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1970-11-12 第63回国会 参議院 文教委員会 閉会後第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十一月十二日(木曜日)    午前十時十二分開会     —————————————    委員異動  十月二十六日     辞任         補欠選任      近藤英一郎君     大松 博文君      上田  稔君     土屋 義彦君      小野  明君     秋山 長造君  十一月九日     選任          星野 重次君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         楠  正俊君     理 事                 永野 鎮雄君                 杉原 一雄君                 安永 英雄君     委 員                 大松 博文君                 中村喜四郎君                 二木 謙吾君                 宮崎 正雄君                 内田 善利君                 多田 省吾君    国務大臣        文 部 大 臣  坂田 道太君    事務局側        常任委員会専門        員        渡辺  猛君    説明員        首都圏整備委員        会事務局長    川島  博君        防衛庁参事官   高瀬 忠雄君        文部省初等中等        教育局長     宮地  茂君        文部省初等中等        教育局審議官   井内慶次郎君        文部省初等中等        教育局高等学校        教育課長     西崎 清久君        文部省大学学術        局長       村山 松雄君        文部省体育局審        議官       西村 勝巳君        文部省管理局長  岩間英太郎君        文化庁次長    安達 健二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○教育文化及び学術に関する調査  (初等中等教育改革に関する件)  (養護教諭定数等に関する件)  (学校教育における国防意識に関する件)  (高等学校学習指導要領に関する件)  (科学研究費補助に関する件)  (筑波新大学に関する件)  (日本クレー射撃協会に関する件)  (日本文化に対する諸外国の認識等に関する  件)     —————————————
  2. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  去る十月二十六日、近藤英一郎君、上田稔君、小野明君が委員を辞任され、その補欠として大松博文君、土屋義彦君、秋山長造君がそれぞれ選任されました。  また十一月九日、欠員中の補欠星野重次君が選任されました。     —————————————
  3. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 教育文化及び学術に関する調査を議題といたします。  本件について質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 安永英雄

    安永英雄君 大臣お尋ねをいたしますが、先月佐藤総理四選されまして記者会見等が行なわれて、その場所で教育問題を大きく取り上げられたと思うのでありますが、内閣改造も行なわれておりませんので坂田大臣さらに続けて文教行政の最高の責任者として重責をになわれたわけでありますが、まあ従前からこの委員会あるいはその他で大臣文教政策についての考え方はあらかた承知いたしておりますけれども、現時点において新しい気持ちで出発されるだろうと思います。今後の大臣文教政策についての、これだけはという、特に重点的な政策もあろうと思います。そういった点についても、時間をとられて大演説されますと質問の時間がなくなりますので項目でもけっこうでありますが、ここだけはひとつ自分としてもぜひ重点を入れてやりたい、こういった点についての抱負があればひとつお聞かせいただきたいと思います。
  5. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 今回また文部大臣を継続してやるということになりまして、また委員会皆さま方にたいへんお世話になることだと思います。  私の文部大臣としての考え方は従来ここでたびたび申し上げておりますことに尽きるわけでございまして、これを踏襲し継続していくつもりでございます。従来私、文部大臣になりましてから大学紛争を収拾し、そして新たな国民のための大学をつくっていくと、大学改革を進めていくということが一つでございます。  それからもう一つは、従来教育行政の谷間でございました特殊教育について充実をしていくという考え方を持っておるわけでございまして、この点につきましても今回の中教審答申中間報告におきましてもかなりそういう点が強調されておることを非常に私は喜んでおるわけでございます。ただそれをどういうふうに行政に反映させていくかということが私に課せられた責任ではないかというふうに考えております。来年の五月ぐらいまでに中教審の第二十五特別委員会及び第二十六特別委員会中間報告を出しました大学及び幼児から高等学校までの教育制度の問題についての最終答申が出ることが期待をされます。それをどういうふうに具体化していくかあるいは順序立ててどういう手順でやっていくか、またそれに対しては長期教育計画をつくらなければならんじゃないか。そうして、毎年大体どれくらいの費用を見込んだならば、その実現ができるのかというような計量計算もこの半年ばかりの間に考えなくちゃならない。そういうことをいま考えておるような次第でごございます。
  6. 安永英雄

    安永英雄君 この委員会で、いまちょっとさわられましたけれども、特に学制改革の問題についても、重点的な施策としてあげられたわけであります。その手順として、大臣は、かつて大体三月ごろまでに中教審の最終的な答申が出るだろう。これを受けて約一年間国民各層意見を聞いて、できれば七二年からこれを実施したい。こういうお考えを述べられたことがあるわけでありますが、中教審答申等を、今度の中間報告等を見てみますというと、いまもおっしゃったように、五月というふうに多少、ずれてきておる。それから、さらに答申内容等を見ましても、相当長期にかまえてやろうというふうに、相当の変化をきたしておるようでありますが、先ほど私が申しましたように、かつて大臣のほうのスケジュールについて間違いがないかどうかお尋ねをいたします。
  7. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 中央教育審議会第二十五特別委員会初等中等教育改革に関する基本構想」を十一月五日中間報告として公表いたしました。これは初等中等教育改革に関する基本的な考え方と、その方向を示したものでございますが、中教審では引き続き第二十七特別委員会を発足させまして、基本構想実施に移すに際しての行政上、財政上必要とせられる基本的施策についての検討に入っております。  なお、右のような中教審審議がすべて終了し、最終答申としてまとめられるのは、明年五月の予定でございます。文部省としましては、最終答申を得れば、実施についての十分な研究と周到な準備のもとに、昭和四十七年度以降において、これが具体化を進めていく考えでございます。  一方、第二十六特別委員会中間報告はすでに出ておるわけでございますが、これも長期計画大学改革スケジュール、それから、計量計算等考えまして検討していただきまして、これもほぼ来年の五月ごろに最終答申を得られるものだと思います。したがいまして、この五月の最終答申を得ました上で十分これを検討し、そして行政上これを実施していかなきゃならないわけでございまして、やはり教育制度改革は基本的な問題でございますから、十分慎重に時間をかけてやるべきものだと考えております。もちろん、その間において国民各界各層に御意見を賜わるという機会も十分考慮してまいりたいというふうに考える次第でございます。
  8. 安永英雄

    安永英雄君 ちょっと聞き取りにくかったんですけれども、四十七年から具体的に取りかかるということでございますか。
  9. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 四十七年度以降ということで御了解を得たいと思います。その法律を待たずしてもやれるような行政上の問題もあるかと思います。あるいは場合によっては法律を制定しなくちゃならない場合も起こり得るんじゃないかというふうに思いますので、その辺のところにつきましては、やはり四十七年度以降というふうにお考えいただいたほうが正確だと思います。
  10. 安永英雄

    安永英雄君 くどいようですけれども、いまおっしゃったように私も感じたんですが、学制改革をやる場合には、法律あるいは予算、こういったものが非常に手続としては重要であるわけですが、とりあえずいまからやらならぬと、こういったものについてはすべてが四十七年以降に法律案とかあるいは予算、こういったものについて提案をしていく、大体こういう考え方ですか。たとえば私の聞きたいのは、次の通常国会等では学制改革に関する事前の問題として、それに関する法律案とか予算とか、こういったものは一切出さないで、そういった手続は四十七年以降あるいは四十七年に出すか四十八年に出すか、九年になるかしりませんが、事前にやるものと最終的な手続をとる場合というのは、すべてが四十七年以降になっているというふうに了解してよろしいわけですね。
  11. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 大体そのように御了解をいただきたいと思います。
  12. 安永英雄

    安永英雄君 それではもう少し詳しく聞きたいんですけれども、この中教審答申中間報告を見てみますというと、「先導的試行」ということばがよく使っておりますが、これによって新しい学校体系というものを開発するというふうに述べております。したがって、この試行というのは現行の六・三・三制の特例としてこのモデル校を指定して、そして実験的に行なう。そうしてその結果十年、その実験の結果を見て実施をしていく、こういう考え方を一応述べておるわけです。そこでいまおっしゃったように、たとえば四十七年というところから一応手をかけていって、そして先導的試行という期間が約十年間ある。その期間のことについてお聞きをいたしたいわけでありますが、これは中教審のほうで出しておりますから、文部省としてはそれを受けて考えをまとめるということではありましょうけれども、文部省として基本的な考え方としては、やはりこういった六・三・三制というものを主軸にして、そして特に特例を設けてモデル校を指定し、モデル地域を指定して、そしてそれを十年間やってみるという、そういったいわば六三制というこの制度は堅持しながら別途に特例として実験的に十年間やってみる、こういう考え方かどうか、これは中教審じゃなくて、文部省考え方としてお答え願いたいと思うんです。
  13. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 私といたしましては、やはりこの制度改革いたします場合には、その条件といたしまして予算的措置行政的措置等が伴わないことにはなかなかこれがうまく定着をしないというふうに考えます。したがいまして、いま先生指摘になりましたように、一応は六・三・三の制度というものを主軸にいたしまして、そうして特例を設けて十年間実験的にある程度先導的試行を行なう、そうして十年後においてこれを六・三・三制度と並行してやるのか、あるいはどうかというような問題はその後に決定すべき問題であるというふうに考えておるわけでございます。
  14. 安永英雄

    安永英雄君 それではこの十年間という期間の中でそういった六三制を主軸にして特例を設けて実験的にやってみるわけですが、その十年間というのはやはり新しい学校体系、たとえば四・四・六とか、いろいろ言われておりますけれども、そういう学校体系というものを全国的な学制改革方向行政としては強力に進めていくというこの十年間の期間のねらいなんでしょうか。そこらあたりどうでしょうか。
  15. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) この点は最終的な答申を得ておりませんので、あまり私からはっきりは申し上げられないと思いますけれども、私の考え方といたしましては、この先導的試行をやります場合においても、非常にいま申しました条件整備というものが前提にならなきゃならない。そういうものを考えずしてただこれを実際行ないましても、いい考え方であってもそれは弊害が非常に大きく出てくるんじゃないかというふうに思いますので、私といたしましては、少なくとも十年間ぐらいは一部に先導的試行というものをやる、そうしてその上において、はたしてこれが定着していくものかどうかというものを考えなきゃいかぬのじゃないかというふうに思います。  それからいまお話しになりました四・四・六とかというような刻みの問題がいろいろ議論をされておるわけでございますが、中教審におきましてもまだこの刻みについては確たる考え方はないわけでございます。これは中教審の第二十五特別委員会で述べられましたように、四歳児、五歳児と六歳ぐらいとどう結んだらいいのかという、そこの結び方の問題について触れておられる。そうすると、四歳、五歳と六歳、七歳と、こう考えれば、あとの残りは小学校が現在のままだとするならば、当然四年、四年になるのじゃないか、そうしてまた一方においては、中学校高等学校一貫教育ということも述べられておりますから、それをくっつけるとするならば六になるんだと、こういう推測にしかすぎないのでございまして、そういうようななしくずし的なやり方というものは私としてはまだ考えておらないわけでございます。ただここで述べられておりまする幼児教育が非常に大切である、そうしてそれはやはり四歳児、五歳児、場合によっては三歳児からも考えなきゃいけないという問題、そういう問題提起があったということは非常に私は重要な点であるというふうに考えますし、またこの四歳児、五歳児から教育をやるんだというときに、学校教育といいますか、いまは一年、二年、三年でやっておりまする学科別学習というものを直ちに機械的に四歳、五歳から始めるんだと、こういうふうな解釈をしておるところが非常に多いと思うんでございますが、少なくとも私どもの気持ちとしてはそうじゃないんで、四歳、五歳、あるいは三歳、四歳、五歳の就学前の教育については、学校教育という形じゃなくて、まあ保育的な考え方といいますか、生活学習的な学習というものが大切ではないんだろうか、そういうような位置づけが必要じゃないかというふうにも考えておるわけでございまして、もしただ、いま一年、二年でやっておるものを、このごろの子供たちは字も覚え、あるいは算数も覚える力が昔よりも非常に早くなってきたと、この間もそういう報告が出ておりますけれども、しかしその報告におきましても、これを直ちに今度の教育制度改革に結びつけて考えてもらっては困るというふうな指摘もあるように、私もそのように考えておるわけでございまして、やはり四歳児、五歳児の教育内容保育内容というものをどういうものでなければならぬかということがまず前提考えられる必要がある。そういういろいろな検討課題がこれからやらなきやならないものでございまして、そういう意味で、私はいま少しこの第二十五特別委員会の場合においては相当の時間というものが必要になる。と申しますのは、大学改革のほうは従来新制大学が出ましたときに相当大学改革への改善方策大学側においても、またわれわれ文部省においても、あるいは中教審等においても考えられ、そうして何らかの改善策要請されておった。そうしてそれが大学改革という形で学生側からも火の手が上がってきた。そうしてその結果として大学当局それ自身からも現在の大学を改善しようと、こういう気持ちになってきた。そうしてそれも、ただ日本だけの問題じゃなくて、イギリス、フランス、ドイツその他の国においても、大学改革というものが今日の社会的要請にこたえられなくなってきておると、こういうような共通した原因もございますから、このほうはかなり早く進めていかなきゃならない。しかし、第二十五特別委員会のほうは、従来六・三・三というこの制度に対して批判はあったけれども、しかし、一面においては評価も出てきておりますし、一応の定着もしてきておる。そうしていま問題になっておるいろいろの人間性不在の問題であるとか、あるいは人間教育というふうな問題についての欠陥が六・三・三それ自体にあるのか、それとも入学試験制度を改善することによって、かなり教育内容等が改善できるんじゃないか、あるいは定員をもう少し確保することによって個別指導その他がやれるんじゃないか、あるいはこれからは教育機器等を導入することによって、また教育効果をあげることができるんじゃないか、あるいはまた指導要領等を改善することによってそういう弊害も除去されるのじゃないか、こういうような考え方でございまして、あるいはいい先生教育界にとどめる、あるいは確保するという前提があって、そうして相当待遇改善をやるならば、その定員その他と相まって、いま問題になっているような欠陥相当に是正されるのじゃないか。そうだとすると、まずそれをやってみて、なお六・三・三というものが時代の要請にこたえられなくなった場合は、やはり先導的試行の結果、これを六・三・三にメスを入れるというようなことも考えられる。しかし、それは相当の時間と、それから慎重さと、検討とが必要なんだと、こういう考え方が私の考え方でございます。
  16. 安永英雄

    安永英雄君 そうしますと、学制改革の問題については、くどいようですけれども、六・三制、これを堅持しながら一部実験的な試行を行なって、約十年間やっていく。しかも、いまの大臣のおことばを承りますというと、別にこの四・四・六とか、いわゆる関連とかという問題等も私は重要だと思っておったのですけれども、そういうことは一応ほんとうに実験的にやってみる、別に引きずって、そうして十年たったときに、いま中教審考えておるようなことにも直ちに切りかえていくというようなことでもないし、むしろいまのお話では六・三・三制をまず強化、完全にやってみるというものも実験の中に入っておるというようなおことばだったと思うのです。そうすると、私はモデルに指定され、そうしてある程度の、たとえばおっしゃるように四十七年から実施実験的にやってみたい、こういったところにおけるどれだけの数が出るかわかりませんし、やはりそういう構想もまだ出ていないようですけれども、少なくとも一つの町村の中で半分くらいは、十校ならば五校はモデル指定をぜひ受けたい、そうしてそこでやる。半分は六三制。こういったことで、私はちょっとそういった方向は、教育効果というものについてはずいぶん差が出てくると思うのです。実験的とはいえ、差が出てくると思う。こういったところで結果的に私は、実験とはいってもこれは非常に国民に与える影響というものは大きいと思うのですけれども、ここで私はあえて聞いてもまだどの程度実験校をつくり、どの程度のパーセンテージを占められるようにやらせるのか、あるいはまた、地域配分はどういうことになるのか、こういう点はまだ出ていないと思います。私はその意味でいつも言っているように、実験的な期間の特に十年間というこれは私はもう教育効果というものがはっきり出てくる十年間だと、こういった点についての配慮等は十分ひとつやってもらいたいというふうに私は注文をする以外にないと思いますので、御配慮願いたいと思います。  そこで、学制改革全般についてお聞きするのはあれだと思いますから、私は現在、非常にこの学制改革をめぐって問題になっているのは、幼児教育幼稚園、こういった問題が非常に混乱をしていると思います。中教審がああいう中間報告を出し、そうして文部省もそれぞれの機会にやはり考え方を述べられ、あるいはまた、選挙戦といえるかどうか知りませんけれども、国会議員がかってに、特に与党の国会議員の演説、国民に伝えている内容等は実にまちまちです。もう直ちに私立幼稚園はつぶすんだとか、あるいは公立にすぐに切りかえてしまって幼稚園を買い上げるんだとか、あるいは幼稚園は全部残していくんだとか、とにかく非常に混乱を来たしている。特に私立幼稚園側としてはいわゆる三歳児あるいは四歳児、こういったところが今度のこの改革の中ではおろそかになるんじゃないか。非常に五歳というのが焦点に出てきて、それが義務化され、そうしてそこに重点がいってしまって、三歳児、四歳児の幼稚園教育というものは非常になおざりにされるんじゃないか。あるいは国や都道府県が援助を与えるといっているけれどもどう援助をするのかさだかでない。しかもその援助をもらえばかえって経営に介入されたり、あるいは現在、自主的に特徴づけてやっている幼稚園教育というものが一つの平板的な統制されるような方向弊害が出てくるんじゃないか、こういう不安等もあるし、また親にとってもこれから幼稚園は義務化されるとすればどうなるんだろう、いま行っておる幼稚園がどうなるんだろう、こういうような不安もあるし、あるいはまた、自治体等について、特に市町村等においてはこれをまともに受けて、今後の小学校中学校校舎建築等についても、小学校あたりではこれは併置するんだから将来、公立幼稚園ということになるならそのつもりでつくらなければいかぬ、その財源をどこに求めるかとか、ひどいところではこの問題が町議会の予算編成の問題にまで上がってくる、こういうことでありますから、私はこの機会にひとつ文部省幼年教育という問題、学制改革にからむ幼年教育という問題についてお聞きをしたいというふうに思います。  そこでまずお聞きしたいのは、幼稚園教育振興七ヵ年計画が行なわれて、大体ことしが最終年度になっているようでありますが、当初の計画等の数字を明示して本年度を目ざして今日までこの達成に努力をされたわけでありますが、その結果について御報告を願いたいと思います。
  17. 井内慶次郎

    説明員井内慶次郎君) 幼稚園振興計画につきましては、ただいまお話ございましたように、昭和三十九年度を初年度といたしまして、本年度、四十五年度最終年度とする七ヵ年計画を達成しようということで今日までまいったわけでございます。で、七ヵ年計画目標といたしましたところは、人口一万以上の地域におきまする就園率を、四十五年度事業を達成した段階におきまして六三・五%のところまで達成してまいろうと、こういうことでございます。この六三・五%と申しますのは、いわゆる保育所に収容すべき、保育にかける幼児特殊教育学校対象となりまする幼児、さらに通園距離等によりまして入園がおそらくできないであろうと思う子供たち、こういったものを一応三十八年の時点で試算をいたしまして三六・五%という計数を得ましたので、それを差し引きまして六三・五%ということを目標にいたしたのでございます。で、三十九年以降、公・私立幼稚園施設設備両面にわたりまして補助施策等を講じながら事業を推進してまいったのでございまするが、四十五年度の五月一日現在、したがいまして四十四年度補助事業が一応終わりまして四十五年初めということになっておるわけでございますが、四十五年五月一日現在におきまして、振興計画対象といたしました人口一万以上の市町村におきまする就園率はおおむね五七・七%に達しております。で、本年度は七ヵ年計画最終年次でございまするので、公立幼稚園に対する施設助成約五億二千四百万、私立幼稚園に対する施設助成二億五百万並びに公・私立幼稚園に対しまする園具等設備一億四千三百万、特に設備につきましては、最終年次でございまするし、五割増の予算措置をお認めいただきましてただいま補助事業実施いたしておりますが、四十五年度補助事業がただいま進行中でございますけれども、ことしの補助事業が完了しました姿が明年の春の幼稚園に入る子供ということで出てまいりますが、従前の七ヵ年間の進行状況を見ますと、大体年間二%ないし三%ぐらいの伸びで就園率が伸びておりますので、大体明年度、ことしの補助事業を終わりますと、六〇%はこえるであろうと思いますが、六三・五%に対しましては若干これを下回るのではないであろうかというような見込みをただいま持っております。で、六三・五%を策定いたしました基礎数にとりました数値等もその後変動をいたしていようかと思いまするし、本年度最終年次でございまするので、幼稚園保育所、その他幼稚園教育に関連のございまする実態につきましての把握の調査費も二とし予算に計上願いまして、並行して実態把握にもつとめておるところでございます。  結論といたしまして申しますと、六三・五%を人口一万以上の地域における就園率目標として七ヵ年やってまいり、で、本年度事業が完成しますと、大体六割はこえるであろう、六三・五は若干下回わるであろう。なお、私どもも七ヵ年計画進行状況の中で、検討すべき多くの課題を発見いたしております。人口一万以上の地域におきまする就園率が大体六割をこえることは確かかと思いますけれども、一万以上の市町村の中における片寄りという問題がやはりどうしてもこれは出てまいっておりまして、その辺等を本年度予算で実態調査をただいまやっておるわけでございまして、その結果等も見まして、七ヵ年計画をみずから評価し、今後の幼稚園教育施策をどう次に展開してまいるかということに対処いたしたい。  七ヵ年計画進行状況等、おおむね以上でございます。
  18. 安永英雄

