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1970-04-24 第63回国会 参議院 内閣委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月二十四日(金曜日)    午後零時四十六分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西村 尚治君     理 事                 石原幹市郎君                 八田 一朗君                 足鹿  覺君                 上田  哲君     委 員                 源田  実君                 柴田  栄君                 玉置 猛夫君                 長屋  茂君                 安田 隆明君                 山本茂一郎君                 矢山 有作君                 中尾 辰義君                 峯山 昭範君                 片山 武夫君                 岩間 正男君    国務大臣        通商産業大臣   宮澤 喜一君        国 務 大 臣  中曽根康弘君    政府委員        防衛庁参事官   江藤 淳雄君        防衛施設庁長官  山上 信重君        防衛施設庁施設        部長       鶴崎  敏君        経済企画庁総合        開発局長     宮崎  仁君        厚生省環境衛生        局公害部長    城戸 謙次君        通商産業大臣官        房長       高橋 淑郎君        通商産業省貿易        振興局長     後藤 正記君        通商産業省企業        局立地公害部長  柴崎 芳三君        通商産業省重工        業局長      赤澤 璋一君        通商産業省鉱山        石炭局長     本田 早苗君        通商産業省鉱山        保安局長     橋本 徳男君        通商産業省公益        事業局長     馬場 一也君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君    説明員        総理府内閣総理        大臣官房参事官  野村 正幸君        経済企画庁国民        生活局水質保全        課長       白井 和徳君        通商産業省貿易        振興局輸出業務        課長       石原 尚久君        運輸省自動車局        整備部長     隅田  豊君    参考人        公害防止事業団        理事長      原 文兵衛君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○通商産業省設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○国の防衛に関する調査  (日本原演習場における実弾射撃問題に関する  件及び在日米軍基地の返還問題に関する件) ○委員派遣承認要求に関する件     —————————————
  2. 西村尚治

    委員長西村尚治君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  参考人出席要求についておはかりいたします。  通商産業省設置法の一部を改正する法律案審査中、必要に応じ公害防止事業団役職員参考人として出席を求めることとし、その人選、日時は委員長に御一任願いたいと存じますが、さよう決することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認め、さよう決します。     —————————————
  4. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 通商産業省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  御質疑のおありの方は順次御発言願います。
  5. 足鹿覺

    足鹿覺君 私は、公害問題については経験も浅く、知識にも乏しいし、全くのしろうとでありますが、お含みの上、ベテランの通産大臣から伺うことはしろうとくさいとお考えでしょうが、素朴な意見国民の声として、意のあるところをおくみ取りをいただいて御答弁をわずらわしたい、かように思います。  この改正案を御提出になりました意図については、提案理由なりその他について伺っておるわけでありますが、この提案理由にも、国民生活を守る上で公害問題の早急な解決を必要とするとお述べになっている。そこで、この公害問題の本質とでもいいますか、これと取り組む政府姿勢ということについては、公害対策特別委員会もありますし、論議をされておると思います。私はなるべく焦点を通産行政、また、これと表裏一体になる、公害問題の厚生関係とにからませながら、厚生総理府、運輸、企画庁というふうに関連を持たさせてお尋ねをいたしますので、それぞれ御答弁をお願いいたします。  まず、大臣に伺いたいのでありますが、公害対策基本法制定をされまして、関連法案も次々と制定を見ております。国民生活環境保全経済発展との調和ということが公害基本法の目的にありまして、この調和という名のもとに、実態的には産業経済政策生活環境汚染よりも優先しておるように私ども受け取らざるを得ないことを遺憾に思いますが、提案理由にもありましたような、早急に問題を解決をされようとしておる点について、しかも公害行政は十一省庁に及んでおり、きわめて多岐広範にわたっておりますが、主として公害問題は産業公害発生源であるやに思量いたすのであります。そこでその発生源に対して所管大臣として、所管省として私はきわめて責任が重いと思うのであります。すなわち、企業がいろいろな廃棄物を出す、これに防除産業なり防除装置というものに対して、経済発展と同時に並行して規制措置が効率的にその機能を発揮していかなかったならば、公害対策成果を期待することができないではないか。そういう点において、通産大臣の今次法案を提出された御意思はよくわかりますが、その背景なり、公害源の御所管でおられる所管大臣としての取り組みの基本姿勢をひとつ伺いたい、かように存じます。
  6. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 背景基本姿勢について説明せよという御質問でございます。公害基本法が書かれました当時は、この両者の調和という問題につきましては、御記憶のようにたいへんにいろいろ議論があったわけでございまして、当時はまだ公害についての加害者被害者というような問題もたいへんに議論をされたわけでございます。しかしながら、その後公害現実に大きくなりますとともに、私ども行政をいたす者の意識も急速に変わってまいりました。今日は産業所管しております私ども公害防除するということが自分たちの仕事の最も大切な一つであるというふうに、時とともに認識を強めるに至っております。したがって基本的に私は企業社会の一構成員でございますから、社会に対して公害を生じないようにする義務があるものというふうに考えております。ただ、この公害という意識、問題は、非常に急速に育ちましたために、企業側で独力で十分に急にはこれに対処できないという面がございますので、企業側にそういう責任意識を持たせつつ、一部は公害防除について政府も財政、税制など、あるいは金融を通じて助けてまいらなければならないというふうに考えておるわけでございます。同時に、御指摘になりましたように公害から生じます排出物をいかにして排出させないか、あるいは排出した場合に、いかにしてそれを処理するか、また、廃棄物をいかにして処理するかというようなことにつきましては、新しい産業技術、あるいはこれを全体のシステムとしてとらえるといたしますと、立地等の問題にもなるわけでございます。それらにつきましては、なお十分に研究をされておらない部分が多うございますが、工業技術院でありますとか、あるいは産業構造審議会でありますとかというものにおきまして、それらの問題を検討いたしております。一部は、たとえば重油の排煙脱硫におきますように、工業技術院で数年間研究いたしましたものが、ある程度いま実地に移されようとしておるものもすでにございますけれども廃棄物、ことに高分子のプラスチックなどの処理につきましては、まだ技術的にも問題が解明されておらないような状況でございます。  したがいまして、私の基本的な心がまえといたしましては、公害を起こさないことが企業責任であるということ、しばらくの間は企業がその責任を遂行するために、国もそれに対していろいろの手助けをしてやる必要があるだろうということ、また国、地方団体企業住民等が一緒になって公害問題に当たるような、そういう意識を持つことが必要であるというようなこと、さらにはまた排出物廃棄物等について、その処理技術並びにそれをつかさどる産業の育成を考えていく必要がある、このような基本的な意識を持っております。
  7. 足鹿覺

    足鹿覺君 産業公害ないし都市公害といわれるものの責任所在について、いま大臣は、この発生源の鉱工業の所管大臣としての御所見をお述べになったわけでありますが、だれが見ましても、公害が出ないようにしたいということは、これはもう国民常識であり、産業にあずかる人人の常識でなければならないと思うのですが、残念ですけれども日本では、わが国では法律は整備しておるけれども、実質が伴っておらないのではないか。これは四日市、水俣病、阿賀野川、富山のイタイイタイ病、あるいはカネミ油被害者問題一つすらろくに解決がついてない。私は、早急に効果を短兵急にあげよと、それにこしたことはないと思いますけれども一つ一つ着実に実践され、成果があがり、そして国民も納得しているならばよろしいと思うのですけれども、むしろ成果は遅々としてあがらないところへ、次々と新しく大気汚染や騒音や水質の汚濁というように、いま廃棄物の問題にも大臣は言及されましたが、新しく公害が広くかつ深く進んでいる。で、これらは、私は、御努力になっているけれども、業績があがっておらないからそういうことになるのではないか、つまりその結果がこういうことになっている。この間日本で開かれた国際シンポジウムの諸外国の学者が、静岡県の富士市の公害を視察して、バーゼル大学のカップという博士が、まあとにかくひどい、工場公害防止措置を何もしていないようだと驚き、これでは環境破壊だと言って、そろって発言をしておったということを知ったわけでありますが、通産省や厚生省に聞いてみると、非公式の話でありますけれども、いや、いろいろやっているんだ、話を聞くと、まんざら否定もできない。しかし、全体として見るというと、いま大臣の御答弁とは別に、公害防除どころか、それを受けた救済も片がつかない。水俣病問題にいたしましても、阿賀野川問題にいたしましても、農薬説カドミウム説と、その判定がなかなかつかない。工場側農薬説を、阿賀野川事件では安西昭和電工社長農薬説をとって一歩も引かぬ、訴訟でもこい、こういう態度です。これでは防除どころか、出た被害救済もつかぬ。企業家側一つ公害源に対する自覚と反省が欠けておるのではないか、やはり時代の趨勢国民の要望に即応して、企業家良識を私どもが期待するならば、こういう問題がすなおに解決されないところに不信感がだんだんつのってくる。それは一つ政府に対する、公害行政に対する不信感につながる、こういうことじゃないでしょうか。その辺の御所感はどうでございましょうか。
  8. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) やはりこの数年間にその辺の意識には相当大きな変化があったというふうに見ております。いま阿賀野川発生源につきまして、直接に申し上げませんけれども、ああいう論争の中で、企業というものが公害について今日ほどの意識を持っていなかったことは確かであると思うのであります。他方で、しかし、今度阿賀野川、直接の問題について申し上げますと、現実にあの公害の原因が何であったか、カドミウムであったか農薬であったかというようなことは、私は客観的にこれは確定してかかる必要というものは今後も減らない、これはいずれにしても究明することが必要であると思いますが、それはそれといたしまして、企業意識がこの数年間にかなり急速に変わったということは、これは事実であると思います。私ども行政をいたします立場もさようでございます。  そこで、先ほど責任救済との関係についてお述べになったわけでございますけれども公害の影響というものは、場合によりましては非常にひどいものでございますから、責任所在を明らかにするまで救済措置がとられないということは、明らかに不適当なことであります。したがって、責任所在責任所在として、とりあえず、どのような救済をするか、二つのことを分けて考えなければならないというふうに私ども認識するに至りまして、昨年でございますか、そのようなとりあえずの救済ということにつきましての法律が成立をいたしたようなわけでございます。従来でございますと、責任所在が明らかになるまでは、救済のほうはほうっておくというようなことが確かに間々ございましたが、この点は行政姿勢も改めて、また、関係者もこの点については昨今では過去と違った認識をせられるに至ったというふうに考えております。
  9. 足鹿覺

    足鹿覺君 まあ公害といってもいろいろなものがありますので、いまの大臣答弁で私は納得はいたしませんが、企業家意識も変わり、自分たち責任所在と当面の処置というものは切り離してやるべきことはやるように踏み切ったんだという、それは若干の進歩は否定いたしません。が、しかし、ちょっと例を大気汚染に話を進めてみますと、その規制法の現在の罰則では、企業家にとっては、これはまあ俗なことばで言えば、ノミがかんだくらいの、食ったくらいの程度で何とも感じない。少々の罰金くらい払ったって平気で汚染を続けていくという、そういうきわめて軽微なものなんですね。これは社会規制措置としての国民世論、またその世論背景にした関係住民の行動というものが私は伴わなければ、これはなかなか解決がつかない問題だと思いますけれども、違反をしても罰金の額が全く問題にならない、諸外国法令と比べてみましても、あまりにも私は軽過ぎるのじゃないか、何も罰則を強くしていくことだけが能ではありません。要は企業家の自粛と良識に期待をしながら、国の世論に従って未然防止なり防除産業なり防除装置というものが完ぺきを期せられていくことに全力をあげなければならぬわけでありますけれども、それにしましても、私はもう少し、反省の色の見えない者に対しては、大気汚染等の場合に対しても、法令改正等をもって臨む必要があるのではないか、こういうふうな感じを持つわけでありますが、これは厚生省にも関係があるでしょうし、しかし、まあ何といっても大臣中心ですから、その辺の御所見を伺っておきたい。
  10. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 大気汚染を一例としてお尋ねになったわけでございますが、御承知のように公害防止をいたしますために、私どもまず環境基準というものを決定いたしますわけであります。そうしてその環境基準が守れますように、個々の排出について排出基準をきめるわけでございます。そういたしますと、企業側にとっての負担は、実は罰金というようなところは、これは最後に出てくる問題でありまして、まずその排出基準を守りますための施設設備をいたさなければなりません。これは相当の企業負担でございます。もしその施設設備を怠りますと、これは排出基準に違反することになりまして、それはある程度の罰則でございますけれども、同時に周辺の住民がそのような企業に対して、事実上いろいろな形で、この節はいわゆるボイコットというようなことをいたします。したがって、企業がその場に立地することがまた困難になるような世論の盛り上がりもございます。それからまた、企業にとってたいした負担でないというふうに仰せられますけれども、たとえば、ある石油精製会社脱硫のための施設を自発的にいたしましたが、これは百億円に近い負担であったということが、一般にいわれておりますように、公害を起こさないための企業側負担というものはかなり私は大きなものであると思います。罰金というようなところにまいります前に、いわゆる基準を守るための負担というものは、相当大きなものであるというふうに考えます。罰金罰則を強くいたしますことはけっこうなことでございますけれども、実はこれは最善努力をしてもなおできないというような限度を設けましたのでは、これは罰金罰則を、いわゆる犯人をつくるために設けるだけのことでございますから、そうではなくて、常識的に最大限の努力をして、どのくらいの環境基準排出基準ができるかということを、やはり三年なら三年、五年なら五年という長期の計画で考えていって、それを怠りましたときに罰金罰則が出てくる、こういたさなければ、現実的な施策にはなり得ないと思います。なお、このような環境基準排出基準は、企業側認識体制が整うに従いまして、私は年とともにきつくなるということは、これは当然の趨勢であろうというふうに考えております。
  11. 足鹿覺

    足鹿覺君 大臣現行環境基準が厳重に守られているとお考えになっていますか、現実に。
  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはこのように理解しております。環境基準排出基準設定いたします。そういたしますと、一足飛びにあしたからということは実際上無理な場合が多うございますから、ある程度の年月をおきまして、そのときまでにそういう排出基準を守れるような施設をしろというふうに行政をいたしております。その点につきましては、いま、経過的なものが多いわけでありますけれども、私はきめられたことは概して守られなければならない、また、そういうふうに企業側考え体制に入ってきたと思っております。
  13. 足鹿覺

    足鹿覺君 ところがですね、四月の十六日なんですけれども経団連関西経済団体連合会首脳懇談会で話し合っておる。「現行環境基準企業の健全な活動を阻害する恐れがあるため、適正な基準設定企業地域住民紛争処理機関設置政府に働きかけることを申し合わせた。」と伝えられておるのです。いわゆる守ろうという意識がない。これはきつ過ぎるのだ、これでは企業活動が成り立たないから、政府に働きかけて緩和をさせるか、紛争処理機関をしてのがれようというそういう気持ちのほうが先に立っておるようですね。これでは、いま大臣がせっかく御答弁になりますけれども、私はうまくいかないのじゃないか。そういう御陳情なり要請をお受けになりましたか、また、そういう事実を御存じになっておりますか。これはきわめて重大なことだと思うのですね。国民気持ち企業者のほうの、発生源のほうの気持ちとだんだん開いていく、これは私は非常に遺憾千万なことだと思うのです。これでは百年河清を待つということになる。あとで公害防止事業団の問題で、あなた方がお設けになったダムの問題については、たった一つの有効な施設だと思いますので、これは伺うつもりでおりますが、できるだけのことは国も援助をいたす、企業家も苦しくても、これは環境基準等を順守して、必要なことを——資金の手当とかいろいろな技術開発とか、そういうことに協力を求めるならいいけれども現行基準はきつ過ぎる、企業活動の支障になる、紛争処理機関を設けてもらうように働きかけるという、そういう認識では、これは大臣のいまのお考えとはズレがあるんですね。これでは私は効果があがらないと思うのですが、いかがですか。
  14. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまのことは私承知をいたしておりませんが、まだまだ何人かの産業人の中にはそういう問題のとらえ方をしている人が残っておるのかもしれません。しかし、それは私は明らかに時代おくれだと思います。ある意味で、私は勝負はもうついた、産業家生活家というような問題の設定のしかたはもう古い設定のしかたであって、だれが考えましても、産業というものは人間のためにあるということは明らかでありますし、そういう産業人自身自分経験として、もう公害というものを体験しているに間違いないのでありますから、実はそういう問題の立て方は間違いだというふうに私は思います。で、私、行政をやっていきます姿勢といたしましては、日本経済の成長というのは、これは自信を持っていい問題でございますから、かりに産業公害というような問題になりましたら、私は公害の側に立って旗を振るくらいで十分だ、それでちょうどいいところにくるという意識を持っております。  ただ一つだけ申し上げておきたいと思いますのは、そうではありますが、環境基準あるいは排出基準というようなものを一ぺんきめましたら、これは守らなければならないと思います。企業の側で最善努力をすれば守られる基準でなければ、法律あるいは規則をつくりましても、むしろそのものの重さを軽からしめるゆえんでありますから、最善努力をすれば守られるという基準でなければならないと思いますので、そこをあまり理念的に先走りますと、逆にいまのような声が出てくる。これは非常にむずかしいぎりぎりの話でございますけれども現実にやる行政としては、関係者最善努力をすれば守られるというそういう規則をつくっていかなければならないと思います。で、技術進歩認識の深まりによって、その基準は年とともにきつくなっていくことは、これはもう産業の側に覚悟してもらわなければならないことはそのとおりでありますけれども現実行政をいたしますときには、やはり最善努力をすれば守られるという規則を設けていかなければならないと思います。
  15. 足鹿覺

    足鹿覺君 現在の環境基準は守り得るとしておきめになったんでしょう、法律
  16. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一定の年月をおいておるものもございますけれども政府できめましたものはこれは守られ得る、守り得る基準をきめております。
  17. 足鹿覺

    足鹿覺君 そうしますと、若干は業者の中にはそういう感じを持ったものがおるとおっしゃるけれども、これは日本の財界というか、経済産業団体中心機関である経団連関西経済連合会首脳大阪北区の「クラブ関西」で懇談をして、公害問題について意見を交換した結果、いま私が述べたような結論に到達したと、そうすると私は、こういう指導方針日本産業経済を握っておる企業者側が、全産業を代表される大手が、有力な人々が、そういう旗の振り方をされますと、あなたの旗の振り方もだいぶきびしくならぬと、うまく調和がとれぬのじゃないかと思います。みんなじゃないかもしれません、やっておる人もあるかもしれません。しかし日本産業界のリーダーシップをとっている人々首脳会談がそういうことを出すということになりますというと、私は企業優先にややもすればおちいりがちな現体制の中では、よほどの御決意がなければ、私はこの問題は容易に前進しない。現在の環境基準なりその他設けられたものが、年月を要してもこれは達成できるという御確信であることは伺いましたが、だとするならば、こういう声に耳を傾けることなく、よりひとつ進歩的保守党だと国民も評価しておる宮澤さんは、この際もう少し一歩前進した姿勢を示されなければ私はならないはずだと思う。かりがりの時勢をわきまえない人は別として、私はそうでなければ何にもならぬ。こまかいことは事務当局に聞きますが、わが国では昭和四十三年に大気汚染防止法が実施になりましてから、告発はもちろん、命令もまだ一件も出てないと伝えておりますが、事実そうですが、実態はどうですか。
  18. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 前段の問題につきまして申し上げておきますが、一部の産業人の持っております気持ちの中にこういうところはございます。なるほど、もう政府の御方針はわかりました、われわれとしても社会の一単位としてそういう努力をしなければなりませんが、しかし、どうかわれわれがついていける範囲に漸進的にお願いをいたしますというようなことを言われる方はございます。それからまた、それと別に、環境基準はすでに定まっているが、たとえばある地方で立地をしようとするときに、環境基準よりもきつい要求を現地がする場合がございます。これはまあ先々考えればきつくしておいたほうがいいというふうに現地は考えておるわけでしょう。したがって企業の側では、基準で許された範囲ではないかといっても、現地のほうでは、いや、それよりも自分たちはもっときついものを要求する。こういう場合にはいまのような声になりやすい、そのいずれかのような場合が、いまおっしゃいました、私はそういう具体的な事実を存じませんけれども、そんな気持ちになってあらわれてくるのじゃないかと思います。  後段の問題につきましては、政府委員からお答えを申し上げます。
  19. 柴崎芳三

    政府委員(柴崎芳三君) 大気汚染防止法、新しく、旧ばい煙規制法から大気汚染防止法に切りかわりましてからは、改善命令を出した件数はございません。旧ばい煙規制法当時に一件ございます。関連いたしまして、工場排水規制法に関しましては、現在に至るまで二十七件、騒音規制法に関しましては二件という実績がございます。
  20. 足鹿覺

    足鹿覺君 煙突が高くなれば高いところからばい煙を拡散してくる。最近の傾向を見ておりますと、煙突が高くなっていくと、そうするとあなたたちの監視体制では非常に弱いからわからない。こういうことになるとジャーナリズムでも批判をしておりますけれども、現地の人々の苦情もそういうところにある。苦情件数は、公害苦情は東京都とその周辺で四十四年には八千百六十六件、四十三年に比べて二・七倍になっておるわけですね。住民はもう腹が立ってしょうがない。だけれども、それがお上に届かない、こういう気持ちなんですね。いま若干の命令を出した、あるいはその他の措置を講じたとおっしゃいますけれども住民から見ると手ぬるいという感じを持っている。これは間違いないと思うんです、私は。住民感情としてね。それを私は言っているんです。苦情は四十年の比で発生件数を見ると三・五倍になっておる。四十四年と四十五年の大気汚染関係の苦情も、四十年比で三・五倍でありますが、四十四年、四十五年とすれば二倍になっておるのですね。ですから、この特にひどいところの環境に住んでおる住民は、もうどうにもやり切れない気持ちになっておる。だがそれがあなた方の行政の網にかかってこないわけなんです。これがいつまでたっても改善されないというところに私は問題があるのではないかと思うんですが、これに対して、あなたたちは大臣等の指示を受けて、第一線にどういうふうな措置を講じて、これら住民の不満の解消なり汚染の防止なり、騒音の緩和なりに手を打っておいでになりますか。具体的なこういう手を打ってこういう成果があがったという事例がありますか。
  21. 柴崎芳三

    政府委員(柴崎芳三君) 大気汚染防止法に関しましては、現実の規制、監督、たとえば東京都では東京都にやっていただいておるわけでございますが、現に東京都の監視体制というものも相当進歩いたしまして、たとえばSO2につきましては電算機を応用した総合的なSO2の監視制度というものが設けられまして、ある一定の危険値を示した場合には、自動的に発生源である工場の燃料について硫黄の低いものを使わせるというような形にもなっておるわけでございます。  さらに、ことしの冬でございましたが、東京都は公害発生源、特にビルの暖房を中心にいたしまして、やはりあらかじめ予測した結果で、これは危険であるというような信号が出ますと、そのビルで使う硫黄分につきまして相当程度これを下げさせまして、未然にスモッグの発生を防止するというような体制をとってございまして、先生御指摘のように確かにまだ苦情の件数は非常に多く残っておるわけでございますが、一歩一歩環境の保全につきましての対策を進めておるというのが実情でございます。
  22. 足鹿覺

    足鹿覺君 私も何もきめ手を持っているわけでありませんのでね、しろうとですから。これ以上はあまり申し上げませんが、大臣、とにかく疎隔しておったものがだんだん近づいていくというお考えのようですけれども、私はそこまでいっていないじゃないか、一応並行線、場合によっては聞くというような危険性すらもあると、こういうふうに思うんですね。これはひとつ、通産省や厚生省だけでは問題にならないのだということで、そこで公害行政の一元化の問題が出てきて久しいのですが、いろいろな資料を渉猟してみますと、四十一年六月二十四日の本院の附帯決議というものはなかなかよくできております。ここに写しも持っておりますが、参議院の公害対策特別委員会が出したものであります。これはもう与野党一致の権威ある決議文であります。これをたよりにしていろいろなことを調べてみますと、公害行政に対する総合体制の整備を、公害対策推進連絡会議というものが関係各省庁の次官を集めて最初出発した。その後、これが公害対策基本法がきまってから、総理府の中に公害対策会議として総理が主宰をされる機関ができた。一方、学識経験者による審議会は、この十一の官公署のどこにどういうものがあるかはわかりませんが、九つあるんですね。技術に関するものもありましょうし、いろいろ多角的な研究、検討をしておるらしいのですが、あなたのほうの産業構造審議会というものが一つある。それから厚生省生活環境審議会というものが一つある。企画庁に水質審議会というものがある。以下この種のものが九つある。行政官庁は十一にまたがっておる。ですから大臣だけを責め上げて、どこが発生源であるからあなたは責任をとりなさい、そういうむごいことば私は申しておらぬつもりです。やはりこれらの関係省庁なり九つの審議会というものが、どういう総合的な機能を発揮しておるか、こういうことがまず現段階では、私は目標は高いところに置いても、これが十分機能を発揮しておれば、私はこういうことを申し上げません。申し上げませんが、この間も予算委員会で山中総務長官が、災害対策に対しても、自分は現に国務大臣なんだ。しかし防災会議は、以前にまだ総務長官が国務大臣でないときの機構をそのまま踏襲してやるということだけで、こんなことでいざというときに間に合うものではない。新しく出直さなければならないという意味のことを私の質問に答えておりました。総理府にだって幾つこの種のものがありますか、総理府からおいでになっておると思いますが、公害関係の十一の官庁はどこどこか、九つの審議会はどの省にどういうものが設けられており、どういうことを検討しておるか、どういう実績をあげておるか、また、公害対策会議は何回開き何を審議したか、具体的に説明してください。どうもこういうことではだめですね。その事績があったらはっきり教えてください。
  23. 野村正幸

    説明員(野村正幸君) お尋ね公害行政機関のリストでございますけれども、まず総理府の審議室で扱っております。これは全体の連絡調整ということで各省にまたがるもの、あるいは各省に属しないものにつきましてやっているわけでございます。次に法務省、これは人権擁護局でございますが、人権問題を担当しております。大蔵省主計局は、これは当然予算の問題でございます。文部省管理局、これは教育施設につきましていろいろ公害の指示をやっております。それから厚生省、これは公害問題のまた主管庁として薬務局が担当しております。農林省、これは農地局、農政局、畜産局、そういうところがやっております。それから通産省は、立地規制を含めまして、鉱山保安とか石炭問題 それを含めましてやっております。それから工業技術院は研究開発、運輸省は、これは海運局、港湾局、船舶局というところがいろいろ公害を担当しております。それから労働省、安全衛生、これは公害直接といいましても、産業労働を中心とした問題でございますが、公害関係しております。建設省がございますが、これは下水道とか都市計画、そういうもの、あるいは河川の浄化問題というものを担当しております。自治省でございますが、これは地方自治の問題でございます。それからあと防衛施設庁は、これは防衛施設の周辺の問題につきましていろいろ担当しております。それから経済企画庁、これは水の問題を担当しております。科学技術庁でございますが、これは排出基準に関しまして公害問題をやはりいろいろ研究しております。こういう省庁が関係省庁でございます。  それからあと審議会でございますけれども、中央公害対策審議会というのは、公害対策基本法に基づきます公害対策の基本的な施策を総合調整するということでやっております。あと水問題につきましては、経済企画庁の水質審議会、御指摘のとおりでございます。それから厚生省生活環境審議会、それから通産省に、産業構造審議会というものがいろいろ公害問題についてやっております。
  24. 足鹿覺

    足鹿覺君 九つあるでしょう。それはみなお調べになっておりますか。
  25. 野村正幸

    説明員(野村正幸君) いま手元にあとのものはございませんが、至急調べまして御報告申し上げます。
  26. 足鹿覺

    足鹿覺君 事前に私は申し上げているのは、何もあなた方を追及して苦しめようとして質問しているわけではない。だからあらかじめ事前に申し上げておるはずです。あなたのところは、私の連絡が不十分であったかもしれませんが、一番おくれておいでになる、事前に、一ぺんに来てください、みんな関連がありますからと、そう言って本委員会の事務局から御連絡を申し上げている。各省庁は一斉においでになって、ちゃんと定刻にお集まりになった。あなたのところだけ来ない。結局、人手がないからでしょう。何人いらっしゃいますか、この公害関係の審議室は。
  27. 野村正幸

    説明員(野村正幸君) 担当参事官は私でございますが、あと二人ございまして、随時忙しいときには手伝ってもらうのが二人ほどおります。
  28. 足鹿覺

    足鹿覺君 もう一ぺんいまのちょっと……。
  29. 野村正幸

    説明員(野村正幸君) 私が担当参事官でございますが、あと職員が二人ございます。それからいろいろ忙しいときに手伝ってもらうのが二人おります。
  30. 足鹿覺

    足鹿覺君 大臣お聞きのとおりですよ。これでは私は、総合一元化はしばらくおくとしても、総合機能の発揮ということにはならぬじゃないですか。やるならやる、そして少し本気で、一応形だけ整えるということではなしに、私はこれはいまの国民の食うと住むと着ると、これと同様に、私は公害問題は重大な問題になっていると思うのですね。言うならば、これは一省庁設けても差しつかえないくらいの気がしますが、私はそんなやぼなことを申しません。せっかく総理が主宰するこの公害対策会議がたった三人の事務局で——私はこういう機構で仕事をするという考え方は間違いだと思っておりますけれども、あまりにも私は、この手のものを一ぱいおつくりになって、そうして国民の側に向かっては、こういうものをつくっておる、こういうものをやっておるというゼスチュアを示すことが、私は政治の要諦ではないと思う。やはり突っ込んでひとつ問題と取り組んでこれを解決していく。及ばずながらこういう業績をあげました、それであってこそ総理直属の一機関ではありませんか。発生源を、担当の大臣としてこれはひとつ本気を入れてやってもらわなければならぬと思いますが、退席される前にこれだけはお答え願いたいと思います。
  31. 野村正幸

    説明員(野村正幸君) ちょっと申しおくれましたが、総理府につきましての担当者は三名でございますけれども、たとえば中央公害審議会ないしは総理府に置かれております公害対策会議、この庶務をやっておりますのは厚生省環境衛生局でございまして、環境衛生局の庶務課が担当しております。
  32. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 多少私は違った感じを持っているのでございますけれども、つまり、総理府というようなところに公害関係でたくさん人がおりますことは、必ずしも私は必要ではないので、やはり、たとえば、先ほどずっと関係各省の名前を野村参事官があげられましたが、たとえば建設省が下水行政について、あるいは河川について、運輸省がたとえば港湾の汚濁、タンカーの廃棄物等について、通産省は産業行政全般について、おのおの公害という意識を頭に置いて、私ども行政をするということが、これが大事なのでありまして、やはりそれを所管している行政官庁がそういう意識を持って行政をするということが、一番私は行政の効率があがるというふうに考えております。足鹿委員も、公害防止庁をつくれとは言わないがと言われましたが、私もそのとおりだと思いますので、その面だけで行政を一元化いたしますと、実はたいへんなそれが効率的のように見えて、私ども所管の省が所管の仕事について、いわば首根っこを押えるという、ことばは適当でございませんけれども、直接行政をやるほどの効率があがらないのでございます。しょせん、結局、帰するところは、行政をやっている省庁が公害防止についての強い意識を持つ、そしてそれが一つのコオーディネーションといいますか、連絡調整をせられてまとまるということが、私はやはり行政の理想だと思いますので、確かに問題が比較的新しいために、従来なかなかじょうずにまとまらなかったきらいはございますけれども、いまや各省ともこの問題については、かなり神経を使い始めておるということを申し上げておきたいと思います。
  33. 足鹿覺

