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1970-08-10 第63回国会 参議院 公害対策特別委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年八月十日(月曜日)    午前十時十九分開会     —————————————    委員異動  七月十一日     辞任         補欠選任      杉原 一雄君     亀田 得治君      森中 守義君     田中寿美子君  八月七日     辞任         補欠選任      加藤シヅエ君     鈴木  強君      亀田 得治君     沢田 政治君  八月八日     辞任         補欠選任      峯山 昭範君     内田 善利君  八月十日     辞任         補欠選任      小平 芳平君     多田 省吾君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         占部 秀男君     理 事        久次米健太郎君                 内田 善利君     委 員                 川上 為治君                 沢田 政治君                 鈴木  強君                 田中寿美子君                 小平 芳平君                 多田 省吾君                 片山 武夫君                 須藤 五郎君    国務大臣        国 務 大 臣  山中 貞則君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        内閣官房内閣審        議官       城戸 謙次君        警察庁交通局長  久保 卓也君        経済企画庁国民        生活局参事官   西川  喬君        厚生政務次官   橋本龍太郎君        厚生省環境衛生        局乳肉衛生課長  神林 三男君        厚生省環境衛生        局公害部長    曽根田郁夫君        厚生省環境衛生        局公害部公害課        長        山本 宜正君        農林省農政局植        物防疫課長    福田 秀夫君        農林省農地局参        事官       住吉 勇三君        農林省畜産局参        事官       斎藤 吉郎君        食糧庁業務部長  中村健次郎君        水産庁次長    藤村 弘毅君        通商産業省鉱山        石炭局長     本田 早苗君        通商産業省公害        保安局長     莊   清君        通商産業省公害        保安局公害部長  柴崎 芳三君        運輸省港湾局長  栗栖 義明君        建設省都市局長  吉兼 三郎君    参考人        東京公害研究        所長       戒能 通孝君        横 浜 市 長  飛鳥田一雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○公害対策樹立に関する調査  (大気汚染及び水質保全対策等に関する件)     —————————————
  2. 占部秀男

    委員長占部秀男君) ただいまから公害対策特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告をいたします。  去る七月十一日、杉原一雄君及び森中守義君が委員辞任されまして、その補欠として亀田得治君及び田中寿美子君が選任されました。  また、八月七日加藤シゾエ君及び亀田得治君が委員辞任されまして、その補欠として鈴木強君、沢田政治君が選任をされました。  また、八月八日、峯山昭範君が委員辞任されまして、その補欠として内田善利君が選任をされました。     —————————————
  3. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 次に理事補欠選任についておはかりをいたしたいと思います。  委員異動に伴いまして、本委員会理事が欠員となっております。この際、理事補欠選任を行ないたいと存じます。  選任は、先例によりまして委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 御異議ないと認めます。  それでは理事内田善利君を指名をいたします。     —————————————   〔委員長退席理事久次米健太郎君着席〕
  5. 久次米健太郎

    理事久次米健太郎君) ただいまから公害対策樹立に関する調査を議題とし、大気汚染及び水質保全対策等に関する件について質疑を行ないます。  質疑に入ります前に、戒能参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日はまことに御多忙の中にもかかわりませず、本特別委員会に御出席くださいましてまことにありがとうございました。  ただいまから先生の御意見をお伺いいたしまして、調査参考に資したいと存じますので、よろしくお願いいたします。  それでは、質疑のある方は、順次御発言を願います。
  6. 占部秀男

    占部秀男君 山中公害対策本部委員長が来たわけでありますので、二、三基本的な点をお聞きしたいと思います。  今度中央公害対策本部が発足したわけでありますが、総理公害対策は七〇年代の内政の最大の問題にしたい、かように言われております。したがって、おそまきながら対策本部ができましたことは当然であると思うのでありますが、今日公害問題は、ある意味では新しい段階に入ったのではないかと、かように私どもは考えておるわけであります。というのは、従来基本法におきましても、御存じのように、五つ対象がきめられておりまして、その対象についての対策は、それぞれ各省ごとばらばら行政が行なわれておったわけであります。たとえば、水の場合一つとりましても、御案内のように、経済企画庁、大蔵省、通産省、運輸省農林省建設省あるいは厚生省、この七省庁にわたって所管が行なわれておりましたし、対策自体にも各省庁それぞれの立場から個別に対策が行なわれておったと、こういう傾きが強いのであります。これは水だけの問題でなく、たとえば大気汚染の問題にしろ、あるいは騒音の問題にしろ、同じような傾向にあったと思うのであります。ところが、今日水の悪いというようなところは、たいていの場合が大気が汚染しておる、騒音もある、かなりそこに重なっておるのでありまして、被害を受ける国民立場からいいますと、いろいろな公害が加わって、そして影響しておる。つまり、公害現象一つ一つ切り離して考えられない、こういうような情勢の中で、しかも、最近、またあとでも触れますが、光化学スモッグのような新しい事態が発生をしておるわけであります。  したがって、最近の公害状況を考えてみますと、あの基本法が四十二年にできたわけでありますが、あれからわずか三、四年の間でありますけれども、もうはるかに影響する地域も広い。たとえば先日の公的機関発表では、ドーナツ型の大気汚染というものが東京の四分の一をのんでしまっておるというようなこともございますとおり、地域が非常に広い。しかも、先日の光化学スモッグのときにもありましたように、厚生省発表でも、あれの被害を受けたものは一万二千人にのぼるといわれているほど、何百人、何千人、何万人という人たち被害を受ける。かような状況になってきておって、しかも慢性化してきておるということは、これはもう公的機関もはっきりと指摘しているところであります。したがって、今月の七日に都議会が開かれましたが、ここで美濃部都知事が、東京をこのままにしておいておくと、五年か十年の後には都民はガスマスクをかけて日常表に出なければならない、こういうことを心配して演説をしていたわけでありますが、これは決して誇張ではないと思います。そうした意味で私は、公害問題は新しい段階に来ておると思っておりますし、したがって、現状のように対象ごと対策を個別に、しかもばらばら行政で施政をしておるという形ではとうてい対処ができないと思うのであります。  そこで、副本部長の御意見をお伺いしたいのでありますが、いずれにしても、新しい段階に来ておる。しかもそれはもっと高度に、しかも一元化した総合政策を立ててやっていかなければ、とうてい対処ができない、こういう新しい段階公害問題は来ているのではないか、こういう点についての御意見伺いたいことと、もう一つは、もし、そうであるとするならば、基本法をはじめ公害法の体系はこれまた総合的に、抜本的に早急に改正する必要があるのではないか、この二点についてお伺いをしたいと思います。
  7. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) お答えいたします前に、先般の閣議で公害担当大臣を命ぜられました。戒能先生幸い御出席でありますが、任命と同時に、山中みたいなしろうとに何ができるものかというような手きびしい御批判もいただきました。私は全くのしろうとであります。これからもしろうとであるだろうと思います。しかしながら、いま公害で何をしなければならないかについては、政治家として事を処していく上において、懸命の努力をささげていくつもりでありますが、国際的には、日本が何をなし得るだろうかという問題にこたえなければなりませんし、また国内的には、国民から政府が何をなし得るかにこたえなければならない。そのためには私自身努力でき得る限りの政治家としての努力をいたしまして、各専門家の方々の御支援、御叱正等もいただきながら、国民人命保護の見地に立って努力をしていけば、何とかこの目的が達成できるのではないかと思っているところでありますが、よろしくお引き回しのほどをお願いいたします。  ただいまの、現在の公害行政に対する政府あり方についての御指摘は、私ども同感でございます。各省それぞれ有能であり、あるいは各省それぞれ熱心でございますが、しかし、その各省が有機的な連携をとって、政府という形でない形で行政機関の姿においてものを言うことが多過ぎたために、一つ一つのケースに国民から見てばらばら行政の感じを強く抱かせた。このことは熱心さのあまりとはいえ、私ども政治家として反省しなければならない点が第一にある。したがって、御指摘のように、今後の公害行政の第一歩は、まず、この各省有能かつ有効な手段を持ち得るとしても、それを政治という名において、政府責任において一本化した形で、国民立場から見てはなはだ迷惑だと言われないような姿勢をとっていきたいと考えるのであります。  第二に、御質問で直接触れていただいてはいないのでありますが、政府のやっていることがともすれば、光化学スモッグ等で例をおとりになりましたように、予期しないような現象が起こってまいるものでありますから、後手後手に回っているのではないかという御批判も私は受けとめなければならぬと思います。その意味で、各省ばらばら行政機能をそれぞれの優秀な諸君を集めまして、対策本部のもとに結集いたしまして、それぞれの機動的な機能の行使によりまして、これが国民から見て後手に回っておる、あるいは地域住民被害を受けておる人々から政府のやり方は手ぬるい、あるいは間尺に合わないという批判をなるべくぬぐい去る努力をしたいと考えるわけであります。そのような二つの批判を受けとめまして、私がその責任者となって、本部長指示のもとに、各省行政機関の長の協力を得てまいりたいと存ずるのでありますが、当然ただいま御質問のありました第二点は、これまで基本法においても四十二年に制定されたばかりのわずかの期間にこのような基本的な議論が、すでに耐え得られないところまで来ておるという問題もあるわけでありますから、その他基本法を受けた各種公害関係取り締まり法規につきましても、全体を含めましてすみやかにそれらの改正を、時宜に適し緊急な修正を行なうとともに、長期的展望に立って二年や三年の時代の変革によって法律あり方議論されるようなことのないように、長期展望に立った法の改正を含めて、次の国会に提出する予定でございます。
  8. 占部秀男

    占部秀男君 いまの法改正の問題でありますが、これは重大な問題のある法改正は、なかなかどうも佐藤内閣としてはおっくうがる傾向がある。たとえば公職選挙法改正等の問題は、総理があれほど大みえを切ったけれども、今日までできてない。問題が違いますから、今回そういうことはないと思うのでありますが、山中大臣としては次の国会——これは臨時国会臨時国会に出す公算は十分であると思うのでありますが、重ねて念を入れておきたいと思います。
  9. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 臨時国会を開くか開かないかにつきましては、これは国会各党の御相談並びに政府との相談になることでありますから、形は別にいたしまして、最も早く開かれる国会に提案をいたす覚悟でございます。駄弁を弄するつもりはありませんが、総理も就任の決意には人間尊重ということが考えられなければならない時代に来たということを掲げて総理になられたはずであります。現在はその人間尊重の声がまさに実行できるかできないかを問われておるときでありますから、総理自身も懸命でありますし、政治家政治生命をかけてこの問題に取り組もうとしておられることについて私は疑念を持っておりませんし、私自身もその努力を忠実にそして積極的に展開してまいりたいと思います。
  10. 占部秀男