    安永英雄君 先ほど大臣のほうから学制改革全般についての考え方をお聞きしたわけでありますが、そのときに特に幼稚園の問題も触れられたわけでありますが、どうもわからないのは、学制改革の問題について、中教審中間報告を出している。これを見てみますというと、やはり四歳児、五歳児、それから小学校の低学年、これとの一貫性という問題を大きく取り上げておるわけです。ここで、これは確かに六三制を堅持しながら、一部そういった実験をやる、こういうことでありますが、私はこの幼稚園の問題について、一貫性というけれども、それだけでは納得できないような気もするわけです。学制改革のやっぱり一つの大きなポイントは、この幼年教育のところをどうするかという問題が大きいわけですから、もう少し四歳児、五歳児、これと低学年との結びつきについて、中教審はそう言っていますけれども、文部省としてどんなふうにそこのところをお考えか。先ほど私は、国民が非常に不安がっているし、どうなんだろうというふうに思っている、というのはここのことなんですが、文部省はやはり四歳児、五歳児、こういったものを将来は義務化するというふうなお考え方向を持っておられるのかどうか、それだけお聞きしたいと思うのです。
  19. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) この辺はなかなかむずかしいところでございまして、やはりその点については最終答申を得てから考えなきゃならぬと思います。しかし、方向といたしましては、やっぱり四歳児、五歳児に対しまして、あまねく適正な心身の発展段階に応じた教育内容保育内容を施していくということが必要であるというふうに思いますし、それから私の考え方といたしましては、今日私立幼稚園もかなり高いわけでございまして、特に都市におきましては、むしろ公立よりも私立が高いというのが普通でございます。したがいまして、私立幼稚園公立幼稚園とをともに併存させながらその普及をはかっていくということが必要ではないか。そのためには、やはり私立に対する財政的なめどといいますか、そういうものがなければこれを強行するということは非常に危険であるというふうに私は考えておるわけでございます。たとえば、御案内のとおりに兵庫県は現在八二・六%の就園率をもっております。特に神戸市のごときは九〇数%が就園をいたしておりますが、これにつきましては私立に対しましても市みずからが財政的な援助をして、しかも地域制といいますか、学区制と申しますか、幼稚園子供でございますから、小学校に通うよりもなおかつ小さい地域から通わせるということが前提になるということも配慮しておる。ただ、スクールバスで幼稚園、ほかの学区に連れていくというようなことは、こうなりますとやはり考えるべきではないんじゃないかというふうな、まあこれはこれから先の問題でございますし、非常に僻地におきましてある程度幼児教育をやる場合においてはスクールバスももちろん必要ではございましょうけれども、原則といたしまして、やはりその地区内から通えるというところがやはり一番大事な点じゃないかというふうに思います。そういった場合に、これをどうやって普及さしていくかということは、かなり綿密な調査あるいは検討、財政措置、行政措置というものを考えないことにはこの中教審答申をそのまま実行するというわけにはいかないというふうに思います。でございますから、まだまだこれらの問題については十分お互い意見の交換をやりながら国民的同意を求めつつ具体化していかなきゃならぬ課題だというふうに思っております。
  20. 安永英雄

    安永英雄君 そうしますと、聞けば聞くほどいま騒いでいるのがあほらしいような状態ができているというふうに感じますが、そこらあたりはっきりしないといけないと私は思います。いまおっしゃるのは、先ほど聞きましたが、現在行なわれている幼稚園教育の振興策というふうに私はお聞きするんですよ。ところがこの振興策が学制改革にからまってくると非常に問題が起こってくるんで、私はそこをお聞きしたかったのであります。いま大臣がおっしゃるのは、まあ先ほど報告されましたような七ヵ年計画最終年度がさらに今後の幼稚園教育を振興していくという方策のように聞こえてならない。ところが私の聞きたいのは、学制改革の中でいま現在の幼稚園に行っている五歳児というものが義務化するという方向を持っているという中教審の性格からいって、この問題をどうお考えかということをお聞きしたかったわけなんです。  端的に聞きますけれども、四十七年度以降からたとえば試験的にやってみるといった場合の姿を考えますと、ある町村には六三制そのままでずっといっておって現在の幼稚園が残っているところもある、あるところは幼稚園の五歳児を小学校の低学年と合併させて、そしてたとえば仮称でありますけれども幼児学校というふうなかっこうの一つの区切りにして、それから小学校高等学校か知りませんが、そういう区切りにしていくような試験的な学校もあるという姿が四十七年以降にあらわれるんですかどうですか。試験的にやってみる場合に、幼稚園の場合だけを私は区切って一応言っています、大学その他は今後聞いていきますけれども、試験的にやっていくというこの新しい試みの学校体系というものが、一つの町村の中で、六三制というもので現在どおりに小学校中学校と、こういうふうにいっているところと、幼稚園の五歳児あるいは四歳児も含まれるというふうにここに書いてありますけれども、五歳児と低学年を一つの独立校舎の中に入れて一つの学校の経営が行なわれる、こういう姿が四十七年から約十年間ぐらい続いて実験的に行なわれる状態がやはり生まれてくるわけですか、ここのところをお聞きしたい。
  21. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) だからその問題をこそ、最終答申を得た後において考えられなければならない問題だというふうに私はお答えを申し上げておるわけです。と申しますのは、御案内のとおりに、たとえばイギリスではインファントスクールを五歳児から始めました。そして確かに義務教育でございます。しかし同時に、そのことが真の意味における幼児教育としていいか悪いかということは、イギリスにおきましても問題にされております。ある従来のナーサリースクールのいうならば幼稚園の総裁に私はお会いをしたことがございますけれども、イギリスでは学校教育はあって就学前のいわゆる真の意味における幼児教育を台なしにしてしまったと、こういうような批判があるわけです。私は心身の発展段階を考えた場合に、ただ機械的に義務教育を五歳からやることがいいかどうかという問題はもう少し検討すべき問題だというふうに考えます。それからフランスは御承知のように、ちょっと統計は忘れましたけれども、しかし大体において就学前四歳児、五歳児の幼稚園教育というものが八〇%をこえておると思います。かなり定着しておると思います。で、フランスはそれまでの幼児教育学校教育とは区別さるべきものである、こういうふうに考えております。これも私は一つのやはり見識じゃないかというふうに思います。あるいはドイツにおきましては、むしろこの幼児教育というのは家庭がその第一の責任を負うべきものであって、幼稚園というものは補完的意味において考えられるべきものである、簡単に申し上げますと、日本保育所みたいな考え方でこの幼稚園というものを考えておる。こういうふうに国々によって違うわけでございますが、われわれもどのような選び方をしたほうがいいのかということでございまして、この中教審に述べておられます幼児学校というような形だとすると、すぐ四歳児、五歳児を含めた幼年学校ということで、先ほど申しましたような小学校一年二年の学校教育というものをただ義務教育という形で四歳児、五歳児からやるということを画一的にやることがいいのかどうなのかということは私はかなり疑問があるんじゃないかというふうに個人としては考えております。でございますから、その辺のところはもう少し最終答申を得まして私たち自身も考えて判断をしなければならぬ課題だというふうに思っておるわけでございます。
  22. 安永英雄

    安永英雄君 いまお聞きして、中教審の全国的な公聴会といいますか意見を聞く会もありましたし、それを受けて今度中間報告を出されています。私的な問題とはいえ、大臣考え方とずいぶん違った考え方報告されておるというふうに私は感じておるわけです。  それとまた私が残念に思うのは、少なくとも学制改革ということをされて——私は幼稚園のところを幼児教育を限って言っているんですけれども、私はこの問題については、中教審答申もあるいは検討もさることながら、文部省としてそこまで大臣もある程度疑問を持たれるということであれば、これははっきりやっぱり文部省が出すべきではないかというふうに私は考えます。そうしないとやはり依然として混乱を来たしてくると思うんです。いまのお考えでは、現在行なっておる幼稚園、私学もあるいは公立も、こういったものをさらに数を増し収容をし、そして教育効果をあげていくという、これに重点がかかっておるような気がしてならない。学制改革とあまり関係ないといいますか、深い研究をされているような気はいたしません。私はそういう気がします。そこで私は現在の学制改革の中における幼稚園という問題の現在の時点における文部省考え方というのは、別に義務教育化するというふうな考え方では現在ないので、当面六三制を進めて幼稚園教育というものの従来のものをさらに発展させる、そしてできれば希望する当該の園児というものは全員とにかく教育を受けられるような場を提供するということであって、義務化というふうなことは現在考えていないし、しいて義務化といえば、施設面における市町村の義務をある程度規制をして、ぜひこういった公立幼稚園といったものをたくさんつくるように、そして全員が収容できるように、こういう方策を現在考えているというふうに私はとったんですけれども、その点どうですか。学制改革との関係はあまりない、またあまり考えていないというふうに私は考えるんですが。
  23. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) いや、おっしゃることちょっとわかりにくかったのでございますけれども、私が申し上げているのは、現在の七ヵ年計画目標率であります六三%に対しましては現在そのままやっていくと、しかし同時に中教審中間報告にも示されておりますし、来年は最終答申もございますから、その場合、謙虚にこの中教審報告検討いたしまして、そしてどちらかにきめていかなければいかぬというふうに言っているわけでございまして、中教審答申が非常に疑問があるという意味ではないのでございます。そのところをひとつ御了承をいただきたいと思います。ただ中教審のをよくお読みいただきますとわかるのでございますが、その強調のしかたによりまして多少取り違えたところが実はあるわけでございますから、その辺のところを私は申し上げておるわけで、中教審そのものを私は読んでおりますから。
  24. 安永英雄

    安永英雄君 どうも私はわからないのですけれども、四十七年以降この先導的試行をやるという方向実験的にやられる、こういった場合には、いまの幼稚園の四歳児、五歳児というのと小学校の低学年、こういったものとを一くくりにした学校の形態というものが生まれ得るというふうに考えてよろしいですか。
  25. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 先ほど申しますように、それには前提条件である財政措置あるいは法律関係、その他を十分考慮した上で、また地方の実情あるいは私立幼稚園保育所あるいは幼稚園先生方の養成、そうしてまたその養成される機関においてどういうものをこの四歳児、五歳児に教育内容として盛るか、あるいは保育内容として盛るかという、そういう小学校以上の指導要領に類するような幼児教育要領というようなものも改定をして、そうして取り組まなければならぬ課題じゃないか。したがって四十七年度以降ということを申し上げておるわけでございまして、直ちにやるということはまだきめておるわけじゃございません。そのことだけははっきり申し上げておきます。
  26. 安永英雄

    安永英雄君 まだはっきりしていないから、いろいろはっきりここではできないわけですけれども、私はこの点については何らかの形でやはりすっきりしなければならぬと思います。早くしないといけないと思います。少なくとも学制改革をやはりやろう、そうして幼児教育というものが非常に大きな問題になっておるし、中教審もこれについては終始初めから中間報告では多少の変化はあるけれども、やはり四歳児、五歳児を義務化する、こういった方向を少なくともとっている以上、そうしてこれを大きな国の政策としていまからやっていこうという段階ですから、多少理屈はそうでも、一ぺんやってみて、その結果もう少し答申を正式に受けてそれから踏み切りますというのがほんとうと思いますけれども、方針として国も持っているという限りにおいてはやはりすっきりした答申を受けて、そうして一年間とにかく各層のところの意見を聞いて、それから四十七年以降十年間やってみて、そうしてその十年間の結果でどうしようかきめよう、こういうゆうちょうなことでは私は大混乱をしていくんじゃないか。学制改革という問題について大きくいまからやるぞという気合いと現実のいまの問題とは、私は非常にかけ離れているような気がする。この点についてはもうこれ以上お聞きしませんけれども、幼年教育の問題については早急にひとつ義務化するのか、しないのか、そこらあたりをはっきりと腰がまえは、試験的に進めるなら進めるということでなければならんじゃないか。混乱だけが残るというふうに思います。幼児教育を義務化する、しないの問題については今後また、私ども意見を持っておりますから、十分出していきたいと思いますから、要望だけを申し上げておきます。  次に、養護教諭の問題について質問をいたしますが、配置の問題であります。学校の運営の中における児童生徒の健康管理あるいは保健指導、こういったものの重要性というのはもう十分国会でも審議を毎回されておるわけでありますが、そういった認識はありつつも、いつまでたっても全校にこの養護教諭を配置するという動きはなかなか出てこないわけであります。  そこでまず大臣にこれだけはひとつ確かめておきたいと思うのですけれども、学校教育法が制定されたときに、この養護教諭は全校必置だということで規定はされておりましたけれども、附則の中で当分置かないことができるというふうにされて、これが今日まできておるわけでありますが、本来この学校教育法を制定するときのこの附則の審議の場合に、全校必置というふうにして法律を決定をしておけば、その当時の養護教諭の人材といいますか、数が足らないということで、さっそく法律違反を起こすということで、附則で置かないことができるというふうにしたわけでありますから、養護教諭の問題についてはこれはもう必置というのが大原則であって、財源の問題とか、こういった問題でおろそかにすべき問題ではないという私は確信を持っておるわけでありますが、この基本的な考え方について大臣のお考えをお聞きしたいと思うのです。
  27. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 養護教諭につきまして、本則においてはそういうふうに書いてあるわけでございますが、しかし学校教育法第百三条におきましては、その特例といたしまして、当分の間小・中学校養護教諭を置かないことができる旨を、また一面において規定をしております。このことはやはり養護教諭の養成状況、先生がおらなければどうにもなりませんし、また財政負担、その他職員の設置状況等にかんがみまして、やはりこれを漸次本則のほうへ近づける努力をわれわれがしなくちゃならぬ責任がある、こういうふうに考えておるわけでございます。
  28. 安永英雄

    安永英雄君 これはもう国会のあるたびに附帯決議がついて、ぜひひとつ必置の方向へ努力をせよという決議が行なわれておって、これも文部省としても了解をしながら今日まできたわけです。一挙に切りかえる、法律の附則を削除するという状態にはいかないことは私も十分承知いたしておりますけれども、それにしてもあまりにやはり進みぐあいがおそい、今日まで附帯決議ずいぶんつけて、そうして努力する努力するできましたけれども、この問題その後の、今日までの努力のあとというものについて説明を願いたいと思います。
  29. 井内慶次郎

    説明員井内慶次郎君) 養護教員の配置、養護教員の定数につきましては昭和三十三年に、第二十八国会におきまして現行の標準法が制定されましたが、国会におきまする附帯決議の趣旨にものっとりまして、第一次五ヵ年計画、第二次五ヵ年計画並びに現在進行中の第三次五ヵ年計画ということでその充実につとめてまいっておるところでございますが、その経過を計数的に御報告申し上げますと、標準法が実施されまする直前の昭和三十三年におきまして養護教員の総数は八千三百九十五人、全校に対しまする配置率は二四・五%でございました。で、昭和三十八年、第一次計画の完成年度におきましては、配置率約五%のアップで三〇・六%となり、数におきましては一万三百二十人ということとなりました。第二次計画は四十三年に一応完成ということでございましたが、実数におきまして一万三千百六十四人、第二次計画中の進行いたしました配置率は大体一〇%でございます。第一次計画で五%、第二次計画で一〇%、さらに四十四年度予算審議を賜わり、そのときに標準法の御審議をいただきまして改正をさしていただきましたが、昨年度の標準法改正により新たに設定されました第三次五ヵ年計画——四十四年を初年度とし四十八年度を完成年度といたしまするが、この計画を目下進行中でございますが、完成年度の四十八年におきましては、養護教員総数約一万七千人、配置率五二・六%。で、第一次計画で大体五%、第二次計画で一〇%、現在進行中の第三次計画で一二%の比率増をいたしまして四十八年度に五二・六%まで整備をはかりたい。養護教員の既往並びにただいま進行いたしておりまする定数の状況は以上でございます。
  30. 安永英雄

    安永英雄君 四十五年度の現在の配置状況についてお聞きしたいんですが、ありますか。
  31. 井内慶次郎

    説明員井内慶次郎君) 四十五年五月一日現在の養護教諭の配置状況は、全国数で申しますと、四六・六%のところまでただいままいっております。
  32. 安永英雄

    安永英雄君 いまお聞きしたんですけれども、完成年度の四十八年度で五二%ですから、ようやく半分になるわけでおよそ全校配置ということとはほど遠いわけでありますが、この現状を今後どういうふうに進めていかれるのか。問題は、養成機関が不足しているという問題と養成機関を出た者がなかなか就職をこちらのほうにしない。これがまあ原因なんですけれども、養成機関の問題についてはどういうふうなお考えをお持ちですか。たとえば一昨昨年でしたか、ようやく千葉大に養成所をつくり、昨年は全くなかった。だからぴたりとまってしまっておるわけで、先ほど申されたように、四十八年以降にさらに努力をしても全校必置とはおよそほど遠い状態なんですけれども、養成機関の拡充、こういったものについての計画がありましたら、ひとつお答え願いたいと思います。
  33. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 養護教諭の養成も、原則といたしましてはそのための課程の認定を受けた大学、短大で養成するのがたてまえでありまして、それで不足する場合には指定の養成機関も養成に当たり得ることになっております。そこで文部省としましては、大学、短大でこのような過程をつくることにつきましてはできるだけこれを奨励をいたしております。それからまた、指定の養成機関につきましてもふやすようにまあ奨励もいたしております。それらでも足りませんので、いま御指摘のありましたように特別立法をいたしまして、養護教諭養成所というものを国立でつくっております。機関の数は、だんだんにふえておりまして、全部でたとえば四十三年現在では七十三機関でありましたものが、現時点では九十六機関になっております。国立の養成所につきましても四十三年当時二つでありましたものが八つになっております。そこで養護教諭の免許状を取得するものにつきましても、四十三年当時におきましては二千六百程度でありましたものが、現在では三千四百というぐあいにふえております。その中で、現実に公立の小・中学校に就職いたしますものは千名内外であります。そういうことで養護教諭の拡充計画そのものについては、先ほどまだまだテンポがゆるいというお話がございましたけれども、一応現在設定されております五カ年計画による養護教諭の充足のための養成としてはまあ間に合っておるわけでありますが、なお、これら養成機関の拡充整備につきましては、機会あるごとに文部省といたしましても、努力するつもりでございます。
  34. 井内慶次郎

    説明員井内慶次郎君) 先ほど安永先生御質問の中で、配置状況の問題というのがありましたが、その点ちょっと説明させていただきます。先ほど四十五年五月一日現在の全国での配置のパーセンテージが四六・六%というふうに御説明を申し上げましたが、各府県ごとにこれを見ますと、正直申しましてでこぼこが相当あるわけでございます。で、この点どうしてでこぼこがあるかという点をやはりひとつ問題としてとらまえるべきであろう。で、いろいろとし細に見ますと、やはり小規模学校と申しますか、僻地学校と申しますか、この辺に対しまする配置というのが、どうもなかなか思うように進行していないという実態がどうしてもございます。それで四十四年から始めまして、ただいま進行中の第三次計画を作成するに当たりまして、従前、養護教員の定数の算定のしかたは、小学校で申しますと、昭和三十三年当時が千五百分の一というやり方、それが千分の一になり、八百五十分の一というふうに、そちらのほうの母数をだんだん小さくしてくるということで、数をふやしてまいったわけですが、四十四年度の第三次計画を立てるにあたりまして、そのやり方だけではどうしてもまずいんじゃないかと、そこでただいま進行いたしておりまする定数の整備計画におきましては、やはり僻地とか無医村とか、こういうところはそれと並行して養護教諭を配置できるように、定数の措置をとるべきであるということで、その点を加味したものを、四十四年に定数計画として立てまして、ただいま進行いたしておるところでございます。ただ、この点、小規模学校、僻地校等に養成していただきました養護教員の方々に、どんどん就職してもらうように、行ってもらえるように行政指導等、いろいろと私どもも今後くふうしなきゃならぬ問題があるであろう、かように考えておりますので、その点を補足いたします。
  35. 安永英雄

    安永英雄君 いまおっしゃったように、僻地、無医村、こういったものについては、特別の扱いをするということですが、明年度はどうされます。明年度はどういう扱いをされますか。
  36. 井内慶次郎

    説明員井内慶次郎君) 定数の五ヵ年計画は、御案内のように四十四年が第三次計画の初年度で四十八年までの五ヵ年間で、大体五年間で一定計画を埋めていくということで、いま進行いたしております。したがいまして、五年間を通じまして、僻地学校につきましては、僻地学校の数の大体七分の一を、一応五年間に埋めていこう。それからいわゆる無医町村には一人ずつ必ず置くようにしてまいりましょうということで、五ヵ年計画を立てましたときは千百四十七という数値を一応、私ども持ちまして、それでことしが二年目ですから、大体その五分の一ずつは埋めていくということで、進行いたしておるところであります。
  37. 安永英雄

    安永英雄君 私はいまおっしゃったことは知っておる。それは審議したわけです。私はやはり来年はどうされると聞いたのは、特別にさらに五ヵ年計画以外の定数の配当を、こういう僻地あるいは無医村等にぜひやってもらいたいという気持ちがあるわけです。たとえばこういうことはできませんか、これは委員長も一緒に長崎、北九州方面の視察をしたわけですが、かつて、ここにおった知事の久保さんあたりが、陳情のまず第一番目は、僻地離島をかかえておる長崎県にとにかく養護教諭の配当をたくさんやってもらいたいというのが要求で、これも報告書には書いておったのでありますが、ここでは知事はきっぱり、いまのところ定数を許してもらうならば二十五名は確保していると言う。二十五名の有資格者もおるし希望者もおる。したがって、先ほど大臣からおっしゃったように、これは必置というのがこの法の原則です。これに向かって進んでおるが、これがなかなか進まないというのが言い分なんですけれども、私はこういう、採用しようと思えばたくさん有資格がおる、そして希望もしてる、僻地も行きたい、こういうところあたりはどしどしとにかく明年度あたりから——ことしもいま予算編成に入っていますが、明年度あたりではそういうかまえがあるかどうか。有資格者もちゃんとおる、希望者もおる、こういったところは次々に採用をしていくという措置はとれないものかどうかですね。  それからもう一つ、これも視察中に、報告にもありますけれども、たとえば北九州のあの公害の一番ひどい城山小学校に行ったわけですけれども、ここはもうものすごいばい煙があって、目も呼吸器もやられておる。昼の時間になってきますというと、先生が指導しないでも洗面所に全員が走っていって、そしてうがいをし、目を洗っておる。校長さんももうすでにぜんそくにかかっておる。ところが学校規模が小さい。ここには養護教諭一人おらない。こういうところあたりは、現在の五ヵ年計画以上の計画を立てて、明年度あたりから定数を配当する、こういうふうなかまえでないと私は、先ほど大臣が言われた、これに近づけるのがほんとうだという趣旨とは合わないと思う。配置ができないのは、人員がまずおらない、有資格者と希望者がおらないということがこれは原因であるならば、おるのなればその人たちは直ちに採用をして定数を渡すというふうに私はするぐらいの積極性がなければ、いまお話がありましたように遅々として進まぬし、私の計算ではこの四十八年以降二十年かかって——現在の状態からいって、いまの計画からいけば二十年かかりますよ、この必置というのは。私は、口では近づける、努力をすると、決議は毎たび附帯決議をつけると、こういっても実現はなかなか非常に不可能だと、こういう状態であれば。私は五ヵ年計画のワク外に飛び出してこの必置の方向については努力をしなきゃならぬのじゃないかというふうに考えるわけですが、この点どうですか。
  38. 井内慶次郎

