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1970-12-09 第64回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月九日(水曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 加藤 清二君    理事 小山 省二君 理事 始関 伊平君    理事 古川 丈吉君 理事 山本 幸雄君    理事 渡辺 栄一君 理事 島本 虎三君    理事 岡本 富夫君 理事 寒川 喜一君       伊藤宗一郎君    木部 佳昭君       久保田円次君    葉梨 信行君       浜田 幸一君    林  義郎君       藤波 孝生君    松本 十郎君       土井たか子君    古寺  宏君       田中 昭二君    西田 八郎君       米原  昶君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 内田 常雄君         通商産業大臣  宮澤 喜一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議官      城戸 謙次君         内閣法制局第四         部長      角田礼次郎君         警察庁交通局長 片岡  誠君         経済企画庁審議         官       西川  喬君         法務政務次官  大竹 太郎君         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵大臣官房審         議官      吉田太郎一君         文部政務次官  西岡 武夫君         厚生省環境衛生         局公害部長   曾根田郁夫君         林野庁長官   松本 守雄君         通商産業政務次         官      小宮山重四郎君         通商産業省公害         保安局長    莊   清君         通商産業省鉱山         石炭局長    本田 早苗君         通商産業省公益         事業局長    長橋  尚君         運輸省鉄道監督         局長      山口 真弘君         運輸省自動車局         長       野村 一彦君         自治政務次官  大石 八治君         自治大臣官房長 岸   昌君  委員外出席者         人事院給与局次         長       渡辺 哲利君         通商産業省鉱山         石炭局石油業務         課長      斎藤  顕君         運輸省自動車局         整備部長    隅田  豊君         自治大臣官房参         事官      立田 清士君         参  考  人         (中央公害対策         審議会会長)  和達 清夫君         参  考  人         (早稲田大学教         授)      野村 平爾君         参  考  人         (大阪学院大学         教授)     板橋 郁夫君         参  考  人         (横浜国立大学         助教授)    宮脇  昭君     ————————————— 委員の異動 十二月九日  辞任         補欠選任   古寺  宏君     田中 昭二君 同日  辞任         補欠選任   田中 昭二君     古寺  宏君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害対策基本法の一部を改正する法律案内閣  提出第一二号)  環境保全基本法案細谷治嘉君外七名提出、衆  法第一号)  公害防止事業費事業者負担法案内閣提出第一  七号)  騒音規制法の一部を改正する法律案内閣提出  第一四号)  大気汚染防止法の一部を改正する法律案内閣  提出第二三号)      ————◇—————
  2. 加藤清二

    加藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公害対策基本法の一部を改正する法律案公害防止事業費事業者負担法案騒音規制法の一部を改正する法律案、及び大気汚染防止法の一部を改正する法律案、並びに細谷治嘉君外七名提出環境保全基本法案を一括して議題といたします。  なお、本日は、内閣提出公害対策基本法の一部を改正する法律案、並びに細谷治嘉君外七名提出環境保全基本法案について、参考人として中央公害対策審議会会長和達清夫君、早稲田大学教授野村平爾君、大阪学院大学教授板橋郁夫君、横浜国立大学助教授宮脇昭君が御出席になっております。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙にもかかわりませず、わざわざ御出席をいただきましてまことにありがとうございます。これから両案につきまして、御意見を承りたいと存じますが、参考人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  なお、参考人の御意見の開陳は、おおむね一人二十分程度といたしまして、あとは委員の質疑の際にお答えくださるようお願いいたします。  それでは、最初に和達参考人からお願いいたします。
  3. 和達清夫

    和達参考人 私は、中央公害対策審議会会長をいたしております和達でございます。  今日、この国会にお呼びいただきましたにあたって、まず、上述の審議会審議結果からお話し申し上げます。  審議会は、十一月十七日、十八日両日にわたって、本国会提出されます十余の公害関係法案について審議をいたしましたが、第一に、公害問題が深刻化しております現状にかんがみて、政府が、公害防止のため積極的姿勢を示し、広範な分野にわたって数多くの制度改正整備をはかろうとされていることに賛意を表しました。そして提示のあった法律案及び要綱につき、現段階における対策としては、その内容審議会はおおむね了承いたしました。  ここで、審議会の開かれたのは十一月十七、八日であり、その後修正いたしましたものもあると存じますが、審議はそれ以前のものについてであったことを付言させていただきます。  そこで、審議会は、公害対策基本法の一部を改正する法律案はもとより、その他の法案につきましても、政府がよい国民生活環境を確保するという趣旨をあくまで貫くという立場に立って、それら立案に万全を期せられたいという強い要望をいたしました。これはあらゆるものにも増して、人間尊重理念を通していただきたいという趣旨で、内容はもとより、表現においても、その趣旨のにじみ出ることを念願したものであります。  また、広範多岐にわたる公害問題に対処するためには、今後さらに社会情勢の進展に立脚した長期的展望に立って、相互の有機的連携をはかりつつ、諸制度整備するとともに、幅広い各般の措置の推進の必要なこと、それには行政機構の一元化問題なども十分に検討を行なうほか、政府として一そう総合的な施策を樹立推進されるよう、強く要望したのであります。  以上が審議会審議経過の要約でありますが、審議の過程における委員意見などを踏まえつつ、ここで私個人の思うところを——私は自然科学を専攻する者でありますが、少し述べさせていだたきたく思います。  さて、昭和四十二年に公害対策基本法が制定されましたが、そのとき多少法案の草案を練るという段階において、私も参加させていただきました。私としては、この法案の成立には、国が現時の重要事である公害に前向きに立ち向かう姿勢を示され、できるだけの具体案を盛られたことに大きな喜びを感じたものであります。しかしそのときにおいて、なぜつけ加えなければならないかという、あの「経済の健全な発展との調和」一項については、失望を感じておったことを申し上げます。これが今回は削除されましたので、これ以上申し上げることはないわけでありますが、このときから、条項中の「国民の健康を保護するとともに、生活環境保全する」という表現において、この二つのこと、すなわち国民の健康と生活環境保全とが二つの異なるものとして考えられ、扱われること、少なくともその印象を与えていることに不安を感じたのであります。私は、この二つは不可分のものであると思います。もちろん、ある面を見るときは前者、ある面を見るときば後者となりましょうが、本来一つのものであるものの見方による表現ともいえると思います。また、国民の健康は、よい生活環境基盤の上に存在しているものであり、その意味で不可分といえると思います。  人々の基本的の権利として、健康で文化的生活を営むため、よい生活環境が保障されなければならないことは論を待たない基本的の事柄であり、狭い意味公害というものは、そうした環境が破られた一つのあらわれであることは申すまでもないと思います。  人間が地球上に住む生物として、たとえ人類科学技術を発展させることができ、人工環境を次第につくるようになってきた現代においても、環境人工でつくるのはある程度のことでありまして、決して自然界生物である人間が、自然環境と離れて生存し得るようになったとはとうてい思うことができません。現在、人間が、急速に発達し、到達し得た科学技術により、高度成長といわれる社会を築きつつある一面において、人間生物一つとして絶対必要である自然環境、あるいは自然的な環境と申すべきかもしれませんが、それをみずからの手で汚染し、破壊しつつあることは、事実と申さなければなりません。  自然は、絶えず動きつつ平衡を保っているものでありますが、その動きは、いわゆる自然循環というものを形成し、この自然の状態を持続しております。自然循環には、生物的の物質循環と、非生物的、すなわち物理的な物質循環とがありますが、この二つ循環は、互いに密接関連しつつ、絶えず物質を破壊し、分解し、または生産し、回復しております。微生物や植物が、無機物から有機物を合成し、人間や動物が有機物消費し、微生物はそれを分解するという、いわゆる食物の連鎖を見ても、複雑な生物循環があることが見られます。  こうした自然循環のある自然環境のうちにおいて、人類が、自然からある資源を取り出し、何かを生産したり、加工したり、運搬したり、そして消費し、その間生ずる要らないものを捨てるという形で、人間的の物質循環をつくっていますが、実は、それは完全に循環するどころか、不完全な循環で、循環ではなく、そこに問題を生じているのであります。これの一例は、地下水過剰くみ上げによる地盤沈下でありまして、それは、人間循環の、資源を採取するという段階において、自然循環を妨げておる一例であります。そして、資源生産や加工をするにあたっても、そのとき生ずる廃棄物は、自然循環のほうに処理させようとしてそこに投棄し、特に、消費の後は多くの不要物を廃棄し、その処理自然循環にまかせようとしています。ここに、自然はとうていそれら大量の廃棄物をみずからの循環のうちにおいては処理できず、ここに自然循環は阻止され、前と異なる自然環境を生じさせ、これは人類にとって有害な環境となります。海洋汚染、ヘドロや、煙突から出るばい煙などによる大気汚染水質汚濁などは、もとより有害なエネルギーの放出ともなっているのであります。ここに人間自然循環を阻止するため、自然の環境は前と異なるものができ、これが人類にとって有害な環境となりますが、要するに、人間のつくる環境を、たとえば生産から消費につながり、また再生につながる人工的循環を完成させることが、自然環境を破壊しない一つの解決であります。  再言すれば、自然循環に対して、人工循環を完成させることが大切であります。ここまで高度に発達した社会で、自然環境をそのまま守る、あるいは自然環境をそこなわないためには、どうしても人間がみずからつくり出すところのいろいろのものについて、みずからが循環を完成させる必要があるのであります。これは端的に言えば、不要物再生利用ということにもなります。  今日、科学技術は発達したと申しますが、この人工的循環の完成のための科学技術、別の言い方をすれば、人間福祉、安全のための科学、あるいはまた、廃棄物の再利用環境人間との関係などの科学研究につきましては、従来の生産増強に偏し、あるいは高度の文化生活に関する科学研究の推進され方に比べまして、はるかに立ちおくれている観のあるこれらの人間福祉、安全のための科学に対し、これが推進されるよう十分なる配慮が望まれる次第であります。  確かに、昔は、人間廃棄物自然循環の中で処理し得る程度のものであったのであります。現代社会における生産の増大と生活の向上とを見るのに、とうてい自然の処理ではこなしきれません。そうして、いまや自然循環は阻害され、環境は悪化してきました。環境の悪化は人間の健康につながることは言うまでもなく、ここに公害問題は、やはりその基盤である環境問題に立ち返ることになり、環境問題は、それがあらわに人の健康を脅かす以前において、目に見えず、次第に悪い環境をつくるその時点で、何らかの処置をすべきことが肝要であるということになります。  人の健康を害するおそれあるということがいろいろ論議になったよしでありますが、おそれあるという表現の適、不適は別として、人の健康を守ることの基本が、環境を悪くしないことであるという立場からすれば、あらわにその害があらわれる以前において徐々に蓄積され、次第に悪化していく環境については、できるだけ早く十分なる対策が実質的にとられるよう、法制化にあたっての配慮を望んでやまないものであります。  よく、日本外国とは公害のとらえ方が違うと申します。それは、日本公害は、日本自然条件社会条件とから生ずる独特のもので、それが、日本にこのような激しい公害問題を起こさせることとなり、われわれはいまそれに直面して、切実な公害を何とかしようとするのが日本公害問題の傾向といえましょう。外国においては、公害を直接に見るより、むしい環境問題としてそれをとらえようとしている傾向の多いといわれるのは、一つには、外国公害日本ほど、部分的にせよ、強烈でない点もありましょうが、根本には、科学、そして文化についての、先進国としての公害基盤である環境について、自然と人間活動調和から、人間が手を加えた自然環境をつくること、すなわち、森林や緑野をつくって、それらを保護するなどについて長年手がけたことにより、いわゆる公害にまで進まぬような、よい環境づくり配慮が、合理主義とともに身についていると申せましょう。また、地域共同社会意識が十分にあって、こうした問題を自分たちにつながりのあることであるという意識が、そこに備わっておることも申し加えるべきと思います。  今回の新しい基本法改正にあたりまして、水の状態や、水底の性質や、土壌汚染などを公害に取り入れられ、廃棄物の公共的な処理施設などの整備も推進されて、特に緑地の保全など、自然環境の保護を条項に加えられたことに賛意を表したいと思う次第であります。それとともに、外国において身についた環境に対する意識が、わが国におきましても、国民が幼いときからそれを身につけていくような配慮、あるいはやり方が非常に大切なことを思わせるものであります。  なお、中央公害対策審議会におきまして、地方自治体への権限の委譲につきましては、できるだけ実効果があがるように、十分に考えられたいことや、また行政機構についても、一元化の方向について、十分検討を加えられたいようなことを要望いたしましたが、前に申し上げたと思いますが、付言させていただきます。  要するに、公害対策基本法は、われわれ人類の長い将来の福祉につながる現下の重大な問題であります。これに向かってわれわれは真剣に立ち向かわらければならないという、国の、そして国民一人一人の決意を表明する基本的なものと考えられるのであります。いま提出されている公害対策基本法一部改正法律案は、確かにそれに向かって一歩も二歩も進んだ改正であることは、第一条の改正においてすでにうかがえるところとも申せます。  ここで、なお申すならば、さらに人間尊重精神と、誤った方向に進まんとする近代科学技術文明へ立ち向かう積極的姿勢が、随所にくみとれるような、力強い、そして実際的のきめ手を持つ法律として、成立されんことを希望してやみません。率直に申して、対案として提出された環境保全法は、私にとって、非常に魅力を感じさせるものであることを申し上げます。これが狭い公害問題だけでなく、現代文明あるいは繁栄に対しての強い反省をするとともに、基本的に将来にわたる国民福祉を考え、人と自然との調和基盤とする新しい社会の建設を誓うことを、強く表現した点においてであります。内容においては、この二つにおいて、根本的に異なることはあるいはないかもしれませんが、現在の公害問題が、日本においてこのような切実な問題になっておる点において、行政的措置を十分に考えた上で、公害対策を強く進めていこうとするための基本法とい立場でできているものが前者であります。根本的に、広く基盤から公害対策に取り組む立場後者であると思われます。後者は、全部を通じて、日本の将来の姿はこれでなくてはいけないということにおいて精彩あり、前者は、いままで努力してきた公害対策を、現実的に、また効果あるやり方をもってやろうとする趣旨と存ぜられます。  いずれにしても、実際に公害対策が、着々と行なわれるために適合した法律が制定されることが望ましい次第であり、これについて首相の所信表明にあった、「福祉なくして成長なし」の精神を、あくまで貫いていただきたいと心より願って終わりといたします。(拍手)
  4. 加藤清二

  5. 野村平爾

    野村参考人 現行公害対策基本法は、昭和四十二年に制定せられましたが、その後わずかに三年ばかりでもって、早くも改正の必要に迫られました。これは、本来基本法といものは、私は、やたらと短期間のうちに改正をするような、そういう性質のものでないようにしていただきたい、こういうふうに考えております。その意味におきましては、やはり今回基本法改正をいたしましたならば、十分に将来を見通した改正をしていただきたい、これがまず第一に申し上げておきたいことであります。  なぜかと申しますと、昭和四十二年の当時におきましても、すでに国際的にはロンドンスモッグの問題や、それからロサンゼルスのスモッグの問題、こういうようなものが起こっておりますし、外国におきましても、すでに光化学スモッグについての研究さえも、もはやできておった時代でございます。それからまた、日本におきましては、もう四日市ぜんそくの問題や水俣病はもとより、そういうような種類の問題がたくさん頻発をしてきかかっていた情勢でございます。しかも、そのときにおいて、経済成長というものを考えるならば、必然的に公害の発生すべきことは予知しなければならなかったのではないか。こういう意味におきまして、今回の改正にあたっての基本的姿勢というものは、やはり将来の国民、それから人類の幸福と健康というものを、根本的に守るような姿勢で立ち向かっていただきたいというふうに考えております。もとより、佐藤総理などの申しておりますことを伺いましても、基本的にはそういう姿勢であるというお話でありますから、どうぞそういう点において、私は十分に御審議の上御検討をお願いしたい、こういうふうに存ずる次第でございます。  このような観点に立ちまして、政府提案とそれから環境保全基本法案について、若干の意見を述べさせていただきたいと思います。  政府案は、どちらかというと健康、生命という現実的な問題から出発して、そしてもって自然の環境保全というような、そういう方向へ向かっております。  ところが、環境保全基本法案のほうは、現在及び将来の良好な環境をつくることの中でもって、この生命、健康という現実的な問題を処理しよう、こういうような姿勢になっておるかと思います。その意味におきましては、幅の広さ、それから視野の高さ、こういう点においてはややこの環境保全基本法案のほうが、基本的姿勢においては私はすぐれておるものではないだろうか、こういうふうに考えております。もちろん生態系循環の問題、調和の問題、それから今日、成層圏汚染とかいうような問題が出ておりますが、これは、専門家であります和達さんや宮脇さんもおいでになっていらっしゃることでありますので、そういう問題については、とくと両先生に御意見を伺っていただけばよろしいのではないかと思うのです。  問題は、理念や目的、これはもちろん大切でございます。しかし、この基本法案というものが成立したときに、それに基づいてできますところの個別的な立法が、どんなにその実効性を確保する立法になり得るか、この点が第一点として問題でございます。  さらに、そういうような立法ができても、それを運用する行政上に適切な措置がとられているのかどうかということと、その裏づけとなるところの財政的な措置、並びにこれを運用いたしますところの人材の養成、こういったような観点というものをどうするかということを、やはり基本的に考えていただかなければならないものだといふううに私は考えております。こういう点におきましては、どちらかというと、この現行基本法改正案のほうでは、そういう問題点は特に強く触れておりません。しかし、環境保全基本法案のほうにはその点が入っております。しかし、この環境保全基本法案にしても、政府案にしても、——もちろんこれは一般的には前進をしておることは私は承認をいたします。しかしながら、一つ問題になりますところは、国の環境基準等設定を中心としております。しかし、御承知のとおり、今日人の健康や生命に影響を及ぼすところの公害と称する現象は、これは広域的な環境の問題であると同時に、地域的に非常に差がある、こういう問題がございます。  そこで、その地域的な性格という点に目をつけて、地方自治体に対する権限を、単なる委任事務の形にするのか、それとも、法令によって幅広い権限を与えて、現実に、また急速に、この緊急事態状態に対応するようにし得るか、この点については、ほんとうにまじめにお考え願いたい。  全体としまして、要綱段階で私が拝見したところによりますと、かなり地方自治体権限の拡大、あるいは権限を与えるという点について考えておられたようです。しかし、法案になりました段階になりますと、その点が弱くなった。この点は、和達さんもえんきょくに御指摘になったように思いますけれども、私もそのような気がいたすのであります。  たとえば、大気汚染防止法改正案にしましても、水質汚濁防止法改正案などを見ましても、この点はおわかりになられることと存じます。地方自治法十四条がございますので、その法令というものの中で幅広い権限と、それから裁量の余地を地方自治体のほうに残していただく、こういうふうにしなければ、実効があがらないのではないか、こういうような気がするのであります。  現実にこういう問題を考えます場合に、一つの例でありますけれども、実際には、今日地方自治体は、国で定めました基準よりもきびしいものを実行しております。その実行をしているにもかかわらず、なおかつ公害病認定患者が出ておる。このことをやはり考えていただかなければならないのではないかということでございます。特に、基準設定そのもの、政令で基準設定する場合について、私は強く考えていただかなければならないことではないだろうかというふうに考えて、その点を、各個別法案については、特にこの委員会でお取り扱いになる部分は少ないのかもしれませんけれども、どうぞお考えいただきたいというのが私の考え方でございます。  それから、環境保全基本法案の中には、企業の無過失責任を取り入れているという考え方が出ております。無過失の損害賠償責任ということは、今日の新聞を見ますと、最高裁あたりでも、すでに無過失損害賠償の責任問題、こういうものは考える必要があるだろうし、それから因果関係の証明についても、それを転換するという考え方、挙証責任の転換という考え方が必要だということを述べておられるように私は新聞で拝見いたしました。私たちも、この点はたいへん重大な問題だと考えます。しかし、損害の賠償というのは、出てしまった損害に対する償いの意味でございます。生命や健康をそこなわれて、それから幾ら償われても、もとの人間のからだには回復いたしません。そこで必要なことは、損害の発生をあらかじめ防止し、あるいは予防するということが必要だと思うのです。これを実は各法案においては、行政的な措置でもっておやりになる、しかも、国の行政基準でもっておやりになる、こういうふうにいわれております。だから私は、単に国だけではなくて、地方自治体が、その状況に応じてきびしい基準を設ける、あるいはときとしては操業の一時的停止等もやってもらう、こういうようなことをしないと、この損害の発生は防げない、こういうように思うのであります。  ただ、従来の例によりますと、行政官庁においては、人員不足という問題もございます。それから財政的な裏づけという問題もあります。そういうことのために、実際には実効を必ずしもあげていない面がこれはあります。  たとえば、ついこの間新聞に出ておりました、労働省の労働基準監督官を動員しまして、全国の安全衛生施設の点検をいたした結果が出ておりますけれども、大気汚染については、大体七〇%をこえるものが施設をしておられなかった。シアンなどのようなきわめて激烈な有毒物の放出を、そのままやっているものも一七%もあった、こういうようなことが出てまいりました。これは総力をあげて点検したら出てきたということであります。通常事務におきましては、なかなかそういうことはできないのです。たとえば、現在の労働基準監督官の数が二千八百ぐらいだと私は想像をいたしますけれども、それでもって全事業場を対象として考えた場合、二十年に一回実際においては回れるということでございます。もちろん数は十年に一回回れることになるのだという計算でありますけれども、課長さんも二人おりますし、署長さんもおります。そういう方々を除いてしまって、現実に動き得る人という点から考えると、二十年に一ぺんぐらいになってしまう。こういうような状態でございますから、公害について行政的な措置を国がやる、そのために国が公害監督、監視のための人員をつくる、こういうようなことをやりましても、おそらくはこの十分なる点検ということはむずかしいのではないか。また地方自治体にそれを全部まかせますと、そこにはまた予算的な問題も出てくるだろうと思うのです。地方自治体に委任をする場合には、十分に予算的措置をつける、地方自治体がみずからやるものについては、これを国が援助する。そういうふうに権限に対する財政的な裏打ちを行なうということが、やはり公害を絶滅していくためには必要な問題点ではないかと思うのです。  その上にさらに必要なことは、行政官庁がやることに待つだけではなくて、国民の一人一人、住民の一人一人、あるいは住民の団体なりがこういうことをとめること、あるいは賠償の請求はもちろんできますけれども——賠償の請求は裁判所に出せばできます。ただ、その道を容易にするのは、先ほど申し上げた無過失と因果関係の立証の転換ということでございますが、あらかじめこれを防止し予防するというような請求権については、実は今日、財産について、ことに物権については、物権的請求権というものが法律上あるわけです。しかし人格権、人間生命、健康というものに対しては、実は損害賠償ぐらいであって、現行法においてはわずかに名誉棄損について謝罪広告の請求ができるということが法文上出ているぐらいなんです。こういう点は、私はぜひ請求権の問題として、やはり国民にそういうような権利を裁判所に遡求し、すみやかにこの仮処分のような手続でもって一時とめる、こういうようなことまでできないものであるかどうか。現に、外国においてはそういう立法例をつくっております。  私は、先日も国会に参りまして、各党を御訪問いたしました。その際ぜひ考えていただきたいと言ったことは、たとえば本年の十月一日、アメリカのミシガン州におきましては、何人といえども巡回裁判所に対して衡平法上の救済、——衡平法上の救済というのは、たとえば禁止命令を出してもらう、こういったような措置ができることになっている。しかも因果関係は転換して、そして相手方が公害を出しておらないということを立証することができないならば、直ちにとめる、こういったような法律をつくっておるわけです。こういうような法律は、その後も幾つかの州でつくられようとしております。それからまたこれについては、連邦法も考えるというふうに伝えられております。こういうような、もう国際的傾向というものが生まれてまいりました。また、公害罪法につきましては、本日の新聞で、ハンブルグの船会社の社長が、廃油を捨てたことから、八カ月の懲役刑に処せられたということが新聞に伝えられております。そういうようなことを考えまして、どうぞ御検討願いたいものだと思うのです。  私は、少し強く企業の責任のことについて述べ過ぎたように思います。しかし、すでに大企業の中では、——私は、この間学術会議におきまして、公害シンポジウムを行ないました。そのときに、企業の中の研究所の方たちなども大ぜい出ておられました。私の聞いたところでは、ある大企業におきましては、すでに脱硫装置を開発して、それについて外国にも売っておる。それによって数十億の利益をもうあげておる、こういったような事態が出ております。また、ある製紙会社の大工場は、外国の特許を得て、それによって現在問題になっております富士市の会社にこれを売っておる、こういったような事実もあるわけです。したがって私は、企業一般ではなくて、大企業の技術首脳というものは、もうそういうことを知っておられるわけなんです。排出基準をきびしくするならば、きびしいような技術の開発をやっていくんですね。そういう人たちの申しますことにつきましては、排出基準などはやたらに変わってもらうことは困るんだ。実はきびしいなら初めからきびしくしてほしい。そこで、ことし設備をしたものが、来年変えなければならぬというようなことにならないように、きびしい基準というものを最初から立ててもらいたい。そうでないとむだな金を使うことになるんだ。こういうような言い方をしておりました。そのことは今日の技術から見るなら、私自然科学者じゃありませんから、必ずしもあらゆるものについての防止の技術というものが、どれほど進んでおるかという点については、明確にはいたしておりません。ただ一部におきましては、すでにそういうような基準以上の装置をして、来年変えられても差しつかえないようにしているというのが現状だといっております。そういう点を考えると、つまり排出基準水質汚濁につきましても、それから大気汚染につきましても、土壌汚染につきましても、そういうものの基準というものは、最もきびしいところに定めるという考え方をぜひお示しいただきたい。これはすでに国民生活を、経済の発展というよりも優先しなければならぬ段階に来たということを、総理もお認めになって、そしてこういう法案改正に進んだわけでありますから、ぜひそのような措置をとられることを希望いたしておきます。  そして、そういうような公害防止事業費の費用の点についてでありますけれども、企業負担としていくということにつきましては、これは可能である企業というのはずいぶんあります。なぜかというと、今日公害発生源企業の中で、配当一割以上というのはたくさんあるんです。こういう点を考えたり、あるいはいわゆる交際費だとかないしは、そういっては当たりさわりありますけれども、政治資金、献金なんというものをある程度規制することによっても、私は、十分に公害防止人間の命を守ることにさき得る余地があるのではないかというふうに考えております。  ところが、今日の企業の全体の構造を見ますと、やはり下請的な仕事をやっておるもの、ことに中小企業におきましては、系列化されたり下請化されたりしている企業というものが圧倒的に多いわけです。そういう点からいきますと、下請価格が押えられると、どうしても設備投資というものに手が抜かれる。このことがやはり問題であると思うのです。そこで、中小企業につきましては、とくと配慮をする必要があるんじゃないだろうか。これをどの程度にするかという点は、十分に御検討願いたい、こういうふうに私は考えております。  それから、やはり基本的なこういう考え方に立ちまして、人類の生存の将来の問題でありますけれども、やはり今度の基本法案の中で、環境保全ということが少し弱過ぎるように思う関係か、あるいは大気汚染水質汚濁土壌汚染ということを防ぐことによって、結果的に自然を守るという考え方になっているのかもしれませんけれども、自然公園法の改正などを見ましても、やはり一部にしかすぎない。単に湖沼や河川だけがよごれているのではなくて、森林そのものがだんだんにまいっていっている。たとえば、富士スバルラインの問題にしましても、これは観光開発会社がどんどん開発していきます。なるほど景色のいいところに連れていっていただけます。しかし、私は、数年たって同じところへまいりますと、全く様相を異にしてしまっている、こういうような事態にぶつかっているのです。そういうような点につきましても、やはり環境保全ということについて、もう少し力を入れ、そしてその中から良好な環境づくりという、そういうことによって人間生命を守る、こういうように徹していただきたいと思う。  とにかく考え方にしましては、政府にしましても、財界の圧力などは全然受けていないんだ、そして憲法二十五条の精神に沿った、生命と健康を守り幸福を守る、こういう方針でスタートするんだ、こういうような所信を披瀝されておられるわけです。野党のほうにおきましても、こういう問題につきましては、やはり一致して立ち向かおうという姿勢を持っておるわけだ。そういう考え方をお互いに持つならば、人間生命のため、健康のために、次代の人類のためにも、私は十分にお話し合いをして、満足のいくような法案をつくって、将来に悔いを残さないような、そういう行き方というものができるのではないか、こういったような考え方の上でもって、これはぜひお話し合いの上、審議を尽くされて、そして、前向きな形でもって問題を解決することが必要ではないかと思うのです。一人の生命は全地球よりも重いということは、私はたいへん大事なことだと思うのです。たとえばぜんそくに悩む子供が、あの赤白だんだらの煙突にふたをしてくれとおかあさんに言いながら、そして死んでいったということが最近伝えられた。こういうような悔いを残さないことが、私は、やはり私どもがお選び申し上げたこの国会の皆さん方が、ほんとうに真剣に取り組んでいただくべき問題ではないだろうかというふうに考えております。したがって、私はそれだけ申し上げて、これで私のなには終わりたいと思いますが、最後に一言申し上げておきたいのです。  けさ参りますおりに新聞を見ました。そしてこちらへ来て、公述人の四人の方と話して、もう政府はこの法案改正をしない、あるいは原案のまま通すということを決定したと伝えられる。決定したのになぜわれわれは来なければならないのかという、そういう考え方を持った。これは、もちろん国会立法府でありますし、行政府とは違うのであります。したがって、議員の皆さん方が修正しようと思えば修正の余地があるわけです。ただ、形式的な意味でもって、私たちが時間をさいて、五百人の学生を学校に待たせておいて来なければならない理由は、もしそれがほんとうだとするならばないのではないか、私はそういうふうに考えたのでございます。これは、私ども四人の共通した考え方でございますので、どうぞおくみ取りいただきたい。委員長から、先ほど、わざわざおいでくだすってありがとうございますという私たちに謝礼のことばをいただきました。ほんとうにありがたいと思うのですが、どうぞ、公述というものは、実はほんとうに専門家なりあるいは国民なりの声を、少しでも法案の中にくみ取るという姿であるのだとするならば、その来る前にもう修正しないなどということが新聞に出されるような、そういうことはひとつ考えていただきたいものだと私は心からお願い申し上げます。(拍手)
  6. 加藤清二

  7. 板橋郁夫

    板橋参考人 本日は、当委員会委員長より、公害対策基本法の一部を改正する法律案、及び環境保全基本法案について、意見を述べよということでございましたので、両法案を拝見いたしまして私の考えを述べさせていただき、審議の御参考に供したいと思うわけでございます。  私が申し上げたいと思いましたところの大部分は、ただいま野村先生のほうでほとんど触れられておりますから、あるいは重複するような部分もございますけれども、若干角度を変えながら意見を申し述べたいと思うわけであります。  昨今の公害問題と申しますのは、十分皆さん御承知のことと思いますけれども、人間の存在というものが自然環境の一部だというようなエコロジー、生態学のほうからの発言で、非常に視野の広い、学問的知識の広さを要求される問題のように考えるわけであります。私は法律、特に民法をやっておりましたけれども、そのかたわら水の問題を長年手がけておりまして、アメリカ水法について研究を重ねておるわけであります。そういう関係で、この夏もアメリカを一通り回ってきまして、実態を見たり、あるいはアメリカ政府の、これは連邦政府のほうでありますけれども、資料などをだいぶ見てまいりました。その中での印象でございますけれども、やはり日本とはだいぶ考え方が違うなということを、そのときの印象でいまでも持っておるわけでございます。  それは、どういうことかといいますと、これは先ほど野村先生も御指摘になった点でありますけれども、発生した公害を防止する、救済する、あるいは民事、刑事の問題としてこれを考えるという、その前にもっと力を入れて、予防措置ということにたいへん財政的にも、法律案としても、制度的にも、あるいは行政的にも、かなり配慮をしているということであります。したがいまして、今後わが国の公害問題についても、やはり公害の排除あるいは予防措置という点にかなり力を入れていくならば、同じ財政支出をするにしても、結果的には自然環境の保護という点については、かなりいい結果が得られるのではないかと、かように考えておるわけであります。何しろわれわれが、これは個人も含めて事業体もそうでありますけれども、生きている限りは、外界をよごすということは避けられないことであります。そうしますと、それをいかに少なくするか、少なくすることによって、自然状態というものを現状、あるいはよりよくして、将来の世代のわれわれの子孫に残していくということに絶えず配慮していく、そうでなければならないと思うわけであります。私が、この夏、アメリカの水汚染防止委員会委員の方にお会いしましたときに、その方が話しておりましたのは、とにかく一度水なりあるいは空気、それを全体を含めて環境、エンバイロンメントといっておりますけれども、その環境が汚染されますと、急速に状態が悪くなるのだ、極端な言い方をすれば、地球が死ぬ、だんだん生命というものは死滅化あるいは衰亡化しているわけでありますけれども、通常の状態を経れば、あるいは何億とか何十万年とかいう年月をかけて、地球上の生物は死ぬのだけれども、環境に対する人間配慮というものがないと、三十年とかあるいは極端な場合には五年とか一年で、その一定のエリア、地域というものが全くだめになってしまうのだ。  その一番いい例が、日本で見られるように、製紙会社が出しましたヘドロ問題で田子の浦がだめになった、あれではないか、そういう現象をユートリヒケーションというのだそうでありますけれども、そういうことだから、われわれはもっと真剣に環境保全ということについて考えなければいけないというように問題を指摘しておったわけであります。そういう角度から公害を未然に防ぐということになると、何が一番必要かといいますと、この法案にも、従来の基本法にももちろん見られますけれども、環境保全基本法案にあげられておりますように、中央、地方自治体、これは都道府県、市町村含めてであります。特別な審議機関、この審議機関は、単に環境基準設定するとか、都道府県あるいは中央でありましたら内閣総理の諮問に答える、諮問があったら答えるというだけでなくて、一定の行政力を持った機関、たとえば現在あります機関でありますと、公正取引委員会のような機関をかりに想定いたしまして、そういうところに大部分の権限を与えてしまう、法律で与えてしまう。そうして中央、地方ともにそういう体制で強力に予防措置を講じていく、予防ということになりますとインジャンクション、差しとめ請求ということになります。  これも先ほど野村先生のほうからお触れになっておりましたけれども、この差しとめ請求も二通りやり方があるわけで、行政的にこの法案、従来の基本法でもあるいはそうなっているのかもしれませんですけれども、行政機関が規制する、あるいは場合によっては強力に営業停止みたいな、当該事業体に、その基準を上回るような汚染源の発生事実があれば、もう仕事をやめさせてしまうというようなことを当該行政機関に持たせる。それからまた、場合によっては、住民が直接司法審査、具体的には裁判所でありますけれども、裁判所に申し立てて、差しとめについて、これは仮処分ということになりましょうか、そういうような手段を講じていく。仮処分ということになりますれば、現行法でも制度的には可能でありますけれども、その前提になる仮処分をするに必要な事実があったかどうかというふうなことになりますと、かなり申し立て人のほうの立証が困難でありますから、この点を公害基本法案のほうで考える、その考えるという具体的な方策は、ただいま申し上げましたように、行政力を持った審議会に与えてしまう、それは第三者機関でありますから、どこからも不当な圧力はかからない。その機関に従事する人々については、法律で身分を保障するというようにしていく、それが公害防止の前向きの具体策の一つであろうかと考えておるわけであります。  そうして問題なのは、この審議会委員の選出方法でありますけれども、これは全員を選挙というわけにもいきませんでしょう。お医者さんとか、自然科学者とか、あるいはエコロジーの専門家、統計学者も要るでしょうし、あるいは薬の専門の方も当然必要であります。法律の方も必要でありましょうから、全員選挙というわけにはいきませんけれども、かりに都道府県、市町村の汚染防止というような地域的な問題になりますと、どうしても住民の意思を反映させるということが必要であります。それを遮断しておきますと、現在の問題を解決するためには、住民としてはどうしてもデモ方式にたよらざるを得ないわけであります。こういった問題をスムーズに解決するような機関がありませんと、住民の側のほうも、事業体のほうも、あるいは行政機関も、いつもデモや陳情がありますので、目先の問題に追われて、大局的な処理ができないということになります。また、住民のほうでも、問題ごとに、いつもむしろ旗を立てて、当該問題について何とかしろということを言っているわけにいきません。しまいに疲れてしまいます。公害のために外からもやられ、あるいは精神的にもへとへとになっていくというようなことが、現状を放置するならば十分に予想されるわけであります。そういうことのために、あるいは社会の平穏ということにも当然影響がありましょう。平和のうちに、合法的な手段で、公害問題の防止ができるという制度的な保障というものを、一日も早く確立していただきたいと思っておるわけであります。  そうして、次に問題になりますのは、公害防止にはたいへんな費用が必要なわけでして、今国会に上程されております十四法案の中には、この費用負担に関する法律が、やはり重要なものとして審議されているようであります。  そこで、この費用負担について、一言私の意見を申し述べさしていただきたいのでありますけれども、公害というのは大部分は——実は、大部分と申すとちょっと差しさわりがあるかもしれませんけれども、とにかく公害発生源というものは、従来、気づいておったか気づかないでやったか、いずれにしても、大きな企業体、あるいは市町村の一般廃棄物もございますけれども、とにかく大きな企業体から出るものがかなり汚染に影響を持っておったわけでございます。そうしますと、この公害防止の費用というのも、やはり原則的には、原因を与えたもの、その汚染をもたらしたものに持たせるべきであると思っているわけであります。これについては、実施の段階でもいろいろ問題がございましょうけれども、原則としてはそうであるべきだと私考えておるわけであります。と申しますのは、防止策を講じないで、ある事業体がどんどん仕事をする、そうしておいて、国の補助で、その汚染源の防止についてやってください、全国的な問題であるから、あるいは全人類的な問題なんだから、政府もこれについては積極的に財政援助をすべきだといったのでは、片手落ちであるわけです、しり抜けであるわけです。そういうわけで、やはり発生源に責任を持つものに、第一次的には財政負担をさせる。したがいまして、法案では、両法案とも、いずれも負担させるというふうになっておるようであります。が、もっと突き詰めていえば、原則としては、何十%程度はその原因を与えたものが持てというような内容であってほしいのであります。それは、この基本法でできなければ、政令とか、あるいは法律の委任、政令によってワクがきめられました条例などで、具体的にそのパーセンテージというものをうたっていくべきではないか、かよう考えておるわけであります。そうした上で、地方自治体なりあるいは地域住民なりが負担しなければならないであろう部分については、やはり環境の維持という角度から、負担すべきものは負担する、そういう順序になるのが最も公平な考え方ではないかと思うわけであります。  近代市民社会では、過失なければ責任なしというようにいわれております。過失主義をとっているということ、これはもう疑いもないことであります。しかし、民法でそういう原則をとって、過失なければ責任なしだからということでこの公害問題を処理しようと思いますと、もうほとんど有効な手を打てないということになります。この近代社会において、自由というのは、それは自由にできるということもありますけれども、逆に言えば、他人を害しない範囲でしか自分の自由はないのだということにもなるわけであります。そういうことで、たとえば職業選択の自由についても、公共の福祉の範囲内でというようなことになってくる憲法の規定は、当然だと思うわけであります。他人を害してまで、自分の行為の自由を主張するということはやはり間違いであろう、かよう考えるわけであります。  そうしますと、国家というのは、産業の発展によって非常に繁栄するわけでありますけれども、片や人間性の尊重という角度から見ますと、国民というものはかなり痛めつけられているというのは、表現が当たらないかもしれませんけれども、たいへんに環境が悪くなって、健康を害しつつあるということが、他方では言えるのではないかと思うわけであります。そういうことで、わが国が、内閣が、文化国家、福祉国家という目標を掲げて、諸種の政策を実行しているのでありますから、より人間性の尊重に重きを置いた、環境保全ということが法案内容に積極的に盛られてしかるべきであろうか、かよう思うわけであります。  それから、民事上の責任に関連しまして、過失責任、無過失責任の問題でありますけれども、無過失責任についてはかなり議論があったわけでございまして、私がいまさら触れる部分というのは少ないように思いますけれども、民法の過失主義は過失主義として、これは、歴史的にも理論的にも意味のあることであります。しかしながら、それでは近代市民社会というものが過失主義を原則として貫いているのだから、公害問題もそうでなければいけないのか、論理必然的に言えるかというと、そうではなくて、わが国でも、御案内のように、特別法では無過失責任をとっておるものが数種類あるわけでありますし、外国法でもその例がないわけではありません。だから、公害問題の民事責任を問う場合に、無過失責任をとれないのだというふうに考えることは、少しく既成の概念にとらわれ過ぎているのではないかと思うわけであります。少なくとも、挙証責任を転換するというところまではこの国会で盛り込んで、積極的にこの環境汚染の防止に対する国家の姿勢政府姿勢を示すべきではないか、そういう意味では、この環境保全基本法案の二十六条に、無過失損害賠償責任制度の確立の条文が見られます。これはやはり、かなり積極的な、公害問題について真剣に考えた結果、こういう結論になったのであろうと推測できるわけで、大いに尊重したいと思うわけであります。  そういうことで、この過失主義というものは、もう古典的な自由主義の時代の考え方である、現在のような社会連帯というような意識を、しっかり強烈に持たなければならない時代には、やはり民事責任についても、無過失主義というものをとっていかなければ、国民福祉、公共の福祉というものを保てないのではないかと思うわけであります。もちろん、水汚染、大気、日照権、騒音というように個別的に検討をしていきますと、かなりむずかしい問題がありますけれども、原則的な認識は、やはり無過失主義であるべきである。かように考えておるわけであります。損害の公平な負担という角度から見ましても、やはり事業体が大部分を持つ。そうするためには、無過失主義でなければそういう負担の公平というような考え方が出てこないということもあります。そうして、無過失主義をとることによって、民事的な角度からの公害汚染防止の抑止力も、またあるのだという認識をいただきたいと思うわけであります。  また、責任分担の問題は、ただ単に、汚染源だけが分担するのではなくて、将来は、やはり社会保険制度のような角度からも検討する必要があるであろうと思うわけであります。しかし、これは時間もありませんので、この辺で打ち切らせていただきたいと思うわけであります。  以上、公害対策基本法の一部を改正する法律案環境保全基本法案と比較検討しまして、公害問題については、環境保全基本法案のほうがより積極的な姿勢が見られるというように考えまして、その角度から私の御意見を申し上げたわけであります。  以上でございます。(拍手)
  8. 加藤清二

