○阿部憲一君 第二班は、去る二月一日から五日までの五日間にわたり、高田委員、
竹田委員、藤原委員と私の四名で、福岡県及び熊本県の
物価問題等の実情について
調査いたしてまいりました。
まず、福岡県につきましては、県の
物価対策の進め方、消費者
行政等について説明を聴取し、引き続き消費者代表との懇談を行なった後、市の食肉市場、
日本専売公社福岡支局、公正取引委員会の地方機関の実情を
調査いたしました。
熊本県におきましては、県当局から消費者
行政の実情について説明を聴取した後、八代市の野菜指定産地及び熊本総合市場を視察するとともに、県果実連代表と懇談を行なったのであります。
以下、その
調査の概要について御報告いたします。
まず、福岡県の消費者
行政でありますが、その基本方向として、最近急激に増大してきた消費者
行政需要に対応して消費者の利益を尊重しようとしております。
すなわち、
消費者保護基本法に基づき、消費者
行政の
総合調整、消費者教育及び保護の
推進、消費者団体の育成、商品テスト室の運営等を柱として、生活の科学化の
推進がはかられてきたのでありますが、県及び市町村当局の指導と県民の積極的参加により、県下全域にその機運が高まりつつあり、その活発な実践活動が期待されております。
昭和四十五
年度の
重点施策として、消費生活相談員
制度、消費者向けテレビ番組の設置、消費生活実態
調査、地域啓発活動機能の充実、試験検査等を通じて、必要な商品の知識の普及並びに利益を擁護するための消費生活センターの開設等に積極的な姿勢を示しています。
物価対策として、本県におきましては、野菜、果実、畜産、水産物の
生産流通
対策、中小企業
対策等を通じて、県民が一致協力して積極的に
推進しております。福岡市及び北九州市における消費者
物価は昭和四十三年五・四%で、全国平均五・三%よりやや
上昇率が高かったにもかかわらず、四十四年には全国平均五・二%を下回る五・一%となっております。
次に、消費者代表との懇談の概略について申し上げます。
御出席になりました方々は、消費者協会、消費生活コンサルタント、県消費者生活モニター等の代表十一名で、福岡市、北九州市等からお集まりいただいたのであります。
約一時間にわたり、非常に熱心な雰囲気の中で活発な
意見及び要望が述べられました。
その概略を申し上げますと、
政府の
物価対策は、
生産者または企業サイドに
重点が置かれがちである、特に畜産振興事業団による食肉価格の操作や野菜
生産出荷安定資金造成事業等では
生産者を過保護しているのではないかという疑いを持つものであり、消費者にもそれに類する何らかの保護
政策がほしいとのことでした。
昭和四十四年の消費者
物価上昇率は五・二%であるとの
発表であるが、生活必需品について見ると、実感として二〇〜三〇%の
上昇率である。このことは指数品目の取り方、統計上に問題があるのではないか、特に地価が指数品目に入っていないことは適当でない。
こういうことで、
所得の低い階層、特に産炭地の人々には
物価の高騰はきびしい
影響を与えており、生活保護を受けている人が非常に多い状況であります、また、団地主婦の団結により酒の直売運動を行ない、その結果定価を下げることができたが、実験上いろいろな問題が多いこと、
消費者保護基本法及び決議の
趣旨に基づいて、有害食品、添加物の排除について格段の配慮を
お願いしたいこと等、その他多くの、そして熱心なる
意見、要望が述べられました。
次に、公正取引委員会福岡地方事務所について申し上げます。
当所は、現在総務課と審査課の二課よりなり、定員十一名で総務課の職員が審査課を兼務しなければ業務の執行が困難な状況であります。その上
消費者保護基本法の施行に伴い、管内各地方公共団体との
連絡協力、大衆消費時代を迎えた最近の消費者動向による業務の急増等のため、総務課と審査課のほかに新しく取引課を設置したいこと、また、業務活動を円滑にするための定員増加と、積極的な審査を行なうための
予算の増額等について強い要望がありました。
次に、熊本県の消費者
行政でありますが、本県では、昭和四十年に企画部企画第一課に消費者
行政の窓口を設置し、四十二年から消費生活モニターや消費者教育など具体的な事業を実施し、特に商工、農政、衛生など
関係十七課により消費者
行政連絡協議会を設け、消費者
行政の
連絡調整を行なっております。また、昭和四十四年七月、消費者、企業者、学識
経験者、
行政機関の代表よりなる消費生活懇談会を設けるなど、組織の整備、強化をはかっています。
昭和四十五
年度には、消費者
行政の強化のため、消費者
行政担当課の新設と消費生活センターの建設を予定しております。また、消費者
行政連絡協議会を軸に、市町村、国の出先機関との
連絡を密にし、特に消費生活懇談会の運営による
行政の円滑化と消費者問題の自主的解決を助長する等、消費者
