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1970-07-08 第63回国会 参議院 内閣委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年七月八日(水曜日)    午前十時四十六分開会     —————————————    委員異動  五月十四日     辞任         補欠選任      鬼丸 勝之君     山本茂一郎君      矢野  登君     宮崎 正雄君  六月一日     辞任         補欠選任      宮崎 正雄君     田中 茂穂君  六月十日     辞任         補欠選任      岩間 正男君     野坂 参三君  七月七日     辞任         補欠選任      中尾 辰義君     多田 省吾君      野坂 参三君     岩間 正男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西村 尚治君     理 事                 石原幹市郎君                 八田 一朗君                 上田  哲君     委 員                 佐藤  隆君                 柴田  栄君                 長屋  茂君                 鶴園 哲夫君                 矢山 有作君                 山崎  昇君                 多田 省吾君                 峯山 昭範君                 片山 武夫君                 岩間 正男君    国務大臣        国 務 大 臣  荒木萬壽夫君        国 務 大 臣  中曽根康弘君        国 務 大 臣  山中 貞則君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君    説明員        人事院総裁    佐藤 達夫君        人事院事務総局        給与局長     尾崎 朝夷君        行政管理庁行政        管理局長     河合 三良君        防衛庁長官官房        長        島田  豊君        防衛庁防衛局長  宍戸 基男君        防衛庁人事教育        局長       内海  倫君        防衛庁参事官   江藤 淳雄君        防衛施設庁長官  山上 信重君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調  査  (国家公務員給与に関する件)  (国家行政組織に関する件) ○国の防衛に関する調査  (国の防衛問題に関する件)     —————————————
  2. 西村尚治

    委員長西村尚治君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  委員異動についてお知らせいたします。  昨七日、中尾辰義君、野坂参三君が委員辞任され、多田省吾君、岩間正男君が選任せられました。     —————————————
  3. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 国家公務員給与に関する件を議題といたします。  御質疑のおありの方は順次御発言願います。
  4. 山崎昇

    山崎昇君 まだ人事院作業中でありますから、あまりこまかな点は聞くこともまたできないだろうし、答弁されるほうも苦しいだろうと思いますから、ごく概括的なことを二、三お聞きしておきたいと思います。  初めに、いま人事院がやられております作業の経過がどの辺まで進んでおるのか、お聞きをしたいと思います。
  5. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 一口に申し上げますれば、大体例年どおりペースで進捗をいたしております。すなわち民間事業所についての実地調査、七千事業所、五十二万人という従業員についての資料の収集が終わりまして、目下これを集計中でございます。このスピードは例年と変わっておりません。
  6. 山崎昇

    山崎昇君 いまの総裁答弁からいきますと、昨年は八月の十六日に勧告が出されておりますね。そうすると、ことしは八月の十六日は日曜日になるのですが、私ども推定からいくと、十五日に勧告が出されるのではないだろうか、こう推定するのですが、去年と同じペースでいま進んでおるとすれば、勧告の時期はそこら辺に私らは思うのですが、どうですか。
  7. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) どうでもいいことでございますけれども、去年は十五日であったと思います。大体例年十五日辺のところで、十日ないし十五日ですが、その辺のところで勧告を申し上げておりますので、これもでき次第、やはりわれわれの手元であたためておく必要はないことでございますので、でき次第に勧告申し上げるというつもりでおります。したがって、これまた作業内容困難性は年によって違っておりますので、完全に機械ばかりでやっておることでもございませんので、その辺何日狂いがあるか知れませんけれども、まあしかし八月半ばころということをめどにして進めていることは事実でございます。
  8. 山崎昇

    山崎昇君 もちろん、いまの段階で何日ということは言えないかもしれませんが、いまの答弁からいくと、大筋は、去年と大体同じようなころまでには勧告をする、こういうふうに私ども理解をしておきたいと思うのですが、よろしゅうございますか。
  9. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) そんなような気持ちで私どももやっております。
  10. 山崎昇

    山崎昇君 少し事務的になりますけれども、お聞きしたいのは、いま総裁は、七千事業所、五十二万人ぐらいを対象調査をしていると、こう言いますが、去年の調査とことしの調査で違う点がありますかどうか。もし特徴点があれば説明を願いたいと思います。
  11. 尾崎朝夷

    説明員尾崎朝夷君) 本年の民間給与調査につきましては、大筋は従来どおりでございますが、対象となります事業所の数が、昨年は約六千九百八十ほど抽出しまして調べたのでございますけれども、ことしは七千百五十ほど、約二百ほどふやしまして調査を行なっております。抽出のやり方その他は昨年と同じでございます。で、調査事項は、いわゆる個人別調査と、それから制度調査と両方ございますけれども個人別調査は従来どおりでございますが、制度調査といたしまして、昨年は通勤手当扶養手当等を調べたのでございますけれども、ことしは地域差関連手当状況、それから住宅施設等状況を特に調べておるということでございます。
  12. 山崎昇

    山崎昇君 そこでお聞きをしたいのですが、私はいま地方を少し歩いておるわけですが、かなり新聞報道で、三十五年の勧告を上回るのではないか、とりわけ、新聞によりましては、十二・五%以上になるのではないかとか、あるいは住宅手当についてはことしはもう新設をされるとか、相当具体的に報道されるわけですね。そこで私ども地方へ参りますというと、内閣委員だということを知っておりますために、一体こういう新聞報道はほんとうなのか、うそなのか。推定記事だとしても、ある程度真実性があるのではないだろうか。あるいはまた人事院がそれとなしにそういうことをにおわしてこれは書かれているのではないだろうか、こういうことがかなり地方では聞かれます。私どもはなかなかそれについて的確な答弁できるわけでもありませんが、そこで総裁にお聞きをしたいのは、あのいろいろ出されます新聞報道というのは、大筋として理解をしておいていいのかどうか、聞いておきたいと思います。
  13. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 新聞方面は、これは毎年この季節になりますと、たいへん御熱心にいろいろお取り上げになるわけです。これは申すまでもなく、一般に知られておる労働省、あるいはその他の数字を基礎として、あるいはまたこの間の公労委の仲裁裁定ども念頭にお入れになって、そうして推測をされるということにほかならないわけであります。私どもとしては、これは山崎委員お尋ねを受けられてもお困りと同様に、私どもも直接お尋ねを受けましても、これは手持ちの資料はお互いさま同じものを持っているんだということで、いまの段階では推測は自由だということで申し上げておるわけです。しかし大きく考えますと、世間のいわゆる春闘相場というものも、大体大手だけの数字ではありますけれども、大体伝えられておるとおりの状況でございまして、われわれとしても、相当のところまでいくであろうということは、これはもちろん推測はしております。
  14. 山崎昇

    山崎昇君 聞くところによると、公務員共闘諸君総裁がお会いになった際に、史上最高とまではいかぬけれども、大幅、相当高額な勧告にならざるを得ないだろうというような趣旨のことが、交渉の中で述べられたと私は聞いておるわけです。そういう点から私ども推定をいたしますと、あながちいま新聞報道されていることは否定できないのではないだろうか、こう私自身も思うわけです。加えて、いま総裁みずから言われましたように、春闘はおおむね一万円前後というのが相場になっておりますね。それからまた、公労協の諸君にいたしましても、八千六百円前後というのがこれまた事実としてアップされておるわけですから、そういう点からいくと、もちろんここですきっとした返事はできぬにしても、いまの総裁答弁とあわせて考えますというと、私は三十五年以上のものになりそうな気がするのですが、私の推定誤りでしょうか、誤りでないでしょうか。総裁のひとつ考え方をお聞きをしておきたい。
  15. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 公務員共闘諸君と会いまして、そんな話がまっ先に出たことは事実なんです。それで、人事院勧告史上空前かどうか、三十五年といういまおことばがありましたけれども、私は私の就任以前のことは知らぬと、しかし、それはそれとして、史上空前になるかどうかはともあれ、今回は相当大幅かつ高額な勧告になるだろうということは確かに言いました。
  16. 山崎昇

    山崎昇君 これはね、何も総裁を責める意味でもありませんし、責める筋合いのものでもありません。ただ、あまりにも新聞には断定的に出されますのでね、十二・五%なんていうことを書かれますから。そうすると、いまの総裁の大幅で高額だということになれば、当然その数字は間違いないんだな、こう私は理解をしておきたいんですよ。したがって、この程度でこの点はやめたいと思うんですが……。  そこで、総裁に重ねて私はお聞きをしたいのは、去年だったと思いますが、私は委員会で、人事院勧告仲裁裁定というのは、法律上のたてまえは違っているけれども、精神的には仲裁裁定と同様に考えるべきものだということは、総裁は認めたと思いますね。そうだとすると、公務員共闘から申し入れがあって、初めて総裁がお会いになるという前に、むしろ総裁側のほうから絶えず労働組合を呼んで、積極的に組合意見というものを吸い上げて、この勧告反映をさせるという態度が私は必要なんではないだろうか、そうでなければ、精神的に仲裁裁定と同じだという総裁趣旨というものが私は生かされてこないのではないだろうか、こう思うのですがね。したがいまして、公務員共闘申し入れ事項というものを、どういうふうにこれからの勧告の中で生かされようとするのか、個々の問題は別といたしまして、基本的な考え方としてまずお伺いをしておきたいと思います。
  17. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 筋道をはっきりさしておきたいと思いますが、ただいまおことばにありました仲裁裁定と同じ性格だということは、これは見方によってはいろいろの見方ができますが、私がかねがねその点を強調してきたのは、完全実施をしてもらわにゃならぬのだという点においては完全に同じことだということを強調してきたのであります。しかしながら、その点を強調してまいりましたけれども、大体われわれの任務というものは、いわゆる団交権なり労働基本権代償機能を営むということで期待されておりますから、そういう立場からいえば、当事者の一方に当たります公務員諸君あるいはその代表の職員団体皆さん意見を十分伺うということは、これはあたりまえのことなんで、したがって、そういう態度で今日まで臨んでおるわけであります。こっちから出てこぬかということで誘いをかけたことも事実ありますけれども、あちらはあちらでいろいろ準備の御都合もあるらしいので、準備の整い次第会ってくれということで、よしきた、待ってましたという調子でお会いをして、腹蔵なくお話を承っておるというのが実情でございます。
  18. 山崎昇

    山崎昇君 私は、総裁がお会いになることは確かにお会いになっていると思うのです。ただ、公務員給与考えた場合に、残念ながら、やはり使用者側のサイドで給与がきめられてきておるという事実だけは曲げられないと思うのですね。そういう意味でいうならば、法体系は違いますけれども、せめてやはり総裁労働組合を、もう少しあなたのほうからもっと呼んで、そして労働組合の要求されている事項について、私は、今度の勧告では、たとえば実現できるならできるだとか、あるいは、これはこういう点で問題があるのだとか、もう少し労働組合見解というものを具体的にあなた方が生かすという積極性があっていいのではないか。ただ会って話は聞きました、これでは私は公務員共闘申し入れている事項の処理の方法としては、少し消極的過ぎるのじゃないか、こういう気がするものですから、いま重ねてお聞きをしているのですが、今後もう少し積極的に総裁のほうから労働組合を呼んで、もっと突っ込んだ話し合いをするというお考えがあるかどうか、聞いておきたい。
  19. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) こちらから積極的に呼びかけることもやってみたこともございますけれども、先ほど申しましたように、また、あちらはあちらの御都合がいろいろありまして、さあ来いと言ったら、よしきたといってすぐ来られるものでもないし、向こうの準備が整って、いよいよ会いたいとおっしゃれば、喜んでお会いします。会談の内容は、山崎委員も一ぺん傍聴に来ていただいたらよろしいのですが、そのくらいフランクにやっております。ただ私は独断で、これはだめだ、これはこういうつもりだということは言っておりません。
  20. 山崎昇

    山崎昇君 重ねて総裁に、私はやはりもう少し積極的に組合見解というものを実現をする方向で入れるようにしてもらいたいということをまず要望しておきたいと思います。  そこで、重ねて総裁にお聞きをしたいのは、この人事院勧告というのは、確かに国家公務員に対する勧告ではありますけれども、事実上では地方公務員にもほとんど適用されていると同様の措置がとられているのですね。そういう意味でいうならば、私は地方公務員実態等についてもかなり人事院は把握する必要があるのではないだろうか。これはいろいろな方法があるかもしれません。その一つ方法としては、たとえていうならば、全国都道府県人事委員会委員長を集めて都道府県実情を聞くなり、あるいはまたその他の方法を講ずるなりして、地方公務員実態というものを把握をされて、それらがこの人事院勧告反映されるという仕組みをとる必要があるのではないだろうかと私は思うのです。それらについての見解はどうですか。
  21. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 御推察のとおりに、開き直って言えば、地方公務員のことは全然わがほうの所管外でございますと言い切れるほどでありますけれども、そうはいかぬということもまたおっしゃるとおり。したがいまして、たとえば全国人事委員会のたとえば総会の際には、万障繰り合わせて私は出席をして、いろいろ御意見を聞いております。それから、人事委員長皆さんも、ほとんど東京に来られるついでに私のところにおいでになる。ことに北海道の委員長のごときは、まことに御熱心に私のところに来ておられまして、その点には抜かりのないつもりでございます。
  22. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、重ねてお聞きしておきますが、地方公務員実態は、この人事院勧告の中にある程度反映さしているというふうに私は理解をしておきたいと思うのですが、いいですか、どうですか。
  23. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 反映さしておるというところまで申し上げると、これまた非常に僣越なことになります。そこは節度をやはりわきまえなければなりません。地方公務員のほうにこれが準拠されていくものだということを十分認識しながら、意識しながら作業を進めておるところでございます。
  24. 山崎昇

    山崎昇君 総裁の言うことも、これはわからぬわけではないのですよ。ただ私は、全体の数から言えば、地方公務員のほうが多いですね。そしてこれは、勧告が出た段階で、私は自治大臣にもお聞きしますけれども、実際は国家公務員に対する人事院勧告ではありますけれども、ほとんどと言っていいくらい同じことが地方公務員にそのまま適用されている実態が多いから、そしてさらに国家公務員にないような、地方公務員だけにあるような職種にこの人事院勧告というものが適用されている。そういう、実態があるから私はいまのことを申し上げているのであって、そういう意味で言うならば、もっと私は、人事院はそういう地方公務員実態というものを反映さした人事院勧告というものがあっていいのではないか、こう思うのです。  そこで、総務長官おいでになりましたから、重ねて総務長官にひとつお聞きをしておきますが、人事院勧告実施したあと、一体総理府国家公務員実態調査というものを行なっているのかどうか。これが人事院勧告実施をされてどういう状態になっているかということを、総理府として調査をされたことがあるのかどうか。何か聞くところによると、そういう調査をやりたいのだが、予算がつかぬからやらぬという話も聞いておりますが、その点もあわせて総理府見解を聞いておきたい。
  25. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 調査というのはどういう意味かわかりませんが、人事院勧告は、いままで遺憾な点があって完全実施が行なわれていなかったのを完全に実施いたしますと、これは当然のことをこれからやろうということで、決してほめてもらおうと思って言っているわけではありませんので、政府の姿勢としてはそういうことでありますということですけれども、これは行なわれているかいないかの調査というものは、人事院年次報告その他もございますし、やはり人事院自体のほうにおいて当然行なわれているものであって、行なわれていないことがおかしいのですけれども、そういう御調査等はあるべきものでありますし、私どものほうは補完的に法定福利費法定外福利費民間との問題等についてはやはり、人事局所管事項でもございませんが、そういうことに私ども配慮をしなければならない給与担当の役所であると考えまして、そういう意味調査はいたしておりますが、完全実施がどのような形に行なわれているかどうかについての調査というものは、どういう形を前提にしておっしゃっているのかよくわかりませんけれども、あるいは人事院のほうが御答弁がよろしいのではないかと思われます。
  26. 山崎昇

    山崎昇君 私の言う実態調査というのは、完全実施がどうかという意味で言っているのではないのです。人事院勧告が出まして、政府実施をいたしますね。そして人事院勧告実施されているのだけれども、それを実際に当てはめてみたら矛盾点一体あるのかないのか、あるいはこういう点はたとえば来年度の人事院勧告では総理府としては直してもらってはどうかとか、そういう意味調査が私はあっていいのではないか。もっと具体的に言うなら、たとえて言うならば、住宅手当一つをとりましても、一体政府公務員住宅全体についての実態調査したことがありますか。そういうことも現実の問題としてないのではないか。人事院で行なっておりますのは、民間調査は行なっておりますよ。しかし公務員全体の調査もやっているかもしれませんが、私はむしろ総理府のほうは、そういう問題について絶えず、この公務員給与というものが公務員に対してどういう影響があって、どういう矛盾があって、将来この点は人事院に言って改善するなら改善する、あるいは実施段階で改善すべきものなら改善するということで、そういう調査があったのかどうかということであって、完全実施がなされているのか、なされていないのかという意味調査ではないのです。その点はどうですか。
  27. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは各省大臣がそれぞれ責任者として公務員を所管しておるわけでありますから、各省大臣が、たとえば、すでに科学技術庁長官においては、科学技術関係技術者給与体系あるいは手当等について考慮をしてもらいたいという申し入れ人事院のほうになされたやに聞いておりますし、あるいは警察庁国家公安委員会のほうでは、現在の国の公務員としての給与体系の中では警察というのがほとんど大部分地方警察官ですから、したがって体系の中で反映するとすれば、皇宮警察しかとりょうがない。しかし、それでは末端の警察官給与体系というものはどうしても乗ってこないということで、何とかして警察官給与体系というものを別に考えてもらえないだろうかという申し入れをしておられる。それぞれ各省所管大臣がおやりになることであって、私がやります場合には、これは内閣立場でものを言うことになりますので、いいことばかり申し上げればいいんですけれども、いわゆる人事院中立性を侵し、あるいは圧迫するということにならないような配慮がなされなければなりませんので、お話し合いはするにしても、私のほうから国家公務員給与勧告についてはこのような点を直すべきであるというようなふうに、私が積極的に指導性を持って人事院にものを言うべきものではなかろうと考えておる次第であります。
  28. 山崎昇

    山崎昇君 どうも誤解しているようですが、なるほど各省大臣各省ごとにいろいろなことを言うでしょう。一体総理府人事局というものは、それじゃ何をするのですかね。私は、これはあらためてお聞きをしたいと思いますが、少なくとも総理府が全体の人事というものをある程度扱うというならば、公務員全体の実態等については把握すべきものではないだろうか。これは警察は、警察官警察庁で調べるでしょう。あるいは農林関係ならば農林大臣が調べるでしょう。しかし、公務員全体に通ずる問題については当然総理府実態を掌握する必要があるのじゃないだろうか、こういう観点からお尋ねしていますが、これはあらためて人事局の機構の問題とも関連して私は別な機会に聞きたいと思いますが、いずれにしても、私は公務員実態調査というものがあまり行なわれておらないんではないだろうかという、回ってみましていろいろ気がするものですから、いま一言触れているわけです。  そこで、人事院総裁にお聞きをしますが、ことしもまた官民較差というものを出されるわけなんですが、そこでおおむね、私が考えるのに去年と同じように、大体まあ本俸重点が置かれるのだと思うのですが、そこで本俸重点が置かれるのですが、最近はどうも初任給にかなりな重点が置かれて、在職者の調整というものがあまり行なわれておらない。ただ一部分文句のありそうな分を中だるみ是正と称していじくり回す程度の話であって、そういう意味でいうならば、ことしの官民較差やり方というものは、一体どういう点に重点を置いてやられようとするのか、あるいは勧告方向として、中堅職員にある程度重点を置くというのか、あるいは、またしても初任給重点を置くというのか、そういう点についてなかなか、作業中だとまた逃げられるかもしれませんが、方向としてお考えがあれば聞いておきたい。
  29. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 全体の官民格差の問題は、これはわれわれとして従来のやり方で間違いないと思います。ただ、御指摘のような問題は、その配分をどこに重点を置いて配分するかという点に、まあ従来から私どもの苦労があるわけであります。しかし、この初任給ということもおっしゃいましたけれども初任給はことしはもう一番これは頭の痛いところでございまして、大体いままで得ました情報では、相当のところまで民間は上がっておると、片や私ども公務員の側を見ますと、これがまた民間景気——好景気反映いたしまして、公務員試験の受験の志願者が年々もうガタガタガタガタと減ってきておると。ここでどうなるかいということが、目下たいへんな頭痛の種になっております。まずそこら辺でものをいうのは初任給だろうということがありますので、初任給はこれはどうもないがしろにできないだろう。もちろん大手の大会社に肩を並べるようなところまでいくかどうかは別として、とにかく重点を置いて考えなければいかぬだろう。これはここ数年来御承知のとおりのわれわれの態度であります。初任給を高くしたために、今度配分の問題として中堅層のところが低くなりはせぬか。これは相関関係で必ず出てくるわけであります。そこのところのやりくりが非常にむずかしいわけです。しかし、中堅の皆さんの生活上の問題というものは、われわれとしてとうてい無視できませんので、そのほうにも十分手厚い配慮を加えなければならぬ。そこがこれからの苦心のしどころというふうに考えております。
  30. 山崎昇

    山崎昇君 なるほど苦心のしどころだと私も思います。ただ私は、ここ二、三年来の勧告を見ますとね、やはりこの在職者はそうやめていかぬだろうという意図があるかどうか別にしましてね、やはり在職者の賃金というのはあまり上がっておらない。初任給だけはずっと上がるというところから、かなり在職者に不満があることも御存じだと思うのですね。  それからさらに、この在職者の問題に関連して、昇格が、実際にいま資格に到達をしているけれども、昇格をさせるのが二、三年から四年くらいおくれるために、かなり本人にとりましては不利益になっておる。そして最近のように毎年この給与改定が行なわれますと、その差というものがだんだん広がってくるということになりますね。そういう点を私はあわせて考えるならば、相当程度在職者の調整というものを重点を置いて考えてもらいたいというのが一点と、もう一つは、これも先般の委員会で議論したところでありますが、総裁は、下級職員はある程度生活給的なものの考え方をしたほうがいいという答弁もありました。そういう点からいきますとね、一定水準の生活が維持できる程度給与というものを与えなければ私はならぬと思う。ところが、現実に現場の労働者でありますとか、俗にいう行政(二)表だとか労務職俸給表だとか、こういう諸君についてはきわめて私は劣悪な条件にあると思うのですね。こういう諸君にまで職務給的な要素一本やりで給与改定を行なうために、ベース改定があるたんびに差が開いていくというやり方をとられる。これは私はやはり納得できませんから、今度の勧告内容につきましては、こういう現場の諸君というのは相当程度の私は改善をしてもらいたい、こう考えるのですがね。この点について総裁はどうお考えになりますか。
  31. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 現在の給与法その他、法律のたてまえは、職務と責任ということを鉄則としてうたっておりますために、その面からのいろいろなむずかしい条件があるということは御推察いただけるところだと思いますけれども、しかし、それにしても、先ほどお触れになりましたように、私どもも生活ということを常に強く考えてきておるわけです。したがいまして、たとえば、いまお話しに出されました行政(二)の諸君というようなことにつきましても、まあ一部には表自身を一表と二表と一緒にしろとかいうような御議論もありますけれども、私どもとしては、それよりも実をとれということで、実質的の改善にもう逐年努力をしておりまして、もう相当のところまでいっておるつもりでありますけれども、まだわれわれとしてはそこで甘んじてはおらない。なお今後それ以上にさらに努力をしていかなければならないという心がまえで臨んでいる。したがいまして、標準生計費のようなことをお取り上げいただきましても、いままでは初任給のささえというようなことでずっと御説明しておりましたけれども民間のほうの初任給がどんどん上がるもんですから、もう標準生計費の上にいってしまいまして、そっちのささえには役に立たぬ。そこで二人家族、三人家族というような方面に今度はその尺度を使って、万遺憾なきを期したいというような態度にも変わってきておるわけでございます。そのほうの気持ちはおくみ取りをいただきたいと思います。
  32. 山崎昇

    山崎昇君 総裁からかなり考えたいということですから、私は了解しておきたいと思うのですが、ただ、最近出ました生活白書を見ましてもね、もう都市と地方とではほとんど生活に差がない。だんだん都市化現象というのは農村にまで及んでいっておりますから、したがって、私は、現場労働者といっても、地方のほんとうの現場で働いている労働者の生活というのは、相当程度都市と同じような考え方でこれを見てやらなければ、私は現実の生活は苦しいのじゃないだろうか。そういう意味もありまして、この現場労働者の賃金というのは、行政(二)表は撤廃せいということは、私も持論でありますけれども、これはまた別の機会にやるといたしまして、相当程度これは考えてもらいたいということを重ねて申し上げておきたいと思うのです。  それから、その次にお聞きをしたいのは、実はいまの給与体系になったのは昭和三十二年以降でありますね。したがって、まあ十三年くらい経過するわけなんですが、その間、新三等級ができたり、あるいは局長以上の指定職俸給表ができたり、いわば八等級制というけれども、事実上は十等級制になっておる。そして上級職は、私に言わせるならば、きわめて優遇されておる。こういう体系にもうなっているんですね。それと、先ほど来申し上げているように、初任給が上がって、在職者がそのわりに上がらぬもんですから、問題がやはり生じてきておる。  そこでお聞きをしたいのは、今度の勧告で、いまの体系そのものをある程度直そうというお考えがあるのかどうか。たとえばもう一つ別な等級制をつくるんだとか、あるいは減らすんだとか、どうなるかわかりませんが、いまの俸給体系というものにある程度のメスを入れるというお考えがあるのかどうか、この際、聞いておきたいと思います。
  33. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 現在の体系もそれなりに確かに継ぎはぎ細工で来ているというような面もございますけれども、ただいまの形としてはそれほど致命的な欠陥を持っておるとは思いませんけれども、しかし、従来もそうでありますけれども、いろいろ御議論があるわけで、したがって、私どもも研究は怠りなく続けてきておりますけれども、今度のこの機会にあたって、これを大幅にどうこうというようなところまでの気持ちはまだ持っておりません。しかし、検討が進んでいくにつれて、多少小さな手直しということは、これはあり得るかもしれませんが、いまおそらくお考えになっているような意味の根本的な改定ということは、いまの段階ではまだ考えておりません。
  34. 山崎昇

    山崎昇君 私は、人事院がそうするという意味でもありませんけれども、最近の行政機構と関連をして言えば、これは課長に相当する職である、これは部次長に相当する職であるというふうに、各省庁ごとにかなり職というものが新設されましたね。そういうものだけは一気に昇格する、そして給与というのが黙っていても上がっていくという仕組みになってしまうわけです。依然として残されるのは、いまの役所の機構で言うならば、課長補佐以下ぐらいの職員というのは、劣悪な条件と言えば少し語弊がありますけれども、やはりあまりいい条件になっていない。こういうふうに私ども考えますと、行政機構の改革というものと賃金というのは密接なんですね。そういうことについて、人事院は、ただ置かれたものについて定数を直して、そしてそれにふさわしい等級を与えるというだけの話であって、そういう意味で私は下級職員——いつでも言いますが、下級職員はいつも恵まれていないんです。上級職というのは職が上がるたびに恵まれていくというやり方をとる。こういうやり方についても私は納得できませんので、したがいまして、いまの体系からいって、何かまたいまたくさん職ができておりますけれども、それにふさわしい等級ができたりしまして、いまの体系というのが上に手厚くなるような体系に直されるのじゃないだろうかという私なりの危惧を持っておるわけでありますが、そういうことがないならないで私はけっこうでありますが、総じて言うならば、私は、下級職員にもう少し人事院は意を用いてもらいたい、こう思うんですが、どうでしょうか。
  35. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) これは行政組織との接点にかかわる問題でございまして、古い思い出話をすれば、私ども内閣の法制局におりましたころは、法制局では、給与問題も、現在行政管理庁のあずかりになっております行政組織や定員も一手に握っておりましたから、非常にぐあいがよかったという郷愁を感ずるわけでありますが、しかし、今日行政管理庁ができておりまして、そのほうの所管ということになっております以上は、われわれのほうはそれにむやみに手を出すということはできませんから、ある程度の批判の上には立ちますけれども、それ以上のことはできない。いまたまたまおことばにあったような下級の人たち、たとえば六等級から五等級にいく辺のところ、これはむしろ御承知済みのことだと思いますけれども、たとえば主任というような制度をつくったらどうかというようなことにつきましては、出過ぎたことかもしれませんけれども、そういう見解をわれわれのほうとしては相当披瀝して、その方向に向かってきているという面もございます。しかし、それは本来は所管問題から言えば別の問題と考えなければいけない。努力している、こういうことです。
  36. 山崎昇

    山崎昇君 総裁の努力は努力として私は認めていいと思うんですが、ただ、いまの給与制度そのものが、行政上のポストが上がらなければ上がらないという仕組みに相当程度なっているところにやはり問題があるわけです。したがって、別な官庁ではどんどんそういうポストをつくって、そういう者だけが賃金が上がっていく。いま総裁から指摘されましたような五等級とか六等級というものは、なかなか昇格ができぬから賃金が上がらない。そして頭打ち制度というものがある。さらに加えて、これもこの前から議論しておりますけれども、等級別定数というようなことであなた方は押えて、いわば下級職員については何重にも押えるようなやり方をとっている。上の者については、すいすい上がるというような仕組みになっているところに私は根本的問題があると思っているんです。とりわけ、私はこの前も指摘しましたように、一省一局削減で何が残ったかといえば、指定職俸給表が残っただけである。そういうやり方をするから私ども問題点として指摘するので、重ねてあなたに要望しておきますが、私は、この下級職員というのが大半でありますから、特に人事院の出しておる業務報告を見ても、七割までは高校以下の卒業生です。そういう学歴の者が大半低賃金で押えられるということは、人事管理上からも私は問題がある。何割かの人はたいへん優遇されるけれども大半の人間は押えられるというような体系は改めるべきだと思っている。これは勧告が出た際に私具体的に指摘したいと思いますが、いずれにしても、勧告段階でそういう点については慎重な配慮をしてもらいたいということを要望をしておきたいと思います。  それで、その次にお聞きをしておきたいのは、新聞報道の中でも、また、去年から総裁のほうから出されておる高齢者職員の問題なんですが、これは一体ことしどういうふうにされるのか、まず見解を聞いておきます。
  37. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) これは昨年の勧告の際に、報告書の中でその検討の必要性を力説いたしまして、そうして、成案を得次第法制化をしていただきたいということをたびたび申し上げてきたわけであります。ただし、これはやはり一定の周知期間というものを置いて、関係の皆さんにもその趣旨が納得いただけるほうがよかろうというようなこともありまして、今度の勧告の際にそれをはっきりと堂々と勧告でひとつうたおうという方向でいまおるわけです。しかし、これに対していろいろと御希望も各方面からございまして、したがって、私どもとして、むげに、ただ冷酷にこの趣旨を貫いていこうという気持ちは持っておりません。しかし、その節、すでに申し上げましたように、これを民間の場合に比べますというと、非常に公務員の場合のほうが給与が手厚くなり過ぎておるという面がどうしてもございます。それが官民比較の際にも響いてくるということがございますし、あるいは、内部の配分の場合にも、本来働き盛りの若い人に回る分が高齢者のほうに行ってしまうということもございますので、その基本的立場はこれを何としても是正したいという気持ちでおりますが、しかし、その実施については、冷酷むざんな形にならないようにということを心がけつつ、いま検討しておるということでございます。
  38. 山崎昇

    山崎昇君 これも具体的内容が明らかでありませんから私もなかなか反論しにくいわけですが、ただ、いま総裁は、高齢者の職員は民間より高いと言う。しかし、この諸君は若いときは民間より低い。たまさか、この年齢になって高くなったからあなたは削りますよというものの言い方は、私はやはり考えてほしくない、そういう考え方は。それじゃ若いときの低いときは一体どうされたのか。それはほおかぶりしておいて、年をとってからだけ、お前、高いから削るんだというような考え方は、私はやめてもらいたいと思うし、この問題は年金や退職金やいろいろな問題と関連してくる問題でありまして、老後の、やめたあとの生活保障等とも関連してくる問題でありますから、したがって、これは相当慎重にやってもらわなければならぬし、もう少し私は検討してもらいたい。そうして、ことしの勧告なんという性急なことをやめて、一年でも二年でも、もう少し検討されて、あるいはいろいろな方々の見解を聞いて、こういう問題についてはあなたは冷酷なことをしたくないというなら、私はそういう扱いをしてもらいたいと思う。そういう意味では、ことしの勧告からこういう点ははずしてもらいたいと思うのですが、どうですか。
  39. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 御要望はとくと承っておかしていただきます。
  40. 山崎昇

    山崎昇君 承っておくだけではどうにもならぬので、ぜひこれは私は強く要望しておきますから、もう少し私は年数をかけるなり時をかけるなりして検討してもらいたい。そうして各層の意見を聞いてやってもらいたい。ただ民間と比較して、これだけのものが高いからこれは削るんだなんという、そういう単純な考え方はやめてもらいたいということだけを申し上げておきます。それで次にお聞きしたいのは、いろいろあるわけなんですが、調整手当のことしはタイムリミットの年になっておるわけですが、いまのところどうお考えになっておるのか。これも結論が出ないでしょうけれども方向があればお聞きしておきたい。
  41. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 調整手当は基本的にはやはり各地域別の格差を何とかして調整しようということから生まれておりますために、やはり現実のデータがどうなっているか、物価、生計費あるいは民間給与という各地別のデータをそろえて勘案すべき事柄でございます。まだ残念ながら最近のデータが出ておりませんために、こうもあろうか、ああもあろうかと、いたずらに憶測をたくましくしているだけの段階でございます。データが整い次第、さらにわれわれのほうの立場をきめなきやならないというふうに考えております。
  42. 山崎昇

    山崎昇君 総裁、大体データとしては今月一ぱいぐらいにおおよそのめどはつきますか。そのめどはどのくらいになりますか。
  43. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) これは早くつかぬと、また私ども困りますし、給与局のほうも督励しておりますが、いまおっしゃるような時期には整うはずだということを局長も言っております。
  44. 山崎昇

    山崎昇君 それでは次に、去年、扶養手当が妻の分だけ上がりましたね。あとは据え置かれているわけなんですが、この点はどうしますか。ことしはその他の者については、これもまた民間調査をやっているのでしょうけれども、ものの考え方としては、その他の者もこれは上げなければ私はバランスがとれぬのではなかろうか、こう思うのですが、お考えをお聞きしたいと思います。
  45. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) これはその他すなわち子供のことであろうと思いますけれども、子供の分は、これは去年の調査におきましても、過去とずっと比べてさっぱり上がっておらぬというのが民間実態でございまして、したがって、いわゆるその他の分については、ことしも大きな変化はないであろうと考えております。ただし、去年は御承知のように配偶者、それに一つおまけをつけてああいうことをやりましたですが、その辺のところが結局限度じゃなかろうかと考えております。ことしは調査はやっておりません。
  46. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、ことしはもう扶養手当については全然考えないということですか。私はどうもその態度はやっぱり納得できないです。それはなるほど民間の状態はどうか知りませんけれども、去年妻の分だけはあれだけ上げておいて、その他の子供の分についてはもうこの十年来据え置かれたままでよろしいなんていうことには私はならぬのではないかと思うのですね。したがって、民間はどういう数字になるのか私はわかりませんけれども、少なくともその他の者についても相当程度考えて私はしかるべきではないかと思うのですが、どうですか、これは。
  47. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) これは、先ほど触れましたように、生活の問題に直結する問題でございますからして、ことしはやりませんとはもちろん申し上げられないことで、しかし、やりますとは申し上げておりません。その中間のところで、まだこれからの問題だということで御了承いただきたいと思います。
  48. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、やることもあり得るというふうに理解しておきますよ。いいですね。
  49. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) はい。
  50. 山崎昇

    山崎昇君 それでは次にお聞きしますが、先ほど、ことしの調査の特徴として地域差について調査をしておると、こういうお話でしたね。これは調整手当と関連して地域差ということを調査をしておるのか、あるいは調整手当とは関係なしに地域差というものをお考えになっておるのか。この地域差調査という内容はどういうお考えなのか、お聞きしておきたい。
  51. 尾崎朝夷

    説明員尾崎朝夷君) もちろん、ことしは調整手当につきましての一つの検討の時期に当たっておりますので、そのための調査でございます。
  52. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、調整手当をどうするかというために地域差調査を行なっておる、これだけの話ですか。そうすると、去年の調査とたいして——何か先ほどの説明では、ことしは特徴点一つとして地域差調査をやったと言うけれども、たいした調査ではありませんね。そうすると、あなた方が強調するほどの特徴的な調査ではありませんね。どうですか、その点。
  53. 尾崎朝夷

    説明員尾崎朝夷君) 手当につきましては、民間状況につきまして、二年あるいは三年に一度程度調査をするということで、いろいろな手当につきまして絶えず民間状況を把握していくというつもりで考えておりますが、ただ、重要な手当につきましては、たとえば住宅関係等につきましては、毎年調べておるというような状況でやっておるわけでございます。ことしは調整手当関係がやはり重要な問題点でございますので、それに関連したデータを特にとるというつもりで、先ほど申し上げましたように、ことしはその点を重視しました調査構成にしておるということでございます。   〔委員長退席、理事八田一朗君着席〕
  54. 山崎昇

    山崎昇君 私の理解が間違っておるのかどうか知らぬけれども、冒頭に去年の調査とことしの調査でどういう特徴がありますかとあなたに聞いたら、ことしは制度としては、通勤とそれから住宅手当あるいは扶養手当について去年はやったけれども、ことしは、地域差住宅手当について調査をしております、こういう冒頭の答弁でありましたから、したがって、この地域差調査というのは、調整手当をどうするかという意味でこの地域差調査というのをやっておるのか、そうでなくて、別な意味で、地域差というものを去年と違った意味でことしは調査をやっているのか。「特徴」ということを聞いたから、重ねてお伺いしているんです。それでは、地域差調査というのはどういう内容でどういうことをやられておるんでしょうか、説明願いたいと思います。
  55. 尾崎朝夷

