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1970-08-11 第63回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年八月十一日(火曜日)    午前十時四十三分開会     ―――――――――――――    委員異動  八月十日     辞任         補欠選任      占部 秀男君     小柳  勇君      中村 英男君     武内 五郎君  八月十一日     辞任        補欠選任      小柳  勇君     松井  誠君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         佐野 芳雄君     理 事                 上原 正吉君                 吉田忠三郎君                 渋谷 邦彦君     委 員                 黒木 利克君                 高田 浩運君                 山崎 五郎君                 山本  杉君                 大橋 和孝君                 小柳  勇君                 武内 五郎君                 藤原 道子君                 松井  誠君    国務大臣        厚 生 大 臣  内田 常雄君        労 働 大 臣  野原 正勝君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        内閣法制局第四        部長       角田礼次郎君        文部省大学学術        局長       村山 松雄君        厚生省公衆衛生        局長       村中 俊明君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省医務局長  松尾 正雄君        厚生省薬務局長  加藤 威二君        厚生省年金局長  廣瀬 治郎君        厚生省援護局長  武藤琦一郎君        社会保険庁年金        保険部長     宮田 千秋君        運輸省港湾局参        事官       田中 光次君        労働省職業安定        局長       住  榮作君        自治大臣官房参        事官      佐々木喜久治君        会計検査院事務        総局第三局長   中村 祐三君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告労働問題に関する調査  (港湾労働者労働問題に関する件) ○社会保障制度等に関する調査  (森永ミルク砒素中毒問題等に関する件)  (財団法人厚生団に関する件)  (医師の養成問題に関する件)  (痘そうの予防接種に関する件)  (敵前党与逃亡罪による処刑に対する遺族の不  服申立てに関する件)     ―――――――――――――
  2. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十日、占部秀男君、中村英男君が委員辞任され、その補欠として小柳勇君、武内五郎君がそれぞれ選任されました。     ―――――――――――――
  3. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 派遣委員報告に関する件を議題といたします。  先般、当委員会が行ないました委員派遣について、派遣委員から報告を聴取いたします。吉田君。
  4. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 先般、本委員会決議に基づきまして、六月二日より五日までの間、秋田青森の両県下山下委員柏原委員、それに私吉田によりまして、派遣調査をしてまいりました。  言うまでもなく、米作単作地帯の両県は、また出かせぎ労働者給源地として全国的に知れわたってきたところであります。それに、今年からは米の生産過剰に伴う作付減反調整という政策がとられることになったことは、さらに今後も出かせぎ農家の増加を余儀なくさせる作用を及ぼすことであろうと推測されます。したがって、出かせぎ労働問題を中心に、以下、順を追って御報告いたします。  第一に、秋田県の出かせぎ労働について申し上げます。当県の出かせぎ労働者は、約五万人と推定され、昭和三十六年当時と比較いたしますと、二・二倍の増加になっております。この内訳を見ますと、県外への出かせぎは全体の八九%で、その七五%が関東地方に出向いて、建設労働中心に従事しております。また、これを年齢別続柄別に見ますと、三十歳以上の者が半数以上の六七%を占め、世帯主が四五・一%、後継者は四〇・四%の割合になっております。  次に、出かせぎ期間を見ますと、三カ月から六カ月が全体の五四・五%、六カ月以上が二八・六%で、出かせぎ期間中の収入は、十万円から十五万円が三二・一%、十五万円から二十万円が二〇・六%と、こうなっており、県内に持ち込まれる出かせぎ収入は約九十四億円と推定され、さらに、失業保険金受給額は約十億円で、出かせぎ関係収入額は、合計百四億円に達します。県下の全農業所得額が約八百億円でありますので、出かせぎ関係収入の全農業所得に占める割合は一三%にも達しております。  以上のような出かせぎの実態の中で、問題点として次の諸点があげられます。  まず、労働問題としては、賃金不払いないし遅払い、事業主契約違反下請制度欠陥による事故発生労務管理不備労働雇用条件の劣悪さ、募集手配師に依存する雇用慣習労働契約を締結しないための不利益、技能訓練及び安全教育不足などがあります。  次に、農業に対する問題では、農業基幹労働力の流出によって、農業近代化に対する支障、さらに老人、婦女子労働過重等があります。最近、深刻な社会問題になってきている留守家族、出かせぎ者の不安、音信不通送金途絶、消防・防火体制不備家庭教育上の欠陥などがあげられます。  このような出かせぎ労働にまつわる諸問題を解消しながら、地域格差を是正する施策が必要であることは言うまでもありません。秋田県では、昭和三十六年より一市町村企業の誘致を行なう農工一体化運動を展開しております。しかし、現在、県内には百二十六工場があり、約一万人の従業員通年雇用をされていますが、その六割が女子労働者で、産業を見ても、縫製弱電機関係企業が多く、基幹産業による男子出かせぎ労働者労働力県内で吸収するためには、巨額の公共投資によって基幹産業の導入をはかる施策が必要であり、要望もありました。  出かせぎ問題を解消させる現実策として、出かせぎ共済制度という県の構想があります。この構想は、明るい出かせぎを実現させるために、県及び市町村と出かせぎ者の三者が一体となって、出かせぎ者一人につき五百円を出資させますと、約一億円の金額になります。これをファンドにして、賃金不払いに対する立てかえ払い、労働災害見舞い金県外の出かせぎ者に地元の新聞を発送すること等によって地域と出かせぎ先の結びつきを保とうとするものであり、県の意欲的な姿勢がうかがえます。  次に青森県の出かせぎ問題について申し上げます。県内の出かせぎ労働者は、昭和四十四年十一月一日現在で約五万七千人を数え、県の全労働人口の八.七%を占めております。また、昭和四十三年度の個人県民所得総額は四千四百八十七億円で、そのうち出かせぎ所得は約百五十四億円、それに失業保険金の約六十八億円を加えた合計二百二十二億円が出かせぎ関係収入で、個人県民所得総額の四・九四%の割合になっております。なお、参考までに申し上げますと、リンゴの県内生産額が二百七十億円であり、これに比較しても出かせぎに伴う所得は、決して小額とはいえず、当地で出かせぎが第四次産業といわれるゆえんでもあります。  こうした中で、米の生産調整による休耕面積は約一万二千ヘクタールにも達し、これによって生ずる余剰労働力は、約一万七千人と推定されますが、この余剰労働力就労現金収入を求めて、今後さらに出かせぎ労働者増加されるものと見込まれます。  次に、出かせぎ者が就労する職種が土工など建設業関係に多いことは、さき秋田県の場合と同様であります。この業種は、労働災害が多く発生していることは、さきの本委員会で新四ッ木橋工事による出かせぎ者の生き埋め事件質疑に見られるとおりであります。青森県が調査した昨年四月から一年間の人身事故状況は、死亡者五十四人、負傷者六十六人で、地域的に見ると東京都における死亡者が十八人で第一位であり、産業別では建設業が四十五人で全体の八三%の死亡者を出しております。一方、これを就労経路状態で見ますと、縁故知人紹介が三十四人の死亡者で圧倒的に多く、安定所経由では、十一人と比較的少ないのが注目されるのであります。  こうした労働災害を防止するためには、十分な技術指導ないし職業訓練を施すことが必要であることは言うまでもありません。しかし、出かせぎ者にいきなり職業訓練を施すのは困難があり、青森県では導火線発破技能玉掛技能やその他の技能を習得させるために、二日間の講習訓練を行なっております。全額県予算でやっておりますこの講習会に受講を希望する者が多くて施設不足するありさまで、国の助成と合わせて県内工業高校施設を利用するのも一つ方法であります。  安定所を通して出かせぎ労働者就労させることが安定行政上の大きな課題になっております。青森県でも、安定所を通して、就労する者は全体の三割以下であります。現地の安定所調査しましたところ、出かせぎ者が安定所を通さないで就労するおもな理由として、収入明確化によって所得税が課税されるのではないかという不安、縁故知人紹介事業所より低い賃金事業所紹介などをあげていましたが、逆に、事業主労働力確保するために、この種の悪宣伝を利用しているのも事実であります。さらにいま一つ問題点として、事業主が出かせぎ者を雇用するにあたって、出かせぎ者の身元を確認させ、現在、社会問題化しつつある出かせぎ者の行くえ不明事件を絶無にするような強力な行政指導が必要であります。その他、出かせぎにまつわる問題点は、秋田県の場合も大同小異でありますので省略させていただきます。  第二は、老人問題について申し上げます。私どもは、秋田県で特別老人ホーム高清水寿光園視察したのでありますが、この施設は、本年四月一日に開園されたところであります。現在、女子三十七人、男子十五人の合計五十二人が職員の手厚い看護によって余生を送っております。来年度予算で、さらに五十人分の施設を増設する計画であります。しかし、県内には約千四百人の寝たきり老人がおり、そのうち、二百四十八人がすぐにでも施設に入る必要があるといわれていて、このような施設不足があらためて痛感されました。  これに関連して、視察をしました秋田労災病院について申し上げます。この病院は、院長外十一名の医師、九十二名の看護婦、その他職員合計百九十三名により労災患者を診療するかたわら地域住民医療サービスを行なっております。五月末日現在の利用状況は、労災患者の四割に対して一般患者は六割の割合であり、三百床のベットの利用率は九一・三%であります。  秋田県は、わが国第一位の鉱産県であり、鉱山労働者けい肺じん肺患者全国水準に比較して多く、じん肺患者二十六人、脊損患者四十四人が入院しておりました。一方、レイノー病対策の一環として、当病院でも営林署職員定期健康診断を行なうかたわら、疑似患者八人の診療を行なっておりますが、特に民有林労働者レイノー氏病が労災病としての認定に困難な状態であるという問題点の指摘がありました。  現在、医療行政上の大きな問題点として、山間避地での医師確保があります。当地でも、看護婦確保状況は、大都市と比較して相対的に十分な状況であるのに対して、医師確保にかなりの困難があるとの訴えがあり、医師地域調整手当を出して補充につとめているなど、大都市とはまさに逆の深刻な問題をかかえていることが調査の結果わかりました。  第三は、十和田八幡平国立公園管理状況について申し上げます。この国立公園の区域は青森、岩手、秋田の三県にまたがり、面積八万三千三百五十一ヘクタールに及ぶ広大な地域であります。昭和四十四年度、十和田湖を訪れた観光客は、おおよそ百六十六万人で、観光収入は約四十一億五千三百万円と推定されております。しかし、その反面、奥入瀬渓流を観賞する遊歩道施設及び観光客受け入れ体制は、まだ十分とは言えない現状であります。そこで、現在、考えられている計画は、公園内の休屋地区観光客が集中するのと、近年のモータリゼイションに対処するため、十和田自然保護をはかりながら公共施設として、休屋地区駐車場をつくること、さらに奥入瀬渓流域に沿ってある車道と歩道を完全分離することによって交通事故の防止をはかること等であります。また、この遊歩道昭和三十六年度より計画され、全長八千九百メートル、工事費六千八百万円で現在実施中であります。計画の一部である三千五百メートルは、すでに完成されておりますが、四十五年度以降においては、残る五千四百メートルの工事費として四千七百七十四万円が見込まれております。さらに、自動車による十和田湖への乗り入れ客は年々多くなり、最大利用時の十月の一日の乗り入れ台数は約一万一千台にも達するといわれ、その結果、奥入瀬渓流十二キロメートルの走行時間に四時間も費やす状態にあり、観光客の悪評を買っているものといわれ、この問題を解決する抜本的な道路対策としてバイパス道路建設急務になっております。  第四は、レイノー氏病について申し上げます。この奥入瀬渓流からさらに十キロメートル入ったところに、青森営林局三本木営林署直営事業を行なっている大幌内製品事業所があります。ここは海抜六百メートルの高さで、傾斜は五度から三十度、平均十度の緩斜地で、トチ、ブナを主体とする天然広葉樹林があり、六名の職員と二十四名の作業員によって、本年四月三日から十二月二日の作業実施期間に一万五百立方メートルの丸太生産を行なっております。  次に、当地区のレイノー氏病の発生状況とその対応策について申し上げます。九十二万ヘクタールを管轄する青森営林局管内には、百四十人の認定患者がいて、下北半島など地域的に偏在して発生しております。ここ三本木営林署管内では患者が一人、疑似患者一人の二人が現在治療中であります。レイノー病患者発生を防ぐために、現在、定期健康診断防寒手袋の支給、作業員休憩所整備栄養食料品の摂取、労働時間の規制などが行なわれておりますが、より根本的な解決方法として、出来高賃金制度の再検討急務であります。また、患者に対する温泉療法は、医学的見地から有効であるという見解もあり、温泉治療施設整備拡充が望まれるところであります。  最後に、さきの国会で家内労働法が成立いたしました関係から、実際に家内労働を行なっている二カ所を現場調査してまいりましたので申し上げます。私たちが最初に訪れたのは、青森市内坂牛しゅくさんの自宅であります。ここでは坂牛さん外七人の家庭主婦事務服幼稚園児園児服などの縫製共同作業で行なっており、一カ月当たり工賃収入は七千円から一万円程度であります。そして一カ月の平均稼働日数は二十日間ですが、忙しい時期には、一日十時間の労働を行なうとのことでした。このグループの特徴を申し上げますと、一時間当たり工賃は、グループの一ヵ月の全収入を総労働時間で割ってきめ、それに各自一カ月当たりの実際の労働時間を乗じて一カ月の工賃収入がきまるということです。さらに、この人々から、内職収入に対する所得税非課税実施公共授産所と、託児所の設置によって、就業機会を多くしてもらいたいとの要望がありました。  次に視察をしました油川団地は、青森市の郊外にあります。ここでは、東京から青森市内時計部品メーカーが進出してきて、内職公共職業補導所のあっせんで、時計バンドの組み立て団地主婦等がしておりまして、団地集会場講習会には、二十人の主婦等が参加しておりました。この講習会を修了すると、各自が部品自宅持ち帰り内職をするのであります。工賃は一個当たり十五円で、会社の説明では、今までの経験から、一日多くて三十個を組み立て、四百五十円の工賃収入になるとのことでした。どこの団地にも共通する問題ですが、この団地にも幼児が多く、思うように内職ができるために、ここでも公共託児所を設置してもらいたいとの要望がありました。  以上で、報告を終わります。
  5. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 以上で派遣委員報告を終わります。     ―――――――――――――
  6. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 次に、労働問題に関する調査議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 小柳勇

    小柳勇君 私は、港湾労働法適用及び港湾労働者雇用の安定並びに港湾運送事業管理運営適正化の問題について質問いたします。特に具体的に例を福岡県の博多港、これは二種港でありますが、博多港に例をとって質問いたしたいと思います。  昭和四十年の五月七日に、この当参議院社会労働委員会港湾労働法が採決され、成立いたしました。そのときに六つ附帯決議を私どもはこの法律につけました。この六つは、第一が、本法全面的施行について。第二が、本法適用対象港湾範囲拡大についてであります。第三が、港湾労働者常用化促進日雇い労働者に依存する割合低減。第四が、日雇い労働者雇い入れに暴力の介入を許さない厳正な措置。第五が、港湾運送事業法違反業者に対する許認可等について厳重な規制を行なうこと。第六は、港湾調整審議会組織構成に十分配慮すること。以上六つ附帯決議をつけてこの法律が本会議で成立したのであります。  自来、五年経過いたしております。したがって、この附帯決議中心に質問いたしますが、まず第一は、本法が全面的に施行されているかどうか、その施行実態について六大港を例にとって説明を願います。
  8. 住榮作

    説明員住榮作君) 法律は四十年に可決され、施行されたのでございますが、その後一部逐次施行いたしまして翌年の七月から全面施行、六大港について全面施行、こういう状況になっております。
  9. 小柳勇

    小柳勇君 六大港適用は、われわれが論議いたしましたような実態で現在適用されておるかどうか、その点を説明願います。
  10. 住榮作

    説明員住榮作君) 法律全面適用につきましては、いま申し上げたとおりでございますが、いろいろ港湾をめぐる状況等変化がございまして、私ども日雇い港湾労働者職業紹介、職業安定について努力いたしておるのでございますが、一部なお十分でない点もあるかと思っておるわけでございますが、そういう点の改善について、港湾の事情を考えながら努力をいたしておるところでございます。
  11. 小柳勇

    小柳勇君 全港湾労働組合などの報告によりますと、昭和四十一年法適用後、この労働者手配師の動きなど漸減の傾向にあったが、関係官庁の怠慢と業者の法に対する反対で、いろいろ暴力事件などが発生しつつあるという報告が出ております。具体的にいま資料がいろいろありますけれども、きょうは時間が少ないので、その論議はまた専門委員から論議してもらいます。  次は、第二の問題ですが、これはいま六大港適用されておりますが、本法適用対象港湾範囲拡大について附帯決議をいたしました。法適用後もう四年経過いたしましたが、この法律を六大港以外に適用することに対して、労働省としてどのような努力がなされておるか。
  12. 住榮作

    説明員住榮作君) 港湾労働法適用港湾の決定につきましては、当該港湾の荷役の量、港湾労働者の数、あるいは港湾重要性等々を考えて、港湾労働法適用を六大港にして現在運用をしているわけでございます。その後、いまも申し上げましたように、港湾労働をめぐる状況というものが大きな変化を遂げております。現在総理府に置かれております港湾調整審議会におきまして、港湾労働対策の根本的なあり方について検討が行なわれておる段階でございます。いずれその結論が出ると思いますので、そういうような検討の結果を見た上で対処をしていきたい、こういうように考えておるわけでございます。
  13. 小柳勇

    小柳勇君 港湾調整審議会の根本的な検討結論は、いつ出る予定ですか。
  14. 住榮作

    説明員住榮作君) はっきりした日時は伺っておりませんが、大体十月ごろかと考えております。
  15. 小柳勇

    小柳勇君 労働大臣に質問いたしますが、本法適用対象港湾範囲拡大は、法律ができますときの論議でもずいぶん論争したところであります。とりあえず六大港適用しようということで発足しておりますが、港湾調整審議会が十月に結論が出るようでありますが、私どもは早急に他の港にもこの法律適用してもらいたいと思いますが、いかがですか。
  16. 野原正勝

    国務大臣野原正勝君) 港湾調整審議会で慎重に審議をしておるところでありまして、近く結論が出るようでございますが、その結論が出ましたならば、その結論を尊重いたしまして、適用後の数等もそうした審議会の意見にはっきりと盛られますれば、当然これは尊重して適用を拡大してまいりたいと考えております。
  17. 小柳勇

    小柳勇君 審議会結論待ちのようでありますけれども労働省として積極的にこの審議会にもいろいろ資料を提出してもらって、第二種港などにも適用できるような方向でお考え願いたいと思いますが、その理由は、港湾運送事業法によりますと、一種港、二種港にちゃんと基準がありまして、人員なりあるいはトン数の差はございますけれども基準がちゃんときまっているわけです。一種港には港湾労働法適用しまして、二種港のほうは適用しないと、この労働法のほうでははっきり差がついておるようですから、港湾運送事業法だけでは取り締まりはできぬけれども、それがいま二種港の一番大きな悩みでありますから、港湾労働法適用する方向で、労働省としてもひとつ御努力願いたいと思いますが、第三の問題は、この附帯決議の第三に港湾労働者常用化促進日雇い労働者に依存する割合低減ということが決議されております。現在の港湾労働者常用化実態及び日雇い労働者との割合などについての労働省報告を願います。
  18. 住榮作

    説明員住榮作君) 数字で御説明申し上げますが、四十二年度の月平均で申し上げますと、日雇い港湾労働者就労延べ数は約二十三万人、これに対して常用労働者就労延べ数は百十四万人、こういうことで、その割合は、日雇い労働者依存率というのが一六・八%でございます。それが四十四年度平均で見ますと、この数が、日雇い労働者就労延べ数は十六万、常用のほうは百三十万ということで、日雇い労働者依存率が一一・一%、こういうように、逐年低下してきておる状況でございます。
  19. 小柳勇

    小柳勇君 それは港湾労働法適用の六大港だけですか、それとも全国の港の平均ですか。
  20. 住榮作

    説明員住榮作君) 適用港湾における数でございます。
  21. 小柳勇

    小柳勇君 適用港湾では、そのように日雇いの率が少ないけれども、第二種港などでは五割五割であります。五割ぐらいは日雇い労働者になっておる。それがいま現在の実態ですね。この問題はあとで具体的に例を申し上げます。  運輸省に質問いたしますけれども附帯決議の第五に港湾運送事業法違反業者に対する許認可等について厳重な規制を行なうと書いてあります。港湾運送事業法昭和四十二年に改正されまして以来許可認可事業になりまして、この基準は非常に詳しく基準がきまっております。扱いトン数なり作業によりまして人員がきまっておりますが、これが現在守られておると、厳重に守っておると判断しておられるかどうか、見解を聞きます。
  22. 田中光次

    説明員田中光次君) 港湾につきましても五大港と、それから五大港以外と、大きく分けると二つございますけれども、われわれ主として五大港中心に見ておりますと、大体におきまして関係業者並びに関係行政官庁の御協力も得まして、おおむね――一〇〇%とはいきませんけれども港湾労働法ができまして、それから港湾運送事業法を免許事業に改正いたしましてから改善の方向に向かっていると、こういうふうに考えております。
  23. 小柳勇

    小柳勇君 港湾労働法ができますときの当社労委員会の議事録の中に、これは昭和四十年の四月二十二日、運輸省港湾局長の発言でありますが、この三、三答申は、港湾労働者雇用の安定と港湾運送事業の近代化、それから港湾管理運営の改善、この三つが柱である、この一番初めの港湾労働者雇用安定は労働省の仕事でありますが、あと二つは私どもの仕事でありますから、港湾労働法ができて、これと同時に、私ども労働省と綿密な連携をとって、港湾運送事業の近代化と港湾管理運営の改善に努力いたしますと、ここに発言しておられます。港湾労働法が六大港にだけ適用されておりますが、運輸省基準は六大港だけではないのですね。二種港にちゃんと基準がありますから、港湾労働法適用の港にだけ港湾運送事業法は完全に適用して、その他の港には若干手心を加えていいと考えておられるのかどうか。
  24. 田中光次

    説明員田中光次君) さような考えは毛頭ございません。
  25. 小柳勇

    小柳勇君 運輸省としては、港湾労働法適用の港であろうと、その他の港であろうと、この港湾運送事業法による基準によって完全に監視し、指導していく、こういう見解であると受け取っていいですね。
  26. 田中光次

    説明員田中光次君) 今後、港湾運送事業はいろいろな問題をかかえておりますけれども、安定した労働力確保することは非常に重要なことでございまして、先生のおっしゃるとおりでございます。
  27. 小柳勇

    小柳勇君 もう一問運輸省に。全般的な問題ですけれども港湾運送事業者の監査などを年々実施しておられるようでありますが、いままで三十四年改正以来、港湾運送事業法によりまして、監査の結果戒告とかあるいは注意とか、あるいは認可を取り消すとか、そういう処分がなされたことがあるかどうか。
  28. 田中光次

    説明員田中光次君) 現在までのところ、現場におきまして、行政指導によりまして一般事業者に対して注意をいたしたことはございますけれども法律に基づく免許の取り消しあるいは停止等の処分を正式に行なったことはまだございません。
  29. 小柳勇

    小柳勇君 具体的に問題を進めていきます。港湾労働法適用港湾は六大港でありますが、その他の港湾は現在適用していない。雇用安定ということが第一の課題としてこの法律ができましたが、港湾労働法適用していない港の労働者雇用状態については、労働省としてはどのように把握しておられますか。
  30. 住榮作

    説明員住榮作君) 港湾労働法適用外の港湾につきましても、いろいろ日雇い港湾労働者につきましては、その就労経路の問題あるいは就労秩序の問題等があるわけでございまして、私ども日雇い港湾労働者確保あるいは安定という見地から、安定機関としていろいろ職業紹介の面にあるいは就労秩序の確立の面において、おおむね適用港湾に準じていろいろ努力を重ねておるわけでございます。と同時に、また港湾労働者の福祉のためには、適用港湾その他の港湾を問わず、労働福祉のセンター等を設けまして、港湾労働者の福祉の増進をはかっていくというような努力をいたしております。
  31. 小柳勇

    小柳勇君 港湾労働法適用されておる港には職業安定所があります。そして日雇い労働者は登録いたします。もしあぶれる場合はあぶれる手当が出ます。そして月に一回か二回講習会があって、なれない仕事の者には訓練をする。そういう仕組みになっておる。ところが港湾労働法適用されてないところの港には職業安定所はありません。ここに一つの例ですけれども博多港の場合、常用労働者約千人から千二百人、日雇い労働者が千人から千二百人、ちょうど半分半分ですね、現在。その日雇い労働者を千人から千二百人、大手の企業だけでも十三ありますから、それが雇わなければならんが、その港湾運送事業者はどういう方法でこの日雇い労働者を雇ったらいいでしょうか。
  32. 住榮作

    説明員住榮作君) 安定機関としてもいろいろ努力をしておるのでございますが、博多港の場合は、博多港の水上署の横の道路に青空市場というような状態ができ上がっておりまして、大体三百人、あるいは多いときには五百人というような日雇い労働者の市場ができております。非常に好ましい状態でない事態が発生をいたしております。それをどのようにして正常化するか、こういうことにつきましては、福岡県あるいは福岡の職業安定所と十分現在連絡して、その改善につとめておるところでございます。
  33. 小柳勇

    小柳勇君 大体の実態は把握しておられるようでありますが、そういう実態はいつごろから発生したのでございますか。
  34. 住榮作

    説明員住榮作君) 私の承知しておる限りでは二、三年前からそういう状態が逐次醸成され、現在におきましては、先ほど申し上げましたように、相当大規模な青空市場になっておる、こういうように承知いたしております。
  35. 小柳勇

    小柳勇君 いまおっしゃったとおりに、水上署の横の道路に、最近の平均が一日約六百五十名ぐらいの青空市場ということでありますが、それは合法でしょうか、非合法でしょうか。
  36. 住榮作

    説明員住榮作君) 決して好ましい状態とは考えておりません。
  37. 小柳勇

    小柳勇君 私どもの調べによりますと、大手の十三社の港湾運送事業者が、手配師といわれる者――いわゆる私設職安が四十人ないし五十人程度おりまして、そういう人が都市近郊の相当の距離からマイクロバスなどで手配をしておるようです。約三年ぐらいでありますけれども、その中には嘱託として手配師を名目上会社に雇い、嘱託料を払っておるものもある。しかもその手配師はその日雇い労働者から日に百五十円なら百五十円ちゃんと給料の中から取るわけですね。そういう仕組みになって今日まで運送事業がなされておる。会社に言わせますというと、職安がないし、私どもはもうこの手配師に頼んだほうが一番便利だと言っておる。労働者の諸君はその手配師にたよって仕事をしておる。こういうものは港湾労働法で、ちゃんと職安が登録して、もし仕事がなければあぶれ手当を出すという制度があるのに、また運送事業法としては一種港も二種港もちゃんと基準があって、これこれの、たとえば免許をとるには労働者何名要りますとちゃんと書いてあるでしょう。作業がうんとふえた場合にはそれ以上に日雇い労働者を雇わなければならぬのに、こういうような青空市場で日雇い労働者の手配をするというようなことを三年間も労働省としてわかりながら手を打たなかったということについて一体どうでしょうか、大臣の見解を伺いたい。
  38. 野原正勝

    国務大臣野原正勝君) お話を伺いまして、まことにこれは行政上検討すべきことであります。したがいまして、市場につきまして今後は改善を加えていきたい。これは六大港だけではなく、多数の第二種港湾について同様の同じようなケースがあると思います。至急に対策を講じて善処をいたす考えであります。
  39. 小柳勇

    小柳勇君 県も市も労働省に対して職安をつくってくれないかと、あるいは職安職員をふやしてそこに五名なり十名なり常駐さしてくれないかと、そういうことを要請しておるわけですよ。それに定員の増員もできないとか、あるいは予算が必要だということで職安ができないということは、私どもは地元におって見るに見かねるわけですね。県の職安課長にもこの間会いました。私ども何回か要求しておりますがなかなか労働省がうんと言いませんと言っている。三年間も青空市場で何百人の日雇い労働者手配師というようなことで、この社会労働委員会としても私はこれは看過できないと思いますが、大臣、ことしすぐ、職安はつくっていただくことはできませんか。
  40. 野原正勝

    国務大臣野原正勝君) このことに関しましては、実態をいま十分に調査をしているということでございますから、できるだけ早く関係の機関その他とも協議したいというふうに考えております。
  41. 小柳勇

    小柳勇君 いま局長が言ったように三年間もわかっているのですよ。実態調査なんという段階ではありません。県からも正式に要求しているはずです。ことしももう予算編成期でしょう。どうでしょうか、大臣。このくらいのことはやらなければこの委員会やったって意味ありませんよ。大臣答弁してくださいよ。
  42. 野原正勝

    国務大臣野原正勝君) 職業安定所設置の方向で、至急に検討させたいと思います。
  43. 小柳勇

    小柳勇君 次に、港湾労働法を六大港以外に適用する問題について、この博多港にも港湾労働法適用してもらいたい。それは港湾運送事業者との関連もありますけれども、この港湾労働法ができますときに、港湾局長が長々と衆参両院で決意を述べておりますように、港湾労働法適用するその港に、ちゃんと運輸省としても責任を持って港湾運送事業の近代化と管理運営の厳正を期します、こう言っている。ところが運輸省としてのいま答弁は、港湾労働法適用しなくてもこれは運送事業法の方向は講じますとおっしゃるけれども、やはりそれは完全に適用できません。したがって港湾労働法を六大港以外にも適用することで、さっき大臣の見解を聞きました。したがって、二種港だけでもよいから早急に港湾労働法適用する方向に御検討を……。大臣の見解をもう一ぺん聞いておきたい。
  44. 野原正勝

