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1970-04-14 第63回国会 参議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月十四日(火曜日)    午前十時十一分開会     —————————————    委員異動  四月十三日     辞任         補欠選任      川村 清一君     小野  明君      渡辺  武君     岩間 正男君  四月十四日     辞任         補欠選任      吉武 恵市君     岩動 道行君      小野  明君     木村禧八郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     主 査         川上 為治君     副主査         羽生 三七君     委 員                 岩動 道行君                 杉原 荒太君                 増原 恵吉君                 山本 利壽君                 小野  明君                 木村禧八郎君                 戸田 菊雄君                 矢追 秀彦君                 岩間 正男君    国務大臣        国 務 大 臣  中曽根康弘君    政府委員        防衛政務次官   土屋 義彦君        防衛庁長官官房        長        島田  豊君        防衛庁防衛局長  宍戸 基男君        防衛庁人事教育        局長       内海  倫君        防衛庁衛生局長  浜田  彪君        防衛庁経理局長  田代 一正君        防衛庁装備局長  蒲谷 友芳君        防衛庁参事官   江藤 淳雄君        防衛施設庁長官  山上 信重君        防衛施設庁総務        部長       鐘江 士郎君        防衛施設庁総務        部会計課長    高橋 定夫君        防衛施設庁施設        部長       鶴崎  敏君        防衛施設庁労務        部長       長坂  強君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十五年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十五年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十五年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 川上為治

    主査川上為治君) ただいまから予算委員会第二分科会を開会いたします。  この際、分科担当委員異動について御報告いたします。  昨日、川村清一君が委員辞任され、その補欠として小野明君が選任されました。  また、予算委員異動に伴い、渡辺武君の補欠として岩間正男君が選任されました。  また、本日、吉武恵市君が委員辞任され、その補欠として岩動道行君が選任されました。     —————————————
  3. 川上為治

    主査川上為治君) 昭和四十五年度総予算中、防衛庁所管を議題といたします。  昨日の会議と同様、政府説明は省略して本日の会議録の末尾に掲載することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 川上為治

    主査川上為治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それでは、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 羽生三七

    羽生三七君 この前の総括質問の際に、防衛庁長官からある程度防衛問題についてお伺いをいたしましたが、二、三日前、新聞に、防衛庁長期防衛構想が一応固まったような報道も出ておりますので、これに関連して若干お尋ねいたしたいと思います。  そこで、最初に私の見解を述べたいと思うのですが、私どもが予見し得る近い将来——ここで永久ということばは使いませんが、予見し得る近い将来、日本を取り巻く国際情勢を想定した場合に、理由のない他国からの直接の攻撃侵略が起こる可能性はほとんどないんではないかと思うわけで、ここで私、絶対とか永久ということばは使いません。ただし、日本がみずからその原因をつくれば別であります。そういう原因日本みずからがつくらない限り、まずもって予見し得る近い将来、外国からの直接の攻撃侵略はほぼないんではないかと思う。そういう前提に立って考える場合に、今度、防衛庁長期構想というものを一応新聞紙上で知ったのですが、このとおりかどうかは、あとから長官からお伺いすることにして、この機会に、もし長期防衛構想というものが一応固まったとするならばお聞かせをいただきたい、こう思います。
  6. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛庁長期防衛構想は固まったというところまでまだいっておりません。この間新聞に出ましたのは、私が三月の何日かでありましたが、自民党の安全保障調査委員会へ出まして私の考え方を述べましたのを要約してまとめたものでございまして、防衛庁として正式に一つ構想として出したものではないわけです。私がこういう考えでやりたいと党に報告した考え方を文書にし、それを参考までに新聞社に配付したというのが事の実情でございます。しかし、あの考え方内容は、私が考えておる内容でございまして、それが次の段階で庁の正式の会議に付され、各段階のいろいろな討議を経てそういう防衛庁としての考え方に順次生成されていくものであると思います。目下のところはそういう状態でございます。
  7. 羽生三七

    羽生三七君 これもさきにお尋ねした問題でありますが、総括の際にお尋ねした問題でありますが、防備力限界をどこに置くかということであります。これはまあ非常にむずかしい問題で、答えられるほうも困難でありましょうし、質問するほうもなかなかこれは、どこをどう区切っていいのか、非常にめんどうな問題でありますが、しかし、日本のような特異な憲法を持つ国の場合、たとえこの憲法上の解釈に多くの相違があるとしても、与野党間に多くの違いが存在するとしても、少なくとも憲法上の制約のない国とは根本的に違うと思うのです。決してこの場合、攻撃的な兵器は持てないというだけで済まされる問題では私はないと思う。それではまた説明にもならないと思うのですね。当然これは一定限界があってしかるべきだ。そうでなかったら、特殊な憲法を持つ日本と他の国との相違というものは全然なくなるのですから、これはこの前もある程度はお伺いいたしましたし、それから自主防衛の五原則というものも長官からお伺いしましたが、限界についてはこれは明確でありませんので、この機会にひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  8. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛力限界といいます場合に、ハードウエアについていろいろ数量やそのほかのものを申し上げるということはなかなかむずかしいと思います。しかし、ソフトウエアとか、特に思想政策運用方針という面につきましては明確なものを持っておらなければならない。それで、その思想政策運用方針そういうものによって数量とか、あるいは性能とかというものをどういうふうに限定するのが正しいかということに問題は帰着していくのであると私は思うのであります。一番の基本憲法であります。それは思想政策というものの根源を明示しておるわけであります。そういう根源に立ちまして、前に申し上げましたいろいろな原則やら、あるいは考え方を実行してまいりたい、そう思っておる次第でございます。
  9. 羽生三七

    羽生三七君 精神的なものとか、あるいは思想的なもの、それを根源として問題を処理していく。数量的なもの性能的なものについて触れるのは非常にむずかしいと言われますが、それは私はおかしいと思う。どんな精神、思想に裏づけられようとも、たとえばほぼ陸についてはこの程度、空についてはこの程度、海についてはこの程度と一応の想定がなければそれは無制限と同じことになると思うのです。それで、この場合、さき総理陸上部隊については一応の限界を示されたわけです。それについて長官が、それは人員の数的なもので、質の向上は別の問題と補足されたわけです。それで、空海については一体どうなのかという問題があるわけですね。これについてもある程度説明はありましたが、また新聞等にも出ておりますけれども総理が一応陸上については十八万とか幾らとかいうような数を、いま現状程度ということを示されたわけでありますが、その場合に今度は空海についても、機数でいえば千機とか千五百機とか、船でいえばトン数ではどの程度というようなことがある程度の目標になるということが出てこなければ、たとえば何十万トンになろうと、あるいは何千機の飛行機ができようと、これは精神的にも思想的にも日本憲法に即しての自衛手段だといえばそれっきりになって、無制限と同じことになるのですから、絶対ということばはなかなか使えないと思いますけれども、一応のこの限界というものが明示されなければ、これは先ほど来申し上げるように、憲法上の制約がある国もない国も全然区別がつかないということになるのじゃないですか。
  10. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 憲法あるいは憲法からくるいろいろな制限というものが原則的にございまして、それで防衛構想あるいは政策というものが出てくるわけでございますが、そういう面で、いままで明確にしてきましたのは、憲法の命ずるところは専守防衛ということでありますから攻撃的兵器を持たない、こういうものを持たないという意味において限界を示してきたわけです。そういう点から、たとえばICBMとか、IRBMとか、あるいはB52であるとか、そういう攻撃性のものは持てない、そういう持てないものの限界でその範囲内のものという中身を示してきたわけであります。そういうようなやり方でないと、いろいろな兵器開発とか、進歩とか、それから相対的ないろいろな関係の動きとか、そういうものから見まして、これが何であるというふうに積極的に打ち出すということは時間の要素が入っておりませんから非常にむずかしい。やはり歴史の流れと同じように流れつつ防衛というものの内容も動いていくものであろう、かように考えるわけであります。それで、陸につきましては、現在の情勢では十八万人の定員というところで一応ストップして、そして内容の充実につとめる、あるいは装備品の改革というものも出てくるだろう、特に機動力を増していくということが非常に必要ではないかと思うわけであります。それから海につきましては、これは方針で申し上げたのでございますけれども、昔、戦争前、日本海軍艦隊渡洋決戦という思想で大きな船や大砲を整備しましたし、航空母艦等も整備しましたけれども、そういうようなものは持たない。むしろ自分の列島を守るという意味、それから船団護衛、そういう意味において必要なものを整備する。空におきましても同じように本土を守るという意味において足の長い爆撃機というようなものは持たない、大体インターセプトを中心にものを考える、そのほかに必要ある場合に支援的な意味の航空機を持つ、そういう思想で組み立てていくという考えに立っておるわけでございます。
  11. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、ICBMとか、IRBMとか、あるいはB52とか、あるいは足の長い爆撃機とか、そういうものが攻撃的なものであるから持てないということになると、それ以外のものについてはこれは持てるわけですが、その持てる場合の上限というものですね、これはどこまでいっても無制限ということなのか。それは相対的な問題ということについては私はあとから触れます。触れますが、いまここで言いたいことは、たとえば相手の国が非常に高速のものができたら、こっちも高速、それはわかります、こういう意味相対というものは。しかし、いわゆる力の均衡で言うような意味相対、たとえば専守防御であったとしても、そういう意味相対論で言えば制限というものがないと同じようなことになりますが、これはあとで触れることとします。そうすると、いま申し上げましたようなICBMIRBMB52、あるいは足の長い爆撃機等々、これらのもの以外は無制限ということですか。
  12. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 無制限ということばがどういうことを意味しますか、考え方にもよりますけれども、方策として核兵器は持たない。それから、たとえば原子力潜水艦のように推進力として使う場合におきましても、原子力推進力というものがポピュラーにならなければそれは使えない、そういう限度限界をいままで申してきておるのであります。それで、そういう以内のものにつきましては、これは可能性を留保しておくので、そこに国産化とか、効率的防衛力とかという概念が出てくるので、いままでの既存のものばかりに頼るのではなくて、開発可能性国産可能性というものを私はやはり非常に重視して、そしてできるだけ省力化、そして性能の精鋭という方向に進めていくべきだと思っております。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 もう新聞報道などでは第四次防だけではなしに第五次防に入った記事すら出ておりますね。そうすると、そこでこの第四次防の防衛計画が達成されて、さらに第五次防、こうなってくれば全く際限のないことになるのじゃないですか。特に四次防で五兆とか六兆とか、あるいはそれ以上になるかもしれない。それを達成して、さらに第五次防、その次は第六次防が出てくるのか。そうすれば、一体、憲法上の制約のある国ない国の区別がない。攻撃的兵器云々という問題はアメリカとの関係であるかもしれないが、これはあとで触れますが、ほとんど無制限になるのじゃないか。そうすると、限界というものはないということになるのじゃないかと思うのですが。
  14. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本防衛力がある意味において必要量——必要量と申しますか、必要性を持って国民生活との調和もとりつつ一応充実してくるという段階になれば、当然足踏みという情勢になるだろうと思います。しかし、現在の情勢を見ますと、アメリカから有償無償援助で来たもの、貸与されたものがまだ非常に大きな要素を占めているわけです。そこで、戦車にいたしましても、あるいは艦艇にいたしましても、アメリカの老朽のものを使っているという要素も非常に多いのでございまして、これを代替していくというだけでもかなりの力が要るわけです。できるだけそういうものを国産化していき、日本の力でつくったものでかえていくという方針が当然とられなければならぬわけなのであります。そういう意味で、設備の更新あるいは機器の更新という面でも若干の金はかかるのでありまして、そういう意味の経費はやはり必要であり、充足していかなければならないと考えます。  それからもう一つは、科学技術の発達に応じまして、日本自体もなるたけ人手を使わないで性能のいい科学技術を縦横に駆使した新兵器開発していくということは非常に大事だろうと思います。私は司馬遼太郎の小説が好きで、よく読んでおりますけれども、いま「坂の上の雲」というのが産経新聞に載っております。明治のときに、下瀬火薬を発明したというのがやはり日露戦争において非常に大きな力を発揮したというのを読んで、なるほどわれわれの先輩はそういうことで日露戦争を救ったという気がいたしまして、まあ兵器内容にもよりましょうけれども、やはりそういうふうにできるだけ科学技術でほかの国よりも一歩先んじたもので、あまり人手を使わないようなもので、肉弾とか、そういうものはあまり用のないようにしていくということが必要ではないかと思います。
  15. 羽生三七

    羽生三七君 私ども自身軍備に対する考え方はこれは別とします、きょうは。これは別として、先ほど来申し上げるように、ある一定の、たとえばどの程度の費用をどの程度の期間使えば、一応いまの国際情勢のもとにおいて、日本防衛庁から見た、あるいは日本国から考えた一応の防衛構想というものが達成されるか、そういうことがあれば別ですが、そうでなければ、これは国民に対して、私自身はいいのですが、国民に対してこれは責任を果たすことにならないと思うのです。だから、そういう意味で、もう少し明確にされる必要があるのじゃないかと思う。たとえば、この前も一応長官から、現在の自衛隊がどの程度の力をアジア諸国の中で持っておるかという防衛庁としての一応の説明を伺いました。私は私なりの資料をここに持っております。そうすると、第四次防、第五次防等々となっていくと、中国を除けばもうアジア最強になりますね、これは。その間に相手の国もふやすということがあるかもしれない。あるかもしれませんが、少なくとも相手の国が、第四次防、第五次防と——第四次防でかりに六兆円、第五次防で八兆とか十兆とかということになれば、そんなことができるのは日本周辺にはないと思う。だから、中国を除けばアジア最強のものになるのじゃないでしょうか。そうなるというと、いわゆる通常兵器による局地戦に対応するという自衛隊の性格をもう越えた、先ほど来繰り返して申し上げておるように、憲法上の制約の何らない国とほぼひとしい状態ができ上がるのではないか。これはもう当然だと思います。いかがでしょうか。
  16. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり、日本国土防衛するということは自衛権の発動として憲法上も認められ、かつ必要なことでありますので、その日本国土防衛するに必要なものは力として保有していかなければならぬのだろうと思います。それで、日本の現在の地政学的位置とか、あるいは客観的な位置であるとか、国内情勢であるとか、財政であるとか、あるいは国民的心理であるとか、そういうあらゆるものを総合的に把握した上で適正規模防衛力を順次増勢していくと、そういう考え方に立っておりますが、現在の情勢を見ますと、空軍におきましては、中共インドよりもはるかに落ちておる。海軍におきましては、同じく中共より落ちておるし、中華民国よりも後位にある。それから、陸軍におきましては、中華民国、あるいは韓国、インド中共、こういうものよりも兵員数においてははるかに落ちておる。こういう情勢でございまして、これから日本防衛に関するいろんな基本構想を、私、自分自身でよく仕立ててみて、その基本構想に基づいて、どういう防衛計画をどういう地域を中心にして展開する必要があるか、それにはどういう装備日本として好ましいかというようなことを再点検してみまして、そういう防衛基本構想の上に立って装備やその他も考え計画というものを策定していきたいと思っておるわけです。その一環に次の防衛計画がございますが、次の防衛計画だけにとらわれないで、全般としてこの程度ぐらいが一応の到達ゴールである、そういうようなものを一応自分でも考えてみたいと思っておるわけです。その上に立って、当分どういうふうにしていくか、そこまでいくためにどうしていくか、そういう考え方を立てながら、これは国民の皆さまや国会の皆さんからも批判を受けて、そして必要な部分は修正しつつ増勢していきたい。そう考えておるわけでございます。
  17. 羽生三七

    羽生三七君 先ほど申し上げましたように、与野党間、政府とわれわれとの間の問題の取り組み方の根本の違いは別としても、いまのようなお考えは私は正当だと思うのです、政府の立場から言えば。そうであれば、全く無制限なものになっては国民の理解を得ることはできないと思う。制限すれば、それは国民がみんな理解するという意味じゃありませんが、少なくとも憲法上の制約がある国としての一応の限度限界というものが政府みずからの手によって、たとえば、第四次防が終わった時点において空車はこの程度になり、あるいは海軍はこの程度トン数になる。しかし、相手の国が性能の強いものを持つようになれば、それはそういう性能の改良というものがあるかも知れませんね。しかし、トン数でも機数でもこれが無制限ということになれば、これは、先ほど来申し上げるように、憲法上の制約のある国、ない国の差別はなくなってしまう。ただ、攻撃的兵器を持たぬということだけです、そうなれば。それでお尋ねしますけれども、そうなるというと、日本安全保障政策軍備というものに重点を置いて考える限り、日米安保からの脱却はほとんど無限のかなたに押しやられると思う。この問題については、長官が先ごろ、衆議院委員会ですか、安保は半永久的に続くであろうということを答えられたそうでありますが、これはうそから出たまことというべきか、これは理論上は必ずそういうことになると思いますね。攻撃的兵器が持てないと。日本専守防衛通常兵器による防衛を担当して、攻撃的な兵器アメリカと、こうなれば、軍備だけが唯一の国の安全を守る手段だと考えておる限り、ほとんど半永久的に安保からは脱却することができない。これは長官がいみじくも言ったとおりだと思うのですね、理論的には。同時に、長官がこの前、伊豆下田会議で、七五年ごろには安保再検討と言われて、これは安保条約という意味じゃない、体制という意味だと言われましたが、そのことはよろしいとして、そういう伊豆の下田会議で言われたようなこととは全く逆に、ほぼ半永久的に安保から脱却できない。こういうことになると思う。この点は一体どういうことでしょうか。
  18. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 論理的に申しますと、羽生委員が申されたようなことになるだろうと思うのであります。それで核抑止力攻撃的兵力というものは日本は持ちませんし、持てません。そういう意味から、その部分はやはりこれと協調し得る国に依存するという形にならざるを得ない。で、そういう形が安全保障体制中身になってくるだろうと思うわけであります。安保条約はいろいろ歴史的因縁がありまして、二十七年、それから三十五年、それから今度の四十五年の自動継続、そういうように態様が変わっているわけでございますから、私は安保条約そのものの持っておる固有名詞というものは、あるいは弾力的運用において、あるいは将来の情勢変化に応じて変わっていくだろう、七五年ぐらいになると、日本高度経済成長の成果というものが現実的にもかなりいろいろな影響を持ってくるので、そういう意味において七十年代は非常に選択時代でもあるし、いつまでも固定的な観念を持っているべきではないと、そういう意味において、一つ選択理論的可能性について、私の提言と申しますか、私論を示したわけであります。その考えはいまでも私捨てておりません。だから、安保条約というものはいろいろ変化の対象にもなり得るだろうけれども安全保障体制という日米提携関係というものは半永久的に必要だろう。そういうように私申したのであります。ですから、条約体制というものを区別しておるわけでございます。で、その体制という場合になると、やはり太平洋をめぐって日本アメリカとの協力関係というものが現実的に出てくると思いますので、その体制というものはいろいろまた歴史的にも変化していく可能性があると思うわけです。その中に、その狭義の安全保障の体系も組み込まれるだろう、そういう気が私感じとしてしているわけでございます。そういうふうな一つの展望を頭に置きながら現実問題に対処していく。そういう考え方を持ちますと、何としても日本の場合に非常に大事なのは外交的努力である、そう思うわけです。したがって、私、就任以来、外交的努力というものを非常に重要視いたしまして、いまやおそらく、こういう核兵器を持つ時代になると、外交的破綻というものが決定的になった場合には全世界が非常に暗くなるし、人類運命にも影響することにもなって、軍事費によって救済される部分は二割、三割にもいかぬだろう、ほとんど人類運命自体の八、九〇%は外交的努力にたよってきている時代ではないか、そういう認識を持っているわけです。
  19. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、その外交的努力第一義的課題とされることには私は全く賛成です。しかし、いま御説明の中で、一応安保条約日米協力体制とを区別されましたが、しかし、条約がなければ攻撃的兵器アメリカに依存することはできないのじゃないですか。
  20. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ですから核抑止力とか、あるいは攻撃的部分というものは、やはりアメリカに依存していくという形で続けられていくだろう、こう考えておるわけです。しかし、いまの安保条約自体の内容はさまざまな内容があるわけで、また地位協定にいたしましても歴史的な性格を持っているわけです。これが十年、二十年、三十年にわたってそのまま同じ内容でいくかどうか、これはやはり両国民選択の対象になり得るだろうと思っているわけです。
  21. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、いまのようなことでいく限り、安保から脱却できる道は政権の交代か、さもなければ国際情勢が安定して、こういう条約を必要とすることのないような、そういう条件が成熟するときまで、これは安保脱却ということはほとんどないと、そういうことになるのじゃないでしょうか。
  22. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まあ国民選択ということになると思います、終局的には。
  23. 羽生三七

    羽生三七君 もちろん国民選択ですが、しかし、防衛庁長官として、最も最高の責任のある方が、自分としてはこうだという一つ考え方があってしかるべきだ。われわれはわれわれなりの考えを持っているのです。たとえば、それじゃ安保を必要とすることのないような条件をつくるには国際的にどういう役割りを果たしたらいいか、外交的な努力はどうするか、周辺諸国とどういう関係を結ぶべきか、条約上はどうすべきか、もっとありますが、きょうは質問のほうですから自分の意見は述べませんが、私はそういう問題にぶつかると思います。そういう問題に関連して、先ほどの四次防が達成されたときの時点で、アジアにおいてはどの程度の力を持ち、軍事力としてはどの程度になるものですか。まだそれは作業はできませんか。
  24. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 四次防につきましては、いまそういう基本的な構想を練っている段階で、数量的なものまで及んでおらない状態であります。
  25. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、この日本の軍事力の増強が、このアジア諸国に不信感を与えておるということがしばしば言われております。もっともその増強を希望している国も二、三あることは、これは事実であります。そういう意味で、いま長官も言われたような外交努力、あるいは科学的な手段選択と言ってもいいかと思いますが、それが必要になると思うのです。ところが、私はしばしば、この前も総括のときに申し上げたように、政府ことばの上では緊張緩和とか、あるいは軍事力以外の手段選択とか、いろいろ言われておりますけれども、実際にはこれに逆行するような政策を数多くとっておるのですね。たとえば核兵器使用禁止条約締結促進決議案、一九六七年十二月、日本は棄権、それから米ソ戦略兵器制限交渉促進決議案、日本は棄権、一九六九年、去年の十二月ですね。それ以外にも、きのうもこの点、私、分科会で外交関係で質問しましたが、この生物化学兵器の問題についても、日本はもう日本案は出しておるけれども、この日本案は逆に、いまのイギリス案、ソ連案の違いはあるにしても、自主的な禁止協定の成立をおくらせておるという批判もあるわけです。それで私、一々これ以上あげませんけれども、実際にはほとんどそういう努力が行なわれておらない。それで、そういうつまり軍事的努力以外の他の外交的手段による緊張緩和というものが並行して、いまやそれにかわるべきものとして行なわれなければならないのが、それが全然行なわれておらない。国連での軍縮活動を強調しながら、いま申し上げたように、実際には場合によってはそれにブレーキをかけるような行動をとっている。これでほんとうの意味日本の安全が達成されるのかどうか。だから、私は防衛庁長官が、本来これは外務大臣の、あるいは外務省がなすべきものであるけれども、もし、いまのような外交的努力ということを防衛庁長官がおっしゃるならば、国際的な軍縮の面などでも、私は日本防衛庁というものがもっと積極的な活動をしてもいいんじゃないかとさえ思う。外務省まかせでなしに、そういう努力があれば、それは話はわかりますが、日本では防衛庁に限らず、外務省でもいろいろな説明をされるけれども、実際国際的ないろいろな場面の中で、そういう意味の努力がほとんど欠けておるという、これでは説得力がないと思う。これは外務大臣に言うべきことかもしれませんけれども、しかし、私は国連の日本の活動を見ておってその感を深くするので、長官の御見解をこの機会に承っておきたいと思います。
  26. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 外交関係につきましては外務大臣の所掌でございますから、私がとやかく申し上げる筋のものではございませんが、やはり外交当局には現実的な諸条件を把握しながら、順次その理想の線に国際関係を持っていくについて、いろいろ苦労があるのではないかと思います。端的に直線的に理想の線に進むということはなかなかむずかしい情勢で、いろいろな国際情勢、国際関係の諸条件を把握しながら、時間をかけて忍耐強く、ある程度の迂回期間、あるいは懐妊期間、そういうものも考慮しつつ、非常にステディな形で進めていっているんではないかと私は思います。
  27. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、少し関連する他の面でお伺いしたいことは、たとえば新聞長官が発表されたといわれます一応の構想長官自身構想でしょうか。この場合、公海上での侵略排除ということを言っておられますし、これはしばしば問題になったことでありますが、この公海上という場合、領海はわかりますが、公海については何らかの限界考えて公海上と言われているのか、その辺はどういうことでしょう。
  28. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり侵略的性格が認められるという限度内における公海ということになるだろうと思います。公海といっても無限の広大なエリアを意味すると必ずしも認められない、そのときの条件によって侵略可能性が十分認められるという範囲内においてそれは考慮さるべきものであると思います。
  29. 羽生三七

    羽生三七君 あまりこういう議論は好きではないのですが、そうすると、侵略の意図が認められれば、はるかああいった他国の領域に接近することがあり得るわけですね。私はこういう議論はしたくはありませんが、しかし、事のついでですからお伺いしたい。
  30. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 論理的には日本がそのために危殆に瀕するというようなことになれば、公海上においては、論理的にそういうことになり得るだろうと思います。
  31. 羽生三七