    占部秀男君 そこでいまその問題を一元的に調整するために今度の公害対策本部を設けられたというのでありますが、私はこれはもういまの公害状況から見て、この対策本部のような形では不十分ではないかと思うのであります。確かに内閣直属ということで総理指揮権があるかないか知りませんが、強い指揮権があるというのでありますけれども、第一番には本部に法的に権限がないわけであります。それからまた、どんな計画を立てどんな方策を立てたとしても、やはり本部自体として実行する予算を持ってない。やっぱりこういうものはこれはもう、大臣御存じのように、役所の行政機構の中ではそれは確かに総理政治的な力、あるいは法的な権限というものはあるかもしれませんが、調整一本ではなかなか問題はうまくいかぬ。すでに行管等では、この政府中央対策本部をもっと強化して各省庁からの権限を吸い上げて、公害対策省的な専門的な機構をつくれということや、あるいはまた、政府とは独立した行政機関をつくって公害問題と全面的に対処すると、こういうような意見委員の中で相当出ておるわけであります。私はこの際、公害行政組織機構を一元化した、いえば公害省といいますか、あるいは公害対策省といいますか、いずれにしてもそういう機構を設けて、その下にこの研究調査のはっきりとした機関を完備をして、公害問題に対する国民の不安というものをまず姿勢行政組織の上から一掃していくようにするのが私は緊急の問題じゃないかと、かように考えるのですが、この点いかがでありますか。
  11. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) ただいまおっしゃったことは、ある意味において、いますぐ考えなければならない問題点一つでもあります。現にアメリカあたりにおいて、承るところによりますと、大統領の強力な権限によって人間ぐるみ機構ぐるみ権限ぐるみ引き寄せまして、集めて、公害に処しようとする努力をいま展開中であるように聞いておりますので、これはやはり他山の石として学ぶところは学ばなければならぬということも考えます。しかしながら、さしあたり現在の機構をもって出発いたしましたけれども、問題は、総理府の長たる総理大臣という姿における総理府に設置された機構と、内閣に置かれた内閣の長としての総理大臣立場とが根本的に異なるわけでありますので、当初の構想は総理府に置いて私を担当大臣ということでありましたけれども、しかしながら、総理府に置いて総理府総務長官担当大臣として副本部長になるということでは、各行政機関の長たる大臣以下に対する指示が、総理から総理府の長の資格においてはできないということでございますので、そこで全く異例でありますけれども内閣にこの機構を置くことにいたしまして、そうして担当相を設置することにより、内閣に置かれた組織に対する内閣総理大臣たる本部長が閣議決定された方針によって各省大臣を指揮することができる。このような権能というものを持たなければ、とても御指摘のように、ばらばら行政といわれる姿を一元化するには私たち総理府の力ではとてもできませんので、その意味において、指揮権限というものを総理府の長という形の総理ではなくして、内閣の長たる総理大臣が持ち得るという形にしたというのが一番の苦心のあとでございますが、これからあと実行するにあたりまして、あるいは私ども努力が足らず公害庁なり、あるいは公害省なりというものを置かざるを得ない立場になるとすれば私自身の敗北であり、私たち自身努力が足りなかった、国民の期待に沿えなかったということになるわけでありますので、目下のところは、現在の機構がすべり出した当初のところでございまするし、懸命に機構を生かすべく努力をしてみたいと考えます。
  12. 占部秀男

    占部秀男君 時間の関係もありますからこの問題は深追いはいたしませんが、同様な問題は、中央政府だけでなくて地方自治体の上にも起こってくると思うのです。  御存じのように、去る七日の都議会美濃部知事演説の中で、公害局東京都に設置するということを約束をしております。これは大臣御存じのように、都道府県の各局部の構成はこれは自治法で定められている。だから自治法改正をしなければ実際はできない。美濃部知事は、自治法改正を各方面と接触を開始して次期定例には組織条例改正を必ず提案するということを約束をしておるわけなんですが、これは単に私は東京都だけの問題ではないと思うのです。公害がかように広範になりますと、人口の集中しておる、しかも重要な工業地帯を持つところの都道府県あるいは大都市、周辺都市としてもよいのですが、そういうようなところではやむにやまれず公害関係の部局を、大きなものをきちっと設けなければならなくなってくるのではないかと思うのであります。  そこで、この際大臣にお伺いしたいのでありますが、もちろん自治大臣が主管でありますけれども、副本部長として、自治法改正をひとつ各公害関係機構にまかせる改正に踏み切るように努力する御意向があるかないか。  また、具体的に都でそういうような話し合いがあった場合には、これを制約しないようにするのが私は公害対策としては大事じゃないかと思うのですが、その辺の大臣のお考えをお聞きしたいと思う。
  13. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まさか国民政府がくみ取りまでやる責任があるとは思っていらっしゃらないわけですから、そうすると、国と地方とのそれぞれの基準を設定したり規制をしたり、そのような権限の分野、あるいは法律上における地位の明確化というものが、国民から見てあいまいな点があるように私も思いまするし、その一例として法律を越えた基準条例を設定することはどうであるかという疑問が投げかけられておりますが、これは現在においては私は違法であると思います。しかし、そのような議論をしておる段階ではないんでありまして、私たちとしては、国が最低守られるべき基準というものを、河川指定河川のみならず、水域のみならず、全国全部の河川基準を設定する等の政府姿勢を示す。それに対して地方公共団体は当然、河川に例をとるならば、全国で見たら四十七しか指定がされていないけれども、しかし、それぞれの県知事さんに言わせれば、自分の県ではせいぜい一つもしくは問題になりそうなのが一つ、いまのうちに問題にならないようにしておこうというのが一つくらいの、いわゆる身近な問題としてよく掌握しておられる河川であろうと思います。あるいは地域住民との関連において知事が最も掌中にしておる問題であろうと思いますので、この知事のたなごころの中にあるようなものは、やはり知事さんを信頼をいたしまして、地方に全面的に基準の設定にしてもあるいは規制あり方についてもおまかせをするような法体系基本として進めてみたらどうだろうかと思っております。  機構の問題は、中央においても公害問題がにぎやかになりますと、やれ各省が局をつくろうとしたり、いろいろそういう傾向もありまして、政府としては機構がなければ、あるいは局長が一人ふえなければ仕事ができないという考え方については、行管のたびたびの姿勢の表明にわかっておりますように、そのようなことだけで解決しようとする安易な態度を廃止しようというつもりでありますけれども、国、地方権限明定をされました後において、地方が当然その権限のもとにおいて当然行使する、企業の中において必要とするものが出てくるということにおいては、自治大臣とも相談をいたしまして、最も柔軟なる態度において処理しなければならぬ事態が来ておる、かように考えます。
  14. 占部秀男

    占部秀男君 地方団体機構の問題はそれでけっこうでありますが、いまの地方に対する権限委譲の問題であります。これはまたあと質問しようと思いましたが、大臣が先を越されまして非常にけっこうな御答弁だったと思います。  いずれにしても、排出基準にしろ環境基準にしろ、これを地方へ大幅に委譲していただくと、こういう原則に立つことは、これはまあわれわれもそれを望んでおるのですが、その場合に条件といいますか、お願いがあるのは、知事やあるいは政令都市といいますか大きな市の市長、こういうところへの機関委任という形で従来は行なわれておる。これは機関委任という形ですと、御存じのように、どんなに排出基準あるいは環境基準のきめる権限地方に移したといっても、国のいわば仕事を委任された知事立場しかないわけです。こういう問題がやはりその地域における住民と直結した非常に重大な問題でありますから、地方の県議会なり都議会なりがこの問題を住民と一緒にタッチできるようにしていくのが今後の公害対策を処理する私はかぎじゃないかと思う。そこで、機関委任にせずにいま言ったように、地方委譲するというならば、この際抜本的に都道府県、自治体の固有事務として委譲すべきではないかと、かように思うのですが、その点はいかがですか。
  15. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) どうしても技術的にできないもの以外は権限委譲という形で行なうつもりでおります。
  16. 占部秀男

    占部秀男君 次に、いま基本法の中に入りましたから基本法問題点で二、三お伺いをして私の質問を終えたいと思いますが、新聞等で見ますと、第一条第二項の経済との調和の条項を削除すると、こういうようなお話がございますが、事実かどうか、また、今度の法の改正には長官はその問題に対してどういう扱いを考えておられるか、それが一つ。それからもう一つは、そのことに関連して、私はこれだけでは足りないと思う。少なくとも公害が今日のような情勢になっている以上、住民生命と健康とはこの法によって保障するんだということを私は明記すべきではないかと思う。つまりこれがないから、現在公害がいろいろな問題が起きても住民が補償の問題、医療の問題等紛争が起こっておるわけです。この点が明確になっておれば紛争はおそらく少なくなると思うのですが、その点についての長官考え方と、それからもう一つは、いまの基本法では規制対象御存じのように、大気汚染水質騒音等五つになっておるわけですね。ところが、新しい複合した公害があらわれてきているのじゃないかということをいわれております。そういう場合に対処できるような法の改正というものを考えるべきではないかと、かように考えることが一つ、それからもう一つは、公害規制基準指定地域主義をいまとっておるわけですが、もうここまでくればこれはもう工場地帯あるいは町の中心地だけじゃなく郊外のほうまで、農村のほうまでこの公害が及んでいるわけですから、地域主義はこの際もう廃止して、全国的に一般的に適用できるようにすべきじゃないか、かように考えているのですが、以上三つの点をお伺いいたします。
  17. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 公害基本法につきましては、私どももそのような考え方で先ほど少し申し上げたつもりでありましたが、短期的な当面しなければならない問題と別に、基本法というものはその理念においてもあるいは場合によっては哲学的なものを含む憲章的な性格においても長い議論に耐え得るものであって、あらゆる諸外国から日本の公害憲章ともいうべき基本法について非常な興味を持って研究がされるというようなところまで努力して持っていかなければならぬ時代が来ておるというふうに受けとめておりますので、一生懸命そういうふうに努力をしてみたいと考えます。  第二点の、典型六公害についてでありますが、厚生省からはすでに土壌の汚染問題について問題が提起されておりますし、さらに産業廃棄物、さらにはまた生活環境廃棄物等々の問題がすでに議論になろうといたしておりますし、諸外国等におていはすでに産業廃棄物等あるいは生活環境廃棄物等でそろそろ公害対象の中に議論が入り込んできているところもあるやに聞いております。したがって、基本法をつくりかえまする際には、当然公害の典型六公害につきましてさらに土壌あるいは産業廃棄物あるいは生活環境廃棄物、表現はいろいろ変わると思いますが、そういう意味を含めまして研究したいと思っておりますが、農薬につきましては土壌と関係がありますけれども土壌だけでは済みませんし、農薬をどうするかについてはいま農林省のほうで典型公害の中に入れられるかどうかは別にいたしまして、農薬をどうするかについては基礎的な問題について積極的な議論を展開しておりますので、もう少しこれを先に見送っておきたいと考えますが、できれば法改正のときには入れないなら入れない、入れるなら入れる理由を明らかにできるようにしたいと考えます。  第三の地域指定の問題も河川に例をとって申しましたように、水系指定のようなことをとっておったんでは百年河清を待つという昔のことばがいまさら耳新しく感ぜられるようなことになるおそれがありますから、御質問のような方向で国は全域、国土全部、そして国民全部というものを背景にした考え方というもので、なるべく地域指定考え方を排除していくという方向に変わっていかなければならぬと考えております。
  18. 占部秀男

