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1970-12-04 第64回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会地方行政委員会法務委員会社会労働委員会農林水産委員会商工委員会運輸委員会建設委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月四日(金曜日)     午後二時五分開議  出席委員   産業公害対策特別委員会    委員長 加藤 清二君    理事 小山 省二君 理事 始関 伊平君    理事 古川 丈吉君 理事 山本 幸雄君    理事 渡辺 栄一君 理事 島本 虎三君    理事 岡本 富夫君 理事 寒川 喜一君       久保田円次君    葉梨 信行君       浜田 幸一君    林  義郎君       藤波 孝生君    松本 十郎君       森田重次郎君    土井たか子君       藤田 高敏君    西田 八郎君       米原  昶君 —————————————————————   地方行政委員会    委員長 菅  太郎君    理事 大西 正男君 理事 塩川正十郎君    理事 砂田 重民君 理事 古屋  亨君    理事 山口 鶴男君 理事 小濱 新次君    理事 岡沢 完治君       亀山 孝一君    國場 幸昌君       高鳥  修君    中山 正暉君       中村 弘海君    野呂 恭一君       綿貫 民輔君    土井たか子君       華山 親義君    山本弥之助君       桑名 義治君    和田 一郎君       林  百郎君 —————————————————————   法務委員会    委員長 高橋 英吉君    理事 鍛冶 良作君 理事 畑   和君    理事 沖本 泰幸君       石井  桂君    羽田野忠文君       松本 十郎君    黒田 寿男君       林  孝矩君    岡沢 完治—————————————————————   社会労働委員会    委員長 倉成  正君    理事 小山 省二君 理事 粟山 ひで君    理事 田邊  誠君 理事 大橋 敏雄君    理事 田畑 金光君       有馬 元治君   小此木彦三郎君       大石 武一君    梶山 静六君       唐沢俊二郎君    小金 義照君       斉藤滋与史君    田川 誠一君       中島源太郎君    松山千惠子君       箕輪  登君    向山 一人君       山下 徳夫君    渡部 恒三君       渡辺  肇君    川俣健二郎君       小林  進君    後藤 俊男君       島本 虎三君    藤田 高敏君       寒川 喜一君    西田 八郎君       寺前  巖君 —————————————————————   農林水産委員会    委員長 草野一郎平君   理事 安倍晋太郎君 理事 三ツ林弥太郎君    理事 芳賀  貢君 理事 小平  忠君       小山 長規君    瀬戸山三男君       田澤 吉郎君    高見 三郎君       中尾 栄一君    渡辺  肇君       角屋堅次郎君    田中 恒利君       千葉 七郎君    松沢 俊昭君       瀬野栄次郎君    鶴岡  洋君       二見 伸明君    合沢  栄君       津川 武一—————————————————————   商工委員会    委員長 八田 貞義君    理事 鴨田 宗一君 理事 進藤 一馬君    理事 武藤 嘉文君       石井  一君    大久保武雄君       大橋 武夫君    海部 俊樹君       小峯 柳多君    左藤  恵君       始関 伊平君    山田 久就君       中井徳次郎君    中谷 鉄也君       岡本 富夫君    正木 良明君       松尾 信人君    米原  昶君 —————————————————————   運輸委員会    委員長 福井  勇君    理事 加藤 六月君 理事 徳安 實藏君    理事 箕輪  登君 理事 村山 達雄君    理事 内藤 良平君 理事 松本 忠助君    理事 和田 春生君       佐藤 孝行君    菅波  茂君       砂田 重民君    關谷 勝利君       谷垣 專一君    古屋  亨君       楯 兼次郎君    田中 昭二君       渡辺 武三君    田代 文久君 —————————————————————   建設委員会    委員長 金丸  信君    理事 天野 光晴君 理事 大村 襄治君    理事 渡辺 栄一君 理事 阿部 昭吾君       池田 清志君   稻村佐近四郎君       金子 一平君    葉梨 信行君       廣瀬 正雄君    藤波 孝生君       古内 広雄君    森下 國雄君       山本 幸雄君  早稻田柳右エ門君       北側 義一君    竹本 孫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 小林 武治君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 内田 常雄君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  宮澤 喜一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君         労 働 大 臣 野原 正勝君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         自 治 大 臣 秋田 大助君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   荒木萬壽夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議官      城戸 謙次君         法制局長官   高辻 正巳君         警察庁交通局長 片岡  誠君         経済企画庁審議         官       西川  喬君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         開発局長    岡部  保君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         大蔵省関税局長 谷川 寛三君         文部大臣官房長 安嶋  彌君         文部省初等中等         教育局長    宮地  茂君         文部省大学学術         局長      村山 松雄君         厚生大臣官房長 高木  玄君         厚生大臣官房国         立公園部長   中村 一成君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省環境衛生         局公害部長   會根田郁夫君         厚生省薬務局長 加藤 威二君         農林大臣官房技         術審議官    加賀山國雄君         農林省農政局長 中野 和仁君         林野庁長官   松本 守雄君         通商産業省公害         保安局長    荘   清君         通商産業省鉱山         石炭局長    本田 早苗君         通商産業省公益         事業局長    長橋  尚君         運輸大臣官房審         議官      見坊 力男君         運輸省鉄道監督         局長      山口 真弘君         運輸省自動車局         長       野村 一彦君         労働省労働基準         局長      岡部 實夫君         労働省労働基準         局安全衛生部長 北川 俊夫君         建設省都市局長 吉兼 三郎君         建設省住宅局長 多治見高雄君         自治大臣官房長 岸   昌君  委員外出席者         議     員 細谷 治嘉君         特許庁長官   佐々木 学君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君         法務委員会調査         室長      福山 忠義君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君         農林水産委員会         調査室長   松任谷健太郎君         商工委員会調査         室長      椎野 幸雄君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君         建設委員会調査         室長      曾田  忠君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害対策基本法の一部を改正する法律案内閣  提出第一二号)  公害防止事業費事業者負担法案内閣提出第一  七号)  騒音規制法の一部を改正する法律案内閣提出  第一四号)  大気汚染防止法の一部を改正する法律案内閣  提出第二三号)  環境保全基本法案細谷治嘉君外七名提出、衆  法第一号)  道路交通法の一部を改正する法律案内閣提出  第一三号)  人の健康に係る公害犯罪処罰に関する法律案  (内閣提出第一九号)  廃棄物処理法案内閣提出第一五号)  自然公園法の一部を改正する法律案内閣提出  第二四号)  毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律案  (内閣提出第二五号)  農薬取締法の一部を改正する法律案内閣提出  第二〇号)  農用地土壌汚染防止等に関する法律案(内  閣提出第二一号)  水質汚濁防止法案内閣提出第二二号)  海洋汚染防止法案内閣提出第一八号)  下水道法の一部を改正する法律案内閣提出第  一六号)      ————◇—————   〔加藤産業公害対策特別委員長委員長席に   着く〕
  2. 加藤清二

    加藤委員長 これより産業公害対策特別委員会地方行政委員会法務委員会社会労働委員会農林水産委員会商工委員会運輸委員会建設委員会連合審査会を開きます。  関係常任委関係常任委員長との協議により、私が委員長の職務を行ないます。  内閣提出公害対策基本法の一部を改正する法律案公害防止事業費事業者負担法案騒音規制法の一部を改正する法律案、及び大気汚染防止法の一部を改正する法律案、並びに細谷治嘉君外七名提出環境保全基本法案内閣提出道路交通法の一部を改正する法律案、人の健康に係る公害犯罪処罰に関する法律案廃棄物処理法案自然公園法の一部を改正する法律案毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律案農薬取締法の一部を改正する法律案農用地土壌汚染防止等に関する法律案水質汚濁防止法案海洋汚染防止法案、及び下水道法の一部を改正する法律案を 一括して議題といたします。     —————————————  公害対策基本法の一部を改正する法律案  公害防止事業費事業者負担法案  騒音規制法の一部を改正する法律案  大気汚染防止法の一部を改正する法律案  環境保全基本法案  道路交通法の一部を改正する法律案  人の健康に係る公害犯罪処罰に関する法律案  廃棄物処理法案  自然公園法の一部を改正する法律案  毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律案  農薬取締法の一部を改正する法律案  農用地土壌汚染防止等に関する法律案  水質汚濁防止法案  海洋汚染防止法案  下水道法の一部を改正する法律案   〔本号(その二)に掲載〕     —————————————
  3. 加藤清二

    加藤委員長 提案の理由は、お手元に配付してあります資料によって御了承願うこととし、直ちに質疑に入ります。  この際申し上げます。質疑時間につきましては、関係委員長協議により、決定いたしました時間を厳守していただきますようお願いいたします。  なお、政府委員の方々に申し上げます。答弁の際は、そのつど、官職、氏名を、何々省何々局長委員長に告げて、発言の許可を求めていただき たいと存じます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。始関伊平君。
  4. 始関伊平

    始関委員 私は、自由民主党を代表して、公害及び公害政策基本的な諸問題につきまして、主として佐藤総理お尋ねをいたします。  いま審議の始まろうとしている公害関係法案は、その立案の審議の過程におきましては、十分な審議を尽くすのに、いささか時間の余裕に乏しかったきらいはありますけれども、ともかく、人間尊重生活優先の原則を貫き、また、企業責 任を明確ならしめたものでありまして、これが成立いたしました暁には、わが国は、少なくとも、公害法令整備という点においては、世界の最先進国になるものと私も評価をいたしております。  しかし、法令ができただけで公害状況がよくなるものではございません。日本のような高密度社会において、公害問題を適切に処理して快適な生活環境を保持するためには、大きな困難を伴うのでありますから、各大臣はじめ、各省をあげて、手ぬるかったという批判を受けてもしかたがなかったような従来の態度を改めて、意識を革新し、諸法令の確実な履行を期し、また、実効のある施策を投入して、これによって、公害対策を効 果的に実行すべきであると思います。  総理自身の御決意のほどは、かねて承っておるのでございますが、政府各省庁を代表し、これを督励する立場におきまして、総理決意をこ の際伺いたいと存じます。
  5. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの基本的な政府姿勢、これは、すでにもう本会議においての所信表明、さらにまた、各党代表質問に私がお答えし たところで尽きると思います。  問題は、われわれが経済発展をいろいろし、これは結局、手段だ。やはり目的、目標、これは何といいましても、人間尊重、住みいい社会をつくり上げることだ、ここにあるものですから、やはり私が、標語ではございませんが、一言にしていえば、福祉なくして繁栄なしというこのことばどおりに、われわれはこれからやっていかなきゃならぬと思います。  ところで、そういう意味基本法やその他の関係法令整備はいたしますけれども、これはようやくスタートしたばかりであります。これからスタートしようとするばかりであります。そうして世間の、また社会発展は、これはもう際限のない状態であります。したがって、そういう意味から、現在の法律でこれで十分だとは言えない。新しい事態が起こればどんどん法律をふやしもし、さらに中身も充実していくようにしていかなきゃならない。そういう対応する状態でなきゃならぬ、かように考えますと、法律よりもそのさきに実情を把握し、国民生活の実態を十分に認識して、どうすれば真に国民の利益、これを増進することができるのか、またどうすればお互いの生活を充実することができるのか、福祉向上に寄与することができるのか、絶えずそういう立場に立ってわれわれが行政をしていかなければならない、かように思っておるのであります。  ただいま法律整備しようという第一歩を踏み出すに際しまして、私は、各閣僚にもそういう点を過日の閣議で話をしたのであります。法律はできても、問題は、やはり運用するのはこれは人なんだ、各省ともその点で十分行政指導の効果があがるようにしないと、幾ら法律をつくったって何にもならない。だから実情を把握すること、そういう点で一そうひとつ目的に沿うようにやってもらいたい、こういうことをお願いしまして、ただいま各省の協力を得ておる、かように確信しております。
  6. 始関伊平

    始関委員 私は、公害防止のための財政金融上の措置と、それから税制並びに関税政策的運用について、ここに二つの具体的な問題点をあげてお尋ねをいたしますが、私は、この二つの問題についての具体的な御答弁もさることながら、この質問に対する御答弁を通じて、同時に公害問題に取り組む政府姿勢というものが、はたして本気であるのかどうかという点を確かめてみたい、かように存じます。  公害対策の一方の旗頭、相撲では大関とも言うべきものが水質汚濁でありまして、これを防止いたしますためには、発生源における浄化装置などを整備する、発生源対策が重要であることはもちろんでありますけれども、それと同時に、公共事業としての下水道整備が何よりも急務であります。日本下水道というのはたいへんおくれておりまして、EEC諸国などに比べると二十年から三十年おくれておる、かように申されております。しかのみならず、予算がたいへん不足しておるようでございまして、私どもの平素見聞するところでは、たいへん小さいわずかな下水道でも、これを完成するのに五年も十年もかかる、これが実情ではないかと思うのでございます。公共事業、特に下水道などにつきまして、思い切った財政措置を講ずべきではないか。  本年の初頭、アメリカのニクソン大統領が、公害教書というものを発表いたしまして、幾多の公害の具体的な対策を提示しておるのでありますが、この中で、下水道整備のためには、終末処理を含めまして、四年間に百億ドル、連邦分は四十億ドルでございますけれども、支出しようとしておりますのは、わが国としても参考としてよろしいのではなかろうかと思います。  それから、公害現象の他の一方の旗頭大関、これは大気汚染であります。大気汚染防止のためには、低硫黄原油確保が緊急であり不可欠の条件であります。わが国の場合にはその入手がきわめて困難であります。世界における石油生産のうちで、低硫黄原油は五〇%を占めるということでありますが、日本輸入されるものの中の低硫黄原油というのは一五%しかない。これは申し上げるまでもなく、自分自身の油田をほとんど持っていない日本の悲哀であります。また、一方におきましては、わが国石油資源政策というものが皆無であるということの結果でもあります。  あとのほうの問題はきょう問題にいたしませんが、たいへん残念な状態になっております。したがいまして、国内での重油脱硫を進めるということが、公害対策の上でたいへん大事でございますが、脱硫をいたしますと、キロリットル当たり千五百円とか二千円とかコストがかかるのでありますけれども、これが、いまは、なかなか消費者に転嫁できないのが実情であります。私ども、衆議院の公害委員会で、各公害地域を視察に参りました。加藤委員長も一緒に参ったのでありますが、至るところでこの低硫黄原油が奪い合いの状況になっております。発電所も、製鉄所も、みんな低硫黄原油を使うということをいわばその地域に対して公約をいたしておるのでございまして、低硫黄原油入手がうまくいかぬということになりますと、これはその地域の重要な公共的な発電所などを含めまして、大きな問題になるおそれがあるわけでございます。  このような点からいたしまして、昨年度から、脱硫重油に対しては、若干の関税払い戻しをしておるのでございますけれども、この幅をさらに広げるのが適当ではないか。また、いま申したとおり、たいへん低硫黄原油は求めにくいのであるし価格も高いのでありますから、この輸入に対してもやはり新しいやり方、制度として、関税の一部を払い戻してやるというようなことが私は必要ではなかろうかと思うのであります。  具体的な問題についてお尋ねをいたすわけでございますが、同時に、この具体的な問題へのお尋ねを通して、政府が、法令のみならず、こういう予算金融税制関税というような方面において、どの程度本気で真剣に努力をなさるおつもりがあるのかということをお尋ねしたいのであります。できましたら、これも佐藤総理からお答えいただければしあわせだと思います。
  7. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま始関委員からのお話でございますが、来年度の予算、いま差し迫った問題になっておるわけです。この予算編成にあたりましては、何といっても公害と物価、これを二つの大きな眼目にしていきたい、かように考えておるわけであります。  公害問題、これにつきましても、できる限りの財政上の配意をいたしたいと、ただいま具体的にいろいろ検討しております。  いま御指摘の第一の問題であります下水の問題でありますが、これにつきましては、これは元来が地方団体の受け持つ仕事でございますが、地方団体が当面しておるこの下水問題をさばき得るような財政的措置、これはもう当然考えなければならぬ、国も協力しなければならぬ、かように考えております。  それから、大気関係いたしまして原油の問題でございますが、いま御指摘脱硫原油に対する関税還付、これを拡大せよ、また低硫黄原油入手するための施策を講ぜよ、この二つの点につきまして、通産省から四十六年度予算の要求といたしまして、いま問題の提起を受けておるわけであります。四十六年度予算編成の一環といたしまして、これは、ただいま申し上げましたような非常に重大な公害問題に連なる問題であるという認識を持って検討いたしていきたい。ただいまそういう段階であることをまずお答え申し上げます。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、わが国の場合、低硫黄原油は現在総需要の一割ぐらいしか得られておりませんで、ことに最近米国で非常に低硫黄原油需要が出ましたことと、リビア等の御承知の問題もありまして非常に逼迫しております。今後とも入手にはできるだけの努力をいたしますけれども、やはり重点といたしましては、同時に直接、間接の脱硫ということに力を注がなければならないと思っております。幸いにしまして石油精製設備許可事項になっておりますので、その許可との関連におきまして脱硫設備をふやしてまいりたい。  昨年、総合エネルギー調査会の低硫黄部会というものを設けまして、一年研究をしてもらいましたが、昭和四十八年までの五年間、大体どのぐらいの脱硫装置が可能であるかということもほぼ計算も出ておりますし、おそらくこれは実行もまず可能であろうと思っております。それにいたしましても、ただいまのようなコストの問題がございますので、昨年、今年度でございますが、今年度分として一部関税軽減ということを大蔵大臣にもお願いをいたしまして、一部実現いたしましたが、これは一部でありまして、本格的には四十六年度の予算編成の際にもう一度相談をし直そう、昨年こういうことになっております。したがいまして、四十六年度の予算編成との関連で、脱硫分関税軽減と、それから低硫黄輸入の場合の関税還付というようなことを私どもからお願いをし、御考慮をいただきたい、こう思っておるわけでございます。
  9. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま始関君から下水整備と、さらに低硫黄エネルギー確保、こういう二つの問題を公害対策基本として考うべきだ、こういう御提案がございました。わが国下水がたいへんおくれておるという、これは日本のわれわれの生活様式が、いわゆる下水を必要としないとでも申しますか、そういうような行き方で今日まで経過した。私がいまさら申し上げるまでもなく、川は三尺流れて清しというたいへん古めかしい話がございます。ところが、いまや川は流れるに従ってますますよごれる、こういう状況であります。したがって、われわれの生活が近代化されるという、そういう立場に立ってものごとを考えないと、ただ下水が不足しているからこれを整備するんだ、これだけでは不十分だろうと思います。積極的に、近代生活をいまもうやっているんだ、それと取り組むにはどうしたらいいのか、その根本はやはり下水道の不足だ、こういうことで積極的にやらなければならぬ。ただいま各方面から、そういう意味の要望が強く出ております。たいへん短い期間に下水道整備しようとすると巨額な金が要る。これは大蔵大臣としても頭の痛い実は最中であります。しかし、これはどうしても取り組んでいかなければならないことだ、かように私は考えております。したがって、ただいま申し上げるように、生活様式がすっかり変わり、また産業構造、これも発展した今日、この下水道整備するということが目下の急務だ、こういう意味でこれと取り組まないと、とうてい国民の皆さん方が希望されるような状態にはならぬだろう、そこにむずかしさがあるのだ、そういう意味でたいへん苦心しておる最中であります。  また、低硫黄の石油源、これを確保しろとおっしゃる。この実情は、先ほど通産大臣から詳しく申し上げたので多くを私は申し上げません。しかし、最近は硫黄があっても原油自身が高くなる、そういうような経済情勢でもあります。石油資源そのものが、世界的に限度があるという、そういう意味からでもありましょう。その中で、ことに低硫黄のものを選んでいくという、それはたいへんむずかしいことだろう。そこで、しかたないから脱硫装置、そのほうに万全を期そうじゃないか。いまの科学技術の力をもってすれば脱硫装置、これはできないわけはないはずだから、大気汚染が、もっと粉じんその他を含めて大気をけがれのないものにすること、これは可能なのじゃないか。そういうことで取り組むべきだろう。ただいまそういう方向で積極的に取り組んでおるはずであります。ただ、重油そのものが、石炭にかわる石油、それがただいまのエネルギー源だ、こういうことで、また原子力そのものもとかくの批判を受けておる、なかなか国民になじみにくいものだ、かように考えると、これからのエネルギー源をどこに求めるか。しかも、お互いの生活を守るという観点で、不十分でないエネルギーを確保することが必要な事態になっておる。そういう点をも考えながら、私どもはただいまの大気汚染あるいは水質汚濁、そういうものと取り組まなければならない、かように思っておる次第であります。
  10. 始関伊平

    始関委員 公害現象は、結局産業と人口の過密とうらはらの関係にあります。したがって、産業政策、特に立地政策というものと不可分な関係にあるわけであります。しかして、環境基準というものは、これはもう動かすことのできないものとしてきめられておりますから、ある地域に工場、事業場の数がふえ、あるいはその規模が大きくなる。それに伴いまして、どうしても排出基準をだんだん下げていかなければならぬ。これは伸縮は多少はありましょうけれども、しかし、これは技術的にも経済的にも限界がある。そこで、その結果といたしまして、私は、過密地帯では新規工場と既存工場の設備の拡張を押えていく。いやな問題でありますけれども、どうせこの問題を避けて通ることはできないだろう、こういう感じがいたしております。公害基本法第十一条には、これはもう御承知のとおりでありますが、その後段に、「公害が著しく、又は著しくなるおそれがある地域について、公害の原因となる施設の設置を規制する措置を講じなければならない。」かようにございます。私は、この点こそまさに過密地帯における公害対策のキーポイントであって、この過密化の進行を認めながら、なおかつ公害を防止しようというのは、あたかも木によって魚を求めるがたぐいではなかろうかと思うのであります。政府は、十四の法案を出しながら、肝心かなめのこの問題を落とされたのは、どういうお考えであるのかということを私は伺いたいと思うのであります。もっとも、あまり広範な地域にわたりまして工場の新設などの許可制度をやりますと、これは自由経済の根幹に触れてまいります。また、いま経済成長と公害との関係が議論されておりますが、そういうことになりますと、これはほんとうに企業成長には死活的な大きな影響を与えると思うのでありまして、慎重に考慮することをお願いしたいのでありますけれども、さしあたっては、御承知の首都圏整備法、これは第二十七条に(工業等制限区域)という規定がございます。ある地域を限っては、これはどうしてもやらなければならない問題ではなかろうかと思いますので、この点をお尋ねしたい。  それから、いま申し上げたこととうらはらになりますが、それなら一体この既存の工業地帯から締め出された新規の工場は一体どこに行けばいいんだ、こういう問題が起こってくるのでありますが、これについては、過疎地帯における工業の適地、特にまだわが国に残っているといわれている——これは少ししかありませんが、陸奥湾地区でありますとか、鹿児島の志布志湾地区でありますとか、秋田県の海岸でありますとか、そういう大規模な工業適地についてその基盤整備を進めるべきではなかろうか、かように思うのでございますが、最も根本的な点でございますから、佐藤総理から御答弁いただきたいと思います。
  11. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最初に事務的な点を私から御説明をさせていただきます。  ただいま御指摘の点は非常にむずかしい、かつ重要な問題でございますので、私ども常に問題意識としては持っております。そこで、今回御審議を願っております法案のたてまえ、考え方から申しますと、公害発生の原因となるような設備につきましては、工場新設の際に届け出の内容を審査いたしまして改善命令が出せる、あるいは改善命令ではとうてい事態を収拾し得ないという場合には廃止を求めることができるということになっております。従来、大気汚染防止法、それから水質の関係、工場排水の規制、これが指定制でございましたので、これは全国的に行なわれておりませんでしたが、今回は全国制になりますので、ただいまのような方法で改善もさせ、また規制することもできる、こう考えておるわけでございます。同時に、首都圏及び近畿圏につきましては、規制の法的根拠はまた別途ございます。なお、新都市計画法の線引きという考えも、ただいま御指摘のような方向に従って行なわれておるわけでございます。  それからもう一つ、根本の問題といたしましては、新全国総合開発計画にもございますように、いわゆる大規模工業地帯の基盤整備、現在、むつ小川原などはもう多少具体的な動きが始まっておりますけれども、そういう受け入れ態勢も必要であろう、こういうふうにただいま考えておるわけでございます。それにしましても、一応公害云々ということを離れましても、生活環境として、工場があっちこっちに乱設されるということには問題がありはしないか、私どもそういう問題意識は実は持っておりますが、ただいままでのところ、公害との関連におきましてはただいま御説明申し上げたような施策を講じたいと思っておるわけでございます。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いまの経済成長、同時にまた公共の福祉、そういうものが二者択一的にされるような考え方がどうだろうかと思っております。しばしば申し上げたように、とにかく、福祉なくして成長なしという、二つのものをやはり調和をはかっていく、調整していかないと、お互いは、原始時代に返ったら公害がなくて済むのだ、こういうような端的な表現で満足はできないだろうと思う。私は、近代的生活をするために、そういうようにしかも近代的生活をしても、われわれの、公害を受けないで済むような生活環境をつくろうというのがいま審議している本来の問題である、かように理解しております。したがって、公害発生源である工場の誘致等について、特別な地域については、お説にもありましたように、過密がもたらす場合がしばしば多いのでありますから、そういう特定地域についても制限があるのはこれは当然だろうと思います。しかしながら、もともと経済成長はただ単に手段にすぎない、お互いがしあわせになる手段だ、かように考えますと、その手段をふさいでしまって、その手がかりがないようにしてしまって私どもがしあわせを望むということは、これこそ木に登って魚を求めるという、そういうことにもなるだろうと思います。したがって、そこらに問題があるんじゃないだろうか。いろいろの制限はいたしますが、同時にやはり地域住民の理解がないとこういうことはできないことだ、かように思っております。したがって、最近の工場誘致等に見られるように、地域住民と企業者と十分話し合いをつけて、しかる上で、公害が発生しないような施設その他の用意をする、万一そういうような事態が起こればどういうように責任を負うとか、等々の話し合いが進んでおるやに聞いておりますが、とにかく公害発生源だからというので最初から全然寄せつけない、締め切ってしまう、こういうことでは、近代的なお互いとしてはとるべき方法ではないだろう、かように私は思います。
  13. 始関伊平

    始関委員 次は、公害対策の科学的根拠という問題でございますが、どうもこの点がたいへん不十分なように思います。のみならず、こういう点について学者、研究者の意見というものがしばしば対立し、見解が分かれておりまして、こういうことがどうも公害対策全体の信頼性というものを薄めておるように感じます。私は、けさある新聞が書いておりましたが、科学的な十分な資料がなければ公害対策は進めるべきでないといったようなことはもちろん考えておるものではございませんけれども、こういうような観点から最初に厚生大臣に伺いますが、環境基準や排出基準は厳密な科学的調査、研究の結果に基づいて決定されているとお思いになりますか。特に、いま問題となっている微量重金属、有機水銀とか鉛とかカドミウムとか、いろいろあるようでございますが、これらの物質と人の健康との間の因果関係を正確に究明、把握しておるとお考えになりますか。私は、たいへん不十分だという御答弁が出てくると思うのでございますが、そういう見地から、いわゆる疫学的な研究体制というようなものの整備を急がなければならないと思うのでございますが、詳細にお答えをいただく時間がございませんので、きわめて大体の方向をひとつお示しいただきたいと思います。  次に、通産大臣お尋ねいたしますが、重油脱硫などについて通産当局が技術開発につとめておることは承知しておりますが、これはきょうはお尋ねをいたしません。いま問題にいたしました微量重金属の分析や測定並びにこれを除去する技術の開発を工業試験所などでやっているというお話でございますが、これはどういう段階なのか。目鼻がついたのか、完成が近いのか、まだまだなのか、という程度でけっこうでございますが、これも伺いたい。  それから、今回の公害立法として海洋汚染防止法というものが出ております。しかし、海洋なりあるいは大気なりというものには自浄作用というものがあるといわれております。この自浄作用の内容とその限界というものについての研究は、世界的にも最も立ちおくれた分野であるように承知をいたしておりますが、生態学的な研究など、この分野の研究についても、わが国として今後積極的に取り組むべきではなかろうかと思うのでございますが、これは橋本運輸大臣がお見えになっておりますので、時間の関係もございますのでほんとに大体の方向でけっこうでございますが、それぞれ三大臣からお答えをいただきたい、かように存じます。
  14. 内田常雄