  9. 宮脇昭

    宮脇参考人 よりよい人間の生存環境を先取りするために、皆さんに最もりっぱな基本法をつくっていただくために、私、生態学を専攻していますので、生態学の立場から、人間というものは自然におけるどういう位置であるか、そして、われわれがよりよい産業の発展、よりよい経済の発展によって、よりよい文化生活国民全般に営ますためには、少なくても健全に生きていけるだけの生存環境を、いかにして先取りしておくかという、人間の生存環境の保障の立場において考えていきたいと思います。  日本でいわれているいわゆる公害というのは、たとえば、ちょうどその発火点になりました、アメリカのニクソンのことしの二月及び八月の教書は、実は環境教書でありまして、人間の生存権を含めた、生命集団の生存の保障を言っているわけでございます。あるいは、同じく本年のわが国の公害問題の一つの出火点になりました、ヨーロッパの生態学者が、数年にわたって準備した結果行ないました、ヨーロッパ二十四カ国におきますところの、一九七〇ヨーロッパ自然保護年の発会式の宣言を見ましても、それは人間の生存環境を含めた、自然の保護を言っているわけであります。すなわち、われわれは、いままで人類がこの世に生まれて二万年、あるいはそれ以上の長い間、とにかく人間は違うんだ、他の生物とは違うんだという立場におきまして、いわゆる人間過信主義で、自然を破壊し、あるいは人間以外のすべての生物を殺戮することによって、現在の産業、経済、技術を発展してきたわけであります。したがって、いままでの立場でいうならば、それはわれわれは、人間は違うのであるから、他の生物をどんなに殺そうと、自然をどのように破壊しようと、あるいはわれわれが、どのような廃棄物を空気や水や土の中に捨てましても、問題なかったわけでございます。  ところが、現在私たち、特に世界の文明国で行ないますところの新しい産業の発展は、自然のエコシステム、生産者である緑の植物、人間も含めた動物は消費者であります。さらに、動物や人間が生きていくために必要な廃棄物、すなわち排せつ物や、あるいは彼らが死んだときに出しますところの死骸を、再び生産者である緑の植物が利用するための、いわゆる分解還元者としての微生物群が、どんなにわれわれが廃棄物を出しましても、十分それを分解還元する分解還元能力のワクの中で、われわれは経済を発展させ、工業を発展させてきたわけでございます。また、どんなにわれわれが自然を破壊しようとも、それは、多様な、人間含めた生命集団と、その環境とのバランスのワク内で行なわれてきたわけです。したがって何ら影響はなかった。  ところが、いまやわれわれが出しますところの新しい産業廃棄物は、自然の分解還元者である微生物群が分解還元する能力を持っていない、そしてたとえば、ブルドーザーで代表されるような、いままで数千年かかってもできなかったような、新しい自然の開発、残念ながらそれが破壊につながっているわけでございますが、それは、いまだかつて、残されていた、破壊されなかったわが国の弱い自然、たとえば水ぎわであるとか、急斜面であるとか、尾根筋であるようなところも画一的に破壊できるし、一時的に開発できるわけです。そうしてそれが破壊している。その結果、われわれがどんなに善意で産業を発展させ、どんなにわれわれのためにと思いまして自然を開発しましても、逆に生きものとしての人間の生存環境が、それによって荒廃、汚染してきているわけでございます。  したがいまして、われわれは、いまや少なくても、もう一度自然における人間の位置、生命集団における人間立場というものを、考え直さざるを得ない時期に来ているのじゃないかと思います。すなわち、現在のエコノミクス、経済に基礎を置きますところの企業の発展、産業の発展というのは、工場をつくる、すなわち生産者、そうしてそれを得る消費者という二つの系を基準にしてつくってきた。自然界におきましては、単純な糸ほど、単純なシステムほど効率がいいのですが、不安定でございます。すでにわずか十数年で、いわゆる公害というふうな、人間生命に直接影響を及ぼすような問題を起こしつつあるわけでございます。したがって、これからの国際競争にも負けないよりよい企業の発展のためには、少なくても生態学におけるエコシステム、生産消費、分解還元という三つの柱によって、生命が地球上に出て三十数億年、一度も破綻しなかった、古くて最も新しいその分解還元を十分かちとって、初めて新製品として出されるべきであるし、それが実は最も持続的な国民生活、あるいは文化の向上に役立つわけでございます。したがいまして、このように見てきますと、すべての生物は、これは人間だけでございませんで、雑草でも、バッタでも、この世に生まれますと、自分たちが、自分たちの種族が、社会がよりよい発展をするために、生活環境を改善していきます。そして、その生活環境の改善が、生態学的な最適条件を越えて最高条件に達したときに、自分でつくり出した環境によって、自分たちが破滅するのでございます。それを植物の社会ではサクセッション、遷移といいまして、どこでも見られる状態でございます。われわれ人間が、もしほんとうに、他の生きものよりも違った人間固有の英知を持っているならば、いまこそわれわれは、自分たちがたとえ善意でやりましても、その生活環境の改善が、産業の発展が、すでに生態学的な最適条件を局部的には越えつつあるのではないか。そうして、それが越えた場合に、たとえ善意であっても、最高条件になった場合には、多くの生物は最後の自己規制、自分の種族が生き残るために、大量出血、大量死滅と大量個体群の激減ということによって、再び自然環境を取り戻そうとします。したがって、私たちは、生態学の立場から見まして、この程度の自然破壊、この程度環境破壊で人類が当分の間に滅びたり、日本民族が滅びるようなことは考えられませんが、少なくても、たとえば首都圏三千万の中の二千八百万人くらいが、何らかの形で急速に激減する直接の影響、あるいはじわじわとやるかもしれませんが、そういう危険性は——そのままもし、こういう法律ができてうまく押えられればいいのですが、いけば、たとえ善意で行なっても、そういう人類の、あるいは日本民族の大量死の危険性すら、生態学的にはこれは予見せざるを得ないわけでございます。したがって、実は生態学的な最適条件というのは、すべての生命集団におきまして最高条件のやや前の、すなわち生理的な、社会的な欲望が、すべてが満足できる。その条件のやや前の、ややきびしいがまんを強要される、そういう状態でございます。したがいまして、私たちは、多少、産業廃棄物や、あるいは自然の保護などの問題におきまして、われわれの、あるいは皆さんの御努力によりますところの、いわゆるGNPが一五%が五%に落ちましても、私たちの、そして皆さんや皆さんの家族や、そして皆さんの子供たちが、きょうもあすも生存権が保障できるだけの生活環境を先取りしていただきたい。  自然には、ちょうど人間のからだと同じように、強い自然と弱い自然がございます。たとえば、ほっぺたのようなところは、どんなにつついてもだいじょうぶでございますが、指が一本目に入れば、目がつぶれてしまうわけでございます。皆さんは、自分のからだでそれを御存じになりながら、自然の利用におきましては、ほっぺたも目も同じように毒をかけ、あるいはブルドーザーで押しているわけでございます。したがいまして、どうかよりよい人間の生存環境を先取りするためには、どうしても自然の能力、自然の強さ、弱さ、自然の許容限界を先取りして、そのワクの中でのよりよい発展をするのが最も理想的だと思います。  私たちの立場、たまたま植物生態学を専攻していますが、そういう立場から申しますと、たとえば、生命集団の中で、最も基本的で、最も量的に多くて、最も本質的な機能を果たしているのは、実は緑の植物でございます。したがって、西ドイツのルール地方や、東ドイツのアイゼナッハの鉄鋼業地域でやっていますように、直接具体的な計量的な、いわゆるPPM手法によって亜硫酸ガスなり一酸化炭素を押えることも、すでに病気が出ている、個別的ではありますが、局地的に生命に影響を及ぼしているところではこれはやむを得ません、やならければいけませんですが、それだけではわれわれの生存環境は先取りできない。少なくとも人間も含めた生命集団が、持続的に保障できるだけの、生きている緑の保障、生きている郷土の森の復元を考えていただきたい。  われわれ日本民族は、ヨーロッパ民族よりはるかにすぐれた生活をして現在まできております。ヨーロッパ民族は、一度はヨーロッパ大陸も、現在地中海地方でごらんになればわかりますように、林内放牧によりまして、全部ステップ、荒れ野にいたしました。われわれの祖先は、弱い自然である斜面であるとか、水ぎわの森は残してきた。そして集落の中には郷土の森を、神社林やお寺林や屋敷林を残して、自然の郷土の緑のフィルターの中で実に共存し、それが最近百年間の新しい日本民族のエネルギーの根拠、基礎、潜在エネルギーの保留地になったわけでございます。残念ながら現在の開発は、そのような、都会におきましてはいわゆる過開発、あるいは産業公害により、そしていなかにおいては過疎村によって、日本民族のエネルギーの根拠地は、都会にもいなかにも失われつつあるわけでございます。したがいまして、どうかよりよい日本民族の発展を、そして今日と同じようなよりよい将来の、あすの活力のエネルギーの貯蔵庫を、都市の中にもそして都会の中にもつくっていただきたい。これは与党野党というようなそんな小さなけちな問題ではなくして、日本民族が一致して、どうか皆さんが自分たちの、そして自分たちの子孫のために考えていただきたい。——笑いごとではございませんです。実は皆さんは、もし生命集団のバランスがくずれたときに、だれが最初にだめになると思われますか。私たちは、たとえば尾瀬ケ原の湿原や、あるいは富士山のスバルラインで調べますと、生活環境のバランスがくずれたときに最初にだめになるのは、生活環境のバランスのとれていたときに、最も優先して、最もいばっている各分野の最上層、すなわち植物社会では森林の高木層、たとえば湿原でございますとミズゴケ類、それから富士のスバルラインの亜高山帯でございますとシラビソ、オオシラビソが最初にだめになるわけでございます。むしろ公害や自然破壊による生活環境のバランスがくずれたときの第一期症状は下克上であって、下のほうのは一時的によくなる。さらに環境条件が悪くなりますと、下克上を起こしたのもだめになって、外人部隊が入ってくるわけです。いわゆる植物の世界では帰化植物です。すでに東京都内におきましては、皆さんの住んでいらっしゃるこの付近は、実は八十数%から九十数%は帰化植物、すなわち植物の世界は第二期症状の末期に至っている。第三期は死の砂漠でございます。宮城の中ですら八九%でございます。皆さんが、まだPPMで、たまたま現在計量化できるそのものによって、だいじょうぶだ、だいじょうぶだと思っていらっしゃる間に、人間も含めた共存共死の運命共同体の一番基本的な郷土の植物の世界は、すでに荒廃し、第二期症状の末期、あとわずかで死の砂漠になろうとしているわけでございます。したがいまして、こういう時期におきまして、一方においてはそういう現代の計量的な方法で自然環境を先取りすること、公害を防止することが大事でございますが、実は、いまの科学を過信していただいては困るわけでございまして、現在計量化できないけれども、生命に有害ないかに多くの物質廃棄物がわれわれの周辺に出されているか、そしてまだだいじょうぶだと思う自然破壊が、どのようにわれわれのエネルギー根拠地、エネルギーの貯蔵庫を破壊しているかということに思いをいたしていただきたい。  したがって、少なくとも一方においては、物理化学的な手法によって、自然の破壊、公害を先取りし防止すると同時に、もう一つは、生命集団の側からその基本的な分野としての植物の世界、植物がどのように動いているかということを考えていただきたい。ドイツやアメリカやソ連では、現在植生図、ベジテーションマップによりまして、それぞれの国土の弱い自然と強い自然、あるいは国土がどのように現在環境が変えられているかというのを、生きものの側から、生命集団の側から、植生の側からの自然の診断図をつくっています。そして生命集団の側から自然の能力を先取りして、そして自然の能力のワクの中でのよりよい発展を考えているわけでございます。したがいまして、せっかく政府及び各野党の皆さんが、ここで日本民族のあすの生活を保障するための、このような基本法をおつくりいただける以上は、どうか小さな次元における争いは——争いといいますと、それこそたいへん失礼でございますが、そういう言い合い、行きがかりにこだわらないで、きょうとあすの日本民族のエネルギーの貯蔵庫と生命を保障するための、よりよい法案をつくっていただきたいと、一科学徒の立場で心からお願いするわけでございます。
  10. 加藤清二

    加藤委員長 宮脇参考人の説明は終わりました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。     —————————————
  11. 加藤清二

    加藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。理事会の申し合わせにより、参考人に対する質疑は各自十五分程度にお願いいたします。  なお、板橋参考人は正午退席予定でございますので、同君に対する質疑は正午までにお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本幸雄君。
  12. 山本幸雄

    ○山本(幸雄)委員 いま四方から、それぞれの御専門に基づいた貴重な御意見を拝聴をいたしました。ただ各党から出されましたので、和達先生は自然科学者であられますが、どちらかと申せば、やや社会科学の御意見が多かったようにも存じます。  そこで、いろいろ御意見を拝聴いたしました中で、将来の日本公害基本法のあり方について、貴重な御意見がございましたが、基本法でございますから、将来を見通して、相当長きにわたって改正する必要のないというのが本筋であることは言うまでもない。しかしながら、人間のやることでありますし、こうした公害というものが、ただそういう法令なりあるいは理念だけで撲滅できるものであるのかどうか。やはり現実に即して、実効のあがる方法を考えていかなければならない。しかもわが国は、いわゆる日本的な社会経済的な風土のもとで、この問題と取り組まなければならない、この問題に挑戦をしなければならないという局面に当面をしておる。そうすると、要するにこうした現実に対しまして、この現実に立ち向かいまして、十二分に効能のあがる方法を考えていかなければならないことは当然である。そこで、この理念、この法律に従いまして、これを運用をして、現実にりっぱな成績をあげていく、そしてまた、それに対して十分なる財源の手当てをしていくということが必要なことは、これ言うまでもありません。  そこで、政府のほうとしましても、自然環境についても決して無視しておるわけではありません。今度の改正案にも、自然環境をも尊重しなければならないということは入っておりますし、施設環境につきましては、これはそれぞれに今日の非常に複雑化した、巨大化した社会経済機構に対しまして、それぞれの分野で長期的な見通しに立った計画に従って、十二分に実効のあがる施設というものの実現に向かって、御承知のように、高度開発のためには新全総というものがございますし、あるいはまた、将来の日本経済のあるべき姿に対しては、新経済社会発展計画というものもありまして、それぞれの分野で、施設、環境整備に向かって邁進をしておるのであります。そういう現実を見まして、これらの現状に即して、そして将来をよりよい私どもの豊かな住みよい社会にしていくための今回の政府案基本法が出てきたものと私は存じておるのでございます。  そこで、現実にこれらの公害対策をやっていきまする上におきまして、先ほど来いろいろ話が出ております中に、科学技術というものが公害の撲滅の上に果たしておりまする役割りは、これは非常に大きいわけでありまして、公害解決の最も重要なる手段であるわけであります。しかしながら、これらの科学技術の今日の現状は、先ほどもお話がございましたように、生産の増強であるとか、経済成長のための科学技術というものは、非常に発展をいたしましたけれども、しかし、ここの数年間に爆発的に出てきたところの公害に対して立ち向かう、科学技術の著しい立ちおくれというものがあるように思われる。行政現実にやる場合におきましても、一体どこまでがはっきり明らかになっておるのか、また、どこまでが一体明らかになっていないのか。では、その明らかでないところの限界というものを考えて、一体どのような可能性が考えられるのか。また、もしそれを目をつぶって、ある程度のところをやろうとするならば、一体どんな誤差が伴うという、あぶなっかしさ、危険性があるのかということが、これらの公害対策を、実際の運用の上において、判断をきめる上において、私は非常な問題点が生まれてきておるように思うのであります。  したがって、どうしても技術の発達に伴って生まれた公害でありましょうが、しからば、これを押える技術の進歩というものが、人間の英知によって生まれ出さないはずはない。いま、宮脇先生は、科学を過信してはいけないという話でございましたが、今日のこれらの公害対策の上におきまして、あるいは理工学系の学問、あるいは生物学的な学問、いろいろな自然科学の分野というものの公害に対する科学技術の新しい発展というものは、またそれはひとつ社会科学とも結びつきまして、共同の姿勢でこれらの問題を人類のために解決をしていかなければならない、日本国民のために解決をしていかなければならないということだと存じますが、一体それには、これからどういうふうにしていったらいいものであろうか。政府は、国立の公害科学研究所をつくるなどといっておりますけれども、先ほど野村先生のお話によれば、大企業は、すでに新しい公害防止技術の開発をはかって、相当進んでおるというお話も伺うのでありまして、しからば、大学と国家の行政機関、あるいは産業との共同的な体制というものはできないものだろうか。そういう公害科学技術というものとの関連といいますか、将来への前進という上において、特に理工学者としての和達先生の御意見をひとつ承らせていただきたいと思います。
  13. 和達清夫

    和達参考人 山本先生から、科学技術の果たす役割りについてお話がございました。確かに私は公害関係、特に人間というものを介しての、人間のしあわせというものを介しての研究というものの立ちおくれを感ずるものであります。また、科学というものが、一般にこのむずかしい問題を早急に解決できるとも思えないのであります。しかし、われわれはこのような事態に直面いたしますと、特に科学技術がここで十分に役割りを果たして、私が先ほど申し上げましたように、自然の循環を妨げないように、人間だけでもって終わらせるような一つ循環をつくり上げる、そうしてそれがよき環境をつくり、人の健康をそこなわないようにするというための研究が必要であると思うのであります。  それで、この振興でありますが、第一番は、何といっても研究者の自覚であります。それぞれの研究者がここによく自覚をしまして、そうして研究者自身がどうしてここに力を注ぐべきかを考える。研究者のその意見やり方についての申し出につきましては、国としても十分にこれを援助し、振興させていただきたいと思うのであります。  なお、研究というものは確かにばらばらでありましては成果のあがりにくい面もあります。したがって、研究者が互いによく連絡し合い、励まし合ってできる体制をつくることが望ましいのであります。よく研究の一元化ということを申されますが、ある場合にはそれは成功いたしますが、この場合につきましては、十分に、形式的な一元化にならないように、しかし、実質的に研究が相集まって大きな力となるようなくふうをすべきであろうと思いますし、これにあたっては、研究者の意見も十分に尊重されることをお願いいたしたいと思います。
  14. 山本幸雄

    ○山本(幸雄)委員 野村先生は、日本学術会議にも御関係がおありのようでありますので、いま、一つ理念としての科学技術公害とのあり方を和達先生からも伺いましたが、もう一歩現実の問題として、さらに、一体どういう具体的方法をすれば、この公害というやっかいなしろものを退治する科学技術の前進がはかれるか。先ほど例を申しましたように、大学と国と産業の共同化をはかるとか、そういうものは一つの例と思いますが、そういう具体的方法をひとつ野村先生にお示しをいただきたいと思います。
  15. 野村平爾

    野村参考人 野村であります。  ただいま具体的な方法をということでございますが、たとえば昭和三十九年であったかと思います。これは三池炭鉱の爆発と、それから鶴見の国鉄事故との直後でありましたが、学術会議は、この災害問題について、本格的に取り組む必要があるということを考えまして、そして当時朝永会長の時代であったと思いますが、私が選ばれまして、この災害に関する特別委員会をつくって、その委員長に選ばれたことがございます。  その際に、政府に対して幾つかの要望を出しました。たとえば、もっと一般的に、工学者に対して安全衛生に関する知識を与えるような教育をしなければいけないというようなこととか、たとえば安全工学というようなものについては本格的に取り組んでほしいのだとか、あるいは実際に災害が発生した場合には、単に技術者のみならず、社会科学者もまぜたところの調査団を派遣して、原因の究明に当たらなければならぬとか、こういったような、いま正確には記憶いたしませんが、政府に対する勧告をいたしました。  ところが、その中でわずかに実施に移されましたものは、横浜国立大学における安全工学の講座が一つできただけであります。残念ながらそれだけでございます。当時、公害問題に対して引き続き討議するということを考えましたが、実は、特別委員会が予算上の関係でもって数が限られております。続行することができないために、やむを得ず今日まで、その空席のできるまで待たねばならなかった、こういう事情がございます。  第二に、私どもはこういうようなことをいたしたのでありますけれども、個々の科学者はそれぞれに取り組んでおります。それは多くの企業から出ました公害問題について、それをほんとうに援助し、あるいはどうしたらいいかというようなことに対して、住民の相談にあずかっているのが多くは科学者なのです。このことをひとつお考え願いたい。ところが、そういう科学者は、決して社会的には恵まれておりません。手弁当で仕事をしておるというようなことをぜひお考え願いたいと思います。  第三番目に、審議会を今度新しくおつくりになる、このことはけっこうでございます。ところが、良薬口に苦しといいますが、なるべくきびしいことを言うような人々を集めてお話を伺っていただきたい。政府の考え方に同調なさる方ばかりでないような、そういう軍門家を選んでいただきたい、私は、このことがぜひお願い申し上げたい具体的な考え方でございます。  なお、学術会議は、今日このことについて、すでに三回シンポジウムを開いております。各分野の人々の、シンポジウムを開いて、意見の交換をしております。それも年間四回しか予算がございませんから、手弁当で集まってやっております。私どもも手弁当で大阪まで参りました。そういうような形でやっていて、そしてなお、できるならば共同の学会をつくったらどうかという意見も出ておりますが、共同の学会よりは、むしろそれぞれの専門領域において研究したことについて連合をする学問的組織をつくる必要があるということで、現在その着手に進んでおります。こういうような状態でありますし、各大学におきましても、それぞれに公害問題についてはもう取り組んでおります。これはもう単に個人の取り組みではなく、組織としての取り組みにまで自発的に進んできておる、こういう現状にあるわけであります。  それから、実は現在の科学を見ますと、たとえば工学方面などでは、とりあえず直接に利潤に響くような技術の開発は歓迎せられます。しかし同時に、直接に利潤に響かないような、公害の防止などの技術者というものは、あまり歓迎されておりません。この点が今後おそらく変わってくるだろうと私は予想しておりますけれども、こういう日の当たらない科学者というものを、もっと大事にしなければならないのではないか。それだからこそ、学術会議は、基礎的な学問の振興ということに特に力を入れてほしいということを、お願い申し上げている次第でございます。
  16. 山本幸雄

    ○山本(幸雄)委員 いろいろ伺いましたが、私のほんとうに伺いたかったことは、学問的な、そういう象牙の塔にやや立てこもるというような若干の感じが私はぬぐい切れないのでありますが、そういうことではなくて、もっと街頭に出た、つまり現実公害が毎日目の前に、先ほどの話のように貴重な生命をおかしておるわけでありますから、もっと行政機関とも共同をし、さらに産業の研究ともひとつ共同した、打って一丸とした、公害撲滅のための科学技術の樹立ということが、私は非常に必要であるように存ずるわけでありまして、以上、ひとつ御希望として申し上げておきたいと思います。  さらにつけ加えまして、もう一つ和達先生に一言だけ最後に伺いたいのですが、公害対策審議会会長をされまして、先ほど来審議会の結論について若干お話がございました。その中で、行政機構の一元化ということがございました。今日の行政機構は、それぞれ縦割りでやっておるわけでありまして、政府公害対策本部は、一つの調整機能を発揮しておるものであります。  そこで、一体、全体を一つの機構の中にたたき込んでまとめたほうがいいのか、あるいは各省において、各省のそれぞれプロパーの業務と関連をしながら、強力にそれらの公害施策を進めていくということの上において、全体を内閣なりそれぞれが調整をしていく、そして全体の調和をとっていくというやり方と、二つあるように思われますけれども、今日の日本行政機構の現状あるいは風土、あるいはいままでのしきたりというものをぶち破らなければならぬものもありますけれども、しかし、現状を踏まえた場合に、一体どういうふうなものがよろしいかということについての、和達先生の御所見を伺いたいと存じます。
  17. 和達清夫

    和達参考人 公害対策審議会においては、ともあれ、公害対策が確実に実効果をあげるように、推進できるような体制について、一元化というのは十分に検討に値するから、検討していただきたいということを強く要望したわけでありまして、現在のこういう幅広い問題に対する機構の立て方については、一得一失、いろいろの問題があると思いますが、要するに、最も実効果をあげ得る強力な体制を望むという、その御検討をお願いしておるわけであります。
  18. 加藤清二

    加藤委員長 次は、島本虎三君。
  19. 島本虎三

    ○島本委員 今回の公害対策基本法の一部を改正する法律案環境保全基本法案、この二つ法律に対しまして、貴重な御意見を賜わりまして、私もそれを聞いておりまして、まことに得るところが多いのであります。それで、順にちょっとお伺い申し上げていきたいと思いますので、この点よろしくお願いしたいと思います。  まず、和達先生にお願いいたします。  先生は、いわゆる環境保全基本法、これは日本の将来の姿として望ましい、よろしい、政府案現実的に効果あるものである、こういうようなことから、これは現実的に効果あるものだとして、これをとっておられたようでございます。そういうふうに受け取りました。実際この環境保全基本法をごらんになったと存じますが、現在のこの公害対策基本法そのものは、四十二年にできて以来、公害という現象に対する対策ばかりに追われて、次から次へと進む産業の発展に追いついていけない。したがって、これがたった三年にして改正せざるを得ないように、初めから運命づけられておったのです。また同じような考えで、ただ「経済との調和」をとっただけで今度やってきたわけです。そういうふうになりますと、同じ愚を再び繰り返す可能性を持った法律案である。こういうようにわれわれは存じますので、高い次元に立った考えを入れて、ここに環境保全基本法案なるものをつくり、出したわけであります。現実的ではないかと申しますと、まさに適切な措置があり、また財政的な措置も加え、同時にこれは人材の養成も含み、それらの機構の一元化を含み、全くこれによったほうが、現在よりもいいというような、現状よりもよろしいという一つの対案としてこれを出しているわけです。先生の場合は、どうも現実的には政府案のほうがいいというお考えでありますが、この点は、われわれ現実的な問題として、政府案を認めると、三年にして変わったと同じような状態を、再び繰り返されるおそれがある、こういうような法律案で、そうでない次元に立つならば、この環境保全基本法なるものがいいのだ、こういうように思うわけでありますが、御見解をひとつ承りたいと思います。
  20. 和達清夫

    和達参考人 環境保全基本法が、私個人にとりまして、非常に魅力的であるということは申し上げました。私は、この問題の基本はここにあると存じますし、将来の日本をこのような考え方で、またこのことを推進することが最も大切であるということは感ずるのであります。ただ、日本の現在の公害問題というのは、残念ながら非常に切実な、病気で申せば病人を出しておるような問題でありまして、それがなお今日も残念ながら続いておる状態であるので、行政措置まで十分考えられ、それを実行していこうという政府案について、私はそれを下げて、いま、この理想といってはなんでありますが、非常に理念の高い、将来性のある環境保全基本法を採択するのを、少し待ってはどうかというような気がいたすだけでありまして、私にとってどちらの法案がよろしいというようなことを申し上げるだけの知識と勉強はいまのところございません。
  21. 島本虎三

    ○島本委員 ありがとうございます。やはり推薦されていますから、それは、はっきりしたことは言えないでしょうけれども、もうひとつはっきりしたことを言ってほしいと思っております。大体わかりましたから、なお今後ともこの環境保全基本法、十分われわれにひとつ新しい見解を今後のためにお示し願いたいと思います。  次に、野村参考人にぜひお願いしたいと思います。さすがに私どもも聞いて打たれるところがございまして、大いに勉強になったわけであります。しかし、その中でぜひ聞いておきたいと思いますことは、現実の面でいろいろと御意見の御開陳がございましたが、規制基準が各法ばらばらになっていること、その内容が政令に委任されている、こういうような点が相当われわれの間では問題になったわけでありましたけれども、野村参考人は、こういうような点、また学術会議の会員といたしまして、どのようにお考えでございましょうか。この点ざっくばらんにひとつ御意見を承りたいと思います。
  22. 野村平爾

    野村参考人 政令に委任された基準というもの、たとえば排出基準等、基準というものをどうとるかということでございます。これは学者によりましてきびしい基準を示す人もありますし、それから、よりゆるやかな基準を示す人もあります。そのことよって、行政当局も迷われるということがあるかもしれません。しかし、ほんとうに健康や生命を守るという観点に立つならば、最もきびしい基準というものを打ち立てておくということは、これは大切なのではないかというふうに思います。ただその場合にも、私が申しましたように、きびしい基準を立てても、なおかつ人口の密集し、あるいは産業施設のたくさん密集している現況のような場合には、大都市などにおいては、それでさえも絶対に公害病患者などが出ないという保証はございません。そこで、そういうような場合について、たとえば一定の権限地方自治体等におまかせになる、そういうことを法律で定めておく必要があるんではないか、これが地方自治法との関係から必要ではないかということを先ほど申し上げたわけでございます。基準はさまざま——私はよく聞かれるのです。学者に聞くと基準はまちまちである、まちまちの基準では、私たちは仕事がやれない、こういうような言い方をなさいます。私は、この考え方はまだ経済との調和という考え方から抜け切っていない考え方だ、生命優先という考え方、健康優先という考え方、環境優先という考え方をお考えになるならば、基準は幾つかの説があるならば一番きびしいところに設ける、こういう態度が望ましいことだというふうにお答え申し上げておきたいと存じます。  なお、これは実は——委員長よろしゅうございましょうか。先ほどちょっと山本委員から、象牙の塔の中にいないで、もっと具体的にやれという——私たちも街頭へ出てやりたいのでありますし、行政機関とも連絡をとりたいのであります。ただ残念ながら、行政機関から一度もお声がかからない、こういうような実情でございますので、なるべく広く声をかけていただきたいということをお願い申し上げておきます。
  23. 島本虎三

    ○島本委員 横浜国立大学宮脇参考人にちょっとお伺いしておきたいと思います。  先生のいろいろな公述がございました。その中に、ほんとうにまあこれではと思う点がたくさんございました。先生の公述、御意見の開陳を聞いておりまして、先生の場合には、特にわれわれ社会党をはじめとして野党が、現行に合わせながらも、現在の政府の考えている現実に即するようなこういうような考え方ではおそいので、一歩先に環境保全するために保全を主にして、そのあとにずっと具体的な事例を持ってくるような、環境保全基本法をつくってみたわけです。先生のお立場からし、またいろいろと現在の御研究の中からして、もしわれわれがつくっておるこの環境保全基本法案でも、これでも手ぬるいじゃないか、このくらいではすぐ追い抜かれるじゃないかという、こういうような危惧をさえもわれわれは感じないわけではございませんでしたが、先生、ひとつこの野党案の環境保全基本法、これでもまだまだなまぬるいような気さえして、私はりつ然とするようなものがあったわけですが、先生の御意見を賜わりたいと思います。
  24. 宮脇昭

    宮脇参考人 御質問に答えさしていただきます。  環境保全というのは非常に消極的でございまして、われわれが生きていくためには、人間も含めて、他の生産者あるいは他の低次消費者あるいは分解還元者も含めて、一つ生物共同体——共同というのは生物社会学的にあるいは生態学的に助け合うのが共同ではございませんです。食うものと食われるものの間、たとえばヘビとカエルの間にすら微妙な共同が成り立っている。すなわち、幾らヘビが出てもカエルが絶滅したという例は聞かないわけです。そういう意味におきまして、われわれ人間が、将来のよりよい発展をするための生命の保障を得るためには、どうしても最低限の他の生物との共存関係が存続するだけの、エコシステムといいます、あるいは生物共同体とその環境を先取りしなければならない。したがって、保全という消極的なことばよりも、これは当然生命の保障、生命集団の生活環境の保障ということを、これは国によって国情が違うとおっしゃいますが、日本でも外国でも、人間が生きものの一員であるということは生態学的に違わないわけです。したがって、その点は、どうぞアメリカのニクソンの環境教書やヨーロッパ一九七〇自然保護年の精神を意とされまして、たまたま出てきたものに対して、こう薬を張る時期はすでに終わっていますので、もちろんそれによって命に影響を及ぼすときには、こう薬を張ることも大事でございますが、現在私たちがまだわからない、いかに多くのものが出ているか考えていただきたい。たとえば、終戦直後のあの世界の人たちが栄養失調のときに、世界じゅうの人のシラミを退治してくれたDDTは、その発見者は、文明が生んだ今世紀の妙薬として、スイス人でございますが、ノーベル賞までもらっているわけです。その世界の妙薬が、世界の毒薬として世界の生態系をおかすということがわかるまで、二十数年かかったわけです。わかったときには、一度もDDTをまいたことのない北極のトナカイの中からも、南極のオットセイの中からも検出されているわけでございます。したがって、これは、われわれがどんなに産業を発展させ、どんなによりよい文化生活をするためにも、まず生きていることが最低条件であります。したがって、生命の保障のためには、これはいまのことと同時に——個々の具体的な対策を自民党案が出していらっしゃる。これも私はないがしろにすることはできない、すでに生命関係があるわけですから……。しかし、それだけでは不十分であって、それと同時に、いままで個別的に何々がだいじょうぶだ、PPMでだいじょうぶだといっている間に、そういうものが全体的に相乗的に、また毒か薬かわからない、現在の科学が計量的に評価できないものが相乗的に蓄積して、われわれの生存環境全体がある点まで悪化したときに、残念ながらすべての生命あるいは生物は、あっという間に大量死するのです。皆さんは、皆さんの周辺から、ホタルがあっという間になくなったのを御存じでございますか。あるいは皆さんの郷土の森の、あの大木であったモミやアカマツが、東京、大阪、名古屋、横浜、そして現在の人間がつくった、最も金と技術を集中してつくった新産業都市である四日市や、水島や、高岡や、尼崎や——最近われわれが調べておりますから間違いございませんですが、尼崎やあるいは川崎に一本もないわけです。すなわち、まだだいじょうぶだ、だいじょうぶだと思って、たまたま計量できる幾つかのファクターをおさえて、まだだいじょうぶだと思っている間に、人間に対する生存環境全体がある点まで悪化をしますと、あっという間に大量死するわけです。われわれの運命共同体の一部である、モミの木やホタルやアカマツがすでに示しているわけでございますから、その点の生態学的な生命集団と環境との微妙なバランス、そしてそれが破綻したときにどうなるかということを、どうか十分御理解いただいて、よりよい基本法をつくっていただきたい、そういうふうにお願いしたいと思います。
  25. 加藤清二

    加藤委員長 時間です。
  26. 島本虎三

    ○島本委員 もう時間ですか。まだもう二分あります。
  27. 加藤清二

    加藤委員長 時間ですから、結論を急いでください。
  28. 島本虎三

    ○島本委員 では板橋先生にお伺いしますが、いまいろいろと御意見の開陳がございました中に、研究機関のあり方についていろいろ申されましたが、先生に聞くのはどうかと思いますが、先生の立場が一番いいと思います。各省でそれぞれやっている現在の研究機関がございます。しかしながら、やはり企業とまたは行政とに密着した機関が多いのでありまして、いかにございましても、公害防止のためにあまり役に立たないのではないか、この際一元化して、その点は高能率的にこれも運営したほうがいいのじゃないか、こう思っているのですが、ひとつ先生の御意見を賜わっておきたいと思います。
  29. 板橋郁夫

    板橋参考人 それでは、ただいまの御質問について私の考えを申し述べさしていただきます。  私は、この汚染の防止ないしは排除、予防の問題についてはすべて特殊な行政的な機関というものを設けて、その中で全部まかなったほうがいいと考えておるわけです。したがいまして、トラブルが起きたときの調停も、行政的な調停としてそこでやる。だから、日常の研究についても、その委員会が一切取り仕切ってやれるような制度が最も能率的でよろしいように思います。と申しますのは、企業は企業で自分の立場から有利なといいますか、データの取り上げ方でも、自分に都合のいい取り上げ方をしましょうし、それから官庁のほうは官庁のほうで、また自分のなわ張りといってはなんですけれども、いわば職責の範囲内で研究をするのであって、それ以外のことについてはあまり関心を持たないというか余分なことをしないというような、日本人の通弊でもありますけれども、お役所は特にそうでありましょう。そういうことから能率が悪くなります。  そこで、あくまでもそういう研究体制も、行政機関も、トラブルの解消も、それから住民の世論を掌握するのも、中央の審議会、それの下部機構である都道府県、市町村の審議会——審議会というとちょっとこの法案に盛られている審議会と私が考えているのは違うのですけれども、そういうような特別な会議体で、一本でまかなっていただきたい、さように思うわけであります。
  30. 島本虎三