    足鹿覺君 それでは厚生省と通産当局の主管者に伺いますが、先ほど述べました通産大臣の諮問機関で産業構造審議会の中間報告と、厚生大臣の諮問機関——前には公害審議会といったそうですが、現在は生活環境審議会だということですが、この意見に食い違いがあると伝えられておりますが、どういう点が食い違っておりますか。
  34. 柴崎芳三

    政府委員(柴崎芳三君) いろいろこの二つの審議会は広範な問題を取り上げておりますので、先生御指摘の意見の食い違いという点がよく判断できないわけでございますが、現在の審議の過程におきましては、それぞれの委員で相互に関係する方々もたくさんおりまして、で、中における審議事項は相互に事務局同士で十分打ち合わせをやっております。先生御指摘の矛盾する点という問題は、現在はないのではないかと考えております。
  35. 足鹿覺

    足鹿覺君 私どもの聞いておるのでは、あるそうですが、ないとおっしゃれば、きょうはあえてこれ以上申し上げませんが、じゃ、おもなる、この審議会が一番中核体になっておるようですが、厚生大臣の諮問機関と通産大臣産業構造審議会と、あなた方がどういうふうに問題を一省通じて取り組んでおるか、その二、三について、両方から説明してください。
  36. 柴崎芳三

    政府委員(柴崎芳三君) 産業構造審議会公害部会につきましては、具体的に現在三つの小委員会を設けまして、産業廃棄物の小委員会、費用負担の小委員会、それから自動車小委員会という三つの小委員会を設けまして、それぞれ現在まで、ことしに入りましてから三回ないし四回の会議を重ねまして、できるだけ早い時期に一つの答申を得たいということで努力しておるわけでございますが、たとえば産業廃棄物の問題につきましては、通産省の小委員会でやっておりますのは、実態の把握と、それからこれを処理するための技術的に最も有効な方法は何か、その技術的な方法に基づいた処理体制としてはどういう機関が考えられるかというような点に重点を置いてやっておるわけでございますが、これはいずれも通産省が産業廃棄物の原因者という立場で問題を取り上げまして、この分野の問題を解明いたしました結果を厚生省にまた御連絡いたしまして、将来、厚生省のほうでは、都市の廃棄物も含めまして、いろいろの検討を行なっておるわけでございます。それらを総合して一つ体制をつくりたいということで、相互に緊密な連絡をとっております。  それから、費用負担の問題につきましては、公害対策基本法二十二条の企業者負担すべき範囲なり対象という問題を、主として企業者の側というとちょっと語弊がありますが、産業側から見て、どういう形でどういうぐあいに負担したら最も合理化であろうかというような観点から問題を進めておるわけでございますが、一方、厚生省のほうでは、たとえば公害防止計画全体を遂行するために、国の負担なり地方公共団体の負担なり、それから企業負担、それをどういうぐあいにかみ合わせたら一番順調に進むかという観点で検討されておるわけでございます。したがって、われわれのほうで出しました結論が、厚生省考えておられます公害防止計画の費用負担割合の一部分として有効にこれがかみ合うという形をわれわれは考えております。  自動車小委員会につきましては、厚生省できめられ、厚生省で検討されました環境基準に基づきまして、その環境基準の具体的な規制措置は運輸省でございますが、通産省としては、それを排出する自動車のエンジン構造あるいはガソリンの構成の問題なり、そういった技術的な面に重点を置いて検討を進めておりまして、これもやはり総合的な対策の一環という観点で問題を取り上げております。  以上でございます。
  37. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 私どものほうでございますが、生活環境審議会には、公害部会のほか、水道、清掃等の部会がございます。この公害関連あるものとしましては、公害部会の中に各種専門委員会を設けまして、これまで主として環境基準設定するための作業をやってまいっております。  まず、第一にやりましたのは、硫黄酸化物の環境基準につきまして、専門委員会を設け検討した後に、小委員会をつくりまして、あと公害部会、それから生活環境審議会に参りまして、それをさらに中央公害対策審議会にかけるという形で、あと公害対策会議にかけるという形で決定に運んでおる次第でございます。これは昨年の二月でございますが、その後一酸化炭素につきまして、ことしの二月に環境基準と同じような手続で決定しております。現在においては、浮遊粉塵の専門委員会、それから騒音に関する専門委員会、この二つが環境基準設定のための作業をいたしております。今後さらに、たとえば窒素酸化物、それから炭化水素、オキシダント、こういうものに対します専門委員会を設けるということにもなろうかと思っております。それから、また、清掃の関係では、特に産業廃棄物関係のための小委員会を設けまして、検討を続けておるような状況でございます。  それから、また、戻りますが、先ほど言われました水質環境基準につきましても、厚生省関係で、水道の水源の関係あるいは海水浴場の関係環境基準関連の数値・その方面のことにつきましての専門委員会の報告をもらっておるわけでございます。  それから、先ほど申し上げる機会がございませんでしたが、中央公害対策審議会、公害対策会議、これは私どものほうが事務局をやっておるわけでございまして、中央公害対策審議会は現在まで十一回開かれております。そのうち二回はことしになって開かれております。公害対策会議のほうもほぼ同じ回数でございますが、昨年度で申し上げますと、たとえば硫黄酸化物の環境基準あるいは紛争処理法、それから健康被害救済特別措置法、こういう法律の提案の場合、あるいは公害防止計画の基本方針関係三県に去年の五月に指示しました場合、あるいは公害白書を出しました場合、あるいはことしの環境基準を水と、それから一酸化炭素につきまして設定いたしました場合には、中央公害対策審議会の公害対策部会、こういうぐあいにはかっております。
  38. 足鹿覺

    足鹿覺君 私は相当離れておりますし、わからないですよ、そんな早口でぺらぺらしゃべったって。ぼくのような大きい声してください、だれにもわかるように。事務的にメモをぺらぺら読んで、何という答弁ですか。そういう事務的な態度そのものが、取っ組みの姿勢が悪いということになるのですよ。私の聞いているところでは、環境基準なり発生源者の責任なり費用負担の諸点で、どうも意見が一致してないじゃないか。やはりこれはある程度調整し、立法化していかなければならぬという声すら私は聞いているんですよ。いまあなた方の話を聞いていると、何かあなたはぺらぺら読まれるだけだし、私どもは一々メモすることもできませんし、記録は十日後でなければわかりませんし、よく理解がつかない。環境基準発生源者の責任と費用負担その他の点で食い違いはありませんね。
  39. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 食い違いはないかとおっしゃいますと、これは確かに立場が違いますから、私ども国民の生活を守る、あるいは健康を守る、環境を守る、こういう立場を中心に発言をいたしておりますので、同じ問題につきましては取っ組むポイントが違っていることは事実でございます。それらの点は政府部内で十分調整をいたしました上で結論を出す、かようなことになろうと思います。
  40. 柴崎芳三

    政府委員(柴崎芳三君) 先生御指摘の企業責任でございますが、大臣からもお話しのありましたように、現在の公害に関する企業責任ということは、企業サイドにも非常に徹底してまいりまして、この公害の原因である有害物質を排出するための設備は完全な形で企業責任において整備しなければならないという考え方が非常に浸透してまいりまして、そういう意味では厚生省サイドで考えておられる、要するに原因者の企業にしっかりしろというような考え方が以前よりは非常に密接な形で相互の審議会で結び合わさっておるというぐあいに言えるかと思います。  それから、これとうらはらになる費用負担の問題でございますが、費用負担の問題につきましても、先ほども御説明申し上げましたように、企業として負担すべき範囲はどこかということで、二十二条に基づまして具体的にその範囲と対象を現在検討中でございまして、もちろん範囲と対象をきめる場合には、厚生省で御検討なさっております現在の状況と、通産省が現在検討しておる状況とは、その過程におきましては相当食い違ったものがあろうかと思いますが、しかし、それは基本的な食い違いというよりは、むしろ相互の側面から問題点を摘出いたしまして、それを組み合わせまして、政府としての総合的な考え方をきめるという、審議過程の当然の段取りであるというぐあいに考えておる次第でございます。
  41. 足鹿覺

    足鹿覺君 厚生省に伺いますが、自分たち国民の立場に立って厳重にやっておるのだ、若干の食い違いはあっても調整するのだ、それはけっこうですがね、その前のお話は何のことだかわからないのです。よろしいですか。ここで御答弁になるのは、われわれを通じて国民に向かって話をしておるということで、わかりやすく答弁してください。費用負担のルールは厚生省で目下検討中だということなんですが、国民の側に立って、どういうルールをいま検討して、どういう段階にありますか。
  42. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 私ども実は産業公害防止計画の一番最初の段階としまして、基本計画というのが公害対策基本法で、内閣総理大臣関係都道府県知事に示すことになっておりまして、千葉−市原地区、それから四日市、それから岡山の水島、この三地区につきまして関係の知事に基本方針を示したわけでございます。これの承認を求めて、それぞれの都道府県から間もなく公害防止計画が提出されるわけでございますが、その際にこの費用を企業がどれだけ持つか、国なり地方公共団体がいかにこの費用を負担していくかという点が非常に重要な問題でございますから私どものほうでは、公害防止計画の費用負担をいかにすべきかという見地から、公害防止の費用研究会というものを設けまして、研究をお願いしておるわけでございます。この点通産と違いまして、審議段階でございますので、費用研究会という形で現在検討を進めているわけでございます。研究会としましては、現在まで七回開催をされまして、公害防止計画というものはどういう意味合いのものであるか、これにどういう事業を盛り込むのが公害防止の見地から適当であるか、現在の法律なり、あるいは予算の立て方としまして、費用負担がどういう立て方になっておるか、こういうような点を関係の県なり各省庁、こういうところから意見を聴取しました上で、また現地も見せていただきまして、その意見を交換しながら取りまとめの段階に入っておるわけでございます。したがって、通産省のほうから話のございました公害対策基本法二十二条の規定に基づく費用負担の直接の取っ組み方ではなしに、公害防止計画の費用負担の問題という見地から取っ組みまして、その一環として基本法二十二条の問題につきましてあわせて検討していく、こういう進み方をする、そういうような形になっております。
  43. 足鹿覺

    足鹿覺君 いつごろ結論に達しますか。
  44. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) これは時期の問題、まだはっきり何月ということを申し上げられませんが、公害防止計画も間もなく総理大臣あてに提出されるという段階でございますから、できるだけ急いでやってもらうように、委員の先生方にお願いしておるという段階でございます。
  45. 足鹿覺

    足鹿覺君 要するに問題は公害に対する投資ですね。いわゆるこれをどう見ていくかということになると思うのですよ。それは企業家も、これは一つ企業に伴う経営投資だ、そういう考え方になって自覚してこられれば、これはこれから公害防止事業団の総裁もおいでになってから伺いますが、そういう体制になってくれば、国のほうとしてもこれは見捨てるわけにはいかぬ、こういうかまえにならぬと、ものごとというものは私は進まぬと思うのです。  そこで私が聞いておるところでは、厚生省に伺いますが、東京の例をいま公害部長は御説明になったけれども、東京は姿勢が違うのですよ、よそとは。これはかしらにいただいておる人が違うので、少しよそとは違うのです。都政そのものの考え方がね。どこも東京のようなわけにいくかというと、なかなかそうはいかぬ。そのことはよく知っておいてもらいたい、これ以上は申し上げませんけれども。  そこで各都市の実情を見ますと、行政担当者もおらなければ、技術者もおらぬというところがたくさんあるのですよ。どうして環境基準をオーバーしたものを見分けたり、警告を発したり、いろいろな手続や行政を進めますか。やはりその程度のことは、これは企業者がやることでなくて、国なり地方行政機関がやらなければならぬことですよ。そこまで企業者負担などというようなやぼなことを言っておるのではない。しかし、現実にこういうあいまいなことでどうしてやれますか。この東京周辺の衛星都市だって、そういう東京都の二十三区を離れたらこんな機構はありませんよ。どうしますか。これは今後どういうつもりでいわゆる行政を進め、また、技術的に基準を守っていく技術者を養成し、配属し、そういう人件費はどういうふうにおのおの関係庁で調整をし効率的に運営していきますか。これひとつ答弁してください。
  46. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) ちょっといま手元に資料持ってきたのでございますが、確かに御指摘のように県、あるいはまた市町村段階もちろんでございますが、非常に人間として見ました場合、まだ事務的な十分こなせるだけの陣容整っていないじゃないか、かような点は全くさような状況だと思うわけでございまして、私どもとしましても、できるだけ人員の充実に努力をいたしたいと思っているわけでございます。四十五年度におきましても交付税のほうでは、四十四年度、県の標準団体で八名でございましたのを、四十五年度では十名になっておりますし、市町村のほうでも一名、従来零でございましたのを一名、交付税の積算基礎の中に入っているわけでございます。そのほか保健所に四十四年度から三十三名ずつ、この四十五年度で二年目になるわけでございますが、増員をいたしておりまして、これわずかな数でございますが、そういうような裏づけをしながら、都道府県を指導し、あるいは市町村を指導して、できるだけ人員を確保して裏づけの仕事をやっていけるようにつとめたいと思っているわけでございます。
  47. 足鹿覺

    足鹿覺君 せいぜいそういう一貫的な人員の配置がなければ、基準をつくっても守れませんし、指導もできません。少なくとも国がそういう行政を行なう上の陣容を整備し、地方自治体もこれに準じて進めていけば、企業者側といえども、これはある程度頭を下げる。あるいはこれはある程度協力していかなければならぬという気持ちになるでしょう。片方のほうは法律をつくりっ放しで、たとえば自動車の騒音なんかはあなた方の審議会からは全然オミットされておる。別に道路交通騒音基準をつくろうということで、これはまた別の機関をつくろうとしておるそうですね。そういうことでは、とてもおくれておりますから、一挙に私はやりなさいとは言っておりませんが、少なくとも体系的に行政指導陣容というものを一日も早く整備してもらわなきゃならぬ。この点については大臣の御出席を待ってあとで伺いますが、公害防止事業団理事長さんですか、原さんがおいでになっておりますので、何かきょうは出にくかったそうですが、御無理を願いました。しかし、まあ私ら公害防止事業団というものを知ったのは、うかつな話ですけれども、ごく最近の一年半ぐらい前なんです。それほどまだあなた方の存在というのはあまり世間に知られておりませんが、PRは十分でございますか。初代理事長としての抱負なり、現状に対して不満なら、どこが不満だ、もっとこの辺はこうしてもらいたいとか、いろいろと御抱負があろうと思いますが、何も最初から申し上げません。ある程度事務的には先日事務当局から説明を受けましたし、御抱負をひとつ。
  48. 原文兵衛

    参考人(原文兵衛君) 最初に、私、十二時半から一時半まで、私が講師になっております講演がございまして、昨日のお話なものでございますから、それを変更するわけにいきませんで、おくれて参りまして恐縮でございます。  事業団の存在がまだあまりはっきりしていないじゃないか、PRが足りないんじゃないかというお話でございます。御承知のようにこの事業団は、昭和四十年の十月一日に公害防止事業団法によりまして発足いたしました。四、五年余りたったわけでございます。もちろん私どももいろいろと各都道府県なり、あるいは関係の市なりを通じましてPRもいたしておりますし、また、代理貸しを頼む金融機関等にも集まってもらいまして、いろいろPRもいたしております。また、私自身も地方のあるいは商工会議所であるとか、あるいはいろいろな団体等にも出向きましてPRいたしましたし、印刷物等を通じてやっておりますが、十分でございませんで、おっしゃるように、私がどこかへ参りまして、公害防止事業団というのをやっているというと、一体そんなものいつごろできたのだということを聞かれることも間々あることでございます。努力はいたしてきたつもりでございますが。まだ足りない面もあろうかと思いまして、今後もいろいろと努力をしてまいりたいと思います。また、公害防止事業団の今後の行き方につきまして、いろいろと考えていることもあるのじゃないか……。
  49. 岩間正男

    ○岩間正男君 委員長、だれが何をやっているか、ちっともわからぬ。
  50. 西村尚治

    委員長西村尚治君) いま答弁なさっているのは、公害防止事業団理事長です。
  51. 原文兵衛

    参考人(原文兵衛君) これからの、どういうふうに考えているかということでございますが、もちろん、公害問題というものが非常に大きな問題でもありますし、また、公害対策は真剣に、しかも実際に進めていかなければならないものだと私ども考えている次第でございまして、厚生省、通産省が私どもの監督官庁でございます。監督官庁の御指導をいただきまして、これからいままでで足りない面を反省しながら十分な努力をして、公害対策を進めるために少しでもお役に立ちたいと思っております。具体的にこれはこうということにつきましては、それぞれ各予算の編成等を通じまして、また、あるいは必要が起きたとき随時に監督官庁のほうにお願いしながら進めているわけでございます。おかげさまで、まだ不足のうらみは十分ございますけれども、事業も大体軌道に乗ってまいりまして、事業費の消化も最近ではほぼ順調にいきつつあるというふうに考えているわけでございます。  何かいろいろと具体的な問題で御質問があれば、またお答え申し上げたいと思いますが、そういう意味合いにおきまして、私ども公害対策の一端をになう者として、今後もできるだけの努力はしてまいりたいというふうに考えております。御質問の意に沿えないかと思いますが、一応以上お答え申し上げます。
  52. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 岩間君のお話もございますので、ちょっと参考人でおいでになっている方を御紹介申し上げます。  こちら側はおわかりになっておりますね、役所関係——それじゃ申し上げましょう。通商産業省の高橋官房長です。その次が通産省の柴崎立地公害部長、その次が厚生省の城戸公害部長、先ほど答弁なさいましたのが公害防止事業団理事長理事長でございます。次が同公団の理事鈴村理事、次が古沢理事、一応御紹介申し上げます。よろしゅうございますか。
  53. 足鹿覺

    足鹿覺君 原さんに二、三お尋ねをいたしますが、いま質問せい、そうすれば答えるということで、いま積極的に御抱負を聞けなかったこと遺憾に思います。そんな何か御講演に忙殺されておられたのですか、まあよろしいです。そこで私も勉強不足でありますので、的を射て言えるかどうかわかりませんが、適用の限界の線の引き方は、私はあまりおもしろくない点がある。つまり四十年十月以前の施設の更新というものに対して適用するのだという、その後のやつは別だという、この線の引き方は私はちょっとおかしいと思うのですね。それは一つの転換期でありますから、どこかで線を引かなければならぬというお考えのようですけれども、これは通産当局もお考えにならなければならないと思う。実例を私は一、二陳情を受けまして、それで行かしたら、そういう点が気づいたわけなんですね。これは是正をされることが必要じゃないかと思いますが、いかがですか。
  54. 原文兵衛

    参考人(原文兵衛君) 私ども事業団が設立されましてから、やはりいま御質問の四十年六月を区切りといたしまして、それ以前からある工場に適用する、それ以後のものについて適用されないというものに対しまして、実際問題として私ども非常に矛盾を感じ、またやりにくい面も多くございます。私どもこの適用の時期を撤廃していただくということで、監督官庁を通じて監督官庁のほうにもお願い申し上げておるところであります。これからもまたお願いしていきたいというふうに思います。  御承知のように公害防止事業団法をつくり、また、それに伴っての業務方法書もそれぞれ監督官庁の承認を得てつくることになっております。これからまたいろいろとお願いしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  55. 足鹿覺

    足鹿覺君 明確な御要望が出ましたので、さっそく、通産大臣がきょうお見えになりますから、御答弁を願うことにしたいと思います。  それから、事業概要を拝見いたしまして、この事業内容そのものが、私は造成建設事業というもの、それから融資事業というものに大別されておる。これは大企業と中小企業の場合に資金の貸付については金利差を設けて、中小企業を守っておるということはけっこうだと思いますが、実質的にはやはり大企業のほうに資金量が流れ過ぎる傾向はありはしませんか。さらに問題は、やはり中小企業が最初はたんぼの中に建っておった。都市の膨張のために周囲に家が建った。そこで公害だ騒音だと、こういうことになりがちなんですね。ところが金がない、五分五厘のようですが、共同公害防止というものに重点が置いてある。ところが個別融資というものは、これよりも金利が五厘高い。大企業は共同も個別もともに七分ということになっておりますね。これはなぜこういう金利になるかというと、ほかの金利に比べると確かに低い。低いけれども、唯一の国が、ろくな対策もまだ講じておらないから、これに依存をしていく傾向は今後強まってこようと思う。金利引き下げの財源が、この資料によりますと、六千七百七十万五千円しか財源となるべき政府補助金がないというわけですが、これでよろしいでしょうか。私は、PRも足りませんし、それからそうしてわっと押しかけられたら困るでしょうから、徐々に仕事をなさるおつもりのようだと見受けますが、資金需要なり、いわゆる需要に対して充足率はどういうふうになっておりますか、その点について御所見はどうですか。
  56. 原文兵衛

    参考人(原文兵衛君) 私どものほうは大企業に重く中小企業に軽くというような考えはもちろん毛頭持ってございません。ただ実績から申しますと、貸し付け事業では、確かに今までの合計を見ますと、件数におきまして大企業が八十八件、中小企業が三十六件ということになっております。これは私ども申し込みに応じまして貸し付けをしているわけでございまして、実際問題で大企業の申し込みは非常に多うございまして、私どもももちろん、中小企業が来たら、中小企業はこれは苦しいのだから、少しでも早くしてやりたいという考えは持っておりますし、きのうも実は役員会で、申し込み順がいろいろあるけれども、必要な中小企業についてはできるだけ早くやるようにということを申しておる次第でございます。ただ現実問題としては申し込み件数が少ないのでありまして、私どものほうで大企業のほうに重点を置いたりしているということは毛頭ございません。  ただ、貸し付け事業については以上でございますけれども、その建設事業のほうの、たとえばいま例を引いてお話しのございました、畑の中に鉄工場なら鉄工場がある。そのまわりに今度住宅がたくさんできて、住宅が非常に騒音でうるさいからということで、そうして、先に鉄工場があったにしても、そのために公害問題が起きている、騒音公害が起きているわけですから、その対策としては引っ越さざるを得ないというようなことが非常に多いわけでございます。それで私どもの建設事業の三号業務として、そういうような工場を共同でもって移転させる、いわゆる工場の移転団地の造成というようなものもやっております。また移転できないような工場について、公害の発生しない作業場だけのアパートを、工場アパートをつくるというような事業もやっております。そういう建設事業のほうでは、ほとんどの対象が中小企業ということでやっておるわけでございます。  それから利率のことでございますが、これから公害防止施設をどんどんつくらせて、どんどん公害対策を推進するについて、もっと金利が安くなければならないのじゃないかという御質問でございますが、私どももそういうふうに考えまして、いろいろといままでも監督官庁等にもお願いしてまいったわけでございます。御承知のようにこの事業団が発足しました昭和四十年の十月に、一応示されました利率が中小企業七分、大企業七分五厘ということでございましたが、その後私ども公害防止施設という特殊なものであるからということで、金利の引き下げについて関係御当局にいろいろとお願いいたしまして、中小企業につきましては、共同公害防止施設はさらに安いのですが、一般的にいいまして、中小企業につきましては当初示された七分から六分までに、一分引き下げていただきました。大企業につきましては七分五厘から七分まで、五厘引き下げていただきました。特に中小企業について特別な配慮をするというような気持ちもございまして、そこまでやっていただきましたが、その後におきましても、私ども事業団といたしましても、さらに金利をなるべく安くしてもらいたい、そのためには、資金運用部の資金を六分五厘で借りてくるわけですから、逆ざやになりますので、結局利子補給金というものを交付金でいただく、あるいはまた無利子の出資金をいただく、両方ともいまこの金利の逆ざやに充てていますが、そういうことをさらにそのワクを拡大していただかなければならないので、毎年予算のつどお願いしておるわけでございますが、今後もさらに金利の引き下げということについてはいろいろとお願いをしていきたい、そのための逆ざやの補てんについてもお願いしていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  57. 足鹿覺

    足鹿覺君 通産省の官房長に。いまお聞きのとおりの御答弁があったのですが、私は金額にこだわるわけじゃありませんけれども、金利引き下げの財源となる政府補給金が六千七百七十万五千円では、これはやりにくいでしょう。たった一億円の融資の金利引き下げの補給金も出せないようなことでは、防止事業団だって、はなはだ仕事がやりにくいと思うのですけれども、思い切ってこういうことには低利なり、あるいは他の便宜の措置を講じて、そうして企業側のほうも、そこまで国が考えてくれるならば、ひとつふんどしを締め直して公害問題に取り組まなければ済まぬ、こういう気持ちを、やはり呼吸が合わなければものごとは進まぬじゃないですか。お聞きになっておって、大臣おいでになりませんし、十分ほどだというのに大臣まだ来ておりませんので、あなたかわってひとついまの意見について答弁してください。
  58. 高橋淑郎

    政府委員(高橋淑郎君) いま御意見を賜わりましたが、できるだけ努力をいたしまして、バランスがとれるように、いわゆる企業者側負担と、それから広い意味の国の負担のバランスがとれるように努力いたしたいと思います。
  59. 足鹿覺

    足鹿覺君 いや、バランスはとれなさ過ぎるんですよ、これは。およそ公害防止事業団と天下に銘打って出たからには、金利補給に一億円のはした金も出さない。六千万円や六千何万円ということでいいはずはないじゃないですか。第一、資金ベースにしても、四十三年六十六億円、四十四年百二十六億円、四十五年に百六十四億円とふえているんです。契約ベースにしてみても、四十三年九十億円、四十四年百六十億円、四十五年二百十億円とふえておるんですからね。ですから十分私はもう少し金利をダウンして、やはり国の誠意を認めさせれば、企業者といえどもやはりお互い国民ですから、これだけ公害問題がやかましいときですから本気になるんじゃないかと思うんです。何しろゼスチュアばかりで、総理をはじめそういう傾向がありますが、国会の答弁はまことにうまいことを言う。済んだらあまりやらぬ。そういうことじゃこの内閣委員会では困りますからね。私は追及しだしたら、とことんまでその実績を見通す覚悟でおりますから、バランスをとるなんて、そんなたよりないことを言わないで、あなたが答弁しにくかったら公害部長かわって答弁してください。
  60. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) これは通産省と私どもの共管でございまして、予算折衝に私ども当たっておりますので、一音申し上げますが、実はこの金利の問題につきましては、二年間にわたりまして引き続いて引き下げをやりました関係もございまして、実は四十五年度では主として、事業量をいかに伸ばすかというところに重点をしぼってやったわけでございます。  それから貸付条件も、いろいろ事業団からも御要望がございまして、先ほどおっしゃいました個別貸し付けの場合は、法施行以前の設置工場、事業所に限るという制約もその一つでございます。こういうものにつきましては、したがって予算折衝の段階で、またあとで大蔵と話し合うということで一応別れまして、六月ごろこの点につきましてのセットをしたい、こういうふうに考えておりまして、実はそこ、いろいろの要望がございましたので、金利の点につきましては二年引き続いて下げ、三年も続けるというのは例もないし、四十五年度としてはむしろ金利よりはもっとほかのものに重点を置いていきたいという事業団の要望もございましたので、両省協議いたしまして、そういうようにまいった次第でございます。今後も大いに努力したいと思います。
  61. 足鹿覺

    足鹿覺君 いまの原さんのお話しのように、四十年以前のものでないといかぬというのは、やりにくいということですが、その点改めますか。
  62. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) これはいろんないきさつがあってかようになったと思います。特に従来から実施していたものは、その後いろいろきびしい条件がかかってくる、その面に資金的なめんどうを見なければならないだろう、こういう考え方も他方その一部にあったんじゃないかと思います。これは、ところが現在の段階では、先ほど来話題になっておりました環境基準にしましても、たとえば五年目標ということになっております場合、われわれとしましては、この二月に一度環境基準排出規制をきつくしまして、それから四十六年度にさらに硫黄酸化物についての排出規制をきびしくする、四十八年度にさらにきつくしまして、初めて環境基準が達成できる、そういうことでございますから、どこの段階でつくりました企業でも、あとあと相当きびしくなるということになりますので、いわば、すでにもうでき上がった形において、その時点において断面を引きまして、その以前のものはめんどう見るが、その後のものは全部自前でやれという考え方は若干ズレがあるんじゃないかと、かように思っております。今後はやはりこういうある時点でその前のものだけという考え方でなしに、個別の融資につきましてもめんどう見ていくことが必要じゃなかろうか、そういうことが公害防止に関します事業を伸ばしていくゆえんじゃないかと考えておるわけでございまして、今後大蔵当局と十分協議して、実現に努力したいと思っております。
  63. 柴崎芳三

    政府委員(柴崎芳三君) ただいま城戸公害部長から御説明申し上げました方針につきましては、通産省としても全く同意見でございまして、現在よく出ております例といたしましては、公害の規制が強まるにつれまして、現在の工場で規制設備をつくろうとしても、なかなか場所がないためにできない。したがってその工場は移転をして、新しい公害設備を持った工場につくりかえるというようなケースが間々あるわけでございます。こういうものが現在適用期限の問題で対象外になっているという非常に大きな矛盾もございます。そういう具体的な例を十分そろえまして、この五月の末か、あるいは六月ころにかけまして、大蔵当局といろいろお話し合いしたいということで、いろいろ現在データをそろえておる最中であります。
  64. 足鹿覺

    足鹿覺君 これは原さんにお伺いいたしますが、いまあなたの御要望になったことは、こちらのほうはこれから元気出してやれと言っておる。大臣が見えたので確認します。いろいろこの説明を聞いてみまして私が感じますことは、私どもも国の政治に参画しておりながら、地元のどの水域が指定地域になっているのかわからなかった。非常に全国にばらついておる。ばらつきが大きい。ぼくは日本海の山陰の一隅におりますけれども、どっちも指定水域だということを——やはりこういうことは全国民なり企業者なり、一般の者によく知らせていく、そうしてこの水域は公害防止事業団の事業対象地域になるのだと知らせると同時に、そういう水域は大体そういう区別はもうやめてしまう、こういうふうにいくべきではないかと思うのです、一ぺんにできなくても。これが一つ。  それから、いまあなた方は、重点的な地域に何か事業所なり出先機関を持っていらっしゃいますか、御不便はないでしょうか。私はですね、いまの政府がやっておる公害未然防止対策事業あるいは防除装置対策なり、ある一つの根幹に触れた仕事はあまり知りませんが、いろいろ今度質問をするのに乏しい勉強をしてみて、やはりあなた方の事業は、これは非常に将来性があるし、実効があがる。私は行政効果の見える仕事だと思います。  したがって、きょうは原さんの大きな構想を私は期待しておったんですが、そういう意味で地方自治体関係とも連絡をとって、この種の政策というものはとれないものでしょうか。私は現在中小企業関係で、木工の団地だとか鉄工団地というものを、私もずいぶんお世話をいたして地元につくって、そうして町工場やその他でやかましい騒音のあるものを、この法律のできる前にそのむずかしい土地条件も解決してあげてやった事例をたくさん知っております、私自身が。そういう関係から見て、こういう新しい公団ができたということになりまして、制限も撤廃されるということになりますと、なかなか仕事のしがいがあり、効果があがると私は思う。これは大臣お尋ねするのがあたりまえなんですけれども、あなた方が何といっても実際の責任者ですから、御希望のないところはいたし方ありませんが、もっとスケールを大きく持って、そうして重点的に出先機関も持って、そうして実効のあがる行政を求めておいでになりますかどうか。この二つ。
  65. 原文兵衛