    占部秀男君 次に時間の関係がありますから、私聞きたいことを三つばかりざっとやりますので、御答弁願いたいと思います。  一つは財源問題でありますが、地方公害問題について相当各都道府県のこれに要する費用がふえてきておるわけであります。実はその材料もここに持ってきておりますが、それは申し上げませんけれども、いずれにしても、現行の地方交付税による公害対策費の配分だけでは何ともならないのが実情ではないか。たとえば東京都の場合ちょっと調べたのですが、四十四年で交付税の計算上では約七千八百万円、八千万円が切れる配賦の予定になっておるのですが、実際は四十四年度で使った公害の金は八億円を突破しておる。十倍以上突破しておるわけです。地方でも同じような情勢になるのではないかと思いますので、この際本部ができた以上、財源問題をもっと深くひとつ掘り下げて、地方公害対策に万遺憾のないような財源措置をしてもらいたい。その方法は交付税をやめて補助金制度にするとか、あるいはまた、公害対策についての金の問題については、たとえば厚生年金会計のようなところから金が借りられるとか、国民から取り上げたというよりも集めた金を公害問題に使えるようにひとつしてもらいたいと思いますが、この点についてのお考えを伺いたいことが一つ。  もう一つは事業者負担の問題であります。私の手元にある資料では、外国と比べて日本の企業が公害防止の施設にかける費用の割合はきわめて小さいわけであります。これは数字等もよく御存じだと思いますからいまさら申し上げませんが、いずれにしても、この機会に企業者の負担する問題をやはり制度的にはっきりとすべきじゃないかと私は思うのです。現在基本法の二十二条で一応は負担をすることができるときめられておりますが、まだ政令もできていないと、かような中でありますから、これはもう何としても、今度の法改正の中ではこの問題はしっかりとひとつ現実に確立をしてもらいたい、これが二つであります。  それから三つ目は罰則といいますか、何といいますか、これほどまでもう公害問題が大きな、地域においても、人間の数においても与える被害が大きくなっているのでありますから、加害者といっちゃ悪いかもしれませんが、加害者である企業に対して無過失責任を課する制度を新設すべきではないか。現在御存じのように、原子力損害の賠償法等では法の三条でこれがきめられておるわけでありますが、やはりこれはもう同じような問題ではないかと思いますし、公害自体についてもある程度意識的にやっておるというような企業に対しては公害罪を新設すべきである。もうその段階に来ているのじゃないかという点が三つであります。  それから四つ目は、これは最後でありますが、先ほど地方に対しては自治団体の事務としてできる限り大幅に権限委譲する、こういうお話がございましたが、何といっても公害を防止する一番の中心点は、私が言うまでもなく発生源をとめるということ、発生源を押えるということであります。そこで悪質な公害を出す企業については、工場閉鎖の問題であるとかあるいは工場を移転させる命令であるとか、あるいはまた自動車が非常に多くなってきてどうにもならぬという場合には、都市あるいは町の中心地に自動車の乗り入れを禁止する権限であるとか、こうした発生源を押える権限をその地方地域の自治団体に与えるべきではないか。いわゆる自治団体の行政責任者住民の代表である各議会との合作でこういう問題は押えられる、こういう状況を私はつくるべきじゃないか、これをつくれば今日の公害問題は相当私は処理ができるのじゃないかと思うのでありますが、以上の四点についてひとつ御回答をいただきたい。
  19. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 財源の、主として地方自治体の公害防止、もしくは排除事業に対する財源措置の問題でございますが、大蔵省も来年度の予算では重点のわずかな項目の中に公害対策の費用というものを入れておりますし、当然地方自治作の財源につきまして、現在ある交付税制度をやめて補助金にしろとか、あるいは現在の政府債でない年金事業団等の融資等も活用できるようにしろとか、いろいろな御意見がございましたが、これらの技術的な問題は今後詰めることにいたしまして、基本的には国の財政と地方財政とは、毎年借りたのか返したのか、何かやったりとったり変なことをしておりますから、ああいうようなこと等もこれからやめてもらって、国のやるべきこと、並びに地方のやるべきこと、それぞれに予算措置もきちんと整ったもので措置していかなければならぬだろうというふうに考えております。  第二点の事業者負担の問題につきましては、これはもう基本法の第二十二条で、すでに別に法律で算出方法等まで書いたものをつくれ、法律をつくれと指示されておるわけでありまして、これをいままで三年有半ほっておいたという責任政府にございまして、まことに申しわけないことだと思います。四十一年に厚生大臣公害対策審議会が答申いたしましたときの考え方厚生省各省調整をいたしまして原案でもって出たときの考え方、さらに調整がなって、なってといえばきれいに聞こえるのですが、傷だらけになって国会に提出されましたときの国会提出法案、さらにそれが国会において修正されて、現在のように人命尊重と生活環境を入れた第一条第二項というものが、明らかに国会においてせめてここは明らかにせいと修正された経緯等から考えたときに、当然それらの問題もメスを入れなければなりませんし、また「別に法律で定める。」となっておりますもののうち、公害紛争処理法というものはすでに先国会で通しまして、現在は事務局をつくって、有識者五名を充てて、国民相談の窓口、そして刑法以前の相談で処理できるものはあっせん、仲介等をしようという努力の準備中でございますが、いま一つ残ったのが御指摘の費用負担の問題でございます。先般通産省の産業構造審議会の小委員会が答申を中間報告の形で出していただきました。これを拝見いたしますと、はなはだばく然といたしておりまして、企業の負担の考え方の方向について述べたりまとめたというようなことで、初めからどうも土台がはっきりいたしておりませんし、法律で求めておる少なくとも最低幾らの負担をどのような算出方法を根拠としてするのかということについては指摘しておりません。これらの点をはなはだ遺憾とするものでありますので、これからさらに私の手元で調整をいたしまして、これも次の国会に企業の費用負担区分に関する法律基本法の命ずるとおり提出したいと考えますし、その内容は、国がどのような特例措置をとり得るか、財源上の特例措置をとり得るか、地方はどのようにしてそれを補い得るか、またその前提に、企業はいかなる公害の種類ごとにどの程度の負担を最低しなければならない義務を負うのか、これらを明確にして提出をしたいと考えます。  第三点の無過失責任の問題と公害罪の問題でございますが、これは私の手元で初めから取り上げて議論をいたしますのにはあまりにも純法律的なあるいは法技術的な問題が強いわけでございますので、いわゆる現在の過失または故意ということによって受けた権利というものをめぐって公害の加害者、被害者というものが争いを展開しておりますが、これが万全でなく、また非常に、逆に言うと、不完全であるためにどのようなむだな時間が投ぜられているかは、力の弱い被害者の立場の人々がそれを故意または過失と立証することが科学的にもあるいは物理的にも立証が困難である、能力的にも、資金的にも乏しいということから考えますと、このままではいけないということが明らかに言えると思うのであります。そこで無過失責任というものをはっきりと、かりに公害に限るか限らないかの問題もありますが、それをつくる場合において、はたしてそれが実際上、法運営上に、原子力のような問題とはまた少しく性格を異にいたしますし、また、かといって一般の普通災害とも違いますから、ここらのところは法務大臣相談をいたしておりますが、基本的には無過失責任罪、単独罪にしますか、あるいは公害罪というものの中に入れますか、いずれにしても加害者も含めて検討をしようということで、大臣も積極的でございますが、ただいま部内において全く純粋な法体系論、法理論上の問題からの議論が現在展開されておりますので、しばらくこれも模様を見たいと思いますが、これも対策本部といたしましては、次の国会に提案をしなければならぬと考えておる次第でございます。  次に、地方自治体に権限委譲した場合の権限の内容について工場閉鎖、移転もしくは自動車の通行禁止等の権限を自治体の長に与えたらどうか。ここらの点はやはり権限の問題の中で基準設定の権限規制権限とは少しく野放しでおまかせするについては問題が存在しようかと考えます。たとえば水系に例をとってみますと、一つの水系に幾つもの県が関係をしておる。公害から見れば、加害県と被害県があるという場合に、被害県のほうが加害県の知事に向かって幾ら声を大にして呼びかけても、私の県は苦心惨たんして誘致した企業である、さらに私の県内には被害は起こっていないというようなことで言を左右にされたんでは、これは権限地方に譲りっぱなしにしたことによってさらに住民不在の混乱が起こるおそれがありますので、こういうケースは中央においてさらに私ども手元で引き上げて再調整をするということも考えておかなければ、ただただ全面的に規制権限を与えるというだけではたいへん問題があろうと存じます。ことに中小零細企業等におきまして、県を異なって同じような現象で、海面はつながっておるのに、県が違うだけで一方のほうの中小零細企業は倒産の危機に瀕し、一方は何とかやっていけるということでも困りますので、これらのことを十分に勘案をいたしまして、規制を全面的にまかし得るものと、あるいはまかせる場合に上限を定めておかなければあぶない問題と、あぶないというのは失礼になりますから、ばらばらになるおそれがある問題、こういう問題を含めましてもう少し検討の時間をかしていただきたいと考えます。
  20. 鈴木強

