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1970-04-16 第63回国会 参議院 予算委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月十六日(木曜日)    午前十時七分開会     —————————————    委員の異動  四月十六日     辞任         補欠選任      二宮 文造君     鈴木 一弘君      片山 武夫君     向井 長年君      萩原幽香子君     松下 正寿君      須藤 五郎君     岩間 正男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         堀本 宜実君     理 事                 木村 睦男君                 柴田  栄君                 山本 利壽君                 吉武 恵市君                 鈴木  強君                 横川 正市君                 矢追 秀彦君     委 員                 大森 久司君                 梶原 茂嘉君                 川上 為治君                 小山邦太郎君                 郡  祐一君                 白井  勇君                 杉原 荒太君                 高橋文五郎君                 中村喜四郎君                 初村瀧一郎君                 平泉  渉君                 二木 謙吾君                 増原 恵吉君                 山本茂一郎君                 柳田桃太郎君                 足鹿  覺君                 小野  明君                 岡  三郎君                 加瀬  完君                 木村禧八郎君                 鶴園 哲夫君                 戸田 菊雄君                 羽生 三七君                 山崎  昇君                 塩出 啓典君                 鈴木 一弘君                 三木 忠雄君                 萩原幽香子君                 岩間 正男君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  小林 武治君        外務大臣臨時代        理通商産業大臣  宮澤 喜一君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  坂田 道太君        厚 生 大 臣  内田 常雄君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君        郵 政 大 臣  井出一太郎君        労 働 大 臣  野原 正勝君        建 設 大 臣  根本龍太郎君        自 治 大 臣  秋田 大助君        国 務 大 臣  荒木萬壽夫君        国 務 大 臣  佐藤 一郎君        国 務 大 臣  中曽根康弘君        国 務 大 臣  西田 信一君        国 務 大 臣  保利  茂君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       真田 秀夫君        公正取引委員会        委員長      谷村  裕君        警察庁刑事局長  高松 敬治君        警察庁警備局長  川島 広守君        首都圏整備委員        会事務局長    井上 義光君        防衛庁長官官房        長        島田  豊君        防衛庁防衛局長  宍戸 基男君        防衛庁経理局長  田代 一正君        防衛庁装備局長  蒲谷 友芳君        経演企画庁調整        局長       新田 庚一君        経済企画庁国民        生活局長     矢野 智雄君        経済企画庁総合        計画局長     八塚 陽介君        経済企画庁総合        開発局長     宮崎  仁君        科学技術庁長官        官房会計課長   野崎 博之君        科学技術庁計画        局長       鈴木 春夫君        科学技術庁研究        調整局長     石川 晃夫君        科学技術庁原子        力局長      梅澤 邦臣君        外務省アジア局        長        須之部量三君        外務省アメリカ        局長       東郷 文彦君        外務省欧亜局長  有田 圭輔君        外務省経済局長  鶴見 清彦君        外務省条約局長  井川 克一君        大蔵省主計局長  鳩山威一郎君        大蔵省主税局長  細見  卓君        大蔵省理財局長  岩尾  一君        文部大臣官房長  安嶋  彌君        文部大臣官房会        計課長      安養寺重夫君        文部省初等中等        教育局長     宮地  茂君        文部省大学学術        局長       村山 松雄君        文部省体育局長  木田  宏君        文部省管理局長  岩間英太郎君        厚生省環境衛生        局長       金光 克己君        厚生省薬務局長  加藤 威二君        農林大臣官房長  亀長 友義君        農林省農林経済        局長       小暮 光美君        農林省畜産局長  太田 康二君        農林省蚕糸園芸        局長       荒勝  巖君        食糧庁長官    森本  修君        水産庁長官    大和田啓気君        通商産業省貿易        振興局長     後藤 正記君        通商産業省企業        局長       両角 良彦君        通商産業省重工        業局長      赤澤 璋一君        通商産業省繊維        雑貨局長     三宅 幸夫君        通商産業省鉱山        石炭局長     本田 早苗君        通商産業省公益        事業局長     馬場 一也君        工業技術院長   朝永 良夫君        建設省計画局長  川島  博君        建設省道路局長  蓑輪健二郎君        建設省住宅局長  大津留 温君        自治省税務局長  降矢 敬義君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十五年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十五年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十五年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ただいまから予算委員会開会いたします。  昭和四十五年度一般会計予算昭和四十五年度特別会計予算昭和四十五年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  これより締めくくり総括質疑に入るのでございますが、その取り扱いについて理事会で協議を行ないましたので、その要旨について御報告をいたします。  審査日数は、本日及び明日の二日間といたしました。その質疑総時間は二百八十八分とし、各会派への割り当ては、自由民主党及び日本社会党はそれぞれ百八分、公明党三十六分、民社党十八分、日本共産党及び第二院クラブはそれぞれ九分といたしました。質疑順位は、お手元に配付をいたしておりまする質疑通告表順位といたしました。以上御報告いたしましたとおりで取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  それでは、横川正一君の質疑を行ないます。横川君。
  4. 横川正市

    横川正市君 委員長報告のとおりに、四十五年度予算の審議がいよいよ最後の大詰めを迎えることになったわけであります。その間、各総括一般分科会等公聴会公述人公述を受ける等、全般にわたって論議をいたしてまいりました。その論議の中で、項目としてあげられました問題について、きょうは質問をいたしたいと思うわけであります。  最初に、総理大臣に、政治所信開会の劈頭に私どもは聞いたわけでありますが、それと、最近になりまして、四月の十日に、帝国ホテルで日本人記者クラブに対しての演説等、これを読んでみまして、七〇年代の政治というのは、六〇年代に持っておりました政治とは内容を異にしながら、しかも非常に重要な内容を持っていることを私どもは感知いたすわけであります。問題は、問題の指摘だけにとどまって、これが実行ができないということになりますと、私は、それだけに重要課題が山積している立場からいたしますと、たいへんこれは国民にとって不幸なことになろうかと思います。ことに四月十日の記者会見で明らかにされた点は重要な項目でありまして、総理決意のほどもうかがわれるわけでありますけれども、この機会にひとつ総理から、その心境とこれに対処する心がまえについてお伺いをいたしたいと思います。
  5. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 横川君も御承知のように、今度の国会における所信表明、いわゆる七〇年代と取り組む姿勢、これを私の所信表明として国会で明らかにしたのでありますが、なお説明の足らない点がありますので、記者クラブでさらにそれを中心にしていろいろ考えられる問題等を提起したつもりであります。ところで、ただいま言われるように、ただ問題の提起だけではだめじゃないか、政府ははたして真剣にこれと取り組む用意がありやと、こういう意味お尋ねであったと思います。もちろん政治国民からあずかっておる者の立場といたしましては、ただ単に問題点指摘にとどまっては相済まないわけであります。もちろん国民の負託にこたえるというか、その信任にこたえるというか、そういう態度でものごとを処置していかなければならないこと、これはもちろんでございます。ただその場合に、ものの緊急度の問題がございます。あるいは軽重の問題もあります。全部を一度に取り上げるわけにもなかなかまいりません。やっぱり順次ものごとをほぐしていかなければならないと、かように思っております。経済社会発展計画等基本計画ともにらみ合わして、その方面からも指示されておる点が数点ございますので、これらとにらみ合わせながら具体化をしていく。もちろんその場合に、国会を通じて政府の意のあるところを明らかにしつつ、皆さんの御批判を受けつつ、また事柄によっては積極的な協力を得つつ、国民に対処、対応していく決意であることをこの際に、抽象的ではありまするが、はっきり申し上げておきます。  いろいろ問題は大きいと、六〇年代に異常とでもいうような、たいへんな経済発展をもたらしただけに、この基盤に立っての七〇年代の活躍、これは六〇年代の成長、あの拡大、膨張を無にしないような、効果のあるような方向で役立てていかなければならぬと思っております。その点から考えまして、国際的な諸問題とも取り組みますが、同時に、内政の問題が主じゃないか、内政の問題としてまず言われておるものが物価その他でございますから、これらの問題と具体的に取り組もうと、こういうのが私ども決意であります。
  6. 横川正市

    横川正市君 表題では、七〇年代は人間性豊かな社会を建設するという総理所信、新経済社会発展計画についても、その内容がるる述べられているわけでありますが、この新計画についてまずお尋ねをいたしたいと思います。  この七〇年代前半の日本の国の中期展望とその間の経済運営基本路線を、この発展計画の中に明示をされておるわけでありますが、これは政府にとっても、ただ一つの文書であるし、国民もそれを寄りどころとしておる問題だと思います。そういう面ではきわめて重要な計画案でありますけれども、この中に、第一は、整合的予測前提とする政策体系化という問題、それから計画という形で政府がなすべき長期公約、さらに各省関係方面政策上ではどういうふうに総合的な連係をとられたかという問題、この三つは実はこの計画基本になる点でありますので、まずお伺いをいたしたいと思います。
  7. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) われわれがいま新しい計画一つの大きな目標としておりますところは、発展の均衡のとれた、バランスのとれた経済成長と、こういう点でございます。したがいまして、その目標を達成いたしますためには、いま御指摘のように、今日いろいろな諸計画がございますけれども、これらのバランスをよく考えてやらなければならないと思います。それにつけましても、これら各省中心にしてつくられるもの、あるいは特殊な目的でつくられるところの諸計画、こういうようなものの作成にあたりましては、全体としての計画、今日までの、現行のいわゆる経済社会発展計画、また今後は新しい、このたび決定を見ましたところの計画、そうしたものとの調整を考えながら常に行なってまいる、こういうことになっております。
  8. 横川正市

    横川正市君 この計画の中で問題になるのは、計量自体予測整合性についてどうなっているかという疑問点があるわけであります。この政策課題と具体的に有機的に結びついているかどうかという問題で、一つ国際収支黒字の幅をできるだけふやさないため、まあこれは非常にぜいたくな言い方だと思うのでありますけれども国際収支黒字の幅が、これが、思うようにまかせないときと、それから思うにまかせる以上に伸びるときと、いろいろその取り扱いとしては問題があろうと思いますけれども、その黒字の幅をできるだけふやさないようにしなければならない、そういうたてまえに立って消費者物価を三%台にとどめようといろいろくふうをされているわけであります。実際にこれはいまの状態から見て、そのくふうというものは計画として的確性があるかどうかという問題が第一に出てくるわけであります。それから第二は、国際収支経常勘定黒字幅を三十四億九千万ドルにこれをして、そうしてそのことはいわば円の切り上げを避ける、それから輸入の積極的なこの展開をはかる、自由化の促進をはかっていく、あるいは海外投資とか低開発援助外貨を有効に活用させる、こういうような含みがあるわけでありますけれども、そういうことが一体具体的にどう行なわれるかということと、それからもう一つは、この自由化政策対外投資政策というものが一体この計画からいって、どういうプロセスで行なわれていくものか、その点が具体的に明示をされておらないのじゃないかと思います。輸入自由化だけで計画期間中に二十五億ドルを使おうといたしているわけでありますけれども、その内容と、これが実施された場合に、消費者物価の問題にどういう影響力が出てくるとお考えになっているか、その点をお伺いをいたしたいと思います。
  9. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) いまの御質問最初の、つまり国際収支の状況がますます改善されてまいりまして、いやでも黒字がたまってくるのじゃないか、そこで黒字がたまり過ぎることを避けるためにことさらに自由化等によりましてその黒字というものをできるだけ打ち消すような操作が行なわれているのではないか、こういうような感じの御質問があったように思いますが、私どもといたしましては、そういう特別な、作為的な気持ちでは、もちろん計画作成が行なわれているとは思っておりません。まあ問題は成長率だと思います。それで、この成長率というものをどの程度の水準に考えるか、こういうことで、まあ横川さんも御存じのように、今日までの非常に高い水準成長、こういうものを続けていくということは、必ずしも先ほど申し上げましたバランスのある経済発展という見地から見ても適当でない。またさればといって、今後ますます成長ということ自体は要求されることでありますから、そこいらのところを勘案いたしまして、まあ一〇%を少しこえるところと、こういう成長水準というものが選ばれた、選択されたものと、こういうふうに考えていいと思うのであります。その結果といたしまして、なるほど三十五億ドル、こういう数字が出てきておりますけれども、これらは御存じのように、同時に海外における経済大国としての日本の責務と、こういう問題もありまして、今後対外投資、あるいは経済協力という関係においてますます多くの要求がなされる、こういうこともまた考えてみなければならないと思います。また、経済成長とGNPの大きさに比較しまして、貿易の規模というものがわりあいにスケールが必ずしも国際的に見て大きい日本ではございません。そこで、大蔵大臣もしばしば指摘されていますように、外貨準備そのものが決してまだ過大という段階ではございません。こういうようないろんな点がございますが、そうした点も頭に、一方に置きながら、現在の国際化の時代の要請にふさわしい自由化を進めてまいらなければならない。これについてはすでに御存じのように、現在ございますところの、いわゆる輸入制限品目、こういうものについての制限の撤廃の問題、あるいはまた、ケネディラウンドによるところの関税の引き下げの問題、あるいはまた、今後輸出の伸びに伴いまして、やはり輸入政策というものを相当積極的に展開してまいらなければならない。これはわが国のバランスのある経済発展、あるいはまた物価問題、いろんな見地からもこの輸入政策の積極的な展開が必要になってまいります。そうしたいろんな自由化の問題、あるいは輸入積極化、こういうような観点は、やはり今度の計画重要課題でございます。これをどういうふうに具体的にやってまいるかということでございますが、自由化につきましては、現在御存じのように、政府に一定のスケジュールがございます。これらを、現在のスケジュールをさらに積極的に繰り上げる等の措置をとりまして、そうしてその実現を期してまいりたい、こういうふうに考えております。
  10. 横川正市

    横川正市君 実は、この計画信頼性というような問題で、この計画が事実をありのままに出しながら、その事実に対してどう対処していくかという、いわば正確さといいますか、そういったものがこの計画の中にあれば、それがかりに、たとえばいささか現実とマッチしない面がありましても了承できると思うのですが、ところが、計画をつくって、その計画実施段階計画自体が間違っている、あるいは基礎になるものが違っておったということになりますとたいへん問題になろうかと思うのであります。  それからもう一つは、私ども政府が言うように、たとえば物価政策をとらえて、これに対して真剣に取り組むといいながら、どういうふうにやってみても、いままでの各年次ごと金融とか、あるいは財政上の手段をとってみても物価が下がってこないというのは、これは物価が実は日本経済成長に重要な役割り、体質的な役割りを持っていて、その体質的な役割りを、これを保持するために物価というのは実は上がらなければいけないのだというような関連性というものがあるんじゃないかという、いわば政府の努力にかかわらず下がらない物価に対して、国民はまあ、そういう感じを実は持っておるわけです。そうしますと、今度の場合に、たとえば基本的にはこの一〇・六%という計画想定成長率を立てておりますけれども、これは一体どうなのか。これ自体は少し過小に見ていないだろうか、そういう問題もあります。それから四十一年度の二〇%をこえる伸び率を示した民間の設備投資を、想定どおり平均一二%台まで一体下げられるのかどうかという問題もあります。あればこれはひとつ政策手段前提条件もひとつ整っていられると思いますので、この点もお伺いしたいと思います。  それから長期的には金融緩和を予想しているようですが、金利低下を見込んでいる根拠というのは、一体これはどういうことなのか。それから公共投資を、一〇・七%から一三・五%に引き上げて、社会開発を大きくうたい上げておりますけれども、これの財源処置は一体どうするのか。さらに、いわゆる高福祉高負担ということが言われておりますけれども、この高負担内容というのはどういうことなのか。その中には新税の取り組み方もあるように見受けられますけれども、この点はもう少し具体的な説明をしておく必要があるのじゃないか、こういうふうに思いますが、お伺いをいたします。
  11. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 最初の一〇・六%の問題でございますが、これはもちろんこのたびの作業におきまして、幾つかのパターンというものを選定いたしました。非常に高い成長率、その高い成長率のもとにおいては、とかく物価もやや高くなる傾向がある、こういうような場合の一つの姿、そのかわりにその場合においては、国際収支の姿というものは、そう黒字が過大になってあらわれない。また一方におきまして、成長率をぐっと下げてみる、そうしてそういう姿の場合においては、物価はだいぶ安定してまいる。ただしこの場合には、相当国際収支において黒字幅がふえてまいる、こういうような両極端のパターンの間に、幾つかのその中間のパターンを設定いたしまして、そうして一体今後われわれがしばらくの間、日本経済がたどる姿としてどういう姿をとるべきであるか、こういうことを種々検討されました結果、今般決定を見たような姿が一番妥当であろう、こういうことで今回の決定を見たわけでございます。そういうことで、全体としての計画整合性があるというのはそういう意味でありますが、まず一〇・六ぐらいのところが適当であろう、そういう前提のもとにおきまして、いま御指摘のいろいろな問題がございました。まあ一つは、たとえば高福祉高負担の問題、これは御存じのように、従来大体、たとえば租税とそれから租税外負担ということで、二一%二ですか、ちょっとこえたくらいのところでございますが、これは少し上がってまいるであろう。あるいはまた、現在四十四年度の実績で、いわゆる振りかえの負担が四・三%ぐらいになっておりますが、これらも少し上がるであろう、いずれも二ポイントぐらいずつは上がってまいるのではないか、こういうような点を想定いたしております。これはもちろん今後の経済伸びにより、財政の幅というものも伸びてまいります。そうしてまた、財政の需要の増大に伴って、ある程度負担の増加はやむを得ない、と申しますのは、その中で大きな比重を占めるのは今後社会福祉である。そうして私たちはただ形の上での所得増大を誇るだけではもうもの足りない、今後公害の問題にしましても、あるいは社会福祉の問題にしましても、そうした社会開発重点を置いていかなければならない。そういうことで、本来百十万円の所得が出るところも百万円でいいじゃないか、名目的な所得だけを追う必要はないのだ、こういうやはり一つの考え方がありまして、そこで相当社会開発というところに御指摘のように重点を置く、その結果として、やはり一面において国民所得、一人頭の所得も上昇してまいる。昭和五十年において百万円というふうなところまでまいるわけでありますから、それに応じてある程度の負担増ということも、これまたやむを得ない、こういう見地からいわゆる高福祉高負担と、こういうような考え方というものも出てきておるわけでございます。そういうことで今回の計画は全体の整合性によっておりますから、そう無理な姿をつくったとは私たちは考えておらないわけであります。
  12. 横川正市

    横川正市君 この各個所で具体的にお聞きをいたしたのですが、計画の中に整合性があると、しかもそれは結果的にこの計画は、たとえば信憑性の問題とか、それから実施をされた場合の責任の問題とか、それからこれがまあいわば単なる目標であって、間違ってもこれはやむを得ないというような計画であるとかという点の非常に疑点がたくさん出ているわけなんです。ことにこれは木村先生からも指摘をいたしたのでありますが、成長率からいえば一〇・六で五十年後に消費者が三・八、経常会計の黒字幅が三十五億ドル、こういうような実施の基礎に物価の上昇率が五・七%と記録をされ、ところがいま六・四を上回るというふうに計画と現実との間に実はちょっと先行き不安な結果というものが見受けられるわけですね。ですからそういう点では一体これは、私は重ねては言いませんが、実施計画は下げる努力をして、それでもなおかつできなかった場合の修正ということが言われておりますけれども、できるだけすみやかにこれが手直しをするという努力があってしかるべきじゃないかと思いますが、その点はどうでしょう。
  13. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 現行の計画におきましても、実態と計画というものが乖離したということでそもそも手直し作業をしようということから、今回の新しい計画に進んだわけであります。そういう意味であまりその乖離がひどいというようなことがあればもちろん問題が起こると思いますが、一応この計画自体も三年目には見直しを考えておるわけでございますから、ですからそういう点におきましてまあ私たちは、それで十分であろうと、まだ計画が始まったばかりでありまして、すべてこれからのことでございますから、いまからそういうことを言うのは時期尚早であろう、こう考えています。
  14. 横川正市

    横川正市君 それではその次に、公共投資と民間投資との均衡の問題でお伺いをしたいと思うんですが、民間投資の割合が四十年度は六〇%、四十一年が五五%、四十二年は四七%、四十三年四六%とだんだん低下の状態をたどってきております。大体発想では六〇%台が、これが必要だと、こういうふうに言われておりますが、この点、経済成長基盤をつくることと公共投資を増額していきたいということと、この増額がもしまかない切れないときには民間資金の導入ということはどういうふうに考えておられるかという問題。  それからもう一つは、地域開発構想の調整について、これも前段質問がありましたが、企画庁には広域生活圏構想、建設省には生活圏中心都市構想、自治省には広域市町村構想と、こう三つそれぞれあるわけでありますが、この点はおそらく調整をされてそれぞれ出されてくる問題だと思いますけれども、はたしてその構想自体各省調整についてどういうふうにお考えになっているかという点ですね、これをお伺いいたしたいと思います。  あわせて一つは、PPBSの導入の時期と、それからこれはまあ各省調整とか組み立てに大きな効果があると思うのでありますけれども、それはどういうような期待を持っておられるか。  それからもう一つは、物価抑制費として、物価対策として大体概算九千百億以上のものが出されておりますが、その効果というものはまだ明確にされておりませんが、これはいつごろ明らかにされるのか、あわせてひとつお聞きをいたしたいと思います。
  15. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) この公共投資と民間投資の問題でございますが、確かに現行計画では六割ということに一応の目標がございました。今度の新しい計画では、この目標をはずしております。これは、この問題について特に検討いたしました委員会の研究の結果なんでありますが、やはりこの公共投資を確保していく目標の設定のしかたにはいろいろな方法がある、たとえばGNPに対する比率でとるとか、あるいは民間資本との関係でとるとか、この民間資本との関係でこの比率をとりますと、非常に景気の変動が影響しやすい。したがって、今日まで、公共投資を一面において相当伸ばしておりますが、何といいましても経済全体の伸びというものは非常に高いものですから、必ずしも適当な比率が出たとも考えられない、その他政府のこの投資の中には産業基盤関係だけでなく政府関連の投資も含んでおるというようなことで、この両者だけの比較で事を決するということは適当でないということで今回これをはずしました。そのかわり、GNPに対する比率を八・七%を一〇%以上に高めるとか、他の観点からこれを取り扱おう、こういうことにいたしております。  それからもう一つは、生活圏、広域生活圏の問題でございますが、御指摘のように、ただいまこれにつきましては全総計画一つ具体化ということで、自治省、建設省あるいは企画庁等で相談しております。建設省は交通、道路ということを中心で考えますから、どうしても広い地域をとりたい、あるいはまた、環境整備等の緻密な計画を必要とする自治省の立場からすればもっと狭い区域でやる、しかし、これらは立場の相違でありまして、中身の政策の相違ではございませんからして、目下調整をできるだけ急いでおります。十分調整のつく問題であろうと思います。  それからPPBS並びにそれに関連しまして物価対策費の効果の問題でございますが、これは私がここでも御説明したことがございますが、目下企画庁におきまして特別にこの研究、分析を進めております。ただ、PPBSは、日本はアメリカとともに最も進んでおるといわれておるのでありますけれども、そうしてまた一番進んでいるといわれるアメリカにおいてさえ、必ずしも十分とはいわれておりません。そうしてまたその対象によりましていろいろとその適用のしかたにむずかしさが違うと思います。そういうことで、今後研究をできるだけ一方において進めるとともに、もちろん適当なものがありましたらばこれはできるだけ早い機会に適用することにやぶさかではない。まあ大蔵大臣からもこの前もそういうお話がございました。物価の対策費の効果ということになると、これはなかなかむずかしい問題でございます。よくこれはなお検討いたしまして、そういう適当な手法が見つかれば、できるだけひとつそれを実現してまいりたい、こういうふうに考えております。
  16. 横川正市

    横川正市君 予算関係で、具体的な項目質問があるわけですが、時間がないので、これは省略をいたします。  そこで、一つだけお伺いいたしますが、日本の現在の経済はインフレかどうかという論議をずいぶんやりました。そのときに卸売り物価が安定しているからというのが政府の一貫した説明だったわけですね。四月十五日の報道で見ますと、これは明らかに需要の不均衡が主因で卸売り物価が五%上昇してきたと、こういうことが報道されておるわけであります。卸売り物価が上がってきたということは、どういう影響が出てきたのか。それは、しかし、日本経済のいまの状態として、これはなおかつインフレではないといえるのかどうかという問題が一つあります。  それからもう一つは、総理物価対策で輸出優遇税はこれはもう廃止すると、ところが、翌日の報道を見ますと、通産省では、これは廃止は早計だと、こう出ているわけですが、これは総理のひとつ考え方をここであらためてお聞きをいたしておきたいと思います。
  17. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まず第一は、総理が輸出優遇税は廃止すると、こういうことを大蔵委員会において言明したということを新聞が報じておりますが、総理は必ずしもそうは言っていないのです。正確に言いますと、四十六年度末をもって輸出優遇特別措置が時限立法のその時限が来るわけであります。そこで、皆さんの御意見等もよく考えまして、その際において考えますと、こういうことを申し上げたわけでありまして、決してこれを直ちに廃止するというようなわけではございません。  それから卸売り物価の問題でございますが、これは、私どもは卸売り物価が安定しているから消費者物価が上がってもいいんだと、こんなことは申し上げたことは私どもはありませんです。逆に、消費者物価が上がると、いつの日にか卸売り物価に影響するであろう。こういうことで非常に心配しておったんです。現在、卸売り物価が上がってきた。これはいろいろ要因があるように思います。あるいは輸出入を通じての上昇、あるいは需給の関係、あるいは賃金を中心とするコスト、いろいろありますが、まあ輸出入の関係はだんだん落ちついてくると思います。それから需給につきましては、これは大いに需給のバランスがとれるように努力をすると。賃金につきましては、これはなかなかむずかしい問題ですが、ひとつ影響力を持つ横川先生におかれましても、この問題には御協力を願いたいと、かように存ずる次第でございますが、私は、いまの経済がインフレかどうかというようなことになりますと、インフレというのは、つまり、これは貨幣価値が下落をする。そして、国民が通貨に対する信頼感を失う。そこに大きな問題があると思うんですが、今日、なお円の価値につきましては、国民はこれを信頼しております。貯蓄もどんどんと伸びていくという状態でございます。そういうことを考えまするときに、今日の状態がインフレであるというふうには考えておりません。
  18. 横川正市

    横川正市君 いろいろな対策をとられておりますから、必ずしも安心しておられないんだろうと思うのです。たとえば四月から六月までの公共事業費を前年度並みに押えたなどということも、その一つの対策だろうと思うのです。いろいろやられておられると思いますが、実際には物価の上昇率は相当高い速度で進みますし、あわせて卸売り物価も高まってまいる、同時に、いま円に対して信用があるかどうかというのですけれども、総需要がふくらまっていく大きな原因の中には、円に対する不信というものがあるんじゃないかというふうに私は思うのですが、これはどうお考えでしょうか。
  19. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そういう考え方は初めて伺うような気がしますが、円の価値が薄れてきたから、そこで総需要がふくらむと、これは私は直接の関係はないと思います。総需要がふくらみますのは、何といっても、経済がよくなった、国民のふところもよくなった、そこで国民の消費が進んでくる、これが一つ。それから、もう一つは、何というても民間事業界がそういう消費需要を充足する、そういうようなことから物が売れる、そこで設備の拡大を行なっていくと、またもう一つは輸出がどんどんと拡大をされてくる、この三つが主たる要因である、総需要が拡大しておるというその原因である、そういうふうに見ております。
  20. 横川正市

    横川正市君 金を貯蓄するということは、日本の事情からいってみて、ほとんどだれもが余裕があれば貯金をしようという、これは一つ国民的な気風みたいなものだと思うんですよ。ところが、それを物にかえようという空気が出てくるということは、これは私は単に、何といいますか、うわついた気持ちに変わっていくということよりか、そのことがかえって得をするという、反対給付があるから物にかえるという気風が出てくるのじゃないか。それが高じてくれば、一つの危険状態というものが出てくるというふうに思うんですが、全然聞いてないという話ではないんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
  21. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 確かに、土地に対しましては、一部、住宅を建てるにも早く買っておいたらいいじゃないかというような気分が一部にあるというような感じがします。しかし、一般的に通貨価値が下落しますから、この際、テレビを買っておけ、自動車を買っておけと、そういうような気分は私はいささかも感じておりませんです。
  22. 横川正市

    横川正市君 これは円価値を物価でもってやってみますと、大体いまの価値が十年くらいと比べますと、七千円台ぐらいしかないじゃないかというような、そういう計算もする人もいるわけですね。だから、この間も羽生委員からも質問のありましたように、円の価値が下がるから、だから年金とか恩給に対して対策を立てる必要があるじゃないかと、それがそういう人たちを守っていく手段じゃないかという質問がありましたが、そういう空気が非常に高まってきておることだけは、これは見のがしては困る問題だと思うんです。  で、地価の問題に入りますけれども……。
  23. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。いまの問題に関連してちょっとお尋ねいたしますが、貨幣価値の下落の点では、国際的に見て、十年前を一〇〇とした場合、減価率では日本が最高、それから貨幣価値の低落では日本が最低ですね。一番価値が減っておるわけです。十年前を一〇〇として日本は六二ですね。そうすると、日本が減価率は最高で、貨幣価値の低落で最低のところにおるが、その外国はインフレであって、日本はでないという理由は、一体どういうことなんですか、どうも理解できない。  それから、もう一つ、卸売り物価が安定しておるからインフレではないと、そんなことを言った覚えはないと、それは大蔵大臣は言ったことはない。池田内閣が一貫して、ここでもう私たち耳にたこができたほど聞かしてくれた。同じ自民党内閣でそんなに意見がどうして違うのか、ふしぎにたえないんですが、これをひとつ解明していただきたい。
  24. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 貨幣価値には二つの面があると思います。一つは対外的価値、一つは対内的価値。確かにこの十年間をとらえてみますると、対外価値におきましては、日本のほうは非常にぐあいが悪い。しかし、この四年間をとってみるとどうだ。特にこの二年間ぐらいをとってみるとどうかというと、必ずしも日本の状態は悪くはありませんです。各国ともこれは消費者物価は上がっておる。昨年のごときは、日本の情勢は、まあ先進諸国の中では調子のいいほうだというような状態です。六〇年代の上半期におきましては、急に高度成長に入ったというような関係日本では消費者物価が上昇する。諸外国においてはさほどのことはないというので、その面ではたいへんぐあい悪かったんですが、最近は日本も上がるし、諸外国も上がる。こういうような状態で、この問題につきまして見劣りのする点はありませんです。  それから対外価値についは一体どうかといいますと、ずっと日本は卸売り物価が安定してきたわけです。昨年度初めて上昇というようなことになりましたが、この十年間におきまして、これは諸外国はたいへんな卸売り物価の上昇を見たわけでありまするが、わが国はその間におきまして、その上昇は諸外国に比べると非常にいい調子であった。そういうことを考えますと、貨幣価値には対外的の面もある、対内的の面もある。そういうようなことを大観いたしまして、わが国の通貨は健在である。国民は、そういう総合的な判断のもとに円の価値に対しましては信頼感を持っておる、こういう認識であります。
  25. 横川正市

