○
参考人(前田義徳君) 四十七年度以降を見通すことは簡単ではないと思いますが、考え方として申し上げますと、ただいま三年前に値上げしたというお話ですが、これに対しては、逆にラジオ料金等については廃止をしているわけでございます。で、白黒等については値下げをしております。カラーについては新料金を設定したという意味のものでありまして、ただいま副会長からも御
説明を申し上げましたように、全体的に見ますと、総合的に見ますと値下げでございます。これは
NHKは終戦以来
——終戦前もそうでごさいましたが、企業体としては
日本でただ
一つ値下げの歴史を持っている企業体でございます。そういう意味では、当然われわれは営利を営む必要はございませんので、大局観からすれば、社会的責任あるいは聴視者の要望を満たし得る限度の経営上の
収入というものが確保されればいい、という考え方であります。そういう意味で先ほど来お答え申し上げているわけでありますが、現在のところ、四十七年度末までの一応の構想を立てておりますが、四十七年度後にどういう問題が起こるかという点だと思いますが、まあ具体的に幾つかの問題を取り上げて見ましても、私
どもとしてはまずカラーの全時間
放送が必要になるだろうということが考えられます。カラーの全時間
放送と申しますのは、概念的に申し上げても一日三十六時間という考え方に立つわけでございます。それからまた、まあこれまでのいろいろな外界との関係で私たちが予想しなければならないのは、あるいは四七年度以前になるかもしれませんが、要するに沖繩の問題がございます。これは将来やはり
NHKの経営からいってかなり重要な部分になるであろう。現在、沖繩
放送協会はまだ創業以来一年の歴史を持っていないわけでありますが、それもきわめて短時間の
放送であり、沖繩全体の地勢から見ても、沖繩全島のネットワークというものができ上がっておりません。いわんやラジオ
放送等はございませんし、教育テレビジョン等もないという状態でございますので、具体的にはこの問題が次の
NHKの構想の中でどう吸収され、処理されていくかということが問題になると思います。と同時に、こういう関係でまあ私
どもの立場から言えば、一種の世俗的な生産コストとの関係で、
一体定員はどのくらいになるかという問題も当然生じてまいります。もう
一つ、具体的でありかつ客観的な情勢から判断いたしますと、現在の経済情勢が四十七年度以後にどのような変化を来たすであろうか、ということが問題になると思います。先ほど来申し上げましたように、三年前の第三次五カ年構想の当初に
予定した、たとえば一例を取り上げれば、
物価の
上昇率、これを三・八%と考えたものが、時期的であるとはいえ、たとえば一月、二月等の実情を見ますと、その二倍に近くなりつつある。こういうような問題については、私
どもとしては、四十七年度の時点に立たなければ予想はつきかねる問題になってくる、ということは、こういうように見通しのつかない、しかも基本的な問題も残ってくるということになると思います。その他国際環境の中で申しますと、
一体、先ほど来御質問もいただきました地域衛星というものが、どの方向を向くであろうか。先ほど技術
研究に関連しまして、
放送衛星の
研究のあり方を変更したと申しますのは、今年の四十四年の六月二十三日に、宇宙開発事業団法というものができ、その附則の第十五条によって、事実上
放送法の一部は改正されているわけでございます。そういう関連から見まして、将来この
放送衛星というものが国策として打ち上げられるのかどうか、またその使い方は本土だけであるのか、あるいは関係地域に及ぼされるのであるかどうか、これらも現在の時点では予測を許さない問題でございます。こういうように具体的に予測できる問題と、事業、あるいは現実にこの時点では予測できない二つのかなり大きな問題がございますので、したがって私
どもといたしましては、ただいまの御質問に率直、明快なお答えを出すことはきわめて困難だと思います。ただ一応考えられることは、四十七年度末の、まあ総契約数がかりに二千五百万世帯を上回わる場合、カラー契約料金が全くこの総契約世帯数と同じ世帯からいただけると、カラー料金の契約総数が何と申しますか、四十七年度末に予想される契約総数二千四百万世帯強と全く一致する場合に、どのようなことを考えるべきかという問題は、当然われわれの社会的責任として考えなければならないと思います。
ただ、以上申し上げた環境の中で、さらに二つの国策と関連する重大問題がございます。その
一つは、先ほど来副会長も触れました音声三波の
調整がどういう形で、
NHKのネットワークとして固定するのかという問題と、まあここ二、三年来、今後十年間の過程において、VHFをUHFに転換するという問題が、事実上どういう歩みをたどるか、これがまた実は私
どもとしては、私
どもの主観的、あるいは方針としてのみ決定できない問題でもございますので、この二つは
NHKの、まあ現在で言えば
放送法第八条と関連する根本的な重大問題であると考えております。こういう問題がまだ明快でないという現状におきまして、ただいま申し上げましたような、一応の私としての感想的なものをお答えする以外に、きわめて端的かつ率直、かつ明快なお答えができないことを、はなはだ遺憾に存じます。