    羽生三七君 そういうことになっていきますと、それは自分の国が自滅するのを待つことはできないと言えば、これは国民だれもがそうだということになるかもしれません。しかし、そういうことにならないためにこそ、先ほど長官が言われた外交的努力というものが必要になるわけですね。これは一外務大臣、一防衛庁長官の問題ではないと思います。それは日本政府日本国民は総力をあげてそういうことをやらなければならないと思いますが、それが日本にあまりにもなさ過ぎるということを私指摘しておるわけですね。それからこれは私の意見があまり多くなりますから、これでやめておきますが、そこで時間の関係もありますので、だんだん終わりにしていきたいと思いますけれども自衛隊による在日米軍の基地管理について、これは長官、大いに意欲を燃やされて見解を発表されたことがあるようですが、しかし、この日本防衛以外の機能を第一義としている、いわゆるアメリカの戦略基地、こういうものも自衛隊が管理するとなると、これは自衛隊法なり、地位協定など改正しなければできない。そうじゃないと、直接アメリカの作戦行動に協力することになるという見解もあるようですが、長官の希望としての米軍基地の自衛隊管理という構想と関連してどういうふうにお考えになりますか。
  32. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はやはりその国はその国民の努力によって守るべきであり、それに要する基地その他の問題は、その国民が管轄し、支配するというのが普通の姿である、こう思うわけです。しかし、日本は敗戦後完全に防衛力は解体され、そうしてアメリカに全面的に依存した、そうして独立してきたという歴史的因縁がございますから、当初におきましては、アメリカにほとんど全面的に依存して日本防衛が成立し、それを徐々に日本の力で回復しつつ自然の姿に戻ろうという努力をずっと過去二十年近く続けてきているだろうと思うのです。それで、この安保条約自動継続という情勢にもなりますれば、なおさらのこと自然体に復するという形に前進すべきであり、その一つの仕事として、基地の問題につきましても日本が自主的管理を行なって、そうして必要あらば、アメリカと共同使用なり、一時使用なり、継続使用なり、向こうと計画を調整しつつ、ある程度の時間をかけて徐々にそれを実現していく、そういう考えを持ったわけでございます。で、アメリカの基地は大体いままで攻撃部面を引き受けたという要素もございます。しかし、機能が混在しておりまして、日本防衛にもその力は役立っておるわけであります。したがって、日本防衛というものと、それからそういう混在しているものについて日本側がその基地を守っていくということは、安保条約の発動としての当然考えられることで、それはイリーガルではない。安保条約の期待していることである、そういうように私は解釈しておるわけであります。
  33. 羽生三七

    羽生三七君 それでお考えはよくわかるのですが、たとえば安保条約で基地を提供する義務を——義務といいますか、条約上の責任を負っておるという、今度はその場合に、基地からもしアメリカ攻撃が他国に加えられる場合、その場合のそういう意味の基地をも日本が管理する、自衛隊で管理するということになれば、これは条約上の責任、条約上の義務をかなり越える、つまり基地提供だけでなしに、アメリカ攻撃作戦に対しても積極的な日本の管理、関与みたいなことになるのではないでしょうか。それで長官考え方は、自主性という意味はよくわかりますが、結果的には非常に外国から疑惑を招くような、疑惑を招くというよりも、むしろ介入する端緒を開くことになるのじゃないでしょうか。
  34. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 安保条約の認めている範囲内の一つ防衛力というものを維持していく、管理していくという範囲内においては、これは法を逸脱することでもない、要するに安保条約の範囲内にあるかどうかと、そういう問題ではないかと私は思うのです。
  35. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっとその意味がわからないのですが、安保条約の範囲内にあるかないかということですか。
  36. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 安保条約の各条章に日本防衛力並びにアメリカ防衛力の機能、あるいはその協力関係が書かれておるわけです。その範囲内における問題であるならば、それは法を逸脱するものではない、そう考えるのです。
  37. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、その自衛隊法も、地位協定も改正しなくても、現行法でもできるという意味ですか、それは。
  38. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはいまでもやっていることであります。ある意味においては、日本日本独自で守っておるのですし、それは日本の基地もあるいはアメリカの基地もそれの範囲内に入っているだろうと私は思うのです。
  39. 羽生三七

    羽生三七君 これは非常に疑問の多い点ですが、時間の関係もあるので、これは他日に譲ります。  それから、非核三原則を明文化されると言われておるようですが、この前、私の質問にもお答えがありましたが、それはただ従来言われたことを文章にするというだけなんですか。何か新たにつけ加えることもあるのでしょうか。
  40. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が自主防衛の五原則として考えをお示しいたしましたときにそれが入っておるわけでございますが、私は何らかの形でああいうものを入れたほうが適当であると考えております。
  41. 羽生三七

    羽生三七君 それはわかるのですが、それはいままで言われてきた非核三原則というものを文章にするだけなのか。何かそれを、従来言われてきたことを文章化するだけを明文化と言われたのか。何かほかに考えがあってそれにつけ加えることがあるのかということです。
  42. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この前は非常に簡潔に非核三原則を維持すると申し上げましたが、非核三原則というのはわかっておることでありますから、非核三原則という名前を使って、そうしてそれを維持するというような考え方を端的に入れたらいいんじゃないかと思っております。
  43. 羽生三七

    羽生三七君 それで、時間がありませんから最後に、沖繩返還の場合、この場合に米軍の基地の数とか、面積、それから兵器の種類とか性能、軍の兵員というようなものはどういうことになるのか。これは日米間でどういう話し合いがなされておるのか。こまかい作業は今後日米の間の協議できまると思いますが、この根本的な問題、つまり事務レベルに作業をさせるための根本方針、それは一体どのようなものか。それはアメリカの欲するとおりになるのか。あるいは日本の意見が入るのか。その辺はどうなんでしょうか。実は私古い話になりますが、昨年、一九七二年に沖繩返還というが、なぜ七二年というのか、七一年でも七〇年でもいいじゃないかと言ったときに、外務大臣が、この沖繩返還についていろいろなこまかい問題があって、七二年が最短距離だということを言われておるわけですが、この日米で協議を始める場合に一応のスケジュールが要ると思うのです。その場合に、その外務関係の外交交渉はとにかく、防衛庁として一体アメリカの基地、その数、そのスペース、兵器の種類、性能、軍の兵員等、そういうものはアメリカの思うとおりになるのか。返還になるのだから日本の意見が入るのか。入るとすればどういう——特にポスト・ベトナムとの関連が沖繩におけるこの地位というものをどう想定してどういうことを考えておるのか。そういうものがあってしかるべきだと思うのですね、考え方が。だから、外務大臣の外交折衝とは別に、防衛庁としておわかりになっていることがあるならば、お聞かせをいただきたい。
  44. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私の方針としましてはアメリカ考えも聞き、わがほうの考えも十分向こうに受け入れてもらって、そうして双方調整していきたいと思っております。向こうの言ったことばかりを聞くという意味ではありません。やはり日本側の意見、考え方というものも十分聞いてもらって調整していきたいと思っております。
  45. 羽生三七

    羽生三七君 それはわかりますが、日本側の考えがポスト・ベトナムに関連して沖繩の地位というものを将来どういうふうに考えるのか。アメリカにやはり無限の——無限ということは語弊がありますけれども核兵器は撤去するにしても、どの程度の規模のものがそのまま——いわゆるそのままというのは語弊がありますが、どの程度の規模をアメリカは残そうとするのか。日本はそれを欲するのか欲しないのか、核は別ですが。そういう構想がなければ、日米間の交渉の基礎にならないと思うのです。ですから、その問題をお伺いしているわけです。
  46. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点はアメリカ側が沖繩をどういうふうに評価し、沖繩をどういうふうに活用したいと思っているか、そういう考えも聞き、わがほうとしての評価及びわがほうとしての考え方、そういうものも言い、そうして両方で計画を調整していく、そういう形であるだろうと思います。沖繩の返還は七二年といいますか、日本側としては七二年のなるたけ早い時期を希望するでしょう。そうしますと、ことしと来年一年くらいしかもう時間的余裕がないわけです。一年半くらいしかないわけです。ところが、沖繩は戦火に焼かれて土地台帳その他もきわめて不正確でありまして、あの太閤の検地みたいに、土地台帳を正確につくり上げ、境界線を明確にするということから、基地内、基地外の施設についても始めなければいけないということになります。そういうことから始めますと、かなり膨大な作業が要るのでございまして、一年半くらいの余裕も十分必要である。だから、愛知外務大臣が言ったことは、私は事務的に見ても正しいと思います。しかし、全力をふるってその作業をやりまして、なるたけ七二年の早い時期に返還を実現するように努力していきたいと思っております。おそらく大部分のそういう土地の確認とか何とかいう仕事は防衛施設庁の仕事になるだろうと思いまして、それを行なうために必要な人員や配置等についてもいま検討しております。それから、おそらく議会が終わりますれば、アメリカ当局と日本のわれわれとの間に沖繩というものに対する認識評価の問題の協議が始まるだろうと私は思います。
  47. 羽生三七

    羽生三七君 それはそういうことで、これから具体的な調査から出発していくということはよくわかりますが、アメリカのグアム・ドクトリン以後、ニクソン・ドクトリンといいますか、それ以後、たとえば従来の極東戦略と変わって核抑止力中心とする。したがって、アジアのことはアジア人にまかせるというベトナムにおけるベトナム化の問題、そういうことに関連して今後の沖繩というものは、それはアメリカの極東戦略の変化と関連していってどういう地位、位置づけというものが考えられるのか。これは私非常に重要な問題だと思います。ベトナム戦争がかりに片づいたとしても、アメリカがそこを拠点にして一体どういう態様の軍事力を維持しようというのか、それに関連して、日本の自衛力がどうなるのか、こういうことになるわけですね。ですから、その基本的なものが把握できなければ、ただ面積を調査するとか、民有地か国有地かというようなことの判定で事足りるような問題ではないと思うのです。そういう意味でお聞きしておるのです。
  48. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) われわれのほうといたしましても、たしか議会が終わりましたら、日米安保協議委員会を開きまして、そういう問題も含めて話し合いの糸口を正式につくって、それから事務的な折衝に入っていくことになるだろうと思うのです。それで、この問題は非常に重要な問題であり、将来に尾を引く問題でもありますから、非常に慎重に的確にやっていきたいと思っております。
  49. 羽生三七

    羽生三七君 これでやめますが、最後に、これは質問というよりも意見になるのですが、これはアメリカの極東にかかわる世界戦略ですが、戦略を変えて核抑止力中心とする、地上部隊を漸次本国に引き揚げていく、そうすると、私はそれと関連して、ベトナム戦争は何を教えたか。ベトナム戦争局地戦とか、限定戦と言われておりますから、もちろん核は使えない。ベトナム戦争は核は使えないということを証明したわけですね。そうすると、アジアのような特殊な地域において核抑止力と言ってみたところで、これは始まらぬのじゃないかと思う。そこで、先ほど私が申し上げたように、本格的に政府が取り組んで、アジアにおいては直接侵略という問題は私は非常に少ないと思う。その国の中の貧困、開発の立ちおくれ、そういうところに混乱が起こり、それに外国勢力が介入する、これが紛争の主要な原因になっておると思うのです。だから、そういうことを除去するために、日本政府なり、あるいは国民なりが全力を傾けて日本の周辺の安全、日本の安全ですね。国際環境というものを改善していくという努力があって初めて防衛問題でもいわゆる限界というものを最小限に押えることができると思う。それがなかったならば、私は質問の一番最初のところに戻るわけですけれども、ほとんど相対論でいけば無制限になる。これはわれわれの論理を矛盾だとよく言われるが、私はそれ以上に大きな矛盾を持っているのがバランス・オブ・パワーの論理じゃないかと思う。こっちが百を持てば相手が百五十を持つ、相手が百五十持てばこっちが二百持つ、際限のない矛盾の拡大再生産になるだけじゃないかと思う。したがって、防衛力にも憲法制約があるといっても限界がないということになる。だとするならば、本格的に日本が特殊な憲法を持つ国でもあるので、積極的に緊張緩和の役割りを、長官の言う外交手段を通じてもっとその役割りを果たすべきではないか。それがあって初めて国民も納得するのではないか。これは非常に意見が多くなりました。だが、非常にその感を深くするわけです。私はきょうはこまかい問題の質問をほとんどしませんでした。あまりにも大局的過ぎて、これは質問になったかどうか、意見が多過ぎたかと思いますが、最後に長官の感想を承って質問を終わりたいと思います。
  50. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 羽生委員が申されました考え方の御趣旨はわれわれにもよく理解できます。それで、そういうお考えも非常に大事なお考えである、そう私は心得ております。そうして、特に日本が周辺諸国を刺激して、軍備競争の悪循環のようなことが起こらないようにすることは非常に大事なことである、そういうふうに考えております。やはり外交的努力というものは一番大事なものでありまして、外交的努力あとに沿って防衛というものはいくことが正しいであろうと、そのように考えております。
  51. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 本論に入る前に、長官に一言お伺いをしたいと思います。  兵庫県における自衛隊の募集等の問題についてはなはだしく医師に迷惑をかけておる。さらにはまた、内部における募集に対する強制的なそういういわゆる募集体制というものをやられておるということが、決算委員会で問題になったようなわけです。自衛隊員の募集についていまどういう方法がとられておるのか、その内容についてひとつ御説明を願いたいと思います。
  52. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 内容政府委員をして答弁せしめます。
  53. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 内容といいますと、ちょっと私どういうふうに申し上げていいか——考えを申し上げますが、もし御質問の趣旨と異なっておれば、あらためて御答弁を申し上げたいと思います。  募集という問題は、いま自衛隊におきましては非常にむずかしい問題でございまして、御存じのように、いわゆる適齢の対象人口がだんだん減少しておりますし、他方、そういう者に対する一般企業からの求めもたいへん多いわけでございますから、そういう間において、自衛隊は大体年間三万二千ないし三万五千を対象にして募集を行なっておるわけです。もちろん陸海空の三自衛隊の所要でございます。現在それらの募集に対応いたしまして、約二倍程度の応募人員がございますが、身体欠陥あるいは知能程度、その他諸般の条件から、大体その半数ぐらいが採用に相なっておるわけでございます。今後の募集という問題は、たいへんむずかしい問題でございますが、私どもとしては、適格な人を一般国民の支持を得ながら入隊させるというふうな努力をいたしたい。こういうふうに考えておる次第でございます。
  54. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 その自衛隊員の募集要項もしくはその採用要件というものは、自衛隊の内部規約か何かで明確化されているわけなんでしょう。それはどういうことなんですか。
  55. 内海倫

    政府委員(内海倫君) もちろん私ども方針にやっているわけでございませんで、かつまた、募集につきましては、自衛隊法に基づきまして、地方自治体である都道府県あるいは市町村もまた自衛隊の募集に関しましてはその仕事を持っておるわけでございますから、これらと一体になった仕事のできるような募集要項を定め、それらに基づいていろいろな募集条件、たとえば身体的条件あるいは知能条件等も定めまして、募集をやっておる次第でございます。
  56. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 もう少し明確にお答えを願いたいのですがね。私たちがいろいろと地方で知っている範囲では、いま自衛隊員の募集時期がまいりますと、市町村を通じてビラを配付したり、あるいは係員が当該家庭に訪問をして、そして勧奨しているという、あるいは学校へ行ってそういうことをやっている、こういうところまでいっているのですね。その中には全く自衛隊と無関係の人もおります。今度の場合は、何というか、自衛隊員にも一定の募集割り当てをやって、これが強制的、たとえば国鉄等で観光旅行その他で団体募集をやっている、こういうような方式をいまやっているのではないか、そういうことを一体知っているんですか、どうなんですか。
  57. 内海倫

    政府委員(内海倫君) ただいま申しましたように、募集は市町村あるいは都道府県及び自衛隊、両者で行なっておるわけでございますが、都道府県なり市町村のほうは、もっぱら広報宣伝というふうな面において力をいたしており、実際の募集業務というものは、自衛隊の組織であります都道府県に置かれております地方連絡部というものが主体になって募集に当たっております。  具体的な募集の状況でございますけれども、もとより、たてまえとして、徹底した募集広告、募集のPRというふうなものによって、どんどん事務所のほうに参ってくれるのを待っておるというのであれば一番いいわけでありますが、現状におきましては、やはりそれだけでは所要人員を満たすということは困難でございますから、許される範囲において学校等にも働きかけ、あるいはまた、家庭の了解を得るということもきわめて大事であります。また、家庭のほう側に十分自衛隊の実態というものを了解してもらって、その子弟を入れてもらうということも必要でございますから、必要によりましては、家庭への働きかけ、こういうこともせざるを得ない、またしなければならない、こういうふうなことで、いろいろな方策を用いて募集をいたしております。ただ、しかし、それにいたしましても、限度を過ぎるということはいたしてはいけないことでございますから、十分それらについては注意を喚気いたしておるところでございます。
  58. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 具体的に聞きますが、その法的根拠は何ですか。たとえば地方で、地方連絡部を通じて各市町村等が家庭まで訪問してやっているというその法的根拠。  それから、いまの自衛隊員の不足は、陸海空含めてどういう状況になっていますか、教えてください。
  59. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 法的な根拠は、自衛隊法に、自衛隊がみずから自衛隊員の募集に当たり得るという根拠があるわけでございます。ただ、さらにその募集の方法、内容ということになりますれば、おのずから限度がありますかわりに、同時にその限度内においては必要な方法というものはこれを採用していいのではないか。こういうことで、その限度内における家庭の訪問、あるいは学校に対する働きかけというふうなことも実施しておる、こういうことでございます。  それから、現在の陸海空、各自衛隊の欠員の状況を申し上げますと、まあ欠員といいますか、逆に充足の状況でございますが、本年の二月末日現在、陸上自衛隊が定員十七万九千に対しまして現在員十五万五千四百二十一名、率といたしまして八七%の充足、欠員が二万三千五百七十九名。海上自衛隊の定員は三万七千八百十三名、現員が三万五千四百五十六名、充足率は九四%、欠員が二千三百五十七名。航空自衛隊は定員が四万一千百八十三名、現員が三万九千四百六名、充足率は九六%、欠員が千七百七十七名。以上が充足の状況でございます。
  60. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 私の前段の質問は、その法的根拠は何かと、自衛隊法だと何条ですか、これをもう一回教えてください。  それから、いま現に、二月現在でもって陸海空それぞれの自衛隊員数というものを御発表願ったのでありますが、非常にこの不足を来たしておるわけですね。で、私たちは基本的に、党としては自衛隊を認めておりませんが、そういう中にあって、百歩譲って、これらのことを考えてみても、当面、昨年も増員をし、今年度も増員をしているわけですけれども、そういうことをやる前に、当然やっぱり打つべき手としては、完全充足に向けて第一段階とるべきじゃないか、こういうふうに考えるわけですがね。その辺の見解はひとつ防衛庁長官にお伺いをしたいと思います。
  61. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自衛隊の充足は、七〇年代の経済成長等を考えますと、かなり困難もございますけれども、しかし日本防衛自体も、国の機能として非常に重要なことでございますので、待遇の改善、教育の徹底というような、あらゆる面に努力をいたしまして、充足していくということにまいりたいと思うわけです。定員の充足率の問題を見ますと、空と海におきましては、外国に比べますとかなりいい率にもきているのです。陸がいま申し上げましたように八七%程度でございますが、この面につきましては、ある程度努力をいたしまして、充足率を上げなければならぬと思います。充足率を上げて定員を確保するということに努力をすべきでありまして、その間に間隙があるからといって、縮小するとか、あるいは萎縮するという考え方は、これは適当でないと思うものであります。
  62. 内海倫