    参考人(原文兵衛君) 順を追ってお答え申し上げたいと思いますが、まず指定地域というものが非常にわかりにくい。指定地域、非常にわかりにくいということでございます。まことに私自身もそのとおりに感じております。事業団ができましたときに、この融資の対象になる指定地域というのは非常に少のうございまして、たしか四地域だけだったと思います。その後いろいろと、それでは公害対策を全国的に進める上において非常に不都合が多いので、地域を拡張していただくように、いろいろと監督官庁にお願い申し上げまして、その後指定地域だけでなく、指定の前段階としての調査地域あるいは調査予定地域というようなところまで事業の対象地域をふやしていただいたわけでございます。それにいたしましても、確かにわかりにくい面もあるし、また、これで漏れる地域もあるわけでございまして、私どもといたしましては、今後一ぺんにはいかないかもしれませんけれども、やはり公害対策というものを全国的に進める上におきまして、こういう地域指定というようなものをなくしていただく方向にいろいろとお願いしていきたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、この公害防止事業団は将来は大きくなるべきだし、また、しなくてはいけないのだということに関連して、出発機関等はどうなっておるのか、それに対して不便を感じているのじゃないかという御質問かと思いますが、現在実は出先機関といたしましては、大阪に連絡所を認められているだけでございまして、ほかには支所等はございません。ただ、ある事業をいたしますときに、たとえば緩衝緑地をつくるとかというようなときに、その緑地が、用地買収の段階から全部完成するまでの間は、建設事務所として、一つの出先機関でございますが、そこにその県なり市なりから出向していただきまして、出先機関的な建設事務所をつくっているという例はございますが、一般的な出先機関としての支所等はございません。ただ私ども、それじゃいままでたいへん不便を感じていたかというと、もちろんそれは私どもが不便を感じるというだけでなく、公害防止施設をつくろうとしていろいろ相談したいというような企業とか、そういう事業団を利用しようという側において御不便を感じたという点は確かにあろうかと思います。ただ、私どもは融資をするにいたしましても、また造成事業で造成するにいたしましても、何といいましても、公害対策というものは県なり市という地域全体を見て、そこでもってだんだん重点的にやっていくべきものだというふうに思っております。そういう意味で、県なり関係市との連絡、これは非常によくやっております。また、県や関係市を抜きにして、こちらだけでやるということはしないように、これからもしないようにしていきたいと思っております。  しかし、それにいたしましても、当然のことに公害対策というものがもっと大々的に進められなければなりませんし、その一環としての事業団の事業をもっと大幅に進めていかなければならないということで、今後必要に応じてそういう支所というようなものもつくって、さらに事業をやりやすく、また拡大していくために、いろいろとお願いをしたり、努力をしていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  66. 足鹿覺

    足鹿覺君 ちょっとここで一区切りつけますために、いまの二点について、大臣がちょっと前にすぐ来るということだったけれども、帰ってこないね。しかたがありませんから、厚生、通産両省から、いまの二点について、来年度あたりにはいままでの私の質問に答えられた原さんの点については、前段についてはあなた方も意見が一致しておるが、後段の点についてはどうですか、来年あたりから踏み切りますか、事務当局としてですよ。これはあなた方がそう言ったじゃないかと、あとであなた方を決して責めやしませんよ。大臣いなくても、だいじょうぶですよ、その点は。安心して御答弁ください。
  67. 西村尚治

    委員長西村尚治君) それでは防衛庁長官を待たしておりますので、できるだけ簡潔に願います。
  68. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) ただいまの第一点のほうの業務対象地域のほうの拡大の点でございますが、これにつきまして私ども、もともと非常にそういうことを念願しておるものでございまして、今後とも努力してまいりたいと思います。  それから、あとの、地方にどういう形で支所等を持つかという問題でございますが、この点につきましては、いろいろの問題もございますので、今後事業団のほうによく打ち合わせして、検討していきたいと思います。
  69. 柴崎芳三

    政府委員(柴崎芳三君) いまの城戸部長方針にわれわれも賛成でございますが、特に業務地域の拡大につきましては、公害問題の現在の状況から考えまして、やはり公害の発生するところは、地域として問題がなくても、やはり個々の点として問題がある場合が多分にあるわけでございますので、公害防止事業団の仕事を当然その方面にも向けるべきではないかという基本的な考え方を持っております。
  70. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 本案の質疑はしばらく後刻に譲ります。  原参考人ありがとうございました。     —————————————
  71. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 国の防衛に関する調査を議題といたします。  御質疑のある方は御発言を願います。
  72. 矢山有作

    ○矢山有作君 それじゃお尋ねをいたします。  実は二十一日の日に、岡山県下にあります日本原というところの自衛隊の演習場の拡張問題に関連をいたしまして、実弾射撃訓練が行なわれております。そこで、その問題だけをめぐりまして急に防衛庁長官においでをいただいてお尋ねをするということで、きょうおいでをいただいたわけですが、この問題だけでお尋ねをしたいと思いますので、まず最初に、おそらく防衛庁のほうでも、そのときの事実経過というものはつかんでおられるはずですから、それを御報告をいただいて、それからお尋ねをいたします。
  73. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 従来日本原演習場は、もっぱら西地区のみの短距離射撃を実施してまいりましたが、今回は、今後当演習場の全面使用をはかる目的のもとに、特科部隊による東地区への実弾射撃を実施するための演習を行なったものでございます。  すなわち、四月十八日から六日間、第十三特科連隊第二大隊七十人により、一〇五ミリ榴弾砲の実弾射撃を行なうこととし、その計画概要については四月十一日に関係町長に通報してあります。  この計画に基づきまして、四月二十一日十二時三十一分から三十七分の六分間に、榴弾三発を射程三千八百メートルで西地区から東地区の弾着地域に射撃したものでございます。  砲弾は、弾着区域、縦二百メートル、横百メートルの中央の目標に対し、十メートル以内に三発とも命中、その破片は、縦三十五メートル、横七十メートルに散布したにとどまりました。  なお、射撃にあたっては、危険防止のため、弾着地域をほぼ中心として東西約四百五十メートル、南北約六百メートルの危険地域を設定した上、さらにその外側に立ち入り禁止地域を設ける等、安全に万全を期して実施したものであります。  当庁並びに警察の調査によりましても、実射並びに警備面での負傷者は一人も出ておりません。  すなわち、今回の日本原演習場東地区への実射にあたりましては、あらかじめ午前六時から空陸両面から関係区域の捜査を行ないまして、その結果、八時四十五分、五名、九時から十時四十五分までの間、六名、他の一名は、危険区域外の山奥に逃げ込んだのでございますが、二十一時二十分ごろ、演習場外の部落内で発見されました。十時三十分、九名を下山させるとともに、十一時十分、八名を着弾地で発見しましたので、これを背後地観測点に同行し、射撃終了後、安全を確認した上で下山させました。また、十一時ごろ危険区域内に入っていた学生七名も場外に退出したことを確認しております。  なお、他の数名が背後地観測点より下山した八名と相前後しまして、十三時二十分過ぎに那美池付近に下山した際、危険区域に入っていたと述べ、他の者が、このうちの一人が負傷したのじゃないかと述べましたが、危険区域内にいたことは確認されず、負傷したと述べたことについても、射撃によるものであるとの申し出ではございません。したがって、防衛庁としては、射撃による安全確認の措置を完全に実施したものでございまして、さらに、射撃によって人に傷害を与えた事実は全くないことを確認しております。妨害の排除の措置につきましても、説得により平穏裏に下山または背後地観測点に誘導しており、擦過傷を負ったと述べている者については、少なくとも砲弾の破片等による負傷ではないことは明らかでございます。  なお、当日、午前六時から、自衛官約六百五十名、警察官約三百六十名をもって危険地域及びその周辺を入念に捜索し、人員が存在しないことを確認した後、さらに射撃直前の午前十一時から念のため約一個中隊をもって危険区域内を数回にわたり精査するとともに、午前六時から射撃終了までの間、演習場内約三十一カ所に監視を設け、一カ所当たり自衛官三、四名を配置して警戒に当たったほか、ヘリコペター四機をもって空中からも捜査、警戒を行ないました。また、十二時三十分から十二時三十七分までの一〇五ミリりゅう弾砲による実射の後、十三時から十五時三十分までの間、ヘリコプター二機をもって弾着地周辺を点検、十四時三十分から十五時四十分までの間、約百六十名をもって地上点検を行ないましたが、全く異状を認めませんでした。さらに十四時四十分ごろ、地元住民一名が行くえ不明となっているとの地元住民からの申し立てにより、十五時四十五分から約三百二十名をもって関係住民と協力して山狩りを行ないましたが、約六時間後の二十一時二十分、その一名はすでに下出しており、その居場所が地元消防団員によって発見されたとの報告を受けまして、二十一時三十分帰隊したわけであります。  以上のとおり、射撃の事前事後の警備措置は遺漏はなかったと確信しております。
  74. 矢山有作

    ○矢山有作君 あなたのほうに来ておる報告は、なるほど事前事後の措置に遺漏がなかったという報告が来ておるわけですが、私のほうが現地と連絡をして調べたところによると、かなりの相違がありますので、そういう点について私はお尋ねしたいのです。  まず最初に、現地の状況からお尋ねをしたいわけですが、現地では、ちょうど十一時ごろに、射撃に反対をしておる住民、その代表である奥という町会議員がおります。これがちょうど、那美池というのがあるのを御存じだろうと思いますが、その堤防上で町長その他と会いまして、地区の住民が現在着弾地付近にすわり込みをやっているが、これが完全に退避した後でなければ射撃をやってはならぬということで強い申し入れをいたしましたが、それに対して町長は、一人でも地域の住民がその着弾地周辺におる場合は自衛隊には射撃はさせませんという確約をしております。それからしばらくたちまして、現地に行っておった報道関係者の人から、どうもいよいよ射撃に入るらしいという知らせがありました。そこで、急を要することでありますので、奥という町会議員は、那美池堤防上にある自衛隊の関係あるいは町長等がおる方向に向かいましてスピーカーでもって、ほんとうにこれから射撃をするのか、するとするならば、まだ帰っておらない住民が十数名着弾地周辺に残っておるから、したがっていますぐ射撃をやることはやめてくれという申し入れをしております。ところが、それに対してものの十分を経過しないうちに射撃が始まったというのが実情です。で、自衛隊のほうでは、その奥町会議員からのスピーカーによる警告といいますか、呼びかけがあったときに、ヘリコプターを飛ばして立ちのきを勧告した模様であります。しかしながら、ヘリコプターによる立ちのき勧告後五分程度で実弾射撃が行なわれたという事実があるわけです。そういうような五分程度の短時間のうちではたして着弾地周辺にすわり込んでおる人々が退避する時間的な余裕があるかどうかということは、これは常識の問題です。少なくとも十五分なり二十分はかかるはずです。そうすれば、私は自衛隊の側は奥町会議員の警告によって周辺に住民が残っておるという疑いが濃厚であるのにかかわらず射撃をしたというふうに断定せざるを得ぬのです。そこに大きな状況の食い違いがあります。もし着弾地周辺にたくさんの地域住民が残っておるという警告を無視して実弾射撃をやったとするならば、それは人命軽視もはなはだしいと言わなければならぬ。その点についてあなたは的確な情報をつかんでおられるのですか、ただ一方的に自分たち責任をかぶりたくないと思っておる現地の自衛隊の幹部からの報告を聴取しただけで何らの誤りがなかったと言い切るあなたに自信がありますか、その点だいぶ大きな開きがあるということを私は申し上げて、あなたの考えを伺っておきたい。
  75. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題につきましては、新聞に報道されましてから、直ちに派遣いたしまして実情を調査させて、いま朗読いたしましたのがその調査報告でございます。この内容を見てみますと、現地では百メーター、二百メーターの着弾地点を着弾地点として、ここには絶対人は入れない、そのまわりにさらに危険区域というのを四百メータ、六百メータにわたって取り囲んで、その外側にさらに立ち入り禁止区域というのを設けて、三段がまえで人を入れないように努力をして、そして相当な兵力を動員して中を全部模索させ、その上ヘリコプターで上から見て、そしてその着弾地点の危険地域にはいないということを確認して撃ったと、こういうことであります。したがいまして、おそらく一〇五ミリのりゅう弾砲ですから相当なうねりはあったろうと思います。それから、弾着はきわめて正確で、十メーターないし二十メーターの弾着目標にくっついておるわけでございますから、危険という面は全然なかったと思います。しかし、そういううねりやら何かで、あるいは遠くにいた人に恐怖感を与えたかもしれません。しかし、そういう安全確認の点は十分に行ないまして試射をしたと考えます。
  76. 矢山有作

    ○矢山有作君 私は現地の地形その他を全部知っておるから言っておるのですがね。なるほど自衛隊としては、実弾射撃をする場合に、着弾地周辺にすわり込みをやられたのではかなわぬから、それはそのくらいの措置をとるのはあたりまえでしょう。ところが、現実に着弾地の周辺二百メーターくらいのところに約五十名——正確な人数は四十九名です、この者がすわり込みをしておった。これは現地の皆さんの数字とあなたがおっしゃった数字との間に多少の違いがありますが、自衛隊なり機動隊で排除された人はあります。ところが、少なくとも十数名の者が残っておったということは事実なんです。しかも、どういうような排除のしかたをやったかというと、四十数名の者が入っておる。ところが、自衛隊なり機動隊の皆さんの排除のしかたというのは、その演習地の周辺なり着弾地の周辺にあるその地域の道路を歩いておるだけですよ。たまたま道路におった連中が見つかって、そして連れ出された。少なくとも射撃に反対をして決死の覚悟ですわり込みをする人間が、道路上にだけ、簡単に見つかるところにだけすわり込んで、そしてたやすく排除されるというような、そういう状況ではないということです。あの地帯はたくさんの灌木が茂っております。そういうところにたくさんの人間がすわり込みをしておる。たまたま道路の周辺におった人々が、機動隊や自衛隊の諸君が道路をへめぐって、だれかおらぬだろうかと言ってさがすものだから、それにたまたまひっかかっておる人間が排除されただけです。残りの人間はたくさんおったわけです。したがって、その状況を現場における反対派の指揮者として奥という議員が掌握しておって、十数名の者がまだ残っておる、出てきておらぬ、ほんとうに射撃をするんならたいへんだから待てと言ったのを無視して、五分ないし十分ぐらいの後に実弾射撃をやっておる。射撃後十一人の人間が青くなって飛び出してきておるわけです。この事実をあなたは知らなきゃだめだ。しかも、灌木の茂っておるところで、ヘリコプターを飛ばして上からながめただけで見つかりますか。機動隊や自衛隊の諸君は道路の周辺をうろうろさがしただけで、それで安全排除したという自信が持てますか。あなたがそういう自信を持つならばかってだ。しかしながら、少なくとも人命に危険があるという時点で、いよいよ射撃が始まるかもしれぬという時点で、責任者がわざわざ警告しているじゃありませんか。そんなことだったらたいへんだ。その警告を無視して射撃をしておるところに問題がある。何も決死の覚悟ですわり込んでおる人が危険のないところにすわり込んだのでは、これは射撃を阻止するだけの効果はないんですよ。危険のあるところに身を挺してすわり込んで射撃をさせまいとするところに効果があるんですよ。これは常識じゃありませんか。その事実認識があなたにないということです。私は現場から取った逐一の情報を見て、命がけで阻止するのにからだを張っておる人たちがうそを言っているとは思われない。たとえうそを言っておると仮定しても、最後のどたんばにそういう十何名かの者が残っておるんだから撃ってはいけないと言ったならば、それに対して慎重にかまえるのは自衛隊の立場じゃありませんか。それとも自衛隊は、国民を敵に回して、国民の生命の危険を顧みずに射撃をしてもかまわぬという立場に立つのですか、どっちなんですか。(「それはオーバーだよ」と呼ぶ者あり)何がオーバーだ。
  77. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  78. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  79. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 人命尊重という点は、全く同感でございます。たとえ反対者であっても、国民として、自衛隊は最大限人命を尊重した措置はとらなければいかぬと思います。それで、報告によりますと、ともかく弾着地点については百メートル、二百メートルの範囲内で精査をしておる。それからそのまわりの危険区域は四百メートル、六百メートルの範囲内において同じように三十一カ所にわたり監視点をつくって、そうして中にいないか確認しておる。そういうようなかなり精度の入った確認をした上で発射したということでありますので、それは町会議員の方か市会議員の方か、そう言ったことがあるかもしれませんが、現場におきましては人はいなかった、そういう確信のもとに発射を行なったと私は考えます。
  80. 矢山有作

    ○矢山有作君 それは長官、現場に人がいなかったんではなしに、現場に人がいたかもしらぬのだが、確認が不行き届きじゃなかったのですか。私は、これから射撃をしようというどん詰まりの時点で、もし警告どおりにその周辺に人がおったとしたならば、これは殺傷事件が起こるのですよ。そうすると、少なくともそこでもう一応慎重な態度をとるというのが自衛隊のとるべき立場じゃないのですか。万が一の危険というものを考えないで射撃をしていいということがありますか。たまたま犠牲者が出ておらないからよかった。もしここで犠牲者が出ておったら、どうするのですか。これはあなたは言いわけがつきませんよ。私は、人間はうそを言うやつが多い、しかしながら生死のどたんばに来たときにうそを言うような者はおらぬと思う。そういう切迫した現地の空気というのは、いまともかくたまが飛んでくるというその瞬間における切迫した空気というものは、これは私はたいへんなものだと思う。そのときにわざわざ警告しておるんだから、だからあなたは確認できなかったというんではない、確認したがおらなかったというんだが、人がおったかもしれぬですよ。現に射撃直後十二人の者が——そのうちの十一人だ、十二人の中の一人は行くえ不明になったんだから、夜中近くまで。十一人が飛び出してきた、青くなって。ということは、私は、危険区域にやはりすわり込みをやって、機動隊や自衛隊やあるいはヘリコプターの目にとまらなかった、排除されなかった人がおったということを裏づけるんじゃないかというんです。これは私どもまだ現地に調査に参ります。確認をいたしますが、私は自衛隊にはそれだけのやはり慎重な行動があってほしいと思う。  ところで、私は伺いますが、長官は四十年の十月に、日本原の駐とん地作業隊長と地元代表との間に取りかわされておる日本原演習場使用協定、これには中部方面総監と呉防衛施設局長と岡山県知事とが立ち会い人になっておりますが、この内容は御承知ですか。
  81. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私よく存じませんので、政府委員より答弁させます。
  82. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 日本原には、昭和三十六年に現在の戦車部隊が配置される際にいろいろ問題があったわけでございますが、その後、戦車部隊を配置するにあたりまして、昭和四十年に至りまして、演習場の使用につきまして、地元の奈義町長、勝北町長、県知事、防衛庁としましては現地の名古屋防衛施設局長並びに西部方面総監の間で、演習場使用に関する協定が結ばれております。
  83. 矢山有作

    ○矢山有作君 その第五条のただし書きの文句を覚えておいでになりますか。
  84. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 第五条におきましては、いま資料を持っておりませんが、演習場を全面使用する場合におきましては、十分地元と協議しまして、協議が整ったところで実弾演習を行なうというような申し合わせになっておったと思います。
  85. 矢山有作

    ○矢山有作君 そういうふうになっておりますね。それで、私は実は、この実弾演習の通告があったという知らせを受けまして、十七日の日に官房の総務課長に来ていただいて、この問題について十分話をしておいたんです。それで、官房の総務課長の言われるのには、地元の了解を得たということを言っておられましたので、それは地元からの了解を得たといっても、町議会が議決をして、そうして実弾射撃をやってくれてもかまわぬということをきめただけであって、直接関係の地元住民、これは五カ部落ありますが、そこははっきりと反対の態度を表明しておるので、これについては慎重に扱わなければいけませんぞということを注意しておいたわけです。そのことに基づいて防衛庁は何らかの措置をとられたか、それとも何らの措置もとらずに、町議会が議決してくれたんだから、直接関係住民が反対しておっても、形式的条件が整えばそれで射撃をやってもいいんだということで射撃を強行されたのか、その辺はどうなんですか。
  86. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 今回の演習は、四月十八日から六日間行なうことになっておりまして、町長のほうにも通告いたしてありますし、町長のほうでその旨告示がなされております。しかしながら、現地の情勢は、射撃の東地区の五部落のほうはなかなかまだ異存があるようでございますので、実際に話し合いができるだけ円満に進みますように、誠意を持って現地と交渉いたしたわけでございまして、したがいまして、十八日からの予定の射撃も、実際には十八日、十九日、二十日と射撃をしないで延ばしております。その間に現地の部隊と現地の五部落との間でいろいろ協議がなされたようでございまして、大かたの賛成が得られたということで、安全確認の上で、二十一日のお昼になって射撃をいたす、そういうような経過になっております。
  87. 矢山有作

    ○矢山有作君 しかしながら、現地に、直接地元農民が反対をして、その着弾地周辺にすわり込んだということは、地元住民の了解がとられておらなかった証拠じゃないか。了解がとられておったならば、地元農民自体が着弾地周辺にすわり込むという行為はないはずです。それが現実にあったのだから、了解がとられていないわけでしょう。了解がとられていないとするならば、射撃はやったらいかぬのじゃないですか、協定の趣旨を尊重すれば。
  88. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 先ほど申し上げました協定の第五項によりまして、実際に現地の町長並びに町議会と協議いたしましてその了解を得られましたので、わがほうとしましては、一応協定の趣旨に沿って全面的な射撃演習ができるということになっておるのでございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、実際に慎重を期するために、実際の射撃は三日間ばかり待ちまして、その間に地元の方と十分協議を進めてまいったという事情でございます。
  89. 矢山有作

    ○矢山有作君 だから私は最初言ったでしょう。地元の了解ということは、あなた方は形式的な町長なり町会の同意が得られればそれで了解が得られたものと考えておやりになったのかと言ったのは、それです。ところが、現実に町長とかあるいは町議会の関係者は、地元の者がおらないわけです、反対の。特に、直接関係のある宮内という部落がありますが、ここの農民諸君はこぞって反対なんです。一番肝心かなめな射撃について直接的な関係のある部落の住民がこぞって反対をしているのに、その意向を無視して、町会の決議、町長のあるいは同意、そういったものがどういう意義があるのですか、これは。それは意義がないじゃありませんか。だから私は、わざわざ十七日の日に、特に密接な直接的な関係のある宮内の部落の住民の反対が強いということを警告しておいた。そうするならば、少なくとも空砲じゃありませんよ、実弾射撃ですから、へたしたら人が死ぬ。そうすれば、万全の上にも万全を期して処理するというのがあなた方の態度じゃないですか。まかり間違って目こぼしがあって射撃をやったら、人が死んでもかまわぬという態度なんです。そこのところです、問題は。万が一の災厄を避けなければならぬじゃないですか、少なくとも実弾射撃だから。
  90. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 日本原演習場は、御承知と思いますが、全面積が国有財産で、防衛庁の行政財産になっております。しかしながら、演習場というものは、実際に使用する場合にいろいろ問題がございますので、演習場の使用協定というものを普通各演習場は結んでおります。その場合に、その対象となるのは、相手のほうは地方自治体でございます。今回の場合におきましてもまた、大体町長なり町議会の御了解が得られましたので、わがほうとしては演習計画を策定いたしたのでございます。しかしながら、その後、実際の実弾射撃を待ちまして、現地の五部落の代表の方と自衛隊とで十分話し合いを進めてまいったのでございますが、宮内部落の代表者の方が最後に代表をやめるというような事態もありまして、その点におきましては、確かに宮内部落の方々の完全な了解がついたというふうには申されませんけれども、しかしながら、実際の射撃につきましては、先ほど長官から申されましたように、最大限の安全確認をいたしまして、わがほうとしましては射撃を実施したということになっておるのでございまして、安全の確認の点につきましては、自衛隊としましては、すべての演習場について共通いたしておりますが、最大限の努力をいたしているつもりでございます。
  91. 矢山有作

    ○矢山有作君 射撃について最大限の警戒をした、そこはわかるのです。おそらく、すわり込みをやっておるのに、何らの措置もとらぬで射撃をするということはないのです。ところが、一番重要な点はどこかというと、あれこれの話をせぬでもいい、一番重要な点は、いざこれから射撃が始まろうという段階になったときに、これはいかぬ、たいへんなことになるというので、わざわざ自衛隊のほうに、ほんとうに射撃をやるならまだ地域の住民が着弾地周辺に残っているから待ってくれということを言うておる。現実に十二人ほどの者が残っておったわけです。そうであるならば、それほどのせとぎわにきておるのだから、なぜもう一度慎重な態度をとれなかったかと言うのです、私は。そこが一番重要なところなんです。自分たちは警戒をし、排除した、もうおらないと考えていたところが、いざこれから撃とうというどたんばに来たときに、地元の人間から、待ってくれ、まだ現実に山の中に入っているのだ、こういう警告がなされておる。それをどうして撃ったかということなんです。そこが、人命尊重の立場に立つか、国という立場に立てば、政府という立場に立てば、そのことによってたとえ犠牲者が出てもかまわぬという方向に傾いていくのか、そこが重大な分かれ目なんです。その辺が一番大切なところなんです。それを私は言っておるんです。
  92. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 御指摘の十二名とか言われる点につきましては、おそらくその中の一名は危険区域外に逃亡された方であろうと思います。そのほか、実際にわがほうとしましては、全員を演習場の南側の部落側のほうに誘導して下山すれば問題なかったわけでございますけれども、一部——八名と聞いておりますが、八名余りの人間は、山の上のほうの、わがほうの観測点に自衛隊員が誘導しまして、そこで安全措置をいたしたわけでございますが、その地点は観測地点でございますので、危険区域ぎりぎりの線でございます。そこで、そこにおりました人間は、下のほうの部落から見ますと、確かにまだ危険区域内に入っておるような錯覚を持たれたように聞いております。したがいまして、わがほうの警備員は、立ち入り禁止区域だけでなくして、実際に危険区域そのものは十分精査いたして、その中に人はいなかった。ただ立ち入り禁止区域の中にはあるいはいたかもしれないという人間が、残りの三名であろうと思います。しかし、この三名につきましても、危険区域の中にいなかったことは、わがほうとしましては、あの狭い面積の中に一個中隊を動員しましてじゅうたん的に捜査いたしておりますので、そのようなことはないと確信いたしておるのでございます。しかも、念のために申しますが、今回の演習は、点目標の射撃訓練でございまして、しかも榴弾砲によるものであって、その危険性というものは非常に少ない演習でございます。したがって、危険区域そのものも非常に狭い地域でけっこうでございますが、実際に命中精度そのものもわずかの——わずかといいますか、せいぜいこの部屋の中ぐらいのところでたまが集中する程度の精密試験をいたした射撃でございますので、その意味におきましては、非常に狭い危険区域しかとっておりません。その狭い区域に自衛隊員が六百五十名も出ましてそれを警備いたすのでございますから、その危険区域そのものの中にはだれもいなかったであろうというふうに考えております。
  93. 矢山有作

    ○矢山有作君 長官、いまのような答弁、もういいです。こんなことは、私が直接現地におり、あなたが現地におったなら、これは話がかみ合ってくるのです。ところが、あなたも現地におらない、私も現地におらない。あなたは現地の自衛隊のほうからの情報を取り、私は現地の、地元の立ち上がっておる住民のほうから取った情報なんです。そこに大きな食い違いがあるのだから、そこのところは幾らやってもしかたがないんです。  ただ問題は、私が先ほどから言ったように、一番重要な点は、これから射撃が始まろうとする、そのことを察知して、そのどたんばの時点で、待ってくれと、周辺地域の住民がまだすわり込んでおって帰らぬのだ、いま撃ってもらっちゃ困るという警告を無視して、実弾射撃をやったところに、問題がある。たとえ仮定の問題として、たまたまそのときにその周辺地域にすわり込んでおった人たちは遠方に待避しておった、そこにだれもおらなかったと仮定してもです。ところが、そういう切迫した状態の中で必死の呼びかけが行なわれておるのに、それを無視して直ちに射撃したというところに、重大な問題がある。これが自衛隊の今後の姿勢関連してくるから、だから私はそれを言うのです。その点で長官の腹を聞きたい、考え方を聞きたいのです、私は。あとの技術的な問題はよろしい、一番大事な点はそこなんだ。
  94. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 人命尊重ということが一番大事であると思いますから、念には念を入れてやらなきゃならぬと思います。しかし、今回の場合は、朝六時からともかく総動員をして二重、三重のいろんな手配をして、そしてあぶないと思われる地域についてはかなり徹底した捜査を行なって、安全を確認してやった。自衛隊のほうとしては、絶対に迷惑をかけたり、人に対して殺傷を行なうことはないという確信のもとにやったのでございまして、なるほどそのときに代表の方がまだいるかもしれぬからと言うておいでになったことは、これは考えなきゃならぬ。
  95. 矢山有作

    ○矢山有作君 いるかもしれぬじゃない、いるんだ。
  96. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) たとえいると言われても、しかし、その現場で事実確認している責任者が安全であると言っていった以上は、私はやむを得ない措置である、そう思います。でき得べくんば、そのときも待って、そしてその人たちを連れて行って現場を見せてやるほうが念の入ったことではあると思いますけれども、しかし、三日も待って、そしてそのような念を入れた捜査をして、弾着地点には危険がないと判定してやったというケースでございますから、まあすすめるべきことではないけれども、やむを得ない措置であったと、そういうふうに思います。
  97. 矢山有作