    説明員井内慶次郎君) ただいまいろいろとお尋ねいただきましたが、先ほど御説明申し上げましたように、四十四年度から四十八年度までの第三次五ヵ年計画のワクといたしましては、そのワクの中で養護教員を設置してまいるにあたりまして、ほんとうに養護教員を必要としておるところに的確に配置できるように、定数のワク内におきましてその定数を十分必要なところに的確に配置していくという行政上の努力をやってまいるということが今日私どもの立場でございます。御趣旨は御趣旨として承りまするが、定数の五ヵ年計画の達成に私どもは全力をあげると、ただいまそういうことでございます。
  39. 安永英雄

    安永英雄君 大臣お尋ねをします。  いまそういった答弁がありましたけれども、公害とかあるいは僻地、離島、こういったものについて私は先ほど言ったように有資格者ちゃんといる、それからそこにも行って働きたい、そういう希望者もいる、こういったところについては五ヵ年計画のワクじゃなくて、私は大臣施策で思い切ってそういったところ、調査も必要です、全般的にレベルを上げることも必要ですけれども、そういった緊急を要する場合とか、ぜひ必要だと、しかも条件が整っておる、こういうところは、養護教員を配置していないところには配置するという勇断をふるってもらいたいと思うのですが、その点どうでしょう。
  40. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 一応ただいま審議官から申し上げましたように、昭和四十四年から出発したばかりでございますから、これをいまの段階で改定をするというわけにもまいらぬわけでございまして、ただし、この進行過程におきましてむしろ地域的にあるいはその定員の範囲内におきまして適正な配置というもののくふうは行政的にある程度可能じゃないかというふうに思います。それ以上はなかなかむずかしいのじゃないかというふうに考えます。これは特に養護教員に関してでございますが、公害その他につきましてはまた別の問題があるいは出てくるかもしれませんが、しかし定数は一応これできまっておるわけですから。
  41. 安永英雄

    安永英雄君 それでは時間もきましたから、一番最後に養護教諭を確保するというために一つ大きな障害になっておる点は育英会の問題にあると思います。いまも局長は答弁されましたように、現在の養成機関というのはいろいろあります。いろいろあって国立に養成所を付設しているようなところもありますけれども、大体大臣が指定をされた学校で所定の課程を終えて、りっぱな免許状をもらってその人たちも学校の養護教諭として採用されておる。ところが育英会の奨学金の貸し付け、それから返還、こういった問題について非常に不利な点がある。国立の養成所を出たこういった方々については奨学金ももちろん与えられ、そして職につけばちゃんと返還免除の措置もとられる。ところが同じように大臣から指定をされた、そして同じ課程を踏んで正式にこの免許状を持って出てこられた人々に対しては返還免除もないと、こういう非常に片手落ちな育英会のほうの仕組みになっておるわけですが、これは毎回たびたびこの問題については措置できないのかということを言い続けてきたわけですが、その点についての何か今後措置をされるというふうなお考えがあるかどうか、お聞きしたい。
  42. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 文部省といたしましては、指定養護教員養成機関等に在学する学生を日本育英会の奨学金の貸与対象とすべく、昭和四十六年度予算概算要求におきまして約一億六千七百万円を要求しております。これに対しましてぜひこれの実現に努力をいたしたいと考えております。またこれらの学生に対する貸与が実現いたしますと、これらの機関で貸与を受けた学生が卒業後養護教諭等の教員についた場合は返還免除に当然なるというふうに考えております。
  43. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時二十八分休憩      —————・—————    午後一時二分開会
  44. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き教育文化及び学術に関する調査を議題といたします。  本件について質疑のある方は順次御発言願います。
  45. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 これから質問することは、従来あまり文教委員会の場で問題にされなかったようなことでもあり、とりわけ現在の法秩序の中と、あるいは行政機構の関連においてこれから質問することは若干この場で問題にすることが当か不当であるかはいろいろ批判のあるところだと思いますが、ただ先般防衛庁から「日本の防衛」と——まあ世間並みに言えば防衛白書が出されたということが一つの大きな質問の動機になっておるし、いまひとつは教育のとらえ方として、この間文部省が出したわが国の教育水準、まあ教育白書、この中にも大きくうたわれている生涯教育という一つの観点から考えた場合の、そういう視点の問題等をあわせ兼ねて、きょうは最初は防衛庁に対して防衛庁の庁内におけるところの自衛官の教育の問題、それと文部行政との関連の問題、こういうことで質問を続けていきたいと思います。  まあ特に中曽根長官が防衛白書を発表する段階において談話も発表しているわけですが、この談話の中で「たとえば自衛官も市民であり、憲法の前では平等であるにもかかわらず、大学への受験や入学が拒否されていることに対する不満」云々ということをことさらあげている関係もありますので、そうしたことがこれから私質問しようとする一つの大きな動機づけになっているということで御理解をいただきたいと思うわけです。  生涯教育の問題はきのういただきました白書の中で一九三ページですか、この中で「一九七〇年代の教育考える場合には、単に学校教育にとどまらずひろく「生涯教育」という考え方が基盤となっている。」ということで、途中を省略いたしますが、「この考え方に従えば、就学前の教育学校教育外の教育学校教育修了後の教育も重要であり、また、学校教育は生涯教育の一環としてとらえられ再編成されるべきである。」という文部省側の腹がまえが出ているわけですが、しかしここでまたいまよく世間にうたわれる生涯教育の問題が提起されておるわけです。私はまだこの生涯教育という教育概念については確たる確信を持っているわけではありませんが、きわめて常識的に考えた場合に防衛庁内の教育行政といったものについて、いわゆるこの生涯教育の中における学校教育外の教育という範疇に入るかどうかしりませんけれども、その辺のところがひとつ法的にも行政機構の立場からもまず最初に交通整理をしていただきたいと思いますが、まず防衛庁のほうではどういうふうにその点をお考えになっているか。私の質問の意味がわかりますか。おわかりなければもう少し付言いたしますが、わかりますか。わかったら回答いただきたいと思います。
  46. 高瀬忠雄

    説明員(高瀬忠雄君) 生涯教育という実は白書、私初めて伺いまして詳しくわかっておるわけではありませんけれども、まず自衛隊の教育のあり方を説明いたしましてそれと関連して私なりの感じで申し上げたいと思います。  自衛隊の教育におきましては御承知のように自衛隊法で、自衛隊は、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛するということを任務とするということになっておりまして、それでその使命を達成するためにその使命の自覚を絶えず徹底させることを基本としております。そしてその最終目標を、精強なる部隊の錬成に置いております。そのために使命感の自覚、責任感の養成、科学技術の知識、技能の修得、体力の錬成、そういったことに重点を置いて教育を行なっております。そういう意味では一種の職能教育というようなことになると思いますけれども、いまお話しの生涯教育というものが人間がその一生を通じてあらゆる場所で学習をして、望ましい成長発達を遂げるというようなことの意味合いであるというならば自衛隊の教育もまた広い意味におきましては生涯教育の一環であると理解できないこともない、さように考えております。
  47. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 参事官も御承知だと思いますが、ことしの五月、参議院の内閣委員会で中曽根長官が、自衛隊は国民教育的場であり、自衛隊の中に国民教育的要素があると、明確に答弁をしているわけですが、その点、御承知でしょうか。
  48. 高瀬忠雄

    説明員(高瀬忠雄君) 承知しております。
  49. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 そこで位置づけの問題ですけれども、結局警察庁における警察大学なりあるいは自治省における自治大学なりあるいは労働省における職業訓練法に基づく職業訓練所などと、こう大体並列する形になるんですか、機構として。
  50. 高瀬忠雄

    説明員(高瀬忠雄君) いまの例示をされたそれぞれのことにつきましてその対比で必ずしも承知しておりませんのでその点はあれでございますけれども、先ほど申しましたように、その人間が一生を通じてあらゆる場所で学習をして望ましい成長発達を遂げるというようなことを目標にしておりまして、そういう意味で自衛隊の教育、まあ一般的に申しますればそういったことで自衛隊の部隊、学校等を通じてやっておるわけでございます。
  51. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 それでは先ほどの答弁の中で若干触れておいでになると思いますけれども、自衛隊法の第三条に基づいてそれぞれの任務、自衛隊の任務がうたわれておるわけですが、結局教育というものはその任務遂行に必要な知識なり技能を身につけることにおそらくなると思いますが、もう一度あらためて自衛隊の教育目標というものを簡単に答弁をしていただきたいと思います。
  52. 高瀬忠雄

    説明員(高瀬忠雄君) 自衛隊の任務は、いま御指摘のありましたように、自衛隊法で定められておりまして、自衛隊は直接侵略及び間接侵略に対しまして、民主主義を基調とするわが国を防衛するということをたてまえといたしておりまして、そういった目的を達成するために自衛隊の精強な部隊の練成、それから個人の陶冶、隊員の教育というようなことをやっております。それで先ほど申しましたように、そういった目的を達成するために使命感の自覚、あるいは責任感の養成、必要な科学技術の知識、技能の修得、体力の練成、こういったことに重点を置きまして、そうして結局は先ほどの自衛隊が任務といたしまするところのわが国の防衛というその目的を達成するために必要な隊員の練成、部隊の練成、そういったことを目的にいたしておるわけでございます。
  53. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 そこであとその問題もう少し深めたいと思いますけれども、具体的ないろいろな問題をまず二つほど聞きまして、その上であらためて目標なり、方法等について伺いたいと思いますが、これも五月の内閣委員会で明らかにされたことなんですけれども、まあ人事教育局長から明らかにされたことですが、防衛大学というものがあるわけですが、その大学の卒業生の動向、さかのぼってずっと申し上げてもらうこともたいへんでしょうが、内閣委員会では昭和四十年から四十四年まで、その中で特に私聞きたいのは、五百名程度定員であろうと思いますが、その中で四十年度の中退あるいは卒業してもなおかつ自衛官にならなかった数、相当数あると思いますが、これをもう一度的確な数字をお聞きしたいと思いますが、一番新しいところまで、四十年から、それをまずお聞きします。
  54. 高瀬忠雄

    説明員(高瀬忠雄君) お答えいたします。十期生、これは四十一年三月の卒業の組でございますが、卒業後一年以内に退職いたしました数が二十六名でございます。それから同じく四十二年の三月卒業につきましては三十二名、四十三年の三月につきましては六十七名、四十四年三月が六十四名、四十五年三月につきましては六十六名。
  55. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 参事官、ちょっと私の言ったこと、まだ質問に答えられておらないけれども、年度途中で中退をする学生、それからいまおっしゃった数字に若干違いがあるのじゃないですか。四十二年度卒業生、四十三年度卒業生のいわゆる自衛官としてとどまらなかった数、私が速記録でみたのと若干違っているようです。いま一度確かめてください。
  56. 高瀬忠雄

    説明員(高瀬忠雄君) 在学中に退学した者につきまして先ほど申し忘れまして申しわけないですが、四十年四十三、四十一年三十八、四十二年四十九、四十三年四十一、四十四年度が五十七。  それで数でございますけれども、四十一年三十二、四十二年六十七、四十三年が六十四、これは四十四年十月現在で五十一名という数字になっておりましたけれども、その後の調査で六十四名、それから四十五年が六十六名、これは四月のときの数字は五十名でありましたが、六十六名。
  57. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 数のことはそう議論をする問題ではありませんから……。ただ問題は、この数がこういう形で現象的に出てきた問題の基本の問題です。ネックの問題になると思います。でありますから、十一月五日であったかと思いますが、NHKのテレビで自衛隊の問題を扱っておったことを御承知でしょうね。その中で多様化する自衛隊の意識という問題をとらえておったわけです。その中で言われていることは、隊員が現在二十六万か幾らかでしょう。しかし非常に不足だ。これは数字をあとで明らかにしてほしいと思いますが、しかし、これは去年、ことしの問題ではない。自衛隊に入った者、いまの場合は、大学の問題を提起しながら横へ問題をそらしますが、八%が国防のために入隊している。つまり自衛隊法第三条にうたっている自衛隊の任務を正しく理解しながら入っているのは八%である。そうしてまた二〇%はそのことを非常に誇りとしているということです。この数字は私何かしらぞっとしたわけです。八%の理解者である。二〇%が誇りを持っているというところにこれから入ってからの皆さんの教育計画の努力というものは並たいていではないだろう。しかもまた、防衛大学のごときこの道に進む者とすればきわめてエリートのコースに入っておりながら、中退者がいま参事官が発表したような数字であり、また大学を出てからもなおかつほかの道を選ぶということについてどのように分析をしておいでになるのか。言いかえれば、防衛大学で言うならば、教育の方法なり内容に欠陥があるのかどうか。あるとすればどういう点で欠陥があるのか。そういうことを深刻に分析をしておられると思います。自治大学にしろ、警察大学にしろ、防衛大学にしても、それぞれの位置づけは違っても、私は大学設置の目的は東大などとはおのずから違うと思う。そういうところがら考えて非常に深刻な問題として庁内では御検討いただいておると思いますが、その検討の大体の荒筋をもし御披露いただけたらしていただきたい、こう思います。
  58. 高瀬忠雄

    説明員(高瀬忠雄君) 先ほどの意識調査の数字につきましては私存じ上げておりません。それで防大に入校の際におきまして、将来とも自衛官として進むという決意を持って入ります者は、私どもの調査ではおおむね三〇%あるというふうな統計になっております。それで先ほど申しましたように、在学中または卒業のときにかなりの中途退学または幹部自衛官とならずにやめていくのは非常に遺憾なことでありますけれども、これらの理由をいろいろ調べております。それらの中には、私どもが調べたところによりますと、家庭の事情によりますとか、あるいは身体的な理由によりますとか、それから他の大学に進学をする。そういう者の中には自分は航空自衛隊に行ってパイロットになりたいというふうな気持ちであったけれども、海のほうに回されて不本意であったというようなことでやめるというような者もございます。中には自衛官になる意思がないという者もございますけれども、大体私どもの調べたところでは以上のような事情でございまして、防衛大学校の教育内容その他について欠陥があったというふうには考えておりません。しかし脱落していく者があることは事実でございますので、入校時におきまして身体検査を厳重にやるとか、それから防衛大学校の教育をしている教育におきまして、もっと強固な自衛官意識を涵養するとか、あるいは体力の練成をするとか、それから学生は宿舎で共同生活をしておりますけれども、そういった学舎におけるところの集団生活を通じて極力自衛隊の意識を織り込むようなきめのこまかい指導をしていくということが必要でないかというような反省はしておりますけれども、特に防衛大学校における教育が技術的にまずいからこうだというふうには考えておりません。
  59. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 防衛大学教育が間違いでない、技術的にまずくない、確信のある答弁をしていただいておるわけですが、しかしやはり何か問題があるんじゃないですか。  もう一つ、かりに突っ込んでいけば、小西君のような場合があるのですね。「反戦自衛官」の場合がある。これは家庭の事情でもなければ身体上の理由でもないし、明らかに彼は自衛隊に入ったときの最初の気持ちは、彼なりの青年らしい誇りを持って入っておると私は思います。それがいま新聞などに非常にうたわれているように、御本人もまた系統的にみずからの思想の転換をこのような書物で出しているわけですから、こうしたところに自衛隊は、防衛庁がはっきりとした確信に満ちた教育の方針等があったり、またそれに対するきめのこまかい指導等があれば、こういう「反戦自衛官」などというものは出るはずもないだろうしかし出たというところにはやはり教育目標の設定の問題あるいは教育の指導上の問題、いろいろあると思います。これは小西君の本を読めばさまざまな問題が起こっております。さまざまな問題も一々私自身も確信を持って申すことはできませんけれども、いまおっしゃったように、防衛庁そのものには教育上の問題はない、私はきょうここで自衛隊を認めるとか認めないとか、憲法がどうだ、こういう原則的な問題をきょうは議論しようとは思いませんが、何かあるんじゃないか。そういうことばなかなか言いにくいでしょうね、参事官。あるんじゃありませんか、率直に申してください。
  60. 高瀬忠雄

    説明員(高瀬忠雄君) いま小西元三曹のお話が出ましたけれども、小西三曹につきましては現存はともかく、当時は、問題が起きましたときはまだ二十歳の若者でございます。いちずに思い詰めた結果、ああいうようなことになったというふうに私どもは考えております。この事件につきまして私どもの反省は、小西三曹の部隊に勤務した環境というようなものをまず考えなくちゃならぬと思うのです。レーダーサイトという非常に僻地に勤務をいたしておりまして、レーダーサイトのまた勤務というものは、勤務そのものは毎日航空機が飛ぶ、飛行機をながめるというようなことで非常に孤独な勤務状態、そういったことでそういった隊内の生活等につきまして非常に単調な生活をしたというような、そういうことにもかかわりがあるのじゃないかというようなことでございまして、そういう点は反省いたしまして、隊内におけるその若者の悩みなどにつきましてはできるだけ生活指導を行ない、個人的な悩みがあればそれに対していろいろ相談に応ずるというような、カウンセラー的な指導面について一そう努力しなくちゃならぬというような反省はいたしております。
  61. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 それでは具体的に小西君のことを例に出しますが、彼はこう言っているわけですね。「ホヤホヤの新隊員には中隊長が自衛隊の使命をスライドを使って教える。講義だと、ちょっと退屈すると遠慮なしに居眠りするから、もっぱら視聴覚教育にたよるのである。たとえば、スライドでベトナムの惨状を次々と写し出しながら説明する。「わが国が、こんな姿になってはいかんだろう。だから自衛隊は平和と独立を守り、それを犯すものには、断固として立ち上がらねばならん」「自衛隊の使命は、直接及び間接の侵略を未然に防止し……わかるかな、これは。間接侵略、たとえば、上の子が、ほしいものがあるときに、下の子に入れ知恵しておねだりさせる、これが間接侵略だ」」と説明、「あまり反応がない。中隊長はいくぶん、てれたようす」と、教育のこのプロセスを書いております。これを読んでみて、私も教育経験を持っておるわけですが、説得力がないし、いま一つ皆さんが期待するような情熱的な使命感がこういうところから出てくるようにも思われません。また彼は、これは彼の思想でしょうけれども、「天皇制軍隊が天皇への忠誠を誓わせ、上下の区別、軍隊内階級の秩序化、すなわち、徹底した差別構造を形成していったことは、あまりにも有名である。上等兵は一等兵、二等兵を、牛馬のように私用にこきつかう。私的暴力は絶対的権威として黙認され、かつ必要とされる。このようなことは結論として、部落出身兵士差別の問題をもはらむのである。しからば現在のブルジョア軍隊」、彼はブルジョア軍隊ということで規定しているわけですが、「自衛隊は何をもって階級的矛盾の解消をはかろうとするか。それは、まさしく「新しい愛国心」の注入にほかならないだろう。「反共」「自由を守る」「平和と民主主義を守る」など。それと同時に、天皇制軍隊と同様に、まさに軍隊内の徹底した差別構造の形成があらわれてくる。絶対的服従の精神がたたきこまれ、黙認された形の私的制裁が公認され、兵士のあらゆる個性を抹殺し、自主性を剥奪することに主力が注がれてくる。すなわち、ロボットとしての、機械としての存在のみしか与えられないのである。」、でありますから、いまの御説明によりますと、彼はまだ若い少年で入隊をしてその後教育を受けた中で自分の矛盾を何とか問う、だから反戦自衛官になったのだというような平面的なとらえ方でありますが、小西君にしてみれば非常に真剣な訴えを実はしているわけです。このことから小西君の行動の是非を論ずるのではなくて、いま自衛隊内の大学のみならず教育計画全体の中に私問題があるのじゃないかというふうに感じますので、ことさらこういう問題について現在なおかつ質問を続けているわけですが、いま御披露申し上げた程度のことは十分御承知だと思いますが、いま申し上げたところだけでも否定ないし反論できるならばお示しいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  62. 高瀬忠雄

    説明員(高瀬忠雄君) いま小西三曹の書かれたものの御説明ございましたけれども、私どもは先ほど申しましたように、自衛隊の教育におきまして非常に精神教育を重視しております。御承知のように、自衛隊法では「服務の本旨」というようなものを定めまして、そしてそこで民主主義を基調とする自衛隊の使命を自覚させ、自衛官としての、繰り返しになりますけれども、旺盛な責任感あるいは厳正な規律、強固な団結を保持させる。そして、あわせて常識ある有為な国民としての資質を陶冶するというようなことを考えておりまして、昭和三十六年には、御承知と思いますけれども、「自衛官の心がまえ」というものを作成いたしまして、それで教育方向教育内容方向、精神を定めております。それに従いまして自衛隊は、それぞれ部隊や学校等におきまして、あるいは教科を設け、あるいはあらゆる機会を利用いたしましてその徹底をはかっております。で、できるだけそういうような方向で、いまお話の小西三曹というような隊員の出ない、できる限り、先ほど申しましたそういった精神教育とあわせて、きめのこまかい、個々の隊員に即した指導をして、そういった誤りのないようにしたいと考えておるわけであります。
  63. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 そこで、自衛官にしろ防大の学生にしても、これは文部省が所管しております中学校教育あるいは高等学校教育、まあ大学教育にも関連があるかと思いますが、そうした学校の教育を経過したものであるわけです。そういうのを自衛官なり防大の学生として皆さんが教育対象としておられるのですから、まあ小西君のような場合は例外中の例外かもしれませんが、先ほどおっしゃったように防衛大学の学生としても中途退学をさせる、あるいは大学を卒業してからも自衛官として職につかない。それは幾つかの理由を申し述べられたけれども、私は、あげられなかった理由の中に、より重要な要因が伏在しているのではないかと、私なりに実は判断するわけですが、参事官の口からそのことを聞けぬことも参事官の立場上やむを得ないと思いますが、やはり基本的には、自衛隊の持っている使命とか任務とか傾向の位置づけの問題等が小西君のような場合も、あるいはまた防大の中退、就職しないというような問題の中にも存在すると判断するのでありますが、これは私の判断でありますから、だからその結果が出るから文部行政に対して防衛庁から注文を過去においてつけられたこともあるだろうし、現在、ただいま参事官の立場で庁を代表して文部行政に対して端的な注文があったらここで、共同の調査の場でございますからお聞かせいただければと思います。冒頭に申し上げましたように、長官が白書を発表するにあたって、何ら自衛官の人が東大へ行こうと日大へ行こうといいじゃないか。教育機会均等じゃないかと言って長官が開き直っているわけですから、そういうことも心の中で含みながら、文部行政に対する端的な御注文を防衛庁を代表して、ここでお聞かせください。
  64. 高瀬忠雄