    政府委員(内海倫君) ただいまの御質問の法的根拠でございますが、自衛隊法の第三十一条に「隊員の任用、休職、復職、退職、免職、補職及び懲戒処分は、長官又はその委任を受けた者が行なう。」、こういうことが一つ根拠としてございます。さらに三十五条に、「隊員の採用は、試験によるものとする。」、以下そういうふうな諸般の規定、それから「試験及び選考その他隊員の採用の方法及び手続に関し必要な事項は、総理府令で定める。」、こういうふうな規定がございます。さらに雑則におきまして第九十七条で募集事務の一部委任「都道府県知事及び市町村長は、政令で定めるところにより、自衛官の募集に関する事務の一部を行なう。」、「長官は、警察庁及び都道府県警察に対し、自衛官の募集に関する事務の一部について協力を求めることができる。」、「第一項の規定により都道府県知事及び市町村長の行う事務並びに前項の規定により都道府県警察の行う協力に要する経費は、国庫の負担とする。」、これらが、ただいま申されました法的根拠であろうと思います。
  63. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 ただいまの問題は本題でありませんので、十分ひとつ要望しておきたいことは、    〔主査退席、副主査着席〕 強制的な募集や、法律に違反したような背反行為というものがないように今後ともやっていただきたいと思うわけです。  それで、防衛庁長官にお伺いしたいと思うのでありますが、四十四年度で陸上自衛隊十八万に対して、いま発表になったような不足があります。さらにこの陸海空の自衛隊等を含めますと、二十五万をこえる自衛隊員が充実されているわけでありますが、なおかつ、財政面では第三次防衛力整備計画、これに約二兆三千四百億ですね。引き続き四十七年から第四次防衛力整備計画考えられる。こういうことになってまいりますと、おおむね想定をいたしますに、今後の防衛費総体予算というものは年間一兆円を出てくるのではないか。そういう結果、世界的にも米ソに次ぐ第三の軍事力、こういうものを持った日本というものができ上がってくるのではないか、こういうことが推測されるのでありますけれども、こういう見方に対しての見解をひとつお伺いしたいと思います。
  64. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 米ソに次ぐ戦力というようなものにいくかどうかは、私は疑問だろうと思います。やはり西独あるいはフランス、そのほかの国々を見ましても、大体年間予算にいたしまして五十億ドル以上の金をずっと注いできております。日本はようやくことしが十五億八千万ドルでございまして、その程度になってきたわけでございまして、過去の蓄積等を見ますと格段の差がございます。そういう面から見まして、その上さらに日本の場合は、警察予備隊以来アメリカから貸与され、有償、無償できた武器が相当ございます。これらがいまでもやや骨幹兵力になっているわけでありまして、それらがもう老朽化し陳腐化してきておるわけです。それらの第二次大戦のときにアメリカが使った老朽兵器更新するということもあるのであります。これが非常に大きな要素を私占めているだろうと思うのです。そういう意味におきまして、米ソに次ぐ大きな軍事力になるというふうなことは、私は考えられないと思っております。
  65. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 第三次防衛力整備計画が現在進行しておるのでありますが、その中心は一体何でしょうか、さらにこの達成率は現在どの程度までいっておりますか、それが第一点であります。  第二点といたしましては、ファントムF4Eというジェット戦闘機ですね。これが昨年の予算で見ますと百四機購入予定になっているのでありますが、この購入の現在の進行ぐあいについてお知らせを願いたいと思います。以上二点。
  66. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 三次防の目標と達成状況という第一点のお尋ねでございますが、一般的に申し上げますと、   〔副主査退席、主査着席〕 国防の基本方針にのっとりました限定された通常兵器による局地戦に対応し得る防衛力を整備しようということで、三次防の整備目標ができておりまして、その達成状況の概略を申し上げますと、陸上自衛隊から申し上げますと、十八万目標に対しまして、四十五年度の予算までを全体入れまして申し上げますと、この場合十七万九千人でございます。予備自衛官が三万九千人に対しまして三万六千人、基幹部隊としましては五方面隊十三個師団、これは五方面隊十三個師団を維持できます。航空部隊四個部隊に対しまして、四十五年度で三個部隊までできます。  それから海上自衛隊でおもなものを申し上げますと、自衛艦、約二百隻、約十四万二千トンに対しまして、隻数は約二百隻程度で変わりませんが、トン数にしまして十三万七千トン程度、航空機は二百二十機程度の予定のところ、現在四十五年度で二百五十機程度でございます。  それから航空自衛隊は三次防末で約八百八十機を予定しておりますが、四十五年度で九百三十機程度に相なります。ナイキ部隊を四個隊編成する予定のところ、四十五年度までで三個隊というのが大体の達成状況でございます。  なお、これを経費的に申し上げますと、全体の計画は二兆三千四百億、それに上下幅二百五十億ついておりますが、そのうち四十五年度までの実績が一兆八千五百六十三億円でございます。もっとも、いま申し上げましたこの四十五年度まで一兆八千何がしの数字にはベースアップ分が入っております。これが約千三百億ばかりになります。最初に申し上げました二兆三千四百億にはベースアップ分が入っておりませんので、これを引いて比較をいたしますと、つまり引きますと、実績が一兆七千三百億ばかりになります。二兆三千四百億の中の四十五年度までの計画は一兆七千七百六十億ばかりになります。そういう数字で比較をいたしますと、達成率は九七・二程度の達成率になっておるというのが三次防の大体の進捗状況でございます。
  67. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 ファントムF4ジェットの購入。
  68. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) ファントムは、昨年の国防会議で百四機を五十年度までに整備することになっておりまして、四十四年度予算では、そのうちの第一次分として三十四機分の予算をいただいておりますが、それが約六百九十二億でございますが、その契約をこの三月に関係の企業と終了いたしました。機体が三菱重工、エンジンが石川島播磨重工その他、搭載機器を十数社との契約を完了した状態でございます。なお、計画の概要は、四十六年度に二機完成品が参りまして、あと四十七年度で残りました八機を勉強の意味で、部品を入れましてのノックダウンの過程を経まして、四十八年度で残り二十四機を入れるという計画でございます。
  69. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 時間がありませんから、いま説明受けた内容でもそうなんですが、問題は、いまアメリカではもうすでにこのF4Eのファントムジェット戦闘機というのは第一線に用が立たない、もういわば中古品だといっているんですね。もうすでにソビエトのミグ23に対抗するのにはF15ですか、この生産に取りかかっているんでしょう。それを日本の場合は、第三次防衛力整備計画を通じて、いま発表あったように、四十七年までに十八億円ないし二十億円もする高額な飛行機を購入していかなければならない、そういうふうなわけはないと思うんですね。その辺の見解、防衛庁長官、どういうふうに考えておられますか。これはもうアメリカでは中古品に入っているんですよ、F4Eジェット戦闘機というのは。もうすでにF15に取りかかっている。もうソビエトのミグ23には対抗できないといって、新兵器をつくりかけているんですね。そういうものに対して、日本はのうのうと中古品をいまだに第三次防衛力整備計画で四十六年まで買っていくというのでしょう。そういうことは、一体時代感覚としてどうなんですか。
  70. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 性能につきましては、政府委員に答弁させます。
  71. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 第二線機といいますか、中古品というようなことでファントムのことを仰せられましたけれども、まあ軍事常識的に見ますと、まだ中古品というふうには少し言い過ぎではないかという感じがいたします。現在の第一線機であり、第一流機である。それからさらに、当分の間、防空戦闘機として一流のものであろうというふうに考えられます。  お話に出ましたミグ23に対抗するために、確かにF14ないしF15の開発に取りかかったようでございますが、これは開発に取りかかったところであって、まだ現実のものにはなっておりません。数年あるいは数年後におきましてはそういうことが、F14ないし15が世界の戦闘機として、こういう開発に成功すれば一流のものになるであろうということは想像されますけれども、その時点においても、世界的に見まして、ファントム戦闘機というものは相当に戦力を持ったものであり、かつ、わが国の防空力として過不足のないものであろうというふうな見方をわれわれしておるわけでございます。
  72. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 ただいまの答弁ですが、ことばじりつかんで申しわけないのですが、もうすでにソビエトのミグ23というのは、はるかにF4Eジェット戦闘機よりも高性能アメリカもそれがわかっているんですね。そしてもう生産に着手している。これは会社の名前までわかるんですが、時間がありませんから読みませんけれども、そういう状況の中で、もうすでに今後二年間も日本としてはこの飛行機を購入していかなければならないという硬直した計画内容というのは、私は全くそこは官僚だと思うんですね。もう少し、やっぱりいま技術開発その他、あるいは兵器生産というのは、すべての高度の科学兵器がそこに集中されると思うんです。少なくとも日進月歩、そういう状況だと思うんです。そういうときに、日本が依然としてこういう中古品を十八億ないし二十億出して買わなければならないと、そんなばかなことはないと思うんです。もうすでにこれはアメリカから中古品でいま買うとすれば、アメリカの飛行機会社じゃ十一億ないし十二億で購入させるといっているんじゃないんですか。そこら辺どうですか。
  73. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) F4Eを購入することにつきましては、一応輸入する場合、国産する場合、その価格の比較はいたしました。当然、第一線機の戦闘機でございますし、激しい訓練に耐えるために、当然国内にその整備能力を持たなければならぬということを勘案いたしまして、輸入する場合でも相当の価格が要るという結論で、技術導入して、ライセンス生産するという結論を出したわけでございます。
  74. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 だから、いま日本の生産としては三菱重工に発注して、ライセンスの生産をやっているわけでしょう。しかしアメリカ自体の飛行機の生産会社から買えば十一億ないし十二億で済むというお話があるのです。それはあなた方から聞いているのですよ。そういう関係はどうなるのです。明確に答弁してください。
  75. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) こまかい資料を持っておりませんが、アメリカからただ買ってまいりますれば、たとえば十二億七千万円あるいは十三億円という価格で入ってまいると思います。しかし、毎日の訓練の中で整備をする必要がある。そのふぐあいが出た場合に対策を講ずる必要がある。そういうような問題を考えますと、国内にもまた修理、整備能力を持つ必要があろう。その点を勘案しましてまいりますと、ただ持ってきて運航するというだけではまいりませんので、そういうようないろいろな試算をしました結果の結論が、国産することが最も望ましい、それが価格的にもいいという考え方で決定したわけでございます。
  76. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 国内の軍需生産部面を育成強化する、こういう点についてあとで質問してまいりたいと思うのですけれども、しかし、いま現にこういう中古品を、貴重な国民の税金を使って、一機十八億、二十億もする飛行機を、あえて将来の見通しのないもの、こういうものに金を使っているという考え方がどうも解せないのですね。いまお答えのように、それが単に日本国産化のために金を使っていく、そんなばかなことはないのです。もう少しやはり切りかえを早くして、いままでずっと発注してきた各般の兵器をつくる工場は一ぱいあるわけですから、そういうことで切りかえる必要があるのじゃないかと思うのですがね。防衛庁長官、これはどうですかね。
  77. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 飛行機のようなそういう高性能のものを買うという場合には、これは原子炉なんかの場合も同じでありますけれども、プルーブンということが非常に大事だと思うのです。つまり性能が証明されて安定性を持っているということが非常に大事であるわけです、買うほうの場合の立場を見ますと。そういう意味でプルーブンという点から見ますと、それをつくっている国より少しおくれるということはやむを得ない。そういう面からファントムを選び、しかも、それをできるだけ国産化しつつあるということは、賢明なやり方だろうと思います。これは中近東の国々で、工業生産力のない国でしたら、飛行機を買ってきて、それにすぐ乗るということも考えられましょうけれども日本のようにこれだけ相当高度の工業技術能力を持っておる国の場合には、その技術が、たとえライセンス生産であろうとも、ほかに応用されて、新しいアイディアを生んでいくという可能性が非常にあるわけであります。そういう目に見えない広がりを持っているという面を考えてみますと、ライセンス生産という方式のほうを日本としてはとるべきである。ちょうどそれは原子炉の国産化につきましても、アメリカ型のプレッシャータイプ、あるいはイギリス型のガスクールとか、いろいろなものを入れておりますけれども、みんなこれはプルーブンを入れて、そうしてライセンス生産で国産化している。それでまた、日本国産原子炉をつくる意味で非常に大きな力の媒体にしているわけであります。同じような意味があるだろうと私は思います。
  78. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 時間もありませんから、   〔主査退席、副主査着席〕 詳しくは聞いておるわけにいかないのでありますが、このライセンス生産をやっているんですから、当然アメリカの機械導入をして、その上に立って組み立てをやると、こういう程度なんですね。もちろんその中には、そういうものを購入して、そうしてさらに改良を加え、技術開発をやっていくと、そういう面もあるでありましょうけれども、しかし、そこまでやって、なぜ一体三菱重工なんかを育成強化していかなきゃならないのか、なぜ一体そこまでやって国内の国産化体制というものに急速に移行しなくちゃならないのか、これは明らかに政治的判断だと思うんですが、いかがですか、そこら辺は。
  79. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり防衛能力という場面を考えますと、兵器国産できる能力というものも、非常に大きな防衛能力でありまして、そういう国産能力を順次培養していくという意味において、当初は高性能のものをライセンス生産しながら、ノーハウを順次マスターしていくという形が賢明なやり方だろうと私は思います。そうして、それによって工業的蓄積あるいは技術的蓄積をつくっていくということも、将来長い目で見た場合に非常に大事であるだろうと思うわけであります。
  80. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 航空自衛隊の場合ですね、先ほど航空自衛隊の現在員を発表していただいたわけでありますが、御存じのように、定員充足はされていない、こういう状況でありますね。加えて、いま自衛隊の飛行士が非常に不足をしだした。結局つくった飛行機に全体が乗り得ない、こういう状況があるように聞いているんでありますが、ことに今後練習機としてXT−2、これは複座式ですね——そういうことになってくると、ますます飛行士養成について不足を来たしてくる。一面飛行機は導入していく、つくっていく、こういう形からふえてきます。そういうものがただ遊んでいる。こういうむだな現象というものがあると聞いているんでありますが、その辺の見解はどうですか。
  81. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 航空自衛隊の充足は、他の自衛隊に比較してわりあいよろしいほうでございます。その中のパイロットにつきましても、現在はファントムまだもちろんございませんで、御存じのF104が主力戦闘機、さらにF86Fという戦闘機を持っておりますが、これに対するパイロットにつきましては、別に不足は感じておりません。数字的に申し上げましても、必要量のたしか一五〇%程度の人員を持っていると思います。したがって、現在はパイロットの不足ということはございません。将来のファントム戦闘機、逐次これが整備されていくわけでございますが、もちろん、現在の86なり104のパイロットそのままではファントムをうまく操縦するというわけにいきませんので、教育が必要でございます。ファントムを購入すると同時にそのパイロットの養成計画も、それにそごのないように同時に計画をいたしまして、ファントムができ上がるにつれてそういうようなのを充てていくという計画をやっているところでございます。
  82. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 四十三年から自衛隊と民間航空会社の間で、年間三十名あて民間航空会社に派遣をいたしましす、こういう計画のあることは御存じのとおりです。しかし、現実これは三名しか行っていないんじゃないですか。これは結局飛行士、パイロットが足らないということじゃないですか。これは民間航空会社に自衛隊から派遣するという、そのこと自体も多くの疑問がありますが、きょうは時間がありませんからそこまでいきません。その点は一体どういうふうに理解をされておりますか。
  83. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 民間航空会社と自衛隊の航空搭乗員の問題につきましては、両者でもって十分運輸省を仲介といたしまして協定をいたしておりまして、大体年間における割愛の数量を定めまして、これに基づいて自衛隊は民間会社に対して搭乗員を割愛いたしております。両者ともにその協定に基づいて満足し得る状態で割愛をいたしております。決して自衛隊の搭乗員が数が少ないから、そのために民間のほうに割愛ができないというふうな状態ではございません。
  84. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 四十三年、四十四年の実績を示してください。
  85. 内海倫

    政府委員(内海倫君) いますぐここに、手元に資料を持ち合わせておりませんが、すぐ後刻調べまして御報告いたします。
  86. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 その契約どおりいかなかったという理由は、いまお聞きしたのですが、ちょっと不明快なので、もう一回聞かしてください。
  87. 内海倫

    政府委員(内海倫君) もう一度申しますと、民間航空に対します自衛隊からの搭乗員の割愛につきましては、運輸省を中心といたしまして、年間大体どの程度の人が割愛できるかという数最といいますか、人員を予定いたしまして、それに基づいて計画的に割愛をいたしておるわけでございます。先ほどの民間航空会社への自衛隊搭乗員の割愛の状況でございますが、昭和四十四年度におきましては、いわゆる普通の飛行機、固定翼でございますが、これが二十二名、それからヘリコプター、回転翼、これが一名、計二十三名を計画どおり割愛しておりますし、これは四十四年十二月三十一日現在ですけれども、それで三十七年から四十四年の年末までの割愛いたしました総数をいえば、固定翼で二百七名、回転翼で三十名、計二百三十七名、こういうことに相なっております。
  88. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 いずれ機会があったときにその協定内容については詳しく話を聞きたいと思うんですが、次に移りますけれども、産軍の複合体制について若干私は質問したい。時間がありませんから、資料を私読みますけれども、間違っておったら指摘願いたい。  一つは、自衛隊防衛産業の就職者の問題であります。最高が三菱重工十五名、これは四十四年現在であります。十五名。それから三菱電機は九名、日立製作所七名、日本電気が六名、石川島播磨が五名、川崎重工五名、東芝五名、新明和が五名、日本製鋼が五名、こういうことになっているんですね。で、この自衛隊のかっての高級幹部、こういう人たちが非常に多く就職をしている。  もう一つは、防衛庁調達の実施本部の企業別契約、これを見ますると、三十九年度から四十三年度の五カ年計画で、契約会社の三菱重工が一兆九千四十三億円、三菱電機が五千三十九億円、石川島播磨が三千七百三十三億円、川崎重工三千六百五十八億円、東芝が二千百三十二億円、日本電気千八百四十三億円、内容いろいろありまするけれども、主として三菱重工はF104ジェット戦闘機の生産、整備、61式戦車、こういうものが主となっているのでありますが、こういうことでいきますと、どうもいまの兵器発注のケースというものが、一つは米国務省、日本防衛庁、そうして米兵器のそれぞれのメーカー、三菱重工、これを中心に進められているんですね。さらに、いまこの三菱重工に対しては、かっての日本の軍事兵器廠ですね、そういう意味までいわれている時代なんですね。なぜ一体この一中心主義に、ここへいかなければいけないか。おととしバッチシステムの発注問題についてたいへんな世論を騒がした汚職問題が発生をした、そういう会社と、いま現に発注先の契約会社との間にいろいろな問題が出ているのであります。そういう問題が今後起こらないように十分配慮すべきだと思うのでありますが、防衛庁長官には何らかの妙案というものを、いま対策として考えられておりますか、どうですか。
  89. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 三菱系統に発注がある程度集まりましたのは、当時受注能力が三菱にありまして、ほかの会社にそういう技術能力その他が著しく劣っておったか、なかったという歴史的理由があるようです。自来できるだけ競争原理を導入いたしましてやらせるように、われわれのほうも指導いたしております。ただ航空機とか、あるいは一部の兵器類につきましては、ライセンスの問題がありまして、そういう意味アメリカの親会社との技術提携という面で、ライセンスの関係から系統ができてくるということもやむを得ない事情としてあるようです。しかし、私は着任以来、できるだけ競争原理を導入するようにという方針を示しまして、努力しておるところでございます。
  90. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 では、最近の五カ年間における防衛費総額、これは大体どのくらいになっておりますか。第一次防衛力整備計画、第二次、第三次、第四次を含めまして、どのくらいですか、年間、単年度の予算も含めまして。
  91. 田代一正

    政府委員(田代一正君) 防衛関係費の四十年度から申します。昭和四十年度で補正後で三千五十四億、四十一年度で補正後で三千四百五十一億、四十二年度で三千八百七十億、四十三年度四千二百十八億、四十四年度が補正後で四千九百四十九億、四十五年度は御案内のとおり当初予算で五千六百九十五億でございます。
  92. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 年次計画です。一次防から。
  93. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 長期防衛計画の経費を申し上げますと、第一次防は四千五百三十二億の計画でございまして、過去のことでございますので実績が出ておりますが、それに対しまして実績を申し上げますと、四千七十四億円でございます。御参考に達成率を申し上げますと約九〇%になります。それから第二次防が、これは計画額が一兆一千六百三十五億円、実績は一兆三千二百十九億円、これはベースアップが実績に入ります。計画には入っておりませんので、ベースアップが千八百九十四億円入っておりますので、これを差引いて比較いたしますと、達成率は九七・三%。三次防につきましては、先ほど申し上げましたような数字でございます。
  94. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 いま発表願いましたように、各一般会計予算から見た場合でも一兆五千億程度、あるいは第一次防衛力整備計画から第四次防衛力整備計画まで、われわれの聞く範囲では五兆円になるだろう、こういうわけです。そうすると今後、現在進行しているのは二兆三千四百億、一次からの計算は十兆円に近い、十二兆円もの膨大な金を使ってやっているわけです。こういう趨勢でいっているから、われわれが調べた範囲では、ここ五年間の統計でいきますと、世界で五位以内に入っている、こういう理解をするのであります。その辺は間違いありませんか、どうですか。
  95. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 世界で五位とおっしゃいましたのは、経費的な意味の比較でおっしゃられましたように聞こえましたが、さようでございますか。
  96. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 あなたのほうの外国の比較がそれなら、それでけっこうです。
  97. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 国防費のほうの比較で申し上げますと、五位ということではございませんで、資料によりますと、一九六九年度の比較で申し上げますと、日本の場合は四千九百四十九億で、世界の十三位に相当いたしております。
  98. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 あと五分しかないですから残念ですけれども、いずれにしても、最近の日本軍備力増強政策というものは非常に高額になっている。対世界の比較においても、非常に高位にそれぞれランクされるという状況にまできているわけですね。いろいろありましょう。それはもう、こういうふうに高成長の時代だから、わずかに一%以下じゃないかというようなことも、いろいろあるようでありますけれども、いずれにしても、軍備増強政策をとるということは、過去の歴史からいって、やはり高額になっていく性格のものなんだと思うのです。そういう道筋をいま日本は歩いている。こういう歩いている根源は、かってニクソンが大統領に就任した際に、今後の地域安全保障というものは、これは地域内における持てる国が負担をしてもらうのだと、ぬけぬけと言っているのです。これを受け継いで、中曽根防衛長官自主防衛力の整備強化を言っている。佐藤総理は愛国心の高揚をうたっている。総体的に世論構成をして、いま日本軍備増強政策にもう一押し進んでいる、こういうのがいまの実態じゃないですか、どうですか、防衛長官
  99. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自分の国を自分が守るということは、今日の国際社会におきましては当然のことでございまして、日本は敗戦以来特殊な環境に置かれまして、むしろ普通の状態でない状態であったと思うのです。それを、ようやく自然体に回復していくという過程でわれわれは努力しているのでございまして、何もほかの国に脅威を与えるような身分不相応の大きなものを持とうという考えではございません。日本のこの情勢に適合した、モディストな防衛力をつくりあげていこう、そういう考えに立っているのでありまして、軍国主義の復活とか何とかいう、そういう海外情報が日本に入ってきているようですけれども、それは全くの誤解であると私は思います。
  100. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 もう一点だけ最後にお伺いしますが、これは今年度の予算で詳しく聞こうと思って準備してきたのですが、一つだけ、私の予算内容を見る限りでは、海軍、これに重点を置いて今年度の予算というのは使われていくというふうに、たとえばDDH、これはヘリコプターつきの護衛艦でありますが、これを一隻建造する。あるいは潜水艦、魚雷艇、揚陸艦、これはLSTですが、こういうものを新たにつくる、あるいは掃海艇二隻、総体で二十隻程度のものをつくるわけですね。四十四年度では十七隻つくられているわけです。こういうことで、海軍力の強化ということで非常に大きく歩み出しているように考えるわけです。これは新聞や何かに報道されているように、今後石油資源を確保するにはマラッカ海峡の防衛をやらなければならない。そういうことになりますと、インドシナ半島にああいうふうに見られる戦火拡大、こういうものと何か日本自主防衛とのかね合いの間で、どうも日本のいまの軍備増強政策というのは、それに中心を置いてやられるように考えられる。この辺のかね合いは一体防衛長官、どういうふうにお考えですか。
  101. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまお述べになりました艦種をごらんになりましてもわかりますように、本土防衛の範囲内に適合している艦種でございますので、外に向かって攻撃的性格を持っているものではないわけです。今後もそういう日本の国情に合った防衛的な艦種を整備していこうというのでございまして、昔、旧帝国海軍がやったような艦隊渡洋決戦をやるとか、あるいは太平洋支配とか、そういう考えは毛頭ございません。また、マラッカ海峡まで船団護衛の手を伸ばせというような一部の議論がありますが、それはばからしい議論であると私は申しております。それは日本防衛方針を、先ほど申し上げたような考え方に立ってやろうと思っておるからでございます。
  102. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 ごく簡単に一問だけ。それは自衛隊におられる方々は、普通の公務員と違って、訓練その他日常の業務に従事する場合でも非常に危険に遭遇する場合が多い。そうして現実にまたその危険が発生して、生命身体に、つまり死傷者を出したという場合がよくあるんじゃないかと思うんです。その場合に対するあとの始末といいますか、救済的な措置ですね、これが実際上従来足りないというか、十分でないうらみがあったように思う。これにはいろいろな事情がありましょう。予算関係もありましょう。これはしかし、実際は非常に隊員の士気ということに関係があるし、それから幾ら予算の編成に、防衛庁でうたっておられる人間性の尊重、そこまで言わんでも、これはとにかく、どうしてもこのままじゃいかぬという状態にあったと思うんです。そういう点はしかし、私が申すまでもなく、防衛庁のほうでは改善の努力をしておられると思うが、今度の予算で一体どれくらいその点の配慮が行なわれたかということが一つ。  もう一つは、そういう点の改善のためには、単なる予算措置だけじゃなくて、新たなる立法措置を必要とするような状態にあるのかどうか。  この二点だけをひとつ簡潔に答えてください。
  103. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま御指摘のことは、まさにそのとおりでありまして、われわれも、事態を何らかの方法によって改善しなければならぬことであると思っております。たとえば、先般習志野の空艇団で演習中落下傘が開かないで公務殉職した自衛官がございますけれども、あの人に対する賞じゅつ金その他全部合わせましても、たしか四百万前後であったろうと思います。それはたしか賞じゅつ金が百万程度で、あとは保険、共済の費用というようなもので複合されて、たしか四百万ぐらいであったろうと記憶しております。これは交通事故による見舞い金やあるいは補償金よりもはるかに現実は低い状態であります。公務殉職者がそういうような待遇を受けているということでは、士気を上げるわけにはいかない、こういうような事態については、できるだけ早期に改善をしてまいりたいと思っておるわけです。ただ、警察官とか消防とか、そのほかのものとの均衡の関係がございまして、その点は内閣において統一をとってもらわなければなりませんけれども、いずれにせよ、現在の交通事故その他に由来しますそういう補償関係と比べてみますと、著しく均衡を失しているように思いますので、事態を改善いたしたいと思います。  今度の予算内容につきましては、政府委員から御答弁を申し上げさせます。
  104. 田代一正

    政府委員(田代一正君) ただいま長官からもいろいろ御説明いたしましたように、ことしの予算一つの目と申しますか、それを隊員の人間尊重ということに置いたわけでございます。従来ともすれば防衛庁予算と申しますと、大体装備関係中心になって予算が始まり予算が終わるというのが通例でございましたけれども、ことしは中曽根長官の御意向も非常にございまして、アクセントを人間の尊重ということに置いたわけでございます。そのためには、一つは隊員の処遇改善ということで准尉制度を設けるとか、あるいは被服費に……(杉原荒太君「私の質問に対する答えだけ簡単に」と述ぶ)本年はそういうことで予算を組んでまいったわけでございますけれども、今後とも予算の……(杉原荒太君「私の質問に答えなさいよ」と述ぶ)そういうことでやってまいりたいと思います。かように考えております。
  105. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大体大まかに申しますと、隊員の処遇改善のためにふやしましたパーセンテージは、昨年に比べて約二〇%ぐらいであったと私は思います。それで具体的には被服あるいは耐寒訓練の費用、あるいは夜食の給与あるいは営舎費の引き上げ、あるいは寝具の改善、照明、毛布、そういう具体的な問題についてこまかく今度は改善をいたさせました。そのほか、官舎、兵舎の整備等につきましてもかなりの金額を配当いたしました。  以上でございます。
  106. 羽生三七

    ○副主査羽生三七君) 杉原さん、いいですか。
  107. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 いや、まるっきり。そんなに広く士気高揚全般のことを聞いているんじゃない。さっき言ったじゃないですか、それだけでいいんですよ。死傷の場合についての具体的の措置について答えりゃいいんですよ、あなた聞いたでしょう。私は、それだけ答えりゃいいんですよ。
  108. 田代一正

    政府委員(田代一正君) どうも御質問の趣旨を誤解いたしまして、いまお尋ねになったような関係で出てまいります予算の科目といたしましては、一つは公務災害補償費というのがございます。これは三億七千万組んでございます。それから次に特別弔慰金というのがございます。これは一千万、それから賞じゅつ金、これは二千万というぐあいに組んでございます。
  109. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それは立法措置関係からいえば、別に従来の改正などをしないでも実施は可能なようなことですか、どうですか。
  110. 田代一正

    政府委員(田代一正君) これは予算執行のもちろん前提といたしましては、防衛庁の内規がございますけれども、内規に従って予算を支出する、こういうかっこうになります。
  111. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 わかりました。
  112. 羽生三七

    ○副主査羽生三七君) 午前の会議はこの程度といたしまして、午後一時再開することとして、暫時休憩いたします。    午後零時七分休憩      —————・—————    午後一時六分開会
  113. 羽生三七

    ○副主査羽生三七君) これより予算委員会第二分科会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方はどうぞ順次御発言願います。
  114. 小野明

    小野明君 四月の十二日の毎日新聞ですが、長期防衛構想防衛庁として固まった、こういう報道がされておるのでありますが、この内容というのはどういうことなんですか。
  115. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 新聞報道されましたのは、私が、三月十九日であったと思いますが、自民党の安全保障調査会で話をいたしました私の見解に多少手を入れまして、それを参考のために新聞社のほうに配付した、そういう内容でございまして、きょう午前中の会議でも御説明いたしましたように、まだ防衛庁として正式の考え方として発表したものではなく、私がこういう話を自民党の調査会でしたと、御参考にまで配付したものであります。
  116. 小野明

    小野明君 しかしまあ、長官のお考えということになりますと、四次防、五次防、こういう内容も出ておるわけなんですけれども、長期にわたる防衛構想というものがこの線に沿いまして実現がはかられていく、こういうことに間違いはないのではないか。
  117. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あれは私が個人的に考えて、それを党に対して、党員としてこういう考えでやりたいがどうですかと、また自分はこういう見通しを持っています、そういう報告をした内容でございまして、しかし防衛庁長官中曽根康弘は同じ人間ですから、党員と。ですから、いずれ防衛庁考え方の重要な資料にはなっていくだろうと思うのです。ああいうものも一つの資料として入り、あるいは部内の専門家その他の考え方も資料として入り、それらが防衛庁内部におけるディスカッションを経まして庁の考え方としてまとまっていくものであるだろうと思います。
  118. 小野明

    小野明君 そうしますと、自民党のほうでこういう発表をされまして、おそらく了承を得られたのではないかと思うのですが、それが庁なり政府構想として固まります時期というのはいつごろになるか、あるいはその内容について相当な、何といいますか、変更が加えられるものであるかどうか、そういう点はいかがです。
  119. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あの内容は、四次防にかけての日本基本的なものの考え方一つの基礎資料になると思いますので、情勢判断とか、限界とか、そういういろいろな問題につきましては、四次防にいずれ庁で議論の上反映してくるものだろうと思われます。
  120. 小野明

    小野明君 そうしますと、この四次防の構想ですが、これはいつごろまとまる見込みですか。
  121. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大体四次防は、来年の夏ごろ国防会議で決定していただく考え方で進めたいと思いますので、ことしの秋ごろ防衛庁考え方をきめたいと思いますから、夏ごろ前ぐらいまでに基本構想はまとめなければいけないだろう、こう考えております。
  122. 小野明

    小野明君 そこで、この四次防衛想について、三次防と異なる点というのはどういう点でしょうか。
  123. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点はいま検討している最中でございます。やっぱり三次防というものは、日本の基幹防衛力の整備のまだ骨みたいなものがかなりあると思いますし、それから米軍から貸与されたり援助された兵器類の代替という、国産化という問題もございますし、そういう要素は実際まだかなり大きく動いておると思います。そのほかに、自主開発であるとか、あるいは自衛官の採用の問題、そういう新しいいろんな問題も出てくるだろうと思います。
  124. 小野明

    小野明君 それで、これはもういま言われるのは、四次防の純粋な装備だとか、そういうものの内容ですが、この四次防の経費について、日本兵器工業会はGNPの四%にせよ、あるいは自民党の安保調査会というのは何ですか二%にせよと、いろいろ構想があるようですが、それは大体幾らぐらいを構想されておるんですか、あるいはまたどういう基準でその経費というものをはじき出そうとなされておるんですか。
  125. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 経費につきましては、いままで国防の基本方針に国力、国情に応じてということばがございましたが、国力に応じてということになると、GNPに比例するというような考えも出てくるおそれもあり、そうなるとかなり大きなものに将来成長していく可能性もないとは言えないわけであります。そういう意味において、いろんな国策とのバランスをとるということが非常に大事になると思います。特に社会保障費あるいは教育研究費あるいは公共事業費等とのにらみ合わせということも非常に大事な要素になるだろうと思いまして、そういう政治的配慮を加えながら規格をきめていきたいと思います。まだ金額その他きまっておるわけでありません。
  126. 小野明

