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1970-03-03 第63回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年三月三日(火曜日)    午前十時十九分開会     ―――――――――――――    委員の異動  三月三日     辞任         補欠選任      塩見 俊二君     任田 新治君      萩原幽香子君     松下 正寿君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         堀本 宜実君     理 事                 植木 光教君                 木村 睦男君                 柴田  栄君                 山本 利壽君                 吉武 恵市君                 鈴木  強君                 横川 正市君                 矢追 秀彦君                 向井 長年君     委 員                 岩動 道行君                 大森 久司君                 梶原 茂嘉君                 川上 為治君                 剱木 亨弘君                 小山邦太郎君                 郡  祐一君                 西郷吉之助君                 白井  勇君                 杉原 荒太君                 田村 賢作君                 任田 新治君                 中村喜四郎君                 八田 一朗君                 林田悠紀夫君                 平泉  渉君                 増原 恵吉君                 柳田桃太郎君                 足鹿  覺君                 小野  明君                 岡  三郎君                 加瀬  完君                 亀田 得治君                 木村禧八郎君                 戸田 菊雄君                 羽生 三七君                 山崎  昇君                 塩出 啓典君                 鈴木 一弘君                 三木 忠雄君                 松下 正寿君                 須藤 五郎君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  小林 武治君        外 務 大 臣  愛知 揆一君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  坂田 道太君        厚 生 大 臣  内田 常雄君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        通商産業大臣   宮澤 喜一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君        郵 政 大 臣  井出一太郎君        労 働 大 臣  野原 正勝君        建 設 大 臣  根本龍太郎君        自 治 大 臣  秋田 大助君        国 務 大 臣  荒木萬壽夫君        国 務 大 臣  佐藤 一郎君        国 務 大 臣  中曽根康弘君        国 務 大 臣  西田 信一君        国 務 大 臣  保利  茂君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       真田 秀夫君        警察庁交通局長  久保 卓也君        北海道開発庁総        務監理官     新保 實生君        防衛庁長官官房        長        島田  豊君        防衛庁防衛局長  宍戸 基男君        防衛庁参事官   江藤 淳雄君        防衛施設庁長官  山上 信重君        防衛施設庁総務        部長       鐘江 士郎君        防衛施設庁総務        部会計課長    高橋 定夫君        防衛施設庁施設        部長       鶴崎  敏君        経済企画庁調整        局長       新田 庚一君        経済企画庁総合        計画局長     八塚 陽介君        経済企画庁総合        開発局長     宮崎  仁君        法務省入国管理        局長       吉田 健三君        外務省アジア局        長        須之部量三君        外務省アメリカ        局長       東郷 文彦君        外務省経済局長  鶴見 清彦君        外務省経済協力        局長       沢木 正男君        外務省条約局長  井川 克一君        外務省国際連合        局長       西堀 正弘君        大蔵省主計局長  鳩山威一郎君        文部大臣官房会        計課長      安養寺重夫君        文部省初等中等        教育局長     宮地  茂君        文部省体育局長  木田  宏君        厚生大臣官房会        計課長      横田 陽吉君        厚生省社会局長  伊部 英男君        厚生省年金局長  廣瀬 治郎君        厚生省援護局長  武藤琦一郎君        農林大臣官房長  亀長 友義君        農林大臣官房予        算課長      大場 敏彦君        農林省農政局長  池田 俊也君        食糧庁長官    森本  修君        通商産業省通商        局長       原田  明君        通商産業省貿易        振興局長     後藤 正記君        運輸大臣官房長  鈴木 珊吉君        郵政大臣官房電        気通信監理官   牧野 康夫君        労働省職業安定        局長       住  榮作君        労働省職業訓練        局長       石黒 拓爾君        建設大臣官房長  志村 清一君        建設大臣官房会        計課長      大塩洋一郎君        建設省住宅局長  大津留 温君        自治省行政局長  宮澤  弘君        自治省財政局長  長野 士郎君        自治省税務局長  降矢 敬義君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    説明員        外務大臣官房領        事移住部長    遠藤 又男君        大蔵大臣官房審        議官       高木 文雄君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和四十四年度一般会計補正予算(第1号)(内  閣提出、衆議院送付) ○昭和四十四年度特別会計補正予算(特第1号)  (内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十四年度一般会計補正予算昭和四十四年度特別会計補正予算  以上両案を一括して議題といたします。  まず、理事会において両案の取り扱いについて協議を行ないましたので、その要旨について御報告いたします。  審査は、本日及び明日の二日間といたしました。その質疑総時間は二百七十四分とし、各会派への割り当ては、自由民主党及び日本社会党はそれぞれ百分、公明党三十六分、民社党十八分、日本共産党及び第二院クラブはそれぞれ十分とし、その質疑順位は、日本社会党自由民主党日本社会党公明党民社党日本共産党、第二院クラブの順といたします。  以上御報告いたしましたとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 御異議ないと認めまして、さよう取り計らいます。  それでは、これより質疑に入ります。
  4. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行。  質疑に入ります前に、一言総理大臣大蔵大臣お尋ねをしたいことがございます。  一つは、国会における予算修正権の問題、もう一つは、暫定予算の問題でございます。  佐藤総理は、二月十七日の衆議院の本会議におけるわが党の成田委員長質問に答えて、予算修正権国会にないのではないか、こういうふうにとれる御発言をされておりますので、この際、ひとつ明確にしていただきたいと思います。  簡単に、その議事録を私が見てみましたが、成田委員長提案は、予算審議を通じて、国民生活の向上のための各党意見の一致を見られるような政策があれば、積極的に修正するという慣行を確立すべきではないか、こういうことでございますが、これに対して総理の御答弁は、「これらの問題についてぜひとも不十分だから予算修正慣行を確立せよとの御提言でありますが、この予算は、先ほども申し上げたように、内政の年にふさわしい国民生活重視予算であります。政府は責任をもってこの編成に当たったのでありまして、内閣制のたてまえに即して、与党である自由民主党意見は十分にしんしゃくして編成されたものであり、御提言のように、各党一致した基本的な修正が行なわれる余地は、残念ながらないことをはっきり申し上げておきます。」、こうお答えになっております。  このあと、民社党西村委員長からさらに御発言があり、最後に総理が御答弁になっておりますのは、「予算編成について与党だけで問題を解決しようというなら、国会はかってにやったらいいだろうと言わんばかりのお話でございます。私は、もちろん、とるべき意見少数意見といえども採用するにやぶさかではありません。」、こういうふうになっておりますので、成田委員長に対する修正がされておるようにも思いますけれども、実は、けさの朝日新聞の投書にも、総理修正権の問題が取り上げられておりました。したがって、私は、国会には修正権あり、こういう立場をはっきりとっておるわけでございますから、この修正権が否定されるような御発言であるのかないのか、この点をちょっと明確にしておく必要があると思いますから、ぜひ総理から明確な御答弁をいただきたいと思います。  それからもう一つ暫定予算については、国会審議状況からして、常識的に考えても、これは組まざるを得ないと思います。しかし、審議の過程でありますから、明確に大蔵大臣としても、ここでお考え方を発表することはどうかと思いますけれども、一応大体のスケジュールももう固まってきた段階でありますから、おおよそ提案の時期、それから規模等について、大蔵大臣のお考え方がありましたら、お答えをしていただきたいと思います。
  5. 堀本宜実

  6. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の発言が誤解を招いておるようですが、私も、もちろん、いまの国会が国政の最高機関であり、予算修正権がないなどと、かような考え方は持っておりません。修正権のあることはもちろんでございます。実際問題として、はたしてその修正権が行なえるような状態かどうかと、こういうような点が、やや私、一言多かったのではないかと、かように実は思っております。
  7. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 福田大蔵大臣
  8. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 暫定予算は、実際問題とすると、どうも編成せざるを得ない、かように考えております。おそくも二十五、六日ごろまでには提案をしたい。規模につきましては、もう少し様子を見ないとわかりませんです。
  9. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと関連して……。
  10. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 関連ですか。
  11. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連です。
  12. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 木村君。
  13. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いまの総理大臣の、予算修正権につきましては、ただ、国会修正権があると思うというだけではなくて、これは過去にはっきりした記録があるわけです。昭和二十三年二月二十六日の両院法規委員会におきまして、「予算についての国会増額修正権に関する憲法の解釈は、左のごとく決定するよう両議院に処置せられたい。」、そういう「要旨」がありまして、そして、「国会予算の増減または予算費目の追加もしくは削除等すべて内閣の提出した予算に関して最終かつ完全な権限を有する。」、こういう決定があるわけです、国会に。ですから、この際、修正権が問題になりましたから、はっきりさしておく必要があると思う。両院法規委員会で、はっきりと、こういうふうな取りきめがあるのです。ですから、これは今後、あいまいにしないで、はっきりと、こういう根拠に基づいて国会には修正権があるんだ、こうしてくださいということ。ただ、あると思うとか、ただ国会最高機関であるからあるとかないとかということじゃなくて、もう議論の余地がないのです、過去で。この点はひとつ頭に置かれておく必要がありますから、われわれもその点を確認しておく必要があると思うのですね。ただ、実際問題としての増額修正の問題については、これはまた、あとで私の質問のときに質問したいと思いますけれども、その点ひとつ、はっきりこの際さしておく必要があるのじゃないかと思う。総理、これについてどうお考えですか。
  14. 堀本宜実

  15. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 木村君から重ねて私に教えていただきました。その点は、もう異存のないところでございます。     ―――――――――――――
  16. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 亀田得治君。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 私は、きょうは、日米共同声明と、特にその中の朝鮮に関する部分について質問をする予定でありますが、本論に入ります前に、ただいま問題になっておる繊維自主規制の問題、これについて若干お尋ねをしておきたいと思います。  吉野公使が帰国して、そうして、何らかの提案日本としてはすべき段階であると思うと、こういうことを主張いたしております。外務大臣も当然、吉野公使からその内容なり理由、背景等についてお聞きになったと思いますが、この際、この場でひとつ詳細にその点を説明してほしいと思います。それに対して外務大臣としては一体どういうふうに対処しようとしておるのか、あわせてその態度についてもお伺いしたいと思います。外務大臣から……。
  18. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 繊維問題につきましては、御案内のように、今回の問題は、実は、表向きに米側からの要請というものが出てまいりましたのは、昨年の五月スタンズ長官が来日したときに端を発するわけでございまして、それからずいぶん長い期間経過しているわけでございます。そして、ただいまのところは、吉野公使を一時帰国させまして、さらにその後の米国におけるいろいろの意見見解、あるいは動向等も念のために聴取いたしたいと思いまして、昨日来その情勢報告も聞いておるわけでございます。  簡単に申し上げますと、アメリカ側のやはりほんとうの気持ちと申しますか、言うところは、いわば包括規制に近いような考え方であるのではなかろうかと考えられるわけでございます。わがほうといたしましては、いまさら申し上げるまでもございませんが、自由貿易主義ということを大姉に掲げておるいわゆるガット精神とでも申しましょうか、その考え方、そのワクの中でこの種の問題は解決すべきものである、かように考えますから、包括規制というような考え方には基本的に日本としては同調するわけにはいかない。これが一番基本的な問題であると思います。そこで、従来から被害日本品の輸出によって与えておる、あるいは重大な被害を与えるおそれが顕著であるというようなことであるのならば、資料等に基づいて検討をする、その結果において、とるべき措置があるならば当方といたしましてもそれについては検討をする用意があるという態度で今日まできておるわけでございますが、その基本的なところが、今回の吉野公使報告によりましても、率直に申しまして、アメリカ側見解というものは、どうもまだ、われわれの考え方とある程度の開きがあるように思われるわけでございます。したがいまして、日本側といたしましては、対案というふうに伝えられておりますけれども、対案と申しましてもこれはいろいろございますので、基本的な問題の取り上げ方についての基本的な考え方をもう少し歩み寄らせなければならないということも含めまして、アメリカ側に対して、折衝というか、話し合いを続ける必要があるのではないだろうか、こういうふうに考えまして、ただいま、繊維という問題は日本といたしましても実に大きな産業であり、これに従事している方々もいろいろの意味で非常に広範囲にわたります問題でありますし、いたしますので、通産省と緊密な連係をとり、また、場合によりまして、アメリカが望んでおるような自主規制という方法をとると、かりに仮定いたしまするならば、それら業界の方方の納得なくしてはこれは実行ができないわけでございますから、それらの方々納得も得るような方法でなければ日本側としての最終的な対案もできないわけでございますから、その辺のところと十分に意見を交換しながら誤りのない態度をとってまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございますので、伝えられる対案というようなものについては、ただいま確とした、こうこうならばというようなものは、まだきめる段階には至っておらないわけでございます。それが大体の現在までの経過でございます。
  19. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、何らかの提案は、この段階ではしない、そう理解していいですか。
  20. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) いま申しましたように、対案といいましても非常に幅が多いわけでございますが、一方におきまして、アメリカとしてもこれは非常に大きな問題になっているわけでございます。われわれとしては、日米間の貿易が御承知のように年間もう八十億ドルをこすというような大きな額になっており、まことに密接な関係でもあり、その他いろいろの点から申しましても、日米間の親善友好関係というものは非常に大切なものでございますから、日米間の基本的な問題に対する考え方というものも、できるだけその友好親善関係の中において歩み寄りをして、そうして双方納得できるような解決の道を何とかしてつくり上げたい、これを基本的に考えておりますけれども、同時に、日本側とし、あるいは関係諸国動向というものも、この問題について非常な重大な関心を示しておるわけでございますから、筋目の立つような解決でなければ対策というものは立ち得ないわけでございますから、できるだけ急いで解決をしたいという考えを持ちながらも、筋目の立つ方法でなければならないというところで、いろいろと苦心をいたしておるわけでございまして、ただいま現在の時点におきましては、まだいわゆる対案というものはつくる段階には至っておらない、これが現状でございます。
  21. 亀田得治

    亀田得治君 通産大臣一言お伺いをしておきますが、業界では、吉野公使発言などに非常に強く反対をいたしております。また、通産省においてもそういう考え方のようであります。私は、その線をきちっとこれは守ってほしいと思うのですが、通産大臣の所見を確かめておきたいと思います。
  22. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま外務大臣お答えになりましたことで尽きておると思います。私が心配しておりますのは、両国の間のこの問題についての考え方、いま外務大臣の言われましたように、かなり開きが、現在のところ、あると思いますが、処置を誤りますと、両国の間の対話というものがとぎれる心配がある、そういう事態を実は心配をいたしております。  そこで、いま外務大臣が詳しく言われましたとおりでございますが、対案というものであるかどうかは別といたしまして、対話というものがとぎれる状態は非常に危険な状態でありますから、何かそういうことにならないようにしなければならない、それをいま考えておるところでございます。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 総理お尋ねしますが、総理としてこの問題にやはり決断を下すべき時期じゃないかと思うのです。日本政府の出先の者が、日本政府の本心でないようなことを口ばしってみたり、はなはだかっこうが悪いわけですね。私は、この時点総理が筋を通して決断を下すということであれば、いわゆる損害というものが明確じゃないわけですから、拒否しかないわけなんですね。だから、そういう線できちっと総理大臣が、ひとつこの問題に決着をつけるということをやるべきじゃないかと思うのです。そういうことをすると、米国国会が硬化して、立法措置を講ずるかもしれぬといったようなこともあるかもしれません。しかし、そういうことをすれば、それは米国が二重に世界から非難を受けるだけなんですね。私は、そういう意味で、筋を通して、やはり総理大臣がこの問題に決着をつけるべきだというふうに思いますが、お考えを聞いておきたいと思います。
  24. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま外務大臣通産大臣からいろいろお話がございました。最終的に総理所信いかんということになっておるわけでございます。私は、日米間の関係はいずれの国にも増して非常に考えなければならぬ。これは施政方針演説でも申したとおりでございます。貿易額八十億ドルと、かようになりますと、やはりずいぶんいいお得意でもございます。これは、日本から見ていいお得意であるばかりでなく、アメリカから見てもいいお得意であります。私は、この繊維問題が起きてから国内繊維関係業者が一体どういうような状態になっているか、こういうことをたいへん実は心配をしております。ただいま亀田君が主張なさるようなことで解決ができるかどうか、そういうことを心配しておるがゆえに、いま国内繊維関係の二次、三次、その辺のところは、二次産業というのは、たいへん混乱というか、不安を持った状況であるように聞いております。これらのことを考えると、国内問題からも一日も早く解決しなければならないし、また、日米間の関係も、やはりただいまは、とにかく話が続くようにとか、あるいはそこらに特別な関係がないようにくふうすべきだというようないろんな表現がございますが、私は、日米関係を悪化ささないようにこの問題を早く解決すべき、そのときではないだろうかと思います。ものごとは、ただいま言われるように、一方の主張だけで話し合いがつくわけのものでないと思います。そこに、双方が忌憚のない意見を交換すれば、必ず私は解決ができるものではないかと、かように実は見ております。甘く見ているわけではありません。日米間で国民的に一番むずかしい問題といえば領土問題だと思いますが、この領土問題だって解決したじゃないか、その見地に立てば、貿易総体の問題ではない、そのうちの一品目の問題である、しかも、日本国内でそれに従事しておられる諸君がずいぶん先行き不安を感じておる、そういう状況のことを考えると、これはやはり互譲の精神で、お互いに譲り合って解決を見つけるのがものごとの本来の筋ではないだろうか、かように実は私は思っております。  私は、そこで大きく後退しろと言っているわけではございませんが、譲り得るもの、そういう点では、やっぱり大局に立って処置すべきではないだろうか。ただいま外務大臣が申しましたとおり、やはり筋は立てなければならない。ことに国会からも決議を受けております。二国間協定ではいかぬですよと、多数国間の話でなければこれはいかぬですよ、そういうことがございます。したがいまして、私は、両国間だけで問題が解決するとは思わない。繊維を取り扱っておる多数の国がございますから、それらのものが、やはりアメリカに対して、いろいろアメリカの業者が困っておれば、これは日本の業者だけがインジュリーを与えているわけでもない、かように考えますので、それらの連中ともよく話がつかなければならない。それにいたしましても、両国間がまずこういう問題でお互いに歩み寄って、一つの結論を出してみて、そうしてやはり解決の方向へいくというのが望ましいことではないだろうかと思います。ただいたずらに主張だけして、そうして片一方で国内の不安――関係業者のほうでもたいへんな状態のようです。いろいろ織物をつくっておると、そういう工賃も最近は半減した、半分にまで下がった、あるいは労働力もこのごろでは余っておるとか、いろいろ先行きを不安に見守っておる状況であります。そういう状態をやはり早く解決するのが私ども政治の問題ではないだろうか。話ができ上がって、われわれの主張は主張で通ったけれども、そのために、もとがなくなったというふうなことでは政治ではないだろうと、かように思いますので、ここらに私はとくと考えなければならない問題があるのじゃないだろうか。長い間引っぱらないこと、早く解決ができること、これも一つの問題だと、かように実は心配しておる際でございます。したがって、せっかく御提案になりましたように、総理が思い切って、いままでの原則を立てて、そうして突っぱねろと、かような御提案がございますが、御激励はありがたくお受けいたしますけれども、ただいまのような結論には直ちに私は賛成いたしかねるわけでございます。
  25. 亀田得治

    亀田得治君 総理から、さきに、この問題で、三月十五日ころまでに決着をつけたいという発言があったわけですが、現在でもやはりそういう考えでしょうか。
  26. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) こういう問題に期限をつけることはいかがかと思います。ただ、私がこの前申しましたのは、万博のちょうど始まるときだ、万博が始まって、そうしてにぎやかに――これは同時に祭典でもありますから、そういう際にこういう問題が残り、そうして、のどにひっかかっておるようではまずい、かように思ったのでございます。しかし、話がつくことに別に制限をつける、かような意味ではございません。
  27. 亀田得治

    亀田得治君 いろいろな角度から検討されることは当然だと思いますが、しかし、土台がはっきりしませんと、日本国内納得できないと思うのですね。基礎がはっきりしないと。やはり問題は、日本繊維輸出とアメリカ繊維産業の困っておることとの因果関係ですね。アメリカ繊維産業が困っておることは事実のようです。しかし、それが日本繊維輸出と直接どれだけ結びつくのか、はっきりしないじゃないかということが、ほとんどの定説のように私は聞くわけなんです。だから、ここがやはり私は問題だと思う。古野公使の言などを借りますと、日本政府から具体的な要求があれば損害説明のための追加資料などをまだ出してもいい、こんなようなことも言うておるようですが、しかし、損害の証明は、要求しておるアメリカが積極的に全部そろえるべき問題なんです。こちらはそんなことしてほしくないですから、何もこちらから一々要求すべき筋合いのものじゃありません。ともかく、それができておらぬわけなんですね。私は、純経済的な問題としては、これはもうはっきり勝負がきまっておると思うのです。残される問題は、私は政治的な問題だと思うのです。これはだれでも知っていることですが、ニクソン大統領が選挙の際に、この繊維産業の保護という問題について打ち出した、約束をした、そういうことが大きく今日の問題に尾を引いておる、こういったようなことをわれわれ聞くわけなんですね。おそらく政治家としては、一たん公約すれば非常に拘束されるわけですから、日米首脳会談を十一月おやりになった際にも必ずこの問題が出たのじゃないかと、われわれ思うのですね。まあ、密約があったとかないとか、そういう密約というふうなことじゃなしに、突っ込んで話があったのじゃないかと思うのですね。それに対して佐藤さんもおそらくお答えになっておると思うのですね。その辺の真相をはっきりここで説明をしてもらいたい。何もないというのでは、かえっておかしい、何かあるんじゃないかと逆に推測されるわけですね。ないはずがないわけです、ニクソン大統領のそれだけの政治的な公約をしたということが事実である以上は。だからぜひその点をひとつ御説明を願いたいと思います。
  28. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私がニクソン大統領と沖縄返還、これを主題にして、その他の日米間の問題、これは日を変えてやはり話し合っております。もちろん大統領にしても私にしても、繊維の問題を一つ両国の懸案事項として、そういう問題があるんだということを話したことはございます。しかし、もうそのときはすでにジュネーブにおいて会議が行なわれておりますから、両者は、そのジュネーブの会議が成功する、成果をおさめることを期待するという程度で別れております。と申しますのは、大統領にしても私にしても、繊維問題という、一口に繊維問題と言われますが、どういうところがどういう違法の問題を引き起こしているのか、これはお互いがそこまで突っ込んで話をするような材料もないし、またそれだけの時間もございません。私は、両国間にある関係する事項、そういうものがいまの沖縄返還問題のその機会に話のあったことは否定はいたしません。しかし、ただいま申すように、ジュネーブで会議が行なわれている、それが成果をあげるようにと、こういうことを期待するということで別れております。その後、帰りましていろいろその話を取り組んでみまするとたいへん複雑な問題でございます。わが国からアメリカに送られている合化繊は、これはきわめて数量的にパーセンテージからいえば低いものであります。しかしながら、特殊な品目については、非常に近時急速に前年に比べて伸びている。ものによっては八〇%以上も急激にふえているものもございます。こういうものがやはり相手方にとりましては非常な心配の種ではないかなあと、かように思います。また、この繊維の問題は、日本だけではない、ずいぶん各国がアメリカを相手にしていろいろ送り込んでいる。この中には欧州からの国々もありますし、アジアの諸国もございます。したがって、日本だけで話はつかない、こういうことを実は申しておるわけであります。それらの点はだんだんアメリカにも理解されつつあるようでございます。したがって、私はそのわずかなパーセンテージ、そういうところから全体的な規制というようなものには発展はしないものだと、かように思いますので、そういう点がいままでいろいろ議論されている。これらの点は先ほど外務大臣お答えいたしましたが、それはアメリカでも修正しつつあるように思います。しかし、特殊なものがいままでのような勢いでそれぞれが伸びていく、増加していく、こういうことについては、やはり危険を感ずるのではないかと思います。  話は少し余談になりますが、私はかつて繊維製品、純綿の問題で、実はアメリカから交渉された、その当時の最初の交渉者でもあります。これはアメリカから買っておる綿、それを日本で加工して、そうしてアメリカに売り出す、関税を課す、こういう問題であります。それは国内問題で、米国内では米綿が高い値段で売られておる、外国に対しては特に安く売られておる、こういう関係だからというようなことを申しておりますので、もともと安く売ったから、今度入ってきたときに高くなるようにするのだ、こういう意味では、どうもばかをみるのは日本人だけだ、こう言ったこともございます。  その次の問題は、今回問題になっておる合化繊と同時に毛製品が問題のようでありますけれども、ジョンソン前大統領の際に参りました際に、毛製品の問題について話し合いたいということでありますから、大統領と総理が話をするのにいきなりそんな話もいかがかと思う。私のほうの毛製品は豪州やニュージランドから原料が来ておるのだ、アメリカでそこらの問題もよく考えられて、いい品物ならこれはやっぱり売れるのはしかたがないのじゃないのか、こういうような話をして、ジョンソン大統領はそれより以上話は進めなかった、こういうことでございます。まあ、いろいろの問題が両国の間ではございます。私どもが、当方からいろいろの繊維関係も売り込んでおるが同時に向こうからも農産物などはうんと私どもは買っております。相互に利害が複雑にからみ合っております。ただいま農業改善をし、構造改善をしようという、そういう際に、農産物がどんどん入ってきましても、いろいろ心配の種でもあります。いろいろむずかしい問題が幾つもあるわけでありますから、それらの点もよく話し合って、そうしてお互いに理解し合い、そうして問題を早く解決することが望ましいのではないか、実はさように私は考えております。
  29. 亀田得治