    説明員(高瀬忠雄君) 私ども自衛隊の中で、先ほど申しましたように、いろいろな各種の学校を持っております。それからいろいろな教育をしておりまして、そのつど文部省に対しましても、問題があるたびにいろいろ御相談をいたしまして御連絡をいたしております。したがいまして、いま直ちに特に文部省に対しまして要望というようなものは持ち合わせておりません。
  65. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 現在時点でことさらないというふうに理解していいわけですね。しかし過去にはあったわけでしょう。いかがですか。
  66. 高瀬忠雄

    説明員(高瀬忠雄君) かって昭和三十七年、政務次官会議におきまして防衛政務次官の名で愛国心等のことについて政務次官会議の席で要望したというようなことを聞いております。
  67. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 聞いているという程度ですか。これは重大なことなんですけれども、当時の昭和三十七年の五月十一日の日でしょう。特に教科書の問題を防衛庁が政務次官会議で、要望ということで学校教育に関する要望を出しておいでになるはずですね。これはあとで文部省からお聞きするわけですけれども、その要望書の大体骨子、中身、力点ですね。そうして三十七年ですから、その後文部行政がそれに対応してきたかどうか、いまおっしゃったようにいまは何も言うことなし、文部行政すばらしいと、防衛大学の中退も小西君の出ることも、いわゆる前段の教育がりっぱであったからこういう結果が生まれたのだと、こういうことになるおそれがありますね。それでいいですか。率直に聞かしてくださいよ。
  68. 高瀬忠雄

    説明員(高瀬忠雄君) 三十七年の政務次官会議の要望でございますが、その内容は高等学校、それから中・小学校における社会科の教育の現状、その当時の現状にかんがみまして、青少年に対して正しい国民的自覚をうながし、国の防衛について積極的な関心を助長するような教科内容の実現を希望する、そういうような内容であると聞いております。
  69. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 いまおっしゃったとおりですね。教科書の内容についての注文が中心になっているわけです。しかもその注文は科学とか技術とか、そういうことでなしに、あくまでも精神教育の面というか、文部省サイドといえば道徳教育の問題だろうと思いますが、しかもその焦点は愛国心の養成ということで強く分析をして、かつ要望しておられるという事実があるわけですね。そうしますと、そこは行政当局の判断ですが、現在の文部省が検定をしております小・中・高の教科書の状態、これはこれで防衛庁から見ても満足です、けっこうです、こういうことになるのですか、ならないのですか、その辺のところをはっきりしてください。
  70. 高瀬忠雄

    説明員(高瀬忠雄君) 私どもは防衛庁の立場で広く安全保障とか国防とかいうような問題につきまして、その中心となる要諦となるものは国民の心の問題でありまして、その心を離れて国防も防衛というものも成り立たないというふうに考えております。したがいまして、防衛意識の高揚につきましては、そういったことを非常に重視をいたしておりまして、そういう意味から青少年の関心が高まるということは非常に望ましいと、こう考えております。そういうような教育内容が順次実現されていくというような期待を持っております。
  71. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 これは出所を明らかにいたしますが、時事通信の内外教育版に載っていることでございますけれども、およそ間違いないと思いますが、いまおっしゃったように、この教科書をいろいろ分析検討した最終的な結論、要望としてここにいろいろ述べているわけですが、簡単ですから申し上げますが、「右のような現情にかんがみ、青少年に対し世界の政治、外交の現状に対して正しい知識を与えるとともに、このような情勢下における国防のあり方を教え、国力国情に応じて自らの手によって自らの国を守ることが、世界の平和維持に寄与するゆえんであり、独立国家の責務である旨を教育することが、最も緊要であると考える。」、これはいま参事官のおっしゃった、思想、背景、要望は大体ぴったりしていると思いますね。「このような教育は、自由諸国はもとより、共産諸国においても、それぞれの国情に応じて現に実施されており、ひとり日本のみが等閑視される問題ではない。  したがって、この際、わが国の教育全般の改善の問題とも関連して、青少年に、正しい国民的自覚をうながし、国の防衛について積極的関心を助長するような、教科内容の早急な実現を、強く要望するものである。」、これが三十七年であります。でありますから、非常に古い証文でありますけれども、自来八年間の月日をけみしているわけですから、これに対応する文部省の側の問題は、あとで教科書なり指導要領の問題なりについてお伺いをすることにいたしますが、ただ、先ほど述べた具体的な防大の学生の動向とか、あるいは小西君の動向等をあわせ考えた場合に、この要望が私は具体的に防衛庁の満足するような形になっていないのではないか。同時にまた、防衛庁の教育の中身の中で、やはりそういう青年を十分納得できるような手だてが講ぜられていないのじゃないか。基本的な問題は別としましても、そういうふうに判断するわけなんです。それをいろいろここでお答えのないことを類推してものを申しますと失礼でありますから省略いたしますが、より具体的な問題として、三十七年のことも、これはその後文部省と防衛庁とが機会があるごとに問題によっては話し合うということですから、書類を書いて飛んでいって相談するのでなくて、やはり事教育ということにかかわりのある大きな問題でありますから、文部省と防衛庁の間に定期的に会議を持つとか、何かの触れ合いを持つとか、そういうことは過去においてあるのかないのか。その辺のところをひとつ防衛庁のほうからはっきり答えてください。
  72. 高瀬忠雄

    説明員(高瀬忠雄君) 定期的に会合を持つというようなことはございません。
  73. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 そうしますと、合同会議という形式を通して、問題を文部省に提起して、文部省と双方協議して、よしわかった、この程度でひとつ文部省サイドで努力しようといったような確認を取りかわすような経過は過去において一ぺんもないというふうに理解していいですか、その辺を。
  74. 高瀬忠雄

    説明員(高瀬忠雄君) 先ほど申し上げましたように、具体的な問題があるつど、文部省にいろいろな御指導あるいはお知恵を拝借いたしておりますけれども、いま申しましたような意味での定期的な会合とかというようなものはございません。
  75. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 防衛庁に対してはもう一問だけ申しますが、結局、今日の教育では、防衛庁の教育のあり方、方法等はこれでもう非難のしようがない、自信満々だというようなことはなかなか言えないのじゃないかと思いますが、特に、自主防衛、国防の意識、こういうものを教育することについて、小西君が手記に述べているようなきわめて拙劣な、一つ教育の観点から考えても拙劣な方法をもってやっておられるようにもうかがわれるわけですが、最近いろんなものを見ておりますと、特に、あるいは特攻隊の人たちの遺品を自衛官の皆さんの訓練をしている学校等に陳列をしてそれを見せてそうして何らかの教育に資している。少なくとも、われわれが昭和二十年の敗戦のときに総ざんげをして洗い落としたことが、時と場合によっては戦犯の国際裁判にかかるような問題、そのような問題の現象を、遺品その他で、現在なおあるわけですから、そういうものを陳列しながら自衛隊員に一つの精神教育を行なっている、こういう事実は全然ないのかどうか。私この間三十何年ぶりで、乃木会館で友人の子供の結婚式があったから行ったんですが、昭和の初めにあの周辺で一ヵ月間の文部省の特訓を受けたことがございますので、もう一度乃木神社を訪れたわけですが、鉄さくをして中に入れないようになっておりますが、外から乃木大将が愛用された愛馬のうまやといいますか、そういうものは見れるような状態になっておりましたが、門が開かれていないのを見て、なるほどと私考えさせられました。ここにもまだ国家の良識が存在すると思ったのですが、しかし、自衛隊の中ではもうすでに、いま申したようにそういう鉄さくをはずして、乃木邸の鉄さくをはずしたような形における、戦争中のあるいは特攻隊のそうしたものが陳列されて、われ独立自衛の気概を養成するような手段、方法が行なわれているやに聞きますが、そういう事実はないんですかどうですか、お伺いいたします。
  76. 高瀬忠雄

    説明員(高瀬忠雄君) 各部隊等におきまして先人の遺品などを陳列している例はございません。しかし、私どもの精神教育の方針というものは、先ほど申しましたように、「自衛官の心がまえ」というものによって方向を定めておりまして、新しい日本憲法のもとで民主主義を基調とする、そういった立場に立った自衛隊の建設というものを考えております。したがいまして、教育の方針も結局そういうようなことに基づくものでございまして、これに間違いのないようなそういったワクの中で日本の防衛はどうあるべきであるかということに出発して隊員の練成につとめている次第であります。
  77. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 防衛庁にもう一つ最後に。  これは白書の中の前段における中曽根長官の談話の中に、日本の国を非核中級国家という定義づけをしておりますから、非核中級国家としての防衛構想というので中曽根構想は出ておりますね。これは、あくまで外交を大切にするということ、文民統制を大事にするということ、その次に訴えていることは国民の協力が必要だ、国民の協力が得られなければ防衛のすべてが存在し得ないという構想であります。そうだと思います。そうすると、この構想から問題を文部省の場に移せば、文部省学校教育の場、あるいは社会教育の場、これらにおいてこれに対応するような努力がされなければならない。当然また防衛庁もその努力の不足に対して要求をし、努力の成果に対して感謝をするといったような交互の関係が成り立たなければならないと私は思うのです。そういう点で先ほどからいろいろ質問をしておるわけですが、どうも私の胸にぴったりとはまるような結果にならないように思われるのできわめて残念でありますが、一応、その程度で防衛庁の側に対する質問を私は打ち切りたい、こう思います。  そこで文部省の側でございますが、いまのやりとりを文部大臣初め文部省の所管の方がお聞き取りをいただいておるわけです。結局、先ほども言った具体的な問題から申しますと、昭和三十七年五月に、防衛事務次官のほうから文部省に対して教科書の編さん内容についての分析、検討と、それに加えての注文が実は出ているわけですね。それについて、その後約八年間、時間的経過をたどっておるわけですから、大体の荒筋ですね。こまかいことはなかなか御無理でしょうから、どういう措置をとりつつあると、なかんずく午前中の安永委員の質問のように、いま大改革を目ざしておられる、制度上の問題もあり教育内容上の問題もありますから、なかなか一口に申し述べることは困難と思いますが、端的に申し上げまして、学習指導要領の面では、これは道徳教育に関し、社会教育のことに関することと思いますが、かくかくのことを努力しているんだということ、制度面でなかなかそれはぴったり答えるような制度改革は意図されていないと思いますが、先ほどの防衛庁の回答等から当然答えが出てくると思いますから、文部省側のお答えをはっきりお聞きしたいと思います。
  78. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) 今回の教育課程の改定でございますが、教育基本法一条の示すところに基づきまして、特に家庭、社会及び国家の形成者としての必要な資質の育成を目ざし、特に国家に対する理解と愛情を深め、進んで国家の発展に尽くそうとする態度を育成するということが改定の基本方針の一つとして掲げられております。具体的には、社会、道徳、国語などにおきまして、たとえば社会でございますれば、わが国の国土に対する総合的な認識を深めたり、あるいはわが国の歴史に対する正しい理解に基づいて国民としての自覚と誇りを持たせたり、さらに国語におきましては、わが国の国語を尊重しようとする態度の育成、こういったようなものを具体的には強調いたしております。先ほど来のお話しの三十七年の政務次官会議での御要望でございますが、結論といたしまして、わが国の教育全般の改善の問題とも関連して、青少年に正しい国民的自覚を促し、国の防衛について積極的な関心を助長するような教科内容の早急な実現を要望いたしますということでございますので、今回の基本方針に特に国語とかいうようなことばではございませんが、防衛庁の御要望になされておる趣旨は、当然これは私どもの教育課程の基本方針とも合致するものでございますし、その意味で、御要望の趣旨は取り入れられておるように考えております。
  79. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 国を守ることは大切だと、そういう精神面の教育という、その点では防衛庁の趣旨を生かしていると、これに関する限りはぼくはあまり問題はないようですがね。ただそこで、国を守るという手段、内容の問題にも関連してくるわけですが、そういうことなどをいま議論する前に、大臣どうですか、こういうことが文部省にかつてあるわけですね。これは御承知のとおり「あたらしい憲法のはなし」というのはよく出るわけですがね。われわれの側からよく引っぱり出すわけですが、一般のこれは教科書だと思いますがね。教科書として文部省がお出しになっておるわけですよ。文部省が編さんをしておるわけです。「あたらしい憲法のはなし」と、こうあるわけですね。これはぼくらはよく鬼の首をとったようにして言いまして、あなた方は煙たいでしょうがね。これは、いつかこれを改定するなり、これを没にするなりということを天下に明らかにしましたか。
  80. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) はっきり覚えておりませんが、いま先生の御指摘の「あたらしい憲法のはなし」というのを、これを法律を改正するように、これは没にして次にこれだといったような手続をとったことはございません。さらにこの「あたらしい憲法のはなし」ということは、現在特に非常にまずいと、先生いま鬼の首をとったとか、あるいは文部省まずいとか、おっしゃるような感じは私どもいたしておりませんのでございますが。
  81. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 そうすると、お読みになっておるだろうと思いますがね。だから、いま防衛庁が文部省に期待する国防の問題、日本の国を守る防衛意識の問題、そういうものに対して、おたくは教科書なり指導要領を改定しながら応ずるということをはっきり言われたわけですね。そうする場合に、防衛庁が期待するような国を守るという守り方、防衛意識の問題になってきますと、憲法の話が現在生きているという局長の見解だとすれば、これは読むまでもないことなんですが、一ぺん無理して読みます。  「そこでこんどの憲法では、日本の國が、けっして二度と戦争をしないように、二つのことをきめました。」と、「その一つは、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戦争をするためのものは、いっさいもたないということです。」、これでいいですか。いいですね、納得できますか、現状と照らし合わせて。「これからさき日本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。これを戦争の放棄といいます。「放棄」とは、「すててしまう」ということです。しかしみなさんは、けして心ぼそく思うことはありません。」、ここまで国民に呼びかれている。「日本は正しいことを、ほかの國よりさきに行ったのです。」、平和憲法をつくったということでしょう。「世の中に、正しいことぐらい強いものはありません。  もう一つは、よその國と争いごとがおこったとき、けっして戦争によって、相手をまかして、じぶんのいいぶんをとおそうとしないということをきめたのです。おだやかにそうだんをして、きまりをつけようというのです。なぜならば、いくさをしかけることは、けっきょく、じぶんの國をほろぼろすようなはめになるからです。また、戦争とまでゆかずとも、國の力で、相手をおどすようなことは、いっさいしないことをきめたのです。これを戦争放棄というのです。そうしてよその國となかよくして、世界中の國が、よい友だちになってくれるようにすれば、日本の國は、さかえてゆけるのです。  みなさん、あのおそろしい戦争が、二度とおこらないように、また戦争を二度とおこさないようにいたしましょう。」と、こう書いてあるわけですね。  そうしますと、きょうは防衛庁は率直に申してくれませんでしたけれども、小西君あたりの手記などを見ると、この思想とは非常に違っている思想のもとに教育計画が行なわれている、このように私は判断します。でありますから、局長が言っているように、改定する必要はおそらくないだろうと、大した間違いはない、こういうふうにおっしゃるのだけれども、これ聞いただけでも、おそらくここに自民党の方はたくさんいらっしゃいますが、自民党の人たちの納得を得られましょうか、どうでしょうか、局長
  82. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) お読みになりました点でございますが、先生も御承知のように、憲法では「國権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、國際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と、こういうふうに憲法に書いてございます。したがいまして、これは私こういうことの専門ではございませんけれども、すでに防衛庁の長官なりあるいは法制局の長官等が他の委員会等でもお話になっておられるところでございますが、自衛のための武力の行使を放棄しているものではない。ただ国際紛争を解決する手段としての戦争はもちろん放棄しておるが、自衛のためのことは放棄しておるんではないというようなことを、私専門でございませんが、他の委員会等でも政府の高官も言っておられます。したがいまして、先ほどお読みになられましたところでございますが、日本が決して二度と戦争しない、国際紛争を解決する手段として日本が戦争をしかけることはしないんだ、だから二つのことをきめました。その一つは兵隊も、軍艦も、飛行機も、およそ戦争するためのものは一切持たないということでございますので、今日の防衛庁の自衛隊関係がここでいいます兵隊とか、軍艦とか、飛行機とかいった要するに戦争をするための、国際紛争解決の手段として戦争するためのそういうものではないと考えますし、さらに先生のお読みになられました終わりのほうにいくさをしかけるということは、結局自分の国を滅ぼすような羽目になるということで、決していくさをしかけるようなことは、その当時から今日まで一貫して国は考えておりませんし、また戦争とまでいかずとも国の力で相手をおどすようなことは一切しない、自衛力をもって相手をおどすというようなことで自衛隊があるんでは毛頭ないと思います。そういう意味に私ども解しまして、これを絶対にこのときとはもう考え方が変わったんだ、それでこれを廃棄しなければいけないんだといったようなことは、まあ基本的にはそういうことはないだろう、ただ表現的な問題はその後いろいろ学習指導要領も変わり、教科書等も変わっておりますから多少ことばの表現は変わっておるかと思いますが、趣旨におきましては私どもそう変わっておりませんし、さらにこの国を愛し、国を守る教育ということが従来からも社会科を中心に道徳や国語でやっておりましたし、特に今回の教育課程で初めて国を愛し、国を守る教育をやろうというふうになったわけでもございませんので、基本的な考えとしては私ども変わってないと思います。
  83. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 ことしの特別国会ですか、本会議でわが党の羽生さんの質問に答えて中曽根さんが、はからずも海軍、空軍ということばを使われて、私は議運の委員でありますので、議運に出ていただいて徹底的に四十分追及したことがあるわけです。陸上自衛隊ならよろしい、陸軍はよくない、海上自衛隊ならけっこうなんで海軍はけしからぬ、憲法違反だ、そういうようなとにかく考え方、いま局長のおっしゃったようなことは高辻法制局長官がよく言われることで、いまそのことを宮地局長さんの意見を聞いていると、あなたのおっしゃったことを小学校の生徒の前で説明してくださいよ。できますか。このことばの内容はこうなんだと、ここには明らかに軍艦も、飛行機も、持っちゃならないと書いてあるんですね。ところがいまは軍艦じゃない、あれは自衛艦なんだ、飛行機は自衛機なんだと、こういうことで子供たちにわかりますか。ぼくも教育をした経験があって説得できないような気がしますね。それからいまこれを、手続きと申しますか、これを直ちに現場の教師が、いまあまり文部省がおそろしくてたな上げしていると思いますが、現場の教師は、このままやはり社会科の授業の中で、道徳教育の時間の中で、これを取り上げて指導した場合に、私は宮地局長の言われたような解説づきでも、子供にはわからぬのじゃないかと思いますがね、どうでしょう、その辺のところ。
  84. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) 軍艦とか、飛行機とか、ことばは別でも実質は同じだといったような意味であろうと思いますが、先生のあれですが、そういうことではございませんで、基本的に戦争ということは、国際的な紛争を解決する手段としてやる、それが戦争だと、しかしながら、自衛をする、外部からの武力攻撃を受けた場合等で、自衛のために、これを排除するために行なう武力の行使は、憲法の戦争放棄という中には入っていないのだという考え方、この考え方を否定されればこれは前提としてくずれますが、そういうことで憲法はできておる。したがいまして、そういう意味において、民主主義、「あたらしい憲法のはなし」のときには、そういう意味での戦争は、もうやらないのだ、そういう意味での、兵隊や、軍艦や、飛行機は持たないのだという意味がいわれたのだと思います。したがいまして、先ほど来申し上げておりますように、まあ飛行機だ、軍隊だということばの、用語というよりも、戦争という意味を、自衛と戦争とは違うという意味において、自衛力を持つ、戦争するようなものは持たないという意味に、二十二年の「憲法のはなし」も解釈すべきであろうと思いますし、また今日私どももそのように考えております。
  85. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 とにかくこれは中学一年生か、二年生を対象にして文章がつくられておりますためかと思いますけれども、ずいぶん古い話です。そのまま改訂されたこともない。変わってもいない。そのまま使っても文句はないと、私が現場の教師に立った場合、宮地局長の言われたように、ことばをくだいてなかなか説明できないようで困るのですがね。自衛とか、防衛とかと書いてないのですよ。陸軍とか、海軍とか、空軍も持っちゃならないと書いてあるのですよ。自衛という名称をつけたから、自衛の問題として聞くので、そうでなければけしからぬのだというような、ぼくは頭が悪いから、なかなかわからんですね。しかし防衛庁のほうから見れば、防衛大学は中途退学をする、せっかく防衛大学へ入って、自衛官になるのだと思っておったら、就職しない。また先ほどのように、小西君のように飛び出してしまって、反戦自衛官として堂々と戦っている、こういう事実が起こってくるのは、うちが恋しくなったとか、女ができたとか、そういう私情的な問題じゃないのですよ。やはり結局突き詰めていけば、国防とは何ぞやという、あなたがおっしゃった学校教育の指導要領なり、教科書の中のこれから進めようとする方向の問題と非常に関連があるから、私はきょう、防衛庁から非常に御無理をいただいて、防衛庁の見解を尋ねたわけですが、どうも局長の説明はぼくはわからぬのです。高辻さんの説明と同様全然わからぬ。ほんとうにわかりませんが、あなた中学校の教師に一ぺんなってみてくださいよ。説明つかぬですよ、それは。でありますから、もしこれがだめならだめだということで一ぺん通達してください。さもなければ、これにあなたのおっしゃっている解説書をもう一ぺん書いてください。現場の教師はそれを必要としていないかもしれませんが、しかし私がもしかりに現場に帰る権利を与えていただくならば、この問題は提起してみたいと思います。その辺のところどうでしょう、ちょっと私ども割り切れないのですよ。
  86. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) 今回の学習指導要領の改訂におきましても、自衛のための防衛力を持ち、自衛隊が設置されるに至ったことにも触れて指導しなさいというように書いております。したがいまして、いまのおことばを返すようで恐縮ですが、先生のお考えですと、いまの自衛隊が憲法違反だという前提を立てますれば、私が説明しておることは何言っておるのかわからぬということになろうと思いますが、でございますので、前提は、私は自衛隊は憲法違反ではない。じゃ、自衛隊というのは何か、戦争放棄との、憲法条文との関係はどうなるかということになりますと、先ほど来申し上げておりますように、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と、こう憲法は書いておられる。しかし自衛隊はそうではないんだと、自衛隊は自衛のためにあるんだと、憲法で言っておる。こういう戦争放棄として放棄された戦争の手段として自衛隊はあるんじゃないんだという前提でありますので、どうもまことに恐縮でございますが、先生にわかっていただけないのが私、説明不十分でまことに悲しいんですが、私は非常にわかっておるように思って説明いたしておるんですが、これ以上申しましても同じことを繰り返すだけで失礼でございますが、お答えになりませんが、申しわけありません。
  87. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 失礼じゃないんですよ。大いに明らかにしてもらいたいと思う。  ぼくは自衛隊論争をここでしょうとは思わない。それは内閣委員会にやらせておけばいい。ぼくが言うのは、こういう厳然たる事実があるということです。だから、いまあなたがおっしゃったような形で学習指導要領も改訂し、教科書の内容もそういう方向で検定を指向するという事実を明らかにされたわけですから、これはそういうことになれば、これは違うというんです。さかのぼって、そうすると、これに対するあなた方は文部省行政として何かなさなきゃ、処置をとらなきゃいけない。どうですか。これをあすからでもこれは違っているんだからということで、改訂版なり没にしたらどうですか。それだけの勇気がないんですか。ぼくは行政のいままでとってこられた処置から考えて、これは昔のことだからけしからぬというわけにはいかぬでしょう。しかも国防の、国家の基本の問題に触れておりますからね。これは必ずしも国防だけの問題じゃありません。基本的人権その他の問題でも非常にはっきり書いてありますから、そのことについての検討なり、改訂なり、あるいはこれは間違っているから、かくかくの点で間違っているから、文部省の権威においてこれを消すという処置をとられたらどうかと思うのです。こいつをぼくは前提にしてものを言っていますから。そのほか、自衛隊の合憲、違憲の問題はあなた方とここでやりとりする気持ちはありません。これはぼくが内閣委員会かどっかへ出てやります。しかし、このことについての措置、これは文部省行政上の問題ですから、これをどうしますか。
  88. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) これどうしますかと言われましても、これ私ども間違ってない、趣旨において間違ってないと思うんでございますが、先生のおっしゃいます、どうしますかとおっしゃる意味が私によくわかりませんが、先ほど来申し上げておりますように、私どもこれ間違ってないと思っておりますので、間違っておればもちろんこれは訂正もしなきゃいけませんでしょうし、その後変わっておりますから、実際の実益としては、そのときの本も使われてもおりませんので、実益は直接ございませんけれども、私ども趣旨としましては間違ってないと思うんでございますが。
  89. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 もう一度確認しますが、敗戦直後出た本ですがね。これは文部省が編さんしたものであって、これはかってに出た書物じゃないんですよ。これは教科書に準ずるものです。それに書いてある中身は先ほど読み上げたとおりなんです、高辻さんが読み上げたとおりなんです。そのことと、いまあなたが述べようとする自衛隊の性格の問題と任務の問題とはぼくは違うと見ているんです。結局、高辻法制局長官の言うような憲法のどうだ、こうだという議論は、きょう私は高辻さんとします、あなたとはしません。この中身が、あなた万がいま言わんとしていることと、これから指導要領に示そうとする方向と違うのじゃないか。違っておらないとおっしゃるが、私どんなに読んでも、何べんひっくり返してみても違っておりますよ。これは意見の相違でしょうか。——答弁がない。  ですから、改訂するとか、これを取り消せと言ってみたって、いまおっしゃったように、これは間違いないとおっしゃたのだから、私たち運動面として、学校の現場でそれをもっともっと活用するという方向でぼくらなりの努力をしてもいいわけですね。同時にまた、現場の教師がそういうことをしたからといって、これに対する処罰とか制裁ということはあり得ないことだと思うのですね。それでようございますね。そういうことの確認をしていけば、一応それ以上あなたとここで議論しておっても始まりませんし、意見の食い違いだといって開き直られると何をかいわんやですから、ぼくはこの問題を取り下げます。
  90. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) しいて先生のお気持ちを憶測してお答えいたしますが、私どもはこれで趣旨は変わっていないと思いますが、それでは私が先ほど来るる申し上げております、憲法の規定で言う「国際紛争を解決する手段として」の戦争でない自衛はどうだというようなことが書かれておりませんので、趣旨はわかっても、小学校先生は私はわかると思いますが、小さい子供が見た場合には、自衛のことが書かれていないから変に思うというような意味でございますれば、率直に申しまして、かゆいところに手が届くほどに十分に説明されていない。その説明の稚拙さという点においては、これはあるいはあろうかと存じます。しかしながら、趣旨は自衛のことは当然含んで、いわゆる侵略戦争のような国際紛争解決の手段としての戦争はしないのだということを表面で言っておりますので、くどうございますが、趣旨は変わっていない。ただ、それにしては表現がかゆいところに手が届くほどに書いてないと言われれば、まあそういう意味で多少表現が不十分であるという面はありましょうというふうにお答えさせていただきます。
  91. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 そうしますと、この中に陸軍、海軍、空軍ということばがそのままなまのままで出ておりますね。それから軍艦とか飛行機とかは持たないというふうに書いてあるわけだし、ただ名前がぼくら実際使っていた戦車が特車になったりすれば事足りるのか。  局長のいまの答弁はここで速記録にとどめた形になるのか。何か書きますか。書いたらおもしろいと思うのですがね。書いて出してくださいよ。あなた説明つかないじゃないですか。局長通達でもどうですか。裁判闘争になると思いますけれどもね、書いたらば、結果的には憲法論議になりますから。
  92. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) 学校の先生方には私が先ほど来申し上げておることは当然わかっておると思います。それで、いまあらためていまのようなことであるということはこれは言う必要もございませんし、さらにこの憲法の戦争放棄の条文と自衛隊との関係は、これはもうたびたび、文部省はこの点は従来国会では質疑ございませんけれども、総理大臣やその他いろいろな方が言っておられますし、新聞でもいろいろな記事もずいぶん出ておりますし、雑誌等にもいろいろ出ておりますから、私どもは当然学校の先生はいま私が言ったようなことはわかっておると思います。したがいまして、いまのような点をまた補足して当時の二十二年の趣旨はこうであるということを言う必要はなかろうと存じます。
  93. 杉原一雄