    ○島本委員 ありがとうございます。
  31. 加藤清二

    加藤委員長 次は、岡本富夫君。
  32. 岡本富夫

    ○岡本委員 参考人の先生方には、たいへんお忙しいところありがとうございます。  最初に、板橋先生が何か大学の講義があるそうでございますので、先生からお聞きしたいと思います。
  33. 加藤清二

    加藤委員長 申し上げておきます。  零時というお約束でしたが、皆さんの熱心な質問にこたえて、二十分だけ猶予を賜わりましたから、さよう心得てください。
  34. 岡本富夫

    ○岡本委員 ありがとうございます。  そこで、先ほど民法学者の立場から、無過失責任についての御高見をいただいたわけでありますが、公害問題は、無過失でないとだめだ、こういうお話でありましたが、それで加害者である企業と被害者である住民の皆さんとの公平の原則というものは相違しないか、これが一点と、それから、こういうことがいま外国の事例にたくさんあるのか、こういう二つの点についてお聞きしたいと思います。
  35. 板橋郁夫

    板橋参考人 それでは、ただいまの御質問に私の考えを申し述べさせていただきます。  第一点、公平の原則という点でございますが、この公平の原則というのはどういう意味になりましょうか、たとえば原因を与えた者に責任をとらせるという意味で、そういう意味では立証の問題がむずかしいから無過失だということであれば、やはり私は原因を与えた者が原因主義的に責任をとるべきである、そうしますと、これは解釈論というよりは立法的な考え方になるわけですけれども、どうしても補償あるいは賠償ですけれども、補償と賠償では多少ことばのニュアンスが違いますが、とにかく被害者に補償しやすいような立法的なものの考え方がより公平であろう、そういうように考えておるわけであります。  それから、第二点の無過失損害賠償責任についての外国立法例はあるかという点でございますけれども、私の記憶しておりますのでは、西ドイツの水利規制法、一九五七年の立法ですけれども、これの二十二条の第二項というのは、無過失損害賠償責任の規定であるということになっておるわけです。どういう規定かといいますと、どういう原因であれとにかく水質というものを変更した、わが国の方式でいえば汚染でありますけれども、そういうような水質に影響を及ぼした場合には、理由のいかんを問わず責任を負わされるぞという規定になっておるわけであります。たとえばパイプを利用して油を送っている。ところがまた何かの関係で、それは事業体では全然責任がないわけですけれども、パイプが破れて漏れたという場合、たちまち水が汚染するわけです。その場合の責任は当該事業体の責任であるというような解釈になっております。したがいまして、これなどは典型的な無過失責任の例であるわけであります。ただし、これは不可抗力の抗弁が立証された場合には免責になるというただし書きがついておりますので、御参考までに付言させていただきます。
  36. 岡本富夫

    ○岡本委員 ありがとうございました。公害の場合は、無過失責任を入れるべきだ、無過失賠償責任を入れるのが普通だ、こういうように民法学者の立場からしますと、政府案よりもわれわれ野党三党の出しておる環境保全基本法のほうがやや適切である、こういうようにお聞き取りいたします。  次に、野村先生と宮脇先生にお聞きしたいのですが、御承知のように先ほどから環境基準について非常に力説がございました。この環境基準が要するに人間の健康の保持と、それから生活環境保全ということになりますけれども、第一義にするのはやはり人間の健康保持だと思うのであります。ところが、この大気汚染防止法、こういうものを見ますと、厚生省と通産省との共管というふうになっておりまして、これはあたかも改正前の産業、経済との健全な発展との調和、こういうものの考えからやはり出ておるのではないか。環境基準をきめるにあたっては厚生省がそうした人間の命の問題を扱っておりますので、やはり厚生省令できめるのが正しいのではないか、こういうように思うのであります。それについてひとつ御高見をお伺いしたいと思います。
  37. 野村平爾

    野村参考人 どこが管轄するかという問題でございますが、これは海洋油濁の問題にしましても、それから水質汚濁の問題にしましても、省庁がたいてい一つないし二つに限られております。関係するところは非常に広いのではないかと私は考えるのです。そういう意味におきまして、やはり通産省だけの管轄とかあるいは厚生省と通産省の相談だけできまるのだとか、こういうことにはならないのではないかという気がするわけなので、もう少し幅広い考え方というものが必要なのではないだろうかという気がしておるわけです。ただし、それだから公害庁のようなものも特別につくって、そこでやれというような積極的なことまで私は申しておるわけではございませんけれども、せっかくこの基本法のほうで経済との調和条項をはずしましたから、そうして国民生命と健康というものを優先させるという考え方に立ったのでありますから、その角度で所管をしていくという、こういう考え方に徹していただきたい、こういうふうに考えております。
  38. 岡本富夫

    ○岡本委員 大体、いままで環境基準とか、こういうのは政令事項でございまして、見ておりますと、厚生省が原案を出します、これは人の健康の立場からします、しばらくすると今度は通産省のほうで産業の育成のほうの立場から出して、そこで二つ足して二で割るのではないでしょうけれども、そうした非常にゆるいところの環境基準、あるいはそうした基準にきまっておるような状態であります。したがって、私はやはりこの人の健康を守るところの厚生省、それに対するところのいろいろな科学技術も必要と思いますけれども、それは科学技術庁あるいはそういったところから参考意見を聞いて、やはり厚生省できめるのが正しいのではないか、こういうように私は思いますので、再度ひとつお聞きしたいと思います。
  39. 野村平爾

    野村参考人 もちろん、厚生省の設置の目的から考えますと、国民保健というものをになうものは、これは厚生大臣でございます。だから、そういう角度で考えるとすれば、そこが中心にならなければならない。だけれども、実情を知る上において、他の方面の知識を必要とするということであるならば、これは審議会その他において十分に検討していただくことができるのではないかというふうに私は考えております。
  40. 岡本富夫

    ○岡本委員 よくわかりました。審議会なんかできめる、こういうことでございます。  それで、時間が迫ってまいりますから、次に、まことに素朴な質問でございますが、宮脇先生に、現実に立って私どもは立法しなければなりませんので、生態学者の立場から、この自然還元の許容限度、たとえば硫黄酸化物の環境基準をきめる、あるいはまた一酸化炭素の環境基準をきめたり、あるいは窒素酸化物の環境基準、こういうものはやはり何と申しましても、自然還元の許容限度、これがなければ先生のおっしゃった自然破壊から守るわけにはいかないと思いますので、それについてどういうようにすれば、たとえばそうした科学者を集めるとか、どういうような処置が必要なのか、こういう御高見がいただけたら幸いだと思います。  その前に板橋先生、二十分になったらお戻りなんですが、委員長に言ってお引き取りいただいてけっこうでございますから。では宮脇先生お願いします。
  41. 宮脇昭

    宮脇参考人 現在行なわれているのは、たとえば着地濃度そのほかで、いわゆるPPMで行なわれていますが、これはすでにソ連なんかでもやっていますように、そろそろ量を考えていただかなければいけないということ、もう一つは個々のものを幾ら押えましても、まだわからない新しいものがずいぶん出てくる危険性がございますから、そういう物理化学的な手法だけでは、どうしても人間が大量死するまで、どこまでがほんとうに基準かわからないわけでございます。したがって、一方ではそういうふうな、いわゆるフィジカルな——環境汚染というのはだんだんフィジカルにくるわけですが、そのフィジカルなものを押えると同時に、もう一つはバイオロジカルな生物学的な面で、われわれの生物共同体の一部がどんどんと消滅し、破損し、破壊されているときに、それから逆に人間環境条件を先取りし、あるいは警告し、適当な措置を講ずるということを考える二つの方法を考えていただきたい。いままでの——われわれ生態学なんか自然科学の分野でも弱かった関係もございますしいたしますけれども、物理化学的な面が最も科学的であって、生物的な面というのは非常に古くさいような考え方があった、人間が生きものであって、生命を持っている限り、生物学的な立場生命の側から、エコロジカルな立場から、生態学的な立場からの生命集団の環境を先取りするということは、最も古くて実はスーパー進歩的といいますか、最も新しい方法であります。したがって、個々の環境条件が測定できないものでも、それを生命集団の側から見れば、死んだか生きたでわかるわけでございますから、そういう面を十分御一緒に御検討いただきたいというふうに考えているわけでございます。その生命集団の側と個々の物理的な方法と、両方からわれわれがどこまでやるべきか、あるいはどこまでが環境基準かを押えない限り、物理化学的な手法だけではどうしてもあと手に回るということを申し上げたいと思います。
  42. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、最後に和達先生にお聞きいたしますけれども、あなたはこの政府案は一歩前進の意味だ、現実に立った基本法改正案である、こういうようなお話がございました。これは実は私ども政府に、「経済の健全な発展との調和」というものをなぜとったのか、そうすると前のは悪かったのかと申しますと、これはそうではなくして、非常に疑いを持たせる、経済界とのつながりというものを疑いを持たせるというようなものだからとったのだというようなお話もちょっとあったように伺っておるのですけれども、ですからその点を見ますと、疑いだけでありまして、実施するときにはそう変わらないのじゃないかとも考えられるわけであります。  それに対して、今度私ども野党が出しておるところの環境保全基本法と申しますのは、先ほど宮脇先生からもお話がありましたように、後代の国民を守るためにはまだ少し弱いぞといわれるくらい、激励されるくらいの展望に立っておりますが、そうした二つを相対しまして先生の御所見を伺いたいと思います。
  43. 和達清夫

    和達参考人 御質問の件には、一番初めのときに大体お答えいたしたと思います。私は、この政府案は確かに前進しようとする姿勢が示されておると思います。また、その表現においても、憲章的の考えで強く打ち出しておられることも感知されます。それらを含めて、私は前の公害基本法から多少関係さしていただき、そして今日の公害問題に対し、特に日本における公害問題についての一貫した進み方というものを私はかなり重んじたいと思う次第であるのであります。  先ほど申し上げましたように、環境保全基本法は、私個人の公害問題に考えておるところと一致したる、私にとって非常に魅力的と申し上げましたが、これぞ根本的に公害問題を取り扱っておられる、将来の日本において、将来といってもそんな遠いことを言っているわけではありませんけれども、これが基本になるべきものと私は思うのであります。ただ率直に言わしていただければ、いまこの緊急なものに取り組んでいるのに、私などばそうは思いませんけれども、一般に多少焦点をぼかすというおそれもなきにしもあらず、また少しの幅の広さも、基本的なるがゆえに切実さを失う面もあるやも知れずという点は多少感ずる次第であります。
  44. 岡本富夫

    ○岡本委員 時間がありませんから質問を終わりますが、やはり将来の目標、長期展望というものをきめて、そうして年次計画を立ててものごとはやっていくべきであって、ただ目先だけでやりますと、非常に問題が起こる場合がしばしば私どもの生活現象にあらわれておりますので、やはりこうした環境保全基本法、そこら辺から出発をして、そしてこの現実の上に立って対策をしていく、これのほうがよろしいのじゃないかということを最後に意見みたいなものを申し上げまして終わります。
  45. 加藤清二

    加藤委員長 次は、西田八郎君。
  46. 西田八郎

    ○西田委員 参考人の方々、たいへん御苦労さんでございます。  最初に、和達先生にお伺いをいたしたいわけであります。中央公害対策審議会でいろいろ御苦労いただいておるわけでありますが、この公害対策上の一番問題点というのは何か、ひとつ率直にお聞かせいただきたいと思うのです。
  47. 和達清夫

    和達参考人 いまさら申し上げるまでもなく、人間尊重といいますか、近代の科学技術文明の誤り進まんとしていることを国民の一人一人、また国がこれを強く認識して、人間尊重精神あるいは遠い将来に及ぶ人類の正しい繁栄、幸福のために戦うということに尽きると私は思う次第であります。
  48. 西田八郎

    ○西田委員 おことばには出ませんでしたけれども、結局、やはり公害をなくするということは、企業家はもちろんのこと、国民全体、公害というものに対するモラルといいますか、そうした産業公害においては企業家のモラル、そしてまた廃棄物であるとか、あるいは水の問題等につきましては、国民全体のモラルの向上ということが非常に重要な問題と私は考えるのですけれども、そうした点について……。
  49. 和達清夫

    和達参考人 全くおっしゃるとおり、私は言い残したのを非常に残念だと思っております。
  50. 西田八郎

    ○西田委員 次に、野村先生にお伺いをするわけでありますけれども、やはりこうした公害が出てくることは、出さない前の予防措置というものが非常に重要ではなかろうかというふうに思うわけであります。そういう点で分析科学ということが最近非常に問題になってきておるようでありますけれども、そうした点について学会等ではどういうふうにお取り扱いになっておるか。——分析科学というふうに聞いておるわけですけれども。
  51. 野村平爾

    野村参考人 ただいまの御質問は、実は自然科学者に伺っていただきたい質問で、私はその方面の専門ではございません。しかし、実際に排出物質等をどう分析し、それがどう結合したらどんな影響を及ぼすかということの研究ですね、これはかなり基礎的な研究として、十分にやらなくちゃならない科学研究だろうと私は思います。宮脇さんのほうがあるいは詳しいのではないかというふうに存じますが、そういう意味におきましては、そういう科学基本的な取り組みの姿勢というものはぜひ打ち立てられなければならない。ところが、現在までの工学におきましても、大学における工学はどちらかというとそういう方面が強いのですね。  ところが、先年ソビエトのケルドウイシ以下の方々が日本に参られまして学術会議を訪問されました。これは政府予算でお招きしたわけですが、各地の研究施設をごらんになって、最後にどういう感想を持たれたかを私ども伺ったわけであります。一番りっぱなのは会社の施設である、第二番目にりっぱなのは国の施設である、第三番目にりっぱなのは大学の施設である。それだけで終わりでありました。やはりそういうような現状を改めていかなければ、この基礎的な分析というようなことは進まないのではないだろうかという感じがいたしておりますのでどうぞお考え願いたい、こういうふうに存じます。
  52. 西田八郎

    ○西田委員 野村先生、アメリカへ行かれて研究してこられた野村先生でございましたね。
  53. 野村平爾

    野村参考人 私ですか。
  54. 西田八郎

    ○西田委員 違いましたか。お帰りになった方ですね。——ではどうも失礼いたしました。  それでは、最後に宮脇先生にお伺いをしたいわけですけれども、生態学的な観点から非常に貴重な御高見を承りまして、私どもいまさらながら、公害というものをもっと真剣に考えるべきだということを痛感をしておるわけでありますが、生態学的に言われると、何かあしたにでも人間社会が死滅をするような、非常に恐怖を感ずるわけでありますけれども、実際に先生の学説あるいはそうしたいろいろな観点からお考えになりまして、一体このままの状態でいって人間の命というものが——人間の命といっても個々の命ではなしに、人間社会というものがどの程度存続できるものなのかという点について、突拍子もない愚問であるかもわかりませんけれども、もしもそういう点についての見解がございましたら、ひとつお伺いいたしたい。
  55. 宮脇昭

    宮脇参考人 実は私、植物の世界、植物群落の研究を専攻しています。したがって、人間のことについて予測することは差し控えさせていただきますが、基本的にはすべて生きものは同じだというふうにわれわれは生態学的に規定づけられていますが、植物の世界では、環境条件を変え過ぎたことによって変えられる。一番いい例を申し上げますと、皆さんにとって困る畑の雑草を絶滅する方法に、どういう方法があるか考えていただきたい。それは畑の雑草を何百年も農民が取っても絶滅しなかった。草を取るのをやめたとたんに、いままでわずか五センチの大きさであったのが、草を取るのをやめまして最適条件から最高条件まで達しまして十センチ、二十センチになりますが、半年たてば周辺の畑の雑草よりも競争力の強い植物が入ってきて、そこから追い出されてしまうわけです。すなわちすべての生命集団には、前に申し上げましたように、最適条件と最高条件があるんだ。そしてすべての生物は、自分のために最高条件に生理的、社会的に持っていくことによってその社会が破滅し、そしてその前の既存社会生活環境のバランスがとれていたところで、一番上位にあったものが最初にだめになるというきびしい生物社会のおきてがあるわけでございます。したがって、そういう意味におきまして、これも前に申し上げましたように、日本民族がこの程度の産業破壊や、産業公害や、あるいは自然破壊で死滅することはございませんが、たいてい生命集団というのは、周辺からどんどんふえていきます。自分でつくった環境条件がよくなると、急速にふえてマキシマムに達します。そのときにちようどデッドセンターと言いまして、まん中が最初にダウンするわけです。したがって、そういう意味におきますと、ちょうど植物の世界の実例をもし人間——生きものの基本的に生きているという基本原理におきまして、生態学的にはこれは当然適用できるわけでございますが、皆さんが御了承いただけるとするならば、現在われわれはどの辺にあるか。たとえそれが自分たちにいかによく合っても、すでに最適条件を局地的に越しつつある、それがいわゆる公害として局部的には生命に影響を与えつつあるわけでございます。したがって、われわれはそういう生命集団と環境との多様なバランスという問題、そしてそれがたとえわれわれの社会、われわれ個人にどのように生理的、あるいは瞬間的にいい条件であっても、最高条件までいって破滅する前に、人類の英知をもって最適条件で持続するように考えていきたい。そのためには現在たまたまそれぞれの分野で、あるいは企業なんかでの多少の犠牲はあっても、生産消費だけでなしに、分解還元に十分な投資をしていただきたい。  と同時に分析科学のお話がありましたが、分析科学的な研究だけでなしに、さらに生命集団の側からの総合的な科学研究も考えていただきたい。すでにヨーロッパにおきましては一九二〇年のころからニューゲーテ時代、新しいゲーテの時代、新しい総合の時代といわれまして、生命というのは総合的なものでございますから、そういう人間も含めた生命集団と環境というふうな、残念ながらまだ何もわかっていないそのような多様な問題、しかし、それのバランスの限度をわれわれが先取りしない限り、どんなに善意で自然開発をしても、産業開発をしましても、結局、人間がだめになるわけですから、そういうふうな生命集団の側からの自然の許容量を十分理解していただきたい、あるいは先取りするための手法、研究、あるいは基本法にそういう問題もぜひ含めていただければ、これはきょうだけの問題ではなしに、あすもあさっても、生きている限り改正しなくてもいいものができるのではないかというふうに考えるわけでございます。
  56. 西田八郎

    ○西田委員 和達先生に最後に一言、端的にお答えをいただきたいと思うのですが、諸外国公害問題に取り組んでおります。日本もいま公害国会等が開かれて、これは非常に重要な問題として、国民的な課題として取り組んでいるわけでありますけれども、一口に言って諸外国の取り組んでいる公害対策という面と、日本で取り組んでいる公害対策の面の違いというような点について一言お聞かせいただければ幸いと思います。
  57. 和達清夫

    和達参考人 基本的には同じかと思います。日本自然条件社会条件とが、外国と違うことは言うまでもなく、そのことについては時間的余裕もございませんのでいま省略いたします。そういう日本独得な、端的に申せば強烈なる現在、私は日本は世界に先がけてこの公害問題に取り組む覚悟と実行が必要であるとともに、国際協力によって、また日本が国際的に知識を得、ともに進むというだけでなく、日本が国際的に迷惑をかけるようなことは絶対に防ぎたいと思っております。
  58. 西田八郎

    ○西田委員 私の言いたいことは、スウェーデン等では環境保護法、アメリカでも環境保全庁ですか、いわゆる環境というものを中心にしてそれを保全する保護するという立場に立っておる。日本の場合はいまおっしゃったように非常に密度の濃いところで、そして多くの生産活動が行なわれているところに特殊な事情があるとは思うのですけれども、いわゆる出てきたものに対する対策という考え方、この考え方の違いがあるように思うのですが、その辺についてどうお考えになりますか。
  59. 和達清夫

    和達参考人 その点、先ほどから何回も御質問を受けまして、また同じことを申し上げることになると思うのですが、要するに効果があがるということが現在の日本の最大の問題であると思うので、どういうふうに法律をおつくりになるかということはどうか先生方において御討議をお願いしたいと思う次第であります。
  60. 西田八郎

    ○西田委員 終わります。どうも御苦労さまでした。
  61. 加藤清二

    加藤委員長 これにて参考人よりの意見聴取は終わりました。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ、長時間にわたりまして貴重な御意見の開陳をいただきましてまことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後一時三十分再開することとし、暫時休憩いたします。   午後零時三十四分休憩      ————◇—————   午後一時三十九分開議
  62. 加藤清二

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出公害対策基本法の一部を改正する法律案公害防止事業費事業者負担法案騒音規制法の一部を改正する法律案、及び大気汚染防止法の一部を改正する法律案、並びに細谷治嘉君外七名提出環境保全基本法案について審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。寒川喜一君。
  63. 寒川喜一

    ○寒川委員 最初に、山中国務大臣にお聞きをしたいのでございますが、もうきょうで時間的にはかなり長いこと質問があり、かつ先輩、同僚の議員からも、重点的なものにつきましてはいろいろな角度から御質問され、御所見の開陳があったわけでございいます。私も終始一貫、質疑応答の内容を承って、記録にもとり、大臣のお考え方もほぼわかりましたが、ただ、応答を通じて考えられますことの第一は、「経済との調和条項をはずした、いわゆる文字の削除と、人間生命、健康を優先をしていくというロジックがどうしても合っておらないような気がするわけでございます。したがって、くどいようでございまするけれども、この問題について御所見をちょうだいいたしたいと思います。
  64. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これはたびたび申し上げておりますが、第一条第二項の削除は、私たちとして最初にきめた新しい、公害に対する政治の姿勢基本でございます。さらにそのあと、しからばいかなる理念をもって臨まんとするかという姿勢になるわけでありますが、その公害対策基本法の新しい第一条に、憲法の条章によるいわゆる健康にして文化的な生活というものは——最低ということばはここでは使っておりません、われわれは最低の生活を目標にすべきでない時代になっておりますので、故意に抜いたわけでありますけれども、これは国民の国家に対して持つ権利であるということの憲法の精神をくんで、そのことばを盛り入れることによってそのような姿勢を示したわけでございます。  さらに、それだけではただ公害対策事業に関するような法律ではないかという考え方も、また別の批判もありましょうから、今後公害憲章とかなんとかということを考えるような問題のときはまた別にいたしまして、さしあたり第十七条の二として緑地の保全その他自然環境の保護等につとめる義務を政府が負うということで、その姿勢をもさらに明確にしたつもりでございます。
  65. 寒川喜一

    ○寒川委員 どうも歯切れが悪いような感じがいたしましてなりません。あなたの今日までの精力的な御努力に敬意を表し、かつ、その以外の問題についてばかなり勇み足になるほど能弁で歯切れのよい御答弁をいただいておりまするが、この点については残念ながら理解をしかねます。しいて善意に解釈すれば、具体的な実施の面で十分配慮していこうというお考えのように私は理解をしたいと思いまするが、そういう面についてあなたも十分な御理解をいただきたい。  そこで、全部が全部悪いということではございませんが、地方公共団体の財政確保の点等々につきましては、通常国会の中で、具体的に措置されるやの方向をかなりお示しされておられる点につきましても、私はほんとうに心から期待をするものでございまして、そういう面につきましても、恐縮でございまするが再度ひとつ、全国の地方公共団体はあなたの答えに刮目をしておると思いますので、お答えをいただきたいと思います。
  66. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これもお答えいたしておりますが、私たちとしては予算編成と切り離してきめられなかった事情がございますので、今臨時国会に提案をいたしておらない。しかしながら、たてまえからいって、大幅な権限委譲に伴って、地方自治体に財政上の配慮なくして行ない得ないことも事実であり、あるいは公害防止事業費の事業者負担法案について、それの次の段階となるべき国や地方自治体の負担に対する特例というものがないということもやはり事実であると思います。しかし、これらは、あくまでも予算の際に、それらの姿勢を踏まえまして、税制、金融とともに、財源措置に対しても十分の措置を講ずる義務を私たちが負っておるものと感じて法制を提出いたしておるわけでございますので、その義務に対してこたえる努力をしたいと思います。
  67. 寒川喜一

    ○寒川委員 そこで、私の行政経験から御意見を承っておきたいことの第一点は、この法律が通過いたしますと仮定をして、所管大臣から特に都道府県知事に対して通牒の中で考え方を述べられ、運用面でも示唆のある行政指導をされると思います。最前線におる者といたしましてはおそらくそれが金科玉条になって公害に対する取り組み方の姿勢の型がきまってまいろうかと思います。そういった面で、先ほどのニュアンスを十分入れられたような、いわゆる形だけつくってやることは多少整備をされましたけれども、ほんとうに住民の不安を解消するために、公害法律を運用して取り組んでいかなければならないといったような姿勢が生かされないことになれば、私はたいへんだと思いますので、そういう面についてあなたの御意見、特に条例の制定などにつきましては直接に自治大臣が監督指導、こういう責任に当たられておると思いまするが、どういうお考え方で臨まれるのか、お考え方についてお尋ねをいたしたいと思います。
  68. 山中貞則

    ○山中国務大臣 国会の論戦を通じても、私たちも皆さんも感じておられると思うのですが、公害に対する戦い、挑戦ということは、思想、党派を越えておる問題だということを私しみじみ感じます。したがって、法律でここのところが不備であるとか、もっとよけいやれとか、あるいはどこが後退したという形式上の議論はあっても、心がまえは皆さん同じだなという気持ちがいたします。そうすると、知事さんにもいろいろとございましょう。端的に申し上げれば、保守の知事もおれば革新の知事もおる。あるいはまた、そうでなくて、企業に対する姿勢にもいろいろの違いのある知事もおられましょう。しかし、私たちはここで、やはりその意味からいって、地方の知事さんも地域の住民に対して思想、党派を越えた行政一つがこの公害問題でなければならないのだ、またおそらくそうなるであろう、そこで、私たちは知事さんを信頼する。都道府県知事、場合によっては特定の市、ものによっては市町村、それらの地域の住民の意思によって選ばれた方々が、地域の住民の幸福のために行なわれる政治のこれが基本でございますから、この公害の問題については、その基本的な姿勢をお保ちになるであろう。端的に言うと、知事さんを私たちは全面信頼をしたい。したがって、その信頼した知事さんにおまかせをいたしますという姿勢を全部貫いておるつもりでございます。
  69. 大石八治

    ○大石政府委員 自治省としては、規制権限その他について、都道府県知事に権限委譲しようということを、今度の公害関連の諸問題の展開のときに、自治大臣から申し上げているとおりでありまして、さような考え方が、今度の法案に非常に全面的に取り入れられていると思うのであります。現実に、公害問題で現場で対処しているのは都道府県知事等でありますから、ただいま山中長官からお話がありましたとおり、知事の責任においてやらなければならないという立場に追い込まれておりますから、私どもは、今度の関連諸法案精神に基づいて、知事はこれをやるだろうと思うのです。また、いまわれわれが特に進めている問題は、そういうことに対処する体制整備を進めているわけであります。ほとんどの都道府県で公害担当の部局をもうつくって、おそらく十二月には全部できてしまうと思います。それに関連して事務的な体制その他を整備していくようにつとめておるところであります。
  70. 寒川喜一

    ○寒川委員 あいそうのない答弁のように私は感ずるのです。ここで議論を集約されて、活字になる形のものよりも、山中国務大臣がおっしゃられたように、この空気というものがやはり末端に反映をするということが、私は非常に大切だと思います。したがって、従来のような条例制定についての指導というカテゴリーから越える性質のものだという理解と認識のもとに、十全の配慮のもとに指導をしていただきたい、この点を要望をいたしておきます。  自治省にお伺いしたいのですが、たまたまだいぶ受け入れ体制が整備をされておるやに承ったわけでございまするが、私の実地に調査いたしました範囲内等で、具体的に県の名前等は申し上げませんけれども、非常に大きなコンビナートができて、しかも、設備基準等は新しいものではない、そういうようなことで、著しい公害のおそれのある県の中で、公害条例が今日までない、職員はというと、しっかり責任を持てる吏員は一人で、補助者が一人、こんなような事例のところが実際あるわけなんです。したがって、ほんとうに形の上でここで一生懸命にやっておりますというような抽象論議では、この法律が動き出しますると片づきません。そういう面で、受け入れ体制の整備についてひとつほんとうに心を込めて、住民の立場で県の体制が符節しておるのかどうかというものを注視していただいて、積極的にやっていただきたいと思いまするが、御意見を承りたいと同時に、法律の中で「市町村」という書き方になっております。いみじくも、先ほど山中国務大臣の御答弁の中で、指定都市というようなことが少し出てまいりましたが、取り扱い等の中で、自治省は財政的にもそうでございまするが、政令都市の問題をどう考えておられるのか。この問題については、ほかの委員からも御質問がなかったので、非常に小さい問題とも思いまするが、この機会に御答弁をいただきたいと思います。
  71. 大石八治

    ○大石政府委員 御指摘の点が、最大の実は悩みでございます。これは公害問題が出てきましてから、実は国の中でも、これに関するいわゆる技術スタッフといいますか、そういうものが非常に足りない、公害に追いかけられているという事態が実はありましたとおり、都道府県におきましても、その点が最大の問題であるというふうに私ども感じております。そういう意味で、いわゆるスタッフの研修といいますか、養成という問題が非常に大事な仕事になります。どろなわ式のような感じがいたしますけれども、しかし、これはやらざるを得ないことで、公害対策本部、中央等で何か都道府県と連絡をとって、いわゆる研修のようなものをひとつやっていただきたいということを、自治大臣等からも申し出てありますし、計画的な研修、養成というようなものをやっていただくようにお願いいたしたいと思っておるところであります。  それから指定都市の問題でありますが、私どもは都道府県と指定市は同列くらいにひとつこの際に権限の問題は考えていきたいというふうに思っておりますし、大体全体的にそういうことで取り扱っていけそうだというふうに感じておるわけであります。
  72. 寒川喜一

    ○寒川委員 まあひとつ、ほんとうに精一ぱいの努力を払っていただきたいと思います。協議の問題に若干触れられましたが、この点は要望いたしておきます。  全国を回ってみましても、専門家の確保、養成というようなことは、口で言えましても、実際に至難の問題でございます。しかも、新しい学問体系を身につけた要員の確保ということになれば、さらにさらに困難だと思いますので、ひとつ自治省が全国的な視野に立って心配をしてあげてほしい。このことをお願いをしておきます。  その次は、委員会の議論の中で、山中国務大臣から国立の中央の研究機関の整備の問題についてお話がございましたし、データバンクのことにつきましても御所見の開陳がございました。しかし、現在の地方の状況、府県を単位として、あるいは指定都市を単位として、こういう側面を考えまするときにおいて、それぞれなわ張りでちゃちなものを数個持っておるというのが現場の実態でなかろうかと私は思います。そういった意味合いにおいて、自治省は、府県自身が持っておるものにつきましても、本省別の系列というようなことにこだわらずに、独立した研究機関を本省、出先機関のものも含めて、整備拡充をして、しかも、そういうところのデータがいわゆるデータバンクの資料として生かされるというような体制なしに、中央で机の上で構想しただけであっては、期待に沿い得るような資料というものの確保は困難であるし、不十分なものが何ぼ集まりましても、零が十集まりましても零でございますので、零でよければいいが、マイナスの条件がそれに入ってくるということになりますると、資料としては、むしろ害あって益なし、かようなことになりまするが、自治省は、そういう構想について、どういうお考えを持っておられるのか、今日まで考えられましたことがあるのか。ひとつおまとめになっておられれば構想、なければ将来に対するお考え方をお述べいただきたいと思います。
  73. 大石八治

    ○大石政府委員 都道府県における公害対策の体制ですけれども、なるべく総合的なものにいたしたいという考え方で、四十六年度予算につきましても、自治省自体として公害センターというものを、それはもう総合的なものという体制で予算要求を実はしております。そのセンターというものは、一つの観測その他の全体的な規制、観測をすると同時に、そこであるいは何らかの研修ということもできるようなものにしていきたいというふうに考えておりますし、それから地方における審議会の問題も、これをセクション別に審議会をつくるいうとことでなしに、総合審議会という形で、いわゆる内部的には部制でいきたいというふうに考えておるわけであります。
  74. 寒川喜一

    ○寒川委員 ひとつ前向きで関係各省とも十分連絡をおとりいただいて、従来の感覚を捨てて、新しい視野に立って問題を解決するという態度で努力していただきたいことを要望いたしておきます。  次は、財政の問題でございまするけれども、夏の委員会で、各地方公共団体が公害対策を解決するために精力的に取り組むためには経費が必要であろう、おそらく自治省に対して要求が出ておる、したがって、早い機会に地方公共団体の総要求額というものが何千億になっておるのかというようなものを、ひとつ資料として提出してほしい、こういう要望をいたしておりましたが、理解のしかたに手違いがございまして、計画を御立案になられておる側からの地方公共団体の要望というようなことでございまするが、大ざっぱにいって、政務次官は現在地方公共団体はどれほどの財政的な要求を国に対してしておられるのか、まずお聞かせいただきたいと思います。
  75. 大石八治

    ○大石政府委員 都道府県がやるべき最初の問題というのは、いわゆる調査、観測等のそれ自体の機材整備人間等の問題であると思うのです。これは従来実は地方交付税の中で算定をするということでやってきてまいったわけでありまして、今後もその点は重点的にその計算をしなければならないというふうに考えております。しかし、金の非常にかかります問題は、公害防止事業それ自体に実はなると思うのであります。先ほど山中長官からお話のありましたとおり、当然あれらの仕事をやります場合に、企業負担の原則は今度の法律でできますけれども、これを実施するのは都道府県ないしは市町村ということになるだろうと思うのですが、その部分について国と県、国と地方との関係の負担割合という問題がどうなるかということが、一番財政的には問題になる点であります。これをもちろん、今度の国会に出していた、だきたいというのがわれわれの希望でありますが、お話しのとおりに、予算編成の形の中でこれは考えざるを得ない点もありまして、これだけが先行してしまうということも困難でありまして、今度の通常会にこの問題は事実上の問題として御審議をいただきたいという過程でおるわけであります。
  76. 寒川喜一

    ○寒川委員 時間もございませんし、掌握をされておらないような事務当局の御意見でございますので、深追いはしませんけれども、私は非常に残念だと思います。地方公共団体に対して権限を委譲するという方向が、早くからやはり考え方としては定着をしておったわけなんですから、そういう面で積極的に対処していただくことを欲したわけでございまするが、いまの御答弁では特定のものに限ってのお考え方の御開陳でございまして、きょうはこの程度でおきまするが、別の機会にやはりそういうものを詰めて、ばく大な国費が要れば要るだけに、ほんとうにやはり要求というものが効果ある内容の要求なのかというようなものを、国政を審議する立場の者が十分知りたいし、そのこともまた国民が欲しておる、こう判断されますので、ひとつお心にとめておいていただきたいと思います。  次に、運輸と厚生の関係でお聞きをしたいと思います。  いろいろな公害がございまするけれども、その中で特に都市公害といわれておる問題が片づけば、人口が集中をしておる住民の不安というものがある程度解消する。その中で、短兵急にいかないものは、下水道の整備等の問題などがございまするが、いろいろと配慮されておる中でやはり解決の迫られておる問題として、自動車の排出ガス、工場の煙突から出ます煙、こういった面でかなり健康をむしばむ限界に来ておるという視点のもとに、やはり今回法体系の整備をされたと私は判断をいたします。  そこで、運輸省にお聞きしたいのですが、自動車の排出ガス対策について、一体どんな対策を、当面対症療法的なことにならざるを得まいと思いまするが、そういう面で、時間がございませんので、将来のこと等については、また時間のある機会に承りたいと思いまするが、そういう対策についてひとつお尋ねいたしたいと思います。
  77. 隅田豊

    ○隅田説明員 お答えいたします。  自動車の排出ガスの規制につきましては、現在は一酸化炭素の規制を新しい車では、メーカーの段階におきましては特定の測定方法によりまして二・五%以下、それから現在すでに使われております車におきましては、アイドル時五・五%ということで規制をいたしております。これにつきましては、今後一酸化炭素につきましては、さらに逐次強化をしていくという方法をとるつもりでございます。  それからほかの炭化水素あるいは窒素酸化物につきましては、ごく最近に、まず炭化水素につきましてはブローバイガス再燃焼の装置の義務づけをメーカーの段階でするようにいたしておりますが、排出ガスいわゆる排気ガスから出てくる炭化水素の成分につきましては、まだ規制をいたしておりません。これは窒素酸化物と一緒に対策を講ずる必要がございますので、できるだけ早い機会、目標といたしましては四十八年を目標にしてその対策をしたいと思っております。
  78. 寒川喜一

    ○寒川委員 そこで、やはり問題になってきますのは、排出ガスの浄化装置の研究というものがどの程度進行しておるのか、この問題が明らかにされないと、ことばのあやで、いろいろなことを進めておるのだといっても、現実には、やはり排出ガスを防止するということは困難だと思いますが、この点はどうですか。
  79. 隅田豊

    ○隅田説明員 排出ガスを強化していきますに対する研究の問題でございますが、御承知のとおり一酸化炭素につきましては、エンジンの燃焼状態をよくするということで、ある程度のめどがついております。炭化水素と窒素酸化物につきましては、これは御存じのとおり、片方炭化水素を押えようといたしますと、窒素酸化物がふえるというような燃焼上の必然的な現象がございますので、単純な対策をとっていくことがなかなか不可能でございまして、現在のところでは、まず一たんエンジンの中でもって窒素酸化物を非常に出ることを押える方法をとって、その結果、炭化水素がふえてまいりますが、それをあとからエンジンの外でもってもう一ぺん燃すと、この場合には非常にゆるやかに燃すので、窒素酸化物をたくさん出さないような燃す方法を考えていく、こういうことで現在各研究所、あるいは世界的な研究所、あるいはメーカーのレベルにおいていろいろと検討しておりまして、われわれは、運輸省の立場といたしましては、規制の目標を示すことによってそういう研究をできるだけ引っぱっていきたい、こういうふうに考えております。
  80. 寒川喜一

    ○寒川委員 そこで、要望いたしておきまするが、資料を拝見いたしますると、低減目標を達成するために目標年度を定めて、いつの状態に戻すのだというようなことを御構想のようです。ひとつそれを国民一般にわかるようなPRをしてもらって、著しい不安を与えるというようなことの解消の一助にしていただきますことを、この点を要望いたしておきます。  その次が、自動車の騒音の問題でございますが、今日まで環境基準の面で、工場建設現場の騒音というものを一応規制してまいっております。たしか工場の場合、六十五ホンだったと記憶をいたしておりますが、大都市における最近の交通事情、さらにまた道路の整備状況、特に大阪のように万博に間に合わすというようなことで、工期に間に合わすという関係上、無理な構造での高速道路がつくられておるなどのことによって、工場建設現場の騒音をしのぐような現状にあるのが実態だと私は認識をいたしております。とりわけ午前二時から五時ごろまでの安眠時間における騒音といったようなものは、具体的には私たちも、その場所に数日間泊って経験をいたしましたが、寝られるような状態にはないのです。そういう理解を関係兆局にしていただきませんと、この問題もまたことばのあやだけに終わってしまうわけでございますが、音の環境基準設定について、今後どういう方針で厚生省は臨まれるのか、ひとつお考え方を聞かせていただきたいと思います。
  81. 内田常雄

