運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1970-06-11 第63回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年六月十一日(木曜日)    午前十時十九分開会     —————————————    委員の異動  五月十四日     辞任         補欠選任      大松 博文君     玉置 和郎君      津島 文治君     横山 フク君      白井  勇君     塩見 俊二君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         佐野 芳雄君     理 事                 上原 正吉君                 鹿島 俊雄君                 渋谷 邦彦君     委 員                 高田 浩運君                 徳永 正利君                 山崎 五郎君                 山下 春江君                 横山 フク君                 大橋 和孝君                 藤原 道子君                 柏原 ヤス君                 中沢伊登子君    国務大臣        厚 生 大 臣  内田 常雄君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        警察庁交通局長  久保 卓也君        経済企画庁国民        生活局長     矢野 智雄君        科学技術庁研究        調整局長     石川 晃夫君        外務省経済協力        局長       沢木 正男君        外務省経済協力        局外務参事官   鹿取 泰衛君        大蔵省主計局次        長        橋口  收君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省環境衛生        局乳肉衛生課長  神林 三男君        厚生省環境衛生        局食品化学課長  小島 康平君        厚生省環境衛生        局公害部公害課        長        橋本 道夫君        厚生省薬務局長  加藤 威二君        厚生省児童家庭        局障害福祉課長  今泉 昭雄君        厚生省保険局長  戸澤 政方君        社会保険庁医療        保険部長     穴山 徳夫君        通商産業省企業        局立地公害部公        害第二課長    根岸 正男君        通商産業省鉱山        石炭局石油業務        課長       斎藤  顕君        運輸省自動車局        整備部長     隅田  豊君        労働省労政局長  松永 正男君    参考人        日本育英会理事        長        緒方 信一君        日本貿易振興会        理事長      原  吉平君        農林漁業団体職        員共済組合理事        長        小林繁次郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○労働問題に関する調査  (日本育英会等職員の労働問題に関する件) ○社会保障制度等に関する調査  (日雇労働者健康保険法に関する件)  (自動車排気ガスによる公害に関する件)  (食品等公害に関する件)  (サリドマイド児対策等に関する件)  (木曽川流域水質保全等に関する件)     —————————————
  2. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  労働問題に関する調査を議題といたします。  この際、参考人出席要求についておはかりいたします。  日本貿易振興会日本育英会及び農林漁業団体職員共済組合職員の労働問題に関する件について本日の委員会に、日本育英会理事長緒方信一君、日本貿易振興会理事長原吉平君及び農林漁業団体職員共済組合理事長小林繁次郎君を参考人として出席を求め、意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。  ただいま決定されました三名の参考人方々の御出席を願っております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日建御多用中のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございました。  本件の実情について御報告をお願いし、忌憚のない御所見等を拝聴いたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。  これより御発言を願うのでございますが、参考人方々からは、お一人五分ないし十分程度で御発言を願い、それからあと委員からの御質疑に対しお答えを願うようにいたしたいと存じますので、その点をあらかじめお含みおきをお願いいたします。  それでは、まず緒方参考人よりお願いいたします。
  4. 緒方信一

    参考人緒方信一君) 日本育英会理事長緒方でございます。  ちょっと委員長に伺いますけれども発言と申しますのは、何か御質問があって答えるというふうに考えて参りましたので、われわれの団体労働関係のことだということは承知しておりますけれども、何か御質問があってお答えするほうが適当ではないかと私は思いますが、いかがでございましょうか。
  5. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  6. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 速記を起こして。
  7. 緒方信一

    参考人緒方信一君) 今日、私ども参考人としてお呼びいただきましたのは、特殊法人労使関係の問題につきましてのことであろうと存じますが、ただいま問題になっておりますのは、労働組合側から賃金決定につきまして、特に私の団体関係で申しますと、中央労働委員会調停申請をしているという問題がございます。それをめぐってのことにつきまして簡単に申し上げてみたいと存じます。  われわれの団体労働関係につきましては、公共企業体労働関係を調整するような特別な制度がございません。したがいまして、いわゆる労働三法がそのまま適用されておるという関係になっていることは否定できないと思います。したがいまして賃金決定労使の自主的な交渉において決定をする、そういうたてまえがとられておるものと考えております。ところが労働組合から賃上げ等について要求がございましても、私ども団体としては、特に私ども日本育英会でありますけれども全額国庫補助金によって運営いたしておりまして、人件費ももとよりその中に含みます。したがいまして、この賃金決定するにあたりまして、財源関係あるいは予算関係等からいたしまして、自由に理事者のほうできめてこれを行なうということは困難な実情にあります。予算決定あるいは給与引き上げ等基準変更等につきましては監督官庁認可を必要とするたてまえになっておりますので、その認可がなければ組合要求を受けるという、自由に受けてやっていくということは非常に困難な実情であります。したがいまして、このたび労働組合としてはそういう関係にあきたらないということで、これは本来労働三法適用されておるから、春闘で早い時期において賃金決定したい、そのためにそれを中央労働委員会に持ち出して、早く有額回答を出すようにということを申請いたしたわけでございます。いまも申し上げましたように、団体といたしましては、従来やっておりますことは公務員に準じまして、人事院勧告が行なわれてそれに準拠してやるということでありますので、いまの時期にはこれはなかなかむずかしいという関係になっております。そういう関係が起こっておりますので、それについていろいろお尋ねがあるかと存じております。  以上、たいへんまとまりませんけれども一応現在の状態を申し上げた次第であります。
  8. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) ありがとうございました。  次に原参考人にお願いいたします。
  9. 原吉平

    参考人原吉平君) 私は、昨年の十一月にジェトロ理事長の職を拝命いたしまして、以後鋭意ダェトロの事務について勉強しているわけでございますが、何ぶんにも事務範囲が広範でございます。したがいまして、これから先生方の御質問に対して的確な答えができない場合があるかもしれません。その場合には、ここにおります佐々木労務担当理事から御答弁申し上げることをお許し願いたいと思います。  ジェトロ労働事情につきましては、本年の三月三十一日に組合側からわれわれに対しましてベースアップ要求、それから夏期一時金手当その他いろいろな問題につきまして要求を提出してまいりました。自後十六回にわたりましていろいろ組合側と折衝したのでございます。そうして昨日に至りまして大体全部——まだ継続的なものもありますが、一応組合側との間において意見の妥結を見たわけでございます。その間に超過勤務拒否、それからストライキ、二回したわけでございます。そのうちで最も大きな問題になりましたのは、組合側からベースアップについて中労委員会調停申請したのに対しまして、われわれといたしましてはこれを拒否したわけでございます。その理由は、先ほどもちょっと育英会からお話しになりましたように、ジェトロ給与というものは、貿易振興会法第三十条及び三十四条によりまして、通産省許可及び大蔵省協議ということになっておりまして、従来の例といたしましては、公務員に準拠いたしまして、人事院勧告が出まして大蔵省内示があって、それから組合と折衝するということになっております。これは、われわれのほうは予算大蔵省と折衝いたしましていただいてまいりまして、その中に予備費というものがありまして、その予備費ベースアップに使うことは、どうしても通産省許可及び大蔵省協議事項を経た上でないとできないわけになっております。したがいまして、組合側要求いたします自主的にベースアップをきめてくれということは、いま申し上げましたように、制度の問題でございます。われわれとしては、どうしてもこの制度改廃ということは、なかなかいまのところではできないような状態にあるわけでございます。それで、組合側の言い分といたしましても、何もわれわれが自主的に賃金をきめちゃいけないという規定はないわけでございますが、制度上そういうようなことになっておりますためにできないものですから、その点が組合側とわれわれとの間において意見の相違が出てくることになっておるわけでございます。まあ幸いにいたしまして、今回のところは組合側もわれわれの意のあるところを了承いたしまして、そうして、この制度改廃の問題は、むしろ組合とわれわれとが一致協力して通産省なりあるいは大蔵省に当たらねばならない問題だろう、そういうふうにも考えておりまして、その点を説明いたしましたら、組合側においても了承してくれたようなわけでございます。  以上、最近の労働事情を御説明申し上げました。
  10. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) ありがとうございました。  最後に、小林参考人にお願いいたします。
  11. 小林繁次郎

    参考人小林繁次郎君) 通称農林年金と称しております組織小林でございますが、私たちの足元の労務事情は、ただいまお二人の方からお話しが出たことと相共通しております。  しかし、最初でありますので、一通り簡単に申し上げますと、やはりわれわれの組織労働三法適用団体であります。しかし、同時に共済組合法という特別法によりまして、たとえば賃金決定につきましては主務大臣認可を必要とするというような法令上の規定もございます。したがって、それらの問題については、予算等に関連する問題については、主務大臣大蔵大臣とあらかじめ協議をしなければならぬという仕組みに相なっております。  そこで、私のほうも、去る三月三十一日に労働組合から本給一万五千円のベースアップ要求する——その他の項目もございますが、そういう要求が出て、その後団体交渉が持たれておるわけであります。問題の中心は、先ほども御説明ありましたように、この給与改定認可を必要とするという事情から、従来とも人事院勧告等が出ました際に、それに準拠して政府関係機関ベースアップのいわゆる内示と称せられるものが出てまいり、それに基準を置いてわれわれのほうで具体的な対案の作業に入るというようなことになってきておりますが、そのことに到達しない時期におきまして具体的な金額回答をするということは困難であるということで、そういう手順を到達するまでの間、その他の労働問題いろいろありますので、十分打ち合わせていきたいというようなことで推移してまいっておりますが、労働組合のほうから申しますと、労働三法のたてまえからしまして、労使間において給与決定をして、それを申請すればよろしいんじゃないか、それを認可するかどうかは先の問題にしても、労使間で賃金決定するということは当然使用者側としてもとるべき態度ではないかという主張をしておるわけであります。しかしながら、いま申し上げるようなことで、そういうことで実現の可能性があるかどうかつかめない回答をするという無責任な態度をとり得ないということで両者の間で意見の対立を来たした。皆さんからお話しがありますように、労働組合中央労働委員会にその問題の提訴申請をいたしました。中央労働委員会のほうからわれわれのほうに対して意見の御聴取がありました。いまのような仕組みのもとにおいては、せっかくいろいろのごあっせんを願っても、事実上金額に関連する御回答をするわけにいかぬということになれば、われわれとしては調停申請を申し上げるというわけにはまいりませんというようなことをお話しをして今日になっておるわけでございます。  おおむね共通した姿でございますので、一通り申し上げまして御報告といたします。
  12. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) ありがとうございました。  それでは、これより参考人に対し御質疑のある方は順次御発言を願います。
  13. 大橋和孝

    大橋和孝君 いまお話を承っておりますと、日本育英会理事長さんのほうからは、やはり労働三法実施を認めておるわけだから自主交渉賃金をきめるのだ、そういうことになっておるけれども、しかし金額国庫補助だからあといろんな手当が要るのだ、そうすると結局いまのお話では、やはり自主交渉賃金をきめるという前提はお認めになっておるわけですね。  それから同時に、いまの農林漁業小林さんのほうからは、えらいそれと違った意見のような言い方をされておるわけでありますが、あなたのほうだって同じように労働三法というものは認められると思うわけだが、あなたのお話を伺っておると、これはもう人事院勧告があって、内示があってからきめる、それまでの間はきめることはまかりならぬというようなお話がありましたが、そういうのではないのでありまして、やはりこれは労使対等で、労使間の自主的交渉賃金というものは行うべきだということで、私はそれは同じことだと思うのですが、この三者とも同じだと解釈してよろしいのですか。
  14. 緒方信一

    参考人緒方信一君) 私が申し上げましたのは、労働三法関係からいうとそういう立場労使とも置かれておるということでございます。ただそれをやるためには、先ほども申し上げましたように、ほかの規制がある。たとえば私のほうは日本育英会法という法律によって団体が成立しておりますけれども、その法律に基づきまして、あるいはまたいろんな、先ほど申し上げましたように、国庫補助金でございましても全額国庫補助金でありますから、補助金を使用しますためには、いわゆる適正化法等適用もございます。いろんな面からそれを使うことには条件がつけられます。しかも制度上つけられます。したがいまして、労働関係制度からだけ申しますと自主交渉すべき立場に置かれておるけれども、そこにほかの制度規制があるから実際問題としては困難である、こういうことを申し上げたのでございます。
  15. 小林繁次郎

    参考人小林繁次郎君) いまの育英会のほうの御答弁と私が申し上げたことと食い違いがあるとお感じかどうかわかりませんが、私が申し上げている点もそういうことであります。
  16. 大橋和孝

    大橋和孝君 もう少し話を詰めていろいろとお話を伺っていきたいと思います。それでは、組合側自主交渉による解決要求しておると思います。そのとおりだと思うのですが、その自主交渉では事態の進展がいまはかれないと判断をして、そうして六月一日から中労委調停申請したと、こういうようなことでありますので、自主交渉で現段階紛争解決が困難だとするならば、調停平和的解決手段として大いに意義があると思われるわけであります。ところが当局としては、これを拒否しておられるわけです。中労委に対しても同じように拒否しておるわけなんでありますが、その理由は一体どうなのか。それから中労委の利用にかわる解決策を何かお考えになっておるか、このこともひとつあわせてお三人のほうから聞いておきたいと思う。簡単に明快にひとつ聞いておきたい。
  17. 小林繁次郎

    参考人小林繁次郎君) 先ほどもちょっと触れましたが、中労委労働組合調停申請をしております内容は、四月から一万五千円のベースアップをすることを調停対象にしておるわけです。先ほど来申し上げるような事情において、現在の段階においてその調停対象に対応する回答をすることができない立場にありますものですから、われわれのほうから調停申請をするということはしがたいことであるというように申し上げておるわけであります。
  18. 緒方信一

    参考人緒方信一君) いまお話しになりましたのと大体同様でございます。
  19. 原吉平

    参考人原吉平君) 先ほども申しましたように、日本貿易振興会法第三十条及び三十四条の規定を変えない限りは、われわれが自主的に組合側要求に対して回答ができない立場にあります。このひもがついておるわけです。組合側要求ということに対しては、振興会のその特殊法人法律には何もないわけです。組合はそれはもうわれわれが実際に要求できる、こういうような御意見なんですね。ところがわれわれのほうは回答を出すためにはひもを断ち切ってもらわぬことにはどうにもできない立場にある。それでこのひもを断ち切るということはおそらく中労委でもおやりになれないだろう、そういうような感触のもとにわれわれは中労委提訴を拒否したわけです。その点は御了解願えると思います。
  20. 大橋和孝

    大橋和孝君 そこのところが、たてまえとしてやはり自主交渉的に賃金というものは考える、こうなっておるのにかかわらず、あとのほうにそれがあるということでもってそれを拒否していかんならぬという理由はないと思うんですね。だからもっとそれを具体的にいうならば、その自主交渉をして、そしてその申請するまでのことはできるわけだから——認可は必要でありますね、主務大臣承認を得なければならない。しかし承認を得るまでの段階はやってもいいわけじゃないですか。たとえば組合交渉して何ぼ上げようということで、こういうことではどうですかということを主務大臣なりその官庁申請するまでのことはあなた方としてはやらなければならぬ。労働三法の中で規定されていることでしょう。あなたのほうでそれを一方的に拒否していると考えなければならぬと思うのですが、その点はどうですか。
  21. 原吉平

    参考人原吉平君) 中労委申請いたしますことも労使間の紛争解決するのが主眼だと思います。中労委提訴することそのものは手段であって、解決することが主眼だと思います。ところが中労委提訴しまして、同じようなわれわれの特殊法人中労委提訴してある場合があるのです。全労災とかいうのがやったのですけれども、これがなかなか明快な回答が出てないです。そしてかえってそれが労使間の紛争を招いてなかなか解決せなんだ。そうすると、そういうようなことをいつまでやったってわれわれとしてはいかぬから、それより人事院勧告を待ってやったほうが手っとり早い、そういうふうに考えてわれわれとしては拒否したような次第でございます。
  22. 緒方信一

    参考人緒方信一君) まあ賃金改定引き上げをいたしますためにはそれだけの財源が必要なわけでございますけれども先ほど申しましたような仕組みのもとにおきましては、現在の時点におきましてその財源見通しがございません。財源が十分に見通しがついて初めてその実施ができるわけでございますから、その見通しのない今日の時点において何か組合と話をして、その結果を申請するということは、私はやはり責任のある態度ではないと思います。
  23. 大橋和孝

    大橋和孝君 育英会のほうでは、自主的にやることが、いまおっしゃいました金の云々ということはありますけれども、しかしあなたのほうとしては、組合側とそういうたてまえでやらなければならぬという状態になっておるのだからしてそれをやって、そうしてそれが承認か不承認になっても、それをある程度誠意をこめて自主交渉をしていく、それが何で無責任なやり方か。私はそういうことに対してはおかしいと思うと同時に、また電源開発とか東北開発あたりのよく似た特殊法人の中では、この春にもう決定していますね。それだからして、あなた方のほうはいまそういう見解で強く監督官庁側に目を向けて、そちらのことばかりを考えて労働者のことを考えていない。そのことがこういうふうな組合との間のうまくいかないことにもなろうし、あるいはまた根本的な労働三法というものをあなたのほうが一方的に行なっていない、それらのことを無視しておるという一つの大きな悪い行ないをしておるということに一方私は解釈しなければならぬと思うのです。ほかの法人でそういうことがあるにもかかわらず、その当然の要求組合としては持っているのですからストも次々と、育英会あたりでは十五、十七、二十三日というふうに設定をしているわけですけれども、こういうトラブルをますます組合との間に起こしているというのは、むしろやはり理事者側の対監督官庁ばかりに目を向けて労働者側に目を向けない、しかも片手落ちの自己保全というか、その目の向け方がほんとうに自分たち特殊法人を運営している組合人たちに対するあたたかい気持ちがない、私はそういうことに起因するのじゃないかと思う。それは具体的にもっともっと話し合いをして、こういうふうなことが最もあなた方としては正しいというふうな賃金話し合いをしてその認可を求める方向に持っていく、そこまでの間は当然あなたのほうではやらなければならぬ義務だと思うのですね。これをなぜ一方的に金がきまらなんだらいかぬとか、あなたが金をきめるのじゃなしに認可を受けるわけだ。あなたのほうで自主的に話をきめて認可を出せばいいわけですから、なぜそういうことをやらぬのか。当然守らなければならぬ法律を無視しているのは、私はどうもおかしいと思うのですが、どうですか。
  24. 緒方信一

    参考人緒方信一君) もちろん労使関係がスムーズにいき、そういうトラブルが早く解決することに私らとしても十分力を尽くさなければならぬことは、これはもう異論ございません。ただ、私申し上げますのは、労働関係について、労働三法のもとにおきまして、いまおっしゃいました立場労使ともあるということは、これは私が先ほどから申し上げているとおりでありますが、もう一つ財政面規制と申しますか、予算的に縛られるという点も、これはやはり国の制度としてそうなっております。そこに先ほどからお二方からもお話がありますように、制度上の問題があると思います。そういう時期において、いまその調停を受けて私どもも進めていく、あるいはまたそれをもし受けなくても自主的に申請をしていくというここは、その見通しは今日においては明らかでありませんので、そういうときにそういう態度をとることは、これも私はやはりまたやれないことだと、こう思っておるわけであります。そのことをいま申し上げたわけであります。  これももうすでにお話が出ましたけれども、われわれの団体の業務というものは、これはもう国の業務を実施しているという関係になります。それからこれはたびたび繰り返しますように、この運営のための経費は全額国庫補助金でございます。でありますから、これは私見でございますけれども、国家公務員給与改定に準拠してこれを改定していく方法は、今日のいま申し上げましたような制度の前提におきましては、これが一番妥当じゃないか、こう考えるわけでございます。国家公務員に対しまするベースアップ人事院勧告が出まして、それに基づいて行なわれるわけでありますけれども人事院勧告が行なわれますにつきましては、民間の労働情勢等も十分その間に取り入れまして、民間との関係を十分考慮してその格差をなるべく是正するような形において勧告が行なわれる、それを受けてわれわれがやっていく。またそれを受けなければ、具体的に財源措置はわれわれは得られないということでございますから、先ほどから申しますような今日の制度の前提のもとにおいて考えます場合には、それしかないのじゃないか、かように考えるわけであります。
  25. 大橋和孝

    大橋和孝君 有額回答というのはできることになっていると私も思うのですし、それから改定財源は組まれておるのです。例年補正予算は組まれてないのでありますからして、これは当然改定する財源は組まれているわけですから有額回答は私はできると思う。中労委の会長は、これは制度上、法令上の制約ではないのだから使用者がやろうと思えばできるのだということを言明しているのであります。もしこれはあなたのほうになければ、資料を私のほうで持っておりますから示そうと思うのですが、中労委の会長もそういうふうに言明しているのに、あなたのほうは一方的にそれはできない、できないと言ってやらないというのはおかしいと思うのです。法律できめられておる。法律まで無視してやらないということじゃなしに、やはりそうしたことで自主的に話を進めていく。それがただ単にいまのようなあなたの態度では、それはいつまでたってもすれ違いのあれにしかならないから、もう少し何かそこに具体的な方策、対応策ですね。これを何とかするというあなたのほうの、いわゆる使用者側としての態度をとるべきじゃないでしょうか。先ほど言われた労働組合と一緒に突き上げるのであると、ていのいい口だけいいことばかり言ってたら実効がないわけですから、使用者側としてどういう対応策があるか、いまのような予算上の措置があるならば、それをどういうふうに対応さしていくか。また有額回答はできるのだから使用者がやろうと思えばできるのだということを中労委の会長は言明していらっしゃいます。それからまた前の大臣の答弁を見ましてもそういうことがある。これは年年ずっと積み重ねられてきておるわけですし、それをそういうふうにしようと思えばできるわけでありますから、何かそこのところの自主解決の具体的な対応策あるいはまた具体策というものが別に考えられないか。いまあなたのおっしゃっておるように、とうていいけない、いけないとすれば私はこれから議論を展開してやりたいと思いますが、そこのところをもう一ぺん伺っておきたい。
  26. 緒方信一

    参考人緒方信一君) 申請をこの段階ですることが制度規制されておるとは考えません。考えませんけれども、何べんも申しましたように、やはり賃金改定のためにはそれに要する財源の確保ということが前提になります。その見通しがつきかねる。今日の制度のもとにおきましては、それが今日いますぐやろうと思ってもできかねる。でありますから、それをあえてやるということは決して問題を解決する道じゃないと、かように判断を私はするわけであります。  それから財源が組まれておるとおっしゃいましたけれども、必ずしも財源は組まれておりません。一部ベースアップの一部分として予備費の中に組まれておるという事実はありますけれども、これはほんの一部でありますから、それで問題が解決するとは考えません。でありますから、それも私は好ましい方法ではないと考えます。それじゃ何か具体的な方法はどうかとおっしゃいますと、いまの段階におきましては、人事院勧告が早く出て、そして内示が早く行なわれる。その内示に基づいてわれわれの具体的な労使交渉が今度実質的に行なわれる時期が早く来るということが必要じゃないか。内示が早く行なわれるということをわれわれはひとつ待っているというような状態、待っておると申しますか、そういうことがひとつできるような方向に持っていきたい、かように考えるわけでございます。もちろんその間におきまして政府といろいろ事実上の交渉をするとか、いろいろな意見を持っていく、もちろんそういう努力もやぶさかなものではありません。現にやっております。
  27. 大橋和孝

    大橋和孝君 そういう態度でおられますと、これは経営者としてのいわゆる経営責任というものをむしろ放棄したというぐあいに言わなければならぬと、私は結論的にそう言えると思うのです。結局、組合側は賃上げの闘争を自主的交渉解決する意思を持っていろいろ団交の中で努力をいたしておるわけでありますが、これを事実上あなたのほうで放棄してしまうという形で、いわゆる内示がなかったらもう何もできぬのだ、こういうことであれば、労働三法というものはあるけれども、私のほうは補助金を出してもらわなければならぬのだから何もできないのだと、賃金も一部は盛られておる、しかしそれだけでは解決できないから話し合いに乗れないのだと、こういうわけですが、もう少しそこのところをあなたのほうで考えて、自主的にどういうふうにすればいいかということをもう少し組合との間の話し合いもし、あるいはまたそれをきめて、この話し合いが円満にある程度進むようにしなければ、いまのところでは、あなた方のお話を聞いておれば、結局組合側に対してはかってにやれといって突っ放しているわけでありますから、これはスト行為をやるとか、実力行使でやるより組合側はしかたがない。言えば使用者側組合側に対して挑戦をして、おまえのほうはやるだけやれと、こういうことを言っているのと同じことじゃないか。こういうことが経営者として、あるいはまた使用者側の責任者として、ほんとうに自分の託されている事業団の運営をしていく上において、最も中核となって働いてもらう組合員に対する理事者側態度であるかどうか。労働三法の中では認められているぞ、だけれどもそれはできない、できないと言っておれば、結局は組合人たちを追い込んでいって、もっとストライキをやれ、もっとあばれよと言っているのと変わりない。そういう無責任な態度で平和的な解決策というものがどうして見られるのか。私は、むしろ使用者側がそういう平和的に解決しようという組合側の意思をけ飛ばして、もっとあばれよ、あばれよというようなことを挑戦していると考えなければならぬと思うのですが、これはあなた方の考え方をもう少し組合に対して、血もあり涙もあるというか、もっとあたたかい指導というか、いろいろな話し合いをしてもらわなければ、私どもの側から見ていても、これはどうしても許されぬ状態じゃないかと思うのですが、その点についてどうなんですか。
  28. 原吉平

    参考人原吉平君) いま大橋先生のおっしゃるのも組合側としては非常にもっともな点もあるのじゃないかと私は思っておるわけであります。たびたび申し上げておりますように、貿易振興会法の第三十条及び三十四条の規定で、通産大臣の承認及び大蔵大臣との協議ということがありますから、私は組合側にも約束したのですが、これから通産大臣なりあるいは大蔵大臣に当たって、この条項がどれくらいわれわれに自主性を与えられるかどうかというようなことをもう少し突き詰めていったらば、あるいはわれわれとしていまみたように多少の裁量はあるのじゃないかというふうにも考えられるし、またこれからの労働事情から考えて、何かこのままの状態でいつまでも組合を引っぱっていくこともなかなかむずかしいのじゃないか、そういうふうな考えも私は持っておるわけであります。したがいまして、こういう点につきまして、もう少し通産大臣なり大蔵大臣の御意向をこれから聞きましてやりたい。そして、それがどうしても現状以上に出ないということになりましたら、われわれとしましては法律の改正をやっていただくとか何かしなければならぬ。大体われわれは国民の大事な税金でこのジェトロというものを経営しておるわけであります。したがいまして、従業員の給与といえどもこれはやはりおろそかに扱っちゃいかぬ問題だと、そういうふうに考えておるわけでございます。それでジェトロの事業の振興をはかるためにも、ジェトロみたようなところは機械が仕事をするのじゃなく、全部やはり組合員の一人一人の活動によって全体の能率があがるわけです。それだから、これの給与に対してわれわれは無関心でいいなんということは毛頭考えていないわけでございます。ただ私は理事長になりましたが、こういうように縛られておるので、これがいままでずっと準用されてきておるわけなんです。それだから、もう少しこれを何かこう弾力的の運用ができないかどうか、そういうような点もこれから研究したいと、そういうふうに私は考えておるわけなんです。その点でひとつ御了承願いたいと思う。あるいはまた今度先生方に、こういう点を法律でひとつ改正していただきたいということをお願いに上がるかもしれませんが、そのときはどうぞよろしくお願いいたします。
  29. 大橋和孝

    大橋和孝君 ちょっと労政局長のほうに話を聞いておきたいのですが、あなたのほうは、いまのこの話で、ジェトロの原理事長あたりもこのような矛盾を感じておると、こう言っておられるわけです。だから労政局長立場で、労働省の立場で、こういう問題をもう少し労働三法の中ではそうしたことが当然やらなきゃならぬようになっておるのにかかわらず、それで何かというとできない。私は、これはもっとあとお話をしようと思うが、これはやればできると思うのです。やらなきゃいかぬと思うのです。それは承認を求めるような状態になっておるのですから、承認を求めるような状態までに、ある程度いけるものを労使間で話し合いをしたものを持っていって、承認をむしろ迫るべきが理事者じゃないかと思うのです。法律を改正してもらわなきゃいけません、予算をつけてもらわなきゃいけませんといっているのではいかぬので、むしろ予算をつけさせるためにみな一丸となってそれは大蔵交渉もしようし、主務官庁交渉もはっきりして、そして労働者に報いると、これが私は当然のことじゃないかと思うのです。そこまでやるのが理事者として当然だと思うのですが、労働省としてもそういうふうにするように指導監督すべきだと思うのですが、あなたの御意見はどうですか。
  30. 松永正男

    説明員(松永正男君) 政府関係の公団、事業団、公庫等の労使関係につきましては、いままでも何べんも大橋先生はじめ皆さんから御質問がございました。衆議院におきましてもいろいろな御質問があったわけです。ただいま関係団体の責任者の方からお話がありましたような法律制度になっておる。労働関係から見ますと、労組法適用でございますから、先生おっしゃいますように、労使自主交渉でスムーズに労働条件がきまる、これがもう非常に望ましい、これはもう間違いのないところでありますが、同時に各公団法、事業団法におきまして、たとえば給与の大幅の引き上げ予算に影響を与えるような引き上げ、そういう場合にはどうしても公団法、事業団法等によりまして、主務大臣といいますか、結局は大蔵大臣承認が要る、こういうたてまえになっておる。それをどういうふうに調整していくかという問題になるわけでございまして、従来私どもがこの問題に取り組みましてやってまいりましたことは二つの面がございます。一つ給与決定につきましての給与の内容でございます。それから一つ給与決定の時期でございます。数年前までは、先生も御承知のように、政労協関係賃金は、国家公務員賃金がきまり、そして国会を通過したあとでなければいわゆる内示あるいは回答というものが行なわれないというような状態であったわけでありまするが、それは適当でないんじゃなかろうかということで内示あるいは回答の時期をできるだけ早めるということで私ども大蔵省ともたびたびお話をいたしまして、また閣議等で労働大臣に発言をしてもらいましてそれを早める。一昨年のごときは、公務員についての閣議決定前に内示が行なわれるというようなことで、大蔵省もその辺は了解をしていただいて、時期をできるだけ早めるということで努力をしてまいった。それから第二点の内容でございますけれども、従来は、たとえば大蔵大臣承認をされます際に初任給、それからアップ率、それから最高といったような押え方をして、そしてその基準に合った場合に認可をする、こういうことになっておったのでありますが、それでは非常に窮屈だということで、たとえば昨年は初任給について幅を持たせて弾力的なことできめられるようにした。それからまた今後の問題として、それじゃ最高という問題はどうなんだろうかというような問題があるわけでございます。全体の原資というもので、国家公務員給与との関係におきまして、これくらいの総ワクの中で団体交渉によって配分をきめたらどうかという行き方も一つあると思うのであります。具体的にはそのようなことで時期におきましても、内容におきましてもだんだん弾力性を持たせ、そうして半面自主性を持つということでございますので、そういう方向にきておるのでありますが、ことしのこの問題は、いわゆる労組法適用の民間の各会社の労働組合が春に賃金をきめていくという傾向が非常にふえてきた。たとえば同盟系統等におきましても春に賃上げする組合がふえてきた。そういう民間の情勢から、政府関係の機関でも春に賃上げをしたいということを政労協が運動方針として掲げまして、そうしてその方針に基づきまして団交を行ない中労委調停、あっせんというようなことになっておるのでございます。  その場合に、それでは私どもとしましては、春に賃上げをすることが可能であろうかどうかという問題につきまして政労協の幹部の人とも、また総評の人たちともいろいろ話し合いをしておるのでございますけれども、現実の問題といたしまして、たとえば先生がいま御指摘になりましたように、労使で妥結をして、そうして承認せい、こう持っていくという場合に、それは全く自主的なものでございますが、その際に、たとえば大蔵省なりあるいは通産省なりそういうところで、それをそれじゃ認可しようというようなときに、その認可基準というのは一体どこに求めようかということがあると思います。もちろん民間賃金といったような相場もあるわけでございますが、従来は人事院勧告が出ますというと、人事院勧告は、御承知のように、官民格差の比較をいたしまして、そうしてその格差について是正をするという勧告でございます。民間賃金につきまして私どももいろいろな統計を持っておりますが、官民の格差の比較の統計というものは、この人事院調査が唯一最高の統計でございます。統計の対象の数も非常に多うございますので、したがいまして、国家公務員と民間との関係におきましては、人事院勧告というものが、いま日本である数字では一番合理的だというふうに私は思うわけでございます。  一方、政府関係の公団事業団がどういう給与のきめ方をしておるかといいますと、国家公務員と多少違いはありますが、一五%増しということで給与が出発をいたしております。そうしていままで毎年の実績では、勧告が行なわれますとそれに準拠してやる、こういうやり方をしております。ただ、それは先生御指摘のように、政労協が主張しておりますように、全く自主的なきめ方というものではない。人事院勧告というものに準拠する、公務員に準拠するというやり方で、全くフリーに自分の立場労使の間できめるというきめ方ではない、これは明らかにそうだと思うのでありますが、その場合に、それじゃ非常に合理性がないかということになりますと、いま申し上げたようなことでありますので、民間賃金の相当詳細、正確な反映という意味では意味があると思いますが、そこで私どもといたしましては、いま原理事長さんですか、おっしゃいましたように、そういう自主的なきめ方をするという方向においてやった場合に、それでは一体どういう認可なりあるいは承認なりというような基準を求めていくか。こういう基準だというような方向を見つけ出し、そうしてそれのほうが人事院勧告に準拠するより合理的だ、よりいいというようなものもあわせ検討をいたしませんというと、その自主性発揮ということは労働省として非常にそれは賛成でありますし、また労組法のたてまえだと思うのでありますけれども、現実の処理といたしましてそういう問題を検討しなければならない。そこで私どもといたしましては、この春闘移行ということは直ちには非常にむずかしいということは国会でもしばしば御答弁申し上げておりますし、それから原労働大臣と岩井事務局長、滝沢政労協の議長等が昨年会議をいたしましてこの問題を話し合った際にも、一挙に移るのはむずかしいですよということを申し上げておる。現実の問題といたしまして、そうかといって政労協の組合の方針として春にきめたいということであれば、それはまあその気持ちもわかりますし、無視するわけにはいかない。でありますけれども、具体的な条件というものを検討しつつ、私としてはどこに解決のめどがあるかということをじみちに見つけ出していくということでありませんというと、いま申し上げましたような事情解決ができないのではないか。これはまあ参考の意味ではございませんが、たとえば全駐労という組合がございます。これは完全に労組法適用でございますし、それから認可とかいう問題はございませんが、現実の問題としてはアメリカが費用を負担するという問題がありまして、この全駐労の組合人事院勧告が出たあとで秋に賃金決定するというようなやり方をしております。そういう例もありますけれども、だからそれがいいというわけではございませんが、結局具体的に従来何年か長い間やってきたものをどういうふうに変えていくか、具体的条件をさがしていくという方向で私どもはやりたいと思う。ただ、いまの時期に早く有額回答をしてきめるということにつきましては、その組合の要望に全部こたえるというわけにはなかなかいかない面があるという事情があるわけでございます。そういう意味におきまして、私どもとしてはこの法律制度先ほど理事長の言われました改正というような問題をどうするかというところまで考えておりませんが、たとえば公共企業体は公労法というものがございます。特別の民間の企業とは違った労使関係の扱いをしておる政府関係機関については、何かそういう特別な立法が要るのかどうか。その場合に賃金の扱い、争議権、団体交渉といったようなものについて民間と違ったようなことがあるのかどうか、そういう全体の検討というものは非常に重要な問題でありますので、そうにわかにどれがいいということにはいかぬと思います。現行制度を活用してそうしてやるということになりますというと、さしあたり私どもの考えておりますのは、大蔵省ともよく協議をいたしまして、このいわゆる内示とかあるいは回答につきまして、できるだけ自主性がこの制度のたてまえの上で発揮できるような、縛りをできるだけ少なくするといったようなことでやりたいというのが当面の問題でございます。根本問題は、まだいろいろな面から検討しなければならないと思います。当面はそういう態度で臨みたいというふうに思います。
  31. 大橋和孝