    説明員尾崎朝夷君) 地域差と申しますのは、民間事業所におきまして、それぞれの地域にあちこち事業所を持っておる場合に、それらの間に給与格差をつけておるかどうかという関係が問題点でございます。その場合に、その格差のつけ方、あるいはそれぞれの各地の事業所間における格差のあり方、それがどういう名前であるか。住宅手当といったような名前であるか、地域手当という名前であるか、そういうような問題についてことしは詳細に調べておるということでございます。したがって、そういう関係が調整手当についての最も重要なデータというように考えておりますけれども、もちろん、それ以外の手当について、地域差問題を検討する場合には重要な資料になるというふうに考えております。
  56. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、私、理解しておきますが、調整手当のデーターにすることが一つと、それから、住宅手当その他地域によって別な手当等をどう民間でやっておるのか、そういう基礎にするために地域差調査というものをことしはやっているんだと、こういうことになりますね。そう理解していいですね。
  57. 尾崎朝夷

    説明員尾崎朝夷君) そのとおりでございます。
  58. 山崎昇

    山崎昇君 それでは次にお聞きしますが、住宅手当は去年四三%くらいしか民間がないというので見送られているわけなんですが、ことしはまだ数字が出ないでしょうけれども、傾向としてはどういうことですか。また、いまの段階で、総裁として住宅手当についてはどのようなお考えを持っているか聞いておきたいと思います。
  59. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) ことしのデーターはもちろん出ておりませんけれども、だんだん上り坂へきておりますから、パーセンテージが上がりこそすれ、減ることはあるまいという観測はいたしておりますけれども、どの程度までいきますか、これはまだ全然わかりません。住宅手当は、それらもさることでありますけれども、従来非常に関係方面から御要望の強いことであって、さればこそ、また毎年しつこく民間調査もやっておるわけでございます。私どもとしては大きな関心を持って臨んでおることはたびたび申し上げておるとおりでございます。ことしもそのような態度でこれを注視しておるというのが現段階でございます。
  60. 山崎昇

    山崎昇君 それじゃ次に私は通勤手当についてちょっとお聞きをしておきたいと思うんですが、実は最近私どもずっと回ってみますというと、  ローカルのバスが運行時間が短くなったり、回数が減ったり、あるいは鉄道がなくなってみたりしますために、国家公務員のたとえば駐在所でありますとか、あるいは出張所でありますとか、そういうところに勤務する者の通勤手当がたいへん問題になっておるようです。私ども行ってみますと、どうしても公的な交通機関を利用するということになると、俗にいう能率があがらぬものだから、無理して自分の車を買ったり、あるいはオートバイに乗ったりして行動する。ところが、そうなると成規の通勤手当がもらえぬといういまの仕組みになっておるんですね。そういう意味では、この通勤手当の支給のあり方というものは、単に民間調査だけでこれをやるということは少し実情に合わないんではないだろうか。そういう意味で、この通勤手当を直す必要があるんじゃないだろうか。まあ、額を上げろとかいう意味じゃありません。支給の方法について、そういう、実態について直す考え方が必要なんじゃないんだろうか、こう思うんですが、どうですか。
  61. 尾崎朝夷

    説明員尾崎朝夷君) 通勤手当につきましては、いまお話しのございましたように、都市につきましては交通機関の利用者が多いわけでございますけれども、ずっと地方に参りますと、それ以外の交通用具、つまりモーターバイクとか、あるいは最近は自動車も相当使われているというような関係があると考えております。この点につきましては、やはりその支給のしかたというのが、民間におきましても、こういう状況反映いたしまして、少しずつ変わってきておるわけでございます。したがいまして、私どものそういう交通用具に対する支給のしかたにつきましても、いままでは全く定額といったようなことであったわけでございますけれども、最近の、たとえば前回の調査の場合には、そういう民間におけるたとえば距離段階別とか、あるいはそれ以外の支給方法といったような点がかなり増加してきているということもございます。そういうことで、昨年はそういう点も織り込みまして定額を定めたということでございますけれども、今後、そういう点は増加する傾向もあるように見受けられますので、そういう点を注目してまいりたいというふうに考えております。
  62. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、あなたのほうでも十分そういう実情は調べられて、そうして手直しをされる、こういうふうに私は理解をしておきたいと思うのです。そうしませんと、私は、特に国家公務員の官庁のないところでも、実際は地方自治体があります。地方自治体は、国家公務員通勤手当そのまま、条例なり規則で支給されますね。そこで実際は実情に合わないということになってきているわけです。そういう点がありますから、先ほど総理府にも、一体実施されている実態について調査されたことがありますかというのは、そういう意味もあって聞いているわけなんですが、したがって、私はこの通勤手当の今後のあり方についても、いま前向きの姿勢が示されましたけれども、もっともっと実情に合うように、やっぱり本人に損にならぬように、そうしてもっと行動できるように、こういう手当をせっかく支給するなら、私は改めてもらいたい。それを今度の勧告でぜひ私は直してもらいたいということを、これも強く指摘をしておきたいと思うのです。  その次に総裁に聞きたいのは、寒冷地手当についてお聞きをしておきたいと思います。これは石炭、薪炭手当もさることながら、寒冷地手当の定額の問題ですね。この問題については、現在どのようにお考えになっておるのか、まずお聞きしたいと思う。
  63. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) これは要するに、寒冷関係の対策のための費用がどのくらいかかっておるかという実態に連なる問題でございまして、したがって、いわゆる寒冷増高費に当たるものが、物価の値上がりその他においてどの程度上がっておるか、その上がりようによってはほってはおけないだろうという立場の問題になるわけでございます。したがいまして、私どもとしてはそういう面についても注視を怠らずにきておりますけれども、まだそれほど大きな、少なくとも寒冷増高費に当たるものとして、それほど顕著な伸びがあるようにも見受けられないがという感じは持ちながら、なお、数字をにらんでおるということでございます。
  64. 山崎昇

    山崎昇君 いつごろ、大体の調査を終わられますか。そうして大体人事院としていつごろにどうするという結論は出さなきゃなりませんね、いずれにいたしましても。それは大体、おおむねいつごろになりますか。
  65. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) たとえば石炭なら——これは釈迦に説法でございますが、これなど、毎年調べておるわけでございます。そういう時期をめどにして、周辺のものも考慮しようということになるわけです。
  66. 山崎昇

    山崎昇君 その際に、総裁、どうも私は人事院はどこのデータでやるのか知らないけれども、やっぱり一番石炭なら石炭を使っておる北海道なら北海道の資料というものを中心にこれは判断をしてもらいませんと、それと違った資料であなた方が適当に判断するということは、私はやっぱりよくないのではないか。そういう意味で、判断される場合には、現地に一番合うような資料でひとつ判断をしてもらいたいということも強く要望をしておきたい、こう思うのです。  そのほか、まだまだ私はこまかな点でも聞きたいと思いますけれども、まだ勧告前でありますから、おおむねこの程度でやめたいと思うのですが、最後に、人事院総裁、定員外職員の、これらの諸君の待遇問題について、私は一言要望もしておきたいし、見解も聞きたいと思う。  私は、これは予算委員会でも、主として定員化の問題と関連をしてやったわけでありますが、行ってみますと、やっぱり同じ仕事をやっておるのですね。ですから、雇用形態は、なるほどいろんな雇用形態はありますけれども、少なくとも待遇面では定員内職員と同様な待遇面をしてやるように指導するのが私は正しいのではないだろうか、こう思うのです。そういう意味で言うならば、人事院はこの問題にそしらぬ顔をしていると言ったら少し言い過ぎになりますけれども、何もものを言わないというのも私はどうも納得ができない。そういう意味で、勧告の中に入れるべき問題かどうかは別にいたしまして、少なくとも政府に対して、この定員外職員の労働条件なり待遇問題等についてはこういう改善をすべきではないかとか、あるいはこういう扱いをすべきではないかとか、そういう点について私は申し入れるなり、意見を述べるなりすべきではないかと思うんです。その点はどうですか。
  67. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) これは予算委員会でも確かにおことばがありましたように、また私も表明したと思いますけれども、結論は、われわれの願いとしては、これはぜひとも定員化していただきたい。しかし、現実にはいろんな要望がその関係者からきておりまして、これを聞き捨てにはできない、聞き流しにはできないという面もあるわけです。われわれとしては、そういう面でできるだけの手当てはしておりますけれども、これは大体私が考えても限界にきておるのです。これ以上やったら、定員外も定員内も全然同じになってしまう。これは大体けじめをもとからくずしてしまうので、しからば、もうすでに定員内のほうに繰り込む、繰り入れるという方向に措置をとっていただかぬことには問題が解決しないという気持ちを持っております。   〔理事八田一朗君退席、委員長着席〕
  68. 山崎昇

    山崎昇君 総裁の言うことは、基本的なことで私も正しいと思うんですよ。ただ、私は、ずっといま回ってみておりますが、こういう事例があります。たとえば十人おりまして、三年計画でこれを定員内に入れるということを約束するのですね。ことしは三人で、来年は三人で、再来年は四人だと。ところが、先に定員に入った人は、これは共済組合から始まりまして全部適用になりますね。ところが、三年計画で入れるという約束をしたけれども入ってないがために、この人はけがしたり、事故したりしますと、日給その他でありますから、その日から生活困難におちいる。だから私は、少なくとも、定員に入れるということは原則であるけれども、それまでの間はそういうものについて、仕事は同じことをやらせるわけですから、服務上の監督は、あなた方一般職員と同じことを監督するわけでありますから、少なくとも待遇面では同一に扱うべき筋合いのものではないのでしょうか。単にけじめがなくなるとか、あるとかという問題では私はないと思う。だから、人事院はそういう点についてもっと調べるなり、あるいはもう少しこういう劣悪な条件で働いておる職員というものについての待遇というものを、私は人事院はあたたかい目で見てもらいたいし、また処遇をしてもらいたいと思うんです。そうでなければ人事院に対して、何をやっているんだという声がやはりありますよ。そういう意味で、私は定員外職員の問題については、すぐ片づく問題だとは思いませんけれども、少なくとも人事院はそれらの考え方というものを明確にして、これからこれらの諸君給与なりあるいは労働条件というものについて積極的な私は姿勢を示してもらいたいと思うんです。総裁の決意を聞きたいと思います。
  69. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 私ども立場から率直に言わしていただければ、ちょっとポイントを切りかえていただければ列車はすぐ走るのを、そのポイントを切りかえることをしないで、こっちのほうの駄馬にむちうてと言われても、これは私どもとしてもやはり限界があることなんです。やはりポイントを切りかえていただくことだ、正しいレールに乗せていただくということにやはり片や努力してまいりたいと思いますし、そのほうの御声援をぜひいただきたいと思います。
  70. 山崎昇

    山崎昇君 もうこれでやめるけれども、なるほどポイントを切りかえるのも必要ですよ。しかし私は、公務員のそういう問題を守るのがあなた方の立場でしょう。そうだったら、一番弱い公務員立場というものをあなた方やっぱり守るべきじゃないでしょうか。原則にいけない場合には、次善の策でも人事院というのはやっぱり政府にものを言って守ってやるというのがあなたがたの任務であって、それができないからおれのほうは何もできないんだという言い方はやめてもらいたい。私は、人事院というのは、もう少し下級職員なりそういう弱い公務員について意を用いてもらいたい。このことを重ねてあなたに強く要望して私の質問をきょうは終わっておきます。
  71. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いま山崎委員のほうからいろいろ質疑が出ておりますが、勧告を前にいたしておりますから、問題をしぼりまして、ダブらないように若干の点をお伺いいたしたいと思います。  何せ数年ぶりに公務員の賃金を論議するものですから、少し勝手が違うんですけれども一つは、やっぱり何といいましても、いま山崎委員からも問題に出しましたように、引き上げ率ですね、これで財源がきまって、それを、きまったものを幾らやるか、調整手当を幾らやるかということで配分されるわけですから、ですから、この引き上げ率を幾らにするかというのがたいへんな問題ですね。これはどうしても論議せざるを得ない。ところが、総裁御承知のように、人事院勧告というのは三十五年以来十年一日のごとき勧告やり方なんですね。ほとんど変わっていないんですよ。ですから、大体推定がつくわけですよ、相当正確に。ことしはどの程度勧告になるだろう、どの程度の引き上げ率になるだろうという推定がつくわけですね。これはやむを得ないんですよ、十何年やっておられるわけですから。そこで常識として一般にいわれているのは、十二・五というふうにいわれておる。これはどこを見ても一二・五と出ています。どういうところからこういうふうに出てくるかといいますと、これはいま申し上げたとおりに、三十五年以来十年同じような勧告やり方ですから、推定がつくわけですね。三公社五現業がどうなっておるということがはっきりいたしております。三公社五現業の仲裁と勧告との関連というものも、これはもう毎年のことを見ればはっきりするわけですね。あるいは春闘相場というのを見れば、大体人事院勧告はこの程度というのがはっきりするわけです。そういう中でいろいろな専門家の人たちが十二・五という数字をはじいておるわけです。たとえば三公社五現業の仲裁裁定は去年は一〇・一だったですね。人事院勧告は一〇・二ですよ。本年は仲裁裁定は一二・五です。そういう観点から見ますと、これは十二・五という数字は黙っておっても出てくるんです。それから春闘相場、労働省の調査あるいは日経連の調査を見ましても、昨年よりいずれも二・五%上回っていますですね。一〇・二を二・五%上回るというような話になりますと、これはやっぱりだれが見ても十二・五という数字が出てくるだろうというふうに思うんですね。これは総裁としては自分の数字が一番正しいと思っておられるわけですから。しかし、そういう数字がずっと十年積み重なった上にこういう推定をみなするようになってきている。どうもやむを得ないことなんですけれども、十二・五%というような数字人事院総裁としては否定はおできにならぬのじゃないかというように思いますけれども、いかがでしょう。
  72. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) それが否定できないということになれば、多額の費用と労力を費やして七千の事業所五十二万人を一人一人足で歩いて票を集めてくるなどというのは全くばかげた話で、むだなことになるんじゃないかという御批判につながることになりますので、やすやすとそれに乗るわけにはいかぬというのが正直なところでございます。われわれとしては、それだけ克明に集めた資料に基づいてこれだけパーセンテージが出ましたと、さかのぼってみれば、なるほど公労委の仲裁裁定もそれほど間違っていなかったわいと、むしろそのほうの裏づけになるかならぬかぐらいな意気込みでわれわれやっておるわけでありますから、正確な数字はもちろん申し上げる段階ではない。片や公務員側の問題といたしましては、現実の公務員が四月現在で幾らもらっているかということもありますし、それから去年からの伸びもございます。それから、現実のわれわれの各地で集めたこまかいデータというものと組み合わせてのことでございますから、どのくらいという見当のつかないのはあたりまえなんです。それを申し上げれば、よほどどうかしているということになりますが、先ほど申し上げましたように、相当大幅になる、高額になるだろうということだけは、半分期待も交えながら、われわれその成り行きを注視しておるということでございます。
  73. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 人事院でやっておられますいまおっしゃった民間給与実態調査ですね。私はこれについても非常に疑義があるんです。非常に問題を持っておる。これは後ほど申し上げますけれども、一言言っておきますと、これ非常に手工業的なやり方ですね。二十年変わってないですよ。これは人事院創設以来と言ってもいい。これじゃまずいですね。そして三月から始まって八月に勧告が出るでしょう。こんなたいへんな社会の変動がせわしい時代に、半年もおたおた計算しておる。仲裁裁定はばしっとですよ、三公社五現業は。これはひとつ総裁としては再検討願わなければいかぬというふうに私は思いますけれども、それは後ほど伺いたいと思います。ですが、ただ昭和三十五年の勧告というのが十二・四%という勧告だったですね。それから二けたのやつは、去年が一〇・二、あとはないわけです。まあそういうこと、さっき山崎委員もお話しされましたが、史上最高ということば、また変な話だけれども、やっぱり十二・四より高くなるだろうというふうに私は見ていますけれども、しかし、それはいまおっしゃったように、だれが見ても推定をすると十二・五というのが出ている数字なんですね。  もう一つ次に伺いたいのは、期末手当ですけれども、いまの人事院のはじき方について非常に問題がある。それは勧告を前にしているからしばらくおきまして、ほぼ人事院やり方に乗っかって見た場合に、労働省の毎月勤労統計、これを見ますと、昨年の五月から本年の四月までの特別給与がどういうふうに増加してきたか、その累計が計算できますですね。その累計を見ますと、昨年の五月からこの四月で〇・二八月分という数字が出ますですね。去年は——去年といいますのは、四十三年の五月から四十四年の四月までですね、同じ毎月勤労統計で特別手当というのはどれだけ増加したかというのを見ますと、〇・一五月ですね。去年は人事院民間の期末手当を調査したところが〇・一八月分、民間のほうが高いという数字を出されましたですね。そういう観点からいいますと、ことしの〇・二八月分というのは、これは間違いないというふうに見ていいと思うのです。総裁はまたおれのほうの調査だとおっしゃるかもしらぬけれども、従来の長年の経緯があるんですから、みなそれを見ておるんです。ですから、ことしも、やはり毎月勤労統計から見ますと、期末手当というのは〇・三を下回らぬだろう。特に去年は〇・〇八月分というのはネグレクトしていますから、これはネグレクトしちゃいけませんよ、〇・〇八というでかい数字を。〇・一といったらどのくらいの金になるんですか。六千円ぐらいになるでしょう。〇・一という、こんなでかいものをネグレクトされちゃかなわぬですよ。〇・三を下回ることはないだろうという数字が出ているんですが、総裁はどういうふうに見ておられますか。当然わかったような話だけれども
  74. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 専門家であらせられます鶴園委員の御推察、私ども非常に明るい気持ちで伺えるんで、私どもも率直なところ、先ほども公務員の生活もございますけれども公務員志願者ががたがた減っていますので、あんまり変なことになってもらっちゃこれはたいへんなことになるという気持ちを持って、やはり多ければ多いほどいいということで期待をしているものですから、いまのようなお話は非常に明るく響くのですけれども、さて今度はこっちの身になって、軽々しくここでどう思うかということをお答えすることは差し控えなきゃならぬので、非常な期待感に燃えながらお話を承っておきたいということで御了承を願いたいと思います。
  75. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 総理府総務長官に伺いたいんですが、これは完全実施の問題についてお伺いしたわけですよ。ちょっと調べてもらいましたら、三月二十六日の参議院の内閣委員会山中総理府総務長官がお答えになっておりますのは、四十五年は完全実施するんだ。どういうことがあっても完全実施するんだ。かりに予期しないところの災害等があって予備費がどうだ、現在の経常経費の中では非常に困難だということがあっても、これは四十五年度は完全実施するんだ。こういう答弁があるわけですわ。その中で長官は、昨年の十一月十一日の保利官房長官の談話を引用いたしまして、四十五年度は何が何であろうと完全実施するんだ、こういうお話。あくる日の三月の二十七日、参議院の予算委員会で、佐藤総理並びに大蔵大臣もほぼ同じような答弁をしておられたわけです。三月の段階ですね。いま春闘が終わりまして、三公社五現業の十二・五という、昨年から比べますと昨年は一〇・一ですから、本年は十二・五という数字が出まして、先ほど以来論議いたしておりますように、おそらく人事院勧告も十二・五を下回るようなことはまさかあるまい。これは、だれも専門家ども考えておるわけですね。総裁は自分の調査を根拠に言われますからですが、そういう中でもう一ぺん山中総理府総務長官にこの点を確かめておきたいというのが、私の長官に対するお伺いなんです。
  76. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 答えは同じでありますが、三公社五現業の仲裁裁定が出ましたときに、それぞれの会計の中において処理するのにいろいろ、楽なところはありませんが、非常に苦しいところ、たとえば国鉄あたりが一番象徴的でありますし、郵政等もそろそろ限度にきているようでありますが、そういう問題も含めて非常な苦悩をしたことは事実であります。しかし、それはやはり勧告どおり実施する。国鉄についてはなお今後の計画について問題を残しつつ、議論が、実行することを先にきめたようでありますけれども、しかし、今度は国家公務員人事院勧告そのものにつきましては、したがって、大蔵省としては財源のやりくり上、三公社五現業を完全に処理したために、いろいろ窮屈な問題がさらに派生しましたので、苦しいとは思います。しかし、依然として政府の姿勢としては、その後の閣議の給与問題等に関係する議論においても、完全実施の線については疑問が生ずるような議論は一回も行なわれておりません。したがって、私の責任においても、内閣全体の責任においても、人事院において勧告されましたものは完全実施をいたしますということでございます。
  77. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは長官にちょっとばかり申しわけないのですけれども、この点は念のために伺っておきたいのですけれども、四十四年の勧告の場合に、六月実施になったのですけれども、夏期手当を抜いちゃったのですね。あの時は何ともみんながまんならなかった。ナンセンスだと、文字どおりこれはナンセンスだと。政府ともあろうものが、六月から実施というのに、六月十五日に出る夏期手当についてベース改定をしないという、これはそもそも常識以外だという話がありましたですね。これは御承知のとおりですが、今回もそういうことがないと言えないじゃないかという気もするものですから、こんなことはないと思いますけれども、こりやしないと思いますけれども、どうでしょう。
  78. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 核は三原則で抜きのほうがよろしいのですが、昨年の夏期手当抜きはたいへんみみっちい感じがいたしました。ことしはそういうのも含めて完全実施いたすことを約束いたします。
  79. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 さっき山崎委員の調整手当の問題についての質問がありましたですね。まあ、四十二年度勧告のときに都市手当という勧告をされまして、それで、まあ六%、三%、〇%、まあ都市手当という点についてはいろいろ論議がされ、そうして、名前は変わって調整手当、そうして、この三年の間に至急検討調査するというようになっておったのですね。先ほど給与局長答弁にもありましたように、この調整手当について調査研究を進めておられる。そうして、今度の勧告の中で、これをはっきりさせたいという考えのようですけれども、これはどういう方向でやろうという考えなんですか。つまり、六%、三%、〇%になっていますね。この率を上げるという方向があるだろうと思うのですよ、これはおそらく。この間のときの調査の経緯からいいますと、四十二年のときの勧告からいいますと、六%、三%というやつを上げるという方向一つあると思うのですね。もう一つは、やはり地域格差を埋めていこうという考え方からいいますと、これは段階性を縮める。六、三、二とか、六、三、〇となっているこの三段階を縮めていかなければならぬという考え方も当然出てくるだろうと思うのですね。ですから、この調整手当についてもどういうようなことに運ぶつもりでいらっしゃるのか。これはまあ去年も調査しておられるわけでしょう。本年も調査しておられるわけですから、考え方としてははっきりしてきているのじゃないかというように思いますけれども
  80. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 調整手当の基本は、やはりこれは御承知のように給与法の中に、地域的格差に対処するような給与上の措置を勧告しろということが至上命令として書いてありますから、われわれは、それにのっとってこの間そういう勧告を申し上げたわけですけれども、地域的な格差というのは、これは一定不動のものではなかろう。したがって、この間の法律には、三年を目途としてということが文章の中に入りましたけれども、これはそういう文章が入ろうと入るまいと、時々刻々やはり変動というものは見きわめつつわれわれは適正な措置はとっていかなければなるまいという心がまえでおるわけであります。ただ、これを非常に精密に考えていきますと、そりゃ地域格差というのはピンからキリまでずっと並んでいるわけですから、五段階、六段階、十段階、これは幾らでも段階を設けることはむしろ可能であって、それ以上段階を設けなければ正確でないという批判もあり得る性質のものだと思います。それをやって、それからまた逆にいろんな短所も出てまいりますし、弊害も出てくるというようなことを兼ね合わせまして、まず三段階ということにいたしました。これをどういうふうな段階にするかということは、結局先ほど来申しましたように、現実の地域格差がどうなっているかということを的確に把握した上で、三段階で追いつかぬということになれば、また格別に考えなきゃならないというような問題をはらんだままで、まだいままでのデータが出てくるのをわれわれとしては待っているという段階であります。
  81. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは昨年も調査されたわけですが、四十二年の調査もあるわけですし、これは相当程度正確にものが言えることじゃないかと思いますが、そうじゃないでですか。ただ、この問題は四十二年に勧告が出ましたときにも非常に論議がありましたように、これは確かに東京都におる労働者とあるいはそれ以外の小都市におる労働者との間に賃金の差がある、あるいは生計費格差があるという点はこれはありますけれども、それはいろんな事情によって、たとえば東京都においては、どちらかというと大企業が多いとか、小都市になりますとなかなかそういう大企業がないというので、企業格差による、企業の大きさと小ささによる賃金の格差、いわゆる地方におりますとどうしても雑費が少ない。これは文化費であるとか、医療費であるとか、あるいは交際費であるとか、そういう相当ウエートがあります雑費の経費というものが小都市の場合は非常に少ないということから、生計費の間に格差が出てくる。それはそういう低い生計費、低い雑費というものをそのまま認めるわけにはいかない。やっぱり引き上げていくように努力していかなきゃならぬわけですから、ですから、この調整手当、つまり人事院が都市手当を出されましたときに非常に論争が行なわれたわけですけれども、そのことは今日といえども依然として行なわれるべき論議だと思うんですね。そういう点を含めて総裁としてはどういうふうに考えておられるか。これは考え方ですよ。そういう調整手当というものをこれからもはっきりさしていく、あるいはこれを比重を高めていくというふうに考えておられるように思うんですよ。そういう点についての基本的な考え方を伺いたい。
  82. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) これはまた別途の政策として各地域の格差を解消していこうという政策も行なわれておることでございますから、これがどういう効果を発揮しているかということも別にまた実態としてあるわけであります。われわれとしてはこれまで論議の多い問題であるだけに、しっかりした数字を踏まえた上で決断を下さなければ、なまじっかな態度で打って出るわけにはいくまいということでおるわけでございます。この点については非常に用心深い、慎重な態度をもって臨むべきだろうという気持ちを持っておりますので、やはりデータを確認した上でということを申し上げておるわけです。
  83. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 先ほど山崎委員が問題に出しました昨年の勧告の際の報告の中に、高齢者のところが民間よりも高くなっている、したがって、これは措置しなければいけないというような報告があって、それを今度の勧告でなさるということですね。その中で一般に報道されておりますのは、五十六歳から六十歳までは二年に一回の昇給にする、六十歳以上は昇給は停止する、そういうふうなことが一般に報道されておりますね。そういう方向で検討しておられるのかどうかという点をひとつ伺っておきたいと思います。
  84. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 先ほど触れましたように、できるだけ冷酷な形にならないようにという心がまえでたとえば職種別にこれは考えなきゃならぬのじゃないかということと同時に、年齢あたりについてもどうするかと、あるいは二年据え置きにするかと、一年半据え置きにするかと、いろんな案がありまして、これは少なくとも私の段階ではまだ全然見当がついておらない。ただし、給与局ではいろんなことをおそらく手探りで——手探りなどとたいへん失言いたしましたけれども、あらゆる点からその辺の検討を進めておるという段階であると承知いたしております。
  85. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、去年の報告を見ましたときに、これは民間給与公務員給与を比較した場合に、いろいろな格差があるわけですね。ところが、この格差について人事院が飛びついたのをいささか不満に思うわけです。小踊りした感じがある。これこれというわけですね。そういう感じすら持つほど奇妙な印象を受けているわけです。というのは、これは、もしこういう形で五十六歳以上の者について、民間との間に差があるからこれを埋めるのだということになりますというと、これは民間は定年制というものが相当普及しているからこういうことになるのだろうと思うのですね。ところが、公務員の場合はそれはないわけですから、それをその格差を埋めるということになりますと、実質的に定年制があるような形に持っていかれるということになりはしないかというので、私は非常に心配しているわけです。これは単に格差を埋めるとかいうような問題ではない。実質的にこれは定年制というものをやるような形になるのじゃないかというふうに私は受け取っておるものですから、この点だけについて人事院が興味をお示しになったことを非常に不満に思っているわけです。というのは、これ以外に格差が一ぱいあるのですから、たとえばお医者さんの格差ですね、あるいは研究職の格差、非常なものがありますね。そういう問題についてはどうも積極的な関心をお示しにならない。むしろ公務員全体の内部の均衡を中心にして考えられる。ところが、ここになりますと、が然民間とだけの問題でお考えになる。しかも、先ほどの総裁の発言を伺っておりますと、この上のほうの昇給を押えたりストップすることによって、その金を中だるみのところに持っていけるようなお話がありまして、これはどうも本末転倒だという私は印象を受けているわけなんですが、ですから、この点については慎重に取り扱う必要がある。残酷なということばで表現する以上のものだと私は思うのですけれども総裁の基本的な考え方を伺いたい。
  86. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) これはまあ昨年の報告の際につけましたように、この表で典型的なところを申し上げますというと、官民の「給与較差」のところで年齢階層別に見ました場合に、三十歳未満の年齢階層で比べますと、公務員を一〇〇とすれば民間のほうが一一四・一になっておる。ところが、今度極端なところで六十歳以上のところで比べますというと、公務員を一〇〇とすれば民間は八三・五になっておるというような実態が出てきているわけです。これはすなわち内部の配分の問題ばかりじゃなしに、全体の格差の問題にこれが非常に影響してくるということが言えるわけです。そうして民間の場合を見ますというと、一定年齢以上になりまするというと昇給額が減るというのが五〇・三%、全然昇給なしというのが三一・一%ということになっております。ただし、これは非常に誤解されておりますのは、民間には、先ほど定年に関連しまして再雇用があるじゃないかというような、そんなものまでこれに入れられちゃたまらぬぞという批判がありますが、これは言うまでもなく、われわれとしてはそういうものは全然のけた上での比較でございます。その点では実態を明らかにしている。これをほうっておいていいだろうかというようなのが私どもの非常な心配でございまして、何とかこれに手をつけないと全体の格差にも非常に悪い影響を及ぼすことになるのじゃないかということに出発したことでございます。定年制とかなんとかいうことはこれは全然関係のないことで、いま申しましたように、民間の昇給制度からいって、こういう制度がもう大多数を占めておる。わがほうもそれにやはり合わせておかないと、格差の関係で違ったことが出てくる、不利なことが出てくるということから出発しておりますので、定年制にはもう全然関係はない、給与制度だけの問題でわれわれは考えておるということでございます。
  87. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 総裁、五十五歳、五十六歳以上となりますというと、そういう年齢の人たちというのは、これは各等級でいずれも昇給延伸をされた人たちです。一年千五百円上がるところを千円しか上がらないというようなことを始終繰り返してきた人たちです。この五十六歳以上というところは大体そう言って間違いない。ですから、そこのところをまたこうやられる。これは私は非常に問題だと思うのですね。しかも、中堅職員、四十前後の人たち、そういうところで五十五歳、五十六歳以上おつとめになるような国家公務員というのは、これはいまはこういう状況だけれども、まあ、つとめている限りにおいては、昇給も金額は少ないけれどもさしてくれるという期待感をずっと持ってきているわけですね。その期待感をここで一挙に奪ってしまうという形にもなるわけです。これは私は慎重にひとつやってもらいたい。先ほど総裁も、残酷論にならないようにというお話ですが、これは相当あとに繰り延べてもっと検討してもらいたいと思いますね。総裁としては来年からやるというおつもりなんでしょう。私はこれは大きな問題だと思いますね。ですから、公務員の場合の五十六歳以上というものの大部分は私が申し上げたような人たちですから、これはえらいことになるのですね。またここでいじめられるということになるわけです。そういう個々の一人一人の問題を含めた給与制度というものを考えてもらわないと困るわけですよね。もう一ぺん総裁に伺います。
  88. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) まあ結論は、この合理化によって相当不利をこうむられる方がある、この人たちに対してはまことに忍びないという気持ちがあることは、これは率直に言ってそのとおりでございます。ただし、公務員全体の船を見た場合、その船を助けるためという大局的見地と、それからもう一つは、部内の配分の面から働き盛りの人たちのほうへもうちょっと配分をできないかという均衡の問題と両方ございまして、やはり大義名分から申しますと、心を鬼にしてある程度は踏み切らなければならない。どの程度心を鬼にするかという問題が、いまのお話にも出ておりますように、やはり残酷にならないように、もちろん毎年のベースアップはかぶります。ベースアップまで排除するなんていう気持は全然持っておりませんし、そういうようなことで、もちろん特別職への道も閉ざしはしないということもございますが、とにかく大きな目から見ましてひとつ踏み切らなければならぬのではないかということをいまも考えておる次第でございます。
  89. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 再度、総裁、これは非常に慎重に取り扱ってもらいたい。先ほど申し上げますように、五十六歳以上という年齢の大部分は、これは各等級において昇給を延伸された人たちです。二千円上がるところを千五百円しか、あるいは何年も上がらなかった。そういう意味では十年ぐらいにわたって損している人たちだと思う。今度ここへいってストップだとか二年に一回、二年半に一回という形にされることは非常に大きな問題になると思います。しかも、これが退職金にはね返る、年金にはね返るというものなんですから。ですから、これは残酷などころの騒ぎじゃない。慎重の上にも慎重を期して善処してもらいたいという点を申し上げます。  次に、これは先ほど住宅手当の問題が出ました。総裁お話しのように、住宅手当については三十九年以来六回にわたってことし六回目の調査やられるわけですね。それだけ住宅手当については非常に問題がありますし、また人事院として見ました場合にも、これはやはり大きな問題があるわけですね。これぐらい執拗に調査されたものないですね、いままで手当の中で。ですから、非常に重要な問題なんですが、私はお取り上げになるときに住宅手当について論争したわけです。どうしてもこの問題を解決してもらいたい。三十八年ですね、そのとき私が申しましたのは、これは条件の同じものを調査してもらいたい。民間給与公務員給与を調べるときには、条件の同じものを調べるのですから、学歴が同じであるとか、経験年数、男は男、女は女という条件を同じくして比較をされるわけですから、この住宅手当についても条件の同じものを比較してもらいたいということを強くその際私も主張したわけです。つまり、転勤があるということ——転勤のないところをお調べになってはまずいということ、転勤があるということと、それから社宅があるということ、この二つを条件にして調べてもらいたいということを要求したわけですが、どうもそれをやるというと、すぐ住宅手当を出さなければならなくなるものですから、もやもやと入りまじっちゃって調査をされまして、言うならば木と石を比較するようなものです。本来比較してはいかぬものを比較されるものですからこういう数字が出る。しかし、そういう比較をしてはならぬようなものと比較をされるのですけれども数字としては毎年三%ぐらいふえてきまして、本年は全事業所でおそらく五〇%をこすだろうというふうに見ていいだろうと思うのですね。転勤があって、そして社宅があるというところを調べれば、これはことしは六〇%をこすに違いない。これは推定されます。給与局長お尋ねになってもいいですが、これは間違いなく、そうなるのですね。ですから、ことしは住宅手当について人事院として踏み切る必要があるのじゃないかと私は思うのです。総裁のお考えをひとつお伺いいたします。
  90. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) ことばじりをつかまえて恐縮でありますけれども、うやむやということでございましたが、うやむやどころではないので、鶴園委員の御指摘、なるほどごもっともだというわけで、そのあとすぐその表をちゃんとつくって公表しているわけです。そして鶴園説だとこうなるとかねがね言いながらその表を眺めてきているというのが事実でありまして、決してこれはうやむやではなくて、非常に注視しているということを申し上げておきます。ただし、われわれとしては依然として国会で説明するときには、全体が四十何%ということで御説明していることは事実であります。そういうわけで、うやむやにしているのではないということだけははっきりしておく必要があると思います。いずれにせよ、私どもは毎年しつっこいくらいにこれを調べてきている。と同時に、並行して、かりに住宅手当を出すようになった場合に現実に方法としてどういう方法があるだろうか、これもなかなか踏み切る段になってむずかしいですよということを申し上げたことがあります。たとえば自分の家を持っている人、公務員宿舎に入っている人にも出す必要はない。これはそうでしょう。自分の家を持っている人でも親がかりの人はどうするか。これもいろいろ問題がありますということをかねがね申し上げておりましたが、またそれはそれで検討しております。ただ、いまのように数字のほうはちょっとあまりすっきりした数字が出ないものですから、これを注目しながら今日まできているということでございまして、どんな数字が出てもやらぬという気持ちでいるわけでは決してございません。いわんや、先ほど言いましたように、関係の公務員組合職員団体の方々も、大体職員団体の方々の御要望は不満ながらもほとんどもう大体かなえられてきているのじゃないか。これは国会のお力もありまして、残るのは住宅手当ぐらいが一番大きい問題じゃなかろうかというぐらいのいま意識を持っております。非常に重要視しておるということだけは申し上げられます。踏み切るかどうか。これはまたこれからの数字が出て、これからの検討の問題であるということでございます。
  91. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 総裁住宅手当が問題になりましたのは、一方は官舎をもらっている。一方は国鉄宿舎に入っている。あるいは官舎をもらっている。同じ公務員でありながら一方はもらってない。その差をどうするのかという問題なんですよ。もう一つは、転勤があるというようなことが問題になっているわけですよ。いま転勤は、前はえらいところだけ、上のほうのところだけ転勤しました、十年前、十五年前は。いまは若いところがどんどん転勤するのですから、その場合に社宅というのが問題になる。官舎というのが問題になる。国鉄宿舎というのが問題になる。国鉄宿舎というのは、御存じのとおり市価の四分の一くらい、あるいは公団住宅の三分の一くらいですよ。だから、一方のほうには同じ俸給表をもらっていながら、それに住宅手当に類するような官舎、国鉄宿舎を支給している、一方には支給しないという不平等をどうするかという問題なんです。これは私は考えるべきだと思うのですよ。しかも、人事院としては、この調査をなさって、全体として見た場合にすでに五〇%こすだろうと本年は言い切れるわけですね。しかも、いまの公務員の例でありますと、転勤があって官舎がある、社宅があるというものと比較いたしますというと、ことしは六〇%をこすだろうという状況なんですね。ですから、いまの状況の中でそれにふさわしい踏み切り方をなさったらどうか。これからどんどんふえるのはあたりまえだ。六年間の状況からいいましても、上がり坂になってきているわけですから、一年に三%ずつ上がっていくわけですから、ですから、本年は半分こすのだから、この段階でそれにふさわしい踏み切り方をなさったらどうかと私は思うのです。そうでありませんと、長年にわたって公務員はオミットされ、これだけのものがあるのにネグレクトされてくる、こういう状況になってくる。これは耐え切れない。毎年オミットされるでしょう。ネグレクトされる。ですから、いまの状況になってそういう踏み切り方をなさったらどうかと私は考えるわけですが、総裁見解を承りたい。
  92. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) いま公務員宿舎のお話がありました。これはまさにおっしゃるとおりなんで、私はもうつとにその点に重点を置いて、住宅手当にはまだ踏み切る段階ではないけれども公務員宿舎に入っておる人とのアンバランスは何とも見過ごせないということで池田総理のころからずうっと勧告のたびごとに総理、大蔵大臣にお願いをしてきて、場合によっては書面を差し出したこともありましたけれども、その効果もありましたのか、最近では相当宿舎のほうは普及してまいっております。しかし、そうだからといって住宅手当の問題は決して消えたわけではありませんから、ただいまのおことばども十分肝に銘じてなお今後の研究に臨みたいと思っております。
  93. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは、ことしで完全実施になるということになるわけですから、先ほど総理府総務長官のお話がありましたように、完全に実施されるということになるわけです。三十五年以来人事院は五月一日ということを毎年繰り返し主張されてきたわけですね。それがことし十一年ぶりに完全に実施されるということになるわけですね。そこで、私はこの際に、人事院としては今度の勧告を検討する中で、おそらく勧告様式というものについても検討なされざるを得ないのではないかというふうに思います。三十五年以来、私に言わせれば、十年一日のごとき同じようなやり方で、数字こそ違え、同じようなやり方で同じような勧告をして五月一日というように主張されてきた。ここでこの十年来の主張である完全実施もできたという段階で、これは勧告方式なり様式というものを根本的に再検討する必要があるのじゃないかと私は思っているわけです。総裁はそういうふうにお考えにならないのか、どうですか。
  94. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) ちょっと御質疑がわからないので首をひねっておったのでございますが、私どもとしては、毎回これは完全実施になるべきものだと、完全実施は絶対に努力してかちとる——かちとるということばはやはりことばでいけませんけれども——かちとるということばを使わしていただいていいでしょう。かちとるものだという前提でやっておりましたが、ことしはそういう予約がほのめかされたからといって、何もそのためにわれわれの態度を変える必要はない。変えるとしても、そういうことに関係なしに虚心たんかいに見て、こうしたほうがよかろうという点は気がつけば直しますが、いまのようなことに関連して変えようなどという気持ちは毛頭持っておりません。
  95. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 総裁立場からお考えになりますと、あるいはそういう御答弁にもなろうかと思いますけれども公務員の側から考えますと、一番大きな問題はやっぱり完全実施というのが大きかったですね。五月一日という勧告を出されるけれども、それが十月一日だ、九月一日だ、八月一日だ。前は、一カ月実施がおくれますと百億ぐらい損するわけですから、これは非常に大きな問題だったですけれども、いまこれが実施されますと、これは人事院に対する期待感は相当変わってきますね、そっちのほうの期待がなくなるのですから。何が人事院に期待できるかといいますと、たとえばことしの十二・五なんというものをもっとでかいものにしてもらうか、あるいは住宅手当なんというものを踏み切ってもらうか、そういうものをしてもらわないと魅力がなくなってしまう。そういうものを含めまして、私は、ここでやはり十年一日のごとき勧告様式というものをお考えになる必要があるのじゃないかというふうな考えを持っているわけです。たとえば一番大きな問題は、先ほど私が申し上げたとおりに、勧告様式が、四月に説明会をやり、五月の連休明けに一斉調査が始って六月中旬まで調査をやって、七月中旬で締め切って八月十五日に勧告、これで六カ月かかる、こういうやり方について非常に不満があるのです。なぜもっと短かい期間でやらないのか、なぜやれないのかというと、これは一番大きいのは、毎年事業所をお変えになるということ、三万くらいある事業所をランダムでとられますから、毎年事業所が違ってしまう。これを固定してしまったらどうか。固定すれば継続性がありますし、変化がはっきりわかりますし、場合によれば、自動的に出てきます。四月末の調査であればこれは五月の初めにはすらすらと出てしまう、五月の末には勧告が出る、こういう作業になるわけです。これをこういう六カ月なんというのは、いまどきせわしい世の中に六カ月もかかってという調査はいまや検討を要すると私は思うのですよ。必ずそこに問題点が出てくる。ですから、御検討なさるお気持ちはありませんかと聞いているわけです。
  96. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) その点はもう全く御同感でございまして、またさらにそれに輪をかけて言わせてもらえば、給与法になって成立するのはいつになるかというと、次の春闘が始まるころになる。勢い、人事院勧告春闘の先っ走りをしているように誤解されるということがありまして、われわれその点非常に悩んでいるわけです。何とか早くできないか。できれば、やはり通常国会の終わるまでの間に勧告を申し上げて、最近のように当初予算でちゃんと勧告の原資をいただくようにしていけば、すぐその場で法案が成立する。そうして七月成立、五月実施ということになれば、さかのぼり方も非常に短かくて、こんないいことはないので、これはひとつできないものかという気持ちは全く御同感であって、ずっと持ち続けております。したがって、そのためには調査方法を変える。計算の方法は、いまのコンピューターの関係では、戦力として最新型の機械を使ってやっております。このごろコンピューターは選挙結果等では多少みそをつけておりますけれども、しかし、新しい機械を十分に使っておるわけでございます。その点はまずもう短縮の見込みはない。したがって、今度は給与調査の客体をどうするかということになりますけれども、精度は落としたくないという気持ちもございます。またそれは私どもの宿題として考えております。いろいろまた御指摘がございましたら、承らしていただきたいという気がまえでおるわけでございます。
  97. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いまこの点は総裁も同じようなお考えなんですから、私は固定化する以外にないと思うのです。固定化すれば継続性もはっきりしますし、変化もはっきりつかめますし、しかも、相当自動的に調査もできるということになりまして、正確さもより一そう正確になる。そうしますれば、これは六カ月間というようなことじゃなくて、五月の末ごろにはこれは勧告ができる。そういう能率的に——能率を言われる人事院ですから 能率的にやってもらいたいということを重ねて要望いたしまして、最後に、先ほど山崎委員からも指摘ありましたが、去年の勧告がありましたときに、去年は一〇・二という財源でした。しかも、前年よりもよかったですね、二けたになったわけですから。この財源があるときにあの中だるみを是正すべきだという意見があったのですけれども、ついに機会を失したわけですよ。今度はどう見ても去年よりももっと財源が出てくる。一二・五という財源ですから、この機会に私はこの中だるみのところを何とかこの機会にやはり善処をしてもらいたいという気持ちが一ぱいなんですけれども、いつもいままでこれはどうしても据え置かれているわけです。いろいろ努力はなさっておられますけれども、どうも財源の関係で据え置かれてきている。去年も残念なことをしました、機会を失して。今度も何とか、これだけの財源が出てくるならば、このところの中だるみを是正してもらいたいという私は気持ちなんですけれども総裁のお考えを承りたいと思う。
  98. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) これも御同感でございます。去年も、先ほどもちょっと触れましたけれども、二人世帯あるいは三人世帯の辺に標準生計費などをささえに使って相当配慮はしたっもりでございますけれども、すかっとした形にならなかったのは残念でございますけれども、そういう気がまえは依然として持ち続けておりますので、初任給も上げ、中だるみもないようにということを理想にいたしまして、これから大いに奮闘したいと思っております。
  99. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 本件に対する午前中の調査はこの程度にいたします。午後一時四十分まで休憩いたします。    午後零時四十分休憩      —————・—————    午後一時五十五分開会
  100. 西村尚治