    亀田得治君 説明は長いのですが、なかなか肝心なところまで明確じゃないんですが、アメリカ日本大使館では、日米首脳会談の二日目、十一月二十二日にニクソンと総理との間で一つの了解事一項ができた。それは自主規制を前提にして――内容のこまかいことは別ですよ、前提にして、そうしてこの問題を早期に、円満に解決をする、こういう了解が成り立っておる。こういうふうに解しておるようですが、そこまではできておらぬのですか、どうなんです。
  30. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど長く申し上げましたが、その要点は、二人の間で繊維問題が出たということと同時に、ただいま申しましたように、当時はジュネーブで会議が行なわれておる、それに成果があるように、ということを期待するということだけでございます。そうしてできるだけ早くこの問題が解決されることが望ましい、かように申したわけでございます。
  31. 亀田得治

    亀田得治君 そういうのは、それは了解事項と理解していいわけですか。
  32. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 外交的にどういうことになりますか、これ別に書いたものがあるわけではございませんし、話し合っただけでございます。私は責任のある総理が話をしたという、そういう意味で、ニクソン大統領も別に書いてはおらないけれども、両国の基礎的な了解事項だと、かようには思うだろうと思う。また、そういう意味で私も話をしたのだから、別にだますつもりじゃございません。
  33. 亀田得治

    亀田得治君 委員長に要求しておきますが、衆議院では、例の先月の二十何日でしたか、下田大使の発言等に関連して、下田大使の召喚を、出席を要求しておるようです。わざわざあちらから呼ぶというのもたいへんでしょうから、たまたま吉野公使が帰っておるわけですから、ぜひこの予算委員会に、本日午後でも出席してもらって、直接われわれから日本大使館の考えておる考え方、その背景をなす米国内の動き、事情、そういったようなことを参考に聞きたいと思うのですね。参考人というかっこうでもけっこうだと思います。この点ひとつ委員長に取り計らってほしいと思います。
  34. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) いずれ理事会で相談をします。
  35. 鈴木強

    鈴木強君 ちょっと簡単に一つだけ。  いま、総理大臣お話を聞いておりまして感ずることは、追い詰められた繊維の交渉打開のためには、個別方式的な考え方でいこうというふうにとれたんですね、私には。そうしないと解決方法がないとも思うのです。けさのワシントンの電報が新聞に出ておりますが、スタンズ・アメリカ商務長官も、先ほど亀田委員からお述べになった、万博前に解決をしようというような意向の総理の御発言を引用して、非常に楽観されているような記事が出ておりますね、これはだいじょうぶ解決すると。ですから、その裏には、何か日本政府考え方というものが向こうにも伝わっているようにも思うわけですね。したがって、通産、外務それぞれ大臣も苦労されておるようですけれども、多少の考え方の相違はあるとしても、やはり基本的にはガットを通じて総括的に解決していくという、そういう立場をとってほしいと私も思うのですけれども、どうも聞いておりますと、そうでなくて、もうここへ来たらやむを得ないから、日米間の友好関係を保持していくという立場に立っても何か妥結の方向を見出したいということで、多少個別方式の方向に走ろうとする気配がうかがえるんですけれども、その心配はないのでしょうか。
  36. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もともとこういう問題はいきなりガットで会議開きましても、いたずらに議論がされるだけだろうと思います。私はやはり両国間の問題を解決する、やはりどうせガットの場でなければならないと思いますよ。多国間の申し合わせでない限り、日本だけが制限を受けて、他の国が自由だというような状況では不公平きわまることですから、そういうことはあってはならないと、かように思いますが、しかし、ただ何かもとになるものがなくて、関係国だけがいきなり集まっても、これは話がまとまるゆえんではないだろうと思います。いままで始めましたのも、そういう意味のものが主でございます。私はいまスタンズ長官が軽く見ておられるという、そういう事態が問題を紛糾さしておるもとではないだろうか、両国に非常に深刻なものがあるのだ、その状態を十分把握しないと、こういう問題は解決されない、かように実は思っております。私は吉野君が今度帰ってまいりまして、そうしてこの機会に日本国内事情を十分知悉して交渉に当たることが望ましいと、かように思っております。もちろん解決できるものなら早いことが望ましいのですけれども、これがいま言うように、基本的にもなかなかむずかしく、両方がかみ合わない状況だ、これが先ほど外務大臣が説明して、苦労しておるところでございます。私はそういう点を解明していくことも一つ方法だと思っております。  それからもう一つ申し上げたいのは、政府が幾ら話し合ってみましても、政府が規制はできるものじゃございません。これは自主規制でございます。その形はどういうことであろうと自主規制だ、したがって、政府側が非常に困り抜いておりましても、業界納得しない限りそういう話し合いはできるものではないのだ、ここは誤解のないようにひとつ考えていただきたい。私は業界方々の自主的な判断、これが一番けっこうなことだ、そうしてただ単に自分たちの立場だけでなしに、広い立場で考えていただきたいと思いますけれども、政府がこの中に入っていろいろあっせんしていると、かように思われるとやや誤解されるだろうと、政府としてはできるだけ早くこういう問題は片づけてほしいと言えますけれども、また業界自身もあれだけ絶対反対だと、こういう立場でございますから、みずから何かかっこつけなさいといっても、なかなかできないだろう。そういう場合はやはり政府関係の範囲が非常に広いのですから、業界方々の相談に乗ることは、もちろん相談に乗れると、かように思っております。だからその辺のところ誤解のないようにお願いしておきます。
  37. 亀田得治

    亀田得治君 それでは本論に移りまして、日米共同声明の中の朝鮮問題の部分について質問します。この共同声明の中では、朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮ですね。北朝鮮に対して非常にシビアな態度を打ち出しております。総理がいつも言われるように、ほんとうに平和に徹した外交ということを考えるのであれば、たとえ対立がありましても、絶えずそれをやわらげていくと、そういう方向の努力が必要じゃないかと考えるわけです。そういう立場から私特に朝鮮問題についての質問をするわけであります。  まず第一に、総理は十一月二十一日、ナショナル・ブレス・クラブで行なった演説の中で、こう言っております。「万一韓国に対し武力攻撃が発生し、これに対処するため米軍が日本国内の施設・区域を戦闘作戦行動の発進基地として使用しなければならないような事態が生じた場合には、日本政府としては、このような認識に立って、事前協議に対し前向きにかつすみやかに態度を決定する方針であります。」こう言っておられるわけですね。この中の「前向きに、かつすみやかに」この点について若干お聞きしたいわけです。英文では、この点は「ポジティブリー・アンド・プロンプトリー」こういう表現になっております。私英語はあまり達者じゃありませんので、詳しい人にも聞きました。またアメリカン・カレッジ・ディクショナリーですか、こういうものも詳しい人に当たってもらいました。そういたしますと、その結論は、「ポジティブリー」というのは、そんな「前向きに」といったような弱いものじゃないと、平生政府などが、前向きに検討しますと言ったって、最後が必ずきちっと肯定と出ると必ずしも限らない、そういう印象を与えておることばなんですね、これは。ところが「ポジティブリー」の場合には、明確に、間違いなく、絶対的と、ほかのことを検討する余地なくと、そういう意味だというわけなんですね、私の勉強の結果は。おおよそマイナスということが考えられるものではない。それほど積極的な肯定的な意味のものだ、こう私は聞くわけなんです。それから「プロンプトリー」これも日本語で言えば時を移さず、遅滞なく、打てば響くがごとくと、こういったような非常に短い時間のことなんですね、日本語の場合は。たとえば政府などがすみやかに検討いたしますと、こう言ったって、なかなかあなた一月も二月も、場合によっては一年にもなることがあるんですよ。はなはだ与える印象が違うという結論を持っておるのですが、総理はこれはどういうふうにお考えでしょうか。そういうことを知っていてわざわざお使い分けになったのかどうか。
  38. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も英語のほうは弱いのですが、とにかく日本語で勉強したというか、この共同声明を理解しておるのです。そのほうから申しまして、ただいまの諸点は一体どう考えているのか、積極的に、前向きに、あるいは時期を逸せずというようなことをどういうように考えているのか。これは私が申し上げるまでもなく、朝鮮半島というもの、これは一衣帯水の間、日本との間の関係は申すまでもないことであります。そしてただいま国連軍が駐在しておる。そういう一衣帯水の地点で戦闘が行なわれる、そうしてその拡大の危険がある、かように考えると、これはゆっくり考えるというようなものではなくて、最近の戦争状態から見ましても、非常に速度が速い。そういうようなことを考えれば、それはもう早急に結論を出すことが当然だと思います。また、米軍が国連軍の形で駐在するといいながら、米軍なるものに違いない。日本にいる米軍がそれに救援におもむく、こういうようなことも相談を受けると、やはり一衣帯水の間で事変が起こる、戦闘が開始された、こういう場合には前向きに私ども考えるのは、これは当然じゃないか、かように思います。  そこで、これで共同声明についての答えは以上で終わりですが、私がいま亀田君から提案されました北朝鮮の問題、北朝鮮の問題は北朝鮮と日本だけで問題を考える、そういうものではなくて、われわれが友好条約を結んでおる韓国の存在、これを絶えず考えながら北朝鮮との交渉を考えていかないと、事態の判断を誤まることになる、かように私は思っておりますから、その点もあわせてこの機会につけ加えさせていただきます。
  39. 亀田得治

    亀田得治君 いろいろな面はまたあとからお聞きをいたしますが、この「前向きにかつすみやかに」というこのことばを入れた例のプレス・クラブにおける演説ですね、これは何でしょうか、共同声明の公表前に米側に渡されたものですか。
  40. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは共同声明が出まして、それから日本の記者団に対して会見をされた。これは宇宙中継で日本に中継されたわけですが、そのあとでプレス・クラブで演説した。そしてこれは日本語でなされたわけです。その草案原稿は、新聞記者によく御承知のアドバンスをすると同じように、草稿ができておりましたから、その草稿を儀礼的にというか、事務的にアメリカ側にも渡しておきました。ですから、時間的には共同声明が発出されたとほぼ同時ぐらいの時間であったかと思います。
  41. 亀田得治

    亀田得治君 プレス・クラブの演説の前に米側に配付されているのでしょう、演説のとき初めて渡したのですか、そうじゃないのでしょう。それより相当前に渡っているのでしょう。
  42. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ですから、いま申しましたように、共同声明が出たころの時間と記憶いたしております。それから、プレス・クラブについては、演説が始まると同時に配付をいたしました。
  43. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、共同声明と同時ぐらいに渡されたということですから、共同声明が出る、すぐ演説の草稿をつくるというわけにはいかぬのですから、すでにでき上がっているわけですね、共同声明の前に米側がこの演説を見ておるわけでしょう、どうなんですか。
  44. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) さらに詳細に御説明すれば、共同声明が発表されますときには、日本側としてはこのプレス・クラブの演説の草稿もそうですが、外務大臣説明要旨という表題をつけましたものも同時に発表いたしております。
  45. 亀田得治

    亀田得治君 いや、私の聞きますのは、アメリカのジョンソン国務次官がいわゆる背景説明を十一時四十分に始めておるのですね、当日の。そのときにすでに佐藤総理の演説を引用しておるわけです。しかし、佐藤総理の演説はそのあとなんです、時間的に。したがって、米側には渡っておると見なきゃなりません。渡らぬものが演説の背景説明の中に入るわけがありませんからね。そうして、ジョンソン国務次官は、このあとから行なわれる佐藤総理の演説は共同声明と一体のものとして理解してほしいと、こういう説明をしておる、これは事実ですか。
  46. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ジョンソン次官がどういうふうに言ったかは別といたしまして、先ほど申しましたように、プレス・クラブで演説される前にその草稿が米側に渡っていたことはこれは事実で、先ほど申し上げたとおり、かような場合に事務的あるいは儀礼的にアドバンスで渡すことは当然なことであると思います。
  47. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、共同声明は、結局あとから佐藤総理がこういう演説をしてくれると、こういうことが前提で締結されたと、こういうふうに理解していいのですか。総理から、あなた自身のことですから、それは外務大臣はわからぬですわ、総理の演説だから。
  48. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの点は、別に私大事なことでもないように思うのですが、というのは、やはり共同声明もその時間にでき上がるわけじゃございません。話を積み重ねて、そうしていよいよ最終的に、あしたはこの案で最終的に共同声明をお互いに確認し合おうと、こういうことでその共同声明も積み重ねてできておるわけであります。また同時に、私がプレス・クラブで演説をする、いきなり行って頭にあるやつをべらべらとしゃべるわけじゃございません。従来まあ演説は、皆さんも前もって御用意なさることもあるし、頭のいい皆さんだから用意せぬという場合もおありだろうと思います。これは、やはり重大なプレス・クラブの演説でございますから、やはり前もって用意するわけであります。その用意したものがこの共同声明と反対のことがあってはたいへんでございます。また、そういうところでそこにつながりのあることも当然でありますし、発表するのに差しつかえのないときに発表したと、かように御理解いただければその両者の関係はおわかりだろうと、かように思います。
  49. 亀田得治

    亀田得治君 あまり時間もとらぬようにしたいと思いますが、先ほど指摘しました例のポジティブリーですね、もう必ず事前協議に対して承諾を与えるという意味のことばですね、これは米側の要請によって挿入したということを聞くのですが、真相はどうですか。
  50. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) そういうことはもう全く、全然ないことでございます。ことに先ほど私申しましたように、これは、総理の演説は日本語で書かれたもので、その英語の翻訳がいろいろと御議論のようでございますけれども、これはあくまで日本文で演説されたものでございます。
  51. 亀田得治

    亀田得治君 この演説の、先ほど私が指摘した点は非常に重要だと思うのです。これは現在の交換公文の私は修正にもなると思うのですね。事前に包括的に承認を与えたというふうにほとんどの人がとっているんじゃないかと思うのです。だから、本来ならば交換公文の一部の手直しということで、正式にこれは国会にはかるべきものだと考えるんですね。考えるんです。事実また、先ほど総理も言われましたが、朝鮮で紛糾が起きた場合に、一番最初問題になるのは在日空車だと思うのですね。空軍だと思うのです。ところが、第五空軍の司令部は府中にあるわけですね。平素から韓国並びに日本の空軍を全部指揮しているわけなんですね。一体なんです、第五空軍としては。したがって、朝鮮で問題が起これば、これは一度に全部こう動き出す形態になっているわけですよ。だから、そういう実態から、米側も肯定的即時承認ということばを要求したんだと思いますし、佐藤総理もまた、そういう実態を頭に置いてこういうことをおやりになったんだと思いますが、しかしこれは、私は単なる演説なんかで済ますべき問題じゃなく、事前協議制度の変更として、正式に国会提案すべき事案ではなかったかと思うんですね。その点どういうふうにお考えですか。
  52. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) たびたび申しますように、これは総理大臣の演説であって、日米合意した共同声明でもなければ、議事録でも何でもない。この共同声明が出されたに際して、総理大臣としての見識と申しますか、総理大臣としての意見を、その際に一方的に述べられたものであって、これは日米両方の合意でも何でもございません。したがって、また、そのほかの意味をも込めて、事前協議の予約というようなことをしたものでもございませんことは明らかでございます。
  53. 亀田得治

    亀田得治君 交換公文の訂正にも当たるようなことを演説だけでやるのがいけないと、こう言っているんですよ。演説だから国会にかける必要はないなんて、そんなこっちゃ答弁にならぬですよ。そういうことを演説の中で一方的に言うて済ましておくことがいかぬ。本来ならば、共同声明の中に入っていくべきです。もっと正式に言うならば、それを基礎にして国会に議案としてかけるべきです、これは。そこを言っているんです。これは演説だから別に国会にかけぬでもと、そういう趣旨のことを聞いているのじゃない。どうですか、総理。私は、重大な現在の事前協議制度に対する変更だと思う。
  54. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 共同声明をよくお読みになればわかりますが、沖縄返還についての最大の眼目は、七二年中返還、本土並み、核抜きというところに本体があるわけです。本土並みということは、法制的に言っても、安保条約関連取りきめ、あるいは了解事項その他が全部変更なしにということが、日米両国の共同声明ではっきり合意をされているわけでございますから、これが日米間の合意であり、特別の取りきめを必要としないのでありますから、国会の承認その他もない、これがいわゆる本土並みの返還なんであります。
  55. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは私、名ざしですから、私がお答えいたします。  当然そういう際は事前協議の対象になりますから、事前協議があると、そのときに、(「即時イエスと」と呼ぶ者あり)即時イエスと言うか、それはノーと言うか、とにかく早めに即時に問題は解決しようと、こういうことを実は申しておるのでございますから、私は、いま言われるように、必ずイエスと言うんだと、こういうことも、演説でありましても演説の場でも、さようなことは申したことはございません。だから、したがって、ただいま、たんのうな英語学者からいろいろ分析される、そうしていまの使った用語が、これはもうイエスあるのみだと、かような判断されましても、これはもう事前協議についての在来の考え方、ここで何度も申したこと、それに何ら変更はございませんから、イエスもありノーもある、かようにお考えになって、そうしてわが国の国益に関して重大なる影響のある事柄でございますから、政府は、そういう事柄については最も慎重だと、ただ、そういう問題をいつまでも長くほうっておけるというような事態ではないから、ノーならノー、イエスならイエス、とにかく早く言ってやらないことにはアメリカとしても困ること、だろう、かように私は思います。そういう点はもう事柄をはっきりさす、それにあまり遅疑逡巡すると、そういうことなしにやりたい、かように思っております。  また、いままでも何度も申しましたように、事前協議の態様、これについてイエスもありノーもある、これはもうはっきり何度も繰り返し申し上げたとおりであります。これによって変わるものではございません。御了承いただきたいと思います。
  56. 亀田得治

    亀田得治君 その原則論に変わることが出されておるから問題になっているのです。総理外務大臣のような受け取り方は一般にはしておりません。まあここだけにこだわるわけにはまいりませんから、進みます。  それから、共同声明の本文の第四項ですが、「韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要である」と、この点ですね。これはちょうど自民党の人が釜山赤旗論とか、あるいは韓国の生命線論というようなことを言われる発想ですね、それがそのままあらわれておると思うのですね。松本俊一さんがこれについてこういう批評をしておりますね。「「韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要である」というのは、ちょっと行過ぎだと私は思う。つまり、韓国の安全を侵されることは日本の安全が侵されることだとしたら、日本の自衛隊も出兵しなきゃいけないんでしょう。」、「そういうことにもなってくると思う。」、こういう趣旨の批判をいたしておりますが、これは単に松本さんだけじゃなしに、たくさんの人がこの点について危惧を持っておると思うんですね。総理の所見を聞いておきたいと思います。
  57. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 松本俊一君は、どういう意味でただいまのようなわが国の自衛隊のことにまで触れたか、私にちょっとわからないのですが、私が申し上げるまでもなく、韓国で問題が起こるとわが国の安全に重大なる影響あり、これは普通一般に言うことじゃないだろうかと思います。かっての満蒙国防線、そういうものとは違う。隣の国だと、そこに事変が起きて、私どもも安閑としているわけにはいかない。あれはよその国で起きた問題だ、日本の国は別だよ、こう言っているわけにはいかぬと思いますが、ただいま亀田君も言われるように、松本君一人ではない、国民大多数もそう思っていると、(「いや、大多数とまではいかない、少なくとも」と呼ぶ者あり)大多数とは言われないまでも、そういう方もあると、こういうことでございます。これは私も、間々あることは、これは否定はいたしません。しかし、直ちに問題があるからといって自衛隊が出動すると、こういう事態、これはどういう出動形態を考えられるのか、これにはまた言い方もいろいろあるだろうと思います。ここにでも、いかにも出動するというと、韓国にわが自衛隊が出かけるようにとる人もあるだろうと思いますから、そこらにも誤解があるのじゃないだろうか。だから、松本俊一君はどういう意味で言ったんだろうかと、かように私は疑問に思うような次第でございます。
  58. 亀田得治

    亀田得治君 いままで政府は、いわゆる海外に派兵をしない、しかし武力行使を内容とするものでなければそれは派兵ではなく派遣なんだ、そういう場合には憲法上の問題としては九条違反にはならぬのだと、こういう考え方をずっとたびたび述べてきておるわけですが、現在も同じだと思いますが、ちょっと議論を進める前提として確認をしておきたいと思います。
  59. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 仰せのとおりに、きわめて概括的に申せば、そのとおりでございます。自衛官が国際の平和的活動のために出かけていく、武力の行使にわたらない限りは、自衛隊法上の問題はあるにしましても、憲法上の問題はない。しかし、自衛隊が武力の行使を目的として、その任務として海外に派遣をされると、武力の行使をするということは、憲法九条でもできないし、自衛隊法でもできない、かつ一まあそれで足りるかと思いますが、こまかい御質問があればさらにお答えを申し上げます。
  60. 亀田得治

    亀田得治君 法制局長官にもう少し具体的にじゃ聞きますが、これは総理にもあとからまたお聞きしますが、たとえば朝鮮で紛争が起こる、朝鮮におる日本人の生命なりあるいは財産が危険に瀕した、そういう場合に、その安全を守る、生命並びに財産の安全を守る、それだけの目的、それからさらに、韓国政府から自分のほうではなかなかそこまでお世話しかねるから出てきてその任務についてほしい、こういう場合に自衛隊を出すのは、これは派遣になるのかどうか、どういうことになります。
  61. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) そのような場面を実は想定してものを考えたことがないというのがまず第一でございますが、これはつまり海外における国民の安全保護のために自衛権というものが発動できるかどうかというきわめて重大な問題だと思います。
  62. 亀田得治

    亀田得治君 相手の要請があって。
  63. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 要請があって。まあ通常は他国の領土を侵すことになりますからこれはできませんが、いま御質問の中ではその点はちゃんとはずして向こうの要請があった場合にできるかどうかということのようでございます。で、これは一般的に国際法上そういうことが認められているかどうかということも一つの問題でございますが、これはやはりそれができるという解釈には必ずしもなっていないようでありますし、いわんや日本の国には平和憲法もあることでありますし、自衛隊法もそれを認めていないことは当然のことであろうと思います。私は憲法上そういうことはやはり許されないものではないかというふうに考えます。とにかく、いきなりの御質問でございましたが、実を申しまして理論的な検討をいたしたことはございません。しかし、さしあたり私の考えはそのとおりでございます。
  64. 亀田得治

    亀田得治君 この戦争目的、武力行使を目的でなければ派遣であるというのは、たくさんありますね、いままでの国会答弁で。学説もたくさんある。その範疇にどうして入らぬですか。いま私の申し上げたことは、派遣の範疇にはっきり入るんじゃないでしょうか、特に相手方からの要請があると。
  65. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいままで申し上げた、まあ派遣と派兵というものを区別しておっしゃいますが、私どもも何となしにそういうことで申し上げていたと思いますが、要するに、もっぱら平和目的のために、まあよくあることでございますが、国際間で国連の監視団みたいなものがよくできます。あるいは、場合が大体二つあるような気がいたしますが、一つは、紛争があった当事国間で平和処理の方法としてたとえば休戦を実施する、それを監視するため来てらうというようなのが一つ。それからもう一つは、国連が何か非常に困窮をした国の要請に基づいて派遣を求めるというようなこと。大体その二つだと思いますが、そういう場合に、自衛官が実は専門家として――一般的に言えば士官が専門家として参加をする、むしろ部隊を形成しないで――といっても多人数にはなりましょうけれども、専門家としてこれに参加をするというのが主眼で、もっぱらそのやることは武力の行使ではなくて平和の維持ないしは欠乏の充足というようなことだと思います。そういう場合が許されることは何度も申し上げておりますが、いまの御設例は、どこでもよろしゅうございますが、国民が侵害にさらされたという場合に、部隊をもって武力の行使をその任務として行く場合のお話だと思いますので、ただいままで申し上げたいわゆる海外派遣というのとは類が違うんだろうというふうな考えを持つわけです。
  66. 亀田得治