    大橋和孝君 その改正をしなければ当面はそうだというふうな考え方を労働省も固守していられるように思うんですがね。これは昭和三十六年ですか、農林年金のほうでは自主交渉決定をしてあとから承認を受けた、いわゆる内示の前にそういうことをやられた実例もあるわけですね、前の話ですけれども。だからして有額回答というものは大蔵省とも、あるいはまたいろいろなことを考えながらある程度妥当な線を出して、これは有額回答を示してこれを承認を求めるようにして、その承認をされたという例もあるわけですから、もう少したてまえばかりに準拠せずして、いまあなたがおっしゃっているように幅を持つようなことにしていかなければこれはぺてんですよ、どっちかといえば。労使間で自主的に賃金はきめなさいという労働法に準拠されておるけれども、こっちはできぬからということで、こっちに示したものと実際やることと、これはぺてんですね。行政がこんなぺてんにかけたようなことをやって、それでおまえら一生懸命働いて業績をあげろといっても、働いている者の身にもなってみなさいということになるわけですよ。そういう労使間の問題を担当するところの労働省としては、もっとあなたのおっしゃっているように幅を広げられるものならば幅を広げて、その幅でもって自主的に交渉してきめられるようにする。これはいろいろなところから資料をもらって見てみると、いままでやった例はありますね。農林年金あたりでも三十六年あたりにあるわけですよ。書類全部もらっていますから、そういうデータがちゃんと出ていますよ。こういう例があるのにこのごろぴたりやめた、これでなかったらできぬというような、そういうロジックからいっても、これは前向きの姿勢ではないですわね。こんなことをいつまでもやっておっては、これは働いている者の身にもなってみなさいということになる。あなたのほうは自主交渉できめなさいと言いながら、これはこれだけしかできませんよと言うのはぺてんですよ。法律改正をするのは一緒にやりましょうという、こんないいようなことを言っておってはいかぬので、こういう問題はやはり当局としては相当に真摯にとらえて、少なくとも私がいま言っているように、有額回答なら有額回答を示して、その示すときにはちゃんと裏で話を詰めて、今年度はこの幅で入るというような、こういうような見通しをつけてやっていくのが当事者能力じゃないですか。もうそれができないような理事長ならば、全体の状態を動かしていくだけの責任者じゃないと言いたくなるくらいなんですよ、実際は、失礼なあれですけれども。そういう意味からいっても、この問題はもう少し労働省のほうでもっとしかじかの示唆も与えながら、また理事者話し合いをしながら、この幅の中で話し合いをつけるということでもっと有額回答を示して解決していくという前向きの姿勢がなかったならば、いまの労使間の問題をことさらに紛糾さすだけである。先ほどちょっと言ったように、言い方は失礼かもしれませんけれども、もう火をつけて、おまえたちはもっとあばれろと言って、そうして対決をして紛争を助長させるようなものだと言ってもおかしくないんじゃないかと、私はそういうふうに思うんですが、労働三法が出ていながら、こっちではできないんだということを示して、そうして固いことを言っている。中労委から何か言ってもその中労委に対して拒否している。こういう固い態度では私はいまの労使の間がうまくいくとは考えられぬと思いますが、そういう意味で、きょうは労働大臣はおりませんからあれですけれども局長のほうからもっと前向きに大蔵省に対してもあるいは各主務官庁に対しても、あるいは理事者に対してもその主導権はやはり労働省で持ってもらって、そうしてこれをまとめていくという方向に、少なくとも労働三法というものが認められている以上、これを前向きにできるようなものにしてやらなかったら働いている者はかなわぬですよ。働いている労働者であるならそういうことになると思いますが、それはあなただってそうでしょう、働いておったら。労働三法でやりなさい、賃金自主交渉でやりなさいといっても、こっちでできぬというようなことで、中労委にやってもそういうことが伴っていなければ、それは交渉をやってもおこるほうがあたりまえなので、それは私は当然と考える。だから、この問題についてはこういう例もあるんですから、もう少し考えてもらいたいと思うんですが、これはどうですか。
  32. 松永正男

    説明員(松永正男君) おっしゃることはたいへんわかります。私ども労使関係を担当いたしておりますので、たとえば政労協にやや似ておるといいますか、公労協という三公社五現業の関係労使関係がございます。これもできるだけ自主性を発揮しようということで私どももこの政府、労働省の立場からこれを応援をして協力をしてまいったわけでありますが、三公社五現業関係もことし初めて交渉段階で自主回答ができたということでございます。これを公労協関係組合方々は非常に高く評価してくださっておりますけれども、それまでにいろいろな紆余曲折がございまして、二十何年たってそういうことが実現をしたというような事情もございます。そうかといって、だからということではございませんけれども、私どももそういう点はおっしゃることはよくわかりますし、それから理事長さん方あるいは理事の方々もその点はわかって、そうして苦慮をしておられるというふうに考えますので、どこに具体的な解決策があるかということをやはり発見をしていくということで大蔵省とも相談し、また最近公団、公庫関係理事者方々がまた新しく組織をつくりまして、こういう労働問題について協議をする体制を持ちたいということも聞いておりますので、その辺ででも意見をまとめていただく、検討をしていただくということとあわせまして、何らかの解決策を見出していくということで努力をいたしたいと考えております。
  33. 小林繁次郎

    参考人小林繁次郎君) 大橋先生のお話の中に、前例として私のほうの話が触れられておりますが、実は三十六年、私が赴任前のことで、ただいまの記憶がもし間違っておれば、先生のところへまた御連絡をとるようにいたしますが、あのときの問題は、いわば大蔵省からの内示的なものの基準が出まして、そしてそれを上回るような措置をわれわれの足元の事情からしてしたいと、それで主務官庁その他とも打ち合わせをした。それで、おおむねそういうことが可能に——了承を受けたということで申請に入ったところが、そこに行き違いがあって、どうも上回るということはいけないというようなことで実は対役所関係で苦労をしたように聞いております。しかし、そういう思い違いと申しますか、連絡不十分の点があったということも了承されまして、自後の経過において、次の年なり何なりのところにおいてそれらの問題の調整はするというようなことで、その際の措置だけを認めていただいたと、こういう経過のようでございます。もし間違っておればまた御連絡を申し上げます。
  34. 大橋和孝

    大橋和孝君 まだ、いろいろこうして話をしていきますと、やはりどうしても内示によらなければできないんだということが先行されていくような感じがするわけですが、やはりこれは特殊法人賃金決定に対して内示規則ですか、こういうのが先行してしまって、組合がどのような要求をしてもあるいは団交をしていろいろなことを主張しても、結局はこの内示あるいは勧告賃金が一方的に労働組合に、労働者のほうに押しつけられる、もう現在ではそういうことになってしまっているわけですね。自分たち要求をしたところの主張が全然反映されてないというところに組合が最大不満を持っていると思うんですね。ですから、私はいろいろ先ほどからお話を申し上げておりますけれども、労政局長もおっしゃったように、何とかそこのところに幅を持たして、幅の中で解決ができると。そしてそこで初めて自主的な——それは先ほどからも話に出ておったように、税金によってずっとまかなわれていくわけですから、それは使い方についてはいろいろ考えられるだろうし、そういうこともわからぬわけではありませんけれども、やはり額の高い低いということよりも、労働三法というものが認められるという方向にこれが持っていける、そうするためにはどうしたらよいかということを具体的にある程度しないことには、いま労政局長は、公労協では二十年もかかったんだからまだこれから努力せぬならぬと言うけれども、それはかかったかもしれないけれども、この問題についてはあすそれができてもかまわぬわけなんで、必ずしも二十年かかったり、これからまた長くかかってやるのがあたりまえじゃないわけですから、私はそういう問題で、何と申しますか、表に出しているものはえらい労働三法のいいものを出しておきながら、それでやるのが当然だということを認められながら、それで苦慮しておるんだということでは相ならぬと思うんですね。  そういう意味で、私はここで各理事長さん方に一ぺん提起してお考えを聞いておきたいと思うことは、そういう苦慮をお持ちであるならば、もう少し積極的に当事者、経営者としてあるいはまた理事者としての観点から、こういうものに対してはこうしなきゃならぬものだということを強く要請して、そしてこういう各団体が協力をして、そうしていま労働省のほうも、それに対してのあっせんにはやぶさかでないと言っておられるわけですから、また大蔵省なりあるいはまた主務官庁話し合いをして、大体こういう幅の中でこういうことにきめていこうというものぐらいをある程度持って、自主交渉によってこれが話を進めていける、そうしてほんとうにやはり労働者としての権利が守られておる、こういうふうなものを出してやるということでない限り運営はできないんだという態度をもっと明確にしてもらうべきじゃないでしょうか。何かいいものを見せておいて、実際はできないのだ、それをするのには苦慮しているというだけでは、何といいますか、こういうお話しをするときに、前進がないように思うわけなんです。ですから、私は、ここで具体的にこういう問題を考えてもらえるかどうか。あなた方は当事者であります。あなた方が労働者をあれしておられるわけですから、雇用関係にある人に対してもう少しその当事者能力を発揮してもらうための働きを、各所に根回しをしてやるべきだと私は思うんですが、その点どうでございますか。
  35. 原吉平

    参考人原吉平君) いまおっしゃいましたように、これはもう当然努力するのがわれわれの義務だと、そういうふうに考えておるわけでございます。しかし、従来の経験から申しますと、こういうような制度改廃は、これはなかなか努力してもおいそれとできにくいやに考えられるわけです。これは私のここだけの考えでございますが、いま大橋先生がおっしゃいましたように、当社労委員会でそういうようなふうにやれというようなことを御決議を願って、そうして社労委員会として大蔵委員会のほうにお働きかけ願ったら、われわれとしても非常にやりやすいんじゃないかと、こういうふうにも考えますが、その点は先生方どういうふうにお考えでございますか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  36. 大橋和孝

    大橋和孝君 理事者のほうからそういうようなお話しもあるんですが、これは委員会でちょっとはかっていただいて、少なくともこの委員会でこれは決議する、こうやってもらえたら私もありがたいと思うんですが、それはまたあとからひとつお考え願うようにお願いいたします。  何か話が飛び過ぎてあれしておりますけれども、私も、その問題についてはひとつ一ぺん委員会でもよく討議をさしていただきたいし、またお願いもしてみたいと思いますが、しかし、いまの段階でも、ただ単にそういうことばかりじゃなしに、私がいま言っているように、五%ぐらいはもう見られているわけですね、予算の中にも。それからまたいま局長も、幅を持って云々ということも言われているわけですから、これらのほうでもう少し交渉を進めていってもらったら、私は、有額回答もある程度、人事院勧告が出ても、その中のゆとりの間でできるようなことも進められるのじゃないかと思いますね。私はそういうことから考えて、できない、できないと言わないで、もう少しそういうことに対して積極的に配慮をしてもらいたい。これはもう法改正されてすきっとするのも非常にけっこうだと思いますから、そういうことに対しても私どもいろいろ今後努力もさしてもらいたいし、皆さんも努力をしてもらいたい。むしろこれはこの委員会でそういうことをするだけじゃなしに、労働省としてはもうそういうものを出して、法の改正やなんかに省としてあるいはまた政府としてそれに臨むべきがほんとうの筋だと思うんですね。そういうことから考えると、労働省に対してこれは特に要請もしたいし、これからも要請していきたいと思います。そういうふうなことでは別にもありますけれども、いまの段階でそれがないからみなできないというわけじゃない。やはりこの予算においてもベースアップ部分は見られているわけですし、あるいはまたそれに流動性、あるいはまたその取捨選択の幅があるとするならば、その幅を探知して、そうしてある程度それに持っていけるような交渉を進めていく必要がある。いまのようにして何もかも排除して、中労委のあっせんに対してもそれを押しのけていく、そうして団交はうわべだけであって、実際は何にもしないということでは、私は労使間の問題はますます紛糾するだろうと思います。ですから、そこの労使間の紛糾をさせないように、ここのところでもう一歩押し進めてもらいたいと思いますので、ひとつ各理事長さんあたりはそのつもりでやってもらいたいと思いますが、その決意のほどをひとつ示しておいてもらえませんか。あとから私は労働省に対してはもう少しきびしく質疑をしてみたいと思います。
  37. 小林繁次郎

    参考人小林繁次郎君) 大橋先生のお話しの意味合いはわれわれもよくわかります。ただ、最初から申し上げましたように、われわれどうも労働組合法と、それから私のところであれば共済組合法と、この二つの法律の谷間に置かれているような形になっておりまして、ただ苦慮するだけではいかぬと仰せでありますが、実際問題として長い間この問題では苦慮してまいっております。それぞれその時期にはいまお話のような角度でこの問題の打開ができないかというようなことも、われわれとしてはそれなりの接触を持ちながらきているのでありますが、なかなか一つ制度化したような形になってまいっている場合には思うようにいかぬというのが実情でございます。  そこでお尋ねの点から申しますと、この問題については、先ほど来お触れになった点もありますが、二つの面を考えていくべきじゃないかと自分で考えております。一つの点は、なるほどいまの制度についてはそれなりの理由はあるにしても、労働組合がそういう仕組みに対して非常な不満を持っていることも事実でございますから、これを基本的に打開するという一つの、何と申しますか、言ってみれば関係省全部相互に連係した研究機関を設けるなりして検討をしていただく。これは原さんがお話しの点と相通じますが、基本的にひとつどうすべきか、現状を分析してさらに対案を求める、こういうことにぜひ着手していただくように、われわれももうそろそろ——いろいろの機会に話が絶えずその辺を行きつ戻りつしているわけであります。それをわれわれも推進をしてお願いをする、国会等でもぜひそういう配慮を願いたい。  それからもう一つは、その間は現在のことが継続するということになりました場合でも、お話のように、労働組合としては非常にそれに対しては不満を感じている、これは事実でございますから、そういう気持ちをやはり幾らかでも緩和するためにも、当面しての現在の仕組みの中でいろいろ問題があるのです。実際内示というようなものはやむを得ないとしましても、内示の中身というような問題につきましては、これも労働組合等との話し合いの中に絶えず出るのでありますが、いろいろ是正しなければならぬと思われるような問題が摘出されておりますわけでございます。これは実施の時期等におきましてもそうであろうと思います。したがって、そういう問題はそういう問題として、基本の問題と別にわれわれとしても努力を加えていくようなことで、労働組合にもやはりそういう点は壁の厚いことは十分了承してもらって、そうしてそれぞれに対処するというような相互理解に到達したいものだというふうな感じをいたしております。
  38. 緒方信一

    参考人緒方信一君) 私は、先ほど来、現在の制度のもとにおきまする実情をざっくばらんに申し上げました。そういう実情のもとで理事者が非常に苦慮しているという話でございましたけれども、その実情をざっくばらんに申し上げたわけでございます。ただ、その間に私どもは何もしないでじっとしておいていいということは全く考えておりません。先ほど申しましたけれども関係監督官庁方面に十分ひとつ今後ともそういう実情の是正につきまして努力をしてみたいと思います。先ほど労政局長からお話のありましたような方向にいきますことは、私たちは非常に好ましいことだと思います。それからいま両理事者からお話のありました点も私は賛成でございまして、特にこの問題は、従来は関係方々もよくおわかりにならなかったのじゃないかと思うのです。これは労働組合の努力もあったと思いますけれども、この問題がこういうふうに国会の問題になったりして、そしてその重要性がだんだん認識されてきたことは非常にけっこうなことだと存じております。どうか小林さんも言われましたけれども、そういう根本的な改善につきましてひとつ十分この委員会でも御検討願えれば非常にありがたい、かように存じます。
  39. 大橋和孝

    大橋和孝君 各理事長さんもいまおっしゃったように、一つはやっぱり基本的に直す問題と、いまのままでもある範囲はひとつやりたいというお気持ち、これを承って、私もさっそくやっていただきたいという要望を申し上げたいと思うわけでありますが、現在でも、できるだけ組合が不満を持っているそれをくみ上げて、そしてどの程度に動けるかということ、動きたいということでありますからして、私はここでひとつ理事長さんには思い切りこれをひとつやっていただいて、そしてその中労委をけったり、あるいはまた組合との団交の中でもあまり筋に閉じ込もらないで、当事者能力としてできる範囲をもっと拡大して、できれば有額回答を出して、そして話を進めていっていただきたい。いろいろ主務官庁なり大蔵省なりにもあなたのほうからひとつ話を進めていって、その話し合いの中でできる範囲をひとつ早く出して交渉の中にそれを乗せてもらいたい、こういうように私は思うわけです。  あといろいろなちょっとこまかしい点で伺いたい点はありますけれども、時間もあまりかかりますので、理事者側方々にはそのことを要望しておいて私は質問を打ち切らしていただきたいと思います。  それから労働省のほうにちょっとお話を伺いたいのですが、この政労協の賃金問題については、大臣答弁が前にあったわけですね。その大臣答弁をちょっと読んでみますと、この紛争が例年長期化の状態にあることは好ましいものではないのだ、だからして政府関係特殊法人労使関係は、事業の特殊性、公共性を踏んまえて、労組法の立場に立って自主交渉解決すべきである。労働大臣としては、以上の立場に立って、賃金紛争についても、自主交渉で円満に解決されるよう期待するとともに、明年以降の賃金問題についても、前記の趣旨に沿って自主的解決ができるように政府内部の関係当局と協議して努力したい。これは六九年五月、ちゃんと大臣答弁としてあるわけですね。こういう点からいっても、いまあなたがおっしゃっているのは、もっともっと二十年もかかって公労協がやってきたんだからというのは、そうじゃなくて、これはすぐやりたいということを大臣もちゃんと言っておられるわけですから、いま言っているように、自主交渉でできるようにすることが当然労働省としては必要だと思うんですね。ですからその点に対して、いま労政局長さんは考えておられるのか、もうさっそくそういうふうにやるようにめどが立っているのかどうか。先ほどから幅のあるように、幅の中でというお話もありましたけれども、その幅は何なのかということをちょっとお聞かせ願いたい。
  40. 松永正男

    説明員(松永正男君) 先ほども申し上げましたように、過去に比べますというと、政労協の賃金決定が早まってきておるということは事実でございます。政府なり公団なりの回答が早まった結果、解決も全般としては過去に比べますというと早まってきておるということでございます。そういう線において私どもも努力をしてきたわけでございますが、現実の問題としましては、たとえば昨年におきましては、初任給についての内示に幅を持たしたということが具体的なあらわれでございますが、そういう内示の問題等につきましても、ことしの問題、大蔵省ともこれからよく協議をいたしまして、どのようなやり方をするかということを私どもがお願いをしたい、弾力性をどのくらい持たせられるかということについても協議をしてまいりたいというふうに考えております。ただ全般の問題といたしまして、春に賃上げをするということにつきましては、先ほど来申し上げたように、組合の希望なり意見なり、運動方針というものはわかるのでございますけれども、これを一挙にやるということにつきましてはなかなか問題がある、できるところ、たとえば政府の認可とかあるいは補助を受けていないとかいうようなところにおきましては、これはやればできるわけでございますけれども、現実に認可を受けるというようなことになりますと、やはり国家公務員給与というものが現在ある制度の中では非常に合理性を持っておるということから、もしそれを離脱して、離れてやるんだということになれば、どういう基準で政府がこれに対処するか。もちろん自主交渉できまったらそれでいいじゃないかというようなことも一つ理由になるかと思いますけれども、同時に給与というもののあり方が公務員と比べて一五%上というようなことで組み立てられておる。それに対しまして、たとえば人事院勧告より低い線で妥結したあるいは高い線で妥結した、いろいろな問題が出てくるのではないか。そういうことの具体的な対処のしかたというものをあわせて検討いたしませんというと、直ちに自主的にきめていくというようなことにはなかなかまいらない。これはおしかりを受けるかもしれませんけれども、現実処理の問題といたしまして、それからまた紛争をできるだけ少なくするという面からいたしましても、人事院なり、公務員給与と乖離が出たとき、そういうときに一体どうするんだというような問題もあわせて考えておきませんというと、これは長い目で見て労使関係の安定ということにはならぬじゃないかと思いますので、ただいま先生の御質問なり御意見なりに沿わないかと思うんでありますが、私どもはその点はそれにかわるべきものがあるかないか、どういう合理的なものがあるかということを同時に検討しながらいかなきゃいかぬというふうに考えております。
  41. 大橋和孝

    大橋和孝君 ちょっとその答弁けしからぬと思うんですがね。これは根本的に言えば、労使紛争の自主的解決を促進すべき立場で労働省はおらなければいかぬでしょう。それをあなたのいまの話を聞いていると、何か政労協の賃金は、公務員人事院勧告公務員に準拠するということはわかるのですが、いかにもそれに対して多くても少なくてもいかぬような、こういうのは、それはあなたの言い過ぎじゃないですか。労働省はそんなことをするあれがありますか。しかし、これはほんとうから言えば、公務員賃金に準ずるということをいろいろさいはいするのは当事者にまかせておいていいわけなんで、あなたの口から公務員のベースで多かったり少なかったりするんだったらいかぬのやと言うことはおかしいじゃないですか。その幅が問題であって、それだけのものが出てきたら困るから、しかも先に、春にそれをきめることなんかはいかにもむずかしいみたいなことを言われておったんじゃ、これはあなたの姿勢自身はむしろ前向きでなくて、あと向きなんです。むしろ紛争を、さっき言ったように助長するものとして、てこ入れをしているんじゃないかといわなければならぬ。これは大間違いだと思うんですね。少なくとも労働省としては、労使間がうまくいけるようなことをしなければいかぬでしょう。そうしたら、もし公務員に準拠するのはどのくらいの幅かということでもっと幅を持たしてもらうようにして、その間でできるようにすべきであって、むしろそんなことは当事者同士にまかせていって、それをうまくいけるようにしていくということが立場じゃないですか。あんた自身が多かったら悪い、少なかったら悪いと言うことはとんでもない話だと思うんですが、どうですか。そんなことをいま言っておったら労使紛争というものはますますおくれますよ。だからそんなことをなくして、もっと前向きにするということをやってもらいたいと思いますが、どうですか。
  42. 松永正男

    説明員(松永正男君) 基本の姿勢として自主性を発揮するということについては、私どももそう考えております。その発揮のしかたにつきまして、どういう具体的条件を整備したら一番うまくいくかということを検討いたしたいという意味で申し上げておるのであります。
  43. 大橋和孝

    大橋和孝君 私、特にそれでやってもらうことがむずかしいことはわかりますけれども、これはひとつ労働省のほうもてこ入れして、そうした自主的な解決ができるように、人事院勧告あるいはまた公務員のベースに準拠するしかたにもその幅を持たせるようにということをもっと具体的にする方途を考えてもらわぬといけない。私は、ほんとうにいまのこのような状態は一日も早く打破しなければいかぬと思います。一方では労使交渉でやって賃金きめなさいといいように言っていながら、こっちのほうではいかぬ、また、いまあんた言ったように、多うなってもいかぬ、少のうなってもいかぬということを言ったら、それはペテンですわ、全然ね。ですから、そういうことは一切なくさなければならない。考えてもらいたい。  それから大蔵省のほうに伺いたいのですが、こういうような状態であるのに、大蔵省としてはえらいごつごつとしたワクをきめて、えらいむずかしいことを言われておるのですが、こういう当事者能力を持たすために大蔵省としてはもう少し幅を持たせるべきだ。先ほど労政局長がおっしゃっておりますように、なかなか大事な問題がここにひそんでいると思う。なかなか大蔵省の壁が厚いためにこれができないというようなことを言われているんですが、私は、先ほどから言っているように、物価指数から何からずっといきまして、当然賃金が上がっていかなければ労働者だって生活が保たれないわけですから、そういうことはちゃんともちろん計算に入れていると思うわけですね。だから、大体の幅を持たせるような、そうして自主交渉できめられるような幅を持たせるような大蔵省の措置というものが考えられるべきだと思うんですが、きょうは大蔵大臣来てもらっておりませんから、その話をじっくり聞いてもらうことはできないにしても、大蔵省としていまの段階で考えてもらわなければ、こうした問題は紛争紛争を来たすだけであって、しかも政府の周辺にある特殊法人賃金については一番あと回しにほっておかれて、そうしていつもかもごたごた、わいわいと労使紛争が起こっている。ストライキをやらしているということ自身は、私は、むしろ当事者にももちろん責任があると思いますけれども、その周囲の監督官庁並びに大蔵省あたりもこれに対して十分の配慮をしてもらわなければいかぬと思うわけですけれども大蔵省側としてこの特殊法人賃金に対してどんなふうに考えておられるか、ちょっと聞いておきたいと思います。
  44. 橋口收

    説明員(橋口收君) 政府関係機関労使関係及び労使関係の中における給与問題に対する基本的な考え方につきましては、労政局長からるる御説明があったわけでございますが、本件に関しまして労政当局との間に意見の相違は一切ございませんので、労政局長からお答えがあったような線で大蔵省としては検討いたしておるわけでございます。ただ先ほどからお話しがございましたように、政府関係機関と申しましても、業態に相当の相違がございますし、また事業の中身も、サービス業をやっている機関もございますし、あるいは建設事業をやっておる機関もございますし、かなり収益をあげている機関もございますし、損失を出しておる機関もあるわけでございます。したがいまして、これは政府関係機関を通ずる給与の原則というものにつきましては、労政局長からお話しがございましたように、やはりよるべき有権的なものを見出していく必要がある。今日の段階におきましては、やはり人事院が民間の給与について調査をいたしましたものを現状において最もよき調査としてわれわれ受けとめておるわけでございます。そういう点から申しまして、人事院勧告の出された結果に基づいて、しかも、できるだけ早く機関とも御相談をし、また機関の理事者組合との間にも円満に話しができるようにここ数年来苦悩いたしてきておるわけでございます。昨年来の実績につきましても、先ほど労政局長からお答えがございましたので、つけ加えて申しませんが、やはり基本的な考え方というものは堅持しながらその範囲内で運用上の改善については十分研究いたしたい。ただ、お話しがございました幅ということにつきまして、幅の中身も十分理解をできないような状況でございますので、幅を設けること自体の可否につきましてはさらによく考えてみたいというように考えております。
  45. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 速記をとめて。   〔速記中止
  46. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 速記を起こして。  参考人方々に対する御質疑はこれにて終わることにいたします。  参考人方々には、御多忙のところ、本日はありがとうございました。
  47. 大橋和孝

    大橋和孝君 これは非常に問題が問題でありますので、私はいま申し上げている事柄は、結局労使の間の紛争をできるだけなくして、そうしていま言っている労働三法の趣旨を十分生かさない限り労使の間はうまくいかないわけですから、したがって、そういう点からできるような方向でこの問題を解決していく道を求めるために、相当私は早い期間にそういうものをやってもらわなければいかぬと思う。ただ、もうたてまえはこうで、それからまた事実は多少それに対して甘みをつけますわというぐらいの程度では話にならないわけですね。実際やっているのは、先ほどからお話しを聞いてもらっているように、みんなもう中労委のあっせんもけっちゃっているんだし、組合との団交に対しても一方的にぽんぽんとやっているわけですから、これは、私は理事者側に対して相当お願いはしておきましたけれども、やはり大蔵省なり労働省なりあるいはまた各所管庁がもう少しこの問題に対して徹底的に考え方を進めてもらわない限りなかなかうまくいかぬと思うんですね。ですから、ひとつ大至急これは煮詰めてもらって、そうしてやはり自主交渉によって賃金をきめていく線に乗せる、そのためにはやはり有額回答をする、こういうような形で進めてもらいたい。それがやはりいま労政局長のおっしゃったように、多少の差があるかもしれぬけれども、中身の問題はあまりここで議論をしてもむだだと思って、幅の中身については私は触れておらない。特にそういう気持ちを持って触れていないけれども、そこのところはあなたのほうで話し合いをして、そうして人事院勧告はこうあろうけれども、これは自主的にこうきめてあと承認を与えるというふうな形にするとか、何かそれはやり方によってはまだできると思うのですね。だから私はそういう詳しいことはタッチしませんから、もう少しこのことを配慮して進めて、そういうふうにやってもらうようにひとつ要望しておきます。きょうは大臣がおったら、前の大臣答弁もありますので、これに対して大臣ともう少しいろいろな意見の交換をしてみたいし、お考え方を伺いたいと考えておったのでありますけれども、大臣はいま出張中でありますから、またその機会に譲ることにして、どうかひとつ労政局長のほうから労働大臣にそのように、また大蔵省のほうは大蔵大臣に対してもそのことをひとつ話してもらって、何とかいい知恵を出して、自主交渉の線に乗るようにひとつ努力してもらいたい、こういうふうに思います。いいものを出しておいてうしろからひねくっていくような、そういう政府周囲の関係機関としてのあるまじきそういう理事者の能力を許しているようなことがあってはいけない。外のほうから十分に是正してもらって、すぐやはり当事者能力として当事者がやはり使っておる使用者に対して十分な責任の果たせるような交渉をさしてもらいたい。これが絶対必要だと思いますから、私は特にこれを要望しておきます。  それからもう一つ私は伺っておきたい。きのう衆議院の小林さんが質問されたこの海外技術協力事業団の労働組合との話し合いです。これはけさの新聞を見て私は意外な気持ちに打たれました。きのうは事業団から理事長が来られなくて、外務省の経済協力局の参事官の鹿取さん——見えていますね。あなたがそこで答弁に立ったようでありますが、協力しますと言ってあれは八時ごろに終わったようですが、九時になってロックアウトしたというのはどうなんですか。この経過をずっと説明してください。
  48. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 海外技術協力事業団のストライキにつきましては約一週間続いておりまして、もちろん初めは全面スト、それから次に時限ストと、いろいろその形はあったわけでございますけれども、当初事業団は団体交渉に応じまして、その団体交渉に応ずるに先立ちまして団体交渉の条件についてもいろいろ組合側と話した結果、徹宵交渉した末、条件について話し合いがつきまして翌日の午後団体交渉に入ったわけでございます。事業団の理事者側といたしましては、団体交渉をやる以上は双方が平穏に双方の主張を十分に述べて、そうして理解に達するということが団体交渉であるというふうな前提に立ちまして、非常に人数が多数になったり喧騒をきわめたりしないようにということを条件にいたしまして団体交渉に入ったわけでございますけれども、実際は双方の意見の相違もありまして、空気が相当エキサイトいたしました結果、期待したような平穏な交渉を続けることができなくなりました。したがって、この交渉は中断したというふうに報告を受けております。この問題は、そもそも組合側から三つの問題を提起いたしたのでございます。一つの問題は、最近六月一日に行なわれました機構の改革の問題、それからそれに伴う人事の問題、それからさらには賃金といいますか、ボーナスといいますか、その問題、その三つだったと聞いております。この三つについて当然理事者側といたしましても、いろいろ検討に検討を重ねているという報告は受けたのでございます。理事者といたしましては、このいろいろな問題について、できれば団体交渉でもって話を詰めたいということでいろいろと考えていたようでございますけれども先ほど申しましたように、団体交渉そのものが平穏な交渉でないということに立ち至りました結果、中断の余儀なきに至ったわけでございます。その後、組合側はストライキを、先ほど申しましたように、形はいろいろ変わったのでございますけれども、きのうまで続けておりまして、事業団の本部にピケを張るということでございまして、この組合のピケは要するに組合側組合員に対して説得をするためのピケであるというふうに説明があったわけでございますけれども、実際には組合員ばかりでなく、管理職にある部長や課長にまで適用があったわけでございまして、その結果、管理者がその事業団の仕事の本部に入れないという状態がこの間約一週間以上続いたわけでございます。したがいまして、海外技術協力事業団といたしましては、何とかこのストライキ中もその事業を続けたいということで鋭意努力はいたしたわけでございますけれども、仕事の本部に一週間も管理者が立ち入れないということでは、とても通常な事業の運営ができないということに立ち至りまして、現に海外から多数来ておりまする研修員も非常に迷惑を感ずるようになりまして、いろいろ研修事業にもそごを来たすというような状態に立ち至ったわけでございます。その結果、理事者側といたしましては、何とかこの職場に入らないではもうこれ以上事業の正常化を望めないということで、全く防衛的な立場で、やむを得ないということでいわゆるロックアウト、職場封鎖に踏み切ったという報告を聞いております。
  49. 大橋和孝

    大橋和孝君 きのうの質問状態のときに、あなたが答弁されておられたようであります。その間にもう向こうのほうではどんどん起こっておる。だから六時とか、時間的なあれを調べてみましたけれども、その前からずっとやっておる。それを白々しく小林議員に対しての答弁に対しては、善処をしますとか言っておるでしょう。あなたは善処しますと言って、一時間足らずでロックアウトした、それはやむを得ない事情だったと、やむを得ない事情にしてはあまりあなた自身の態度がおかしいじゃありませんか。私はこれを聞いて議会軽視というかあるいはまた委員会軽視というか、あまりにも私は常識をはずれておるのじゃないかと思うのですね。あなた自身どういう心境で答弁に立っておったのですか、それをちょっと聞かしていただきたい。
  50. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 私も衆議院の小林先生に御答弁申し上げましたとおり、外務省——監督官庁といたしましては、海外技術協力事業団のやっております事業の国家的な重要性、特にいろいろな国際約束に基づく事業でございますので、その国際的な重要性ということを最も重要視しておりまして、その事業を重視するという立場から、その意味で早期に円満な解決を望みたいというふうに申し上げましたわけでございまして、本日私が御答弁いたしておるのも、要するにこの重大な事業に支障を来たさないというためにその努力をするということでございまして、あのときと私の心境はいささかも違っていないわけでございます。
  51. 大橋和孝

    大橋和孝君 あのときのあなたのあれは、外務省としては、いまおっしゃっておるように、重要性から見てストの影響が大きくならないように平和的にやりたいということなんですね。あなたは、ロックアウトをしたら平和的なことになるというふうにあなたのいまの心境は変わらないというか、その気持ちなんですか。  それからそのときに来ておられた寺岡さんも、小林先生の意見は十分考慮してやりますと言う、小林先生はそういうことをしないで話し合いをせい、むしろ団交に応じないのは理事者側が悪い、しないんだと、こういうことを言っておられることに対して、小林先生の意見はそういうふうにして十分考慮しますと言っているわけでしょう。それなのに、一時間以内に、その前からもうガードマンからあるいはまた警察から、あるいはまた弁護士まで入れて、そろえてロックアウトする。これは、私の意思に変わりはないと言うけれども、少しおかしい。紋切り型の答弁をするだけではなしに、あなた自身としてもう少しこの答弁の内容といまの心境というものを真に考えてもらえないですか。私個人としてはどうもおかしいし、けさも私は小林委員のところに電話をしてみたわけですけれども、そうですかとびっくりしておられるわけですね。わずかの時間の間にそれはもう当然だと言うのではあまりにもひどいんじゃないかと思うんですが、その点どうですか。
  52. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 先ほど申し上げましたとおり、外務省といたしましては、第一に事業に支障がないように、事業が一日も早く正常化するためにその労使関係が正常化になるように、労使関係が正常化するにはもちろん平和的に正常化することが一番望ましいわけでございまして、私どもといたしましては、今日の時代になりましても、もちろん平和的な解決は可能であるというふうに信じておるわけでございます。また、その努力をするつもりでございます。
  53. 大橋和孝

    大橋和孝君 そういうことであれば、私時間的にもちょっと話してみたいと思うんですけれども、あれはいま私申し上げたように、管理者側が全部集められてやっておる。時間的な問題は、もう六時ごろからやっておられたんじゃないですか。その問題についての質疑はたぶん——私もちょっと顔を出してみたけれども、七時ごろじゃなかったかと思うんですね。時間的にあまりはっきり私は覚えておりませんけれども、七時ごろに、たぶん質疑が始まる前からそういうことがやられておって、そこへ理事者の側も来ておられたし、あなたのおられたところでそうしたことがやられておる。私は、そういうときにもこういうことになり得るかもしれませんとか何とか、もう少し発言の余裕がありそうなものですが、ロックアウトをどういうふうに考えておられるか知りませんけれども、みんなもう締め出してしまうんですから、政府機関としてやっておられる重要な機関ということから考えてみれば、こんなことが起こることは望ましからないことなんだから、そういう点についてもっと組合との自主交渉、いろいろな話し合いというものもあるわけなんですが、あなたのいま言うことを聞いておると、何か組合交渉にならぬようなことを言っておられるわけですね。組合としてもそれはいろんな質疑をするかもしれないけれども、あなたのほうに対してそんな暴力行為もなければ、私は何にもなかったと思うんですがね。そういうことから言ったら、あなたのほうの一方的な考え方でロックアウトを強要するわけであって、ほんとうに理事者側のやり方に対してあなたのほうが見ておられたら、もっと指導して、理事者側労働者側と対等に話し合いをするように指導をされるべきじゃないか。特にここでやっておることは海外にも影響することですし、対外的な問題ですから、そういうことから考えたら大事なことであるし、紛争も避けてもっと労働者立場も考えて話し合いをするということでなければいけないんじゃないかと思う。労働者の言っていることはある程度はね上がりがあるというふうに解釈されるかもしらぬけれども、私のほうの調べたところでは当然のことを言っているんじゃないか。私は、こういう点に対してもあとから局長さんの御意見を聞こうと思うんですけれども、そのとき出られたあなた自身のやり方が、さもそらぞらしく答弁はそう言っておけばいい、私が言ったって、かってに言っておれ、おれはこうだという態度で私に答弁されるから非常に納得のいかぬ点があるわけです。平和的にやるのは当然だと思っています——それは思っているでしょう。思っているでしょうけれども、やることは挑戦じゃないですか。やっていることを認めながら、あなたはこの委員会に来てそらぞらしくその答弁をされているとは何事なんですか。そういうような不信行為をやりながら、それはあなたのほうが指導している、監督をしている参事官であるというなら私は許されぬ状態だだと思う。そんな人は国の行政に対して不適行為をやっているわけで、責任をとってやめるべきだ、私はそこまで言いたいと思う。それを白々しくきょうも前から変わっていませんなんと言ってのけるというのは非常に問題だと思うんですよ。委員会でいろいろ話をして心配してやっていることに関して、もう少しあなた方も指導者の立場からしたらそれを指導していくということをやってもらいたいと、私は切なる気持ちで言っているわけです。また、きょうも出てそういうことを言われることに対しては、ほんとうに労働者立場を考えてもっと国の機関がうまくやってもらいたいと考えるからこそ腹が立つ。それで労使間がうまくいくということをあなたが指導されるというなら大間違いだと思うんです。むしろこれは水をさすことをやっているからますます紛糾していくんじゃないかと思う。もっと率直に立場を考えてみてください。それが言い過ぎだったら私はごめんくださいということで話し合いがつくと思うが、あなたのようにそらぞらしく今後ともやっていくということなら、私はあなたの態度に対して徹底的に論議を展開したいし、もっといろんな意味で反省も求めたいと思うんですけれども、政府の機関をいろいろ指導されるというような立場でそんなことでは非常に不愉快に思います。もっと心境をゆっくり話してください、私の納得できるように。
  54. 沢木正男

