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1970-12-08 第64回国会 衆議院 運輸委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月八日(火曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 福井  勇君    理事 宇田 國榮君 理事 加藤 六月君    理事 徳安 實藏君 理事 箕輪  登君    理事 内藤 良平君 理事 松本 忠助君    理事 和田 春生君       佐藤 孝行君    佐藤 守良君       菅波  茂君    砂田 重民君       關谷 勝利君    谷垣 專一君       長谷川 峻君    古屋  亨君       井野 正揮君    大原  亨君       金丸 徳重君    斉藤 正男君       米田 東吾君    田中 昭二君       宮井 泰良君    小宮 武喜君       田代 文久君  出席国務大臣        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君  出席政府委員         水産庁長官   大和田啓気君         運輸大臣官房長 高林 康一君         運輸大臣官房審         議官      見坊 力男君         運輸省海運局長 鈴木 珊吉君         運輸省船舶局長 田坂 鋭一君         運輸省港湾局長 栗栖 義明君         海上保安庁長官 手塚 良成君         気象庁長官   吉武 素二君         自治大臣官房長 岸   昌君  委員外出席者         厚生省環境衛生         局公害部環境整         備課長     榊  孝悌君         水産庁次長   藤村 弘毅君         運輸大臣官房参         事官      原田昇左右君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ————————————— 委員の異動 十二月八日  辞任         補欠選任   増田甲子七君     佐藤 守良君   楯 兼次郎君     大原  亨君   渡辺 武三君     小宮 武喜君 同日  辞任         補欠選任   佐藤 守良君     増田甲子七君   大原  亨君     楯 兼次郎君   小宮 武喜君     渡辺 武三君     ————————————— 十二月七日  残存機雷完全撤去による北九州港湾建設作業の  安全確保等に関する請願田代文久紹介)(  第二号)  気象業務整備拡充等に関する請願佐藤観樹  君紹介)(第二五九号)  東北、北海道新幹線の最優先着工に関する請願  (鈴木善幸紹介)(第二六八号)  東京葛飾区内における踏切道立体交差促進  に関する請願小川新一郎紹介)(第二七〇  号)  同(北側義一紹介)(第二七一号)  同(小濱新次紹介)(第二七二号)  同(田中昭二紹介)(第二七三号)  同(竹入義勝君紹介)(第二七四号)  同(松本忠助紹介)(第二七五号)  同(宮井泰良紹介)(第二七六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  海洋汚染防止法案内閣提出第一八号)      ————◇—————
  2. 福井勇

    福井委員長 これより会議を開きます。  海洋汚染防止法案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。佐藤守良君。
  3. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 私は、冒頭質問するにあたりまして、この委員会に十時二十七分に入ったわけでございます。大臣は何かと御多忙であるかと思いますけれども関係当局方々が十分おくれるというのは、たいへんこの法案に対します真剣さが足りないと思うのでございます。特に御配慮をお願いいたしまして、質問に入ります。  私は、この臨時国会に提出されました海洋汚染防止法案につきまして、いろいろ質問したいことがあるわけでございますが、四項目、一つは、国内法化をなぜ急ぐかということ、次は、廃油処理施設整備の問題、その次は、廃棄物処理法案本案との関係防除体制、それから、時間が許しますならば、実はこの廃油処理施設等をいたしました場合に、特に大型タンカーは別としまして、小型内航タンカーにつきまして、その経費、設備等の問題につきまして、時間がありますならば、運輸大臣以下関係当局に御質問したいと思っております。また関連といたしまして、現在瀬戸内海公害主役になっております赤潮の問題につきまして、その原因対策につきまして、水産庁長官質問をしたいと考えております。  私に与えられました時間は三十分でございますゆえ、質問答弁の時間につきまして、海洋汚染防止法案につきまして約二十分間、赤潮の問題は約十分間私は予定しておりますので、私もできるだけ質問を簡単にいたしますゆえ、答弁をぜひ御協力をお願いいたす次第でございます。  四十四年の十月、IMCOの総会におきまして採択されました一九五四年の油による海水汚濁防止のための国際条約改正条約批准した国は、アイスランド一国のみと聞いております。また、四十四年の十一月にIMCO主催海事法会議で採択されました油濁災害に対する公海における措置に関する国際条約についても、まだ批准した国はないと聞いていますが、わが国もまだ批准なんか国会に提案されていないのに、なぜ国内法だけ整備されるのか。実は批准案国会を通過してからでもおそくはないと思うのですが、この点につきましての大臣の御所見いかがか、伺います。
  4. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 御承知のように、日本周囲海をめぐらしておる海洋国家でございます。将来日本海洋産業というものは、各国に先がけてやるべき性質のものと考えております。そういうような意味からして、他国に率先してこの法案を出し、かつまた条約が調印をいたしておりますからして、これを一日も早く批准することによって、世界に先がけてこの条約成立を期待したいと考えておるわけであります。  したがって、この条約批准するためには、国内法整備しなければ条約批准はできません。そういう意味において、国内法整備を前提として、今回の臨時国会に提案をいたした次第であります。
  5. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 また、その効果についてでございますが、実は国際条約もまだ発効してない段階で、わが国だけが海洋汚染防止を強化しまして、特に廃棄物については、国際条約もないのに強い規制を行なっても、海洋全体から見れば効果がないのじゃないかと思うのですが、この点についての大臣の御所見を承りたいと思います。
  6. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 国際条約は油の汚濁の問題だけを求めておりまして、日本国内法は、いま御審議願っておるように、廃棄物全般に対しましても規制を行なう、こういう意味においては、条約上との関係においては、国際的にはその効果は持っておりません。けれどもアメリカにおきましても非常に関心を抱いております。おそらく、アメリカで来年立法せられるものは、油だけではなく、やはり廃棄物をも含めて公海をきれいにしようという考え方に基づいて立法されると聞いております。  こういう意味におきまして、いわゆる海洋国家である日本は、ほかの国に率先をして、こういうような国際的な新しい立法並びに条約成立を促す、そういう意味において非常な意味がある、かように考えておる次第であります。
  7. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 実は私は、大臣答弁を聞きまして、たいへんうれしく存ずる次第でございます。実はいままでわが国におきましては、国際的に批准されましたものが国内批准されないというケースが多く、また批准されても、非常に時間がかかったというような感じがするわけでございます。また、国際間におきまして、日本御存じのように、エコノミックアニマルとか、ことに最近においてはマリーンダンピングということばがありまして、国際的な信用を落としておりますが、そういうような大臣姿勢が、私は国際信用を回復する道の一つではないかと思いまして、大臣のそのような姿勢に、たいへん敬意を表する次第でございます。  次に、廃油処理施設の問題でございますが、港湾局長にお聞きいたします。  油の排出を、全海域投棄禁止原則とするような規制強化法律をつくるとすれば、廃油処理施設整備は、むしろ港湾管理者に義務づけすべきではないかと思うのでございます。また、義務づけしないとその実効があがりにくいと思うのでございますが、この点につきまして、港湾局長の御所見を承ります。
  8. 見坊力男

    ○見坊政府委員 法案の問題でございますので、私から御答弁申し上げます。  港湾管理者規定につきましては、この法律の中に、管理者への勧告ということが規定されております。港湾管理者と申しますのは、実質的には地方公共団体でございまして、港湾法の中にも、港務局業務といたしまして、「船舶廃油処理その他船舶に対する役務が、他の者によって適当且つ十分に提供されない場合において、これらの役務を提供する」ということが当然の業務として規定されておるわけでございます。さらに港湾法の四十八条では、重要港湾につきましては港湾計画を提出さして、運輸大臣がこれを審査するという規定がございますので、そういう点から、港湾管理者に対する措置は十分担保されているということで、このような勧告規定にいたしてあるわけでございます。
  9. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 四十八年の三月三十一日までには、船舶からの油の排出原則的に禁止されるようになっておりますが、廃油処理施設整備なくしてはこの義務づけも無意味になると思うのですが、それまでに施設整備は全国的に間に合うかどうか。実は私の聞いている範囲では、四十二年六月に、最初の改正前の案が通ったときに、いろいろ計画されたようでございますが、なかなか計画どおりにいっていないというようなことでございますので、全国的なその計画と、それからまた昭和四十八年度には大体汚水の量が二千四百トン前後になると思いますが、その二千四百トンを全部処理できるかどうかということにつきまして、ひとつ港湾局長の御所見をお聞きしたいわけでございます。
  10. 栗栖義明

    栗栖政府委員 ただいま御指摘ございましたように、現行法によりまして、昭和四十七年までに全国で三十四港、五十五カ所の廃油処理施設計画がしてございます。ただ、現在は百五十トン以上の油送船あるいは五百トン以上の一般船ということでございますが、本法案ができますと非常にきびしくなりますので、さらに検討を要する、再検討しなければいかぬというふうに考えてございます。なお、現在やっております、先ほど申し上げました三十四港、五十五カ所に対しまして、四十五年度末までに、二十二港、三十三カ所程度のものはできる予定になってございます。ただ、全面禁止になりますので、さらにこまかい場所あるいは小さな港に対する措置は必要になろうということで、再検討いたしたいと思っております。
  11. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 先ほど申しましたように、四十八年三月三十一日に施行されますので、全部の廃油処理できるような処理設備を、ひとつ十分間に合わせていただくように希望しておきます。  それからもう一つ、現在、昨日も御質問があったと思いますが、川崎におきまして廃油処理施設がつくられましたけれども、その利用が非常に不十分であるというようなことにつきまして、その最大の原因は何であるか、また今後どのように考えたらいいかということにつきまして、御所見を聞きたいと思います。
  12. 栗栖義明

    栗栖政府委員 御指摘ありましたように、現在でき上がった施設、稼働している施設利用状況は、必ずしも良好でございません。  その一つの理由といたしましては、現行法によりますと、施設整備された告示をしなければならない。これははなはだおくれて申しわけない次第でございますけれども、現在九港程度告示が済んでございますけれども川崎だけが昨年の十一月にやりまして、あと残りはつい一、二カ月前にやったという、やっと整備ができたという状況でございまして、そういう施設整備港の告示ができなかったという点も点あろうかと思います。  それからなお、従来多年の慣行でございますのでなかなか直らないというふうなこともございまして、施設のそこにわざわざ行って処理するのをおっくうがるといいますか、そういうふうな習慣がついてございませんので、そういう点は、今後廃油処理を厳重にやるのだという思想を徹底して、PRにつとめるということとかいろいろな措置を講じて、なるべく私ども利用していただきたいと思っております。
  13. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 わかりました。  それから次に、私は廃棄物海洋投棄の現況と、それから本案廃棄物処理法案との関係、特に、実はこの海洋汚染防止法案油等全面禁止をいたしましても、一般廃棄物あるいは産業廃棄物規制をしないと、なかなか実効があがりにくいのじゃないかと思いますので、この関連につきましてひとつ御所見をお聞きしたいと思うわけでございます。
  14. 見坊力男

    ○見坊政府委員 わが国におきましては、年間約二億一千五百万トン以上の各種の廃棄物発生されておるという状況でございますが、そのうち二千四百万トンほどが海洋に投棄されているような状況でございます。その海洋に処分されるおもなものは、屎尿であるとか、あるいはしゅんせつ土砂、汚泥、カーバイトかす、あるいは廃酸とか廃アルカリというようなものでございます。  そこで、廃棄物処理法との関係でございますが、廃棄物処理法は、生活環境の保全と公衆衛生の向上をはかるため、廃棄物を適正に処理するということを目的にいたしまして、その廃棄物の収集から処分までを一貫的に、一定基準に従って処理をするということを定めておるわけでございます。これに対しまして海洋汚染防止法は、海洋汚染防止という立場から、原則として船舶及び海洋施設から油または廃棄物排出することを禁止しておるわけであります。一定基準に合ったもののみ排出を認めるということでございます。  そこで、廃棄物処理法本法との調整をはかる必要があるわけでありますが、この法律におきましてその橋渡しをしてありますが、廃棄物処理法によって海洋投入処分することができるものとして定められた廃棄物につきましては、その排出海域排出方法本法による政令によってその基準を定めるということにいたしておるわけでございます。  それで、何ゆえ廃棄物処理法基準によらないで本法基準によったかということは、海洋に投棄する場合に、海洋の海象とか、潮流とか、あるいは地形というような海洋特殊の条件がございますので、そういうものを十分勘案して、政令によって基準をきめたいということでございます。
  15. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 特にこの問題は、御存じのように、並行しないとなかなか実効があがりにくいと思う次第でございます。厚生省その他の関係省庁とよく打ち合わせされまして、財源的問題もあるかと思いますが、実効があがるように御推進方をお願いしたいと思う次第でございます。  大量に油が排出された場合の、関係者並び海上保安庁長官のとるべき措置規定されておりますが、むしろ平生から海上保安庁といたしましては、石油業者海運業者等々と一体的の防除体制を組織化しておくほうが、有事の際に効果的であると思うのですが、この点につきまして、海上保安庁長官はどのようにお考えでしょうか。
  16. 手塚良成

    手塚政府委員 先般の川崎汽船のていむず丸爆発事件等の実際の被害に徴しましても、御指摘のような体制が非常に重要であると考えております。私どもはそういう見地から、かねがねそういう協議会方式のものを、必要な場所に各地で編成するようにいたしております。  メンバーとしましては、消防機関あるいは地方公共団体民間関係者、その民間関係者の中には、その港々の特有な企業の関係深い方々、そういうのが一体となりまして、そういった方々大型タンカー事故対策連絡協議会というものを編成をしております。そしてこの協議会の中では、オイルフェンスあるいは油除去剤、こういったものの資材の備蓄、整備事故発生した場合の協力体制のやり方、そういったものをきめるようにいたしております。現に、主として編成を強化しておりますのは、第三管区本部東京湾を持っております管区本部、それから瀬戸内海方面臨海工業地帯の多い六管、あるいは大阪湾近辺の五管、四管、そのほか九州、北海道、私どもの持っております十管区本部において、それぞれ数あるいは組織の内容は若干ずつ違いますけれども、港を中心にしてそういうものを編成し、今後なおこれを強化いたしていきたい、かように考えております。
  17. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 いま長官の話を聞きまして、たいへん私はその備えを固めているのを喜んでおるわけです。とにかくこういう事故が起こることは望ましくないわけでございますが、事故の起きた場合の被害最小限度に食いとめるというようなことにつきまして、平素特に訓練強化をなお一そう要望しておく次第でございます。  実は私、いま十八分たったわけでございますので、私の要望等を申し上げて、この法案に対する所見を述べて私の結論を出したいと思っておる次第でございます。  実は、この法案大臣が、たいへん世界に誇り得る法案だと言っておられますが、全く私もそう思っておるわけでございます。   〔委員長退席加藤(六)委員長代理着席〕 また、海洋資源開発立場からいきまして、海というものは、いろいろな学説があるかと思いますが、地上生物の母というのが海と、いろいろな学説が立証しております。そういう意味におきまして、海の死というものは生物の死につながるというような私は理解をしているわけです。その意味におきまして、大臣がこのような英断をされたことにつきまして、私ほんとうに心から敬意を表する次第でございます。  実は、私事を申して恐縮ですが、私、広島県の尾道の前の向島という島が私の郷里でございますが、実は私の小さいころは、どこへ行っても泳げたというところでございますが、いま島で泳げないので、島の中の学校にプールがあるというのがいまの姿でございます。先般、この海洋汚染防止法案につきまして選挙区で話をいたしましたときに、実はこういう素朴な質問が出たわけです。そうすると先生、何ですか、また海で泳げるようになりますか、海が子供たちの遊び場になりますねというような質問が、特におかあさん方から出たわけです。大臣が七つの海をきれいにするとおっしゃっておりますが、私はたいへんけっこうだと思いますが、その前に、瀬戸内海日本近海の海をきれいにしていただきたい、そのような努力をぜひお願いいたしまして、大臣への私の質問を終わらしていただきます。  次は、水産庁次長お見えになっておりますが、瀬戸内海公害主役となっております、本年六月中旬から発生いたしました赤潮について、時間の関係で簡単に申します。  現在、原因調査中と聞いておりますが、その結論は出ましたでしょうか。あるいはまだ出てなければ、いつごろ出る予定でしょうかということが一点。また、先年山口県の徳山辺での赤潮につき、その調査はどうなっておるでしょうかということを、時間の関係上、その赤潮原因自然現象だけか、あるいは自然現象プラス人為的要素、すなわち、たとえば工場排水とか都市排水とか、あるいは屎尿投棄等が影響しているかどうかという点、特に自然条件だけか、自然条件プラス人為的要素が入っているかどうかということを中心に、ひとつ報告してもらいたいと思うわけでございます。
  18. 藤村弘毅