    ○内田国務大臣 公害対策基本法等に基づきまして環境基準を設定したり、またその達成の手段として規制基準等を設けておるわけでございますが、これらにつきましては、亜硫酸ガスとか一酸化炭素のように、もう学理的にも人の健康に有害なことが明らかなものもございますし、また、いろいろな各種の微量重金属などにつきましては、必ずしも私は学問的には明瞭になっていないものもあろうと思いますが、しかし厚生大臣としては、一方におきまして環境の清浄を守るだけの措置を講じつつ、さらに私どもは今日の科学技術の段階においてそれの究明を進めていく、こういう措置をとっておるわけであります。一切が明らかになって、最終的に有害だとわかるまではすべての措置をしないということであってはならないように少なくとも私どもは考えますので、始関さんの御質問も出ていると思います。
  15. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、工業技術院では以前から、分析の方法、そのための施設、研究をいたしておりまして、現在ございます方法、施設はJISの規格を設けておるわけでございます。その限りではやや客観的に確定しておるのでございますけれども、もう一単位下まで分析をする——これは科学及び機械両面からでございますが、そういうことになりますと、これは世界的にやはり非常にむずかしい問題だそうでございまして、たとえば〇・〇一、それをもう一単位、十分の一に落とすというところは非常にむずかしいようでございまして、これは引き続き研究をいたしております。  それから、工業技術院傘下でばらばらに研究をしておったきらいもございましたので、今回公害資源研究所というものを、七月から改組いたしまして設けました。各試験所の間のコオーディネーションもやろうということで、そのような仕組みも設けたところでございます。
  16. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 海洋汚染防止法は、御承知のようにわが国世界に率先して制定する法律であります。従来油濁防止法という法律がありますが、これは、タンカーは百五十トン以下は野放しになっております。それから一般船につきましても五百トン以下は野放しになっておる。これを今度の法律によっては、タンカーは百五十トン以下も全部規制する、禁止をする。それから一般の船につきましては、五百トン以上であったのを三百トン以上を規制する、こういうことにしております。これは油だけではありませんで、一般の廃棄物も一緒に規制することになります。したがって、陸上から船によって廃棄する場合には、特に船に対して廃棄船の登録を行なう、あるいはまた規制についてのこまかい規定を設けてやっていくわけであります。これによって、おそらく日本の船がまず規制されるわけでありますが、領海においては従来は五十海里までを規制しておりましたが、今度は至るところ、七つの海でこれを規制するということになります。ただし、条約が本年の十月に強化されましたが、まだ日本はこれを批准をいたしておりません。次の国会でこれを批准する予定になっております。世界におきましてもこの種の法律日本が先べんをつけることになりますので、おそらく各国もこれに刺激せられて、りっぱな法律が各国ともに進められるであろう、かように考えておるわけであります。
  17. 始関伊平

    始関委員 最後に、もう御答弁をいただく時間がございませんので、佐藤総理と自治大臣に対しましてお願いを申し上げておきますが、公害問題というのは今日国民が非常に心配しております。先行きどうなるだろうかということを考えておるわけでございますが、まだ現在の段階ではだんだん広域化したり多様化したりしております。その理由は、昔からある工場が公害防止のための施設をしないままで生産を続け、場合によっては生産がふえるということと、カドミウムとかああいう新しいものが出てきたことが大きな点ではないかと思いますけれども、いずれにいたしましても、今度の立法などによりまして、かなり企業責任もはっきりいたしましたり、公害対策が進むだろうと思います。三年後にはどうなるとか、五年後にはどうなるとか、白書というようなものでなくとも、あるいは五年計画というものでなくとも、政府の正式な発表として、もう少したてばこうなるということをはっきりおっしゃっていただいて、国民を安心させていただく必要があるだろうと思いますので、ひとつ御考慮いただきたいと存じます。  それから自治大臣に対しましては事業税の分配の問題でございますが、たとえば千葉県に大きな発電所がある。その電気の大部分は東京都に持っていっておる。千葉県には公害が残るわけでございますが、その事業税は、現在の分け方からいいますと、大部分が本社なり営業所に人間のたくさんおる東京都のほうに持っていかれて、千葉県はほんの少しだ。千葉県と申しましたが、これは電源などを持っております多くの県の知事さんなどが非常に強く要望しておりますし、私は、税制の合理的な運営という点から——税はしろうとですが、そのほうがよくはないかと思いますので、これまた御考慮をお願いいたします。  時間がございませんのでお願いだけにとどめておきます。ありがとうございました。(拍手)
  18. 加藤清二

    加藤委員長 答弁は——まだ一分ありますよ。
  19. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 始関君からただいまお願いと言われましたが、始関君とは同じ党ですから、党内でもまたゆっくりお話ができるだろうと思いますので、その際に十分懇談を遂げたい、かように思います。ただいま言われたことは国民の皆さま方もみんな御心配していらっしゃることですから、他の機会に明らかにしたいと思います。
  20. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 法人事業税の分割基準につきましては、その事業の活動内容を地域的に適正に反映をさすことと、それから課税にあたっての計算事務が簡明であるということが要望されるわけでございます。ただいまお説のような、従業員割りによらないで、あるいは生産量によるとか、あるいは固定資産税の価額によれというような御意見もございます。こういうことが案外、事業事業で多少状態が違うようでございますが、計算事務に、申告当時に非常にかたきを事業者にしいるというような傾向もあろうかと思うので、何らか別途の方法で、簡明な方法で事業内容を適正に表現できる、しこうして地方にも適正な事業税がさらにふえる、全国的に均衡を得ているという方法がありやしないかということをせっかく検討中でございます。
  21. 加藤清二

    加藤委員長 次は、小林進君。
  22. 小林進

    小林(進)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、主として総理に御質問を申し上げたいと存じます。  まず、公害基本法関係してでありますが、政府のこの公害基本法に対する姿勢について承りたいのでございます。  いま国民が一番知りたいと思っておることは、政府がこの基本法の改正案を提出するに際し、国民の側を向いているのか、あるいは財界の側を向いているのかという点であります。昨日の本会議中において、わが党の島本君の質問総理は答えられて、生活を優先する考えであるということをおっしゃいましたが、国民は、きのうの総理の御答弁だけではいまだ疑いを晴らしておらぬのであります。そこへ昨晩の新聞は一斉に、政務次官会議で、公害法案の修正について各省の政務次官が、政府の説明は何であれ、公害罪修正の過程は、一般の印象として、党の圧力、さらにその背景に財界の圧力があったと受け取られる、われわれはこうしたことは不愉快に思うと発言をいたしておるのであります。政府を構成する重要な地位にある次官までが、公害に取り組んでいる政府姿勢に重大な疑問と不愉快を感じているというのでありまするから、国民の側からすればさらに疑いを強め不信を持つのは当然であると思うのであります。政府はほんとうに生活優先に徹して公害の防衛に任ずるという決意姿勢を持っておられるのかどうか、これをまず承りたいと思うのであります。
  23. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、政府の態度は財界に向いているわけじゃありません。被害者のほうに向いている。はっきり申せば国民のほうに向いてやっている。このことは間違いございませんから御了承いただきたいと思います。  また、次官会議においてのいろいろの議論について、私の党もその名が示すようにたいへん自由濶達な論議を戦わしております。しかし私の耳にまでのぼってこない状況でありますから、いまの次官の考え方云々もその程度に御了承いただきます。抑圧するような考えはございませんので、自由濶達にやらしております。
  24. 小林進

    小林(進)委員 もし総理のおっしゃるとおりであるならば、その生活優先の思想あるいは目的というものが法案のどこかに明瞭にあらわれておらなければならぬと思うのでありますが、残念ながらどこにもあらわれていないのであります。公害基本法の一部改正法律案において「経済の健全な発展との調和」という条項だけは確かに削除をされましたが、積極的に生活権を優先する、基本人権を優先するという条項を見出すことができぬのであります。総理の発言を裏づける条文は一体どこにあるのか、これをお伺いいたしたいと思うのであります。
  25. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま小林君が自分でも言われるように、基本法第一条にはっきり、いままで疑惑を残した点を直した、これで非常にはっきりしたのじゃないか。本会議でもその点に触れてはっきり申し上げたのですが、政府が真剣にこれと取り組んでいるからこそ、こうして臨時国会を開き、公害国会を開き、十五の法案提案する、こういうような状態ですから、それらの点も御理解いただきまして、政府の熱意のあるところも御賛成いただきたいし、むしろ力をかしていただきたい。これをお願いしておきます。
  26. 小林進

    小林(進)委員 一体公害とは何ぞというこの定義、及び公害のよって来たる原因や公害の分析について、政府とわれわれ野党との間に重大な相違があるのではないかという気持ちがするのであります。  公害とは、事業活動その他、人の活動によって生ずる一般公衆または不特定多数人に対する生活の妨害であるといわれております。そして公害の形態を分析すれば三つに分けることができるのでありまして、産業公害、都市公害、政治公害の三つでありまして、産業公害とは産業の放出する汚染物質のために住民が被害を受けるもの、これをいうのであって、日本公害の七〇%は産業公害であります。産業公害の直接の責任者は企業の経営者であることは言うまでもありません。  政治公害というのは一体何かといえば、警察、軍事、行政など、国家権力の行使によって行なわれる、生産や生活の妨害が政治公害でありまして、軍事基地の騒音、軍需工場の有毒ガス放出、原水爆の実験、原子力潜水艦の入浴などによる放射能の汚染などがこれでありまして、その責任は当然国にあることは言うまでもありません。  ところで、公害の大部分を占めている産業公害でありまするが、政府は、この産業公害を引き起こす直接の責任者たる企業に対する姿勢がまことにあいまいなのであります。これではどんなに法律をつくっても、公害の問題は根本的に解決することがないというのが、国民一般の抱いている偽らざる不信感であります。この国民の偽らざる疑問を解決するために私はあえてお伺いをするのでありますが、産業公害における企業者は公害の加害者であり、不特定多数の住民は被害者であります。もっと極端にいえば、産業公害の犯人は企業者であり、被害者は住民であると思うが、いかがでございましょうか。加害者と被害者、犯人と被害者は絶対に相いれないものであると思いまするが、この点、総理はいかようにお考えになりますか。
  27. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 公害が発生した場合に、その責任は企業にあるんだ、かように仰せられるが、これは企業の責任としてはっきりしておる場合もありましょうし、また不明確の場合もあるし、また多数のものが集まってかもし出す公害もありましょう。やはり公害の形態でそれぞれ違っておりますから、一がいに企業者の責任だ、かようにきめつけるのはいかがかと思います。自動車の排気ガスの公害などは明らかにそういう点になりましょうし、あるいはまた廃棄物等においても、家庭の廃棄物もやはり一つの公害でもありますから、それらの点もやはりそれぞれ考えていかなければならない、かように私思っております。
  28. 小林進

    小林(進)委員 私は、総理のそういう御答弁があると思いまして、公害の種類をあえて分析いたしました。その中の七〇%を占めているものは産業公害である。企業者がかもし出す公害であるということを定義づけ、分類をいたしました。したがいまして、ほんとうに政府が、この多くの公害の中の産業公害を防止するという意欲に立つならば、この加害者であり犯人である企業者、産業人を厳重に取り締まるということから始めなければならないと思うのであります。政府公害対策について国民が最も疑惑を持っている点はこの点であります。加害者であり、犯人であるといってもよいこれら財界人、企業者に対する政府の態度がたいへんあいまいであるということであります。  それのみではなくて、しばしば財界人と懇談をし、そしてその要求に屈服されておることを国民はよく知っているからであります。財界を代表するものに四つの団体があります。経団連、経済同友会、日本商工会議所、日経連の四つの団体でありまするが、いずれもこれは公害罪に反対をいたしております。さらに基本法についても、産業調和事項が削除されたことに反対しておるということであり、そのために自民党の幹事長とも懇談をいたしておることが十一月の二十日の各紙に一斉に報道をされておるのであります。その後十日もたたずして、まず公害罪の中から危険を及ぼすおそれのある場合という条項が突如削除されておるのであります。このことについてマスコミは次のように伝えております。読み上げます。「公害法案が、財界からの注文で修正された。政府の準備した法案が、今度ほどはっきりと、みんなが見ている前で、あっという間に、部外の力で修正されてしまった例はないだろう。自民党首脳が財界首脳に「来年の選挙資金を」と頼みにいき、同じ席で財界は「公害法案審議未了で流してほしい」と党に頼む。それが十日前だ。ききめは即座にあらわれる。財界の「圧力で……」と、どの新聞にもあった。「……ゆらぐ自民党」「及び腰の自民党」「苦慮する自民党」。ゆらいだのは党で、政府は最後まで「法務省原案どおり無修正で通す」形でいた。しかし、そういう政府が必ずしも正義の味方だったわけではない。見さかいもなく「どうせざる法なんだから」とまでいって党の了解を得ようとしたが、押し切られた。よほど財界の圧力なり工作が猛烈だったのだろうな、と想像する。公害法案は、他国に類のない、きびしい法律だそうだ。それだけ法技術的に問題があるらしいことはわかるけれど、少なくとも政府の専門家が時間をかけて検討した原案である。また、他国に類のない公害先進国日本だからこそ、こういう法律を必要としたのだった。公害問題は、ことし最大多数の国民の関心事になった。その公害問題で、まるで頭からぴしゃりという感じで、いま、政府と自民党が財界の力に押えつけられた。さすがに自民党内にも「そういう印象を国民に与えるのは、政治的にまずい」という意見があったが、弱弱しい声で終わった。財界と自民党とが密着していることは、まあ、世間の常識ではある。それにしても、こんどのこの露骨さ加減はなんだろう。公害問題のむずかしさ、けわしさを、またひとつ学んだ。」ものであると言っておるのでありまするが、私は、これがうそだとおっしゃるのであれば、この新聞社に抗議を申し込むか、誣告罪か、または名誉棄損で訴えられたらよろしいではありませんか。政府は一片の抗議もお出しにならぬから、国民はますます疑惑を深めておるのであります。抗議を申し込み、あるいは取り消しを申し込まれたかどうか、この点をまずお伺いをしておきたいのであります。
  29. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお読みになったのは何新聞ですか。新聞社の名前をはっきりおっしゃってください。(小林(進)委員「朝日新聞」と呼ぶ)朝日新聞ですか。まだ政府は何にもそれに対して抗議を申し込んでおりません。その点ははっきり申し上げておきます。  きょうも私、参議院で実は声を大きくしたのでありますが、とにかくどうも言論自由の場所だとはいいながら、公党を誹謗することだけは、お互いに良識ある範囲にとどめてほしいということを参議院の本会議でも実は申しました。私は、ただいまの点は政府において何ら関与するものでもない、これを何度も申し上げております。私どもの声明は御信用なさらないが、新聞社で書いたことはそれを何よりも大事にお考えになる、さようならば、小林君もその社のほうにお入りになって、審議をここでなさることは無意味だろう、私はさように思います。一体どうでしょう。(拍手)私がただいま申し上げる点について、別に私は政府の考え方を私どもは明確にしておりますし、ただいまそれで十分ではないだろうか、かように思っております。政府答弁は信用しない、しかし新聞社の材料をもって私どもを批判されること、これはいかがか、かように思います。もっと冷静にお互いがこういう問題と取り組むところ、これが必要ではないだろうかと思っております。私はそこらに問題があろうかと思っております。
  30. 小林進

    小林(進)委員 時間がありませんので、総理答弁は問題を残しながら、次へ進みたいと思います。  財界四団体の反対をいたしておりますのは、あに公害罪という基本法だけではありません。経済同友会は農地の土壌汚染防止法も問題があるといっておるのであります。こうなれば、次から次へと法案が骨抜きにされて、結局何もかもなくなってしまうのではないかということを国民は非常におそれておるのであります。この点、国民の疑惑が間違っておるのかどうか、私はこれを総理に聞きたい。この政府と財界の癒着を別のことばで言えば、産業公害の加害者である財界人と政府との関係を見て、政府はどろぼうを縛る法律をつくるのにどろぼうと相談をしている、殺人犯を取り締まるのに殺人犯人と取り締まりの方法を相談をしていると国民は批判をしておるのであります。そして、これでは国民は安心して生活することができぬ、どうしても政府のこの間違った姿勢を正して、住民の立場国民立場、被害者の立場に立って、この公害犯人を厳重に取り締まる姿勢を示してもらいたいというのが国民の声であります。これに対する政府の明らかなお答えをもう一度お伺いをいたしておきたいのであります。
  31. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が小林君に言えることは、政府政府の責任においてただいま法案を準備し、そうして皆さん方の御審議を願っておるのであります。その経緯等についていろいろな疑惑を持っておられるというから、そういうことはございませんと、はっきり実は申し上げたのでございます。この上は政府行政の態度なり、同時にまた、法案審議に対して与党がどういうように協力しているか、成立にどういう努力をしているか、これでおわかりがいただけるんじゃないだろうか、かように私思っております。
  32. 小林進

    小林(進)委員 確かに総理のおことばの中には、誠意の一片も見ることができぬのでありまして、具体的に法案その他の形の中に何もあらわれていないのであります。社会党、公明党、民社党三党は、環境保全基本法案というものを作成いたしまして、いま国会に提出をいたしておりまするが、その中には、いま私が申し上げました理念が明瞭にうたわれているのであります。  すなわち、第三条には、現在及び将来の国民が健全な心身を保持し、安全かつ快適な生活を営むために必要かつ十分な自然環境及び資源が確保されるために、国をあげて努力をすること。それから環境権保全のための施策は、あらゆる産業施策と企業利益に優先する旨を明記をいたしておるのであります。私は、これだけを明記することによって初めて総理の言わるる生活権優先が明らかになると思うのでございまして、政府は三党のこの条文を政府基本法の第一条に明記をして、国民の健康と生命と安全を第一に優先するということを明らかにせられる決意が一体ないかどうか、御所見を承っておきたいと思うのであります。
  33. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま小林君がお述べになりましたような点を、当委員会が審議している最中ではないかと思っております。ただいま私どもが国会の審議についてとやかく申し上げること、これは差し控えるべきだ、かように思いますので、お尋ねがございましたが、どうか十分御審議願いたいと思います。
  34. 小林進

    小林(進)委員 なお、社会党を中心とする三党の基本法は、政府案に比較をいたしまして、事業者の責務十三条、事業者等に対する規制十七条、公害対策の優先十二条、公害の防止に関する責任者制度二十二条等、明確にうたっておるのでありまして、国民はせめてこの三党の案が実現されればと願っておるのでありまして、政府はわれらのこの法案を受け入れられることを強く要望をいたしましてやまぬ次第であります。  なお、この問題に関しましてひとつ総理お願いをいたしておきたいことは、これほど国民の疑惑を受けておりまする財界の態度に対しましてその変更を厳重に忠告せらるる意思がありやいなやということでございまして、私はいまの財界の態度がいかに外国に非難をせられているか、その例の一、二を申し上げて、あえて総理決意を促しておきたいのであります。  まずアメリカのネーダー氏という、これは公害の専門の弁護士でありますが、この人は日本公害に対して、公害は人の命を奪う化学兵器だ、来いというならば日本へ出かけていって公害に挑戦をする、日本の家族的温情主義、大企業のまあまあ意識が公害をはびこらせる第一の原因である、市民が発言すれば改められる、長く根強くやることだと忠告をしているのであります。  また、昨年十二月の国連総会では、世界は核戦争による絶滅は避け得た、しかし公害による同じような脅威を受けている、政府も産業界も必要な責任をとるべきだという、こういうスエーデン提出の決議案を採択をいたしておるのであります。産業界も責任をとるべきだという、ここのところに私は注意を喚起いたしておきたいのであります。  またいま一つ、アメリカの鉄鋼メーカーの大手でありまするベスレヘム社の社長のエドモンド・F・マーチン氏という人は、ニューヨーク・タイムス紙に手紙を寄せて、署名入りで、日本の企業に基づくいわゆる公害ダンピングについて次のごとく投書をいたしておるのであります。すなわち、日本の企業者たちは、環境汚染防止のために費用を使わぬので、米国の同業者よりはるかに優位に立っている、こう主張して異議を唱えているのであります。  以上、二、三の例を見てもわかるごとく、日本の産業界が公害に対してあまりにも無知であり、あまりにも鈍感であり、現在世界からそれを注目され、非難されていることがこの例によっても明らかなのでありまして、現在財界が金力にものをいわせて政府を屈服しようとしても、いつかは砥界の各国から、人命をそこなう殺人者として、または世界の市場を公害ダンピングで荒らし回るギャングとして締め出されるときが必ずまいりましょう。そのためにも総理は、勇断をもって、財界の不当な要求、圧力をはね返して、厳重な忠告を与えて、いま政府がおやりになっている公害防止対策を阻害することのないような、そういう行動をとらないように中止させるべきであると私は思いますが、いかがでございましょう。総理の財界、企業に対する勇断をひとえに願ってやまないのであります。
  35. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府は、財界あるいは産業界の意見に屈服してどうこうしたことはございません。これは本会議ではっきり申し上げたとおりであります。また、私ども自身政府に対しては財界からも何らの陳情はございません。このこともはっきり申し上げておきます。  ただ、私どもが党といろいろ相談をした、そこらに問題があるのだ、かような御指摘があろうかと思いますけれども、これは全然別なことでありまして、議会政治、政党政治である限りにおいて、与党の意向を政府が取り入れるということはこれは当然のことでありまして、十分そこらに連絡は緊密にしなければならない、この点はある政党が特別な組合の支持のもとにおいて行動しておる、こういうこともいわれるのだから、その辺は十分御理解もあろうかと思います。私は、大事なことは、今回の公害立法というものはいままであまり例を見ないようなずいぶん広範にわたっての各種の問題について取り組んでおります。しかしこれをもって十分だとは申しません。世の中はどんどん発展していくのでありますから、さらに内容も時宜に適したようにそれぞれ改正していく必要はあろうかと思います。しかし、そういうことはもちろんこれから皆さん方とも知恵を持ち寄りまして直してまいりますが、ただ今回の事柄について政財界の圧力に屈した、かように言われることはどうも当たらないように思います。  また、国際的な関係におきましては、米国のトレイン環境整備委員長ですかが参りましていろいろ話をした、日米間においてもこの公害対策については万全を期せよう、こういうことで話し合っております。また、さきの国連総会において私が発言の機会を得まして、そのときにもやはり公害の問題には触れております。さように私自身も全然認識を欠いてはおらないつもりであります。ただいまの国際的な問題であるだけに、この問題をほうっておくこと、これこそわれわれは一つの危機としてこの問題を考えざるを得ない、かように思っております。  また、お話にもありましたように、かつてはチープレーバー、さような意味日本商品はずいぶん国際的に非難を受けました。今回はまた公害ダンピングだ、さようなことばは使われておりませんが、もしもさような意味公害に対する対策を怠っておるなら必ずや批判がはね返ってくるだろう、かように思っておりますので、そういう点では実業界、産業界にも私は呼びかけておるつもりであります。  そういう意味で、ただいま詳細にわたって御批判あり、また御意見も聞かせていただきましたが、基本的な態度においては、私は先ほど来言われたこととあまり変わっていないような感じがしてならないのであります。それらの点も御了承いただきまして、私のお答えも十分玩味していただきたいと思います。
  36. 小林進

    小林(進)委員 それでは基本法につきまして第二の問題点についてお伺いをいたしたいと思います。  基本法の第二条には公害の種類が列記されておるのであります。大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、地盤の沈下、騒音、振動、悪臭等七つが限定的に記載されておるのでありますけれども、私ども現在の汚染にはそのほか食品汚染あり、薬品汚染あり、温熱汚染あり、日照制限があり、黄害汚染があると思うのでありまして、その他科学の進歩と財界のあくなき欲望によって生まれる新しい汚染を漏れなく加えて、そうしてその対策を練るようにしておくためには、悪臭という最後の種目の下に「等」などという一字を挿入をしておく必要があるのではないか、かように考える次第でございまして、特に日照権につきましては、国民基本的人権の一つであると思うが、これが都会においては無制限に奪われております。政府はこれが公害の範疇の中に入らぬと思っていらっしゃるのかどうか、これをまずお伺いをいたしておきたいのであります。
  37. 根本龍太郎

    根本国務大臣 お答えいたします。  日照権の問題は非常に複雑な問題でございます。現在のように非常に都市化が進んでおる場合に、これを純住宅地域だけにその都市化した場所を指定しておるわけにはまいりません。やはりそこで都市計画法に基づきまして、工業を発展せしめるために必要な高度の工場地帯あるいは住宅地帯、商業地帯というふうに区別をいたしまして、住宅地域に指定しておるところにおいては十分日照権が確保されるということが考えられなければなりません。しかしビジネスセンターとか工業地帯になりますと、むしろ日照権よりも他の要素を重視して都市計画をやらせる、こういうことになろうと思います。したがいまして、日照権を概括的に法律上規定して、どういう場合においてはこれは犯罪になるとかということはなかなかいたしかねるのでございます。現在これは日本の裁判所においても民事上の争いになりまして、いろいろの具体的な判例を重ねてその上でこれを規定していくことで、現在のところは建築基準法と都市計画法で整備していく、こういう段階でございます。
  38. 小林進

    小林(進)委員 社会党を中心とする三党のこの基本法の中の三十一条には、「日照の保護に関する施策」という条項がありまして、「国及び地方公共団体は、良好な環境を確保するためには日照の保護が重要であることにかんがみ、都市計画その他の土地利用計画の策定、建築物に関する規制その他の施策を講ずるに当たっては、特に住宅についてその日照を保護するよう配慮しなければならない。」と明確にうたっているのでございまして、いま建設大臣がこれが困難であるなどというおことばは、私どもはすなおにちょうだいすることはできぬのでありまして、政府は、この基本法の中にも、わが党の三十一条をそのまま挿入をしていただいて、そして日照権を奪われて現在泣いている都会の住民にあたたかい手を差し伸べてくださったらどうであるかということを考えるのでありまするが、いま読み上げたわが党の条文をそのまま用いられる考えありやなしやを承っておきたいと思うのであります。
  39. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ただいまの日照権の問題は、建設大臣がお話しになりましたとおりの事柄であろうと考えておりますので、したがって、私権の問題として、たとえばいま別な問題提起として、超高層ビル等が建てられた結果によってわかりました局地強風等の被害等々もやはり同じような問題かと思いますが、これらの問題は、やはり建設行政の中で一義的には処理していくべきものであろうと考えます。これは典型公害としてはやはり無理ではなかろうかと思うわけでございます。  さらに、おあげになりました中の温熱排水等については、今回、水の状態というカッコ書きの中で温熱排水を明確にとらえておりますので、実質上は原子力、火力発電等の冷却水による異常な水面の高温排水等に対する対策は、これから規制法その他によって打ち立てていくことが可能になる第二条の設定がなされておりまするし、さらに水質の汚濁の中に色も読むようになっておりますので、ただの汚濁以外に水の色というもの、あるべききれいな色を取り戻すということも念頭に置いてやっているわけでございます。
  40. 小林進

