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1970-05-06 第63回国会 参議院 法務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年五月六日(水曜日)    午前十時二十一分開会     —————————————    委員異動  四月二十八日     辞任         補欠選任      亀田 得治君     加藤シヅエ君  五月六日     辞任         補欠選任      加藤シヅエ君     亀田 得治君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         小平 芳平君     理 事                 河口 陽一君                 後藤 義隆君                 亀田 得治君                 山田 徹一君     委 員                 上田  稔君                 木島 義夫君                 小林 国司君                 堀本 宜実君                 山崎 竜男君                 大森 創造君                 小林  武君                 松澤 兼人君                 山高しげり君    国務大臣        法 務 大 臣  小林 武治君    政府委員        法務政務次官   大竹 太郎君        法務大臣官房長  安原 美穂君        法務大臣官房司        法法制調査部長  影山  勇君        法務省民事局長  新谷 正夫君        法務省刑事局長  辻 辰三郎君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総長       岸  盛一君        最高裁判所事務        総局総務局長   寺田 治郎君        最高裁判所事務        総局人事局長   矢崎 憲正君        最高裁判所事務        総局経理局長   大内 恒夫君        最高裁判所事務        総局民事局長   矢口 洪一君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○民事訴訟手続に関する条約等実施に伴う民事  訴訟手続特例等に関する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○航空機の強取等の処罰に関する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○裁判所法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 小平芳平

    委員長小平芳平君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  理事補欠選任についておはかりいたします。  委員異動に伴ない理事一名が欠員になっておりますので、この際、その補欠選任を行ないたいと存じます。  選任につきましては、先例により、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小平芳平

    委員長小平芳平君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事亀田得治君を指名いたします。     —————————————
  4. 小平芳平

    委員長小平芳平君) 民事訴訟手続に関する条約等実施に伴う民事訴訟手続特例等に関する法律案及び航空機の強取等の処罰に関する法律案を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から提案理由説明を聴取いたします。小林法務大臣
  5. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 民事訴訟手続に関する条約等実施に伴う民事訴訟手続特例等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  民事訴訟手続に関する条約について承認を求めるの件及び民事又は商事に関する裁判上及び裁判外文書外国における送達及び告知に関する条約について承認を求めるの件がこの国会に提出されておりますが、これらは渉外的な民事事件に関し裁判手続迅速化と当事者の利益の保護増進をはかることを目的とする条約でありまして、両条約批准に伴う国内法上の措置としてこの法律案を提出したのであります。したがいまして、この法律案の内容は、渉外的な民事事件に関し、民事訴訟法外国裁判所嘱託ニ因ル共助法等に定める手続について、両条約批准により必要となる措置を定めるとともに、両条約により課せられる義務を履行するため、若干の規定を新設したものであります。  次に、この法律案の要点を申し上げますと、  第一に、わが国裁判所外国当局との間の文書送達及び証拠調べ嘱託について、両条約により設けられた転達経路として、相手国領事官等から嘱託を受理する当局外務大臣を指定しております。  第二に、両条約に基づき外国当局から文書送達及び証拠調べ等について嘱託があった場合、わが国裁判所法律上の補助をするものとし、その管轄及び実施手続について若干の規定を設けております。  第三に、民事訴訟手続に関する条約第十七条の規定実施するため、締約国住所を有する締約国国民わが国において原告となった場合には、その者がわが国住所を有しないときでも訴訟費用担保を課さないものとしております。  第四に、民事訴訟手続に関する条約第十八条及び第十九条の規定実施するため、訴訟費用担保の免除を受けた者に対し訴訟費用負担を命ずる裁判につきましては、締約国からわが国に外交上の経路を通じて執行認許の請求がされた場合の裁判手続に関して詳細な規定を設けております。  第五に、訴訟上の救助、公示送達費用予納等に関し両条約実施上必要な規定を設け、さらに裁判所手続に関して必要な事項は、最高裁判所最高裁判所規則で定めることができるものとしております。  第六に、この法律案は、両条約日本国について効力を生ずる日から施行することとし、これに伴う経過措置を定めるとともに、民事訴訟法及び非訟事件手続法について所要の整理をすることとしております。  以上がこの法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。  次に、航空機の強取等の処罰に関する法律案について、その趣旨説明いたします。  この法律案は、最近の航空機奪取事犯実情等にかんがみ、航行中の航空機を強取する行為等について特別の処罰規定を新設しようとするものであります。  去る三月末に発生したいわゆる日航機乗っ取り事件国民に大きな衝撃を与え、ハイジャッキングに対処する立法措置を要望する声が各方面から聞かれるに至っておりますことは、御承知のとおりであります。  さて、ハイジャッキングと呼ばれる犯罪行為は、一般社会から隔絶した航行中の航空機内という特殊な環境を巧みに利用して行なわれるものでありますが、これによって、多数の乗客及び乗り組み員が恐怖と不安の伴う監禁状態のまま遠隔の地に連れ去られることとなるだけでなく、航空機の安全な運航が著しく脅かされ、脅迫状態における運航によって不慮の事故が生ずる危険も少なくないのであります。さらに、この種の行為によって生ずる財産上の損害及び航空業務妨害という面をも見落とすことはできないのでありますが、このように悪質かつ危険な手段を用いて自己の不法な目的を遂げようとする犯人に対し、きびしい社会的非難を加える必要があることは言うまでもないところであります。  このようなハイジャッキングは、世界的にはここ数年来急激に増加しており、しかも、民間航空の今後の発展、国際情勢推移等の諸事情から見て、決して一時的な現象として看過することはできないものと考えられるのでありまして、その防止及び処罰のための国際的な協力体制を確立することが、緊急な国際問題の一つとして真剣に検討されているのであります。  以上の諸事情を考慮いたしますと、この種の行為に対する処罰を強化する等の措置を講ずる必要があると思われるのでありますが、現行法制のもとにおいては、その実態に適合した罰則がなく、既存の罰則では刑が軽きに失すること、日本国外における行為処罰できない場合があること等、十分でない点が少なくないと考えられるのであります。そこで、この際、早急に、この種事犯について特別の処罰規定を設けるとともに、日本国外での犯罪をも広く処罰し得ることとするため、この法律案を提出することとした次第であります。  この法律案の骨子は、次のとおりであります。  第一点は、ハイジャッキングという犯罪実態に適合した処罰規定を新設する点でありまして、航空機乗客、乗り組み員に暴行・脅迫等を加えて、航行中の航空機を強取し、あるいはほしいままにその運行を支配した者は、現在の強盗罪よりも重く、無期または七年以上の懲役に処し、その未遂をも処罰するとともに、この犯罪を犯した結果、人を死亡させた場合には、死刑または無期懲役に処することといたしております。  第二点は、右の罪の予備を罰することとする点でありまして、強盗予備罪より重い法定刑を定める一方、この種事犯をできる限り未然に防止する観点から、実行に着手する前に自首した者に対しては、必ず刑を減軽または免除することといたしております。  第三点は、偽計又は威力を用いて航空機の針路を変更させるなど、典型的なハイジャッキングには至らないものの、乗客や乗り組み員の自由及び安全を脅かすことにおいてこれに近い運航妨害行為処罰する規定を設ける点であります。  第四点は、ハイジャッキング防止及び処罰国際的協力が必要であることにかんがみ、以上の犯罪国外犯を広く処罰し得ることとする点であります。  以上が航空機の強取等の処罰に関する法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。
  6. 小平芳平

    委員長小平芳平君) 以上で説明は終了いたしました。  両案に対する自後の審査は後日に譲ることといたします。
  7. 小平芳平

    委員長小平芳平君) 裁判所法の一部を改正する法律案議題といたします。  御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  8. 亀田得治

    亀田得治君 質問に先立ちまして、私、この法案に対する反対請願書、これが非常にたくさん来ておりますので、この点について一言触れておきたいと思います。  ただいま私が持ってまいりました請願書は、在野法曹の方が中心につくられたものでありますが、大阪で阪東平君ほか六百五十名、東京で五百七十三名という数であります。これはみんな専門家皆さんであります。一つの問題について専門家皆さんがこれほど多数熱意を込めた請願書を持って来られるということはあまりないわけであります。私は、そういう意味で、ぜひこの法律案審議と並行してこの請願書審議もひとつお願いをしたいと思っておるのです。従来ややもすると、法律案法律案として審議が進んで、それと離れて請願が扱われる。こういうことでは、ほんとう請願制度というものの意味が生きてこないと思うのですね。だから、ぜひそういう扱い本件で私お願いいたしておきます。  簡単ですから、請願理由だけを御参考までに申し上げておきたいと思います。  一、この法案によれば、約三七、〇〇〇件の通常訴訟事件地裁から簡裁に移転しますが、これは簡裁に係属する通常訴訟事件の約六割増加をもたらします。その結果、法曹資格のない裁判官によって多くの事件が審理されることになり、問題のある裁判が続出し、裁判をうける国民にとって不安が増大します。   また、控訴がふえるなどのために事件処理がますます遅延し、迅速な裁判をうけられなくなります。  二、簡裁事件総数は、昭和二十九年の五三二、五七三件から昭和四十三年の七八八、九五三件へ二五六、三八〇件増加しており、なお増加をつづけています。   このため、簡裁固有督促手続、起訴前の和解手続調停手続などは著しく停滞し、既にその本来の機能を失いつつあります。このうえ通常訴訟事件が激増すれば、簡裁は完全に麻痺状態に陥ります。  三、法務省は、物価にスライドして訴額の上限を一〇万円から三〇万円に拡張するといわれますが、昭和二十九年の一〇万円は、物価指数にスライドしても二八万円になるにすぎません。  四、地裁において著るしい訴訟遅延現象はありません。地裁通常訴訟事件平均審理期間は、昭和三十一年が一一・五カ月、昭和四十二年一一・八カ月で殆んど差がありません。これに比して簡裁通常訴訟事件平均審理期間右各回年度を対比しますと三・八カ月から五・二カ月へとむしろ遅延の傾向がみられます。  五、簡裁管轄が拡張されますと、その事件については上告審高等裁判所となり、国民は原則として最高裁裁判をうける権利を奪われますとともに、判例の不統一による法的安定性侵害の虞れがあります。六、簡裁は、その設置の趣旨国会議事録でみますと、国民の身近かな裁判所としての本質をもち、素人による所謂カケコミ裁判所」として、調停事件督促事件、軽微な通常訴訟事件などを簡易迅速に処理する特長があります。今回の法案は、簡裁通常訴訟事件を激増させ、この本質を失わせます。  七、地裁民事事件負担軽減の問題は、地裁裁判官の増員などによって解決すべきものであり、簡裁にこれを転嫁すべき問題ではありません。  まあ以上のような理由での反対請願書であります。決してこれは、反対のために反対をしている、そういったような趣旨のものでは断じてないと思うのです。何としても日本司法制度がうまくいくように、それが間違ってはいけないという気持ちから、これだけの請願書が出てきていると思うのであります。私後ほどこまかい点についての質疑は行ないますが、ぜひそういう立場でひとつこの請願書を大事に法案審議とともに取り扱ってほしい、このことをまず委員長に要望いたしておきたいと思うのです。どうですか。
  9. 小平芳平

    委員長小平芳平君) ただいまの請願書扱いは、大事な問題と思います。したがいまして、後刻理事会で十分相談いたしたいと思いますので、亀田委員には質疑に入っていただきたいと思います。理事会で後刻相談いたしたいと思います。
  10. 亀田得治

    亀田得治君 それでは、まず最初に、簡裁性格につきまして、昭和二十一年の三月十四日裁判所法案委員会会議録、この中で当時の木村篤太郎司法大臣が述べている点ですね、ちょっとそこを朗読してみますが、「簡易裁判所は、民事刑事の軽微な事件のみを取扱うのでありまして、今回新たに設けられるものであります。この種輕微事件を處理いたしますために、全國に数多くこれを設けまして、簡易な手績によって争議の實情に即した裁判をするよう、特に工夫をいたした次第でありまして、この制度は、司法民衆化にも貢献するところ少からざるものがあろうと期待いたしておる次第であります。」、こういうふうに簡易裁判所をつくるときの説明をされておるわけであります。最高裁は、当時行なわれたこの、いま私が引用した説明、このことを現在でもそのとおりというふうに考えておるのかどうか、これが土台だと思いますので、まずその点を確かめておきたいと思います。
  11. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 私どもといたしましても、いま亀田委員からお読み上げになりました木村大臣の答弁の趣旨はよく了解いたしております。基本的には、現在もそのような姿であると、かように考えておるわけであります。
  12. 亀田得治

    亀田得治君 今回の改正理由で、経済的な事情変動ということだけが提案理由説明書に書かれておるわけです。基本性格というものはそのまま維持しておるのだというふうに理解していいのですか。
  13. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これはあるいは法務省のほうから御説明あるべきことかと存じますが、裁判所としては、全く基本的性格は変わらないと、今回の法案によって変わることはないと、かように理解しておる次第でございます。
  14. 亀田得治

    亀田得治君 法務省どうですか。
  15. 影山勇

    政府委員影山勇君) 法務省といたしましても、今回の提案理由は、提案趣旨説明書にございますように、前回の改正の線をそのままに物価変動にスライドいたしまして、当時の十万円を十数年を経ました今日三十万円に改定するのが相当というふうに考えましたわけでございます。
  16. 亀田得治

    亀田得治君 それではいろいろこれからお尋ねをいたしますが、最初に私の考え方をここで率直に明らかにしておこうと思うのです。そのほうが質疑応答がやりやすいと思うのです。何のために私がどういうことを聞いておるかということが理解されやすいと思うのです。私は、この問題は、一つの党派の立場とか、そういう気持ちでこれは質問するのじゃありません。こういう裁判所の基本的な機構に影響しかねない問題というふうに私はまず考えておるのです。私が心配するようなことであれば、これはたいへんなことなんですね、提案者としても、最高裁としても。最高裁としても、いまお聞きしますと、簡裁制度がつくられたときの基本性格はもちろん認めてかかっておるのだ、こうおっしゃるわけですから、われわれが危惧しておることが、なるほどそのとおりだということになれば、矛盾してくるわけですからね。そういう意味で、まず私の考えを端的に申し上げますと、第一は、簡裁現状は、簡裁が当初構想されたような運営になっておらぬと思うのです。これはまた各論的にいろいろやりますよ。やりますが、大ざっぱに言ってそう言えると思うのです。これはいろいろな専門家の方も指摘しておる。ところが、この物価変動などの関係通常訴訟が減ってきた——まあ減ったといいましても年間五万件をこえるわけですから、現在の簡裁裁判官の人数をもってしては決してそんな軽い負担じゃ私はないと思うのです。いずれにしても、通常訴訟件数が減ってきた。私は、むしろそういう状態になっておるときにこそ簡裁が本来の性格を発揮できるそういう条件がそろいつつあるのじゃないか。簡裁の本来の性格を発揮しようと思えば、どうしてもこれは手間がかかるのですから——裁判官なり職員の、時間がなければできないのですよ、時間がなければ。そのためには、かえって通常訴訟事件が減るということはいい条件じゃないかというふうに私は考える、まず。  それから第二の問題は、地裁の問題です。この地裁事件負担が非常に多くて、そうして訴訟の遅滞・遅延が起こるという問題は、若干あると思うのです。しかし、私は、その問題も、本件最初に提起されたころとは若干情勢が違ってきているのじゃないかと、統計的にずっと検討してみてそう私は思うのです。もちろん十分じゃありませんよ、十分じゃありません。しかし、たとえばこの地裁民事事件審理期間というものをとってみても、さっき請願書にもありましたように、まあ横ばいですね、横ばいです。むしろ逆に簡裁のほうが審理期間が延びておる。これは数字に出ておるわけですね、これも各論でまたやりますが。だから、そういう状態ですからね、地裁としてはとてもやっていけぬという状態では私は絶対ないと思うのです。幸い、たとえば地裁刑事事件をとってみても、ずっと件数が減ってきていますね。だから、刑事事件が減り、裁判官をふやし、あるいはわれわれが絶えず主張しておる検察官の証拠物事前開示、こういうこと等がやられれば、これはもっとスムーズにいくわけですね。それだけのものが、もし民事が忙しいということであれば、民事のほうに回せるはずです。そういう状態ですから、地裁との関係本件のようなことをしなければならぬという合理性は私はないと思うのです。地裁地裁としての手の打ち方が十分あるというふうに考えられます。  それから第三は、地裁だけじゃなしに、全般的な問題ですが、やはり裁判官そのものの増員問題ですね、これは大事なことです。しかし、一体裁判官というものはどういうところに魅力があるのか。これは最高皆さん考えておられることだと思いますが、私の考えを率直に言えば、裁判官というものは、憲法規定によって、ともかく自分が準拠するのは憲法法律良心と、この三つしかないわけですね。どこの役所に行ったって、みな上から具体的な直接の指示を受けたり、いろいろあるわけですよ。裁判官の場合には、裁判官の一番大事な訴訟という問題については、御存じのとおり、この三つしかないわけですね。これが裁判官魅力ですよ、何と言ったって。しかるに、最近のその空気を見ておると、裁判官が一番大事に思っておる裁判官の思想というような問題に司法行政がやはり入り込んでくる。これは午後、私じっくり聞きたいと思っておることなんですが、できますれば、これは最高裁長官が来てほしいんです。来てほしいんです。良心的な裁判官であればあるほど、憲法法律良心ということはまじめに私は取り組んでおると思うのですね。それに触れていくようなことを最近の最高裁が数回おやりになっておるわけですね。こういうことをやっておったのでは、ほんとう法律に忠実に、そのときの権力とかそういうものにあまりこびないで、法律に忠実にやっていこうという若い法律専門家は、裁判所にあまり魅力を感じませんよ。大事なことです。給与のこともあれば、いろいろ待遇のこともあるでしょう。しかし、そういうことは、それはどれだけよくしたってこれで完全というものはありっこない。やはり、若い法律家は、生きがいだと思うのですね。一体そういう点についての問題点がないのかどうか、これが第三です。  それから第四番目ば、こういう司法制度の根幹に一方は触れると言うし、一方は触れないんだと、こう言っているのですね。しかも、おのおのが専門家なんですよ。そういう人たちの間で意見がまとまらぬままで一方的に押し切っていくということは、私は非常な悪例を残すのではないだろうかと思うんです。それは皆さんのほうも、おそらくその気持ちには異議はないと思うのですね。だから、いろいろ相談もしたんだがやむを得ぬからということなんだろうと思いますが、そうじゃないんでして、やはりこういう基本問題に触れるようなことについては、あくまでも意見調整ができるように努力をする。これは、半年か一年延ばしていたら地方裁判所がパンクしてしまうという現状であれば、また一つ緊急措置ということも世の中にはよくありますから、そういうことも一理あるかもしれませんが、私は率直に言って、そんな状態にあるとは、どの法曹の方々でもそこまでは突き詰めては考えておらぬと思うのです。で、よく法曹三者、法曹一元ということが言われますね。臨司においても法曹一元ということが大部分の時間をつぶして議論されたわけなんです。非常に本質的に反対な人は若干ありますが、しかし考え方としてはその長所というものはだれでも認めておるはずであります。そういう立場から言いましても、一つ機構の問題で、裁判所と、そうして在野法曹というものが、意見が食い違ったまま進んでいくと、これは私は耐えられんですな。私がほかの世界におるんなら、多少まだ感じが違うかもしれません。私も法曹の一人として、まあいろいろ皆さん協力もして活動しておるわけですからよくわかるわけですが、だからその第四の点ですね、これはもう単にこの改正案がこの国会で成立するとかせぬとかという小さい問題じゃないですよ。もう行きがかり上どうしてもこれはやっちまわなきゃならぬというふうな短気を起こしちゃ私はいかぬと思うのです。そういう種類の問題じゃないですよ。これが私の第四として申し上げたい点。  以上で大体私の考え方は理解していただけたと思いますが、そこでぼつぼつひとつ聞いていきます。  まず第一は、今回の提案理由説明を拝見しますと、さっきも私からも指摘し、お答えもあったように、経済事情変動だ、こういうふうに言われているんですが、本心はそうじゃないんで、やはり地裁簡裁の間の事件の配分と、そのことが重点なんじゃありませんか。ただ、それを前面に出しますと反論が強くなりますから、ことさらにそのことには触れない、それは結果としてただそうなるにすぎないというふうな、今度は付加説明のほうで言う程度にしておるように私は感ずるのです。どうですか、それ。
  17. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 便宜、裁判所意見を述べていきたいと思いますが、ただいま亀田委員からるるお話のございました点、私は基本線において同感するところが非常に多いわけでございます。直接のお尋ねの、簡裁性格と申しますか、今回の提案趣旨と申しますか、その点でございますが、経済事情変動ということが提案理由であるという点につきましては、繰り返し法務省のほうから御説明になっておるとおりでございます。ただ、その経済事情変動ということは、一面裁判所の側から見ますれば、これが地方裁判所簡易裁判所事件の比率にどういうふうな影響を及ぼし、どういうふうな関係になるかということと結びつくわけでございますし、また他面、国民の方々の側から見ますれば、従来まで十万円の事件までしか簡易裁判所へ持ち出すことができなかったのが、三十万円の事件まで簡易裁判所へ持ち出すことができるようになる、こういういわば出訴の利益と申しますか、そういうふうに結びつくわけでございます。経済事情変動ということと切り離して、地裁簡裁負担の調整というようなことをあげておりませんのは、経済事情変動と離れて、つまりそれ以上に、あるいはそれ以下の場合もあろうかと思いますが、特にそれ以上、この改正をやっていただきます場合には、それがいわば独立の理由になろうかと思いますけれども、今回の場合はあくまで経済事情変動のワクの中の改正でございまして、これをいたしますれば、その結果として、負担と申しますか、係属件数変動が生ずるということは当然であり、またそれがある意味において訴訟の適正、迅速に役立つと、こういうことも当然であろうと、かように考えておる次第でございます。
  18. 亀田得治