    鈴木強君 ただいま占部委員長から基本的な公害対策に対する問題は質疑がありましたので、この点について私は若干漏れているというか、もう少し伺ったほうがいいという点だけにいたします。  御承知のように、光化学スモッグとか、あるいは硫酸ミスト、こういった新しい型の公害東京を中心に発生しておりますし、また、川とか田畑が農薬とカドミウム汚染によって問題が起きておりますが、これも全国的に地域が広がっております。それからヘドロの問題については、御承知のように、田子の浦あるいは東京湾さらに松島湾、こういうふうに各所にまたこのヘドロによる問題が出ておりまして、これは魚族の資源を絶やしたり、漁民の生活権を奪う、こういうことで非常に問題になっております。同時に、この港内における船舶の航行が非常に困難になってくる。こういうふうな公害というものが非常に多様化しておるわけです。私はこういう現象が起きたことは、いま長官からも多少反省的な点が述べられましたけれども、やはり基本法が制定され、そのほか六つ七つの公害関係法律がすでにできておるわけです。そうしてそれに取り組む体制はやらなければならないにかかわらず、経済成長と処罰の関係ですね。やはりこの政府の派の中に何かしら企業への歩み寄りというものが多かったように思うのですが、そういうことを非常に国民は不満に思っておるわけです。ですから、ここまで公害がくれば、もはや人間尊重、人命を大切にするというそういう姿勢に立ってこの公害対策をやってほしい、こういうふうに国民は期待しておるわけです。そこで、いまもお話がありましたように、当面起きておりますこの公害を何らかの具体的な対策を立てて防止していかなきゃならない、こういうところに追い込まれていると思います。ですから、基本的な問題は基本的な問題としてやるとしても、当面やはり残された具体的対策を立てる必要があるわけです。そういう意味においてわれわれは臨時国会の召集をぜひやっていただいて、知事権限委譲できるものは委譲していただくように法律を変える、制度を変える、そうして思い切った予算もつけてほしいということでまあ臨時国会の要求も国対委員長会談においても出ておるわけです。ですからして、いま中央公害対策本部というものをおつくりになりました。これは私は多少意見があるのですが、とにかく政府として当面するこの公害対策を解決するための臨時国会をやはり召集すべきだと私は思うのです。それに対しては、まあ国務大臣でもありますから、担当の山中長官からさっきちょっとお触れになりましたけれども、もう少し、まあそれは伺いたいが、国会を開くべきだと思うのですが、どうでしょう。
  21. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 臨時国会を召集すべきかどうかを閣議にはかってまだ議論をしておりませんが、いますぐ開けと言われますと、実は担当大臣の私も困るのです。というのは、もう少し時間をかしていただきまして、いま占部委員長委員席からのわざわざの御質問に対しまして答えましたような問題点をさらに煮詰めて、それが皆さま方の御批判並びに国民の信頼にこたえ得る内容のものであるかどうか、これをつくり上げる努力もまずしませんと、いま開かれましても、ただ問題点をお互いが認識し合ったりあるいは意見の食い通いを調整し合ったりすることにとどまるおそれがあると考えますので、開くにしてももう少し先にしてほしいと思いますが、これは私自身だけの判断ではどうにもなりませんので、やはり国会の衆参両院議員、そうしてそれを踏まえた政府の判断というものに全体の形でまつ以外になかろうと思います。
  22. 鈴木強

    鈴木強君 これは私党派を乗り越えてやるべきだと思います。そこで、東京都の交通規制一つやる場合でも、現在の道交法ではなかなか問題があるということで警察当局も苦労されているわけですね。それから、たとえば電気とかガスあるいはメッキ工場ですね、こういったものに対する権限を、なるほどそのほかのものはありますけれども、こういうものは地方知事権限がないわけですね。ですから、そういったものは私は論議をするというよりも政府がわかっておることですから、それをお出しになって、直ちに国会法律改正し、そういう権限を与えていくということになれば、あなたが心配するようなことはないと思うのですよ。ですから、担当大臣としては早く臨時国会を開いて、そうして法的な改正もし、具体的な対策もしたいというふうに思うのですが、この点どうですか。
  23. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) いますぐ開いてもらって出せる法律もあると思います。しかし、いますぐではやはり間に合わないというものも確かにございますので、できれば、日本の国が公害に対してどのように取り組んでいるか、どのような取り組み方を示したかはいまや国際的な注目を浴びると思いますので、やはりつくるならば徹底したものにしたいと考えておりますので、臨時国会を開く開かないの問題よりも、時期的には私としてはもう少し先に延ばしてもらいたいという気持ちでおるわけであります。私は臨時国会を開くなとか、開いてみたいと思って心境の変化があるとかいう立場にありませんので、その点の追及はひとつかんべん願いたいのですが、いかがでしょうか。
  24. 鈴木強

    鈴木強君 逆に質問されますけれども、私はやはり政治家として、あなたもおっしゃるように、最善を尽くし、国民の負託にこたえるというのがわれわれの使命でしょう。そうであれば、これは政府権限があるわけですから、ですから、いまの場合は、政府のほうでそういうひとつ決意でおやりになってくださいということをお願いしておるわけです。それに対して、長官としてはいまどうも自分で積極的にどうとかこうとかいうこともむずかしいということを言われる。要するに担当の国務大臣としては、そういうもろもろの法制度の改正もし、予算の裏づけもしてやりたい、そういう御心境ではないかということを私は聞いているのです。そうでないと、国民は納得しませんよね。
  25. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) いまのような御趣旨だと全くそのとおりで、せっかく受け、担当の大臣になった以上、後世恥ずかしくないものに少なくともしたいと考えておりますから時間をおかしくださいと言っているので、臨時国会を私がここでしからば開くことにいたしますと言える性質のものでないことは、これはよく御承知でございますから、その点だけをあいまいといえばあいまいな答弁をしているにすぎないということで、基本的には変わっておりません。
  26. 鈴木強

    鈴木強君 もう時間がないですから端的にお尋ねしますが、要するに人間尊重、経済発展との調和ということがありましたね。これは人間尊重、人間の健康と命を守るという、そういう基本的な考え方対策本部をつくられ、今後公害対策をやっていくということでよろしいわけですね。
  27. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 現在の基本法第一条第二項並びにそれを受けた各種公害立法の目的に、表現はやや違いますけれども、「経済の健全な発展との調和」という項を引用したくだりがございます。これはこの第一条第二項があるから公害対策はできないというようなものでもないと思いますし、またこれが削られたら、日本の経済というものはやっていけなくなるというものでもないと思います。しかし、やはりここに第一条第二項のそのような考え方を生活環境というものにかかって受けたとしても、盛り込んでおること自体が公害対策基本法姿勢からいって言わずもがなのことではないか。あるいはそこらに何かやはり保守党と経済界というものの世上言われておるような姿勢から見て、そこらのところから足を引っぱられるのではないかというような疑念を提示されていることについては否定できない事実でありますから、それならば私たちとしてはいわゆる盲腸手術をせざるを得ない。盲腸というものはあるからといって虫垂炎にならない限り別段生命に危険が起こるというものではありませんが、しかし、やはり虫垂炎を起こしたら、あるいは起こそうとしたら切ってしまうのが医学の常識のようであります。しかし、現在第一条第二項は虫垂炎症状になりつつあるということは私もそう思いますので、基本的な姿勢で疑問が残っておるうちに、他のどこをどのようにいじってみても説得力と信頼を得るに遠いものがあると考えますから、ここらのところは経済を主管する通産省の責任者、これは大臣のことを考えておるわけでありますが、大臣ともよく話し合って基本的な方向で一致いたしておりますので、すみやかにそのような盲腸的な存在のものをなくしたいという考えでいま調整中でございます。
  28. 鈴木強

    鈴木強君 時間があまりないですから、いろいろやりたいのですけれども、ちょっと残念です。  そこで政府姿勢の問題に関連をしてですが、東京都をはじめ、各地方自治体も中央公害対策本部に歩調を合わせてそれぞれ地方公害対策本部をつくっていくと思うのです。これと基本法公害対策会議とかあるいは中央公害対策審議会とか、こういうものとの関係がどうなるのか、ちょっとこれは心配なことになるわけですね。現に中央公害対策本部をつくったような趣旨で基本法では各大臣を糾合した対策会議というものをつくることになっているわけですから、これは行政法上当然の会議ですね。こっちのほうは一つの便宜的なものだと私は思うのですが、それはともかくとして、それをよく調和して問題のないようにしてほしいということが一つ、それから具体的に東京都の東前知事時代に、昭和三十五年十二月に東京都に都市公害対策審議会というものがつくられております。この審議会は学者と国の各省庁、警察庁、それから都の議会、これによって構成されることになっておる。国側のメンバーは経済企画庁国民生活局長厚生省の環境衛生局長、通産省の鉱山局長運輸省の鉄道監督局長と自動車局長、それから建設省の都市局長河川局長ですね、これがメンバーになっているんだが、特に最近会議に局長が出たことがない。これは非常にひどい状態になっているわけですね。七月十七日の総会にも課長補佐とかあるいは調査員という方々が出てこられたんだが、やはり十分責任を持って発言ができなかった、こういうことでいま批判が出ておるわけです。長官としては、こういうふうにきめておる構成員である国のメンバーが、この会議に出ないということについてはどういう責任を感じておるか、これからは出してくれますか。それはいろいろ事情がある場合がありますから、全員出るということもむずかしいかもしらぬですけれども、ずいぶん無責任なやり方だと私は思いますから、そこらひとつ督励してもらいたい。
  29. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まず初めの地方都道府県に設けられます本部と連絡を円滑にして有機的に動けということであります。これは私もそのことが念願でありまして、そういうふうにしたいと考え、また、自治大臣も主管大臣として協力の態勢をとっていただいておりますので、順調にいくと考えておりますが、公害対策審議会には、それぞれの公害対策本部関係閣僚と寄り寄り機会のあるごとに相談をして一つ一つ煮詰めていきます。その煮詰めていったもので、たとえば企業に費用負担をさせる法律が明確に審議会にかけられるようなものになりましたら、これをかけてまいりますし、また閣僚をもって構成する公害対策会議のほうには、決定いたしましたものを幾つかまとめまして、政府の施策を打ち出す際に当然閣僚会議にかけて公害対策会議の名において方針を打ち出していくという形をとっておりますので、その間の重複混乱はあり得ないと考えておるような次第でございます。  東京都の会議に局長が出ないでだれかが出たという話でありますが、ちょっとどういうことかよくわかりませんが、東京都だけの会議なのか、地方で開かれるようなそういう会議に全部局長が出ろとおっしゃっておるのかよくわかりませんが、東京都だけの問題でもございませんし、やはり都合のつく局長は行くときもありましょうし、あるいは局長が都合がつかなければ次の責任者が行くことも、これは常識としてあり得るわけでありますし、どういうことが具体的な問題点なのかよく私にはわからないわけでありますが、なるべく地方の会議でも、中央の者が参加して行なうような会議には責任者出席することが望ましい、こう思います。
  30. 鈴木強

    鈴木強君 これは三十五年の十二月に東京都に都市公害対策審議会というのが、これは基本法の前ですがつくられまして、そこに国側のメンバーとしてさっき申し上げましたような局長連中が構成員になっているわけです。その連中がさっぱり出ていかぬのです。特に最近はひどい。課長補佐とか調査員が出ておるんですね。責任ある会議の運営ができないというので東京都議会のほうでもいまの議会で批判が出ておりますね。ですから、できるだけ局長を出すように、長官としても対策本部の副本部長として、国務大臣として督励してもらいたいというんです。現にこれは起きている問題です。
  31. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) いまおっしゃった限りにおいてはわかりましたので、その事実を私どものほうで調査してみます。わざと行かないのか、行けるのにサボっているのか、そこらのところはよくわかりませんが、なるべく責任者が行って、ことに東京都が一番人口の多い都道府県の筆頭でありますから、したがって、公害も一番の問題点になっているわけでありますし、やはり東京都の公害対策というものは、世界が日本の公害対策として、われわれがニューヨークとかロンドンとかいうものをながめますような目で、東京都というものを見ておるんだということを考えますときに、やはり重点を置いて対処しなければならない都道府県の筆頭であると考えますから、そういう意味でももう少し調査させてもらって、あなたの御趣旨になるべく沿えるように各行政機関の長と連絡をとってみます。
  32. 鈴木強