    ○矢山有作君 私は、あなたがこういう重大な問題をやむを得ない措置であったと言うことに、危険を感ずるのです。事態は、早朝からなるほど警戒をしいた、あるいは排除するものは排除し、いろいろやってきた。しかし、それをやられたのは十一時ごろまででしょう。十一時ごろまでですね。発射の寸前まで排除行為が行なわれたんじゃないんですよ。発射寸前にはもう排除行為に動き回っておった自衛隊員も機動隊も遠くのほうへ退避した。そのどたんばになって——十二時三十一分でしょう、発射したのが。そのどたんばになって、発射をする、すぐ発射にかかるという情報が入ったから、待ってくれ、こう言って必死で呼びかけておるのです。そうすれば、私は、やむを得なかったというのじゃなしに、そういうときにどんなことがあろうと最後の手を打たなきゃならぬのじゃないのですか。もし機動隊や自衛隊の諸君が、着弾地周辺で、その発射のまぎわまで、つまり待ってくれ、いままだ周辺地区の住民がすわり込んでおるんだという呼びかけをやった時点で機動隊、自衛隊員がその周辺をさがし回っておるんなら、文句を言いません。その時点では、機動隊も自衛隊員ももうとっくに引き揚げて、おらない。そういう状態の中で待ってくれと言っているのです。これはたいへんなことですよ。そのときに、やはり自衛隊としては、国民を敵にしないという立場に立つなら、万一を配慮しなきゃならないはずだ。射撃は三十分や十分や二十分延びてどれだけの支障があるんですか。私は、なぜそれをやらなかったか、それをやらなかった自衛隊の姿勢に問題がある、ものの考え方に。人命軽視の姿勢がそこに底流として流れておるじゃありませんか。それをあなたがやむを得ないというようなことを言っておるなら、私どもは今後の自衛隊の方向に危険を感じざるを得ない。あなたはむしろ、防衛庁の長官として、そういうことは許さないという立場に立たなきゃいかぬのじゃないですか。そして、その呼びかけに応じてもう一度捜査してみた、そして危険がないと断定を下して発射した、これなら、あなたの言うことは私は無理もないと思う。なぜそれだけのことをやれなかったのかということを私は言っているのです。
  98. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく、そういう御心配をおかけしたことは、まことに遺憾であると思います。しかし、自衛隊側のいろんな手続等見てみますと、弾着付近並びに危険区域の範囲内におきましては、あれだけの人間を動員して精査して、そして安全を確認した上で行なって、そしてまたそういう実害も現になかったのでございまして、私はやむを得なかったと思います。
  99. 矢山有作

    ○矢山有作君 それはあんたらしくもない、結果論だよ。結果論で議論しておったのでは、これは万一の災厄というものを防ぐわけにはいかぬわけだ。しかし、あなたがそういう考え方でおるんなら、それでよろしい。しかし、そういう考え方に立っておったのでは、あなたが幾ら声を大にしてシビリアン・コントロールなんということを言ってみたところで、そんなものは通りませんよ。そういうものの考え方を根底に置いて、人命尊重を口にしながら、根底に人命軽視という思想が流れておることを私は心配するのです。しかし、あなた方自衛隊のほうで、防衛庁のほうで、日本原の軍事基地の全面使用、つまり実弾射撃をやっていく上には解決しなければならぬ問題がたくさんあることをみずから指摘しているじゃないですか。私は、あなたのほうから全面使用に踏み切るについて、いろいろと解決せなければならぬ問題は知っておられると思いますから、それを聞きたいのですが、そういった問題点の解消ができておるのですか、今日。御存じないのですか。全面使用に踏み切るために、いろいろ問題点を解決しなければならぬということで、あなたのほうのつくられた日本原演習場処理問題に対する何か要領みたいなものをつくっておられるでしょう。その中に、演習場の全面使用についてはこういった問題はぜひ解決すべき問題だと指摘しておるでしょう。その問題は解決しておりますか。どういう問題をあなた方が指摘され、その解決のためにどういう努力をされ、その解決の現状はどうなっておるかということを聞かしてください。
  100. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 御指摘の点がよくわかりませんが、おそらく、昭和三十六年七月五日に現地の町長から十七項目ばかりの申し出が出ております。この十七項目につきましては、わがほうとしては一応参考としてお聞きしたわけでございますが、現在日本原演習場で一番問題になっておりますのは、もちろんこの全地域が国有財産でございますけれども、実際には農耕を許可している地区がございます。これが現在なお四十四町歩くらいございます。これらの地区につきましては、毎年毎年逐次、許可の取り消しといいますか、本人の希望によりまして補償料を払いながら逐次面積を減しております。できますれば、演習場を全面的に円滑に使用するためには、演習場内に農耕地の使用を認めることは適当でないのでございまして、この点につきましては、周辺地元民と話し合いをいたしまして、適正な補償料を払いつつ逐次演習場内の農耕地の削減につとめてまいりたいということで、年々予算を計上して実施いたしております。実情は、地元の希望が多くて、わがほうの予算が足りませんために、なかなか思うように進展いたしておりませんが、できればさら地にして、演習場としての自由使用が十分できるようにしてまいりたいと思っております。
  101. 矢山有作

    ○矢山有作君 そういうことをよく知りませんがなんぞと言うておるから、今度のような問題が起こるのですよ。あなた方は、自分の仕事をやるためには国民を犠牲にしたってかまわぬという、そういう根性が根底にあるんだから。これはあんた知らぬことはないじゃないか。何で知らぬのですか。十七項目を町当局から要求した、それだけの問題じゃないんですよ。あなたのほうで三十七年に日本原演習場問題処理要領というのをきめているでしょう。その中で、全面使用についてはこういった問題をぜひとも解決しなければできないということを、あなた自身が、防衛庁自体がちゃんと言っているじゃありませんか。それをあなた知らぬのか。人をごまかすような答弁するんじゃありませんよ。「防衛施設広報」というのがちゃんとある。これあなたのところから出ているのだろ。この中に書いてある。これだけの問題は演習場の全面使用についてはぜひとも解決しなければならぬ問題だと書いてあるじゃないか。その問題解決できておるのか。解決できていないだろ。解決できていないうちに、部落の住民の反対を無視して、すわり込んでおるのにあえて実弾射撃をやったというように、そういうことになっておる。これを考えあわせたら、既成事実をつくり上げて、強権でもって地元の住民を押えつけようという姿勢以外の何ものでもないのじゃないか。なぜあなた方みずからがつくったこの日本原演習場の問題処理要領というものを何でそのまま実施せぬのだ。もしあんたたちがやろうとするなら、われわれは演習場を広げるのは反対だ。しかし、あなたがたは地元住民やわれわれの反対を押し切ってそれをやろうというなら、自分たちがつくったこういう問題があるから、これは処理しなければならぬといってつくった処理要領だろう。なぜこれをやらぬのだ。なぜこれをやらぬ間に、人命の危険をおかしてまで実弾射撃をやるのだ。これは行なわれていないでしょう、現実に。逐次は多少処理されている。しかし、ほとんど大部分は未解決だ。笑いごとじゃないよ。
  102. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 三十八年九月に……。
  103. 矢山有作

    ○矢山有作君 三十七年だ。
  104. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 私のほうの資料は三十八年九月になっておりますが、陸上自衛隊のほうで日本原演習場処理要領というものをつくって出しております。この項目につきまして、先ほどはその一つの点だけ触れたわけでございますが、さらに場内国有地の入り会い慣行権の問題とか、あるいは立ち入り日数をどうするかとか、あるいは土地の払い下げの問題をどうするかとかいうような問題がございます。それから有線放送の問題、これは施設庁のほうで相当進めてまいっておるようでございます。まあはっきり申しまして、この演習場はこれまで全面使用いたしておりませんので、他の演習場に比較しまして演習場の管理規制と申しますか、あるいは現地との使用協定というものが比較的まだ明確でない点は事実ございます。したがいまして、なるべく早い機会に、かりにこの演習場の中に立ち入りするにしましても、入り会いの場合も含めまして、農耕等で立ち入りする場合におきましても、一年のうちにどういう条件で立ち入りを認めるかというその立ち入り条件を精密に規定を設けるべきであろうと考えております。その点は、いま現在、陸上自衛隊のほうでこれは討議しておるようでございます。  それから周辺対策につきましては、防衛施設庁のほうでもいろいろ検討いたしておるようでございまして、これまですでに約四億数千万円の周辺対策の予算が執行されたというふうに承知いたしております。
  105. 矢山有作

    ○矢山有作君 それで、この処理要領に基づいてさらに四十年十月に、先ほど私が言った日本原演習場使用協定というものが結ばれたわけでしょう。その使用協定の中の第十二条に、「この協定の実施事項については別に定める細部事項によるものとする。」と定めてありますけれども、この細部事項はもうきまりましたか。きまっておらぬでしょう。
  106. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 御指摘のように、現地との協定の十二条にありまする「この協定の実施事項については別に定める細部事項によるものとする。」、この細部事項はまだきまっておりませんけれども、ということは、先ほど申し上げましたように、農耕地とか、あるいは立ち入り——薪炭採草に立ち入る場合の立ち入り条件とかいうようなものにつきましては、本来ならば、もう少し詳細なものがなければならないわけでございますが、何しろ全面使用いたしておりませんでしたので、きわめて概括的な規定だけしかなかったということが事実ございまして、やはり詳細な規定をつくりませんと、わがほうの演習の円満な実施にも支障がありますし、また同時に、地元の部落民の方々にもいろいろと御迷惑をかけることになると思いますので、双方の利益のためになるべく早い機会に細部の協定を結んでまいりたいというように考えております。
  107. 矢山有作

    ○矢山有作君 それで申し上げたいのは、このいわゆる射撃場の拡大ですね、演習場の全面使用については、日本原演習場処理要領、さらにそれにのっとってつくられた先ほど言った四十年十月の日本原演習場使用協定、こういったものが一応基礎になっておるだろうと思うのですが、そういったことについて問題を解決していくための細部の要領もまだきめられておらぬということ、しかも、この問題の処理要領ができてから七、八年になる。日本原演習場の使用協定ができてから五年になるんですよ。その間、問題の処理を、細部要項すらきめられないで、私はサボっておったと言いたいのですが、そういうことをしておいて、そうしてどうでもこうでも、もうこの段階で演習場の全面使用に踏み切ろう、そのためには何が何でも実弾射撃をやることが先決だということで実弾射撃を強行したんだ、今回は。したがって、これは解決すべきものを解決しない。特に実弾射撃をやる上については、これは大きな危険が伴うのですから、当然解決すべきものを解決しなければならぬのに、それをせずにおいて強行してきたというのは、既成事実をつくり上げて、地元住民が何と言おうとそれを力で押え込もうという考え方以外には何もないのじゃないですか。昔の旧陸軍のときですら、軍国主義のはなやかな旧陸軍のときですら、演習は原則として徒手空砲、そして地元住民被害を与えないということに最大の配慮を払っている。これは私が言うのではない。「防衛施設広報」にちゃんと書いてある。軍国主義の旧軍時代ですら住民被害を与えてはならぬ、住民から反感を買ってはならぬというので、演習というのはたまの例外を除いては空砲と徒手に限られておる。そして被害を与えない慎重な配慮をしてきておる。それだけのことをやっておるのに、今日の自衛隊が全面使用について解決しなければならぬとみずからがきめておる問題の解決をすらサボっておいて、そして地元住民の意思を無視して実弾射撃を強行したという。これは許されるべきことじゃないでしょう。まさに軍国主義的な方向に力強く進んでいるこれは証拠じゃないのですか。人命尊重と言いながら人命を軽視しておる。自衛隊あって国民なしというやつじゃないですか、これは。その点で私はあなた方に深い反省を求めたい。地元の住民は、今回の事件で絶対に何が何でもここまでくるのなら全面使用は許さぬという決意を固めておるでしょう。そういうふうなことをあなた方はやっていいのですか。よくお考えを願いたい。これは長官だよ、参事官じゃしようがない。
  108. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国民に愛される自衛隊になるためにも地元の皆さんとよく了解し合ってやるように今後とも努力してまいりたいと思います。
  109. 矢山有作

    ○矢山有作君 地元の住民の了解を得られるように努力するとおっしゃったから、今回地元住民を無視した実例が示されたわけだから、さらに私はこの問題については現地で詳細な調査をやりたいと思います。われわれ議論する場合に行き違いにならぬだけの手だてを、あなた方のほうもわれわれが提案する手だてについて拒否をしないで、行き違いの議論じゃ幾らやってもしようがないのだから、私どもは行き違いにならぬ議論の場をこしらえる努力をいたします。したがって、この問題は与党としても、政府としても、その真相をきわめるために行き違いにならぬような論議の場をこしらえることに対して私は協力を願いたい。あなた、それ、できますか。
  110. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 承知いたしました。
  111. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記やめて。   〔速記中止〕
  112. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を始めて。
  113. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私はちょっと予定の時間が短くなりましたので、多少通告してなかった問題等も聞くかもわかりませんが、そのつもりでお願いしたいと思います。  初めに私は在日米軍基地の返還の状況等について伺いたいと思います。一昨年わが党が在日米軍基地の総点検をやりましたわけでありますが、そのときには在日米軍基地は全部で百四十八の基地がございましたが、その後、日米安保協議委員会等で基地の整理統合等がありましたし、またその後、二十六かの基地が返還されたと、こういうぐあいに聞いておりますが、現在いわゆる日本の中にある米軍基地の数並びにその返還状況等についてどういうぐあいになっておるか、お伺いしたいと思います。
  114. 山上信重

    政府委員(山上信重君) 御承知のように、一昨年、日米安保協議委員会において約五十の施設、区域の返還、使用転換、あるいは移転等について協議が行なわれましたが、その後、日米合同委員会、あるいはその下部の施設委員会においていろいろ審議し、合意に達しましたものは、二十八施設の返還等について日米合同委員会が合意に達しておるのでございます。ただし、これは合意に達したものでありまして、そのうちすでに返還等になりましたのは二十五施設でございます。ただ、この中には一部返還とか、そういうものもございまするので、現在、提供施設といたしましては百二十六でございます。したがいまして、二十二の施設が完全になくなったということになっておるのでございます。なお残余の施設、区域につきましては、これはいろいろむずかしい問題もございまするが、引き続き双方で鋭意検討を進めて、できるだけすみやかに解決をはかるつもりでおる次第でございます。  以上が大体今日までの状況でございます。
  115. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 返還状況はなかなか進捗状況が悪いようでありますけれども、実際問題としまして、私は、現在百二十六あるそうでありますが、これを一刻も早く全面返還をしていただきたいわけでありますが、返ってきたところにつきましても、長年の公害等によって国民が悩まされてきたわけでありますけれども、しかしながら、私がここでお伺いしたいのは、自衛隊に返還するということが決定いたしましても、そのあとを自衛隊が管理するということになりますと、これはまた問題が出てくるわけであります。先般来、長官がたびたび、自衛隊管理の面について新聞等でも私たち見ておりますけれども、やはりこの点は一考していただかないといけないんじゃないか、こういうぐあいに思うんですが、この点いかがでしょうか。
  116. 山上信重

    政府委員(山上信重君) ただいままでに返還を済ませました二十二施設について、及び合意されました二十八施設、このうち元来が自衛隊の施設でございまして、それをいわゆる地位協定の二条四項(b)という条項によって米軍に提供していた施設が五施設ございます。これが返還になりましたので、この面積が約五千六百万平方メートル、返還された全体が約六千万平方メートルでございますが、この大部分が要するに自衛隊のもと持っておったのが返ってきた、これが面積的に大きいために非常に自衛隊が使っているように見えるのでございまするが、その他の返還されました施設のうち自衛隊にいきましたものは五施設にすぎません。その他のものにつきましては、民間にいったか、いくべく目下それぞれ大蔵省等で検討しておるのでございます。したがいまして、自衛隊にいきましたものは五施設、百万平方メートル、約四分の一弱というような程度でございます。その他のものは民間にいくというふうになっておるのでございます。たまたまこの返還されたものの大きなものが自衛隊でございましたので、たいへん自衛隊にいくようになっておりますが、その辺ひとつ御了承を願いたいと思います。  われわれといたしましては、この返還された施設につきましては、これは地方の住民の方々の御要望等に沿うことはもう当然であると思っておりますが、国防上重要なもの、どうしても持たなければならぬというようなものについて、自衛隊が返還後これを使用をさせてもらっておるというふうに考えておる次第でございます。
  117. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いまの問題については長官の意見を伺いたかったのでありますが、実際問題としまして、返還された基地の使用については国民のほうでも相当利用計画を立てておる、私もかように聞いております。この点について、やはりたとえば、具体的に言わないとあれですから、いますでに返還になったというよりも、これから返還になる予定の分もありますが、たとえば立川の飛行場等についてもそうであります。地元の住民等が長年爆音等に悩まされてきて、今回返還というような話が出てきたり、これから返還されるであろうという場合に、それがそのまま自衛隊で使われるということになると、やはりいろいろな問題が出てくると思うのですが、地元の住民にとってもやはり寝耳に水ということになるのですが、この点どういうぐあいにお考えであるか、長官の御意見を伺いたいと思います。
  118. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 立川の飛行場につきましては、運輸省当局からも御要望もあり、また一部住宅にという御要望もあり、自衛隊側にはまた自衛隊側の要望もございますので、よく協議をして調整していきたいと思います。
  119. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 実は先日この立川の飛行場の跡で、立川市の自転車競技連盟主催のいわゆるサイクリングの講習会が基地であったそうですが、地元の住民の人たちがどんなに喜んだであろうかと私は思うのです。実はこういうふうな問題は至るところにあるわけです。たとえばこれは基地の問題とは違いますけれども、都会の子供たちが緑を求めていわゆるレクリエーションに行くということについては、たとえば大阪に、今度地下街ですけれども、地下街に川の流れる町というのがある。川が、こう自然の水が流れているというだけで、いわゆる都会の子供はそこへ寄っていくわけですね。そういうぐあいにして、ほんとうに基地周辺の子供さんをはじめ住民というのは、そういうふうな自然の姿というものを相当求めていると私は思うのです。そういうふうな意味からも、ぜひともこういうふうな基地の返還につきましては、先ほど長官もお話がございましたけれども現実の面から相当長期間にわたって爆音等に悩まされているわけですね。ことしの何月からですか、飛行停止ですか、停止が四カ月あまりあるわけですが、その間の期間だけでも相当地元の住民はもういわゆる環境がこんなにもよくなったかと、爆音がなくなってどんなにいわゆる病気の人でもなおりが早くなったというような話まであるわけですね。そういう点から、ほんとうにこの基地の問題については真剣に考えていただきたいのですが、長官、いかがですか。
  120. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 地元の皆さま方の御要望もできるだけ達するように心得た上で、われわれの必要その他も考えて調整していきたいと思います。
  121. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 短時間でありますので、もうちょっと、私は長官に一ぺんお伺いしてみようと思っておったことが二、三あるのですけれども一つは、国防白書の問題なんです。これは前の長官のときにも私はお伺いして、いま一生懸命つくっているということで、もうやがて出るというときにやめられたわけですけれども、その後どういうぐあいになっているのか。こういうふうな、できたら国防白書というようなものはできる限り毎年出して、長官がいつも言われるような国民に愛される自衛隊になるためにも、私はこういうふうなものを出していただいたほうがいいのじゃないかと、こういうぐあいに思うのですが、この点いかがでしょうか。
  122. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国防白書につきましては、前長官の考えも言明も伺って知っております。私、着任以来、国防白書の草案をばらばらとめくって読んでみましたけれども、私自体の考え方から見て若干修正を要する部面もあり、また客観情勢の変化等もその後少し変わってきている面もございます。そういういろいろな面から見まして、しばらく慎重に見守っているわけです。それで、細川隆元氏そのほか全く自衛隊にずぶのしろうとの方によって、日本の防衛及び自衛隊を診断する会をつくって、いま診断していただいております。そういう方々の率直な御意見も見た上で、秋ごろ国防白書は出したらいいんではないか、そのように私は心組みを持っておるわけであります。
  123. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私はちょっと不安なことが一つあるわけですが、一つはマスコミ関係の皆さんからも、今度国防白書ができたということが、昨年の暮れ、新聞等でも概略発表になりました。それが要するに、私は長官がかわるたびにちょっと待ったというわけで、もう一回つくり直しというんでは、ちょっとやはりあまり合理的ではないんじゃないか、こういうふうな思いがするんですが、この点どうでしょうかね。
  124. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私の考えでは、前の国防白書の草案の中はよくできているところもありますけれども、昔の冷戦思想みたいな残滓もありまして、そういういろんな総合的に見まして、私の考えに必ずしも適合していないところがあるわけです。私の名前で出す以上は、私が責任を持たなければなりません。そういう考えから、責任の持てるものを出そうと思いまして、慎重にやっているわけであります。
  125. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私もそういう意味はよくわからないでもないんですけれどもね。やはり国防白書なんていうものは、できたらやはり毎年一回とか、定期的に出すようにしていただいたほうがいいんじゃないか、そのほうが国民のほうから見ても期待されるんじゃないか、またその内容が当然、極端に言えば長官の気に入らなかったら気に入るようにしたい、それではちょっと私その内容等についてもやはり問題があるんじゃないか、そういうぐあいに思うのです。やはりそういう内容をつくるにはつくるだけのある程度の基準というものも必要じゃないか、こういうぐあいに思うのですが、いかがでしょう。
  126. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり官僚の作文を主としているような感じのするものを出すことは、私は政党政治家としてあまり適当でないと思っているわけです。
  127. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 その点は私も同感でありますけれども、その程度でおきまして、もう一つ、私は前の前の長官のときからお伺いしている問題でありますが、自衛隊のいわゆる指揮官心得というのが初めございました。それから指揮官心得はつくっていないということで、部隊長心得というような名前が出てまいりました。やはり特に治安出動等の場合には、私は自衛隊がどういう教範によって動くかということは、これは当然必要なことじゃないかと私はこう思うのです。前の長官のときにも、いま一生懸命つくっているところだという話がございましたけれども、この点、長官になりまして、当然私は内容等も変わってくるであろうと思いますし、自衛隊がどういうぐあいに動くかということは大事な問題だと思うのですが、現在そういうような教範があるのかないのか、またないとすればこれからどういうふうにされるつもりなのか、この点お伺いしたいと思います。
  128. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 指揮官心得も私は拝見いたしましたが、いま取り立ててつくる必要もそう認めていないのです。治安出動をすぐしなきゃならぬという事態でもありませんし、そういうものをつくって出すことによって無用な刺激を与えるということもいささかどうかという気もいたしまして、もう少し慎重を期してやっていきたいと思っております。
  129. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いま長官、指揮官心得を見ましたという話がありましたけれども、私たちいままで見たという話は聞いたことないわけです。きょう初めて聞いたわけですが、これ、ぜひ見せてもらいたいと思うのですが、いかがでしょう。
  130. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 心得ができているわけじゃなくて、心得の草案みたいなものがあるわけです。私が承認し、庁で正式に認証されて、これは指揮官心得になるので、その草案みたいなものを見たわけでありますが、まだお見せをするほどのものではありません。
  131. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは私は長官、初めの答弁のほうが正直だと思うのですよ。非常に正直におっしゃっていただいて、やはりあるわけですね、結局は、草案であろうと何であろうと。これはぜひやはり——決して悪い意味ではなくて、私たちもかねがねからこの委員会でも何回も発言されている問題でありますし、ぜひともその草案なるものでもけっこうですから見せていただきたいと、こういうぐあいに思っております。また、もし草案であれば、いつごろ完成するつもりなのか、その点もあわせてお伺いしたいと思います。
  132. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が読んでみまして自信のあるものができましたらお見せいたしますが、まだその段階に至っておりません。
  133. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 ちょっと私一つ関連して。これはことばじりを申し上げるようで恐縮ですが、先ほど基地返還に際して民間からの要望があると、自衛隊のほうとしても必要であるわけですけれども、その点を調整をはかるとおっしゃるわけですがね。非常にことばとしては便利ですが、この調整をはかるというのはやはり優位の基準が、自衛隊が優位であるというそういうようなものがあるのか、どういう条件を考慮してこれを調整していくのか、それが一つ。  それから先ほど国防白書の件ですが、これは白書はいろいろ出ておりまして、経済白書のごときは、これはかなり政府が修正をしたような点もありますし、この際、白書という意義はどういう意義なのか、私はこの場でちょっとお伺いしておきたい。そうしないというと、最近の白書はいわゆる白書になっていない。どうしても政府の主観というものが入って、政府の都合のいいようにいろんな白書ができる。そういうものをわれわれが見ても、これはどうもあまり参考にならない。そこでその二点だけ。調整の意義と白書の意義と、はなはだ恐縮ですけれどもお伺いしておきたい。
  134. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 住民の要望等は基地基地によりましてケース・バイ・ケースで非常に異なっているわけでございます。また、自衛隊側の要望あるいは米軍側の希望、これもおそらく基地基地によって非常に違っていると思います。米軍側の希望というものは、まだわれわれは正確につかんでおるわけでもございません。そういうわけで、やはりあらゆる基地につきましてケース・バイ・ケースであらゆる要望をよく勘案した上で、できるだけ国民の皆さんにお渡しして平和的に使うということが望ましいと思いますが、そういう基本原則に立ちつつ防衛目的も果たすように調整していこう、こういう考えに立脚しております。  それから白書ということでございますが、寡聞にしてどういう意味で白書というのかよくわかりません。おそらく経済白書というのが出てきたのが初めてで、自来、何とか白書というのが汁牛充棟ただならぬように出てきて、初めのうちは読んだけれども、みな積んでおかれるような感じもしております。そういうような意味において、白書の乱発というのは白書をつくった趣旨に沿わないような感じにもなってまいりました。ややもすれば政府側のPRに使われているという感じもして、正確な現実国民にお知らせするという科学的な報告書という性格が少し薄れてきているのではないかと疑われるところもあると思います。私はいわゆる国防白書につきましては、やはりまず事実を国民の皆さんによく知っていただく。それから第二番目に、自分たち考えをよくのみ込んで御理解をしていただく。その上に立って、こういう政策をやりたいということを申し上げて、そしてでき得べくんば現在われわれがやっていることや、これからやりたいと思っていることをよく御了解いただくような努力のものとして、白書というものをつくっていきたい、そういうふうに考えているわけでございます。
  135. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 時間がないそうですのではしょって質問いたしますが、ほんとうにこれをこの次の防衛問題のときに詳細やりたいと思うのですが、北富士の入会権の問題で補償問題がこじれまして、先日、国が敗訴いたしまして、再度控訴した事件がございますが、これにつきまして地元といわゆる防衛庁側とおもな争点だけでけっこうですから、どういう点が争点になっておるのか、それを具体的に教えていただきたい。
  136. 山上信重

    政府委員(山上信重君) 補償に関連する問題といたしましては、その前に、北富士演習場の問題については、訴訟問題以外に補償金全体の未払いという問題がございますが、訴訟に関連したものといたしましては、忍草入会組合、この入会組合に対する補償の関連で訴訟が起きておるのでございますが、訴訟の主たる問題点は、三十五年から三十七年にわたる三年度分の林野雑産物補償につきまして、国と地元の入会組合との間の折衝の過程において、中間的な確認のために補償金算定の基礎となる項目について、これまで合意に達した点を整理確認した文書を取りかわしたわけでございますが、その文書の中で、後日に至って運賃の計算方法について問題があったと、その点が発見されましたので訴訟が起きておるということでございます。この不合理な点について、実は国が組合の代表者と思われる天野重知さん、この方との間にその部分の撤回を話しましたところ、組合としてはその天野さんのほうは承知されたようでありますが、これは組合の正式の代表じゃないというようなことから、これは有効でないという問題点と、それからその内容といたしまして、国との間に計算上の差がある。それを組合側は覚え書きを前提にし工訴訟をしてきた。これにつきまして、すでに御承知のように、この二月二十七日に一応国が敗訴したということが事実でございます。これに対して国側は直ちにこれを控訴しておりますが、そういうのが現在の争点及び状況でございます。
  137. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 長官、ちょっと聞いてもらいたいんですがね。もう時間がないそうですからこの質問で終わりますが、いまの問題は、私はこの問題を聞きまして、かねがね防衛庁が言っていることと非常に矛盾すると思う。どういうぐあいに矛盾するかといいますと、長官ね、今回の問題、施設庁長官おっしゃいましたように、争点が三つあります。一つは、要するに三十七年の十二月二十日並びに二十一日に書類で地元と合意書というのがかわされているわけです。書類で合意書がかわされているわけです。そのかわされたことについて、地元はそれが有効だと言っているわけです。施設庁は、その書類が無効だと言っている。書類を無効だと言っている。これがまず第一点です。それからもう一つの点は、運賃計算の方法がいわゆる施設庁が間違っていたというわけですね。その間違っていた、間違いだということを地元の代表者には言わないでボスに言ったわけです、口頭で。ボスに口頭で言ったことが、施設庁は有効だと言うている。代表者に言ってないわけでしょう。書類も何にもかわしてない。口頭で言ったことがいわゆる有効だと言っているわけです。それから運賃の計算の方法は、これは要するに国としては、施設庁としては、この合意書にありますような、またあとで計算したような、いわゆる国が間違えた理由は、初め地元へ提示したのが一番安い、そう思って計算したわけです。ところがあとで計算してみたらもっと安い方法があったというわけですね。したがって、これはこの三点とも私たちが伺うと、自衛隊がかねがね言っている、たとえばきちっとした契約書をかわされていなければ、それは意味がないと言っていること、また、ボスや何やかやに口頭で言ったことは意味ないと言っていること、すべてこれ、かねがね言っていることと反するわけですね。非常に私はおかしいと思うのですよ。この点やはりこういうふうな、やっぱりこれは事務当局のミスであり、何ぼ裁判やったって、これは結論は私は明らかだと思うのですがね。しかしながら、かねがねから防衛庁が主張していることとはおよそほど遠い事件である。私は詳細もっとこまかいことをやりたかったのでありますが、この点についてどういうぐあいにお考えか、お伺いして、私、質問をきょうは終わりたいと思います。
  138. 山上信重

    政府委員(山上信重君) 代表者の件につきましては、もう先生御承知のように、天野重知さんという人は、事実上の組合の代表者で、それまでずっとこられた方でございますので、そういう方とお話しをした。そうして、この方は、いや十分承知したというようなことであったということで、これがまあ組合代表者が、法律上の代表者と言いますか、正式な代表者のほうから、それは、あれはいま代表者じゃないという問題が出ておるということ、そういうような形で従来話が行なわれていた事実、それが前提であったということ、それから契約書であるかないかということは、これは支払いの場合には正規の契約書をかわすのでございますが、これは契約書という意味合いでかわしたのではなくして、従来、国と地元と話し合いをしているときに、その話し合いの過程において事実の確認をした文書をかわしたというふうに了解しておるということが、まあ当方の控訴の理由になっておるような次第でございまして、これらにつきましては、今後まだ訴訟を通じて、あるいはその後の組合との話し合いにおいていろいろ解決をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  139. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 北富士の問題は、私もよく報告を受けております。なかなか歴史的に、因縁も、社会的にも非常に複雑な問題のようでございまして、非常に大局的見地に立って、政治的に判断をして解決しなければできないのではないか。そういう心がまえをもちまして慎重に対処していきたいと思います。
  140. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 本件に対する本日の調査はこの程度にいたします。     —————————————
  141. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 先刻に引き続いて、通商産業省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑のおありの方は順次御発言願います。
  142. 足鹿覺