    説明員(沢木正男君) 私、昨日インドネシアとの交渉がございまして、関係各省とインドネシア交渉団との間の会議を主宰いたしておりましたので、責任者でございますが、委員会出席できませんでしたことをここで深くおわび申し上げたいと思います。  ただいま私のほうの鹿取参事官から申し上げました点につきまして、昨日の発言ときょうの事態の発展との間においていろいろそごがございましたようで、その点につきましては私から深くおわび申し上げます。ただ、外務省の立場は、あくまで技術協力事業団のようなところでストライキというな好ましくない事態が発生しないことがまず第一の願望でございます。それにさらに輪をかけてロックアウトをしなければならないというような事態が発生することは、さらにわれわれは残念なことであるというふうに考えております。昨日、鹿取君がこちらに出席いたしまして御答弁申し上げておりました段階におきましても、できるだけロックアウトのような事態に立ち至らないでこの事態が収拾できないものかという点でわれわれは事業団ともいろいろ話しておったわけでございますが、いまだ外務省が労使間の問題について直接介入いたしましてどうこうすべき立場にないという点で、事業団の理事者側の措置を直接私がどうしろああしろという命令的な指示はいたしておりません。あくまで労使間において円満に話してもらいたい。その間におきましても、組合側理事者側団体交渉以外にもいろいろ話し合いがあったようでございまして、われわれは最後の瞬間までそういうパイプで話し合いが円満裏に解決されることを望んでおった次第でございますが、遺憾ながら事態は御承知のようなふうに発展したわけでございますが、われわれといたしましては、あくまでそういうふうな関係がすみやかに話し合いによって解決できるということを念願しておるものでございますので、いろいろお腹立ちの点もございましょうけれども、その点はそういう気持ちでおりますのでひとつおくみ取りいただきたいと思います。
  55. 大橋和孝

    大橋和孝君 局長から話を聞くと私もある程度よくわかるんですが、特に私先ほど申したように、やはりこうした海外にも影響を及ぼすような事業をしておられる事業団であるわけですから、その紛争がよりエスカレートすることは望ましくないということはおっしゃるとおりだと思います。その意味では、私はいつの場合でもそういう感を深くするわけですが、やはり間接的な指導をしておられるわけで、直接的な責任はきのう来られた寺岡さんあたりがやっておられるわけですから、そういう意味で自主的なあれはあろうと思いますけれども、指導はやっぱり外務省のほうでやっていただかなきゃいかぬわけです。そういうようなところでできるだけそういうものが起こらぬようにすると、局長のおっしゃったような趣旨から考えると、いま、やはり労働組合の自主的ないろいろな立場を無視したような状態で押しつけるというか、そうじゃないかもしれませんけれども、いろいろ自主的な話し合いが円満にいけるような方向づけを持っていないと、どうしてもデッドロックに乗り上げていくことになると思うのです。この経過は、私は御意見を伺うために調査をしてみましたけれども先ほど鹿取さんからお話があったようなぐあいに、どうしても話し合いの場ができないからロックアウトをしなければならないという、いまお考えを聞いたわけですけれども調査してみると必ずしもそうばかりではない。別に何もやったわけでもなければ、それはむしろ声を大にしなければならないような雰囲気を理事者側でつくられた点もあったように聞いております。そういういろいろな点を考えてみたら、もっともっと理事者側が力を入れて自主的な話し合いをして解決の方向に持っていくような努力がされるべきだというような点はまだあり得ると、私はそう思ったわけでありますが、これは個人の見解ですから理事者側の見解とは違うかもしれません。しかし、いずれにしてもロックアウトをしたりすることは非常におもしろくないことですから、いま局長のおっしゃったような、これを平和的に解決するためにはどうしたらいいかということに対してはひとつ強力に指導していただきたいと思います。しかし、私が先ほどから申し上げたのも、局長から話を聞けば、そういう気持ちに燃えて、ことばが足りなかったという点で了解はいたしますけれども、どうかひとつ鹿取さんのおっしゃっているようなことでなくて、また委員もこうして質問するときに決して思い上がったことは考えておりませんので、こういうことはなるべくならうまくおさまってもらうように少なくともひとつ口添えして、そして労働者の気持ちも尊重しながら話し合ってもらいたいというふうな気持ちでおそらく衆議院の委員会小林さんが質問しておったと思うのです。そういう状態の中でこういう事態が起こるということは労働者に対してどういうことになるかといえば、非常に大きな不信感と裏切られたような感じを持たせることになる。私もそういうふうに思って腹立たしく思ったくらいですから、当事者である労働者はもう一つ胸にざくっとドスを突きつけられたような衝撃を受けるんじゃないかと思うのですね。だからそういう事柄は、私はできるだけそれを避けてもらいたい。できるだけひとつ円満に解決をしていただきたい。まだいろいろなことを調査いたしましたからお話し申し上げることはありますけれども、それを申し上げることがいいか悪いかわかりませんので、私はこれをいま申さないで、資料をここに持ったままにしておきますけれども、そこでお願いしておきたいこと、あるいはまた希望しておきたいことは、ひとつこの問題はできるだけそういうことのないように早く話し合い、団交に持っていって、そして平和的に円満に解決をしていただきたい。いま局長がおっしゃっているような気持ちで早く具現化してもらいたいと思います。ロックアウトをやって、日にちを遷延してまたいろいろな問題が起こってくる。特にロックアウトになっていまのような態度でいかれたら組合側もエスカレートするでありましょう。またいろいろな問題が起こってくればいけないので、私はそういうことのないようにやってもらうということをいま要望しておきます。同時にまた、そういうことが起こったときにはこれはたいへんなことになりますから、絶対そういうことがひとつ起こらないように円満に解決を早急にやってもらうということをひとつお願いしておきたいと思います。  それから労政局長のほうも、きょうは大臣おられませんけれども、労働省の立場からいえば労働者を守る立場です。ですからこの問題がロックアウトまで発展したということは非常に私は遺憾だと思います。おそらく局長もそう思われるだろうと思いますが、この問題に対してはひとつ早急に平和裏に話し合いを進めて、そうして団交のうちでこれを早く解決してもらえるような方向を見出してもらいたいと思います。言おうと思えばまだたくさん質疑する問題を持っております。都合によれば、また理事者側にも来てもらって詰めなければならぬ点もあると思いますけれども、しかし、きょうはそういうことでロックアウトの報告を聞いて、どうかひとつロックアウトというものを早く解いて自主交渉ができて円満に解決してもらうということを要望いたしますので、これに対してひとつ極力やってもらいたい。それに対して両局長からのお考えを聞いて私の質問を終わりたいと思います。
  56. 沢木正男

    説明員(沢木正男君) ただいま御答弁申し上げましたように、外務省といたしましては、現在に至っておりますような最悪の事態ができるだけ早く解消いたしまして円満裏に紛争解決し、業務が正常化することを望んでおります。そのために、われわれとしましても、監督官庁といたしまして全幅的な努力をする所存でございまして、正常な労使関係がすみやかに確立されまして正当に話し合いが行なわれる事態になることに私としても全幅の努力をいたしたいというふうに考えております。
  57. 松永正男

    説明員(松永正男君) 海外技術協力事業団の労使紛争につきまして、昨日に比べてきょうが対立が深刻化した、これは私も全くそういうふうに思います。この労使の間柄でありますので、労働委員会といったような第三者機関もありますけれども、問題は、だれかほかの人が解決してくれるわけではなしに当事者が解決するわけでございますので、そういう深刻化した事態というのはたいへん遺憾でありますので、やはり両当事者が解決に向かって何らかの手を尽くして努力をするということ以外には基本はないかと思います。私どもも、従来問題になりましたいろんな例につきまして、たとえば私が間に入ったりした例もございますし、大橋先生等とも御相談したこともございますが、今回の場合は、いま伺っておりますというと、外務省も監督官庁として善処されるというようなことでございますので、早期の解決ということを願望をいたしまして、また必要があれば私どもがお力をかすということも場合によっては出てくるだろう、その際には私どもやりたいと考えております。
  58. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は本日はこの程度にとどめておきます。  午前の調査はこの程度にとどめ、午後一時より再開いたします。    午後零時十七分休憩      —————・—————    午後一時四十五分開会
  59. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  社会保障制度等に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  60. 大橋和孝

    大橋和孝君 それではまず第一に、この六十三国会が終わりまして、その五月十三日の夜、厚生省が日雇健康保険の擬適の廃止を決定して十五日の閣議にはかったというわけでありますが、一体この擬適の廃止に踏み切ったというこの強行手段をとった理由をひとつ聞かせていただきたい。
  61. 戸澤政方

    説明員(戸澤政方君) 一応私から経緯を申し上げます。  この日雇健保の擬制適用につきましては、御承知のとおり、前々からこれは法律に基づかない、いわば便宜措置というようなことでもって運用してまいったわけでございまして、法制的にも問題の多かったものでございます。かてて加えてその財政状況は非常に悪くなっておりまして、改正法を出す以前におきましても日雇健保全体としての累積赤字は一千億近くに及ぶというような状態で、財政的にも運営しがたいような状況になっておったわけでございます。それで六十一国会並びに三国会に提出いたしました改正法案は、この日雇健保を運営していくために最小限の財政対策を盛った改正案を出したわけでございます。それでこの改正案が通りますれば、何とかいままでの制度でもってしばらく運営していこうというようなことであったのでありますが、不幸にしてその改正案が廃案になりました。その結果、単年度の赤字は当初予定いたしたよりも九十四億もふえましたし、本年度の累積赤字は千二百億にも及ぶと見通されるわけでございます。そういうわけで、このままの形で運営していけば、本来の日雇健保の対象である被保険者に対する医療費の支払いも不可能になるおそれがあるといったような状態になりましたために、これを救うためには、この際擬適適用者につきましては、これを本来あるべき姿に移して、もとの日雇健保の対象である被保険者の保険を守っていく必要があるというようなことでもって擬適廃止に踏み切ったわけであります。
  62. 大橋和孝

    大橋和孝君 法制あるいはまた財政の面から踏み切ったと言われますが、この擬適については、昭和二十八年の十二月十八日ですか、厚生省保険局の健康保険課長の名前で、この土建労働者に対する擬制適用に関する基本通達というものが出ておるわけでありますが、そういう形で出されて今日までの間十六年半ですね。長い間行政運用されてきておるわけでありますが、実質的に言うならば、もう通達ではあるけれども法文規定と同じように取り扱われておるものであるということで取り扱われてきたわけでありますが、この実態をどういうふうに考えておられるのか。これまでの間にとやかくあったというが、これは既成事実として行なわれてきているわけでありますから、これは法文化されていないけれども、法文で規定されているものと同じくらいの力があるものと私は考えますが、この実態をどう考えておられるのか。一片の局長通達でもって廃止に決定したというのは、非常に私どもその実態から考えるとふに落ちない、納得できない点が非常にあるわけです。この点について見解を示してもらいたい。  同時にもう一つ、時間が迫っておりますからまとめていきますから答えてください。国会の最終日にあたってちょうどつら当てのように廃止を決定した。これは非常に私もそう思うけれども、国民ひとしく、廃止に踏み切ったやり方を時間的に見て、報復措置以外の何ものでもない、国民はそう受け取っているのじゃないか。国民の生命と健康を守る立場で非常に大きな役割りのある厚生省、この当局がこういうようなことをやったということに対して私はどうも納得ができぬ。国民もおそらく納得していないと思う。ですから、この問題に対してひとつ納得のできるようなあなた方の考え方、先ほど紋切り型の財政の問題が赤字になっているとかあるいはまた法制上の問題とかいって、あなたは三つの問題を提起しておりますけれども、そんなことではなしに、ほんとうにこれはこうしなければならぬのだ、なるほどなということが国民に納得できるように説明をしてください。いま聞いているような説明では国民は納得しませんよ、私も納得できない。私も納得しないから国民も納得しないと思う。あちらこちらにいろいろな運動が起こっているのを見ても、納得していないからこういうことが出てくるのじゃないか。そういう点で、いままでこれでやられたことを一ぺんでもってやめなければならぬ理由、同時にまた、これは実態としては法文で規定されていると同じような力がある。この二点について国民に納得いくように説明をしてもらいたいと思います。
  63. 戸澤政方

    説明員(戸澤政方君) 第一点の十七年にわたる実績を持っているものをなぜそういう形式的な理由でもって廃止するのかという問題でございますが、沿革的に見ますると、確かに二十八年日雇健保法が制定された時期におきましては、まだ国民皆保険の体制もでき上がっておりませんでしたし、この本来の日雇い労働者と同じような職務体系にあったいわゆる一人親方、そういう人たちの保険制度として適当な受けざらがなかったというようなところから、これを日雇健保擬制適用というかっこうで運用してきたことは一つの意味が確かにあったと思います。しかし、その後だんだんと国民皆保険の体制が整備してまいりまして、三十六年に国民健康保険法の全国適用ということになりまして、全国民は何らかの保険に入り得る体制ができ上がったわけでございます。そういたしますと、本来ならば、そういう時期においてこの擬制適用といったような不自然な形はやめて、これを本来あるべき国民健康保険に移すべき筋のものであったと考えられます。しかし、いろいろな事情でもってそのまま推移したわけでありますが、厚生省では、いずれかの時期にはこういう体制はすっきりさせなければならぬというような考えのもとに、四十年ごろからは新しい擬制適用組合新設を認めておりません。それで、その後抜本改正の問題等も出てまいりましたので、抜本改正のおりにこの擬制適用の問題も考えようというようなことになっておったわけであります。しかしながら、先ほども述べましたように、日雇健保全体の財政はもう破綻に近い状態になってまいりましたし、かてて加えて健康保険法のいろいろ分べん給付とか、いろいろな給付改善も行なわれましたので、その機会に日雇健保につきましても同じような給付改善を織り込む必要があるというようなことでもって改正案を出したわけであります。その結果こういうことになったのでありますが、確かに法律的には問題があるにしろ、この十七年にわたる実績というものを無視することはもちろんできませんし、また、それ以上に擬適の方々に対する医療保障というものを無視するわけにはいきません。それで私どもが考えましたのは、この擬制適用者につきましては、法制的にも日雇健保を適用するのはおかしいんで、これは国民健康保険に入るべき筋のものでありますが、国民健康保険——市町村経営の国保に入りますると、いろいろと保険料負担等においても問題がありますし、いままで組合方式でもって運営してきたその実績を尊重しまして、これを国民健康保険組合というような形式でもって運営するということによって従来の実績あるいはそれ以上を保障できるような保険に育てていきたいというふうに考えておるわけでございます。したがって、決してただ擬適を切りっぱなしにしてあとのことを考えないというわけではございませんで、万全の措置をとって切りかえ措置をやりたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、第二の問題のタイミングとしまして、確かに廃案の直後にこういう廃止措置をとるということはつら当てあるいは報復措置のように感情的にはとられると思いますけれども、それは決してそういうことはございませんで、前々からこの改正法案が通らなかった場合には擬適は廃止せざるを得ないおそれがあるというようなことは外部に対しても言っておったわけでありますけれども、もう財政事情先ほどお話したようなことで一日の猶予も許さないといったような状況になりましたので、準備期間等もございますので、早い時期に廃止、国保への切りかえの措置をとったわけでございます。
  64. 大橋和孝

    大橋和孝君 前から、これが廃案になった場合には擬適の問題というのも私も聞いたことはあるわけですが、しかし、いずれにしてもそういうふうに踏み切っていくということは根本的に、先ほど申したように、国民の健康と生命を守らなければならぬ厚生省がそういうことをばっと打ち出してくるということはあまりにも……。いままでこの十六年の間にしても、これはもう法制上あるいはまた行政上からいってやれぬことはないわけですね。通達でやっているんだから、また通達を出せばいいということは、通り一ぺんの理屈では通るでしょうけれども、その十六年何ヵ月のいままでずっとやってこられた実態、それを廃案になったからすぐぱっと切りかえてやるということは、国民の受ける率直な感情からいってもどうか。それならばあとで、これは赤字になって困るんだと、これが廃案になったからこうこうなったからということをもう少し議論をして、話し合いを進めて、そうして納得の上でそれをやるというならまだ話はわかる。何も言わずに翌日新聞を見たらぱっと出ておったということになれば、これは国民としてはどうなんだろうということにもなるわけです。いままでもそういうことになっているからやむを得ないといって説明をすることもそれはできるかもしれない。けれども、実際問題としてはやはり国民の受ける感情、そういうようなことを考えてみると、国民の生命と健康を大事にしていく、そういうことを最も先行して指導してやらなければならぬのが厚生省です。公害の問題や何かを問題にするときは厚生省がまっ先になって考えてもらわなければならぬのだと、それはもうほかの省よりは先んじてやはり厚生省はからだを守るとか、健康を守るという意味でやらなければならぬ。こういうふうなことを国民はひとしく厚生省に対して希望し、思っておるわけです。それを今度のような場合にこういうふうにやられて、いままでのように通り一ぺんの理屈を聞くだけでは、なるほど赤字が出てきたらそれは擬適は廃止されてもやむを得ないなということで納得できないわけですね。だからして、今度のとられた方法というのは非常に遺憾であると言わざるを得ないと思うのです。ほんとうにもう私はその気持ちで一ぱいなんです。ですから、私は大臣にちょっとお願いしておきたいと思うんですが、今後こういうふうな事柄をやはり厚生省は重大にとって考えてもらわなければならぬ。通り一ぺんで赤字が出て困る段階にきたから廃止してしまいますということではいかぬと思うのですよ。大臣といつもこうやって委員会お話ししているときは、そういうことは非常にくんでもらえて、国民の感情あるいはまたその生命、健康というものを守ることがどれほど大事であるかということを大臣はいつも言っておられるわけで、私ども共鳴しておるわけです。そういう点からいえば、今度の措置なんか大臣はどう思われますか。やはり国民はこういうことで不安を持ち、厚生省に対して非常に不信の感情を持っているんじゃないかと思いますから、そういうことに対してはもっと何とか国民の感情をそうでないようにしないと、これは厚生省の立場としてはよくないと思うんですね。ちょっと一ぺん聞かしてください。
  65. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) いつも大橋先生のお話をじゅんじゅんと承っておりまして、私も敬意を表し、また先生のお説には非常に同調をいたしておるものでございます。ただいまも大橋先生から申されましたことは、私は全部ごもっともだと思います。しかし、私どものほうの保険局長の申しましたこともそのとおりでございますので、私が大臣として見れば、局長のやったことももっともだけれども大橋先生の言われることもまことにごもっともだという両方の私は実は板ばさみのところに立っております。そこで、私は当局にもいろいろの注文を大臣としてつけております。これはちょっと時間をかしていただきたいのでありますが、擬制適用というのは、申すまでもなく、読んで字のごとく擬制適用、擬制適用だから本物ではなしにうその適用と、わかりやすくいうと、ことばは悪うございますがそういうことで、法律制度としてではなしにやってきてまいっておる。それは本来日雇い労働者の健康保険制度というものが失業対策事業として雇われておる日雇いの方々あるいはまた健康保険制度適用されている事業所に日雇いとして雇われておる方々対象として、したがって、いわばそういう日雇いの方々でございますので給料も高くない、昔はニコヨンといっておりました。今日はニコヨンではないわけでありましょうが、そういう安い給料の方を対象といたしておりますために、改正はされましても日額給料の標準を四百八十円ぐらいのところにおきまして、そして四百八十円ぐらいの給料の方——そういう人はほとんどありませんが、日額保険料二十円、また四百八十円以上の給料の方は日額二十六円ということでやってまいっております。したがって、擬制適用方々とはもともと事情が違っております。擬制適用方々は日雇いさんでもなければ、むしろ自営業の方々が多いわけであります。ただ職場が毎日違う場合が多いということで、非常に形が似ている。しかし、その制度が行なわれました当時、まだ全国各市町村には国民健康保険制度がなかったために、厚生省の全く便宜措置として一課長の通牒でしばらくこの制度でということでやってまいりました。私はその当時の厚生省の役人よくやったと思います。保険制度がまだできない際に、擬制適用という名前は悪いが、それだけ一人親方のめんどうを見てきたのだからえらかったと思いますが、それが十何年かやってまいりましたので、無理に無理を重ねてまいりました。この保険の対象となっておられる方方は、現在で申しますと、本来の日雇いの方が六十万、擬制適用の方が四十万、六対四ということになってまいっておりまして、しかも現状におきましては、これはいい悪いは別といたしまして、経済がここまで伸びてまいりましたので、日雇いさんという方がだんだん減ってまいりました。この保険の本来の対象者は減ってまいりましたにもかかわらず、この擬制適用方々は毎年五万人くらいふえております。いま申しましたように、現状におきましては六対四でございますが、このまままいりますと五対五になり、あるいは逆になるというような状況をたどることは間違いないわけであります。なぜならば、この擬制適用と同じような事業をなさっておられる方は、よく言われますように大工でありますとかあるいは左官業でありますとか、あるいは植木屋さんも入りましょう、とび職も入りましょう、板金工も入りましょう。そういう方々は何百万もおるわけでありますが、その一部の方々が特別の組織のもとに擬制適用を受けておるわけでありますから、四十万人ということでありますが、これは四十万人でとまりません。毎年毎年ふえていく状況にあるでありましょう。しかしいまのこの時点で見ましても、保険局長から申しましたように、日雇い健康保険は全く大赤字になってしまって、百万人の対象でありながら一千億をこえるような赤字になってしまっておる。なぜそうかと申しますと、ただいま申しますように一日二十六円の額でありますから、かりに月に二十日印紙を張ったといたしましても、これは五百円前後でございます。一年間にいたしましても五、六千円であります。しかしこれは二十日印紙を張る人とばかりは限りません。この保険の恩恵を受けますには、いろいろ二カ月間で二十八枚印紙を張れば保険の適用を受けられるとか、過去六カ月間に七十八枚、一カ月にいたしますと十枚余りの収入印紙を張ればそれで保険の適用を受けられるということのために、この保険の対象になっている方々が一年間に納められる保険料というものは五千円内外でございます。しかし保険給付のほうは、保険の内容というものは全体的に上がってまいってきております。また医薬も開発されまして、高い薬がどんどん保険給付の対象になってまいりましたので、今日一年間で約五万円近い保険給付になっております。言いかえますと、現状におきましては五十円で五百円の買いものをするという仕組みでございます。これに対しまして国はそのうち百分の三十五の国庫負担金を出しております。しかし百分の三十五の国庫負担金を出しましても、保険料があまり安いものでありますからこれは半分にもなりません。そこで赤字に赤字を重ねまして、どうしてもこの保険料のほうを合理的に引き上げる、しかし引き上げるばかりでは感触もよくないから、さらに給付のほうもよくするという改正案を昨年の国会にも御承知のとおり出したわけでありますが、いろいろの事情で不成立でございました。先般の国会にも出しましたけれども不成立でございます。国の予算のほうは、二度も法律案を出しておりますので、その法律が通るたてまえの予算を組んでおりますが、予算といっても対象のない予算は組めませんので、結局は借り入れ金延納を認めてもらっておりまして、そこで借り入れ金で泳ぐわけでございますが、この法案が通りませんでしたので、予算の上に乗っかっている借り入れ金の範囲、これは動きません。しかし借り入れ金といっても、どこでも貸してくれるということではありませんので、資金運用部の短期資金を実は借りあさって、そうしてお医者さんのほうの支払いをかろうじてしておるというのがうそ偽りのない実情でございます。短期借り入れ金でありますから、年次を越すことはできませんので、食糧証券などと同じように、予算で定められた保険の借り入れ金を認めてもらい、資金運用部から金を借りてすぐまた短期の借り入れ金で返すというような綱渡りをしておりますが、今回法律が通らなかった、あるいはまた修正案も出ましたが、また修正案も通らなかった現状におきましては、何かこの保険制度について手術をしないことにはこの保険制度が動かなくなってしまうということで、ここは厚生省の考えておるところを御理解いただきたいのでありますが、単に擬制適用の人ばかりでなしに、本来の日雇い労働者に対する保険制度というものが一緒につぶれてしまいます。そこでそれをつぶさないためには、擬制適用の方にはこれは申しわけない形でありますが、それが本来の擬制適用だから、それらの方々にはこの際日雇い健保のほうから他の——今日においては保険制度ができております。国民健康保険なりあるいは政府管掌保険制度がございます。今日、さらにこの擬制適用の方方を見ますと、日雇いでないばかりでなしに、一人の親方で何人かの子分を連れた方がそのまま擬制適用のもとに二十六円の保険料で入ってきているというのも現状でございまして、私どものほうには、まことにけしからぬと、こういう苦情も出てきております。なぜならば、いまのとびさんでも大工でも左官でも、ある一部の人は二十六円でいくけれども、他の多くの人々はやはり国民健康保険とか政府管掌健康保険に入りまして、それよりもある程度高い保険料を納めているわけでありますから、したがって、同じ職業、同種同業の方々の間にも非常に不均衡感が起こりまして、そしてそれらが違った派閥といいますか、政治団体といいますか、そういうものの結成をも誘致しているというような状況さえもあると、こういうわけでございますので、したがって、私どもは、ほんとうに日雇い労働者の健康保険の制度をこの際維持するために、擬制適用方々はそこからのいていただく、のいていただいただけでは、この人方は健康保険が受けられない、病気になっても健康保険が受けられない、あるいは生活の脅威になるということではいけませんので、その方々のためにはできるだけの席を用意しようということを保険庁長官、保険局長に私が厚生大臣として命じております。それは日雇い健保がなくなりましても、健康保険はもちろんなくなりません。なぜならば、今日は国民皆保険でありますからどれかの保険に入るわけでありますが、どれかの保険へ行けということだけでは厚生省として情が足りないから、ちゃんと行く道をこしらえるように厚生省はいろいろ考えろと。一番いい方法は、それは国民健康保険の中に一部門がありますが、国民健康保険組合というのが先生御承知のとおりあります。これもいまは新しくはつくることを認めておりません。おりませんが、これはまあ早い話が、お医者さん方も国民健康保険組合というものをつくっておられますし、あるいはその他の職業の同種同業の方々も、全国一円、都市あるいは地域のそれぞれの単位としてそういう組合をつくっておりますが、その組合がこれはたまたま同種同業でできるから、その組合に擬制適用方々は御案内をして、そこでそれにひとつ何らか特別の心配をせよと。どうせいまの日雇い健保のほうは大借金でもたなくなる。もたなくなって、えらい赤字なんだが、とどのつまりは、そのしりは将来国が見なければならぬものでありますから、したがって、この際国民健康保険組合のほうにその擬制適用の方方に行っていただいた際には、国が何かいままでにない別の助成とか国庫負担ということまで考えろということを、実は私はみずから大蔵大臣福田赳夫君のところまで乗り込んでいって、また閣議の席でもちょっとはずしていただいて、そういう原則的な話を実はいたしておると、こういうことでございまして、したがって、その擬制適用の方方に本来あるべき姿に帰っていただく。それがほんとうのことでいいのでありますが、しかし急激に環境変化があってはいけませんので、激変緩和という処置もとってまいるようにせよということで、そのことにつきましても事務当局のほうでめどをつけて着々と措置をいたしておる。ただ、今回、先生御指摘になりましたように、擬制適用制度を廃止するしかたが国会の直後であったとか、また擬制適用廃止について、組合方々に一銭五厘のはがき一こんなものはないですが、七円のはがき一枚で、今度やめになったからと、こういうようなことで、しかも、その文章がまちまちであったり、はなはだ不親切な点もあったようでありまして、それについては私が訓戒もいたしておるわけでありますが、そういうことで、厚生省は厚生省として本来の日雇い労務者の方を守っていく。それから擬制適用の方にも過去の実績等を勘案して無理のない措置を講じていこう、こういうことにいたしております。ただし、これはやっぱり知っている方も知らない方もあるものですから、私どものほうの厚生省などにも日雇い健保の適用を受ける方々がたくさん押しかけてきておるんですが、これらの方々は自分の保険がなくなると思って押しかけてきておりますが、そうではない方が多うございます。本来の日雇い健保の適用を受ける人までも、自分の保険がなくなってしまう、厚生省けしからぬ、情がない、こう言うのでありますが、それはもう本来の法に基づく日雇い健保の適用を受ける人はもちろんそのままでありまして、いままで給料の高い方々が上にたくさん乗っかっておった、そのおもしがのきますから、これらの方々は、むしろ将来への安心感が深まっているとも思うわけでありますが、それが一緒になりまして不安を来たしているというような状況もありますので、このことにつきましては、私どももさらによく関係方々にも徹底をさしたり、国会の諸先生方にも御理解をいただいて、そうしてぜひこの急場を切り抜けるための措置を許していただきたい、私はこういう気持ちでございます。
  66. 大橋和孝

    大橋和孝君 いまお話を承っておると、非常に熱情こめてお話しになったので、まあ感銘するところもありますけれども、内容をずっと聞いておりますと、やっぱりこれは廃止だけであって、あとに何にも——いろいろのことは考えておるとおっしゃっておりますけれども、この擬制適用を廃止されたことに対してまだ気はおさまらないということもあるわけですが、これはまあ別に置いて、大臣もしかし十分この措置についてはあと考えるように命じておられると言っておられるから、これはせいぜいひとつやってもらいたいと思います。いま大臣のお話しを聞きながら、私はこの擬適の廃止をずっと考えてみますと、まだまだ次々と私の頭の中には逆に矛盾点が一ぱい出てくるわけであります。こういう機会でありますが時間もありませんから、ごく簡単に運ばしていただきたいと思いますけれども、国会というのはやっぱり国民の代表が集まっている最高機関で、国でいえば、これは唯一の立法機関であるわけでありますが、ここにかけられた日雇い健保の一部改正、これが廃案になった。これが廃案になったからして、これに対してすぐ擬適の廃止というわけでありますが、大臣のいまのお話をずっと聞いておりながらやっぱりこの行政に対して、廃案にしたことに対しての挑戦的な意味もまだまだあるのじゃないかなということをいま感じながら聞いておったわけです。これは私はそういう気持ちが去らないのであります。同時にまた、この擬適の廃止に対しましても、厚生省は、いまの大臣の話を聞いておりましても、廃止そのものに対しては相当決意を持って臨んでおられるようなところが見えるわけです。また局長の話を聞いても、この廃止に対して非常に断固たる感じを持っておられるように見受けるわけでありますけれども、しかし、この国会に出された原案というものに対しては、この擬適の廃止ということは全然載ってなかったのですね。それが衆議院の段階で、自民党さんのほうからの修正案の中でこの中身が出てきたわけです。そうすると、原案にこの擬適の廃止というものが全然なかった。それであるのにかかわらず、廃案になったとたんに擬適が廃止になってしまった。これはやっぱりどうも審議の過程からいっても、いま言うているようなものがまだまだ残っているわけですね。こういう点も、私はまだぬぐいがたいような感じがいたします。それからまた擬適はおろか、この日雇い健保そのものにいま大臣は触れられまして、それまでに破綻を来たしてはいかぬからというお話でありましたけれども、厚生省の当局が今回の措置を強行したことは全く約束違反であるからして、やっぱり日雇い健保に対しましても将来の不安性というものが出てくるであろうし、国民に対しても、ある程度抜本改正までは手をつけないで、日雇い健康保険に対してもあるいは擬適に対しても、もう抜本改正まではしませんよということは前に言っておられたわけでありますからして、これに対しての矛盾、うそを言ったということにもなるわけで、こういう点も、まあ先ほどからこれが私は強く頭の中に残っておるわけです。このようにして、擬適の廃止ということと同時に、いま国保のことをおっしゃっておりましたが、国保の組合をつくって、そうしてもっと何かいいように、いまの擬適の人たちにもうまくやるようにすると、あるいはまた政管健保なりあるいは市町村の国保なり、こういうようなものにいけば、国民皆保険であるからして保険には入れるよということでありますけれども、それだけではいかぬから、いまおっしゃっておるように、また特別な国保組合でもこしらえて、それに対してはいろいろ手厚い保護を考えてやろう、こういうことであろうと思うのでありますが、この政管健保のほうに移行できる、あるいはまたそういうことを指導するということであるならば、私は前からでもこの指導は行ない得たと思うわけですね。いま、これが廃止になってもそういうところへいけるし、いけない人にはまた組合をつくり、こういうところへいけるということが言われるぐらいなら、もっと前から市の国保なりあるいはまた職域の国保組合なりができているわけですから、そこへその人たちがいくときに指導して、もっとスムーズに損にならないように、いまよりも悪くならないような形でもって移行できるようなことを指導しなきゃいかぬ、指導もできたのじゃないか。そういうことはいままであまり何にも言われていなかったのにかかわらず、今度はこれもできる、あれもできるよということだけでは受け取り方としては少し不安が、ほんとうかなあという気持ちが起こるのではないか、私はこういうふうに思うわけです。それはいままででも、もしそういうことができるものならば行政努力をして、赤字がこんなになってほんとうに困っていられるならば、そこに入っている人も、擬適で入っている人がこっちに入ってもよりベターになるような状況にかわられるわけですから、そういう指導もあってしかるべきじゃなかったかというようなことも考えられる。それからまたこの組合の設立に対して好意的に、また日雇いの給付内容等もあまり大きな変化がないようなひとつ手心を加えてやれいということを命令しているとおっしゃっておりますけれども、そういうふうなことができるならば、一体どういうふうにされるつもりなのか。そういうことが口で言われておっても、実際そういうようなことが行ない得ないような感じもいたすわけでありますが、そういうことなんかも含めて相当明確にしておかなければ、何かいままでのやり方からしてそういうふうな気持ちが国民の間に浸透していかないというふうなことも考えられますので、そういう点を含めてちょっとひとつ局長のほうから御答弁願いたい。
  67. 戸澤政方

    説明員(戸澤政方君) いろいろなお話がございましたが、一つ、今度の擬適の廃止は抜本改正までは手をつけないと言ったことに対する約束違反ではないかというお話がございましたが、これは昨年の社会保険審議会における当局の言明あるいは国会における大臣の答弁にもあらわれておりますが、改正法案が通りましたならば一応最小限の財政対策というものが成り立つので、その場合には擬適の扱いについては抜本の際に考えようという趣旨を言っておるわけでございまして、決して日雇い健保全般について抜本改正まで手をつけないということを言ったことはございません。  それから次に、いままでも結局政管健保とかなんかへ移れる、移行できる例があったならば、そういう行政指導をやればよかったのではないかということでありますが、これは今回の擬適廃止に伴いましていろいろ地方でもって連絡したり、調査したりしました結果、こういう本来擬適に入るべからざる者が擬適の適用を受けておる、何人もの雇い人を使用しているようなところとか、あるいは一人親方でない、土建関係でないような業種のものが入っておるとか、いろいろな例が発見されたわけであります。そういうものは本来政管健保あるいは健康保険の包括適用とかいろいろ道はあったのでありますけれども、そういうことが表面に出ないままに運用されておったわけでございます。それで、今回切りかえにあたりましては、そういう政管健保に移れるようなものはそちらへ移ると、それ以外のものは国保のほうへ移行するというふうに指導しているわけであります。  それから、一番中心の問題であります国保組合への移行に伴って従来以上の助成の道を考えよということを大臣から言われておりまして、いまこれについてはいろいろの案を考え、財務当局とも折衝をしようというところでございます。現在のところでは、国保組合に対する助成というのは医療費に対する二割五分の国庫補助がございます。国保組合の補助は総医療費に対する二割五分でございまして、日雇い健保の国庫補助は給付額に対する三割五分の国庫補助であります。したがって、国保のほうが有利なことになっておるわけでありまして、国保は一般的には七割給付でございますので、その給付額に対する補助率として見ますと七分の二・五で、約三割五分くらいになるわけでございまして、大体従来の日雇い健保と同じような補助額に相なるわけであります。それ以外に、臨時財政調整補助金として一億円の補助金がございます。これは、努力するにもかかわらずやっていけないような弱小組合に対する補助金であります。あと事務費としまして、被保険者一人当たり二百二十円の事務費が補助されます。現在のところはそれだけでありますけれども、今後できます国保組合の内容、経営規模等を見、努力してもどうしてもやっていけないというようなところに対しましてはこれ以上の助成措置を考えようということでもって努力しているところでございます。
  68. 大橋和孝

    大橋和孝君 いまの説明を聞いておりますと、この国保組合もそうしてやっていく、これはほとんどその日雇い健保の中でやっておられたとあまり大きな差のないようにしてやるというお話であるし、パーセントでいま示されたわけでありますが、そうだとすればやはりこのまま残しておいて、擬適を切り離す意味がほとんどないような気がする。やはり中に置いておったと同じような状態で、こっちに持っていっても同じように補助していくならば、いままでどおりに擬適を廃止せずにおいてもあまり変わらぬのだ、こういうような感じがする、私は。手厚いことをやろうということで三割五分もやるし、また一億もつけるといってやっていかれるならば、別にいま切りかえしになるような擬適廃止をせずにやっぱりいままでどおり置いておいてもいけるじゃないですか。そこのところがどうもわからぬ。その点はどうなんですか。  それからもう一つ、あなたのほうで出しておられるのをちょっと読んでみますと、何といいますか、擬適の中に入っている一人親方というのが、建築労働者あたりでは日額数千円という高額に及んでおる状況から判断してというやつが出ているわけですね。擬適の対象になっている人で日額数千円というのはほんとうにあるのですか。一体、数千円というのはどれくらいにいま計算しておられるのですか。
  69. 戸澤政方

    説明員(戸澤政方君) 第一の問題の、内容が同じようなものであれば従来どおりのままでいいじゃないかということは、これは事実に反するのでありまして、私が申し上げましたのは、従来の給付実績を落とさないようにほかの受け皿に移行さしたいということでございまして、保険料の負担、本人負担、そういった点から考えますと従来どおりにいくはずはございません。従来は先ほど大臣がお話ししましたとおり、もう給付額の十分の一程度の保険料でもってやっておったわけですから、まあ、それはこんないい制度はなかったと思います。けれども、それはほかの一般の自営業者とか農民、漁民、そういったものが入っております市町村の国保におきましては、擬適者よりも低い収入の者がより以上の保険料を負担しているわけであります。そういった負担の公平化ということから考えまして、従来のような負担において、保険料でもって従来の給付実績を確保しようというようなことはとうてい無理な話でございます。それはやはり国保組合でもって運営していけば、これを維持するだけの保険料は払わなければならぬということになるわけでございます。その際にあまり急激に大きな負担増にならないように国の助成等もできるだけ考えていこう、こういう趣旨のものでございます。  それから賃金の問題につきましては医療保険部長からお答えいたします。
  70. 穴山徳夫