    小野明君 まあ国力に応じておきめになると、こういうことのようですが、これはまあ総理の答弁にもありましたように、国力、国情に応じて云々と、こうあるわけですね。それで、その辺の基準の取り方というものは、いまの御説明では不十分だと思います。再度ひとつ御説明いただきたいと思います。
  127. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 昭和四十五年度予算、いま御審議願っている予算は三次防の延長でございまして、いままでの原則が生きているわけでございます。しかし、四次防になりますと次の時代のものになりますから、いままでのそういう基準でいいかどうか、これは検討を要するものだと思っているわけです。その中で一つの検討すべき場所として国力、国情に応じてということばがある。そして、特に国力に応じてということになると、GNPに正比例するというような考えを持つと、それは非常に大きな数になるおそれもある。したがって、その点は検討を要すると、そういうことを申し上げておるわけです。GNPに正比例していくという考えでは必ずしもないという意味でございます。
  128. 小野明

    小野明君 そうすると、GNPに必ずしも比例をしない。しかし、そのあとに続いております、国情に応ずるという点の、経費面から見る基準の取り方というのはどういう意味ですか。
  129. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国情ということばがどういう意味ですかはっきりいたしませんが、このことばも非常に抽象的で、非常に広がりを持って、解釈によって右でも左でもとれるわけです。自民党は三百議席取ったから、それじゃ国情がこういう状態だからという判断もできますし、京都知事選で負けたから、これは自民党の人気は落ちておるんだから、国情は変わるということもありますし、そういうようなものにとらわれることはいささかどうかとも思われます。やはりある程度多角的に合理的な基準をもってやる必要もあると思います。そういう意味に応じて、国力、国情という抽象的なことばがはたして妥当するかどうか、それは検討を要すると思っておるわけです。
  130. 小野明

    小野明君 そういたしますと、国情というのは、これはまあそのときどきのつけ足しみたいなものであって、一応の基準になりますのは、やはり国力、すなわちGNPの比率をとっていく、こういう考え方が正鵠を射ていると、こういうことになりましょうね。
  131. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり憲法並びに他の諸政策とのバランスというものがあるだろうと思います。
  132. 小野明

    小野明君 それからですね、この長官長期防衛構想、これは長官だけのものではないと思いますが、もうなくなっておると思いますけれども、これの基礎になります国際情勢の分析、特にアジア情勢の見方、こういうものについてはどのように見ておられるのかお伺いしたい。
  133. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大体安保調査会の報告の中にも書いておきましたが、世界大戦はないだろう。それで、大国の間には核抑止力がやはりきいて、核手詰まりの状態が続くであろう。ただし、その局地的な紛争、代理戦争、そういうようなものはあり得る。アジアにおいても同様である。それで、日本の問題を考えてみますと、この条件が大きく変化しない限り、舳艫相銜んで日本に本土侵攻をやるというような、そういうようなケースは考えられない。あり得れば、やはり間接侵略的な要素が非常に多いだろう。そういう意味において、われわれは国民のコンセンサスを非常に重要視する。それとやはり、長期的、平均的に、歴史的に考えられる日本一つ防衛構想といいますか、防衛の基準的な考えも考慮に入れて整備していく、そういうことを申し上げたのであります。
  134. 小野明

    小野明君 これは新聞報道ですけれども、間接侵略というものを重視をされまして、反乱分子に地方政権を樹立させた上に、これを外部から支援する形をとるだろう。こういう内容が書かれているわけなんです。これに、いまの御説明にもよりますと、そういう点に非常に重点を置かれているかのような印象を受けるわけですが、この点を再度御説明をいただきたいと思います。
  135. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは、もし万一何らかの理由で日本の国内治安が乱れたり、国情が騒然となるというような場合が起これば、反乱分子に地方政権を樹立させた上で、これを外部から支援するという形が考えられる。アジアにおける情勢を見ると、やはりベトナムにいたしましても、その他の場所にいたしましても、内部の民族抗争という形を実際はとっておるのが現実でございます。そういう意味において、私が特に強調したいのは、ナショナル・コンセンサスをつくり上げるということは日本のような場合には非常に大事である。そういうことを強調する意味もあって、また外部からの沖繩上陸作戦とか本土上陸作戦みたいなああいうものが連想されるような形の戦争の形態は目下のところはないだろう、そういう、何と申しますか、一応の見通しと申しますか、理論的に考えられ得る一つのそういう展望みたいなものの意味で申し上げたのであります。
  136. 小野明

    小野明君 私がお尋ねしておりますのは、地方政権という意味ですね、そこにはっきり書かれておるとすれば、これは一体どういうことなんですか。
  137. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは国際法的意味における地方政権という意味では必ずしもなくて、たとえばラテン解放地区とか、東京で三派全学連が騒いでカルチェ・ラタンをつくろうとか、そういうようなことばがあったり、赤軍が考えているようなことなんかもいろいろ報道されておるわけであります。したがって、実証的に散見しているものを見ると、あり得ればそういうようなものが種になって出てくる危険性があると考えているわけであります。
  138. 小野明

    小野明君 どうもわからぬですが、反乱分子という、たとえば赤軍派というようなものが地方政権を樹立するという可能性なんかあるわけですか。
  139. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまのところはありませんけれども、治安が乱れ、国内が騒然としてきたという場合に、つまり政治が失敗した場合には、ないとも言えないと思います。
  140. 小野明

    小野明君 その地方政権というのは、一体、まだ長官の御説明でも私わからぬですが、ずばり言ってどういうものですか。
  141. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それほど深く分析して考えたわけじゃありませんが、要するに、外から舳艫相銜んで上陸作戦を敢行してくるような形でなくて、国内の反乱というものが導火線でいろいろな間接侵略あるいは間接侵略的な様相が出てくる可能性というものを例示的に示したのであります。具体的にどの地方にどういう好戦団体が生まれるとかなんとかいうことを特に言ったわけじゃございません。
  142. 小野明

    小野明君 地方政権すべてこれ反乱分子というふうに見られておるんじゃありませんか。
  143. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう意味じゃありません。地方公共団体とは意味が違います。
  144. 小野明

    小野明君 どうもこういう表現は、日本に当てはめた場合に一体どういうことになるのか、さっぱり理解ができぬわけですが、もう少しわかるようにひとつ御説明いただけませんか。
  145. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 要するに、国内治安が乱れ、人心が騒然としてきたりして、国が著しく乱れた場合に、一応理論的に可能性もあると見られている一つの表現としてこういうことばを使ったとお考え願えれば幸いです。
  146. 小野明

    小野明君 それからいま一つの表現の中に、公海・公空上で侵略を排除する、こういう表現があるわけですね。これは従来の方針と異なるのではないかと思いますが、この点はどうですか。
  147. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 従来と変わったわけではありません。スクランブルをやっているのは、やはり日本の防空の意味でやっておるわけであります。あれは公空の上でやっておるわけであります。それから海上にいたしましても、領海だけで侵入を排除しようと考えてきたわけでもございません。やはり本土防衛というものを中心にいたしまして防御、ある意味においてここからは許すべからざる限度であろうと思う範囲内において、空においても海においても防衛の力を発揮しなければならぬという場所はあり得るわけであります。そういう意味において公空ないし公海、公空ということばがあるかどうか知りませんが、そういう意味で申し上げたのでございます。
  148. 小野明

    小野明君 この公海・公空上というのは、やはりそこでやられておるものをこれは侵略であると断定することはなかなか困難であると思うのです。それで、あえてこの場合において排除をする、こういうことを入れられた意図というのはどういうものですか。
  149. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは本土防衛に緊切な関係があって、自衛権発動の時期とも関係いたしますけれども自衛権発動の時期がきたと見られる場合には、これは公海においても、あるいは領空以外、他国の領空は別でありますが、そういう自分の領空以外においても自衛権発動は可能なのであります。
  150. 小野明

    小野明君 それから、長期防衛構想といいますか、背景になります安保条約ですね、これについて長官は選挙前にたしか、七五年くらいには安保を廃棄して云々、アメリカとは経済文化の交流の域にとどめる、こういう話を発表されたと思うんです。ところが、安保条約については、長期堅持、あるいは堅持、いろいろ考え方があるようでありますが、一体どういうふうにお考えなのかお聞かせをいただきたい。
  151. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 昨年の九月、日米民間人会議で申しましたのは、現在の安保条約というのは歴史的にいろいろ変化してきた。昭和二十七年当時、独立したときは、ほとんどアメリカの力が一〇〇%に近く日本を守っておった。そして日本はほとんどゼロに近い力であった。しかし、その後国力の回復に応じて、昭和三十五年に安保の改定をやって、そうして裁判権を回復するとか、あるいは事前協議を設けるとか、内乱条項をやめるとか、あるいは期限十年を一応設定するとか、そういうふうに日本の発言権の回復を考えてそこへ前進してきた。今度十年たって四十五年六月二十三日に自動延長されるわけですけれども、その上はやはりその延長線でいかなくちゃならぬ。つまり、日本の発言権を回復して、自主性を回復するという努力がその上においてもなさるべきである。したがって、その後においては、自動延長後は安保条約を弾力的に適用する、そうして事実上そういう方向に努力していくことがいいだろう。しかし、七五年くらいになると、日本のGNPは戦争でもなければ四千億ドル前後になるという数字もあって、そうすると日本の地位もまた変わってくる。この六月の自動延長で国民の意識も相当変わるでしょうし、それから七二年に沖繩が返ってくればまた国民も意識が変わってくるでしょうし、それから経済成長というものが加わるとまた変わってくるだろう。そういう変化も踏まえながら七五年、一応七十年代の半ばごろと考えて言っておったのでありますが、安保条約がいまのままでいいかどうか点検してみる必要はないか。しかし、日米間の相互安全保障体制は必要だろう。しかし、そのことは、何も必ずしも現行の安保条約をいつまでも墨守していくという関係ではあるまい。これを発展的に新しい形、新しい日米親善提携関係をつくっていくということは必要じゃないか。ちょうど三十五年に新安保条約で代替いたしました、そういう意味で、日本の発言権をさらに回復した形のものがもし可能であるならば検討してみる必要はないのか。そういう理論的可能性について問題提起を行なったのが私の発言なんであります。そういう考え方というものは、私はいまでも持っております。しかし、内閣の一員として、また自民党の党員として、やるべきことは党や内閣から一定限度がございますから、自分のそういう考えをいますぐどうこうということは申しません。しかし、個人的にはそういう考えは持っていて、七〇年代は、総理大臣でも、非常な選択可能性時代である、そうも言っておるのであります。いつまでも旧套墨守しておる必要はない、常によきものへわれわれは前進していく努力を重ねていくべきであろう、かように思っております。
  152. 小野明

    小野明君 自主的な体制と言えば、安保条約を破棄することが一番よろしいわけですね。しかし、長期堅持と言い、あるいは堅持と言い、このことはかなり長官のいまの考えとは異なっておるように私には理解がされるわけです。それで、一体長期堅持あるいは堅持と言うが、これの期間といいますか、これはそのときどきの検討もあるでしょうけれども、いまの時点での想定というものはどういうふうにお考えになっておるか。
  153. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、日本がいまの憲法を守って維持していくとすれば、やはり核抑止力及び攻撃的兵力というものは日本は持たないで、米国に依存する以外にないと思うのです。したがって、いまの憲法を守っていくということになれば、やはり日米間のそういう核抑止力攻撃要素における安全保障体制というものは、条件変化がない限り半永久的に必要になるだろう、理論的に私はそう思っております。しかし、その内容については、安保条約といういまの履行している固有名詞のついたもののみにこだわるというものでもありますまい、時代変化によって、その提携の態様は両国民選択によって変わる可能性はあると思うのです。そういう弾力性を持って進むことが政治的には賢明ではないかと思うわけであります。
  154. 小野明

    小野明君 今度の予算のきまり方にいたしましても、防衛予算というのが一番先に、五千七百億でありますか、一七%余りの増ということで決定をされている。まあそういうことを反映しておるかどうかわかりませんけれども、今回の周恩来総理が朝鮮を訪問いたしましたね、その際、中朝共同コミュニケ、こういうものが発表されておりますが、これは以前からもそうなんですけれども日本の軍国主義の復活ということに極端に警戒をしておる、警告をいたしておるわけですね。で、長期防衛構想、あるいは予算の優先的な増というものに対して、まあこういったアジアの諸国に一つの大きな脅威を与えておる、こういうことが言えると思うのですが、こういう点についてはお考えいかがですか。
  155. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先般の中国周恩来総理と金日成北鮮首相との共同声明は新聞で拝見いたしましたが、あの考え方は誤解であると思います。まことに遺憾でございます。けさの新聞でしたか、共産党の宮本書記長ですら、日本に軍国主義が存在しているということはない、しかし危険性はある、その防止に全力を注ぐのだと共産党でも言っていらっしゃる。この共産党の考えでも、私はまだまだ不十分であって、事態認識が十分でないと思いますが、日本共産党の皆さんですらそういうお考えを持っているのでございまして、軍国主義発生というような危険性、存在の危険性というものは絶無である。共産党のお話の中にもたしか、日本憲法によって、徴兵もやらないし、外国へ兵を送るということもやらないのだ、そういうおことば新聞に見えておりましたけれども、それは全くそのとおりであると思います。その点については同じであります。
  156. 小野明

    小野明君 この軍事費の増大という点を、先ほど長官は、国力あるいはGNPその他の事情を勘案してと、こういうふうに言われておるわけですね。もちろん憲法上の制約という話もされているのですが、憲法上の制約というもの、あるいはこの九条のいろいろな要素における解釈ですね、これを長官はどのようにお考えなんですか。
  157. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自主防衛の五原則の中で私が第一に取り上げましたのは憲法を守り国土防衛に徹するということばでありまして、憲法を守って専守防衛という防衛のやり方に徹していきたいと思うわけでございます。
  158. 小野明

    小野明君 専守防衛と言われますし、先ほどの長官のお話の中にも、攻撃的兵器あるいは防御的兵器と、こういうふうに区分けをしておっしゃられたようでありますけれども、そういった兵器についてそういう区分けができるものかどうかですね、この点をひとつお尋ねしておきます。
  159. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一応はできると思うのです。まあいわば戦略的に考えまして、ICBMとかIRBM、あるいはB52であるとか、あるいは攻撃的空母であるとか、こういうものは外に対して攻撃的な脅威を与える要素はございます。しかし、それ以外に日本が持とうとしているようなものは、これはそういう脅威を与えない、防衛に使われる。しかし、戦闘の場面になれば、あるいは戦術的に見れば、それは攻撃性も持つわけです。つまり自分を防御するというのは攻撃しなければ防御になりませんから、そういう戦術的な意味においては攻撃性もありましょうけれども、戦略的意味考えてみますと、外の領土に行ったり外国を威迫したりする道具にはならない。そういう意味で、一応の区分けはできるのじゃないかと思います。
  160. 小野明

    小野明君 まあ憲法上の制約というものを重点的に私考えたいと思うし、長官が言われたナショナル・コンセンサス、こういうこともこれを得たいと言われるけれども、これは現に私は憲法ということであるではないか、こういうふうに申し上げたいのですが、いかがでしょうか。
  161. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 憲法を守って国土防衛に徹するという線にぜひナショナル・コンセンサスを各党の間でもつくっていただけば幸いであると思います。
  162. 小野明

    小野明君 しかし、現実に日米共同声明あるいは日米安保条約というものがアジアの近隣諸国に脅威を与えている。あるいは日本の軍事力の増と防衛力の充実というものがアジアの諸国に脅威を与えている。現実に脅威を与えているではないか。こういう客観的な事実について、これを脅威を与えないように緩和をしていく、こういうお考えはないのですか。
  163. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 現在の安保条約や佐藤ニクソン共同声明等につきましては、政府政策、それからそれを運用している実態等をお考えいただけば、外国に対して脅威を与えるようなものではない、そういうように私は解します。
  164. 小野明

    小野明君 どうもこの点は見解の相違ということになるようですけれども、あながち私はそうとばかりは言えない事実があるのではないかと思うのです。  そこで、時間がありませんから、施設庁長官にお尋ねをしてまいりたいと思います。駐留軍労働者ですね、全駐労が最近ストライキをきめたようですが、これについての事情を一応御説明願いたい。
  165. 山上信重

    政府委員(山上信重君) 全駐労が今回ストライキをきめたという事情につきましては、これは御承知のように、ことしの初めから駐留軍従業員に対しまする整理が、一月から六月までの間に五千百八十人、相当の数に達しておるわけでございますが、それに対しまして、全駐労といたしましては、この従業員の解雇の撤回もしくは延期というような点を要求。それから、駐留軍の従業員の整理にあたりまして、事前調整期間というのをなるべく長期に設けるということがございますが、それについて、私のほうで申しております三カ月間の調整期間というものを契約によって確定してほしいという点が第二。それから第三点としては、特別給付金という制度がございますが、それに対する特例措置を実施してほしいということ。それからもう一つは、雇用安定法を——これは議員立法で出されておりますが、これを制定してほしいというようなことを要求いたしておるのでございます。  これらにつきまして、御承知のように、駐留軍従業員の解雇は、これは米国の国防費の削減というようなことにもよりまする、米軍としての世界的な方針一つにもなっておりまするので、この整理は実施をせざるを得ない。ついては、政府としては、これらについて、従来からも、駐留軍従業員の転職を円滑にするために、いろいろ、退職金の増額であるとか——これは一昨年実施いたしました。それから特別給付金を昨年の四月から大幅に増額いたしまして、従来の三倍程度に増額いたしたのでございますが、そういったような増額措置を講じ、あるいはまた調整期間の問題につきましては、極力九十日以上の期間を置くようにということで日米間の了解を見ておるのでございまして、さらにこれらについては、契約の中にできるだけ規定をしたいということで米側と折衝いたしているような実情でございます。それからまた、駐留軍の従業員の再就職のあっせんにつきましては、これらを主要業務とする離職センター等に対する補助等も本年度予算をもって実施いたしておるのでございます。したがって、従来からもいろいろな意味で雇用安定法のねらいとするところと趣旨を同じうするものを行政的な面で実施できるものはやってまいったということでございます。ただ、ただいま申しましたような、全駐労といたしましては、いま申したような四項目ということで実施してほしいということで、ストライキをいたしたいということを通告いたしてきている次第でございます。
  166. 小野明

    小野明君 長官説明を聞きますと、ストライキが起こるような説明じゃないわけです。何もかにもしてやっておるというふうな説明であって、何も対立がないような感じを受けるわけです。ですから、どこが対立しておるのか、その問題点を説明してもらわぬとわからない。それを説明してもらいたい。
  167. 山上信重

    政府委員(山上信重君) ただいま申した撤回ということについては、先ほど申しましたように、できないという点がございます。  それから延期という点につきましても、これまた、現在すでに発出されたものについては、延期は困難でございます。調整期間をとるということにつきましては、われわれも努力いたしておりまするし、今後できるだけ長い調整期間を置くようにしたいということでございますが、これまた現在のものを延期は困難である。  それから第三番目にございます特別給付金の問題につきましては、全駐労側は、これを一律に特別給付金の特例措置を講じてくれということでございますが、私どもといたしましては、この特別給付金の特例措置というのは、御承知のように、昨年の十二月に非常に大量の人員を非常に短い期間に整理をする——四十五日ないし五十日程度の非常に短い期間で整理通告がございました。これに対処するために昨年限りの措置として実施したということであるので、これを今後の整理にそのまま応用するということは困難であるということでございますので、その点が意見が違っておる。  雇用安定法につきましては、これは国会への提出の問題でございますので、私のほうの話の問題ではございませんので、特段と申すことはないのではないかというふうに考えます。
  168. 小野明

    小野明君 一つずつ申し上げますと、新聞に出ております内容は、解雇予告は三カ月前に必ず提示をせよ、この点はすでに合意を得ているのだ、こういう内容であります。すでに合意を得ているとすれば、必ずこの解雇予告の三カ月——私はこれは六カ月ぐらい置かなければいかぬと思いますけれども、この点がどうして守れないのか、いかがですか。
  169. 山上信重

    政府委員(山上信重君) 解雇の調整期間につきましては、現在契約改定というところまでは至っておりません。契約にその旨を明記するというところに至っておりませんで、日米間の話し合いで、極力三カ月以上にするようにするということでの了解ができておるのでございます。これに沿いまして、昨年は、昨年の十一月十二日に実施いたしました整理については、非常に短い期間で全員を整理したのでございますが、本年に入りましての整理につきましては、五千百何人のうち四分の三程度の者は、その調整期間以上の期間を置いているわけでございます。ただ、一部に調整期間に満たない者がございます。これも非常にわずかの日数が満たない者と相当満たない者とございますが、一部にそういう者があるということでございますが、日米間の話としては、必ず全部にということにはなっておりませんので、極力米側としても努力した結果ということであって、その点については、したがって、これを全部そうするということはいま困難な状態にございます。われわれといたしましては、今後これらは契約改定の線に持っていくということは望ましいことだとは考えておりますので、今後の努力として、契約改定についてさらに努力は続けてまいる、かように考えておる次第であります。
  170. 小野明

    小野明君 一部少数であれば、日本側としても、長官としても、一応合意は成り立っているわけですから、これを強く押すべきではないかと思いますが、いかがです。
  171. 山上信重

    政府委員(山上信重君) この点につきましては、再三米側とも、私みずからも、また部下の職員、部長以下も、米側と折衝いたしておるのでございますが、遺憾ながら、今日までの実情におきましては、これ以上に縮めるということはむずかしいのが現状でございます。
  172. 小野明

    小野明君 なお、特別給付金ですね、これは昨年末そういう措置がなされているとすれば、やはりこれは一種の既得権的なものとも考えられますし、この点についても長官としては努力すべきではないかと思いますが、できないですか。
  173. 山上信重

    政府委員(山上信重君) 先ほどお答え申し上げましたように、その気持ちにおいてはよくわかるのでございますが、昨年の場合は、非常に短い期間で全員を整理した、しかも多量に、かつ年末においてこういうような大量の整理を実施せざるを得なかったということでございまするので、昨年限りの特別の措置ということで実施いたしたのでございます。その場合に、今後できるだけ長い調整期間を置くように努力するということでございまして、今年に入りましてからの分は、全員にそういうようなことにはなっておらない、多数の者は長期の調整期間を置いて、一部まだ短いのはございまするが、そういったような実態でございまして、昨年とことしとでは背景も違いまするし、条件もいろいろ違うというようなことでございますので、政府部内におきましては、これの処置としては、これを昨年どおりにするということはきわめて困難な実情にあるということを申し上げざるを得ないと思うのでございます。
  174. 小野明

    小野明君 困難ではあるでしょうがですね、何とかこの点を再度御努力をいただきたい。それから、九十日に満たない場合に、その不足日数について賃金を支払う、こういうことはできませんか。
  175. 山上信重

    政府委員(山上信重君) 従業員に対する給与の支払いということは、たてまえとして、形式的には私のほうで支払っておりまするが、この給与は米軍から実質出ておるわけでございます。したがいまして、これらにつきましては、日米間で労務契約というものができておりまして、この線に沿いますと、整理された者に対するさらに賃金を払うということはできないというたてまえになっております。
  176. 小野明

    小野明君 最後に、防衛庁長官にお尋ねをいたします。この軍事基地の問題ですね、ニクソン大統領の宣言によって、海外軍事基地の縮小整理、日本にもその影響があらわれておるのですが、長官の、いつか覚えませんけれども、言によりますと、これは返還されたものは自衛隊で使うのだと、こういうようなことを見たことがございます。それで、いま問題になっておる駐留軍労働者、これは特に再就職、あるいは基地の平和転用によって雇用の安定をはかる、あるいは地方自治体に払い下げて公害に悩む都市生活を豊かなものにしていくとか、こういう平和利用という面をやはり強く考えていかなければならぬし、労働者の大量整理をこの雇用の安定に使う、こういう方向に大いに私は意を用いてもらわなければならぬと思いますが、基地の返還あるいは転用についてどのようなお考えを持っておられるか、お伺いをいたします。
  177. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 将来基地が自衛隊の管理のもとに移るとかあるいは返還されるとかという場合には、その基地基地のケース・バイ・ケースによりまして、十分慎重に考慮してまいりたいと思います。軍事的に使う必要がないものは民間にお返しするというのが一応のたてまえではないかと、そういうように思います。なお、雇用の安定問題につきましては、最大の努力をして、従業員の皆さまに不安を与えないように努力しなければいけない、そのように思っております。
  178. 小野明

    小野明君 終わります。     —————————————
  179. 羽生三七

    ○副主査羽生三七君) この際、分科担当委員異動について御報告いたします。  ただいま小野明君が委員辞任され、その補欠として木村禧八郎君が選任をされました。     —————————————
  180. 岩間正男

    岩間正男君 先ほど中曽根防衛庁長官の発言の中に、わが党の宮本書記長のことばを引き合いに出して、いかにも軍国主義の危険のないような発言をされておりますが、これは非常に趣旨が違っておりますね。こういうことを言っているでしょう。現状では軍国主義は全面的に復活しているとは見ていない。しかし、これは軍国主義復活の危険がないということじゃない。これは、これに対する民主勢力の戦いがあって、そしてまあ徴兵制や海外派兵がこういうような現状では、全面的に復活しているとは見ていないので、この危険性については十分にこれは指摘していることで、そういうことですから、先ほどのあなたの発言からいくと、何か共産党の宮本書記長ですらということで、いかにもそういうことを、軍国主義の復活については、これは別に危険がないようなことを言ったような印象を与えるような発言をされておりますが、取り消しを願いたい。違いますよ。記事をあなた十分読んでいられないので、読み方を誤って、都合いいようにこれは曲げています。この点、はっきりしてください。
  181. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は非常に注意して発言いたしましたので、軍国主義については危険性がある、それで自分たちは努力してそれの発生を防止するのだ、そういうことを——速記をお調べになればわかると思います。そういう意味で私が申し上げましたことを、宮本さんのお考えとそう違っていないと思うのです。私がそういうことを申し上げましたのは、北鮮や中共に対しても独自の見解を持っていらっしゃる共産党に対して少し評価するところがあったから、そういう発言があったのであります。
  182. 岩間正男