    委員長西村尚治君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  国家公務員給与に関する件を議題といたします。  御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  101. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 公務員給与に関しまして、すでに午前中にもう相当質問ございましたが、私は二、三質問したいと思います。  すでに八月の勧告を前にいたしまして、もう人事院におきましては種々調査も進んでいると思います。初めに、何と言いましても、ことしの勧告の率の問題がやはり公務員諸君は一番知りたいところだと思います。それにつきましては、先ほど種々質問がございました。あの質問からも、また総裁からの答弁もありまして、私たちもわかるわけでありますが、実はこの勧告するまであと余すところ少ししかないわけでありますが、ここで私は、初めに勧告をするまでの作業ですね。大体どういうふうな作業を経て勧告ということになるのか、これを一ぺん教えてもらいたいと思います。
  102. 尾崎朝夷

    説明員尾崎朝夷君) 私どもといたしましては、民間事業所におきましてどういう給与が支払われているかという点を詳細に調査をいたしまして、それと国家公務員給与を比較をいたしまして、格差を出し、その配分関係を検討するというのが内容でございますけれども作業といたしましては、したがいまして、まず国家公務員給与実態というものを調査をいたすわけでございますが、それを毎年一月現在につきまして公務員給与実態調査をいたします。その調査の結果を集計をいたしまして、そのものと、それから次は民間給与調査をするわけでございますが、この民間給与調査につきましては、まず民間事業所調査を各税務署によりまして、大体三月ごろに行ないます。で、民間における事業所の、つまり事業所規模五十人以上、会社の規模百人以上のものにつきまして全数を確定いたしまして、つまり調査対象を確定をいたしまして、そのものから抽出をいたしまして、その抽出した事業所につきまして実態調査を行なうということでございます。で、この実態調査につきましては、本年の場合には七千百五十七の事業所全国調査をいたしたわけでございますが、その調査を五月一日から六月の十五日の間におきまして各都道府県人事委員会と共同で調査をいたしまして、その調査結果を統計局に送りまして、集計を現在いたしているところでございます。その集計結果が大体七月の中旬——もうそろそろ出てくるところでございますが、七月の中旬から下旬にかけまして実態調査の結果が集計されてまいりますので、それと、さきに調査をいたしました公務員給与実態とを比較をいたしまして、格差を出し、そうしてその配分につきましては、別途調査をいたしております民間の配分状況、諸手当の状況というものを調査をいたしまして、七月の終わりごろから八月の初めにかけまして検討をいたし、勧告案を作成するというのが作業の大体でございます。
  103. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、結局公務員給与というのは、官民格差調査して、その結果に基づいて人事院勧告をすると、そういうことですか。——そうしますと、公務員給与は、いまの話ですと、一月一日現在でございますか、この点どうですか。
  104. 尾崎朝夷

    説明員尾崎朝夷君) 一月十五日現在に実際に在職しておる職員につきまして調査をいたすわけでございますが、その給与につきましては、四月一日現在でどういう状況になるかという面のこともあわせまして、したがって、実際の結果は四月  一日現在の状況が把握できるように、国家公務員給与につきましても調査できるという形に仕組んでございます。
  105. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ということは、私は給与の問題にはあまり詳しいことないんですけれども、この一月十五日現在ということは、特に公務員皆さん毎年何%か退職していかれる方がいらっしゃると思うのですが、そういう方々は大体一月から三月の間が多いのじゃないかと、こういうふうに私は推測するわけですが、そうしますと四月一日まで、一月十五日で調査するが、四月一日までのいろいろな問題も全部調査できるようになっていると、いまの話ですとそういうことですが、この四月一日ということは、いわゆるやめる人たちの調査はこの中に含まれる、そういうことですね。それから四月一日以降今度新しく入ってくる人は、これはこの中に入っていないですね、これはどうですか。
  106. 尾崎朝夷

    説明員尾崎朝夷君) その一月十五日現在の調査におきましては、調査対象にもちろんなっておりませんけれども、別途これは私どものほうの任用局で試験その他をやっておりますので、そういう関係から別途把握できるという、そういう状況でございます。
  107. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ということは、四月一日以降新しく入ってくる新入社員——社員というとおかしいですけれども公務員のそういう方々の給与も勘案していると、こういうことですか。
  108. 尾崎朝夷

    説明員尾崎朝夷君) 四月一日ごろに入ってまいります者につきましても、その数その他はまあ把握できているわけでございます。
  109. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや、その数を把握しているということは、即その給与のいわゆる官民格差を比較する場合のデータとしてちゃんとその中に含まれていると、こういうようにとってよろしいですね、この問題は。
  110. 尾崎朝夷

    説明員尾崎朝夷君) 初任給につきまして民間の関係もいろいろ調べておるわけでございますけれども民間の場合の四月分の給与を調べるわけでございますけれども、その初任給関係につきましては、民間につきましても別の初任給調査というものをいたしておりまして、新採用者につきましては、つまり新採用者についての官民給与の格差の関係と、それ以外の者についての官民給与の格差の関係を別々に調べておるということでございます。
  111. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 まあ、そうしますとね、私が言いたいのは、要するにこの公務員皆さん給与ですね、民間に比較する給与が、いわゆるやめていくほうは四月までですから完ぺきに掌握できますね。ということは高給の人がやめていくわけですね。ところが、新しく入ってくるほうはあまり掌握してないじゃないかと、そういうふうな給与と、それから民間給与と比較した場合に、そこのいろいろなズレが出てくるのじゃないか、これを心配するわけです。  それから、民間のほうは、いま四月一日で基本調査とおっしゃいましたが、先般からの勧告の場合ですね、付属調査というのですかね、遡及改正率というものですかね、あれが実は昭和四十年から同時に出ておりますけれども、毎年この付属調査の分が率が相当ふえてきておるわけですね。そういう点からいきますと、昨年度はこの官民格差調査が六・八%ですか、それから遡及改正率のほうが三・四%というように、非常に、約半分近くになってきておりますね。そういう点からいきますと、これは、いままでは、私は四月一日から六月十五日までの調査と聞いておりますが、ことしはどういうようになっているか、その点をちょっと。
  112. 尾崎朝夷

    説明員尾崎朝夷君) その関係は、調査の期間につきましては、先ほど申し上げましたように、従前と同じように六月十五日までの調査でございます。と申しますのは、その調査期間をさらに延長ずるというようなことになりますと、どうしてもぎりぎりの関係になりますので、勧告の日にちその他もまあ結局長くなる、延びるというようなことになってまいりますので、そういう調査期間というものは、従来と同様な調査でやっておりまして、かついわゆる積み残し、つまり調査時期までの間に、つまり四月分の給与の支払い日までに給与改定がなされなくて、あとでそれがなされたといったようなものにつきましては、別途の調査で持ってくるという方法につきましては、従前どおりでございます。
  113. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、私はことしの春闘のぐあいから見ましても、実際問題として六月十五日以降に妥結する会社も相当出てくるのじゃないかと思うのです。そうしますと、相当このいわゆる付属調査の重要性というのが出てくるわけですね。現在の時点では八月の十五日に、先ほどの答弁でございましたから、八月の十五日近くに勧告があるであろうと思うのですが、そういたしましても約二カ月ですね。要するに二カ月いわゆる集計期間といいますか、そういうデータのあれがあるわけですね。そういうようなのを、できたらこれはもうちょっと短縮することができないのか。これ実際国会の審議にかかって、それを実際実施するまで相当いろいろな時間があるわけです。もちろん勧告の時期をおくらすというのはいろいろな問題があると思うのですけれども、それはそれとしましても、ある程度もっと合理化して、私、六月十五日というのは相当前から六月十五日だと思うのですよね。実際問題、集計の技術というのは相当進んでいると私は思うのです。そういうような面からも、いわゆる付属調査の期間をもう少し延ばして、そしてなおかつそういうふうな積み残しを全部できるだけ掌握するようにしたほうがいいんじゃないか、こういうぐあいに思うのですが、いかがでしょう。
  114. 尾崎朝夷

    説明員尾崎朝夷君) 仰せのように、いわゆる積み残しの問題がやはり一つの問題点でございます。で、私どもはやはり四月分の給与につきまして調査をいたしまして、それによって相互の比較をするということでございますけれども、実際のいわゆる民間における春闘内容といたしましては、四月のいわゆる月給日までにそれがきまって、かつ個人別に全部支払われるというわけになかなかまいりませんので、どうしてもおくれる分が出てくるということがございます。その関係は、一つには民間におけるそういういわゆるおくれというものが、そのときどきの情勢によりまして、早くなったりおそくなったりするという点が一つございますわけですが、そういう点で、ことしはどうかという点がひとつ今後の私どもとしては問題点でございます。しかし一方におきまして、そういう点をなるべくつかむという点から申しますと、なるべく調査期間をおくらすというほうがけっこうでございますけれど、やはりそれにも限度がございます。現在そういう点で非常にぎりぎりの関係になっておりまして、集計のほうも、統計局のほうで数年前から従来の集計からコンピューターに回すという形で、そちらのほうもぎりぎりの関係になっておるわけでございます。そういう点で、現在もう少し合理化を何とかはかれないかというところはないかというようなことは、考えておりますけれども、そういう点で技術的には現在の段階ではぎりぎりであるということでございます。
  115. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、いわゆる遡及改正率といいますか、付属調査の分が昭和四十年度みたいに非常にわずかな数字であればそんなには云々するわけないんですが、実際問題、これから毎年毎年率が上がりまして、昨年のように、いわゆる官民格差の半分があとの付属調査で掌握していると、そういうようなことになってきますと、ことしも私はそういうようになってくるんじゃないかと思いますけれども実態はわかりませんけれども、しかしながら、そういうようになってくると非常に大事になってくるわけですね。そういう点からしますと、私は、一生懸命にやっているとは言いますけれども、六年間も同じ調子ということはないと思うのですよね。少なくとももう少し前進していると思うのですね。統計のやり方にしても、いろんな面で私は前進するんじゃないかと思う。そういう点は少なくとも前向きで私は検討すべきであると、こう思うのです。それが一つと、それからもう一つは、先ほどちょっと話も出ましたけれども事業所のいわゆる七千何件かの調査対象の問題ですね。これも何か先ほど税務署ですかを通しての調査ということでありますけれども、それもけっこうですけれども、七千件という相当たくさんの事業所をチェックされるわけでありますから、できたらこれどうなんですか、三分の一なら三分の一にでも固定したいわゆる事業所というものをやれば、これはもっと早く合理的にできるんじゃないか、こういうぐあいに思うのですが、この点二つあわせて総裁どうでしょうかね。
  116. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) この前者の積み残しの問題は、これは私どもに言わしていただければ、多少うらみつらみもあるわけでございまして、御承知のように、昔は三月調査をやっておった、これじゃ春闘カバーできないというふうなこともございまして、四月調査になったわけです。昭和三十五、六年まではそれで無事に、あまり積み残しの問題なしに来ておったわけです。ところがその辺からだんだん今度はいわゆる春闘がおくれてまいりまして、そうしてどうしても積み残しを放置できないということで、これは私どもとしては相当の勇断をふるったわけでございますけれども、それだけ精度がやはり落ちるわけです。その点において勇断をふるったわけであります。そしていま申しましたようなことで、付帯的な調査ということでカバーしてまいったんでありますけれども、これがやはり依然としておくれぎみで、ことしもまだこれ、ふたをあけて見ないとわからないので、どういう数字が出るか、実は私ども自身もはらはらしておるわけです。したがって、それを抜本的に改めるとすれば——これはたびたび申し上げて苦笑いされておるらしいのでございますが、春闘のほうをもっとずっと早めていただくと、しからずんばわがほうの調査時期を、いま四月になっておりますのを六月とか、もっとこっちがずらして、それに追随した形をとるかということに、どうも追い詰められざるを得ない。そういう中間の形——いろいろいまもお話しございましたけれども、私どもいまの中間の形をもとにしながら、何とか正確な方法がないかということで、もちろんやっておりますけれども、どうしてもこれは限界があることじゃないかというふうに考えております。気にしておるということは申し上げておきます。  あとのほうの問題は給与局長から一応お答えさせます。
  117. 尾崎朝夷

    説明員尾崎朝夷君) 調査事業所を固定をして、もう少し早くならないだろうかという問題点につきましては、午前中もお話しがございましたけれども、私どももいろいろ考えておるわけでございますが、たとえば現在の労働省の毎月勤労統計調査という調査がございますが、これは事業所を三年間ほど固定をいたしまして、早くとることをしております。しかしながら、現在毎年事業所の数及び従業員数等は数パーセントずつふえておるわけでございます。したがいまして、たとえば毎月の調査の結果は、三年ごとに対象事業所を入れかえましたとたんに数字ががたんと変わるというふうなことがございまして、そういう点のやはり不安定ということが、非常に大きな問題点が一つございます。それからもう一つ、たとえば同じ事業所をまたお願いしました場合に、どうして自分のところだけが調査対象にされなければならないかといったような、そういう苦情もどうしても出てまいります。現在でもやっぱりそういういろいろ問題がございますので、そういう関係もいろいろ考えて、もう少し早く、かつ能率のいい調査にする方法はないかといったことをいろいろ考えていることは事実でございます。
  118. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 実際問題として、毎年七千件というような調査をやっておりますと、毎年同じ事業所をやるつもりではなくても、毎年何割かは同じ事業所が出てくるんじゃないですか、これはどうですか。
  119. 尾崎朝夷

    説明員尾崎朝夷君) 対象事業所全国で約三万ぐらいございます。その中から約二割を抽出いたしまして、約七千事業所ということでやっておるわけでございますけれども、その抽出のしかたは、事業所の、大きな会社は大きな会社なりに抽出をする、小さい会社はそれなりに抽出をするということで、抽出のしかたを層別に抽出をするわけでございますので、大きな会社につきましては、どうしてもほぼ毎年当たるということになりますし、小さい会社は何年に一ぺん、十分の一の抽出あるいは二十分の一の抽出ということになりますので、毎年当たることはほとんどございませんし、何年に一ぺんということになるわけでございますが、そういうことで、大きいところは大体毎年当たるというふうな関係になっております。
  120. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この問題はもうこれで終わりますけれども、いずれにいたしましても、毎年当たる会社もあるはずです、確かに。七千件ということになりますと、二万件の七千件ですから、相当の会社はやはり毎年ということですね。そういうところは事前にチェックするなり何なりいろいろ方法も講じれば——私も何も固定しろということをやんやん言っているんじゃなくて、要するに結果を早く、またできるだけ期間も長く、勧告の寸前までいわゆる調査ができれば一番いいわけでして、そこら辺のところを、できたら前向きに検討してもらったらいいんじゃないかと、こう思います。  それから、もうすでに人事院当局では、公務員給与に関連のあるいろんな経済指標というのはつかんでいらっしゃると思うのです。そこでまず春闘の問題ですが、賃上げの状態というのは、ことしは五けたですか、五けたに達するというような、非常に五けた闘争というようなことがよく言われておりますけれども史上最高とも言われておるわけでありますが、民間主要産業の賃上げ率について、人事院どういうぐあいに掌握していらっしゃるか、これがまず第一点です。  それからもう一つは、先ほどもちょっとお話しがございましたが、人事院勧告に密接に関係の深いいわゆる三公社五現業の賃上げ率についても、すでにことしほぼ決定しておると思うのですが、そういう点についてどういうぐあいに掌握していらっしゃるか、数字がちゃんとわかりましたら教えていただきたいと思います。
  121. 尾崎朝夷

    説明員尾崎朝夷君) 公労委の仲裁裁定につきましては、これは私どものほうの場合には、いわゆる月給全部を比較するということになっておりますけれども、公労委の仲裁裁定の場合には、本俸、扶養手当と、それから調整手当のいわゆる三者ベースでございますけれども、それが去年は一〇・一%でございましたのが、ことしは十二・五%ということになっているようでございますし、いわゆる春闘の結果につきましての報告が、労働省あるいは日経連等のものがございますけれども、労働省の調査といたしましては、約百五十社程度のものでございますが、去年は一五・八%、これはいわゆる定期昇給込みのものでございますが、一五・八%、六千七百六十八円でございましたのが、ことしは一八・三%、八千九百八十三円というふうになっていると承知しております。
  122. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それからもう一つ、この公務員給与に関連のある経済指標の問題についてお伺いしたいのですが、一つは消費者物価ですね、これはどのくらい上がっているのか。それからもう一つは消費支出ですね、これはお伺いしておきたいと思います。それからもう一つは、ちょっとございましたが、労働者の賃金ですね、これは労働省の調査が出ておると思うのですが、この三点についてはこれはそれぞれどういうふうになっているか、お伺いしたいと思います。
  123. 尾崎朝夷

    説明員尾崎朝夷君) そういう関係の経済指標でございますが、賃金につきましては、労働省の毎月勤労統計の調査がございます。これの全産業きまって支給する給与というのが、四月現在におきまして、対前年比が一六・〇%でございます。これは昨年の場合には十二・五%でございました。  それから消費者物価でございますが、統計局のこの指数といたしましては、全国の場合には四月現在で、去年が四・六%でございましたのが、ことしは八・三%になっております。なお五月になりますとこれが七・六%と下がっております。少し下がっております。それから東京都の場合には、去年の四月現在の対前年比が五・四%でございましたのが、ことしの場合には七・八%ということになっておりまして、六月になりますと季節的な関係で六・〇%まで下がっております。  それから生計費でございますが、生計費の関係も、統計局の家計調査によりますと、全国全世帯の消費支出といたしましては、去年の場合、四月の対前年比が九・二%でございましたのが、ことしの場合には十二・二%という形になっております。
  124. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 午前中にも一いろいろ話があったわけでありますが、いまの人事院がつかんでいらっしゃるいろいろな、いわゆる公務員給与勧告に関係のあるいろいろな数字を見ましても、確かに大幅な今回の勧告があるのではないかというマスコミの皆さんの報道も、あながち間違いでは私はないと思うのです。こういうふうないろいろな情勢から見ましても、相当高額の勧告が行なわれるのではないかと、こういうように予想するのが当然であり、また公務員皆さんも期待していらっしゃると私は思うのです。そういう点から考えてみましても、昨年は一〇・二%でありました。また、ことしはいろいろな巷間のうわさでは十二・五%ということがいま言われておるわけでありますけれども、この点につきましては、先ほど総裁から答弁ございましたけれども、あらためてもう一回この点についてお伺いしておきたいと思います。
  125. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 先ほども申しましたとおり、もちろんパーセンテージはわかりません。わかるはずもないわけでありますけれども、諸般のデータから推測いたしますと、大幅、高額の勧告は必至であろうというふうにわれわれも考えております。
  126. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 総務長官にお伺いしたいのですが、先ほどもそうですが、今回の公務員給与勧告に対しましては、政府は責任をもって完全実施をする、そういうことを御答弁になっていらっしゃるわけであります。また、先日の内閣委員会におきましても、官房長官の談話を引いて話がございましたが、実はここでひとつお伺いしておきたいのですが、特にことしは、いま総裁答弁にもありましたように、相当大幅な勧告が予想されます。そういう点からいきまして、予算の裏づけですね。ほんとうはきょう大蔵省に来ていただいておればよかったのですが、来ていらっしゃらないのですが、大臣が間違いなく実施するとおっしゃるからには、大蔵省のほうとのもう話し合いもついているのであろうと私は思うのですが、予算の裏づけの問題についてはどういうぐあいになっているか。  それからもう一つは、特にことしは台風等ももうすでにやってきておりますし、そういうふうな面での予備費の使用ということもずいぶん出てくるのではないか、また、種痘なんかについても予備費の使用があるのではないか、いろいろな面で言われておりますけれども、そういうふうなあらゆる事態を見込んで、その上で完全実施するのかどうか。これは当然私は完全実施すると言ってほしいわけですが、そこらのところのもう話し合いはついているのかどうか、この点をお伺いしておきたいと思います。
  127. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 予備費は昨年よりか二百億増の一千百億でございますが、当然この中に予想さるべき人事院勧告のそれぞれの関係官庁織り込み分以外の分に対応すべきものとしての金額は予定いたしておるわけでありますけれども、お話にもありますように、予測しがたいいろいろの、予備費使用によらざるを得ない支出が次々と出てまいります。今後台風その他でさらに予想外の相当大幅な予備費の支出ということがかりにありましても、財源上の操作を最大限にいたしまして、少なくとも完全実施に必要な財源については、はっきり申し上げると、これはもう約束ごとでありますから、不足するものは、公務員給与人事院勧告の充当財源が不足するのではなくして、この財源は、大幅高額と言われましたけれども、当然政府の約束で充当をいたします。そのことによって残る要因が積み重なっていって、予備費が足らなくなった場合その他については、当然政府全体として大蔵省が中心になって相談をしてまいるべきものということについて、閣内に意見の不一致はございません。
  128. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それから次に私は人事院に、先ほどもちょっと話しございましたけれども、頭打ちの解消の問題ですね。これをちょっとお伺いしておきたいのですが、人事院の昭和四十四年、国家公務員給与実態調査、いわゆる実態調査の表によりますと、俸給表別、等級別、号俸別人員分布表というのを先日いただきました。その表によりますと、いわゆるワク外者というのが相当ありますね。いわゆるワク外者、いろいろ頭打ちの人ですが、これは要するに、これらの人たちの各俸給表別、等級別人員ですね。これ、総人員でけっこうですが、行(一)、行(二)、それぞれの表別に、まず人数どれぐらいずついるか、教えてもらいたいと思うんです。
  129. 尾崎朝夷

    説明員尾崎朝夷君) 表はございますけれども、ここで勘定して申し上げるというのはちょっとなんでございますけれども、たとえば行政職俸給表(一)の八等級にはございませんが、七等級の場合には、全体で四万七千人のうちの五十一名、それから六等級の場合には大体七十名ぐらいいるかと思いますが、ちょっとここで申し上げるのはなにでございますから、失礼いたします。
  130. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 けっこうです。先ほどもちょっと話にあったわけでありますが、いずれにしましても、この俸給表を見てみますと、いわゆるそのワク外、ランク外の人が相当いるわけです。この行政職俸給表を見ましても相当な人数になります。それで特に多いのが行(一)ですね。行(一)、それから教育職、それから医療職(一)、(二)ですね。そういうところにがあっと固まっております。これはなぜこういうことになるのか。まああちこち言ってもしかたありませんので、たとえば行(一)の給与表でいきますと、六等級ですね、六等級が一番多いですから、ここを例にとりますと、最高額を八号もこえている人がいるわけですね。ということは、この給与法の第八条ですか、第八条が適用されるわけですね。これから計算しますと、いわゆる八号俸もオーバーしているということは、少なくとも十数年間も頭打ちのままでなっているわけですね。そういう点から考えますと、なぜこういうことになるのか。また、一年間にこういう人たちは、どのくらい昇給が行なわれているのか、実際問題として。ほんとうにもう昇給額というのは、年間で計算してもほんのわずかにしかならないんじゃないか。消費者物価の上昇、そういうことから考えても話にならないんじゃないかと、私はこういうぐあいに考えるんですが、この点どうですか。
  131. 尾崎朝夷

    説明員尾崎朝夷君) 昇給額につきましては、たとえば六等級のワク外の場合には、最高号俸とその前の号俸との差額、たとえばことしの現在の場合には千百円ほどございますが、昇給期間二年たちますと、勤務成績良好の場合には千百円昇給といったようなことでございますけれども、ワク外の話でございますから、そういう昇給がはたしてなおかつ適当であろうかどうかという問題はあろうかと存じます。ただこのワク外問題といたしましては、現在の俸給表の幅が適正かどうかという問題が一つございますので、その点につきましては、毎年幅を若干伸ばすというようなことを検討はしているところでございます。  それから特に御指摘ございました六等級の場合には、ワク外の七号も八号も相当高いところにおる者がございます。で、こういう者はいわば例外でございまして、いま御指摘ございましたけれども、これは、六等級と申しますのは一般職員でございます。一般職員の一番グレードの高いところでございますけれども、これはそういうワク外の何号にもなっているというのは、いわば上の等級におりました。役付におりました者が、役付を離れまして、なお一般職員として在職している、そういうケースでございまして、この点はそういう意味で例外でございます。したがって、長く在職したために何号俸になったということではないものでございます。
  132. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 しかしですね、二年間に要するに千百円、一年間に五百五十円しかこれは上がらないわけですね。やはりひどいと思うのですよ、例外とは言いましても。前は役付であった。それが長くいるために下におりた。そうでない人もいると私は思いますよ。これは六等級ですか、六等級でも七十何名いるわけですね。それからそれ以外の七等級でも五十一名いるわけですね。こういう人たちの給与については、私たちは、やはり頭打ちというのじゃなくて、これはいろいろな面で検討していかなければいけないんじゃないか。また、この給与表自体が私は考え直すときにきているんじゃないか、こういうぐあいに思うのです。それで、いろいろ特別な事情だとおっしゃっておりますが、この頭打ちの人たちのいわゆる年齢別構成ですね、それから在職年数、これはどういうぐあいになっておりますか、わかっておりますか。
  133. 尾崎朝夷

    説明員尾崎朝夷君) 在職年数につきましては、なお調査を要すると思いますけれども、各号俸におきまして、たとえばワク外の何号俸の職員がどういう年齢構成になっているかという点につきましては、詳細に把握をしております。原則といたしまして、ワク外におります者は六十歳以上でございます。
  134. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、これはあとでこのワク外者について詳細にその年齢別、在職年数別構成を資料にして出してもらいたいと思うのです。  それで、この問題については、私はいろいろな面からこれは解決しなければいけない問題だと思うんです、実際問題として。いわゆる例外というものは、こんなによけいワク外であってはならないと思うんです、実際問題として。特に行(一)とか、そのほか、先ほども言いましたように教育職等には相当あります。こういう点はやはりこれからも改善していくべきだと私は思うんです。しかしその改善の問題で、やはり運用面で改めていくのか、または号俸延伸というのですかね、それによってやっていくのか、または抜本的にこの給与表自体を、まあ給与表自体の改正については先ほどもちょっと出ておりますけれども、これをやっていくのか、この辺の考え方についてはどうですか。
  135. 尾崎朝夷