    説明員(穴山徳夫君) 数千円についての御質問でございますが、現在擬適の対象者の方々の平均賃金日額につきましては、私どもの推計は二千七百三十六円という金額を推計いたしております。これは労働省の屋外労働者職種別賃金調査というのがございまして、その四十四年の八月の調査結果をもとにして四十五年度を推計いたしました額でございます。さらに私どもが考えます場合に、全建総連のことし三月に出されました資料を見ましても、地域によりましては賃金が三千五百円あるいは四千円というところがあるわけでございまして、こういうようなことを勘案して数千円ということばを使ったわけでございます。
  71. 大橋和孝

    大橋和孝君 二千七百円で数千円と言うのはちょっと……。われわれ数千円と言ったら四、五千円と、こう感じておったんで、非常に私は高く思ったんですが、あなたのほうは二千七百三十六円をもってまあ数千円という表現をしたわけですね。そのよしあしは別といたしまして、ちょっとおかしいけれども、しかし二千七百三十六円というのは、これは全部の総報酬制ですね。ですからして、この保険料の対象にしようという場合を考えてみると、標準報酬制ですから、これは標準報酬に変えなければならぬですね。それに変えたら何ぼになるんだ。それからまた所得税の税率なんかをとってみると、六五・一三%くらいが所得にされているんですね。そういうことからいって、これもまた少し修正せんならぬだろう。それからまたこれらの人たちは退職資金なんかありませんから、これらのことを考えてみると、もっとそこで手直しせんならぬ。そうなってきたら、一体この人たちの大体標準の賃金というのはどうなるんですか。私はちょっと試算しているのですが、あなたのほうで試算してもらって、その数千円で片づけられた数千円が、いまの二千七百三十六円から計算していくと、どの程度までに実質は一体下がっていくのか。私は私の試算をしているんですが、ちょっとそこのところを一ぺん見解を示してください。
  72. 穴山徳夫

    説明員(穴山徳夫君) この二千七百三十六円というのは、先生御指摘のとおり、総報酬と申しますか、全部をひっくるめた金額でございまして、それを一応まず前提とさせていただきまして、平均就労日数が月二十三日と見まして、それから二十六円の保険料が月二十日かかるということで五百二十円。この五百二十円と、二千七百三十六円の平均賃金で二十三日働かれた場合の収入とによって保険料率の換算をいたしますと千分の八くらいになります。御承知のように、政府管掌健康保険が千分の七十で自己負担が半分でございますから千分の三十五、単純に比較いたしますと相当差があるということでございます。それから経費その他のことをこまかく計算をしたわけではございませんが、一つの私の試算でございますけれども、たとえば国家公務員と同率のボーナスというものを考えまして、それを平均賃金日額から差し引いた場合に幾らぐらいになるだろうかという試算をいたしますと、大体約二千円でございます。それで先ほど申しましたような保険料率を計算してみますと、保険料五百二十円として約千分の十一ぐらいでございまして、私どもとしては、こういったようなことから現在の保険料というものが相当安いのではないかということを考えたわけでございます。
  73. 大橋和孝

    大橋和孝君 二千円の割合にして千分の十一になる、これは政管健保より安くなる、それからまたいろいろ国税庁で示しているような税率、あるいはまた退職資金もないと言われる、そういうようなことをずっと考えていって、ほんとうに標準報酬というものをもう少しきちっと見きわめていけば、二千円よりもっと以下になるわけですね。それでまた掛け率を考えてみますと、いかにもその人が所得が多くて擬適に入っているようなふうにおたくのほうで出されたものを見てそういう感じを持ったわけですが、事実はそうじゃないわけですね。そんなに所得は多くない。そういう擬適の人たちは所得が大きいからあれしておると言っておりましたけれども、実際からいえば、そう所得は大きくないと私どもは感じとったわけです。いまあなたのほうからのいろいろ試算を聞きますと、やはり数千円もあるということでぽんと打ち出されているよりは、実際は千円台に落ちている。ですから、そんなにたいした大きなものになっていないというふうに考えておるわけですが、そういう意味からも、この通牒の中にいろいろ出されている事柄がやはり私は擬適に対して非常にいろんな疑惑の起こってくる一つの問題であろうと思うので、こうしたとらえ方自身にもひとつ十分配慮をしてもらいたい、こういうふうに思います。  同時に、私はここでもう一つお伺いしておきたい。先ほどお話がありまして、事務費を出したりあるいはまた三割五分にして今度国保組合をつくるということに対しては、非常に内容を日雇い健保に近づけていくのだ、こういうことでありますが、話を聞きますと、とび職とかあるいはまた何か建築の組合あたりで国保をつくっておられるようでありますが、いまあなたの示された問題でもう少し給付の内容とか、あるいはまたいろんなものをデータとして示していただきたい。こういうふうなもので指導していくんだということをもっともっと詳しくひとつこの際聞いておきたいと思う。  同時にまた、私はこういう点をひとつここで伺っておきたいと思うんですが、この間の六十三国会の修正案の財政効果ですね。そして修正案がもし通過したときには財政効果がどれくらいあったのか、それからまた擬適を廃止したら財政効果としてどうなるのか、こういうようなことの詳しいデータを示してもらいたい。ここですぐ示してもらえればけっこうですが、もしあれでしたら資料としていただけたらなおけっこうだというふうに思います。
  74. 戸澤政方

    説明員(戸澤政方君) いわゆる日とび、とび職を中心にしました国保組合第一号の設立の準備が進んでおりますので、それを例にしまして概略を御説明申し上げます。いま申請が出ております国保組合は、正式の名称は全国建設工事業国民健康保険と申すんでありますが、これは本部を、事務所を群馬県に置きまして、目下設立の準備事務をいたしております。したがいまして、具体的な詳細の事業内容とか収支計算等につきましてはまだつまびらかでございません。  こちらに申請がきております内容につきまして概要を申し上げます。この国保組合は全国組織を目途としております。とりあえず発足しますのは十五都道府県でございます。  それから組合員の範囲は、規約ではとびに限らず、建設工事業に従事する者全員を対象にしておりますが、とりあえず発足するのは、従来とび職で擬適の適用を受けておった者約一万四千名をそのままこの国保組合に吸収するということで進めております。組合員が約一万四千人、被保険者としてはその家族を含めて約四万人というふうに言われております。  それから事業内容は、これは国民健康保険に基づくいろんな保険給付と各種の福利活動ということでありますが、具体的の保険給付としましては日雇い健保でもって従来擬制適用でもって給付されておったもののその実績を全部生かすということでもって計画をしております。すなわち療養の給付につきましては本人は十割、家族は七割。本人は十割を確保したいということでございます。それから家族は国保でもって当然に七割になるわけであります。そのほかに出産費とか、葬祭費とか、もちろん傷病手当金、これも一般の国保ではないんでありますが、これも付加給付として支給したい。従来日雇いでもって実施しておりました単価三百三十円、二十二日、この傷病手当金をそのまま支給したい。それから出産手当金を支給したいというような計画になっております。  それで問題は保険料でございますが、現在一応申請書でもってきております計画は、事業主である組合員、いわば親方、そういう人たちは月額千八百円、二十日間就労としますと日額で九十円でございます。それから従業員たる組合員、いわば子方と言っているようですが、これは月額千五百円、これは日額七十五円であります。こういうことでありまして、こちらとしてはこういう保険料でもって、先ほど申しましたような保険給付がカバーできるかどうか。これを一応問題にしているところでありますが、話によりますと、母体である日本とび工業連合会から毎月何がしかの援助をするというような話を聞いておりますし、来年度は保険料も若干また修正するというような話も聞いております。われわれとしましては、こういう見通しをつけてから認可したいというふうに考えているわけでございます。  次は国庫補助でございますが、これは先ほど私が申し上げました二割五分の補助とか事務費の補助、そういったものでございます。そのほかに出産費につきましては三分の一の国庫補助がございます。  大体そんな構想でございまして、こういう収支の見込み、事業計画、内容が固まりましたならば、今月の中旬ころには認可いたしたいというふうに考えているわけでございます。  そのほか全国的にいまいろいろ話を進めておりまして、同種同業の全国的な組合をつくりたいというような動きも若干ございますし、それから地域的に話し合いを進めているところもございますが、まだ設立まで至っておるものは一つもございません。  それから、財政効果につきましては医療保険部長から申し上げます。
  75. 穴山徳夫

    説明員(穴山徳夫君) 財政効果につきましては、こまかい点につきましては、また資料をもって別途先生に御説明をさしていただきたいと思いますが、ここでは金額だけ申し上げさしていただきたいと思います。  この前の国会に出しました政府原案の改正案の財政効果は、これは総額で九十四億円でございます。それから、それが衆議院で修正になったわけでございますが、その修正案が成立した場合の財政効果と申しますか、当初の改正案に比較いたしまして、十八億円が減になるということになるわけでございます。それから、今回の擬制適用制度の廃止によります財政効果は百億でございます。
  76. 大橋和孝

    大橋和孝君 いまちょっとお話を聞いておりますと、財政効果も、財政上に響く差も非常に大きい。それから、またその政府のほうで考えておられるところの組合健康保険というものに対しても、これはだいぶ大きな掛け金の増額になっている。いろんなことを考えてみますと、擬適がはずされるという事柄は、非常にいままでの大きな既得権を一挙に行政当局で今後の通達で変えられるということになるわけでありまして、このいままでの保険の制度の上から言っても、こういうような大きなもし変化を起こす、重大な影響を及ぼすような変化が起こった場合には、やはりこれは社会保険審議会なり、社会保障制度審議会なり、そうした適当な審議会にかけなければならないということになっておるわけだと思うのですが、こういう場合に、ずっといろいろな話を聞いてみると、やはりこれは審議会にも一ぺん問われるべき性質のものじゃないかと考えるのですが、この点につきましてはどうでしょうか。
  77. 戸澤政方

    説明員(戸澤政方君) 従来とも、社会保険審議会にかけるべきものは、法律に基づくいろいろな企画なり運営に関する重要な問題でございまして、擬適のように行政措置としてやっているものにつきましては、諮問のようなかっこうでもってはかったこともございませんし、これははかる必要はないというふうに解しておりますが、もちろん審議会で議論になりますれば、もちろん審議の対象になるものと思います。
  78. 大橋和孝

    大橋和孝君 私は、いまちょっと見ているのですが、保険のほうの条文の中にも、やはりそういうようないまおっしゃったとおりなことは、表面の解釈ではそういうことは言えると思うのですが、大きな変化が起こったときにはかけることが望ましいようになっているわけですから、そういうこともこの場合では考慮されんけりゃならんと思うのですが、通り一ぺんではなくて、そうした通達であったものは通達でということは成り立つことは成り立つと思いますけれども、こういうふうな大きな問題は、やっぱり国民感情としてもあるいはまた、どうしてもそういうふうなことをされたほうがよりベターであるということは、どうしてもそういう感じは持っておるわけであります。  それから、ここでもう一つちょっと尋ねておきたいと思いますが、こういうような問題があるこの擬適の問題は、私も先ほどちょっと言ったのですが、これはそういう審議会にかけてすべきじゃないか、私どもそういう気持ちを持つわけですが、これは感情的に申しましても、こういうような問題を現在の段階で考えてみるときに、この擬適というものを取っ払っていくということよりは——いま所得の面からいっても非常に高所得だというけれども、それほどでもない。だんだんやってみれば千二、三百円になるんだと、こういうようなことから考えてみると、やっぱり擬制適用されておったものに対してほんとうにあたたかい気持ちで、国民の健康と、生命を守るという立場から厚生省が考えていく場合に、いまこの擬適をこのまま取っ払ってしまって、そうして健康保険の組合をつくっていけとかあるいはまた政管健保にいけとか、市町村国保にいけ——いろいろな面があるわけですが、これで比較すればそれぞれメリットはあるかもしれません。しかし、それ以前にやっぱりこれは擬制適用を取っ払ってしまうということは、財政効果だとか、あるいは相当収入のある人が安い日雇い健保に入ってはいけないというようないろいろなことがあるだろうと思いますけれども、いまこれを取っ払わないで、もう少し擬制適用の問題は凍結しておいて、冷蔵庫の中にちょっと冷やしておいて、そうして一方で日雇い健康保険が赤字でほんとうに困るならば、これに対してどの程度のことをどうしようと、国もこれだけするから日雇い保険の加入者も少し保険料を上げようじゃないかというふうな形をこの次の国会にでも、臨時国会も開かれるでしょうから、そのときに協議をして、そうしてもう少し皆さんの納得のいかれるような保険の内容ですね。私は、先ほど大臣のお話を聞いておって、二十六円でどこまでもいける、こういうふうには思わないわけですね。平均十倍になるような医療給付を受けながらそのままでいこうというような、まあ安いほうがいいから、いまの物価が上がって勤労者はほんとうに苦しいんだから保険は安いほうがいい、私もこれはいつもそうだと思うんですよ、実際は。物価の上昇の率が大き過ぎるし、こういうような状態のときでは公害は多いし、いろんなことを考えてみたら健康上非常に悪い問題が一ぱいあるわけですから、そういうところでもって保険料が上がることは、これは皆さん好まないことは当然ですね、安いほうがいいわけだから。だけれども、また実際上の赤字の問題を考えてみると、どんどん赤字を埋めるために国のほうから補助しなさいということを言っても、その補助は国民の税金だということを考えていきますと、ある程度均衡のとれたものを考えなきゃならぬということは私もわかる。そういうことは国民に対してよく説明すれば国民も了解してくれると思うんですよ。こういうときに擬制適用を廃止してしまって財政効果を云々とか——いろいろ積み上げて私もきょうはだいぶ言いたいこともありますが、三時ころまでに終わりたいと思っているんでかいつまんでおりますけれども、そういう点から言いますと、もっといろいろな問題を詰めたら議論はありますし、また詰めなければならぬ点がたくさんあると思うんですが、それはちょっと置いておくにしても、擬制適用というものを取っ払ってしまうよりは、もうちょっとこの問題は国会を終わったところで、それはなかったことにする、ちょっと冷蔵庫にしまっておいて、この次の国会でひとつどういうふうに改正しようやと、こういうふうにかまえたほうが、国民の側にしてみたら、ぱっと廃止して国保をつくれとか何とかいうことよりは受け取り方が違って、なるほどと納得して受け取ってくれると思うんです。そういう意味から言えば、一ぺんこの擬適の今度の廃止の措置というものは冷凍しておいて、凍結しておいて、これからひとつ日雇い健保あるいは擬制適用をどうするかということを含めて、そうして保険料の問題なり、あるいはまたその他の問題をひとつ協議して納得のいくような改正をすべきだ。そういうことにひとつ踏み切ってもらったほうがこの擬適を廃止する段階では皆が納得するのじゃないかと、こう思うわけですね。擬適を廃止をすることはちょっと凍結しておいて、その間にこの日雇い健保あるいは擬制適用になっている部分の検討をして、もう少し皆が納得するような線で、あるいは保険料を少し上げるとか、また保険料を上げるから給付の内容ももっとよくしていく、いま保険の中で考えられているような出産の手当もあるいはまた葬祭の手当も、ときによっては休業補償もそこでできるようにして、そうして保険料はこういうふうにしていこうじゃないかということをもう一ぺん協議してやるほうがよりあたたかい政治じゃないかと思うんですね。ですから、いまその擬適を変えて国民健康保険組合をつくってやるということはちょっと凍結しておいて、いま一ぺんまたそういうような問題を協議をするという時点まで戻して話せば非常に民主的に、国民も納得して、ああまで言ってくれるんだから少々の保険料の値上げも考えなければならぬぞと、あるいはまた、そういうことについては納得をしようじゃないかという運動が出てくると思うんですね。だからして、私はいろいろまだまだ言いたいことたくさんありますけれども、一方的にこの擬適を廃止してやめられたということに対しての国民感情というものは、どうもまだ納得できないという点がかかってくるわけですから、そういうようなことに今度踏み切ってもらうことが非常にいい方法じゃないかと私は心からそう思っているんですが、これは大臣、どうなんでしょう。何とかひとつ凍結しておいて、この抜本改正やりませんか。
  79. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 大橋先生のお話、私は非常によくわかるところでございます。できましたらそうするのが正直に申しまして一番いいと思いますが、先ほど長々と申しましたように、凍結したままですと、いまの日雇い労働者健康保険制度というものはつぶれてしまうし、また金繰りもつかないし、また同じ仲間でありながら非常に安い方と普通の国民と同じような保険料を納めているという不公平からいたしまして、そういうことはやはり先生方のお耳にも入ると思いますが、私どものところにはやはりひんぴんと言ってまいりますような事態に対応いたしまして、いま凍結してたな上げに一時していくというようなわけにいかない、せっぱ詰まったところに来ております。もっとも擬制適用制度は、ここ何年間事実上は凍結いたしてまいりました。と申しますのは、そういう行政上の通達でやってはまいりましたが、これはやればやるだけ保険が動かなくなるということで、御承知のように、新しい組合は一切承認しない、いま新しい加入も認めないということで押えに押えてまいってきておりますけれども、何しろ保険料は二十六円ということで安いものでありますから、保険がなかった人が新しく飛び込んでくるならともかく、いままで他の保険に入っておった方々がどうしても新しい組合ができなければ、いままである組合組合員として入り込むというようなことで年々五万人ずつもふえてくるというような事態が防ぎ切れなかった。これは凍結はいたしてまいっているけれども、事実上は凍結にはならないでそういうように出てくるという事態でございました。でございますので、私どもは、昨年、今年と二度にわたりまして擬適の問題には触れないで、日雇い健康保険の給付面と納付面と両面にわたる行政の改正計画を立てましたのも、何とかこれを生かしていこうと私自身考えまして、実は国会でも、この場合これと関連して擬適をどうするんだという御質問がございました。私はそれは擬適というものはもう法律上認めていないのでございます、しかし、この法律が通りまして財政的に動くような場合におきましてはその時点において考えますという御答弁をいたしておりますのも、これはもうそれで日が越せるならば、おっしゃるように、抜本改正のときまでもう私はほっかぶりして擬制適用には触れないがいいということでそういう答弁をいたしてまいりましたが、不幸にしてその法律が通りませんでした。しかも、またこの国会では日雇い健保というものの制度を本質的に変える修正案が出されていました。というのは、もう擬制適用といわれておった方々は、これはいまの法律適用対象になるような失対事業に働く方でもなければ、また健康保険適用企業に雇われる方でもない、全く自営業者と同種の方々をもこの新しい意味の改正される日雇い健康保険制度の正面からの対象にしてまいる、そのかわりいまの保険料の仕組みなどはかなり段階的にして上まで積み上げるというような修正案も、これは私どもがやったわけではありませんが、国会のいろいろな方面からのお考えが働かれて、そうしてそれが出されたわけでありまして、それならばそれはもう擬適じゃなしに、今度本体になるわけでありますから、そのあとまたどうするかということは抜本改正のときまでということで、その修正案が通ったときに、私は、この修正案については国会の御決定を尊重いたしますということを申し上げてまいりましたが、しかしそれも成立をいたしませんでした。しかも私はまあ政府でございますので、衆議院なりあるいはこの席にすわっておったわけでございますが、舞台裏では関係の政党なり、あるいはまた全健総連その他の関係団体との間でいろいろの打ち合わせ、相談、民主的な議論がかわされておったそうでございます。しかし、にもかかわらずやはり通らなかったと、こういう次第でございます。また先ほどから報復措置ではないかというようなことばもございましたが、これは大橋先生はすいも甘いもおわかりの方だと思いますが、もし擬適をやめて次の席に移るとすれば今回の時期以外にございません。これをこのままずっと認めてまいりますと、そのまま修正案が通らなくても認めてきたではないかということで、結局現在でも日雇い健保の運営が壁に突き当たってしまって、どうしてことしから来年度にわたる年度を越すか、これは補正予算を出すなり借り入れ限度の引き上げというような、臨時国会でやればやれないことはございませんが、そうでもない限りぶち当たってしまうという事態にならざるを得ないものでございますから、行政の責任でやったことでございますので、国会の皆さま方からおしかりを受けることを私も国会議員の一人として感じてはおりましたが、厚生大臣として行政府の長官としての立場からやらせていただいたという切ないところでございます。どうぞ御了承いただきたいと思います。
  80. 大橋和孝

    大橋和孝君 最後にちょっと。いまのお話聞いておりまして、もう切ないところ、どうしてもやらなかったら財政的にどうにもならぬというお話ですが、これは九月から始めるわけですね、結局廃止になって次の組合保険なり何なりにするとするならば。ですから私は十月から十一月ごろには——もうほうっておいて次の通常国会にしても十二月。したがって十一月、十二月になれば国会でやろうと思えばできるわけです。社会党のほうもどんどん臨時国会要求しておるわけですから、話をしようと思えば話はつく。だから私がいま御提案申し上げた、凍結しておいてひとつまた保険料、擬適の問題をもっと話し合いをしてそして成り立つものにしていこうじゃないか、こういうような私はえらい譲歩した考え方を申し上げているわけですね。この問題に対しては財政的にそれがために一ぺんに破壊してしまうということはない。もう十月にはそれを起こしてしまえばその開きは二カ月ぐらい、こういうことになるわけですね。だから、その二カ月の赤字は何ぼとなるわけですけれども、その赤字よりも国民に対するそうした厚生省の信頼というものを持ってもらうほうが私はよりベターなような気がするし、そのほうがよりやってもらいたいことだという感じを持ったので御提案申し上げた。私がすぐ大臣にそれに対して返答してくれと言ったって、これはいろいろいままでの経過がありまして、あるいはいろいろな問題があるわけでありましょう。その組合の発足地点でも申請も出ているらしいし、また閣議決定もあるということもあろうと思いますから、私のいまの提案を大臣受けとめられてひとつ検討してもらって、何とかそういうふうなことで二カ月の赤字だけで済むならば一ぺんそういうことをしてみようじゃないかということを協議してください。そして前向きにひとつ検討してください。これを大臣にひとつお願いしておきます。大臣のお考えを伺って私の質問を終わります。
  81. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 先ほどから申し上げておりますように、大橋先生のお話はよくわかります。しかし私がこれ以上申し上げますと、これは議論になってしまいます。また立場の違いにもなりますので、またたいへん国権の最高機関であられる皆さま方にも失礼になりますので、申し上げません。先生の傾聴すべきおことばをきょうは心にとめさせていただきましたということでお願いをいたします。
  82. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 関連でお尋ねをいたします。特別国会における最終段階突如として擬適の廃止が決定を見た。これはきわめて政治的配慮の欠如でなかったか、非常に遺憾に思うわけです。政府当局においても常々民心の安定というものには極力努力をするという、常にそうした前向きの発言をなさっている。けれども、実際に起こっている現象というのは、御承知のとおりたいへん動揺を与えたことはいなめない事実だと私は思う。先ほど来からの質疑応答をずっと聞いておりまして、擬適廃止に至らざるを得なかったという経過は十二分にわかったつもりでありますけれども、少なくとも昭和二十八年にこの適用を受けて今日まで来ている経過というものを振り返って見ますと、おそらくは物価上昇というようなことも関連しまして将来に起こるであろういろいろな不備の問題というものは当時においてもおそらくは検討されたのではないか。ならば、どうして今日まで十七年間にわたってそれを続けてこられたのか。先ほども数年くらい前からこの問題については正式に法律適用を受けたものではないので、これ以上続ければ赤字がふえる一方であると、赤字がふえるということはやはり機能的にどこかに欠陥があるということの証明でありまして、これはいまこの時点に立って初めてそういうことが起こったのではないわけであります。当時国保組合というものがなかったということで便宜日雇い健保のほうに繰り入れた、その事情はわかります。けれども、次善の策というものはたえず講じられていかなければならないのが政治だと思います。歴代の大臣は一体どういった前向きの姿勢で取り組まれたのか。いたずらに動揺を与えるだけのことでこれは今回の赤字を防ぐというだけの理由によってなされたものではないのではないか。また私は今度の問題に関連しましてしみじみ思いますことは、現在保険全般にわたって問題があると思う。したがって、この際に根本的にとおっしゃるならば全部洗い直して、やはり抜本的な対策を講ずるまでいままでの施策というものはこのまま継続的に持っていくのが妥当な線ではないか。こういう疑問を私は抱くわけであります。その次善の策も講じられないままにもう切り捨てごめんというようなことでは、これはやはり社会福祉国家を目ざす日本のこれからの行き方としてはきわめてうしろ向きの姿勢ではないか。これは大臣御自身もおそらく私の発言に対しては否定されまいと思う。それだけに現在の保険制度というものについてはいろいろ問題があります。いまここでこまごましく申し上げる時間がございませんので、あえて申しませんけれども、たまたまこの擬適の廃止をめぐって、再びこの健康保険の問題というものが浮きぼりにされてまいりました。では、将来において、現在考えられている、先ほど大臣が命じられた考え方に基づいて、これから国の施策として、また国民も安心して保険を受けられるような体制ができるのかどうなのか。また将来になってから赤字がふえた、また保険料を相当上げなければならないと、またその法律上の改正をしなければならないというのでは、これは一番迷惑を受けるのは国民であることは言うまでもない。常にそのしわ寄せは国民であることはもういかなる場合でもそうであります。したがって、いま大橋委員からも、るるいろいろな角度から述べられましたように、可能な限りにおいて次善の策というものが確立されるまでやはり継続的に据え置くべきではないかということを私自身も強調したいわけであります。その点が一つ。それから先ほど申し上げたように、どうして途中の段階において十七年間も放置されたまま考えられなかったのか。今後においていかなる展望に立った保険行政というものにお取り組みになるおつもりなのか。この三点について重ねて私は大臣の明快なる答弁を期待したいと思うのです。
  83. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) おっしゃることは私もよくわかるわけであります。ことにどうしてここまでほうっておいたか、こういうことであります。私も同感でございまして、どうしてほうっておいたのか、昭和二十八年にこの擬適を制度に乗せた。そのときに他に乗るべき制度がなかったから乗せたことは皆さんも御承知のとおりでございますし、私どもも述べたとおりでございますが、昭和三十六年ころから国民皆保険ができましたので、今度擬制適用のほうはそちらに入れるように政策的な誘導行政的な行政措置で始めたことでございますので、行政上の措置をなぜやらなかったかということを私も感ずるわけでありますが、しかし、それはやっておったと思います。やっておったと思いますが、日雇労働者というのは失対事業などの場合の方々、全部ではございませんが、国が特別の政策を傾注してきた対象方々でありますから、保険料も安い。そこで、一ぺん入られた自営業者の方々はちょっとやそっとの誘導や政策ではのくものではないと思われますので、その当時の厚生大臣、また厚生省当局も非常に苦労をいたしたことと想像されます。その証拠には、もうしばらく前から新しい擬制適用組合というものは認めないということで非常にトラブルを起こしながらも突っぱってまいりました。あるいはまた組合は認めないが、今度は組合に新しい人がどんどんふえていくことも認めないというようなこともやったのでありますが、いろいろこれはそこへ入ることは、非常に安い保険料でございますので、自然にどんどん対象がふえていくということを押えきれなかった。今度私のようなばか者が厚生大臣になりまして、また環境もこれ以上どうにもならないということになりましたので、政治生命をかけるというと大げさでございますが、皆さん方の御理解を得てやらせていただかなければならないというところまできてしまった。そういうことでありまして、もっと前からやっておいてくだされば私も皆さん方からこれだけしかられないで済んだわけでございます。まことに残念でございます。それから、申すまでもなく、抜本改正を将来に考えておりますことはしばしば申し上げておるとおりでございますので、先般の、また昨年の日雇い健康保険の改正ということは抜本改正でございませんので、全く財政上のアンバランスを何とかひとつ解消していきたい。これは御承知のとおり、政府直営の保険制度でございますので、市町村がやっておられる国民保険制度などには国が御承知のとおり何割かの国庫負担助成をいたすわけでありますが、そのしりは市町村がみな見るわけでありまして、幸いにごく最近までは三千幾つかの市町村のうち大部分の市町村の国保というものは赤字等出さないようになってまいりましたが、しかし、国のこの保険はもうバランスがとれましたのは最初の二年間だけだそうであります。そのあとはずっと赤字を重ねてまいりまして、先ほど来、もうくどいように申しましたように、国が保険の主体として、補助金をもらっても出る赤字でございますから、一時の借り入れ金で、これは予算にもない一時の借り入れ金でその診療報酬を支払ってきた。こういうような状態でございまして、保険制度というものは、御承知のとおり、いま八つくらいのグループがございます。各種共済組合、船員保険、国保、政管、また企業の組合等等、八つくらいございまして、これらも非常に不合理、不均衡がございますので、また、いまないような保険、老人を対象とする老人保険というようなものもつくりたいという私ども野心も持ちまして、そうして健康保険制度の抜本改正を関係審議会にもお願いをいたし、厚生省自身も一つの素案、たたき台のような案を出しておるわけでございますから、いずれはそれができますことを期待しておりますが、それまでのつなぎがどうしてもできないということで、結局緊急避難ということでございます。したがって、この日雇い健保制度も、抜本改正の際には別の姿になるか、あるいは他の保険と合理的に吸収運営されるものである、こういうことに相なるわけであります。ただ、私がほんとうに心配いたしますのは、今度の擬制適用の方を別の線に移しましても、先般の改正案も成立したわけではございませんので、やはり保険給付と保険料との割合は、保険料のほうが十分の一で保険支払いのほうがその十倍だというその関係そのものが是正されておりませんので、一時ここでしのげますが、抜本改正までつなげるかどうかというと、これまたもう一つの頭の痛い種でございますから、そういうことにつきましてはこれまた法律上の問題でございますので、これはもしそういうことになりますれば、そのときにあらためて抜本改正の関係について御相談を申し上げなければならぬことになるようなことも私の頭のどこかに心配として実はあるのでございます。
  84. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 将来の展望らしきものをちょっとお触れになったようでありますけれども、いつとおっしゃらなかったところにまた国民としての不安がまつわりつくのではないかという危険性があります。しかし、いままでともかく認可を与えてきたのは厚生省であり、そうしてまた直接の運営に当たってきたのも厚生省である。それで緊急避難をしなければならないという事情によってしばしばそういうことが行なわれたのではたいへん困る。  それから先ほど冗談で大臣がおっしゃられたのだと私は思いますけれども、ばかな大臣がもし国政に参加するというようなことになれば、これはありがた迷惑である。やはり責任を持ってこの問題に——まあ冗談は冗談として伺いますけれども、しかし、ここは公の委員会の席上であります。ならば、やはりその辺の分をわきまえておっしゃっていただきたいと思います。やはり権威ある発言をわれわれは期待しております。その発言の中に将来の保険全般にわたる行政というものの仕組みがどう一体変貌を遂げていくのかということをくみ取るわけでありますので、一体どこまでが冗談でどこまでが真意だということになりますので、これは非常に判断に苦しむわけであります。決してそういう大臣自身はふざけた気持ちはなかったと思いますけれども、やはりもっともっと積極的に——大臣としては就任以来非常に前向きの姿勢をとられておることは、われわれは十分理解しておるつもりであります。ならば、この機会に、いま申し上げたような妥協のできるものについては妥協し、そうして次善の策ができた段階において政治的な配慮をとりながら次の施策を決定していくという、こういう御配慮を私は願いたいものだと、こう思うわけでございます。やはり政治家の一人である厚生大臣があまりにも唐突なそういう変更をされるということは、国民がたいへん迷惑をする。今後においてもそういうことはないとは言えない、そういう判断からあえて最後に御決意を伺って、私は関連質問でありますから、これで終わりにしたいと思います。
  85. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) ここで渋谷先生から、おまえは厚生大臣として前向きで適格だと、こう言われるためには、私は、いまお説に従って、日雇い健保に関連する行政上の擬制適用というものについて従来どおりそのままほうっておくということをしなければならないわけであります。私はそれをしないで、厚生大臣としての責任でそれをやめることになりましたので非難攻撃が私に集中いたしておりますが、私がばか者でなければ、りこうにふるまったらこれはできません。そういう意味で、何と言われても、私はばか大臣だと言われてもこれだけはやらしていただくというようなことで、私のようなものがあらわれなければ、いまあなたが過去一体何をしていたのかと言うが、過去にりこうな大臣ばかりおったからこれはできなかった。私はやらなければならなかったのでやることだから、ぜひ御理解をいただきたいということを一生懸命で実は申し上げておるときに出たことばでありますので、そのようにどうぞひとつ御理解をいただいて、ばかな大臣に将来をまかせられぬというふうにおとりくださらないようにお願い申し上げます。将来の問題につきましては、私はほんとうにだれよりも意欲を持っております。ただ、なかなかこれ私の思うとおりにできない面がありまして、悩みが多いわけでありますが、保険の抜本改正につきましても、また国民一億のうち経済発展の現段階におきまして恵まれない立場におる人たちのために、できるだけのひとつ政治の努力を続けていくべきだという私は前向きの姿勢で進むことはもちろんでございますので、この点につきましてはぜひひとつ御理解をいただきとうございます。
  86. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、最近非常に問題となっております公害問題、これが及ぼす人体への影響、こういう点について若干お伺いをしたいと思います。  すでに各委員会でも取り上げられておりますし、衆議院の公害委員会では三日にわたって参考人を呼び、あらゆる角度から検討が続けられており、私も傍聴してまいりました。そこで重複は避けまして、私の納得のいかない点、そしてそれが人体に及ぼした影響、これの管理、これの対策等についてお伺いしたいと思います。  大体いまの政府の言われる高度経済成長政策、経済は世界第二位だと、ところが公害はこれまた世界第一と国際的な科学者から指摘されております。要するに、企業の高度成長は国民の犠牲においてなし遂げられ、さらに関係当局も企業優先で、国民軽視の上に成り立った今日の姿ではなかろうか、かように考えるわけでございます。そこできょうの朝日新聞の「天声人語」欄でございますが、「公害はマスコミのでっち上げだよ」、こういう放言をしている者もいる。そしてしろうとに何がわかるか、わからずに騒いでいるといった気分がこのごろ関係企業や指導官庁の役人の中にも見えるということです。確かに私たちはしろうとだし、何もわかりません。だから頭が痛い、疲れやすい、のどが変だ、一人だけでなくて家族みんな、近所じゅうがおかしい。騒ぐ理由はある。それが排気ガスのせいでないというのなら証拠を見せなさい、こういうことが「天声人語」にずっと載っているわけなんです。私はこの点についてお伺いしたいのでございますが、ただいま通産省の石油課長が衆議院の委員会に呼ばれておるので、この面から先にやっていただけないかと、こういうお話でございますので、まず自動車排気ガス対策、すでに論議されておることは大体抜くといたしまして、問題点若干をお伺いしたいと思います。  問題の自動車排気ガス対策、特に鉛対策、この問題の経過について厚生、通産、運輸各省、警察庁にお伺いしたいと思います。いま問題になっております鉛対策について。
  87. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) いま御質問のございました自動車排気ガス対策でございますが、法律的には大気汚染防止法というのがございまして、大気汚染防止法で、現在のところ有害物質としては一酸化炭素というものを政令で規定をいたしまして、また大気汚染防止法によりまして一酸化炭素の許容限度を運輸大臣が厚生大臣の意見を聞いてきめるということがございます。一台ずつの自動車適用につきましては運輸省所管の道路運送車両法によって行なうということでございます。現在のところ、一酸化炭素の排出基準につきましては二・五%という形になっておりまして、当初三%のものが少しきびしくなったということでございますが、私どもはこれでまだ満足しておるわけではございません。また、この一酸化炭素につきましては、本年二月、環境基準を設定いたしまして、これは公害対策基本法第九条に基づく環境基準でございます。維持することが望ましい条件ということでございますが、どういうものでございますかというと、一酸化炭素ヘモグロビンというものであげますならば、二ないし三%ということでございまして、これはたばこをのまない人が一%、たばこを非常にのむ人が五ないし一〇%ということでございますが、この程度の全く問題の起こらないという条件でございまして、しかもそれを目標として達成するということを閣議で決定いたしました。それに基づきましてこの夏からアイドリング調整ということにつきまして法律規制をするということが運輸省のほうから打ち出されまして、新車と中古車につきましての規制が初めてスタートするということでございます。今後そのほかに炭化水素を加えるという形になっております。  今回の鉛害の問題が起こりましたことにつきましては、またおのおのの省からお答えがあると思いますが、鉛害の問題につきましては、私どもは環境と影響という面から対応をし、運輸省のほうはハイオクタンのガソリンを使わない自動車の車種ということでこれに対応いたし、通産省のほうは無鉛化ということでガソリンの中の鉛をどんどん減らしていくというような施策を行なっていくということでございまして、これらが対応しながら現在の自動車排気ガス対策と取り組んでいるところでございます。
  88. 隅田豊

