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1970-03-23 第63回国会 参議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年三月二十三日(月曜日)    午前十時五分開会     —————————————    委員異動  三月五日     辞任         補欠選任      任田 新治君     塩見 俊二君      上田  稔君     小山邦太郎君      長屋  茂君     杉原 荒太君      佐田 一郎君     二木 謙吾君      市川 房枝君     山高しげり君  三月九日     辞任         補欠選任      須藤 五郎君     渡辺  武君  三月十日     辞任         補欠選任      黒柳  明君     三木 忠雄君  三月十一日     辞任         補欠選任      渡辺  武君     岩間 正男君  三月十九日     辞任         補欠選任      塩見 俊二君     任田 新治君  三月二十日     辞任         補欠選任      植木 光教君     近藤英一郎君      大森 久司君     玉置 猛夫君      西郷吉之助君     鹿島 俊雄君      林田悠紀夫君     玉置 和郎君      松下 正寿君     萩原幽香子君  三月二十三日     辞任         補欠選任      岩間 正男君     渡辺  武君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         堀本 宜実君     理 事                 木村 睦男君                 柴田  栄君                 任田 新治君                 山本 利壽君                 吉武 恵市君                 鈴木  強君                 横川 正市君                 矢追 秀彦君                 向井 長年君     委 員                 岩動 道行君                 鹿島 俊雄君                 川上 為治君                 剱木 亨弘君                 小山邦太郎君                 郡  祐一君                 近藤英一郎君                 白井  勇君                 杉原 荒太君                 田村 賢作君                 玉置 和郎君                 玉置 猛夫君                 中村喜四郎君                 八田 一朗君                 平泉  渉君                 増原 恵吉君                 柳田桃太郎君                 足鹿  覺君                 小野  明君                 岡  三郎君                 加瀬  完君                 亀田 得治君                 木村禧八郎君                 鶴園 哲夫君                 戸田 菊雄君                 羽生 三七君                 山崎  昇君                 塩出 啓典君                 鈴木 一弘君                 三木 忠雄君                 萩原幽香子君                 渡辺  武君                 山高しげり君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  小林 武治君        外 務 大 臣  愛知 揆一君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  坂田 道太君        厚 生 大 臣  内田 常雄君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        通商産業大臣   宮澤 喜一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君        郵 政 大 臣  井出一太郎君        労 働 大 臣  野原 正勝君        建 設 大 臣  根本龍太郎君        自 治 大 臣  秋田 大助君        国 務 大 臣  荒木萬壽夫君        国 務 大 臣  佐藤 一郎君        国 務 大 臣  中曽根康弘君        国 務 大 臣  西田 信一君        国 務 大 臣  保利  茂君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       真田 秀夫君        内閣総理大臣官        房広報室長    松本 芳晴君        防衛庁長官官房        長        島田  豊君        防衛庁防衛局長  宍戸 基男君        防衛庁人事教育        局長       内海  倫君        防衛庁装備局長  蒲谷 友芳君        防衛施設庁長官  山上 信重君        経済企画庁総合        開発局長     宮崎  仁君        法務省刑事局長  辻 辰三郎君        外務省アジア局        長        須之部量三君        外務省アメリカ        局長       東郷 文彦君        外務省条約局長  井川 克一君        外務省国際連合        局長       西堀 正弘君        大蔵省主計局長  鳩山威一郎君        文部省社会教育        局長       福原 匡彦君        文部省体育局長  木田  宏君        厚生省公衆衛生        局長       村中 俊明君        農林大臣官房長  亀長 友義君        農林省農林経済        局長       小暮 光美君        農林省農政局長  池田 俊也君        農林省農地局長  中野 和仁君        農林省蚕糸園芸        局長       荒勝  巖君        食糧庁長官    森本  修君        通商産業省企業        局立地公害部長  柴崎 芳三君        通商産業省繊維        雑貨局長     三宅 幸夫君        郵政省電波監理        局長       藤木  栄君        自治省行政局長  宮澤  弘君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○昭和四十五年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十五年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十五年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付) ○公聴会開会承認要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ただいまから予算委員会開会いたします。  まず、理事補欠選任についておはかりをいたします。委員異動に伴い、理事が一名欠員になっておりますので、その補欠選任を行ないます。理事選任につきましては、先例により委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 御異議ないと認めます。それでは、理事任田新治君を指名いたします。     —————————————
  4. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 昭和四十五年度一般会計予算昭和四十五年度特別会計予算昭和四十五年度政府関係機関予算。  以上三案を一括して議題といたします。  まず、理事会において三案の取り扱いについて協議を行ないましたので、その要旨について御報告をいたします。  総括質疑は、本日から開始いたしまして七日間といたしました。その質疑総時間は千五十六分とし、各会派への割り当ては、自由民主党及び日本社会党はそれぞれ三百九十六分、公明党百三十二分、民社党六十六分、日本共産党及び第二院クラブはそれぞれ三十三分といたしました。  質疑順位につきましては、お手元に配付をいたしました通告表の順序によって進めることといたします。なお、公明党民社党話し合いにより、十四番目と十五番目の順位が入れかわることとなりました。  以上、御報告いたしましたとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいいたします。     —————————————
  6. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 次に、公聴会開会承認要求に関する件についておはかりをいたします。  公聴会は、来たる四月七日及び八日の両日開会することとし、公聴会の問題、公述人の数及び選定等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 御異議ないと認め、公聴会開会承認要求書を議長に提出することといたします。     —————————————
  8. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) それでは、これより総括質疑に入ります。羽生三七君。(拍手)
  9. 羽生三七

    羽生三七君 昭和四十五年度予算審議に際して、内政と重要な関係をもつ国際問題を中心に質問をいたしたいと思います。  本論に入る前に最初にお伺いいたしたいことは、繊維問題でありますが、最近アメリカの上院でこの輸入制限法案が提出されたことは御承知のとおりであります。政府もまた、報道によれば、一年間の暫定措置としての包括自主規制に踏み切ったとも伝えられております。これに対して業界では、そういうアメリカの動きはすでに織り込み済みであるから、既定の方針を変える必要はないとも伝えられており、場合によっては行政訴訟をも辞さないとも伝えられております。また一説には、政府の説得に応じつつあるとも言われております。事情がどうであるか、この際お伺いをいたしたいと思います。
  10. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 日米間の繊維問題につきましては、現在政府といたしましても鋭意努力をいたしまして、何とか双方納得ができるような円満な解決策を見出したいということで努力を傾注しておるところでございます。この問題につきましては、日本側といたしましても関係する方面は非常に多い、また今後の状況につきまして、いろいろの点から心配する点も多いものでございますから、それだけにいろいろと希望意見やあるいはいろいろの情報が取りざたされておりますけれども、いまだ最終的な、いわば妥結点というものが発見されるところまで日米間の話し合いは進んでおりません。できるだけ早い機会に何とか決着をつけたいという努力をいたしておりますが、これに対しまして日本側の基本的な態度というものは、何といたしましてもやはりガット精神と申しますか、そういうワクの中で、そしてアメリカに対して日本繊維品輸出というものが相当の被害を与えているということが立証できる限りにおきましては、限定された品目等につきまして、その実情納得ができるようなことであるならば自主規制もやむを得ない、こういう考え方中心にして検討や折衝を続けておることはしばしば政府が申し上げておるとおりでございます。恒久的に長い期間にわたって包括的な規制をするというようなことは、基本的な考え方からいきまして日本側としてはどうしてもこれは承服することはできないわけでございますから、同時にまた、繊維の対米輸出については日本だけの問題ではございませんで、関係する国もほかに多くありますような関係もございますから、最終的には関係国間の話し合いでこれを取りまとめていくということを基本線にして、そういう基本線ワクの中で納得のできるような点におきまして妥結点を見出したいというのが、現に努力を集中しておる焦点でございます。したがいまして、まだいまお述べになりましたような点について合意ができているとか、あるいは一つの線をほぼ固めつつあって、その線に乗って日本関係筋納得を求める方策を展開しているというようなところまではまだいっておりません。こういう実情でございます。
  11. 羽生三七

    羽生三七君 ただいまの御答弁の中に、長い間包括的な規制を続けることは適当でない、だから一年間というような暫定処置があるのかないのかということ、それから業界が言っている被害立証ということは、業界の単なるエゴイズムかどうか。これは正当は主張ではないのか。それからもし包括的な規制を認めれば貿易全体の普遍的な原則がくずれることになるのではないかと思います。ですからいま御答弁にあった長い間の包括規制はということは、短い間ならあるということを意味するのか、その辺をお伺いいたします。
  12. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいま申しましたように、まだ最終的な詰め段階には入っておりませんものでありますから、的確な、明確な御答弁ができない状態でございますけれども、やはりこういう非常に両方の、両国にとりまして大きなむずかしい問題でございますから、一〇〇%に双方とも主張が貫徹できるということもまたむずかしいことではなかろうかと思います。基本的なものの考え方の線の中において、互助妥協ということも必要ではなかろうかと考えるわけでございます。ただいまお述べになりましたように、被害がなければ規制はしないという業界主張は正しいのか正しくないのかという仰せでございますが、これは先ほど申しましたように、いわばガット精神ワクの中で考えれば、被害なきところに規制なしということが私は原則である、かように考えるわけでございます。  それから包括的の規制というものは、私は、原則的に日本側としてはとるべきところではない、かように考えるわけでございますが、しかし、非常にこじれた問題のような場合に、一つ妥協点として何か考えられることはないかということについては、私は検討に値する考え方もあり得ると思いますけれども、ただそういう点について的確にまだ具体的な、ここまではいけるとか、これは絶対にいけないとかいうところまでの詰めは考えておりません。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 この政府日米間の摩擦を極力避けるという配慮もわからぬわけではありませんが、しかし、この早急な解決を急ぐのあまり、筋の通らない無原則妥協をあるいは譲歩をした場合には、私は将来に禍根を残すことになると思います。いま外相からお話しになったように、あくまでガット原則を守るべきであろうかと思います。特に昨日ですね、来日したEECの委員長が、空港かどこかで談話を述べておるようでありますが、それによると、このアメリカ主張は適当でないと、やはり多国間の協議が必要であるということを述べております。これはガット原則に基づくということであります。したがって、私は強くこの原則をくずすことなく、政府が所信を貫くことを要求をいたします。中にはこれにかわるべき案として一〇〇%自由化案と、まあ即時ではありませんが、それをケンドール氏なんかに示して、それで何かアメリカ要求にこたえようという説もあるそうですが、まあそんな説はとにかくとして、基本的にとの精神をどういうふうに貫かれるのか。これは総理からひとつお聞かせください。
  14. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま外務大臣からお答えいたしましたように、ただいま日米間の重要懸案事項というものは、いわゆる繊維の問題であります。この問題をめぐりましていろいろ論議が戦わされております。双方業者それぞれがそれぞれの立場議論を遂げておるようであります。日本のほうにおきましても、明日あたりは大会が持たれる。これはサンフランシスコにおけるアメリカ業者大会に対する一つ態度を鮮明しようとするものだと思います。私は、こういうような問題がそれぞれが議論をすることもけっこうですが、しかし、日米間の問題でとにかく最も大きな領土問題すら解決できたんじゃないか。私はそのことを考えると、国民的な関心度から申しまして、この貿易の一品目、そういうものが話し合いで結末が発見されないということはないだろうと思う。そこらにお互いに歩み寄って、そうしてこの懸案事項を早く解決することが望ましいのではないか。かように思います。ただいま言われるように、急いで原則を無視すると悔いを将来に残すのではないか。そのことも考えないではありません。しかし、友好親善関係、これは終わりのないものであります。長く長くその関係を続けていかなきゃならない。かように考えますと、やはり将来の見通しに立って、そうしてお互いに譲り合って、そうして話をつけるということ、これが望ましいのではないかと思う。ことにこれは日米間だけで解決のできる問題ではない。アメリカ業界に対する輸出物、これは多数あるのでありますから、それらの国の立場も考えなければならない。こういう意味で、いきなりガット会議を開きましても、それはただ議論に終始するだけで、解決方向ではないだろうと思います。そういうことを考えながら、日米間でやはりこの問題を解決するという方向で取り組んで、そうして他の関係国納得のいくそういう案を見つけたい。これが政府態度であります。私はまあさような意味で、この問題はできるだけ早く解決すべきだ。また、そういう意味からはお互い原則論だけをやっていてはしかたのない問題ではないかと思って、ただいまいろいろ案を審議さしている最中であります。外務省、通産省、その他関係省もございますので、私は相互に納得のいくというところで一応話をつけるべきではないか、かように思って実はたいへん苦心しておる最中であります。あまり多くを申しますと、交渉を持っておるこの段階でありますだけにデリケートな問題もありますから、まあこの辺で……。ただ、基本的に、私どもはこの問題をいつまでもほうっておくとかあるいは解決をしないで原則論だけで議論をするとか、こういう状態ではあり得ないと、できるだけ早く解決すべきだと、それにはやはり互譲精神をもって話を詰めていく、こういう態度で臨みたいと、かように思っております。
  15. 羽生三七

    羽生三七君 この問題ではこれ以上触れませんが、要するに、道理にかなったことをやっていただくことを要求いたしておきます。
  16. 鈴木強

    鈴木強君 関連。いまの問題でちょっと総理にお尋ねいたしますが、先般、吉野公使がこの問題で一時帰国されましたときに、この委員会でも問題になりました。で、政府の基本的なこの繊維交渉態度は、あくまでも政府レベルであるものをきめて、それによって業者に押しつけるという、そういうものではない、あくまでも業者がお考えになることであるという、そういうことを総理おっしゃいましたですね。その基本的な態度は変わっておるかどうか。それからいま非常に苦慮されているということですが、われわれも諸般の情勢からして、この繊維交渉が重大な段階に来ていると思います。したがって、一年間の期限を切った包括規制とかいろいろなことが伝えられておるわけですけれども、さっき申し上げました基本的な考え方をあくまでも貫くという考え方でいくならば、業界は非常に強く反発しておりますから交渉はかなりむずかしいと思いますね。そこのところを一体どういうふうに外交ペースでやっていくのか、ここが非常に私は聞きたいところだと思うのです。したがって、おおよそその妥結を、結着しようとするめど、そういうところをどこに置いてやっていくのか、それも含めてひとつ総理からお答えいただきたいと思います。
  17. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この繊維問題はいわゆる自主規制という名前で、その呼び方で事件の実相がわかるように、業者それぞれが納得して、業界納得して、そして規制していくというそのたてまえに変わりはございません。したがって、政府自身立法措置をとるとかあるいは特別な措置をとるとか、こういうものではない。しかし、私は業者ともそのうち接触を持たなければならない段階ではないだろうか、かように思っております。相手方のアメリカとしてまあいろいろ立法措置その他の問題が論議されております。しかし、これはまあどういうことになりますか、相手の国のことですから、これは私どものとやかく言う筋のものではないように思います。しかし、日本関係においては、自主規制、そういう立場において業界納得する、こういう案でなければならない、かように思っております。先ほども申しましたように、自主規制と申します限り、業界納得するのだ、業界は理屈の通らないことには納得しない、これが態度だろうと思いますが、しかし、その点がただいま申しますように、お互い互譲精神で歩み寄りができるのじゃないだろうか、かように私は思っておるような次第でございます。
  18. 鈴木強

    鈴木強君 ちょっと私は気にかかることがあるのですけれども、確かに表向きの姿勢はわかりましたが、やはり日米間の友好関係を悪くしちゃいけないという配慮のもとから妥結をしなければならない。そう時期を一体どこに求めているか。それからおっしゃるように、政府外交ペースでおやりになると思います。しかし、どうしても業界が聞かない、ちょっとそういう場合、たとえば繊維業界方々一つ規制によって受ける損害が出てきたような場合、あるいはそれを国がある程度補償するとかなんとか、そういうことだって出てくるのではないでしょうか。そういう点を含めて、やはりものは妥結に導びくための手段があると思いますが、そういう点で、どうも総理のお考え方を聞いておりますと、引っぱっでいくのだというようなことを言われているかと思うと、またそうでもない、それはむずかしいことはわかりますけれども、そういう配慮をしなければ妥結できないのじゃないですか、そこをひとつ聞きたい。
  19. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、業界方々にいたしましても、個々の取引の場合を考えても、それぞれがときには原価を割っても商取引をすることがございます。おそらく長いつき合いだ、長い商売だ、こういうことならば、そういう観点に立てば、きっと話はつくことではないだろうかと思っております。そこまで私どもがとやかく言う筋はないように思います。かように私は思っております。また、政府がその点について立ち入ってどうこうしなさいとか、かようなことは申し上げるつもりはただいまのところございません。しかし、さらに事態がむずかしい方向へ向かうならば、政府も一体となって、それらの点について相談すべきであると、かように思っております。そういう点がまだ損害が実際に発生していない、そういう状態のところで、それを立法措置で救済をするなどと、ただいま申し上げる段階ではないように思います。しかし、私がただいまのように申しますことは、すでに第二次産業の諸県、諸地方であらわれておるように、あるいは、福井、石川等でどうも発注がおくれておる、受注がおくれておる。そういうために労賃は下がっておる。しかし、やっぱり生産しておかなければならない、こういうようなむずかしい状態になっていることもお聞き及びだと思います。こういう事柄を、紡績会社自身が、そんな損害があれば、それは引き受けて、全部あと始末するとか、かように申しておりますが、そういうことは果たして適当なことかどうか、ここらに私は話し合いのできる余地があるのじゃないだろうかと思っております。そうしてとにかくアメリカもさることですが、私どもは、日本国内の現状を見まして、このまま推移することはよくないと思っております。できるだけ早く業界を安定さすこと、そのためには話し合い方向なり、めどなりがつくこと、これが必要じゃないだろうかと、かように実は思っておる次第であります。
  20. 羽生三七

    羽生三七君 この問題はこの程度にしまして、次に、本論に入る前にいまひとつお伺いしておきたいことがありますが、それは最近のインドシナ半島の動きでありますが、ラオスにタイ軍が出動したこと、それからカンボジアが周知のような政変が起こったこと、これらに関連して一体現状はどうなっておるのか。あるいはこれに対して、米中ソそれぞれ対処のしかたが違うようでありますが、日本政府としては、どういう見解をもって対処されようとするのか、その辺、外相からお伺いしておきたいと思います。
  21. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ラオスにおきましては、本年の二月からジャール平原地、周辺地域での戦闘が活発化いたしまして、現在も引き続きその状態が続いております。また、今後とも流動的な事態が予想されますけれども、一応大幅にラオスにおける戦局が悪化するとは現在見ておりません。他方プーマ首相の米ソ共同議長国に対する関係国協議を要請したアッピールが、御承知のように派出されておりますが、現在のところ、ソ連はあまり積極的ではない、むしろ消極的な態度であるように見受けられますので、その実現の見込みは現在のところ薄いように見受けられます。また、パテト・ラオ側から伝書使を派遣するというメッセージが出ておりまして、これをプーマ首相が受け入れる用意があるという伝書が出ておりますので、当事者間の話し合いの糸口があるいはできるのではなかろうかというふうに見受けられるわけでございます。わが国といたしましては、従来からラオス問題の話し合いによる解決を希望してきておりまして、随時措置もとっておりますことは御承知のとおりと存じます。プーマ首相のアピールが関係国で好意的に検討され、ラオス問題の話し合いによる解決の場ができることを希望し、この協議が早期に実現するよう格段の努力政府としては要請をいたしておるわけでございまして、その旨はこの三月の上旬におきましても、あらためて英ソ共同議長国をはじめ、インド、カナダ、ポーランドの国際監視委員会構成国の政府に対しましても申し入れた次第でございます。ラオス問題は、先ほど申しましたように、なおしばらく流動的な状況を続けるものと思われ、その平和的な解決の見通しについて、現在の時点で明確に予測することは困難でありますけれども、早期に平和が到来することを希望いたしまして、わが国としては、今後においても果たし得る役割りを積極的に探究し、また果たしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。  次に、カンボジアにつきましては、カンボジアの外務省は、わがほうの出先大使館に対しまして三月十八日に口上書をもって、上下両院合同会議がシアヌーク殿下の元首の職務を剥奪することを可決した、そして憲法に従ってチェン・ヘン国民議会議長が、新しい元首が選出されるまでカンボジア元首の職責を行なう旨を通報してまいりました。わが国としては、今回のカンボジアの事態を注意深く見守っておりますが、何ぶん事態がいまだ必ずしも明確でないところもございますし、また、今回の事態がカンボジアの内政問題であることにもかんがみまして、現時点でこれ以上見解を申し上げる段階ではないように思われます。今回の事態がカンボジアと日本との間に与える影響、また、東南アジア情勢に及ぼす影響につきましては、今後の動きを十分見守っていきたいと考えるわけでございますけれども、カンボジアは、ただいま申しました口上書におきましても、またその他の面におきましても、これまでどおり独立、中立、領土保全の政策を続ける、また、従前カンボジア及び友好国並びに国際機関との間で締結されたすべての条約、協定、取りきめ等を尊重する意思を再確認する旨、わが国をはじめ各国に通報してきておりますことも御承知のとおりでございます。  なお、タイの出兵のお尋ねがございましたけれども、これに対しては、タイあるいはカンボジア側からの声明等によりましては、公式にこれを否定しておるというのが現状でございます。
  22. 羽生三七

    羽生三七君 ラオス、カンボジアの問題は、結局ベトナム問題の関連であると思います。したがって、このベトナム戦争が解決しない限り、別個に解決することはほとんど困難だと思います。そこで、外相が外交先の外交演説で、ベトナム和平の実現のために、できる限りの役割りを果たしたい、こう述べておられます。ところが、日本政府の従来の考え方からいうならば、米軍の作戦行動に協力することも和平への協力とも受け取れる。いましかし、要請されておるのはそういうことではないのじゃないのですか。ベトナム戦争をどうして早く終わらせるか、そういう意味アメリカ態度が問われておる。だから一体、外相の言われるベトナム和平に対して日本が何らかの役割りを果たしたいというのは一体何を言われておるのか、お聞かせいただきたい。
  23. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ベトナムにつきましては御承知のように、アメリカといたしましても、非常な努力が続けられておるわけでございまして、アメリカ軍の撤退計画等につきましても、逐次いろいろの努力が払われ、あの程度の実績も私は成就できていると考えております。  それからラオスにつきましては、これもまた御承知のとおりでございますが、一九六二年、ジュネーブ協定当時に顧みてみましても、ラオスの現政権はいわゆる中立政権として西欧側だけではなくて、共産側からもこれが支持がされているわけでございまして、そういうことを基礎にいたしまして、先ほど申し上げましたように、ラオスの問題については、英ソ共同議長国をはじめとして、国際監視団を構成している各国の努力に期待をして、そうしてラオスの平穏化と申しますか、これに対して関係国努力を要請しながら、わが国といたしましても、できるだけこれを助けていくという立場をとって、そうして現に行動もいたしておるわけでございますが、従来からそういう態度を続けているわけでございます。政府としては、ラオスの問題がベトナムに影響が、影響というより、ことに軍事的な関係において影響が大きくなることをまず防がなければならない。あるいはカンボジアの問題にいたしましても、軍事的なエスカレーションがベトナムをめぐって起こらないようにしていくということが、これは政府としての最大の関心事である、こういう立場に立ちまして、たとえばラオスについても、日本としては共同議長国でもありませんし、監視団の構成国でもございませんけれども、そういう意味で当時国ではございませんけれども、できる限りの外交的な努力も展開していかなければ今後ともいけないということで、状態を注視しながら、関係国の動向も見守りながら、日本政府の意図が成就できるように努力を続けていきたい、かように考えているわけでございます。
  24. 羽生三七