    小林(進)委員 いま総務長官から温熱汚染、放射能汚染も含めての答弁と思われます。——放射能は入りませんか。入らなければそれでよろしいが、私は温熱も含めて放射能汚染は人類における最終の公害であると考えておりますが、この放射能が人体に滞留をしている場合に、それが子供から孫から子孫永々に続いていって、その結果がどうなるのか、まだ人類の学問はこれに解明を与えていないのであります。解明を与えていないままに、原子力発電所というものが都市の周辺にいま無計画に進められている。私はこれを思うときに、まことにりつ然たらざるを得ないのでありまするが、これは、まあしかし総務長官の御答弁の中にありまして、まだ研究中でもあり、次に用意をせられるということでもございまするので、これはそのときに譲ることにいたしまして、いま一つ、黄害でありまするが、これは黄色い害であります。これを総理は一体知っておられるかどうか。日本の国鉄が生まれて、汽笛一声新橋をと歌ってから九十八年になります。この間、全国、北は北海道から南は鹿児島まで、走る鉄道がたれっぱなしで流しているふん尿のことであります。これであります。現在国鉄の持っている車両が二万五千二百車両、そのうちで便所の備えつけてあるのが一万七千六百車両。一つの車に二つあるのもありまするから、合計一万九千車両であります。この中でタンク方式でたれ流しをとめておる車両が、新幹線を中心にして九百十三両にすぎません。残りの一万八千の車両に動く便所があって、一日のたれ流し量はどれくらいであるか。国鉄の輸送人員から割り出してまいりますると、一年間の輸送人員が大体七十億人である。一日に換算すると二千万人であります。この二千万人の比で計算してまいりますと、国鉄の走る便所でまき散らす大便が一日で二千トン、米三万俵分であります。小便で百四十三万リットルであります。これだけの大量の黄金が、あるいはつぶてとなり、あるいは雨となりあらしとなって全国に振りまかれているのでありますが、これは人体に影響がないかといえば、これも学者の研究によれば、大便の中には一〇%ないし二〇%の大腸菌が含まれているというのであります。真におそるべき公害であり、黄害であるといわなければなりませんが、この黄金の数量に間違いがないかどうか。私は国鉄公社にこの数字を示して、もし間違いがあるならば正しい数字を持ってこいということをしばしば督促をいたしておるのでありますが、まだ参りません。総理は国鉄の出身者でいらっしゃいます。鉄道のことは何でもおれに聞けと、こういう自信をお持ちになっておるのでありまするけれども大気汚染、水質汚染もたいへんではありまするけれども、この黄金汚染もまた一日もゆるがせにできない問題であると私は思うのでありまするが、総理はいかにこれを処理されるのか承りたい。廃棄物処理法案第十五条には「便所が設けられている車両、船舶又は航空機を運行する者は、当該便所に係るし尿を環境衛生上支障が生じないように処理することに努めなければならない。」と規定をいたしておるのであります。この処理に対する総理の具体的な御所見を承っておきたいと思うのであります。
  41. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 これは直接私のほうの所管でありますから、私からお答え申し上げます。  お話しのような数字、大体その辺だろうと思いますが、私の聞いておるところでは、一万七千両がまだついておらない。タンク式にこれは直すことになっておりますが、そのために八百億円の金がかかります。たいへんな金でありますが、金はいずれといたしましても、ただ動いておるものにつけてまいるのでありますから、一ぺんにこれをつけることもむずかしいのであります。しかし、私はこれを督励をしまして、なるべく早い機会にこれが実現をしたい。  ただ問題は、地上設備であります。地上にやはり処理場をつくらなければなりませんが、これに関しましては、小林さんその他関係者にぜひ御協力願って、一日も早くこれが実現するようにいたしたいと考えております。
  42. 小林進

    小林(進)委員 あまりきれいな話でもありませんので、これはひとつとどめまして次に移りたいと思うのであります。  次には、企業の無過失賠償責任の法制化についてお伺いをいたしたいと思うのでありまするが、これもきのうの本会議場において、総理が九月宇都宮で企業の無過失責任は早急に検討すると言明をされたことについて質問がありました。本会議場でのわが党島本君の質問に答えて、検討するということはあながち法制化するという約束をしたわけではないのだ、無過失責任の法制化は民法の制約があって困難が多いが、しかし目下検討中である、こういう御答弁であったと思うのであります。これに間違いがないならば、わが党、民社党、公明党三党の間で鋭意作業を進めまして、無過失賠償責任に関する法律案というものをすでに作成をいたしまして今次国会に提出をいたしておるのであります。その改正があながち困難でないことは、私どもはこの事実によって証明をいたしております。そして、その基本理念といたしましては、企業はいかなる場合にあっても排出等の汚染原因となるような行為を知っておくべきものである、一たび被害が生じたならば、過失であろうと、故意でなかろうと、正当な賠償を迅速に償うのがあたりまえである、こういう原則に立って、第三条にこういうことを規定いたしておるのであります。すなわち、無過失損害賠償責任、「事業者は、工場又は事業場における事業活動に伴って公害を生ずる物質を排出し、よって他人の生命若しくは身体又は通常人の食用に供される動植物の生産に係る他人の権利を害したときは、故意又は過失がなくても、その損害を賠償する責に任ずる。」こういうことを明確にいたしまして、この条文で知られるごとく、第一には、カドミウムの慢性中毒によるイタイイタイ病、有機水銀の中毒による水俣病、阿賀野川の水銀中毒、これらを正当に救済いたしまして、長い間の産業界のわがままをこの法律によって押えることができる。第二番目には、カドミウムは土壌汚染等によって人体に有害な農作物が生産されることをきちっと防ぐことができるようになっておるのであります。こういう明確な、りっぱな条文が野党三党によってつくり上げられておるのでありまするから、政府はこの案をそのまま用いて実行される御意思があるかどうか、私は政府の御決意を承っておきたいのであります。
  43. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 小林君のせっかくのおすすめでございますが、ただいま政府としてはなお検討中でございますので、まだ結論が出ておりません。
  44. 小林進

    小林(進)委員 あまりにも政府の検討中が長いものでありまするから、それで私ども法案をお届けしようと思ったのでありまするが、この検討の長い中には、やはり何か財界の圧力に遠慮されているのではないか。特に言いたいことは、カドミウムや水銀中毒におかされている被害者の真の苦しみを、どうも総理や閣僚の方々は身にしみて理解されていないのではないかという、私は気持ちがしてしかたがないのであります。  時間もありませんから簡単に一、二の例を申し上げますと、これは富山県の一婦人のことばでありますが、「私はイタイイタイ病で歩くことも動くこともできない富山県の一主婦小松みよです。清らかな神通川の水をすくって農事の疲れをいやした十四年前のことは夢のようです。いまから思えばそれは地獄の水でした。私はその水の中に含まれていたカドミウムにおかされてしまったのです。そのカドミウムは三井金属の神岡鉱業から排出されていることがこのごろやっとわかったと聞いております。」こういう切実な陳述を、これは富山の裁判所で開かれたイタイイタイ病の法廷で述べられているのでありまするし、また、阿賀野川の昭電の水銀中毒にやられた方が、まくら元で泣きながらこういうことを訴えていられる。「私は廃人です。生きる望みは一つもありません。早く死にたいと思います。しかし私をこんな目にあわせた犯人が高笑いをして豚のごとくふとっているのを見ながらまだ一言も悪かったというおわびのことばを聞いていないのを見ると死んでいくことさえもできません。きゃつをかみついてでもこの目で恨みをはらしてから死にたいと思います。」それからいま一つ。これは十五年前、森永の砒素混入事件で約一万二千名の被害者ができた。その当時の被害者はいまは十五、六歳になっておりますけれども、まだ検査をいたしますると四割ぐらいは、何らかのからだの故障があるということが証明をせられております。そのうちの一人が、これは十数日前でありまするが、十六歳のおとめが森永の砒素の慢性患者であることを悲観して自殺をしたということが新聞紙上に報道せられておりました。また、四日市の病院でも、亜硫酸ガスに胸をおかされた人々のぜんそくの発作が、いまでも、私どもがこうしているうちにも続いておるのでございます。こういう悲惨な事実であります。  こういう悲惨な事実に対して、一体加害者たる企業者は何をしているのでありましょうか。裁判という方法の隠れみのにのがれて裁判を引き延ばしながら、この力の弱い被害者が力尽きて死んでいく、あるいはあきらめていく、そういうのをじっと見詰めて冷酷な笑いを続けているのが産業人の実態であります。  こういうような悲惨な事実を取り締まるには、無過失賠償責任論の法制化以外に道はないのであります。どうか総理、私は総理のあたたかい御決意をここで承っておきたいと思うのであります。
  45. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど答えたとおりでございますが、本会議でも無過失責任、この法制がいかにむずかしいかという点ではお答えしたとおりでありますので、その点をこの機会に重ねて申し上げるのもいかがかと思いますが、なお私ども検討をさらに急ぐ、こういうことでしばらく時間をかしていただきたいと思います。
  46. 小林進

    小林(進)委員 次に、私は公害法案の修正点についてお伺いをいたしたいと思うのであります。公害法案については、政府公害防止に対する姿勢のところで承りましたので、重複は避けて、主としてその内容について承りたいと思うのであります。  昨日の本会議場において、わが党の質問に対して法務大臣は、危険を及ぼすおそれがある場合の条項の削除をしたことは、本質的にはたいしたことはないという御説明をされました。しかるに、同じく昨日であります。政務次官会議において、この公害法案の取り扱い、すなわち財界の圧力に屈したと思われる点を非難するとともに、もう一点、危険を及ぼすおそれがある場合を削除した点に議論が集中をいたしまして、その解説を、同席をした法務省の辻刑事局長に説明を求めておるのであります。この次官の質問に対して辻刑事局長は、次のごとく解説をいたしておるのでございます。すなわち、大気汚染関係では、実際の面ではほとんど変わりはない、しかし、水質面では、おそれのある状態の条項があった場合は、汚染されたプランクトンやモ類まで捕捉できると考えていたが、同条項を削除したので、せいぜい汚染された魚介類までしか捕捉できなくなってしまったと考えていると説明し、同法案の内容は骨抜きになったことを認めているのであります。こう言われているのであります。ここで同じく法務省でありながら法務大臣は、あまり変わりがないと言う、専門家の刑事局長は、骨抜きになったことを認めたと言うといえば、これは天地水火の開きがあるのであります。これでは政務次官がおこるのはもっともだと私は思うのでありますが、この法務大臣と辻刑事局長との間の重大な解釈の相違がどこにあるのか。私は小林法務大臣に聞けばいいのでありますけれども、法務大臣の御答弁はもうきのうの本会議でこりごりいたしました。聞いても価値がないと私は感じますから、これに対しては釈明を求めないで、おそれがある場合とあるいはこのおそれを入れない場合との見解の相違を、政府法律上の番頭である法制局長官に私は解釈をお伺いをいたしたいと思うのであります。
  47. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答えを申し上げます。  いまのお話にもございましたように、最初の案と申しますか、法務省の刑事局当局の原案と申しますか、そういう段階における、これは法制審議会にかけた案でございますが、「生命または身体に危険を及ぼすおそれのある状態」、これが身体に危険を生じておるというふうに変わったわけでございます。変わったことが変わらなかったことと同じであるかといえば、これはやはり変わったといわざるを得ませんでしょう。その点は法務大臣も全然変わらないとおっしゃっているわけではなくて、この法律目的が、実害を生ずる事前の段階において、要するに危険というものでありますが、その段階において公害罪として把握をしようという大きなねらい、それは少しも変わりがないというのが法務大臣のお考えだろうと思います。ただ、「おそれがある場合」がなくなって「危険」ということになれば、その「危険」の状態がいささか変わっておるということはいえると思いますけれども、大きなねらいである、事前における危険の状態、現実の障害が発生する事前における把握のしかたという点には、いささかも変わりがないということを申し上げました。
  48. 小林進

    小林(進)委員 この際、辻刑事局長答弁を求めればよいのでありまするけれども、時間の関係がありまするので残念ながら割愛をして、今度は次のほかの場所でこの問題はいまひとつ詰めてみたいと思うのでありますが、いずれにいたしましてもこのイタイイタイ病とかカドミウム汚染などというものは、これは外国にはない。同じ公害といっても、外国の公害は環境汚染が主であります。日本公害は、水俣といい、阿賀野川といい、直接人を殺している、人を傷つけている、人の身体を障害者にし、心身耗弱者にしている。動物のごとき人の機能さえも奪っているという悲惨な現象を呈しておるのであります。  こうしたおそるべき犯罪を犯しながら、一体現在の産業人は、自分たちが加害者であるという認識は一つもないのであります。自分たちが殺人の犯人だという認識が一つもないのであります。民事にしか責任を問われないということを活用いたしまして、しかもその民事の責任も故意過失論によらなければならないということから、まずこの犯人たちは故意も過失もない、あるいは流した水銀とそれによって死んだ被害者の間には因果関係がない、こういうような論理で一切の賠償責任をのがれて、この悲惨な方々をそのまま泣かせているというのが実情であります。そうしてこの加害者たちは、まずこの悲惨な被害者が死んでいくのを待っている、死ななければ貧困に耐えかねて裁判をやめるのを待っている、そのうちには安い安い涙金で妥協するのを待っているというのが、これが今日のわが日本の産業人の実態です。しかも人を殺せば死刑または無期または三年以上の有期懲役に処すというのがわが日本の刑法の原則だ。産業人が人を殺したところで、最高いまの法律は七年じゃありませんか。法人が人を殺しても賠償金の最高が五百万円だ。しかもいまの産業人は、この公害罪法に反対して、人を殺しても七年が長過ぎる、五百万円の賠償は大き過ぎるといってこの法案に反対をしているがごときです。私は全く遺憾千万にたえないのでありまして、こういう悲惨なことが人間としていま許されるべきかどうか。  私は、こういう犯罪を再び繰り返さないためにも、悪質な公害罪をどうしても犯罪として処罰する以外にはないと考えるのであります。考えるのでありまするが、この点法務大臣に私はお伺いする。これはひとつ、刑事局長との食い違いをただせという党の指令も来ておりまするけれども、これはただしてもらわなければなりませんが、あわせて、法務大臣は同じく昨日の本会議で、改定していく、これを改定していくことにはやぶさかでないという答弁はしておいでになるのです。私は、このことばが救いだと思っておるのであります。社会党を中心にする野党は、この「おそれ」ということばを復活させるための修正案をいま国会に提出いたしておるのであります。どうかこれだけでもひとつ野党三党の修正案をいれて、この「おそれ」ということばを復活せしめるように御努力を願いたいと思いまするが、その意思があるかどうか。一言でよろしいです、簡単でよろしいが、私は法務大臣決意をお伺いいたしておきたいと思うのであります。
  49. 小林武治

    小林国務大臣 私はいまお話しのように、公害罪というものが新しく公害というものを犯罪としてとらえるという、このことが非常な大きな意味があるのでございまして、したがって私どもが最後の段階において多少の手直しをした、これは実質的には公害というものが人に実害を与えない前においてこれを把握する、このことにおいては変わりありません。すなわち、いまの水俣病等につきましては、これはたとえば魚介類が汚染した、そういう段階において処罰できる、こういう解釈をとっておるのでございます。いずれにいたしましても、「おそれある」という字句を削除したことが、法全体の趣旨とか目的とか効果においてはたいした差異がないというふうに私は考えておるのであります。  この問題を復活するかせぬかということは、私どもの問題でなくて国会の問題であり、また私は、これを直すと言うたことは、今後の運用あるいは今後の公害の実態等によって、将来の問題としてこれは整備をしなければなるまい、こういうことを申し上げておるのであります。
  50. 小林進

    小林(進)委員 答弁にはまことに不満足でありまするけれども、時間がありませんので、次に移りたいと思います。  次は、行政の一元化の問題についてでありまするが、公害は、人類が遭遇している現在の最大の困難、しかも危険な問題であることはいまさら申し上げるまでもありません。まず、これについて大蔵大臣お尋ねをいたしたいのであります。  現在のわが日本の経済成長、GNPの成長率を続けていったら、日本の経済の規模は五年後にはどういうふうな形になるか、また一九七〇年代の末尾にはこれが何倍に成長をしていくのか、これを私は承りたい。あなたは、かつて池田元総理大臣が所得倍増政策をおやりになったときに非常に反対をされた、それが経済の過熱に通ずる、インフレが高まるという立場で反対されたと思いまするが、今日のこの経済の成長率は、池田総理大臣のときよりももっと激しく伸びておるのでございまして、所得の倍増もおそらく五年を待たずしていくのじゃないか、私は、七〇年代末には現在の四倍ぐらいに伸びていくのではないかとも予想をしておるのでありまするが、そういうときになりますると、まあ経済の成長の問題は他日に譲るといたしまして、その経済の成長にこの公害が出てくるのでありまするから、わが国の経済の成長率が二倍になり、四倍になっていったときに、一体五年後のわが日本公害の実態はこれがまた何倍になっていくのか、どういう状態になってくるのか、大気汚染がどうなるのか、水質汚染がどうなるのか、特に交通の公害が一体何倍に倍増をしていくのか。私は、そのときには日本国民自体が呼吸までもとまってしまう、この四つの島に、いまからまた四倍ぐらいの大きな経済成長をこの中に入れて押し込むということになったら、それは公害だけで日本国民の呼吸がとまってしまうのではないかというくらいな感じもするのでありますが、聡明な大蔵大臣の経済成長と公害関連を、時間がございませんから、端的にひとつお聞かせを願いたいと思うのであります。
  51. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国における経済の成長は、昨年秋までの調子でいきますと、御指摘のように五年もたちますと倍になる勢いだったのです。そうしますと、これはたいへんいろいろな問題が起こる。御指摘のような公害の問題、また労働力の不足というようなことをきっかけといたしまして、物価の問題がおさまりがたい、さらに資源もそれだけの資源を獲得できるかという、そういう問題、また国内における輸送力の問題、いろいろな隘路を生じてまいりますので、これはいかぬ、そこで御承知のような景気抑制政策を打ち出したわけでありますが、私は前々から言っているのでありますが、当面一〇%、その程度の目標を立てて、それに経済の勢いを近づけるという努力をすべきだ。それをやってみた上でさらにその後のことを考えたらいいじゃないかというふうに言っておりますが、一〇%成長でありますと、一九七五年、五年で大体六割増しになります。それから十年、一九七〇年代の終わりには二倍半になります。つまり四つのこの島の上において、五年後には六割増し、十年後には二倍半の生産が行なわれる、こういうことになるわけでありまして、それが昨年のような勢いでありますれば五年で倍だ、また七〇年代の終わりには四倍になる、こういうような状態に比べますればたいへん緩和されることになりはしないか、公害、物価、あらゆる諸問題に対する手の打ち方が楽になっていくのじゃないか、そういうふうに見ております。景気がぶり返してまた非常な高度の成長をいたすということになると、収拾つかないようなことになるじゃないかということをおそれている次第でございます。
  52. 小林進

    小林(進)委員 まあ内輪で押えても五年たてば六割、大蔵大臣はずいぶん内輪内輪にお話しになった。それにしても経済が六割伸びれば、公害もまず現状のままでは六割伸びると判断していかなければならない。それをどう抑制していくかということはたいへんな問題だと私は思うのでございまして、時間もありませんから省略しますけれども、経済の成長の中で中心をなすものはやはり石油であり、電力であり、都市ガスであり、鉄鋼であり、造船であり、化学でありますが、特に公害の中心は石油であります。この石油の使用量なんというものはまだぐんぐん伸びていかなければならない。そのときの大気汚染などというものは、想像以上だと思うのであります。そういう将来を予測するときに、いま政府がおやりになっているような公害対策本部などというものを設けて、総理が本部長になられて総務長官を副本部長にしておられて、そして各省の調整だけをやっておられるような、こんな緩慢なことで一体よろしいかというようなことで私はお尋ねしたいのであります。まあ山中長官や総理には——その意味においてひとつこの際、諸外国に先がけて強力なる執行機関、行政庁というものをお持ちになる必要があるのではないか。  山中長官にお尋ねいたしますけれども、一体あなたは、四十五年度の各省にまたがる公害予算の総額が幾らであるか御存じかどうか。一体、来年度の各省にまたがる予算要求の総額が、いまどれだけであるか御存じであるかどうか。あなたは公害担当の長官をしておいでになりますけれども、あなたは総理の信頼を得ておられますからばかばかマイペースで飛び回っていらっしゃるけれども、また人がかわればいまの対策本部なんというのはぺちゃんこになる、何にも組織的な安定性が一つもない。執行機関じゃない。あなたは各省の調整役をおやりになっているにしかすぎないという、こんな表面をごまかしたような形では、わが日本の経済成長と人類の滅亡に通ずるようなこの公害問題を一挙に解決できる体制はでき上がっていないと思うのでありまして、ここで、わが社会党並びに公明、民社三党では、この基本法の中の三十五条で、いわゆる環境保全省というものは断じて設置すべきである。そして諸外国のごとく——イギリスでは環境保全省ができております。アメリカにおいては環境保全局ができて、約六千名の人員で組織し、十四億ドルの巨額の金をもって公害対策の一元化をはかっております。また、スウェーデンにでは農林省が中心になって一元化の行政を進めておる。私は、世界に冠たる工業国の日本公害国の日本がまだこういう対策でいるということは、これ自身、私は総理公害に対するほんとうの決意のまだ固まらざるところを疑わざるを得ないのでありまして、総理決意、また、いままでの経験に徴しての山中総務長官の私の質問に対するお考え等を承っておきたいと思うのでございます。
  53. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は公害担当大臣を命ぜられて、同時に本部の副本部長を仰せつかったわけでありますが、自分の能力に応じて精一ぱいやっておるつもりであります。しかしながら、今回の国会にも、その調整機能のゆえをもって、たいへん短時間ではございましたけれども、既提出十四並びに今明日中にも準備いたしております悪臭防止法を含めて十五の法案の作成に一応成功いたしましたし、来年度予算等についても私の手元でしさいに検討いたし、重複あるいは便乗等を避けつつも新しい、たとえば下水道その他の予算に対する、大蔵省の編成等に対する対策本部の意見等も申し述べるところまでいっておるわけでありますが、ただ、現在の機構でだめであるかどうかについては、これは客観的な評価の問題でございますので、私自身はそれに対してとやかく申し上げる立場にございません。総理のほうから御答弁いただくと思います。
  54. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本社会党、公明党、民社党三党では、一省設け、専任大臣をつくれという非常に割り切ったお話でございます。私は、他の公務員給与に関する法案の際は、どうも一省ふやすあるいは大臣をふやすということはとんでもない考えだ、かようなお尋ねをいただいたばかりでありますが、ただいまはそれと全然違うお話を聞いて、十分参考になったようでございます。十分検討いたします。
  55. 小林進

    小林(進)委員 そのとおりです。何か聞きますると政府は、まだ二、三の新しい大臣を何かおつくりになるお考えがあるやにも私は伺っておりますが、世評は、これはあぶれ大臣、いわゆる大臣病患者の失業救済を行なうためにそういう大臣をおつくりになるというような評判でありますが、それとこれとを一緒にしてはいけないのでありまして、環境保全法という全国民が被害を受けておる問題に対しては、大臣の一人や二人おつくりになることに国民は絶対反対をいたしません。双手をあげて賛成をいたしますから、この点はひとつ大臣、お考えをいただきたい。  なお関連もありますが、最後に一つだけ私は申し上げて——それでは、質問を残しまして関連に譲りたいと思います。
  56. 加藤清二

    加藤委員長 関連の申し出がありますので、これを許します。阿部昭吾君。
  57. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 ただいまの小林議員の質問のうち、環境基準の問題に関連をして、特に私は施設環境基準についてお尋ねをしたいと思うのであります。  国民が良好かつ快適な環境を保障されることを、今回の公害対策に望んでおるわけであります。そういう立場から、下水道あるいは廃棄物の処理、あるいは公園、緑地、道路、交通等、こういう施設環境の整備に対して、今回の公害対策が大きな実を実らすであろうことを期待しておるわけであります。  そこで、きのうのわが党の島本議員の質問に対しまして、この基準は政策の目標であって、必ず達成をしようといったものからは若干後退をした答弁のように国民は受け取っておるのであります。私どもは、この環境基準あるいは施設環境基準につきましては、責任において必ず達成せねばならぬもの、こういう立場で設定をしなければならぬと考えておるわけであります。そういう観点で今日、この施設環境設備のすべての責任は、実際の問題として地方自治体が持っておると思うのであります。下水道にいたしましても、あるいは廃棄物の処理施設にいたしましても、公園その他すべてが、地方自治体の責任に多くがゆだねられておるわけであります。したがって、この基準をわれわれは必ず達成するものとして設定することを、特に三党提案環境保全基本法案の中では明示いたしておるわけでありますけれども、今回政府の提起をされております公害対策の中では、この辺は政策の目標、こういうぐあいに非常に後退をした印象を私ども受けておるのであります。そこで、特にこの中で施設環境基準を達成をする実際の責任は自治体が多くを持つ。この場合に、自治体の財政というものは非常に困難なのであります。これに対しまして一体政府はどういう責任を果たそうとなさるのか。昨日までの答弁では、この辺が非常に弱いように思うのでありますが、明快な御答弁お願いしたいと思うのであります。
  58. 福田赳夫

    福田国務大臣 公害対策が地方財政に及ぼす影響ですね、これは非常に複雑です。つまり、地方財政における収入面の問題もありまするが、支出面の問題も起こってくる。しかも、非常に広範です。でありますので、これが対策をどうするかにつきましては、ただいま鋭意検討中なんですが、まだ結論は得ておらない。四十六年度予算ではこれをはっきりさせたい、こういうふうに考えております。いずれにいたしましても、公害行政を地方自治団体が権限委譲に基づいてやっていく、その上において支障を生ぜしめるというようなことはいたさないということを旨としてやっていきたい、かように考えております。
  59. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 公害対策事業を推進していくに伴いまして、地方公共団体にいろいろ経費を要します。この点につきましては、従来、国庫支出金、それから地方の交付税、また地方債等をもってそれぞれ所要の財源措置を講じてまいりましたが、今回の法令の改正によりまして地方公共団体に権限が委譲され、それに伴いまして経費の増が必要でございますから、それに対応する所要の強化は財源措置において講じてまいるつもりであります。  なお、公害防止事業等を集中的に行ないます地方公共団体の分につきましては、やはり国の責任ということも明確にいたし、所要の期間のうちに地方公共団体が目的とするこの公害防止事業を行ない得るように、達成できますように、ただいま大蔵大臣も申されましたとおり、所要の財源強化の点につきまして、総合的に検討いたしておりますが、ひとつ次の国会の機会までに必要な結論を出すように関係官庁といろいろ協議を重ねておるところでございます。
  60. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そこで、いま地方自治団体に対して権限の多くを委譲する、こういうお話でありましたが、きのうの本会議答弁によりますれば、法律の範囲を越えて委譲するということはできない、こういう説明が行なわれておるのであります。私どもは、本来、権限の委譲という考え方に実は同意をしないのであります。本来、良好かつ快適な環境を保全する権利を住民が持っておる。したがって、本来、環境権というものを住民が持っておるのでありますから、自治体が権限を当然に持っておるのであって、委譲するという考え方が実は私どもとは異なる立場でありますが、自治体固有の権限であるという私どもの見解に対しまして、政府の明快な立場をお示し願いたいと思うのであります。  そこで、私は、この機会に——先ほど小林議員が政治公害ということを言われました。実は、政府の国有林地内に、塩素酸系の除草剤、あるいはホルモン系の除草剤、こういうものが今日まで大量にヘリコプターなどで散布をされてまいりました。特にこれらは、自然公園あるいは国定公園、こういうような地域内におきましても大量に散布をされてまいったのであります。その際、林野庁の関係者の説明によりますと、来年あるいは将来においては公害世論がシビアになってくるでしょうから、その段階では考えなければならぬでしょう、現時点では国有林のいわば経営を合理的に安上がりにやっていくためにはやらなければならぬのだ、こういう説明であります。こういう説明や、今回の政府公害関係法案を、わが党の、あるいは野党の立場から指摘をいたしておりますように、肝心のところは全部しりが抜けておる。これと同じように、いま林野庁が言っておりますように、公害世論がシビアになってくるだろうから、その際は考えなければならないだろう、こういういわばいかにして企業の側を守るというところを前提にして、世論の動向を見ながら、それにある程度ずつなしくずしに追っかけていこう、こういう姿勢がありありと見えるように思うのでありまして、今回の公害一連の関係法に対して、われわれが環境保全の基本法案を提示をして明らかにいたしておりますような立場に、この際ほんとうに政府が責任をもって今回の公害対策国民の期待するようにやっていこう、こういうのでありますならば大きな転換をこの際やるべきであろうかと思うのでありますが、総理の所信、特に林野庁などの問題につきましては、この際農林大臣からも御答弁を求めておきたいと思うのであります。
  61. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 自然公園の中の国有林における除草剤散布に対する農林省のお話でございましたが、国有林では、除草剤を散布する場合には、自然公園の特別保護区域には使用しないことといたしておるわけです。その他の地区でも自然の保護に十分留意してやっております。  なお、いまお話のございました自然公園の特別保護地域のほかに、史跡、名勝、天然記念物、鳥獣保護区特別保護地区、学術参考保護林、湖、池、河川等には除草剤を使わないようにいたしておりますが、なお、いま除草剤だけのお話がございましたけれども、塩素酸糸のことにつきましては従来もずっと継続して使っておりましたが、二四五Tがいま問題になっているようであります。そういうものにつきましては、十分われわれも検討いたしまして、環境保全のために最善の努力をするように指導いたしております。
  62. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま農林大臣から詳しくお答えしたからおわかりいただいたかと思います。  農薬の使用については、私ども、これからももっといろいろと性質を十分検討して考えていかなければいかぬ、かように思っております。  その点だけつけ加えておきます。
  63. 加藤清二

