○亀田得治君 このたび派遣されました
委員を代表して第二班の
調査の結果を報告いたします。
去る二月一日から四日間、近藤
委員、山高
委員と私が、大阪府及び兵庫県において司法
行政及び
法務行政等並びに
出入国管理に関する問題等について現地
調査を行なってまいりました。
大阪府においては、二月二日午前中、大阪高等
裁判所に
関係当局の御参集を得て、司法
行政及び
法務行政等の問題、なかんずく交通
犯罪、選挙
犯罪、公害及び登記の各
事件の現況等の
調査懇談を行ない、午後は、新築成った大阪弁護士会館においてこれら司法
行政、
法務行政等に関する諸問題につき在野法曹の意見等を聴取いたしました。また同日、大阪高等、地方
裁判所新営工事現場及び大阪法務合同庁舎の
営繕の視察を行ないました。二月三日午前中、大阪入国管理
事務所において
出入国管理問題の
調査等を行ない、午後、兵庫県に参り、神戸地方
裁判所に
関係者の御参集をわずらわしまして、大阪の場合と同様司法
行政等の
調査懇談を行ないました。二月四日午前中は、神戸入国管理
事務所並びに同神戸
港出張所を
調査視察して、
調査を終わりました。
調査にあたり、現地の各
関係機関等から終始懇切な御
協力をいただきましたこと、並びに最高
裁判所及び
法務省から種々実地に御便宜をお取り計らいくだされたことを、厚く感謝申し上げます。
以下
調査項目に従って申し上げます。
調査項目第一、司法
行政及び
法務行政等に関する
事項。
まず民、刑
事件処理の概況について申しますと、大阪高等
裁判所及び高等
検察庁の管内民、刑
事件の総受理件数は、最近減少の傾向にありますが、
民事事件において、手形小切手訴訟
事件を除き、未済件数が既済件数を上回っているのが注目されます。わけても
民事交通事件の
増加や第一審
行政訴訟
事件の未済が目立っております。刑事
事件において総受理件数が減少しているのは、
昭和四十三年七月から交通反則通告制度が実施され、道路交通法違反
事件送致が減少したことによるものとされています。しかしながら、
業務上
過失致死傷事件の激増、殺人、放火等の凶悪犯の
増加傾向は注目されます。
第二は、交通
犯罪事件の現況と対策であります。交通反則通告制度実施後の交通
犯罪事件の状況を見ますと、まず道路交通法違反
事件について、警察における交通の指導と取り締まりは、軽微違反者には警告指導または告知を、悪質違反者には
検察庁送致の措置をとることになり、現場措置が違反態様により適切に行なわれることになった結果、大阪府警察では、
昭和四十四年警告指導件数は八十万件をこえることになりますが、送致件数は激減し、告知件数を加えても年間三十五万件程度にすぎない状況で、告知件数についても毎年約十万件程度の減少となっております。交通事故を
内容とする
業務上
過失致死傷事件については、自動車登録台数、免許人口の激増により交通事故が年々
増加し、大阪府警察では、
昭和四十四年は四十一年に比し件数において四六%の
増加を示し、近畿管区警察局管内では、年間三〇%前後で
増加している実情であります。
以上の傾向は
検察庁ないし
裁判所の
事件受理についても言えることであって、たとえば大阪高等
検察庁管内では、道路交通法違反
事件は、
昭和四十四年は四十二年の五分の一に減じましたが、交通
関係業務上
過失致死傷事件については、
昭和四十四年は四十二年の一・五倍に達し、成人のみで一・六倍、刑法犯中に占める割合は七二・三%であります。
次に、少年
交通事件の特色等について申しますと、
業務上
過失致死傷事件が、
昭和四十三年から窃盗を抜き首位に立ち、毎年
増加していること、一般に無免許運転を犯す率が高いことなどがあげられます。さらに
事件処理問題に関して、
家庭裁判所終局区分中
検察官送致は減少し、不処分、審判不開始が近年多くなっている状況であり、また交通反則該当の少年
交通事件の逆送事例に対しては、罰されない成人の反則
事件との不均衡があるとの
検察見解がありました。なお、
現行交通反則通告制度を少年
事件にも適用することの可否につき意見交換がありましたが、警察、
検察の積極論と
裁判所の消極論が対照的でありました。
交通事故対策は現下の重大課題であり、そのため、道路環境の
整備拡充、大阪都心部幹線道路の一方通行実施の例に見られるような交通規制の
改善など、
行政施策の推進にまつところが大きいのでありますが、当面、
検察、
裁判においては、交通事犯の激増に対し、交通専門の部や係の設置など捜査機構の
充実強化、審理促進のための
裁判官増員が望まれるのであります。
第三は、選挙
犯罪事件に関する
事項であります。昨年十二月に行なわれた
衆議院議員総
選挙関係の選挙違反
事件検挙総数は、近畿管区全体で本年一月二十六日現在千二百四十六件、千八百五十六人で、前回、
昭和四十二年のそれに比べれば、件数で百八十件減少いたしておりますが、人員で二十七名の
増加、罪種別では、買収のみが他の減少にもかかわらず二百人も多くなっているのが注目されます。これらの
事件捜査は間もなく終了の見通しでありますが、第一審係属中のこの種
事件の三〇%が
昭和四十年以前に起訴された長期未済