    説明員(隅田豊君) 運輸省の対策本部でございますが、ただいま厚生省の橋本課長から大体申し上げたとおりでございますが、現在、法律制度でもってやっておりますのは、自動車の中で一酸化炭素の規制だけでございます。この一酸化炭素につきましていまの規制でいいますと、いわゆる新車に対しまして、メーカーから発売される段階でもってある測定の基準を設けまして、これに対しまして二・五%以下という規制をいたしております。もっとも一酸化炭素の問題はこれは非常に大きな問題でございますし、まだいろいろな面からこれを低下させることが必要でございますので、ただいま厚生省からもちょっと触れたようでございますが、ことし八月をめどにいたしまして、現在すでに走っております車、普通に走っております車も規制対象に拡大いたしたいと考えております。この場合にはメーカーが新しく売り出す段階規制とはちょっと規制のやり方を変えないと、実行上測定が不可能だという問題がございますが、アイドリングと普通言うのでございますが、自動車がからふかしをしている状態でございます。この状態のときには非常に一酸化炭素の状態が悪うございますので、この状況のときをとらえまして、このときの基準につきましてはいまのところ五・五%を目標にしておりますが、五・五%を目標にしてこのアイドリング状態の一酸化炭素をこれに入れたい、こういう規制をことしの八月から車検場でもって、そこらを走っております車が車検にまいりましたときにはかって、その段階でいたしたいと考えております。このアイドリングの状態をこういうふうにいたしますと、先ほどメーカーの段階で二・五%にしておくという数字を申し上げましたが、二・五%までは下がらないと思いますが、ある程度のところまでは、三%ぐらいまでは普通走っている車も下がってくると思います。  さらに将来の問題といたしましては、メーカーでつくります車が、新車の段階でももっともっと下げる方向の検討もしていきたいと考えております。いま走っております車につきましても同様のことをしていきたいと考えております。  それからそれ以外にまだ有害ガスとして指定はされておりませんけれども、炭化水素あるいは窒素酸化物というようなほかの有害ガスの問題がございます。これにつきましては最終的にはまだ決定をいたしておりませんが、炭化水素につきましては、その自動車から出ますいろんな出方がございますが、そのうちの一部の部分につきましてわれわれのほうで何と申しましょうか、ブローバイガスという名前をつけておるのでございますが、そのブローバイガスというものについての規制を新しくいずれつけ加えたいということで目下準備中でございます。ただ、この炭化水素につきましては、それ以外に排出するガスの中から何%という法律規制のところまでまだいっていないのが現状でございます。それから酸化窒素につきましては、これは技術的に非常に問題がございまして、先ほども申し上げました一酸化炭素とかあるいは炭化水素とか、そういうガスの対策を講じてまいりますと、いままでの技術のやり方で申しますと、窒素酸化物と言われるものが逆にふえてくるということが最近になってわかってきております。そのために、ただ一律に何と申しましょうか、簡単に規制をやっていくだけでは、かえってほかのものをふやす可能性があるということもわかってまいりましたので、現在のところ、それじゃ全体として対策をやり直す必要があるのではないかということで、別にこれはいままでやりました規制がむだだったわけではないのでございますが、これ以上進めてまいりますとそういう弊害が出てくるということでございます。そのための基礎的な研究その他をアメリカその他世界各国と共同いたしまして目下開発中でございます。まだまだちょっと先の見当がついているとは申し切れないのでございますが、鋭意研究中ということでございます。  それから最近問題の起きております鉛でございます。これにつきましては基本的に申しますと、鉛は自動車の中で燃えた結果でできてくるものではございません。もともとエンジンの中に入っているものが、形は変わりますが、出てまいるわけでございます。ですから非常に基本的なことを申し上げれば、燃料の中に入れなければ、これは自動車のほうとしては、そうして入れないで使用できるエンジンさえ開発できれば、排出規制とか、そういうような形でやらないでも一応行政措置は可能であろうと考えております。しかしながら、現在の状況で申しますと、まだいまのところ全然鉛の入っていない燃料では実用上非常に問題がございます。私どものほうで一応現状のエンジンを全部調べましたところ、いま大体国産でもって非常に大ざっぱな数字で申し上げますと三百五十型式ほどの自動車がございますが、その中で三百型式近くは、実は同じ燃料の中でもいわゆるレギュラーガソリンといわれる比較的鉛分の少ない燃料で十分使えるということがわかってまいりましたので、実際にお使いになっている方々、それから自動車の販売店あるいは整備工場、こういうところにいま目下PR中でございますが、レギュラーガソリンでなるたけ走ろうじゃないか、値段も高いハイオクタンガソリンを使わなくても十分自動車は走れるんだからということでまずPR中でございます。それから関係方面を使いまして、自動車関係方面からユーザーにもそういう指導をするようにしておりますし、官公庁はじめ要路のところにはすでにハイオクタンのガソリンは使わないという取りきめをしていただいております。大体これでいきますと、どうしてもハイオクタンのガソリンを使わなければならない車といいますのは、自動車の数で申しますと、おそらく一割くらいであろうと思いますので、そういう方向で進められると思います。それで将来、通産省の御指導でもってハイオクタンガソリンであっても鉛分がないとか、あるいは非常に少ないとか、こういう燃料が開発されれば、われわれ自動車エンジンのほうの技術としては非常にありがたいわけでございますが、それまではなるたけ鉛分の少ないレギュラーガソリンを使うような指導をしていきたいというふうに考えております。
  89. 藤原道子

    ○藤原道子君 ところが、このごろ質問に答え、あるいは新聞発表によると、ハイオクタンをなるたけやめていく、鉛は五年後にはこれを除外できれるというようなことを言っているのですね。ところが一方において東洋エチルというのですか、国産石油製造会社ですか、これは三井系ですか、これがいままでは輸入であったのを今度国産でハイオクタンガソリンをつくる、その工場ができるというのはどういうわけですか。
  90. 斎藤顕

    説明員(斎藤顕君) 先ほど運輸省、厚生省のほうから御説明ございましたときに、ちょっと私のほうで手をあげそこねましたので、その点をちょっと御説明申し上げておきたいと思います。  実は産業構造審議会というのがございまして、その中で通産省としては各省と連絡をとり、また自動車業界、石油業界のエキスパートその他中立委員に入っていただきまして、自動車排気ガスをなくす方法というものを研究いたしております。これらの一応の結論、方向、スケジュール等はこの七月に得られるわけでございます。その中で将来の計画が自動車ガソリン、それから自動車エンジンと両方の面から論ぜられるはずでございます。しかしながら、今回非常に鉛の問題が大きく取り上げられまして、鉛がないにこしたことはないということから、さしあたっての対策としまして、通産省としては六月五日に石油業界に通達を出しまして、鉛の入っておる量の多いハイオクタンガソリン、これは数字で申し上げますと二・二CCパー・ガロン平均で入っております。各メーカーで差はございますが、二・二CCパー・ガロン入っておるのがハイオクタンガソリンでございます。レギュラーガソリンと申しますのは、平均いたしましてその半分の一・一CCでございます。したがいまして、ハイオクタンガソリンの鉛を少なくともレギュラーガソリンの一・一CCにまず下げようということで、一・一CC以上の鉛を含むものをつくってはいけないということを通達いたしました。同時にレギュラーガソリンにつきましても、技術的にできるだけ一・一CCよりも下げろという通達をいたしました。もちろん鉛を抜くということはガソリンにとっては簡単なことなのでございます。と申しますのは、ガソリン精製過程の最後の段階で鉛を加えておるわけでございます。四エチル鉛でございますが鉛を加えておるわけでございます。この鉛をいますぐに抜きますとオクタン価が急激に下がって、したがいまして、現在町を走っております自動車の役に立たないガソリンになってしまうわけでございます。そこで、現在町を走っております自動車にたいした障害を与えない範囲内でどこまで抜くかということを詰めました結果が一・一CC以上ハイオクタンに入れない。一・一CCのレギュラーものをできるだけ下げる。そうしてオクタン価を九十七——これはハイオクタン、スーパーガソリンですが、九十七及び九十ぐらいに落ちつけるようにということをあわせて通達しておるわけでございます。これは業界のほうでは、すでにハイオクタンガソリンにつきましては加鉛量を減らし始めた会社もございます。先月末には、私どもは七月一日以降はいけないという通達を出しましたけれども、何か新聞の報道によりますと、あるいは各社からの報道によりますと、自発的にすでに開始したようでございます。現在市中に出回ってありますガソリンは、ここ一カ月、郡部のほうに行きますと少し時間がかかりますが、ここ一カ月ぐらいにハイオクタンガソリンが鉛を含まないものにかわるものと思います。  東洋エチルのほうは第二課長のほうから……。
  91. 根岸正男

    説明員(根岸正男君) いま御質問のございました東洋エチルは、昭和四十一年の七月に、外資法に基づきまして外資導入とそれから技術導入契約の認可が行なわれたわけでございますが、これにつきましては、その契約が法令に違反している場合等を除きましては認可の取り消しということはちょっと行なえないわけでございます。しかし、いま石油業務課長のほうから御説明いたしましたように、自動車用のガソリンの無鉛化計画というものが、今後おそくとも五年間に、できるだけ早い機会にその無鉛化の目的を達するような計画をつくるということでただいま検討を始めているところでございますから、当然その四エチル鉛の使用というものが減少してまいりまして、東洋エチルとしましてもその生産計画を逐次縮小していかざるを得ないというふうに考えられます。その後はその会社の計画でどういうふうに製品を転換してまいりますか、その辺はまだ確かめておりませんけれども、現実として生産を減らさざるを得ないのではないかと考えております。
  92. 藤原道子

    ○藤原道子君 いま新聞やその他で石油業界がその方向にあるということは私も承知しておりますけれども、東洋エチルがそういう方向へ行ったときは、ここはハイオクタンをつくることの目的でできた会社でしょう。それを許可するのはおかしいじゃないですか。なぜ操業しなければならないか。それならその目的を変えるとかなんとかというような通産省としての指導があってしかるべきじゃないか。このままで操業開始をさせるということは私どもには納得がいかない。この点もっとわかるように御説明を願いたい。
  93. 根岸正男

    説明員(根岸正男君) これはいま申し上げましたように、昭和四十一年に申請が出まして、当時鉛というものに対する認識が浅かったためだろうと思いますけれども許可されたわけでございまして、それにいま石油業務課長のほうからも御説明がありましたように、四エチル鉛というものを全部明日からゼロにしてしまうというわけにはいかないわけでございまして、それで四エチル鉛というのは現在どうなっているかといいますと、ほとんど輸入されているわけでございます。そういうことでございまして、当面だんだん減ってまいりますけれども、やはりどうしても使わなければならないものがあるということによって、これは実は化学工業局のほうで所管しておるわけでございますが、具体的にはどういうような指導をしているか、まだ結論が出ていないと思いますけれども、いま申し上げましたように、だんだんやはり転換させなければならないということで指導しておるはずでございます。
  94. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、その点はそういう方向にいくという、そういうふうな目的に合ったような工場なら私は納得がいくのです。鉛を全部抜くというわけにはいかぬということは私も承知しているのでありますけれども、人体に影響のあるハイオクタンがこれだけ騒がれているときに、それをつくることを目的にした工場がこの際操業許可になったということはおかしい。また、一たん許可しても悪いとなったらこれに対して規制を加えるのが指導官庁の役目じゃないか、こう思いますけれども、どうなんでしょう。
  95. 根岸正男

    説明員(根岸正男君) まことに先生のおっしゃるとおりだと思いますけれども先ほども申し上げましたように、四十一年の七月に外資法の許可がございまして、それをとめるという方法がなかなかないのでございまして、行政指導によってだんだんとめていくという方向をとらざるを得ないんじゃないかということでございます。それは、われわれとしましても、おっしゃるとおりでございまして、当然輸入があるからその輸入を減らす分だけつくってもいいじゃないかというような簡単な、単純な足し算引き算の感覚でやるつもりはございません。なるべく早い機会にそういう方向転換をさせるべきではないかというふうに考えております。
  96. 藤原道子

    ○藤原道子君 一たん許可したものだからというようなことがいろいろな方面に影響してきていることは、私はこれからの質問で申し上げるのでございますけれども、少なくともいまの時点でこれだけ騒がれており、そして柳町あたりでもいろいろ病気が出てまいりますね。肺ガンが出るとか、排気ガスとの因果の有無とかいろいろ問題になっているときに、いまこそこういう問題についてはもっときびしい基準で、そうしたハイオクタン製造の目的で許可した会社ならば、それに対しては方向転換をさせるような指導を直ちにやる。これは衆議院でも問題になっておりましたけれども、通産大臣のあまりはっきりした御答弁がなくてだいぶ問題になったようでございます。参議院でも、私といたしましても、この点は国民の保健衛生上という点からも特にお考えが願いたいと思います。  石油の関係でさらにお伺いしますけれども自動車排気ガスはいまや黙視することはできない状態にある。私は静岡県でございますけれども、高速道路があまり騒音が激しいので朝までふさいで、朝になったら換気の装置を動かす。そうすると朝お茶だの何かに露がおりておりますけれども、朝六時にあけるとそこにわっと排気ガスが堆積しましてお茶の葉なんかまっ黒になる、タールを塗られたようになる。こういうことの被害は一体通産省では御承知なんでしょうか。運輸省でも御承知でしょうか。これの被害を受ける百姓あるいは国民の健康とかいうことを考えれば、どうも企業が優先するように思えてならないのでございますが、一体どうなんでしょうか。それの対策というものをお考えになっているかどうか。
  97. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) いまの先生のお話のございました高速道路近辺の植物被害の問題でございますが、東名高速道路ができますときに、静岡の郊外に小坂という所がございますが、あれは地形的に非常にむずかしいところでございますが、そこの地区の住民がやはりミカンに被害が出ているというような不安を述べられまして、私、現地へ参りました。現地へ参りまして、そうして現地の地形を見て、またそのミカンをつくる方々ともお話をいたしました。それから今度は東名高速道路公団のほうでございますが、公団にかけ合いまして、道路公団と静岡県との間でそこの場所に大気汚染の問題の起こらないようにいろいろ最善の注意をしてやるという契約書か、念書か入ったわけでございます。そういう形でございまして、道路公団としましては、そこの場所の局地気象調査をしてかなり注意をしてやったのではないかと思っておりますが、このトンネル排煙というところのこの場所は、いま先生の御指摘のあった煙の中に炭化水素が含まれておったりあるいは窒素が入っておったりする、それで問題が起こるわけでございますが、トンネル排煙から出てまいりますものにつきましては最善の措置をするということを当時東名高速道路公団のほうが申しておったことを記憶いたしております。いまのお話の件につきましては約一週間近く前に新聞に出ましたので、私どもさっそく静岡県に照会をいたしました。静岡県では現在調査をいたしておるということでまだデータがはっきりまとまっていないということでございますが、私どもとしましてもできるだけ指導をいたしまして、データも把握いたしましてどういう現状かということでこれの対策を関係の方面とも連絡をとりながら努力をいたしたい、そういうふうに思っております。
  98. 藤原道子

    ○藤原道子君 非常に静岡県は風光明媚の非常に空気のいいところでございます。ところが、それが沼津のほうでも、何といいますか、工場排水によってお米がだめになり作付を禁止された。あるいはまたこの小坂トンネル延長二百七十メートルですか、これは地元から訴えてきた文章でございますけれども、結局、有機粉じん汚染、排気ガスはまことに困る、排気口の周辺のミカンの木がコールタールを塗りつけられたようになって枯れる、原因は排気音が夜中続くので夜間騒音防止のため換気装置をとめている、これが朝六時に動き出す、その際、夜中にたまった排気ガスが一ぺんにふき出すので、ミカンの木に露がおりている上にコールタールを流したように張りつく、こういうわけで公団は一時試験的に全網のさくをつくると言っているというのです。そんなことで防げるのでしょうか。こういう点、運輸省でも十分注意してほしいし、これは通産省関係じゃないかしらぬけれども、こういうことが各紙に報道されておるのですよ。だから高度成長は国民の犠牲の上に成り立っているという私の毒舌も間違いじゃないと思う。  そこで厚生省にお伺いいたしますが、こういう排気ガスあるいは鉛等々で病気が起こったときに、これの対策はどういうことになるのですか。
  99. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) いまの御質問でございますが、排気ガスによる大気汚染で病気が起こったときというお話でございますが、私どもの現在知ります範囲内におきましては、一般の大気の自動車排気ガスの汚染によって病気が直接起こったというケースは現在までないわけでございます。ただ一点問題がございますのは、工場の煙もございますし、自動車の煙もございますし、その両者がまざっておってその影響はよくないじゃないかという御指摘には、私どもこれは全く学問的にはそういうことは否定できないと思います。排気ガスそのものとして、排気ガスによってたとえば一酸化炭素中毒が起こるということはございません。ただ交差点の周辺の住民が一般の場所よりも若干CO濃度が高いということはございますが、危険ということではございませんが、それを押えるということで一酸化炭素の環境基準を組んだわけでございます。炭化水素そのものでも、これは植物被害でございますが、人間のほうの問題ではございません。窒素酸化物とか粉じん混合体が大気汚染の原因として今後いろいろ議論を呼ぶことと思っております。もし万一起こった場合どうするかということで、これは全く仮定の御質問でございますけれども、もし万一起こった場合といいますのは、現在の健康被害にどういうぐあいに対処できるかというところにこの問題がございますが、はたして排気ガスだけはどうかといういろいろな問題がございまして、この手だて、手段としましては健康被害救済という法律がございますから、その対応が全然できないということではございませんが、しかしながら、自動車としてきめられたということと費用負担がどうなるかという点はまだこれをもう少し、しばらく検討してみないとわからないことでございます。私ども排気ガスそのものとしては人体に直接影響が及んだということは、現在のいまのところでは承知をしておらないということでございます。
  100. 藤原道子

    ○藤原道子君 お役所ではいつもそういうふうにして逃げるのですよ。それが原因かどうかわからない、それを調査いたしましてといううちに何年かかかるのですよ。そのとき、ほんとうに病気にかかった場合には取り返しつかないじゃありませんか。私はあとで触れますけれども、同じことがサリドマイドでもあるいは森永のミルク事件でも、カネミ油でも水俣の問題でもみんなそうなんですよ。イタイイタイ病だってそうです。原因がどこにあるかわからないから究明して究明してといって十年も十五年も放置されている例がたくさんあるのです。ここに問題がある。いまコールタールの問題点鉛の問題言いましたけれども、結局一酸化炭素を出さないエアインジクションというのですか、これをゼネラル・モーターズでつくったけれども、一方、酸化窒素がふえる、かえって公害が増大するといってこの方式は廃止したと私は聞いております。酸化窒素と炭化水素がスモックの元凶であるということは、一九六八年にカリフォルニア大学の教授が米国の学会に発表していることも御案内のとおりです。こういうふうなことで、結局このスモッグというものに非常に国民は悩んでいるのですよ。それに対する対策も一向になされていない。そこで国民が騒ぎ出した。これから調査します、これがいつもお役所のやり方だから私たちは納得がいかない。これらに対して、きのうもたしかテレビか何かで言ってましたけれども、アフターバーナーをつけるというようなことが、ちょっとどこだか知らぬけれども発表があった。かえってこれをつけることが酸化窒素と炭化水素を増大させるというようなことが言われておりますが、この関連はどうなんですか。
  101. 隅田豊

    説明員(隅田豊君) ただいま先生のお話のアフターバーナーの問題でございますが、その前に、結局自動車排気ガスの一酸化炭素、先ほど申し上げました一酸化炭素、それから炭化水素、それから窒素酸化物、まあガスとして出てくるおもなものは以上三つでございます。この三つをどうやってきれいにするかということなんでございますが、一酸化炭素と申しますやっと、それから炭化水素というものとは、これは非常に簡単な言い方をしますと、完全に燃え切らないで出てきたものでございます。これはお医者さんのほうで、私たちのほうではございませんが、その中で人間のからだに直接害を与えるのは一酸化炭素のほうでございまして、炭化水素のほうは直接的に人間に害を与えるというよりも、いま先生がスモッグということを申されました、いわゆるロスアンゼルスその他で起きておりますスモッグというようなちょっとむずかしい現象があるようでございますが、ほかのほうに影響を与えるものでございます。ところが窒素酸化物と申しますのは、これは今度は簡単に申しますと、物が燃えまして、燃えるということは酸化するわけでございますが、非常に高温で燃えますと、普通の状態でもとにかく窒素酸化物というものができてしまうわけであります。ですから非常に俗な言い方をしますと、一酸化炭素、炭化水素の対策を進めていくということは、なるべくよく燃えるというようにしてやるわけでございます。この対策を進めてまいりますと、窒素酸化物をつくりやすくしてしまう。いままで程度の一酸化炭素対策でございますと、特別な装置をつけませんとエンジンそれ自体を、簡単に言えば非常に燃え方のいい、質のいいエンジンに切り替えてまいりますと、これで一酸化炭素はぐっと減ってまいります。従来世界的に行なわれてきております対策というのはこの対策でございます。ですから特別な装置はつけておりません。これに対しまして、ちょっと出ました炭化水素というものは、これはそれだけではちょっとむずかしい点がございます。この炭化水素の害というものは、特にアメリカの一部の地方では非常に顕著に出ておりますが、わが国では、普通俗にはスモッグ、スモッグとは言われておりますが、そういう被害を与えますスモッグは、これから先、車がどんどんふえて起きる可能性はないわけじゃないのでございますが、いままでのところではアメリカほどのひどい状態はまだ出てきていないのでございます。そのために日本の国内で売られている車には炭化水素に対する対策はアメリカに輸出されます車よりは下回った対策がされております。そのかわり一酸化炭素に対しましては、率直に申し上げましてアメリカ車よりは日本の国内の車のほうが進んでいると思います。そういう状態でございます。  それで、いま先生のお話のアフターバーナーでございますが、アフターバーナーと申すものは、これは字のとおり、あとで燃えるものでございまして、燃やすものでございまして、結局エンジンの中で燃え切らなかったものをもう一ぺんあとで何なりか人為的な形で燃してやろうという形の装置でございます。ですからどちらかと言えば一酸化炭素あるいは炭化水素対策のもので、なおこれはどうやってやるかと申しますと、結局燃やすといいましても、マッチで火をつけるというものではありませんから、結局酸化させやすい薬といいますか、そういうようなものを詰めた入れものをつくっておきまして、それに排気ガスを通すという措置をとるわけでございます。そういたしますと、ただいま申しましたような一酸化炭素は炭酸ガスになるとか、比較的無害のものに変わっていくわけでございます。ところがこの薬は、実は実用的な意味でいいものが、実験室的には非常に各種あるのでありますが、世界的に、また実用的な意味で普通の自動車が使い切れるような値段でたくさんできるものは実はまだできていない。きのう、おとといでしたか、ある会社が非常にいいものができたと発表いたしております。これにつきましては通産省のほうから補助金が出ておるということでございますが、運輸省のほうにも説明がございました、会社から参りまして。いろいろ聞いてみますと、実験室的には相当いいものができたので、これから通産省補助金をいただいて、自動車会社ともある程度の連絡をとりながら実用的なものにまで持っていきたいという趣旨でございまして、私たちのほうでは触媒といっておりますが、アフターバーナーに使うところの触媒にはいろいろな種類がございますし、このいろいろな種類のもの、先ほど申しましたような普通の自動車が簡単に安く多量に使えるようなものというのは、まだできていないというのが現状でございます。しかし、これがやはりできますと、おそらく一番自動車排気ガス対策としては完成されたものができるだろうというのがわれわれの考え方でございます。特にこれからの問題として、先ほど名前だけ申し上げました窒素酸化物というものの対策をやりますのには、先ほど申し上げましたように一酸化炭素とか炭化水素というものと矛盾する形になってまいりますので、そのためにも窒素酸化物の対策を進めれば、同時に一酸化炭素その他の対策がいまよりも一段と強化されたものになる。そのためにはアフターバーナーと申しますか、触媒方式を取り上げないとむずかしいのじゃないかというのがいままでのところのわれわれの技術レベルでございます。  ついでにふえんいたしますと、鉛の問題として、実は柳町の問題が出ますまで私たち自動車の技術者が認識しておりましたのは、もちろん鉛というものは有毒なことは私ども存じておりましたが、いま現在、あれほど人間のからだに影響を与える状態になっているというようには実は聞かされておりませんでした。ただ、いま申しました触媒を開発していきますときに、実は鉛が非常にじゃまになる。鉛がないともう少しうまくいくんじゃないかというのが一部の実験データにも出ておりますので、そのためには通産省のほうにも何とかお願いして、何とかいますぐでなくともいいから鉛のない方向にいってもらいたいという御相談をしていただいているのでありますが、最近の問題はそれどころではない。いま鉛の問題が大きな問題として出てきているので、まずその問題が急がれるというのが最近の実情でございます。
  102. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、この問題については自動車の専門家から話を聞いております。そこで、こういうふうにかえってアメリカあたりでもむしろこれを中止するような方向にあるときに、日本でも少し考えてもらいたい。それよりもむしろコンピューター方式というのですか、ベンツとかワーゲン、ボルボなどは使っているそうなんですが、これを使うようにしたらどうなるのか。これは空気と燃料の割合を一定に保つようにできているという話なんです。ところがこれをつけると公害はわりあいに少なくなるというが、金が高くなり、費用がかかる。その費用はどのくらいかかるかと聞きましたら七万円から八万円かかるという。あの自動車の設備にただ七万か八万円かけることによってこの公害というものが防げるならば、私はこれを指導するほうがいいのじゃないかと考えるわけです。これは一体どうなんですか。すでにベンツ、ワーゲン、ボルボなんかはこれを使っている。それから日本でも若干それを使っているところもあるやに私は聞いている。これに対して通産省はどのようにお考えですか。費用は少し高い、高いけれどもわずか七万や八万ならばこれくらいのことは指導するのがあなた方の役目じゃないかと思うのですが、これはどうでしょう。
  103. 隅田豊

    ○説明人(隅田豊君) 運輸省のほうの立場からお答えさせていただきます。  ただいまの先生のお話のコンピューター方式と申しますのは、これはちょっと技術的なことになって申しわけないのでございますが、一番最初に申し上げました、なるたけ自動車の燃え方をよくしてやる特別な装置をつけないというやり方の一つでございます。結局自動車のいろんな状態にうまく合うように燃料の何といいますか、出し方といいますか、火のつけ方とかそういうようなものを、まあコンピューターといいますか、自動的な装置を使ってやっていこうという一つのやり方でございます。ドイツのある会社がそれを開発して、そのドイツ系統の車にその装置が一部ついているのでございます。これはこれなりに成功しております。ただ運輸省の立場で現在考えておりますのは、どういうやり方をしなさいということよりも、たとえば一酸化炭素で申しますと何%以上出ちゃいかぬという、こういうやり方で押えてきた。先生いまおっしゃいましたようなコンピューター方式もなかなかいい方法であります、それなりに。それを開発していって、それである基準の中に入ればそれもけっこうだと思いますが、いまの日本の普通の会社がやっておりますのもなかなか技術的にいいところをやっております。それぞれいろんなシステムがございます、それはそれなりに。あるいはその他のほうで産業的な助成をしていただきながらいろんなシステムが伸びていくのはけっこうだと思います。それをどれかにきめてしまうということは、いま非常に暗中模索の実情にありますときにはきめないほうがいいというふうに運輸省としては考えております。助成することは非常にけっこうです。
  104. 根岸正男

    説明員(根岸正男君) いま大部分運輸省のほうから御説明がありましたとおりでございまして、通産省のほうはこれも御承知のことと思いますけれども、工業技術院の中に機械試験所とかあるいは工業試験所とか、そういう研究所がございまして、自動車公害防止と安全という面からいろんな研究をしております。先ほど出ましたアフターバーナーと俗称で言われておりますようなものにつきましても相当開発が進んでおりまして、相当効果のあるものも考案されているわけでございます。それからそのほかにもっといいものをつくりたいというようなことで研究補助金も、先ごろ新聞をにぎわしました会社に今年度交付するというようなこともやっております。それからコンピューター方式という御表現でございましたけれども、もっとさかのぼって燃料の面から先ほどお話がありましたCOガスあるいはハイドロカーボン、炭化水素ガスあるいは酸化窒素ガスというものの発生の少ない燃料というようなものも根本的にはやはり考えなければいかぬというふうに考えておるわけでございます。そういう研究も進めております。それから先ほどもまた運輸省のほうでお話がありましたが、俗称でアフターバーナーと言われておりますものも、これは燃料中に鉛が入っておりますと、触媒を使いますので、その触媒にこれが付着しまして触媒の性能が落ちてしまいまして、つけましたときは非常に能率がよく、一酸化炭素あるいはハイドロカーボンを相当とってしまうわけですが、ただいまの鉛の状態ですと数カ月たたないうちに性能が半分以上落ちてしまうようなことがございまして、それでわれわれはそういう技術的な面から、ガソリンから鉛を抜かなければならないのじゃないかということでいろいろと検討を始めていたわけでございます。取りとめもないことを申し上げましたけれども、いろいろと通産省といたしまして、そういう試験研究所でプロジェクトとして研究を進めさしている状況を概略御説明申し上げました。
  105. 藤原道子

    ○藤原道子君 いずれにしても、スモッグであるとか鉛の害であるとか、これはたいへんなことなんです。私たちが地方へ参りますと、空気のおいしさがしみじみわかるのですよ。これをこのまま放置すると、柳町のように子供を疎開させなければならないとか、いろいろな病人が出るとか、ここまで来てからの対策じゃ、私、何しているのだと言いたくなるのですよ。だからもっと真剣に前向きにひとつやっていただかなければ困るということを強く申し上げておきたいと思います。きのう自動車工業会というのですか、これがよこした資料の中にもいろいろ出ておりますけれども、これをよき方向で早くできるように、研究、研究といっているうちに国民が病気になっちゃったら何にもなりませんので、至急に考えてほしい、こう思います。  それからもう一つ、無鉛化ガソリン対策も伺いましたが、とにかくコストアップなんかはほんとうにわずかなことだというふうにも聞いておりますので、これは一体どうなんですか。とにかくハイオクタンガソリンの対策、スモッグの対策、メーカーがモデルチェンジに使う費用を無鉛化ガソリンあるいはエンジン開発に回すべきではないかと私たちは思うのです。こういう点も十分に御指導願いたいと考えますが、いかがでございましょうか。
  106. 斎藤顕

    説明員(斎藤顕君) 先生御指摘のように、燃料の面はここできるだけ早く、われわれ委員会で集まっております自動車工業会の技師その他の御意見では、一応五年ぐらいかかるのではあるまいかというのが一つのめどでございます。しかしながら、これは早いにこしたことはございませんので、私どもはもっと早くできないかということを審議会のほうにお願いしております。近くそういうエキスパートをお集めになりまして、現時点における技術の開発の可能性という結論を出していただくことになっておりますので、その時点で相当はっきりするであろうと思っております。
  107. 藤原道子

    ○藤原道子君 とにかく技術的にも経済的にも無鉛化ガソリンですか、これをオクタン価を低くすることは二年ぐらいでできるようなことも聞くわけですよね。ところがあなた方は五年以内とおっしゃる。これはアメリカの計画に合わしているのですか、いいことはアメリカより早くやったっていいんですよ。これをやってほしい。  それからもう一つは、ハイオクタンの宣伝ですね。これは車のメーカーの競争に便乗した石油メーカーの売らんかなの方式に起因しているのじゃないかと、こういうふうに考えます。いまでもまだ宣伝していますよね。こういうことに対しては何とか方法はないんですか。それから販売規制、製造禁止、あるいは課税の方法なども検討、実施すべきではないかと、こう思います。したがって、鉛だけではなくて酸化窒素とか窒素酸化物、3・4ベンツピレンというのですか、ガン発生物質だと聞いておりますが、こういうものに対する対策を早急に進めてほしい、こういうことを強く要望いたします。  それからもう一つ最後にお伺いしたいのは、自動車道路も整備できないで自動車ばかりふえる。それで伺いたいのは、アメリカは日本の二十四倍の領土があるのです。そのアメリカの自動車の台数——何人に一台とかいいますね。日本の台数、これは一体どうなっているかをちょっと伺いたいことと、もう一つは、自動車をこれ以上ふやすということは非常に危険だと思いますが、これに対してのあなた方のお考え、むしろ自動車規制することがこの際必要じゃないかというふうに、私はしろうと考えで考えるのですが、これに対してのお考えをひとつ承りたい。
  108. 斎藤顕

    説明員(斎藤顕君) さきのハイオクタン価に対する先生の御要望でございますが、俗にスーパーガソリンと呼びますのはオクタン価の高いガソリンでございます。これまではスーパーガソリンのほうは鉛分が多く入っておりましたけれども、これからはほとんど同じになるはずでございます。将来はレギュラーもスーパーもゼロになっていくはずでございます。その意味におきましては、スーパーガソリンが非常に悪いということはごぜいません。現に自動車の業界とタイアップして少し宣伝が過ぎるのじゃないかという御指摘がございましたが、私どももそう思います。したがって、今回の柳町のことを契機といたしまして、石油業界に過大な宣伝をするのは慎むようにということを申し入れまして、石油業界も直ちにそれを決議いたしまして過大な宣伝——新聞、ラジオ、テレビその他過大な宣伝はやめるという申し合わせをいたしました。ただ、現在もし残っておるとすれば、テレビ局その他との契約がございまして、しばらくやむを得ずそれを放送するということで、いずれ近々そういうことはなくなるはずでございます。
  109. 藤原道子

    ○藤原道子君 冗談じゃないです。テレビ局と約束あったって、あなた方がそういうことを禁止する方針ならば対策はあるはずじゃありませんか。一面ではやめると言い、一面ではどんどん宣伝して売らんかなの商魂を見のがしているということはないじゃないですか。
  110. 斎藤顕

    説明員(斎藤顕君) いままでに私ども聞いておりますのは、六月一日から後はスーパーガソリンの誇大広告はやめた。ただ、スタンド等におきましてこれは全部はがしていかなくちゃなりません。相当人員を集める都合がございますし、テレビ、新聞等は六月一日以降やめております。ただし、そういう人手の問題があったりいたしまして、ガソリンスタンドではまだまだ少し残っているところがある。これもできるだけ早くやめるということで現に指導しております。
  111. 藤原道子

    ○藤原道子君 いや、だってあなたはいまテレビ会社との約束があって云々と言ったでしょう、だから私はおこったのですよ。そんなばかなことはないですよ。
  112. 斎藤顕

    説明員(斎藤顕君) 私どもの申し入れました時点は、実は五月二十五、六日だったと思います。その時点で、五月一ぱいはテレビの契約がございますので、そちらとの話し合いにゆだねるということを私ども認めたわけです。六月一日以降に誇大宣伝はやっておらないはずでございます。
  113. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 政府委員の都合があるそうでございますので、たまたま鉛の問題が出たついでに関連で私もお尋ねをしておきたいと思います。  昨晩、NHKで、川又会長と石油連盟の宮森副会長でございましたか、対談がございまして、たいへん興味深く伺ったのでありますが、その説明によりますと、現在いわゆる騒がれておりますオクタン価の高いプレミアムガソリン、これが現在年間としては三百三十万キロリットル、それからいわゆるレギュラーのほうは一千五百万程度であるから、量にすればたいしたことはない。したがって、今日まで鉛の公害が起こるということは予測だにしなかった。また、たまたま新宿の柳町においてこうした問題が発生したのでありますけれども、全国的に見てこれというまだ被害状況というものは聞いておりません。もちろん鉛が人体に及ぼす影響というものはもうすでに調査の結果たいへんきびしいものがある。したがって、将来無鉛化にする方向に異存はないという趣旨のものであったように記憶しております。ならば、現在三百三十万キロリットルでございますか、これを全部レギュラーにかえるという可能性もあるのではないか。また一方において、日石の社長は、自動車業界のほうはいわゆる高性能といううたい文句のもとに小型車の性能の効率化をはかるためにやはりどうしてもハイオクタンのガソリンを使う傾向があるということはきわめて残念だという、また一面から見ると自動車業界に対してそういう警告を発しているようなことばも聞いております。この辺のからみ合いが利害関係が対立しているのか、ちょっとわれわれしろうとでは判断できかねる点があるのでありますけれども、いずれにしても鉛の害というものはいまあらためてスポットライトを浴びてきておる時点に立って考えてみると、これはやはりゆゆしき問題である。もうすでに通産省においては、五年をめどとして無鉛化の方向で業界に対して指示を与えたものと伺っておりますけれども、いかがですか。直ちに無鉛化の方向にということもおそらく無理だということをおっしゃるに違いないが、五年以内において、いま当局が考えられているような方針で進んでも、直ちに人体に被害が及ぶというようなことは考えられないのかどうなのか、まずこの点をお尋ねをしておきたい、こう思います。
  114. 斎藤顕

    説明員(斎藤顕君) 先ほど厚生省その他運輸省からも御説明がございましたと思いますが、自動車排気ガスは一酸化炭素、酸化窒素、炭化水素、それから鉛粉じん、鉛酸化物粉じん等を含むいわゆる浮遊粉じん、これらのものを総称しまして自動車排気ガスと呼んでおります。現在さしあたっての対策として、可能な限りの鉛をガソリンから抜くようにということを緊急の対策として通産省としては打ち出しているわけでございます。もちろん長期的に見まして、できるだけ早く鉛を抜くことによって、先ほど運輸省から御説明のありましたいろいろ自動車排気ガスの浄化装置の開発、活性を弱めないで鉛を抜くという対策を今後五年以内にできるだけ早くという形で現在検討しているわけであります。COとか、NO——酸化窒素、窒素酸化物、また炭化水素というようなものも、これらの浄化装置の開発ができませんとなかなかむずかしいわけでございますが、先ほども御説明がございましたように、現在技術的にある程度のめどがついております。  いつそれが完成するということは、なかなか私どももはっきりしたお答えは申し上げられない、それの完成するめどがついているというのがいまの段階でございますというふうに、私も自動車の専門家から聞いております。
  115. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ほとんどの車はレギュラーガソリンを使っても走っているというんですね。別にオクタン価が高いからどうのこうの、ただ、一説によりますと——一説ではない定説かもしれませんけれども、やはりオクタン価の高いガソリンを使うことによって、いわゆるノッキングが起きないほか、あるいはオーバーヒートを起こさないという利点があって、かえって鉛がないために、現在の東京のような混雑した都会においては、むしろ交通事故が起こるのではないかというような危惧も抱かれているやに聞いているわけでありまして、しかし、実際に走っている車を見ますと、レギュラーをほとんど使っているわけです。先ほどの年間の生産のガソリンの実態を考えてみましてもですね。そうなれば、オクタン価の高いガソリンをあえて使わなくても、あるいは直ちにいま現在オクタン価の高いガソリンでなければ走れない車であっても、何か行政指導をなさって、いわゆるレギュラーのガソリンに切りかえることはできないものか、そこまでの規制はこれは不可能なものなのか、どうなのか。この点を、たいへん素朴な質問かもしれませんけれども、わかりやすいようにひとつ御説明をお願いしたい。
  116. 隅田豊