    鈴木強君 時間がありませんから、次に田子の浦のヘドロ問題についてお伺いしたいと思います。御承知のように、富士の市内には百五十以上の紙の工場がございまして、そこから排出される製紙のかすによるヘドロは一日約三千トンと推定されております。このヘドロが沼川、和田川をはじめ、その後つくられた三つの岳南排水路、これは下水道法による特別都市下水指定で四分の一を国が負担している、これを通じて田子の浦港に流れているわけです。そして湾内に流れ込んだヘドロは現在五メートルに堆積が達しております。そして水深九メートルが湾内では四メートルになって国際貿易港の機能は麻痺寸前になっておる。また漁民は田子の浦港から駿河湾へ流れ出したヘドロによって、それによって生ずる硫化水素、これによりまして、漁民は漁が不漁になってたいへん重大な影響を受け生活権を脅かされている、こういう問題があります。これはこういう結果が出たのは、私は明らかに企業の無責任な排水、たれ流しにあったと思います。と同時に、県や国の公害防止のための対策が欠除しておった、行政指導の面において非常に無策な点があった、これは明らかだと思います。そこで、すでに私は七月二十三日の委員会でこの問題を取り上げ、政府にすみやかに実態調査を行なっていただき、適切な防除対策を立ててほしいとお願いしておきました。ところが、現在まだ国や県におきましても具体的対策がとれておらない、そして問題は一そう深刻化しているように思います。そのために地元の住民はヘドロ公害追放、駿河湾を返せ、こういうスローガンを掲げて抗議連動を強化しております。きのうも御承知のように、現地では五千人以上が集まりまして、大きな抗議集会を開いておりますが、この中には生活権を奪われる漁民の方々が百四十隻以上の船を持ち出して海上参加している。こういうふうにニュースは伝えております。そこで私は再びきょうこの問題を取り上げて、どうかひとつ政府にすみやかな解決策をお願いしたい、こういうことで伺いたいと思います。  そこで第一に伺いたいのは、なぜこの地域水質保全法等によって指定水域になっておらなかったのかどうなのか、これがないために通産省のほうでは監督ができないというぐあいになっておるわけです。ですからなぜ水質基準というものがここに適用できなかったのか、指定水域にできなかったのか、これは簡単でいいからひとつそこだけ伺いたい。
  33. 西川喬

    説明員(西川喬君) 田子の浦につきましては、昔から製紙業が集積しております。水質保全法ができまして、当初から取り上げまして、昭和三十六年に指定水域のための調査を行なっております。ところが、当時進行中でございました岳南排水路が昭和三十七年に一応竣工する、最初の第一期の工事を完了するということになりまして、当初の問題といたしましては潤井川の農業被害という陸上の被害の問題だったわけでございます。これを解消するための調査を行なったわけでございますが、岳南排水路に工場排水を入れることによりまして、農業被害は解消するということで当時水質審議会のほうにもはかりまして、一時保留、たな上げという形になったわけでございます。その後工業整備の特別地域指定になりまして、急激にパルプの大企業の集積が行なわれましたために、川状のような結果になってしまったわけでございますが、当時としては岳南排水路の効果というものに期待いたしまして保管しておるというのが実情でございます。
  34. 鈴木強

    鈴木強君 岳南排水路との関係で保留になったというのですが、そうすると、この特別都市下水道である岳南の排水路はなぜ終末処理施設というものをつけなかったのか。新聞の報道とか、われわれが調査をしてみますと県当局が排水路をつくるとき、これをつくれば各会社の浄化装置はつけなくてもけっこうですと、岳南排水路に流し込むことになれば、そういう心配はありませんからということで、企業者にも多少の負担をさして排水路をつくったということなんですが、これは建設省伺いますが、一体県がそういうことを指導をし、またそれを国が知っておったかどうか、きわめて無責任なやり方をしたと思いますが、この岳南排水路の建設のいきさつ、なぜ終末処理施設というものをつくらなかったのか、これを明らかにしてもらいたい。
  35. 吉兼三郎

    説明員(吉兼三郎君) ただいまのお尋ねの件でございますが、先刻企画庁から御答弁がございましたように、私どものほうは岳南関係の都市下水道事業を二十四年から着手してまいったんです。当初から全体計画といたしまして処理場をつくるという構想で出発をいたしておりますが、当面は早く事業効果をあげるという観点、先ほど企画庁から御答弁がありましたように、農業関係との調整という点で早くまず特別都市下水道の排水路を完成させるという点に重点を置いてまいってきたわけでございます。ところが、現在におきましては様相は一変してまいりまして、早急にやはり当初の計画の中にございます処理場を早く完成するという観点に立ちまして、いま鋭意努力をいたしておるようなわけでございます。
  36. 鈴木強

    鈴木強君 これはたいへん無責任なお答えですよ。だから要するに早くそれをつくれば効果があがるというが、効果があがらない、終末処理施設をつくらなければならないということは、いまごろ感じたんですか。当時からそういうヘドロというものが問題になっておったのです。これは行政姿勢というものが非常に悪かった。建設省がこういう特別な排水路をつくるに際して、何と目先のきかない行き当たりばったりの計画を実施したかということがいま明らかになっている。そのためにいろいろ結果を招来している。あなたは大臣でないけれども、こういういいかげんなことをされてはかなわんです。なぜもっと目先を考え、将来を考えてやらなかったんですか。
  37. 吉兼三郎

    説明員(吉兼三郎君) ただいま先生の御指摘のとおりのことかと思いますが、岳南関係の下水道事業の総額は百六十億近い金がかかるわけでございまして、私ども全国対象にいたしました下水道事業を鋭意整備に当たっておりますが、何しろ空前の下水道事業の当初予算のワクとの関係がございまして、やはり限られた投資の中で少しでも効果をあげていくというようなことを考えざるを得なかったという事情が今日に至ったという点もあろうかと思います。何も今日の時点においてすぐ下水処理場関係をやっていくということじゃございませんで、もう私どもは数年前からそういうことで県当局にいろいろ指導をいたしてまいったんですが、目下は処理場のまず土地の手当て、そういう関係において努力している段階でございます。御了承をいただきたいと思います。
  38. 鈴木強

    鈴木強君 了承はできないんです。要するにそういう自分の過去やってきた行政の中であやまちがあれば反省をして、再びそういうことのないようにしてほしいと思う。これは過去のことですから、あまりここで申し上げてもどうかと思いますけれども、そういう行政姿勢そのものに問題があるということを、これはよく知っていますよ、地元の人たちは。だからなかなか納得してくれない。したがって、それでは具体的にこの終末処理施設をつくって、これ以上田子の浦港にヘドロが流れるようなことについてはどういういま状態になっているんですか。これはすぐやらなければいけないんですよ。もっと緊急のヘドロをしゅんせつするということもありますけれども、とにかくこれ以上ふやさないためには基本的な対策としてどういうことを考えていますか。
  39. 吉兼三郎

    説明員(吉兼三郎君) 私どものほうの所管外のこともあろうかと思いますが、私どもといたしましては、来年から早急に処理場関係の事業に着手してまいるというふうな予算編成の体制をとってまいりたいと思いますが、しかしながら、この処理場はあと一年ではできません、数年を要するものかと思います。したがいまして、それまでの間の緊急対策としましていろいろな私どものほうの所管以外のことで手を打たなきゃならぬ面もあろうかと思います。そういう面は関係省庁ともよく連絡をとりまして遺憾のないようにやっていきたいと思います。
  40. 鈴木強

    鈴木強君 長官、いまお聞き取りのとおりですね。ひとつ、過去のそういう行政のひずみがあったわけですから、足りないところがあったわけですから、これを取り戻すために、公害対策中央本部としてもすみやかにこの対策を立ててもらえますか。いま言った基本的なことですけれども
  41. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 富士市の市長になるには紙関係の企業の応援がなければ市長になれぬという話を私はちらっと聞いたことがありますが、たいへんむずかしい問題もあろうと思いまして、いままでの経緯についてはいろいろあろうかと思いますが、しかし問題は、ヘドロと俗に言っておりますが、ヘドロはどこにでもたまっているわけですから、公害ヘドロ、あるいは汚染ヘドロ、廃棄ヘドロということになりましょう。それらの問題の処理が、単なる、いままでの話を聞いておりますと、いままでの製紙業と農作物関係のトラブル処理のために重点が置かれていたように聞こえました。しかし、いまや、海によってなりわいを立てる漁業者という人々も含め、あるいは、自縄自縛とも言えるかもしれませんが、みずからが流したパルプの廃液による堆積によって水面が非常に浅くなって、喫水の関係で大きな船が出入りできなくなるということになれば、企業自身も自分の首を締める現象がいまや起こっていると言わなければなりません。したがって、一番先に取り組むべき典型的なケースは、たとえば、企業の費用負担区分、国が行なう事業、公共事業について、一般補助に比べて公害に対してどれだけの熱意を示すかの姿勢、あるいは補助率、あるいは地元の関係団体がどれだけの負担をするか等を明らかに明定をいたしまして、建設省のいま計画しておる計画を中心に、すみやかに、現在の情勢というものがもとの姿になれるかどうか、これをもとの姿にする努力をしなければならぬと考えておりますが、田子の浦はまさに典型的な姿でそこに登場しておるものととらえております。
  42. 鈴木強