    ○内田国務大臣 御承知のように、騒音につきましては現在のところは工場騒音、建設騒音、それから、ずっと下がっては深夜騒音とか、あるいは商業騒音だけでございまして、あとで申しました二つはこれはもう全く地域的、局地的なものでございますので、市町村長まかせになっておりますこと、御承知のとおりでございます。しかし騒音でやはり今日一番問題なのは自動車騒音だということで、今回の騒音規制法に取り入れましたが、取り入れただけでは、一体どういう規制をするのかということのその標準がきまりません。どういう規制をするのかということをきめますためには、その目標でなければならない環境基準が当然きまらなければなりませんので、私どもは今回この騒音規制法を出します心がまえと並行をいたしまして、かねがね生活環境審議会というこういう方面のことを担当いたしております専門家のお集まりの中に、特に騒音の環境基準についての専門部会を設けまして作業中でございますが、おおむねそのめどがついたと聞いておりますので、少なくとも本年度中にはこの騒音の環境基準を閣議決定をする、それに相対応いたしまして、その目標に到達するための規制基準というようなものも具体的につくられる、こういうことに相なる心がまえでおります。
  82. 寒川喜一

    ○寒川委員 再度お伺いしたいのですが、ほかの組織を当てにして答申を待ってというお考え方のようでございますが、年度内という一つの目標も御説明がございまして、理解はできますけれども、そういう目標が延びるというようなことであれば一やはり厚生省自身は環境基準の問題について事務当局も主体的な面で研究をされ、お考え方を持っていらっしゃると思います。その内容についてはお聞きいたしませんけれども、暫定的な基準設定をして、一日も早くこういった自動車騒音等の解消につとめる、こういうことについての構想はいかがでしょうか。
  83. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これはまあ公害防止の目標となるべき環境基準でございますので、厚生省部内の科学者あるいは私どものほうは御承知のとおり医官などもある程度おられますが、そういう人々だけのグループで主観的につくることもかえって守られないことになりますので、やはり相当広範囲の、部外の専門家も集めてこういうものは設定するというたてまえにいたしております。  私どものほうでは、どこでそれをやっているかといいますと、これは寒川さん御承知の国立公衆衛生院、これは二つの機能があること、これも御承知のとおりでございまして、都道府県や地方公共団体のその方面の職員の方を集めて、公害対策等につきましての専門知識を研修する、そういう教育的機能のほか、直接その騒音の環境基準設定、防止対策等につきまして、ある程度の専門的な研究はいたしておりますが、それらも加えましてやっております。  それから私は環境基準設定を本年度中と申しましたが、おそらく答申はこの月じゅうに、年内にあるでありましょうから、予算編成等の作業で私どもも追われますが、そういうことと並行しながらなるべく早く、月が明けたら答申を閣議決定に持ち込めるようなふうにして、せっかく今回改正されます騒音規制法がすぐに生きるようにいたしたいと思います。
  84. 寒川喜一

    ○寒川委員 ひとつ早い段取りで御配慮をいただきたいと思います。  それに関連をいたしまして、交通規制の問題について警察にお伺いをいたします。  この法案のたてまえでございますと、知事から要請があればということになっておるので、知事から要請がございますと、法の規定に従って交通の規制をしていくということは、これは当然だと思いますが、要請がなくても、事実関係が警察当局で確認をされれば、警察は規制を積極的に行なうのかということが第一点。  それから第二点、規制についてはいろいろ種類があろうかと思います。その中で一番強い禁止ということ、先ほどの一定の時間市民の睡眠を確保するという意味で禁止するということについては、どういうお考え方で臨まれんとしておるのか。  この二点を警察にお伺いをいたします。
  85. 片岡誠

    ○片岡政府委員 二点についてお答えいたします。  第一点の、知事の要請がない場合でも独自に交通規制を行なうかということでございますが、独自に行なうように道路交通法の一部を改正する法律案できめております。知事の要請があった場合、それからみずから知った場合、おそらく住民からは警察にいろいろ要望なり苦情が出ると思います。それが総理府令、厚生省令で定める基準に達しておりますときには、みずから行動を起こすこともあるような、そういう仕組みになっております。  それから第二点でございますが、迂回路があるような場合には交通の全面禁止という場合もあり得ると思いますけれども、それが幹線道路であって、迂回路もないというような場合には、全面禁止をするということは事実問題として非常に問題があろうと思います。ただ、それが病院であるとか、学校であるとかいったような場合には、一定の自動車、たとえば大型車であるとか、あるいは二輪自動車を禁止するとか、そういうことは比較的できやすいと思いますけれども、人家は連権しておる、しかもそれが幹線道路に面しておるという場合には、非常に困難な事態が出てくるのではなかろうか、そのように考えております。
  86. 寒川喜一

    ○寒川委員 懇切にお答えをいただくものですから、だんだんと時間が迫ってまいりましたが、ただ警察に御要望申し上げておきます。  お答えのございました中でわれわれの心配をいたしますのは、たとえば引例のございました迂回路の問題にしましても、若干の距離等のことで、いわゆる自動車側だけに立った判断ということでなしに、やはり住民の睡眠、すなわち健康を守るという立場で、公害に重点を置いた姿勢でひとつ実際の判断を願いますように、第一線各警察本部の指導をしていただくように要望をいたしておきます。  なお、知事の要請のなかった場合にしましても、私は、先ほど山中長官からお話のございましたように、やはりいろんな面で悲観的なお考え方というようなもの等あろうかと思いますので、こういったことについて精一ぱいやられても、いわゆる警察権力で云々というような事態は起こらないのではないか、こういう理解のもとにひとつ努力をしていただきますことを要望いたしておきます。  次は、法制局にお伺いをしたいと思います。御案内のように大気汚染防止法の二十三条の問題が一昨日から問題になりまして、たまたま法制局の見解をお述べになって、間に合わなかったというような面で「勧告」ということばを使った、そういうようなことでございます。  そこで、法制局自身がこの問題について厚生、通産と折衝過程でどういうような御見解を示されて大気汚染防止法改正案の中の二十三条の四項ですかを中心にして議論があったのか、お聞かせいただきたいと思います。
  87. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 お答えいたします。  御指摘のように、大気汚染防止法の一部を改正する法律案の二十三条の四項が問題になったわけでございます。緊急時の措置をそもそも勧告によってとるべきこととするかあるいは命令によってとるべきこととするか、この問題は法律論としては本来どちらも考えられると思います。ただ、私どもがその際検討いたしました問題点といたしましては、命令によってとるべきことといたしまして、その違反行為を犯罪とするということになれば、当然命令発動の要件とか、あるいは命令の相手方であるとか、あるいは命令の内容等が、現に法文の上で明確にされる必要があるのでございます。つまり、犯罪の構成要件が明確でなければいけないということは、これは罰則における至上の要請だからでございます。そういった点を私どもとしてはいろいろ検討した、こういうところでございます。
  88. 寒川喜一

    ○寒川委員 再度お尋ねをいたしまするが、全部大気汚染のことについて網をかぶせようということの議論でございますると、そういった実態が起こって、発動の要件なり、内容通知の方法、相手方というような問題について議論が分かれると思います。しかし、やはり当面問題にしなければならないのは、多量に排出をするたとえば重油を一定量使う企業であるとか、企業の規模であるとかいうようなものを設定して、そういうところが厳格に守っていただければ、大気の汚染というものもだんだんと基準が低下して、みんなが期待している方向になると思うのですが、そういう側面での議論はなかったのか、その点はいかがですか。
  89. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 この問題は、実態問題とのからみ合いがございます。ただいま御指摘のように、たとえば命令を出す相手方というものをある程度限定するということは、これは先ほど来申し上げました構成要件を明確化するということについて、一つの大きな前進と申しますか、要素ということは言えるだろうと思います。ただ、実態問題とのからみ合いがございますから、ただいま御設例になりました非常に多量のばい煙を排出するものをまずとらえるということ自体がいいか悪いか、これは私の立場上まだはっきりは申し上げられません。
  90. 寒川喜一

    ○寒川委員 山中国務大臣にお尋ねをいたしたいのですが、私が法制局に対する設問例として申し上げたようなこと等について、やはり配慮していただかないと、作文をしてみましても、効果が期待されなければやはり問題は片づいていかないわけなんで、公害罪の点について、法務大臣が抑止力の問題を例にあげられましたが、やはりそういう側面も、また私が引例をしておる面についても、大きなウエートにしていただいて、排煙の防止、それによって大気汚染を少なくするということについて将来お考えになられることについての御意見を承りたいと思いますが、いがかでしょうか。
  91. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ただいま内閣法制局第四部長の答えましたとおりの問題点が、率直に申し上げて法制局の仕組みの中で、四部に数多くの法案がかかったものですから、その議論を私の手元で最終的に詰めて、そして提出するに至らなかった。いまの問題点がなお残っております。でありますので、朝令暮改もいいほうへ改めるなら非難は受けないと思いますので、私はできるだけ早くそれらの問題点の所在を、何がゆえに必要としておるかを出発点として、その必要に沿うために障害は何があるのか、その障害を法制上いかなる理論でもってそれを立証することができるか、法律化することができるか等について、明確なる詰めを行ないまして、大体のいままでの議論を集約したところの方向に向かって作業をしてみたいと考えております。
  92. 寒川喜一

    ○寒川委員 ぜひ、せっかくの御努力をお願いを申し上げておきます。  時間があと二分足らずでございます。したがって、通産に御質問を申し上げたい点、本会議でも実は若干触れておりますので、やはり通産の立場からいたされての公害防除、こういうことがやはり一番大きなウエートになろうかと思います。したがって、善意に解釈をしましても、痛くない腹を探られて企業べったりだと、こういう非難が続出をいたしておりますのもむべなるかなと私は思います。そういう面で、時間がございませんので項目のみを申し上げておきますので、再度お尋ねいたしませんから、率直にひとつお答えをいただきたい。それは公害防止のための大都市における工場、事業場は、もうこれで精一ぱいなのです。この中に、まだ現在グラウンドがあるからグラウンドだけ先によそへ移して、そこを設備拡充して新しい工場をつくるとか、あるいは住宅を逆にのいてもらって、そこへ新しい新設工場をつくる、こういうようなことについて、省令で規制をしていくというようなことをほんとうに考えていかないと、私はたいへんだと思います。したがって、そういう面での努力をひとついただきたい。  それから第二点は、やはり公害防除の設備基準設定でございます。これも末端の諸君からよく聞くわけでございまするが、厚生省にも申し上げましたように、末端の諸君は、高度の専門家というものは非常に少ないわけなんです。したがって、工場の視察に行ってみましても、いいか悪いかの判断というものが直ちにできて改善命令を出すというような次元での指導というものは、紙に書いてロジックを合わすと非常にけっこうなものでございまするけれども、私は、実際の指導の面ではなかなか困難なものだと思います。したがって、その他の点については、こういう設備基準について通産省令でおきめになっておるものもあるわけなんですから、そういう面でひとつ公害防除の設備基準設定して、それに合わして積極的な指導をしていく。改善命令、改善命令といわれる前に、やはりそういう措置ができておるかできておらないかということの点が、特に中小企業等を対象にして考えた場合に、私は最も効果のあるやり方だと思いますが、御意見を承りたいと思います。
  93. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 企業の首都圏内に、大都市内に入られるのを防止したこと、たとえばこれは首都圏、近畿圏については既成市街地における工場の原則的な設定を禁止いたしておりますし、都市計画法における用途指定もやっております。通産省といたしましては、開銀中小企業三機関あるいは公害防止事業団等の地方進出に対しての融資、あるいは大型規模の団地、内陸工業団地、来年にはぜひ通産省としては出したいのは、農村工業化ということで、大都市の中の工場を地方へ進出させるという計画を持っております。また、いろいろな施設についての問題でございますけれども、本法においては、粉じんについての施設の改善でございますけれども、今後通産省としてはどしどし立ち入り検査指導をやって、それに万全を期したいということで考えております。
  94. 寒川喜一

    ○寒川委員 時間がまいりましたのでこれで終わりますが、ひとつほんとうに、質問終わったらやれやれというような形じゃなしに、より責任が加重されたという立場で、精一ぱい取り組んでいただきたいと思います。終わります。
  95. 加藤清二

    加藤委員長 次は、藤波孝生君。
  96. 藤波孝生

    ○藤波委員 すでに公害関係法案審議につきましては、本会議の代表質問に始まって、連合審査並びに当委員会におきまして、いろいろな角度から論ぜられてまいりまして、問題点は出尽くした感じがございます。私は、こういった論議のあとを追いながら若干の問題点について政府のお考えを承っていきたいと思うわけでございます。そういう立場上、若干の重複をする面があるかもわかりませんが、ひとつ御答弁をお願いを申し上げたいと思います。  今回の公害関係法案基本法改正をはじめとして一連の法案につきましては、私どもの長年の念願でありました公害行政の一元化という自由民主党の基本姿勢を踏まえて、佐藤総理並びに山中副本部長のたいへんな御尽力をいただいて、大きく前進をしてきておるわけであります。しかしながら、今回の法の提案のしかたなどにつきまして、当初、政府の構想なり、あるいは自民党の考え方なりが早い段階に示されたことが、せんじ詰めていくうちに、特に法制局等との折衝を重ねております間に、非常に政府あるいは自民党の姿勢が財界と密着しておるのではないか、当初考えておったよりも、非常にゆがんでしまったのではないかというような受け取られ方になっておりますことは、非常に残念なことと思います。これは今後政府としても御提案になる際に、いろいろとお気をつけていただかなければならぬところだと思うのであります。しかし、そういった中にも、十四本の公害関係法案が出そろって、いよいよ審議も大詰めに来ておりますことを、特に中心になって御尽力をいただきました山中長官には最大の敬意を表したい、このように考えるわけでございます。  私は、今度のこの公害国会は、非常に大きな意味を持っておると思います。内政の問題につきましては、戦後二十五年間にかってなかった大きな意味合いを持った国会を経験したのではないかというふうに私は考えております。それはどういう意味かというと、一九七〇年代は新しい時代に入る、こういうことがここ二、三年前から叫ばれてまいりました。そういうふうに七〇年代の大きな問題点、それは技術文明がどんどんと経済の拡大をはかっていって、それが今度は主人公であるはずの人間生命や健康を害し、生活環境を破壊していくという事態にいかに対処するか。こういった政治の挑戦であるというふうに私は考えるからでございまして、従来経済成長を謳歌し、生活水準の向上ということを標榜してきた日本の政治が、ここで人間尊重福祉の増進ということを表面に掲げて、大きなものの考え方、価値観の転換をはかる、その具体的なあらわれが今度の一連の公害法案公害国会になってあらわれてきたのであると、このように理解したいと思うのでございます。こういった背景というものを考えていきませんと、公害問題、公害法の条項審議だけでは意見合いというものはつかみとれないのではなかろうか、こういうふうに、私ども今度の国会に入りましてから特に一年生、二年生の代議士などを中心として、そういう問題の背景をいろいろ話し合って、今日に来ておるわけであります。特に、基本法の「経済の健全な発展との調和条項を削除した意味合いというものは、そういう中できわめて大きな意味を持っておる、このように考えるのでありますが、重複をすることになるかと思いますが、山中総務長官のお考えを承っておきたいと思います。
  97. 山中貞則

    ○山中国務大臣 藤波君の考え方というものは、そのことそのものが、私たち政治家自身も考え方を新たに出発しようとしておることを意味するものであって、私もたいへん共感を覚えます。われわれは国際的には経済大国日本と言われるところまでのし上がって、諸外国のその経済力に対する脅威というものさえ云々されるところまできましたけれども、これから私たちはこの公害問題で私たちの知っている限りの惑星、いわゆる太陽系の中での天体で一番美しい地球であることを、この宇宙の月に人間が行く時代に知らされた。そのことの上にたってわれわれは、国際的なわれわれの四つの島を中心とする美しい列島を、世界から非難されないような美しい姿に保っていく義務を新たに自覚し、それを遂行していかなければ、いかなる経済的な発展を遂げても、それは諸外国が受け入れないところになるであろう。あるいは日本に対していたずらな警戒心を招くところになるのではないか。現にここでも申しましたけれども、日本の企業がダンピングしてくるのは、これはいわゆる社会に対する責任としての公害の防止施設に対する費用を投下しないで、そしてその点だけ安くなぐり込みをかけるんだという批判を、これは保護貿易の一つの理論として、背景として議論したものでありましょうが、私たちはこのことばを軽軽しく聞きのがしてはならぬということを考えておるわけであります。貿易立国を少なくとも今後も貫いていく日本として、このような問題点が、世界的な問題として提起されておることを考えます。  いま一つは、今度は国内的な問題として、藤波君のただいま言われたように、私たちが追求してきたものはより高い生活、快適な生活、そして人間として、少なくとも個人単位で幸福な生活というものを追求してきました。しかしながら、それは形の上では量の経済の追求となって、自由世界陣営のGNP第二位にまで到達し得た。しかし、そこに私たちは、いまはたして自分たちはこれでいいのであろうか、それが一体幸福というものなのであろうかということを、みずからがみずからに問いかけるときに日本民族は来ておると思うのです。したがって、私たちは、すなわち人間というものが、その幸福を求めるための手段であった経済成長の中で、それが、幸福そのものが求められていく質の成長に変わっていかなければならないんだということに、大きな転換がいまもたらされようとしておるものと考えます。その意味では、公害臨時国会などというものを、民社党の竹本君のいみじくも言われたように、もう一ぺん開くようなだらしない政治をやってはならぬと思います。これは政治も、経済も、あるいは企業も、企業内の労働者も、そして住民も、全部がこの決意をしなければなりません。もう一ぺん公害臨時国会を開くことを余儀なくされたとすれば、少なくとも現在の自民党政権というものは敗北を意味するものと私は考えます。したがって、われわれは二度と公害臨時国会などという世界にこれこそ例のない、誇るべきことと全く逆の事態の国会を開いておることに思いをいたして、私たちは今回の法律制定のみをもって足りるとするものではない、次の国会においても、その次の国会においても、絶えずわれわれは公害に対して克服し得ているのか、環境破壊というものに対する挑戦を怠ってはいないかということは、私たちはわれわれの命のある限り後世代に向かってよりよき環境を残していく義務があるのだ、これ以上の破壊を許さない責任が私たちにあるんだ、世代の問題として、われわれは覚悟してかからなければならないことと思っております。  以上、藤波君の見解に対して私の答えといたしますが、そのようなことから基本法第一条第二項、三年前につくったものであるけれども、これは議論の余地なく関係閣僚協の第一回において削除を決定したということであります。
  98. 藤波孝生

    ○藤波委員 四十二年にちょうど私国会に出てきてすぐの国会でございましたが、公害対策基本法が成立をいたしまして、その審議の中にも加わらせていただきました。そのときにいろいろな議論が出たのですけれども、与野党を通じて、三年ぐらいの間にこんなに急激に公害問題が浮かび上がってくる、生活環境を破壊をする、人間生命や健康を害するようになるのだろうというような見通しは、実は持たなかった。これは政府も政党も、少なくとも政治に関係をいたします者が、ひとしく反省をしなければならぬ、非常に見通しを誤ったということについては、率直に国民にあやまらなければならぬものだと私は思います。  しかし、三年の間にこういった事態が出てまいりました上は、今回の一連の公害関係法案に見られるように、政治が思い切った手を打つ、こういう姿勢をとられましたことは、私ども実に欣快にたえないわけでございますが、いま長官の御答弁をいただきまして、ひしひしと、日本の政治の向かうべき方向、あるいは質というものが、この国会から転換をしておる——もう一回繰り返すようでありますけれども、一番大切なものは何か、それはGNPではなしに、一人一人の日本人の生命と暮らしを守り、高めていくという、もっと広い立場で高めていく、豊かにしていくということが、政治の目標になったんだということを、私はいま承ったわけでございますが、重ねてでございますけれども、その辺についての長官のお考えをもう一度承らしていただきたいと存じます。
  99. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これ以上加えることもありませんが、私たちは思想、党派を越えた問題として、都道府県知事にも全面的に信頼を申し上げて渡していこうということを先ほど寒川君にお答え申し上げました。それと同じことでありまして、手段や、あるいは法律の不備や、あるいは不足等についての異なる見解はあっても、ここで日本の全国民に対して、すべての政治に携わる、現在の胸にバッジをつけておる私たちの責任において、これでよかったのかどうかという反省の上に立って、そしていままでの政治家全体が、過去三年をとってみても、われわれは国民にわびなければならなかったという、そのすなおな気持ちを私たちは今国会で持ち続けて、そして最大限の今国会における成果をあげることにただいまは全力を傾注したいと考えます。
  100. 藤波孝生

    ○藤波委員 公害国会が開かれておる、そして価値の転換がはかられつつあるというその背景を、もう少しさぐらしていただきたいと思うのであります。  今日もうすでに戦後の生まれの青年が、いわゆる国民の世論を形成する非常に大きな分野を占めてきておりますけれども、そういった若者の間では、新しい生きがいをさがす、生きがいを求めるという一人一人の心の中の作業が始まっております。従来のように、高いレベルの衣食住の生活を持ちたい、こう考えてきた二十五年間の日本。これからの日本人の暮らしというのは、そういった道にGNPや、一人当たりの国民所得というものを求めるのでなしに、もっと人間らしい快適な環境を求めるような方向に向かって、人間の生きがいというものが求められつつある、このように私は考えるわけでございます。  今回の国会を通じて、佐藤総理あるいは山中長官のお話の中に、公害はみんなで考えてみよう、被害者である自分は、場合によると大きな発生源になっているかもしれないというような、一億国民総ざんげ論に近いような御意見が出たわけでございますけれども、これなども青年の新しい時代の生きがいというものといろいろ結びつけてみると、非常におもしろい問題点が浮かび上がってくるのではないかと思います。たとえば、従来の青年が一番ほしいものは何かといえば、自動車だった。それがいい自動車、いい乗用車をほしいということになった。一台はふだん乗り回す自動車で、もう一台は非常にかっこうのいい外車を持ちたいというようなのが青年の生きがいであったり願いであったわけでございます。ところが今日になってみると、もう青年の自動車、乗用者に対する考え方というのは変わってきておりまして、むしろ乗用車を持つなんというのは、広い車庫が要って、しかも、非常に不健康で、危険で、しかも、時間がかかるじゃないかというようなことが心の中でウエートを占めてきております。すでに、乗用車がふえつつある事態の中でも、心の中では自動車に対する考え方というのは、変わってきておりますね。あるいはいろいろな薬品を飲用して、自分のからだに栄養をとる、体力を増進する、こういうふうな従来の薬品に対する考え方というものはもう変わってきて、むしろそんないろいろな錠剤を飲むよりも、美しい水のところへ行って生活をする、清浄な大気の中で生活をしたり、活動をしたりすることのほうが、はるかに人間のからだにとっては大事なんだ、どんなにたくさんの錠剤よりも、大事なんだという考え方が心の中にもう生まれてきておりますね。こういった、一人一人の心の中に芽ばえてきております新しい時代の生きがいといいますか、生活の知恵といいますか、そういうものと、全体の政治が取り組むべき公害というものとを、いろいろ考え合わせてみますと、私は案外その辺に公害問題を解決する一つの道があるのではないかというような感じがするのであります。  したがって、公害というのは、単に公害対策としてばい煙規制、水質汚濁——もちろんそれが中心でありますけれども、それだけではなしに、広い国民生活のあり方の転換といいますか、人間の生き方の転換といいますか、そういうものが政治の側から国民に示されていいのではなかろうかというような感じがいたすのであります。総務長官のお考え方を承りたいと思います。
  101. 山中貞則

    ○山中国務大臣 心の問題に触れて、さらに青年の意識というものについて触れられたのでありますが、心の問題に触れることは私も同感です。たとえば、いままでの考え方の家庭の普通の廃棄物は、ただ外にちりかごに入れて出しておけば集めてくれるというようなことで、それは市町村の固有義務であった。しかしながら、それが電気洗たく機や、テレビや、冷蔵庫や、そういうもの等については、もう差し上げますといっても、もらってくれる人はいない、中古になれば。そうすると金を上げてどこかに運んでいってもらう。はたしてその人は、あるいは運ぶ人は、どこに持っていって捨てるのだろうかというようなことまで考えてやっているかどうか。こういうようなことがあるし、社会面の記事で、あき地に捨てられた冷蔵庫に入って子供が死んでいたという話も、再三私たちは見ました。それは悪意を持って捨てておいたのではなかったかもしれません。もちろんそうであると思います。そういうようなことから、今回一町村だけによって、そういうような産業廃棄物なり、俗称粗大ごみといわれる家庭環境から出てくる廃棄物、新しい環境から生まれる廃棄物等は、広域な処理が必要であるという意味廃棄物処理法を出したのは、そこらに問題があるわけでありますが、あるいはまた私が例をとって、自動車に乗っている人は交通事故の問題からいっても、いつ加害者になるか被害者になるかわからない立場で運転しているのですが、そういうことはあまり考えていない。しかし、今度は公害の問題からいくと、自分が快適に自動車を飛ばしている、高速道路なら一そう気持ちがよろしい、渋滞にはいらいらするといいながらも、自分の自動車の排気口から出している排気ガスというものが、究極的には大気汚染の大きな犯人となって、沿線住民の人々に大きな被害を与えることについての意識を持っているかどうか、これらの問題等は大きな問題があると思います。これらも、しかし、人の心の問題を法律で定めることはできません。できませんから、心の問題から生まれてくる現象というものをなるべく的確につかもうというのが、今回の法律にあらわれた考え方であります。  第二点の、青年の意識の問題ですが、私は青少年問題も担当いたしております。しかしながら、ただいま藤波君の言われたように、日本の大多数の健全なる青少年諸君がなってくれておるという資料を実は得ていない。そうでない。自分が幸福であれば、自分が生活が楽であれば、いい恋人が見つかればというようなことの限界の中において動いておるような気がしてならない。統計上からいっても、日本の核家族化なんというものは——本来は育ててくれた親の恩というものを、恩を返せとはいわなくても、老後の親は子供が養うべきはあたりまえの人間のあり方であります。そこが動物と違うところなんですけれども、核家族化していっている状態というものは、実際はそれに逆行しておるわけです。あるいはまたレジャー地等における青年たちの意識を持たずして廃棄していく一日数万トンのごみ、あるいは富士山に、ヒラリー卿がなげいたといわれるほどの廃棄物が一ぱい、持ち込んだものを持っておりればいいのにおりないで、富士山の上に捨てていっている。皮肉を言えば、富士山は登山者の廃棄物によって標高が高くなりはしないかという、そういうような現象等も私は決して誇張でない社会環境というものがあると思うのです。ここらは、藤波君の言われるような青年諸君ばかりであるように、私たちは努力をしていかなければなりません。これまた強制してもできるものではありません。私たちはやはり人間としてこの世に存在することは、自分一人のみの存在でないという自覚を持つことがおとなになることへの第一歩であると思います。その意味では自分は社会に対して反面義務を持つのだ、権利のみではないという基礎的な考え方に、日本もいくさに敗れてから二十五年、そろそろ立ち直ろうとしておるわけでありますから、二十五年の前に取り落とした心の問題もわれわれは取り戻し、青少年もまた自分たちのあるべき社会人としての姿に、本然の姿に返っていく。諸外国においては当然のことだと受け取られていることが、日本においては、まだ敗戦のショックでありますかどうか、それらのところの基礎的な問題がまだ取り残されているような気がしてならないという気が私はするわけであります。これはあえて反論ではなくて、あなたのお考えもあろうし、私は青少年問題を担当して、いまあなたの指摘したような青年たちの意識の革命、前進というものが、普遍的に日本の青年たちに生まれてくれたら、どんなにかすばらしい日本の未来が描けるであろうということを念願して、その方向に沿うように努力しているわけであります。
  102. 藤波孝生

    ○藤波委員 いろいろもっと承りたいことがございますが、時間の関係もございますので、先に急がしていただきます。  先頭に立って、一九七〇年代の冒頭に、政治の価値の転換をはかる、その大きな仕事を、まさに先頭でおやりになっていらっしゃる総務長官、いろいろ感慨深いものがおありになると思います。私はこの公害国会から、やはり日本人の暮らし、あるいは日本の政治のあり方、それから将来に対する長期計画のあり方、これはもう一回洗い直してみなければならぬのではなかろうかというような感じがいたします。いろいろな面でそれは出てまいりますから、今後いろいろな角度から努力をしていきたいと思いますけれども、従来の日本の計画の立て方というのは、都市化現象にしましても、工業化の問題にいたしましても、経済界のそういった一連の動きの上に立って、それを計画としてまとめていくというような感じ、政治があとから追っかけていって、もっと問題点を先取りをして計画を示して、しかも、その中で民間の自由と創意を生かしていくというような政治のあり方が、早く打ち出されなければならなかったのではなかろうか。特に公害問題などに関しましては、そういう感が深いのであります。  いろいろ例が外国にはございますけれども、イギリスで最近よくいわれておりますのは、ロンドンの近郊都市づくりなどは、もう一ぱい一ぱいになってきた。ニュータウン政策が戦後ずっと進められてきたのですけれども、いま一番いわれておりますのはミルトン・ケインズ市建設計画、御存じだと思いますけれども、いなかのまさに田園のどまん中に小さな村、その村が将来二十五万か三十万くらいの人口の町を、計画を立てて、そこにいろいろな事業を分散させる、公害防除を初めとする社会資本を思い切り投資する、りっぱな教育施設を整える、住宅環境をつくる、こういった町づくりが進められております。  わが国においても新全総などで、地域の思い切った開発計画というものが打ち出されておりますけれども、何か少なくとも都市化現象などを見ておりますと、なしくずし的にそういう町や村が大きくなっていく、都市がだんだん膨張していく、それをあとから政治が追っかけていくという感じがしてならないのでありまして、思い切ったこういった理想村のようなものを、やはりわが国もどんどんと都市政策といいますか、地方計画といいますかの中へ打ち出していくことが、積極的に公害問題に取り組んでいく姿勢にもつながっていくのではなかろうかと思いますが、総務長官、所管は違いますけれどもお考え方を承っておきたいと存じます。
  103. 山中貞則

    ○山中国務大臣 前の国会で、議員立法で過疎地域対策緊急措置法が成立いたしました。私は入閣をいたしておりましたので、感無量でその成立を見送りました。というのは、私自身が責任者となって、直接鉛筆をとって書き上げた法律であったからでございます。その法律を、昭和五十四年三月三十一日をもって失効すると書きました。そのときに、私がまだ提案者でありまして、これは一応廃案になったのです。その成立をいたしませんでした提案した国会において、この委員会のこの場所で私は提案者として、自民党を含む野党の皆さん全員の質問に二日間答えました。なぜ五十四年の三月三十一日には失効すると書くのか。過疎対策の目的が達せられなかったら当然続けるべきではないかという議論がありました。  そのときに私は、現在は太平洋ベルトラインにメガロポリスを構成するその姿というものが、計画的になされたものでない。しかも、新全総にしても、やはり現在のその時点から計画が、考え方というものが現実を踏まえて出発をしておる。しかし、いずれ過疎地域というものは、日本人が求めている本来の美の世界、すなわち美しい空と水と環境というものが、みんなから、飢えたものの泉を求めるごとく求められる地域になるはずである。そのための施策をやるために、あらゆるものを考えて、過疎地域対策緊急措置法を立案したんだ。したがって、十年の間に過疎地域対策は終わるのであって、その過疎地域はやがて過密地帯に、六十年には七割の人が集まるであろうといわれる見通しの反面、これらの過疎地域には、自分たち日本人の美の心の根源としての人口の還流があらためて起こるであろう、時期的なものとしてもあるいは定着をしたものとしても。そのようなことを念頭に置いているのであって、過疎地域対策を延々と続けることは意味がないことである。私は、期限を十年と切ったから過疎地域対策意味があると説明をいたしました。これはよけいなことでありますが、しかしながら、そのことは今後、ただいま議論されたようなことにも当てはまるのでありまして、私たちはそういう日本の立地というものを今日無条件で、無制限で、無計画で、成立された条件のもとにおいて対策を立てるのみにきゅうきゅうとしておってはなりません。日本こそ利用すべき土地のまことに狭小な、人間の居住関係の面積の少ない国であります、原材料の乏しい国であります。その国が、アメリカでさえも広いところで土地政策をニクソンが公害対策の前提として述べておることに思いをいたすときに、われわれは十年前に日本の土地政策というものに思いをいたして、そうして土地政策の展開の上に立った、日本列島の新しい経済発展の計画を定めるべきであったのだという反省を持っております。しかし、おくれてもやらなければならないことはやらなければなりません。したがって、今後の公害対策基本には、日本の限られた面積の上に立った条件を克服する新しい立地の計画、土地計画というものが、当然大きな柱としてまん中に立てられなければならぬということについては、私も同感でございます。
  104. 藤波孝生

    ○藤波委員 同じような問題、もう一点だけ。文部政務次官お越しをいただいておりますので、承らしていただきたいと思います。  従来の都市化や工業化から人間の健康を守るというのは、今日では、世界ではむしろ消極的な保健のあり方とされております。積極的にもう一つ前へ進んで、人間の健康を保持する、保全するという考え方が打ち出されなければならぬ時代に入っておるわけでございます。  例は西ドイツにございますが、西ドイツの黄金計画によりますと、一九六四年から十五年間の計画を立てて、思いっ切り巨費を投じて、一般国民のためのいろいろな運動施設、これを国内につくりまして、すでにこの七年間に三万五千カ所の運動場、子供の遊園地、プール、体育館というものを整備をして、国民の健康あるいは西ドイツの青少年の育成に大いに役立っておるということを、私ども聞いておるわけであります。これからの日本の政治、特に公害国会以後の政治は、積極的に人間の健康に取り組まなければならぬ時代に入ってくると私は思うのでありますが、特に文部省としてのそういった面でのお考え方をひとつ承っておきたいと思います。
  105. 西岡武夫

    ○西岡政府委員 お答えいたします。  先生、ただいまお話のとおりでございまして、文部省といたしましても、積極的に児童生徒の健康を増進していく、保持をするだけではなくて、増進をしていくという観点からいろいろの新しい施策を考えているわけでありますが、たとえば今年度から自然の環境の中に少年の家のつくっていこうということで、新しく「少年自然の家」という施設を全国各地に建設をしていくということを具体的に実施をいたしておりますが、これもその一例でございます。  それからさらに、小学校、中学校の児童生徒に対しまして、都会の児童生徒が中心でございますが、自然環境の中で、学校と同じ教育というものをそこに移してある一定期間行なうということも、これは各都道府県において、それぞれ実施をしているところもございますけれども、来年度からは、特に文部省として、そういった方向をさらに推進をしようということで、そういった事業に対する補助ということを新しく考えているわけでございます。ただいま先生から御指摘のありましたいろいろな体育施設、プール、体育館、そういった健康増進のための諸施設につきましても、格段の努力を続けていきたい、かように考えておるわけでございます。
  106. 藤波孝生

    ○藤波委員 先ほど来から今国会の意義、公害改正の意義、新しい時代に入る政治の姿勢等につきましては、山中長官の非常に高邁なお考え方を承りまして、私ども意を強くしたわけであまりす。  長官にお願いをしたいと思います。これはこれまで何回も出た話でございますけれども、少なくとも政府がそれだけの意味合いを持った公害対策基本法改正を提案をし、関係十四法案を今国会審議をし、その成立をはかろうとしております意味合いを、やはり率直に国民に訴える必要があるのではなかろうか。法案を読めばわかる、改正する意図を考えればわかる、こういうことになりましょうけれども、私はいま申し上げてまいりましたように、この一連の公害改正の持つ意味合いというものは、日本人の暮らし、将来の日本にとってきわめて広く、かつ大きな意義を持っておると考えますだけに、何らかの形で政府の所信といいますか、そういったものが、国民の心に語りかけられる必要があるのではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。公害憲章とかなんとか、そんなかた苦しいものでなくともけっこうでございます。アメリカの大統領も、率直に国民にこの公害の重要性などを訴えておりますが、ひとつそういった姿勢を、、ぜひ国民に呼びかけていただきたい。私は、そのつもりで、今国会冒頭の総理の所信表明演説なども読んでみたのですけれども、非常に事務的に、だれがお書きになったのか、官僚の作文でありますけれども、非常にその辺の訴えかけが力がないという感じがしてなりません。これはもう外に向かっては日本が講和条約発効の批准国会と、内に向かっては今国会意味というものはきわめて大きいものがあると私は思っておりますだけに、自民党の一党員として非常に残念でならないのであります。どうかひとつ、今国会の終了のときでもけっこうでありますし、来年年頭にあたってでもけっこうでございます、総理としての形で御無理であるならば、総務長官、ひとつ党人としての愛情に満ちた、新しい時代の日本人のあり方、いき方を国民にお呼びかけになりませんか。そのことを御提案申し上げつつ、御所見を承りたいと存じます。
  107. 山中貞則

    ○山中国務大臣 自民党の中からそのような声の出ることを、私はたいへんうれしく思います。  私たちは自民党の中で、兵隊の位じゃありませんが、二回当選は二年生とか五回当選は五年生とか俗に言っております。そうすると、やはりある意味において、遠慮がちな言い方をすることも場合によってはございますが、しかし、そのような基本的な問題については、総裁である総理の姿勢についても敢然としてものを言うということは、私は非常に貴重なことだと思います。  総理がどのような形でこれを処理されるか、いまの藤波君のことばは、総理よりもさらに未来を背負う人たち、私よりも未来を背負うであろう後代の責任者の人たちのことばとして、私は総理に率直に伝え、また総理が上から押しつけて、国民にかくあるべし、かく心得べしという言い方をすることは逆な効果になりますので、そこらのところの方法はよく考えるといたしましても、国民とよく対話ができている、国民との間に一方交通でない意味の話し合いが絶えず持たれておって、そしてこの公害の問題がその大きな中心として語りかけられていく、そして国民が率直にそれにこたえる声を出すというようなことを考えていきたいと思うわけでございます。
  108. 藤波孝生

    ○藤波委員 少し、大気汚染防止法関係をいたしまして浮かび上がってまいりました問題点の、あととめをいたしてまいりたいと思います。しかしながら、この大気汚染防止法につきましても、すでに昨日来、佐藤社会委員、あるいはわが党の林委員などから御質疑がありましたところでございますが、その中で一つ浮かび上がりました問題点は、第三条の(排出基準)の問題でございます。厚生大臣ひとつお願いいたします。従来は指定地域制をとってまいったのでありますが、その規制対象地域ごとに従来は排出基準を定めてきたわけでございます。今回の改正によって全国一律の基準となるのでありますが、従来の指定地域ごとの基準と比較をいたしまして、きびしさはどういうことになりましょうか、ひとつわかりやすく御説明をいただきたいと思います。
  109. 内田常雄