    亀田得治君 普通武力の行使というのは敵と戦うことなんでしょう。この場合は、生命、財産の保護、それだけの目的で行くと、そういうことなんです。目的が非常に違うんじゃないですか。
  67. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいまのお話でだいぶわかってまいりましたが、私は、保護の任務という場合に、単なる監視といいますか、そういうものであればともかくとして、武力の行使をいざという場合にはやるんだということになるのかならないのか、その辺が最初の御質問ではわからなかったわけでありますが、かりに監視をしてそこにとどまってもっぱら平和的な処理だけをはかるというのであれば、これは話は別だと思います。憲法九条は武力の行使についての禁止規定でありますので、政策上の問題は別として、そういう禁止にわたらなければ、これはむろん話は別だと思います。
  68. 亀田得治

    亀田得治君 私がこういう質問をしますのも、日韓条約以後日韓間の経済関係等が非常に前進しておるわけですね。そういうことにつれて、いざという場合には、ひとつ政府としてもわれわれを守ってくれる、そういうことがなきゃ困るというふうな意見がぼつぼつ出だしておるわけですね。私は、そういう立場から懸念して、そうしてこういう一つの問題を設定しておるわけなんです。  最後に、これは総理に聞きます。その前に、これも議論を深めるために必要だと思いますので外務大臣にお聞きいたしますが、日韓条約以後における韓国に対する政府ベースの援助ですね、それから民間の信用供与、それから民間の直接の設備投資、こういったようなものがどの程度に現状なっておるか、ひとつ概略説明を願いたい。
  69. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 御承知のように、いわゆる対韓援助については、無償三億ドル、有償二億ドル、それから民間の経済協力というものがあるわけですが、まあ無償供与で申しますと、昭和四十年から発効したわけですが、昭和五十年までの十年間に年平均百億円相当の日本国の生産物と役務を賠償と類似の方式で供与することになっております。これは、大体その計画どおりといいますか、実行されておると思います。  それから有償の経済協力については、一九六五年から毎年実施計画を策定して、現在第五年度の実施計画について協議中でございますが、現在まで実施計画で取り上げられた四回の年次の事業は二十九件で、そのための貸し付け金の合計額は一億二千九百万ドルということであります。  それから、第三の民間ベースの商業上の信用供与、これにつきましては、やはり日韓条約締結後昨年末現在では、一般のプラント関係が六十二件で二億六千万ドル、漁業協力が十七件で千九百万ドル、船舶輸出が五件で二千五百万ドル、こういうふうな実績でございます。
  70. 亀田得治

    亀田得治君 民間投資はどうですか。
  71. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 失礼いたしました。民間対韓投資は、これは昭和四十三年の十二月末に第一回が許可されまして、昨年末までに、十八件、約六百四十万ドルの投資が行なわれております。その対象の業種は非常に多岐にわたっておりますけれども、繊維、雑貨、電気製品等の製造販売、これがおもなもののようでございます。
  72. 亀田得治

    亀田得治君 この総合製鉄所建設計画に対する日本の協力ですね。十二月三日に妥結したようでありますが、その資金援助の額なり、またそれはどこから出すのか、そういう点はどうですか。
  73. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 製鉄所の関係につきましては、日本側の資金協力といたしましては七千三百七十万ドルと見積もられております。そしてその七千三百七十万ドルは有償・無償の資金からファイナンスすることに考えられておりますが、そのほかに五千万ドルを限度とする輸銀ベースの輸出延べ払い融資が行なわれるはずになっております。そしてこの七千三百七十万ドルと申しますのは、大体が一九七一年、二年というところの計画の中に、先ほど御説明いたしました有償・無償の年次計画の中で織り込まれることになろうかと予想されております。
  74. 亀田得治

    亀田得治君 それからもう一つ、日韓関係の経済関係の指標として、貿易関係ですね、日本から韓国への輸出額並びに韓国の輸入額の中に占めるそのシェアですね、何%になるか。
  75. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) それでは政府委員から……。
  76. 須之部量三

    政府委員須之部量三君) それではお答え申し上げます。  日本の韓国に対する輸出でございますが、六九年だけでよろしゅうございますか、ずっと申しましょうか。
  77. 亀田得治

    亀田得治君 六六年から。
  78. 須之部量三

    政府委員須之部量三君) 六六年が三億三千五百万ドル、それから六七年が四億七百万ドル、それから六八年が六億三百万ドル、それから六九年が七億六千八百万ドル、これは通関統計でございます。  それから、韓国貿易において占める日本のシェアでございますが、六六年が日本が四一%、それから六七年が四四・五%、それから六八年が四二・五%、六九年が三八・四%、これは韓国の経済企画院の統計でございます。
  79. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 亀田君の質疑の途中でありますが、午前の審査はこの程度にとどめます。  午後零時四十五分再開をすることにいたしまして、これにて休憩をいたします。    午前十一時四十七分休憩      ―――――・―――――    午後一時三分開会
  80. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き質疑を行ないます。亀田君。
  81. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと資料のことで通産大臣にお願いしますが、午前中の質疑の最終のときに、韓国の輸入貿易における日本のシェア、これが外務大臣からは三八%何がしという数字がありましたが、どうも急にこれ下がるのおかしいので、通産当局からもらった私の資料とも非常に違うわけです。だから、通産のほうでとっておるそのパーセンテージは幾らになっておるか、その点だけちょっと……。外務大臣、これ訂正してもらうと言ったって、外務大臣の持っておる資料は資料としてあるんだから、通産のほうから別個にひとつその点だけお答え願いたい。
  82. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私も先ほどちょっと気がついておりましたのでございました。私どものほうでは「韓国銀行統計月報」というのの資料を使っておりまして、そこで六五年から申し上げますと、三七、四一、四四・五、四二・五、四二・四と、こういうようなことを事務当局から資料をもらっております。
  83. 亀田得治

    亀田得治君 以上、日韓間のおもなる経済指標を出してもらったわけですが、これでも明らかなように、韓国経済というものが日本に非常に依存度を強くしておると、こういうところから、さらに、いわゆる権益擁護、こういう立場から自衛隊の海外派遣と、こういうことが出てくる要素が日本の内部に生まれつつあると、これは私、この大所高所から、総理大臣としては、やはり大きな問題として考えておく必要があると思います。で、単にそれだけではありません。韓国側のしからば状況はどうかと、これもいろいろなことが言われておりますが、たとえば四十年八月十日、古いことですが、日韓条約審議の韓国国会において丁首相がこういうことを言っておる。「もし朝鮮で戦争が再開される場合には、日本は在韓国連軍の指揮下に参戦することを私は信じている」、こういうことを述べておる。これは正真正銘の派兵のことでありますが、それ以下の海外派遣ということであれば、なおさらこれは要請する可能性が強いと見なきゃなりません。で、こういう出すほうも、受け入れるほうも、だんだん何か条件がそろってきておる、こういう状態でありますから、一体この海外派遣という問題をどう理解すべきか、きわめて重要になってくると思うのです。で、従来は、午前中にもありましたように、海外派遣はこれは憲法違反ではないのだと、こういうことであります。そういうことになりますと、条件が熟してきた場合には、たとえば自衛隊法三条という問題もありますが、事は緊急を要するからということで拡大解釈をして、そうしていわゆる出兵をする、こういうことになりかねない。名目はあくまでも派遣であります、これは。しかし、私は、一たん派遣されてしまいますと、その実質というものは派兵とどれだけ変わるのか。ことに第三者から見た場合には、そういうことになるわけであります。したがって、こうなりますと、従来のような政府見解答弁で一体いいのかどうか。海外派遣そのものもやはり憲法上の問題として考えなきゃいかぬのじゃないかというふうに考えるのです。だから、自衛隊法の三条とかそういうことの問題じゃなしに、海外派遣も許されないということを明確にしませんと、いろいろな条件がそろえば海外派遣という名目で出ていくということがあってはこれはたいへん。いやそれは、そういう場合はしかたがないのだという総理見解であれば、これはまた別ですが、日韓間の関係が緊密化するにつれ、また共同声明において韓国の安全即日本の安全と、こういうことが総理によって言われ、そういうことが巷間においてもどんどん言われるようになりますと、私がいま指摘したような懸念が出てくるわけですね。そういう意味において、この際、私は、この海外派遣そのものについての考え方、これをはっきりしてほしいと考えます。
  84. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 自衛隊が出かけるということは、そこで戦争に巻き込まれる危険も多分にあると思います。したがって、そういう問題は、この前二十九年に参議院で決議をされた、その決議の趣旨からもできないことだと、私はかように考えておりますが、この決議は二十九年六月二日に行なわれたものでございます。私、その意味で、海外出動、これはできないことだと、自衛隊法上もできません、かように考えております。
  85. 亀田得治

    亀田得治君 自衛隊法上はわかりますが、しかし、自衛隊法は、これは多数で変えればいつでも変えられるわけです。憲法上の問題として聞くわけですが、自衛隊を海外に派遣することも憲法上いけないと、こういう理解ですか。それなら従来の政府答弁をはっきり変えてもらわなきゃならぬ。私はそのほうがいいと思うのです。それならそれではっきり従来の解釈を変更してほしいと思うのです、この際。
  86. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いままでの午前中からの続きの問題、そういうケースには派遣はできないと、かように私は理解しておるのです。そこで、ただいま憲法上の問題が出ましたので、なお、憲法上の問題として法制局長官はどういうように考えているか一度お聞き取りをいただきたいと思います。
  87. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げますが、海外派遣と海外派兵とをお分けになってのお話でございまして、海外派遣ということは、武力の使用に一切関係のないことについてのお話だと思います。で、これは先ほども触れたところでございますが、国連の活動への協力というようなことで、よくあります監視団というような、武力の使用にわたらない、もっぱら平和的な国際協力というものができていけないという理由は憲法上からは出てまいらないと思います。で、それと同じようなたぐいのものが憲法上できないのだということはこれはいかがかと思っております。やはり憲法解釈上はそこまで許しておらないということは少し行き過ぎではないかと考えております。ただ、それが武力の行使をそもそもの目的とするものではないけれども、場合によったら武力の行使も容認されるというようなものであればどうかと言えば、そういうことになるのである限りやはり私は許されないと思いますが、もっぱら平和的目的によって国際協力活動としてやるようなものまでが憲法九条で許されないというのは、私どもの考えとしては行き過ぎになるのではないかと思うわけです。しかし、憲法でなければいけないとおっしゃいますが、自衛隊法という国会で制定した法律もございますし、それからまた、院の決議としてなされた先ほど総理御指摘の決議もございますし、やはりそういうことは政策上の問題としてりっぱにこれを守っていくのが至当な道ではないかと考えるわけです。
  88. 亀田得治

    亀田得治君 その院の決議は、「海外派兵」となっているのですか、「海外派遣」となっているのですか、「出動」となっているのですか、何ですか。
  89. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 「海外出動」となっています。
  90. 亀田得治

    亀田得治君 「海外出動」というのはどういう意味ですか。「派遣」と「派兵」、どういう意味ですか。こちら自体が決議したのだからこちらが説明しなきゃならないんだろうが。
  91. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お説のように、実は私のほうがお聞きしたいことでございますが、私どもが当時の提案趣旨の説明なんかを見ておりますと、やはり自衛隊の出動でございますから、多くの場合武力の行使を内容に含んでいる場合が多いと思いますけれども、それだけに限定される、限定して解すべきであるというふうに私は申し上げることはできないと思います。やはり広く解すべきではないかと考えております。
  92. 亀田得治

    亀田得治君 院の決議を尊重してということは、これは政治上の問題として非常に大事なことです。私は、総理にお聞きしておるのは、憲法上も派遣ということは認めないというふうな感じをさっき持つわけですが、そこまできちっと言い切っておるのかどうかということを聞いておる。それならば、従来の解釈をここでもう少しきちんと整理してもらわなきゃ矛盾が出てくると思いますね。どうなんですか。これは総理のお考え――法制局長官のお考えはわかっておる。総理自身がこれははっきりしておいてもらわぬといかぬ。実際上そういうことはやらぬけれどもということを聞いておるのではない。憲法上も派遣は認めないとはっきりおっしゃってもらえれば一番いい。
  93. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 私の申し上げておることは、実は昔から少しも変わらないことを申し上げております。で、この考えは、いままで――従来の政府考えでございますし、また、佐藤内閣になってからの考え方でもございますし、いま、総理が特にこれを変えるというふうにおっしゃっているわけでもございませんし、事は憲法の解釈に関することでございますから、私が責任を負うことにいたしたいと思います。
  94. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、派遣は憲法違反ではないと、こういうことですか。従来、そう言うてきているわけですね。憲法違反ではないが、そういうことをする気持ちはない、こういうことですか、総理。そこをはっきりおっしゃってください。法制局長官なら何べんも聞いておるからもうよろしい。どうなんですか。
  95. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 憲法問題は、先ほど法制局長官が述べたとおりでございます。私は、先ほども、憲法問題もさることながら、決議もあるし、そういう意味で、そういうことをやる考えはございませんということを申したのでございますから、それでおわかりがいただけるかと思います。どこまでも解釈の問題だと、こういうことでお尋ねなら、先ほどの法制局長官の答弁を何度も繰り返すだけでございます。じゃ、そういうことを政府はやるかとおっしゃれば、そういうことはやらないとはっきり申し上げておきます。
  96. 鈴木強

    鈴木強君 ちょっと関連。いまの問題で一つ簡単に。  午前中、法制局長官ね、亀田委員質問で、朝鮮が不幸にして何か戦乱になった場合ですね。そこにおる日本の在留邦人の生命財産を守るために、特に韓国から自衛隊の派遣を要請してきた。そういう場合には、あなたは行けるんだというふうにとれるようなニュアンスの答弁をしましたね、考えなきゃならぬということを。それといまとの関連なんですね。総理は、もし戦火に巻き込まれるような危険性のあるところへ自衛隊をやるということは、これは憲法上もできない、こうおっしゃるわけですね。ですから、そこのところを、法制局長官と総理の御答弁との中には、多少いま申し上げたようなニュアンスの相違があると思いますけれども、この点をはっきりしてもらえば、いまの亀田委員質問もかなりはっきりすると思います。
  97. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げますが、かつて、この委員会で稲葉誠一議員から私が質疑を受けたことがございます。韓国にある日本人の経済権益が侵奪される危険に侵されている場合にどういうことになるかというお話でございましたが、私はその際に、外国における日本国民の財産が危殆に瀕するということで、一国の部隊がその外国へおもむいて自衛権の名において武力を行使するということはできませんという趣旨の御答弁を申し上げました。私、実は午前中の御質疑を二度御答弁申し上げておりますが、最初の御質疑が、当然に武力の行使にわたるものであるということで、それはできませんということを申し上げました。ところが、そういうことに無関係なことであるというふうなお尋ねがさらにございましたので、政策的な問題は別とし、また、自衛隊法上の問題は別として、憲法に違反することに――武力の行使――にわたらなければ、直接にはそれに該当しないだろうということを申し上げましたが、その趣旨が十分にくみ取れませんでしたため、あるいは誤解があってもいけないと思いますが、すでに経済権益の問題に関しては、いま申し上げましたように、はっきりとしたお答えをいたしております。
  98. 鈴木強

    鈴木強君 総理の、紛争の心配があるときにはやらぬということと合うわけね、そうすると。これは総理大臣からも聞きたい。
  99. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど亀田君にお答えしたように、そういう危険なことはしないと御了承いただきます。
  100. 亀田得治

    亀田得治君 まあ、そういう解釈では、結局、いざという場合には、政府の政策的な考えの変更によって、いつでも海外派遣ということが出てくるおそれがこれは十分なんです。はっきり憲法上それは禁止されておるということを明確におっしゃらぬわけですから。私はそういう危険性だけをここで指摘しておきます。  それからもう一つ、次に義勇兵ですね。これは差しつかえがないと、憲法九条。これはほとんど学説等も多数一致しておると思いますが、政府はどうですか。
  101. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) これも、いつでしたか、もうだいぶ前に質疑が出ておると思います。御答弁した覚えがございますが、義勇兵というのが、やはり国家の権力がそれに介在をして、募集でもして大いにやろうというようなことになれば、これはどうも憲法違反ではないといって断言することは私はできないと思います。要するに、国家の意思がそれに加われば、憲法九条の精神に反する。少なくとも反する。憲法違反になる可能性は大いにありというふうに考えます。
  102. 亀田得治

    亀田得治君 個々の人が国と関係なしに出かけていくのは、いまの答弁からすると、明らかに差しつかえありませんか。
  103. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 典型的には、国民がこれはときどきある――ときどきあるというのはおかしいですが、外人部隊なんかに加わるということはございます。これは政府がといいますか、憲法違反だと思う人はおそらくはいないと思います。個々の人がその意思に基づいて自由かってに行けば、これはどうもふらちだということは言えましても、政府の憲法違反を問うような問題ではあるまい。さっき言ったように、政府の意思がそこに介在することによって憲法違反になることは明らかだと思いますが、御指摘のような問題は必ずしも憲法に違反するというようなことはあるまいと考えます。
  104. 亀田得治

    亀田得治君 したがって当然、たとえば朝鮮動乱が起こる、そういう場合に個々の人が出かけていく。これは政府としてはどうにもしようがない、こういうことになるわけですね。
  105. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 亀田さんは法律家でいらっしゃいますから、私の言っていることもむろんおわかりの上でおっしゃっていることと思いますが、政府の意思がそれに介在するかどうか、とにかくそういう現象がやたらに出ておって、政府がそれをかってに容認しておるということによって実質的にはそれを奨励しているということになれば、むろん憲法違反の問題になると思います。その場合に応じて考えていかざるを得ない問題だと思います。
  106. 亀田得治

    亀田得治君 結局、憲法上は許される、こういうことになりますと、実際問題として多数の方がそういう形で韓国動乱が起きた場合に出ていく。これは外部から見ますると、日本人ですからもう出兵と同じようなかっこうになるわけですね。もちろん国は介在しておらぬのですから、武器を持っていくわけじゃないでしょう。政府としてはとめようがないと。そうしていても、たとえば、日本はどんどん武器などもたくさんつくれる力があるし、これが韓国政府に輸出され、韓国政府から直接義勇兵として来た者に渡る。やり方はまあいろいろあるわけですね。だから、そういうことを考えますと、私はまた共同声明に戻るわけですが、韓国の安全即日本の安全と、こういったような考え方をどんどん吹聴されますと、私はやはりそのような、たとえば義勇兵――日本の自衛隊が正式に行けないんなら義勇兵といったような傾向というものが出かねないと私は思うんですね。こういうことについて総理はどういうふうにお考えでしょうか。憲法上これは差しつかえないんですから、いまのお答えにあったように。
  107. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのように、危険でもないものを非常に危険だ危険だと言って宣伝することはこれはいかがかと思います。また、危険な状態であるにかかわらず、それを特に何でもないように国民に知らさないようにしておくこともいかがかと思います。私は、正しい認識を国民が持つように、政府、政治そのもの、政府の責任者はそういうようにありたいものだ、かように思っております。私は、ただいまの共同声明もそういう意味で読んでいただき、またそういう意味で理解していただきたい、かように思います。私は無用な誇大な表現は使わないつもりでございます。
  108. 亀田得治

    亀田得治君 総理は昨年の八月に米国の統合参謀本部議長のホイーラーさんにお会いになったことありますか。
  109. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ありました。
  110. 亀田得治

    亀田得治君 あるんですね。これは相当長時間の会談のようにお聞きするんですが、どういうことなんでしょうか。
  111. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 正確な記録をここに持っておりませんけれども、ホイーラー統幕議長が来日をいたしましたときに総理大臣に表敬をされて、そこで若干のお話し合いがあったように承知いたしております。それからそのあとでホイーラー議長は私のところへも来られました。日にちその他はっきりした記録はいま持っておりませんけれども、そういう事実はございます。
  112. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私のところへも見えて、官房長官も立ち会って一般的な極東の情勢についていろいろ事情を聞いた、かような状況でございます。
  113. 亀田得治

    亀田得治君 端的にお聞きしますが、韓国におる米軍の削減ですね、このことについての相当重要な話し合いがあったんじゃないですか。米軍の削減について韓国は、もし日本があとの安全保障を引き受けるんなら韓国としても米軍の削減には賛成しましょうということを総理にホイーラーさんが伝え、総理がそのことを原則的に了承をした、こういうことが伝わっておるんですが、どうなんでしょうか。非常に大事なことなんです。
  114. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) さようなことは全然ございません。
  115. 亀田得治

    亀田得治君 在韓米軍の削減についての情報は受けておられるわけですか。
  116. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はその情報も受けておりません。
  117. 亀田得治

    亀田得治君 これは防衛庁長官わかりませんか。
  118. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 目下のところ受けておりません。
  119. 亀田得治

    亀田得治君 まあ、つんぼさじきというところですな、それじゃ。一般にはどんどんそういうことが言われておるわけですね。  外務大臣にお聞きします、関連事項として。日韓条約締結後、いわゆるこれは仮称でしょうが、国連協力法案というものが外務省内で検討されたことがあります。まあ、法案の形まではいっていないだろうと思いますが。それによりますと、国連憲章四十一条、四十二条等の発動がなされた場合の日本としての協力のしかた、それに関連して自衛隊法等を改正しなければならぬというふうな討議をされたようですが、どうでしょう。
  120. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私の就任いたしましてから今日まではそういう事実は全然ございません。
  121. 亀田得治

    亀田得治君 いや、過去のことを聞いているんです。そういうことは聞いていませんか。
  122. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 過去のこととしては、私も突然のお尋ねで正確ではございませんが、何か国際監視団というような問題に関連して研究されているということが、何か新聞に出たことがあって、そういう事実はないということを当時の外務省当局が言明したことがありましたようですが、そのことのお尋ねではございませんでしょうか。そうだとすればそのとおりで、全然そういう事実は今日もございませんし、当時も、何と申しますか、そういう研究をしたことはないということに相なっております。
  123. 亀田得治

    亀田得治君 国連局長いたらちょっと答弁してください。
  124. 西堀正弘

    政府委員(西堀正弘君) これはたしか日韓国会の直後であったと思います。それは亀田先生のおっしゃったとおりでございます。われわれ事務当局におきまして、当時、この前の安保理事会の理事国に当選した直後でございますので、当時のわが政府としてなし得る国連協力をもう少し積極的にやる方法はないものかという点で、若干われわれレベルで考えたことはございますけれども、政府の案として固まるまでにはまいっておりませんでした。
  125. 亀田得治

    亀田得治君 現在でも、外務省の事務当局としては、可能であればそのようなものをつくりたいという動きというものがあるんじゃないですか。
  126. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは私の承知しております限り、さようなことはございません。
  127. 亀田得治

    亀田得治君 まあ、そういう根がちゃんとあるわけですよ。大臣、気をつけてください。  それでは、次に南北朝鮮の統一の問題について若干お尋ねをいたします。この朝鮮民族の最大の関心事は、これは統一問題です。これは南も北も変わりません。北朝鮮の統一問題に対する態度は、これは総理も御存じのとおり、米軍を撤退してもらって、自主的に自分たちの手で南北統一の選挙をやりたい。しかし、一足飛びにそこまで行かなければ、南北の現在の政治体制をそのままにして、暫定的に連邦制をとってもいい。しかし、それもなかなかむずかしいということであれば、とりあえず、経済的、文化的等の交流から始めたい、こういうことが出されております。南のほうは、御存じのとおり、国連の決議に従ってその監視下で南北の統一選挙をやろう、こういうことに対立しているわけです。で、本来こういう問題は朝鮮民族自身の問題であることは、これは何人も否定ができないと思います。だから、本来から言うならば、憲章の二条七項の規定から見ましても、朝鮮民族自身にまかしておけば済む問題なんですね。これは第三者が介入するものだから紛糾しておる。それは、もちろん実際問題として、朝鮮の南北の人たち自身にまかしても、若干の混乱は私は予想されると思います。思いますが、外国の軍隊なりほかのものが介入して起こる混乱に比べたら、これはもうはるかに小さいものです。そういうふうに私たち考えておるんですが、国連の決議とか、そういうことを離れて、本質的にこういう問題についてどう総理はお考えになっておるか、お聞きしたい。
  128. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 同一民族が一国家を形成し得ないということは、これは民族の悲劇と言わざるを得ないと思います。しかも、その二つに分裂しただけでなく、その間に絶えず武力抗争が行なわれる、こういう事態はほんとに気の毒なことではないかと思っております。私は、いま国連が介入することによって一応武力抗争は回避されている、かように思っておりますが、それにもかかわらず、絶えず両国の間に武力の抗争が続いておる、そういう現状のもとで、いろいろの理想的な形についての話をつけましても、まだその段階にいっておらないんじゃないだろうか、かように思います。気の毒な状態であることにおいては同しような思いをする、これはひとしくすべての人たちが同しように気の毒だというふうに思うだろう。また、ましてやその両国が武力で争う、この分裂国家の状態について、これはほんとに心から痛ましいことだ、かように考えているだろうと思います。でありますから、そういうようなことから、まず戦争状態はもう完全にないんだ、もう武力抗争はしないんだ、お互いが話し合うことができれば、それから先の問題も始まるんじゃないだろうか、かように私は思います。
  129. 亀田得治