    羽生三七君 違うのですよ、御答弁が。ラオスじゃないのです。ベトナム戦争にどういう役割りを果たすかということです。
  25. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 昨年、ちょうどプーマ首相がアメリカへ行く際に、日本に立ち寄られて、そのときに率直に私はお話をしたのですが、いまベトナムの問題が論議の的になっているけれども、ラオスの問題は停戦状態のままで、これがあまり議論になっていない、しかし、私の見るところでは、ベトナム問題とラオス問題は同時に解決すべき問題のように思う、どうもそういう点でこの点に触れてないことは日本としても心配だ、プーマさんもそういうことは御心配だろうと思うから、取り上げられたら十分ひとつそういう点もよく説明されることが望ましい、こういうことを実は話し合ったことがあります。私はいまのお尋ねはどういうことかわかりませんが、ベトナムの問題がとにかく火をふいているこの際、しかもアメリカ自身が撤兵計画を持っておる、こういうことで何だか明るいような感じがする。そういう際でありますだけに、ラオスの問題もあわせてやはり国際的には解決する、こういうことであってほしいと、かように思うのであります。その際はカンボジアの問題は、実はただカンボジア国内にべトナムのベトコン部隊がいるとか、あるいは北からも来ておるとかというような話がありまして、デルタ地帯の攻防ではそれがいつも問題になっているということでありますが、その程度で、あまり深く突っ込んだ話にはならないでいた。しかし、今度のようにシアヌーク殿下が国家元首の地位を去られると、こういうことになれば、これまた一つの大変化だと思います。したがいまして、ただいまのインドシナ半島の情勢、これは重大なる変化が起こりつつある。こういう際にこそ、ただいまのような点を含めて、ただ単にベトナム一国だけの問題でなしに、総体に和平がもたらされるように、関係国としては十分注意すべきではないだろうかと、私どもはそういう方向でお役に立つならば力をかしたいと、かように考えておる次第であります。
  26. 羽生三七

    羽生三七君 総理のお話はよくわかりましたが、外相には、ベトナムの和平について日本としての役割りを果たしたいと、外交演説で述べられておるので承ったのですが、それはそれとして、特に総理にお伺いしたいことは、このいまのラオス、カンボジアの問題だけでなしに、タイの派兵について、先ほど外相は否定されましたが、これはもう、タイ国軍隊が入っていることは間違いございません。これはタイにも波及するかもしれません。そうなってくると、これら全体の情勢と関連して、ベトナムの撤兵計画というものもある程度修正されるかもしれぬ。アメリカの撤兵計画ですね。これはもう伝えられている。そうなった場合に、このベトナム戦争が七二年沖縄返還の時点に続いている場合に、再協議という問題——私は再協議の内容には触れません、ここでは。これは私は、私なりの解釈をしておりますが、触れませんが、その場合、七二年返還は、沖縄返還ですね、これは、ベトナム戦争がなおかつ続いておる場合でも全く不動のものである——協議の内容がどういうものであるか、私はこれは問いません。それは絶対の不動のものであるということを、ここで確言をしていただけますか。
  27. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 沖縄返還の問題は、一九七二年、これは不動のものでございます。そのワク内でただいまの協議をするということでございます。私は、そういうような事態が起こらないこと、それまでに問題が解決されること、これを心から望んでおるような次第であります。  ところで、ただいま、タイ国、これがラオスに介入しておるというようなお話でございますが、これはタイ国自身に、いま米軍の基地も強力なものを持っております。同時にまた、タイとラオス、これは同一民族であります。したがって、そういう意味で義勇兵が出ているんじゃないかというような説明をしておる。先ほど外務大臣はその点を触れたと思っております。今度米軍がこの地域から撤退する、そのあとは一体どうなるだろうか。もうすでにイギリスは、英国兵はスエズ以東どんどん引き揚げている。さらに今度は米軍が引き揚げる。そうすると、ここらに、自主独立の方向でそれぞれの国が自国を守るという、そういう方向にいかざるを得ないんじゃないだろうか。たいへんむずかしい状態が起こるんではないかなと実は心配しておる一人であります。ただいまのところ、タイ自身がラオスに積極的に介入しておるとは、どうも私はそこまでは考えないのです。これは責任のある者がはっきり声明をしておりますから、それを信じたい。また、カンボジア自身も、タイとカンボジアとの関係等から考えまして、ただいまのようなことはないだろうと、かように私は見ておるような次第であります。
  28. 羽生三七

    羽生三七君 いまの、沖縄返還七二年間違いないかということに対する御答弁、間違いないというようにもとれますが、さようなことの疑問の起こらないことを希望するとも言われておりまするから、私は、断固としてどんな情勢変化があっても返還間違いないと、それを言っていただきたかった。  それともう一つは、いままでの国会論議はベトナム戦争が継続しておった場合だけが言われているのですね。私は、そうではなしに、それもそうであるが、日本を取りまく国際情勢の推移いかんにかかわらず沖縄返還七二年は間違いないと、これを総理にひとつ、ぜひ確言をしていただきたいのです。これは、あいまいになると、あとで非常な疑問が残りますから、明確にひとつ答えてください。
  29. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまのように一言よけいなことを言うと誤解を受けるようですが、これははっきり、七二年中に返ってくる、かように申し上げておきます。これは共同コミュニケの示すとおりであります。
  30. 羽生三七

    羽生三七君 こちらは今度は一言付け足して、そういうことになるよう、断固返還されるよう、希望いたしておきます。  そこで、これから本論に入るわけでありますが、総理は、施政方針演説で、七〇年代の施政について国会で方針を述べられましたが、たとえば、「一九七〇年代は、国際間の新しい安定した秩序と均衡を達成するための重要な時期である」、 こうも述べ、さらに、「世界の平和は、基本的には力の関係に依存しながらも、国際政治の多くの面において、軍事力以外の要素の比重が高まり、各国の自主性が増大し、軍事的均衡のみならず、より多元的な均衡が模索されるようになった」とも言い、さらに、「その意味で世界は大きな転換期に立っている」と述べ、さらに、「日本の国力が世界に対し、前例のない重みを持つ時代に入っていく」と、こう述べておられます。非常に格調高く述べられておるわけでありますが、しかし、残念なことに、今日までの国会答弁の中から緊張緩和の具体策を聞くことが少しもできない。これははなはだ遺憾であります。七〇年代の世界、特に今日のアジアの現状に照らして、先ほど総理も触れられましたが、たとえば、米国のアジアからの軍事力の撤退、あるいはベトナム以後、さらに沖縄返還後、さらにはニクソン・ドクトリンに示されたようなアメリカの対外政策の変化の徴候、これらに対応して日本がアジアにおいてどのような外交路線を選択しようというのか。総理は「新しい安定した秩序と均衝」と言っておられますが、それは一体どのようなものをさしておるのか。また、総理が「軍事力以外の要素の比重が高まり」とか、あるいは「軍事的均衡のみならず、より多元的な均衡」と言うのは、緊張緩和について言っておられると思う。具体的には、どのような緊張緩和政策というものをお考えになっておるのか。あるいは施政方針で、「その意味で世界は大きな転換期に立っている」と言うが、そうして七〇年代に臨む総理の決意を披瀝しておるわけでありますが、この七〇年代の世界、特にアジアに対する日本外交の基本的な姿勢、役割りというものは、そもそもどのようなものなのか。施政方針だけでは、これは問題点を指摘しただけであります。何も具体的にどうするということを言っておられない。これをひとつ具体的にお聞かせいただきたいと思います。
  31. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 基本的には、やはり、私どもが守っている平和憲法、そのもとにおいてわれわれの果たすべき役割りがある、かように実は思っておるのであります。過去におきましては、とかく軍事力が中心、軍事力によってものごとがきまる、こういう形がありました。今度は、私どもは平和憲法を守り抜く、そのことが国際緊張の緩和にも役立つのではないか。これは直ちに平和憲法から引き出されるもの、諸国間の友好を増進するということにもつながりますが、同時にまた、国連等を強化することによりまして、自国の平和、安全、これが確保される。またさらに、軍縮、その場を通じての積極的な活動も始まる等等、平和憲法のもとにおいてわれわれの進むべき道がおのずからきまっている、かように私は思っておるのであります。そういうことを、この前の基本的な施政方針演説で触れたのであります。これはおそらく、お互いに同じような気持ちじゃないだろうか。いままでは、とかく、重ねて申しますが、軍事力が中心で、軍事力の協力によって大体話がきまったが、今度はそういう時代ではないんだと、いわゆる平和憲法のもとで国際友好関係、あるいは南北問題等とも取り組む、あるいは国連においても十分働いていく、あるいは軍縮会議等においても平和への努力を続けていくと、そういうように考えておる次第でございます。
  32. 羽生三七

    羽生三七君 いや、そういうことなら、施政方針演説のこれを拝見すればもう十分なんですが、そうじゃなしに、たとえば、今日世界の緊張の存在する地域といえば、これは、中東紛争を別にすれば、大体四つの地域。ドイツとか中国、あるいは朝鮮、ベトナム、この四地域でありますが、これはことごとくが分裂国家で、同一国家、民族の中に二つの主権者が存在をしておる、これが緊張の要因ですね。ことに、その中の三つがアジアの中に存在をしておる。したがって、この分裂国家を固定的に見て、そのどちらかの一方だけを承認して他の一方と敵対関係に立つような政策を続けるべきではない。長く続けるべきではない。これは私の考え方です。それを、そのことをやめない限り、私は問題の根本的な解決にならないと思う。  現に、ドイツでは、戦後二十五年分裂しておった国家が、初めて東西両首脳が会談をするという、画期的な、歴史的な事件が起こっておる。そういう中で総理が緊張緩和を七〇年代の重要な要素と考えておるならば、より具体的に、それでアジアにおいてどうするのかと。この三つもある緊張要因ですね。その一方だけとは国交を持ちながら、他の一方とは、敵対関係とは言わなくとも、これとは全く相異なる立場で対処しておる。これで一体アジアの緊張が緩和できるのか。そういうことをどうやって解決するのか。それを私は聞いておるわけなんです。憲法の精神に基づいて云々ということではない。それはわかりきった話で、それに基づいてどういうことをされるのかを伺いたいのであります。
  33. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま御指摘のように、アジアには分裂国家が三つもある。これはたいへんな状態でございます。この分裂国家がどういうことでできたか、そういうことを考えてみると、私はやはり、米ソ二大強国、これらの責任はまことに重大だと言わざるを得ない。戦後今日までもそういう状態が続いているという、そこらに、両強国のやはり平和共存、同時にまた、こういう問題を解決する努力が積極的になされなければならないんではないだろうかと思います。  私は、日本の場合において、片一方を承認し、片一方に敵対していると、こう言われれば、これは言い過ぎではないだろうかと思う。私どもは、どこにも仮想敵国は持っておらないし、敵対はしておらない。われわれが承認しておるものは、他の諸外国と同様に、国連の場において承認された国を認めておるだけであります。ただ、中国の場合におきましては、私どもは、サンフランシスコ条約において中華民国を相手として実は講和条約を締結した。そういういきさつがございます。そういういきさつはございますが、その基本的なものは、これは何といっても、米ソ両国の大国がこういう事態をかもし出したものではないだろうか。欧州においても同様のことが言われる。ドイツが東西に分かれておるのも、これも、はっきり申しまして、やはり米ソ対立の結果ではないだろうかと思う。しかし、もう今日では、その米ソ両国が一足先に平和共存を申しておるわけであります。私は、そういう状態がやはりそれぞれの国に反映してしかるべきじゃないだろうか、かように思います。こういう状態がいつまでも続いておることは、隣がたいへん迷惑なことで、ことに、私どものように平和憲法を守っておる国から申せば、非常に迷惑だと、そのもとである二大強国が平和共存に移ってきたのだから、まあそういうことが、対立が、緊張が、分裂国家を起こした原因だと、かように見るならば、分裂国家自身においても、もうすでにそういう情勢の変化に対応してしかるべきではないかと私は見ておるのであります。そうして、もう一つ申し上げたいのは、こういう問題は、日本の場合にも、やはり他国との関係においても十分調整をする必要がある。その動向を見きわめて、しかる後でこういう問題がきまらなければならない、かように思っております。まあ、幸いにして、国連の場ということが言われておりますので、そういうところでこういう問題を取り上げるのに、最も各国の意向を反映さすのに、適当な場所が与えられておるのじゃないだろうか、かように思っておりまするから、そういう問題も含めて、国連が十分にその機能を発揮すべきではないだろうか、かように思っております。
  34. 羽生三七

    羽生三七君 七〇年代の選択の問題を伺っておると、非常にこれ、時間がかかってしまいますので、端的に、もう具体的な問題に入りますが、その場合の最大の課題は、私、アジアにおいては中国問題だと思います。そこで、この中国の帰趨が、今後の世界平和、特にアジアの平和の上に非常な重要な関係、不可欠の重要要素となることは、これは言うまでもないことと思います。  そこで、第一の質問は、台湾国府が全中国を代表する形で国連安保常任理事国の地位にあることは不適当とは考えられませんかということです。これは、台湾をどうするかということは、これは別であります。私が聞いておるのは、論理的に伺っておるのです。いかがでしょうか。
  35. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、その不適当だとか適当だとかいうことをきめる前に、国連憲章は何をきめておるか。常任理事国に中華民国をはっきり指名しておる。こういう事実を認めざるを得ないのであります。
  36. 羽生三七

    羽生三七君 まあ、事実はそうですがね。実際問題として、ここに問題があるわけですね。台湾の処遇をどうするかという議論になると、これはたいへんな議論になりますから、私はそれに触れないわけですね。論理的に、この問題をとにかく論理的にはこうだと——事実関係は非常にむずかしいというなら、これは話はわかりますが、国連が認めておるからというだけでは、これは問題の解決にならぬと思う、答えに。もう一回お聞かせください。
  37. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの国連憲章は承知だということを言っておられます。また、先ほど申しましたように、私どもはサンフランシスコ条約で、中国の代表者として中華民国を選んだ。そのもとに講和条約を締結した。まあ、大体日本は国際信義を重んずる国であります。国際的な権利義務、これはどこまでも守っていくというのが日本考え方でございますので、いまの状態でとかく批判することは私差し控えたいと、かように思っております。
  38. 羽生三七

    羽生三七君 そこでですね。私、きょうは中国問題のこまかいこと一つ一つは聞きません。大局的な立場で聞くんですが、その中で、ただ一つだけ、ですね。国連における中国の代表権問題で、重要事項指定方式、これは、中国問題が重要であるということは認めます。あたりまえの話です、これ、最重要なのは。それと、このような重要事項指定方式をとるということとは、別の問題なんですね。ですから、これは中国の国連加盟を阻止するための手段ととられておる。関係者がどう考えようと、相手側にはそうとられておる。そこで、少なくとも、日本が最小限、この秋の国連総会では共同提案国になることからおりて、中国の国連参加を阻害する意思は毛頭ないということを、最小限、明らかにする必要があると思います。これは先のことだから検討を言うかもしれませんが、これはぜひこの機会に明らかにしておいていただきたいのです。
  39. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 中国の代表権の問題が重要事項であるということは、ただいまもお話があったとおりでございますが、したがって、政府といたしましては、代表権問題は国連憲章の十八条によって重要事項として扱うのが妥当である、こういう見解を持っておるわけでございます。その手続等につきましては、たとえば共同提案国になるか、提案理由の説明をするかどうかというようなことについては、これはもう、半年もまだ先のことでもございますし、手続的な問題でございますから、いま何とも態度はきめておりません。慎重に検討いたしたいと思っております。
  40. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、その慎重に検討するということは、日本の主体的な意見が固まらないということなのか、相手国の様子を見るということなんですか、票読みをした上でということなんですか、明らかにしてください。
  41. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは、日本として主体的な立場でもって検討をすべきものと考えておるわけでございます。ただ、過去の経過を申し上げますと、重要事項として取り扱おうということが関係国の中でまとまりましたときには、その関係国の中で、たとえば、ことしはどういうところが提案国になる、あるいは順番で提案理由の説明をするというようなことは、そのときになってきめられるのが通常の例でございますが、そのときには、日本政府の主体的の立場に立って慎重に検討して態度をきめたいと、かように考えております。
  42. 羽生三七

    羽生三七君 総理は、衆議院の予算委員会で、中国問題の打開は一両年は無理と、こう言っておられますが、その一両年はということは、これは一体どういう意味なのか。根本的な解決には一両年かかるという意味なのか、あるいは、吉田書簡、輸銀使用というような、そういう個々のケースについても一両年という意味なんですか、その辺がちょっとあいまいですから、ここをひとつはっきりしてください。
  43. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま外務大臣がお話ししたように、重要事項指定方式、これに代表提案国になるかどうか、こういうような問題は、ただいま、まだもちろんきめておらないということでございますが、しかし、ただいまそういうような事態があるそのやさきでございますので、いろいろ中国との間の交流ははかっておりますが、しかし、どうもなかなかそう簡単には解決できないんじゃないだろうかと、かように私は思いまして、まあ一両年と言ったことはあるいは軽率であったかもしらないが、その程度はなかなかむずかしいんじゃなかろうか、かように思っております。ただいま幸いに松村大先輩が出かけておりますし、藤山、古井君等、わが党の連中も参りまして、いわゆる協定貿易について話し合おうとしております。こういうのがどういう結果をもたらしますか、積み重ねていかないとなかなかむずかしいんじゃなかろうかと思います。なかなか基本的に触れられないのは、北京も中国は一つだと言っているし、台湾もやはり中国は一つだと言っている。私は、中国は一つだという、この考え方は、私どもがとやかく言うべき筋のものではない、これは中国の問題だと、かように思っておりますが、この問題はなかなかそう簡単には解決できないんじゃないだろうかと、実はかように思っておる。先ほども申しましたように、われわれはとにかくサンフランシスコ条約の締結の際に中華民国を一つの中国の代表者として選んだ、そこから始まっておる今日の状態でありますから、これについては国際信義は守らなきゃならない。また実際には、大陸との間の交流、これは必要なことでありますから、そういうものは進めていこうと、かように申し上げておるのであります。私は、現状を十分に双方が理解し合って、そうして認識し合って、そうして、ただいま申し上げるような問題がそれぞれ積み重ねられていくことが望ましいんではないだろうか、かように思っております。そういう意味努力は私自身も払うつもりでありますし、私は、松村大先輩が出かけたことについて、もうあの老人がほんとうにお気の毒だと、国家的な使命を果たすために老躯をひっさげて出かけられた、まことに意気盛んなものを実は感じて、ほんとうに感じ入っておるような次第であります。私は、そういう事柄がやはり両国間の関係をいい方向に導くゆえんではないだろうか、かように思っております。ことに、あとで聞くところですが、松村先輩の出かける際には、社会党からも委員長御自身がお出かけになったようであります。私は、偶然にそこらにお互いに意思の通ずるものがあるように思って、たいへん愉快に思った次第で、先だっても、予算が成立した後に、社会党で委員長にお礼を言ったようなわけですが、私は、こういうような事柄が理解してもらえれば、おそらく日中間の関係も改善されるんじゃないだろうかと思う。しかし、ただいま申し上げるように、基本的な一つの中国という問題、これは簡単にはなかなか解決できないんじゃないだろうか、かように私は思っておりまするので、それまでにできるだけの問題をそれぞれ解決していく、こういうことが望ましいんではないだろうか。具体的には私は申しません。具体的には申しませんが、ただいまのように、全体を考えて、こういう状態があってはならないんだということだけははっきりしておりますから、努力はしたいと、かように思っております。
  44. 羽生三七

    羽生三七君 私自身も、一刀両断に中国問題が片づくとは思っておりません。ただ、問題は、一つ一つ実績を積み上げていくことが必要だと思いますが、その一つ一つがないわけですね。たとえば、経済目的のための中国本土への一時帰国とか、あるいは日中渡航手続の簡素化というようなことも考えられておるようですが、これが日中関係打開につながるにどれだけの意味を持っておるか、私は疑問であります。ですから、根本的な解決が即時不可能であるにしても、前向きに一つ一つ解決していくというならば、その一つとは具体的に言えば何なのか、どれを解決したことがあるのか、また、いますぐ解決しようとする意図があるのか、ほとんど見受けられないでしょう。それを私伺っている。  そこで、いまたまたま総理からお話がありました松村謙三氏の訪中の問題、これは藤山さんも同行されたようです。政府はしばしば政府間接触ということを言っておりますね。大使級会談。時と場所等も、場合によったら相手の希望に応じてとまで言われた時期もある。それはとにかく、そうであるとするならば、大使級以上の人が現に北京を訪れておるんですから、このルートを使って日本の意思というものを伝えるなり、あるいは何か覚え書き、貿易協定の前進に役立つようなことを一つでも実行されてはどうですか。それが何もなしに、原則問題もだめ、一つ一つ積み上げていくと言うが、その一つもないという、これではちょっと聞こえないんじゃないか。
  45. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま言われるように、一足飛びに解決は困難といたしまして、今度どういうような覚え書き、貿易協定ができるか、これは一つの楽しみであります。私はまた、大使間会談、そういうものを選挙中は言ったが、その後後退したんじゃないかと言われるが、それはまだ捨ててはおりません。そういう事柄が開かれれば、これはけっこうなことだと思っております。また、そういうことを外務当局にも指示してありますし、また外務当局も、そういうことについていろいろ研究はしておるようであります。  また御承知のように、人道上の問題ですが、まだなかなか行き来が不便だ、これと交流がなかなかできないと。今度も広州交易会に日本に住んでいる華僑が出かけることはやはり問題であった。しかし大幅に今度は認められた。これなぞも一つの進歩ではないかと私は思っております。また郵便物、これも人道上の問題ですが、これなぞもいままで万国郵便条約というものがありながら、なかなか思うようにそれができておらない。電信電話のほうは比較的うまくいっておるが、郵便のほうは、小包みとなると、とにかく特別なルートを通っていくようになっておる。こういうような問題も、やはり民間だけではなかなか話がつかないんじゃないだろうかと、かように思いますが、そういうような問題が解決されることによって、これはやっぱり両国がもっと密接に結びつくんじゃないだろうか、意外なところに意外な障害がある、かように私は思っております。そういう問題を、あるいは効果がないとか、あるいはもっと大きな問題があるとか、御指摘ではあろうと思いますが、そういうことを順次片づけること、これが望ましいんではないだろうかと、かように思っております。
  46. 羽生三七

    羽生三七君 小さいことでも効果のあることはたくさんあります。いまのお話の郵便気象協定は、昭和三十五年の当予算委員会の私の質問に答えて、池田総理が郵便気象協定を結ぼうという、ここではっきり答弁をされたわけですね。これは実現しなかったけれども、すでに十年前に当時の池田首相が答えられているわけです。ですから、そういうこともですし、それから大使級会談は相手が応ずるならば、いつでもどこでもよろしいんですか。
  47. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 御案内のように、たとえば抑留者問題などもございますし、政府といたしましては中共側と日本側と、在外公館を第三国で双方ともに持っておりますところが相当の数ございますから、そういう場所において接触をしたい、話し合いをいたしたいということについては、すでに何と申しますか、アクションを起こしているわけでございます。試みを展開しているわけでございます。現在までのところ、これについて御報告申し上げるような新しいできごとは起こっておりませんけれども政府といたしましては誠意を持ってその門戸を開くように努力をいたしておることは御承知かと思いますけれども、その試みについては引き続き努力をいたしておるわけでございます。
  48. 羽生三七