    ○内田国務大臣 今回の大気汚染防止法はもとより、一連の公害関係法を改正するにあたりましての私どもの理念の中には、いままでの法律は、公害によって汚染された局地対応主義と申しますか、水については指定水域、大気については指定地域のみを対象として規制いたしておりましたのを、これをより広範な環境保全対策として全国に及ぼすということで、地域指定を取ってしまったということが一つでございますし、もう一つは、いままでは規制の対象にいたしておりましたのは、大気について申すならば、硫黄酸化物というようなものを主としておりましたが、しかし、公害の原因となる有毒物質は硫黄酸化物にとどまらず、他にいろいろな有害物質がありますことは申すまでもないところでございます。これらの他のいろいろな有害物質につきましては、法律は正面からこの規制をいたすことを避けまして、事故が起こった場合とかいうようなときにだけこの特別の対策をしておったのでありますが、こういういわば毒性物質の極限主義というものもやめまして、網羅的に毒性物質を全部常時規制の対象にするという方向をとることを第二のねらいといたしております。  そういう前提のもとにおきまして、この新しく規制の対象にいたしました物質につきましては、これも全国一律の、いわゆるシビルミニマムと申しますか、そういうものを設けまして、公害というものは、言うまでもなくその地域ごとの地理的、あるいは自然的、あるいは社会的な状況にも関連が深いものでありますから、その上に地方公共団体の長をして必要なる規制の上積みをさせる、こういうことをいたしましたが、藤波君お尋ねの一律規制の趣旨でございます。したがって、シビルミニマムでございますから、大体その最大公約数的な基準をきめますが、地域の状況に応じてそれに上積みをいたしますから、ゆるいものをきめるという趣旨ではなしに、全国どういうところでもシビルミニマムはかけておいて、そして公害の現象があらわれているところには、その状況に応じた強い規制を上に乗せる、こういうことにいたしました。  また硫黄酸化物につきましては、これはもう昭和四十三年から規制をいたしておりまして、八段階の規制をつくっておりますので、その八段階もこれは指定地域だけでございましたのを、全国各地の実際の状況に応じてこれを当てはめるということは従来のとおりやってまいります。そのほか御承知のとおり、硫黄酸化物などにつきましては、燃料規制というものも新しく法律に導入いたしたり、また、さらに特に工場等が込んでいて大気が汚染する、そういう地域につきましては、特別排出基準というような特に強い基準も乗せるというようなことも準備し、また緊急時については、さらに緊急時の非常措置というようなこともあわせて規定をいたしまして万全を期している、こういうたてまえをとったわけでございます。
  110. 藤波孝生

    ○藤波委員 時間の関係もございますので、ひとつ簡潔にお答えをお願いをいたしたいと思います。  昨日の橋本政務次官の御答弁でも、また本日の大臣の御答弁でも、各県の上乗せ条項があるのだから、従来のものと比較をしてなるいものにはならぬ、きびしいのだ、こういう御説明でございますが、上乗せをする段階までまいりますと、もちろん上乗せしてきびしいものになるわけでございますけれども、最初一件の届け出については、最初はやはり野原に一つの工場ができるわけですね。そしてだんだんふやしていくことになるわけでございますけれども、やはりそれがもう複合的なものになってくるという時期と、上乗せをする時期との、その辺の非常に時期的な問題も出てこようかと思います。したがって、やはり全国一律のものは、上乗せするからいいんだという考え方じゃなしに、相当思い切ってきびしいものをかぶせていくという考え方、少なくともひとつ厚生省はそういう態度で臨んでいただくことが、国民の健康なり生命なりを守っていく所管省として非常に大事な態度ではないか、こういうふうに思いますので、その辺ひとつ格段の御留意をお願いいたしたいと思います。  なお、昨日第四条の都道府県の上乗せ条項の問題について、佐藤議員の質問に対して橋本政務次官から、その中の政令で定める基準というのは上限下限を示さぬものではない、こういうふうな御答弁がございました。これはどういう形で私ども理解をしたらいいのか、どういう形のものが政令で示されるのか、総務長官、厚生大臣でございましょうか、整理してお答えをいただきたいと思います。
  111. 山中貞則

    ○山中国務大臣 昨日ちょっと混乱をしたような空気もございましたので、あらためて政府の統一見解を申し上げます。  関係閣僚協を開きました段階においては、都道府県知事が非常識な上乗せ等をやった場合においては、これは住民の環境、健康の保護等を越えたものがあり得るのではないか、非常識なことが出てくるのではないかという心配が一応ございまして、そこで閣僚協の決定の際には、政令で定める基準内において都道府県知事が上乗せの権限を持つということで一応の申し合わせをいたしました。しかし、その後具体的に詰めていきますと、水質についてどのように一体そのような政令の上限が、技術的に実態的に定め得るか。さらに大気についても同じような問題が出てまいりました。  そこで、先ほどの寒川君の質問に私はそのことも含めて答えたつもりでございますが、ことばにこそ言いませんでしたけれども、この際環境を守ることについて、立場の相違とか、地域における、存在している知事さんのあり方とか、すべての問題を割り切ってしまう。知事さんを全面的に信頼しよう。したがって、上乗せにおいては、その地域において最もふさわしいと判断されたもの、すなわち知事さんが審議会等の意向も聞いてきめられることもありましょうが、それらの手続等も経られるでありましょうけれども、要するに知事の上乗せについて政令において上限を定めることはやめようということを最終的にきめましたので、これをもって政府の統一見解と心得ていただきたいと思います。——なお、まだ厚生大臣からもっとはっきりしておいたほうがいいということでありますから。上限というものはないということです。したがって、下限もない。下限というのはむしろ政府が定めた基準というものが、少なくとも最低の守るべき線ですから、下限というようなものはもともとないわけであって、問題は上限ですから、上限というものは政令で定めない。したがってまかせるということでございます。
  112. 藤波孝生

    ○藤波委員 もう一つ問題になりましたところでありますが、第二十七条の三項の電気事業法またはガス事業法の規定による許可もしくは認可の申請というところですね、これは通産大臣はその届け出に対して知事に通知をする、そしてそれを踏まえて四項で、これが人の健康または生活環境にかかる被害を生ずるおそれのあるときは、それぞれの措置を知事は所管大臣、通産大臣に要請をすることができる、こう書いてございますね。それを踏まえて五項で、そのとった措置をさらに通産大臣は知事に通知をする、こう明記してございますが、ここのところがこの国会を通じて問題になった、一つの除外をしたことに対する問題点として浮かび上がったわけでございますが、この知事の通産大臣に対する要請は、通産大臣が知事に通知をいたしましたことが知事にとってまだ不服であります場合、自分の県として条件を満たしていないと知事が判断をいたします際に、通産大臣に対して再要請をすることができるかどうか、この点をひとつ承っておきたいと思います。  それから、つけ加えてでございますが、それがもしできるといたしますならば、そういった手続をいたしております間には事業の開始にならないかどうかということについて、時間的な問題につきましてもあわせてお答えをいただきたいと思います。
  113. 莊清

    ○莊政府委員 通産大臣が措置をとって通知したものを踏まえて、もう一度大臣に要請することは、法律上十分に可能でございます。  それから、通産大臣が通知をして、知事さんのほうが再度御要請になるまでの間どうするかという御質問がつけ加わっておったかと存じますけれども、この場合には当然に何日付で認可をしたということ、それから着工予定時期等全部許可申請等にあらかじめ入ってございまして、大臣が措置をとる前から知事さんのほうでは全部おわかりいただけるはずのものでございますので、時間的なアローアンスというものは知事さんのほうでも十分おわかりのはずでございますから、その点は通産大臣及び県のほうで十分気脈を通じまして、時期おくれであるとかそういうことがないように当然運営できるものと考えております。
  114. 藤波孝生

    ○藤波委員 小山委員から関連の質問を申し上げたいと思いますので、お許しをいただきます。
  115. 加藤清二

    加藤委員長 関連の申し出がありますので、これを許します。小山省二君。
  116. 小山省二

    ○小山(省)委員 いま、わが党の藤波君の質疑を通して、私は公害担当の山中大臣の明快にして率直な御答弁を承ってたいへん意を強ういたしたわけでありますが、私は、ただ四十二年に公害基本法が制定をされましたとき、当然これによって相当公害というものは防止ができる、しかも、産業との発展の調和をはかることもまた可能である、私自身もそういう確信を持っておりました。また、政府当局の答弁も同一でありました。しかるに、わずか三年の間に、このような重大な変化を来たした点につきましては、私ども政治を担当する立場として率直に深い反省をいたしますが、私は、このような立法措置がなされたにかかわらず、企業者もまたこの方向に協力をしなかったという点も一つはありますが、最も大きな原因は、やはり公害防止に指導的な立場に立っておった政府姿勢の中にも、大きな問題点がたくさんあったように私は思うのであります。  きょう、御承知のとおり当公害委員会参考人においでをいただいて、斯界の権威者からいろいろ貴重な御意見を拝聴したわけであります。はしなくも参考人の中から、一体公害に対する学術研究に対して政府のとっている措置に対しても、また一般の無関心さについても、重大な指摘がなされたわけであります。  私は、今回十幾つかの関連法案が、きわめて短い期間に急速に整備をされてこの国会に提案をせられる。しかも、その十幾つかの法案のあとを振り返ってみますると、私は、法の整備を急ぐのあまり、かなりどろなわ式といってはたいへんことばが行き過ぎるかもわかりませんが、急造の法案が至るところに目につくような感じがいたすわけであります。  私どもは、法規や厳罰主義で公害の問題というものが必ずしも解決つくものだとは認識しないのであります。もし、そのような方向で解決ができるとするならば、人を殺した者が死刑になるという重罰によって、殺人というような形のものは順次解消されなければならぬのに、むしろ死刑の制度を廃止しなければならぬようなそういう動きがあるように、法規や処罰で必ずしも問題の解決ははかれない。  そうなりますと、一体政府がなすべき措置は、立法措置ももちろん私は必要でないとは申しませんが、むしろそれ以前に、なすべき多くの問題が取り残されておる。この点について、おそまきであってももう少し政府としてはそういう面に私は大きく前進してほしいと思うのであります。  たとえば公害防止技術というものは、まだきわめて未開発であります。私は今日この制度公害防止が必ず完全に行なえるとは考えにくいのであります。そうした方面に対する政府の責任というものが明確に打ち出されていない。たとえば油の例を一つとってみましても、低硫黄重油というものは確保されておるだろう、また確保いたしますと言っておる。しかし、それはどういうことをつかまえて確保がなされておるか。それは民間の業界の手によって確保されているにすぎないだろうと思うのであります。しかし、この油は、この資源は、もともと国内にないわけであります。需給の関係からいって必ずしも義務づけられていないこういう制度のもとにおいて、確保されたということは少し早計に過ぎるのではないか。したがって、低硫黄重油というものが必要であるならば、法的にやっぱり明確にこれを確保されるような、そういう義務づけがなされなければならぬというふうに考えておるのでありますが、これらの点を含めて、時間がございませんので担当大臣から御所見を重ねてひとつお伺いしたいと思うのであります。
  117. 山中貞則

    ○山中国務大臣 通産大臣が低硫黄重油確保の責任者でありますが、おられませんので私から答弁をいたします。  これはわが国が政府のなすべき義務として、かりに確保の法定義務をつけても、これは国際石油の供給市場においておのずから限度のあることなんです。御承知のとおりなんです。しかも、低硫黄重油の要求が各国非常に強いということから、これがまた石油の資本市場においては、寡占的な国際石油資本でございますので、それらによって投機的な相場さえも一時生まれていたというようなこと等を考えますと、これはわが国だけでなかなか解決できない問題である。かりに民族資本の最たるものとしてアラビアでは私たちが日本民族の力で掘り当てた。しかし、これが最も硫黄分の多い油である。そのことを解決しないために、結局はその油を引き取るために、需要者側との間に、生産量は相当あるのに、それについて全量を国内が喜んで消費しようとしない、受け取ろうとしない、価格についても数量についても毎年もめておる。このようなことは、やはり今度は外国の現地において低硫黄の処理をなして持ってくるか、あるいはまたすべての輸入原油を国内において低硫黄化する際の、低硫黄化のそのことについて、われわれが、国が何かをなしてあげなければならないのではないか。たとえば、ただの一例でありますけれども、重油脱硫の過程においてアスファルトが生じる。しかし、日本全国の需要の約二倍に近い四百八十万トンのアスファルトというものが出ておる。そうすると、それは消費市場が伴わないわけですから、業界では重油脱硫の過程に伴って生ずる余剰アスファルトの処分について、中近東のアラビア地帯に、砂漠地帯に、砂漠の砂の下に、一定の地面の下に層をアスファルトでつくって緑にしてあげる国際協力をやろうかというようなまじめな議論もしておられますが、しかし、われわれは、このような余剰アスファルト等について、もっと国内でこれを有効に国土のために使えるはずです。農免道路についても、あるいはその他の村道、里道等についても、もっともっとわれわれは、アメリカ人から砂利道を道路の予定地かと言われたという話がありますけれども、道路は必ず舗装されているというのが、少なくとも現道舗装であっても望ましいことであるならば、このような余剰アスファルトというものは全量国が引き取りましょう。引き取って国がそれぞれの事業に使えばいいのでありますから。使う分野は数多く残っておる。そうすると、それぞれの重油脱硫の過程における、それぞれの会社において、そのアスファルトが消化されることによって、アスファルトの再処理等を考えないで、どんどんそれを重油脱硫装置としてやっていけばいいわけでありますから、それらについて得るメリットというものは非常に大きなものがあろうと考えます。これらも若干の端緒についた政策が表には出ておりますけれども、大蔵大臣その他とも話しておりますが、来年あたりはぜひそういうものでも私たちの取り組むべき予算の中で表に出すことはできないだろうかと考えております。  担当大臣でありませんので、私の答弁はあるいは御質問に的を射た答えにならなかったかもしれませんが、あらゆるくふうをこらすべきことについては私も同感でありますが、これの義務をかりに政府が負ってみても、それはしょせん環境からみて、日本一国のみではいかんともなしがたいことであるということだけはいえると思うのです。
  118. 小山省二

    ○小山(省)委員 私も石油業界の実情というものはよくわかっておるわけでありますが、しかし、一方においては使用に当たって法的な義務づけをしておる。そうであるとすれば、当然それが法的に確保されておらなければ私はいかに法的にこれを使えといっても、使うべき品物が確保されてない中において法的な規制がなされるということは、かなり業界にとっては大きな苦痛である、重荷であるというふうに考えております。ことに中小企業業界においては、私はなかなか、こうした方面にかなりの困難さが伴うのじゃないかというふうに考えておるのであります。これはひとり油の問題ではありませんが、私は今日の提案されました各種の法案を通しまして、こうした新しい問題に対して、たとえば行政罰に直罰を加えるとか、あるいは行政罰に刑事罰を併用するとか、かなり思い切った重罰方式というものが法案を通して強く出ておるような感じがいたすわけであります。しかし、公害自体の技術的開発研究分野における政府の力の入れ方というものは、はたしてこれと並行しておるかというと、予算措置の上においても、現実にそれに対する制度の上においても、必ずしも明確に私は出ていないと思う。私どもはやはりみずから律するにきびしく、他に向かってはできるだけ寛大でなければならぬのに、政府の方針は、みずからなすべき仕事の分野においてはまだ多くの問題が残されております。にもかかわらず相当業界についてはきびしい態度で臨んでおられる。私はそのこと自体に決して不満を言うわけではありませんが、少なくとも、これだけの考え方を法制化そうという政府立場に立ちますれば、やはりみずからなすべきことを先行しなければならぬ、私はそのような感じがいたすわけでありますが、この点をお伺いいたしまして、時間がございませんから質問を打ち切りたいと思います。
  119. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 小山先生のおっしゃるとおり、公害法案が通ったときに、低硫黄の石油の需要というものは非常に高まるであろう、これに対して低硫黄をどういうふうに確保していくかということは非常に重大なことであろう、現在通産省では低硫黄というものが非常に確保困難である、非常に高いコストで買わざるを得ない、しかし原油が入るときには一二%の原油関税が入っておりますので、これに対しては、特に低硫黄に対しては関税を少しまけていただきたい、安いもので供給ができるようにしていただきたいということで、来年度に低硫黄輸入政策に対して大蔵省と現在折衝中でございます。また硫黄分の高いものについては間接、直接脱硫の問題といま取り組んでおりますけれども、なかなかその実績が十分あがっております。いま実績の中では七、八〇%が大体できるであろうということでございますけれどもも、なんせ一基五十億ないし百億かかる施設でございます。これに対してもぜひ関税還付をやっていただきたい、一二%の中から幾らでも返してもらえないだろうか、それらの施設を精製工場の中洲につけて、低硫黄を大いに供給できるような形としていきたいということで鋭意努力しております。低硫黄産地を開発するにしても、なかなかすぐ間に合うものではございません。現在インドネシアでその低硫黄開発をやっておりますけれども、それも全体量から見れば多いものではございませんし、ほとんど低硫黄石油というものがアメリカにあります。そういうことで、通産省といたしましては、ぜひ四十八年に約一億キロリットルぐらいの分は確保ができるようにしておきたいということで、いま低硫黄燃料政策を策定中でございます。
  120. 小山省二

    ○小山(省)委員 これで質問を終わります。
  121. 藤波孝生

    ○藤波委員 以上で、私の質問を終わります。
  122. 加藤清二

    加藤委員長 次は、島本虎三君。
  123. 島本虎三

    ○島本委員 きょう午前中に対策基本法の問題と、環境保全基本法のこの二法についての公聴会を行ないました。参考人和達清夫さんと、それから野村参考人板橋参考人宮脇参考人であります。こぞってこの四参考人ともに現在の公害対策、そういうような状態ではなく、もう環境保全ということばさえも追い抜かれるような状態じゃないか、これでも少し心配だという。われわれが先へ数歩進んだつもりでつくったものさえも、宮脇参考人によって、この程度の考え方ではすぐ古くなるのじゃないかと指摘されたほどでした。私も、けさの参考人の公述を聞きまして、実はこの公害対策というものは、われわれの考え自身がすでに相当進んでおるつもりでも、現況のほうがそれより先に進んでいるということを痛感しました。今後の対策にあたっては、やはり為政者もわれわれもともにその点に留意して、先を見越しながら完全対策を打たなければならない、それでも場合によってはおそくなる、こういうようなことがあり得ることを痛感したわけです。そういうような立場に立って、ひとつ私から二、三質問さしてもらいたい、こう思いますので、どうぞ。いままでもう法案は詰めの段階に入っておりますから、あまりそういうような内容に触れた点は勘弁願いたい。しかしながら若干そのためにも聞かしてもらいたい点もあるわけであります。  まず、水質汚濁大気汚染防止法、この両法案は関連して作成されたものか、個々に作成されたものであるか、この点は公害関係大臣である山中長官から承りたいと思います。
  124. 山中貞則

    ○山中国務大臣 原則的には個々の法律でございますから、個々の関係省庁の合意によって作業が進められたものであります。しかし、国のつくる法律でございますから、空気と水であるからといっても、そこに関連性のないばらばらの法律であってはいけませんので、本部において調整に加わりまして、それぞれの法律内容が対応して、大体その程度でよかろうということでありますので、完全に一体のものではございませんが、それぞれの法律において調整すべき点は調整してあるわけでございます。
  125. 島本虎三

    ○島本委員 では、水質汚濁防止法大気汚染防止法を比べて、どの点が相違しておりますか。相違点があるならば、この際はっきりしておいてもらいたいと思います。
  126. 山中貞則

    ○山中国務大臣 相違点と言われても、具体的に何かあとで御指摘があるんでしょうが、これはやはり大気は大気、水は水でして、基本的には水と空気の違いということです。冗談で答弁しているわけではありません。いまの御質問にはその程度しか答えられないです。
  127. 島本虎三

    ○島本委員 だから、あなたのほかに厚生大臣と通産大臣をお呼びしたのであります。しかし、ないようでありまして、これは困るのであります。  では、次に進みますけれども、その中に相違点があるようです。環境基準と排出基準の出し方、これはいままで事務的な説明がいろいろありました。私どもはその点でも、もう一回大臣とともにこの問題の認識だけ新たにしておきたいと思うのです。これは事務的に伺います。経済企画庁、環境基準、排出基準、これを明確に一応説明してください。前にありましたけれども、再び要求いたします。
  128. 西川喬

    ○西川政府委員 お答え申し上げます。  環境基準と申しますのは、公害対策基本法に基づきまして、いわゆる公共用水域の基準として、行政目標としてきめるものでございます。現在きめておりますのは、健康項目と生活環境項目とに分けておりまして、健康項目は、全国一律の環境基準ということにいたしてございます。  それから生活環境項目につきましては、これを河川、湖沼、海域に分けまして、それぞれ河川の部で六類型、湖沼の部で四類型、海域の部で三類型の類型をつくったのでございます。この類型を分けましたのは、それぞれの類型につきまして、そこの水域の利水目的の適応性がどのようなものに適応するかということをきめているわけでございます。個々の水域につきましては、現在の利水目的あるいは将来の利水目的等を勘案いたしまして、基本的にきめられました類型のどこに当てはめるかということをきめるというふうにいたしてございます。  排水基準のほうは、環境基準を達成するための一つの手段といたしまして、排出の規制を行なうということで考えておるわけでございます。現行法の考え方によりますと、指定水域というものを指定いたしまして、排出規制を行なうという考え方におきましては、そのまま排水をたれ流しにしておいたのでは環境基準が守られないということで、環境基準に見合って排水基準をきめるという考え方でやってまいりました。  新法におきましては、環境基準と一応離れまして、ナショナルミニマムを設定してしまうということで、ナショナルミニマムにつきましては、環境基準との関連はなしに、いわゆる公共用水域に水を排出する者の社会的、道義的義務として守らなければならない基準というもので決定されるわけであります。ところが、この一律基準を守っておりましても、そこに異常な集積が行なわれる、あるいは自然状況におきまして流量そのものが少ないというようなところでは、全国一律の基準を排出者が守っておりましても、環境基準は守られないというようなところが、個々の水域におきまして出てくるわけでございます。そこの水域におきましては、環境基準を達成するために、一連の手段の一つといたしまして排水規制の強化ということが必要でございまして、それを都道府県にまかせます上乗せ基準ということによりまして、規制を強化するということによって、結果的に環境基準の維持達成をはかりたい、このように考えておるわけでございます。
  129. 島本虎三

    ○島本委員 その説明の点はよくわかりました。そうすると、ナショナルミニマムによっても排出基準のほうははっきりきまっておる、またきめることが可能である。河川、湖、海域、それぞれの類型に分けて環境基準をつくる、これはわかりました。  この際伺います。隅田川、北海道の石狩川、これはいつきれいになりますか。
  130. 西川喬

    ○西川政府委員 隅田川につきましては、すでに環境基準設定いたして、類型の当てはめを終了いたしております。環境基準の類型の当てはめをいたしますときには、これの達成期間というものをきめて閣議決定いたしております。隅田川につきましては、すでに現在排水規制は一番きびしい規制と申しますか、都市河川方式でこれ以上の規制はできないというような規制をいたしております。隅田川の環境基準を達成いたしますためには、現在排水規制になじんでおりません家庭用水、このものを減らして、汚濁量を減らしていく以外に方法はないわけでございます。これはいわゆる社会資本の充実といたしましての下水道の整備によらざるを得ないということで、この下水道の整備の年次を勘案いたしまして、やむを得ません。環境基準の達成は五年以内ということを原則といたしておりますが、それでも達成できないものは五年をこえる年限においてもやむを得ない、可及的すみやかに、現在のところどんなにおくれましても九年ということを考えておるわけでございます。それによりまして、隅田川は河川の類型で申しますとE類型、これは一番最低のところでございまして、悪臭が出ないということで、付近の人に不快感を与えない程度、最低の基準でございますけれども、九年によりましてそこへ持っていきたい、このように考えておるわけでございます。それから、石狩川につきましては、いろいろ類型が分かれまして、上流のところはAA、これは自然環境として一番いいところでございます。そのあとのところは、旭川の市街地へ入りますまでの区域はA類型、旭川の市街地の中につきましてはC類型、それから雨龍川合流点から下流につきましてはB類型、このような当てはめをいたしてございます。上流のAA類型、A類型のところは、現状におきましてすでに達成されておりまして、今後これ以上よごさないように維持していくということにいたしてございますが、旭川の市街地内並びに雨龍川合流点から下流のC類型、B類型のところにつきましては、現在きまっております排出規制、これが相当古い規制でございまして、その後の情勢にもそぐわなくなってきておりますので、この排水規制の強化、新法できまります一律基準の適用によりまして、現在よりも相当強化されることになります。さらに、必要によりましては、水域を限って上乗せ基準設定しなければならないというところも出てこようかと思います。この排水規制の強化並びに市街地におきます下水道の整備ということによりまして、一応達成期間を五年と考えております。
  131. 島本虎三

    ○島本委員 前の法律によると、昭和三十三年にいわゆる水質二法ができておる。これによって水はきれいになるといわれながらも、だんだんきたなくなってしまった。今度の場合もこの法律によって九年間の間にはきれいにする、こういうような環境基準ができ上がり、排出基準もきまっておるようです。しかし、それに対して具体的な年次計画、それに対してはっきり当てはめて、初年度はこれ、二年目はこれという具体的な計画があるのかないのか。それでなければ法律をつくっても、その計画なしではいつの日にかまたきれいになるのかわからない。計画の点は一体どういうふうになっているのか、どうするつもりなのか、この点はやはり伺っておかなければなりません。これはありますか。
  132. 西川喬

    ○西川政府委員 その年次的計画でございますが、一応環境基準達成のための施策、これはいろいろな施策がございます。排水規制の強化、それから下水道整備の促進、あるいは河川の流況改善、河川のしゅんせつ、これらのことがございます。それぞれのものにつきまして一応計画を持っておりまして、それを集約いたしまして達成年限をきめているわけでございますが、環境基準がいわゆる原則といたします五年以内に達成できない水域につきましては、五年目の暫定目標、五年までに達成すべき暫定目標というものをひとつきめまして、そこに節をつけまして達成を考えております。
  133. 島本虎三

    ○島本委員 それはわかるのです。ただ単にそういうふうにして暫定目標を目標だけきめておいて、具体的な計画がないままであったのがいままでの汚染の一つやり方だったのです。ですから具体的に、段階的に、九年でやるというなら九年間の間に具体的な計画がないとだめだ。目標だけ追って、その目標とやっておることと別々だ、これじゃだめなんだということなんだ。わかりませんか。
  134. 西川喬

    ○西川政府委員 従来のやり方におきましては、このような計画がなかったわけでございます。その当時の、排水規制を行ないます時点におきます汚染の状態を調べまして、一応目標水質をつくりまして規制をかけたわけでございますけれども、その後の動きに対しても想定以上のものは出ておりません。それで排水規制の書き方にしましても、従来のやり方におきましては、ただ単に現状を踏まえたところからの基準しか設定いたしておりませんでした。最近のやり方は、現行法におきましてもすでに従来の反省をも加えまして、たとえば既設と新設は基準を変える、新設はよりきびしい基準設定するというようなこと、あるいは業種におきましても漏れがないように、その他の業種を必ず入れて絶対に漏れがないようにするとかいうようなことを考えてきたわけでございます。ただし、排水規制だけで公共用水域の水質の保全をはかることは、先ほども申し上げましたように、一般家庭の汚水等を考えますとできないわけでございます。そのために下水道の整備その他も含めなければ、ほんとうの総合的施策はできないわけでございまして、それが先般閣議決定をいたしました環境基準というものを決定いたしまして、その環境基準を達成するための方策を、排水規制だけではなしに、総合的に行なうということで決定いたしたわけでございまして、従来のやり方とは、ずっと前進しているということを御了承願いたいと思います。
  135. 島本虎三

    ○島本委員 それを了承する意味において、ではお伺いいたしますが、監視測定はどなたがやるのですか。
  136. 西川喬

    ○西川政府委員 従来、監視測定につきましても、水質の測定ということは県もやっておりました。それから、私どものほうで、指定水域につきましては予算を県に配賦いたしまして測定をやっておりました。それ以外に河川管理者あるいは水産関係とか、そのようなところも、それぞれ別個の立場で水質の測定をやっておりました。そのようなばらばらな状況であったわけでございますが、その点も今後の環境基準の決定に伴いまして、はたしてこの公共用水域の基準が、政府行政の目標といたします基準が、どのような状況になっているかということを常に把握しておかなければいけないわけでございますので、新法の法案におきましては新たに測定等の章を設けまして、そこにおきまして、従来それぞれの所管がそれぞれの目的でやっておりましたような測定というものを一元化いたしまして、全部調整をはかって取りまとめる。一応その責任者は県知事ということにいたしまして、県知事を中心といたしまして、いわゆる測定を行なっております国の出先機関等も含めまして、そこで毎年度ごとに監視測定のための調査の時点なり、回数なり、そういうものを全部統一いたしまして、調査、測定を行なう、その測定の結果は、全部都道府県知事のほうに集めまして、そこにおいて集約いたしまして、公共用水域の状態がどうなっているかということを常に把握しておくというふうにいたしたわけでございます。
  137. 島本虎三

    ○島本委員 いままでも同じように都道府県では監視しておった。同時に、経済企画庁でも同じように監視をしておった。それがこのようにしてだんだんよごれてきた。今回もまた同じように権限を都道府県に与えて、そしてそれを中心にして監視させようとする。あなたたちには足がないのです、手もないのですよ。口だけあるのですよ。そういうようなことで、予算をやったからということでいままでやってきて、これだけあなたのほうは水をよごしたのです。今度も同じように、県にやらせると言っておりますけれども、どういうような監視測定体制をとっているのだと聞いても、ただやらせるだけです。やらせるといったって、やらなかったらよごれるんだよ。十四条を説明してください。
  138. 西川喬

    ○西川政府委員 従来もこの監視測定は、経済企画庁が予算を配賦いたしまして、指定水域につきましては県がやっております。そしてその結果は、私どものところにも全部報告がきておりまして、現在指定水域にしましたところの状況がどうであるか、進行しているかどうか、少しずつよくなっているかどうかということはわかっております。必ずしも所期の目的のようには改善されていってはいない、しかしながら、少しずつ改善されていっているというケースが多うございます。ただし、都市化のはなはだしいところによりましては、所期の目的と違いまして悪化していくというようなケースもございました。しかし、一般的にいいまして、指定水域になりましたところは、少なくとも現状維持か、わずかながらずつよくなっておったというのが従来の傾向でございました。そのような状況は、一応企画庁のいわゆる水質保全法の所管としての観点から、企画庁、県をつなぎましたパイプで行なわれておったわけでございます。ただし、これが必ずしも十分ではなかった。それ以外に公共用水域につきましては、それぞれの水域の管理者があるわけでございます。公物管理者がおります。もっとこういう公物管理者も全部一丸となって、総力をあげてやるべきではないだろうかというのが、今回の「測定計画」を入れたところでございます。  十四条の問題でございますが、いま私どもが申しておりますのは、この公共用水域の監視測定ということで十五条以下の問題を申しておりまして、十四条の問題につきましては、これは事業者のほうの義務でございます。事業者のほうで、自分のところから出します排水のほうを記録しておかなければならない。私がいままで御説明申し上げておりましたのは、公共用水域の環境基準に見合うほうの水質を常に把握しておかなければならないということでございます。十四条の排出基準のほうを監視いたしますのは、これは一元的に都道府県知事でございます。
  139. 島本虎三

    ○島本委員 これであまり長い時間やっておっては、時間が惜しゅうございます。ただ一つ経済企画庁、十四条によってこれを記録しておくのは業者なんです。業者だっていままで記録してあるのです。夜こっそり投げて、昼何でもないときにそれを記録しておいたって水はきれいにならぬのです。ですから監視体制はどうなんだといっても、都道府県知事にそれを与えておいてやるというのです。都道府県知事のそれは、夜でも昼でもやっておりますか。やっておりません。そういうような状態で、監視測定機能も十分じゃなしに、権限だけやって、そうしてこれで水はきれいになりますといっても、これは机上プランというものだ。それで九年間たったら直します。直しますといったって、目標だけ置いて、そうしていままでにないことだからといって、これでよくなりますか。私は、この点まだまだだめだ。  それと同時に、ではどういうふうにして、この汚水、こういうようなものを不法に排出するその行為を取り締まりますか。夜ともなく、昼ともなく、たとえば隅田川、ああいうようなのは出すなといえば出さないのです。寝静まった夜出すのです。だれもわからぬでしょう。それでみなよごれるのです。これをだれが取り締まるのです。こういうような取り締まり体制がさっぱりなっておらぬということなんです。まあこれはいいです。これを言ってもなんだから、十分これは研究しておきなさい。コンピューターでも使って、ちゃんとやれるような研究をしておきなさい。あとからまた引き続いてやるから。少し休憩します。  次に通産省、大臣来ておりますからちょっとお伺いいたします。  労働省では、過般公害問題が重大な様相を呈してまいりました。それに合わせて、職場の総点検をやっております。この総点検の結果、意外にこの業者で汚物というか、廃液を処理しないままたれ流しの状態で何年間もやってきたという事実がわかった。もちろん中に働く労働者は、職業病またはそれに類するような労働災害によってこれはもう痛めつけられておるのは事実なんです。そばに労働大臣いませんから、これはやむを得ませんが、これによって新たな事実が発生しました。わかりました。ただし、これはわかっただけなんです。事実はそれ以前に発生しておったのです。何か衝撃がないとやらないのです。通産省では各鉱山——この鉱山から廃液が出されております。こういうようなことに対して、労働省は、いわゆる労働者を擁護するという立場で行ないました。通産省ではこれを完全に行ないましたか。
  140. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 通産省は、幾つかに分けて申し上げますが、まず工場排水の規制に関する法律の適用を受けております工場につきましては、これは実は全部毎年点検をいたしております。それから微量重金属につきまして、今年一千八百ほどの工場の総点検をいたしました。鉱山につきましては、これは独立製練所というちょっと盲点になりますような問題はございましたが、それ以外でございますと、これは一番厳格にやっております。
  141. 島本虎三

    ○島本委員 現在、土壌汚染防止法も出されております。農業の問題でも大きい問題がございますので、すでに公害という一つの新しい事実に、これは典型公害の中に当然土壌汚染も入れる、産業廃棄物も入れる、こういうような状態になってまいりました。これはまことにいいことでありますが、悲しむべき事実です。しかし、農業の関係で被害を与えるのは鉱山、鉱業ということになります。そのようにしてはっきり点検している、この事実があるならば、農業のほうにこういう被害を与えないのがほんとうだと思います。しかし、依然として被害を与えておる。こういうような事実はありませんか。私のほうでは、あえて言うと、最近ちょっと心配なことを入手したのです。点検しながらもこういうようなことをしないということは私はどうも困ることになるのです。大臣は点検したという。どんなことを点検したのですか、これは。何か私は最近少し北海道に憂うべき事実を一つ耳にしたのです。それを聞きたいのです。
  142. 莊清

    ○莊政府委員 重金属関係の鉱山の排煙及び排水につきましては、大臣御答弁いたしましたとおり、鉱山保安法に基づきまして厳重な検査を実施しておりますが、農地汚染との関係におきましては、カドミウム等の重金属及び銅、亜鉛等の金属が、主として排水を通じまして農地を汚染する。それで人間の健康に害のある食物を生産させたり、あるいは農業の収穫の減産を招くという事態が現にあるわけでございますけれども、最近いろいろの科学的調査の結果に基づきまして、カドミウム等につきましても明確な基準設定されまして、それに基づいて鋭意指導監督を行ない、現在では全国の銅、鉛、亜鉛関係の鉱山、製練所等につきましては、少なくとも現在出しております水、現在出しております煙につきましては厳重な検査をやっておりますが、合格しておるものと思います。北海道関係におきましても、国富製練所とか、その他古い製練所とか鉱山がございまして、銅等を採掘あるいは製練しておりますので、厳重な検査をいたしておりまして、ただいまのところは排水基準、排煙基準すべて合格いたしておりますけれども、何ぶん非常に長い間操業しておりました古い製練所、鉱山でございますので、先ほど申し上げましたとおり、きわめて遺憾ながら周辺の土地に対して、過去において相当なものを蓄積させておる危険性が率直に申しまして私あると存じます。現在こういう点につきましては、それぞれの地方庁によくお願いいたしまして、周辺の土壌とかあるいは農産物等につきまして、米等も新米について調査をすべてお願いしておる段階でございます。  北海道につきましては、まだ報告を受けておりませんけれども、いま先生ちょっと心配しておるというおことばがございましたけれども、もしもカドミウム等について、不幸にして北海道でもそういう事態がかりに——今後私ども正式の事実を知りましたならば、ほかの地域につきまして従来実施してまいりましたと同様、鉱山、製練所に対して厳重な指導監督を行なうと同時に、農民に対する補償でございますとか、あるいは今国会に提案されております農地汚染防止法等に基づく事業者の負担問題等につきまして、当然業界を十分監督し、前向きに対処し、今後の公害は一切起こさないという姿勢でやる所存でございます。銅、亜鉛等についても、農地汚染防止法の施行が十分行なわれるようになりました暁には同じ姿勢で対処する気持ちでございます。
  143. 島本虎三

    ○島本委員 古い鉱山、また廃坑になっているところの多いのは、まあ北海道だと思います。したがって、そういう被害については、われわれ一番敏感であります。そういうような点において、カドミウムまたは銅その他によって、汚染米、またはそれによって健康被害、こういうようなものが予想されなければ私は一番いいのですが、この点等について、通産省では太鼓判を押して何でもないということを言えますか。
  144. 莊清

    ○莊政府委員 遺憾でございますけれども、過去の累積汚染につきましては、最近相当な調査がそれぞれの鉱山、製練所付近において着実に進展するに伴いまして、あちらこちらで過去の累積汚染と思われる結果が出まして、カドミウム米とかということが全国を非常にお騒がせしておる次第でございまして、北海道等につきましても、これはことしできます米など調べて、あるいは近所の農地等を精密に調査しました結果、今後出ないということは私決して申し上げるわけにはいかぬと思います。ただし、出ました場合には、先ほど申し上げましたとおり、ほかの地域におけると同様、十分な措置を講じていくべきである、かように考えております。
  145. 島本虎三

    ○島本委員 もう一歩進めて、そういうようなおそれのあるようなところ、そういうように予想されるところ、ありましたならば、この際はっきりしてもらいたい。
  146. 莊清

    ○莊政府委員 最初の御質問との関連で、北海道についてはいままで問題になっていないけれども、心配があるようなお話がございましたので、北海道に限って申しますと、たとえば先ほどちょっと触れたと思いますが、製錬所の関係では住友金属鉱山株式会社の富国製錬所というのがございます。ここは銅の製錬所として六十年近く前からやっております。現在は検査に十分合格しておりますけれども、以前の、規制のなかった時期に、どういう水を流し、どういう煙を出しておったかという点については、御指摘のとおり明らかに心配がございます。いま銅のほうでいろいろ調査を進めつつあるわけでございますけれども、私どもその結果を注目しておるところでございます。
  147. 島本虎三