    藤村説明員 赤潮原因調査につきましては、昭和四十一年から三カ年間、九大の花岡教授主任研究官といたしまして、赤潮発生機構調査、それから四十二年から三年間、水産大学校の松井教授主任研究官といたしまして、瀬戸内海赤潮についての研究をいたしております。特に本年の春から夏にかけましての赤潮につきましては、広島にございます南西海水産研究所中心にいたしまして研究をいたしております。  現在までわかっておりますのは、赤潮がどういう状態で、どういう作用によって魚介類に影響を及ぼすかということが大体わかっておりますことと、赤潮がなぜ起こるのかという原因につきましては、まだおのおのの問題につきまして、正確なところは究明できておりません。  先生の御指摘のありました、人為的なものか天然現象かという点につきましては、そのどちらも関係があるものであろうというふうには考えられておりまして、原因の一番大きなものは、海洋栄養が非常に豊富になってきているところに大量の降雨があったような場合に、河川から特にたくさんの栄養塩類が流入されて、そこに滞留しました海水に何らかの作用、いまのところある種のビタミンあるいは燐というようなものは考えられておりますけれども、そういうものが起爆剤のようなものになりまして、赤潮発生するのではなかろうかというところまでわかっておりますが、これが人為的に発生したとかというような点までは究明されておりません。  そこで、いまのところは、天然現象が大きな原因ではないかというふうに考えられておりますが、遠因といたしましては、特に内海、瀬戸内海、伊勢湾、三河湾等が過剰な栄養になっているということが遠因になっていると思います。
  19. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 いまの次長さんの話の中に、非常に表現がぼかされておるわけです。自然的条件人為的要素関係があるようなにおいがされつつ、遠因としてということばを使われておりますが、私はいまの次長さんのお答えで、当然人為的要素が入っておると思うわけです。というのは、プランクトンというのは、御承知のとおり植物性動物性がございますが、この植物性プランクトンの動向が、結局漁民に魚の大漁と不漁を予測させることは御存じのとおりですね。少なくとも植物性プランクトン動物性プランクトンが、適当な規模で生存しているということで魚は生きておるわけです。プランクトンは、御存じのように酸素製造者で、葉緑素みたいなものですから、これを食って——プランクトンの育ち方は、食いもの環境なんです。その食いものは、御存じのように燐と珪素が二つの柱をなしておるわけです。しかもその環境は、結局植物性プランクトンが適当に動物性プランクトンあるいは魚に食われることによって、適当に生存しておると私は思うのでございますが、食いもの屎尿処理とか工場排水都市排水に大きく影響されると思うのですがどうでしょうか、この点については明確なるお答えをしてもらいたい。
  20. 藤村弘毅

    藤村説明員 ただいままでのところ、特に瀬戸内海赤潮につきましては、鞭藻類と申します原生動物のうちで、セラチュームとかオリノディスカスというようなものがおもになっておると思われますので、特に植物性動物性という、そういう規定はしておりませんけれども、それが発生しますのが、それの栄養塩類の窒素が一番大きな原因になっておるというふうに考えられますので、遠因といたしましては、海が栄養豊富になっているということでございますが、栄養豊富な海が全部赤潮になるというわけではございませんので、直ちにそれが人為的なものであるというわけには、説明がついておりません。
  21. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 そうすると、いま赤潮というのは全国的に広がっておるような感じがするわけですが、特に臨海工業地帯等に非常に赤潮発生が多くなってきておりますね。その原因は何とお考えになるでしょうか。
  22. 藤村弘毅

    藤村説明員 ただいま申し上げましたように、栄養が豊富になるということが赤潮遠因ともなると考えておりますので、栄養豊富なところはノリ等の養殖も適するようになりますとともに、赤潮原因にもなりやすいということでございます。
  23. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 次長さんの話を聞いておりますと、少なくともいまのところ、どうも人為的要素が加わっておると思うけれども、まだ具体的な結論は出ず、認めにくいという感触が私はするわけです。個人的な話をすれば、おそらく私の意見に同感すると思われるけれども、お立場上言えないと思うのですが、どうしても自然条件プラス人為的要素が入っているという見方が私は正しいんじゃないかと思うんです、程度の差はありますが。そうしませんと、いままでは少なくともそういうことがなかったわけですよ。新しい現象として出てきたわけです。しかも、いわゆる臨海工業地帯とか、少なくとも急激に伸びている都市の付近海域に多くなっているという事実が、このことを裏づけていると思うのです。ですから自然条件をこわしている。それは食いもの環境であるというような感じがするわけです。  そこで、実は私は、ここで次長さんとその問題で押し問答をするというのではなくて、実はこのためにたいへん瀬戸内海の漁業者が困っているわけです。広島の場合をちょっと申し上げますと、現在漁民が、広島だけで言いますと、漁業従事者が四千六百戸ございます。それから養殖関係が約二千戸あると思います。全部で六千戸の漁民がおるわけでございますが、その中で四千六百戸の漁民の収入が、四十四年度で五十一億でございます。それから養殖業者の収入が、約九十億ということになるわけですが、そうすると、漁業従事者の一戸当たりの平均収入が百十万円なんです。今度の赤潮によりまして、平均約四十日間出漁できないわけです。この損害は、いろんな見方がありますけれども、大体私は一億七、八千万だと思っておりますが、一戸当たり十二、三万円という被害をこうむっておるわけです。この百十万円というのは収入でございます。そのうちから、油代とかえさ代とかあるいは船の償却を入れますと、約四割というのがとられるわけです。そこで、百十万円から約四割を引きますと、年間収入がよくいって約六十万前後になるわけです。そうすると月に五万円です。しかも、特に漁業従事者というのは子供も多うございますし、それから老人をかかえております。そういうなことで、月五万円で平均五人家族だと思いますが、やっていけるかどうかということです。しかも、現在御存じのように、高校を出たような方が月に四、五万円をとっておるような状態です。しかもボーナスもない。しかも、国も何ら補助もめんどうも見ない。ただ漁業共済があるだけでございます。  そういうふうなことで、実はたいへん困っておるわけでございます。といって、いま次長さんがおっしゃるように、原因が出てというのでは、漁民は死んでしまうわけです。そしてまた、実はこれはいろいろな説があると思いますが、通説とすれば、来年も赤潮発生するのではないかというように、私はいろいろな人から聞いておるわけです。で、私は特にそういうような現状認識をしていただきまして、もちろん自然的条件のみか、あるいは自然的条件プラス人為的要素が入っておるのかどうか、いろいろな要素があると思いますが、これを常識的に判断すれば、人為的要素が入っておると思うのです。  そういうような立場からすれば、現在の漁民対策を講じてもらいたい。こうした漁業者というのは、五万四千世帯あるわけです。これは広島県だけではありません。岡山県、山口県あるいは四国全部にこのような問題が起きてきておるわけです。  そういうような意味から、ひとつ応急的な対策と恒久的な対策をぜひ講じてもらいたいと思うわけでございますが、そのような意味からいきまして、現在次長さんが考えられております応急的対策と恒久的対策のお考えを、ひとつ聞かしていただきたいと思います。
  24. 藤村弘毅

    藤村説明員 恒久的対策としましては、その原因を究明するために、本年度から来年度にかけまして、相当強力な調査網を設けまして調査をいたしたいと思っております。  応急対策といたしましては、現在のところ人為的な要素があるかもしれませんけれども、だれが加害者というのもわかりません。そこで、自然現象というふうな見方で、漁業共済あるいは漁獲共済でこれを救済する以外に道がないので、これを促進するようにつとめております。
  25. 加藤六月

    加藤(六)委員長代理 時間が参りましたので、簡単に願います。
  26. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 赤潮につきましては、御存じのように苦潮とかあるいは腐れ潮とか、山陸海岸では厄水というのです。ほとんど天災とあきらめておるわけです。そこで、結局これは陸の干ばつと同じじゃないかと思うのです。陸の干ばつに対しては、農地に対してあるいは果樹園等に対して補助があるわけです。これに対しては何もないわけです。もちろんこれはいろいろな財源等の問題もあると思いますが、これはそういった意味におきまして、天災とも私は解されると思うのです。  実は、ほかにもいろいろと質問したいのですが、時間も来たようでございますゆえ、特にそういう点につきまして、水産庁の格段の漁民に対するあたたかい配慮をひとつお願いいたしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  27. 加藤六月

    加藤(六)委員長代理 米田東吾君。
  28. 米田東吾

    ○米田委員 私は、最初に基本的な問題二、三を大臣から御答弁いただきたいと思います。  この海洋汚染防止法が運輸省によって検討されまして、最終的に運輸省案がまとまり、政府案になり、本委員会に提案をされているわけでありますが、この過程を見ますと、これは新聞の報道でありますから私は確認しておりませんが、朝日新聞の報道によりますと、たいへん後退をしておる。その主たる理由は、石油業者に対する廃油処理施設の義務づけが、結局最終政府案の段階で削除された。これは多分に関係産業界やあるいは自民党の内部事情、こういうようなことで、この汚染防止法が第一のしり抜けになったという感じを与える報道になっておるわけでありますけれども、この関係につきまして、大臣からひとつはっきりさせていただきたいと思うのであります。特に、運輸省がこの海洋汚染という面で積極的に解決をするには、その根源である石油業者にある程度規制と義務づけが必要であるという判断をされて、原案というものがだんだんできてきたのであろうと思うのでありますけれども、それが結局は削除されて、船あるいは船員その他そういう関係の責任において汚染防止をさせるということで、大事なかなめが抜けておるわけでありまして、こういうことが、どういう経過でそうなったのか、ひとつこの委員会ではっきりさせていただきたいと思います。
  29. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 お話ではありましたが、運輸省の法案作成の段階におきましても、義務づけるという試案をつくったことはありません。したがって、この法案において石油業者に対して義務づける問題は、もちろんこれは検討途上においてはいろいろな点を検討いたしますから、そういう問題も出てまいりますが、事務当局の案の中においても、そのいわゆる義務づけの考え方は、その必要がないという見解に立って、運輸省の案は義務づけを除いております。  その理由は、石油業者におきましても、自主的に現在すでに設置をされておるし、将来ともにこれは設置をする方針を変えてはおりませんので、したがってその必要はない。港湾管理者が、不特定少数の船に対しての廃油処理業務、この問題は、御承知のように港湾の計画の場合におきましても計画書を出しますからして、したがってその中において処置ができる、あるいはまた今後そういう必要がある場所に対しては、運輸大臣はこれに対して計画の変更を求めることができる、こういうような港湾法その他港則法等の法律がありますので、したがって、特に義務づけなくてもよろしい。かつまた、政府としては廃油処理に関してはすでに計画を立て、順次これを実行しておりまして、現在の状態においても、これをまかなうのに必ずしも不足はしておらない、将来この法律が発効されるに際しては、廃油処理場を設置することは十分に可能である、こういう前提に立って義務づけをしておらないのであります。ましてや、産業界からの一言半句の、いわゆる申し入れもありませんので、その点は申し上げておきます。
  30. 米田東吾

    ○米田委員 新聞はきわめて敏感に、運輸省の法案作成の段階を見つめておるわけでありますけれども、業界からは一言半句の申し入れもないとおっしゃっているようでありますが、たとえば、いま私が御質問したような趣旨のことを、日本の船主協会等は逆にあなたのほうに申し入れておるはずであります。それはとにかくといたしまして、私は、石油業界があなたにそういうことについて要請されたことは当然ではないかと思うのでありますが、それはここで議論してもしかたがありませんけれども、ただ、運輸省の最初の検討の段階では、義務づけることが好ましい、努力をさせる——いずれにしても、石油業界あるいは事業者の企業責任というものを、この法案の中にはやはり明確にさせておくという、そういう立場があったと思うのです。ところが、この法案では、少なくともそういう関係は削除されている。いま別の委員会で議論されております廃棄物処理法案、この第九条には、その産業が出す廃棄物処理については、自前でやれという原則が確立されておるわけであります。そういうことからいきましても、石油あるいは油の公害というものについては、その根源である事業体あるいは企業の責任というものをある程度明確にしておかないと、汚染防止といえども実効があがってこないのではないか、私はこういうふうに思うのでありますが、重ねて見解をお聞きします。
  31. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 この法律は、とにかく廃油については、領海はもちろんのこと、公海に至るまで捨ててはいけないという禁止規定であります。したがって、実効をあげるあげないよりも、法律をもし無視して廃棄することがあれば、これは処罰の対象になる。したがって、それに対する処理能力が十分かどうかというところに問題があるのでありまして、義務づける義務づけないの問題ではなくして、この法律は、一切捨てちゃいかぬというのですから、これは当然どこか廃油処理場で処理せざるを得ないのであります。のみならず、御承知のようにパイプラインの計画が進められております。したがって、いまおっしゃるような石油製造業者といいますか、石油業者、こういうものにつきましても、現在の地点に設置するのがいいのか。シーバースは石油業者のところからかなり離れたところで、いわゆる油をパイプラインで流すことになります。したがって、将来の態様の変化等もありますので、いまこれをここにつけるべきとかつけないとかいう問題も、別の観点から検討せざるを得ないことになります。この法律によれば、もう捨てることはできないのですから、自分のものに対してはどう処理するか、これは当然やらなければならぬし、かつまた勧告にようて十分指導し得るという確信を持っておりますから、その点においては御心配はない、かように考えております。
  32. 米田東吾

    ○米田委員 それでは次の問題に入ります。  もう一つ、基本的な問題でございますが、この海洋汚染防止法の目的でございます。これは主として第二条に明記をされておりますけれども、私は率直に言って不十分である。特にこの法案の目的に、海洋生物資源の保護とかあるいは漁業環境の保全、こういう大事な条件というものをはっきりうたって、そしていま現実に海洋汚染によって被害をこうむっておる沿岸漁民あるいは養殖漁民、その他一般市民の健康を守り、かつそうしたものに対する被害をなくす積極的な意義というものを、この海洋汚染防止法に当然求めておると私は思うのでありますが、それがこの目的の中にはないのであります。   〔加藤(六)委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、この面ではきわめて消極的な法案ではないか、そういうふうに思うのでありますけれども、この関係については、運輸省としては、それは別の法律でやるんだというお答えが出てくるかもしれません。現実に起きておる海洋汚濁あるいは汚染によってこうむっているこうした海洋水産物資源の破滅あるいは漁業環境の破壊、そして漁民の被害、こういうものについては、この法案とあわせて、当然何らかの解決のめどをつけておかなければならないものではないか、私はこう思っておるのでありますけれども、この点が抜けている。あるいはこれは最初から考えてなかったのかどうかわかりませんけれども、そのことをお聞かせいただきたい。
  33. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 お話の点でありますが、御承知のようにこの法律ではその点までは規定しておりません。  ただ、こういうことはあり得ると思うのです。この法律が通りましても、いわゆる監視網の目をくぐって、わからぬうちに捨てる場合があり得るのじゃないか。つかまえれば法律の対象になります。しかし、どろぼうだってなかなかつかまらぬ場合がたくさんありますから、そういう場合があったときに、従来の汚濁されたものとは別個に、新たに汚濁されるわけですね。そういう場合において、廃棄物によって漁網なり漁船が損害をこうむるという場合が出てくるのではないかと思います。  こういう場合になりますと、これはもちろんこの法律の問題外ではありますけれども、実際問題としては、常識としてそういうものをどういうような形で救済するかという問題はあると思います。この問題につきましては、漁業組合の共済制度を活用することも必要でありましょうし、あるいは国が何らかの形でこれに対しての助成策を考える。こういう問題はこの法律とは別個で、こっちは防止するという法律でありますから、汚染された事実をどうするかということは、別個の法律なり別個の制度によってこれを救済していく以外に道はないと思っております。
  34. 米田東吾