    羽生三七君 最近の米中関係でありますが、この米中会談に見られるように、ニクソン大統領のグアムドクトリン以後の動きですね。これを米中ソ、この三者ゲームの中の一時的な戦術変化と見る人もありますが、しかしもっと私は根の深いものではないかと思う。したがって、何もアメリカがやるから日本もそうするということじゃありません。日本こそ基本的にそういう問題に取り組まなければならない。それで、もし総理がアジアにおいて日本が何か重要な役割り——緊張緩和についてですね、役割りを果たすとするならば、そのアジアの平和の不可欠かつ最大の要素は、先ほど申し上げたように日中打開であります。だから、このアジアの緊張要因となっているこの諸問題、たとえばベトナム問題、ラオス、カンボジア、いろいろあるでしょう。そういう諸問題に、もし平和的な話し合いについて日本が何らかの役割りを果たそうとする場合でも、この中国との国交も政府間接触もなく、つまり何ら対話の条件なしに、政府政府との間の対話の条件なしで、どうしてアジアの問題が片づけられるか、これは基本的な問題だと思う。でありますから、私は一挙に何もかもすべて片づけよという無理を言っているわけではない。しかし、少なくとも総理が施政方針演説でこれだけの格調高く、七〇年代の外交路線選択をうたっておられるならば、それに値する努力一つ一つでも積み上げられなければ、何のための施政方針演説かと問いたくなるわけですね刀ですから、そういう意味で、もっと建設的な役割りを果たすべきではないか。重ねて総理にお伺いいたします。
  49. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま羽生君の御意見どおり、政府間の交渉なしにこういう問題について政府が働く場所は見つけるわけにはまいりません。したがって政府交渉の場を求めたいということ、これは私どもはただ単に口先だけの問題で申しているわけではない。このことを十分北京政府においても理解してほしい、かように思います。そうして両国間の意思疎通をはかり、そうして現状認識について十分理解を深めていく、このことが何よりも大事なことではないか、かように私も思っております。
  50. 羽生三七

    羽生三七君 中国問題の最後に、一つここで申し上げたいことは、核軍縮と中国との関係であります。これはあとにあらためて触れますけれども、たとえば中国の核開発が進んでいきますね、ICBMが実用段階に入るのも七〇年代の半ばと言われておる。そうなると、中国の核開発が進むにつれて日本アメリカの核戦略への依存を一そう深めていくわけです。ところが、その中国の核の脅威を言うならば、その脅威を取り除く一番正しい道は、米ソはもとより、中国を含む核軍縮を実現することではないかと思います。ところが中国の国連加盟を妨げながら世界平和や軍縮を説いても、一体どれだけの意味があるのかということになる。これはあとから触れますけれども、そういう場合に、私はやはり日本アメリカの核のかさに入るという場合には、ソ連の核のこともあるでしょうが、やはり中国の核の脅威を頭に描いて言っておるのではないかと思う。そうであるならば、やはりそういう意味からも早急に中国の国際社会への復帰ということは非常に必要になるのではないか。これはあとからあらためて触れる場合がありますが、中国の国際社会への復帰ということに関連をして、こういう条件からも必要なのではないかということを申し上げたわけでありますが、いかがでしょうか。
  51. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これも御承知のことと思いますが、先般核防条約に政府が署名をすることにいたしましたときにも、政府の、内外に明らかにいたしました核の兵器の問題については、中華人民共和国政府の参加を期待する、こういう態度を明らかにいたしましたし、また、これも御承知のことと思いますけれども、昨年七月、軍縮委員会に参加しまして以来、やはりこの点に触れて、どうしてもこういう会議の場には参加を求めるのが妥当である、この姿勢は表明いたしておるわけでございます。
  52. 羽生三七

    羽生三七君 この問題、またあとから触れます。いずれにしても、この日中打開に取り組む積極的な姿勢を総理要求したいのですが、古い話でありますが、当院の外務委員会で、これはたしか昭和三十年でありましたが、私、日ソ国交回復を求めて鳩山総理に質問いたしたことがあります。そのときに鳩山総理が声涙ともに下って決意を披瀝されて、この委員会全体がみな応援するから積極的にやってくれよという非常な劇的な場面がございました。当時の条件とは異なりますけれども、私はやはりこの世界平和、アジアの平和をわれわれが探し求める場合に、七〇年代の重要な選択の一つが、やはりヤルタ体制にかわる新しい体制の、あるいは国際秩序の創造であろうと思います。その場合、特に必要なのがアジアにおいての日中打開、これが残念なことに与野党間にまだ、完全な意見の一致がない。ないが、しかしもし何らか共通点があるならば、前進に役立つことがあるならば、私はこの芽をお互いに伸ばさなければいかぬと思う。そういう意味で、今後総理が民間人や学者等を活用して、積極的にこの問題の前進のために取り組まれることを心から私要望いたしますが、御決意を承って次の質問に移ります。
  53. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま日中間の問題について基本的な考え方にお触れになりましたが、私は日本くらい、地理的に近いというだけではない、文化的にも非常なつながりがある。どちらかといえばその影響を受けている、大陸の影響を非常に受けている日本の文化であります。そういうことを考えると、何としてもこのままの状態でほうっておいてはいかぬ。いま言われるような気持ちで積極的に前向きに取り組まなければならない。その基本がいま阻害されておる。それは一体何なのか。これは申すまでもなく、われわれがサンフランシスコ条約の際に中国の代表者として中華民国を選んだということ、それが今日まで続いてきておる。やはり国際信義を守る面からも、われわれは国際の権利義務、国際条約上の権利義務、これは守っていかなければならない。そこに日本の信頼も信用もあるのだと、かように私は思っておりますので、この関係はとにかく守り抜きたい、かように思っております。しかし、中国自身が内政問題だという、そしてその内政問題が片づく、これが解決される、そのことを心から望んでやまないのであります。私は、別に北京政府を敵視しておる、こういうような考え方ではございません。だから、そういう点も十分御理解していただいて、そして本来、日中の関係は同文同種というか、そういうふうにいままでも表現されておる、その形で解決さるべきではないだろうかと思います。イデオロギーの相違はございますが、私どもはイデオロギーを越えてただいま申し上げるような関係を打ち立てるべきではないか、かように思っております。しかし、ただいまのところそう簡単には解決されない。しかし、御指摘になりましたように、一つ一つ可能なものから問題を解決することによって、そして双方が密接に交渉ができるように、そういう状態をつくりたいと、かように思っております。
  54. 羽生三七

    羽生三七君 次に、朝鮮問題に触れてお尋ねいたしますが、日米共同声明の中で、朝鮮問題についての今日までの国会答弁で不明確な点がありますが、その点についてお伺いいたします。  私のお尋ねしたいことは、こういうことであります。かりに朝鮮に何か問題が起こった場合、その場合に相手国は日本を攻撃する意思も侵略する意思も毛頭ない、そう仮定いたします。にもかかわらず、アメリカがこれを侵略国として日本からの米軍の出撃を求めてきた場合にはどうされるのか。この場合、衆議院の答弁、あるいは日米共同声明から読み取れるものは、事前協議でイエスの公算が多いということであります。そこで、私の承りたいのは、条約上の解釈ではないです。相手国の毛頭日本を攻撃する意思がないと判断されるにもかかわらず、場合によってはイエスということもあるのか、これをお伺いします。アメリカの出撃についてイエスを与えることもあるかということ。
  55. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 朝鮮半島に緊張が起こると、激化するという場合を想定いたしますと、朝鮮における休戦協定に違反して、大量かつ組織的な攻撃が南に対して起こると、あるいは休戦協定が予想していないような事態が組織的、計画的に行なわれるという場合であろうかと思われるわけでございまして、同時に、朝鮮半島における騒動というものが、日本国から見ても、日本の安全ということに直接危険性があると判定されるような場合でございますれば、これは非常に大きな問題になる。その場合におきましても、安保条約の運用としては、日本の国益の立場に立って主体的に措置をするということになると思います。どこの国も日本を侵略するという意図が毛頭ないというようなことであれば、その組織的、計画的攻撃というものは、おのずからいま申しましたような想定には入らないのではないかとも考えられますけれども、やはりこれは具体的なケース、バイケースによって判定しなければならない性質の問題ではないかと思います。
  56. 羽生三七

    羽生三七君 私がいつもこの当委員会で申し上げておるように、安全保障は相対的だということであります。その一つのケースを考えてみた場合、お隣の国に何か起こると、混乱が起こった場合、これは総理がいつも言われるように、お隣の国に混乱が起これば、こちら側にも波風が立つのはあたりまえであります。影響があるのはあたりまえであります。しかし、お隣の国は、先ほど申したように、日本を攻撃したり、侵略したりする意思は毛頭ないと判断される。にもかかわらず、日本日本からの米軍の出撃を認めたとする場合に、そこから相手国のはね返りが起こるわけです。そうなると、今度は安保五条の適用という事態に発展するわけです。この場合、隣国に何か起これば、こちらにも波風が立つのは、これはあたりまえであります。しかし、直ちに日本に対する攻撃、侵略を意味しない単なる波風で済むかもしれない。にもかかわらず、アメリカ日本からの出撃にイエスを与えることによって、これがエスカレートしていく。この二つのケースをお考えになって、どちらに安全の度合いがより多いとお考えになるか、どちらの道を選択されようとするか、それを私伺うのです。ですから条約の解釈の問題ではありません。基本的な姿勢の問題であります。
  57. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 侵略の考えはないと、これはそういう場合だと何も問題は起こるわけはないのです。いま韓国、朝鮮半島で事態が起こると、そういういわゆる波風が立つということ、朝鮮半島で波風が立つと、そういう場合に、韓国から北鮮を攻撃するのか、北鮮から韓国が攻撃を受けるのか、そこに問題があると思います。私は、いまの韓国の状態は韓国側から波風を立てる、そういう考えはないと思っております。そうすると、まず問題が起こる、波風が立つとすれば、それは北鮮側からではないだろうか、それを否定なさるなら問題は起こらないです。ここに問題があるだろうと思います。そうして波風が立ったとすると、これはいわゆる国連軍、米軍が守りにつくと、そういう意味でこの波風が立った国連軍を日本に在留する米軍が応援に出かけると、そうすると、ただいま御指摘になったように、日本から応援したんだ、その基地をまずつぶすんだと、こういう意味で第二の侵略行為が起こると、こういうことになるのではないかと思うのです。私は、その辺を十分お考えいただいて、この韓国に波風が立つという、その事態はどういう場合なのか、韓国自身が北鮮に攻め入るという、そういう事態ならば、これは私どものそれに対する態度は非常にはっきりしておる。われわれ戦争する考えはございませんし、しかし、北から南が攻撃を受けた、こういう場合だと、やはり国連軍を守るためにみずから守りにつくと、そういう場合に、日本の基地から米軍が飛び立ったと、その基地をたたけというところで、北から攻撃を受ける、これは第二の侵略行為じゃないでしょうか。私はさように考えるべきだろうと、かように思います。そういうところで、その侵略があったからといっても、なおかつ日本は慎重にそれに対処するのでございますと。あらゆる場合にイエスを言うわけではない、ノーもあり得ると。これは日本の国益から見まして、そうして問題が拡大しないように努力するつもりでございますから、そういう意味で、いままでの説明をしておる、かように考えております。
  58. 羽生三七

    羽生三七君 それで、朝鮮内部の問題と日本自身の問題と、私分けて言っておるわけですね。ですから、朝鮮の北と南の関係はいま総理のおっしゃったような傾向が多いでしょう。その場合に、韓国と北鮮との関係では問題があるでしょう。しかし、日本には一体どういう関係があるのか。日本に対して直接侵略的なことが行なわれなくとも、他国の脅威は同時に日本の脅威と感じて、運命共同体的に米軍の出撃にイエスを与えるのか、それはかえって危険を招来することになるのではないかということを言っておるわけで、一体その危険とは、日本の国土に対する侵略を危険というのか、思想上のことを言うのですか。何がつまり日本に対する安全を阻害するということを言うのか。その内容が不明確ですから、これをひとつ明らかにしてください。何が日本の安全を阻害するのか。
  59. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ほど申しましたように、これはやはり基本的には、一番基本的にいえば極東の安全なくして日本の安全というものは守り得ないという考え方、特に一衣帯水のところに起こりました戦争状態、攻撃状態というものは、これは日本の安全と区別して考えることはできない。もちろんその間におきましては、いろいろの態様が考えられましょうけれども、やはり日本立場において自主的に、さような場合の在日米軍施設、区域の使用についての日本態度というものは自主的に判定すべきものである、かように考えるべきであると思います。  なお、朝鮮半島におきましては、国連軍が国連の決議に基づいて、その任務を与えられておるわけでございます。その国連軍の行動に対して日本の協力という面がございますから、その面とあわせて考えるべきものであろうと、かように考えるわけでございます。
  60. 羽生三七

    羽生三七君 要するに私の言いたいことは、日本に対する直接の攻撃、侵略のある場合は、寝ころんで理屈を言っているなんという、そんな考えは私毛頭ありません。しかし、そうでないにもかかわらず、他国に対する問題を、直ちにいわゆる極東の平和と安全に結びつけて、日本に対する侵略と同様な解釈をして安保第五条の発動を許すようなやり方は避けるべきだと、それを私言っておるわけですね。特にわれわれは隣国に問題の起こらぬことを希望いたします。これは当然のことでありますが、この場合、今日の情勢は、かつての朝鮮戦争の起こったときと事情が違うと思う。あのときには北朝鮮の側にソ連、中国があったわけです。だが、いま今日、中ソの関係は御承知のとおりであります。また、アメリカの世界戦略にも大きな変化のきざしが見える。しかも韓国問題を日本に肩がわりさせようとさえしているんですね。こういう情勢下にあるときに、この朝鮮問題に関して、分裂している国家の一方の民族の問題だけを念頭に置いて、そしてこの対朝鮮問題全体の政策の立案の基礎に、政策の基礎にするというのはいかがかと私は思う。私は、そういう意味で、やはり北との接触にも道を開いて、現にあるささやかなルートをさらに拡大をして、戦争になったらどうするかということではなしに、戦争にならないような緊張緩和の方途をどうして講ずるかと、どうしてその条件をつくるかと、これを考えなければ七〇年代のアジアにおけるこの平和の外交路線というものは出てこないと思う。ですから、そういう意味で私はお尋ねしておるのです。条約のこまかい解釈を私はやっておるわけじゃありません。私は、これは基本的な問題だと思って、この点は総理からもう一回お伺いいたしたいと思います。
  61. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま条約上の問題も含めて外務大臣からお答えをいたしました。また、先ほどは私からも申したのでございますが、アジアの問題で一番大きな問題は、これは何と申しましても日中関係だろうと思います。これはまあ先ほど来いろいろここで論議を尽くされたと、私どもの気持ちもある程度わかっていただいたろうと思います。今度はいまの北鮮問題、これはまた中国大陸とはこと変わって複雑な問題がございます。その複雑な問題は、何といっても日本から分裂して独立したと、最近まで一緒だったという、そういうことでございます。したがいまして、いま私どもが同居しているというか、この日本国内に住んでいる韓国人、同時に北鮮系、それぞれが実はいるわけであります。まずこれらの方々がそれぞれの国の国籍に従って帰ること、これをいろいろ取りきめをしておるわけであります。ところがなかなかその取りきめが予定どおり進まない。それにはいろいろの問題もありましょう、ありましょうが、とにかくいま約束のできている約一万五千名あるいは一万七千名といっていますが、その北鮮へ帰ろうという、そういう者をやっぱり北鮮に送り帰すこと、届けることがいまの状態ではまず第一必要なことのように思っております。ところがなかなかそれは実現されない。それ以外に、やはり一時帰国の問題がある、これとも真剣に取り組んでおるわけであります。ところがわれわれが考えるより以上に南北の関係は悪化しておる、悪い、お互いに憎しみ合っている。これはあの朝鮮事変の傷あとがまだいえておらないという、そういうことであります。その関係がございますから、これは同じ日本国民であったその当時には問題がなかったが、今日戦後においては、その関係はまた南北の間にはっきり浮き彫りにされつつあります。その関係を、日本自身とすればたいへん迷惑な話ですが、日本政府に持ち込まれてただいまのような様相を呈しておる、しかし、これについては何と申しましてもわれわれが日韓の国交正常化をはかった今日でありますから、どうしてもその線に沿って問題を解決していかなければならない。それにはまず第一に、約束した事柄をまず履行することだと、そうして経済的な交流について特別な制限はございますけれども、しかしそういうことも可能な範囲において進めればいいのじゃないかと思っております。渡航の方法なども一般人の渡航はいろいろとむずかしいルートを通っている、これなぞももっと簡単なルートが開かれてしかるべきだろうと、かように私は思います。朝鮮半島との関係はそういう意味で幾多の問題がある。しかし問題は、この日韓国交正常化、そのあと始末がまだできていない、そういう際に、われわれも責任がある。また、ただいま政府が直接そういう関係を持たないまでも、日赤を通じて残っておる部分の問題の解決の衝に当たっておるというのが現状でございますから、いま御指摘になるような点も、これから順次積み重ねて、解決、その方向で進んでいかなければならない、これはなかなかむずかしい問題であります。まあ幸いにして南北間に戦乱、いわゆる武力に訴えるというようなことがない状態である、そういう間にも、その中間にある日本がその立場においてそれぞれの問題を解決すべきその役割りを果たしていくというのがただいまの状況であります。これはなかなかむずかしい問題でありますので、各党の御協力を得なければならない問題だと、かように私考えております。そういう意味で、ただいまお尋ねがございましたので、私の率直なお答えをしたような次第であります。
  62. 羽生三七

    羽生三七君 ここでこまかいことを外相に一つお伺いいたしますが、この北朝鮮から、非公式ですが、何か万国博覧会視察の申し入れがどこかへ来ておるということでありますが、政府としてはどういうお考えでしょうか。まだ公式のものじゃないでしょうか、お考えを伺いたいと思います。
  63. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 実は私も新聞で見ましたので、私のところへはまだそういう申し入れば届いておりません。したがって、はたしてそういうことが考えられているかどうかはわかりませんですけれども、ただいま総理からもお述べになりましたように、なかなかこの南北韓国の問題はデリケートな複雑な問題でもございますので、いまのところ仮定の問題でございますが、さような種類の問題に対しましては、よほど慎重に扱いませんと、そのあらわれているこのぐらいのことは適当ではないかと考えられやすい問題ではございますが、またなかなか微妙な状況のもとでございますので、政府といたしましては、できるだけ慎重に、かりにそういう話がありました場合にでも慎重な考慮を必要とすると思っております。
  64. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。朝鮮の問題で関連してお尋ねします。  一つは、先ほど総理のお答えを聞いておりますと、朝鮮でもし紛糾なり混乱があるとしたら、それは北からのしかけたものである、こういうふうに、これは仮定でしょうが、仮定して言われたようでありますが。しかし、私その答弁を聞いておりまして、どうも日本政府は北朝鮮に対して一つの偏見を持っているのじゃないか、あるいは北朝鮮の外交方針というものを十分消化しておらぬのじゃないかということを感じたわけです。これはわれわれ近くにおる者としては非常に大事な点だと思うのですね。日本政府のほうには韓国との接触が非常に多いものですから、どうしても韓国側の意見、主張というようなものが入りやすい。何回もそれを聞いていると、それだけがすべてだというふうな感じを強く持っておられるのじゃないかと思います。そこで私お聞きするわけですが、一体北朝鮮の責任者が武力で南北の統一をやるというふうなことを意思表示をしたことがあるのかないのか。何か政府側の答弁を聞いておりますと、そういうことがあるように言われる節もあるのですが、私はこれは大きな誤解だと考えております。もしあるとするならば、その文献等を具体的に提示してもらいたい。私もこの問題は非常に重要ですから、各種の文献等も見ておりますけれども、私の理解するところでは、北朝鮮の統一方針は、あくまでも平和的な統一、これはずっと長い間変わっておりません。ただし問題は、米軍なりあるいはほかのものがこれに介入して、そうしてそういう統一の作業が進められることは、これは拒否する、あくまでもそれは自分たちの問題なんだ、南北の自主的な統一をやっていこう、こういうことがたてまえになっているわけですね。だから一番大きな違いは、南のほうは米軍をそのままに置いて、そうして統一の作業を進めていこうという、このことだと思うのであります。で、北のほうは一貫して、そういう立場で責任者がたびたびいろいろな場所で演説もいたしております。そうしてどうしてもそれが不可能だということであれば、暫定的には南北の連邦制を考えてもいい。また、それが不可能だというのであれば、お互いに自主的に相談をして、その事前の人的な交流等も始めていいじゃないかと。ともかくこれはわれわれの内輪の問題であるから内輪でやろう、これがこの方針なんですね。ところがそういう方針を貫くためには、南朝鮮のほうでそのような考え方を持った政府ができなければ、これができないわけですね。したがって問題は、北から見るならば、南の政権の性格、あり方の問題だ、こういうところに今度第二段として問題が移ってくるわけであります。しからば南の政権がどうなるのか。これは北から見るならばいろいろなことが考えられるわけですね。南自身の選挙等によって政権が交代していけば一番いいでしょうが、そうでない場合も考えられるわけであります。南があまりこの大衆の運動なり統一の運動というものを弾圧すれば一それに対して自然にいろいろな抵抗が起きてくる。そういう問題に触れておるところを拡大して、南の政府の諸君なりあるいは日本政府の皆さんも、何かこの武力統一ということを考えておるように宣伝されるわけですが、これは真相をついておりません。そういうもじり方をすれば、たとえば韓国側におきましても、責任者が勝共統一、とりょうによっては非常にこれは武力行使というようなことを意味するようなことばも盛んに使っておったことがあるようですね。私はこの点は具体的に総理なり外務大臣が何を指してそのようなことを言われるのか、これを明らかにしてほしいのです。その根拠が明確になれば、それに対してまた適当なときにお尋ねもしたいと考えております。これが一つ。  それからもう一つは、総理の先ほど来の御答弁によって、できるだけ南北が対立を激化させないようにという気持ちは私もわかります。ところがせんだって里帰りが六名、日本政府によって許可をされました。ところがこれが許可になるまで韓国政府日本のその方針に対して非常に強い介入をしてきたわけですね。そのためにこの許可の日がずんずんずれていったわけなんであります。私はこの全くだれが見ても里帰りといったような人道的な問題、こういう問題にすら韓国政府があれほど強く介入をしてくる、またその介入に対して、日本政府が最終的にはこれはけっておりますが、一応耳を傾けて日を延ばしている。こういうことはね、介入するほうも受けたほうも、朝鮮の統一の問題ということを考えるならば、はなはだ遺憾だと考えるのですね。こういう問題については、もっと早くそういうことは日本政府自身がきめるべきことであり、そんなことは韓国政府がかれこれ言うてくるべきではない、これくらいにあしらうべき問題だと思うのですね。ところがそうではない。そうではないという、そういう姿勢の中に、北に対する統一方針に対しても一つの誤解と偏見というものがあるような感じを持つわけです。この二つの点につきまして、ひとつ、どういうことなのか、お答えを願いたいと思います。
  65. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まず第一の点でございますが、政府といたしましても北鮮側のいろいろの態度考え方等については、至らぬところも多多あろうかと思いますが、できるだけ正確に注意深く情報を収集し、かつ分析することにつとめております。ただいま亀田さんからお話のごとく、最近において金日成総理その他から、武力による統一とか、南に対して武力攻撃をかけるとかいうようなことを公式に発言されておる事実はございません。ただ同時に、これは国連等への報告にも出ておりますように、ゲリラあるいはその他の活動や行動というものもございますことは、これは明らかにされているということも御承知のとおりでございます。それから同時に反面、勝共統一というお話も出ましたが、これも韓国政府として、あるいは政府の公式の見解として勝共統一というようなことは使われておらぬように承知いたしております。それから、申し上げるまでもないところでございますけれども、韓国政府とは日本としては正常な国交を結んでおりまするから、この親善関係というものは、条約がございまする以上、誠実に親善関係を育て上げていきたいということを、外交の基本政策にいたしておりますことも、あえて申し上げるまでもないと思います。  それから、六人の里帰りの問題でございますが、これもただいま御指摘のとおり、これは決定をいたしました。やはりこの問題についても、先ほど来御論議がございますように、いろいろの出入り——出入りというか、意見の出入りがあることは否定できませんけれども、私は人道的の立場から、こういう種類の問題については、日本が主体的に決定すべきものである、こういう方針で実現に踏み切ったわけでございまして、多少の時日がかかりましたことは、御指摘のとおり私もあえて否定をいたしませんが、結局基本的に微妙な、複雑な関係にあるというその状態のもとにおいて、この種の問題を処理してまいりますのには、政府政府立場においていろいろと苦心がございますことも、あわせて御理解をお願いいたしたいと存じます。
  66. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま外務大臣からお答えしたとおりでございます。私、前段で亀田君からいろいろ御忠告のあった点、これは気をつけて今後ともまいりたい、かように思っております。国際間の問題で偏見や誤解を持つということ、これがたいへんなことだ、結果としてたいへんなものを招来する、かように思いますので、そういう点については、特に今後とも注意していくつもりでございます。
  67. 羽生三七