    説明員(隅田豊君) ただいま先生のお話の一応ハイオクタンで走っているいまの車をそのまま、あるいはたいした改造をしないでレギュラーガソリンで走るようにできないものかという御趣旨の御質問だと思います。先ほど申し上げました大体ほとんどの車がレギュラーで走れるといいますのは、大体その程度のものを含めて申し上げた数字でございます。全然いじらないで走れるという意味でございますが、ほんのちょっとした点火時機の手当をやりますと、一応九〇%程度の車両はレギュラーガソリンで走れるわけであります。しかし、やはり残りました車は、ただ性能が落ちるというだけじゃなくて、運転が何と申しましょうか、円滑でなくなって、ちょっとレギュラーでは実情に適さないということが残ることも事実でございまして、これはちょっと指導ではなかなかやりにくいだろうと思います。
  117. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 エンジンの機能を変えるという、これは現在の自動車工業界の技術をもってすればたいしたことはないということが言われているようでありまして、何か五百円程度で直せる。そうすればレギュラーガソリンが使えるのだというようなことも伝えられておりますけれども、これは五百円くらいで直せるのであれば、鉛の公害が少しでも避けられるのであるならば、こうした是正というものはまず当面の解決の課題として考えられていいのではないかと、こうなるわけですが、いかがでしょうか。
  118. 隅田豊

    説明員(隅田豊君) 私のことばが足りなくて申しわけなかったのでありますが、その五百円程度でと申しますのは点火時期をいじるという程度だと思います。それを全部含めまして九〇%くらいまでがレギュラーが使えるということでありまして、それ以外やはりどうしても、たとえばまず基本的に圧縮機を変えてやらなければならないとか、キャブレターそのものを変えなければならないとか、いわゆる設計自身をいじくるようなことをしなければならない車が一割くらいあるということでございます。
  119. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それで、通産省のほうのあれの通達を私もちょうだいしたのでございますが、この通達に基づいて業界としてもたいへん自主的に、また積極的に鉛追放ということに取り組んだようであります。昨晩の説明を伺っていても、そういう趣旨のことがうかがえたわけであります。私の聞き違えかどうかわかりませんけれども、向こう二年以内で全部無鉛化にすることができるのだと、通産省は五年と、何かばかに開きがあるみたいだなと感ずるわけですが、せっかく業界がそうして積極的に取り組み、その程度でも、さまざまな利害関係というものを考えた上でも、まず整理されていくということであれば、これは早いことにこしたことはないわけでございますので、その辺の行政指導と業者が考えておる感覚というものとは何か開きがありはしまいか。むしろ業者が積極的にやっているならば、もう少し短い期限を設定しておやりになったほうがより促進されるのではなかったのか。五年とされたその意味合いはどういうことを背景とされ、いろいろな要素がからみ合っているのだろうと思いますけれども、その理由、これをお聞かせいただきたい。
  120. 斎藤顕

    説明員(斎藤顕君) 私、実はテレビを見落としておりまして、宮森社長がどういうふうな言い方をしたか存じあげないのでございますが、鉛を抜くということは、先ほど申し上げましたように、簡単なことなのであります。ただ、鉛を抜きましてオクタン価を保たせるというところに問題点があるわけでございます。したがいまして、二年で抜けるようになりますとおっしゃるのがどういう意味合いでのおっしゃり方だったのか、私はちょっとわからないのでございますが、実はこのオクタン価というものが自動車のエンジンと非常に関係がある。したがいまして、私ども自動車エンジンの開発、そうしてエンジンがどの程度のオクタン価を要求するか。もちろん自動車業界はおそらく石油業界にオクタン価を要求するでございましょうし、石油業界は無鉛でどこまでオクタン価が可能かということを独自の判断でやはりものを言うと思うのであります。その辺が技術的にどこで落ち合うかということが今後の大きな問題だろうと思います。したがいまして、無鉛ガソリンということでございますが、いま直ちにゼロにいたしますと、ちなみに、実はオクタン価がレギュラーで八四 五になります。——失礼いたしました。八四・五という数字を得るためにも相当の設備投資をしていかなくては八四・五にならないという計算が一つございます。したがって、これをあるいは八八であるとか九〇であるとかというふうな要求のしかたがもし自動車エンジンの性能のほうから出てまいりますと、それ相当の設備投資が必要である。投資は、もちろんお金の問題は、これは公害問題でございますから、政府の補助その他でいろいろな手段がございます。物理的な時間も必要でございます。したがって、その二年というものは、私どももどういう意味合いかわかりかねるのでございますが、それからエンジン開発と、そちらから出てくるオクタン価の要求ということがもちろん三年以内ということでうまくかみ合えばここで三年という数字が生まれてくると思います。ただ、その際鉛を抜くということは、繰り返し申し上げておりますけれども、COとか酸化窒素とか、そういうものを抜く、そういうものを別の無害のものにしていくのが目的でございます。鉛それ自身のことは加鉛がなくなれば自動的になくなってくるということでございます。説明が不十分だったかもしれませんが、エンジンその他の問題については運輸省のほうからお願いいたします。
  121. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ただね、川又氏も同調されているんですよ。非常に自信を持ったようなおっしゃり方でした。言い違い、聞き違いということもありますので、NHKにその記録をとらなければということまで発展しかねないと思いますけれども、私は少なくともそう聞いた。これはたいへんけっこうなことだというふうに感じたものですからあえてその点の当局の決意というものをあらかじめ伺っておきたいと、もちろん鉛を除くことによって、今度一酸化炭素がどうにも処理が困るというようなことならこれはまた非常に困ることでありまして、おそらくそういうことを踏まえた上で業界の専門家も——専門家の中でも代表者的な方の発言でございますから当然そういう御発言になったのではないかと、こういうふうに判断いたしましていまお伺いをしたわけであります。
  122. 隅田豊

    説明員(隅田豊君) 通産省のほうのお答えで大体尽きていると思うのですが、自動車のほうの性能から申しますと、鉛のあるないではございませんで、オクタン価が幾らであるかということできまるわけでございます。ですから、私たちのほうからも通産省のほうに要望として申し上げておりますけれども、オクタン価を下げないで鉛を抜いてくれというような行政的なお願いはしておるわけでございまして、その点のいろいろの折り合いではきっといろいろな問題があるのじゃないかと思います。
  123. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 せっかく警察庁の方がお見えになっておりますのでお伺いしたいわけでありますけれども、最近交通整理に当たられる警官の方、パトカーあるいは白バイ等を運転されておられる方々、まあ立場上そういう実態というものはなかなか表面化しないのが通例になっているようでございますけれども、やはりいろいろ調査して見ますと、非常に軽微な嘔吐をもよおすとかあるいは頭痛、あるいは目まい等の現象を起こしているというふうに聞いておりまして、その数は決して少なしとしない。全国的に見れば相当数にのぼるだろうと思いますけれども、この実態についてはどうなっておりましょうか。
  124. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) 重点は排気ガスの中の一酸化炭素に着目をいたしまして、警察庁のほうから名古屋市立大学に委託調査をやっておったようであります。そこで一昨年及び昨年までの調査の結果ではさほどのことはございませんでしたけれども、本年、ごく最近調査結果が出た、その三度目の出たものによりますると、相当悪い状況のようになっております。これによりますると、これは名古屋市内の八つの交差点について交通係の警察官であるとか外勤の警察官、あるいはパトカーの警察官、そういったもの約八十名ばかりについて調べてみたわけでございますけれども、ごく最近の例によりますると、交差点の場所によりましてCoの濃度が六PPmから十八PPmまでの間、それから空気中の鉛が一時間当たり平均で五マイクログラムから十一マイクログラムといったような状況、これはCoの方向で見ますると、御承知のように、閣議で定めた環境基準が十あるいは二十といったようなPPmでありますので、それに近い。したがって環境としては悪い。ただし許容限度は五十PPmでありますから、その程度までは当然至っておらない。それから鉛のほうは、これは尿中鉛で平均値をとってみますと四十八マイクログラムとなっております。これも許容限度からいいますと百五十マイクログラムでありますが、しかし、この限度は大体二十から以上は正常でないという状況でありまするから、鉛の被害はCoに比べては相当に高いということで、いろいろの自覚症状もまた出ております。たとえば頭痛、肩こり、倦怠感、目の刺激などを訴える者が出ております。  そこで、こういった結果を、最近出ましたこれは名古屋の例でありますけれども、柳町の例と関連をいたしまして、全国的に主要な場所についての再調査をする。それによっての対策をとってみたい。ただ、現在もこの程度のことで対策を立てる必要がありますので、現在専門家と打ち合わせ中でございます。
  125. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ついででございますけれども、実際に実務に当たられた警察官の状態でございますね、これを簡単でけっこうでございますからお聞かせいただきたいと思います。
  126. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) 私が直接担当しているわけではございませんけれども、一般にやはり先ほど申し上げた頭痛でありますとか、それからものうい感情になるといったような状況を訴える者が相当数あるということで、ただ、若い人が多い関係上、たとえば酸素吸入器を置いておいてもなかなかめんどうがって使わないといった状況もあるわけでありますが、これはただ現在では勤務条件、たとえば時間制の交代あるいは配置がえ等を逐次行ないつつありますので、それほど大きな影響はないとは思いますけれども、しかし、名古屋での例でありますので全般的に、たとえば柳町などのように交通量が必ずしも多くないところにもかかわらずということで、調べてみないとわからないのではなかろうかというふうに思っております。
  127. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ただいまの御説明は、やはり相当権威づけられたお話ではないかと思うのですね。そうなりますと、やはり新宿の柳町にかかわらず、特に交通量の激しい、あるいは信号機のついている特にそういう場所においては、警察官は時間によって交代する、それでもなおかついまのような被害状況があらわれております。そうなりますと、その近辺に長時間にわたって住んでいる——多少の出入りはありましょうけれども、むしろ警察官より長時間その場所にいて仕事もしなければならない等々考えますと、やはりこれはほうっておくわけにはいかない。そういう観点に立って、通産省もおそらく捨てておけない問題ということでこれは前向きに取り組まれておるだろうと私思いますが、きょうは大臣の出席がございませんので、政治的な配慮というものを伺いかねたのでございますけれども、政府委員を通じまして、やはり積極的に鉛害はもとより、Coの問題にいたしましても、当然これは未解決になっておるわけでありますから、事が起こってから処理するということではなくて、事前にやはり想定される問題というものは、産業開発と同時にあり得るわけでございますので、この点を十二分に含んで今後の石油行政というものに特に通産省においては取り組んでいただきたい。このことを強く要望しておきまして、時間がおありのようでございますから、衆議院のほうへ行ってください。けっこうでございます。  それから、警察庁のほうに重ねてお尋ねをするわけでございますけれども、いまいろいろ御説明伺っておりますと、名古屋の例を引き合いに出されました。私も名古屋の状況よく知っております、住んでおりますから。しかも、申すまでもなく、あそこは区画整理においては日本一で模範的な道路網が敷かれております。東京のように密集した地域と違いまして、相当交通量がふえているわりに車の流れがよろしいというような、そういう利点もあるわけでございます。けれども、それにもかかわらず、いまお話にございましたように、いろいろな被害が警察官を中心としてあると、こうなった場合、警察当局として今後やはり事故を未然に防がなければならない、あるいは将来起こり得るであろう無鉛化あるいはその過程において鉛を抜いたためにノッキングを起こして、むしろ交通事故が多くなったといういろいろなからみ合いが予測されるわけでございますけれども、警察当局としてはなかなか将来に対する青写真というものも、ますます密集してくる状態を考えると、こうだという断定的な即断を下すわけにはいかないにいたしましても、こうありたいというやはり独自の立場に立っての方針と申しますか、考え方というものをお持ちでございましたらひとつお聞かせいただきたいと思います。
  128. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) 警察が担当いたしておりますのは道路交通法でありますが、道路交通法の目的は、御承知のように、交通の安全と円滑であります。したがいまして、従来は、公害という問題が道交法のほうでは登場いたしておらないわけでございますけれども、しかし、モータリゼーションの進展の結果、社会的な生活にいろいろな面での侵害が出ているということで、次の国会にはそういった道交法の性格そのものを変えなければならないだろうと思っております。  そこで、先ほどガソリンの問題が出ましたけれども、事故を起こすかもしれないような形で自動車ができるあるいはガソリンができるということは、絶対に困ります。したがって、欠陥車両でない形でそれぞれの開発を進めていくというのが第一点。これが前提であります。それから公害を防止するという場合に、一台一台の車からの公害については運輸省のほうで所管をいたしておりますけれども、交通の流れその他からくるところの公害ということについては警察が間接的に担当することになりましょうから、この場合に考えられますることは、一つは一方交通を強行してまいる、これは車の流れがたいへん円滑になります。大体、数字的にもあるいは経験値的にも二割から三割くらいの円滑さがそこで求められる。つまり車が停止をしたり発進をしたりする回数が少なければ少ないほど排気ガスが減少するわけでありますから、そういった意味で車の円滑化をはかる。それから信号機を交通の安全上たくさんつけてまいりたいわけでありますけれども、信号機をたくさんつけると車がとまる可能性もまたふえてまいる。そこで、信号機の系統化と申しまして、柳町でもやろうとしているわけでありますが、一つの信号機と他の信号機と連結さして、全部青なら青になって進んでいく。つまりとまる機会を少なくさせるということであります。これも相当強硬に進めてまいりたい。しかし、いまの系統化というのは一つの路線であります。ところが大都市でありますると、そういった路線が無数にあるわけでありますから、系統化だけではだめであります。そこで、これを電子計算機に連結をさせまして、交通容量に応じて信号機のサイクルをコントロールする。そうしますると、その地域における交通流入に最も応じた交通の規制ができる。つまりわれわれはこれを交通管制組織と言っておりますけれども、こういうものを大々的に設置してまいりたい。これをこの前の国会からもずいぶん申しておりますけれども、来年度からの五カ年間にわたって相当巨額の金を要求をしてまいるつもりでありますが、現在その内容を詰めているところであります。
  129. 藤原道子

    ○藤原道子君 警察庁にお伺いすることは、いま渋谷さんからお聞きになりましたので、とにかく、いまおっしゃったような権威ある方法で何とか対策を警察庁としてもやってほしいし、それからまた交通整理その他によって警官が身体に故障が起きる、こういった場合には、ぜひこれらは十分な対策で療養させるように配慮していただきたい。そのことを要望いたしておきます。  そこで、厚生省にお伺いいたしますが、公害で、ことに柳町あたりがああいうひどい状態になってなっておった。厚生省としては、住民の健康管理、こういう問題はきょうまで何もやっていらっしゃらなかったのですか。
  130. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) いまございました藤原先生の御質問と、先ほど渋谷先生の御質問の中で、私どもがお答えしていないことが関係ございますので、両方あわせてお答え申し上げたいと思います。  初めに鉛の影響でございますが、私どもは中毒がないから対策をやらなくてもいいとは毛頭思っておりません。鉛なんかは悪いものでございますから、これはなくしていくということが基本でございますので、先ほど一番最初に藤原先生にお答えいたしましたように、あの排気ガスで病気が出ているかと、こう言われると、病気という形ではこれはむずかしいということを申し上げたのでございまして、いまの汚染は私どもは絶対カットしていくべきだという立場をもともと持っておるわけでございます。この点につきましては、まず最初に、一体五年でだいじょうぶかという御質問先ほどあったわけであります。先ほど運輸省と通産省の方がいろいろおっしゃいましたが、前回四省の課長会議でもお互いに確認して、どうして五年というのが出てきたのかということの論議がございました。その中で先ほど御説明になったことのほかに、もう一つは、先ほど来の一酸化炭素と炭化水素と窒素酸化物、鉛、これだけがみんな非常によくないわけでございます。しかも拮抗するものがあるわけでございます。そういうことで全く公害を発しない自動車をつくってもらうということが厚生省としては最大の念願でございます。現実の面からいえば、私どもは窒素酸化物を一番きらっております。これは非常にいやなものだと思っておりますので、一酸化炭素よりもはるかに困ります。一酸化炭素は一時的であります。片一方の鉛のほうは、これはいやなものでございますけれども、これはあとで申し上げます現在の汚染の程度をどう見ておるかということのほうの判断から出ておるわけです。この五年かかりますといいますのは、無公害車の開発ということの中で、鉛が騒がれたら鉛だけに飛びつく、一酸化炭素が騒がれたら一酸化炭素だけに飛びつくというようなことだけをしておりますと、全体として見ると非常におかしなことになってくるのではないか。そこで、やはりこの五年で絶対に問題の起こらない自動車をつくってもらうということが基本だということで、私ども実は要望しております。この点で柳町の事態が、いま藤原先生から御指摘がありましたが、私どもとしましては、柳町のデータは世界的に全く異常なデータである、こういうぐあいに思っております。世界的にあのような、一般の大気汚染によって鉛の百ミリリットル当たり六十マイクログラム、血中鉛のデータというのは全然ございません。そういうことで、各省の話の中では鉛害があるという前提でお話しになったようでございますが、私どもは鉛害という報道があって非常にそれにショックを受けた。これは世で初めてのデータだということで実はこの問題に取り組んでおるわけです。そういうことで、この事実の確認いかんを問わず、いまやられることは最善のことをやっておる、これは事実確認と並行してやっておるということでございまして、五年というお話がございましたが、五年以内のなるべく早い時期ということが通産省のおっしゃったことでございます。もし柳町の事態の血中鉛の濃度が、あの濃度がほんとうに正しいということが確認されましたら五年はとうてい待てないと思っております。これはもっともっと非常に速い速度で無理をしてでもやらなければならないというように思っておるということをひとつ申し上げたいと思います。  それからもう一つは、影響の問題のときに警察官の方あるいは自動車のドライバー、この方は業務上非常に濃厚に自動車排気ガスの暴露を受けるという方々でございまして、一種の半ば職業的な問題が中にあるわけでございます。先ほどお話のございました警察官の方の鉛の問題では、代謝にし少普通と違うところが出てきているのではないかということでございまして、あれをもって鉛の中毒が出てきているという話ではございません。これは、私どもはそれでいいと言っているわけではございません。ただ、すでに鉛の中毒は発生しているのだという観点ではございませんが、新陳代謝で非常に異常な蓄積が起こるかどうか、起こらないかということが厚生省のほうでは一番大事なことであろうということで、厚生省が申しておりますこの環境のどういう条件をねらうかということにつきましては、厚生省としましては、この中毒が起こるか起こらないかというような悪い条件をねらっているのではなしに、普通とは少し問題のあるような、違いがあるような代謝、からだの中の蓄積が起こるようなことは絶対防がなければいけないという覚悟で対処しておるわけでございます。  それから、いま藤原先生の御質問のございました環境対策ということでございますが、そこの柳町の住民がやはり一番困っておりますのは運輸交通公害全体でお困りなわけです。私もあそこにかなり立っていろいろあの回りも見てみましたが、一つは騒音があり振動があり、それから排気ガスとしましても、非常に地形が悪くて、これは一酸化炭素もほかのガスも非常にたくさんございます。きのうの東京都の発表ですが、あそこの鉛の濃度が二十四時間平均で五マイクロ前後だったということでございます。私どもは、鉛の問題が起こるということを昭和四十年度からそういうものを頭に置きまして全国を調べておるわけであります。それによりますと、全国の国設大気汚染測定網、これはアメリカと完全に比べられる形で調べておりますが、その限りでは大体アメリカの二分の一でございます。それからもう一つ工業地帯というところでも徹底的な調べをいたしておりますが、それは国設測定網より倍くらい高いのでございます。国設のほうが全体としてこの一年間で大体一立方メートル当たり〇・五マイクログラムという平均がございます。工業地帯の私どもの調べでは、一立方メートル当たり一マイクロぐらいあります。この数字といいますのは、アメリカに比べまして、一九六五年当時のアメリカの中等度汚染地帯並みでございます。それから交差点というところ、これも調べたデータがかなりございまして、交差点が大体一立方メートル当たり五マイクロ前後でございます。これは非常に高いときで十マイクロ、二十マイクロぱっと出ることがございます。そういうことで、日本の鉛の汚染の現状といいますのは、交差点の汚染はぎりぎりで、これは押えなければいけないという判断を私どもは持っております。これ以上ふえるということは全く好ましいことではない。しかし、五マイクロ前後では鉛の中毒が起こるということではないということでございます。ただ、どういうことが起こるかということにつきましては、アメリカの三大都市の徹底的な調査がございます。これは日本よりもはるかに高いのでございます。私ども調査から見てみますと、やはり全くきれいなところにいる人と町の中にいる人とで差ができることは事実でございます。ただ、中毒であるのか正常であるのかということは発見されておりませんので、鉛の問題と取り組みますとき、よごすことは絶対いけませんから、中毒が起こっているあるいは起こるというようなことだけでこれに取り組むということでなく、科学的にやはり正しく受けとめて対応すべきではないかということが厚生省としての申し上げることでございます。  保健衛生対策といたしましてどうするかということでございますが、これは東京都のほうへ私どものほうから、また東京都からも私どものほうに、両方で連絡をいたしておりますが、一つはやはり大都市の健康管理問題というものが一番だろうかと思われます。現在のところ、やはりこの健康調査ということを徹底的にして、私どもの最大のまず重点は、血中鉛の言われている濃度が正しいかどうか、これは世界的に大問題になりますので、これはぜひとも確認してくれということで、それを現在私どもがいろいろ注意もいたしましてやってもらっております。東京都としましては、検診をして異常を発見されれば無料で都立病院で治療をするということを都知事もこの間の連絡会議で申しておられます。そういう形でございまして、検診をしたあとの今度はフォローアップが大事でございまして、検診をしただけで何も説明をしないということは非常にまずいのじゃないかということで、極力検診した結果を保健所を通じまして、あなたはどのくらいであったということをはっきり指導をするということを先日の東京都の連絡会議で双方は打ち合わせをしております。これはあくまでも健康管理としては、どういいますか、あまり積極的な策ではございませんが、やはり基本的には各省のお話しになりましたような交通の規制とか、あるいは自動車排気ガスというほうでやるのが一番基本でございますが、保健衛生対策としましては、やはり保健指導という面で、もし万一異常があれば都立病院で無料で治療するという面でやっております。そういうことで、私どもは五年間たってだいじょうぶかということにつきましては、五年いまのままで経緯しておりまして鉛中毒が起こるとは思っておりません。いまの濃度自身では起こるとは思っておりませんが、決してこれ以上上げることは絶対よくないということでございますので、五年内には絶対これはもう直してくれ、少なくとも三年くらいにしてくれということを通産省の審議会の中では私どもも申しております。もし万一ほんとうに悪いということが発見されるならば、五年なんというのはとうてい許せない、そのような角度で臨んでおるということを御説明申し上げたいと思います。
  131. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、アメリカで鉛はどうであろうと、そんなことは問題じゃない。現実に起こっている日本の現状を言っているわけです。それで厚生省が保健衛生を中心にやるとおっしゃるならば、これだけ騒ぐ前にもっと厚生省で、学童が疎開しなければならぬ、そこには住めない、肺ガンになった人もおる、いろいろな呼吸器をおかされた人もある、こういう問題がわかったならば——わかってなければならないはずですよ、保健所というものもあるし。そうしたときには、通産省やあるいは運輸省等へあなたのほうから積極的に働きかけて、この公害排除に努力すべきじゃないか。それをきょうまでやられたかどうか、こういうことを申し上げておる。ことにいまアメリカよりも少ないなんといったって、現実に東京の柳町だけじゃないんですよ。この間の新聞には、御殿場のひどさが発表されている、あるいは大森地区のひどさが発表されている。おそらくこれは日本全国の交通が混雑するところではほとんど起こっているのじゃないかと私たちは思う。これに対して厚生省がきょうまでどのような指導と対策をとってこられたかということを私は伺っている。
  132. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) いま私申し上げましたのは、医学的にいろいろの問題を考えます場合には、このまわりの汚染と影響ということを学問的に見るという立場のことだけを申し上げたわけでございまして、アメリカがこうであるから日本がそのままでよいということを申し上げたわけではございません。まわりの環境にどれくらい鉛があったら、人間どのくらいの鉛で害が起こるかということは、これは純粋に科学の問題でございますから、それはそれとして判断するということを申し上げたわけでございます。そういうことで、私どもはアメリカより少ないからいいとか、そういうような気持ちで申し上げておるのではないということだけは御理解をお願いいたしたいと思います。  その次には、どういうぐあいに各省に言っておるか。これは、四十年度のときに私ども自動車排気ガスの環境汚染の影響調査をいたしまして、一般に公表いたしました。それから総理府の協議会におきましても、これにつきまして非常に私どもは強調いたしました。排気ガス対策で昭和四十一年に運輸省がこの全国規制を始めた。これは日本が世界で最初の国でございます。それは厚生省が運輸省に非常に強く申し入れをしてこの規制が始まったということは事実でございます。  それからもう一つは、排出基準を強めるということにつきましては、大気汚染防止法で運輸大臣が厚生大臣の意見を聞くという点、私どもは非常にこの点はきびしく要求をいたしておるわけでございます。私どもは現在の規制に満足しておるわけではございません。端的に申しましたら、いまのままの自動車でこの環境基準に一酸化炭素を全部合わすということになりますと、いまの排出を半分に下げてもらわなければ、どこの場所に行っても絶対環境基準を侵さないということにはなりません。そういうことはどんどん強化してくれということを言っております。それから、炭化水素の点につきましても、絶対押さえてくれということも言っております。それに対応いたしまして運輸省がこの秋から炭化水素の規制に入るということを申しておるわけでございます。  そういう形でございますので、昭和四十年度から影響調査と環境汚染調査をいたしまして、厚生省はヒステリーかと言われるくらいに運輸省や各省に強く申し入れをしております。今度の東京都の場合におきましても、各省とも連絡をとり、東京都ともやり、また先ほど申し上げましたように、直ちに、事実確認をする前にとにかくできることはやってもらうということを強調し、もし万一データが出て、これがほんとうであればもっと猛烈なことになるというような言い方をして対応しておるということを御理解をお願いいたしたいと思います。
  133. 藤原道子

    ○藤原道子君 何といっても、厚生省は国民の健康を管理する省なんですわね。だから、産業優先のいまのあり方を厚生省がしっかりしてもらわなければ、国民の健康は守れない。厚生省はしっかりやってもらいたい。四十年度からやったのがきょうまで放置されたとすれば通産省や運輸省の責任だ。今後は十分に国民の健康ということをまず考えてこの問題は推進していただきたいということを強く要望いたしておきます。  それから、この鉛の問題についてもう一つ、これは通産省でしょうか、お伺いしたいのですが、ゆうべの夕刊に、朝日新聞のこれは夕刊でございますけれども、「内装用塗料に鉛の危険」ということでこれは発表になっていますね。ごらんになったでしょうか。アメリカでも特に貧民街といいましょうか、そういうところを主体に被害が起こっておる。結局、鉛の塗料がこれが健康を著しく侵しておる。それで、シュワイカー議員によれば、米国では鉛入りの塗料による鉛中毒患者が少なくなく、特に一歳から六歳まで、壁ですか、室内に塗ってある、それにさわった手をしゃぶる赤ちゃん、一歳から六歳まで、あるいは割れて落ちたものをお菓子と間違えて食べちゃった。こういうことから結局六九年だけでニューヨークで七百二十七件、シカゴで四百六十七件というようなこと、首都ワシントンでは六十件を記録しておると、こういうことが出ておる。それでこの鉛の規制を上院に提案をしたということが出ておりますが、つまり鉛の顔料及び添加物を含んでいる塗料を住宅の内装に使用するのを禁止する。住宅の所有者または家主に対し法律施行後一年以内に鉛入りの塗装を取り除くことを義務づける。違反者は一件につき最高千ドルの罰金を科するというような内容だそうでございます。この鉛の被害はアメリカだけに起こるわけではないと思う。ところが日本で——これは建設省がきょう来ていないわけですけれども、建設省の建築研究所の話によりますと、鉄に塗料を塗る場合、さび止めとして鉛入りの顔料などを使ったり、乾燥を早めるとか耐久性を持たせるために使っているが、鉛の量は微量で、毎日のようになめるということでもなければ人体には影響はないのではないかというふうな意見が出ておるのですがね。ところがこの鉛害というものがアメリカではこういうように規制されておる。日本では害はない、こういうことで今後放置されるんでしょうか、一体どうなんでしょうか。これはわかりますか。
  134. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) いま先生のおっしゃいました点は非常に有名ないろいろ事例がございまして、これは日本の住居とアメリカの住居と、日本の家とアメリカの家とでかなり相違がある。アメリカのはよく毎年ペンキを塗り直したり、家の中にいろいろ塗ったり、日本家屋はそういうものがあまりございませんが、アメリカでそういうような小さい子供がそのペンキをなめる、それで起こるということを私ども教科書で習いました。またそういうことが日本で起こるかどうかということを言われたことも私ども存じております。そういう子供がなめるような場所の塗料の中にそういうものが入っているというのは、私ども全く悪いことだというように思っておりますが、日本の住居とアメリカの住居とは違うということもこれまた事実でございます。  私どもとしましては、食品衛生のほうでは食器とかあるいはおもちゃというようなものに鉛が入る、これは厳重に押えられる形になっておりますが、それらの塗料の中のものにつきましては、私ども、よいかと言われるとこれはよくないものだという考えを持っております。
  135. 藤原道子

    ○藤原道子君 ところが、さらに鉛が検出されたということが出ておりますね。これは規制しているんですか、どうなんですか。
  136. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 食品あるいは子供がおしゃぶりにするような玩具、食器物、おさらでございますが、そういったものは食品衛生法によりまして鉛が検出されてはならないというふうに禁じられておりまして、それについては、私どもとしては厳重に監視をしておる状態でございます。
  137. 藤原道子

    ○藤原道子君 これ六月二日の朝日ですけれども、これによりますと、やはり静岡県の富士宮市の主婦が買ったおさらから鉛が出た、こういうことがずっとこう出ているんですけれどね。こういう禁止されているものを使ったということならば、これに対してはどういう措置をしておいでになるのですか。
  138. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) それが純然たる事実だとすれば純然たる食品衛生法の違反でございますので、法に従って処置するということになると思います。
  139. 藤原道子

    ○藤原道子君 これは静岡県だけじゃなくて各地で出ておりますね。多治見でも出ている。それから石川県かどこかでも出ている。これを取り締まっている、取り締まるというけれども、実際にはこういうことが起こっている。これに対して今後どのような指導と、もっと厳重な処罰等はどういうふうになるのですか。
  140. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) ただいま藤原先生御指摘の点は、食品衛生法に基づく食品あるいは食器その他の取り締まり監視がどのような体制になっておるかということの御質問かと思います。確かに、御指摘のとおり、近来のいろいろの食品の複雑化、多様化、それから取り扱われる量の多量化といったようなこともございまして、これらを食品衛生法で定める。実はこれを年に何回監視しろという回数がきめられておるわけでございますけれども、その基準に従って監視するということが一〇〇%行なわれておるかと申しますと、残念ながら一〇〇%は実施されていない状況でございます。しかしながら、私どもといたしましては、いまの食品衛生監視員の体制の実情を考えまして、一方ではさらにその人員の増加をはかる、あるいは技術レベルの向上をはかるといったようなことに努力しながら、さらに現陣容でもって最も効率的に監視が行なわれるといったようなことで、たとえばパトロール車を持つとか、あるいは食品のうちでも特に問題の多いものについて重点的にやっていくとかいったようなことで、内部的にはいろいろと苦心いたしまして、できるだけ実効があがるようにやってまいりたいということでやっておるわけでございます。またこのようなことで、たとえばこの前、輪島塗りのはしから有毒色素が発見されたといったようなことにつきましても、食品衛生監視パトロールによりまして、こちら側でもって事前に発見したといったようなこともやっておるわけでございます。しかしながら、総体的な回数というものはまだまだ不十分でございますので、御指摘のような事例も多々起こるわけでございますけれども、私どもは、そういった際にはまたこれをさらにその時点でもって押えるように、機動的に県あるいは保健所のほうが動いてくれるようにということを指示いたしておるところでございます。
  141. 藤原道子

    ○藤原道子君 あなたはそうおっしゃいますけれども、多治見の陶磁器卸し業協同組合の専務の話では、さらなんかに絵を書く場合にはほとんど鉛が入っておる。検査員が各業者をおとずれて検査指導をしてやっているけれども、全製品を検査することは不可能なのが実情である。無鉛絵の具を使うようにならない限り今後もこうしたさらが出てくるおそれがある、こういうことを卸し業組合の専務が言っておる。そうすると、私たちはここにもまた公害の危険を感じるじゃありませんか。禁止しているものをやった場合には、もっときびしい罰則かなんかで禁止することはできないですか。
  142. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 御指摘の点は、それではたとえば漆器あるいは陶磁器など、器具の原材料あるいは下塗りの色素、あるいはまたハンダ、そういったようなものの中にまで鉛が禁止されているかどうかということでございますが、御承知のように、鉛というものが人体に影響を与える、あるいは健康に障害を起こすというためには、これが溶けまして、ことに食器の場合は溶けまして、たとえば口の粘膜を通じて、そして体中に吸収されまして初めて健康の障害等を起こすわけでございます。したがいまして器具あるいは容器、包装、それらの原材料につきまして、実際には、かりにたとえばハンダの場合にはどうしても鉛を使わなくてはならない構造上の問題がございますが、そういったようなときには、その原材料の規格を、たとえばハンダの場合におきましては鉛を二〇%以上含有してはならないといったようにきめますと同時に、今度は実際に用いた場合に、それが溶け出して、そして人体に吸収されることがないように、たとえば磁器の場合には上薬を十分にする、あるいはほうろうの場合にはほうろう引きを十分にして実際に溶け出さないといったようにきめておるわけでございます。
  143. 藤原道子

    ○藤原道子君 溶けなければ害がないくらいのことは知っていますよ。ところが、いま私が申し上げるのは、買ってきたおさらに酢のものを入れたところがさらに塗ってある塗料が溶けて出てくる。それでこれを消費者センターに届けたので、そこで検出したところが鉛が検出された、こういうことなんです。こういう溶けた場合には害があるでしょう。  それから、委員長にお願いします。きょうは時間がおそくなりましていらいらしているのですから答弁をもっと簡潔にわかりやすくするようにおっしゃってください。
  144. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 注意してください。
  145. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) そういったことに関しましては、ちゃんと試験法を定めておりまして、それで溶け出さないということを確認して製品が売り出されるということになっておるわけでございます。したがいまして、その製品につきましては、それらの試験法によってやったところが鉛が出たということだと思いますので、これは明らかに規格違反でございます。私どもとしてはもちろん厳重にそういったことのないように処置いたしてまいりたいと思っております。
  146. 藤原道子

    ○藤原道子君 とにかく厳重にもう少しやってほしいですよ、企業擁護でなしに。  時間がございませんが、もう少しやりますよ。  今度は、農林省来ていますか——来てなければしかたがないけれども、この際、厚生省にまいりましょうか。通産省にも関係がある問題です。  このごろ農薬で汚染された食品ですか、これが非常に多くって、私たち安心して物も食べられない。ことに牛乳の問題あるいはお米であるとか、ノリであるとか、最近はお茶にまで農薬の被害が出ているわけなんです。これに対していろいろ問題になっているけれども、農林省ではいま全面的に禁止すると、いま持っている二千七百トンとかのDDTが困る、だからこれを使い切ってから新しい農薬を使うよう指導するというようなことが新聞発表にあるのです。ところが、それは業者はそれでいいかわからない。農薬の入った米やあるいは牛乳、ノリ、お茶、すべてのものを食べさせられておる国民の立場はどうなるのか。厚生省はこの農薬汚染に対してどういうふうな態度をとっておいでになるか。一度牛乳に対して騒ぎが起きたときにだいぶきびしいような発表をされたけれども、いつのまにやらぐずぐずとしちゃったのですね。だから、世間では厚生省のことをこれは通産省の厚生局だなどと悪口を言う。農林省にも頭が上がらない。これでは国民の健康の保持は一体どうなるのか。もっと厚生省に強くなってほしいと思いますが、この農薬に対してのあなた方の考え方をこの際伺いたい。
  147. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 国民の健康を保っていく、あるいはできれば増進していくという立場から、私どもはこの牛乳等、食べものの農薬による汚染問題が健康にどのような影響を与えていくか、まず事実関係につきまして、昨年の夏でございましたか、牛乳の中のBHCの濃度が異常に高いという事実が高知県のほうから発表がありまして、それは容易ならぬことだということで、まず直ちに全国数カ所の衛生試験所におきましてその実態の把握につとめていくとともに、食品衛生調査会というのがございますが、食品衛生調査会に報告いたしまして、そのデータに基づいての人体に対する直接の影響でございますね、直接の影響いかんということでお尋ねをいたしましたところ、直ちに現在のレベルでは人の健康に危害を及ぼす程度ではないかもしれないけれども、早急にやはり現在でのレベルに達しないようにその減少をはかっていくべきであるという見解も示されたところでございます。それで、厚生省といたしましては、この見解に従いまして、さっそく農林省のほうに対しその減少対策の実施の徹底方を申し入れたのでございます。それから、やはりそれを監視していくためには、その後牛乳中のBHCの濃度がどういうふうになっていくかということをチェックしなくてはなりませんので、その調査分析を各府県において引き続き行なうように指令をいたしてございます。それからやはりその周辺の問題について、ことに赤ちゃんの場合を考えますと非常に問題が深刻でございますので、調整粉乳などにつきましても国立衛生試験所において分析を行なっております。結果を申し上げますと、ちょっとこまかくなりますが、結論から申しますと、牛乳に比較いたしましてまた幸いながらその残留量は比較的少のうございました。なお少なかったと申しましても、全般につきましては、やはりないのにこしたことはございませんので、少なくとも現段階では現状以上にレベルが上がらないようにするということで引き続き検討中でございます。それから乳製品につきましても、私どもといたしましては、BHCの濃度をチェックいたしておりますが、それらもいまのところは問題になる程度ではないようでございます。それから農作物全般につきましての農薬の使用の規制をどうやっておるかということ。これは直接的には農林省のほうからのお答えをいただくべきであると思いますけれども、関連いたしますので。現在、日本で使用しております農薬約五百種類ございまして、その中で非常にしばしば使われるのは五十種類ほどございます。すでに現在では、農林省では、これらのものにつきましては一々その製造につきましては許可を与えているわけでございますが、その際に許容量というものを設定してございます。ところで、このような問題が起こりますと、はたしてそれでいいかという問題も起こってまいりますので、今後厚生省といたしましても、主要な四十八の食品につきまして、また取り上げる農薬は四十七種類でございますけれども、これらについて今後五年以内に一応許容量を設定したいと考えておるわけであります。五年というと非常に長いというふうにおとりになるかもしれませんけれども、人体に与えますこれらの影響を考えますと、急性のものというのは目に見えて防ぎようがまだございます。しかし、おそるべきは微量が長年にわたってしかも知らない間にいろいろと人体に影響を与える。場合によっては蓄積して慢性の中毒を起こすといったようなことも可能性としては考えられますので、やはり動物実験にはある程度時間をかしていただかなくちゃならないといったようなこともございまして、大体五年以内にこれらのものについてははっきりした基準をきめていきたい。それから過去のものにつきましてももう一度洗い直してみたい。なお新規の薬品を許可するにあたりましては、これらの点も考慮して厳重にひとつそういった慢性中毒についてもチェックしていけるようにしていく、こういうふうなことをやっております。
  148. 藤原道子