    ○杉原一雄君 もう最後の締めくくりみたいな形になりますが、これはたしかアメリカの大学の教授だと思うのですが、チャールズ・オスグッドという人が「戦争と平和の心理学」という本をあらわしているわけですが、核時代のもろもろの矛盾という問題で幾つか指摘しているわけですね。その中で四つのことを指摘しているわけですが、一つは所有する武器の破壊力が大きければ大きいほど大多数の人間がそれをおそれなくなる、こういうことの指摘があるわけです。これをどう理解するかは別として、こういうムードといいますか、思想というか、客観的なものに対する受けとめ方がだいぶん一般化しているし、また第二の矛盾としては、核軍備競争に夢中になっている反面、両陣営はこうした核兵器は決して使用しないという平和的意図と熱烈な希望とを表明している、これも、ソ連とアメリカをさすわけですが、大きな矛盾のあらわれである。第三の矛盾として指摘するのは、各国のいわゆる国防費が増大すればするほど、その国民の真の安全は減少する、これはきわめて皮肉な指摘だと思います。四番目には、軍事力の増強に伴い、各国の自主的な外交政策の自由が次第に失われていく、こういう指摘もこれは非常に適切な指摘だと思います。いま、単なる法理論争なり、法の解釈にとどまることなく、やはり文部省のこうした問題に対処する場合も客観情勢の変化ということ、そのことに対する敏感な受けとめ方がなされていると思いますが、それがなされておれば、いま私が単に憲法の話、防衛庁の教育計画の問題をあれこれ言っている文字どおりの問題じゃない、もっと深刻な問題が私の議論の背景にあることをお含みいただいて、控え室へ帰られてから笑われないようにひとつしていただきたいと思います。いいですか。  いまは、世の中は変わった、激動している——確かにそうですが、文部省行政のいろいろな屈折があるわけです。   〔委員長退席、理事永野鎮雄君着席〕 そのことを、朝鮮戦争の直後におけるアメリカの第二次使節団がどういうことを時の文部省に注文をつけたか、あるいは一九五一年の五月に、リッジウェー司令官が占領政策の是正として教育制度に関するところの、いわゆる国力と国情に適合する云々ということで、教育制度に対する注文をつけたことなど、あるいは一九五三年の池田、ロバートソンがアメリカで会談したときの教育に対するところの愛国心の問題、日本教育の上でもっとしっかりやれと、こういう注文をつけた経過等、安永君も同様に抵抗する側に立って今日まで歩いてきた一人でありますから、身にしみてこたえているわけです。決して私たちの発言は平面的なものでないわけです。でありますから、いまここでそうした見解を出していただこうとは、御無理なことは申しませんけれども、今後なおかつこうした問題をめぐって深く掘り下げながら、日本の将来について文部当局と話し合いを進めていきたい、こう思いますので、一応きょうは時間の制限がまいりましたので、これで私の質問を打ち切りたいと思います。
  94. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 先ほど杉原さんも御指摘になりましたように、中曽根長官が出されました日本の防衛に示されております自衛権は、国が独立国である以上当然に持っておる固有の権利であり、それを行使することができるのは当然である、わが国の固有の権利である自衛権を行使するために防衛力を所有し得ることも当然である、このような見解は従来から政府が一貫してきた見解でございます。しかも、先生指摘になりましたように、中曽根長官がどこかで、日本の防衛という場合はまず外交を主とすべきである、第二番目には文民優位の防衛政策をとっていかなきゃならない、三番目には国民の防衛意識というものをつちかっていく、この三つがあって初めて日本の防衛というものが成り立つんだということを申されておるわけでございますが、この点はわれわれ文教をあずかる者といたしましても当然のことだと考えておりますし、それがまた指導要領等にも書かれておるわけでございます。ことに中曽根長官とは私ときどきお話をするわけでございますが、そのときに、戦前におきまして陸軍、海軍等において世界的な視野と、あるいは国民全体のいろいろの広い知識というものを求めることが不十分であったがために日本の悲劇をもたらしたというようなこともかんがみて、防衛大学をはじめとする防衛庁の諸学校においても一般国民教育と同じような科目をやはり履修させると、そして広い視野——世界の中における日本というものをやはり体得させることが非常に大事だということを強調されておるわけでございますが、この点に関しては私も全く同感でございまして、その意味合いにおきまして、私どもはこういう日本の防衛につきまして、やはり国民全体の防衛意識を高める、特に青少年における防衛意識を高めるという面においては、行政の上においてこれをつちかっていかなきゃならないというふうに考えておる次第でございます。
  95. 内田善利

    ○内田善利君 私は先月の十五日告示になりました高等学校の新学習指導要領について若干お伺いしたいと思います。  まず第一番目は、この学習指導要領というのは、私たちはこれに基づいてカリキュラムを組み、またこれに基づいた授業をやってきたわけですけれども、この学習指導要領一つの単なる基準なのか、それとも一つの規範としてのきびしいものなのか、この点をまずお聞きしたいと思います。
  96. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) これは学習指導要領によって教育を行なってもらうということでございますので、そういう意味の基準でございます。
  97. 内田善利

    ○内田善利君 そういう意味であれば京都市の教育委員会、それから京都府の教育委員会、また諸澤審議官の意見が食い違っておるわけですが、これは十月二十日の新聞報道で、確かなことは私もよくわかりませんけれども、京都府では、「学習指導要領は、教師の自主的な教育実践のための”手引き”としての性格と役割りにとどめ、運用については現場教師を中心に、高校教育課程審議会をつくって検討する」と、こういうことであります。  それから諸澤審議官は、「学習指導要領は、国が定めた教育活動の基準であって、この基準は一種の拘束性を持つと考えている」、こういうことを言っておられますが、またあとのほうには、「月末の説明会で、京都から質問もあるだろうし、その席上で新指導要領をよく説明し、また府側の意向も聞きたい」、こういうことでございますが、この点についていずれが事実なのか、京都府のほうが間違いなのか、この点はどうなんですか。
  98. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) 実はいまのお尋ねは、京都府でいわゆる教育課程審議会をつくって、今度の高等学校学習指導要領について検討するという点について新聞に報道があった、この点に関する御質問と存じます。そこで十月二十日でございましたか、そういった新聞が出まして、新聞の見出しでは独自の審議会を府が設置するんだというようなことでございました。そこで私どもこれが事実かどうかということにつきまして照会をいたしました。ところが伴という指導部長からこのような回答がありましたので申し上げます。それは「京都では男女共学、総合制をとっているので、国の指導要領を地域の実情に即して実施するための編成のしかたを研究するものであり、あくまで国の学習指導要領の枠内ということであります。」さらに二番目としまして、「手引きと考えるということは、希望意見として出したものであり、実施上指導要領を手引きとして扱うという意味ではございません。」、これは確かに京都府のほうの意見としましては、学習指導要領は拘束力を持たないで、一種の手引きとして、参考資料としてやるのがよいという意見は出ております。しかし自分たちが今度教育課程審議会云々ということでは、その希望意見として出したのが、手引きとして考えたいということを言ったんだけれども、学習指導要領がきまった後に、その学習指導要領を府として手引きとして扱うということではございませんから誤解のないようにということでございました。その他いろいろのことを申しておりますが、そういうことを聞きますと、どうも十月二十日に出た新聞記事、これは京都府としてはその記事を否定しておられるように私どものほうには聞こえます。したがいまして、新聞について報道されたのが事実といたしますと、いろいろ私どものほうとしても指導をする余地がございますが、いま申しましたような照会に対する指導部長の回答を聞きますと、何らあらためて考え方が違うというので文部省のほうの考えを特に申し上げるというほどでもございませんでした。したがいましていまの先生の御質問は、新聞の報道を私どもも信じたいと思うのですが、京都府自身がそうでない、自分らはこうだと申しますので、諸澤審議官の話云々というのも、これは新聞の諸澤審議官の話として載っておるところをおっしゃったものと思います。したがいまして私どもが照会をしまして、それに対して府の答えますとおりであるとしますれば、諸澤審議官の批評というものは特に言う必要もなかったというふうにも思われます。したがって府の私のほうが照会しましたのに答えた点と諸澤審議官の言っておることは一致するというふうに考えます。
  99. 内田善利

    ○内田善利君 もう一つは、京都市の委員会ですが、やさしい科目を設置することは中学卒業段階の能力が教科の基準にされ、これから伸びる可能性がある生徒の能力を押えて袋小路に追い込んでしまう危険があると、このように批判していたという記事でありますが、私も数学Iの場合、これも例をあげてありますが、数学一般を選択した生徒はこの科目を二年、三年かけて履修しなければならない。数学II、数学IIIに進もうとするその前に数学Iを履修しなければならないので、事実上は数学一般を一年生でとれば、もう数学II、数学IIIは学べないという不合理が出てくる、私もそう思いますが、市の教育委員会でも袋小路に追い込まれてしまう危険がある、このように言っているようですけれども、この点はどうですか。ついていけない生徒が三割ぐらいおるわけですね。
  100. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) いまの点につきましては実は十月二十四日付の新聞に出たわけですが、そこで電話で市教委のほうに連絡をいたしまして、市教委のほうの回答では、京都市の教育委員会においては生徒の能力適正に応ずる教育学習指導要領の定めるところに従って行ないたいが、能力別にそれぞれ、いま先生のおっしゃった袋小路に通ずるような能力別の学級を設けるつもりはございません。それを何か新聞の方が聞かれてあやまって理解をされ報道されたものではないであろうかという連絡がございました。なお市の教育委員会におきましては新しい指導要領に関しましてまだ何らの態度も決定していない段階でございまして、十月の末に講習会、これは二十四日に新聞に出た直後のあれですが、十月の末に講習会を開いて、それが終わった後にカリキュラム委員会のようなものを設けて検討したいということで、まだ新聞に報道されたようなことを決定をしたこともございません。また決定する段階でもないという報告を受けました。したがいまして、これも特に私どものほうと考え方が違うというふうにもとれませんので、私のほうはそういう回答を聞きまして、それ以後はその回答どおりであるというふうに考えて、何ら措置もいたしておりませんし、措置する必要もないというふうに考えております。
  101. 内田善利

    ○内田善利君 このカリキュラムの新旧比較表を見ますと、確かに数学一般というのが標準単位は六単位として出ているわけですね。それから基礎理科も、理科のほうで基礎理科というのが六単位出ているわけですが、これはやはり内容を見てみますと、「光」などには、非常にむずかしいということで光電効果なんか入ってないようですけれども、数学一般も一年生でとれば……、とれないでしょう、実際は。また理科も一年生でとれば物理IIとか化学IIとか生物IIとかは実際はとれないと思うのですね。とれないということになればやはり私は何割かの生徒に対して差別教育が行なわれることになる。そう思うのですけれども、この差別教育は行なわないということなんですか。
  102. 西崎清久

    説明員(西崎清久君) 少しこまかいお話になりますので私からお答えいたします。基礎理科でありますとか、数学一般についてはこのたびの学習指導要領の改訂の趣旨としまして現在の高等学校教育の現状としては非常に多様な生徒が入っている。そういう能力適正進度で多様の生徒が入っているという現状をとらえまして、それぞれに対応した教育課程を用意する。こういう趣旨で基礎理科、数学一般ができたことは先生も御承知のとおりであります。その数学一般なり基礎理科を履修した子供があるいは興味、関心を高めて、より深く勉強したいということもあり得ることでございます。この点も先生おっしゃるとおりでございます。この点につきましては指導要領におきまして数学IIのAとか数学IIのBに進む場合は原則としては数学Iからそこに進むのがたてまえであるけれどもというふうな形で、原則としてということばを使いまして、例外として数学一般から数IIA、数IIBに進むこともあり得るということを予想いたしております。それから理科につきましても理科の内容でございます物理、化学それぞれIIという科目がございますが、これもそれぞれのIから進むのが原則であるということにいたしまして、例外として基礎理科からそれぞれ物理、化学のIIに進むことも許容いたしております。そういう意味で数学一般なり基礎理科からむずかしいほうに進む道は指導要領でも開いておりまして、その意味では決して袋小路にはいたしておりません。ただ実際問題として先生指摘のように数学一般なり基礎理科なりを始めた場合に、実際問題として移りかわる場合のむずかしさというのはあると思います。この点御指摘のとおりでございまして、前回私ども指導要領の趣旨徹底会をやりました際にもいろいろ話題が出たわけであります。その点は最初に進路指導ということをよく考え先生方に適切な指導をお願いして、やはりこの子は基礎理科なりあるいは数学一般なりを選ぶのが適当であろうと。まず最初の選択についてよく御指導をお願いしたいというお願いをしておりますし、それからもう一つ、ぜひ深くやりたいという場合にはその子供の能力なり進度のぐあいを見てその数学IIなりあるいは理科、物理のIIに進む特別なカリキュラムというものをどういうふうに組んだらいいかということを個々の生徒ごとに考えて学校の適切な指導をお願いしたいというような趣旨徹底会における御相談をいたしております。来年、再来年と私ども趣旨徹底会を進めまして、いま先生が御指摘のような袋小路にならないような措置を十分研究し講じてまいりたいと思っております。  以上でございます。
  103. 内田善利

    ○内田善利君 京都府も京都市会も了承しているわけですね。それと、実際生徒が数学Iを一年生でとったと、高校一年生からぐっと伸びる生徒が非常に多いわけですが、自分は数学IIのAないしBをとることができる能力が出てきた場合に取り得る通路はあるわけですね。この二点、再度……。
  104. 西崎清久

    説明員(西崎清久君) いま先生お話しのことでございますが、数学一般なり基礎理科のとり方もいろいろございます。六単位を二単位ずつ三年とるとり方もございますし、それから三単位ずつ二年間でやるというとり方もございます。そのとり方に従いまして。  それからもう一つ、生徒がどの時点で移り変わりたいという希望を出すかという問題にかかわってまいりますので、道は開かれておりますので、実際の具体的適用をスムーズにやるための研究は、先生おっしゃるとおり今後十分研究したい、こう思っております。
  105. 内田善利

    ○内田善利君 その両点について了承しておるわけですか、京都のほうは。
  106. 西崎清久

    説明員(西崎清久君) 失礼いたしました。京都のほうの御意見といたしまして先ほど局長からお話し申し上げましたような、いろいろ御意見をいただいております。学習指導要領の趣旨徹底会の際にもこれは各県からいろいろ御質問をいただいておりました中に、京都からもその点に関する御質問は出ておったのではないかと思います。指導要領の趣旨徹底会で、総則部分に私も出ておりましてその点の御説明を十分いたしております。その点について再度御質問はございませんでしたので、まあ今後私どもと研究を進めていく点においては御同意もいただいておるというふうに考えております。
  107. 内田善利