行政を総合的に
推進する姿勢を示しております。
本県は、どちらかといえば、農畜産物の
生産県でありますが、果実の
生産、特に代表的なミカンの
生産量は、四十三
年度十二万四千トン、販売量十万六千トンで、うち、県内消費はわずか二千トンで、ほとんど全部が県外に出荷されております。
野菜は、
生産量三十七万四千トン、販売量三十万四千トンで、県内消費十六万八千トン、県外出荷十三万五千トンであります。
畜産物については、肉豚が出荷頭数約十八万七千頭、肉牛は約一万四千頭の出荷頭数であります。肉豚、肉牛は、県内向けが四〇%、県外移出が六〇%の割合になっており、特に肉牛についてはほとんど生体出荷になっております。
果実、野菜の中間経費及び農家手取り割合を見ますと、小売り価格を一〇〇とした場合の農家手取りは、三〇〜四〇%、小売り粗利益三五から五〇%、荷づくり包装費一一〜一八%、その他となっております。
本県におきましては、消費者に良質で安い商品の供給と
生産者手取りの増加をはかるため、県当局及び業界は、それぞれ果実
関係では
計画出荷、集荷施設の整備、共販体制の確立や輸送の円滑化を積極的に講じようとしており、また、野菜
関係では、需給の不均衡による価格変動の調整、遠隔地輸送の対応策、産地の組織化、集団化、近代的な流通機構としての地方市場の整理統合及びその運営改善の促進等に努力いたしております。
畜産物
対策としては、現在の取引規格が温体取引であること、及び規格付けの複雑等について抜本的な改革が必要と思われます。
このように、本県は農産物
生産県として
生産拡大につとめ、県外出荷の実をあげ、同時に、農家
所得の増大を
目標として
関係者の協力が行なわれております。
次に、熊本総合市場について申し上げます。
本卸売り市場は、市場の用地、建物並びに隣接して設置されている鮮魚、塩干物等の問屋団地の一切が民営で建設、運営されております。人口の割合では、東京の中央市場の二十四倍の広さであり、県内のみならず、他県にまたがる流通機構としての
役割りを果たしており、その取引内容及び取り扱い量におきましても、市場法による中央市場に相応するものであります。
理事者側との懇談会におきましては、たとえば、売り場の拡張、駐車場の建設、これに伴う土地取得等、市場の
近代化のための設備については市場
関係者の責任と能力において実施するが、当市場を取り巻く道路網の整備については、すみやかなる公共事業の実施について強い要望がありました。なお、地方卸売り市場を含む卸売り市場のすみやかなる法制的整備、当市場においては中央市場に準じ、卸、仲買い、光参買い出し人の
制度化についても強い要望がありました。
次に、野菜指定産地、八代市の金剛農協について申し上げます。
まず、金剛農協におきましては、野菜
生産出荷
近代化事業の一環として、春トマト及び冬トマトの共同育苗施設、特に大型ビニールハウスや暖房機、集出荷貯蔵施設、自動梱包機の購入等に
重点を置き、価格の安定、
生産者
所得の増加に懸命な努力をしております。
ここでの
意見及び要望を一、二申し上げますと、野菜
生産出荷
近代化施策のための資金を、団体及び個人に対しても、農業構造改善事業
推進資金と同様な長期低利融資を行なってもらいたいとの強い要望がありました。また、
生産者手取りの増加、出荷価格の安定、流通機構の改善、ハウス病
対策等について国の積極的な援助を期待しているとのことでした。
次に、県果実連幹部との懇談について申し上げますと、
わが国のかんきつ
生産、特に甘夏については、その
生産の四割を占める本県にとって最も重要かつ緊急な問題は、昭和四十六年末からときまったグレープフルーツの輸入の自由化の問題であります。
代表者の話によりますと、われわれは、国の指導と果樹振興法に基づいて、もっぱらかんきつ類の増植や集団産地の形成につとめてまいりました。
政府が突如果実の自由化に踏み切ったことは、国際競争力体制の整備されていない果樹農家の実情を無視したものであり、ぜひ果実自由化を撤回してほしい。また、レモンの自由化のときに見られたような巨大資本の強引な販売
政策は、たとえば自由化した当初だけ価格が低下しても、競争相手の国内
生産者が淘汰された後において価格を二倍にも三倍にもつり上げてしまうような実情で、消費者にも迷惑をかけることになります。
米国産かんきつ類の
生産費は、わが国に比べ約半分ぐらいの経費だといわれ、
生産コストの面からは、とうてい太刀打ちができません。したがいまして、県果実連としては、国際競争力をつけるための補助
政策として、低金利の融資、税法上の優遇
措置、
生産性向上のための
生産地の育成、集荷並びに選荷揚の建設、労働力流出に対処する省力裁培施設等への国の積極的な援助と保護を希望し、それについて強い要望がありました。
以上、派遣報告を終わります。