    加藤委員長 小林進君に申し上げます。  まだ質問があるかもしれませんが、時間でございます。
  64. 小林進

    小林(進)委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、総理、あなたも四選をかちとられた。もはや功成り名遂げて、これ以上望むべくもない地位におつきになったのでございますが、これからの総理こそ、私は、歴史上に残る大きな仕事をおやりになる一番いい機会だと思います。いま一九七〇年、現在の日本に残されている最も重大な問題は、外交では中国との国交回復、国内では公害問題であります。総理大臣の御勇断を心からお祈りをいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  65. 加藤清二

    加藤委員長 次は、正木良明君。
  66. 正木良明

    ○正木委員 公害の深刻さということについてはいまさら私から申し上げるまでもないと思います。古くは明治の初頭、足尾銅山鉱毒事件から今日の水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそく、指曲がり病などの悲惨な公害の歴史があるわけでありますが、これらはすべて人間の生命、健康に重大な脅威を与えておる。しかも、この公害というものが、現在ではもう昔のような部分的なものではなくて、非常に普遍的になってきておる。しかも、一時的なものでなくて、非常に継続的なものになってきておる。しかも、非常に重要なことは、企業がもうけることだけに一生懸命でありまして、他人に対して与えておるところの被害というものにつきましてはきわめて関心が浅い。てんとして恥じざるというような表現が似つかわしいような状態であります。この点が欧米の企業家と大いに違うところでありまして、欧米の企業家では、こういう人の健康や生命というものに重大な脅威を与える公害を出すということは最も恥ずべきことであって、ハイソサエティーから締め出されてしまう、社会的に葬られてしまうというような、そういう精神的な風土がございますが、日本にはそれがない。どんなやり方をしても金をもうける者が一番優秀な人間だというふうな観念があるわけであります。それに加えて、その企業を非常に擁護するという立場でいままで政府はやってこられました。これにも一つの大きな原因があり、この政治責任は追及されなければならぬと私は思うのであります。しかしながら、いま、この深刻な公害問題を解決し、最も快適な自然環境というものを国民のためにつくり上げていくというためには、いまあなたと私がつまらないことで言い争っていてもしようがないのでありまして、むしろ、こういう公害というような問題は超党派で取り組んで、国民の期待にこたえていくという情勢をつくり出さなければならぬというふうに私は考えております。だからといって、政府の責任をそのまま帳消しにしてしまうというつもりは毛頭ございませんが、そういう意味で、総理もどうか前向き、建設的にこの問題を一緒に考えていただくということにお願いをいたしたいと思うのであります。  こういう重大な問題を討議するには、私に与えられた一時間の質問の時間、しかも答弁を入れての一時間の時間というのはきわめて短い時間でありまして、こういう点についても、臨時国会をいままで引き延ばして、しかもその審議期間をたった二十何日というような状態にしてしまった政府にも大きな責任があると思いますが、いずれにいたしましても、現在のわれわれが国民に対して負っておる大きな責任を果たすためにもこれをやり遂げていく、公害を防除していく、しかも、それにとどまらずに、自然環境の整備、自然環境の回復というような点まで完成をさせていく、そのための努力というものを十分にしていかなければなりません。そういう意味において、総理決意というものをまずお聞きをいたしたいのであります。単に公害対策という対症療法的なものではなくて、いま生態学的にいわれておるところの、ほんとうに人間をこのまま快適に生存させていくような状況というものをつくるために努力をしていくかどうか、この点について、まず承りたいのであります。
  67. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 公明党が全国にわたって実際の公害状況その他について詳細なる調査をし、さらにその検討をしておられることについては、心から敬意を表するにやぶさかではございません。皆さん方が政府に対してそういう意味からいろいろ建言されることについては、私は謙虚にお話を聞くつもりでおります。ただ、ただいまお話しになりました点で、二つばかり私どうしても一言言っておきたいのは、日本の産業界、これは利潤追求のみに狂奔している、欧米に比べると格段の相違だ、かような批判がございましたが、日本人が日本の産業界に警告を発せられることはいいですけれど、あまりにこれはみずからを卑しめたことばじゃないだろうか。私は、日本の産業界にもりっぱな産業人のいること、これは正木君もそのまま評価されてしかるべきじゃないか、かように思っております。  それからもう一つは、臨時国会の開会が非常におくれた、あげて政府の責任のように言われますが、これは必ずしもそうでもないと思う。こういうことは、当然経過もよく御存じのことだから、この機会にはあまりとやかく言われないほうがいいだろう、それよりも、ただいま国会が開かれたのだから、おそいとかなんとかいうよりも、前向きでひとつ審議を願いたいと思います。ことに、その問題の焦点は、皆さんから御指摘になっておるように、公害国会といわれ、最も重大なる問題と取り組んでおる、そのために皆さま方にも特別にきょうなどもおそくまで御審議をいただくという、この熱意のあるところを国民の皆さんにも理解してもらって、そうしてわれわれが国会議員としての国民の負託にこたえる、こういう努力をしたいものだと思っております。  それにつけましても、公害基本的な政府の考え方、これは本会議等でしばしば説明し、いわゆる福祉なくして成長なしという、その観点に立って問題を進めていこうということで、ただいま法案を十五ばかり予定してはおりますが、それだけで事足りるというものではございません。これはもうもちろん内容においても、さらにまた必要ならば数もふやしていかなければならない、そういう点もこれから情勢の変化に応じてそれぞれ対策を立てていく、そのためにはどうしても超党派で、また皆さんの御協力を得ましてこういう問題を審議する、国民のためにそのことだけはやりたい、かように私は考えております。  一言お答えいたします。
  68. 正木良明

    ○正木委員 いろいろ申し上げたいことがあるのですが、いまそのお話がございましたので、飛ばしてちょっと申し上げますが、一つは、産業界、企業というものについて、いま非常な弁護をなさったわけでありまして、これは弁護なさるのも御自由でございますが、しかし、現にいま公害四大裁判というものが行なわれております。この経過というものはもうすでに総理もよく御存じであろうと思うのでありますが、これも非常に行き悩んでいる。現にカドミウムとか有機水銀というような、直接人間の生命や身体に対して危害を及ぼすような有毒物質を流しておるということが歴然としておっても、しかし、いまの日本法律の体系の中では、これが原告側から立証できなければ賠償責任を追及することができないというような問題がございます。そのことについて、おそらく今回は、こういう悲惨な被害者のために、総理はかねて検討するとはおっしゃっておりましたが、これは実現の可能性を含めておっしゃった無過失損害賠償責任制度というものについて、必ずこの臨時国会において、公害国会において立法されるであろうというふうに私は信じておりましたが、先ほどもお話がありましたように、これができなかった。しかも、民法上の非常に重要な問題があってそれができないというお話でございます。しかし、私は法律学者ではございませんので、実際法律的な論争をしようという意味ではなくて、素朴な国民の声として総理は聞いていただきたいのですが、裁判におけるところの原告と被告の、特に民事におけるところの原告と被告の実質上の平等というものがなかなか期せられないということがいわれておるわけであります。というのは、一つは主張の問題、立証の問題で、いわゆる過失の主張や立証を原告がしなきゃならぬ。また、因果関係の主張や立証ということも、これは原告側がやらなければならぬ。ところが、実際問題として、裁判におけるところの被害者というのは、たいていは一般の住民です。そうしてそれがいわゆる原告になるわけでありまして、いわゆる訴えられた側、被告というのは、たいてい大きな企業というのが従来多かったわけであります。そういうのと比べると、原告の側に非常に専門的な科学的な知識が乏しいということもありましょう。また、資力が非常に不十分であるということもありましょう。同時にまた、その過失、また原因、因果関係というものを立証するために企業の中へ立ち入ってそれを調べてくるというわけに原告の側はまいりません。特に、最近は、非常に企業秘密ということがやかましくいわれまして、御存じのように、ノーハウ、特許をとると、それに類似のものをすぐまねされるというので、特許もとらないで、企業外へは絶対出さぬというような企業の工程の厳秘主義というものがとられております。そういうことから考えると、原告側のいわゆる厳格な過失の立証、主張、また因果関係の立証、主張などということは、これはもう求めるほうが無理ではないかというような状況が起こりつつあるということであります。そういう中にあって、このまま被害者、いわゆる原告が、この損害賠償の責任を追及するために裁判を続行していくというのはきわめて困難であります。こういうことから考えますと、特に水俣病の患者がこういうことをおっしゃっているわけでありますが、私はこれを見ながらじーんときたのですが、これは九州弁でおっしゃっておるので、私は大阪なんで九州弁では言えませんので、このまま読みますが、「銭は一銭も要らぬ、そのかわり会社のえらが衆の上から順々に水銀母液ば飲んでもらおう、四十二人に死んでもらおう、奥さん方にも飲んでもらおう、そのあと順々に六十九人水俣病になってもらおう、それでよか」と言った。何を意味するかといえば、この四十二人というのは、水俣病によって被害を受けた当時の死者の数であります。六十九人というのは、同じく患者の数であります。こういうところまで追い込んで——こういう原始的な報復の原理というものが現代社会に通用するとは思いませんが、しかし、ここまで叫ばせたいまの政治、いまの立法、こういう問題について、われわれとしてはいま重大な反省をしなければならぬときがくるのじゃないか。こう申し上げるとなんでありますが、総理の権限というのは、もう現代ほど私は強いものはないと思うのです。昔は大臣一人首を切ろうと思えば総辞職をしなければいけなかったが、いまは簡単に——簡単にとはいかないでしょうけれども、切る気があれば切れるような絶大な権限をお持ちになっている。しかも、党内を押えて四選まで楽々となし遂げられた佐藤総理のことでありますから、ほんとうにその気があって、裁判の原告と被告の不平等をなくしていくという立場からも、少なくとも因果関係の問題は別として、この過失の立証ということについての被害者の側に立つならば、私は、無過失損害賠償責任制度というものがとられなければならないのではないかというふうに考えます。その点、総理の御答弁をいただきたいと思うわけであります。
  69. 小林武治

    小林国務大臣 ただいまのお話はたいへんごもっともなところがございます。ただ、私ども、いまの因果関係の問題は別にしまして、無過失責任という問題につきましては、実は公害が特別いま被害が深刻であり、またそれが広い範囲に及ぶ、こういうことであって、しかも、一方においては過失の証明がきわめて困難だ、あるいは不可能に属するものもある、こういうふうな特質からいうて、公害という特殊事態について無過失というものが考えられないか、こういうことを検討しておるのでありますが、この問題につきましては、私は、率直に申しまして、いま民法の無過失責任というのは、鉱業法と原子力法の関係法律に書いてあるのでありまして、これはそのこと自体がきわめて特殊なものである、こういう考え方を及ぼせば、公害全体につきましても、それぞれ公害の態様について、この公害についてどうか、あの公害についてどうか、こういうふうな個々の具体的の検討をすべきではないか、したがって、もしこれについて必要があれば、いまの個々の公害防止の本体の法律のほうに、鉱業法あるいは原子力法のような形においてひとつ考えるべきじゃないか、こういうことで、私どもは、いま公害対策本部にも、各省にも、そういう趣旨においてひとつ考えてもらいたい、そういうことで、ひとつ法務省も民法の例外としてのことを考える、ただ横に漫然と公害だから無過失責任と、こういうふうなわけにはまいらぬ、公害のそれぞれの形について考えていくべきであろう、こういうふうなことを申しておるのであります。  なお、実は、因果関係の問題につきましても、これはいまお話がありましたが、要するに因果関係があるかないか、こういうことは裁判官の自由な心証によっていま決せられる問題があるのでありまして、現在の民事訴訟の実際におきましては、被害者側で必要な事実をすべて証拠によって証明しなくても、ある程度の間接事実を証明すれば、加害者側で特段の反証をあげない限りは因果関係を裁判官が認定するということも行なわれておるようでありまして、これらも裁判の運行によってはある程度前進をし得るもの、こういうふうに思っております。
  70. 正木良明

    ○正木委員 それは、すでに三月二十日の衆議院の法務委員会において、最高裁の矢口民事局長が長官代理としてお出になって、いま法務大臣がおっしゃった蓋然性の問題についてはおっしゃっておりますので、これは私もよく存じております。ただ、この因果関係の問題についても、いまいみじくも法務大臣がおっしゃったように、裁判官一人一人の心証でありまして、これが明確なもので規律されなければ、裁判官の一人一人の心証によって、この裁判官はそういうふうな見解をとるかもわからぬがこっちの裁判官はとらないというようなことで、被害者としては万全の保護を受けられないというような状況が起こるわけであります。現にカネミの被害が起こりました。あのときには、いわゆる原告側、被害者のほうは、全然工場の中へ立ち入って検査ができません。厚生省が食品衛生法の強権を発動して、そうして立ち入り検査をして、初めてあの欠陥がわかって、そこから毒物が混入したのであるということがわかって、初めてこれは問題が明らかになった、そういう点がございます。これは因果関係の問題でありますし、同時に、これはカネミの過失であったということがはっきりしたからよかったのです。しかし、この過失の問題が、立ち入り検査もできないような現在の状況でどうしてそれができますか。しかも、いま法務大臣は、原子力損害の賠償に関する法律と鉱業法をおあげになりましたが、まあ、そのほかにもあることは御存じで省略されたのだと思います。水洗炭業に関する法律、独禁法、労働基準法、国家賠償法、すべてこれは無過失賠償責任というものがこの中にきめられておるのでありまして、そういう意味からいえば、いまの法務大臣の話を聞いておると、公害というものはきわめて特殊なものではなくて、非常に普遍的なものであって、それを横ではとらえられないというような感覚で私は受け取りましたが、そういう感覚でおってもらっては困る。公害ほど特殊な犯罪はありませんよ。だからこそ、政府は曲がりなりにも公害罪の法案を今度お出しになったのじゃないですか。その中には推定条項だって入っているじゃないですか。そういうことから考えてくるときに、いまそういうことが隘路になって、無過失賠償責任というような民法の特例をその特別法で設けるわけにはいかないんだということは、私はどうしても納得できません。その点について、もう一度国民によくわかるように言ってください。
  71. 小林武治

    小林国務大臣 いまの無過失責任というものは、いわゆる一般的の例外として規定することはきわめて困難である。すなわち、特殊の態様について、それぞれの事態についてひとつ考えるべきだ、こういうふうに私は申しておるのでありまして、公害もたくさんの公害がみな無過失責任になれば、横につながったそういう例外法規はできるが、これは個々の公害についていま検討をしてもらいたい、こういうことを言っておるのであります。
  72. 正木良明

    ○正木委員 法務大臣公害罪の法案をお出しになりましたね。これは公害を特殊なものとしてとらえて、そうして特別に立法されたのではないのですか。
  73. 小林武治

    小林国務大臣 これはそのとおりであります。大気汚染とか水質汚濁とかいろいろな問題がありますが、公害を全体としてとらえて、そして刑事罰の対象にしよう、こういうことでございます。その点につきましてははっきり申し上げておきます。これはあくまでも過失の上に成り立つ責任、こういうふうになっております。
  74. 加藤清二

    加藤委員長 ちょっと待ってください。法務大臣答弁の途中にうしろを向かれると、委員長としては終わったものと心得えますから……。
  75. 正木良明

    ○正木委員 私は、過失のどうのということをいま問題にしているのではなくて、そういうすりかえの答弁をしないで、公害を特殊な問題としておとらえになっているのでありましょうということをお聞きしているのですよ。したがって、特殊な問題としてとらえているんだという御答弁があったのだから、それでいいわけです。だから、この無過失の問題についても、公害を特殊なものにとらえた法律案というものをお出しにならないから、われわれは社会党と民社党と協力をして、公害のみに適用すべき無過失賠償責任制度の法案を出しているではありませんか。これについてはどうお思いになるのですか。こういうことは賛成できないわけですか。
  76. 小林武治

    小林国務大臣 公害罪の法案は、公害というものを全体的に見てここに含む、こういうことでありますが、民法の無過失責任については、私は個々の問題を通じてひとつ検討してもらいたい、こういうことを言っておるのであります。
  77. 正木良明

    ○正木委員 こういうことでいつも時間をとられて困るのです、肝心のことが言えなくなっちゃって。公害という特殊なものに限っているのです。三党が出している法律案というのは、公害という特殊のものに限っているのです。公害以外のものも一緒に入れたすべてのものに無過失責任制度を設けろといっておるのではないのです。公害という特殊なものについて設けろといっておるのです。
  78. 小林武治

    小林国務大臣 公害というものは、全体的でなくて、個々に公害の種類がある。公害の態様がある。それについてひとつ一つ一つ考えたい、こういうことでございます。公害罪は、公害全体をとらえた、こういうことでございます。
  79. 正木良明

    ○正木委員 もう法務大臣にお聞きしても、それ以上は教えてもらってないようでありますから——この私ども法案の中には、はっきり「事業者は、工場又は事業場における事業活動に伴って公害を生ずる物質を排出し、よって他人の生命若しくは身体又は通常人の食用に供される動植物の生産に係る他人の権利を害したときは、故意又は過失がなくても、その損害を賠償する責に任ずる。」これは公害法案に書いてあるのと同じ意味のことが書いてあるじゃないですか。向こうで通用してこれで通用しないというのはどういうわけですか。
  80. 小林武治

    小林国務大臣 これは幾度言うても同じでありますが、公害罪というものは過失を前提としておる。したがって、これを全体としてとらえておる。民法の無過失の問題とは違う、こういうことでございます。だから、民法の問題については、公害の中にはたくさんの種類があります。その種類ごとにひとつ考えていったらよかろう、こういうように思っております。
  81. 正木良明

    ○正木委員 あなたと押し問答しておってもしようがありません。それくらい不熱意だということにしておきましょう。  そこで、それではこれは総理お尋ねいたしますが、そういう意味において、それではそういう予想せられる公害によって生ずるそういう損害の無過失賠償責任制度というものを、各単独法のほうに置くということをお約束していただけますか。
  82. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも専門家である法務大臣が答えのできないことを、まして総理自身もしろうとでございますから、よりしろうと、それが答えをすることはなかなかむずかしいのですが、ただ、私が聞いていて、どんな食い違いがあるのか、いわゆる刑事責任を問う法律と民事責任の場合とその二つがあるんだ。それで、いま最初に正木君がお尋ねになったのは、民事責任の場合の問題であったように思います。その民事責任の場合は一般的には規定ができないんだ、一つの、個々の問題についてそういうことを必要ならば書くべきだ、こういう答えを法務大臣からしたと思っております。私にお尋ねがあれば、私ならば、この問題はたいへんむずかしいことだから、十分検討をいたします、かように実は申し上げるのでございまして、これは本会議を通じ、また今日もなお同じような考え方でおります。全然無視はしないつもりです。ことに、先ほど来のお話を聞いていると、挙証責任、これがたいへんむずかしいことだ。私もお話を聞きながら、正木君の説明がなかなかうまい、たいへんセンチメンタルに実は聞いたのであります。したがって、そういう意味から、やはり私自身も何か書く方法があればというような気がしないではないのでございますが、しかし、法律の問題ですから、その人情的な情愛だけで問題を解決するということは、あとへ禍根を残します。したがいまして、これはやはりもっと冷静に私自身も考うべきだろう、そういう意味で、いままでのような同じような答弁をいたします。
  83. 正木良明

    ○正木委員 ですから、これはまた原点へ戻って話をすると話が尽きませんので、押し問答になりますので、そこで話を前向きにという意味で申し上げますが、原子力賠償そのほか水洗炭業とかいろいろきめております。おそらく、食品公害については、食品衛生法等に無過失賠償責任制度というものを設けるというような形で、各個別法に設けようとなさっているのでありましょう。そこで、そういう問題を各個別に検討をして、やはり公害それ自体の中で幾つもの要素があるというふうにおっしゃった。いわゆる大気汚染防止という大気汚染の問題もあるし、水質汚染の問題もあるし、いろいろあるからということでありますが、公害は特殊のものであって、無過失賠償責任というものは設けるべきである。いわゆる特別な、立法を横割りにする、特例として一本にするかどうかは別として、公害の問題については、無過失賠償責任というものは必要なものなんだ、こうお考えになりますか、どうですか、きめる法律は別として。
  84. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そういう点で誤解を受けることがしばしばあるわけです。抽象的に無過失責任というものは必要だろう、どうだ、いま法令に書けというのではないんだ、こういうようなことで話を進められると、とかく間違いが起こりやすい。無過失責任については、何ぶんにも私ども検討しておりますから、そこに結論が出るまで待っていただきたい。
  85. 正木良明

    ○正木委員 この前の総理所信表明質疑のときの答弁でございましたが、通常国会でこれを何とかしたいというふうに私は受け取ったのですが、これはどうなんですか。
  86. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも検討が長過ぎる、こういうおしかりだろうと思いますが、確かに長過ぎておる。それは私も認めます。とにかく結論を早く出せとおっしゃる、そういう意味の御叱正である、かようにただいまのお尋ねを聞いたのであります。
  87. 正木良明

    ○正木委員 いや、総理、この前そういうふうにおっしゃったのです。検討ということばはなかったようですが、ところが非常に玄妙ふかしぎなる答弁をなさって、ある意味では非常におじょうずなのでありますが、よくよく検討してみると、一歩近づける努力をするというふうなおことばであったわけですが、一歩近づける努力というものはどういうようなものか、われわれにはわからぬのであって、われわれには終点しかわからないわけであります。国民にはわからないわけであります。一歩近づける努力という意味は、通常国会でこの問題をちゃんとするのだ、いわゆる法律案を出すのだ、たとえば、それは個別法になろうと一本の法律であろうと、それは検討して次の通常国会に出すのだ、こういうふうな御心境であるかどうかということをお尋ねしているわけであります。
  88. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これが先ほどから問題になっておると思います。たとえば食品公害、これについてはどうするんだとか、そういうものについては私ども前向きで考える、こういうような答弁ができれば非常に楽なんですが、その答弁をするそのものを出すためにいま研究している、こういう状態でございます。
  89. 正木良明

    ○正木委員 ではこれは、ほかにたくさんやりたいことがありますので、あとの質問者におまかせすることにいたしましょう。しかし、無過失賠償責任制度というものは、被害者救済のそれこそ最も大きな中心となるべき柱であるということはよく知っておいていただきたいと思います。盛んにうなずいていらっしゃいますので、おわかりになったのであろうと思います。  そこで、ちょうどこの法律の問題が出ましたので、公害罪ですが、法制局長官は、おそれがあるのとないのとでは違うであろうとおっしゃるし、小林法務大臣は、あってもなくても同じだとおっしゃる。この点はどうなんでしょうか。これはしろうとがわかるようにお答えをいただきたいと思います。
  90. 小林武治

    小林国務大臣 これは、私が言っておるのは、法の全体の趣旨とかあるいは効果とかそういうものについては大差ない。むろん、いまの状態というものは、要するにわれわれの人体に実害があってからではない、ある前のことをやるんだ。したがって、その状態と、いまの危険を生ぜしめたということについては、これは字句上多少の距離があっても、要するに人体に害が及ばない先に、危険があれば処罰をする、こういうことであるから、私は、法の趣旨からいってあまり大きな差異はない、こういうことを申し上げておるのであります。
  91. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 私は、先ほどの御答弁で、全く同じかといえば、同じとは言えまい。でなければ直す必要もないし、また直さなくてもよかったかもしれませんが、と同時に、いま法務大臣がおっしゃったように、実害が生じる事前の段階で、つまり危険の段階で事を処理するという意味においては変わりがない。それは法務大臣のお考えで、おっしゃったのはそういう点だろうということを申し上げまして、片方だけ言ったわけではございませんが、同時に立法の法制の当局といたしましてこのものを見ました場合に、確かにいま申し上げたような相違はございますけれども、危険を及ぼすおそれのある状態というのは、確かに理論的に言えばわかるようでございますが、実際になりますとなかなかこれは認定がむずかしい。やっぱり危険が生じたという場合と危険を及ぼすおそれのある状態ということになりますと、理論的には確かに差が認められますけれども、事前の段階における危険であるという点においては同じであるにしましても、危険の段階においては理論上の差はないとは言えますまい。しかし、実際の運営においてそういうきわめてあいまいなる段階で、はたしてどこまでものごとが処理できるかということを考えてまいりますと、はたしておそれのある状態がいいかどうか、そういう点も当然法制当局としては考えたわけでございます。危険が生じたということで、これは実害の発生する以前の段階の問題であるという点において満足すべきではないかということも、その際の考慮の一つでございました。
  92. 正木良明

    ○正木委員 それでは一応想定で、どの段階というのを一回やってみましょう。一つは、工場、事業場が有毒物質を排出したという時点ですね。そうして二番目は、その有毒物質をプランクトンが非常に濃縮をいたしまして、そのプランクトンを魚介類が食べて、魚介類の体内に蓄積したという段階ですね。これは二番目です。今度はその魚介類を人間が食べて、人間の体内に有毒物質が蓄積されたという状態、そのあと人間の発病。これまた記録によりますと十年ないし二十年くらいかかる、この発病まで。ところが必ず発病するのです。そこで、この私の想定がどうであるかわかりませんが、この四つのうち、おそれが入った条文の状態とそれからそれを抜いた状態とでは違いますか、どうですか。
  93. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 この点については、実は私を御指名になりましたので、私が御答弁するのが当然だと思いますけれども、やはりより専門家である法務省の刑事局の当該政府委員からお聞き願うようにしていただきます。
  94. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの御設例、その前に前提条件があると思うのでございますが、かりに有毒物質、水銀なら水銀を放出しておる、その放出の量が結局最終的には人間が汚染されるおそれがあるというくらいの程度の水銀なら水銀を排出しておる、そういうことが前提でございまして、さらにそれで汚染されていた魚をその付近の人が通常食べている、常食としておるというようなことを前提条件といたしまして、ただいまの四つの段階についてお答えを申し上げますと、まず魚が水銀によって汚染された。その汚染された魚を付近の方々が通常の頻度で食べておられる。そうするとそれが発病してくるということであれば、その魚が汚染されました状態、これは危険を生ぜしめたというところに当たると思うのでございます。それから微生物、魚の前の場合でございますが、プランクトンならプランクトンというものが汚染されておるけれどもまだ魚は汚染されていないという状況、この段階は人間にとって、この法案にいう危険を生ぜしめた段階には至っていないと思うのでございます。ところで、そのプランクトンの段階は、危険を及ぼすおそれのある状態という場合には当たるのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  95. 正木良明