    鈴木強君 ですから、それをどうするかということが問題になるわけでして、いまとりあえずこの堆積しているヘドロを、紙くずから出るこのヘドロというものを取り除くことが問題ですね。ところが、それを海洋投棄すると、漁民はいまさっき申し上げたような生活権の問題にかかるわけですから、あそこはもう世界でただ一つとれるサクラエビの産地であるとか、いろいろ魚族資源の保存のために、あそこは大陸だなになっていませんから、そういう意味では問題だと。いろいろなそういうものを考えていくときに、当然漁民は反対をする。しゅんせつしようとすると、そこには硫化水素があって、七月の十七日ですか、二十人の従業員が硫化水素のためにやられちまった。労働基準法上問題があって、労働省が調べてみると七・五倍の硫化水素があそこに検出されたというふうな問題が出てきているわけです。そうすると、貿易港である田子の浦港というものは、一体、しゅんせつしようとしてもそれはできない。そうすると今度は港が機能を停止する。国際貿易港としての価値がなくなってしまう。静岡県の需要の石油の約七割かがそこから陸揚げされている。こういう貿易港としての保全は一体どうなるのか。きのうも現地では大会を開いて、港則法違反で四つの会社と県知事を告発をするということをきめたようですね。これは要するに港内の安全というものが、企業が投げ出すヘドロによって不能になってきた、航海が。そういう点をとらえているようですね。これは運輸省としても港湾局は頭を病めていると思います。なお、航行の保全については海上保安庁もどういうふうにこれを取り締まっていくのか、そういうむずかしい問題がいまあるわけです。これをどういうふうに整理し、地元の協力を得てやっていくかということ、とりあえずの措置はそこですね。それからあとは、いま言った終末処理施設なり浄化装置というものをつくって、再び田子の浦港にそういうのが入ってこないようにしなきゃいかぬわけです。いまある三つの岳南排水路、さらに四、五とつくろうとしているんだが、これは漁民の反対でつくれなくなっている。そういう問題をどういうようにしていま整理していこうとしているんですか。これはひとつそれぞれの局長さんから伺いたいのですが、長官はその元締めですから、そういう対策はすでに協議されたのでしょうか。そうしていま、具体的にこういう対策を立てて、田子の浦港を国際貿易港として運用できるような方法にもっていく、それから漁民に対しても損害のないような方法でやっていく、そういう具体的な計画を相談されたのでしょうか。されておったら、それをひとつここで発表してもらいたい。
  43. 西川喬

    説明員(西川喬君) 田子の浦の処置につきましては、もとが排水のほうに起因しているものでございますから、経済企画庁が中心となりまして、すでに関係各省の第一回の会議を開いております。そのとき議論されましたことといたしましては、田子の浦の対策といたしましては、当面の緊急対策、それから暫定対策、それから恒久対策、この三段階が考えられるかと思います。  当面の緊急対策といたしましては、現在港湾の機能が麻痺しようかという寸前におちいっている状態でございますので、それらのヘドロの処理ということでございます。いろいろ検討いたしまして、現在の検討の段階におきましては、結局は海洋投棄をせざるを得ないのではないだろうか。海洋投棄するにつきましては、いま先生のおっしゃいましたように、駿河湾沿岸の内岸に、内浦に捨てることにはこれはもちろん問題がございます。相当外洋に持って行って捨てるということにいたしましても、今度はほかのほうへの影響も生ずるわけでございます。現在では海洋投棄の問題につきまして、投棄場所につきまして、どこへ捨てましても問題は生ずるわけでございまして、投棄の方法その他につきまして、何らかのいい考え方がないかというようなことで、水産庁のほうでも御検討願っておるようなことでございます。  それから硫化水素の問題につきましては、しゅんせつの、ヘドロを吸い上げる方法につきまして考えませんと、従来やっておりましたようなしゅんせつ方法によりますと、これは空気に触れますと硫化水素を発生するわけでございます。その方法につきましては、運輸省のほうで検討いたしております。  その当面の緊急対策に続きまして、暫定的な対策といたしましては、幾らしゅんせつを繰り返しましても、ヘドロが出ている限りは、海水の中から浮遊物質が出ている限りにおきましては、またたまっていくわけでございます。当面早急に、SSだけの暫定基準を早急にかけるということに考えております。これはすでに水質審議会の中におきまして部会を設置いたしまして、目標といたしましては、十月にはSSに関する暫定基準をきめたい。その基準に基づきまして、各企業は早急に除害施設を設置してもらいたい、このように考えております。  恒久対策といたしましては、これはSSだけではございませんで、COD、いわゆる汚染の原因となっておりますCODその他パルプ廃水といたしましての全般的な水質基準規制基準並びに先ほど建設省のほうからも話のございました岳南排水路の終末処理場の建設計画、これらのものを総合いたしまして恒久対策を——暫定的な基準をきめまして、それに引き続きましてこの恒久対策関係省の間で確立したい。  現在、そのような段階で第一回の会議を経て、引き続きまして早急に第二回の会議を開催したい、このように考えております。
  44. 鈴木強

    鈴木強君 恒久的な対策は、まあ私はきょうはあまり言いませんよ。それはそれでひとつやってもらいたい。とりあえずの対策なんですが、海洋投棄になると、港則法二十四条との関連もありますね。それで、いま県が計画しているのは、御前崎、御蔵島、野島崎を結ぶ三角点の沿岸に投棄しようと考えているようだが、そこはたまたまサバとアジのいい漁場になっている。したがって、魚族資源ということから、当然漁民は反対するわけですね。そうしてどこへ捨てるかというと、黒潮の外のほうの近海へ投棄をすればいいじゃないかということも考えられるわけですがね。それにはしゅんせつ船、運搬する船の問題とかあると思いますけれども、そういうことは一体どうなんですか。水産庁もきょう次長に来ていただいておりますけれども、一体駿河湾の魚族保存、資源保存について、どういう考え方を持ってこのヘドロ問題はながめていますか、考えていますか。それぞれ対策を、皆さん御意見出していると思いますが、考え方を教えてほしい。
  45. 藤村弘毅

    説明員(藤村弘毅君) 水産庁といたしましては、原則としては海洋投棄に反対でございますが、現在の緊急事態としてはやむを得ない、この場合、先生が御指摘のように、黒潮の外側ということを考えておりますが、黒潮は時期によりまして、年によりまして沿岸に非常に近寄るところがございますが、現在一番近いところでも距岸三十マイル程度が本流のまん中になっております。そこでそれの外側に投げなければなりませんが、伊豆七島がございますし、ただいま御指摘のように、伊豆七島の西側には銭洲その他サバの好漁場がございますので、伊豆七島をはずれた黒潮の本流がいいのではないかということで検討中でございます。
  46. 鈴木強

    鈴木強君 長官に、対策本部長にひとつ締めくくり的に伺いたいのですが、いろいろそれぞれ苦労はされていると思いますけれども、いま申し上げたような当面緊急にやらなければならない対策を、これは県にまかしておくのですか、もっと中央が積極的に乗り出してやるべきではないかと思うのですけれども中央対策本部長として一体どういうふうにこの問題を解決していこうとしているのか。現地へどなたか責任者行っているのですか、ただいま政府としても、大臣あたりが出かけていくとか、そういうことはしてないのですか。もっと真剣に現地とも接触をとって具体的な対策を立ててもらいたいと思いますが、どうですか。
  47. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 田子の浦の場合は具体的な加害企業というものが明確でありますから、これはやはり企業が一義的に全部、そのようなことの起こらないように、起こったことのあと始末をするようにという義務づけを受けなければならない典型的な場所だろうと思うのです。しかし、企業側の自覚とか実行とかいうものを待っておったのではいまのような状態は日々悪くなる一方でありましょうし、また、経企庁の段階限りにおいて検討中の方向である海洋投棄ということもやはり漁業者ということも考えなければなりませんから、どのような技術があるのか、たとえば埋め立てのときに海底のヘドロを吸い上げて地面をつくるわけでありますが、そのような方向で有毒なるものを処理しながら焼却その他の手段によってしゅんせつが可能なのかどうか、これら具体的な検討を専門家の結論に待たなければならない点が残ると思いますけれども、少なくとも政府のほうにおいても積極的に県と連絡をとって、そしてこのような事態の改善、そしてすみやかな田子の浦港の生き返りというものをはからなければならぬと考えております。
  48. 鈴木強

    鈴木強君 運輸省は一体この海湾の保全という立場に立ってとりあえずどうするのですか。いま長官からそういう点も触れてお答えがあると思ったから私は聞かなかったのです。もうすでに麻痺寸前でしょう、今月一ぱいでおそらく航行不可能というふうに聞いておりますが、これは港湾の保全の上からどういうことを考えるのですか。
  49. 栗栖義明

    説明員(栗栖義明君) 港湾局長でございます。ただいま御議論がありましたように、当面まず麻痺寸前の港のしゅんせつの問題が出てまいります。先ほど御議論がありましたように、いろいろなことを考えておりましても非常に難点がございますので、いまのところいわゆるバキュームカー式に吸い上げまして、ふたをして外海に持っていくということしか方法がないのじゃないか、当面でございますが、それにつきまして水産庁で御検討願っておりますが、ここ二、三カ月の間とりあえずそういう処理をいたしたいというふうに考えてございます。
  50. 鈴木強

    鈴木強君 国際貿易港としての機能が停止しないようにとにかくやってもらわなければ、あなた責任とらなければいかぬですよ。そういう確固たる信念でやれますか。
  51. 栗栖義明

    説明員(栗栖義明君) どうしても田子の浦港の維持ということは重要な問題でございます。技術的にいろいろといままで検討してまいったわけでございますが、他に被害を与えないで、特に硫化水素の発生を押えて捨てるという方法はいまのところ外洋投棄の方法しかないわけでございます。それにつきまして、どこに捨てたらいいかということと、それからそれにあまり遠くに行きますとそういう捨てる船、器材その他がございませんので、それとの調整をいま検討していただいている最中でございますが、話さえつけばさっそくにもかかりたいというふうに考えております。
  52. 鈴木強

    鈴木強君 最後に、政務次官が御都合で午前中しか出席できないそうですから、お許しをいただいてちょっと長くなりますけれどもお願いいたします。  私がきょう伺いたかったのは、先般の光化学スモッグについて質疑をいたしてみますと、この光化学スモッグがどういう現象で起きてくるかということの輪郭はつかめておりますが、たとえば起きた光化学スモッグによって、オキシダントによって、人体にどういうふうな影響を与えるかということについても的確な衛生学上の結論が出ておらない、これから大学の先生方に集まっていただいて研究するというような答弁を聞いて、日本の衛生医学、特に公害については前から叫ばれておったにかかわらず、その対策がきわめてお粗末である。いま、国立衛生研究所というのがございますね、こういうところでもう少し思い切った公害に対する研究をやれないものでしょうか。私たちはもっと予算をかけてもいいですから英知を集めて、日本の医学は進んでいるわけですから、ひとつ思い切った研究所をつくって対策を立ててほしいと思うのです。きょうは戒能先生がいらしておりますけれども、いまの問題と関連があるわけですけれども、いろいろ東京都としてもそれぞれ当面の対策を御苦心されてやっていただいてわれわれ感謝しておりますけれども、しかし、全体的な国の研究体制というものがおくれておるわけですから、ただ単にこれは医学的な問題だけではなくて、公害全体についてもそうだと思うのですから、ですからいま東京都でおやりになってもいろいろな面で国との制約もありできないで苦慮されておる点もあると思います。だからあなたから見られた、先生の公害研究に対する御所見がありましたら、この際伺いたいと思います。
  53. 橋本龍太郎