    亀田得治君 総務局長、この昭和二十九年の改正理由ですね、これはどうなっていますか。
  19. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは、私いまこまかい理由書を持っておりませんが、経済事情変動、それから負担調整と申しますか、権限配分と申しますか、そういう点が両方出ておったように記憶する次第でございます。
  20. 亀田得治

    亀田得治君 そこの辺に問題があるのですね。今回のような論争は、ほんとう昭和二十九年に起こらなきゃいかぬのですよ。若干は起きていたのだと思います、古い人に聞いてみると。しかし、今度ほどこうみんなが突き詰めて検討するということではなかったわけなんですね。だから、そういう状態ですから、わりあい提案者ほんとうのねらいというものが、昭和二十九年の提案理由書を見ると、すなおに出ておるのですね。今度は大論争になったから都合の悪いところは引っ込めると、どうもこういう印象を受ける。そこでまず、皆さんは二十九年の改正も今度の改正も少しも変わらぬとおっしゃっておるのですから、二十九年の改正の部分を御参考に読み上げてみましょう。「この法律案改正点の第一は、民事に関する簡易裁判所の事物管轄の範囲を拡張して、裁判所間の権限の分配の適正化を図ったことであります。」、これが提案理由説明の冒頭のことばですよ。これは全くあなた、裁判所間の権限の分配の適正化、事件をあっちへやれ、こっちへやれ、こういう考えでしょう。それから、もう少し進みますと、もっとはっきり書いてある。「もとより裁判所法の下における簡易裁判所は、裁判所構成法の下における区裁判所とは、多少その設置の趣旨を異にする点がないわけではありませんが、」、ここがもうすでに問題なんですね。最高裁はもうこのころからすでに簡易裁判所というものを、「多少その設置の趣旨を異にする点がないわけではありませんが、」と、区裁判所との比較においてこういう表現を使っているわけですよ。ここですでにもう当初予定された簡裁性格というものを半分薄めてしまっている。それはその当時ほんとうにこれはもっと議論をすべきことであったのです。しかし、あとからでもいいですよ。正論であればいつだっていいことですよ。こういう認識の上に立っておることはきわめてはっきりしているんですね。「異にする点がないわけではありませんが、わが審級制度を大局的に観察するならば、簡易、地方の両裁判所間に見られる以上のような不均衡を是正して、民事第一審事件を適切に配分することが、簡易裁判所設置の本旨に副うゆえんであって、これにより地方裁判所における事件の渋滞を解消することができ、また簡易裁判所事件上告審高等裁判所である関係上、延いては、最高裁判所負担の調整にも寄与することができると考えられますので、これらの目的を達するため、簡易裁判所の事物管轄の範囲を拡張する必要があると考えるのであります。」、もうその目的、意図が明々白々ですね。ともかく最高裁地裁負担軽減のためにこの事物管轄の範囲の拡張をやるのだ、こうなっているんですよ。そのあとに物価指数のことがつけ足しで一行ほど書いております。「最近の物価指数は右改正当時のものと比較して、既に四割程度の上昇を示しておりますし、」、これはつけ足しの理由です。あなた思い出されたでしょう。これはもう事務総長もじっくり考えてほしいんですがね。当時すでに最高裁簡易裁判所というものをこれは骨抜きにする考えです。ここへ出ておる。物価指数だけであれば、当時は四割高でしょう。それに対して、原案は三十万でしょう——二十万でしたか、二十万の原案が国会で結局十万になったわけですが、二十万なんという数字があなた物価からどうして出てくるんですよ、四割しか上がっていないのに。結局それは、最高裁地裁負担を軽くしよう、地裁事件をこっちへ持っていこう、持っていくために幾ら幾らの数字でなければならぬか、そこから逆算しているんですよ。だから、そういうことが二十九年においてすでに出ておるわけですね。今回はその引き継ぎでしょう。前の改正と少しも変わらぬとおっしゃるんですから、引き継ぎですわ。それならば、本心は、物価上昇とかそういうことじゃなしに、何とかして地裁事件簡裁のほうへよけい持っていきたい、そういうふうに断定されてもしかたがないんじゃないですか。第一、私が疑問を持つのは、木村司法大臣が最初簡裁について説明されたこの性格、これは今日もそのとおりに当局考えておるとおっしゃる、これは考えておらぬと言ったら、制度の根幹に触れる問題ですから、これはたいへんですよ。表向きはそう言わなければしかたがないものだから、言うておるものの、ほんとうはだいぶ変わっておるんじゃないですか。事務総長、岸さん、どうなんですか。これは法律家がみんな疑問を持っておるところなんです。私が最高裁長官に来てほしいというのは、それは最高責任者が来て説明してもらわなきゃはっきりしませんよ。国会の議事録に堂々といま私が指摘したようなことが載っておるわけですから、一体簡裁本質というものをかってにそんなに法施行の段階で曲げていいものかどうか、そんなことは許されませんよ。あなた、この二十九年の提案理由説明、どう理解するんです。
  21. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) まず、事務的な関係もございますので、私から説明さしていただきたいと思います。  先ほど来亀田委員からいろいろお話のございました二十九年の法改正の際の提案理由は、お話のとおりでございまして、直接には政府のほうの御提案趣旨でございますが、私どもとしても大筋において了解しておったものでございます。だからそれは、先ほど亀田委員からも御指摘がございましたように、当時いろいろ上告制度その他の問題もございまして、法制審議会でいわば全面的ないろいろな問題の一環として審議されて、ある程度の結論を出されました。これは法制審議会の議を経て提案されたものと記憶しておるわけでございますが、その際の原案は二十万円まで引き上げるということであったわけでございます。こうなりますと、これはかなり、その金額自体の問題としては、戦前の裁判所の上限に近づくと申しますか、そういうような意味合いがあったろうかと思います。御承知のとおり、戦前区裁判所では八五%の事件を処理しておったわけでございます。それに対しまして、政府の原案で出されました二十万円の金額に引き上げますれば、これはかなりそれに近い数字になるような意味合いを持っておったと思いますが、それが十万円に修正されまして、その結果、先般来資料で御説明申し上げておりますように、ピークではございます昭和三十三、四年ごろにおきましても、大体五七、八%というところになっておるわけでございます。そういう意味で、パーセントだけの面から申しますと、簡易裁判所の発足当時のパーセントよりはやや上がっております反面、区裁判所当時のパーセントに比べますれば、二十九年の改正をもっていたしましても、なおかなりパーセントが低いということになっておるわけでございます。   〔委員長退席、理事山田徹一君着席〕 で、今回の改正は実は経済事情変動に基づきますものであります関係上、パーセントの面から申しますと、先般御説明申し上げましたように、昭和二十九年度の程度の簡易裁判所のパーセントまでにも達しない、つまり五〇%前後ということでございまして、そういう面からは、いわば発足当初のパーセントにむしろ近づくと、こういうことになるような数字になっておるわけでございます。ただ性格論ということになりますと、こういう民事訴訟の金額の上限だけで直ちに簡易裁判所性格を見るわけにもまいらないと思うわけでございまして、たとえば執行事件とか、さらに破産事件を扱うか扱わないかという問題、その他本日法務省のほうから資料としてお手元に差し出しておりますものをごらんいただきますればおわかりいただけますように、金額にかかわらず担当する事件も区裁判所にはあったわけでございますので、そういういろいろ幅の広い面から見てまいりませんと、直ちに比較は困難であろうかと思いますけれども、金額の面だけから見ますと、そういういま申し上げましたような関係になるわけでございまして、二十九年の政府提案国会で修正されまして、その修正されましたものを基本にして、それからその後における経済事情変動ということのみをもとにしてできておりますのが今回の法案である、かように理解する次第でございます。
  22. 亀田得治

    亀田得治君 まあこれはこまかくやり出すと私だけでも二日も三日もかかりますが、第一、提案理由のその経済事情にしましても、いままでは物価指数だけとっている。ところが、物価指数だけでいくと、どうも十万を三十万にするのには無理があるということで、そのほかの経済事情というものをいろいろ資料に並べておるわけですね。これは重複ですわ。各種の経済活動の集約がこれは物価なんですから、一つでいいんですよ。それを何も、いかにもたくさん理由があるように見せつけようとして、いままでは物価と言っているのを、ことさらに経済事情とかいったようなことを言い、そうしてこちらが要求もしないような資料をたくさんおつけになると、そういう無理なことをしても、私はあと味が悪いだけでよくないと思うんですよ。だから、そういう経済問題にまで入り込んで議論しておったら、これはとても進みませんからね。それはそれとして、まあ私の感じだけをちょっと指摘しておきますが、結局、物価指数だけでいくと十万がどうしても三十万にならぬ、しかし三十万にしなければこちらが目的としておるだけの数が簡裁のほうに行かないと、そこがねらいなんでしょう、端的に。二十九年の改正と一緒です、考え方は。で、いまの御説明の中ではしなくも言われましたが、二十九年の改正のときに二十万までいっておれば、戦前の区裁判所が八五%ですか、それに近いところまでいったはずだというような御説明をされておるのですが、そこなんですよ、問題は。簡裁と区裁というものは根本的に性格が違って出発しておるのに、なぜそういうものを比較の対象に持ってこなきゃならぬのか。すでにその考え方において混乱が最高裁で生じておるというのは、そこなんですよ。だから、どうもこれは大事なことにひっかかってしまったのですが、簡裁がいつの間にかあんた区裁判所化されておるわけですね。当初はそんなつもりじゃないんですからね。これは国会としても——簡裁をつくったときの考え方と矛盾してきておるわけですから、本来ならばこっちのほうから何か措置を講じなければいかぬぐらいに思う問題ですね。あなたのほうでおつくりになったこの「裁判所法逐条解説」というものがありますね。ちょっとごらんになってください。これは総務局長の責任でしょう。「最高裁判所事務総局」と書いてあります。総務局長か事務総長に責任があるわけですが、ちょっと中に入る前に、こういうものの責任はだれが持っているんですか。
  23. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは意見にわたる部分は当局限りの一応の見解にすぎないとして、総務局といたしておりますので、総務局の一応の意見でございまして、私が責任を持っておるわけでございます。
  24. 亀田得治

    亀田得治君 これは最高裁判所の事務総長は責任がないのですか、こういう方面には。事務総長からお答えを願いたい。
  25. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) ちょっと私から。事務総局の刊行物でございますから、そういう意味におきまして事務総長に全然責任がないということを申し上げるわけにはまいらないと思いますけれども、前書きのところで意見にわたる部分は「当局かぎりの一応の見解にすぎない」として、総務局といたしておりますので、内容的には総務局の責任でございます。ただ、最高裁の事務総局から出ております刊行物という趣旨においては、事務総長も形式的には責任がある、そのように考えております。
  26. 亀田得治

    亀田得治君 そういうことを言われても、一般にはちょっと通用せぬでしょうな。上・中・下三巻出ておるわけでして、これは最高裁判所考え方だと、こう考えるのがあたりまえじゃないですかな。そういうふうに考えるのは無理ですか。
  27. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは原則的に、部内の執務資料として、部内用に作成したものでございますが、まあいまのお話のような関係もあろうかと思いまして、特に前書きでその点を断わっておるわけでございます。ただしかし、そう申しましても、総務局におきましても十分関係局とも必要に応じて意見を交換いたしておりますので、まあそういう意味でどういうふうにおとりいただいてもけっこうでございますが、前書きに書いてありますことは、当局限りの一応の見解である、こういうふうに明示しておるわけでございまして、私が責任を持って内容を編集した、こういうことになるわけでございます。
  28. 亀田得治

    亀田得治君 これはまあ一ぺん長官に来てもらって聞きますがね。この一八五ページですね、これをちょっと質疑を進める都合上読んでみます。「第二章 地方裁判所」ですね。「一 本章は、下級裁判所の一たる地方裁判所について規定したものである。」、「二(一)」——これから本文ですね、「地方裁判所は、原則的な第一審裁判所であるとともに、司法行政上は第三階層に位する裁判所であるという意味においては、裁判所構成法上の地方裁判所に相当するものである。もっとも、本法においては、簡易裁判所は、本来、警察署の管轄の一または二を単位として全国に六百近くも配置し少額軽微な事件を簡易迅速に処理させようという新しい構想から考えられたもので、その意味において、裁判所構成法上の区裁判所性格を同じくするものではなかった。」と、もう過去のことに表現しているわけですね、区裁判所との区別。「そこで、それに伴い、地方裁判所裁判所構成法上の地方裁判所と等質のものとしてでなく、地方裁判所のほかに、区裁判所性格をもある程度あわせ有するものとして構成されている。そして、従来区裁判所の存した地には、原則として、地方裁判所の支部が設けられている。なお、本法では、地方裁判所と同列の裁判所として別に独立の家庭裁判所が設けられているから、地方裁判所の権限は、この点では、裁判所構成法上の地方裁判所の権限に比し、それだけ狭いこととなるわけである。」、さらに続けて「(注1)」に、「ただし、本法施行後における本法および民刑訴訟法等の数次の改正の結果、簡易裁判所は、逐次、区裁判所に近い性格に復しつつあるものということができよう。」、こういうふうに、何ですか、最高裁では割り切って考えてしまっておるのですね。簡裁と区裁、当初は違っていたことははっきり認め、しかし数次の改正によって区裁判所に近い性格に復しつつあるものと言うことができると、こういうふうに見ているわけですね。しかし、あなたのほうがその担当者なんですから、見ているということは、それを是認してそういうふうに一緒に歩いているということになるわけでして、これはたいへん重要なことじゃないかと思うのですがね。そうして、簡易裁判所の章を見ますると、なおさらはっきりそのことが出てきます。二六八ページですね、「第四章 簡易裁判所」、「一 本章は、下級裁判所の一たる簡易裁判所について規定したものである。」、「二(一)」——ここから簡易裁判所のことを書いていますね。「簡易裁判所は、比較的少額軽微な事件について第一審の裁判権を有する裁判所であるという意味においては、裁判所構成法上の区裁判所に相当するものである。しかし、本法は、本来は、簡易裁判所を、区裁判所に相当するものとして構想したわけではなく、」と、ここはちゃんと誕生のおい立ちというものは、これはお認めになっているわけだ。「構想したわけではなく、むしろ、アメリカの少額裁判所やイギリスの治安裁判官等にならって、少額の民事事件またはいわゆる違警罪その他の比較的軽微な犯罪に関する刑事事件を、簡易な手続で迅速に処理させるため設けられたものである。従って、それは、警察署の管轄の一または二を単位として、全国に六百近くも設けられ、その裁判官の任命資格についても、要件が緩和されているほかに、とくに、特別の選考による任命も、認められた。ただ、手続の簡易化については、必ずしも当初予期されたほどの徹底した立法措置が講ぜられなかったばかりでなく、」、これからですが、「数次にわたる本法改正の結果、簡易裁判所裁判権の範囲は次第に拡張され、今日においては、簡易裁判所は、裁判所構成法上の区裁判所にやや近い性格をもつにいたっているものといわなければならない。」と、これは非常にこうはっきり説明されておりますね。当初の最高裁なりあるいは法務省提案理由説明と全然違うじゃないですか。簡裁が設けられた当初の基本性格というものは堅持しておるのだ、その立場に立ってやっているのだと言いながら、すでに昭和二十九年においてはそれをくずしておるようなことを言っておりながら、それは実際は忘れているわけですね。まあ私もそれは忘れていた。当時はあまり議論にならなかった。ただ今度こういう大議論になってきたから、私もさかのぼって調べたら、なるほどこういう二十九年当時のものが出てきているわけです。そうして、昭和四十二年十二月のこれは説明書です。現在の説明書です。これにおいてははっきりともう違っているのですと、これじゃあ一体どうこの問題を扱っているのか、答弁に矛盾があるわけですよ、第一。事務総長、さっきからずっとお聞き願っておりますが——総務局長はいいです、あんた何べんも聞いているから、ざっくばらんにどうお感じになりますかね。違っておるものを、いや違わないと、法案を通すためにだけそういうことをおっしゃるということも、これは困るし、事務総長からお答えしてください。
  29. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) ちょっと先に一言、私、総務局の責任において編集した資料が問題になっているわけですから、まず私から御説明申し上げて、その上で事務総長から説明していただきたいと思います。  先ほど来お読み上げになりました資料に、お読み上げになりましたような内容の記述があることは、大体お話のとおりでございます。ただ、先ほど、こまかいことを申し上げて恐縮でございますが、「注」のほうをお読みになりましたときに、「区裁判所に近い性格に復しつつあるものということができよう。」とお読み上げになりましたけれども、これは原文では「復しつつあるものともいうことができよう。」と書いてございまして、たった一字のことであまりいろいろ申し上げますのも恐縮でございますが、「注」のほうには「復しつつあるものともいうことができよう。」と、こう書いておるわけでございます。
  30. 亀田得治