    岩間正男君 もう一言やると、宮本書記長すらということばで、いかにも軍国主義の復活がないような印象を与える発言について、指摘しておる。それは速記であとでやってもいいが、この点ははっきりさせておきます。
  183. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、自主防衛というものの性格と、それから防衛関係について伺いたい。  まず最初に、アメリカが一九七一年度の予算防衛費を削減したのですね、それをどういうふうに評価するかですね、それが私は日本防衛あるいは防衛費等に影響が出てくるのじゃないかということが考えられますので、この点御質問するわけなんです。
  184. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) アメリカはベトナム戦争あるいは核戦略体系等でかなりの防衛費をいままで使ってまいりまして、そのために国内に厭戦気分が起きたり、都市や黒人に暴動が起きたりしてきておるので、ニクソン大統領は内政優位という方向に政策を切りかえたのであろうと私は思います。その一つのあらわれが、国防費を削減して内政に向ける、特に公害なんかにも非常に注意を払ってきておるようでございますが、そういう政策転換が新大統領によって行なわれたと思います。それがやはりアジアにおけるアメリカ政策にも出てきつつあると思います。現に、アジアにおける基地を整理しようとか、あるいは日本、韓国等にある補給基地は沖繩に集中するとかなんとかいう陸軍長官の発言があったりしてきておりますのも、そういうあらわれではないかと解釈しております。
  185. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この防衛に非常に打ち込んでおられる防衛庁長官としては、ちょっと私はその解釈については、何かあまり常識的な解釈じゃなく、一般に伝えられるところは、アメリカの戦略の変更にあるのだ、予算は削ったけれども核兵器の拡充に重点を置いたから、通常兵器のほうを節約したのだ、こういわれておるのですけれども防衛予算は削減したけれども防衛力強化のほうにむしろ進んでいるのだ、そういう評価がこれは一般的ですよ。いかがですか。
  186. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その辺は、私はまだよくつまびらかにしておりませんが、よくまた昔の大量報復戦術に移ったのだという新聞記事や何かが見えますが、まだそこまで即断するのは早過ぎるのではないか。やはり、通常戦争通常兵器による紛争処理、それから戦略的兵器による処理、二本立てで動いているのだろうと思います。ソ連との間にいわゆる戦略兵器停止交渉を進めておりますが、それらもやはり、金がかかるのはむしろああいう大型の戦略兵器でもありますから、両国の間に妥協を進めようと努力しておるのではないか、そういうように思います。両方ともかなりの核弾頭の蓄積並びに大陸間発射可能な弾道弾の保有等持ってきておるので、ある限度を越すと両方とも荷やっかいになるのじゃないか、そういう気もいたしております。
  187. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど、海外におけるアメリカの基地の整理とか、現に沖繩で起こっております駐留軍の労働者のスト、その根底は、アメリカ通常兵器のほうの整理縮小、そういう方向に進んだ私は影響だと思うのですよ。そういうふうに考えるのはあまり表面的だと思うのですよ。ですから、核兵器中心に重点を移していく、予算を重点的にそちらにつける、そのかわり通常兵器及び通常兵器に関する施設、また海外におけるそういうものは大幅に整理する、そういう方向に向いているんじゃないですか。そこで、その結果として、その穴埋めというのですか、通常兵器の整理、海外における通常施設兵器その他も整理する、そのかわり日本に対するそのあとを埋めるような防衛要求が出てくる。アメリカが直接日本防衛力を強化せよとは言わないでしょう。しかし、沖繩返還に関する佐藤ニクソン会談等で、佐藤総理のほうから自主的に日本防衛力を強化するというような形においてその穴埋め的な約束がされていると、こう私は解釈しておりますが、これはあまり皮相ですか。
  188. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点は見解の相違があると思います。それは、安全保障条約歴史変化をたどってみますと、そういう考え方と違う考え方がわかるのではないかと思います。二十七年に独立しましたとき、三十五年に新安保条約を制定して、たとえば内乱条項を削除するとか、行政協定を地位協定にかえて裁判権を回復するとか、あるいは事前協議条項を設けるとか、あるいは期限を十年に規定してレビューするチャンスをつくっておくとか、そういうものはみんなやっぱり日本の発言権を回復するという意味で、特に事前協議というものは非常に大きなファクターであると思います。それで、今度は六月二十三日には自動継続になるでしょうが、そうなりますと、一年の予告でいつでもやめられるという体制が出てきたわけです。こういうふうに三段階にわたって日米安全保障体系が変化しているという事実を見ますと、やはりアメリカのおっぱいでいつまでも育てられているとか守られているという形から、やはり自主的に防衛して発言権を回復していく、そういう過程にこの関係は歴然としてあると思うのです。私は、そういうことを意識しながら、その方向に進めようと思っていまの政策をやっているわけなんでございます。
  189. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これから私は、あなたは自主的、自主的と言われますが、自主的というものの内容について質問してまいりたいと思いますが、それでは次に伺いますが、佐藤総理が昨年十一月二十一日にナショナル・プレスクラブで演説しているのですが、その中で自衛力強化についてこういうふうに演説しておるのです。沖繩の復帰に伴って、わが国が沖繩の局地防衛の責任を徐々に負っていくことは当然である。日本の自衛力はすでにわが国の第一次防衛を保障する上で枢要な役割りを果たしているが、今後とも逐次整備していく方針であるというのですね。もうすでにその一次防衛を保障する上で重要な役割りをしていると、枢要な役割りを果たしている。日本の自衛力は今後とも逐次整備していく方針、これは整備ということは縮小じゃないと思うのですね。もうすでに日本の自衛力としては第一次防衛は果たしているのだけれども、さらに発展するという意味なんです。発展さすという意味なんです。一体、一応こういう役割りを果たしているのに、さらにどうして発展させるようなこういう約束をアメリカにする必要があるのか。
  190. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 木村先生、日本の自衛力の内容をよく点検していただきますとおわかりになると思うのですが、アメリカが第二次世界大戦で使った古い戦車とか艦艇がまだずいぶんあるわけです。それで、こういう老朽戦車、老朽艦艇、特に戦車なんかも動かないものもかなりあります。そういうものも員数に加えられておるわけです。そういうようなものを国産品で精鋭なものに代替していくというためにも相当な金が要ると思うのです。しかし、それはやらなければならない。そういうふうにして自主的なものに逐次改変していくということが整備に当たると私は思います。それから兵器にしましても、アメリカから有償無償援助でもらうという体制から脱却して、国産で自主開発したものを自分の金で装備していくという方向が私はまた当然出てくる段階でありまして、そういう過程にこれから入ろうとして努力しているわけであります。
  191. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ずいぶん自主的ということを言われますがね。ちょうど孫悟空がお釈迦さまの手の上に乗って、自分が自主的だろうと思っているけれども、結局お釈迦さまの手の上に乗っかっているという、それと同じような状態じゃないかと思うのですよ。あなた主観的には非常に自主的、自主的と言いますけれども、しかし客観的に自主的でないのじゃないかということをこれから質問していきますがね。それはMSA協定なんです。この前質問したように——もう時間がありませんでしたがね、MSAの八条ですね。防衛長官に読んでいただきましたが、このMSA協定八条は、御承知のように、一つは軍事義務を負っているのですね、日本は。私は一つは外交条約上の問題だと思うのですけれども、「軍事的義務を履行することの決意を再確認」というのですよ。そこで私調べて見たのですけれども、MSA協定以前に軍事義務を確認したものはないんですよ。おさがしになってごらんなさい、ないですよ、前には。期待するということだけしかない。日本防衛力を漸進的に発展することを期待するという条約はありますよ。ところが、軍事的義務——ミリタリー・オブリゲーションを負うという規定はどこにもないんですよ。もしここにあるということがありましたら、知らしてもらいたい。
  192. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 法律的な関連、私はよく存じませんが、バンデンバーグ決議などもあって、相互援助並びに自助ということがあります。そういう自助ということばが、ある意味においては、何といいますか、オブリガトワールな性格を持っている、そういうような関係がここに見られているのではないかと推察いたします。しかし、いずれにせよ、第八条の内容は、この前もお読みいたしましたように、日本憲法や政治・経済条件と矛盾しない範囲内でやるということなんでございまして、むしろそちらのほうが重点的に書かれているということもぜひお考え願いたいと思うのであります。
  193. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これには日本国憲法なんということは書いてありませんがね。自国の政治及び経済条件と矛盾しない限り——これは解釈が問題になると思うのですがね。「自国の政治及び経済の安定と矛盾しない範囲でその人力、資源、施設及び一般的経済条件の許す限り自国の防衛力——日本防衛力ですね、「及び自由世界の防衛力の発展及び維持に寄与」するとなっているのですね。日本防衛力だけじゃないんですよね。それから「自国の防衛能力の増強に必要となることがあるすべての合理的な措置を執り、且つ、アメリカ合衆国政府が提供するすべての援助の効果的な利用を確保するための適当な措置を執るものとする。」となっているのです。アメリカから供与された援助の効果的な利用を確保するための適当なる措置——これはあとで質問いたしますが、このMSA協定第一条に、アメリカの国内法に従ってこの援助を使用しなければならない。これはアメリカの国内法というのは、アメリカの国家的利益とアメリカ安全保障に役立つようにこれを使用しなければならぬとなっているのです。日本の国家的利益と日本安全保障に役立つように使わなければならぬということは書いてないのです。アメリカの国家的利益とアメリカ安全保障、そのために軍事顧問団が来ている。あとで軍事顧問団の任務について伺いますが、ですから、防衛庁長官はそれは主観的に自主的に考えることはけっこうですし、われわれも日本人としてなるべく自主的であらんことを欲しますよ。しかし、そういうMSA協定という自主的ではできないこういう条約というものがあるのですから、そういうものを踏まえてやはり考えませんとね、私は何か非常に錯覚抱かせると思うのですね。その点いかがですか。
  194. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これ、八条に、自国の政治及び経済条件の安定と矛盾しない範囲内でと、こういう文章が書いてございますが、それからいまの憲法の問題は九条に書いてあるようです。九条の第二項に、「この協定は、各政府がそれぞれ自国の憲法上の規定に従つて実施するものとする。」と、こう書いてあります。こういうような条項によりまして、やはり当該国の主権というものが厳然としてありまして、その主権というものに立脚してアメリカのエイドと協調していくと、そういう仕組みになっているのだろうと思います。現にMSA協定を実行して有償無償の援助等がきている——ほとんど無償援助はありませんし、有償援助も非常に減ってきておりますが、その過程において何か特に強制されたとか、アメリカに対して特にこちらが仕事をやらされたというようなことはないわけです。みんな日本の主権の範囲内で、自国の政治・経済の安定というものを考えて、日本は独自の道をやってきたと思うのです。MSA協定の文章もさることながら、実績を見ていただけばおわかりになっていただけるのではないかと思います。
  195. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まだ私の質問にお答えになっていないのですが、さっき一応答えたようなかっこうになっておるのですが、プレスクラブでの演説ですね、日本の自衛力はすでにわが国の第一次防衛を保障する上で枢要な役割りを果たしているけれども、今後とも逐次整備していく方針である。この質問に対して、防衛庁長官は、アメリカからいままで有償無償の援助を受けてきた、無償援助の中には、非常に古い艦艇とか、そういうものがあって、そういうものをリプレイスするというのですか、あるいは国産でという、そういうような意味でというような、そんな意味ではないと私は思うのです。もっと日本防衛力を強化するという意味だと思うのですよ。それでなければ私はつじつまが合わないと思う。日本は、自国の防衛だけではなくて、自由世界の防衛力の発展及び維持に寄与しなければならぬ義務があるのでしょう。これは条約上そういうことになっているのじゃないですか。ですから、これは予算を審議している者としては、すぐに日本防衛費にも関係してくるわけですね、国民の税金の使い方にも関係してくるわけですね。ですから、自主的、自主的と言いますけれども、それにはこういう条約上の制限があるのですよね。そこのところを踏まえていきませんと、何んだかもう全然この日本は、よその国に何ら制約なく自由に防衛費を削ろうと思えば削られるし、あるいはふやそうと思えばふやせるというような印象を与えるような御発言になる。そんな甘いものではないと思う、この条約は。アメリカはそんな日本に甘い形で——アメリカ国民の税金なんですから、そんなに日本アメリカの援助を受けて、その援助で自由自在に日本の国家的利益と安全保障のみに役立つような援助をするはずがないと思うのですよ、これは。その点いかがですか。
  196. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、先生とちょっと考えが違いまして、アメリカ側は、なるほどアメリカの税金を使ってやることで、世界じゅうにこういう協定を結んでいるわけでございますから、一つのパターンをつくって、そういう標準パターンによって契約書をみんなつくっているわけだと思うのですけれども日本日本独自の考えを持って日本防衛を自主的にしていくという意味においてこのMSA協定というものを活用していく、利用していくという立場でもってきたと思う。現に、日本がその後たどってきた道というものは、日本の自主性を回復する方向にたどってきているので、MSA協定をやる前よりもはるかに自主性を回復しているだろうと思います。それは賢明な道であったと私は思うのであります。  それで、自由世界云々というのは、おそらくこのMSA協定の一つのパターンがあって、そのパターンによって各国とサインしているということの拘束があるのではないかと私は思いまして、それほど重要視する必要はない。日本に関する部分は、安保条約で極東条項というのがございます。あの極東条項が挿入されているということが、ある意味においてはこれに関連していると考えていいのではないかと思います。
  197. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 このMSA協定による軍事援助は、この第一条に、アメリカの二つの国内法に従ってですね、この援助は提供されることになっています。その一つは、改正一九五一年相互安全保障法というのがありますね。もう一つは、改正一九四九年相互防衛援助法というのがございます。この二つの法律に従って、この二つの法律の「援助に関する規定並びに当該援助の条件及び終了に関する規定に従って供与する」と、こうなっています。で、私はこの二つの法律を見たんです。そうしたら、援助のための資格というのがあります。第五百十一条です。「この法律に従って承認されたいかなる軍事、経済又は技術援助も大統領がその援助の供給が合衆国の安全保障を強化するものであることを認め且つ受領国が次のことに同意する場合の外、軍事的努力を促進するためにいずれの国に対しても供与されてはならない。」となっているのですから、ここでは合衆国の安全保障を強化するものであることを認めなければならない。これが主なんです。そうしてまあ結局、「合衆国が供与する経済的及び軍事的援助が有効に利用されることを保証するために適当な手段を執ること」、こういうことに合意する、そうした場合でなければ与えない。それで、このことはMSA協定にもちゃんと書いてあるのですね。「合衆国が供与する経済的及び軍事的援助が有効に利用されることを保証するために適当な手段を執ること」は、これがこの五百十一条においてアメリカ合衆国の安全保障を強化するというものの内容なわけですね。私は意地悪く質問するわけじゃない。何でも反米的に質問していると解されては困るのですけれども、客観的に見て、いかに主観的に自主的に考えようとしても、こういう援助を受けている以上は自主的になれない。だから、防衛庁長官がそれほど自主的を強調されるならば、MSA協定は廃止すべきです。廃棄すべきです。そうすると、これは一カ年の通告で廃棄できるのです。いかがですか、どうなんですか。
  198. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) MSA協定というものは、やはり歴史的な性格を持っていると思います。それで、アメリカのある時期における世界政策一つの方便としてこういうものができ、それはもとをただすと、バンデンバーグ決議みたいなものが淵源にもあると思うのです。そういうある時期におけるアメリカの世界政策というものは、大統領がかわり世界情勢が変わるにつれて色あせてくる部分もありますし、また内容によってはほかのこれを利用する国が大いに活用すべき要素も内実的にはあるだろうと思うのです。それらはいずれも外交戦略の内容にも入ってくると思います。私は、そういう意味で、このMSA協定の歴史日本に対する評価というものをまだ持続しておるものであります。
  199. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 MSA協定の歴史的な意義なり効果が持続されていると言われますが、それではさらにもう一つ、改正一九四九年相互防衛援助法の第四百五条というのですね、これは終了に関する規定があるのです、やめさせるね。四百五条の(a)項「大統領がいずれかの国に対する援助の供与がもはや合衆国の国家的利益もしくは安全保障又はこの法律の政策及び目的に合致しないと認めたとき」には援助を取り消すことができる、そうして、「この法律に基づくいずれかの国に対する援助は大統領によって一層すみやかに終止されない限り、議会の両院の共同決議によって終止させることができる。」、つまり、やめさせることができる。大統領がやめさせない場合には、両院議会の、両院の議決によって援助を取り消すことができる、ストップさせることができる、こういう非常にきびしい規定なんですよ。それで、いまMSA協定によるアメリカの軍事援助は、日本防衛としては、これはやめることはできない。ずいぶん国産化されたといいますけれども、一番重要な部分については、まだ私はアメリカの援助によらなければならないと思うのですよ。そこで、こうしたアメリカ日本に与えた、供与した軍事援助がアメリカの国家的利益及びアメリカ安全保障に役立つようなふうに使われているかどうかを監督しているのが、お目付役になっているのが軍事顧問団だと思うのです。そこで、私はこの軍事顧問団の任務について伺いたいのです。どういう任務を持っているか、そして軍事顧問団からどういう監督を受けているのか、具体的に伺いたいのです。
  200. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) MSA協定に関する認識において、木村委員と私と相異なるのはまことに遺憾でございますが、私の見解では、日本兵器性能を上げるという意味において、MSA協定によるライセンスの供与、ノーハウの供与というものはまだまだ必要であると私は実は思っているのです。それだけの自主開発をゼロからスタートすれば膨大なる税金を要しますし、税金をかけてもそれだけの開発ができるかどうかは疑問の要素もございます。そういう意味において、防衛費を安くしておくという意味においてはまだまだ評価いたすべき要素が残っているだろうと思うのです。で、アメリカ側は、アメリカ国民の税金を使うのでございますから、政府を監督して議会が厳重な目を光らせるということは立法者として当然のことであろうと思いますし、そういう配慮が条文になっていることもうなずけることであります。しかし、おそらくそういう要素が入れられたという中には、アメリカの援助が、ある国によっては腐敗の材料になったり、あるいは政局を混乱するもとになったりするということがあったので、アメリカ側としてはそういう要素も入れてあるのだろうとは思います。しかし、正常な形で自分の国の力をふやしていく上にこれを活用していくという意味においては、アメリカの善意といいますか、援助するという精神をわりあいにすなおにのんで、自分の力の肉づけにしていったらいいだろうと、私はそう思います。そういう考え方におきまして先生と考えがやや違うわけです。   〔副主査退席、主査着席〕  顧問団の任務につきましては、政府委員からお答えさせます。
  201. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 在日米軍事顧問団は、昨年の八月に改組されまして、現在は相互防衛援助事務所ということで、大体十数名の人がおりまして、私どものほうの関係のMSA協定の装備品の問題につきましては、現在の有償援助でわれわれが取得するものにつきましての相談相手あるいは米国との連絡、それからもう一つは、たとえば今回導入しましたF4Eのような非常に高度の技術のものを導入するという場合の、何と申しますか、アメリカとの折衝の中間的な立場で、むしろ日本のアドバイザーという仕事をしてもらっております。
  202. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは防衛年鑑ですがね、防衛年鑑にこう書いてあるんです。軍事顧問団の任務としまして、「大別して次のとおり」。第一は、「装備品供与計画及び訓練計画の立案」、第二が、「防衛問題に関する助言」です。アドバイスですよね。それから「供与装備品の整備、使用状況の調査」、第四は、「援助の成果等に関する報告」。特にこのうち重要なものは、言うまでもなく、装備品の供与計画及び供与装備品に関連する訓練計画の作成である。そうすると、軍事顧問団は、それは防衛庁長官が言われたように、ノーハウとかそういうものについてはまだ非常に日本はおくれているから、アメリカの援助を受ける必要がある、それは日本開発するより安上がりだ。そのこと自体は私は否定しませんよ。しかし、それにも問題ありますけどね。あの民間のたとえばソニーの井深さんなんという人は、アメリカあたりで防衛費を中心開発されてそれの工業に対する技術的な波及効果を高く評価する向きもあるけれどもそれは間違いだと、防衛費を直接民間に技術援助を与えたらそれはアメリカよりさらに多くの効果があるのだということを言っています。あまり防衛費に依存して工業に対する技術的波及効果を過大評価しちゃいけないということを日本の賢明な実業家あたりは言っておりますが、そういう面はありますけどね。しかし、その援助を受ける代償としての軍事顧問団による日本防衛問題に対する助言というものは、どういう助言なんですか。この目的は、アメリカの国家的利益、アメリカ安全保障のために使えという、そういう目的なんでしょう。そうでなければ軍事援助は取り消すことができるというんですよ。そういう場合の防衛問題に対する援助としたら、アドバイス、それはアメリカ・サイド。そうでなければ、援助を私は供与しないことになるんじゃないかと思うんですよ。  それから、訓練とは何ですか。「装備品供与計画及び訓練計画」、どういう訓練計画ですか。日本が自主的にそれでは訓練計画を立てられないんですか。アメリカの軍事顧問団によって立てられるんでしょう。そういう点、自主性、自主性と言うけれども、MSA協定というものがあって、それによってこういう日本の自主性についてはきびしい制約があるんだ、そういうことをわれわれは考えざるを得ないんですよ。だから、そんなら一年の通告でこれは廃棄できるんですから、廃棄したらいいと思うんです。ところが、防衛庁長官は、まだアメリカのいろんな技術的な援助を得なければ日本防衛力は維持できない、また効率的な防衛力開発することはできないというお話なんです。しかし、そのかわりに自主性がなくなる、こういうジレンマがある。その点は私は率直に認められなければいけないんじゃないかと思うんですが、いかがですか、その点は。
  203. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その顧問団の仕務が、日本の場合、法的に生きているかどうか私知りません。しかし、知らぬほど、私のところには、ほとんどそんなの、いるかいないかわからぬくらいの実は存在になっております。それで、顧問団長がどういう人か、私名前も覚えておりませんし、顔も知りません。いま実際問題としては、日本の経済力がこれだけ充実してきて、日本アメリカとの位置が少しずつ変わってまいりましたものですから、あの顧問団——顧問団という名前も今度はやめたんですけれども……
  204. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 やめたんですか。
  205. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 何とか事務所。
  206. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 相互防衛援助事務所。MDAO。
  207. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 結局ライセンス生産の連絡役みたいな役になってきておる。訓練計画をどうするとか、自衛隊の訓練計画を監督するとか、そんなことはないですね。
  208. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 何か非常に軽く考えているようですが、それはいま事が起こらないからそうです。平時の状態ですとね、何ら制約を受けてないように思うでしょう。これはいま地位協定でもそうでしょう。地位協定に基づく十七か八の国内法があるのです。アメリカ軍に特権を与えておる、広範な。平時だからわかりませんが、土地等の使用等に関する特別法、刑事特別法、あるいは電波法、道路運送法、水先法等の特別法で地位協定に関する国内法があるのです。これは占領中に持ったアメリカの特権を国内法によって認めているわけです。みんな気がつかないのです。有事の際に非常に問題になるのです。占領と同じ状態が出てくるのです、いまの日本の国内法によって与えておるわけですから。いまのMSA協定の軍事顧問団が防衛庁長官が知らないぐらいの存在になっている。知らないぐらいにもうちゃんと指導を受けてしまっている。だから、指導を受けていれば、向こうの言うとおりになっていれば、何もアドバイスする必要はないのです。そこが私は問題だと思うのです。それでは結局見解の相違になりますから、それじゃ質問にまた移ってまいりますが、その援助の形態がどうなっているか。いまほとんど無償援助はなくなってMAPですか、これもなくなっている。大体まあ昭和三十一年以降はFMSですか、有償援助がもう大部分でだんだんその援助がふえてきている。その無償援助がどのくらい、有償援助が現在どのくらいになっているか、そして有償援助というものの内容がどういうものか、これを伺いたいのです。
  209. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 装備局長に答弁いたさせます。
  210. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 無償援助は実は二つに分かれますが、一つはMSA協定ができましてからあとのもので、向こうの渡した状態における表示価格にしまして五千三百四十三億、MSA協定ができます前から、警察予備隊当時からもらっておりますが、それを合計しますと五千七百四十六億、これは減価をしておりません。向こうの渡した状態における表示価格をそのまま総計したものです。それから有償援助は八百六十五億になっております。で、大体内容につきましては最初の警察予備隊あるいは一次防、二次防という姿でほとんどのものを無償援助でもらっておるわけであります。で、三十一年からの有償援助の額につきましては、大体の概略を申しますと、一点は米軍から供与されました装備品の維持部品等は向こうから入手しております。有償援助のかっこうでもらっております。第二点は、機密度の高いもので、向こうの米軍から機密の関係で入ってくるもの、機密関係のものが一つございます。もう一つは、米側の一般企業からも輸入できますけれども、米軍を通じたほうが在庫品なり、あるいは米軍が世界に供給しておりますので、調達方式が安いという関係のもので有利と思われるものを買ってくるということでございます。
  211. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 このライセンス生産の場合ですね、ライセンス生産の場合はどういうことになるのですか。そのライセンスはどこに払うのですか。
  212. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) いま申しましたのはMSA協定の中の有償援助についてのアメリカの対外軍事販売部法でございますか、六三年にできたその法律に基づきまして米軍から買っているものを申し上げました。結局、MSA協定にはもう一つございまして、第一条で、そのほかに技術を渡すということで、いま先生御指摘のいわゆるライセンス生産でございますが、この点につきましては、私のほうも民間の企業を指定しましてそこに技術援助をします。その関係で一般の支払いは相手方の企業に参りますけれども、特に米側が四十二年の三月ですか、国防省令をつくりまして、米政府が一アイテムについて一億ドル以上の開発費を使ったものにつきましては、その品物を技術ライセンス形式で外国へ出す場合には、その開発費を各国政府に負担してもらうという規則をつくりまして、それは米国政府に払うことでございますけれども、実際の払い方としましては、たとえばF4E機が一機できますと、その一機ごとに幾らという価格を四半期ごとに、いまの場合は三菱でございますが、三菱重工が相手方に払って、相手方企業が米国政府の会計に入れる。日本政府としては三菱重工に払う一機当たりの価格の中に含ませて払ってしまうという形式をとっております。
  213. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはどういうふうに原価計算、評価するのですか、そのものは。それは何%ぐらいのものですか。
  214. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) これは国防省令に計算方式がございまして、過去十カ年間に支出した総開発費と米国政府の使うものも含んで世界の需要を分母にして割ったということが大体の簡単な計算方式ですが、それで計算されたものをわれわれのほうに要求されます。今度のF4Eの例を申し上げますと、これはこまかい数字の発表は米国政府からよしてほしいという希望でございますけれども、大体一機の〇・八%というものをRアンドDとして米国政府に払うというかっこうになっております。
  215. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、これはアメリカ国防総省が開発のために投じた研究開発の費用ですね。研究開発費でしょう。その一部をわれわれ日本が分担させられるということになるのですね。結局そうでしょう。そう解していいわけですね。
  216. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) そういうふうになります。現実に米国政府なり米国の一般企業からわれわれが輸入する場合にはそういうものは当然価格に含まれているのでございます。ところが、米国のいまの会計制度では、米国政府が企業に補助した開発費は回収する方法がない。もちろん品物で売る場合にはそれをかけろという国防省令はございます。各企業が米国政府から開発費をもらってそれでつくったものを売る場合には、それに一定の比率をかけて取れという規定はございますけれども、技術導入のかっこうになりますとそれが入ってこないということで、普通であれば一般の物品にかけるものを米国政府は直接取るという国防省令をつくりまして、それをわれわれに要求しているという問題でございます。
  217. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 会計法上これはどうなんですか。こういうノーハウの計上のしかたというもの、会計法上の……。
  218. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) いま申しましたのは国防省令なり日米間の話し合いのことでもございますけれども、現実、いま申しましたように、いまの私のほうの支払い方式は、三菱重工にF4Eを注文する場合に、米国政府に払う分としては、原価として三菱重工は原価計算出ておりますね、それで、だから、一般の一機当たり幾らという価格で会計法上は三菱重工に払います。三菱重工はそういうひもつきのものを払って、マグダネル・ダグラス社は国防省令に従って米国政府に納めるという形式をとっている。会計法上は一機当たり幾らという形でその原価に含まれているということでございます。
  219. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 わかりましたが、そういう原価にそういうノーハウを計上する場合の根拠はどうなんですか。会計法上どういうことですか。これは結局アメリカ政府開発にいわゆるあれでしょう、開発のために研究開発の一部を負担するということが——全部ではない、一部。それがどんどん多くなればそういうことが結局原価にはね返ってくる。それは多いか少ないかという、それは何で判定するんですかね。われわれ予算の積算する場合ですよ、そういうものは根拠がないですよ。アメリカのそっちの開発費というものが、そこまでも研究しないとほんとうはそれは適正なのかどうか。向こうがきまっちゃってそうしてその一部を有償援助として負担させられるというのでは、われわれ予算を審議するものとして何か積算が非常に根拠が薄いように思う。これは相当問題にならなかったんですか。ならないで、ずっとこれは原価に計上されているんだからいいんだということで、それで認めちゃっていいですかね。そうなるとずいぶんお粗末なものだと思いますがどうですか。
  220. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 会計法上の問題について私こまかく御説明する資格がございませんけれども、一応米側としてそういうものを要求しますから、われわれとしましてはこまかい折衝はいたしておりますが、それがある意味でMSA協定に基づくホークなりあるいはF4Eなりの契約をする場合の大きな要素になっております。現実にそのほかに各会社とも相当に開発費を払っておりますので、それはRアンドDというか、ロイアルティーというかエスティメートとして当然要求されるわけでございます。いまのアメリカの会計法上それが会社の中に入らないものを別に組んで、それを総合計したものをF4Eの開発費というふうに理解しております。
  221. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 前に森田三喜男という装備局長さんが自殺されたですね。これはいまの開発費の負担の問題と関連してといわれたんですが、そういういきさつを御存じですか。
  222. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 森田前局長がなくなりました原因はわかりませんが、なくなったときはちょうどアメリカ政府とホーク、ナイキのRアンドD交渉をしている最終段階でなくなりました。そういう意味の交渉はしておりました。そのときに実はいままでの米側と日本側の経緯を申しますと、無償援助ですべてものを受け取った。それが有償援助に変わった。そこでも一つ問題があったわけでございますけれども、その中で今度は有償援助だけではなくて、そのほかに米国政府が金を取るんだという方式が出まして、それが現在の各条約規定上どういうことかというようなことを法律問題、あるいは現実の解釈問題、あるいは予算の中でこれを現実に組んでなかったという問題でございまして、それを予算上どうするかというような問題があったことは事実でございますけれども、そういうような交渉の最中になくなったという事実はあります。その際の各方面の森田前局長が努力した結果の解釈が、いまのアメリカ政府の規定に従って、いまの条約上RアンドDは払うべきだという結論になったわけでございます。
  223. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういう生命の犠牲においてそういうことが認められるようになったように私も思うんですが、そこで伺いますが、時間もございませんから、先ほど防衛長官日本兵器国産兵器を整備するにあたって、やはりアメリカのMSA協定による技術援助その他が必要だと、そういった防衛費を節約する意味でも非常に役立つんですと、こういう話がありました。しかし、これまでF4Eの問題につきましては、前の衆議院あたりでもだいぶ問題になりましたが、輸入したほうが安い、二〇%も安いのになぜ国産化をするのかという問題が提起された。これは今後の三次防、四次防を考えるときに、日本防衛費がふえてくると思いますが、そういう場合に輸入したほうが安いのになぜ国産化するかということですね。その点がわからないのですが、防御費の節約から言ってもかなり違う。二割違う。私の見方が、これは私自身が専門家じゃありませんけれども、一般には二割は輸入したほうが安い。二割ということは相当大きい。F4Eの場合には一機二十億といわれるから二割というのは相当大きい。なぜこれを国産化されるかということを伺いたいのです。
  224. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 例のファントムの問題のことを私が聞いた話では、一機が十九億何千万についた。一機別に既製品を買うとすれば十四億くらいになるのだということを聞いておりました。そうすると、一機四、五億円くらいの差がある。しかし、どちらが経済的かということを考えてみますと、既製品を買うということになると、部品なんかもついていないし、メンテナンス——補修、維持についても向こうに全部お世話にならなければならない。一々アメリカに持って行って直す、あるいはアメリカから来てもらって直してもらうということになるとかえって高くつく。しかし、日本がノーハウを受けてライセンス生産でやるとメンテナンスは日本自分でできる。ですから、補修も日本国産化できると十分できていく。その上にノーハウを受けるということによって日本の技術水準がかなり高まっていく。そういう様子を見ますと、日本のように工業的に発達した国はライセンス生産のほうが国益に合致するわけで、これが中近東のようにフランスのミラージュを買うとかファントムを買うとか、既製品を買って、それだけでやっていく国ならばいざ知らず、日本のように工業力、基礎的素地のある国においてはライセンス生産のほうがはるかに国益に合致するという判断を下したようであります。
  225. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いま技術的な波及効果を言われましたが、どうも日本の軍需産業なり国産化に関連して防衛生産委員会なんかのまとめたものを見ますと、波及効果というものを非常に高く評価しているんですよ。ところが、たとえば朝日新聞の論説委員の岸田純之助さんですか、こういうことを言っている。アメリカは非常にたくさんの研究開発費を軍事費の中から出している。つまり、研究開発予算の半分は軍事費の中から出ているが、そういう研究開発予算というのは、研究開発という観点から見ると、むしろ非常に能率の悪い使い方だと思う。アメリカ日本の経済力の差から見ると、七対一ぐらいの比率にしか日本の場合にはなり得ない。だから、そういうものを能率よく利用していこうとすると、アメリカと同じようなむしろむだの多い研究開発費の出し方をすることになる。そういうことをするよりも、むしろ違った出し方を国家的に考えていく必要があるのじゃないかということを提起しております。それから、さっき言いましたソニーの井深という人も、もしアメリカ軍事費につぎ込んでいる開発予算を民間に出したら、いまよりももっとアメリカの経済効率はものすごく高くなる。幸いにアメリカは非効率的なことをやっているから日本は助かっているのだと言っている。だから、研究開発の波及効果ということについては、そういう点から今後防衛庁長官日本の軍需生産を考える場合、あまりこれを過大評価すべきじゃないんじゃないかと思う。こういう批判もあることですから、これは頭へ入れておく必要があるのじゃないですかね。あまり、軍需産業のほうは波及効果を相当強調しますよ。だけれども、それはかなり割り引いて考えなきゃならぬ。岸田さんとかソニーの井深さんみたいな、そういう批判があることを、これは私は頭に入れる必要があるのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  226. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大体、国がやったり、官僚がやるという場合には非常に能率が悪いのでして、民間にやらせるというのが私はやっぱりうまいやり方じゃないか、こう思います。
  227. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最後に、もう時間がないですから一つだけです。防衛生産委員会のまとめたのを見ますと、あるいは政府のほうにそういう陳情、要請が行っていると思うのですよ。兵器の輸出を非常に強調していますよ。そうすると、兵器輸出なくして日本防衛生産は成り立たないと。採算的にはそういう考え方のようですが、将来この輸出につきましてどうお考えになりますか。それともう一つ、今度の新経済社会発展計画ですね。あの中で防衛費の位置づけについてどうなっているか。これはさっきの小野さんから質問があったかもしれませんが、防衛長官として、この新しい経済社会発展計画昭和四十五年までにおいて防衛費としてはどういう位置づけをされたのか。あれを見ますと、防衛費については全然書いてないんですよ、何もないですから。これは非常に重要な要素だと思うのですけれども、この二点について伺いたい。
  228. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず、新経済社会発展計画の中における防衛費の位置づけでございますが、前に先生からも予算委員会で質問がありまして、私もこの点あとで調べさせておきましたが、新経済社会発展計画というものは何十兆でしたか、ともかく膨大な数字になる。その中でいまのペースで進められる防衛費というものはほとんどネグリジブルだと、そういう報告でありまして、企画庁のほうからも特に防衛費について向こうから申し出もないそうですから、こちらのほうでもネグリジブルの数字であるので、特に申し入れはしていない。そういう報告を聞きました。それで私は——しかし、われわれが防衛費の見通しをつくるためには、新経済社会発展計画の中で一体社会保障費がどの程度になるか、それから公共事業費や教育研究費がどの程度になるか、それとの意味合いにおいてわれわれは一つの基準として防衛費を考えなくちゃいかぬというので、その数字をいま調べさせておるわけです。ところが、なかなか社会保障関係とか、そういう数字はまだ固まって出てきておりませんし、原局、原省においても隠してなかなか数字はまだ表へ公表しないそうです。そこまでまだ完全に末端のほうは煮詰まっていないようです。しかし、これは非常にわれわれは将来計画をつくる上に大事な数字ですから、それをできるだけ正確に調べるようにいまやっております。それから、大体前に申し上げましたように、いまの日本防衛費の中における調達費は日本の工業総生産額の〇・五%以下。一%まで行っていない。〇・五%以下で、その規模は皮革産業と同じくらいだという数字でございますから、そう大きなものではないと認められると思います。  それから第一の質問は何でございましたか。
  229. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 輸出です。
  230. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 輸出の問題につきましては、例の三原則を厳守してまいるつもりであります。これは外務当局からも御答弁になっておりますが、外務、通産で一致した線をわれわれは守っていくつもりであります。
  231. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もういいです。
  232. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 最初に、質問通告しないでお聞きするのは恐縮です。  先ほどお伺いすると、まだ保安庁のほうから防衛庁のほうに報告が来ていないと言っておりましたが、私の質問が五十分ありますので、最後のほうで報告していただければけっこうだと思いますが、本日日本海沖で巡視艇が正体不明の船を追跡したところが、自動小銃で撃たれたという事件がありました。それを聞きましたので、この問題についてあとで報告を伺って、関連して少しだけ質問さしていただきます。  それじゃ本論に入りますけれども、先ほども質問が出ておりました長期防衛構想についてでありますが、その中で、中国の核開発についての分析が少し出ておりましたが、この中国の核開発の進んだ場合、現在米ソの強大な核のために一応バランスが保たれていると、こういうふうに言われ、しかも、日本には核のかさがおおっている、こういうふうなことでバランスは保たれていると、いままで政府は言っておられたわけでありますが、中国における開発がどの程度まで進めば日本の現在の核のかさに何らかの変化が起こるのか。あるいは、米ソの核が強大であれば現在の中国の核開発の進度ぐあいが少々ピッチが上がっても心配がない、こういうふうに見ておられるのか。その点の、わが国の核のかさという面からどのように考えておられるか。
  233. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中国の核並びに大陸間弾道弾、あるいは中距離弾道弾の開発に対しましては、われわれのところではよくわかりません。アメリカのレアード国防長官等が議会に報告したその記録をわずかに知っているだけでございますが、それによりますと、一九七五年ごろには十基とか十五基のICBMでありますとかIRBMでありますとか実戦配備につく可能性があるというような報道がわれわれの耳に入っております。私はそれがどの程度進むかよくわかりませんが、少しおくれるのではないかという感じが私自体はしているのであります。米側の報告によりますと、ICBMの機能テストは一九七〇年中に開始される見込みである。その後実戦配備までに少なくとも多分その上さらに二、三年は必要とするであろう。テストが間もなく行なわれるとすれば、一九七五年までに十ないし二十五基のICBM、これを保有し、その射程は約六千マイル、そうして中共は多分MRBMを展開する意図を持っているだろう。それは一九七〇年代の中ごろまでには八十ないし百基のMRBMを保有する可能性があるというような情報があるわけでありますが、大体アメリカから来ているこういう情報は、わりあいに時期的にずれるというのがいままでの経験でございます。初めは一九七二年前後とは言っておりました。そういう情勢から見て、はたしてこの時期に行なわれるかどうか、私は疑問の余地があると思っております。それでもしそういうMRBMなりICBMなり核弾頭の実戦配備ができますれば、一体中共とソ連とアメリカ関係がどういうふうになるだろうか。いろいろ想定してみますと、現在の中ソ間の対立状態等を考えてみますと、中共アメリカに対してもソ連に対しても等距離政策に行く可能性があるのではないか。これは一つ可能性としてそういうことが考えられるのではないかと思います。そうなると、正三角形の関係が出てきて、もしそういう正三角形の関係が出てくるとすれば、そのうちの二つの角がけんかすれば、何もしない第三者が一番利益になるわけで、そういう意味において三角核手詰まりというような可能性が出てくることも考えられる。これは一つの想定でございます。そういうような情勢になると、核手詰まりで国際関係はある程度安定性を保っていくということも考えられると思われます。しかし、そのことはこれから実際の動きをよく注目して見ませんと、独断するわけにはまいりません。われわれはよくこれからの現実の移行を注目してまいりたいと思っております。
  234. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 少なくも現在と将来と分けまして、現在まで日本がたよっておるアメリカ核抑止力は戦略核を重点に置かれておるのか、あるいは戦術核が重点なのか、あるいはゼロなのか、その配分といいますか、その点はどう考えておりますか。
  235. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 戦争を抑止しているという意味においては、やはり戦略核が抑止力として非常に大きく働いております。
  236. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまの中国が核開発をして、核手詰まり論というのを最近言っておられますが、こうなった場合においても、なおかつ、やはり戦略核兵器による日本防衛というものは、あくまでもアメリカの戦略核の抑止力にたよったほうがいいと、こう見ておられますか。
  237. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは戦争を誘発させないという意味において核抑止力というものを考えてみることは有益ではないかと思います。
  238. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 戦術核というものが、日本防衛に対して具体的には戦術核がどういうふうな役割りで戦争の抑止力になっていると考えておりますか。
  239. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 戦略核も、戦術核も、日本は非核三原則を持っておりますから、日本の内部においては問題にはならないわけでございます。そういう様子を見ますと、大戦を誘発させないでおく力というものは戦略核が非常に大きく動いているんではないかと、こういうように思われます。
  240. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そうすると、日本の土地の中にはこれはもちろん持ち込まれませんし、そういうことがあってはならないわけでありますから、結局、日本の周辺においても戦術核兵器というものは必要ないと、こういうお考えと受け取ってよろしいですか。
  241. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この間ソ連がやりましたドブナ演習、あの体系を見ますと、やはり戦術核は使っておる想定のもとに動いております。それから、北大西洋同盟諸国及びワルシャワ同盟諸国の連合演習、おのおのの演習想定等を見ますと、戦術核が使われておるようです。ですから、ヨーロッパにおいては戦術核は使われるという、そういう想定で、いろいろ戦略、戦術体系がおのおのの陣営においてもできているように思います。しかし、アジアの場合においては、そういう明確なものはまだ報告もございません。でありまするから、われわれも信頼すべき情報の資料、判断の資料というものはまだ手に入れることはできない状態であります。ただ、前に二、三の——これは真実であったかどうかわかりませんが、不確定情報等によれば、朝鮮戦争のときにマッカーサー元帥が核を使おうと考えたとか考えないとか、あるいはディエンビエンフーのときにアメリカが使う決心を一度したとかしないとか、そんなような情報が前にあったことはあります。それが戦術核であったのか何だったのか私よく知りませんが、そういうことを大森実君から聞いたり、新聞、その他で読んだことがあります。しかし、われわれが、われわれのほうの防衛の基礎資料として考える資料としては対象としていません。われわれとしては、しておりません。
  242. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いや、私が聞いているのは、戦術核は日本のまわりで、いまのソ連が持っておる、あるいは中国が今後持つかもわかりませんけれども、そういう場合においても必要と考えられるのか。それとも、いまの戦略核の体系の中で、戦術核は特に日本の周辺の防衛には必要ないと、こう見ておられるのかどうか。
  243. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本はとにかく非核三原則をとっているんですから、日本に関する限りは、それは思考の対象外にあることであると思います。外国がどういう備装を持っているのか知りませんが、これは世界戦略的に見れば、やはり戦争抑止力として働いているのは戦略核が非常に大きい力を持っておると思います。
  244. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 アメリカがこれから配備されようとしているABM、これについてもいろいろ議論がありますけれども、その先端が日本に来るとか来ないとか。これについてはどうお考えですか。
  245. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ABMについてはアメリカの内部にもいろいろ論争がございまして、都市の周辺に配備するというのが、基地の周辺配備に変わったり、いろいろ変化もあるようですし、アメリカ国内の問題としてもあれだけ騒がれている問題で、われわれ日本に関する限りは、そういう問題によってトラブルを起こさないように、ABMの問題はわれわれとしては論外の問題だと考えております。
  246. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 しかし、そのABMの先端が日本列島に来るかどうかということはあくまでも向こうの問題で、わからないと思うんですけれども、その場合もしABMが将来配置をされる場合に、日本としては非核三原則という立場から、ABMの先端は日本に来ないということをはっきりアメリカに言うおつもりはあるのか。そんなことを言わないでも、向こうは了解してくれるだろうかと、そういうような態度なんですか。
  247. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ABMの先端ということは、私にはその意味がよくわかりません。それは日本の国内に置くということですか、それとも……
  248. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そうです。
  249. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本の中に置くというのならば、非核三原則があるのですから、それはもう断わるにきまっているじゃないですか。
  250. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまの核の問題については非核三原則ということで外国の核については関知しないとか、まあそういうことで長官は言われますけれども長期構想の中に、核装備については非核三原則を守る、このためにということで、非核の対核戦力をつくらねばならぬ、こう思うわけです。この核は持たないにしても対核戦略ということをここで言われておりますが、これはどういうものをさすわけですか。
  251. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは外交を中心にするいろいろの国際間の多角的な要素を活用しつつ、国際世論であるとか、国際機構であるとか、そういういろいろな面を考えた上の総合戦略を言っているわけです。防衛力とか装備力だけを言っておるのではなく、もっと幅広い全体戦略という意味で言っておるのであります。
  252. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 全体戦略といういまお話ですが、それを装備に限った場合にはどうなりますか、その範囲内で言えばどういうことを考えておられますか。
  253. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) われわれのほうが非核三原則を持っておるのですから、核に関しては特に非核三原則以外には対象になるものはないと思います。
  254. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そうではなくて、この核を持った飛行機が来るとか、ポラリスが来るとか、結局、そういうアメリカじゃなくて、ソ連とか、中共だって持つ可能性があるわけですから、そういうことに対して装備の上では何もしなくてもいいのか、何かを考えておられるのか、そういうふうな……
  255. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 装備の上ではもうしょうがないですね。放射線の防護とか、国民を守るということも考えなければならぬと思いますけれども、そういうことでも言い出すとすぐ議会で騒がれたり、野党が攻撃したりするものですから、なかなかデリケートな部面もあるので、やっぱりもう少し世論の推移や何かを見るよりしようがないと思うのです。
  256. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 一昨年私が予算委員会で核防護訓練の問題を取り上げたわけですけれども、そのときに防衛庁長官が、将来万が一の場合に備えてやはり考える。それは自衛隊にはいま訓練はやっておる、そういう教材等も拝見いたしました。国民にも考えるというふうな答弁があったのですけれども、この問題についてはその後何か検討されておるのか、それとも、もう核戦争はあり得ないという想定で、それは望ましいし、さっき長官の言われた外交の面あるいはその他の面で核戦争がないように日本としては努力すべきであると思いますけれども、この問題についてはどうですか。
  257. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本はやっぱりアレルギーがありますから、われわれがよほど注意して言っても、それはほかのほうに受け取られたり、不要な人心の摩擦や動揺を起こしたりする危険性もあるので、その部面に対する扱いはよほど慎重にしなければいかぬと思っております。
  258. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 では、次に四次防に関連してお伺いしますが、十一日の新聞に出ておりますイギリス、フランスの共同開発による超音速ジャガーが墜落をしました。そういうことが防衛庁から明らかになったという記事が出ておりますが、この内容を詳しくお知らせ願いたい。
  259. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) フランスのジャガーという航空機の墜落のことでございますけれども、この事故の発生は三月二十六日でございまして、フランスのイストレルという飛行場に着陸進入中に墜落したもののようでございます。原因ははっきりわかっておらないようですが、エンジンの火災があったようでございます。ジャガーのE−O1型という練習機型の航空機であったということでございます。
  260. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 このジェット機を防衛庁は四次防で装備をするTXのモデルであった、このように伺っているのですが、そのとおりですか。
  261. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) モデルという関係はございませんが、現在四十二年度からTXの開発をはかっております。いま防衛局長申し上げますように、ジャガーも練習機だそうで、私のほうもTXは高等練習機でございます。積んでいるエンジンが偶然と申しますか、このジャガーはロールスロイスとツルボメカという両国の会社の共同開発のアドアというエンジンでございます。われわれのTXも同じエンジンを積むという考えでおります、先生御指摘のようなモデルという関係はございませんが、非常に似通った点は持っております。
  262. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 この開発費は幾らですか。
  263. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) TXの開発費は大体総額で六十五億かかる予定でございます。
  264. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 これは何機つくられる計画ですか。現在どこの会社でどういうふうな開発段階、いつごろ飛べるのか、そういう点について詳しく説明してください。
  265. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 四十二年度から基本設計にかかりまして、四十三年度で細部設計、四十四年度予算で試作機二機の予定を組んでおりますが、三菱重工で開発を担当しております。
  266. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 ことしじゅうには飛ぶわけですか。
  267. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 来年の夏には試飛行したいということで計画を進めております。
  268. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私がお伺いしたいのは、いま、モデル機ではない、こう言われましたけれども、非常に似通っているという点で結局はモデルと言われてもしようがないと思うのですが、このイギリスとフランスで共同開発されたジャガーの試作機は現在まで何機つくられて、何機くらい飛んでいるのですか、今回の事故までの間ですね。
  269. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) ジャガーの初飛行は四十三年の九月と聞いております。その後現在まで七機の試作機を持っているというふうに聞いております。
  270. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まだ七機しか試作がされてなくて、しかも、これはちょうど墜落したのは七機目になるかと思いますが、そういうまだ向こうとしてもはっきりしていないものを四次防の計画に入れること自身が非常に私はずさんではないか、このように考えるわけです。特にこのTXはF86の次のものであると聞いておるわけですけれども、その点はどうか。それから、その装備計画が非常にずさんではないか、このように思うのですが、その点はいかがですか。
  271. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 86Fの後継機ではないかという点につきまして私から申し上げますけれども、86Fには要撃戦闘機の任務と、それから支援戦闘機の任務とがあります。要撃戦闘機のほうにつきましては、これは次に御承知のファントムが予定されておるわけでございます。TXとは直接関係はございません。それから支援戦闘機のほうの後継機につきましては現在検討中でございます。TXもいろいろな候補機種の一つにはなりますけれども、それにきまっておるわけではございません。
  272. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) フランスが七機目をつくって事故を起こしたものを現在の段階で四次防に組むのはずさんではないかという御質問でありましたけれども、フランスの開発状況はわかりません。日本のいまの技術ではできるという自信は持っております。特にいまの各国の航空機の技術は相当進んでおりまして、ある意味ではこの程度の航空機は日本の技術ではこなせると考えております。もちろん、来年の試飛行を待たぬとわかりませんが、試飛行を待ったあとで具体的な計画は立てられるというふうに考えております。
  273. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま、向こうの開発の状況がよくわからないと言われましたけれども、そういうものがわからないのによく似たものを——結局、モデルと私は断定したいのですけれども、それを八十六億円も出して開発をされるということはちょっと早いのじゃないか。もう少し向こうの様子を見て、事故も絶対ない、かなり使われだしておるというくらいでいいのじゃないか。ただ、非常にスピードが、いまそういう時代ですから、早く開発しなければいけない、世界の大勢におくれると、こういうふうに考えられる点もありますけれども、もう少し慎重にこの計画なりその内容を、それは向こうは軍事であるから言ってくれないかもしれませんけれども、もう少し把握をされてからしっかりつくられたらどうか、日本の航空技術と合わせて。それはもっと慎重であるべきであったと、このように思うわけでありますけれども、その点で重ねてお伺いしますけれども、どうですか。
  274. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) フランスとイギリスがジャガーという超音速高等練習機をつくっておるということも一つの過程でございますけれども、現在米軍なりそういう方面では、超音速の高等練習機は現実に使っております。そういう実情の中で、必要なものを現在の技術の許す範囲でつくるという考えでおります。いままで試作したものの中には民間機ではYS11、私のほう防衛庁ではTX1という航空機がございますけれども、いずれも計画どおりにまいっております。そうした意味でわれわれは計画どおりにいくという考えでおります。現在作業はスケジュールどおり進んでおります。
  275. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 この事故の原因につきまして詳しい報告を向こうから求めて参考にされるのか。もう一つは、この墜落までにも小さな事故というのですか、多少あったということも聞いておりますけれども、そういう点ですね。とにかく延べ飛行時間は三百二十六時間、新聞報道によりますとそうなっておる。まだわずかな時間です。そういう点の詳しい事故の究明はちゃんと報告を受けられるような体制になっておるのかどうか、その点お伺いしたい。
  276. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 新聞報道によりますと、エンジン・トラブルではないかというような記事もございます。そうした意味で、使うエンジンについては非常に関心がございますし、ちょうど先生御指摘のように、同じような航空機の試作機が事故を起こしたということは非常に関心事でございます。そうした意味で、いまフランスの事故につきましては、在仏大使館を通じて調査を依頼しております。また、このエンジンをつくっているロールスロイスについては詳しい報告を求めております。われわれとしましても、この経験は十分に生かしてまいりたいというふうに考えております。
  277. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 長官にお伺いしたいんですが、こういう新しい開発のあり方ですけれども、いまのようなこういうふうなことも決してこれから考えられないとは言えないと思います。日本が非常に急ピッチでいま防衛計画をされておる状態ですし、やはりせっかくやろうとしても、もし外国のまねをして結局むだなお金を、損してしまうということもあり得るのではないか。かといって、外国のスピードにも追いつかなければならぬと、そういう両方の問題あると思うんですけれども、そういう技術の開発ですね、こういう点についてのあり方をどう考えられますか、この事故を通して。
  278. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) シャガー——私は去年の六月でしたか、フランスへ行きましたときに、飛行機、見てまいりました。当時話を聞いた情勢では、なかなかいい性能で、アメリカ側の飛行機に遜色ないようなことを話として聞きました。まあ、日本方針としては、世界じゅうからいい要素を集めていい飛行機をつくるという考えがいいと思います。アメリカ一辺倒で何でもアメリカのものに依存しておけばいいという安易な考え方は捨てたほうがいい。そういう意味におきまして、ジャガーのような当時優秀な飛行機であるといわれていたものをよく検討してみるということは非常に有益であると私、思っておるわけです。しかし、それがもし欠陥があるとすれば、それはあくまで究明して、そういう欠陥を起こさせないようにわれわれとしては改良する必要もあると思います。基本方針としては、一国に偏することなく、やはり世界じゅうからいい資料を集めていいものを国産していくという考え方がいいんではないかと思っております。
  279. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そこで私、向こうが試作の段階でもうこっちが一挙にどんどん進めたほうがいいのか、ある程度向こうで安全度がためされてから、少しおくれるけれども日本へ持ってきてやったほうがいいのか、その点はどうですか。
  280. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点はお示しのとおりでございまして、やはり航空機のようなものについては、先ほども申しましたように、プルーブンという、証明と経験のあるということが非常に大事であるだろうと思うんです。そういう意味においては、慎重を期してやらなければいけないと思います。
  281. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 先ほども少し問題になっておりました自衛官の人員の問題ですけれども、非常に充足率が、要するに、定員が一ぱいになっていないと、どうせこれから自衛官をどんどんふやされるでしょうから——あまりよくないことですけれども、あまりにも人間をふやすより、それを、いまだんだんコンピュターとか機械化の時代になってきますから、どの企業でも人手不足の時代で機械に切りかえていっていますけれども防衛庁としてはそういう人員と機械化の問題、これどうお考えになっていますか。
  282. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 基本方針としましては、いまお示しのとおりの考えに沿って現実化していこうと思っております。
  283. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 具体的な計画はどうなっていますか。
  284. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 具体的計画は、私がそういう基本方針を出しまして、次の防衛計画の過程においてそれをどういうふうにこなしていくか検討を命じている最中でございます。
  285. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 人員不足の点に関連してお聞きしたいのですけれども、ことし防衛大学校を卒業する四百九十人の卒業生のうちの一割強に当たる五十人が自衛官にならない、こういうふうなことを聞いておりますが、具体的にそれで数字は間違いないでしょうか。
  286. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 教育局長から答弁します。
  287. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 御承知のように、五十名の者がこの三月の卒業者のうちから自衛官にならないまま学校を卒業いたします。
  288. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 どういうところへ行ったのですか。
  289. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 五十名についてすべてがわかるわけではございませんが、防大を卒業いたしまして自衛官になることを辞退するということでその承認を求めた場合に、本人から申し出た者が十一名ほどございますが、それらについてちょっと申し上げてみますと、ミツワ自動車、これは本人の親がやっておる会社のようです。これが一名、共栄社一名、JAPAC一名、オリエンタル・エンジニアリング二名、日本電子一名、大阪軽金属一名、それから東京理工専門学校の講師一名、大昭和製紙一名、八州製作所——これは自分の家業でございます——一名、日本システム一名、以上の者がそういうふうなことで申告をいたしております。それから卒業する際に、大学当局としても自衛官となることは健康上その他の関係——概して健康でございますが、適当でないということで就職した者が、防衛大学校の教官、トリオ・ステレオ、日本ソフトウエア、三井建設等に行っております。その他につきましては、からだが悪いといいますか、要するに、自衛官となる適性が十分でないという、たとえば航空機搭乗等には適性が欠けておるというようなことでございます。五名。その他の者につきましてはどこに就職するか、あるいは他の大学にもう一度入り直すか、そういう点については明らかでございません。
  290. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 残りの人が不明なのはまだ現在きまっていないのか、掌握できていないのか、どっちですか。
  291. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 厳密に言えば、掌握できておらない、こういうことでございます。
  292. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 どこでも学校を出て就職をどこへしたかというのは掌握するのが普通だと思いますけれども、どうして掌握できないのですか。
  293. 内海倫