    説明員尾崎朝夷君) 給与につきましては、原則としまして職務給的なたてまえがあるわけでございまして、したがいまして、ある職務の等級におきまして相当期間在職しました者の昇給というものが、はたして適当かどうか、どの程度が適当であるかという点がやはり一つの問題点だろうと思います。したがいまして、ただいま申し上げましたように、原則として六十歳以上でございますようなワク外者、現在のワク外者につきまして、なおかつどの程度の昇給を保障したらいいかどうかといった点が、やはり一つの大きな問題点であろうというふうに考えますが、現在の俸給表のワクそのものは、いわば制度的に考えますと、下からずっと昇給して、若いところからずっと昇給していくことを制度的に考えますと、五十歳ぐらい、五十歳から五十二、三歳でちょうど最高号俸になるようなそういう関係がございますので、もちろん、たとえば教育(一)のような場合には六十歳程度の近くまでございますけれども、行政職の場合には五十二、三歳で、まあ制度的に俸給表のワクはその程度になっておりますので、したがって、若干のワクの拡大ということは今後避けられないんじゃないかという感じは別に持っております。そういう点でその両面、職務給的なたてまえの昇給問題、現在の俸給表のワクの長さの問題、そういう両面からその点はいろいろ検討する必要があるんじゃないかというふうに考えております。
  136. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 総裁にお伺いしたいんですが、実は先ほどから総務長官も、公務員給与完全実施ということをおっしゃっておりますのですが、ことしの勧告は五月実施ということが前提での完全実施とおっしゃっているんだと私は思うんですが、実際問題、いろいろな調査の時点等取り上げてみても、私は四月実施勧告をやるべきじゃないかという考えを持っておるんですが、この点はいかがでしょう。
  137. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) これは五月実施勧告を申し上げた当初から四月にすべきだという御議論は、これはなしに相当の期間来ておったわけですが、最近になりまして、四月調査なら四月にすべきじゃないかという声が大きくなってまいりました。私どもは初めから五月ということでやっておりますし、これにはこれで相当の理由があるという前提で、これで正しいと思っておりますけれども、いろいろ御議論承ってみると、なるほど四月説にも一理なきにしもあらずというところまで、率直に言って考えが多少進んできているわけです。しかし、これは五月が絶対間違っておって、四月が正しいという結論が出れば、それはいつでも踏み切りますけれども、そこまで行っていないというのが正直なところでございまして、ことしはやはり五月でまいりたい、そして完全実施をしていただきたいと、そういう気持ちでおります。
  138. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いま総裁おっしゃること、よくわかりまして、五月、実施が絶対悪いということ、これは私そのとおり、総裁もおっしゃるとおりだと思うんです。しかし、ことしは総裁のおっしゃるとおり五月実施であったにしても、将来四月実施ということを考えることがあるかどうか、その点ちょっともう一回……。
  139. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) これはあくまでも筋の議論でございますから、筋としてそれが正しいということが確認できれば、これはわれわれとしてはそっちのほうを採用すべきじゃないか、そのくらいのフランクな気持ちで検討に臨んでいきたいと思います。
  140. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは最後に人事院総裁並びに総務長官に少しだけ年次報告のことでちょっとお伺いしておきたいんですが、先日人事院が発表いたしました年次報告によりますと、公務員の非行の問題が相変わらず多いようでありますが、院としまして、いわゆる公務員諸君の非行の原因ですね、これは一体どこら辺にあるのか、また非行をなくするために、人事院としてはどういうぐあいに考えていらっしゃるのか、この点お伺いしておきたいと思うんです。
  141. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 御指摘のとおり、年次報告には非行の表を出しましたのですが、まあ百何十万の公務員の中でありますから、これぐらいはということもあるいは言えるかもしれないと思いますけれども、しかし、それにしても、われわれとしては、こういう非行の事件は一件でもあってはならないという気持ちでおりますために、この表を発表するについても非常に心を痛めて発表したわけでございます。  これを今後なくする方法ということについては、これは私どもの専管ではないんで、ここに先ほどお名ざしの総務長官もおられますけれども、私どもは、どこの所管ということでなしに、総務長官のほうも非常に努力されているわけでございます。これは後刻お話しがあると思いますが、私どもとしても私どもなりの努力をしております。まあ私どもとして、当面、研修のいろいろな機会を持っておりますために、昨年ごろから私自身、この一九七〇年代ということは、公務員にとっていえば、これはことし完全実施になるということからいって、非常に画期的な年代であろうと、従来公務員のあり方について世間の目というものは非常にむしろ冷たいと言ってもいいくらいに、われわれに対して好感を持って見られておらない。勧告を申し上げれば、そのたびごとに、まずまず金額は妥当であろうけれども、勤務密度において、はたして民間相当にいっておるかどうかというような、必ずそういう私どもとしては気持ちの悪いコメントがついておるというような現状を、これからはっきりわれわれ自身認識をして、完全実施になればなっただけに、世間の批判というものもそれだけまたきびしくなるという覚悟を固めて、大いに職場の倫理を革命するとともに、まずわれわれ公務員としてのイメージ・チェンジをはかるべきである。一九七〇年は公務員のイメージ・チェンジの年だ。国民から信頼される公務員として出発すべき年だということを盛んにほうぼうで機会あるごとに私はぶってまいっておるわけでありますが、そういうような意味で、今日の公務員に対する世間の目というものを、少し同情ある信頼される方向に持っていきたいという気持ちも込めて、こういう非行事件というものは絶対に今後絶滅されなければならぬと思います。  まあこの中に出ておりますのは組合活動云々というのが相当ございますが、これは完全実施になれば、このほうはぐんと減ることはあたりまえなんでして、いままでは完全実施を要求されての御活動というのが相当あったわけです。これは減ると思います。その他の点においても、われわれお互いに大いに自粛自戒せねばいかぬという気持ちで臨んでおるわけでございます。
  142. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 もうあと一問で終わりたいと思うのですが、その中でも、いま総裁がおっしゃいましたように、そういうふうなストとか、それに関する問題は確かに減ると思いますが、私がやはり問題にしたいのは、横領や収賄とか、悪質な汚職というのが実際問題として三百三十件近くにも上がっているわけですね。これはやはりいろいろ問題だと私は思うのです。そういう点から考えてみても、私はこの公務員の綱紀粛正ということはもう絶対大事な問題だと思うのです。この点について、また、これは昨年のデータでありますけれども、ことしになりましてからも警察庁から発表されておりますデータによりますと、すでに五十何件のいわゆるこういうふうな悪質な事件が起きている。自治省でも異例の会合を開いたということを聞いておりますが、こういういろいろな観点に立って、公務員の綱紀粛正ということについて総務長官、どのようにお考えか、その見解をお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  143. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) ただいまのお話しのようなケースは、この四十四年の年次報告に発表になっております三百三十件が、前年は四百十七件あったわけなんです。これは行政監理委員会からも意見が提出されましたので、昨年の閣議で、総務長官名の通達を閣議決定として発しまして、各省庁で職務権限配分の是正やチェック機能の強化や、民間業者との接触についての監督等、具体的な点を指示いたしました。その結果によるものであれば幸いである。心の問題はそれだけみんながりっぱにほんとうの心を取り戻してきたのであれば、なおりっぱであると考えますので、この点はこれからもなお気をつけてまいりたいと思いますが、ただ一つ、御質問にはありませんが、ちょっと最近私心配しておりますのは、交通事犯ですね、運転しておることによって、結果、道路交通法による刑罰を受けたために、そのために結局は懲戒処分その他に付せられざるを得ない、被疑者になる、犯罪者になるということがだんだんふえてまいりまして、ことに道交法がことし八月二十日に施行されることになりますと、飲酒運転にもうきわめてきびしい法律になりますので、これはもう私のほうで各役所や民間の会社まで、そんなことで人生を棒に振ったらつまらぬぞということの通知徹底運動というものを始めております。公務員のせっかく有能な諸君が、飲酒運転その他によって懲戒処分による件数の中にだんだん増加しつつあります傾向の中で、これが食いとめられるように、ことに道交法等もきびしくなりますので、そういうことの十分の徹底を事前にはかっておく必要があろうということを考えておりますので、ふえんいたしておきます。
  144. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 本件に関する本日の調査はこの程度にいたします。
  145. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、国家行政組織に関する件を議題といたします。  御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  146. 山崎昇

    山崎昇君 それでは行政機構の問題についてごく簡単に二、三だけきょうはお聞きをしたいと思います。  ことしは内政の年であって、政府の三大政策の中に行政改革というのが主要な柱だということをたびたび述べられているわけです。ところが、ふしぎなことに、国会の開会中にはあまり政府からいろいろな考え方については述べられないのですが、国会が終わると同時に、いろいろなことが新聞を通じて報道されます。私が見ているだけでも、たとえば行政機構の改革は国会の審議を経ずして政令で行なえるようにするのが筋道である。あるいはまた具体的に言うならば、農林省は根本的に改組したらどうだとかいうようなことがずいぶん報道されます。私ども国会が終わりましてからいろいろな官庁に行ってみますというと、そういう新聞だけで、出先の諸君等が見ますために、かなり職員の中には、自分の役所がどうなるのだろうかという動揺等があります。そういう意味では、第一に私は、政府はもっとこういうことについては、発表するにしても、ものを言うにしても、慎重にやってもらいたい、こういうふうにひとつ考えるわけです。  そこでお尋ねしたいのは、一昨年以来一省一局削減、これはショック療法である。総定員法は二つ目の柱で、これができれば行政機構改革はスムーズにいくのだということをかなり長官は述べられてきたわけなんですが、一向に行政改革というのは進んでおりません。特に行政組織法上の、私どもが何日もかかって指摘したような事項については、ほとんどまだ見るべき状態にはなっていないと私は思うのですが、その後それらの点についてはどういう政府部内で検討をされ、どういう状況になっておるのか、まずその点からお聞きをしたいと思います。
  147. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 国家行政組織法との関連についての御質問かと思います。国家行政組織法については、行政需要の変化に即応した能率的な行政の実現に資するために再検討を行なっていくということは、御指摘のとおりであります。昨年八月以来、内閣官房、内閣法制局、総理府本府、行政管理庁、大蔵省の職員よりなる国家行政組織法等検討協議会を設けまして、ほぼ月一回のペースで審議を続けてきましたのでありますが、同協議会で現在までに検討してきた事項は、行政機関の調整、企画機能を所掌する組織のあり方、合議制機関、外局制度、八条機関、内部部局及び地方支分部局等、特殊法人、行政組織の規制形式などでございまして、一応主要問題点の摘出を終わった段階でございますが、しかしながら、これらの問題点についてどういうふうな方向で改正していくかについては、何分にも問題が広範にわたるなどから、まだ成案を得るに至っていない状況であります。今後とも検討協議会での審議を通じ、あるいはその他の各省庁及び学識経験者の意見を聴取しつつ検討を続けてまいる考えでございます。
  148. 山崎昇

    山崎昇君 いまの長官の説明ですと、部内に検討の機関ができたようでありますが、一体それらの機関がつくり上げる結論というものは、おおよそいつごろまでをめどにして結論が一応出されて、そしていま言われましたように、たとえば関係の方だとか、あるいは学識経験者だとか、そういう方々の意見の聴取段階までいつごろまでにいくのか、めどがあればお聞かせをいただきたいと思います。
  149. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 八月一ぱいくらいまでにはたたき台になるような素案をまとめて、その上でそれを材料にして意見を聴取したりしながら取りまとめに入る、そうしてできれば次の通常国会に間に合わせるようにしたい、こういう心組みでございます。
  150. 山崎昇

    山崎昇君 それに関連して、私ども国会終われば新聞報道しか情報というのはなかなかつかめないのですが、ときには長官が抜けた監理委員会意見として発表されてみたり、あるいはまた長官が入った監理委員会意見として発表されてみたり、行政監理委員会の審議のしかた、あるいは発表のしかたというのが、そのときそのときによってまちまちのような私は気がいたしますが、これはそれなりに理屈があるのかもしれません。あるのかもしれませんが、一体こういうやり方というのはどういう考え方に基づいてやられるのか、どうも私どもにはわからぬわけです。特にまた最近の新聞等を見ますと、国会で局長等があまり答弁に出るのはどうも思わしくないから、あるいは行政事務の渋滞等があるから、できるならば政務次官、大臣等で答弁できるようにしたらどうかというようなことも、これは長官の抜けた行政監理委員会意見だという意味新聞報道等がなされているようであります。私ども地方におりますというと、そういう新聞が出るわけなんですが、一体こういう点は部内でどう検討をされて、そしてまた行政管理庁としてはどういうそれらに対する見解を持たれるのか、この機会に聞いておきたいと思います。
  151. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 行政監理委員会は合議制の機関であります。ですから、正式の行政監理委員会意見とならば、行政監理委員長、長官が委員長でありまして、私も入って確定的な議決をしたことが意見であるわけでございます。ところが、問題によりましては私が入って、執行部が入っております委員会では、石橋をたたいて渡ると申しますか、十分念を入れるという傾向を生みますために、タイムリーに意見が発表されないというもどかしさを感じられると思います、これは私の想像ですが。それで、委員長は抜きにして相談しようじゃないかということがよく起こるのであります。それとても一面合議体の機関ではありますが、行政監理委員会としてではありますけれども、総理大臣に意見を述べることができるという機能もあるということを、略式ではありますが、委員長を抜きにした民間委員だけの意見段階新聞発表されること等が再々ございます。それは正式の意見ではないというべきでありますが、さりとて民間委員だけの意見を発表なさること自体を差しとめるわけにもまいりません。また、差しとめなくてもたいした支障がないじゃないかという考え方のもとにそういうことが行なわれるわけでありまして、それにしましても、民間の有識者の意見として傾聴をすべきものは傾聴する、とるべきものはとるという考え方でこれには対処しておるわけでございます。
  152. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると長官、あなたが出席しない監理委員会で、監理委員会の発表として公式に新聞等で発表されたものは、私ども国民から言うならば、これは行政監理委員会意見だというふうに思うのですがね。そういうふうに私どもは受け取らざるを得ないと思うのです。あとからあなたが、私がおらぬからこれは違うのだというようなことを言っても、これは通らぬ話じゃないか、こう思うのです。そういう意味で、言うならば、私ども民間の方だけで発表しようが、あなたが入って発表しようが、行政監理委員会という関係で発表されるものについては、当然一つの機関の発表として私どもは権威があっていいのではないか、こう思うのです。今後私どもはそういうふうに理解をしたいと思うのですがね。それについて長官の見解を聞いておきます。
  153. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 発表されるときには行政監理委員会意見としてでなしに、民間から出られた監理委員会六人の名前でもって発表されるわけでございます。ですけれども新聞の扱い方が必ずしもその点を明確にしない傾向もありますので、まぎらわしいかと思いますが、たてまえはそういうふうに相なっておるわけであります。  そこで先ほども申し上げましたように、正式の意見ではないけれども、予告編と申しますか、もっと検討すべき余地があることでも、意見として発表されることそれ自身に価値がないとは言えませんので、とるべきものはとる、とらざるべきものはとらずとする態度で臨んでおると申しましたが、そういうふうに御理解いただきたいと存じます。
  154. 山崎昇

    山崎昇君 これは深追いするつもりもありませんが、ただやはり受ける国民の側からいえば、行政監理委員会という六人の方の名前が出て、監理委員長の名前が確かになかったかもしれないが、あとから、あれは長官のおれが出席しないから行政監理委員会の正式の意見でないということになりますと、混乱が生ずるのですね、受けるほうの側としては。ですから、それらのことについては、今後混乱のないように、私はこの行政監理委員会というものをきちんとした運営にしてもらいたい、こういうふうにこれは要望しておきたいと思う。  それから次に御質問しておきたいのは、最近、道州制という問題が財界からも出され、また地方制度調査会でも検討してはどうかという方向になっているようでありますが、そこで行政管理庁としても、道州制等の問題について討議をされているのかどうか。もし討議をされているとすれば、何かの機関を設けてやられているものであるかどうか、お聞きしておきたいと思う。
  155. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 行政監理委員会ないしは行政管理庁としては、道州制には取り組んでおりません。まあ、ほかのことでございますが、与党の自民党の行政調査会では取っ組んでおられるやに仄聞しております。
  156. 山崎昇

    山崎昇君 その次にお聞きしたいのは、行政機構というものは、私は、いろいろな経済政策が進んだり、あるいはその他の政策が進めば、当然行政機構も変わってくると思うのですね。最近、たとえば経済企画庁の新全総等を見れば、広域生活圏等の構想が出される。あるいは建設省からは広域生産生活圏というような構想も出される。あるいは自治省からは広域市町村圏というような構想も出される。やがてこれは生産圏という考え方になるようでありますね。そうすると、そういうものに伴いまして、国の行政機構というものも私は整備をされてこなければならぬのではないだろうか、こう思うのですが、こういう経済といいますか、生活の単位というものが変わっていく場合の行政機構のあり方について、一体行政管理庁はどういう対応のしかたをするのか、どういう検討をされておるのか、この機会に聞いておきたいと思います。
  157. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 先ほど申し上げましたように、行政管理庁ないしは行政監理委員会としては取っ組んでおりません。おりませんけれども、通信、交通の発達ないしはいま御指摘のような広域生活圏の形成が着々と進みつつあるやに見受けられる情勢下において、それに対応すべき行政機構がいかにあるべきかということは、行く行くは検討すべき課題であろうとは存じます。
  158. 山崎昇

    山崎昇君 私は、実際行政管理庁としてはおくれておるのではないかという気がいたしますね、そういう点については。当然地方自治体の場合には二、三の市町村が集まって一部事務組合等をつくって、たとえば清掃にしろその他の問題にしろ、一つの施設をつくって運営をするというふうな方向がかなりいまとられておるわけです。そうすると、国の行政機関としても、そういうものにあわせて私はある程度の整理といいますか、あるいは統合といいますか、あるいは広域行政に合うといいますか、そういう機構面というのは相当程度検討されなければならぬのではないかと思うのですね。よしあしはいろいろ議論のあるところだと思うのですが、ところが各省からいろんな構想が発表になる。それに対応して政府部内では、それを推進すべき行政機構については何も検討されておらない。とりわけ私が不満に思いますのは、新全総ができて、閣議決定がありましてからもう一年くらいたつわけでありますが、あの全国の開発計画を進めるべき行政機構の点に至っては何も検討されておらない。一つもないと言ってもいい状態ではないだろうか。こういうことで、一体日本の新全総なんというものはできるのかどうか。私は、残念ながら公務員というのは一つの機構ができなければ、なかなかものごとが進展しないという習性を持っているからお尋ねしているわけです。そういう意味で言うならば、私は行政管理庁のやり方というのは、全くおくれているのではないだろうか、こう思うのですがね、どうですか、長官。
  159. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 元来は地方行政機構がいかに対応すべきかという課題が先行するものと思います。同時に、いろんなそれに関係する課題は、国の行政機関としては、運用の総合調整的な機能を発揮することによって当面対処できる。それでも行く行くは中央の行政機構といえども、それに対応すべき課題と取っ組むべき時期がくるかとは思いますが、時期的にそれとこれとは同日の談ではないというふうに一応理解しております。
  160. 山崎昇

    山崎昇君 確かに私はすべて同一だなんという意味で申し上げているわけじゃない。しかし、いま答弁を聞いている限りでは、少なくとも行政機構の面での立ちおくれだけは、これはもういかぬともなしがたい現実ではないだろうか。何もまだ検討に入っておらぬというに至っては論外ではないだろうか、こういう気がいたします。しかし、これは今後また私は具体的にいろいろお尋ねをしたいと思いますから、きょうは原則的なことだけいまお聞きをしているわけです。  もう一点お聞きをしておきたいのは、これは去年から長官との間にやりとりしている問題であり、なおかつ予算委員会でも私はやりとりした問題でありますが、この定員外職員の扱いをその後どういうふうにされておるのか。三月の予算委員会では、私から総理に五点にわたる提案をして、原則的には総理はこれを認めたはずです。したがって、行政管理庁ではその具体化というものは当然私は検討されておるのではないだろうか、こう思っておるのですが、もし、長官でなくても、こまかな点であれば局長でけっこうでありますが、その後の対処のしかた、経過等について説明を願いたいと思うのです。
  161. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 検討いたしております。各関係省庁に依頼をしまして資料を取りよせて、ようやくそれが取り集めができまして、その資料に基づいて検討を加えているところでございます。なお詳しくは政府委員からお答え申し上げます。
  162. 河合三良

    説明員(河合三良君) ただいまの御指摘のとおり、各省庁に依頼をいたしまして、各省庁所管の定員外職員の内容につきまして調査をいたしまして、これはただいま長官から申し上げましたように、取り集めは済んでおりますが、それの整理に現在かかっておりまして、間もなくこの整理が完了いたす予定でございます。そういうことでございますので、整理が完了いたして、十分部内でそれを検討いたしました上、御説明を申し上げるのが適当かというふうに存じております。
  163. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、その整理はいつごろでき上がりますか。なお、私はこの予算委員会でかなり具体的にこれは提案をしたので、その趣旨に沿って当然検討されると思うのですね。それは大体いつごろになるのか。おおよそのめど、またあとで、それが狂ったからどうだという意味のことを申し上げませんが、おおよそのめどをひとつお知らせを願っておきたい。
  164. 河合三良

    説明員(河合三良君) なかなか内容は複雑な点もございますので、いまいつごろまでということを申し上げる段階ではございませんが、予算委員会山崎先生いろいろ御指摘の点も十分にその検討の際にはしんしゃくに加えまして、そういたしまして検討いたしまして結論を出したいというふうに思っております。時期的には半月とか一月とかいうふうにはっきりした日にちはちょっと申し上げかねますので、それはひとつお許しいただければと思います。
  165. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いま山崎委員が質問をされました行政監理委員会ですね、行政監理委員会は、一体存在価値はどういうところにあるのかと私は常日ごろ思っているのです。行政監理委員会としての意見は出なくて、委員の中の個人の意見が出たり、それから正式のではない、委員長の入らない六人の委員の名前を列記して、いかにも行政監理委員会の名前であるごとき発表を行なわれたり、意見を述べられたり、しかも、その述べることが、ちょっと行政機構なり国家行政組織について、くろうとであれば、いかにもはったりみたいな時期に、先ほど行政管理庁長官からおっしゃったように、何か物価の問題が出ますと、それに関して何かタイムリーによく検討もしないものをおくめんもなく出す、これは行政監理委員会そのものを危うくするものだと私は思います。しかも私は、もっと立ち入って行政監理委員会そのものの存在に疑問を持っているわけなんですよ。四十年ですか、できたですね。私は問題があると思っているのです。行政機構をお扱いになる行政管理庁ですから、行政監理委員会というものが一体監理委員会として、こういう組織はどうかという点もあるいはお考えだと思うのですけれども、私は行政監理委員会一体何をしているのか、存在価値があるのかと思いますけれども、どういうように長官お考えになりますか。
  166. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 存在価値はあると存じます。意見を発表されることだけがすべてではございませんで、毎週一回開会します行政監理委員会を通じましては、行政監察のことであれ、行政機構の改革のことであれ、そのつど審議をしてもらってはおります。そのほかに六人の委員の方が意見を発表したいと言われることが、いま御指摘のような姿になってあらわれているわけでありまして、本来の姿ではむろんございませんけれども、それはそれなりに示唆を与える意味においては意味があるんじゃないかと理解しております。
  167. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は長官がいまおっしゃるような話であったら、いままでの行政監理委員会の動きを見ておりますと、これは監理委員会という法律でつくっている委員会にしないで、審議会でいいんじゃないか、行政監理審議会とでもしてお置きになったらどうかと私は思うのです。これは行政機構を取り扱っておられる行政管理庁ですから、一体どっちがいいかお考えになってしかるべきだと、私は監理委員会という制度はよくない。これは審議会にしなさいという主張をしたいわけです。その点についての長官のひとつ見解を承りたい。  それからもう一つは、先ほど申し上げたように、行政監理委員会というのはどうも妙な存在だと思うのですね。長官がおっしゃるように、もっと慎重に検討しなければならない問題だけれども、ふっと出す、こういうのを出されてはかなわないですよ、行政機構におる者にとりましては。十年先のこと、五年先のことを言っているのかもしれませんけれども、いかにも監理委員会が出したというようにでかくレコードされますと、これはたまったものではない。なぜ監理委員会としてお出しにならないのかというように思うのですけれども、そこら辺のそういう処理のしかたについて、委員長として慎重な取り扱いをしてもらいたいですね。その二つについてお尋ねいたします。
  168. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 第一の問題は立法論と申しますか、一つ考え方として拝聴させていただきます。  第二の問題は、すでにお答え申し上げましたとおり、事実問題としてこれを制約するわけにまいりませんので、かたがた、時宜に応じて、まだ未完成交響楽かもしれませんけれども、ある示唆を与える意味において意見を発表されたのだなあという理解のもとに受けとめているわけでございます。
  169. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 どうも効果は何にもありませんし、それから与える影響は、妙な影響を与えるわけですね。そうしてちょっとくろうとが見ると、これはとても話にならぬという気がしますし、十年先を言うならともかく、それはしかも六人委員会の名前で出る、あるいは個人の名前で出る、こういうのでは、これはどうも利用されているようにしか思えないですね、行政監理委員会というものが。これでは私は、これは行政機構改革なり、そういうものに対する権威を失墜すると思うのですよ。これは何か妙なと申しますか、タイムリー的に、あまり正確でもないようなものを、アドバルーンを上げておれば、それで役に立つのだというようなことでは、これは私はあってはならないと思いますですね。ぜひこれはそういう監理委員会というようなものでなくして、審議会のごときものにしてもらう。そうすれば、そういう妙なことは出ないだろうと思うのですよ、審議会というのは大体そういうことはしませんから。どだい、あまりないような監理委員会ができましたものですから、こういうものがばたばたですね、出てくるわけです。審議会のようにされてはどうか。しかも週に一回だそうでありますから、週に一回の委員会を開かれるなら、これは常設のものにしなくてもいい、毎日開くような機構でなくてもいい。これは審議会でいいじゃないか。十分用は足りると私は思う。そこで、ぜひそういう意味で荒木国務大臣に御検討いただきたいと思います。年じゅうのことなものですからね、この六人のやつ。頭にきちゃうです、こっちも。  それから、さっき山崎委員の質問にお答えになりました国家行政組織法の改正問題ですね。これは従来からやかましく言われているわけですし、先ほどの長官のお話ですと、八月一ぱいにはたたき台をつくって、そしてこれからある通常国会に出したいというお考えですね。それからいきますと、これから八月一ぱいに一回程度の内部検討部会というのが開かれるだろうと思うんですね。あと一回ぐらいしか開かれないんじゃないですかね。昨年からやっておられて、七回か八回ほどやっておられるように報道されていますね。まああと一回しかないということになれば、もうその骨子はまとまっておるんじゃないかと思うんですけれども、またそういうふうにも報道されていますですね、うわさされていますですね。ですから骨子を出していただきたい。
  170. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) まだ先ほどお答えしましたように、問題点を摘出した段階でございまして、その問題に対していろいろな考え方がある、そのどれを選ぶかということについてはまだ取りまとめはできておりませんので、たたき台といえどもまだお示しする段階ではございません。
  171. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 たとえば大きな問題の一つであります国家行政組織法を改正する場合の一番重点だと思うんですけれども、局とか部とか、そういうものを法律によらないで政令できめたり、あるいは廃止したり変更できるということですね。これについては考え方がまとまっているんですか。従来どおり法律でいくか、政令でいくかというふうに、どちらかにまとまっておるんですか。
  172. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 御指摘の問題点はまさに一つの重要な課題でございますが、それにいたしましても、どういうふうにやったほうがいいかということについての検討もいまだしでございます。これは臨時行政調査会でも、たとえば行政機関における内部組織の編成に関しては、内閣自体にどこまで自律的な内部組織編成権を認めるべきかという問題があるが、これについては法律では通則のみを定め、どの省にいかなる部局を置くかという個別的、具体的な内部組織の編成については、その取り扱いを内閣にまかせ、政令以下の段階で定めるのが能率的な行政運営の要請に沿うものと考えるというふうな意見も参考にしながら、検討を加えておる段階でございまして、まだ結論には到達しておりませんこと、いま申し上げたとおりでございます。
  173. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 次に、三年間に五%定員削減の問題なんですが、これは四十六年度で終わるわけですね。四十三年から始まったわけですから、まあ足かけ四年、実質的に四年ですね。三年間五%削減といわれておるわけですが、これが四十六年で終わると、続いて第二次ということになりますが、第二次三カ年間に五%削減というのがいろいろ言われておりますですね。ところが三年間に五%削減というのは、公務員の自然退職ですね、そういうものを基準にしてつくっておられたと思うんですが、これからさらに四十七年から三年間に五%、まあ自然退職をやはり基準にしてやるには、これは相当無理がある。したがって二つの方法考える。一つは、従来いま実際上各省庁で行なわれております勧奨退職、これを活用して、そして途中で、まあ五十七歳になって勧奨してやめるというんじゃなくて、まだ四十でも三十でも、若いときに、あるいはまあ中堅職員のときに、就職を見つけてやめる者については、退職金を勧奨と同じように積み上げをする。あるいは就職がなくても、途中でやめる場合でも、たとえばその昔ありました、前にありました待命制度ですね。一年なら一年間給与は支給する。そして形は休職というようなことをするか、あるいは特殊な特定の機構に傾斜して定員を削減するというようなことが言われておりますね。そういう点について、どういうふうになっているのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  174. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) いわゆる三年五%計画削減措置のあとに、どのような定員管理の方針をとるかについては、目下検討中でございます。三年間——実際は足かけ四年間でございますが、四十六年度でいわゆる三年五%の削減計画は終わるわけでございますけれども、これは総定員法を実施するについての準備的な事項であり、現に実施段階に入っておりますが、実質的な措置でもあるわけでございます。これがなければ、言いかえれば、まあ定員を削減して、それを供出してもらって、行政管理庁で取りまとめて、その中から比較的多忙なところには再配分をするというやり方で運営をいたしておりますから、これは当然三年五%の計画は実行していきますけれども、御指摘のとおり、そのあとに続く三年間なり五年間なりをどうしていくかということについては、まだ検討中でございまして、結論は出ておりません。けれども同じように三年間なら三年間で五%か四%か、三%か知りませんけれども、そういう計画を新たに押し立てて取っ組んでいくべきものではないかというふうに心得ております。その間勧奨退職、あるいは重点的に比較的ひまなところをねらって、定員削減に協力してもらうということは、従来もやっておりましたし、今後も続けていくべきものと心得ます。その間、退職金を特別に考慮してやりやすくするということなども、部内で相談はしましたけれども、まだ計画的にそれを実行するという課題としては取り組んだことはございません。
  175. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この間もですね、内閣委員会の際に私申し上げたんですが、三年間に五%定員削減する、そしてまたこれからもさらに三年間に五%、第二次の削減をやるんだというようなことが報道されるわけですね。これが現在おる国家公務員の若い連中に非常に動揺を与えるわけですね。これから公務員になろうという連中にとりましても、非常に国家公務員というもの、あるいは行政機関というものは不安定ではないかという感じを著しく与えているというふうに言わなくちゃならぬと思うのですけれども、先ほど、午前中に人事院総裁がお見えになりまして、初任給の問題の論議をいたしました際に、総裁の話といたしまして、新しく学校を出て公務員の試験に応募する者ががたがたに低落して少なくなってしまった。がたがたに少なくなってしまったという表現をして言っておられましたですけれども、確かに初級職を受ける応募者というものはかつての半分に減っております。あるいは上級職、中級職にいたしましても、著しく減ってきておるという状況なんですね。これは、いまおります高等学校を出て入った連中で、おそらく五年以内にやめるという者は相当おるのじゃないでしょうか。どうも役所というところはあぶないところで、これからも五%、さらに五%というような事態では、これは不安定だというような気が相当あるのではないかと思うのです。給与が低いという点もありますよ、先を見た場合にありますけれども、機構がどうも不安定だという点があって、必要以上に動揺を与えているのではないかという点もあるのではないかと思います。あと五年たったら公務員になり手がおるのかいなという話をする人もおります。極端に言えば、そういう人もおります。あるいはいま試験をやっておりますけれども、試験ができなくなるのではないか。結局、選考せざるを得なくなるのじゃないかという意見もある。いま具体的に自衛隊がそれを示しているじゃないか。あるいは警察官なり看護婦さんなんかがいまそうした事態になっているじゃないか。公務員全体も、職種を見た場合におきましては、研究職、医療職の(一)にいたしましても、そういう傾向がいま現に出てきている。ということになりますと、私は行政管理庁としては真剣に考えていただかなければならぬじゃないかと思うのですね。  ただ減らせばいいんだということだけが表面に出てくるわけですね。三年間に五%、続けてまた三年間に五%減らすんだという話ですね。決して公務員に対してもいい影響を与えていない。特に若い連中には、これからなろうという人に、これは不安を与えている。安定しているというところに国家公務員のいい点があるわけですから、そういう点についての大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  176. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 御指摘ではございますが、応募者が減ったというのは、民間給与に比べて官庁給与が低いからだと思います。そのことが原因の最大の点じゃないかと思います。  総定員法の運営につきましては、四十二年度末の総定員を押えて、その範囲内で運営していく。そうして国民的要望でもある少数精鋭の方式で取っ組んでいくということが目標でございます。それにしましても、出血整理は一切行ないませんから、役人になったらいつ首を切られるかわからぬという不安は一切ございません。したがって、少数精鋭の列に加わらんとする精鋭が集まることについては何らの支障がないというふうに考えるわけでございます。給与関係を別としますれば、御心配のような動揺を来たすということはないかと思いますが、総定員法の運営を誤解して理解しておれば、あるいはそうかもしれませんが、ほんとうの理解に立って判断すれば心配御無用じゃないかと思います。
  177. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 たいへんいいお話を承りました。ですが、実際上は私が言うように、あるいはいま大臣のお話しの総定員法の趣旨というのじゃなくて、いまの定員法の運営についてのあり方が理解されていない面も確かにあるかと思いますけれども、しかし、それは総定員法というものを考えますと、いっそれがそうでなくなるかわからない存在なんですね、総定員法というものが。いま運営は大臣のおっしゃるような運営になっているが、しかし総定員法というのは、そういういまやっているような運営でなくてもいいわけです。本来はいまやっているような運営でないものが本来の総定員法だろうと私は思っています。またそう考えていいんじゃないかと思うんです。ですから不安に思うし、それから、これからなる者も、何か不安じゃないかというふうに考えているわけです。  以上申し上げて私の質問を終わります。
  178. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は国家行政組織に関する問題に関しまして二、三質問をしたいと思います。もうすでに種々話がございましたけれども、まず、先ほど行政監理委員会の問題が出てまいりました。これにつきましては、先般の第六十三国会の委員会でも相当いろいろと問題にいたしました。そこで私は、行政監理委員会設置法の第二条に、「委員会は、次の各号に掲げる事項に関して、審議し、行政管理庁長官に意見を述べ、及び長官の諮問に答申する。」、こういうふうにあります。要するに私はその行政監理委員会の存在価値等については、それは別問題にいたしまして、いずれにしても、この行政改革の面におきましては、この行政監理委員会並びに行政管理庁というのは非常に重要な役目をしているわけです。これしかないわけですね。そういう面から考えまして、私は、当然設置法にもありますように、行政監理委員会は行政監理委員会としての意見は確かにいままで何回か発表され、またその民間委員のみによる意見も発表されております。しかしながら、実際問題として、政府は行政監理委員会に対して、いままで一回でも諮問したことがあるかどうか。実際問題、私はこれはないんじゃないかと、こういうふうに思うのですが、設置法上もちゃんと諮問するということはあるわけですね。ですから、そういう点から考えてみると、もっと政府自身も、これは大臣も、大臣という役目と委員長という役目と一緒ですから、非常にむずかしいかもしれませんけれども、私たちは初めからこれは切り離したほうがいいと言っているわけですけれども、いずれにしても、行政監理委員会にいま行政改革の問題点というのは山積みしておるわけですね。そういう問題について行政監理委員会に何らかの形で諮問するなり何なりして、そのばちっとした答申を受けるという姿勢が必要じゃないかと思うのですが、この点いかがですか。
  179. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 御指摘の点は確かにそういう傾向があります。ただし、諮問をしないわけではございません。今後諮問という形を活用することを心がけたいと思います。
  180. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣から前向きの答弁がありましたので、当然前向きに政府として行政監理委員会に行政改革の必要な問題を諮問する、そしてそれに対してきちっと答申を受ける、そういうふうなきちっとした姿勢をやれば、要するに民間とのこのぐずぐずした点がなくなるのじゃないか、これも一つと思うわけです。  それからもう一つの問題点といたしまして、先ほどすでに話がございましたが、国家行政組織法の改正の問題については、これもさきの六十三国会で相当議論をいたしましたが、この中で、先ほど大臣の答弁の中で、大体たたき台になる原案は近く出るそうでありますが、いま大臣はこのようにおっしゃいました、国家行政組織法についての問題点を摘出したと、全部。いわゆる問題が大臣の手元にあるのだろうと私は思うのです。そこでその内容について詳しく私はこれからどうするつもりなんだということは、これはこれからやることですから、公開できないと思うのですが、現在国家行政組織法での問題点というのはどういう点がいま列挙されているのか、これは具体的内容は要りませんから、羅列でけっこうですから、教えていただきたいと思います。
  181. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 政府委員からお答え申し上げます。
  182. 河合三良