    亀田得治君 「(注1)」ですね。
  31. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 一八六ページの「(注1)」でございますが、一八六ページの「(注1)」をお読み上げになりましたところに、「区裁判所に近い性格に復しつつあるものともいうことができよう。」、こういうことで、たった一字のことをあげつらうのも恐縮でございますが、それを御理解いただきたいと思って、ここで「注」にいたしましてこういうものを書きましたのは、そういう意見も学者その他にございますので、そういう意見を紹介したわけでございます。しかし、この簡易裁判所のところで、簡易裁判所裁判権の範囲が次第に拡張されて、そしてやや近い性格を持つようになったという表現をとっておりますことは、これは御指摘のとおりでございます。この点は、私どもとしてはかような考えで書いたものでございます。一つは、まず刑事事件につきまして、発足当初は純粋な罰金刑の事件だけしか扱うことができませんでしたのを、その後の改正である程度懲役刑の事件でも処理することができるようになりました。これを広い意味での性格というふうに見ますれば、そこに少し前よりは区裁判所のほうへずれたということになると、こういうような趣旨で書いたわけでございます。同時に、民事事件につきましても、訴訟事件に関しまする限り、先ほど来御説明申し上げましたように、発足当初は三〇%程度であったかとも思いますけれども、二十九年の改正の結果は五八%程度になりましたわけですから、区裁判所の八五%に比べますればまだかなり開きはございますけれども、発足当初よりはパーセントは高くなっておるということを指摘したつもりであったわけでございます。ただ冒頭に木村司法大臣の提案理由説明として御引用になりましたことについて申し上げましたことは、これは要するに、少額軽微な事件を簡易な手続で処理すると、そういう基本的な性格について、現在も少しも変わっていないと考えておるわけでございまして、民事事件につきましても、先ほど来申し上げておりますように、訴訟以外の事件につきましては全然変わっておりませんし、それから訴訟につきましても、金額にかかわらず取り扱います、たとえば境界確定の事件でございますとか、家屋の賃貸借の事件でございますね、そういう事件については、現在でも簡易裁判所の権限ではないわけで、そういう点では簡易裁判所も当初の権限と少しも変わりはないわけでございます。ただ、第一審訴訟事件の配分比の点から見ますると、発足当初よりは区裁判所のほうへややずれていっておる、こういうことを指摘したことが亀田委員のお目にとまったことかと思いますけれども、私どもとしては、まだそれに関して発足当初の基本的な性格を欠いておるものというふうには理解しておらないわけでございますし、ここに書いておりますことも、「やや近い」とか、いろいろ表現ございますけれども、そういう趣旨で、私どもとしては、先ほど来御説明申し上げましたことと矛盾しないと考えておる次第でございます。
  32. 亀田得治

    亀田得治君 それは矛盾しないと言わなければ答弁になりませんわな。それは無理やりに言っているだけで、第三者の聞いておる人がそういうお感じになるかならぬか、私はおそらくだれでもこれは矛盾しておるというふうにお感じになっていると思います。  兼子一さんですね、あの人は裁判所法の立案に参画された人でしょう、当時専門家として。どういう立場で参画されたのですか。
  33. 影山勇

    政府委員影山勇君) おそらく、裁判所法律案段階における、改正調査委員会でしたか何かの委員ではなかろうかと思いますが、正確なところはいまちょっとわかりません。
  34. 亀田得治

    亀田得治君 それをちょっと調べておいてください、正確なところを。いいですな。
  35. 影山勇

    政府委員影山勇君) はい。
  36. 亀田得治

    亀田得治君 とにかく兼子一さんが参画されたことは事実です。その方が、法律学全集の「裁判法」という著書の中で、簡裁性格の指摘をやっているのです。これも皆さんにひとつぜひ御検討願いたいと思いますので、朗読しておきます。「簡易裁判所は、最下級の下級裁判所で、少額軽微な訴訟事件についての第一審の裁判権を行使する単独制の裁判所である。但し、同じ第一審裁判所であっても、地方裁判所簡易裁判所とは、かなり性格の異ったものとして構想されている。旧制度上の地方裁判所と最下級であった区裁判所との関係が相対的であったのと違うため、名称もこれを踏襲しなかったわけである。むしろ裁判所法の立法過程においては、当初は各裁判所をなるべく等質的なものとする趣旨から、簡易裁判所というものは考慮されなかったが、一方刑事関係憲法上特に捜査段階における各種の強制処分に裁判官の令状が必要になったので、警察署の近くに裁判官がいないと急を要する場合に間に合わないことが懸念されて、警察署単位の違警罪裁判所的なものが要求された。そこで、民事でも調停や少額事件を簡易迅速に処理する民衆に親しみ易い裁判所があってもよいというので、この両方の要求を満たすために、全国に多数設置されることになったのである。現在ではその設置場所は、五七〇カ所に達している。しかし、裁判所法施行後、上級裁判所負担軽減のために、簡易裁判所管轄を次第に拡張する傾向にあり、そのために当初の性格がぼやけて来たことは見逃すことができない。」、この事務総局がつくった裁判所法の逐条解説とほとんど同じような説明をされておりますがね、これを読んで簡裁性格が変貌しつつあるというふうに考えない人はありますかね——ないでしょう、それは。兼子さんは、当時立法にも参画しただけじゃなしに、これは民訴の専門家として、その後の改正についてもこれは十分知っておられる方の意見なんですよ。形の上では同じかもしれぬが、実質は変えられつつある、こういうことでしょうが。事務総長、どうなんです。
  37. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) ちょっとまず私から申し上げます。  兼子委員の御著書に御指摘のような記述がありますこと、私どももよく承知いたしております。私どもが「注」でああいうことを書きましたのも、そういう御意見を念頭に置いておったわけでございます。ただ、先ほど来御引用になっておりますこの逐条解説にも引用しておりますように、司法法制審議会の第一小委員会の席上、兼子委員から簡易裁判所手続に関する構想が出されまして、それも審議の資料とされたようでございまして、その構想は、それは非常に徹底したもので、いわばイギリスのマジストレート・コート、それに当たりますかどうか、もし間違っておりましたら取り消しますけれども、とにかくその手続を徹底的に裁量的なものにする、現在の民事訴訟法にありますようなああいう簡易手続の程度ではなくて、もっと徹底したものを構想されておったようでございます。それに先ほどお読み上げになりました「構想したわけではなく、」というようなところにも多少そういうのが出ておるわけでございますが、そういう構想もあったわけでございますけれども、これは結局、委員会の審議の過程、この法案立案の過程で、いわば少数的な意見となったようでございまして、結局実現いたしましたのは現在の民事訴訟法にあります程度のものになったわけでございまして、そういう意味では兼子委員のお考えそのままが簡易裁判所として実現したわけではなかったわけでございます。しかしながら、それにいたしましても、数次の改正、ことに兼子委員は主として民事のことを言っておられるといたしますれば、それは二十九年の改正を中心におっしゃっておるものであろうと思いますけれども、その際の改正の結果パーマネントが変更になったということがおそらくおもな理由になっていまのような記述になっておるわけであろうと思います。しかしながら、その点につきましては、私どもは、先ほど申し上げておりますとおり、その限度においては近づいたという表現をとらざるを得ないけれども、しかし全体として、まだそのほかの部分を含めて総合的に見た場合に、基本的性格が変わったものというふうには受け取っていないということで、おそらくそういう意味においては兼子先生もお認めになるのではないか、かように考えるわけでございます。
  38. 亀田得治

    亀田得治君 「当初の性格がほやけて来たことは見逃すことができない」、これはお認めになりますか。
  39. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 兼子先生がそういうことをお書きになっておることは、承知いたしております。
  40. 亀田得治

    亀田得治君 いや、そうじゃない。あなた自身はお認めになるかと言うのです。
  41. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは、性格ということばを非常に吟味して使う必要があるということを私どもも最近特に痛感するわけでございます。兼子先生も、たとえば執行事件、破産事件簡易裁判所で取り扱わない、そういう意味での性格がぼやけたとは毛頭お考えになっておらないと思います。また、訴訟事件につきましても、先ほど来繰り返して申し上げますように、少額にかかわらず取り扱う事件が区裁判所にございましたのに、それを取り扱うようにはしていないという点でも、性格がぼやけてきたとはお考えになっていないと思うわけでございます。ただ、訴訟事件訴訟物の価額の上限の問題については、当初よりも比例的に少し高くなったという意味でお使いになっておるとすれば、それは私も先ほど来繰り返し申し上げておりますように、そういう意味で、当初から比べれば少しパーセントは高くなったという意味性格がずれたということ、こういうことは認めざるを得ない、こういうふうに言えると思います。その点は、性格ということばの使い方の問題であろうかと、かように考えるわけでございます。
  42. 亀田得治

    亀田得治君 いずれにしても、本件は、十万を三十万にする、十を三十に直す、それだけの問題ではないのだということがこの一番大事な点だと思います。大きな論争になっておるのも、そこにあるわけです。簡裁性格がぼやけておる、決してこれは管轄が拡張されただけじゃなしに、簡裁が当初予定されたいわゆるかけ込みの裁判所という運用が少しもなされておらぬじゃないか、調停とか、和解とか、あるいは法律相談とか、そういったようなことについてもっと性格を発揮すべきじゃないか、そういうこともこれは含めて議論されておる性格論なんですね。調停の状態がどう、和解の状態がどう、逮捕状の状態がどうなっておる、肝心の民訴の扱いがどうなっておる、これは各論的にまた聞きますから、ただいまのところはそのこまかいことには触れませんが、そういう問題として今日提起されておるのだということを、やはりこれは国会としても真剣に考えていかなければいかぬと思うのです。いや、それはもう簡裁というものは区裁判所化してしまったらいいのだ、こういうお考えなら、それも一つ立場でしょう。しかし、それなら、簡裁をつくったときのこのいきさつもあるし、ちゃんと制度もあるわけですから、きちんとそういうふうにしなければならぬ。いや、それはいかぬのだ、やはり簡裁の当初の特色というものを発揮しないままで埋もらさしてしまう、それはよくないという方針なら方針で、そのきちんと歯どめをしなければいかぬわけですね。その点をはっきりさせないで、ただ物価がちょっと上がったから十を三十に直してくれ、そんな簡単なことじゃない、この問題は絶対に。そういうことで、ひとつ委員会としても慎重にこれは審議をしてほしいと思います。ちょっと区切りがいいですから、午後一時からやりたいと思いますけれども、一応この点だけひとつ提起しておきます。
  43. 山田徹一

    理事(山田徹一君) それでは午後一時まで休憩いたします。    午前十一時四十八分休憩      —————・—————    午後一時十七分開会
  44. 小平芳平

    委員長小平芳平君) 法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き裁判所法の一部を改正する法律案質疑を行ないます。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  45. 亀田得治

    亀田得治君 裁判所法の一部改正に関連し、地裁状態をどう考えるかということが一つ問題点になっておるわけです。で、当初私の考えも申し上げましたが、この問題の処理はいろいろな方法があろうと思います。そのうちの一つは、やはりこれは他の問題にも共通する点があるわけですが、裁判官の増員ということが問題だと思います。で、これは幾ら予算と定員とをふやしても、なろうという意欲が若い法曹の間に出てこなければ、実際問題としては成り立たぬ話です。そういう立場から、この裁判官が、裁判官となって裁判所に行きたいと、そういう雰囲気が非常に私は大事だと考えております。裁判官になる人は、やはり一番の魅力というものが、場合によっては国家権力が横暴なことをすればそれをも否定できるのだと、憲法法律良心に従ってほんとうの正義のためにこの仕事ができるのだと、こういうところにもう最大の意義を感じておると思うのです。また、これは大事なことなんです。何といっても、政治権力というものは、これは議会制民主主義のもとにおいては、多数党、どちらかの党派というものが権力を握ってやるわけですから、これは立場のいかんにかかわらず、行き過ぎということは絶えずあり得ることなんです。それに対して、この三権分立の立場で、裁判所裁判官というものが非常に大きな価値を持っておるわけですね。私はそこを大事にしなきゃいかぬと思うのです。ところが、どうも最近二、三起きた現象というものは、逆のことをやっているのじゃないか。やっている方々自身はそれなりに非常にまじめな気持ちで取り組んでおられるかもしれぬが、もう少し大きな気持ちで見たら、かえって結果はマイナスになるというふうなことがあるように私は感ずるのです。平賀書簡の際、あるいは四月八日の事務総長の談話、私はそれらを見て非常に憂慮していたわけですが、五月三日最高裁の長官が新聞記者会見で語られたこと、まあマスコミの伝えるところによりますと、裁判官が一番えぐられることをきらう裁判官の思想の問題に入り込んできておる。これは私は質的に非常に重要な問題に最高裁の長官が触れたと思うのであります。この問題についていろいろお聞きしたい点があるわけですが、まず最初に、どういう状態であのような発言がなされ、そうしてまたその発言のために文書などが用意されてなされたものなのか、その辺の実情からまずお聞きしたいのです。本来ならば、長官自身に御出席を願って、ここで長官自身が説明さるべき重大な問題だと私は考えております。しかし、いま来ておられませんから、事務総長にかわってお答えを願いますが、ともかく、どういうことを言われたのか、その中身をはっきりすることと、そのときの状況ですね、その二つの点できるだけ正確にひとつまずお答えを願います。
  46. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 五月三日の憲法記念日の当日各新聞に発表されました最高裁長官の記者会見の模様と申しますか、そういう会見が行なわれるに至った経過と、その席で長官がどういうことを骨子として言われたか、その点について、私はこの会見に立ち会ってはおりませんけれども、立ち会っておりました広報課長あるいは長官自身の口からいろいろ伺っておりますので、ある程度御説明できることと思います。  あの記者会見は憲法週間にちなんで行なわれたものでありまして、だいぶ前から記者クラブのほうから記者会見の希望がございまして、長官も、憲法週間のことであり、それに応じようということで、五月二日の十一時四十分ごろから午後の十二時半近く約四、五十分にわたって会見が行なわれたわけでございます。そして、いろいろ新聞に出ておりますが、その際の長官の言わんとした骨子は、憲法の精神を守るべき裁判官についての職務上のモラルを説いたものであります。長官の言われた骨子は、この二十数年来憲法が次第次第に国民生活に定着しつつあるのだと、この際裁判官として、憲法を守って、その精神によって法を解釈する職責の重大なことを自覚しなきゃいけない。そこで、この憲法を究極において否定するような極端な片寄った主義主張の持ち主は裁判官としては好ましくはない。しかし、それはあくまでも裁判官の職業的倫理、モラルとして述べられたもので、法律問題として扱ったものではございません。以上のような長官の考えは、国民大多数の常識ではなかろうかという、そういう趣旨の事柄が長官発言の骨子でございます。
  47. 亀田得治

    亀田得治君 それはメモがあるのですか、発言のときの。
  48. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 発言の際は、何ら原稿もメモもなしに、フリートーキングでやられたそうでございます。
  49. 亀田得治

    亀田得治君 録音はあるでしょうな。
  50. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 録音は裁判所としては取っておりません。
  51. 亀田得治

    亀田得治君 それはおそらく、めったにない記者会見ですから、マスコミのほうでちゃんとあると思いますね。したがって、やはりそれを正確に事務当局としては再現をして文書にしてほしいと思います、大事なことですから。
  52. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) これまでもたびたび記者会見が行なわれましたけれども、それを録音しておいてあとで文書にしたというような例は、そういうことはございませんです。
  53. 亀田得治

    亀田得治君 いや、例があってもなくても、今回は必要だから、必要だから要求するわけです。これは別に被疑事件の捜査に関連があるとかなんとか、そんな話じゃないから、マスコミだって正確な国会の論議の便宜のためであれば当然そんなことは協力してくれると思います。これはやってくれませんか。
  54. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 裁判所としては録音を取っておりませんことは先ほど申しましたとおりですが、はたしてどこかでそういうものを取っているかどうか、あるいはそれがもし借りられて文書にできるかどうか、そういう点はちょっとここでは即答申し上げかねますけれども、十分考えてみます。
  55. 亀田得治

    亀田得治君 努力してください。  そこで、いま事務総長がかわってお答えになったことを前提にして若干お尋ねいたしたいわけですが、今後そうすると裁判官を採用する場合に、どういう思想の持ち主であろうか、そういう点を調べるということになるのですか、ならぬのですか、それはどうですか。
  56. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) その裁判官任用について思想調査をするというようなことは、長官も申しておられませんし、また私どもとしてもそのようなことは考えておりません。
  57. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、実益のないことをただおっしゃったということにもとれるわけですが、しかし、裁判所機構の頂点に立っておられる方が発言される以上は、そのことが当然司法行政の中に何らかの形で生きてくる、こういうふうに一般は理解をしますね、理解をします。そういうふうに一般の人が考えるということについて、あなたはどう思いますか。
  58. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 長官発言を新聞記事を通じて国民各自がどのような受け取り方をするか、これはそれぞれの考えがあろうと存じます。しかし、あの長官発言は、先ほど申し上げましたとおり、憲法の精神を守るということについての裁判官の職業的モラルを説いたものでありまして、決して実益のない空虚なものであるというふうには考えられないと思います。
  59. 亀田得治

    亀田得治君 これは、憲法を守るというのは裁判官の独立の規定である憲法七十六条でも明記しておるし、そのほかでも憲法順守の義務ということは明記しておるわけで、そんなことはあたりまえのことですわね。わざわざ司法行政の頂点に立つ人が言われるというところに、いろんな憶測が生まれるのは、これはあたりまえじゃないですか。軽率だということになりませんか。
  60. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) どの新聞かにも出ておりましたが、言ってみればあたりまえのことを長官が言われたという一説が出ているぐらいで、当然のことを申されまして、ただちょうどときあたかも憲法週間に当たっておりますので、そのときの記者会見における長官発言としては当を得たものじゃなかろうかと、かように考えます。
  61. 亀田得治

    亀田得治君 いや、当然のことを言ったとは私は言うてないのですよ。言うた以上は、やはりそういう考え方司法行政を運用されるのだろうと、それをあなたのほうは否定されるわけだ。    〔委員長退席、理事山田徹一君着席〕 それはあなた、発言の中身は決して当然なことじゃないですよ。もしそういうことが司法行政の中で実際に運用面にあらわれてくるということになれば、前提としてはどうしたって調査ということが出てくるわけでしょう。調査は、しかもきわめて国の根本に関するような問題になれば、立場によって非常に違ってくるわけです。簡単に批判することはなかなかむずかしいです。そうして、いまそういう発言が多々行なわれておるのは、政治的にはむしろ場合によっては憲法九条をかえたいというふうなことを考えておる側の政党から出ておる問題なんです、もとは。だから、憲法を守る守ると言いますけれども、どっちが一体守ろうとしておるのか、その辺もあいまいになってくるわけなんです。憲法擁護といったって、ただ形式的に守る問題、実質的に守る問題、これは釈迦に説法ですが、これははなはだむずかしい問題に入っていくわけでしょう。そういう問題について、これは裁判官自身が各種の事件を扱って、絶えず自分自身がむずかしい問題と考えておる問題なんです。その裁判官に対して、司法行政の上のほうにある人が、これを検討すると、しかねないという立場の発言ですからね。そんなことは、あなた、何が当然の発言でしょうか。それはあすこに書いてあるのは、極端な軍国主義者とか、そういうことばを使っておりますが、そこが問題なんですよ。極端な軍国主義者とか、そういうことになるかならぬかが一体問題でしょう。だれが判断するか、判断の過程においてはどんなことをしなければならぬのか。しかも、国民一般の気持ちというものは、やはり裁判官はみんなそれぞれ勉強もしておるし、おのおの自分の考えでおやりになっておる、それでいいんだと、こう考えておるのです。それにワクがはまってきたら、これはワクをはめるといえば、何といったって権力側からのワクが強くなりますよ。それを認めておらぬから、みんなが安心しておるわけでしょう。どんな思想であろうと、とにかく憲法法律良心、これをすっぱいようにみんなが言うて、それでひとつ裁判官しっかりやってくれと、こういうことにいまの大体の意思統一というものがされておるのじゃないですか。それに対して、一つのものを特定して、これはよろしくない、こう言ったら、じゃその隣、ちょっと隣の範疇に属するものはどうだとか、これはたいへんな問題に発展するわけでしょう。私は最高裁長官として全く適当じゃない発言だと思うのです。判決が悪ければ、控訴、上告で破っていけばいいわけですね。具体的な事件憲法法律を無視する行動があれば、忌避をしていけばいいわけですね。何が当然の発言でしょうか。これは、行政の立場の人とか、そういう人が言う場合には、また多少違うのですよ。よほど考えなきゃ。一般の俗耳に入りやすいような表現、それをたまたま二、三のマスコミが支持したからといって、それでわしの言うたことが司法行政最高責任者として間違いないのだと、そんなことは私は通用せぬと思うのです。おそらく私は、二千数百名のこの日本裁判官はいろいろに受け取っていると思います。賛成をしている人もあるでしょう。しかし、裁判官としては、どうもそういうことを言われるのは困ると考えている人もたくさんあると思うのですよ。ことに私は、若い人はそういうふうに考えると思いますよ。そういう影響というものはないと断言できますか、事務総長として。
  62. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) だいぶ長官の発言の内容の問題とずれていると申しますか……。
  63. 亀田得治