    国務大臣野原正勝君) 先ほど申し上げましたが、審議会がこの問題について目下検討しているということでございますから、審議会検討結果を待ちまして、できるだけ早く対策を講じたいと考えております。
  45. 小柳勇

    小柳勇君 今度は運輸省ですが、博多港の場合十三の大手とその他にたくさんの会社がありまして、昭和四十年の港湾労働法審議のときの、企業合併をしたりあるいは近代化をいたします、荷役機械も優秀なのを入れさせます、そういうこの速記録にあるようなことがほとんどなされていない。これは二種港だからということもありましょうが、先般大手の一社を本省から行って監査されているようですが、その監査の結果について御報告願います。
  46. 田中光次

    説明員田中光次君) いま先生がおっしゃられました大手十三社のうち、博多港に会社名博多運輸、資本金二千万円の会社がございます。先般本省から係官を派遣いたしまして監査をいたしましたところ、港湾運送事業法の免許基準に定めるところの取り扱い実績に足りないという面が一つ、並びにその取り扱い実績からいきますと、事業計画に定める労働者雇用するに十分でないという点が発見されました。直ちに公文書をもちまして至急これが是正方を指示してございます。
  47. 小柳勇

    小柳勇君 その監査の結果によりまして、あまりよくないので、この会社に対して本省から書面を出されたものを私持っておりますから内容はわかっております。ここで公表されたくないようでありますが、読んでみるとわかります。こういうのは一社だけじゃないと思います。博多港に大手が十三社ございますけれども、一、二社を除いてはほとんどこういう情勢ではないかと思う。たとえば運送事業認可の書面を出すときに、労働者の二十一名とかあるいは四十名とか基準がありますから、その名前を出しますけれども、その出しました名前がもう亡くなった方の名前すら出るということですよ。ただ名前だけ出して、頭数だけ置いておきまして、そうして陸上から海上へ持っていったり、海上から倉庫へ持っていったり、労働者の数もこの基準のようになっていないのがほとんどであるということを労働者の皆さんから私聞いています。監査を厳正にして――監査を厳正にしてもらうということは行政指導を十分にしてもらうということ、そしてけがのないように完全に荷役作業ができるように、それでもうけるように、何も損する必要ございませんから、もしあそこに十三社なりあるいは三十社あって仕事ができないならば、皆さんが行政指導して統合さして完全にりっぱな近代的な荷役作業ができるように、港湾運送事業ができるように指導されるのが運輸省の任務ではないかと考えますが、いかがですか。
  48. 田中光次

    説明員田中光次君) おっしゃるとおりでございまして、たまたま今回監査によりまして違反業者を発見したのは、先ほど申し上げました博多運輸一社でございますけれども、なおそのほかの会社についても問題があるかと存じます。したがいまして、われわれとしましては、今回の事件を決してやみからやみに葬るというようなことはとりませんで、公表いたしまして、それから業界を通じましてこういうことがないようにという厳重な警告を、先ほど申し上げました本省からの通達のほかに、九州海運局並びに博多支局のほうに厳重にやるようにすでに指示してございます。
  49. 小柳勇

    小柳勇君 この法律改正は昭和三十四年になされましたけれども業者の大多数が戦前からずっとこの運送事業をやっている人であって、あの人たちの心の中には、あの戦争の混乱のときにわれわれは日本の運送事業、海上輸送事業に貢献したではないかという誇りを持っているわけです。したがって、あそこに海運局の支局がありまして役人の皆さんは非常に苦労しておりますけれども、その役人の皆さんの言うことも聞かないようなプライドと覇気を持っておる。しかし荷役作業はなかなかもうけがない、損するというようなことで基準も完全に守っておられぬのだと私は思います。だからもう少し本省からも力を入れて、これは博多港だけではないと思いますけれども、ほかの二種港にもそういう現状があると思いますから、この際に、第一種は監査されましたが、第二種のひとつ博多港だけでよいから二社ばかり特にことし監査してもらいたいが、いかがですか。
  50. 田中光次

    説明員田中光次君) 二種業者以下につきましては、地方海運局が監査するたてまえになっておりますので、九州海運局のほうにその線で打ち合わせ中でございます。なるべく御趣旨に沿うように取り計らいたい、こう考えております。
  51. 小柳勇

    小柳勇君 これで質問を終わりますが、私は博多港だけを例にとりましたが、博多港だけではないと思います。六大港港湾労働法適用の港にもまだ相当問題があるようであります。これは私ども法律をつくりましたときに非常に矛盾がありました。まず根本的な矛盾は、三・三答申はしたが、運輸省業者の考えるものと非常に違ったわけです。だから今日も港湾労働法が全面的に適用できないものと思いますけれども、そういう法律をつくりましたときの矛盾がいまもなお現実に生きております。現地では。そういうものがいまの港湾運送事業の矛盾なり労働問題の問題となって発生している。願わくば港の暴力団などの介入によりまして流血の惨など起こりませんように、そういう願いをこめながらきょうは質問いたしました。  私がきょう質問いたしました点をひとつ十分御考慮の上、今後両者とも行政指導なりを十分にしてもらって、港湾運送事業がますます発展して、また労働者が十分安心して働けるような職場をつくってもらいたいことを希望いたしまして質問を終わります。
  52. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 他に御発言もなければ、本件に対する本日の調査はこの程度にとどめます。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  53. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 速記を起こして。     ―――――――――――――
  54. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 次に、社会保障制度等に関する調査議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  55. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、まず質問に入ります前に第一にお伺いしておきたいことがございます。  私、前にいろいろ質問しましたけれども、政府は何かと言いわけのようなことが多くて納得できないものがたくさんございます。まず第一にお伺いしたいことは、国の責任について基本的な考え方を伺っておきたいと思います。行政庁の行政指導が誤って、それによって損害が発生したときには、国は被害者に対してどういう責任を負うことになるのでしょうか。それからお伺いしておきたいと思います。
  56. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 国の行政指導が誤まっておりましたために一般の国民に被害を与えたような場合、国の責任の問題でございますが、そういう場合には単に民事訴訟とかあるいは行政上の特別の訴訟手続等にまかせるべきもの、そういうものだけで処理すべきものでなしに、国が私は社会的にあるいは政治的に責任を負う場合もなければならない、こういうふうに考えます、
  57. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、いろいろ問題がございますけれども、国に法的責任があると思うのです、森永事件にしても。ところが、一般論は責任があると思うけれども、その責任に対して国は何かとのがれておる。だから、いまの大臣の御答弁によりますと、行政上の責任があった場合にはこの責任はとるべきである、それはどういうふうに……。もう一回その点を明確にしてほしい。
  58. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) いろいろの事柄、行政百般にわたりますので、それぞれ行政上の指導上の誤りの態様に応じまして国が表明すべき責任の態度というものも私は違うと思いますけれども、しかし国は国民の信頼を受けて政治や行政をやっているという立場からいたしますれば、単に、先ほども申しましたような司法上の手続のみをもってこういう問題を処すべきではなしに、事と状況に応じて、それなりの政治的なあるいは社会的な責任もあり得るし、さらにまた行政的に将来に向かって改むべきものは勇敢に改めるというような行政上の措置をとると、こういうことも必要なことであろうと考えます。
  59. 藤原道子

    ○藤原道子君 一般論はその程度といたしまして、私は、当然国に責任があるという立場から、いろいろ御質問してみたいと思います。  まず、きょうは、森永の過日の質問の続きといたしまして、具体的にお伺いしてみたい。事件を起こした森永の企業責任は当然でありますけれども、それの解決にあたりまして、いわゆる五人委員会の意見書等を見ましても、道義上の責任と習俗上の責任を森永は負っておるが、いまだに裁判中であるために法律上の責任はとられておらず、また解決をしておりません。しかし企業責任だけでなく、一方、国においても責任がないとは言えないのではないかと思うのです。なぜなら行政措置による監督、指導が誤って行なわれた。また毒物及び劇物取締法の不備、食品衛生法の欠陥等をあげて食品行政の担当者として責任を認めている。私はずっと衆参の速記録を読ましていただきました。そうすると、担当者がひらあやまりにあやまっている。ことに与党の議員から鋭い質問がなされておる。こういうことは当時の衆参速記録で明らかになっております。それについて政府はどのような責任をとられるか。事件は食品衛生法の改正や、省令、次官、局長通知の改正があっただけで責任転嫁はできないと思いますけれども、大臣はどのようにお考えになりますか。
  60. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 森永の粉ミルクに砒素がまじっておったために、それを食用に供した乳幼児に被害があったという事件のことは、私も厚生省へ参りまして聞いております。しかしその経過、過程につきましては、お答えができるほど十分な知識がございませんので、それぞれ関係局長から答弁をさせたいと思います。
  61. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 食品衛生法上のことについてお答えいたしたいと思います。  森永中毒事件を契機といたしまして、いろいろと先生方からの御意見もあり、食品衛生法の改正をしてまいりましたことは、いま藤原先生がお触れになったとおりでございます。  その内容でございますが、四点ほどございまして、まず第一点は、食品添加物の定義を改めまして、化学的合成品の規制をいたしたことでございます。それから第二点といたしまして、これら基準または規格が定められました添加物については、それを徹底させるためにその基準及び規格を収載する食品添加物公定書を作成することといたしました。それから第三点といたしましては、乳製品の一部及び化学的合成品たる添加物の製造及び加工を衛生的に管理させるために、専任の食品衛生管理者を設置することとして、このような不幸な事件が再び起こらないように十分に管理させることにいたしたのでございます。第四点といたしましては、食品及び添加物の標示規制を強化いたしました。特に添加物につきましては、食品添加物の標示を必要とするように改めた点でございます。  それから食品監視員の監視体制につきましては、かねがね先生のほうからも御指摘のあったところでございますが、この体制を強めるために、まず人員増加ということにつきましていろいろ努力してまいったのでございますが、事件後、ちょっと数字が食い違っておりますけれども、四十一年末におきましては、地方交付税の標準団体、人口百七十万の標準団体におきまして三十六名という数字でございましたが、それが逐次ふえてまいりまして、今年、四十五年では四十四名ということで、一応不十分ながらも監視員の増員に関する体制の強化につとめてまいった、このようなことでございます。  その後、いろいろと森永の砒素中毒の患者さんに対する、ことに昨年、四十四年の岡山の公衆衛生学会を契機といたしましてのこれからの事柄につきましては、すでに前委員会でもってあるいはその他いままでに御説明も申し上げたことでございますので、先生御案内のとおりだと思いますので省略させていただきます。
  62. 藤原道子

    ○藤原道子君 そういうことだけ……。ほかへ移る予定ですが、先に食品衛生の問題が出ましたから、その面でお伺いいたしますが、いま食品衛生法を改正して云々ということが出ておりますが、これも委員会で、政府の約束によって改正がなされたわけでございますが、そのときに出されました改正要綱という中には、いろいろ食品衛生法の改正の要旨というものが委員会へ出されておりますが、そのときに、いろいろありますけれども、三点では食品営業者従業員の健康診断を毎年一回以上行なうことを義務づけること。それから都道府県または保健所を設置する市の食品衛生監視員の設置に要する費用の全額を国が負担をすることというふうになっていたんですね。ところが、出てきたときには要旨はこうでございましたが、法案として出てきたときにはこれが変わりまして、載っていない。衆議院のほうでは国庫負担を三分の二というのも落ちてこちらへ参りました。それで参議院で修正いたしまして、国の補助を二分の一補助をするという規定になっていたと私は記憶いたしますが、それが現在では交付税のほうに入っているんですね。それはどういう意味でそういうふうに変わったのか、法律は国が二分の一を補助するとなっているはずなんです。ところが実際には交付税でまかなわれている。これはどういうわけでそういうふうになったのかということをお聞かせ願いたい。
  63. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 食品衛生監視員の充実のために人件費等の補助金の制度を考えたらどうかという御指摘でございますが、御承知のように、食品衛生法の発足当時は、法律の中の人件費の補助二分の一ということで、食品衛生監視員に対しまする補助金制度というものはあったのでございます。ところがその後、国の方針といたしまして、人件費等の補助金制度については整理削減という方向が打ち出されてまいりました。一方、食品衛生監視員を充実強化しなくてはならないという必要は、これはいなめなかったのでございますが、昭和二十六年に地方財政平衡交付金制度に切りかえるということが、全般的に見て監視員の充実強化をはかる上から有利であるという判断がなされたのでございます。したがいまして、昭和二十六年から平衡交付金制度ということによってまいったところでございます。これは先生御案内のとおりだと思います。さて、昭和三十年に森永事件が発生いたしました。それを契機といたしまして、さらに食品監視制度というものの充実強化、その基盤の監視員の増員ということが一つの大きな眼目として取り上げられましたことは、私ども十分に承知しているところでございます。したがいまして、これらについて、その目的を達するために交付税制度によるのが有利かあるいは補助金によるのが有利かということについての検討を命ぜられた、また私どもとしてもこれを検討するということであったかと思うわけでございますが、いろいろと私どもといたしましても検討いたしました結果、もとの補助金制度に再度切りかえるということよりも、当時の情勢といたしましては、食品衛生監視員を充足するためには、やはりいまの交付税制度によるほうがより有利であるという判断をいたしたのでございます。まあ結果から申しましてどちらがよかったかどうか、にわかには断じがたい点があるかと思いますが、先ほど数字をあげましたように、逐次交付税の中におきまする食品衛生監視員の人員というものは増員をされてきておるという現状でございます。
  64. 藤原道子

    ○藤原道子君 いまどのくらい全国で監視員がおりますか。それから業種がどれだけあって、一人の監視員が年に何回ぐらい監視に回っているか。
  65. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 政令監視の延べ施設数でございますが、これは昭和四十四年末現在におきまして、施設数で一千九百三万七千カ所ございまして、これに対しまして、監視の実施数は三百十九万二千件でございます。そのもととなっている監視すべき食品関係の営業施設数は二百八十五万八千カ所で、このうち許可を要する施設は百五十三万六千カ所となっております。  それから監視員の数でございますが、一番最近の数字で申しますと、四十三年末で五千四百九名ということになっております。  それから業種的にどうなっておるかと申しますと、まず、監視実施率で申し上げますと、乳の処理場が六五・二%、これは年間十二回監視することになっております。それから乳製品の製造業が三四・五%、それから六回監視することになっておりまするマーガリンの製造業あるいは食肉製品製造業、これが七七%あるいは七五%という数字でございます。それから氷雪製造業でございます。これは年間二回ということでございますが、七四・五%、それから食品販売業、これが四一%、これは年二回監視する規定になっております。  以上のようになっております。
  66. 藤原道子

    ○藤原道子君 私が伺いたいのは、この森永の問題が起きたときに、当時の速記録等の答弁によりますと、科学的分析というようなことが監視の項目に入ってなかったからまことに申しわけなかったというようなことで、法の改正をするというような答弁になっておるんですが、その後改正されたはずです。それで、いまではそうした科学的分析、そういうものについては励行されておるんですか。
  67. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) その後、地方衛生研究所及び保健所の監視の能力を高めるために、種々の科学検査器具あるいは測定器具といったようなものについても財政援助をし、また技術的な指導をしてまいっておりまして、決してまだ十分とは言えませんけれども、少なくとも添加物というものについては、その後十分な検査をしておるところでございます。  それから数字で申しますと、保健所で行ないましたものと地方衛生研究所で行ないましたものと、軽微なものは保健所でやっておるわけでございますし、多少高度の技術を要するものは地方衛生研究所でやっておるわけでございますが、昭和四十三年の数字で申しますと、いわゆる収去試験といたしまして、保健所では全国で収去した検体の数は十七万九千四百でございまして、そのうちで、先生御指摘の理科学試験を行なった検体数は八万三千三百四十五でございます。それから細菌検査を保健所で行ないましたものは十万八千九百六十でございます。なお、地方衛生研究所でも同様に検査をいたしておりますが、四十三年の数字といたしましては、収去し検査した検体数が約七万三千七百三十八ということになっております。
  68. 藤原道子

    ○藤原道子君 その点は詳しく聞いておると時間がなくなりますから……。このときの答弁によりましても、監視員が工場を回っておりながら、この森永事件が発生するまで知らなかった、そういうことが問題になって、それでこの法の改正ということになってきておるわけでございますから、それがはたしていまやられておるかどうかということを私はもっと知りたかったわけです。  それで、もう一つ納得がいきませんのは、国の補助金では増員がむずかしい、だから交付税にしたというようなことですが、なぜ国の補助金では増員ができないのか。法律ではそうなっておるのに、これが不利だから交付税に切りかえたんだというようなことは私納得いかない。国として人命尊重とか国民本位とかというようなことを言っておりながら、必要な、人の命にたいへん重大な影響を及ぼすこの食品衛生監視員、これが国の補助金ではふえていかないというのはどういうわけか。そうすると、二分の一を補助したのでは地方がそれに応じないから交付税にしたというわけなんですか。あるいは国のほうで衛生監視員に対する費用を出さないのですか、この点を伺いたい。簡単明瞭にお答え願います。
  69. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 現在の法体系から見ました場合に、形式的には効力を同じくしておる地方交付税、それと食品衛生法第二十六条二項に規定されております地方食品衛生監視員に対する国庫負担の条項といったものは、一見矛盾抵触しているというふうにも見えるのでございますけれども、この場合、一つは交付税法が食品衛生法のあとから規定された法律であるということ、それから食品衛生法は発足当時すでに補助金制度として人件費の補助をしてきたところでございますけれども、そのような情勢から、いわば後法優先と申しますか、交付税のほうに切りかえたという歴史的事実経過もございます。したがいまして、おことばを返すようですけれども、問題は、現実の問題としてそういった経過を踏まえた場合に、どちらがより食品衛生監視員の充足に有利であるかという判断の問題であろうと思います。その両方から、私どもといたしましては、法律的に見ましてもあるいは現実の問題といたしましても、交付税でやっていったほうが有利じゃなかろうか、このように判断したわけでございます。
  70. 藤原道子

    ○藤原道子君 大臣にお伺いしますが、法律には国庫負担二分の一となっている。だけれども、こうやることが有利だからといって現在では交付金でおやりになっている。そうすると、法律は要らないわけですね。厚生省の考えでどうにでもできる。もし、どうしても国が増員の金を出さないというならば、それは厚生省の要求が弱いのでしょう。これはどういうふうに解釈したらいいのですか。
  71. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 法律では補助金制度になっておるわけでありますけれども、地方に対する人件費の補助金というものは、だんだんその単位等が削られる一方の傾向に当時ございまして、したがって、補助金制度だけで突っ張っていたのでは、実際補助金の絶対額というのは減る一方になる。こういう状況のもとに、他方においては地方交付税交付金制度というものができまして、各公共団体における機能別の人員等に関連して交付税の金額がはじかれる。こういう法律ができましたので、実質的に食品監視員に対する補助金の増額をはかるためには、むしろ後法の地方交付税交付金による計算方法に乗り移ったほうが実質的の補助金の増額、また監視員の確保ができる、こういうふうな状況でございました。したがって、食品衛生法における監視員の補助金に関する条文というものは、同じ地方における機能を補助するところの地方交付税交付金によって置きかえたものと解釈して、現在は地方交付税交付金による計算方法をとっておる。なぜならば、御承知のように、国の税収入がふえるにしたがいまして、地方交付税の三二%という割合が減らない限り、地方交付税交付金の総額というものはふえてまいります。したがって、交付税交付金による算定によりますと、毎年ある程度の地方監視員に対する補助金の額、また監視員の計算人員等もふえるという状況にありますので、私どもといたしましては、そのほうの法律にのっとって今日処しておる、こういうことに私は聞いております。
  72. 藤原道子

    ○藤原道子君 私、納得いかないのですよ。――一時間しか時間くれないものですから、こんなことでやっていたのでは商売になりませんよ。いずれあらためてこの点は問題にしたいと思います。  そこで、この間の七月三日の当委員会における薬務局長の答弁の点をお伺いしたいのです。薬務局長はこの間、具体的に言えば森永ドライミルク事件で、この事件を起こした森永が企業として責任を負うとかいろいろあったのですけれども、薬務局長は知らなかったということも言っていらっしゃるし、松野製薬ですか、毒物劇物のあれに対するお答えにしても納得のいかない点が多々あるわけなんです。その点についてひとつ御答弁を伺いたい、こう考えるのです。  この間、毒物劇物の中には雑物ですか、廃棄物は入ってないというようなことを言われたのですが、この毒物劇物取締法の提案の説明のときに、大臣から「工場、事業場から毒物、劇物の横流れが行なわれ、凶悪な犯罪の手段に用いられる危険が多く、保険衛生上安全を期しがたい」、そういう意味から本法を制定するということが述べられておる。本条の「目的」におきましては「毒物及び劇物について、保健衛生上の見地から必要な取締を行うことを目的とする。」とうたっているわけです。ところが、この間のお話では、日本軽金属から出すボーキサイトによるアルミニウムを製造した廃棄物はこの毒物劇物の取り締まり対象にならないのだ、こういうことを言っていらっしゃる。そうすると、こういう工場の廃棄物に砒素が入っていようと、どんな毒物が入っていようとも取り締まりの対象にならないと、ただ機械的に法律の解釈、これを強行してきたことがこういう結果を起こしたのではないかと思うんですが、これはどうなんですか。毒物劇物の改正等も考えられておるでしょうけれども、それはどういうふうにしておいでになるか。あくまでも工場の廃棄物はこの適用に入らないという解釈でお進めになるのかどうか、この点を明らかにしてほしいと思う。とにかくはっきりこの廃棄物の中には六%の砒素が含まれておる、こういうことをうたっておるんですね。にもかかわらず、これは毒物劇物取り締まりには触れないのだ、野放しでいいのだ、こういうようなふうに聞こえるのでございますが、それはどう解釈したらよろしいか。いまもいろいろ問題になっておりますけれども、これはどれだけ入っていようとも法の対象にはならない、だからかってに処分してもよろしいという解釈でございますか、この点をお伺いしたい。
  73. 加藤威二

    説明員(加藤威二君) 最初に、この前の私の答弁で、先生御指摘の日本軽金属から廃棄物が出まして、森永乳業に渡りますまでの間に数カ所の会社等を経由いたしておるわけでございますが、その中の一つに松野製薬という大阪の会社でございますが、松野製薬株式会社というのが一つの経由されておる会社としてあるわけでございます。医薬品の会社がこういう毒劇を含んだものを森永のほうに、直接ではございませんけれども、譲り渡しておる、非常にけしからぬじゃないかという御指摘があったのでございます。そのときに、私、実は松野製薬という薬品会社が森永事件に関与しておるということを承知していなかったのでございまして、その点まことに申しわけなかったのでございますが、その後調査いたしました結果、この松野製薬というのは、名前は製薬ということでございますが、医薬品のメーカーではございませんで、工業薬品のメーカーであったわけでございます。工業薬品のほうは薬務局の所管外でございますので、そういうことで知らなかった点については非常に申しわけなかったのでございますが、この松野製薬は直接薬務局の所管の会社ではないということだけを申し上げておきたいと思うのでございます。  それから第二点の、要するに毒劇法では、こういう廃棄物等は相当の有害な物質を含んでおっても毒劇法の対象にならないかという御質問でございますが、前にも申し上げましたように、毒劇法では急性毒性ということをねらいとして取り締まりをやっておるわけでございますが、ただしかし、そういう工場等で毒物劇物を取り扱っておりまして、それを工場外に流すという場合に、これは毒劇法によって規制がございます。やたらに猛毒なものを流してはならないというようないろいろな規定はございます。ただ、問題はこういう毒劇物をよそに売るとか、持ち出すといった場合に、そういうものの取り締まりの対象になる毒劇物というのは、これは毒物劇物の化合物またはその製剤ということに制限されておるわけでございます。ただ、毒劇が入っておる不純物というのはこの法律の対象になっていない、こういうことになるわけでございます。それについて、しかし不純物であろうとなかろうと、毒劇が含まれて危険なものであれば、これは毒劇法として取り締まるべきではないかという御意見もあろうかと思いますが、ただ、これをやりますと非常に範囲が広がってまいるということでございます。非常に卑近な例を申し上げて恐縮でございますが、たとえばたばこでございますが、たばこの中にはニコチンが四%くらい含まれておる。そのニコチンは毒物でございます。しかし、たばこは毒劇物の化合物でもなければ製剤でもございません。毒劇物を含んだものでございますが、そういうものも全部毒劇物ということになりますと、これは相当取り締まりという面でいろいろの支障が生じてくる、こういう問題もあるわけでございます。そういうことでなかなか広げるということは、化合物あるいは製剤をより以上に、とにかく毒劇物を含んだものを全部毒劇法の取り締まりの対象にするということは非常に問題を含んでおるわけでございます。私どもとしては、むしろそういう点について、それを受け入れる法、たとえば食品衛生法のほうで取り締まる、あるいは公害関係の大気汚染の防止法、あるいは水質保全に関する法律、こういう公害関係法律あるいは食品衛生法、あるいは薬事法もございますが、直接人間が飲んだり食べたりする、そういうほうで防ぐほうが効果的ではないかと考えております。
  74. 藤原道子

    ○藤原道子君 詭弁ですよ。砒素はちょっとなめても死ぬんですよ。だから基準がきまっておるんじゃないですか。だけれども、たばこに例を――私がたばこを吸うから例にとったんでしょうが、そんなものと砒素を一緒くたにして答弁するのは詭弁だと思う。第一、毒物劇物の取締法を提案するとき、工場、事業場から毒物劇物等の横流れが行なわれる云々ということを当時の大臣がはっきりうたって提案しておる。しかもこの工場から出す廃棄物の中に、はっきり工場側が、この中には砒素が六%含まれております、それでも差しつかえないかどうかという伺いを立てているんじゃないですか。ところが、それは関係ない、法律のたてまえは化合物とか何とかきまってしているんだから、その中には入らないのだ、こういう解釈、こういうことでいくからいままで各地にいろいろな問題が起きているのです。工場の廃棄物から起こっている。だからそれは公害のほうでやるべきだ、そんなばかなことは納得できないのですが、私の納得のいくような説明をしてください。
  75. 加藤威二

    説明員(加藤威二君) 毒劇法におきましては、先ほども申し上げましたように、毒物劇物がその製造所あるいは営業所、あるいは店舗から外に飛散したり漏れたり、流れ出たり、もしくはしみ出るというようなことについては、それを阻止するような必要な措置を講じなければならぬというような規定もございます。それから廃棄する場合については、これも政令で基準をきめて、それに基づいて廃棄しなければならぬ、そういう規定はあるわけでございます。したがって工場の外へ流れ出たり、あるいは廃棄するというような場合には毒劇法で取締まっておるわけでございます。これは製剤であろうとなかろうと取り締まっておるわけでございます。この森永の事件にありましたように、毒劇を含んだ一つの不純物、これは廃棄するわけではないわけでございます。これをほかに売るとか持ち出すという場合に、それについて毒劇法の規制をするかどうかという問題でございます。これについては、先ほど申し上げましたように、あるいは先生なかなか御納得いただけないかと思いますが、いまのたばこの例は適切でないかもしれませんけれども、私の申し上げるのは、それをやりますと非常に対象がふえてきて、なかなかこれは行政的にもそれを把握することが非常に困難であるという問題があるわけでございます。そういうことで、なかなか行政上毒劇法の取り締まりの線に乗っけてくることがむずかしい。したがいまして、そういうものについては、問題は人間に害がなければいいわけでございますから、たとえば食品でありますれば食品衛生法のほうでいろいろな基準を設けて、食品として体内に取られる場合にそういう有害なものが入らないようにということで、食品衛生法のほうで基準をきめていただく。薬であれば薬事法のほうでそういう基準をきめていく、あるいは空気とか水というものはそれぞれの関係法律で、公害関係法律でチェックしていくということのほうがよいのではないかというぐあいに現在考えておるわけでございます。
  76. 藤原道子

    ○藤原道子君 それは、あなた方の答弁したことはみな出ているから、あなたの言ったことはみな知ってますよ。それならば、こうした廃棄物は従来どおりの取り締まりでよろしいですか。払い下げるときはどこへ払い下げてもそれはいいですか。廃棄物は、これはどういうふうに解釈しておりますか。
  77. 加藤威二

    説明員(加藤威二君) この日本軽金属でやっておりますような、こういう例というのはレアケースだそうでございまして、いまではほとんどこういうものを日本軽金属においても外に売ったりなんかはしていないということを聞いております。  それから、問題は当時の食品衛生法の食品の添加物の中に砒素を入れちゃいかぬという規定がなかったということのようでございますので、そういう規定もちゃんと入っているということでございますので、こういう事態が起こるという心配はほとんどないというぐあいに考えておるわけでございます。
  78. 藤原道子