    説明員橋本龍太郎君) ただいま御指摘の、最初に例として出されましたいわゆる光化学スモッグあるいは硫酸ミスト等の被害についてそれに対処し得べき方法が必ずしも明確ではないという御指摘はそのとおりでありまして、これは健康被害に対する問題を直接担当する行政官庁としてはなはだみっともない次第であります。この点は最初おわびを申し上げておきたいと思います。  この光化学スモッグそのものがきわめて気象状況その他に左右されるものでありますだけに、必ずしも従来からその発生の原因その他について明確な状況等も得られませんでした、しかし、また具体的な例として先般発生いたしましたものが一つの大きな、初めての形でありましただけに非常に対処する事態等についておくれを来たしておりました。今日の時点におきましては公衆衛生院等関係機関を最大限に駆使し、その対策を考える以外にその手段を持ちません。しかし、基本的に申し上げまして、現在の研究機構そのものを駆使してまいりますには一つの限界がございます。第二次世界大戦にこの国が敗れましてから今日までの間にこの国はある意味ではかけ足で国力と申しますか経済力と申しますか、いわゆる産業を育成することに全力を注いでおりました。その間には必要と思いながらある程度抜けていたものも当然あるわけでありまして、その意味では現在の日本のいわゆる専門家の育成機関たる大学の教育内容等についても実は問題はあるわけであります。そして、直接生産に結びつく部門において優秀な人材はむろん育成をされてまいりました、むろん衛生工学その他においても、都市工学その他においても、それぞれ人材の育成はされております、必ずしもこれは十分であったとは申されません、そうした意味では今日までの私どもの役所に関係のある研究機関等においても、その体制その他において決して十分なものとは申せなかったわけでありまして、今日私どもが国立公害衛生研究所というものをつくりたいと世間に対しても申し上げ、関係各省に対しても協力要請をし、また隣におられる公害対策本部本部長に対してもその中身等を御説明申し上げ、御協力をお願いしておるのもそのような事情が裏にあるからであります。絶対の問題として公害対策の実効をあげていくために必要なことは、公害の人体あるいは生活環境等に及ぼす影響の科学的な調査研究というものが行なわれなければなりませんし、また、その科学的な成果というものに基づいてその施策が実施をされていかなければなりません。今日までむろん明らかになっておるものについては具体的な対策もそれぞれにとられております。一つの例を申し上げるならば、あるいはカドミウムでありますとか鉛でありますとか水銀でありますとか、一部の特定の金属についてのその人体に対する影響等についてはデータ等もすでに明らかにされておりますけれども、微量重金属全体をながめた場合に、はたしてそれら以外の微量重金属が人体にどのような影響を与えるか、こうした点は必ずしも明確ではないわけであります。また、現在いわゆる公害基本法の中に土壌汚染を私どもが取り入れていただきたいということを本部長の手元で御調整を願っておりますが、従来考えられていなかった土壌中の微量重金属というものが一つの大きな人体の汚染源として世間にその姿をあらわしてきたと、そういった実態もあるわけであります。そうした考え方がその基礎になりまして、いままでの、地方自治体の御協力を得、あるいは各大学等の御協力を得、それぞれ固有の場所においてばらばら研究等をお願いし、それをまとめていくだけでは完全な公害対策というものができないということから、こうした研究所というものを考えてまいりました。そのねらいとするところは環境汚染と健康との間の関係全般についてそれを総合的に調査研究を行ない、同時にそれを具体的な施策の上に反映をしていくその前段階まであらゆる部門における研究調査を行なっていくことであります。この機関をつくりますために、これは私どもとしてもどの程度の規模になるかいまだに最終的な構想において決着は見ておりません。それがごくわずかな金額でできるものでないことはむろんおわかりのとおりでありますし、いわゆるシンクタンクといわれている非常に多くの分野から、従来なら必ずしもこうした研究部門に必要としないような立場の方々までも含めた非常に幅の広い研究機関にならなければならないことも事実であります。それだけにこれはただ単に行政官庁としての厚生省だけがその構想をまとめることもいかがかと思いまして、国立公害衛生研究所というものの設立準備委員会というものを実は設置をいたし、いろいろな方々にその中にお入りをいただきました。すでに第一回の会合から非常に多くの御議論が出ておりますが、参考までに申し上げますと、その準備委員会には、たとえば京都大学の工学部の教授である石原藤次郎氏あるいは相模中央化学研究所の理事長である内田俊一氏あるいは東大の名誉教授としての茅誠司先生あるいは木原生物学研究所の木原均先生あるいは日本医学会の会長さん、日本医師会の武見会長あるいは公害に現実に悩んでおられる自治体の代表としての千葉県の友納知事あるいは電力中央研究所の理事である堀義路先生、国立予研の柳沢所長、埼玉大学の和達先生、非常に広範囲の方々にお集まりを願っております。そしてその中から生まれてくるものは最終的にどのようなものになるか、これは必ずしもその図は今日では明らかではありません。ただ基本的に言えることは、従来国の研究所あるいは研究機関というものは、そこの正規の職員だけがその中にこもって研究に励み、そこに蓄積された資料というものは民間の方々あるいはその研究機関外の方々が駆使していくには、きわめて貸し出し等の上にも困難を感じるケースがございました。またそれと同時に、優秀な研究者でありながら、そうした国の機関に縛られることをきらってその中にお入りにならない方々もございます。公害衛生研究所というものがそのようなものであってはならないということから、基本的に言えること、これは、その研究所の研究施設一切あるいは資料の一切、これはどなたがお使いになろうと、十分それを活用していただく、そして民間の方々が特定のテーマをお持ちになって、そこの資料をお使いになりたい、あるいは研究施設を使われたいということであれば、どうぞお使いくださいということを申し上げられる状態にしていきたい、そのためには相当余裕を持った設計も必要でありましょうし、能力自体も必要であります。むしろ研究所本体の職員というものは、常に幅の広い活動のできる状態をつくっていきたいということで、今日ある意味では私ども厚生省としてこうしたいという形を示さずに、この準備委員会の方々にその構想をぶつけまして、そして今日私どもが当初予想したよりもはるかに大きな規模のものを準備委員会の方々はすでに御議論になっておられます。なお第二回、第三回の御議論伺いませんと、準備委員会の方方からどのような御意見が出てくるものかはっきりはいたしませんが、むしろ国の研究機関とはいうものの、国の研究者だけが特定の研究者だけが手がけるような形ではなく、あるいは民間の方々でも堂々とそこを使って御自分の信ずる研究のできる体制をつくっていきたい、これが一つ基本であります。
  54. 戒能通孝

    参考人(戒能通孝君) 第一の点でございますが、光化学スモッグの件でございます。これは七月十七日以降かなり顕著な光化学スモッグ現象がございました。この光化学スモッグ現象の一番基本のものが窒素酸化物系統のものであるかあるいは炭化水素系統のものであるかまだはっきりしたことはわかっておりません。いずれこれは解明しなければならない点だと存じております。しかし、光化学スモッグのほかに、光化学スモッグと言ってもいいだろうと思いますが、七月十八日の午後一時過ぎごろ立正学園高校に落ちてきたものは、これは硫酸ミストだと考えて間違いないんじゃないかと思うのでございます。ただそこで倒れた女子高校生八人がございますが、その八人について見ますと、胸が苦しいというほかに手足の麻痺という現象が起こっております。手足の麻痺という現象は、これは必ずしも硫酸ミストの成果ではないようでございまして、単純な硫酸ミストの影響であったということもできないようでございます。したがって、光化学スモッグと硫酸ミストの複合現象であると考えないわけにはいかないようでございます。どちらであるとだけ断言することが現在できないわけでございます。  ところで、硫酸ミストが一つの主体になっていると仮定いたしますと、立正学園近郊に大量の石油をたくような工場があるかというふうにさがしてみますと、これはございませんでした。近所に何か硫酸的な、亜硫酸ガス的なものの発生施設があるかということをさがしましたが、結局ないわけでございます。結局そうなってまいりますと、かなり濃厚な亜硫酸ガスが、気団、一つの気流に乗って相当遠方から流れてきたと考えないわけにはいかないようでございます。具体的に申しますと、おそらく川崎方面というふうな、ちょうど当日南南西の風が吹いておりましたので、南南西方向から流れてきたと考えなければいけないように思うわけでございます。その流れてきた亜硫酸ガス類が、当時かなり湿度が高うございましたので、水滴に結びついてしまったというふうに考えなくてはいけないようでございます。しかもその水滴と申しましても、これは純粋な水ではございませんで、何らかの化学的な成分を含んだ水でございますので、それにくっついて落ちてきたんだというふうに考えなければいけないわけでございます。落ちてきた理由もはっきりわかりませんが。で、この辺は大体におきまして舗装道路でございます、舗装地でございます。ところが、立正学園の運動場だけは舗装してありませんでした。したがって、当日温度がかなり高かった舗装地に当たった空気は相当速い速度で上昇を続けていたわけです。ところが、立正学園の上にあった空気というのは、これは温度の上昇がそれほど著しくなかったのではないか。そこでつまり滞留現象が激しく起こって落ちてきたんじゃないか。しかもそれが八人の高校生にかなりの重症の影響を与え、そのほか数十人の人たちに軽症ながら影響を与えたということになりますと、相当大量の亜硫酸ガスが近所にあったのではないかと考えないわけにいかないようでございます。こうした硫酸ミスト類の影響あるいは光化学スモッグの人体影響ということになってまいりますと、どこにどんな形で落ちてこないかわからないという点に私たちたいへん困った問題が起こったと考えているわけです。極端なことを申しますと、東京の空が一種の化学工場になってしまったと、そしてそこには何らかの触媒的な物質まで飛んでいるんではないか。触媒的な物質がどこから来たかもわかりませんけれども、自動車の排気ガスから来たか、あるいは石油の燃焼の際に石油の中にある重金属類が飛んで来たのか、そこら辺もはっきりわかりませんけれども、要するに東京の空で化学変化が自由に起こり得る状態になったということは、これは非常に重要な問題であって、これは大気汚染について一つの時期を画したのだと、したがって、この大気汚染一つの時期が画されて、今後ああした被害者というものがもしふえるようなことがあってきますと東京自身の問題になってくる。東京に住んでいる一千万人の問題になってくる。しかも場所は住宅専用地でございまして、たいへん環境のいいところでございますけれども、そういうところで被害が起こるというふうなことになったら非常に困ったことになると思っているわけでございます。  そこで問題は、こうした化学変化とそれからその人体影響というふうなものもやはり私のほうでも勉強してみなくちゃいけないと考えているわけです。ただ非常に困ったことに、医師、医学者にお尋ねいたしますと、医学者はどうも病気という現象については非常にこまかい研究をなさいますが、病気と完全な健康の中間状態というものについての研究というものが乏しいように思うわけでございます。病気と健康というのは、これは現象としては二つの極でございますが、その二つの極の中間にいろんな段階があるんではないか。病気から健康に移る段階、健康から病気に移る段階、各種の連続的な線があるんではないかと思うのでございます。その連続的な線のどの部分をとって勉強するかということが、これが実を申しますと公害の人体影響に関する一番の重要な問題になってくるんではないかと思うんでございます。だから私どもといたしましては、したがって病気という状態だけを研究対象にしたくない。で、完全な健康と病気の間に各種の中間段階がある。病前状態あるいは病気準備状態という段階がある。そこから研究を始めていきたいと思っているわけでございます。で、残念なことに病気準備状態もしくは病前状態というものから研究してみようという医学者の方が存外少ないわけでございます。したがって、その医学者をどうして組織していくかということが私たちに課せられた任務の一つでございます。従来、政府のほうで病気の研究といいますると、ビールスの研究あるいはガンの研究なんかに対しては相当多くの支出をなさいまして、そして援助していらしゃいますけれども、病前状態に関する研究というものについては存外おくれていたんではないか。私のところにある保健部というのは非常にささやかなものでございまして、いま厚生政務次官のおっしゃったような大きなものではございません。全くささやかなものでございまして、わずかに医師二人が勤務しているという状態でございますけれども、しかし、研究対象はあくまでも病気ではない、病気準備状態という、そこに研究の出発点を置きたいというふうに考えているわけでございます。その結果、どんなものが出てくるか、はっきりしたことはいま申し上げることができません。ただそれによりまして、申し上げることはできませんけれども、しかし、ともかくそれによりまして光化学スモッグの健康影響というふうなものが、これが単に病気という観点からでなくとらえることができるんじゃないか、まあ硫酸ミストで倒れた立正学園の女子高校生なんかは明らかに病気でございますけれども、その以前の段階でどんな健康影響が起きてくるのかという、ちょっとむずかしい問題でございますけれども、その点を立脚点にして勉強してみたいと思っているわけでございます。で、残念ながら私が東京都の公害研究所の所長になりましたのが昨年の五月でございまして、その後保健部長が決定いたしましたのが昨年七月でございますので、まだ研究の成果があらわれる段階まで達していないわけでございます。しかし、厚生省も国立公害衛生研究所というふうなものをおつくりになるというお話でございますので、そちらのほうもできるだけ利用さしていただいて、病前状態段階研究というものを私たちもやっていきたいと思っているわけでございます。
  55. 久次米健太郎