    羽生三七君 この問題はぼつぼつ終わらせたいと思いますが、要するに、私が言いたいことは、相手国が毛頭日本に対して攻撃する意思のないような場合に、みずから求めてこの緊張をエスカレートするような役割りを日本が果たすべきではないということを言いたいわけです。したがって安保の場合でも、たとえばベトナム人民が何も日本に危害を加えるわけではないでしょう。日本の一億の国民がだれ一人、ベトナム人民が日本に危害を加えるなどとは思っていない。にもかかわらず、極東の平和と安全の名において、いま沖縄がアメリカの施政権下にあるという事情があるにせよ、政府アメリカの出撃を許しているわけですね。返還後の沖縄から今度アメリカが、なおかつ戦争が続いておった場合、ベトナムが続いておった場合に、どういうことを求められ、日本がこれに対してどういう対処をするか、これは別な問題でありますが、いずれにしても、私は直接日本に攻撃を加えられない限り、日本アメリカの出撃を自由に許して、安保第五条の発動となってかえって日本の危機を招来するような政策を断じてとるべきではない。ケースバイケースと言われましたけれども、これは非常に重要な点でありますから、もう一点だけこの問題をお伺いして、この問題を終わりたいと思います。
  68. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどもお答えいたしましたように、日本が、韓国で事変が起きた場合、これがただいまのところは国連軍がいる。そういう立場でございますから、国連軍のほうから問題を引き起こすことはないだろうと、まあ普通に想像される。とにかくしかし、いずれにしても事件が起きた、そうすると、国連軍を応援する、そういう形で必ず日本在住の米軍も発駐したい、そういう期待を持つだろうと思います。そういう場合に、先ほども申したのでございますが、日本の国益に照らしてわれわれは慎重にそれに対して対処する、こういうことをお答えしたはずでございます。これは速記をよく読んでいただきたい。そういう場合に、ただいま羽生君の御指摘になりますように、われわれが問題に巻き込まれないことが最も必要なことだと思います。また、事件そのものがこれは非常に小規模で、これが拡大する心配がないというような場合に、そういう際に出かけることは特にわれわれが慎重に考えなければならぬ、かように思いますので、御注意のほどは十分心得てまいりたいと思います。
  69. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 羽生君の質疑の途中でありますが、午前の審査は、この程度にとどめます。  午後は一時再開することとし、これにて休憩をいたします。    午後十一時五十八分休憩      —————・—————    午後一時十分開会
  70. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ただいまから予算委員会を再会いたします。  午前に引き続き、質疑を行ないます。羽生三七君。
  71. 羽生三七

    羽生三七君 午前中の質問の総括みたいなことになりますが、アジアの平和を招来するには具体的にどうしたらいいかという問題であります。そのためには、私はベトナムの和平を早急に実現させて、インドシナ三国の中立化が、特に北ベトナムの同意が得られて実現する可能性があれば、アジア全体に与える影響は非常に大きいと思います。アジアには政治体制や政治的な信条はとにかく、軍事的には中立を希望する国が相当数多くあると思います。したがって、アジアにおける諸国の動揺や不安をどうしたら防ぐことができるか、これを日本は真剣に考えるべきではないかと思います。それには、大国の軍事的介入を排除することが必要だと思います。そういう意味で、中立地域の拡大、新しい国際世論——すなわち、内政不干渉、民族自決の国際世論が形成される必要があるかと思います。そういうことがアジアの平和の中核となり、また軍事的意味での緩衝地帯ともなるのではないか、そういう意味での役割りが日本にあってもいいのではないか、七〇年代における日本の選択は、およそそういうことであるべきではないかと私は思います。政府も、安保繁栄論や安保による安全保障だけを考えるのではなく、われわれもまた、危険な側面だけを指摘するのではなしに、どうしたらこの緊張緩和を具体的に実現できるかをさがし求めなければならぬと思っております。たとえば、西側のフィリピンのロムロ外相すら、先般こういっております。米国がアジアから手を引いたあと、日本が軍事・経済的にその肩がわりをすることは望まない。アジアの安全は米・ソ・中国・日本の四強国が不可侵・不侵略協定を結ぶことによって得られると信ずる。一つの大国がアジアを支配する時代は去った。この地域の安全は地域協力にかかっている。こうフィリピン外相は述べております。したがって、日本もアジア地域における平和の安定の具体的な構想を持つべきではないか。そうでないと、総理が言われる、日本は前例のない重みを持って世界の中に入る時代が来たという、そういうことから言いますと、経済大国になることだけが何か日本の重みみたいに受け取れます。したがって、総理は、施政方針演説にあれだけいろいろなことに触れられておるのですから、いま私の述べたようなことも一つ考え方ではないか。総理は、具体的に、先ほどは中国問題を中心に申しましたけれども、アジアの真の安定のためには、そういう意味の役割りももっと積極的に果たすべきではないかと思いますが、いかがでありますか。
  72. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま御意見をまじえてお述べになりました、また、お尋ねでございました。私も、ただ単に日本は経済的大国になるというだけで事が済むとは思いません。それかといって、日本が軍事力を強化する、こういう方向であってはならないと思います。私が指摘したように、これからは多元的な関係で国際の緊張が緩和される。そうして平和がもたらされる。その多元的な一員として、日本のような軍事力を持たない国、これがやはり一役買うべきではないかと思っております。私は、そういう意味で、日本一つの存在の意義がある、かように思っておりますし、また、それは高く評価されるのではないかと思います。  そこで、御提案になりました米・ソ・中・日、そういうものが不可侵条約を結ぶという、それも一つの方法かと思いますが、しかし、直ちにそこまで踏み切れないところのものには、現在の中国問題が横たわっておるわけであります。私は、軍事的な強国である米ソ並びに北京政府というもの、これらの関係について、これから、平和の維持、平和共存という、そういう方向へ踏み出すことが必要なんではないかと思っております。まあ幸いにして今日までのところ、米ソの間では一応平和共存の形ができております。しかし、もちろん、米ソといえども、その二国間の問題が中近東においてやはり一つの問題をかもし出しているし、また、ベトナムについても、必ずしも意見は一致しておらないし、ラオスにおいてもしかり、こういうことを考えますと、この平和共存関係もまだたよりにはならないと、しかし、この線はもっと大きく、また、深めていかなきゃならないと思います。  そこで、中国の問題ですが、大陸にある中共政府、これがいまや重きをなしつつあること、見のがせないこと、これはもう国際平和の面から申しまして当然でございます。いままでは一枚岩だといわれた中ソの関係が、最近の国境紛争をめぐっていつ火をふくかわからないような状態になっております。私は、そういう心配はないまでも、少なくとも中ソ間に緊張のあること、これはいなめない事実だと思います。私は、まあ両国がその関係を早く清算すること、そうして中国が各国から喜んで迎えられるような、そういう状態にするためにも、ただいまの中ソ紛争、これは解決しなければならないと思っております。が、幸いにして米中間では、一時とだえておりました大使間の意見交換の場が成立したようでありますから、そのほうは最近になってやや改善されたと、こういうことは言えますが、一方で中ソ、その間においては最近は悪化しておる、緊張が激化しておる、こういう状態にあること、このことは私どもたいへん心配にたえないのであります。  私は、ただいま御提案になりました日本をも含めて不可侵条約を結び得るような、そういう状態になれることをとにかく喜んでおる一人であることは、ここではっきり申し上げてもさしつかえないと思いますけれども、ただいまの状態で直ちにそこまではなかなか進み得ないのじゃないかと思っております。そういうことを考えたときに、日本が果たすべき役割り、国際関係が多元的になったといっているその立場は、米国がグアム・ドクトリンを忠実に実施した場合に、これにかわって役割りを果たすということは、これはできないことであります。だから、日本が平和憲法のもとでやり得ること、これはいまアジアの諸国が心配するような、米軍が撤退すればかわりに日本が出てくるんじゃないか、さような心配があるならば、そのことはありませんと、こうはっきり答え得ることじゃないかと思います。  ただ、私どもは、経済的な強国だというそのこと自身、今度は経済的にエコノミック・アニマルというような批判を受けないで、共存の形、共栄の形、その方向で寄与すること、これがわれわれのなすべきことではないだろうかと思います。ただいま申し上げて、直ちに御提案になりました御趣旨には直接は答えておらないが、私はそういう意味で、日本のなすべき問題が大いにあるのではないだろうか。いまポスト・ベトナムということがしばしばいわれております。そういうような場合に、東南アジア諸国に対して日本が果たすべき役割り、あるいは米軍が東南アジア地域から撤退したと、そういう場合に、それぞれの国が経済的に自立ができる、それの助けをするということ、これがやはり内乱を未然に防止し、それぞれの政情を安定さすゆえんではなかろうか、かように思います。私は武力による力でなしに、お互いが繁栄への道をたどること、そういう意味で、日本も救いの手が伸べられるのではないか、かように思っておる次第であります。
  73. 羽生三七

    羽生三七君 次は、防衛問題で少し伺いたいと思いますが、これも本質的な問題に入る前に、一つ伺っておきたいことは、自衛隊が発足以来、その任務は通常兵器によって局地戦に対応するものと、こういうように定義づけておりますが、局地戦とは一体何をいうのか、これを一つお聞かせください。
  74. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 局地戦ということばは、グローバル・ウォーに対してローカル・ウォーというのを訳したことばのようです。世界全体の戦争、大戦というものに対して、一局部で起こる戦争、そういう意味のようであります。私は、しかし、いままで防衛庁が通常兵器による局地戦ということばを使ってまいっておりますが、これもいいと思いますが、むしろもっと正確には、通常兵器による限定戦というほうが正確ではないか。限定戦という意味は、まず目的において防衛に限るということ。それから第二に、手段において核兵器を使わない、攻撃的兵器を使わない、防衛の兵器に限る。それから第三番目に、場所は本土防衞である。そういう意味で、限定戦というほうがより正確ではないかと私は考えておりますが、いずれもう少し研究した上で、局地戦ということばがまずければ直したほうがいいだろう、こう思います。
  75. 羽生三七

    羽生三七君 ところが、ベトナムは局地戦、限定戦争といっておりますね。ベトナム人民にとってはこれは全面戦争です。それだから、戦争の定義は局地戦でも限定戦争でも、それは世界的に核と関連さしていろいろな言い方がありますが、その国民にとっては全面戦争ですね。ですから、これは私は、今後の自衛隊の運営にも関係するけれども、非常に問題があることだと思います。  そこで本論に入っていくわけですが、自衛隊の本質、性格については、第四次防との関連であとから承りますが、その前に、日本の防衛計画がどのようなものかを知るためには、その背景をなす国際情勢をどう認識されておるか。先ほどまあ総理、外相等からお話がありましたが、防衛庁としては今日の国際情勢をどのように認識されておるのか。これが結局あとからお尋ねしていく第四次防にも関連することだと思いますので、まずその基礎をなす国際情勢についてお聞かせいただきたいと思います。
  76. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 現在の情勢下においては世界大戦の可能性は非常に少ないと思います。しかし、代理戦争とか、あるいは局地的紛争というようなものは、世界各所に起こり得る。現に中近東やベトナムに起こっておるとおりでございます。そういうことは将来も起こり得る。  それから、日本を取り巻く情勢を見まして、日本に対する侵略の可能性というものは顕在的には非常に少ないように思います。しかし、潜在的にはないとは言えない。それでわれわれといたしましては、ただいま申し上げましたような限定的意味における防衛力の整備を考えていく段階であると思います。  それから、じゃ日本——われわれの周囲にどういうようなものごとが起こるであろうかと予測いたしますと、最近の国際情勢から見ると、政治と軍事が非常に混在してきておりまして、戦争があったり交渉が開始されたり、交渉があったりまた戦争があったりというような、政治と軍事とが非常にミックスした形のものがやはり考えられる。そういう意味において、政治的戦争とかあるいは軍事的政治とか、そういう非常に複雑な事態の世の中になってきておるのではないか、そう思います。われわれはそういう事態に対処して、直接侵略と同時に間接侵略というものも、相当、われわれは国家の安全保障の面において考えていかなければならない、そのように心得ております。
  77. 羽生三七

    羽生三七君 日本の地理的条件あるいは政治的条件、国際的条件からいって、いわゆる先ほど御説明のような局地戦が容易に起こるとは思いませんけれども、それはとにかく、自衛隊発足以来の歴史や今日までの定義づけを振り返ってみますと、今日の自衛隊は相当大きな性格変化を示しておると思います。たとえば、今日まで日米安保が主で自主防衛が従といわれてきたことは、これは確実であります。特に、アメリカの極東戦略との関連で、従来の通常兵器中心の戦略から核抑止力に依存する新たなる戦略への移行が見られておることは、これもまた確実であります。そこで、アメリカの極東戦略との関連で日本の自衛隊はどのような任務を果たそうというのか。最近問題となっている自主防衛論との関連ですね、さらには第四次防の計画とも関連をして、この際、自衛隊の性格、任務あるいは防衛の基本計画、こういうものについて、従来の歴史を振り返ってみて、新しいもし性格変化があるならば、それに基づく計画をひとつ御説明いただきたいと思います。
  78. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 性格変化はないと思います。これは自衛隊法にきめられておりますとおり、わが国の直接・間接侵略から平和と独立を守るという任務を付与されておるのでありまして、この任務は自衛隊設置以来今日といえども一貫して変わっていないと思います。  ただ、日本の安全保障は安保条約とのコンビネーションでいままで考えられておりまして、自衛隊ができました当初は日本の力が非常に微弱でありましたために、安全保障条約にたよる部面が非常に多かったわけでございます。しかし、次第に自衛隊の力がふえるに従って安保条約も改定され、たとえば、昭和三十五年におきましては内乱条項を削除するとか、あるいは、今度到来しましたように期限を十年にしてみるとか、あるいは地位協定、行政協定を改定をして裁判権を回復するとか、そういうような日本の自主性の回復が行なわれたと思うのです。それから十年たちまして、この六月に自動継続というふうに変わってまいりました。安全保障条約のほうが国力の増大につれてそういうふうな変貌を遂げるに従い、また、国力の増大の中には自衛力の整備も入ってまいりますが、それに応じて、いままでなかった機能が復活してくると申しますか、自然体に戻るという形で本来の自衛隊の機能が出てきた、そういうふうに思います。  それで、自動延長、自動継続後におきましては、さらに自主防衛の必要性というものは出てくるわけであります。なぜなれば、自動継続後は、一年の予告で安保条約を一方的に廃止することができるという状態に入るからでありまして、そういう面から見ましても、自主性を持った防衛力を整備する必要というのは、いままでより出てきておるわけであると私は思います。ただし、不必要な誤解を国民及び国際的に与える必要は毛頭ないと思いますので、私は自分流に考えまして、自主防衛五原則というようなものを実は考えております。それは第一に、憲法を守り国土防衛に徹するということ、第二番目は、外交と一体、諸国策と調和を保つ、第三番目は、文民統制を全うする、四番目が、非核三原則を維持する、五番目が、日米安全保障体制をもって補充する、こういう五原則を基準にして自主防衛力を順次漸進的に整備していく、こういう考え方に立ちたいと思います。いままでややもすれば日本国民の間には安易な気持ちがありまして、ばく然と米軍にたよっておればいいんだ、オールマイティであると、そういう考えがありますが、これは独立国家としてとるべき態度ではないのでありまして、ばく然たる期待であるとか、無原則的依存というものは、この際払拭して、日本が分担すべき機能、それからアメリカが分担すべき機能、これを明確にして、そして自分でやるべきことはきちんとして自分でやっていくという限界を確立し、また協調提携する吻合の分野も緊密に連絡して確立していかなければならない、そのように考えておる次第であります。
  79. 鈴木強

    鈴木強君 ちょっといまの問題で関連。いま防衛庁長官から、自衛隊の性格については変わっておらないという最初にお話があった。そのあとに五項目をあげられましたが、どうも性格が私は大きく変わっているように思います。関連ですから簡単に御質問いたしますが、実は一昨日の二十一日に、横須賀市の小原台の防衛大学校で卒業式がございましたね。その卒業式に総理大臣も御出席になっているようです。で、私はきのうの実は新聞を見ましてちょっと驚いたんですが、その卒業式の席上、大森校長が次のような式辞を述べておりますね。「現在、新しい軍人像を考えることは行き過ぎではない。いままで旧軍と自衛隊、いわんや旧軍人と自衛隊員を関連づけて考えるのはタブーだった。しかし最近、旧軍人を先輩、自衛隊員を後輩という考え方が出てきたことは喜ばしいことだ。明治十五年の軍人勅諭には、いくつかの徳目が書かれているが、これらはいまなお、軍人の基礎的な徳目であると考える。われわれは人間性の尊重と軍人としての職能を調和させて、新しい軍人像を作らねばならない。」、こういうふうに述べておるんです。それで、これは私は新聞の掲載するところを引用したわけですから、事実この耳で聞いておりません。したがって、内容についてはまた後ほど確認をしたいと思いますが、少なくとも新聞が報じているような内容とすれば、私は現在の憲法あるいは自衛隊法から照らしてみて重大な疑義を感ずるわけです。いま、くしくも防衛庁長官がおっしゃったような自主防衛という、日本の国は日本人で守るんだという、そういう考え方の中にひそむ考え方がここに出ておるんではないでしょうか。したがって、私は防衛庁長官と総理大臣から、御出席をしておられたのですから、自分たちの考え方と同じだというふうにこの式辞を受けとめておられたかどうか明らかにしていただきたいと思います。
  80. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大森校長の話は全体として聞いておりますと妥当な話であると私は思います。一部そういう軍人勅諭であるとか、軍人像ということばは出ました。出ましたけれども、あの人は明治の人でありますから、自分の考えていることを表現するときにボキャブラリーが少ないので、そこでああいうことば以外に発見できなかったんではないか、非常に言いたかったことは、要するに規律を守るとか、礼儀を尽くすとか、国家に忠節であれとかいう徳目については変わっていないんだ、人間として、国民としてそういうものは今日でも大事なんだと、そういうことを実は言いたかったんだと、私そばにおって聞いておりました。それで、今日の自衛官は外国でいう軍人とは違った存在であります。たとえば軍法会議というものはございません。それから第一、交戦権がありません。そういう意味において防衛に徹する、まあいわば防人みたいなものなんです。その防人みたいなものを、大森さんはほかにことばがないので、ああいう表現でやったんだろうと私思います。で、自衛隊では、自衛官の心がまえというものを定めておりまして、その内容としては、一、使命の自覚、二、個人の充実、三、責任の遂行、四、規律を厳守、五、団結の強化、こういう徳目を教えているわけです。この中には前の軍人勅諭と似た徳目、内容自体から見ますと似ているものもあるわけであります。その点を言及して言ったのだろうと思います。  それから先輩、後輩との関係は、同じような、国を守るという点において一致しておる職分でもありましたから、また自衛官の中には陸大や海兵を出た人もまだ残っておるわけであります。上級職にかなりおります。そういう面からも自然的な愛情といいますか、感情といいますか、そういうもので親しみの気持ちでああいう表現を使ったのであって、今日の自衛官の確立と申しますか、身分というものは昔の軍人とは違ったものであるということを明確に認識して教育していきたいと思っております。
  81. 鈴木強

    鈴木強君 総理の前にもう一つ。これは総理大臣の前にもう一つ防衛庁のほうに聞きますけれども、従来われわれは、この国会を通じて、戦力のない軍隊から始まった今日の自衛隊ですから、毎年この論議はやってきておるのですね。ところが政府の一貫した答弁というのは、自衛隊は軍隊でない、自衛官は軍人でもない、したがって、特別職の公務員にすぎないのだ、こういうことをおっしゃってきた。ですから、私は先輩、後輩とか、そういうことにはあまりこだわりませんけれども、ここで軍人とか、あるいは軍人像という、そういうことばの表現そのものがむしろ問題だと思うのですよ。ですから、憲法上からいっても、自衛隊法からいっても適切なことばでないと思うのですよ。それはあ、なたは、大森さんは古い人だからほかのことばを知らないで言ったのだと、こうおっしゃっておりますけれども、そういうことでないと私は思う。やっぱり時代に即応するフレッシュマンでなかったら校長はつとまりません。旧憲法の軍人精神を体して教えるような者が校長として適切であるかどうか、これは疑問を持ちますよ、私は。そういう点が、もし私が心配するような点にあるならば、これはひとつ改めてもらわなければ困ります。そういうことを申し上げておるわけですよ。一つ一つのことばのあげ足をとって言っておるわけじゃない、基本を流れることがわれわれの心配しておることと違いませんかということを私は聞いておるわけだから、違わないなら違わない、したがって、そのことばが適切でなかったら、その点は指導するとか、そういう答弁をしてもらわなくちゃ中曽根さんらしい答弁にならない。だから総現大臣に聞く前にもう一回あなたから承りたい。
  82. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 本人の真意は、私が申しましたようなことであることは間違いございません。しかし、いやしくもそういう誤解を与えたことは本人の落ち度でございまして、よく注意いたします。
  83. 鈴木強