    ○藤原道子君 厚生省は、法律の文面どおりに行なって、広くそれが国民に害を及ぼすのだというところまでの思いやりがないと思うのです。だから速記録を見ても、当局はいろいろと申しわけやら、頭を下げる答弁ばかりしているんです。とにかく明治四十五年にこの法律ができて以来ずっとこの解釈でしていて、さらにこれが二十五年ですか――二十五年の十二月一日のこれは速記録ですけれども、提案するときに、当時の大臣もこういうふうな提案のしかたをしている。実際においては工場からの廃棄物がそのような状態で横流れをしておると。それによって起こった今回の悲劇である、こういうふうに考えると、行政上大いに反省しなきゃならない、そしてまた責任が私はあるんだと、こういうふうに考える。  それから、いま、松野製薬は工業薬品だから私のほうの管轄ではない、だから知らなかった、こうおっしゃるのですけれども、私がいま通産省へ、きょう出席してほしいといって連絡しましたら、これは衆議院の何々委員会が二、三あるし、その関係は厚生省でございます、こういうふうな連絡があったんですね。そういう向こうの返事なんです。私がこの前言いましたように、洗かん剤としても断わられ、さらに陶器染料としても断わられ、それを製薬会社が受けて、そして製薬会社が第二燐酸ソーダでないものを第二燐酸ソーダとして入れたらしい。ところがいろいろ食品衛生のほうで云々と言われたけれども、森永へ入れたものも、これが食品衛生監視員ですか、これが適正に働いていればチェックできた。ところがそのときの答弁、これも速記録の答弁によりますと、そのときには分析調査というようなものが指導要項ですか、職務の中に入ってなかったからやらなかった、これは申しわけない、申しわけないできょうまで過ぎてきている。ところがまた局長は、松野製薬は工業用の製薬会社だから私は知りませんでしたと、通産省にいえば、それは厚生省のやはり係だと、これは一体どう解釈したらいいのか。この点が一つと、いま一つは、そうした洗かん剤にも陶器にも、両者のほうから拒否して断わってきたものをさらに製薬会社がつくって、しかも第三燐酸ソーダというものを第二燐酸ソーダとして森永へ入れた。その製薬会社は何ら処分の対象にも何もなってない。松野製薬はその後どうなっているんですか。
  79. 加藤威二

    説明員(加藤威二君) 私のほうにおきましては、先般の先生の御質問がございましたので、大阪の府庁を通じてこの松野製薬なるものを調べさせたわけでございます。そうしましたら、その返事といたしまして、これは医薬品の製造会社ではない、工業薬品のメーカーであるという返事が参ったわけでございます。その報告に間違いないといたしますれば、少なくとも所管は厚生省薬務局の所管ではございません。工業薬品のメーカーであるといたしますれば、これは明らかに通産省の所管でございます。通産省がそういう返事をいたしましたのにつきましては、この森永ミルク事件全体について、これは厚生省の問題だから通産省の関知するところじゃないという意味であったかもしれませんが、松野製薬株式会社をほんとうに通産省が調べて、工業薬品のメーカーであるかどうかということを調べた上での返事であったとすれば非常におかしいと思うのであります。それから、松野製薬につきましては、私どもも問題の経緯についていろいろ調べてみますと、先生御指摘のように、いろいろおかしい点もあると思いますが、一応これは薬務局所管の会社の問題でございませんので、薬務局長として松野製薬の処置がどうのこうのということはこの場では申しかねますけれども、調べた限りにおいては、いろいろおかしい点があるという点は先生の御意見と全く同じでございます。
  80. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、事は森永ミルクに関連した問題ですから、松野製薬の砒素を入れた第二燐酸ソーダがこういう悲劇を起こしているということになれば、その取り締まりその他があるいは通産省かもわからないけれども、厚生省としてこういう人命をそこない、いまだにこういう悲劇を継続している事件に対して松野製薬の状態を知らないということはない。関連しているんです、主犯なんですから。そういう点は、ただ大阪に聞いたらそうだったというようなことでは少し親切げがないと思う、責任感が足りないと思う。自分の業務範囲だけやればいいんだというような考え、お役所のなわ張り根性といいますか、そういうもので方々に問題が起きているんですが、松野製薬の現状とか、松野製薬に対する処置等についてあるいはこれが通産省ならば、話し合って調べて知らせる責任がある。食品衛生法のほうでやるべきだというさっきの答弁もあったけれども、そういう食品衛生法のほうではそれが手が届かなかった。ばかをみたのは国民じゃありませんか。これはいずれにしてもお役所の私は責任だと断ぜざるを得ないわけでございまして、大臣どうですか。
  81. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 私は、静かに聞いておりますと、藤原先生のおっしゃることはたいへんよく理解できるわけでありまして、毒物劇物取締法という法律があり、私はその法律の全部についてはつまびらかにいたしておりませんけれども、とにかく毒物劇物というものを法律上指定して、その取り扱いについて規制が行なわれている一方、食品衛生法というまた受ける法律がございまして、その口に入るものについて危険なファクターが入っていないかどうかということを監視をする仕組みになっておるにもかかわらず、御指摘のような砒素事件が発生しておったということは、その二つの法律あるいはその他の法律関係もあるかもしれませんが、法律制度に盲点があるに違いないと私は考えます。また法律に盲点がなくても、先ほど冒頭に藤原さんお尋ねになりましたように、食品衛生監視員というものが五千人余りあるようでございますが、私はいつも心配しておるわけでありますが、そのうちの専任者というのは一千人にも足りない九百何名ということであり、また兼任にしても、兼任者を加えて五千有余名であって、それが法律、政令が要求する食品等に関する検査延べ回数というものは千九百万回かなんかを監視しなければならないことになるわけであります。これは食品関係の営業所の数というのは何百万軒であって、千九百万軒ではありませんけれども、業種業態ごとに政令では一年間に何回の監視を行なうべきであるというようなことを期待をした規定もあるはずでありますので、したがって、監視を要する延べ件数というものは、たしか一千九百万件以上になるわけでありますのに、いまの五千人の監視員体制ではその六分の一ぐらいしか実際の監視ができない。これは重点主義でやるわけでありますが、そういう監視体制にも至らぬ点がある結果がはなはだ不幸な事件を起こした。その森永砒素事件というものはやや特異なケースでございまして、いま私が申しました点が整備され完備されておればはたしてそれが防げておったかどうかは別といたしましても、私は、法律上の盲点あるいは監視上の至らぬ点があるからこういうことができたと考えるわけでありまして、したがって、あれじゃない、これじゃないということを言うよりも、どうしてこういう事件が起きたかということで、私ども自身が法律の盲点をさがし、また監視体制の充実を期するということで、先生はじめ国民の御心配にこたえるべき課題であると私は思うわけであります。これらのことにつきましては、過ぎたこととはいえ将来のこともありますので、私はさらに関係の当局を督励をいたしまして不備を補い、また監視の十全を期するような措置を今後に向かってはできる限り講じてまいる姿勢をとりたいと考えております。
  82. 藤原道子

    ○藤原道子君 大臣、本気でやってください。  次にお伺いいたしますが、森永粉乳中毒事件の補償等に関する意見書というようなことで、いわゆる五人委員会における意見書の最後の章に、厚生当局に対する希望として、「本件の入院患者は、今なお全国に三百名近くいるということであるが、厚生当局はその地方衛生当局と緊密に連絡して、これ等入院患者に対して何らか行政指導によって治療経過及び入院等につき、早急に適当な措置を講ずるよう進言する。」とあります。これに対して厚生当局はどのような行政指導をとってきたかをお伺いしたい。これが当時の五人委員会資料でございますけれども、簡単明瞭に御答弁を願いたい。
  83. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 三百名の全国の入院患者というのはいつの時点でございますか。
  84. 藤原道子

    ○藤原道子君 この五人委員会が最後に厚生省へ訴えて、昭和三十一年三月二十六日にその資料によって厚生省が通達を出しているのですね。
  85. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) わかりました。どうも失礼いたしました。  それで、前後いたしますが、厚生省といたしましては、さっそく患者の診断基準並びに治療指針の作成を日本医師会のほうに依頼いたしまして、そしてその結果を――これは三十年の十一月八日のことになりますが、すでに各都道府県に通知して、患者の確認と診断につとめたのでございます。それからさらに、患者実態を把握するために、昭和三十一年の三月二十六日に「森永粉乳中毒患者の精密検診について」という表題の通知を出しまして、各府県ではその通知に基づいて精密検診を実施いたしております。その結果でございますが、要治療者が九名、要観察者が二十六名、再検者が四十一名、それから診断がつかず保留された者が十四名、合計九十名でございます。その後も各府県におきましては要観察者の検診などの実施をしております。  また、費用の点につきましても、森永においては、患者から申し出のあるものについては森永の負担で検診を行なっているということが別にございます。  このようにいたしまして、現在までに――現在といいますか、昨年の秋までに森永が実施いたしました患者数は三十名でございます。  以上のような経過でございます。
  86. 藤原道子

    ○藤原道子君 ところが、一度精密検査を簡単にしてそれでもう打ち切りになった。その後、後遺症問題について森永ドライミルク事件の後遺症有無をめぐっていろいろ問題になっているようですけれども、その状況はどのようになっているんでしょうか。資料によれば、森永から昭和三十一年の十一月十二日付で厚生省の公衆衛生局長あてに「森永粉乳中毒の精密検診実施後の措置御願」として、被災者代表の要望とあわせて厚生省あてに提出されているんです。ところがこれに対して厚生省当局は、その必要がないということで精密検査をしなかった。ところが、今回急に後遺症の問題で精密検査をするというふうになったことが私には納得がいかない。森永が三十一年厚生省にあてて出している中で、「更に精密検診の結果現在迄の処後遺症等と診定された患者はありませんが、受診者中には精密検診の結果如何に不拘、現症状は明らかに後遺症なりとして不安を申出でられ主治医等におかれてもその診定に苦慮されて居られるやも仄聞して居りますので之等後遺症に関する解決を計る点から別に斯界の権威者によって」精密検査をしたいと思うが、厚生省のあれをお伺いするということを申し出ているわけなんです。これは森永と被災者との共同の会議できまってお願いを申し上げたわけでございますが、これについてその必要ないというようなことを言われているんです。ところが、きょうになって急にまた精密検査というようなことになったことが私には納得がまいりませんので、御説明を願います。
  87. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 昭和三十一年当時、いわゆる砒素中毒の後遺症の問題についてもいろいろ専門学者の御意見もお聞きいたしまして、一応あの段階では後遺症は考えられないという御意見でございましたことと、それから、実際上から申しましても、健康診断の道は各関係の都道府県とも開かれておったのでございますけれども、その後次第に病院を訪れて診断を受けられるという御希望の方も事実上減ってきておるというその後の経過もございました。あの時点では、後遺症は考えられないということであのように判断したものでございます。
  88. 藤原道子

    ○藤原道子君 いや、そのときに後遺症は心配ないからやらなかった、ところがきょう急に精密検査というようなことを言い出して問題が起こっているようでございますが、それはどういうわけか。それからそのときに必要がないと判断したのは、後遺症などは考えられないと思って取り上げなかったんですね。ところが今日問題になっているんです。そうすると、その判断にも誤りがあったんではないかと私は思います。そうして今回急にこれをやろうとする考え方と、それからそのやり方についていまお伺いをしているわけです。
  89. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 今回、いわゆる砒素中毒の後遺症の有無ということについていろいろと世間的な不安、疑問があるわけでございますが、その事の発端となりましたのは、昨年の秋、大阪大学の医学部の教授であられる丸山先生が、森永の砒素中毒患者のその後について、十三年目の森永中毒患者、そういったような題で医学的な観点から見ました森永の砒素中毒の患者さん方のその後の状況調査された結果を発表されたことが発端になっておりますが、その中で丸山教授自身、砒素中毒の後遺症という判断をお下しになっているわけではないのでございます。しかしながら、少なくとも当時森永の粉乳を飲まれた方の中からいろいろとからだの障害、故障を訴えておられる方があるということもまた事実でございます。したがいまして、私ども三十一年に下しました判断が誤っておったとは思っておりませんけれども、事実は事実ということで、これらに対しましてはやはり慎重に調査、検査してまいる必要があるということで、今回百三十万円の調査研究費を支出いたしまして、それらについて詳しく調べていただく、このようになっておるわけでございます。
  90. 藤原道子

    ○藤原道子君 じゃあ、あなた方の判断が間違っている。いまも病気で、森永砒素ミルクを飲んだ子供に故障があることはあなただって認めるじゃありませんか。それは後遺症です。だからそういうことを森永は心配して、森永のほうからそういう不安を解除し、そしてこれにありますように、もしこれを飲んだことによって故障があった場合は将来とも見ると、森永ははっきり言っているんですよ。それで森永が精密検査をあなたのほうにお伺いを立てたら、その必要はない、こう言っておきながら今回――十五年たったんですよ。十五年たったきょう、また急に精密検査をやらざるを得ない、それでその費用が百三十万円、これは一体どういうわけなんですか。精密検査は一人に――いまも「守る会」のほうでやっておられるようですけども、一万五、六千円かかる、精密検査すれば。それを百三十万円で調査するというんですか。この前もちょっと聞いたと思うんですけれども、そのときの答弁がほんとうかどうか。それから新聞にちょろっと一人一万五千円くらいというようなことが出ていたという報告を聞いたんですが、私は見ていないんですけれども、それらの調査のやり方とその費用、こういうものについてお聞かせください。
  91. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 先ほど三十一年の後遺症に対する判断のことで多少ことばが足りませんでしたが、三十一年当時の砒素中毒の患者に対しての後遺症の有無につきましては、当時としては考えられないということでございましたが、昨年の丸山教授の発表に端を発しまして、いろいろとからだの障害をいまもって訴えておられる方もあるという事実もございましたので、その新しい事実に基づきまして、私どもといたしましては判断しなくてはならない、早急にその点に対して結論を出さなければならないということで、いまその検診、調査実施いたそうとしておるところでございます。  それから百三十万円の件でございますけれども、これはまず第一歩といたしまして、あくまでも第一歩といたしまして、これらの精密検診を行なう、健康診断を行なうについての基準的な方法というものの確立をすることを目途としておるものでございます。
  92. 藤原道子

    ○藤原道子君 だから、そこにもあなた方の見通しの間違いがはっきりあらわれておる。それと同時に、今度のやり方について、やはり家族の人たちとの間に意見がだいぶ食い違ってきておる。結局、臨床学だけではわからないというので、いろいろ学会のほうからも政府に申し入れがありますね。これは日本公衆衛生学会の理事長の染谷さんからの申し入れですけれども、これは十二月二十八日――四十四年です。三日間、岡山で開催した第二十七回日本公衆衛生学会の総会においての一般議題として、十四年前の森永砒素ミルク患者はその後どうなっておるかという発表があって大きな社会反響を呼んだ。本学会としては中毒事件の疫学調査並びに対策に関する委員会というものを設けた。それで、これに対してはやはり恒久的追跡調査を含む対策機関を早急に整備確立することを要望しますというのが出ておるのですね。これは四十四年の十二月二十七日。それからさらに、これについて日本公衆衛生学会中毒事件等の疫学調査並びに対策に関する委員会というのができておる。そこからもあなた方に対して、これはぜひ臨床だけでなく、この疫学の方面も含めて追跡調査をしなければならないという、いろいろ私たちの頭の下がるような内容を具備して申し入れてあるわけです。そうしてまたざらにことしの四月七日に金澤で開催された第四十回総会の決議に基づき具体的な行政措置を要望されておるわけなんです。これらを無視して、そうして一方的に岡山に十六人委員会とか十七人委員会とかを設けて、そうしてこの学会の申し入れ、注意等を無視して急にこれをやらなければならない理由はどこにあるか。臨床だけでなく疫学的な立場から追跡調査が必要である、このりっぱな権威ある学会からの申し入れ、これを無視して急に、岡山には資料があるだろう、だから岡山でやらせるのだ、こういうふうなやり方が私は納得いかない。ほんとうに森永砒素ミルクの子供たちの運命を御心配いただけるならば、こうした学会の意見も尊重して、この学会の人たちの代表をも入れて何々委員会やらということでおやりになったほうが納得する。しかも「守る会」の親たちの中には、今度の十六人委員会か十七人委員会の中には、後遺症はない、心配ないと断言したお医者さんたちが六人入ってるんです。その中には森永の顧問的な立場に立ってらっしゃるお医者さんもある。私は、名前をあげろといえばあげますけれども、これはまあ御遠慮いたしますけれども、そういう構成で一つの気持ち、方針を持っておやりになるのは、やはり意図的な考えがあるのかというふうに家族が考えるのはあたりまえだと、こう思うんですがどうですか。
  93. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 四十四年の秋の学会に基づきまして、その後疫学調査をする必要があるということで、疫学調査を進めていることは、これは私も承知しております。しかしながら、この結論は、実は二年がかりでもって調査していこうということで、まだ結論は出ていないと承知しております。十分にこれらの疫学調査につきましても、事柄が事柄でありますだけに、その結果につきましては、私どもとしては尊重してまいりたいと思っております。  さて、岡山県に委託いたしまして後遺症の調査実施するというやり方の問題でございますが、これにつきましては、私どもといたしましてもできるだけ厳正中立の立場からやっていけるようにということで、担当課長を現地に派遣いたしまして、「森永ミルク中毒の子供を守る会」の方々ともお話し合いをいたしております。また地元岡山県の衛生部長も再三にわたって「守る会」や協力医師団との話し合いを持っておるはずでございます。また厚生省のほうからも担当部長についていろいろとその辺の事情については連絡させ、こちらからも指示をしているところでございます。したがいまして、「守る会」の御意向を無視するというつもりはございません。何とかそこでもってお話し合いをしていただいて、すべて客観的に結果が評価できるようにしていただきたいということがわれわれの基本的な態度でございます。したがいまして、今日まで最終的にはまだ結論が――合意には達していないようでございますけれども、できるだけ「守る会」の御意向を配慮して、円満に事が運ぶようにいたしたいと、またそのように望んでおるわけでございます。
  94. 藤原道子

    ○藤原道子君 ところがね、あなたの御答弁とだいぶ食い違った点があるように思うんです。岡山県衛生部は厚生省の委託により森永ミルク被災児の検診を行なうと、岡山県粉乳砒素中毒児調査委員会も発足すると聞いている。そして私も岡山へ行っていろいろ調べてまいりました。ところが、後遺症調査と「守る会」の方々が岡山県の衛生部炎との会談で確認をしたものがある、衛生部長との間で。「守る会」と、それから森永砒素ミルク中流被災児後遺症調査班という人と、それから衛生部長。これをあっせんしたのは、厚生委員会委員長をしておる河崎さんという県会議員があっせんをして、そこで会議を開いて、それで結論に達している。にもかかわらず、厚生省が強引にこれを無視して強硬に調査実施するように衛生部長に指示しているということも、私の耳には入ってるわけです。  その中で確認事項として――これは公開質問状としてお手元に行ってるんじゃないですか。全部読めば長くなりますけれども、この中にはすでに二、三の小児科専門家から、このことについては悲観的な発言をしておりますと。また疫学調査については公衆衛生学会の専門委員会においてその研究方法につき討論がなされておる段階でありますと。したがって、いまここで急に、十五年もほっといて、疫学のほうからさっき申し上げましたような申し入れがあるにもかかわらず、ここで強行されるということがどうも納得がいかないというようなことも話し合っておりますね。  それからここで一番問題になりますのは、調査研究予算、この点がだいぶ問題になっている。これについては衛生部長は足らなければ途中で打ち切るようなことはしないで、引き続いて調査をする、診断をしていくということをいっている。  それから砒素ミルク中旬被災児後遺症調査研究班ですか、すでに御承知のように、岡山協立病院、水島協同病院、それから下津井病院、同仁病院等において実施され、今後も予定されております。今回の研究医療実施機関からこれら病院が除外されている理由は何か。あるいは総合病院でなければならないとの御意見も聞いておりますが、十五年間にわたる間、被害児の日常の発達とその生活をよく観察してきたすべての医師の協力とその判断こそが重視されなければならないのではないか。かつて総合病院の診断のみによって判定されたがゆえに今日の不幸な状態を招いたとも考えられる、この点またもや同じ誤りを繰り返すのではないかというようなことがいろいろ審議された。  その結果、確認事項として、調査委員会は現在準備の段階であり、結成されてはいない。この調査は疫学調査を含め、追跡調査を行なわねばならないと考える。しかし今回は被災児の現時点での健康状態調査するにすぎず、これによって何らかの結論が生まれるかもしれないが、そのような調査方法は非科学的であろうことを認める。――これは確認事項ですよ。  今回の検診は後遺症の有無の判定は行なわない。またこの検診結果により厚生省が独自に後遺症の有無の判定を行なうようなことはないように厚生省とあらかじめ確約し、その危険がある場合は県としても委託を受けることはできない。  それから、委員会の規約案では、会議はすべて非公開となっているが、科学的な討議の場が非公開であるということは非科学性を意味することであることを確認し、もし非公開の条項が今後も残るならば衛生部長自身がこの調査委員会を脱退する。  厚生省の検診予算は百三十万が予定されているが、岡山県内に二千人近い被災児の数が考えられる。予算は明らかに不足している、そのために厚生省と折衝を行なう。  予算理由として検診制限や検査内容の制限は行なわず、また県としては県下の検診希望者全員の検診を行なう予定であり、全員の検診が終了するまで検診打ち切りは行なわず、それまでまとめ、結論等は一切出さない。  実施医療機関については被災児の希望にこたえる形で医療機関の門を広げるよう厚生省とも折衝し、もし制限が加わるものであるのであれば除外理由を明らかにする。  調査委員会の研究班との関連については、調査委員会の研究班のメンバーをできる限り全員迎えるよう検討する。  以上が河崎厚生委員長司会のもとでいろいろ討議されているのです。その中で出た確認事項、これは局長も御承知だろうと思うのです。これらに対してどういうお考えであるのか、これを伺わしていただきたい。とにかく疫学から出ているのを無視して、十五年うっちゃっておいて、精密検査必要なしとして放置してきたこの精密検査を急にやろうとする理由はどうなのか。  それから、いままで見てきた主治医を除外して、そうしていろいろ問題が起こっておるお医者さんだけを含めたメンバーで構成された、こういうことについても私自身納得がいかない。  それから秘密にする、非公開でやる、これはどういう理由でこういうことが指示をされておるのか。こういう点についてひとつお伺いをしたい。私は決してうそ、でたらめは言っておりません。大臣の御答弁を願います。
  95. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 伺っておりますと、たいへん具体的で経緯のあることであって、正直に申しまして私から答えられませんから、そのためにおります局長から答弁させます。
  96. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 先ほどの調査研究班のほうからの要望あるいは確認事項については、私まだいさいを承知しておりませんので、第一点の急に検診をやる理由とおっしゃいますけれども、三十一年以降、事実上後遺症なるものはないのではないかというふうな考え方できておったものでございますから、四十四年の丸山教授の御発表によって、そのような疑わしい事実があるということで始めるということでございますので、その点、中断しておったので急にというふうにおっしゃるのかもしれませんが、経過から申しますと、そのようなことでございます。  それから委員会のメンバーでございますが、これにつきましては、私どものほうからどのような人物を入れろ、あるいはどのような人物をはずせといったようなことについては、指示はいたしておりませんで、あくまで自主的に委員会が構成されているということでございます。  なお非公開のことでございますが、普通、これは推測でございますが、おそらくはやはり委員会の一応の運営の規則と申しますか、申し合わせとして、このような学術の討論会あるいは研究会というような場合には、通常非公開でやっておるものですから、そのような申し合わせでやっておるのではないかというふうに考えております。
  97. 藤原道子

    ○藤原道子君 費用はどうなんですか。
  98. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 予算の面でございますが、検診費あるいは調査費につきましては、今後やはり必要があることでございましたならば考慮してまいりたいと思います。
  99. 藤原道子

    ○藤原道子君 百三十万円という費用の出どころ、発想はどこから出たのですか。この前の精密検査をしたときのことを漏れ承ると、子供の肝臓がどの程度はれているかどうかちょっとさわって、一人の診察に十分か十五分で済ました、この前のとき。そんなことをすれば百三十万円で済むかもわからない。けれども、精密検査をしなかったことで今日十五年経過してなお悩んでいる。こういうことで、今度やるのは非常に学会も重視しておりますよ。いままで主治医が精密検査をやっているのですけれども、何人やっていると言ったか、だいぶやっておりますけれども、この費用は一人どうしても一万五千円ぐらいかかる。一万五千円で百三十万円、二千人として幾ら要るか。こういう費用を出すことなども、申しわけ的な精密検査ではないか、責任のがれの精密検査である、こういうふうに考えますが、どうですか。  それから、この確認書の中に、主治医、いままでずっと診察してきた人も入れてほしい、これも衛生部長は、門をもっと広げてそういう人も入れるといっておりますが、この間ちょっと厚生省のほうのお話を伺ったら、難色のあるような御答弁でございましたが、それは一体どういうふうにお考えでございますか。
  100. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 予算の百三十万円の件でございますが、前回にもお答えいたしましたように、これは一応の予算でございます。その後の情勢の進展に応じましては、やはり必要な検診費、調査費というものは考えてまいりたい。  それから委員会のメンバーについての重ねての御質問でございますけれども、私は、県の実際に状況をよく知っておられる部長さん並びに現地のこの関係の方々の御意見、それによって委員会のメンバーの構成を考えるべきであるというふうに考えております。こちらから、だれだれを好ましくないとか、だれだれを入れろといったようなことについてはこちらとしては差し控えております。
  101. 藤原道子

    ○藤原道子君 それなら岡山県のほうで人選をした人に厚生省は異議は言わない、こういうことですか。
  102. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) そのとおりでございます。
  103. 藤原道子

    ○藤原道子君 それから費用は相当かかると思うのです。二千人ぐらいとして、その半分が精密を受けたとして一万五千円としても、その費用はどこから出るのですか。
  104. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 二千人の方が全部検診をお受けになるか、あるいは最終的にどのようになりますかわかりませんが、いま私ども全国的に健康診断の精密検診の基準というものをつくるに要します費用は、これは当然国から出してよろしい。あとの検診費あるいは調査費というものは、これは相手のあることでございますけれども、森永乳業あるいは関係の責任を持っている企業の方々とその辺は相談し合っていくべきものもあろうかと思います。
  105. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、こういう問題に対して厚生省が冷淡だと思うのです。たとえば補償の問題にしても、五人委員会が出したのですからということでしょうけれども、当時死者が二十五万円です。いろいろ調べてみますと、同じ当時でも、ほかの交通事故の死者とかあるいは紫雲丸事件で亡くなった乳児死亡に対しても、これが三十六万五千円出ているのです、あの低いといって問題になったものでも。これは三十年の十二月の一日なんです。ところが同じ時点で、しかもこれは船で起こった海難事故、森永砒素ミルクは、それを飲まなかったら起こらなかった。飲んだがゆえに死んだ。苦しんだ結果が死んだ。それに対して二十五万円の補償、しかもそれまでに出した費用を差し引いて、実際には十五万円ぐらいしか入らないんですね。こういうことをやるというところに、私はどうも政府の――五人委員会にまかしたのですというけれども、五人委員会を選ばれたのは政府でしょう。紫雲丸事件にしても三十六万円で、あるいは自動車賠償法による、あの低い低いといわれるところでさえ当時三十万円。この事態に二十五万と査定するような政府の愛情なさを私は追及したい。  私は、実はきょうはこの質問は少し健康状態がよくないものですからやめようと思った。ところが、きのう私らのところへ陳情があった。それは、この森永砒素ミルクを飲んでからだが悪くなって九カ月目に小児ぜんそくと断定された。三十六年まで続いた。ところが幼稚園へあがるときに診察してもらったら多発性硬化症だと、こう言われた。まだ、はしかではないなんて言われてガンマグロブリンを使った。ところが、今度は運動障害、言語障害、右手、右下肢が動かなくなった。東京女子大へ入院して脊髄液をとったら、これはどうも撮影等もしたけれどもわからない。四十年に発熱合併症――はしかじゃない、あるいはその後運動障害とかいろいろ起こして、また今度は視力障害が起こった。それで今度は現在虎の門病院に入院しているのですけれども、大小便たれ流しだ。この人は女子医大でもみてもらっているのですけれども、全身麻痺とかいろいろあってずいぶん苦労しているんです。ところが一カ月に六万円から八万円かかる。おとうさんが最近定年退職、一体この八万、六万の費用をどうして払ったらいいでしょう、こういう訴えがある。これを全部言っていればたいへんなことですけれども、とにかくたいへんな難病なんです。ということになると、それはいや多発性何とかだとか、やれあれだこれだと言われるけれども、最初は森永の砒素ミルクを飲んで発病した。それから次々にこういうふうになった。こういう難病に悩む人はたくさんあると思うのです。この間も岡山の子供さんのことを聞いたら、厚生省だか森永だか、どっちだかちょっと忘れましたけれども、あれは先天性奇形多発症で、森永砒素ミルクの関係はないんだ。こういうふうな診断が出ておるというけれども、どういう診断が出ようとも、子を持つ親としては森永砒素ミルクがこれだけ問題になっておれば、それを飲んで病気が起こったら、その後どういう病気の変化があろうともこれは砒素ミルクの結果だと、こう思うのは私はあたりまえだと思う。こういうことをお聞き及びではございませんか。こういう難病に悩んで、ところがそれを十分や十五分の診断でこれは砒素ミルクじゃない、こういう断定を下すところに冷酷さがあるように思う。それは一つのからだにそれによって被害が及べばほかの病気と合併症を起こす素因にもなるんじゃないでしょうか。こういうことはないんでしょうか。一体こういう訴えを起こしたおかあさんたちに対しては、私たちはどういうふうに答えたらいいんでしょうか。私は、きょうの質問をする気になったのはこのおかあさんの訴えがあって、聞けば聞くほど、目も見えなくなった、運動神経もだめだ、大小便も出しっぱなしだ、こういうふうになった子供を入院さして、しかもおとうさんが定年退職だ。十何年の聞こうして悩み悩んでいる人もあるということをひとつお考えになって、こういうことに対する対策は一体どうしたらいいのか。後遺症とか簡単なものだけじゃないと思う。いろんなところへ影響してきているのじゃないかと思うけれども、これはどういうふうに考えますか、局長
  106. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 現在虎の門病院に入院しておられて失禁され、からだが不自由な子供さんのことにつきましては、まことにお気の毒にたえないと思います。また、御両親の心中察するに余りあると思います。この費用も確かにたいへんなことだと思います。砒素の入りました森永ミルクを飲みまして、その後からだのぐあいがずっとおかしいというのは私は事実であろうと思います。ただ、残念ながら私専門家でございませんので、その辺のところがどのような医学上の因果関係がずっとあるのか。いまのところは、直接の因果関係がなければ、おそらくは民事訴訟を起こしましてもこの辺の補償ということについてはなかなか思うようにまいらないのが実情ではないかと思います。もちろんこの辺また道義上の問題は別にございますけれども、ただ私といたしましては、このような場合にどのような措置をとっていったらいいかということは、私環境衛生局長の立場から申し上げれば限られておると思いますが、やはり一般的にこういった難病をしておられる方々の医療費の問題とかあるいは生活の問題とか、救済措置と申しますか、こういったものを一般的に手厚くするようにしていかなければならないと思います。
  107. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、この際医務局長にもちょっとお伺いしたいのですけれども、どうにもならないこういう状態にある人、難病ですね。森永の後遺症だと、これにいろいろからんできますからその判定が出るのはなかなか容易じゃないと思うのです。ということになると、スモンであるとか水俣であるとか、いろいろありますけれども、特にこの問題は子供のことであるし、こうした難病に対して国としては何ら方針はないんでしょうか、難病対策とか何とか。
  108. 松尾正雄