    横川正市君 あとの点は、もう一問、卸売り物価の問題はどうですか。卸売り物価が池田内閣当時は安定しているから、日本経済は安定していると……。
  26. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 当時、卸売り物価が安定しているからまあいいじゃないかというようなことも言われていることは、私は承知しておりますが、私は、当時卸売り物価が安定しておるからそれで安心だ、こういうことは間違いである。消費者物価が上昇を続けると、いずれはこれは卸売り物価にはね返ってくる時期が来る、こういうふうに申し上げ、これは消費者物価の安定というものは、直接に卸の価格につながる。これは警戒しなけりゃならぬという議論をしてきたわけなんでありまして、今日でもそう考えております。
  27. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連ですから簡単に一つ質問しますが、池田内閣のときに、ぼくはだいぶ論戦やったんですが、卸売り物価が本来なら下がるべきものが下がらない。そこが問題であるということが問題だった。というのは、非常に生産性が上がりますね、総理も言われておりますが、生産性が非常に上がって、コストが下がった企業においては、非常に利潤が多くなるんだから、物価値下がりのほうにこれを振り向けるべきであるということを財界に要請されておりますが、ですから当時、山際日銀総裁も卸売り物価が安定していることが問題なんだ、卸売り物価が下がらないことが問題だ。安定しているんじゃなくて、下がらなくちゃいけないというんです、生産性が上がっているから。そこが問題で、卸売り物価が下がれば全体の消費者物価も上がらないし、そういうことが問題の焦点だったと思う。いまでも私はそれが問題だと思う。ところが、下がるどころか最近は上がっているんです。だから、二重に問題だと思う。生産性が上がっているところの、卸売り物価が下がらないどころか、上がっているんですから、非常に重大な問題である。  だから、もう一つ消費者物価が諸外国より日本が非常に上がっていることですね。なぜ問題か、何で問題なのか。インフレであるとかないとか、ことばの問題ではなく、それが所得の再分配に大きな影響を及ぼすからなんですね。国民がみんな心配しているのはそうなんですよ。貯蓄をしても減価してしまう。ですから、低額所得者は貨幣価値が下がるので困る。ところが、そうした人は賃上げをする力もないでしょう。ですから、諸外国より日本消費者物価が上がるということは、上がりが大きいということが、これは一番の問題点所得再分配に悪い影響を及ぼすから、そこのところが問題だと思うのですよ、一番。この二つの点を問題にしなければ、物価問題の焦点をはずしてしまうと思うのです。さっきの御答弁では的をはずれた御答弁になっているように思いますので、その点をひとつ御答弁願います。
  28. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) なぜ消費者物価が上がるか。これは、消費者物価の上がり方自体は問題があります。こう急速に上がるというようなこと、これは許さるべきじゃありませんけれども、しかし、多少の上がり方は、私は是認さるべきものである。そういうふうに考えております。物価は、わが国の状態におきましては、生産性の高い大企業においてはその製品価格が安くなる、私はこれはまああなたのおっしゃるとおりだと思います。しかし、それが下がらない。なぜかと言いますと、需給の関係も先ほど申し上げたとおりある、あるいは外国の問題もありますが、最近の様子を見ますと、そういう要素もありますが、同時にコスト要因、これが響いてきておるというふうに思うんです。確かにそういう傾向がありますのは、増収で減益だというような会社も出てきておるのでありまして、つまりその最も大きな問題は、賃金問題、ここに私は着目しなければならない時期が来ておる。こういうふうに思うわけでありまして、そのコスト要因ですね。それで、そういうコスト要因並びに需給要因、海外要因というものを捨象して考えると、まあ生産性の高い大企業においては、製品価格は安くなるべきものだ。それがならない。それらの問題点を解決していかなきゃならぬが、同時に、賃金が上がるものだから、生産性の低い中小企業だのあるいは農村におきましても、また、賃金を上げるという——上げざるを得ないという立場になる。上げるのは私は当然だと思う。そこで、それをカバーするためには、これは製品の価格を上げなけりゃならぬ。こういうことになるわけでありまして、ですから、日本は大企業においては、この価格が下がる、中小企業、農村等の、あるいはサービス業等の低生産性の部門においてはサービス料金なり価格が上がる。そういうことで調整できれば私は物価は安定していく。こういうふうに考えるわけでありまして、それがまあうまくいかないで、大企業のほうはあまり物が下がらない。賃金問題を中心といたしまして、サービス業だ、中小企業だ、農村だというような方面における製品価格が高くなる。そこに、私は物価問題の根源があると、こういうふうに見ておるのでありますが、しかし、そういう状態、一体どうなんだ。あなたが、いま、これが所得の分配上の問題があるあるというふうにおっしゃいますが、確かにあります。金銭資産を持っておる人に対する、その金銭価値の下落という問題はあります。しかし、一面において大企業、中小企業あるいは農村、そういう方面におけるこの所得調整、これがまた他面において行なわれておるという、その面もあるのであります。ですから一がいに価格が上がったからどうのという議論はできないと思うんですが、これを軽度に押えるというところにこそ私は問題がある。また、いま非常に高いですが、これがだんだんと先行き商さが低まっていくということですね。これをひとつ実現をしなけりゃならぬという立場に置かれておるのじゃあるまいか。そういうふうな見方もしているのであります。
  29. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 簡単に。非常に重要なので……。
  30. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 木村君。簡単に願います。
  31. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 簡単にやります。  大蔵大臣はコストプッシュを非常に強調されたのですが、いわゆる、これは黙っておりますと、それをわれわれ容認したように思われますから。実は昨年九月に、日本銀行が卸売り物価が急に上がったので、それを押えるための金融引き締め政策をとりましたね。そのときの日本銀行の理由が、日本銀行で調査している経営分析がありますね。経常分析によると、賃金上昇及び原材料の値上がりによるコスト値上がりですね、それを上回って工業製品、特に卸売り物価が非常に上がっているところに問題があるんだ。ですから当面の物価対策としましては、そのことを認識しませんと、コストプッシュは私は否定はしませんよ。それも確かにありますよ。だけど、いま問題なのは、卸売り物価が上がっているのはそういう賃金を含めて、原材料の値上がりを含めたそういうコストの値上がりを上回る卸売り物価の値上がりが顕著になっているところに問題がある。だからそれはどこに原因があるかといえば、総需要が非常に多いんだ、だから日本銀行は金融引き締めをしているんだ、こういう理解をしないと、あなたコストプッシュだけでやったら手がないわけです。金融引き締めだってそれじゃ押えられないことになっちゃうでしょう。当面の物価対策は、そういう認識のもとにやらなければ卸売り物価の値上がりを押えられない。だから認識自体にかなりズレがある。日本銀行の金融政策に対する理解が十分でないと思う。ですから財界ではコストプッシュを盛んに言っていますよ。日本銀行の分析はそうじゃないんですから、その点は私は非常に違うと思うのです、政府の考え方としては。
  32. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 先般来、木村委員が今回の物価騰貴を論じてコストプッシュということに言及をされる、これはたいへん木村委員もずいぶん前進した見方をされておるなあと、こういうふうに感じたわけですが、私もそのコストプッシュ、プッシュばかり言っているんじゃないんです。需要の問題もあるし、海外要因もあるし、そのコストプッシュ、特に賃金問題もある、こういうふうに申し上げておるのであって、何も偏した考え方を持っておるんじゃなくて、大ざっぱに言うと、木村委員と同じような考え方を持っておると、こういうふうに御理解なすってもいいと思うんですが、とにかくわが日本におきまして、四十四年度において生産性の向上が賃金の上昇を下回る、こういう傾向を生じてきた、これは私は注目すべき現象ではないか、こういうことを申し上げてお答えといたします。
  33. 横川正市

    横川正市君 いまの大蔵大臣の答弁で、生産性に上回った賃金という見方に対して、収益性というのは必ずしも落ちてないという説明が日銀の側でされているわけなんですが、賃金は生産性を上回っているというのはどういうことを言われるのか。しかし、日銀の調査あるいは佐々木総裁の言の中には収益性はあがっているということを説明しているわけなんですが、それは関連をしてお聞きをいたします。
  34. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 経済がこれだけ伸び、各企業において大量生産をする度合いが強くなってきておる、そういうものにつれまして収益はあがってくる、これは自然の勢いだと思います。しかし、私はその収益の幅というものはだんだん狭まってくる、これは何かというと、四十四年以来、昨年以来生産性を上回って賃金が上がる傾向が出てきた、こればかりが要因じゃございませんけれども、これも大きな問題になりつつあると、こういうことを申し上げているんです。
  35. 横川正市

    横川正市君 ワクの中での質疑ですから、また別の機会でやりたいと思います。  地価対策で総理にお伺いいたしますが、四十年の十一月の十二日に閣議了解で、「地価対策について」という方針が出されております。大体四年間たっておりますが、具体的に実施をされて、どういう効果が出てきたかという点で判断をされておられるかどうか。これはまあ、次の地価対策の問題とも関連をいたしますのでお伺いいたしておきます。
  36. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 昭和四十三年十一月十二日の閣議了解されました地価対策の基本方針は、一つは宅地の大量かつ計画的な供給、二番目は既成市街地の高度利用、第三は、土地取得制度の改善、第四番目が土地に対する税制の改善でございます。これに基づきまして、御承知のように、土地収用法の改正をいたしまして、収用における改善をいたしたわけであります。なおまた、土地の高度利用につきましては、新都市計画法で容積制限から、従来の建蔽率を改正するということと、それから都市再開発等を合理的にやりまして、都市化しつつある地域の拡大を合理的に促進するということ、それから地価公示制度をきめまして、これによりまして土地の標準価格を示しまして、公共用地等を取得するときにはそれを標準として取得する。これもまた一般取引に一つ目標としてやっていただく、こういうような措置をとったことは事実でございます。しかしながら、御指摘のように、これで完全であるとは言えない。依然としてやはりまだ土地の上昇の傾向がありまするので、さらに今度は強力にこれをやっていくために、今度は相当の大量の土地を開発するということを今度は目ざして進んでまいるとともに、土地税制等についても固定資産税の弾力的な適用、それから都市開発税の増強等をはかりまして、一方においては地方自治団体に土地政策の財源を与えるということと、一方においては土地の流通性を促進する、こういうようなことを総合的に実施してまいる所存でございます。
  37. 横川正市

    横川正市君 直接政治が介入して強権で行なうということは、これはもうもちろんできませんが、政治の誘導によって効果をあげるという点で閣議了解事項というのは不十分であったと、それじゃ新しい方針で進めばこの地価対策の問題については解決するとお考えになっていらっしゃいましょうか。
  38. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 相当前進すると信じております。たとえば首都圏それから近畿圏等において、一番土地問題がむずかしいところでございます。ところで、従来でありますれば公団等が土地を買い入れるというところに重点を入れていったのでございます。ところが、それではなかなか目的達成しないのみならず、場合によっては地価を上げるという原因にもなりかねない。そこで基本的には新都市計画法によりまして、市街地とそれから調整地域をきめまして、市街地に線引きされたところは積極的に都市機能を充実させるための公共施設をやっていくと同時に、一方においては、スプロール現象をなくし、それから農業の安定的経営ができるように、あるいは自然を保護するという意味調整地区をつくろう、そうしておいて、一方においては今度は大量の土地が開発されないままに残っておるものもまた事実あるようでございます。これはどういうところかと申しますと、交通関係が現状では非常に不便である。それから水の問題でございます。水がないために民間デベロッパーも、あるいはまた、地方自治体も手をつけていないでおるところがあります。そういうところを事務的に十分調べた上に、そういうところに道路あるいは軌道等を設置し、あるいは上水道の設備をやることによってそれが大量に供給できるような措置を、これは主として明年からやりたいと思って、基本的に運輸省、自治省、建設省、こういう方面でいま総合的に調査をしながら、対策を講じていこうといたしているのでございます。
  39. 横川正市

    横川正市君 値上がりの状態を見ますと、三十年を一〇〇として、昨年の九月で千二百六倍くらいな値上がりをいたしている。ですから、閣議了解事項以降の値上がりも、パーセンテージが相当高いものがあるんではないかと思っておるわけですが、この地価の値上がりが、経済合理性だとか、それから所得の大きな不均衡とかという原因になっているわけです。そういう点からすると、これは、私どもはいわば攻撃をする立場に立ってものを言うのではなしに、どうすれば解決をするかという立場に立って対策を立てなければいかぬのじゃないかと、こう思いますが、そういう点で、建設省としてはどういう方針をとられますか。
  40. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 御指摘のように、この土地問題は、お互いにあげ足をとったり、攻撃しても、全然解決できないので、国民合意のもとにこれはやらなければならないし、ある意味においては、現在が一つのチャンスじゃないかとすら思っているのでございます。従来は、ややもしますれば、国が公共のために実施するところの用地を取得する場合に、一つのイデオロギーにとらわれまして、国がやることは国家権力との対決だというようなことで勇ましい旗上げをしまして、あるいは一坪地主とか、そういうものが出たり、非常に抵抗が強かったのであります。そのために、御承知のように、土地収用法をかけようにもかけられない。かけても、なかなかむずかしいという問題があったが、いまや与野党を通じて、この土地問題を解決するためには、土地収用法も強くすべきだ、あるいは先行取得について思い切った政治的な手段をやるべきだというような意見も強くなり、あるいは、従来学者の中にも、土地所有権に触れることに非常に消極的であった傾向がありましたのが、むしろいま、土地についてはもっと公共優先にすべきである、こういうふうな御意見が出てきております。そういうような状況からいたしまして、いま横川さんが御指摘になりましたように、攻撃とか、単なる批判を越えて、いま与野党一致してこの土地問題を取り扱わるべきであるという提言は、まことにわれわれも意を強うするところでございまして、その御支援を得ながら——これは立法措置も必要な部面もございます。あるいは財政その他のあらゆる方面手段を講じまして——これは急にいま決意したから、きょう、あすすぐできるというものではございませんですが、少なくともこの四、五年中には土地の値上がりが押えられるというような傾向に持っていくために極力努力したいと存じます。
  41. 横川正市

    横川正市君 攻撃を受けたのは私のほうじゃないかと思うのです。私は逆に、地価の値上がりを待っている側の立場に立った政治の姿勢ということを、これを申し上げておくほうがいいんじゃないかと思う。  それで、これは、具体的な方法でこんないい方法があるのになぜ紛争が起こるのか、と思うのは、下総の御料牧場が那須へ移転をいたしました。那須に行かれたその従業員の皆さんも、たいへん喜んで仕事をいたしております。一体、手を尽くされる点が抜けておるから紛争が起こるんじゃないのか。そういう点の解決策が政治の面では足りなかったんじゃないかというように思いますけれども、その点はどうでしょうか。
  42. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) そういう点も反省しなければならないと思います。従来は、一つ目標を立てますというと、その目標を完成するための努力に忠実なあまり、広く見ないでいく点がある。ですから、たとえば道路とか、いろいろの公共施設をやる場合に、予算をまずきめて、そうして今度は路線をきめてしまうと変更ができない。そうすると、予算を使うときには、今度は条件闘争に入ってくる。非常に高いものにする。一たんその付近が公的機関で値段がつけられると、それ以上の値段に、写真相場になってうつっていく。こういうような点がありますので、できるだけ今度は、少なくとも絶対的に非常な大きな違いがあるところは別ですけれども、比較の線を考えておって、そうしてより収用、というか、政府が入手の楽なほうからやっていくというぐらいの弾力的な考えを採用すべきであるという意味の御指示だと思いますので、そういう点も十分考慮して、今後計画並びに実施を進めてまいりたいと思っておる次第であります。
  43. 横川正市

    横川正市君 もう一つ、現状、これをどうするのかという問題をひとつお聞きをいたしたいと思うのですが、これは建設大臣も現状は十分御案内のようですし、この間も答弁されておりましたので、実情は知っておられると思うのですが、たとえば神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県の一部ですね。この開発は、総合的な開発が全然計画的にはおくれてしまって、住宅必要者がどんどん土地を、きわめて小さく開発をしていっているわけですね。ですから、そこにはもちろん排水もなければ、上下水道もなければ、火災その他についての、消防車も救急車も入らない。それがもう全く点在しておって、そうしてそれが一つの町を構成いたしているわけであります。大体東京のベッドタウンとして、東京が一千百万になろうとする、そのふくらみ方の中でそういう現象というものが出てきているわけですね。この現状に対してどういう手を打つのかというのが一つあるのじゃないかと思われます。自治省とも関係しますけれども、要は、建設省の計画面からお聞きをいたしておきたいと思います。
  44. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 御指摘のとおりの非常な弊害がございました。そのために、今度市街化区域と調整区域を策定いたしまして、調整区域には、そうした民間の個人並びにデベロッパーが簡単に土地開発をやってもうけるということができないような規制をいたす。一方、そのかわり、市街化区域には、やはり上水道、下水道、道路、そういうものを公共投資をしつつ開発していく、こういうことをやらなければならない。さらにまた、いままで建築基準法がございましたが、これが実は現実に沿わないために、だれびとも守らないというような、非常に悪い状況にございました。そこで、やはり現状にできるだけ対応して、民間もこの程度ならなるほどと思われるような法改正をいたしまして、いわゆる建蔽率も緩和しました。それから今度は、いままでの四つの区域を八つに分けまして、ほんとうに環境のいいところは住宅地域にする。そこには、工場やいろいろの商店街は持ってこない。それから住宅地域でも高層、中高層を許すところと低高層のところと区別してやらなければ、日照権の問題があり、いろいろな問題があるから、これもできない。これもやる。それからもう一つは、監視員並びに建築主事を増員いたしまして、そうした不正住宅や不正の開発を厳重に取り締まるということにいたしまして、いま御指摘のような弊害をなくしよう。これが今国会に提出しておるのでございまして、これらの法律を通過せしめていただきますれば、一段と効果があらわれてくるであろうということを期待しておる次第でございます。
  45. 横川正市

    横川正市君 地価対策で抜本的な方針を立てるべきだということで、私どもは当然協力しなきゃと思いますが、これは総理大臣にお伺いしますが、容易なことではないと思うんです、このことは。それで、一応先取りのために政府あるいは地方公共団体が土地を占有する、こういう方針がきめられておりますね。それを臭化体するのには、やはり税制とか、あるいはその他のいろいろな有効な手は打たないといかぬと思うんですが、地価公示法というのがつくられたわけです。この公示法は、私も、実際上地図でもって単価を見ましたけれども、これが適切な価格かどうかという点は、ちょっと判断できません。ですから、これは建設省から、どういうふうな一平方メートルの価格の決定をされたか、それをお聞きしたいと思うんですが、要は、この地価公示をやった場合に、公示額よりか高く売った場合に、その高く売ったものに対してはどうするかという、いわば対策がなければ、公示をしただけに終わっちまう。公示はこうですが、ここはこうです、ということになった売買というものが出てくるんじゃないか、それが一つ。これは明確にひとつお答えいただきたいと思います。  もう一つは、土地高額譲渡の場合、この場合には一体どういうふうにして対策を立てるのか。いわば前段では、適正な公共用地の買収価格というものがきめられれば、それで当然買い取りができるような方法が必要ですし、公団では、きめられた価格よりか高かったものには一〇〇%税金をかけるとかいうような、率は別にして、方法が必要だということがなければ、具体的な効果というものは期待できないと思うのですけれども、その決意はどうでしょうか、お聞きをいたしておきたい。
  46. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 地価公示は、このたびようやく第一回をやったところでありまして、まだ、三大都市の市部とその近郊だけでございます。これは実情に相当合っているようでございます。したがいまして、これは公共事業でこういうものを買収するときの一つの基準になります。そのとおりにはいきません。なぜかならば、地区においてもかなり広範囲のうちの中から選んだ地点でございますから、具体的な数字については後ほど事務当局から説明いたさせまするが、これを漸次拡大していく。  それから、税制の問題は、これは大蔵省のほうからお話があると思いますけれども、窮極において、地価公示がされて標準がきまりますれば、売買の利益がそれだけはっきり出てくるわけでございますから、それだけやはり土地売買に伴う所得がふえるということになるでしょうから、現在でもある程度これで税制上の作用は出てくると思います。しかし、現在まだそれだけの、公示価格との差額を直ちに一〇〇%かけるということも、これはなかなかむずかしいいろいろの問題があると思いまするので、われわれのほうといたしましても、大蔵省と十分に連携をとりながら、そうした趣旨のことをも考慮に入れて進めてまいりたいと思う次第でございます。
  47. 川島博

    政府委員川島博君) お答え申し上げます。  地価公示でございますが、これは、昨年成立いたしました地価公示法に基づきまして、建設省の付属機関でございます土地鑑定委員会が行なうことになっております。土地鑑定委員会が公示いたします価格は、公示地点ごとに二人ないし三人の不動産鑑定士に委嘱いたしまして、その鑑定評価を求め、その結果を委員会が審査、調整をいたしまして判定をするものでございます。この価格は、土地について自由な取引が行なわれるとした場合において通常成立すると認められる価格、すなわち正常な価格でございます。不動産鑑定士等が公示地点の鑑定等をするにあたりましては、近傍類地の取引価格から算定される推定の価格、近傍類地の地代その他の収益から算定される推定の価格及び公示地点と同等の効用を有する土地の造成に要する推定の費用等を勘案いたしましてこれを行なうわけでございますが、鑑定評価に際しましては、土地の客観的な価値に作用する諸要因、たとえば地積でございますとか、あるいは間口、奥行き、前面道路の状況、水道、下水道等の整備の状況、あるいは都市計画法による規制の程度等を勘案いたしまして、これらの価格を決定するに関する資料をできるだけたくさん収集いたしまして、これらの資料に基づいて厳密な鑑定評価が行なわれておるわけでございます。本年の四月一日に官報で公示いたしましたのは、東京、大阪、名古屋並びにその近郊九百七十地点でございますが、将来は、これを全国の主要各地、全域に拡大することで作業を進めております。
  48. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま建設大臣並びに川島君から答えたのでいいかと思いますが、制度そのものでの説明にとまっておると思います。お尋ねになるように物価の問題、その元凶は一体何か、いまやっぱり地価が一つの問題だ、かように私も思います。先ほどは、労働不足、労働力不足から、労賃が一つの問題だというように、これも指摘しておりますが、地価の高騰はこれは確かに一つの問題です。でありますから、この地価を安定さすということ、適当なところにとどめる、これは政府として最大の努力をしなければならないと思います。それで、今日までにとってきた政策が、ただ土地を、宅地を提供するという、その方向で宅地造成には相当力を尽くしたが、売買その他について適当なる政策をまだ樹立していない。ことに税制とあわせて考えると不十分だ、こういうことが指摘されると思います。  そこで、ただいまの公示制度、地価公示制度というものがまだ始まったばかり、その値段のきめ方は一体どうなのか、それは正しいか、こういうような点がいま御指摘になりましたが、私は、事務当局等が説明するように、公示制度というものを十分役立たすように、もっと一般に周知徹底さすことが必要だと思うのです。そうして、その地価のあり方にある程度の相場——と言うと、ことばが俗っぽくなりますが、その値段がきまる、それより以上に高い値段で取引されたら一〇〇%の課税をするとか、いわゆる高く売っても意味がないというような、そういうところへ持っていくのが一つの方法じゃないだろうか、そのためにも、公示制度そのものが普及し、網の目のようにならないことには、ここに正確さがない限りは、いろいろこの公示制度をくぐって売買される、こういうことになるだろうと思うのですね。だから、公示制度を設ける以上、それを十分効果をあげるように、信頼のできるものであり、また同時に、関係者が知っておる、そうしてそれより以上のものになるとこれは一〇〇%も税も取られるよ——そうなると、値段を高く売っても意味をなさぬということになりますから、比較的地価が守られるということにもなるのじゃないだろうかと思います。固定資産税その他の関係もございますので、公示制度をいますぐに、いわゆる地価を、土地の値段を、そのときの時価によって直ちに表示することはなかなか困難な問題がございます。ございますが、それをもっとなじみ深いものにしない限り、どうも土地の値段は維持できないのじゃないだろうかと思っております。また、非常に高く売買された、と、短期投機的な売買だ、こういうことが判断されれば、これについて課税するということ、これは前国会でしたか、皆さんの御協力を得て法律ができておりますが、守られるだろうと思いますが、ただいまのような二つの問題、物価の問題から発展してきて、やはり落ち着くところはこの土地の問題だろうとかように私は思います。したがって、先ほど来の御質問を伺っていながら、やっぱり地価の問題はそういう意味で重大性、非常な重点を置いた政策でなければならない。いま総合性云々の問題がございますが、われわれが取り扱うべき物価対策、これはやっぱり地価の問題、これは一つの核だと、かように私は考えておる次第でございます。
  49. 横川正市

    横川正市君 そういうことから、公営取引所を設けたらどうかという意見があります。もちろん、これには土地が全国的に一つの商品として取り扱われておりますし、しかも、有利な商品ですから、それに関連をする業者というのもどんどんふえてきております。相当な数だろうと思うんです。公営取引所なんというのが出れば、それはもう、そういう団体から攻撃が来るのは火を見るよりも明らかだろうと思いますが、この点で、一体公営取引所というのを設置したらどうかという一部の意見に対して、建設省はどうお考えになりますか。
  50. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) これは、いまだかつて、日本にそういうものはございませんでしたので、研究に値すると思っております。と言うのは、公平な取引が公開の場において、しかも相当の有力なる人々がこれに従事することによって、価格そのものに客観性を持つと同時に、そこに上場される業者、あるいはものが相当のあれになりますけれども、ただ、そこにその前提条件をつけることが非常にむずかしいようでございます。しかし、これは研究に値することでございますから、よく御趣旨のことも承りまして、前向きで検討してまいりたいと思います。
  51. 横川正市

    横川正市君 そこで、総理大臣に、少しとっぴな提案ですが、提案をいたしたいと思うんですが、私は、いろいろな計画がつくられ、適切だと思っていても、その実効があがってこない、その壁は一体何なんだと、これはやはり人口の稠密化が問題だろうと思うんです。計画より上回った状態というものが都市の中に非常にたくさん出ていることが、いかに計画を立てても疎通化することができない。そういう点から、思い切って都市疎開、たとえば、東京ならば東京のいま一千百万の人口を大体七百万程度の人口にするような、そういう抜本策というのがあっていいんじゃないか。その場合に、たとえば埼玉県で言いますと、与野とか大宮、浦和というような都市は相当広大な地域に約五十万くらいな人口が住んでいるわけですが、千葉、茨城、埼玉、神奈川というところに最も近代化された五十万ぐらいな都市が建設をされて、そしてそこへ稠密している都市の人口を移しかえていく。それには道路も軌道もということで十分な対策を立てていく。それだけの計画があっていいのじゃないか。いま言ったような虫食い都市開発なんというところに手をかけるだけの金があれば、これはできるんじゃないかと思いますが、一つ目標としては、東京の人口一千万以上というのはどうか、これはもうこれ以上ふやさないという政策は次善の策だと思います。さらにこれを疎開をさせて、都市らしい都市、環境のよい都市をつくっていくという、そういう目標を持ったらどうかと思いますが、ひとつ御意見を伺いたいと思います。
  52. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 私のほうから先にお答えさしていただきます。  そういう構想が必要だと思います。従来は、都市再開発に重点を入れて、都会の環境をよくするということも相当やってみましたが、たいへんこれは金でかかりまして、メリットが少ない。そこで、現在首都圏の事務局に、栃木県の宇都宮を中心とするところに、五十万から百万都市ぐらいの構想で職住近接の構想のもとに研究さしております。それからもう一つは、高崎−前橋間、この地点にやはりそうしたところの一つの拠点をつくる。もう一つは茨城県、それからいまの鹿島灘、あの付近に一つの大きな拠点、これが三つの大きな拠点で、それからいまの神奈川県とか埼玉というものに、単なるベッドタウンとしての施策だけでなく、東京の都心から吸引する力を与えなければ、幾ら東京から出ていけ出ていけといっても、実質上これは現在の自由主義社会においてはできないので、そうした構想で進めるべきであり、首都圏構想にそれを今度相当強力に進めていこうということで、現在事務当局をしてその条件を調べる指示をいたしておる次第でございます。
  53. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま建設大臣からお答えしたように、政府自身も、いまの過密過疎の問題について真剣に取り組むということでございますが、しかし、いま、不平を言われながらも東京はますます大きくなり、横浜も同じように大きくなり、住みにくい住みにくい、家がない、住宅がないと言いながら、そこに住んでいる。この状態には何らかお互いに気をつけるというか、自治体、中央政府ともどもに、これに限度を考える、こういうことが望ましいのじゃないかと思います。私は、ついせんだって、テレビを見ておって、意外な、いま戦時中にあらざる学童疎開の話が出て、どうもこれは年間を通じてわずかな期間ではあるが、やはりきれいな空気を吸わすような、そういうことを考えなければいかぬのじゃないか、こういうような事柄が具体的な問題として取り上げられておる。やはり一般的にも、そういうように過密の公害その他弊害等について気がついてきておる。やはりみずから自制するようになると横川君のさっき言われたような、ある程度の限度、そういうものが守られるようになるのではないだろうかと私は思います。やはり、何と申しましても、中央地方それぞれが一体となって、そうしてただいまのような問題に取り組まないと、ただ人口が大きくなればその県が繁栄するのだというようなあれのものでないことをよく考えていかないと、迷惑するのは地域住民そのものだと、かように思いますから、地域住民にどういうしあわせをもたらすことができるか、やはりそれが政治上の課題だと私は思います。  そこで、先ほど建設大臣からお答えしたように、東京都を中心にして、周辺地域、それらにおいて適当なる施設がつくられることが望ましいと思います。その場合に、先ほど来すでに触れられましたが、上水道は大体できておりますが、一番不完全なのは、いま下水道だと思います。私は、下水道をもっと整備しない限り、河川その他の汚濁、これは耐えられないのじゃないか、かように思っております。浄化装置は相当できてはおりますけれども、まだまだ不完全な状態である。ああいう不完全な浄化装置のもとで、下水、これが流れている。これはたいへんな問題を引き起こすのじゃないか、いまから、そういう意味で、住宅建設については上下水道の整備はもちろんのこと、その他通信あるいはガス等も十分考えていけと、こういうような注意を、いましておる次第でございます。ただ単に家を建てるだけの、いま夜でのような住宅政策から、その付随施設、その整備、その完備の状況において住宅が初めてできるんだと、こうならないと、これからの住宅対策、これは不完全のそしりを受けるだろう。また、いつかのときにたいへんな問題を引き起こすんじゃないかと、かように私は心配しておる次第でございます。  一言私の感じを端的に御披露しておきます。
  54. 横川正市