    鈴木強君 総理大臣どうですか。
  84. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま長官から詳しくお答えをいたしましたので、私からつけ加えるものがございません。ただ、私もその席にいまして、最初、校長何を一体しゃべり出すのかなと思ったのでございます。おそらく、あの席に見えておりました民社や公明党の方も、最初ちょっとびっくりなすったのじゃないかと思っております。しかしながら、全体としては、ただいま中曽根君が答えたような心で締めくくっております。私は、それでけっこうだと思います。私は、明治の人間だというばかりでなく、私の好みのような卒業式であったということがけさの新聞にみんな出ておりますが、私の好みというよりも、たいへん規律正しい卒業式であった、私はそこにこそ意義があるのではないかと、かように実は思っておる次第でございます。ただいまの点は、中曽根君が詳しくお答えしたとおりでございます。
  85. 羽生三七

    羽生三七君 次に、防衛と関連のあることですが、政府が非核三原則を認めながら核非武装宣言を拒否している理由は一体何か。これは核の平和利用なら核拡散防止条約で、今後の国連の中でも、平和利用についての権利をあくまでも留保することを明らかにすればいいのですね。この問題は一体どういうことなのか。  それから核と関連して、アメリカの核戦略あるいは核抑止力に依存するということは具体的にはどういうことを意味するのか、つまりICBMとか、ポラリスとか、要するにアメリカの、そういう日本の国土以外の地域におけるアメリカの核に依存をするということだろうと思う。そうすると、その場合に日本政府なり自衛隊ですね、防衛庁と一体どういう話し合いをしておるのか、何も話し合いなしに行なわれておるのか。アメリカの核抑止力に依存をするのが基本戦略であるというならば、その関係を明らかにしていただかなければならぬ。最初の点は総理、あとの点は防衛庁長官から承りたい。
  86. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、日本には原子力基本法がございます。これではっきり軍事的には核は使わない、平和的利用のみ許される。そういう法律がちゃんときまっております。もちろん持ち込みについては、これを禁止するものはございませんけれども、ただいまのような原子力基本法を考えますと、その上にさらにもう一度決議をする必要はないんじゃないか。法律としてはっきりしている。かように私は考えて、ただいまその必要なしと、かように申しておるわけであります。
  87. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 抑止力と申しますのは核兵器の脅威、それから通常兵器による防御力、戦闘力、そういうもののコンビネーションで現在の抑止力は構成されていると思います。日本の場合には、本土防衛に関する限り、日本が防衛力を持っているということは、ある意味においては抑止力にもなっていると思います。日本としては核に対する問題については、日本はそういう機能は持てない。アメリカその他に依存することですけれどもアメリカの力だけで抑止力ができているわけではない。ソ連がややそれに近いものを持っているから抑止力がここで生じておるので、これが非常に不均衡である場合には危険性もまた出てくるかもしれません。そういう意味において、抑止力というのは相互的にバランスでできておるものだろうと私は思います。それは一般的な力としてあるので、どこの潜水艦がどうであるとか、どこのICBMがどうという問題よりも、やはりその国々の戦争に関する意志力、これを回避しようとする政治の力、そういうものに著しく依存しているものではないかと私は思います。日本に関する限りは、国土防衛ということを通常兵力で防衛の限度において行なうという意味に徹してやっていきたいと思っておるわけでございます。
  88. 羽生三七

    羽生三七君 核問題でアメリカ日本の防衛庁との間で話し合いがあるのか、核戦略上の問題で、それをお聞きしておる。
  89. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 具体的な話はございません。これは政治家の方針として、その部面はアメリカに期待するという考えを持っておるのでありまして、どの場合にどのように相手に期待するというような具体的な話はございません。
  90. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、日本アメリカの核戦略に依存する限り、この戦略上の必要ということで、将来、日本への核の配備を求められても、いかなる場合でも絶対に拒否すると、これは間違いございませんか。
  91. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そのとおりでございます。持ち込みも許さない。はっきり申し上げております。
  92. 羽生三七

    羽生三七君 そこでグアム・ドクトリンとも関連して、アメリカの海外基地をはじめとする原子力削減計画、これは漸次進行すると思います。そこで、要するに日本の防衛計画は、核についてはアメリカにゆだねて、他の通常兵器については当面アメリカと共同防衛でいくけれども、目標としては自主防衛力を強化して米軍の駐留を必要としないところまで持っていくのか、このことはいかがですか。これをはっきりさしていただくと自主防衛というものはよくわかると思います。
  93. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本は防衛についても攻撃的な兵力は持てません。この部分は友好国であるアメリカに期待しなければできないことであります。そういう意味においてアメリカの兵力が完全に日本から撤去するということはなかなかむずかしい状態だ、なぜならば日本を防衛するためにもある程度の脅威、相手に対する打撃力というものがないと防衛できないという可能性も将来皆無であるとは言えないからであります。そういう意味において安全保障条約というものはきいている要素がございます。しかし、日本に関する限りは本土防衛という、そういう謙虚な面で維持していくと、こういう考え方であります。
  94. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、そういう考え方でいくと、アメリカの戦力に依存することから脱却する時期はないのじゃないですか。それは日本が攻撃的兵器を持つといえばこれは別ですが、それはできないのですから、まあできるようなこと、衆議院でも答えられておりますけれども、それはとにかく、そうすると、もういつまでたっても、この日米安保は恒常的なものにも受け取れるが、一体それはどういう条件のときに米軍の駐留を必要としない条件ができるのでありますか。
  95. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) すべて防衛は相対的でありまして、環境の力に左右されるところが非常に大きいと思うのです。したがって、環境がそういう攻撃的兵力を必要としないという環境ができれば要らなくなるかもしれません。しかし、そういう環境ができなければ要ると、そういうものであるだろうと思います。いままでの日本の防衛力の整備状況を見ますと、防衛のこと自体についても足りない要素が実はあります。よく言われておりますが、何カ月もつとか、何日もつとかよく言われております。それは防衛に限った場合でも足りないという要素があるわけであります。そういう部面はやはり自主的にこれを充てんしていく、そうして、一応防衛に関することぐらいは、本土防衛に関することぐらいは自分で、自前でやれるというところまでいきたい、ただし、それは年月をかけて、国力、国情に応じて漸進的に整備していくと、こういう考え方であります。
  96. 羽生三七

    羽生三七君 先ほどの御答弁の中にも、この核に関連して力のバランスということがありました。だから、この防衛力の問題でも、結局相対的ですから、これは際限のないことになってきますね。だから、私はこの力の均衡論については非常な疑問を持っております。しかし、これをやっておると、これ持ち時間がないものですから、はなはだ残念でありますが、力の均衡は際限のない矛盾の拡大再生産につながります。これはもう結局軍縮以外にないのですが、これはまた時間があればあとからあらためて触れますが、そこで、この防衛力の限界ということがいつでも問題になっております。これはもし具体的な制約がなければGNPの何%とか、あるいは国民所得の何%とか、予算総ワクの中の何用とか、そういう議論では私は適当でないと思う。いずれは、いまは自由陣営では世界第二位、ハーマン・カーンによれば、いずれは世界第一位にGNPがなるであろうと言われる日本が、ただ予算の総ワクの中とか、あるいはGNPの何%とやっておれば、これはどこまででも日本の自衛力というか、防衛力が伸びていく、したがって、ある一定の限界というものがあっていいんではないか、またなけりゃならぬと思います。なかったらこれはおかしな話です。それは一体何の意味の憲法かということになる。そういう意味で、一体、特に国力国情に応じて考えるなんということは、そんな抽象的なことでは私はだめだと思います。そういう意味で、このアメリカにかわって日本がアジアにおいて憲兵の役割りを果たすわけではないでしょう。したがって、この際アジア諸国の不信を買わない意味でも、先ほど総理からある程度お話ありましたが、私は一応の限界を設けるべきだと思う。また、その意味で川島さんがその必要性をある程度説かれたのじゃありませんか。防衛力の限界についてひとつお聞かせいただきたい。
  97. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) お説のように、何%というような数字を設けることは私は必ずしも適当であると思いません。なぜならば、日本はGNPが相当大きく増大している国でございますから、パーセンテージだけでこれを考えることは、他とのバランスを失する危険性もあると思います。そこで、政治的な秤量の一つの基準としまして、社会保障費とか、公共事業費とか、あるいは教育研究費との比率を見比べながら、どの程度がこの場合適当であるかというはかりを持っていくのが一つのやり方であるだろうと思います。それから、日本の本土防衛をできるだけ自力で回復していくという範囲についても、大体どの程度で一応やれるか——現在の客観情勢から見て——というめどをつくることは、私は必要だろうと思っております。それが五年かかるか、十年かかるか、十五年かかるか、常にトライアル・アンド・エラーで修正しながら持っていけばいいだろうと思っております。今度、いま四次防を策定しようと思っておりますが、四次防策定に際しましては、一応のそういうメルクマールみたいなものも考慮しつつ策定していきたいと考えておる次第であります。
  98. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、その四次防についての大綱をお聞かせいただきたいと思います。これはある程度衆議院にも出ております。それから、自民党の調査会ですか、ここでも若干の所見を開陳されたようですが、この機会に四次防の大綱についてお聞かせいただきたいと思います。
  99. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 四次防につきましては、三次防の延長でいく部面と、それから三次防の延長でいくのでは適当でなく、また新しい要素をつけ加える部面も必要ではないかと思います。大胆に批判しますと、私はしろうとでありますから、いままでの防衛計画や旧軍の思想というものを見ますと、そういう痕跡が必ずしもなくはないという気が実はしておるのです。たとえば師団というような考え方にしましても、日本の関東軍が満州で平原作戦をしたときのような考えの痕跡が残っていやしないかどうか。日本はこの島の中で、非常に狭いところで運用するわけでありますから、機動力が非常に重要であり、非常に複雑な機能を持った防衛力が私は必要だと思うのです——精巧な兵器による、小型でもいいんです。そういう部面を関東軍の作戦のようなものでやると、非常に大きなもので、平原を駆使するというような思想が、いままでは日本の軍にあったと思います。そういうものは残っていやしないかどうか。あるいは海にしますと、海軍は艦隊渡洋決戦ということを考えていたわけであります。正面が太平洋であったわけです。そうすると、どうしても巡洋艦だ航空母艦だという大艦・巨砲主義、あるいは機動部隊というような、そういう思想が出てくるわけであります。しかし、日本のこの列島を防衛するという面を考えてみますと、そう大型のものばかりでないし、むしろ小型の高速ロケット艇とか、あるいは海峡を管制する力であるとか、日本特有のそういうものが強く出ていいと思うのです、そういう部面について。これは新しく加える要素がありゃしないかどうか。あるいは人員にいたしましても、陸は私はもうこの程度で当分いい、ふやす必要はないと思っていますが、海、空についてはまだ多少整備していく必要はあると思っております。しかし、その教育・訓練にしても、その質を高めるということが七〇年代は非常に大事でありまして、少なくとも民間の工場による技能労働者と同じぐらいの原単位の効率と申しますか、精巧度、技術力を持った人たちに育て上げる必要がありゃしないか。あるいは一般教育、教養の面においても、ある意味において国民教育的な場でもあるわけです。そういう部面についてレベルを高めるという要素は必要ではないかどうか。そういう新たにつけ加える要素等につきましても、いろいろいま検討してまいりたいと思っているわけでございます。
  100. 羽生三七

    羽生三七君 日本の自衛隊の力はアジアで現在どの程度のものか、世界ではどの程度にランクされておるのか、お聞かせいただきたい。私、資料を持っておりますが、間違うといけないから、そちらから御説明いただきたいと思います。
  101. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本の自衛隊の力は、陸軍につきましては、兵員数で言いますと世界で二十三番目になっております。アジアでは十番目であります。それから海軍につきましては、世界では十三番目、これはトン数であります。アジアでは四番目でございます。アジアでは、海軍につきましては、中共、インドネシア、中華民国、日本の順です。それから空軍につきましては、世界では十四番目、アジアでは、中共、インド、それから日本と、三番目になります。
  102. 羽生三七

    羽生三七君 総合戦力では中国に次いで第二番目だと思いますが、そこで、これは昭和四十年の当参議院予算委員会で、当時の小泉防衛庁長官はこう答えております。つまり、自衛隊は、大体においては通常兵器による局地戦的なことはわが自衛隊の任務であると、またその程度のことは現在の防衛力において可能であるかと思います、こう答えております。これどうお考えになりますか。その後何か緊急の危機が起こっておるのでありますか。
  103. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは当時アメリカに期待する部分をかなり多く考えての御発言であったと思います。必要最小限のものは整えているとあとでも御答弁になっておりますが、そのときにはかなりアメリカに期待する要素が防衛自体についてもあった。しかし、今日のように安保条約が自動継続されるという段階になれば、アメリカに期待する部分をできるだけ減らして、自分でやれる分はふやしていく、そういう方針でありますので、いままでどおりのことで満足していてはならないと考えるわけであります。
  104. 羽生三七

    羽生三七君 総理、この防衛力の限界ですね、これは国力・国情に応じてなんということは際限がないと思います。だから量的・質的にどの程度が日本の自衛隊、憲法上の制約その他かれこれ勘案して、どの程度のものかという一応の制約があっていいはずであります。これなかったら、ほとんど無制限じゃないですか。これは総理からひとつお聞かせ願いたい。
  105. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 防衛力というものはとにかく相対的なものだと、かように私考えます。その意味におきまして、万全を期する、こういうことになると、際限もないという心配も起こります。しかし、私は、大体の傾向はやはり各国とも軍縮の方向へ向かうべきじゃないか、また向かわせなければならぬのじゃないか。日本などは、そういう意味で、ジュネーブでいろいろ努力しておるわけであります。したがって、ただいまの軍事関係者のみにまかすべきものでなくて、先ほども言っておるように、政治優先というか、そういう形においてこういうものが解決される方向に取り組まなければならない、かように実は思っております。私も、羽生君の言われることは、無制限じゃないかと言われるが、国力・国情に応じてというのは、どうも中身がはっきりしない、かように思っております。それらの点もよく注意いたしますが、もっと政治的にわれわれが果たすべき役割りのあることを、これをやっぱりこの際は指摘するほうが適当じゃないか、かように思っております。
  106. 羽生三七

    羽生三七君 日本政府がもしこの緊張緩和に積極的な役割りを果たしておりながら、なおかついまのようなことをおっしゃるなら、これは立場の違いはあっても理屈はわかります。ところが、その努力が非常に少ないのに、防衛力の増強だけにたよっておる印象は、いなめないと思います。だから私は強くこういうことを申し上げておるんですが、そこで防衛力の増強は現状で凍結するようにしたらどうですか。そうしてアジアにおける緊張緩和に全精力を日本が傾けていく。お答を願います。
  107. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 軍縮というのは政府の方針でありまして、日本も十八カ国軍縮委員会に出ておりますから、一般的にはわが国もそういう政策を推進していくべきであると思っております。しかし、日本の現在の防衛力を見ておりますと、自分で自分の国を守るという原則から見ましても、まだ足りない部面がかなりございます。特に海並びに空の勢力におきまして、まだまだ努力を要する部面がございます。したがいまして、凍結ということは現在では適当でない、国情に応じて徐々にまだ充実さしていくということが必要であると思います。
  108. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、そういう日本が積極的に軍縮という役割りを果たすために何をしたらいいかという、これは時間がないので多くを申し上げるいとまはありませんが、たとえば戦略核兵器の制限交渉というようなものがありましても、実際はなかなか進んでおらない。核拡散防止条約ができても、実際上は米ソの核は量・質ともむしろ拡大していく。しかも日本は、過去二回にわたってそういう制限交渉あるいはその他の国連における軍縮に関するいろんな提案に棄権をしておる。それで軍縮の必要を説かれている、実際には。こんな矛盾した話はありませんが、私はその引例を一一どの場合には何をしたかということを申し上げている時間はありません。  そこで、次に外相は、外交演説で、国連の平和維持機能を強化し、同機構を改善するため、わが国として積極的に貢献したいと述べられ、さらに総理は、先般、大阪で、国連に対して拒否権等を含む一連の改組に対して意欲を燃やした発言をされておる。確かに、今日の硬直した国連の現状を見れば、総理の発言も、大いにわれわれもこれを多とするわけでありますが、そういう意味で、今秋の国連総会に日本としては具体的にどういう提案をなさろうとするのか、これをまず総理からひとつ伺わせていただきます。
  109. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ことしがちょうど国連ができて二十五年、その二十五年を記念する催しがある。それに私が出席するとかしないとか、いろいろ新聞に出ておりますが、実はまだ正式な招請状を受けておりません。このことだけははっきりしております。しかし、万博にウ・タントさんがいらっしゃいますから、おそらくそれまでには何かこの問題もはっきりするんではないだろうか、かように思っております。この二十五周年を記念する会の組織委員の一員では日本はないということ、このことをはっきり申し上げて、ただいまのように申しておきます。したがって、私がそれに出席をするというのはまだきめかねておるところであります。また、そこで何を言って話するか、どういう提案をするか、これもまだ少し先走った話でありますから、これはしばらく保留させていただきます。  そこで、大阪における私の発言、これは一体何を意味するのかと、こういうことになろうかと思います。私の発言は、昨年の外務大臣の国連における演説、その内容を受けて私は発言したものでありますから、その詳細については外務大臣からお聞き取りをいただきたいと思います。
  110. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 昨年の二十四回国連総会において私が触れましたのは、二十五周年に際して、国連が世界的な期待を受けていろいろいままでやってきたわけだけれども、この時期において過去を振り返って、足らざるところを反省し、またよりよき国連としての機能を発揮するのには何をやったらいいかということについて各国が前向きに検討することにしようではないかということを基礎にいたしまして、国連憲章の改正などにも触れたわけでございまして、これはしかし国連の本質にも触れる問題でございますから、日本が言い出したからといって、直ちにそういう方向でものごとは必ずしも進むとは思いません。相当息の長い努力が必要ではないかと思いますが、しかしその中で申しましたのは、先ほどもお触れになりましたが、平和維持機構としての機能の足らざるところも指摘されておるところでもありますし、それから運営につきましても、総会の運営や、安保常任理事国の持っておる立場や、その機能、活動等についても、これは相当に非難も批判もあるわけであります。あるいはまた方面を変えて言えば、社会経済委員会などの取り上げるべき問題は、世の中がこういうふうな進み方をしておりますから、国際的にもいろいろと取り上げるべき問題がある。ことに日本のような平和憲法の国から言えば、特にそういう面でも取り上げるべき問題が多い。軍縮のあり方については言うに及ばずでございます。こういったような各方面にわたる問題を再検討するよい機会ではないか。同時に、憲章の問題について言えば、たとえば敵国条項というようなものがいまだに残っておる、あるいは信託統治理事会といいますか、そういう仕事などはすでにもはや仕事がなくなっている、こういうものもあるわけでございます。こういうわけでございますから、それらのいろいろの面につきまして、できるならば各国が同意をして、特別の委員会でもできて、そこでそういったような問題を的確にとらえ、かつ前向きの路線が敷かれるようになれば、たいへんけっこうなことではないか。できるならば日本もその中に指導的の立場で参加したい。まあ大ざっぱでございますが、私の申しましたことの概要は以上のようなことでございます。これをできるだけ具体化し、相当の時間はかかりましょうけれども、そういう方向を打ち出していくことが国際緊強緩和という日本の外交基本方針に国連外交の面では沿うゆえんではないか、かように考えているわけでございます。
  111. 羽生三七

    羽生三七君 安保常任理事国へ立候補を希望しているのでありますが、それには国連の規約改正が必要なのではありませんか。
  112. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 仰せのとおりでございますし、安保理事国の構成を変えますためには、現在の五常任理事国を含めて、全加盟国の三分の二の議決が必要になっておりますから、そういう点から申しましても、安保常任理事国に参加するということには手続上におきましてもなかなか困難な問題があろうと思います。同時にしかし、非常任理事国については、いろいろの経過はございましたけれども、やはり日本としては非常任理事国にできるだけ常に席を持つことが適当であると考えましたので、今回立候補いたしまして、当選をするように十分の努力をいたしておるわけでございます。
  113. 羽生三七

    羽生三七君 先ほど総理の言われた敵国条項の削除の問題や、現状に合うように国連機構を改正するという問題、いまの安保常任理事国の立候補問題ともこれ関連するわけですが、いずれにしても事務当局でどういう案をつくるかということを私聞いておるわけではないんです。総理が大阪でああいう演説を言われ、発言をされ、また外相が、さきの国連総会、続いていまああいう御発言があった。だから、それだけの意欲を持っておられ、しかも安保常任理事国にも立候補されようというならば、事務当局の事務的な案はともかく、総理大臣としてこういうようにしたいと、それは時間はかかるかもしれませんが、これとこれは達成したいというものがなければ、さっきの七〇年代のアジア問題と同じことでしょう、言はよし、さらにしかし実行はしない。これをひとつ明らかにしていただきたい。
  114. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) あまり大それたことを申すわけではございませんけれども、こういったような日本態度も私は反映していると思いますが、コロンビア国が大体同様な趣旨の提案をもう少し具体的に出しまして、これは総会において大多数をもって賛成を得ている。何かこういう問題について特別な取り上げ方をして衆知を集めようという趣旨の提案は、したがって日本の発言に対する一つの反映ではないかと思います。またフィリピンの代表なども、そういう趣旨の発言によって日本の発言を支持してくれておる。こういうふうな動きが出てきているということは、日本の発言に対してかなりな反響をすでにあらわしているものではないかと思います。ただ、いまだに、たとえばやはり先ほどからいろいろ御論議がありますように、大きな意味の、たとえば米ソといいますか、そういうところの動き、あるいはその他の対立などもございますから、ただいま申しましたコロンビアの案などに対しましても、十一ヵ国が反対もしくは棄権をしておりますが、それが共産圏の国が大部分であるというようなこともなかなかこの種問題の成果をあげる上においてまだまだ困難性が多いということを示しておるのではないかと思います。
  115. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 総理はどう考えているかというお尋ねだと思いますが、ただいま外務大臣がお答えしたように、私自身も二十五年たった今日、国連のあり方を見ますと、いろいろ問題があると思います。この前も大阪で記者諸君にお話をしたのですが、その中の一番の大きな問題は、敵国条項はいまなお続いておる。こういうものは、もう二十五年間もつき合って、そうして世界は一つだという、そういう方向に進まなければならないときに、その条項のあることはいかにも時代おくれじゃないか。またそのために加入もできないというような、そういう状態になっておる、こういうのはひとつ改めるべきじゃないか。またいまの拒否権等も、これはみんなが納得できるような事態に必ずしもない、こういうところに大国の特別な力が動いておる。こういうのは真に国際関係においても考えられてしかるべきじゃないか。こういうようなことがいろいろ問題になるんじゃなかろうかと思います。私はいま先ほども申したように、必ず出かけて、こういう話をしますと、こういうところまでは実際いっておらないんです。まだ行くか行かないかわからない。しかし行く際においては、もう二十五年たった今日、国際連合についてもその体質が時代の要望にこたえるような、そういう方向であるべきではないだろうか、かように私は思っておると、一般的な話を実は申し上げておるわけであります。一般的にはただいま言うような点が理解されるんじゃないだろうか、かように思います。ことに、先ほども申し上げたように分裂国家の実に気の毒な状況、それについて触れられましたが、分裂国家はいまのような状態でこれは続いていくかもわからない。しかも国際間の問題だからというので多数の国がこれをきめていく。しかもこれが重大問題だと、こういう形で処理される限りにおいては、なかなか三分の二をとり得ないというそういう形が残るかもわからない。その基本は一体何かというと、さっきも申したように、これは米ソ二国間、その二大強国の間の緊張がかもし出した事実じゃないか。そういうことを考えると、やはり二大強国の責任は非常に重いのだ、国際連合の運営においても、やはりこの二大強国の果たすべき役割りは非常に重いという、そういう点を率直にやはり反省されることがしかるべきじゃないだろうか。いま申し上げたような一、二の例をとりましてもそういうことが言えるように私は思うのであります。
  116. 羽生三七