    亀田得治君 いや、ずっと関連して続いているわけです。あれを発展させればそういうふうになっていく。
  64. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) まあ関連しておりますけれども、思想、信条によって差別的な扱いをするということは、これは許されないことでありまして、それこそ当然のことであります。また、これまでそのような司法行政はやったこともございません。長官の発言は、そういうような法律問題、そういうのを離れて、この際憲法記念日に憲法を守る最後のとりでである裁判所裁判官の職業倫理としてあるべき姿を説いたものである、かように私どもは解釈しております。
  65. 亀田得治

    亀田得治君 ともかく、憲法を守るということを繰り返しおっしゃればいいんで、特定の思想というものを具体的に取り上げ出したら、これは切りがないですよ。最高裁の長官みずからが憲法十九条なり二十一条の規定を無視するような印象を与えかねないんです。よほどこれは注意して長官というものは発言してもらわなきゃ私はいかぬと思うのです。これは事前に事務総長などに、ああいうことは相談があるんですか、ないんですか。
  66. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 長官の発言の骨子、趣旨、本旨、これはたびたび先ほど来申し上げたとおりでありまして、憲法週間なればこそ、憲法の順守ということを強く強調され、それと関連して裁判官の職業倫理に触れられた談話をなされたわけです。そういう記者会見の際に一々われわれと相談するかというお問いでございますけれども、それはそのときそのときの長官のお考えでありまして、今回は長官独自にお考えになって、長官がお話しになった、かような次第であります。
  67. 亀田得治

    亀田得治君 裁判官が自民党に入党されても、裁判所法五十二条には抵触しませんね。
  68. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) まあ法律上はさようであります。
  69. 亀田得治

    亀田得治君 民社党も同じですか。
  70. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 何党を問わず、政党加入の問題については共通だと思います。
  71. 亀田得治

    亀田得治君 これは念を押しておくんです。公明党も、社会党も、共産党も、みんな同じことですね、五十二条違反にはなりませんね、はっきりおっしゃってください。
  72. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) お説のとおりと思います。
  73. 亀田得治

    亀田得治君 まあ法律上は差しつかえないが、モラルとしてどうだとか、まああまりそういうことはおっしゃらぬほうが私はいいと思いますね、なかなかものの見方によっていろいろ違うんですから。それで、せんだってからたびたびいろんな機会に問題になっておるのが青法協ですね。青法協というのは、事務総長は、これは政治団体あるいは政治的な団体というふうにお考えになっとるのか、なっていないのか、どっちなんですか。
  74. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) ただいまのお尋ねは、四月八日の事務総長談話の形で、最高裁の公式見解、裁判官の団体加入についての正式見解というような発表、公式見解の発表がございました。その際に、どうしてああいう見解を発表するに至ったかと申しますと、二十二期の修習修了者、この人の中で、最高裁判所は青法協会員なるがゆえに裁判官に採用しない、思想・信条による差別をしておると、そういうことや、あるいは二回試験に落第生を出すなと、そういったようないろいろな要求を掲げて、三十数名の者が、最高裁長官に会わせろ、事務総長に会わせろ、そういう、いわば多衆をたのんで押しかけてきたことがございます。そのときに、責任者であると称する一人の者が名前を述べただけで、ほかの三十数名の者は一切名前は言わない。そういうような形では、これは長官はおろか、事務総長でもそういう面会はできないと言って拒絶したことがあります。ところが、四月七日に研修所の修了式がありまして、そして八日の午後に、それらの前に、たしか三十数名の人たちの中と思いますが、相当多数の者が裁判所の記者クラブへ来て、前と同じような要求を最高裁判所に提出したと、そういうことを話したことがありまして、そこで記者クラブから、この問題について最高裁はどう考えておるかという点について会見を求められた経過であります。それより前に、まあ青法協という問題について、いろいろ裁判所部門において、あるいは最高裁裁判官会議において、世間の批判が強まるにつれて、いろいろ検討されておりました。いろいろ検討された結果、やはりそのような団体には裁判官は加入することは好ましくない、そういう結論になって、あのような談話の形式で公式な見解を発表したわけであります。しからば、青法協についてどう考えておるか——今回裁判官任用で三名不採用が出まして、そのうち二人は青法協会員でありましたが、そのうちの一人はあとになって青法協会員だということがわかったくらいで、青法協会員なるがゆえに採用しなかった、そういう事情ではありませんけれども、青法協について一体どういうふうに最高裁考えておるかということになりますと、いろいろこまかい問題もございますので、所管の人事局長から御説明を申し上げたいと思います。
  75. 亀田得治

    亀田得治君 私のお聞きしておるのは、政治団体あるいは政治的団体という見方をしておるのか、それを聞いておるんです。
  76. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) その点になりますと、政治団体とは考えませんけれども、非常に政治的色彩の濃い団体であるということは言えると思います。
  77. 亀田得治

    亀田得治君 この青法協の目的というのは、これはどういうことです。目的と事業というものはどういうふうに規定してあるんですか、ちょっと読んでください。
  78. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) ここにありますのは、「二十四期司法修習生歓迎特集号」というパンフレットがありまして、これは青年法律家協会から提出しましたパンフレットになっております。ここには規約として、目的は、「法律問題の調査研究」、「教育、啓蒙活動」、「法の制定、運用に対する批判」、「法律問題処理に関する知識・技術の提供」、「他団体との提携」、「その他必要な諸活動」ということで、これは規約の三条に掲げている目的の要約でございますけれども、協会が成立されたときの目的としては、こういうように掲げられてはおるわけでございます。
  79. 亀田得治

    亀田得治君 第三条は「本会は憲法を擁護し、」、ここが大事なところです。「憲法を擁護し、平和と民主主義をまもることを目的とする。」、第四条「本会は前条の目的を達成するために左の事業を行う。」——一から六まであるわけですね。一が「調査ならびに研究活動」、二が「教育ならびに啓蒙活動」、三が「法の制定、運用に対する批判活動」、四が「法律問題処理に関する知識ならびに技術の提供」、五が「他の団体との提携」、六が「その他必要な諸活動」。まあ五、六は、これは付随的なものですわね。それから一から四までが、具体的なこの事業内容といいますか、そういうものですね。これはきわめて法律家として当然のことを並べておるわけですね。問題は、第三条の問題に関連してくると思うのですが、目的に「本会は憲法を擁護し、平和と民主主義をまもることを目的とする。」、これは文字としてはきわめて今日の憲法に合致した内容ですね、合致した内容です。それをくずそうとしてくるという政治勢力があることも、これは事実なんです。しかも、それが憲法の名においてくずそうとするわけですね。だから、そうはさせまいと、こう青法協の諸君が努力をする。しかし、その努力といいましても、法律家らしい第四条に掲げておるようなやり方で努力をしていくということなんです。これは政治団体でもなければ、政治的団体でも何でもないですよ、憲法擁護というものはすべての国民の義務なんですから。だから、それを逆の立場憲法考えている人から見ると、気に食わぬ、政治的と、こうなっているのが真相じゃないですか。
  80. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) それでは、ここに、青年法律家協会が設立後にどういう活動を目標としてやってきているかということについて、これは「青年法律家」自体の雑誌の中で書かれていることですから、少し長くなるかもしれませんが、ごかんべんいただいて、申し上げたいと思います。まず、「協会の目的の中心は現行法秩序の頂点たる憲法の改悪を阻止し、憲法上の民主的諸制度、諸権利を擁護することにあり、そのために協会は継続して憲法改悪阻止運動を展開してまいりました。」、続いて(1)として、「一九六〇年の安保改訂阻止斗争において協会は他の多くの団体にさきがけ五八年から組織的に取組み、パンフレット数万部を作成して「何故安保改訂を阻止しなければならないか」の理論上の正しさを国民大衆に知らせる啓蒙活動を行ない、国民運動の盛り上りに貢献しました。また新安保の成立後も安保体制が憲法の定める平和と民主主義と基本的人権尊重に逆行する方向であるとの認識のもとに一つ一つの深刻な現象に対決してきました。」、で、少し飛ばしますが、「また昭和四〇年秋の日韓条約批准に際しては、右条約日本大資本の対韓進出、南北朝鮮民族の分断を意図し、自衛隊の海外派兵に道を開くものであり、実質的な憲法無視、改悪により拍車をかけるものであるとの見地から他の法律家団体とも提携して「日韓条約に関する意見書」を発表し、日韓条約批准阻止運動をくり拡げ、二〇〇名以上の法律家を結集しました。また最近では小選挙区制反対の運動が憲法改悪阻止のための当面の中心課題であるとの認識のもとに「憲法改悪のための小選挙区制——その危険なねらいと内容」というパンフレットをいち早く発行し、これを教材に労働組合、民主団体等に講師を派遣し、各層に小選挙区制の意図するものを訴え、更には第五次選挙制度審議会に小選挙区制の答申を取止めるよう要請しました。」  「アメリカのベトナム侵略が狂暴化し核戦争の脅威が現実のものとなってきている状態のなかで、協会は平和擁護のための活動にも積極的に取り組んでおります。トンキン湾事件発生の際には安保条約との関連で、我が国の戦争協力体制につき分析を加え、その後のアメリカの有毒ガス有毒化学薬品の使用に対しては抗議文を採択し、ベトナム侵略をジュネーブ協定にのっとって解決するための法律家アピールを他団体と協力しておし進め、アメリカのベトナム戦争犯罪調査の「東京法廷」に参加しました。」  「また沖繩問題については、沖繩県がベトナム戦争の発進、補給基地となっており、米軍による各種人権侵害がひん発していることから、五八年四月沖繩調査団を派遣し、沖繩問題の解決は、主権の回復、平和、県民の人権と生命を守る観点から取組む必要性があることを「基地のなかの沖繩」といわれる沖繩の現実をもとに国民各層に訴えてきました。」「反憲法的な治安立法や官憲の側の便宜のみが強調され、国民の権利が大幅に制限されかねない諸立法が謂わば傾向的に見られるなかで、これらの傾向に憲法擁護の基本線で結集している青法協が黙視することが出来ずにいるのは当然で、協会は治安立法・治安体制の強化、国民の人権と生活の侵害に対処する活動を展開してまいりました。」、このようにして、まだ「現在の協会活動の重点」というのがありますが、それはいま御制止がありましたので、各項目だけを読み上げてみますと、「安保・沖繩」——これは安保は七〇年の闘争、沖繩はこれは完全回復と、それから「司法制度」、それから「人権・公害」という項目がありまして、公害では「イタイイタイ病、四日市、新潟水俣、安中の四大公害をはじめ、富士、熊本水俣その他公害問題、出稼ぎ労働者の人権と生活、労災問題等につき調査団を派遣し研究集会を開催するなどし国民の生命と人権を守る。」等々となっておりまして、これは青年法律家協会が独自の団体で、これが独自の行動をする、これはもうまことにそのとおりの事柄でございます。われわれが問題にしているのは、この団体に裁判官が加入していることがはたして適当かどうかという問題なのです。いま御紹介いたしましたのは、青年法律家協会の内容自体をどうこう申し上げているわけじゃないのでございます。要するに、このいま御紹介いたしましたところによれば、これはやはり国民が常識として、中のいい悪いは別問題にいたしまして、政治的色彩の濃い団体であるというように認めることは、これは問題ないのじゃなかろうか。だとすれば、それに裁判官が加入していることはいかがなものであろうかということに相なるわけでございます。
  81. 亀田得治

    亀田得治君 そこにまあ書いてあることは、これはきわめてもっともなことなんです。それは、憲法を守り、平和と民主主義を守るということが目的である以上は、目的に忠実なら当然出てくるそれは行動なんですよ、どの一つとったって。そしていろいろ具体的には、パンフレットをつくったり、やはり法律家としての特徴を生かしておやりになっているわけですね。私はどんどんやったらいいと思うのですよ。ただそこに裁判官が入るのが困る、ふさわしくないという意味なら——まあ違法ではないが、ふさわしくないと、そういう意味のこともおっしゃるわけですね。そういうところに最高裁のやはり古さがにじみ出ておると思うのです。これは裁判官も政党に加入するのは差しつかえないとさっきおっしゃった。それから、たとえば政府の政策を批判する——これは憲法をしっかり勉強しておれば批判が出るのはあたりまえですよ。ことに憲法九条などはあたりまえじゃないですか。政治的な解釈で、多数にものをいわせてまかり通っておるだけでしょう、端的に言えば。数が足らぬからこっちが遠慮しておるだけのことです。政治権力にも何にも遠慮しないで、そうして自分をみがいていこうという法律家が批判を持つのは、これは当然ですよ。その点までは差しつかえないでしょう、その点までは。政府の政策に批判を持つことは。
  82. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 要するに、私どもの申し上げておりますことは、こういうような政治的な色彩の濃い団体に裁判官が加入していること、これがやはり国民から見られれば裁判の公正に対する疑惑を招くことになるのじゃなかろうかということを申し上げているわけでございまして、この団体自体の行動がいいとか悪いとか、そういうことを申し上げているわけでは決してないわけです。
  83. 亀田得治

    亀田得治君 それは何べんもお聞きしておるからよろしい。私の問いに答えてくださいよ。裁判官が、自分の憲法解釈はこうだ、したがって政府憲法の運用は間違っておると、こういう批判をすることば自由でしょう、裁判官として。裁判官、または個人としてでもけっこうですよ。
  84. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 内心においては自由だと思います。
  85. 亀田得治

    亀田得治君 内心においては自由とは何ですか。そういう批判はできませんか、外部的にできるでしょう。そんなことを言うのは、憲法自身をあなたは否定するのじゃありませんか。どこから出てくるのです。表現の自由というのは、そんなあなた、厳然としてあるじゃないですか。内心というのは、そんなこと、どこに限定する必要があるのです。
  86. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) あるいは私の申し上げようがまずかったかも存じませんけれども、裁判官政府の政策に対する批判あるいはある党の政策に対する批判というものを公に発表して、そうしてそれによって世論の喚起の一助にするとか、そういうような行動をとることについては、これはやはり慎しまなければならない事柄ではないか、こういうように思って、先ほどのような表現を使ったわけでございます。
  87. 亀田得治

    亀田得治君 そこがおかしいじゃないですか。裁判官には表現の自由がないのですか。ほんとうにそう思っていたら、論文でも書いて発表するのはあたりまえじゃないですか。何が悪いのですか。それを悪いように思うているところが、どこか狂うておるのじゃないですか。裁判官は実際の裁判をやる場合には、それはそれとして取っておいて、また別個な角度で事件自体は処理していっているわけでしょう。それを信用しなければいかぬですよ。それを信用しないのだったら、結局最高裁は、表ではきれいなことを言うているが、思想調査をやって自分らのワクで選択をしていくということになってしまう。一体論文を発表するのがどうして悪いのです。それは議員の立候補とか、そんなことはもちろんこれは禁止されております。
  88. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 純粋な学術論文というのと、政府なりある党の政策に対する批判ということは、やはりこれは違うのではなかろうかと思うのでございますけれども、亀田委員のおっしゃることもよくわかりますけれども、しかしながら、政府の施策、あるいはある党の政策に対して、裁判官がこれを批判して論文を発表するということは、いかにもこれは裁判官としての心がまえにも沿わないやり方ではないか、私は頭が古いのかもしれませんけれども、そう思うわけでございます。
  89. 亀田得治