    ○正木委員 そうすると、水銀を例に出されましたが、水銀は適当じゃないと思います。これは排出なんというものはゼロですからね。こんなもの排出したら当然やられてしまうのだからあれですが、いずれにしても、もう一度私が聞いたことが間違いないかどうか確かめるわけですが、おそれがある場合というのは、プランクトンが食べた状態、そのプランクトンを魚が食べて、そうして体内に水銀が——水銀というのはあり得ないことでありますが、水銀が蓄積されたという状態、これがおそれが抜けた状態、こういうことですね。そうすると、法務大臣、やっぱり違いますよ、これは。これは明らかに違うじゃないですか。魚はプランクトンしか食うものないのです。プランクトンにすでにもうそういう有毒物質が蓄積されておる。しかもプランクトンは微量の水銀なり有毒物質を濃縮するというような作用を持っておりますが、この時点において、すでにもう危険は生じておると私どもは思います。少なくともそれをおそれと表現するならば、この辺でもうやっておかなければ、これはたいへんなことになるということは明らかなことなんです。そうすると、やはりおそれを抜いたということは非常に危険な状態を放置するということになる。その点どうですか、法務大臣
  96. 小林武治

    小林国務大臣 これは目的が危険を防止する、こういうことにあるから、いまのような魚を食べれば人体に障害が起きる、こういうことになると、その魚が汚染された状態においてこれをとらえても、人間に実害を及ぼす前の問題であるからこの法案目的は達せられる、こういうふうな考え方をしております。
  97. 正木良明

    ○正木委員 これは法務大臣、あなたの観点というのは、もうすべて抑止効果のほうしか言っていないのです。どうせ水銀が流れて——かりに、想定ですよ。そんなことは許されることじゃありませんが、水銀が流れてくる、いわゆる排出される。排出された時点において、それはプランクトンから、魚から人間というふうにこれはもういってしまうに違いない。だから、その最終的なものが罰せられるということがはっきりしていれば、もう流すやつはなかろう、こういう抑止効果のことだけおっしゃっておる。この間の本会議答弁なんか、その議事録を——聞いていると非常にわかりにくかったが、ようよう考えてみるとそういう御答弁のようであります。私はそういうことだけで公害罪を設置したのではないと思うのです。現実にそういう形は、いわゆる水道の上水の中へ毒物を流して、これはもういわゆる刑法の中でばっちりやられるのです。それと同じような思想において、そういう毒物が排出したという段階において、もうこれは刑法上の罪にするということでなければならぬ。そうすると、当然これはおそれという問題が入ってこなければこの公害罪というものは完成しないと私は思うのですがね。どうですか。
  98. 小林武治

    小林国務大臣 それは公害罪が完成するので、いまの魚介が汚染した状態においてこれをとらえる、人体に入らない前にとらえる、これで予防ができる、こういう考え方でございます。
  99. 正木良明

    ○正木委員 人間が魚を食べるときに、一々分析して、これは汚染されているか汚染されていないかということで食べるんじゃないのです。したがって、人間が直接口にして、それがそのまま人体に蓄積されるというような状態のものまでこなければ取り締まれないということであるならば、処罰ができないということであるならば、これはたいへんなことで、その前段階のプランクトンの状態においてすでにその手が打たれてこなければ、この人間に対するいわゆる被害というものを防ぎ切れないと私は思うのですが、どうですか。
  100. 小林武治

    小林国務大臣 これは要するに健康を守る、こういう立場からいけば、いまのそういう物質がもし排出されておるならば魚介の調査などもすべきだ。したがって、調査だけでもう十分にわかります。汚染されておれば、人に障害を現実に与えない場合でもこれは公害罪として処断できる、こういうことでございます。
  101. 正木良明

    ○正木委員 あなたはいま事前予防というような言い方をなさっておりながら、またそうでないような御答弁のように私は承ったわけでありますが、それならば、いわゆる汚染があるであろうと思われるような状態のところは常に総点検をしますか、事前に。人体に被害を与えない状態をつくり上げるためには、その総点検がしょっちゅう行なわれていかなければならないと思うのですが、そういう計画が総務長官、ございますか。
  102. 小林武治

    小林国務大臣 これはたとえばある工場がそういうことの心配があるということなら、やっぱりこれは調査すべきだ、こういうふうに私は思っておる。これはまあ調査はそれぞれの機関がありますから、私ども犯罪の捜査としては、これはもう捜査もできるし、この捜査については科学的の裏づけがなければこれは処断できない。したがって、科学的の裏づけというのは、魚が汚染されておるかどうかということを調べる、こういうことが捜査の一つの段階である、こういうふうに思います。
  103. 正木良明

    ○正木委員 そうすると法務大臣、そういう捜査権の発動というのはどういう時点から起こるのですか。何の訴えもないのに点検をしていくわけですか。捜査権を発動して点検していくわけですか。どうなんですか。
  104. 小林武治

    小林国務大臣 何の問題もなければ捜査の端緒というものはありませんが、そういう危険のある工場あるいはその排出、こういうふうな状態があれば、それは捜査の端緒にもなり得る、こういうことでございます。
  105. 正木良明

    ○正木委員 そこで総務長官——厚生大臣ですか。では内田さん、すみませんお願いします。そこで、そのためには、要するに住民から告訴がなければ法務大臣のほうが動かないのですからね。それがわかるためにはどうすればいいかということ、それはやはり未然予防として国がちゃんと考えてやらなければいけません、そうでなければたいへんなことが起こるのだから。そうすると、それは厚生大臣どうですか、そういうことはできますか。大体ここらが汚染されているのではないかというような地区については、そういう総点検というようなものを国の力で常時おやりになることはできますか。
  106. 内田常雄

    ○内田国務大臣 魚介類等が汚染をいたします前に、その排出基準というものが設けられておりますので、その排出基準に違反をいたしますと、まず行政罰の事態が私は発動すると考えます。そういう事態のもとにおきましては、これは私どものほうがそれを端緒として府県の衛生部等を指導いたしまして、そしてその基準違反によって河川の中の魚介類がどの程度に汚染されているかということを調べまして、そしてその状態がこの今回の法律に該当するかどうかというようなことを判断をしてまいることになろうと思います。
  107. 正木良明

    ○正木委員 ここで当然、この監視機構並びに調査機構というものがどう整備されるかという質問にならざるを得ないわけでありますが、その点もひとつお答えいただきたいと思います、厚生大臣
  108. 内田常雄

    ○内田国務大臣 もちろん私どもは、法律整備ばかりでなしに、監視、測定の機能というものの地方における充実につきまして助成もいたしますし、また大気、水等に関する法律そのものの中に、地方公共団体はみずから監視、測定の仕事を進めるべきである、こういうようなことにもなっておりますので、それを強化してまいります。
  109. 正木良明

    ○正木委員 話が横道にそれたようでございますが、いずれにしてもおそれをとったということは、重大な問題であるということがいま判然といたしたわけであります。そういう意味において、この審議の過程において、おそれを入れるというふうに修正することも可能であろうと私は思うのでありますが、それは国会の権限でございますから、答弁を求めるつもりはありません。  そこでもう一つ、念のために聞いておきたいのです。これは刑事局長お願いしたいのですが、水の場合を申し上げましたが、大気汚染ならどういう段階になりますか。
  110. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 いまのおそれがある場合とない場合の設例を、大気について話をしろということであろうと思うのでございますが、大気につきましては、現実的には非常に具体的な、適切な例が見当たらないと思うのでございます。しいて頭の中で考えた例といたしましては、硫黄酸化物なら硫黄酸化物でたいへん汚染されておる大気がどこかでできた、しかし、まだその大気は非常に人里離れたところの非常な高度のところにある、それが、いずれ都会のほうにその状態が移行してくるというような場合を考えますと、非常に人里離れた上で汚染された状態があった場合は、これがおそれに当たるということになろうかと思いますが、現実的には、そういうものはなかなか考えられないわけと存ずるのでございます。  それから、なお一点でございますが、おそれというものが取られたわけでございますが、これは他の、今回の大気汚染防止法であるとか水質汚濁防止法の改正で、いわゆる排出基準違反の直罰主義がとられておりますから、その関係におきますと、おそれというものを置いておく必要性が、きわめて薄くなったということが言えると思うのでございます。
  111. 正木良明

    ○正木委員 いよいよ時間が迫ってまいりました。きょう私がやりたかったのは、自然環境の保全の問題について総理からも聞きたかったが、これもちょっとできにくいようでございます。特にきょうは文部大臣を呼んでおりますので、文部大臣に一言だけ最後にお聞きしたいと思います。  そこで、私が文部大臣にお聞きしたいことは、先ほどもちょっと申し上げましたが、これを言うとみずからを卑しめるというふうに総理はおっしゃいましたが、決してみずからを卑しめるために言うのではなくて、他をもって範とするに足るものは、やはり見習わなければならぬという意味で私は申し上げているのですが、欧米の企業家というのはそういうことらしいですよ。ハイソサエティーから排除されたり、社会的に葬られる、企業の社会的責任というものが非常に追及されるようなものがあるんです。これはないほうがいいか、あったほうがいいかといえば、あったほうがいいに違いない。そういうことになってくると、やはり非常に長期的な問題になるかもわかりませんが、義務教育の課程の上からも、公害というものはおそるべきものであり、公害というものはなくしていかなければならぬというような教育をしていかなければならぬと私は思うのです。また同時に、成人に対してはそういう環境教育なんというものもやっていかなければならぬと私は思うのです。  ところが、文部省がいまおやりになっておる公害教育というのは、きわめて微温的なものでありまして、これは一問一答でいくと非常に長くなりますので、私、申し上げますが、いま使っている学習指導要領というのは昭和三十三年のものでございますから、これは公害のコの字も出てこないのは当然のことといいますか、しょうがないと私は思いますが、小学校は来年からですね、そしてまた中学校は再来年から新しい学習指導要領になりますが、この学習指導要領の中に、公害というのはほとんど出てきませんね。小学校においては五年生の社会科、ここで初めてちょっぴり出てまいります。しかも、それが実にへっぴり腰でございまして、たとえば、企業を悪者として糾弾させることが目的ではないし、そういうことをしてはいかぬようなことをいっております。こういう方針でございますから、教科書におきましても、この公害の問題が登場するということはほとんどございません。これはあえて私は、この教科書の検定の段階において、文部省がそれを落っことさせたんだなどということは言いません。言いませんが、少なくともそういう雰囲気のあるところでは、そういうような教科書をつくるということは当然のことであろうと思う。  だから、そういう公害教育というものも、将来の国民の、公害をなくしてほんとうに快適な自然環境というものを整備するというための心がまえをつくるためにも、ぜひとも必要なことであろうと私は思うのです。同時にまた、社会教育的には成人に対する環境教育といいますか、公害教育といいますか、そういうものをやはり再教育をしていくという雰囲気が出てこなければなりません。そのためには、何といっても一番大事なことは、やはり文部省がこの公害というものの絶滅に対して腰を入れてやるかどうかです。文部省は公害の被害者であって、加害者ではございませんのでというような形ではなくて、むしろ被害を受けておる文部省であるならば、そういう公害をこの地上から抹殺してしまうような教育というものをしていかれてはどうかというふうに私は思うのでございますが、いかがでしょう。
  112. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 正木さんの御指摘の点は、そのとおりに私は考えております。日本は、元来春夏秋冬という四季の変化に非常に恵まれた美しい国であったはずでございます。それが戦後二十年、自然科学の発達、科学技術の進歩あるいは産業構造の変化、都市集中、交通戦争、公害という形で実は醜くなり、あるいは害を発生しつつあることで、これはまさにわれわれ国民が一番憂慮しておる問題でございまして、青少年の心をむしばむものもまたここにあるかと思うのでございます。したがいまして、私といたしましては、教育の中に公害の防止ということについては、最優先的に考えていかなければならぬと思っております。  ただ、御指摘のように、来年の小学校の教科書が四年から——四月から使われるわけでございますが、これからはかなり公害の問題の記述がされております。また指導要領その他私は指導上、あるいは指導書、指導資料等を通じまして積極的に、今国会における公害問題の重大さということを認識した上に立って指導をしてまいりたいというふうに考えておりますし、また、中学校あるいは高等学校の教科書等については万全の努力を傾けたい、かように考えておる次第でございます。
  113. 加藤清二

    加藤委員長 ちょっと文部大臣に申し上げます。  あなたのいまの答弁の中で、来年は四年生からとおっしゃったが、五年生からの誤りじゃございませんか。
  114. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 いや、小学校は来年の四月からということで、それから再来年度が中学校から、そしてまたその次の年度から高等学校ということでございます。もし間違っておりましたら、御訂正を願いたいと思います。
  115. 正木良明

    ○正木委員 文部大臣にせっかくの御努力お願いいたします。  このあと、被害者の紛争処理の問題、被害者の救済制度の問題、こういう点もいろいろとお尋ねしたかったわけでありますが、残念ながら時間が来てしまいましたので、これで終わることにいたしたいと思います。この問題については、私たちも真剣に立ち向かって、それこそ健康で文化的な日本をほんとうにつくり上げるために努力をしたいと思いますので、総理もどうかひとつがんばっていただくようにお願いをしたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  116. 加藤清二

    加藤委員長 次は竹本孫一君。
  117. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、民社党を代表いたしまして、現下の重大問題である公害の問題について、若干の質問をいたしたいと思います。  まず最初に、総理大臣にお伺いいたしたいのでありますけれども総理、四選をされまして、おめでとうと申すべきか、御苦労さまと申すべきか、たいへんなことだと思いますが、この四選の過程の中で、これだけはやっておきたいということが二つなり三つなりあるはずだと思います。そのことをまずお伺いいたしたいと思います。
  118. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が、今回重ねて自民党の総裁に選ばれた、そこで新しいものを考えておるか、こういうお尋ねでございます。私は、かねてから機会あるごとに、私に課せられた政治課題、そういうものはそのつど話をいたしております。したがって、今回の自民党総裁四選ということで、事新しく申し述べるものはございません。もちろん、私の基本的な考え方は、自由を守り平和に徹する、そうして住みいい社会をつくる、これが私の考え方であります。  その意味におきまして、具体的な問題、これはことしこそ内政の年だ、かような表現もしております。内政の年としての表現、これは一体何なのか。これは、ただ単に産業経済を発展させようというわけではありません。私ども国民生活がほんとうに充実をされること、これが何よりも大事なことだと思っております。そういう意味で、ただいま問題になっておる公害問題、これは緊急な課題であります。これはことしの一日内閣で、宇都宮で私の所信も明らかにしたところでありますし、また、過般の創立二十五周年国連総会に参りました際も公害問題に触れて、私どもの進むべき道を明らかにしたつもりでありますし、また、私がかねてから申すような平和に徹した外交、そういう意味で善隣友好、これをさらに拡大していくという、そういう考え方で、もっといままでやってきたことを徹底するつもりでおります。  したがって、特に事新しくこれだと、私自身が生まれかわるわけじゃございませんので、それらの点は、在来からの政治姿勢、これを堅持して、そうして意気込みというか、その意気込みこそは、いわゆる決意を新たにする、こういう立場でただいまのような問題と取り組んでいくつもりであります。
  119. 竹本孫一

    ○竹本委員 総理から明確な重点をお示しいただけるかと思いましたけれども、いままでの姿勢に事新しくつけ加えるものはないかのようなお話でございました。私は、その意味では非常にこれは残念に思いますが、やはり政治というものは重点的に取り組んでいかなければ、いままでの自動延長では、なかなかうまくいかないと思うわけであります。  先般、私はいなかを回っておりましたときに、こういう話を聞きました。非常に世俗な話でございますけれども、昔は、こわいものといえば地震、雷、火事、おやじと言ったものだ。しかし、最近はそれが変わった。物価、公害、カー、かあちゃんだと、こう言うのですね。なるほどこれはうがっておる。今日の政治において、われわれが真剣に取り組まなければならぬものは、やはり物価の問題である、公害の問題である、自動車の問題である、あるいは民主主義のもとにいろいろな行き過ぎがあるそれらの精神的な問題である、かように考えます。私は、特に公害の問題は、人の生命にも関する問題でございますので、やはり総理の御在職中に、きわめて真剣に、成果をあげていただくように期待をしてやまないのであります。ただ、その点について、いまも文部大臣から御答弁がありましたけれども、これは単に公害十四の法案の問題だけではなくて、もっと根本的な問題があると私は思うのです。その点をまず最初に指摘して御意見を承りたいと思うのでございます。  それは、われわれ日本人の考え方の中に、排出物は、たれ流しはかってほうだいという考え方があります。また、われわれ日本国民には、民主革命のおかげで個人の尊厳ということは考えるようになりましたけれども、人さまの迷惑ということはあまり考えないという考え方もあります。いずれにいたしましても日本の、最近において一番残念なことは、パブリックフィロソフィーがない、公徳心がないということだと私は思います。したがいまして、公害法案が幾らできましても、あるいは予算措置が行なわれたとしても、それだけでは解決しない。まず第一に、日本国民基本的なものの考え方、人さまには迷惑をかけてはならぬのだ、環境は美しく保全をしなければならぬのだという、それぞれが使命感を持たなければいかぬ、考え方を持たなければいかぬ。  そういう意味で、私どもはこの公害国会を契機といたしまして、従来のようなパブリックなものに対する考え方を持たない、欠いておるような人生観なりあるいは行動原理なりというものを、まず改めることが根本であると思いますが、いかがでございますか。
  120. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私もそのとおりだと思います。  少し話が古くなりますが、ことしの宇都宮における一日内閣、そのとき質問に立った一高校生、この高校生から、やはりその点を指摘されました。最近は公徳心というものがないのじゃないか、そういう中で世の中はよくならないだろう、こういうような指摘がありました。私は若い青年、しかも高校生が、こういう点にまで言及したということで、実は非常に感激したものであります。  ただいま同じようなお話を聞きまして、われわれももっとパブリックフィロソフィー、そういうものに徹するというか、そうして古いような表現でなくて、新しい表現もありましょうから、その新しい行き方のもとに、ほんとうにみんながしあわせになるように、そういう世の中をつくろう、そういうところで人さまの迷惑を考えないというようなことは、まずわれわれの世代から払拭する、こういうことでありたいものだと思います。
  121. 竹本孫一

    ○竹本委員 文部大臣にお伺いいたします。  イギリスでは、子供に家庭教育をやる場合に、一番最初に教えることばはプリーズとサンキュー、どうぞということとありがとうということだと聞いておる。これは相手の人格を認め、またそのことのゆえに自分の人格の尊厳を形成していくわけでありまして、ことばを覚える最初のことばは、プリーズでありサンキューであるということも聞いております。また、アメリカにおいてはビーオネスト、正直であれということをもって家庭教育の一つの中心の考え方に置いておるということを聞いておるが、一体いま文部大臣は、日本の家庭教育なりあるいは学校教育なりの基本的なねらいをどの辺に置いておられるかということを、まず伺いたい。  時間がないからまとめて申しますが、私は先ほどパブリックマインドを持たなければならないということを申しました。いま正木委員からも御質問がありましたが、今度採用になった新しい教科書の中には、公害の問題が小学校五年生の教科書に入った。入ったことは一つの進歩であるから高く評価いたしますけれども、その入り方が問題であります。先ほども御発言、御指摘がございましたけれども、企業を悪者として糾弾させることが目的ではない。これはある意味において当然であります。しかし、もしわれわれの希望を言うならば、企業にも社会的責任があるのだぞということを教えなければならぬと思うのです。そういうことが逆になったように、あるいは先ほど来言われるような経済優先に傾いたような指導要領になっておるように思いますが、この二つの点をお伺いいたしたい。
  122. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 イギリスの例やアメリカの例をおとりになって、公徳心というものが子供の教育に大切なことをお述べになりました。私もまた同感でございます。そして日本人もまた、ありがとうとか、あるいはお先にとか、どうぞとかいうことばがございますように、日本人の長年のしつけの中には、人間として一番大事なものだというふうに親はしつけてきたと思います。しかし、それが戦後の二十年間、どちらかといいますとわがことばかし考えまして、権利の主張だけをして、そして他を顧みないという風潮が子供にも出てきましたが、同時にわれわれおとなにもそういう風潮があるということが、結局子供の教育につながっているんじゃないか。御指摘のように、やはり企業等におきましても、自分の会社だけもうけさえすればいいんだという風潮がないでもないと私は思うのでございまして、こういう公害国会を通じまして、企業の新たなる行き方というものが問い直された時期を迎えておるというふうに思います。  その意味合いにおきまして、教育におきますこの公害の取り扱い方は非常に大事だと思いますし、先ほどお答えを申し上げましたとおりに、指導要領には、これから改定します部面につきましては十分配慮していくわけでございますが、従来のものの中に、指導要領のこの説明をいたしました中に、御指摘のような点がございましたことを私も承知をいたしております。これは何らかの機会に、あるいは指導要領のその資料等を配付する場合におきまして、十分改めていくようなやり方を考えたいと思っておる次第でございます。
  123. 竹本孫一

    ○竹本委員 企業のあり方が問い直されておる、文部大臣の御指摘のとおりでございますので、次回に改めるというお話もありましたけれども、その場合には経済優先でない、社会とともに産業経済はあるのだという考え方に立って、個々の指導要領に、いま私が指摘しましたようなことのないように御努力を願いたい。  なお、ついでにもう一つだけ文部大臣にお伺いいたしますが、公害国会を開いて、公害防止の問題にわれわれは真剣に取り組もうという姿勢でございますが、今日の大学の講座の中に、ある専門家に言わせますと、公害防止技術に関する研究はない、あるいは講座はないといろいろ指摘を受けておるようでございますが、はたして日本の大学は公害問題にいかなる取り組み方をしておるのか、あるいはそういう講座を設けることになっておるのか、この点についても伺っておきたいと思います。
  124. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。  大学の中におきましては、公害に直接ではございませんけれども関連するいろいろの研究は、各大学あるいは各研究所においてやられておるわけでございます。たとえば生態学の問題なんかも、実は……(竹本委員「いや、公害防止技術に関する研究」と呼ぶ)公害防止技術については、公害そのものとして講座はございません。しかしながら、これからはそういうような要求も出てまいるかと思いますし、また、当然そういうような研究がなされなければならないと思いまするので、大学等においてそういうような要求があった場合は、前向きでこれを検討し、そして設置の方向へ進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  125. 竹本孫一

    ○竹本委員 総理、いまお聞きのように、大学においては、産業廃棄物をはじめとして、本格的な意味での公害防止技術に対する取り組みはまだないのです。これは早急にやってもらわなければ、かりに国立公害研究所をつくりましても、御本尊の研究が深められていないということになりますので、ぜひ前向きに取り組んでいただきたいと思います。希望を申し上げておきます。  次には通産大臣。いまパブリックフィロソフィーの話をいたしまして、庶民も政治家も大いに反省しなければならぬということを申しましたが、この際、最も反省を願わなければならぬのは企業のあり方であります。御承知のように、イギリスにおきましては一九六一年ごろから、こうした問題に対する考え方の中に、一部の先覚者はレスポンシブルカンパニーというようなことの考え方を打ち出しております。ジョージ・ゴイダー氏その他をはじめといたしまして、企業のあり方について、会社というものは地域社会から離れてあり得ないんだ、だから会社の取締役の中には、地域代表を一人取締役に入れたい、従業員の代表も一人入れたい、物価の問題がやかましいからでしょうか、消費者の代表も入れたい、三人ぐらいは新しく取締役会に入れて、先ほど来問題になっておりますように、企業の社会的性格を貫徹するように努力しようということを言った人がおる。さらにアメリカにおきましては、ゼネラルモーターズに対して、こういうことを要求をした弁護士さんもいらっしゃいますことは御承知のとおり。  そこで、私は伺いたいのでありますけれども、本委員会において先ほど来指摘もありましたように、日本公害に関する実態調査というものは、あるいは労働省あるいは厚生省がやっておられるけれども、一体通産省はどの程度にやっておられるのであるか、あるいはやっていかれるつもりであるか。  同時に、労働省やあるいは厚生省でやられたものを見ると、あるいは七割あるいは三割が全く浄化装置も何も持たないで、日本人お得意のたれ流しをやっておるということも十分に指摘されておる。それでは愛される会社になることは不可能である。どうしてもこの際会社のあり方に——いま取締役を三名、地域代表なり消費者代表なり従業員代表なりを入れるか入れないかということは、確かにむずかしい問題もありましょう。しかし、すでに一株運動というものがあって、一株株主運動というのは、強引に地域社会の声を会社の運営の中に反映させようとしている。方法についてはいろいろ議論があるかもしれませんけれども、そういう要求に発しておる。だとすれば、会社のあり方にそれを先取りして、会社というものは地域社会を離れて存在し得ないのだという観点に立って、新しい会社のレスポンシブルなあり方を考えなければならぬと思いますが、通産大臣はそういう実態調査をやられたか、会社のあり方についてはいかなるお考えをもって行政を指導しておられるか、伺いたいと思います。
  126. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 水あるいは土壌の汚染等の問題が非常に出てまいりましたので、今年もいわば再点検といったような意味で、関係のあると考えられます会社につきまして、各通産局を総動員いたしまして調査をいたしました。その結果も発表いたしたところでございます。  それから、それと別に産業廃棄物につきまして、通産省の所管であります五千ばかりの工場、これもある意味で悉皆調査をいたしまして、廃棄物の実態が大体わかってきた。できるだけの調査はいたしておりますし、これからもいたそうと思っております。  それから、企業のそういうあり方につきまして、これはまことに御指摘の点は私どもも同感でございます。外国ではよくそういう形での社外重役というものを非常に有効に使っておる例が多うございますが、わが国には何ゆえかそういう慣行が育っておりません。これは、こうしろああしろと私ども申すつもりじゃございませんけれども、やはり広く社会との連関を持つという意味で、企業がそういう心がまえでやっていってもらうことはきわめて望ましいことだ、また必要なことだと思います。
  127. 竹本孫一

    ○竹本委員 ホーカン・ヘドバーグという人が「日本の挑戦」という書物を書いておる。御存じだと思います。この書物は、日本の経済成長率を非常に高く評価いたしておりまして、先ほど大蔵大臣からも御答弁がありましたけれども、このままでいけば七五年、五年で倍になる。二千億ドルは四千億ドルになるだろう。十年たてば八千億ドルになるだろう。したがいまして、一九八五年になれば日本のGNPはソビエトを大きく抜いて、名実ともに世界第二位になるのではないかということも指摘いたしております。まあ私も大体そういうふうに思いますけれども、この書物に非常に痛いことが書いてある。あと二十年たてば日本はソビエトを追い抜いて名実ともに世界第二位になるであろうが、その二十年たった後の日本においては、なお青い空が残っておるであろうかと書いておる。これはまことに痛い、きびしい批判であります。青い空がスモッグでだんだんなくなってくる。われわれは静岡県でございますが、静岡県の田子の浦においては青い海もなくなっておる。青い空がだんだんなくなる、青い海がだんだんなくなる、たれ流しはかってほうだいだということになっておりますと、これは総理の言われる、福祉なくして成長なしには大きく反することになるし、政府が言っておられる社会開発は、単なる大企業中心の会社開発になってしまう心配がある。  そこで私は、この公害国会を契機に、どうしても大きな方向転換をやらなければならぬと思う。先ほど、たしか総理は言われたと思いますけれども、われわれの危機意識を持たなければならぬ。われわれはこの国会を契機として公害問題については意識革命をやらなければならぬと思います。そういう意味からたいへん痛いことをいっておる、ニューヨーク・タイムズの、この間の十一月三十日の日付のやつでございますけれども、なかなかうまいことをいっておるので、私はちょっと引用させてもらいますが、「一億人の日本国民のうち、三分の二は東京から広島に至る沿岸地域に住んでいるが、この地域では空気も水もよごれ、市街地は家がひしめき合い、スラムのような公害地はおよそしゅう悪である。」ということばが入っておる。「さらに悲劇的にしているのは、単純にGNPを追求するあまり、この感受性豊かな国民が自然環境保護にあまりに無関心すぎたことである。日常の環境こそは、日本の特異な文化を特徴づける“みやび”と“美”そのものではなかったか。」ということをいって、最後のところで「ここには一種の精神分裂症的性格がある。このことは、目は二十一世紀に向けながら、精神は中世のままだった三島由紀夫のハラキリに劇的に現われた。」公害問題は全く、二十一世紀を展望しながら、私の言うパブリックマインド、パブリックフィロソフィーその他は中世紀そのもので、頭は分裂しておる、その精神的腹切り現象の一つがこの公害であるという批判であります。まことに鋭い批判で、われわれは外国に誤解を受けないためにも、この辺で公害の問題については、先ほど来総理も言われておるが、またわれわれ野党が特に指摘しておるように、もっともっと本格的に取り組まなければならぬのではないかと思うわけであります。  そこで、まずその第一として具体的な問題で、環境権という問題がいろいろ、最近には学者あるいは弁護士さんによっていわれるようになりました。私は、きれいな水とかきれいな空気とかいうようなものば昔のように自由財ではない、やはりこれは制約をされて希少価値が出てきた、したがって財産価値が出てきたというふうに思います。そういう意味からいうならば、法律的な概念構成からいえば、まだ一歩残された問題がありますけれども、政治的な観点から問題をとらえるならば、この返で、美しい空気、美しい水というようなものは、これは単なる自由財として取り扱うべきものではなくして、やはりわれわれの一人一人が、地域社会に住む地域住民が、健康で文化的な生活を保障してもらう大きな物的基礎でございますから、これは広い意味の環境権というようなものは政治的には考えていいのではないかと思いますが、総理のお考えはいかがでございますか。
  128. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 環境権ということは、実はまだ私自身にはちょっとなじまないことばでございます。したがって、ただいまいきなり環境権ということばを打ち出していいかどうか、そこらにも疑問がある、かように思います。どうも私自身とかく新しいことばが好きなように皆さんから言われておるので、そういう意味ではみずから省みましてやはりこの点は十分考えてみたい。しかし、言われることは私も同感でございますし、そういう点について十分気をつけなければならない、かように思っております。
  129. 竹本孫一