    横川正市君 知恵があって実行に移そうと思っても、その知恵が解決するだけに及ばないという、そういう状態がこの過密都市の中にあらわれているんだと思いまして、私は、やはり相当の決意と抜本策がなければ、この問題は解決をいたさないと思っております。  そこで、住宅問題で一、二お伺いいたしますが、まず一つは、公団住宅の値段がだんだん上がってきていますね。分譲住宅であるとか。大体住宅公団は、自分の力で建てられる人はこれは建ててもらおう、そうでない人たちにはひとつ公団で提供しようと、大体が税金でやられることなんですから、社会福祉的な性格というものは十分持っておったと思うんです。最近のマンションを見ますと、今度青山に建てられるマンションあたりは、たしか二LDKですか、でもって六百四、五十万円、これはちょっと、一般のサラリーマン、庶民では手の届かないような価格になってきているわけなんです。もちろん、これは民間のものとはだいぶ値段は安いんじゃないかと思うんですけれども、この価格を下げて需要に応ぜられるという考え方があるかどうかですね。お聞きをいたしたいと思います。
  55. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 御指摘のように、住宅公団で分譲するものも、それから貸し家のほうも、かなり高くなってきていることは、これは事実でございます。これはわれわれもいま非常に苦心しているところでございます。それで、できるだけ公有地——これは国有なり、それからまた都道府県が持っておる土地を利用して、できるだけ土地の入手に金のかからないところということをまあ一応ねらい、その次に、先ほど御説明申し上げましたように、大幅の土地造成をいたしまして、それに、建設省のみならず、運輸省とも連携をとりまして、足をつけてやるということになれば、かなりできる。ところが、これはいままであまりやっておりませんので、近く、経済企画庁を中心として、建設省、それから運輸省、自治省、協力して、それをひとつやりたいと思っております。  それからもう一つは、やはりこのごろの工事費が非常に高くなってきました。それは、材料のほかに、いまの左官、大工、板金工等が、実際人数が少なくなってきています。そこで、このコストダウンと合理化をはかるために、通産省とも連携をいたしまして、工業生産化を進めてまいる、そうして組み立てすれば、少なくともいまの四階から五階、十階までは組み立て式でできるということをやらないと、とうていこのコストダウンはできない。従来の手法ではできないというので、これも開発してまいりたいと思います。  まあ、その他、いろいろわれわれの足らない知恵をしぼっておりますけれども、ひとつ、いろいろ皆さんから御教示を願いまして、可能で経済的なものはどしどし勇敢に取り入れてまいりたいと思っている次第でございます。
  56. 横川正市

    横川正市君 そこで、一つ提案をいたしたいと思うんですが、郵政省は、東京都内にある郵便局の屋上を利用しまして、そして職員住宅を建てております。これは、渋谷の郵便局も建てました。それからもう一つは、中野の局は十二階建てのものを計画いたしております。現業作業場としては三階あるいは四階まで、あと上の七、八階は住宅。まあこれは一般に供給する住宅じゃありませんけれども、方式としてはこれが出ております。ことに、この住宅と土地とが切り離せないという問題が一番ネックなんですが、私は、交通事情の最も至便なところにビル建設をする場合、少なくとも四階まではその人の所有にし、オフィスとしての供給をしてもですね、四階以上八階くらいまでのものは、これは住宅として提供させる。それだけは全部国がめんどうをみる。あるいは公団がめんどうをみる。こういう方式をすみやかに取り入れる必要があるんじゃないか。もちろん、これは都市の中に、昼間は何百万人という人間が蝟集しており、夜間になると死の町になってしまうということでなしに、住宅とそれから職場というものを近接させて、今日の困った点を解決をする。これは当然の知恵だと思っておりますし、もうすでにフランスあたりでは、ずいぶん前から実施をいたしておるわけですが、そういう考え方をすみやかに取り入れる考え方はあるかどうかですね。
  57. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 御指摘のようなことを考慮しまして、住宅全団は、以前は、かなり都心に民間の所有する土地の上に、一定の上にはどんどん住宅をつくりました。ところが、やはり民間の人は、貸し家にしてやるよりも貸しビルにしたほうが経済的に有利であるという観点もございまして、最近だんだんこれが少なくなってきているのです。ただし、いま御指摘のように、東京の都心は、いわゆるドーナツ形態になりまして、非常に公共施設がやられています。都心は交通もよければ下水も上水道もあり、さらに電話からなにからある。にもかかわらず、夜になるとほとんどもう人がいない。はたしてこれがいいかどうか、私は非常に大きな疑問を持っています。しかしながら、現在、一つの建築物をつくるとき、政府が条件つきで許可するわけにはいかない立場になっておりまするので、これはやはり、できるだけ民間の方々の理解と協力でやらなければならない。それで、私は、実は昨年党におりましたときに、経団連、同友会、日経連、商工会議所の首脳部の方々に提案してきたのは、企業自身で持ち家政策あるいは住宅政策協力してほしい。あなた方は相当の従業員と相当の土地を持っている、ビルを持っている、そこに住宅をくっつけてやってください、こうすることによって従業員も安定する、あなた方のほうも能力のいい、はつらつたるサラリーマンが働けるじゃないか、そういうことになりますれば、われわれは財投でこれに御協力もいたしましょう、税法上の協力もしましょう、ということで提案いたしておるのでございます。一部これはいまのあなたの提案とはちょっと違いますけれども、持ち家政策にはいこうとしていますけれども、自分のビルの上に住宅を入れるというところまでは、まだなかなかそういっておりませんが、今後御趣旨を体しまして、できるだけ民間関係のそうした方々にもこれを大いに奨励してすすめてまいりたいと思う次第であります。
  58. 横川正市

    横川正市君 大蔵大臣にお聞きをいたします。  生保業界が不動産業者と提携して、住宅ローンの金利を、四月一日以降、いままで九%だったものを九・五%に値上げをすると、こういうことがきめられて、これは各予約マンションに適用するということが言われております。この住宅ローンは、高級マンション提供者だけではありませんで、一般の庶民の方々も、切り詰めて郊外その他に家を求めてローンを利用されているわけですが、これは一般金融業者までこれから波及していく可能性というものは十分なんですけれども、これに対して大蔵省としてはどうお考えでしょうか。
  59. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 最近、住宅ローンというものが普及してまいりまして、住宅政策上ずいぶん貢献するようになりまして、私も歓迎しております。ただ、最近金融引き締め政策をとっておる。金の需給の関係というので、金利体系全体が上がってきておる。その余波を住宅ローンも受けつつある。こういう傾向を見受けるのであります。しかし、これはまあ、私といたしましては、大事な住宅の問題でありますから、ぜひこの住宅方面にそう大きな波及がないようにということを念願し、そういうふうにまあ指導はいたしたいと、こういうふうに考えているところでございますが、とにかく、長期金利は、これはだんだんと下げていきたいという基本的な考え方を持っております。しかし、当面金融調整政策をしているものですから、ここで一時的にそういう傾向が出てきておりますが、まあ金融機関をよく指導いたしまして、住宅のようなものにつきましては、さしたる影響がないようにというふうにしたいと、さように考えているところでございます。
  60. 横川正市

    横川正市君 次に、道路問題で質問をいたしたいと思います。  実は、私は、道路の公共性というものは、まあ必要、需要に応じて道路建設というものは拡大されていくのだと思いますが、つくられた道路は、単なる需要だけでこの効果というのを見るのか、それとも道路そのものの生産性というものを考慮されているのか、こういう点で、道路を建設されるときの建設省の考え方をお聞きをいたしたいと思うわけですが、一つは、最近東名高速道路というのがつくられました。これはまあ、言ってみると、一つの疎通する動脈になったわけなんです。この動脈を実際上消化しているのは一体どういう階層が消化をしているのか。第一次的には、産業に貢献する、あるいは物価ににも関係のする、そういう意味での貢献をしているのか、それとも、もう一つは、言ってみれば、レジャーというようなものに非常に大きな貢献度が、ウエートがあるのではないかというふうに見られるわけですが、まあ言ってみれば、一番大きな動脈であります東名の高速道路の、いわば生産性あるいは効率というものは、どういうふうにお考えになっておいででしょうか。単なる経営の面だけじゃございませんで……。
  61. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 道路の効用については、これは非常に広範でございまするので、一がいに申し上げることが困難でありまするが、いま御指摘のありました東名の利用の状況は、日曜祭日は確かにレジャーと思われるものが相当多く通っていることは事実でございます。しかし、平日において調査してみますというと、全体の通過車両の約四〇%がトラックでございます。それから、乗用車のうちの八五%がいわゆる営業用でございます。こういう点から見れば、いわゆるレジャーに支配されておるというほどではないということが一つです。  それからもう一つは、道路の効用は、走る車それ自体の便益のほかに、地域に、拠点に、新しい流通センターとか、あるいは工場とか、あるいは住宅団地みたいな、いわゆる従来非常に過疎現象であったところの地域に、かなりに、この東名、名神に接続して新しい経済展開がなされておる。この効果が非常に大きいようでございます。その事実を見まして、現在は、東北あるいはまたいわゆる五道という、各地において非常に要求されるゆえんは、そうした意味における、先ほど横川さんがるる御指摘になりました、いわゆる経済全体の均衡ある発展、これに大いに貢献する、こういうふうに見るならば、私は、道路、特に高速道路等の開発が日本国民生活に寄与することは非常に大きいと、こういうふうに評価している次第でございます。
  62. 横川正市

    横川正市君 最近、閣議で、四国かけ橋が三つの方向で検討をされて、あるいは三つ一緒に着工かというような記事を見ました。この四国連絡橋公団法が決定したいきさつは、新聞で見る限り、四国の住民の皆さんの熱烈な期待によるものだということが言われております。私もまあ、おやじが高松ですから、北海道ではありましても四国に関係があるので、四国の人の期待を裏切るという意味でこの話をするわけじゃないんですが、一体、四国の経済性という、生産性というものから考えて、この架橋、三架橋というのは、これは言ってみますと、経済的な面ではあまり大きな意義がないんじゃないか。政治的には確かに意義があったかもしれませんが。そういうことが一つ言われるのと、まあこの架橋工事は、おそらく世界的な技術がこれに駆使されることですから、その面では非常に大きなプラスの面もあるというふうに思います。そういうことはあろうと思いますけれども、一体、三本かけるのか、それとも一本でがまんをするのかという問題なんですが、この閣議決定というのは一体どういう内容なのでしょうか、お伺いいたしたいと思います。
  63. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 端的に申し上げまするが、三本かける方針をもって進んでおります。  それから経済効果でございまするが、わずか四百万の四国の方々のためにと、こう見ればそういう判定が出ますが、実は、あの三路線が接続することによりまして、中国、近畿、それから裏側の山陰、山陽までもこれは大きく開発利益が出てくるんでございます。その意味で、実は四国の方々もたいへん熱心でございますが、それらの広域的な地方の人々がみんな要望しておる次第でございます。そういう観点から、長期の日本経済発展並びに地域の均衡ある発展というところから見て、昭和六十年までに三本をつくるということは、日本経済力にとってプラスの面が多く作用しておると、こう判断している次第でございます。
  64. 横川正市

    横川正市君 これはまあたいへんけっこうなことで、ぜひその方針で実現をしていただきたいと思いますが、私は実は、その面では、いまの道路行政の中に一つ欠けている点があるんじゃないか。それはどういうことかといいますと、背骨は通すけれども、あばら骨が道路にないんじゃないか。ことに日本海と太平洋岸、あるいは瀬戸内海岸に対しての道路建設というものはほとんどこれは見るべきものがない。拡幅程度のものしかない。これは、総理のところも、鳥取、松江を通じて下関というような線もありますがね。松江から広島という線もあります。それから松江−鳥取−大阪という線もありますね。あるいは岡山へ抜ける線もあります。この背骨に対するあばら骨というのがほとんど開発をされておらないのじゃないか。道路の効率からいけば、たとえば東北でいえば、青森、それから秋田、岩手という経済圏、あるいは宮城、山形というような地域的な関係、こういった点の連絡路というのは、これはもう全く旧態依然たる連絡路ですね。私は、ある程度の効率をあげているなと思うのは、ちょうど名古屋から木曾路を通って長野県へ抜けていく道路くらいが、大体一つの道路としての体をなしているのじゃないかと思うわけです。そこで、背骨が先か、あばら骨が先かという問題ですが、あばら骨も相当必要な要素というのが強い。ことに、過密過疎の太平洋岸と日本海岸の関係からいきますと、非常に重要なものだと思っています。一例を申し上げますと、新潟が豪雪にあって物資が輸送できないというのを、当時の建設大臣の河野さんが見られて、これは道路を一本つけなければいけないと。その道路計画を立てましたけれども、いま中山道というのが、熊谷へ行きますと、もう三十分、四十分待たされるというのが通常になっておるわけです。ですから、あばら骨がいかに完備されておらないかという点が出てきているわけですが、これは一あって二がないというくらいに大切だと私は思うのですが、この点はどうでしょう。
  65. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 御指摘のとおり、従来はそういう傾向が非常に強かったのでございます。そこで、先般、昨年国道昇格にあたりましては、できるだけあばら骨をつくるということを配慮しております。それから今度策定されました新五カ年計画においても、そういう点を特に重点的に配慮してまいりたいと思っております。  なお、これについては御質問もありませんでしたけれども、交通体系を総合的に考えなければならぬ。道路は道路だけで全部日本の輸送問題を解決するということ、これは不可能でございまするので、運輸大臣ともよりより協議をいたしまして、空路によるべきもの、鉄道によるべきもの、道路によるべきもの、それから沿岸の航路によるべきもの、これを総合的に総点検しようじゃないか、そうした上でやっていかないと、ややもすれば過剰投資になって効率を害するということで、そういう点は今後新五カ年計画の実施の面にあたって特に配慮してまいりたいと思っておる次第でございます。
  66. 横川正市

    横川正市君 これは、総理、電力九分断というのは吉田さんのときにやられたものなんです。この結果、実際上、いまどういう事情が出ているかといいますと、人口稠密なところと、それから容易に施設のできるところは料金が非常に安い。需要がある程度あるのですけれども、たとえば過疎地帯、それから工事その他が非常にむずかしいというところは非常に電力料金が高い。同じく公共性のある電力を需用しておっても、九州とか北海道は非常に高い電力を使っておる。こういうバランスのくずれた状態が出てきておる。それからもう一つは、企業はやはり燃料に支配をされてそれぞれ適地を見つけるわけですが、できれば、この九分断された電力会社を一つにまとめて、そうして均等化された価格で供給できる、そういうことによって過密過疎を解決するための方策を立てられるということも一つの考え方じゃないかというふうに思うわけですが、いままあ過密過疎はいろいろやっておられて、工場誘致がどうだとか、そこへ工場を持ってこられるように誘致側は一生懸命陳情するとか、いろいろなことをやっておりますけれども、条件の備わらないところにはなかなか企業というものは出かけて行かないわけですね。ですから、誘導策としては、電力を一本化をし、そうしてこの価格はもう全国一律で供給のできるという、そういう体制に持っていくことが妥当じゃないかと、こう思いますが、いまの問題と関連してひとつお聞きをいたしておきたいと思います。
  67. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 電力料金の地域的な編成が、まあ終戦後三つくらいな段階が、御承知のとおり、ございまして、最初古い、水力を余裕をもって持っておった地方が比較的安かったわけでございます。ところが、その後、需要の多い地方では、今度は火力に転じまして、早く有利な地点に大きな火力をやったところが、その後ずっと安くなってまいりました。これはしかし、需要がなければそういう大きな火力ができなかったわけでございますので、したがって、おのずから工業需要の多かったところが安くなりました。ところが、最近になりまして、御承知のように、しばらく建設を、どう申しますか、供給が需要を安定的に上回っておったものでありますから、建設が、しばらく大きなものがなかったということもあり、その他いろいろな事情で予備率が非常に下がってまいりまして、電力料金も、従来安定しておったものが多少不安定になりかかって、ここでまた相当大容量のものをしなければならないということになってまいったわけでございます。  そこで、いまのお話でございますけれども、従来からしばしばそういう議論がございましたが、実体的にはかなり広域的な運営で解決をされるようになりました。ことに、今年のように、地域によりましては八月ごろにはかなり需給関係が窮屈になるところがございますので、この数年間の広域運営でまずしのげるであろうと考えておるわけでございます。全体を一本にして、一本の料金にするということは、それなりのメリットもないではありませんけれども、まあ私どもは、いまの広域運営をやっていくことと、電発などに基幹送電線をもう少しつくらせるということでやってまいれるかと思っております。
  68. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 横川君の質疑の途中でありますが、午後一時十分再開することといたしまして、これにて休憩をいたします。    午後零時八分休憩      —————・—————    午後一時十九分開会
  69. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、横川君の質疑を行ないます。横川君。
  70. 横川正市

    横川正市君 公害問題で一、二御質問を申し上げたいと思います。  これは衆議院の予算委員会で、江田質問総理が答えられまして、都市公害に対して、公害基本法をたてまえにして、産業の発達が国民福祉に奉仕する、この原則を守って、企業責任と政治の行なう責任と負担の分担をすることを答えられておるわけであります。私は、公害は非常にしのびやかに入ってまいりますけれども、結果においては惨事となるわけでありまして、その特質を持っているために大体公害に対しての市民運動というのは発生のあとに起こってきておるわけであります。私はその状態を勘案しまして、公害については、あらかじめ公害のおそれのあるというような工場では、公害データを発表して地域の住民との間に十分な意思の連絡をとっておく必要があるのではないか。そういうことを規定し義務づけるということがまず前段にあっていいのではないかと思いますが、その点が一問。  それからもう一つは、市民のこういう被害発生に対して、国際社会科学評議会の公害追放のための東京宣言が出されております。これをどうとらえておられるか。もしこれを肉づけするとすれば、どういう肉づけの内容を持っておられるか。これを第二にお伺いをいたしたいと思います。  それから、この公害、一酸化炭素の基準について、法律関係で一体これが違反しているか、していないかという論争が出されまして、衆議院の公害特別委員会で、都留さんは、これは法律には違反しないということを明言いたしましたが、政府の見解はどうなのか、この三点をお伺いをいたしたいと思います。
  71. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 厚生省におきまして公害につきましては一般事案を総括いたしておりますので、まず私からお答えを申し上げます。  公害の問題は政府においてもいろいろの角度から取り上げておるわけでありますが、しかし、これは究極的には地域住民の生活に密着する現象でございますので、横川先生からただいまお話がございましたように、地域の住民の意向というものを尊重したり、また地域の住民の理解のもとにこの施策を進めてまいることが、私は最も現実的であり、肝要なことだと考えます。でありますので、実際におきましても、たとえば四日市等の例を見ましても、四日市における当該企業、また四日市の市、それから地域の住民代表、それに学識者をも加えまして一つの協議会ができております。そうして、お互いの相互認識、了解の上で法律あるいは政令、あるいは条例等に基づく具体的の施策を進めてまいっておるわけであります。これはたとえば最近における千葉の市原市などにおきましても、単に一片の法律を力をもって遂行するということだけでなしに、企業との間にいろいろな契約や協約を結ぶような方向にきておることも御承知のとおりと存じますが、そういうことで、私どもも地域住民との接触を尊重してやってまいる所存でございます。  第二番目のお尋ねは、先般のISSCの東京における会合並びにその東京宣言と言われているものでございますが、これにつきましては、私どもはまことに時宜を得た私は会合であり、また宣言であると考えます。しかし、宣言の内容を見ましても、私どもとそう認識を異にしておるものではございませんで、おおむね公害対策基本法以下の諸法例の中で私どもも取り上げていることでございます。ただ、国際的関連におきましては、日本がヨーロッパの諸国のように地域を接しておりませんために、大気とか、水なんかにつきまして、現実的に国際間の直接相互連携努力というものを必要といたしませんけれども、しかし、公害の問題は世界の共通の事案でありますので、日本だけの問題としてだけでなしに、世界の各国と協力してやるのがいいし、また、公害のない社会に住むのは人間個有の権利であるというような考え方には賛成でございますので、私どももこれらの国際的活動と表裏一体のもとに公害の対策を進めてまいります。  それから第三番目のお尋ねの法律と条例の問題、具体的には東京都における最近の新しい条例と通産省並びに厚生省の告示に基づく大気汚染の規制基準等のきめ方でございますが、一般的に申しますと、これはもう今日の公害対策基本法にいたしましても、あるいはまた大気汚染防止法にいたしましても、事業者と、それから国と公共団体とは相互密接の連携のもとに一つの公害という事態に対処するような仕組みに法律はつくられております。また、純法律関係におきましては、これは法律できめておることと条例できめたこととが矛盾する場合には、それは条例の効力は法律の範囲内というような解釈も法律的には成り立つんでありましょうけれども、私は常に、先ほどの第一番目に述べましたことと同じように、公害は地域の問題に関連するので、相互十分打ち合わせてやろうということで、この問題も私は解決がつくかと思います。また、現実には東京都の今回の条例のきめ方がきつくて、政府のほうのきめ方がしり抜けで非常に弱いのかというと、そうではございません。一つの公害発生施設ごとに、またどの時間をとってもこれ以上の汚染源を発生してはいけないという国のきめ方と、それが一つの工場施設というものを単位として、そうして一日の稼働時間等を総合してきめる今回の東京都のやり方とでは、私どもで専門的に検討いたしましても、国のほうがゆるいんだというようなことではないようでございますので、現実的には矛盾がない、こういうことで進んでおります。
  72. 横川正市

    横川正市君 総理にはまとめてひとつ見解をお聞きしたいと思うんです。  次に、交通対策問題でお伺いいたしますが、いままでの国会の審議を中心として、幾つかのアイデアがそれぞれ担当省を代表する長官、大臣から出されておるわけであります。しかし、この交通対策というのが、普通歩道とか、ガードレールとか、陸橋とか、横断道路、警報機の整備というようなことではなかなか被害を防止するというふうには至っておらない。続発するわけであります。ことに交通戦争と言われるような中で、一年間に負傷者を入れると百万にも達している、あるいは死傷者が一万六、七千ということになりますと、加害者を加えますと、交通戦争の被害というのはこれは財的にも精神的にも非常に大きなものになってきているわけです。そこで私は、これは交通関係がきびしくなるから、自動車産業にどれだけの影響力があるかというようなことをあまり考慮に入れないで、この際思い切った施策が必要なんじゃないか。その場合には一番問題なのは、車を買いますと車庫証明というのが要ります。ところが車庫証明というのはもうすでに有名無実になっているわけなんですが、これを厳格にするということが直ちに実施ができないものか、これが第一。  それから第二は、駐車を禁止いたしますと、駐車そのものは非常に疎通を阻害をし、仕事ができなくなるという一面もありますけれども、これはどうも私は駐車はできるだけ禁止の方向にいくべきである。たとえば霞が関の三井ビルができたときに、あそこに出入りをする車の台数というのはほぼ計算がつくわけでありまして、その計算だけの台数をほぼ収容できる施設があるというのが、私はこれは一つの設備として当然のことだろうと思うんです。ビルはできるが付随して駐車設備がない、こういうものは当然これは整備をする方向にいくべきである、こういうふうに思っておりますが、この二つの点についてお聞きをいたしておきたいと思います。
  73. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 車庫証明の問題は運輸大臣でございますけれども、しかし、交通行政全般から見ました場合には、当然それが相当長時間にわたる路上駐車ということになります。したがって、車庫証明を現実に許可いたしますときの確認のしかたにも私問題があるんじゃないかと思うんです。ということは、お友だちのうちの車庫を借りたような形にしておいたり、とにかくそういうところがあれば車庫証明として認めているきらいが幾分あるのではないか。ですから、そういう人たちは自然自分のうちの前にとめます。しかし、路上駐車にも警察のほうで一定の時間を定めておりますけれども、それ以上越えるものは、途中で一回動かして戻ればまた同じことになるという悪循環もあるわけでして、私は、笑い話のようになりますけれども、警察あたりで——大雪の降りましたあくる朝にわれわれがよく見ることですけれども、大体五、六寸くらい屋根の上に雪を乗せて走っているのは、これは明らかに路上駐車を一晩しておったに違いないのですね。そういうものは大雪の朝に、まあそういうことがわかるとみんな雪を落として走るかもしれませんが、取り調べて、たしかに車庫を自分のうちに持っていたのかどうか、なぜ雪が積もっているのかということ等はすぐ確認できることだと思うのですが、要するに、追跡調査ということがやはり行なわれまして、その確認というものがなされないと、有名無実の結果に終わって、いたずらに自動車というものがそういうような路上の障害物となるということになると思いますので、この点は陸上交通対策本部におきましても関係省庁と連絡をとりながら、有名無実にならざるよう、また車庫の用意もないのに、いたずらに自動車を購入することに何だか生活の向上が与えられたような気持ちになるような風潮にも警告を与えたいものと考えております。  それから、路上駐車の問題とも関連をいたしまして、そのような三井ビルと申しますか、霞が関ビル等の建設におきましては、そのような配慮に薄かった点がございました。でありまするので、その他の一般の公共用に開放する敷地面積も含めまして、当然そこに自動車許容面積も要るわけでありますが、たしか霞が関ビルには開銀の都市再開発の融資は行なわれなかったと思います。しかしながら、浜松町ビルにおきましては、当初の設計より駐車場も含めた一般市民への相当のスペースをさく計画であるということが前提でございましたので、ほぼ同じ高さのビルでありましたけれども、浜松町ビルのほうに開銀融資が行なわれたという現実の政府の姿勢も示されておりますので、今後もそういう設計者は当然御指摘のような配慮をしていくであろうと考えます。
  74. 横川正市

    横川正市君 次に、当予算委員会公述人としておいでをいただきました宮尾修君という重症身体障害者の方の切なる希望もあったわけでありますが、この中で、身体不自由であるからといって、本人はどうすれば社会に貢献できるかということを常に考えて自立の道を立てようと努力をしている。ところが、それに対して何らこたえるべきものがない。できれば、第一は、どういう障害者、重症の障害者であっても、これはだれもが受ける義務教育は万難を排して受けさせるようにしてもらいたい。それから、社会に復帰できるように、いわば職業訓練をする、あるいは能力の開発ができる、その人間の持っております能力によって貢献のできるもの、これをぜひひとつ与えてくれるように努力をしてもらいたい。それから、重症者の特有として、手足になって世話をしてくれるというものの設備、コロニーのような設備は部分的にはあるけれども、もう少し規模が小さくても小雨位に設置をしてもらいたい、こういうような要望があったわけでありますが、この義務教育問題については文部大臣、それからその他について関係の大臣、それから交通と都市公害と身体障害問題をひっくるめて総理からひとつ答弁をいただきたいと思います。
  75. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 身体障害者福祉の問題は、私ども厚生省といたしましても、重視をいたしておりますが、これまでのところ、私が就任をいたしましても、これらに対する厚生福祉施設というものは必ずしも十分であるとは見ておりません。しかし、幸いここ数年間におきまして、身体障害者の厚生施設というものはかなり進んでまいりまして、厚生施設だけをとりましても、今日全国で百八十六カ所ございまして、かなり毎年ふえてはおりますが、私はぜひこれから、いまお話しのように、またこの間の訴えも聞いておりますが、ああいう方々の幸福のためにも厚生施設をさらに充実をしてまいりたいと思います。また現況におきましては、めんどうを見るための家庭奉仕員でありますとか、あるいはまた本年から相談員というようなものも置かれることになりまして、めんどうを見ることにいたしておりますし、また身体の障害の程度などにもよりますが、自動車の操縦の訓練というようなこともひとつさせてみようというようなことになりまして、四十五年度からその訓練のための助成費を計上するようなことも実はいたしておるのでございます。また本度度で、御承知の国立の心身障害者の福祉施設でありますところのコロニーがかなり大規模で、数十億円の国の数年間の投資が実りまして、高崎に総合的なリハビリテーションの機能を持った施設もできるのでありますが、それのみでなしに、地方でもかなり地域的なコロニー的な要求がございますので、それらも地方の実情に応じて国の助成の方法を考えてまいりまして、そして総合的なこれらの方々のための福祉厚生の施策を進めてまいりたいと思います。
  76. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 肢体不自由児につきましても、教育の機会をできるだけ与えていくということは当然なことでございます。このような考え方から、肢体不自由児のための養護学校の設置につとめておりますが、昭和四十五年までに全都道府県に一校以上の設置を見ております。また重度の肢体不自由児につきましては、当該児童の入院しております病院等に養護学校または分校を付設し、約三十校でございますが、ベッドサイド教育を行なっておりますが、今後ともさらに充実をしてまいりたいというふうに思います。また、文部省といたしましては、心身障害児のために神奈川県久里浜に総合的な研究所をつくりまして、そして教育学的にも、あるいは心理学的にも、あるいは医学的にも、あるいは社会学的にも、あらゆる学問を総合した研究をいたしまして、その教育の方法、あるいは社会復帰の職業訓練等につきまして、実際的な指導もやれるようにいたしたいということで、本年度の予算にも建物の費用を計上いたしたようなわけでございます。
  77. 野原正勝