    政府委員(内海倫君) おそらく大学当局といたしましては、ただいまそういうふうなことの相談に乗り、あるいはこの就職先を承知するということはしておろうと思いますが、現在までにわかっておる者は先ほど申し上げたとおりでございます。
  294. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 で、長官にお伺いしたいのですが、防衛大学校というものはかなりまあ一人当たり四百万くらいのお金をかけて国が完全にめんどうを見て出すわけです。それが全部自衛官になるべきなのか。しかし、まあいまの日本自衛隊の性格——戦争だけじゃなくて、まあ災害のほうもやっておられるし、そういった意味で、もっと幅を持たして、別に防衛大学を出たから必ずしも自衛官にならなくてもいい、民間へ就職してもかまわない、その点は自由だと、こういう見解をとられておるのか、その点の基本的なお考えはどうですか。
  295. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防大生は卒業後は必ず自衛官になるべきです。なるべき道徳的義務と責任があると私は思います。しかし、からだが悪いとか適性がないとか、客観的にそう思われる人はこれはやむを得ない。防衛庁のシビルの仕事をやってもいいし、防大の先生になってもいいし、ほかへ転出することもいいでしょうが、一応健康で自衛官に向く者は防大卒業後は自衛官になるべきであると思います。
  296. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そのいかなかった人が、入るときは絶対自衛官になると思っていたのが、実際四年間勉強してみて、まあほかのほうがいいと考えるようになったのか、また、もし途中でそういうふうになった場合に、やはり自衛官というものに対して非常にいや気がさすような教育内容なのか、また、そういうふうなまあ自衛隊に魅力がないのか、その点の、ほかへ就職をした人の意識調査といいますかね、そういうのはやられましたか。
  297. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 正確な意識調査というふうなものをやっておるわけではございませんが、まあ入校いたしますときに、入校する全員が将来ともに全部りっぱな自衛官になるという決意に燃えて入ってくるという者は、私どもの想像よりもはるかに少なくて、おおむね入校当初アンケートなどをとりました場合、そういうしっかりした気持ちの者は大体三〇%程度のようでございます。まあ入ってみて、どういう学校であるか、あるいはどういう任務を持っておるかということがだんだんわかって、四年間にほとんどの者がしっかりした自衛官になりたい、こういうふうになるわけです。今度の五十名の者がどういうふうなことで自衛官になることを拒否したかということでございますが、学校におる間に、どうも自分の能力ではとても自衛官として将来立っていけないというふうな自信喪失というような者が約十名、それから家庭の事情、これはまあどうしても家業を継がなければいかぬ、そういうふうなことの者が七名、それから、さらに学問を続けたいということで大学院、他の大学に進学したいというふうなことの者が四名、それから身体的な欠陥というふうなことの者が三名、それからどうも自衛官に自分としては気持ちの上でなりたくないというふうなことでこれをやめた者が十四名、その他というふうなことになっております。
  298. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 さっき長官は、自衛官になるべきであると、こう言われましたが、実情はそういうふうなことで、まあ自衛官にならない人が出てくるわけです。これを防止するといいますか、ためには、入学のときにもっときびしいチェックをするか、定員を少し減らしても、かなり厳密に審査をするようにするか、あるいは中の教育をもっと魅力あるようにするとか、その点と、もう一つは、先日私テレビで見たのですが、西ドイツの軍隊ですね。向こうは徴兵をやっていますが、若い人が非常に行きたがらない。徴兵を拒否するという例が非常にふえているという話を聞きました。いまの若い人がはたして今後防衛大学校にどれくらい来るのか、その点をどう考えておられるか。確かにいま、たとえば教育大学でも、教育大学を出て学校の先生になる人というのは安外少ないわけです。ほかのところへいく人も確かに多い。これは大学制度に確かに問題があるし、内容的にも問題がある。この点は、大学紛争ということから考えて、今後大いに検討しなければならぬ問題だと思います。これからの若い人が、はたしてどれだけこの防衛大学校に来るのか。その点もっと意識を調査して、それに対して定員をふやすなり、入学の規定をきびしくするなりしなければならぬと思うのですけれども、その点はどのように考えていますか。
  299. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛大学校の学生の定員は減らす必要はないと思います。ただ、あの中の空海陸の配分を変えて、空と海をもう少しふやして、陸を減らす、そういう方針が必要であると思います。  それから第二に、防衛大学校の教育の内容を理工科系の大学のようにして出発したことは非常に賢明であったと思います。しかし、私は行ってみて文科科学の面が足りないと思いました。その点はもう少し補強を要すると思います。それから、やはり国家が四百万もかけて、小づかいまで国からもらって教育を受けている特別の学校でもありますから、その恩恵を受けて卒業される諸君は、国が期待しているように自衛官になるのが当然であって、そういう道徳的義務を、社会的責任に似たものを果たすように私は希望いたします。それで教育の内容は、当然これは命をかける自衛官でもありますから、そうして集団生活のリーダーになるという性格の任務を持つ人たちでありますから、やはり旺盛な責任感と、それからリーダーシップを発揮するだけの勇気とそれから見識を持つ必要があると思うのです。そういう意味において、普通の大学とは違ったきびきびした、ある意味においては多少スパルタ的な教育をもって、ほかの国の軍の幹部を養成するに似た精神的規律を確立するということが必要なので、それにたえられないという者は自衛隊の幹部としての資格はないと私は思います。ですから、そういう大事なポイントについて、教育内容を変更する必要はないと私は思います。
  300. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、同じく人員不足の問題でもう一点お伺いしたいのですが、これも一昨年、私は医官不足の問題でお伺いしまして、医師法違反が自衛隊の中で行なわれている、このことを追及いたしました。こういう問題を取り上げたのは、医官自体の不足が原因となっている。それをちゃんとしなくちゃいけないという意味でお聞きしたわけでありますが、その後現状はどうなったか。特に医官、技官の不足について、現状並びに今後の対策をお聞かせ願いたいと思います。
  301. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自衛隊の医官は、定員八百十三名に対して現在二百九十四名、充足率三六・二%、歯科医官は、定員百九十名に対し現在五十八名、充足率三〇・五%であります。これは四十五年二月二十八日現在です。これを病院、研究所、それと部隊等と分けて見ますと、病院、研究所等の充足率は六九・六%でありますが、部隊等は二二・八%、部隊等の充足率が非常に低いことが目立っているのは遺憾であります。
  302. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 これに対する対策ですが、お医者さん自身が不足しているわけです。私なんかも大学におるころ、自衛隊からの医官の募集が掲示板に張られておりましたけれども、あまりみんな関心がなくて、行かないわけです。結局その防護策として私が考えるのは、病院ですね、あるいは研究所を非常に充実したものにする。研究費なんかにうんと金をかけてもらって、あるいは、この病院では相当いろいろな診療の技術も学べる、そういうことになればかなり行くのじゃないか。いま町の病院にしても保健所なんかも、行く人はいないわけです。もちろん無医村なんかも全然行かないわけです。そういうわけで、警察病院というのもありますし、自衛隊の病院をもっと開放して、研究テーマなんかも広範囲なものにし、そこに金をかければ、別に自衛隊に行ったから、医官になったから、軍隊よくないのだ、じゃなくて、そこで勉強ができる、あるいは診療技術も習得できるとなれば、私はかなりの人がいくのじゃないか、もちろん給料もよければ。そうした場合に、かなり医者をふやして、それを部隊に回して、何とかある期間出張という形で回せば、私はかなりできるのじゃないか。また、いま自衛隊のほうでもやっておられると思いますが、これから海洋開発時代になりますので、特に潜水病の問題なんかもこれから非常に大きな問題になる。これは研究費はありますけれども、そういう特殊な研究、あるいは非常に魅力あるものをやって、しかもそれが戦争に全然結びつかない平和なものであっても私はかまわないと思う。このように考えるわけです。その点はいかがですか。
  303. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はいまおっしゃいましたようなことと全く同じことを考えておりましたけれども、できるだけ早期にそういう方向に実現していこうと思っております。具体的には中央病院をでき得べくんば長官直轄ぐらいに格上げしたらどうか、それからその中央病院のお医者さんの研修や研究について、大学病院以上の待遇その他の機会を与えるようにするとか、あるいは外国留学あるいは国内留学、そういうふうにして病院の権威を高めていく、そういうふうにして、いまおっしゃいましたように、潜水病とか、あるいは航空医学実験とか、あるいはそのほか外傷、そういういろいろなけがとか、整形とか、部隊には必要なことでございますから、そういう点で日本でも水準の高いものに仕立て上げていきながら、大ぜいのお医者さんの卵がそこに来ていただくような形にすることから始めたらいいんではないか、そういうように考えております。
  304. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 また話が長期防衛構想に戻って恐縮ですが、一点だけお伺いしたいのですが、先ほども少し木村委員のほうからでしたか、海上自衛隊の増強の問題が出ておりましたが、原子力潜水艦の問題をお伺いしたいのですが、防衛庁としては、今後原子力潜水艦の建造は計画をされておるのか、あるいは検討中なのか、絶対されないのか、この点はいかがですか。
  305. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛庁としましては、原子力推進による船舶が普遍化してきて普通のものになるというときまで、原子力潜水艦推進力に使うことはやらない方針になっております。
  306. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまのお話だと、一般化された場合、たとえばいま原子力商船ですか、「むつ」ですか、できつつありますが、ああいうものができ上がり、将来かなり日本の中で普通の商船あるいはタンカー等に原子力のエンジンが、原子力による推進が行なわれるようになった時点ではつくると、こういうふうな意味だと思うのですけれども、そう解釈してよろしいですか。
  307. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大体そのように思います。
  308. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 その場合に、原子力基本法との関係はどうなりますか。
  309. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 抵触いたしません。私は原子力基本法をつくったときの提案者であり、国会に説明したものでございますけれども、そのときに明確に、たとえば推進力として普遍性を持ってくる場合には、自衛隊がこれを推進力として使っても、この基本法には違反しない、そういう説明を加えております。そういう了解で、あの法案は全会一致で通ったように記憶しております。
  310. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そういう違反しないと提案者が言われるのですから何とも言えませんけれども、この第二条の平和目的、これは防衛は平和が目的なんだということで、これはごまかされるかもわかりませんけれども、その次の民主的な運営という問題ですね、これは軍の場合、要するに自衛隊の場合どうなりますか。やはり軍の機密という問題が出てくるのじゃないかと思いますけれども、民主的な運営、さらに公開、国際協力ないしこういった点でひっかかってこないか、その点はどうですか。
  311. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 原子力平和利用三原則の中でも、パテント——工業所有権の関係とか、そういうような関係の機密は、やはり守らるべきであるということになっておるわけです。したがいまして、これを平和推進力として使うという場合でも、抵触することはないと思います。
  312. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 時間がありませんので、簡単にあと二つお伺いしますが、一つは、先ほどこれは少し触れました、防衛庁でやられている海洋開発というか、海底の調査、調査船がいまございますけれども、それの目的ですね、また今後海洋開発がいろいろ行なわれてきた場合、防衛庁としてはやる必要が私はないんじゃないか。もし防衛庁がやるとすれば、海底の軍事利用ということが目的とされているんじゃないかと、その場合は、現在国際的にも海底軍事利用を禁止しようと、こういう問題が出てきます。防衛庁としてはやらなくてもいいんじゃないかと、こう思うのですけれども、その目的ないしあり方、長期見通し、それをお伺いいたしたい。
  313. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 海洋観測につきましては、海洋観測艦というのを——先生も御承知かと思いますけれども——四十四年度につくりました。で、この目的はまあ海洋の調査ですけれども、その調査の目的は、海域別の音波の、電波の特性というふうなのがおもな目的でございます。つまり海上自衛隊の大きな任務の一つに、対潜作戦といいますか、対潜防護ということがございます。潜水艦を追っかけ、それをつかまえるということが大きな任務ですけれども、そのためには、わが国周辺の海洋の特性をつかまえまして、水流なり水温なり深さなり、特にそういうことをよくつかまえまして、音波がどういうふうに伝わっていくかというようなことを知る必要があります。そういう目的のために海洋観測艦をつくったと、今後もそういうことを続けていきたいと、こういうふうに考えております。
  314. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 最後に、先ほど質問いたしました巡視艇の銃撃事件についてお伺いします。
  315. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) けさほど日本海に不審船舶が出たようでございます。概略申し上げますと、けさの二時四十分に海上保安庁の第八管区本部から連絡がわがほうの海上自衛隊にございましたけれども、海上保安庁の巡視船の「あさぎり」というのが、午前零時十五分過ぎに、兵庫県の津居山という港の東一マイルに不審船舶を見つけております。その不審船舶は、見つけたときには高速で、ハイ・スピードで逃走中であった。この巡視船の「あさぎり」はあまりスピードが出ませんので、海上自衛隊の航空機を出してもらえないかというふうな連絡もございました。で、海上保安庁では午前三時四十五分に巡視船四隻を現場に急行させております。さらに五時には、海上保安庁のビーチクラフト機も発進しております。で、海上自衛隊では先ほどのような連絡もありましたので、徳島からS2Fという対潜哨戒機を出しました。二機出しております。六時過ぎに二機、それからさらに八時過ぎにさらに一機出しております。で、この間海上保安庁の巡視艇の「あさぎり」というのは不審艦を追跡しておりますが、だいぶ接近しまして写真を撮影しておったようでございますが、この間、五時三十五分ごろ二回ないし三回の銃撃を受けたという模様でございます。  で、海上保安庁のビーチクラフト機は九時過ぎに目標を発見しております。で、海上自衛隊機も十時過ぎに目標を発見いたしております。十一時四十分ごろ海上自衛隊機は撤収をしております。海上保安庁のビーチクラフト機もそのころ撤収をいたしたようでございます。  概略以上のような状況でございます。
  316. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 どこの船かまだわからぬのですか。
  317. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) よくわかってないようでございます。
  318. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まあこの間のハイジャックのときも自衛隊が出動しまして、あれはまあそういう民間の飛行機でもありますけれども、今回こういうふうなことがですね、まあもしこれが、こんなことがあってはならないことですが、かなり、まあ撃沈までいかなくても大破されたとか、そういうような場合、防衛庁の飛行機は出ているわけですけれども、どの辺になれば自衛隊としては活動するのか。専守防衛ということをいっておられますけれども、どの辺になればたまを発射するかですね。あるいは威嚇をするのか。そういう、まあこの問題は保安庁だけの問題でとどまっておるようですからそう問題ないと思いますけれども、こういう問題が出てきた場合、やはり専守防衛の立場から、こういったことに対してどういう処理をされるか。いまどこの船かわからないという話ですが、こういう情報網を、この間も私は予算委員会でお伺いしまして、法の範囲内で拡大していきたいと言われましたが、こういう情報網ですね、またこれに対してどう防衛庁としては動くのか、自衛隊として動くのか、そういった点について長官の見解を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  319. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 法的なことは私よくわかりませんから、防衛局長に答弁させますが、私の考えでは、海上保安庁から救援を求められ、海上保安庁の船が相手の船舶によって攻撃を加えられるとかそのほかで危殆に瀕して、救援を求められたときに、それを排除するに必要な限度の行為及び正当防衛の範囲内の必要な行為は、許さるべきではないかと思います。
  320. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 今回の場合は、先ほど申し上げましたような状況でございますので、情報収集、海上自衛隊としては情報収集にとどまっています。情報収集は、やはり海上保安庁と連絡しながら、海上自衛隊としても今後も続けるべきであろうと思います。  それから情報収集を越えた具体的な行動ということになりますと、法律に定めてありますのが、一つはもちろん防衛出動、これは武力攻撃があった場合、それから海上における警備行動、これは海上保安庁の行なわれる警察行動の補完として「海上における警備行動」というのが法律にも規定してあります。これは先ほど長官からお答えのように、法律上、ある場合には武器を使用することができることになっておりますが、それは警察的な事態が緊迫して、たとえば正当防衛上武器を使用せざるを得ないというような事態に限られると、こういうことになっているわけでございます。
  321. 岩間正男