    羽生三七君 総理が四選されるかどうかしらぬが、それで国連に行くか行かないかを私は尋ねているわけではない。基本的ないまの現時点における総理のお考えを聞きたかったわけですが、そこで、国連発足二十五周年を機会に、私は各国からいろんな提案がなされると思うし、現にいま総理が言われたように、いわゆる分裂国家の一方が加入できない。特に中国やドイツ、それから朝鮮、北ベトナムこれは全部加入できないわけですね。しかもこれが世界の問題の焦点でしょう、米ソの問題もありますけれども。これが今日の国連の機能を十分発揮させることができない大きな理由であると思います。  そこで、この国連が真に世界の全国家が参加できる機構として、文字どおりこのユニバーサリティーの原則に立って、国連としての有効性を発揮できるようにするために、先ほど総理の言われた拒否権の問題の解決、あるいは敵国条項の削除等々、いろいろ機構上の不備を改正することももちろん重要でありますが、同時に、この機会に未加盟国にも参加の道を開くように、私はこの機会に中国代表権も含めて、問題を同時に一括解決するようなことをお考えになったらどうかと思う。これはいい機会だと思います、私。もしほんとうに日本が中国問題等についてまじめ——まじめといっては失礼でありますが、真剣にお考えになっておるならば、非常にいい機会だと思う。これは規約改正がなければだめでありますし、日本の安保常任理事国の立候補もできない。だからすべての懸案を同時に一括解決するような努力を国連でやられてみたらどうか。なかなかむずかしい問題です。しかしそういうこともお考えくだすってはいかがかということをひとつお尋ねいたします。
  117. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) なかなかむずかしい問題だと思います。そういう表現以上に難事だと、かように考えます。と申しますのは一日本考え方もさることですが、相手の国の考え方、また世界各国の考え方、これと取り組まなければならない。そういうところにコンセンサスをつくることがはたして可能かどうか、非常なむずかしい問題だとかように思います。したがって、私はものごとをほんとうにいつも手っとり早く引き受けますが、この問題はそう簡単には引き受けない。これは至難中の至難だ、現状においてはですよ、至難中の至難だ、かように思います。しかしそういう方向に目をさますべきそのときにきておるのではないか、このことを先ほど来申し上げておるような次第でございます。
  118. 羽生三七

    羽生三七君 この四月、ウ・タント国連事務総長が来日する機会に、いま総理がお考えになっておるようなことを話し合われますか。それともう一つは、国連大学の日本招致というような問題もその機会に話し合われてはいかがかと思うのですが、いかがですか。
  119. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ウ・タント事務総長とはもう私も数回お目にかかった仲でございます。また訪日されれば、そういう機会はたいへんけっこうな際だと思っておりますので、いまの国際間の重要事項については話し合いたいと思っております。またそういう際に、未加入国の問題ばかりでなく、ただいま言われるように国連大学の問題についても、もっとその構想等も確かめたい点がございますので、そのような点、意見を交換してみたいと、かように私考えております。
  120. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、時間がありませんので、外務大臣ですね、これは防衛庁長官でもよろしいんですが、米ソの戦略兵器制限交渉というような問題もありますが、現実にはむしろこの核は、量質ともにエスカレートしておるんではないか、拡大しておるんではないかと思うのですが、何かその点について全般を鳥瞰できるような資料があったらお示しいただくか、お話を聞かしていただきたいと思います。
  121. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 米ソのいわゆるSALT交渉につきましては、まあ非常にこの戦略兵器の問題でございますから、両国の間で秘密を保ちながら話し合っておりますから、的確な情報を申し上げるほどのものは持ち合わしておりません。しかし両方とも、非常にむずかしい問題ではあるけれども、誠意を尽くしてと申しますか、一生懸命で話し合いを続け、成果をあげたいという努力は相当の程度に続けられておるようでございます。いずれにいたしましても、かなりの長期間がかかるのではなかろうかというふうに見ております。長い時間がかかりそうなことと、中身の問題が問題でございますだけに、現在この時期におきまして的確に御説明できるほどの情報は、遺憾ながら持っておりません。
  122. 羽生三七

    羽生三七君 時間がないのでこれで終わりますが、一口に言えば、私が今朝来申し上げたことは、七〇年代の新しい時代に対処する日本の外交路線、この選択は、いわゆる緊張緩和に重点を置くべきではないか。しかもそれは、アジアの、日本を取り巻く周辺諸国との関連において解決するのみならず、国連の場において積極的にその役割りを果たすべきではないか。特に、先ほど申し上げたように、力の均衡政策だけにたよっておっても、これは際限のない矛盾の拡大再生産です。たとえば安保常任理事国に日本が立候補する場合でも、核を持たないということをマイナスと考えるのではなしに、むしろそれをプラスとして、日本が軍縮の先頭に立つことではないか。そういう役割りを果たしてのみ、私は、この原爆被爆国、また、非核三原則を世界に訴えておる日本の真の七〇年代の外交路線というものがあるのではないか。  私の質問は、きょう、かなり抽象的でありました。一つ一つの具体的な問題に触れられなかったけれども、しかし、私どもが考えておるこの熱意は、これはおくみ取りいただけると思う。それが私は今後の正しい日本の路線ではないかと、私は心からそう考えて、この道に向かって、いろいろな困難はあってもそれを排除して、さらに一そうの前進を続けることを総理要求し、お考えがあれば承って、これで私の質問を終わります。(拍手)
  123. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も、羽生君の御意見に全面的に賛成でございます。私ども日本の行くべき道、また日本の果たすべき役割り、これは軍事力ではないんだと、その他の方面でということをしばしば申している。多元的な方向で世界の平和は保てるんだ、また世界の繁栄はあるんだということを申しておりますが、そういう意味で、日本は軍事力以外のその面で働いていく。それには国連の場がかっこうの場でございます。国連こそわれわれが発言し得る一番いい場所じゃないかと、かように思っております。幸いに、ただいまではジュネーブの軍縮会議のメンバーにもなっておる。日本の発言権は各方面でそれぞれ与えられております。その与えられた機会を、ただいま言われるような方向でこれを十分生かしてまいりたい。それによりまして現状を幾ぶんかでも変えることができれば、たいへんわれわれも、自衛隊の増強ばかりをしなくて済むんじゃないだろうかと。ただ、いまの状況が、必ずしも、まだまだわれわれの力はそこまでいっておりませんので、たいへん弱いことではございます。これを残念には思いますが、ただいま御指摘になりました方向において一そう努力してまいり、私どもは、ほんとうに世界の平和、繁栄のために尽くしたいと、かように考えます。ありがとうございました。
  124. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 以上で羽生君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  125. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 次に、白井勇君の質疑を行ないます。白井勇君。
  126. 白井勇

    ○白井勇君 二月の十八日の本会議におきまして、同僚の剱木委員から十三項自の細部にわたりまして質問がございまして、総理はじめ各関係大臣から詳細な御答弁をいただきましたので、私からは、ごく身近な問題、特に緊急を要すると考えておりまする二、三の問題につきまして御質問を申し上げたいと思います。  私は、四十一年の三月の九日と思っておりまするが、この予算委員会の席上におきまして総理にお尋ねをいたしたことがございます。その要旨は、先進国の党首というものは、国民に対しまして一つの目標というものを与えまして、そして協力を願っておる。わが国におきましても、前の池田総理というものは、十年間に所得倍増というような目標をもって国民の協力を願ったわけでありまするが、当時、明治百年というようなものを間近に控えまして、国民全体というものは何とかいたしまして祖国の興隆に邁進をいたしたいというような熱望を持っておる。この国民の活力に、向こうべき方向というものを与えますることが総理といたしまして最も大事なことじゃなかろうかと、こういうお尋ねをいたしまして、昭和四十年代を迎えまして、この国民にお示しになりまする目標はどういうものでありましょうかと、こういう御質問を申し上げたのであります。それに対しまして総理は、昭和四十年代というような目先のことだけではなしに、二十一世紀というものを目標にいたしまして、日本のあるべき姿というものをいま考えなきゃならぬ時期だと、こう思っておる。で、その二十一世紀というものを考えまして、その骨子となりますることを一口で言うならば、「繁栄と平和に満ちた光輝ある日本の建設、」、これが国民に示しまする目標であるというふうに私は承ったのであります。このお見通し、またこの考え方のもとに、今国会の冒頭におきましては、来たるべき二十一世紀というものを控えまして、「繁栄と平和に満ちた光輝ある日本の建設、」、この目標のもとに、一九七〇年代というものにおきまして、どういう方向で国民というものは進まなきゃならないか、また、総理のお考え方のあらましをお示しをいただいたわけであります。しかも、今後、さらに七〇年を迎えまして、渾身の努力を傾けまして政局を担当していかれると、こういうかたい御決意をお示しされたことでございまして、この点は国民とともに喜びにたえないところであります。総理のお考えのうちに述べられましたように、一九七〇年代というものは、もう国民の総生産というものは、もう十年もたちますれば三倍になるであろうと、したがって、いままでのように外国を模倣いたしまするとか、あるいは外国の考え方に従うというようなことじゃなしに、国民自体がみずからの手によってその進むべき方向というもの、あるいは目標を定めまして国をつくっていかなきゃならぬ、こういうまことにごもっともなお考えを示されております。その中におきまして、一九七〇年代というものは、世界に類を見ないような高密度の社会が形成されると思われる。国鉄新幹線をはじめ、青函の連絡、国土縦貫道路、本土と四国の架橋をはじめとする全国的な交通網の整備、情報網の伸展により、わが国土は、本土はもとより沖縄、小笠原を含めまして、より一そう凝結、結合され、画期的な国土総合開発の時代になるものと思われると、こういう見通しをお示しになっておられます。この最後のおことばにありまする画期的な国土総合開発の時代というものを、どういうふうにこれから具体的に実現をしてまいりまするものか、その一端でもお示しを願えますれば幸いだと思うのであります。  なお、それに関連をいたしまして企画庁長官にお尋ねをいたしたいと思いまするが、昨年の五月三十日に閣議決定となりました新全国総合開発計画というもの、これは今後いかに進められるおつもりでありますか、その点をあわせてお尋ねを申し上げておきたいと思います。
  127. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私からまずお答えをして、しかる上で経済企画庁長官から補足して説明することにしたいと思います。  ただいま私の所信表明演説、これを土台にしていろいろお尋ねがございました。私の考えますところでは、一九六〇年代はすばらしい経済発展をした。さらに、その素地のもとにおいて七〇年代はもっともっと伸展していくだろう。また伸展させなければならないと思っておる。また六〇年代においては、私どもは沖縄問題というような領土問題もあり、また国防の問題等、それぞれ外国と取り組むべき幾多の問題を持っていたが、今度は、七〇年代はそれよりも、いわゆる内政の年として問題をひとつ取り上げていこう。そうして二十一世紀に備える、そういう態度にしたいものだ。こういうことを申したのであります。まあ最近は、私が申し上げるまでもなく、未来学がなかなか発達しております。私どもの想像しないような新しい構想が次々に出ております。まあしかし、未来学必ずしもそのとおりにはいっておらないようで、その点は残念でありますが、少なくとも方向として新しいものを絶えず求めて、その未来学の方向でものごとが判断されておる。  そこでこの六〇年代における経済発展のあとを振り返ってみると、私どももいろいろの批判を受けておる。その最もはなはだしいものが、エコノミック・アニマルだといわれたり、イエロー・ヤンキーだといわれたりしている。ここらを私どももう一度みずからを反省しなければならないのではないかと思っておる。これが対外的な関係において私どもの反省すべき問題だと思います。いままでのような小国である間はエコノミック・アニマルも通用したかもわからない。しかし今日、世界三番目の経済力を持つようになった。その際に、依然としてエコノミック・アニマルだ、こういうような批判を受ける、そういうようなことではならないと思うし、そういう意味で私どもがやはり諸外国の繁栄、それをもたらすように、開発途上国とも十分手を取り合って、世界の平和、繁栄を期していく、そういう態度でありたいと思うし、また、うちにあっていろいろ内政上の問題をにらみます場合に、経済発展がかもし出しているひずみ、ただいまお話のありました高密度社会ができる、一面で過疎の問題が起こる、これらの問題を一体どういうように解決していくか。公害が至るところに発生しておる、その公害といかに取り組むか、交通事故、交通禍の問題、こういうものと一体どういうように取り組んでいくか、こういうような問題が、外部において、開発途上国に対して援助の手を差し伸べることもさることながら、内政について、国民が納得のいくような、満足をするような生活環境をつくること、これが必要なのであります。私は、そういう意味で、経済総合開発計画などもいろいろ樹立し、またそれを方向づけ、その方向で取り組んでいくつもりであります。しかし、何よりも大事なことは、これらのことが十分理解されて、いわゆる経済発展、その芽をつまないで、ただいまのような生じつつあるひずみ、これを是正することができれば、これにこしたことはないのでありますから、そういう方向で一そうの努力をしたいと思っております。  詳細については、企画庁長官からお聞き取りをいただきたいと思います。
  128. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) いま総理から大きな方向をお話し願ったわけでありますが、御存じのように、今日までわが日本が示してきましたところの成長の路線、こうした過去の実績を踏まえまして、しかしながら同時に、それによってもたらされたいろいろなひずみというものを頭に置きながら、今後昭和六十年ぐらいまでのところを頭に置きまして、そしていわゆる高密度化情報化の社会というものに突き進むこれからの日本の全体の見通しというものを、きわめて荒いスケッチでもって描いたものが新全総でございます。したがいまして、そこにいろいろと示されておりますフレーム、その他の数字も、一応の見通しの前提でございます。これらを具体的にどうやってまいるかということでありますが、御存じのように、ただいま政府におきましては、その六十年までのうちで、今日から五十年までのいわゆる六カ年にわたるところの新経済社会発展計画、これの計画化をいまはかっております。それからまた、そういう総合的な計画と同時に個々の、白井さんも御存じのいろいろな長期計画、これらをこれから逐次策定してまいりますその過程において、総合的な調整が要るわけでございます。  それからまた、一方におきまして、全総計画におきましては、大規模プロジェクトというものを中心にした構想が非常にきわ立っております。こうした大規模プロジェクトは、いままで私どもが考えておりました規模とは非常に異なるくらいの、大規模の、レベルの高いプロジェクトでございます。これは一省一局でもってなし得るところではない。そういうことで、私どもこれにつきましては、よほど基礎調査をしっかりする、そして総合的な調整、調査をしなければならない、最初の調査段階から、これはもっと総合的なものにしようということで、目下実は企画庁の中にもいわゆる総合開発のための審議会がございますが、そこに総合開発調整部というものを設けまして、そして各研究会を持ちまして、ごく最近すでに出発したものもございますが、これからも出発してまいりますが、大きなプロジェクトごとの研究会をつくりまして、各省がこれに参加をいたしまして、そして基礎的な調査に万遺憾なきを期してまいる、こういう体制をつくっております。  なお、その調査にいろいろ必要な経費等も、御存じの総合調整費というものを、従来の事業費中心からもっと調査費に重点を置いて、そしてこれをやっていく、こういうふうにして大きな総合プロジェクトを、少し時間をかけまして、そして本格的に調整をしてまいる、その上でもってこれらの推進のための事業を行なってまいる、こういうようなやり方でもってこれを実現してまいりたい、こういうふうに考えております。
  129. 白井勇

    ○白井勇君 そうしますと、去年の五月三十日にきまりました新全国総合開発計画というそのワクの中に、この間きまってまいりました新幹線計画でありますとか、あるいは国土縦貫道路の問題でありますとか、そういうものが入っておるものと、こう考えて差しつかえないものかどうか。  もう一点は、いま最後にお話のありました開発プロジェクトの問題、六つ七つ、いろいろ御計画を持っていらっしゃるようでありまするけれども、この具体化というものは、昭和四十六年度の予算に予算化されるような運びになっておりまするものかどうか。  さらにもう一つは、それ以外にはいまのところこの総合開発計画に基づきまする具体的計画というものはないものでありますか、その点をもう一ぺんお聞かせ願いたいと思います。
  130. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) お説のとおりに、いま御指摘になりました新幹線等のいわゆる構想の骨格というものは、当然新全総の中に含まれてございます。それの具体化につきましては、今後実際的な計画を見まして、どういうふうに配慮していくかきまるものと思います。  それから四十六年度の予算化のお話でございましたが、いま申し上げましたプロジェクトはたいへん大規模なものが多うございます。そこで基本調査をよほどしっかりやらないといけない。これが一年で済みますれば、当然それまでに間に合うことでありますれば、四十六年度の予算化の問題が事業費について起こると思います。それから、なお調査を続ける場合も考えられます。それらの調査費は、いま申し上げましたように、調整費その他で十分にまかなえるようになっております。この調査の結果を見ましてそして考えてまいりたい、こういうふうに考えています。
  131. 白井勇

    ○白井勇君 十年間に所得はまあ三倍にも伸びるというような国全体といたしましての明るい見通しはきまりましても、やはり国民一人一人の立場になってみますれば、自分の生活はどうなるであろう、あるいは、自分が住んでおりまする社会の実態というものはどうなるであろうかというところに非常な関心を持っておるわけでありまして、したがいまして、この新国土総合開発計画というものに非常にみな期待を持っておるわけであります。もちろん、企画庁というものは物価の問題が何よりも大事だということで取り組んでいらっしゃるわけでありましょうけれども、まあ、新幹線でありまするとか道路でありまするというようなそれぞれの担当の省がありまして、全体を総合しまするものはやはり企画庁しかないわけでありまして、いま計画されておりまする六つばかりの大プロジェクトというものの開発計画というものも、私の聞いておりまする限りにおいては、なかなかその来年までに予算化できないじゃないかというような懸念も持たれておるようでありまするが、そういうことでは私はいけないと思いまするし、物価の大事なことはよくわかりまするけれども、やはり総合的な仕事をやりまするのは企画庁ですから、その点を十分ひとつ今後とも御奮闘をいただきたいとお願いを申し上げておきます。  次に私、総理にお願いを申し上げたいと思うんでありまするが、総理はたいへんお忙しいわけでありまするが、定例の記者会見でありまするとか、地方に参られまして一日内閣というようなものもやられるのであります。しかし、私は、国の施政方針というものの徹底というものは国民に非常に欠いておる。これは一総理の力をもってしてはどうにもならないと思いまするが、お忙しい総理におかれましても、現在はテレビの時代であります。したがいまして、テレビをいま少し御活用願えるような御配慮をいただけないものであろうかということでございます。私、実は十四日の万博の開会式に参りまして、あの式が終わりまして、まず参りましたところは、あれは永久に残るだろうといわれておりまする日本庭園に参りました。その奥まった小高いところに、日本の文化の象徴といわれておりまする茶室がございました。そこに行ってみましたところが、お茶人の総理直筆の庵号が寄付されておりました。私、あのことばというものをどういうふうに理解していいものか、なかなかむずかしかったのでありまするが、これは間違っておりますれば御訂正を願いたいと思いまするが、まあ私なりに、あれは「汎庵」(ばんなん)というふうにも読むものかというふうに見てまいったのでありまするが、あの御趣旨は、私なりにそれも解してみまして、これは人種を越え、国境を越え、イデオロギーを越えまして、茶の精神でありまする「和」に溶け合おうじゃないか、総理のいつもおっしゃいますることばをかりまするならば、平和に徹しようじゃないか、こういうお気持ちのあらわれであろうと私は深く感銘をいたして帰りました。ただ、初日なものでありまするから、そういうようなことが正しいといたしまするならば、せめてその解説ぐらいは、あれに突っ立っておりまする守衛が配るのがあたりまえじゃないかと思いましたけれども、そういう手配もない。まあ、私なりにそういうふうに理解をして帰ってきたのであります。そういう、平和に徹するということばよく使われまするけれども、これはほんとうに全国民に血となり肉となって伝っては私はいないと思うのであります。  昨年の選挙のことを振り返ってみまするというと、総理はあちらこちらをお回りになりましてたいへんな人気でありました。これは私はただ珍しいものを見たいというようなうわついた人気でもない一さらにまた、五年間におきまして、あれだけの功績を残されました。しかも、沖縄というものが血を流さずに話し合いで返ってきた、そういうような感謝の念ももちろんありましょうけれども、しかし、七〇年代というものは、日本の新しい国づくりの時代なんだ、それをぜひ佐藤総理にやっていただきたい、こういう国民の願望のあらわれであろうと私は見ておるのであります。ああいう国民の願いにこたえる意味合いにおきましても、できまするならば、私はいま少しテレビというものを御利用いただきまして、この間も石田前国鉄総裁との対談がございましたが、ああいう姿だけじゃなしに、職場に働いておりまする代表者あるいは家庭の御婦人の代表者、そうしてまた、農村に働いておりまする者の代表者というような方方にも談合の機会というものが与えられないものであろうか。ただ、テレビに顔を出されることも非常に大事なことだと思いまするが、そういうような機会も必要でなかろうかと、こう思いますものでありまするから、一言総理の御所見を伺ってみたいと思う次第であります。
  132. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政治に携わる者といたしまして、自分の考えておることを国民に理解していただく、そういう機会が与えられることは、これはまたそういう機会をつくることが、これは当然なことだと思います。ただ、私どもなかなか忙しいというような、そういうことで、いまのような機会がしばしばあるにかかわらず、それを十分こなし得ないというのが現状であります。おそらく各党とも、皆さん方、そういう気持ちで、あらゆる機会を使いたいと念願しておられることだろうと、ひとり総理ばかりではなく、その点では考え方が同じだろうと思います。まあ、私、ただいまの状況は、マスコミ、たいへん多いのでありますので、個別的にはなかなかそれを使うわけにいかない。不公平になるというか、公平な扱い方をしなければならない。そこで申し合わせができていて、非常に限られた範囲でテレビなどを使うようになっております。平素の記者会見は官房長官がかわりにやってくれますので、これは大部分官房長官の仕事でございますし、また、NHK自身が国会討論会等を開いて、この審議の模様なども直接これがテレビを通して国民に伝わると同時に、特別な問題等については、あの国会討論会を通じてたいへん親しみを持たれて、国民から批判を受けているというような状態であります。ただいま十分にまだ利用できないことを残念に思っておるという、そのことを一言申し上げてお答えにいたしたいと思います。  また、お尋ねのありましたお茶席の問題、これは宗匠から特に頼まれましてあの字を書いたのであります。これはさすがに白井君がお茶人だからただいまのようなお目にとまったと、かように思います。しかし、これはいま言われるように、あまねく広くという、こういう意味で万博にちなんで宗匠がつくった名前だと、かように思っております。たいへん私にもなじみにくいことばでございましたが、そういう意味で頼まれて書いたような次第であります。
  133. 白井勇