    亀田得治君 古いですね、話にならぬ。裁判裁判で、あくまでもケースに即して、具体的に、良心的にやっていこうとして裁判官が努力しているわけでしょう。あとは信用しなさいよ。だからといって、裁判官、忙しいのに、むやみやたらにいろいろなものを発表するとは思いませんけれども、そんなワクをはめるようなことは間違いですよ。憲法にきちっと保障されているではないですか。裁判官なるがゆえに、どうしてそれが制限されるのですか。そうして、いま追及すると、いやそれは法律上は別に差しつかえないのだと、ただモラルとしてと、こういうところにすべて逃げてしまうわけでしょう。それは私は、裁判官も、政治問題についても、どんどんまじめな人はやはり研究すると思うのですよ。してもらったらいいんですよ。そういう打てば響くような状態のほうが、普通の事件を扱う場合でもやはり反映していくと思うのですよ。それを何か、時のいわゆる政治に巻き込まれるのはごめんだと、わしは一切もうそういうことは腹の中だけにしまっておくのだと一それは、しまっておくというのは、実際は考えないということなんですよ。考えておれば、どうしても口に出るのはあたりまえですよ。だから、そういうことではなしに、むしろ裁判官も、好きな方は大いに勉強してもらう。意見を述べてもらう。ただし、それによって、裁判官裁判の原則を、憲法法律良心、これはあくまでも守って、国民の負託にこたえるようにしてくれ、こういかなければ、そんな若い人が集まってくるものですか。そうして、何かそういう俗耳に入りやすいことを言うと、若干それに最高裁長官なかなかいいことを言うたというようなことを言うと、うちょうてんになって、それに輪をかけたようなことを考えていくと、これは知らず知らずのうちに、最高裁というところは、これはもぬけのからみたいなところになってしまう。われわれも、場合によっては政治家もしんどいし、場合によっては裁判官もいいなあと実際は思っているのですよ。思っているのですがね。そんなあなた、妙なワクをはめられるところに、何で行く必要があるのですか。まあ君らのほうは亀田さんなんかに来てもらわぬほうがいいと思うているかもしれないけれども、しかしわれわれでも行きたいなあと思うような状態でなければいかぬのですよ。それはずっと突き詰めてみれば、何もたいした根拠はないのです。だから、この間からモラルとして、モラルとしてというようなことを言っても、そんなことはやめてほしいのですね。
  90. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 先ほど来人事局長との応答を拝聴しておりまして、当然のことであろうと思いますけれども、裁判官の思想、良心の自由、表現の自由、これは憲法で保障されております。と同時に、裁判の政治的中立性、公正ということも、これも憲法上の大問題。この二つの問題が、原則が衝突する場合に、それをどう調和し、解決していくかの、その問題だと思います。その問題を解決するかぎは、裁判官としての職業的モラル、これがやはりものをいうんじゃなかろうか。裁判官が政治的な色彩のある団体なり組織なりに加入しておりますと、いかにその裁判官が公正な裁判をしたとしましても、やはりその団体の構成員であるがゆえに、その団体の方針に沿った裁判をしているんじゃないかという疑惑を国民から持たれることになろうかと思います。やはり裁判官は政治の前衛隊であってはならないということは昔から言われておりますが、そういう点から考え合わせましても、やはり裁判官としては、法律上は許されている、許されていないの問題は別として、裁判官の職業的モラルとしては、これはきびしいモラルじゃなかろうかと、かように考えます。
  91. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 モラルということがどうもよくかからぬのです。それは規律という問題とは全然別なんですね。モラルというと、どうも簡単に使うけれども、なかなかむずかしい問題じゃないですか。
  92. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 普通に使われている意味でモラルと申しておりますんですが、法規範ではないけれども、やはり一つの倫理規範である、かように考えるわけです。
  93. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 今度は倫理規範とおっしゃったですね。じゃ、服務規程とか規律とかということとは別に、倫理概念というか、倫理的な要求でしょう。そういうものが特に裁判官には必要だとあなたおっしゃるのですか。
  94. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 服務規程とか、そういうものはむしろ法規的なものだと思います。倫理規範と申しますと、法規以前の問題であろうと思います。
  95. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 倫理あるいはモラルということでは必要であるけれども、服務規程とかあるいはまた内規とかいうものでしばれないというわけですね。
  96. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) さように考えます。
  97. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私わからないのは、最高裁の長官がおっしゃることは、最高裁の長官ということでおっしゃったものか、あるいは長官である個人ということでおっしゃったものか、その辺のところも私たちわからない。それがモラルということで裁判官に特殊な一つの義務規定みたいのものを要求されるということが、私にはよくわからないのです。
  98. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 長官談話は、やはり個人と長官を区別するというわけにまいりません。最高裁の長官としての談話である、しかし決して最高裁裁判官会議の見解ではない、さようにお受け取り願いたいと思います。
  99. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そうすると、やはり長官という職務を持った、あるいは肩書きを持った長官の個人的な見解だというふうに了解してよろしいのでしょうか。
  100. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) そのとおりに考えております。
  101. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 要するに、モラルということを要求する、しかもモラルは、服務規程とかそういう行政の権限までいかない非常に広範な、あるいは内的な生活、あるいは生活の考え方、そういうものまでも含めて、裁判官に対してこういうモラルが必要である、あるいはそのモラルを持ってない者は裁判官として望ましくない、あるいは不適格である——不適格とはおっしゃらないけれども、望ましくないというふうにきめつけることは、一体どういう権限から出ているものなんですか。
  102. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) これは今日に始まったことではございませんですが、裁判官の先輩として後輩の裁判官裁判官としての心がまえを説くということは、これは日常行なわれていることで、また昔から今日に至るまで行なわれていることでございまして、先日の長官談話も、やはりそれと同じような、先輩としての裁判官の心がまえを説いた——裁判官は自発的によく考えてほしい、それまでのことと思います。
  103. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私のおやじも裁判官ですが、裁判官として生活をしなければならないモラルというものは心得ていたと思います。特に最高裁の長官がそういう発言をしなければならないということは、やはり政治的な問題がそこにあるのじゃないですか。普通の道徳とか、裁判官の私生活ということなら、あらためてそういうことを言わないでも、裁判官は当然考えていることなんです。それを特に憲法記念日に発言されたということは、やはり政治の問題がそこにからんでいる、それがむしろ根本的な理由であって、新たなるモラルというふうに私は考えなければならないと思うのです。これは従来からあったモラルと違って、新しい、つまり政治的な色彩を含んだモラルとして、裁判官にこのたびあらためて要求されたというふうに解釈できると思うのです。この点はどうですか。
  104. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 長官発言は、政治的意図から出たものでは決してございません。また、私どももさようには受け取っておりません。時代の進むにつれまして、裁判官の周囲にもいろいろな問題が起きますので、それを一々法規でしばり規制するというふうなこともできないので、新しく起きた問題について先輩としてどう考えると、そういうことを示すということは、これは別にそう非難さるべきことではないというふうに考えます。
  105. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 終わります。
  106. 亀田得治

    亀田得治君 要するに、最近ずっと起きておる司法行政の上のほうからの発言を見ておりますと、結局は、青法協なり、憲法を成立当初の純粋な形で擁護していきたい、そういうことに対する攻撃としてこれはあらわれておるわけですよ。中立でおれおれといいますが、結局は現在の政治権力が考えているような方向でこう戒めておる、そういうふうにずっと結びついておるのですね。そこに、どれだけ最高裁のほうできれいなことばでおっしゃっても、専門の若い法曹から見たらいやな感じがする。それから、昨年問題になった例の平賀問題ですね。平賀問題から、あなたの談話、最高裁長官の記者会見、こう発展しておるのですが、たとえば平賀問題にしても、最高裁ではきわめて中途はんぱな判断しか示さなかったわけですね。ほとんど全国の法曹というものが、平賀さんの行動に対して、これは裁判に対する干渉だという考え方を示しておるわけですね。例外はあります。鹿児島の果てのほうにおられる方とか、いろいろこれはまたありますが、それはどこでも例外はありますよ。だけれども、ほとんどの方がそういう見解、そうして地元の札幌地裁においても、これは弁護士会等の表現よりは多少やわらかいのですが、やはり介入、干渉という印象が強い決定ですね。最高裁が一番あいまいな結論になっておる。だから、こういうことを若い法曹の人が見ておるわけですね。裁判官の一番生命としておる、干渉されない、独立でやっていこう、憲法法律良心を尊重してやっていこう。最高裁がああいう平賀問題についてもきちんとした処理をすれば、これは非常に若い人の裁判官の志望に影響があるのですよ。それを何か、先輩のアドバイスとして親切心から出たものであってというような、半ば是認しておるようなかっこうで、そうして処分としてはきわめて微温的なことをやっておるのですね。そういうことをやっておって、裁判官が足らぬ足らぬと言っておるのです。足らぬように追い込んでおるわけでしょう。私はまあ、平賀問題についても、法務委員会で聞く機会を逸しておりましたので、この際、これは岸さんからお聞きしたいのですがね。おそらくまあ、最高裁がこういう決定をやられたについては、まあ平賀さんの立場もいろいろ考慮されたのだと思いますが、これは個人の問題ではありませんので、実際に裁判の干渉を受けたということが事実とすれば、事実をはっきり認めていかぬと、結局はあの程度のことは今後もあるぞということになっていくわけでして、これは司法制度の運用上大問題ですよ。で、干渉があったかないか、新聞の記事だけ等で、私も在野法曹の一人として、簡単にそんな批判はいたしません。私も何回もこれを検討してみたんですよ。しかし、これを裁判に対する干渉、介入でないと言ったら、一体どうなるのかということをおそれるわけですね。あの平賀書簡、これは最高からもらったやつ、ここにありますがね。ちゃんと結論としては、政府考え方を尊重すべきだと、こういうことですね。そうして、その理由も一、二、三と分けて書いて、もう裁判書きの理由のような書き方で、メモというものじゃないですよ。きちんと文章までできたものとして渡されておるわけですね。なるほど初めのほうには、「一先輩のアドバイスとしてこのような考え方も有り得るという程度で結構ですから、一応御覧の上、もし参考になるようでしたら大兄の判断の一助にして下さい。」、こう書いてあることは事実なんです。しかし、こういう前ぶれを書けば、肝心の本文のほうはどんなことを書いてあったって免れるということなら、これこそあなた、脱法的に幾らでもいたずらできますよ。私は、こんな前文があろうがなかろうが、こういう本文自体を渡したこと、この形式自体から、これはもう裁判に対する干渉、介入と断定すべきだと思うんですよ。それができておらぬ。  それからもう一つは、いま訴追委員会でいろいろ調べておる最中ですがね、この八月十四日の書簡というものは、突然にあらわれたものじゃないんですね。皆さんもう平賀さんから事情を聞かれておるから御承知だと思いますが、八月四日に平賀さんは福島裁判官の上席の平田裁判官に対しメモを渡しておるわけですね。この行動はね、事件を担当しておるのは福島裁判官なんですから、その上席の人に渡すんですから、ひとつあっちのほうを説得してくれいと、こういう行動であることは、これはもうはっきりしますわね。平賀さんがどういうふうに弁明されておるかもわかりませんが、これはほんとうに親切なアドバイスなら、そんな人を介しなくったって、直接に言うたらいいじゃないですか、ほんとう意味の親切なアドバイスなら。やはり司法行政のルートを通じて干渉していっているわけでしょう。  それと、われわれの聞くところによると、八月十二日の裁判の告知、これを延期さした。表面の理由は、平賀さんとしては、その日が不在になるので、庁舎管理の必要上裁判の日を延ばしてくれ、こういうことになっておりますがね。しかし、どうもそれだけでは理由薄弱でしょう。所長がおらぬとき重要な裁判の告知を延ばさなければならぬと、ほかの裁判所だってそんなことないでしょう。平田裁判官を通じて工作をしたけれども、どうもうまくいっておらぬようだ、十二日に悪い判決が出てしまえば、これはもう手おくれになるから、とりあえず十二日を延ばそうということで、こう延ばしたものとわれわれとしては思える。延びた直後、八月十四日に例の平賀書簡、今度はきちっと書かれたものが福島裁判官に渡されておるわけですね。その前後の経過から見て、これはあんた、干渉でないとしたら、こんな親切な念入りな干渉なんて、これからあるとしても、そうざらにないと思う。なかなか念が入っていますよ。これに対して最高裁が、多少の軽率さを認める程度で、干渉としてこれを見なさない、これははなはだ私は最高裁として大事な問題についてみずから誤ったと思っているんです。何か問題が起きたときにこそ、きちんとけじめをつけるべきなんでしょう。機会を逸したと思うんですね。どうして、あれだけの批判が全国で起きておるのに、最高裁としてああいう手ぬるい処理で終わらしておるのか。これはもう一連の最近の問題ですから、この際総長から御説明願っておきたいと思うんです。
  107. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 平賀書簡問題は、まあ御承知のとおり、決して最高裁の注意処分も平賀所長の行動を全面的に肯定してはおりません。節度を越えた行為であることは、これははっきりしておりますから、この点は申し上げておきます。ただ、平賀判事、福島判事については、ただいま訴追委員会で審議されております。たしか亀田委員も請求者のお一人だと思いますので、現在訴追委員会が独立して調査を行なっておるこの際に、私がここで、公の席でこれについての意見なりを申し上げることは、これは差し控えさしていただきたいと思います。
  108. 亀田得治

    亀田得治君 まあそう窮屈に考えなくても、いろいろおっしゃることがまた参考になるわけですからね。私たちの感じとしては、これはまあ平賀さんもずいぶん中央で活動もされたんだし、最高裁としてはお気の毒だという気持ちが勝ち過ぎたのではないかと思うのですね。だからその辺のところをわれわれは真相を知りたいわけだ。それからもう一つは、最高裁があの処分決定をするにあたって、平賀所長は呼んで事情をお聞になりましたね。ところが、福島裁判官のほうは聞いておらぬでしょう。干渉したかせぬかというのは当事者が一番知っておることで、干渉されたとおこっておるほうの意見なり、前後の事情というものを聞かないで処理されるというのも、私は何かこう不明朗だと思うのですよ。何でそんなことになるのですか。
  109. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 当時高裁長官の熊野さんでございますが、熊野さんを長官がお呼びになりまして、熊野さんから十分に事情を聴取されたわけでございますが、その際、熊野長官をこちらに呼ばれる際に、特に長官から念を押されまして、福島裁判官から何か言いたいことがあるならば十分に聞いてくるように、福島裁判官に会って事情をはっきりと確かめてくるようにという特別の注文を熊野長官におつけになりまして、そして熊野長官は福島裁判官に会われて、そしてこちらに来られて長官に報告されたと、こういうような事情になっておりまして、十分福島裁判官の意向も熊野長官としてはお聞きになって上京なすっているはずでございます。
  110. 亀田得治

    亀田得治君 熊野高裁長官からは文書で報告書が出ておるのですか。
  111. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 今度のたしか訴追の関係であったかと思いますが、熊野長官から、事実を調査した結果につきまして報告が出ておるはずでございます。
  112. 亀田得治

    亀田得治君 いや、最高裁に対してその報告書が出ておりますかというのです。
  113. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 出ております。こちらのほうに報告書が参りまして、こちらから訴追委員会のほうにそれをお回し申し上げたというような手続に相なっておるわけでございます。
  114. 亀田得治

    亀田得治君 これは司法行政上きわめて私は重大視しているのです。だから、その報告書がどういうふうになっているのか、資料としてこれは御提出願いたいと思います。
  115. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) それは訴追委員会のほうにいまそっくり提出しております資料でございまして、これをいま直ちにここで公表申し上げるということについては、いささか疑義があるのではなかろうかと思っておるわけでございます。
  116. 亀田得治

    亀田得治君 いや、疑義も何もないでしょう。どのような法的根拠でそういうことをおっしゃるのですか。訴追委員会も国会の機関だし、こちらも司法行政についての検討をしていかなければならぬ立場があるわけですからね。そういう立場で要求しているわけですから、私はやはり、そういう干渉した、干渉されたという問題があれば、これはあなた当然じゃないですか、両方呼んで直接お聞きになるというのは。間接証拠なんというのは、皆さん専門家じゃないですか、あまり尊重されぬでしょう、そんなものは。人の聞いたものを持って行くというような、そんなことではなしに、やはり福島裁判官自身が来れば、これは皆さんが調べるほうの専門家だから、いろいろこう裏表聞けるはずであります。それが大事なんですよ。どうせ福島裁判官は、あれは個人の問題じゃないとして、いたしかたなくあれは公の問題にしたわけですよね。その公にしたとかせぬとかでも、また議論が別個に起きておりますがね。それはまた別ですわ。別個の問題です、そんなことは。それが行き過ぎだ行き過ぎないということによって平賀さんの行動がいい悪いということと直接関係ないことですからね。それは個人としては非常に悩むでしょう、福島さんもああいう場合は。しかし、ほっておけば自分らが命の綱と考えておる裁判官の独立というものが侵される前例をつくっていくことになる。これは個人の問題としては済まされぬという気持ちで踏み切られたものだと私は思います。だから、その福島裁判官が来れば、どうせ平賀さんに有利なことを言うわけがないわね。そういうことを十分最高裁皆さんがわかりながら、ことさらに呼ばない。そうして高裁長官に間接的によく話を聞いて出て来いというふうな、そんなことはよくないですよ。それはまあ材料は材料としてやはり正確に集めて、その上でまたその集まった材料の批判検討ということが——これは意見が分かれてくる場合もありますよ。だけれども、その材料収集の過程において何か作為をしているような感じを与えるということは——まあその辺の行政官庁あたりではしょっちゅうそういうことはやっていますよ。だけれども、事裁判所扱いですからね。そういうことでは、私はやはりそういうことを知っておる人は非常に批判をすると思うのです。それは呼んだほうが真相把握に有利である、これは認められるでしょう、どうですか。呼ばぬほうより呼んだほうが真相把握により有利である、これは抽象的に答えてください。
  117. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) どうも抽象的にお答えするというのはなかなかむずかしゅうございまして、裁判所はいままで全部やはり高裁長官を介しまして全部そういうように扱うやり方をいたしておりますので、しかも福島裁判官を注意処分するとかなんとか、そういうような問題とは全然離れておりまして、要するに高裁長官あるいは高裁の裁判官会議で十分その点を調査していただいて、そうしてこちらにおいでになって詳細御報告いただければ、その問題の処理としては十分まかなえるんじゃないだろうかということで、そういうような措置をとられた次第でございます。
  118. 亀田得治

    亀田得治君 この八月十二日の期日を変更させた、八月十日の日にそういう話し合いを平賀所長から福島裁判官に持ちかけたようです。それは一体どういうふうに報告されているんですか。これは非常に大事な問題点だと思いますがね。その報告書によればでけっこうですから、どうなっているんですか。おそらく私は真相が伝わっていないんじゃないかと思う。
  119. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) これも事務総長から申し上げましたように、ずいぶんそれらの点を含めて訴追委員会で独自に詳細な調査をなすっておられるようなふうに聞知いたしておりますので、ここで私の口からこまかいことを申し上げるべきではないんじゃなかろうか、やはり訴追委員会の独自のきわめて詳細な調査にゆだねるのが妥当ではないだろうかというように考えるわけでございまして、この際その点についてはどうかごかんべんいただきたいと思うわけでございます。
  120. 亀田得治

    亀田得治君 それもあまり何か理由のないことですね。さっきその報告書全部を出してくれと言ったら、それに対して文句を言われる。それじゃ一番大事と思われる十日の会談ですね、それは報告書によればどういうふうになっていたのか、それも言われない。ちょっと筋が通らぬじゃないですか。私もそれを聞かなきゃどうにもならぬという問題でもないですけどね。しかし、これはそういう問題の取り扱い方として適正かどうかということをわれわれとしても関心を持っておるから聞くわけなんでしてね。それは聞いた以上はお答えもらわなきゃ、この種の程度のことは答えぬでもいいんだと、私から前例つくるわけにまいりません。それは答えてください、部分的なことだけしか聞いてないんだから。答えてならぬ何か禁止規定ありますか、ないでしょう。
  121. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 禁止規定というのは別にあるわけではございませんけれども、しかし、訴追委員会のほうで皆さん各党の代表がお集まりになって御審議なすっていらっしゃるそのさなかに、やはり私からあのときのことはこうだったということについて申し上げるということは慎しまなきゃならないんじゃないか、こう思うわけなんでございます。
  122. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっとあなた勘違いしてますね。その報告書を総合してどういうふうにこの点を判断するか、そう聞いているわけじゃないんですよ。その報告書にはその部分はどのように表現されておりますかということを聞いておるんですからね。その部分だけをここへ出されたからといって、訴追委員会にどんな影響があるわけでもない。向こうにも同じものが行っているんだから、何も差しつかえないわけでしょう。それはそうですよ。そんなことが何の差しつかえあるんですか。ちょうど裁判官の中立性みたいなもんで、何となくそんな気がするということだけでしょうが。そんなこと、あんた質問がある以上はどんどんおっしゃってください。いま報告書ないんでしょう。そこにないのなら、後刻再開のときまでにそれを取り寄せて、そうしてそれははっきりしてくださいよ。当然でしょう、だれが考えたって。意見をおっしゃってくれと言っているんじゃないんだ。
  123. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) いろいろな関係がございますので、検討はいたしてみたいと存じますけれども、何しろ現にもう訴追委員会で何度も、外形的なことしかわかりませんけれども、裁判官を証人として四人お呼びになったりして、非常に詳しくお調べ中だと、訴追請求人の方も何かお呼びになったというようなことも聞きましたし、そういうようなときに、私の口から、あれは、あのときの事柄はこういうことであったということを申し上げるのはやはり差し控えたほうがいいのじゃないかというように思うわけなんでございます。
  124. 亀田得治