    足鹿覺君 先ほど総理府のほうへお尋ねをいたしましたが、公害関係の審議会が九つある、その所管省と審議会の名称、おもなる審議対象、そういったようなことについて、先ほどは資料がなかったのですが、持ってまいりましたか。
  143. 野村正幸

    説明員(野村正幸君) まず第一が中央公害対策審議会でございますが、設置されているのは総理府でございまして、内容は公害対策に関する基本的な事項というものになっております。次に、生活環境審議会でございます。これは所管省厚生省でございまして、生活環境に関する重要事項につきまして、特に公害問題について公害部会を設けまして検討しておるところでございます。三番目が産業構造審議会でございます。これは所管省は通商産業省でございまして、産業構造問題全般をやっておりますが、その中に公害部会を設けまして、公害問題についていろいろ検討しております。四番目は水質審議会、これは経済企画庁に置かれておりまして、水質問題に関する重要事項について審議しております。その次は地盤沈下対策審議会、これも経済企画庁に置かれておりまして、地盤沈下につきまして調査審議しております。それから都市計画中央審議会、これは建設省に置かれておりまして、都市計画に関する重要事項につきまして調査審議しております。その次が首都圏整備審議会、これは首都圏整備委員会に置かれておりまして、首都圏整備に関する重要事項につきまして審議しております。次は近畿圏整備審議会、これは総理府に置かれておりまして、近畿圏整備に関する重要事項につきまして調査審議しております。最後は中部圏開発整備審議会でございます。これも総理府に置かれておりまして、中部圏の開発に関する重要事項につきまして審議しております。
  144. 足鹿覺

    足鹿覺君 わかりました。  そこで、先ほどもあなたのほうの答弁がむずかしそうだったから保留しておきましたが、公害対策閣僚会議、総理府が主催をされておるわけでありますが、私は、先ほども一元化問題に関連をして、一元化が好ましいけれども、この段階ですぐできそうにもないし、また無理をしてつくっても機能が発揮できなければ困る。したがって、公害対策閣僚会議というものは、少なくともフルに動いておるものだと思っておりましたが、聞くところによると、名ばかりであまり実がないというように聞いておりますが、そこで、さっきの、何回開き、何を審議し、何を決定したか、それはお調べになってきましたか。
  145. 野村正幸

    説明員(野村正幸君) 公害対策会議は、閣僚ベースで公害行政に関する基本的政策をそこできめて推進する機関でございます。これは必要に応じて開いておるわけでございますが、いままで四十二年十二月にこの会が設置されまして五回ほど開いております。開いておる内容は、公害規制二法——これは大気汚染防止法と騒音規制法、その規制法の審議、それから硫黄酸化物の基準につきまして審議しまして、あと公害防止計画につきまして内閣の基本方針を都道府県に指示して、関係都道府県知事につくらせるわけであります。そういう公害防止計画に対する指示方針をそこできめたというふうに聞いております。それから一酸化炭素につきまして、これも基準をつくります。それから最近では水質環境基準につきまして、これもきめて会議を開いてやっております。ただ、閣僚ベースの会議は、そこまで問題があがらなくても十分解決するものにつきましては、その下の次官レベルの幹事会、それからさらには課長レベルの連絡会がございまして、実質的にはその課長ベースの連絡会で相当多くの事項はそこできめております。ちなみに担当課長会議の開催数を申し上げますと、四十三年から最近まで四十六回開いております。課長レベル会議はひんぱんに開いて連絡調整をやっておるわけでございます。
  146. 足鹿覺

    足鹿覺君 わかりました。  大臣がおいでになったようでありますから。先ほど公害防止事業団について原理事長からお話を聞きました。私の質問に答えまして、いろいろと切実な現実的な要請が四、五点、具体的に出ました。厚生、通産両事務当局も大体事務ベースにおいても肯定ができるというように申しておりましたが、お打ち合わせになりましたか。その構想——今後の公害防止事業団というものの拡大強化、事業内容の整備刷新、特に地域の水域の指定等は全面的に解除するということ、それから四十年十月以前のものにしか適用しないということは、これは撤廃をするということ、それから融資を行なっておりますが、その利息低下のための政府の補給金が六千万円余にすぎないということ、これではもっと低利に貸したくても貸せられないということ等々、一々具体的に御答弁があり、さらに出先機関を持っておらない、いま直ちに不便ではないけれども、県、市町村等とこの問題は協議をしなければならないので、直ちに不便がないが、できることならば、そういう出先があれば非常にいい、こういうような諸点について私も建設的にお尋ねを申し上げましたし、まじめにお答えをいただきました。  そこで、これを一括して今後の公害行政の大きな重点として、いま私が指摘した点も御確認されると同時に、大臣としての構想もひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  147. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 公害につきましての私の考え方は、先ほど申し上げましたとおりのことを基本にいたしております。また、公害防止事業団には非常にりっぱな理事長を得まして私ども喜んでおるのでありまして、事業団の仕事につきましては、なるべく事業団の希望されるような方向に政府全体といたしましても力を合わせてまいりたいと考えております。  そこで、第一点の公害防止事業団の貸し付けについて、昭和四十年の五月の末までに設置された工場に限り云々ということにつきましては、いろいろないきさつもあるようでございますけれども、私ども全力をあげまして、事業団の希望しておられるような方向で解決をはかりたいと思います。  それから、金利引き下げにつきましても、これは今後もう少し、一般の問題でございますから、一般論として努力をいたしたいと思います。  それから、地域指定の問題でありますが、この地域を国全域にするということにつきましては、これも私どもとしては前向きに処置をいたすべき問題と考えております。  出先機関の問題でございますけれども、これは非常にむずかしい問題になるのではないかと思いますので、すぐにお約束を申し上げることができかねますけれども、将来とも、実情に応じて検討はいたさなければならないと思います。
  148. 足鹿覺

    足鹿覺君 それでは先へ進みまして、排気ガス規制の問題について運輸当局並びに通産当局にお尋ね申し上げますが、去る、本年三月二十八日の本院の予算委員会で総括質問の際に、わが党の小野明君の質問に答えられまして、橋本運輸大臣はこのように答えております。「やはり問題は二つの面からこれを規制していくといいますか、考え方でいかなくちゃならぬ問題があると思います。一つは、これはメーカーがやはり考えなくちゃならぬと同時に、できました問題については、国が何らかの措置をとらざるを得ないという二つの問題があると思います」と、最初に述べております。最近著しく大気汚染を全国的に拡散しておりますのは、やはり自動車の普及ということであろうと思います。そこで、自動車がまき散らす一酸化炭素その他の複合ガス体というものの排気ガス対策として、私はどうしても、大臣、納得のいかないものがある。つまり、橋本さんもここで指摘しておられますように、メーカーがやはり考えなくちゃならぬということなんです。輸出をする自動車については除害装置をしたものを輸出をしておる、わが国は。ところが、国内のものに対しては、排気ガスの除害装置をしているものを、コストの関係ですか、価格の関係か知りませんが、やらない。これはどうも私には合点のいかないことだと思う。外国へ輸出するものに対しては、除害装置をしなければ輸出がきかない。国内は、これだけやかましい公害をまき散らしておるものを、除害装置も今後いつやるか、メーカーは独自の立場で検討しておるというようなことではいかぬじゃないですか。これはやはり通産省としては、発生源として大きな問題でありますから、輸出同様に、自動車の除害装置を製造と同時につくる。そんなに高いものでもないだろうと思いますが、こまかいことはともかくとして、そういうふうに踏み切るべきじゃないですか、いま。外国のには除害装置がついておる。国内では排気ガスをまき散らしてどんどん飛び歩く。これでは全く納得いきません。この点はどうですか。
  149. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一酸化炭素につきましては環境基準を決定いたしたわけでありますが、この基準の決定は、聞くところによりますと、アメリカにおいて行なわれております基準より決して弱いものではないということでありまして、すでに、わが国のメーカーがつくっております新車は、この基準に合致するように防止装置を施しております。しかし、まだ古いものはそうなっておりませんので、中古車につきましては、今年の八月からその基準に合わせるようにするということだそうでございます。  次に、アメリカの場合は、カリフォルニア等におきまして炭化水素の基準を設けておるよしでございます。この点、わが国は設けておりません。したがって、この点につきましては、輸出車と、わが国における国内で用います車との間に差がございます。私どもとしましては、将来、炭化水素についての基準が設けられるようになりますれば、当然メーカーに対して、それに適応した処置をとるように申さなければならないことになるわけでございます。
  150. 足鹿覺

    足鹿覺君 これは「公害産業」という新聞記事です。「この人と」というまあ対談のかっこうで出ている。その冒頭に、これは日本における自動車産業の大メーカーの専務ですが、「自動車と排気ガスの問題、これは各自動車メーカーがそれぞれ研究しているようですが、いいかげんにやっていると、いまにひどい目にあいますね。カリフォルニア州が自動車メーカー十一社を告訴したなんてことも起こりましたから。」云々と、こう言っておるのですね。そうすると、何かいま新車には全部きちんとやっておるように大臣はおっしゃられるけれども、この自動車メーカーのほうが正直に言っておるような感じを受けますが、この点いかがですか。
  151. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私の聞いておりますことに間違いがないといたしますと、一酸化炭素につきましては、日米両国とも同じ規制をしておる。炭化水素につきまして、アメリカの中でカリフォルニアが規制を始めましたので、これに適応するためには特別の装置を施さなければならない。わが国は炭化水素の規制がございませんので、その点は、わが国の国内を走りでおります新車にはそれについての装置がない、したがって、おそらく、いまお読み上げになりましたのはそのことでありまして、将来わが国でも炭化水素の規制をするようになれば、カリフォルニアにおけると同じような制約が車の上に出てくる。現在はしかしまだ炭化水素の規制はわが国はしておらない。こういうことと承知しております。
  152. 足鹿覺

    足鹿覺君 先ほども私申し上げましたように、一酸化炭素ということは一つの例として申し上げたので、やはりいろいろなものが含まれたいわゆる複合ガスですね、それのきちんと除害装置を施すと、カリフォルニアがそういうふうに踏み切ればこっちもやらざるを得ないというようなことではなしに、有害なものはきちんと踏み切って除害装置を完備すると、こういうことが好ましい姿ではないでしょうか。
  153. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) おそらく、いまから何年かたちましていまを振り返りましたら、あのときはずいぶんルーズなことをやっておったというようなふうに、公害の問題というものは年とともに意識がきつくなっていくと思います。いまから数年前を振り返りましたら、やはりそうでございましたので。そこで、年とともに、技術進歩、あるいは認識の定着とともに規制はだんだん強くなっていくべきものだというふうに私は思っておりますけれども、先刻も申し上げましたように、現実にはともかく企業が精一ぱい努力して、ついていける範囲の規制ということも、これもまた片一方で考えざるを得ませんので、そういう意味では完全に理想の状態に一足飛びに飛んでいけないというのがわが国の実情でありますし、また、諸外国においても州などによって規制が違いますのは、やはりそういうことを反映しておるのではないだろうか。私は現在の状態をもちろん理想的な状態だと思っておりませんが、問題が比較的新らしく、意識の変化というものが非常に急激でありますが、すぐにいろいろなものがそれに対応できませんので、行政としてはやむを得ないことながら、現実にできる限りの規制をだんだんに強めていく方向でやっていく、こういうことであろうと思っております。
  154. 足鹿覺

    足鹿覺君 この自動車の対象で、いま一酸化炭素の除外装置の対象になっておる車種はどういうものですか。
  155. 隅田豊

    説明員(隅田豊君) ただいまの一酸化炭素の規制の問題でございますが、現在、規制の対象にしておりますのは新車でございまして、しかも軽自動車以外のものでございます。それでガソリンを燃料とするものでございます。
  156. 足鹿覺

    足鹿覺君 新車はそういう除外装置の対象としていつから実施になったのですか。
  157. 隅田豊

    説明員(隅田豊君) もう少し詳しくこまかく申し上げますと、四十一年から新らしくつくる車は、メーカーに一酸化炭素が三%以下という規制をつけております。それが四十四年度に二・五%以下というふうに強化いたしました。それからいま先生のお話の中にございます除外装置をつけるというお話がございましたが、これは必ずしも除外装置をつけるということではございません。ことに一酸化炭素の対策といたしましては、特利な装置をつけるよりもエンジンそのものの燃え方を非常にうまくする、まあからだで言えば体質改善をする、そういうような設計上の配慮、生産上の配慮をした結果でやったほうがうまくいくわけでございまして、現在、日本の車、日本で売られておる車、これは先ほど大臣からお話がございましたように、炭化水素に対しての規制はまだ行なわれておりませんので、特別な装置をつけませんで、そういうエンジンに対する基本的なやり方を変える、整備する形で対策が行なわれております。そういう意味ですから、ちょっと補足説明になりましたが、特別な装置は現在つけていないのが普通でございます。
  158. 足鹿覺

    足鹿覺君 私はこの点はしろうとですから、しろうとらしいことを伺うのですが、いまあなたのお話は、以前は、そうすると、そういうエンジン装置はなかった。それが昭和四十二年ですか、四十一年ですか、それからそういうエンジン装置に切りかえて特別な除外装置はしないが、エンジンの構造を改良することによって一酸化炭素は完全に除去できると、こういうふうにした、こう理解していいんですね。
  159. 隅田豊

    説明員(隅田豊君) 構造改善といいますか、簡単に申しますと、質がよくなったというふうに考えいただいてもいいと思います。何といいますか、いろいろな構造そのものはそう変わっておるわけではございません。質がよくなったというふうに考えていただいていいと思います。それから現在では二・五%というところまでそれで下げさせることができているわけでございます。これからまた、もちろん将来もっと下げる方向へわれわれも規制を強化していきたいと思います。
  160. 足鹿覺

    足鹿覺君 ハイオクタンですね、このごろずいぶん使用されておりますし、これには御存じのように鉛が入っております。これは相当人体に悪い影響を及ぼすというそういう油を一方では売っておる。どうも何といいますか、企業の性質として、もうけるものには何にでも手を出すというのはわからぬわけではありませんが、どうもあまりにも利潤追求本位に過ぎる。別にハイオクタンを使わなくても、普通のガソリンでもけっこうやれるのじゃないか。こういう有害と認められるものをどうして大臣お認めになるのですか。こういうものを片っ方でどんどん規制を加えて、エンジンを改良しておきながら、また片っ方で新しい油を使っていくということでは、これはナンセンスじゃありませんか。
  161. 隅田豊

    説明員(隅田豊君) 技術的な問題でございますので、私、御説明させていただきます。  普通、内燃機関を性能を出します場合、いま言われております鉛化合物を入れた燃料を使いますと非常に性能がよくなるわけでございます。従来は性能をよくするために、必ずしも商売を繁盛させるというよりも、性能をよくするために、飛行機のエンジンも同じことでございますけれども、性能をよくするためにそれを使っていたわけでございますが、そのころはいまのように公害問題はそれほど大問題ではございませんでしたので、性能をよくするということがいろいろな意味で社会的な利益であり得たわけでございますが、最近になりますと、御指摘のとおり、鉛の問題というのは大きな問題になってまいりました。鉛の入らない燃料を使っても、簡単にいえば性能を落としても使えるようなエンジンを考えなければいかぬのじゃないかというのが現在の問題でございまして、それを燃料の問題といたしますと、これは通産省のほうの問題でございますけれども、同時に、エンジンの規制という立場からもわれわれもそういう方向を考えていかなければならぬ、こういうふうに考えます。
  162. 足鹿覺

    足鹿覺君 ついでに運輸当局に伺いますが、中古車の除外装置はどういうふうに現在やっておるのですか。
  163. 隅田豊

    説明員(隅田豊君) 先ほど申しましたとおり、きょう現在まででやっております規制は新車だけでございます。で、中古車は、いろいろやはり古くなりますと排気ガスの成分が悪くなりますので、それに対しまして、従来は一応ユーザーに対しまして定期的な整備というものをよく行ないなさいということの行政指導を行なっていろいろやってまいりました。これは整備をちゃんといたしますと、まあ大ざっぱに目の子で申しますと、半分くらい質がよくなります。ただ、やはりそうは申しましてもいろいろなかなか行政指導というものの限界がございますので、車両検査の段階で何かはかる方法はないだろうかというのがいまわれわれの検討事項になっております。新車の場合にはこれは実験室的な測定も可能でございますので、相当大がかりな設備をつくりまして、時間をかけて測定をして何%ということを、先ほどのようなことをやっておるわけでございます。しかし、車両検査で普通の人が持って来るのを検査場でやるということになりますと、短時間にしかも割合に簡単にやらなければなりませんので、これはなかなかむずかしい問題がございます。しかし、一応ある程度の簡単な測定器の開発のめどがつきましたので、ことしの秋には車両検査でもってこの排気ガスの一酸化炭素の測定を始めたい、こういうふうに考えております。
  164. 足鹿覺

    足鹿覺君 聞くところによると、まだ軽四輪等は来年の一月からだと、こういうふうに——だから先ほど対象車種はどういうふうになっておるかということを申し上げたのですけれども、   〔委員長退席、理事八田一朗君着席〕 なかなか答弁がこま切れなものですから、ちゃんと答えていただきたい。
  165. 隅田豊

    説明員(隅田豊君) 申しわけございませんでした。軽自動車については、従来は、先ほども軽自動車を除いてと実は私は申し上げたつもりだったのでございますが、軽自動車は対象になっておりません。ただそれの理由といたしましては、技術的にはやはり非常に小さい車と申しますのは、小さいというのは大きさよりもエンジンの問題でございますが、エンジンの小さい車は対策がむずかしゅうございます。そういうことが一つございます。それからやはり大きなものはそれだけたくさんガスを出す、小さい車はそれだけガスが少ない。簡単にいいますと、いまの軽自動車というものは普通の二千CC級の、先生方お乗りになっておりますような車と比べますと、大体排気ガスの量が五分の一くらいでございます。そういう意味では一台当たりでは非常に少ないわけでございます。そういう意味で、いままでは規制を延ばしていたわけでございますが、やはり相当の数走っております。いつまでも置いておける問題ではございませんので、技術開発を急がせまして、来年の一月からは軽自動車も対象にするということを決定したわけでございます。しかし、従来も軽自動車型式認定という制度がございますので、ある程度の線までは入るような行政指導をしながら、徐々に下げてはまいってきておりますが、ただはっきりした規制という形では来年の一月からでございます。
  166. 足鹿覺

    足鹿覺君 車検を通じて、そうすると、それを確かめて全国的に一酸化炭素が完全に近い除外の装置が完了するのはいつごろですか。
  167. 隅田豊

    説明員(隅田豊君) この排気ガスの対策がゼロにならない限りは、車はどんどんふえていきそうですし、交通事情にもわれわれから考えますと悪い方向に変化が出てきますので、ゼロにならない限りは、いつごろになったらだいじょうぶだということは、ちょっとわれわれとしても予測がつかないわけでございます。現在われわれは技術的に追っかけていきまして、とにかくできるだけ下げていくという目標で考えておりまして、五年ぐらい先までの一応目標をつくろうということで、現在はその長期計画の検討中でございます。
  168. 足鹿覺

    足鹿覺君 どうもあまりこの点で時間を食ってもいけませんから、水質問題で経済企画庁に、先ほど審議会が出ましたので伺いますが、この調査対象のうち七十七水域が未設定であると、こういうことを聞いておりますが、水質基準設定が行なわれておるのは六十八水域に過ぎない。まだ未指定が多い。ところが、この未指定水域がどんどん汚染が進行する。水質基準設定することを急いでやる必要があるのではないか、計画的作業をもっと切り上げてやる必要があるのではないか、かように思いますが、大体いつごろこの指定を完了される予定でありますか。
  169. 白井和徳

    説明員(白井和徳君) 基本計画に載っております水域は全国で約百六十八水域でございます。そのうち、現在まで調査並びに調査中の水域が百四十五水域でございます。先生御指摘のように、指定水域になりましたのは、ただいま現在では七十五水域が指定水域になっております。したがって、その調査水域の中から指定水域になったものを除きまして約七十近くあるわけでございますが、このうち、四十五年度の調査水域も入っておりまして、実際調査が完了し、審議会で部会を設置し、指定水域にすべく準備中なのは約三十水域ぐらいだろうと思います。この約三十水域のうち二十水域はできれば本年じゅうに部会を設置いたしまして、水質基準設定したい、かように考えております。
  170. 足鹿覺

    足鹿覺君 いつごろですか。
  171. 白井和徳

    説明員(白井和徳君) ですから、その残っているうちの……。
  172. 足鹿覺

    足鹿覺君 何年ぐらい。
  173. 白井和徳

    説明員(白井和徳君) 三十水域のうち約二十水域ぐらいは本年度じゅうに指定水域にいたしたいと考えております。
  174. 足鹿覺

    足鹿覺君 あと全部。
  175. 白井和徳

    説明員(白井和徳君) それは調査中の水域がございますので、調査には約一年かかります。しかも、そのあと解析をし、それから部会を設置して、まあ審議会をやりますと約一年半かかりますので、残りの調査完了した水域は本年じゅうにやりますけれども、調査中並びに四十五年度で調査する水域については、その後ということになろうかと思います。
  176. 足鹿覺

    足鹿覺君 とにかくあなた方の官庁のお仕事というものはなかなか気の長い話のようですな。そこで、せっかく水域を指定いたしましても、監視体制がなっておらぬそうですね。だから、この間の多摩川の例なんかをあげておるわけですが、第一、測定器具や測定機械の上でも困難な面がある。この発生源の良心に期待するのが精一ぱいだと、こういうことなんですが、技術職員をふやせるような財源措置も国は講じておらない。   〔理事八田一朗君退席、委員長着席〕 専門職員を養成すること、大気汚染の観測のように測定点を設置して、常時監視体制を確立しなければ、せっかく指定をいたしましても、その保持が困難になる。監視体制がなければ何をするかわからぬ。そこに隘路があると思うのですが、指定しただけでは問題は解決しないではありませんか。
  177. 白井和徳

    説明員(白井和徳君) 現在まで七十五水域指定しております。この水域につきましては、単に基準設定しただけではございませんので、われわれとしては、指定水域になったあと、いわゆるその指定水域内の水質汚濁の状況は、アフターケアでもって定期的にその水質の状況を把握しております。
  178. 足鹿覺

    足鹿覺君 あなたの答弁もあまり親切な答弁でもないようだな。水質環境基準設定について、亜硫酸ガス、一酸化炭素に次いで第三番目が環境基準であるわけで、おくれていると思うのですが、政府部内で検討した際に用途別基準にするか、水域別基準にするかで各省間で相当もめたというように聞いておりますが、結論的には、水域別に健康保持と生活環境の二面について設定するということになったと聞いておりますが、今後、水質審議会にかけて、三月中に閣議決定をするという報道が伝わっておりますが、もう三月はとうに過ぎておりますが、いつになったらやりますか。
  179. 白井和徳

    説明員(白井和徳君) 水質汚濁にかかる環境基準につきましては、先生御指摘のように、国民の健康にかかる項目と生活環境保全にかかる項目と二本立てになっておりまして、その基本的な方針は四十五年の四月二十一日に閣議決定いたしました。それで、御承知のように、生活環境保全にかかる項目につきましては、これは各水域がそれぞれ流量とか、あるいは立地している産業、あるいは利水目的が各河川によってそれぞれ異なるのでございまして、したがって、それぞれきめられた項目について、その当てはめ行為を今後やっていこうということで、できれば現在、水質保全法の指定水域については五月中に当てはめ行為を完了し、閣議の決定にいたしたい、かように考えております。
  180. 足鹿覺

    足鹿覺君 そこで最後に大臣に伺って終わりますが、今度の法案そのものは、私は審議すれば一時間とかからずに済んでしまうので、その背景を聞いておったのですよ。そこで、この機構図を見ますと、大臣、これは昔の、高度成長以前の日本産業が石炭産業と鉱工業とに大きなウエートがかかっておった当時は鉱山保安局というものであった。それを鉱山を取って公害をくっつけた。産業立地部を削って若干手直しをしたという、まあ文章で言えばそれだけですね。これが日本公害行政の上にどのような大きな役割りを果たすのでしょうか。通産大臣、私は何と乏しいその公害行政ではないか、ほかに改善をされるつもりがあれば別ですけれども、結局いままでしろうとなりに模索をし、考え、勉強してきたところから見ると、今度の通産省のこの機構改革をもってしては、これだけとは私は思っておりませんけれども、それにしてもあまりにも近視眼的な機構改革じゃないですか。別に悪いというのじゃないですよ。悪化ではないと思うんですが、いわゆる鉱山保安局の「鉱山」を取って、そして公害保安局にされた、産業立地部を特に削っておるのですね。これはあとで経済企画庁に伺って終わりますが、私どもは、まことに言っては失礼でありますが、現在の発生源の通産省としての公害行政としては、いささか国民の期待に沿わない点があるんじゃないか。もっと大臣に構想があれば承りたいし、現状をもって甘んじられるならいたしかたありません。別に私どもはこれが悪いというのじゃない。いかがですか。
  181. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まず最初に申し上げておきたいと思いますのは、私ども政府といたしましては、公務員の定員というものについて、これが野方図に増大するということは、結局、納税者に御迷惑をかけることと考えておりますので、できるだけ定員をふやさないことを考えてまいっております。しかも、世の中の変化に従いまして従来非常に必要であった行政がそれほど必要でなくなる、あるいは新しい必要が生まれるというようなことがきわめてしばしばございますので、したがって、総定員法に示しておりますように、なるべく現在持っている人員を有効に活用しよう、必要によっては転用をしようという、そういう基本方針を持っております。したがって、通産省に立地の問題が生じ、また公害の問題が生じました。そこで、立地公害部というものを従来持っておりますわけでございますが、本来このことはやや異質的なものでありまして、立地ということは公害関係はございますけれども、しかし、工業立地という問題はもっと広いいろんなものを含んでおります。農村の工業化にいたしましても、あるいは新全国総合開発計画における大規模工業地帯の造成にいたしましても、立地という問題はそういうものをも含んでおりますから、公害と一緒になる部分もございますが、本来非常に似ておって一緒になったというふうにも考えられません。しかし、これも便宜措置でやっておったわけでございます。ところが、片方で、最近御承知のように、従来鉱山保安といわれておりましたものは、山の中の主として坑内の安全ということを主にやっておったわけでございますけれども、それ以外にも多少土地の陥没というようなことはございましたが、坑内保安、人命尊重ということが主たる鉱山保安の仕事でございました。ところが最近、神岡鉱業でありますとか、あるいは安中製錬所とかいうような例にございますように、鉱産物の製錬とか、採掘とかいうことから、公害が外に出ていくということがしばしば見られるようになったわけでございます。そこでいろいろ考えまして、そもそも鉱山における従来の金へんの鉱害がいろいろな意味で公の公害に転化しつつございますので、従来、鉱山の金へんの鉱害について持っておった知識、これは公の公害とかなり知識においても経験においても共通点がございますから、そこで、公の公害と鉱山の金へんの鉱害並びに保安とを一つ行政にするほうが行政の知識、経験としては自然ではないだろうか、そのほうが能率があがるのではないかというふうに考えましたわけでございます。これが今回、公害保安局というものに改組をしようと考えた理由でございます。  そういたしますと、そこへ従来化学局に、たとえば高圧ガス等、あるいは火薬等の保安行政公害行政がございましたから、それも合わせて今度の公害保安局のほうへ移す、そこで公害関係、それから鉱山保安関係一つの局にいたしまして、部は立てませんけれども一つの屋根の下、そういたしますと立地のほうが残りますので、これはもう立地部というほどの必要もございませんから、立地のほうは企業局に残すと、こういうふうにいたしましたので、私どもとしてはまあ比較的自然な、一つも人員をふやさずに、機構を大きくしないでできますこととしては進歩であろうと、こう考えて御提案を申し上げました。もちろん全然別の理由で、機構はふやしても大きくしてもいい、人員をふやしてもいいということがございますと、また別の考え方もあったかと思いますが、これは先ほど申し上げましたような理由で、私どもそういうことをしないという原則を持っておりますので、その原則の中で最善考える御提案をいたしたようなわけでございます。
  182. 足鹿覺