    ○内田善利君 それからもう一つお伺いしたいと思いますが、旧指導要領を読み上げるとちょっと長くなるんですが、「社会」の欄の三八ページの「日本国憲法の基本問題」というところに、「日本国憲法制定の意義」と「基本的人権の保障」と「権力分立とその運営上の諸問題」それから「法の支配」というのがあります。上の二項目は大体新指導要領と同じですが、次の三、四は「権力分立とその運営上の諸問題」として、カッコとして「国会と内閣との関係、」の次に「司法権の独立などを取り扱う。」というのがありますが、この「司法権の独立などを取り扱う」というところはなくなっております。それから、「法の支配」として各「憲法の最高法規性、違憲立法審査権などを取り扱う。」というこの項目は新指導要領では全然なくなっておりますが、これはどうなのか。
  108. 西崎清久

    説明員(西崎清久君) いま先生お尋ねの点を個々にお答えをいたしますと、まず「法の支配」の点でございます。現行の学習指導要領と改正の学習指導要領は若干立て方を異なる形にいたしておりまして、たとえば法の支配について申しますと、現行指導要領は、日本国憲法の中で法の支配を扱うようにいたしております。  さて、このたびの改正された学習指導要領では、日本国憲法の中というよりも、むしろ、その項目を先に出しまして、最初の「民主政治の基本原理」というところの第二項目に「政治と法」という項目がございます。その「政治と法」の項目の中で「法の支配の意義を理解させる。」というふうにあげております。その場所を変えました意義は、日本国憲法の中だけで法の支配を扱うということではございませんで、御承知のとおり法の支配は、イギリスのほうの諸外国の考え方が、まず主として入ってまいりますので、日本国憲法の中ではなくて、一般的な「民主政治の基本原理」の中で、まず法の支配を扱おうというような形で前に出したわけでございます。そういう意味では、日本国憲法の項目の中に法の支配が消えておりますけれども、扱いとしては、もっとより広く扱おうというような形にした点が第一点でございます。  それから、第二点で「権力分立」その他「司法権の独立」が消えておるという御指摘でございます。この点は御指摘のとおりでございまして、今回の学習指導要領の改訂におきましては、ここの新しい案でごらんいただきますと、国会、内閣、裁判所の「政治機構と政治の運営」という項目がございますが、この「政治機構と政治の運営」のところで、「国会、内閣、裁判所の機構と機能を明らかにするとともに、政治の民主的な手続きの意義について理解させる。」というふうに書きまして、「国会、内閣、裁判所の機構と機能を明らかにする」ところで当然「権力分立」「司法権独立」の内容を扱うというふうな構成にいたしております。  それから、さらに先生指摘の「憲法の最高法規性」と「違憲立法審査権」が消えているのではないかという御指摘でございますが、実はこの違憲立法審査権と最高法規性は、そのまま取り扱いのほうに掲げた次第でございます。先生お手元の資料で申しますと、三五ページかと思いますが、「内容の取り扱い」の(1)のイでございます。イのところに「日本国憲法のもとにおける法の支配(憲法の最高法規性、違憲立法審査権を含む)」というふうな形で書かれておりまして、これの重要性については、やはり学習をしてもらいたいというふうな形で指導要領を作成いたしております。  以上でございます。
  109. 内田善利

    ○内田善利君 どこに出ているかよくわからないのですが、司法権の独立を取り扱うという内容はあるわけですね。
  110. 西崎清久

    説明員(西崎清久君) お答えいたします。  ことばとしてはございませんが、国会、内閣、裁判所の三者の機構と機能を扱うというところで、内容として当然扱うことにいたしております。
  111. 内田善利

    ○内田善利君 憲法の最高法規性並びに違憲立法審査権などを取り扱うという、「法の支配」もあるわけですね。
  112. 西崎清久

    説明員(西崎清久君) これは明確にございます。
  113. 内田善利

    ○内田善利君 いまこれは、いつつくられたかわかりませんが、家永裁判において、文部省は敗訴して、宮地局長も全国の教育委員会に通知を出されて、行政府の司法権に対する干渉云々ということで問題になりましたし、また、文部省とは関係ありませんけれども、青法協等で司法権に対する小当介入というようなことが問題になっているやさきに、こういう「司法権の独立などを取り扱う。」というのが消えてしまったと、また、この「法の支配」もどこかにあるようですけれども、さがせませんが、何か作為的な意図を感ずるのですが、この点はどうなんですか。
  114. 西崎清久

    説明員(西崎清久君) 先生指摘の点でございますが、権力分立なり裁判所の性格として、最高裁判所が違憲立法審査権を持っておる。そうして、司法権は独立しておるということは、これは非常な重大な政治原理でございます。そういう意味におきまして、今回の改訂学習指導要領におきましても、「憲法の最高法規性」ということは、明確にそのままのことばとして残しておりますし、それから、「法の支配」の説明といたしまして違憲立法審査権ということも明確にいたしております。そういう意味におきまして、この政治の学習において、司法権の独立なり違憲立法審査権を持つ最高裁判所の機能というものは、非常に重要な問題として、生徒に学習してもらいたいということは、従来の学習指導要領と全く同様でございます。そういう意味で裁判関係の御指摘がございましたが、この関係についてどうこうということで私どもは考えたわけではございませんので御了承いただきたいと思います。
  115. 内田善利

    ○内田善利君 この指導要領は、五月に中間案が出まして、五ヵ月の間に二百八十ヵ所手直しがあったということですが、しかも、この指導要領は四十八年から実施されて五十八年までですか、いま一番最初にお答えになった相当の拘束力のある指導要領を十年間高等学校先生方は基準にして使っていかなきゃならないわけですけれども、十年間の間には七〇年代をこして七一年代、ずっと二十一世紀に向かって社会は激変していくわけですが、そういう管理社会になるか、将来に対しては不安を持っている私たちですけれども、社会の急激な変化に対してこの指導要領は十年間、四十八年から五十八年まで、そういった拘束力といいますか、きびしい基準として妥当であるかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  116. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) 今回、学習指導要領の改訂をいたしましたのは、たまたま前回から数えまして十年目に当たりますが、しかしながら、だからといってこの学習指導要領が今後十年間続くというような関係のものではございません。したがいまして、いま先生おっしゃいますように世の中は非常に進んでおるということでございますが、今回の学習指導要領におきましても、たとえば十年前にはあまり世の関心がそれほどでもなかった公害の問題とか、あるいは消費者保護の問題とか等、新たに挿入したものもございますが、なお学習指導要領が直るまでは、そういう公害の問題等はあっても全然触れないということではございませんで、学習指導要領を改訂しましても、随時そのようなことがございますれば、そういう点は補足する必要もございますし、したがいまして、今後十年間ということは全然私ども考えておりません。ただこの改訂をいたしますのには、きょう考えてあすといったようなぐあいにいきませんで、非常に多くの人の意見をちょうだいし、また審議期間もございますので、たびたびは変えられませんが、おっしゃいますように世の中の進展に即応して、当然学習指導要領の改訂を必要とするときには、十年といわず、それより早くすることもあるのは当然のことでございます。
  117. 内田善利

    ○内田善利君 この学習指導要領の改訂についていろいろいま申し上げましたが、十年を待たずして社会情勢等に応じて修正といいますか、変えていくということでありますが、この点については私はもう少し弾力性のある学習指導要領にしたほうがいいんじゃないか、きびしい拘束よりも一つの基準として先生方に示したほうがいいんじゃないかと、このように思いますが、この点どうなんですか。
  118. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) おっしゃいますことは一つの御見解でございますし、私どももそういった声を一部聞くわけでございます。しかしながら、この学習指導要領の内容いかんによろうかと思いますが、よく世間では学習指導要領で何でもかんでも文部省は変えておって、学校の先生はそのワクに縮こめられて、創意くふうも何もできないといったようなことをよくおっしゃられる方があるんですが、これは先生にお読みいただけばわかりますように、高等学校学習指導要領これだけでございますが、これには各教科が相当ございますし、たとえば、分量でいってもおかしゅうございますが、総則というのがございますし、国語などは二一ページから三一ページまで一〇ページくらいですし、社会にしましてもそういうことで、これには目標とかあるいは内容、さらに指導計画作成上の留意事項といったようなことで、これをお読みいただけばわかりますように、きわめて簡単だといえばいえるようなものにもなっております。ただ、教科書などはこれを受けまして相当詳細な教科書が出ますが、私どもそういう意味で、できる限り学習指導要領の内容を、先生方の創意くふうが生かせることまで、また創意くふうを生かしてもらったほうが適当であると思うことまで、何でもかんでも詳細に書くというようなことはこれは当然留意しなければなりませんし、そういう意味におきまして基本的な点にしぼる、今度の学習指導要領の改訂にしましても、子供たち教育の基本的な問題について精選集約するといったような考えをとった次第でございますが、そういう意味において今後とも、今回も留意しましたが、今後とも指導要領の内容につきまして、教師の創意くふうとの関連を十分考え検討すれば、そのような意見にはこたえ得るのではないかというふうに考えております。
  119. 内田善利

    ○内田善利君 学習指導要領の点はそれで終わります。  次は科学研究費補助に関する問題をお聞きしたいと思いますが、まず最初にわが国の研究投資ですけれども、科学技術白書によりますと国民所得の一・八%、これは昭和四十三年度の統計ですけれども、日本では一・八%、アメリカでは三・八%、独西で二・八%、英国で二・九%、フランスで三・一%、こういう外国の状況を見ましても、非常に日本学術研究投資の面が少ないわけですが、この点どのように考えられておるのか。  それから二番目には、日本では民間の研究投資が七〇%に対して国と地方公共団体が三〇%ですが、アメリカではこれが逆になっている。  三番目にはGNPが第二位の日本としては、この研究投資が非常に惨たんたる状況ではないか、このように思うわけですが、その三点について、日本研究投資の面について、文部省としてはどう考えられるかお聞きしたいと思います。
  120. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 科学あるいは学術研究に関する投資が、特に国の支出すべき部分について諸外国と比べて遜色があるという点につきましては、おおむね御指摘のとおりでございまして、文部省としてはその点の改善のために毎年努力をいたしておるところでございます。学術研究あるいは科学研究に対する費用の出し方につきましてもいろいろございますが、特に文部省としては直接所掌しております国立大学の必要な研究費あるいは国・公・私立大学、それから民間研究機関も含めて助成しますところの科学研究費、この辺に重点を置きまして増額につとめております。たとえば、少ないながらも科学研究費につきましては、ここ数年来毎年二割増という増額をはかってまいっております。この勢いで一そう努力することによりまして、少しでも諸外国に比べて遜色のある点を打開してまいりたい、かように思っております。
  121. 内田善利

    ○内田善利君 いま文部省科学研究費について毎年、ここ数年二割増ということでございますが、この中に特定研究がございますが、この特定研究社会的要請のきわめて強いものとして特に定められたものに対して指定研究として助成するということですけれども、現在この点については、一番日本にとって緊急を要する問題として公害問題があるわけですけれども、この公害問題の研究を特定研究として今後研究をしていく必要はないのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  122. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 公害の問題としましては、現実に起こっておる個々の公害の対策的なものについてももちろん緊急に対処が必要でありますが、文部省で所掌しております科学研究費の特定研究対象としては、これは基礎科学の振興を目標としておりますので、公害に関しましても必要は感じながらも、基礎的な面からの研究にやはり焦点を置く必要がございます。そこで、いままでもそういう面について留意してまいったわけでありますが、特に本年からは産業構造の変革とそれに伴う諸問題という項目を特定研究の中で立てまして、主として社会科学的な面から公害に関する研究を取り上げておりますし、それから来年度から、現在概算要求しておるわけでありますが、特定研究のワクの拡大によりまして、ちょっとむずかしい名前でありますが、人間の生存と自然環境に関する基礎的研究という項目を立てまして、自然科学的な見地から、たとえば人間が生存するためにどれだけの基本的なライフサイクルあるいは必要なる酸素の量でありますとか、水の問題だとか、そういう問題を研究しょうということで特定研究のワクを設ける、こういう形で対処をいたしたい、かように考えております。
  123. 内田善利

    ○内田善利君 人間の生存と自然環境の整備は、いま大体生態学みたいなものじゃないかと思ったんですが、いわゆる公害の研究、たとえば原因不明の病気がたくさんあるわけです。私もこの間お話ししましたように、精薄児を見に行きまして、いろいろその原因はあろうかと思いますけれども、胎性水俣病の患者、あるいはイタイイタイ病の患者、あるいはその他のスモン病患者等を見ますと、何かどこかに日本国土特有の病原体があるのじゃないかと、重金属でないにしても、あるいはあるかもしれない、そういう不安を感ずるわけですが、そういった公害病というようなことについても、やはり特定研究に入れるべきじゃないかと、このように思うわけです。と申しますのは、いろいろ大学先生方にお会いしておりますと、やはりそういう研究費の不足を、先生方は語られないけれども、感ずるわけですが、こういった公害問題では特に必要な教授がたくさんおられるのじゃないかと思うのですが、項目ではずれておれば、申請もなかなかできないだろうし、申請してもなかなか一律にきめるとなれば通過しないのじゃないかと、そのように思うわけですが、この点はどうなんでしょうか。
  124. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) いま考えております人間の生存と自然環境に関する基礎的研究は、これは対象は、お察しのように、大体植物、動物、あるいは水、気象といったような生態学的な面がかなり重点になっておりまして、医学的な問題は必ずしも直接の臨床的な見地からの取り組みは考えておりませんが、医学的な問題といたしましても、基礎的な見地からいきますれば環境衛生的な見地では取り上げるわけであります。御指摘のように特定といいますか、日本で頻発するところの非常に人間の生命に危険を及ぼすところの病気あるいは中毒といったような現象につきましては、現時点では科学研究費の扱いとしては医学の分野で取り上げております。医学の分野ではほかと一緒になって必ずしも取り上げられないのではないかという御懸念があるようでございますけれども、医学の特に臨床的な分野では災害をもたらすような特定の病気、たとえばスモン病でありますとか、ベーチェット病でありますとか、そういう病気が起こりますとやはり医学研究者としてはそういうものに着目して取り上げ、研究費の申請も行ないますし、審査においてもそういう研究計画が内容が充実したものであれば取り上げられておりますし、今後も取り上げられるように留意いたしたいと思いますので、現時点では特定研究の項目には立てておらないわけでありますけれども、それによって研究費の獲得が特に支障があるということはないと思いますし、また、ないようにつとめたいと思います。
  125. 内田善利

    ○内田善利君 私は公害委員もしておりますが、公害の中でたとえば例をあげますと、あの厚生省がきめた米のカドミウムの基準ですけれども、これも最初は最低基準は〇・四PPMときめたわけです。ところが今度〇・九PPMが白米の場合汚染米としてきめたわけですが、これについても学者等によってはいろいろ意見があっておるようですし、きのうも公害委員会においてそのことについて議論がいろいろあったわけですが、私は、そういったきちっとした線を引くよりは、ある程度幅を持たしたほうがいいんじゃないかといって質問したわけですけれども、線を引く場合、〇・四PPMという学者もあるし、〇・九PPMという厚生省の見解もある。ところが、これについてはいろいろ国民の側から異論がある。こういった問題についても専門学者の中で異論がある以上は、こういった公害問題についてもやはり権威のある方々に早く研究してもらってはっきりしてもらうほうがいいんじゃないかと、そのように一つの例として私は考えるわけですが、こういった公害問題についてもやはりこの際研究費を差し上げて研究してもらったほうがいいんではないかと、このように思うわけです。大体何名ぐらい申請があって、何人研究費をいただいておるのか、その辺まずお伺いしたいと思います。
  126. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) この特定研究全体ということになりましょうか。それとも公害……。
  127. 内田善利

    ○内田善利君 公害問題を何名申請して、何名いただいておるのかですね。
  128. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 御説明申し上げますが、公害問題ということで直接項目を立ててやったことは従来必ずしもないわけでありますが、たとえば過去におきましては特定研究で大気汚染、水質汚濁といったような項目を三年間特定研究として取り上げたことがございます。こういう場合でございますと、各年度とも金額にいたしまして五千万円程度、件数にいたしまして、少ない年で二十五件、多い年で三十三件、こういった結果になっております。それからことし取り上げました産業構造の変革に伴う諸問題につきましては、件数にしまして二十四件、五千万円程度の採択がなされておりますが、これは直接公害の問題というのにはちょっとそう具体的な問題ではございません。かなり公害に焦点を当てたものは、この中で一件程度が認められる程度でございます。それから来年度計画しておりますこの人間の生存と自然環境という問題につきまして、これはまあ予算が取れなければ具体化しないわけでありますけれども、いまこういう問題に興味を持って研究を出したいとお考えになっておられる方は、大体十数人程度あるようでございます。これは予算が取れました上で具体的な計画を立てるということになろうかと思います。
  129. 内田善利

    ○内田善利君 人間の生存と自然環境に十数人ということですが、これは公害も含むと受け取っていいですか。
  130. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) まあ広い意味で公害を含むわけでありますが、むしろ公害の前提条件といったぐあいに申し上げたほうがよろしかろうと思います。これはまあ計画の段階でありますが、トピックを若干拾いますと、たとえば、生活環境における微量化学物質と人類との交渉に関する研究というような問題、それから内湾汚濁に関する基礎的な研究といったようなこと、それから陸水栄養化、つまり有機物が水の中にふえて栄養が多くなることに伴う基礎的な研究、それから人為的原因による気象気候の変化の研究、こういった項目が、例をあげますと考えられておるようでありまして、これらは、こういう事柄の動きによって公害を起こすわけでありますが、公害そのものに直接焦点を当てたというよりは、若干間接的といいますか、より基礎的と言ったほうがよろしかろうと思います。
  131. 内田善利

    ○内田善利君 それから科学研究費の審査の面についてお伺いしますけれども、審査方針の中に、審査は非公開とし、審査の経過は他に漏らさないと、こうありますが、何といいましても大切な国民の血税を使うわけですから、公開にして、この研究はこうこうだったから助成し、この研究国民の福祉に関係ないから落としたとか、いろいろ、公開にすべきだと思いますが、あるいは公開してはならない点が何かあるのかどうか、この点お伺いしたいと思います。
  132. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 科学研究費等の審査が公開であるか秘密であるかということでございますが、現在は、個々の審査の経過についてはこの内容を発表いたしておりません。そういう意味合いにおきましては公開でないわけでありますが、審査にあたりましては、基本的な方針については学術審議会あるいは日本学術会議の意見も聞いて、そこで御協力を得た基本方針や審査方針によってやっております。それからその具体的な審査は、関係各分野ごとに各界の権威者にお願いいたしまして、書面審査及び合議による審査をやっております。で、審査の結果、またどういうプロジェクト、どういう人にどれだけのものがいったということにつきましても、公開して発表をいたしております。そういうことで、全体については公にしておるわけでありますが、その審査の経過だけは公表しないことにしております。それはなぜ落ちたかということについては、申請者個人にとっては知りたいという気持ちはわからないでもないわけでありますけれども、審査員を委嘱して合議制で審査しておるというような性格上、審査の経過をつぶさに明らかにするということは支障があると考えまして、公開しないことにいたしておるわけであります。ただ、全体の流れについて公開すれば足りる、かように考えておる次第であります。
  133. 内田善利

    ○内田善利君 審査の面は審査員がおられて審査されておるようですが、調査の結果ですね、研究成果、これについてはどのような調査をだれが行なっておるのか、それをお聞きしたいと思います。
  134. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 研究成果刊行費も科学研究費の一分野として申請によりまして補助しておるわけでありますが、これにつきましては、科学研究費の審査と同様、専門家の審査員をお願いいたしまして、文部省としては申請をこの分科会に付議をいたしまして、その結論によって採択、不採択をきめております。ほぼ他の科学研究費と同様な審査をいたしております。
  135. 内田善利

    ○内田善利君 最後に、日本学術振興会についてお伺いしたいと思いますが、振興会も科学者の国際交流に努力しておるわけですけれども、外国から国費で大体何名ぐらい招待しておられるのか。
  136. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 学術振興会が外国人の研究者を招聘する計画といたしましては、比較的一流の方を招聘するプロジェクトとして流動研究員という制度がございます。それからもっと若い研究者を招聘する制度といたしましては、奨励研究員という制度がありまして、いずれも国からの補助金によって運営しておるわけであります。今年度の正確な数は、実はいま資料持ち合わしておりませんが、流動研究員につきましては、たしか二十四、五名だったと思います。それから奨励研究員についてはたしか三十名程度と記憶しております。もし違っておりましたら次回に訂正いたします。
  137. 内田善利

    ○内田善利君 西独などでは四百人ぐらい招聘しておる、このように聞いておりますが、非常に少ないんじゃないかと、このように思うのですが、この点はどうなのか。  それからもう一つ日本学術会議の国際研究集会費ですね、これも非常に少ないように聞いておるわけですが、この点について文部省としてはどのように考えておられるのか。非常に熱意がないように思うのですが、特に次の時代への、いろんな社会の変化を考えるときに、もう少しこういった面について留意し、熱意を傾けて研究すべきじゃないかと、このように思うのですが、この点についてお伺いしたいと思います。
  138. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 学術の国際交流につきましては、ただいま御説明した学術振興会の研究制度一つありますが、そのほかに文部省関係といたしましても文化庁による招聘のプロジェクトもございます。それから日本ユネスコ国内委員会によるプロジェクトもございます。その他、学術会議によるものもありますし、外務省でも若干やっております。また、民間ベースのものもございます。しかし、それらを合わせましても御指摘のように外国に招かれるものに比べますと、日本がお招きする総数は少ない。つまり、学術協力の国際交流についてはどうも借り勘定になっておるという感じがいたします。文部省といたしましてはこういう事態はできるだけ打開いたしたいと思いまして、少なくとも文部省で関係しております学術局所管の分、文化庁、ユネスコ、それぞれ努力しておるところでありまして、なかなか思うようにまいりませんが、今後さらに努力いたしたいと思います。  それから国際研究集会等に出席する旅費の問題でありますが、これは正確に申しますと学会、国際的な連係のある学会に出席する場合には、日本学術会議のほうで費用の負担とそれから候補者の選定などをいたしております。それから正確な意味で国際研究集会に出席する旅費は文部省のほうで負担しておるわけであります。これにつきましても、これまたそういう機会の多いことあるいは出席の希望に対しましてお金のワクは必ずしも十分でありませんので、拡大に努力いたしておりますし、今後さらに努力いたしたいと思います。
  139. 内田善利