    国務大臣(野原正勝君) 身体障害者の問題につきましては、それらの人たちが社会復帰、労働の方向に行きたいというものに対しましては、現在は雇用率を設定いたしまして、できるだけそれらの人々を使うようにしておりますし、おおむね雇用率はそのとおりいっておるようでございます。しかし、職業訓練という問題につきましても特に大事でございますので、その点もやっております。特にまたそれらの人たちは、生活の面あるいは不自由な面を補うために、たとえば自動車を購入の場合に特別な融資を行なうとか、あるいは住宅設計をする場合においては、それらの不自由の方々を収容できるような特別な措置を講ずるといったような面で、それらの人々ができるだけ多く社会復帰ができますように、手厚い、きめこまかい措置をとっておるわけでございます。
  78. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それぞれ担当大臣からお答えいたしましたので、もうこれでこと足りるかと思いますけれども、ただ、まとめて公害や交通対策あるいは身体障害者、これらの社会復帰の問題についてお答えしてみたいと思います。  私が申し上げるまでもなく、近代産業が一面で利益をもたらしていると同時に、いつの間にかたいへんな被害を社会一般に与えておる。それが大気汚染であったり、あるいはまた河川、海水の汚濁という問題であったり、あるいは騒音というような形で問題を投げかけたり、あるいは震動等の問題もございます。まあ、いろいろ形は違いますが、公害ということでこれが取り上げられる。それが、ときにただ単に睡眠がとれない、休息がとれないという程度ならともかくも、そのはなはだしきにあっては有毒、有害であり、生命の危険すらさらすようになる、こういうことでありますから、公害の問題をただ単に発生者が何の何がしだと、その責任でこれを処理しろと、こうなかなかきめかねるものがある。多数が集まって公害を発生しておる、かもし出しておる、こういうものもございますので、これはもう全体として発生者の、発生事業の責任はもとよりでありますが、地方公共団体、また国、それぞれがやっぱりこの公害対策を立てざるを得ない、かように私は実は考えておるのであります。この公害問題の対策の中に、ただいま言われました交通対策も入るのかと思いますけれども、これはよほど専門的な部門になってきますので、いまのような公害対策の一般の姿勢と交通事故対策もやっぱり取り組んでまいりたいと、かように思います。  ただ単に、自動車事故が非常に多いから、自動車をつくらないようにしろとか、販売するなというようなわけにはいかないと、これが公害を一方で発生はしているが、利便も提供している。これの利便をやっぱり十分にわれわれも活用したいし、それがかもし出す事故だけはあらゆる方法でこれを防ぐ、起こらないようにすると。そこでいまのような駐車制限だとか、あるいは通行制限だとか、本来ならば積極的に車を収容し得るだけの設備を提供すべきだと、かように考えますが、なかなかそのほうの積極的な処置ができないために、消極的な事故防止という意味で、駐車制限だとか、あるいは通行制限だとか、通行禁止だとか、こういうような処置をとっておるわけであります。しかし、私は、どこまでもこれは消極面であるから、もっと積極的な面で施設を自動車の十分利用できるような、そういう状態にわれわれも施設を整備すべきだと、かように実は考えております。また、そういう方向で心得ておりますが、車のふえ方がたいへんな勢いでふえますし、そのためになかなか防止施策がこれに対応できない。もう道一つつくるのはたいへんかかるが、走る自動車のほがうすぐ一ぱいになるという状況ですから、ある程度消極面の制限もやむを得ないのではないかと、かように思っております。しかし、こういうことがあってはならないので、もっと積極的に取り組むべきだろうと思います。  また第三の問題としては、先ほども言われますように、身体障害者といえどもその才能を十分伸ばして、そうして社会に活動していただく、社会復帰できるその機会を与えると、そういう方向でこれは対策を立てるべきだと思います。ただ単に消極的な救済対策というだけでなしに、積極面、その才能を生かし、そして社会に復帰して貢献していただく、こういうことであるべきではないだろうか、かように思います。  まあ大体各大臣が答えたところを繰り返したにすぎませんが、以上のように、私は積極的な姿勢が望ましいのではないか、かように思っております。
  79. 横川正市

    横川正市君 この重障者に対する問題は、実はこの予算委員会は各派、超党派で来ていただいてお話を聞いて、非常に私どもの知らざる点を多く指摘をされましたので、いままあ答えられたことが具体的に実現するように期待をいたしたいと思います。  その次に、私は、いろいろな観点がありますこの経済援助、経済協力、それから日本の現在の経済の動向からの問題と、いろいろありますけれども、ちょっと触れている時間がありませんので、この点で一つだけお聞きをいたしたいと思うのでありますけれども、技術開発で、基礎的な研究とか応用研究で、外国技術に依存をしなくてもよいような自主的な技術開発というものの能力を持つようにこれをつくり上げる、こういうことが必要なんではないか。この点を、たとえば国際的に技術開発の上の投資の比較率というのを見てみますと、非常に日本の場合には先進国から見ますと低い状態にあるわけでありまして、ことにこの技術開発は大規模な額の研究投資とか、そういうものを必要としている点がふえているにかかわらず、これにこたえる民間事業では資金の面からは手に負えなくなってきている。こういうことがありますので、この点について政府が積極的に取り組んでもらいたいと、こう思うのであります。  技術開発のいままでの例でありますけれども、これはまあ軍事優先で、絶対勝たなければならないという至上命令に向かっての全知全能というのが、人間社会の技術開発に非常に大きな貢献度をしてきたのでありますけれども、これはまあ日本の場合に、そのおこぼれをもらって技術開発の援助にするということはできないわけでありますから、そういう点から考えますと、研究投資にもう少し集中的にこの機構というものをつくり上げていく必要がある。そこに全知能というものを結集したらどうか。大体GNPに対して二・五%程度のものを予定しておるようでありますけれども、これは三%程度ぐらいまで強化する必要がある。これはまあどれくらい強化すればいいかはいろいろあろうと思いますけれども、強化の方向で、まあ大体三%ぐらいを現状では必要だと、こういうふうに専門家筋でも言っておるわけですが、開発への考え方やら予算関係やら、締めくくりひとつ総理から考え方をお聞きいたしたいと思います。
  80. 西田信一

    国務大臣(西田信一君) 科学技術が今後の経済社会発展の基盤として、あるいはまた先導力として非常に大きな役割りを果たすことは、先生の御指摘のとおりでございます。そこで政府としましても、科学技術振興には大いに力を入れて努力をしてまいっておるところでございまして、先生御承知と存じますが、政府予算に対しますところの科学技術振興費の割合でありますが、四十二年は一・二三、四十三年は一・二六、四十四年は一・三六、四十五年は一・四三、こういうふうにかなりの比率で伸びを示しておりますし、それから国の予算伸び率と科学技術振興費の伸び率を比べてみましても、昭和四十一年、二年ごろは若干比率が下回っておりますが、四十三年から国の伸び率が一七・五に対しまして二〇・九、四十四年は国の伸び率が一五・八に対しまして二四・七、四十五年度は一八に対しまして二四・四というぐあいに、かなりの速度で伸びを示しております。しかしながら諸外国に比べて、これはもちろん諸外国のは軍事的な科学技術の開発ということも含まれておりますから、直接の比較にはなりませんけれども、諸外国よりまだ低位にあるということはあるいは否定できないと存じますが、今後もこのような国の投資努力を強化いたしまして、そして民間の投資努力の助長をはかって、わが国の研究開発技術をできるだけひとつ先進国の水準に近づくように努力する、こういうふうな心がまえで政府は取り組んでおる次第でございます。
  81. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 科学技術会議という総理の諮問機関がございます。その際に会議を開きますといつも言われることは、研究投資がどうも十分でない、何とかしてもっとふやせ、こういうことをしばしば注意を受けるのです。しかし、一口に研究開発と申しましても、基礎的な研究開発がございますし、さらにまた利用、応用、そういうような面もあります。あとで申しますように、この利用、応用というような開発ならば、これはもう民間においても積極的にやれる。したがってそのほうは投資に対して課税対象からそういうものははずしていくとか、こういうような優遇をすることによって民間の利用、応用の開発を促進しておりますが、いま言われるのは、おそらく基礎的な技術の開発、これをひとつ先行しろと、こう言われるのだろうと思っております。そういうことこそ政府が積極的に取り組まなければならないものだと、かように思っております。先ほど言われましたGNPに対して二・五あるいは三%がいいのか、どの辺のパーセンテージか、わかりませんけれども、とにかく政府が音頭をとり、また積極的にこういうことと取り組むという姿勢がぜひとも必要だと、かように考えております。ただいま御注意がありましたような方向で、この科学技術の基礎的な開発には積極的に取り組む、そうして民間の協力を得てこれを進めてまいりたい。外国の模倣でなしに、純国産のものをこれからはどんどん開発するような、そういう姿勢が望ましい、こう言われることについては、十分注意してまいる決意でございます。
  82. 横川正市

    横川正市君 ちょっと中国問題についてお聞きをいたしたいと思います。  非常に新聞紙等の報道では、LT貿易、日中覚書貿易内容について難航をいたしておるようであります。その難航の理由が、やはり日本の政情といいますか、佐藤内閣に対しての非常にきびしい姿勢が見受けられるようであります。私は、さきに、敵視しない、友好を保持したい、防衛的にはこれはもうもちろん防衛的であって、攻撃的なものを持たない、こういう佐藤内閣の方針は、少なくとも松村、藤山両自由民主党の先輩の皆さんが行かれた、そういうことに非常に大きな期待をかけながら一るの望みを持っておったのではないか、こういうふうに考えるわけですが、総理として、この中国問題について、いまどう対処されようとしているのか。一部では、これはまあしばらく推移を見て、おそらくそう簡単には解決はしないだろう、非常に長期的にこれは考えていく必要がある、共産圏貿易もわずか五%程度だからと、こういうような意見もありますけれども、今日のアジアにおけるところのいろいろな情勢を見て、日中間における共存、いま平和共存というか、友好関係が保たれることは非常にいいことでありますから、これに対して総理としてどういうお考えかをお聞きをいたしておきたいと思います。
  83. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 中国問題についてのお尋ねでございます。まあ北京政府との交渉、これは私どももあらゆる機会にそれを、存在を意識しながら、同時にまた中国は一つだ、こういう立場に立ってものごとを検討しておるわけであります。しかして、ただいま御指摘になりましたように、松村さん、藤山君、あるいは古井君、こういう人たちが北京に出かけて、ただいまLT貿易に始まったものの取りきめを今日もやはり続けていこうとしてあらゆる努力をしている。これに対して積極的な支援態勢を示しているのが私どもの党であり、また政府自身も、出かけることについてこれに了承を与えておるのでありますから、いわゆる敵視政策などをとっているとか、あるいは北京を除外するとか、そういう考えのないこと、これは十分理解していただきたいものだと、かように思います。しかし、なかなかさように申しましても、佐藤政権、昨年のニクソン大統領との共同声明についてもきびしい批判があるようでございます。しかし、一方で米国自身も北京政府と、場所は違っても、適当なところで大使級会談をやっております。私は、アメリカ自身、出かけて、どういうように中国大陸について見ているか、これは私のこの目で見てき、また、ニクソン大統領の考えていることもわからないではございません。いわゆる封じ込め政策あるいは敵視政策、さようなものを露骨に取り上げているというようなことは絶対にございません。でありますから、あまりそういう点について、お互いがやはりある程度遠慮していただくと話はスムーズにいくのではないだろうかと思います。  いま出かけておる松村老人にしても、藤山君にしても、古井君にいたしましても、何とかして唯一のパイプ、その他は全部民間のパイプだと、かように考えますが、この政治的なパイプとすれば、この連中以外にはないのですから、そこにある程度のものをぜひとも結びたいというこの気持ちはひとつぜひ理解してもらいたいと思います。私はこの予算委員会のこの席で、横川君からお尋ねがありましたから、ただいまのような私どものの真意を理解していただくような意味であえて発言した次第でございます。おそらくまだまだ、なかなか、交渉の前途がもう明るくなったという連絡はまだございません。たいへんむずかしい状態になっている、かようにはいわれておりますが、私は、そのうちに必ず解決するのではないだろうか、妥結の方向を見出すのではないだろうか、かように思っております。また、そういうことを期待しておりますので、ただいまの状態で、もう心配した、打ち切った、あとどうするかとか、そういうような考えは持っておりません。何とかしてこのパイプは成果を上げるようにと、心から念願しているというのが現状であります。一応お答えしておきます。
  84. 横川正市

    横川正市君 次に防衛問題に入ります前に、先般の総括質問の冒頭で、わが党の羽生委員が、これは社会党の従前の考え方からすれば清水の舞台から飛びおりるような質問をいたしたわけであります。すなわち、防衛とか外交とかという国益につながるものは、何といってもその土台に国民的な合意というものが必要であろうと思います。いまのところ、政治的には全く並行線をたどって論議をいたしておるわけでありますが、そういうような論議が不毛であるとは言いかねても、しかし、これが決定的な防衛の基礎になっているというふうにはどう考えても考えられないわけであります。  そこで、総理にこの羽生質問をもう一回申し上げてお聞きをいたしたいと思うのでありますけれども、現状の防衛力整備計画を積み重ねてきた整備計画でとどめて、そしてその点から国民的な合意の上に立てるような努力を出発点としてやったらどうか、このことを羽生委員が提案をいたしたわけでありますが、繰り返してひとつお聞きをいたしておきたいと思います。
  85. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 羽生委員の御提案、私はたいへんけっこうなことだと思います。私どもが、絶えず国民的なコンセンサス、その上で外交を展開し、あるいは国の防衛問題と取り組んでいく、そういう姿勢が望ましいことだと、かように思います。そういう意味から、お互いに率直な意見を交換し合って、そうしてできるだけ話が一致できるものは、それはそれなりに取り上げていくと、こういうことであってほしいと思います。もう最初からイデオロギー的な立場に立ってとやかくしないこと、もっとブロード・マインドで話し合うという、そういうことが望ましいのじゃないだろうかと私は思いますので、羽生君のお話はそういう意味に私は理解し、たいへんけっこうなことじゃないかと思います。
  86. 横川正市

    横川正市君 具体的にはどうですか。防衛力は現在でストップをしてはどうですか。
  87. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 具体的に現在でストップしろ、かようにまで——私はそこかこれからお話があるんだろうと思っていたのですが、防衛力は、私申し上げるまでもなく、やはり時代とともにどんどん新陳代謝もございますから、古いものが新しくなっていくというか、そういうような交代の時期でもあるし、また情勢いかんによってそれに対応していくということ、これは望ましいことです。でありますから、いわゆる現状を確保しろと言われる、そこらに少し私には理解しかねるものがある。ただ、いわゆる何か非常な強化をする、核三原則でもこれをないものにして、そうして核武装でもすると、こういうようなお話になると、これは私はもう皆さんと意見は一致して、核三原則は守ると、かように申しておりますので、これは御協力が得られるのじゃないかと思います。しかしながら、防衛力自身、ただいまの実情は、まあそれぞれの立場に立って考えますと、やや陸海空これら三つが一体になって均衡がとれたものとは必ずしも現状では考えられません。そういうものについてやはりくふうをしていくのが、これが当然の政府の責任ではないだろうかと私思いますので、それらの点について、皆さん方ともほんとうに具体的な問題についてはよくひざを突き合わしてお話し合うことが必要じゃないだろうかと思います。いま第四次防衛計画策定中だと、かように伺っておりますが、これなどの案ができましたら、十分御審議いただいて、そうしてその際にやっぱり協力すべきものは協力してやると、どうも反対なものは反対だと、こういうことにもう最初からならないで、やっぱり協力すべきものも見出していただきたいと、かように私お願いしておきます。
  88. 横川正市

    横川正市君 日本のGNPが非常なスピードで拡大をいたしていくわけであります。この拡大に伴って、防衛庁予算がパーセンテージで論議をされるというのは、いささか不合理ではないか、こういうふうに思います。ことに防衛力の限界説というのが当然出てきているわけでありますから、私どもは、この自衛力そのものの限界について、単に情勢の変化に伴うということやら、あるいは国力・国情ということやら、あるいは憲法のワクの中でということやら言われておりますけれども、ひっきょうは、いまのところやはり強化・整備の方向に向かっていっているのだと思いますね。ただ、考え方とすれば、GNPのワクが大きくなれば、パーセンテージは必要に従って下がってくるのがほんとうではないか。たとえば、いまGNPに対して〇・八四と言いますけれども、これを〇・六とか、〇・四とか、将来の年月の進むに従ってパーセンテージを小さくしていく、そういう必要があるのではないか、こういうふうに思いますが、その点のお考えをお聞きいたしたいと思います。
  89. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、GNPに対するパーセンテージで云々するのは、これはどうかと思います。しかし、いま現在のパーセンテージは一体どうなのかと、こう言われれば、これはまあいいところへきているのじゃないか、かようにも思いますし、またいま第四次防というものがまだ明るみに出ておりませんが、あるいはそれが明るみに出ると、もう少しふやさないと実情に沿わないと、こういうような見方もありはしないかと思います。これはやっぱり、現実に自衛隊を持つ限りにおいては、自衛隊がまあおもちゃの兵隊であっては困ります。やっぱり士気の高揚ができるようなそういう設備・施設・装備等は十分考えてやらないと、せかっく自衛隊になったけれども、おもちゃの兵隊だと、かような非難を受けるようじゃ困ります。でありますから、私は、パーセンテージよりも、実際にどういうような自衛隊がそこでできるのか、そのほうを主体にものごとを考えるべきじゃないか。いままで私どもは、たいへん経済成長する上においてしあわせでありました。積極的な軍備を持たないで今日まで経過したこと、これはたいへんな日本のしあわせでもあったと思います。また、いままでは別に国力・国情に応じた自衛隊で不都合を感じなかった。と申しましても、やはり日米安保条約が背後にある、控えておる、そういうもとの自衛力であったと思っております。でありますから、今日まではこれで済んできておりますが、やはり、日米安保条約も解消しろ、自衛力を漸減しろ、これではどうもコンセンサスは成り立たないのじゃないか、さように私は思います。羽生君の言われるのも、いまのような背景、そこらにも一つ問題があろうと思いますけれども、私どもが非常に少額な自衛隊費、防衛費、これで済ましているというその背後には、やはり日米安保条約、これが保障的な役割りを果たしている、こういうこともございます。ただ、独立国である以上、あまりそれにたよるわけにはいかない、かように考えますので、内容をよく見まして、そうして自衛隊がやはり士気があがるような自衛隊であってほしいと思います。せかっく金を使うならば、そういう方向でなければ国民の御期待にも沿い得ないと、かように思いますから、私は、パーセンテージで割り出すよりも、質的にまたどの程度国民から許されるか、そういうことを絶えず考えながら進めていくべきじゃないか、かように私は思っております。
  90. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと関連。実は一昨日、いまの問題について中曽根防衛庁長官に伺ったのでありますが、長官の考えはわかりましたけれども総理一つだけお伺いしたいことは、日本は憲法上制約があって、通常兵器以外の攻撃的兵器は持てない、攻撃的兵器はアメリカに依存するわけです。そうすると、攻撃的兵器は持てないんですから、理論上から言うと、中曽根長官が先日衆議院で答えたという、日米安保条約は半永久的に脱却できないだろうと、理論的に言えばそのとおりでありますね。攻撃的兵器を持てるということになればこれは別ですが、持てないと言っている限りでは、安保条約から脱却するときはないじゃないか。そうなれば、勢い政権の交代か国際情勢の変化以外にはない。そうなれば、国際情勢を安定させ、日本の周辺の緊張を緩和するための政府の努力が積極的になされる場合にのみ問題の回答たり得る。この点に対する総理の御見解をお伺いします。
  91. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま言われるとおり、日本の国の安全を確保するためには、現在においては、現在の国際情勢のもとにおいては、これはどうも日米安保条約が必要だ、かように私は考えます。しからば、それは変わらないのか、半永久的にこの状態が続くのか、かようなお尋ねがありますが、私は、それは必ず変わる、また変えなければならないのだ、かように思っております。ついせんだっても、ウ・タント国連事務総長が来られたこの機会にいろいろ懇談をしてみたのでありますが、私どもは平和憲法を守り、そうしてそのもとで安全を確保している。ところが、アジアにはあまりにも火種が多過ぎる、いわゆる分裂国家が多過ぎる、かように思うので、ここらに問題が起こるような危険を非常に感ずるのだ。その問題が起こらないようにするために、いわゆる軍事大国——アメリカ、あるいはソ連、あるいは中共、こういうような諸国が果たすべき役割り、平和共存への努力が、これが絶対に必要ではないか。私どもは、いま経済大国一つだと言われて持ち上げられておりますけれども、軍事的ないわゆる大国ではない。また、われわれは力がついたからといって軍事大国にするつもりはございませんから、そういう意味から考えると、世界の平和のためには、いわゆる軍事大国、これはみずからが自制すべきそのときに来ておるのではないだろうか、かように思うのです。この点が国連の事務総長ともいろいろ懇談した一番大きな問題だったと思います。私はいま、国際情勢はいまのままだ、これがいつまでも続くのだ、かように考える必要はないことで、むしろ最近の、人類を破壊し、破滅に導くような核兵器が実現するということは、今度は逆に戦争のない社会をつくり得る道でもあるのだ、その方向に使うべきではないだろうか。私は、われわれの努力する方向がそこにきまるような気がしてならないのであります。したがって、ただいま言われるような状態を半永久的なものだ、かように考える必要はないと思うのです。私の時代にどうこうなるというのではないが、しかし、七〇年代には必ず大きな変化が起こるであろうし、また国連においても新しい努力をすべきだ、かように思って、それらの点を話したようなわけであります。事務総長の話だと、欧州における分裂国家のほうがアジアにおける分裂国家よりも早く一緒になれるかもわからない。そういうようなことを考えると、世の中はどんどん変わりつつあるのだから、われわれもそれの進んでおる方向はよろしいのですから、われわれが受け入れやすいその方向へ進んでおる、かように思うから、その方向で努力すべきだと、かように思います。
  92. 横川正市