    ○島本委員 これはもうそれ以上情報がなければ、直ちに万全の手配をして、そしてそういうようなことのないように、あった場合には、必ずしもそれはいまに始まったことであるかないかわかりませんけれども、措置の点においては事遺憾ないように、これだけは完全にやっておいてほしいと思います。この点、大臣の所見を伺っておきます。
  148. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま政府委員から申し上げましたとおりでございますが、島本委員の御指摘のように処置をしてまいりたいと思います。
  149. 島本虎三

    ○島本委員 大気汚染防止法関係で若干お伺いしておきたい、こう思う点がございますので、ひとつ伺わしてもらいます。  これはいかがでしょうか。これはどちらのほうの関係になるのかわかりませんが、大気汚染防止法の一部改正法案、この中の第四条、これは硫黄酸化物に対しての都道府県知事の上のせができないようになっておるようであります。これは前にもわれわれの同僚委員からも指摘されておるところであります。しかしこれは炭化水素、それからオキシダント、これが合して光化学スモッグになる。ことにこれは、調査十分でないとか調査困難であるとかいう理由で上のせできないということは、これは私は容易に了解することができないのでありますけれども、都道府県知事が上のせしないという根拠、理由、これはどこにあるのですか。
  150. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは以前にも申し上げたかと思いますが、現在亜硫酸ガスの規制はすでに全国、汚染の高いものから低いほうへ八段階というかなりこまかな段階を設けておりまして、それで規制をいたしております。事態が悪化するに従いまして、高いほうの段階の規制をしていくということをやっておるわけでございます。  今回上のせをしないということにしております一つの理由は、そのような方法で事態に対処できると考えたからでございますが、さらにもう一つの理由は、御承知のように低硫黄の原油の入手難ということがあるわけでございます。これもせんだってから申し上げておりますように、できるだけ低硫黄の原油を入手いたすべく努力をいたしておりますし、また総合エネルギー調査会の昨年の研究報告に基づきまして、昭和四十八年から五年間をまず最初の一期として計画的に入手をすることを進めておりますけれども、何ぶん相手のあることでございますから、それは大いに努力をするといたしまして、他方で脱硫を国内で進めてまいらなければならない。直接脱硫、間接脱硫ございますが、これも現在のところ三十七万バーレルぐらいな脱硫能力を持っておるわけでございますが、昭和四十八年ごろにはその倍ぐらいの能力を持つべく、これは石油業法の設備許可の際に条件がつけられますので、まず、行政内容は確保できると思っておるわけでございます。それから排煙脱硫ということも電力会社なんかについてはやりつつあるわけでございます。  いずれにいたしましても、物理的に低硫黄の重油が入手し得る限度というものが、これは年とともに脱硫が進みますと広げてまいりますけれども、ございますので、電力を確保するという見地をもあわせまして亜硫酸ガスについては上のせをしない。ただいま申し上げましたような二つの理由からでございます。
  151. 加藤清二

    加藤委員長 その問題は内田厚生大臣もありますよ。
  152. 島本虎三

    ○島本委員 そう思っています。内田厚生大臣に答弁を求めます。
  153. 内田常雄

    ○内田国務大臣 おおむね通産大臣からお答えをいたしたとおりでありますが、これは島本先生よく御承知のように硫黄酸化物、すなわちSO2とかSO3とかいうものの規制が、わが国の公害防止体制では一番早く始まりました。昭和三十七年でございましたか、あのばい煙規制法の当時からやりまして、各地域における汚染度、なかんずく重合の状態などを、私ども中央におって、通産省のほうでよく把握いたしておりますので、それを今度は指定地域だけでなしに、全国に当てはめていくというようなことで状況をよく把握しているということが一つと、もう一つは御承知のように特別排出基準につきましては、これは地域の状況に応じて一そうきつい排出基準を設けられる。しかも、このいずれもあらかじめ都道府県知事と十分意見を交換して、そして一般の排出基準あるいは特別排出基準をきめる、こういうことになっておりますので、現実の方法として私どもがその地域の住民の健康を守る方法としても、それぞれ、ちりぢりばらばらにその地方で上のせをしなくとも、これでやっていけるというめどがあること。さらに第三には緊急時、つまり風が吹いたり、気象の状況によりまして、その地域が特に汚染される場合には、それに応じた御承知のような非常措置がとれる、こういうようなこともございまして、単に低硫黄対策ばかりでなしに、私が述べましたような状況で今度それを補強してするんだ、こういう次第でございます。
  154. 島本虎三

    ○島本委員 この問題は、ましていま言ったように光化学スモッグの原因にもなるようなものであるならば、その地域の都道府県知事が条例で上のせできるようにしてやることが、いま答弁されたことを具体的にやる方法になるじゃありませんか。なおよくするのにそれをやらないということ、何のためにそういう答弁が出るんですか。これはどうもわからない。これだったら、新しく提案された公害対策基本法精神にもとるじゃありませんか。これは山中大臣、業者のために、また同時に金がかかるからというようなことでこういう問題に対しては上のせをしないということ、これは基本法精神にもとると思います。進んでこれはすべきだ、こういうふうに思うのですが、しないほうが正しいのでしょうか、ひとつ大臣に御見解を伺いたいと思います。
  155. 山中貞則

    ○山中国務大臣 基本法精神にもとるようなものであれば、私の手元で立法をさせませんし、また訂正をさせるつもりでございます。しかしながら、国が地方に権限を委譲するといいましても、それは地域の実情をよく知っておる知事さんを信頼しておまかせするということでありまして、国がやらなければならない権限を放棄して逃げるということではありません。そうすると、原料確保の問題と、県境を越えた問題である電力の広域供給の義務はどうしても国が負わざるを得ないという意味において、基本法にもとるものではない、国の責任においてなさなければならない範囲はやはりあるということで、基本法にもとるものとは私は考えません。
  156. 島本虎三

    ○島本委員 東京都では硫黄酸化物の九九%、それから光化学スモッグの主因である窒素酸化物の七〇%が工場から排出され、最大の発生源は電気事業である。それから電気、ガス事業においては大気汚染防止の適用からこれがはずれていること、これをはずしても何にも影響はないんだ、こういうようなことであります。しかし、それであるならば最大の発生源を放置しておくということになり、これこそまさにざる法の最たるものじゃなかろうか、こう思うのですが、国の事業であるからこれはもうさしつかえないんだ、こう言われるようです。  それならこれは山中大臣にお伺いしたい。この電気、ガス事業、これはいわば事業法によって、企業は当然供給の義務がある。したがって、規制はきびしくできても、公害と供給義務のいずれを優先させるのか、こういうふうにいう場合には、当然これは供給義務のほうが先行する、こういうふうなことになるじゃないかと思うのです。こういうふうな状態にしておいて、それで国がやるからだいじょうぶだ。規制できるからだいじょうぶだ。その真意は、電力という供給義務、これは一つの供給義務として公害より先行する、こういうようなことになるのじゃないですか。おそらくそういうふうなことであるならば、供給義務の前に公害はやむを得ない、こういうふうなことになってしまうじゃないかと思うのです。そうなりませんか、大臣。
  157. 山中貞則

    ○山中国務大臣 そういう言い方も私は説得力を持つと思います。だから、そういう言い方で言うならば、企業の利益とはいいませんが、企業と住民の健康というものを、どっちを優先するんだといえば、当然生命、健康を優先するのはあたりまえのことなんです。しかし、それでいって、そういうふうにした場合に、はたして地方に委譲して、今度は燃料その他が供給できない。あるいは結果的において、じゃあ電力をとめた場合に、電力をとめたことによって生ずる公害、すなわちその地域の多数の国民である住民が、自分たちの電力をとめられたため受ける被害というものは、これは手術中の非常に危険な場合等例にあげるまでもなく、無計画にとめられるべきものではなかろうと思うのです。そういう現実の問題を踏まえて私は申し上げたのでありますから、比較論でいうならば、何ものにもまさるのは人の健康であり、生活環境である。このことは何の疑問もございません。
  158. 島本虎三

    ○島本委員 通産大臣に見解を承ります。
  159. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま山中国務大臣が非常に適切に述べられましたので、それで尽きておると思いますが、何かこう承っておりますと、電力はもう放置してあるというふうにおっしゃっておられますが、もちろん御存じのようにそうではございませんで、電力会社から発生するところの排煙につきましても、同じように規制があるわけでございます。そこで何か産業、企業というようなふうに電力をおとらえになります。電力にはそういう面もあることは確かでございますが、国の事業であるからとか、公益事業であるからと申しますよりは、国の事業にもたばこをつくるのもございますし、アルコールをつくるのもございます。そういうものを一緒にして考えておるのではありません。つまり電力というものがもし無計画にとまりましたら、直ちに人の生命、健康にかかわるのでございますから、これは経済生命、健康との調和の問題ではなくて、同じ生命、健康の中で、どういう調整をするかという問題になるわけであります。
  160. 島本虎三

    ○島本委員 当然、健康並びに環境保全、こういうふうなものが先行するというならば、そしてまた現況このとおりにして実施するのがいわば重要である、こういうふうにするならば、当然この電気、ガス事業法の中に公害に関する項も加えておいて、配慮しておいて、これでだいじょうぶだというのが当然じゃありませんか。それがない以上、やはりこれはもう公害と供給義務のいずれを優先させるか。当然これは供給義務が先行する。そうなれば供給義務の前に公害はやむを得ないのだ、こういうふうなことになるといわれてもこれはどうにもできない。そうじゃないというならば、この(目的)の中にでもはっきり公害に関する項を加えておくというようなのが法体系上もこれは完全じゃありませんか。大臣ちょっと伺いたいと思います。
  161. 山中貞則

    ○山中国務大臣 最後の締めくくりの(目的)には、明らかに今度は公害というのが書いてございます。法律にそう書いてございますが、問題は各種規制法は、電気、ガスといえども完全にかかっているわけですから、したがって、本来の電気、ガス事業法の中に、(目的)に公害のことが一言も触れてなかったということで、今回は御指摘のとおり原案として提出してあります中に入っております。
  162. 島本虎三

    ○島本委員 したがって、今後いろいろと排気ガス、こういうような問題が大きい一つ問題点としてここにクローズアップしてまいりましたが、いま通産大臣のほうから脱硫装置その他についてこれは十分行なっておるという、こういうようなことがございました。硫黄分の少ない原油を輸入する。なまだきしてもいいようにする。それがまず第一番でしょう。次には、硫黄分の多い油でも、これを脱硫装置をさせて、そしてそれによって脱硫されたきれいな油をたかせる。これが二番目でしょう。そして三番目には大口の消費、企業、そういうようなところにも、排煙脱硫を義務づける。こういうふうにしてやって、とりあえず電力、鉄鋼、ガス、こういうほうの排煙、脱硫も義務づけてやる、こういうふうにしてやったらだんだん現況もよくなる、こういうことがはっきりするじゃないですか。この点は通産省では十分配意してございますか。
  163. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたように、昨年総合エネルギー調査会に低硫黄部会というものを設けまして、この問題を長く研究いたしまして、昭和四十八年、さらには五十三年まであるわけですが、年次計画を立てまして、それをそのとおり進めておるわけでございます。
  164. 島本虎三

    ○島本委員 これは年次計画によって進めておる、こういうようなことですが、達成率その他脱硫計画そのものは、はっきりここに発表してもらいたいと思います。どういうような計画でございますか。
  165. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 お答え申し上げます。  昭和四十五年の時点で、間接脱硫二十七万三千五百バーレル、直接脱硫十一万二千八百バーレル、合計いたしまして三十八万六千三百バーレルでございます。基数にいたしまして間脱は十三基、直脱が三基、合計十六でございます。四十六年度の予定は、間接脱硫三十五万六千五百万バーレル、基数十六、直接脱硫十五万二千八百バーレル、基数四、合計五十万九千三百バーレル、基数二十。四十七年、四十九万四千五百バーレル、間接脱硫でございます、基数二十基、直接脱硫十五万二千八百バーレル、基数四、合計六十四万七千三百バーレル、基数二十四。昭和四十八年につきましては計画はございますが、確定数はいま出ておりません。
  166. 島本虎三

    ○島本委員 全使用量はどれほどになりますか。
  167. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 使用量と申しますのは、おそらく稼動率というふうな意味合いかと思いますが、これは平均的な数字で、ただいますぐに数字を調べまして御答弁申し上げます。
  168. 島本虎三

    ○島本委員 これは大臣はもう十分やっておる、こういうようなことでありますけれども、いま数字を調べられる、こういうようなことのようであります。ほんの合計して三十七万キロリットル、こうなったら二億分の三十七万キロリットル程度、こういうようなもので、十分やっておる、こういうようなことにはたしてなるんですか。私はこういうような点でも十分やっているということばですけれども、ほとんど効果はあがっておらない、こういうようなことが十分であるならば、とんでもないことだ、私そう言わざるを得ないのです。  ことに脱硫装置について、どれほど積極的に通産省がやっていなさるのか、私はその姿勢についてもお伺いしたいのです。いま硫黄分の少ない、こういうような油を大いにたくように慫慂していなさる。しかしながら、持ってくる油はみな硫黄分が多いという、しかしながら、これをどうするのですか。いわゆる脱硫装置にかけるよりしようがない。いま使っておるのは相当硫黄があります。間接脱硫にかけたところの油のかす、すなわちアスファルト、アスファルトが出ますけれども、そういうようなものについても油の中へまたまぜて、そしてこれを販売するものですから、いわゆる硫黄分の高い油になってしまう。ほんとうに通産大臣がやるつもりならば、アスファルト本来の用途にして、これを十分使うようになすったらどうですか。それを使わないで、そのまま計画を実施するから、油の中に入れて硫黄分の高い、悪い油にしてまた使わせるじゃありませんか。こういうことではとんでもないと私は思います。こういうような計画をそのまま実施させても私は何の効果もないと思うのです。それと同時にこういうようなやり方について、ひとつ通産大臣に伺っておきたいと思うのです。いまやっている程度で満足ですか。
  169. 加藤清二

    加藤委員長 その前に数字の誤解があるといけませんので、もう一度発表させます。斎藤石油業務課長。
  170. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 先ほどの私の御説明の中に、数字について少し説明の悪い点があったと思いますので、訂正させていただきます。  私が申し上げましたのは、たとえば四十七年の合計でございますと、六十四万七千三百バーレルと申し上げましたのは、その脱硫設備の有する能力でございまして、年間の処理量ということになりますと、六十四万七千に約五十をおかけいただいた数字になります。したがいまして、非常にラフな計算でございますが、約三千万キロリットルということになります。
  171. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは当然御承知のことでございますので、先ほど十分申し上げませんでしたが、そもそも脱硫技術というものが世界的にはまだ十分に企業として経験済みだというところまでまいりませんで、おそらく技術の開発は、ともかくこれを現実に装置として動かしておりますのは、わが国が世界で一番早いのではないか、一番大規模にやっているのではないかと思います。でございますので、最初にはちょっとつまずいた企業も、御承知のとおりございました。しかし、このごろ直接脱硫というのは、大体うまくいくという自信が持てるようになりましたので、先ほど説明員から申し上げましたように、今後石油業法の設備許可との関係で、主として直接脱硫でございますが、これを進めてまいりたい。  それから工業技術院でも大型プロジェクトとしてわが国独自の直接脱硫の技術を開発しておりまして、テストプラントまでつくっておりますから、明年の半ばには、まずこれが完成をするであろう。そうしますと、在来の外国から輸入いたしました技術よりはさらに効率のいいものが出るのではないかと思っております。  ただ、いまアスファルト云々と言われましたのは、間接脱硫との関連においておっしゃったと思います。そういうことは確かにございますが、どうも間接脱硫は能率も悪うございますし、技術的にも直接脱硫のほうが進んでおると思いますから、そっちのほうに重点を置いてまいりたいと思っております。そこで、硫黄分が高いアスファルトの新規需要を拡大するということは、結果的には燃料用の重油の硫黄分を低下させることになるわけでございますから、これは低硫黄化の要請に沿うものであって、私はその方向は賛成でございます。
  172. 島本虎三

    ○島本委員 やはり何とかかんとかいっても、現在やっているこの間接脱硫の方法、この方法によっては必ずアスファルトが出る、この出るアスファルトはやはり完全に利用しなければならない。しかし、昭和四十八年から五十年ほどまでには一千万トンをこえるような状態だという予想がある。そうすると、やはり好むと好まざるとにかかわらず、この処理の問題を考えない以上、空は青くならないということになるのじゃなかろうかと思うのです。  自治省来ておりますか。——市町村道は現在何%舗装されておりますか。
  173. 大石八治

    ○大石政府委員 七%何がしでございます。
  174. 島本虎三

    ○島本委員 私の手元では五・三%ということになっておりますが、七%まで上がったとするならば、まず、よろしいと思いますが、これは一〇%以下ですね。国道の舗装率はどれほどになっておりますか。
  175. 立田清士

    ○立田説明員 いま政務次官の申し上げましたのは、四十四年末の市町村道の舗装率は七・六%でございますが、それに見合うものは、国道は七九・四%、それから都道府県道等は四〇・四%、こういう状況でございます。
  176. 島本虎三

    ○島本委員 そういうような状態で、通産大臣、やはり間接脱硫をやっても、アスファルトが出る、そのアスファルトはそのまま直ちに市町村道の舗装に使えるように、または農道、林道の舗装に使えるように、こういうふうにして両々相まってこの事業の振興をはかるほうが、空を青くする方法の一つになるのじゃありませんか。それもしないで、わざわざ再びアスファルトを純度の高い油にまぜて空をよごす必要はごうまつもないじゃありませんか。この点通産省の指導はどこか間違っているんじゃないかと私は思う。蛮勇はそういうところでふるうべきじゃありませんか。
  177. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 アスファルトの用途をもっと広げていくべきだというお考えは、私は基本的に賛成でありまして、地方道にいたしましても、農道にいたしましても、まだまだ土のままのが幾らもあるわけでございますから、それはしごく賛成でございますし、一部輸出も、これは二十万トンぐらいと思いますが、しております。あと防潮堤でありますとか、そういったようなものに使う、これは、方向としては私はしごくよろしいと思います。
  178. 大石八治

    ○大石政府委員 市町村道、府県道等になるべく安いアスファルトが提供されることを、われわれは期待しております。
  179. 島本虎三

    ○島本委員 これはどうも歯切れが悪いようです。大気汚染防止の対策一つとして、アスファルトによる舗装をやるといいということなんです。この辺の行政が一貫性を欠いているじゃありませんかということなんです。そうしないと、その出たアスファルトをまた純度の高い油にまぜてたきますから、だんだん空がよごれるんだ、少なくともこれは一千万トンほども出るのですから、これをまたまぜてたかせることによって、業者は自分の損失を防いでいるのです。ですから、アスファルトはアスファルトとして、出たものはそのまま舗装に使わせたらどうですか、こういうことは敢然としてやるべきだと思います。これは通産大臣もおりますけれども、特にこれは山中公害対策担当大臣に決意を伺っておきたいと思います。
  180. 山中貞則

    ○山中国務大臣 すでに島本君も、公害対策委員会でそういう意見を述べられておりますし、私どもの党内においても、昨年から脱硫過程において生ずる余剰アスファルトを主として農道その他に使用すべきである旨を提言し、予算にも今年度一部実現化いたしておるわけでございますが、私としては、さらに来年度予算の編成について建設、農林、大蔵大臣等にすでにもう話をいたしております。これがどのような形で実現をいたしますかは、これから予算編成の過程のできごとでありますから、この意味で与野党一致の合意が得られた方向について予算化を具体的に示していきたいと思います。
  181. 島本虎三

    ○島本委員 あくまでもこの問題は大気汚染防止の手段として、また舗装その他によって一つ行政の質を高める手段として、両々相まつのですから、こういうふうなことはどしどしやるべきだと思うのです。これは厚生省なら厚生省、通産省なら通産省、自治省なら自治省、そういうような権限の中にだけこもってセクト性を発揮するからこれができないのです。おそらく一貫してこれをやらせるのは、山中大臣、あなたですから、ここにあなたの実力を発揮する場所がある。ここであります。ひとつこの予算の中で、どのように盛られ、どのように実施するか、刮目して見ながら私の質問をこれで終わります。
  182. 加藤清二

    加藤委員長 次は、土井たか子君。
  183. 土井たか子

    ○土井委員 きょうは私は、数限りなくございます公害の中でも、もはや極限にまで達してあとに引けないような事例を一つ申し上げて、大気汚染防止法についての疑問をひとつお尋ねしたいと思います。  御承知のとおりに、兵庫県にございます尼崎と大阪の特に西部地区は、大気汚染で有名な場所になっております。大体、尼崎の例をとりますと、亜硫酸ガスによるところの汚染度は、厚生省の基準を大きく上回っておりまして、大体亜硫酸ガス平均濃度〇・〇八四PPM、南部の汚染された地域で〇・一二PPMという数値が出ているわけでございます。これは言うまでもなく、厚生省の基準を、限界をはるかに上回っているといわなければならないわけでございますが、地域によりましては、この結果もうすでに慢性気管支炎、ぜんそくのような症状が出ていることも事実でございます。さきごろ、新聞発表によりますと、尼崎の医師会が、市民二万五千人について行ないました調査の結果、十人に一人が慢性気管支炎ということにもなっているわけでございます。この事例からすると、たいへんにゆゆしいといわなければならないわけでございます。  そこで各政党は、こぞってこの地区の調査をいままでに進めてまいっていることは御承知のとおりでございます。しかも、この大気汚染の最大の原因であると見られる、公害発生源と見られる関西電力を実は調査いたしましたところ、そこで使われております燃料の重油などに含まれておりますサルファの含有率が、答えるために出て来られます重役によって、また尋ねます政党の違うつど実はまちまちで、私たちは非常に疑惑を持っているわけでございます。この点に対して疑惑が持たれれば持たれるほど、脱硫装置を完備して、硫黄の量を下げるということがどうしても必要だと思うのでございますが、先ほどの島本委員の質問の際、宮澤通産大臣の御答弁を私承っておりまして、もう一つこの点で釈然としないのです。電力会社になぜ排煙装置をつけることを義務づけられないのか、宮澤通産大臣にお尋ねいたします。
  184. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 排煙脱硫装置というのは工業技術院の大型プロジェクトで昨年まずまず完成をいたしまして、現在東京、中部、関西各電力会社で、規模は大きくございませんが工事を始めたところでございます。排煙脱硫装置というのは、行く行くはまず完成した装置としてあちこちで使えるようになるであろうと考えております。
  185. 土井たか子

    ○土井委員 まるで私の質問と答弁は違う。私のお尋ねいたしておりますのは、そうした排煙脱硫装置をどうして義務づけることができないかという問題なんでございます。
  186. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、ただいま申し上げましたとおりでございまして、排煙脱硫装置というものは、まだ企業がきちっと取りつけるだけの完成をしていないのであります。昨年ようやく技術を開発し終わりましたから、今年三カ所において初めてこれを始めたわけでございます。
  187. 土井たか子

    ○土井委員 いまの宮澤通産大臣の御答弁によりますと、技術の開発がもう完成段階にあるわけでございますから、これから義務づけるというふうなことが必要だとはお考えになりませんか。
  188. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いわゆるK値の算出という御承知のような式があるわけでございまして、K値は分母にHの二乗を置きまして、分子にqを置くわけでございますから、これを少なくしていくためにはまずqを少なくする方法もございます。それからHを大きくする方法もあるわけでございます。つまりK値はHの二乗に反比例いたしますし、qに正比例するわけです。そのHが煙突の高さといったようなことになるわけでございます。それでございますから、煙突を高くするあるいは排煙脱硫装置がもう一つ完全なものになりましたら、これをつけさせるということもよろしいことでございます。排煙脱硫はqのほうを小さくすることでございますが、これにはあるいはもっと端的な方法があろうかと思います。これは燃料の低硫黄化ということになるわけでございます。
  189. 土井たか子

    ○土井委員 ただいまの御答弁によりますと、排煙脱硫装置がさらに改善される、さらに開発される。それを待って義務づけるというふうな意味を含んでいらっしゃるのじゃなかろうかと私考えられるのですが、それではもういつまで待ってもこれは切りがない話でございまして、やはり開発が最近急速度に進んで、排煙脱硫装置についても、大体これを備えつければどの程度押えられるということが、数値としてはっきり確かめられる段階にきているわけでございますから、これについては法的にこれを備えつけるというふうなことを義務づけることが必要になっているのではないか、そういうふうに私考えるわけなんでございますが、いかがでございますか。
  190. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いわゆる大気汚染防止はあらゆる方法をいたさなければならないと思いますので、排煙脱硫装置もその一つでございましょう。しかし、ただいまのところは、使用いたします重油の中の硫黄分を下げるということのほうが、より直接的に有効でございます。それでもしかし、なおそれらの硫黄が——原油はそうたくさんはないということでありますから、排煙脱硫というものを技術として開発をいたしまして、現在たとえば東京電力の鹿島でこれをつくりつつございます。まず成功するであろうと思われるのでありますけれども、本格的な工場としては、先ほど申しました全国に三カ所いま始めましたところで、まずまず成功するとは思いますものの、まだこれだけの効果は確かに現実に工場においてあるというところは出ておりません。完成いたしましてさらに技術が進歩いたしましたら、これもやはり電力会社などには使ってもらいたい装置の一つになるのではないかと期待をしております。
  191. 土井たか子

    ○土井委員 尼崎などの例を見ておりますと、もはやそういう猶予はないというふうに考えられてもいいと思うのです。公害の問題は公害発生源に対して段階段階で手を打っていって、できるだけ公害発生源の時点で押えるということがもはや常識でございましょう。こういう点から考えますと、通産大臣のおっしゃる原油の段階でサルファを少なくということは、もちろん必須の条件でございます。けれども、脱硫装置についても手をこまねいているという段階ではもはやないと私は思うのです。いまのこの問題について、まだそういう必要がないというふうにお考えなんでございますか。
  192. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 同じことを申し上げるわけでございますけれども、脱硫には申し上げるまでもなく幾つか方法があるわけで、直接脱硫、間接脱硫、それから排煙のところで脱硫する方法というものがあるわけでございます。ですから一番いいのは低硫黄の原油を買ってくることでございますけれども、それには限度がある。そういたしますと、それをどうやってもとにおいて脱硫するか、ここが一番大事なところで、このほうの技術はすでに動き出したということは先ほど三十七万バーレル云々と申し上げましたことでございます。  それからさらにもう一つ、今度は煙突のところで脱硫をするということが排煙脱硫でございますが、その技術は、ただいま申し上げましたように、ようやくいま工場に取りつけられようとしておる、全国三カ所でそういう工事を始めたところでございますから、それが将来有効な方法になることを私ども期待をしておるわけであります。
  193. 土井たか子

    ○土井委員 この義務づけは私はぜひとも必要だということを再度申し上げて、特に、しかしやはりこの公害発生源によみがえって押えていかなければならないということを強力に考えますと、重油についてもA重油の必要性、さらにはミナス原油などをなまだきさせるということ、これなんかは現在考えられているいろいろな方法の中で忘れてはならない一つの問題だと思うのです。この関西電力と尼崎市と兵庫県との間に取りかわされております協定書による契約を見ましても、年度年度のたびごとに、この燃料に含むサルファ分というものが減少させられていかなければならない。このことに対してどういうふうにお考えかということを、先ほど、九月でございましたか、私たち視察をしに参りましたときに、副社長にお会いして説明を受けた際にも、A重油を必ず手に入れます、さらにはミナス原油のなまだきでもって、この燃料に含むサルファ分をだんだん下げてまいりますというお話でございました。私たちは、現在のこの原油の対策などを思い合わせましたときに、ずいぶん無理な問題だ、不可能な約束だと思いながら、原油の仕入れ先との契約書を裏づけに要求をいたしました。そうしてその裏づけ書類というのをどうか国会にも提出されたいという旨を言って帰ったのですが、いまだに国会提出はございません。  公害委員会における去る十月の六日にさらに参考人を呼んでの公述がありたわけでございますが、このときにファーイーストオイルトレーディング株式会社、これはミナス原油を一手に輸入している業者でございます。ここの社長が、火力発電会社がコンスタントになまだきするほど多量に電力会社に低サルファの油を提供することはできないという旨の答弁がはっきりございました。石油連盟の会長の出光さんもその節、火力発電に原油をなまだきということには反対はしないけれども、現在アラビア原油などのハイサルファの原油というふうなものが日本ではたくさん輸入されている、ミナス原油のようなローサルファの原油のなまだきについては反対であって、ハイサルファの原油についてなまだきということが考えられなければならない、そういうふうな旨が申されて、なぜかという理由については、これは国策によってハイサルのアラビア石油などを多く買わされているからということが理由になっておりました。ローサルファのミナス原油は直接なまだきするほど多量に輸入されない上、これは精製してナフサであるとか、ガソリンなどの需要に応ずることが現在の日本の国策であるというふうにその席で申されました。  そういう点から考えてまいりまして、どうもこの低サルファの油の輸入というものが困難である限り、これから電力に対しては、需要が伸びれば伸びるほど、現在の電気事業法等々によりまして供給をしていかなければなりません。したがって、需要が伸びれば供給も伸ばしていかなければならない。一体供給を伸ばすのについて公害を押えるということをどこでやるのか。需要に見合う、供給に対してだんだんこれが伸びていくことは明らかなんです。片やそれをやりながら公害を押えなければならないということ、一体どこで手を打とうとしておるのか、私は特に宮澤通産大臣にこれに対する決定打をひとつお伺いしたいのです。
  194. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどA重油のお話がございまして、これもそのとおりであります。原油なまだきも必要でございましょうし、またあらゆることを考えますので、たとえばLNGのようなものがたくさん入れば、それも有効な方法でございますが、結局、第一には低硫黄の原油をできるだけ手当てをするということ、これが一番確実ないい方法でございますけれども、低硫黄の需給関係というのは、御承知のように非常にただいま詰まっております。それでも、できるだけ確保しようといたしております。  次に輸入いたしましたものを脱硫する、これが一番人にたよらずに自分でできる低硫黄化の方法でございますから、年次計画で脱硫施設をふやしつつあるわけでございます。  それから先ほど何回か御指摘になりました排煙脱硫ということも、技術的に実用に供されることになりましたら、これなども有効な方法であろう。  私どもただそういうことをばく然と申しておっては申しわけないわけでございますから、昨年一年総合エネルギー調査会で研究をいたしまして、年次別に面接脱硫はこのくらい、排煙はこのくらい、低、中、高の原油の入手はこのくらいということをきめまして、それに従いまして実行をいたしておるわけでございます。そして年が進むに従いまして、したがって、硫黄の含有量が減っていく、PPMが減っていく、こういう方式でやっておるわけでございます。
  195. 土井たか子

    ○土井委員 いまの御答弁を伺っておりまして、私は手元に関西電力の年次計画書というものを持っているわけでございますが、それを見ますと、四十五年、四十六年、このあたりまでは供給予備力がいささか低下をいたしますが、四十七年度くらいから、ぐんぐん予備力が伸びてまいります。四十八年、四十九年、五十年と、たいへんな勢いで実は供給予備力が伸びることを予定した見通しがあるわけでございます。これに従って関西電力が操業をいたします。いまおっしゃった低サルファの油の確保ということは、こういう現状もはっきりとお踏まえになってお考えになっているのでございましょうね。
  196. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 総合エネルギーの需給計画というものを持っておりますので、それに従いまして重油、原油の供給あるいは脱硫の計画を立てておるわけでございます。
  197. 土井たか子

    ○土井委員 それではお尋ねいたしますが、総合エネルギーとおっしゃるのは、内容はどういうことになりますか。
  198. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これはやや長期計画になっておるわけでございますけれども、原子力を含めまして考えられますあらゆるエネルギー、それが逐年どのような趨勢で需要がふえていくか、それに対してどのように供給するかというエネルギーの基本の計画でございます。
  199. 土井たか子

    ○土井委員 大臣のは計画でございまして、それが実際実現され得ないと、この電力に対しても確保できないはずでございます。原子力発電については各地で誘致を察知した際に、反対運動があるのを御承知だと思います。反対運動があって、せっかくの計画が計画どおりに進んでいないという現状を御存じであろうと思います。計画どおりであるならば、もうすでにそこに企業が立てられて、操業開始していなければならないはずの場所に、いまだに企業が立たない。そういう現状も勘案なすった上で、いろいろ低サルファの油についても確保するということを、肝に銘じてお考えになっているのでございましょうね。
  200. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御承知のように、尼崎で第一、第二火力を動かさざるを得なくなりましたのは、京都のほうにおきまして当然もう立地して発電を開始しておるはずであった火力発電所が、今日まだ計画が実現の緒についていないからでございます。そういう例は原子力ばかりでなく、ほかにもございます。そういうことは、どうしても計画と実施とは多少ずつズレがありますことはやむを得ないことでございますから、そういう事態も当然考えております。
  201. 土井たか子

    ○土井委員 いまのお答えのとおりなんですよ。尼崎の火力の第一及び第二発電設備というのは、減価償却もとっくに過ぎまして、老朽設備でございますけれども、しかし、現在四六時中全設備フル運転でなければこの需要に対して供給は追っつかないのです。けれども、この問題を突いてまいりますと、要は一点に尽きるようだと私は思うのです。何かと申しますと、やはり需要の量に対して供給がはっきり確保されていなければならないという問題でございます。需要の量が予定の見込みどおりにいかずに、ずいぶん見込みよりも上回ってくるということに対して、供給もフル操業で、フル運転で、とにかくふうふうといいながら追っかけなきゃならないという状況なんです。しかも、このことに対しては、現在需要があれば供給をするということ、これが至上命題として電気事業法で法律上定めがあるというところにいつもその理由が求められ、いつも説明を聞きますと、説明が繰り返しなされるわけでございます。  そこで、私は申し上げたいのです。このたびの大気汚染に対しての防止法の改正の中に、こういう現状を見た場合、電気事業法がどうして対象からはずされているのか。適用外に置かれているのか。また、適用外に置かれるのならば、こういう現状に対しては、電気事業法でもって取り締まりが必要であろうかと思うのですが、電気事業法では、こういう現状に対する取り締まりが十分にできるような措置がはたして講じられているのでございますか、その点をお伺いいたします。
  202. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 電気事業法が一部、適用除外になっておりますけれども、これは先ほど島本委員に申し上げたような理由によるものでございまして、電気事業であるからかってに何でも排出していい、むろんそういうことになっておりませんことは、よく御承知のとおりでございます。
  203. 土井たか子

    ○土井委員 しかし、現状からいたしますと、この電気事業によって引き起こされている大気汚染というものは、もはやゆゆしいものがあるということはこれはもうだれしもが認めるところでございまして、何とかこれに対する取り締まりができないかというのは、現地における被害者は言うまでもなく、私たちは、将来を考えました場合に、どうしても放置しておくわけにはいかない問題なんでございます。したがいまして、いまここで大気汚染防止法の中から、この一部、電気事業法に対する適用が除外されているという問題を考えましたときに、ならば電気事業法それ自身で、やはり取り締まりを十分にしていくということが講じられていなければならないと思うのです。現在の電気事業法では、いまの大気汚染に対しまして、特に亜硫酸ガスなどを中心にした大気汚染に対しまして、どういう取り締まりが講ぜられているわけでございますか。
  204. 長橋尚

    ○長橋政府委員 電気事業法の第四十八条に基づきまして、排出基準を、大気汚染防止法に基づきますものを受けまして、技術基準が定められておりまして、ばい煙発生設備を含めまして電気工作物の工事計画にあたりましては、まず認可を受けなければならないことになっております。  認可に際しましては、ばい煙発生量その他をチェックいたしまして、それを確実に実行し得る設備である、またその他の所定の安全供給等々の基準にも該当するということを確認いたしました上で、認可をいたしているわけでございます。  また、その基準にはずれるというふうな事態におきましては、工事計画の変更命令あるいはまた許認可に際しまして適用されます基準に対して、適合させるための命令というふうな規定を、それぞれ電気事業法の中に用意いたしているわけでございまして、こういった諸規定によりまして、大気汚染防止法上の排出基準の履行につきまして最善の努力をいたしているわけでございます。
  205. 土井たか子

    ○土井委員 その際、認可をするのはだれなんでございますか。
  206. 長橋尚

    ○長橋政府委員 通商産業大臣でございます。
  207. 土井たか子

    ○土井委員 ならば通産大臣にお尋ねいたします。  尼崎の現状から考えて、現在県や市と三者協定があることを御存じだと思いますが、この協定が守れない、協定破りの原因はどこにあるとお考えでいらっしゃいますか。
  208. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 非常に端的に申し上げて恐縮でございますが、答えろとおっしゃいますので申し上げますが、関西電力会社が京都府の宮津で火力発電を計画しておったのであります。それが何年たっても認可にならないのであります。そこで、供給が需要に追っつかなくなった。この発電所はもう昨年は動いていなければならなかった、これが実は端的に申しますと原因でございます。
  209. 土井たか子

    ○土井委員 ならばお尋ねいたします。公害防止協定の目的は何でございますか。
  210. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 どの公害防止協定でございましょうか。
  211. 土井たか子

    ○土井委員 いまここで問題になっております関西電力、尼崎市、兵庫県、この三者間に結ばれております公害防止協定でございます。
  212. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私どもが聞いております限りでは、尼崎の第三発電所を増設いたしますときに、そのような協定が締結されたという事実はないと聞いております。
  213. 土井たか子

    ○土井委員 それは認可権を持っていらっしゃる大臣の義務怠慢だと私は思うのです。協定については、現に昨年はっきりこれについて結ばれているという事実は、新聞にも公表されております。認可権を持っていらっしゃる大臣としては、当然御存じでなきやならないはずでございます。
  214. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それでございますから、わざわざお断わりをいたしましたので、第三発電所の増設計画当時に協定があったということはない。そこで、問題は第一、第二というものを実はなるべく早くやめようということであったのがやめられませんで、昨年になってその事態について三者の間で、今度は協定でございますか、があったというふうに聞いております。
  215. 土井たか子

    ○土井委員 その協定に対して違反をする、協定破りをするという最大の原因がどこにあるかということをお尋ねしているわけでございます。
  216. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、第一、第二というものは、実は関西電力としても早く予備供給力に入れてしまいたかったんでございますけれども、先ほど申しましたような理由でそれができなくなった。できなくなったことについては実は早く了解を地元に求めるべきであったろう。その点、私は電力会社としても十分でないという感じがいたしますけれども、実際上は供給の計画に狂いを生じたために、この二つの発電所を多少重油がたけるように、一つはすでに改造いたしましたけれども、そういうことで供給をせざるを得なくなった、こういうことだったと聞いております。
  217. 土井たか子