    ○藤原道子君 いまおっしゃったように、慢性的に蓄積されることがおそろしいのですよね。農薬のみならず添加物の被害というものも問題になっているわけです。で、伺いますけれども、それなら牛乳は心配ないので、どんどん飲んでもだいじょうぶなんですか。これは主婦の間の不安というものはあなたがたの想像以上のものがある。だから牛乳の消費量もぐっと減ってきたという話も聞いている。飲んで一体差しつかえないのか、あるいは従来添加物でもチクロ等が添加されてきたときには影響がないのかどうか。これに対して科学技術庁ですか、あるいは通産省にも関係があるのですね、こういう問題は一体いいのですか。はっきりした責任のある答弁をしてもらいたい。食べるものも不安で食べなければならないというようなことじゃ困るのです。
  149. 神林三男

    説明員(神林三男君) お答え申し上げます。  牛乳の件につきましては、先々月の四月二十一日に、厚生大臣の諮問機関である食品衛生調査会のうちの残留農薬部会と乳肉食品水産部会を開きまして、八道府県で行なわれましたデータをお示しいたしまして、その数字の評価をまずしていただきました。その結果、大体西日本のほうが東日本より傾向としては多いだろう。これは農薬の使用量に大体比例していると思われるという数字の評価をまずいただきまして、さらに牛乳というようなものにつきまして、その安全性が非常に問題になるわけでございますから、これにつきまして、なお安全性につきまして当時このBHC、特に牛乳と関係の深いベータBHCについて研究されておる方が非常に日本では少なかったわけでございますが、神戸大学の喜田村教授と、そういうことに関する特に臨床の大家である岡山大学の平木教授を臨時委員としてお呼びいたしまして御意見を伺い、また調査会、いまの残留部会あるいは乳肉水産食品部会の先生方の総合的の御意見をいただいた結果、この値はいま直ちには衛生上心配はない、しかしこういう状態が長期に続けばやはり問題があるだろうというふうな御意見をいただいたわけでございます。いま直ちにというのは、これは動物実験を国立衛生試験所でやった結果、この値が未来永却ずっと続くと問題があるだろう。しかし一応稲わらが原因であるというようなことがはっきりしておりますから、稲わらの給養がなくなると一緒に青草を食べますから、当然これは下がってくると。それから私のほうも農林省に申し入れまして、すでに原体の製造禁止というような措置をやっておりますし、それからさらにまた最近農林省に対しまして、この国会終了後、いろいろ善後策といたしましては、さらに農薬のストックされているものについてのいろいろ取り締まりとか、あるいは使用状況につきまして申し入れをいたしまして、この六月になりまして、農林省がこれに対してさらに徹底を期して通達を出しておりますから、今後牛乳につきましては、さらにBHCの含有量というものは下がってくると。したがって現在牛乳を飲んでも問題はないというふうに確信いたしております。
  150. 藤原道子

    ○藤原道子君 同じ農薬でございますが、この問題で長野県の佐久市では農薬で目の奇病、学童の九五%に異常がある、こういうことが発表されておりますが、有機燐酸からであると東大の調査で判明した、こういうことに対して御承知でしょうか。
  151. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) この問題につきましてはいさいは承知いたしておりませんけれども、長野県佐久病院でございますか、その近郊でおそらくは農薬の散布その他に伴いましてそういったような障害があるいは起こり得るということで農林省のほうからの報告を、起こったということで受けておるわけでございます。
  152. 藤原道子

    ○藤原道子君 それでその状況は詳しく聞いていらっしゃるのですか。とにかく学童の九五%が目に異常があるなんということは容易なことじゃないと思うのですよ。これに対して厚生省はどうするのですか。
  153. 小島康平

    説明員(小島康平君) この件につきまして、実は農林省の担当課とも連絡をしたのでございますが、実は私ども食品衛生法に基づいた行政をやっておりまして、食品に付着する農薬によりまして起こる健康上の障害を私ども取り締まりをしておるわけでございますが、この間起きました学童の目の奇病につきましては、どうも農薬による環境汚染あるいは農薬を使用しまして、それが環境にただよっているものが目に付着いたしまして、どうもその粘膜からおかすのではないかというようなことでございまして、その原因がはたしてどういう農薬であるかというようなことを農林省のほうでお調べになっているようでございまして、実はこれが環境汚染によるものであるか、あるいは労働衛生上の問題であるかというようなことがございまして、実は厚生省として私ども食品を扱っておりますものといたしましては、今度はそれが食品に付着してどうなるかという問題があるわけでございますが、私どものほうとしてはそういった可能性のございます有機燐剤は食品の場合には非常に分解しやすくて、食品の場合では非常に残存量が少ないわけでございます。私どもの食品のほうでは、それを口を通じてとった場合にはほとんど問題ないというふうに考えておるわけでございますが、そういうものが粘膜に付着してそういった環境あるいは労働衛生上の問題として入ってきた場合にどうなるかということについては、実は所管は私どものほうではないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  154. 藤原道子

    ○藤原道子君 所管はあなたのところじゃないと言うけれども、口から入った農薬だけが所管なの。国民の健康を害することは厚生省の所管じゃないか。私はまことに残念です。  科学技術庁にお伺いいたします。  水も汚染されれば、食べものも汚染される。人体も農薬で汚染されておる。これを放置されているのが日本のいまの現状です。しかも、農林省ではこの農薬の規制に対して内部対立が起こっているということが報じられている。企業擁護の立場と健康管理の立場から非常に対立が起こっておるということが新聞には報じられております。全面禁止に横やりが出ておる、BHCに対して。こういうことが報じられておりますが、これではたしていいものかどうか。  さらに私がお伺いしたいのは、きょうは農林省も来ていなければ、林野庁も来てないんだけれども、今度ベトナムで使用されて大きな問題になっております枯れ草作戦に使いましたね、それを使って下刈りですか、除草にそれを使うということを林野庁で決定して、どこか富山県だか石川県だか——いまちょっと資料が見つからないのですけれども、労組のほうから反対が起こって大騒ぎになっておるというふうに聞いておる。こういう事実があるのですよ。人手がないから、費用がないから、だから枯れ葉作戦のあの薬ですね、これを散布して下草を処理するのだ、こういうことが言われておる。こういうことではたして経済成長は世界二位だなんて言っている日本が費用がないからといって人体に害があるとして世界的に騒がれておるそうした薬を散布することが許されるのかどうか、これをちょっとあわせてお伺いしたいと思います。
  155. 石川晃夫

    説明員(石川晃夫君) 科学技術庁のほうからお答え申し上げます。  科学技術庁といたしましては、この公害問題につきましてはかねがね重点的なものといたしましてこれと取り組んでいるわけでございますが、公害問題につきましては、この公害対策研究というものに現在重点を置いております。これはいろいろな分野がございます。環境科学技術という面で、その中の一環としての公害対策でございますが、それぞれの個々の公害の問題につきましては、各省からもお話がございましたように、これは各省でそれぞれ関係の法規の整備、強化というような面あるいは施策の面ということで実施していただいているわけでございます。ただ、科学技術庁といたしましては、科学技術の面からこの公害解決しないといけないということで、いろいろな研究につきましては、ことに各省庁間にわたりますこの公害に対する問題につきまして研究の強化ということを行なっているわけでございますが、科学技術庁の所掌といたしまして、毎年予算が出される前に各省でそれぞれの見積もり方針がつくられるわけでございます。それを科学技術庁におきまして調整することによりまして各省庁の研究が円滑に進められるように、私たちはその調整をはかっているわけでございます。また、そのほか科学技術庁には特別研究促進調整費という経費が一括計上されております。これは二省庁以上にまたがります研究につきまして、それを総合的に研究する必要がある。いわゆる二省庁以上にまたがります場合に、その研究が効率的に行なわれるという趣旨のもとに、それを総合研究的に行なうための経費が計上されております。それによりまして公害関係の研究は従来行なわれていたわけでございます。たとえば大気汚染に関するその構造の研究、いかにして大気が汚染されるかというような問題につきましても、この総合研究によって、従来三カ年程度期間をかけて、各省庁の協力を得ましてこういうような研究を行なっております。そのほかに緊急にどうしてもすぐ解決しなければいけないと思われる研究につきましては緊急研究費というのを持っております。これは、その研究テーマによりましては科学技術庁のほうからその関係省庁に経費をお渡しいたしまして、移しかえまして、その省においてこの緊急研究をやっていただくということになっております。たとえば先般、これは相当前でございますが、神通川のイタイイタイ病の問題とかあるいは油症の問題、こういうようなのは各省庁におきましても急いで解決しないといけないということで研究を始められたわけでございますが、それに対しましてもこの特別研究促進調整費を使いまして研究を進めてもらったわけでございます。ただ、この研究段階でございますので、それが直ちにその成果がどうなったというようなものではなくて、あくまでもこれは基礎的な研究でございますので、それをそれぞれの省において施策に反映していただくというような形の研究でございます。そのほか、実は先般大臣のほうから特命がございまして、この公害問題を今後相当重要視して研究していかないといけないと、検討を進めなければいけないということで、当庁の科学審議官が中心になりましてこの公害問題、ことに長い目で見た公害問題、今後産業開発が進むにあたりましていろいろな公害が出てくるものと想像されるわけでございます。それにつきまして今後どのような形態において公害が発生してくるか、あるいはそういう公害が発生した場合にはどういうふうに対処していくべきか、こういうような問題をこの科学審議官を中心にいたしまして検討するように命令が出ているわけでございます。  そのあとに御質問ございましたこの枯れ草の除草関係の薬を使ってというのは、これは農林省関係でございますので、私のほうから御返事申し上げられないわけでございます。
  156. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は科学技術庁で研究されたことが各省庁へ伝えられているが、それを実行するかしないかは各省庁の自由になっている、ここに問題があると思います。したがって、公害行政の一元化、これが私は絶対に必要だと思う。公害が七〇年代における一大社会問題化して、このまま放置すれば憂うべき環境破壊が現出することは火を見るよりも明らかである。そこで、従来の公害現象の増大に対して行政の立ちおくれが強く指摘されてきましたが、その原因の一つとして行政の多元化があげられるのではなかろうか。これが対策の推進の中心となるべき行政機構の欠陥が批判されてまいりました。  右の批判に対して、公害対策基本法の制定によって、政府部内の最高政策決定機関として関係閣僚による公害対策会議が、総理が議長でございますけれども、設置されております。ところが、これは実質的にはあくまでも関係閣僚会議であって、対策を一元的な責任のもとに推進する機構とはどうも言いがたいように思います。行政事務機構の面でも依然として各省庁が自分の狭い守備分野の中で対策に取り組んでおり、対策の総合性に欠けております。今後激化する公害に対処するためには各省庁、各行政機構の個別的スタッフのつなぎ合わせでは間に合わない。総合的対策の確立が要求されることから考えると、対策充実への意思を決定し、これを強力に推し進めるための独立した機構を設置すべきであると思います。これは野党においてこれを常々主張して、法案も国会に提案しているところでありますが、時あたかも京浜、京葉工業地帯を視察した内田厚生大臣は公害省設置の必要性を発言しておられます。この重大なときにあたって、政府としては七〇年代の公害問題の危機的状況の現出を事前に防止するためにも、勇断をもって、独立した公害行政機構の設置に踏み切るべきではないでしょうか。このために、私はきょう総理府の総務長官の御出席を願ったのでございますが、お留守だそうで御出席がございません。したがいまして、厚生大臣はじめ関係当局の所見を伺いたいが、どうです。
  157. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 公害の状況が非常に複雑多岐、広範にわたってまいっておる現況におきまして、国の公害対策組織というものを強力にすることは私はぜひ必要だと考えます。しかし、そのために必ずしも一元化が有効かということについては、私自身もそういうことを言うんですが、一元化ということについて、各省庁がみな手を放してしまったらそれはどうなるかという問題がございますので、とにかく公害というのは、しょせんは人の健康を守るための対策が必要でございますので、法律に書いてあろうがなかろうが、分課規程がどうなっていようが、公害のことは厚生省がみな引き受ける、こういう臨戦体制でいけ、こういうことを常に厚生省の内外に向かって言っておるわけでありますが、しかし、複雑多岐にわたりまして各省庁が分担しております関係もございます。正直申しまして、厚生省には公害一つございません。さきに私は衆議院のほうで同じような問題が出ましたときに、たとえ話として厚生省の公害機構というものは、将棋で言えば飛車角を落としたような機構であるから、とにかく飛車も角もみな並べたようなことにしないと、各省庁引きずり回せない。だから、いま先生からお話がございました長野県の佐久での農薬についての小学生の健康被害というものがあったら、それは健康被害なんだから、厚生省の環境衛生局にはもちろん農薬研究課というものはございませんが、食品衛生課とか食品化学課というのはございます。みな食品がくっついておるようなかっこうでありますけれども、口から入ろうが、目から入ろうが健康障害だから厚生省が先に飛び出していけというようなことを言っておるわけであります。それによってやはり厚生省がそれを引っぱっていくことのできる仕組みを厚生省につくってやらなければ、公害の総合対策というものはうまくいかないということを内外に私はわかっていただきたいと、こういうことで、また公害に関するどんな責任問題が出ても私自身が買って出て、これは厚生省の責任だと、厚生大臣の責任だと、こういうぐらいのつもりでやっております。そこで、来年度におきましては、私はぜひ皆さま方の御協力を得てせめて厚生省に公害局というものをつくる、これは通産省の権限を取り上げるとか、あるいは農林省、運輸省の権限を取り上げるというつもりではなしに、これは通産省とも、農林省とも二人三脚でやらなければ公害対策はできません。それの牽引力、引っぱっていく力というものを私どもが持たなければならないという趣旨から、少なくとも公害局がつくられなければならない。しかし、もっとそれは政府全体がほんとうに公害に取り組むならば、公害局なんという話は小さいから公害省をつくれというような、そのぐらいのことを私が政府の中で言ってやろうというようなことで、公害省と言ったりあるいは——厚生省には社会保険庁なとがございますが、場合によってはこれを公害庁に取りかえてもいいぐらいのつもりで、少なくとも公害局というものをつくって各省を引いてやっていく、こういう気持ちでおるわけでございます。これは、私はある意味で私の政治生命をかけてもぜひやらしていただくつもりでございます。なおまた先ほど来、私のほうの答弁を聞いておりましても、私自身がまことにもどかしいという気持ちがいたします。しかし答弁がございませんでしたが、長野県の学童の目の被害につきましても、厚生省が先に飛び出せということを私が命令いたしまして、そして東大のそういう方面の教授と相談をして現地の状況調べをいたしております。これにつきましても対策は厚生省としては農林省に対してはむろんのこと、またそれの治療上の対策とかあるいは健康上の対策は率先して厚生省が当たっていくべきものだと私は考えておりますので、先ほどのもどかしい答弁ではございましたが、そういう私の気持ちも十分認めていただきたいと思います。
  158. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、きょうは水俣の問題、カドミウムの問題等々を追及する予定で準備をしてまいりました。いま厚生大臣がたいへん強い決意を披瀝され、これを確実に実行していただけるなら私も安心でございますが、今度水俣の関係を見ても、あるいはカドミウム汚染の問題を見ましても、どうも納得がいかない。企業に偏重しているのではないか。この問題は委員長日を改めてまたやらしていただきます。  そこで、厚生省がじくじたる態度をとってこられたことが各省にいろいろな被害が起こっておりますので、その二、三の例を私はお伺いしてきょうの質問を終わりたいと思います。  私は、かってここでサリドマイドの問題を取り上げたことがございます。サリドマイドに対してドイツで昭和三十六年の十一月だと記憶いたしますが、非常に危険だということでレンツ博士が発表され、直ちにこれが回収され、これが新聞報道されたときは、日本にもこれが入っているんだと、諸外国が相次いで禁止、回収をしたんだから、日本でもこれの禁止をしなさいということを社労委員会質問をいたしましたところが、当時の厚生省の薬務局長から、日本ではまだそうした奇形児はあまり出ておりません、いまこの薬の影響があるかどうかは研究中でございます、その結論が出るまで一たん許可したものはどうも困りますと、結論が出てから対処するという意見が出た。発明元のドイツが危険であるとして回収をした。イギリスもスウェーデンも相次いで全部回収した。それだのにまだ日本で出ていないからといってちゅうちょするのはおかしいんじゃないか、もし奇形児が生まれてからではどうするんだ、直ちに回収して、研究の結果が白と出たならばまたそのときあらためて売り出したっていいじゃないかということを強く厚生省に要望いたしましたが、十カ月放置した。そして日本製薬がこれに対して自主的に回収に踏み切った、十カ月経過があった。これはあくまでも業者保護のやり方ではなかろうか。その結果、諸外国では昭和三十七年度、八年度はぐっと減ったんです。ところが日本は三十七年、三十八年が奇形児が生まれたピークになっている。諸外国は回収したから減った。十カ月おくれた日本がそのことによってどれだけ多くの気の毒な人が出ているかということは大臣も御案内のとおりでございます。この厚生省の態度、私は許せないと思っているんです。私は、ゆうべその当時の速記録等を出しまして、十分検討してまいりました。その結果、日本でも多数の奇形児が生まれたんだ。ところがこれに対して会社にも責任がない、厚生省にも責任がない、こういうことでほとんど放置されてきた。一昨年だと記憶いたしますが、私、社労委員会で取り上げました。これに対して園田厚生大臣が、会社にも政府にも責任があると思います、こういう発言をして、あとで厚生省内ではたいへんな問題になったということも聞いております。もしあのときに政府が直ちに回収に踏み切っていたならば、いまの不幸はそれこそ三分の一、五分の一で済んでいるかもしれない。ところが、その後政府にも会社にも責任がないというようなことできょうまでやってきた。たまりかねたその家族が訴訟を起こしております。大臣見たことありますか、あの奇形児を。しかもその奇形児がいま学齢期に達し学校へ行っております。これらの子供が学校に行くにもどれだけ親が苦労したかわからない。ところが勉強さしてみたら知能指数は一二〇、一三〇と、いずれも知能指数はすぐれておるんです。それを見るにつけても親の苦痛というのは推察するに余りあるものがあると思うのです。これに対して、あのとき厚生大臣が約束いたしました装具の問題、あるいはアフターケアの問題、これらに対してどういう措置がとられておるか。さらに国はあくまでも関係なしとしてしらを切って済まされるのか、業者もしらを切って済まされるのかどうか。諸外国ではいずれも裁判をしておりましたが、結局妥結いたしまして補償金がそれぞれ出されております。日本はまだ裁判係属中という現状でございますが、これに対して大臣のお考えを聞かしてほしい。これも政府がほんとうに人命尊重という立場に立たれたならばきょうの悲劇はぐっと少なくて済んでいる。こう思いますが、いかがですか。
  159. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) お話を承るにつきましても、また私が厚生省へ参りましていろいろ厚生省のことにつきまして調べて知りましたことに関連いたしましても、まことに胸の痛む話でございます。今日、薬の製造、輸入を承認いたします際に、私も最近初めて薬の製造についての手続とか、あるいはその現場を視察する機会がございましたが、それはもうかなり周密な毒性試験をやっておりました。たとえばマウスであるとか、さらに大きなラットである、ウサギである、場合によってはサル、イヌであるというようなことを経なければ、もちろん新薬については承認もいたしませんし、またその上、それらの毒性試験が終わった後、臨床試験も幾つかの例を重ねてまいらなければ承認をしないというようなことで、そのとき私自身が、どうしてこれだけのことをやっておるのに、十何年か前にあのサリドマイド児の、あるいはフォコメリーと申しますか、関節が不具になる病気、ああいう病気が出るんだと尋ねましたところが、当時は、そういういまのような毒性試験、臨床試験の仕組みが十分でなかったようであります。あの事件が契機となってどこの製薬会社でも、また厚生省におきましても、承認にあたりましてはそういう毒性試験並びに臨床試験の厳重なる資料を提出をし、また提出を求めるようになったことは、あれだけの犠牲の上に、非常に薬の承認に対する大きな進歩もあったわけでございますが、しかしそれだけに、いま藤原先生からお話のような、ああいう不幸な子供たちが今日学齢期に達している、こういうことであります。これの処置につきましては、もちろん訴訟になっておりますが、また諸外国でもそうでございましたこと、先生のおっしゃるとおりでございますが、厚生省でも、十分ではないでございましょうけれども、身体障害児の範疇において、たとえばその補装具といいますか、補装具を交付をするとか、また施設にお入れするとか、あるいはまた先般、その薬の会社全体から子供たちの福祉のためにと言って、大した金でもなかったわけでありますが、一億ぐらいの御寄贈もあった。こういうようなものも活用いたしてまいって、いまその最終的の責任処置が講じられていない段階でありますけれども、今後もちろんああいうことがないように、私どもは、これを大きな戒めにして厚生省も万全なことをやってまいりますけれども、これは前の厚生大臣も申されたように、少なくとも厚生省は積極的な意味の責任はともかくといたしましても、あれを早くはっきりしなかったということについてはやはり消極的なあるいは道義的な責任があったという、園田元厚生大臣の立場はそれでよかったと思うものでございまして、いろいろな事態の推移にも応じまして、この過去の件につきましては、適切な処置を講ずるような環境の熟することを私は待っておる、過去のことについてはそういうことでございます。しかし今後におきましては、私はあれを大きな戒めといたしまして、ぐずぐずものごとをしない、とにかく進んで厚生省が国民全体の健康を守るために必要と判断した場合にはもちろんその企業の利害も考えない、また各省の立場にも遠慮をしないで、薬のことに限らずやってまいるべきだという気持ちを非常に強く持つものでございます。
  160. 藤原道子

    ○藤原道子君 当時は、研究のあれが十分でなかった。日本にそういう機関が十分でなかったならば、諸外国で研究した結果が発表されている、そうしてみな回収した。アメリカでは、この薬には疑問があると言ってこの輸入をしなかった。だから、アメリカがほとんど奇形児はいないわけです。これを輸入した国が全部奇形児が生まれている。それらの国でもやはり製薬会社が責任を感じて、そうして国があっせんをして、裁判にはなったけれども、ほとんど和解で解決をいたしております。ところが、ひとり日本は政府も責任がない、製薬会社も責任がない、こういうことで逃げているわけなんです。それのみならず、今度国際裁判です。外人を証人として迎える。これは五月二十八日の朝日の記事でございますが、レンツ博士、世界で最初にサリドマイド剤の危険を警告したレンツ教授、サリドマイド児の診察に当り薬を奇形発生との因果関係を認めたボン大学のワイカー教授その他全部で五名ですか、これは原告側が要請しておる。これに対して大日本製薬は、レンツ教授らの主張に対抗のためにやはり反対派の学者を五人呼ぶそうです。これが新聞に発表になっております。ところが、そういうふうに日本が裁判で外人まで呼ぼうとしているときに、ドイツではサリドマイド児の治療費などに日本の金にすると約百億円、これを出して解決したらしく、和解が成立した。それからイギリスでも、スウェーデンでもみな相当の賠償費を出して解決しておる。そのときにひとり日本が家族がいたたまれないで訴訟を起こしていることに対して、厚生省も会社側をバックアップしている。それで会社側はこうした不幸な子をかかえた親の気持ちあるいは子供の立場も考えないで日本の裁判に外人を五名も呼ぶということはばく大な費用だと思う。そうしたからといって心の傷はなおらないと思うのです。とにかくそれほど日本の業者、日本の政府は冷淡に出ている。諸外国は全部解決しているのに日本ではそれがいまだに続いている。これの裁判をする親の気持ちを思うと私はたまらない気がいたします。これに対して大臣はどう思いますか。
  161. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) これは藤原先生のおっしゃること、私は同感でございます。私は、先ほどの答弁で環境の変遷に応じてというような意味のことを申したのでありますが、これは諸外国の例を聞きましても、長いこと裁判をやりましてもなかなか因果関係の立証が困難なことになりまして、これはまあ裁判上の和解でしょうか、裁判外の和解でしょうか、先生のお話のように、最後に西ドイツでああいう措置で和解が成立したと聞いております。日本のほうも、その諸外国における例が私の頭にはいろいろな実はリフレクションを及ぼしておりますので、私も常にそのことが頭にありますが、何と申しましてもまだ日本では裁判がたしか準備手続を何回か重ねてきているだけで、一回も公判に入っていない。したがって両当事者の間でいつまでも争うよりも何らかの、諸外国の例に見るようなことができないだろうかと、これは言い過ぎかもしれませんが、そういうような動きでもない限り、私どもが中に入るから裁判取り下げろというようなことをこちらから言うものでもございませんので、その辺の事態の推移に応じて私どもできるだけの動きをせねばなるまいと私はひそかに考えております。  なお、この事件につきましてはいろいろ古い経緯もございますので、薬務局長もおりますので補足させたいと思います。
  162. 藤原道子

    ○藤原道子君 もうちょっと、時間がないからあと質問とあわせて答弁してください。  賠償のことでございますが、ドイツはいま申し上げましたような、非訴訟者も含めて百五十億円として一人が七百万円から八百万円でございますね。イギリスは、症状に応じてですから、一人が四百三十万円から四千万円、エジンバラ大学に二十五ポンドをビッヒラードが出すと、あるいはまたスウェーデンでは一人二十五億七千五百万円出しているのですね。それからカナダは三千三百九十万円というようなことで妥結しているのです。イギリスは四百三十万円から四千万円というようなことで、諸外国はとにかく解決をしている。それでこの解決にあたっては、国が業者を説得したやに私は聞いている。ところが、ひとり日本は政府までが製薬会社のしり押しをするような答弁が裁判ではなされている。これでいいのかしら。私は手のない子、全くあれを見ると、子供が足で字を書いたり足で絵をかいたりしている状況を見るたびに、涙なしには接しられない状況であることを一度大臣にも私は見てもらいたい。この点が一つ
  163. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) ここに写真もございます。
  164. 藤原道子

    ○藤原道子君 写真よりも本ものを見なければだめです。  それから私が四十三年の五月の末に質問したことに対して厚生省が発表した、園田厚相発言で。電動義手の試作、義手装着装備訓練センターを全国八カ所に設立する、軽症者には補装具無償貸与をするということが発表された。私はそのときの質問で、ドイツではガスによる補装具ができているそうだ、何ぶんにも子供のことだから軽い装具でなければ耐えられない。ドイツから一つが四百五十万円くらいで輸入できるのだから、そんなものはわずかな金額だから直ちに輸入して、そしてこの子供たちに与えたらどうかという質問をしております。これに対して厚生大臣は、いや実は日本でも徳島大学で電力による義手の研究ができて、いま実用化のための努力をしているところでございますから、それが近く完成いたしますので、これを無償で貸与したいと思います、もしこれが間に合わなかったらドイツから輸入をいたします、それから訓練センターは全国八カ所に設立をいたしますと、そういう答弁があって、六月一日にこの発表がございました。  それから七月十一日に、園田厚生大臣の発言に対して大日本製薬社長の宮武氏の発言で、発売当時の安全基準から見て会社側にミスがないと信ずる、こういう発表がある。その後もこれはいろいろございますが、そういう経過もあったのでございますが、このリハビリですか、訓練施設はどうなっているか、補装具はどうなっているか、こういうことについてその後の経過をお聞かせ願いたい。
  165. 加藤威二

    説明員(加藤威二君) 最初の何というのですか、和解というのですか、日本だけやらないでおくれているという御指摘については、先ほど大臣からもお答え申し上げましたように、ドイツなんかでは二百回も裁判をやって、そして裁判では法律的にはどっちにもきめかねるということで、裁判所のほうで和解のほうにもっていった、こういうようないきさつのようでございます。各国も大体そういう状況で和解をしている。日本ではまだ準備手続の段階でございます。間もなく公判が開かれると思います。まだ一回もやってないというところで、そういうことで決着がおくれているというような実情でございます。  私どもといたしましても、この問題についての感じ方というものは、先生とわれわれはいまの段階ではあまり変わらない気持ちでおります。ですから、なるべく早い機会にこういうサリドマイド児の方々や、その家族の方々が納得されるような決着が早くつけばいいということを念願しておる状態でございます。ただ法律的な問題になりますと、一応法律的に責任があるかどうかということになりますと、これはやっぱり法律論としては一応争わなければならぬということは、これはやはり法律上の問題として一応別に考えていただきたいと思うのでございます。  それから、電動義手の問題につきましては、昭和四十四年に四十台、昭和四十五年に四十台、これは徳島大学で開発したものでございます。金額としてはそれぞれ約一千万予算に組みまして、これを無償貸与しているという状況でございます。
  166. 今泉昭雄

    説明員(今泉昭雄君) ただいま薬務局長からお話ございましたように、現在その電動義手の交付に際しまして、東京の整肢療護園及び大阪の大手前整肢学園及び徳島のひのみね学園におきまして、三カ月間くらいの装着訓練を経まして交付しているという状況でございます。
  167. 藤原道子

    ○藤原道子君 三カ所にできているわけですね。
  168. 今泉昭雄

    説明員(今泉昭雄君) さようでございます。
  169. 藤原道子

    ○藤原道子君 それで電動義手装具は完成したんですか。
  170. 今泉昭雄

    説明員(今泉昭雄君) 四十四年の十月からこの装着訓練を電動義手ができましたので実施して交付いたしております。
  171. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はそのことも資料で承知いたしておりますけれども、とにかく一億会社が出したんですね、あのとき寄付を。それの使途というものはわかってますか。
  172. 今泉昭雄

    説明員(今泉昭雄君) このうち七千万円でただいま申しました東京の板橋の整肢療護園に訓練棟をつくっております。それから、三千万円につきましては、当初大手前整肢学園に同じようにそのような施設をつくる予定でございましたが、たまたまあの地区は灘波宮時代の遺跡の問題がございまして、工事ができなくなりましたので、ただいま徳島県のひのみね学園のほうでその施設を三千万円でつくるというようなことで計画いたしております。
  173. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、この点についても不満がある。サリドマイド児のために出したと言われると会社の責任が問われるので、サリドマイドの子供のために出すということでなしに、肢体不自由児全体のためというようなことの申し入れがあった。それが付加されているように聞いておるのです。私はこういうところにも小手先の考え方、こういうものが目に見えて、これに対しては園田さんも非常に不満のような口ぶりでございました。いずれにいたしましても、厚生省にも私は責任があると思うのです。ことに薬務局、疑わしきを直ちに禁止して、事人間の生命に関するのですから。千八百人も生まれて、それで生きているのは、いま百八十人ぐらいですか、あとはみんな死んでいるのですよ。初めて生まれた子供がどんどん亡くなっていくというようなことも、私はもう少し考えて、そうして幸いにも命を取りとめたけれども、一生ああいう不具をしょっていかなければならない子供が生まれたということに対して、厚生省としても少し責任を感じて、この問題が家族に、その子供に有利に解決するようなやはり示唆が必要ではないか、こういうふうに考える。それと同時に、私は、サリドマイド児と同時に、厚生省の怠慢さが生んだ問題といたしまして森永ミルクの後遺症の問題がある。あれだっても静岡県の日本軽金属ですか、あそこから県へ問い合わせて、これはこういうものが入っているけれども、これをほかの産業へ譲り渡してもいいのか、砒素に対しての毒物としての規制、これらに抵触しないかという問い合わせが出ていたはずです。県から厚生省へ問い合わしたのに、これを一年も放置していた。それで、しかもこれは関係がないという返事が静岡県へ行っているんですよね。その結果がああした重大な問題を起こしている。私はカネミ問題にしてもあるいは水俣の問題にしても、あるいはまたこの森永にしても、サリドマイドにしても、厚生省は人命尊重の省でありながら、企業側にどうしても偏したいままでの態度に見えるんです。森永の解決のときでも五人委員会というものを会社に頼まれてつくったんです。それでその家族に対してはまるで冷淡に扱って、水俣の問題だってああした調停委員というんですか、あれに託して会社の責任が明らかでありながら、会社の責任ということは何にも出ていない。そうして人間の命があんなに安い値段、しかも患者がすわり込んで、一室へ閉じ込めて無理やりにのましたというような態度に対しても、私は心から怒りを持っているんです。森永の問題もいま裁判になっておりますけれども、あの示談金、五人委員会の出した解決策は幾らだったと思いますか。あれで妥当だと厚生省は考えているか。厚生省は、事が発生する前に食いとめられたはずの静岡県からの問い合わせに対して迅速に回答して、砒素は非常に危険だからこれをほかに出すことは好ましくない、やるべきでないという返事が直ちに出されていたら森永のミルク事件は起こらなかった。どう考えても企業偏重の態度、犠牲者の心を心としない政府のやり方に私は不満を持っております。これらに対してひとつお考えを聞かしてほしい。新聞は多く報道しておりますので、私ももう切り抜きができないくらい資料はここに出ております。そうして森永の問題も、衆議院の委員会の問題あるいは参議院の委員会の問題、速記録をコピーいたしまして夕べ全部調べてきました。政府の答弁を見ると、歯がゆいやら、腹が立つやら、そういうことばかりです。一体サリドマイドの問題にしても、水俣の問題にしてもあるいは森永の問題にしても、政府はどういう考えを持っているのか、私はその点を聞きたいのです。政府対策よろしければこういう被害は起こっておりません。しかも、いま裁判になっておりますが、厚生省は責任がないの一点ばりだけれども、私は責任がないとは言えないと思います。これに対して大臣のお考えを聞かしてほしいと思います。
  174. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 私の心がまえとしては、藤原先生がおあげになりました事件に対しまして、企業を庇護するとか、企業側におるとかいうことは私自身にはございません。しかし、これまた批判される方々から見ますると、そういう御批判のあることも事実でございますので、今度同じようなことが起こっちゃいけませんが、そういう公害問題なんかに対処する私どもの心がまえとしては、国民の皆さま方から、厚生省は企業寄りだと言われることがないように公正な態度、むしろ国民の健康を守る、被害者の弱い立場を庇護してやる、少なくとも厚生省としてはそういうことでありたいと思います。最近私が着任をいたしましてからも、続いて行なわれました水俣病に関する補償の処理委員会の結論にいたしましても、一部からいま藤原先生が言われたと同じような御批判が厚生省に向かってございました。それは議論をいたすつもりは毛頭ございませんけれども、その御批判は当たらないものでございまして、昨日も衆議院のほうでは公聴会がございまして、あの補償処理委員会の座長をつとめられた千種達夫氏もお見えになってお立場を述べられたようでございますけれども、これはもう私どもといたしましては、ことに私といたしましては、会社の立場ということよりも、訴訟に持ち込まないでああいう和解のあっせんを望まれた患者さん方の家族の皆さま方の気持ちが少しでもよく解決することを念願しながら、私は実は処してまいってきたものでございます。これはもうあの三人の先生方から答申を受けて厚生大臣の私が補償額をきめたというようなことでは全くございませんで、厚生省を離れて両当事者からの御依頼で、政治的な影響を離れたあの委員会がその活動をされたり調査をされたり、結論を出されたわけでございまして、私どもからの政治的な影響がそれがマイナスであれ、プラスであれ、あの委員会の動きに入ることについては常に委員会方々からも警告をいただいておったようなことでございましたが、私といたしましては、できるだけ天地神明に誓って恥じない立場を持してまいりました。いろいろ申し上げられないこともございます、ほんとうに。
  175. 藤原道子