    ○米田委員 いまの問題につきまして、水産庁の見解はどうでございますか。別個の法律で解決できますか。それからそういうことが用意されておりますか。いま海洋汚染からくる沿岸漁民の被害はたいへんなものなんです。あなたのほうはよく承知しておるはずですね。
  35. 藤村弘毅

    藤村説明員 海洋環境の保全ということに、一部漁業資源の保全も含まれていると思いますが、具体的な個々の場合につきましては、本国会ではございませんが、次期の国会に、私ども水産資源開発促進法とでもいうべき法律をお願いしたいということを考えております。その中では、海洋環境の保全、特に漁業資源の保全をうたいたいというふうに考えております。
  36. 米田東吾

    ○米田委員 ちょっと水産庁、いませっかくそういう答弁をもらいましたから、もう一回ここで聞いておきます。いまあなたは、まだ確定しておらないようでありますが、法律の名前をおっしゃいましたけれども、それには現実に起きている漁民の補償問題等についても、解決策は載っておるのですか。そういう法案になるように考えておられるのですか。
  37. 藤村弘毅

    藤村説明員 具体的な個々の補償問題についてまでは、その法律には、現在のところは検討いたしておりません。
  38. 米田東吾

    ○米田委員 いずれあとでもう少し具体的に水産庁の御見解を聞きたいと思います。  基本的な問題としていま大臣から御答弁をいただきましたが、私もやはり、海洋の汚染を防止しなければならないという趣旨は、少なくとも海洋資源といわれる水産物資源あるいは地下資源、それから海水そのものを含めた海洋資源、こういうものの環境整備し、保全をするということでなければならぬと思うのでありますが、そういう立場からいきますと、現実には海洋の汚染によって、海洋資源といわれる水産物資源あるいはそれに基づく漁業関係というものは悪化しているわけですね。こういうものについては、それは別の法律で解決策を考えればいいのだということにはならないのではないか、私はそういうふうに思うのであります。この点については、これは単に農林省が考えればよろしいということではないと思うし、海洋の汚染そのものを扱っておる運輸省において、こういう面についてはもっと配慮があってしかるべきじゃないかと私は思うのでありますけれども、再度御答弁を願います。
  39. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 漁業の問題から見ますと、いずれかといえば魚に対して危険を及ぼす状態のことをおっしゃると思います。あるいはまた漁獲をする上における危険な状態、その二つがあると思います。魚に及ぼす影響等は、これは油の問題もありますけれども、陸上からの排出をいかに規制するかという問題が、まず主たる問題になると思いますから、この法律からどうしても離れざるを得ない。問題は投棄物によって、油なりもしくは廃棄物の投棄等によって現実にどういう障害を受けるか、こういう問題については、この法律はこれから先の問題を考え規定しております。規実によごれている問題をどうするかということは、現行法律によって処理する以外に道がない。のみならず将来、ただいま水産庁からお話があったように、それらの資源保護というたてまえで新たな立法をするか、あるいは救済制度としてそういうような制度を考えるか、こういう問題が別個に起きてまいると思います。それらは前向きに、運輸省もこれらに全然関係がないわけではありませんから、水産庁、農林省等とも十分協力をしながら進めていきたい、かように考えております。
  40. 米田東吾

    ○米田委員 次に、もう一点大臣にお聞きをいたしたいのですが、この海洋汚染防止法は、これからの海洋汚染を防止する目的と、現実に度を越えている海洋汚染あるいは汚濁をもとへ戻すという緊急の目的も、この法律の意図というものには含まれておると思うのです。提案理由の説明にも、たしか緊急に手を打たなければならぬという趣旨の説明があったのも、私はそのことを言っているのだろうと思うのです。そういうことを考えてみますと、いま海洋汚染で緊急に手を打たなければならないところはどこかといえば、私はそれは特定の汚染港、すなわち、まあ名前をあげれば京浜であるとか、あるいは名古屋港だとか、あるいは田子の浦だとか、あるいは阪神だとか、九州の洞海湾、北九州港、こういうところじゃないかと私は思うのであります。緊急に何らかの解決策を政治的にもとっていかなければならないと思われるそういう汚染港に対して、あるいは汚染海洋に対して、この法律はどういう意味を一体もたらすのか。この法律成立適用されましても、私は、たとえば水質汚濁防止だとかいろいろな廃棄物処理だとか、総体的に法律作用いたしまして、ある程度の次善の対策になるということはわかりますけれども、この海洋汚染防止法関係だけを見ますと、何にも当面の緊急策としては手がない。  したがって、私は、こういうところについては、この法律の特別規定を設けるなり、あるいは緊急特別措置の単独立法を考えるなり、いずれにしても、こういう死の海となっておる汚染港の対策については、別途考えなければならないのではないかと実は思うのであります。こういう点については、大臣はどのようにお考えでございますか。
  41. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 ただいまおっしゃるように、この法律は、将来の防止考えていくという目的が主たる目的であります。そこで、運輸省あるいは農林省なりあるいは経済企画庁等で、十分従来とも相談をいたしてまいっておりまして、公害防除事業として、いまおっしゃるような問題、それにつきましては、昭和四十五年度の予算におきましても、運輸省は、いわゆる海底の土質の調査、カドミウムその他の有害物質がどの程度、全国の重要港四十四港、特に洞海湾は、特別に二千万円の調査費をかけておる。それから経済企画庁におきましては八港、それ以外に北海道開発庁におきましては四港、合わせまして三千五百万円の調査費を計上いたしまして、それに従って、これらは調査の結果によっては、直ちに防除に入らなければならぬ。ただ、おっしゃったような田子の浦の問題等につきましては、すでに御承知のように、地方公共団体と国が協力しまして、いま防除事業を行なっておるわけであります。  したがって、そういう緊急防除事業というものは、この法律外の法律でやっていける。その方針で、今後とも積極的に、沿海の泥海といいますか、悪い海を正常化することは、政府としても緊急の措置としてやっていく方針であります。
  42. 米田東吾

    ○米田委員 大臣の御答弁をいただきましたが、その別途考えるという、緊急に対処していくということの実態というものが実はまだつかめませんので、私、不安を感じておるわけでございますけれども、この問題で、やはり法律的にも一番明確にして汚染防止という面で対処をしてもらわなければならないのは、運輸大臣はもちろんでありますが、直接的には私は港湾管理者じゃないかと思う。港湾管理者は、港則法やあるいは港湾法等によって、いろいろこの面についての責任はあると思いますけれども、新しくいま公害問題として取り上げられて、しかも、海洋汚染防止法という立法措置をしなければならないという、この事態における段階での港湾管理者の汚染防止という面についての責任、この面は、この法案全体を通しましてもきわめてあいまいであり、不明確で、弱いと私は思うのであります。ほとんど、これは運輸大臣が相談したときには意見を言ってもらう、あるいは何か意見があったら建議をしてもらうという程度でありまして、やはり全体としては、汚染の最もひどいと思われる港域あるいは沿岸、こういうようなものについては、地方自治体はもちろんでありますが、港湾管理者というものをもう少し強く考えて、この汚染防止という面に積極的に参加をしてもらうという法律的な要素というものを考えていいのじゃないかと、実は、私は思うのであります。  この面について、一番苦労しておられる港湾管理者の側の意見を実は聞きたいわけでありますけれども、これはきょう御出席いただいておりませんので、せめて自治省の関係の方から、こういう面についての御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  43. 岸昌

    ○岸政府委員 ただいま、港湾管理者なり地方自治体の公害防止に対する責任を強調するような御質問をいただいたわけでございますが、基本的には私ども同感でございます。  ただ、この海洋の汚染防止につきましては、ただいま御指摘のありました条文の権限は、単に意見を述べるという程度になっておりますが、先ほどの御質問にもございましたように、水質汚濁防止法がこうした水域全般に適用になっておりまして、これにつきましては、都道府県が国の基準よりもきびしい基準を定める、あるいは法律に定められておりません事項につきましては条例を制定することができる、かようなたてまえになっておりますので、そういう意味におきましては、地方団体の責任あるいは地方団体の権能というものも、海洋汚染防止につきまして、十分尊重されていると考えておる次第でございます。
  44. 米田東吾

    ○米田委員 いまの問題は、審議官法律作成の段階では、これらの関係についてはどういうふうに扱われて、港湾管理者あるいは自治省等とどういう意見調整をされておりますか、ちょっと聞かせていただきたいと思います。
  45. 見坊力男

    ○見坊政府委員 一般に公害の問題は、地域性の強い問題でございます。したがいまして、できるだけその地域の実情に合った施策をとりやすい立場にある行政機関にゆだねることが、そういう方向が望ましいわけでございます。しかし、この海洋汚染防止法を制定する際に、われわれがいろいろ考えましたのは、船舶は非常に広域的に移動する、したがって、むしろ広域的に監視をする必要があろう。したがいまして、個々の管理者規制では十分目的が達成できない。しかもまた、現実の問題といたしまして、機動力を備えた海上保安庁等と一体となって海洋汚染の防止をはかることが、最もふさわしいということで、こういう体制にいたしたわけでございます。  ただ、この法律案にもございますが、関係行政機関との協力規定が四十七条にございますが、こういう関係によりまして達せられるというふうに考えたわけでございます。
  46. 米田東吾

    ○米田委員 時間が非常に心配でございまして、言われることはわかりました。  次に、私は第三車の第十条以降の関係を主としてお聞きをいたしたいと思います。  まず、船舶からの廃棄物関係でございますか、先ほどの御答弁でもちょっと私、気になったのでありますけれども、この法律で禁止しているのは、一切船から外へ捨ててはいかぬということを禁止してきめておるのであって、したがって、廃棄物処理ということではない、こういう趣旨の大臣の御答弁が、先ほどの方の質問にあったように私は思うのであります。しかし、私はちょっとこれは納得できない。船から外へ捨てるということは、これはもう明らかに処理ですよ、いまの段階では。捨てたものを海で拾って再処理するような、そういう何ものもないのでありますから。そうしてそれは全部沿岸に流れてきて、漁民の漁場を荒らしたり、海洋を汚染させたりするわけなんでありますから、これは一つのやはり廃棄物処理だ、私はそういうふうに理解をして、この法律規定というものを考えなければいかぬのじゃないかと実は思うのであります。  そこで実は、通産省の諮問にこたえて産業廃棄物のあり方というものを中間報告されております。産業構造審議会産業公害部会産業廃棄物、小委員会、この中間報告が、これはことしの六月二十三日であります。この産業廃棄物一般廃棄物を含めまして廃棄物のあり方、処理のしかたというものについて報告をしているわけであります。これによりますと、たとえば、こういうふうに「廃棄物問題の基本的なとらえ方」として、「大量の廃棄物については、物理的、化学的あるいは生物学的に適切な処理をし、最終的には、資源化を図るか、大気、海洋、大地における物質の自然循環系にのせること——すなわち土地還元あるいは海洋還元の方式によって処分すること——が必要である」こういうことをはっきりと指摘しております。そうしてまた次のようにも書いておるわけであります。「物資の通常の自然の循環系にのせて合理的に処分するという見地からすると、例えば、海洋投棄については、海洋の保全を図る観点から、投葉物が海洋本来の物質に容易に還元され、しかも水産業、海運などに支障を及ぼさないように、また、投棄物が海底にたい積されて海底の底質を悪化させたりしないように充分配慮することが必要である。」ということを指摘しておるわけであります。  こういう観点からいきますと、この第十条の関係は、法律の本文として、「何人も、海域において、船舶から廃棄物排出してはならない。」とありますか、ただし書き以降の例外規定、いろいろ考えますと、これはこの報告の趣旨からいきましても、私は政府の公害対策姿勢に反するものではないかと思いますし、きわめてこれは弱いのではないか。ことに、海洋でありますからだれも見ておらない、だれもそれを監視することができない、確認することができない、そういう実態を考えますときに、私はこの第十条の関係というものは、きわめておそろしいと実は思うのであります。そういう関係で、運輸省のほうではどういう御意図か、もう一回はっきりお聞かせをいただきたい。
  47. 見坊力男

    ○見坊政府委員 第十条のこの規定は、廃棄物につきまして、船舶から何人もこれを排出してはならないという大原則をまずきめてございます。あと一項で、「ただし、次の各号の一に該当する廃棄物排出については、この限りでない。」一号、二号ございますが、これは油の場合と同様に、緊急やむを得ない場合、非常に緊急性、急迫したような場合に運用される規定でございます。第二項は、実際現実の問題としまして、海洋に投棄せざるを得ないという、これもやむを得ない場合でございます。  いずれにしましても、その運用は非常に厳格にやっていく方針でございます。政令においても、そのような考え方で基準が定められるという予定でございます。
  48. 米田東吾

    ○米田委員 せめて、第十条の二項の一、二ぐらいは、これを例外として認めるならば、港域ぐらいについては完全にこれは禁止するというような措置をなぜとれないか。そうして港域においては陸上処理、前処理処理の前の前処理というものをはっきり規定づける、義務づける、そういうふうにしなければならぬのじゃないか。いま列車のあの黄色い害、列車の黄害すら国鉄はまっ正面に取っ組んで、あれをなくしようとして取っ組んでいるわけですね。いまつくる法律が、こういう一号、二号ぐらいが解決ができないということは、これは政治家の責任になっちゃうと私は思う。  ですから、この一号、二号ぐらいは、せめて港域ぐらいの区域は、要するにこれは一切陸上処理、それから海洋の廃棄の場合でも、その船に事前の、報告にありますように前処理を義務づけるというような方法をとったらどうか、こういうことなんです。端的にお答えをいただきたい。
  49. 見坊力男

    ○見坊政府委員 第一項の場合は、これはどこの場所というのではなくて、一般的に緊急やむを得ない場合のことでございます。  二項の一号、二号とお話がございましたが、一号は、船舶内にある船員その他の日常生活に伴って生ずるもの、これは日常生活に伴う少量のものは、海洋を汚染するおそれが少ないものと考えたわけでございますが……(米田委員「少量じゃないでしょう、客船なんかは。」と呼ぶ)しかし、このカッコ内にございますように、「とう載人員の規模が政令で定める人員以上である」ようなものにつきましては、その船舶内で集められた屎尿、ごみ等につきましては、無制限に廃棄するということは、御指摘のように問題でございますので、その排出方法等については、一定の港内あるいは一定の沿岸海域では、排出規制しようという趣旨でございます。  それから公有水面埋立法の、第二号の関係でございますが、これも公有水面埋立法に基づく埋め立て地の中に土砂等を入れる場合、これは埋め立て用材は廃棄物ではございません。むしろ有用材でございます。埋め立てのために用いる……(米田委員「あなたが私の手持ち時間を使ってしまうんだ。やめてくれよ。委員長、だめだよ、そんなの。」と呼ぶ)したがいまして、ここでいうのはごみ等の廃棄物でございます。それについても、御指摘のような趣旨で規定を、政令基準をきめていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  50. 米田東吾

    ○米田委員 時間がなくなりまして、大事なところを聞けないわけで、端的にひとつ答えてくれませんか。  この海洋汚染防止法関係する船主それから荷主、港湾運送業者、これらは、いわゆる公害罪法の適用を受けますね。どうですか。いま法務委員会で審議しておる公害罪法……。
  51. 福井勇