    説明員(河合三良君) お答え申し上げます。  具体的などういう問題点かという御質問でございますが、それにつきまして簡単に項目だけを申し上げますと、まず、行政機関の調整、企画機能を所掌する組織のあり方というような問題といたしまして、たとえば事務次官補を設置したほうがいいかどうか、あるいは現在総括整理職が国家行政組織法十七条の二あるいは二十条の3と、いろいろな種類がございますが、それについてどういう整理をしていくか、また、その調整機能を持っております総括整理職の名前が審議官という名前もあり、あるいは参事官という名前もあり、あるいはその他いろいろの名前がございますけれども、そういう名前が省庁によって重さがいろいろ違うというようなことは非常に不都合でございますので、それを統一したらどうかというような問題、あるいは合議制機関、あるいは八条機関にあります合議制機関を含めまして、合議制機関の本来のあり方でございますとか、それをどの条文で受けるか、八条機関の中に、いま御指摘がございましたように、種々雑多の機関が入っておりますが、これを何らかの形で整理し直すのが、国民の目から見ても行政組織がわかりやすく映るのではないかという点でございます。あるいは現在国の行政機関といたしまして府、省、委員会、庁、四つが掲げてございますが、この中で府、省は国の行政の第一次的にこれを分担する、いわば分担管理、大臣が担当する行政の区分でございまして、これにつきましては、これはいわば第一次的な行政の分割である。さらにその中で委員会なり庁なりというものが第二次的に行政をそれぞれ分担しておりまして、そのほかに内部組織がまた別にある。そうなりますと、行政機関というものが第一次、第二次に混在しておりまして、行政機関と総称されておりますが、その辺が適当であるかどうか。理論的だけに申しますれば、府、省だけが行政機関ということが理屈としては合うのではないか。しかしその実態がそれでいいのかという点でございますとか、それに関連いたしまして外局と・いうものが現在ございまして、これはただいま申しました委員会、庁の問題でございますが、こういうものがこの中にいろいろな、やはり外局という名前の中にいろいろなものがある。たとえば庁といたしましても、これは総理府には国務大臣を長とする外局である庁がございます。これは行政管理庁も経済企画庁も、あるいは科学技術庁、防衛庁もすべてその中に属しますが、その他の省には国務大臣を長としない外局である庁がある。水産庁とか食糧庁とか、あるいは中小企業庁、そういうものが同列で庁に入っておりますが、これを理論的にはどう考えるべきか。しかし実際の扱いとしてはどうするのが適当かという点についても、大きな問題点としていろいろ検討いたしております。  また、そのほかいろいろございますが、先ほど来問題になっております行政組織の規制形式、これは現在局、部あるいは次長の職務が国会の法律事項になっておりますが、それについて先ほど大臣から御説明申し上げましたように、臨時行政調査会の答申の趣旨どもしんしゃくして、その点についても検討を加えるのがいいのではないか。また、現在ございます内部機関の問題につきましても、これはたとえばかなり技術的な問題になりますが、庁に、これは局部の下に置かれない、直接課が置かれているものがございまして、そんなものをどういうふうに扱うか、ほかの部局の中の課と違えるかどうか、そういうかなり技術的な問題もございます。  いろいろ並べ立てましたが、主としてそういうような問題につきまして、いろいろと現在こういう意見、ああいう意見もあるということで検討を続けているところでございます。
  183. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いま私聞いておりまして、臨調答申が出ましてもう六年近くなるわけですね。そうしてこの臨調答申自体が、行政改革三カ年計画にもあまり反映されてない。皆さん反映されていると言うかもしれませんけれども、実際問題としてはあまり反映されてないと現実にいわれております。ところが、いまの局部の新設、廃止のところだけ、いま局長は臨調答申というところを引きまして、ほんとうにおかしいですよ。都合のいいところだけ臨調答申をぽんと引っぱってくるので、それ以外のところは全然臨調答申のことは一言も言わない。こういう姿勢というものは私はおかしいと思う。いま局長がおっしゃったその改革の問題点の中でも、先ほどから問題になっておりますように、この局部の新設、廃止のこれを政令にするという、これは一番問題なわけです。私たちにとりましても、国会の審議権をどうするかという問題になっているわけです、現実に。わが内閣委員会からこれを取り上げたら、われわれ何になりますか、実際。あと内閣委員会各省何もないのです、ほんとうに。いま総定員法ができて、あの総定員法の問題だけでもずいぶん楽になったと現実に言うておるわけです。それがこのいわゆる府とか局とか、こういうものが政令でやれるようになったら、今度はほんとうにそれぞれの省庁に対する審議というものは、わが内閣委員会でもほんとうにできなくなってしまう。だからそういう点から考えても、これは非常に重要な問題だと思うのですね。それで都合のいいところだけ臨調答申の意見をぽんと取り上げる、そういう姿勢は私はよくないと思うのです。いずれにしても、そういう点を考えてみても、これはこの国家行政組織法の改正につきましては、私たちも重大な関心を持っております。したがって、そういうふうな原案とかそういうものができましたら、早急に各委員にも配っていただいて、そうして慎重に審議をするようにしていただきたいと思うのですが、大臣どうですか。
  184. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 政府部内で検討を加えている間はごく試案の形でしか提出できないと思いますが、それにしましても、八月一ぱいでできるかどうかちょっとわからない見当ではございますが、一応の素案ができたらば、非公式にでもごらんに入れることにやぶさかではございません。
  185. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ぜひそうしていただきたいと思います。実際問題、この総定員法の運用の問題についても、先ほどちょっとだけおっしゃいましたけれども、ほんとうに実際問題、総定員法が通って一年半近くなるわけですね。ほんとうにどの程度運用されているか、一つも運用されてないのじゃないか。皆さんは、運用されてないと言うと、もう国家公務員、それこそ相当の膨大な組織の中から少しでも運用されたのを引っぱり出して、答弁するときはぱっと言うかもしれませんけれども、現実の問題としては一つも運用されてない。三年五%定員削減の問題も先ほど出てまいりましたけれども、とにかくこれだけいわゆる経済成長といいますか、また公害といいますか、臨調答申の中には、公害の問題なんか全然出ておりませんけれども、そういうふうなあの当時全然問題でなかった問題が、現在私たち国民の生活の上に重要な問題としていま取り上げられております。そういうふうなときに、そういうようなことを担当するいわゆる、たとえばいろいろな行政官庁もずいぶんあります。また国立衛生院とか試験所とか、ずいぶんあります。そういうふうなところにまで三年五%の定員削減が入り込んで、そうしてどうしてもこれからそういう面で人間をふやしていかなければいけないというところでも、この定員削減のために人数を減らさなければいけない。  私も先日国立衛生試験所へ行ってまいりました。それで現実にカドミウムの問題とか、またBHCの農薬の問題とか、いま必死になってやっております。ところが何ぶんにもそういうところまで三年五%の定員削減が入り込んでいる。これでは私は、三年五%をやめてしまったらいいのじゃないか、そうして総定員法というものがあるのですから、もっと運用をちゃんとしてやったらいいのじゃないか、こう思うのですが、大臣、これはどうでしょう。
  186. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 総定員法が運営されてないとおっしゃいますが、これは大体予算編成のときに運用がなされておるわけでございます。三年間五%の割り当ての定員の供出をいただいたものから、緊要なところには増員もし、比較的閑疎なところからは減員したやつをプールして、多忙なところに振り当てるという操作をいたしております。年度途中にこそまだ御指摘のようなことをいたしておりませんが、予算編成の時期に十分いたしておるとお答え申し上げさしていただきます。
  187. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣の御答弁ごもっともだと思うのです、私はね。そうしか言いようがないと思うのでありますけれども、要するに大臣、現実の問題としてはこれは運用されていない、現に実際問題。一部どこか、それは運用されている面があるかもしれない、私たちの目につかないところで。けれども、実際問題どうしても必要なところというのはずいぶんあるのです。そういうふうな意味では、どうしてもこれだけ私たちの生活にいろいろな関係のある重要な部門というものはずいぶん出てきております。ですから、そういう点についてはどうか大臣も、それは年度途中ではできないのかもしれません。私はそこのところ詳しくはわかりませんから、わかりませんが、いずれにしても、予算編成のときにやられるなら、いまから実態調査して、そしてどうか、ことしの予算編成のときにはまた準備していらっしゃると思うのです。そのときにどうかこの問題を反映して、そうして総定員法がきまったのでありますから、私たちの手元では審議されない、逆に言えばね。政令でどんどんどんどんできるわけですから、ぜひともそういうような面も目を配っていただいて、単に機械的に三年五%の削減といってどんどん減らすのじゃなくて、そういうふうな必要なところにはどうしても人数を回す。そうして今度私たち国民が期待している部門には、どうしても必要な部門というところがあると思うのです。そういうところにはぜひともそういうふうな定員を回すように大臣も力を入れていただきたい、こういうぐあいに思うのです。大臣の答弁をいただいて私の質問を終わります。
  188. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 御指摘の点は、当然私の心がまえとして持っておるべきものだと心得ます。予算のときに配分上十分考慮しておると申し上げましたが、蛇足ながら政府委員から、そのごりやくのほどをちょっと御披露申し上げます。
  189. 河合三良

    説明員(河合三良君) お答え申し上げます。  ごりやくでございますが、昭和四十五年度の予算の査定の際に、ただいまお話しになっております三年五%削減の数といたしまして、各省庁から五千四百三十七名の欠員を集めて行管のほうでいただいております。この五千四百三十七名を行政需要の消長に応じて分配をし直すわけでございますが、たとえば農林省からは九百二十三名の欠員をとりまして、新規増は一人も見ませんで、それにさらに八名の減員をしておる。その結果農林省は九百三十三名の削減に対して差し引き九百四十一名の定員減になっておる。これは農林省のお立場からいろいろ御議論あると思いますが、行政需要の消長という点から申しまして、どうしてもこういうところからは定員を出していただいた。あるいは建設省からは四百八十三名の定員をいただいておりますが、それに対して新しく増としては二名を見ておる。差し引き四百八十一名の減になる。こういう例に対しまして、一方においてたとえば厚生省では、厚生省から二百八十三名の欠員をいただきまして、これに対しまして千二十名の増員を認めておる。差し引き七百三十七名厚生省は純増でふえております。あるいは文部省は千三十四名の計画削減定員をこちらにいただきまして、これに対して二千三百二十五名の増を見ておる。差し引き千二百九十一名純増になっておる。あとはそれぞれの省庁内で、ただいま峯山先生御指摘のような緊急なところにこれを回す。また、もちろんそれをどこに回すかという点につきましては、私どもいろいろ予算の要求の際に御相談がありまして、それによって査定していく、こういうことでありまして、ただいま申しましたように、行政需要の減った省庁の欠員を集めて、これを行政需要のふえたところに回すというのが、私ども総定員法のごりやくだというふうに思っておりまして、まさにごりやくがあらわれているというふうに思っております。  ただ、来年度につきましても同じような考え方で、ただいま峯山先生御指摘のように、非常に国民に対してサービスとして必要であるというところには、各省庁内でこれは絶対必要だという判定をしていただいて、それを私どもに対して要求をしていただいて、私どもはそういう点をしんしゃくしながら、集まりました、原資である欠員をもとにいたしまして、こういう方針で配り直すということでございます。
  190. 多田省吾

    多田省吾君 関連。ただいま峯山委員から、実際総定員法の運用がうまくいっていないということで、事実いろいろな実例をあげて質問をいたしたわけでございますけれども、その答弁というものが一応ありましたけれども、まだ私たちには納得できない。たとえば総理府の統計局というのがあります。今年は国勢調査の年です。来年の統一地方選挙に備えて、地方自治法とかあるいは選挙法によって、国勢調査が行なわれたあとですぐ定員是正をしなければならないという法律があるにもかかわらず、自治省の選挙部あたりでは、統計局の作業がどうしても思わしくないので来年はできないと、二十年前の昭和二十五年においては、前年の十月において行なわれた国勢調査の結果によって、翌年の統一地方選挙というもののいわゆる定員是正というものがはっきり行なわれている。その当時の人口は九千万、いまは一億、そんなに違いがないにもかかわらず、しかもコンピューターなどが相当導入されて、優秀であると自慢しておるにもかかわらず、非常に作業がいわゆる予想は思わしくない。もう五月一ぱいにならなければ人口の統計が出ないというのでは、非常に二十年前よりもおそいような状況です。それに対して局長にいろいろ問いただしたところが、どうも総定員法があるために人員増が認められない。いつもの国勢調査ならば八百人、千人、千五百人の臨時の職員をとることができるのだけれども、今回はわずかに予算編成のときに百名臨時にとってもいいという許可があっただけで、それによってどうしても来年の作業はおくれてしまうというような、そういう話もあったわけです。こういった部門にもそのひずみがあらわれている、適正に運用されていないと私は言いたいのです。  また、選挙のことでついででございますから……。選挙局が選挙部に一省一局削減で格下げされた。第六次選挙制度、審議会のいわゆる答申においても、選挙庁にすべきだとか、あるいは全国管理委員会にすべきだとか、そういういろいろな意見があったわけです。最近そういう選挙に対する政府の軽視というものがいろいろな面にひずみになってあらわれております。したがって、政治資金の規正だって、法律があるにもかかわらず、全然行なわれていない。人員が少ないからどうしようもないということも言われております。  こういったように、私は総定員法の運用も思わしくないし、また、それに対する行管庁の姿勢というものが非常に前向きではないのじゃないか。大事な部門においてはむしろそれをふやしていくという御答弁でありますけれども、それが全然行なわれてないじゃないかと、こういうふうに思うわけです。そういった具体的な問題に対して、行管庁は一体どういうふうに思われますか。
  191. 河合三良

    説明員(河合三良君) お答え申し上げます。  具体的な国勢調査の例をお示しいただきまして、定員配置についての御質問でございましたが、国勢調査につきましては、これは過去十年間に集計に要する日数は半分に減っております。コンピューターの導入その他合理化によりまして、過去三回くらい前の国勢調査と比べますと、そのころは約四年かかっておりましたが、大体現在は二年くらい以内に出るようになっていると、私は理解いたしております。もちろん、それにいたしましても、選挙区の割り当てに間に合わないということがあるいは問題になるかと思いますが、これはやはり人数の問題に限らず、機械でございますとか、建物でございますとか、あるいは都道府県におきます統計職員の能力の問題でございますとか、あるいは国民の申告の度合いでございますとか、種々そのほかの事情の制約もございまして、なかなかこれの短縮はむずかしいというふうに思っております。ほかの先進国におきましても、全国民につきましての人口について調査いたします国勢調査に当たりますものは、おそらく少なくともこれくらいの日数が集計にはかかる。日本は国際的に見まして決しておそくはないというふうに理解いたしております。  また、臨時の職員ということでございますが、これは実は定員ではございませんで、予算の問題でございまして、予算がどの程度まで臨時職員の事務量によって見るかという問題で、定員とは関係ない問題というふうな理解をいたしております。  一省庁一局削減で選挙局が部になったという点につきましては、これはまさに組織としては縮小でございますが、一省庁一局削減の本来の趣旨から申しまして、局が部になりましても、その事務の能率なりその内容につきましては、いささかも後退するようなことがないように措置していただいているというふうに信じております。
  192. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 本件に、関する本日の調査はこの程度にいたします。     —————————————
  193. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、国の防衛問題に関する件を議題にいたします。  御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  194. 矢山有作

    ○矢山有作君 防衛の問題で二、三お伺いしたいと思います。  まず最初にお伺いしたいのですが、自衛隊の任務というのは、自衛隊法の第三条の一項で「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」、こうなっておりますが、ここでいままでも論議されたと思いますが、直接侵略、間接侵略ということばの概念といいますか、それを一応明らかにしておきたいと思いますので、御説明をいただきたい。
  195. 宍戸基男

    説明員(宍戸基男君) 自衛隊法で言っております直接侵略といいますのは、組織的、計画的な武力進攻で、外部からの武力進攻をいうものと解しております。それから間接侵略といっておりますのは、外国からの教唆または扇動がありまして、国内に大規模な内乱または騒擾的な事態が起こった場合をいうものというふうに解しております。
  196. 矢山有作

    ○矢山有作君 それで直接侵略の場合にとられる自衛隊の行動がいわゆる防御出動、それから間接侵略の場合にとられる自衛隊の行動が治安出動と、こういうことになるわけですね。で、その場合に治安出動をやるのは間接侵略の場合だけでなしに、その他緊急な事態が起こって、治安維持がむずかしくなったというような場合にも治安出動ということは認められる、こういうことになっておりますね。
  197. 宍戸基男

    説明員(宍戸基男君) 大体そういうことでございますが、防衛出動の場合は外部からの武力攻撃、つまりいま申し上げました直接侵略の場合でございますけれども、間接侵略で非常にいわば上限といいますか、不正規軍が非常な武力を行使するというふうな場合もあり得るわけで、間接侵略の場合でも防衛出動はあり得るということになろうかと思います。  それから治安出動の場合は、間接侵略の場合また治安出動があり得るわけですが、間接侵略でなくても、つまり外国からの教唆、扇動による内乱、騒擾的な事態でなくて、国内だけの内乱、騒擾事態で、警察力が不足する場合も治安出動はあり得るというふうな考え方に立っております。
  198. 矢山有作

    ○矢山有作君 そこで、これは防衛庁の長官にお伺いしますが——その前にはっきりさせておきましょう。だから、治安出動という場合は、一般的にまあわかりやすく言ってしまえば、外国からの教唆、干渉で大規模な内乱、騒擾が起こった場合の治安出動と、それからそういう状態にまでいかない、治安維持上非常に重大だと認められて、警察力では防げないというような状態の場合のまた治安出動というものがある、こういうことにまあ簡単に言えばなりますね。
  199. 宍戸基男

    説明員(宍戸基男君) こういうことかと思います。治安出動といいますのは、一番根本は大規模な内乱、騒擾であって、警察力をもって対処し得ないような事態で初めて自衛隊の治安出動というものがあり得ると、その内乱、騒擾事態を分けてみますと、一つは外国からの手が伸びている場合と、一つはそうでない場合、規模としましてはいずれも警察力をもっては対処し得ない大規模な内乱、騒擾事態である、こういうことでございます。
  200. 矢山有作

    ○矢山有作君 それで明確になりました。  それでは、これは次に防衛庁長官にお伺いするのですが、長官がこの前自民党の安全保障調査会でこういうことを言っておられるのを、あらためてこのとおりであるかどうか確認しておきたいのですが、「軍事力が全面戦争を回避しつつもっぱら政治の手段として用いられる現代において、わが国に対し万一外部から侵略があるとすれば、なんらかの原因で国内の治安が乱れた場合に叛乱分子に地方政権を樹立させた上でこれを外部から支援するという形をとり、艦隊が舳艫相銜んで海洋を越えて来襲し、わが本土に部隊を大挙上陸させるというような形の侵略は目下のところ考えられない。あるいは事態によつてはことさらにたとえば伊豆大島近海にICBMを練習に弾着させ、日本を脅迫するというような形をとるかもしれない。いずれにせよ、侵略者はアメリカを戦争に引き込まないよう細心の注意を払い、その限度でゲリラ的戦争を断続させ、国内破綻を狙うと思う。したがって自衛隊はこのような事態に備えて訓練し、装備することが必要である。」、こう言っておるのですが、このことは、要はこういうことになると解釈していいですか。七〇年度はわが国に対する直接侵略という形のものは考えられぬ。侵略があるとすれば、それは間接侵略である。こういうふうに簡単に言ってしまえばなると思うのですが、この御発言はそういうふうに解釈してよろしいですか。
  201. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まずその発言は、自民党の内部におきまして安全保障調査会、すなわち国会議員たる党員に私の個人的考えを申し述べたものでございまして、そのとおり全部正確では必ずしもございません。そのサマリーでございます。が、しかし、大体ニュアンスはそれに似たようなことを言っております。  それから私の感じでは、一九七〇年代全般を通じてそういう情勢判断を持っておるのではなくして、むしろまあ一九七〇年代の前半においてはそういう可能性が多いだろうと、後半におきましてはまだ条件が出尽くしておりませんので、若干情勢も変わる可能性もあると思っております。
  202. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあ後半のことを論議しだすと、あなたのほうにもはっきり言えないということですから、私も申し上げません。要するに、まあ当面するところ、日本の場合は直接侵略は考えられぬと、まあ間接侵略だと、こういうことを言っておられるのですが、この考え方というのは、私は、新しくここで長官が言われたから出てきた考え方ではないと思うのです。たとえば、四十一年の六月に、わが国の安全保障に関する中間報告というのが自由民主党の安全保障に関する調査会から出ていますね。この内容を読んでみると、やはり同じように、直接侵略というものはまず考えられない、あるとすれば間接侵略だ、こういう意味のことが指摘してあるわけです。それからもう一つは、その前に出た、三十八年の七月の安全保障に関する調査会の中間報告、これでも大体全体を読んでみると、同じような思想が流れているんじゃないかと思うのです。そうして大体自衛隊というのは、御存じのように、警察予備隊として発足した当初から、間接侵略に対処していくんだということが大きな基本的な性格になっておったと、私はそういうふうに解釈しておるんですが、それ間違いじゃありませんか、間違っていますか。
  203. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 警察予備隊発足当時はたぶんそういうことではなかったかと私は思いますが、自衛隊法に切りかわったとき、これは直接並びに間接の侵略に対処すると、そういうふうに明確に書きましたので、直接侵略というものも非常に大きなウエートを占めてきているものであると思います。
  204. 矢山有作

    ○矢山有作君 もちろん直接侵略というものも、自衛隊になってから大きなウエートを占めたと思うのです。占めたでしょうが、少なくとも政権を担当しておる自由民主党の安全保障に関する中間報告から見ると、三十八年当時から、大体直接侵略よりも自衛隊の対処するのは間接侵略重点になっておったと、私はあなたの政党から出された安全保障に関する中間報告に基づいて言っておるんですが、私は先ほど言いましたように、政権担当をしてきた与党の考え方ですから、大体そういう気持ちで自衛隊というものを見ておったんではないかと、つまり自衛隊というものを考えておったんじゃないか、そう思うんですが、どうでしょう、間違いですか。
  205. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 必ずしもそうではございません。やはり直接侵略という危険性も、現時点においては必ずしもないにせよ、歴史的経過の中におきましては可能性を否定するわけにはいかない。ですから、防衛という問題は十年、二十年、三十年の長い単位でとらえないといけない。その場合になって、あわてて造成できるものではない。骨幹防衛力というようなものは常時蓄積していかなければ、そのときに間に合わない。そういう考えもあって、逐次防衛計画を何回かやって蓄積してきたんだろうと思います。そういう意味においては、やはり直接侵略というものは非常に重要視されて対処されていると思います。  それから間接侵略に対しましては、そういう調査会の報告の内容にはございますけれども、実際、じゃあそういういろんな対処方法をそのとおりやっているかというと、それほど実際は演練も装備もやっていなかったんではないか、まあ自民党と政府は別でございますから、自民党にはいろいろな資料報告やら観測やら調査報告がございますが、そのとおり政府は必ずしもやっているわけではございません。
  206. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあ私は政権担当の自由民主党の考え方だから、なるほど政党と政府は違うけれども、そういう考え方が大きく自衛隊というものに自民党が対処していく場合に、あるいは政府が対処していく場合に、貫いておったんじゃないかと思っておるんですが、その議論はそのくらいにしておきましょう。  ところで、次にお聞きしたいのは、間接侵略というのは、一体具体的に言うと、どういう状態のとき間接侵略があると考えおいでになるんですか。抽象的に言えば、外国から教唆、干渉があって治安が乱れたときと、こう言うんですが、具体的に一体外国からの教唆、干渉というものがどういう形で起こるというふうにお考えになっておるんですか。
  207. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まあいろいろケースは考えられると思いますが、一つの思いついた例を考えますれば、政治が非常にまずくて、民心が離反して、そしてあるいはさらに政治が非常に権力的な暴走に走って、そのために民衆がこれに反逆して、そのために暴動状態が起こるとか、そういうような状態がますます悪化していって、弾圧とか権力的抑制とか、そういうことばかりやったという場合に、政府と完全に対立するようになる。そういう場合に外国のほうの勢力がそこに目をつけて、教唆、扇動するとか、応援するとかというようなことで、明治維新の例等を見ますと、あのときやはり薩長のほうをイギリスが応援しようとしたし、幕府に対してフランスが応援しようとした。幸いにあのときは日本のナショナリズムが健全でしたから、大体において両方断わりました。日本のことは日本人がやる、そういうことで断わったので、ほかの国に見られるような不幸なことが回避された。やっぱり江戸城の明け渡しの勝海舟と西郷南洲の会見なんかは、そういう一つのクライマックスでもあったのではないかと思います。そういうようなことが将来日本に起こらないとも限らない。最近の例から見ますと、思い当たることはそういうことがございます。
  208. 矢山有作

    ○矢山有作君 明治維新の例をお引きになったのですが、私は明治維新の例を引いて御説明を受けても、現在そういうふうに政治が乱れ、政治権力的になって、政府権力に反逆する騒乱が起こったら、一体そのときに外国からどういう形でちょっかいをかけてくるんだろうと思うと、ちょっとわからないんですね。外国からだれかがどんどんたくさん上がってきて、やれやれと言って扇動でもすることを考えているのですか、どういう形なんでしょう。私は、日本のような四面海に取りかこまれたところですからね、どんどん外国の勢力が上陸してきて、そういうような教唆、扇動をやり、干渉をするというのはあんまり考えられぬと思うんですね。何ぼ考えても、いまのような御説明を受けても、やっぱり頭の中でそういうふうなことはいろいろと組み立てられるとしても、現実の問題として、どういう形で起こるんだろうと思うと、ちょっとわからないんですよ。どうなんでしょう、どうしてもわからない、ここのところ。
  209. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あの明治維新のときは——私よく歴史をつまびらかにいたしませんが、フランス公使のロッシュが小栗上野介に金を何万フラン出すとかなんとかいった話もあります。それからアーネスト・サトウの回顧録を読んでみますと、薩長方に対してイギリスが非常に大きな関心をもって援助を申し出たというような日記も当時ありました。そういうことが、将来日本が二つに割れたり、内乱状態になる場合がないとは限らない。たとえばこの間ハイジャックで逃げた赤軍の一派の考えを見ると、外国基地をつくるというようなことをあの連中言っておったようです。それであの赤軍の目的の中に、やはり革命というのは国内だけじゃできない、外国の応援を得て、外国基地というものとの連携でなければできないと、そういうような感じで——ゲバラなんかの影響を受けたんでしょうか、ハイジャックをやったというような記録もありました。そういうことを考えている一部の人間も日本の中におるわけでございますから、皆無とは言えませんし、政治が悪くなって民衆と離反してくれば、どういう状態が出てくるか、予断は許されないと思うのであります。
  210. 矢山有作

    ○矢山有作君 ことばの上で説明されると、ああそうか、そういうことも考えられるんかという気がするのですけれども、実際問題として、外国に革命根拠地をつくるといって赤軍派がハイジャックした。その連中が一体日本のいまの現状の中で、たとえ政府権力に反対する騒ぎが起こったにしても、一体どういう形で考えられるんだろうかと思うと、ちょっと私は、いずれにしてもなかなか間接侵略というものの具体的な形というものが思い浮かばぬですよね。頭の中ではいろいろのことを言えると思うのです。だが、現実にそんなことが起こってくるだろうかと思うと、ちょっと考えられないのです。それで一つの参考なんですがね。こういうことをいまの話を聞くと、大体やっぱり間接侵略じゃというふうに考えていらっしゃるじゃないかなという気もするんですよ。いま説明されたのを、また変わったことばで、なかなかむずかしく表現してありますが、こういう場合はどうなんでしょう。その自民党の安保調査会の中間報告ですね、四十一年の。これに「脅威の実態」というふうに書いてあるんですよ。これを念のために読んでみます。重要なところだろうと思うんですね。「わが国は日米安保条約の存在により、他国から直接の軍事的挑戦を受けるような恐れは少ないが、いわゆる間接侵略による危険は現状においてもすでに存在している。(一)第一にあげねばならないのは、わが国の政治的秩序と伝統的国家観を破壊しようとする「革命工作」である。この脅威は主として国外の政治勢力によって指導された「反帝・反米運動」である。かれらの世界革命戦略の上では、日本の「解放」が中心課題とされており、すでに強力な統一戦線工作を推進する行動に移っている。厳重な警戒を要するものに、北鮮政権からの破壊的、革命的な工作がある。とくにわが国に多数存在している北鮮系学校は、わが国において反日教育、革命教育を実施し、このままでは将来わが国に重大な脅威となろう。(二)国際共産主義勢力の働らきかけは、わが国の左翼政党を通じて行なわれるだけでなく、その他各界各層を通じて国民相互間の離間分裂をねらった政治的な謀略の形をとっている。原水爆反対運動の如きも人道的立場をとる人たちの善意を踏みにじって、共産主義勢力が主導権をとろうとしている。また、安保破棄、基地反対、原潜寄港反対、ベトナム戦争反対等のなかにも、国際共産主義勢力が巧妙に潜入してこれを煽動し、反米運動、日米離間に利用せんとしている。」、こういうことをあげて、これを間接侵略だと、こういつておるんですね。こういうものの考え方をすれば、何か国内において政府反対の激しい運動が起こると、すぐこれは外国からの干渉、教唆だということで結びつけられて、全部これは間接侵略に仕立て上げられるんですよね、こういうものの考え方だったら。この辺どうですか。
  211. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはやはり相当、因果関係がどの程度にあるかということを客観的に判定しなければいけないことで、何でも騒擾事件が起きたら外国の教唆、扇動に基づいておると即断することは、政治としては慎まなければならぬだろうと思います。ただ、自民党の、いまお読みになりましたのは中間報告で、別に党できめた考え方でもないようです。自民党の中にもいろんな考えの人がおりまして、そういう考えを是認する人ばかりがいるわけでもないので、そこで「中間」という形でペンディングになっているのだろうと私は思います。
  212. 矢山有作

    ○矢山有作君 この問題では増田長官もあなたと同じようなことを言っておられますわ。しかし、自民党の中にこういう考え方を持った人がおるわけですよね、現実に。そうすれば、その人が治安出動を要請する地位に立った場合に、一体これはどうなるんです。治安出動をするかせぬかということの判断は、七十八条の「命令による治安出動」の場合は、これは内閣総理大臣がやるわけでしょう。それから八十一条の「要請による治安出動」の場合には、知事が要請をして、そして総理大臣が判断をするわけでしょう。そうすると、間接侵略と見て治安出動をやるかやらぬかの判断は、内閣総理大臣がやるわけです。ところが、自民党のなかには、自民党の安全保障調査会の中間報告としてこういうものがまとまるということは、こういう考え方を持った人がたくさんおるということなんですよね。そうすると、いま自民党が政権握ってるんですからね。佐藤さんがやめたら、その次にこの考え方に全く賛成の人が総理大臣になっちゃったらどうなんですか、これは。これはたいていのことなら全部外国と結びつけちゃって、いろんなへ理屈つけて、みんな間接侵略に仕立て上げる、こういうことは可能でしょう。自民党の中にこういう考え方の人がおるということをあなたは認めたのだから。そうなりませんか。
  213. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう極端な人を自民党員が総理大臣や総裁に選ぶはずがないと私は思っております。それに、かりにそういう事態が起きたといたしましても、国家公安委員会というものも一つございますし、それから閣議で大体治安出動なんというものはきめるべきものでありまして、そういう暴走は許せない体制になっていると思います。
  214. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあそれは一応の言いわけとしてはそうできますよ。しかしながら、自由民主党のわが国の安全保障に関する中間報告として一応まとまって発表されるということは、自由民主党の中の圧倒的な人々がこういう考え方を持っておるということなんですよ。そうすると、そういう多くの自由民主党員の上にささえられた人は、これはそんな極端な人は総理大臣にならぬだろうと言ったって、総理大臣になる可能性のほうが強いんじゃないですか、そういう連中のほうが。国家公安委員会云々と言われるけれども、いまの行政官庁の中から見たら、内閣総理大臣がきめたらもうきまるんですよ、治安出動は。それは単なる——そうですと言ったのじゃぐあいが悪いから、言いわけにしかすぎないんじゃないですか。いずれにしても、私はこういう考え方が自民党の中の多数を占めておる。まあ多数と言っておきましょう。ということになると、もうちょっとした騒乱といいますか、そんなものは全部間接侵略に仕立て上げられて治安出動の対象になる、この危険性はきわめて多いわけですね。  ところが、もう一つ重要なのは、必ずしも間接侵略と認定をしなくても、警察力で押えられないというような、間接侵略の前の段階の、まあ間接侵略の場合よりも小規模の混乱が起きた場合、反政府闘争が起きた場合、その場合にも治安出動が可能なわけですよね。可能なわけです。それが一つ。それから、たとえば間接侵略の場合の治安出動のときの自衛隊の対象になるものは、これはだれかと言ったら、これは日本国民なんですよね。外国からの教唆、干渉だというけれども、間接侵略で自衛隊が治安出動した場合のその対象になるのは日本国民なんだ。まして、いわんや、間接侵略にいかない段階、これは全く日本国民。だから、いずれにしても治安出動の場合の弾圧対象になり、自衛隊によって踏みにじられる対象になるのは、これは日本国民だということには変わりはないわけですよね。ただ、自衛隊の出動をやりやすくするためにでっち上げて、間接侵略と言ったほうが都合がいいから、私はおそらく間接侵略というものを何とかしてでっち上げようとして、この中間報告に書いておるような見方をやってくるのだろうと、こう思うんですが、まあいずれにしても、これは日本国民が対象ですわ。そのことは異存がないでしょう。治安出動の場合には、自衛隊の対象は日本国民であるということは間違いありませんね。
  215. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自民党、そういう貧弱な政党だと思われちゃ困りますね、これは。やはり国民がこれだけ信頼して、この間の選挙でも三百人の支持を与えたというのは、やはり穏当な考えを持って、この政党にたよる以外にないと国民は思って、あれだけの票を与えていただいたのだと私は思うので、つまり民主主議、中道政治を行なう、そういう期待で、極右極左を排撃しているということは、やはり自民党が三百名をいただいた一番大きな理由であるだろうと思うのです。  それから、そういうような文章が自民党の一部になぜ書かれるかということを考えてみますと、やはり外国の勢力の中で、民族解放闘争をイデオロギーとして、そうしてそれをやはり世界に宣布するというような考え方が日本にびんびん入ってきますから、そうしてまた日本に入ってきて、日本人の中でも、そういうことのために力をいたすという勢力も必ずしもなきにしもあらずでありますから、そういうものが刺激して、そういう文章が一部に出てきた。党の一部にも心配するという人たちが出てくるのであって、そういうものがなければ、また別の現象になるかもしれません。私はそういう意味において、そういう文章ばかりを責めるわけにはいかないと思うんです。国民が全般的に判断して見ました場合に、どういう判決をお下しになるか、私は国民は、この間の選挙等見てみても、やはりあの学生の暴動、去年のあの騒擾、そういうものに非常に反発して、そうして自民党を非常に圧倒的に支持したんではないかとも考えます。ですから、矢山委員がおっしゃるように、自民党がそういう極右国家主義者の集団であると御即断になるのは早いのではないか、もっと豊かな中道の政党であるというふうに御認識願いたいと思います。  法的解釈からいいますと、確かに間接侵略、治安出動の場合に、対象はやはり日本人になっていく、これは非常に不幸なことであります。しかし、法的解釈からいえば、そういうことになるんではないかと思います。
  216. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあ自民党が選挙に勝ったこととこの問題とは直接私は結びつかぬと思うんです。  それから何か民族解放闘争云々というお話がありましたが、民族解放闘争というのは、何も外からの干渉がなくったって、政治が非常に権力主義的で、あなたもおっしゃったように、国民弾圧をこれを事としているような非常に乱れた場合には、やはりそれから脱しようという形で私は闘争が起こってくると思いますよ。だからそれを、そういう闘争が起こったから、すぐ外国の勢力に影響されて起こったんだという見方はできないと思うんですね。そのことをあなたも、間接侵略に至る前の段階として、自分でおっしゃったでしょう。政治が乱れた場合、弾圧が激しくなった場合、それに対する激しい国民の闘争が起こると、こういうことをあなたもおっしゃったわけですから、ですからそういう場合にも自衛隊の出動ということは考えられるわけですよ、間接侵略でなくても。ただ私は、こういう中間報告に出ておるようなものの考え方だったら、間接侵略に仕立て上げることがきわめてたやすいということを言っているわけであって、間接侵略に仕立て上げなくても、大規模な紛争が起きた場合に、自衛隊は出動するわけですから、そのときの対象は、あなたも肯定されたような、不幸なことではあるけれども、日本国民なんだ。そうすると私は、この間、五月の十六日の新発田の自衛隊の創立十七周年記念で、参議院議員の今さんが、「自衛隊は人を殺すためにある。」、だから「安心して人を殺せ、」と言った。これは私は、今さんというのは実に正直だから、自衛隊というものの本質、性格というものを的確に見抜いて発言されたんだと思うんです。あれは私は正直な発言だと思うんです。  私どもは自衛隊が、今さんが指摘するように、その基本的な性格において日本国民に銃口を向けておるものであるから、われわれは自衛隊を否定しておる。現実の自衛隊は、今さんが言ったように、日本国民に銃口を向けたものであるということになりますね。これは今さんの発言は、現在の自衛隊の基本的性格というものを的確に指摘した発言じゃないでしょうか、どうでしょう。
  217. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはまるきり違います。ほんとうに違います。自衛隊は国民のための自衛隊なのであって、国民に銃口を向けた自衛隊などというものは絶対にございません。これは自衛隊法、防衛庁設置法その他を見てもわかりますように、わが国の平和と独立を守り、国民を守るための自衛隊なのであって、国民に銃口を向ける自衛隊などというものは絶対にないのであります。  それから、今さんがおっしゃいましたことは、どういう意味でおっしゃったか知りませんが、あの人は位も高い仏者でございますから、慈悲の気持ちを持っているので、しゃにむに人の命を落とさせろなんていうことを言う人でないと私は思うんです。少なくともあれは天台宗の僧正か何かになっておられる方で、仏教の——大僧正ですか、ともかく仏教をきわめた方であります。しかし、立正安国ということもありますから、外敵の侵入に対しては立てということは、やはり仏者でもあり得ると思うんです。そういう点から今さんは、外国が侵略してきた場合にはやむを得ず、相手が戦ってくる場合には殺さざるを得ぬだろう。そういう意味のことをおっしゃったんではないか。これは私の推察でございますからどうも、今さんに直接お尋ねいただいたら真意がおわかりになるのではないかと思います。
  218. 矢山有作

    ○矢山有作君 いや、外面如菩薩内面如夜叉ということもありますから、人の命を一番大切にせにゃならぬ仏者が、一皮めくってみたら人殺しが一番好きだったということになるわけでしょう。まあそれはあなたは私の言ったことをそのまま肯定したらたいへんだから、それは肯定はされぬでしょう。それからまた、法律の規定その他を見れば、自衛隊は日本国民に銃口を向けるものだとは書いてないことは明らかです。そしてまた自衛隊自身も、やれ災害出動だ、やれ何だといって、国民に愛される自衛隊だということを表面的には徹底してPRしておるということも、これは事実です。しかし私の言うのは、自衛隊というのは、間接侵略なり直接侵略に対処するものとしてあるものだと。ところが直接侵略というものは、これはこれから当分考えられない状態である。自衛隊が対処するのは間接侵略である。しかも間接侵略というのは、私はいろいろ考えてみて、なかなか日本の中では起こりにくい。間接侵略と言うとするならば、国内の反政府権力闘争が起こったときに、それをことさらに間接侵略と言えば言うだけであって、実際の問題として間接侵略というものは起こりにくい。ところが間接侵略だといって出動する場合でも、その対象は日本国民である。それからさらに間接侵略にいかない事前の段階で自衛隊の出動が考えられておる、これも対象は日本国民である。間接侵略、その他緊急事態に対する出動ということが自衛隊の中心任務だということは、あなた自身が自民党の安保調査会で言われておる。そうするならば、自衛隊は日本国民に対する弾圧をやるのが中心の仕事だということに論理的になるじゃありませんか。だから私は言っているんです。  それで今さんは、たまたまそのことを賢明にしてちゃんと見抜いておられる。だから正直に、自衛隊は人を殺せ、安心して殺せと言ったわけです。そうでしょう。あなたは、今さんが「人を殺せ」と言ったのを、外国の侵略者を殺せと言ったように弁護しておられますがね。その弁解は、今さん自体が自分の発言が問題になった後の新聞の記者会見でそういう弁明をしております。ところがね、それは弁明なのであって、「人を殺せ」というその今さんの発言というのは、やっぱり私は自衛隊の本質を見抜いての発言だと思うんです。ところがもしその「人」というのが、外部からの侵略者だというふうに言われたとしても、言い抜けのできぬ発言もあるわけです。こういうことも言っているんですね。「社会党は労働者や農民の一代表だから頭の悪いヤツばかりそろっている。」、これはたいへんな悪口ですね。そうかもしれないな一これは悪口ですよね。この悪口は私は問題にしませんよ。こんなことはどうせつまらぬやつの言った悪口だと思っていますから。「そんなヤツらに踊らされて秩序を乱そうとするバカが多いけれど、そんなヤツはみんなぶっ殺してしまえばいいんだ。」、こう言っておる。そうすると、社会党は労働者、農民の代表だ、その社会党が踊らす対象はだれかというたら労働者や農民である。そういう連中が騒ぐ。そんなやつはぶっ殺せ、こう言っておる。「共産党なんて「へ」みたいなもので、わたしの目の黒い間にこんなヤツらはぶっ殺してやりますよ」、こうなっておる。これは何といっても言いわけのできぬ、日本国民をぶっ殺せ、要するに政府権力に反対するやつはぶっ殺せ、こう言っておるわけです。だから、あなたがおっしゃった、いわゆる政治が悪くて、政治が乱れて、その政治のあり方に対して激しい反対の闘争が起こる、その闘争に参加したやつはぶっ殺せ、こう言っておるんです。あんたの言うことと同じことになっていく。これはたいへんなことじゃないですかね。これはやっぱり自衛隊の本質でしょう。くどいようですけれども、どうも私はそれ以外に考えられぬ。
  219. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自衛隊は、今東光氏の指揮を受けるものではございません。
  220. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあそれは詭弁で、自衛隊の本質というものは、間接侵略に対処するもの、治安上の重大な危機に対処するもの、その対象は日本国民である。自衛隊は、出動したら人を殺せと、こうなるんだから、自衛隊の銃口は、これは何と言っても、日本国民に向いているのがその基本的な性格だろう、こういうことになろうかと思います。これはまたたいへんなことなんで、こういう自衛隊はやっぱりわれわれは賛成できない。幾ら表で治安出動だ、救難援助だと言ってやられても、それは自衛隊の基本的な性格を国民の前から隠すための一つのベールにしかすぎない、そういうふうに私は断言して差しつかえないんじゃないかと思います。でありますから、われわれはそういう自衛隊の存在に反対をせざるを得ないんだということを、この際あらためて私は申し上げておきたいんです。  ところで、これはちょっと横道に入りますが、この治安出動の場合にどういうふうに具体的にこれに対処していくかということで、治安行動教範の草案ですね、これをつくっておるんだとか、もうすぐできるんだとか、たびたびこれは国会で論議になってきた。また、あるいは治安出動の場合の指揮官心得というものをつくるのだとか、つくらぬのだということがたびたび論議になってきたんですが、この作業はいまどうなっているんですか。一向にはかどらぬのですか。
  221. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、着任以来、そういうような不穏な状態や安静を欠いている状態に日本はあると思いませんから、しばらくこれはたな上げしておきなさい。ほかの大事な仕事をもっとやりなさい。そう言って、たな上げさしてあります。
  222. 矢山有作