    ○内田善利君 集会費は年に幾らぐらいですか。
  140. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 文部省で所管しております国際研究集会出席旅費はたしか百七十名分だったと思います。
  141. 内田善利

    ○内田善利君 金額は幾らですか。
  142. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 失礼いたしました。人数は七十五名分で、金額にいたしまして、これも正確な数字持ち合わせておりませんが、五、六千万程度だったと思います。
  143. 多田省吾

    ○多田省吾君 私はまず最初に、中教審の中間答申の問題あるいはその他の問題について若干お尋ねいたします。先ほども安永委員から詳しく御質問があったわけでございますが、私はなるべく重複を避けてお伺いしたいと思います。  佐藤総理が四選後の最初の記者会見におきましても、教育施策の第一に持っていきたいと、こういう方針も述べられまして、相続いてOECDの教育報告あるいは中教審の中間答申あるいは教育白書というようなものが出されたのでありますけれども、OECDの報告書でも中教審の前回の答申の内容に一応触れまして、その評価あるいは批判というものも若干しているようでございますが、こういったOECDの教育報告というものをどのようにどの程度これからの文部行政に反映させていこうとされているのか、まずそれをお尋ねしたい。
  144. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 実はこのOECDの見解といいますか、あるいは日本教育制度に対する意見といいますか、それはまだ未発表のものでございます。したがいましていまとやかく申し上げる段階ではございません。
  145. 多田省吾

    ○多田省吾君 中教審の中間答申の中で私たちだれしも考えることは、いろいろな改革もあろうと思いますが、何といっても日本教育において教員の方々の待遇が非常によくないと、こういう問題でございます。やはり何といっても中教審報告にもありますように、待遇をどのように改善していくか、また定員問題等もふやしてほしいというような意見もずいぶん多いわけです。こういった点に関して具体的に来年度予算等においてそれをどのように入れていくかというような問題です。文部大臣は、先ほどからの御答弁を聞いておりますと、来年の五月からの最終報告に基づいてこれから考えるというような御答弁が多いわけでありますけれども、少なくとも基本構想が出ている以上は、こういった問題に関してはやはりいち早く前向きにやるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  146. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) これは第二十七特別委員会でさらに計量計算等もやらなきゃなりませんので、いまここで申し上げる段階でございません。ただ中教審中間報告の中で、すぐれた教員を確保するそのための待遇改善というものを抜本的にやらなきゃならぬ、こういうことについては私も同感でございますし、そのいろいろの調査検討というものは省内におきましても検討を始めておる、こういうふうに御了承をいただきたいと思います。
  147. 多田省吾

    ○多田省吾君 この中で特に「特殊教育の積極的な拡充整備」ということで、これは文部大臣もこのようなよい内容も含んでいるじゃないかということもおっしゃっているようでございますけれども、これはいままでは確かに怠慢であったわけでございまして、こういった(1)(2)(3)(4)という具体的な方策も出ているわけです。特殊学級設置の義務を課すること、あるいは教員派遣による教育の普及あるいは重度の重複障害児の施設の設置とか、あるいは心身障害児の早期発見と早期の教育、こういったけっこうなことが出ておりますけれども、これを来年度からどのように具体的に取り上げていこうとなさっているか。
  148. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) 中教審で御指摘いただきましたことは一々ごもっともな点が多うございまして、私ども特殊教育が確かに一般の小・中学校と比べましておそいということは痛感いたしております。またかねてから当委員会におきましても、いろいろ特殊教育の振興方策について御質問等ございましてお答えいたしました。大体そういった趣旨でございますが、特に中教審につきましては、特殊教育を推進するためにそういった特殊教育学校のとりわけ養護学校等の設置義務並びに養護学級の設置促進といったようなことにつきまして非常に力強く、中間的な報告でございますが、述べておられます。そこで私どもといたしましては、今後この御趣旨に沿いまして、目標といたしましては、養護学校を義務にしたいと、ハンデキャップのある子供には盲ろうと同じように養護学校にぜひ就学させてやりたいという気持ち目標としては持っております。ただ、いま直ちにこれを義務にするということにつきましては、いろいろ従来からの進行状況もございますので、従来この委員会で申し上げましたような点をさらにもう一度考え直しまして、いま直ちに何年からとは申し上げられませんが、従来の考えをさらに前向きに検討いたしまして中教審の御趣旨にすみやかに沿いたい、そういうことで進みたいと思っております。
  149. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) いま初中局長から申したとおりでございます。特にこの中教審特殊教育を今回取り上げていただきましたことは、私、同感するところが多いわけでございまして、前の試案には多少触れておりましたけれども、これほど具体的ではございません、これもやはり公聴会その他の各種団体との中教審の接触等によりましてそういうものが盛り込まれたんじゃないかというふうに考えます。また私どもといたしましても、かねてから特殊教育の充実、これは午前の委員会においても申し上げましたとおりでございまして、私就任以来この方面に努力を続けてまいったわけでございますが、特に来年度予算におきましては、就学奨励費を従来特殊学級の人たちには及んでいなかったものを今回概算要求の中に要求をしておることを申し添えておきたいと思います。
  150. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、この中間報告の骨格とも申すべき幼児教育を含めたところのいわゆる先導的試行というやつでございますが、午前中の質疑を聞きましても、まだはっきりしていないようでございます。先ほど申し上げましたように、もしこれ以上具体的な考え方が出ないとすれば、やはり文部省としてこの答申を経て具体的なやり方をつくっていくわけでございますけれども、その中間報告の中にも、実施校が特定の地域に偏したり、特別な生徒だけを収容しないということもありますし、これはかなり大がかりに、いわゆる先導的試行というものが行なわれると考えなければならぬ。そうしますと、相当困難が生ずるんじゃないか、また地方自治体の財政もこれに耐え得るか、あるいは父兄の方々が一体どっちにやろうかということも選択しなければならないような姿になったらこれはまことにたいへんな試行になるんじゃないか、こう思いますけれども、こういったことに対する具体的な方向というものはまだ考えておられないのですか。
  151. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 午前中にもお答えを申し上げたとおりでございまして、むしろまだはっきり方向をきめていないといったほうが適切であり、正しいかと思います。しかしながらいま先生が御指摘になりましたように、もしこれを何らの前提条件というものを考えずして施行した場合には、いたずらなる混乱を引き起こす結果、この考え方そのものがうまくいかないということを私みずから考えておる次第でございます。したがいまして、この取り扱い等につきましては慎重にこの前提条件となる幾つかの問題を、ある程度の見通しをもってでなければ実行すべきではないというふうに考えておるわけでございます。その条件とは一体どういうことかというならば、まず第一には、厚生省所管の保育所幼稚園との関係をどうするかという問題、第二番目には、私立幼稚園公立幼稚園とをどういうふうに考えていくかということでありますが、私は少なくともこの点につきましては、併存して進めるべきである、公立を義務設置するというような方向をいくことによって、現在まで果たしてまいりました私立幼稚園というものが、そのことによってつぶれてしまうというようなことがないためには相当の財政援助をしなければならないんじゃないか、こういうふうに考えております。  また第三点には、まず第一段階として五歳児の就園というものを市町村に求めるという場合におきましては相当先生が必要でございます。その先生方の養成はどうすべきであるかということがまだ前提にならなければならぬ。同時に、市町村に、義務設置に近いことを求めるといたしまするならば、その市町村の財政をどう考えていくかということ。  それから最後には、四歳児、五歳児、一年、二年のつまり六歳、七歳というものを一貫した教育をやる、その教育内容あるいは保育内容というものは一体どういうものでなければならないかというようなことにつきましてもいろいろ議論も分かれているところでございますし、確たるものがまだないわけでございます。こういうことにつきましては学者、それから現場の先生方、あるいは行政、その三者をもって構成する検討委員会等において十分検討した上で、行政上これを実施する場合に参考にしていかなければならないんじゃないかというふうに考えております。一番大きい問題はやはり財政の問題だと思います。
  152. 多田省吾

    ○多田省吾君 今度の教育白書を見ますと、やはり文教費というものが年々、ほんとうはこの前の教育白書でも言われましたように、増加させるべきであるという意見が今度はだんだんその予算の比においても下がっているような姿が出ているわけでございます。それとともに、前回も申し上げたところですが、せっかく教科書の無償配布というようなものが実現しながら、父兄の教育費負担というものが非常に最近は重くなっておる。こういった問題にからんで大臣のほんとうにこの問題に対するこれからの決意、考え方というものをはっきりと承りたい。
  153. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 今度の教育白書を発表いたしましたゆえんのものも、日本においてはたとえば就学率等においては第一位、あるいは先進国のトップを歩いておるということは、これはだれしも認めるところでございます。また高等学校等の就学率もそうでございますが、また大学における就学の率にいたしましても二一%をこえるということで、量的な拡大というものは非常に進んできておる。しかしながら、同時に質的充実というものがおくれておるということは、端的に公教育費の支出が最近停滞がちである、しかもイギリス、アメリカあるいはドイツ等におきましてはこの十年ばかりの間に急激に上昇率を高めてきた、その国民所得における比率もかなり高いようになってきておる、こういうことを、むしろ国民一般の方々によく御理解をいただくということが必要である。日本教育制度及び教育内容というものが非常にいい長所もあるけれども、しかし短所といわれるところを国民の皆さまに明らかにする、明らかにすることによってどこに重点を置くかということもまた考えていただくということのためにこの教育白書を私どもは公にいたしたわけでございまして、そのことによって私は飛躍的に今後教育費の充実ということにつきまして、毎年計画的に十年なら十年、高等教育期間にはどのくらいのお金を注いでいったらいいのか、あるいはまた幼児教育から高等学校までの段階にどのくらいの費用をつぎ込んでいったらいいのか、そういうような長期教育計画というものを幼児から大学まで考えるべきではなかろうか、それに対する必要なる経費、あるいは定員、あるいは教職員の待遇改善というものは幾らになるかということをこの半年ばかりの間に私ども文部省においても策定をいたしたい、考えていきたいと思っております。同時に、中教審におきましても第二十七特別委員会においても検討をわずらわすつもりでおるわけでございまして、その意味合いにおきまして今後相当の決意と、それから国民各界各層の御協力がなければ、教育国家日本として今後世界の水準に追いついていくということはできないんじゃないかというふうに私は考えておる次第でございます。
  154. 多田省吾

    ○多田省吾君 この中教審中間報告につきましては教員養成等の問題もあり、さまざまの問題を含んでおると思いますが、この次にこれは譲りまして、次に私は筑波研究学園都市のいままでの経過あるいは進行状況、これからの予定につきまして若干の問題を御質問したいと思います。  首都圏整備委員会の事務局長川島さんにおもに最初にお尋ねしたいのですが、ひとつ時間もありませんので簡明にお答え願いたいと思います。  いま現地におきましても非常に県や町、村、こういったところで国の計画は当初と違って非常におくれておると、こういう不安感が高まっておるわけです。せっかく土地の提供等協力しておるにもかかわらず、このようなおくれはどうしたことかと、こういう不信感、不安感が非常に高まっておるわけです。現在の進行状況と今後の計画について、当初の予定どおりいくのかどうか、また一番問題になっておる点はどうなのか、またいままで移転計画のなされたものはどのくらいか、まずそれをお伺いしたい。
  155. 川島博

    説明員(川島博君) 筑波の研究学園都市の建設につきましては、御案内のように三十八年の九月にこの地に研究学園都市を建設するという閣議了承がなされまして七年たっております。七年という期間考えようによっては非常に長い期間でございましたが、その間日本住宅公団が中心になりまして、鋭意用地買収に当たってきたわけでございます。ただいまのところ、用地買収については予定面積の九三・三%、約千八百ヘクタールの買収を終わりまして、移転機関が進出するためには必要にしてかつ十分な用地が確保せられたわけでございます。このような状況に際しまして、政府といたしましては昨年の六月に閣議決定をもちまして、昭和四十三年度から十ヵ年、すなわち昭和五十二年までに移転を予定されております政府関係の研究教育機関三十六機関の移転を行なう。そのうち前期五ヵ年、すなわち四十三年から四十七年までの五ヵ年間におきましては、科学技術庁関係の二機関、文部省関係の一機関、農林省おおむね五機関、建設省三機関、計十一機関の建設を開始するということに閣議決定を見たわけでございます。すでに科学技術庁関係におきましては国立防災科学技術センター、無機材質研究所の建設に着手いたしておりますし、それから建設省の建築研究所につきましても一部工事に着手をいたしております。また新設機関でございますが、文部省関係の素粒子研究所、これについても本年度着工の予定になっております。したがいまして、前期に予定されております十一機関につきましては、計画どおり四十七年度までにはそれぞれ着工段階に至るものというふうに予想されるわけでございます。後期間につきましても現在鋭意現地調査をいたしております。これにつきましても、なるたけすみやかに現地に進出着工するように申し合わせをいたしておりますので、おおむね計画どおり、この筑波学園都市の建設は進むものというふうに考えております。
  156. 多田省吾

    ○多田省吾君 地元の方たちはいろいろ皆さんのお話を聞いたり、あるいは新聞報道によったりして、いまおっしゃった前期五ヵ年計画が終了する四十七年度までにはいまおっしゃったような機関が全部工事が終了して移転が完了すると、このように理解している人もおります。いまお聞きしますと、工事に着工するのが四十七年である。着工だけでは四十七年からまた何年かかって完成するのかわからない、こういう現状ですが、これはどうなっているんですか。
  157. 川島博

    説明員(川島博君) ただいまも申し上げましたように、昨年の六月十三日の閣議決定でこの建設の今後のスケジュールがきまったわけでございますが、この閣議決定には「四十七年度までの前期間には、十一の移転予定機関の建設を開始することを目途とする。」こういう表現になっております。できますればこの期間に全部移ることが望ましいわけでございますが、各省庁各機関におきましても、いろいろの施設等を新設するものもございますし、更新するものもございます。そういった関係もございまして、全部が四十七年度中に完全に移転をするということは現状では困難なようでございます。したがいまして、閣議におきましても少なくとも四十七年度までには必ず行動を起こすということで御了承願った次第でございます。
  158. 多田省吾

    ○多田省吾君 研究学園都市推進本部移転機関部会というのが四十四年の二月二十五日に報告を出しておりますけれども、その中にも、前期五ヵ年、後期五ヵ年の二期にわけて、おおむぬ十ヵ年で実施することを目標とするという説明があります。これはどう見てもまた地元の方々の考えも四十七年中には移転完了するのだというふうに受け取って期待しておるわけです。ですから、いまおっしゃったような、いわゆる建設工事が四十七年中に手をつけられるのだということになりますと、これは相当おくれることになりますね。ですから、もっとこれは地元の方々にもはっきりと最初から御説明をすべきじゃなかったかと、こう思いますけれども、その点は地元の方々と十分打ち合わせができておるのですか。
  159. 川島博

    説明員(川島博君) 御案内のように、今回の筑波に移転する機関は関係省庁も多数にわたりますし、また移転するに当たりましても、単に研究機関そのものがそっくりその施設をそのまま移すというわけのものでもございませんし、また移転機関に付属して向こうに移転をする職員の方々もいろいろ考えなければならないわけでございます。したがいまして、この計画を推進する立場にある私どもといたしましては、一日も早く完全移転することを心から願っておるわけでございますけれども、それぞれの家庭の事情もございますので、私どもが無理無理引っ張っていくわけにもまいりません。また地元の方々が一日も早く現地に完全に移転してほしいという希望のあることも十分承知をいたしておりますが、必ずしも各機関の都合によりましてそういう状態になっておらないことは、はなはだ遺憾でございますけれども、私どもといたしましては今後ともに、なるべくすみやかに完全移転が完了するように各省庁にお願いをいたしまして——これは予算の関係もございますので、大蔵省にも来年御協力をお願いしなければならぬわけでござますけれども、なるべく御期待に沿うように早期に移転が完了するように今後とも努力をいたしたいと考えております。
  160. 多田省吾

    ○多田省吾君 この研究学園都市の建設はわが国でも初めての、まことに大がかりな計画であると思います。しかしながら進行状態はだれが見てもおくれておりますし、また各省庁がばらばらでやっておりますから、いろいろこの間に問題があろうかと思います。この研究学園都市計画は具体的にどのように組まれて、どのようなシステムで行なわれておるか、それから大方の希望であり、われわれもそう望んでおるけれども、民間人を相当起用して、民間人の方々の意見を反映する考えはないのかどうか。たとえば審議会とか委員会というようなものをつくって、そうして都市計画というものをもっと民間人の意見を入れたほうがよろしいのじゃないか、このように思いますので、それはどう考えていらっしゃいますか。
  161. 川島博

    説明員(川島博君) ただいまも申し上げましたように、移転機関が各省庁に多岐にわたっておりますので、これらの間の思想の統一をはかることはもちろん必要でございます。そのために政府といたしましては、三十九年にこの推進本部というものをつくりまして、首都圏整備委員長を本部長に、各省庁の事務次官クラスの方を部員にお願いいたしまして、事あるごとにお集まりを願いまして、思想の統一をはかりつつ、この移転計画の内容を固めているわけでございます。この学園都市はほとんど大部分が政府関係の研究教育機関で占められるわけでございまして、民間の私立学校、あるいは純然たる民間の研究機関の進出する場所は、わずか用意してはございますが、ほとんど言うに足りない面積しか予定されておらないわけであります。したがいまして、この移転計画のマスタープランは、やはりこの進出を予定される各省庁の機関の御希望というものを最大限くみ上げるという形で構成せざるを得ないわけでございまして、そのために推進本部の全体会議あるいは部会また各局長クラスで幹事会が構成されておりますが、これらの機関にはかりまして調整をとる、こういう形で進められております。御了承願いたいと思います。
  162. 多田省吾

    ○多田省吾君 県のほうからもいますべての移転計画を早く出してもらいたいという強硬な意見が、要求が出ていると思うのです。また地元の方々もやはり国を信頼して土地を協力的に手放した人も多いわけです。そういう意味で、四十七年中にやっと十一機関の建設を手がけるのだ、建設を開始するのだと、こういう段階では、それでは移転計画はどうなのだと聞きますと、まだ何もできていないという、こういう状況では非常に納得ができないわけです。こういう全体的な前期後期も含めた移転計画というものが早急にできないものかどうかですね。
  163. 川島博

    説明員(川島博君) 御出席の中村先生の御尽力によりまして、六十三国会におきまして建設促進法も成立いたしまして、政府が責任をもってこの研究学園地区の建設計画を決定する義務を法律上負わされたわけでございます。これに基づきまして私どもは早急に計画を固める必要に法律上も迫られたわけでございます。もちろん法律がなくても当然進めなければならないわけでございますけれども、そういう経緯もございまして、実は今年の七月の二十二日にこの推進本部会議におきまして、今後の運営に関する申し合わせを各省庁といたしたわけでございます。これによりますと、本年度中には全体の建設計画の大綱、それから中にいろいろ公共公益施設を設置する必要がございますが、これらの整備計画の概要、それから第三番目に移転予定機関等の移転計画の概要、これはおそくも今年度中にははっきりときめる。これに基づきまして早急に研究学園都市の建設計画法律に基づいて決定する必要がございますので、本物の建設計画法律に基づく建設計画をこれに基づいて早急に策定をする、こういう段取りで各省とも関係省庁とも了解をいたしたので、ただいますでに全体の建設計画の大綱の作成を終わったわけでございますが、引き続いて公共公益事業等の整備計画、移転予定機関等の移転計画について各省と詰めに入っている段階でございます。これもなるたけ急いでまとめたいというふうに考えております。
  164. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、この八月の報告書を見ますと、交通通信体系、この中に一般国道のほかに常磐自動車道の早期建設をはかる、このように出ております。これは道路公団でやっておられると思うのですが、何ですか、五十一年に完成というようなことを聞いているわけでございますが、やはり東京から相当通勤しなければならないというようなことが生ずるわけでございますから、どうしてもこれは早く道路の整備をしなければ関係する方々も安心して現地に赴任できないのではないか、こういうこともあるわけでございます。この常磐自動車道というものをもっと早く完成する計画というものがないのかどうかですね。
  165. 川島博

    説明員(川島博君) 常磐高速自動車道につきましては、これは建設省の所管でございまして、具体的には日本道路公団が建設施工に当たるわけでございます。まあ研究学園都市の話が本ぎまりになりましたのが三十八年でございますから、私どももこの自動車道はもっと早く手をつけてほしいというのが切なる希望であったわけでございます。ところがこの五道等の建設が先にきまりまして常磐高速道はたいへんおくれておったわけでございますが、ようやく本年に入りまして整備計画が決定し、六月に日本道路公団に施工命令が出される段階にこぎつけたわけでございます。現在道路公団におきましては自主設計を急いでいる段階でございまして、来年度から本格的に用地買収等の事業に入るという予定でございます。そうして完成につきましては、現在の道路整備五ヵ年計画が、第六次の道路整備五ヵ年計画が四十九年度までの計画になっておりますので、その先の予算のつき方はその次の五ヵ年計画予算のつき方いかんによりますが、現在の予定では昭和五十年度中にはこの完成にこぎつけるという目標日本道路公団が急いでやっていただくということになっております。
  166. 多田省吾

    ○多田省吾君 ともすればこういった都市計画の際にいつも道路とかあるいは下水道とか学校とか、こういったものが非常に建設がおくれる傾向があるわけです。これは鹿島臨海工業地帯なんかでもそういう傾向が見られるわけです。やはりこういった道路というようなものは、もう外国だったらまっ先につくるわけです。そういった点が非常におくれているのではないか。いま御答弁がありましたけれども、これは日本道路公団にも催促して早急にやるべきだ、このように私たちは思います。  それからもう一つは、確かに用地買収のほうは、いま御答弁いただいたように九三・三%が済んでいる。七月末現在では九二・四%でしたから、まあ着々と進んでいるようには見えます。しかしながら、一方の周辺の任意買収と言われる区画整理のほうは、七月末で六七・七%、十月末で同じく六七・七%、ほとんどもうこの実績表に関する限りでは進んでないように思います。これは今後買収可能な、あるいは買収が進む見積もりはないのかどうか。そうして中には区画整理地区で買収に応じた方々というものは、やはり国というものを信頼して手放した人たちが多いわけです。ところが、これが売っても売らなくてもよかったのだというような姿でございますと、やはりこれは売らなかったほうが得ではないだろうか。土地も値上がりしたのではないか。こういうことで非常に不公正また不平等の面から不信感というものが起きるのじゃないか、こう思いますが、この点に関してはどういうお考えでございますか。
  167. 川島博