    福井委員長 だれか答弁しますか。——相談してください。
  52. 米田東吾

    ○米田委員 相談していてください。私、次を資問しますから。
  53. 見坊力男

    ○見坊政府委員 公害罪法との関係は、検討いたしまして、後ほど答弁させていただきます。
  54. 米田東吾

    ○米田委員 それはやむを得ませんが、公害法案それから公害本法公害法案では企業の刑事責任、それから基本法関係では無過失の補償責任、これが実はあるわけでありますが、無過失の賠償責任は、この国会ではいま議論になっておりませんけれども、政府の答弁や担当大臣答弁から推定いたしますと、少なくとも次の国会くらいにはこれはかかる。そういうときにまたこの法案の手直しは、私はみっともないと思うのであります。したがって、関連するのでお聞きをしておるわけなんです。  要するに、この海洋の汚染あるいは汚濁によってこうむった被害について、漁民や一般被害者は、一つは、原因不明の場合でも、国あるいは地方自治体に対して損害賠償の請求は私は可能だと思う。そういう法律の道を開いておかなければならぬと思う。それから、原因がはっきりしている企業に対しては、補償責任を提起をしてそれを求める、こういうことも当然私は出てくると思うのであります。そういう関係をはっきりさせないと、海洋汚染防止法というものは、これは全く文章の文字の羅列だけになりまして実効はあがらぬ、私はそう思うのでありますけれども、そういう関係からお聞きをしているのです。
  55. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 無過失責任制の問題は、これは企業の問題でありますが、これらについては、過日の連合審査会でも法務大臣は、縦の問題として各省において検討されたいという話を承っておるわけであります。私は私見としては、この海洋汚染防止法の中ではこの問題はないと考えておりますけれども、なおこまかい点もありますからして、対策本部と十分に打ち合わせた上で、いずれこの問題については、最終的な方針を打ち出したいと考えております。
  56. 米田東吾

    ○米田委員 海上保安庁長官にお聞きしたいのでありますが、この法律の制定によりまして、あなたのほうでは監視義務あるいは汚染防止についての相当な責任、権限を持たれるようになると思うのでありますが、これはもう前の委員諸君が質問しております。  そこで、海上保安庁体制としては、この法律に対応するだけの体制はどのように考えておられるのですか。たとえば、内部機構をどうするとか、あるいは監視人員をどういうふうに配置をするとか、予算措置をどういうふうにやるとか、これは私は非常に大事な問題じゃないかと思いますので、ひとつ現在考えておられる、現在ある方針をはっきりお聞かせいただきたい。
  57. 手塚良成

    手塚政府委員 この法律の施行によりまして、まず第一段階、海上における公害の監視一般という義務が、責任が海上保安庁に出てまいりますのは、条文にありますとおりです。現在、私どものほうでもすでにいままでも一部やってまいりましたが、これに要します船艇あるいは航空機、こういったものを、私どもはこの新しい仕事に対応して機能の充実あるいは効率的な配置転換、そういったものによって、重点的な活用でこの取り締まりの効果をあげたいと思っております。将来には、なおそういったものの数的な整備あるいは装備の整備、そういったものを考えてまいりたい。  いま御指摘の組織、人員という問題につきましては、組織についても、従来のものは必ずしも十分で整備されたものとは思っておりません。特に人員におきます公害の専門家というのは、非常に足りないと思っております。先般、十月一日から公害班というようなものを地方の重要四管区に置きまして、これらにつきましての基礎知識の教育をいまやっております。さらには、本庁に将来はこういったものの元締めとしての課の組織なども整備をしていきたい。さらに、公害に対する一般知識などというのは、すべての保安官の基礎的な知識ということにしなければならないと思いますので、海上保安学校あるいは大学校といったところに公害に関する講座等を設定いたしまして、一般的な基礎知識をみんなに持たせるというようなこと、それらを総合いたしまして監視体制の充実をはかり、取り締まりの十全を期したい、かように思っております。
  58. 米田東吾

    ○米田委員 いまの段階でやむを得ない、いまの御答弁をお聞きしておくよりやむを得ないと思います。  ただ私、一つお願いをしておきますが、いままで海上保安庁の主たる仕事は、海上の遭難あるいは人命的な海上の保安ということにあったと思いますが、これからは公害中心にした海洋そのものの保安あるいは汚染防止、安全というものに、非常にウエートがかかっていくかと私は思うのです。民間企業でいえば、これは成長産業になる、いいことではありませんが。したがって、それだけの気がまえを、長官以下全職員に持っていただきまして、必要なものはどんどん大蔵省に要求するなりしまして、万全を期してもらいたい。  それから次に、気象庁からおいでをいただいておるのでありますが、あわせまして気象庁にも、この法律の制定によりまして、私のしろうとことばでありますが、公害気象というような分野がどんどん拡大されてくるんじゃないか。いま気象庁の関係からいきますと、公害気象という関係では、全体的に非常に、私は失礼でありますけれども、弱いんじゃないかと思いますし、ましてや、この海洋汚染防止法関係等からいきますと、気象庁の体制では非常にこれは心配の点が出てくるんじゃないか、こういうふうに実は思っておるわけであります。要するに、気象庁の海流あるいは海洋全般についての公害気象という関係で、どんどん開発をするなり、あるいは法律規定に基づくところの積極的な対応策というものを、気象庁からは考えてもらわなければならぬと思う。したがって、気象庁とされても、この法律によるところのどのような対応策と、公害気象との関係についてどういう積極的な御見解を持っておられるか、この機会にお聞かせをいただきたい。
  59. 吉武素二

    ○吉武政府委員 気象庁といたしましては、さしあたりは日本近海の海況と申しますか、それは私のところ、だけではとても及びませんから、水産庁、海上保安庁協力しながら、しっかり海の状況というものをつかんでいく、海流というようなものの消長をよくつかんでいくということにつとめたいというふうに考えております。  公害問題については、来年は、さしあたりは大気の汚染というほうに主眼を置きまして、大気汚染のための気象センターというものを東京、名古屋、大阪、福岡に設けるということを考えております。海についても、海上保安庁とよく話し合いながら、前向きの姿勢で取り組んでいきたいというふうに思います。
  60. 米田東吾

    ○米田委員 最後に、水産庁のほうにお願いをいたしまして、これで終わります。  実は、この法律関係いたしまして、あなたのほうの所管事項については、もう少しお聞きしたいと思ったのです。特に私は、現実に海洋の汚染あるいは汚濁によって被害をこうむっておる生物資源、それから漁業、漁民、特にこの漁民は、沿岸漁民はもちろんでありますが、養殖漁民、こういう関係につきまして、水産庁のほうで積極的な解決策というものを持ってもらわなければならぬし、それを何とか引き出したいと私は思っておりましたけれども、時間がありませんので、ひとつお願いしておきますが、この法律は、肝心の具体的なものはほとんど政令ないしは省令事項になってくるわけであります。したがって、その段階で水産庁等と運輸省当局も相談されるはずなんです。また皆さんの御意見というものは、政令、省令事項の中に、これから当然反映されていかなければならぬと思いますから、ひとつ私がいま申し上げたような立場で、政令事項に少なくとも反映されていきますように、水産庁もひとつがんばってもらいたい。これについて御見解を聞いて、終わりたいと思います。
  61. 藤村弘毅

    藤村説明員 その点につきましては、運輸省と法律を提出します段階から打ち合わせいたしておりますので、十分御趣旨に沿うように努力したいと思います。
  62. 福井勇

    福井委員長 この際、午後二時三十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二分休憩      ————◇—————    午後二時三十二分開議
  63. 福井勇

    福井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。田中昭二君。
  64. 田中昭二

    田中(昭)委員 まず大臣にお伺いいたしますが、あなたは運輸行政をあずかる責任者であります。いまこの日本を取り巻く洋々たる海洋を持つわが国立場を踏まえて、海洋が汚染されていくという将来をどのように考えておられますか。また、現時点より汚染させてはならない処置を講ずべきであると思いますが、その点どのように思われますか、確信のあるお答えをお願いしたいと思います。
  65. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 田中さんがおっしゃったように、日本は四面海に囲まれておるということと、最近大陸だなの問題もやかましくなってまいりまして、そういう点から考えると、日本は小さな国じゃなくて、世界の大国と言っていいくらいの大きな国と私たちは考えていいのであります。のみならず、御承知のように日本は貿易国家でありますから、海洋に助けられるところも多いのでありますから、何としても海国日本の名で、いわゆる海洋は保全されなければならない。そのための法律として、今回の海洋汚染防止法という法案を出したのであります。かつまた、御承知のように国際条約におきましても、従来の沿岸五十海里というものを、全海域に及んで油の汚濁防止しよう、こういう空気が強化されまして、条約もすでに調印を見ておるような状態であります。この条約も、次の通常国会わが国といたしましては批准をする段取りになっておりますので、その条約にあわせて、この国内法整備したいというのが一つであります。  第二の問題、御意見の、現在汚濁をしておるものをどうするかという問題は、必ずしも直接的にはこの海洋汚染防止法は働きはしません。しかしながら、部分的にはこれは考えざるを得ない点が多々あります。いまお話がありまし毒沿岸の汚染、ことに田子の浦とかその他の港湾の汚染につきましては、公害防止本法に基づきまして、積極的にこの浄化事業をやるかまえで、国としては関係県と協力をいたして、場所によってはそれを実施に移してまいっております。それ以外の、いわゆる港則法の適用をしない場所、これは沿岸でも多々あります。そういう場所で、これ以上に汚染状態を放置できないような問題、これは、運輸省が本年度三千五百万円の金をもって四十四カ所、その他の関係省も約十二カ所、この調査を進めまして、その調査の結果出てまいりましたものが、直ちに浄化事業を行なわなければならぬ場合は、関係省と協力いたしまして、特定者がよごしたことが明らかになっておれば、当然これは今回の公害本法等によりまして処置をいたしますが、不特定多数で明確でないもの、これはやはり国と地方団体が協力してやっていかなければならぬのではないか。これらの問題はできるだけ早く、調査の済み次第、現実の問題として進めてまいりたい、かように考えております。
  66. 田中昭二

    田中(昭)委員 そのような御認識であることはわかりますが、お聞きしておりましても、これは重大なことでございます。この海洋汚染について真剣にひとつ実効ある施策をとることこそが、世界第一位を占めております造船国、また海洋日本立場としましても、担当大臣としても当然のことである、このように私も思います。そうすることが、ひいては、世界の海をよごしてきた日本という汚名を返上するためにも、最大の使命であり、それでこそ世界の関心を巻き起こして、国際社会の信頼をも得られると思いますが、その点大臣の明確なるお考えを、もう一度お聞かせいただきたいと思います。
  67. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 田中さんのおっしゃるとおり、大いに世界に対する責任を感じ、かつまた十全の実行力を発揮して実施していきたい、かように考えております。
  68. 田中昭二

    田中(昭)委員 昨日からこの法案についていろいろ審議をされておるわけでございますが、私は、現時点における具体的な問題から入ります。そこで、時間も少ない関係上、むだなことばを省いて簡潔にお答え願いたい。  まず、この法律案の目的でございますが、第一条に、「この法律は、」云々とございます。読んでみますと、「この法律は、船舶及び海洋施設から海洋に油及び廃棄物排出することを規制し、」これが一つと思います。「廃油の適正な処理を確保するとともに、」これが二つであるかと思いますが、その次に、「海洋の汚染の防除のための措置を講ずることにより、」とありますが、この「海洋の汚染の防除」という意味はどういうようにお考えになっておりますか、お聞かせ願いたいと思います。
  69. 見坊力男

    ○見坊政府委員 これに見合う規定は第六章でございますが、海洋が油または廃棄物によって汚染される場合に、それを除く意味でございます。
  70. 田中昭二

    田中(昭)委員 除くのであれば、いままで汚染されたものを除くのか、いまから先汚染されるものだけを除くのか、そういう点、いまの答弁ではたいへん不十分であります。そういうことを一々聞いておりましても時間がございませんから、先ほど大臣がおっしゃったように、私の第一番の問いに対して、とにかく海洋を保全していきたい、次の問いに対しては、すでにおかされた汚染については、部分的にはそれを直していきたいというような御趣旨であったと私はお聞きしました。そういう大臣の前の答弁考えながら、その線に沿ってひとつ答えていただきたい。  もう少しことば意味をはっきりしておきたいのですが、昨日も第一条の海洋についていろいろ問題になりましたが、きのうの説明でははなはだあいまいであります。そこで私は、具体的にその海洋の内容について確認しておきたい。海洋とは、海面、海上並びに海中もあります。海底もあります。海底の地下資源もあります。こういうものまで含むと考えてよろしいか。
  71. 見坊力男

    ○見坊政府委員 そのとおりでございます。
  72. 田中昭二

    田中(昭)委員 この点は将来にわたっても、海洋が汚染されるということについては基本的な問題だと私は思いますから、このことを間違いないように運用してもらいたい、こういうことをお願いしておきます。  同じ第一条の最後のところに、「もって海洋環境の保全に資することを目的とする。」これは先ほど大臣がおっしゃったところだろうと思います。ここのところは、私は非常に重大な意義を持つものであると思います。  そこで、この法案が、いまから短い無理な審議日程で可決されようとしておりますが、かりに可決されたとしましても、この法律の経過規定もあり、その実施は少なくとも三、三年の期間がかかる。そうするとその間、現時点より実施に至るまでに、汚染がひどくならないという保証がありますか。
  73. 見坊力男

    ○見坊政府委員 いまお話しのように、本法が完全に施行されるのは公布の一年六カ月後ということでございますが、その間の措置といたしましては、法律的に経過措置等を規定してございます。(田中(昭)委員「そこは聞いておるから、簡単に結論だけでいいですよ。ひどくなるのをどうする。」と呼ぶ)現在の油濁防止法並びに清掃法の規定は、なお効力を有するということにいたします。  それから、さらに監視体制の強化等、この法律の趣旨に沿って行政的に措置してまいりたいと思います。
  74. 田中昭二

    田中(昭)委員 このことにつきましては、次に大臣からお願いしたいわけですが、いまの説明を聞いておりましても、ただ都合のいい、言えるようなことばを並べておるような感じを受けてならない。結局そのように汚染がずっと続いていきます、その汚染の責任はだれが一体とるのでしょう。またいまのような説明であれば、この目的の最後の重要な意義を持つこの部分は、海洋環境の保全に資するということにはならないのではないかと思いますが、大臣、どうでしょうか。
  75. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 いま審議官からお答え申しましたように、約二年後にこれが実施されるわけでありますが、その間においては、先ほど申しました油濁防止法その他清掃法等を積極的に活用するのみならず、こういう法律国会で通ったのであるから、その施行は二年後であっても、行政監督として、これは各団体あるいは関係者に十分に説明をして、その間は自主的にできるだけやってもらいたい。こういうことによっていわゆる保全の目的を全うしたい、こういうふうに考えております。
  76. 田中昭二

    田中(昭)委員 やる、やるということですからやってもらいたいわけですけれども、やる場合には、このように汚染されたものをどういうふうにやるかということにならなければいけないんだ、こう思います。しかし、ここでその汚染された実態をどうするというわけじゃございませんが、一応その考え方の中には、二年間なら二年間に汚染される、その汚染されるところによってはどういう被害が出てくるかわかりません。人命、船、また資源の枯渇、こういう問題をよく認識し把握して、監視なり防除なりの立場をとらなければ、私はこの法律の効力は発揮できない、こういうことを申し上げておるわけです。  そのことにつきまして、今度海上保安庁長官のほうにお尋ねをいたしますが、きのうもありましたように、第三管区海上保安部でやりました東京湾の海上公害特別一斉取り締まり、その結果、廃油やごみの不法投棄の違反が三百五十五隻中六十九隻もあったというのです。一隻から百トンものバラストをこぼしたというような話もありましたが、こういうことを、保安庁が日本全国で行なったならばたくさんあると思う。このように現在不法投棄がなされて、日本列島の近海がよごされているということが推定されるわけです。わが国全体で、汚染された現状は大体どのくらいあると認識しているか、概算でけっこうですからお答え願いたいと思います。
  77. 手塚良成