    岩間正男君 まず最初に、先ほどの長期防衛構想内容ですね、これを資料として出してほしいんですね。国会の意見なんかも聞きたいと、こういうことでありますから、これは資料としていただきたいと思います。
  322. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 長期防衛構想というのはまだないので、新聞に出ましたのは、あれは私が自民党の安全保障調査会で講演しましたのを整理したものが新聞に出たわけでございまして、したがって、長期防衛構想というそういう正式の防衛庁としての考え方で出ておるわけではないのであります。
  323. 岩間正男

    岩間正男君 それは先ほど伺いましたが、あなたのほうは案として固めるまでの長官の見解であると、それをだんだん固めるまでにはいろいろ意見を聞きたい、だから新聞の発表の骨子はあるんでしょう。骨子でもいいですから、出してほしい。
  324. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう意味におけるものとしてお取り上げいただくならば、差しあげてもけっこうでございます。
  325. 岩間正男

    岩間正男君 それじゃ、それをお願いします。  次に、今度の「よど」号問題について、これは二、三の点をただしたいと思うんですが、三十一日に金浦に「よど」号が着陸をした。その後の記者会見だと思いますが、防衛庁長官は、それに対しまして対空砲化があり、ミグ21が八機出てきた、こういうことを記者会見で述べられておりますね。しかし、その後、機長並びに乗客のほとんど全部ですけれども、そういう事実はないということで否定された。それにもかかわらず、その後両院の本会議における答弁では、「対空砲火にいたしましても、うしろで撃った場合には、前の「よど」号の機長は前方を注意しているからわからない。だからあったという事実もございませんし、なかったと断言することもできない。そういう意味で未確認として考えておるわけであります。」、こういう答弁をあなたはされているわけですね。これは非常にあいまいだと思うんですね。国民は非常にこれに疑惑を感じているんですよ。  そこで私はお聞きしたいんですが、とにかくそういう事実がなかったということを関係者の全部が言っているんですから、だから、私は当然この事実についてはもっと情報を確めるということが必要だと思うんです。したがって、その後どういう態度をとっておられるか。単にああいう答弁をされただけじゃ私は非常にこれは無責任じゃないかと思うんですが、いかがでしょう。
  326. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あのときの答弁でも申し上げましたように、そういう報告、情報が米軍を通じて当方に入りまして、当方の記録にもちゃんと残っていることであります。あの機長の話を聞いてもわかりますように、たとえば福岡を出たあと日本の航空自衛隊の飛行機が追尾していきましたが、それもたしか知っていなかったようです。それから韓国の識別線に入ってから、同じようにF5が追尾して両側からついていったのですが、それも認識していなかったようです。三十八度線を越えて西のほうへ旋回してから、どこの国の飛行機だかわからないけれども出てきて、そうして下のほうへ合い図をしたと、そういうことを機長は言っております。そういうように、機長はやはり前方を非常に注意しておったので、側面や後側面で起こったことはこれはわからない状態であった。これは無理もないのです。そこで、砲撃があったかどうかということはまだ未確認の状態で、そのままわれわれのほうの報告の事実があったということで記録に残っておるのです。その後もこういう報告があったけれども、もう一回調べてみろと、あの事件の途中で私言いまして調べさせましたが、確かに——あの阿部議員と一緒に防衛庁の人間を外務省に併任させて向こうにやりました。あのときは中島一佐というのを外務省の身分にしまして、それでいろいろ現地でも調べさせましたが、その報告でも、やはりそういう報告があったということを言ってきております。ですから、事実があったかなかったかということは、これは未確認で、わかりません。しかし、そういう報告があったということは事実であります。
  327. 岩間正男

    岩間正男君 これは非常に私は、この「よど」号の問題もですが、日本防衛問題にとっては見のがしのできない考え方だと思うのです。未確認そのままにこれはして、しかもこれは長官の答弁は推測が加わっているんですね。解釈です。だから、問題を、その事実があったかどうかということをここで私は追跡することが防衛庁の当然の任務であり、責務である。そういうことを記者会見までやった長官としても、ことにあなたの立場からいえば非常に私はこれは重大なことだと思うんですね。これはされるべきですね、今後。されますね。
  328. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう報告が過去の時点においてあったという事実はあったのでありまして、そのことを正直に私は未確認情報として申し上げたのであります。その事実以外はわれわれのほうは関知しておりません。ですから、これ以上韓国側に問い合わせて、あったかなかったかということも、そのとき中島一佐に調査させまして、そうして韓国側にそういう情報があったということは言っておるわけでありますから、これ以上やる必要もないだろうと思います。
  329. 岩間正男