    亀田得治君 それがわからないのだな。一事が万事ということがありますが、そんな調子でいろいろなことをやっておられるのですか、最高裁というのは。何か人事問題でもお聞きしますと、なかなかおっしゃらない。個人の秘密をだれも知りたいとは思っておらぬのですよ。だけれども、なかなか政治的な、社会的な関心を呼んだような場合でも、個人の秘密というようなことに隠れて一切おっしゃらない。よけいいろいろな疑惑が生ずるわけですね。きょうはこの質疑を通じまして——どうも最高裁の頭ちょっと古いですな、古いですよ。戦前の区裁判所みたいなものだ。区裁判所簡易裁判所を比較しましたがね。区裁判所みたいな感じですわね。もっと明朗にあなたどんどんやったらどうですか。それから青法協の皆さんが、司法試験の結果、その採用の問題ですか、それについて最高裁に会いに来た。一人だけしか名前言わぬ、あとは名前はわからぬじゃ——そこで皆さんがあかすと何かこう差別扱いするのじゃないかという印象を与えるから、またそういうふうになっていくのですよ。それはもうみんなはっきり名前してくれ、決してそんな差別扱いなんて考えていやせぬと口でも言い、平素からもそういう印象を与えておれば、相手だってそんなことしませんよ。自分であなたそういうふうに追い込んでおいて、現実に一人しか名前言わぬというと、それはけしからぬ、だから何とかという、そんなことじゃぴちぴちした生きのいいのを引き抜くわけにいかぬですよ。みんな逃げてしまう。こんなわかり切った資料の提出一つについてそんなに渋るということは、最高裁の判断求めているんじゃないのですから、しかもあなた門外不出じゃないでしょう。訴追委員会のほうへ出しておるというなら、同じものをここに出したらいい、そこの部分だけ。これは絶対出してください、あとから。  それじゃ委員長、ちょっとこれで、裁判官採用の問題についての点は一区切りします。
  125. 山田徹一

    理事(山田徹一君) 十分間休憩いたします。    午後二時五十分休憩      —————・—————    午後三時三分開会   〔理事山田徹一君委員長席に着く〕
  126. 山田徹一

    理事(山田徹一君) それでは再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。
  127. 亀田得治

    亀田得治君 それでは次に、裁判所と日弁連のこの改正案に関しての関係ですね、これをひとつ逐次聞いていきたいと思います。  その前に、臨時司法制度調査会、昭和三十九年八月の意見書ですね、これが相当いろいろ問題があるわけですが、この意見書の中で、いわゆる法曹一元の制度ですね、これについての結論的な集約の部分でいいのですが、どういう集約になっておるか、これをまず明らかにしてほしいと思います。
  128. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 臨時司法制度調査会の意見は、亀田委員委員であられたわけで、つとに御承知のとおりでございますが、調査会そのものの決議といたしましては、「法曹一元の制度は、これが円滑に実現されるならば、わが国においても一つの望ましい制度である。しかし、この制度が実現されるための基盤となる諸条件は、いまだ整備されていない。したがって、現段階においては、法曹一元の制度の長所を念頭に置きながら現行制度の改善を図るとともに、右の基盤の培養についても十分の考慮を払うべきである。」というのが「採るべき制度」になっておりまして、その前提としては、先ほど亀田委員もちょっとお触れになったと思いますが、甲説、乙説、丙説といろいろ分かれまして、いろいろ各委員が御協議になって、最終的には、先ほど読み上げました結論という点で全会一致きまったように記憶いたしておる次第でございます。
  129. 亀田得治

    亀田得治君 まあ経過はそのとおりですが、そこで最高裁にお聞きしたいのは、「右の基盤の培養についても十分の考慮を払うべきである。」、こう結んでおるのですが、最高裁として、その基盤の培養についてどんなことをいままでおやりになったか、これをまず明らかにしてほしい。
  130. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) この臨司意見書で「採るべき制度」についてうたっております中に、いま亀田委員から御指摘の「基盤の培養」といっておりますのは、そのあとにございます「具体策」を受けているものであると、こういうふうに当時も言われておりましたし、私どももそう理解いたしております。したがいまして、この具体策の第一から第一〇までについて施策してまいりますことが、まさに基盤の培養である、かように考えるわけでございます。もっとも、その内容によりまして、法曹一元の基盤の培養からは比較的遠いものと、それからかなりそれに密接なものと、かように分かれると思います。その中のどの項目を実施したかという質問について申し上げてよろしゅうございましょうか。少し時間がかかると存じますが、ごく簡単に申し上げますか、それともあるいは……。
  131. 亀田得治

    亀田得治君 ええ、おっしゃってください。
  132. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) それでは申し上げたいと思います。  一つ一つ申し上げますことは非常に冗長になるかと思いますので、項目の順序を追ってごく簡単に申し上げたいと思いますが、「任用制度運用の改善」の問題につきましては、あとでいろいろお話が出ると思いますが、日弁連との連絡協議の席でいろいろお話が出たわけでございます。  それから、「簡易裁判所判事制度の改善」の問題につきましては、できる限り法曹有資格者を充てるということにつきましては、常時努力しておるわけでございますし、また選考任命の判事の素質の向上につきましても、選考試験のあり方、あるいは研修等を通じまして努力しておるわけでございます。ただ、その次にございますいわゆる法曹資格の付与の問題は、これは弁護士会も強く反対しておられるところでございますし、私どもとしても当面手をつける考えはないわけでございます。  「裁判官の増員」は、御承知のとおり毎年数名ずつでございますが、実現しつつあるわけでございます。  「裁判官の補助機構」の問題につきましては、(二)にございます地方裁判所に特殊事件の調査官を置くということについて、裁判所法改正をしていただきまして、予算も計上され、いま数名の調査官が働いておるわけでございますが、この点につきましても弁護士会のほうには若干の御異論がございますので、その後、その御意見も伺い、その運用の実情を考えるということで、伸び悩みになっているわけでございます。  「弁護士制度」の問題は、弁護士会のほうでお考えのことであろうと存じます。  「検察官制度」のことは、法務省のほうでお考えのことであろうかと存じます。  「司法試験制度」の改善の問題は、先年法務省のほうで立案を準備されたように伺っておりますが、その後法律案としては出ていないように承知しております。  「司法修習制度」の改善の問題でございますが、施設の拡充整備につきましては、現に建築工事実施中で、近いうちに完成する予定になっておるわけでございます。  そうしてその二以下の問題につきましては、司法研修所の管理運営について、法曹三者で、学識経験者を含めますと四者で構成する委員会を設けることになっておりまして、これにもいろいろ経緯はございましたけれども、約二年間実際に委員会を開いたわけでございますけれども、最終的には、具体的な答申が出ないままに終わったわけでございます。またお尋ねでもございますれば詳しく申し上げたいと思います。  一番問題になりますのがその第六の五にございます「司法協議会の設置」でございまして、当時、我妻会長も、個々の項目については各委員にいろいろ御反対もあり、また審議の不十分なところもあるけれども、要するにこの司法協議会でもって臨司意見について十分考えていくことを期待するという談話を発表されたように記憶いたしております。そして、臨司意見の出ました直後の昭和三十九年の十月ごろから、法務省及び日弁連と御相談をいたしまして、司法協議会の準備幹事会というものを設けまして、日弁連からも正式な推選にかかる幹事に出ていだたいて、約六回準備幹事会を開いていただいて、司法協議会の運営についての要綱案を作成する作業をやっていただいたわけでございますが、御承知のとおり、この年末の日弁連の臨司総会の決議におきまして、いま問題になっております簡裁のあり方についての反対の決議をされますとともに、司法協議会準備幹事会から幹事をお引き揚げになったわけでございます。私どもなり法務省も同様であろうと思いますけれども、せめて司法協議会を開催することについてだけ御協力がいただきたいということで、切にお願いしたわけでございますけれども、総会の決議があったからということで、一方的に準備幹事がお引き揚げになりましたために、司法協議会を設置するに至らず今日まで及んでおるわけでございます。裁判所と弁護士会の連絡協議会は、いわばそれにかわるものと言うと、また弁護士会からおしかりを受けるかもしれませんけれども、ともかくその司法の運営について協議をするという意味ではこれにかわる、ただしそれは臨司意見を実現するためのものではないという前提のもとに、いま連絡協議会を開くことになった次第でございます。  そのあとの給与の改善の問題につきましては、当時、経験豊富な裁判官の処遇をよくするために一号積み上げをいたしましたことと、それから簡裁判事の号俸を一号積み上げをいたしました。また、判事補の初任給の引き上げをいたしたような次第でございます。これらが第七の一に当たる部分でございます。  それから退職手当の問題につきましては、御承知のとおり、最高裁判所裁判官の退職手当の特例の法律が制定され、実施されておる次第でございます。  第八にございます「裁判所の配置等」の問題は、これは各方面にもいろいろ御異論の多いところで、目下いろいろ研究中ということになろうかと思います。  それから第九の「裁判手続の合理化」の問題、これはその後、たとえば借地非訟事件手続その他各種民刑の手続法の制定が行なわれておるわけでございます。  それから「簡易裁判所の事物管轄」の問題は、むしろ臨司意見について問題になっておるわけでございますけれども、私どもとしては、臨司意見の事物管轄の範囲の拡張の経済ベース以上のものという理解がございますので、この意見の実現というふうにはこの法律案考えていないわけでございます。  「司法委員制度」の改善及び活用につきましては、その後検討いたしておりますけれども、具体的な結論を得るには至っておらない次第でございます。  「その他」のところにございますうちで特に申し上げたいことは、やはり執務環境の整備改善と、それから事務の近代化と申しますか、この点につきまして、御承知のとおり、いわゆる裁判官研究庁費というものが計上されまして、裁判官室の調度品、あるいは図書、物品というものを充実するということについて、毎年一億八千万近い予算が計上されて、相当に改善しつつあるのでございます。  宿舎につきましては、逐次ふえてまいりまして、裁判官の宿舎は、質の点は別といたしますれば、数の点では九割をこえる充足率になっておる、こういうような状況でございます。ごく大まかに申し上げればかようなことでございますが、ただ亀田委員は臨司委員であられましたし、いまそういうお話ございましたので申し上げたわけでございますけれども、実は私ども日弁連との連絡協議の席で申し上げておりました段階では、むしろ臨司意見を実現するということでこういうことをやるということについては、非常な反情をお示しになるわけでございまして、そのこと自体がいいことであるからやるということで、それが臨司意見の実現であるからと理由づけをすることについては、いわば禁ぜられておるような形になっておるのでございます。亀田委員のお尋ねにお答えするということでこういうことになりましたけれども、これが臨司意見の実現ということにストレートにおとりいただくことがいいのかどうか、その辺のところはきわめてデリケートでございますので、御了承いただきたいと思います。
  133. 亀田得治

    亀田得治君 いろいろまたお聞きしますが、臨司でやはり長時間論議をしたのは、臨時司法制度調査会設置法にも書かれておるように、法曹一元の制度をどう考えるか、これが中心であったわけです。そのためにずいぶん時間もとられたわけですが、ところが結論としては、先ほどお答えになったように、きわめて不十分な結論しかこれは出ておらぬのです。そこで、本来ならばその辺でもう一ぺん調査会としてはどうするかということをもう少し慎重に検討すべきものであったのではないか、若干私たちもそういうことは申し上げたつもりですが、ところが、その一番大事な問題が抽象的な申し合わせで終わってしまって、そのあとを裁判所や検察庁が用意していた具体的なものがどかどかと出てきたというのが実際の経過ですね。あとの具体的な問題になると、十分な論議の時間なり、あるいはまた外部の専門家意見を聞くなり、そういう点で相当欠けるものが私あったんじゃないかと思うのです、率直に言って。それはだれでも司法制度のよくなっていくことについて一生懸命考えておるのですから、ものごとはやはり率直に見ていかなければいかぬと思うのです、事実を。その辺にやはり一つの問題があって、どうも臨司の意見書ということになると、なかなか扱いが難航しておるようです。いま総務局長が、意見書の中の法曹一元についての一応のばく然とした申し合わせがあって、それ以後のことが「右の基盤の培養」につながるのだと、こういうふうな説明でありますが、私は必ずしもそれほど関連性があるとは考えていないのです、関連のあるものもあるだろうが。まあよく考えてみれば、第二編でいろんな具体的なものを扱っておりますが、これは別に意見書というものがあろうがなかろうが、適当なことはやっていったらいい問題なんです。だから、第二編のことが即法曹一元の基盤の培養、それにつながっておるんだと、これはちょっと私は論理の飛躍があるように思うのですよ。あるいは一部の人はそういうふうに考えておったかもしれぬ。だからそういう点はひとつこの際はっきりしておいたほうがいいと思います。それともう一つは、この法曹一元の基本問題について時間がずいぶんとられたことは事実で、あとは言うてみればその法曹一元の問題ほど緻密でなかった。しかしまあ、こういう結論ができたということで、つくったほうはずいぶんこだわっているのじゃないかと思うのですね。ぼくらは、こだわるとすれば第一編のほうに実はこだわりたいですわ。これをもっと何とか実のあるものにしたいものだなと、いまでもそう思っております。しかし、第二編以下のことは、これはまあじっくり考えてみるといろいろやはり問題があるものもありますよ。したがって、あとのほうについてあまり金科玉条のごとく見せびらかすというふうなことでは、かえってほんとう司法制度を心配している立場と私は矛盾してくると思うのですね。たとえ一たんきめたって、あとからいろんな意見が出てくれば当然謙虚に聞くべきであるし、なるほどと思えばそれに従ったらいいわけだし、だからそういうゆとりがないといかぬと思うんですね。ただ問題を投げかけたことの功績だけでいいですよ、言うてみれば。実際大問題なんですから、そう簡単に、二年間一瀉千里相当詰めて熱心に審議やられたことも私も知っております。しかし、こんな問題は短時間に、ちょうど裁判をやるように集中的にやったからといって、なるほど国家百年の大計が生まれてくるというものでも必ずしもないわけですわね、だから。その一編と二編というものを区別して、そうして二編のほうにはあまりこだわらぬように、もっと意見があれば聞かしてくれと、なるほどという場合にはそれでやっていくというふうな態度じゃないとどうもうまくないように思うんですよ。どうですか、その点。
  134. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) この臨司意見書の二編のほうにこだわるなということは、私ども日弁連から繰り返し繰り返し言われておりまして、もう臨司意見書ということは口にしないというくらいな気持ちでおるくらいでございますから、決してこれにこだわる気持ちはございません。ただ、いま亀田委員のお話の中で、この具体策と基盤培養とはあまり関係のないような御趣旨の御発言もございましたけれども、しかし意見書自体は、この五〇ページのところで、「法曹一元の制度が実現されるための基盤の培養という見地からも不可欠の問題である司法試験制度司法修習制度、弁護士制度及び法曹一般の問題について検討し、また、以上の諸問題に関連して検討の必要があるものと認められる裁判所の配置、裁判手続司法行政一般、裁判・検察事務の近代化等の問題についても検討した。」、こういうことで、しかしこれが全員の御意見ということになるかどうかわかりませんけれども、とにかく臨司意見書では、一応その具体策が大体基盤の培養に当たるような理解ではなかったかというふうに考えるわけでございます。しかしながら、もとより私どもとしては現時点においてはこの具体策にこだわる気持ちはございません。ただ、何分にもこの具体策は非常に広範にわたっておりますために、いま司法制度について何らかの改善を加えようと考えますと、全然これと関係のないところの問題点というものはいわばないとも言えるわけでございます。この結論には決してこだわりませんけれども、この具体策と全然離れた別のところで司法制度の改革を考えるということ自体がきわめて困難である。非常に網羅的になっておりますので、何か考えますとたいがいこれに触れてくる、こういう関係にはなっておると思います。しかしながら、この結論を金科玉条にする考えは毛頭ないわけでございます。しかし同時に、この臨司の当時においては、亀田委員もつとに御承知のとおり、大部分の項目、たとえば法曹資格の問題等は別でございますけれども、それを別といたしますれば、ほとんど大部分の項目について、全会一致の結論でございます。その全会一致という中には、当然弁護士会の代表の方もお入りになっておることでございますし、当時の衆参両院の与野党の議員の方もお入りになっておるわけで、当時としては一応大部分のものが法曹——国会の皆さま方も含む法曹一つの総意の結集である。ただ、若干の項目は多数決によっておりますので、これは別でございますけれども、そういう関係になっておるということも、一応亀田委員はつとに御承知のことでございますけれども、御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  135. 亀田得治

    亀田得治君 この法曹一元の制度の実現と関係のある問題も多々あることは、これは事実なんです。しかし、そんなことは、別に答申書に書いてなくたって、当然法律家であれば考えるべき項目の問題なんですよ。だから、それよりも大事なことは、法曹一元について言うて見たら具体的な結論が出なかったわけですね。土台のほうがはっきりしないのに、はっきりしないままで、それにつながる個々の問題を少し急ぎ過ぎたのではないか、これはやはり私は、反省としてそういうことを考えなければいかぬのではないかと思うのです。しかも、そのあとの問題については時間があまりない。だから、そういう関係ですから、いま総務局長のほうからお答えになったような気持ちでひとつ扱っていってほしいと思います。  それで、この法曹一元についての一番大事な問題は、やはり法曹三者が重要な問題について十分の討議ができる、このことが大前提ですわね。一元化していこうというのだから、そのつながりがなければ初めからこれは問題にならぬことです。だから、それをしっかりつくることが一番大事なことなんで、何か個々の具体的な問題をああするこうするということの前に、だれでもそのことは考えなければならぬ。ところが、現状を見ておりますと、その個々の問題を解決するために——解決するというか、それを話がつかないままに押していく、そういうことのために、法曹一元にとっての土台である法曹三者のつながり強化、そういうものが逆に私はくずれていくことを心配しているのですね。これは角をためて牛を殺すのたとえです。あなたのほうは多数で押し切ったと思ったって、一番大事なところは死んでしまう。それも承知でやるのだというのなら、これはむしろ法曹一元をぶちこわしていく、表に出してはしかられるから、腹の中ではそう思っておると勘ぐられても、私はしかたがないと思う。で、実際この程度の具体的な問題で、なぜきちんとした意思統一ができて、そうしてその上でこの処理をしていくということができぬのか。午前中にも申し上げましたように、地裁状態がとてもそういうことは待っておれぬ。具体的な証拠でもお出しになるならまた別です。しかし、一般的にはひところより緩和しておることは事実なんですね。この点を私は今度の経過をだんだん聞くにつれて実は非常に残念に思っておるところなんです。あなたのほうは、いや協議はだいぶやられたのだが、結果は意見が違うのだとおっしゃるかもしれぬが、そこをもっと努力しなければ私はいかぬと思う、法曹一元ということを本気で考えておるなら。これは事務総長そういう点どういうふうにお考えになっておりますか。
  136. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) ちょっと私から先に、大局的な点はあとから事務総長から説明することにいたしまして……。
  137. 亀田得治

    亀田得治君 こまかい経過はまたあとから逐次聞きます。
  138. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 先ほども申し上げたところでございますけれども、私どもとしては、おっしゃるとおり、個々の項目ではなくて、やはり司法協議会を設けることが法曹一元のために一番必要である、かように当初から考えたわけでございますけれども、司法協議会を設けることについては弁護士会の賛成が得られないわけでございます。しかも、その賛成を得られない理由は、その司法協議会というものがいわば臨司意見に出てまいりますと、それが臨司意見の実現のためのものになる、こういうことでむしろ反情をお示しになるわけでございます。亀田委員のお話は、臨司意見の中でも少なくとも「採るべき制度について」のこの結論の部分についてはみんなで尊重すべきものだということでございますけれども、日弁連のほうは必ずしもそういう御意見ではないわけでございまして、むしろ臨司意見については非常に全体として消極的な評価をしておられるようであります。そこでなかなか話し合いの場が持てないというのが実情になっておるようでございます。
  139. 亀田得治