    手塚政府委員 私のほうの立場調査といいますか、汚染の状況はどうかということになりますと、昨年じゅうにやはりいろいろ調査をし、ただいまお話のありましたような取り締まり等をやりました。その結果で御説明することになるかと思います。  それによりますと、全体といたしまして合計二百七十三件というのが、そういう汚染関係というのでわれわれのほうにつかまえられておるものであります。そのうち、船舶によりますものが百七十五件、船舶以外の陸上からのものというのが二十九件、そのほか不明、どこからということが必ずしも確定しないものというのが六十九件、そういった姿が、一応昨年とらえました海洋汚染の姿であります。
  78. 田中昭二

    田中(昭)委員 それは、取り締まり関係で出されたのがそれだけでございますが、私が聞きたいのは、先ほどから言いましたように、そのような不法投棄によって日本の近海のきれいなところが汚染されておるのは、全体でどのくらいございますか、こう言ったわけでございます。お答えいただければ、またいただくことにします。  保安庁長官にちょっと言っておきますけれども、いまの朝日新聞に載りました一斉取り締まりの内容を、私のほうからお聞きしましたけれども、その内容を、おたくのほうで教えてくれないのですね。こういうようなことは、ほんとうにけしからぬことだと思います、教えて悪いことはないはずですから。これは後日資料として出していただきますが、ようございますか。
  79. 手塚良成

    手塚政府委員 私のほうでいろいろ調査、取り締まりをやりました結果について、一般の公表を求める声がそのつどいろいろございます。捜査に直接関係あるという内容、あるいはその時期におきまして、あるいはいまお話のありましたようなことがあるかと思いますが、原則として、やはりこういうものについては皆さん多数関係方々に、共同でその防止なり防除なりに努力していただく必要があると考えますので、適当な時期に内容はできるだけ公表する、こういうたてまえで進んでおりまして、いま先生の御指摘の特別取り締まりの結果などは、もう半ば公表に近い状況で、もしいまお話のような事実があれば、まことに申しわけない次第だと思いまして、今後注意いたします。
  80. 田中昭二

    田中(昭)委員 見坊審議官のほうから、いまの汚染の量がわかりますか。
  81. 見坊力男

    ○見坊政府委員 現在、海洋に投棄されておるものは、推定量でございますが、約二千四百万トンでございます。これのうちのおもなものは、産業廃棄物、下水汚泥、ふん尿、しゅんせつ土砂、こういうものでございます。
  82. 田中昭二

    田中(昭)委員 大臣、お聞きのとおり、取り締まり関係でも、先ほど百数十隻の船を検挙した、いま見坊審議官から、二千四百万トンもの廃棄物その他によって汚染されておるという現状です。こういう現実を見てみますと、この汚染されておる状況がさらにひどくなる。海洋汚染防止法ができてひどくなるのです。それはこの法律が施行されるまでには、二年間という先ほどのあれがありました。そうしますと、現在あります法律でも適用除外がございまして、御存じのとおり一般の船舶では五百トン未満及びタンカーでは百五十トン未満、これから出される油、ビルジ、その他の汚物等もたれ流しなのです。それはいまの二千四百万トンよりもふえていくのです。  このように汚染された海洋は、この法案成立しても、二年後の昭和四十八年までは、この法律の重要な四条の該当も実施されないで現行法のままでいきますと、それはますます汚染がひどくなります。これに対してはどのような対策をお持ちになっておりますか、お尋ねしたいと思います。
  83. 見坊力男

    ○見坊政府委員 いま油の関係でお話がございました廃油処理施設整備につきましては、四十八年の三月三十一日の全面禁止までに間に合うように、また十分間に合うという見通しで整備を進めております。
  84. 田中昭二

    田中(昭)委員 当面汚染がひどくなるのをどうするか。かりに二カ年間、実施時期までにどのくらいの汚染が広がるのか、そういうことを調査したことがございますか。二カ年間でよごされた海をどうして、いわゆる「海洋環境の保全に資する」ために取り戻しますか。もしもそれが取り戻せなかったら、だれが責任とりますか、こういうふうに言わなければ、いまここで提案された法案だけでは、審議しようがないのです。きのうからずっと言われておりまするが、大事なことは全部政令できめる、そうして適用除外でどんどんはずしていく。それならば、現法律で汚染された状態を、いわゆる海洋環境を保全するためにどう手を打つかということが問題じゃありませんか。大臣、いかがですか。
  85. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 先ほど見坊審議官お答えした中で、あるいは皆さんに誤解をこうむるといけませんので、内容を説明しておきますが、二千四百万トンのうちでは、しゅんせつ土砂が千三百四十万トンあります。それから産業廃棄物というのが、いわゆる埋め立てに一緒に使っているというのもありますけれども、この産業廃棄物が五百五十三万トン、下水で出てまいります汚泥が四万二千トン、ふん尿が、これが大きいんですね。五百十七万トンです。しゅんせつ土砂は、御承知のように東京湾の埋め立ての場合も、たとえば、それが海をなるべくよごさないような措置をとって埋め立ててあるわけです。したがって、二千四百万トンが海をよごしているというのは、いわゆる形式論でありまして、実際は、そのうちの特に大きいのがいわゆるふん尿五百十七万トン、下水汚泥が四万トンということでございます。これらは十分防除施設、すなわち、どろが海洋の中にはみ出さないようにという装置が、必ずしも現在まで完全ではないと思います。したがって、最近はその点やかましくやっております。比較的に東京等におきましては厳重にやっておりますから、これによるところの害は、だんだんと減りつつあります。  こういう状態で、いわゆる海洋の汚染度は、決して過小評価するわけではありませんが、今後とも、この期間中におきましても、十分これを自主的に規制してもらうということを行なえば、ある程度は清浄化を進めることができる。同時にまた、現在までによごれてしまった地帯、これに対しては積極的に公害防除事業という形で国が、あるいは企業がよごしたもの、たとえば田子の浦のごときものは、これにおいて積極的な防除事業を進めていくということで、一日も早く海の清浄化を取り戻したい、かように考えております。
  86. 田中昭二

    田中(昭)委員 それは、ここでこういうふうに言えば、そういうふうにおっしゃいますけれどもね。実際、私、福岡でございますが、北九州のあの洞海湾の死の海をどうして取り戻しますか。水質基準がきまったのがことしの十月じゃありませんか。どういうことを国は協力してやりましたか。海洋の汚染防止事業をどうやってやりましたか。やっていないのです。それで、私の言うことも抽象的なこともありますから、誤解があるということを大臣がおっしゃったが、今度は誤解のないようなことを、それじゃ聞きますよ。いいですか。  では審議官、よく法案を見てください。議員の皆さんもひとつ見てください。今度は間違いないところを言いますから。ビルジということばがこの法案の中に幾つも出てきます。いいですか。第三条の七号、第四条三項、四項及び第.五条、ここに出てくるビルジと、大臣、ここが大事なんです、か、また前に戻って、第四条の二項のビルジとは違うものなんです。違わないというのならば、その違わないという見解を聞きたい。名前は同じビルジです。違いますか。同じですか。
  87. 見坊力男

    ○見坊政府委員 結果は同じでございます。
  88. 田中昭二

    田中(昭)委員 それは間違いありませんか。
  89. 見坊力男

    ○見坊政府委員 はい。
  90. 田中昭二

    田中(昭)委員 内容も同じですか。
  91. 見坊力男

    ○見坊政府委員 はい。
  92. 田中昭二

    田中(昭)委員 私が先日、隣の係官に聞いたときには、違うということだった。それでははっきり申し上げます。ビルジの定義は、私しろうとで、聞いた話でございますけれども、油性混合物になっております。そのビルジを防止装置によってこれを処理するそうでございますが、その場合に残った、その装置にかけて残った、スラッジといいますか、スラッジとその少し油性を含んだ水に分離して、その水を排出する、その排出するところの水をビルジと、四条二項のところではいっているのでしょう。違いますか。
  93. 見坊力男

    ○見坊政府委員 ビルジというのは、船底にたまった油性混合物でございます。
  94. 田中昭二

    田中(昭)委員 四条二項のビルジを説明しなさい、どういうビルジか。
  95. 見坊力男

    ○見坊政府委員 これも同じ意味でございます。
  96. 田中昭二

    田中(昭)委員 違いますよ。それでは四条の二項なんかきめる必要はないのですよ。それじゃ第四条の三項、四項だけでいいはずですよ。第四条の二項は、これにあるじゃありませんか。「船舶からの次の各号に適合する油の排出」とある。かっこ書きはどういうことになりますか。「(タンカーにあっては、ビルジの排出に限る。)」このビルジというのは、その分離された水でしょう。全部ですか。
  97. 見坊力男

    ○見坊政府委員 これはタンカーでも、一般船舶でも、ビルジは排出されるわけでございます。それでタンカーの場合につきましては、第五項で別に水バラスト等について規定してあるビルジについては、第二項でいくというのでかっこの中が書いてあります。
  98. 田中昭二

    田中(昭)委員 それでは、そのビルジというのはあとではっきりしたいと思いますが、私が説明を聞いたときには、いま言うたような——ビルジ装置というものは、いままでも義務づけられておりますよ。それを全部船がつけて、そういう装置をつけておれば、この四条二項の項目は要らないようになるのじゃないですか。それでは、私が説明を聞いた御本人がいらっしゃるから、もう一ぺん御本人から説明してください。全部一緒に聞いているのだからね。
  99. 原田昇左右

    ○原田説明員 私が前に御説明したとき、何か誤解があるかと思いますけれども、ただいま見坊審議官説明に間違いございません。   〔委員長退席、箕輪委員長代理着席
  100. 田中昭二

    田中(昭)委員 あなたは部屋に来て、はっきりそこが違うと言ったじゃありませんか。いいかげんなことを言いなさんな。あなたが違うと言ったから、私は、このことを聞きますよと言ったじゃないか。  それじゃ、次にいきます。第五条の「ビルジ排出防止装置」でございますが、この第五条の規定が一歩後退していると思うのです。いままでの旧法でいきますと——新法をまず読みますと、五条の項目の中に、「ビルジの船舶内における貯蔵若しくは処理のための装置」こういうふうにございますが、先ほども説明がありましたごとく、ビルジとは、油性混合物をスラッジと油を含んだ水に分離し、その水を排出することをいっていたが、いわゆる水を分離することが処理と、こういうふうにうたっている、こういうことなんです。そうならば、旧法では第二条四項に、このビルジ排出防止装置がきめてございますが、そこには、「ビルジが船舶から海上に排出されることを防止するための装置」だ、こういうようになっている。いままでの法律でははっきり、防止装置というのは、海に排出されることを防ぐための装置といっている。今度のこの法案の中には、それを「貯蔵し若しくは処理」する、こういうようにある。私はこれを読んでみますと、この旧法でははっきりビルジの排出防止をいっておりますし、新しい法案は一歩前進であるどころか、一歩後退であると思いますが、いかがでしょうか。簡単にお願いします。
  101. 見坊力男

    ○見坊政府委員 これは後退ではございませんで、現在は、ビルジの排出防止装置のところにありますが、潤滑油が入ってないわけでございます。今度は新しく潤滑油も規制の対象に加えておりますので、その点は強化されておるわけでございます。  それから、ビルジ排出防止装置につきましては、船底への流入の防止、それから貯蔵、処理のための装置、つまりビルジ排出防止装置については三種類ございます。これは現行と同じでございます。
  102. 田中昭二

    田中(昭)委員 お話しになりません。  次に第四条一項に、「船舶の、安全を確保し、船舶若しくは積荷の損傷を防止し、又は人命を救助するための油の排出」このようにありますが、この条文を読みますと、端的にいって、その根底に生命の軽視といいますか、企業優先の考え方があらわれているように私は思います。すなわち、公害発生したのは、人類文明の何たるかを忘れ、科学文明の宣揚からくる自然の征服であり、破壊であり、その支配を行なったことから、自然との調和の一体化を忘れ、生命の軽視に根ざしたものであるといわざるを得ないのであります。  そこでこの条文も、人命を優先すべき立場に立つならば、すなわち「船舶の、安全を確保し、人命救助、船舶若しくは積荷の損傷を防止するための油の排出」というように改めるべきと思いますが、これはこまかいようでありますか、考え方としては重要なことであります。どうか大臣、このくらいの修正は当然配慮したほうがよいと思いますが、いかがでしょうか。
  103. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 この条項は、御承知のように油濁防止法の中にもこれと同じ言い方をしておりますし、国際条約もこれと全く同じ文章になっておるのです。そこで、国際条約承認の前提でもありますので——いまおっしゃるように、われわれの感覚からすればそのほうがよりベターのような感じがいたします。しかし、全体としてはいまおっしゃることと全く変わりはない。そうなれば、国際条約でこういう文章であらわれておりますから、かえって混淆をもたらさないためにも、そのまま国際条約をとった。精神はそのような精神でありますので、おっしゃるとおりのような考え方でいくのでありますから、わざわざ文字の修正をしなくても精神には変わりはない。ただ、国際条約がそうなっておりますから、なるべくその国際条約ことばを使うほうがスムーズに通りやすい、かように考えております。
  104. 田中昭二

    田中(昭)委員 海洋汚染で何かを言いますと、すぐ国際条約というものが出てきますけれども、やはり私たちも法律の適用というものは、最優先順序に善くべきだと思うのです。いますぐこれはできなくても、このくらいは、人間尊重をうたう佐藤内閣の大もの閣僚である橋本運輸大臣が先頭を切って、できないとするならば、ひとつ検討事項とされるように強く望んでおきます。  次に、きのうもありましたが、同じく第四条四項に、「海岸からできる限り」とありますが、この「できる限り」ということぐらいあいまいなものはないですね。  これに関連してでありますが、海の汚染の大半は、きのうからの審議を通しましも、陸上からの廃棄物によるという考え方があるようでございますが、そうしますと、それでは海洋の汚染の発生源というのは、陸上からと海上での排出がそれぞれどのくらいあるのか、調査した明確なものがあるかどうか。  時間がありませんから次にいきますが、海洋の汚染の中で、すなわち船と海洋施設等から汚染されるものがどのくらいあるか。こういうことがわからないでは、海洋汚染防止はできないと私は思うのです。その現状がわからずして、「海岸からできる限り」とは一体どういうことですか。そんな抽象的なものでなく、具体的な海域を指定し、汚染防除と本気に取り組むべきであると思いますが、いかがでしょうか。ある地域を指定して、指定海域をつくることができないのか。その最後のほうの問題だけでけっこうでございます。指定海域をつくられる、そういう考え方があるのかどうか、そこだけお答え願いたいと思います。
  105. 見坊力男

    ○見坊政府委員 これは、非常に規定をするということがむずかしいわけでございます。と申しますのは、ビルジの場合と申しますか、この規定の場合は、いわば努力規定でございます。船の態様によりまして、できるだけ離れてやれということで、その船の態様によって、その海域はどのくらい離れるかということはおのずからきめられなければならぬわけでありますが、その辺は、法律できちんと海域をきめるということが、非常にむずかしいというふうに考えております。
  106. 田中昭二