    横川正市君 最後に、私は、最近防衛庁を退官されて何らかの報道の接触されたときの発言を聞きますと、どうも制服組の考え方というのは、通常、議会でわれわれが論議をしておるのとはまた別個な思想、防衛関係についての考え方を持っておるような気がいたすわけであります。もちろんこれは、文民優位、シビリアン・コントロールで十分調整されているものと、こういうふうには考えますけれども、一体その実というのは明確に保障できるのかどうか、十分制服組に対してコントロールできる体制にあるのかどうか、この点を最後に御質問いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  93. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は、防衛問題の一番大事な急所でもありますので、つとに戒心をしておるところでございます。それで、制度的に見ましても、任用、あるいは政策決定、そういう部面につきましては、内局の厳重な統制のもとにございます。内局は長官直属になっておりまして、三幕の高級人事並びに防衛庁が行なう重要政策決定につきましては、長官を補佐して事前審査をし、また長官に助言するということになっておりまして、そういう仕組みで人事及び政策について完全な統制が行なわれております。これは制度的にも保障してあるわけでございまして、かつてのような統帥権独立というような傾向は全然ございません。これは防衛庁設置法をつくるときに、われわれ立法者として一番戒心した点でございます。このシステムを堅持していけば間違いはないと確信しております。
  94. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま防衛庁長官から防衛庁内のあり方についての説明がありました。これはそのままいま中會根君が述べられたとおり御理解いただきたいと思います。また、シビリアン・コントロールというのは、防衛庁内だけの問題ではございません。制度上のたてまえから申しましても、国会優位、その立場においてものごとがきめられるのでありますから、この発言権はおそらくいままでのようなものとはおよそ問題が違うと、かように思います。いま統帥権という立場説明されましたが、まさしくその点に触れておると思います。したがって、私は、ただいまのところその点の御心配はないと、まただれが出ましてもそういう意味では十分国民が納得いくような方法でない限り自衛隊を動かすことはできないと、このことをはっきり申し上げておきたいと思います。
  95. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 以上で横川君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  96. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 次に、中村喜四郎君の質疑を行ないます。中村君。
  97. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 私は、文教政策問題、さらにいま重大な関頭に立っておる筑波研究学園都市の問題、さらに海洋開発の問題、この三点につきまして総理及び関係大臣にお尋ねしたいと存じます。  最初に、文教政策につきまして文部大臣にお尋ねいたします。大学立法後の状況と今後の学校制度の改革について文部大臣の考え方をまずお尋ねいたします。
  98. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 大学の運営に関する臨時措置法が施行されましたあと、大学紛争は昨年秋以来急速に収拾されてまいりました。すなわち、大学運営臨時措置法施行の日現在、昨年八月十七日でございますが、施設の占拠、封鎖または授業放棄等が行なわれておりました大学は、六十四校、国立三十八校、公立五校、私立二十一校、全大学の一七%であったわけでございますが、法施行後大学当局の積極的な紛争収拾策が推し進められまして、本年四月十五日現在、紛争校は八校、国立七校、私立一校、全大学の約二・一%というふうに激減いたしたわけでございまして、ほとんどの大学におきまして、正常な教育研究活動が行なわれております。  また、本年度の入学試験も無事終了をいたしたわけでございます。  今後、たとえば、七〇年安保闘争に向けまして新学期以降新入生を巻き込みまして学内を拠点化しようという動きが出てくることも考えられますが、このような場合におきましても、大学当局が、これまでの紛争の経験に照らしまして、大学運営臨時措置法の趣旨に従い、みずから積極的に紛争の収拾に努力を積み重ね、場合によっては、警察力の援助を得まして、学内の正常な秩序の維持、回復に努力することを私は期待をいたしておる次等でございます。したがいまして、長期間にわたります施設の占拠、封鎖等の事態を生ずるということはそう多くはないというふうに考えるのでございます。  なお、大学運営臨時措置法は、当面の課題であります大学紛争の収拾をはかるため、制定、施行されたものでございまして、紛争により提起されました大学の改革の問題につきましては、ただいま中央教育審議会の答申を待ちまして、各界各層の意見を十分に聞いた上、具体策をまとめ、その実現につとめる考えでございます。
  99. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 大臣は、みずから選挙戦中あるいは選挙前においても全国を遊説して回って、はだで教育改革に対する、大学紛争に対する国民の声をみずから感じ取って、それでやらなくちゃならない、これから改革をしなくちゃならない、そういうことをひしひしと感じたものと思います。また、選挙の結果等を見ましても、国民政府に対する、大学改革の問題、あるいは教育制度の改革の問題について政府は本腰を入れてやるであろうという、こういう期待が、私は選挙その他においてもあらわれたものと、かように考えるわけでございます。  いま大臣は、大学はおさまったと言うけれども、現実にまだ問題が数々あると思います。先般のNHKの今年度の卒業生の調査をいたした結果を見ますと、紛争によって大学は変わったかという問いに対しまして、少しはよくなったというのが一〇%、変わらなかったというのが六%、悪くなったというのが二〇%、さらに大学紛争がまた起こり得る可能性があるかと、こういう問いに対しまして、九三%の者がまだ大学紛争は起きる可能性があると、こういう答えを出しているわけですが、私は、この際、大臣としては思い切った教育制度の改革をすべきと考えるが、もう一度大臣の所見を承りたい。
  100. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 確かに最近のゲバルト学生による大学内における不法不当の状況というものがなくなったということは先ほど申し上げましたとおりでございますけれども、しかし、それだからというて、直ちに紛争が起きないかというと、必ずしもそうではない状況にあるということは私も承知をいたしております。これは、やはり大学みずからが積極的にそういう不法不当の集団暴力等が行なわれないようなき然たる管理者としての立場をとられるということがまず第一であろうと思うのでございます。  それから第二には、やはり大学それ自体が今日の社会におきまして改善すべき多くの問題をかかえておるということも事実でございまして、この根本的な大学改革ということをやらない限りにおいては、この大学紛争を根絶するということはできないかと思うのでございます。したがいまして、私といたしましては、最大の努力を払いましてこの大学改革と取り組んでおるわけでございます。また、中央教育審議会におきましても、この一月十二日に大学改革に関する試案を出しましたし、また、世の中にその案に対する批判を仰いでおると、あるいは取り入れるべきところがあれば入れるという態度でもって、国民的合意を取りつけつつあります。おそらく五月の末、おそらく二十八日ごろになるかと思いますけれども、私に中間報告がなされる、またその後、長期教育計画とそしてそれに対する肉づけとして一体どの程度の財政措置が必要であるかというような計量的な試算を一年かかりましてやって、来年の春ごろには最終答申が私になされる、その最終答申を見ました上で本格的な具体化に取り組んでまいりたいというふうに考えております。また一方、大学当局におきましても、それぞれ具体的な改革の案をいま検討をいたしております。この点は私は一面において評価をしておる一人でございます。
  101. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 いまの大学の紛争の可能性、起きるであろう可能性というのを考えてまいるときに、よく大臣が言われるように、大学が持つ内部の矛盾、閉鎖性、あるいは自己改革のできなさ、こういうところに問題を学生は読み取っておるわけでございます。したがって、中教審の答申を待つまでもなく、行政指導の面でできる面については大臣としては積極的な姿勢を打ち出してやるべきものと私は考えますが、大臣いかがですか。
  102. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) その点は中教審の答申を待つまでもなく、私としてはでき得る限りやりたいというふうに考えておるわけでございます。東京大学におきまして、この準備調査会の新しい総合大学のビジョンというものが最近発表されておりますが、それを見てみますると、かなり私たちの考え方とオーバーラップしているという点が多いのでございます。たとえて申しますと、やはり大学の中においていままで研究ということについて非常に一生懸命であったのだけれども、教育ということ、大学の中における教育ということについてわれわれは少し十分でなかったのだというまず反省がありまして、そうして、この大学の教育運営委員会というものを設けるという考え方が出ております。それからもう一つは、カリキュラムの問題でございますが、従来、この四年の学部学生に対しまして、まず前期の二年におきまして一般教育をやり、あとの後期二年におきまして専門教育に入ると、こういう考え方で進んでおったようでございますが、この点につきましても、私どもは四年間を通じて総合的な一般教育というものをやることが望ましいのではないかということを一年前からわれわれは主張いたしておったわけでございますが、この点につきましても、四年間を通じて総合的な一般教育をやると、しかも、それは単に一般教育に当たっておる従来の先生方だけではなくて、全学的な教官の出動を求めることによってこれを果たすのだと、こういう姿勢が出てきたことは私はきわめて評価さるべきことでございますし、このようにわれわれの考え方あるいは大学の考え方とほぼ一致をしておる点につきましては、中教審の答申を待たずともある程度やっていけると私は思っておるわけでございます。また、入学試験制度につきましても、最近大学におきまして内申書、あるいはまた作文を課すとか、少なくともものを考えるあるいは思索をする、そういうような人を大学に入れるべきであるという考え方が出てきておるようでございます。これにつきましても、高校と大学との連絡の協議会がございます。調査会もございます。この考え方もだんだん固まりつつあるわけでございまして、こういうような問題もやろうと思うならばやれると、私は、こういうようなことにつきましては行政的に指導をして実現をはかってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  103. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 いま東大の問題が出ましたけれども、東大が、現行の国の大学行政、財政を批判して、新しい管理形態として、文部省から独立した大学委員会を提唱しておるわけでございますが、その他の案も出ておるわけでございます。私は、先ほど大臣も同感のように、自己改革のできない体質こそが大学紛争の一番の根源、これを考えてまいりますときに、私は次々大学から、東大当局から打ち出される改革案を見ますときに——新聞ではこう言っております。東大の改革案とかけて何と解く、薄皮まんじゅうと解く、中はあんばかりだ。と、こういう批判が出ておりますが、私どもはこの東大の改革案に対して多くの疑問を持っておりますが、端的に言って、この改革案に対して大臣はどう思いますか。
  104. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 確かに東大の改革案の発想等につきまして、かなりわれわれの考え方と隔たりがあるというふうに考えます。大学のことは大学人にまかせておけというような考え方がまだ残っておる。ところが、従来、大学のことは大学人にまかせておけということでやった結果が、実を申しますと、国民の意思を十分にくみ取ることができなくて、そうして国民のための大学としてではなく、国民のために閉ざされた大学として、非常に固定化したというか、陳腐化してしまったというところかと思うのでございます。その意味合いにおきまして、やはり発想自体においてわれわれと隔たりはございますけれども、先ほど申しますように、かなり前向きの、われわれが評価すべき点が幾つかございます。たとえて申しますというと、中教審の試案の中におきましても、今日の大学というものは、やはりその目的、性格に応じて種類分けをする必要がある、種別化する必要がある。その種別化に基づいて、管理運営あるいは教育研究のあり方というものがそれぞれ具体的にきめられなければならないという考え方をとりまして、そうして、一種から六種までの目的、性格の違った形というものが提案をなされておることは御案内のとおりでございますけれども、今回の東大の改革案におきましても、この種別化ということに対しまして、そのような考え方をやはり、まあ六種でなくて三つではございますけれども、たとえば、大学一般の教育課程を中心とする大学、それから大学の専門課程を性格とする大学、あるいは研究・養成課程というものを中心とした大学、そういうふうに考えが及んでおります。ただ、私たちがこの改革案を見まして感じますことは、私学というものを頭に入れていないというような点、あるいはこれは今後出てくると思いますけれども。それから、従来のやはり東大というものの考え方を脱し切れない考え方がある。したがって、今日大学といいましても、短大から、あるいは場合によっては高専をも含めて、鳥等教育機関と考えたほうが一番適切かと思うわけでございますが、そういう形において、やはり短大の役割りや高専の役割りというものを考えなければならない。ところが、そういうようなことに対しては全然触れていないし、まあ、考えようともしておらないというような点があろうかと思います。それからもう一つは、やはり国民の税金でもってわが国立大学というものはまかなわれているということに対しての反省というものが足りないのじゃないか。やはり、この際、第三者機関というものが何らかの形において設定をされ、そうして国民の意思というものが反映をされ、そうして学問の自由、大学の自治がその観点において位置づけられなければならないのじゃないか。そういう点にはまだまだ私たちと考え方が違うというところはございます。
  105. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 大臣の趣旨がよくわかりました。私ども東大の改革案そのものの中には認めるべき性質のものもありますが、すなわち、それでもなおかつ、東大自体の改革委員会、大学委員会というこういう制度は、管理制度が確立されない限り、これは問題にするに足らないものと考えるわけでございます。内部の矛盾の問題でも、たとえば大学の教授のごとき、いわば近親結婚的なものであり、あるいは教授の任期制の問題にしても、あるいは外部の声を聞くというこういう問題については一つも触れられていない点は、まことにいわゆる東大オンリーのものの考え方だなという感じを深くするわけでございます。そのことは別としまして、私は角度を変えまして、大学紛争の際の公共物件の損害が非常に大きいわけですが、これらに対する概況とその損失補償はどうされているかをお伺いしたい。
  106. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 大学紛争に際しまして、不法行為により公共物が破壊をされました場合の損害につきましては、当該不法行為を行ないました学生に対しまして損害賠償の請求を行なうよう指導をしているわけでございます。ところが、これまでのところ、不法行為者を特定することがなかなか困難であることもございまして、まあ、私どもの文部省といたしましては、関係大学が法務局とも協議をいたしまして民事訴訟を提起するよう督励をいたしているところでございます。また、学長等の国有財産管理の努力にもかかわらず損害が生じましたことは遺憾なことでございますが、管理者としては損害の防止のため種々努力を重ねているところでもございます。文部省としましては、現在までのところ、管理者としての法的責任を追及するまでには至らないと考えております。会計検査院におきましては、これまで調査された限りにおいて、同様の結論というふうに承知をしておるわけでございますが、民事訴訟の提起につきましては、四十五年三月末現在で五十二校が損害賠償請求に関しまして地元法務局と連絡をしております。四十五年三月末現在で、納入告知をした大学も、また民事訴訟を提起した大学もないわけでございますけれども、これらのことにつきましては、これからも指導助言をいたして、その損害賠償の責任をある程度追及をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。ただ、東京大学等におきまして、その損害賠償の一つの気持ちをあらわす意味かどうかわかりませんけれども、教官たちが毎月の給料から差し引きまして、たしか二月ぐらいまででございましたか、すでにもう二千万円程度のものを拠出をしておる、そうしてこの損害賠償に充てるということでございます。これはもう少しお金はさらに増加をするということも聞いておりますが、少なくともそういう気持ちが大学にあるということは、やはりわれわれとしては今後いいことでありますし、また、各大学においてもそういうような気持ちを持ってもらいたい、そうして、いやしくも国民の財産を損傷したことに対して責任を果たすと、また、責任を果たさせるというようなことで、いやしくも国の財産というものを損傷なからしめるように、これからはき然たる態度でもって占拠、あるいは不法な損害等が行なわれないようにつとめてもらいたいというふうに期待をし、念願をいたしておるところでございます。
  107. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 文部省の調査によりますと、国立大学だけで十二億九千二百万の損害を出している。東大だけで四億六千四百万円、北海道大学が一億七千一百万円、京都大学が一億一千四百万円、こういうような損害を与えておるわけでございます。いま五十二校が損失補償のために訴訟を告発していると言うが、その告発の結果はほとんど出ていないでしょう。それから、いま東大の大学の会計の中に入っていますか。
  108. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) その点はまだつまびらかにしておりませんけれども、教官たちが自発的にこの損害の一部に充てるためにいま拠出をしておるということを聞いておるわけでございます。もしなにでございましたら、あとで御報告を申し上げたいと思います、詳しいことを。
  109. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 私どもが調べた限りにおきましては、たとえば東大が本富士署に告発した問題も、今日まだ全然手を触れられておらない。解決のめどがついてない。また、東大当局が拠出した金も、また帳簿台帳その他には載ってないように私どもは承わっておるわけですが、その出すという気持ち、あるいは国民に対しておわびするという気持ちはわかりますけれども、これらの点につきましては、十分ひとつ文部省として指導をしていただきたいと思うわけでございます。  さらに、この大学紛争に関連して学生諸君が相当数逮捕され、そして起訴されておりますが、この学生の処分についてはどのようなことになっているかお尋ねしたいと思います。
  110. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 羽田事件以来相次ぐ学生の集団的暴力事件に対しましては、文部省としましても、かねてより機会あるごとに警告を発してまいったのでございますが、各大学におきましても学生の指導につとめているところでございます。昭和四十四年度におきましては、学生運動関係で処分された者は、退学九十四人をはじめ、三百四十五人にのぼっております。また、学内外の暴力事件で起訴された学生は、現在までに判明したところでは二千四百六十六人でございます。文部省としましては、各大学が暴力は絶対これを否認するというきびしい姿勢のもとに、これら起訴された学生を含め、学生に対する指導の適切厳正を期するとともに、学生としての基礎資格を欠くものなど大学に適応しない者につきましては、学則に照らし適切な措置を講ずるようさらに指導を行なう所存でございますが、全般的に申しまして、昨年の初めあるいは一昨年ごろはとうてい処分ということすら考えることができなかったわけでございますけれども、昨年の紛争以来、あるいは大学立法以来、かなりこの処分等につきましても、大学側が積極的な努力を積み重ねて、そうして現に三百四十五人という処分ができておるということでございまして、今後一そう、このような事件が起こりました場合におきましては、大学当局として、学生としてあるまじき行動に対しましては、十分注意をするように指導をいたしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  111. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 いま大臣は、三百四十五名処分したと、こういう御報告でございますが、私立大学で千二百名の起訴者の中で処分された者は、一カ月以上の処分者が二百六十七名、公立では起訴者のほとんど全員が処分されています。ところが、東京大学、京都大学、北海道大学、九州大学、広島大学のような非常に激しかった学校では、たとえば東大では起訴された者が、数字ちょっと忘れましたが、東大では一名も処分してありません。北海道大学も、京都大学も全員処分はしておりません。山本義隆のように全共闘の委員長としてあれだけの激しい闘争をした者も、あるいは学園紛争によって、器物損壊によって警察から逮捕され、起訴された、そうした助手も処分されておりません。これはいかがでしょうか。
  112. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 確かに私立大学と国立大学と比べてみますると、そのような事態がございまして、この点私も全く遺憾だと考えておるわけでございますが、東京大学あるいは京都大学等におきましては、そういう処分そのものによって大学紛争があそこまでエスカレートしたという一つの経過もございます。それからまた、内部の大学改革の中において処分制度というものをどういうふうに考えるかということについていろいろの議論がいま戦わされ、そしてそれがまだ定着をしていないというようなこともございまして、その点がはっきりとして、ほかの私立大学に比べましておくれておるということは申されようかと思いますけれども、私どもといたしましては、こういうような事柄につきましては、やはりもう少し東京大学あるいは京都大学というような国立大学の一番教育条件のいい大学におきまして、厳正なあるいはき然たる態度をもって臨んでもらいたいということを考えておるわけでございます。
  113. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 先ほどの東大の起訴学生が百四十八名、これは全員処分されておりません。これは御承知のように、学生と取りかわされた確認書に原因していることは大臣も御存じのとおりであります。今度のように「よど号」の乗っ取り事件の中にも東大生が御承知のようにおるわけでございます。あるいはその他の明大あるいは京都大学農学部の岡本、こういうような学生もおるわけでございます。こういう学生に対しては、大学の判断のみで、いまのように学生との確認書取りかわしの線のままでこれを容認しておりますか。いかがですか。
  114. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 従来の起訴学生とは別個に、今度のようなもう人道上許すべからざる犯罪行為に対しましては別個に私は取り扱ってもらいたいということで、学生の身分を持つ資格はないのではないかというような考え方で、ただいまこの点については東大当局とも話し合いを進めておるというところでございます。
  115. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 東大当局はおそらく確認書の線に沿ってこの問題を具体的に解決することはなかなか困難だろうと思いますが、しかるべき大臣としてのきびしい判断をお願いいたします。  さらに、私は学生処分に付随いたしまして、東大が病院をつくった、六億八千万の国の金をかけてつくった、おととしの三月でき上がったけれども、いまだに学生あるいは医局員の騒ぎによって使用できない現状にあるのを、これをどうお答えになりますか。
  116. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 確かに北病棟が現在までに、完成をいたしたわけでございますけれども、たとえば看護婦の数の問題であるとか、あるいはまたその他の要求を掲げまして、その話し合いがまとまらないために病院の移しかえができないということはまことにこれ遺憾な点でございます。しかしながら、昨年の紛争中のことを考えますと、なかなかそこまでも及ばなかったのではないかというふうに思いますし、また、去年の実情は、入学試験というものすら行なえなかった状況でございますが、今度は入学試験も行なえたという状況でございますから、四月以降におきましては、ひとつぜひともこれの移転が完了するようにということでただいませっかく努力をいたしておるところでございます。
  117. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 なるほど入学試験は落ちついた。そうではありますけれども、いまの学生処分の問題にしましても、あるいは東大の入学式ができずによその民間施設できのうやった。その入学式の状況を見ておりましても、新聞報道によると、総長はもちろん来ません。学生だけが集まってやった。そのあいさつは、たとえば安保反対であり、あるいは自民党攻撃であり、あるいはその他の過激なことばが出ている。こういう現実の中で教養学部長は学校の教科その他の伝達をやっている。こういう姿をどう考えるのですか、大臣。私は学生の自主にまかせるという、あるいは大学教授の自主判断だけ、そうではなくて、ほんとうの国家的な見地から、学問という見地から、研究という見地から、もう少しきびしい姿勢が大学人の中に、みずからの中に生まれなければならないと考えるが、いかがでしょうか。
  118. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) もうその点は中村さん御指摘のとおりに私も考えておるわけでございます。今度の場合、東京大学の安田講堂それ自身がまだ荒れたままで修理もいたしておりません。したがいまして、学外でやったということは一応認められるといたしましても、もう少し総長みずから出ていって、そして自分の考えを述べるなり、あるいは学生たちと話し合いをするなりというようなことがあってしかるべきであったというふうに考えられてならないのでございます。この点につきましては全く中村先生と同じようなことでございまして、文部大臣といたしまして、今後十分そのようなことにつきまして、もう少し国民のために大学があるのだということに徹してもらいたいというふうに考える次第でございます。
  119. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 大学の問題からさらに私は高等学校、中小学校等々の問題、これは中教審の答申を待たなくても、文部当局の考え、政府の考え方で十分道が開けることと考えるわけでございますけれども、たとえば、現職教育の充実の問題あるいは教育者の養成機関の充実の問題、待遇改善の問題、管理制度の特に充実の問題、これらの問題につきましては、中教審の答申をあえて待たなくてもできる道があるではなかろうかと思うのです。これらの点について大臣の御所見を伺いたいと思います。
  120. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 大学紛争だけでなくて、やはり大学に続きまする高等学校、中学校、小学校、この教育が、総理も施政方針演説でお述べになっておりますように、あまりにも知的教育だけに偏重をしたきらいがあって、教育の一番大事な情操教育であるとか、あるいは徳育であるとか、あるいは健全な体育であるとかいうような全人的教育ということに目を向けるということが、やはりこの二十年間におきまして欠けておったのではなかろうか、こういうような反省に立ちまして、制度の問題はとにかくとして、現制度の中においてなおかつ改善あるいは改革できる点がままあろうと思うのでございます。その一番大きいものは、やはり入学試験の問題でもございましょうし、また同時に、高等学校、中学校、小学校の日々の教育に当たっておられる先生方それ自身のものの考え方にもそれがあるのではなかろうか。先生方がほんとうに教育者としての使命を感じて、そして教育そのものに精魂を傾けるというようなことであったならば、相当教育の内容あるいは人間性の回復ということはやれるんじゃなかろうか。しかし、この二十年を振り返ってみますると、いろいろと原因はあったかと思いまするけれども、あまりにも教育の中にイデオロギーを持ち込み過ぎたきらいがあったと思うのでございまして、今日高度社会における人間疎外がいろいろ叫ばれ、そして脱工業社会と申しますか、そういうようなこともいわれておりますが、私はもう一つの病根というものは、脱イデオロギーではなかろうか。教育の中立性というものがいわれておるのはまさにそういうようなことではなかろうかというふうに思うわけでございまして、脱イデオロギーに立って、ほんとうに教育者がその専門職たるの自覚と反省の上に立って教育そのものに没頭されるならば、この点は相当改善できるというように私は思いますし、またそのような指導助言をいたしてまいりたい。またそのような教育行政をやってまいりたいと思いますが、しかし、また同時に、先生方の待遇の問題につきましてやはり一面においてわれわれが考えていくということも、非常に欠くべからざることである。ことにこの高度産業社会になりますと、ともいたしますると人材がその方面に流れてまいります。教育が大事であるというからには、教育界に人材を入れるようなやはり待遇の面というものも一面において考えていかなければならない、かようにまあ考えるわけでございます。
  121. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 私は、大学紛争やいま述べた東大の現実、あるいは「よど」号の事件、もろもろのあのあばれ回る学生、こういう姿を見るときに、私は、学問というものは決して学問やあるいは知識だけじゃないのだ、もっと人間的なものがほしいものだ。武蔵の五輪書の中に、「剣術一篇の理にては剣術も知りがたし。剣の道をもってせば万事においてわれに師匠なし」ということばがあります。剣術一篇では剣術つかいにもなれないということば、私これこそほんとうの道ではなかろうか。ほんとうの道を求めるのでなければならないと思います。そういう意味で、大臣みずからも剣の人ですから、もっと性根を据えて、そうして、選挙期間中にも国民の声に肌で触れたわけです。ひとつき然たる態度で教育改革に向かってもらいたいことを要望いたしまして、文教問題については終わらせていただきます。  次に、筑波研究学園都市の問題につきましてお尋ねをいたしたいと存じます。  この御質問申し上げる前に、私は過程について申し上げたいと存じますが、昭和三十六年に政府が学園都市の構想を打ち出し、三十八年に筑波と決定して、以来用地買収にかかって、今日用地の五百七十万坪のうちの九九・三%の用地買収が完了しておるわけでございます。しかも、その用地買収は非常にむずかしいものでございました。成田空港の三百万坪に比較しまして面積は広く、しかも、成田は地主が三百五十人、筑波は三千五百人、その土地価格は成田が筑波の四倍です。坪当たり筑波が千百幾ら、こういう現実の中で、しかも、権利者は筑波が一万名、成田が八百名。そういう安い値段、権利者が多い、地主が多い、土地条件は成田と何ら変わりがありません。キロ数もそうです。土地の状況も同じです。しかも土地の価格は、評価価格は茨城の筑波のほうがずっと高いわけです。それでもって買収価格は非常に安い。安くてもなお地元が協力したというのは、国家のこの事業に対しまして、地元民としては不服であり、不満はあったけれども協力したわけです。しかし、その過程におきまして、先般も私は申し上げましたように、町村長が過労のために六人死んでいます。議員が二人死んでいます。県会議員が一人死んでいます。直接現地の学園都市の課長が一人死んでおります。こういう中で、悲劇的な中で用地買収が進められながら、いまだに学園都市の建設は進められていない。地元の人たちは、返していただきたい、政府がほんとうにやらないなら返してもらいたい、こういう激しい憤りと政治に対する不信を持っておるわけです。こういう現実を踏まえまして、私は各大臣にお尋ねをいたしたいのです。  まず第一に、建設大臣にお尋ねをいたします。四十四年の六月に、移転期間前期後期に分かれて、四十三年度を初年度として五十二年度までにこの学園都市の建設は完了するという閣議決定をなされておりますが、この予定どおり五十二年までに三十六機関の移転完了する見通しがあるかどうか、この点をまずお伺いしたい。
  122. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答え申し上げます。  御指摘のように、昭和四十四年六月十三日において閣議決定いたしたのでありますが、これは研究学園都市に移転する予定の機関については、昭和四十二年九月に、三十六機関に閣議了解をいたしております。四十四年六月の閣議決定によりまして、四十二年から四十七年度までの前期五カ年には十一機関、これは科学技術庁関係に文部省、教育大学とそれから農林省五つの機関、建設省三機関。その他の機関につきましては昭和五十二年度までの後期に移転することといたしております。  なお新設機関といたしまして、素粒子研究所についても設置をする決定をいたしまして、現在、建築に着手いたしておるような次第でございます。後期に移転する予定の機関についても、前期の期間において移転に関して必要な調査を促進し、できるだけ早期に建設する措置を講じているのでございます。で、現在、これに必要な道路、河川、上下水道等の都市施設の建設をも進めることにいたしておりまするが、御指摘のように、用地買収は地元の御協力で非常に順調にいっていまするけれども、現実の移転の状況はだいぶ計画から見ておくれておるということは、まことに遺憾でございます。これはいろいろの事情がございまするけれども、今後、関係行政機関と十分に協議いたしまして促進をはかりたいと考えておる次第でございます。
  123. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 私がお尋ねいたしましたのは、予定どおり五十二年までにできるかどうかということを具体的にお尋ねしているわけでございます。と申しますのは、私は、各省に——科学技術庁、通産省、農林省、それぞれの移転機関に対しまして、移転の年次計画、具体的な調査計画予算はどうなるか——与党であるかために質問の時間が許されませんものですから、文書でもって私がお尋ねいたしましたところが、その文書回答は、いずれも、調査中、あるいは、予算はわからないと、全部そういう回答です。これでは地元は納得いたしません。閣議決定が二回も三回も行なわれながら、いまのような状況では、私どもとしては何とも納得いかない御回答のわけですが、もう一度ひとつ大臣の、では決意だけでもお伺いします。
  124. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 現在のところ、各省が文書で答弁したことが事実でございます。この状況では、五十二年度に完成することは非常に困難であります。それで、先般の予算分科会において、中村さんの御質問に答えまして、私は、近く閣議にこの状況を御報告申し上げまして、関係閣僚会議を開いていただき、明年度以降の予算並びにいままで閣議決定しました計画について、具体的に年次計画をつくるよう関係閣僚に要請申し上げ、促進をはかりたいと思っておる次第でございます。
  125. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 いま、大臣みずからも、推進本部長である大臣みずからも、事実だと、答弁は事実だと、こう申されましたが、私もこの答弁を見て非常にあ然としたわけでございます。で、いまの大臣の御答弁を見ましても、五十二年までに完成するためには相当の予算が要るわけです。きのう、完成までには約四千億の財政支出が必要だと。そうだとすれば、これは財政支出を四千億とすれば、一年間に五百億平均出さなければならないわけでございますが、この予算支出についてはどうお考えになっていますか。
  126. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) いま、中村さん御自身がお認めになるように、この短期間に四千億近くの財政支出をすることは非常に困難だということを私も先日申し上げたわけでございます。したがいまして、この事態を踏まえまして、しからば従来の閣議決定事項を充足するにはどういう方法をとるべきか。場合によっては計画を延期せざるを得ないじゃないかとすら私は感じております。問題は、財源とそれから負担能力、これらの点をあわせて検討するために、近く関係閣僚会議を招集していただいて、そこで、現実可能なる、そうして政府として責任をもってやるべき具体的なものをはっきりと明定してこれを実行する態勢に入らなければ、先ほど冒頭に中村さんが御指摘になったような、地元住民の非常なる不満感とそれから不安感をあおるということになりまするので、現実に即したところの計画を立てるべきであると信じておる次第であります。
  127. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 おくれるであろう、そのことは許されないと思います。あるいは、変更はなかなか許されないと思います。と申しますのは、目的を持って用地買収し、しかも強制収用をしてやったわけなんです。目的外に変更することはなかなか許されないと思います。また地元感情としても、成田との関係からしてこれは許されないことと思います。したがって、どうしてもこの問題は具体的に解決していただかなくちゃならないわけでございます。  そこで、私は総理お尋ねしたいわけでございまするが、いまのような状況を見まして、具体的にこれを進めるためには、予算上の問題と、大臣が閣議にはかって、皆さん方の協力を求めるというような御発言なさっておりますが、先般総理も、閣議で決定いたしましても予算がきまらなければどうにもならない。しかし、万博の見通しもついた今日において、必ず、筑波に重点的にこの問題をしぼって、計画を進めたいというような、強い総理の意思表示がありまして、地元の知事あたりも非常に納得したわけでございますが、いまの状況にかんがみて、総理のお考え方をひとつお伺いしたいと思います。
  128. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 筑波学園都市建設、これはずいぶん問題がありました。しかし、もういまさらそういう経過を云々しても始まらない、前進あるのみでございます。いま、たいへんな金のかかるもので、短期間にそれができるかと、こういうことを言われますが、各省を督励して、重点的な施策だと、かように考えますと、予算は学園都市建設の方向にまず優先的につくわけでございますから、私はそういうような各省協力なくてはいかないように思いますし、いままでも建設推進会議等持っておりますのも、ただいま言うようにこの事柄が重点施策だと、そのことをよく各省が徹底して理解して、そうして協力する、それならば中村君の御指摘のように、期待にも沿い得るのではないかと思います。私は、こういうような事柄で政治不信を買うこと、これは何としても避けなきゃならない、あらゆる努力を注いで、そうして所期の目的を達するようにいたしたいと、かような決意でございます。
  129. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 いま、総理が、予算重点的に施行して、具体的にしたい、それで私は一応納得するわけでございますが、重点的に予算をするために、私は、各年次の予算要求の場合に、ワク外予算としてこれをやるような重点策はできませんか。
  130. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ワク外予算というのがどういう御趣旨かよくわかりませんが、例の二五%こえるというやつですか。
  131. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 そうです。
  132. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは研究学園都市という個別の問題についてじゃないんです。それぞれの所管庁、それを全部通じて、文部省なら文部省予算全体を通じまして、二五%をこえないようにしようじゃないか、こういうことで、このワクについて、学園都市の問題の予算問題、これが妨げになると、こういうふうには考えておりませんです。
  133. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 大蔵大臣はそうおっしゃいますけれども、現在までの各省予算折衝の過程におきましては、やはり二五%なら二五%というワクに縛られているということ、まず現実の問題。もう一つは、大蔵省からいえば、まだ用地が取得されないという、あるいは移転計画ができてないからと、こういう理由で各省予算がどうしても取れないのです、大蔵省が渋いからと。こういうイタチごっこを続けているわけです。これではいつまでたっても進みませんよ。だから、私は総理に、この問題は、重点的にひとつ閣議の中で取り上げていただいて、学園都市建設に予算を振り向けていただきたいということを言っているわけです。
  134. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そういう意味だとよくわかりますが、これはまだ調査段階だというようなことで、調査、調査といったのじゃ、私は一こうに進まないと思います。何か一つでも具体的に早く完成して、そうして地元の人にも政府の意のあるところをこれは認識してもらう、これが大事ではないかと、こういうふうに思います。同町に、全体としての計画を持つこと、これも大事なことである、こういうふうに思います。それで道路もつくらなけりゃならぬと思います。また公務員宿舎、この問題もあると思います。また学校をどうするか、公務員の子弟を一体保育所また幼稚園、義務教育課程、高等教育課程と、そういう問題をどうするか、これは非常にいろんな複雑な大きな問題を含んでおります。そういう問題の順序づけをまずしまして、着実にそれをやっていく、そして検討し、移転の容易なものからとにかく一つでもなるべく早く移転をすると、こういうふうにいたすのがよかろうかと私は考えておるのでありますが、そういうまだ具体的な計画まで入っていないような段階のように見ますので、そういう着実な計画ができますれば、私どもとしても財政的には積極的に御協力申し上げる、こういうふうに考えております。
  135. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 総理大蔵大臣から計画が立てば積極的にやると、それでよろしいと思いますが、私はその前に各省がもう少し具体的な計画をすみやかに立てるような方策をとることをまず望みたい。大臣がどうおっしゃっても、役人の人たちはこれに応じない。たとえば農林省の場合十三機関移転する。どの機関が移るんだと言っても発表できない。あるいは工業技術院が七機関移ると言うけれども、ずっと先のことの計画だけをやって一つも移る計画はされていない。大臣はそうおっしゃっても下の官僚はそうしている。そのことのために問題がある。もう一つは労組から突き上げをやるんじゃないかと思う。私は突き上げをやるのは当然だと思います。あそこに移るためにはりっぱな公務員住宅も生活環境も十分完全な組み立てをやって、そこに行きやすいような姿にすることが私は先決問題だと思う。そのような計画一つもされていないわけです。このことにつきましては、私はおくれた原因というのはそこらにあると思います。したがって、政府が意思統一しまして、この問題の具体的な促進計画をぜひ立てていただきたいと思います。建設大臣いかがでしょうか。
  136. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 先ほどお答え申し上げましたように、そのために私は近く関係閣僚会議を開いていただきまして、そこで今日までの経緯にかんがみて、従来の計画を極力推進する方針のもとに、いま御指摘になりました点を具体的に検討して詰めていかなきゃならぬと思います。ただ、ことばだけでやってもどうにもなりませんし、それからすでに御説明申し上げましたように、客観情勢は非常に困難でございます。道路にしろ、都市計画にしろ、学校にしろ、そうしたものを充足することには、もう五十二年に全部完成するということは非常に困難でありまするから、私は従来の経験からかんがみて、再検討して実行可能な案をすみやかにつくり、これに基づいて予算化をしていただくということがより現実的ではなかろうかと考えている次第でございます。
  137. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 非常に前向きな答弁でありがとうございます。しかし、私はなおそのような考え方に立ちましても、推進体制の強化という問題を考えていかなくちゃならぬと思います。いまの首都圏整備委員会の中では、ここには権限がないです。法律的な根拠もないです。したがって、もし政府がそういう決意をしましても、推進本部長である建設大臣が本部長として各省に勧告する義務、あるいは計画案を出させる義務、あるいは国会報告する義務、これらの機構上の問題も考えていかなければならないと思いますが、総理いかがでしょう、この点は。私は推進体制の強化の問題についてお伺いしたいのです。
  138. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) この筑波学園都市を建設するために、そうするならば特別立法をしなければならぬということになりまするが、それは非常に困難だと思います。問題は法律をつくることよりも、内閣全体が結集しまして、具体的に進めるということに意味があると思うのでございまして、そういう意味で今後推進してまいりたいと思います。
  139. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 この四千億に近いもの、しかも十カ年間に完成する、そういうためには推進本部長に、特別立法しないとすれば、総理ひとつ重大な権限を与えて推進体制を整えてもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
  140. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま中村君の御意見はよく伺っておりますから、なお推進本部長ともよく相談いたしまして、御期待に沿うように最善の努力を払ってまいります。
  141. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 大蔵大臣伺いたい。この学園都市建設の過程の中で、財政負担能力の非常に低い六カ町村に対しましては、何らかの財政上の特別措置をとらなければならぬと思いますが、たとえば成田のような場合の財政措置、あるいは周辺界域のために特別の財政支出をしたと、こういうふうな措置をしなければならないと思いますが、いかがでしょうか。
  142. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 研究学園都市につきましては、首都圏等の整備を推進するための特例法があります。あの特例法を適用いたしまして、関連公共事業の補助率の引き上げというか、かさ上げですね、これをいたしますとか、あるいは住宅が重要問題でありまするが、住宅につきましては、住宅公団の建てかえ方式を適用いたしますとか、国としても大いに御協力をする考えでございますが、おそらく自治省におきましても、こういう企画の推進につきましては、いろいろな方法がありますが、そういう方法で御協力を申し上げる。なお融資とか、いわゆる起債ですね、そういう面におきましては、大蔵省といたしましてもできるだけの配慮をいたすと、こういうふうに考えて駆ります。
  143. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 その建てかえ方式で完全にまかなわれましょうか。首都圏の地帯の問題は、これはわかりますけれども、これは全地域に適用される問題であって、学園都市そのものに対する建てかえ方式そのものだけでこれは完全に行なわれるでしょうか。
  144. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 建てかえ方式と申し上げましたのは、住宅公団が担当する住宅建設、これのことについて申し上げたんですが、その他一般の市中というか、都市計画に伴う住宅、そういうものにつきましては、あるいは住宅公庫の融資の方法がありますとか、あるいは公営住宅と、こういうような制度もあります。それらの諸制度を適用する。もちろんのことこれは公務員住宅、これにつきましては政府が全面的に責任を負ってこれを建設すると、こういうふうに考えております。
  145. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 道路の地元負担、あるいは周辺の営農対策、田園都市対策、これらの問題に対しても当然これは学園都市が学園都市らしくするためには、学者の町だけではなく、そこに住める町としなければなりません。そういう点からする周辺の都市開発等についてはどのような考え方を持っておられますか。
  146. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 御指摘のように、学園都市は単なる学問の府であるのみならず、あそこの環境を最も適切に利用して教育環境を整えるとともに、あの地帯の住民のこれは福祉と生活の向上に役立つものでなければなりませんので、御指摘のことは全く賛成でございます。そのために、これは農林省も建設省もそうした点に標準を合わせまして今後施策を進めてまいりたいと、考えております。
  147. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 学園都市につきましては以上で終わらせていただきますが、私は総理に、特に先ほどのような地元の問題、あるいは土地提供者の感情、あるいは政治的な感覚、これらの問題からしまして、さらにはこれは日本の頭脳センターの建設という立場、新しい過密対策の、あるいはニュータウンというこれらのもろもろの観点からして、ひとつ総理みずからも陣頭に立って、これの推進に当たっていただきたいことを要望いたしたいのでございます。  次に、海洋開発の問題についてお尋ねしたいと思います。御承知のようにアメリカのケネディ大統領が海洋開発宣言をやる、あるいはドゴール大統領が海洋開発宣言と、国家的な計画としてこれを大きく取り上げておるわけでございます。いわば原子力時代、宇宙開発時代、いままではいわば海洋開発時代に向かったと言われる。国連の決議におきましても、一九七〇年この十年間は海洋開発の時代だということを国連でも決議されておるわけでございますが、これらの海洋開発の問題点につきましては、私は関係大臣にお尋ねしたいと存じます。  まず、通産省のほうにお尋ねいたします。海底資源開発の問題、エネルギーの問題でございますが、石油の現在の需給状況、昭和五十年ごろまでの供給の見通しについてお尋ねをしたいと思います。
  148. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) お答えいたします。  わが国経済発展の原動力でございますエネルギーの需給でございますが、その中で石油の需要が非常なテンポで伸びておりまして、一次エネルギーの供給の構成比から申しますと、三十五年には三七・七%でございましたが、四十三年には六六・五%になっております。御指摘の五十年には七二・八%、六十年には七四・八%、約四分の三が石油で供給されるというふうに予想されておるわけでございます。需要量といたしましては、四十五年は約二億キロリットルと考えておりまして、五十年には供給は増加いたしますが、これに対する供給の体制といたしましては、大体処理ベースで三億キロリットルの設備による供給が必要であろうというふうに考えておる次第でございます。
  149. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 その石油で、海外から輸入する石油とそれから内地でできる石油、さらには日本が開発した海外開発石油の率はどのくらいですか。
  150. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 国内の原油は、最近の実績では八十万キロリットルでございまして、一億九千万キロリットルのほとんど大半は、ほとんど全部が海外からの輸入になっております。その輸入の中で海外で開発した輸入は、四十四年度におきましては千八百万キロリットル、約一一、二%ということに相なっております。
  151. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 その油の貯油状況は、ストック状況はどのくらいになるか。
  152. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 四十四年度末におきます石油の貯油の設備能力は大体五十八日分程度になっておりまして、四十二年度には四十五日分でございましたので、かなり増加になっております。日にちで申しますとそうでございますが、四十二年度末は二千八百七十万キロリットルの貯油能力でございましたが、四十四年度末では四千四百二十万キロリットル、大幅に増加しておるのが現状でございますが、なお貯油はさらに増強する必要があろうというふうに考えております。
  153. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 いま五十年の石油の必要量というのは三億トン。三億トンといってもドラムカンにして十五億本、日本でできる石油が八十万トンというと、これは一日の消費量というのは大体日本中で四十五万トン、そうしますと国内石油というのは二日分もないということになりますか。
  154. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 御指摘のとおり、現在の国産原油の量はきわめて微少なものでございます。
  155. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 国産石油が幾ら掘っても現在二日分ぐらい、ストックがいま五十何日分、私どもが通産省でこまかに調べた量では、いまで三十六日分ぐらいしか貯油量がどうにもならない、こういう現実で、八十万トンの国内石油の開発にさらに大陸だなの石油開発というもの、日本の周辺の大陸だなの開発に対してはどんな政策をとっているんですか。
  156. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) お答えいたします。  わが国の周辺の大陸だなの面積は、大体陸域の八〇%程度に相当いたしておりまして、しかも予想される地質構造としては、石油あるいは天然ガスの賦存しておると予想されるような状況にございます。したがいまして、政府といたしましてはこれの基礎調査を実施いたしまして、今後この大陸だなにおける石油資源の開発を進めるべきだというふうに考えておる次第でございます。
  157. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 どんなふうにいま進めていますか、それは。今度の予算上から見て。
  158. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 本年度大陸だなの基礎調査を、二カ地域の基礎調査予算を計上いたしております。これによりまして、逐次大陸だなの賦存状況が資料が不足しておって事情がわからないという現状から、まず基礎調査をやって賦存状況を確かめる、本年度は二地域を実施すると、こういうことに相なっております。
  159. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 貯油の施設、油をストックする施設の状況はどうなっていますか。
  160. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 貯油に見合います施設といたしましては、現在千二百万平方メートルの用地をすでに使用いたしております。今後この貯油のために膨大な土地が要ることに相なりますが、現在確保しております土地は、すでに確保あるいは確保済みという形になっておりますもので四千五百万平方メートルございます。これは精製の用地も含んでおりますが、大体タンクヤードとしてはその半分程度見込まれますので、二千三百万平方メートル程度が確保されているというふうに考えられます。四十八年度までの間にさらに二千七百万キロリットル程度の貯油が必要であろうと思いますので、これを合わせて、要する用地は千九百万平方メートル弱でございますので、四十八年における用地は十分確保できておるというふうに考えるわけでございます。
  161. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 貯油が三十六日分ぐらい、そしてそのタンクの面積がいまの説明だと約四百五十万坪ぐらいになる。そうすると後楽園の約四百五十倍の面積、今後一三%から一〇%ずっと年率伸びた場合には、昭和六十年度ごろにストック施設、貯油施設というのは非常に狭隘になり、しかも防災、防火上も非常にむずかしい問題となってきますが、海底あるいは地中にタンクをつくる施設等については研究を進めていますか。
  162. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 御指摘のように、先ほど申し上げましたような事情で五十二、三年までの用地は確保できておりますが、それ以降につきましては、さらにタンク用地の確保が必要であろうと思います。御指摘のように用地の確保が非常にむずかしいという点がございますので、共同タンク、あるいは貯蔵の技術的な方法、あるいは貯蔵の場所等につきまして調査をいたしておりますが、なお現在は、海底あるいは地中等の貯油方法についていろいろ技術上、あるいは保安上、あるいは法律上の問題もございますので、いろいろ検討いたしておる現状でございます。
  163. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 私は非常にこの問題重大だと思うのです。現在三十六日分、しかも面積にいたしましても膨大な面積である。これが一時ストップしてしまったならば産業上も、あるいは国防上からいってもどうにもならない事態になる。したがって貯油施設というものは十分今後政府においても検討を加えまして、拡大のために努力していただきたいと、この点につきましては通産省当局にひとつ要望いたします。  次に、大陸だなの鉱物資源の開発促進法の問題についてお尋ねしておきますが、これは今国会に出すという予定であったが、どういう理由で出されなかったのかお尋ねしたい。   〔委員長退席、理事吉武恵市君着席〕
  164. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) お答えいたします。  大陸だなの開発促進法につきましていろいろ検討いたしておったわけでございますが、権益の調整等に関しましていろいろ事前に調整を要する諸点が多くあったわけでございまして、これらについてなお時間を要するという状況に相なりましたので、今回の国会への提出は見送りまして、引き続き検討を続けてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  165. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 農林大臣に、海洋生産物の資源開発の問題で、現在の漁獲量はどのくらいになっていますか。
  166. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 昭和四十年あたりからだんだん漸増してまいっておりますが、四十三年には八百六十七万トンで、これは鯨を抜かしてです。そこでなお技術の開発も行なわれますし、新漁場の開発等も増進いたしておりますので、逐次増大の見込みでございます。
  167. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 新漁場開発のほかに、海中牧場等の問題についてはどの程度研究を進められているかお尋ねしたいと思います。
  168. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) これは水産の方面としてはきわめて大事なことでございますので、ただいま新漁場、それから増殖等のために瀬戸内海とか松島湾とか浜名湖等において新しいそういう研究をいたしておりますが、いわゆる海底牧場等につきましてもそういう面で研究を進めておるわけであります。
  169. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 大陸だな関係の中で、海中牧場、いわば大陸だなの五%程度を開発すれば、いわゆる現在の漁獲量と同じ程度にとり得るような道もあるということも学者は言っておりますが、今後この問題については十分ひとつ御検討をいただきたいと思いますが、さらに私は、この海洋開発の水産物の増産の問題と関連して、先ほどの海底資源開発の鉱物資源との開発の間に競合ができると思います。こういう競合の調整というものは政府でいまから研究をすべきだと思いますがいかがですか。
  170. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 海底の開発につきましては、ただいま通産省のほうからもお話がございましたが、これはまあどういうものが出てまいりますか、たとえば石油などを想像いたしてみますというと、そのためにいろいろな排出物等によって漁業にどういう影響を持ってくるかというふうなこともございますので、関係各省とそういう点について十分相談をして調整をはかってまいるようにやっておるわけであります。
  171. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 この鉱物資源あるいは海洋資源とはいつでも競合しなくちゃならない課題をかかえて、それは業者によっては統合はできないわけです。調和はできないわけですから、したがって政府機関においてこれらの調整について前もってひとつ十分御考慮いただきたいと思います。  さらに私は科学技術庁のほうにお尋ねいたしますが、海洋開発のいわゆる突破口とも言うべき潜水シミュレーター、それから海底基地、この問題についてどのような計画が進められており、そしてこのシミュレーターはいつごろできる予定か、どこにつくるかまでひとつ。
  172. 西田信一