    ○土井委員 この協定の目的は、もういうまでもございません。宮澤通産大臣御自身は、とっくにしかも十分御存じだと思うのです。一にも二にも公害を防止するというところにその目的はあるわけでございます。それから考えてまいりますと、一たん結んだ協定である以上は、これを守るということがやはり一番大事な問題だと私は思うのです。それから考えてまいりますと、現在の電気事業法でやはり需要量に見合う供給ということが至上命題になっている個所、それはいま基本法で私たちが討議の対象にいたしております経済との調和、産業との調和条項、これにも触れてくる私は問題だと思うのでございます。あくまで人の健康を大切に、人の命を大切にということを徹底して貫き通さないと、実は公害防止、防止というのは、口で言うのはやさしいけれども、実現不可能でございます。したがって、この問題について私はやはり認可権をお持ちの通産大臣、この際電気事業法で取り締まれないんなら、大気汚染防止法からなぜ電気事業法についての適用をはずしているのか。この点についての再度御答弁をお聞かせいただきたいと思います。
  218. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは法体系の問題ではございませんで、先ほど島本委員にも申し上げたわけでございますけれども、電力の供給というのはいわゆる行為としての経済、あるいは利潤の追求といったようなこととして私どもとらえておるのではございませんので、電力の供給ということは、これが無計画にとまったりいたしますと、生命にも、健康にも、すぐに関係をいたすわけでございますから、そういう意味で、経済と健康との調和ではなくて。同じ健康、あるいは生命ということに寄与するいろいろな要素がございますが、その間の調整の問題だというふうに考えておるわけでございます。でございますから、だれも好んで尼崎の二つの発電所を利潤追求のために運営をするものはないのでありまして、これを動かさなければ、先ほど申し上げましたような遠因がありまして供給ができないわけでございます。そこで本来からいえばああいう密集地に、しかも、非常に古い発電所を動かさなければならないということは、決して好ましいことではないのでございますから、石炭から重油の専焼のほうに第一はすでに変えましたし、第二も工事中でありまして、できるだけやむを得ないピーク時、あるいは緊急時には、これをサルファがよけい出ませんような形でしばらくの間使わざるを得ない。決してこれは利潤追求とかいう立場から行なわれておるのではございませんことは、もう繰り返して申し上げるまでもないことでございます。そうしてできるだけ早く、ことに間もなく美浜が完成して動き出すようになると、第一のほうからまず使用度数を減らしていきまして、やがて第一は予備に入れてしまいたい。その次の段階で第二をそうしていきたい。現に今年下半期になりますと、かなり第一の動き方は小さくなっておりますことは御承知のとおりでございますが、これらのことは企業の利潤追求というような意味合いではさらさらございませんから、したがって、法体系を変えたらそういう事態が直るかといえば、そういうことではないというふうに思うわけでございます。
  219. 加藤清二

    加藤委員長 土井たか子君に申し上げます。あなたに与えられた時間が過ぎました。結論を急いでください。
  220. 土井たか子

    ○土井委員 ならば、もうあと一問だけお伺いをいたします。  電気事業法を修正するという御用意がありやなしや、この一点お願いいたします。
  221. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 電気事業法は、ただいま御審議願っております法律案の中で、第一条の(目的)を改正いたしております。
  222. 加藤清二

    加藤委員長 次は、岡本富夫君。
  223. 岡本富夫

    ○岡本委員 最初に基本姿勢で、もう一度確かめておかなければなりませんのは、今度公害対策基本法改正にあたりまして、第一条の中で、生活環境保全については、経済の健全な発展の調和がはかられるようにするということがありましたが、これを削除したのはどういうわけなのか、これはひとつ山中長官から簡単にお聞きしたいと思います。
  224. 山中貞則

    ○山中国務大臣 第一条第二項に「経済の健全な発展との調和条項がありまして、これが三年も経過しない期間においてこの問題がさらに議論され始めた。成立の段階においても、すでに議論のあったところである。しからば、この第一条第二項があるから公害防止対策ができないのであるかというと、私はそういうことはないと思います。しかしながら、これがあるために公害防止対策を怠っているというふうに見られる可能性も確かにあります。そこで、われわれとしては公害防止対策については各般の法律を出しましたとおりの姿勢を示すと同時に、そのような疑問を持たれる条項は削除という形で疑問に対して明快にこたえさせたいということで、削除いたしたわけであります。したがって、担当大臣に私が就任いたしましてから関係閣僚との相談を週に一回、二回ずつ持ってまいりましたけれども、最初に決定したのは、第一条第二項の削除ということから出発したわけでございます。
  225. 岡本富夫

    ○岡本委員 疑いを持たれるからおはずしになったということをお聞きしました。それはそれで了解をして、それならば、この公害対策基本法ができたからといって、疑いだけですから前に進むのではないともいえるわけでありますが、それはそれとして、時間が非常に切迫をしながらやっておりますので次に進みますが、次は、「自然環境の保護」を十七条の二に入れられましたが、これはどういうわけでございましょうか。
  226. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは、基本的にわが国の公害基本法というものは、現象として起こっております公害基本法第二条でとらえて、その公害等に対処する方策を示しておる姿をとっております。しかしながら、今日の日本の国内情勢も、国際的な諸外国公害に対する取り組み方も、いずれも環境をまず守る、保全するという考え方から出発しておることが明白でございますので、この際われわれとしては、基本法の中に「緑地の保全その他自然環境の保護」に政府がつとめることの義務を設けました。それは単にことばの上だけの文章ではなくて、今国会にも自然公園法の改正案提出いたしておりますし、さらに廃棄物処理等についてもこのような概念からの新しい角度からの取り組みを示して、法案を換骨奪胎したものとして提出したものでございます。
  227. 岡本富夫

    ○岡本委員 よくわかりました。そうすると今後の法案作成においては、やはり「自然環境の保護に努めなければならない」ということが、その精神に入っておる、こういうお答えでありましたから、そこで、大気汚染防止法の目的の中にこの基本法の十七条がどう生かされておるのか、これをひとつ厚生大臣からお聞きしたいと思います。——厚生大臣、要求したら出なさいよ。委員長、おくれた時間をください。
  228. 加藤清二

    加藤委員長 わかりました。この時間はあとで余分に差し上げます。
  229. 内田常雄

    ○内田国務大臣 十七条の二というのを入れていただきましたことは、厚生省の私どももかねがね主張をいたしておりましたところですが、この公害対策というものが局地対策ではなしに、もっと広い意味環境保全対策ということからとらえるべきだという主張があの基本法の中で実現をいたしました。  そこで、基本法に基づく各種の法律の中におきましても、その精神を取り入れまして改正をしたり、ことにまた私どものほうでは自然公園法の改正までいたしまして、単にすぐれた風景の観賞ということだけでなしに、全くよごれていない地域の環境保全の見地から、自然公園政策というものを行なうべきだ、こういうような改正もいたしております。
  230. 岡本富夫

    ○岡本委員 自然公園のほうのこの論議は、社労委員会でやっておりますので、私は当委員会で一番大事な大気汚染防止法の(目的)の中に——自然環境の破壊の防止、こういうようにもう基本法に出ておりまして、この基本法から受け継いでできた法案であれば——別だったらいいですよ。であれば、これはやはり(目的)の中に血然環境の破壊を防止するというように入れるのが正しいのではないか。入れなければこれは全然ばらばらのあれになるのではないかということも考えるのですが、いかがですか。
  231. 内田常雄

    ○内田国務大臣 その基本法の新しい条項を入れました趣旨に相対応いたしまして、大気汚染防止法におきましては、そのいままでの局地指定主義というものをやめまして、全国指定主義ということにいたしまして、よごれていない地域のその環境対策ということも進めることにいたしましたのはその最たるものでございます。
  232. 岡本富夫

    ○岡本委員 (目的)にはそういうことは全然入っておりません。私言っておるのは十七条の二の、「自然環境の保護に努めなければならない。」これがやはりこの(目的)の中に入ってこなければならぬ。なぜかならば、改正前の「経済の健全な発展との調和」ということがあったときには、それを削除するとやはり大気汚染防止法のほうのこれも削除しておるわけですから、この基本法で削除すると実施法も削除されてくる。ところが基本法で入って実施法に入れないということはちょっと理屈に合わない、こういうふうに思うのですが、簡単にお答えを……。
  233. 内田常雄

    ○内田国務大臣 公害防止法の主動法ともいうべき公害対策基本法のほうに十七条を入れましたので、したがって、それに基づく子供の法律の各防止法についてはその精神をくんで中身を改善をした、こういうことで私は足りておると思います。
  234. 岡本富夫

    ○岡本委員 大臣、基本法から次の実施法に移るときには、「経済調和」事項は入っておったけれども、これは今度削除した、子供ですからね、あなたのおっしゃるとおり。そうすると親であるところの基本法に入っておれば、この(目的)の中にやはり入れるのが正しいのではないか。そういうようにひとつ修正する考えがあるかどうか。これは私要求しておきますがね。
  235. 内田常雄

    ○内田国務大臣 まあ見解がいささかずれることになりますが、私はもう基本法に入れてあれば、その基本法改正趣旨に従って子供である各法はその趣旨を体して、中の実際の規制の方法、対象等を即応するような改正をしてあるので、それで私はこの基本法改正の目的は達しておると考えております。
  236. 岡本富夫

    ○岡本委員 この問題で押し合いしておりますと時間がありませんから、通産大臣どこへ行ったんですか。——そうしますと、佐藤総理は、世界に冠たるところの法案を出したということでありますので、まことに素朴な質問をして申しわけありませんけれども、厚生大臣それから通産政務次官、大臣のかわりに、副大臣ですから……。  二十五条「削除」というところがございますが、御承知のように昭和四十五年の六月の一日、法律百八号公害紛争処理法ですでに削除されておるのでありますが、それがまたここで削除。二回削除するということは、まことに私ども素朴な質問で申しわけありませんが、大臣が全部この法案を点検なさったならば即座にお答えできる問題でありますが、いかがですか。
  237. 内田常雄

    ○内田国務大臣 公害紛争処理法ができましたので、それに該当する規定はなくなっておるわけでありますので、今回法文の全面的改正をいたします際に、さらに念を入れて法制局の御注意によりまして削除をいたしまして、そのあいたところへ新しい条文等を詰めていっていいぐあいにした、こういうわけでございます。
  238. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 いま厚生大臣がおっしゃったとおりでございます。
  239. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうも削除されたのがまた念を押して削除される。なくなった人がまた念を押してなくなったということは、まことに理解に苦しむことでありますが、いかがですか。
  240. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これは法制局の意向を主といたしましたが、今日の行政法のたてまえ、整理の方法からまいりますと、これが新方式だそうでございますので、実体的なことではございませんので、法制局の意向に従ったまででございます。
  241. 岡本富夫

    ○岡本委員 私はそういうことが即座にあなたから御答弁いただける——一生懸命政府委員と打ち合わせておりましたが、この非常な国民の声の中では、あわててつくったというような皆さんのお声がずいぶんありますし、したがって、検討する時間がなかった、そういうことで政令事項も非常に多いということでありますので、その点をひとつ念を押しておきたかったのであります。  そこで次は、第二条第一項第三号ばい煙の定義、この第三号の中に「カドミウム、塩素、弗化水素その他の人の健康」、こうありますが、この中に窒素酸化物、硫化水素、鉛、こういうことをなぜお加えにならなかったのか。
  242. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これはひとつ高く評価していただいていいところだと思いますが、いま御指摘に一なりますような有毒物質は、いままでの古い法律では、これは特定有害物質というようなことで、事故時には対応するが、平素は常時規制の対象にしていなかったものを、わざわざここに三つほどの例を持ち出しまして、常時規制の対象にする。それも三つばかりでなしに、政令をもって定むる物質というようなことで、いまお尋ねがございましたような窒素酸化物等は、政令できめる段取りにいたしております。
  243. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは、実は三党の政審会長あるいはまた野党、与党の政審会長会談のときにも、窒素酸化物、あるいは硫化水素、鉛、こういうふうに入れてあったわけでありますけれども、いろいろ協定しておったわけでありますが、半分だけ入って半分だけ入らなかったという理由がどうも私は解せないのでありますが、いかがですか。
  244. 内田常雄

    ○内田国務大臣 全く他意はございません。例示をたくさん並べるのもいかがと思いまして、例示は三つほどにいたしました。現に私どものほうでは、窒素酸化物などに関する環境基準もいま検討中でございまして、おそらく年がかわりましたならば、窒素酸化物の環境基準も閣議決定をして目標を定める、こういうような実務を進めておりますことからも御理解をいただきたいと思います。
  245. 岡本富夫

    ○岡本委員 その点はなかなか理解できないのです。なぜそういうように窒素酸化物、あるいは硫化水素、鉛、こういうものが入らなかったか。こういうことはまだ環境基準もできていないとか、そういうようなわけでここに入れられなかったということだと考えられます。したがって、政令事項で逃げておるわけであります。ということは、政府が出すところの法律というものは——このあと続けていきますけれども、科学的な裏づけ、要するに、科学技術の開発が非常におくれている。このどんどんどんどん進むところの現代文明に、科学技術がうんとおくれている。法律だけ前へ行きまして科学技術がおくれているから、非常に政令事項とかいろいろなもので逃げなければならない。したがって、厚生大臣にこのことを言ってもしかたがないのですけれども、今後——山中長官、こっちを見ておってください。あなたは公害対策本部の一番中心の実力ある大臣ですから、この科学技術公害対策とともに進まなければ、法文だけでいっても、あとは政令でと逃げて、二年も三年も四年もほうっておく、こういうことになるわけですから、科学技術公害防止に対する技術をどういうように考えておるか、ひとつお聞かせ願いたい。
  246. 山中貞則

    ○山中国務大臣 科学技術の問題は、これは政府の責任でもありますし、またそれぞれの企業が、これだけきびしい規制基準がかかりますと、みずからの科学技術による新しい防止施設の開発、あるいはまた、新しい産業として、公害防止施設のための開発会社なんというものが、アメリカ等においては株も非常に暴騰しておるというような現象さえ示しておりますように、日本においても、それぞれ防止機器そのものを製作する会社等がどんどん始まっておるようでありまして、本朝の新聞等でも、日立の新しく開発したものが、各地から問い合わせが殺到しておるというのが出ておったようでありますが、そういうことについては、これは朝野をあげて努力しなければなりませんし、そのよりどころは、やはり国立公害研究所みたいなところか、あるいはまた科学技術庁の科学技術情報センターその他の各試験研究機関というところになるわけでありましょう。そういう意味では、これは何も法律に書いてないからといっても、政令には、法律に書いてある物質もさらに書きますと同時に、ただいまあなたの言われたようなものは、ほとんど漏れなく政令の中に網羅して物質として掲示されることになる、結果はそうなると思います。
  247. 岡本富夫

    ○岡本委員 あなたがおっしゃったように、確かに産業界の技術はどんどん進んでまいります。それに対して、政府の防止技術というものが非常におくれをとっておる。したがって、公害が出てからあわてておる。  まず、それを申し上げておいて、一つの例といたしますと、大気汚染防止法の第三条の中に、大気汚染の拡散方式というものを、煙突を高くすることによって大気汚染を防ごう、こういうような考えを入れていらしゃいますけれども、この拡散原理というものは、大気汚染を防止することにはならないことは御承知だと思うのです。なぜかならば、たとえば現在その基準をきめておりますのは煙突の高さと着地濃度、たとえば着地濃度を〇・〇二ということにしますと、煙突の高さを百メートルのやつを二百メートルにしますと、その排出量は四倍まで許容できることになる。したがって、煙突が高くなったから、排気口が高くなったから、着地濃度は少ない、それだけの分を硫黄分をよけい出しますから、その付近の汚染地域というものはどんどん汚染されていく、こういうことでありますから、この拡散原理の方式をここで考え直さなければならぬと思うのですが、厚生大臣の御所見はいかがですか。
  248. 内田常雄

    ○内田国務大臣 専門家の議論もずいぶんいたしたところでございますが、現在の段階におきましてはqイコールKかける云々というようなこと、それに高さをかけたものでいくので、現段階においてはそれしかない。しかし、これはもう最終的にいつまでもそれでいいかというと、厚生省自身がこれは今後においてはさらにいろいろな検討を加えた上で変更することも適当な場合も出てくるという含みを持っております。
  249. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、またそこで、いままでは着地濃度、K値とかなんとかいってやっておりました、そういう係数でやっておりますと、今度変わりますと、今度はまた煙突を低くしたほうがいい、こういうようなことになりますと、非常に、きょうの参考人のお話の中にもありましたが、政府の方針というものが一貫してないので非常に困る、こういうお話でありますが、私も実は各所を総点検していろいろの工場へ行って聞いてみますと、政府の方針がきまってないので困る、こういうことでありましたから、その点について、先ほどの科学技術の革新、それから環境基準設定、排出基準の決定、こういうものの一貫性を持たなければならぬ、それがはっきりしてない、こういうように思うのですが、明快なる御答弁をいただきたい。
  250. 内田常雄

    ○内田国務大臣 煙突を長くしたものを今度は短くする方式に変えるということでは全くないわけであります。現段階においては、これはやはり煙突の高さ、あるいは排出口からの排出量、それにさらに一定の係数でありますK値というものをかけるわけでありますが、そういう方式だけが永久不変のものではない。こだわらない。いま、たとえば東京都などでおやりになっております、工場全体として各ばい煙発生装置から発生する一日の総量をとらえるやり方でも、とどのつまりは——もちろん私どものほうもそれが仕事でございますから、比較検討いたしましたところが、やはり東京都方式におけるSというものは、いま政府基準で使っておりますq、つまり高さを勘案したものを時間でかけ合わせて、そうしてその一つの工場の中における施設数を足したり、それにさらにまた一定のアローアンスをかけたものでございまして、あの方式もあれならいいということでもないし、またどちらが強いかということでもないのでございます。たとえばそういうことがございますので、これは私どもも科学を進歩させまして、煙突が半分でもいいことにするという気持ちはございませんが、こだわらないでさらに前進をしてまいるという、こういうすなおな気持ちだとお受け取りいただきとうございます。
  251. 岡本富夫

    ○岡本委員 そんないいかげんなことを言ってもらったら困るのですよ。煙突の高かったやつを短くすることはないのだ。そうではない。きょうも宮協先生という方がお見えになりまして、諸外国におきましてはやはりグリーンベルトを大きくしまして遠いところへ飛ばすと、非常に人類の生存ということに関係してくる。この自然環境を守るためには煙突を低くして、そして近くに飛ばす。その付近を大きな自然公園につくる、こういうような方式をいまとっておる、そういうような国もあるのだということになっている。これはアメリカの例らしいのですけれども、そういうことで、ひとつどうしても私の提案したいことは、環境保全基本法でなければ、そういう先を見通したものでなければ、ほんとうの公害対策にならなくて、かえって国費の損耗になる、あるいは企業も困る、こういうことであるわけです。しかし、あなたのお話を聞いていると、もうずいぶん自信のないようなあるような、はっきりしませんのでこれは言っておってもしかたがない。そこで第三条の三項で、「施設の集合地域」「特定有害物質に係るばい煙発生施設が集合して設置されている地域」、こういうように書かれていますが、この「施設の集合地域」とはどういうことをいうのでしょうかね。
  252. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これは私が逐条の一々の文章についてお答えするのが適当かどうか知りませんが、私が理解いたしておりまするところによりますと、硫黄酸化物につきましては八段階に分けて、そしてそれぞれの地域の特性、地理的、社会的状況に応ずる規制基準をかけてはあるが、それらの地域についても、特にいろいろな施設が密集しておりますところについては、一般の基準にかえて特別排出基準をつくる、こういうことによりまして、たとえば尼崎とか、川崎とかいうところに、もし新しい工場をつくるとすれば、そこに一般に行なわれている基準よりもさらに強い基準をかけ得る、こういう道を開いたわけでございます。
  253. 岡本富夫

    ○岡本委員 わかりました。それで、たとえば川崎、あるいはまた尼崎、あるいは姫路、こういうところをぼくはずっと点検に回りまして、工場がたくさんあるわけです。たとえば石油コンビナート、これは石油精製だけではなくして、いろいろなものを精製しております。そういうまとまったのを「集合地域」というのか。その中の一本一本の特別排出基準をおきめになる、こういうふうに特別排出基準を規定するといういま考えでしょうが、そうしますといろいろなものが出るのです。一つのこっちの工場からは——一つの工場の中でも、片一方では硫黄酸化物、すなわちSO2、それからカドミウム、いろいろなものが出る。排出基準をきめるときに、出てきた大気煙の中からこれは硫黄酸化物、これは一酸化炭素、こういうように分類して分けてはかるのですか。要するに複合した大気の中でどういうようにこれを分けてはかるのか、それがちょっと……。
  254. 内田常雄

    ○内田国務大臣 こまかいことは政府委員のほうがより正確に答えられると思いますが、いま排出基準は物資ごとにきめられておりますので、したがって、特別排出基準をかけます際も、物資ごとに、硫黄酸化物でありますとか、あるいはばいじんとか、あるいはまた酸化窒素というような物資ごとの排出基準を、それぞれ突きとめてまいる、こういうことになると考えます。
  255. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは大臣たいへんでしょうから、ちょっとあれしますが、いまの特定有害物資にかかるばい煙について、集合しているところの煙突から出てくる煙の中から、一つ一つの有害物資について、特別排出基準をおきめになると思うのですが、そういうことが技術的に可能なのかどうか、これをひとつお聞きしたいのです。
  256. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 先生御承知のように、この特別排出基準は新しく設置される工場等のばい煙発生施設、新設のものについてだけ適用されるものでございまして、今度有害物、質としていろいろなものが新たに取り入れられることに伴いまして、当然われわれこれら一般の排出基準をまずつくらなければいかぬわけですけれども、それにあわせてもちろん当然法律の要求する特別排出基準につきましても、なお検討を進めなければならぬと思いますけれども、当面の問題としては、硫黄酸化物以外の今度新しく取り入れられた有害物質にかかわるものについては、まず一般の排出基準を早急にきめ、引き続き特別排出基準についても早急に作業を進めたい、そういう考えでございます。
  257. 岡本富夫

    ○岡本委員 それで一つは現在出ている分はもう全然これは問題ないのだ、これから先のものを、特別排出基準をきめるのだ、これであればこの大気汚染防止法は決して前を向いたものではない。なぜかならば、あなた、現実を見てください、いまこの臨海工業地帯、そこに新しい工場が建つ余地はもうありませんよ。もうほとんど土地に建つ余地のないところだけは特別排出基準をきめる。現在のものはこう野放しだということでは大気汚染の防止にならぬ。  それから、もう一つは、敷地の中にいろいろな、たとえばこっちは一酸化炭素が出す煙、こっちからはSO2、カドミウム、こういうようにあるものを、一本一本出しておってくれればこれはすぐはかれるのですけれども、必ず集合して出しておるのですよ。そういうことになりますと、技術的にこれは不可能ですよ。これはまだ科学技術が進んでないからこういうことになる。だから法文だけは、法律だけはいかにもりっぱなものができておる。ところが、科学技術が進まないから全然これはできないことになる。これは私、全部回りまして実態調査の中から出てきた結論なんです。ですからどうしてもここで防止技術の、あるいはいろいろな分析の科学技術、これが十分進まなければ、何ぼ法文出してもだめ、これはひとつ世界に冠ではなくして、あかぬのカンだとか、よく悪いことを言う者がおりますが、そこのところがきちっと合っていかなければならぬと私は思うのですが、ひとつ両大臣の決意をお伺いしたい。
  258. 内田常雄

    ○内田国務大臣 特別排出基準というのは、先ほど私が申し上げましたように密集地帯に新しくつくるばい煙発生施設等については特にからい、きつい基準をかけていくのでありますが、しかし、それで済むわけではなしに、それと同時に、他の一般の排出基準につきましても、これは状況を見ながら逐次きつく締め上げていく。そして環境基準が達成されるようにする、こういう方法を実はとっております。現に、ことしの二月から、硫黄酸化物等につきましては、それより前の排出基準を全体といたしまして一段と締め上げました。しかし、今後もさらに締め上げていく必要がある、かように私は考えます。  なお、科学技術につきましては仰せのとおりでありまして、私は御激励に沿いまして山中大臣とも、十分協力をお願いして、その措置を進めてまいりたいと思います。
  259. 岡本富夫

    ○岡本委員 山中国務大臣も言われるのと同じようなことを言ってしまいましたので、時間があれですから——要するに、ここで規制をきつくします、これはけっこうです。ところが、監視がどんなになるかということ。今度の改正案の二十二条、常時監視を行なう、こういうようになっておる。ところが、私、そういえば総点検であっちこっち回りまして、煙突の上に一本一本上がりました。常時ですよ。常時というのは四六時中、一年に一ぺんくらいだったら常時にならぬ。そういうことになりますと、こういうのはただ二行で、この常時監視を行なうというが、ちなみに申し上げますと、西ドイツではもっとかっちりしています。そうしたものをこの法案の中に盛り込んで、初めて、はあ、なるほど今度の厚生大臣は熱心になられた、こういうことになるのじゃないかと思うのですが、その決意をひとつ……。
  260. 内田常雄

    ○内田国務大臣 公害対策を進めますにつきましては、まず監視測定ということが私は前提となると思います。このことにつきましては、私どもも早くから気がついておりまして、今日まで指定地域におきましては、おおむね十二キロ平方に一カ所ぐらいの監視測定機器を設置させようというようなことで、国が三分の一程度の補助金を出しまして、今日まで全国で二、三百の監視測定施設ができております。また、これらも人間の問題がございますので、なるべく人間を要しないようにテレメーターというのでございましょうか、電気施設等で相互に連絡ができるような施設も講じておりますが、しかし、いままでの指定地域を対象にとりましても、私の見るところでは、まだ監視測定装置というものは、五〇%余りくらいしかできておりません。今度指定地域を取っぱずしまして、全国をすべて要規制地域にいたしましたので、さらに私は監視測定装置の必要性を感じますので、これも私はこの法律が文章だけで終わらないように進めてまいる決意でございます。
  261. 岡本富夫

    ○岡本委員 監視測定計器を私も大阪やあるいはまた東京都、あっちこっちのを見せてもらいました。確かにその地域の濃度というものはわかるわけでありますが、排出をしている一本一本については、全然監視測定の機械が見受けられなかった。電力会社に行きますと、こういうようにSO2をはかっております、こういうところがありました。なるほどりっぱにやっておりますなといって、次の同じ電力会社の中で火力発電所、たとえば尼崎の第一、第二、それから第三と東、この三と東はついておる。一と二はついてないんですね。そういうことになりますと、ほんとうに亜硫酸ガスの測定機械をつけているところはまれなんです。そういうものの特別排出基準をおきめになりまして、そして監視がどうしてできるのか。ああ、きょうは空がよごれているなくらいでは話にならぬと思うのですが、その点についての科学的な根拠を示していただきたい。
  262. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これは法律のことばかり申し上げて恐縮なんですが、法律上はばい煙発生施設を持つ企業は測定の装置を備え、またその結果を記録しなければならない、こういうことになっておるわけでございますけれども、これは岡本さんが実際に御視察なさったわけでありますから、ある工場についてはそういうものがないというようなことがありますならば——またあるでございましょう、実際遺憾でございます。  そこで、先般来この委員会でもしばしば問題になっておりますが、各企業、工場ごとに、企業側の責任として、公害担当責任者というようなものを置くような仕組みをとらせるということで、通産省がその手続を進めておられるようでございますので、そういうこととも相まって、遺憾のないようにぜひしてもらいたいと厚生省の側からは今後ひとつ十分各方面に持ち出したいと思います。
  263. 岡本富夫

    ○岡本委員 通産大臣がいないので困ったが、先を急ぎます。ずいぶんたくさん質問があるのですが、あとの方がおりますので……。  二十三条の緊急時の措置、このときに政令ではどれくらいの量になったときということがあります。これも大体これから政令できめるのだそうですが、たとえばそうなってSO2が、亜硫酸ガスが〇・五PPMとか——〇・〇五PPMが普通のあれですけれども、それを十倍も突破したとか、あるいは五倍も突破したとか、すでに尼崎あたりでは〇・八四常時突破しておるわけです。いつも緊急時みたいなんですけれども、このときに知事が勧告権を発動いたしまして、そしてすぐに改善命令をかけにいった。ところが、すでに厚生省、通産省からきめられたところの排出基準をきちっと守っておった。排出基準を守りながら改善命令をかけられるということはちょっとぐあいが悪いのですが、そういう法的なそのときの処置というものはどうなるのか、必ず不服を言うと思うのです。
  264. 内田常雄

    ○内田国務大臣 いまおっしゃるように、環境基準は〇…〇五PPMでございますが、緊急時というのは文章の上ではともかく、実態は〇・二PPM以上の状況が三時間以上続いたとか、あるいは〇・三PPM以上の環境が二時間以上続いたというようなときは、緊急時としてばい煙発生の減少の協力をまず関係者に求める。しかし、それだけでは足りないものですから、今度新しく第四項等の規定を設けまして、そしてばい煙の発生量の減少なり、あるいはその施設の改善とか、あるいは使用停止とかいうことを勧告できるようなことにいたしました。しかし、おっしゃるとおり、緊急時でなしに常時こういう状況が許されておるというようなことでありますと、これは全く平常時になりますので、先ほども申しますように、そういう状況を見ながら排出基準というものをだんだん締め上げていく。一ぺんきめました排出基準というものは、三年も五年もほっておきません。締め上げるということによりまして、その地域の環境が常時改善されるような方向に進むべきであると私は考えます。
  265. 岡本富夫

    ○岡本委員 それで、この法案を見ましてほんとうにできるのかどうかと疑わしいのは、たとえばそうした非常事態になったときに、Aという工場に行きましたところが、私のほうは示された特別排出基準をちゃんと守っております、それからもう一つ——自動車の排気ガスの場合もそうでありますが、公安委員会に要請して、公安委員会が取り締まろうといたしますと、自動車はちゃんと基準は守っております、私のほうは発生源ではありません、こういうように断わられたときに、この大気の中のこれだけは君のところが出したのだ、これは君のところのものだ、こうこまかく分けてできる科学的根拠があるんですかね。その点についてひとつ。
  266. 内田常雄

    ○内田国務大臣 たいへんむずかしいことでありますが、緊急事態というのは一つ一つの工場をさすのではなしに、ある地域全体が、気象状況によって平時と非常に違った状況を来たした場合を想定いたしておりますので、どの工場から出たということでなしに、その地域にあります工場全部、あるいは排出量が特に多い、基準は守っておっても、数量として多い工場のようなものを目当てとしてその減少の勧告をし、あるいはその前提としては協力も求める、こういうことに相なろうと思います。
  267. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで緊急時の措置の勧告権、勧告をしましたらそれに対して不服を申請することができるんですね。要するに知事が勧告しましたところで、私のほうはきちっと基準を守っております、それで不服を言うておる間にどんどん汚染されて、きのうもちょっと私申しましたが、四日も五日もスモッグが起きたときにはどうするか、こうしたこまかい配慮に立った法案でなければならない、こういうふうに私は思うのですが、その点についてお聞きしたいと思います。
  268. 内田常雄

    ○内田国務大臣 いままでの法律には、そういう勧告権さえもございませんでした。そういう場合には、もっぱらその施設を持っておる企業に対して協力を求めるとか、あるいは自動車の運行者に対して協力を求めるとか、あるいはせいぜいいままでばい煙の発生について、その減少計画を立てておったような企業に対して、その計画をしんしゃくしてばい煙の排出の減少をお願いするというような程度の規定しかございませんでしたので、御言及のように、第四項の規定をとにかく設けまして数歩前進をさせた、こういうことでございます。
  269. 岡本富夫

    ○岡本委員 やはり勧告だけではだめで、命令しなければこれはきかない。これは厚生省、通産省が一応合意しておるそうでありまして、緊急時には知事が命令するということの合意があるそうで、あとは法制局の段階だそうですから了解しておきまして、そこで最後にひとつ複合汚染の場合、大気の中には亜硫酸ガスだけ、一酸化炭素だけ、窒素酸化物だけというように、別々におりますと非常にありがたいのですが、環境基準をきめるときに、たとえばSO2が〇・〇五PPM、この環境基準を見ますと、病状が悪化したり——〇・〇五PPMという環境基準はもうほんとうにきびしい——きびしいというとおかしいですけれども、やわらかい、健康を保持するぎりぎりの線なんです。ちょっとこえるとぐあいが悪い。アメリカでは〇…〇一五、これは確かに厚生省のおっしゃるように、安全基準を見て三分の一くらい落としてある。ソ連においては〇・〇一、大体国際基準というものは〇・〇一五くらいの基準らしいですね。ところがわが国においては〇・〇五PPM、それに対して今度一酸化炭素が一〇PPMですか、そこへまたカドミウム、あるいは酸化窒素、こうなったときに、みんなぎりぎり一ぱいの環境基準をきめておきますとどうなるか。こういう基礎的なところの健康調査の詳細なデータがございましたら、ひとつ出していただきたい。
  270. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私は、御指摘のような状態が心配されると思います。いま、いろいろな監視測定の話も出ましたが、監視測定にあたりましても、各有害物質一つずつの状況を同時に測定する仕組みは実はできておりますけれども、それをほんとうに複合して、まぜ合わせたようなものについての測定というものは、何かむずかしいようでございます。しかし、複合の状況というものはあるわけでありますから、先ほど来たびたび申し述べますように、私どもはだんだんそれぞれの有害物質についての規制を締めてまいって、そして複合の状態が起こった場合にも健康が保てるような方向に向って進んでいく、こういうことをとる一方、監視測定の機械につきましても、複合そのものを測定できるような、そういう科学的な機器の開発にもつとめてまいりたいと考えます。
  271. 岡本富夫

    ○岡本委員 最後に、ですから、労働衛生の五PPMから百分の一にして〇・〇五PPMとか、そういう環境基準じゃなくして、やはり総合的な——複合汚染でありますから、もう一度その環境基準を洗い直して、いろいろ複合しても健康保持できる、こういうようにしなければならぬ。あなたはそれを変えるのにやぶさかでない、こういうことでありましたから、この点について最後に御決意を伺って私は終わります。
  272. 内田常雄

    ○内田国務大臣 幸い今回提案をいたしております公害対策基本法の第九条の——これは現行規定にもあるわけでありますが、環境基準も常に科学の進歩をにらみながら常時それの改善を怠るべからず、こういう規定もありますので、私どもはただいまの御要望にもこたえまして、今後合理的な環境基準の改定等につきましても検討を進め、改善をしてまいりたいと考えます。
  273. 岡本富夫

    ○岡本委員 最後に言うておきます。厚生省で何ぼいろいろ考えても、やはり技術革新、科学的根拠に基づいたところのあれがなければだめですから、山中長官ぜひひとついろいろな法律については、科学技術の革新というものにきちっと沿うていく、こういうようにしていただきませんと、国民はああいい法律を出してもらったとは思わないわけですから、すっかりしり抜けになっているわけで、名あって実なし、こういうふうにいわれておりますから、ひとつ、さらに力を入れてやっていくということをしていただきたい。これは答弁は要りません。
  274. 加藤清二

    加藤委員長 次は、田中昭二君。
  275. 田中昭二

    田中(昭)委員 運輸大臣を呼んでください。運輸大臣が来てから始めますから。
  276. 加藤清二

    加藤委員長 質問者に申し上げます。この待ち時間はあとでプラスアルファをいたします。  田中昭二君に申し上げます。  あなたの要求しておりまする運輸大臣は、いま行くえをさがしている最中でございます。しかし、時間が延びまして他の方々に御迷惑をかけてもいけませんから、質疑を続行いたします。田中昭二君。
  277. 田中昭二

    田中(昭)委員 大気汚染によります環境の破壊が進行し、先日も川崎市では公害病認定患者が窒息死し、死の恐怖がひたひたと押し寄せてきております。大気を構成する酸素一つにしましても、人類は産業、交通機関によって大量の酸素を消費し、大自然がたくわえたこの重要な資源を減らし始め、やがて人類は酸素の欠乏で窒息し、死に絶える以外ないだろうと予測さえされております。また、これと同時に、亜硫酸ガス、鉛、一酸化炭素、ばいじんなどの汚染も急速に進行している。これらの人体への影響は、言うまでもなく、工場地帯や自動車の交通がひんぱんなところでは、排気ガス等による肺や気管の疾患があたりまえになっております。死者が出るほどの汚染はいまのところ限られた地域のようでございますが、しかし、この恐怖の事例が現実となってまいりました。すなわち、最近の報道で、ロサンゼルスからの外電によりますと、今月の三日、ロサンゼルス地区では濃い一酸化炭素が原因で、毎年百人から五百人が死亡しているとカリフォルニア州の公衆保健局は発表しております。これら大気汚染と病気との関係を調査した結果、一酸化炭素による汚染度の高いロサンゼルス地区の心臓麻痺による死亡者が多数出たのは、この原因によるものとしております。このように死の恐怖がひたひたと押し寄せてくる。これらの全体的な汚染の進行も時間の問題でしかないといわれております。  しかしながら、政府が出しております環境基準はたいへん甘いものであり、楽観的な説によっているとしか思えない。生命の安全を守るためには、もっと厳格な態度で臨むことが当然であります。かりに悲観論者が少数派であったとしましても、その人たちの意見を重視し、それをよりどころとして対策を立てるのが住民の生命を預かる行政担当者の義務であります。その観点に立っての立案、法規制でなければならないと思いますが、いかがでございましょうか。
  278. 内田常雄

    ○内田国務大臣 一酸化炭素、まことにおそるべきものでございますが、環境基準につきましては、これは老人とか、子供とか、あるいは病弱者等に与える影響をも研究を進めた帰結として今日の環境基準をつくってございますので、私は環境基準が必ずしも甘いとは考えておりません。むしろ、その環境基準に到達させるための自動車排気ガス等についての規制が、あとから運輸大臣からお話があるかと思いますが、これまで段階的にしか行なわれておらなかった、こういうことでありますけれども、最近、新車のみならず中古車などにつきましても、アイドル時の規制なども実施するようになりましたので、そのほうも環境基準の達成ができるようなふうに改まってきつつあると私は考えております。
  279. 田中昭二

    田中(昭)委員 そこで、私は全国で千七百万台に達するという自動車の状況、今後ますますふえ続けて、それに伴います排気ガスや、そのほか各種有毒物質の量も飛躍的にふえてくることを考えますと、ここで排気ガス撲滅対策を確実に行なっていかなければならない。そういう観点に立ちまして二、三の御質問をしてまいります。  現在、排気ガスの規制方法は、濃度規制をやっております。大気汚染の規制をほんとうに考えるならば、この方法では幾ら規制しても汚染がなくならない。簡単な一つの例をとってみますと、小型車も大型車も同じ濃度規制で行なわれておる現状は、もう少し具体的に申し上げますと、たとえば千ccと二千ccの車が同じ目的地に行くとすると、その車がそれぞれ五・五%以内の規制をしておりましても、排気量は二倍近くになってまいります。この場合、一酸化炭素の量はどうなりますか。アメリカではパワーマイル測定を行なっておると聞いておりますが、わが国は排気ガス汚染においては増大の一途をたどっております。深刻になる一方であり、世界各国に先がけて重量規制をも早急にやらなければならないと思うものでございますが、そうなりますと、いまの道路運送車両法の保安基準改正すべきであると思いますが、この点はどのようにお考えになっておりますか、お尋ねいたしたいと思います。
  280. 野村一彦