    田中(昭)委員 次は四条六項関係でございますが、大気汚染により酸素がたいへん減っております。炭酸ガスもその反面ぶえておりますが、そういうことが大気の温室効果にたいへん影響しまして、このまま進みますと、全般的な気温の上昇を来たしてたいへんなことになる。具体的には、ある学者は、南氷洋の氷山がそのために解ける、また、いわゆる南氷洋で捕鯨を行ないますが、その捕鯨の行なわれます際の船舶のたれ流しによりまして、そういう南氷洋の氷が固まりにくいというようなことが起こるかもしれない、そのために、いわゆる氷が解けて、そして海面が数十メートルも上がる、こういうことを予想した人もおる。  そこで、この四条六項の油の排出の適用除外ですが、この捕鯨業に従事する船舶を載せてありますが、   〔箕輪委員長代理退席、加藤(六)委員長代理着席〕 この南氷洋の野放しでよごれております状況考えてみますと、たいへんなことである。ですから、自然を保護する意味からいきましても、この南氷洋で排出されます油については、何とか手を打っていかなければならない。そうすることが水産先進国としましてのわが国としても大事なことではないか、こう思います。  この項も、先ほどからありますように、国際条約によってという考え方がございます。私はそれをもう一歩進めて、逆にそのリーダーシップを握って、国際条約を引き上げるというようなことが当然ではなかろうかと思います。わが国としましても、そのくらいのことをやるような政府の積極的な働きがなければいけないし、そのようなことぐらいすることが、大臣の参議院の本会議におかれての、七つの海をきれいにするということに当てはまるのじゃないかと私は思いますが、いかがでしょうか。この南氷洋の汚染を禁止すべきことを考えていただけないでしょうか。
  107. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 油の量からすれば、母船が流すものはたいしたことがないにいたしましても、いまおっしゃるように、これは七つの海をきれいにするという大きな宣言の上から言うならば、ことに母船でありますから、ある程度処理を行なわしめることも可能であると思いますので、将来そういう会議の席上では、おっしゃるような意見を十分に主張して、これらの抑制措置をとるというような努力をいたしてまいりたいと思います。
  108. 田中昭二

    田中(昭)委員 最後に、昨日からも、この法案でたいへん政令、省令できめるところが多い、こういうような話が出ましたが、担当者として、この政令はどのくらいございますか。
  109. 見坊力男

    ○見坊政府委員 政令が十六ございます。
  110. 田中昭二

    田中(昭)委員 昨日は四十八あるとかいうようなことも出ておりました。いま担当の審議官から、十六というお話でございますけれども、それも少しあぶない。それをきょうは論議できませんから、そのような、十六もの政令できめていくということによって、この法案が違った方向に行くということが十分考えられる。ですから、その十六もある政令の中で、一番簡単な具体的な例でようございますから、どういう考えを持っておられるのか、一つか二つだけでもいいですから、ここで聞かしていただきたいと思います。
  111. 見坊力男

    ○見坊政府委員 政令で、まず海洋施設につきましてはシーバース、海洋観測塔、灯標等、海洋の汚染源として影響の大きいものが入っていくといくことになろうかと思います。そのほか大きいものとしましては、十条関係廃棄物排出海域排出方法に関する政令、これらにつきましては、昨日もお答え申し上げましたが、関係各省の専門家あるいは学識経験者等の意見も聞きまして、政府全体として適正な基準ができるように、この政令の内容をきめていきたいというように考えております。
  112. 田中昭二

    田中(昭)委員 これで終わりますが、いまの政令の中で、海洋施設のいわゆる定義の中にもありますが、政令できめるということでございますが、パイプラインなどはどうですか。それと、洞海湾にある工場が海の底にずっとパイプを敷きまして、全然よそのほうで汚水をぷかぷか出しておる。離れた別のところへ持っていって出しておる。パイプラインなり排水溝といいますか、そういうものはどういうふうになりますか。それを最後にお聞きしたいと思います。
  113. 見坊力男

    ○見坊政府委員 パイプラインにつきましては、この海洋施設の中に入れることを考えておりますが、政令段階で、その点十分検討いたしたいというふうに思います。
  114. 田中昭二

    田中(昭)委員 以上で終わります。
  115. 加藤六月

    加藤(六)委員長代理 大原亨君。
  116. 大原亨

    大原委員 時間が短時間ですから、端的に質問いたします。  最初に条約法律関係なのですが、新しく改正された条約に基づいて法律改正するわけですが、条約法律で内容的に違っておる点を答弁してください。
  117. 見坊力男

    ○見坊政府委員 この法律改正条約の、大体と申しますか、その内容を盛り込んでおるわけでございますが、条約よりもきつい点がございます。  一つは、適用対象船舶が、条約では一般船舶五百トン以上、タンカーは百五十トン以上ということになっておりますが、この改正では、タンカーにつきましては全船舶、それからタンカー以外の船舶につきましては、三百トン以上ということにして規制を強めております。  それから、さらに油濁防止管理者、それから油濁防止規程につきましては、これは船内における油濁防止体制を強化するということで、条約にはない点でございます。その点は強化されておるわけです。
  118. 大原亨

    大原委員 原則的にない点を国内法できめるというのは、問題ないと思うんですね。ただし、同じ条約にきめておる基準国内法で強化をする、こういう場合には、条約法律の効力の関係はどうなりますか。——別の質問をしましょうか。条約の効力のほうが法律よりも優先するわけでしょう。その場合に、そういう問題についての疑義が起きてきませんか。問題は起きてきませんね。
  119. 見坊力男

    ○見坊政府委員 条約法律関係でございますが、領海内におきましては、わが国の管轄権に基づいて、国内法として規制強化されたものがかかっていく。ただし公海につきましては、これは条約がなければ及ばないということになります。日本船については及ぶわけでございますが、外国船については、条約がなければ及ばないということになります。
  120. 大原亨

    大原委員 それで、もうちょっとこれは原則的なことですが、しかし国内でも条約法律が、中身についての是非というのは別にいたしまして、矛盾をする際には、条約規定が優先するんですよ。たとえば、国際条約日本国内法がありまして、そして条約のほうが違った規定をしておる場合には、条約のほうが優先するんじゃないですか。
  121. 見坊力男

    ○見坊政府委員 ここに油濁防止法の例をとって御説明いたしますと、現在は沿岸から五十海里は捨ててはならぬ、ただし領海は三海里であると仮定した場合に、三海里については、日本国内法が外国船にも日本船同様にかかるわけであります。ただし三海里から五十海里の間、これは公海でございますので、条約で担保しなければならない。したがって、それを規制いたしますのは、当該船の旗国の国内法によって処分される。もし外国船がその五十海里以内三海里以上のところで違反をしたという場合には、条約規定によりまして相手国政府に通報をするという制度がございます。これはアメリカの沿岸におきましても同じようなことでございまして、日本船が向こうに行った場合には、アメリカの領海内においてはアメリカ国内法に従いますが、それから五十海里の間において日本船が違反をした場合には、アメリカ政府からこちらの日本政府のほうに通報がある。これは条約の手続に従って手続がとられる。そこでおのおの担保されるということに相なるわけであります。
  122. 大原亨

    大原委員 領海や他の国内についての基準をきめても——時間がなくなってしまいましたから、この問題は、あとで議事録を調査して議論するということにします。  この海洋汚染防止法の第十条の第一項第三号に、「廃棄物処理法」カッコして法律の通った年月日、「第五条第三項又は第十一条第二項の政令において海洋を投入処分の場所とすることができるものと定めた廃棄物その他政令で定める海洋において処分することがやむを得ない廃棄物政令で定める排出海域及び排出方法に関する基準に従ってする排出」このあとの「廃棄物政令で定める排出海域及び排出方法に関する基準」これは一体どういう中身のものですか。
  123. 見坊力男

    ○見坊政府委員 これは、海洋に投棄することがやむを得ないと認められた廃棄物につきまして、海洋汚染防止という立場から、その海象、潮流、地形等を勘案しまして、妥当な基準をきめていくという考え方でございます。
  124. 大原亨

    大原委員 できるだけ具体的な質問をするのですが、これは私が、きょうは大臣が見えたらこのことを——この法律によって権限の大きな委譲があるのです。厚生大臣から運輸大臣に権限が委譲されている面がかなりありますね。その面を頭に置きながらやるのですが、公害問題は非常に具体的ですから、私は東京湾とか、伊勢湾とか、瀬戸内海とか、洞海湾とか、広域の湾とか内海について、閉鎖的な海についての公害防止についての政策を、集中的にある時間だけ議論いたしますが、そのときに、政令等の関係で問題になるのは、たとえば瀬戸内海は、二十年しないと水が変わらないというのですね。それに各方面からずっと、臨海工業地帯から工場排水廃棄物都市排水など、人口が集中しまして汚染されている。それから油の汚濁があるというふうなことですね。さらにラワン材その他木材が貯蔵されますね。そうしたら皮がむけて、有機物を発生して腐敗する。そういうことで、赤潮が異常発生でなしに通常発生しまして、全く麻痺状態です。全体としてこの海をどうするかということを、具体的に解決できないような法律だったらだめなんですよ。そういう法律でなかったらだめなわけです。  そこで、この問題に関係しまして質問するのですが、たとえば瀬戸内海を調べてみますと、なまの屎尿瀬戸内海に投棄しているのは広島市が一番多いですね。一体どのくらい一日になまの屎尿を、瀬戸内海のどこに投棄しているのか。このことは、今度きめるこの排出海域あるいは排出方法政令とはどういう関係になるのか。やはり依然としてそういうなまの屎尿を投棄するのか。広島、呉、まあ広島が一番多いそうでありますが、私、広島だから言うのだけれども、岡山、呉もひどいが、広島が一番ひどいんだ。どのくらい一日になまの屎尿を、どこに投棄しているのか、これからどうするのか、これはこの政令規定とはどういうふうな関係になるのか、こういうことをお尋ねいたします。
  125. 見坊力男

    ○見坊政府委員 私から、この政令との関係を御説明いたしたいと思います。  ここでまず、廃棄物処理法のこれこれの政令において海洋を投入処分することができる場所と定めた廃棄物という、まずこれが問題でございます。これは廃棄物処理法政令で定める廃棄物でありますが、考え方としましては、政令をきめる場合の考え方でございますが、海洋への投入の際には、廃棄物等を加工あるいは包装などをして海洋を汚染するおそれが少ない状態としたものという考え方でございます。もちろん、陸上で処理できないものであるということは当然でございますが、たとえばいまのお話の屎尿でございますが、これは将来はできるだけ陸上で処理してもらう、もう海洋は捨て場所にはしないという方針で厚生省とも話し合いをいたしておるわけでありますが、現実の問題としてなかなかむずかしいという問題が、昨日も厚生省のほうからお話がございました。その辺はやむを得ない点もあろうかと思いますが、われわれとしては、排出方法をきめる場合にもそういう点を十分考えて、瀬戸内海あるいは東京湾、伊勢湾のような内湾、そういうところでは、投棄禁止という方向で考えていきたいというふうに考えております。
  126. 大原亨

    大原委員 厚生大臣が、なまの屎尿を投棄していたその禁止区域というものをきめておるわけでしょう。今度は厚生大臣ではなくて運輸大臣になるのですか。簡単に言ってください。
  127. 見坊力男

    ○見坊政府委員 この法律政令できめることになるわけでございます。
  128. 大原亨

    大原委員 運輸大臣でしょう。運輸大臣はその禁止区域でない場合に——これは厚生省から答弁してもらっていいですよ。広島のなまの屎尿処理は陸上でやってくれ、陸上でやってくれと言っているけれども、そんなことは運輸大臣の権限になったってできないんだよ。そんなことはやろうったってできやしないんだよ。そのための財政の裏づけがあるかといったら、ちゃんとありますか。広島市周辺のなまの屎尿を、一日にどのくらいを、どこに投棄していますか。
  129. 榊孝悌

    ○榊説明員 広島県が現在海洋投棄いたしております量が、一日当たり九百六十キロリットル海洋へ投棄しております。九百六十キロリットルは、大体一トンが一キロリットルとお考えいただいていいと思いますので、千トン近くということになります。
  130. 大原亨

    大原委員 どこへ落としておるのですか。
  131. 榊孝悌

    ○榊説明員 各市若干場所が違います。広島市は甲島の南方へ投げております。
  132. 大原亨

    大原委員 運輸大臣、呉は安芸灘、広島のは禁止区域以外のいま言われたように甲島、阿多田島の南にある甲島の南に投棄する。そこで、産業廃棄物やヘドロとなまの屎尿が一緒になって、赤潮が異常発生しているんですよ。運輸大臣の所管になっても、その甲島への海洋投棄を続けるのですか。
  133. 見坊力男

    ○見坊政府委員 まさにそこが問題でございます。その辺の排出海域排出方法につきまして、海象、海流等を考え海洋汚染防止という関係から適正な場所と方法をきめたいということでございます。
  134. 大原亨

    大原委員 それはあなたの話によると、陸上処理ということだが、陸上処理ができぬのだからね。下水設備もないし、浄化槽もないから、どこかへ投棄しなければいかぬわけですよ。そうすると、依然として瀬戸内海の甲島とかそういったところに投棄するのですか。それとも太平洋のほうへ持っていって投棄するのですか。高知県のずっと南の、カツオかブリのとれるほうへ持っていって投棄するのですか。どうするのですかと聞いておるのです。現実の問題として、もし瀬戸内海で投棄をやっておるのを、一年二年と続けたらたいへんですよ。そういう見通しのないことを依然として——やらないのであるならば、鉄鋼船なり運搬船を国は助成してきちっとつくって、そして遠くへ持っていけるような、そういう措置瀬戸内海全体でとるのかどうか。そういう向うにしなかったら、高度成長で臨海工業地帯に工場が集中して、工場の産業廃棄物とヘドロとなまの屎尿都市排水でだんだん汚染されている瀬戸内海は、きれいになりませんよ。権限だけもらっても、責任だけもらってもきれいにならない。それはどうするのかということです。
  135. 見坊力男

    ○見坊政府委員 われわれの立場から申しますと、海洋に一滴も屎尿を出してもらいたくないということでございますが、現実にはそうはなかなかなりません。そこで屎尿関係につきましても、厚生省のほうで計画もつくって検討されておられます。できるだけ早い機会に、海洋投棄はなくしていくという方向でまいりたいというお話も伺っておりますので、その辺の進めばやりたいと思います。
  136. 大原亨

    大原委員 あなたは、伺っておりますと人ごとのように言うが、今度の法律改正によって、なまの屎尿の投棄をする場所をどこへきめるかということは、あなたのほうの権限なんです。それを監視するのは海上保安庁でやる。運輸大臣がやるのですよ。だから、人ごとではなくてあなたのほうのことなんです。そういうことはどうするのですか。たとえば五カ年計画でそういうことは完全になくしますとか、そういうことを政令できめますとか、その政令は具体的に裏づけをやってきめますとか、財政はどういたしますとか、こういうことがなかったら、瀬戸内海は魚も何も住めなくなるのですよ。自浄能力の限界を越えているのです。環境は破壊されているわけですよ。瀬戸内海をどうするかという議論がありますけれども、それはあとへ回します。それで、権限と責任はこれで委譲されますけれども、じゃ処理についてはどうするのですか。裏づけがあるのですか。幾ら法律をつくったって、どうにもならぬじゃないですか。甲島あるいは安芸灘へなまの屎尿を投棄する。こえ船の底を抜いて、その途中でどどどどっと流していくわけです。そうしてカキとかノリとか魚とかが汚染されるわけです。そうした産業廃棄物と一緒になって、窒素と燐酸が一緒になって、冨栄養化してプランクトンが異常発生する。それによって養殖のハマチやタイなんかみんな死んじゃうわけです。そういうことについて、総合的な対策を立てるのは一体だれだ。だれが責任を持ってやるのですか。
  137. 見坊力男

    ○見坊政府委員 排出海域排出方法をきめるのは、もちろん海洋汚染防止法に基づきまして、先ほど申しましたように、関係行政機関とも十分協議をしてきめたい、適正なものをつくりたいと考えておるわけでございますが、現実の問題として、やむを得ないものにつきましても、この法律の趣旨に沿いまして、各省とも十分協議してまいりたい、このように思います。
  138. 大原亨