事件である現状からも、係属中の
事件はもちろん、今回の選挙違反
事件についても、早期開廷、集中審理、公判促進が望まれております。
第四は、公害に関する
事件についてであります。いわゆる公害に関する
事件がどのようにあらわれているか、現地の状況を見ますと、まず公害対策基本法付属
関係法律違反
事件の受理はなく、罰則の定めのある各地の公害
防止条例違反
事件すら皆無の状況で、これに類するものとして、
業務上過失致死傷、河川法違反、清掃法違反など若干の
事件をあげ得るのみであります。しかし、最近のビル工事、マンション建設、工場操業、飛行機などからくる騒音、振動、じんあい、工場廃液、地下水流失など、また、日照権、通風、採光を阻止され、生活を侵害されたことに基づく、損害賠償請求ないし建築差しとめ、危険
防止のための不動産仮処分など、主として相隣
関係を中心とした
民事事件は多少存在するという実情であります。他方、直接公害
事件とは言えない警察への苦情や生活権の侵害と目される中、小の公害による人権侵害
事件は年とともに
増加していることは事実のようであります。
最近の公害
事件は、種類が多様化するばかりでなく、
内容も複雑な
利害関係がからんだものが多く、また、地域住民の生命、生活に関する深刻な問題であるので、公害に関する
事件訴訟の
処理には特段の考慮と迅速性が要求されることはもちろんでありますが、基本的には、公害紛争の
行政的
処理に関して早急の解決策が望まれる次第であります。
第五は、最近の
登記事件処理の現況であります。大阪
法務局管内
登記事件数は、この十年間で、所有権移転、抵当権等の登記甲号
事件において二倍、謄本、抄本等の登記乙号
事件において三・七倍の
増加を見ており、神戸
地方法務局でも甲号
事件で二倍に近く、乙号
事件で四・六倍という
増加ぶりであります。これら
事件増に伴う
登記事務従事
職員の
増員はなく、
登記事件の適正迅速な
処理に苦慮しているのが実情であります。
さらに、近畿管内本、支局、出張所計百八十五庁舎の大半は老朽狭隘であり、
施設の
整備改善が望まれています。
調査項目第二、
出入国管理に関する
事項。
大阪入国管理
事務所管内外国人登録人員は、昨年十一月末現在二十三万七千九百三十四人で、中でも大阪府は、万国博覧会
関係労務者の移入並びに外国人経営企業体が大阪地区に集中しているため、
在留外国人は他の地区に反し漸次
増加の傾向にあり、また、大阪には在日朝鮮人、韓国人の二八%が居住している
関係から、
在留外国人の管理上、期間更新、再入国などの許可
事務手続の合理化が急務とされ、また違反
事件の発生は年間一万二千件にも及んでおり、
事務所の
処理方針としては、退去強制よりも仮放免許可へと移っているとされています。
出入国管理上
改善さるべき問題点として、国際交通の多様化に即した出入国手続の簡素化、
犯罪調査のためのコンピューター制導入、違反審査の必要的収容の
改善、在留管理
関係業務処理体制の拡充、神戸
港出張所の
業務体制の確立と増強、そして万国博覧会対策の確立などがあげられました。
調査項目の
最後は、本
委員会に対する現地の要望
事項であります。
現地で多くの傾聴すべき意見ないし要望が強く述べられましたが、まず
交通事件に関して、大阪弁護士会から、交通事故の被害者救済と自動車損害賠償責任保険の円滑な
運用をはかるため、自動車損害賠償保障法第十条(適用除外規定)及び第五十五条(自家保障規定)を削除すること、交通事故被害者の医療に関し、その医療の
適正化と救急医療機関の監査、
整備をはかること、自動車損害賠償責任保険における傷害保険金を引き上げることの要望がありました。
公害
事件に関して、大阪弁護士会は、各種公害
事件につき訴訟救助制度を弾力的に
運用し、訴訟資力のない者にも広く救助が与えられるよう指導すべきであり、騒音、日照権、悪臭、食品等各種公害に関し、
現行法の不備を改めるべきだとしています。
登記事件の
処理に関するものとして、大阪
法務局から、登記所の地図の補修、再製の早急な実施が望まれ、大阪弁護士会は、登記簿の改編
作業はまず都市から促進されたいとの意見でありました。
出入国管理に関する要望として、神戸入国管理
事務所から、在留
資格審査要員及び
入国審査官の
増員、鉄製高速舟艇や自動車の増配、さらに尼崎港湾合同庁舎建設促進などがあげられました。
一般司法
行政等に関するものとして、大阪弁護士会は、大阪地方
裁判所
民事交通部
裁判官の
増員を切望しており、その他
簡易裁判所事物管轄拡張に対する反対意見、
出入国管理令改正に対する反対意見、司法修習生委託費
増額、国選弁護料等の
増額、無料法律相談活動に対する謝礼金支出、弁護士会館の敷地、建物に対する課税免除など各種意見要望等を提出し、神戸地方
検察庁から神戸法務合同庁舎設備ボイラー改修工事等の実施促進の要望があり、神戸弁護士会は兵庫県篠山地区の過疎問題をあげ、これらの解決を望まれました。
いずれも今後
委員会としても十分検討すべき重要な諸問題であると存じます。
以上をもって報告を終わりますが、詳細は
調査室の資料に譲りたいと存じます。