    説明員(松尾正雄君) 難病と申しましてもいろいろなものがあろうかと思います。率直に申し上げまして先生の御質問が非常に難問であるというふうに私は感じとったのでございますけれども、直接いろいろな因果関係等のはっきりいたしましたようなものについては、御案内のとおり、いろいろな手も打たれ始めております。それはそれなりにまた解決すべきだと思います。ただ、いま御指摘の中で、特に子供という問題を御指摘になりましたのは、かりに社会保険の適用をいたしましても全額社会保険負担ということもあり得ない状態でございます。こういう点から、特に子供という表現をお出しになったのじゃないか。これらにつきましては、すでに一部では心臓等につきまして育成医療というようなものでいわば対応できる道もあるわけでございますが、特にそういう回復困難なものというようなものについては残念ながらいまのところはございません。これにつきましては、いわゆるいまの体系でいえば、かりに公費負担というようなことも容易になじまない問題もあろうかと思います。むしろ特定の入院の場合に小児医療というものは、ただいま申しましたような状態から見れば、むしろ研究費の中で特別のくふうをしてみるというようなことも十分考慮されるのではないか。私まだ十分検討いたしておりませんので、常々考えておる個人的な意見にすぎなくなっておりますけれども、そのような感じを持っておるわけでございます。
  109. 藤原道子

    ○藤原道子君 医務局長に難問で申しわけありませんが、こういうものもいるのだから今後難病対策というようなものもひとつ検討していただきたいと思います。  そこで、最後に大臣にお願いいたします。お聞き及びのとおり、非常に大きな問題、いま医務局長からいろいろ御答弁はございましたけれども、大臣もお聞きになって、私が言うのがそうたいして無理な質問じゃないと思うのです。とにかく精密検査をやるにしても、この前のようなおざなりの精密検査では私自身納得いたしません。いままで中毒になってからずっとみてきた医者もいるわけなんです。ところが、ある方面では、あれはどうも左寄りの医者だとか、あれはこうだとかというようなことすら言われる人があるわけなんです。だけれども、私は医者の良心は信じたい。この生まれて何も知らない赤ちゃんに飲ました砒素ミルクが原因である。しかもその砒素ミルクに対しては、私は厚生省に大きな責任があると考えるわけです。それはそれといたしましても、先ほど来質問いたしました毒・劇物に対しての対策、あるいはこの急性毒物のみならず、慢性毒物に対しての扱いの問題等について、この際大臣には責任をもって対処してほしい。それから、森永問題に対しましては、これは薬事法の問題、衛生の問題もあれば食品の問題もあり、医療の問題もございますけれども、いまやらんとする精密検査、これは家族の御納得のいくような方法でというような、局長が言われたことを私は信頼いたします。いまのような対立的な雰囲気でおやりになりましても決していい結果は出ないと思う。やはり話し合いの上で、納得の上で国の貴重な税金を使ってそのよき効果があがるようにひとつ慎重にやっていただきたい。それから、さらに希望いたしますことは、疫学方面からも、こういう学会からの申し入れもあることでございますし、十五年間放置してきた問題をここで急いでちゃっちゃっちゃっとやってしまう、こういうふうな考え方はやはり責任回避のやり方ではないかということがもう大きな問題となっているわけなんです。不信感です。いままで厚生省のやってこられたことに対する不信感、しかも森永の申し入れすら拒否されたということ、そういう点が大きな問題となっておりますので、この際ひとつ納得のいくような、真剣な対策を強く要望いたします。と同時に、森永でも毎回いつまでも森永砒素ミルク、砒素ミルクということを言い立てられることはさぞつらかろうと思う。私は、森永にも責任なしとは言いません。第二燐酸ソーダを長年にわたって使っていたから、そのまま同じ業者から同じ包装で入れられたんだから、これをそのまま使った。けれども、もし慎重におやりいただけるならば、大きな包みをあけるときには、やはり検査をして使っていたならば、この悲劇は起こらなかったと思う。これは政府にも責任がある。その一端が森永になしとは私は申し上げません。けれども、森永としても、できるだけのことはいたしますということをはっきり言ってるんですから、なぜあのとき精密検査をやらせなかったか。なぜこうしなかったかということで、この資料を見れば見るほど、私は申し上げたいことはたくさんありますけれども、いつまでもこれが問題になっていることは、家族もたまらないだろう、不安な気持ちを押さえて生きているわけでございますから、ひとつ慎重にやっていただきたい。先ほど申しました難病対策等に対して、もし解決がつきますならば、いつでも異常が起こったら責任をもって診察ができる、治療ができるというようなことの何らかの方法、あわせまして、森永としても、いま大きな悩みになっております心身障害児なり難病に悩む人たちのためにというようなことで、社会的施設等をこの際思い切っておわびのしるしに寄付をして、そうしてまあ罪滅ぼしの方法をとられたらどうかなどと私はしろうとなりに考えておる。  どうか大臣、意を尽くせない医務局長との質疑でございましたけれども、麻薬問題もいま大きな問題になっているように、ヒロポン以上に危険だといわれているようなものでも、外国ではこれを禁止した例もあるのに、日本はまだこれは禁止されていない。それが高じ高じて大きな社会問題になることは申し上げるまでもないのです。薬というものは非常に大事なものです。こういう点については、いずれ麻薬問題等については次の機会に譲るといたしますけれども、厚生省の責任は人の命を守る、健康を維持していくというところに強い責任ある省だと思います。したがいまして、いつもいつも言うサリドマイドのときにも、厚生省の責任じゃないか、また今度も厚生省の責任じゃないか、あなた方ばかりを責めるようですけれども、責めるのじゃなくて、国民の生命を思えば、使命を十分に果たしていただきたい。必要ならばやはり毒物も急性のものだけでなく、慢性のものにもその対策を立ててほしいというようなことを考えておりますが、大臣の御所見を、真剣なお考えをこの際お伺いいたしまして、たいへん時間をとったようでございますし、ほかの委員にも御迷惑のようでございますから、この程度で質問を終わりたいと思います。
  110. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 藤原先生の御意向だんだんと承りました。非常に広範な問題を含んでおるわけでございますが、私はこの種の問題は、御意見にもございますように、政府が責任のがれみたいなことだけを言っていれば済ませる問題だとは決して思いません。法律の規定のいかんにかかわらず、また法律上の責任のいかんにかかわらず、人の幸福のために行政を推進すべき厚生省といたしましては、こういう事案に処しましても、でき得る限り親切に、かつ誠実に被害者のための計らいをいたしていくべきだと考えることが第一でございます。なお、その上むずかしい問題はいろいろございますが、医療の公費負担等の制度につきましても、あるいは毒劇物取締法等の法体系、薬事法なりあるいはまた食品衛生法なりの法体系並びにその運用の組織などにつきましても、いかなる事態が生じてもカバーできるということは、なかなか複雑であるから申し得ませんけれども、できる限りいろいろな場合を想定して、その不備は補うような、そういう努力を常に払っていくべきだと考えます。きょうは幸いに私もお話をよく承りましたし、その方面の関係の厚生省のスタッフがみなお話を聞いておりますので、私と同じような思いを持ってこういう問題、前向きで処していくように尽くしてまいりたいと考えるものでございます。
  111. 藤原道子

    ○藤原道子君 最後に重ねて申し上げますが、岡山の今回の精密検査は、おそらくこれが最後とあなた方思っているのだろうと思う。したがって、慎重の上にも慎重を期して、この前のような簡単な精密検査と名ばかりのようなことではなく、真剣におやり願いたいことを特に要望いたします。
  112. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  113. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 速記を起こして。  本件に対する午前中の調査はこの程度にいたします。午後二時まで休憩いたします。    午後一時二十八分休憩      ―――――・―――――    午後二時十六分開会
  114. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  社会保障制度等に関する調査議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  115. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最近痛切に感じます問題の一つは、公害の多発、それから福祉行政の強力な推進というようなことが望まれもし、また解決を迫られておるわけであります。ところが、たいへん多くの問題をかかえております厚生省としまして、もう一ぺんこの福祉行政全般にわたって基本的に洗い直してみる必要はないだろうかということであります。その基本的な問題云々につきましては次回に譲るといたしまして、そうした中で、きょうは一つ問題点をとらまえて政府の姿勢をお伺いするわけでございます。  初めに会計検査院のほうにお伺いをしたいわけでございますが、昭和三十八年の検査報告によりますと、厚生年金保険あるいは船員年金保険等のその施設については、すでに年金福祉事業団というものの設立がありますので、その事業団に一切の経常の運営をまかせるべきではないかと、大要趣旨そういう内容であったかと私は思うのであります。そうしたことを中身として、厚生当局に対する改善の意見書が出されております。ところが、その後国会における審議会議録を開いてみますと、昭和四十三年の衆議院における決算委員会に至る左で、どうも改作されたあとが見られない。また四十三年のその決算委員会におきましても、結論は、総合的に年金の積み立てについてはどのように管理をし、どのように運営をするかということを検討してまいりたい、そのように当時の伊部年金局長が回答されておるわけであります。ことしは昭和四十五年、すでにその後二カ年間の経過があるわけでございますが、当委員会はいざ知らず、ほかの委員会で問題になったかどうかわかりませんが、私の調べた範囲内では、この問題についてのするどい検討、また政府がそれに対して改善をしたというような結果の説明がなされている気配がございません。そこで、特にこの外局と申し上げたほうがいいのか、外郭団体と申し上げたらいいのか、財団法人厚生団というものがございます。また社団法人全社連というものがございます。そういうところに委託業務を厚生省としては行なわしている。それはいろいろな事情、経緯等から考えましてやむを得ない措置であったかもしれません。それはそれとして、せっかく年金福祉事業団というものが設立された。一体その辺の関係というものはどうなるのか。  そこで、会計検査院の方にお尋ねをするわけでございますけれども、かって出された改善意見書のとおりその後是正されているかどうか。また、いま私が申し上げている点について、再確認の意味で当時の経緯というものをここで開陳していただきまして、そうしてまたさらにお尋ねをしてまいりたいと、こう思います。
  116. 中村祐三

    説明員中村祐三君) ただいま渋谷先生からお示しがございました会計検査院が三十八年度の検査報告に掲げました改善意見の内容についてでございますが、その中で、確かにいまお話がございましたように、年金福祉事業団を設立いたしまして、その年金福祉事業団の業務の一つとして施設の設置運営ということを掲げておるのに、なぜ現在に至るまで――その当時の現在と申しますと三十九年でございますが、引き続いて従来どおりの委託管理方式というものを踏襲しているかということを申し述べてございます。そこで、この当時の改善意見の内容といたしましては、実は厚生省に対しましてこういう点を改善してほしいという、その点につきましては、実はこの文章で申し上げますと、厚生省のこの施設の設置運営に関する基本方針が明確ではない、これを確立せよという、そういうきわめて抽象的な言い方で言っておりまして、なぜそういう言い方をしたかと言いますと、実はこれも先生すでに御承知のこととは存じますけれども、会計検査院の立場といたしましては、会計経理上のいろいろ検査をいたしました結果不都合がある。そういう会計上の不都合をいろいろ調べていきますと、その原因が会計経理の分野にとどまらず、行政その他の方面に行き渡るというような場合に、ここで改善意見を発しました根拠は、会計検査院法の第三十六条というものにございますが、この三十六条によりますとそういうことが書いてございますので、私どもといたしましては、法律にそう書いてあるのになぜ実際にやらしてないのかということだけでは、これは改善意見を出す立場になっておりませんで、あくまで当時のその委託管理方式についていろいろ契約上の問題とか、そのほか財産の管理の問題とかについて調べた結果不都合があると、それはいま申しましたように、厚生省当局のこの設置運営に対する基本方針、この基本方針と申しますのは、せっかく事業団をつくったのならば事業団にやらせるつもりなのか、あるいはいろいろな事情があって当分は事業団にやらせることがむずかしいと、そういう事情ならば、現行の委託管理方式をそのまま踏襲するにしても、どっちにするか、はっきり基本的な態度を明確にしてほしいと、そこでもし現行の委託管理方式についてそのまま踏襲するとするならば、具体的にいろいろ申し上げてありますが、こういう点について直していただきたいと、そういう趣旨で当時改善意見を申し上げたわけでございます。それでその後この意見を出しました結果、厚生省当局といたしましては、逐次私どもの申し上げました具体的な例につきまして是正をしていただきまして、現在のところは、会計経理の問題としては一応是正されていると、そういう状況でございますので、たびたび繰り返しますけれども、会計検査院といたしましては、ストレートに年金福祉事業団が設立されて、その事務の一つとして、まあこれは全部ではございませんけれども、厚生年金保険の関係、それから船員保険の関係で設立された施設についての運営と、こういうものが事業団でできることになっているわけですが、それを現在に至るまでやらしてないのはけしからぬ、そういう趣旨でこの意見を申し上げたのではなくて、あくまでも現在のやり方について不都合があるので、その一つの原因がそういうところにあるのではなかろうか、こういう意味で実は当時この意見を申し上げたわけでございます。
  117. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 伺っておりますと、たいへん遠慮しいしいおっしゃっているように私受け取れたのですけれども、会計検査院法第一条に、独立機関としてきわめてオーソライズされた、そういう立場を明確に示されていらっしゃるわけですね。そうなりますと、そういうあなたのほうから出された改善意見というものは命令とは違いますので、こうしろああしろというわけには、いまおっしゃられたとおり、いかないかもしれないけれども、やはり会計経理上の問題を通じまして、先ほど述べられましたように、どこかに行政的な欠陥というものもありはしまいかということもやはり含めて御調査になる、これが本来の立場ではないかというふうに理解しているわけであります。ならば、その後、いまおっしゃられました改善されているようであると、それを断定的におっしゃらない、そういうふうに私受け取ったのであります。問題が三十八年初めて表面化したこの厚生団というもの、その前にもあるいは問題があったかもしれません。昭和四十五年の現在に至るまで、確かにいまおっしゃられたとおり、指摘された改善内容については改まっておりますか。そうでなければ、私一つ一つ例をあげてお尋ねをしていってもよろしいと思います。
  118. 中村祐三

    説明員中村祐三君) ただいまの御質問でございますが、三十八年当時に改善意見の内容としていろいろこまごましたことを幾つか申し上げているわけでございますが、その一つ一つにつきましては、これは直ちにではございませんけれども、四十年あるいは四十一年というふうに年号を追いまして逐次改善されておりまして、現在のところは、その当時私どもの申し上げました限りにおきましては、私どもの申し上げた意見どおりに是正されているというふうにわれわれ承知しているわけでございます。――個々について申し上げたほうがよろしゅうございましょうか。
  119. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それでは個々にと申しましてもたいへん多種類に分かれますので、その一、二点例にとってお尋ねすれば大体の概要がつかめると思いますので申し上げますが、あなたのほうで指摘された中に、「施設の運営を委託するにあたって運営収支の帰属を定めないまま事業を執行させている」、「運営に関する経理が適正を欠く」という御意見が一つあります。それから「委託事業のため受託団体に提供する国有財産および国有物品の管理が適正を欠く」、こういう点の指摘もございますね。そして先ほど述べられたように、こうしたいろいろな適正を欠くような、いわゆる疑惑を抱くような問題については「厚生省の基本方針が明確でない」、こう結ばれているわけです。したがいまして、とりあえず、いま私申し上げた一、二の例を通じまして、その後どう一体なっているのか。少なくとも先般当局の方からお伺いしたところによれば、依然としてこの年金福祉事業団においては融資の事業しかやっていない。それでその福祉事業団としての本来の義務もやはり逸脱する面がまだ残されている、こういうふうにことしに入ってから私確認しているわけです。したがいまして、はたしていまおっしゃられたような方向に立って改善されているのかどうか、こういう私は疑問を抱きますがゆえに、この点もあらためて明確にしていただきたい、こう思います。
  120. 中村祐三

    説明員中村祐三君) ただいま御指摘がございましたうちの一点の運営、収支の帰属が明らかでないと、こういうことは確かにその当時の意見で申し上げておりまして、その後これにつきましては、相手方との経営委託契約ですか、これの条文に不備があるということで、その後この経営委託契約が解除されたときには、その契約にかかる清算を行ないまして、資産に剰余が出た場合には、それは国に引き渡すと、そういうことを明確にしたという点がございます。  それからもう一点の、この国有財産の管理がはっきりしていないという点、これは具体的に申しますと、国有の土地にかってに相手方がいろんな施設を建てていると、こういう事態でございますが、これにつきましては、その後逐次撤去したということを聞いておりますので、このいま先生から御指示がございました二つの点につきまして、われわれとしては意見どおりに是正されたというふうに考えておるわけでございます。
  121. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もう一点だけお尋ねをしたいと思います。一番大事なことは、申すまでもなく、被保険者がどういう恩恵を得られるのかというところにポイントがあると思うのですね。その運営というものが、おそらくこの問題について国民に明らかにされていない、こう感じます。たとえば、やはりこれもあなたのほうで指摘をされた「保健、福祉施設として設置した趣旨に則した運営が行なわれていない」、これは非常に大きな問題だと私は思うのですね。先ほども申し述べましたように、本来の業務というのは融資だけに限られたものでないことは法律の示すところであります。検査院としてはいろんな点で、まあ影響等を考えながら意見を述べることを控える場合もあるかもしれませんけれども、では現状としては、いま指摘されたそういう問題まですべて解決されて、きわめて合理的に運営されていると判断なさっていらっしゃいますか。
  122. 中村祐三

    説明員中村祐三君) ただいまの御質問でございますが、実は会計検査の関係で申し上げますと、この財団法人厚生団、それから船員保険会あるいは社会保険協会連合会といったような団体につきましては、国から、すなわち厚生省からは一部の業務についての委託費という名目で金が出ているわけでございますが、ところが法律上、私どもといたしましては、相手方に補助金その他で財政援助を与えているという場合には会計検査院法でその団体を直接検査できるという規定がございますが、委託契約の相手につきましては直接に検査ができない。現実にそういうことになっておりますので、あくまでも厚生省を通じての検査ということになるわけでございます。当時といたしましても、そういうことで直接にはそういった施設についての検査はいたしておりませんので、あるいは具体的な例について申しますと、いささか隔靴掻痒というような感じもせられるかと思いますけれども、それは実はそういう実情からでございます。それでただいまのお話のように、それでは完全に現在のやり方がいいのかという御趣旨かと思いますけれども、これは私どもといたしましても、仮定の問題がだいぶ入るかと思うので、現在年金福祉事業団に――これは全部でございません。一部になるわけですが、やらした場合に、現在よりもよくなるかどうかということは、これはなかなかむずかしい問題で、なかなか簡単に答えの出ないことだろうと思いますので、私どもといたしましては、数年前に、いろいろこういう検査をした結果出てきた状態が、先ほども申しましたように、是正はされておるということにおいて、現状におきましては決してこれで満足だということはなかなか申し上げかねると思いますけれども、現在のところはこれで特に検査院として意見を申し上げる段階ではない。将来また現在のやり方でいろいろ不都合が出たという場合にはその時点であらためて考え直さなくてはいけませんけれども、現在時点ではそういうふうに考えておるわけでございます。
  123. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 では、検査院終わります。  いま大臣もお聞きになっているとおりでございまして、厚生団の歴史をひもといてみると、昭和十六年あたりにさかのぼると記憶しております。まあそれだけに存在理由というものがあったんでございましょう。その後いろいろな変遷をたどりながら現在に至っている、このように承知しております。そうした委託業務をやらしておる一つの団体がある半面に昭和三十六年に年金福祉事業団の設立をされた、この理由はどういうわけでありましょうか。
  124. 廣瀬治郎

    説明員(廣瀬治郎君) 年金福祉事業団は、ただいまお話のとおり、三十六年に設立されたわけでございますが、この目的は、法律に書いてありますように、被保険者のための福祉施設を行なうことと、それから福祉のために融資をするという二つの業務を行なうことが目的になっております。ところがいまお話のとおり、現在はその融資業務だけしかやっておりませんわけでございますが、これは立法当初、国会におきましてもいろいろ議論になった点でございますが、当時の厚生省の考え方といたしましては、発足当初は最も要望されておる融資業務をまず始めると、それからそれが軌道に乗りまして、なお余裕が出た場合には事業団みずから福祉施設の設置運営をするという考えでおったわけでございます。ところが、すでに十年近くになるわけでございますが、融資業務のほうの要望が非常に多いわけでございまして、その資金も設立当初に比べますと十数倍になっておるわけでございます。そういうことで融資の業務のほうが年々事務量が増加してきておるわけでございまして、それに必要な人員も逐次ふえておるわけでございますが、現在の人員をもってしてはなかなかこの融資業務自体も満足に十分に行なうということができない。非常に人手不足だというのが実情でございます。このような状況でございますので、現在のところ、まだ事業団みずから福祉施設を設置運営をするということまではでき得ない状況になっておる次第でございます。
  125. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうしますと、先ほども申し述べましたように、設立の趣旨というものと若干違った方向――いわゆる融資に限定された、そういう方向を歩んでいるのじゃないか。将来については、いまことばを濁されて申されておりますが、今後の基本的な方針としてはどういう一体考え方で臨まれていくのか。また福祉事業団としては、その存在というものは引き続き融資という問題も含んでおりますから必要とされるのか。じゃ厚生団との関係はどう考えていいのか、こういう問題がいろいろ出てまいります。今後に対する考え方というものをひとつ明確にお示しをいただきたい、こう思っております。
  126. 廣瀬治郎

    説明員(廣瀬治郎君) 今後の方針といたしましては、可能な限り法律で示されておるように二つの業務をやりたいと考えておりますが、事業団みずからそういう施設を設置運営をするためにはそれ相当の機構なり、そういう手当が必要でございます。ところが、融資関係の事務の状況は先ほど申しましたが、かりに事業団がみずから福祉施設を設置運営をするということになりますと、またそれ相当の人数あるいは組織が必要になってくるわけでございます。御承知のように、この事業団は特殊法人でございまして、ちょうど国家公務員の定員と似たような扱いを受けておりまして、通常の場合ですと五%削減というワクに入っておるわけでございます。そういうような非常に増員がきびしいという状況でございますので、いますぐ一号業務――最初に申しましたこの事業団がみずから施設を設置運営するという状況は、ちょっと可能ではないんではないかというふうに私は判断いたします。さればといって、福祉施設につきましては、ただいまお話がありましたように、事業団ができる相当以前から、民法法人ではございますが、厚生団と契約いたしまして、先ほどお話がありましたように、いろいろ当初におきましては不都合な点もありまして検査院の指摘を受けてきたわけでございますが、その後可能な限り改善をしてまいりまして、現在のところ、福祉施設の設置運営につきましては厚生団あるいは全社連等におきまして委託経営ということで円満に運営されておりますので、実際に被保険者の福祉ということには阻害になっていないのでございます。
  127. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうしますと、先ほどお聞きになっていらっしゃったとおり、会計検査院の指摘された内容の改善というものはやはり依然として改まっていないと、こう理解してよろしいわけですか。とにかく福祉事業団にやらせるべきだという意見を言われているわけですね、福祉事業についても。少なくとも積み立て金を用いて管理運営に当たる以上は、その辺をやはり十分に踏まえた上で運営していただきませんと、本来の目的、趣旨というものからはずれはしませんか。いや、一体福祉事業団というのは金なしでやっているのかと、端的に言えばそういうことになりゃしませんか。大臣にもその辺の今後の方針というものを伺いたいと思うのですがね。
  128. 廣瀬治郎

    説明員(廣瀬治郎君) 事業団の設置されました趣旨は先ほど申したとおりでございますが、ただ法律的な関係を申しますと、事業団がみずから施設を設置運営をするというのは、現在の法律で当然に設置運営しなければならないということではございませんで、政令で定める施設を事業団が設置運営をするというしかけになっております。ところが先ほど申しましたような事情で、まだ政令でこういうものとこういうものを指定して事業団がみずから設置運営をするというような状況に立ち至っておりませんので、その政令そのものをまだ公布していない状況でございます。その限りにおきましては、まあ法律違反のことをやっておるということにはならないわけでございますが、ただ、まあ定めるべき政令をまだ出していないというそしりはございますが、その政令を定められないその理由は先ほど申したような次第でございます。
  129. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま申し述べている問題に関連しまして先ほど私申し上げたとおり、昭和四十三年の決算委員会においての年金局長の発言、その後改善されておりますか。検討されたのですか、どういう結果が出ておるのですか。
  130. 廣瀬治郎

    説明員(廣瀬治郎君) ただいまお話の、前の年金局長の御答弁、私も速記録で読み、直接御本人にもお聞きしたわけでございますが、前の局長の趣旨は、やはりこの事業団の事業というものは積み立て金の運用方針そのものとも関連があるので、それとの関連も十分に考慮してきめたいという趣旨を述べておるわけでございます。この積み立て金の運用問題につきましては、別のいろいろの基本的な問題がございまして、御承知のように、現在は厚生年金なりあるいは国民年金の余った、将来の給付のためにいただいているお金をすべてこれは政府資金として大蔵省の資金運用部に預託されておるわけでございまして、そのうちの二五%分がいわゆる還元融資ということで直接被保険者の福祉のために使われております。その一部が事業団の原資となって使われておるわけでございまして、こういう状況でございますが、この積み立て金の運用管理につきましては、非常に還元融資の要望が多うございますので、さらにその二五%のワクをふやすとか、あるいはこれは将来の年金給付の原資でありますので、しかも強制的に徴収した保険料でございますので、さらに有事運用をすべきではないかというような基本的な問題がございまして、これらの問題は、政府内部では大蔵省なり理財局といろいろ交渉をしておるわけでございますが、いまだにその最終的な結論が出ていないという状況でございます。したがいまして事業団のやり方につきましても、従来とは特に改善されたという点はないわけでございます。
  131. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いつごろ結論が出るのですか。
  132. 廣瀬治郎

    説明員(廣瀬治郎君) これは、年金積み立て金の管理運用の問題につきましては、厚生省だけできめられる問題ではございませんで、相手のある問題でございますので、いろいろ希望なり、折衝はしておりますけれども、いまのところ、いつごろ結論が出るかということは明確にはお答えできない事情でございます。
  133. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 非常に大事な要素を含む問題だと思うのですね、私が申し上げなくても。しかもこれが去年、ことしに始まった問題ではなくして、相当以前からやかましく国会においても論議されてきたいきさつがあるわけです。にもかかわらず、依然として将来の方向すらも定められないということになれば、やはり極端な見方をすれば、疑惑が生まれてきはしないかというようなことだって考えられないではない。その辺をやはり整理をしながら今後のあり方というものを明確に示すということが非常に大事である。しかも指摘されてからすでに二年近くもたとうとしておりますが、いまだに結論が出ない、先の見通しも立たない。一体その積み立て金の運用管理というものは将来どうあるべきか。それはほかの省にもいろいろ関連がある、言うまでもないことでありましょう。それを十分にわかり切った上での答弁だとは思いますけれども、それにしても時間的にあまりにもおそ過ぎはしまいかと思いますけれども、決してそれはおそ過ぎはしないんだ、またそれによって生ずるであろう障害というものは予測もされない、このようにお考えでございましょうか。
  134. 廣瀬治郎