    大原委員 瀬戸内海の管理はだれが管理しておるのですか。第一次的な管理者はだれで、最終的な管理者はだれか。
  139. 見坊力男

    ○見坊政府委員 現在の法制度では、海洋を基本的にだれが管理しているかという管理者についての明文の規定がございません。
  140. 大原亨

    大原委員 ありますよ。港湾についてはだれですか。知事でしょう。特定の場合には市長がやっている。港湾を管理しているのは知事ですよ。港湾法には、そういうヘドロが蓄積した場合においては、管理者が排除する責任があるのです。そうでしょう。どうですか。
  141. 見坊力男

    ○見坊政府委員 ことばが足りなくて申しわけございませんでしたが、もちろん港湾につきましては、港湾法によりまして港湾管理者がきめられておるわけでございますが、先ほど申しました海洋についてという意味は、管理者のきまってない海域につきましてどういう管理者がいるかという規定につきましては、そういうものはないということを申し上げたわけでございます。
  142. 大原亨

    大原委員 港湾については管理者ですよ。知事とか市長とか、主として知事が港湾管理者ですから、港湾法に基づいて、港湾が汚染された場合にはきれいにする必要があるわけです。その場合に、たとえば東洋パルプとか山陽パルプとか日本鋼管とか、いろいろな企業がヘドロを排出いたしますね。あるいは木材の貯木場みたいなのがありまして、川の下へ沈でんして二メートルにも三メートルにもなって、それが腐食して有機物を発散させておるわけですね。そういう場合に、排除する費用はだれが負担するのですか。その排除をするのは管理者がやるとしても、その費用はだれが負担するのですか。それは今度の新しい費用負担法によって、原因者が負担するのでしょう。私が質問答弁を両方しますけれども、そうでしょう。間違いないですね。
  143. 見坊力男

    ○見坊政府委員 港湾法に基づく港湾を良好な状態に保つというためには、管理者が港湾事業費として行ないますが、それ以外のものにつきましては、公害防止事業としてやはり港湾管理者が行ない、その費用については、先生おっしゃるとおりでございます。
  144. 大原亨

    大原委員 初めて愚見が一致した。  それから、港湾以外の水路において油で汚濁をする。あるいはタンカーがやる、あるいは一般船舶が流す、あるいはなまの屎尿を投棄する、そういうものが堆積してヘドロになっている。大暴風雨になったら、それがひっくり返されて冨栄養化して赤潮が異常発生する、そして死の海となる、それが恒常化してくるというのが瀬戸内海のいまの実情ですか、港湾以外のところは、これからは海上保安庁が監視と処理の責任を負うのではないですか。   〔加藤(六)委員長代理退席、委員長着席〕
  145. 見坊力男

    ○見坊政府委員 そういう場合の監視、取り締まりの責任は、海上保安庁が負います。
  146. 大原亨

    大原委員 法律のたてまえからいうと、港湾管理者と同じように、運輸大臣海上保安庁が一般水路でそういうヘドロの排除の仕事をやらなければいけなくなったような場合には、これも原因者負担にするのですか。
  147. 見坊力男

    ○見坊政府委員 原因者がわかっている場合には、いま先生のおっしゃったとおりでございますが、原因者がわからないものにつきましても、それは一体だれがどういうことでやったかということにつきましても、この法律の趣旨を尊重しまして、これに沿いまして海上保安庁が監視、取り締まりを行なうということでございます。
  148. 大原亨

    大原委員 幾ら環境基準をつくり、そのもとになる排出基準をつくりましても、蓄積されたヘドロの処理をしなければ、瀬戸内海はきれいにならぬですよ。だから、海上保安庁や運輸省はたいへんな仕事をこの法律で引き受けることになる。検査能力とか人員とか、そういう海上保安庁の予算的な裏づけを、そういう監視も含めて、途中で屎尿を投棄したものを摘発する、タンカーについても摘発する、そうしてそういう海に関する限りはあらゆる廃棄物についてやる、水質汚濁防止法で県知事に委任をされた権限もあるけれども海上保安庁がやるという予算とか人的なあるいは研究的な機能というものは、整備されておるのですか。
  149. 手塚良成

    手塚政府委員 海上保安庁海洋汚染防止法あるいは関係法案の順守、取り締まり、予防、こういうことを今後新たな任務として担当することになります。従来港則法というたてまえで若干やっておりましたけれども、今後は一そう明白な形でやることになります。  そこで、体制といたしましては、私のほうでは、ただいまある巡視船艇等によりまして、当面は重点的な取り締まり、予防ということをやらざるを得ない。人員等におきましても、これを本件によって急速に、きょうあすから動員ということは非常にむずかしいので、この人員の配分等につきましても重点的に考えたい。瀬戸内海等におきましては、御指摘のとおりいろいろ問題が非常に従来とも多いわけですが、そういうところについての船艇あるいは人員等につきましては、あらためて今度の法律施行に伴う重点配分というものを、当面考えて実施をしていきたい。  将来の、今後の問題といたしましては、たとえば来年の予算要求等におきましては、組織といたしましても、海洋公害課に当たるようなものをはじめといたしまして、地方の重点的な場所公害監視センターというようなものをつくっていく。現在、実行上若干の人員を配置して、公害班というものをすでに設置しておりますが、これをさらに整備強化をはかっていくというようなこと、あるいはそういうところの人員も、ただの人間ではだめなんで、専門的な知識を必要といたしますので、そういう面についての研修をただいまやっておりますが、これを大々的にし、さらに恒久化する意味で大学校あるいは保安学校等私どもの専属のものがございますが、そういうところにそのような講座を設けて保安官一般にそういう知識を与える、そういうような総合的な体制考え、現状のものからできるだけ早期にそういうものを整備強化をはかるというようなことが、当面考えておることでございます。
  150. 大原亨

    大原委員 これは大臣質問することですが、大臣はすぐ帰ると言って出ていってまだ帰らないので、しようがないから、最後に三つだけ質問するのですが、赤潮が自然の浄化能力の限界を越える環境破壊として、内海とか湾において異常発生し、それによる魚の死滅などを来たしたら、もう瀬戸内海は全く魚の資源の宝庫でなくなる、こういうことです。これは刻々進んでいるわけですが、そういう赤潮についての防止対策研究、ここに出ているだれでもいいから、責任をもって答弁していただきたい。ほんとうに赤潮原因、その防止対策について研究するのは、一体だれがするのか。こういう大きな問題になっているものを、だれがするのかということが一つ。  それから、将来そういう瀬戸内海というものは、臨海工業地帯としての運河というだけにするのか、それとも、このまま汚染を続けておって、瀬戸内海の将来の総合的な浄化計画というものはどこが責任をもって立てて、そうしてどこが裏づけをして実行するのか、こういう二つの点について答弁をしてもらいたい。この問題は、この法律案を審議したってだめですからね。こんな法律案はざる法ですから、実際に問題を解決できなければだめですよ。  それから第三に、大体マラッカ海峡防衛論というものがあるけれども、海上自衛隊を増強するよりも、運輸省の海上保安庁をもう少しきちっと科学的に整備したほうがいいのじゃないか。そのほうがほんとうに国民の生命と健康を守って、自然環境を破壊からお互いが守っていく道じゃないか。三島君なんかになにされるあんな自衛隊というものは何です。だから、こういうものはほんとうに海上保安庁でやるべきだ、私は肩を持つわけではないけれども。いまは県知事が管理しておる港湾については、港湾管理者に責任をどんどんおっかぶせてやっておるが、これでは財政措置で幾ら金をつぎ込んだってだめです。この法律では、一般水路を含めて全体が汚染されている場合は、運輸大臣が責任を持っておる。しかし、そういうことについての人的、物的、科学的な能力が欠除しているのではないか。そういう点について抜本的な、総合的な対策がないところに、日本公害対策がしり抜けである。そういう総合対策がなくこう薬ばりである、ほんとうに生活優先ではない、こういうことがあるわけです。  私は、以上三点にわたって質問をしたけれども、そのことについて明快なる答弁があったら、私は質問をすぐにやめる。どうですか。
  151. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 私は、三点について全部お答えするわけにはまいりませんけれども、まず第一点の赤潮の試験研究につきましては、他の官庁とも当然共同研究をいたすべきでございますけれども、主として水産庁の責任というふうに考えております。現在すでに、ここ二、三年、水産大学校の松井教授あるいは九大の花岡教授等を主任研究者として相当な研究をいたしておりますけれども、なおそこで不明な点が多く残されておりますので、南西海水産研究所中心にして、瀬戸内海及び伊勢湾の沿岸の船艇を動員いたしまして、現在やっておるわけであります。来年度におきましても、この研究を進めるわけであります。  それから第二点は、これも私のほうだけでお答えをいたしますと、負担法もできますし……。私ども、荒廃した漁場の復旧については特に意を用いて、今後の水産行政を進めるつもりでおります。
  152. 大原亨

    大原委員 大臣が来ましたので、ちょっと委員長、一言だけやらせてください。  運輸大臣、私が質問したのは、赤潮が自然の浄化能力の限界を越えて、内海や湾において進んでいる。これに対して研究体制があるのかどうか。この赤潮原因対策について研究体制はないのじゃないか。海上保安庁がやるといってもできない、あるいは水産庁にまかすといっても水産庁だけではできない。いままでやっていなかったのだから。やろうと思ったら、業界から押えられたのだから。いままでやろうと思ったら、それは漁業組合の補償問題を起こすというので押えられたのだからね。それで最近になって、公害がやかましくなったからやれ、やれということになったが、やれと言ったって、その研究の蓄積は何もない。  それから第二点は、瀬戸内海全体は、知事が任命した港湾管理者が管理しておるが、水路その他は運輸大臣であるあなたがやるわけです。現実にヘドロが蓄積している、それを処理しなければ、幾ら環境基準をつくっても、排出基準をつくっても、海洋汚染防止法をつくったって意味がないのですよ。その責任はだれが持ってやるのか。  その膨大な計画をやるためには金が要る。海上保安庁に人的な能力、技術的な能力あるいは研究能力がないままに、そういうことについて今度は非常に大きな監視の役割りを果たさせる。ある場合にはヘドロを自分で回収しておいて、原因者に負担させる、企業に負担させる、あるいは自治体に負担させる、国に負担させる、あなたは自分で提案しておいて知らぬかもしれぬけれども、そういうことがここにちゃんと書いてある。そのためにはばく大な金が要るのじゃないか。そういう総合計画がないようなことを、全部政令政令でまかせておいても、こんな法律ではどうにもならない。これは第十条の説明を言っておるのですが、私は、もうそういうことをいつまでもやらずに——マラッカ海峡を防衛するというよりも、こんな自衛隊よりも、海上保安庁をちゃんと充実させて、国民の生命、財産と自然の財産を守ることが必要ではないか、こういうことを最後に私は結論として言ったわけです。これは大臣の政治的な答弁が必要なわけですから、政府委員の皆さんも一応汗をふいて弱っておるところですから、ひとついかがですか。
  153. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 どうも、私も赤潮の正体というものについてはわかりませんので、あるいは大原さんにおしかりを受けるかもしれぬが、これは水産庁だけでもないと思います。しかし、何といってもこれは専門家の調査にまたなければなりませんので、水産庁を中心にして、これは各省連絡の上で十分なる調査を進めてまいりたいと思います。  そこで、瀬戸内海汚濁をどうするかという問題、これは、一応港湾関係調査は、本年度三千五百万円で海底地質の調査等は進めてまいりますが、この種の問題になりますと、広く問題が大きくなってまいりますので、それだけではもちろん済まぬわけであります。ただ、この公害関係法案で示すところの諸問題については、一省だけではできない問題が当然たくさんあります。したがって、いまのところ公害対策本部というところで各省の力を結集してやっていこう、こういうことでありますが、おっしゃるとおりに、本格的にやればおそらく相当、何千億といいますか、たいへんな金が要るだろうと思いますが、ある程度の年月をかけても、あるいは予算上に相当なウエートはかかりましても、やはりこれは日本としてはやるべきこと、やらざるを得ないのでありますからして、最善を尽くして、運輸省はことに海上保安の責任もあり、海洋開発関係関係いたしておりますので、その他の各省と全面的な力をひとつ結集しまして、大原さんのおっしゃるようなところまでいけるかどうか、まことに心もとない答弁でありまして恐縮でありまするが、最善を尽くしてやってまいりたいと考えております。
  154. 福井勇

    福井委員長 次に小宮君。
  155. 小宮武喜

    小宮委員 私は、職業上船の仕事に携わっておりますので、特にこの汚染防止については大きな関心を持っておるわけでございます。したがいまして、本日はあえて本委員会に出席して質問をいたしますけれども、何ぶんほかの委員会に所属しておりますので、不勉強の点がございますから、その点はあらかじめひとつ御理解願いまして、親切な答弁をお願いいたしたいと思います。  そこで、ただいま提案されております海洋汚染防止法を読んでみますと、率直にいって、これで目的にうたわれているような海洋の汚染を防止し、もって海洋環境の保全に資するということがいわれておるわけですが、はたして可能かどうかということを、率直に疑問を持つものであります。少なくとも立法化する以上は、その趣旨にのっとって実効をあげるものでなければならないと私は考えております。その立場からしますと、現行の海水油濁防止法もしり抜け法とは言われておりましたが、この改正案も再びしり抜け法といわれるおそれが多分にあります。したがいまして、私は気づいた点についてひとつ質問をいたしますので、明確な御答弁をお願いいたします。  まず質問の第一点は、先ほども申し上げましたように、端的にいって、運輸省当局はこの改正案で海洋汚染が十分に防止できると考えておられるのかどうか、まずひとつ大臣に所信を伺いたいと思います。
  156. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 一言でなかなか答弁しにくいのでありますけれども、しかし、御承知のようにこの法律案は浄化を目的とし、海洋の保全を全うしようという大きな目的を持っております。ただ最近、これは皆さんも御承知でありましょうが、最近の新しい学問では、技術開発というものには限度がある、限度をつくらなければいかぬ、いわゆる再生産の完結をする、再生完結ということと同時に、技術開発によるところのいわゆるマイナス面を除去するような制御装置を考えなければならぬ、こういうような議論が最近出ております。その意味におきまして、これからのいわゆる技術開発というものは、当然マイナス面を補うだけの技術開発が伴わなければこれは技術開発とはいえない。こういうような観点からいいますれば、この法律の中で十分ならざる点があると思いますけれども、しかしながら、従来なかった一つ規制方針をこれによって強化していく、ことに廃棄物までこの法律は取り扱っているところは、非常に特色があると思います。のみならず、この問題はひとり日本だけやったところでこれは実現できる問題でもありませんので、国際会議を通じて、あるいは関係国際業界を通じて日本の趣旨を十分に徹底して御協力を仰ぐ、こういう姿勢でまいりたい、かように考えております。
  157. 小宮武喜

    小宮委員 この改正案は、当初運輸省が考えておった原案よりは、相当後退した内容のものになっておるというふうに理解するわけですが、この問題については、相当あちらこちらから圧力がかかったようにも聞き及んでおるわけですが、運輸省の当初の原案とこの改正案の変わっておる点を、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  158. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 結論から申しますと、当初の案も現在の案も変わっておりません。ただ、一つのものをまとめてまいります場合には、幾つかの、何人かの人によって討議が行なわれますから、Aという人はこういう議論をする、Bという人はこういう議論をするという過程はあったけれども、案としてまとまったのは、現在の案がいわゆる運輸省の最初の案でありますからして、他から制肘された事実ももちろんありませんので、さようなことは全くないとお答え申し上げる以外にありません。
  159. 小宮武喜