    岩間正男君 これはとにかくあれだけ乗客が全部否認する、そういうことですからね。だから、向こうの情報だけは信頼するという立場だったんでは、自主的な防衛ということをあなた言っておられますが、向こうの情報だよりの自主的防衛ですか。そういうことはあり得ないと思うんです。自主的な立場からいったって、私はこれを確認するための努力を今後続けるのが当然あなたの立場としては必要だと思いますが、重ねてお聞きしますが、どうですか。
  330. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あの事実、つまりそういう報告、情報の事実があったということだけは、これは事実でございますから、正直に申し上げたので、それ以上の内容については、いまの限度でもういいと私は思います。
  331. 岩間正男

    岩間正男君 私はそういう態度ではちょっと困るんじゃないかと思うんですね。  そうすると、これは情報のニュースの経路ですね、これを明らかにする必要があると思うんです。つまり、日本のいまとにかく防衛庁——ことに航空の場合ですけれども、航空はそういう情報にたよっているわけですね。入手の経路をここで明らかにしていただきたい。どういう形になりますか。金浦から、どういうふうになりますか。
  332. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 第五空軍からわれわれの航空総隊に入った情報で、それが私のところに来たのです。第五空軍は、韓国側からそういう情報があった、そういって、念のためにわれわれのほうへそれを知らしてくれた。
  333. 岩間正男

    岩間正男君 ちょっとお伺いしますが、情報の入手をもっとこまかくずっと述べてもらいたい。入手の経路、どうなります。  第一に、第五空軍に入る前に、板付の米軍から出ているわけです。その場合には、これは釜山の米軍じゃないですが、米軍の情報でしょう、これは。その前に韓国軍がどうしたか、そこは私はよくわからないが、そうじゃないですか。
  334. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 第五空軍というものは日本にもあるし、また韓国にも一部あるわけです。それが同じ第五空軍のもとにあって、コミュニケーション・ラインを持っているわけです。ですから、それは韓国の内部において、たとえば釜山とか大郷とか、ソウルとか、適当なところにそういうコミュニケーション・ラインがあるんではないかと私は思います。
  335. 岩間正男

    岩間正男君 技術的に明らかにしてください。技術の上から、どういう経路をたどったか。
  336. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 技術的と申しましても、長官のお答えのとおりでございまして、第五空軍は、在日本を管轄すると同時に、韓国の米軍も麾下に持っておりますので、第五空軍の中で連絡の経路は当然あるわけでございます。在韓における第五空軍から、府中の第五空軍の指令所に連絡が参りまして、府中のほうには、これはわれわれの総隊司令部がございます。そこに米軍から連絡がくる。それが空幕を経て、われわれのほう、長官のところに来る、こういう経路でございます。
  337. 岩間正男

    岩間正男君 これは資料として出してください、時間が限られておりますので。こうじゃないですか、韓国の釜山、これは米軍の第十三師団司令部がある。そこから板付の米軍の基地に送られて、それから府中のアメリカの第五空軍司令部に送られて、それから府中の米軍基地内に同居している自衛隊の航空総隊、ここの司令部に送られて、それから防衛庁の幕僚監部作戦室に送られて、それから防衛庁の内局運用課、そうして防衛庁長官、こういう経路をたどる、こういうふうにわれわれは聞いておりますが、これは違いありませんか。
  338. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 先ほどお答えしたとおりでございます。
  339. 岩間正男

    岩間正男君 それは資料として出してください。この経路は、もう非常に私たち重大だと思います。結局は米軍のそういうルート、それなしには長官の耳には入らない。韓国から聞くというわけじゃないのだから。だから、あなたがたの、ミグの問題と対空砲火があったという情報は、第五空軍の司令部を通した、そこを通ってきたこれは米軍情報ですね。それは確認してようございますね。
  340. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど申し上げたとおりでございますが、いまのこまかいルートにつきましては、ただいま申し上げました私と防衛局長の答弁で御了解願いたいと思います。
  341. 岩間正男

    岩間正男君 米軍のルートを通った情報であるということを確認しておきたいと思います。  そこでお聞きしたいのですが、問題は、これはどうなんです、三十八度線を通った、そしてそれに沿って西に南下して、それからUターンして金浦空港に入ったということですが、三十八度線というと、これは誤解を生みやすい。当然これは停戦ライン、軍事境界線に入ったか、入らないかということが非常に重要だと思いますが、これはどういうことになっておりますか。軍事境界線に入ったのですか、入らないのですか、「よど」号は。
  342. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 日本航空の長野部長等の証言によりますと、長野部長は機長からさらに聞いたものだと思われますが、三十八度線を越えて、休戦ラインも一部越えているという状況のようでございます。
  343. 岩間正男

    岩間正男君 一部越えているのは、どこでですか。どこを越えたのですか。
  344. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 地図と緯度でお示しするわけにもいきませんけれども、何と申しますか、私が長野部長の証言を聞いた記憶では、三十八度線はある程度越えて、そうしてずっと、地図でいえば左側、西のほうに行っているようでございます。そうして平壌に向かっている。平壌に向かった途中から南下をしておりますが、休戦ラインがずっと斜めにあるわけですが、大体あの半島のまん中あたりから、こちらぐらいのところでは休戦ラインを越えている模様でございます。
  345. 岩間正男

    岩間正男君 これは長野基準部長でわかるのですか。それが得た情報というのですが、どこから得たのか。それをあなたたち確かめるのが責任でしょう。長野基準部長がどうだこうだという問題じゃないわけです。それは、最初はそういうふうに報道されて、新聞によってその後はっきりと訂正されておりますが、そういう航路で最初は報道をしたということです、一つは。これはなんでしょう、ここに私は地図で明らかにしましたけれども、最初は三十八度ラインを越えた。それから二分ぐらいということですが、さらにそれからこちらに、西に沿って行って、停戦ラインには結局入っていない。そういうことでしょう。北緯三十八度二十分、東経百二十度四十分、そこのところから西のほうに向かって、金浦の真上のところでおりた。新聞もその後はっきり訂正しております。最初は、何かこの返でちょっと入ったような報道らしかった。これは明確にしなければいけませんわな。これは重大な問題です。停戦ラインをどうしたか。軍事境界線を越えているのか、越えていないのか。ということは、この問題はいまの情報と関係が深いから私はそう言うのです。これは越えなければどうなんです。越えないのにミグ戦闘機が八機も出てくる、それから対空砲火があった、こういうことになるんですか。この「よど」号の速度はどのくらいです。時速はどのくらい。
  346. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 正確に覚えておりませんが、速度は九百キロ前後ではなかったかと思います。  それから先ほどの休戦ライン云々のことにつきましては、石田機長並びに江崎副操縦士が一番正確に知っているわけでございますが、その人たちから長野基準部長が聞いたところでは、休戦ラインを一部越えているようであるということを私は聞いたわけでございます。
  347. 岩間正男

    岩間正男君 石田機長は証人に喚問されても出てきてないし、それからこの人はなんでしょう、もう平壌に着いたのだと思っていた人でしょう。その人が、休戦ラインを越えたかどうかといっても、これはわかりっこないですよ。そうでしょう。おかしいです、そんなこといっても。結局はこれは越えてない。朝日新聞なんか、訂正しているでしょう、最初に出した記事が違っていたというので、その後追跡して。  そうしますと、おかしいでしょうが。軍事境界線を越えない飛行機が、どうして一体ミグ戦闘機の追跡を受けたり、対空砲火を受けたということになるのですか。だから、そういう点を考えても、どうです長官、あなたの情報というやつは、やはり依然として怪情報ということになるのですか。怪情報がいまだに流れて、あなた方それを擁護するような立場から、向こうに行った、調べたと。調べたといったって、米軍の情報はどうだったかということが必要なんで、向こうに行ってソウルで聞いたとか、韓国から聞いたとかということではこれはだめなんです。情報そのものについての責任は、はっきりその主導権は第五空軍が握っているわけでしょう。そういうものですから、第五空軍に聞かなければはっきりしたものはわからないでしょう。正確は期し得ない。
  348. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま岩間先生からお見せいただいた地図を見ますと、休戦ラインを越えてない線になっておりますが、私らはいまの防衛局長のお話しのとおり、搭乗員から聞いたという話、あるいは新聞に出たいろいろな情報その他を見ますと、この岩間さんの地図とはだいぶ違う地図になっており、これも未確認情報じゃないかと思うのです。この情報がどこから出て、どの程度の正確性を持っているか、それは私は不幸にして知ることができない。
  349. 岩間正男

    岩間正男君 あなたは都合のいいことを言いますが……。
  350. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはどういう根拠があるのか、もしお知らせいただけば……。
  351. 岩間正男

    岩間正男君 私どもは追跡をして調べたんですよ。それであなた方は都合がいいことを言う。対空砲火はなかった、それからミグの追跡もなかったという点は、これはおかしいといって盛んに、うしろから撃ったんだからわからないとか何とかいって、それから今度は機長から聞いたんだという点だけはこれは間違いない、こういうことでしょう。これはおかしくないですか。そういう形で情報というものはつくられてはいかぬということです。私はさらにこの問題は締めくくりなんかでも、もう少し正確にやりたいと思いますけれどもね。なぜかというと、「よど」号の問題、この問題も重大です。しかし同時に、その中では空の問題がある。つまり今後の日本の空の防御問題がどうなるのかという問題です。  そこで、私はこれと関連してお聞きしますが、大体第五空軍の空の管轄区域はどことどこですか。
  352. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 日本、韓国及び沖繩と承知しております。
  353. 岩間正男

    岩間正男君 聞いてみると、そこのところでは絶対権威をふるっている、そうして自分の庭のことについてはほんとうにほかの容喙を許さない、こういうもとに日本の空はあるわけでしょう。韓国の空もあるわけでしょう。沖繩の空もあるわけだ。極東の中枢部というものは第五空軍で握られている。その支配のもとに日本の空というものはあるんだということじゃないですか。今度の「よど」号の問題の非常に重要な点はこの点にあるんじゃないですか。だから私は、そういう点から言いますというと、これはこの点を明らかにしなければ、私たちのいま置かれた位置というのはわからないわけだ。今度の問題で一億の国民というものは、自分の人権というものは実は軍事力、つまり安保体制下におけるこれらの支配、さらに第五空軍というものが、いま言ったような総括的な管轄をしている。そうしてそれが太平洋全部に、全米空軍につながっている。そうして極東においてはそのような権威をふるっている。そういうもとに日本の空がある。そうして情報網というものは全部握られている。そういう形でしょう。そういう中でこういう問題が起こったということ、そうしてその情報というものはいまのような形で引っぱり出されてきているというところに非常に問題の本質があるんじゃないかと思う。したがって、このような情報をもとにして中曽根さん今後判断されますか。あなたは防御の責任者として、そういう怪情報みたいな、未確認情報というものを根拠にして今後の防衛体制をやっていくということだったら重大問題と思うのですが、これはどうなりますか。
  354. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自主防衛はやはり自主情報から始まるというふうにも考えておりまして、やっぱり情報の充実ということを努力して、自主的判断を確立していきたいと思います。
  355. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると何ですか、いまの安保改定とつながると言うのですか。たとえば松前・バーズン協定というのがありますな。これを見ますというと、緊急事態の実施についての責任体制というものが目的になるのはわかっています。しかしその後どうなる。緊急の事態では米空軍が飛び立ってしまうでしょう。そして、それから当然日本自衛隊が結局この情報のもとに同調する、そういう形になりますな。安保五条が発動すればそういう形がとられる可能性があるわけですね。これは五条の問題。それからもう一つ、事前協議の問題にしても、どういうことになりますか。事前協議にしても、たいへんな事態が起った。その情報が日本に入ってきた。その情報をもとにして、そしてことに韓国の問題については、これは対岸の火ではない。したがってすみやかに前向きに——プレス・クラブの総理の演説によれば、そういうふうに決定すると、こういうことを言われている。そういう事態になりますと、これはどうなりますか。空の情報網を握られて、あなた自主情報にしたいと、それはあなたの個人的な願望としてはなるほどそういうことになるでしょう。自主防衛を大言壮語しているあなたですから当然です。当然でしょうが、しかしそれはできますか。いまの空の体制の中でできますか。
  356. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本アメリカとは安全保障条約を結んでおりまして、相互に信頼関係にあるわけであります。そしてアメリカ日本防衛については重大な関心を持って協力しておるわけであります。そういう相互信頼関係の中にあって、情報の交換を緊密に行ないながら日本防衛に役立たせていこう、そう考えておるのでありますから、アメリカの情報というものを一つの重要な情報として、われわれは判断の素材にして、できるだけ多くアメリカ側からの情報も手に入れるようにしたいと思っております。
  357. 岩間正男

    岩間正男君 判断の素材と言われましたけれども、今度の「よど」号に関する問題はそうじゃなかったと思う。金浦に着いたのはやむを得なかった。対空砲火があったし、ミグ戦闘機が来た。そういう形であなた発表された。これは軽率ですよ。だから確実にこれを確かめるという努力というのは、今度これはされたかというと、やはり米軍でしょう。米軍の情報というもの、そしてそういう情報の入手経路というものについて特に問題がある。それで、実際の支配体制の中で、いま言った松前・バーンズ協定だって全くそうだ。それをどうなんです。一体府中のあそこの航空総隊司令部というのはどうなっているのです。あれはあそこに一緒にいるんでしょう、米軍と。そういう事態の中で、いままでわれわれにがい経験を何回もなめている。そうでしょう。たとえばキューバの事件のときだってそうです。キューバの事件のときは総理も知らなかったわけだ。ところがいつの間にか警戒体制を米軍が全世界に対してとった。日本でも当然その情報が第五空軍から流れてきた。そこで航空総隊を通じて全部の基地の警戒体制をとったじゃないですか。これで責任者が出ているはずです。そうでしょう。池田総理が、そういう事態ではどうするのだ。これはもうとにかく問題も何もあるもんじゃない。そういう事態に対して全然総理も知らないうちに警戒体制がとられたという、実際あの大きな問題があった。その後だってあるのですよ。プエブロとかEC121だとか、そういう事態が起こっておるのです。そういうにがい経験がありますから、われわれの知らないうちに、米軍の支配のもとにいつの間にか自衛隊がそういう体制の中に投げ込まれる。そういう事態というものは、今後の防衛問題を考えるときに、自主防衛だとかなんとか言っても、いろいろあなた自衛隊の増強の問題もやっておられますけれども、しかし、こういう基本的な問題について対決をしないで、この問題そのままになって、そして結局それをささえているのは安保条約だ。そしてそれがさらにもっと、現在の日韓の間において問題になっているのは、日米共同声明の線でしょう、アジアの主役という面で。これは自主防衛というかっこうになっている。そうすると、この問題は、私は「よど」号の教訓としては、一億の国民は、今度の問題は、その背後にある日本防衛問題として非常に重大視せざるを得ない。そして、空の支配というものははっきりそうなっている。そうでしょう。
  358. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) キューバのときに警戒体制をとりましたのは、米軍がやっただけで、日本側はやっておりません。これは大統領命令で、アメリカは全世界の米軍にたぶんやったのだろうと思いますが、日本とは関係がない。それで、いまの第五空軍と航空総隊との関係でもありますが、これは別個の指揮系統、独立の指揮権を持ってやっております。双方が連絡しておるという関係にあるのでありまして、そのために日本の独立性がそこなわれるということはないと思います。
  359. 岩間正男

    岩間正男君 だから、そういう指揮系統というのは何を根拠にしてやりますか。
  360. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本は内閣総理大臣を最高指揮権者として、私がその一部を受託してずっとやっております。
  361. 岩間正男

    岩間正男君 空の場合は。
  362. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは航空幕僚監部、それから航空総隊、それから各航空団、そういう方向に指揮系統が流れていっておるわけですけれども、その間に米軍が関与して入ってくるという余地はありません。
  363. 岩間正男

    岩間正男君 いま言った二つの司令部、最初は幕僚監部、それから航空総隊——しかし、これは、五九年に松前・バーンズ協定ができて、それが根拠でしょう。そうして二つのこれは司令官というかっこうになっている。しかし、それは緊急事態に対処する事前の措置で、それからの問題についてはいまだに不明瞭じゃありませんか。これは防衛庁長官調べてみたのですか。
  364. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 岩間委員のお話を承っておりますと、非常に資料は豊富で、事実はたくさんお知りでありますが、判断と評価においてわれわれと非常に違うところがあると思います。
  365. 岩間正男

    岩間正男君 私は事実を述べているので、決して私の主観でやっているのじゃない。これはもう隠れもない事実だと思います。だから、その点は私は、自主防衛を口にされているけれども安保のこの事態の中で、自主防衛というのはいま言ったような形になっている。それを何よりも明らかにしたのが今度の「よど」号の姿だと思う。  もう一つお聞きします。阿部助哉代議士が二日に確認のために——向こうがどうしても要請した、そういうことで出かけることになった。そのときに記者会見であなたが述べられていることを私たちは聞いておるのでありますが、中曽根防衛庁長官は、T33で韓国にすぐに向かわれたらいいだろう、人命のためには海外派兵になってもやむを得ないと、こういう発言をされたと聞いておりますが、いかがですか。
  366. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 緊急な事態でありまして、阿部代議士を一刻も早く京城に送って、あのお客さんたちを飛行機からおろして、家族を安心させ、日本にその晩でも連れてお帰ししたほうがいいという判断のもとに、飛行機を調べましたけれども、韓国に行く飛行機もないし、私は一時は羽田から福岡まで日航空機かあるいは全日空の飛行機で行ってもらって、それからは、やむを得なければT33で行っていただいたらという気持ちも起こしましたけれども、日航で迎えに行く飛行機が用意してあるというふうなことを聞きまして、そしてそれを繰り上げて阿部先生に行っていただいたのです。それは、あのときの判断としましては、ともかく相手はああいう賊でありますから、どういうふうに気が変わるかもしれぬ。したがって、一刻も早く阿部先生をお届けして、お客さんを地上におろすことが緊急である、こういう判断のもとにやったことです。そのときに、海外派兵でも何でもかまわぬということを言ったことはございません。
  367. 岩間正男

    岩間正男君 それはあなたが興奮しておられて言ったのかもしれませんが、これははっきりそのときの記者の言として私たちは聞いておるのです。それから自衛隊機が行くとすれば、当然に韓国の領空を通る。これもあなたは前の日に韓国側の了解を得ておる、こういうふうに記者の質問に対して答えたと言っているのですが、これは事実ですか。
  368. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 前の日に——そういうことはございません。
  369. 岩間正男

    岩間正男君 もっとも、あとの記者会見で、きのう了解をとっていると言ってから、いま交渉中だ、こういうふうに言われたということでありますけれども、そういうことになりますと、これなんかも空のそういう形が今後非常にやはり問題点になってくると思うわけですね。海外派兵という問題、これはいまどう考えておられますか。
  370. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 海外派兵ということばがどういうことを意味するか。法制局長官に言わせますと、武力行使の目的で兵力を外国に送るというのが海外派兵である、と法制局長官は言っていました。そこで、人命救助のために、平和的な目的のために緊急に飛行機を派遣するとか何とかということは必ずしも海外派兵に当たらないというようなことをたしか予算委員会で答弁していた記憶があります。武力行使の目的で兵力を派遣するということでなくして、たとえば災害のためとか、そういう場合で平和目的のためにやるということは、たしか法制局長官の見解でも、違憲ではないという記憶が私はあります。
  371. 岩間正男

    岩間正男君 しかし、それをあえてやられるということは——これは政府政策としてはやらない、といういままでの国会答弁があるわけですね。今度はあなた、途中でとどまられたようですが、これについては私たちも聞いております。どこかの議員が、これでやはり海外派兵の突破口が開かれる、そういうことで社会党の代議士が乗っていたのではぐあいが悪いというような、そういう反対もあって、考えてみれば、そういうことで一ぺんに道が開けると、そのときは平和だろうが人命救助だろうが、さてそれが先例となって、そのあとにその道が強化されるというのがいままでのやり方なんです。こういう点については、防衛庁長官としてはもっともっと慎重であるべきじゃないか。ことに国会答弁の立場にあるわけですね。こういう点はそれはわかりますよ、気持ちは。われわれも人命尊重ということをほんとうにこれは委員会でも第一にすべきだということを主張して、私なんかも質問の中で最初にそれを述べた。その気持ちはわかる。わかるのだが、その気持ちと、それからこの問題を私は——ことにいまそういう責任の衝にある人は口にすべきでないことだと思う。その後あなたが、自衛隊法の改正については、個人的見解だが検討しておる、というようなことをあのとき答弁された。そしてその後、記者会見であなたは、これは内閣の意向じゃない、個人としての考えだ、と言い直された。しかし、これはさっぱり違わない、個人としてでも。やはり、そういう海外派兵の問題をも含めた憲法の改正や自衛隊法の改正をやるということにつながるわけです。その点大臣、お変わりないですか。
  372. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はうそは申しません。
  373. 岩間正男

    岩間正男君 これは重大な問題ですよ。個人といいながら、閣僚の中にそういう考えを持っている、現実に即応するのだという形で。そういうものが国民のほんとうに長い間のそういう一つの歯どめということがそういうところで実は破られる。時代即応ということをさっき言っておられましたが、時代即応というようなことでやられるわけです。  最後にお聞きしたいのですが、今後の「よど」号事件で自衛隊が出動しましたね。航空自衛隊の場合はどういう出動のありさまだったか、それから陸上自衛隊の場合はどうだったか、これをお聞きしたいです。
  374. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 板付におきまして救急車四両を飛行場のそばまで持っていき、それから航空自衛隊の基地内にそれを待機させた。それから不発弾の処理班四名を福岡駐とん地内に待機させた。狙撃兵云々ということはありません。以上でございます。私の国会のいままでの答弁で、不発弾処理班に御質問が言及しておったのも忘れて、不発弾処理班を派遣したことがないというような印象の答弁をしたような気もいたしますが、もしそうでありましたならば、それは間違いでありますから取り消します。狙撃兵を置いたということがないということであります。
  375. 岩間正男

    岩間正男君 ここには、これは西日本新聞では、はっきりそれは載っておりますね、地元の新聞ですからね。それからさらにこれは三十一日の毎日新聞にも、やはり「同50分」——五十分といいますと、九時六分に「よど号」が着いておりますから、板付に。その前ですね、十五分前になりますか、「福岡空港に陸上自衛隊から不発弾処理隊と狙撃兵到着。」こういうふうにこれは報道しています。それから地元の新聞もそうです。これは狙撃兵はいないということですが、どういうふうにその後これは調査されたんですか。
  376. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 狙撃兵云々というのは、当時あの飛行機のタイヤをパンクさせるためのねらい撃ちの人間が要るとか要らぬとかいうことから、何か狙撃兵がいたとかいないとかいう議論が出たんではないかと想像されますが、狙撃兵を置いたということはございません。
  377. 岩間正男

    岩間正男君 それからこの点については、そうするとこの新聞記事はこれは誤報なんですか。これはまだ明確になっていない。
  378. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 不発弾処理班四名がいたことは事実であります。これは誤報ではありません。
  379. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、出動の何か資料で出してもらえますか、時間もありますから。  それからその飛行機は二十機というふうに言われていますが、小松基地とか築城ですか、新田原、こういうところからも出て、いろいろ何かこれを追跡したり、そういうなにがあるわけでしょう。これも時間の関係で一々こまかく言っておられませんけれども、このときの出動の状況というのは、これは調べておるわけでしょう。どうなんです。
  380. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ただいま申し上げましたように、救急車四両を航空自衛隊の基地内に待機させた。それから福岡駐とん地内の室内に不発弾処理班四名を待機させたというので、室内に待たしておいたということで、外へ出たんではないので、出動ではありません。
  381. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、この飛行機のその日の出動状況は、これはちゃんと文書で、ひとつ資料として出してください、時間ありませんから。
  382. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) はい。
  383. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、これは何出動ということになるわけですか。
  384. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) どちらのやつですか。飛行機ですか、それとも陸上のやつですか。
  385. 岩間正男

    岩間正男君 陸上も、飛行機の場合も。
  386. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 飛行機の場合は人命救助のための災害出動。それから陸上の場合は、これは出動ではない。基地内におった。
  387. 岩間正男

    岩間正男君 それは基地内の常備軍ですか。
  388. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 救急車は基地内の部屋の外におったし、それから不発弾処理班は室内に待っておった。
  389. 岩間正男

    岩間正男君 これは派遣されたんじゃないですか。
  390. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そうではないようです。福岡駐とん地内におったということです。
  391. 岩間正男

    岩間正男君 しかしこれは「同空港に急行」、そして今度は「狙撃兵到着」というふうにこれは書いておりますからな。だからそこのところはやっぱりことばのあやでなく、事実はどうか。そうするとこれは災害出動ということなんですか。
  392. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 飛行機は災害出動。しかしいまの陸上の話は、駐とん地内におったことで、出動ではありません。
  393. 岩間正男

    岩間正男君 そうしますと、これはそこの狙撃兵はないというふうなことなんだけれども、これはどこの判断ですか。防衛庁長官の判断でこれは出しておるのですか。
  394. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 陸上自衛隊の待機につきましては、福岡におります第四師団長が状況を見まして、救急車も要るかもしれないというので、航空基地に待機させた。不発弾処理は、ああいう情報がございましたので、何かのお役に立つ場合もあるかなということで、部屋の中に待機させたということでございます。
  395. 岩間正男

    岩間正男君 待機は何ですか、法的な根拠は。どんな待機のしかたですか。
  396. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 不発弾処理につきましては、法律に不発弾処理の規定が、先生御存じと思いますけれども、ございます。それの前の準備といいますか、そういうことを考えた。行動に移っておりません。それから救急車等につきましては、人命救助のお手伝い、こういうことになるわけでございます。
  397. 岩間正男

    岩間正男君 これは航空自衛隊の要請ですか、あるいは警察からの要請ですか。
  398. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) あの時点における各種の状況を見た上での第四師団長の判断だったわけでございます。
  399. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、これは自主の判断で出たというのですね。
  400. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 先ほどから長官もお答えのように、出たというわけじゃございません。準備を部屋の中でしておっただけでございます。
  401. 岩間正男

    岩間正男君 これはどうも治安出動と紙一重のようなところがあるんです。だから警察の要請とか、それから警察の後拠としての待機なのか、この辺が非常に不明瞭です。これは明確になっていないので、それはその後調査しないのですか。
  402. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 調査の上、お答えをしているわけでございます。
  403. 川上為治

    主査川上為治君) 以上をもちまして、防衛庁所管に関する質疑は終了したものと認めます。  なお次回の分科会は、明十五日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。   午後四時三十七分散会      —————・—————