    ○竹本委員 法制局長官についでに伺いましょう。  環境権という概念構成を法制局長官としてはどういうふうにお考えになりますか。
  130. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 環境権という御指摘の権利については、公法上私法上、両方考えられると思っております。公法上は、むろん憲法上の基本的人権的権利として保障がされるかどうかという観点の問題が一つあると思いますが、これはきのう衆議院の本会議総理大臣からもそれに触れたお答えがございました。むろん環境権という名の権利が憲法上保障されているわけではございませんが、まさに先生御指摘の憲法二十五条の、例のいわゆる生活権というようなこととの関連においてこれは無関係なものではない。やはり環境を害された場合に、政府が国の責務としていい環境を保つような施策を講ずべき責務があるのではないか。そういう意味からいいますと、二十五条にゆかりを持つ権利であるというふうにいえるのではないかと考えております。同時にまた、私法権の対象として一体どこまで考えられるか、これは財産権として確立しているということは、まだ申せる段階であるとは考えられませんけれども、だんだんに、それこそ判例の集積等によりまして、これがどこまで認められているかということで、私がこの際きわめて明快に御説明をするのは困難でございますが、やはりそういう実際の実例を通じてだんだんに考えられていく傾向のあるものではないかというふうに考えます。
  131. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、公法的のみならず私法的にも一種の入り会い権的なものを発展さした姿においてこれをとらえてみたらどうかと思いますが、なお法制局で御検討を願っておきたいと思います。  次に進みますが、首都圏近郊緑地保全法という法律があります。そこには、「この法律は、首都圏の近郊整備地帯において良好な自然の環境を有する緑地を保全することが、首都及びその周辺の地域における現在及び将来の住民の健全な生活環境確保するため、ひいては首都圏の秩序ある発展を図るために欠くことのできない条件であることにかんがみ、その保全に関し必要な事項を定めることにより、近郊整備地帯の無秩序な市街地化を防止し、もって首都圏の秩序ある発展に寄与することを目的とする。」と書いておりますが、私はこの構想を将来日本の全体に広げていきたい。首都圏だけが、ここに書いておるように、緑地を保全して、そして「現在及び将来」——「将来」の字も入っておる。「現在及び将来の住民の健全な生活環境確保するため、」のくふうをしなければならぬ。首都圏は特にその必要が迫っておるということもわかりますけれども、私は環境権とかあるいはわれわれが新しく出しました法案におきましても環境保全基本法ということばをうたっておるわけでございますが、その環境保全という考え方は、まあ近い例をいえば、この首都圏近郊緑地保全法の考え方を全国的に広げていこう、こういう考え方であります。  そういう立場から考えまして、やはり先ほど来御指摘のございました、この公害のただ基本法とか防止法といったような事務的な対策だけではなくて、われわれは二十一世紀への展望も持ちながら、もうこの辺で環境政策というものを本格的に取り組まなければならぬ。首都圏だけの問題ではない、日本全体に緑を残しておかなければならぬのだ、こういうふうに思いますが、いかがでございますか、総理
  132. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま言われる点、私にも理解できますし、また私どもが今回公害問題と取り組む、またその中にも美しい自然を取り戻す、またこれを子孫に残したい、これが私どもの考え方でもあります。公害問題と取り組んでおるその基本姿勢、これを竹本君は率直に御披露なさいました。そういう意味で、私ども一そう努力しなければならぬ、かように思っております。
  133. 竹本孫一

    ○竹本委員 先ほども指摘がございましたが、もし本格的にそういう認識を持っていただくならば、やはり私は公害対策基本法というこの法律は環境保全の政策基本法として考え直すべきではないかと思います。  この点、見解の相違もありますし、時間もありませんから、私はさらに具体的な問題に入りたいと思いますが、一体いまの環境基準というものは、維持することが望ましいものを環境基準としてきめるということになっておる。その望ましいものというのは、科学的にあるいは社会的に許容できる限度に対して何割引きになっておるか、あるいはよりきびしくなっておるのか、プラスアルファかマイナスアルファか、その幅はどの程度のものであるかということについて、ひとつ長官にお伺いしたいと思います。
  134. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 環境基準の設定につきましては、現在における各種水域におけるところの実情あるいは下水道の普及状況、あらゆる点を勘案してつくっております。そうしてその前提としては当然排水量の量的な前提を置いております。ただいまお話がございましたように、上下非常なアローアンスをとるということではなくして、むしろ相当余裕を持って基準をつくってある。すぐに基準の改定が行なわれるようなことがないように、十分のゆとりを持たせて現在は決定しておるわけであります。
  135. 竹本孫一

    ○竹本委員 そうすると、いまの基準というものは相当将来への展望も含めて、ある程度きびしくやっておる、こういうことであるか。間違いありませんか。
  136. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 今後におけるところの排水量の増大、すなわち経済の成長、生産が相当伸びるということも頭に入れまして、そして決定しております。
  137. 竹本孫一

    ○竹本委員 さらにもう一つお伺いいたしたいが、今度十四の法案が出まして、政府として公害に取り組んでおられる。環境を保全するための御努力をいろいろ積み重ねようというわけでございますが、その大きなねらいというものはどの辺に置いておられるか。すでに議論もあったと思いますけれども昭和三十五年ごろ、日本が経済の高度成長を始めて、いろいろな公害を出し始めた、その前あたりを目標にされるのか、あるいは相当の経済成長の段階を考慮して、それよりは相当割り引きしたものを目標にされるのか、この辺の考え方を一つ伺いたいし、さらにもう一つ伺いたいことは、われわれ野党三党の提案の中にははっきりうたっておりますけれども公害防止の——ある一定の地域を指定するだけではなくて、国全体として防止計画というもの、五カ年計画というものを立てるべきではないかと思うのでございますけれども、その点はどういうふうにお考えでございますか。
  138. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 御存じのように、一方におきまして経済社会発展計画というものをわれわれは持っておりますし、新全総の見通しというものも立てております。当然そうした点を頭に入れながら、われわれの環境基準設定の基本といたしております。  それから五カ年計画の問題でございますが、これはいわゆる環境基準を設定いたしましても、これをあらゆる努力をもって極力達成しなければ何にもなりません。そのために基礎的なデータをもとにいたしまして、その達成に必要なところの期間、あるいはまたそれに必要なところの諸施策、そういうものを個々の流水域ごとに十分検討いたしまして、これを環境基準設定の際の参考資料としても出しております。そういうようなことでございますから、それぞれの水域に応じまして見通しを十分に立てておる、こう申し上げられると思います。
  139. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまの答弁ではまだよくわかりませんが、私は端的に聞きまして、いろいろな条件を含めて、環境政策として、全国を美しい、われわれのいう良好な環境にするために、とにかく政府として中央で五カ年計画を立てられる御意思なりあるいはお考えがあるのかどうかということが一つであります。  あわせて伺いますが、いま全国総合開発計画のお話が出ました。これは私も読んでおりますけれども、この計画は、昨年の五月決定を見た新全総、これは意欲的な取り組みが行なわれておるかのような御答弁にも聞こえたのでございますけれども、これを読んでみると、たった二ページ、簡単に触れてあるだけだ。それは当然であります。この計画を考え出したのは、御承知のように国土総合開発法二条に基づいてやっておるのであります。その二条を読んでみましても、いまの公害という問題についての感覚はほとんどない。ないままに、また、ない時代に——公害の問題がこんなにやかましくなりましたのはごく最近のことでございますから、法律ができたときあるいは委員会が出発したときには、それほど大きな問題意識はなかったと思うのです。あるいはなかったことはやむを得ないと思う。そうなればこの新全総というものは、当然に公害問題についてははなはだ手ぬるいものにならざるを得ないと思うのですが、事実、せいぜい二ページ書いてあるだけでございます。これはやはり新しい公害対策、環境政策という観点からもう一ぺんまじめに見直すべきであると思いますが、この点についてはいかがでございますか。
  140. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 第一点でございますが、公害のいわゆる防止、環境基準の達成、こういうものを具体的にいま五年計画として、総体的決定はいたしておりませんが、しかし、たとえばその背景になるところの下水道につきましては、下水道の五カ年計画というものを持っております。また、新経済社会発展計画におけるところの行政投資、いわゆる五十五兆円というものの中にこれらの環境保全に必要とするところの各種の行政投資の計画を持っておるわけでございます。  それから、いま御指摘の新全総でございますが、これは形式的にはいわゆる国土総合開発法に基づくところの長期見通しでございます。もちろんこの法律は非常に古うございます。たしか二十五、六年ごろにできた法律でございます。しかし、形式上はそれに基づいておりますけれども、新全総計画自体は、御存じのように昨年、すなわち四十四年の五月に決定を見ました。そして、この決定の過程におきましては、当然のことながら公害問題についての議論を十分に尽くしております。ただ、御指摘のように、一ページか二ページしか触れてない、そういうお感じをお持ちになったと思うのですが、実は、いわゆる国土の開発という見地からあのビジョンが立てられておるために、具体的な問題としての触れ方は少ないのです。しかし、あの前文、それから全体の課題におきまして、随所に公害のことばが出ております。そうして、いわば現在の都市におけるところの過密集中、こういうものを何とか是正する。局部的な国土の利用というもの、その偏在を是正して、全面的に国土の再編成を行なおう、こういうことが新全総の根本のねらいでございまして、そのことは、この国土の再編成計画そのものがすなわち公害対策である、こういうふうに私たちは考えておるわけであります。
  141. 竹本孫一

    ○竹本委員 時間の関係であまり問答いたしませんけれども、私は、新全総の策定されている過程といまとは問題意識が違うのだから、やはり問題意識の違う観点でこれは再検討を加えるべきだということを要望いたしておきたいと思います。  さらに、五カ年計画の問題については、下水道計画はこうなっておるというようなお話もございましたけれども、これもやはり国土全体をいかに美しく保全するかという観点から大きく網をかぶせて——非常に困難な問題であります。内容は非常に複雑多岐だと思いますけれども、やはり新しい問題意識の上に立ってこの問題と取り組まなければならぬだろうと、要望をいたしておきます。  具体的な点を一つだけ伺いたいのですけれども、振動、悪臭、産業廃棄物、土壌の中の有害物質、窒素酸化物、これらのものについての環境基準というものはどういうことになりますか、そのお考えを伺いたい。
  142. 内田常雄

    ○内田国務大臣 有害物質の規制等に関しましては、今回の一連の改正法の中で規制対象を広げてまいりましたが、環境基準を設けますものは、大気、水、それから騒音、そういうものが環境基準としての条件になずむものでございますから、そういうことに相なるわけでございます。
  143. 竹本孫一

    ○竹本委員 私が言うのは、振動にいたしましても悪臭にしても、産業廃棄物あるいは土壌の中の有害物質、窒素酸化物、こういう問題は環境基準の設定を考えなければならぬ問題ではないか。それをどういうふうにいま取り組もうとしておられるのかということでございますから、これはそれぞれの関係省においてひとつ前向きに取り組んでもらいたいということで、問題を指摘するにとどめてまいりましょう。  最後に希望を一つ。これは環境の問題についてでございますけれども、生態学的な視点というものが、われわれ三党の出しました案の中には非常に強く出されておる。環境の問題とあわせて、このエコロジーの問題を取り上げておりますが、政府のほうにはそうした感覚はほとんど見られない。出てきた公害をたまたま押えていくということでございますけれども総理も言われる美しい環境をわれわれの子孫に残していこうということになれば、炭酸ガスの問題にしてもあるいは酸素の問題にしても、植物循環もできなくなるような日本ではどうにもなりませんのですから、ぜひ新しい環境政策としてまじめに取り上げてもらいたいという要望を申し上げて、この問題は終わりたいと思います。  次に参ります、先ほど来いろいろ御指摘がございましたが、まずそれじゃ公害罪のほうからいきましょう。公害罪について、もうすでに議論のありました点は私はそう申しません。しかし大事な点が一つ抜けていると思うのです。それはちょうど公害罪というのは、どろぼうにたとえますと、どろぼうをつかまえることの議論は一生懸命にやられたけれども、その前に戸締まりをしなければならぬという問題が別にあるわけです。公害罪で、公害罪を論じなければならない、具体的な発動をしなければならぬというようなことになること自体が環境基準や排出基準の設定が的を射ていない、こういうことじゃないですかね。公害罪を論ずる余地のないようなそういう環境基準をつくり、排出基準も考えていかなければならぬ、私はこう思いますが、この点はいかがでございますか。
  144. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、法律をつくってそれだけで事足りるとは実は思っておりません。もちろん実態を絶えずつかまえること、監視すること、そうして行政的な指導がそこにはまず先行することだと、かように思っております。したがって、そういう意味合いの各省大臣公害と取り組む姿勢、これを総理だけの問題じゃなしに、現場を預かっている各省大臣に要望しておりますので、各省大臣はそれぞれの局、部等に対して同じような指示をしておると思いますが、そういうことで初めて法律も生きてくるんじゃないだろうか、かように思っております。また、法律に生命を吹き込むことにもなるのだ、かように思っております。
  145. 竹本孫一

    ○竹本委員 ただいまの総理の御答弁を聞きながら、われわれが解せない点があるわけであります。各省大臣がしっかりやれというお話でございます。もちろんそのために今度は十四の法律が出ておるわけです。その十四の法律が、新聞も大騒ぎをしておりますが、非常に骨抜きになったという問題であります。私は、具体的なことを申しますけれども、たとえば大気汚染法の問題がある。この問題については発生施設を許可制にするかどうかというような問題は見送られてしまっておる。緊急時における燃料の規制という問題はなまぬるいものになってしまった。電気、ガスについてももちろんそうであります。こういうことを考えてみると、大気汚染のところでぴしゃっと押えていかなければほんとうの環境政策も立たないし、また公害罪の問題の心配も出てくるわけですけれども、その戸締まりが大穴があいてしまっておる。水質汚濁の防止法につきましても、同じようにこれはいざという場合の緊急命令は勧告にかわってしまったということになっておる。一番わかりやすいところで申しますと、海洋汚染の防止をやる、非常にもっともであります。ところが、これも廃油の処理施設の問題になりますと、さっぱりわけのわからないものになってしまった。一体、廃油の処理をしなければならぬ廃油をかかえたその人はどうすればいいか。処理施設がなければどうすることもできない。陸に捨てようといっても、それもむずかしい。陸で処理することもむずかしい、海へ捨てることもできない。自分がかかえているわけにいかない。こうなれば、どうしても、廃油処理施設の設置というものは、この目的の中から省かれたようだけれども、これは目的の中に入れて、それに対する取り組みを考えなければいかぬ。それは目的からはずす、そして義務は、義務づけをやらなくなって勧告をするとか何とかという程度になってしまった。それでは一体廃油はどこへ捨てるか、どう処理すればいいか。現在御承知のように港湾管理者が三十三の処理施設をつくろうということになっておるようでございますが、九つしかありません。あと二十四は、一つつくってもまあ五億円なら五億円かかるということになるでしょうから、なかなかそう簡単にいかない。財政措置のほうもまだはっきりしない、結局だれも手を出さないで、廃油処理施設というものは本格的につくることができない、体制ができないというままになって、そして海洋汚染はやめよう、あるいは公害罪でいこう、こういうことは私はナンセンスだと思う。やはり処理施設というものをちゃんとつくらなければ話にならない。騒音についても同じように大きな穴があいておる。全部骨抜きだというて新聞あたりもこういうふうにいろいろ書いておりますけれども、その当否についていろいろ御意見がありましたけれども、しかしそれぞれの環境を守っていくために入り口で防がなければならぬものが十分に防がれていないということだけは私は事実だと思うのです。そういう形にしておいて、公害罪で悪ければぱんと引っぱろう、こういうようなことになると、これは公害罪そのものを非常になまぬるいというか不徹底なものにしてしまう。公害罪を新しく刑事犯罪だということで確認したということは、これは小林法相御苦労があったと思いますけれども、私は画期的なあり方だと思うのです。しかしながら公害罪でふん縛ってしまう、牢屋へ入れてしまうということがわれわれの政治の目的であってはならない。そうなれば公害罪を起こす余地がないように、それぞれの法において大気も水質も保全していかなければならぬ。ところがいま言ったように廃油施設をつくるということのほうはしり抜けにしておいて、海をよごしてはならぬというほうだけ言って、海をよごしたら処罰するぞというようなことを言うのは全くナンセンスだと思いますけれども、いかがでございますか。
  146. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 竹本君の言われる点、私どもずいぶん頭をひねっておる最中でございます。  ついせんだって、横浜で船底に残っておる廃油処理、その作業をやっていて、そして爆発した、そしてとうとい人命を失ったが、一体、港でああいう廃油の処理をするという、そういうことがいまの時代に考えられておるという、これはずいぶん問題があるのじゃないのか。まずその廃油の処理の問題は、ただいま陸上で焼却なら焼却、そういうことができるかどうか、廃油という形のものがとにかくずいぶん船底に残っておる、それをただ海水で洗うだけで非常な高熱を生ずるとか、そしてそれが爆発するとか、これはいかにもまずい。実は専門的な運輸大臣にどうだという点まで話しておりませんが、よく伺えば、外国では、南米では、そういうことで事故を起こした例がたびたびある。さようなことを聞けば、なおさらこういう問題に科学的に、もっとわれわれの力を使うべきじゃないだろうか。私はどうも公害について、ただいまようやく法案整備する、十四、もう一つできて十五、これを提出しようとしておる。大体おそきに失した、こういう点はあるだろうと思います。そうしてまたそれも中身が不十分だというおしかりは各党から出ておりますが、ただいま、私、不十分にしろそういう法案を出そうという、まだそういう段階なんだ、対策としては非常におくれているのだ、したがって、実情を十分把握する、その実情に対応するだけの法律案、そういうものがこれから必要なんだろう、かように私は思っておりますが、こういうことはやはり創造も創造、自分でつくらなければならないが、同時にまた経験からもいろいろ教わるのじゃないだろうか、かように思っております。したがって、今日御審議をいただくものが、これで私は事足りると、かように申しておるわけではありません。しかしまず最もわかりやすいものから手をつけようじゃないか、そうして、みんなが納得のいくものからまず手をかける、それすら実はただいま大問題になっておる、かように一部では批判されておるのです。そこの点も、まあ竹本君おわかりがいただけるのじゃないだろうか、かように思います。政府自身として公害と取り組んでおる姿勢、これは真剣に取り組んでおるのだということだけ申し添えておきます。
  147. 竹本孫一

    ○竹本委員 対策は非常に立ちおくれておるということについて、総理は率直にお認めになられましたが、ぜひひとつこの謙虚なる反省の上に立って本格的な施策を講じていただきたい。私が言っておりますことはおわかりいただいておると思いますけれども公害罪で取り締まるということはもう最後だ、その前にいろいろと手を打たなければいかぬし、個別法で対策を講じなければなりませんよということを言っておるわけでございますが、その講ずる場合において、ついでに一つだけ申し上げておきたいのは、大正五年九月にできました、いまはなくなった工場法であります。いろいろ骨抜きの問題が問題になっておりますけれども、あの大正五年にできた工場法の中にもこういうことばがあります。「設備力危害ヲ生シ又ハ衛生、風紀其ノ他公益ヲ害スル虞アリト認ムルトキハ豫防又ハ除害ノ為」ちゃんと予防という字も入っておる。「豫防又ハ除害ノ為必要ナル事項ヲ工業主ニ命シ必要ト認ムルトキハ其ノ全部又ハ一部ノ使用ヲ停止スルコトヲ得」と、こう書いてあります。今度のわれわれがいろいろ骨抜きだといって議論をいたします問題の多くは、この行政措置のとり方、かまえ方が、場合によっては大正五年の工場法よりも一歩まだおくれておる。この点はせめて大正五年くらいのレベルまではいってもらわなければ、個別に公害の発生を防ぐということについて不徹底を免れないのではないかという点を心配するからでございまして、ぜひこれからの法令を検討される場合には、少なくとも大正四年、あるいは五年の感覚において議論をするようなことにしていただきたいということを、ひとつ要望しておきたいと思います。  なお、公害罪についてひとつ具体的なことをお伺いしたいのですが、公害罪でいろいろ法律に書いてありますが、私はこの公害罪をいざという場合に警戒警報として、われわれの問題意識をひとつ投げかけるという意味からも、あるいは法の適用、運用の問題の面から見ても大事なことは、公害についてそれぞれの会社にある全責任を持っていく人をきめなけりゃだめだと思うのですね。だれが公害について責任を持つのかわからないように、ただ会社だから社長に、工場だから工場長にということだけでは問題がはっきりしない。ちょうど新聞社においては編集長というのが編集について最高の責任を持っておる。これと同じように、各会社においては会社ごとに公害についての責任者、統括責任者というものを置かなければならぬと私は思うのです。これを置かなければ、ただ、刑法のなぎなたみたいなものを振り回してみたところで、なかなかこれはむずかしい。そういう意味で問題意識を投げかけて、各会社ごとに公害罪の問題もあるし、われわれは責任をもって公害に取り組まなければならぬということを責任をもってやる、いわゆる責任大臣を置かなければならぬ、こういうことであります。産業構造審議会におきましては、各業界の方々も入れてこの問題を検討しておられるというふうに承っておるのですけれども、その必要をだいぶ痛感しておるように承っておりますが、これはもしその答申が出てきた場合には、当然その答申を尊重すべきものであると思いますが、いかがでございますか。
  148. 小林武治

    小林国務大臣 私は、ただいま公害罪法について御理解をいただいてたいへんありがたく思いまするが、要するに公害罪というのはお話のとおりこれは結果に対する評価にすぎない。したがって公害を防ぐためには、各省関係行政施策が総合的に十分に実施されなければならない、こういうことでございまして、公害罪法が前面に押し出されるようなことは、企業者として恥ずべきことであるということを、私はここに申し上げたいと思うのであります。ただいまお話しのように公害の問題につきましても各会社、工場等において管理者を置くべきだ、こういうことはやはり一つの考え方であり、これは私は政府全体の問題としてこれに対処いたしていきたい、かように考えております。
  149. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 管理体制というようなものを整える必要があるのではないかと考えましたので、産業構造審議会の特別の部会でいま諮問をして御研究を願っております。おそらくもう今月うちに中間答申が出ると思いますので、私としてはできるだけその答申の線に沿って施策をしていきたいと考えております。  ただ、一言申し上げさせていただきますと、私どもはそういう意味公害管理についてのいろいろ専門的な知識あるいはその体制を整えていきたいと思っておるわけでございますが、例の法律の両罰規定が働くのは、おそらくはその作為または不作為について責任のあった人ということになるのでございましょうから、すぐそれが公害体制の管理者であるかいなか、それはまた場合によって違うであろうと私は思っております。
  150. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 ちょっと横から時間をとって恐縮でございますが、先ほど廃油処理場の問題の御質問がありましたが、あの海洋汚染防止法をつくる際には、廃油処理場の処理能力等を十分に調べてあります。現在全国三十四港のうち五十五カ所を四十八年までに完成する。現在できておりますのが十四港で二十一カ所できております。その能力はこれは十分に処理し得るという前提に立って、あの法案をつくったのであります。今後とももちろんこれは情勢に応じて港湾管理者に対しては強力なる指導によって、十分なる措置をしてまいりたい、かように考えております。
  151. 竹本孫一

    ○竹本委員 ただいまの大臣の御答弁でございますけれども、私が言ったのは、特に数字の問題は別といたしまして、義務づけるかどうかということにポイントがあったわけでございますから、御理解をいただきたいと思います。  なお、時間がありませんが、この公害罪の問題について法務大臣に伺いたいのですけれども、これは大体、たれ流しをやっておるのは中小企業が多い。しかもこれの対策を講ずる場合にも、資金面その他やはり中小企業は非常な困難におちいっておる。こういう点を考えますと、へたなことをすると、この公害罪の適用を受けて処罰をされる者は中小企業の親方が多くなりはしないか。中小企業いじめになっては、われわれの考えるところと大いに違ってまいりますが、その点についてはいかなる配慮を行なわれるつもりでありますか、承っておきます。
  152. 小林武治

    小林国務大臣 法律自体の実施は厳正公平にやる、そういうことになりますが、その前提といたしまして公害防止の施設をする、こういうことにつきましては中小企業は相当困難があろう、したがってそういう事態の生じないように、政府全体として税金なりあるいは融資なり、これらによってそういう防止施設を先行させる、こういうことをぜひ政府にも考えてもらいたい、私はかように思っております。
  153. 竹本孫一

    ○竹本委員 さらにもう一つ。この公害罪にもひっかからないようにしよう。公害処理施設も十分につくっていこうということになりますと、それが相当なコストがかかる。  そこで、物価の問題について一言お伺いをするわけでありますが、三月二十日の予算委員会において、私は、このままでいけば、げたが相当大きいのだから物価は四・八%や何かではとどまりません。六%にも七%にもなるでしょうということを、速記録をごらんいただけばいいが、ちゃんと指摘いたしました。さらに、そのためには経済企画庁の権限は弱過ぎる、これはむしろ強くする必要があるのではないかということも申し上げましたけれども総理経済企画庁長官も、いまの制度をうまく運用しながら一生懸命やってみますという答弁でございました。しかしそれは不可能であるということを私は指摘をいたしましたけれども、結果は御承知のように、先月あたりは八・六%も上がった。この問題は論ずる時間がありませんが、この公害関係コストがかさんだものをそのまま物価に転嫁することがあってはならぬと思いますが、物価大臣からその責任のある答弁をいただきたい。
  154. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 竹本さんが御指摘のように、公害の投資費用が増大したという理由だけで、それを直ちに価格に転嫁する、こういうことはもってのほかであると思います。当然のことでありますけれども、これはコストには違いございません。しかし、物価が上がるからといって、公害防止を怠るわけにはまいりません。公害防止が何よりも優先する。その結果としての投資は、これは当然コストの一部となります。しかし、これは、他のコストと同じように、このコスト全体と価格との関係は、企業の努力あるいは技術の革新、各方面から検討いたしまして、そうして、極力、これが転嫁にならないように行なっていかなければならない、これが経営態度であると思います。
  155. 竹本孫一