    ○矢山有作君 間接侵略を重視して、そういうことが起こる事態に自衛隊が備えなきゃならぬという防衛庁長官が、その間接侵略に対する治安出動の場合のよるべき根拠というものをつくるのをサボっておるというのは、これはちょっとうなずけませんね。私は、やっぱり自衛隊の主たる任務が間接侵略にありとするならば、これはやはり治安出動の場合のどういう具体的に行動をとるのかということは、これはやはり急いでつくらぬといけないんじゃないですか。その辺ちょっと論理が合わぬのですがね。
  223. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ここしばらくの間は、外敵の侵入、船艦をふくんでやってくるという侵入の可能性はないが、しかし長期的に見た場合に、そういう危険性が絶無とは言えない。現に朝鮮には動乱もあり、ベトナムあるいは中近東において動乱が起きておる。それで、そういう直接侵略に対抗する力、あるいは能力をつくっておくということは一朝一夕にできることではありません。やはりそういう防衛力、骨幹防衛力を蓄積しつつ、練度も蓄積されて向上していくわけでありますから、そういうことはたゆまず努力をしておるわけです。私は、自衛隊の第一の仕事はやはりそこにある、いますぐ起こらぬにしても、そういう練度を上げ、そういう骨幹防衛力を蓄積していくという懸命な努力がやはり必要なので、自衛隊はそれをまず第一に一生懸命やっていると思うんです。それで間接侵略に対する問題は、一つの理論的可能性として、大勢を洞察したときの情勢判断からして、外部からの侵略の可能性と、それから内部のそういうものの可能性と比べてみた場合に、ここ当面の場合には、外部からのほうが薄いという判断でそういうことを言っておるのでありまして、それがいますぐ差し迫って急にきているかというと、そういう問題ではありません。したがって、やはり人心に不必要な刺激を与えたりするということは適当ではありませんから、そういう条件がいますぐにないにもかかわらず人心を刺激するようなことはやらぬほうが賢明だ、そういうふうに思いまして、たな上げさしておるのであります。
  224. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあ、ああ言えばこう言うじゃちょっと困るので、やはりあなたは間接侵略を重視する、それに自衛隊を備えると言っているのでしょう。そうすれば、それは直接侵略というものを全然考えておらぬことはないでしょう。しかしながら間接侵略を重視してそれに備えるというのですから、そうすれば、やっぱりそう言った以上は、そういう事態に対して備える一つの手だてとして出動した場合にはどうするのだ、具体的に。そういう規範というか、そういったものがなければ困るのじゃないですか。出たときに何をやり出すかわからぬというのじゃかないませんよ。それと、そんなことをおっしゃるけれども、現実に治安訓練はやっているのでしょう。七〇年安保に備えると言って、去年でしたか、富士の演習場ではヘリコプターから戦車、装甲車まで動員して大々的な治安訓練をやったでしょう、現実に。やっているわけですよ、治安行動。そうすると、それが現実のものとして起こったときにどうするかというよりどころはやはり公式につくっておかぬとたいへんなことになるのじゃないですか。ちょっとわかりませんね。
  225. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) つくれとお命じになるならば検討いたしますが、私は目下のところいまの状態でいいと思っております。
  226. 矢山有作

    ○矢山有作君 私はつくれと命じませんね。大体治安出動をして日本国民を殺す自衛隊なんですから。しかし、もしそういう自衛隊の性格だとするならば、そういう被害を避けるために、最低限度にそういうことを、被害をとどめるためにも、やっぱりその自衛隊の行動を抑制するという立場から、これはワクをはめにゃいかぬのじゃないですか。これは何も野放しにしておくと、出動した自衛隊のほうが恐怖感にかられて、ああこれは相手を、武器を持っておるのを幸いに殺しさえすれば自分の危険がのがれられると思って、武器をぼんぼんぼんぼん使用して殺したら、これはたい  へんなことになっちまいますよ。そういうおそれはないんですか。
  227. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういうおそれはございません。
  228. 矢山有作

    ○矢山有作君 だから、あなたと話をしていると、肝心なところへくればみんな逃げちゃうんだ。しかし、自分は間接侵略を重視すると言っておりながら、その出動にあたってどうするかということを全然考えないというのは、これは無責任ですね。まあ考えないと言うのだから、これは考えろというわけにもいかぬから、この議論は水かけ論になるでしょうから。ちょっとそれはひどいですね。出動した自衛隊に、だから、やりたいほうだいのことをやらそうというわけですか。そういう思想というのは、これはたいへんですよ。出動の対象になる日本国民というのは遠慮会釈なしに殺されますね、こういうことだったら。それはそれだけにとどめておきましょう。そういう治安出動のときの規範すらないということになると、ますますもって遠慮会釈なしに人を殺せということになりますね。今さんの考え方と同じになっちまうわ。これはたいへん危険なものの考え方ですよ、これは。  次に話を移しますが、四十二年の七月十八日に参議院の内閣委員会で精神教育指導書というものを目下作成中であると、こういうことを防衛庁の当局のほうから言っておいでになりますが、このほうの作業はどうなっておりますか。
  229. 内海倫

    説明員(内海倫君) いま現在そういうふうな指導書というふうなものは作成いたしておりません。ただ、御承知のとおり昭和三十六年に自衛官の心がまえというのができておりますから、これに基づいて、それをどういうふうに教えるか、どういうふうにふえんしていくかというふうなものについては、各幕においてもいろいろ検討し、あるいはそれなりの資料はつくっておると思いますが、いまおっしゃったようなものはつくっておりません。
  230. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、これは四十二年七月十八日の内閣委員会では、精神教育指導書というのを作成中だと、こう言っておるのですが、そうすると、このときの答弁はうそだったということですね。使命教育編の部分について目下作成中だ、こういうことを言っておりましたが、これは会議録がありますよ、ここに。うそを言っていたわけですか。出たとこ勝負の答弁は困りますね。
  231. 内海倫

    説明員(内海倫君) その時点でいろいろ検討はしておったようであります。しておったようでありますけれども、現在はそういう作業はいたしておりません。
  232. 矢山有作

    ○矢山有作君 それで、「自衛官の心がまえ」を細説したものをつくっておるということも言っておるんですよね、この答弁のときに。これもいまつくってないですか。
  233. 内海倫

    説明員(内海倫君) 先ほども申しましたように、「自衛官の心がまえ」に基づいてこれをどういうふうにふえん説明していくかというふうなことは、各幕におきましてそのつどいろいろな資料を整えて説明をいたしておりますが、それは、たとえばまとめたものとしてかなり長い間使用されるというふうなものでなく、いろいろな資料をそのつど得て、そして「自衛官の心がまえ」に基づいた解説あるいは教育を行なっておると、こういうことでございます。
  234. 矢山有作

    ○矢山有作君 しかし、そうするとなんですか、こういう大事な精神教育をやるのについてきちっとしたテキストはないで、出たとこ勝負でそのときどきに都合のいい資料をそろえて教えていると、こういうことになるんですか。
  235. 内海倫

    説明員(内海倫君) 決して出たとこ勝負というふうなものではございません。先ほども申しましたように、「自衛官の心がまえ」というきちっとした一つのわれわれは論拠を持っており、またそれは自衛隊法の本旨に基づいてつくられたものであります。またその資料といたしましては、歴代長官が常にいろいろな方針を指示いたしますし、また各級指揮官がそれに基づいていろいろ実施をいたす、あるいはいろいろな形で発行されるこの「自衛官の心がまえ」に準拠できるようなそういう資料があるわけでございます。そういうものに基づいて、その時代に、そのときにふさわしい形で教えを行なっておると、こういうことでございます。
  236. 矢山有作

    ○矢山有作君 しかし、どうもおかしいですね。こういう精神教育をやるのにきちっとしたテキストがないとおっしゃるんですから。じゃ、ないとあくまでも強弁されるんなら、そういうふうにしておきましょう。  それでは私のほうから一つお尋ねしますが、陸曹教育用の精神教育というテキストはありますね。これは教科書かと思うんですが、下士官教育用の、私はこれが手に入ったものだから、ちょっと読んでみたんですがね。これで教育しておるんだろうと思っていたんですよ。これはいまないんですか。
  237. 内海倫

    説明員(内海倫君) まず結論から先に言いますと、現在有効に施行しておるものはございません。ただいま御指摘になりましたようなものは、警察予備隊、あるいは保安隊、さらに自衛隊の過程におきまして、いろいろな精神教育をどういうふうにするか、どういうふうにしたらいいかということで、その時点でいろいろなものが試案としてつくられたということは私も聞いております。そしてまたそういうものが検討材料になったことも聞いております。しかし、結局そうしたものをいろいろな角度から集大成してエッセンスにまとめたものが「自衛官の心がまえ」として昭和三十六年、でき上がったわけでございます。それ以前にいろいろなそうしたものが試案としてつくられたということは私も聞いております。
  238. 矢山有作

    ○矢山有作君 しかし、これは三十二年の初版ですよ。私はこれが——現在は知りませんよ。現在は知りませんが、これが三十二年の初版で出されて、それ以来陸曹教育に使われておったということを聞いておりますが、あなたは否定なさるけれども、私は、第一この精神教育をやるという場合に、一つの統一的なよりどころがなくてやるということはないと思うんです。それはあなた、「自衛官の心がまえ」というのがよりどころだと言っておられますけれども、これは「自衛官の心がまえ」というのをこの前国会に出されたのを私は読んでみました。しかしながら、これはそうじゃないだろう。というのは、現実にいままで自衛隊の教育がたびたび国会で問題になっているでしょう。問題になっていますね。だから、そういう教育をやっていくには、やはり基本的なよりどころにするまあ教科書というかテキスト、それがあるはずだと思っているわけです。それがたまたま三十二年の初版として出された、たとえば陸曹教育用についてはこういう精神教育のテキストがあると、私はこう理解している。ないとおっしゃるなら、これはそうしておきましょう。幾らないとおっしゃっても、教育という立場から見て一つの統一されたテキストがなければ、私はできるものじゃないと思ったのです。そのときどきに指揮官が思いついたものをもってやっておったら、これはたいへんなことになるのです。「自衛官の心がまえ」に準拠して云々とおっしゃるけれども、もしこれに準拠してやる場合に、こういうことだって起こるのじゃないですか。たとえば「個人の充実」というのが「自衛官の心がまえ」の中にありますね。積極的で片寄りのないりっぱな社会人をつくり上げると、こういうことを言っておる。片寄りのないりっぱな社会人をつくり上げようと思えば、世の中にはいろいろなものの考え方があるのだ、いろいろな思想があるのだということを教えなければならぬわけです。そうすると、たとえば憲法第九条を教える場合でも、第九条のたてまえからいえば、自衛隊というものは存在しないのだという思想だって、これは国民の中にたくさんあるのですから、そういうものの考え方もあるのですと、そうしてそのものの考え方は第九条をこういうふうに解釈することから出ておるのだと、こういうこともきちっと教えなければならぬわけでしょう。それで、もしその教える人の個人個人にまかされておるというなら、この「自衛官の心がまえ」を教える人が個人流に解釈して、適当なテキストを使って教育していいということになりますが、そんなことを自衛隊でやっていいのですか。
  239. 内海倫

    説明員(内海倫君) もう申し上げるまでもないと思いますけれども、自衛隊は組織でございます。したがって、個人と申しましても、個人が次分のかって次第、やりたいほうだいをやると、そういうことでは決してございませんで、やはり陸上自衛隊では陸上自衛隊の組織をもって動いておるわけでございますから、自衛官の精神教育につきましても、「自衛官の心がまえ」に準拠して、それぞれの学校教程、あるいは新入隊員の教程、こういうふうなものにいろいろな形で資料を提供して、そうしてそれに基づいて一貫したものを行なうわけでございますから、決して個人の恣意によって「自衛官の心がまえ」が不当に解釈されたり適当に行なわれるというふうなものではございません。
  240. 矢山有作

    ○矢山有作君 これまでの国会論議をいろいろ調べておったら、やはりこういう教育についてのテキストというのですか、それはあるのでしょう。この前のたしか稲葉委員がこの精神教育の問題を取り上げていろいろ論議をしておる議事録を読んだ記憶があります。その中では、こういった精神教育といいますか、それに使うテキストはあるということを言っておられましたよ、議事録の中で。ただそれを出せという段階になって、いろいろたくさんありますとかなんとかいうことで逃げておられたようですが、しかし、そういうテキストはあるということをはっきりおっしゃっておった記憶がありますが、それでもないとおっしゃいますか。
  241. 内海倫

    説明員(内海倫君) 先ほども申しましたように、自衛隊におきましては、テキストというものは、いわゆる正規に教範ということで長官の承認を得て、幕僚長が成規の手続を経て作成をさせ、そうして施行されておるものでございます。それ以外のものは私どもはいわゆる教範とは言っていないわけでございます。したがって、自衛隊におきますいろいろな教育、いろいろな訓練というものは、その準拠を教範に置いてやっておるわけでございます。そういう教範は各自衛隊の訓練あるいは行動、いろいろな面についてかなり多数にわたり教範ができております。ただその場合に、ただいま御指摘の精神教育をどういうふうに行ない、どういう内容を持ったものにするかというそういう教範、これはできておりません。したがって精神教育のもしテキストあるいは教範というものを言うならば、昭和三十六年六月に設定されました「自衛官の心がまえ」、これがそういうものになるわけであります。
  242. 矢山有作

    ○矢山有作君 それではないないとおっしゃるんだから、それを幾ら議論してもないで突っぱられるでしょうし、また前の国会における答弁と食い違うようなことも平気でおっしゃるわけですから、これを幾ら言ってもしかたがないでしょう。そこで私は、精神教育をやる以上は、それについて準拠となる教範、あなたは教範ということばを使われましたが、それがあるはずだと思います。なしに、それぞれの指揮官の選択にまかせるというようなことがあるはずがない。そんなことをやったらいかに自衛隊の組織の上に立った教育だとは言いながら、これは私は統一した教育はできない、やはり教育というのは特に自衛隊のような組織のものに対する教育であるだけに、私は統一性が要求されるだろうと思うのです。そうすればそれほどにやはり統一的な教範がなければならぬはずである、私はそう解釈しております。だから私はあなたがないとおっしゃるから、それをあると言わせようと思ってもなかなかあなたもおっしゃらぬでしょう。だからもう言いません。私は、陸曹教育用の精神教育という教範がここにある。それは三十二年が初版で、いつまで使われたか知りません。あるいは現在使われておるかもしれませんが、しかしそのものがあるという前提に立って、その中で一体どういうことが言われておるかということを申し上げてみたい。これは陸曹教育用精神教育として、第一編が「陸曹並びに陸曹候補生の心がまえ」となっておりますね。第二編が「陸曹教育並びに陸曹候補生教育」と、こうなっておる。その第一章が「精神教育」、第二章が「営内服務」ということで、全文三六八ページ、この中を見てみると、いろいろのことが書いてあります。たとえば愛国心についてもいろいろと書かれておりますけれども、私はこれを読んでみて、これはもう非常に問題点がたくさんあるということを感じました。しかしながらその論議をやっておったのでは、時間の都合がありますから、その論議はここではいたしません。そこで、私が特に注目した点をひとつ申し上げてみたいと思うのです。それはこういうことを書いておる部分がありますね。「正しい愛国心の必要性」として(一)は「民主主義の確立のために正しい愛国心が必要だ」、(二)として「国家の防衛上正しい愛国心が必要である」、こういうことで、その「国家の防衛上必要である」というところの終わりのほうに、こういうことを言っているわけです。「日本の地理的位置は、民主、共産両陣営にとってきわめて重要な位置を占めているので、共産主義侵略によい対象となっています。したがってソ連の世界侵略、主義の世界革命を企図する共産主義者が存在する間は世界国家などということはとうてい考えられないので、どうしても国家の防衛ということが必要であります。」、こういうふうに書いてある。そうすると、これはまあ結論に近い部分だけを読んだのですが、この愛国心教育というのは、いわゆる共産主義対策のこれは愛国心教育ですね、共産主義対策。それからもう一カ所問題になる部分があります。それは共産主義について教えておる部分です。共産主義についていろんなことを言っておりますが、その結論の部分でこういうことを言っているわけです。  結論として、「ア、共産主義者の目標とするところは結局暴力による共産主義革命であり、平和共存、平和友好等々のスローガンもこれら革命遂行のための一戦術であるにすぎないものであります。」  「イ、彼らは勝つためには手段を選ばず、破壊、策略、虚偽、欺瞞等々の手段も平気で行なわれているのは諸君らが十分知っているとおりであって、あらゆる人間の知恵の及ぶ限り採用する価値のあるすべての戦術が用いられ、その重点はわれわれ自衛隊に向けられているのであります。」  「ウ、われわれ自衛官に与えられた使命は、共産主義的独裁の脅威から祖国の独立と民族の平和を守り、人間の尊さに基づくおのおのの自由と人権を保障しようとする民主主義を生命を賭して守り抜こうとするものであります。これがためにはいままでに習い、身に修めている種々の崇高な精神が必要でありますが、共産主義者は自衛隊を弱体化し、崩壊させ、あるいは自己の勢力に引き入れるため、先ほど説明したような宣伝、扇動、妨害や示威等によって自衛官相互の団結を弱め、あるいは国民と自衛官との離間をはかり、または各人の心をまどわすようなあらゆる手段を繰り返し繰り返し行なうことでしょう。」  「エ、われわれ自衛官は共産主義革命を助長するような外国の武力的干渉に対して敢然と排撃し得るに足る実力を平素養うことはもちろんであるが、共産主義者の以上のような戦術に対して自己の厳格なる精神を命を賭して守り抜くこともまたわれわれに与えられた崇高なる使命を達成するための第一歩であることを肝に銘じ、無形的な間接侵略に対して微動だにしない自信を涵養することにますます努力しなければならないと思います。」  ここで教えておることは、要するに共産主義思想というのは、攻撃はみな自衛隊に向けられているのだと、いわゆる自衛隊の敵は、共産主義思想を持っている者が自衛隊の敵である、こういうことを言っておるわけです。また間接侵略についても、間接侵略というのはこの共産主義思想による宣伝、扇動によって行なわれるのだと、こういうようなことを言っているわけですよね。こういう教育を行なっているとするならば、これこそたいへんな偏向教育じゃないですか。こういう教育を行なっておれば、何か騒動があった場合に、あれは共産主義者の扇動だからといえば、これはすぐ自衛隊の隊員というのは、よし、これは共産主義者の扇動だ、共産主義者がやっているのだ、全部ぶっ殺しちゃえ、こういう敵がい心というものをきわめてこれは強く持たせることになりますね。こういう教育をやっていたらたいへんですよ。事実やっているのじゃないですか、これは。
  243. 内海倫

    説明員(内海倫君) 先ほどから申しましたように、自衛官の精神教育というものは「自衛官の心がまえ」に準拠して行なっているわけでございますし、また自衛隊の任務、その任務を遂行する自衛官の責任、こういうものは、先ほどから長官がたびたび申しておりますように、自衛隊法あるいは防衛庁設置法等に定められているものに厳格に従って行なうわけでございます。これの外に決して出るべきものではないわけでございます。そういう趣旨に基づく教育が行なわれているところであります。ただいま引用されておりますが、これは先ほども申しましたように、現在そういうものは自衛隊においてはテキストとして使っておるものでもございませんし、あるいはそれのようなものが昭和三十年ごろから一、二年の間、いろいろ案としてつくられたことがあり、そういうものがいろいろ検討されたことがあるということは私は聞いておりますけれども、いずれもそういう部内で検討いたしましたものは、案としてすでにその段階で廃案になり、そしてそういうものが全く施行されない、想を改め、いろいろな知恵を借りて「自衛官の心がまえ」というものを策定いたした次第でございますので、もし、いま御指摘になりましたものが現在教範として施行され、それに基づいていまおっしゃったような形の教育が行なわれておると、こういうふうにお示しになるのであれば、私はそういうテキストは現在何ら施行されておるものではない、こういうふうに考えます。また繰り返すようでございますが、自衛隊員の教育というものは、憲法あるいは自衛隊の任務、行動をきめておる自衛隊法、そういうものに準拠をして厳正、公正に行なわれておると、こういうふうに申し上げたいと思います。
  244. 矢山有作

    ○矢山有作君 あなたね、こういうものを陸上自衛隊でつくらなかったというんですか。これは案じゃないですよ。これは私は現物を持ってこないで全部リコピーにして持っていますけれども、明確に「陸曹教育用精神教育」として、陸上自衛隊と書いてあるじゃないですか。これは案だったんですか。三十二年の初版ですから、これはやはり正式のテキストとして、教範としてつくっておったんじゃないんですか。それはいままで使っておるかどうかは知らぬけれども、こうして明確に出ておるものまでそれは違いますと否定なさるんですか。
  245. 内海倫

    説明員(内海倫君) 自衛隊におきましては、教範を作成いたしてそれを確定いたしますまでには、ずいぶんいろいろなものを試案として作成いたします。その作成いたしましたものを検討を要する向きに限定配付いたしまして、そして意見を求めて、そしていろいろな検討を経た結果、それで最後に案を得て採用されて、長官によってマニュアルとしてそれが定められれば、初めて、陸上自衛隊であれば陸上自衛隊、海上自衛隊であれば海上自衛隊に施行されるものでございます。したがいましてそういうものをつくり上げる過程において、一つの作案としていろいろなものがつくられておるということは私も決して否定するものではございません。しかしそういうものは最後に確定するに至らない限りは廃案として処理されてしまうものでありまして、現にそういうものは、先ほどから申しておりますように、施行されておるものではございません。
  246. 矢山有作

    ○矢山有作君 あなた、そんなに強弁されるけれども、裏のところをめくってみると昭和三十二年初版と書いてある。表には、横が十センチですかね、縦にして十五センチぐらいでしょう。私の持っているこれは教範としてきちっと製本してあるのをばらしてプリントしたんですよ。それで表には、いま言ったように「陸曹教育用精神教育」として、きちっと陸上自衛隊と書いてある。これは草案の段階であるものを、こんなにきちっと製本して何年初版なんて入れるのですか。これははっきりと出版されているんですよ。出版されておってなお試案だと言うんですか。
  247. 内海倫

    説明員(内海倫君) たびたび申しますように、教範として定められたものは、その奥書きでなくて、一ページ目なんかにきちっと、何年何月これを教範として定める、陸上幕僚長何の何がしというきちっとした教範制定のものをつけて、それが初めて長官の承認を得てそして施行されるものである。したがって先ほども言いますように、そういうふうな確定的な教範になるまでの間、いろいろな案をつくる段階におきまして、いまおっしゃったような印刷をしたもの、製本をしたもの、いろいろそういうものがつくられておる過程はたくさんございます。しかし、それはやはりたびたび申し上げておりますように、教範として採用され、正式に制定されない限りは自衛隊に施行される教範というものではございません。したがっていまおっしゃったものも、そういうふうに正規に教範として取り上げておるものではございませんので、現在はそういうものは全然ございません。施行ももちろんされておりません。
  248. 矢山有作

    ○矢山有作君 あなたがそこまで否定されるなら私は百歩譲りましょう。百歩譲ったとしても、こういう草案がつくられて堂々と製本になったという事実は、このことはそういうふうな精神教育に対する考え方が自衛隊の中にあったということであり、そうしてまたその考え方があったということは、自衛隊の中にそういう考え方、そういう教育方針というのがやはり流れているということはこれは否定できぬでしょう。草案をつくる、草案は陸上幕僚監部なら陸上幕僚監部でつくる。草案の段階で廃止されたとしても、それをつくったのは陸上幕僚監部ですね。そうすると、そういう教育方針というのが自衛隊の中にあるという事実は否定できないでしょう。私はそういうような教育をやっておることが、これはたいへんな問題だと言うんです。そういうような教育をやっておることは、今度は今が、先ほど私があげましたが、ああいう思想とすぐ結びつくでしょう。平素自衛隊員にこういうような精神教育をやっておるとするならば、この精神教育を受けた自衛隊員が、今の発言の、社会党は労働者や農民の代表だから頭の悪いやつばかりそろっておる、そんなやつらに踊らされて秩序を乱そうというばかなやつが多いけれども、そんなやつはみんなぶっ殺してしまえばいいんだ、こういうことを言えば、そのとおりだ、社会党も共産党もみんな一緒くたにいわゆる共産主義者、社会主義革命を起こそうとしている、そういうものだと思っているのですから、ストレートに入っていくでしょう。平素こういう反共教育をやっておる自衛隊員はこういう話を聞くと、そのまま入っちゃうわけですよ。そういう教育を受けた自衛隊員というのがいざ治安出動という状態になったときに、あれらは政府に反対するやつらなんだ、あれらは社会主義者なり共産主義者なりに踊らされているのだ、だから遠慮なしにやれと言ったら、やるでしょう、こういう教育を平素受けておれば。それはたいへんだというんですよ。要するに精神教育の面から見ても、自衛隊は現在の政治権力に反対する日本国民を敵として見て、これを遠慮なしに殺していいんだという教育をしておるということでしょう。そういう自衛隊の存在が許されますか。それで「自衛官の心がまえ」をたてにとって、公正な教育をしている、厳正な教育をしていると言えますか。そういう詭弁を弄しちゃいかぬというんです。もし、あなたのほうで厳正、公正な教育をしていると言うならね、あなたは愛される自衛隊だとか何だとか言うなら、自信を持っていらっしゃるんでしょうからね、どういうことを教えているか、とにかく全部出してごらんなさい。どういうことを教えているかということを出せぬということは、国民の前に明らかにできないような、この精神教育というテキストにあるようなことを教えているからでしょう。愛される自衛隊で厳正、公正な教育をやっているということなら、われわれが精神教育はどんなことをやっておりますか、テキスト出してごらんなさいと言えば、はい、これがテキストですと出せるはずだ。もし統一されたテキストがないなら、そのときどきのテキストが出せるはずだ。そのときどきの教育の、こういうことの教育をやっているという資料が出せるはずでしょう。それが出せぬということは、こういう教育を国民の目に隠れたところでやっているということでしょう。もしあなたがそんなことはないとおっしゃるなら、国民の前に、こういう教育をやっているという、その個々の指揮官が選択して教育をやっておるんだそうだから、その指揮官の選択したテキストを全部出してくれませんか。そうしたらこんな議論しなくったって一目瞭然はっきりわかる、事実で。出せますか。
  249. 内海倫

    説明員(内海倫君) 先ほどからたびたび御答弁申し上げておりますように、自衛隊におきましては憲法あるいは各法律、特に自衛隊法、こういうものに準拠し、それに与えられた任務を適正に行ない得るそのための任務の自覚、使命の自覚、そうしてまた、そのための人格の陶冶という観点で教育をいたしておるものでございまして、ただいまおっしゃったような人を殺せとかどうとかというふうなことは決して言っておるわけではございません。きわめて豊かな人間性に満ちた自衛隊員を養成してつくり上げていくという教育を実施いたしております。
  250. 矢山有作

    ○矢山有作君 きわめて豊かな人間性を養う厳正公平な教育をやっておるなら、統一テキストがなければ、いままでに使った精神教育用のテキストを幾らでもよろしいから、たくさんあるならその中の一部でもよろしい、出せますか。出して、こういうことを教えているんですとおっしゃるなら信用できるんですよ。また、あなたが自信を持って厳正公平な人間性豊かなそういう教育をやっておるんだとおっしゃるなら、出せるはずでしょう。なぜ出せないのですか。
  251. 内海倫

    説明員(内海倫君) 私、先ほども言いましたように、その典拠は「自衛官の心がまえ」というものによっているわけであります。これの上に立って、先ほども言いましたように長官の行ないましたような訓辞、あるいは幕僚長が行ないますような訓辞、そういうようなものを資料にし、あるいはいろいろなこういう「自衛官の心がまえ」に定められているものに適合するようなそういう論文あるいは論評というふうなものを参考にして教えているわけであります。帰するところは、「自衛官の心がまえ」として明確に隊法に定められ、記載されているものをいかに正しく、いかに間違いなく、いかにその制定された精神に従ってこれを隊員に伝えるかという形で行なっているわけであります。したがって、いまお話のありましたものでもし差し上げることのできるようなものがありますれば、私は決してそれを差し上げることにやぶさかではございません。
  252. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、統一テキストはないと、そのときどきその時代その時代の幕僚長なり、あるいはその他の指揮官が自衛官の心がまえに対して訓辞をやって、それが精神教育なんだとおっしゃるなら、歴代の幕僚長なりその他の指揮官の訓、辞というものはその場限りでなくしてはおらぬでしょうから、精神教育としてやったんだから、その訓辞を全部そろえて出せますね。その訓辞の中に、こういう訓辞もあるんじゃないですか。杉田陸将がかつて富士幹部学校でやった訓辞ですが、「よき中隊の育成について」という訓辞の中でどんなことを言っているかというと、「自衛隊の敵として総評、日教組、共産党、社会党(一部)とともにマスコミ(一部)もこれに入る。」、こういう訓辞をやっております。つまり幕僚長なり、それぞれの指揮官の訓辞による精神教育というものは、こういう内容を持った訓辞による精神教育ですか。
  253. 内海倫

    説明員(内海倫君) もう何べんも繰り返しますが、根拠は「自衛官の心がまえ」にあるわけであります。そうしてそういう心がまえをふえん説明するに際して、長官の訓辞、あるいは幕僚長が自分の部隊を指導していく上において示しました方針、そういうふうなものが根幹になって精神教育が行なわれる。しかし、どこまでもそういうものは「自衛官の心がまえ」というものに準拠したものである、こういうふうに考えます。
  254. 矢山有作

    ○矢山有作君 それじゃ、その歴代長官なり幕僚長なりあるいはその学校の校長なり、そうした人の精神教育用の訓辞を、手を加えないでそのまま原文のままで出せますね。
  255. 内海倫

    説明員(内海倫君) 出せる出せないということは、現在そういうものがあるかないかということも見なければいけません。また、部内限りで出しておるものであればこれは外に出すべきものではないと思いますし、しかし、少なくともお出しできるものは、現中曽根長官が就任以来いろいろな機会に自衛隊員に呼びかけております訓辞、そういうものはお出しすることができると思います。
  256. 矢山有作

    ○矢山有作君 厳正公平な精神教育をやる上の訓辞ですから、出せないものはないと思う。それからまた、そういうような重要な人物が精神教育用としてやった訓辞が、それがなくなることはない一わけです、それが精神教育の軸になっておるのだから。だからそれは全部出してくださいね、頼みますよ。
  257. 内海倫

    説明員(内海倫君) 全部出せと仰せられても、私はこの場で直ちに御返事するわけにはまいりません。
  258. 矢山有作

    ○矢山有作君 出すのか出さぬのか、どうなんです。そういうふうに、厳正公平な教育をやるための訓辞すら出ししぶるということは、教えている内容がたいへんなことを教えておる、国民の目の前にさらしたらこれは大問題になりそうなことを教えているから出せないんでしょう。まあ、こんな水かけ論をいくらやったってしようがない。私は、いまここに言ったこの教範が自衛隊の精神教育の中心になっていると思っておりますから、これはあなたが幾ら否定したって、ここにおる人が聞いていて、たいていそのとおりだと思っていますよ、これは。  それじゃ次に聞きますが、自衛隊がいろいろな行事のときに、あるいはまたその教育という立場から、いろんな講師を頼みますね。この講師をどういうふうにして選んでおるかということなんですが、その前に、新発田の自衛隊の十七周年創立記念講演に行った今議員は、これはどこが選定をして今議員を派遣したのですか。
  259. 島田豊

    説明員(島田豊君) 今先生の講演は、先ほど先生からお話がありましたように、新発田の駐とん地の十七周年記念の行事の一環として行なったものでございまして、いわゆる隊員の部内における教育というものよりも、むしろ市民と自衛隊との親睦と申しますか、そういう催しとして行なったものでございます。  そこで、今先生をどうして選んだかということでございますが、これは地元の新発田駐とん地の司令のところにおきまして、いろいろどういう講師に依頼したらいいかということを検討いたしまして、まあこういう場合には一般の聴衆を集めてやるわけでございますので、できるだけ知名度の高い、つまりその話が有益で興味があるというふうなことが選考の対象になろうかと思いますが、駐とん地司令のほうでは、今先生がしばしば各地で講演しておられまして、その話が非常に興味があるというふうなことを聞きまして、そこで師団司令部を通じまして今先生のほうに出席していただくことをお願いをし、その御了承を得て来ていただいた、こういうふうな経過になっておるわけであります。
  260. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、今議員を一ちょっとしまいのほうが、ほかのことを考えておって聞きとれなかったのですが——今議員を選んだのは、  〔委員長退席、理事石原幹市郎君着席〕  新発田の自衛隊で選んだのですか。それとも上に相談があって、どこか上部機関に相談があってそうして選んだのですか。
  261. 島田豊

    説明員(島田豊君) これは新発田の部隊におきまして選んだようでございます。その際に、師団司令部を通じまして依頼をした、こういうことでございます。
  262. 矢山有作

    ○矢山有作君 私は現地の川久保連隊長からの話として、これはそういう発言をするような今議員を選んだのは間違いじゃないかといって抗議をした人たちがとっておる録音テープを聞いたのですが、これは川久保連隊長の言うのは、やっぱり上部機関にあっせんをしてもらっているように言っておりますがね。まあそれはいずれでもよろしい。  ところで聞き捨てならぬことば一つあるのです、あなたのことばの中に。今議員の発言が有益だから呼ばれたわけですか。つまり人を殺せという人殺しを奨励するような今議員の話が有益だということで自衛隊に呼ばれたわけですか、ことばじりをとらえるようで悪いですが。
  263. 島田豊

    説明員(島田豊君) こういう催しの場合に講師を依頼します場合の一般的な考え方というものを申し上げたわけでございます。そこで、地元の部隊ではいろいろおそらく依頼するにつきましては人選をいたしたと思いますけれども、今先生はしばしば自衛隊でも講演をしておられますので、まあ知名度も高いし非常に適当ではないか、こういうふうな気持ちで選んだものと考えます。
  264. 矢山有作

    ○矢山有作君 今議員は確かにしばしばやっておりますね。このとき新発田でやる前にも何かどこでやっておると言ったかな……松本ともう一カ所どっかでやっておると言っておりましたね。似たり寄ったりのことをしゃべっているだろうと思いますけれども、その話の内容が気に入ったから自衛隊の記念講演に呼んだというのでは、これは物騒な話ですね、これは。今という男は何を言うかといったら、このくらい何というか常軌を逸したぼんさんはおらないので、これは全くなまぐさ坊主の名前がぴったりするような男です、これは。そういう連中を呼んで人殺しの奨励をやる演説をやらすというのはどうかと思うですね、これは。
  265. 島田豊