    説明員(廣瀬治郎君) 前の局長は積み立て金の管理運用と合わせてというお答えをいたしましたが、確かにそういう考え方もあると思いますが、その管理運用の問題は別といたしましても、ただいま御指摘の問題が現にあるわけでございます。それで、先ほど来申しておりますように、私はでき得る情勢になれば、この法律で書いてあるとおり、事業団が融資のほかにみずから福祉施設を設置運営すべきであると思っておりますし、またしたいと考えております。それが現実問題として人員の問題機構の問題、そういう障害がありますので、その問題が解決しない以上、単に政令だけをきめても実際にはものが動きませんので、そういう無責任なことはできないわけでございまして、いまのところもう少し情勢を見守っておるというのが率直なる心境でございます。さればと申しまして、その福祉施設につきましては何もやっていないわけではございませんで、先ほど来お話が出ておりますように、すでに厚生団は昭和十六年から委託契約という形式ではございますが、福祉施設をやってきまして、被保険者の福祉の増進につとめておるわけでございまして、その委託契約の内容なり、そのやり方につきまして不備な点があればできるだけ改善いたしまして、不備のないようにやっていくという、当面このやり方しかないように私は考えております。
  135. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それでなくても療養施設であるとか老人ホームが非常に少ない。昭和三十九年三月末の調べによりますと、これら厚生年金保険等を通じてつくられた施設の数がたしか二百六十七と記憶しております。それで十分だとは言えない。しかもおたくのほうからいただいたこの資料によりましても、収容されている人員等を見た場合、一体これで経営が成り立つんであろうか。まだまだ救いの手を求めているような人々が大ぜいいるのにどうして少ないんだろうかという疑問があります。あとでまた申し上げますが、しかも二百六十七の中にはいろんな施設があるだろうと思うんです。しばしば当委員会においても指摘されておりますように、現状としては決して十分であるとは言えない、そういう状況であるということが言われてまいりました。また厚生省当局としてもそれを率直に認めておられるわけであります。なるほど融資の問題も必要でございましょう。けれども、いま申し上げたように、施設の面についてももっと近代化された、そしてまた望ましいところにつくっていくというのも一つ方法ではないかというふうに判断するわけであります。いまの御答弁を伺っておりますと、いや将来の見通しが立つまではやむを得ないんだ、結論的に申し上げれば、年金福祉事業団というものは今後も融資専門にやっていくんだ、施設関係については財団法人厚生団にまかしてやっていくんだ、こういうふうに受け取れるんですけれども、大臣、その辺いかがでございますか。
  136. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 局長から御説明申し上げたとおりでございますが、年金福祉事業団は、御指摘のように、融資の面と、それからまた直接施設の運営の面と両建ての仕事としてできておりますけれども、これは両方やれれば一番かっこうがいい、法律が当初期待をしておったとおりにいくわけでありますが、御承知のように、公団、公庫が政府と並んで、たとえば定員の削減につきましても、三年間五%の定員削減を受ける。また新規の機構拡張というものは今日の行政機構の簡素化というような面からこの段階で認められないという現実がございますので、そこで二本立てのほうの一方である施設の直接運営ということを無理に年金福祉事業団の仕事に持ち込みますと、私どもは、かえって施設の経営、運営の面が窮屈になって狭まるのではないかということを私は心配をいたしております。でありますから、これは将来事態が変わりまして、年金福祉事業団が厚生団の事業までも吸収し、それ以上の施設の運営事業をやれるような事態がくれば別でありますが、現状におきましては、何十年間の歴史があり、またその仕事のしぶりなどにつきましても、いろいろの方面の御勧告や御叱正のもとに姿を正してきておりますところの厚生団というようなものに施設の運営面は委託さしておくということが現実に即したやり方ではないかと私は思っております。法律の姿に当てはめることが事態をよくするかどうかということにつきまして、これから先の見通しとともに、いましばらく検討さしていただきたいというのが私のほうの気持ちでございます。
  137. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 やはり結論は同じように、当分検討期間を与えてもらいたいという御趣旨だと思うのでありますが、それでは、その歴史がある厚生団、その仕組み、経緯、歴史的背景、一応存じておるつもりでございますけれども、いま大臣が述べられましたように、かえって特殊法人的な性格にすることが運営の面ではたして円滑にいくかどうかということも、おそらく財団法人厚生団としてやっていくほうがより効果が大きいのではないかという意味を含めての御答弁だったように私は思います。そういう現在の状況におきまして、今後とも十分に機能というものが発揮できるという見通しを立てられた上での御方針でございましょうか。
  138. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 少なくとも、この厚生年金の積み立て金による施設の運営をいまのままの年金福祉事業団の仕事に持ち込むよりも、またそういうことをいたしますと、実際いまの人員、機構では年金福祉事業団に対してもいままで厚生団が果たしていたより以上のよい仕事を期待することは私は現実の問題としてはできないと思います。先ほど会計検査院のお話にもそういうことがございましたので、したがいまして、現状においては年金福祉事業団にこれ以上直接運営の仕事を持ち込むということは私は踏み切れませんので、厚生団そのものをさらに充実改善していくような、要すれば努力を続けることによりまして厚生年金積み立て金の社会福祉施設への直接活用というものをはかっていったほうがいいのではないか、現実論としていいのではないかと思います。ただ一つ、ただいまのおことばのうちにもございましたが、いまの厚生団というものは財団法人のままでございますので、もしこれも事情が許されるならば、厚生団というものを、これを特殊法人といいますか、公団公庫のような公の団体に法律上設定していくかどうかという問題は残されるわけでありますが、これにつきましても公団公庫の新設は認めないと、こういうふうなたてまえできておりますので、これをもまた形式上無理をしていくこともいかがかと思われます。現実の面におきましては、厚生団の運営につきましては、会計検査院から御指摘がありました委託契約の内容などにつきましても、会計検査院から御説明がございましたように、これは改善をいたしておりますし、運営上不正の余地がないようなふうに私どもは監督もいたさなければならぬ面がありますならば、さらにこれもいろいろそういう面についても意を尽くしてまいるという前提でありますことはもちろんでございます。
  139. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もちろん不正があってはなりませんけれども、ただこの運営の面で、厚生団が今後さらにより多くの成果をおさめるための活動といいますかをするためには、はたして現状でいいのかということが多少気になるわけであります。少なくとも端的に申し上げれば、この人的な配置につきましても、大体まあ役員といわれる方は元厚生省におられた方であります。それは多年の経験というものを生かす上において、一般的に天下り人事というのとあるいはわけが違うのかもしれませんけれども、そうした問題。それからあるいは全体の運営をおそらく決定するであろうと思われます評議員のあり方、現に現職の厚生省の部課長が入っておられる。こういう当面監督指導に当たるべき当局の方々がそういう中に入って理想的な運営というものが果たし得るのであろうか。これはいままで厚生団に限った問題ではなくして、少なからずそういう心配を抱くわけであります。基本的には、厚生団がどうしても存在理由というものがあって、今後とも大いに発展的に進んでもらいたいという、その当局としての意図があれば、これは大いに育てることも必要でありましょう。そういう大前提を踏まえての私はお尋ねでありますので、そのためにはやはりどこから見ても、大臣もいま御指摘がありましたように、疑惑の眼を持たれたりというようなことのないようにするためにも、なるほど厚生団というのは国においてはなくてはならない存在なのだろうと――おそらく厚生団と言われても知らない人がほとんどではないかと私は思うのです。そうした点からいま私申し上げている。具体的な例をあげてしまいましたけれども、どのようにこれから対応されるおつもりなのか。まず基本的に現在の時点に立って将来という立場に臨んでお考えになっているのかということを述べていただきたいと思います。
  140. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 実は、私も厚生省に参りますまでは、たとえば新宿にございます厚生年金会館というようなものは、あれは厚生省の厚生年金保険事業をやっております、つまり役所の運営だと私は漫然と思っておりました。しかし、厚生省に入って聞いてみますと、先ほどから論議になっておりますように、年金福祉事業団の経営でもなければ、また厚生省の直営でもなしに、財産そのものは国有財産――厚生年金保険特別会計に属する財産でございますが、それを厚生省の役人が直接運営するといっても、これはなかなかうまくはいかないということで、財団法人の形ですけれども、厚生省が直営の形と同じような姿をとって、理事長には厚生省出身の先輩が当たられ、またいまお話のように、評議員というようなものの中にも厚生省の現職の役人の方が入っておると聞いております。そういうようなことで、見方によってはその監督をする者とされる者が一体のような面もありますが、また、見方によっては厚生省が直営のつもりでやっているというような形でありますので、その辺の利害得失、これは世論といいますか、皆さま方のお考えに従って、評議員から厚生省の現職の人を排除してしまったほうがいいというようなお考えがございましたら、これもまた検討いたしました結果、そうしたほうがいいということならば、これはきわめて簡単なことでありますからそういたしたいと思います。ただ、厚生団というものをかりに特殊法人にしたといたしました場合には、これはいいこと悪いこと、いろいろ見方はございましょうが、やはり理事長等のスタッフにはその方面の役所の経験を積んだ方々がお入りになるというのが今日の状況で、現に渋谷先生がああいうことは年金福祉事業団のほうの仕事として当然やるべきだとかりに言われましたその厚生年金福祉事業団の理事長も、やはり厚生団の理事長と同じように、厚生省の役人として長い経験を持たれた方が就任をされているというようなことから考えますと、いまの厚生団をこれは法律に基づく特殊法人に改組すれば、それで万事いいということでもないようにも思いますし、また、現実に厚生団としてやっているのだから、新しい公団公庫をつくるということがなかなか日程に乗っかってこないという面もあるのではないかと思います。しかし、最終的には、できましたら厚生団というものは年金福祉事業団と並ぶ特殊法人といいますか、公団の一つ、厚生事業団というようなものにいたしまして、そういうことに踏み切った場合には、いまの年金福祉事業団というものは、これは施設の直接運営に関する仕事のほうは削って、そうして年金福祉公庫というような、いまやっている仕事をそのまま名前にもそのとおりあらわしたようなものに改組する、こういうことも私の先のほうの構想にあるわけでございます。しかし、くどいようでございますが、形を整えるのに追われるよりも、年金福祉事業団は事業団として手一ぱいの仕事をしておるので、そのほうはそのほうで充実し、また厚生団は過去の経験を生かし、よりよい監督の方法も、足りない面がありますれば講ずることによりまして、それの仕事の伸展を期していくのがいいのではないかというようなふうに考えるものでございます。しかし、私は、固定的にそれでなければならないと、こういうことをきめておるわけではございませんで、各方面の御意向をも承ったり、また厚生省内部といたしましても、こういう機会に検討を尽くしてみたいと存じております。
  141. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 まあたいへん聞きようによっては弾力的な話だとも伺えますし、また聞きようによっては何かわからないというふうにも聞こえます。そんな失礼なことは申し上げたくございませんけれども、結局その辺がきわめてあいまいではないか、率直に言えばそういう結論になりはしまいかということを私はおそれるわけであります。先ほど申し上げましたように、役人がそれぞれの部門に入るということのよしあしは別といたしましても、どうしても必要であるならば、またその人をどうしても求めている、望んでいるというようなことの事情があるならば、これはやむを得ない場合だって当然私はあるだろうと思います。ただ、世間的に言われているように、何かこう天下りといいますか、横すべりといいますか、そういうような批判等を受けない意味からも、また一面においては厚生団自体が仕事の上でやりにくくないような、やはりそういう行き方というものをたどることが一番大事ではないかと私は申し上げているわけです。実は、私、厚生団の方にお目にかかりました。まあ端的に申しますと、遠慮しいしい言われたのですけれども、やはりやりにくいという御意見でございますね。人はそれぞれの見方、考え方というものがありますから、それが全体の意見であるとは私は思いませんけれども、しかし、いずれにしても、多少でもそういうような批判があり、今後のその運営にあたってやりにくいという面を与えるなら、いま福祉行政が非常に大きくクローズアップされてる昨今、早くここで、冒頭に申し上げましたように、もう一ぺん全面的に洗い直してみる必要がありはしまいかという基本に立ち返るわけであります。これは私は一つの事例としてお尋ねをし、今後の政府としての姿勢を正してるわけでありますけれども、その辺はいま明確なお答えをいただきかねたわけでございますけれども、いずれにしても、その辺はもう一歩立ち至って、大事な部門でもございましょう、団体でもあると思いますので、大臣みずからやはりこの厳重なチェックをされるということが私は望ましいんじゃないかと思うんです。まあ冗談まじりにおっしゃったと思うんですが、年金会館が、ホールが厚生省の直営事業であるというような御認識でございましたから、その辺からもうすでにやはり今日のあり方というものについて、はたしてどのように真剣にお取り組みになっていらっしゃるか。それだけ厚生省が扱うのは膨大であるということでしょう。だから、もう一ぺん全部洗い直してみる必要があるんではないか、こういうふうにも申し上げてるわけです。こうしたことをもう一ぺんここで整理していただきまして、その基本的な今後のそういう施設の強化拡充、また融資も当然必要になってきましょう。重ねて明確に、もう一言でけっこうでありますから、やるかやらぬかと、これは現状でいくんだと、あるいは後退するんだと、答えは三つ出ると思うんです。そのうちの一つでけっこうですよ。
  142. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) なかなか一言で申せない問題でございます。後退するつもりは毛頭ございません。私は厚生大臣といたしまして、社会福祉施設はぜひ充実をいたしたいと。そのときその原資をどこに求めるかと。これはたとえば厚生年金あるいは国民年金の積み立て金をみなそこにぶち込んでいいものとも思いません。これは後のやはり支払いの基金でございますので、より確実なる利殖をはかっていかないとあとの年金受給者に御迷惑をかけるという問題もございますので、必ずしも全部が福祉施設の原資でもございませんが、しかし還元融資というようなことにつきましては、これは利息もいただくことでありますから、ぜひ大幅に広げてまいりたい。しかし、あの厚生年金会館というものの施設は、あれは金を借りてやってるものではございませんで、あれはもう全く厚生省がお預かりしている特別会計の所有する国有財産でございますので、その形は変えないわけであります。もしそうでないとすれば、それはああいうものを出さないで、全部金を資金運用部に預けて、そしてもう一ぺん年金福祉事業団にその金を財政投融資で融資して、年金福祉事業団がその金をもってどこかに仕事をさせると、こういうことになるわけでありますので、いまの厚生団がやっております仕事の系統というものはやはりどうしても国有、その運営につきましては国営に近いような形にならざるを得ないというようなことも頭に置きまして、せっかく渋谷さんの御示唆もございますので、要はその国民のために、また社会福祉の前進のために、積極的な方途をいろいろと講じてまいりたいと思います。
  143. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 またその根本的な問題については、毎回毎回機会あるごとに新たな観点からお尋ねしてまいりたいと思いますが、今日までの決算状況についてはどうでございますか。年金局長のほうがよろしゅうございましょう、厚生団の決算状況。非常にうまくいっているのか、赤字になっているのか。
  144. 宮田千秋

    説明員(宮田千秋君) 厚生団の決算につきましては、特に特別な問題はございませんで、順調にまいっておると思います。試みに四十四年度の決算を申し上げますと、収益のほうが六十六億七千八百万円でございますし、費用のほうが六十七億九千六百万円でございまして、差し引きをいたしまして一億一千八百万円の赤字をこの年には生じておりますけれども、この欠損金につきましては、前年度からの剰余金が約二億ございますので、それをもって充当をいたしております。それ以前の年におきましても大体とんとんすれすれくらいの決算をいたしておりますので、特に支障はないものと考えます。
  145. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま御説明になりました昭和四十四年度の決算状況に一億三千万という大幅な赤字が出ておるわけです。これは昭和四十三年あるいはその前の昭和四十二年、ほんとうにわずかな金額でありますが黒字を残しておる、こういう状況が示されております。この赤字になった理由はどういうわけでございましょうか。
  146. 宮田千秋

    説明員(宮田千秋君) これは特にこの年におきまして、病院をただいま七カ所経営いたしておりますけれども、その病院の改築、増築工事などをいたします関係等がございまして、若干入院患者の減少を来たしたという、そういう一時的な特殊事情でございますので、各年にそういうことがあるわけではございません。たまたま四十四年だけの特殊事情でございますから、四十五年度以降においては解消するものであろうと考えております。
  147. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 厚生団が扱われる業務の中にはいろいろありまして、その一、二からお尋ねをしてみたいと思うのですが、たとえば厚生年金会館ホール、先ほども話題になりましたものがございます。現在東京、大阪、もう一カ所はどこでしたか、最近札幌が完成する予定、近くは名古屋にもできる予定である。これにも相当の金額が計上されるわけでありますけれども、そういう資金繰りの点についてはどういうふうになっているんでしょうか。
  148. 宮田千秋

    説明員(宮田千秋君) 札幌等において年金会館を建設いたします建築費のほうは、先ほどもお話のように、国有財産でございますから、厚生省の特別会計において直接負担をして建築をいたすわけでございます。それから中の運営につきましてはそれぞれ独立採算の原則を定めておりまして、会館自体の経理において経理をしていく、かようなことになっております。
  149. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 特別会計からの出資によってまかなわれる、そうしますと現実的に厚生年金会館ホールというものは厚生省がどういうチェックのしかたをされているのでありましょうか。
  150. 宮田千秋

    説明員(宮田千秋君) 国有財産といたしまして、国みずからが財産の管理をいたしますと同時に、施設ごとの個々の委託契約におきまして事業計画を定めあるいは予算を定め、重要な財産を処分しあるいは重要な人事を決定する等のときには一々国に協議をさせまして、厳重にこれをチェックするような契約を定めまして監督をいたしております。
  151. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 なるほどデスクワークの上ではそれはもっともだと思うのであります。現実現場にまいりまして、その管理状況あるいはその国有財産の保全の上から欠陥はないのかというようなところまでしさいにわたって、時をきめてやはり検査をおやりになっておるわけでありますか。それから経理状況についても、当然これは調査をしなければならない対象になるわけでございますけれども、そういう点についても、ただ事前における協議をまつのではなくして、あるいはこちらから出向いて、そういう管理状況というものがどうなってるのかということを当然おやりになっていらっしゃると思うんでありますけれども、その時点においては不都合なことはいままで一ぺんもございませんでしたか。
  152. 宮田千秋

    説明員(宮田千秋君) 申し落としましたが、こちらから出向いて、定時に経理と、それから建物の設備につきましても監査、監督をいたしております。そして、いままで特に不都合ということはなかったように思っております。
  153. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 まあ細部にわたってお尋ねをいたしますと時間もたいへん経過いたしますので、いま抽出的に申し上げてるわけでございますけれども、はたしていまおっしゃられたとおりに運営されていれば問題ないんですけれども、こまかい問題をあげれば切りがありませんが、ホール使用の際に徴収するであろうその料金というものが一般の会館あるいは劇場等使う場合と格差はないのかどうか、その辺は一体どういうふうになってるんだろうかというような問題も当然出てまいるわけであります。やはり国の施設であるならば、国民に対して最大級の便宜をはかってあげるというのがたてまえでございましょう。現実的にはやはり独立採算制をとっておられると思うんでありますけれども、その立場からあまり欠損になることは好ましくないということで、あるいはものによっては一般よりもそういう使用の料金等についても高いものがありゃしないか。たいへんこまかい問題で恐縮なんでありますけれども、その辺はどのようになっておりましょうか。
  154. 宮田千秋

    説明員(宮田千秋君) 利用の料金でございますが、特にこういう施設の性質上安価で快適なサービスを提供するという趣旨から、ほかのこの種のものよりはかなり安い料金を定めておりまして、また、先ほど検査院のほうから御指摘のありました中に、厚生年金の被保険者の場合と、それから被保険者でない場合と同じ料金ではおかしいという御指摘をいただいたことがございまして、直ちに改正をいたしまして、被保険者の場合にはさらに安く、被保険者でない場合には少し割り増しにすると、かようにいたしておりまして、たとえばいまの会館につきまして申し上げますと、ホテルの宿泊料の場合には、被保険者であります場合には一泊千二百円、それから一般の人の場合にはそれに百円を増すと、結婚式の挙式料の場合には、被保険者の場合には千円、そうじゃない一般の方の場合には五百円増しというようなことにいたしておりまして、他に比して安いというつもりでおります。
  155. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 大臣、先ほど私お尋ねする途中で申し上げましたように、福祉施設関係について一覧表を私ちょうだいしてるんですが、歴史が長いわりにはずいぶんお粗末だと思うんですね。たとえば病院施設にいたしましても、ただいま申し上げました会館、ホール等につきましても、それから老人ホーム、そのほかスポーツセンター等々あるようでございます。これはおそらくお金の問題、人の問題というのが必ず出てくるであろうと思いますが、いろいろ問題をいままでかかえながら、ともあれ今日まで経営してきたということを考えてみた場合に、もっとやはり前向きの年次計画というものを立てられて、強力にこれを推し進めるべきではないだろうか。実は厚生団におきましては、厚生省当局がいろいろ計画された方向に従って、厚生団としてはそれを受け、当然受託契約をやるわけでありますから、それを推進しているのにすぎないわけでございますと、こういうような話を聞いているわけでございますが、当然でございますね。そこらあたりに厚生省が、先ほど来から申し上げてございますように、本気になってこういう問題に当っているのか。いままでとかく国民の前に伏せられておるようなこういう施設、こういう何といいますか、厚生団のような組織を通じての施設の強化拡充というものをなぜはかれないものだろうか。一体、年次計画の中には厚生団に対してどういう方針で臨まれておるのか、くどいようでありますけれども、再びそういう疑問を抱くわけです。この施設状況を見ましても、そして収容されておる人数もきわめて微々たるものなんです。老人ホームを見ましても、大体五十人前後ですよ。全体の数からいったってきわめてわずかなものです。これで事足りるとはもちろんされておるわけではないでしょうけれども、それならばそれなりのように毎年の予算編成等にあたって、あるいはここは大いに特別会計を通じて援助してあげなくちゃならんとか、いろいろそういう新しい問題提起というものが毎年々々あるのじゃないかと私は思うんです。そうした毎年あるいろんな課題に対しまして、特に厚生団に限って申し上げておるわけでありますけれども、一体いままでどう取り組まれてきたのかということ。それから今後、こうした実情を見るにつけて、一体どういうふうに対応されていかれるおつもりなのか。お伺いしたいことはたくさんありますけれども、これに限っていると次の問題できませんので、今後に対する大臣の基本姿勢をお尋ねしておきたいと思います。
  156. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 社会福祉施設につきまして、私は、現状はやはり足らざる面があるので、どの金によるかということは別にいたしまして、今後しかるべき機関の中に計画的にそれの充実をはかるような、そういう施策立ててほしいということを役所の中にも命じて作業中であります。しかし、その場合、厚生年金の積み立て金から、いまのような国が直接施設を国有財産として持って、そして社会施設を運営していくという分野は限られておって、それがどうも従来の経緯を引き伸ばしてみただけでは多くを期待できないように思います。どうしても社会福祉施設整備拡充いたしますためには、こういう人さまのお金をお預かりして後に年金として支払うというような積み立て金ではなしに、一般会計から国立なりあるいは公共団体がつくるものに対して補助金を出すなり、あるいは民間の社会福祉法人等がつくられるものに施設費を出し、それのまた運営につきましては措置費をできる限り出すというような、そういう方式が主となると、私は思うわけであります。しかし、この厚生年金の積み立て金というものを全部将来の支払い原資として、有利確実に運営すれば事足りるというものではないと私は思いますので、一定の比率はこれをやはり社会福祉施設のように、その積み立て金を回して、いまのような厚生団方式、細々やっておるような方式、私は満足しないんですが、さらにこれを一体事業団みたいなことにしてやらせれば、それで幅が広がるのかどうなのか、必ずしもそうはならぬと思いますが、そういうことも検討してまいりたいと思いますけれども、この年金の積み立て金の活用による社会福祉施設というものの拡充には、繰り返しますように、私は限界がある、こういうふうに思います。
  157. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いずれにしても、委託契約は大臣と理事長との間で結ばれるんですね。
  158. 宮田千秋

    説明員(宮田千秋君) 社会保険庁長官と厚生団の理事長です。
  159. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 失礼、長官と理事長との間で、それを監督するのは当然厚生大臣でございますね。したがって、その契約の内容いかんによってはいかようにでも変更ができるという、言うなれば、一方においては聞こえのいい弾力的、一方においてはへたをすると変な間違った方向へいかないとも限らない、そういう盲点があるような気がいたすわけであります。したがって、先ほど来、大臣が特殊法人の問題等からめて模索されているようなお話しぶりでございます。けれども、やはり委託契約一本だけでは、はたしてこの国の事業をやらせる上において適格であるとはどうしても考えられないわけなんです。別に委託契約の中身そのものが不正があるかどうとかという問題よりも、万が一ということを絶えず私どもとしては考えなくちゃならない。あるいはいろいろな解釈の方法によっては、悪く言えば曲げて解釈されないとも限らない。たった一片のそういうはたして契約そのものが、それは民法上の効力を持っているだろうと思うのでありますけれども、一体それではたして合理的な運営というものがなされるであろうかということに多大の疑問を抱くわけであります。しかし、現状としてはやむを得ない、やはりしばらくの間はこういう契約ということを土台にして、厚生団に対しても今後従来どおりの仕事をやらしていくのか、私は念を押して確認のためにお尋ねをしておきたい。
  160. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 私は、未来永久にこれが一番いいとは思っておりません。おことばを返して恐縮でございますが、かりにいまの厚生団というものを特殊法人に直して、そうして厚生事業団法というものをつくりまして、法律に基づくその機関にいたしたといたしましても、それに経営させる厚生年金会館であれあるいは病院であれ、老人ホームであれ、それらの施設が国からの出資としてしまうことはできません。それは国民からお預かりしておりまする掛け金でございますので、それはやはり会計が財産として持つものでございますから、いまの厚生団との間に行なっている委託契約を、今度は新しく法律による厚生事業団というものをつくった場合には、それとの間の国有財産の法定委託というような形、法律なり政令なりで国の財産をその事業団が運営するタイプをこしらえてやるということになるわけでございまして、法律的には性格は異にいたしますけれども、事の本質については全く変わってしまうということはないと思いますので、その辺のことも考えまして、決して私の考え方を固執をいたすものではございませんので、皆さんのお考え等も十分承りながら、事態に即して物事が発展するような行き方に、今後とも何らかの機会をとらえつつそういうふうにいたしてまいりたいと思っております。
  161. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最後に一括してお尋ねをしたいのでありますが、これは全然問題点が違います。衛生行政の六法を見ておりますと、法律の中にたくさん――たくさんと申し上げたほうがいいと思うのでありますが、政令の未公布がございます。精神衛生法の中にもございますし、清掃法の中にもございますし、薬事法の中にもあります。あるいは食品衛生法の中にもあります。どうして未公布のままにしておかれるのか。今後どういうふうにこれを取り扱われるおつもりなのか、これをお尋ねしておきたいと思います。
  162. 村中俊明