    国務大臣(西田信一君) 海洋開発、非常に広範でございまするが、まず現在の段階は海洋開発のための技術開発ということがまず先決であると存じます。その意味におきまして科学技術庁ではいまお尋ねの潜水シミュレーター及び海洋作業基地の建設を担当しているわけでございますが、海洋作業基地は昭和四十四年度から建造にとりかかりまして、四十五年度にでき上がる見込みでございます。予算は大体四億円弱であります。これはでき上がりましたならば四十六年と四十七年度におきまして大体水深百メートルくらいの海底で四人くらいの人が一カ月程度海底で生活ができる、居住ができる、こういうことを目標にいたしまして海中実験を行なうことにいたしております。その建設の場所でございますが、海底の状況でございますとか、海象の条件とかいろいろそういうむずかしい要件がございまして、ただいまその場所の選定を懸命にやっているところでございますが、ことしの秋ごろまでにはその場所をきめたい、こういうふうに考えております。それから潜水シミュレーターでございますが、これは地上におきまして海底と同様の条件で訓練をするわけでありますが、四十五、六の両年度にわたって建設をすることになっております。四十五年度の予算は一億一千三百万、それに国庫債務負担行為は二億八千三百五十万ついておりますが、この完成は大体昭和四十六年度でございますので、これも設置の場所につきましてはシミュレーターの効率的な運用可能の場所をひとつさがし出さなければなりませんので、そういう立場におきまして、目下これもその位置につきまして調査検討を進めている段階でございます。
  173. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 いま西田大臣が資源開発だけでなく技術開発が大事なんだと、私もそう思います。  そこで私は文部大臣にお尋ねしたいのでございますが、こういう基礎技術、基礎科学、これらのものを文部省としても十分海洋開発に即応してやっていかなければならないと考えるわけでございますが、学校教材等においては海洋に関する、海に関するものはいまほとんどないように考えるのですが、いかがでございましょうか。
  174. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 高等学校以下の教科書にどのように取り扱われているかということについては、突然のお尋ねでございますから、必要がございましたらあとで御答弁を申し上げたいと思いますが、四面を海に囲まれましたわが国といたしまして、海洋開発ということが非常に必要であるということはお説のとおりでございます。したがいまして、海洋学あるいは海洋工学の充実ということには十分私たちも気をつけてまいらなければならないと考えているわけでございまして、現在これらの分野の研究教育は、国立大学におきましては東京大学の海洋研究所をはじめ、主として水産学部及び工学部の関連の学科等におきまして行なわれておりますが、今後も関係の学部、学科等のあり方を検討の上、大学からの要求も考慮いたしまして、これらの分野の充実をはかってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。   〔理事吉武恵市君退席、委員長着席〕
  175. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 いま大臣は突然でございますから——。私は学校教材ずっと調べてみますと、海に関する教材、海洋に関する教材というのはほとんど小・中・高校とも取り上げておられぬ。わずかに社会科の中で一部取り上げられているわけでございますが、日本人の考え方として陸地の果てが生活圏の終わりだ、果てだ、こういう認識、陸地の果てに続いている大陸がそこに同じような資源があるんだという、こういう認識を私は子供の時代から養成することも、国民もそう理解することが大事だと思います。先ほど大臣は大学の講座についてお話になりましたが、日本の大学の中でほんとうに海洋工学を取り上げている講座というのはどこにもないのです。東海大学に一つだけです。アメリカの大学では七十の大学に七十の講座がございます。あるいはソビエトでもそうです。あるいはフランスにおいても大学のみずからの中にそういう海洋開発の予算をつけて、思い切った施設をやっています。アメリカでは約五十八億の予算が大学のそういう海洋工学の講座をすすめるために予算支出をしているわけですが、大臣いかがでしょうか、今後の海洋開発について。
  176. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 確かに御指摘のとおり、各国にこの点についてはおくれていると思います。私といたしましては、今後十分海洋工学その他の面につきまして研究を進めてまいりたいというふうに考えております。
  177. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 総理お尋ねいたしたいと思うのですが、海洋開発の重要性については、総理みずからもジョンソン大統領と一九六七年にお会いしたときには、海洋開発の共同研究まで進められるような打ち合わせをされておる。あるいは当時の鍋島科学技術庁長官が西独に、韓国に海洋開発についてのいろいろの打ち合わせをやっておるようでございますが、私は予算上から見ましても、今年度の海洋開発の予算が四十八億円です。アメリカの予算が昨年が千九百二十七億円、イギリスが百二十二億というような、海洋開発のために大きな力を注いでいるわけです。ケネディ大統領が海洋宣言をし、ドゴール大統領が海洋宣言をする。国家体制として、一つのナショナル・プロジェクトとしてこれを推進しようとする体制を整えておるわけでございますが、残念ながらまだ日本ではそれだけの海洋開発に対する体制が十分でない。さらに総合開発も進められてない。この現状から見て、総理はどのように考えられ、なおかつ私は海洋開発に対する国家的宣言をして国民協力、財界の協力、あらゆるものの協力を求める頭脳総動員体制を整える必要があると思いますが、総理いかがでしょうか。
  178. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまこれから開発すべき海洋開発、これはたいへん大きなプロジェクトでございます。また各国ともこれに真剣に取り組んでおる。日本はたいへん海洋に恵まれた国だと言われながらも、先ほども指摘になったように、学問としてこれはたいへんおくれておる。また私どもの小さなときとは違って、いまはなかなか学校でもそういう点について触れておらないと、こういう御指摘があります。したがって、私、ただいまのようなことを御指摘になりますように、国民的な協力を得るためには、もっと海洋の知識、海洋工学、海洋開発、その必要性が国民から理解され、周知徹底すること、これが必要ではないかと思います。いきなり国家宣言をいたしましても、ただいまのような状態では何のことかわからないだろうと思う。あらゆる機関、あらゆる機会をつかまえて、海洋開発の必要性を説くことがまず何よりも大事なことで、そうして国民の理解を得た上でわれわれが進むべき方向、これをさだかにきめる、こういうことではないだろうかと思います。
  179. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 アメリカでもあるいはソ連でも、海洋開発を正視しているのは、これは軍事的要請も当然あるからだと思いますが、私どもは、たとえば造船とか、あるいは光学とか繊維とか電気とかあるいは写真機とか、こういうふうなものは世界的なレベルに達している、このレベルを、こういう技術を活用して技術輸出の立場に立って、世界の海洋開発に今後力点を置くことを要請いたしまして、与党の関係上あとの都合もありますので、質問を終わらせていただきます。
  180. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 以上で中村君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  181. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 次に、鈴木強君の質疑を行ないます。鈴木君。
  182. 鈴木強

    鈴木強君 総理大臣最初お尋ねします。  アポロ十三号は、御承知のように母体の故障のために月着陸を断念して、いま地球に戻っているのでありますが、着陸船とドッキングしたまま帰ってくるわけでありますから、たいへん心配をしているわけです。アメリカの国会では、三人の飛行士の安全を祈って決議をしているようであります。われわれもまた三人の飛行士の無事を祈っているわけであります。今度は予定地域への着水がそのとおりいけるかどうか、たいへん心配をされているために、ソビエトあるいはイギリスにおきましても、万一に備えて着水態勢に支障のないように対策を立てておるようでございます。わが国は海外派兵は認められておりません。そういう関係で、直接的にそういう面におけるお手伝いはできないかもしれませんけれど、何らかの方法において万一に備えての態勢というものをお考えになっておりますか、どうですか、伺います。
  183. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) アポロ十三号、これは無事に帰ってくることを祈らない者はだれもないだろうと、心から安危、これをたいへん心配しておるというのがいまの現状でございます。したがいまして、われわれもいまニュージーランド近海、その付近に着水するだろう、こういう予定はされておりますが、あるいはその付近に台風が起こるとか、その他で気象状況もどういうように変わるかわからない。そうすると、着水の場所も変えざるを得ない、こういうような話がございますので、十分警戒態勢をとるというか、警戒態勢というとことばが不適当ですが、万一われわれの手の届くところ、そういうところで救済というか、救助、そういう方向に協力ができれば、そういう点で一応注意しているというのが現在の状況でございます。ただいまのところは、日本の近海には着水する危険はないというか、そういう心配はないようでございますけれども、万一のこともございますので、こういう点は十分気をつけてまいりたいと、かように思っております。
  184. 鈴木強

    鈴木強君 次に、三月三十一日から四月の五日の六日間にわたり、日本中を大騒がせさした赤軍派学生と称する犯人による日航機「よど」号の乗っ取り事件でありますが、これはきわめて極悪非道の許すべからざる私は重大な暴力犯罪事件だと思います。  この事件の措置について、総理大臣以下関係の皆さんがたいへん御苦労をいただいたことについては心から感謝をいたしますが、ただ一つ、この機会にお尋ねをしたいのは、少なくともこのハイジャック事件の犯行を事前にキャッチし、これを捕捉するようなことができなかったその責任というものはあると思うのです。一部では警察の取り締まりの限界というものを示したのだという意見もあるわけですけれども政府の最高責任者としての総理は、この問題に対して責任をどうお考えになっておりますか。また再びかかる事件が起きてはならないと思いますが、これに対する総理のき然たる決意と今後の対策について伺いたいと思います。
  185. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この一部学生が国外に逃避したいという、それが国内線の旅客機を乗っ取ったと、本来なら国際線、これに乗りたかったろうと思います。しかし、どうも国際線の場合はパスポート、旅券等の必ず身分が明らかになる、そういうことでそのほうは使いかねる。やむを得ず国内線で使って、それでその飛行機を日本の国外として一番近いところ、しかも国交のないところ、そういうところへ着けたいという、これがいまから考えるとあの連中の考えたことだろうと思います。ところで国内線、国内の飛行機の場合だとこれは数分前までお客を受け付けるようないまのたてまえでございますから、改札等もたいへん簡易に通過していると、こういうのが現状でございます。そこらに私ども国内線というものについての見張りがもっと厳重にできないだろうか、だからいわゆる私権、それの非常な拘束にならない程度の監視方法は何かないものか、ここらにぬかっている点があるのではないか、こういうことで私もたいへん国民から批判される、そういう点で反省もしているような次第でございます。  いずれにいたしましても、でき上がったことはやむを得ないことだ、かように考えますが、しかし重ねてこの種の事故が繰り返されることのないようにわれわれの足らない点も補って十二分の体制を整えること、ただ結果から見て日数がかかったが全員無事に帰還できた、犯人を残す以外は全部帰ってきた、また、飛行機そのものも日本に返ってきたと、こういうことで結果としては、時日はかかったということはございますけれども、まあまあと、かようには思いますが、しかしこれからもこの種の事故が起こらないとはどうも保証できない状況でありますから、万全を期してこの種の事故が起こらないように、この種のような乗っ取りが起こらないように一そう厳戒をすると、しかし乗客にあまり迷惑にならないようなそういう方法でないと、利用者がどんどんふえる、国内の場合だとほんとうにタクシーに乗るような気持で飛行機が利用される、それが非常に厳重な状況ではたいへん不便だろうと思いますから、そういう不便を与えることなしに平穏安全であると、こういう方向でどうしたらいいだろうか、いろいろ事務的な努力もしておるような次第であります。私はいち早く国民の方々にもこれによってある程度個人の権利、それを侵害するようなことがあるかもわからないが、それはぜひひとつ御協力願いたい。この種の事故を起こさないためにも御協力願いたいのだということをいち早く申しましたが、私はあまりこういうような点、いわゆる個人の権利を侵害することなしに取り締まることもできるんじゃないだろうか、そういう方向で対策を考えてみたいと、かように思っております。
  186. 鈴木強

    鈴木強君 総理の言われておる飛行場において飛行機に乗り込む前ですね、ここにおける取り締まりの方法はあると思いますが、私がいま総理にお伺いしようとするのはそうではなくて、それも大事だけれども、この赤軍派の学生というものは大菩薩で爆薬物を使ってえらいことをたくらんだ連中ですから、これは明らかに警察としてもマークしておった人間だと思うんです。こういう者がこういう計画を立てることに対して事前にどうして捕捉できなかったか、こういう点を私は伺っているわけなんです。前科があったんじゃなかったかということですね。
  187. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いろいろの学生運動が激化し、ことに大菩薩峠で謀議をはかった連中に対しては警察当局も特に注意をしていたのでございまして、いわゆるマン・ツー・マンとかいいますか、個々の人について一人一人——まあ、そういうことでございましたが、中にはわからない連中もあったと、したがってそういうところのぬかりといいますか、そういう意味のものがあそこで暴発したと、こういうことにもなっておるようであります。いまようやく全員の氏名が明確になりましたが、昨日まで全部はわからなかった。三人ばかり名前がわからなかったが、それがようやくいま発表されたように、警察当局としても確信を持ってその氏名を発表することができる、そういうような段階になったわけであります。まあ、そこらにぬかっていたんじゃないかというおしかり、これは受けなきゃならないと、もちろん今後はこういうことのないように、そういう意味の厳戒をするという、そういう態度であってほしい、そういうことで警察当局も臨んでおります。まあ、御心配をかけないように、かように思っております。
  188. 鈴木強

    鈴木強君 私はむやみに警察当局の責任を追及しようという、そういう意味じゃないんです。問題は、実際に一生懸命やっておられても、マン・ツー・マンでやっておっても、なかなかうまくいかなかった場合もあるでしょう、これは体制が不十分である場合には。ですからして、今後に備えるためにそういう盲点をどういうふうに科学的に研究をしてこういう犯罪を捕捉していくかという、そういうところに問題を私は移したい。  ですから、これは多少、総理としてはあとでまた伺いますから、若干他の閣僚に伺いたいんですが、運輸大臣、現在の航空法でも爆薬物を持って飛行機に乗っちゃいかぬというのがありますね、こういう法律をどういうふうに平素運用なさっておったんでしょうか。
  189. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) おっしゃるようにいまの法律といいましょうか、規定の中にも調べることができることになっております。ただ、それには当人の同意を得てということになっております。それと先ほど総理が申されましたように、現在この国内飛行というものは相当たくさんの人を運んでいると、それがために十五分前にはこれを受け付けると、こういうような状態でありますからして、したがって危険物捜査が十分じゃないだろうと思うんです。そこでできるだけ強く要請しておるのは、機械等による探知ですね、これをひとつ励行をしましてそれによって危険な場合は極力この検査を求めると、こういうことを強くやるようなことにいたしておりまするが、同時にまたこの空港全体というものが、大体まあ羽田でいいますというと、十五万前後の人間です。大きな大都市です。しかもわけのわからぬといいましょうか、各種各層の人が集まってきますからね、かような意味でその方面の警備に関しても行政的に一元化をする方法を目下考えておる、かような状態であります。
  190. 鈴木強

    鈴木強君 これは外務大臣ですがね、その後犯人の消息を伝えるような情報は出ておりませんでしょうか。
  191. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) その後聞いておらないそうでございます。
  192. 鈴木強

    鈴木強君 犯人の引き渡しは当分やらないと言っておりましたが、まだその考え方は続きますでしょうか。
  193. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 四月四日に愛知外務大臣が犯人の引き渡しについて北鮮当局の配慮をお願いするという旨を述べられましたことは、たてまえとしては犯人の引き渡しを要求することが可能であるということを示すものでありますが、御承知のように国交がございませんので、この引き渡し要求は非常に複雑な問題もございます。そこで現実にどういう措置をとるかについて、情勢の推移を見守って考えたいというのが外務当局の立場と承知しております。
  194. 鈴木強

    鈴木強君 国内にいる赤軍派の暴力学生の捜査のその後の状況はどういうふうになっておりますでしょうか。  それから赤軍派というのは現在まだどのくらいの組織力を持っておるのか、ひとつ教えてもらいたい。
  195. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 政府委員にお答えいたさせます。
  196. 川島広守