    ○白井勇君 次に、私は、いま問題となっており、またこれから非常にわれわれとしましては考えなきゃならぬと思っておりまする日本の人口問題に触れてみたいと思うのであります。総理にお尋ねをいたします前に、現状をお尋ねする意味合いにおきまして、まず法務大臣にお尋ねをしたいと思いまするが、現在、刑法の第二十九章に堕胎罪というものの規定がありまして、一方、また優生保護法というものがあり、特にその必要ありまするものは、人工中絶手術というものが認められると、こういうふうになっておるわけでありまするが、現在のこの優生保護法の運用の実態からいたしまして、刑法の第二十九章のいわゆる堕胎罪に問われるものというものは、ほとんどこれは適用がないような実態であると、こういうふうに私は聞いておりまするが、その実態はいかがなものでありましょうか。
  134. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) 人工中絶というものはよくないことだと、こういうことで刑法に堕胎罪の規定がございますが、優生保護法というものができまして、母体の保護以外に、経済上の理由によっても人工中絶ができると、こういうふうな規定ができましたために、刑法の堕胎罪は、要するにもう空洞化されたということでこの設定がそう意味がないということにまでいま変貌してきておるのでありまして、最近五カ年間におきましても、堕胎罪でいわゆる検察庁に来た者は、年に平均して十件もない、四十一件しかない、しかもそのうちの起訴は十一件しかないと、こういう状態でありまして、この問題に対する世論と申しますか、そういうものも相当変わってきたことは事実でありますが、優生保護法によっていわゆる堕胎という罪はほとんどいまでは意味がなくなってきておると、こういうことでありまして、これがよいか悪いかということは、いろいろの点から再検討すべき時期にきておると、こういうふうに考えております。
  135. 白井勇

    ○白井勇君 同じ問題でありまするが、文部大臣にお尋ねいたしたいと思いまするが、まあ私から申し上げるまでもなしに、性道徳の退廃あるいは青少年の非行というようないろいろな問題が重なり合っておるわけでありまして、この原因もこれはもちろんいろいろあろうかと思いまするが、やはり現行の優生保護法の欠陥というものが一つの原因であるというように世間では言われておるわけでありまするが、これに対しまする文部大臣の御見解はいかがなものでありましょうか。
  136. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) この問題につきまして、直接私いろいろ聞いてはおりませんが、しかし、やはり戦後かなり青少年の肉体的発達というものがよくなりまして、また同時にモラールが欠除した。それには戦争の結果もございましょう。おとなが自信を喪失したということもございましょう。あるいは学校教育の中におきまして、知的教育に重点が置かれて、むしろそのような道徳的心情を養うとか、あるいは健全な肉体的なスポーツというようなことを含めました全人的教育ということについて、学校教育においても、また家庭教育においても、あるいは社会一般においても、その辺についての欠くるところがあったのではないだろうかということが考えられるわけでございまして、十分われわれといたしましても考えていかなきゃならない。それからまた同時に、いま申し上げましたように、女子の体位がかなりすばらしく向上したと申しますか、そういうことで早く成熟をする。したがいまして、小学校の後期から、あるいは中学校に入ります段階におきますまあ純潔教育というようなことにつきましても、いま少し積極的な指導が行なわれなければならないんではないかというふうに考えておるわけでございます。ただ具体的にこれを進めてまいります場合におきましては、なかなか先生方の指導ということが非常にむずかしいわけでございまして、私どものほうではその手引き書というものも従来からつくり、また指導をいたしておりますわけでございますが、今後とも十分気をつけてまいりたいというふうに考えております。
  137. 白井勇

    ○白井勇君 同じようなことでありまするが、労働大臣に、労働力の確保の面から見まして、まあこれは申し上げるまでもなしに、労働人口というのは増加が減って年間百万を割っておると、こういうまことに憂慮すべき事態になり、いろいろ労働省とされましては、労働力の流動化でありまするとか職業訓練でありまするとか機械化でありまするとか、たいへんな御努力をなすっていらっしゃるようでありまするが、やつ。はり問題は人そのものがふえなきゃならない事態であろうかと思いまするが、先ほど来話のありまする優生保護法というものの運用におきましてあまりにもルーズであるというような面がこの労働力確保上からどういう影響を与えておりまするものか、その点を承りたいと思います。
  138. 野原正勝

    国務大臣(野原正勝君) お答えいたします。  日本の今日の経済成長、繁栄のもとは、たくさんの国民の人たちが非常な勤勉努力の結果であります。したがいまして、労働力が存在をし、これが十分に活用される限りにおいては、日本の経済の発展は今後も力強く進んでいくことは期待できるのでございますが、しかし、最近におきましては、労働力がだんだん不足を来たしまして、この問題に対しましては、いまのところまだ十分に活用の余地がございます。また同時に、ある程度むだづかいもございます。こうした問題につきまして、われわれは労働力の活用をはかり、あるいは新しい開発の方法を講じまして、労働力を十分に確保していこうという体制を進めておりますけれども、将来にわたって考えまするというと、御指摘のような日本の人口資源が非常に減少していくという傾向、まことにこれは寒心にたえない次第でございます。したがいまして、長期的展望から見るならば、やはり日本の人口がどんどん減っていくというような現象は、これは将来の日本経済の成長発展に障害になる事態がくるであろうと、そういう点で、これは直接のお答えになるかどうかわかりませんが、優生保護法なり、人口問題につきましては、真剣に考えていく必要があろうかと考えております。
  139. 白井勇

    ○白井勇君 これに関連いたしまして、厚生大臣のお考えを承りたいと思うんでありますが、たしか二十三年にあの法律が制定されたと思いまするが、二十四年、二十七年と議員修正に相なりまして、経済事情というようなものが入ってまいり、しかも従来でありまするならば、民生委員の承認を要し、したがって審査会も必要であったというようなことすらも二十七年の改正によって削除をされたと私は記憶をいたしておりまするが、こういう姿で、はたしてこの優生保護法というものが目的といたしまするような姿で運営されるようなかっこうになるものであるか、ただ労働力確保というような問題だけじゃなしに、これは人間尊重、人命を何よりも大事にしなきゃならない、こういう観点からいたしましても、この優生保護法というものを何らかのかっこうで是正をする必要があるように私たちは思うのでありまするが、この点につきまして所管大臣でありまする厚生大臣のお考えをお聞きをいたしたいと思います。
  140. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 優生保護法は、ただいま白井先生からお話がありましたように、終戦後間もない昭和二十三年の議員立法でございます。それから、同じく昭和二十四年、七年にこれまたお示しのような議員修正による改正によりまして、手術の手続の簡素化が行なわれたまま今日に至っておりまして、その間、社会経済情勢のかなりの私は変化もあると考えるものでございますが、最近各方面にこれに対する再検討の動きもございますので、厚生省におきましても現年度——昭和四十四年度の予算で現在中絶についての実態調査をいたしまして、集計中でございます。また、一方、総理府にもお願いをいたしまして、既婚婦人につきましてこの課題についての世論調査を取りまとめ中でございますが、これも近くまとまるはずでございますので、これらの結果をも参照いたし、またこれが先ほど申しますように、国会立法、国会修正の経緯もございますので、国会方面における動きなども十分見きわめまして対処をいたしてまいりたい所存でございます。
  141. 白井勇

    ○白井勇君 最後に、このことにつきまして総理のお考えも承っておきたいと思いまするが、最近の日本の人口の増加率というものが非常に低調になってきた、このままでまいりまするというと、ある説によりまするというと、もう三百年もたちますというと日本人というものはこの地球から消えてしまうのじゃないかと、こういうような見方もあり、一方、日本というものは堕胎天国であるというような外人の悪評すらもある姿であります。これは、人間尊重を第一に考えていらっしゃいまする総理とされますれば、これはもちろん許すべきものでない、こうお考えになっていらっしゃると思いまするが、いま厚生大臣がおっしゃいますとおり、いろいろ検討いたしまして対策を講ぜられるようなお話でございまするが、なお、この点につきまして総理のお考えを承っておきたいと思います。
  142. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 生命、これは大事にしなければいかぬというそれは生まれて後も、もう胎児のときから大事にするというその考えでなければならないと思います。私自身は別に宗教家ではございませんが、しかしこれ、やはりその生命を大事にするというそれがすべての基本ではないだろうかと、かように思っております。そういう意味で、堕胎天国というこれは、まことに残念な言われ方だとかように思いますので、こういうことのないようにはしたいものだと思っております。まあ国内の問題、性——セックスの問題、それの乱れがただいまあらゆる方面に悪影響を及ぼしている、これが指摘できるのじゃないだろうか、かように思いますので、この性道徳を守るという、そこに基幹が一つあるだろう、これはとりもなおさず生命を大事にするという、命を大事にするという人間尊重、その理念からこれは当然守られなければならぬことではないか。かように私は思っております。まあ労働人口がどうだとか、あるいは日本人がいなくなるのじゃないかとか等々の御指摘よりも、いまの問題がわれわれ生活の基幹になる、基本だと、かように考えて、これは重要視すべき問題だと、かように私考えております。
  143. 白井勇

    ○白井勇君 次に、昨年度の選挙を受けまして総理が国民にお約束をされました放送大学、これの開設の準備状況、それからいま大体きまっておりまする構想等につきまして所管大臣からひとつ現状をお話し願いたいと思います。
  144. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 放送大学の設立につきましては、昨年の九月、文部大臣と当時の郵政大臣の会談におきまして、昭和四十六年四月を開設の努力目標にしたいという話し合いを行ないました。その後、両省共同によります放送大学懇談会というものを設け、放送大学の基本的問題につきまして有識者の検討をわずらわし、引き続きまして十一月には、放送大学の具体的構想を進めますために、文部省に放送大学準備調査会というものを設置をいたしまして、放送大学の性格、目的、あるいは設立主体はどうするか、あるいはどういう対象を学ばせるか、あるいはその教育方法はどうするか、あるいは設置学科はどのようにきめるか、大学の組織、放送の実施機関というような事柄につきまして現在まですでに十四回会合を重ね、検討を進めております。先般もこの準備調査会のカリキュラムその他につきましての一応の試案も発表をいたしました次第でございます。放送大学の設立には大学の整備並びに放送体制の整備が必要でございますし、今後も郵政省と緊密な連絡をとりながら設立準備を進めてまいりますが、現在の状況から見ますると、その発足の時期は当初の目標よりも少しおくれるのではないかというふうに考えております。しかし私といたしましては鋭意ひとつ努力をいたしまして、できるならば来年やりたいとは思っておるわけでございますけれども、何分にも私のところだけではこれはできませんし、やはり郵政省の波の問題もございますし、その設立主体の問題もございます。いまたとえばカリキュラムにつきましても週に日曜を除きまして毎日二時間、大体テレビ一時間、ラジオ一時間、二時間を聞いて、そして年間に文化系でございましたら十日のスクーリング、それから理科系統でございましたら十九日のスクーリングというようなことで、四年間で大学資格を得る、百二十四単位を一応目標としておるというような試案がいま発表になっております。これは最終的にはまだきめたわけではございませんけれども、そういうような形で具体的に進んでおるということをひとつ御了承賜わりたいというふうに思うわけでございます。
  145. 白井勇

    ○白井勇君 いまの文部大臣のお話で非常に気になりますことは、少しおくれるじゃないかということなんですが、去年は閣議決定というものは、御承知のとおりに昭和四十六年度の四月開設ということで選挙を打ってきておるわけでありまして、しかも、できましたいわゆる放送大学懇談会でありますか、この懇談会はすでにもう十一月の十一日に一応意見書を出しておるわけでありますね。私しろうとでわかりませんけれども、大体まあこういう構想でありますればそう苦労することもない、あしたにもできるのじゃないかというような感じを持つのでありまするけれども、どういうようなことがそう問題になっておりますものか、これはどうも郵政省よりも文部省の問題じゃないかというふうに私は感ずるのです。いまお話によりますと、文部省だけじゃこれはできないのだ、これはもちろん郵政に——これはやつ。はり放送というメディアを利用しての教育機関ですから、これは郵政省というものに非常に関係があるわけでありまするけれども、どうも私は、いまのお話ではちょっとふに落ちないのでありまして、文部省は一体どういう点が引っかかって準備が進まないのか。少しおくれるというのは一体いつごろになるのか、そのあたりもうちょっと明らかにしていただきたい。
  146. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) やはり放送大学という画期的な新しい大学をつくるわけでございます。これが去年の十月から始めまして十一月、それから今日までの進みぐあいというものは、常識的にいって委員方々は非常にりっぱに御苦労を願っておるというふうに思います。イギリスにおきましても、ウィルソンが最初唱え出しましてからあれは五年かかっておると記憶をいたしておりますが、それでも来年ようやく開校ということのようでございます。それには相当の綿密な準備と体制とを整えておるようでございます。たとえば、先ほど申しまするスクーリングにいたしましても十日あるいは二十日ということを口では申しますけれども、実際上それを聞きます人たちがその地域のどの大学にいってスクーリングが可能であるのかどうなのか。そのスタッフはどうなのかというようなことだけを考えましても、既設の大学が使えるのかあるいは新たに校舎をつくらなければならないのか、そういうような問題も実はあるわけです。それからコースの問題にいたしましても、いまございます既設の大学で教育をしておりますすべての学部がこれに適用できるとは考えられぬわけでございまして、やはりテレビあるいはラジオというものを使って最も有効に、しかも教育が行なわれるのはどういうようなコースなのかというようなことについては、まだ未知の世界でございます。やはりその点は十分検討を要する必要があるのじゃなかろうかというふうに考えられるわけでございます。それから、また一面におきまして、根本的な、時代にマッチしました新しい構想の大学というものをいま中央教育審議会で検討をし、中間報告が近く五月ぐらいには行なわれると思います。そうしてその最終答申というのは来年の春ころになされるだろう、そういうふうな基本的な大学の構想というものをも十分頭に置いてこの放送大学の内容もきめていかなければならない。一応この間のカリキュラムの問題等につきましては、現在の大学基準等を頭に置いて考えておるわけでございますけれども、やはりもう少しこういう画期的な放送大学が国民のためにほんとうにいいものであればあるだけに、やはり慎重にやらなければいかぬのじゃないか、こう考えるわけです。講義は、確かに一流の人たちの講義というものが電波を通じ、テレビを通じまして目で見、あるいは耳で聞こえるということにおいて知識が授けられると思いますけれども、ともいたしますると、そのことによって講師と学生たちとの何といいますか、人的かかわり合いといいますか、人間関係というものがいかがかというような問題を考えました場合には、やはり相当にスクーリングというものの十日あるいは十九日というものの意味というものは非常に大きい。イギリスにおきまして、二万名の学生に対して少なくとも二千名のチューターを当てがわなければやれないというものの考え方というものは、一面において、やはりわれわれとしても、イギリスの教育というからにはそういう個人指導のない教育というものは成り立たないのだ、単に電波だけの一方的な知識の通行ではそれは教育にはならないのだという一つの確信は、これはやはりわれわれの頭の中に考えていかなきゃならぬ事柄だというふうに思って、私は非常に積極的に、意欲的に、早く、しかし慎重にやっぱり考えていかなくちゃならない、かように考えておる次第であります。
  147. 白井勇

    ○白井勇君 いま例を引かれましたイギリスの公開大学の問題ですが、何もこれは、まあ文部大臣はよく御承知なんでしょうけれども、公開大学がイギリスで初めて立案されたのじゃないのですね。これは御承知でありましょうけれども昭和三十七年の十月の十六日にNHKの会長の前田さんがロンドンのギルドホールで、教育のためのテレビ放送というものを頼まれて講演をした。そうして日本の実際やっておりまする通信教育、NHKでやっておりましたそれをフィルムやスライドで説明をして非常な感銘を与えたわけであります。それをきっかけに、これはぜひイギリスはやらなければならぬ、こういうことで始まったものなんですね。日本が教えたものなんですよ。ですから、その後も向こうからBBCあたりも、ほんとうの専門家というものがNHKの中央研修所に何人か来まして、検討を加えて帰っておる、こういう姿なわけでありまして、私、教育のことはさっぱりわかりませんけれども、いまいろいろ問題となっておりまする基本的な教育制度というものは、大いにこれは慎重を期さなければならぬと、こう思いますけれども、この放送大学のように、いわゆる正規の教育制度ではほんとうにその人の天性というものを開発できないと言う人があるわけです。あるいはまたそういう正規のものではやはり勉学の機会が与えられない、あるいはまた、これからレジャーブームといいますか、非常に主婦の人たちの時間というものが出てくる、そういう人たちにこれはやることでありますから、そう初めから何といいますか、教育の基本法とか何とかかんとかというようなむずかしいことを考えなくても、これはやれる筋合いのものじゃなかろうか。でありまするから、きめなければならぬことは、一体これは主体はだれがやるのであるか。実施は、イギリスの公開大学のように、国でやるけれども、しばらくの間は、実態というものはBBCにまかしてやるのだ、こういうような大きな線さえきめますれば、あとは文部省のいわゆる専門家がおるのですから、こまかいことは積み上げていきますれば、何もそう時間は食わないものじゃなかろうかというように私は思うのですが、いかがなものですか。
  148. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 確かにNHKの前田さんがそのような演説をされた、それに刺激されてオープンユニバーシティというものが始まったということも、前田さんから私直接聞いておるのでございます。それからまた、NHKの高等学校のテレビ教育というものの実態を見に来たことも承知をしております。しかし、私は、やはりこの問題は、先生と少しあるいは考え方が違うかもしれませんけれども、やはり慎重にいくべきだというように思うのです。単にテレビというものが有効であるといっても、それにはおのずと限界があるということ、教育的に見まして。その意味合いにおきまして十分これは検討をしてまいりたいというふうに思います。  で、イギリスの場合におきましても、どうも話を聞いてみますると、同年齢の、つまり大学に行ける人、行く年齢の人たちにはこれをシャットアウトするというようなこと、たとえば何らかの異常な客観的な理由があって行けなかった人、たとえば身体障害者その他、その人たちに対しては受けることを許すけれども、普通はもう勤労者、勤めていてさらに教育を受けようとする人たちに門戸を開く。だから何かオープンなのかどうなのかという気がちょっといたしております。私どもいま考えておりまするのは、もちろん高等学校を出たその学生たちも喜んで入れる、あるいはまた主婦の方で、これから勉強しようという人たちも入れる、さらに再教育を受けたいというような人たちにもこの機会を与えるというようなことも考えておるわけでございます。それだけに、イギリスよりも日本の教育放送が技術的にもあるいは教育の内容においてもいいんだというようなものを実はつくり上げたいと考えておりますので、あまり急がない、しかし意欲的に、積極的に取り組んでいく、こういうふうにひとつ御了解を賜わりたいというふうに思うわけでございます。
  149. 白井勇

    ○白井勇君 まことに、私の最も尊敬する文部大臣に申しわけないんでありますけれども、多少おくれるというなら、そうしますと、四十六年度の四月には間に合わないけれども、せめて十月ぐらいには——全国的にいかないかもしらぬけれども、一部の地帯なりなんかというものは開設ができるお見通しであるものか。それから、この懇談会で結論を出しておりまするこの主体、あるいは実際放送をしばらくやらせる期間というような大綱につきましては、まだおきまりにならないのですか。そこらあたりたびたびでまことに恐縮ですけれども、ちょっとひとつお尋ねします。
  150. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 率直に申し上げまして、まだきまっておりません。ただ、私の気持ちといたしましては、やはり四月には間に合わないと思いますけれども、できれば来年度中に実験的な放送ということはひとつやってみたい、一部という意味では。
  151. 白井勇

    ○白井勇君 まあ、これはぜひひとつ、画期的な一九七〇年といたしまして、日本では、これは画期的な歴史に残る事業であると思いますから、ひとつ大いにがんばってやっていただきたいと思います。世間では、文部大臣は非常に張り切っておられまするけれども、文部省のお役人さまは百キロの高速道路を四十キロぐらいでもたもたしているものですから、テンポが合わないで困るなんという主張もありますから、どうかひとつがんばっていただきたいと思います。  これに関連をいたしまして、郵政大臣に伺いまするが、放送の波のほうは、いま十分準備をしていらっしゃると聞いておりまするが、この点は不安はないものですか。
  152. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 内容については、いま文部大臣のお答えのとおりでございます。そこで、私のほうはテレビで一系列、ラジオで同じく一系列、全国ネットワークが組めるようにという配慮でただいま準備をいたしております。ひとつラジオのほうは、白井先生御承知のように、中波は国外放送で撹乱されているような面もありまするので、こういうものの調整をどうするか。たとえばFMを活用するかというような問題もあろうかと思います。そういう点を鋭意努力をいたしまして、文部省のほうと、御鞭達あったようでありまするが、私のほうは十分連絡を密にいたしまして、なるべく早く御期待に沿うようにいたしたいと、かように考えております。
  153. 白井勇

    ○白井勇君 郵政大臣、重ねて恐縮でありまするが、かりにこの放送大学というものが開設になりました場合に、いま科学技術を本番としておりまする十二チャンネルの問題でありまするとか、あるいは教育テレビというものを中心にしておりまする十チャンネルの問題とか、そういう問題との関連というものがやっぱり出てくるのでありますか、あるいはそれは全然出てこないものと、こう解していいですか。
  154. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) いまのところは別個の問題と考えておりまするが、ただ、免許主体をどうするか、あるいは既設設備をいかに活用するかというふうな問題もこれからのひとつ研究対象にいたしたいと考えております。
  155. 白井勇

    ○白井勇君 私、いま郵政大臣には、まあこの秋には問題になる——いまもお話がございましたが、中波の再編成の問題でありますとか、あるいはVからUに転換の道行きの問題でありますとか、さらにCATVの問題とか、あるいはデータ通信のための通信網の開放の問題であるとか、いろいろと複雑なめんどうな問題が山積をしているようでありますが、そういう問題はいずれ委員会におきまして、また郵便の料金の値上げの問題も、衆議院におきましては、大臣触れておられるようでありますが、そういう問題は委員会におきましていろいろお尋ねをしたいと思いまするが、きょうはただ一言、小さい問題でありまするけれども、お願いを申し上げておきたいと思います。それはもう御承知のとおりに、テレビはカラーの時代です。総理のお話によりまするというと、終戦後半世紀で日本も民主主義というものは地についてきたと、こうおっしゃいますけれども、この主たる働きをなしましたものは、日本におきましてはラジオ、テレビの普及、ことに九七%もカバレッジを持っております二千二百万世帯というたいへんなテレビ、この普及が日本の民主化というものをここまでささえてきたものだと、こう私は思っておりまする一人であります。そのテレビが現在カラー化している。ところが、御承知のとおりに、非常にあれが高いわけであります。どうもいままで私見ておりまするというと、テレビの問題というものは、それは通産省じゃないかというようなお考えを郵政省の方は持っておられるのかどうか知りませんけれども、いかに高く売られようが、税金幾ら取られようが、そんなことは一向おかまいなしのように私は見ておるのであります。十九インチで十八万、十九万というような高値、あれをもっといわゆる外国式に実用的なものにしまするならば、少なくも十八、九万円というものは五万円内外というもの下がってくるのであります。しかも、御承知のとおりに、あれに対しましてたいへんな税金がかかっておる。まあ、これは大蔵大臣が一人で喜んでいらっしゃると思うのでありますが、あの伸びというものはたいへんなものであります。毎年毎年テレビの税金はふえ、去年は四百万をこしております。すわっておって倍増してまいります。でありまするから、何とか税金の面は多少考慮していただきまして、カラーテレビというものが全家庭にくまなく入るような配慮をやるということも、私は郵政省の一つの仕事じゃないだろうか、ただ通産省にまかしておけばいいんだ、こういうような筋合いのものじゃないんじゃないか。総理は、沖繩までカラーテレビをひとつ見せようじゃないか、こういうまことにあたたかいお心を持っていらっしゃるわけでありまするが、それくらいのことは郵政省ももう少し手をつけてしかるべきものじゃないかと私は思うのであります。私の計算によりまするというと、いま十八、九万の十九インチのカラーテレビというものは、いま私が申し上げたようなやり方でいきますれば、少なくも十万を割ってくると思います。最近はまた小型のものも出てきておるわけでありまするから、そうしますれば、わりあいに各−家庭に入りやすい姿に相なっていこうと、こう思います。その辺の御所見を承りたいと思います。
  156. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 専門家の白井さんでございますから、私があえて申し上げるまでもなかろうと思います。カラーが非常な勢いでふえてまいりまして、たとえばNHKなどの受信料もカラーによってたいへんな増収になっておるような事態でありますから、御指摘のように、いかにして受像機を安くするか、こういう問題に意を用いなければならぬことは当然であります。私も少し調べてみたのでありますが、ただいまのところは受像機自体の自動化であるとか、あるいはIC化であるとか、こういった質を向上するというふうなところへ努力が払われておるようでございます。しかし、それだけじゃいけませんから、生産のほうを担当される通産省ともよく打ち合わせをし、私どものほうは、言うならば電波行政を担当しておるのでございますから、決してこれは人ごとではありません。十分に御趣旨を体してやってまいる所存でございます。
  157. 白井勇