    足鹿覺君 さすがに直接自分の省の機構の問題ですので、大臣はたいへん力を入れて答弁をしていただきまして、大体まあお気持ちはわかったのですけれども、とにかく、私は別にこれをけなすわけじゃありませんけれども、いま公害問題をかかえておる発生源の通産省としては、私どもが期待を持っておったような機構改革ではないということは、申し上げても言い過ぎではなかろうと思います。いま国家公務員の総定員法の問題を御引用になったのですが、おことばを返すわけじゃありませんが、私はそういう一律的なお考え方がとにかくわからない。やはり時代が変わってくれば、あるところはふくらんでいくでしょう。ふくらむものも総定員法があるからだめだ、こういってふくらまさなければ、新しい行政というものは強力に展開できないのじゃないかと思います。どうも私は、そういう点でこの間も予算委員会で荒木さんにも申し上げ、運輸大臣にも御質問申し上げたけれども、どうも政府は総定員法というものをたてにとって、とにかく必要なものにまでしわを寄せておるという感じがいたします。どうも大臣の御答弁を聞いて、その点はもう少しよく御再考になってしかるべきではないか、かように申し上げておきたいと思います。  宮崎さんが最初からお待ちでありましたので、結びに、この新全総の三三ページに、私もこの公害問題の取り扱いを新全総はどの程度のボリュームで取り扱っておるかということを見て驚いたのですが、たった半ページですね。これには全くあいた口がふさがりませんで、これでいわゆる新全総の計画が何を意味しておるかというと、いわゆる大企業中心の、いわゆる利潤追求にきゅうきゅうとして、その廃棄物中心とする、全人類をこれからどん底に突き落とすかもしれないこの公害問題に対しては、わずか半ページしか割いていない。私はこの姿勢は間違っておると思う。どういう意味でこう軽くお取り扱いになったのか。たまたまよくにくまれ口をたたく私の癖でありますから気にかけないでほしいのですが、これは作文だという話なんですよ。非公式な話になると、政府みずからも、あれはまあ作文でして、こういうことをよく言うのですが、作文にしてみても、もう少し力の入れ方があったんじゃないか、こういうふうに思います。具体的に申し上げますならば、新全総の公害防止というものについてはもう少し、こういう抽象的なものではなしに、具体的に大胆な町づくりの構想はどうあるべきか。工場と住宅を離して、騒音のない静穏な生活を国民が営むことができるようにするにはどうあるべきかといった新しい七〇年代の人間生活、すなわち、内政の充実の末端の人間生活のあり方を示すべきではなかったかと私は思うのです。もしほんとうに、総合的にこの新全総が国民の期待の線に沿っておるものだとするならば、相当のページをさき、具体的にそれを示し、予算の裏づけをして、初めて私は国民の期待に沿う新全総として政治の指標ともなったんではないか。これをただ単に作文に終わらせるか終わらせないかは、政府の決意と内容によりますが、いずれにいたしましても、遺憾千万に思います。この点、御所見があれば承りたいし、また前に経済企画庁長官をなさってずいぶん切れ味のよいところをお見せになりました通産大臣も、当時を思い起こして、四十二年の新全総計画から始めて——この前か四十二年ですね、あの当時は経済企画庁長官じゃなかったですか、大臣は。と私は思うので、経済企画庁長官として御質問申し上げた記憶があるのですよ。その前かな。とにかく米価二年据え置き論など大胆に打ち出された印象が私などまだ残っておるのですが、そのとおりになってしまいました、いま。あなたが御指摘になったとおり。このことだけは、そういうようなことから非常に遺憾に思います。発展の裏にはいろいろな公害がびまんする。これに対する未然防止や基本的な構想というものがあってしかるべきではないか。このことを申し上げて、何か御所見があれば起案者である宮崎さんはもちろん、大臣から御所見を承わりまして、あまり長くなると御迷惑をかけるかもしれませんので、この程度で私は質問を打ち切りますが、どうかよく経企庁なり通産省におかれては、七〇年代の新しい公害のない平穏な秩序のとれた国づくり町づくり村づくりというものはどうあるべきかということに思いをいたしてほしかった。今度の機構改革もそれに近づく一歩としてはそれなりに評価いたしますが、このことを申し上げて終わります。たいへん失礼いたしました、言いたいことを言って。
  183. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) 非常に基本的な問題について御批判をいただきましたが、この新全総計画がどういう経緯でつくられたかということはよく御承知と思いますが、結局、いま非常に問題になっております公害問題、大体過密地域で非常に深刻な事態を生じておるわけでございますが、これに対してただいままで御議論がありましたように、いろいろな施策がとられております。しかし、長期にわたって考えますと、これから都市化も進みますし、経済の規模も大きくなっていく、そろそろ現在過密問題が問題になってきておる太平洋岸の地域、あるいは大都市の地域というようなところを高度に利用してきた従来の考え方をこの際考え直さなきゃならない。そういう観点で国土利用の再編成とか、あるいは産業の立地につきましての新しい方式というようなことを、この全総計画は考えたわけでございます。そのための具体的な手段というものがいろいろ書いてございますが、結局私どもはこういった計画の全体を通じまして、国土の利用という、そういう基本的な面から公害の問題とか、あるいは交通の問題でありますとか、地価の問題でありますとか、こういうものを解決していくのでなければ、ほんとうの意味での解決はなかなかむずかしい。こういう観点でこの計画ができておるわけでございまして、そういう意味で申し上げますと、この全総計画そのものが、いわば基本的には公害というような問題に対する一つの基本的な解決策を見出そうという考え方でつくられておるわけでございます。  そこで三三ページの課題の御指摘がございましたが、これはその計画の中の生活環境の問題、これもいろいろ書いてございますが、その中で、公害対策としていわば狭義の意味で行なわれております問題、これにつきましてもいろいろと課題がございます。そういう点をここに書いてあるわけでございまして、私どもの問題意識としては、むしろこういった計画を通じて、国土の利用の形を変えていく、あるいは大都市の地域から産業の分散をうたっておりますが、そういうことを徹底的にやっていく、あるいは地方に工業を持っていくにあたりまして、生活環境とか、あるいはいろいろの条件というものを十分考えに入れて立地をしていく、こういうことによって非常に困難な公害問題というのに対処していくべきである、こういうことで考えておるわけでございまして、決して当面のこの問題を軽視しておるというようなことではないことを御理解願いたいと思います。
  184. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私が経済企画庁におりました当時、この新全国総合開発計画の作業が進んでおったわけでございますけれども、私の気持ちといたしますと、いま宮崎局長が答弁されたとおりであったと思います。つまり、当時、経済企画庁には公害問題についての問題意識はかなり高うございまして、この点は毎年生活白書などでも取り上げておりました。ところで新全国総合開発計画は、そういう意識に立って、将来公害がたいへんだ、たいへんだということを申しますかわりに、そうでない国土の発展はどういうふうにすればいいかということを、むしろそういう方法を先に立てて述べておるわけでございます。つまり、大規模工業地帯を今後どこにつくる、あるいはもう瀬戸内海に大きなタンカーが入ってくることは不何能でもあるし困るので、海洋に石油の大きな貯蔵基地をつくって、そこからパイプラインで油を引く必要がある、あるいは海水浴場の確保をこれから国としてどう考えるかとか、全国に草地を造成する、これは酪農との関係もございますが、やはり生活環境考えておるわけでございますが、そういうかなり新しい提言があの中にたくさんございますのは、やはり公害というものをかなり強く意識して、これから昭和六十年までの間に、そうでない経済発展はいかにあるべきかということを述べておるというふうに考えておるのであります。したがって、公害そのものについて触れておる個所は少ないかもしれませんが、むしろ全体がそういうことを意識して書かれておるというふうに理解すべきかと思います。  それから、私自身は通産大臣に任命されたのはきわめて突然であったのでありますけれども、突然に聞かれまして、通産行政の目下一番大切な仕事は人間性を回復することだというふうに答えたわけでございます。それは私がそのときにまさにそう考えたからでございまして、今日もその初心は忘れないように行政はやらなければならないと考えておるような次第であります。
  185. 上田哲

    ○上田哲君 公害問題についても後ほどお伺いしたいと思いますけれども、私は四月の十日に、防衛三法について本会議の代表質問を行ないましたときに、通産大臣の御出席を求めましたが、たまたまガス事故がございまして御出席をいただけなかったので、本会議の席上、委員会にゆだねるということになっておりまして、そこでまず防衛産業、兵器産業の問題についてお伺いをしたいと思います。  最近、非常に自主防衛論というのが高まってまいりまして、四次防を展望するわけでありますけれども、自主防衛論の大きな骨格をなすものは言うまでもなく兵器の国産ということ、あるいは国産能力ということになるのでありましょう。これについて中曽根防衛庁長官は、四十二年度のデータをあげて日本の鉱工業生産に占める防衛生産の割合は〇・四%だ、だから、たかだか並べてみれば皮革産業ぐらいのウエートしかないのだということをほかの質問に答えております。これは一体国民の実感からしても、倍々にふえていく防衛予算なり、あるいは七十年代の経済展望の中で防衛産業に大きなウエートをかけようとするように見える日本産業界趨勢からして、この〇・四%という現状では理解しがたい実感があります。そこで、四十二年度というデータも古うございますし、所管省である通産大臣から日本経済の今時点における防衛産業の占めるウエート、あるいは今後の経済展望の中での防衛産業の将来像、そうした点についてまず大まかにお考えをお示しいただきたいと思います。
  186. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私ども事務当局が調査いたしましたところも、中曽根防衛庁長官が言われたところと似たような数字のようでございます。工業生産額に占める防衛生産総額、四十年度〇・五、四十一年度〇・五、四十二年度、この辺から申し上げますと、工業生産額が三十九兆六千六百二十三億円のうち一千七百二十三億、〇・四%、四十三年度四十六兆二千八百四十五億円のうち一千九百八億、〇・四%。この場合の防衛生産額の中には航空機を含んでおるということだそうでございます。
  187. 上田哲

    ○上田哲君 いや、さっそく答弁漏れましたね。そういう数字でありますけれども国民の実感からしましても、現に組み上げられていく四次防、あるいは現在進行中の三次防のたとえば二兆三千四百億円というような大きな数字から見ても、また、自主防衛というものの骨格をなす兵器の国産という方向から考えても、日本の生産性がいかに高まったとはいっても、その中に占めている数字は〇・四%だからというだけでは実感としては理解しがたい部分があるだろう。なかんずく日本の兵器工業界とでも言いましょうか、防衛産業界が目ざしている意気込みというものから考えて、こうした数字というものだけでは理解できない感覚がある。日本経済のたとえば七〇年代の趨勢の中で防衛産業が骨格を占めるのじゃないかというような見通しというものは、いろいろなところでそれなりに言われているわけです。そういう点で今後の日本経済、あるいは生産性の発展の中で、一体、防衛産業趨勢、国産防衛産業趨勢というのはどういうふうにお考えになるかという点を大まかにひとつ御見解をいただきたいわけです。
  188. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まず、最初に、私どもは防衛産業という中に航空機産業を含めておりませんので、それをまずお断わりいたしておきます。航空機産業について、私ども日本で将来非常に得意とする産業になり得ると考えておりますから、これは大いに助成をいたしたいと思っております。  残りの武器についての産業でございますけれども、これは私どもは自衛隊の装備をなるべく国産化するという目的がございますから、それに沿う範囲で兵器産業というものを伸ばしていきたい。ただ、その場合に兵器を輸出して稼ぐというようなことはあんまり私どもは気が向きませんので、ほかに輸出するものが幾らでもございますから、あまり輸出というようなことを考えて兵器産業を助成するというようなことはいたしたくございません。そういたしますと、国の生産力が確かにまだまだ大きくなってまいりますけれども、現在その中で兵器産業というものが占める割合というものはまあ微々たるものであろう、四次防というようなことをおっしゃいますと非常に大きな金額に一応なりますけれども、実は人件費がもうばかにならない大きなものであるように私は聞いておりますので、実際はそこにございます数字とわが国の兵器の年々の生産額というものとは、ちょっと対照できないような関係にあるというふうに承知をいたしておるわけでございます。
  189. 上田哲

    ○上田哲君 後ほども伺いますけれども、ちょっと忘れるといけないのでお伺いいたしますが、航空機産業には将来非常に大きな期待をかける、したがって、いまの数字の中に含まないということですけれども、また、輸出の問題にも触れられましたけれども、防衛産業としての航空機の、たとえば対米輸出ということもお考えになっているかどうか。それから防衛予算の中で人件費が非常に大きいので兵器産業のほうにいく分は少ないのだというお話がありましたけれども、それではどのくらいになっているのか。
  190. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 実際の過去の数字を申し上げますと、あとのほうの御質問にお答えできると思いますが、私どもは武器等製造法で武器の生産額を調べておりますが、年々の推移、最近の推移を少し申し上げてみますると、四十一年度のいわゆる武器の生産額が全体で百五十九億であります。四十二年度が百四十八億、四十三年度が百八十一億、四十四年度が百九十四億でございます、これはまだ推定が入っておりますのでわかりませんが、大体そのくらいな金額になろうと思います。したがいまして、これから先もそうこれが、たとえば四次防で年々倍になるとかいうふうな飛躍的な増加は考えていないと私は承知をいたしております。  また、航空機のほうはどうかということでございますが、航空機のほうの全体の生産額は四十一年度が五百三十億、このうちいわゆる防衛庁用の航空権が三百四十四億でございます。四十二年度は、全体の航空機生産が七百八十八億でございますが、そのうち防衛庁用が四百六十六億、四十三年度は九百二十二億の全体航空機生産に対しまして、四百八十億円が防衛庁向けでございます。以上のようなことでございまして、四十四年度になりますと、これも推定でございまして、まだわかりませんが、全体で約千億の航空機工業生産のうちで、防衛庁の占めております比率は、金額は五百四十七億、全体の五五%弱というのが実情でございます。そこで、いま申し上げましたような趨勢からいたしまして、私どもこれから先、防衛庁用の需要が四次防にかけましていろいろと国産のものが出てまいりますので、金額はある程度はふえてまいるとは思いますが、いわゆる一般の鉱工業生産の伸び、特にこれから重点になると思われる機械工業、これは機械工業全体でもって、私どもこれから先五年間年率平均でもって一五%強というふうに考えておりますが、おそらくそういった伸びから比べますと、年率の伸び率は防衛用の航空機並びに武器というものは相当程度低いと私は思っております。したがって、全体に占める比率もその意味から言えばシェアが下がっていくだろう、こういう想定をいたしておるわけでございます。
  191. 上田哲

    ○上田哲君 人件費はどうですか。
  192. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 防衛庁予算に占める人件費の比率というのは、実は私いま手元に資料を持っておりませんので、至急調べましてあとでお答えをいたします。
  193. 上田哲

    ○上田哲君 そういたしますと、先ほどの大臣のおことばの中に、将来、日本の自衛隊の兵器の国産化をはかるということと、それからいまのお答えを総合すると、伸びてはいくけれども、そうたいしたウエートは占めないだろう、こういう二筋がありました。まとめて言えば、日本の自衛隊の兵器の国産には大体ほとんど航空機も二〇%ぐらいいっているようですけれども、一〇〇%とは言わないでしょうが、それに近い数字を目ざしていくという方向を一方にとりながらも、日本経済の中に今後防衛産業が大きな骨格として存在するような見通しはないだろう、こういうことになりますか。
  194. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) さようでございます。
  195. 上田哲

    ○上田哲君 そこで、兵器産業の実態になるわけですけれども、いまの御見解には私は賛同しない見通しを持つわけで、たとえば防衛費の基本的な性格である国家財政からの直接支出というような問題が、経済の基盤に向かって乗数的に効果を相乗させていくというような問題から考えても、単に〇・四%というような数字だけのやつにはならない部分があるだろうと思うのですけれども、その辺はしばらくおくとしまして、現在の兵器産業の実態を少しお伺いをしたい。兵器産業というのは、急に中小企業が志を立ててどこかの資金を導入するからといって、にわかにそうした業種にはなれない性格を持っているわけですから、そういう意味では日本の防衛産業、兵器産業というのは、主として現在日本兵器工業会に集まっているメーカーたちだと考えてよろしゅうございますか。
  196. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 武器ないし兵器、同じ意味でございましょうが、いずれも非常に性能の高いものを要求されております。こういった意味からも、あまりいわゆる中小企業と申しますか、技術練度の低い企業ではこれの需要にマッチすることができないという実情にあろうと思います。そういう意味から、やはり兵器産業の主たる役割りと言いますか、にない手と申しますか、これは勢いそういった技術力を持った大企業ということになってまいると思います。
  197. 上田哲

    ○上田哲君 大体、日本兵器工業会に集まっているメーカーたちだというふうに考えていいということですね。そうでありますと、日本兵器工業会に加盟と言いましょうか、参加しているメーカーの数は何社でしょうか。
  198. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 兵器工業会加盟の会社の数はいまちょっと調べましてすぐお答えをいたしますが、兵器工業会の範囲を申しますと、いわゆる銃砲、あるいは銃弾、砲弾、爆発物等々もございますが、同時に、いまいろいろな兵器類が電子装置を持っておりますので、これに組み込まれております各種の電子関係のメーカー等がこれにも入っております。そういった意味から、いわゆる狭い意味の銃砲、弾薬といったもののみならず、システムとしての一つの兵器体系と申しますか、そういったものを開発する意味で、いま申し上げたような、いわゆる電子関係の会社が相当数入っております。会員の数は全体で八十七社でございます。
  199. 上田哲

    ○上田哲君 念のために伺いますが、百四十社という数字はお聞きになったことはありませんか。八十七社というのは、非常に有力メーカーの数が八十七社というのは私も知っておりますが、加盟社ということになると、百四十社という理解では間違っておりますか。
  200. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 至急に調査をいたしますが、私が承知いたしております兵器工業会会員会社数は八十七社というふうになっております。
  201. 上田哲

    ○上田哲君 後ほどお調べいただいて、これは会員ということになるわけですから正確な数字を御報告いただきたいと思うのですが、当面その八十七社に限ってお話を進めていこうと思うのですけれども、この八十七社は相当な設備投資を続けてきたわけです。それで、たいへんつかみにくい部分はあろうと思いますけれども、通産省以外にはわからないはずでありますから、概数でけっこうですからお伺いをしたいが、少なくともどこかで区切るとすれば一次防以来でもけっこうですが、今日までの設備投資の総額をお聞きしたいと思います。
  202. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 武器関係の設備投資について私ども承知しております調査の結果でございますと、四十一年度が三億円、四十二年度十四億円、四十三年度二十三億円、四十四年度はまだ見込みでございまして、実際の数字が出ておりませんが、非常にふえておりまして、ほぼ五、六十億という推定をいたしております。四十三年度から四年度にかけまして非常に投資がふえておりまするのは、私ども承知いたしておりまするところではナイキ、ホークの国産化のための設備投資、これが相当大きく出てきているというふうに承知をいたしております。
  203. 上田哲

    ○上田哲君 先ほど大臣の御答弁で生産額としてのパーセンテージはよくわかりました。今度は設備投資のいま御報告がありましたけれども、他産業と比べて、この設備投資の額についてどのようにお考えですか。
  204. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 経済企画庁の四十五年度の企業の設備投資の見通しは十四兆六千億円でございます。ですから、これは新規設備投資でございますから、いまの数字と大体対応する性格のものとお考えくだすってけっこうでございます。
  205. 上田哲

    ○上田哲君 数字を確めたのではなくて、そういう額の設備投資が単に〇・四%とかいうのとこれは違うデータだと思いますから、他産業の設備投資と比べてこういう額をどのようにお考えになるか。防衛産業の将来にどういう影響をもたらすかということです。
  206. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは微々たるものだという感じを持ちます。
  207. 上田哲

    ○上田哲君 日本兵器工業会の八十七社のうちを、これは一流メーカーに限るわけですが、眺めて見ますと、完全に兵器産業オンリーという会社ではないわけですが、それぞれの企業の中で防衛部門の生産高が占める割合を見てみると、五〇%以上が十三社、五〇%から二〇%が八社、二〇%から一〇%が九社という数字が出ております。こういう数字について御認識でございましょうか。
  208. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) いま手元にその正確な数字がございませんが、おそらく五〇%以上というのは、たとえば銃弾の専門会社等が非常に大きいと思います。で、低いところはもちろん、たとえば三菱重工業でありますとか、日立製作所でありますとか、こういったところはおそらく全体から申しまして、極端な例で申しますと、五%以内あるいは一%以内というようなところも多数あろうかと思います。いまの数字につきましてはもう少し正確に調べました上でお答えをいたしたいと思います。
  209. 上田哲

    ○上田哲君 いまの数字は経団連の防衛生産委員会が四十三年七月に発表している数字でありますから、これはもう少しお調べになればすぐわかると思います。事実いまの十三社、八社、九社というのを足し算をしても三十社でありますから、それ以外の企業はパーセンテージはそこまでいっていないのですから、そういう点ではおっしゃる部分も当たると思います。ただ八十七社のうち三十社がこうしたウエートを持っているということは、やはりかなりな特異性だということは言えると思います。別なところから申し上げれば、これはアメリカと日本を比較してみましても、それぞれの上位二十五社への兵器発注の額を見てみると、アメリカの場合は四三%でありますけれども日本の場合は六二%ということになる。これは非常に特殊な性格になる。日本経済全体なり、GNPなりというものの分母を大きくする説明はよく聞きなれておりますけれども、それはそれとして、その分子の中で問題を洗っていきますと、これはかなり世界有数の性格を持ってくることになるんじゃないか、こういう感じがいたしますが、局長、いかがですか。
  210. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 米国の場合と日本の場合の違いという点から御質問がございましたが、私どもも防衛庁の発注を通じて見ておりますと、やはり日本の場合には発注の全体金額が非常に少のうございますので、したがって、ある意味から申しますと、多数の会社がそういった金額を分け合うというよりも、むしろある種のところに技術が育ってまいりまして、こういう技術を持ったところへ集中的に発注がなされる、こういうことだろうと思います。したがって、ある意味から申しますと、防衛需要——国防需要とアメリカではいっておると思いますが、そういったような需要の厚み、それからその全体のバラエティといいますか、品種、こういったものと日本における場合とがやはり違っておるんだろうと思います。そういった意味からも、日本の場合には、いま申し上げておる年間二百億円程度の発注、狭い意味の武器でございますが、二百億円程度の発注でございますから、この二百億円の内訳と、いま先生が御指摘の広い意味の防衛というのはちょっと数字が違うかと思いますけれども、いずれにしても、こういったものを発注するにあたっては、やはりそれなりに積み上げた技術というものが要ると思いますし、アメリカよりはむしろ品種的には日本のほうが少ないと思いますから、したがって、どうしても集中的な発注が行なわれる、こういう結果になっておるものと私は考えます。
  211. 上田哲

    ○上田哲君 防衛産業技術的な集中性というのは、これはもう世界じゅうどこでも同じことだと思います。それはそれとしても、はるかに、何と言いましょうか、兵器産業の先進国であるアメリカと比べても、こういう上位二十五社をとって、アメリカが四三%であるのに日本が六二%だという集中度は、これはやはり天下のアメリカを抜くわけでありますから、特殊な性格であるということは当然お認みになるわけですね。
  212. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 先ほど私がお答え申し上げましたような意味で、そういう性格からきているものというふうに私は承知しております。
  213. 上田哲

    ○上田哲君 その中の一つをかりに取り上げますと、三菱の場合は四十三年度で見ますと、兵器購入契約費が全体で二千百七十九億円のうちの実は五分の一を三菱重工で占めておる。三菱電機を入れると全体の三分の一になる。こういう集中度はこれはたいへんなことだろうと思うんです。たとえば、アメリカのナンバーワンのロッキードがそういった全体の兵器工業の契約の中では四・五%しか占めていない。技術的な集中度からいえばロッキードの集中度が高いはずですけれども、それでも四・五%、それから三菱の持っている三分の一という数字を比べてみれば、単なる技術上の集中度だけでは説明し切れない企業上の高度の集中度ということがあるように思います。そういうことでよろしいですね。
  214. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) いまの数字は武器という狭い範囲ではなくて、もう少し広い範囲だと思います。つもり防衛庁の発注契約社としての三菱重工あるいは三菱電機を含めた総額ということであろうかと思います。したがって、武器並びに航空機、それからその他もろもろの機械類、あるいは自動車類、車両類、こういったものを全部含めた上での防衛庁の年間調達額に占める三菱重工の比率、こういうことであろうと思います。しかし、いずれにしても三菱重工がそういう意味で防衛庁の契約社の中のナンバーワンの位置を占めておるということは事実だと思います。
  215. 上田哲

    ○上田哲君 まあ具体的な数字の示すところでありますし、たいへん企業的集中性が高いということはお認めいただいたと思うんで、先へ進んで後の問題にいたします。  そこで、さっき大臣も御指摘になりましたけれども、こうしたものが武器輸出と俗と呼ばれておりますけれども、輸出品目になっている。この辺をちょっとお伺いをしたいのでありまして、通産省での通関統計上の、過去五年間でけっこうでありますから、武器の輸出実績を御報告いただきたいと思います。
  216. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 通関統計というお示しでございましたが、通関統計の分類の中にはいろんなものが入っておりまして、たとえば、刀剣類というものも込みで入っております。そういった意味から、ちょっと狭義の武器と違っておる点がありますことをあらかじめお断わりしておきまして、あとで私どものほうで武器という狭い範囲で輸出承認をいたしました数字をあわせて御報告申し上げたいと思います。  四十年度でございますが、こまかい区分けがございますので恐縮でございますが、一括してちょっと申し上げますと、小銃等及び同部分品というカテゴリー百九十三億を含みまして三百三十七億円、概数でございます。
  217. 上田哲

    ○上田哲君 けたが二つ違うんじゃないですか。
  218. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 一億九千三百万円、たいへん失礼しました。百万単位で、たいへん失礼しました。それから四十一年度が同じく小銃等部品一億九千三百万円を含みまして二億四千百万円、それから四十二年度が同じようなことで申しますと、小銃等三百万円を含みまして九千五百万円、四十三年度は同じようなことで、小銃等部分品が六十万円でございまして、それを含みまして九千百万円、四十四年、これは四十万円の小銃等部分品を含みまして五千四百万円でございます。いま申し上げましたのは歴年の数字でございます。これを私どもの別途また輸出承認ベースで狭い意味の武器だけとってみますと、四十年度がタイ向けの小銃等を含みまして三億一千五百万円、四十年度——年度でございますが、四十年度が二億四千二百万円、四十二年度が七千七百万円、四十三年度が五千九百万円、四十四年度はわずかに四百万円というのが、これが輸出承認ベースの数字でございます。大体ほぼ突合するものと思います。
  219. 上田哲

    ○上田哲君 いまの数字の刀剣類、拳銃、弾薬等含めましたこまかいデータをお聞かせ願いたい。
  220. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 通関ベースでこまかい数字を読み上げます。  四十年度から申しますと、四十年、暦年でございます。暦年で申しまして、小銃等及び同部分品一億九千三百万円、刀剣類三千三百万円、拳銃二千八百万円、弾薬等というのがございますが、これが統計上八千三百万円、計三億三千七百万円。四十一年は、小銃等同部分品一億九千三百万円、刀剣類百万円、拳銃四千六百万円、弾薬類七十万円、計二億四千百万円。四十二年、小銃等同部分品三百万円、刀剣類二百万円、拳銃七千三百万円、弾薬等千七百万円、計九千五百万円。四十三年、小銃等同部分品を含みまして六十万円、刀剣類五百万円、拳銃八千二百万円、弾薬等三百万円、計九千百万円。四十四年は小銃等同部分品が四十万円、刀剣類七百万円、拳銃が四百万円、弾薬等が四千三百万円、計五千四百万円。  以上でございます。
  221. 上田哲

    ○上田哲君 ちょっとこまかいことを伺いますけれども、総額でいうならば、四十年三億三千七百万円、四十一年二億四千七十万円、四十二年九千五百万円、四十三年九千百十七万円、四十四年五千四百四十万円、御報告の数字はこうなっていると思うのです。ところが、たとえば四十四年を取り上げますと、刀剣類はいわゆる美術品としてだから——最近「よど号」がありまして、これは決して美術品とはいえぬと思うのですが、まあそれは譲るとしましても、刀剣類、たとえば四十四年七百万円ですよ。そうして拳銃が四百万円でしょう。ところが、狭義の兵器は四百万円しかなかったと言われますと、拳銃四百万円だけしか出さなかったということになるわけです。たとえば弾薬等となっておりまして、等のところがたくさん多いのだという御説明だろうけれども、そこに少なくとも四千三百万円ある。全体としては五千四百万のうち、弾薬等が四千三百万もあって、それでこれは狭義の武器に限ってみると、申し上げたように、刀剣類は美術品だということでカテゴリーをそっちへしぼってもかまいませんけれども、一挙に四百万円になるというのは、これはどうも常識じゃないのです。もう少しく御説明いただきたいと思います。
  222. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 拳銃の輸出と申しましたのは、私ども承知いたしておりますところでは、三十九年度から始まっておりまして、三十九年度には護身用の拳銃がアメリカ、スイスへ三千九百丁出ております。四十年度になりますと、これが約六千丁にふえておりまして、アメリカ、カナダ、スイス、ごく二丁とか三丁といったようなこまかいのが、これは見本輸出だと思いますが、オーストラリアでありますとか、ギリシアあるいはベネズエラといったようなところにも出ております。これら合計いたしまして約六千丁でございます。それから四十一年度は、これは全体で約七千丁でございます。これもアメリカ、スイス、ノルウェー、イギリス等でございます。たとえばノルウェー一丁、イギリス二丁といったふうに、いずれも見本のための輸出であると思います。四十二年度の拳銃は、先ほど申し上げましたが、これもアメリカ、イギリスへ約一万二千丁余り出ております。それから四十三年度は、やはりアメリカとイタリアへ約八千四百丁出ておるわけでございますが、四十四年度は、まだ十二月まででございますが、現在のところはアメリカに三百七十丁、イタリアに百七十丁、合計五百四十丁の護身用の拳銃の輸出しか行なわれておりません。非常に数が少なくなってきております。もちろんこれは商談があるのかどうかわかりませんが、相当程度見本用と申しますか、そういった性格のものがあちらこちらに入っておるように思います。こういったことから数字が、いま申し上げましたように護身用拳銃五百四十丁、四百万円というのが四十四年度の数字でございます。
  223. 上田哲

    ○上田哲君 私のほうで、おたくから出ている数字でいいますと、四十四年だけいいましても、あまりこんなことは、こまかいことを重箱のすみを突つくようなことを申すつもりはないので、もうちょっと簡単にお答えいただければいいのですけれども、たとえばアメリカに銃弾、刀剣類など二千九百三十六万円、フィリピンに銃弾、爆薬関係など千四百五十万円、カナダに小銃など三十一万円というふうな数字が出ているのです。それで、いまのお話から矛盾してまいりますのは、拳銃だけ四百万円だとおっしゃる。そうすると、小銃の部分品とか、これはせいぜい四十万円ですけれども、あるいは弾薬等の四千三百万円、この辺は全部武器でない数字になってしまう。これはどういうことでしょう。
  224. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 通関統計と武器の輸出との関係でございますが、通関と申しますのは、いわゆる輸出という形で、いわゆる商取り引きの結果としての輸出ということで出るものばかりではございません。たとえば四十四年の通関統計に出ております弾薬等の四千三百万円でございますが、これは非常に数字が大きいものですから、私どもも調べてみたのでございます。これはナイキ、ホークといった国産をいたしておりますもの、国産をしようとしているもの、これを試射する装置がまだ日本にございません。そういうことから、米国へ持ってまいりまして、防衛庁がこの試射に立ち会って、立ち会うと申しますか、試射の結果を見ようということから、通関上は税関を通りますけれども、私どものほうでいえば、いわゆる輸出という形ではない、こういったものがやはり含まれておると思います。現状で申しますと、いわゆる武器に類するものにつきましては、私どもが武器と考えておりますものについては輸出承認が必要でございますので、一々輸出承認なしには税関自身が通りません。そういう意味から、厳密な意味で私ども承知いたしておりますが、いまお示しの点は、いわゆる輸出でない、無為替輸出と申しますか、実験用その他のもので、いわゆる輸出承認を取りつける必要のないかっこうで通関をしておる、こういうふうなものだと思います。
  225. 上田哲

    ○上田哲君 あまりこだわりたくありませんけれども、そうしますと小銃等部分品、それがないことになりますし、それから四十四年は、弾薬は一発もなかったということになるわけです。それはちょっとよくわからないので、いまの御説明、ナイキ、ホークの問題についても、いわゆる俗にいえば行ってこいの部分になると思うから、これを計算しないというのは、私は少し政治的過ぎると思うのですが、あまりこまかいことになりますから、これは決して秘密の問題ではないはずです。ひとつこの五年間に限って、こまかい具体的なデータを後ほど御提出いただきたと思います。よろしいですね。
  226. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) これは通関統計と輸出認証統計とのズレでございますので、できる限り内容を洗いまして、あとで資料として御提出いたします。
  227. 上田哲

    ○上田哲君 そこで、どうもこだわるようですけれども、平和日本でありまして、武器の輸出といわれる点については、通産省でもこれはというものについてはチェックされているという実例があることも了知しています。しかしどうも、そうであるならば、網の目をくぐるようにして、好ましからざる人殺し兵器がわれわれの国から、先ほどのお話しのように、たいしたウエートもないというのであるならば、それゆえにこそきちっと、出ていかないという形がいいだろうと思うのです。  これは意見でありますから、質問の部分で言うならば、そういう意味で浮かび上がってくるのが、通産省の内規である武器輸出三原則に戻るだろうと思うのです。念のために、三項ありますから一つずつ伺いますけれども、第一項の、共産圏についてはこれは問題ないでしょうから、第二項から伺いますけれども、国連が輸出禁止を決議した国というのは、現在ありますか。
  228. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 南ア、それからポルトガル、ローデシア三国であります。
  229. 上田哲