    説明員(島田豊君) 今先生の講演の内容はあらかじめ部隊長としては知っておるわけではございませんので、かねてのうわさを聞いておりまして、適当ではないかというふうな基準でお願いしたというふうに思うわけでございます。あらかじめこういう内容でお話し願いたいということも言っておりませんし、またどういう内容でお話しくださるかということも聞いておりません。その辺は各地でおやりになります場合の話の内容につきましては、一々詳細には吟味しないでまいります。こういうようなことではないかと思います。
  266. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあ、いろいろと言い方はあるでしょうが、いずれにしても今議員がいろいろな発言をしておる。その前にも似たようなことを言っているのだろうと、これは推察ですが思うのですが、そういうものをやっぱり記念講演の講師に選んで、全くそれは自衛隊の基本的な性格を明らかに示したのだから、そういう点では自衛隊というものがどういうものかということを国民の前に明らかに印象づけた効果はあったと思うのですが、こういうものを呼ぶというのはあまり適当じゃないですね。  そこで、私は念のために自衛隊でどういう教育が行なわれておるかということを、テキストがないとおっしゃるし、そうして訓辞その他についても、都合のいい、問題になりそうにない訓辞くらいは出してくれるかもしれぬが、ちょっとでも問題になりそうな訓辞はどうも出さぬじゃないかということが感ぜられるので、いままでそちらから資料で陸上自衛隊なり各学校でどういう講師によってどういう話を聞いたかという、この四十四年の四月から四十五年の三月三十一日ごろまで、大体このころまでの一覧表をもらっていますから、この中で私の言うものを、講演内容を出してもらいたいのです。そうすれば大体自衛隊はどういう教育をしているという、テキストはない、ないと言いながらどういう教育をしているというのもわかるだろう。言いますから、これはどなたでも書いておいてください。資料として出してもらいたい。奥村房夫、これは拓大の教授です。幹部学校でしゃべっておる。国際政治概説。それから鈴木成高、早大の教授、同じく幹部学校での講演、世界史概説。田口精一、慶大の教授、憲法概説。同じく幹部学校でしゃべっている。以下これから言うのは幹部学校でしゃべっているのです。勝部真長、お茶の水大学の教授、日本の精神構造。それから芹澤功、拓大助教授、現代の社会思想。それから佐藤慎一郎、拓大教授、国防の認識、これは輸送学校で講演。もう一つ輸送学校の講演、升田幸三、拓大顧問、国内外情勢の認識。次が幹部候補生学校で講演をした平泉澄、元東大教授、明治維新をかえりみて。菊地豊、福岡県教育庁主事、日本歴史について。それからこれは幹部学校でしゃべっています、甲谷悦雄、KDK国際動向研究所の人ですね、演題は中ソ紛争。同じく甲谷悦雄、幹部学校での講演、思想戦。それから吉村正、これは幹部学校での講演です、東海大教授、現代政治。吉村融、埼玉大助教授、社会思想。それからこれは陸上自衛隊の北部方面隊、札幌で四十四年六月四日の講演、林三郎、東海大教授、最近のソ軍情勢。それから東北方面隊、これは神町というのですかね、四十五年二月の二十四日、小谷秀二郎、京都産業大学の教授、七〇年代の安全保障。東部方面隊、高田でやった、四十五年の三月十四日、佐藤新一郎、拓大教授、中国問題。それから陸上自衛隊のWACに対する講演、四十四年六月二十七日、草加東郷、青山学院講師、国際情勢について。それから第一一六教育大隊での講演、四十四年七月十五日、田中卓、内外情勢について。それから佐世保地方総監部での四十四年八月——日にちはわからぬですが、講演、倉前義男、アジア大講師、七〇年とアジアの経済。それから飛教と書いてあるが、飛行教育集団のことかな。一空団としてありますが、四十四年三月六日、山崎琢磨、拓大一高長、国際情勢。それから第一航空教育隊での講演、四十四年八月二十二日、倉前義雄、日本をめぐるアジアの情勢。それから四十四年十月十六日に札幌市民会館でやっておりますですね、隊友会道連協力会連合会、そこでやっておる、高谷覚藏、一九七〇年の展望。それから四十三年三月七日、秋田市民会館でやっておる、秋田駐とん部隊の共催による講演会ですね、小谷秀三郎、ベトナム戦視察談、国内の防衛論議。それから四十四年四月九日、岡崎音楽センター、群馬自衛隊父兄会連合会の主催で、今東光、時局放談、自衛隊のあり方、一九七〇年問題。それから同じく四十五年五月十六日、新発田市体育館、新発田駐とん部隊の主催、今東光、自衛隊は軍隊である、自衛隊は人を殺すためにある、ほか。これをですね、おそらくこういう教育活動として、こういう講演等をやったのであろうから、私は記録としては控えてあろう。これを一応時間がかかってもよろしい。一カ月くらいかかってもけっこうですから、この講演内容を全部プリントにして出してもらいたい。出せますか。
  267. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまいろいろな人の名前を承りましたが、今さんのことがいまここで問題になっているわけでありますが、一般の学者の皆さんの思想調査みたいな印象を与えるのでありまして、しいてこの理事会で出せと言えばわれわれも考えますけれども、国会が学者の魔女狩りみたいな、マッカーシズムの逆みたいな印象を与えて、学者一人一人のそういう思想調査をやるというようなことは私はあまり適当ではないと、私自体は国会議員の一人として思うのであります。いまいろいろ聞いた学者の中に知っている人もおりますし、思想の内容もわかっておりますけれども、そう極端なことを言う人は、私自体はいないと思います。今さんの場合はこれは別でありますけれども、これはまあ参議院議員でいらっしゃいますから、参議院の方の思想内容とか何かなら、これは参議院でお扱いになるのはけっこうだと思いますけれども、一般の学者についてそういうことをおやりになることは、私自体は適当でないと思いますし、また講師として依頼したほうがそういうことを学者に無断ではたして公表していいかどうか、これは学者に対するエチケットもあると思うのです。その意味において、これは委員長においてぜひ理事会等においてお考えいただいたほうがいいのではないかと私は思います。
  268. 矢山有作

    ○矢山有作君 私は何も講師の思想調査をやろうと思っておるのじゃない。私の考えておるのは、自衛隊でどういう内容のお話をされただろうかと、それを見れば大体自衛隊の教育方針、教育の傾向というものはわかるわけです、私には。それはなるほど出してもらえば、この人はこういうことを言っているのだなということがわかります。その限りにおいては、あなたは思想調査になるという御心配をなさるわけでしょう。しかし、私はその講師個人の思想においてどうこう言っているのじゃない。自衛隊でどういう話をされたか、そのことを知りたいわけです。それは自衛隊の教育の方向というものを私は知りたいという立場で言っているのですが、これは私はやはりあなたのほうで、精神教育のテキストがないとおっしゃるから、やはり精神教育その他自衛隊の教育はどういうものをやっているだろうかと思えば、講師の講演速記でも見る以外ないわけです。そういう意味ですから、私は別にマッカーシズムの逆をいっているわけではもちろんないわけです。そういう誤解をなさらぬようにしていただきたい。そうしてもちろんこの問題は、おっしゃったように理事会でも協議をしていただきまして、理事会できまったらこれはやはり出していただく。ぜひ私はそのことをお願いするし、それからなお私は委員長にも、この際ですからお願いしたいのですが、いま言いましたように、決して私は個人の思想調査をやるつもりはありません。ただ、自衛隊がどういいう教育をやっているかということが知りたい。それを知るために一番適当な方法は、精神教育その他自衛隊の教育のあり方を示すテキストが示されればいいのですが、それが示されない。したがって自衛隊の教育の傾向、方針を知るために、資料として私は提出要求するわけですから、そういう立場でひとつお取り扱いをいただきたいと思います。
  269. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私らの立場といたしましては、やはり話された講師に無断でそういうことをやっていいかどうか、やはり人間のエチケットがございますので、この点は慎重にお考え願いたいと思うのであります。特にそういう思想問題につきましては、議員としての権限はございましょうが、慎重にお扱い願えるようにお願いいたしたいと思います。
  270. 石原幹市郎

    ○理事(石原幹市郎君) 矢山君から要望されました資料の問題につきましては、後刻理事会で相談いたしまして、その取り扱い方をきめたいと思います。
  271. 矢山有作

    ○矢山有作君 ひとつ、礼を失しないような手段方法があるはずですから、礼を失しないような手段方法をおとりいただいて、しかもその意図するところは、決して個人の思想調査ではないのであって、自衛隊の教育のあり方というものを知る一つ資料としてほしいんだという立場から、委員長のほうでお取り計らいを重ねてお願いいたします。
  272. 石原幹市郎

    ○理事(石原幹市郎君) はい、わかりました。
  273. 矢山有作

    ○矢山有作君 そこで私は、最近長官が自衛隊を国民教育の場として考えていこうというような発想から、自衛隊高校の設置の問題等いろいろな構想を打ち出されております。私が心配するのは、自衛隊における教育というものが、先ほど私が陸曹教育用の精神教育の中身を引いて申しましたような方向で行なわれておる。そういうときに、国民教育の場として自衛隊高校の設置だということになると、全くいわゆる反共思想教育というものを教育の場にもろに持ち込んでくる、そういうことに私はなるおそれがあるんではないか。そうでなくとも最近の教育の状況というのは、たとえばいわゆる日本歴史を教えておる教科書の中に、あるいはまた神話の復活等々に見られるように、非常に何と言うか三十年ぐらいさかのぼったような傾向を打ち出しておるときに、そういうときに自衛隊は、国民教育の場でこういう反共思想教育というものが自衛隊内で行なわれていく。それと同じような方向で行なわれてくると、私はたいへんだと思うんですよ。これは国民教育全体が反共思想教育になってしまうおそれすらある。長官はその旗振りをやろうというんですか。私は、あなたが自衛隊を国民教育の場と考える、そういう発想の中で自衛隊高校をつくる、しかも自衛隊における教育は倫向、きわめて偏向した反共思想教育が行なわれている。それらを結び合わせるときに、私はあなたが反動教育の、反共思想教育の旗振りをつとめようとしておるのかと言いたくなる。これはたいへんなことなんですがね。
  274. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 反共教育や偏した教育をやろうなどとは毛頭思いません。私が着任以来、庁内放送とかあるいは各所で話しました資料をごらんいただけばわかることと思います。  それから防衛高等学校ということが新聞記事に出たので御質問になったんだと思いますけれども、私は、一面においてこの日本の自衛隊というのはほかの国の軍隊と性格を異なって、ある意味においてはデンマークの国民高等学校みたいな教育に資するという面もあっていいんではないか。この間の防衛庁並びに防衛政策を診断する会の有力意見でも、やはりそのことが取り上げられておりました。そういう面から考えてみまして、   〔理事石原幹市郎君退席、委員長着席〕  そういう要素を取り入れるということは、決して私は意義のないことではないと思うのであります。ただし問題はその教育の内容でありますけれでも、これは文部省が認定しているカリキュラムに基づいて、普通の高等学校と同じ程度の学力及び見識を与えようと、そういうような考えに基本的に立っておるのであります。やるかやらないか、まだきまったわけじゃございませんが、構想としてあるのはそういう考えが基本にあるのでございまして、反共教育とか軍国主義教育をやろうなどとは毛頭考えておりません。
  275. 矢山有作

    ○矢山有作君 防衛高校の設置の問題は、これは教育自体の問題として、教育制度の上からも基本的な問題点になるところですから、これは問題は別に論議をするとして、私の言うのは、あなたはなるほど文部省が定める普通の課程に従っての教育をやるんだと、こうおっしゃるけれども、その文部省の教育自体がだんだん昔に逆戻りをしてきておるんですね。まあそのことはさておいてもです、その防衛高等学校で文部省の課程に準拠して教えるにしても、自衛隊自体できわめて偏向的な反共思想教育をやっておるんだから、したがってそこに設置された防衛高校というものがどういう精神教育をやるか、どういう教育をやるかということは、おのずから推察がつくのです。これは私はたいへんなことだと思う。そうしてそれがしかもあなたの発想から言うならば、自衛隊を国民教育の場とするというのでしょう。これは教育自体のたいへんな偏向ですよ。これはたいへんなことになると思うのです。私は、あなたがこの前もデンマークの例をあげてしゃべっておられましたが、そのデンマークの教育の内容がどうか知りませんから、私はそれをすぐ引いてあなたと議論することはできません。できませんが、私は繰り返し言いますけれども、文部省の定めたものに準拠して幾ら教育するとしても、自衛隊自体が反共思想教育をやっておる。その自衛隊の中に設置される防衛高校だから、おのずから教育の方向というのは明らかだ。偏向的な反共思想教育になる。私はそれをおそれるのです。そういう物騒なものはこれはぜひ私はやめていただきたい。これは教育制度の上からも問題があるのですから、まだ構想だけであって固まっておらぬというのですから、私は固まらないうちにこんなことはやめてもらいたいのです。そうせぬと、後世、歴史家から、中曽根防衛庁長官は、いわゆる反動的な反共思想教育を国民教育の中に全面的に取り入れる旗振りをやったという汚名を着ますよ。これは私はやめてもらいたい。  そこで次に移ります。自衛隊は直接侵略なり間接侵略なりそういう事態に備えて情報収集活動をやっておると思いますが、間接侵略に対処する、あるいは治安上の重大な緊急事態に対処するものとして、積極的な情報収集活動を独自の立場でやっておられますか、おられませんか。
  276. 宍戸基男

    説明員(宍戸基男君) 自衛隊の任務の一つであります治安出動等に関しましては、情報収集が必要だろうと思います。で、平時から一般の治安機関、たとえば警察とか公安調査庁とか、こういう一般の治安関係、情報関係の役所と十分連絡をとりまして、一般の治安情報を入手するというようなことにつとめております。
  277. 矢山有作

    ○矢山有作君 独自の情報収集活動をやっていないということですか。
  278. 宍戸基男

    説明員(宍戸基男君) 主として、いま申し上げたように一般の治安機関から入手するのが大部分でございますけれども、自衛隊も、調査隊とかその他情報機関が若干ございます。一部自衛隊で独自に調査をするということもございます。大部分は治安関係から入手すると、こういう経路になっております。
  279. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうでしょうね。この前の四十年三月十八日の決算委員会で稲葉君の質問に対しては、独自の直接情報収集活動はやっていないということで、否定をされておったようですが、私はそんなことばないはずだと、治安活動をやるものが、それはいろいろな関係機関から情報収集をやることはもちろんだが、独自の情報収集活動もあると推察をしておったのですが、きょうは正直にそれをやっているということをおっしゃった。まあその正直さに対しては、四十年三月当時よりだいぶん前進しておりますから、その点は高く買いましょう。ところで、私はこの情報収集活動というやつが行き過ぎると、これは人権侵害の問題を起こしたり、いろいろの問題を起こすと思うんですよ。そこで、最近情報機関を強化充実するというような、まあ発想であろうと推察するのですが、情報本部の設置ということが、これまた中曽根構想で高々と掲げられました。情報本部を設置すると、そうして情報の収集活動というものを強化するということになると、必然的に治安活動に対する積極的な独自の情報収集活動も強化されるのだろうと、こう思うのですけれども、その点どうですか。
  280. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は着任以来、日本が専守防衛で、日本の防衛というものを全うしようと思えば、やはり情報を入手するということは非常に重要である。それからアメリカと安全保障条約を締結して共同作業をしているという場合には、情報の優位に圧倒される。やはり対抗できるくらいの情報を持っていなければ引きずり回される。そういうようなことも考えまして、独自の的確な情報能力を自衛隊が持たなければいけない、そういう考えに立って、情報機能を強化しようと申し上げてまいりました。しかし、それを具体的にどうするかということは、部内でいろいろ検討しておりまして、まだ情報本部ときまったわけではございません。しかし、いま三幕でばらばらにやっておったり、それからそれが非常にダブっておったり、あるいは総合的な分析、判定能力が非常に不足しておったり、そういう点で是正を要する部面は非常にあります、私自体が点検してみまして。そういう点について、もっと効率のある的確な情報体制をつくろうとしておるのでありまして、決してその治安活動目当てのスパイめいたことをやろうという考えでやっておるのではございません。
  281. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあ情報収集の強化という意図はこれまでもあなたの口から再三にわたって出ておるわけですから、この情報活動を強化するということは、外に対しては、これがエスカレートすると隣国に対する非常な刺激になり、むしろ国際緊張を増大するというおそれもあるということをお考え願いたい。それから内にあっては、なるほどいまお話がありましたけれども、私はやはり自衛隊が間接侵略に対処するということを非常に重要な任務にしておるという立場から言うと、やはり治安出動に備えての情報収集活動の強化というものも当然出てくるだろう。そうすると、いままでも情報収集活動の行き過ぎが一再ならず問題になったことを記憶しておりますけれども、今後この情報収集活動がさらに個人の身辺のいろんな、何というのですか、調査に及んだり、思想調査に及ぶというような危険性が出てくるわけです。だからこの点は私はきびしく御注意を申し上げておきたいと思うのです、たまたま構想が固まっておらぬそうですから。いずれにしても、情報活動の強化というのは非常な危険な面があるということを考えておいていただきたいと思うのです。  そこで、これはもう少し前に出して聞くべきことだったのですが、この新発田の自衛隊の今発言問題があった後に、この今議員を講師として呼んでこういうふうな内容の講演をやらしたことについては不都合だということで、自衛隊に対する抗議集会が五月の三十日に持たれました。そのときに浜谷隆平という、これは一尉だそうでありますが、この男が終始、集会からデモ行進の間、ずっと何か入り込んでおったようです。さらにデモ行進が済んだあと、警察のいわゆる過剰防衛というか、行き過ぎに対してわれわれが交渉をしておる、その集会場の中に二時間近くにわたってじっと入り込んでおったという事件があったわけですが、この浜谷隆平というのは、私はそういう行動全般を見ておって、これは自衛隊の調査隊に属する人間ではないか、情報収集ということでそういうことをやっておったんではないかと思っているんですが、この浜谷隆平という一尉ですか、身分証明書を見たら、それには二尉と書いてあったけれども、最近一尉になったという話ですから、浜谷隆平という一尉の身分、任務、そういったものは何ですか、これは。
  282. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 浜谷自衛官の問題につきましては、よく調べて私も報告を受けておりますが、行き過ぎはございません。また、彼はそういうふうな情報収集の目的であのデモの中に巻き込まれたのでもありません。むしろあのデモ側の行き過ぎによって浜谷一尉の人権がじゅうりんされたというのが真相で、警察でも捜査活動を開始している。また、現に私が聞いたところでは、あれをやった側の人が政治家等を介して、行き過ぎであったと言うて、そして手帳を返してきたり、それから、告訴は何とか取り下げてもらえないかと、そういう話を持ち込んできているということを聞いております。
  283. 矢山有作

    ○矢山有作君 まああなたのほうにはどういう報告があったか知りませんが、私も現場におって見て、決して浜谷隆平という人の人権を侵害するような事実行為はなかったと私は思っておりますし、そのことできよう論議する必要はないと思うのです。私は、この浜谷隆平氏に対して人権侵害があったとかなかったとかどうとかというこの論議ではなしに、私の言っているのは、浜谷隆平という人はどういう任務を持っておった人かということが問題なのです。というのは、浜谷氏は何かアイスクリームを買いに出ておったのだと、こういうことなんですね。そして、その当時何か頭が痛かったとか何とかかんとか言っていたな。そのアイスクリームを買いに出た者が、終始集会場からデモ行進について回り、そしてまた集会場の中に二時間近くもじっとすわって、それで、あなたはだれですかと言われたら黙って逃げた。逃げないで名前を言ってくれと二、三人そばに行ったら、自分でひっくり返っちゃって、痛い痛いと言うのですがね。事実これじゃ全く笑い話みたいな話で、よくやる手なんだ。痛い痛いと言うから、じゃ医者に見てもらったらいいでしょうと言って医者を現場に呼んですぐ見てもらったら、これは医者はどうもありませんよと言われている。私はよく見ておって、昔でいえば陸軍中尉ですか、全くだらしのない話だと思って見ていましたが、そんな話は余談ですからいいですが、要するに浜谷隆平というのは調査隊の者じゃないですか。それだけ答えてください。余分なことはいいです。
  284. 内海倫

    説明員(内海倫君) 浜谷君の略歴をずっと申し上げます。  同君は昭和三十七年の三月に防衛大学校を卒業いたしまして、三十八年の三月に三等陸尉になりまして、いわゆる新発田の連隊、第三十普通科連隊の第四中隊の第四小隊長になっております。  昭和四十一年の七月に防衛大学校の教官になりました。四十三年の八月に再び新発田の第三十普通科連隊に赴任しまして、第二中隊の第一小隊長。昭和四十五年の三月に同第二中隊の副中隊長になっておるものでございます。  それから、いままで彼が教育訓練として受けておりますものは、いずれも幹部候補生学校あるいは幹部の初級の訓練、あるいはレインジャー訓練、そういうふうなものが彼の受けております訓練——もちろん、先ほど仰せられましたような調査隊の者である、あるいはそういうものに従事している者というふうなものでは全然ございません。
  285. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあ調査隊の者ではないということですから、それはそのままにしておきましょう。ただ申し上げておきたいのは、幾ら好奇心とはいえ、集会場をのぞき、デモ行進について歩き、そしてしかも集会場の中に二時間もじっと入って、何をやっておるのかということ。スパイするような行動はやはりとらぬほうがいいんじゃないか。そういうことをやるなら、あなた、どなたですかと、わざわざ新発田市の市会議員が名刺を出して、私はこういう者です、あなたはどなたでしょうと聞いているわけですから、スパイ行動をやっていないのだったら堂々と、私は陸上自衛隊二尉の浜谷隆平ですと答えたなら問題が起こらないのです。それをことさらに身分を隠して逃げようとする行為をやられるから、これはてっきりスパイだと、こう思われる。そういう点は今後もあることですから、ひとつ自衛隊の諸君にそういうスパイらしきことをやらないように、もし好奇心があって集会場に行ったり、集会に行って、知りでなくて、あなたはどなたですかというて聞かれたときには、好奇心で来ておるのなら、何、はばかることはないのですから、私はだれだれですと、こういうふうに名乗らせるようにひとつ御教育を願いたい。そうすれば問題は起こらないだろうと思います。まあしかし、これらの問題は、まだまだ情報収集の問題にしても、あるいは自衛隊の性格の論議にいたしましても、これで済んだとは思いません。さらに、自衛隊内の教育のやり方についても、これで事が終わるものではないと思います。私はまあ、たまたま今議員の新発田自衛隊の記念講演で自衛隊の性格というものが国民の前に明確に示された。つまり自衛隊は直接侵略よりもむしろ間接侵略なり、あるいは治安上の緊急な問題だというような場合、そういうふうに政府権力の側が一方的に判断をする場合に出動して、そして日本国民に対して銃口を向けるものなんだ、こういうことだけは明確になったと思うんです。私はそのことは、いままで災害救助だとか、あるいはその他いろいろな自衛隊の本質を隠すような、国民に愛される自衛隊だという宣伝にこれつとめてこられたこの自衛隊の本質というものを、むしろ明確に示すことができた。それで、自衛隊に対するいわゆる国民の目もまた変わってくるのじゃないか、こういうふうに思いますから、その限りにおいては、今議員はまことに自衛隊について適切な、その本質を暴露する発言をされたと思っております。まあこれらの問題については、今後さらに自衛隊の性格その他についてお尋ねをしたいと思いますが、きょうのところはこれで質問を終わっておきます。
  286. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ただいまの結論につきましては、私はそのように絶対思いません。矢山委員のお考え方は御自由でありましょうけれども、自衛隊の名誉のために、そういう事実は間違っていると私は考えております。このことを明確に申し上げておきます。  それからもう一つは、浜谷自衛官の名誉のために申し上げますが、あの事件は警察で捜査としていま取り上げている問題でありまして、われわれが調べた範囲内におきましては、デモ側の警察官に対する行き過ぎを浜谷は心配をしてついておったようであります。そうして浜谷自体の人権が著しくじゅうりんされて傷害を受けたということによってすでに捜査中でもあり、かつ、いま申し上げましたように、政治家を通して告訴を下げてくれという話もあったやに私は聞いておるのでありまして、いずれ真相は明らかになると思います。私は、この際、浜谷の名誉のために一言申し上げておきます。
  287. 矢山有作

    ○矢山有作君 これは浜谷の名誉のためにおっしゃったのだが、そうなると、こちらもこっちの立場がありますから、はっきり言うておかなければいけないので、これは私のほうも、いまあなたのそう指摘された点で問題になる点を言っておきます。  一つは、デモ隊に警察署長なんかがいかにも何かつるし上げられておったというような気持ちをお持ちのようですが、これは警察署長と、それからその当日の機動隊を指揮した指揮官と、それからデモ参加者との間で、デモ規制の行き過ぎに対してどうこれを今後処理していくかということの話し合いをやっておったのです。ただ、話し合いの時間がきわめて長くかかった。たしか四時間くらいかかったと思うのです。だから時間がかかっておるだけの話であって、双方ともにこにこしながら、この決着をどうつけるか、こちらは過剰防衛といっている、あなたのほうは過剰防衛でないと言っておる、だから事実調査が必要だ、事実調査をするにはどうしましょうか、こういう話をしていたのですから、それを一方的に警察がつるし上げられておったというふうにお考えになるのは、これは誤りです。  それから負傷をしたとか、その他の問題については、いま司直の手にかかっておるなら、その結論を待ってやったらいいでしょうけれども、私が先ほど言いましたように、浜谷君は会場の中で二時間くらいすわっておった。どうも顔見知りでない人がおるからおかしいというので、市会議員——地元の市会議員ですが、名刺を出して、あなたはだれですかといって聞いたら、名を名乗らないで逃げた。それを逃がすまいとして二、三人か、三、四人の人がかこんだ。そうしたら、とたんにひっくり返って、痛い痛いと言いだした。それで、痛いはずはないし、どうしたのだろうということで、それでも本人が痛いと言うなら、万一ということもあるからということで、現場に医者を呼んで診断してもらった。そして、医者のほうから、浜谷君を引き取りに来た刑事二名の方に浜谷君の診断の結果を言ってもらう。そのときに、外傷も何もない、もちろん打撲も何もない、何にもないということになっておりますから、これはデモ隊側の立場のために私は言っておきます。しかし、いずれにしても、どうなるのかという問題は、あなたのおっしゃるように、司直の手にかかっておるならばその決着によって明らかにしたらいいことですから、これ以上議論をする必要はないと思います。
  288. 上田哲

    ○上田哲君 きょうは時間の関係がありますから、二口だけ申し上げたいと思います。  いま、本院に所属する某議員の発言をめぐって、まあ最終的には野党の矢山委員防衛庁の責任者である中曽根長官との間に、自衛隊の本質については見解を異にするというか、立ち分かれになったようにお聞きしておりました。私どもも某議員の片言隻句をとらえてちょうちょうする趣味を持ち合わせておりませんし、そして、その限りでは中曽根長官がこのように考えると説明をされた説明のしかたと内容理解しようと思いますが、ここで、もう一つぜひ明らかにすべきであろうと思いますのは、私どももこの耳で聞き、その文字を記録しているわけではありませんが、すでに一つの社会常識とまで広がっている某議員の発言の内容は、少なくとも中曽根長官が先ほど説明をされました限度のものを越えておる。簡単に言えば、自衛隊は人を殺すのが本業だと考えよと受け取られるような発言であったというふうになっていると思います。もしそのとおりであるならば、あるいはそのように伝えられていることが今日の流れであるならば、長官はそうした問題について、自由民主党をもう少し高く評価しろ、あるいは三百という評価はもっと大きく国民の負託がそこにあるものと考え、その上に乗っている自衛隊である、あるいは今議員は、いや某議員は、参議院に所属されるのだから参議院でひとつ議論をされたらよかろうという範囲を越えなければならないと思います。そうした一般的に受け取られている、あえて言えば自衛隊は人殺しをすることが本業なのだというように述べたと伝えられている受け取り方について、いま自衛隊の最高責任者である防衛庁長官は、そのよって立つ立場からの見識を明らかにされるべきだ。見解の相違ということでなしに、専守防衛の求めるものは、一体そうした具体的な指摘に対してはどういうものであるべきかということの見識を問うべきだと私は思う。その御見解を、単に本質についての見解の相違であるということでなしに、突っ込んで承りたいということが一つです。  二口と申しましたからもう一つは後ほど申します。
  289. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今議員の御発言は、もし新聞に伝えられるようなものでありましたならば、あれは世の中に誤解を与え、また自衛隊に対してもそういう誤解を与えるおそれのある発言であり、不適当であったと私は思います。今後は、われわれ自衛隊としてもああいうことの起こらないように戒めていきたいと思います。
  290. 上田哲

    ○上田哲君 次の問題をひとつお伺いをいたします。  六月二十三日が過ぎまして、日米関係あるいは太平洋アジア情勢が新しい局面に立っているということになろうと思います。先般、五月の中旬で終わった六十三特別国会で、佐藤総理及び中曽根長官に対して、今後の四次防ないしは長官の言われる新防衛計画なるものへの展望について、これからの新しい防衛戦略の基本になるものとしての三十二年の国防の基本方針の改定問題、この点をかなり執拗にお尋ねをしたのでありますが、五月十三日の段階での佐藤総理の答弁はまことに慎重以上のものでありまして、にわかに国防の基本方針についての改定の可能を見ることができませんでした。その後、二十三日の乗り越え方のぐあいにもよったんでありましょうけれども政府部内でも、それまで私どもが仄聞していた限りでは、この改定に少なくとも時期的に消極論であった人々まで、いまかなり積極的な風向きに変わったように聞き及んでいます。私どもまた仄聞する限りでは、具体的に、たとえば「国力国情に応じ」という部分などを指摘されて、中曽根長官はこの基本方針の改定を目ざされていると推定をしているのでありますが、特にこの際、今月の末、二十七、二十八日ですか、ワシントンで新しい情勢に立っての日米事務次官レベルというのでしょうか、打ち合わせも行なわれるというふうに聞いております。そこで議論される当然なテーマの一つとしても、またそこへ向こうべき政府の方針としても、この段階で、少なくとも六十三特別国会の終盤に示された政府の方針とは明らかに数歩前進しているものと私は考えるのですが、国防の基本方針の改定について現段階の御判断を承わりたいと思います。
  291. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 議会中におきましても国防会議をもっと開けという御指摘もございまして、私もその必要を痛感しておるものであります。先般、二十二日に安保の自動継続に関連して政府声明を出しましたが、その準備等のために、総理臨席のもとに関係閣僚で懇談会を持ったことがございます。しかし、国防会議懇談会として、正式にやはり国際情勢なり、あるいはこの間の日米安保協議委員会、あるいは沖繩返還問題等々に関して議論して、国防会議としての機能を発揮させる必要ありと私は思っております。したがいまして、関係議員の都合を聞きまして、私はできるだけ回数を多く開いて、諸般の問題について討議することがよろしいと思いますから、この自動継続も決定しました今日、できるだけ早目に国防会議議員懇談会を開いてもらいまして、いまの国防の基本方針も含めて、いま申し上げた諸般の情勢について懇談をする必要あり、そういう希望を持っております。
  292. 上田哲

    ○上田哲君 重ねて御確認いただきたいと思うのですが、そうなりますと、国防の基本方針改定の方向を目ざして、議員懇談会を早い時期に、具体的には今月末の二十七、二十八日の日米交渉と申しましょうか、会議と申しましょうか、を踏まえながら、たとえば今月中にも持てる可能性があると判断してよろしいか。また、日米会議には当然国防の基本方針の改定問題をテーマとして論ずべき御用意があるのか。この点の御確認をいただきたいと思います。
  293. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 伝えられる日米会議においては、日本の国防の基本方針の改定問題なんかは論議さるべきものではないと思います。しかし、先ほど申し上げましたように、できるだけ回数を多く国防会議議員懇談会というのは開いたほうがよろしい、そう思っておりますが、これは元来、総理府の主管でございますので、官房長官のやりなさる仕事でありますから、官房長官のほうにできるだけ早く開いてもらうように希望は申し述べてあります。しかし、いつお開きになるかは官房長官がおきめになることであると思っております。
  294. 上田哲

    ○上田哲君 二十七、二十八との関連において議員懇談会はかまえられるわけですか。
  295. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は官房長官がどういうふうに考えていますか、また、総理以下関係閣僚の日程が、一緒に集まれるものかどうか、そういうことにかかっていると思いますから、この点はよくわかりません。
  296. 多田省吾

    多田省吾君 私はまず在日米軍基地の整理方針からお伺いしたいと思います。私どもは当然、六月二十三日を経過した今日、安保の段階的解消、すなわち安保条約の実質的形骸化を主張している以上、米軍基地の全部の撤去を求めているわけでございますけれども防衛庁の方針としては、米軍基地の撤去を求めながら自衛隊への移行の方向を強くしているような感を深くいたします。また、米軍基地のある各地方自治体におきましては、何も野党のみならず、与党である自民党の方々も、地域住民も含めて相当強く米軍基地の撤去を求めていることは、これは事実だと思います。つい二、三日前も、神奈川県から三十七基地の米軍基地のうち二十九基地の撤去の要求が県当局からあったと思いますけれども、その他の地域においても大同小異であると思います。そこで、私は最初に、一昨年の暮れの日米安保協議委員会におきまして約五十の基地の撤去が論ぜられて、そうして日米合同委員会において具体的に協議するということになりまして、この前の五月の時点におきましても約二十五の基地が撤去される、二十八の基地が、すなわち三つ追加された二十八の基地について合意を見たというような答弁もなされておるわけでございますけれども、その現況と今後のこの米軍基地の撤去を求める方針について防衛庁としてどのように考えておられるのか、まずそれをお伺いしたいと思います。
  297. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 公明党が基地の撤去の問題について非常に御熱心であることは私も知悉しております。私もこういう情勢変化に伴いまして、米軍基地につきましては整理、統合、縮小をはかり、そしてケース・バイ・ケースによって向こうと協議をしつつ段階的に自衛隊が代替していくとか、共同使用するとか、あるいは日本側に返還して民間利用に転ずるとか、そういうあらゆる可能性について積極的に推進しようと思いまして、日米安保協議委員会におきましても、この問題を持ち出して双方で協議することに合意が成立いたしまして、そうして現在その作業が進行中でございます。具体的内容につきましては施設庁長官からお答え申し上げますが、私の方針といたしましては、勇敢に積極的にできるだけ早く進めていきたい、そのように考えております。
  298. 山上信重

    説明員(山上信重君) ただいまお尋ねのありましたうち、最初の約五十の施設の返還整理の実情につきましては、五月の段階においてお答え申し上げましたものと、合同委員会等の合意あるいは返還の数等においては現在では変わりございません。その他のものにつきましては鋭意努力をいたしておる段階でございます。これらのものにつきましては移転等の措置を伴なうものが多々ございます。それらの条件を目下日米間で詰めておる実情でございます。  さらに、いま防衛長官から御方針がございましたように、今後の米軍基地の整理の問題につきましては、ただいまお話もありましたように、自衛隊への管理移転あるいは地元への返還等も含めまして、目下、防衛庁内部におきましても全般的な検討をいたしておる段階でございまして、われわれといたしましては、できるだけこれを強力に進めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  299. 多田省吾

    多田省吾君 次に、私は具体的な問題として水戸射爆場をまず取り上げまして、この返還に対して防衛庁当局はどのようなお考えで米軍との折衝を進めておられるのか、それをまずお伺いしたいと思います。  御存じのように、水戸射爆場の返還につきましては、昨年の閣議におきましても、大体三、四年のうちに返還を実現したいというような発表もしておられるようでございますし、また、この前から水戸射爆場の新島移転問題等もからみまして非常に論議されたのでありますけれども、まあ、新島移転問題があったために、むしろ水戸射爆場の返還促進というものを、たとえば茨城県当局あるいは地域住民もちょっと遠慮したというような感もあったように私は見受けられます。で、実情をちょっと申し上げますと、ことしになりましても、三月ごろ、那珂湊一高におきまして入学試験を実施している最中に米軍機が飛んでまいりまして、そのために入学試験そのものを中止せざるを得なかったと、こういうことも生じておりますし、また、校庭にいろいろな廃棄物が落ちてきたとか、こういう問題もあります。またこの前、文部省で小学校、中学校長にあてて全国の小学校、中学校のいわゆる公害問題を調査いたしましたときも、茨城県は水戸射爆場あるいは自衛隊の百里基地があるために、全国二位という姿で騒音問題が大きく取り上げられております。で、その両基地があるために、小学校、中学校の諸君は非常に騒音に悩まされて勉強もできないというような姿があるわけでございます。これも全国有数であるわけです。で、そのほか最も大きな問題は、やはり東海村に原子力発電所、あるいは原子力研究所、あるいは将来は再処理工場までそこに設置されるのではないかと言われておる現状におきまして、その目と鼻の先にある水戸射爆場が、もし米軍機の事故によってその発電所なり、あるいは研究所に誤爆や、あるいはそこに突っ込むようなことがあったならば一体どうなるかというようなことを考えた場合に、地域住民の方も非常にりつ然としているわけでございます。で、私も何回も見てまいりましたけれども、水戸射爆場の飛行方法というものは、横田基地あるいは厚木基地から参りまして爆弾を投下してすぐ海のほうに避難する、そういう場合に、その避難の時期が少しでもおそいと、もう原子力発電所にひっかかってしまう、こういう状況も十分考えられますし、事実私もそれを見ております。こういった現況から、私はこの水戸射爆場は年来のまあ課題でもあり、早急にもう撤去を求めるべきであると、このように思います。またそのほか、その付近の農村の方々がどんなに困っているかという実情を、私たちの調査からもうちょっと申し上げてみましても、これは非常にひどいものがあります。まあ鶏とか豚とか飼っているうちはほとんど被害を受けております。ほぼその一〇%以上、たとえば豚なんかでも、子供を生む場合に飛行機が飛んで来たために、その最中に逃げ出したとか、あるいは踏みつぶしたとか、こういう状況もございますし、事実養鶏なんかにおいても足折れの障害とか、羽折れの障害、こういったものも多いし、被害は一〇%に及んでおります。あるいは乳牛の産乳量なんかも相当、一〇%以上も低率となっております。こういった現況もございます。いままでの誤射、誤投爆その他の事故はもう三百件以上に達しております。その中にはもちろん生命を失った事故までございます。そのほか爆弾誤投下の事故、機銃誤射事件、あるいは墜落事故、不時着事故、落下物事故、超低空事故、あるいは自動車事故までございます。こういった姿から見て、茨城県当局も、あるいは勝田市とか、あるいは那珂湊市、こういったところでは、もう党派を離れて、全地域住民がこの水戸射爆場の撤去を強く求めているわけです。私たちが一昨年総点検した意識調査の結果におきましても、その地域住民の方々がこの水戸射爆場の撤去をどのように強く望んでいるかということは数字においてもあらわれておりますし、相当の影響も出ております。こういった現実から見て、政府自体、水戸射爆場の代替地が見つかるまで撤去を求めない方針なのか、あるいは三沢とか、横田とか、代替地と申しますか、かわりのものも考えておられるようなふうに伺っておりますけれども、私はそういった代替地がなくとも水戸射爆場だけは早急に返還を求めるべきである。そして三、四年なんて言わずに、やはり早急にその期限も早めるべきである、このように思うわけでございます。これは野党だけが望んでいるのじゃなくて、県当局もあるいは地域住民の方々も、全県をあげてこの水戸射爆場の撤去は強く望んでいるのだ、こういう認識に立って、今度は移転になるだろうからというようなから頼みに終わって、そうしていつもがっかりしておる。こういう現状をよく知っていただいて、ひとつ水戸射爆場の撤去は一日も早く早めていただきたい、こういう観点から質問するわけでございますが、防衛庁としてはこの閣議決定後のお考えに変わりはないのか、あるいはこういった私が先ほど申し上げましたように、代替地等の関連の問題、それから時期を早める問題をどう考えておられるか、まずそれをお伺いしたいと思います。
  300. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 水戸射爆場の問題は茨城県知事以下関係住民の皆さんから熾烈な御要望がございまして、政府も一番胸を痛めて議論している問題であります。私も前有田長官からこの問題の引き継ぎを受けまして、政府が閣議決定で約束したことを必ず実行するように、昨年以来一番努力しているところでございます。在日米軍司令官がかわりましたけれども、この去っていく人はワシントンへ帰りますが、それから来た人、参謀長その他アメリカ大使等、あらゆる機会を通じまして、くどいくらいに私からも直接先方に話をしております。問題は代替地の問題でございますけれども、ともかく政府が約束したことは必ず実現しなければいけない、先方にもそういう点で協力を求めなければならない、そういう観点に立ちまして目下努力しているところでございます。その成果いかんというお答えをまだ申す段階に至っておりませんけれども、われわれの熾烈な要望というものは、米軍側におきましてもある程度了解して、向こうのほうもある程度考え始めているのではないか、そう思われる徴候も若干ございます。しかし、まだどうするのかということが正確にきまったわけではございませんので、今後とも地元の皆様方の熾烈な御要望を体して努力してまいりたい、そして約束は実行いたしたい、このように考えております。
  301. 多田省吾