    野村政府委員 お答えいたします。  ただいま先生からお話のございましたように、自動車の排出ガス等の規制を進めるにあたりまして、御指摘のように濃度の規制から重量の規制に移るべきだということは、私どももそういう線に沿って努力しているところでございます。これはことしの七月に大臣の諮問機関でございます運輸技術審議会におきまして、排出ガス規制の長期計画が策定され答申されました。それに基づきまして措置をやっておりますことは、先生御案内のとおりでございますが、その方法といたしまして、ただいまは先生御指摘のように濃度規制ということでございますが、重量規制についても検討を進めるようにという答申でございますし、私どもも近い将来できるだけ重量規制の方向に早い時期に移行する、現在のところ四十六年度に重量規制に持っていくということで研究を進めておりますので、できるだけ早い機会にその措置を講ずるように、さらに研究を、テンポを進めたいと思っております。
  281. 田中昭二

    田中(昭)委員 早い機会といいますが、いま私、ここでほんとうに大気が汚染されるという現実をよく見きわめていくならば、あなたに答えを一々願いましたら時間がなくなりますから、いま私が具体的に申し上げた、小型車よりも大型車によって一酸化炭素は多量にふえていくということはお認めになりますね。それでは、濃度規制だけで汚染が少なくなると言えぬじゃないですか。ただ四十六年から五十年、五十五年にかけて計画がある、実際に排気ガスの弊害が減少したとは言えない。これを極論すれば、人間は排気ガスによって健康をむしばまれて、被害が増大するかもしれぬ、こういう政府やり方をやれば。これには反論をいただきたいのですけれども、時間がありませんから続けていきますが、いまあなたがおっしゃったことしの八月から使用過程車に対して一酸化炭素の基準値五・五%の規制を行ないました。これでほんとうに人の健康を守るための最高の方法であると確信を持って言えますか、この点が一点。これは簡単にあるかないかだけでけっこうです。  それからなぜこういうことを言うかといいますと、実例をもって説明いたしますが、ある車が規制する前に七%のCOを出しておった。これを規制して四%にした。そこでその七%から濃度を四%にした段階において何がふえるかといいますと、あのこわい窒素酸化物がふえる。これがふえて現実にことしの七月はオキシダントが発生して光化学スモッグが起こったじゃないですか。そういう現実の被害で世間が騒いでおる。このいきさつをずっと突き詰めていきますと、その前に、NOxいわゆる窒素酸化物は光化学スモッグに全然関係がないといわれないことは科学的に明らかになっております。そうしますと、この光化学スモッグを発生させたのは、排気ガスの中の窒素酸化物が増加したということです。その増加は一酸化炭素を規制したために起こった、こういうことになります。そうすると、政府の行なった一酸化炭素の濃度規制は、その光化学スモッグの犯人であるといっても、これは大体当たっておることになります。どうですか、この責任をどうとりますか。結局、そのCOの規制をしたときにはそういうことがわからなかったとしか言えない。まあ政府が現在行なってきておりますこのCOの規制は、さらに公害をふやすものでしかない。国民はだまされている。そのCOの規制における検査のためにばく大な国費が使われて、そして整備業者は多大な経済負担をかけて、国の検査場の検査員は一酸化炭素におかされ続けて、何にもならない、かえって公害がふえておる、こういうふうにはっきり言う学者もいるのです。現場の人もおるのです。一体この責任をどう考えておりますか。
  282. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 御承知のように、問題は自動車の排気ガス規制に関する技術開発が、どこまでわれわれが追及できるかという問題が一つあります。現在、御承知のように、運輸省としては積極的な指導をしておりますけれども、現時点においては、せんだってきめましたアイドル時において新車は四・五%、現在の技術開発においてはこの点以上にはなかなか無理がある。しかしこれでとどまるわけではないのでありまして、今後とも新車のいわゆる規制強化を進めてまいって、将来自動車が二倍もしくは三倍ふえても、全体におけるところの濃度がふえないようにしたい。  それからもう一つは、道路の構造の問題もあります。いわゆる走行時においては——現在の四・五%は渋滞、アイドルタイムにおけるところのものでありますから、そうでなくて走行時においては非常に低い二・五くらいのところでありますからして、ことに問題は、渋滞時において車がたくさん集まれば、そのアイドル時間中に排出する車が五十台が百台となれば、せっかく規制しても全体の濃度は濃くなってまいるわけであります。そういう意味においては、一方においてはもちろん新車の開発については十分なる努力をすると同時に、メーカーが相当苦しくとも規制を強めていく必要はあると同時に、一方において道路の構造改善等が行われませんと、どうしても渋滞が多くなれば、その規模が多くなればなるに従って、一定場所におけるところの濃度は高くなる。こういう意味において両者相まってこれらの全体の措置を講じていきたい。しかし、運輸省所管でいうなれば、いわゆる技術開発によって、相当メーカーに負担が多くても、積極的にいわゆる炭酸ガスの排出数量を全体的に低めていきたい。お話にありましたように、いわゆる一酸化炭素に対する技術開発を行ないますが、一方において今度は酸化窒素の問題が出てまいります。こういう問題もあわせて研究して、将来これらの問題を少なくしていくということに積極的な努力を払っていきたい、かように考えております。
  283. 田中昭二

    田中(昭)委員 いま大臣の答弁を聞いておりましても、何をやりました、何をやりましたと言うのですが、やりますところの現実のものをつかまえて、実際大気の汚染がひどくなるのじゃないですかと私はこう言うのです。全然違うのです。政府がやった一酸化炭素の規制は、町へ行って聞いてみなさい。あんなことをやっても、実際そういうものが減りますか、こういうことをいま私は具体的に順序を経てお話をしたのです。まあしかし、これはどうあっても、これだけの規制を政府がやって、とにかく国民にばく大な損害を与えたという事実を考えてもらわなければならないということを、私はさらに念を押しておきます。  この大気汚染防止法によりましても、私のほうの党では、このいわゆる汚染の拡散、拡大の問題で、拡散原理を廃止して、そして絶対量を規制しなければいけない、こういうふうに言っておるわけであります。このことが、濃度規制ができるか、やりたいというようなことはいま聞きましたけれども、もう少し具体的に現実状態を申し上げておかなければいけないと思います。  そこで、先日、私はこの一酸化炭素の制規のことにつきまして、国の検査場に行ってみました。ところが、この検査場で、検査員の方がもう一酸化炭素のガスにまみれて仕事をしております。そういうようなことで、たいへんかわいそうな立場で仕事をしておる。そういう職員の人から待遇改善の要望もあって、そして人事院のほうから調査がなされたと聞いております。その人事院の調査はどのような調査がなされたか、人事院来ておれば簡単に御説明願いたいと思います。
  284. 渡辺哲利

    渡辺説明員 お答え申し上げます。  自動車の検査業務につきましては、御指摘のございましたように、一酸化炭素等の排気ガスの影響、それから騒音、あるいは冬季寒風にさらされるというような悪条件がございまして、その中で仕事を進めておられるわけでございますが、ただ、こういう環境条件につきましては、本筋といたしましては、そういう環境条件をまず改善をするというのが本筋であろうかと思います。そういうことで、その改善について常々私どもは強くお願いをしているところでございまして、その結果は、だいぶ改善がなされていることは事実でございますが、一方検査業務に従事します検査官の給与につきましては、本俸の面におきまして、等級別定数その他で、専門職として十分の配慮を得ておるところでございますけれども、いまの環境条件の劣悪に基づく特殊勤務手当の御要望は、常々従前からいただいておりますが、それらにつきましては、私どもとしていろいろ調査しました結果では、まだ特殊勤務手当を支給すべきだという判断には立ち至っていないところでございます。  なお、今後それらにつきまして、十分検討を進めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  285. 田中昭二

    田中(昭)委員 いま、報告があったわけでございますけれども、このような調査についても、政府はほんとうにこの一酸化炭素のことについて考えておるかというと、考えてないといういまの報告だと私はとるのです。なぜかならば、職員の人たちは、それは給料をたくさんもらうこともうれしいでしょう。しかし、自分のからだがガスでおかされているという現実をなぜ調査しないのですか。そういうことをやって、そしてそれに対する処置をとってやるのが、私は人間性豊かなものである、こう思うのです。先ほど大臣も、初めのほうはいらっしゃらなかったから、重量規制のことはもう少し早めます、こういえばいいのです。できなければ一生懸命やればいいんです。やってできなければ、またその次の方法を考えればいいのです。申し上げておきますが、この濃度規制自体の問題が、いま五・五%の基準がきめられておりますが、私たちが現場に行ってみますと、検査を受けた車がいわゆるキャブレーターのネジを調整しまして——簡単に調整できるのです。検査が終わったらすぐそのネジをゆるめて、排気量を多く出して、車が正常に走れるようにするのです。こういうことが現実に行なわれておる。そして、これに対しては罰則規定も何もないのです。こういうことでは、先ほどから言うように、一つも規制にならない。かえって人間を悪い方向に追いやるようなもんです。ですから、大臣がまだ答弁が悪ければ、ずっと事実をあげて続けていきますから、どうか前向きの答弁をなさるようお願いしておきます。
  286. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 前向きの答弁をいたしますが、運輸省としましては、四十六年、まだこの規制を強化します。来年度、それから四十八年とこうやってまいりまして、おっしゃるように積極的に規制を早めまして、そうしてできるだけ空気の清浄化に対して努力をいたしたい、かように考えております。
  287. 田中昭二

    田中(昭)委員 どうもおかしいですね。銀座、新宿等において歩行者天国が行なわれました。そのときはたいへんCOが少なくなってゼロになった。もちろんいままでの統計を見ましても、一酸化炭素の犯人は九九・七%は自動車である、このようにいわれておりますが、この自動車の排出ガスの基準がいま言うたようにたいへん明確でない。新車はもちろん規制をしておりますが、使用過程車、いわゆる中古の車は、いわゆるアイドリング時の五・五%、これは大体どうしてきめたんですか。私が聞くところによりますと、おかしなことなんですよ。東京、大阪の車を二千台集めて平均を出してそれを基準に用いた。このような簡単な基準のきめ方で、どこに大気汚染をなくそうという政府姿勢があるかと、またこう言いたい。そのような簡単な、二千台集めて足して割って、そういう基準のきめ方はけしからぬ。それがそうでないとするならば、その五・五%をきめた資料をひとつ提出していただきたいと思いますが、どうですか。委員長、これは資料提出をお願いしたいのですが……。
  288. 加藤清二

    加藤委員長 ただいま、田中昭二君から資料提出の要求がございましたが、それについて提出できるかできないか。できるとするならばいつごろできるか。できないとするならばなぜできないか。これについて御答弁願いたい。
  289. 野村一彦

    野村政府委員 お答えいたします。  ただいま先生の御質問の件につきましては、こちらで調査をいたしまして大体規制をする。それからどのくらい合格するか、どのくらい不合格になったかという実例を調査いたしまして、その資料につきましては、できるだけ早くということで、おそらく明日にはお手元に届けられると思いますので、お約束いたします。
  290. 加藤清二

    加藤委員長 田中君に申し上げます。いまの御答弁でよろしいですか。
  291. 田中昭二

    田中(昭)委員 はい。  もう時間がなくなりましたから次へ行きますが、この一酸化炭素の基準は、結局非常にあいまいな基準であるということはどうしようもない。またそれをつくってみても、実際問題として、現実一酸化炭素は減らないのですね。その減らないガスが町にばらまかれておりますが、大体そのような一酸化炭素のガスが、人体にどのように影響するのか研究したことはあるでしょうか。この研究がなされてない。たとえば人間が生まれてから七十年間生きたとして、現在このCOを吸ってどういう状態になるのか、だいじょうぶなのか、そういう点がなされておりません。ただメカニックな面は研究をされておりますが、生態学的に研究がなされていない。このような規制は、人体にどう影響するかを解明せずに公害を撲滅するということはできないことであります。人間に対してCOの安全許容量がわからないのに規制値を算出しているが、許容量がきまらなければ人間の健康が安全であるとはいえないのではないですか。この許容量等について総合的な研究もしていない。これは運輸省だけではなくて、警察庁等におきましても、その生態学の分野まで詳しく説明できる方がいますか。いるかいないか、それだけ言ってください。
  292. 内田常雄

    ○内田国務大臣 不満足かもしれませんが、一応私から御説明申し上げます。  厚生省では、昭和四十年から、厚生省の所管でございます国立公衆衛生院、また横浜市立大学などに研究費を出して、依頼を続けてきております。これまで、一酸化炭素の神経機能に及ぼす影響を、生理学的見地からの研究、疫学的立場からの研究、動物に対する一酸化炭素の慢性暴露実験に対する研究等を行ないまして、その結果、多大の成果はあげております。この成果に基づきまして、一酸化炭素の環境基準が定められたわけでありますが、そういうような状況でありますので、これは非常にりっぱな研究が進んでいるとも思えませんので、御承知のように、本年度から国立衛生試験場というようなものをぜひつくっていただきたいということで、それの調査費みたいなものを本年度予算につけておいていただいておりますが、明年度におきまして、これは政府検討課題になっておりますが、山中大臣からの御協力も得まして、そういう有毒物質とされているものの生体に及ぼす生理的、衛生的研究というようなものを進める機関をさらに集大成したいと考えております。  なお、現在横浜市立大学、大阪府立公衆衛生研究所、大阪市立衛生研究所等、各地の大学や衛生研究所にも委託をいたしまして研究を続けている、こういうのが現在までの状況でございます。
  293. 田中昭二

    田中(昭)委員 時間がなくなりましたが、大気汚染について解決されていないものがたいへんまだたくさんあると思います。  そこで、私はきょうは自動車のタイヤ、これがいま道交法の改正で、すり減ったものはつけてならないとかいう問題も起こっておりますが、このタイヤの粉じん問題ということについて研究したことがあるのかどうか、関係各省からお答え願いたいと思います。
  294. 隅田豊

    ○隅田説明員 御指摘の、自動車が走ることによりまして、道路とタイヤの摩擦から、タイヤが粉じんとなって飛散するために、空気中にタイヤの微粒子みたいなものがびまんするという現象があるということは、一応聞いております。ただ、御存じのとおり、タイヤの安全性を確保するという立場からの摩擦係数をふやすということと、それから微粒子をなるたけ出さないというために摩擦係数を減らすということが、相矛盾する問題でございまして、研究問題としては、非常に重大な問題ではございますが、いまのところまだ緒についていないのが実情でございます。
  295. 莊清

    ○莊政府委員 産業界でも、まだ本格的な研究は行なわれておらないと承知しておりますが、自動車技術研究所というものが財界の出資でつくられております。そこが今後タイヤ業界と提携いたしまして、タイヤに関して総合的な研究を行なうことになっております。将来、御指摘のような問題につきましても、業界自体でも製品公害という問題もあるわけでございますから、そういう立場から研究するように、今後の問題として指導いたしたいと思います。
  296. 田中昭二

    田中(昭)委員 重大なことであるけれども、結局研究がなされていないということです。私たちがどんなに調べようとしても、これは通産省も企業の秘密なんかといって、絶対に教えてくれない。しかし、このことについてはやはり世の中は、あなたたちが研究しなくても、ちゃんと現実は調べてあるところもあるのです。ある研究所で調べてみますと、このタイヤの摩耗によるところのタイヤの粉じんが、年間三十万トンにのぼると私は聞いております。問題は、このタイヤの——また役人さんに聞いても時間がかかりますから、私のほうから申し上げますが、このタイヤの成分はどうか、成分が問題です。ゴムであることは間違いない。そのほかアスベスト、硫黄、カーボン、その他重金属ということになっておるようでございますが、こういう重大なものが大気を汚染し、人体に影響があるということについて、いままで何の研究もなされていないということは、一体どういうことですか。関係各省、通産省、運輸省。
  297. 隅田豊

    ○隅田説明員 タイヤの微粒子が、身体的にどういう影響を及ぼすかということは、いわゆる医学関係のほうの研究としてはやっておられると思いますが、私たちのほうとしてはやっておりません。
  298. 莊清

    ○莊政府委員 先ほど御答弁申し上げましたとおり、産業界のほうでもタイヤの問題について研究をしようということになってきておりますので、指導をいたしたいと思います。
  299. 田中昭二

    田中(昭)委員 御存じのとおり、何べん答弁を求めても同じことです。やっていて言わないのか、その点は大臣にひとつ考えてもらいたい、そして答弁してもらいたい。この古タイヤが町で焼かれております。いまのような成分であれば、重大な有毒ガスが多量に発生する。この古タイヤによって交通事故まで起こっている、死人まで出ておる。厚生大臣のほうも、今度廃棄物処理法を出されたわけですが、そういうものでこれがどのように取り締まれるのか。またこのタイヤの主成分になっておりますゴム、アスベストについて、重大な事柄でございますから、どのようなお考えを持っておりますか最後にお尋ねしたいと思います。そして、いま申し上げましたことを踏まえて、山中総務長官から最後にお考えを聞きたい。
  300. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私のほうも実は苦慮いたしております。これは運輸省なり、通産省なりに、大いに一歩を進めてもらわなければならない問題でありまして、今度の法律で取り入れましたのは、一つの施設から生ずる粉じんにつきましては、そのいろいろな管理、監督の規定もございますが、古タイヤで自動車が走っておるときに、その摩擦によって生ずる粉じんというようなものにつきましては、施設ではないものですから、直接今度の法律の対象にもならないので、私のほうではたいへん困っておりますから、もとにさかのぼって、そうしてそういう粉じんが生じないようなタイヤをつくっていただくことと、今度はあと始末としてのいまおっしゃいました廃棄物処理法、これによって私どもは責任をもちまして、たとえば自動車、タクシー会社等から生ずる古タイヤの処置については、排出者責任の原則に立ちまして、そういう自動車会社等につきまして処置を講じさせますし、また自家用の車に売られた古タイヤが一般廃棄物に出されます際には、これは家庭の一般の廃棄物などとは区分して処理する等、いろいろ苦心して道を考えてまいりますが、要はやはりそういうものをつくるときに、そういう粉じんが出ないようなものをつくっていただくということで、私どもひとつ大いに関係各省にお願いをいたし、国民の健康を守ってまいりたいと思います。
  301. 山中貞則

    ○山中国務大臣 単に、自動車のタイヤの問題ばかりでなくて、現在各省にあります国の研究機関というものの相互の有機性がないということについては、私も政府の反省として今日まで申してまいりました。総理が、それについては具体的な構想をいま検討中でありますので、それがまとまれば、場合によっては、国立公害研究所というものができますから、そういうもので、各省の持っておりますそのようなそれぞれの省内における研究、あるいは各省がどちらも自分の省でないと思って研究してない分野、そういうような問題等が、すべて提起されたものについて研究ができるようになると思いますが、その結論が出れば、来年度予算の要求の中にでも盛り込んで、早急な実現をはかりたいと思います。総理の結論待ちでございます。
  302. 田中昭二

    田中(昭)委員 最後に要望だけ申し上げて……
  303. 加藤清二

    加藤委員長 田中昭二君に申し上げます。あなたに与えられた時間が五分超過いたしました。
  304. 田中昭二

    田中(昭)委員 要望だけ申し上げます。だめですか。——それでは以上でやめます。
  305. 加藤清二

    加藤委員長 米原爽君。
  306. 米原昶

    ○米原委員 時間が限られておりますから、ごく簡単に質問したいと思います。  今度出された公害関係法案は、幾つかの前進面はあると思いますが、これで実際に公害が防止できるかという点が結局肝心だと思うのであります。ことにその中でも、大気汚染防止法については、これではたして大気汚染を食いとめられるだろうかという感を禁じ得ないのであります。  この十二月二日に、東京都と神奈川県の一円にわたって、国の環境基準〇・〇五PPMをはるかに上回る、〇・二五PPM前後の亜硫酸ガスによる高濃度の大気汚染が発生しました。その中で、先ほども同僚議員から話がありましたような、公害病患者が二人死んだというような事態も起こっております。  先日、連合審査会の場合に、私は川崎市における大気汚染の状況について大臣に質問しましたが、そのときには私が出した資料が大臣の手元になかったので、十分な答弁にならなかったと思うのです。あの点をもうちょっとはっきり説明していただきたいのです。つまり、ことし二月現在の亜硫酸ガス発生三十八工場、川崎市における実際の排出量が、一時間当たり六千三百五十三立方メートル、これは会社が届け出た数字であります。そうして、現行の排出基準によると、一時間当たりそれの二倍近い一万二千四百五十一立方メートルが許容限度になっておる。ですから、許容限度の半分ぐらいな量が出ている。もっともこの検査も、むしろ非常に基準を引き締めた段階における数字なんですね。それの二倍近くまでが許容されているという問題ですね、これは実に大問題だと思うのです。  そういうことになりますと、いま出ている排出基準というのでは、たくさんの人が死ぬような事態を防げないじゃないか。もちろん環境基準が極度になる場合には、いろいろな要因が作用するわけですが、それにしてもこういう排出基準では、実際に人が死んだりする事態を食いとめられないのじゃないか。この点が今度の改正案で十分に食いとめる保障が与えられていないという点を非常に残念に思うのです。  これは川崎市の例ですが、実は大臣に聞く前に、厚生省のほうへこれを持っていって相談したときに、厚生省当局が非常にびっくりしておりました。してみると、こういう調査はいままでやっておられないのじゃないか。地方で、これは神奈川県で、その排出基準に従って許容量を出して、それから各工場で出している排出量というものとあわせた表ができているわけで、これは神奈川県議会で発表された数字ですね。そういう調査を見ると、あらためていまの排出基準でいいだろうかどうか。こういう調査は一体、川崎市とか、問題になっている尼崎とか、四日市市とか、西大阪とか、そういうところでこういう調査をやって、そういうデータが出ておるのでしょうか。おそらく、そういうデータが出てたとしたら、いまのような排出基準のきめ方でいいという結論は出ないと思うのです。この点について、厚生大臣の見解を聞きたいと思います。
  307. 内田常雄

    ○内田国務大臣 先般の連合審査の際に、米原さんから資料をいただきました。私も驚きました。しかし、事実を調べましたところ、おっしゃるとおりでございまして、川崎市における御指摘の三十八工場の合計いたしましたものは、いまきめられておるSO2あるいはSO3の排出基準よりもはるかに少ない。にもかかわらず、川崎市の空がよごれているというのは一体どういうことかと私もまことにふしぎに思いまして、この措置を問いただしましたところが、こういう事情でございます。  これは決して弁明するわけではございませんで、でありますから、私どもも、結論から申し上げますと、環境基準というものは、たとえば〇・〇五PPMでありますが、それを達成しますための排出基準というものは、川崎につきましては、数年がかりあるいは十年がかりでそれをきつくしていって、そういう環境基準が達成されるのは十年計画になっておるそうでございます。  ところが、環境基準はすでにこれまで、ことしの二月に、一回目か、二回目か、きつくいたしまして、もちろん、川崎市にもそれが適用されましたが、ことしの二月の時点におきましては、神奈川県全体は、その排出基準に違反する施設の数が二百九十七、違反率一五・九%、川崎市だけとってみましても、ことしの二月の時点では、違反する工場が百四十七施設、その違反率は一六・二%であったそうであります。ところが、県のほうでも、非常にその改善のための行政指導を行なわれまして、現在では、熱心な工場は、御指摘のように、この三十八工場などは熱心な例であると思いますが、排出量の基準の二分の一ないし三分の一程度にこの基準を下回る排出でみずから自制しておる。こういうことのために、川崎市では、昨年に比べて、ことしに至る間、全体としてのスモッグシーズンなどの汚染度は、かなり改善してきたそうでございます。にもかかわらず、しかし、やはり環境基準よりも高い。たとえば大師につきましても、現在、そんなにお互いに自制をしておりましても、大師は〇・〇六PPM、それから、衛生試験所前が〇・〇五PPMと、環境基準すれすれというようなことでございまして、全体とすれば、まだ川崎市の汚染状況は環境基準に達していない。  そこで、私どもは、この二月の環境基準の強化をもって満足いたすものではございませんので、さらにこの環境基準を、これは御承知のように、全体八段階になっておりますけれども、強めてまいるような努力をいたし、それからまた、それに応じて企業側もこういう努力を続けていただきたい。おそらく川崎では、国のこの排出基準、規制基準に満足せずに、現地の協定などもございまして、その協定によって、国の許容基準よりも低い基準−で押えていると私は考えますが、しかし、全体の状況は悪うございますので、環境基準は、四十六年度中にはさらに排出基準の強化を行なうというたてまえのもとに、その準備を進めておる、こういう状況でございますし、私どももたいへんうれしいことでもあるが、また、御指摘のような状態でありますことは、まことに残念なことであると思います。しかし、これを一挙に環境基準を二倍に高めるというようなことをやりましても、これはあそこにある工場が三十八工場だけではございませんので、だんだん現地の自主的な努力に合わせて、この規制をきつくしてまいる、こういうことを考えておる、こういうことでございます。御理解をいただきたいと思います。
  308. 米原昶

    ○米原委員 大臣のお話を聞きますと、かなり努力しているということにも聞えますが、しかも、一方では、十年計画だとおっしゃるんですね。一体このような状態を十年もかかって平常の状態にしていくんだというのじゃ、少しのんき過ぎるんじゃないですか。現に二人も死者が出ているというような事態になっていて、実際は、相当危険な状態にある。どうも思い切った措置が実際にはとれないでいるんじゃないか。工場のほうは、いろいろそういうことを報告するかもしれませんが、実際はずいぶんその報告自体が怪しいものだと私は思うのです。というのは、この前も実は、そういう状態だと聞いて川崎市におもむいてちょっと調べたのですが、たとえば、日本鋼管が排煙脱硫装置をつくっているといってたいへん自漫しているということを聞いたので、どういう状態か見に行きました。そうすると、九十二本煙突がある中で、一本だけ脱硫装置がついておる。ところが、これが自漫なんですね。そして、それじゃ、こういうものを今後つけるのかと聞いたら、いや、今後はもう一本もつけない、のんきなものですよ、そういうことを言っております。こういうところから出てくる報告だけで信頼できるかと私は思いますがね。どうしてもいま多くの国民の望んでいるのは、この空気の汚染した状態を十年も待つちゃいられない。絶対そんなものじゃないと思うのです。もちろん、もうすぐにできるなんてことはだれも考えませんが、とにかく、もっと大きく規制をしてもらいたい、厳重にやってもらいたい、こういうことなんです。その見地から見ますと、先ほども議論がありましたが、いわゆる排出基準という濃度だけを規制する、−基本的にはですよ、いままでのこのやり方ではなくて、やはり地域に一ことに非常に危険な地帯です、まず排出総量、この地域全体としての排出総量をどれぐらいまでに押えなくてはならぬか。排出総量の方向を見てそれに合わして排出基準をきめていく、あるいはある場合には、重大な汚染の原因になっている工場は、もうあそこから移転させるぐらいの措濁をとらなければ、おそらく解決できないのじゃないか、こういうふうに思うのです。そういう点で今度の法案では、この排出総量をはっきり押えるという方向が出てはおりません。間接的なやり方で量を押える問題にももちろん関連はしておりますが、こういう汚染地域については、許される排出総量というものを大体計算してみて、単に一つ一つの工場の一本ずつの煙突についての排出基準じゃなくて、全体として押える。その観点に立った規制方式でなければ解決がつかないのじゃないかという感じを深くします。この点についてひとつ聞きたいと思います。
  309. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私が十年ということを申しましたのは、これは私は隠す必要がないからそのまま申し上げましたが、この亜硫酸ガスの環境基準が昨年の三月でございましたか、きめられましたときに、地域によっていろいろよごれの状況も違いますので、それを達成せしめるおおむねの目標というものをつけました際に、川崎市は非常によごれがひどいところであるので、十年間ぐらいというような目標がつけられた、こういうことで私は説明を受けております。ところが、これはいまの排出基準を厳重にするとか、あるいはその地域のSO2、SO3の総排出量をきめて、それを各工場に割り当てるというやり方もあるいは考えられることではございましょうが、もっとさらに根本的には、あそこに公害防止計画という一つのいわば都市計画、地域計画をつくらせる対象に考えておりまして、ことしは千葉の市原とか、四日市とか、御承知のように水島とかいうような地域に、二千数百億円の事業費をかけまして、そして五カ年計画でございますが、公害防止計画をやらしておりますが、来年からはそれを東京、大阪、川崎を含みます神奈川というようなものもつくってまいらせることになっておりますので、いまのような川崎のいい工場が、またその地域の人々が努力をしている状況から見ますと、十年も待つ必要はない。したがってもっと早い期間に環境基準に到達せしめることができるだろう。だとすれば、その排出基準のほうも、通常は二年に一ぺんくらいこれを締めあげていくという一般的な計画だそうでございますが、川崎市のようなところにつきましては、さらに期間を詰めて、排出基準をきつく規制していくということも考えていいのかもしれません。その辺につきましては、事態に即しまして、また私どもも十分地域と打ち合わせをいたしまして、できる限り前向きの処置をとってまいるべきであるし、またまいりたいと思います。
  310. 米原昶

    ○米原委員 時間がありませんから、いまの問題をもっとはっきりさせる点がありますが、問題は、そういうもっと厳重に排出を押えるやり方を強硬に進めないとたいへんなことになる。そういう点からいうと、もう一つは先ほども議論になりましたが、脱硫の問題であります。  先ほどの通産大臣の答弁で聞いておりますと、低硫黄重油を使うということだけでして、しかも、それはもう限度があるということも一方で明らかなのです。そういう状態、もちろん低硫黄重油を使うことはけっこうですよ。しかし、それだけでは解決にならない。そうしますと、直接の脱硫ですね。これをどうしてもやっていかなければならない。また排煙脱硫も、もっと進めていかなければならぬ。一つは、製鉄所などの場合は、当然排煙脱硫を義務づけるようにすべきじゃないか。  排煙脱硫についてはこういう話も聞いております。八幡で、新日本製鉄で、排煙脱硫の新しい装置を製作した。それがむしろ外国からたくさん注文がきて、日本はどんどんそれを売っている。それでかなりもうけているという問題ですね。ところが日本のほうではそれはあまり使わない、こういう問題も聞いているのです。排煙脱硫を使うことを義務づけるようにする、こういう措置をとる必要があるのじゃないか。  それから石油業者に対して、直接脱硫するということをもっと進めさせる。そうして脱硫したものを原則としては買うような、そういうシステムにできるだけ早く持っていく。このことをやらないと、いまのやり方では結局亜硫酸ガスは押えることができないのじゃないのか。先ほどから通産省の答弁を聞いていましても、その点がまだ明確になっていない。この点を厚生大臣としてどう考えられるか、聞きたいと思います。
  311. 内田常雄

    ○内田国務大臣 政府といいますか、内閣中央公害対策本部ができて、総理大臣が本部長に就任し、ここにおられる山中大臣が副本部長に就任せられるまでは、これは私どもが国民の健康や環境保全立場から、いろいろの要望をいたします際にも、通産省と手を組んで、二人三脚でいかなければならなかったわけでありまして、なかなか骨が折れましたが、今度はいまいうような中央本部ができましたので、私どもは国民の健康を守るためにはこういうことをしてほしい、ああいうことをしてほしいということを、中央本部に持ち込みまして、中央本部がそのためにはいまおっしゃる排煙脱硫なり、直接脱硫なり、そういうことについていかなる措置をとるべきか、またとり得るかということも考えて、そうして通産大臣を率いていかれる、こういうことになるわけでございまして、私は、そのことにつきまして中央本部の組織や機能に大きな期待を寄せておるわけでございます。  それはそれといたしまして、私どもが承知いたしておりますところによりましても、直接脱硫のことにつきましては通産省、ことに工業技術院が大型プロジェクトとしてこれを取り上げまして、数十億円の研究費をかけまして、そうしてその開発の途上にあるというようなことをこれまで聞いておりましたし、またそれは別といたしましても、ある石油精製会社などはみずから費用を投じて、また一つの方法の直接脱硫の方式も開発しておるようでございますので、そういう勢いを全体にプレベールさせてまいりたいし、またいまの排煙脱硫などにつきましては、これは製鉄所ばかりではなしに、それを取りつけ得るようなところにつきましては取りつける方向に、命ずるかどうかは私どものほうからは申すべきではありませんけれども、そういう方面に指導をしていくことをしないと、これから低硫黄対策といたしましても十全の道ではないと考えますので、そういうことにつきましては、私どもは、さらに一そうの関心を持ち、また要望をいたしながら、中央対策本部と協力のもとに改善をいたすようにつとめたいと思います。
  312. 莊清

    ○莊政府委員 通産省としてお答えを申し上げます。  排煙脱硫につきましては、先ほど大臣から御答弁申し上げたと思いますが、電力関係、鉄鋼関係ともに鋭意技術を開発しておるという段階でございまして、これで完全にやれるというだけの技術に達してないことはまことに残念であり、申しわけないと思って、今後努力すべきだと思っております。  電力関係で申しますと、電力中央三社で三十二万五千キロワット相当の発電機を想定いたしまして、それに相当する程度の排煙脱硫装置をそれぞれ近く建設して、本格的な研究に入ることにいたしております。これの基礎になりましたのは、通産省におきまして、大型プロジェクトとして過般四十一年から研究してまいった研究成果でございます。この電力中央三社の研究は、当然に将来実用に移すということを前提にいたしまして、通産省としても指導しながらやっておる。実用化を当然に踏まえた研究でございまして、それに備えまして電気事業法で新しい発電所の建設を許可いたします場合には、かなり土地も要るような関係もございますので、排煙脱硫用の用地が確保されていることということを実は条件に、昨今では電気事業法の運用で許可をしておるというふうな面もございます。  鉄鋼の関係でございますけれども、先ほどちょっと御指摘ございましたけれども、日本鋼管でやっておりますのは煙の量が三万立米程度の小型の第一次の研究でございましたけれども、来年度から高炉メーカー全体の共同研究という形で、十三億円ぐらい金をかけまして、十五万立米ぐらい、五倍ぐらいのスケールアップの研究プラントを、同じ日本鋼管の工場につくることにしておりまして、これは、現在日本鋼管にあります焼結工場から出ます煙の量の大体三分の一ぐらいの、成功をすれば実用に移せる程度の大型の研究ということで、この成果を大いに期待しておるわけでございます。  設置を義務づけたらどうかという御提案でございますけれども、技術の開発が当然先行しなければならぬわけでございますけれども、実は私ども、これは厚生省と意見ももちろん一致しておるわけでございますけれども、現在の亜硫酸ガスについてのK値規制、これはK=q/H2と俗にいわれておる数式でございますけれども、qを小さくすれば亜硫酸ガス濃度は下がるわけでございまして、厚生大臣御指摘のとおり、今後はどんどんと過密地帯中心に、規制値であるKの値を切り下げて規制を強化してまいりますので、当然にqの値を小さくするのに役立つ排煙脱硫というものは、業界としても当然に大きなプッシュを受けておる。われわれとしては、技術開発促進をしながらK値も切り下げて、そして行政指導によって電力などは用地も確保さしておいて、実際上実現の方向へぜひ持っていきたいと真剣に考えておるわけでございます。
  313. 米原昶

    ○米原委員 時間がもうわずかしかないが、いままでも、いまおっしゃったようなことをおっしゃってきたわけです。要するに技術の開発がおくれているから、しかし、一方では——さっきこれ公然と言っていますが、一方では日本でつくった排煙脱硫の装置がどんどん外国に売られている。これはどうしても義務づける方向を出していかないと、ただ進める進めるといったんじゃ、企業家は採算ということを考えますから、これはずいぶん金がかかる。ですから、結局なかなかその装置をつけないと思うのです。どうしても一定のところで、義務づけの方向をはっきり出さなくちゃいけない。この点がまだやられてないのは非常に残念なんです。  それと、もう一つ、一点だけ聞いておきますが、ばい煙排出者による記録ということが今度出ておりますが、記録する。しかし実際は、記録というのはずいぶんでたらめ書いている事実があったということがいろいろなところで、尼崎の場合でもわかっております。私は、記録じゃだめだと思っております。報告させる。そして虚偽の報告をやった場合には、当然処罰されるくらいきびしくしなければいけない。ほんとうを言いますと、大量の亜硫酸ガスを発生するようなそういう施設に対しては、自動測定器をつけさせて自動的に報告される。これはもうすでに一部の地域でもやられていることを、私、この前この公害委員会で関西方面に見に行ったときに知りました。新しい工場にはすでに自動測定器がつけられておりますが、あれはどうしても義務的に全工場につけさせないと、いまのような、記録して、それから報告も今度の法案じゃ義務づけられていないけれども、やはりこれではほんとうの状態というものは政府のほうにも全然つかめませんよ。企業というものは、そんなものじゃないと思うのです。正確に、自動的に客観的な事実が出る。それがセンターのほうにキャッチされる、そこで指示を与える、こういうしかけにしておかなければ、結局私は大気汚染の問題は、このままの形では解決つかないんじゃないかという感を深くするのであります。この点について厚生大臣及び総務長官の見解を聞きたいと思います。
  314. 内田常雄

    ○内田国務大臣 測定装置をつけ、かつそれを記録する義務を与えてあるわけでございますが、記録しただけでは、これは立ち入り検査でもしました際に、当該官吏がそれを見るということなんでしょうが、幸い米原さん、今度の法律の中には、都道府県知事は企業に対して立ち入り検査なんか、報告を求めることができるという規定がございます。そこで、それは個別的報告を求める規定でございますが、これは全般的な報告を求めることを排除している規定ではございませんので、あの規定によりまして、私は都道府県知事から報告を求めるように、印刷したものを管内のばい煙排出設備届け出企業に全部出せ、報告しろ、こういうことでやっていただくことができる。そうすれば常時報告を受けまして、それに対する対策もできるのではないかと思いますが、いずれにいたしましても、やはり公害を排出するのは企業でございますから、企業責任の強化というような頭を私どもは決して捨てておりません。また、企業のほうも、そうしないと人も集まらないし、たびたびお話が出ます川崎の某大工場が海のほうの地先に移転しようと思いましても、御承知のように、なかなか条件に応じなければ移転も認められないというようなことでもございますので、企業としても私はそういう姿勢にならざるを得ないような、そういう御時世にもなっておるとも思いますので、それに対応して、私どももさらに前向きの、法律に書いてあるなしにかかわらず、くふうをいたすように進めてまいりたいと考えます。
  315. 山中貞則

    ○山中国務大臣 確かにこの問題は、記録をしてあることについて、ことに記録はしてあっても虚偽の記録であるかどうか問題だと思うんですね。その点がいまおっしゃった点において、若干詰めが足りない点があると思うのですが、たとえば、この工場は少しおかしいと思った場合には、油の量等から計算をすると、虚偽の記録であるかどうかはわかる手段があるそうであります。そういう補完の手段を講ずる必要があろうかと考えます。
  316. 加藤清二

    加藤委員長 米原拠君に申し上げます。あなたの持ち時間が超過しました。結論にしてください。
  317. 米原昶

    ○米原委員 時間がありませんから、もうちょっと詰めたかったのですが、遺憾ながらこれでやめますが、虚偽の記録という問題は、いま言いました川崎の例の場合にも、日本鋼管がたとえばどのくらい重油を入れているかというところ自体がもうあやしいんですね。だから、原油だけで調べてもなかなかつかめないという問題があります。ですから、ほんとうに厳重に規制しないと、ことに大気汚染の場合はもう大問題になっております。これだけでは、いままでのようなやり方では不十分であるということを指摘して、私の質問を終わります。
  318. 加藤清二

    加藤委員長 次回は、明十日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後七時二十分散会