    説明員(村中俊明君) ただいま御指摘されました精神衛生法の関連の中で、政令が現在未公布の状態にあるものは三点ございます。  第一点は法の第六条の二にあります非営利法人の設置する精神病院に対する国の補助の基準を定める政令でございます。  この国の補助の基準を定めることが政令にゆだねられておりますが、これが現在御指摘のように未公布。第二点は、同じく第十二条に、精神衛生センターに関して必要な事項を定めるということが政令にゆだねられております。これが第二点。  第三点は、同じく精神衛生の三十二条の二の第三項に、一般患者に対する医療費の審査、支払いの事務を社会保険診療報酬支払基金以外のところに委託しようとする場合の委託先を定める政令、これが政令にゆだねられておりますが、現在これが未公布。大体この三点だと承知いたしておりますが、これらの点については、立法の際に、将来こういう問題について政令を制定する必要が生じた場合には、いつでも発動できるようなという態勢をとったものだと考えております。  第一点の非営利法人の設置する精神病院に対する国の補助金制度は、当初あったのでございますが、御承知のとおり、昭和三十五年に医療金融公庫が設置されまして、非営利法人あるいは民間の病院に対する融資の制度ができました。三十四年までは非営利法人についても補助金の出た時期があったのでございますが、それ以降、厚生省医療機関を除きまして、民間病院については医療金融公庫の融資の対象になって現在に至っております。こういうふうな実態から考えまして、現時点では、実効上一応法の精神が生かされているというふうに私ども判断をいたしております。なお、これは将来の問題として不測の事態が出てくるというふうな場面には当然考える時期があろうかとも考えております。  第二点の精神衛生センター等に関する必要な事項のきめでございますが、これは公衆衛生局長の通達をもちまして指示をいたしておりまして、現在、御承知のように、全国で二十カ所ほどの精神衛生センターがありまして、これが局長通達による基準と申しますか、それによって運営されているわけでございますが、今後運営の様子を見ながら、政令できめる必要があるかどうか、こういう問題も検討したいと考えております。現時点では局長通達によって処理をされているわけでございます。  第三点の医療費の支払いにつきまして社会保険診療報酬の支払基金事務所、これは各都道府県に一カ所ずつ現在ありまして、ここを通じて実際には医療費の支払い事務を行なっております。現時点では、これについてそれほど問題もないと判断しておりますが、今後さらに通院医療の件数が相当普及して伸びていくというふうな時点で、さらに都道府県一カ所では不便であるというような時点がくる場合には、この問題についても前二者と同じように考える必要があろうかとも考えますが、一応これらの状態はそれぞれの実態に応じた形で処理をしているわけであります。
  163. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 清掃法。
  164. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 渋谷先生御指摘の清掃法関係は、法第十八条に規定する国庫補助についての政令の定めがないではないかという御指摘だと思いますが、屎尿処理施設につきましてはございますが、ごみ処理施設について定めがないということでございます。このごみ処理施設整備につきまして、補助金をどのように考えているかという現在までの経過をごく簡略に申し上げますが、また補助金の額についてごく簡略に申し上げますが、昭和四十二年度を初年度といたしまして、清掃施設整備緊急五カ年計画を策定してまいって、少なくとも昭和四十六年度末におきましては、特別清掃地域から排出されるごみのうち、可燃物の七五%を焼却処理するようにいたしたいということを目標として、ごみ処理施設整備をはかってきておりまして、これに対しまする補助金は、昭和四十五年度におきましては十一億円という額に達しておるのでございます。一方でこのように補助金制度がありながら、一方では政令においてその定めを怠っておるということは、非常にその点平氏が合わない点でございますけれども、厚生省といたしましては、このように非常に膨大な資金量を要しておりまする、しかもごみ処理施設という最も生活環境に基本的な施設に対する補助金というものは少しでも多いほうがよろしい。また補助率につきましてもできるだけ高いほうがよろしいという態度でいままで臨んできたわけでございます。したがいまして、現行の補助率あるいは補助金総額というものについてもまだまだ今後とも努力していかなくちゃならないということで、したがって、いまの段階ではっきりと補助率その他をきめられるということについては、いささか私どもとしては、将来に向かってかせをはめられるという逆の作用もございますので、政令がいまだもってきまってないという状況でございます。したがいまして、御指摘の点につきましては、今後さらに国庫補助金の増額について努力を続けてまいりますとともに、もうその時点がまいりましたとも考えられますので、必要な処置を、まず政令をできれば定めるような段階でもってこの努力をしてまいりたいと思っております。  それからもう一つ、食品衛生法の第二十六条に述べられております国庫負担の条項がございますが、これは食品衛生監視を府県段階でもって厳密に統一した方針でもって全国行なえるようにという趣旨で設けられたものと解せられますが、食品衛生法が発足いたしました当時は、この補助金制度は確かに動いておったのでございますけれども昭和二十六年に至りまして交付税交付金の制度がスタートいたしましたのにつれまして、ことに人件費に対する補助というものは漸次削減の方向に向かいまして、それに伴いまして補助金から交付税、当時は交付金でございましたが、交付税のほうに切りかわっていったのでございます。その後、先刻藤原先生のほうからも御指摘がございましたように、森永ミルク事件を契機といたしまして、もう一度検討してはどうかということで検討してまいったのでございますが、この件につきましては、法の所期の目的から申しまして、むしろ地方交付税の規定によってまいるのがより有利ではなかろうかという判断で今日に至っておるわけでございます。
  165. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまお二人の答弁を伺っておりまして、まあそういう時期に来なければ、またそういうような必要と思われる条件に迫られたときにあらためて検討をすべきであると、したがって、いささかなりとも法律に違反するものではないというふうに受け取ったわけであります。しかし、少なくともいま環境衛生局長の言われた中でのごみ処理の問題、これだけはやはり早急にきめるべきものではないだろうか。未公布未公布、どう考えてみても、これは考えようによっては法律にやはり背反しているのじゃないかと受け取られがちであると思います。いまそうした点にかんがみて、絶対に法律違反ではないと、しかし、その一方においては、そういう緊急の事態が生じた場合に、通達でもって一切事を済ましていると、これまたおかしな話ではないだろうかと、こうも感ずるわけであります。はたしてそういうようなやり方で事を済まして、いままで支障がなかったからそういうような結論を持って話をされたのであろうと、こう思うのでございますけれども、やはり万が一ということがあるのでございますので、その辺の政令未公布というものを、これからただ検討するということではなしに、やはり法律の中身によっては、ケースバイケースで早急に実現の方向へ向けなければならないものもありましょう。たとえば、いまのごみの問題がそうでしょう。この点いかがでございましょうか。
  166. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) ごみ処理施設の補助金、それに関する政令の未公布の点につきましては、先生御指摘のとおりでございますが、これでよろしいのかどうかということでございますが、私ども、従来少しでもごみ処理施設に対する補助金、ことに補助率あるいはその補助になる対象というものについて努力を続けてまいったのでございます。その点、先ほど申しましたように、四十五年度におきましては、補助金総額で十一億円というところまでやっとまいったのでございます。しかしながら、現在これが十分であると考えているわけではございません。ただいま実際上では補助率が大体まあ形式上は四分の一ということでございますが、補助率につきましてもいろいろと私はまだ問題があろうかと思います。今後私どもの緊急整備計画がその実効を期しますように、ただいま先生の御指摘の点も含めまして、ただいまこれに関する政令の公布について努力してまいりたいと思っているわけでございます。
  167. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 先ほどの話の中では、地方交付税のワク内で何とか処理をしていただく以外にはないということも述べられております。しかし貧弱な地方交付税だけをもってしては、今日のごみ公害と言われる問題の解決にはならないと思います。おそらくこのごみの問題は年々ふえていくだろうと思います。いまごみに焦点を合わして申しているわけでありますが、実はこの問題をどう考えているのか。これはもうほかの公害とやはり同じように取り扱われるべき問題でありましょうし、先ほども可燃性の焼却については七五%という数字まであげられて、ごみ処理をしていくのだというような話もあったようでございますが、しかしこれとてもやはり問題があると私は思っております。その一体設備や何かどうなっているのだろうか。それに対して一体補助金なしにやれないか、やはり待ち焦がれているのは補助金でもって、少しでもそのごみ公害というものを解消するために地方公共体としても不断の努力をし、またその対策に腐心しておられるだろうと、こう思うわけです。大臣、いかがでございましょうかね。ほかの未公布の政令、未公布の問題は、その中身によっては、先ほど環境衛生局長が言われたようなこともあり得るかと私思うのでございますけれども、しかしあまりにもちょっと未公布が多過ぎるのじゃないか。一片の通達くらいで事を済ませるようなことではいけないのではないか。やはり一つのルール、方程式というものをつくって、今後の解決に当られることが望ましい。なかんずく、いま申し上げておりますように、ごみ処理については緊急を要する。これは国のたった十一億くらいの金ではまかない切れるものではない。この辺どう考えておられるか。
  168. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) ごみの処理につきましては、私も非常に関心を持っております。ことに家庭から出るごみばかりでなしに、御承知のように、産業廃棄物とか都市廃棄物、建設廃棄物というようなものが家庭から出るごみの二、三十倍も出る。一日百万トンくらいもそういうものが出る。これをどうするかというようなことが大きな課題になっておりますが、これらについては補助の約束は実は得られておりません。そこで、おそらく局長の申されたことは、これらのごみ処理についてはできるだけ広範囲にして、かつまた高率の補助をとりたいということで大蔵省と協議を重ねてきているが十分な補助がとり得ない段階であった。ある程度の、十億なり十数億の補助はとったが十分の補助はとっていないときに、それを固定化して政令で書いてしまうと先に広げ得ないので――補助は御承知のように、政令がなくても実際上は予算措置だけでできるものでありますから、いままでの段階では予算措置を広げることに努力をしてきたと。しかし、受けるほうの公共団体の身になってみれば、早くはっきりさしてもらったほうがより安心で前向きにいける面もありましょうから、私ども大蔵省を攻めるだけ攻めてこの辺でということで、この政令で補助率なり補助の範囲をきめる、こういうことにならなければならないと思っております。サボっておって政令を出さないということではなしに、新しい事態が次々と生じてくる中で前向きの施策に応ずるような補助の態様をきめたいということで今日まできめていなかった。しかし、もうそろそろこの辺で腹を固めて大蔵省にも当たり、きめなければならぬときに来ていると私は考えます。
  169. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最後に、少なくとも昭和四十六年度の予算編成、おそらく今月一ぱいで大ワクが各省ともきめられていくだろうと思うのですけれども、特にいま緊急を要する問題の一つとして、その割合を政令で残してしまうと、かえってそれに縛られてしまいはしないか、もちろんそれはそういう懸念もございましょう。けれども、いまこの段階において先行きを見通しながら、どのくらいの率を設けておけばここ当分の間はそれを乗り切れるのではないだろうかという、やはり予測というものを立ててしかるべきであろう。そういうことを前提にいたしまして、昭和四十六年度の予算編成にあたってやっぱり真剣に取り組んで、何らかの形でこれを入れるべきではないだろうかということが一点。  それから、まとめて一括して申し上げたこともございますので、一つ一つ明らかにできませんでしたけれども、今後この未公布の政令につきましては、先ほど公衆衛生局長が言われたような方針でいかれるのか。それとももう一辺これを検討し直して政令としてできるものは一つでも多く政令を設けていくおつもりなのか。  この二点を伺って私の質問を終わらせていただきます。
  170. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) ごみの問題につきましては、家庭ごみ、その他可燃性のつまり焼却炉で処理できるようなものにつきましては、これは補助も得ておりまするし、補助率をつくろうと思えばつくれます。これは今度の予算折衝を通じまして、できる限り大蔵省と相談して詰めたいと思います。その上、この辺でということになれば補助率も政令できめたいと思います。しかし、産業廃棄物などになりますと、これは発生者の責任といいますか、発生者において費用負担あるいはその設備費を出すというような問題のかね合いもございますし、一般の家庭ごみとはいささか趣きを異にするものでありまして、これに対する処理の方向は、公害などに対する企業の事業費負担の問題とも関連するものでございまして、必ずしも固まっておりませんので、できるだけこの問題もそういう見地から詰めて善処してまいる所存でございます。その他政令未公布のものにつきましては、この際政令をつくったほうが法律の趣旨にも合うというものはつくって、そして一般に中身を知っていただくというような方向をとるべきであるし、また、まだその政令をつくる事態に至らないものは、これは私はそういう事態に備えて必ずしも政令を急いでつくる必要はない、こういうふうに考えます。
  171. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 だいぶ質問も多くて時間がたくさんいただけないので、私から委員長にお願いをいたしておきますけれども、休会中であるといいながら非常にいろいろな問題で、厚生省のほうからも、大臣の意見も十分聞かしてもらわなければならぬ点が多いわけであります。それで、この委員会をもっとしばしば持っていただきたいという気持ちを私は持っているわけでありますが、まあきょうは非常に質問も多いそうですから、時間の制限もなるべくするようにというお話でございますので、その委員長の趣旨にのっとりましてできるだけ簡潔にしたいと思いますので、また私の質問に対しましても簡単明瞭にひとつ御答弁を願いたいと思います。  きのう衆議院のほうで、今度の医学教育の問題についていろいろ協議をされたようでありまして、概略はちょっと伺ってみました。けれども、また新しい観点からこの問題について一ぺん厚生大臣並びに文部省、自治省のお考え方を聞いておかないと、どうもまだ私自身がふに落ちない点がたくさんあります。これはおそらく国民も同じような観点にあると思いますので、私はそれをひとつお尋ねしたいと思います。  まず第一番目に、私は自治省のほうでこの医学専門学校教育というものを僻地の医者が少ないからお出しになったというわけですが、あの案を出されました経緯、どういうところでどういうふうに考えてあれが出ましたのか、一ぺん明快にそこのところをおっしゃっていただきたい。
  172. 佐々木喜久治

    説明員佐々木喜久治君) 僻地におきます医療が非常に不足をしておるということは、もう御承知のとおりでございます。特に本年過疎地域対策緊急措置の法律が先般の国会において通過いたしたわけでございますが、その緊急措置法におきまして、過疎地域における医療の確保というものは国と地方公共団体の責務として明確に法律に規定されておるわけでございます。そうした新しい立法措置並びに従来から不足を告げられております僻地の医療確保、この問題とかね合わせまして、自治省といたしましても、何らかの具体的な医療確保の措置ということを考えていかなければならぬ、こういうことになっておったわけでございますが、さしあたり、当面の対策として、医師の絶対数を何とか確保する方法を講じながら、同時に現在各地方団体が確保しようにもしきれないでおる医師のいわば養成対策も合わして講ずる必要があるのではないかということで私ども検討しておったわけであります。七月の四日に高知におきまして行なわれましたいわゆる一日自治省の機会に、質問に答えまして大臣から僻地医師確保対策の一環としての医学高等専門学校構想を発表したような次第でございます。
  173. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 大臣がその発表をされるまでの間に、自治省ではどういう検討をされて、そして大臣がその発表をされた経過になったか。ああいうふうな構想が出ることは、僻地で医者が少ないことが非常に問題になっておりますからわかりますが、専門学校教育を考えられた経緯ですね。それは大臣が自分のあれでやられたのか、自治省内ではそういうものが出るまでの過程でどういう討議が行なわれて、どういうふうな経過をたどってその結論になったか。おそらくそれを大臣が発表されたと、こう思うわけですね。大臣が発表されるまでに何もなくて大臣が発表されるわけはないと思うわけですから、その間はどういうふうな経過であるか。それはもう国民の側からしてみたら、医者を確保するためにそこまでの飛躍的なものがぽんと出るからには、何かあるだろうという疑念はあるわけです。中身において、経過において非常にいいものがあるならひとつ私も教えてもらいたいと思うわけでありますが、その経過をひとつぴしっと話してください。
  174. 佐々木喜久治

    説明員佐々木喜久治君) 僻地の医療を確保するために、いわば医師の絶対数を僻地において確保するためにはどういう方法医師を僻地に向けるかというのが一番私ども検討の中で問題だったわけでございます。そこで、やはり僻地の医療を確保するためにはどうしてもそういう使命感を持った医師を何とか確保していきたい。そのためにはそういう医師の養成を目的とする新しい学校をつくることによって、そうした使命感に燃えた学生を教育をして、それを僻地のほうに振り向けるのが一番いいのではないか。そしてまた、特に僻地の場合には民間の医師がこうした僻地に行くということはなかなか期待されないわけでありますから、やはり都道府県なり市町村なりの公立病院の系統を通じて僻地に医師を派遣するという方法をとらなきゃならない、そういうようなことでやはり新しい学校を設置をする、そしてまた同時に、そうした学校を卒業した者が僻地に行けるような形をとってやらなきゃならない、そういうようなことでこの医育機関というものを設置したいということにしたわけであります。その間において、いかなる教育機関がいいのかという点につきましては、中でもいろいろ議論があったことは事実でございますけれども、現在の医学教育というものは次第に専門化されてまいっております。それはまた医学の水準から見て当然のことであろうというふうに考えておりますが、僻地におきましてはどうしても専門医よりは一般医、何でも一応はこなせるというような医師が必要ではないか。そういう意味では、こういう過疎地域におけるホームドクター的なものの養成というものを行なわなきゃならない。それに対して現在の国立大学、いわば医科大学あるいは大学の医学部による養成よりは、むしろ医学高等専門学校というようなもので若いうちからそうした特別な教育をし、そしてまた若い使命感に燃えた生徒を集めることによって僻地医師の養成をはかりたい、こういうような考え方だったのでございます。
  175. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それは、自治省の中でそういうふうなことも専門的に協議されたんですか。そしてまた、高等専門学校くらいでホームドクターができるということは、どこに根拠を置いてそれをお調べになってそういう発案が出てきたのか。私は、そこら辺きっちりした根拠があったら教えていただきたい。
  176. 佐々木喜久治

    説明員佐々木喜久治君) 医学高等専門学校におきまして、いわば私どもが期待する僻地医療を担当し得る医師の養成が一体可能かどうかという点につきまして、私どもは、特にそうした医学の専門家を持っておる役所ではございませんので、これらにつきまして厚生省なり文部省なりとも十分御相談をしたいというつもりで一応の構想をつくりまして、現在その内容等につきまして関係者のほうと協議中でございます。
  177. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それで経過が少しよくわかったように思うんでありますが、あまりそういう専門的な見地で検討されないけれども、これからしょうというわけですね。それでその事柄を発表されたと、そういうふうに受け取れるんだったらそれで私も了解ができますが、しかし、いままでの経過を自治省といえどもお考えになっているわけでありましょうから、おそらく医学がどんどんと進歩していく中で、いままでの大学教育を受けたものでももっと勉強させなければならぬのだというように一般に考えられているわけでありますが、それがもう一ぺんあと戻りをして専門学校になるという問題に対しては、私は非常に大きな疑問を持つし、国民もおそらく持ったと思うのであります。最も大事な国民の命が、現在いろいろ公害やら何やらの問題で軽視されようとしているところにもう一つ軽視をする態度が出てきたというように私は受けとめられるし、国民も受けとめていると思うのでありますが、そういう点で、私は、ああいうことをきっぱりと言われたことに対して非常に大きな疑問を持ったのですね。だけれども、いま話によると大臣はそういうふうな構想を考えただけで、まだほんとうに詰めてそれがいいかどうかという検討がないのに発表されたという実に軽々しい態度でやられたと、私どもこう考えてもそれはいいんですか。
  178. 佐々木喜久治

    説明員佐々木喜久治君) 現在、無医地区といわれております地区が約三千近くあるわけでございます。この地域におきましては、一般的に医療水準が上昇しておるということになっておりましても、この地域における医療はゼロです。そういう意味におきまして、私どもは、何らかの方法でこの地域の医療需要に対してこたえていかなければならない。こういう観点から私どものこの医学高専の構想が出たわけでありますけれども、大臣もその段階におきましては、その内容について関係省と十分協議を経た上で具体化していきたい、こういうことを申し上げておったはずでございます。なお、またこの医学高専における教育、さらに卒業後における研修というものを考えあわせますと、大体現在の国家試験を受け得るような状態にまで教育をして実際の医師として働いてもらう、こういうつもりでおりますので、現在の大学卒業の医師とその内容において変わらない水準の医師の養成をはかりたい、こういうつもりでおるわけでございます。決して私ども国民の健康、生命を軽視しているというような考え方によるものではないのでございます。
  179. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 私がいままでずっと考えておりますところによりますと――衆議院のほうでも議論をされたように思いますが、そういう点からいっても、実際問題としてそんなことは不可能でないかというふうな意見も出ているわけでありますが、それはさておきまして、私は、これで一つ文部省のほうにちょっとお尋ねしてみたい。ことに教育に携わっておられるわけでありますから、文部省側から、一体いまの医学教育の中でもっと安上がりの医者をつくって、そうして大量に掘り出せばそれで医者は足りるのだ、こういうふうな考え方、特に大学の医者と専門学校の医者というのが昔はあったわけでありますが、それがようやくそこの矛盾を解決して大学に一本化されたというときに、もう一ぺんあと戻りをしてそういうものをつくろうということに対して非常に問題があろうと思いますし、そこで、文部大臣のほうでもやはりいろいろな見解を発表されたのを新聞紙上でも見たわけでありますが、一体大学局長のほうではこの問題に対してどういうふうなお考えをお持ちになるのか、ひとつお伺いしたいと思います。
  180. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 現在、高等専門学校制度は学校教育法にきめられておる制度でございまして、分野からいたしますと工業と商船というきわめて限定的な二分野について認められておるわけであります。この趣旨としましては、工業といったような専門職業につきましては程度の高い、非常に理論にすぐれた技術者も必要でありますし、それから実地の職工さんも必要でありますし、その間に技術にすぐれた中堅技術者も必要でございます。いろいろな段階の技術者が必要であるわけでありますけれども、現在の学校制度でありますと、一方において大学がございますし、それから高等学校に工業課程がありますけれども、それだけでは十分ではないので、もう少し若い段階から理論と技術とを並行的に一貫教育をする制度が必要だという産業界の御要望もあり、関係の学会等の検討も経ました上で、工業のような分野については高等専門学校が必要であるという一致した見解のもとに制度を発足せしめ、現在六十校近いものが設置されてそれなりに成果をあげております。そこで、医学というような分野にこの高等専門学校制度が適合するかどうかというような問題になりますと、工業というような分野とは相当事情が違うように思います。医学のように、人間の生命を扱うということで相当高度な学問的基礎の上に責任を持って一人の人が患者に対処するというような分野につきましては、現在の考え方としまして、少なくとも高等学校卒業程度を基礎といたしまして六年という、大学のほかの学部よりも長い修業年限が定められております。それから従来からの経緯もございます。医学という分野に高等専門学校制度が適合するかどうかについては相当厳密な検討を経ないと軽々に言えないわけでありますが、現時点でどうかということになりますれば、それはまず無理ではなかろうかと考えるわけでありまして、自治省のほうにもそういう意見を申し上げておる次第でございます。
  181. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それからまた大学局長のほうにお尋ねしたいのは、あなたのほうの御発表によりますと、医科大学というものは非常にカリキュラムを厳正につくられて、しかも付属病院がなければとても教育は成り立たない、こういうような御見解を発表なすったようでございますけれども、これにつきましては内容的にはどんなふうになっておりますか。特にこのごろ聞いておりますと、医科大学一つつくるのに九十億とか百億とか聞いておるわけでありますが、その中で病院をこしらえるのにその半分とかあるいはまた三分の二ほども、千床とか何床とかの病院をつくるためにそれが必要である、こういうような状態になっておるようでありますが、そういう付属病院が必要であるという根拠はどこにございますか。
  182. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 結論的に申し上げますと、現在大学教育は、基本は学校教育法に目的、修業年限等が定められておるわけでありますけれども、より具体的な準拠といたしましては、文部省令で大学設置基準というのがございます。さらに現実に大学を設置します場合には、公私立につきましては、文部大臣は大学設置審議会に諮問いたしましてその可否の答申を得て処理いたしますし、国立大学につきましても形式的には認可ということじゃございませんので、大学設置審議会に、法律的必要諮問事項ではございませんけれども、公私立大学と同様な内容的判断を仰いだ上で設置を進めておるわけでありますが、大学設置審議会においては、文部省令の大学設置基準よりさらにもう少しこまかい具体的な基準をきめております。医学部につきましては、御案内のように、戦前は大学と医学専門学校との二本立てでございまして、戦時中には医師不足というようなことからいたしまして医専を大幅に増設いたしまして、終戦の時点では大学と医専とを合わせまして入学定員が一万人をこすような状況であったわけでありますけれども、戦後、一つには戦時中の必要から生まれた医師の大量養成体制はもとへ戻す必要があるし、それから質を高める必要もある。それから国際的に見ても医学教育は大体大学、しかも他の学部よりは長い修業年限でやっておるということからいたしまして、これは占領行政もありましたけれども、厚生省、文部省協力いたしまして、医専は一部は大学に昇格し他はこれを廃止いたしまして大学一本といたしました。その際にも現在の基準の前身になるような基準を医学関係者によって定めたわけでありますけれども、その当時からおよそ大学で医学教育をやる場合には付属病院というものは不可欠の施設というぐあいに考えられます。それはやはり医学教育は基礎と臨床の一貫した教育が必要でありますし、臨床教育にいたしましても臨床の理論、講義をするのと密接に組み合わせて臨床実習をやる必要があり、そのためにはどうしてもみずからの管理下における付属病院が必要だという考え方がもとになっておったようでございます。形式的な基準にいたしましても、たとえば教授が二十名以上、それから四百床以上の病院を持つべきだ。それから戦時中にやりましたような百人以上の入学定員は多過ぎるから入学定員は八十名以下というような基準をきめまして、それに基づきまして学校の数なり入学定員も大幅にしぼって四十六大学、それから約二千八百名というような入学定員で戦後昭和三十六、七年ごろまでやってまいったわけであります。そのころから、これでは医者が足りなくなるのじゃないだろうかということで、既設の大学について一部定員をしぼったようなところもございますので、復元的な意味を含めまして入学定員をふやしてまいった。それが今日まで累計して千五百名程度になっております。さらにそれだけでは足りない、さらに地域的な要望があるというので医学部の新設というような問題も起こってまいりました。医学部の新設というような問題が起こってまいりますと、医学部の基準につきましても戦後早々の間に考えたものでございますので、また医学関係者の協力を得まして昭和四十三年に改訂をいたしました。これによりますと、入学定員別の段階があるわけでありますが、やはり付属病院は必置制という考え方でありますし、それからまた講座数につきましても基礎と臨床で二十七講座、それから必置制の病院であれば病床数も、たとえば入学定員が六十名であれば六百床、それから八十名であれば七百床、百名であれば八百床、それから百二十名であれば千床といったような基準をきめまして、百二十名という一応最高限はございますが、百名程度にとどめるのが妥当であるということで、ことし戦後初めて――終戦直後に札幌医科大学がございましたが、それを除きますと、ほとんど戦後初めて国立一大学、それから私立三大学の医学部を設置したわけでありまして、そういうことで医学教育基準というものはきわめて厳密に関係者の協議のもとにきめられておりますし、それから付属病院も相当大規模なものが必置制という考え方になっております。ただ、現在の医学部関係の紛争等々に関連いたしまして、医学教育にはなおまだ相当改善の余地があるということが言われております。いろいろございますが、たとえば付属病院の問題にいたしましても、付属病院をますます大きくするということは教育上も管理上も問題があるのじゃなかろうか。むしろ卒業後の研修のようなものは、日本のように大学病院に大量にとどまらないで、市中の整備された公的な病院があればそれを医学部の修練病院という形で協力を求めて、卒後研修などはもっと多くのウエートを大学外に求めたほうがいいのじゃないかという意見も高まっております。そういうことで医学教育改善の意見がいろいろございますが、現在は、先ほど来るる申し上げましたような講座数あるいは相当規模の付属病院の必置制ということ、それを基準として認可もされ、指導もされているというのが実情でございます。
  183. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 文部省としては、そういうふうに新設されたのでありますが、なおまだ百二十名では多過ぎるから百名に押えているというお話ですが、一体いまのままで定員をもし増加しようと思うとどれくらい増加したらいいのか、それを伺いたい。  それからもう一つは、文部省のほうでは、これからは国立大学はつくらぬのだ、私立大学ならつくると、こういうようなお話が出ていたように思うんです。一体、そこらはどういう根拠で私立大学はよくて官立大学はだめだ、その理由が私どももよくわからないのですが、一体どこにその理由があるのか、どういう観点からそういうことを言われているのか、それをお伺いしたい。
  184. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  185. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 速記を起こして。
  186. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 現在医学部は五十ございまして、百名に入学定員が満たないものがまだかなりございます。入学定員の数にいたしまして六百名程度の差がございます。  それから、どれくらいまでできるかということでございますが、基準の上からは百二十名というのが限度になっておりますので、百名くらいが望ましいという指導にはなっておりますけれども、百二十名には、現行基準上も病床でありますとか施設、設備を整備すればなし得るわけでございます。したがって、五十大学ございますので、千六百名程度の増員の余地が基準の上からはある。これは施設整備した上でございます。  それから、文部大臣が国立の医学部はつくらないと申しましたのは、これは将来を見通しての御発言ではなくて、四十六年度についてはつくらないという趣旨でございます。と申しますのは、現在医学制度を含めまして、大学制度全般が再検討の時期でもございますし、それから国の方針上、機構、定員の拡大というのを抑制しているというような時点でもありますので、国立の学部、特に医学部というようなものは大きいのをつくるのがきわめて困難であろうという趣旨でございます。それから公私立につきましても、大学制度の問題はございまするが、これは現在の基準で認可が申請され、基準に適合すれば認可しないというわけにはまいりませんという趣旨でございます。
  187. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 何かその受け取り方によりまして、今度新しく三私立大学が出ましたが、まあ医師の少ないときでもあるからして、府県から一億とか何か献金をしながらその過疎地帯に医師をとろうとかいうようなうわさも新聞紙上であったわけですが、そういう関係のところで私立はつくるけれども官立はつくらない、これはいま説明を聞きましたら、そういう意味ではなくて、出てくものはしようがないというふうな考え方で、ちょっと了解はできるわけです。その受け取り方としては、われわれとしてはびっくりするような受け取り方がされるような発表であったと私は思うわけでありまして、この点についてもちょっと伺っておきたいと思ったわけです。  そこで、厚生大臣のほうにちょっと私は伺いたいわけですが、いままでの話を聞いておりますと、こういうふうな関係でありますが、一体厚生省としては――大臣もいろいろと発表しておられるというようなわけでございまして、お話も新聞紙上で伺っておるわけでありますが、まず第一番目には、一体日本では、それなら医者はほんとうに少ないのかどうか、足らぬのかどうか。足らぬとすれば、いま厚生省でおっしゃっているのは、十万人口に対して百五十にすれば学生の定数も六千にしなきゃならぬ、六千にしたいというふうな意見もあるわけですが、外国と比較してみても、英国だって百十四か何ぼですね。日本は十万比が百十二・一ですか、何かになっているようですし、英国あるいはフランスなんかを見ましてもそんなにたいした差はない。スイスなんかもそうじゃないかと思うんですが、いま厚生省なんかで考えられておるのは、アメリカにあわせて百五十人の比例にしたいというようなお話のようでありますけれども、日本のいまの状況を考えて、また外国のそういう例と引き比べてみて、その僻地の医者の足らないのはほんとうに医者が足りないことだけが原因なのか。私は、もっと制度の上においてもこれが問題があるんではないかと思うわけです。それはあとから一ぺんよく議論をしたいと思いますが、私が考えてみて、必ずしも先進国と比べて、人口比から考えて日本が少ないということは言えないと思うのですが、その点はいかがですか。
  188. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) きのうの衆議院でも同じような課題の御質問がございました。私は、実は各方面の御意向もあることですから、表現をやわらげまして、ことさら焦点をぼかしたような表現をしておりました。それは、絶対数につきましてはいろいろの御意見がある。しかし、相対数においては各方面で医者が不足しているということが言われておるところである。したがって、厚生省としては、医師の養成、充足ということを考えざるを得ません、こういう申し方を実はいたしておきました。事実アメリカやソ連などは、人口十万当たり医師の数が非常に多いし、その他また日本と同じ程度のところあるいはそれよりも少ないところがあるわけでございますので、絶対数については御議論があるところだと思いますが、現状の医者の養成数、すなわち一年間四千三百人か四千四百人程度では、これは先を考えた場合には不足であるので、医師の養成をさらに相当の幅に増加したいという考えを私は持つものでございます。
  189. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 人口の上から外国との比較をいたしましても、いま申したような形で、また一人の医者が何人くらいの患者を見ているかという府県の比較、これなんかも私ちょっと調べてみましたのですが、非常に都会には集結して百五十何名のところもあるわけでありますが、また僻地のほうでは、十万比に対して六十六・何ぼというところもあるようであります。これは確かに、医者の数をある程度ふやさなければならない、非常に医療が高度化されたために医者をもう少しふやしたほうがいいということに対しては、わからないわけではありませんが、私は、このごろ僻地の医者の問題を、医者さえつくればいいという考え方に安易に持っていかれることに対して非常に疑問を持つわけであります。そのいままでの考え方が、その医療の制度というものをもっと分析して考えるほうにいくのでなくして、あるいはまた医学の教育というものをほんとうにもっと分析して考えるのでなくして、そうして数が足らぬから医者をふやせというような行き方、しかも自治省の考えているように、高専でやりさえすれば安上がりのものができるのじゃないかという行き方、若い人を使って、いなかだからそういう者を連れていけというような行き方自身がほんとうに言語道断な考え方じゃないかと思うのですよ。もっともっといまの日本の国民の側から見れば、自分の命を託する人がいなかだから若くて安物でいい、簡単な教育を受けた人でいい、町のまん中であれば大学を出た人がいいという差別はあり得ないだろうし、そんなことは考えられておらないとしても、僻地に医者が足りないから高専程度の者でいいじゃないかという考え方を打ち出されてきたこと自身に非常に大きな問題がある。ことに厚生省の立場で、こういうふうな問題に対して、すぐ六千人にするために十五校か十七校つくろうじゃないかという考え方、しかもそこで大臣のお話では、付属病院は金がかかるのだから、付属病院ははずしたらいいじゃないか、こういうような御意見も出ている。私は、そのはずし方についてももっと考えられたならばその御意見に対して反対するものではないのですが、八、九十億も百億も金がかかる、その半分以上が付属病院だから付属病院やめておいて、いまあるところの国立病院に使えばいいじゃないか、そういうふうなことになっていくならば、いまの高等専門学校をつくって若い者をいなかに出せばいいじゃないかと同じような考え方に通ずるものがあると思うのですが、こういう点で、私は、いまの厚生省の考え方に対しては非常に不安な感じを持つわけですが、おそらく大臣はそのつもりはおありじゃない、また別の考え方がおありだと思いますが、この際、これを明確にしていただかぬと、受けるほうの国民の側からは非常に不安な感じを持つし、私も国民の一人として実に情けない。日本の医療というものはそれでいいのか、われわれの命というものはそういうふうに評価されていっていいのか。公害とか非常にいろいろな方面で人間の命というものが安く考えられている。あとから私は質問したいのですけれども、あの種痘禍にしても、三百三十万出しさえすればそれでいいと、えらい人間の命が安く計算されたなということになるわけでありまして、大きな意味においては人間の命の評価が軽く見られるという、ひが目じゃないけれども、感じを持っておるやさきに、またそういうことが出てくると非常に私は大問題だと思いますので、ここらのところは、大臣にもう少し明確な態度を示しておいていただいて、日本の医療水準をもっと上げていくのだということが根本になっていなかったら――私はそのために行なわれる過渡期のいろんな考え方はまだ了承できるのですが、少なくともレベルを下げるような形というものは非常に私は不愉快に思うわけでありますが、その点どうですか。
  190. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 五月の終わりごろに全国都道府県知事会議がございまして、その際、数人の知事の方々から、地方によっては非常に医師不足しておる、それに対応するために、いわば特定医のような、今日のような大学卒業後一定の臨床研修を経たというような形でなしに、特定医のような制度を厚生省は考えていないかというお尋ねが私自身にございました。厚生省の中ではそういうことは考えたことも聞いたこともございませんという私はお答えを間接に申し上げておいたわけであります。しかし秋田自治大臣は、それらの地方の要望といいますか、あるいは過疎地域等に医師不足している事態を直接かかえておられる方でありますので、先般のような御発言もあったと思いますが、その後私は秋田自治大臣ともお会いしまして、この問題は自治大臣が考えられるような事態のものではないことをよく申し上げておきまして、自治大臣も十分御承知でございます。  私の考えでは、三つほどございますが、その一つは、大橋さんの言われるとおり、今日医学が非常に進歩し、複雑化している際に、短期間の養成だけで医師をつくるということは後退であるということが第一点。第二点は、中学の上に六年積み立てようがあるいは高等学校の上に六年積み立てようが、来年から始めるという場合においては、やはり六年たって、その上また研修をした後でなければ医者は仕上がらないのだから、中学卒業後六年というのは決して医者の早期養成という期待にこたえ得ないじゃないか。中学生は余っているけれども、高等学校の学生は足りないということじゃなくて、高等学校から医学生に行きたいという志望者があのとおりいることを考えますと、それは中学から行こうが高等学校から行こうが、六年先でなければ医者ができないということは同じであるということ。もう一つは、どういう医者のつくり方をしても、憲法その他の関係があって、お医者さんを僻地その他特定の場所に強制的に縛りつけるとかいうことがはたしてできるだろうかという疑問も率直に申して私は持つものでございますので、私は厚生大臣として以上の三点を考えておるわけであります。  大学付属病院の必置制につきましては、これは先ほど御意見がございましたように、大学をつくる際に半分以上のお金が付属病院設置のためにかかるということもございますし、そのほかせっかく大学を卒業された医学生が研修その他あるいは学位取得等の関係もございまして、付属病院に吹きだまっているということは、これは各方面で言われておることでございますので、そういう点に対処いたしましても、今日かなり高水準の設備機構を整えております公立病院、あるいは私どものほうで二百以上の国立病院、療養所等を持っておりますので、そういうものを大学新設あるいは学部の新設等の場合に教育病院として使うという方法がとられるならば、卒業生の吹きだまり、あるいは設置費の問題も解決をする。特に僻地医療対策の関係で私どもがしばしば述べてまいりました親元病院的機能もそういうことをやることによって大学の教育病院であり、かつまた国立ないし公立病院のお医者さん方にそういう機能も十分持ってもらえるだろうと、こういうことでございまして、以上の諸問題を含めまして、実は自治大臣とも最も適切な医者についての解決のしかたをしたい。また文部大臣のほうとも政治的にも、また事務当局間においても打ち合わせをいたしておる、こういう実情でございます。
  191. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それでだいぶんよくわかってまいりましたが、いま文部省のほうから話を聞きましたら、くしくも最高のいまの設置基準の中に含まれているのは、千六百名くらいはふえるというわけですね。そうすると、厚生省の考えられている人口十万、百五十というやつでも千六百人か千七百人の定員増ということにしたいということでありますからして、必ずしも新設をしなくても、いまのところ何かすれば設置基準内でもできるということでありますが、そういうことは了解さしていただいたわけでありますが、そういうことを前提としておきながら、ここでいま大臣がおっしゃったように、教育する病院を他にもっと求めればという話でありますが、私はこれをひとつもう少し具体的に御意見を伺っておきたいし、また方向も一ぺんお尋ねしておきたいと思うわけですが、ただ単にいままでの話を聞いておると、大体教育病院というのは実習をさせる病院で、いわゆる修練をさす場ということになっているわけでありますけれども、大臣がおっしゃったように、付属病院を別に必置しないでもいい、いわゆる付属病院というものを離してしまってもいいという感じ、私もそういうことを考えたことがあるわけでありますが、そのことは付属病院でなくて、大学には付属病院はないけれども、付属病院と同じような性格を持った病院が幾つもあれば、それなら非常にいいのじゃないか。ところがいまの考え方では、そういう大学病院と同じような性格を持ち、能力を持ち、そういう研究ができ、あるいはまたそういうほんとうの医学的な研修ができる、実習ができる、ベッドサイドティーチングもそれで十分できるというふうなものにならない限り、私はそういうことにはならないと思うのですね。  ですから、私はお伺いしておきたい第一点は、じゃ、これをたとえば十五校六千人にするために大学をつくったとすると、十五校か十七校つくらなければならないわけですね。これに対して九十億なら九十億、百億なら百億かかれば、その中で約半額なりあるいはまた六割が大学病院にかかるとすると、その費用を一体いまの大きな設備のされているいい病院に対してそれを設備をしていこうと思うとどれくらいでできるのか。こういうことになれば、大学を十六校ふやすつもりで、その付属病院と同じような性格、研究ができるような病院がいろいろな場所に、適当な場所に配置されまして、そこへ金が入れられたとするならば、たとえばほかのほうに行って――私、京都ですから、京都の例を出してみるとよくわかるのですが、京都のほうには、舞鶴のほうにも綾部のほうにも、非常に過疎と過密と、一府をなしておるわけですが、あの北のほうは過疎地帯で、いま非常に医者がなくて困っている、全国の僻地と同じように。その中でもまた舞鶴の国立病院、福知山の国立病院、こういうのがあるのですね。そのほかあるいは組合立で建っておるところの大きな病院がある。こういうようなものも含めて教育病院にしたならば、それがいまの大臣のおっしゃるようなその基礎的な病院の役割りをして、そうしてその周辺に対して、半年なり一年なり研修期間あるいはまた勉強期間中組合病院に行って、そうしてそれが絶えず教育病院にいろいろな研究をした実績を持って帰って研究をすると、こういうようなシステムをつくったならば、私は非常に過疎地帯の対策になる。いまさら高専の人をつくったところでなかなかそういうところへ行ってくれない。おそらくそういうことになると思う。逆に言うならば、そういうたくさんな大学をつくって医者をたくさんつくれば、逆に過密都市ではもっと過当競争が起こるだろうと思うのです。そうなれば、病院がよくなければ患者が来ない。病院をよくするために借金をして病院を建てる、借金を返さなきゃならぬといういまのような悪循環が起きて医療費が高くなる。こういうことになるわけですから、私はむしろむやみな方向で医者をたくさんつくることは、一面の場所においては足らぬところの補給にはなるかもしれぬけれども、過密な場所に対してはより多くの競争をさせることになる、いまの制度でいけば。私は、そういう意味でむしろ教育病院というものを徹底的に考えたらもっといいのじゃないか。それをある程度日本全国に過疎のないように教育病院をこしらえて、それに対しては十分な研究のなにができる、いわゆるいまの付属病院と同じような性能を持つものができたならば非常にいいのではないか。ことにその中で、いま言われているような大学の自治の問題とか、いろいろなものが出てくるでしょうけれども、こういうことによって大学紛争、医学部から端を発したあの問題もある程度解消することにもなるのではないかというふうにまで考えられる。そうなれば大学も、いま私そうたくさんの医者は要らないのじゃないかという考え方を持っておるけれども、よしんばアメリカ並みにしようということで、十五校なりつくるかわりに、その金をそういうことに使ったならばそのバランスはどうなるか。そんなことではとても足らないということだったら、どのくらいプラスアルファしたらそういうことになるのか。どのくらいのものになるのか。それからいまの既設の国公立、それから私立にしても相当りっぱな病院がある。これはそういうものにするということによってどういうふうになるのか。それに対してその費用の分担でどれくらいのものになるのか、こういうようなこともひとつ私は一ぺん考えてもらいたい。  それから、ただ単に医者が少ないから医科大学をつくるのだとか、あるいはまたその付属病院をどうこうするというような議論だけでなしに、もっとそういった付属病院を廃止するならば、必置でないようにするならば、その付属病院にかわるものをこれだけつくりたいという考え方を持つとしたら、どれくらいの費用でどのくらいのものができるのか、これはどういうふうにお考えですか。
  192. 松尾正雄