    亀田得治君 いろいろさらに申し上げたいこともありますが、要するに、朝鮮民族自身の問題ですから、あまりほかの人が騒がないほうがいいと思うんですね。私は具体的に南北の統一ができる、そう簡単にいくとは私も思っておりません。しかし、そのうちに私はやはり具体的な手段というものが自然に生まれてくると思うんです。自然と言っちゃなんですが、努力によっておのずから生まれてくると思います。で、一番大事なことは、そういうことにじゃまにならないようにする。これは私は日本と朝鮮の関係から見ると、この点は非常に大事だと思うんです。あれほど対立していた、たとえば東独と西独、これでも、最近はいきなり総理大臣同士が会おうか、こういうふうな状態にまでなっておるときですからね。ともかく、従来、いや国連でどういう決議があるとかないとか、そんなことにあまりこだわり過ぎちゃ私はいかぬと思うんです。見ようによっては、ああいう決議というものは全くアメリカに利用されているものだという批判もこれは強くあるわけだし、またそういう批判は相当これは説得力があるんですね。非常にこれは朝鮮国連軍の痛いところをつかれておるわけですね、批判として。批判されたからといって、はあそうですがといって米車が引き下がることはなかなかないと思いますが、ともかく日本自体としてはあまりそういうことにこだわってはならない。ともかく、統一ができることであれば何でも積極的に考えていく、こういう気持ちが必要じゃないかと思う。おそらく佐藤総理もそのことには賛成だろうと思います。そういう立場から、それは賛成でしょう、総理は。それは統一に不賛成なんていうことはありっこない。  そういう立場から見まして、ひとつ私お聞きしたいのは、いわゆる朝鮮に関する国連決議、これが毎年国連でやられておるわけですね。ところが、日韓条約締結後、一九六六年以降ですね、日本提案国の一人になっておるんですね。それでいろんな票集めについても、ずいぶん日本のほうが努力しておるやにわれわれ聞くわけなんです。だからここまではする必要がないんじゃないか。まあ、中国の問題についてもそういう議論がされておりますが、私は朝鮮の場合においても、提案国にまで日本がなるべきではない。もっと大きな立場からこの問題については臨んでおるべきだ。直ちに従来の態度を百八十度転換するようなことは私はなかなかむずかしいと思いますが、提案国にまでならぬでいいじゃないか。あの提案国を見ますと、ほとんどが朝鮮戦争に兵隊を派遣して参戦した国の諸君が提案国になっておるのですね。二、三そうでないのはあります。しかし、これはまあ世界からいったらほとんど影響のない国ですね。そういうことを平素から考えているんですが、この点、総理どうでしょうか。この一点だけ、統一問題に関連してお聞きします。
  130. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日本が全然関係のない遠いところにあれば、これは別ですが、つい最近まで韓国とわれわれが一緒になって国をつくっていた。戦争の結果、韓国が日本の手から離れ、独立した、こういう状態でございます。そこで、韓国の人々が日本国内に在住し、そうしてこれは北もまた南も、同じように日本人と混住しておる。そこに一つの問題がありますね。そうしてただいまその国籍が一体どちらなのか。韓国籍なのか、あるいは北鮮なのか、そういう問題にわれわれが引っぱり込まれておる。ただいまの、ただ南北朝鮮一国家ができる、これだけの問題ならまだ比較的に解決しやすいと思います。しかし、私どもが韓国を承認し、また日本に住んでいる韓国人の国際的地位、これも一応固まりつつある。その場合に、同じ民族である北鮮系と――まあ系ということばがいいかどうかわかりませんが、そういう方々の身分もわれわれはやはり規制していかなければならない。ここらに非常にむずかしい困難な事態が実は起こりつつあるわけであります。したがって、他の国より以上に、この韓国の統一問題については私どもは関心が深いのであります。これだけはやはり亀田君も、いままで一緒に住んでいたその現状から考えられまして、この問題がいかに日本、われわれにとっても重大であるか、御理解をいただきたいと思います。  そこで、私はこういう問題を、やっぱり民族自決の原則とはいいながら、これを、現に日本に住んでいる韓国人あるいは北鮮系の方々、それらの方々が、いま帰還問題などで私どもの総理官邸にもしばしば陳情に見える、こういうようなことを考えると、この民族問題が、ただいま言われるように、日本がただじっと見ていていいというようなものでもないようですし、私は、ことに韓国を承認し、韓国と積極的に国交を調整しておる今日、この状態をやっぱり無視はできないんだといって冒頭に申しましたのも、こういう点から発想しておるわけであります。したがいまして、私、ここらに戦争――まあ干戈を交えるというような事態が起こらないで、無事平穏に話し合いが進むならたいへんけっこうだ、それこそ歓迎すべきことだ、かように思いますが、またそういう際に、やはり日本に、日本人と混在しておる諸君の地位もそのときに解決ができる。まあいま一応かっこうはついたようにはなっております。しかし現実には、なかなかそれがつかないでいるというのが現状でございますから、ここらに日本の立場の非常にむずかしさがある。しかもわれわれは平和を愛好しておる。そうして戦争にならないようにならないようにと、どうかそこらでお互いにけんかをしないように、そういうことがまあ心から望まれる、こういうことでありますし、いま亀田君もいろいろな場合を考えられて、いきなりいかないまでも共存の立場ができればたいへんけっこうじゃないかというわけで、私はいまのようなことを前提としながら共存の関係を打ち立てようというのがいままでの国連の決議ではないだろうか、かように私は考えております。一応国連が三十八度線を引いて、その東西で戦争しないように一応いま鎮静している。そこで話し合いをしろと、こういうのじゃないかと思っております。私はこの状態が、平和――両国民としても、それぞれの立場においてそれぞれ意見はあるだろうと思います。思いますが、何よりも大事なことは戦争しないことだ、そうして話し合いに入ることだ、かように私は思っております。
  131. 亀田得治

    亀田得治君 国連の提案はどうですか。朝鮮決議……。
  132. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) したがいまして、私はいままでの経過から見て、日本提案国になるのは、それは当然じゃないだろうか、かように思っております。
  133. 亀田得治

    亀田得治君 どうも説明と結論がちょっとちぐはぐな感じがしますが、外務大臣にちょっとお聞きします。  一九六六年の総会で決定された国際人権規約ですね。通常そういうふうに言っておりますが、二つの規約ですが、これに対して日本は批准をする考えはないのですか。
  134. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) お答えいたします。  いまの点、ちょっといま条文をあれいたしますから……。  その前にちょっと、いま朝鮮と国連の関係ですが、これはもう亀田委員よく御承知のとおりだと思いますから、詳細には申し上げませんけれども、一九六六年以降の国連決議に、日本は共同提案国になっておることは御承知のとおりでございますが、その決議の内容というものは、朝鮮において、平和的手段によって代議制の政体のもとに統一された独立の民主的な朝鮮を確立することということが一番の終局の目標になっておるわけでございますね。これにはまさに日本も共同提案国になっておる。これが一つの朝鮮についての願わしい姿であって、これが国連の願うところでもある。しかし具体的な現実の事態はそういう状態でないものですから、同時に国連軍の役割り等につきまして、アンカークの決議が毎年確認されているわけでございます。同時に国連軍の駐留期間については、韓国政府から国連軍引き揚げの要請があったとき、あるいはまた総会が定めた恒久的解決の条件が満たされたときは、何どきでも朝鮮から兵力を引き揚げるよう用意をする、引き揚げる用意があることに留意する、そういう趣旨を含む決議を採択しておるわけでございますから、終局的な考え方、朝鮮に対して望ましいことは、国連のこうした経過の上にもあらわれておりますし、またそれにわが国ももちろん替意を表しておるわけであります。これを要するに、望ましき事態と、それから現実の事態とにまだ非常な乖離があるということが現状である、こういう環境にありますことは御承知のとおりであります。
  135. 西堀正弘

    政府委員(西堀正弘君) ただいま亀田先生のお尋ねの国際人権規約でございますが、これはおそらく国連総会の第三委員会で審議中のものだと思いますが、はなはだ申しわけございませんが、それが第三委員会におきましてドラフトして完全な形になったかどうか、私まだ資料を持っておりませんので、後刻調べましてお答え申し上げたいと思います。
  136. 亀田得治

    亀田得治君 こんなつまらぬ答弁にさらに質問するのは時間のむだになるのですがね。外務省の国連局からちゃんとこの条約の詳しい説明案まで出ておるわけですがね、外務省から出ておるわけです、国連局。局長ですよ、いまのは。あるかないかも知らぬというような、そんなむちゃくちゃな話ないですよ。こんなことはあなた、人権問題の専門家の間で通用語になっている規約です。全然知らぬ者に説明するのはこちら時間がかかりますからね、質問するのも、実際の話。あと六分しかないのですからね。これはあなたのほうのやつですよ。人権宣言にかわるものとして決議されたものです。総理、これ覚えておいてください。そうして従来の人権宣言は、これは各国に対して道徳的な責任を負わすだけ、しかしこれは条約の効力を持たす、法規的な効力を持たすということで規約化されたもので、ずいぶんたくさんの国がもうすでに批准しておるのです。第一条に、この民族自決の権利というものが明記されています。従来の人権宣言であればそんなことは書いてない。個人の人権がずっと並べてあるわけです。しかし人権を守る一番大事なことは平和、平和の基礎は、内政干渉を大国がやり過ぎる、こういう立場からこの規約ができたものなんです。私はこういう規約が早く批准されていくということは世界の平和のために非常にいいことであると思って聞いているのですがね。どうなんです。
  137. 西堀正弘

    政府委員(西堀正弘君) ただいまのその民族自決の点でございますけれども、これはおことばを返すようでたいへん恐縮でございますけれども、われわれの理解しているところでは、国際連合憲章自体にもうすでにその点はうたわれておるのでございまして、国際連合憲章の第一章目的及び原則の第一条二項に、「自決の原則の尊重に基礎を置く諸国の間の友好関係を発展させること」という点でもって、その点はもうすでにわが国が国連加盟国になった際に、その点についてのわが国の立場というものは明らかになっている、こう了解いたしております。
  138. 亀田得治

    亀田得治君 批准を聞いているのです、批准を。そんなあなた、原文を見ておらずにそんな説明をする資格があるか。この条約に対する批准の態度を聞いているのです。これは総理どうですか、前向きにひとつ検討してくれますか。大事な規約です。
  139. 西堀正弘

    政府委員(西堀正弘君) その点につきましては、お説のとおり問題ないと思います。しかし批准ということになりまするというと、ほかの点も多々あるかと思いますので、今後よく検討いたして、批准についての承認をお願いするかどうか検討さしていただきたいと存じます。
  140. 亀田得治

    亀田得治君 それはあなたじゃだめだ、責任者から言うてもらわなければ。
  141. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは実は突然のお尋ねでございましたので、十分用意をいたしておきませんでしたが、ただいまの問題でございますれば、とくと検討いたしまして、批准に対する態度をきめることにいたしたいと思います。
  142. 亀田得治

    亀田得治君 これは朝鮮の問題等についても非常に関係の深いことなんです。そういう意味関連してお聞きしたわけです。  あまり時間がありませんから、個別的な朝鮮の問題について若干お聞きいたします。第一は帰還の問題ですが、これは衆議院でも、総理からも積極的に考えるという趣旨のことが昨年、一昨年でしたか、ストップしたあとお答えがありますが、残念ながらまだそれが妥結がしておりません。経過は私も知っております。何とかこういう人道上の問題ですから、政府もさらに積極的にひとつ妥結がいくように、双方の立場もあると思いますが、やってほしいと思っているのですが、どうでしょう。
  143. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いわゆる北に帰りたいという一万五千名の連中の問題……。
  144. 亀田得治

    亀田得治君 一万七千……。
  145. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 一万七千の問題は至急に解決が見たいものだ、かように思っております。しかしなかなか日赤と朝赤との間の話がつかないのが現状でございます。私はそれらの問題を十分両者の間で話を詰め、そうして北鮮に帰りたいという諸君も帰れるようにすべきじゃないか。これはまあ一時帰国の場合とは違います。さように考えております。
  146. 亀田得治

    亀田得治君 結局最後の承認が政府にかかってくるわけですから、努力をしてほしいと思います。  それからもう一つは、例の再入国の問題ですが、北鮮への再入国が非常に少ない、認めるのが……。韓国はそれに比較して非常に多いわけですね。総理にお聞きする前に、法務大臣からその過去の数字だけをちょっと資料として説明してほしいと思います。どういう数字になっていますか。
  147. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) 昭和四十四年度における日本への入国者数は、韓国から四万四千六百五十四人、北朝鮮から六人、中華民国から二万七千五百一人、中共からは十六人で、これが入国の状況でございます。またこの中にも再入国が入っております。  昭和四十四年度におけるいわゆる再入国許可件数は、韓国人に対しては二万八千八百三十九件、中華民国人に対し七千八百九十六件であり、北朝鮮向けの再入国許可は六件、中共向けの再入国許可は百三十九件となっております。
  148. 亀田得治

    亀田得治君 外務省関係はどうなっていますか。北朝鮮並びに韓国へ出かけた日本人の数、これは外務省所管ですね。
  149. 遠藤又男

    説明員(遠藤又男君) 昭和四十一年に韓国向けに参りました日本人の数、旅券発行数で申し上げますと二万二千六十四、昭和四十二年二万五千三百二十一、昭和四十三年三万二千四百三十、昨年、昭和四十四年が四万一千九百六十八となっております。  それから北鮮向けの旅券発行数でございますが、昭和四十一年十件、昭和四十二年十件、四十三年十二件、四十四年十件、こうなっております。
  150. 亀田得治

    亀田得治君 いまお聞きのように非常に違うわけですね。一方はもう禁止的なんですね、禁止的……。私はこれは大きな立場から見て、やはり適当じゃないと考えるのです。もう少しそういうアンバランスな状態というものを直していくべきじゃないかというふうに思いますが、どうですか総理
  151. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国際的な交流、これはまあ人道上の問題でもありますから、私ども、弊害がなければ、支障がない限り、こういうものをゆるめていく、そういう考え方でございます。
  152. 亀田得治

    亀田得治君 いま一々過去の記録などを申し上げる時間もありませんが、弊害がなければと言いますが、たいして弊害の予想されぬものも禁止しているものもたくさんありますよ。  それからいま問題になっておる――これは関連してお聞きしておきますが、広州交易会に、日本におる華商の人が行ってきたい、これはどうする方針ですか。
  153. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) きょう私の耳に入ったばかりでございます。ただいま検討中でございます。
  154. 亀田得治

    亀田得治君 前向きですか。
  155. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 前向きか、うしろ向きかは御批判を受けるつもりですから、とにかく一応検討してみよう、こういうことでございます。
  156. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ、あと二分ですからね、万博について若干お尋ねします。  第一は、いわゆる未承認国から万博を見たいということがあった場合に、私は許すべきだ。ほんとうは招請すべきだという意見をずいぶん出したわけですが、それはいまからはもうおそい。せめて、見に来る、そのための入国は許すべきだと思いますが、この点。  もう一つは、万博の一これは総理が答えていただきたい、いまのは。交通対策ですね、これは一体きちっとできておるのか。もう一つは宿泊の対策ですね。これはどうなっておるか。これもお聞きしておきたいと思います。以上。
  157. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御指摘のように、宿泊と交通、それと警備の問題を私どもが一番心配をしている点でございます。  宿泊につきましても交通につきましても、関係府県で協議会あるいは懇談会をつくっておるわけでございますが、まず宿泊につきましては、旅館の中で旅行あっせん業者と協定を結んでいない旅館、いわゆる未協定旅館、これは相当あるわけでございますが、ここらはまだかなり利用できる状態にあるわけでございます。なお、そのほかに御承知のように、民宿でありますとか社寺などにも協力を依頼しております。  交通のほうは、一番多い日には六十万人という入場者があろうかということで、御承知のように、道も開きましたし、地下鉄も入るようになりました。バスの利用も極力すすめております。一番心配しておりますのは、地方から、いわゆる、お父さんでもお母さんでも一緒に若者がマイカーで来るという場合、この数の見当がつかないわけでございます。そこで、私ども、せっかく来られて込んで入れないというのではお互いに不幸でございますから、大体もう少したちますと非常に込みそうな日というのが見当がつきますので、地方から来られるような方は、できれば、これは入場券はいつでも使えるわけでございますから、混雑の日を避けてくれないかという日をあらかじめ周知をさせたい。非常に消極的な方法で恐縮でございますけれども、地方からのマイカーを一番心配しておるわけでございます。  なお、関係府県では広域的な交通調整というようなこともいろいろ考えておってくれるようであります。  前段の問題は、特に万博であるからといって、従来の方針を変更する必要はないのではないかというふうに私は考えております。
  158. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。万博担当大臣が話を申し上げたことで大体尽きておりまして、警察当局としての分担のことについても触れられましたから、ある程度補足的に申し上げさせていただきます。  まあ、全世界から相当数の、七十カ国以上の国々から元首あるいは総理大臣級、閣僚級の人々が続々やってきます。その警備、警護関係が特に懸念されるわけですけれども、これは特定した方々ですから、十分の配慮をしますれば御心配かけぬで済むであろう、かように思っておる。  それから交通渋滞でございますが、結論から先に申し上げますれば、日により、時によりましてはお手上げだという現象が予想されると思うが、その場合には、やむを得ませんから、道路交通法等、法に基づいて交通規則をしたりしなければならぬこともあろうかと思うのですけれども、何さま二年も三年も前から予約切符を買った人が押しかけるわけですから、交通渋滞しているからちょっとだめですよと言っても、感情的にも相当エキサイトする場面が現出するおそれがある、それを若い交通警察官でたしなめるということも現実問題として容易でないことも連想されるのであります。ですから、そういうことがないように、万博協会とも現地の警察本部長ないしは関西の管区警察局長等が十分連絡をいたしまして、すでに御案内のとおり、テレビ、ラジオないしはその他のマスコミを通じましてなるべくマイカーを乗り入れるということを御遠慮願いたい。それよりもバスでいらっしゃい、それよりもまた北大阪急行ないしは阪急――電車、地下鉄等を御利用ください。会場のどまん中に御案内できますからというふうなことをPRすることによって、ある日のあるときになるべく集中しないように、さっき話が出ましたように、六十万ないし六十五万の見物客が殺到するということが一応予想されますが、それが無計画にただ殺到したのではこれは処置なしということになることをおそれる意味において、十分の社会的なPRとあわせまして最小限度に渋滞を食いとめたい。また、交通事故等が起こりましたら、十七台のレッカー車をすでに準備いたしまして、適宜、適切に迅速に処理するというふうなことについても現地では頭を使っているようであります。今後さらに連絡等を密にいたしまして、万全を期したいという心がまえでおります。
  159. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 大体おわかりだと思いますが、非常に混雑が予想される、そういう際でありますだけに、ただいまの未承認国からの入国についてはこれはまた慎重ならざるを得ない。私は特にこの機会に、ゆるめるとも厳重にするとも申しませんが、とにかく慎重な態度で対処する、ケース・バイ・ケース、特にそういうことが多いとき、強くその場合に考えるというようなこともあるのじゃないか、これはやはり予想しておいてもらいたい。たとえば、非常に混雑するところへもってきて、未承認国から団体で見物に多数の方が見える、こういうようなことがあれば、これは明らかに当方としても戸惑うようなことでございますから、そういうこともないようにしたい、かように考えております。
  160. 亀田得治

    亀田得治君 まあ、進歩と調和となっているのですからね、やはり国際間の調和という意味で参加はできなかったが、見物はしたいと言うかどうかわかりませんよ、言うてくれれば、私は日本にとって非常にいいことと思います。したがって、それは万博のスローガンから言っても考えるべきじゃないかという気持ちなんです。これは十分ひとつこれこそ前向きに御検討願いたい。  それから宿泊の関係でありますが、万博会場のまわり、周辺に、非常に衛生的にも問題のある簡易宿舎がたくさんできて、住民との間で非常な摩擦が起きているんです。これは御存じだと思いますが、これに対してはどういう処置、対策をとられるのか、明らかにしてほしいと思うんです。これはもう差し迫っている問題ですから……。
  161. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答え申し上げます。  大阪近辺で、許可申請その他条件の整わないまま簡易住宅を建てたものがあるようでございます。さっそく府県知事のほうから現場に対して、厳重にそれらを、あるものは取りやめさせる、あるものは改造して十分使えるものは指導してやり直させる、というふうにしておる次第であります。
  162. 亀田得治