    ○白井勇君 このことにつきまして、通産大臣の御所見も伺ってみたいと思います。
  158. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは従来から、ことに輸出との間に価格差が大きゅうございまして、先方でダンピングではないかというような疑いを生んだりしたこともございまして、長いこと私どもそういう問題を指摘しておるわけでございます。だいぶんそういうこともわかってきたようでありますし、まあできるならばいわゆるスタンダード型というものにしてもらいたい。キャビネットなどにあまりよけい金をかけないということが可能なわけでございますから、そういう行政指導もいたしております。それからこれはしばしば政府の所信表明にもあることでございますが、概してそういうメーカーの賃金の引き上げというものが非常に大きゅうございますので、一部分は消費者にも還元してほしいということを要望しておりますことは御承知のとおりでございます。そういう行政努力をなお続けてまいりたいと思います。
  159. 白井勇

    ○白井勇君 私、地方行政、至ってしろうとでありまするが、自治大臣に一言伺ってみたいと思います。私は前々からこの自治体の形態といたしまして、一体府県の存在というものは日本のようなところに必要があるのかどうかという考えを持っておるものであります。北から南まで長い島ではありまするけれども一つの人種で一つの同じことばを話し合っておる。いろいろな違った国が集まってここに合衆国ができ上がっているというような国柄じゃないわけであります。それなのに、昔からの殿様然たる府県の存在というものがある。自治体というものは、市町村というものがその時勢に合いまするような広域な自治体形態さえできまするならば、もうこれは中央と直結するような姿が望ましいのじゃなかろうか、こう私は思っておるのであります。しかも御承知のとおりに、いまは情報化社会の時代です。私はほかの大臣でありまするならば、こんなことをお尋ね申し上げましても、それは地方制度は審議会におきましていま検討中であるから、その答申を得た上において云々というお答えしかいただけないと思うのでありまするけれども、幸か不幸か、秋田大臣は日本の情報化の先駆者、橋本先生とお二人がその方面の先駆者であり権威者であるわけであります。そういう大臣が自治大臣となっておすわりになったわけでありまするから、そういう機会に、そういう地方制度のことを思い切ってこの情報化社会に即応するような体制をとるべきじゃないかというふうに私は思うのでありまするけれども、大臣の御所権を承れますれば幸いに思う次第です。
  160. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) 情報産業ないしは情報処理の施策を大いに進興すべきだということについては、私先生と同意見であります。そしてこの情報処理に関する新しい技術あるいは情報管理に関する新しい技術を地方行政の上に取り入れて、もっと合理的な近代的な地方行政を推進すべきものであると私は考えております。しこうして、この情報処理技術が大いに進展しました社会における地方自治行政のあり方を考えてみましたときに、ただいま先生のお話のとおり、国と市町村との間に存在する府県のようなものは無用の長物である、要らないんだという不要論が出てくることは考えられますが、しかし、かかる時代におけるあるべき地方行政のありかたにつきましてはいろいろ議論もございます。府県の合併でいくべし、あるいはいまやかましい道州制の問題もございまして、これを一つにきめてしまうことにつきましては、私、情報処理振興政策の推進者ではありますが、いましばらく事態の推移を見、いましばらく慎重に検討をする時間を与えていただきたいと思う次第でございます。  現実の姿といたしましては、国と市町村との間に広域自治体として府県というものが有力な役割りを果たしておることは事実であります。私はまあそう思っております。したがって、現段階におきましては、府県並びに市町村というこの自治体を基礎といたしまして、広域市町村圏の進興とその基礎になる情報処理に関する、あるいは組織工学の手法等を大いに応用することは必要でございますが、非常に激動する社会経済情勢に対応して、あるべき適当な適切な地方行政の振興、促進ということを当分考えていきたいと、こう思っておる次第でございます。
  161. 白井勇

    ○白井勇君 私ちょっと申し落としましたが、府県は必要ない、いま一部に言われておりまするそれにかわりまして道州制なんというもの、私の考え方では非常にカビくさいものであって、そういうようなものはもうこの情報化の社会におきましては必要ないことになるだろう、こういう私は考え方であります。御承知のとおりに、いま約百四十万の府県の職員、二兆円の人件費とこう言われておりますが、非常にむだなようなことであり、私はそれにかわって道州制を持つなんという考え方も、これも多少時代おくれではなかろうかというような感じを持っておりますから、私は自治大臣に大いに期待を持ってお願い申し上げておきます。  次に私、総合農政の問題につきまして多少お尋ねをいたしてみたいと思うのであります。  「総合農政の推進について」という農林省の構想と申しまするか、発表に相なったわけであります。まあ内容は従来言われたことを再編成をしたというものでありまして、そう目新しいものは何もないわけでありまするけれども、しかしいままでばらばらでありましたものを再編成するだけでもたいへん御苦労だったと私は思っておるのであります。これはどこまでも一つの推進についてという方向を示しただけでありまして、それならばこれからはどういうような具体策を、どういう手順でお進めになっていかれまする御予定でありますか、農林大臣にお伺いできましたら非常に幸いです。
  162. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お尋ねのまとめて出しました総合農政の推進につきましては、御存じのように、昨年九月農政審議会等の御意見を聞きまして、今後の基本方針を四十五年度において講じようとする施策を明らかにいたしたものでありますが、今後農政を進めてまいるにあたりましては、この基本的方向に沿ってやってまいりたい。  そこでまず、ただいまの農業の実情から見て、第一は御審議を願っております農地法、農業協同組合法等の改正をはかるほか、農業生産基盤の整備、それから第二次農業構造改善事業、こういうものを本格的にいたしますと同時に、新たに農業者年金制度の創設などをいたしまして、いわゆる農業の構造政策を一そう充実いたしてまいりたい、これが第一であります。  それから第二は、御存じの米の需給が今日のような状況にございますので、これの需要の拡大につとめる一方、百五十万トンの生産調整をやる。これは農政審議会でも特にこの点の必要性を強調いたしておるところでありますが、さらにそれに加うるに畜産、園芸等の生産拡大をはかって農業生産を推進いたします。  その次は、あそこにうたっております三番目には、農産物価格の安定をはかるため、肉用牛、野菜につきまして価格安定措置の強化をはかるとともに、各種の価格安定措置の適切な運用につとめてまいりたいと思っております。さらにこれと同時に、これらの品物に対する加工流通の近代化を一そう促進いたしたい、こういうことのために四十五年度予算でも予算を計上いたしております。このほか道路など都市に比べて立ちおくれております農村の生活環境施設の整備を推進いたす、このための具体的な予算の措置を講じております。応私どもの想定いたしました総合農政の推進についてのこれからやろうとしておる第一着手についてそのように御報告をいたします。
  163. 白井勇

    ○白井勇君 私、いろいろとお尋ねやらお願いをしたい点も多々ありますので、まあ一々お尋ねしておりますと時間もありませんので、いまこれから進められようとしておりまする地域の特性を考えました具体案ですね、特性を考えました具体案をこれからいま作業をしてきめられるわけでありますね。いわゆる適地適産と、農林省のことばをかりて言いますとそういうものをきめられるわけでありますね。それは需給推算によって、まあ来年の少なくも初めまでにきめるということのようでありまするけれども、これにつきましては、やはり私はその需給推算を土台といたしましてきめますることは当然でありまするけれども、その次の段階におきまして、たとえば肉類が足りないということになりまするならば、その肉類というものは最小限度どういう肉類で国民に最低線のものだけは、これは保障するような措置を講ずるというようなこと、あるいはまた野菜にいたしましても、野菜というものはたとえば肉類で申しまするならば、日本じゃなかなか牛肉というものはこれは高級品になるんでありまするから、そういうものはまあ極端な言い方をしますと幾ら高くてもやむを得ない、むしろ鶏なりあるいは豚なりあるいは鶏卵というようなものだけはせめてたん白資源といたしましてできるだけ安い価格で安定するような措置を考えてやる、あるいはまた野菜にいたしましても同様なことでありまして、緑の野菜じゃこういうものをまず最小限度考えていこうというような考え方、あるいはまた最近におきましては、新たん白食品というようなものも出ておるわけでありますから、ああいうものをどういうふうに取り入れていくかというような、そういうまず線からきめまして、それから府県におろしていくような措置を考える必要があるだろうと、これは私の意見であります。  それからもう一つ申し上げたいと思っておりますることは、よく大臣は、地方の実情に最も詳しい地方長官なり市町村がまず何がその地帯においては生産されるか、それをおっしゃってください、そうしますれば、その要望に応じまして政府はいろいろ手を打ってあげましょうと、こういうふうに従来の農林省のほうも申しまするし、大臣もそういうお答えをなすっていらっしゃいます。私はしかし、それはどうかなというふうに思うのであります。と申しますることは、いま市町村にいたしましても農協長にいたしましても、あるいは知事さんにいたしましても、かりに日本全体といたしましてくだものが足りないのだという実態がわかりまして、それならブドウをつくってよいのか、ナシをつくっていいのか、桃をつくっていいのか、答え得る人はだれ一人として私はないと思います。こういうことはやはり国全体を見ております農林省、この変動の激しい社会状態なんでありまするから、世界の市場というものを十分——まあ総理のことばをかりますれば、長期の見通しを持ったそういう判断に基づかなければ私はきまり得るものではないと思います。そういうものに基づきまするところの一つのビジョンを出しまして、そうしてもちろん地方庁なり、あるいは実際やります農家の協力を最後に得なければなりませんけれども、やはり必要なことはまず農林省といたしましては、そういう長期に基づきます一つの指針というようなものをまず出さなければならぬ。まあこれは私の私見でありまして御参考になりましたらお考えをいただきたいと思うのであります。  次に私、学校給食のことを文部大臣に伺いますが、一々伺っておりますというと時間もありませんから、私の考え方がまず正しいものかどうかおくみ取りを願いたい。  私たちが学校給食法を制定いたします場合、食えない者に昼めしを与えてやるというような考え方でやったのではありません。貧乏人であろうが金持ちの者であろうがどういう者であろうが、一緒に食堂で先生を中心に食事をやって団らんをしていく、その間が私は教育の過程である、こういう考え方のもとにあの制度ができ上がったと私は記憶をいたしております。たまたま当時は米というものが足りなかったから、やむを得ず外国から小麦をもらってパン食に相なり、脱脂ミルクというものを持ってきた。ところで、今日におきましては、幸か不幸か米が余るようになったということになりまするというと、米食にかえますには、お話によるというと、ばく大な施設費がかかりまするとか、あるいは父兄負担がたいへんであるとか、あるいは炊事婦がよけいかかるというような、いろいろな計算をされまするけれども、それはそれとして、大蔵大臣が考えるべき筋合いのものであって、国がありがたいことに米が余るという状態になりますれば、やはり主食というものは米をもってかえるということが、これは教育制度としてあたりまえだと私は思うのです。パンでなければ牛乳は飲めない、チーズは食べれないというものではありません。何も米に限ったことではない、くだものが余ってまいりまするならば、やはりそういうものもああいうところにどしどし出してやって、やはり豊かな食事を与えてやるようなことを考えなければならぬ、こう私は思うのであります。それなのに文部省とされましては、ことしは試験的に何校か選びましてこれをやってみましょう、こう言うのです。農林省は農林省で希望がありまするところにやってやりましょう、——まあ私は古くさいのかしりませんけれども、あの給食法を制定いたしました当時の考え方からいたしまして、どうしてもそういうことが私は農林省の態度、文部省の態度というものは割り切れぬのであります。そこらあたりにつきまして私の考え方が間違っておりますかどうか、御批判を得たいと思います。
  164. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) お答えをいたします。  白井先生おっしゃいますように、当初やはり学校の先生を中心としまして、子供たちと一緒に同じ食事をとって、いろいろ談笑のもとにやるというところにも学校給食の教育的意味というものを認めておったと思いますし、その基本的考え方というものは今日も変わっておらないと私は思うわけであります。  それからもう一つの事情は、確かにその当時、米が不足をしておったという事情でもあるかと思いますが、同時に、日本の食生活というものの中において、米だけをたくさん取り入れて、そうしてその他のものを十分取り得ないという状況においては、やはり日本の民族の将来にとっていかがかというようなことも考えて、やはり牛乳を飲むとか、あるいはまたお肉をとるとかというような、そういうバランスのとれた栄養のあるものを子供たちに、貧乏人であろうが、あるいはお金の豊かな人の子供であろうが、とらせていくということであったと思います。したしながら今日のような状況におきまして米が余ってきたという状況においてどうするかという問題があろうかと思いますが、私どもは、単に米が余ったからどうだとかということではなくて、日本の主食は何と申しましても米でございます。この米の食い方ということについてもう少しくふうをしてみる必要があるのじゃなかろうか。たとえば、いま御指摘になりましたように、米を一合食べる、それにお肉を少々、あるいはチーズを少々、あるいは牛乳一本というような形で、けっこうバランスのとれた食事内容になるんじゃなかろうかと、そういうようなくふうを少しやってみたらどうかということでございます。しかし、戦後のこの二十年にわたりまする学校給食の普及は、確かに小学校におきましてはもう今日九〇%の完全給食の普及率を示しております。中学校では四〇%、ミルクはほとんど九〇%、中学校におきましても、というようなことでございまして、農家におきましても、戦前のように年一石一人食べるというようなことでなくて、今日では大体七年ぐらいになっているのじゃなかろうかと思うわけでございまして、こういうような傾向というものはまあ争えないことではなかろうか。  しかし、一面においては、確かにある程度米の消費というものを伸ばしていくくふうというものも農林省自体としてもお考えにならなきゃならないことだろうしというふうに思いますが、われわれもある一面においては御協力を申し上げたいと思うわけでございますけれども、大きい流れとしては、そう昔のような一人当たりの消費というものは期待できないのじゃないかというふうに私は思うわけでございます。しかし、日本人の主食でございます米のとり方について、今日の段階においてもう少し取り入れ方というものはくふうしてしかるべきである。また、学校給食の中においても、これを取り入れられるならば取り入れていこうという考え方で、実は、本年度、百十校小中校の指定校をいたしまして、一年間実験をいたしてみたい。どのような結果が出るか、これも私は慎重に実験をやってみる必要があろうかというふうに考えるわけでございます。われわれのほうでも、保健審議会の意見等をも踏まえまして、基本的な考え方のもとに進めておるわけでございます。
  165. 白井勇

    ○白井勇君 時間がありませんので、農林大臣にお願いをし、また、考えていただきたいと思いますことは、米が余るということがまことに突然としてあらわれたような印象を農村に与えたわけでありますね。ほんとうにこれはいつ米が余るということが農林省ではっきりしたのかというようなことを私はお尋ねをしてみたいと、こう思うのでありまするが、そんな時間もありませんので、まあ私のお願いになりまするけれども、いま、御承知のとおりに、農林省におきましては食糧事務所というものがありまして、府県に事務所があり、さらに五百十一カ所の支所というものが全国に散らばっており、その下にまた約三千の出張所というものがある。全体の人間が二万六千三百六十七名というものがある。そのほかに、統計調査事務所という統計をとっておるところ、それが府県にありまするほかに、また出張所というものが六百二十八というものを持っておる。それで、人員でも一万一千五百六十一人というものがあるわけでございます。そういうほかにはない一つの組織網というものを持っておる。それだけの組織網を持っておりながら、米が足りないとか余るとかということが唐突としてあらわれてくるものなのか。私は、米だけのことを申し上げているのじゃありません。たとえば過去の豚の問題にしたって、これだけの組織網があるのですから、これを動員いたしまするならば、何も年末押し迫ってから一々豚肉を入れなきゃならぬという結果なしに済まされるのじゃないか。野菜の問題もしかりだと私は思います。そういうような総合的な運用のやり方がないものであろうか。これはほんとうに農林省といたしまして考えなきゃならない問題でなかろうかと、私は思っているんです、調査の面だけから見ましても。それからさらに、後ほどもお尋ねしたいと思いまするが、いわゆる食品対策の問題がありますね。こういう問題につきましても、農林省というものは、こういう組織を持っておるのですから、大いにこれを活用いたしまして、国民のために適正な食品が行き渡るようなことを考えなきゃならないのではなかろうかと、私はこう思うのでありまして、賢明なる大臣でございまするから、どうかひとつよくお考えをいただきまして、運用にしかるべき御配慮を願いたいと、こうお願いを申し上げておきます。御返事は要りません。  そこで、米の問題につきましていろいろ私お尋ねしたいのでありまするが、また委員会等におきましてお教えをいただくことにいたしまして、まあ百万トンは減反、残り五十万トン分というものは土地を買い上げる、あるいは、いまの案によりますると、民間に大体買わせるとかなんとかということなんでありますけれども、私はしろうとでわかりませんけれども、国で直接あれを買い上げるというような措置をなぜとれないものであろうか。一番手っとり早く申しまするならば、どこに参りましても道路の予定線というものがあり、あるいはまた、縦貫道路というようなものは山を走っておるかしれませんけれども、平野を走っております道路にいたしましたって、これを幅員を拡大しなきゃならぬというものはわかり切っておるわけであります。そういうところを思い切って公債でも出して政府が買う、そうして利子だけそれを補給すればいいじゃないかというようなふうに私はしろうとなりに思うのでありまするけれども、賢明なる大蔵大臣の御判断をお願いしたいと思います。
  166. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 昭和四十五年度で十一万八千ヘクタール他に転用すると。他に転用すると申しますると、農家の自家消費もありますが、他の人が買うということもあるわけです。しかし、政府が買う、これはまあ先行投資として買うんですが、これは地方庁にお願いをする。実際国が使うときにそれを地方庁から買い上げると、こういうことで、直接国が各地の情勢はわからぬ、これを買うということを考えるのはどうだろうと、こう存じております。
  167. 白井勇

    ○白井勇君 私は、ことしの百五十万トン分の調整というものはうまくいきますか非常に危惧の念を持っておりまするが、いまの需給推算から申しますれば、生産が千四百万トンは変わらないでしょう。それに消費というものは千二百万トン切るという情勢です。したがって、そこに出ますものは最小限度二百万トンは出るんだというふうに言われている。百五十万トンの調整をもってしては足りないということは当初から言われているぐらいの問題であります。来年はどうなってまいりますかわかりませんけれども、私は、来年のこともあり、いまからそういうような態勢を準備いたしておかなければならぬのじゃなかろうかと、こう私個人では思っております。県を通しまするとか、あるいはまた、民間に払い下げる、道路、わきのものを売ってそこにガソリンスタンドが建ってしまうということになりますれば、将来虫食い的になりまして、道路を拡大するにいたしましても、とんだいろいろな災害が出てくるわけでありまして、そういうようななまぬるいことをやっていいものかどうかということ、そこらあたりはよくおわかりでありましょうから、これ以上は申し上げません。  それからもう一つ、私ぜひお願いを申し上げたいと思いますことは、倉石大臣が総合農政につきましていろいろ御苦労なすっておることはよくわかりまするけれども、なかなかこれは具体的には進んでまいらないと思います。ことに、東北地帯のような単作で、御承知のとおりに、私たちくにへ帰りましても、おまえら減反をしなさいなんということは口にも出せないような姿の地帯があるわけでありまして、総合農政の具体化というものはなかなか容易じゃないと私は思うのであります。そこで、何らかの一つの明るさというものを与えなければならぬと思いまするが、それは、私は、職場を持って行くことだろうと思うのであります。幸い、農林省と通産省の間におきまして十分検討されまして、農村地域工場適地におきまする工業開発の促進をはかるための特別措置というものが要綱が一応きまったわけであります。しかし、これは、まことに、まあ何と申しまするか、お粗末なものでありまして、こういうことだけでは、ないよりいいでありましょうけれども、この政策も予算がほとんど固まってしまってから出てきたわけでありまして、金融機関にいたしましても別ワクをもっていろいろ対策を立てるということはできないわけです。で、これは、やはり特別立法をいたしまして、こういう立法のもとに工場を持っていくんだというような措置をとるべきものであろうと、こう私は思うのであります。  もう一つ、非常に思い切ったことでありまするけれども、それには、ここに書いてありまするとおりに、起債ワクでありまするとか、銀行の融資であるとか、いろいろありましょうけれども、この際思い切ってやることは、とにかく通産と農林との間にきまった所に工場が行く限りにおきましては、この三年間なら三年間というものは国税も地方税も一切免除すると、このくらいの措置を考えていただきたいと、こう思うのでありまするが、大蔵大臣、いかがなものでしょうか。
  168. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私も、白井さん同様、農村問題の解決には、やっぱり農村だけのことでは解決しないと、こう思います。したがって、他産業ですね、鉱工業が農村地帯に進出するということも非常にこれは大事なことじゃないかと思います。いま通産省と農林省がお話し合い中であるということでございますが、まだ私はその話し合いは聞いておりません。おりませんが、そういう大事なことでありますので、もし非常に有力な構想でも出てきますれば、けっこうなことだと思いますから、よく私も受けて立って相談をいたしたいと存じます。
  169. 白井勇

    ○白井勇君 まことにありがとうございました。農村はそれだけがたよりだと私はいまの段階は思いますから、思い切った御配慮をいただきたいと、こう思います。  最後に、私、食品関係のことにつきましてお伺いをいたしたいのでありまするが、時間もありませんが、どうかこれは農林省と厚生省の関係でありましょう、消費者保護のたてまえから、農林省も厚生省も、どうか手を組んで、国民栄養の、また、国民健康の増進のために、適切なる御措置をこの際特にお願いをいたしたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。  以上であります。
  170. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 以上をもちまして白井君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  171. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 次に、参考人出席要求に関する件についておはかりをいたします。  三案審査のため、明日、日本銀行総裁佐々木直君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  172. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  明日は午前十時開会することとし、本日はこれをもって散会いたします。    午後四時二分散会      —————・—————