    説明員(松尾正雄君) 具体的に医学部付属病院を廃止いたしまして教育病院にするというために幾らの費用がかかるかという問題は、まだ具体的には詰めてない問題でございます。ただ、私どももそういう御指摘のような方向検討する必要に迫まられておりますので、具体的な地域を例にとれば、そこで具体的に現実にあります病院というものの機能をチェックいたしまして、さらにこれはどの程度の規模にふやし、あるいは内容につきましてもどの程度の整備をしなければならぬというふうなことを、一つ病院だけではなくてその地区に利用し得べき複数以上の病院群というものを中心にいたしながら、一つの青写真をつくるいま作業を続けておるわけであります。したがいまして、それがある程度できましたならば、ただいま先生御指摘のような、どの程度の資金を導入すればほぼ満足できるようなレベルに到達できるかというお答えになるかと存ずるわけであります。しかし基本的には、数字の問題は別といたしまして、私ども、大臣が御提案のようなこういう問題を考慮いたしておりますのも、現在かりに医学部を新設するといたしましても、御指摘のように、相当りっぱな病院も既存にございます。そこで新らしくまた千ベッド建てるというようなものは、そのこと自体が非常に大きな過当競争、あるいは二重投資というような問題も起きます。いま医者を供給します原田であります医学部自体、それだけ膨大な病院を持つということになれば、そのために医者自身も相当数そこに集めなければならぬという問題、むしろ逆にかき集めなければならぬという問題も起こってまいりますので、そういう点でも考慮いたしたわけでありますが、しかしながら、現在ありますところの病院がそのまますべて私どもは教育病院になるというふうには考えているわけではございません。もしそうするとするならば、先ほど青写真の話で申し上げましたように、相当具体的に詰めまして、内容の整備した病院群というものをその地域の教育に当てさせる、こういうふうに整備しなければならないという前提条件をあくまでも堅持したいというふうに考えておるわけであります。
  193. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 関連病院整備するという問題は、これはよほど根本的にメスを入れて考えてもらわないと、いまのような状態ではこれは関連病院としてもその意味をなさぬと思う。たとえば国立病院をあげてみますならば、京都の国立病院でも、私、いつも出入りして見ておるわけですが、ほかの公立病院もおそらくそうだと思います。これはそこにおる先生たちはもう午前中外来でもってくたくたになってしまう。外来をできるだけ集めてやらなければ独立採算がとれないのだということで、外来については一時ごろまでかかって汗だくでもうがっくりして疲れてそれから入院患者をやるのだ。また患者のほうにしてみたら、あそこは国立病院でいい病院だからというので重症患者が入院に押しかけてくる。これをやるのもなかなかたいへんだということで、やっと治療をする。そこへ持ってきてもう一つ教育病院か関連病院で教育させるといったって、いまのような研修制度、これは小使いがわりに使うわけですから、医者の下でこき使うわけですから、これはできるでしょう。ですけれども、ほんとうに教育の面からいえばどうだろうかということが問題だと思うのです。特に研究もし、あるいはまたほんとうにベッドサイドティーチングというものが完全にいけるような形にしようというならば、これは言語道断なものだろうと思うのですね。これを少々直します、あるいはまたこれを改善しますといったっておそらくできないと思う。こういうようなことから考えますと、この抜本改正というものがいまいろいろ論議されておりますけれども病院のあり方というものをもう一ぺん抜本改正の中で考えながら、そうしてその考えの中の一端として教育病院はこうあるべきだということで、ひとつ抜本的な考え方をここに入れてもらわないと、ただ単に教育病院をつくるのだといって付属病院並みのようなものをこしらえてみても、かっこうだけでは教育は実際何にもならないと思うわけでありますから、そういう点からいって病院のあり方、いわゆる大学の医学部のあり方とかあるいは大学教育、医学の教育というものがやっぱり抜本改正の中で、医療の中でどうあるべきかということの一つの観点からこれを考えてもらうべきだと思うのですが、この点はいかがですか。
  194. 松尾正雄

    説明員(松尾正雄君) 御指摘のように、現在のこの病院実態において、そのままで教育的な機能がそのまま果たせるとは存じておりません。しかしながら病院群というようなものを申し上げましたのも、いわばベッドサイドティーチングというようなことが、非常に多くの床例で、しかも適切に学生にも与え得ると、それを相当広げ得るというような、そういう教育上の効果ということも十分考慮した上でのことでございます。また人の問題につきましても、当然大学側の方々が病院の中にも自由に入り込んで来るような、またそういう人々も、大学の方も、すべて病院の方々も相当教育にすぐれあるいは研究能力があるというようなものがあることがやはり前提に立たなければならぬと存じますので、そういういろいろな問題については、これを具体化する上においてはやはり精力的に解決をすべきだと考えております。しかしながらそういう問題は、いま抜本問題と申されましただけでございますけれども、私どもはやはり抜本とのつながりもいろいろあると存じます。しかし今後のいろいろな日本の医療需要を考えます場合、私どもはやはり今日まで非常にふえてまいりました医療需要というものが今後これがこのまま減っていくとか横ばいということもなかなか考えられないというような気がいたします。そういうものに対応いたしますためにできるだけ内容の充実した、しかもいろいろな観点から合理的な教育というものがはかられるべきではなかろうか。そういう意味を含めまして今度のような提案も一つの提案として申し上げているわけでございまして、なお、こういう問題につきましていろいろな御意見も十分承りながら、やはり全体としては日本の医療あるいは病院そのものについても、これを機会にさらに飛躍的によくなるということもあわせ考慮した上でまとめてまいりたいものだというふうに念願をいたしておるわけでございます。
  195. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 この教育病院なりあるいは付属病院のシステムというものは、医療の面はやはり厚生省の管轄でありますけれども、教育の面は文部省にあると思うのですね。いまでもおそらくそういうふうにはなっていると思いますけれども、やはり文部省の管轄下で、どういうふうなカリキュラムでどういうふうな教育をするかということが主体になっているのですから、こういうふうなことも含めて考えれば、私はいわゆる抜本改正の話も申したのですが、その治療だけを主にしていくような病院のあり方では、たとえば外来に相当大きな消耗をしてしまうというような状態ではいけないので、外来もほんとうに医学の教育のため、あるいはまた重症の患者のみとか何かいろいろこまかしいあれもいるわけでありますからして、この教育病院というものは、将来はやっぱり厚生省が十分な監督のもとに、二方面からこういうものがやられて、いわゆる学力というものが低下しないように、そのカリキュラムの上においてもあるいはまたいろいろなその教育をする面においてもよりもっと発展をするような仕組みでなければならないし、同時にまた、いろいろな珍しいあるいはまたいろいろなむずかしい病気に対して、病人に対してほんとうに積極的にこれを研究をしながら、これがいわゆる教育にもはね返っていくという、研究と教育とあるいはまた治療と、この三つのものがマッチしていくようなシステムを考えなければならぬので、両方で相当それをやらなければならない。この両方の管理ということはむずかしいようでありますけれども、そういうようなことの見通しはどんなものでありますか。文部省及び厚生省のほうから伺いたい。
  196. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 市中の病院を教育、研究面を整備していただくことによりまして大学の医学教育と関連を持たしていくということにつきましては、大学関係者も多く前向きで賛意を表して検討すべき課題だと考えておりますし、文部省もそう思っております。ただ、現時点で、付属病院なしで医学教育が考えられるかということになりますと、これは相当な検討の末の結論まで否定するつもりは毛頭ありませんけれども、現時点ではこれは無理だと考えます。教育関連病院として整備していただくことによって、まずもって活用し得るのは卒後研修の面が先だろうと思います。卒後研修の面においては、現在大学病院の負担はやや過重のように思います。現在卒後研修は、予算の面で申しますと、一対九の割合で大学病院がしょっておりますけれども、これは半々、むしろ市中病院のほうによけい持っていただくほうがいいんじゃないかと思います。そういうことによりまして、今度は卒後研修の負担が軽くなれば、私は大学の付属病院はもっと学部、学生の臨床教育に力を入れることができるのではないかと思います。現在医学教育、いろいろ改定を言われておりますけれども、特に基礎と臨床、臨床の講義とベッドサイドティーチングをもっと密接にかみ合わしてやれ、ベッドサイドティーチングに重点を置けということが言われております。これに重点を置くには、できれば管理下の病院、それからぜいぜいごく近所にあれば考えられますけれども、やはりあまり離れた病院ではむずかしかろうと思います。そこで卒後研修にいたしましても、将来学部の問題まで考えるにいたしましても、やはりカリキュラムと、それから人的にも密接な関係がなければなりませんので、所管省である厚生省と文部省がその点において密接に連絡をしながらやる必要があろうと思いますし、そういうことはお互いに十分誠意を持って協力、検討すれば可能であろうと思いますし、また可能であらしめるように努力いたしたいと思います。
  197. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 この問題も、時間がありませんから、もう少し詰めたい点があると思いますが、私は文部省に最後に伺ってみたいのですが、いままでの大学のあり方だけでなくて、私は先ほどから厚生省、厚生大臣にも申し上げているのは、もっと教育病院を広げてやるためには、もう何々大学の自治という形でなくて、教育の面は教育の面で、その有名な教授に匹敵するような人は、やはり教育病院の各病院にそういう教授がおられる、いういうふうな形にして、そしてその人がその教育に当たるために、やはり教育に、講義に大学に行くというふうな形がもう少し――よく外国でも行なわれておるような方式ですね。こういうようなものがもっと確立をして、そうしてどこどこ大学はもっと広く教育の場を持っている、教育病院を持っているという、その教育病院にはその教授がみなおって、その教授があちらこちら交流をして、そうしてまた講義をしていけるというようなほうにまで将来私はいくべきだと、こういうふうに思うわけでありますけれども、特に私はいままでの状態だけにとらわれずに、今度この医学教育を拡充しようという問題が出たときには、一ぺん根本的にさっき申し上げた医療の抜本改正等含めて、医学教育の抜本的なものをひとつ考えていただきたい。これが私は前の学園紛争、学園紛争は終わりましたけれども、一応終わったようにはなっておりますけれども、何ら新しいものが得られないという段階から見れば、この医学の教育というものをここらで一ぺん文部省も真剣に考えて、そうして厚生省とよく話し合いをしながら、少なくともその教育のやり方あるいはまた教育のいわゆるベッドサイドティーチングを深めるためのやり方も、もっと別な角度から私は考えるべきじゃなかろうか。それからまた大学の一つのからに閉じこもって、その管理下にある付属病院ということで一つ一つにしないで、もっとワクを広げてやっていくということが望ましいと考えますので、こういう時期においては、今後文部省も厚生省も前向きに、そういうふうなあり方を根本的にほんとうの教育の姿というものをひとつ考え直してみるということに持っていく、このように心をきめてもらいたい。いままでの状態ではこうだああだということじゃなしに、ほんとうに将来の展望をもってこの教育というもののあり方を一ぺん検討してもらいたい、こういうことを思うのでありますので、どうかひとつ大臣の所信のほども聞き、少なくともそういう前向きでひとつ文部省とも、文部大臣とも当たってみる、文部省と厚生省ともっといろんな段階でやってみたいという決意のほどを伺っておきたいと思います。文部省側と大臣からひとつ。
  198. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 大橋先生の御意見、傾聴をいたしました。私はそういう形でこの問題は基本的につき詰めて、その間において医療の現実面の対策をも解決をしていくべきだと思います。幸いここに厚生省の担当の局長もおり、また文部省の大学学術局長もおられますので、共々、こういう問題についての考え方を共通して持ち得たいい機会であったと思いますので、文部省のほうとも、行政的にも事務的にも、また政治的にも十分打ち合わせて進んでまいりたいと思います。
  199. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 文部省といたしましても、従来とも厚生省と連絡を密にしておりましたけれども、今後一そう努力いたしたいと思います。
  200. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 今度はひとつ、この間、種痘禍に対して死亡と障害一級というのが、十八歳以上三百三十万、それから十八歳未満が二百七十万というのが出されたようでありますが、一体――この自賠の保険においても死亡が五百万といっております。またおもしろいことに、この間ちょっと私も調べてみましたら、サリドマイド禍について各国が製薬会社からあるいはまたその社から補償をとっております。たとえばスエーデンではアストラ社が百人のサリドマイド児の補償に対して五十億四千万、一人に対して五千四十万円。五千四十万円という補償をしているわけですね。またイギリスのデイスティラーズでは、二十八人に対して四億二千百五十万、一人当たりが千五百万の補償をしている。それからまたアメリカでは経口避妊薬エナビッドというのがあるわけですが、これに対して中毒を起こして不具廃疾のようになっている婦人がある。こういうものに対しては九千万円を補償をしている。これはまた外国は外国なりにかなり大きな補償をしているわけです。日本では、今度の問題に要求しているのは一千万円を要求しているんですが、これは私は当然のことであろうと思う。こういうようなことを考えてみますと、今度の三百三十万と二百七十万、これは一体算出の基礎はどこで算出されているのですか。これをちょっと聞かせていただきたい。
  201. 村中俊明

    説明員(村中俊明君) 今回の見舞い金の算出につきましては、補償金的なお見舞い金を出すというふうな考え方で、現在の国の他の制度あるいはホフマン方式の一部の参考というふうな形で、ただいま御指摘の十八歳以上については三百三十万、十八歳未満については二百七十万というふうな考え方を打ち出しております。これは、申し上げましたように、お見舞い金という性格を持たせた補償金的なものであるということでございます。
  202. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 この後遺症が残っている場合に、年齢の少ない十八歳未満、この後遺症というのは百二十プロも労働力が喪失しているというんですね。こういう動けないような人がいるのに年齢の少ない者のほうが安いということは、補償から言えば補償される期間が長いわけでありますから、実に不合理だと思うんですね。少なくともこういうような障害の補償というものは年金制にすればそれは話がわかると思います。ですから、こういう観点から言えば、私は、矛盾を解決するには年金制度にしなきゃいかぬのじゃないかと思いますよ。前向きにこういう問題は年金制度として取り扱っていくという意向はあるのですか、ないのですか。それは、私はそういうふうにやるという方向を出してもらわなかったら、これはもうこの立て方で、十八歳以上は三百三十万で十八歳未満が二百七十万。これは年齢の低いほど逆にもっとよけいに出さなければ私はならぬのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  203. 村中俊明

    説明員(村中俊明君) 今回の措置はあくまでも応急的な措置でございまして、伝染病予防調査会が、実は四十三年に伝染病対策についての基本的な将来の構想について大臣が諮問いたしまして、それの中間答申が六月に出たことは御承知のとおりだと思います。この中で、先月開かれました伝染病予防調査会の総括部会の中で、中間答申の中に盛り込まれておりますただいま問題になっております種痘の関連の救済の問題についても立法化あるいは制度化というふうな方向検討するための特別部会を設置をいたしまして、ただいま御提案のようなものも当然論議議題になろうかと思いますが、今後制度部会、特別部会の検討の中でいろいろと御意見を伺ってまいりたいと思います。これはどこまでも応急的な措置でございまして、制度としては特別部会の検討の結果もあわせて処置をしたい、こう考えておる次第でございます。
  204. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 医療費の公費負担ですね、今度の場合でも。それからまた死亡、後遺症に対しては弔慰金とか、いまおっしゃっているように一時金とか言っているのですけれども、それのほかにもっと特別な救済措置というものも考える、これは出ておりましたね。そういうことからいって、生活の面で一体これを補償するならば、これは収容する施設が要るわけでありましょうし、また教育とか社会保障のようなためにはまた訓練所、訓練施設をしていかなければならない。総合対策が必要だからということでああいうふうな討論をされているわけでありますが、具体的にして、やっぱりもう少し明らかにしてやらないと、こういうふうな被災者に対しては非常に不満が残っていると思うのですが、特にこの中で救済措置という用語が意味するものを考えてみると、やはり公害によって健康の被害を受けた、これの救済措置法の中では医療だけにしぼっておるわけですが、社会保障的な救済というようなものが必要になってくるわけでありますけれども、この補償とそれからまた救済という考え方――補償というのはもちろん適法行為に基づいたところの損失の補てんでありましょうけれども、またそうした行為に対する、過失的なものに対する補償の考え方はやっぱりそれなりの方法でこれをあらわさなければならない、こういう意味から考えてみますと、これがどうもひとつあいまいなようなふうになっているのですが、やはり被災を受けたものの側からいえば、もっと補償的な意味できちっとしたものができないと困るだろうと思いますが、そういうふうな点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  205. 村中俊明

    説明員(村中俊明君) ただいま申し上げましたように、今回の措置は応急的な措置でございます。制度化するという過程の段階では御提案のような補償というふうな問題も含めて検討されておりますが、応急的な行政措置ということで、こういう字句を特に使ったわけでございます。
  206. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それから、まだそこのところについてもちょっといろいろただしたいことがありますが、特に被災者の気分に合わして補償的なものを十分にしてもらいたいということを私は申し上げたいと思うのです。  それからもう一つここの中で気になることは、まあ医療法では、カルテとか、そういうものの保存は五カ年間ですね。ところが今度の特別措置の手続ではやはり医療の記録というものが行なわれなければならぬわけですが、実際六年以上もかかっておるような人があったとすれば、そういうものは医者の証明がなかなか出ない。そうすると、医療の記録がないとこの特別措置を受けられないような形になるわけでありますから、こういうのはやはり前の引き揚げ者のときに処置をされたように、また知人の証明とか、ああいうことで、そこで種痘なら種痘を受けた、それでまたその反応が起こったということの何かの証明があればそれでもって交付をすることのできるような形までせねば前向きの姿勢じゃないのだろうと思うのですが、この間うちのあれを見ているところでは、そういうことがなかったように思います。こういう点についてはやはりひとつ手続のあれを考えてもらいたい、こういうように思うわけです。  それからもう一点、副作用の問題ですが、これは実態調査と追跡調査というのが必要なわけですが、この死亡の数は、二十六年――四十一年で何人ということが出ておりますが、その後の後遺症の患者というものはずっと追跡調査をしなければならない、こういうようなことを考えてみますと、実態調査というのは、やはり今後の追跡調査を制度的にこういうふうにするということにしないと、これも手落ちじゃないかと思うのですが、この二点についてちょっとお聞かせ願います。
  207. 村中俊明