    亀田得治君 じゃ、農林大臣への質問は、分科会なり一般のほうでやりますから、きょうはどうも……。
  163. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 以上をもちまして亀田君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  164. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 次に、戸田菊雄君の質疑を行ないます。
  165. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 私は、質問要旨といたしまして、主として内政問題にしぼりまして、項目としては、一つは補正予算の内容です。第二の問題は米の調整の問題、第三の問題は税金の問題、第四は基地経済等の問題について各大臣にお伺いをしてまいりたい。  そこで、今回の補正予算編成方針についてでありますが、総合予算主義について、現在の政府総理大臣の御見解を、まず最初に承りたい。
  166. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 予算編成のことでございますから、詳しくは大蔵大臣から説明をお聞き取りいただきたいと思いますが、いわゆる総合予算主義、それをとって、ただいまのような予算編成しておる。ことしも同様でございますから、その基本の政府考え方だけ申し上げて、あとは大蔵大臣の説明をお聞き取りいただきたいと思います。
  167. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 総合予算主義は昭和四十三年度からとられたわけです。ところが、当初は、補正なし予算と同義語のように理解されておったようでありますが、私は、一昨年の暮れに大蔵大臣に就任をいたしましたときに、それでは少し窮屈だ、これは異常な場合あるいは非常な場合があり得るので、そういう際に補正を排斥するような措置ではない、そういうことを両院において申し上げたわけでありまするが、四十四年度におきましても四十五年度におきましても、そういう方針、これを総合予算主義と称しまして踏襲して堅持をしておる、かように考えております。
  168. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 確かに、いま大蔵大臣答弁をされましたように、四十三年にはじめて総合予算主義というものが採用されました。その内容は、補正予算は一切やらない、それから総合予算主義を採用する、こういう方針を、当時、予算編成方針としてとったと思う。それで、なおかつ、四十三年十二月二十八日の閣議決定の内容でありますが、これによりますと、四十四年度編成の際も総合予算主義は堅持をする、あるいは補正要因の解消ということにつとめる、あるいはまた、災害外の追加補正はしない、組みかえ補正等はやむを得ない、こういう四項目に基づいて四十四年度の予算規模編成をされた。ところが、四十五年度に入りますと、この総合予算主義という柱は全く消えておるじゃないか。ただ、予算の説明書によりますと、財源の重点的配分、こういう中にこれを若干におわしておる程度である。一体、こういう、いま大蔵大臣が説明されたような内容でいくならば、なぜ、方針書に明確に、そういったことを明記をして柱として打ち立てていかないか、この辺の見解はどうですか。
  169. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 主義、方針は変えておるわけではないのです。ただ、補正を四十三年は組んだ、また、四十四年も御審議をただいまわずらわしておる、こういうことになりますと、当初皆さんに、どうも総合予算主義というのはこれは補正なし予算と同意語、同義語じゃないかというようなお感じを与えておる。これは、そういうことをはっきりさせる必要もありますので、私は、四十五年度予算編成におきましては総合予算主義ということばは使います。使いますが、使い方を、前よりは少し(「変わった」と呼ぶ者あり)遠慮をしておるというような、いま状態でございます。しかし、当初考えました、総合的に歳出も歳入もながめまして、均衡のある予算を組み、でき得べくんば補正もないようにしていきたい、この考え方につきましては、いささかも変わりはないのであります。
  170. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 では、具体的にお伺いいたしますけれども、当初、水田大蔵大臣は、四十三年のときは、総合予算主義採用をやれば一切補正は組まないと――このことはたいへん問題になりまして、予算委員会で多くの論議を呼んだところであります。これに対して、水田大蔵大臣は、当時そういう答弁をやっておるわけです。四十四年度予算編成当時も、福田大蔵大臣でありますけれども、そういう答弁をやっておると思う。こういう問題について、現実、この補正の必要があって今回補正予算を組まざるを得ない、こういう事態まで来ておることは、やはり、財政法でいう二十九条の必要性というものが、予算総体をながめてみた場合に必ず起こり得るのだと、こういうことを想定してあらかじめ設置をされた、こういう趣旨ではないかと思う。ですから、そういう意味合いにおいて、いままで政府が述べてきたことと今回とった具体的な事実とは違うじゃないかと思うのですが、その点はどうですか。
  171. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 考え方には、いささかの違いもございませんです。私は、一昨年の暮れの臨時国会におきましても、両院で、非常、異常の場合におきまして補正予算というものはあり得るのですと、これは御理解願いたいというように申し上げたわけでありますが、どうしても年度を経過しますとそのような事態がある。ずいぶん努力はいたしまするけれども、補正がやむを得ない場合もあるということは、ひとつ御了承願いたいのであります。
  172. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 そうすると、四十三年当時、この総合予算主義を採用したときの方針とは今回変わるということでありますか。どうですか。
  173. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 考え方はいささかも変わりはない。ただ、当時初めに、どうも補正なし予算と総合予算主義とは同意語だというような印象を与えた節がある。そういうことを私は暮れの臨時国会において訂正をいたしております。
  174. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 まあ序論をいつまでもやっても困りますからその方向を変えまして、総合予算主義の後退した理由ですね、われわれは、少なくとも私はそう理解しておりますが、後退した理由は一体何なのか、あるいはその政策的なねらいですね、これはどこにあるか。
  175. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 後退はいたしておりません。
  176. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 少なくとも予算説明書の方針の説明による限り、表現による限りは、私は後退していると思う。いままではやはり明確に項目を起こして、総合予算主義採用というものをやった。今回はそういうものが全然なくなってしまった。この表現の内容についてわれわれが受ける印象としては、後退したと見ざるを得ないんですがね、その辺はどうです。
  177. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 当初、総合予算主義と申し上げたときに、どうも補正なし予算という印象を与えた節がある。それは、そういうことではこれは困るわけでございます。そこで、私はそれを一昨年の秋の臨時国会におきまして訂正をはっきり、正しいと私の思うことを申し上、げたのです。それは、予算はあくまでも総合的に編成するけれども、異常な場合、または非常な場合の補正予算、そういうことはあり得るんですと、こういうことを申し上げたはずでございます。しかし、その総合予算主義という当初の考え方、これはいささかも変えておらぬ。表現上多少の推移はあります。
  178. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 政策的ねらいは……。
  179. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 政策的には、別に何のねらうところもございません。総合予算主義につきましては、当初以来その考え方の基本におきましては変わりはない、かように御了承願います。
  180. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 まあ意地悪い解釈でありまするけれども、私の理解する限りでは、何か農民の所得政策というものは実現をしたから、あと残されたものは公務員に対するところの給与問題、こういうことで今日ねらいはむしろこの国家公務員等の給与所得政策にあるのではないか、こういうふうに、意地悪い解釈でありまするけれども、そういう理解をするのでありますが、大蔵大臣はどういうふうに考えられますか。
  181. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) さようなことは全然ございません。
  182. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 それじゃ予算の内容等について具体的にお伺いをしてまいります。  まず、この税収見積もりについてでありますけれども、政府は四十四年のこれも予算委員会審議の際、わが山本伊三郎議員からこの自然増収の問題について質疑をされた。必ず千五百億はいきますよと、ないしは千九百億ぐらいもあるんじゃないかということを指摘をしながら、大蔵大臣答弁を求めたのでありますが、その際大蔵大臣は、いまの情勢の中においてはそれを訂正することはできないという趣旨の説明をなされておる。こういった見積もり過小について、大蔵大臣はどういうお考えを持っておられるか。
  183. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 昨年のいまごろ、そういう論議のあったことをよく記憶しております。たしか山本委員は、成長率が一六%ぐらいいくんじゃないか、そこで税収は千五百億円ぐらい政府見積もりよりも多くなるんじゃないかというふうな御意見でありましたが、私どもは政府見積もりとして、一四・四%という見通しを持っておったわけです。今日になりますと、どうも山本委員の先見の明に敬意を表さざるを得ない、こういうような事態になっておるわけでありますが、山本委員が一六%と言ったのが、実は一八%ふえる上昇であり、山本委員が千五百億円の自然増収がある、こういうふうに指摘されたのが、千九百六十九億円の自然増収があった、こういう事態になったわけなんです。しかし、当時としては一年間を見通しまして、経済見通し一四・四%というのが動かない限り、税収のほうでこれを動かすということは不可能なわけ、決して過小見積もりを政策的にやったというふうな次第ではないのであります。
  184. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 その過小見積もりの原因ですね、どう一体考えておられるか。
  185. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは成長率の見方です。景気が一体どうなるか、一四・四%というふうに本年度は見ましたが、実際は一八%をこえるような上昇になった。そこに自然増収の根源がある。何もその年度当初に一八%ぐらい上がりそうだ、それをあえて一四・四%に見たわけじゃないのです。どうも一四・四%と見るのが正しいと思っておったところ、実際は一八%をこえる上昇になった、こういうことになった次第であります。
  186. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 税収見積もりのいかんが、私は結果的に減税の配分、あるいは総体的な財源の配分、あるいは予算の的確性ということからいきまして、非常なる弊害というものが生ずると思うのであります。ですからそういう意味合いにおいてここ四十二年度から考えてみても、四十三年度は二千六百億、四十四年度は千九百億円、こういうぐあいに毎年自然増収というものが見当違いが生じる、こういう責任について何か改めるということはございませんか。
  187. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) どうも経済の見通しが狂うという結果、そういう結論になるわけでございますが、経済見通しというのは非常にむずかしい。私どもはたとえば四十五年度につきましては、何とかして一〇%ぐらいにはしたいと、こういうふうに思っておるが、実際はそこまでいくまい。そこで一〇・八%実質成長というふうに見ておりますが、これが世界内外の環境下でどういう動きをしていくか、いまあらゆる指標を眺めまして、また私どもの政策の意図を含めまして一〇・八%というふうに見ておりますが、結果は多少の変動はあり得るかもしれない。それに応じて、あるいは税が減るか、あるいはふえるか、そういう事態があるかもしらん。ふえるときばかりじゃないと思う。減るときもあり得る。多少のズレはやむを得ない、こういうふうに見ております。
  188. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 これは四十五年度予算編成でもそういうことが言えると思うのでありますが、政府の見通しでいきますと、実質成長一一・一%、こういう考えのようでありますが、その辺の見当はどうですか。
  189. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 大体その辺であってほしい。いま昭和四十四年度、四十三年度、四十二年度、この勢いで経済が一三%-一四%という間の実質成長を遂げるということになると、たいへんなことになりはしないか。たいへんな反動を招きはしないかということを心配しておるのであります。何とかして実質一〇・八、その辺で押えたい、そういう目途を持ちまして、財政金融政策もやっていきたい、かように考えております。
  190. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 これは予想でありますからいろいろはずれる点があるかもしれませんけれども、現行四十五年度の予算説明によりますと、税収は一兆三千七百七十億円程度の自然増収だとこう言われる。私たちが想定するに、約二千億程度、いまの産業の強気態勢からいけば、上回るのじゃないか、こういう判断を持っているわけですが、大臣のお考えはどうですか。
  191. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 成長の高さによると思うのです。私どもはどうしても、さっき一〇・八%と申し上げましたが、これは経過中の数字でありまして、最終的には二・一となっております。これを動かすということになりますれば、税収もまたおのずから違ってくると、かように考えます。
  192. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと関連ですが、いま四十五年度の自然増収の質問ですが、その場合、四十四年度の今度の補正における自然増収を伺いたいのですが、それは私の計算では――今度はいまの補正予算では千九百六十九億の自然増収になっていますね。ところが、私の計算では二千八百九十二億です。そうしますと、政府の見積もりより九百二十三億多いんですよ。ですから、政府は今度の補正に出したよりも、さらに私は自然増収を見込んでいるんではないか。と申しますのは、先ほど大蔵大臣が言われましたが、最初一四・四%の名目成長率を見込んだのは一八・五%になっているでしょう。この計算のしかたは、大蔵大臣御承知のとおりですよ。いままでの私の計算のしかたでやりますと、それは千九百六十九億じゃないですよ。二千八百九十二億、それはもう計算方法はここにございますが、関連質問ですから――結論としてはまだ非常に財源がある。あるのにどうして公務員の給与を五月にさかのぼって実施できなかったのか、九百二十三億もあるのですよ。これについは私はおそらく含みがあると思うんです。それから公債発行をもっとあとで減らそうとしているんじゃないですか。このふくみを持たしているから、低く千九百六十九億に押えた。まだ九百二十三億もあるんです。ですから、もしもっとこれを出せば――なぜ、公務員給与を前のボーナスも減らし、そうして五月実施を六月に伸ばしたんでしょう、はっきり計算やれば出てくるんですから。この点が一つと、それからもう一つは、総合予算主義にしましても、大蔵大臣は原則は変わらぬとおっしゃっているんですが、これは破綻したんですよ。四十三年、四十四年でしょう。総合予算主義をとるとると言いながら、とうとうとれない。みんな補正をしている。総合予算主義を、あれを採用したときには、いわゆる財政硬直化の打開としまして、予備費をたくさんつくったんでしょう。予備費をたくさん計上したことは補正を組まないということなんです、そうでしょう。だからあなたは追加補正というものと総合予算主義をどういうふうにとらえて一おそれがあると訂正しましたけれども、追加補正と総合予算主義は切っても切れない関係にあるんですよ。財政硬直化打開策だとしてあんなに予備費を計上したじゃありませんか。予備費を計上したのは追加補正を組まないということなんです。そして追加予算というのは、財政法二十九条で、総合予算主義のこれは例外なんです、あくまでも。あくまでも例外なんですよ、これは。そうでしょう。ですから、大蔵大臣は率直に、総合予算主義をとろうとしたけれどもできなかった。破綻したと、私の言ったことは、ここで訂正いたしますと。ほんとうに大蔵大臣、今度総合予算主義を貫こうとまた言われるならば、四十五年度でもはっきりまた補正予算出ますから、米価を中心として出ざるを得ない。何回もあなたは総合予算主義を貫く貫くと言いながら、毎年ずっと補正を組んでおいて、総合予算主義の考えが変わらないというのは、これはおかしいですよ。もっと私は率直に破綻いたしましたと、それはこうこうこういう原因でありました、見通しが誤りましたと、はっきり言うべきですよ、そういう面で。そうじゃないですか。ごまかしですよ。  それからもう一つ、あとで公債を、これは財界のほうでもっと資金需要がありますから、公債発行を減らしてもらいたいんです。そこであと公債発行を今度は四百億円減らしますけれども、さらに四百億ぐらい減らしたいために、まだ含みがあるのを残しておる。この計算ではどうしてもそうなりますよ。この二点をはっきりさせてもらいたいと思います。
  193. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 木村さんのような数字になってくれれば私も楽でございますが、そんな数字にはなり得ません。人のやることでありますから、これは間違いもあり、見通しの狂いもあります。多少の違いはあるかもしれませんけれども、八百億も九百億もこれからさらに自然増収がある、そういうことは全然予想もできない次第であります。  それから総合予算主義につきましては、先ほど申し上げましたとおり、四十三年度の初めからこれが言われたのでありますが、そのときに、どうもこの総合予算主義を強調するのあまり、補正なし予算という印象を与えた節があるので、私が大蔵大臣になりましてから、これが説明を修正しております。異常なる場合、あるいは非常な事態のある場合において、補正予算を排斥する趣旨のものではありません。この予算編成時におきまして、あらゆる歳出要因、あらゆる財源要因というものを総合的に勘案して、でき得べくんば補正なしでいきたい、そういう気持ちを込めての予算であると、こういうふうに訂正しておりますから、そのように御了承願います。
  194. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連ですから、もう一つ簡単にします。
  195. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) きわめて簡単に願います。
  196. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 きわめて簡単にやります。  それでは、あとで私は計算方法を示しますけれども、計算方法大蔵大臣御存じだと思います。四十四年度の税収と四十三年度の税収を引いて、それで率は二二・一%になります。それを一四・四%で割ると一・五三になる、一・五三に一八・五%掛けると二八・三になります。この計算でいくと、どうしても九百二十三億政府の見積もりよりも多くならざる得ないのですよ。多少のでこぼこがあるかもしれませんが、ちゃんとこういう計算方法があるのです。これは否定できない。また、もう一つは積み上げ方式というのがあります。積み上げ方式がありますが、だけれども、こういう推定があるのです。またこういう推定でこれまで大体当たっているのです。前には私はぴったり当たったことがあるのですから。  そうでしょう。池田さんのころありましたでしょう。こういう推定方法があるのです。だからこれは全然否定できないのです。あとでこまかい数字を出しますけれども……。
  197. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 木村委員のおっしゃるようになったら、これは国家のために喜ぶべきことだと思いますが、そうは遺憾ながらならないということは、私はっきり申し上げておきます。
  198. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 もう一つ大蔵大臣にお伺いしたいのですが、それはいま提示をされておる補正予算そのものの見積もりは適正であるかどうかということです。これはどうですか。
  199. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 適正だと信じて御審議をお願いしております。
  200. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 これは昨年度補正後二百億円の税収、穴があいたということを私は知っておるのです。その見積もりの計算方式によってやっていただいたのですけれども、一八・五%の成長率で、ことし一月末の弾性値で昨年十一月末の収入を試算してもらったぐあいでは、どうも補正後約五百億程度の増収があるのではないか、こういう計算になってくるのでありますけれども、その辺はどうですか。
  201. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 大蔵省でも全機能を用いまして計算した結果でありまして、そうなってくれれば、これはほんとうにありがたいことだと思いますが、ただいまのところは、そういう数字は想像しておりません。
  202. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 今回のこの自然増収の見積もり増がさらに総体二千三百十二億八千万円、こういうことの増収態勢が出ることのわかった時期はいつですか。
  203. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) お答えいたします。主税局で見積もりまして、大体この数字が出てまいりましたのは、一月の中旬でございます。
  204. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 この見積もりの問題についてはいろいろな議員から、ことにわが党の山本議員、あるいは新聞関係でもそういったことを去年の十二月二十六日、これは日経でありまするけれども、あるいは毎日新聞もこういったことをすべて報道しているわけですね。専門的にやられておる大蔵省なり福田大臣が、こういうことをわからないというのは、私はどうもおかしいと思う。その辺はどうですか。
  205. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 一番問題になりますのは、法人税の数字が非常に景気のと申しますか、経済の状態によって動くことでございます。日本の場合には、三月、九月に決算期が参ります法人が非常に多いということで、その結果九月決算の数字が十一月になって明確になってまいります。それともう一つ問題は所得税でございますが、所得税のほうは二つ要素がございまして、十二月のボーナスの状況によって非常に動いてまいります。もう一つは、三月の確定申告でございますが、これは現在の段階でもまだ確実にはわからないわけでございまして、いつも毎年予算補正の段階で私どもは見当をつけます場合に、大きな要素として動きますのは、九月の法人税と十二月のボーナスの状況によるものでございます。
  206. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 前にもちょっと指摘をしたのでありますが、大体政府は、国家公務員の給与について六月実施で去年は押し切ったわけですね。まさしくこれは法律違反だろうと思う。しかし、私の計算でいくならば、一カ月の給与総額が百億程度で済むんですね。  そうしてさらに四十四年度の予算編成の際に、予算委員会でもそういうものは全部勧告どおりに実施をしてはどうか、これに対して福田大蔵大臣も、四十五年度以降等については検討する、こういったことを言われております。なぜこれだけの自然増収があるのに、百億程度の穴埋めができないのか、この辺の見解はどうなんですか。
  207. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは国の費用は公務員の給与費ばかりじゃございません。いろいろなものがあります。いろいろなものにつきまして増額の強い要請もあるわけであります。そういうものの総合的な比較、バランスにおきまして六月実施、人事院勧告尊重と、こういう線がやむを得ないんじゃないかと、こういう結論になったわけです。そのかわり四十五年度におきましては完全実施、これは実施時期を含めての意味であります、そのための予算措置を講ずると、こういうふうにいたしたわけであります。どこまでも全体の費用のバランスの中において考えたときに、その辺が妥当な結論ではあるまいか、さように結論したわけであります。
  208. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 この租税及び印紙収入の中身についてお伺いをしたいのであります。一つは税収入の総額、割合、さらに政府が最低限の引き上げをやったというのでありますが、それを五人家族で平均した場合には百二万と、四人家族、独身者の方、これは大体どのくらいになるか。
  209. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 課税最低限は、給与所得者と事業所得者で若干違いますが、給与所得者の場合で、夫婦と子供三人の場合、これはいつも言われております百三万円という数字でございますが、ただいまお尋ねの独身者の場合は、今度の改正によりますと、三十四万二千円、配偶者と、つまり夫と妻の場合が五十七万七千円、それから子供が一人ある場合が七十二万九千円、子供が二人ですと八十八万五千円ということになります。
  210. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 もう一点お伺いしたいのは、この所得税の自然増収は総額でどのくらいありますか。
  211. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 明年度の全体が一兆三千七百七十億の自然増収の中で、所得税の自然増収は六千四百八十億でございます。これはつまり制度改正前の数字でございます。
  212. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 いまその数字が発表されましたけれども、四十五年度の税収、租税及び印紙収入の総額は六兆九千三百八十四億、歳入の八七%、四十四年度の比較で一兆二千二億円増収、こういうことになって、所得税の自然増収が六千四百八十億円あるのですね。にもかかわらず、政府は大減税をやったと言うけれども、結果的にはこれは初年度で二千四百六十一億円の減税しかやっておらない。加えていまこの五人家族の場合に、百万一千六百五十円、こういう者に対してその収入を考えてみると、四カ月の手当てを除いて計算をいたしますると、七万二千百四十八円程度の生活単位、四人家族の場合においては、四万八千二百六十五円程度のこの一カ月の収入単位にしかなれない。これではたして税法に定める生活費に食い込まない課税と言えますか、どうですか。大蔵大臣どうですか、その辺。
  213. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今度の改正では、夫婦、子三人の場合は百三万の最低限が実現するわけであります。これはもうほんとうに国際水準でありまして、まあこれより高いところももちろんあります。ありますが、大体まあ先進諸国水準に達したわけでありまして、まあまあこの程度のところはそう世界的にも遜色のない税制ではあるまいか、さように考えております。
  214. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 総理府長官にお伺いをいたしますが、現在までの最近の生活水準のこの度合いですね。その統計によって総理府で発表しておりますが、国民生活の水準、それをちょっと御発表願いたいと思います。この五人家族ないし四人家族でどの程度の一体食費が取れるのかですね。おわかりですか。
  215. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 統計のことでございますから、数字に基づいてお答えしなければならぬと思いますが、最近値の数字によりますと、大体所得が百万の一応大台に乗ったというところまで参ったようでありますが、正確な数字は、突然のお尋ねでございますので、資料を取り寄せてお答えを申し上げたいと思います。
  216. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 わが党の調査でありますけれども、その調査によりますと、五万円見当の収入者は、一日の食事費が百二十円見当だといわれておる。そういう形の中で、この四人家族等が五万円まで達しないという収入の状況では、相当私は低い生活に甘んじなければいけないということになるのじゃないかと思うのですが、大蔵大臣これはどうですか。
  217. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは絶対的な基準があるのではなくて、私はその収入と相対的に生計というものは大体あるのであるというふうに思います。で、その生計が国際社会なんかの中でどういう地位にあるかというのが、まあ何といってもわが国の生計水準というものがどんなものであるかということを理解する一つのまあ大きな基準ではあるまいか、そういうふうに考えます。そういうふうに見るとき、わが国はとにかく百三万円まで夫婦子三人の家庭においては、課税最低限が設けられたと、こういう水準に達したわけでありますから、そう遜色のある状態ではない、さように見ております。
  218. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 次に、給与所得控除の定額控除について、十万円は据え置きですね。定率控除の適用限度と控除引き上げについて、具体的に二百万円以上三百万円までは一体何%か、二百万円以上四百万までは何%か、これを発表していただきたい。
  219. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) いまの御質問は、二百万円から二百五十万のところでどのぐらい下がったかという御質問でございますか。――二百万円の給与所得のところで御説明いたしますと、四十三年の平年分は給与所得控除額が二十八万円でございます。それが四十四年に三十二万五千円になりました。今度の改正で三十九万円になります。
  220. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 定率控除の適用を受けるのは……。
  221. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) これは、この中でそれぞれ十万円が定額控除でございます。定額控除額は動いておりませんので、四十三年で二十八万円と申しましたうち、十万円が定額控除であり、十八万円が率による控除でございます。
  222. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 二百万以上三百万円までの割合は幾らですか。前に質問したやつです。
  223. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 割合と申しますと、二百万円以上三百万円までの所得に対してかけられる給与所得控除の全体の税率でございますか。
  224. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 控除率の引き上げの割合です。
  225. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 引き上げの割合は、現行は二百万円までは五%でございましたが、これが今度は一〇%になります。
  226. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 二百万から三百万、二百万から四百万。
  227. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 三百万までは、現行は二・五%でございましたが、今度五%になります。四百万円までは、従来ゼロでございましたが、これが五%になります。
  228. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 いま発表がございましたように、最低は一〇%据え置きなんですね。そしてなおかつ二巨万から三百万までは五%と引き上がった。四百万円までも同じです。これはまさしく税率緩和をしたというけれども、特定層に向けて、言ってみれば、中堅層から上、こういうことになりはしないかと思うのですが、この辺はどうですか。
  229. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 給与所得控除につきましては、四十三年七月に御答申いただきました税制調査会からの答申によりまして、従来百十万円までで、それから上については同額ということになっておりましたのが、中堅所得層といいますか、中堅サラリーマンの税負担を考慮すべきだということで、いま御指摘がありましたように、三百万円なり四百万円まで所得の額に応じて給与所得控除の額がふえるように改められたわけでございまして、その意味から申しますと、従来、課税最低限の引き上げが中心に所得税の改正が行なわれてまいりましたので、今回の分は、その意味におきますと、中堅層にむしろ意識的に重点が置かれたということでございます。
  230. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 最高税率についてちょっとお伺いいたしますが、従来、六千五百万円以上、これは七五%の最高税率だったんですね。今回、八千万円以上にもこれが適用になっていると、これは間違いありませんか。
  231. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) おっしゃるとおりでございます。
  232. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 先ほど発表がありましたように、最低一〇%そのまま据え置き、最高限度になりますと、こういうぐあいに多額の所得者が税率据え置きということは、どうもやはり低所得者等から見たら理解のできない点じゃないかと、こういうふうに考えますが、大臣、この辺の緩和策について今後どう検討されますか。
  233. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 昭和四十五年度の税制改正だけを見ますと、どうも、中堅層に厚く、下の人に薄いと、こういう御批判があるいはあるかもしれない。ところが、これは長期答申の一環であるということをひとつまず御承知願いたい。と同時に、ここ数年間の所得税減税の傾向というものをごらん願いたいんです。いままでは課税最低限の引き上げばかりをずうっと十数年間やってきておるわけです。その税率調整というものが行なわれていない。そこで、非常な低額所得者、最低限以下の人は減税の恩典には浴しまするけれども、さあ子供ができたというような中堅階層ですね、そういう人の負担というものが一向に軽減されないじゃないか、そういうような批判もありましたので、今回は長期税制答申を完全実施すると、そういうことにいたしたわけであります。そうすると、四十五年度だけをとってみますると、いささか下に薄く中堅者に厚いような印象を与えまするけれども、全体を数年間をとってながめてごらんになられますと、大体つり合いのとれた減税になっておると、かように御理解願えるんじゃないかと思います。
  234. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 その税調の答申等の問題については、後日さらにまた触れていきたいと思うのでありますが、そこで、具体的にお伺いするのでありますが、年収百万で四人家族はどれだけ一体減税になっておりますか、その額を教えていただきたい。それから年収五百万の者、年収一千万の者、これをちょっと教えていただきたい。
  235. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 百万円の給与収入で夫婦と子供二人の場合、現行の税負担が一万五千三百十円、それが四十五年度で一万四百十円、軽減割合三二・〇%。五百万円、現行百十万一千六百円、改正後平年分九十万九百円、軽減割合一八・二%。一千万円、現行三百四十五万六千円、改正三百十四万六千五百円、軽減割合は九・〇%。以上でございます。
  236. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 時間がありませんから、この計算は省略しますが、私が前にやった計算では、年収百万の四人家族は四千九百円しか減税にならない、額にしましてですよ。いま割合でもって発表されましたが。それから五百万円の者は二十万七百四十円、年収一千万の者は三十一万。実に、最低所得者層の五倍ないし七倍程度になっているわけですね、上級のほうは、こういう実態を見ますると、いかに政府が減税したといっても、国民はどうも納得いかない。あらゆる報道に出てくる国民の意見というものはそういうことである。世論というものはそうなっている。ですから、こういう問題について、私は、大蔵大臣衆議院予算委員会でも答弁をされましたように、長期税制答申を実施するということを言われましたけれども、この機会でもいいですし、今後やはり税率緩和について徹底して洗い直す必要があるんじゃないかと思うのですが、この辺の見解はどうですか。
  237. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 税率改正を四十五年度にやるわけですが、これはもう実に十数年ぶりのことなんです。しかも、これは、税制調査会で各界の代表的な人が集まって、また、各界の多方面の意見を広く聞きまして、衆知を集めてと申してもいいと思いますが、今回ひとつ断行しようということで一昨年の夏に答申が行なわれたと、そういうことでありまして、この答申をそのまま実行する四十五年度予算でございますので、そうゆがんだところがあろうというふうには思いません。思いませんが、所得税全体の問題としては、今後といえどもいろいろ検討していかなきゃならぬ、かように考えております。
  238. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 これは将来の問題になると思いますが、一点お伺いしたいのですが、最近、政府の要人からそれぞれ発表にもなっているのでありますが、今後政府としましては、自動車新税、あるいは付加価値税、あるいは売り上げ税、こういうものの新設についてはどうお考えになっておりますか。
  239. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 将来、やっぱり社会資本の充実とか社会保障、そういうようなことで、国費はだんだんと需要がふえていくだろうと思うのです。それに対して自然増収というものもある、そういうふうに考えますが、その間におきまして国民からなお所得税をさらに減税せよというような要望も出てくるに違いないと思います。そういうことも考えなきゃならぬ。そうしますと、所得税の減税ということを考えるときに、一方における社会資本、社会保障というようなまあその他もろもろの国家需要というものを考えますと、そう簡単にできないんじゃないか。やはりこういう際に税制全体として考える必要が出てくるんじゃあるまいか、そういうふうに考えます。そこで、税といたしますと、とにかく四十五年度、これは長期税制答申を完全実施をする。ですから、一つの段落を画する時期です。さて、それから一体どうするかという問題になってくるだろうと思うのですが、その際におきましては、まあ税全体、直接税も間接税も全部をつっくるめて少し掘り下げて検討が必要になってくる段階になってくるんだろう、そういうふうに考えます。そういうような背景があるんでしょう。そこで、いろいろの構想を言う人があるわけです。売り上げ税でありますとか、あるいは自動車新税でありますとか、いろいろのことを言いますが、これらはまた今後の税制調査会にお願いいたしまして総合的に慎重に検討してみたい、かように考えております。
  240. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 ついでですから、もう一点お伺いしますが、少なくとも戦時中に戦費調達の手段として設置をされた交通税であるとか、最も悪税といわれている電気ガス税とか、こういうものは、私は、当然廃止をすべきじゃないか、あるいはまた、砂糖税、全く国民の消費生活にも不可欠の要件を持つこういった税金に対しては、同じくやっぱり廃止をしていくような検討が必要ではないかと思うのですが、こういう面についてはどうですか。
  241. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これからの税制の検討の傾向としては、いまどうも直接税が少し重いのじゃないかという感じを国民に与えておると思うのであります。なるほど、いま日本の国民一人当たりの税負担というものは、国民所得に対しまして二〇%ちょっと切るというような状態です。諸外国では、三〇%の負担、四〇%の負担をしておる中において、わが国の一人当たりの税負担というものは非常に少ない。ところが、直接税がその中でわが国においては非常に多いわけでありまして、実にその六五%が直接税であって、間接税的なものが三五%である。そこに一つの問題があるんじゃあるまいかというふうに考えるのです。直接税中心というのは、税体系としてこれは正しい考え方であると思います。しかし、国民に直撃的に負担感を与えるという点において、これが今日六五%であり、しかも国民所得の増加、経済の成長と、そういうものの趨勢を考えまするときに、ますますこの傾向は高くなっていくということを考えるときに、一つの問題として適当な間接税というようなものを模索すべきじゃあるまいか、そういう考え方が出てくると思うのですが、いま御指摘のいろいろな問題も、そういう総合的な検討の際にぜひ検討さしていただきたいと、かように考えます。
  242. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 確かに、今回の税制改正では、この点は大蔵省も努力をされたことは敬意を表するのですが、問題は利子配当課税の問題ですね。これはやっぱり依然として差があると思うのですね。御存じのように、われわれの場合は百二万だと。国民総体はそういうことだと。それが配当収入だけで生活をしておる人は二百八十三万から三百五万円まで上がっておるわけですね。どうしてもその差が非常に開きが大きい。三十万近く上がっている。いろいろと手直しをしていって一・七五%もう一回やったというけれども、しかし、これも今年度は見送りで、来年度から二年間の時限立法、こういうことになっておるわけですね。そうだとすれば、この辺の不公平について、もう一つは今後の取り扱いについて、大蔵大臣としてはどういう態度をお持ちですか、この点について。
  243. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、税は、第一に公平でなければならぬ、それからもう一つは、負担能力に応ずるものでなければならぬ、第三には、国民との間に摩擦を起こさないような配意をしなければならない、この三つを税制の大きな骨子とすべきものだというふうに考えております。そういうような第一の公平原則からいうと、いま御指摘の利子配当の特例ですね、これはあくまでも特例であるというふうに思われますが、同時に、国民の負担感だとか、そういうような点からみると、またそこに問題が出てくる。また、特にいまの利子配当につきましては、国民の貯蓄です。この点から深甚な配意を加えなければならぬというふうに考えておるわけであります。とにかく、今日、日本の経済は非常な発展をしておる。戦後ここまで来られたゆえんのものは何であるかというと、これは貯蓄だ。貯蓄にいささかもこれをディスカレッジするようなことがあったらたいへんなことだ、これを私は非常に心配するわけです。そこで、利子配当に関する特例につきましても、公平の見地からいいますれば、これはあるいは特例を全廃するということも考えられないことはありません。ありませんけれども、一面、いまこういう物価の浮動する情勢下におきまして、この貯蓄問題に火をつけるというようなことになったら、これはまた取り返しのつかないようなことになる。そういうことを考えまするときに、慎重ならざるを得ない。  そこで、両者の要請――公平問題、それから貯蓄の問題そういう問題両者をふんまえまして、とにかくこれは貯蓄にそう大きな心配は与えないで、しかも漸進的ではあるが、公平、理想の方向に向かって前進しようというふうにして結論づけたものがいま御審議を願っておる税制改正案である、こういう次第でございます。
  244. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 ついでですから、この際一点だけ。いま大臣も指摘されましたように、非常に物価上昇、経済政策そのものがインフレだと言われる。こういう情勢の中で国民の貯蓄意欲というか、そういうものが非常に薄れておる。こういう問題に対して、この利率を引き上げるとか、そういう何らかのカバー策を大臣としてはお考えになられておられますか。
  245. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、物価は何とかして貯蓄の預金の金利以下の上昇にとどめたい、これは最小限の願いとして当面持っているわけです。先々はどんどんひとつ物価を下げるように持っていかなきゃならぬが、差し迫ってこの瞬間におきましても、消費者物価の上昇が預金の利率以下にとどめられなければならない。こうしないと経済は安定しない、こういうふうに考えておるわけでございますが、企画庁において大いに努力して、とにかく四・八%、こういうところをねらってやっておりますので、それに期待はいたしておりますが、また別の面――そういう面ではありませんが、別の角度からその金利の調整というものを考えてみたい、こういうふうに考えておるのであります。どんなふうな結論にしますか、いま長期の貸し出し金利でありますとか、社債の金利だとか、そういう問題を進行さしておるんです。それとの関連において預金の金利を若干引き上げなければならぬかなというふうにも考えておるわけでありまして、そういう関係、これは物価の問題とは別の角度からでありますが、いま考慮中であるということを申し上げさしていただきます。
  246. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 次に、地方交付税交付金問題について質問をしてまいりたいと思うのでありますけれども、四十五年度の国からの地方返還分のうち、三百八十億円今回補正処理をする、こういうことになっておるわけですね。さらに本問題については、四十三年度の際に四百五十億政府が地方から借り入れ、四十四年度で六百九十億円の借り入れをした。こういう問題について、当時、大蔵大臣と自治大臣とが申し合わせした事項があると思うのです。そういうものに今回の補正、三百八十億を補正処理をするということは違反していないのか、あるいはまたこの四十四年度予算成立後の補正ということには言えないのではないか、あるいはまた四十五年度予算の先食いのにおいが相当するんじゃないか。すなわち、財政法の二十九条で言う補正の緊急性というものが失われているんじゃないか。こういう意味合いにおいて非常に疑問を持っているのでありますが、その辺の見解をひとつ大蔵大臣と自治大臣から承りたい。
  247. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず、四十四年度の補正でございますが、これは申し合わせの精神に違反するものではないと考えております。つまり地方からことし借りる計画でありましたものを一部借りないことにいたしましょう、こういうことでございますので、むしろこれはああいう覚え書きの精神からいえば前進した、改善される効果を持つものである、そういうふうに考えます。  ところが、四十五年度で今度は再び三百億円地方から中央が拝借するようなかっこうになるわけであります。これは、いま御指摘のように、昨年、もうこういう借り貸しは四十四年度をもっておしまいにいたしましょう、四十五年度以降はしないことにいたしましょうといった、私や自治大臣の覚え書き、これに違反をするということになりますが、これは、その際そういう申し合わせばかりじゃないのです。地方交付税交付金につきましては、これが年度間調整につきまして別途検討いたしましょうという申し合わせをいたしておるわけであります。その年度間調整というものは非常にむずかしい。それができないもんですから、申し合わせをし、またその申し合わせを国会にも御報告を申し上げて、まことに申しわけないことになったわけでございますが、再び借り貸し方式を四十五年度においてもこれを取り行なう、こういうことになったわけであります。  それから第三に、この四十五年度の借りと、四十四年度の補正とこれは関係あるかという話でありますが、これは全然関係はございませんです。別個の立場で、先ほど申し上げましたように、四十四年度は財源の状況を見まして、借りようとした額の一部を借りないで済ませたい、かように考えた、そういうことでございます。
  248. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) 三百八十億円に関してでございますが、四十四年度の当初予算で交付税総額の中で六百九十億円繰り延べ減額をすることになっておったのですが、年度途中でいろいろ交付税をさらに加えて配賦しなければならない事情も生じてまいりましたが、一方、国税三税の自然増収も十分予想されますので、彼我いろいろ勘案いたしまして、繰り延べ額のうちから三百八十億円繰り上げて加算をされるという措置に出た次第でございます。  なお、四十五年度で三百億円のいわゆる貸し借りを国の財政と地方財政の間にいたしましたことは、これは極力申し合わせの趣旨もあり、覚え書きの趣旨に照らしてこれは避くべきものと心得ておったのでございますが、いろいろ国の財政に、地方財政といたしましても、警戒中立型の予算を組む以上、御協力を申し上げる趣旨もあり、かつまた国税のいろいろ自然増収も予想されますので、これだけ交付税の交付減額処置をとりましても、地方行財政の円滑な処理には事を欠かないだけの交付税収入があり得ることが見通され、いろいろ諸般の事情等交渉の過程において考慮をいたしまして、万やむを得ざる三百億をいわゆるお貸しをするというような処置をとった次第でございます。
  249. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 まあ、大蔵大臣も自治大臣も非常に巧妙に答弁をされておるようでありますが、実際はこういうことじゃなかったでしょうかね。国は地方から四十三年度四百五十億、それから四十四年度六百九十億借金をした、いずれもこれは均等償還ということで約束がしてあるはずなんです。さらに四十五年度に返済すべき金額は、四十三年度分の百五十億、四十四年度分の二百三十億、計三百八十億、大蔵省はこの予算編成の作業の中で、四十五年度予算編成が苦しいので、四十六年度までこの返済を延ばそう、こういう配慮のあったことは私たちも聞いておるところです。もう一つは、この交付税率を引き下げるとか、どうのこうのということを持ち出したことも大体伺っておるのであります。さらにこの教科書の無償配付、国庫負担の一あれは地方に二分の一肩がわりの問題、こういう問題を盛んに持ち出して自治省と折衝したと聞いておる。だけども、自治省はそういうものに対して反対だ、こういう趣旨から窮余の一策として実際はこの四十四年度に補正予算を組んで、本来四十五年度に返す三百八十億の借金を繰り上げて返済をする、こういうことになった経緯というものを私は聞いておるのでありますが、そういうことが実態じゃないですか、どうですか。
  250. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それに似た経過のあったことは、まあ事実でございます。しかし、結論的に申し上げますと、正式には、そういうひっかかりがあるというふうには申し上げられない。四十四年度の補正の措置は、これは四十五年度の貸借措置とはこれはもう全く別個で、四十四年度におきまして六百九十億円地方から借りるというかっこう――これはかっこうなんです。かっこうをとったのでありますが、しかし、それを全額借りないで、三百八十億だけこれを借りずにおこうと、こういう措置、これは国の財源上そういうふうにしたわけであります。もちろん、いまお話しのようないきさつ、それを横目でにらみながら見合いをとったというような傾向はあったと思いますが、結論におきましては、全く関係がない、こういうふうに理解をして御審議をいまお願いをしておる、かように御承知を願います。
  251. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 ただいまの大蔵大臣答弁があったんですが、そうだから、私は、当然本問題等については、四十五年度以降の正式予算の中で処理すべきではないだろうか、補正の予算の中で、そういう緊急性とか――財政法上でいう、こういう問題にはなってこないんではないだろうかと思うのであります。再度、本問題について両大臣からお伺いをしたい。
  252. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま財政運営は、景気対策というものを重視する必要があるのです。そこで、今度の補正におきましても四百億円の国債の減額を行なうと、こういうことをいたしたわけでありますが、地方から借りましても国の債務であることは債務なんです。この際、財源の状況から、三百八十億円、これを借りないでおいて済むと、こういう状況が見られましたのでそういう措置をとった、これで私は財政法上の説明はつくと、かように考えております。
  253. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) ただいま大蔵大臣の御答弁の趣旨と同様に考えております。
  254. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 まあ、答弁が非常に不満でありますけれども、先へ進みます。時間がありませんから。  米の生産調整特別対策費についてお伺いをしたいのでありますが、実は、四十四年度農林省予算で、稲作転換対策費、こういうもので三十億二千四百万計上されたことは予算で明確なことだと思うんです。これは幾ら使われて残が幾らあるのか、この辺をひとつ説明をしていただきたいと思いますし、それから、当時、対策費の中で十アール当たり二万円、一万ヘクタール、これを消化するわけでありますが、実際はどのくらいその作業が進められ、今日まで割合として一体どのくらいやられておるか、この辺についてまずお伺いしたい。
  255. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お答えいたします。  四十四年度の稲作転換は、一万ヘクタールを目途にいたしたわけでありますが、その転作は、御存じのように、わが国で初めての経験でございますので、ふなれの点もありまして、実績は五千数百ヘクタールにとどまったわけであります。このために、当初予算、いまお話しのように、三十億計上いたしましたが、不用となりました部分について減額をいたしております。一方、四十五年度には本格的な米の生産調整を進めることとしておりますが、その円滑な実施をはかるために、米の作付前にあらかじめ所要の手続を実施する必要があるというので、今度の補正にもお願いをしておるわけでありますが、いまお話の当初予算額三十億二千四百万円、それから修正減額がございます。これはいま申し上げましたように、所期の目的を達成するに至りませんので、使用しなかった分十四億四千六百万円、これだけ残が出たわけであります。こういう結果でございます。
  256. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 結局、いま説明のあったような残額が出て、今回、対策費として二十億円、再度補正予算で計上したわけでありますが、これは明らかにいま農林大臣も認めておるように、私は、農民の拒絶反応じゃないかと思うんですね。このこと自体、どっかに無理があるのだろうと思うんです。ですから実行できなかったのだと思う。そういうものを残額を含めて補正に組んで、そうして、なおかつ四十五年度予算の繰り越し明許をやって、そうして今後使えなかったならば再度また四十五年度予算に繰り込もうという……。私は、農民の皆さん方に数多く政府が金を出すということについては全く賛成です。しかし、こういう予算編成上からいけば、きわめて私は不純なものを生ずるのじゃないかと思う。そういう意味において一つお聞きしたいことは、補正予算組んだあと、二十億というものが、はたして二十何日間のうちで消化できるのかできないのか。本来ならこういう予算編成のときに、これは明らかに政府からそういう実行の見取り図というものを出して、そうして国会審議にかけてくるというのが私は常道だろうと思う。そういうことは一切やらずに、単に金だけ先行させる、こういうやり方については、昨年の農林省予算の経緯からいっても、私は許すことはできないんじゃないかと思う。この辺はどうお考えになりますか。
  257. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いまお話のように、四十四年度分は五千数百ヘクタールしかできませんでしたが、これはもう世間でもよく認めておりますように、初めてのことでありますし、ふなれなことでございましたが、四十五年度に、私ども、このままの状態でいけば食管制度の根幹を維持することすらむずかしくなるんではないかと世間一般にいわれるほど生産過剰になりましたので、そこで、私どもは農業団体、それから地方の県知事あるいは市町村長の会合を数次開きまして、種々御相談をいたした結果、百五十万トン以上の米の生産調整はぜひやらなければならないということに意見が一致いたしまして、いま申し上げましたような各公共団体、農業団体等も一致してこれに協力をしてくれるということに相なって、いまそれに着手されてきておるわけであります。  そこで、補正に組んであります二十億でございますが、これにつきましては、御存じのように、植えつけが行なわれる前に着手しなければなりませんので、取り急ぎ緊急で小型の改良工事をやったり、あるいは小型の機械等、それぞれ米をほかのものに作付転換をするために必要な資材等を購入をする必要があるというので、各地方に二十億の金を分散いたしまして、その工事を促進していただきたい、こういうので補正に二十億を組んでおるわけであります。
  258. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 ですから、三月一ぱいで実行できるのかできないのかです、一つは。その見通し。それからもう一つは、こういった予算提出については、そういう実行計画というものを出すべきじゃないか、その内容というものは一体どういうものか。大臣が考えておる内容ですね、それを端的に伺ったんです。その内容をひとつ。
  259. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 実は、いま御報告申し上げましたように、知事会とか、農業団体とか、数次集まりまして御相談をいたしましたときに、なるべく早く、いま私が申し上げましたように、作付転換に必要な小規模の土地改良、転換先作物の生産等に必要な機械あるいは施設の投入、集団的に行なう作付転換に必要な種、種苗ですね、資材等の確保などの事業をなるべく早くやりたい、こういう要望がございましたので、それを計算をいたしまして、これらに要する経費として四十四年度補正予算に二十億計上することにいたしましたわけでありますが、いまお話しのように、この経費に繰り越し明許が付されておりますのは、この事業の性格上、年度内に支出をしてしまいませんというと、ただいま私が申し上げましたように、植えつけ等の前に早く着手をさせなければなりませんので、こういう措置をとった、こういうことでございます。
  260. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 そこで、委員長に要求をいたしておきたいと思うのですが、その実行計画ですね、内容、こういうものを別途資料として私は要求したいのですが。(「資料いいですか」「確認してください、ないのだから」と呼ぶ者あり)
  261. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ちょっと伺いますが、それは二十億を地方にどのように配分して促進するかという計画でございますか。
  262. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 結局、この米調整対策費ですよね、二十億計上されておるのです。前年度は十億何がしか残があった、こういうことなんですね。だから三月一ぱいでどれだけできるのか、その見積もりなるものを当然示すのが私は国会に対する親切な信義じゃないか。それをひとつ出していただきたい。
  263. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) それは、いま申しましたような、事前に行なうべき、つまり転換等に必要ないろいろな資材を購入したり、小規模の改良をやったりするために、地方の県知事及び市町村長たちはあらかじめそういう金がほしい、こういう御要望でございましたので、それらの御要望に応ずるために一応地方に配分して渡すというために二十億予算を取っているのでありますからして、私どもがいま作付の行なわれる前にやらなければならぬということで、地方に配分するために計画を立てたわけであります。
  264. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 まあ、協議の結果まとまったようですから、それでは先に進みますが、しかしいずれにしても二十億計上するのですから、具体的な実施計画がなければ金が私はあがってこないと思うのです。そういう意味合いにおいて非常に農林大臣の答弁は私は不満で残念だと思うのです。あとで資料要求したものを出していただきたいと思います。  それから、農林大臣に再度お伺いをしますけれども、四十年度ですね、農家数はどのくらいあって、もう一つは、四十三年どのくらいで、農家人口がどのくらい、男女別。それからさらに、四十年、四十三年でけっこうでありますが、専業それから兼業農家別の戸数、それから炭鉱労働者の、これは通産大臣のほうになるかと思いますが、三十三年度の末でけっこうですが、当時の炭鉱労働者がどのくらいおられるか、三十七年度どのくらいおられるか、四十三年度どのくらいおられるか、この内容についてちょっと数字をお示し願いたいと思います。
  265. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私がふだん持っております資料を向こうへ置いてきたもので、それならありますが、あとで資料として出してよろしいか、あるいはいま――後刻出しましょうか、どちらでもよろしゅうございますが。
  266. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 政府委員に……。
  267. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) 御説明申し上げます。  農家人口、これは四十二年の数字しか持っておりませんが、二千七百九十万人でございます。それから農業の就業人口、これは九百四万人、四十三年の数字でございます。それから、兼業の関係でございますが、御承知のように農家の中に一種農家と二種農家とございます。二種農家といわれますのはほとんど兼業でございます。それから、一種農家の中で六割ぐらいが兼業に相なっております。戸数で申し上げますと四十三年で一種兼業農家が二百二十七万九千戸ございます。これがすなわち一種農家のうちの兼業の数でございます。さらに、二種農家につきましては、ほとんどが兼業という状態でございます。
  268. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 私の要求しているのは、四十年度、四十三年度、その一種、二種ということで質問しているわけじゃないのです。農家数、農家人口、男女別、こういうことです。
  269. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) 四十三年の数字で申し上げます。一種農家が三百六十五万一千戸でございまして、このうち専業が三七・六%、兼業が、先ほど申し上げましたように六二…四%ございます。全体の農家戸数が五百十八万戸でございますので、二種の農家は約二百五尺それから一種のうちの兼業が三百六十万の六割でございますから、これも約二百五尺合計四百万戸が兼業農家であるというふうに推定できるわけでございます。  男女別の数字は、ただいま持っておりませんので、後ほど資料として提出いたします。
  270. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 信憑性の問題で若干問題がありますが、私が調べた内容で進めたいと思います。  私の調べによりますと、四十年は農家数が五百五十七万六千一尺農家人口が二千九百五十五万九千人、うち男女それぞれ半々ぐらいになっておるわけでありますが、四十三年度で五百三十五万一千戸相当減少いたしております。人口において二千七百二十一万二千人、こういうことになっておるわけでありますが、こういう大ぜいの、国民総人口の二割程度を占めるのでありまするから、少なくともこういった大事業を完成するということになれば、もっと私は政府は具体的な政策を差し示して、金を多くつけて、この問題に対して対処をしていかなければ、私は成功しないだろうと思う。ですから、それは前に石炭が斜陽産業になってきて、当時炭鉱労働者は、三十三年末に二十八万人、三十七年度末に十三万人、四十三年度末に七万九千人、こういう推移をたどるのに、昨年、石炭援助資金を石炭関係に出すのに大蔵委員会で種々検討いたしました。昨年八百億円出しているわけです。総体において私の記憶ですと八千億近く出しておると思う。この詳しい数字をひとつおわかりになったらお示し願いたいと思うのでありますが、私の理解ではそうなっておる。そのくらい金を使わなければ一つ産業転換というものはできないだろう、ましてや、農村の死活問題を決する、こういった米政策転換については、もっともっとやっぱり政府が意欲的に政策を示すと同時に、金を使っていく、こういうものがなければ私は成功しないと思うのです。こういう問題について倉石農林大臣はどう一体お考えになっておるか。
  271. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 大部分戸田さんの御意見に私は賛成でありますが、まあ金をどのくらい使うかは別といたしまして、とにかくただいままでの傾向を見ておりますというと、年々――昭和四十年以来米の需要量が減少いたしてきております。そして今度は逆に、ほかの作物の需要がどんどんふえてきておる、こういう傾向であります。しかも御存じのように、貿易の自由化等の国際的な波をわれわれもまともにかぶっている。わが国の産業構造の中で占める農業の地位というものには、そういう意味でも困難性が加わっておるわけでございますが、いまの米を中心にいたしまして、いままではああいう状態でよかったのでありましょうが、現にもうすでに非常に過剰米をかかえておるという現在で、しかも生産は依然として継続いたしてまいる状況でありますので、やはりこの辺で思い切って生産調整をしなければなるまい。こういうことにつきましては、私どもこういうことに着手いたしますまでに、農業団体、市町村長、県知事等としばしば会同いたしまして、いろいろ検討いたしたわけでありますが、いずれもみな生産調整はやむを得ざるものであるということで御協力を得ることになったわけでございます。しかし私ども政府与党のほうでも、総合農政に関する特別な調査会もできておりまして、この人たちが熱心に将来の農業の展望について検討していてくれますし、同時にまた政府の諮問機関であります農政審議会等も、これから先の農業のビジョンについて種々検討を続けてきてくれておるわけであります。そういう方々の意向も十分しんしゃくいたしまして、私どもは最近日本の農政についてのいわゆる総合農政の展望について発表いたしたわけでありますが、ああいうことにつきましては、先般も農林省では地方農政局長会同を開きまして、地方の要望を聞きながら私どもの考えを地方に徹底してもらうようにいたしておるわけでありますが、私どもいま見ておる限りにおきましては、全国の農家の方々がやはり生産調整はやむを得ないことである。しかしさらに農業全体の健全なる運営をやってまいるために、ぜひこういうようなことをやってもらいたいという要望がたくさん出てきておりますので、そういうものも配慮しながら、将来の展望を築いてまいりたいと思っております。お説のように農業者に不安を与えるようなことがありといたしましたならば、私どもとしてはまことに遺憾でありますし、申しわけないことでありますので、そういうことのないように全力をあげてまいりたい、こう思っておるわけであります。
  272. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 今回のこの政策転換にあたって、政府が総合農政で具体化したとわれわれが理解するのは、農民の職業訓練以外ないと思う。あとはほとんど項目を羅列した程度に終わっておるわけですね。ある人に言わせるなら、称してコイのぼり農政、中が何にもない。そういう問題について、私のほうは別な態度とこれらに対する対処策がございますが、それは一応さておいて、かりにいま政府が言っておるところの総合農政というものを一つとって、かつて農基法制定とか主産地形成というものが政府から盛んに主張された。だからいま米がだめなら、余っているならば、農民は何か先行きの指標がほしいのです。ところが、そこは全然やられておらないわけです。だとするならば、かりに政府の大臣の皆さん方が考えるように、そういう考え方にからだを置きかえて考えてみると、この主産地形成というものを一回打ち出してみたらどうなのか。たとえば九州はミカンならミカンでいきなさい、あるいは長野や青森だったらリンゴでいきなさい、あるいはまた東北の宮城県というようなところは米産地だから、これは米でいきなさい、北海道は酪農でいきなさい、こういう一つの指標を与えて、そういう中で価格保障をやってやる、農民の所得政策というもので一定の線を確保する。こういう形になっていけば、いまのこの米余剰等からくるいろいろな、数多くの農民に対する不安感というものが幾ばくかは解消していくのではないだろうか。こういう問題について、総理大臣どう一体お考えですか。
  273. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) たいへんいい御意見を拝聴いたしました。私どもも同感でございまして、私どもが発表いたしました総合農政の方針につきまして、よくお読みくだされば、いま戸田さんが御指摘になったことと同じことを指摘していると思うのであります。それで主産地形成のお話がございましたが、いま私は数は覚えておりませんけれども、農林省で鋭意つとめていたしておりますのは、三、四年前から構造政策推進会議というものを農林省の中に設けまして、農政審議会等とも歩調を合わせながら、やっぱりいまおっしゃったように、地域分担をしてもらいたい。ことに北海道のごときは、私は他の――いま米がだんだんふえてきておりますけれども、そうでなくて、もっと違うもので――北海道のようなところは、私は近代的農業を経営し得る一番適当な地域ではないかと思っておるようなわけであります。そういうことにつきましては、県知事あるいは市町村長さんたちに今度米の転換をお願いをいたしました機会に、それぞれ地域に適したものをひとつ考案してわれわれのほうに示していただきたい。そうして、それはそれなりに、ただいま戸田さんの御指摘のように、適地適産の方策で、それは別途に農林省として御援助申し上げましょう。お話の中にありましたように、青森あるいは東北地域、北陸のごとき単作地帯はなかなかむずかしいと思いますが、その他の地域では、むしろこの機会を利用して、ほかの農作物に転換しようという気がまえがたいへん旺盛になってきておるわけでありますが、そういうものも私どもやっぱり十分取り入れて指導してまいりたい。そのためには、御審議を願っております四十五年度予算をごらんくださいましてもわかりますように、圃場整備あるいは土地改良等にはかなりの予算を計上いたしておりますのは、そういう地域分担ということで日本の農業をそういう方面から体質を改善してまいりたいという考えでありまして、ただいまあなたがおっしゃいましたようなことと同じ傾向で、農林省としては鋭意そういう方向で努力をしていこうというのが総合農政の大筋の考え方であります。
  274. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 食管特別会計への繰り入れについて若干質問しておきたいのでありますが、これは政府の今回の補正ですね、五百六十億円、食管特別会計に繰り入れがあったんですが、この経緯を説明していただきたい。
  275. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 四十四年度の当初予算編成にあたりましては、四十四年産の生産につきまして、作付面積は四十三年産米の実績を、反収は過去の増加趨勢を織り込んだ平年反収を採用して、千三百六十五万トンと当初見積もったわけでございますが、出回り比率につきましても過去の最高比率をとりまして、自主流通米百七十万トンを見込んで七百五十万トンの買い入れといたしましたものであります。しかしながら、四十四年産の生産量が千四百三十万トンに達しました。そういう豊作でありましたことと、また、自主流通米の見込み量が当初の計画量百七十万トンを下回って九十万トン程度になりましたことなどの理由によりまして、百三十六万七千トンの買い入れ増を見てしまったわけでございます。それが今度の繰り入れになったわけであります。
  276. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 この予算説明の九十三ページでありますが、これによっても、当初の買い入れ見込み七百五十万トンが八百八十七万トンになっているわけですね。この政府の買い入れ見積もりというものが非常に私は意識的に低過ぎたのではないかと考えるわけなんです。その点はどうですか。
  277. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 別にそういうことではございませんで、先ほど申し上げましたように、従来の平年反収を基礎にいたしまして見込みました数字よりも実際の収量が多かったと、こういうことに相なったわけでございます。
  278. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 この点も、昨年のこの補正予算審議の際に種々論議をされた点だと思うのです。四十四年二月二十二日の議事録でありまするけれども、ここで矢追委員が本問題について政府をただしておるわけであります。これに対して長谷川農林大臣は、そういうことは絶対ありませんと。いわば当然もっと買い入れ量というものは、結果的にふえてくるのではないか、こういう質問に対して、そういうことはありません。こういうことを言っているのですね。ですから、こういう一連の経過措置考えますと、どうしても政府というものはそのときの答弁というものは何とか巧妙にごまかして、それで、事が済めばいいということになっているのじゃないか。こういうふうに考えるのですね。農林大臣どうですか。
  279. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) そういうごまかしなどというような知恵を持っておりませんで、つまりこのごろは御存じのように、もう技術が進歩いたしまして、大体私どもの見ておるところによりますというと、植えつけをいたしましたときに、植えつけ面積に四百三十キロぐらいかけてみると、その年の収量は――途中でちっとばかり暴風雨、台風ぐらいあっても、ほとんど受け付けないほどに収量が正確になってまいったようでございます。それに、昨年は何と言っても、これはおてんとうさまを相手の仕事だものですから、お天気もよくて、そうして、技術が進歩いたしたというようなことで、収量はそういうことになったんだ。実は私、長谷川農林大臣から事務引き継ぎのときも、いろいろそういうようなときのお話もございましたけれども、やっぱり長谷川さんのお考えでも、当初の見込みであったんだけれども、とにかく最近の収量は著しい伸びをみせておるんだというお話がございましたので、私どもといたしましては、そのように考えておるわけであります。
  280. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 この自主流通米の実績結果がいま発表になったわけでありますが、まさしく四十五年一月末で六十三万六千トン余り、これは農林省の資料に明確に載っております。それで、こういった自主流通米制度が百七十万トンに見込んでおりながら、所定どおりいかなかった、こういう理由は一体どこにあるとお考えですか。
  281. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 自主流通米はお説のように百七十万トン当初見込みましたけれども、先ほど申し上げましたように、九十万トン程度でおりまして、これは一つには、制度が発足したばかりでございまして、取引当事者がきわめてふなれでございましたこと、それから、当初出回りました超早場米が、たいへんまあ素質が悪いものが出たために、一般にたいへん自主流通米に対して不人気を買ってしまったこともありました。そういうような事情で自主流通の伸びが悪かったようでありますけれども、生産者側も今度はかなりこういうことに熱心になられたものですから、最近は自主流通に対する人気が出始めました。そういうことでございますので、現状におきましては、むしろ自主流通米が品不足を訴えておるような状態でございますので、私どもは、このような事情によりまして、出回り量としては今度は百七十万トンは優にいけるものではないかと、こう見ているわけでありますが、いままで出回りが悪かった、成績が悪うございましたのは、いま申し上げましたようなことと、もう一つは、長年の間配給統制ということに、もう国民がなれ切っておったものでありますから、そういうようなことが重なってうまくいかなかったのではないかと、こう見ておるわけでございます。
  282. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 これは数字的にわかれば、各県別の販売実績をひとつお示し願いたいと思うのですが、それと加えて、自主流通米が当初予算審議の際に、農林省の考えとしては絶対自信あると、こういうことを言っているんですね。ところが、結果は、いま農林大臣がお話をされたような状況なんです。この辺の見込み違いというものは常に生ずるんですけれども、どういうところに一体原因があるとお考えになりますか。大臣どうですか。
  283. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 自主流通がうまくいきませんでしたのは、先ほど申し上げましたような、いろいろな条件が重なり合ってうまくいかなかったんだと思いますが、さっき申し上げましたように、最近はたいへん需要家のほうも自主流通米について認識を新たにしてきてくれておりますし、生産者のほうでもたいへんこれはなれてきておりますので、いまは自主流通が品不足を訴えるような状態になってきておりますので、私は、今度の百七十万トンは優にいけるものであると、こう自信を持っておるわけであります。
  284. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 質問の論点をもとに返しますけれども、当初予算政府買い入れ墨見込みというものは、七百五十万トン予定しておったわけですね。それにこの自主流通米百七十万トンを加えた、いわば政府ルートに乗る米というものは総体九百二十万トン、こう見ておったわけでしょう。この点はどうですか。
  285. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ちょっといま聞き取れなかったのですが、九百二十万トン……
  286. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 結局、政府買い入れ量見込みが七百五十万トンですね、それに自主流通米百七十万トン、それを加えて九百二十万トンということで考えておったんでしょう。
  287. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) そうです。
  288. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 そうですね。そうしますと、結局九百六十万トンというのは、過去の四十二年、四十三年の実績からいきますと、非常に低過ぎるわけですね。低過ぎます。四十二年度は九百八十六万トン、四十三年度は一千五万トン、こういうことでありますから、相当低目に見ておると思うのですね。そうなりませんか。
  289. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) その数字を立てましたことについて、事務当局から御説明申し上げます。
  290. 森本修