    ○藤原道子君 委員長にお願いいたします。カネミの問題あるいはカドミウムの問題、森永の問題、サリドマイドの問題、やればきりがないので、厚生大臣はうまいこと言って逃げているけれども、これが三十年十二月十四日の衆議院の社労における答弁、当時は楠本さんが答弁なさっている。これをずっと読んでみると、何としても会社の立場に立っているということが明らかに出ております。もう私は許せないけれども、きょうは時間がございませんので、もっとやりたいけれども、近く参考人を呼んでこの委員会で徹底的にやっていただきたい。各委員の方もこれに対してはひとつ思っていることを大いに主張してほしいと思います。私は、きのう参考人の話聞いていたのですよ、大臣。なぜ厚生省は自分で解決に当たろうとしないのか。ああいう人を中に入れて、そして会社側に有利に、どうですか。会社側ではその参考資料——証拠になるべき研究データをなくしたり、ネコの実験を途中で中止したり、参考人は患者に会って十分意見を聞きましたというけれども、ほんとうは市役所に呼びつけて一人十分で経過の話をする、それで患者の苦痛がわかるでしょうか。私は、あのやり方が患者の立場に立ってやられたとは考えません。患者が頼んだのじゃない。しかも厚生省を許しがたいと思いますのは、訴訟派の人たちが行ったときにとったあなた方の態度です。訴訟派をかたきのように扱って、こういう点に厚生省の態度が言わずしてあらわれている。こういうふうに理解せざるを得ないのでございます。私は、いま委員長にお願いしたように、近く委員会を開いていただいて参考人を呼んでほしい。それからそれまでに厚生省にお願いしておきたいのは、いま申し上げました水俣病のことは大体資料は整っておりますけれども、カネミ油脂症患者のその後の状態、カドミウムによる患者さんたち状態、それから森永がその後どういうふうになっているか、こういうことの資料をひとつ御用意を願っておきたいと思います。  私は以上で質問を終わります。
  176. 大橋和孝

    大橋和孝君 実は公害の問題、京都で亀岡に二カ所あるのですが、バッテリー再生工場がある。そこで一日三トンくらいの鉛を再生しておる。これが廃液の中に一ぱい鉛が放出されて周囲に非常に大きな障害が起こっているというような報告を受けている。もういろいろの方が実態調査にも行っておられるようでありますから、私もそれにちょっと参りたいと思いますが、その前に一体いまどういうふうなことになっているのか、厚生省のほうに報告がいっているだろうと思いますから、その内容をちょっと伺っておきたい。
  177. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) いま御質問のありました例の亀岡の鉛再生工場のことについてですが、約一年近く前、現地の農業組合の会長さんでございますか、私の課にお見えになりまして、実は地元にこうこういう問題があるということをお話しになりました。実は、そこで私どもほかの物質と違って一般にいう鉛ですから、それは非常に注意が要るだろうということで、その工場はどっか大都市から追い出されてきたものらしゅうございますが、さっそく府の産業調査課のほうに連絡をいたしまして、一度調査をしてくれということを申したのでございます。それからまた府のほうから報告がございませんで、しばらくしましてまた例の組合長さんがお見えになりまして、だれも来ないというお話なものでございますから、私、直接今度は府の環境衛生課長に連絡しまして、主管課長会議で参りましたときに、鉛の問題は非常に注意が要る、ほかの物質と全然問題が違うので、いくら相手が零細であろうが何であろうが、鉛で回りに問題を起こしたら申しわけが立たぬということで、府としても厳重にその問題を調査してくれということを直接申しまして、府が必ずいたしますということで、調査をいたしておりますというところまでの報告を聞いております。調査のなまのデータは私どものほうにまだ参っておりません。ただ、その件につきまして二日ほど前ですか、新聞に、住民のほうから非常に追い立てを食ってよそに行くというような記事が出ておりました。府に対しては、詳細をいただいておりませんので、もう一度その点を確認してみたいと思います。
  178. 大橋和孝

    大橋和孝君 私も実態調査をいたしましてからあれしますが、厚生省としてもこれはたいへんな問題で、最近ではその調査なんかに行きますと、会社はやめちゃって閉鎖をしようとかいうことになっておるようなわけでありまして、あとの補償なんかの問題もたいへんなことになるだろうと思うのでありますが、こういう問題はもう非常に大きな、中小企業としてほんとうにかわいそうなくらいの状態も起こってきておるわけであります。これはやはり公害により付近の住民も非常に困るわけでありますけれども、中小企業そのものまでつぶれてしまうような状態で、しかも補償ができないという状態であるならばそこはたいへんな問題だと思うのであります。ですから厚生省としても十分な調査をしてください。私も調査したら一ぺんよくお話をここで詰めてみたいと思います。お願いいたします。
  179. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 たいへん時間が経過しておりますので、できるだけはしょってお尋ねをしてまいりたいと思います。  公害の問題で衆議院におきましても連日にわたってたいへん熱心に審議が繰り返されておるようでありまして、おそらく閉会中の審議においてはいまだかつてない状況ではないか。それだけに公害問題についてはたいへんな国民的な世論を巻き起こしておるわけであります。そこで、公害については当然政府当局としても事前の予防対策をどうするか、それから事後におけるいわゆるその救済措置というものをどう考えていくべきか、大きく分けるとこの二点に集約することができるであろう、こう思うわけであります。そこで基本的な問題としてお尋ねをし、またこまかい問題については次回に譲るといたしますので、大臣もその辺をひとつ御理解をいただきまして大局観に立った政治的な解決の方途というものをこの機会に明快にお示しをいただきたい、このように最初にお願いを申し上げておきたいわけであります。  かつて富山県に発生いたしましたイタイイタイ病を見るまでもなく、この認定をめぐりまして実に長期間にわたることは再々言われているとおりであります。ところが、その際に厚生省の判定というものと、通産省の判定をめぐって微妙な見解の相違があったこともわれわれ了解しているわけであります。そうした事柄を通じて考えますと、この公害認定に至るまでの経過というものについてはなかなかわれわれがしろうと考えで考えるようなわけにはいかないものなんだなと。そこで思いますことは、ならば被害にあわれた人たちは一体どういうことになるんだという問題がこれからも必ず出てくるであろうということは当然想定されるわけであります。そうした問題というものを一刻も早く処理し、国民の前に明確に公表するということがやはり原則的にはこれはもう必要であります。その大前提に立ってこれからの公害というものに取り組まねばならぬと、このように思うわけであります。そうした観点から、私は、やはり各省にまたがるいろいろなそういう問題をすみやかに解決する方途として、特にその毒物の分析あるいは検出、あるいは調査というものについては、各省間に異論のないようにするために事前の防止策の一環として、たとえばこれは個人的な考え方でございますけれども公害対策総合研究所というようなものを設置されて、そうして積極的な対応策をはかられたらいかがなものであろうか、これが第一点。  それから第二点といたしましては、先ほども答弁の中にございました公害省けっこうでございましょう、公害庁もけっこうだと私思います。しかし、いまの行政の簡素化というたてまえから考えると、はたしてどうかなという矛盾というものも起こってまいりましょう。そうしたことも十分考慮しつつ、むしろそれよりも省内においての見解の統一というものをはかる必要があるのではないか。その辺の機構の問題で、やはり調整をするための公害局ならばこれは非常に理想的である。そういうことで、私は大臣の構想の中にある公害局というものはそういうものではないかというふうに理解をしているのでありますが、最初にその二点をお尋ねをしておきたい。
  180. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 公害研究所の構想は私どもにもございまして、四十五年度の予算の最終折衝でも強く私から要望いたしました結果、ようやく実は芽が出まして、何というんでございましょうか、もとの構想、設計みたいなものをつくる費用だけを四十五年度に認められました。その結果によりまして四十六年度には建設費の要求も出そう、場所はいまのところでは筑波山のあの学園都市、あそこにつくろうと、そういうことでとにかく調査費だけは取りましたので、それの具体化につきましてさらに推進策を講じております。  第二の機構問題につきましては、渋谷先生のお考えと私は全く同じ意見でございます。でございますので、これは公害省とか、公害庁とかいうことは、私のほうはそのくらい打ち出しておかないとなかなか頭が上がりませんのでやっておりますが、とにかく現実は力を持ってやることと、厚生省の職員をフルに使うことが大切でございますので、先般私から言い出しまして、いわば厚生省の関係機構の総動員、臨戦態勢というような意味で、公害部は公害部といたしまして、実は公害対策本部というものを厚生省の中につくろうといたしましたが、協議の結果、公害関係連絡協議会、こういうものをつくりましてそれを公害部を補強する仕組みといたしました。その会議の議長は事務次官。厚生省にはいろいろな局や、またその方面の技術者、政策関係の者がいるわけでございますので、それらをもって編成して、そうして先ほど私が飛車角落ちのいまの公害部のようなものとはと申しましたその飛車角にかえまして、とにかく厚生省の省局は全部動員すると、こういう仕組みをつくりまして、あすには第一回の会合、店開き、こういうことになるはずでございます。しかし、それはそれといたしまして、ぜひ明年度におきましては厚生省の中に私は本気で公害局というものをつくっていただく。しかし、それは通産省の権限をとってくるとか、運輸省の権限をとってくるとかということではなしに、各省の機能を引き回すに足るだけの組織と力を持つようなものを厚生省が持たないと引き回しはできないと、こういう見地から私は熱心に考えているわけでございます。
  181. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 おそらく、いまの御答弁を伺っておりますと、その公害局は今後のいろいろな処理上の問題についての主として行政の運営面、これをつかさどるのであろうと私は思うのでございますけれども、前段に申し上げました件については、やはりその専門家を配して、そうして時間的にも早く結論が出るような、そういう方法を申し上げているのでありまして、せっかく調査費もとられた努力をもう一歩進めていただきまして、どうか昭和四十六年度の予算の編成の際にやはり厚生省がイニシアチブを持たなければこれはならないのでございます。公害は、申すまでもなく人の健康保持をいかにするかということに最大の課題があるわけでございますので、いま大臣のおっしゃったとおり、むしろ厚生省があらゆる面でリーダーシップを持って通産省、農林省、運輸省と、各関係省に対してもそういう働きかけができるような仕組みに私は持っていっていただきたい。そのためにも厚生省が音頭をとっていただいてそういう研究所をつくっていただければどうなのかなと、こういうふうに実は考えて申し上げたわけであります。ひとつその点はよろしくお願いしたいと思います。  それからそれに関連しまして、直ちに人の確保の問題だとか、必ずそういう問題が出るだろうと思うのです。実はこの質問を私はする前に、各省の担当官の方にいろいろお話を聞きました。それで私の考え方なんかも聞いてもらいました。結局問題は人がいない。また設備だとかというものをつくるにはやはりそれなりの予算措置というものが必要になってくるということで、これは直ちにということはなかなかたいへんではなかろうかというお話でございました。もっともだと思います。事務当局の方々としては、いままでのやってこられたいろいろな経験というものもございましょう。そうした知識に基づいての御意見であったろうと私思いますが、できないことはないと思う、そういう御意見を聞けばですね。やはりこれは大臣が政治的な折衝を行なわれて、閣議の際におきましてもこれを積極的に進めていただければと、こう思いますので、それを含めておやりになっていただくようにお願いをしたい。ほんとうは答弁を聞きたいところですけれども、時間があまりありませんので……。  それから、昨日でございましたか、法務大臣が各検察庁の検事長会議か何かの席上で、公害法を設けるべきだという発言がございました。おそらく公害法を設定するということについては閣議か何かの了承があったものと私は推察するわけでございます。そうしたことの経過を踏まえてああいう公の発表ということになったと思うのでありますが、この法務省が打ち出した、今後の問題として、できることなら次の国会において公害法案というものを上程したいというようなところまで述べられているわけでありますが、厚生省としては、こうした構想に対しましてどのように受けとめられていらっしゃるか、まずそこからお尋ねします。
  182. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 公害に関しまして、たとえば大気汚染防止法でありますとかあるいは水質保全法等にそれぞれ罰則がございます。罰則がございますが、私の記憶に間違いなければ、懲役刑、禁固刑などはなくて罰金刑以下のはずでございます。これは他のことばで言いますと、いまの公害関係法律に設けられている罰則は行政罰でございます。報告をなすべし、しなかった場合にはそれに対する罰金を取るとか、ガス発生装置ならガス発生装置で設備の変更命令を通産大臣が出したけれども、それが所定の期限までに応じないというような場合の罰則でありまして、したがって、公害が発生してそれによって多くの国民の生命身体、財産に大きな損害をこうむったということに対するそういう責任の処罰の法規が、これは刑法の一般原則によるのほかはないはずでございますので、そこで刑法の一般原則によるというようなことになりますと、これは傷害罪であるとか何とかいうことになりまして、非常にこの辺の因果関係、責任の立証の問題でこれはとても間に合わないということになると思われますので、いま申し述べましたような事態に対する特別刑事法をつくろうと、こういう構想であろうかと思うわけでありまして、私はけっこうなことだと思います。それがどの程度に動くかは別といたしまして、それだけのやはり名目と申しますか、あるいは国家的な秩序の統制がないことにはなかなか今日の事態には処し得ないと思うものでございます。ただし、これは法務大臣の御意向を私は直接聞いたわけではございませんが、昨日は検察官会議の席上で法務大臣の訓示とか発言ということだったでございましょうか、そうではなしに全国各地の検察官の声としてそういうものがつくられないと、またそのことについては法務大臣自身も発言がかつて国会内外であったようであるが、それはつくらるべきだという意味の発言が多数の検察官からあったということではなかったかと思いますが、いずれにいたしましても、そういう見方に対してはこれを支持する一人でございます。
  183. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かにおっしゃるとおり、具体的に内容がどうこうというものではないようでございますけれども、少なくとも法務省が独自の立場に立って国民に影響のある公害というものをやはり刑事罰をもって規制することができるならばというおそらく発想に基づくものであろうかと、こういうふうに思うわけでございます。いままで公害基本法等の公害を防止するためのそうした法律はございますけれども、御承知のとおり、まだまだ抜け穴がございます。おそらくそうしたものをひっくるめて、あるいはもっときびしく規制をすべきであろうという、そういう根拠に基づくものであろうと、こういうふうに判断しているわけでありますが、いま大臣は大いに支持するということでございますので、ただ、法律というものは拡大解釈されて、せっかくよくやっている人までそれが適用されればこれまたかえって法律がうまく生かされないというような面もありますので、どうか閣議の席上とか、あるいは直接法務大臣にお会いされてその真意というものを確かめられ、確かにこれは前向きの姿勢で公害というものを防ぐその一環として制定さるべきものであるというならば、いま大臣のおっしゃったように、大いにこれは推進していただきたいと、こういうふうに思うわけであります。  それから公害について、われわれのすぐ脳裏に浮かぶのは河川あるいは港湾の水質の汚濁、そのほかばい煙等による被害というものもございましょう。最近問題になっておりますことを一点にしぼりまして、あと次回にまた引き続きさせていただくということにしたいと思いますので、あらかじめ御了承をいただきたい。  最初に経企庁のほうへお尋ねいたします。——いらっしゃっていますね。長官はきょうはからだが悪くて御出席になれないということでございますので、また局長のほうからよくお願いをしていただきたいということもございますので、その辺よろしくお願いいたします。  実は、すでに経企庁のほうでも委託をされて御調査になっております木曽川流域の問題がございます。もうほとんど全国的には指定水域というものの水質については、ほぼ各県了承ということで解決を見ているようでありますけれども、残念なことに木曽川についてだけは利害を異にする愛知県、岐阜県、三重県、この三県が相対立するために経企庁のほうでは第一案、第二案、第三案というようにあっせん案を出されたようでございます。ところが、このあっせん案というものがどういうことをその背景とされてお出しになったのか。これから予測される問題としては木曽川流域に、岐阜県側の意向としては、今後の岐阜県の経済発展あるいはその財源の確保といういろいろな理由がございましょう。工場群をつくる、こういうような計画があるようでございます。これが実施されますと、何らかの形でこの三県が、まず飲む水について被害を受けなければならないということが判断されるわけでございます。そうした点から、今回経企庁が出されたその三案についての背景というものをひとつお聞かせいただきたい。
  184. 矢野智雄

    説明員(矢野智雄君) 木曽川につきましては、ただいま御指摘のように、環境基準の水域群系のどれに当てはめるかということにつきまして、関係の三県の意見が分かれております。現在それぞれの県の利害もふくそうしておりますので、その三県の意見の一致を見るようにまずお願いしております。現在、自治省がそのあっせんをしておりまして、その調整をはかっております。何分にも御承知のように、この問題は地元の考え方をなるべく尊重して、一番実情に詳しく、また直接住民に接触しているそれぞれの県の意向を十分反映してまいりたいと思いますので、現在その意見の調整を早急に終わり、それに基づきまして、私どもとしては今月中に少なくともこの調整を終わり、当てはめ行為の閣議決定に持ち込みたい、かように考えておる次第でございます。
  185. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最初第一案としてお出しになった、これは非常に理想的な案ではないかというように私どもは実は受け取っていたわけですね。その後いろいろな点で県のほうから、これじゃとてものめないというような反論があって、それで二案、三案というようにお出しになったといういきさつがあるようにわれわれは受け取っております。それでもなおかつ、特に愛知県、三重県側においてはのめないと、それで経企庁としても、それならばというので二案と三案をプラスして二で割ったその案にしようか、いずれにしても相当当初の案から後退をしているということが言われております。いまおっしゃられたように、六月中に結論をまとめて最終のあっせん案をお出しになるという予定だそうでございますけれども、その辺はいかがでございましょうか。
  186. 矢野智雄

    説明員(矢野智雄君) 岐阜県、愛知県、三重県それぞれ汚濁源及び利水目的、上水道あるいは漁業その他の利水目的と両方の調整をはかってまいらなければならないと思っております。経企庁から一案、二案、三案というお話でありますが、必ずしも公式にそうした段階で案を逐次出したというわけでもございません。それぞれの県の意向も聞きながら逐次いろんな見解を示しておりますが、私どもといたしましては、いずれにしてもそれぞれの県の事情もありますが、大体現在の汚濁源及び利水目的に照らしまして、私どもとしては、いままとめたいと思っております方向は、御承知のように、ごく大ざっぱに申しますと上流、中流、下流ということに分かれておりますが、たとえば上流というものは犬山から落合ダムですか、その間、それから犬山からあと下流に向かいまして、これが第二頭首工、及びそこからあと下流にかけて、この三地域に分けましてそれぞれの順序で、この環境基準の類型からいきますとA、B、Cと、そういうランクであてはめるのが適当ではなかろうかという考えに基づきまして、その方向でまとめたいというように考えております。現在この木曽川は指定水域になっておりまして、それに対する水質基準をきめておりますが、これではまだ間に合いませんので、今度のいま申しましたような案で環境基準がきまりますと、それに応じて現状よりもかなり排出規制を強化しなければならないことになるかと思いますので、そうした点もおっかけて所用の手続を踏んでまいりたい、かように考えております。
  187. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ここで地図でも開いてごらんに入れないと、いま局長のおっしゃったことについては、お聞きになっているほかの方々がおわかりにくいと思うのですね。ただいまそのことをこまごましくいまここで申し上げませんけれども、いまの案でございますと、これはもう当然愛知県が大反対することにきまっております。もう取水口がとにかくBランクであるとか、Cランクであるとかということになりますと、とうていそのときの、あるいは水かさが増したような時点においては、これは当然またその水質基準というものが変更されてくることは十二分に考えられるわけでございます。そういうような観点から愛知県や、またその下流に面しております三重県におきましても、今日ノリがどうなる、魚介類がどうなるということを非常に心配しているわけでございます。愛知県と三重県におきましては、これは私が確かめたわけではございませんけれども、厚生省とそれから経企庁のほうに陳情に行くのだ、そういういま段取りになっているやに聞いているわけでございます。そうしたことから企業優先になって、そうして飲む水がどうも汚濁しているということになりますと、これはやはり人命にどう影響を与えてくるかということをそれなりに思いますときに、やはり捨てておけない問題である。こう判断されるわけでございますが、厚生大臣、いまの質疑応答を聞かれておりまして、この種の事水道に関する問題でありますので、経企庁でそういう裁定をされたような場合に、その辺の連携というものはどうなって、どういう一体認定を下されていくのか、あるいは今後建設省も一枚かんでくることになると、非常にやっかいな問題でございますけれども、そういう点は一体どういうふうに処理されて解決されていくか。
  188. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 水質保全法の所管は経企庁がやっておるわけでございますが、現実的に現地の組織という形では経企庁自身はお持ちにならないわけでございます。実態的にどういうぐあいに現地で水の測定をしているかという問題になりますと、一番荒い目でございますが、こまかいのはやっぱり建設省の河川行政が非常に大きなポイントを押えてやっておられる点が一つございます。ただ、非常に荒いものを押えておられるだけでございます。もう一つは厚生省の水道関係のほうで、これは水道関係の検査施設がございますので、そこが最も熱心に水を定期的にはかっておるということは間違いのない事実でございまして、これは木曽川につきましても非常に名古屋市が一生懸命はかっている。名古屋市からの陳情がいつも強くあがってくるということでございます。それからもう一つは、実際、問題が起こりましたときに、どこが一体飛び出しているかということを調べてみますと、県の衛生研究所及び公害研究所、愛知県に新しく公害センターができましたから、公害センターということになるかもしれませんが、基本的には水質検査機能を持っておりますのは衛生研究所、これは各県に全部ございますが、そこが最も水をはかったりする機能がございます。ただ、そこで魚が死んだりするということになりますと、死んだ魚をさっと分析するくらいなところまでは衛生研究所でタッチできますが、もう少し深く水産ということになりますと、どうしても水産のほうを含まなければならないということでありますと、水産のほうまでも全部この衛生研究所でこなすということは実は非常に無理があるということが実態でございます。  それからかんがい用水のほうになりまして、これは農林省関係の方が非常に積極的に調査をしておるわけでございますが、かんがい用水の水質と農業被害ということを調べておられるわけでございます。そういうことで実態的に川を、水質を見ておるといいますのは、一番大もとの川全体としては県が見、それからこの具体的な技術的なことは水道と衛生研究所が中心となっておりますが、やはり川の単位でどのようにそれが組織的に現地組織として含んでいくようになられるのかということを私ども実務的にこの木曽川に参りまして、関係各省の機関、各県の機関に全部回ってみましたが、やはりそういう点も非常に感ずるわけでございます。そういうことで中央の機構の問題、これもございましょうが、やはり現地組織での協議組織といいますのが非常に大事ではないかということでございまして、近畿のほうではやはり河川局が中心でありまして、水質浄化の協議会等が淀川を中心に存在していて、非常に有効な活躍をしているというのもございます。そういう現地の体系としては、私どもは以上のような考えで厚生省としての基本的な役割りについて努力をしておるというのが実情でございます。
  189. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 先ほど冒頭にも申し上げましたように、事が起こってからどうしようかというのがいままでのやり方であったように思うんです、たいへん失礼な言い方ですけれども。起こってからでは間に合わない。そこで、いま申し上げましたこれから取りかかるであろうという、そういうような問題がありますだけに、これは捨てておけませんのでいま申し上げているわけでありますが、先ほど経企庁の御答弁の中には、各県の事情に応じてということがございました。ことばじりをとらまえるわけではございませんけれども、なるほど県の意向というものを十二分に勘案するということは、それが前提であることはわれわれもよく了知しております。しかし、事水道ということになって、これが国全体の国策の一環として考えなければならないというときに、はたして一県だけのそういう利害得失ということに振り回されてこれをまかしておけるかどうかという問題も考える必要がなかろうか。すでに長良川で御承知のとおりアユが大量に死にました。去年はまた木曽川で死んでおります。今回、調査は非常に時間的にも早かったようであります。五時間か六時間の間にその原因がどこにあるかということを直ちに、県の衛生研究所でございますか、調査をしたようでありまして、その結果、やはりいろんな毒物が検出されていることが公表されておるわけであります。だんだんたぐってまいりますと、その流域に約八百社、しかも、とりわけ最も直接つながったであろうといわれるのがパルプ工場の廃液ではないか、こういうふうにいわれているわけです。そうしたようなことがいま騒がれた直後でございますだけに、これから新たに木曽川流域に工業団地というものを建設していこう、これはけっこうだと思うのです。大いにこれからの経済発展というものを考えてみた場合に、われわれはそれを阻止する何ものもございません。けれども、常にそこには人命というものがどう一体守られていくのかという大前提に立たなければならないのが現在の社会環境ではないのかと、これはもう言うまでもないことだと思うのです。そこで、一番最後に河川関係では木曽川が取り残されたということだけに、問題が非常に多いということで、その辺のこれからの行政的な指導というものがどう一体なされていくのか、まずそれは経企庁、それから厚生省とお答えをいただきたい。きょうで不十分なところは——もう大体七時でぼくはやめますから、それで不十分なところは次の機会に譲らしてもらいます。
  190. 矢野智雄

    説明員(矢野智雄君) 先生御指摘のように、ことに人の健康に関するものは、これは絶対に守っていかなければならない。特に木曽川について申しますと、そのほかにもいろいろ利水目的もありますが、一番問題は、おそらくいま御指摘のように、上水道の問題であろうと思います。先ほどどもがまとめていきたいと言っております案も、もちろんその線に沿って考えております。水道の利水地点になりますところで、現在七PPMぐらいの状態でありますので、今度の環境基準に当てはめ、それを実施してまいりたいと思っておりますのは、これを3PPM、つまり水道で十分処理できるそこまで落とすと、その利水目的を達成できるそこまで落とすということをこの内容に盛り込んでのことでございます。こうした基準をつくると同時に、もちろんこれを達成していきますためには、排水規制を中心として、そのほか下水道の整備等、所要の措置を関係各省と連絡をとりながらやっていかなければなりません。環境基準に当てはめますときも、ただこれが当てはめたということだけで終わりませんように、そうした裏づけを十分持ちながらこれの当てはめをやり、閣議決定をしたいと、かように考えております。
  191. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 先ほど大臣のほうからも、公害対策の実効を期するための全般的な方針につきましてはお答えがあったことと思いますが、渋谷先生が御指摘のように、確かに公害、環境汚染の問題はやはり発生を未然に防止するというところまでいかねばなるまいということは、おっしゃるまでもないことだと思います。こういった公害発生を未然に防止したいということで、従来から厚生省におきましても、関係各省庁に対しまして、ことに公害対策事務連絡会議などの場を通じまして、積極的な施策の実施についてその場その場で強く要請をしてきているところでございますが、公害対策の具体的な目標としては、何といたしましても環境基準の適正を期したいということでございまして、いま御指摘の水道水の原水としての河川の汚濁を防止することはどうかという点になりますと、先ほど公害課長あるいはいま経済企画庁の国民生活局長のほうから答えがございましたように、実際には水質保全法という法律によっているところでございますが、厚生省といたしましては、やはり木曽川あるいは長良川、あるいは揖斐川、あの中部日本の各河川は日本でも一番美しい川の一つである。もう汚濁が始まってからでは、あるいはもう汚濁してしまったあとからではそういったことは追っつかないのだということで、特に経済企画庁のほうにも強くこちら側の意見を申し入れまして、今後の木曽川の水質基準につきましては最もきびしい案でもってお願いできないかということで、現在経済企画庁でやっておられるその調整の方向を見守っているという段階でございます。  水道の原水、もちろん水道管を通じまして給水されます水の性質いかんということで国民の健康に及ぼす影響はきわめて大きゅうございますので、厚生省といたしましては、従来の検査を一そう励行しますとともに、御趣旨のように、事前にその水源河川の汚濁については予防措置をいろいろ各方面にお願いし、また、こちらとしても強力に原水のために努力していきたいという所存でございます。
  192. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 だいぶきょうは質問が残ってしまいました。しかし、きょう経企庁のほうは局長もだいぶ長いことお待たせしたこともございましたので、お約束どおり七時でやめますけれども、最後に大臣に伺っておきたいことは、まだ、いま環境衛生局長と、それから国民生活局長がおっしゃったお話の中に食い違いがあります。これをどう一体整理されていくのか、どこで一体まとめられていくのか、どこで一体最終的に結論が出されるのか、六月中にどういう一体結論が出されるのか、それを私ども見守っていきたいと思いますけれども、このほかにも、水質をぜひとも厳重に調査をしてもらいたいという問題の中に港湾があります。最近の名古屋港なんというのは大腸菌も住めないという状況です。おそらくその例は横浜港にしても、神戸港にしてもあるいは東京港にしても同じではないかというふうに思うわけです。これに関連して起こる問題は、当然ノリ業者あるいは魚介を業としている人、これがいろいろな影響を受けるであろうことは間違いのないところだと思います。こうした点についてはどういう一体措置なりがこれからとられようとしていくのか、そしてまた、その地域に存在する工場についてはどういう一体方法が講じられていくのかということが当然問題になると思います。なかんずく、その中で、これは結局事後処理ということも一つの方法になるのでありますけれども、企業側の公害費用負担というようなことは考えられないか。せっかく公害対策基本法というものが制定されておりましても、企業者側については何ら制裁措置というものがとられていない。こうした公害というものがやかましく国民にアピールされておりますときに、やはりこの公害費用の負担というようなことが当然考えられていいのではないか、こう思うのでございますけれども、いま申し上げた問題を総括して、最後に大臣の答弁をお願いして私は終わることにいたします。
  193. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 木曽川に関する環境基準の当てはめに関連いたしまして、各地域の考え方がそれぞれ違うというようなことで混乱があるようでございますが、しかし、環境基準法律によりまして国が最終的にきめるものでございますので、これにつきましては終局的には国で、しかもその最高の機構として閣僚をもって構成する公害対策会議があり、その下部機構の幹事会、すなわち各省庁の局長会議もございますので、その辺で総合的、高い見地からきめてまいるほかないと、かように考えております。  それから公害防止対策に関する企業などの費用の分担についてでございますが、これは御承知のとおり、公害対策基本法にもその精神に関する規定がございます。さらに必要ならば公害防止計画等の設定に関連しながら企業の負担すべき費用の範囲、区分等に関して法律をもつくり得ることになっておりますので、私どもも実はその研究もいたしております。実際問題といたしましては、企業をかばうつもりは毛頭ございませんけれども公害対策はやはり費用の負担、このごろはだんだん関心を寄せられてきまして、先般、私は千葉県の千葉市、市原方面に、これもかけ足で公害防除事業を視察してまいりましたけれども、あの地域における緩衝緑地帯等の費用につきましては、地元の企業が一体となって数億円を負担をし、それに県市というようなものが一緒に金を出して、そしてこれまでのところ一応の施設ができております。しかし、今後あの地域は公害防止計画の対象地域にもなっておりますので、それのみでなしに、企業側の費用分担につきましてはさらに積極的に一歩進めていかなければとても公害防止計画はできまいと思います。あの地域ばかりでなしに、これから東京、大阪、名古屋等々にも同じような計画を進めてまいらなければなりませんので、企業側の費用分担のことにつきましては十分私どもも頭に置いて、企業の協力を求めつつ必要なこと等は法律の整備もいたす、こういう考え方で進んでおります。
  194. 上原正吉

    ○上原正吉君 私は、この質疑応答を伺っておりまして、いつも痛切に公害問題について感ずるのです。企業の責任というものを企業者があまり感じていないように思えるのです。そうして役所側も、企業者の責任というものはあまり追及なさらないように聞こえるのです。しかし、たとえ過失であっても他人に危害を与えたら責任を負い、その損害を賠償するというのが当然ではないかと思うのでございまして、企業そのものはそういう心がけで運営されなければならないものだと、私は心からそう思うのでございます。この点、厚生当局におかれましても十分そのお心がまえで御指導を賜わりたいと念願してやまない次第でございます。ことに大臣の御構想にある公害局ですか、公害省ですか、けっこうなお考えでございますけれども、化学工業が発達するにつれて公害というものは非常にふえてまいります。そうしてどこまでふえるかわかりません。化学工業の発達に正比例して公害というものは生まれてまいります。これはもう火を見るよりも明らかであります。そうして何が害になるか、これは業者にはあらまし見当がつくのでございます。たとえばカドミウム、これはもう重金属の化合物は皆有害である、こう申し上げて過言でない。カドミウムだけではないのでございます。金でも銀でも鉛でも何でも、重金属の化合物はほとんど有害である。それから砒素だとか青酸だとか、こういうものも有害でありまするし、それからまた硫黄だとか塩素だとか、こういうものの化合物もほとんど有害なものが多い。これもわかるのでございまして、化学工業をやっておる者、あるいはそれに類する仕事をやっておりまする者には、あらましこれは有害ではないかというものが見当がつくはずでございます。ですから、それを十分注意しなかったということは、それだけでも私は責任を負わなければならぬものだと考えております。ですから、政府におかれましても、企業者を何と申しますか、指導し監督する場合には十分気をつけさせる、これも大事でございまして、企業者もたとえ過失でございましても、悪意でなくて善意でございましても、人に被害を与え、人に損害を与えたら賠償するのが常識だと私は思うのでございますけれども、この点は、この委員会におきましても長い間応答を伺っておりまして、企業者があまり責任を感じてない。何とか自分の責任をのがれよう、こういうことしか考えていないように聞こえまして、まことに残念にたえないのでございます。これはもう政府にも責任があると、こう思う次第でございまして、公害局、公害省をおつくりになるのもけっこうでございます。これにはたいへん大きな、巨大な試験所も研究所も必要でございましょうし、あるいは大工場が必要になるかもしれません、公害を防ぐためには。ですから、企業者も、工場の経営者も、みな国民に被害を与えないように十分な注意を払うということを御指導、御誘導いただくようにお願い申し上げたいのでございます。お考えのほどを伺っておきたいと思います。
  195. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 上原先生のお説、よく承りました。公害の対策を進めるにあたりましては、これはもういつも私どもが責められるわけでありますが、私どもが企業寄りだということを始終攻撃を受けまして心外でございますが、企業を敵としてはこれは公害対策はできないと思います。企業の理解と、それから協力というものを前提といたしながら私ども公害対策を進めてまいるつもりでございますので、上原先生のような企業を率いられている有力な方々に、ぜひひとつ公害対策につきましてこの上とも御協力と御理解をいただければ幸いでございます。  また、私どもの責任につきましては、ずいぶんいろいろ皆さま方に御鞭撻をいただかなければならないようなたくさんの落ち度もあることを率直に認めざるを得ませんので、どうかひとつ野党の方々からおしかりをいただくことはもちろんのこと、ただいま上原先生からもお話がございましたように、与党の方々からも遠慮なく御指摘をいただきまして、この欠陥補強のために御援助、御鞭撻をいただきたいと存ずるものでございます。
  196. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、上原先生のようなお気持ちで政府が企業に当たってもらいたい。たいへんいい御意見を伺いました。  私、ちょっと資料の要求をしたいと思います。きょう質問するつもりでしたが時間がなかったのですが、いまやたいへん問題になっておるのは、ごみの処理だと思います。  私、この間、ある国立病院へ参りました。二、三行ったんです。ところがポリエチレンというのですか、薬を入れる袋——こういうものがありますね。あれがもう山のように積んである。この処理に非常に困る。それから家庭の奥さんたちがポリ袋ですか、これをずいぶんこのごろ使っておりますけれども、あれは焼けないのですってね。またあれを燃せば非常に公害が出るというじゃないですか、非常な問題があると聞いております。それから、ごみが非常に出るけれども、ごみ屋さんがあまり持っていってくれない、こういうふうなことがございます。そのために各地がよごれておるのですね。この処理は非常に重大だと思います。これらに対していまどういうふうな処理をしておいでになるのか、今後どういう対策をお立てになるのか。ある人に聞いたら、将来はほんとうにこれはぺったんこにしてコンクリートにでもかためてどうかしなければならないんじゃないでしょうかというようなことも言っておりましたが、私はしろうとでわかりませんけれども、病院へ行ってびっくりしちゃったんです。そういう点について、いまの状態と今後の対策、こういうものをひとつお知らせ願いたいということをお願いしておきます。
  197. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) ただいま藤原先生から御指摘のように、確かに今後ますます増加するごみ処理の問題、これはわれわれの生活環境を守る上において非常に重大な問題だと思います。将来ますますこういうことが起こる。従来は、ごみ処理は、御承知のように清掃法ということで、いわば市町村の固有事務、市町村が責任を持って処理しておるという法体系でまいっておりますけれども、昭和三十九年でございましたか、特にそれらの市町村の事業に対しまして、政府としても何とかしなくちゃいかぬということで、生活環境施設の整備緊急措置法というものを提案いたしました。幸い先生方の御賛同を得まして成立したわけでございます。それ以来、いわゆる五カ年計画、その後逐次修正し、さらに事業量を拡大してまいりました。五カ年計画ということで、ごみ処理施設あるいは屎尿の処理施設、そういったものの設備の補助金並びに資金面でのめんどうを見てまいってきておるわけでございます。  ただいま御指摘のポリエチレン、その他近ごろのプラスチック容器あるいはプラスチック製品の始末の問題でございますが、ただいまのところポリエチレンその他のプラスチック製品は、やはりただ埋めたり何とかするのではなかなか腐りもしませんし、始末に負えないということで、結局は焼却炉で燃してしまうということにならざるを得ませんけれども、あの中にはいろいろと塩素その他有害なものも含まれておりまして、それがそのまま焼いた場合には空中に有害物質が飛散するということで大気汚染、ひいては人体に対する健康の障害という問題を引き起こすわけでございます。これに対しましては、焼却炉の構造をよくする、それから煙突、そのまま煙突から煙を逃がすのでなくて、やはり除塵装置あるいはガスの処理装置、たとえば水、シワャーで洗って流がすとか、そういった設備をしなければならないということで、いまのところは、もちろんごみの焼却炉につきましては、大気汚染防止法でもって厳重にそういった排気基準について規制もしております。幸いにごみ処理場は、その後、一時見られたような状態はだいぶ改善された、このように思っておる次第でございます。  ところが、さらに科学が進んでまいりますと、今度はほんとうに煮ても焼いてもどうにもならないといったような物質の出現も予想されますし、これらにつきましては、生活環境審議会のほうに特別の分科会を設けていただきまして、ひとつどのような技術基準、どのような方法でもってやっていくかということは、目下鋭意御研究を願っておる最中であります。したがいまして、御指摘のような点につきまして、私どもといたしましても、できるだけ資料を取りそろえて、先生方にまたその席でいろいろ御説明を申し上げたいと思っておる次第でございます。
  198. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 他に御発言もなければ、本日の調査はこの程度にとどめておきます。本日はこれにて散会いたします。   午後七時十四分散会