    ○上田哲君 三番目の紛争当事国または紛争の起こりそうな国ということになります。紛争の起こりそうな国というのは、通産省ではどこを言っていらっしゃいますか。
  230. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) これは通産省と申しますよりも、私どもは、こういったケースについてはケース・バイ・ケースに外務省の意見を徴しております。通産省で国際情勢、紛争が起きるか起きないかということを独自に判断することは非常に困難だと思いまするので、そういう輸出申請あるいは申請以前の内相談等がありましたときに、そのケースによりまして、絶対安全だと思われるところは別といたしまして、何かそういう意味できなくさいと申しますか、何かありはしないかというようなときには、そのつどちゃんと外務省と協議をいたしまして、向こうからの判断を求める、それによって私ども行政処理をしておる、こういうことでございます。
  231. 上田哲

    ○上田哲君 そこで、紛争当事国ですね、アメリカは紛争当事国ではありませんか。
  232. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 紛争当事国でございます。
  233. 上田哲

    ○上田哲君 アメリカにたとえば小銃、弾薬ですか、いってるわけですね、さっきの御報告の中で。
  234. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 拳銃です。
  235. 上田哲

    ○上田哲君 拳銃ですか。これは武器輸出三原則に触れないのですか。
  236. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) その場合の武器ということの定義と申しますか、考え方でございます。私どもいわゆるこの三原則と申しておりますような輸出承認に関するものの考え方、原則につきましては、その場合、武器とは一体どういう概念かということをあらかじめ頭に描いて運用いたしておるわけでございます。この場合、武器と私どもが言っておりますのは、軍隊が使用して直接戦闘の用に供するものというふうに考えておるわけでございまして、いまの護身用の拳銃といったものは、これは軍隊が使用し、直接戦闘の用に供されるものかどうか、この点はいろいろ御議論もあろうかと思いますが、私どもとしては、いわゆる三原則運用上の武器ではない、こういうふうに考えております。
  237. 上田哲

    ○上田哲君 拳銃のことで議論をしようとは思いませんけれども、拳銃はですね、戦争といいましょうか、相手を殺傷するために使われる可能性を否定することはできないものですね。はなはだ小さい品目でしかないものであるならば、その辺は厳密にかまえていくことが、本来、武器輸出三原則というものを設定する趣旨からすれば、人殺しの武器など一生懸命外国へ送って、金もうけなどしないという国是を貫こうという方針に従ったものでしょうから、相手方ではどう解釈するかわからぬ心配はあるけれども、わがほうはそこまでは心配をしないということの趣旨を貫かれることが正しいと思うんですが、いかがですか。
  238. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 拳銃に対する概念は、ちょっと私ども国内、日本の場合とアメリカの場合とでは違うと思います。アメリカの場合は、御承知のように、身分証明書さえあればどこの店からでも自由にだれでも拳銃が買えます。私ども考えておりますのは、軍隊が使用して、直接戦闘の用に供するものということでございますから、たとえば戦車といったものは、これは明らかに個人が使うものではなくて、軍隊しか使わないものでございます。そういう意味から、拳銃というものについては、いろいろ御議論がありましょうけれども、ちょっと私ども日本における拳銃というものの感じと、それから、いまのようにアメリカにおいて自由に買えるものというものとで、少し考え方が違うんじゃないか、こういう感じを私は持っております。
  239. 上田哲

    ○上田哲君 国会の議事録にその種のことを残しておくことは好ましくないと私は思うんですよ。なるほど、日本は非常にきびしい制約の中でなければ、持ちたくはないけれども、ピストルは持てない。向こうじゃだれでも持てるというようなことは、やはり輸出する国の側の立場からすれば条件にはならないことのはずですよ。また、ベトナムなりどこなり、現に紛争を起こしている国で拳銃を持っていない軍隊がいるでありましょうか。そういう意味では、戦争必需品ということでいうならば、拳銃と大砲とタンクと、特に大きく区別しなければならぬということは、基本的な発想の区分としてはやはり成り立たないと私は常識として思うのです。思うのですが、これは御答弁を局長から求めることも無理があると思いますから、こまかい、重箱のすみをつつくのではないけれども、やはり国民常識として通るような立場で、武器輸出三原則の精神を踏まえて、大臣から一言この点についての御見解を承りたいと思います。
  240. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) ちょっと、その前に。先ほどちょっと私護身用拳銃ということで申し上げましたが、いま輸出されております拳銃の内容を見てみますと、その威力と申しますか、たとえば有効射程あるいは全体の銃身の長さ等々、あるいは初速、重量、口径、こういった点からいたしまして、いわゆる護身用というものと、それから実際まあ軍隊が戦場で使っております拳銃とはやや違うように思います。値段も非常に違っております。現在出ておりますのは護身用の拳銃ということでございまして、まあいわば、先ほどちょっと申し上げましたが、そういうことが許されておる国では、一般に護身用として使われておる性質のもの、こういうふうに御理解をいただきたいと思うわけであります。
  241. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ベトナムでどういう武器を使っておりますか、お互いしあわせにして存じませんけれども、アメリカに輸出しておるこの護身用のピストルというのは、ライフルですらないので、どうもこういうものを、ベトナムにいって戦争に使っているとは私ども実は思えない。女の人がハンドバッグに入れるような程度のものであろうと思います。したがって、私どもはそこまで武器と考えなくていいだろうというふうに実は思っているわけでございます。
  242. 上田哲

    ○上田哲君 私は拳銃に限ってこまかい議論をしようと言っているのではないのです。品目としてあげられている中に、小銃の部品であるとか、そうして弾薬であるとか、そして拳銃というのが入っているわけであります。そうなれば、すべてを洗って、どうして小銃の部品が武器にならないのかという議論にも発展をしなければならない。私はそういう点を、事実ベトナムでどんな拳銃が使われておるか私も知りません。そういうことを申し上げているのではない。決してこれは売りことばに買いことばではなくて、ここにあげられている限りの数字でいえば、たいした数字ではないのだから、そうしてそういうことをみだりにしないための処置として、武器輸出三原則というのを通産省でおきめになったのだろうから、そういう精神からいえば、こうしたものの輸出を助長する方向でないことが望ましいということは、はっきりしているだろうと思うのですよ。その種のことを大臣の御見解をいただきたかったのです。
  243. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) はい、それは助長するというような気持ちは別段ございません。
  244. 上田哲

    ○上田哲君 そうなりますと、世上私どもがまあ大体常識として理解しつつあることは、いまここで御発表になりました数字のやりとりではなくて、もう少しく違った形で、兵器輸出といいましょうか——輸出ということばには当たらないかもしれないけれども、そうした形が動いているというふうに感じております。で、なるほど、いまの数字でいえば、ハンドバッグの中に入れるような拳銃だというような範囲を、幾らも、出ているとしても出てないと思いますけれども、そうなりますと、たとえば対米輸出のこの種のものは、特需ということになるわけですか。
  245. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) いま、先ほどから御説明いたしております数字は、特需ではございません。いわゆる民間の普通の輸出でございます。特需は別でございます。
  246. 上田哲

    ○上田哲君 ですから、これ以外は特需ということになるのですね。
  247. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) さようでございます。
  248. 上田哲

    ○上田哲君 そこで特需の話をひとつ伺いたいと思います。まず、通産省でも特需についてのデータを御発表になっているわけでありますから、知っている限りでけっこうですが、その数字を御報告いただきたいと思います。
  249. 後藤正記

    政府委員(後藤正記君) 四十四年、年間の特需の概況でございますが、特需収入、合計六億三千八百五万一千ドルでございます。これは二つに分かれておりまして、円セールの分が四億六千六百四万六千ドル、それから米軍の預金振り込みが一億七千二百万五千ドル、かように相なっております。
  250. 上田哲

    ○上田哲君 昭和二十七年ぐらいからあるわけですね。
  251. 後藤正記

    政府委員(後藤正記君) さようでございます。
  252. 上田哲

    ○上田哲君 ざっと読んでください。
  253. 後藤正記

    政府委員(後藤正記君) 昭和二十七年七億七千五百八万三千ドル、二十八年七億五千六百五十四万二千ドル、二十九年五億三千八百六十一万六千ドル、三十年四億六千九百五十七万六千ドル、三十一年四億六千百四万四千ドル、三十二年四億一千四百三万五千ドル、三十三年三億七千百三万三千ドル、三十四年三億四千九十万六千ドル、三十五年三億八千八百九十万三千ドル、三十六年三億七千六十六万一千ドル、三十七年三億六千六百十二万四千ドル、三十八年三億四千五百二十八万九千ドル、三十九年三億二千二百四十二万四千ドル、四十年三億二千二百九十万一千ドル、四十一年四億六千八百九十二万九千ドル、四十二年五億五百八十五万ドル、四十三年五億八千六百四十四万五千ドル、四十四年六億三千八百五万一千ドル。  以上でございます。
  254. 上田哲

    ○上田哲君 円セールと米軍の預金振り込みの数字をあわせてお願いします。
  255. 後藤正記

    政府委員(後藤正記君) 二十七年の円セールのほうから先に申し上げます。  二十七年が二億七千百四十七万六千ドル、二十八年三億五十一万三千ドル、二十九年二億九千二百七十七万九千ドル、三十年二億七千五百七十二万三千ドル、三十一年二億七千三百七十七万九千ドル、三十二年二億五千九百四十三万五千ドル、三十三年二億七百五十三万五千ドル、三十四年二億九百五十九万八千ドル、三十五年二億一千五百九十万三千ドル、三十六年一億八千三百三十二万五千ドル、三十七年二億百七万ドル、三十八年二億四百十四万九千ドル、三十九年二億一千九十九万六千ドル、四十年二億二千七百五十三万七千ドル、四十一年三億九百三万六千ドル、四十二年三億七千四百二十五万七千ドル、四十三年四億千七百二十七万一千ドル、四十四年四億六千六百四万六千ドル、これが円セールでございます。  それから、米軍の預金振り込み分を二十七年から順次申し上げます。  二十七年五億三百六十万七千ドル、二十八年四億五千六百二万九千ドル、二十九年三億四千五百八十三万七千ドル、三十年一億九千三百八十五万三千ドル、三十一年一億八千七百二十六万五千ドル、三十二年一億五千四百六十万ドル、三十三年一億六千三百四十九万八千ドル、三十四年一億三千百三十万八千ドル、三十五年一億七千三百万ドル、三十六年一億八千七百三十三万六千ドル、三十七年一億六千五百五万四千ドル、三十八年一億四千百十四万ドル、三十九年一億一千百四十二万八千ドル、四十年九千五百三十六万四千ドル、四十一年一億五千九百八十九万三千ドル、四十二年一億三千百五十九万三千ドル、四十三年一億六千九百十七万四千ドル、四十四年一億七千二百万五千ドル。  以上でございます。
  256. 上田哲

    ○上田哲君 ただいま表を見ますと、二十七年は七億七千五百万ドル、それから三十四年が三億四千万ドル、それから四十年までが大体三億ドル台、四十一年から四十四年までが五億から六億台、こういう趨勢になっております。二十七、八年ごろのわが国の輸出の十数億ドルから二十億ドルという分母に比べまして、当時の七億ドルは大きかったという常識はあるわけですが、今日の輸出の総ワクからいって、五億ないし六億ドルというものが、どの程度のウエートになると判断されるのか、また将来は、どうなるのか。そしてまた、特需という非常にわかりにくいものでありますから、実態としては、これ以外にどれくらいがあるいは見込めるのか、数字の問題ではなくて、ウエートの判断として、大臣どのようにお考えですか。
  257. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 百七十億ドルといたしますと四%ぐらいでございますか、そんなものでございます。ですから、けちなものといっちゃいけませんが、何も特になくなってもどうということはないものだという感じでございます。
  258. 上田哲

    ○上田哲君 そこで、なくなってもいいという、ふえてはということもあるんですが、この数字の中で、内訳を御報告いただいた米軍の預金振り込みの数字と、それから、これはアメリカ大使館を通じて報告がされるのでありましょうが、主要物資契約高の間に開きが出てきているわけですね。四十一年で言えば九千九百八十八万ドル、四十二年では一億一千五百六十三万ドル、四十三年が一億四千四百八十三万ドル、四十四年では一億五千六百五十二万ドル余りの開きが出ています。この開きはどうして生ずるんでしょう。
  259. 後藤正記

    政府委員(後藤正記君) ただいま先生の御質問は、米軍の預金振り込みの分に限るかと存じますが、預金振り込みの分は、物資分と役務分に分かれておりまして、それで、物資の関係が六千一万二千ドル、四十一年でございますが、それから、役務関係が四千七百四十二万七千ドル、合計一億七百四十三万九千ドル、こう相なっております。それで、その四十一年、先ほど米軍預金振り込みで申し上げました一億五千九百八十九万三千ドルに、御指摘のとおり約五千万ドル余の食い違いがございます。  そこで、実は把握のしかたでございますが、これは日銀の外国為替統計でこの内容をつかまえる以外にちょっと把握のしかたがございませんので、ただいま申し上げましたこの米軍の預金振り込みの内容は、実は米国大使館から物資と役務と両方に分けまして、私のほうへ好意的に報告をいたしてくれておる内容によるわけでございます。したがいまして、この間の約五千万ドルというものの数字というのがどちらに使われておるかということが、よく把握いたしかねます。  それで、御承知のとおりに円セールというのは、米軍振り出しのドル小切手と引きかえに市中銀行が円を売る。それでこの米軍の取得いたしました円が、主として軍人とか軍属とか、あるいは家族、その家族あるいはPX等の維持だとか、物資の購入費用あるいは役務の調達、これに充てられておるものであります。それから、米軍の預金振り込みのほうは、これは特需契約に基づいて在日米軍のその付属機関が調達いたします物資とサービス代金をさすものでございまして、日銀の本店、支店に設けられました円建ての軍支出官名義別の当座預金勘定に振り込まれるものでございまして、金額の面では日銀の上にあがってまいりますけれども、ちょっとその内容は、先ほど申し上げましたように、大使館からとっております以外に、こまかくどういうぐあいに使ったかということを把握いたしかねるというのが現状でございます。そしてその差額が先ほど申し上げましたように、五千二百万ドルほど四十一年で出てきておる、かような状態に相なります。
  260. 上田哲

    ○上田哲君 日銀に振り込まれてくる額で足し算をする、それからアメリカのほうで大使館を通じて報告してくる数字がある、この開きになるというのですね。これは私もさっきの大臣のお話のように、二十七、八年ごろ特需が日本経済の中に占めていた大きさと、今日のそれとは比べものにならないウエートというものを認めるのに決してやぶさかでありません。しかし、そういう量の問題ではなくて、質の問題として言うならば、やはりまさにこうした差額が出てくるということは、安保条約に基づく地位協定の中から出てくることであって、日本政府に報告の義務はない、こういうあたりからこうした差額が出てくる。まさに日本通産行政全体を握っているわれわれの国の通産省なり通産大臣が、こうした部分、なるほど大臣が言われたように、これはけちなということばをお使いになりましたけれども、けちな数字だとは思えましょう。しかし、けちな数字であればこそ、こうした部分に指一本さわることができないというような形というものは、やはりたいへん好ましくないのじゃないかというふうに思うのですが、その辺いいかがでしょうか。
  261. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは確かにおっしゃいますように地位協定から出てくるところでございまして、われわれが便宜を供与しているということであろうと思います。その結果がわが国の国益にとって全体として有害であるかどうかということになるわけでございますが、私どもはそう考えておりませんので、そのような便宜供与をいたしておるわけでございます。
  262. 上田哲

    ○上田哲君 まあけちなと言われる部分ですから、これはひとつ大国日本対アメリカの関係から言っても、これくらいのところは日銀の預金高と大使館から回ってくる数字がきちっと合うようにしてもらいたいぐらいのことは言えないものでしょうか。
  263. 後藤正記

    政府委員(後藤正記君) 大使館でわれわれのほうに知らせてくれますが、おそらく大使館自体としてもこの内容は、先ほど御指摘ございましたその差額の点については、的確につかまえていないというように私は推測をいたしております。
  264. 上田哲

    ○上田哲君 どうもその辺は主体性がないのですが、大臣からも一言伺いたいと思います。
  265. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 詳しい仕組みが私によくわかりませんけれども、大まかに言いまして、もう円がアドバンスして、それがドルで入ってくるということに多分違いないと思いますので、それはその程度の便宜供与をいたしましても、その円がどう使われたかということは、かわりにドルが入ってきておれば、私どもとしては大きなできごとではないというふうに考えますが、いかがでございましょう。
  266. 上田哲

    ○上田哲君 ですから、大きなできごとではないということについては、量の問題として私は認めることにやぶさかではないと申し上げて、まさに額の問題とすればけちな部分でしょう。おっしゃるとおりです。けちな部分であってみれば、まさにそれほど両大国がこだわることもないのであって、質の問題としては、まさに文字が物語るように、地位協定の地位の落差を物語るということになるのだから、いま局長の御答弁にもあったように、なかなかつかみにくいのだという実態があるならば、それもよかろう、しかしそこらは、こちらに向かって報告義務がないという形の中で行なわれるのですから、それについてはしっかり報告をしてくれよということを言うのは、一向に差しつかえないことだと思うのですよ。そういうこともできないのかということを言っているのです。
  267. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そうは思いませんですね。つまり、たとえば軍票でも出してくれるということになれば、これはもう文句言わなければなりませんが、先方がドルの経済をやっておって、日本に入ってくるときは円を使うと、そこで円をアドバンスしてドルをあとで払うということになれば、これは私ども円がどう使われようと、これはたとえて言えば、日本人がその持っている円をどう使いましょうとこれは政府の知らぬことでございますから、私はそれと同じに考えてもさしたることはない、こう思います。
  268. 上田哲

    ○上田哲君 さしたることがないということの質的な問題ですけれども、この中で、たとえば日本国民なりあるいは通産省の好まざる内容のものが、品目が輸出をされるというようなことが起きては、やはり質的な問題として、あるいは国のプライドとして、問題が出てくるだろうと思うんです。ですからそういう点で、たとえばいろいろ公に販売されている図書のデータなどによっても、その辺のところが、死体を入れるポリエチレンの袋であるとか、ポリエチレンの土のうであるとか、あるいは保存血液であるとか、これはまあ戦争に持っていくといわれておりますけれども、私も知りません。知りませんが、そういうふうなものがこの中の品目としてうわさされ、そしてそれをまた明らかにするととができないというようなことは、やはり大綱において、量の問題としてはとるに足らないものであっても、やはり国の方針なり原則なりということからすれば、一考を要すべきものではないだろうかということを考えるわけです。
  269. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、おっしゃることは全然私わからないと申しておるのではございません。しかし、結局わが国の国内で生産されているものが非常に反倫理的なものが生産されておって、本来反倫理的なことを目的とするものが生産されておって、それがいまのような形で買われていくということでありましたら、同じには日本人も買えるはずでございますから、そういう生産が国の中にあるということに問題がむしろあるのだろうと思います。普通そういう目的でないものを先様が何か違う目的に使うということになりますと、これはどうも何とも——つまりポリエチレンというものは本来死体を入れるためのものでないが、そうなって出てきたということになりますと、これはどうもとめる方法もないのではないか、そんな感じがいたしますが、しかしお説が全然わからないわけではございません。
  270. 上田哲

    ○上田哲君 最後の一言で、その問題に深入りするのを避けて——そういうような揣摩憶測を生むような、そういう部分を含んでいるのが特需であろうと思うんです。私ども実際よく特需がわからぬのですよ。そこでいろいろな区分けをする人がいる。特需を直接特需、間接特需、あるいは対米輸出特需なんという名前をつける人もいますし、そこらのところはいろいろあるでしょうけれども、一体、たとえばAPA、横浜のAPAがはっきり調達をするような形ならば、ルートとしてはある程度推測もつくわけですけれども、一体特需ルートというのはどういうふうにやっておるのか、そこをひとつ御説明をいただきたいと思います。
  271. 後藤正記

    政府委員(後藤正記君) 恐縮でございますが、たいへん不勉強で、私もよく詳細を明らかにいたしておりませんが、たとえばこれは、特需契約にいたしましても、一般のオープンビッドで役務等をあるいは調達する場合もございましょうし、それからまたそのほかの一般の物資の調達と同じように随意契約によって購入する場合もございますし、国内の商取引と同じようにこれはきわめて多岐にわたるいろいろな形態があるものと存じております。詳細のところ不勉強で、はっきり明確にお答えできません。
  272. 上田哲

    ○上田哲君 やっぱり不勉強では困ると思いますよ。不勉強では困ると思うんですが、いかがですか。
  273. 後藤正記

    政府委員(後藤正記君) 早急に勉強をいたすことにいたします。
  274. 上田哲

    ○上田哲君 これはやっぱり大臣に言われて、けちな部分であっても、不必要な疑惑を国民に生ませるということからしますと、これから防衛計画というのがどんどん大きくなっていくだろうということの中で、やはり非常に神経を使う政治の部分だろうと思うんです。日本の信頼すべき通産省へ国会の場で御質問しても、わからぬということはないことは当然なことですから、量の多寡のいかんを問わずぜひひとつ次の機会に御説明をいただきたいのですが、ほんの一つ、二つ、私どももわからないからお聞きしているんで、たとえば直談とか裏口特需とか、そういうものもあるというふうに聞いております。——首をひねっておられるから、あまり無理につきつめてもなんですが、APAの場合は具体的にどうなっていますか、これはわかるでしょう。
  275. 石原尚久

    説明員石原尚久君) APAと申しますのは、アーミー・プロキュアメント・エージェンシー、これはアメリカの調達の窓口になっておるわけでございまして、ここが先ほどの入札をしたり、随意契約をしたりして、日本国内から資物あるいはサービスを調達しておるわけでございます。その具体的詳細なやり方は私存じません。
  276. 上田哲

    ○上田哲君 武士の情けでしょうが、たとえば横浜の港から船がだっと出ちゃうと、いろんなことが言われるわけですよ。ささいなことであるんでしょうから、その辺のことは後ほどひとつお示しになって、これは報告義務があるとかないとかいう問題とは少し違うんでございますから、十分お調べをいただいてぜひ御報告をいただきたいと思います。
  277. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これはやっぱり、確かに私ども知っておく必要があると思いますから、調べまして、さっそくいまの仕組みなど御報告するようにいたします。
  278. 上田哲

    ○上田哲君 大臣の誠意ある御答弁でありますから、私もこの問題は次の課題に移しておきます。そこでちょっとつけ足したいのですけれども、世にいうところの間接特需というものがある。これはことばの使い方はいろいろあるのですが、たとえば韓国とか台湾とかフィリピン経由でくる、そういう形の米軍の直接取り引じゃない形のもの、こういう問題もありますね。これは実態を把握されておりますか。
  279. 後藤正記

    政府委員(後藤正記君) どの分がいわゆる間接特需であるかということにつきましては、これはちょっとやはり実態の把握が非常に困難でございます。
  280. 上田哲

    ○上田哲君 この場合は、第三国への発注の形を通じてそこからこちらへくるという形で、そのままでは武器にならないけれども、向こうへいって組み立てれば武器になる、そういうことの危険もあるわけですね。そうして、大体そういうところのほうが実は大きなワクの中では東南アジア向けの輸出というワクに囲まれているのじゃないか、そういう心配があるわけです。その辺はいかがですか。
  281. 後藤正記

    政府委員(後藤正記君) ただいま先生おあげになりましたような、先方への輸出をいたしまして、そうして現地で組み立てれば武器になるというような部品その他につきましては、やはりこれは武器と同じように輸出規制が、先ほど来御議論ございますように規制がございますので、そういうことはないと承知いたしております。
  282. 上田哲

    ○上田哲君 これは東南アジア向け輸出という形の中に含まれる心配があるということを申し上げているわけなんで、その辺もひとつあわせて精密に御調査をいただきたいと思います。最近話題になっているガスなんかも、そういう形でいっているということを言う人もいる。私は自分の目で見、確めたわけじゃありませんから、その辺のところは答弁を求める内容とは思いませんけれども、不必要な疑惑を持たせないためにも、きちんと確かめて御報告をいただきたいし、大臣からのお約束がありましたから私はそれでこの場を納得をいたすのですが、やはり特需というものは、何かいま隆昌発展を遂げる日本輸出の中でたいへん暗い影を落としているということがあってはならない。そういう意味で、特需がどうなっているのかということはある意味ではタブーでありまして、小さなことだからどうでもいいじゃないかということにだんだん量的にはなってきているとは思いますけれども、やはりそれなればこそきちんとしておきたいと思います。そのことを付言をしておきます。一応そのことについて。
  283. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) わかりました。少なくともどのような取引の形態になっているかということだけは、これは調べましてお答えを申し上げることができると思います。  次に、どのようなものがしかし買われているかという具体的な明細についてどれほど私どもが正確に知り得るかどうか、これはやらせてみていただきませんとわかりません。しかし、仕組みだけはこれは調べておく必要が私どもとしてもあると、上田委員がおっしゃいますことは私どもそう思いますので、そういたします。
  284. 上田哲

    ○上田哲君 この問題について最後ですけれども、通常、兵器産業はもうからないということをよくいわれます。これは先ほどからの御答弁の中にあったように、日本経済の中で占めるウエートはたいへん低いんだということとあわせて、兵器産業というものをネガチブに説明するときに使われる表現だと私は思うのですが、確かに三菱プレシジョンですか、F104Jのライセンス生産の際に、姿勢・攻撃照準装置というものがありまして、その生産のために一時期は八億円の赤字を背負い、赤字受注をしたというふうに聞いております。確かに兵器産業というのは、いま特にはかばかしくもうからないという実態もあるように思います。しかしそうなると、兵器産業というものは何か将来に大きくかけているというふうにしか思われません。現に、しかし、前の防衛庁長官の有田さんも、日本を取り巻く軍事情勢はさしあたり緊迫したものにはならないということを御答弁になりましたし、つい最近の本院の本会議でも、中曽根長官も、しばらく大戦争の危険があるとは思えないということを言われた。そういう一方における軍事情勢にもかかわらず、どうしてこんなに財界がこのごろにわかに兵器生産に傾斜をするのか。先ほどお話が出ました兵器工業会の大久保会長が、兵器メーカーには国の存亡がかかっておる。しかし、いまのような安価な受注ではいい兵器はできないから、談合などの手段を使ってもしかるべき価格維持が必要だということをおっしゃっておられますけれども、一体何で兵器産業にこうも執着をするのかというあたりを、御見解を伺いたいと思います。ひとつ大臣に。
  285. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) さあ、それははっきりわかりませんけれども、やはり自主防衛をいたしますときに、どこの国がということはございませんが、日本以外の各国は、相当すぐれた精密な兵器を持たなければ日本を攻撃することはできませんので、それを防衛するとすれば、やはりその兵器は相当の精密度、高度な技術を必要とする。そういたしますと、そのような精密度、高度の技術というものが日本産業全体の、ことに機械産業のレベルを上げる波及効果があると、そう考えておられるのかと思います。どうもいままでのところ、またこれから先を考えましても、兵器産業というものそれ自身がたいへんにもうかる産業日本のGNPを潤す産業というふうには考えられませんので、私はおそらくアメリカのペンタゴンにいたしましてもNASAにいたしましても、ああいうところの発注が各工業部門に相当の精度と技術を波及されたというようなことでもあるいはお考えではないか。これは推察でございます。
  286. 上田哲

    ○上田哲君 波及効果ですけれども技術上の波及効果ということで、言うならば、もう少しレベルの低いときならばともかく、たとえば中山伊知郎さんなんかも言われているように、ここまでくれば、特に兵器産業にかけなくても、技術上の進展というのは十分にはかられるんじゃないかというようなことも言われております。何でこんなに執着するのか。というのは、たとえば日本経済が大型化して、これまでの需要超過型から供給超過型になっている、そういう時期に近づいているんじゃないか、そういう見方がある。そうしてそのための有効需要としての軍需というものを先取りしておきたい、こういうこと。それから国際資本競争にたえるためには、自主防衛の開発ということがきめ手になるけれども、そういう点では、国の金を当てにできる防衛生産が最も手っ取り早いというような見解がありますけれども、これについてはいかがですか。
  287. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) たとえば、エリコンというのはおそらくまだわが国でできないんじゃないかと思いますが、そういう意味での精度といったようなものの波及をおそらく考えておられるだろうと私は推察いたします。将来のわが国の防衛計画を当てにして、武器産業に投資をしようというのは、私はどうもあまりもうかる投資ではないように考えます。
  288. 上田哲

    ○上田哲君 この問題の最後ですけれども、一番初めにもお尋ねをしてそのような御答弁がありましたけれども、兵器産業というものが持っている高度の技術集中性ということのほかに、特に日本の場合は企業集中性が高いということをお認めになった。そういうことが一つと、それから、これは前に国会に政府が提出した資料ですけれども、防衛庁の指名入札に参加する資格のある千五百十八社への防衛庁からの天下り、将官のほうだけで昭和三十九年四月から翌年の三月末までで百六十六人もいる。こういうあたりを見ますと、企業集中性の上にもう一つ、言うところの産軍複合体への萌芽が見られるのではないか。これが先ほど来の御答弁の中で、日本経済全体に占める量としての割合が現時点でどう議論されようと、しかし萌芽としては、いまアメリカが抜き差しならない形に追い込まれておる産軍複合体というようなものの危険をお感じにならないか、この辺を最後に通産大臣からお伺いしたいと思います。
  289. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどから承っておりまして、おそらくそういう意味での御議論であろうと思っておりました。そういうことがときどきアメリカから伝わりまして、わが国でもいわれますが、いまのわが国体制で、いわゆるミリタリー・インダストリアル・コンプレックスが生まれるとはとうてい考えられない。そういう意識を持って絶えず警戒することはたいへんけっこうなことだと思います。思いますが、わが国の現状からそういうものが生まれる、あるいは政治がそういうものに振り回されるというようには私は考えておりません。
  290. 上田哲

    ○上田哲君 そういう意識を持ってそういう警戒をすることが必要だとお考えになるわけですね。
  291. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) はい、それは必要なことだと思います。
  292. 西村尚治

    委員長西村尚治君) それでは、議事の都合により、本案に対する質疑は後刻にいたしたいと存じます。     —————————————
  293. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 委員派遣に関する件についておはかりいたします。  国の防衛に関する調査のため、委員派遣を行なうこととし、参加人員の人選、派遣地、派遣期間等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、さよう取り計らうことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  294. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  295. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 先刻に引き続き、通商通産省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  御質疑の方は御発言を願います。
  296. 上田哲