    亀田得治君 いや、そんな程度のことはもっと努力すればわかることですよ。それはあなた、天下の法曹の代表者ですからね。それは突っ込んで討議をしていけば、適当な結論に私は当然到達できるものだと思っておるんです。だから、はなはだ私は現状としては遺憾に思っておるんですが、そこで逐次もう少しこまかく聞いていきます。臨司の意見書に対する日弁連の批判が昭和三十九年十二月十九日の臨時総会で行なわれましたね、この内容をちょっとおっしゃってください。できるだけ文書でやってください、正確に。
  140. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 原文を読み上げたほうがよろしゅうございましょうか。
  141. 亀田得治

    亀田得治君 ええ。
  142. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) それでは、昭和三十九年十二月十九日臨時総会の決議の内容でございますが、  理由は省略いたします。   関連決議として、  以上でございます。
  143. 亀田得治

    亀田得治君 ところが、最高裁のほうでは、三十九年八月の意見書を受けて、三十九年暮れからの国会に対して、一部制度化していこうということをおやりになっておったようですね。そのために日弁連との間でもめるわけでしょうが、その間の事情をちょっと説明してください。
  144. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 御承知のとおり、臨司の意見が出ましたのは八月の末でございます。同時に、われわれが翌年度の四十年度の予算要求をいたします一応の要求の締め切りも八月末でございます。そういう関係で、これはこの種の意見が出まして数年放置しましては、予算化はかえって困難になるわけでございますので、意見が出ますればすぐ次の年度の予算に一部織り込むのがいわば従来の役所のやり方としては当然の手順であったわけでございます。ただ、何ぶんにもそういうように答申の出ます時期と予算の締め切り時期とが一致しておりました関係で、答申の具体化いたします段階で予算要求も作成せざるを得なかった、こういう関係一つあるわけでございます。それから同時に、先ほど申し上げましたように、とるべき策の中でも比較的多数の方の賛成を得られる問題、特に全会一致の問題と、それから多数決があり、それから一部の方の非常な反対のあります問題とございますので、全会一致のものから優先してやってまいるということが当然のことであろうかと考えたわけでございます。その中で最終的に実現いたしましたのが、先ほど申し上げました研究庁費でございますが、同時に簡易裁判所の事物管轄の問題につきましても、全会一致の結論でございましたので、これはその金額の幅等は別といたしまして、最終的には御了解が得られるものと、かように考えまして、予算の中に織り込んだわけでございます。それで、予算に織り込みます際には、要するに裁判官の増員をどこでとるかということになるわけでございますが、当時臨司で考えられておりました簡裁の事物管轄の拡張はかなり大幅な拡張になるわけでございますので、そうなりますれば自然増員は簡裁のところを中心に要求するということにならざるを得ないわけです。したがって、裁判官の増員を従来要求してまいりましたものをまとめまして、いわば簡裁の部分で要求すると、こういう形になったわけでございます。ただそれは、従来から、御承知のとおり、裁判官の増員要求というものにつきましては、八月の段階での見通しと、十二月になってからの見通しと、いろいろありますので、一応の見通しということで要求したものでございまして、その間には先ほど申し上げました準備幹事会等も開かれまして、その準備幹事会においては、簡裁の事物管轄の問題はこの準備幹事会ではやらずに、法制審議会のほうでやることにしたいというような弁護士会側の幹事の御提案もありまして、それを了承したというような経過もあるわけでございまして、そういうような関係もあったわけでございますが、法曹資格の問題を契機として、先ほどから問題になっておりますような決議が出たというふうに了解しておるわけでございます。
  145. 亀田得治

    亀田得治君 だから、答申の意見書が出た、すぐそれに基づいて予算化の行動を起こした、やっぱりこの辺が少し性急過ぎる点があるわけですね。臨司では、実際のことを、簡裁の設立当初からの性格論とか、そういったようなことまで論議されたという記憶がどうも私にはないわけです。ともかく当時支配していたのは、地裁事件の渋滞が非常に多い——調査会設置法自身もそういう立場からの提案ですからね、そのことが頭にき過ぎていた感じですね。それで、最高裁のほうでともかく調査会で通ったんだから予算化しようというので、その後日弁連から以前に比べるならば本質に触れた問題点の指摘なりが起こってきたのがこの経過ですね。まあ結局最高裁も、それによって四十年度の施策としては簡裁の問題はこれを取りやめたわけですが、その後最高裁のメモというのが弁護士会側に出されておりますね、これちょっと説明してください。このメモの出された事情並びに内容。
  146. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) いま亀田委員からお話がございましたけれども、この簡裁の事物管轄の問題は臨司では全会一致になっておるわけでございますし、引き続き準備幹事会でも話が出ておりますので、私どもはいわばその線に乗って考えておったつもりであったわけでございます。したがいまして、法曹資格の問題とは当初から切り離しておったつもりであるわけでございます。ただ、弁護士会のほうで法曹資格の問題と非常に結びつけていろいろ話が出てまいりまして、臨時総会の決議になりましたので、いま御指摘のように、四十年度の策としては取りやめたわけでございますが、しかしながら、弁護士会となるべく話し合いをしたいということは私どもとしてもつとに希望しておったところでございまして、弁護士会のほうでもそういう動きがあったようでございます。われわれとしては、できることならば法務省も加え、さらにできることならば学識経験者をも加えました、いわば法曹四者の協議会を持ちたいということでいろいろお願いしたわけでございますけれども、その点についてはどうしても了解が得られないまま、それでは次善の策として、裁判所と弁護士会と連絡協議をする、そして法務省とはまた別個に裁判所法務省と話し合いをすると、こういう三角関係的な関係にならざるを得なかったわけでございます。そうして、いろいろメモの文章等につきましても、裁判所の内部と弁護士会側の内部におかれて検討されたところといろいろ突きまぜてまいりまして、そうしてでき上がりましたのがいま御指摘のメモでございますが、この内容はあとで読み上げますけれども、ただこれは、こちらから一方的に差し入れたというよりは、取りかわしたものでございまして、その点は弁護士会でも当時認めておられまして、ある刊行物に出ておるところによりますと、日弁連の理事会の議事録の中に、「辻事務総長から後日九月三十日最高裁との間にメモを取りかわす」と、こうなっておるわけでございます。一方的に差し入れたものではないわけでございます。  で、そのメモの内容でございますが、   司法制度の改革については、いわゆる法曹三者が協力すべきものであることは、いうまでもない。したがって、裁判所としては、右につき、貴会と十分協議したいと考える。   とくに、貴会の総会の決議もおることであるから、   (一) いわゆる特任簡易裁判所判事の法曹資格ないし弁護士資格の問題については、貴会と十分協議を重ね慎重に検討を続けたいと考える。   (二) 簡易裁判所の事物管轄拡張の問題は、(一)と切り離して早期にその実現を図りたいが、拡張の程度その他機構、運営等については、貴会と十分協議する用意がある。  さらにこれと関連するメモもございますが、この際問題がこんがらがるといけないと思いますから、一応当面の問題に関係ありますこのメモだけに限りたいと思いますけれども、こういうメモを取りかわすということになったわけであります。ここで、私どもとしては、法曹資格の問題についての弁護士会の強い御反対を理解しておりますので、それについては、「慎重に検討を続けたい」という表現をとり、一方の事物管轄の問題につきましては、「早期にその実現を図りたい」、こういう表現をとって、使い分けたつもりでございます。
  147. 亀田得治

    亀田得治君 その関連するメモというのはどういうことですか。もう一切がっさい明らかにしてください。そればやはり日弁連との間で取りかわされておるものですね。
  148. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これはむしろ日弁連側からいただいたと言っては誤弊があるかもしれませんけれども、まあそういう趣旨になるわけであります。要するに、法曹資格の問題につきまして、私どもとしては慎重に検討を続けるという趣旨になっておりますけれども、これには法務省が加わっておられないわけでございますし、さらに特任検事の法曹資格の問題に関連いたしますので、その点につきまして、特任簡裁判事が特任検事よりも不利にならないという趣旨の了解をいたしたわけでございます。
  149. 亀田得治

    亀田得治君 それはやっぱりメモで文章になっているのですか。
  150. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) さようでございます。
  151. 亀田得治

    亀田得治君 文章のとおりちょっと読んでください。
  152. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 読み上げてもよろしいのでございますけれども、こういう趣旨でございますし、これは日弁連との関係もございますので、私が申し上げた趣旨だというふうなことで御理解いただければありがたいわけでございますが……。
  153. 亀田得治

    亀田得治君 また資料のことになってきたが、そこにあるんでしょう。
  154. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) ございますけれども、ただ、日弁連とのお約束がございますし、そもそもこのメモ自体が公表しないというたてまえでできたものでございます。ただ、その後いろいろ問題になってまいりましてから、もう公表せざるを得なくなって、むしろ日弁連側から御発表になりましたので、私どもも発表しておるわけでございますけれども、しかし片方のほうは日弁連は御発表になっておりませんので、日弁連の御了解を得ずに発表することはいかがなことであろうか、かように考えるわけでございまして、しかしこれをお目にかけることについて少しもあれはないわけであります。
  155. 亀田得治

    亀田得治君 そこで、その後裁判所・弁護士会の連絡協議会、こういうものが持たれるわけですが、その辺のいきさつをちょっと具体的に説明してください。
  156. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) このメモはそもそも連絡協議を開こうという趣旨でできたものでございますので、これができましたときには、すぐ続いて連絡協議が開かれる順序になったわけであります。そうして、ただその連絡協議の申し合わせというようなことで、この細部の運営をきめるというようなことで若干時間がかかった等の関係がございまして、第一回が開かれましたのが昭和四十一年の一月二十日でございます。  その際に連絡協議のまず申し合わせをいたしました。それの重点を申し上げますと、「司法制度の運営および改革について、最高裁判所日本弁護士連合会とは、昭和四〇年九月三〇日付メモにもとづく連絡協議をおこなう。」「協議出席者は、裁判所・弁護士会それぞれ二〇名以内とし、かならずしも双方一致した人数たることを要しない。」、実は、私どもとしてはもう少し人数のことを希望したわけでございますが、弁護士会のほうはぜひ二十名にしてほしいということで、二十名になったわけであります。この協議は、十分に意見の交換をして意思の疎通をはかることを主眼とし、多数決による決議はしない。なお意見の一致をみたものの実現については双方協力する。」、こういうような趣旨の申し合わせになっておるわけでございます。
  157. 亀田得治

    亀田得治君 これはやはり申し合わせ文書になっているわけですね。
  158. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) そのとおりでございます。
  159. 亀田得治

    亀田得治君 これはいいですね、公表してもらって。
  160. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) もうすでに公表されておりますので、資料として提出いたします。
  161. 亀田得治

    亀田得治君 そこで、私が聞いておるのでは、ともかく両者の意見が一致したものから実行していこうというふうになっておるのですが、その点どうですか。
  162. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 実はその点も、連絡協議の申し合わせをつくります際に非常にいろいろ議論が出たわけでございます。弁護士会としては完全に意見の一致したもののみに限るというようなたてまえで御主張になっておったわけでございますが、私どものほうとしては、これは必ずしも裁判所の権限でできる事項ばかりではございません。現に、たとえば事物管轄の問題もそうでございますが、その他要するに最高裁の規則なり運営でできる問題ばかりではございませんし、規則でやる問題につきましても、こういう連絡協議で意見が一致しなければ規則は制定できないということを公式にお約束することもできませんので、結局意見の一致をみたものの実現については協力するという表現で、双方の主張を突きまぜたということになるわけでございます。そして、ただ実際の運用としては、初めはなるべく意見の対立しない問題から論議に入っていこうというような話ではございましたが、意見の一致しないものを協力しないというわけではむろんないわけで、そういうことでございますれば協議の意味もないということで、むしろ十分に意見の交換をして意思の疎通をはかる、そういうところに重点があるということでございます。
  163. 亀田得治

    亀田得治君 それは意思の疎通をはかるというのは、これは大前提である。そして、疎通をはかって意見を一致させて、実現をしていこう、どうもそういうふうにわれわれは聞いているのですが、いまの御説明ですと、たとえば最高裁の規則だけでやれるもの、最高裁の独自の権限に属するものまでについては若干問題もあるというふうな御説明がありましたが、それは私もわかります。しかし、いま問題になっているのは、事物管轄といい、あるいは法曹資格にしても、いずれもこれは法的な措置の必要な問題ですから、だからそういう別に争いにもなっておらぬことを特に持ち出す必要もないわけでして、問題の焦点になっておる大事な点は、これは法改正が必要だし、裁判所独自でやれる問題からもうはみ出ているわけですから、腹の中はどういうふうに実際はお考えになっておったのか知らぬが、でき上がった申し合わせ書そのものから言いますと、やはりこれは単独で一方的にやることはしないというふうに解釈するのが正しいんじゃないですか。規則でやるやつは別ですよ。
  164. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは私、案をたくさん持っておりますので、その案の経過をごらんいただくと、私どもがそういう趣旨でなかったことははっきりするかと思いますが、私どもとしてはできる限り意見を一致するように努力したいとは考えましたけれども、意見が一致しなければやらないというわけにはいかないということは、一般的に当時から連絡委員の方には申し上げておったわけでございます。その点はしかしとにかく努力しようということで始めたわけでございます。
  165. 亀田得治

    亀田得治君 その辺に多少食い違いがあるように思いますが……。そこで、そういう申し合わせに基づきまして、その後の連絡協議の運営状況ですね、どういうふうに進んだですか、具体的に日時を追って説明してください。
  166. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 全部の連絡協議の経過を御説明申し上げますと、非常に時間がかかるかと思うのでございますが、要するに第一回は四十一年の一月二十日に行なわれまして、その際には、先ほどお話ございましたように、なるべく意見の対立しない問題からまず入っていこうというような話し合いに基づきまして、弁護士から裁判官への任用についてという問題を私どものほうから出したわけでございます。その後数回はそういう問題で、なお弁護士会のほうからは司法修習の問題等が出てまいりまして、それからその間に、たとえば予算の問題とか、裁判所法改正の問題等も出たわけでございます。で、大体当初は毎月一回ということでございまして、比較的毎月一回で大体行なわれておったわけでございますが、ただ、四十一年の五月の長官所長会同の際に、事務総長の説明の中に、この連絡協議がいわば臨司意見の実現のためのものであるというふうに受け取れるような表現があったということを弁護士会の側で強く問題にされまして、まあそういう関係で、少しこの進行が渋滞し出したわけでございます。私どもの趣旨としては、必ずしもこの連絡協議が臨司意見の実現のためのものというふうに考えておったわけではございませんけれども、ただ、説明の表現がややそういうふうにとれるようなニュアンスを持ちまして、そういうことでは弁護士会としては話し合いが進められないというような御意見があったわけでございます。私どもとしては、実はこの連絡協議は、法曹資格の問題は当分というか、まあ大体相当長期にわたって取り上げない、しかし事物管轄の問題は早期に取り上げてもらうという前提でございますから、事物管轄の幅いかんによっては、臨司意見とは関係ないということにいたしましても、何らかの意味で臨司意見には関連するわけで、そういう意味で、およそ臨司意見と関連するものは扱わないということであれば、連絡協議としては非常に困るわけで、その辺から少しどうも考え方に差があるのではないかというふうな気持ちも持つに至ったわけでございます。まあそういうようなことがございまして、やや進行が難渋いたしたわけでございます。そうしてその間私どもとしては、先ほど申し上げました事物管轄の問題について、もうそろそろそれに入っていただきたいということをお願いしておったわけでございますけれども、連絡協議の議題そのものを連絡小委員の議によってきめる、連絡小委員意見が一致するまでは連絡協議の議題に出さないという一応運用にしておったわけでございます。これもむろん法的な拘束力とかなんとかいうのじゃなくて、なるべくそういうふうにやっていこうということでやってまいったわけでございます。ようやく昭和四十二年の九月になりまして、その問題に入ってもいいだろうというふうに弁護士会側の連絡小委員の方のお話がありまして、ただ、ストレートに事物管轄の問題というふうにして出すのもどうかと思われるので、もう少し表現をやわらかく出したほうがというようなお話でございました結果、結局、第一審裁判所のあり方についてという表現で出すことにして、四十二年九月七日の連絡小委員会で意見が一致したわけでございます。そうして九月十四日の第十一回会議に、これは日弁連側の主催でございまして、当時の事務総長の開催通知にその議題が掲載されたわけでございます。ところが、連絡協議を開きましたところが、いろいろ弁護士会のほうから、まだその問題については弁護士会の内部的な意見調整ができておらないからということで、内容の論議に入らないでその日は終わりました。引き続き、十月三十日と十二月五日に予定したわけでございますが、この二回とも弁護士会の御都合で流会になったわけでございます。その後弁護士会の委員が任期満了等でおかわりになりまして、約一年間開くことができませんでして、四十三年の九月になりまして弁護士会側の意見がきまりまして、十月から再開できることになったわけでございます。そこで十月二十九日の連絡小委員会でその点を引き続きやることにお願いいたしまして、十一月五日に提案理由説明等いたしましたところが、少し具体的な案がないと話し合いが進まないのではないかという御指摘が弁護士会側のほうからあったわけでございます。で、私どもとしては、できれば私どもの案を押しつけるような形になることはまずいので、話し合いの中から案が出てくることを期待したわけでございますが、そういう御意見がございましたので、十二月六日の連絡小委員会に一応の試案を民、刑それぞれについて出したわけでございます。ところが、その後十二月二十日と四十四年の一月三十一日に予定いたしました連絡協議は、弁護士会の内部意見の調整ができないということで流会になりました。一月三十一日に連絡小委員会だけが開けたわけでございます。そのうちにまた弁護士会の委員の大部分の方が任期が切れるというようなことがございまして、約一年間ストップいたしまして、四十四年の十一月二十七日になって十三回がやっと開けるという状態になったわけでございます。それ以後、引き続き十二月、一月と、十四回、十五回等が開かれてまいったわけでございますが、その間にはすでに法制審議会等も開かれるというような経過になってまいっておるわけでございます。
  167. 亀田得治

    亀田得治君 最終はいつだったわけですか。
  168. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 最終は本年の三月六日でございます。
  169. 亀田得治

    亀田得治君 この四十三年十二月六日の小委員会で裁判所側が提案した内容ですね、これは刑事のほうも含まれておるわけですね、これちょっと説明してください。
  170. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 民事のほうは、基本においていま御審議いただいております裁判所法改正案と大体同趣旨の、おおよそ民事を三十万円に引き上げるということでございますけれども、刑事のほうはいまこまかい資料を——これあると思います、ちょっとさがしますのに手間がかかりますので、時間かかるとあれだと思いますで、ごく私の記憶で申しますれば、現在地方裁判所の単独事件として処理されておりますもののうち、窃盗に準ずる簡易な罪種、たとえば詐欺、恐喝、業務上横領というようなもので、事実関係にも争いがなく、法令の解釈等も比較的容易であるものに限って、三年以下の科刑権の制限のもとに簡裁の権限としてはどうかというようなこと、その他また逆に、いま罰金以下の刑の事件簡易裁判所のいわば専属管轄といいますか、そういうことになっておるものも地方裁判所に移送できるようにしてはどうかと、その他一事項ございますが、刑事関係は大体そういうものでございます。
  171. 亀田得治