    説明員(川島博君) 御指摘のように、先ほど御答弁いたした全面積の買収率は九三・三%でございますが、これが公共事業用地あるいは一団地の住宅用地等、収用権をバックに買収いたします用地につきましては、九九・九%の買収を見たわけでございますが、御指摘の区画整理用地につきましては、予定三百九十ヘクタールに対して二百六十五ヘクタール、六七・六%の買収にとどまっておるわけでございます。まあ区画整理が非常に成績が悪いので、学園都市の建設に支障を及ぼすおそれがないかということもひとつ問題であろうかと思いますけれども、これにつきましては、少なくとも移転あるいは新設される研究教育施設用の用地、これは直接の施設用地、並びに職員の住宅等含めまして、この収用権をバックにその買いました用地内に十分収用し得るわけでございますので、その移転機関の移転には支障はないものと考えております。ただ、区画整理用地の中で、予定したものが七割弱しか買えておらないということは事実でございます。これによりましてどういう支障が、かりにこれ以上買えなかった場合に生ずるかといいますと、これは進出機関以外に民間の研究機関、あるいは学校等の進出も一部予定しておりますし、またこれだけの町ができますと、関連する企業も集積をいたしまして、これの従業員等の人口に対する住居地等の手当てが必要でございます。そういったものを見込みまして、三百九十ヘクタール程度のものを区画整理地域内で住宅公団が取得することを計画したわけでございますが、御案内のように、区画整理事業は強制収用という手段が認められておりませんので、あくまで地主との話し合いでその一部を売っていただくという交渉になるわけでございます。いままで数年にわたりまして住宅公団職員また、茨城県、関係市町村の職員の御協力がありまして、いろいろ説得につとめてまいりましたが、どうも十分地主の方方の御協力を得られないで、約七割弱の買収にとどまっておることははなはだ遺憾でございます。今後の見通しでございますが、なお公団関係、公共団体ともに地主の説得につとめておりますけれども、どうも私どもの見通しといたしましても、これがさらに八割、九割と予定の買収率を高めることは現状ではなかなか困難なようでございます。したがいまして、今後とも努力は続けますけれども、そう多くを期待することはむずかしいと思います。これはやはりあくまで地主との納得づくで買うという手段しか認められておりませんので、やむを得ないことではないかというふうに考えております。
  168. 多田省吾

    ○多田省吾君 その点で、まあこれからの建設についての若干の支障という問題はわかりましたが、私が先ほど質問したのはそうじゃなくて、この土地の買収というものは、区画整理地域はまあ任意であるということで、それを任意であるということを知らないで、相当同じような気持ちで協力した人も多いのじゃないかと思います。現地で私どもも確かめた結果、そういう人もかなり多いのですよ。その場合に、将来、買収に応じなかった人たちが、その土地が値上がりしたことによって相当利益を得るという場合に、いままで手放した人たちが、だまされたとか、そういう説明はなかったとか、こういう不信感、不平等感を生ずるおそれはないのかどうか。もしそれが起きた場合は、こういう任意買収の不徹底なやり方というものに問題が起きてくるのじゃないか、こういうおそれはないのかどうか、それを質問をしているわけです。
  169. 川島博

    説明員(川島博君) この研究学園地域内の買収にあたりましては、全面的に買収をする地域と、それから区画整理用地としてその一部先買いする用地とを完全に分離をいたしまして、それぞれ、全面買収用地は、お売りいただけなかった場合には最後には収用させていただきますということをはっきり申し上げておりますし、区画整理地域については、初めからそういう手段が用意されておりませんし、もちろん公団の職員あるいは関係地方団体の職員の方々も、区画整理ということを前提に買いに入っておるわけでございますから、そういう三百代言的な言辞を弄して、最後は取り上げますよというような交渉は万々しているはずはないと、私どもは確信いたしております。
  170. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に文部省に、筑波新大学創設整備費として、昭和四十六年度の概算要求を十億六千万円ばかりやっているようでございます。四十五年度予算額は百四十五万円ということでございましたけれども、これは相当進んだ概算要求でございますが、一体どういう予定内容で概算要求されたのか、簡単でけっこうですからお答え願いたいと思います。
  171. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 東京教育大学につきましては、すでに四十四年七月から移転の表明がございまして、その後いろいろと準備を進めてまいったわけでございますが、四十六年度から、運動場を整備いたしますと同時に基幹工事の一部に着手をしたいということで、ただいま御指摘になりましたような予算を要求しておるわけでございます。
  172. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 関連で川島局長お尋ねしたいのですが、ただいま多田議員がお話しの件、地元の土地提供者は国を信頼して、犠牲を払って用地を提供した。にもかかわらず、移転機関が遅々として進まざる状況について、地元では政府に対しても政治に対しても信頼感を失いつつあるから、すみやかに具体的にこれをやるように、さらに四十七年度十一機関、三十六機関の残る二十五機関を五十二年度までに完了することを地元では期待している、こういうことはまさにそうだと思います。住民の声を代表し、また政府が計画したものを五十二年に完工するという、起案、立案、起工だけではなく、完了するという、こういうふうな受け取り方をしていることは、これは間違いありません。私も予算委員会で建設大臣に対して、五十二年に三十六の一応予定機関が移転完了することができるかどうか、その点が問題だということをお尋ねしましたときに、建設大臣は、幾ぶん延びるかもしれないけれども、五十二年を完了目標にいま具体的に進めていく。そのためには移転することを拒むような、あるいは仮定のできないようなものもあるかもしれないが、その際にはすみやかに、そのことも予想されてすみやかに移転機関のセレクトをする。そうして五十二年度までには完了できるような方途でやっていくという答弁をしているわけです。しかもそのセレクトは、七月から八月頃までに関係閣僚会議を開いて、どれとどれが完全に移転できるか、これは移転することが無理であるかという、こういう閣議をするということまでお話ししておりますが、そのセレクト等に関する閣僚会議、あるいは五十二年を完了目標とした計画が具体的にこれは政府部内で進められているのかどうか、それをお尋ねしたい。
  173. 川島博

    説明員(川島博君) 先ほどもお答え申し上げましたが、移転機関の確定を急ぐということについては、去る七月の本部申し合わせで各省庁とも協力をするということが決定したわけでございます。したがいまして、現在各省庁と最終的にこの移転の今後のスケジュールについて打ち合わせ中でございます。ただいままでのところ移転機関でもういかないとか、やめたとか見合わせるとか、あるいは変更するとか、そういう意思表示はもうございません。全部いきたいということでございますが、移転はするのだけれども移転をするにあたりましてはいろいろの前提条件がある。これは多分に予算にからむ面が多いわけでございますが、そういった前提条件がどの程度満たされるかということを、主として財政当局との詰めの問題になるわけでございますが、そういう問題についてある程度の確信を得ないと何月何日からどういう行動を起こすということがなかなか踏み切れないという点で話が詰まらない面がございます。その点につきましては先ほども申し上げましたように、おそくも年度内にはすべてのスケジュールをきめたいということでただいま関係省庁と折衝を急いでいるわけでございます。それがきまりましたところで、法律に基づく建設計画というものをはっきりと固めたい、きめたいと、こういうふうに考えているわけでございます。
  174. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 もう一つ。そうすると、もう一度お尋ねしたいんでありますが、いま関係各省の関係の次官あるいは局長会議等で移転に対する具体的なスケジュールあるいは出られるか出られないか、セレクトをするかしないかと、こういう問題の閣僚の会議は行なわれたかどうか、閣僚の会議までいっているかどうか、それを一つお尋ねしたい。もう一つは、ただいまのところ移転をしたくないという省庁の意見は出てないと言うけれども、現実にたとえば農林省の十三機関の中であそこに移転を必要としないものもこれはあるのではなかろうか。これはそういう点で農林省関係の中にもあるし、それからもう一つ、工業技術院関係等がこれは依然として、これは移転するあらゆる条件、すべて通産省関係の意見がいれられなければ移転することについては積極的な意見が出ない、まとまらない、こういうことが出ておりました。この前の筑波研究学園都市建設法の法律審議の際に参考人からもそういうような意見が述べられておるわけですが、これは全然、いまのところ各省とも全部予定されたものは出ると、出すと、出る、出すと、こういうことに意思決定がはっきりしているんですか。
  175. 川島博

    説明員(川島博君) 私は事務局長になってからまだ一ヵ月足らずの新米でございまして、中村先生たいへんお詳しいので何でございますけれども、私が聞いております限りでは、各省庁とも幹部の基本方針としては、進出についてはゆらいでおらないようでございます。その下部機関におきましてはいろいろ条件等につきまして問題がなきにしもあらずのようでございますけれども、各省庁自体としては三十六機関ともにぜひあそこにいきたいということは、私はゆらいでいないというふうに報告受けております。したがいまして、本年度末までには足並みが全部そろうものというふうに確信いたしております。しかしながら、不幸にして最終的な詰めによりまして脱落が出るというような場合が、これは一〇〇%ないとは言えないと思いますが、その際には根本委員長が御答弁になりましたように、出るものは出る、出ないものは出ない、出ないことがはっきりすれば、そのかわりに何を入れるかということは早急に詰めて、全体の完成が一日でも早くできますように私どもとしては努力をいたしたい。それから促進のための会議でございますが、まだ委員長が出席してのそういった会議は、七月以後開いておりません。これにつきましては各省の次官あるいは局長ベースで具体的な実質的な話を詰めましてその上で開きたいというふうに考えております。
  176. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 セレクトするという意味はなかなか出ることについて困難な問題もあるので、しかも地元の要望、土地提供者のそういう要請に応じて五十二年度までにできるだけ完工するというその目標のもとにセレクトされたのだと思います。したがってそのセレクトがされて大体の具体的なスケジュールが、計画立つというのが十二月にはできるのですね。あと一ヵ月くらいで、先ほどの十二月ころまでには。
  177. 川島博

    説明員(川島博君) 四十五年度一ぱい、すなわち三月末日までには最終的な結論を得たいというふうに考えております。
  178. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、私はアマスポーツの問題で若干質問します。これは一問だけにします。  プロスポーツではこれはプロ野球の黒い霧の問題等が起きておりますが、アマスポーツの問題でもこのところクレー射撃の問題、あるいは重量あげ選手権の興奮剤使用問題とか、フェンシングの海外派遣選手の試合放棄事件、たび重なって不祥事件がございました。特にクレー射撃におきましては、メキシコ・オリンピックの際にも弾丸の横流し事件等がありまして、今回の国体事件、さらにアマチュア資格問題とかあるいは賭博問題あるいは経理の問題等もう不祥事が重なっているわけです。こうしたおりですね、来年クレー射撃の世界選挙権大会が日本において予定されておる。で、この前渡米した山田理事が、日本の開催はもう決定していたということで議題にのぼらなかったということで、意思表示しないまま帰国されたそうですが、実際は開催しないほうが望ましいわけです。そうして初め文部省においてもこういった不祥事が起こらなければ当然補助金も出して世界選手権大会は後援する予定だったと思います。現在こういった問題で、開催問題で国際問題も起こりかねないような現状でございますが、文部省として具体的にどう指導されているのか、これが第一点ですね。  それからもう一点は、この体協のもとにおけるこのクレー射撃の会長として代議士の福永氏が会長になっておられるわけですが、最近政治家とアマスポーツの癒着という問題が非常に論ぜられておる、この背後に金銭問題等もからんでおりますので、私たちはスポーツの中立という問題からこういったことは好ましくないのじゃないかと、特に福永会長の名義になっている所沢射撃場の地価十数億円という問題、それから今仁という人が今度逮捕されましたけれども、この経理問題も結局はその所沢射撃場の福永会長名義になっているところの利息を払うためにお金を無理したのだというようなことも論ぜられておるおりでございますので、こういったことは大臣がよく事情を御承知かどうかですね、こういったことが今後好ましいかどうか、この問題をひとつお答え願いたいと思います。
  179. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 今回の日本クレー射撃協会の不祥事のことについてまことに遺憾だと考えております。ちょうど国体が開催されますときに、私、ヨーロッパから帰ったばかりの福永さんとも汽車でお会いをいたしましていろいろお話を承りました。なかなか内情は複雑のようでございました。その後いろいろな事件が摘発されまして非常に遺憾なことだと思うわけでございますが、私どもといたしましても十分この事情を聴取いたしまして適切な措置をとらなきゃならぬというふうに考えてまいったわけでございますが、十月の二十七日に日本クレー射撃協会日本オリンピック委員会に対し委員会構成団体から辞退する旨文書で申し入れがございました。日本オリンピック委員会はこの退会届けを受理し、JOC構成メンバーから削除することをきめました。十一月の五日に日本体育協会理事会において日本クレー射撃協会の問題を協議し、日本体育協会内に設置されたアマチュア委員会及びクレー射撃調査委員会からそれぞれ提出されたアマ団体として失格であるという答申を全会一致で承認、日本クレー射撃協会がアマ団体にふさわしい団体に再編された場合はあらためてこの加盟を協議する旨の申し合わせを行ない、全理事が一致して除名を決議した次第でございます。文部省としましてはできるだけ早い機会にクレー射撃団体がアマチュア団体としてふさわしい姿に生まれ変わることを期待しておりますが、その前提といたしましては、もう少し関係者の中におけるいろいろな不祥事の内容等をただいま調査検討をいたしておるということでございます。
  180. 西村勝巳

    説明員(西村勝巳君) 御質問の中に世界選手権大会の開催のことがございましたんですが、いま大臣から御説明のありましたとおり、十月二十七日にJOC常任委員会でクレー射撃協会の辞退届けが受理をされまして、JOCからはずされますと、これは世界選手権を開く資格を失うということでございます。なお、日本体育協会におきましては、体育協会を通じてこの世界大会については補助金を申請していたわけでございますけれども、日本体育協会からも退会処分をされるというようなことでございまして、これに対する副申は取り下げるという話が来ております。したがって、この開催自体については消極的な方向に向かいつつあるというように思っております。
  181. 多田省吾

    ○多田省吾君 それじゃこの世界選手権大会問題は全然今後国際問題になるような可能性はないし、このまますんなりと開かないという線でいくという見通しがあるということですか。
  182. 西村勝巳

    説明員(西村勝巳君) いまのような事情でございますので、これはクレー射撃協会の世界連盟との相談があるわけでございますけれども、開かれない方向へいくんではなかろうか、そのように考えております。
  183. 多田省吾

    ○多田省吾君 こういった問題が起こりますと、やはり政治家がスポーツに介入するからこういう問題が起こるんだということも言われるわけですよ。体協の中に加盟三十六団体がありますけれども、私たちの調査でもそのうちの七つばかりは自民党の代議士あるいは参議院議員の方が会長になっておるというのがあるわけですね。今度の福永さんのような場合も私たちは非常に遺憾だと思うんですが、こういったことは文部省としては政治家とアマチュアスポーツとの癒着、あるいは金銭問題がからむような事件が起こるということは、スポーツの中立性という問題から、こういうことが、だから自民党の代議士、あるいは参議院の諸氏がこういったアマチュアスポーツ団体の会長としてやっていくこと自体が好ましいことであるかどうか、それは文部大臣はどのように考えておりますか。
  184. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 今回のクレー射撃協会の問題につきましては、福永君がその会長であったということについては、福永君自身も責任を感じているようでございますが、しかし、一般的に申しまして、アマチュアスポーツに対しまして、政治家が関与するということが直ちに悪いとも言えないのではないかというふうに思うのでございまして、福永君の場合でございましても、国体の推進というような問題につきましては、みずから実践してやっておりますし、非常に国民的スポーツの奨励、特にアマチュアスポーツについては、なかなか功績も多かったのではないかというふうに思います。ただ今度の問題については自分でも責任を認められておられますし、おそらく自分としての態度をおきめになるだろうと、またそういう常識をお持ちの方だというふうに私は思っておるわけでございます。
  185. 多田省吾

    ○多田省吾君 時間がおくれましてたいへん申しわけないのですが、もう一点だけ。  アタッシェの問題でひとつだけお聞きしたいと思います。来年度の概算要求の中に、いままではアタッシェが二人いるそうですが、今度はさらにもう一名バンコクに要求しているそうでございますが、その役割り及び最近外務省とも関係があるのですけれども、特に外国の教科書において日本を正しく紹介していないという点が前から言われているわけです。ちょんまげ時代とか、あるいはかごの時代のさし絵がそのまま載っておりましたり、あるいは最近は、戦敗国であったドイツの悪虐無道な姿がアメリカの映画において相当日本のテレビ等に提供されております。それと同じように、ヨーロッパにおいては、太平洋戦争において、日本の悪虐無道ぶりが極端に誇張されて相当上映されておりまして、そのために、せっかく国連等において総理大臣等も敵国条項の廃止というようなことも叫んでいるのでありますけれども、まだそういった点が日本を誤解させるもとになっているという点も非常に強く感じます。ヨーロッパにおいて上映されているこの前の戦争における極端に誇張した日本の悪虐無道ぶりなんというものは、目にあまるものがあるわけですね。こういったことは非常にアタッシェの人たち、あるいは外務省とも提携して、文部省においても十分相手国に申し入れをしなければ、やはり国際親善、世界平和のために、そういったことはなくすべきであると、このように考える。それから、もう一つの問題ですが、前にフランスがアルジェリアを支配していた当時の教科書を見たのでありますけれども、極端に人種差別が強くて、機関車等の絵が出ておりまして、それを見た黄色人種が、白人先進国文明の偉大さに仰転しているというような、ほんとうに驚くべき教科書も使われていたわけですね。こういった例がまだまだ世界には多いのではないかと思います。そういったことにからんで、アタッシェの強化等はけっこうでございますけれども、文部省においてももっともっとこういう点は外務省とも協力をして、日本文化を正しく紹介するという意味におきまして、また正しい国際間の文化交流ということにつきまして、もっともっと留意をしていかなければならないのではないかと思います。こう思いますけれども、いかがでございますか。
  186. 安達健二

    説明員(安達健二君) 最初にアタッシェのことでございますが、現在文部省から出向いたしておりまするアタッシェは、パリの日本大使館に一人、それから本年度からタイのバンコクの大使館に一人、それからもう一人ユネスコの日本代表部に一人と三人になるわけでございまして、バンコクにつきましては、この秋から赴任することになっているわけでございまして、したがいまして、総計いたしまして三人でございまして、ほかの省庁におきまして五十人をこえる省庁もございますが、したがいまして、教育文化の役割りが大きくなっております際に、非常に不足であるという観点から来年度は二ヵ所、OECDの代表部と、アメリカ合衆国に一人、二人の要求をいたしておるわけでございまして、御指摘の点もございますので、明年度及び今後におきましても、その増員につきましては努力いたしておるわけでございます。  次に、外国の教科書においての日本の取り扱いが誤っている、著しく不当であるというようなことが種々御指摘されまして、実は昭和三十二年でございますが、国際教育情報センターという財団法人が設立されまして、理事長は藤井丙午氏でございますが、この国際教育情報センターにおきまして、海外の七十二ヵ国の小・中・高等学校の地理、歴史、社会科の教科書を取り寄せまして、それぞれ専門家に調べてもらいましたところ、わが国の事情につきまして誤りなり不適切なところがだんだん出てまいりました。そこでそれを具体的に指摘いたしまして、著者と出版社にお送りいたしまして、機会があればひとつ改訂してもらいたいということを申し入れておるわけでございまして、先方でも好意ある返答をよこしまして、すでにこちらから申し入れたところに従って訂正をしてもらったところも出ておるようなわけでございます。これは非常に大事なことでございまして、学校の時代に教わった知識というものは一生残るわけでございますので、この点につきましては財団法人の仕事に協力しまして、外務省、文部省とも努力をしてまいりたいと、かように考えるところでございます。  それから第三の、映画等で見られる好ましからざるその実態についての改善でございますけれども、これはなかなか容易ではないと思うわけでございますが、御指摘の点もごもっともでございますので、機会あるたびに在外公館等で随時善処をしていただきますように、外務省のほうにもお願いをいたしておきたい、かように考えておるところでございます。
  187. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですから、映画のほうはこれから改善していくとおっしゃいますけれども、現状をつかんでおられるのかどうか。まあ日本でもこの前「ハワイ5−0」という映画で、特殊潜航艇の乗り組み員が同僚を殺して自分だけが助かって在留邦人を身がわりに殺して悪徳の限りを尽くして逮捕されたというのが日本のテレビに出ているわけですね。それから「バロン」なんという映画にもジャップは死ねなんという題でやっておりますし、日本ではその程度でございますが、ヨーロッパにおいては、ちょうど日本において、ドイツ軍の悪逆非道ぶりがどんどん映画にされているように、ヨーロッパではまさかドイツを出すわけにいきませんから、日本を引き合いに出して、相当な極端なそういう映画が上映されておるのですね。言うに言えないような破廉恥な、また事実を誇張したような映画がどんどん上映されておる。そのために日本というものが非常に誤解されておるという面も非常に強いわけです。それは日本の映画、テレビであのドイツの出てくる映画なんかを見れば十分おわかりになると思うのですが、こういった点をほんとうにつかんでおられるのかどうか、ほんとうにつかんだ上で、やはりそれを申し入れ等をやっていかなければならぬのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  188. 安達健二

    説明員(安達健二君) 寡聞にいたしまして、いま御指摘のような点は、十分私ども知っておりませんけれども、今後御指摘の点によりまして、よく注意するようにいたしたいと思っております。
  189. 永野鎮雄

    ○理事(永野鎮雄君) ほかに御発言がなければ、本件についての本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十三分散会