    政府委員(森本修君) 四十四年の当初予算に米の買い入れ量を算定をいたしましたのは、先ほど大臣からお答えがございましたように、作付面積は前年の作付面積をとりました。それから反収の見込みは最近ずっと傾向的に上昇をしてきておりますから、そういう上昇傾向を見込みまして、四十四年産はどのくらいの反収になるかということを見込んで四十四年産米の生産量を推定をいたしました。それから出回り比率といいますか、買い入れ比率といいますか、そういう比率につきましては、従来の傾向のうち最も高い比率をとりました。そういうことで計算をいたしまして、先ほど御指摘がございましたような九百二十万トンという数字が出てきたわけでございます。
  291. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 ですから、どうも政府はこの当初予算の際の買い入れ量の見込みに対して、この自主流通米も含めて、間違っていたのじゃないかということを私は考えるのですがね。いまいろいろと聞き、ケースを話をされて答弁をされたようでありますが、その辺の点については一体どうなのか。農林大臣、どうですか、間違っておったのじゃないでしょうか。
  292. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 来年度予算の買い入れ量につきましては、私ども確信を持ってやっておるわけであります。
  293. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 私の質問しているのは四十四年度の見通しについてです。これは、やっぱり大臣はかわっても責任があるのじゃないですか。どうなんですか、それは。
  294. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) もちろん同じ内閣でございますので、責任は私ども継承いたしておるわけでありますが、四十四年度の見込みにつきましては、いま食糧庁長官から申し上げました理由によってああいう算定をいたしておるわけでありまして、特にこれはさっき私もちょっと申しましたように、長谷川農林大臣からの引き継ぎのときにも、長川さんはいまあなたが御指摘になりましたように、特に買い入れ量を小さくするというふうな考えは毛頭お話しになりませんでしたし、私どももそういうことはないと確信をいたしておるわけでありますが、しかし、現実にそういうことになりましたのは、もう御指摘のとおりであります。
  295. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 この、政府委員会要求資料の中にもそのことがあるのでありますが、四十四年度のこの売り渡し予約九百七十三万トンと、こうなっていますね。これだけでも政府が当初予算考えた九百二十万トン、政府買い入れが七百五十万トンプラス自主流通米百七十万トン、五十万トンも上回っておるわけですね。これにこの自主一流通米に回った六十万トンがもし政府で買うということになれば一千万トン上回ると思うのです。売り渡し予約の九百七十三万トンプラス自主流通米六十万トン、こういうことになるでしょう。農民が打ち出している米の量は、最近数年間の数字で見れば一千万トン前後ということになると思うのです。こういうことは、はっきりしているわけでありますから、そういうことが、いま農林大臣が種々説明をされたように、農林省は農林大臣だけが知らなかったということは、私は言えないのじゃないかと思う。この点はどうなんですか。
  296. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いま御指摘のありましたようなことで、政府は、初め見込んでおりましたよりも第一には生産量が多かったこと、もう一つは予定いたしておりました自主流通米が九十万トンにとどまったと、そういうことの結果の見込み違いだったことはそのとおりでございます。
  297. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 大蔵大臣にお伺いをしたいのですが、いろいろのいままでの審議の経過で、帰するところ、私は政府が米の買い入れ量がふえたから補正をしてくれと、こういうことを言っているのですが、政府のこの当初買い入れ量を間違えたこの理由は、私は農林大臣がどう強弁しようとも、意識的に見積もった、そういうところに原因があるのじゃないだろうか。そういうことから判断をするなら、本問題について私は補正の要件としては成立しないのだ、あるいは財政法の十一条、十二条から言って、明確にこの会計年度の独立、そういうことから言っても、本問題も補正要因ということにはなってこないのではないか、この辺について、ひとつ福田大蔵大臣見解を伺いたい。
  298. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいまの食管制度のもとにおきましては、農家から要請があれば政府はこれを買う、こういう政策をとっておりますので、買い入れ量というか、農家からの売り渡し量が増加する、これに応じるということは、私はこれは予算編成後そういう事態が起こったのですから、これは財政法二十九条の緊急なる必要が生じたと、こういう条項に該当すると、さように考えます。
  299. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 政府が諮問して、おととし総理大臣名で農政審議会は今後の農政を推進するに留意すべき事項という答申をしたと思う。この答申の内容が昨年の九月に出されました。私もその答申の内容について目を通したのでありますが、内容は、一貫して生産調整を基軸にするというのが今後の自民党農政基本ということで、政府の農政基本ということで示されておると思うのです。あれを見ますと、今まで数多く言い古されたような項目を単に羅列した程度です。ただ中心は、やはりあくまでも米生産対策の転換、この生産調整を基軸にしてやっている内容だと私は理解をするのであります。そういうことであって、さらに農基法の角度から言って、いままで政府の進めていた計画というものは、言ってみれば大体三分の一第二種兼業、あるいは三分の一第一種兼業、専業農家、こういうおのおのの割合を、第二種兼業以下を自動的に首を切っていこう、そういう答申の内容と、いままで政府か推し進めてきた農政――農政と言えるかどうかわかりませんが――そういう内容になっているのではないかと思うのですね。いういう意味合いからいけば、今後の総合農政の中心は、一体どういうところに置いて農林大臣は推し進めていきたいか。先ほど私は主産地形成ということを言ったけれども、そのほかにも農基法の作成当時三つほど条件をあげたのですね、いずれもこれらは絵にかいたもちになっている。いまこそ私は政府が本気になってそういう政策的なもの、あるいは立地条件に応じたもの、農村がもう少し安心のできるようなそういう農政対策というものを打ち出すべきじゃないかと思うのですけれども、その具体的なプログラムというものは持っていないのでしょうか、お示しを願いたい。
  300. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 先般私ども政府で総合農政についての考え方を決定いたしております。それを決定いたしますには、もちろん農政審議会等の意見も徴しておるわけでありますが、私どもはあそこにも書いておりますように、わが国の農業というものをできるだけ規模を拡大いたしまして、農業の体質をしっかりしたものにして、企業としてりっぱに成り立つような農業を育成いたしてまいりたい、こういうのが一つであります。もう一つは、そういうことをやりながらも、やはりいま事務当局からも御報告申し上げましたように、わが国の農業における人口の分布、それからその経営規模状況を見ておりますというと、八割近いものが兼業農家であります。そのまた大きな部分がいわゆる第二種兼業農家であります。そこで、こういう方々は、いままであるいは出かせぎのような、あるいはまた、小さな農業は家族にまかせて、自分は他の産業に就職して現金収入を得るというふうなことをやっておりましたが、私どもは、できるだけひとつ地方に産業を分散してまいって、その人々の労働力をできるだけ地元で活用することができることがいいではないか。私ども地方の農業団体などからいろいろ意見を聞いてみますというと、いま私が申し上げましたようなことが、大部分地方の熱心な要望でございます。そこで、政府は御承知のように来年度予算では全部の農道を舗装するとか、あるいは地方道その他の農道を整備するとか、あるいはまた来年度予算では大型農道の予算を取りまして、各県に一本ずつ、とりあえずその地域の農業を育成していくことのできる便宜のために、大幅な農道を建設してまいるといったようなことをやりまして、集団的な営農団地をつくってまいると同時に、できるだけ公害を伴わないような産業は地方に分散していって、余っている労働力を地元で吸収して現金所得を得るほうがいいではないかという考えを出しておるわけであります。そのためには、やはりどうしてもこのごろは地方に産業が行きたがっておるわけでありますが、そういうものに間に合わせるために通産省及び労働省と農林省とは協力をいたしまして、産業界でその地域地域に出ていく計画を持っている業界と事前に話をいたしまして、それは地方の市町村長や県知事に主としてやってもらうことでありますが、そういうふうにして、あらかじめ出てくる産業に対して農村にある労働力、中高年齢層がわりあいに多いのでありますが、そういう者には、労働省において、先ほどちょっとお話のありました石炭対策でやっておりましたような職業訓練をいたしまして、その間には手当を出すというふうな形で訓練をして、そして新しい職場で現金収入を得て兼業の所得を得られるように、それで、もしその人たちが農業をもうこの辺でやめて、そのほうの専門の産業に従事するほうがいいというお考えになれば、その方方は規模を拡大する方に農地を譲っていただきたい。そういうようなことのためには農業者年金制度というふうなものも加味していこうではないか、こういう考え方でございますので、私は米のほかに、一種農地につきましてはもうすでに御審議、御賛成を願っております農業振興地域の法律がございますが、ああいう方針はそのまま継続すると同時に、経営規模を広げるために農地法の改正案や農協法の改正案を御審議願うために提出するわけでありますが、したがって、そういうことを考えてみますと、一連の考え方はやはり第一には経営規模を大きくして農業を国際競争力を持たせるようなりっぱな農業に育成していきたい。しかし、その間においてさらに比較的長時間兼業農家があるであろうから、そういう方々にその余った労働力で現金所得を得てもらうようにしてまいりたい。こういうようなことと合わせて、いま戸田さんも御承知のように畑地がかなりいろいろに使われておりますが、そういう面では、先ほどのような主産地形成で、その地域地域に合うような農業を育成助長してまいって、農業全体としてやっぱり他産業に比べてひけをとらないような農業経営になってもらえるような努力を続けてまいりたい。こういうことを私どもの念願として進めてまいりたいと思っているわけであります。
  301. 足鹿覺