    亀田得治君 四十五年の三月六日の最後の協議会というものはどういう状況でございますか。
  172. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 四十五年の三月六日の協議会は、弁護士会のほうから若干の御質問があって、それにお答えいたしましたのと、それから弁護士会のほうから資料の御提出がございました。これは「判例タイムス」とか「自由と正義」と、それから御意見であったかと思いますが、パンフレットも提出されておるわけでございます。そうしてなお弁護士会のほうから、私どものほうで弁護士側の反論に対してさらに反論をいたしました、それに対する反論が提出され、そうしてまたそれに対する反論を私どものほうでいたしたというような経過になっております。そうして最後に弁護士会のほうから、今後一年間簡易裁の事物管轄の拡張も含めて協議を続行することについて御提案がございまして、私どもとしては協議の続行には異論がないわけでございますが、ただ、事物管轄の問題はすでに法制審議会にも付されておることでございましたので、これは法制審議会のほうの審議にまたざるを得ないということで、それと切り離した部分について今後協議いたしたい、こういうふうにお答えしたものになったわけでございます。
  173. 亀田得治

    亀田得治君 法制審議会の進行はどういうふうになっておりますか。
  174. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 外形にあらわれました部分だけ便宜私のほうから申し上げますと、二月の二十七日と三月の九日に開かれております。
  175. 亀田得治

    亀田得治君 これは部会ですか、総会ですか。
  176. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 総会というふうに承知いたしております。
  177. 亀田得治

    亀田得治君 それは部会にかけなかったんですか。
  178. 影山勇

    政府委員影山勇君) 部会にはかけておりません。
  179. 亀田得治

    亀田得治君 これほど、その段階ではこんな論議を呼んでおる問題ですがね。普通はちゃんと部会にかけて、そうして総会にかける。それはほんとうの突っ込んだ審議はどうしてもやはり部会だろうと思うんですね、それにふさわしい専門家が集まっておるわけですから。何でそれを省略させたんですか。
  180. 影山勇

    政府委員影山勇君) 法制審議会は、部会といたしますと、こういう問題は司法制度部会でございますが、法制審議会の司法制度部会の委員はほとんど総会の委員と同じでございまして、そういう関係で、こういう問題はやはり大所高所からひとつ総会で御判断願ったほうが適当ではないかということで、総会にかけたわけでございます。
  181. 亀田得治

    亀田得治君 司法制度部会はだれとだれですか。
  182. 影山勇

    政府委員影山勇君) いま手元に司法制度部会委員の名簿その他、総会の名簿その他持っておりませんので、いまお答えいたしかねますが、名簿は別に用意してございます。
  183. 亀田得治

    亀田得治君 ほかの部会でも刑事なり民事なり、部会委員というのは大体総会にも出てるんじゃないですか。
  184. 影山勇

    政府委員影山勇君) ほかの部会ですと総会の委員も加わりますが、もっと各分野の専門家をこれに部会委員として特に加えまして、そこで部会の審議をするということになっておるわけでございます。
  185. 亀田得治

    亀田得治君 それにしてもいろんな部会があるわけで、司法制度部会でちゃんと煮詰めて、そうして総会に提案をするということじゃないと、司法制度部会以外の人は非常に不便を感ずるんじゃないですか。それはいきなり意見を聞くのもいいが、普通はやはりそういう順序でやってるわけですからね、司法制度部会としては。総会にかかればそれは結論という感じですからね、みんな出てきている人はそのつもりで来ますよ。そのための部会制度だから、国会だって、委員会で通れば、総会は日時の問題しか残らぬわけですね。そういうものなんですから、どうもそこの扱いが、急いで、普通の手続をことさらに簡略にしたという感じを受けるのですが、そのメンバーを一ぺん出してみてくれますか、あした。
  186. 影山勇

    政府委員影山勇君) メンバーは提出いたします。それから特にことさらに部会を省略したというのではございませんで、先ほど申し上げましたように、総会委員と部会委員と同じようなものでございますから、それから問題の性質上、法案自身としては十万円を三十万円に引き上げるということでございまして、むしろ大所高所から御判断願いたいというつもりで総会にかけました。その総会も、普通まあ他の部会の例でございますと、部会あるいは小委員会で詳細論議をいたしまして、総会は大体一回で済むような例が多いわけでございますが、今回の総会につきましては、二月二十七日に開きまして、さらに三月九日に続行して、そして御決定をいただいたということに相なっております。
  187. 亀田得治

    亀田得治君 総会では簡裁性格論というようなことはどの程度意見があったんですか。いまのお話だと、まあ十万を三十万にするだけのことなのでして、というふうなお話ですが、どうも提案者自体が軽く説明をしておるような感じがするわけですね。総会のメンバー、どういう方か、これも名簿を出してほしいと思いますが、その点どうなんですか。
  188. 影山勇

    政府委員影山勇君) ただいま申し上げましたのは、法案自身が立法的、技術的に簡単だという点を申し上げましたわけで、総会でも——総会の内容は非公開でございますが、あらましの点を私が承知した限りで申し上げますと、やはり簡裁性格論、特にやはり発足当時の簡裁ではどうだというような問題も出ますし、それから弁護士会の推選にかかわる委員から、かなり詳細なその点についての御質問があり、御意見の開陳があったわけでございます。
  189. 亀田得治

    亀田得治君 総会の結論は全会一致、多数決、どっちですか。
  190. 影山勇

    政府委員影山勇君) 多数決でございます。
  191. 亀田得治

    亀田得治君 前に重要な議事録については、名前をA、B、Cにして、議事録を参考にもらったことがあるんですが、それは差しつかえないでしょう、その人ということがわからなければいいんだから。どういうことがここに論議されてきておるものか、これはわれわれとしても重大な関心があるのですから。そういう資料のつくり方だったら差しつかえないですか。
  192. 影山勇

    政府委員影山勇君) その点はひとつ前例を検討さしていただきまして……。
  193. 亀田得治

    亀田得治君 前例はあるのだ。もらっておる。
  194. 影山勇

    政府委員影山勇君) できれば提出することにいたしますが、ただ、少し時間がかかるだろうと思われます。なお検討いたします。
  195. 亀田得治

    亀田得治君 それは何かプリントしたものがあるのじゃないですか、名前のところだけ消せばいいような。
  196. 影山勇

    政府委員影山勇君) まだプリントの段階に至っておりません。
  197. 亀田得治

    亀田得治君 これは法案審議に間に合わないといかぬですから、ちょっとくふうしてみてください。  それから弁護士会の意見、それに対する最高裁側の反論、それに対するまた反論、反論の反論とか、いろいろおっしゃったのですが、それは幾つぐらいそういうものが出ているの。
  198. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 双方いま記憶しておりますところで三つずつございますが、しかしそれとまた別個にいろいろな弁護士会のほうは意見書もお出しになっておるのが実情でございます。一応そのあらましは御承知と存じますけれども、「自由と正義」の三月号に当時の伊藤事務総長が、弁護士会の意見最高裁の反論等を要旨として対照して掲げておられまして、これでごらんいただきますと、表現その他私どもの書面と一致はしておりませんけれども、大筋において双方の意見を大体要約しておられるというふうに申し上げてもよいかと思います。  それから、なおついででございますが、この伊藤事務総長の原稿の中に、法制審議会で裁判所の立法に関与された某委員から意見が出たとして書いておられまして、これは一体法制審議会の秘密性との関係がどうなるのか存じませんけれども、ともかく性格問題に触れた意見もちょっと出ておりますので、御参考までに申し上げておきます。
  199. 亀田得治

    亀田得治君 この要約というやつは私はあまり好かぬのでね、そのもとのやつを参考にくれませんか。
  200. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 私どものほうの分を提出いたしますことには少しも異存はございません。弁護士会のほうもおそらく御異存ないと思いますので、差し上げることはできると思いますが、ただ、委員会の資料ということになりますと、相当な部数が要りまして、ちょっと印刷の関係で時間がかかるかと思いますので、亀田委員にお届けする分にはすぐにでもお届けできると思います。
  201. 亀田得治

    亀田得治君 じゃ、その点お願いしておきます。できたら今晩じゅうにでもちょっと拝見できたらと思います。  そうして、まあいろいろずいぶん長い経過をたどっておるようですが、これ、現段階は一体どうなっているのです、弁護士会との間。もうたこの糸が切れたまま、そういう状態ですか。
  202. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 弁護士会の連絡協議の委員の方は、大体三月になりますと任期満了になられる方が多いわけでございますし、その後任を御選出になりますのにかなりの期間がかかるのが従来の例でございます。本年の場合はどういうことになっておりますかまだ伺っておりませんが、過去の例では、半年ぐらいかかるわけでございます。早くおきめいただきますれば、私どもとしては別に連絡協議会を開くことについて少しも異存はないわけでございます。
  203. 亀田得治

    亀田得治君 まあ法案がこういう最終段階へ来ているわけですからね。それは最終段階といっても、きょうあす審議して、そのあとどういうふうになるか、これはまあ国会委員会の相談になるわけですが、弁護士会側で何か委員がかわっておるので、その後任が少しおくれるだろうというふうなことじゃなしに、ともかく弁護士会には、会長、副会長以下役員があるわけですから、こういうふうな事態の場合には、やはり裁判所側のしかるべき人、そういう方が弁護士会側のしかるべき人と会って、最終までやはり意見調整ということについて努力をするのが私はほんとうだと思うのです。それはどちらからやるべきことか簡単に言えぬかもしれませんが、そういう気持ちはないのですか、どうなんですか。わしのほうはもう法案を出して、ちゃんと台本も進んでおるから、もうそっちにおまかせしておる、そういうことではいかぬように思うのですね。最初に私が一番心配しておると言った点ですね、司法制度全体からみたら、こういう問題だけじゃないんですからね。その点はどういうふうに長官なり事務総長なり最高裁の首脳部としてはお考えになっているのか、その心境を聞きたいですな。
  204. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 事務総長の心境の前に、私から事務的な点で若干御説明申し上げたいと存じますが、先ほど申し上げた伊藤事務総長——これは私どもが連絡協議の最終段階をやります際の連絡小委員会で出されたわけでございますが——が「自由と正義」にもたびたびお書きになっておりますところ、さらに衆議院の法務委員会で御説明になったところを総合いたしますと、日弁連として、この問題について法的な手続での御意見というものがどこにありますのか、必ずしも十分に捕捉しがたい面があるわけでございます。で、理事会は正副会長会議と合同委員会におまかせになったようでございまして、そのうち正副会長会議では一応の結論に近いものをお出しになったと伺っておるわけでございますが、合同委員会のほうはそれと違う御意見のようで、その間の御調整ということについて、どういうことになっておりますのか、またそれが日弁連の公式意見ということになりますのか、その辺のところが多少はっきりいたしません点がございますのと、それから、そういう話し合いをいたしますといたしましても、日弁連の場合、連合会長がお一人で全責任を負って話し合いに当たるというような体制に必ずしもなっておられないようにお見受けするわけでございまして、実は冒頭に申し上げました司法協議会の幹事の問題につきましても、事務総長との十分な了解を得ておったつもりであったのが、必ずしもそれが日弁連の公式な御意見としては受け取っていただけなかったというようなこともございまして、まあその辺はむろん私どものほうの配慮の持っていき方にも十分考えるべき点はあろうかと思いますけれども、なかなか話を煮詰めます際にむずかしい問題が多々あるように、従来の経過から見受けるわけでございます。
  205. 影山勇

    政府委員影山勇君) 先ほどの法制審議会のことでちょっと補足いたしますが、総会に諮問いたしまして、部会で審議するかどうかは総会でおきめいただくことでございますが、今度の場合は、部会を省略するということにつきましては、弁護士会推選の委員の方を含めまして、全員一致で総会で審議するということになったわけでございます。ちょっと一言補足さしていただきます。
  206. 亀田得治

    亀田得治君 事務総長に端的に聞きますが、明日、日弁連の代表の方に来ていただいて御意見を承ることになっておるのですが、日弁連のほうから最高裁に、ともかくこの段階で一度協議をしたいという提案がある場合には、最高裁は応じますか。
  207. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 日弁連との折衝の経過については、先ほど来詳細に総務局長から御説明申し上げましたが、非常に簡単な説明で、そのニュアンスといいますか、奥深いところがなかなか出にくいと思いますけれども、もちろん裁判所としてはできる限りの努力をしてきたわけであります。あと一年待ってはたしてどうなるかというようなことは、これは新しい日弁連会長も、はたして一年待って解決するかどうかはわからぬがという前提で、石田長官の留守中であったために、長官代理のところにお話を持ってこられました。そのときに長官代理は、これまでの連絡会議の経過等については詳細事務総局から報告を受けておるし、裁判官会議においても何回も慎重に検討の結果、ここのこの段階に至ってはやむを得ないからということで、その一年間待つということをお断わりいたしたわけであります。今回やむを得ずこういう事態になりました以上は、あとはやはり国会の御審議に待つほかないと、かように考えております。
  208. 亀田得治

    亀田得治君 これは最終的にはそういうことでしょうが、日弁連の会長が一年待った場合に片づくか片づかぬかわからぬというふうに言われた点に非常にこだわっているようだが、そこはものの言い方、取り方だと思うのですね。その間にやはり関係者の熱意なり努力というものが大きな問題解決のかぎになっていると思うのですね。私は、一年くらい待ったって、やはり法曹三者が意見を統一してこういう問題は処理していくのが非常にいいことだと思っているのです。だから、その否定的な面に最高裁としては力点を置いてお考えになっているのじゃないですかね。宙ぶらりんであっても、それが肯定的に変わっていく場合もあるわけだしね。
  209. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 決して、一年待てば解決するとは言えないがという、そういう点にこだわっているわけではありません。ここ数年来の連絡会議の運び方、その経過から考えまして、いつも弁護士会の内部事情によってこの会議が開けない、きちんと前々から約束しておりました期日も流されてしまう、こういう状況ですと、それに一方、事物管轄の調整ということについては、ここ数年来の全国の高裁長官、所長からの強い要望もありまして、そういう点から考えましても、この段階に至りまして一年間待つということについては、私はどうもそういう方向に踏み切ることはむずかしいと、かように考えております。
  210. 亀田得治

    亀田得治君 高裁長官、所長からの要望があると言われますが、これは簡裁を地方裁判所化していこうという構想が背後にあるわけじゃないですか。だからそこが問題になっているわけですからね。日弁連の中でも意見が出ているわけでしょう。そこをやはり納得させていくことでなければ説得力がないのですよ、態度としては。だから、私はもう一ぺん重ねて聞くわけですが、いま事務総長がおっしゃった話のやりとりですね、それはいつのことですか。
  211. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 四月二日に、新会長が長官代理に面会に来られています。
  212. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、現在もう一カ月ほどたっているわけですね。なかなかこういう大問題というものは、ぎりぎりのところでなるほどそうかというふうなことにもなる場合もありますしね。いろいろですよ、これは。だから、たとえば弁護士会のほうでもう一度最高裁と最後の談判をやってみようと、前提なしでいいですよ、前提なしで、そういうことには最高裁は応ぜられるのか、られないのか。
  213. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) これは、最高裁裁判官会議の意向もありまして、しかも従来の経過からいいまして、これ以上それを引き延ばすということには踏み切るわけにはまいらぬと思います。
  214. 亀田得治

    亀田得治君 理由はどういうことですか。相手が責任のある日弁連でしょう。しかも、法曹一元といえば、その土台にならなければならぬ団体でしょう。やみくもに反対しているわけでもないでしょう。一つのちゃんと立場を持って問題を指摘しているわけでしょう。どんな経過があろうと、その諸君が最後の段階でもう一度会おうという提案があった場合に、それはだめだろうと、そんなことは少し筋が通らぬように思いますがね。
  215. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) そういう点につきまして、つまり司法制度改正、あるいは運用の改善、そういう問題については、法曹三者が十分に協議を遂げる、これが必要であるということは、私どもも十分心得ております。しかし、何度も申し上げますとおり、これまでの経過ということから考えまして、ただ漫然と——あえて漫然とは申しませんが、ただこれから時間をなにしましてもはたして解決できるかどうか、非常に疑いを持っております。しかも、この段階まで参りまして、国会審議を仰いでいることであります。この際これを引き延ばすということには、とうてい賛同いたしかねる次第であります。
  216. 亀田得治

    亀田得治君 それは、国会審議といいましても、十分われわれが納得できるような事実の解明があれば、これは別なんですよ。ところが、私は各論に入っていけばよけいそうだと思いますが、なぜ、その地裁状態がいま緩和しておるとき、提案した当時は相当緊迫しておったことも事実なんだが、状況が変わっておるのに、そうして一方からは本質問題を出されておるのに、押し切ってやらなければならぬか、こういうことに大きな疑問を持っているわけなんでね。地裁の問題の解決のしかたなんか幾らでもありますよ。それは明日もっと突っ込んで私は質問いたしますが、私のほうからも解決の提案は示していきたいと思います。それはあなた、国会できまったものじゃないですよ。こんなことは何も党派によってきまる問題じゃないのですから、最初から言っているように。われわれ質問するものが十分納得できれば、これはもうすぐにでも通してもらったらいいんですよ、そういう性格の問題ですから。与党が多数だからまあそこにたよっておったらいいと、そういうことじゃやっぱりちょっといかぬと思いますね。この問題を取り上げている人は、政治的な立場からいえばいろいろですよ。平素自民党の立場で政治的に動いておる人も聞いておりますし、いろいろですよ。そういう性格の問題だから、私いまそういうお尋ねをしておるのですがね。どうもそういう消極的なことじゃ私はおもしろくないと思います。
  217. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 私ども裁判所としましては、これまでの連絡協議によってできるだけの努力はいたしました。性格論についても論議をいたしましたし、法制審議会においても、先ほど説明がありましたとおり、性格論について討議が尽くされております。これ以上議論を重ねましても、ただ見解の相違ということになるほかないように思われます。と同時に、連絡会の最後のときに一先ほど総務局長から説明しました例のメモの取りかわし、あれはお互いに取りかわして、管轄の問題については早急に実現をはかるようにしようという双方の約束ができておるのでありますが、しかし最終段階になりますと、これは一部の連絡協議の弁護士会側の方が言われたようですが、あんなメモは、あれは一方的な裁判所側の願望にすぎないのだというような発言までありまして、なかなかこれ以上協議を続けましてもどういう結果になるか予測がつかないと思います。で、一方事柄の運び方が今日のような段階に至っておりますので、ここでまたもとへ戻すということは、これは非常に困難なことだ、かように考えます。
  218. 亀田得治

    亀田得治君 政務次官、えらい同調しておるけれどもね。これはあなた、政務次官あたりがそういうところの政治的な配慮というものをもっと私はやってほしいと思うのですよ。どうも裁判所はもうけさからでもかたくな過ぎますわな、残念です。性格論争からいったって、午前中の質疑でも明らかなように、裁判所が一体何を考えているかはっきりしないでしょう、実際のところ。表向きは当初の簡裁性格を維持しますと言いながら、最高裁の書いておられるもの自身が、簡裁が変質しつつあることを認めておるじゃないですか。そんな土台がぐらぐらしているような状態で、さあ多数だから早う法案を通してくれ、これは私はちょっと虫がよ過ぎると思うのです。その点をみなが心配しているわけなんでしょう、これどうなってるのかなということで。だから、これ以上個々の質問のやりとりをしても始まりませんが、これはまあひとつ考えてくださいよ。いままでこれだけやったのだからしかたがないと、そんなあなた木で鼻をくくったようなこっちゃ済まぬ問題ですよ、それだけ申し上げておきます。あしたまでよく考えてください。
  219. 山田徹一

    理事(山田徹一君) ほかに御発言もなければ、本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十分散会      —————・—————