    多田省吾君 いま一般的なお答えをいただきましたけれども、それでは長官のお答えから見て、もし代替地が見つからなくても、閣議決定の線は後退しない、おそくても三、四年以内には撤去するんだ、こういう方針なのか、それからもう一つは、その三、四年という期限をもっと早められるお考えはないか、この二点をひとつ具体的にお答え願いたい。
  302. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく政府が従来約束しましたことは実行する、そういう点で御了解願いたいと思います。時期の問題、代替地の問題等いろいろございますけれども政府が文書をもって約束したことは必ず実行するようにいたしたい、そういう決意で現在努力を継続中なのであります。
  303. 多田省吾

    多田省吾君 再三申し上げるのは、政府が閣議決定したとは言っても、いままでもあまりにも約束を守らなかった点が多かったんじゃないか、たとえば太田大泉飛行場等も、もう十数年前から返還するんだというようなことを閣議でもおっしゃってこられたんじゃないかと思いますけれども、それをようやく昨年あたり実現したというような姿もありますし、私はそういう点から、大臣がおっしゃったように、水戸射爆場の返還あるいはその他の基地の返還は約束したことはぜひ守っていただきたいし、むしろそれを早めるようにお願いしたいと、こう思うわけです。  それから具体的にもう一つ、米軍基地撤去について申し上げれば、きのうわが党の黒柳議員が決算委員会で、全国八カ所の米軍基地内のゴルフ場の返還を強く要求したわけでありますけれども、土屋政務次官はその返還に努力するような答弁をしたわけでありますが、せっかくきょうは長官がおられますから、重ねてお尋ねいたしますけれども、詳しくは申し上げませんが、少なくとも昭和三十九年六月二十三日のいわゆる東京地裁の決定で、米軍基地ゴルフ場は行政協定の施設区域ではないので、これは協定違反じゃないかという判決も出ておりますし、その後、和解とはいいましても、昭島ゴルフ場が移転しているわけです。防衛庁当局は、地位協定の十五条によって当然許されているのだ、こういう主張をされておるようでありますが、きのう黒柳議員の追及によって、そういった八つのゴルフ場が独立採算制がとれないので、民間にそれを大きく門戸を広げて、そしてどうしても国民から批判される運営をしている。こういった問題で、税金問題等もからんで追及されたわけでありますけれども、私たちはこういったものを住宅地にすれば、ほんとうに大都会の近くにあって、私たちの国民の要求が、住宅のほうにおいても満足するであろうと思われるような広大ないい場所が、むざむざとゴルフ場に使われて、そして米軍があまり使わないので、民間にも開放しているというような姿、これは当然国民感情からも許されないような問題だと思います。こういう意味で、もちろんすべての基地の撤去を私たちは要求しているのでありますけれども、こういういわゆる党派的な感情を捨てて、国民的な感情に立っても、こういったことはすべての国民が強く要求するところではないかと、こう思います。そういう意味で、さらに長官から、この米軍基地内のゴルフ場の返還の問題についてどうお考えなのか、直接お伺いしたいと思います。
  304. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 土屋政務次官が申されましたように、運営の改善並びに一般的な施設返還の問題の中に含めて、この問題も先方と交渉すると、そういうふうに申されたことを、私も強く推進してまいりたいと思っております。米軍の何と申しますか、兵員の休養とか、あるいはレクリエーション、そういうような意味において、ゴルフ場も必要ではあると思いますけれども、日本国民感情というものもございますし、日本固有の住宅問題という問題もございますから、その点はわれわれも同感であります。しかし、地位協定等によって提供しているものについては、われわれ政府側も米軍側に対して責任もまた持っておるわけであります。したがって、不信義な行為はできないと私は思います。しかし、政治問題といたしまして、いまのように日本側の特殊事情、こういう条件をよく先方に認識してもらいまして、協力を得るように私は努力してまいりたいと思います。
  305. 多田省吾

    多田省吾君 基地撤去にからんでもう一点だけお願いしたいと思いますが、具体的に申しますと、横田基地の手前に都営住宅がございます、拝島都営住宅が。その上に送電線がありまして、今度、横田基地にC5というのですか、よくわかりませんけれども、ジャンボよりも大きいような米軍輸送機が横田基地で使われるのじゃないかということも言われておりますけれども、ファントムでも送電線すれすれでおりてくるような、ああいう東京のすぐそばにある横田基地、もしこの前の朝鮮戦争のときのように事故でも起こったらたいへんなことになります。送電線にひっかかるのじゃないかというようなことを地元の方々は相当強く危険を感じているわけです。こういった問題について施設庁の当局は御存じなのか、そしてまあ神奈川県でもそうでありますけれども、この東京の近辺においてもそういったさまざまの危険性がたくさんあります。戦争に巻き込まれるような危険性というものは、これは当然考えられますけれども、いわゆる基地公害、地域住民の方々に大きな生命の危険さえ及ぼすようないわゆる公害、こういったものをどうして取り除くことをなさっておられないのか、まず輸送機の問題にからんでお答え願いたい。
  306. 山上信重

    説明員(山上信重君) 米軍基地の使用につきましては、現在の米軍基地の前提のもとに使用し得る機種等が当然使用されるものと私どもは期待いたしておるのでございます。具体的にどういう飛行機がどういうふうに来るかということは、それぞれの実際の適用の際に外務省のほうに連絡があると思いますが、C5という飛行機がまいりましても、この飛行場の滑走路の中で十分飛行でき得るということで運用されるものと思います。ただ、いまの送電線の問題につきましては、私、具体的に必ずしも承知いたしておりませんので、よく調べまして、もしぐあいの悪いような点がございますれば、米軍側にしかるべく申し入れたいというふうに考えております。全般的にはさように承知しております。
  307. 多田省吾

    多田省吾君 次に、施設庁の関係ですから、施設庁の方に続いて御質問申し上げますけれども、また違った問題なんですけれども、いわゆる占領下にあって連合軍——占領軍の行為等によって被害を受けた方々、すなわち占領軍の方々に交通事故で生命を落とされた方とか、いろいろあるわけです。そういう方々は現在わかっている人だけでも一万人——三万人以上いるんじゃないかといわれておりますけれども、その方々のための給付金の資金に関する法律ができまして、そうして昭和四十一年におきましても超党派でまたそれが期間を延ばされて、金額も多くなったわけでございますが、その全金額を考えましてもわずか三十五万円という状況です。この問題で今度の六十三国会におきましても自民党はじめ各野党が協議の上で、それを五年——ことし切れるのをあと二年さらに延ばそう、また金額の上でもそれを増加していこうじゃないかというような法案を、その被害者の方方のために出そうとしたんですが、どういうわけか、これは自民党の都合で出なくなったわけでありますけれども、御存じのように、いま日本は占領下にございません。ですから、米軍の方々の事故によって生じたところの補償金というものは、この前も神奈川県である方が交通事故で生命を落とされて千二百万円の補償金を得たというように、沖繩等においてもその面はだいぶ改善されております。しかしながら、昭和二十七年まで、事故を起こされた方々はわずか三十五万円でほうり出されているんです。そして現実に一万人をこえるそういう方々が、肉親が、あるいは働き手が失なわれて非常に生活に困窮を来たしたり、あるいは自分自身が事故のために障害を受けて、そして生きる望みさえないというような姿で、いろいろな社会問題を引き起こしております。そしてそれは週刊誌等においてもいままでも数多く取り上げられてまいりました。事実、一昨年あたりも、そういう代表の方が自民党に申し込まれたとき、時の福田幹事長なんかも一、この問題はぜひ皆さんの御要望に応ずるようにやりますからというような手紙まで差し上げておきながら、政府自民党がこの方方のために、もうすでに補償は終わったのだというお考えで全然手をつけようとなさらない、これは非常に問題であると思います。そういった戦後が終わらない状況がまだあるわけです。事実ことしの春等におきましては、超党派で法律までつぐって、そしてそれを通せるような状況まできたわけでございます。この問題はやはり防衛施設庁としてもよく御存じのことだと思います。私たちも今後これは努力してまいりますけれども、施設庁として、この占領軍等の行為によって被害を受けた方々に対して、もう打ち切りだとお考えになっておられるのか、まだ考えなくちゃいけないと思っておられるのか、ひとつお答え願いたい。
  308. 山上信重

    説明員(山上信重君) 占領中の占領軍によるところの被害につきまして、特別給付金を支給する件につきましては、昭和三十六年に政府立法によりまして、これらの従来の措置に対して、非常に気の毒であるということで、特別給付金をつくり、さらにその後、昭和四十二年に御承知のように国会の各党の御提案によりまして、議員立法によりましてこれを追加するということで、その追加いたしたのが十五万五千円、これは死亡者の例でございますが、そういうことで、いまおっしゃったように増額されております。これらの被害者につきましては、すでに二回にわたって、まあ法律で増加をいたしておるのでございまして、しかも第二回目は議員立法であるというようなことでもございまするし、かたがた、当時の制定のいきさつから見ますると、当時のいろいろな給与等の金額等を参考といたして決定いたすというようないきさつもございまして、したがいまして、私ども一といたしましては、政府としては、まことにこの方々は非常にお気の毒な実情にあるということは、私どもも十分御同情申し上げるのでございまするが、政府としては、ただいまそういうような、改正をするということのイニシアチブを取るということには、ただいまはいたしかねるというような実情にある次第でございます。その点を御了承願いたいと思います。
  309. 多田省吾

    多田省吾君 この問題はまた別の機会にいろいろ御質問もし、また私たちも調整をとっていきたい、こう思っておりますからあれですけれども、ちょっと、政府としてはなかなかやりにくいという、しかし、参議院の二年前のこの委員会におきましても附帯決議等もついたわけでございますから、私は当然生命を落として、しかもわずか三十五万円の最高補償しかいただけないというような姿では非常にかわいそうだと思います。これは何も政策の問題じゃなくて人道の問題だと思う。また、これに手をつけると、その他のいろいろな法律も手をつけ、ざるを得ないからというような懸念も持っているようでありますけれども、そうじゃなくて、こういった人道問題はやはり前向きに解決していかなければならないのじゃないか、こう思うわけです。そういう意味で、この前が議員立法だったからというような理由で、ただ政党にまかせるということじゃなくて、やはり防衛施設庁自体も関係官庁としてその方々のめんどうはどこまでもみていくという考えに立たなくちゃいけないのじゃないか、こう思います。  次に、私はこの前、先ほどもお話に出ましたけれども、日本の防衛防衛庁・自衛隊を診断する会というものが防衛庁の長官のお考えの上に立って設けられている。六月三十日にその診断書が出たというのでありますけれども、私たちももっともだという点もありますし、またちょっと行き過ぎだというような納得できない点もあります。で、私は二、三この中の問題を取り上げて、防衛庁がどのようなお考えの上に立っているか、それをお尋ねしたいと思います。  まず、この診断報告で言っていることは、自衛隊の基本的なあり方として、防衛任務に国民奉仕隊的な性格を加え、そして災害救援部隊的な性格を強化して、災害派遣を軽視すべきではないというような報告を出しているわけです。この前も房総沖で海難問題が起こった場合に、ちょっと自衛隊の救援がおくれまして、そのために大臣が非常におこられて、その後、海難体制も十分にすべきであるというような指導をされたと、このように私は覚えておりますけれども、こういった海難救助なんかでも非常に、海上保安庁ですか、それから警察とか、そういった方々との間になわ張り争いがあるような、すっきりと海難救助に向かわないような、こういう点があるのじゃないかとこう思います。それから、中には自衛隊は災害救援なんかにあまり力を入れるべきではないというような考え方の人も若干いるようでございます。しかしながら、私たちはやはり自衛隊が現実にこの日本にある以上、しかも私たちは決して最小限度の自衛力の存在を否定するものではございませんので、やはり国民から愛される自衛隊として、こういった性格は私は強めていくべきではないか、このように考えますので、今度の千葉の災害等においてもだいぶ活躍されておられるようでございますし、昨年の災害におきましても、新潟のがけくずれにおいては、自衛隊の応援がなかったならばもっとたいへんなことになっただろうと思われるようなことも私も現実に見ております。こういった観点からこの災害救援部隊的性格を強化するということは私は賛成です。  次に、ちょっと目についたのは、やはりこの前の本委員会の視察においても報告があったのでありますけれども、相馬ケ原の兵舎はじめ富士学校等の兵舎がすごく老朽化して生命の危険さえ感じられるような、そういう老朽化した兵舎がだいぶ残っていることです。二階、三階を歩きますとみしみし音がする、火事にでもあったらたいへんなことになるのじゃないかと思われるような老朽兵舎が多い。私はこういった問題についても、もう昭和五十一年度の四次防の最終年度においては防衛庁が一兆三千億から一兆四千億くらいのいわゆる軍事費を見込んでいるにもかかわらず、こういった自衛隊の方々の生活に関しては全然——全然とは申しませんけれども、その関心度が低いのじゃないかと思わざるを得ない、こういった点をどう解決なさろうとしておられるのか。あるいはこの中に述べられていることが、まあその他、医官の不足の問題とか、あるいは防衛大学の中にいわゆる医者を養成するようなことも一昨年あたりから考えられているようでございますけれども、それに対してどういういま認識を持っておられるのか、こういったこと、こういった前向きの明るい面につきましては、私はこれは妥当な報告であると思いますけれども、長官はどのようにお考えになっておりますか。
  310. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自衛隊に対しましていろいろあたたかい御配慮をいただきましてまことに感謝申し上げる次第です。災害の救助の問題については同感でございまして、ただ、自衛隊の任務は、直接間接の侵略に対してわが国の平和と独立を守る、国を守るというのが第一義でございますけれども、また、国民に奉仕するという点も自衛隊の機能として私は重要であると認識しております。そういう意味におきまして災害その他国民に奉仕するという部面についても考えてまいりたいと思います。特に、たとえば漁船の救難等の問題の飛行機の整備等につきましては、次の防衛計画の初期においてこれをもっと充実強化するようにいま計画を進めさせております。  兵舎の問題につきましては全く同感でございまして、これらの人間尊重の部分、あるいは給与その他の部分、あるいは公務傷害、殉職等の場合の手当等につきましては、社会並みの手当、待遇が与えられるように次の防衛計画において是正したいと思います。それで、次の防衛計画におきましては、そういう人間管理の部分において社会と大体同じぐらいの待遇が得られるように、思い切って費用をそちらのほうへ分けようと考えて指示しております。医官の不足の問題もまことに同感でございまして、いま実際の部隊では二三%しか部隊についてお医者さんがおりません。そこで、この問題を解決するということは、士気高揚上も非常に重要な問題でございますので、根本的な解決策を考えたいと思いまして、勧告を体しまして部内で検討を開始しているところでございます。
  311. 多田省吾

    多田省吾君 ただ、この報告の中でちょっと危険性を感ずるのは、やはり先ほど長官のおっしゃった、情報収集能力の充実あるいは通信網の整備という報告がなされておりますが、この六月三十日の時点の報告の結果かどうか知りませんけれども、とにかく大臣が情報収集能力を高めると、こういう発言をされたように聞いております。私どもはそういった結果、ちょうど米軍の上瀬谷通信基地とか、あるいはプエブロ号とか、EC121ですか、そういった偵察機のエスカレートしたような姿で、やはり近隣諸国の緊張を高めるようなことがあってはならないんじゃないか。いま海外駐在官として十八人いらっしゃるそうでございますけれども、そのほかバッジシステム等もございまして、そのほうの情報収集はなさっておられると思いますが、将来それがエスカレートして、いわゆる電子情報とか、そういったふうになりますと、やはりその専守防衛という域から逸脱いたしまして、そしてやはり近隣諸国を強く刺激するということはいろいろ考えられるわけです。現実に米軍によるプエブロ事件等が起こっている際でございます。そういった点から、情報収集はある程度必要ではありましょうけれども、そういったいわゆる近隣諸国を刺激するような姿にならないように気をつけなければならないんじゃないか、こういう観点から、いまお考えになっているその情報収集についての今後のあり方について、でき得る限り伺っておきたいと、こう思います。
  312. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 情報収集の問題につきましては、全く多田委員の御指摘のとおりでございまして、国際緊張を高めたり外国から誤解を受けるような措置は、これは厳に戒めてやらなければならないと思います。ただ、いままでの自衛隊の内部の情勢を点検してみますと、三幕僚幹部がありまして、みんなおのおのやっておったり、それがダブっておったり、たとえば外国の図書を翻訳するにしても、同じところでやっていればいいのに三カ所で同じ本をやっておったり、それからその全部の情報を総合しながらこれを分析判定する力がきわめて弱い、そういういろんな点で欠陥があるように思いまして、どっちかといえば整備統合をすると、そういう考え方に立って情報問題を処理していこうと思っておるのでございまして、外国にいやしくも誤解を与えたり緊張を高めるようなことは戒めてまいりたいと思っております。
  313. 多田省吾

    多田省吾君 最後に、この前の通常国会におきまして、大臣は、四十七年から始まる四次防につきましては、大体の予算は国民総生産の〇・八%前後、そして五兆数千億円であるというような答弁をされておるわけでございます。そうしますと、昭和五十一年度は一兆四千億程度になりまして、現在においても世界第十二位ぐらいの軍事費といわれておりますが、そのころになりますと、五位、六位というような、相当軍事費の絶対額というものは多くならざるを得ないと思う。中には、日本が専守防衛をするためには、そういったそのぐらいの予算が必要なのかどうか、〇・八%を切っても、やはり防衛費は、平和憲法を持ち、また専守防衛を唱える政府としては、もう少し少なくしたほうがよろしいんじゃないかという意見も国民の間から強く要望されているわけです。私もそういう考えです。で、長官は、この前わが党の矢追委員の質問等に答えられて、結局、推進力になるから、原子力潜水艦も将来推進力としての原子力が普遍化されたような場合は持ってもいいのではないか、こういうようなことも、それは憲法とか、自衛隊法とか、あるいは原子力基本法、こういった問題には別にかかわらないとは思いますけれども、国民感情としてどうしてもそういった兵器のエスカレート、あるいは産軍複合化というような姿には納得できないし、またそれが高じて武器輸出等にも発展するのじゃないかというおそれも抱いております。こういった観点から、やはりこの四次防の防衛費の問題におきましても、率が少ないのだからという理由で、〇・八%以上にはしないのだからという理由で、やはり五十一年度の一兆三千億あるいは四千億に達しようという防衛費をそのまま是とする方向で是認することは私たちはちょっと抵抗を感じる。そういう場合にはたしてそういう——まあ人件費は限られるでしょうし、相当それは兵器あるいは装備品に使われるでございましょうけれども、そういった装備が自衛のためにはたして必要なのかどうか、こういう疑問が生ずるのですが、長官はこの問題に対してどのように考えておられますか。
  314. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 次の防衛計画におきましては沖繩防衛という新しいファクターが随伴してまいりまして、この費用はいままでにない新しい費用にもなります。それから七〇年代になりまして、先ほど申し上げました兵舎とか、人間尊重関係というものをかなり見込まなければ要員の確保もできないし、普通の社会から著しく見劣りするような待遇の自衛隊になっては、ほんとうの意味で国民の自衛隊になることもむずかしいと思います。そういう点でお金が要りますし、それから第二次世界大戦でアメリカから貸与を受けたりもらったりした代替を要する兵器類でも五千七百億円ほどまだ残っておりますし、そういうようないろいろな面からいたしまして費用が若干かさんでくる傾向にあります。しかし、私は国会で申し上げましたように、社会保障費や教育研究費等とのバランスも考えて、国民生活の発展、向上に支障を来たさないような配慮をひとつやらなければならぬ。そういう考えに立って節制してまいりたいと思っております。金額につきましては、いまのところまだ幾らときまったわけではございません。方針といたしまして、そういう方針に立ってやってまいりたいと思っております。
  315. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 たいへんおそくなってまいりましたので、簡単に二、三質問したいと思います。  いま自衛隊を診断する会の中で問題になりましたので、ちょっとだけ質問しておきたいのでありますが、私も先日自衛隊の皆さんと話をする機会がございまして、その中で各自衛隊の部隊を回ってみますと、必ず公務でなくなった人の写真を飾って置いてあります。公務でなくなった方が全然ないというところは私が行ったところではありません。ほとんどのところが、少ないところでも五人ぐらい、多いところですと十四、五人というように写真を飾って置いてあります。今度の診断する会でも、いわゆる遺族の補償の問題が出ておりますが、そのとき私たち懇談したときに出てきた話でありますが、自衛隊の皆さんが言われるんですね。公務では死にたくない、交通事故で死にたいと言うんですね。ほんとうなんです。私たちなぜそうかということがわからなかった。どうしてなんだということを聞いてみますと、いわゆる公務でなくなった場合の補償は、事実かどうかわかりませんが、皆さんの話ですと大体六十万円から七十万円ぐらいだということなんですね。交通事故で死ぬと少なくとも自賠法でいきましても五百万円くらいは出るわけです。ですから、交通事故で死にたいという気持ちは私はもっともだと思うんですね。ここらへんのところを、先ほど長官から答弁がございましたけれども、具体的にどういうぐあいになっておるのか、現在までどのくらいなくなった人がおるのか、また、これからどういうぐあいに対処していこうとしていらっしゃるのか。こういう点は、長官のかねがねおっしゃっていらっしゃる自分の子供なり夫を自衛隊に出している家族にとりましては、非常に大事な問題だと思うし、また、そういう家族を大事にしてあげることこそ私は大事じゃないかと思うのですが、そういう点も踏まえて御答弁いただきたいと思います。
  316. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自衛隊における殉職者数は昭和二十五年から四十五年の三月三十一日まで総計で九百八十六名でございます。これらの方々に対する見舞い金、賞じゅつ金の金額は非常に少ないということは、まことに遺憾でございます。この間も習志野で空艇団の一人がパラシュートが開かなくて殉職された例がございますが、あらゆるものをかき集め努力しても、たしか二百五十万、三百万以内であったような気がいたします。あとは保険でめんどうをみておる。これは国家のやり方としてはきわめて公平を欠くやり方でございまして、次の防衛計画におきましては、少なくとも社会水準に公務殉職者あるいは傷害者等については引き上げるようにいま鋭意、案をつくらせております。その案に基づきまして次の計画を実行してまいりたい、努力していきたいと思っております。
  317. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 最近一番新しくというとおかしいのですけれども、最近なくなった方でもそのくらいですね。過去になくなった方は相当悲惨な人が  いらっしゃるのじゃないかと思うのです。その点はいま長官のお話しもございましたので、そのくらいにしておきますが、先ほど出た中で関連してもう一つだけ質問しておきたいのですが、いわゆる指揮官心得、いつもいうあれでありますが、教範の問題でありますが、これは先ほどからいろいろな問題を聞いておりまして、要するに、これをつくったらどうかと思うのですよ。つくって、国民の皆さんに見せて、そうして、それに基づいて自衛隊の出動なり何なりできるようにすればいいのじゃないかと思うのです。実際問題として、これを隠したり何かすると、いろいろ問題になるだけでありまして、現実に、長官、先般、一昨年ですか、昨年かもわかりませんけれども、金沢で104Jのジェット機が墜落いたしました。あのとき私は金沢へ参りました。あのとき一番問題になったことは何かといいますと、自衛隊のジェット機が落ちまして、現地へ自衛隊の皆さんが出動したわけです。それは人家のあるところに落ちましたので火事になった。それで地元から消防自動車がかけてきたわけですね。ところが、地元の基地から出てきた一部の自衛隊ですか、自衛隊の皆さんがカービン銃を持って——緊急の場合ですからね、ぼくはそういうときちゃんとあるんじゃないかと思うんですが、とにかくカービン銃を持って出てきたわけですね。それでそのカービン銃を、火事で燃えているのに、どの人たちに向けて撃つのか、一体どこへ向けて撃つんだというので大騒ぎになったわけです。当時は有田長官でしたけれども、長官が行ったときには片づいて、なかったわけですけれども、ほんとうにこういうような問題、いろんな点から考えてみても、こういうふうな指揮官心得といいますか、教範といいますか、こういうふうなものは私はつくったほうがいいと思うんですよ。先日の委員会でも、私は長官に指揮官心得はどうなんだと、こう言いましたら、長官が、私、見ましたと初め言いましたよ。あとで、あれは草案であったと訂正されましたけれども、そういうふうな意味では、私は必要でないから検討はしないとか、あとでするとかいうようなことをおっしゃっておりますけれども、そういうふうな緊急の場合が一番大事な問題でありまして、そういうような意味から検討をし、早急にちゃんとつくって、そうしてみんなが納得いく、そういうふうな教範であれば私はいいのじゃないかと、こう思うのですが、いかがでしょう。
  318. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) お説はごもっともであるように思います。ただ、私は仕事の順序といたしまして、次の防衛計画の策定にいま全力を注いでおりますし、これは非常に膨大な作業でもあります。そのほか対米関係の基地問題の処理、沖繩の返還問題の交渉、それから秋にはいわゆる防衛白書を出すと、そういう仕事が山積しておりまして、いまのところそっちを先に片づけてしまおう、特に防衛白書というものは非常に大事なものでありますから、そちらに相当力を入れて、それを国民に読んでもらって、その次にいまの指揮官心得という問題に手をつけたらどうかと、私の心組みはそういう状態であります。
  319. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 長官から、いま秋には防衛白書という話がございました。これはいままでから何回も出ている問題でありますけれども、ぜひとも秋には防衛白書を完成していただくように、それで私たちにも見せていただきたいと思います。  次に、私は三次防で計画されておりますあの第四高射群の問題でありますが、この配置状況等についてお伺いしたいのですが、今回、大阪の能勢町にナイキJの基地の設置について先般から多少問題になっておりますが、その問題はまああとにいたしまして、いわゆる第四高射群としまして、全部で五カ所ですか、阪神、中京地区に五中隊ですか、五カ所ですね、配置する計画ということを私たち聞いておりますのですが、簡単でけっこうですから、現在までの経過を説明願いたいと思います。
  320. 宍戸基男

    説明員(宍戸基男君) 阪神、中京方面のナイキにつきましては、御承知のように三次防で計画がございまして、来年度あたりそれを配置したい希望を持っております。その進捗状況と仰せられましたが、土地取得の進捗のほうのお尋ねでございましょうか。もしそうでございましたら、阪神、中京方面に大体五カ所予定しておりまして、一つは岐阜でございますが、それは調査工事が間もなく完了する段階でございます。それからもう一つは饗庭野演習場に設ける予定でございまして、それは調査工事が間もなく完了する見込みでございます。あとは三重県にもう一つつくる予定でございますが、まだこれは用地取得について折衝中の段階でございます。それから大阪におきましては能勢町というのが候補地になっておりますが、地元関係者の御理解をこれからいただこうと、いろんな折衝を進めようという段階でございます。残る一カ所でございますが、これはまだ候補地を調査中、こういう段階でございます。
  321. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ただいまありました能勢町の問題でありますが、この設置につきまして、今月の初めですか、大阪の防衛施設局が地元民に打診したところからいろんな問題が出てまいりまして、現実には地元ではもう大騒ぎになっております。実際問題、これは防衛施設庁としてはどういうぐあいにやったのか一ぺんお伺いしたいのですが、府当局とか、町当局にはあまり通じてなくて、何か地元のほうへ直接行っていろんなことをやったためにこういうように問題が大きくなってきたんじゃないかという話まで出ているわけですが、ここら辺のいきさつはどういうふうになっているのですかね。
  322. 江藤淳雄

    説明員(江藤淳雄君) ナイキ陣地の場所の設定につきましては、いろんな要素を加味した面から判断し、一応内定するわけでございますが、その場合に阪神、中京の場合になりますと、これから一定の周辺の距離とか、あるいはレーダーの効率がどういうふうになるかとか、あるいはその地形が工事に適するかとか、そういう点、いろいろな角度から検討するわけでございます。そうしまして、最終段階におきまして、実際にその用地の所有者がわれわれのほうに売ってくれるかどうかという点を十分調査しなければなりません。そういう意味におきまして、まず現地に入りまして地形の調査をし、あるいは所有者の了解を得なければ、関係町村なりあるいは関係都道府県に、この点につきまして設置につきましての協力を依頼するという段階までまいりせんので、能勢町の場合におきましては、現段階における所有者の了解を得るために現地における交渉をいたしておったというところでございます。
  323. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いま話がございましたように、できるだけ所有者の了解ということについては、ぜひとも心得てやってもらいたいと思うのですが、現実の問題としましては、能勢町では町議会としても一応反対の決議をしたということを私聞いております。また実際問題、大阪の豊能郡能勢町というところは、大阪全体が非常に公害の町でありますが、もうそれこそ豊能郡の能勢町の方面だけがいわゆる公害のない緑に囲まれた唯一の町なんですね。そういう点からいきますと、大阪としましても大阪府の総合青少年野外活動センターですか、そういうようなのを設置するというあれもありますし、できましたらそういうようなことを承知の上でやったんじゃないと私思うのですが、実際問題、地元としましてもこのミサイル基地の建設につきましては相当敏感になっておりますし、どうかそういう点も考え合わせた上で、この点を考慮した上で、この設置ということに踏み切っていただきたい、そういうぐあいに思います。それからもう一点は、能勢町がこういうように、私の手元には決議の決議文もきておりますし、もうやがて防衛庁のほうにいくと思うのですけれども、その決議文というのは、ちょっと簡単に言いますと、「能勢町は都市公害から離れ、緑に包まれ自然に恵まれた平和な里である。とくに大阪府総合青少年野外活動センターが設置されるなど青少年育成の町で、府民いこいの町でもある。能勢町が七〇年構想として自然都市を建設するため総合計画を実施しようとしているとき、伝えられた防衛庁のミサイル基地建設計画は、町民一万人の希望を破壊し、住民生活を危険にさらすものである。町議会として基地設置に絶対反対を決議する。」と、こういうような文書でありますけれども、いずれにしましても、地元の協力ということはどうしても必要でありましょうし、そういう点も考え合わせて進めてもらいたいと思います。どうか防衛庁としましても、地元のそういうふうな意向を無視して強行するなんということになりますと、やはり地元民並びに国民に対しましても、この愛される自衛隊という面からいきましても反することになると思いますので、以上、二、三点申し上げましたが、以上の点をよく心得て設置をやってもらいたいと思うんです。大臣いかがでしょう。
  324. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 能勢町の場合は手続きやあるいは配慮のしかたにおいて欠けるところがあったように思いまして、慎重に対処してまいりたいと思っております。ナイキ基地の設定の問題は、やはり有事の際にその地帯の住民あるいは施設を守るために行なうのでございまして、関係住民の皆さんにも十分納得のいくようにこれから御理解を願い、慎重な手配を行ないつつ誠意を尽くして努力してまいりたいと思っております。
  325. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それからちょっと問題を変えまして、今般、防衛施設庁で沖繩の米軍基地の調査をやったということが新聞に報道されておりました。それで実は一つだけお伺いしたいのですが、防衛施設庁としましては、総力をあげて米軍の施設を調査されたんだと思うんです。そこで私たちが沖繩で一番心配している問題は、沖繩の毒ガスの問題なんですね。毒ガスがあるということについては、実際問題として日本の国内ではそう問題に、国民的問題になっていないと私は思うんですけれども、アメリカでは沖繩の毒ガスをアメリカのどこかの島へ移せというので、もう自分のところへそれを持ってこられないように総力をあげて反対しておるわけです。ですから、毒ガスの移転先も次から次に変わっている、こういう現状なんですけれども防衛施設庁は実際沖繩に行かれて毒ガスを見てこられたと思うのですが、これは大体どういうふうな実情になっておったのか。私この新聞の報道がちょっと間違っておるのじゃないかと思うのですが、「お粗末調査」と書いていますから、こんなことないと思いますが、ちゃんと調べてきておられると思いますので、どういうふうなぐあいだったのか、一ぺん教えていただきたいと思うのですが、これはいかがでしょう。
  326. 山上信重

    説明員(山上信重君) 去る三月末から四月にかけまして、当庁から沖繩に、施設部の管理課、取得課の職員を主体にした調査団を派遣いたしましたが、これは主として返還時点に備えるいろいろな調査の中で、これからやっていかなければならないものがあるわけでございまするが、特に土地所有の実態、あるいは軍用地の管理の問題、管理と申しますのは、いろいろ使用上、民間使用にさせるとか、いろいろ使用条件等がございます。そういったような使用条件の問題であるとか、軍用地の賃借料のいろいろな制度、実態あるいは賃借料そのものといったようなものを主体にした、いわば施設の取得、提供にからまる事務的なものを主体にした調査を第一回としていたしたものでございまするので、実を申しますると、そういったような政治的な問題その他につきまして私のほうは今回の調査には含めておりませんので、これらについての視察あるいは結果の報告等もございませんので、ただいま申し上げるだけの資料がございません。
  327. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ということはですね、まあ、あんまりきょうは時間もありませんので、簡単に済ませますけれども一つは、マスコミの報道によりますと、資料をアメリカ側が出ししぶったという話があるようでありますが、こういう事実があったのかどうかが一つですね。それから、その報告書というのが三百ページにわたる報告書だそうですが、その報告書も公表されたものは一枚のプリントということですが、私どもの党としましても、沖繩の基地の総点検につきましては相当力を入れてまいりました。それで、やはり私たちの調査だけではなくて、施設庁の調査というものはそれだけの権威があると思うのです。そういう意味ではできるだけ公表していただきたいと思うのですが、この二点いかがでしょうか。
  328. 山上信重

    説明員(山上信重君) ただいま私が申し上げましたように、調査内容がそういったような限られたものでございますので、オーバーホールの施設全般について調べてきたというものではございません。ただ、それらの点につきましては、相当こまごまといろいろなことを研究いたしてまいったのでございますが、資料の中には米軍から提供された資料もございまして、これらは米側において一応「秘」というような扱いになっているものも含まれておりますので、それらを整理してまいらなければならないというふうに考えております。米軍が特に出ししぶったというようなことは、施設に関する調査についてはないように考えておりますが、今後これらの問題につきましては資料をさらに整理いたしまして、必要な場合にはこれを公表するようなことも考えてまいりたいと思っておりますが、ただいままでの実態の一応わかりました点等につきましては先般表に出したのでございますが、なお、いま資料整理をいたしておるというような段階でございます。
  329. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 もう一点お伺いして質問を終わりたいと思います。  これも先日、米軍の基地ですね、キャンプ王子、それからグランドハイツ、それから麻布のヘリポートですか、これを米軍が返還するかわりに、一戸一千万円の住宅を一千戸、三沢基地内に新築せいと、そういうふうな要求が在日米軍司令部から出されている、こういう報道がなされておりますけれども、これはどうなんですか、事実なんですか。
  330. 山上信重

    説明員(山上信重君) グランドハイツ、武蔵野住宅につきましては、これは元来が住宅の移転でございますから、住宅をどこか米軍の基地内に移転するということがあるわけでございますが、現在そういったようなものを含めて三沢に一千戸というような要求は私ども聞いておりません。ただ、各種の移転の場合に、移転先等の中に一部三沢が含まれるということも考えられるかと思っておりますが、一千戸というような数字としては聞いておらないのでございます。
  331. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これですね、いまの答弁を聞いておりますと、やはりこれに近い要求はあったように私思うのですが、やはりいろいろな面から、私は国民感情としてどうも納得いかないんですよね。先ほどもちょっと話が出ましたけれども、ゴルフ場の問題だってそうですね。昭島のゴルフ場を多摩に移したときに相当のお金をかけてつくって、それで昭島を返還されたけれども、それはもちろん昭島の借り地のほうが安くつくという話があったかもしれませんけれども、そういうふうな非常に国民感情として、むちゃなことを言われて黙っている感じではいけないと思うんですよ。やはりそこら辺のところは国民感情では許せる範囲内というものはあると思うんですよね。特に日本の皆さんほとんどの人が住宅には相当困っているわけでありますし、きょう午前中にも人事院給与の問題で話がありましたけれども住宅という問題については相当困窮しております。そういう点から相当慎重に交渉していただきたいと思うのです。  以上申し上げまして、最後に長官の答弁をいただいて私の質問を終わります。
  332. 山上信重

    説明員(山上信重君) ただいま申されたような国民感情その他を十分尊重いたしまして慎重に処理してまいりたい、かように考えております。
  333. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 本件に関する本日の調査はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時三十分散会