    説明員(村中俊明君) 第一点の予防接種に基因するという判定の基礎資料でございますが、これは御指摘のように、医学的な判断がまず前提になるわけでありますし、一番重い比重を占めると思います。そういう意味では、私は、カルテその他の医師あるいは当時担当した主治医といった方々の客観的に判断し得るに足りるようなそういう資料というのは当然要求されると思います。ただ御指摘のような五年以前にさかのぼった場合、これはどういう形のものが資料として適当なのかという点については、いまこまかい詰めをいたしておりまして、御提案のようなできるだけ客観的に判断できるような資料が整え得るというふうな形の中で幅を広げて詰めをしていきたいという気持ちでおりますが、たとえば六年、七年前にあるいは十年前に訴訟があったというふうなことで、それ以来継続してその人がカルテを用意しておる、あるいは医師が持っているというふうな例も私はあると思います。必ずしも五年という、六年目から一切なくなるというふうの趣旨でもないというふうにも判断いたしますし、この点につきましてはもう少しこまかい詰めをさせていただきたい、こう思います。  それから第二点の、副作用その他についての追跡調査の問題でございますが、これも御提案の趣旨は私も全く同感でございまして、今後制度化の過程の中では、そういうサーベーランスシステムというふうなものの確立もぜひ検討事項の中に入れて調査会で御判断願いたい、こう考えます。
  208. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 特にそれについてやはり予算化も必要であろうと思いますから、予算化もひとつそういう調査に対するあれを十分にしてもらいたい。  それから今度ワクチンの開発でありますけれども、こういうような問題に対して、この間も私はちょっと質問申し上げてその後の様子を聞いていないわけですが、この開発のための研究、ことに開発の体制の整備、こういうようなものが非常に私は大事だろうと思うのです。特にまた開発されるまでの応急処置ということもまた一面考えなければならぬことですから、こういう両面を考えてみますと、たとえばリスター株とかいろいろありましたが、それまでの間はどうするか。それからまた、そのワクチンそのものがほんとうにもっと開発されるためにはどうするかという二本立ての問題をよく考えなければならぬということ、これに対してのその後の厚生省の考え方もひとつ伺っておきたい。それからまた接種のあのときにも方法を考えるのだと、いろいろありましたけれども、接種の方法あるいはまた時期だとか、子供の年齢あるいはまた医者に対してはどういうふうにするかというようなことなんかもっと具体的なその後の様子も聞いておきたい。  それからことに薬務局のほうに対しては、VIGによっての予防、こういうようなものもたいへんな問題だし、マルボランによる治療なんかも考えられておるわけですが、その後これに対してはどういうふうにされておるか。あのときに、私は、いろいろ日本で製剤をするための今後の前向きの考え方に対しても要望しておいたのでありますけれども、その後の考え方について伺っておきたい。これだけ簡単にお願いいたします。
  209. 加藤威二

    説明員(加藤威二君) 種痘の株の研究につきましては、来年度におきまして約千四百万ばかりの予算を組んでおります。さらに副作用の少ない株の開発ということにつとめたいと思います。ただ、それまでの間に暫定経過措置といたしまして、ただいま先生御指摘のように、マルボランとかVIGの問題がございますが、マルボランにつきましてはイギリスのほうから輸入いたしまして、現在約六百人分を確保いたしております。それからVIGにつきましても、これはオーストリアから約三百人分を確保しているというのが現状でございます。ただ、これでは不十分でございますので、さらに日本赤十字社におきましてVIGを生産する。そのためには、この前の委員会で申し上げましたように、御承知のとおり、これは種痘後数週間の人の血液が必要でございますので、そういう種痘後数週間の献血者を確保する。これは港湾労働者港湾労務者の方々の協力を仰ぐ。あるいは日赤で献血を受けましたときに問診をしまして――問診といいますか、種痘後数週間以内の方は一応それを申し出ていただいて、そういうものを別ワクにしてVIGをつくるための血液にするというようなことをやってもらっております。現在、日赤は五リットルのこういった血液を確保いたしておりますが、今後そういう血液をさらに増加させまして、VIGの国内生産ということもやっていきたいというぐあいに考えております。
  210. 村中俊明

    説明員(村中俊明君) 種痘の接種の方法、時期、年齢という点についてでございますが、年齢につきましては、先月、伝染病予防調査会の予防接種部会、ここでいろいろデータを検討していただきまして、従来の二カ月から十二カ月を六カ月から満二年、二十四カ月というふうな範囲にやることが適当だろうというふうな結論をいただきまして、先般、全国の主管課長会議を開きましてこの点の打ち合わせをいたしました。なお、接種の方法につきましては、これも両三回、今回の問題後、県に対して通知を出しておりますが、それらの通知を全部一まとめにいたしまして具体的な指導をいたしております。これが主管課長会議におきまして指示いたしました事項でございます。
  211. 武内五郎

    武内五郎君 私は、時間になりましたので、内容の詳しい説明をする予定でありましたが、これができなくなりました。骨になる部分だけ申し上げてお伺いしたいと思います。  私がお伺いしたいのは、援護行政の推進に関する問題であります。援護行政は、とにかく戦争後すでに四分の一世紀を経ており、昭和二十七年に援護法が施行されて今日まで十八年余になっておりまするが、いまだ救われることができないでたいへん苦しんでおる人々がたくさんあるようであります。ことに自分の意思から出ていない、いわゆる昔の瑕疵のために軍刑法犯罪のらく印を押され、その遺族が出口のない牢獄で呻吟をしているというような者がかなりたくさんあるようであります。私は、これらのいたましい家族の中のいわゆる氷山の一角ともとられる人を指摘いたしまして、援護行政のあり方について明らかにしていただきたいと思うのであります。  その前に、私は、法制局にこれらの法に関する解明をお願いしたいのでありますが、事は、実は廃棄されました軍刑法に関することでありますので、たいへんやっかいだと思うのでありますが、ぜひひとつお願いしたい。私はもとより法律専門家でありませんので、きわめて社会的な常識の立場から申し上げますので、一般国民も理解できるような解明をお願いしたいと思うのであります。  事の起こりは、南太平洋ブーゲンビルという島に結集した日本軍、これはほかの島嶼から撤退いたしまして、そこに結集して第十七軍を編成した。その中に起きた事件であります。この中で長野県の中野市出身の陸軍軍曹吉池袈裟次という人がありました。この人が戦場でとにかく死んだということで、昭和二十一年八月に遺家族の妻きよに対して、長野地方世話部長の名で吉池軍曹は昭和二十年八月十二日ブーゲンビル島ムグアイにおいて平病死した旨の公報が入ったのであります。平病死なんというものはわれわれしろうとにはちょっとわかりません。そこで遺家族は、昭和二十七年十二月六日、援護法による年金と弔慰金の申請を厚生大臣に向かって提出したのであります。ところが昭和二十八年十月三日付で厚生省から却下の通知が出たわけであります。どうしてもふに落ちない。遺族としてはふに落ちない。一身を戦場にさらして死んだ夫の死が何ら報いられることのない状態であるとされるならば、家族の人々がどんなにいたみ悲しむかわからぬ。そこで、これに対して昭和二十九年の四月二十八日、不服の申し立て書を厚生大臣あてに提出されております。これの申し立て書には長野県知事も、不当であるという意味の添書がつけられておったはずであります。  これが問題に至るまでの経過であります。その前に、それに先だって、ここに一つの問題が出てきております。こういう援護申請に対する却下、それに対する不服の申し立てがある前に歩兵第二十三連隊の所属にあります第七中隊の隊長が「歩兵第二十三連隊等死因未詳者状況一覧表」という表を提出しておるわけです。これは帰還兵の整理等の関係でそういうものを提出したということであります。その中にずっと書いておりまするが、だれだれが変死、だれだれが死刑あるいは自決というような氏名と死亡の区分、年月日等が記載されております。この中で私どもが特に注意しなければならぬことは、昭和二十年八月十五日前後、日本がポツダム宣言を受諾して戦争を終わった。その前後に行なわれた死刑――平病死(死刑)、変死(死刑)、変病死(死刑)というような報告書が提出されたわけであります。私はここに大きな疑問を生ずるのは、こういうような問題の報告がされております中で、これらの部隊に関係した人々の中には、いや全然それはなかったことなんだということを言っておる人もたくさんおります。また、第十七軍部隊長自身はこういうことを言った。吉池等の死刑のことは全然知らない、憲兵隊から何の報告もなかった。いわんや軍法会議の残存書類にもそれがないとするならば、私も福田君――第二十三連隊長福田環。福田君らの証言を信ずるよりほかに処置がございません、こう言っておる。この福田環という人は何と言っておるかというと、食糧収集のため出て敵機にあるいは土民に殺されたかあるいはジャングル内で帰路に迷って帰れない者などは知る由もない、死体の確認のできない行方不明者が生ずるに至った、これらの者は後日いろいろな形で処理された。もし、処刑に関する書類ありとせば、これまさに戦後事務処理の要求に基づく作文に過ぎないと、部隊長も否定し、連隊長も否定しておるわけであります。こういうような事件が起きたわけであります。  私は、まず法制局にお伺いしておきたいことは、そういう南海に起きた、しかも非常に混乱した戦線の南海において、前線における軍法会議というものは一体正常な形で持たれたのか。もし、そういう軍法会議を開くという場合には、どういう手続で開かれたか。そしてだれが一体その軍法会議の指揮をとって責任を負うものであるか。これを一応明らかにしていただきたいと思うのであります。
  212. 角田礼次郎

    説明員角田礼次郎君) 御引用になりました前線における軍法会議が実際問題としてどのようにして開かれたかという事実の問題につきましては、私はお答えいたしかねますけれども、一応法律の規定を申し上げますと、前線における軍法会議と申されましたのは、陸軍軍法会議法の第八条第五号に臨時軍法会議というのがございます。おそらくそれをさしておっしゃったと思いますが、臨時軍法会議は陸軍軍法会議法第九条第三項の規定に基づきまして、戦時事変に際し編成されました陸軍の部隊において必要を認めた場合においてこれは特設されるということになっております。したがいまして、第十七軍におきまして軍法会議が設けられたとすれば、いまの規定に基づいて設けられたものと考えられます。なお、具体的な審判を行なう軍法会議はどのようにして構成されたかといいますと、特設軍法会議は五人ないし三人の裁判官をもって構成されますが、公訴提起があった個々の事件に応じて、特設軍法会議が設けられた部隊の長官、この場合は第十七軍司令官に当たると思いますが、その司令官がいま申し上げた裁判官を任命して、そして軍法会議を具体的に構成をする、こういう仕組みになっております。  なお、最後に御質問のありました指揮という問題でございますが、この点につきましては、いわゆる審判機関としての軍法会議の行動に対しては一切干渉できない、外部の者は干渉できないということが陸軍軍法会議法の第四十六条に規定されております。したがって、いま御指摘の指揮ということが審判機関の行動ということであれば、これは一切、陸軍司令官といえども干渉できない。ただ、部隊の長官は軍法会議の主宰者としていま申し上げたような審判機関である軍法会議を構成したり、そのほか準備手続において捜査を指揮したり、予審を命ずるというような一切の訴訟上の手続あるいは訴訟外の手続、そういうものにつきましては部隊の長官は指揮はできると、こういうふうに軍法会議上は規定しております。
  213. 武内五郎

    武内五郎君 よくわかりました。  そこで、さらにお伺いしたいのですが、そういう非常に激しい戦線の中で軍刑法違反の審判が行なわれるとするならば、やはり軍法会議という機関の設置または開設というものがどうしても必要であることは否定できないと思いますが、どうでしょうか。
  214. 角田礼次郎

    説明員角田礼次郎君) そのとおりでございます。
  215. 武内五郎

    武内五郎君 そこで、私は明らかにしていただきたいことは、軍法会議が審判を行なったときは公判調書をつくるのがこれは当然だと思うのであります。これは明らかに会議法にもそう規定してあるようであります。軍法会議法百十二条には「公判期日ニ於ケル訴訟手続ニ付テハ公判調書ヲ作ルヘシ」、これは命令になっております。「作ルヘシ」。それからその「公判調書ニハ左ノ事項其ノ他重要ナル訴訟手続ヲ記載スヘシ」、この「左」というのは第一項から第十二項まであって、第一項は「公判ヲ為シタル軍法会議及年月日」、第十二項は「判決其ノ他ノ裁判ヲ為シタルコト」、こういうような一項から十二項にわたって明細な軍法会議の手続、進行等に関する公判調書の作成の内容を記しておるようであります。しかも百十五条に至って、「公判調書ニハ裁判官タル法務官録事」――これは書記であります。「録事ト共ニ署名捺印スヘシ」と、こういうふうに命令で公判調書の作成の順序とその責任を明らかにしておるようでありまするが、そう解釈して差しつかえないですか。
  216. 角田礼次郎

    説明員角田礼次郎君) 公判調書の作成義務につきましては、ただいま御指摘のとおりでございます。ただ先走ってちょっと申し上げるようでございますが、軍法会議法の百二十七条に若干「特設軍法会議ニ於テ審判スヘキ事件ノ書類ニ付テハ本節ノ規定ニ依ラサルコトヲ得」、「本節ノ規定」というのは、ただいま御指摘の百十二条とか百十五条もそれに当たるわけでございますが、若干の特例ということは、法律の上でも認めているということにもなろうかと思います。
  217. 武内五郎

    武内五郎君 そこにくると、その百二十七条の特例の場合であります。しかしながら、これはそういう手続を踏まんでもいいということなんですか。それが第一。それからそういう公判に関する人間の――いくらこれは兵隊であっても人権、そういう人権を審判した経過を記載する調書というものを作成しなくてもいいというのですか、この二点。
  218. 角田礼次郎

    説明員角田礼次郎君) その点につきましては、私ども、実はこの百二十七条をどのように読むべきかということについていろいろ検討いたしました。最初に御指摘のようにすでに廃止になった法律でございまして、いまになってこの規定の解釈を明らかにするということは非常に困難でございますが、いろいろ当時の参考の書類、著書なども調べましたけれども、遺憾ながらその点が必ずしも明らかでございません。しかし、確かに方式等について、若干の特例はあるいはこの規定に基づいてできるのじゃないか。しかし、調書作成義務そのものを全然免除してしまうというようなふうに解し得るかどうかについては、ただいま御指摘のように、いろいろ問題があるのじゃないかと思います。ただし、いろいろ調べましたけれども、この規定をどう解釈するかということについて、いま法制局として自信を持って公権的な解釈を立つということは非常に困難じゃないかと思います。ただ御指摘のようなことは、確かに問題点として私どもも感じております。
  219. 武内五郎

    武内五郎君 まことにそういう点が私は問題を起こし、問題をことさらに複雑にしてきた大きな原因だと思います。さて、それはそれといたしまして、そこでしからばそういう戦線において人間を裁く場合に、軍法会議の審判を経ないで事件の判決が、処理ができたのかどうか。特にお伺いしたいことは、死刑というようなまことに重大な事犯の処理を軍法会議を経ないで処理することがあり得たのかどうか、許されていいのかどうか。もしそういうようなことができたとしても、私は当然その処理に関する記録というものが残されなきゃならない。いやしくも国家の機関――国家の機関が国民の審判をする記録がないはずが私はないと思いますが、その点はどうですか。
  220. 角田礼次郎

    説明員角田礼次郎君) 軍法会議における審判をしないで事件、特に死刑というような重要な事件の処理ができるかということにつきましては、これはもう法律的にできないということは明確であろうと思います。現実にそういうことがなされたかどうか、あるいはそれについて調書が残っているかどうかというような問題につきましては、これは私がお答えする範囲内の問題じゃないと思います。御答弁は御容赦願いたいと思います。
  221. 武内五郎

    武内五郎君 実は、私はほんとうはこれは一般問題だと思うのであります。当然法の解釈として出されるべきものだと、そういうことではまことに実は遺憾だと思うのでありまするが、しからば、いかなる軍法会議といえどもその長官が――これは軍法会議法の第四百五条「長官ノ命令ナクシテ公訴を提起シタルトキ」は「判決ヲ以テ公訴棄却ノ言渡ヲ為スヘシ」と命令が書いてある。したがって、かりに長官が全然知らない、関知しないという軍法会議があったとするならば、それはその軍法会議は無効だということになると思うのですがどうですか。
  222. 角田礼次郎

    説明員角田礼次郎君) 結論は同じようなことになると思いますけれども、御引用になりました規定、ちょっと申し上げますと、これは長官の命令なくして公訴が提起されたそういう事件については、軍法会議は公訴棄却の言い渡しをなすべし、こういうことでございますから、軍法会議の構成とか存在とかについて命令があったとかないとかいう問題とは別と思います。しかし、おっしゃるとおりに、そういうようなことはあり得べからざることだと思います。
  223. 武内五郎

    武内五郎君 わかりました。その次に、戦時中そういう軍法会議において判決が下る、処刑される、特に死刑はこれは銃殺刑でありますが、銃殺される場合にその手続はどういうふうな手続がとられたか。軍法会議法の――私も急ぎまするので、私自身から申しますが、軍法会議法の第五百二条「死刑ノ執行ハ陸軍大臣ノ命令ニ依ル」、こう書いてある、ブーゲンビルのような、七月から補給が全然絶えて、艦船の交通もなく、通信も途絶した孤島の中で起きた事件であります。どうして陸軍大臣の命令を待つことができるか。この点はどういうふうにお考えになっておりますか。
  224. 角田礼次郎

    説明員角田礼次郎君) 原則はまさに御指摘のとおり、五百二条に「死刑ノ執行ハ陸軍大臣ノ命令ニ依ル」ということになっておりますが、同時に五百八条という規定がございまして、ここでは「特設軍法会議死刑ヲ言渡シタル場合ニ於テハ其ノ執行又ハ執行ノ停止ニ関スル陸軍大臣ノ職務ハ長官之ヲ行フコトヲ得」という規定がございます。この長官は特設軍法会議が設置された軍の長官ということになりますから、必ずしも陸軍大臣まで行かなくてはいかぬということにはなっていないようであります。
  225. 武内五郎

    武内五郎君 そこでここに問題が出たわけであります。これは法制局のほうからお伺いするまでもなく、先ほどちょっと私が触れましたが、司令官も知らなかった。  その次に伺いますことは、もちろんそういうような死刑が行なわれたとしても、軍法会議法第五百六条「死刑ノ執行ニ立会ヒタル録事ハ執行始末書ヲ作リ検察官及監獄ノ長ト共ニ之ニ署名捺印スヘシ」といって、書類の作成を命じておる。これは当然そういうふうにならなければならないと思います。そこで、こういうような書類作成、公判調書の書類作成、それから死刑を執行した場合における死刑執行始末書の作成、こういうようなその事犯の被処刑者がどういう状態で殺されていったかという証明というものは、もしそういう関係の書類がないとするならば、一体何によってこれを証明することができるでしょうか。実に私はどうやって証明すべきものだかいろいろ考えたのでありますが、これはないのでありますが、どうでありましょう。
  226. 角田礼次郎

    説明員角田礼次郎君) 裁判が行なわれた、あるいは判決が下されたということについて直接に証明する書類については公判調書、それを含めますいわゆる裁判書というものがそれに当たることは言うまでもないと思います。また刑が執行されたことを直接に証明する成規の書類としては、これまた御指摘のような執行始末書というものがそれに当たることも間違いないと思います。それらの書類がないときにどうして証明するかという御質問でございますが、これにつきましては、私どもの立場から申しますと、どういう法律関係においてそういうことを証明することが必要になっているかという問題と関連いたすと思います。で、それぞれの法律関係において何らかの意味で死刑の執行なりがあったかどうかということを、心証と申しますか、そういうことを証拠としてどれだけ確かなものとして考えるかという問題として考えますと、いま申し上げた執行始末書というものが最も有力な証拠になることは、これは言うまでもないかと思いますが、それがない場合においても、具体的な事件によりましては、他の資料なりあるいは関係者の証言等によってその事実を証明することが絶対にできないとは言い得ない。しかしそれは非常にむずかしいことだろうとは思いますが、しかしそれぞれの具体的ケースに応じてそれぞれ考えるべき問題であろうと思います。
  227. 武内五郎

    武内五郎君 ところが、本件が厚生省に提出されて以来十六年になりまするが、ほとんどどんな審査をやったかわかりません。いろいろ厚生省で調べた資料も私どもの手に入っております。それによると、肝心のこの公判調書、犯罪事件の内容を記していなければならない公判調書というものが、復員後におけるそういう犯罪書類の保管を引き継がれている福岡地方検察庁にも死刑を執行したという書類もないと聞いております。ただ、実に一片の有村作成の名簿一覧表があるだけであります。一体、有村というかっては陸軍第二十三連隊第七中隊の中隊長であった有村大尉が終戦後日本に帰ってきて復員事務所に提出した一覧表が、どれくらいこれによって人間の人権が――私は必ずしもこれが死刑をされたのだというらく印を押すことができるほど、それくらい有力な一片の書類であろうかどうか。公判調書もない。どういうふうにこれをお考えになりますか。
  228. 角田礼次郎

    説明員角田礼次郎君) せっかくの御質問でございますけれども、私はこの事件につきましては、具体的事実の認定につきましてはそれをとやかく申し上げる能力もございませんし、またその立場にもございません。非常にむずかしい事件だろうということは私個人としては十分感じますが、それ以上のことは申し上げられません。
  229. 武内五郎

    武内五郎君 わかりました。  そこで、これ最後に、いま一問を終わりまして厚生省のほうに入りたいと思うのでありますが、御承知のとおり、終戦後大赦令が三次にわたって出ております。第一次は昭和二十年十月の十七日勅令第五百七十九号、第二次は昭和二十一年十一月三日勅令第五百十一号、第三次は昭和二十七年四月二十八日政令第百十七号、こういうふうに戦後処理のための大赦令が三次にわたって発令されておるわけであります。特に私どもがここでお伺いしたいことは、この勅令の第一次、第二次は特にここで軍刑法違反者が大量に救われたのであります。この大赦令が発令された後において裁判が開かれ、事件が結審されて判決が出た。そうして処刑された。刑務所に入った。中には刑務所において、これは病気をして死んだのか、あるいはどうやって死んだのか原因は不明でありますが、死因がはっきりしませんけれども、五名死んでおる。こういうような処理が終戦後この第十七軍の中で行なわれた。せっかく勅令で出たこの大赦令の中で救われなければならない人、特に逃亡の罪に問われている人がここに最もよく適用されていなければならぬはずのものが、みんなそういうふうにしてやられておるのが、記録によりますと実に六十五名ある。こういうようなのは一体どうやって理解すべきものなのか。その理解だけでもいいから私お伺いしたいと思います。
  230. 角田礼次郎

    説明員角田礼次郎君) 法律的に申し上げますと、おっしゃるとおり、大赦令が出たわけでございますから、まあ大赦令に該当する者につきましては当然言い渡しが効力を失う。したがって釈放されるとか、あるいはまだ言い渡しを受けていない者については公訴権は消滅すると、そういうことにならなきゃならないはずでございます。まあ終戦直後の、しかも南方のどこかの島で、おそらく連合軍の管理下にある部隊における軍法会議の運用とか、あるいはその判決の結果に基づく刑の執行ということについては非常に異常な事態ということが言えるだろうと思います。理解できるかどうかということにつきましては、率直に言って、私もそういう事態につきましてはびっくりしているという以外には申し上げられません。
  231. 武内五郎

    武内五郎君 そこで厚生省にお伺いします。私がいままで指摘いたしました問題、特に長野県のこの元陸軍軍曹吉池袈裟次に関して、援護法による援護申請があって、弔慰金の申請が出て、それが却下された。それに対して遺族は実に不満にたえないのでこういう不服の申し立てがあった。こういうことはあったのかどうか、お伺いしたい。
  232. 武藤き一郎

    説明員武藤琦一郎君) 先生の御説明になりました事件につきましては、不服申し立てが二十九年に出ておりまして、厚生省は三十四年にこれを県から送付を受けております。
  233. 武内五郎

    武内五郎君 その却下の理由を明らかにしていただきたいのですが、どうですか。
  234. 武藤き一郎

    説明員武藤琦一郎君) 御遺族に御連絡しました内容につきましては、先ほど先生が読み上げられたとおりで、いわゆる平病死で亡くなっておられる。つまり公務でないということで却下をいたしております。
  235. 武内五郎

    武内五郎君 われわれ社会の者は平病死なんということはわからぬ。一体どういうことでございますか。
  236. 武藤き一郎

    説明員武藤琦一郎君) 公務で亡くなった方には、いわゆる死亡公報が出るわけでございますけれども、それ以外の自殺あるいは事故死、処刑等で亡くなられた方々につきましては、いろいろ御遺族等の心情を考慮しまして、通例平病死というような通知を出しております。  それからまた却下理由等には、援護法の規定に該当しないというような字句を用いられておることが通例でございます。
  237. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  238. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 速記を起こして。
  239. 武内五郎

    武内五郎君 そういう判断は一体何によってなされたのでありますか。私はこの判断のよりどころが大事だと思うのです。一体何によってなされたのか。すでに私が指摘いたしましたように、吉池の事犯に関する調書あるいは死刑執行に関する始末書というものは一切ない。最も信頼しなければならない国の書類がない。そのないものを中隊長が出した一片の書類で判断するとするならばこれは人間を軽視するもはなはだしいものだと思うんだな。一体厚生省はそれをほんとうにやったのか。何によってその判断をしたのか。私はいろいろ最近厚生省の人間らしいものの考え方をはずれたようなできごとをしばしば聞いておりまするので、その点をはっきりさしていただきたい。
  240. 武藤き一郎

    説明員武藤琦一郎君) 昭和二十七年に申請がなされまして、それを却下したのはどういう確認資料によってやったかという御質問であろうと思いますが、これにつきましては、部隊が報告いたしました未詳者連名簿、死亡者連名簿、その他あと一件ございますが、その部隊の規定に基づきまして、調整いたしましたものに死刑ということの事実が明記されておりますので、この処置をとったものと考えられます。
  241. 武内五郎

    武内五郎君 そういう一体部隊とは何ですか。そのときは部隊はあるんですか、終戦後。
  242. 武藤き一郎

    説明員武藤琦一郎君) 部隊が復員しますときには、部隊におります生存者あるいは行くえ不明者、その他の詳細な名簿を提出するように規定がなっております。
  243. 武内五郎

    武内五郎君 私はかりに部隊があって、その作成されたものが出されたとして、それより信頼するものがないとしても、こういう名簿が作成されるときには一体どういうふうな状態で作成されたのか。これが有村の言うことでは、まあ何とかしてていさいをつくって上陸し帰還する手続をとったと。それはほかのものも、これを作成する処置も結局そういうことになります。一体そういうていさいをつくってというような書類が一体人間の生命を、人間の人権を左右するということは全く私はおそるべきことだと思うわけですがどうですか。
  244. 武藤き一郎

    説明員武藤琦一郎君) ただいま私が申しました書類でございますが、これは生存者、生死不明者、それから亡くなった方というものをはっきり区別して部隊長がこれは報告しておりますので、先生が御指摘されるようなものではないというふうに確信しております。
  245. 武内五郎

    武内五郎君 その部隊というのは一体何なのかと私は先ほどから聞いている。連隊長自身が、私の関知した問題ではありません、単なる作文にすぎないでありましょうと。こういうような権威のない、何らその価値のない一片の書類です。こういうような一片の書類、それをわれわれが信頼して人間にらく印を押すということは一体どういうことですか。きょうは時間がありませんから、きょうは質問やめます。二回、三回やります。大臣よく御調査をお願いして、私は大臣にひとつよく、これはたいへんな問題ですから御調査をお願いしたい。人間の生きるか死ぬかの問題、尊い人権の問題ですからよく御調査いただいて、国の権威というもの、国民から国が信頼される国の権威というものを保持していただくように御努力願いたい。
  246. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) これは具体的の事案でございまして、私がお答えできるものではございません。特に、承っておりますと、この該当者はすでに戦争の末期において亡くなられた方でございまして、その死亡の原因について恩給法等の適用があるかないかという具体的案件でございまして、これまでもでき得る限りの資料に基づいて判定をいたしてまいってきたものと思われます。私自身がこの資料を処理はいたしておりませんが、資料の存在する限り、本人に有利な資料が存在する限り、御本人といいますか、亡くなられた方の利益のために見てあげるのがよいことと思います。なおまた、これは直接関連ありませんけれども、去る国会におきまして援護法の修正がございまして、従来は援護の対象外に置かれておったような、あたかも本件の方に該当するとも言われるようなことにつきまして、法律の改正によりまして援護の措置が受けられるようになったはずでございますので、そういうこともあわせてお考えいただきまして、円満なる処理ができれば一番いいことと私は思います。  以上でございます。
  247. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 他に御発言もなければ、本件に対する本日の調査はこの程度にいたします。  散会いたします。   午後六時二分散会