    小宮委員 どうせそういった答弁をするだろうということは予想しておりましたけれども、その問題はそれとしても、先ほど私が、この改正案はしり抜け法案になるということを指摘したわけですが、これは幾ら法律改正しても、その裏づけになる、今回のこの改正案についての廃油処理施設がそれに伴わなければ、実効をあげることはむずかしいと私は思います。したがいまして、この改正案の穴は、やはり廃油処理の問題が一番重要なポイントになるものと考えます。  そこで、廃油処理に関しての現行法と、それから今度の改正案の内容とはどのように、現行の海水油濁防止法と今度の改正案との内容の中で、廃油処理施設についての相違があるのか、またどのように変わっておるのか、その点をひとつ具体的に教えていただきたいと思います。
  160. 見坊力男

    ○見坊政府委員 廃油処理施設関係につきましては強化されておる、結論を申し上げるとそういうことになると思います。  と申しますのは、現行の海水油濁防止法におきましては、施設整備港に向かって航行する場合あるいは施設整備港の中で航行する場合には適用除外、なるべく海岸から遠く離れて捨てろという規定になっておりましたが、今度のこの法律では、そういう適用除外規定をなくしてございます。その点におきまして、それは規制強化であるということが申し上げられると思います。  なお、廃油処理事業者等の規定につきましては、ほぼ現行法どおりでございます。
  161. 小宮武喜

    小宮委員 たぶん、現行とそう変わっていないというふうに私も考えておるわけです。  そこで、この現行法で適用される船舶は、一般船舶の場合は五百トン以上、タンカー船の場合は百五十トン以上となっていたわけですが、今度の改正案では、一般船舶は三百トン以上、タンカー船の場合は百五十トン未満も全部適用されることになっているわけですね。そうしますと、現行法でのいままでの対象船舶は数は幾らになるのか、それと今度の改正案によって、そういった五百トンを三百トンに下げた、またタンカー船は全部適用するということになった場合の対象船舶は幾らになるのか、一般船舶とタンカーと区別してひとつ教えてください。
  162. 見坊力男

    ○見坊政府委員 タンカーと一般船舶に分けてお話しいたしますが、現行法で対象になっておりましたのはタンカー百五十トン以上、これは隻数にいたしまして千四百十五隻、これは百五十トン以上でございます。それから一般船舶でございますが、これは漁船を含めまして五百トン以上が二千五百五十二隻。そこで次は、新しくタンカーにつきましてはふえるということになったわけでございますが、ふえました分が、タンカーにつきましては百五十トン未満、つまり隻数にいたしまして千六百九十六隻、合計三千百十一隻ということになります。それから油送船以外の船舶につきましては、五百トンから三百トンに適用対象を広げましたので、それに伴ってふえます船が千九百五十隻、合計いたしまして四千五百二隻でございます。
  163. 小宮武喜

    小宮委員 いまの現行法が制定された場合に、たしかその廃油処理施設については、五カ年計画でこれを整備するということになっていたと思いますが、その計画の内容と、この前の現行法が制定された場合の廃油処理施設を、結局どこどこにどれだけつくるようになっていたのか、それで、それが現在整備されておるところは何カ所でどこどこか、また現在申請されておるものがあるとすれば、それは何カ所でどこどこか、ひとつ説明願いたいと思います。
  164. 栗栖義明

    栗栖政府委員 現行法計画してございます実施中の港につきましては、全国で三十四港でございます。個所数にいたしまして五十五カ所というふうに予定してございまして、現在でき上がっており稼働しておるもの、いま先生の御質問ございました施設整備というふうな港、告示してございます港は九港でございます。個所別に申し上げますと、千葉、横浜、川崎、神戸、尾道糸崎、土生、宇部、大分、喜入というふうになっております。  なお、現在も実施してございますので、これが施設ができ上がりますと、来年の年度末と思いますけれども、少しずれるかもしれませんけれども、来年の五、六月ごろまでにはさらに八港程度は追加して告示できるというふうに考えております。
  165. 小宮武喜

    小宮委員 これは、それでは年次計画計画的にやっておるわけですか。現在九カ所しかできていないということになれば、なかなか施設は進んでおらなかったというふうに理解するわけですけれども、そういった現在なかなか進んでおらないという理由はどこにあるのか、その点について何か理由があれば、ひとつお聞きしたいと思います。
  166. 栗栖義明

    栗栖政府委員 御承知のとおり、廃油処理施設をつくる場合に、まず場所の選定をしなくちゃいけない。それから各港ごとにいろいろと事情がございますので、港湾管理者あるいは石油精製業者なり船舶の運航業者、いろいろな方面の御意見を承って場所の調整をして計画を立てるということになりまして、しかも、こういう施設でございますので、場合によりましては、土地があればよいのでありますが、ない場合は土地からつくっていかなければならぬというところが出てまいりますので、やはり四十二年からやりまして四十四年度に、先ほど申し上げました九港いっておりますが、ことしになって告示したのがございます。二、三年かかったというのが実情でございまして、続けて来年の半ばまでには八港程度追加できると申し上げましたのも、続けて仕事をしてきたということで、これからだんだんとでき上がってくるのがふえてくるというのが実情でございます。
  167. 小宮武喜

    小宮委員 それでは、今度の改正案によって、先ほど数字が示されましたように対象船舶は大幅にふえるわけですけれども、そういった場合に、結局、従来のような廃油処理施設だけでは当然足りないことははっきりしておるわけですから、そういった意味では、今度の改正案によって、経過措置の問題もありますけれども、実際いま予定しておる廃油処理施設と、今回増加したことによってどれだけふやしたらいいと考えておるのか、またどこどこにふやそうとしておるのか、もしお考えがあればひとつ教えていただきたい。
  168. 栗栖義明

    栗栖政府委員 現在、手元にございますいろいろな統計資料を使って、机の上でいろいろ検討しておる段階でございます。これは、具体的に各港ごとにもう一度おろして計画をつくるのでなければいかぬというふうに考えてございます。御指摘のとおり、対象船舶は拡大いたしましたので、現在予定しております港よりも、さらに小さな港までそういうものが及ぶだろうということは考えられますので、一応杭上で私ども検討している段階でございますが、三十港以上はふえるんじゃなかろうかというように考えてございます。  それからなお、現在やっておる港につきましても、船の数がふえますので、現行施設のチェックはもう一ぺんしなければいかぬというふうに考えております。
  169. 小宮武喜

    小宮委員 もう現行法が制定されてから三年もたっておるというのに、まだ九カ所しか整備されておらないという問題は、この中でただ単に、つくろうとするけれども運輸大臣に申請しなければならないとかいうようなことだけでは、なかなかできぬのじゃないか。やっぱりある程度義務づけをしなければ、どうにもならぬのじゃないかというふうに考えるわけです。したがって、それは三年間たって九つくらいしかできておらぬし、来年でき上がるのもありますけれども、この法律改正されますと、それだけふやさなければならない問題も含めて、もう短期間のうちにこれをやはりやらなければ、法律だけ改正しても、結局は廃油処理施設がないから、またしり抜けになってしまうというような問題が起きてまいりますので、この処理施設をつくることについて、何らか港湾管理者あたりに義務づけをする必要があるのじゃないか。それは港湾管理者かほかでもかまいませんけれども、やはり一応義務づけをして、必ずつくらせるというようなことをやらぬと、政府が全額金も出して、あるいは長期の低利の資金を貸し付けてひとつやれというぐらいにやらぬと、これはなかなか腰が上がらぬのじゃなかろうかというふうに考えます。  そういった義務づけの問題については、今回何ら触れられていないわけですが、はたして今度の改正案だけでこの対象の——対象船舶はどんどん数がふえていく、それに対して施設が追いつかなければ、またしり抜けになる可能性がありますから、その点についての御見解をひとつ承りたいと思います。
  170. 見坊力男

    ○見坊政府委員 廃油処理施設につきましては、御承知のようにこの法案で許可制をまずとり、それから港湾管理者については届け出制、それで必要がある場合には港湾管理者運輸大臣勧告するということになっておりますが、先ほど港湾局長から話がありましたように、港別にその港の事情によりましていろいろ計画を立てておるわけでございます。  それで、港湾管理者への義務づけの問題につきましては、港湾管理者は現に地方公共団体でございます。また港湾法規定によりまして、港湾管理者業務といたしまして、廃油処理施設について他にそれを行なう者がない場合には、港湾管理者がそれを行なうという意味規定がございます。それを当然の業務といたしておるわけでございます。さらに港湾法の四十八条によりまして、重要港湾以上については港湾計画を提出させて、運輸大臣がそれを審査するという規定もございますので、この海洋汚染防止法の立て方としては勧告になっておりますが、現実には非常に強い規定でございます。そしてまた、この海洋汚染防止法で、港湾管理者に対しましては、必要がある場合には十分の五を補助するという規定になっております。
  171. 小宮武喜

    小宮委員 次に、この処理施設がかりに運輸省当局計画どおりにもし完備されたとしても、やはり問題は残るのじゃないかというふうに考えております。というのは、たとえば長崎なら長崎港にかりに一カ所の処理施設ができたとしても、特に長崎では、造船所あたりが出資をしてこれをつくろうということで現在やっておるわけでありますけれども、そうしますと、どうしても自分のところに来る修繕船等を最優先的にやる、また、特に大型船を最優先的にやるというようなことが必ず起きてくると思います。そうした場合に、今度の対象になったタンカー船は、五十トンでも百トンでも一切適用するということになりますと、こういった小型タンカーとか小型船舶はどうしてもそこの中に割り込み切れない。大型タンカーなどでは一昼夜ぶつ通しでやってもかかるわけですし、特にこういった小型タンカーあたりは、晩のうちに入って翌日は出かけていくという船がほとんどでございますから、そういった意味では、廃油処理施設が各港に一カ所ぐらい設置されても、こういった小型船舶はあと回しにされて影響が大きいのじゃなかろうか。そのことを、特に百トン、百五十トン、二百トン、こういった小型船舶の所有者である船主は、非常に心配しているわけです。  そういった意味で、せっかくこういうような改正案をつくり、それを対象とするならば、やはりそういったことが支障を来たさないように、何らかの配慮をする必要があるというふうに考えるわけですが、いままで説明をされた運輸省として、今度対象船舶がふえてきたから、そこでこれくらいの廃油処理施設を増加したいといっても、それだけで完全にそういった問題が解消できるのかどうか、そういうような懸念はないのかどうかということを、ひとつ質問します。
  172. 栗栖義明

    栗栖政府委員 御指摘の点、御心配あろうかと思います。現行の施設整備する場合も、各港ごとにやはり管理者中心にいろいろ関係方面で相談をしてきめておるわけでございます。長崎に例をとってお話がございましたけれども、造船所でもしつくっていただくといった場合も、桟橋一つであれば、大型船が一隻来ればふさがってしまう。その場合には、逆に管理者中心にしていろいろ相談をいたしまして、小型船舶用の桟橋を増設してもらうなり、あるいはビルジなんかは回収船と申しますか、そういうようなものを考えるなり、いろいろな方法があろうと思いますので、各港の実情に応じて計画をしてもらうように指導してまいりたい、このように考えております。
  173. 小宮武喜

    小宮委員 こういうような廃油処理施設を行なおうとする場合に、国の資金措置、資金援助というものはどうなっていますか。
  174. 栗栖義明

    栗栖政府委員 港湾管理者が行なう場合は、先ほど、審議官から説明がございましたように、廃油処理施設の二分の一を国が負担してございます。それから民間企業でやる場合には、現在はほとんど開発銀行の融資をあっせんしてございますけれども、所要資金の二分の一程度の融資をいたしております。
  175. 小宮武喜

    小宮委員 これは少しこまかい質問ですが、この改正案の第四条で、ビルジの排出について、一般船舶とタンカーと区別する理由はどういうような理由によるのですか。ビルジの排出はどの船舶でも同じなんですが、タンカーと一般船舶と区別した理由はどういうような理由によるものですか。
  176. 見坊力男

    ○見坊政府委員 ビルジにつきましては第四条二項でまいります。これは、タンカーであっても一般船舶であっても第二項でまいります。
  177. 小宮武喜

    小宮委員 時間がありませんから次に移ります。  第五条の「ビルジ排出防止装置」についてでありますが、新しく船を建造する場合は別として、既存の小型船に設置しようとするときは、非常に金がかかるわけですね。そういう点、特に小型船の船主というのは中小企業であるために、資金の負担に非常に困っているわけですが、こういった既存の船にこの第五条でいうビルジ排出防止装置をつける場合は、何らかの国としての資金の融資について特別な配慮がありますか、ちょっと教えてください。
  178. 見坊力男

    ○見坊政府委員 ビルジ排出防止装置につきましては、これを船につける場合には、船舶整備公団の融資対象にいたしております。
  179. 小宮武喜

    小宮委員 時間がありませんから、最後にします。  監視体制の問題ですが、この汚染防止法が成立したら、その監視体制はやはり海上保安庁でやるわけでしょうが、そういった場合に、私のいろいろ聞く範囲では、もともと現在でも海上保安庁体制が非常に弱体だということを聞いておるわけです。特にこの前でも、御存じのように東シナ海においてのいろいろな日韓漁船の紛争の問題にしても、また対馬沖の問題、五島沖周辺の問題にしても、これは海難事故、海難救助、違反操業の問題、密漁の問題、いろいろな問題が続発しておりまして、もっと海上保安庁の警戒体制を強化してくれということは、しょっちゅういろいろ要請され、陳情されておるわけですが、現在でもそういった警戒体制が手薄の中に、こういった問題までやるとすれば、海上保安庁の警戒体制というのはますます手薄になるのではないかというように考えますが、そういったことも含めて、海上保安庁は現状の勢力の中で十分やっていけるのかどうか、その点について、ひとつ最後に質問をいたします。
  180. 手塚良成

    手塚政府委員 いろいろ前提がございますので、十分か十分でないかという端的な、イエス・オア・ノーの答えがなかなかむずかしいわけでございますが、当庁といたしましては、こういった法案あるいは関係海洋に関する法案ができてきましたについて、これらの法案の施行、取り締まり、予防ということを担当することになります。現状の船艇、器材あるいは組織、人員等につきまして、それぞれ特異なケース等については、必ずしもいままでのところも十分ではないという面もございます。当面、現状の体制の中で、こういったものをどうこなすかということになります。  私どものほうでは、やはりこういう公害等については重点的に、問題の起こる海域あるいは内容がございますので、そういうところにさらに配備についての重点体制整備したい。あるいはヘリコプターその他についてもそういうことでございます。組織、定員等につきましては、これは来年度の予算でも一部増強の面をお願いしておりますし、先ほど来大原委員あるいはまた皆さん方からの多数の御声援、御指導を得ておる次第でもございますので、私どもも大いにそういった面の増強については、今後努力をいたしたいと考えております。
  181. 小宮武喜

    小宮委員 その点について、大臣に最後に一つ質問しますが、その点で、いまここで答弁することはいともやさしいことですが、現実的には、全国的に海上保安庁体制が非常に手薄だということがいわれておる中で、この問題まで監視体制をやっていくということになれば、それはどちらかの手をさかなければいけない問題ですから、そういうことでさらに手薄になるということも考えられるわけですから、そういった意味では、この際ひとつ大臣から、万々支障はありません、警戒体制は十分にやりますという御答弁を、最後にいただきたいと思います。
  182. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 実は、昨年の九月に大蔵大臣と談判をいたしました。実はYSは許可がないのです。そこで、人命救助あるいは大型船等の遭難問題、それとこの問題も当時検討を加えておりましたので、YS一機を九月に大蔵大臣と交渉しまして、国庫債務負担行為によって注文することになりました。そうしませんと、あれはなかなか手に入らないのです。注文してから一年半くらいかかる。さようなことで、大蔵大臣もなかなか理解を示しまして、YS一機を注文することを認めてもらいましたので、来年のうちにはこれが活動体制に入るということになります。私としては、足りない人員であっても最善を尽くしてこの問題を達成したい、かように考えております。
  183. 小宮武喜

    小宮委員 それでは、これで質問を終わります。
  184. 福井勇

    福井委員長 次回は、明九日午前十時三十分から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十五分散会