    ○上田哲君 公害の問題について伺います。  公害の問題は、先ほど足鹿委員から大体の話がありましたので、私はかなりしぼってお伺いをいたしますから、効率的にお答えをいただきたいと思うのですが、どうしても公害の話をしようということになれば、先ほどから何回か出ております公害都市の中でも、四日市の問題を具体的に取り上げてお話をするほうがいいと思うのです。  まず最初にお伺いしますけれども、四日市での問題の、四日市の大気汚染というのには、大きく分ければ二とおりあるでしょうけれども、特に問題になっている亜硫酸ガスにしぼって言うなら、許容値の〇・一PPMに対して、現在ではどれくらいになっておりますか。
  297. 柴崎芳三

    政府委員(柴崎芳三君) 四日市のSO2の大気汚染汚染状況を御説明申し上げますと、御承知のように、環境基準は五つの数値を総合的に満足しなければならないという形になっておりますので、若干繁雑になりますが、五つについて御説明申し上げたいと思いますが、第一番目が年間の平均値でございますが、これが環境基準では〇・〇五PPM、これに関しましては、三浜小学校、それから保健所、磯津、窯業試験場、それから南中学校という五カ地点の調査によりますと、磯津が四十三年の実績で〇・〇五二PPMということで〇・〇〇二だけオーバーしておりまして、ほかの地点は合格しております。  それから第二の基準といたしまして、一時間値が〇・一PPM以上の日が一〇%以内でなければならないという基準に関しましては、これもやはり磯津が一二%ということになっておりまして、二%オーバーしております。  それから第三の基準といたしまして、一時間値が〇・二PPM以上である日は一%以内でなければならないという基準がございますが、この点につきましては、三浜小学校が二%、窯業試験場が二%、南中学校が八%ということで、保健所と磯津は合格しておりますが、この三カ地点がオーバーしております。  それから第四基準といたしまして、一日平均値が〇・〇五PPM以上の日が三〇%以内でなければならないという基準に関しましては、三浜小学校が三四%、磯津が四五%ということで、この二カ地点がオーバーしております。  それから第五といたしまして、緊急時の発生頻度、これが年間三%以内でなければならないということになっておりますが、三浜小学校が七・六%、窯業試験場が六・五%、南中学校が八・一%ということで、この三カ地点がオーバーになっております。これが実態でございます。
  298. 上田哲

    ○上田哲君 いまの報告で、簡単に言うと四日市のほとんどの部分は許容値の〇・一PPM以下にあるということですか。
  299. 柴崎芳三

    政府委員(柴崎芳三君) 総合的に見まして、大体五分の三程度は許容値の範囲内にあるということになろうかと思います。
  300. 上田哲

    ○上田哲君 いま磯津であるとか、非常に問題の地区が出まして、とてもそういう数字は私ども理解できないのですが、こまかい点は、時間が迫っておりますから、御報告をお伺いしたということで先に進むといたしまして、少し先を急ぎますが、昨年の秋に昭和四日市石油と大協石油から、原油精製能力一日当たり十二万バーレルと十万バーレル、この増設申請があって、石油審議会が少しバーレルを落として八万バーレルと五万バーレルにしたわけですが、十一月の四日に認可したことになっておりますね、この場合、これが増設されると非常に大きな問題になってくるわけですけれども公害防止計画との関係からいって、重油脱硫排煙脱硫などの側面から、どういう認可条件がついたのか御説明ください。
  301. 柴崎芳三

    政府委員(柴崎芳三君) ただいまの石油業法に基づきます許可につきましては、公害に関する具体的な条件はついていないかと思います。ただし、われわれ公害を担当しておる面から、この点は条件以上のきびしい措置をしておりまして、それはどういうことかと申しますと、産業公害総合事前調査という制度がございまして、四日市地区に所在します各企業の新増設につきましては、大体五年先を見込みまして、その五年先の姿から出てくるSO2というものを会社の計画に基づきまして正確に計算いたしまして、それを風洞実験その他、あるいは理論計算いたしまして、どの程度の汚染濃度が出てくるかということを科学的に把握しておる。で、その調査の結果、この設備程度でございますと、これ以上悪化させないということ、それから全般的にLS重油を使わせることによってSO2の総量は削減できるということ、それからさらに今後、四十六年にかけまして、具体的に排出基準を強化いたしまして、その排出基準の強化に伴う設備を必ず設置させる、そういうふうなことをはっきり会社との間で十分検討いたしまして、会社との間で実はジェントルマン・アグリーメントというような性格の覚え書きを出させまして、その計画を一々チェックしながら今後の新増設計画を監視するという体制をとっております。
  302. 上田哲

    ○上田哲君 公害対策基本法によって、公害防止計画というものを立てなければならない。いまのお話でいいますと、重油脱硫排煙脱硫のようなものはかませなかったけれども、もっときつい締めつけをしているのだとおっしゃるのですが、公害対策基本法との関係で、それでいいのですか。
  303. 柴崎芳三

    政府委員(柴崎芳三君) ただいま説明にことばが足りませんでしたけれども、LS重油を使わせること、あるいは重脱装置をつけさせまして、その付近の需要家に対する低硫黄重油を供給すること、あるいはこれは排煙脱硫の設備が具体的に必要であったかどうか、いま記憶してございませんが、とにかくSO2を減らすための所要の設備につきましては、克明に検討いたしまして、会社との間にはっきりした申し合わせをやっているというのが実情でございます。
  304. 上田哲

    ○上田哲君 私はそこが専門家でないからよくわかりませんけれども排煙脱硫装置をつけることは条件にはしていないわけですね。
  305. 柴崎芳三

    政府委員(柴崎芳三君) 排煙脱硫装置の主たる対象業種は電力でございまして、石油の精製の場合には、重油脱硫をやる場合に出てくるSO2というのがございますのですが、これは電力に比べますときわめて微々たるものでございまして、特に重油脱硫をやる場合の燃料として低硫黄の燃料を使いますと、SO2はよけい下がるわけでございますが、はたして排煙脱硫装置が必要であるかどうか、それぞれの設備計画に合わせて検討していくというようなたてまえになっております。
  306. 上田哲

    ○上田哲君 この磯津地区では、住民の反対署名などもかなり起こったはずなんですね。そういう住民たちと話し合いを十分にしたのかどうか、そうしてそういう話し合いの中では、排煙脱硫装置というものを、非常に常識的にはっきりしているチェックがなしに通ることを納得させているのかどうか。
  307. 柴崎芳三

    政府委員(柴崎芳三君) 石油業法の許可にあたりましては、地元の意見を十分聞きまして、それを尊重するという形で運用されておるわけでございますが、具体的には三重県知事に照会いたしまして、知事さんの手元で現地の事情を総合的に判断していただいて、差しつかえないという返事をいただきまして、許可を実行したということになっております。
  308. 上田哲

    ○上田哲君 住民とはどうなんですか。
  309. 柴崎芳三

    政府委員(柴崎芳三君) この個々の件につきまして、住民のグループあるいは住民の代表と通産省が直接話し合ったというケースは聞いておりません。
  310. 上田哲

    ○上田哲君 その辺は、後にまとめてひとつお伺いしますけれども、もう一つ、四日市の共同排水処理場ですね。これがまだ本格運転を——これはもう本格運転をしていますか。していなければ、いつしますか。
  311. 柴崎芳三

    政府委員(柴崎芳三君) まだ本格運転はしていないはずでございます。  その本格運転ができない理由は、活性汚泥法で排水を処理したその最後の残滓の捨て場につきまして、海上投棄あるいは山の中に投棄という原始的な方法を最初に考えておったのですが、これは二次公害を発生するということで、最新のボイラーでこれを燃焼するという形をとりまして、設備計画の変更をやったわけでございますが、おそらく完成まで、正確な期日はただいま記憶しておりませんが、あと半年あるいはそれより若干時間がかかるのではないかというぐあいに考えております。
  312. 上田哲

    ○上田哲君 そういうお話で言うとたいへんなめらかなんですけれども、これは活性汚泥法というものが失敗をした、それで現在集中燃焼法という方法に変えるわけですね。簡単に言えば、活性汚泥法で汚物を処理しようとしたけれども、その捨て場がなくなった。その捨て場をまたつくるための処理場のほうが、本来の四日市共同排水処理場の建設費よりも高くなっているというふうに聞いているのですが、それぞれの費用を含めて御説明ください。
  313. 柴崎芳三

    政府委員(柴崎芳三君) ただいま手元にその費用その他のデータを持ち合わせておりませんので、直ちに調査いたしまして後刻御報告いたしたいと思いますが、私の理解する範囲では、活性汚泥法の失敗ではなくて、活性汚泥法から出てくる残滓の処理につきまして新しい方式を考えて、活性汚泥法との連携のもとに終末処理までを完成する設備を現在建設中であるということだと思います。
  314. 上田哲

    ○上田哲君 活性汚泥法というのもあれですね、汚物の処理のためでしょう。その汚物の処理ができないということがどうして成功なのか。その汚物の処理のためのまた処理の機関をつくらなければならない。それがさらによけい金がかかるということになってくると、これは私は失敗だと考えなければならないと思うのですが、専門的に説明するとどうなるのかわかりませんけれども、わかりやすく言うとどうなるのですか。
  315. 柴崎芳三

    政府委員(柴崎芳三君) 四日市が計画しております排水処理施設は、いわゆる共同の処理施設でございまして、非常に能力が大きいわけでございまして、普通活性汚泥法を一つの単位会社で採用しております場合には、これは非常に順調にいきまして、その終末の残滓につきましても、ある場合には工場が所有しておる土地の中に捨てて、二次公害が起こらないような管理をする、あるいは非常に恵まれたところですと、相当遠海に出ましてそれを海中に捨てるとか、いろいろの方法も講じておるわけでございます。四日市につきましては、そのいずれの方法も適用できなかったという特殊な事情がございますが、これは地理的な条件と同時に、量が非常に多いということでございます。したがいまして、その処理できなかった汚泥を処理すべく新しい方法をそれに追加するという関係になろうかと思います。
  316. 上田哲

    ○上田哲君 もう一つ、海上保安庁の四日市海上保安部が、昨年の八月の十五日に日本アエロジルの四日市の工場長、次長、技術課長の三人を検挙いたしましたね。それから同じく石原産業の四日市工場工場長、公害保安室長の二人が検挙された。これは港則法に基づくわけですね。こういう法律以外には、具体的に検挙というような、つまり罰則を適用することのできる取り締まり法規はないのかどうか。
  317. 柴崎芳三

    政府委員(柴崎芳三君) 形の上だけで申しますと、水質保全法体系の中の工場排水規制法でもできるわけでございますが、この四日市水域は四十一年に指定はされましたけれども、その指定の中身につきまして、日本アエロジル並びに石原産業が問題とされました、いわゆる強酸、強い酸でございますが、PHという基準が実はここには適用されていないわけでございます。したがいまして工排法ではこれを規制することはできないという関係になっておりましたので、若干変則だとは思いますが、港則法によります港の通常の運営を妨げてはならないという、その通常の一つ基準といたしまして、PHについての指導基準というものが存在いたしました。これをもって告発に踏み切ったという形になっておるわけであります。
  318. 上田哲

    ○上田哲君 時間を非常に急ぎますから、大いにはしょって、いまいろいろお尋ねをした部分を総まとめにしてひとつ御見解を承りたいと思うのですけれども、いまいろいろ出た問題を大ざっぱにまとめていきますと、一つには、公害都市四日市という舞台ですね。たとえば排水処理場の問題、いろいろ御説明のしかたはあろうけれども、たいへん適切でない計画立案、あるいは企業への指導の不備の問題、そういった行政上の問題がありますね。  それからもう一つは、やはり責任追及のあり方というような問題が出てくるように思うのですね。一番初めにたいへんPPMはいま有望なといいましょうか、望ましい方向にあるような御説明だったけれども、とてもとてもそういうお役所の出している数字にもかかわらず、ぜんそくの子供はさらにふえるとか、いろいろな実態的な逆反応というのが出ているのは事実ですね、これはお認めになるとおり。こういうことを考えますと、やはり、きょう私は、四日市の問題に局限して話をするのではないけれども、やはりナンバーワンの公害都市四日市を舞台にしながら、基本的な方向づけというものを立てなければならないということが、いま申し上げた幾つかの問題にしぼられてくるのじゃないかと思います。で、たとえば公害審議会の第一次答申、これは残念ながら消えてしまった提案でありましたけれども、「公害によって他人の生命、身体、財産その他の利益に一定の受忍限度をこえる損害が生じたときは、原因者がこれを賠償する責任を負うこととする。」こういう答申がありましたね。つまりこの提案というのは、答申の内容というのは、一定の受忍限度を越える責任については、原因者が無過失責任を負うべきだという提案だろうと思うのですよ。その発想に対してどういうふうにお考えでしょうか。
  319. 柴崎芳三

    政府委員(柴崎芳三君) 公害対策基本法の審議の過程における答申かと思いますが、結局、公害公害たるゆえんが、詰めていきますと不特定多数の原因者が不特定多数の住民に害を与えるという基本的な性格を持っておるわけでございます。おそらくその辺を法理的に詰めていった場合に、はたして確実にその原因者ということを公害と結びつけてはっきりさせることができるかどうかというようなことが相当議論になったように聞いておるわけでございますが、もちろん原因者がはっきりしております、たとえば特定のイタイイタイ病とかあるいは水俣病というようなものは、これは私法的な手段で十分損害の賠償に応ずる形になっておりますし、そういう形でなかなか救済できないものがまあ公害として行政的な規制の対象になっているという基本的な性格を持っておるわけでございますので、現在具体的な形として、公害対策基本法に盛られたような具体的な姿を国としてはどこまでもはっきりこれを確実に実行していくというのが当面の対策としては一番いいのではないかというように考えておる次第であります。
  320. 上田哲

    ○上田哲君 そういうお話なら非常にいいんですけれども、しかし実際には、この公害対策基本法の二十二条は、「事業者は、その事業活動による公害を防止するために国又は地方公共団体が実施する事業について、当該事業に要する費用の全部又は一部を負担するものとする。」、ところが二項に、「前項の規定により事業者に同項の費用を負担させる場合における負担の対象となる費用の範囲、費用を負担させる事業者の範囲、各事業者に負担させる額の算出方法その他その負担に関し必要な事項については、別に法律で定める。」と、最後の一行ですっと逃げちゃうわけですよ。こういうことではいまおっしゃったけれども、その精神を体してなんということには法の方向は全然向いてない。現在の法制のもとでは、公害の民事法上の問題としていえば、加害者の故意とか過失ということがはっきりしていれば、おっしゃるように損害賠償の問題になるわけですけれども、刑法上の規定というのはまあ事実ないようなもんですから、そういう意味では過失として扱われる公害というのはまあきわめて例外、さっきの港則法というようなものですね。これはかなり無理をして、何といいましょうかね。相当の無理じいといってはことばが悪いけれども、無理をされた適用だろうとも思うのですね。だからといって、人民はかなり注目をしておりますから、これがまたするするっとわけのわからないような形になっても困るのですが、罰すればいいということではないけれども、法制上に、実は先ほどの答申の中にあったような、そしてそれは尊重すべきだとおっしゃるような、そういう規制が全然といっていいほどないじゃないか、その辺がまた、せっかくこれから公害に乗り出そうとされる通産省当局としても、実際には具体的に手の打ちようが規制力としてはないのじゃないかというふうに思うわけです。  そういう状態じゃ、先ほどからいろいろ出てきている問題をほとんどまあ、ことばとしては脱硫装置その他はたいして心配はないのだからほかの方法で十分やっておりますということになり、これも苦しいお答えだと思うのですよ。時間があればもうちょっとお尋ねしたいけれども、そういうところじゃいかぬのじゃないか。その辺について大臣いかがですか。——では、局長からお答えいただいたあとでもいいです。
  321. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) あの別に法律をもってこれを定めるという一条が入りましたのは、御承知かとは思いますけれども、この公害対策基本法をつくりますときに、実は非常に各省にいろいろ議論がございまして、いまとだいぶ時代も違ったせいもございますけれども、結局あの部分はああいう形でおさめなければ法律ができなかったのでございます。それでああいうはなはだ不徹底なことになりましたけれども、別に法律に譲ったわけでございます。したがって、この法律はどうしてもできなければならない法律案なのでございますけれども、そうして各省かなり話がいまの段階で詰まってまいりましたけれども、今国会に御審議いただくには至らなかったわけでございます。他方で、罰則につきましては、おのおのについて罰則の適用が可能でございますし、それから紛争の処理につきましては、今国会で御審議を願っております紛争処理についての法律というものを考えておるわけでございます。でございますから、一応罰則なり、紛争のさばきはできるわけでありますけれども公害基本法二十何条でございましたか、あそこにございます法律というものはまだできていない、御提案を申し上げることができないでおります。しかしかなり煮詰まっておるようでございますので、私どもは、できれば次の国会には御審議をいただけるのではないかと考えておるわけでございます。
  322. 上田哲

    ○上田哲君 どうもよくわからないのですけれどもね。私はかなり協力的にといいましょうか、好意的にといいましょうか、これじゃなかなか意気込んでやったがあがらぬ法制でもあるだろう、その上に乗った行政の苦しさもあるだろうということを申し上げたわけですよ。その辺を、時間がありませんから、もうはしょって結論に入るのですが、やはり私は現行法規を若干少しずついじっていくことが、同じことを何べんも言うようですが、港則法のような思いもかけないような法律が出てきて、まあわれわれからすればですよ。何か決して無理じいに法適用をはかったなどとは言いませんけれども、やはりまっこうみじんな法規制を主張するのじゃありませんけれども、まっこうみじんな法理論といいましょうか、行政基本理論といいましょうか、そういうものを踏まえた新しい公害対策理論といいますか、そういうものがもう少し先取りする部分がなければならぬのじゃないかということを言いたいわけですよ。それはやはりもし法のジャンルに限るならば無過失責任というところですね、考えていかなければならないのじゃないか。これはひとつぜひ大臣から、そういうカテゴリーでのひとつ展望というものを伺いたいと思っておるのですけれども、たとえば大臣が、先ほどの足鹿委員の質問に対しても、企業責任を持たせつつ、国が財政金融上の努力もあわせていく、また住民が一緒になって努力することも必要であるというような御答弁がありました。そうだろうと思うのです。そうして、責任責任救済救済と分けて、とにかく救済論に入っていくのだというふうな御答弁もございました。ただ、私はこれはやはりだめだと思うのです。もう一歩進めていかなければいかぬのじゃないか。つまりそうなりますと、公害というものをどれくらいまっこうからかまえて取り上げていくかという姿勢になるのですけれども公害ということばもはなはだ考えてみればおかしなものになってくるのじゃないか。たとえば公害なんという、たいへん公なんという名前がついたのは、一つには、これは何かどっかで企業、特に大企業社会性というようなものがある種の害毒を流すことについての免責感覚というものをひとつかかえ込んでしまっているのじゃないか。あるいはやはり大企業から流れ出るものであるために、あるいはそのために非常に大きな、個人なり一町内くらいでは手のつかないような大きな規模の、何というのでしょうか、大気汚染なり水質汚染なんという害毒であるために、そういうスケールの大きさなり、そうした要素から、何となくプライベートの感覚でなく、あるいは企業というようなところにすぐ返っていくような感覚ではなくて、公というような、きわめて全社会的な、みんなが責任を少しずつ負担しなければならないみたいな感じ公害ということばにもなってきたし、それがカッコに包まれて先に進んでいくようではいけないんではないか。まあ、たとえばその救済救済責任責任ということは、それは当面の問題としては認めるんです。そしてまた、厚生省がいままで公害を担当していたというのは、せきが出たら何とかしようと、水が濁ったら何とかしようといういわばあと追い行政ですから。そうじゃなくて、とにかく発生源をつかんでいるところに重点を置いていこうという行政姿勢というのは、その半分だけ前進であることを認めるのにやぶさかではない。しかし、やはり将来起こるべきといいましょうか、将来の都市設計とかあるいはその産業未来図の構築というようなものの中で必然的に起こってくる公害に対する公害対策論というような、この場合公害ということばは正しくないかもしれないけれども、そういう問題としてはまだあと半歩足りないのじゃないか。そういうことで言うんならば、煙突であるか排気口であるか何だかわかりませんけれども、たとえば組織の動くところ必ず税金がつくというような、そういう論理と同じように、何らかの害毒がどっかから出てくるならば、必ずそれについては責任が出てくる。それが故意か過失かという刑法上の通常概念ではなくて、明らかに無過失責任というところまでさかのぼるような、そういう体系というものがいま考えられるべきときに来ているんじゃないか。だから、そういうことを一つ踏まえていえば、一つには、やはり企業責任というのはこれは当然あるはずです。この企業責任というのがやっぱり全部しょい切れるならば、公害ということばが出ちゃったんでこれはどうしようもないだろうという社会通念はあるんでしょうけれども、他面企業というものが全部しょい切れるならば、無過失責任企業に持っていけばいい。事実それはできないということだろうということが、くどくどとは私も言いませんけれども一つの実態認識だろう。そうなってみれば、それが不可能な場合には、もはや国や地方公共団体というものが——たとえば四日市でいま五十億国へ入っている。これが四日市に返ってくるのは五億ですか、その程度だと、数字はちょっと違っているかもしれませんが、大体そういう大きさなんですが、そういうところを抜本的に一方では考えながら、国なり地方公共団体というものが、企業では負い切れない部分があるとすれば、その部分の無過失責任も負っていくと、こういう実態的な行政論、対策原理、そしてそれに基づく法体系というようなもの、これを、その故意、過失がはっきりすれば民法で賠償責任をとるけれども、それがなければだめだと、刑法ではそこまではいえないんだということでいくんじゃなくて、その辺のはっきりした法体系というものもそういうところから考えられていいんじゃないか。  もう一つの問題は、やっぱり住民参加といいますかね、この部分をどれぐらい取り入れていくかということがやっぱり——大体大きな公害が出るところはコンビナートみたいなところなんだから、大工業地帯なんだから、当然労働力の問題から考えたって、それはいわば必須条件の一つでもあるので、まさに企業の側から考えたって、産業立地論のほうから考えたって、住民の意思というのはそういう意味でもっと積極的にくみ上げていくという体制を、いまの二つのものと三つの問題として三本柱の原理というようなものの構築ができないかと、私はそういうふうに思うんです。  時間がないからゆっくり言っていられないが、ちょっとおもしろい例があるのですね。たまたまですけれども、ことしの二月の九日のインターナショナル・ヘラルド・トリビューンに出ているのでありますけれども、キャンペーンGMというのがあるのですね。ゼネラル・モーターズに、ラルフ・ネーダー弁護士という人が中心になって、GMの役員会に市民代表を送り込もうと。二十四人重役がいるそうですけれども、そこにあと三人ふやせと、二十七人にして、そのうち三人は市民代表でどうだと。これは日本とは全然違うので、各大学なんかがGMなんかにも大きな力を持っているわけだから、その辺へ市民的な要求、世論をぶっつけながらその要求を一つ一つ通していこうと。で、ネーダー氏なんかはGMのことをプライベート・ガバメントとあえて称しながら、そのプライベート・ガバメントに対して市民の参加、公害というものを黙視し得ない市民がそういう意味で中に入っていく、こういう運動を起こしているわけですね。この辺のところは、先がどうなるかということは今後の問題としても、公害についても悩んでいるアメリカでこういう運動が起きている。この辺をたとえば一つの参考としながら、いまや企業なりあるいは国や地方公共団体などだけの問題ではない。住民参加というのはその場合どういうふうに考えられていいかということは、一つのパターンになると思うので、その辺かまえて、一体確かに責任責任救済救済でもけっこうですから、そういう点では先ほど来大臣がお答えになったような、責任責任救済救済として考えるという柱と、それから企業と国と住民の参加も求めていくんだという柱と、この二つが、こっちも大事だと思うけれども、この問題として言うならば、いま原則をどうするかという、救済の問題ちょっとしばらく話の外に置くとすれば、ほっとくことはできないけれども、置くとすれば、いま申し上げたような三つの、私の私見ですけれども、そうした方向をどういうふうにかなりロングレインジの立場でお考えになるかをひと  つ伺いたいと思います。
  323. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは非常にむずかしいいろいろなものの考え方を含んでおると思います。つまり、いまわれわれのいます段階はきわめて初歩的な段階におるわけでして、一定の規制の基準を定めて、それを守ってもらわなければ困るということを言っておる段階であります。しかもその基準をきめるためには、にわかにきょうきめてあしたから守れるというものではございませんために、一定の猶予期間を置いたり、あるいはそのための施設、方法等に政府が援助をしたりしながらやっていっているわけでございますが、もちろんその基準というのは、理想からいえばはなはだ遠いものであると思いますし、したがってその基準を守っていたからといって公害を起こさないというわけのものではないということまでは、いまの段階では私はやはり言えるだろう。しかしそれならば、煙突が煙を出すということは必ず何かの意味で人間の健康に影響を与えるでありましょうから、そういう事態に対して企業責任を負わせられるかといえば、どうもおそらくそうではないであろう。それならばそれに国が責任を負うかということですが、それはまたとめどもないことであろうというふうにも考えられます。で、無過失責任ということは、おっしゃっていることはわかりますが、その無過失責任というものをどうやって追及するのか、だれを追及するのかということは実は明白でありません。そうなりますと、最終的に国民から税金を払ってもらっておるのは国でありますから、あるいは公共団体でありますから、そういうところに責任があるのかといえば、私はその場合の責任というのは、おそらく国として、あるいは地方公共団体として、国土をきれいにしていくという意味での行政上の私は責任になるのではないかと思うのであります。つまり近代国家、福祉国家を目ざす国として、納税者に対してどれだけのことをする責任があるかという、そういう意味での私は政治的あるいは行政責任になると思いますから、そのことにはその定量的な限度というものはおそらくない。国の力がふえていけばふえていくほど、国が国民に対して持っているそういう意味での責任が大きくなる、私はそういうふうな理解だと思うのでございます。その場合に住民が何を望むかと、国民が何を望むかということは、これは国会の場などで議論されますが、ある一定地域における住民が何を望むかということになれば、その当該市であるとかあるいは中央の出先の官庁であるとか、その地域の住民であるとかというものが一緒になって問題を相談していく。これはまあ四日市でも、おそらく園田厚生大臣の時代に始まったことでございますが、やはり行く行くの福祉国家の姿としては私はそういうことは考えていいことではないか、おそらく考えられるべきことであろうと思いますけれども、その段階に比べますと、いまわれわれのおります段階ははるかにまだまだ幼稚な段階であることを認めざるを得ないと思います。
  324. 上田哲

    ○上田哲君 これでやめようと思ったんですけれども、私は時間を短縮するために、たいへん盛りだくさんに一ぺんに申し上げたから、意を尽くさなかったかもしれないし、あるいはおくみ取りを願えなかったかもしれないのですけれども、もう一歩前向きな公害原理を立てようという方向がお聞きできないか。つまり、私はいまのお話をそのままとってしまいますと、まあある程度やむを得ない。それは国としてもまるっきり責任をとれるわけでもないよと、こうちょっとうしろ向きの感じにしかとれないわけです。私が言いたいのは、大いに産業発展することはけっこうだ。いろいろな立体的な社会発展ということの不可避な道筋の中で、また公害というものも不可避なものであるだろう。その公害というものも、しかし、十分除去していくという政治論、したがって、法理論と行政論というようなものが出てこなければならないところにきているんじゃないかということで、原理を詰めていけば、これはしょせんするところ、たとえば所得があれば税金ありと、必ずどこまでも追いかけていくように、そうした原則と同じような、煙が出ておって何かの害を流すのであれば、その害に対しては徹底的にやはり余すなく責任を追及していくのだ、こういう部分、これは何かあるいは御警戒なさるかもしれないが、国になるべく刑事責任を負わせようということを言うのじゃない。そういう社会責任を大きく背負っていく主体を設定しなきゃならぬのじゃないか、こういうことを私は言いたいのですよ。そういうことで言うならば、基本的に言うならば、企業の煙が企業から出るのですから、いろいろな金属物質も企業から出るのですから、それはどの工場から出たとか、この工場から出たかわからないにしたって、それはしょせんするところ、そこから出たということになるんだろうけれども、それはさっき別な立論をいたしましたけれども、あまり大きな何か産業構造なりなんなりということからしますと、一企業へ求めるということだけではない。いろいろな要素もあるだろう、でき得ない部分もあるだろう、大企業保護育成なんというものとは別に。そういう意味で言うならば、どこにも帰すことのできない責任というようなものについても、従来の刑法上の、故意については、過失については云々とか、あるいはその場合は民事でどうするとかいうような形だけではなしに、煙が一条でも立ちのぼるならば徹底的に追いかけていくという角度での、それは法のジャンルで言うならば、無過失ということにことばとしてはなるんだろうけれども、そういう部分が全くどこからも突き詰められなければ、責任もないよというものを存置するのじゃなくて、その場合はだれかが責任を負うということに関与をいたしていくのでなければ、たとえば国、公共団体が——そうでなければこれからの税金の取り方もいけないだろうし、社会発展に対して人々の協力を得ることができない、こういう考え方があるだろうと思うんですよ。公害に対しては、だからそういう意味では、いま申し上げたように、それは第一義的には企業だろうし、そうして大きく進んで漏れるところがない形で、国なり地方公共団体というものの責任論というようなもので、これを逆な面で言うならば指導論ですよ、監督論でもありますよ。そういうことでけっこうだから、そういう立場というものを強固に、九九%じゃなくて一〇〇%の立論原則というものがあってしかるべきじゃないか。そうしてそこには、さっきことばは足りなかったかもしれないけれども、キャンペーンGMというものは、訳せばGMに社会責任を持たせるというキャンペーンのようですけれども、そういうような問題、動きというものを、もう少しその原理に適応させるような形で吸収していくということが、言うならば、大臣が最初に言われた、企業責任を持たせつつ、国が最大の努力もあわせながら、住民も一緒になって努力されるということが、発展の姿に結びつくんじゃないか。そういう方向については、やっぱり厚生省がやっていたのとは違うんですから、通産省がいまやろうという行政であれば、それだけのビジョンなり、展望なり、抱負というものが、もっと前向きの意欲としてあってしかるべきじゃなかろうか、こういうことを伺いたいわけです。  私はこの質問、これをもって終わりますから、ひとつぜひ前向きに御答弁をいただきたいと思います。
  325. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどのお話は、大体私そのように理解を申し上げておったつもりであります。つまり、われわれが福祉国家として国民に対して持っている責任とか義務とかいうものに私はやはり帰着するように思います。つまり一つ環境基準というものを、これならばまずまず安心してもらえるという基準を国が設けたといたしまして、それは産業等々があることを前提にする限り、産業だけではその環境基準は守り得ないとすれば、国が、たとえば公園をつくるとか、あるいは下水道を設置するとか、いろいろございましょうと思いますが、そういう福祉国家として、国民に対してその環境基準を実現する義務を持っている、そういったような形として私は問題をとらえることはできると思います。しかして、それがどの程度に国が国民に対してその責任を全うし得るかということになりますと、それはやはり、そのときのその国の持っている総合的な力あるいは政治の意思ということによるのであろうというふうに、私はお話はそのように理解いたします。
  326. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 本案に対する本日の審査はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時十七分散会