    ○竹本委員 以上で終わります。
  156. 加藤清二

    加藤委員長 午後六時五十分再開することとし、暫時休憩いたします。     午後六時十一分休憩      ————◇—————     午後六時五十六分開議
  157. 加藤清二

    加藤委員長 休憩前に引き続き連合審査会を開きます。  質疑を続行いたします。向山一人君。
  158. 向山一人

    ○向山委員 私は、自由民主党を代表しまして、今回提案になりました一連の公害関係法案につきまして、若干の質問を行ないたいと思います。  わが国公害に関する法律を見ますと、昔は鉱山等の鉱害が起きますと、それに対して局部的な立法を行なってきたわけでございますけれども昭和四十二年に現在の公害対策基本法が成立施行されましてから、従来の観念を破りまして、公害に対する抜本的な法律が施行されたわけでございます。その後今日まで三年有余を経ているわけでございますけれども、この法律に盛られた公害防止が、いろいろなきわめて困難な、基礎的な資料を必要とするわけでございまして、さような意味もございまして、今日の段階を見たときに、日本経済がきわめて急速な成長を年々行なってきた。一方においては、三年前に公害対策基本法ができたけれども、これに対する基本的な調査等を行政面ではやらなければならないので、なかなか、表面上見ますとはかばかしい対策が講じられなかったように実は考えるわけでございます。  そこで私は、今日のような、こうした全国的な大きな公害が起きている状態におきまして、過去を振り返ってみますと、せっかくの公害基本法ができたけれども、実はわが国行政が、公害に対してばらばらな形になっておった。また一つには、行政面の意欲的な指導が欠けていたんではないか、こういうようなことが今日大きな公害の問題になっているように思われる節があるわけでございます。これに対しまして、本日は総理がおりませんので、公害担当大臣として山中大臣にお伺いをいたしたいと思います。
  159. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ただいまの御意見は、私どもも謙虚にそのとおりであると考えております。したがって、後手後手に回ってまいった感じ、あるいはばらばら行政のそしりを受けないよう、さしあたり、閉会中でございましたけれども総理を長とする対策本部を設け、そして総理指名による公害担当大臣を設置することによりまして、来年度予算編成の問題ももちろんのこと、緊急措置その他等について適時適切に、各取り締まり法規を所管いたしております各省庁の連絡、調整、あっせん等をはかりまして、その結果、今国会に現在提出済みが十四の法案であり、与党との調整が終われば、さらに悪臭防止法を提出いたしますことの最終的な合意をいただいた場合においては、十五の法案提出できるということにこぎつけましたのは、やはり総理を長とする対策本部の——各省庁のばらばら行政といわれておりました感じの、いわば裏返しに申しますと権限を、なわ張りをめぐってのいろいろな障害というものが、対策本部の手によって一応の調整がなされたということの証明にもなるかと思いますが、しかしながら、われわれはさらに、三年前にできたばかりの基本法をこの際基本的に改正しなければならなかった理由を一そう反省をいたしまして、今回われわれのでき得る限りの基本法を改正いたしました分、その基本的な姿勢並びに具体的な各条項等を受けて、各法律の補完をいたしてまいらなければならぬと考える次第でございます。
  160. 向山一人

    ○向山委員 本日の状況を見ますと、公害に対しては国民的な世論の盛り上がりを来たしております。それほどに今日日本におきましては、この公害の防止が大きな問題になっているわけでございます。ただいま担当大臣のほうから、そうした事態に対処するために現在十四本の公害法案提案になり、またさらに悪臭防止法等を追加されるというふうなことで、まことに私は時宜に適したことだと考えるわけでございます。  そこで私は、この今日の日本におきまして、公害問題をひとり政府がやるとか、あるいはまた事業者がこれに対して取っ組むとかいうような程度では、この公害問題はなかなか解決しないだろうと思います。御承知のように、産業公害が約七〇%、その他一般の公害が三〇%程度のようでございますけれども、しかし、今後新しい公害がさらにいろいろと加わってくる今日の状況におきまして、私はこの公害問題は——ちょうどかつて労働省が、労働基準法等におきまして安全運動を提唱して、長年この職場における運動を続けているわけでございますが、この公害問題につきましては、私は、ほんとうに全国民を含めた国民的な運動を行なっていく。たとえば、年々公害防止月間くらいのものは設けて、そうして何といたしましても公害に対する、事業者はもちろんのこと、国民の認識と、それからこれに対する理解をもとにして対策を講じなければ、ただ単に国会で法律をつくっても、一般国民がこれを理解して協力するという段階には相当な時間がかかると思うのです。しかも私は、今度の国会に提案されておりますところの公害対策基本法の中心であるいわゆる環境基準の問題、あるいは排出基準の問題等を考えてみると、この法律にあるような望ましい基準をつくるということ、しかもその基準がほんとうに科学的な判断によらなければならないということを考えてみますと、これはもう並みたいていのことではないように考えます。そういう意味合いにおきまして、今日これだけ大きな問題になり、また、これからますますほうっておけば広がるであろうこの公害と取っ組むには、国民的な運動を行なう必要があると思いますけれども、担当大臣としての山中大臣の御所見を承りたいと思います。
  161. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ただいまの御意見、結論的に申しますとそのような必要を痛感をいたしますが、やはり基本法の理念で明らかなように、企業というものがあり、事業場が存在して初めて公害が起こるという因果関係を考えますときに、総理の言われた、地域住民に対するよき隣人であるべき企業、あるいは私が使うことばとしては、反社会的な企業の存立を許されなくなった環境というものを、よく企業者というものが思いを新たにして、企業の存立というものについての社会的な責任を自覚していかなければならぬと考えます。  一方また、先般の質疑応答等の中にも一部ありましたように、国民全部の問題としてとらえなければならない問題である問題等もやはり提起をされておりますから、今回の清掃法等の抜本改正等においては、廃棄物である、すなわち一般の生活環境から廃棄されるもの、あるいはレジャーその他によって一定の地域に特定の集積がなされるもの等について、その市町村だけの責任で処理できないようなものは、広域的な処理をするような道を開く等の措置も講ぜざるを得ないような背景があることは、事実だと思うのであります。ハンドルを握っている者は、自分は被害者であるという意識はあっても、その排気ガスが累積した場合に加害者の一人となっておることについての自覚があるかどうかについて疑問であるというのが、今日の国民状態であると考えます。  したがって、私たちは責任を回避するものでなく、政府は、あくまでも責任をみずからの責任として受けとめながらも、これを全国民的な同感と共感と、そうしてお互いがそれに向かって邁進する社会連帯感の結成のために、いろいろの、ただいま御提示になりましたような公害防止月間等も一つの試みでありましょうが、政府広報等を通ずる手段等も念頭に置きながら、全国民的な受けとめ方をしていくことは、この問題の基礎条件であろうと考える次第でございます。
  162. 向山一人

    ○向山委員 先ほども申し上げましたように、いろいろ今日公害が多くなっている状態におきましては、まず産業公害においては、事業者が公害を出さないことがもちろん先決でございまして、公害源を断ち切るという考え方に立って進めるのは当然でございますけれども、いかんせん従来の形を見ますと、この公害に対する認識といいますか、当然公害を怠ろうという気持ちではないけれども、むしろ公害とは何ぞやというようなことから入らなければなかなかわからなかったのが、実は実情でございます。数からいきますと、日本の産業のまあ九七%は中小企業といわれているほど、数においては多いわけでございますが、今日公害の問題が大きくなってまいりますと、初めて目ざめて、この公害問題とほんとうに取っ組んで進んでいこうという意欲が出ているわけでございまして、決して事業者が公害を出して、そうして国民の生命、健康を犠牲にして、それを等閑に付すというふうなことは私はないと考えます。今後この産業面におきましては、公害のむずかしい問題と取っ組みながら、しかも一方においては国民生活の向上をはかるために、さらに経済の成長に努力していかなければならないのが今日の状況かと考えるわけでございます。  そこで私は、先ほど申し上げましたように、まず公害の源を断つというような考え方から立ちまして、公害対策基本法にございます九条あるいは十条等の大気汚染、あるいは水質汚濁土壌汚染、騒音等に関する各種の基準をつくるために、どうしてもほんとうに権威のあるりっぱな研究機関が必要である、こう考えるわけでございます。昨日山中担当大臣は国会におきまして、公害研究所の設立をしていきたいという意味の御答弁がございました。この国立の公害研究所等が設けられて、ほんとうに基礎的なデータからいろいろな資料がそろってこないと、実際にはこの公害の源を断つ、しかもまた、これに関連する公害罪に影響があるわけでございますので、こういう重大な問題については、国立公害研究所等がほんとうにしっかりしたデータを出し、これに対処していかなければならないと思いますが、明年度の予算にこの国立公害研究所の予算を計上される御意思なのか、あるいはどういう程度の規模のものをお考えになっているのか、その点についての御所見を承りたいと思います。
  163. 山中貞則

    ○山中国務大臣 現在の段階では、関係閣僚協の結論としてきまっておりますのは、公害データバンクの設置ということだけでございます。これは現在、各省のそれぞれの研究所、試験所あるいは科学技術庁の情報センター等における各種の内外の資料等が、それぞれの役所の範囲内にのみ循環をしておる可能性が強いわけでありまして、やはり国が、政府として一体でなければなりませんから、厚生省の研究したデータも直ちに通産省は受け取り、通産省の開発した技術も直ちに厚生省に伝えられるというように、有機的なものでなければなりませんが、それを目ざす第一としては、まずそれぞれの中で滞留して、循環しておるデータを政府が一本で拾い上げまして、それを集めて、さらにそれぞれの各省庁の研究機関に流していく、また政府の手元に届いていない、国立大学の研究所なりあるいは民間企業内の研究施設等の資料等についても、それを公害データバンクに受けとめて、国際的な交流の場合等の参考にも資するように、またその成果を公表して、広く世間の公害防止のための活用に技術が供せられるように、というようなことを念頭に置いているわけでございます。  しかしながら、総理はまだ結論を出しておられませんが、そのままでよろしいかどうか、研究所だけであっても、国立公害研究所みたいなものを考えてみろということでございますので、私の手元で、いまそのあり方について作業をいたしておりますけれども、まだその結論は総理から御下命がないという次第であります。したがって、来年の三千五百六十三億の予算の要求の中には、それは入っていないということでございます。
  164. 向山一人

    ○向山委員 四十二年に公害対策基本法が施行されましてから、調査をいたしてみますと、環境基準については、四十四年の二月に硫黄酸化物の環境基準ができております。それから四十五年の二月に一酸化炭素の環境基準がまとまっている。本年の四月に水質汚濁の環境基準ができております。三年間たちまして、今日この三つの環境基準ができておりますが、これらはどちらかというと、いずれも比較的従来から資料が整っているものだと思います。それでさえ三年間にこの三本だけ、環境基準がまとまっているわけでございまして、これに対しまして、騒音の問題や大気汚染の中の粉じんの問題等が現在いろいろやられているようでございますが、窒素酸化物等からその他もろもろのものを、これから環境基準をきめなければならないので、これはなかなか容易のことではないと私は思います。こういう問題について一応今後どんな計画で、いつごろまでにお進めになるような計画でおられるか、その点についての御所見をお伺いいたしたいと思います。
  165. 山中貞則

    ○山中国務大臣 現時点における機構の中では、それぞれの関係省庁が持っておりまする法律に基づいて設定しなければならない環境基準についての義務を、それぞれの研究所等の研究成果を得て果たしていくことになっておるわけでありますけれども、先ほど御指摘のありました国立公害研究所等が発足をいたしますれば、当然これが一本になって、あるべき国の基準の姿勢というものが、各省庁間にばらばらでなく設定をされることになりましょうから、現在でも連絡を一応とっておるとしても、やはりより望ましい姿が実現するのではないかと考えます。したがって、それらの目的遂行のためにも、そういう国立公害研究所等が来年度予算等において実現できるように、さらに総理とも相談をしてまいるつもりでございます。
  166. 向山一人

    ○向山委員 次に、公害対策基本法の第十条の排出に関する規制の点でお伺いをいたしますけれども、これは経済企画庁のほうへお伺いをいたしたいと思います。  最近、工場の排出基準を各水系ごとに地域を指定して進めておられるようでございますし、またその地域内の産業別に基準をおきめになられているようでございます。もちろん、御承知のように、それぞれの地域によって相当に基準が違うわけでございますし、また産業によって特定有害物質は非常に違ってくるわけでございますので、当然そうした形を進めなければなりませんけれども、これらの形は中央で直接進めるものと、あるいは地方によって都道府県等が進める場合等とがあると思いますけれども、これらの各水系に対しますところの指定地域内の工場排出基準、こういうものは今後どんな形で進めていかれるか、またいつごろまとまるのか、その点についてひとつ御答弁お願いいたしたいと思います。
  167. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 環境基準、排水基準のことでございますが、御存じのように、今日までは経済企画庁におきまして、審議会等の議を経てきめておりました。ところが、今回提案しております法律におきましては、御存じのように、まずシビルミニマムということで一律の基準を設けます。もちろんこれは健康に関する項目と環境の保全に関する項目、二口に大きく分かれております。そうしてこのシビルミニマムを越える分について、環境の保全に関しましては、その地域実情に応じまして知事がこれに上のせ基準を設けることができる、こういうふうに大きく体制を変えました。結局このことは、従来はいわゆる一定の地域を指定いたしまして、その地域指定制度を前提にしてやっておったわけでありますが、今般は、もうそういうことでは間に合わない、全国の地域を同時に対象にする、こう大きく考え方を変えた結果でございます。  そこで、各知事といたしましては、その流域の状況に応じて最も適当と思われるところの基準を設ける。なお経済企画庁は、率直に申しまして、まだ地方においては、技術的な準備その他も必ずしも万全でない点もございますから、そういう点についてできるだけ中央政府として応援をしてまいる、こういうことになっております。
  168. 向山一人

    ○向山委員 今回提案されました水質汚濁防止法案は、通過いたしましても六カ月以内に施行されるわけでございますので、当然それを踏まえて、従来の水質保全法等に基づいてデーターができていなければ、また法律が施行されましても、これらに対する問題がたいへん時間がかかるように実は考えますので、従来の水質保全法等を中心にしてこの基準は相当進めていかないと、いまの公害と本格的に取っ組むことがなかなかできないように思います。私は、わが国の山間部等で、ほんとうにきれいな水の中で生活をしてきたわけですが、今日はもう、ちょっと大きな川になると非常に汚濁が激しくて、どうにもならない重大な公害になっているだけに、この問題については、現在ある法律の中ででも早急にひとつ基準を進めていただきたいと考えるわけでございます。  時間がだんだん少なくなったので次に移らしていただきますが、次に、今回提案されました土壌汚染の関係について、農林大臣にお伺いをいたします。  いろいろ問題になっております土壌の汚染によりまして、今回土壌汚染防止法が御提案になりました。これを見ますと、とりあえずはカドミウムだけが規制されております。このカドミウムにつきましても、イタイイタイ病とか、あるいはまた水銀の水俣病とかいうふうな病気が出ておりますから、これに対して早急に対処することは当然でございますが、人間の健康と土壌の汚染の関係を見ますと、カドミウムだけでなくて、ほかの物質も、現在危険を及ぼすような物質があるのではないか、こんなふうに考えますけれども、その辺についての御所見を承りたいと思います。
  169. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農林省では、従来から農用地土壌を対象に組織的な土壌調査を実施いたしておりますので、今後は、この結果をもとに土壌の汚染状況につきましての全国的な調査を行なうとともに、汚染の程度が高い地域につきましては、より精密な検査をいたしてまいるつもりでございます。この場合の土壌中の特定有害物質の分析方法につきましては、有害物質の種類に応じて最も適当と思われる方法を定めて、これによって統一的にやってまいるわけでありますが、ただいまお話しのように、今般はとりあえずカドミウムについての規制をいたしますが、さらに引き続いて、お話しのように、銅、亜鉛、鉛、砒素等につきましても、それぞれ検討を続けまして、必要がございますれば、さらにそういうものも指定してまいりたい、こう思っておるわけであります。
  170. 向山一人

    ○向山委員 今回、一連の公害防止法案とともに公害罪の法案提案されているわけでございますので、これにいろいろと関連が出てくるわけでございますが、今後、大気汚染防止法の基準内であり、また工場から出る排出基準も基準内でありましても、もうすでに相当に土壌が汚染されていると考えなければならない。この全般的な土壌が汚染されている中で、大気汚染防止法あるいは水質汚濁法の排出基準の中に入っていても、従来相当土壌が汚染されているために、いろいろと健康に害のある事態が発生するんではないかというような心配が、実は非常に残るわけでございますけれども、特定有害物質を使っているような工場、あるいはまた、そうしたものが生産過程の中で出るような工場地域については、あらかじめいわば土壌汚染地図とでもいいますか、各地域地域土壌の汚染の程度をお調べになって、それから出発されるのか、あくまでこれから発生するものについてやっていって、そうしてその調査時期に基準内にあれば、健康に実際の危害があっても、その場合は公害罪に問わないのか、その辺について、農林大臣並びに法務大臣にお伺いをいたしたいと思います。
  171. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 このことは、先ほどどなたかの御質問にもお答えいたしたと思いますが、ただいま指定いたしましたものはカドミウムだけでございますので、それにつきましてはもちろん全般に適用されるわけでありますが、他のものが、いま申し上げましたように、さらに検討の上指定されますというと、それもやはり同様な結果になることであると思います。
  172. 小林武治

    小林国務大臣 これは非常にやっかいなことでございます。したがって、刑事局長からひとつお答えいたすようにいたします。
  173. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 ただいまの御設例の場合でございますが、かりにこの公害罪法が施行される前から土壌が相当汚染しておった、そこへ施行後にたとえば汚染行為をやった、そういう場合にはどうかという御質問であろうと理解するわけでございます。  その点につきましては、もとより申すまでもなく、この公害罪にかかるという行為は施行後の排出行為によるわけでございます。具体的事例によっていろいろ違うと思いますが、すでに施行時にもう相当程度汚染をされておる、その上にちょっとだけ汚染行為をした、そうして、そのちょっとだけ汚染行為をしたというものに全部の汚染行為の刑事責任を負わすということは、とうてい考えられないわけでございますから、すでにそういう蓄積状況のある場合には、わずかな量で全部の責任を負わせないという意味において適用の対象にならないことが大部分であろうと思います。
  174. 向山一人

    ○向山委員 環境基準について、関連質問を林義郎先生に与えていただきたいと思います。
  175. 加藤清二

    加藤委員長 関連の申し出がありますので、これを許します。林義郎君。
  176. 林義郎

    ○林(義)委員 ただいま向山先生からのお話でございますけれども、私は、公害対策のまさに中心になるのは、環境基準の問題、また排出基準、排水基準というのがございますが、こういったのが一番の問題になる中心点だろうと思うのです。これについて政府がどういうふうな考え方でやるかというのが、一番の大きな問題ではないかと私は考えております。  法律の形としましては、いろいろ考えてみました。私も考えてみたのですが、現在の政府提案のように、閣議決定や総理府令云々というようなかっこうに、政省令に譲っておられるというかっこうでございますが、法律の形としては、どうもこれよりほかにしょうがないと思います。しかしながら、政治的には、私は環境基準をつくる、この点についてはっきりした考え方をするのが一番大切なことだろうと考えております。まさにこの基準というものは、国民的な合意のもとにおいてやられなければならないものであるからであります。特に法律目的が改正されまして、従来のものと変わった点がございます。当然でございますが、国民の健康を守るという点と生活環境を守るという二つの点の、後者の点について大きな改正がございます。したがって、環境基準、環境保全につきましても、これをどういうふうな形で環境保全の基準をつくっていくか、基本的な考え方を聞かしていただきたいと思うのでございます。  これは具体的に申しましても、私の地元で、洞海湾からいろいろな汚水が流れてくる。だんだん魚がとれなくなってくる、こういった問題があります。それから瀬戸内海でも、だんだんだんだん漁業がやっていけなくなってくる。工場廃液が原因ではないかというようなことがいろいろいわれております。私はこの公害環境基準、その他排水基準、排出基準の具体的な基準をどうするかということの前に、基本的な考えとして政府がどういうふうに考えておられるかということをお尋ねしたい。  これはいわゆる生態学的な見地からいたしますと、人類はこのままでいったら滅亡するだろう、あるいは原始的な生活に返らなくちゃいかぬだろう、こういう考え方も極論としてあるようでございますが、私は、やはり現代の体制におきましては、技術の進歩、医学の進歩等があれば、そんなことはやらなくてよろしい。科学的に公害の実態を見きわめて、そして公害絶滅のための技術開発というものに体制をつくっていけば、私は十分できることだと思うのです。一体こういった点におきまして——先ほど厚生大臣から御答弁がありました。まだ科学的な研究が十分進んでないから、絶対的な基準というものをはっきりするわけにはなかなかいかない、基準としては、疑わしきは罰せずという考えではないことは考えておるのだ、こういうふうな御答弁があったようでございますけれども、私はむしろ環境基準であるとか排出基準、排水基準というものにつきましては、やはり先ほど来申しましたような、ナショナルミニマムとしての定められた、国民各層が広く納得するようなものでなくちゃならない。法律の形としては政省令にゆだねておられる。しかしながら、それは行政庁の行政官僚の手にまかせておいたのではいけないと思うのです。やはり広く国民各層の納得のいくような基準でなくちゃいけない、私はこれは大前提だと思います。したがって、政府としては、単にこの法律を制定したらそれで終わりということではないのです。私は医学的な問題についても、またそのほかの観点からして、いろいろな点をはっきり国民に明らかにしていかなくちゃいけない。こういった基準をつくったならば、これは医学的にはどういう影響があるのだ、また、こういった環境基準をつくれば、こういったような魚に対して影響がある。また、いろいろなプランクトンだとかなんとかいろんな影響があるということをはっきり言って、国民が納得するような基準というものをつくってもらわなくちゃいかぬと思うのです。まさに私はそういった意味ではっきりした基準というものを、数字の上でなくて、国民が納得するような平易な、いなかのおばあちゃんでも、おじいさんでもわかるようなものの考え方をしてやっていかなくちゃいかぬ。これは私は公害対策基本だと思うのです。そういった意味におきまして、基準をつくられる際に、従来〇・一PPMであるとかなんとかいう基準をつくっておられました。私は思いますけれども、ここであれですけれども、マッチをすります。このマッチの中から出るガスがどのくらいあるかということです。この第一委員室の部屋の中で、おそらく私の勘定したところでは〇・〇一PPMが若干下ではないかと思うのです。おそらくこの中で、マッチをすっておられる方がたくさんあります。そういったようなものだけで済んではいけない。こういった基準をつくったならば、お互いの健康はこうして守られるのだ。また、こうした基準がお互いの食糧なりまた漁業に対して、どういうふうな影響をもたらすのだということを、基準をつくると同時に、はっきり国民の中に周知をしていただきたい。私は、なかなか具体的な問題としてはむずかしい問題がたくさんあることは承知しておりますが、やはり政府としては、そういったことをはっきりと打ち出していただくことがぜひ必要ではないかと考えております。この辺についての山中総務長官の、あるいは厚生大臣でもけっこうでございますが、御所見を承りたいと思います。
  177. 内田常雄

    ○内田国務大臣 林さんよく御承知のように、今度の基本法、あるいはこれに関連する公害対策法の改正におきましては、公害対策というものを、従来のように人の健康の保護と生活環境の保全というようなことに区分することなしに、両方を含めて、人間のための正常な、最後の聖域を残せるようなことを目標として法律の改正をいたしました。したがって、環境基準のつくり方におきましても、従来は二本建ての考え方があり得たわけでありまして、人の健康を保護するための環境基準は厳密に、それから生活環境の保全を目的とする環境基準は、産業経済の健全な発展を害さないように、それとの調和のもとに、ややゆるくつくる場合もあり得る。また、むしろそうすべきであるというようなたてまえでありましたものを、そこも基本法の九条の第二項というものを削ってしまいましたので、これからの環境基準というものは人の健康を保護することを目標とするもの、いわば一本の見地からつくるべきだと私は考えております。  今日これまでにつくられました環境基準は、大気については硫黄酸化物、つまり亜硫酸ガス等の硫黄酸化物、あるいはまた自動車排気ガスでございますが、これらはいずれも人の健康を保護するために非常にシビアにつくってございますので、今度の法律改正に伴いましてこれを改正し直す必要はないわけでございます。水についてはややおもむきを異にするところもないわけではございませんが、これらについても御承知のように、おおむね人の健康と利水目的をたてまえとして最近つくられたものでございますので、おおむね私は変更の必要はなかろうかと思います。騒音等につきましても、今度の法律の改正によりまして騒音規制法の改正がございますので、私は環境基準を早くつくるべきだと考えまして、目下専門家の作業を急いでいただいておりますので、近く騒音の環境基準も出てまいります。  でございますので、環境基準の考え方については、私はいままでの考え方が間違っておったと思いませんし、いま林さんマッチをおすりになりましたが、そこから出る亜硫酸ガスその他のガスは、環境基準をそれによって害するような、そういう排出程度であるかどうかというより、むしろ排出基準に合うかどうかというような問題になると考えますので、環境基準を達成するために、排出基準につきましてはすでにことしに入りましてからもだんだんこれをきつくしぼり上げるような、そういう改正をいたしてきておりますので、今後も事態に即して、排出基準というものは、一日も早く環境基準が守られるようにこれを強くしていくような方向であるべきだと私は思います。  また、私が先ほどどなたかの御質問に対して申し上げましたのは、微量重金属でございますが、たとえば水銀とか、カドミウムとか、あるいはシアンとか、砒素とかいうような、いわゆる特定有害物質などでございますが、これは水につきましてもかなりシビアにつくってございます。しかし、一方に議論がありまして、そういうものはほんとうに人の健康に有害なのか、こういう議論がございますが、厚生省といたしましては、それがほんとうに有害かどうかにつきましては、まだ究明すべきところがカドミウムなどについてもあるといわれておりますけれども、しかし私は、一方においては環境基準はつくっておきながら、その有害性につきましてはさらに究明を進めてまいる、こういう両建てで厚生省として人の健康や生活環境を守る責任を果たしていきたい、こういうふうに考えるものであります。
  178. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 御存じのように、いままでと考え方を逆転したわけであります。結局いままでは、自然に流れておる河川というものに対して自由に捨てることができる、もしくは権利がある、こういう考え方を転換しまして、まず、おおよそ汚水を廃棄すること自体がいかんのだということであります。  まず、そういう規定を大前提に置きまして、しかしそれには全然基準がないと困るわけでありますから、そこでシビルミニマムをまず設ける。しかし、さらにそれだけでは現実に合わないという場合に、それに上のせして知事が適当なものをきめる。これは健康項目、環境保全の両方を通じての考え方でございます。そしてそれらを実際に決定いたしますにつきましては、いま御指摘がありましたけれども、各方面の知識経験者、関係方面の人々、これらの方々の意見を十分に取り入れなければならない。やはりそのことが先ほど話のあった皆さんを納得させる、こういうことになろうかと思います。そういう意味で、私のほうは水の関係だけですが、審議会等を設けまして、そうしてその議を通じて十分な審査を行なった上で決定をしてまいる、こういうふうな考え方でいます。
  179. 林義郎

    ○林(義)委員 私がお尋ねしましたのは、いまお答えがありました環境基準をどうつくるかということではない。むしろ、やはりこういった環境基準をつくったから、こういった環境基準であるならば国民の健康なりあるいは生活環境に対してはこういう影響があるのだ、またこういう影響がないのだというようなことを、わかりやすく一般の方々に訴えるようなものを出していただきたいということでございます。私は、環境基準をつくったから、またいろいろな学識経験者を入れたから、それでもって十分だということではないと思うのです。広く公害問題について、国民がほんとうにこういった形で満足のいく、また安心のいくような施策をとることがほんとうの政治だと思うのです。そういった意味におきまして、基準をこういうふうにつくったからよろしいということではなくて、この基準であれば必ずこうなるのだ、こういうことを政府としてはっきり言っていただくということをやっていただきたい、私はこういうお願いをしたいのでございます。  時間がだいぶたっておるようでございますので、私の要望にとどめまして、いずれ公害対策特別委員会のほうで私は質問をさせていただきたいと思います。
  180. 向山一人