    政府委員川島広守君) 赤軍派の現在の勢力は、おおむね四百若干を上回る程度と考えております。
  197. 鈴木強

    鈴木強君 捜査の状況はその後どうなっておるか。
  198. 川島広守

    政府委員川島広守君) 犯人のその後の捜査の状況でございますが、現在までのところ、乗客の方々のおおむね七割程度の方々に御協力を賜わりまして、いわゆる面割りその他、あるいは機内の状況等、犯行、犯罪要因の内容等について事情を承っております。  そこで、先ほど総理大臣からも御答弁がございましたように、九名のうち指紋ではっきり——遺留指紋がございましたので、遺留指紋によりまして指紋が合致しました者が六名ございます。したがって、これははっきり特定できたわけでございますが、あとの三名につきましては、うち二名は全然前科がない者でございますので指紋がないわけでございまして、その意味で照合が完全にできておりません。それからもう一名は前科がございますので指紋があるわけでございますが、そこでいま最後の一名についても照合を急いでおりますけれども、指紋の照合、あるいは乗客の方々の証言等からはっきりと特定できましたのは六名でございます。さらに急いでおります。そういう状況でございます。
  199. 鈴木強

    鈴木強君 三人のいまお触れになった犯人は、昨年、東大の学生運動のときに逮捕された学生だというふうに聞いておりますけれどもね、その事実は違いますか。
  200. 川島広守

    政府委員川島広守君) 残ります三名につきましては、いまお尋ねございましたように、それぞれ東大事件で二名、もう一名は本富士署の襲撃事件の関係で一名と、それぞれ前科のある者で指名手配をしておった者でございます。
  201. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、二人は指紋がなくて、一人指紋があるというのはこれはどういうことですか。逮捕された人の指紋をとっていないのですか。
  202. 川島広守

    政府委員川島広守君) ただいま申しました東大事件その他で指名手配をしておりまして、逮捕されておらない者でございますから指紋がないわけでございます。
  203. 鈴木強

    鈴木強君 逮捕していなかったの。
  204. 川島広守

    政府委員川島広守君) はい。指名手配をしておった段階でございます。
  205. 鈴木強

    鈴木強君 それで、この公安事件は刑事事件のように公開捜査に踏み切ったらどうかという意見があるのですが、この点はどうでしょうか。
  206. 川島広守

    政府委員川島広守君) ただいまの御意見でございますが、われわれ部内におきましてもそのような方法について現在検討いたしております。先生御案内のとおりに、公開捜査と申しますのはやはり人権保護の立場もございまするので、在来の公開捜査のしかたと申しますのは、たとえば強盗、殺人でございますとか、あるいは強姦でございますとか、非常に反社会性の強い凶悪なる犯罪者、そういうような者につきまして限定的に公開捜査をしてまいった経緯でございます。したがって、今回の場合のように赤軍派の、また似たような者が数十名おるわけでございますけれども、これらの犯罪容疑の内容と申しますのは、あながちいま申しましたような在来の基準から申しますればいわゆる凶悪と言えるかどうか等の問題もございます。しかし、そのような見解も当然これはまたあってしかるべきでございますので、今後の問題については検討してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  207. 鈴木強

    鈴木強君 それから赤軍派の資金の出どころを捜査されているようですが、現在までわかっている実情を説明していただきたい。
  208. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 赤軍派の財政実態については鋭意究明中でございますが、その内容は明らかではございません。しかしながら、主たる財源としては、一応赤軍派の構成員や支持者からの個人カンパ、機関紙類の売り上げ金、政治集会における入場料などであると推定されます。赤軍活動家の中には、割り当てのカンパを消化するためにアルバイトをしたり、親の金を持ち出したりする者もあると聞いております。大阪府警察では、大阪の桃山学院大学の教授ら約十人が合計約三万四千円を赤軍派にカンパしたとの情報を得たので、四月二日カンパした一人と思われる同大学学長事務取り扱い竹内氏に事情を聞いたところ、同氏は、昨年秋ごろ同氏のゼミの学生に対し額は忘れたがカンパに応じたことはある、その学生が赤軍派であったことは全く知らなかったと述べた由であります。なお、他の教授らについては名前は符号でしかわかっていないので目下調査中であります。  また、日航機の乗っ取り事件捜査の過程で、学者、文化人、著述業者などの一部が赤軍派にカンパしたのではないかと思われる資料を得ましたので、現在これら関係者から事情を聞いておるのであります。現在までの調査では、救援資金あるいは機関紙代としてカンパした者が二、三ありますが、いずれも数千円程度で有力な資金源だとは思われません。  以上御報告申し上げます。
  209. 鈴木強

    鈴木強君 過激派の学生諸君が同志社大学の学生会館を使ったり、桃山学院大学の学長宿舎とかあるいは和歌山大学の施設などをアジトにして危険物をつくったり、集会を開いたりしたということですけれども、この大学の管理については文部大臣としてはどういう考え方でやっておるのか。またそのアジトとしてあるいは集会として使った実情について、わかっておったら知らせてもらいたい。
  210. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 昨年来各大学が学生暴力の巣と申しますか、あるいは宿泊所あるいは爆薬物、凶器等の隠匿場所に利用されておったということ、まことに遺憾なことでございましたが、しかし大学立法、さらには大学当局の努力あるいは私たちのそれらに対する行政指導によりまして、大学内にももっぱらそういう暴力が横行するということは漸次なくなってまいりまして、事はまあ不幸中の幸いかと考えておったやさきでございますけれども、しかしまだその大学を拠点といたしましてこのようなアジトに、赤軍派の拠点になっておるというようなことが出てきた。つまり皆無にならなかったということについてはまことに遺憾千万だと私は考えておるわけでございます。私たちの知る限りにおきましては、やはり警察当局からの情報に待つよりほかしかたがなかったわけでございますが、ただいま先生御指摘のように、桃山学院大学あるいは同志社大学、和歌山大学も捜査を受けたようでございますが、私たちの報告によりますと、和歌山大学にはそのようなことはなかったというようなことを聞いておるわけでございます。  昨年の四月の二十一日には、大学内における正常な秩序の維持につきまして、実は文部次官通達というものを出しまして、特に大学の内部に鉄パイプ、角材、石塊、火炎びん、ガソリン、毒薬物の凶器ないし危険物が準備隠匿されることのないよう、また大学がみだりに学生その他の者の宿泊の場として利用されることのないようの通達を出して管理の厳正を期することを指示いたしておるわけでございます。  また昨年の十一月の十三日にも、「学内における危険物製造等大学を暴力行動の拠点とする行為の根絶について」という学術局長の通達を出しておるということでございますけれども、全体の体制としては、大学を拠点として公にそのようなことをやるということはだんだんなくなってまいったということではございますけれども、まだ皆無ではないということにつきましては、なお一そう今後とも私といたしまして、私立大学及び各国立、公立を問わず、十分指導助言を重ねてまいりたい、そうしてこのようなことが起こらないようにいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  211. 鈴木強

    鈴木強君 和歌山大学の施設は使っておらないということですが、警察のほうはそうでしょうか。
  212. 川島広守

    政府委員川島広守君) 和歌山大学につきましては、拠点になっているというふうなことはございません。
  213. 鈴木強

    鈴木強君 これは総理大臣か外務大臣にお答えいただきたいのですが、今度のハイジャック事件を契機にして、朝鮮民主主義人民共和国との間にまあ国交はありませんし、わずかに民間ベースの貿易とか、人事の往来もわずかですけれども、こういう状態を、友好関係を維持するためにおいて、もう少し幅を広げていくという、そういう御配慮はないのでございましょうか。
  214. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 北鮮当局の人道的な配慮によってこのたびの事件の円満な解決が導かれたということは、外務当局も事実として認識をいたしております。他方で、朝鮮半島をめぐるその周辺の国際情勢が御承知のごとく複雑でございますので、いわゆる百八十度の従来の方針を転換するということについては、なお慎重に検討しなければならない、こういう立場を外務当局は持っております。
  215. 鈴木強

    鈴木強君 その考え方は前にも聞いておるのですけれども、国際情勢が非常にきびしいと、こうおっしゃる。問題は、北と折衝を持つと、南のほうがどうもいい顔をしない。率直に言ってそうだと思うのですがね。だけれども、これは、分裂国家の悩みであり、国際的にもたいへん困ったことではありますけれども一つ一つ友好を深めていくということは、特に、人間の交流だとか、通信の開設とか、あるいは文化の交流ということは、私はもっと進めていいと思うのですね。それについて、韓国がかりにいろいろ意見がありましても、理解と納得をしていただいて、そういうふうな方向に踏み切るべきではないかと私は思うのですけれども総理大臣の考え方を聞きたいですね、これは。
  216. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 同一民族が二つの勢力圏に分かれていると、これはたいへん不幸なことだと思います。しかしながら、その二つの状態が相戦っておる、それでいま休戦ラインで一応停戦している、それが現実でございますね。そのときに、第三者というか外からこの二つの力をそれぞれ認めて交渉を持つというのは、これは見方によっては、民族の、国家を形成すべき単一民族、その内政に干渉することにもなるのじゃないか。私どもは、いままで、大韓民国と国交を回復した。その状態のもとにおいては、少なくとも朝鮮半島の正統——私とものほうから認めた主権といいますか、主権国家、これは大韓民国だと、こう言わざるを得ない。それ以外に別な主権国家を認めると、こういうわけにはいかないのです。でありますから、御承知のように、北鮮帰還問題等についても、これはいままでも直接まあ日赤を通じていろいろの話し合いをして、その計画は進めておりますけれども、これが日赤の案では十分目的を達し得ないということでとんざしているというのが現状でございますし、また、新聞報道関係にいたしましても、「赤旗」の記者が平壌に一人いるだけだと、他の新聞の人はいないと、こういうような関係もありますし、まあいままでのところ、さっき宮澤君からお答えいたしましたように、いきなり百八十度転回はできない。しかしながら、われわれが敵視政策をとっていないこと、それだけは十分理解してもらいたいし、私申し上げるまでもなく、日本と韓国、これは北朝鮮をも含めて、かつては一緒であった。同じ日本国民であった。それが戦争の結果分かれて国が二つになったと、そういういきさつもございますし、日本国内に雑居しているというか同居している状態でございますので、そこで、大韓民国の国民なのか、あるいは北朝鮮の人民なのか、そこらの区別さえなかなかつきかねると、こういう状態であり、その争いを日本の国内に持ってこられても実は困る。そこにも私どもがなかなか片づけ得ないものが一つ残っておるわけであります。  そこで、今回の措置等につきましても、現実に戦っておる北朝鮮へソウルに着いた飛行機をよく出してくれた。無事だったのは、そこで出してくれた結果だと思いますが、平壌側におきましても、受け入れたとはいいながらも、ちょっとその連絡がどうも不十分であったように思います。私どもは一応話はついていたもとだと、かように考えますが、その後事情が変化したということで、何やかやとある程度の行き違いはあったようです。したがって、「よど」号が着陸したあの地、あの飛行場、これは必ずしも正規の飛行場——正規ではございますが、いつも使っているような飛行場ではないようだし、そういうような点で、むしろあそこまで入って行ったのだから、平壌自身で誘導してもらうと、そういうことまでやってもらったら、これはたいへんけっこうなことだったと思うのですが、私ども北朝鮮の処遇について不平を何ら言うべきものではございません。これはもう許可なしであそこに入って行ったのですから、その意味において、北朝鮮がその点をとがめないで、とにかく帰してくれたことだけで十分感謝にたえませんけれども、しかし、ぜいたくを言うならば、誘導してもらったら、ああいうところでなしに、もっと楽に着陸もできたのではなかろうかと、こういうことすら実は考えざるを得ないわけです。しかして、私があの直後申しましたように、関係各国の人道的な行為によってこの問題が解決したと。これは平素からの善隣友好というか、そういうことをつくることが必要なんだと。だから、私どもは、そういう方向で、いまの政府政府関係でないにしろ、現実に平壌に政府のあることは現実の問題として認めざるを得ないのですから、そういう意味で、私どもも、敵視政策のみとらないで、いま、可能な限りというか、そういう意味においての交流はしたい、国益に反しない範囲で交流はすると、こういうことで、「よど」号事件の直後に声明をしたときにもその点に触れて声明を出したような次第でございます。私は、この点で、南北ともに十分日本政府立場については理解をいただいておると、かように私は思っております。
  217. 鈴木強

    鈴木強君 私も、南北の両国の皆さんがたいへん人道的立場に立ってやっていただいたことは、心から感謝をするわけですが、ただ、板付から金浦におりるまでのことについては、平壌だと思っておりたら金浦だというようなことがありまして、これは石田機長においでいただくように一度きまったんです、運輸委員会で。ところが、何かの御都合で御出席ができないで、まあなぞに包まれておりますが、しかし、いずれこれは明らかになるでしょう。しかし、感謝の気持ちは総理と同じように私も持っております、韓国に対しても、北朝鮮に対しても。  そこで、橋本運輸大臣は、なまなましい現地の御苦労をされて、いまでもだいぶ体重が減っているくらいに御苦労をいただいたようです。私はたまたま運輸委員会にいるものですから、しょっちゅうお会いするので、そういうことも聞いておりますけれども、あなたが四日の午後羽田に帰国されて記者会見をしているのですが、このハイジャック事件を契機にして、イデオロギーを越えて、人道上の問題として解決できるという確信を持った、これは非常にプラスだった、また、これでもって北朝鮮との間に太いパイプがつながったと思うと、こういうふうに述べられている。まさにこれは現地で苦労をされて帰ってきた橋本運輸大臣のほんとうの気持ちだと思うんですね。ですから、そういうふうな気持ちをいま総理が述べておられると思うのですけれどもね。まあ橋本さん、悪夢から少しさめて、十日以上たっているんですけれども、当時を想起しながら、ひとつあなたの気持ちを吐露してもらいたいんですが、北朝鮮との関係を。
  218. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 今回の事件を通じて深く感じましたことは、やはり友好親善の関係です。ただ、御承知のように、政治関係もありますので、そのワク内においてもしかし友好親善は可能である、人道主義の上に立っていけば。その意味で、先ほど総理が申された精神と全く同じでありまして、この方針でやってまいりたいと思います。
  219. 鈴木強

    鈴木強君 そこで、総理にひとつ伺いますが、朝鮮民主主義人民共和国から万国博覧会に視察をしたいという申し出があります。これは非公式に聞いている。これは亀田委員もちょっと指摘されたのですが、これはもしなんだったら、外務大臣からでもけっこうですが、正式に認めていただけますか。
  220. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど、総理大臣から、国益を害しない範囲においての交流は考えなければならないという御答弁があり、また、鈴木委員の御質問もいまこういうふうにございました。ただ、現実には、正式の申請、すなわち氏名、日時等を外務当局は受け取っておりません。たまたま愛知外務大臣も、もう一、二日で帰って来られることでございますので、ただいまこういう応答がありましたことを私といたしましては愛知外務大臣帰国後にお伝えをいたしておきたいと存じます。すなわち、現実に申請がまだなされておらない段階だそうでございます。
  221. 鈴木強

    鈴木強君 これは、まあ正式にはないかもしらぬが、非公式には話があるはずですけれども、これは政府委員からでもいいですから答えてください。
  222. 須之部量三

    政府委員須之部量三君) お答え申し上げます。  非公式には伺っております。ただ、この問題は、先ほどからいろいろお話しがございましたように、ただ単に簡単にすぐどうこうというのにはいろいろ考慮すべき問題点があるようでございますので、私どもとしては、現在のところ、まだ何もきめていない。むしろ、慎重に、また同時に、あまりに一時の感情に流されることなく検討したいというふうに思っているというだけの状態でございます。
  223. 鈴木強

    鈴木強君 これは事務当局でなかなか決断のできる問題ではないと思います。そこで、総理の先ほどの友好を深めていきたいと、その可能な範囲においてですね。そういうお考え方からすれば、これは人類の平和と調和を表看板にしてやっている万博ですから、当然認められるというふうに理解をしていいんじゃないでしょうか、認めていいのじゃないでしょうか。
  224. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 事務当局はなかなか慎重にただいま検討しております。と申しますのは、その他の案件等とも実はからんでおりますから、なかなかそう簡単に結論が出ないんだろうと思います。最終的にあるいは私がきめるようになるかわかりませんが、ただいまのところは、ひとつもう少し検討してみたいという、それより以上に出ないと思います。
  225. 鈴木強

    鈴木強君 まあそういうことであれば、私は、ぜひ認めるように御高配をいただきたいということをお願いをしておきます。  それからもう一つ、中国、東独、いまの朝鮮民主主義人民共和国、それから北ベトナム、こういうわが国との間に国交のない未承認国への日本人の渡航者に対して、相手の国が入国を認めたら、すなおにそれを許可するようなことはできないものでしょうか。私はそうしてもらいたいと思うのですけれども……。
  226. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 原則として、それらの国からの入国等につきましても、手続等々簡素化にすべきが本筋と考えておりますけれども、未承認国でありますために、相手方の実情等々も把握しにくい場合もございます。したがって、具体的なケースにつきまして検討をすべきものと考えます。
  227. 鈴木強

    鈴木強君 法務大臣おられますか。法務省では何か問題があったんでしょうか。
  228. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) この問題は、未承認国で相当入っておるものもありまするし、なかなか運びかねるものもあると。たとえば、東独の問題、あるいは中共等からはある程度入って来ておると……
  229. 鈴木強

    鈴木強君 いや、相手の国が認めた、入国してもいいということだったら、こちらも認めなさい、認めたらいいんじゃないですかということを聞いておるのです。
  230. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) 相手の国が日本に入ってもいいということをですか。
  231. 鈴木強

    鈴木強君 向こうが認めたらですね。——じゃ、もう一回、これは時間に入れないで。中国と東独と朝鮮民主主義人民共和国と北ベトナムのような、わが国との間に国交のないいわゆる未承認国ですね、この国へ日本人が渡航したいと、こう申し出る。ところが、向こうの国はよろしいと、相手の国は入ってよろしいと、そういう場合に、日本政府はそれをすなおに認めたらどうですかと。これはアメリカでも中国の旅行制限は撤廃しているんですね。ですから、そういうことをひとつ考えてほしいということを言っているのです。
  232. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) この問題、実は、旅券の発給問題、出国の問題は、主として外務省がお扱いになると、こういうことでありまして、いまの入管で扱うのは、向こうから私のほうへ入るものについての取り扱いと、こういうことになりますが、やっぱりある程度相互主義においてこれらも考えていきたいと、かように思います。
  233. 鈴木強

    鈴木強君 それから乗っ取り処罰法ですね、これはいろいろ内容もちょっと変わったようですけれども、いつ国会へ出されますか。
  234. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) お話しの処罰法は、すでに、法務省の手続としましては、法制審議会も昨日承認を得ました。したがって、いまの予定では、二十一日の閣議の協議を経まして直ちに提出いたしたいと、かように考えております。
  235. 鈴木強

    鈴木強君 では、その次に移ります。  総理伺いますが、総理大臣は、このところ、内政、外交非常に御多忙のようでございます。一昨日も、米国のケネディ財務長官やウ・タント事務総長が来日をされて、御会談になっているようでございます。当然、この会談では、懸案の繊維問題だとか、あるいは国連問題、それから沖繩の復帰の問題、資本の自由化、あるいは貿易自由化、こういったふうなこともお話し合いになられたと思うのですけれども、外交機密上差しさわりのあることは私はお伺いしませんが、よき結論を得ている点がありましたら、ひとつこの際明らかにしてもらいたいと思います。
  236. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ケネディ財務長官、これはあいさつ程度に私のところへ見えたのでございます。大蔵省の関係の問題で繊維の問題では、これにタッチするような筋のものでないものですから、そのほうはございません。ただ、いまの状態で国際金融の問題について意見を交換する、それが主であったと、かように御理解をいただきたいと思います。  それからその次は国連の事務総長との関係、これはずいぶん話がはずみまして、はずんだというよりも私が一方的にしゃべったことが多かったのですが、一つは国連の二十五周年、それをただ単なるお祭りにしないで、どういうようにしていくか、また、国連大学等の問題についての意見の交換をした。ことにこれは、わが国の外交姿勢が親善友好と同時に国連中心ということを申しておりますので、そういう形で国連に全面的に協力すると、そういう立場にあることをよくウ・タントさんが理解してもらいたいというので、この点ではよく話したつもりであります。同時にまた、国連のほうで積極的に協力を得なければならない問題、これはとりもなおさずアジアにおける分裂国家の問題、これをもう二十五年もたっている今日、この分裂国家、これについてぜひともこれは民族の悲願でもあるから、こういう問題が早く解決されるように、そのためには、米ソ二大国がもっと調和のとれた形においてこういう分裂国家問題を扱ってほしいというような話をしたわけですが、なかなかアジアの問題はむずかしいようですねという話だし、東独、西独、このほうがわりに早いのじゃないでしょうかというような見通しまで実はしてくだすったと、こういうようなわけで、その詳細はこの際許していただきたいと思いますけれども、ただいま申し上げるように、私ども日本の周囲で一番苦労している問題、これについては国連でも理解してもらいたいと思って十分話し合ったつもりでございます。
  237. 鈴木強

    鈴木強君 まあ、質問がばくとした質問ですから、お答えもそうだったと思いますが、私のお伺いしたいのは、一つは、二十五周年の記念総会に佐藤総理大臣を正式に招待をしたかどうかということですね。それから、それに対して総理はどういうふうにお答えしたか、これが一つ。  それからもう一つは、国連憲章の改正、あるいは安保理事会日本が常任理事国を希望する、これは愛知外務大臣もウ・タントさんとお会いになったときに、そういう意思表示を正式にしたようですね。ですから、そういうような問題とか、国連大学についても、日本で誘致に熱心だからひとつ考えようとか、そういう前進のような話がそこいらにあったかどうかということを実は伺いたかったわけですけれども、いかがなものでしょうか。
  238. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 二十五周年記念に際しては、記念で各国の元首または首相を招待すると、そういうことでございまして、私にももちろん出席するようにと、こういう話がございました。そのお話はよく伺っておきますが、ただいま直ちに即答はできません、しかし、われわれは国連協力と、こういう立場でございますから、きっと御満足のいくような回答が出るだろうと、こういうことはつけ加えてございます。  それから、あと国連憲章の問題、これはなかなかむずかしい問題だと。申すまでもなく、三分の二の同意がなければ取り上げることができない問題だし、片づかない問題だし、そういうことでなかなかむずかしいように申しておりました。そこで、冗談を言いながら、まださきの戦争の敵国条項、それが残っているその際に、日本が二十五周年に出ていくと——そういう立場であるのですが、ぜひともむずかしいことであろうが、いつまでも当時を思い起こすようなサンフランシスコ体制のこの憲章は十分検討してもらいたいことだと、こういう話を実はしたわけであります。  また、国連大学については、ウ・タントさんからも、たいへんこれは評判がいいので引っぱりだこですと、なかなか希望国が非常に多い、そういう関係でいまのところ私のほうでもどこにしますとか、こうことは言いかねます、それは問題が起こるように思うからということで、評判のいいという話、たいへん誘致運動が盛んだということ、ただそれだけの話であります。  また、もう私どもが、国連の分担金の問題から見るといま六番目だが、近く五番目になるのじゃないか、こういうことをウ・タントさん自身が発表しておりますので、そういう点も重ねて申しております。われわれは積極的に国連に協力しているのだ、この点をよく御理解おき願いたい、こういう話はいたしました。  大体、以上でございます。
  239. 鈴木強

    鈴木強君 よくわかりました。それで、この際、私は、繊維問題が実は話題にのぼったと、こう思いましたものですから。これは後ほど……。  大蔵大臣は、ケネディさんとお会いにならなかったのですか、沖繩の財産問題でですね。たしかお会いしたように聞いているのですけれど、その点。
  240. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 去る十二日、ケネディ財務長官と狸穴の日銀総裁の公邸で三時間ばかり会いました。それで、話は非常に幅が広いのですが、世界の通貨情勢、経済情勢、さらに日本とアメリカの経済金融の情勢、お互いに状況、情報の交換をする。それからさらに低開発国に対する経済援助、これに対する両国の意見、特に東南アジアに対する協力、これについて意見の交換をする、こういうことでありましたが、ちょうどいい機会でありますので、日米共同声明で総理大臣が具体的な沖繩の資産返還問題、これを話し合うということになっておりますが、これをひとつ話し合いましょう、まず段取りをきめましょう、こういうことなんでありますが、さあ、いまここで段取りをきめるわけにもいかぬ、と、こうケネディ財務長官はおっしゃるのです。そこで、段取りをきめることを事務当局間でひとつ話し合いをさせましょうとそういうことだけをきめたのです。ですから、いずれ近くその段取りをどういうふうに——段取りと申しますのは、その話し合いをワシントンでするとか、東京でするとかあるいは交互にするとか、そういうこと、それからそれをいつから始める、いつごろを目標にする、そういうようなことでありますが、その段取りの話し合いを事務当局間で話し合いをさせましょうというところまで話し合ったわけであります。  大体、会談の要旨はその程度であります。
  241. 鈴木強

    鈴木強君 日本としては、沖繩の資産を——アメリカの資産ですね。資産をどういうふうに買い取るかということに対する考え方はまとまっていないのでしょうか。これは、大蔵大臣の気持ちもまだまとまっていないのでしょうか。まあ、相手のあることですから……。
  242. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) この問題は、終局的には、これは外務大臣がアメリカと交渉する問題ですが、日本とすると、その下ごなしは大蔵省がこれをする、こういうことにいたしております。また、アメリカでも財務省がこれをする、こういうことにいたしておるのですが、まず何よりも、どういう資産があるのかという明細がまだはっきりしないのです。そういうような状態でありますので、まだ基本的な方針は立てておりませんけれども、とにかく、わが国の国益に従ってこれを守る、こういう方針でこの交渉には臨みたい、かように考えております。私がいま接触しているところでは、そうアメリカも無理なことを言うというような調子は見受けられませんです。
  243. 鈴木強

    鈴木強君 では、この機会に繊維問題もちょっと尋ねておきたいのですけれども、いま両方がにらみ合いといいますか、対峙というか、そういうような関係、かっこうにあると思うのですけれども、しかし、アメリカの議会のほうでは規制法案を出して、賛成者が五十何名とか六十何名というようなことも報道されているのですけれども、やはり何とかこれを終結の方向にイニシアチブをだれかがとらなければいかぬと思うのですが、総理は、何か新聞の記事ですと、頼まれてもあまりやらぬとかというような記事がありましたけれども、私は、まあ、それは記事のあれだと思いますけれどもね。やはりある段階でだれかがリーダーシップを発揮してやらなければまとまらないのじゃないかと思う。ただし、これは自主規制が原則でしょうからね。あくまでも業界が主になって考えなければならぬことでしょうから、そういう基本線は守りつつ、しかも国際的な問題があることも考えながらやっぱりやらなければいかんことですから、そういう基本線は、私はどうでもいいということではないんですよ。しかし、そういう基本線を持ちつつ向こうと折衝を進めていくというその態勢をつくらなければいけないんじゃないかと思うのですけれど、いま現在どういう状態か。それから、これからどうしようとするのかですね。これは、総理、外務、どちらでもいいです。通産大臣、かねて……。
  244. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 三月九日に日本側の覚え書きを先方に送りまして、その覚え書きを先方が検討しておるというのがいまの形の上での両方の交渉の現在の段階でございます。覚え書きをめぐりまして、非公式には両者が主としてワシントンで緊密な接触をいたしております。他方で、米国の議会で御指摘のような動きがあるわけでございます。  そこで、佐藤・ニクソン会談の雰囲気、全首脳の考え方というものをもとに考えますと、この問題で交渉が決裂をするということは、両国の親善のためにも、また世界の自由貿易のためにも不幸なことでございますので、何かの形でお互いに妥結をはかりたいと非常に苦慮をしておるような次第であります。いずれの側も国会あるいはその他等々の意思表示によりまして、ある程度政府といたしましては動きが制約をされておりますので、それらのことをも考えながら、ともかく両国が交渉決裂に至らずに、共同の努力で解決策を発見したいと考えまして、接触をし努力をしておるということが現状でございます。具体的に御報告を申し上げるような成果あるいは成果の見通しというものは、率直に申しまして、ただいまのところまだついておりません。
  245. 鈴木強

    鈴木強君 この三月九日に先方におくられた覚え書きというのは、ケンドールさんの案に近いものなんでしょうか。その内容は明らかにできませんか。
  246. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 三月九日の覚え書きというのは、いろいろな不幸な事情から、その内容は、事実上当時各新聞に両国の間で報道されたわけでございます。したがって、事実上、鈴木委員も御承知のとおりの内容でございますけれども、エイドメモワールというものの性質上、両国政府としては公にこれを発表するということをいたさなかっただけでございまして、内容は御承知のとおりの、何度か繰り返して御説明申し上げましたわがほうのこれについての原則的な考え方を述べましたものでございます。
  247. 鈴木強