    足鹿覺君 関連。先ほど戸田委員の主産地形成問題について農林大臣は地域分担政策ということばを述べられました。この際非常に大事な問題でありますので、地域分担政策の考え方、その目的は何か、また、その地域分担政策を進める条件として、自然的諸条件あるいは行政的区域の問題、大きくいうならば国際的な関連、そういうような面から、これは大きく検討していかなければならない重大な農政課題だと思うのであります。したがって、主産地形成政策とかあるいは適地適産政策というようなことばと同意義にこれを簡単に取り扱うことは、私は、ただいまの農林大臣の御答弁をいささか疑問を持って受けとめた次第であります。新しい全国総合計画によれば、東北、北陸方面を米を主とした基幹作物とする新しいいわゆる地域分担を考え、中四国等においては和牛あるいはかんきつ等を考え、九州をまた東北に準ずる農畜産物を考えておる、こういうふうに新全総においては明らかにしておるのであります。そういう関連から見ますと、私どもが昭和四十二年において調べてみますると、稲作の特化係数について調査した一つの資料に基づきますと、全国で稲を基幹作物としておる県が実に三十一都道府県にまたがっておるという事実であります。また、それに伴い酪農においては二十都道府県、桑においては十二都道府県にまたがっております。それらが複合形態をとり、あるいは基幹作物一本の形態をとり、それぞれ今日に至っておるのであります。したがって、政府が、いまお考えになっておりますことは、新全総計画をもとにしていかれる考えで、新しい総合農政を進めていかれようとしておるのか、いわゆる河野農林大臣の当時唱えられた国際的適地適産、国内的適地適産という形の中で主産地形成を細分化していかれる、こういう理解でなければ、私どもはとうていただいまの農林大臣の御答弁を理解することはできないのであります。三十一都道府県も水稲を基幹作物としておる、この事実が、今度の生産調整にしても、全国一律という――その政策のよしあしは別として、全国一律という形をとらざるを得なかった、こういう結果になったのではありませんか。したがって、基幹作物プラスアルファ、複合経営をどういうふうにし、そうして近代的ないわゆる農業の季節性と労働の組み合わせをこれを考えた形で今後の経営を組むかということが問題であって、決してただ単なる主産地形成や適地適産というようなことばやあるいは地域分担というような抽象的なものであってはならないはずであります。農林省は、この私がいま指摘した特化係数等を着実に検討をし、新全総に基づく、ただいま戸田委員が御質問になりましたことに対する農林大臣の述べられた地域分担政策の考え方、目的、その進め方、地域分担政策の内容、そういったものをこの際明らかにされる必要があろうと思います。これは少なくとも農業基本法において達成されなかったものを、新しい総合農政と称してこれを取り上げられた以上、当然これを明らかにし、全国の農民に、あるいは識者に訴え、これが妥当であるかいなか、実現性のあるものであるかいなかを確かめるべきであると私は考えます。この点について、農林大臣または経済企画庁長官は新全総の当面の責任者でありますが、その関連において、責任のある御答弁をわずらわしたいと思います。
  302. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私ども先ほど来申し上げておりますような総合農政に対する考え方の基本を一応発表いたしておりますけれども、あれを私どもは強制的にいろいろやろうというわけではありませんし、また、日本でできるはずもありません。そこで、ただいま事務当局を督励いたしまして、米につきましては、もうりっぱな国際競争力を持っておる世界にまれなわれわれ日本人の食べるに一番適した米を持っておるわけでありますから、それ以外のもので、米は年々、昭和三十九年以来、一人当たりの消費量が逓減しつつあるにもかかわらず、野菜、くだもの、酪農関係、肉類等は逆にふえてまいってきております。したがって、先ほどお話のありましたように、私どもは適地適産を考えておりますので、これからいわゆる総合農政の考え方でやってまいりますためには、その地域地域に適当した計画を立てていただきたいということで、地方の県知事にそういうことの御協力を求めようといたしておるわけであります。で、私どもただいまアウトラインを出しましたけれども、自由民主党にも総合農政の専門の調査会がございますし、また、農林省といたしましても、政府の諮問機関であります農政審議会等においても、さらに近くいろいろ御研究の会を催していただくようでありますからして、そういう方々とも歩調を合わせ、御意見を承りながら、そしていま申しましたように、私どもがこれからやっていこうとする農政の推進につきまして、地方の事情を一番よく知っておる県知事諸君に、その地方地方に適当したようなやり方をひとつ勘案していただきたいということを、これから申し出るわけでありまして、前々からこの総合農政ということにつきまして研究を続けておりましたけれども、その間に衆議院の解散があったり、あるいは新しい国会で中断したりいたしておりまして、まだしっかりしたその具体的なものを出す運びに至っておらないというのが今日の状況でございますけれども、私が申し上げておりますのは、日本の全体の農業というものを産業構造の中で見ますときに、もうすでに足鹿さんも十分専門家でいらっしゃるので、御存じのとおりに、われわれが昔考えておりましたのよりもさらにまた国際競争という荒波がかぶってきております。その中に対処して生き抜いていき得る日本の農業というものは、どういう姿のものであるかというようなことをやはり念頭に置きつつ、これから総合農政を推進してまいらなければならないのでございまして、したがって、そういう構想についてのわれわれの基礎的な考え方を出しましたけれども、いま申し上げましたように、地方の状況を一番よく体験いたしておられる地方の公共団体の長などにも御協力願いまして、そうして新しい計画を進めてまいりたいと、こういうのが現在の段階でございます。
  303. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) いまの足鹿先生のお話は、われわれもよく承知しておるつもりでございます。  全総計画は御存じのように、二十年間の見通しでございますが、その中にあって、一方において農業の生産拡大、一方において都市を中心とするところの膨大な食糧需要、これの供給に対応し得るような流通機構を伴ったいわゆる大供給地、こういうものの形成、こうした大きな課題を持っております。これを二十年間の見通しの上に立ちまして、これから一人頭、農民所得二百万ぐらいのところを目ざしながらどうやってこれを計画化していくか、ちょうどいま農林大臣からお話が出ました現在取り上げつつある総合農政との関連も十分に考えながら、これから計画を具体化していく、こういう段階でございます。総合農政とあわせながら、われわれとしても逐次全総が目ざすところの方向に向かって計画を具体化してまいりたい、こういうふうにいま考えております。
  304. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 後日、再度また予算委員会等で同僚議員が質問いたしますので、私は、この辺で打ち切って次に進みたいと思うんであります。  次に、この農民年金の問題でありますが、この資料の四一ページを見ますると、総合農政費の一環として農業者年金等が実施される。予算にいたしまして三十六億五千七百二十四万八千円、こういうことで計上されておるわけでありますが、この中身が多分に私は疑問視するわけでありますが、どうして――この一つは〇・五ヘクタール以下のものを除いたか、北海道の場合は二ヘクタール以下のものはそれぞれ除かれている、こういう除いた理由ですね。それからもう一つは二十五年間ですね、期間が。月七百五十円ずつかけていくわけです。六十五歳以上支給ということになるわけです。こういうことになりますと、少なくとも今後の経済の成長見通し等、いろいろまあ政府の刊行物がありますが、そういったものを見ますると、七〇年代の前半、すなわちこの七五年までは国民総生産が百十兆ぐらいになるだろう、こういうことさえ想定をされておるわけですね。そういうときに、この二十五年後にいって、支給金額が二万円だというんですね。一体こういう前途の見通しのない農民者年金というものは私はないんじゃないか。そのときにいったら、私は貨幣価値はもう相当下落をして、全くこの年金のこのことによって、農民が一定の生活を確保できるなんというようなことになっていかないんではないだろうか。こういう問題についてどう一体考えておるか、ちょっと触れておきたい。
  305. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 農業者年金制度を創設いたします考え方は、いずれ御審議を願います法案で詳しく御説明があると思いますが、先ほど私が申し上げましたように、第一は、規模を拡大するために農業としてやっていかないで、ほかの産業に転換することを希望する人たちは、離農をしやすくするように経営規模を広げる人に土地を譲っていただきやすくする。これは御承知のように、われわれ日本に合うような方法考えましたけれども、ヨーロッパではすでにたくさん行なっておることでありますが、いまお話の五反歩未満の者、これは御存じのように保険に入りにくいものである、ことに五十五歳以上の者は。したがって、そういう方は一時金を差し上げるということに、法案の原案はこれからそういうふうにするつもりであります。  それから、二十五年、七百五十円かけて二万円というのは少ないではないか、そのころになれば。お説のとおりであります。しかし、いまみんながかけております厚生年金がやっぱり同じ仕組みになっておりますので、これは決して現在少ない額であるとは申されないんではないか。しかし、またそのころになりまして一般社会情勢、経済情勢の変化に応じて、その金額は修正されることは当然のことでございます。
  306. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 時間がありませんから前に進みますけれども、この補正予算関係でもう一点だけ伺っておきたいのでありますが、これは、この土地需要緊急調査費というやつですね、総理府、文部省、厚生省、農林省、通商産業省、運輸省、労働省、建設省、自治省所管、まあ確かに総体予算からいえば、金額の面では少額であります。一億であります。しかし、これは国民の税金であります。少なくとも補正予算は二十何日間の中で各省にそれぞれ配分しておるんですね。各省一体どういう計画でこの調査をやられるのか、その見取り図をそれぞれ関係大臣からお示しを願いたい。
  307. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) これは私のところだけじゃございませんが、まあ立ちましたから、先に御説明申し上げます。  百五十万トン以上の生産調整をしたい、こういうことでございますが、農地の他用途への転用などの分で五十万トン分の調整をいたしたい、こういうことで各省協力一致してそういうことをやる、そのための調査費をとりあえず計上していただきました。農林省といたしましては、四十四年度の稲作転換対策は、一万ヘクタールを目途に稲から畑作物への作付転換を進めているが、これはまあ過ぎたことでありますから。四十五年度の米生産調整対策は、最近の米の過剰に対処して緊急に需給の均衡をはかるために実施しようとするものでございまして、稲作農家及び関係団体の理解と協力を得てその達成を期するということで、この人たちに調査をしてもらうために取りました経費でございます。
  308. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 意地悪い質問のようですけれども、私は、やっぱりここにこの予算編成の本質というものがあらわれているんじゃないかというふうに考える。それはやっぱり官庁の一番悪いところではないか。結局本格的にこの米生産転換策の調査をやるというならば農林省が主体になって、あるいは総理を頂点にして本格的に予算を組んで、それに見合う一つの調査体制というものをやるべきじゃないか、それを各省全部分配をしておるわけでしょう。早い話が文部省が百万だ、こういうことで一体どういう調査がはたしてできるんですか、その内容を私は聞きたいんです。
  309. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) これは私がお答えするのは筋違いかと思いますけれども、やっぱり農林省だけでは、こういう仕事はできませんので、政府全体として、各省が協力一致してその仕事を推進してまいるということでございますので、農林省のサイドでできますことは、いま私が御説明申し上げましたわけでありまして、その他のことは、やはりその他の省において御尽力を願うための経費でございます。
  310. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 文部省におきましては、国立、公立、私立にわたる学校用地の取得の問題はきわめて大きいのでございますので、農地転用につきましても、十分調査をして活用したいと考えております。今回の百万円の調査につきましては、学校新設用地の拡張、学校統合、校地移転等の要因別に今後の必要量を調査することといたしておりますが、国立学校につきましては文部省で直接行なうつもりでございます。また、私立学校につきましては、私立学校振興会に委託調査をすることにいたしております。なお、公立義務教育諸学校につきましては、自治省で一括調査を行なうことにいたしております。
  311. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 運輸省関係についてお答え申し上げます。  運輸省は土地需要緊急調査費として四百一万円をちょうだいすることにいたしておりますが、大体運輸省直接にはあまりこれといって土地取得の問題はありませんが、運輸省所管事業十六業種について、これらの事業者が農地などを購入して使用する土地の面積と値段等を、昭和四十年度の実績、価格については実績、そして昭和四十五年度の購入計画について調査票をつくりまして、これを十六業種、数としてはたいへん数が多いのでありますが、これらに送付いたしまして、三月末までにその結果を御報告をしていただき、それから大体の見当をつける、かようにいたしております。
  312. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 建設省に配分される予算は千三百九十九万四千円だと思いますが、これは建設省所管には公共事業が相当ございまして、この中には御承知のように、一般道路、有料道路、いわゆる新幹線系統、都市再開発、あるいは住宅地、広範にわたってあります。これの調査は、各地建で調査する部分あるいは各公団、さらには都道府県に委嘱をしまして、都道府県で実施する道路その他公共事業に先行取得する意味においてこれを調査していただく。さらに民間デベロッパーがかなり全国にわたって宅地開発をやっておりまするので、これは一つの協会を通じて民間デベロッパーの、水田の転化が予測されるもの、これを調べてまいるつもりでございます。大体三カ年間の見通しを立てて、そのうち四十五年はどの程度だと、こう二つに分けていま調査を委嘱しつつあるという段階でございます。
  313. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) 自治省の配分は四千数百万円と記憶いたしておりますが、府県に配分をいたして、府県から傘下の市町村、全国三千有余の各地方公共団体が公共用地として必要な数量、そういう点について調査をするとともに、水田供給の分についてどのくらいのものがどういう地点にあるだろうかということもあわせて調査をしていただきたいと、こう考えております。
  314. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 厚生省におきましても百万円ほどの予算をつけていただいておりますが、御承知のように、これは厚生省は国の助成の対象になります各種の社会福祉施設をたくさんかかえており、また国民年金やら厚生年金やらの積み立て金還元融資の対象になる施設がたくさんございますので、それらが活用する土地の状況をこの際急遽調査をいたしまして、そして所要の成果を得たいと、かようのことに活用をする準備をいたしております。
  315. 野原正勝