    ○向山委員 それでは、最後に小林法務大臣にお伺いをいたします。  今回公害罪法を提案になられましたが、これは、いままでにカドミウムによるイタイイタイ病、あるいは水銀による水俣病等が、一応工場の排出する重金属によるということになったのでこの法案提案されたのか、あるいは政府が今回提案をされました一連の公害法案と同時に、わが国においてはこうした刑罰をもって罰しなければ、こうした公害に対する法律が効果をあげにくいというようなお考えになってこういう法案を御提案になられましたか。ごく簡単に、その辺の事情をお聞かせいただきたいと思います。
  181. 小林武治

    小林国務大臣 この法案は、いわば公害対策が完全に実施されれば、場合によったら不要になることが一番いいと、こういうふうに思いますが、要するに現在の状態においてはそんな理想な形が求められない、こういうことで、行政施策を補完し、あるいはその第二次的な作用を持つ法案として、要するに公害というものは刑事罰の対象になる犯罪だ、こういうことを宣言することによって、企業者あるいは事業場等が、自粛を、反省をすると同時に、この問題が、もう世間においてもこれは犯罪ですよと、こういう観念が定着することによって大きくひとつ公害の予防に役立てたい、こういうことでございます。したがいまして、私どもはこの法律が前面に出ることはむしろ不本意な問題であると、かように考えて、こういうことのないように、ひとつぜひ企業者もまた行政各庁も努力をしてもらいたい、かように考えております。
  182. 向山一人

    ○向山委員 ただいま法務大臣の御答弁のようにぜひ私もありたいものだ。いま私は、わが国においてこうした何本かの公害防止法案提案され、これと抱き合わせで刑罰をもって罰する、しかも厳罰をすれば公害がなくなるというような状態ではないと思います。もっと科学的に全国民の協力を得て、そうして全国民とともに官民一体になって取っ組んでこそ、はじめてこの効果があがると考えますので、どうかいま法務大臣の御答弁にありましたような姿を私は期待をいたします次第でございます。  時間がございませんので、以上をもって私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
  183. 加藤清二

    加藤委員長 次は、中谷鉄也君。
  184. 中谷鉄也

    ○中谷委員 社会党の委員として、法務大臣公害罪の問題について、冒頭一応整理をしてお尋ねをしておきたいと思います。  答弁がはなはだ動揺しておられるようでありますので、私のほうから次のような考え方を申し上げておきます。  要するに危険については、許された危険と許されない危険がある。そうして、そういうふうな危険の状態に達する、危険を生ずることについての可能性と蓋然性と必然性、こういうふうな考え方がこの場合必要だろうと思うわけです。  そこで、さっそく具体的な例についてお尋ねをいたしたい。たとえば、そうすると、大臣答弁のように、実害が生じなくても事前に検挙できるということであります。しかし、はたしてそうか。この点について、まず次のような設例を設けたい。すなわち、魚が汚染をしておる。そういう危険を生じている。その魚が、朝とられた。そうして昼の食ぜんに供せられた。すでにそういう場合に健康に害を生ずるというふうな点については、捜査というのはそんなに——内偵、いろんなことが要ります。そういうような場合については、結局、事前検挙ができるのだ、事前規制ができるのだといっても、現実の被害が生じなければこの法案法律として実効を発しない。これはもう法の実務の問題だと思う。  土壌汚染の問題について、同じく設例を設けたい。たとえば土壌が汚染される。そうして、そういうことが必ず農作物に被害を与える。そういう必然性がある。そういうことで、検挙をしても、それはもう朝その農作物をとった場合に、昼、食ぜんに供せられる。そういうふうなことで、結局、すでに事前検挙の実効を果たさない。こういう場合はあり得ることは、大臣認めざるを得ないと思うけれども、いかがでしょうか。
  185. 小林武治

    小林国務大臣 お答え申し上げますが、これらの問題は非常に専門的な問題、中谷さんは弁護士で非常な専門家でありますから、この点につきまして私は刑事局長にひとつ答弁をさせたいと思います。
  186. 中谷鉄也

    ○中谷委員 公害罪についての問題点は約十点ばかりあります。その問題についてきょうは私は詳細に論議をするつもりはありません。法務委員会でやりたいと思っている。大臣答弁をだから求めます。そういうふうな場合はあり得るということは、先ほど大臣の手元に資料をお渡ししました。ごらんをいただきたいと思います。ニューヨーク州刑法典、「あらゆる情況に鑑みて不合理である行為によって、相当数の人々の安全もしくは保健を危険に陥し入れる状態を」云々、このニューヨーク州法典は、少なくとも法務省内部においてつくられたところの原案と称するものよりもさらに蓋然性、事前検挙の法案であると私は思いますけれども大臣この程度は御答弁できるでしょう。御答弁をいただきたい。
  187. 小林武治

    小林国務大臣 これは、非常なむずかしい専門的な法律的な問題だから、おわかりになると思う、私がこれをお答えするのは適当でない、刑事局長答弁をいたさせます。
  188. 中谷鉄也

    ○中谷委員 もう一度お尋ねをいたしたい。要するに、大臣、じゃ蓋然性と必然性という概念はわかりますか。
  189. 小林武治

    小林国務大臣 わかります。
  190. 中谷鉄也

    ○中谷委員 刑事局長答弁願います。
  191. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 ただいま御設例の、魚が汚染されておった、その場合に、汚染された魚を食ぜんに供された、それで犯罪が成立するかというような御質疑のように思うのでございますが、そういうことは現実にはまずないと思うのでございますが、もう一度御明確にお願いいたしたいと思います。
  192. 中谷鉄也

    ○中谷委員 質問は明確なんです。要するに、私が言っているのは、法律というのは現にある法律がどのように動くかという問題なんですから、捜査がどういうプロセスをたどるかということを問題にしなければ公害罪が実効を発するかどうかということはあり得ない。だから、実害を生じなくても事前検挙ができるのですよといっても、要するに、「おそれ」を取ったということになってくると、実際の検挙は実害を生じたときになるでしょう、こういう質問なんです。
  193. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 必ずしもそういう場合だけに限るわけではないと思うのでございます。すなわち多くの場合には、多少発病者が出たというような状況から、それでは魚が汚染されておるのじゃなかろうかというようなことで捜査が行なわれるということが多かろうとは思います。しかしながら、必ずしも発病という状況ではなくて、やはり何らか人間のほうも汚染されておるのじゃなかろうかというようなことから、科学的に魚の汚染状況を調べて、この犯罪の捜査をするということも大いにあり得ると思うのでございます。
  194. 中谷鉄也

    ○中谷委員 局長はこういうふうに言われました。実際のこの法律の場合は、人間の健康が害されている。そういう状態があって、そうして逆にこの法律をある状態のところから適用していくということが大部分の場合だろうということになっている。しかし、そういうふうなことは、法務省や総理が何べんも言っている事前検挙、予防主義という公害基本的な問題に反するわけなんです。だから、事前に検挙できますよといっても、別の例でいえば、どろぼうがドアに手をかけた、その段階で検挙したといっても、一一〇番にかけるひまはありませんよ。そうでしょう。そういうふうなことじゃ、結局どろぼうが中に入ってきてしまうということであるのではないのか。要するに、だから、結局蓋然性の段階においてこの法律を実効あらしめなければ実際捜査のプロセスにおいては、必然性の段階において捜査に着手されるでしょう。そうでなければおかしいじゃないですか。予防主義の原則というものを、この際徹底しようじゃありませんか。そういうことを聞いているのです。
  195. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 ただいま申し上げましたのは、具体的な、発病なら発病というものが起きてから逆に犯罪の捜査が開始される場合ももちろんございますけれども、必ずしもそれに限ったわけではないと思うのでございます。たとえばある地方で、一つの工場から一つの災害が出た、公害が出ておるというような場合に、同種の工場においてそういうものの公害が出ておるかどうかというようなことも、当然調べられる場合が基礎の調査としてはあり得ると思うのでございます。必ずしも結果の発生を待って、その場合に限って捜査が行なわれるというものではないと私は存ずるのでございます。
  196. 中谷鉄也

    ○中谷委員 じゃ、大臣にもう一度整理をしてお答えをいただきたい。  いわゆる法務省原案なるものを修正をして政府案なるものに、移行したところの合理的な根拠は一体何なのか。要するに蓋然性から必然性、実害は生じなくてもいいというけれども、その実害にきわめて近接したような状態にまでこの法案を持っていった合理的な根拠は一体何か、それはどういうことなんですか、大臣
  197. 小林武治

    小林国務大臣 これは要するに実害の生じない前段において犯罪としてとらえるようになればそれでよろしい、こういうことで、けさから水俣病の貝や魚の話がありましたが、貝や魚が汚染しただけで、これを食べるというふうな段階にいかない前にできる。要するに危険が、要するにあなたの言うような必然性、あるいは蓋然性ですか、こういうものがあればいいんだ、こういう考え方からしてやったのであります。
  198. 中谷鉄也

    ○中谷委員 そうじゃないんです。蓋然性で押えなければだめなんですよ。事前検挙だといっても、もう目の前にそういう危険がきているときでは事前検挙にはなりませんよ、それは事前検挙の意味を達しませんよ、ということを言っているんです。だから、そういうふうにいわゆる法務省原案を政府原案というものに変えた、法案に変えた合理的な根拠は——事前検挙、事前検挙とおっしゃるけれども、事前検挙の実効を発しないじゃないですか、こういうことを聞いているんです。質問意味はわかっていただいているんでしょうね。
  199. 小林武治

    小林国務大臣 これはもうあなたがおっしゃるのはほんとうの法律論、何もわれわれしろうと、あるいは大臣立場においてお答えすることが適当かどうか。これは実際の訴訟問題、あるいは検挙の問題、こういうことだから私は申し上げているんです。
  200. 中谷鉄也

    ○中谷委員 じゃ、私はひとつ山中さんに、見解と申しますか所感を一ぺんお聞きしたい。  しろうとだからわからぬ、——これは国民の健康と生命を守るための話をしているんですよ。わからぬ、——何もむずかしい話をしているんじゃない。事前検挙、事前検挙というけれども、その点、法律的な論理的な事前検挙では実効を発しないじゃないかと言っている。私は、とにかく一生懸命大臣答弁を求めている。わしは知らぬ、わしは知らぬ、これじゃお話になりませんよ。こんなことじゃいかぬじゃないですか。一体どうですか、山中さん。
  201. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私の気持ちは、法務大臣のほうに法案の立案から過程、全部おまかせしてございますので、法務大臣を批判することはちょっと私としてはできませんが、蓋然性というのはそうなるかもしれない、必然性というのはそうなることが間違いないという意味において相当な開きがあろうということはわかります。
  202. 中谷鉄也

    ○中谷委員 実は、公害罪の問題については、問題点は十点ばかりある。しかし、社会党のほうから、公害罪についてはほかの委員がやるから私にあまり質問するなということだから、大臣法務委員会であらためてまたお目にかかります。そういうことで別の質問に移ります。  そこで、同じく添付いたしました資料を山中さんごらんをいただきたいと思いますが、排出基準そして環境基準、そういうふうなものについていろいろと法案の中で取りきめがある。ところが、すべて日本の企業については、公害たれ流し企業であっても全部届け出制でございますね。そこでスウェーデンの一九六九年環境保護法、仮の訳をしてまいりましたけれども公害企業については全部許可制になっている。一九一九年のフランス法においても許可制、一九六七年の西ドイツの法律においても公害企業については許可制。さて、きのう総理答弁によると、行政的な措置とか届け出があって、いろいろな改善命令が出せるのだからカバーできますよ、届け出であってもカバーできますよとおっしゃった。しかし、基本問題としてお尋ねいたしたい。届け出と許可とは、どちらが公害防止についての規制はきついですか。
  203. 山中貞則

    ○山中国務大臣 許可制のほうです。
  204. 中谷鉄也

    ○中谷委員 そうして、おそらく次のように御答弁をされるだろうと思うのですね。要するに、いろいろな届け出はあるけれども、いろいろなとにかく措置をしておる。だから、届け出についてもそれでまかなえるのだと言っている。実質的には届け出と許可とは変わらないのだとおっしゃりたいのだろうと思うのです。それなら本来公害は犯罪なんだ、公害は許さないという観点に立つなら、公害型企業については禁止条件を解除するという許可制をとること。これは排出基準や環境基準にさかのぼって何としてでも私はやはり公害防止姿勢を示すあり方だと思う。許可制というものが、きついにかかわらず認められない合理的な根拠いかん、こういう質問でございます。
  205. 山中貞則

    ○山中国務大臣 電気ガス事業等については、原則、御承知のとおり許可制でありますが、その他の一般の公害関連企業の場合には届け出制であって、あなたが答えるであろうと言われたとおり、一定の期間中に、それに対して改善その他の措置を命じて、それが実行されなければ実際上それを受理しないということになりますから、その効果は発揮できますが、しかし、許可制とは本質的に違うことは認めます。
  206. 中谷鉄也

    ○中谷委員 総理の本会議における答弁の中で、私は、これは外国の人が聞いて非常に問題にするだろうと思った点、要するに低賃金による輸出をいままでやっておった。日本は、今後公害を輸出しているのだ、それを総理世界に冠たる公害法案だとこういうようにおっしゃった。  じゃお尋ねをいたしますけれども、資料として大臣のお手元にお届けしたスウェーデン法一九六九年環境保護法、西ドイツ営業法十六条、フランス法、これらの法律と、届け出をもって足るとする日本大気、水質、その他そういうふうな法律と、どちらが公害防止について法的規制はきついですか。どちらが世界的な水準に達していますか。この点をお答えいただきたい。
  207. 山中貞則

    ○山中国務大臣 それは各国の事情によってそれぞれ違いますし、日本の場合においては——ことに公害に対する考え方が、日本以外の国は、公害の起こる前の環境というものを保全しなければならないという考え方で、たいへんその意味では原則的な姿勢をとっております。わが日本は、残念ながら現象として公害があらわれておりますために、基本法公害基本法であり、その他の規制法等も、公害防止に関する具体的な基準規制等をいたしております。そこらにおいて非常に大きな違いがございますが、具体的な内容をこまかに定めておる点については、日本法律において、私は諸外国に劣らない整備はなされておると思います。
  208. 中谷鉄也

    ○中谷委員 もう一度お尋ねします。  スウェーデン、フランス、西ドイツでは、日本が届け出をした場合にやるいろいろな措置は全部やっておる。それ以上のことをやっておる。しかも許可制になっている。そうでございますね。そういうことだとすると、許可制にすることが日本の法制上都合の悪い点があるのでしょうか。憲法問題として法制局長官お尋ねするまでもございませんね。要するに、公害対策基本法基本的な理念は、憲法二十九条の財産権と二十五条の生存権を対比させたという以上に、私はやはりいま一つの論点は、二十五条の生存権と、二十二条の職業選択の自由、営業の自由というものよりも、生存権のほうがまさるのだということを、私は公害対策基本に置かれねばならないと考える。これは当然だと思うんです。だとするならば、なぜ許可制がとれないのですか。許可制をとることは憲法違反でないということは、まずはっきりいたしております。なぜとれないのですか。とってはなぜいけないのですか。何か日本の法制上の問題があるのですか。この点です。
  209. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は、許可制がとれないとも言っておりませんし、また許可制をとってないことについて強弁しようとも思っておりませんが、現在の私たちの提出いたしておりまする法制の実行によって、その効果が期せられるものと思っております。しかしながら、それが期せられないということがわかりましたならば、改めるにはばかることがあってはなりませんので、それらの実質をとらえて、もっときびしい法律にしなければならないものは、ちゅうちょすることなく改めていくことで足りると思うのです。
  210. 中谷鉄也

    ○中谷委員 厚生大臣にひとつ御所見を承りたいと思います。  西ドイツの公害防止関係法律の考え方は次のとおりであります。要するに、新しい発生源の設置は、その発生源からの発散と、既存の発生源の発散との合計が、許容されるその量の限界数値をこえるときには認可されない、要するに環境基準というものは、政策目標でなくて、規制さるべきものとして考えられているわけでございますね。そういうようなものだという考え方、だとするならば、大気汚染あるいはその他におけるところの、政策目標として環境基準というものを考えている日本の考え方と、そういう法制と、それが規制さるべきものとして考えているところの西ドイツとは、一体どちらが公害防止について強い姿勢を示しているでしょうか。厚生大臣は経済の御専門家でありますから、私は次のように申し上げたいと思うのです。日本が西ドイツを抜いて、国民総生産で世界で二番目になった。私は、公害問題を勉強して、初めてそのわけがわかった。要するに、いろいろなファクターはあったでしょうけれども公害と低い賃金と、そうして物価高、そういうようなものが私はやはり柱になったと思う。環境基準一つをとってみても、政策目標と規制さるべきものということであれば、これは当然西ドイツのほうが公害に対するきつい姿勢を示していることになります。だから、私は何べんもお聞きしますけれども世界に冠たる公害立法なんというようなことは厚生大臣総理はおられませんけれども、こういうふうなことばは、私は外国に与える影響もよくないと思う。どういうふうに思われますか。
  211. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私は、現在厚生大臣でございますから、他の条件が影響なしとするならば、規制はぜひきつくしていただきたいと思います。したがって、いまのような、届け出を受けて、そうして届け出が排出規制を超過するような、そういうばい煙発生設備等を持つ場合には変更命令を出すといういまの制度よりも、それは初めから許可制にするということのほうがきついにきまっておりますが、ただ私が、いまおっしゃった経済の立場に返りますと、はたしてそういう統制経済のような形に戻ることが賢明かということについては、若干の疑いを持つものでございます。  それから、中谷さんにおことばを返してたいへん恐縮でございますが、環境基準というものは、排出基準と違いまして、いわばフットボールでいうとゴールでございます。そのゴールに到達するようにたまをける、その基準が、排出基準とか規制基準というようなものでございますので、環境基準を超過する企業というものは、そういう計算は実はできませんです。自動車でも、自動車の排出ガスを、自動車から出るときに規制するのは排出規制でございまして、これは、たとえば一〇%とか二〇%とかいう非常に高いものでございますが、それが空気中に拡散された場合の、その一酸化炭素の環境基準というものは、さらにずっと少ないというか、甘くなった、何PPMというような——一〇PPMとか、二〇PPMでございましたか、そういうことでございますし、煙突の場合も、煙突から出るところをわれわれは押えまして、そして、あまり出すと私どものゴールになっている目標を超過するようなことになってはたいへんだから、その、煙突から出るところ、あるいはもっと低いところでも、排出口がある場合には、排出口から出るところで排出規制というものをかけておる、こういう仕組みになっておりますことを、あわせて御承知いただきたいと思います。
  212. 中谷鉄也

    ○中谷委員 じゃ、たとえば許可制の問題についてもう少しお聞きをしたいと思います。  山中さんにお答えいただきたいと思いますけれども総理はおられないのですけれども世界に冠たる公害立法なんというようなことばは——私は、非常にざる法的な性格を持っている、また外国の公害立法に比べて、規制面においても低いものがあることを指摘せざるを得ない。そんな中で世界に冠たるなんというようなことは、私は、外国に与える影響もきわめてよくないと思う。むしろ、しかも、現在の公害の熾烈な状況、そんなものを認めると、私は、そういうふうな姿勢こそ、この法案について問題点を修正する点はあくまでも修正をしていくという姿勢の、そういう点にもつながっていくと思うのです。それだから、そういう点については、この法案が多くの問題点を残しているし、そういうものがあれば修正にやぶさかでない、世界に冠たるなんというようなことは、総理にかわって、私は、ひとつお取り消しをいただきたい。
  213. 山中貞則

    ○山中国務大臣 それは、総理によって総務長官の任命を受けました者として、できない行為でございますが、しかしながら私たちは、アメリカのラッセル・トレイン大統領の環境問題諮問委員長と日米会談をやりました際にも感じたのですけれども、アメリカも、ニクソン大統領が議会にはでに勧告をいたしておりますが、しかし、実際に議会を通過してきちんとされたものはまだあまりない。  たとえば海洋汚濁防止法等について運輸大臣が御説明になりましたけれども、やはりこれは日本は、次国会で批准をいたしますれば、アイスランドに次ぐ二番目の国になるでありましょうし、少なくとも、一切の海上における原則、油のみならず廃棄物まで規制をするという法律は、一応事前に私どもの説明をいたしましたところ、アメリカ側よりかはるかに進んでいる、自分たちも参考にしたい、というようなことも言っておりました。  しかしながら日本法律全体をながめてみて、やはりわれわれがいままで反省しなければならなかった点は、要所要所にやはり底の抜けたところがある。いわゆる穴があいている場所がある。これを徹底的にセメントで詰めるという作業を私はしてまいったつもりでございますが、しかしながら、なおかつ、これから実行いたしてまいりまして、足らざる点がありましたならば、これらの問題等については、逐次これをてん補していくことに謙虚でなければならぬと考えます。  たとえば海洋油濁防止法が世界でいまは一番進んでおると思いますが、しかしながら、御指摘が竹本君あたりからもございましたように、やはり将来は廃油処理施設の義務づけというようなところに持っていかなければ、その、原則として捨ててはならないといいながら、廃油処理施設のない港に航行する場合とか、その港内の航行の場合はその限りでないというようなことが一応抜け穴になるというような点は、早急にてん補していかなければならないところであると考えております。
  214. 中谷鉄也

    ○中谷委員 法務大臣に同じような御所見を承りたいんですけれども、やはり公害罪というものを、りっぱなものをつくるというのは基本だと思うのです。公害罪についても、ひとついろいろな、法務委員会にこれまた移っていきますが、そういう審議の中で、大臣、柔軟な態度、要するに、問題があれば修正をするという態度はお持ちいただきたいと思いますが、大臣の御所見を簡単に述べてください。
  215. 小林武治

    小林国務大臣 これは、私どもは、整備された法案とは思わない、したがって、私もこの席で、将来、この公害の実態あるいは運用等にもかんがみて、順次直す必要があろう、こういうふうに思うのです。いまのところ、この国会でどうこうというよりか、私は他日を期したい、こういうことを申し上げておるのです。
  216. 中谷鉄也

    ○中谷委員 まあ私は、大臣の、やっぱりそういう謙虚といいますか、非常に柔軟な御答弁をいただいたことと思います。  そこで、山中大臣に、これは御所管と少しはずれるのですけれども、水質それから大気汚染関係で、電気、ガスの適用除外、要するに都道府県知事については通知、そして要請、通知、こういうようになっておりますね。これは先ほど大臣おっしゃった公益事業、これは許可制になっていますよ。ほかに石油業法だとか、公衆浴場法、これはおかしいと思うのですよ。公衆浴場法を何で一体——まあ合理的な根拠があるのでしょうけれども、それならたれ流しの公害を何で許可制にしないかということを、時間があればもっと言いたかったのですけれども、それはそれとして、電気、ガスを適用除外した理由いかんという、最初はきわめて普通の質問をいたします。だから簡単にひとつ答えてください、質問が続きますから。
  217. 山中貞則

    ○山中国務大臣 通産大臣の御答弁が一番正確だろうと思いますが、しかしながら、ひとつ簡単に基礎的な、基本的な考え方を申しますと、電気、ガス等については都道府県等の県境を越える広域的な供給の義務を国が一義的に負わなければならないものである。すなわち住民という名の国民に対して、国が責任を持たなければやっていけないものであるということが一つ。  さらに、国際的にも、またさらに、日本の国内事情においても、低硫黄重油の確保というものが非常に全体を満足せしめるには不満足な状況にあるという、この二点であろうかと考えます。
  218. 中谷鉄也

    ○中谷委員 じゃあ整理をいたします。要請というのは一体法律的な拘束力はあるのでしょうか、一体何なんでしょうかという質問なんです。これは公益事業という名によって都道府県の持っているところの、直接住民に対して責任を持つ都道府県に対する、私はある意味では非常なべっ視だと思います。率直にそういうことばを使わしていただきます。公益事業だということと、また火力発電所などという最も公害型産業について、住民は一番関心を持っている。これについて何ら文句は言えないというのはおかしい。じゃあ、たとえばこんな考え方さえも許されないのでしょうか。大臣はこのように答弁をされました。供給義務を持っているんだと言われましたですね。そうすると、一時操業停止というのはかりに別としてでも、改善命令というのは操業停止ではございません。そんなことも要請にとどまるのでしょうか。そんなことでいいのでしょうかという問題。要するに、都道府県知事が電気、ガス等に対して持っている、適用除外以外の持っている権限の中身の問題として、これについてはひとつ権限を持たしてもいいじゃないかというものがあってしかるべきだというのが私の見解の一点。  いま一つは、要請ということばについての内容をお答えいただきたいと言いましたけれども、こんなものは大臣としても御答弁するのはつまらぬと私は思うのです。要請は要請ですよということになっちゃうと思う。たとえば通産大臣協議をするとか、都道府県知事の協議を要するとか、同意が要るとかいうことがあってしかるべきじゃないかと私は思う。この点いかがでしょうか。特に、この要請をさえもできない都道府県は一体どうなるでしょうか。公害は広域化している。隣接の都道府県は、法律上要請権もない。要請権なんという権利かどうか、はたして疑問ですけれども、そんなことを大臣、どのようにお考えになりますか。
  219. 山中貞則

    ○山中国務大臣 要請は、意見を申し述べることができるという段階に比べますと、要請された者は、それに対してとった措置なり何なりを、要請者に対してこたえなければならない義務を負いますから、やはり少し違うと思います。  さらに、改善命令の段階等においては知事に与えてはどうかという点でございますが、これらはやはり通産大臣の御見解にまちたいと思います。
  220. 中谷鉄也

    ○中谷委員 通産大臣の御見解ということで、私は、だから山中さん何もかもお答えになってくださいよということでおいでいただいておったんです。電気、ガスの適用除外理由という問題について、少なくともふしぎに思われませんか。要するに、協議だとか同意だとかいう、そういうことも、あらゆる場合、全部要請でとどまるという点については、何となしにおかしいとは思われませんか。どうでしょうか。
  221. 山中貞則

    ○山中国務大臣 法案をつくり上げますまでの過程において、私の姿勢は、経過を明らかにするわけにまいりませんが、あなたの御意見に近い考え方でおりましたけれども、しかし、最終的につくり上げたものについては責任を負わなければなりませんから、ただいまのあなたの御意見については甘受いたします。
  222. 中谷鉄也

    ○中谷委員 最後に、特許庁長官お尋ねをいたします。  日本の特許というのは、日本の企業努力というのは、いかにして生産性を上げるか、こういう点にあらゆる努力が集中されている。そうして、結局そのことが公害をまき散らしてきた。ですから、質問は簡単です。公害を発生するおそれある技術に対しては特許権を与えない、こういうふうなことが法律的に可能かどうか。  さらにまた、行政指導の問題として、これらの問題については、公害をまき散らすというふうな特許については、いかに生産性を上げるものであったとしても、慎重に特許庁としても特許審査をすべきである、こういうことでなければ、日本の企業努力というものが生産性だけに傾いているという現状を、特許行政の面においても是正するわけにいかないと思う。これは最後の質問ですから、ひとつすかっとした答弁をいただきたい。
  223. 佐々木学

    ○佐々木政府委員 これは直接公害——簡単でよろしゅうございますか。(中谷委員「簡単でいい」と呼ぶ)発明の場合に、公害の、公害といいますか、人間の生命に害を及ぼすおそれがある、けれども、その発明の目的とするものを達成することのできるような発明が一番問題であろうかと思います。そういう場合におきまして、当該、衛生に危険を及ぼす、その危険を除去する手段のないものにつきましては、特許法の三十二条でこれは拒絶するということにいたしたいと思っております。
  224. 中谷鉄也

    ○中谷委員 終わります。
  225. 加藤清二

    加藤委員長 次回は、明五日午前十時から連合審査会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後八時十八分散会