    鈴木強君 次に、総理お尋ねしますが、先ほども横川委員から、十日の日本記者クラブ総理の演説についての御質問がありました。これは非常に幅広いものものですから、総理が施政方針演説でお述べになったよりも少しこう具体化しておる。私は、非常に興味を持ったのは、たとえば住宅とか道路の問題、いわゆる社会資本の整備、社会保障の拡充、そういうことによって国民生活を質的に充実していく、こういうような点ですね。  それからもう一つは、いま当面、私がさらに質問しようとするこの物価の問題で、これも構造的原因に基づく物価の上昇、こういうふうに言っておりますし、過密、過疎現象に伴う物的、質的諸問題、特に大都会、中都市の混乱、各種公害の発生、世代間の断絶、その他いわゆる人間疎外現象といわれる問題について述べられている。しかも、ここで私が非常に関心を持ったのは、これらの重要性については認識も十分あり、幾つかの処方せんを持っていると、こういうふうにお述べになっている。私は、この処方せんをここでひとつ明らかにしていただきたいんですけれども、幅が広いですからね。時間が関係するので、ひとつ大都市、中都市の混雑のことで少し——要するに都市災害を含めてですね。総理のいらっしゃらない一般質問のときに、東京とか大阪に大地震が起きたら一体どうなるんだ、こういう質疑をいたしました。ところが、総理が議長になっております中央防災会議、これらについても、どのくらい開かれているのかよくわかりません。それから山中総理府総務長官は、いまは国務大臣になっているわでですね。ところが、その事務局長というのは、国務大臣総理府総務長官がならぬ前のことらしいのですね。ですからして、そういう機構上の問題もあるように聞くわけです。したがって、もう少しそういう都市災害、たとえば関東大震災のようなものがきたときに一体どうなるのだろうかという不安があるわけですね、ガスだけでもあんな状態ですから。ですから、そういう一般の防災対策といいますか、そういうものに対して、一体、中央防災会議は今日までどういうようなことをなさって、いま総理のおっしゃるように、処方せんはどういう処方ぜんがあるのか、これを伺いたいのであります。
  248. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の記者クラブにおける講演、これをたいへん関心を持って読んがいただいてありがとうございます。お礼を申し上げます。  まあ、そういう意味で各界の方々に、ただ問題を投げかけただけでは相済まない。過日もお答えしたとおり、問題のあることはもうみんな御存じだと。しかしながら、いまの処方せん、そういうものがなかなか受け入れられないものもありますから、また発表する時期がそれぞれ当を得ないと誤解を受けやすい問題でもあります。そこで、いま限られたこのたとえば災害防止、そういう対策についてどういうようにするのだと、こういうような具体的な問題ですね。これも非常に一部で地震が近いというようなうわさが立っている。したがって、ただいまのような問題を提起されると、国会では慎重にやっているからいろいろな議論をしているのだが、それでいよいよ近いのじゃないか、こういうことで浮き足を立たすような危険もなきにしもあらず(「そんなことはない。」と呼ぶ者あり)だから、そんなことはないとおっしゃるが……
  249. 鈴木強

    鈴木強君 だいじょうぶだという答えをしてもらいたい。
  250. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私どもが、そこで申し上げたいのは、だいじょうぶだということを申し上げたい。そのためには、いまのあります警察や消防署や、それらのものの動員体制というものがどういうように行なわれるか。また中央、地方との一体となっての——地方自治体ですね。そういうものと一体となって、そういうものの対策はいかにあるかと、こういう問題があるわけであります。したがって、これらの点について、やはり中央ではまずこういう事柄はどこに問題があるか、こういうことでそれぞれが材料を持ち寄って見当をつけておる。そうして関東大震災、私どもちょうどまだ学生であったが、あのときのような混乱が起こらないように今日からすべきだ。もうあまり当時の状況を知っている人も少ない。これは、まあ日本の行き方が当時は特別な行き方であっただけに、関東大震災のときの対処方法、これはずいぶんあぶないものがあったと思います。しかし、いまからも反省すべきものが幾つもございます。私は、まあ、その記憶が残っておりますだけに、こういうことについてはもっと掘り下げた話をしなきゃならない。最近、高層建築が建っておりますが、これは火事のほうからいえば、火災というほうからいえば、昔のような木造建築とは違って火災防止はできるだろう、しかし、この高層建築が耐震性があるのかどうか、これは地震でつぶれるというようなことがあるんじゃないかというその心配がありますが、これは十分建築の際に、倒れる心配のないという、そういう計算の上でただいまの建築ができておる。ただ一つ問題があるように私思いますのは、高層建築の谷間にまだ幾つも家が残っておる。そういうものは非常事態にどういうような空気の還流が起こるか。それの中にうずができるか。そういうことで、谷間にあるところは、いまのビルが建っただけでも看板が落ちたとか、風のぐあいがすっかり変わったとか、こういうように言われておるだけに、ここらにも一つの心配があります。それからもう一つは、これは何といいましてもあき地がないですね。土地がもうぴっちり詰まって利用されておる。けさほども話があって、できるだけ事務所の屋上——上は住まいにするように、こういうような話が出ておりましたが、私は、それを聞きながらも、こういう緑地帯のないところで、ただ住むことはできても、子供は一体どうなるだろうか、そういうことを考えながらも、皆さんの質疑応答を伺ってきたのですが、そういう点は新しい都市づくりに、これはやはり考えていかなきゃならないのだと、そういうことを考えると、どういうように退避するか、指導はどういう方向へもっていくか、こういう問題が一つあるわけですね。これは非常に大きな問題だと思いますよ。大阪のガス爆発においてあれだけの多数の犠牲者を出したこと。これなぞは、これはまあ興味を持っているそういう人たちを遮断するというか、車を寄せつけなかったようにああいう人をも現場に寄せつけなければ、あんな災害は起こらなかったと思う。しかしあんなことではなしに、もし大震災が起これば東京全体がそういう渦中に投ぜられるわけですから、住民、都民の誘導というか、それは非常に大事なことではないだろうかと、かように思います。この誘導ができればまあ落ちつきもとれるし、そういう点に一つの問題があるんじゃないだろうかと私は思っております。昔のような火災はまず起こらないだろう、また水道等の施設などもまずだいじょうぶだろう。ガスは、ガス管は、いまの経験等から見まして、やはり中央でガス管をとめるというか、そういう処置については十分考えられるだろうし、火災防止の方法はよほどこの前とは変わっていると、しかし倒壊という心配については建築学的にはその心配はないのだということは、はっきり申し上げますが、混乱を起こさないように都民をいかに誘導していくか、整理するか、ここにも力を入れる。これは最も大事なことではないだろうか、かように思っております。いろいろ疑問もあるだろうと思いますが、それらの点については、後ほどまたお尋ねに答えたいと思います。
  251. 鈴木強

    鈴木強君 まあこの処方せんはあるのだが、その出し方と、出してみても、きき目がないようなことじゃ——いや、使ってくれなきゃしようがない、こういうようなことです。問題が大き過ぎますし、つまりここで十分や二十分のことで話がどうということではないのです。そこでひとつ、防災会議というものがあるわけですから、大都市の災害対策について国民がほんとうに安心できるような青写真を示していただくことじゃないかと思うのです。私は最近、科学技術庁の資源調査会というのがございますが、ここですでに勧告三十九、報告五十七というのを出しておりまして、約五百名の専門家がそれぞれお集まりになって、それぞれの立場から非常に勉強され、一つの勧告を出しておるわけですね。これを政府がどれだけ活用しているかということについても疑義を持ったのです。ですからして、こういうものを総理はひとつ御活用いただいて、中央防災会議があるわけでございますから、そこでひとつさっそくそういう際には、あなたの処方ぜんはこうだ、政府はこうだ、心配するなというものを示していただきたいと思うのですけれども、そういう意味できょうはここで締めくくっておきたいと思いますが、あまりこれは遷延されても困りますから、ぜひひとつ総理に確約してもらいたいと思いますが、これは事務局長総理府総務長官もいらっしゃるし、建設大臣でも、どなたでもけっこうです。
  252. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 総理からたいへん詳細にお話しくださいましたので、私のほうからは、現在の防災会議の運営のあり方、並びにただいま言われましたような常時いろいろの研究機関あるいは先般の消防審議会の答申等、いろいろと示唆に富んだものが行なわれるわけでありますから、それを受けとめて防災会議の活用ということに努力をいたしてまいりたいと思います。先般の当予算委員会における私の答弁の中で、関係閣僚であります当面の私が防災会議の議員でない、それに日銀総裁や日本赤十字の総裁まで入っておられるのに構成メンバーでなくて事務局長であることはおかしいということを申し上げました点については、先ほど触れられたわけでありますが、その後調査いたしました結果、これは法律措置を要せずに政令で処理することができることが判明いたしましたので、政令ですみやかに措置いたしまして、責任大臣たる私も防災会議の構成員たる議員となり、局長には副長官を充てたい、このように考えて遺憾なきを期したいと考えます。
  253. 鈴木強

    鈴木強君 そこはわかりましたけれども、具体的に処方せんをちょっとつくって国民の前に早く示してもらいたい、その作業を。そうしないと安心できないのです。
  254. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは前の予算委員会でも御答弁申し上げたのでありますけれども総理の答弁の中にもありましたように、そのような大規模な関東大震災的なものを想定いたしますと、非常な人心の不安動揺、あるいはあすにでも起こるのではないかという不安等を誘発する半面の問題点も含まれておると思われるということを申し上げたのでありますが、その際にも、自動車等が当時と比べものにならないほど、総理のただいまのあき地等が少なくなったことと、またさらに加えましてふえておりますから、その自動車等は直ちに走る火炎車みたいになることはもう明らかでございまするし、これらの事態が明らかに違っておりますから、先般も答弁いたしましたように、こういうものは想定演習的なものとして、あまり消防審議会の答申的なもので、国民に発表をするにしても、想定演習的なものとして、このような場合に現在の消防体制なり警察その他の対処すべき体制はどのようにすべきかという、そのような対応策等も一緒にして国民に知らせることが必要ではなかったのか、私はこう思ったわけです。もちろん直接は他省のことでありますから、あとで秋田自治大臣に、私のただいまの答弁は行き過ぎておりましたでしょうかと申し上げましたところ、私も同感である、これからはそのようなものは、むやみに不安動揺を与えるようなことの少ないような形で、しかもそれに対して適切なる対処策を講ぜられるような具体的なものにつながった形に取り上げていきたいと言っておられました。もちろん、いろいろな形態で混乱が起こるわけでありますけれども、関東大震災当時においては流言飛語等によるパニック状態というものもあったように聞いております。それらのことも十分念頭に置いて取り扱いを慎重にいたしつつ、なお防災会議の構成メンバーのもとで具体的な問題の対応策を逐次整えておくことが、ことに地震予知学においては世界最高のレベルにある日本として、そのようなときに周章ろうばいして醜態を世界にさらすということのないような措置をとり得る条件もあるわけでございますので、おさおさ怠りない対策は続けてまいりたいと考えます。
  255. 鈴木強

    鈴木強君 締めくくりで総理からお答えいただきたいのですが、火災の点はだいじょぶだとおっしゃいましたけれども、いまも総理府総務長官がちょっと触れましたけれども、私たちは——道路が混雑して自動車の波ですね。これに一たん火がついたらもう逃げ場所がないのですね、全然逃げ場所がない。そこで総理はあき地ということをおっしゃったと思うのですね。一つまあ感心したのは、ビルの谷間における乱気流のことを総理は非常に言われました。先だって私は、それを取り上げたのですけれども、これを防ぐ対策がないのですね、答えてもらえないのですよ。浜松町の駅では何かあそこへ暴風よけといいますか、何千万円だか何百万円の金をかけてやった。あそこの商店では、ドアがこわれたり、ちょっと風が吹いてくると裏のほうから入らなければならぬとか、店を締めなきゃならぬとか、そういう公害が出ておるわけです。これらの問題を含めて、確かに国会論議される、不安を持つ、だからして総理がおっしゃるように、そうでないんだという基本的な政府の防災対策というものを示していただくことによって国民は安心できる。食糧はどうなるんだ、火事はどう防ぐんだ、待避できるか、こういう点をひとつ十分に御検討いただいて、早く結論を出していただくように、防災会議の議長としてお願いしたいんですけれども、いかがでしょうか。
  256. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 鈴木君のただいまの御提案、政府も十分心して対策に万遺漏なきを期したいと思います。  そこで、私申し上げたいんですが、ただいまのように人の問題、そこの住居、さっき総務長官からも一言触れましたが、自動車がたいへん多数になっていると。だからもう路面交通の状態もすっかり変わっているから、昔のようなわけにはいかない、そういうものについての誘導というか、指導、それがさっき申すような大衆の誘導というようなことになるわけであります。それから、やはり何といいましても水が豊富でなきゃならないのですから、水道だけは絶えず注意しておく。これがいまのところ関東大震災の当時と違って、東京都の給水装置といいますか、設備は、よほどふえておる。だからそのほうでは万遺漏ないと思います。しかしながら、旧都内でも、まだ足立区その他の地域にはずいぶん水道のないところがあるようでございますから、そこら辺もまだまだ全部行きわたったとは言えない、まだ普及度が非常に低いわけですね。ましてやいま新しく建設しようという新都市、その方面だと、水の問題など、これは簡単に解決できていると、こう言えないようなものがあるようでございますから、まだそれぞれがやっぱりそれぞれの地域についての特殊事情等を頭に入れながら対策を立てていくということ。しかし一番大事なことは、いま政府がこういうことを考えておるという、それだけで、大体地域住民の方が自警団までつくっていただかなきゃならぬような状態でないことだけを申し上げて、あまり浮き足立った形だけなさらないようにお願いしておきたいし、いま来るというようなわけでもございませんので、この点は誤解のないようにお願いしておきます。
  257. 鈴木強

    鈴木強君 どうぞお願いします。  それから沖繩返還の問題で、若干これは外務大臣、総理大臣お尋ねしておきたいんですが、沖繩が返ってくることは間違いないと、こうおっしゃるわけですから、われわれはそれを信頼いたします。そこで一九七二年の、これは国会承認や調印との関係で私は伺いたいんですけれども、一九七二年、まあ前後半に分けましたら、大体どの程度をめどにしておられるかということですね。
  258. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 一九七二年のできるだけ早い時期に返還が実現いたしますように、ただいま日米間で返還協定締結のための準備をいたしております。その進行いかん、並びにわが国及び沖繩における準備態勢等の進捗状況もございますので、ただいま確たる日時を申し上げることができませんが、七二年のできるだけ早い時期に返還が現実に実現するような目標で仕事をいたしております。
  259. 鈴木強

    鈴木強君 最近アメリカ側の国務省高官が——これは総理に伺わなきゃいけないのですが——われわれはこの沖繩返還協定というものは、アメリカの上院の承認なり報告を必要としないというふうに理解をしておるわけですね。そういうことになっているかどうか、これは確認をしたいわけです。もしそうなっているとすれば、国務省高官が最近上院提出の必要がないということを昨年言明したけれども、最近になって上院の助言と承認は必要とするというような考え方が強くなってきているということを言っているわけですけれども、そうなりますと、いまお話のありましたような、一九七二年前半ということとの関連で、アメリカ議会とも関係がありますけれども、多少時期が移動するような気がいたしますからね。これは念のために確認しておきたいんです。
  260. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 一般的に今回の協定が米国の議会の承認を要するかどうかということは、アメリカの行政府の判断によって決せられるべきものと考えております。ただいま御発言の点は、最近ストロム・サーモンド上院議員が申しましたことに関係いたしておると思いますけれども、それは米国政府の、行政府の態度というものではございませんで、私どもとしては、行政府がまだその点についていずれとも決定をしていないと承知をいたしております。いずれにいたしましても、できるだけ早期に返還をするということについては、佐藤・ジョンソン会談、さらに佐藤・ニクソン会談のこれが決定の基調でございますので、そのことのいかんにかかわらず、米国側としてはその基調に従ってできるだけ早い返還に協力をしてくれるものと考えております。
  261. 鈴木強

    鈴木強君 ところが、これは外務省の当局の方でもけっこうですけれども、いま私が申し上げましたようなアメリカの国務省内の見解というものが、アメリカ議会の動きその他からして、いままで上院不提出論であったが、それが後退して、上院提出必要論というものが強くなってきたと、こういうふうに、外務省の方々も考えていると聞くんですけれども、この点いかがでしょう。
  262. 東郷文彦

    政府委員(東郷文彦君) ただいま宮澤大臣からおっしゃいましたように、米国政府としまして、この点についていずれにするともまだはっきりきめておらぬようでございます。これは米国の行政府と立法府の関係の問題で、立法府の中には、さきの奄美、小笠原の協定は、これは行政協定でやったけれども、今度は規模も違うしということで、これは議会に正式に出して同意を求めなければ困るという意見もあるようでございます。現にこの間、サイミントン議員もそういうことを言っているようでございますが、いずれにしましても、この問題は向こうの内部の問題でございまして、まだ立法府、行政府ともきめておらぬようでございます。しかし、わが方としましては、向こうの内部の問題でございましても、全体の返還の見通しの問題につきましては、先ほど宮澤大臣からおっしゃいましたとおりでございます。
  263. 鈴木強

    鈴木強君 これは総理とニクソンさんの会談のときにはそういうことは触れなかったのでございましょうか。
  264. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ニクソン大統領と私との話し合いの際には、そこまでは触れておりません。
  265. 鈴木強

    鈴木強君 それからもう一つ、インドシナの情勢が非常に険悪化しているように私たちは判断するわけですけれども、これが沖繩返還七二年にどういう影響をするだろうかということを非常に心配するわけです。愛知外務大臣はいまバンコクに行っておられるのですけれども、向こうで新しいカンボジアの政府を、共和制をとるなら認めるとかいうような、ちょっと新聞の記事が出ておりましたけれども、いずれにしてもベトナム問題というのはたいへんわれわれは関心を持つわけです。そこでこのベトナム問題の情勢はどういうふうに転換していくのか、沖繩の返還については影響がないと判断しているのかどうなのですか、先のことだからよくわかりませんでしょうけれども、一応いまの段階で見解を教えてもらいたい。
  266. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) この点は、外務省の専門家の判断によりますと、カンボジアにおいて政権交代を企図いたしまして、ベトコン、北越等が国境に侵入をして紛争が起きているわけでございますけれども、これがカンボジア全体の内乱に拡大するというようなことはないであろうという見通しだそうであります。  次に南ベトナムにつきましては、サイゴン等に多少の砲撃が加えられたりいたしておりますけれども、これはおそらくいわゆる砲弾等、爆撃等によるものであって、これが大きな地上の戦闘に再度拡大するということはないであろう。ラオスにおきましてはジャール平原で騒乱が起こっておりますけれども、これもいまのところ一時小康状態である。したがって、ただいまのところインドシナ全体の局面が爆発的なものに発展するような兆候はないというふうに専門家は判断しておるというふうに聞いております。
  267. 鈴木強

    鈴木強君 それから沖繩の国政参加法はいつ国会に出るようになりましたですか。
  268. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 各党間の調整がほぼ終わりまして、明日、衆議院の議院運営委員会におきまして設置されました小委員会の小委員長報告がございまして、その報告を了承いたしました後、すみやかな提出が国会に予定されるに立ち至りました。
  269. 鈴木強

    鈴木強君 それは御同慶にたえません。  それから防衛庁長官に伺いますが、沖繩復帰後の沖繩防衛の準備はどのようにされておりますか。また、防衛構想があったら明らかにしてください。
  270. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 議会でも終わりましたら、アメリカ当局とよく相談し合いまして、アメリカ側が沖繩をどういうふうに評価して、どういう兵力を残す考えを持っているか、それに対して当方はどういう規模のものをあそこに駐留せしめたらよろしいか、そういう点はよく相談し合った上きむべきものであると考えております。  で、現在申し上げられることは、おそらく地上におきましては一部の陸上部隊、それから防空兵力、それから近海の哨戒部隊、それから施設部隊、通信隊等は派遣しなければならぬだろうと考えております。
  271. 鈴木強

    鈴木強君 いま沖繩にある米軍の装備ですね、兵力といいますか、そういうものがわかっておりましたら教えてもらいたい。
  272. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 兵員数にしまして大体五万八千人くらいおります。そのうち二万五千人くらいは空軍であります。そのほかが陸上及び海上でございます。もし詳細な部隊の内容を必要といたしましたら政府委員報告させます。
  273. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 在沖繩米軍の状況でございますが、兵員数は合計しまして五万八千人ばかりございます。内訳としまして、陸軍が一万五千、海軍が三千五百、海兵隊が二万一千五百、空軍が一万八千、人数はそういうことでございます。  おもな部隊を申し上げますと、陸軍では在琉球の米陸軍司令部のほかに、第九軍団司令部、第三〇防空砲兵旅団、第二兵站コマンド、そういうものがおもな部隊でございます。海軍及び海兵隊におきましては艦隊の基地隊、それから艦隊の哨戒部隊、それから海兵隊の海兵師団がおもなものでございます。空軍におきましては、第三一三という航空師団、それからそのほかに戦略航空団等がおります。  大体以上のような状況でございます。
  274. 鈴木強

    鈴木強君 兵器は。
  275. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 兵器の種類を申し上げますと、空軍におきましてF105という飛行隊がありまして、約二十機程度おるようでございます。それから、B52が約二十機程度と聞いております。それから、KC135という、これは給油機でございます。十数機おるようでございます。それから若干の偵察機があります。それから海軍でP3という哨戒機がおります。  それから、ちょっと飛び飛びになりましたが、なお空軍に102というこれは防空戦闘機及びC130という輸送機等がおります。海軍はここには基地隊で、第七艦隊等がここに寄るということで、常時おるわけではございません。陸軍は兵站部隊がおもなものになっております。  大体以上でございます。
  276. 鈴木強

    鈴木強君 メースB八機は完全に撤去をされたことを確認しておりますでしょうか、どうですか。  それから、CB兵器はたしか三月三十一日限りで解体するというふうに、持ち去るということを聞いておるのです。これはそういうふうになっておるかどうかですね。
  277. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) メースBはことしの春までの間に解体してアメリカへ輸送すると、そういうことになっておりまして、進行しておるようであります。  それから、化学兵器につきましても同様でございまして、米陸軍省は、一九六九年十二月二日に、沖繩にあるすべての有毒化学弾薬を米本土に移転する、第一回の沖繩からの積み出しは六九年十二月ないし一月に開始され、撤去は一九七〇年春に完了する予定と発表しておりまして、米陸軍省がかねて米厚生教育省に申請していた沖繩の致死性ガスのオレゴン州への輸送計画が本年四月六日承認されました。船積み開始は大幅におくれましたが、陸軍省は依然今週末までに船積み完了を目途としていると報道されております。米国務省スポークスマンは、六九年八月十一日、米国が毒ガスを含む化学兵器を配備しているのは沖繩と西独の二カ所だけであるけれども、それ以外の生物兵器は海外基地には配備していない、その毒ガスにつきましても、いまのようにことしの春までに完了すると、こういう予定であるようであります。
  278. 鈴木強

    鈴木強君 メースBがまあ取り除かれたようで、これはけっこうですが、それにかわるべき核兵器が沖繩に入っているかどうか、この点は確認できますか。
  279. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それにかわる核兵器が入っているということはないと思います。私は承知しておりません。
  280. 鈴木強

    鈴木強君 自衛隊の兵器購入についてちょっと伺いたいのですが、その前に、先ほど問題になりました自衛隊の限界ですね、これは、政府は国力国情に応じて漸増すると、こういう方針をとられておる、この方針はいつの国防会議でおきめになったんでございましょうか。
  281. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 昭和三十二年に制定されました国防の基本方針でそのようにきめられております。
  282. 鈴木強

    鈴木強君 自来十三年たっているわけですがね、この国力国情に応じて漸増するという方針については、まあ防衛庁長官の御見解も私たちはこの国会伺いました。したがって、そういうものをどういうふうに調整して新しいその自衛力の限界というのをおきめになるのかどうなのか。また、その構想があったら示してもらいたい。
  283. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 昭和三十二年ごろは日本経済力も国力も微弱でございましたので、いまのような表現が適当であったと思いますし、それは現在も進行しておりますが、新しい防衛計画策定に際しましては、このように国力が増大してまいりました現状にかんがみ、いまのような国力、国情ということでやると、GNPに正比例してというふうにとられやすくなります。そうなった場合にはかなりの金額にのぼってくるという可能性も考えられますので、むしろそういう表現よりも、日本のその他の国策とのバランスをとると、そういうふうにして、少なくとも平常時におきましては国民生活の安定と発展を阻害しないと、そういう考慮が必要であると思っております。そういうような意味内容を込めて、新しい防衛計画の場合は考え方を変えていったらいいと思っております。
  284. 鈴木強

    鈴木強君 それは総理も議長ですからどうでしょう。
  285. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま中曽根君が答えたとおりであります。
  286. 鈴木強

    鈴木強君 それから、先ほど羽生委員の関連質問で私ちょっと気になったものですから、もう一回総理に確認しておきたいのですけれども、私の受け取り方が間違っておったら訂正していただきたいのです。私は核兵器の問題について、総理は核兵器というものは人類を破滅する効果を持っておる、だからそういうものを持つことによって戦争はなくなるのだ、だから一九七〇年、日米安保条約の関連で日本も、私の勘で御答弁を承ると、持つようになるというふうに受け取れたわけです。これは重大な発言だと私は思いまして、私の質問がありましたから関連をしなかったのですが、この際明らかにしてもらいたいと思うのです。
  287. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の発言を逆に取られると、それはたいへんなことです。その際もはっきり申しましたように、私どもは核武装する考えはないということをはっきり申しました。核拡散防止条約に署名した、そうして皆さん方にわが国のあり方はこれではっきりしただろうと思います。  私が申し上げたいのは、軍事大国といえども、核兵器というものがいかにおそるべきものかということ、これはよくわかっているから、そのために軍事国自身が戦争を回避するようになっている。だから戦争はもうないのだと、こういうように私は思うので、その方向で努力すべきだ、こういうことを申し上げたのです。私はやっぱり核兵器を日本あたりは持つのでなくて、それは科学的な力はありましても、核兵器は絶対に持たないと、その態度でよろしいと。また、軍事大国が核兵器は使えないという、そういう状態に置かれているということをよく知っておるから、米ソともいま共存の形になっている。これがどうしてまだときどき緊張するのか。その緊張さえとれてくれればわれわれも安心なんだ、その方向で努力すべきじゃないかと、こういうことを申し上げたのでございます。今度は誤解がないだろうと思います。
  288. 鈴木強

    鈴木強君 わかりました。それならいいんです。  それから防衛庁長官に伺いますが、きのう衆議院で自衛艦の艦長は艦と運命を共にすべきかどうかというので、たいへん大論争があったそうですね。これは船舶職員法の改正の問題に関連をしてあったそうですが、私は新聞報道を見る限り長官の言われることを支持します。私が社会党の立場だから支持するというと都合が悪いかどうかしれませんけれど、そうでなくて、運命を共にするということの結論ですね、要するにあらゆることを尽くして、これ以上自分は艦と運命を共にしてみたって犬死にということがあるかもしれません。そのときにわざわざ艦と運命をともにするなんて、こんなものは昔の決死隊、特攻精神と同じで、そんなことは私はやるべきでない。だから発言をしている方のことは、私はよく議事録をまだ拝見しておりませんからわかりませんので失礼になるかもしれませんが、新聞で聞く限りは、私は長官の考え方を支持するわけですね。ちょっとそのいきさつを聞かしてもらいたい。
  289. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) きのうは船舶法の、船員法でございましたか、あの十二条の改正に関して艦長の運命はどうなるか、そういう御質問がございまして、その際、ある委員より艦長は艦と運命をともにすべきである、そういうお話がございました。私はそれは精神論としては非常にりっぱなお考えであると思いますし、そういうお考えで自衛官が終始されることは望ましいことであるけれども、しかし、命を大事にするということと職責を果たすということとは一緒に考える必要はない、やはりベストを尽くして、そうして最後にはやっぱり命も助けるということは、人間としてまた国民として望ましい方法である、防衛庁もそういうことを期待する、七生報国ということは、何もすぐ死ぬことじゃなくて、生き抜き、生き抜いて最後まで国家のために尽くすということである、自分はそう思うということをお答えいたした次第でございます。
  290. 鈴木強

    鈴木強君 また最近ソ連が大演習を始めてオホーツク海から日本海までやるらしいですね。先般はここでも論議されまして、一応ソ連がやめていただいて、これは非常にありがたかったんですけれども、またこういう報道が出ていますが、これを防衛庁キャッチしておりますか。
  291. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 最近の情勢報告によりますと、ソ連はバルト海の出口、それからスペインの沖、それから沖繩の南方とフィリピンの間、その三カ所に相当の艦船群が集結しておりまして、演習を開始しているか、これからしようとしている段階のように思われます。  それでソ連当局の声明等も考えてみますと、世界的にソ連の海軍がこれだけ成長しているということをデモンストレーションする意味が多少あるのではないか。あるいはソ連はいままで冷たい海域で演習ばかりしておりましたけれども、太平洋の黒潮とかその他でやって、気象や海象になれるということも考えられますし、そのほか地磁気の測定とか、その他の測量という意味もあるのではないか、そういうふうに解釈されております。
  292. 鈴木強

    鈴木強君 長官は御就任以来、意欲的に、自衛隊が国民に愛される自衛隊になる、そういうことで人間像の形成のために御努力いただいておるわけですけれども、残念ながら最近非常にいやな事件が出ておりまして、たとえば南多摩の多摩町にある米軍のゴルフ場がアメリカ軍はほとんど使わないで、日本人のゴルファーがこれを使っておる、こういうふうな批判が出ております。また、私はここに新聞をこう張ってあるんですけれども、新兵さんが三人自衛隊から逃げ出した、それから市谷の駅でもってこともあろうに、三等空佐の方が女性に抱きついて麻酔薬をかがせた、こういう事件が次から次報道されるわけです。これではどうもあなたが言うような愛される自衛隊ではなくて、いまわしい自衛隊というようなイメージをますます国民に与えるんですけれども、これは困ったことだと思いますが、どうなさいますか。
  293. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのような不祥事件が出ましたことは、まことに遺憾なことでございまして、まことに申しわけない次第であると思っております。自衛官に自分の使命感を徹底させて、まず国民として市民としてりっぱな尊敬される市民になり国民になる、それと同時に、自分が自衛官であるという崇高な職責に徹して、職務に精励するよう今後とも戒心していきたいと思っております。
  294. 鈴木強

    鈴木強君 せんだっては兵庫県で女性の胸部をとったレントゲンを、まさにその人が健康だというようなことにごまかして入隊したというのもあるんですね。一体どっか抜けていないですか。便所の紙がないとか給食費が少ないからやってやるのは、これはけっこうですね。よくしてやらなければいかぬですけれども、何か一つ抜けているところないですか。
  295. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはりそういう精神教育といいますか、自衛官としての使命感というものを明確に教育して、それが浸透するという点において、まだ著しく欠けている点があると思います。その点につきましては、大いに反省して、努力してまいりたいと思います。
  296. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 鈴木君の質疑の途中でございますが、本日はこの程度にとどめます。  明日は午前十時開会することといたしまして、これをもって散会いたします。   午後五時三十一分散会