    国務大臣(野原正勝君) 労働省は百一万五千円いただいております。これは各地につくります労働者住宅これは約一万戸でございますが、あるいは青少年のホームであるとか、あるいはスポーツセンター、その他さまざまの労働省関係の施設の問題にどの程度水田が活用できるかということをいま調査しております。まあどうやら年内に調査がまとまるつもりでございます。
  316. 西田信一

    国務大臣(西田信一君) 北海道開発庁といたしましては、調査全体の一環といたしまして行政機構上の分担を考慮いたしまして、当庁の直轄事業機関でありますところの北海道開発局の所掌にかかりますところの公共事業の用地の需要を直接調査いたしますほか、当庁独自の立場から大規模開発計画にかかりますところの土地の需要を調査いたしますとともに、他省庁の所管する北海道関係分の調査の結果を総括取りまとめをいたしまして、今後の北海道開発に必要な土地の需要と水田転用の可能性を三月末までに調査いたすことにいたしております。百二万円でございます。
  317. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 まあ私、非常に意地悪い質問だったかもしれませんが、しかし、事は国民の税金だろうと思うのです。いま各省大臣の御意見を聞きますと、その答弁の限りでは、その各省のすべてにわたるような答弁ですね。まあそういうことに必要なら、もっと金を出してほんとうに目的が遂行できるような金の使い方を遠慮なく私はやってもらってけっこうじゃないかと思うのです。一億で各省百万円ぐらいずつ分配をして、――大体経験のある方はおおよそ予想ができますけれども、やっぱり私はここにほんとうに官庁の予算編成のあり方というものをきびしく反省していかなければいけないのではないか、こういうふうに考える。それはなぜかというと、時間もありませんから項目だけでお話をいたしますけれども、今回の予算編成にあたって農林省で節約された分、要求に対して節約もしくは却下された分ですね、工場排水規制等事務委残費十万円が削られるのですよ。それから食料品流通消費改善対策費補助金これが百三十万円削られる。中央卸売市場整備費補助金六千万円これも削られる。あるいは不用の分として、農業近代化資金利子補給金十三億円。節約の分、これは水産物流通対策事業費補助金一億五千万円。運輸省関係にいきますと、これなんか全く私は必要なものだと思うのです。まあ運輸大臣聞いていただきたいのですがね、不用分として、国鉄再建補助金一億円。節約分として、航空保安照明施設維持費一千万円が削られた。航路標識修繕費五千万円、航路標識なんというものは航空の安全からいったら欠かせないものです、こういうものも削られている。ですからもっとやっぱり予算の重点配分というのですか、――これは予算の大綱では総理以下各大臣が説明されたとおりなんです。だからもう少しこの辺私は十分な配慮というものがあってよいのではないかと、こういうふうに考えますので、要望として申し上げておきたいと思うのです。  次に、基地経済について若干質問をしてまいりたいと思うのです。  まず冒頭に、ラオスでいま内乱が起きておるわけでありますが、これは世俗、報道によりますと、第二のベトナムではないか、こういうことにいわれている。こういった戦局の動向等について総理はどう一体御判断になっておられますか、御答弁を願います。
  318. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 最近、ラオスで戦乱が起きておる、たいへん痛ましい状況だと思っております。プーマ首相は国連その他を通じまして、やはり、さっそく和平会議というか、こういうものに対策をする会議を開くことを希望しているとの連絡を受けております。私は一日も早く、かつてのシュネーブ会議のメンバーがまた集まりまして、そうしてラオスにもう一度あのときのような和平状態をもたらされることを、心から期待するものでございます。
  319. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 私たちが四十一年に行ったときに、ラオスの現状というものを見てきたんでありますが、当時ですらも、すでにいまのプーマ首相に対する不信というものは非常に大きかったと、私たちは印象として受けてきております。これはもちろん政府要人から確かめたものではありませんから、風評として聞いてきたんでありますから確信のほどはありません。しかし、そういう中で最近は報道によっても相当神通力を失っておる、こういうことですね。こういうところに対して、この無償援助という形でラオス空港場拡張問題について日本が無償援助をしておる、こういう点について総理はどう一体お考えか。外務大臣に対してお伺いしたいんでありますが、その内容、さらにこのサイゴンの、ベトナムのチョー病院、これに対しても昨年に引き続いて無償補助というものをやっておる、これらに対してもちょっとお答え願います。
  320. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ラオスにつきましては、ただいま総理からもお話がございましたが、これはよく御承知のとおりに、一九六二年に第二次ジュネーブ会議が行なわれたわけでありますけれども、現在のラオスの政権については、これはいわゆる自由主義国だけではなくて、共産圏も中立の国も認めて育成につとめてきた政権であると、かように理解すべきものであると考えているわけでございます。現在、ジャール平原等について騒乱がパテトラオ軍との間に起こっておりまして、たいへん憂慮すべき状態ではございますけれども、この状態は一九六二年当時から何と申しますか、一進一退で情勢としてはきわめて流動的でもありますし、にわかにどういうふうな形で平和的に終結ができるかということについては、確定的に予断をもっては申し上げる状況にまだないと思います。  それはそれといたしまして、ラオスに対する経済協力の問題でございますが、たとえば四十四年度、ただいまの年度でございますが、KRの食糧援助百二十万ドル、それから為替安定基金、FEOFといわれるものですが、これに百七十万ドル、ところが、これらもただいま申しましたような経緯にございますので、イギリス、オーストラリア、フランス、アメリカその他がいずれもラオスのキップという貨幣価値の安定のために協力しているわけでございますから、日本もその一環として協力をいたしておるわけであります。それからそのほか技術協力海外青年協力隊の派遣、専門家の派遣というようなものもございます。またビエンチャンの空港の拡張計画、それからラオス・タイ間の電気通信計画というようなものが四十四年度予算に計上され、すでに使用済みのものが大部分でありますが、四十五年度予算におきましても継続的なものは計上されて別途御審議をお願いいたしておるわけでございます。  こういうわけで、ラオスの何といいましょうか、民生安定あるいは人道的の立場その他から、たとえばベトナムについても話がいまございましたけれども、病院の建設等につきましても主として人道的に戦乱の渦中にある、しかしながら、そういう観点から協力を適当とするもの、ということでやっております次第でございます。
  321. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 実はこの基地経済、相当私も調べてきたつもりでありますが、時間がありませんから大綱でお伺いいたしたいと思います。  基地問題等閣僚懇談会、これは内閣に、総理府に基地等周辺問題対策協議会、それから自民党の総裁直属として基地対策特別委員会等々がつくられておるのでありますが、これらの主目的は一体どういうことであるか、その点を総理から……。
  322. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 便宜上私からまず答弁申し上げますが、日本に置かれております基地の周辺をめぐって起こります諸問題につきまして、それを政府といたしましてただいま閣僚協議会等をつくりまして対処をしてまいったわけでございますけれども、しかしながら、四十一年から防衛施設周辺の整備等に関する法律でございますか、法律も立法されまして予算化等も着々なされておりますので、現在は協議会そのものはあまり活動いたしておりませんが、これらの機構等につきましては、今後洗いかえまして、法律ができましたあとの、実態に即応するような運営にかえていきたいと、いま研究中でございます。
  323. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 この基地整備法というものが三十七年にできておるわけですが、今後米軍基地というものはさらに拡大をしていくのか、その辺の見通しはどうですか。
  324. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ニクソン大統領のメッセージその他等を読んでみますと、拡大をしている可能性は少ない、むしろ整理されておる可能性のほうが強い、そう思います。
  325. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 そういうことであれば好ましいのでありますが、確かにこの数やそういうものはそういうことになっておりますが、一面、運用面積は拡大をされつつあると私は判断しております。そこで施設提供等の関連諸費の内容について、六〇年以降ちょっと御説明を願いたいのです。
  326. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) よく声が聞こえなかったのでございますが、提供施設の増減の問題ですか。
  327. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 そうです。関連施設等です。項目なり……。
  328. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大体当初は千数百ぐらいあったのでございますが、現在は百二十六件……それじゃ施設庁長官から答弁させます。
  329. 山上信重

    政府委員(山上信重君) お答え申し上げます。  四十五年度の施設運営等関連諸費の主要な内訳を申し上げますと、提供施設等の借料が四十億八千四百万円、それから提供施設等整備費、これが八億七千七百万円、この提供施設等整備費と申しますのは、施設の集約移転等及び施設周辺整備の中の直轄工事等を含んでおるのでございます。それから不動産購入費が三十四億五千三百万円、これは不動産の一般購入、地元の住民等からの希望があって、土地を買収する場合を含んでおるわけです。並びに飛行場周辺の住民が集団移転をいたしたいというような場合の不動産購入費、これが三十四億五千万円。それから障害防止補助金、これが三十九億二千百万円。これは河川であるとか、ダムであるとか、あるいは砂防堰堤であるとかいったような、施設の周辺にいろいろの障害ができます。これの防止をする費用でございます。それから、騒音防止補助金、これが八十八億七千三百万円、これは学校であるとか、病院であるとかいういろいろな施設の防音関係の補助金でございます。それから民生安定助成補助金、これが二十八億三百万円。これは基地周辺にありまして、いろいろな障害等がございまして、それについて関連して市町村がいろいろ民生安定、福利厚生の施設をしたいと、これに対する補助金で、たとえば庁舎であるとか、公民館、農業、漁業あるいはごみ処理であるとか、いろいろな施設に及んでおるわけでございます。次は、道路改修の補助金が十九億二千万円。それから地方公共団体の委託費、これは事務等について地方公共団体が所要の経費がありますので、これを補助しよう。それから施設関連補償費、これが十八億九千八百万円、これには漁業補償であるとか、周辺の損失補償であるとか、中間補償あるいは事故補償、こういったものを含んでおります。次が、その他が四億四千万円。事故給付金、事務費等でございます。それらを合計いたしまして、四十五年度の施設運営等関連諸費は二百八十三億五千三百万円でございます。四十四年度の二百四十一億六千四百万円に対しまして四十一億八千九百万円というものが増額になっておるのでございます。大体総括して申し上げますと、この費用は基地周辺対策の経費が主体となっておる、こういうふうに申し上げて差しつかえないかと思っております。
  330. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 これらの諸費が四十四年二百五十一億、四十五年度四百十億、約倍に伸びているわけですね。その伸びたおもな理由は何でしょう。
  331. 山上信重

    政府委員(山上信重君) 年々ふえますところの基地の周辺対策、ただいま申し上げました障害防止対策であるとか、あるいは民生安定対策といったようなものの費用が増額することと並びに不動産等の借料等が年々値上がりしてまいる、あるいは漁業補償等の費用が上がってくるといったような周辺の費用が増加するわけでございます。
  332. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 政府の土地収用方式についてお伺いするのでありますが、防衛長官お願いしたいんですが、民事補償契約によるこの処理の問題、基本的な政府態度はどういうところにあるわけですか。
  333. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 公益のため必要な場合、やむを得ざる場合に限って強制権力をもって取得する、そういうことであると思います。詳細は施設庁長官から、御質問があれば答弁させていただきます。
  334. 山上信重

    政府委員(山上信重君) ただいま大臣がお答えになりましたように、施設の取得にあたりましては、原則といたしましては、私どもの考え方は民事によるところの契約を主体にいたしております。ごくやむを得ない場合におきまして強制手段を用いなければならないときには、土地収用法あるいはいわゆる特措法といったようなものを適用することもございますが、この法律によりまして強制手段を用いましたのは講和発効以来三十六年ごろまででございまして、その以後におきましては強制手段を用いて取得したことはございません。ただいまではもっぱら民事の契約、こういったようなことを主体にして取得をいたしておる、こういうような状況でございます。
  335. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 もう一点だけ伺っておきたいんですが、電電公社の講和条約後の駐留軍側の保全サービス、この対象施設の料金が多く未納になっておる、こういう話を聞くんでありますが、大体私自身が計算をしても一千億程度になっておるのではないか。いまだに数多くの金額が未払いになっておるというのでありますが、そういう経過はどうなっておりますか。
  336. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) お答えいたします。  米軍の使用しておる専用設備の大部分は、これは支障なく料金が入っておるようです。しかし例の占領下における終戦処理費あるいはその後の安全保障諸費、これによって施設をしました分に対しては、地位協定についての見解がこちらと向こうと違うということからしまして、現在八十億円ぐらいのものがまだ未納になっておるのでございます。私も就任以来これに気がつきまして、鋭意これを督促しまして、何とかこの最終的な処理をいたしたいと、かように考えております。
  337. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 それはいつごろまででしょうか。時期をちょっと明示をしていただきたい。  それから、時間がもうちょっとありますから、もう一点。いま地方自治体において基地対策のための超過負担総額がどのくらいあるのか、自治大臣、ひとつお示しを願いたい。
  338. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 最初の分だけお答えをいたしますが、これはもうかなり長い懸案でございますが、この辺でひとつ処理をいたしたいと、できるだけすみやかに、さようにいたしたいと考えております。
  339. 山上信重

    政府委員(山上信重君) ただいまの御質問の趣旨がちょっとはっきりいたしませんが、当庁の実施いたしておりまする周辺対策の経費に伴うところの市町村の負担という意味でございましたら大体三十億程度というふうに考えています、地元の負担。
  340. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 後日詳しくやりたいと思いますが、最後に東北開発の今後の開発構想について企画庁長官にちょっと質問したい。  今年度の予算要求を、あるいはまた決定を見ますると、東北開発予算というのは軒並み大幅削減をされておる。ようやく当該開発関係は黒字に転化をするという、こういうところまで現地としては相当努力をしているわけです。今後数多く開発構想というものがあってやっていこうという、そういう意欲的なものに対して、残念ながら政府の今回の予算編成というものからみればこれに水をさしたような印象を受けるのであります。こういう問題について今後の見通し、それをお聞かせ願いたいと思いますし、もう一点はこの開発会社の人事構成その他についてもう少し抜本的に検討する必要があるんではなかろうか。民間を登用するとか、もっと地域人を採用するとか、こういうことがあっていいのではないかと思うんですが、その辺の構想について最後に質問いたしまして、関係大臣待っていただいて質問の行き渡らない大臣もあったと思うんでありますが、その点はごかんべんを願いまして、おわび申し上げて終わりたいと思います。
  341. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) お答え申し上げます。  いま戸田さんのお話でございましたが、四十五年度は東北開発は相当拡充をしたと私ども実は考えております。予算の過程においてはだいぶ切られたこともあったのですが、最終のでき上がった姿は、中をお調べ願うとわかると思うのですが、昨年よりもだいぶ実質的に新しい事業に回す金額がふえております。総額は十七億でございますけれども、同じ十七億でも昨年は借金を返すのに十億使っておりますが、ことしは五億で済んでおります。そういうようなことで、中身をごらんいただきますとわかると思うのですが、相当新しい事業をやりたい、こういうふうに思っております。特に基本的な調査、たとえばむつ、小川原湖の調査とか、そうしたことも基本的にやってまいりたい。また、新しく秋田の臨海の仕事等、臨海鉄道の仕事等も着手してみたいと、いろいろいま意欲的に考えております。ただ、中身は最終的には四月になってはっきりすることになっております。  それから人事の点でございますが、先般の人事異動におきましても、セメントの方面の担当者を民間のセメント業で相当経験を積みました方に理事になっていただいております。民間からの出身者も理事の半分を占めております。そういうようなことでできるだけ――昔相当悪名を流しておりました東北開発でありますが、ようやくおかげさまで立ち直りましたので、この機会に御趣旨のような点も十分くみながら再建を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  342. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 以上をもちまして戸田君の質疑は終了いたしました。  明日は午前十時開会をすることといたしまして、本日はこれにて散会をいたします。    午後五時十三分散会      ―――――・―――――