    理事久次米健太郎君) 質疑の途中でございますが、飛鳥田参考人が御出席をしていただきましたので、この機会に一言ごあいさつを申し上げます。  本日はまことに御多忙にもかかわりませず、本特別委員会に御出席くださいましてありがとうございました。ただいまから先生の御意見をお伺いいたしまして、調査参考にいたしたいと思いますので、何分よろしく御協力のほどをお願い申し上げます。
  56. 占部秀男

    占部秀男君 飛鳥田市長さんと戒能先生に簡潔にお伺いをしたいんでありますが、いまこの委員会では中央公害対策本部ができました機会に、副本部長責任者である山中国務大臣においでを願って、ただいままで御案内のように、政府側の、政府としての基本的なこの問題に取り組む姿勢も特に基本法の問題あるいは地方への権限委譲の問題、企業責任の問題、こうした問題でいま審議をしておるわけであります。そこで私はお伺いを両先生にしたいんでありますが、国のほうは国のほうとしてやっておりましても、現場で実際公害対策責任に当たるのは何といっても都なりあるいは大都市なりの地方団体であります。そこで今後は地方団体に大きく働いてもらわなければならないと考えているわけでありますが、地方で実効を得るようにするためには、いま対策本部ができたこの機会に、たとえば行政面の権限はこうすべきではないか、あるいはまた財源問題についてはこうすべきじゃないかと、その他いろいろとお気づきの点があると思うのでありますが、飛鳥田市長さんには行政責任者としての立場から、また戒能先生には公害問題そのものに取り組んでおられる所長さんの立場からひとつ御意見をお伺いしたい、かように考えておるわけであります。
  57. 飛鳥田一雄

    参考人飛鳥田一雄君) お呼び出しをいただきまして、ぼくらも自分たちの考えておりますことを申し上げる機会をいただきましたことは、たいへんありがたいことだと思っております。  まず第一に、直接のお答えではありませんけれども公害は突如としてあらわれるものではありません。これは地震か火山の爆発のようなものではなく、当然起こるべくして起こってくるのでありまして、この起こるべくして起こってくるということを考えてまいりますと、私たちはできるだけ先手先手と打って問題を解決していかなければならないのであります。そういう点において、私たちはまず第一に、国自身基本的に公害基本法その他において健康を守るという面と、それから企業との調和あるいは経済との調和という二つの線を出しておられるのでありますが、まずこの企業、経済との調和というような面を除いていただきたい。そのことが少なくとも生命の問題は他にかえがたいものでありまして、この基本がすわりませんと——個々の小さな行政的な権限云々の問題ではなしに、基本がすわりませんと、地方自治体といえども働きようがないのであります。そういう点でまず基本をただしていただきたい、これが地方自治体の第一のお願いであります。と同時に、地方自治体が私たち痛感いたしますのは、何といいましても地方自治体オンリーで、独立王国として問題を処理していけるわけではございませんので、やはり政府との関連性を持っていきます。その場合に政府はあまりにも関係官庁が多過ぎまして、いろいろな基準が、いろいろな意見が各関係官庁から出てまいりまして、私たちとしては非常に応接に困るのであります。したがって、今回公害本部を御設定になられたということは、私たちとしてもひとつの大きな前進であろうと思いますが、しかし、現に市民は公害に悩んでおるのでありますから、できるだけ早く行政的にも機構的にも整備をしていただきたい、こういうことを私は第二にお願いをしておくのであります。  そこで、地方自治体の問題に移りますが、公害問題について実際に処理をいたしておりますのは市町村であります。しかし、市町村が公害問題についてどういう権限を持っておるのかと申しますと、ほとんど権限がないというところに問題があります。権限はなく、しかも事実市民のためにわれわれは何かをなさなければならないのであります。こういう問題を私たちはやむを得ず御存じのように、横浜方式というような形で、企業と横浜市の私的契約を結んでいくというような形で処理をいたしておりますが、これはやむを得ざるにいずる手段でありまして、理想的なものだとは私たちは考えておりません。そういう意味で、私はまず第一に、地方自治体に対して十分な権限を与えるということを考えていただきたいのであります。  もう一つ問題は、公害問題というのは、基本的には全国共通でありながら、その地域地域によって非常に特殊性、特徴を持っているのでありまして、一元的に国なり県なりで問題を解決するということは私は、不可能だろう。そういう意味でぜひ地方自治体に大幅にこれを是正していく権限を与えていただきたい、こういうふうに私たちは思っているのであります。  さらに、そうした権限を持ちましたところで、私たちは企業との責任、企業のいわゆる責任を追及する、あるいは企業の社会的な役務を果たしていただくということについてかなり腰のすわった要求を出していくことができるだろう、こう存じております。もちろん各市町村がおのおのの形でその権限を実行してまいりますためには、かなり広範な財政的なバックアップを必要といたします。これは当然その市町村だけが負担すべきものではなく、国がやはり同様その責任に任じていただいてよろしいものだ、こう私たちは考えております。お尋ねでありますので、ごく概括的なことを申し上げました。
  58. 戒能通孝

    参考人(戒能通孝君) 私若干ひまがございますので、もし飛鳥田市長に御質問ございましたら、午後にしていただいてもけっこうでございます。
  59. 占部秀男

    占部秀男君 いまおおよそ市長さんが仰せになったような点が、この委員会でも問題になっておるわけなんですが、市長さんにお伺いしたいのは、市町村にはほとんど権限がないという問題なんですが、権限委譲の場合に、私どもの考えとしては、知事やあるいは大きな政令都市その他の公害の特にひどいようなところの市長さんに対する機関委任のような形でなく、市町村なら市町村としての固有事務として公害関係をもっとはっきりと規定していくべきじゃないかと、こういうふうに考えておるんですが、そういうような点はいかがでございますか。
  60. 飛鳥田一雄

    参考人飛鳥田一雄君) お説のように、市町村の固有事務にしていただきませんと、その地域地域の特殊性に対応することができません。ただ、画一的な全国基準でお話を実践するというだけでは問題解決しないだろうと思います。したがって、市町村の固有事務にしていただきたい、こう私も考えております。
  61. 占部秀男

    占部秀男君 もう一つ伺いしたいのは、市長さんは簡単に、時間の関係もあるので、財政の問題、財源問題には、あまり詳しくは触れられなかったのですが、いま交付税方式が部分的にとられておるんですけれども、こういうものだけではどうにもならないんじゃないかと思うんですが、もう少し市の立場からこうした財源のあれをすべきじゃないかというお考えがありましたら、その点をお伺いしたい。
  62. 飛鳥田一雄

    参考人飛鳥田一雄君) 私は交付税のような形でいただくというのには限界があると思いますし、そうしてそのことは間違いだろうと思います。当然公害はその原因を発生するものがあるから公害が出てくるのでありまして、したがって、公害発生の責任、あるいはその公害発生のおそれあるものは当然その財源について負担をしなければならぬのじゃないだろうか。したがって、一定の水準以上の企業あるいは現に公害を出すおそれあると市町村が認めたような企業に対して、当然税あるいは負担金のような方式で支出をせしめるべきものじゃないだろうか、こう私たちは思っております。  それから一方にたとえば逆転層の研究をいたしますについても、私どもどうしても少なくとも二年三年その実験を繰り返さなければなりませんでした。すなわち横浜には大体高度二百メートル前後のところに一定の条件が整いますと逆転層ができるというようなことを調査をいたします。この調査費は、これは私はやはり市町村自身が負担してよろしいのじゃないだろうかというふうに考えております。したがって、一般的な調査費、こういう問題については市町村の支出、しかもその相当な部分については交付税で考えていただく。さらに個々の問題に至りますと、やはり当然企業負担と考えていくべきだろう、こういうふうに思っております。
  63. 占部秀男

    占部秀男君 いま最後の市長さんが言われた企業負担の問題ですね、これは国会の中でもたびたび問題になり、きょうも問題になっているわけなんですが、やはりこの企業負担の問題が制度的に一応法律ではすべきだときまっているけれども、内容的にはきまっていない。こういう中でやはり市長さんのいままでの経験ですね、だいぶ横浜でやっておられますが、企業間とのあれで非常にやりにくい点が相当出てきておるのじゃないかと思うのですが、そういう経験的な点、二、三お伺いしたい。
  64. 飛鳥田一雄

    参考人飛鳥田一雄君) 私のほうでは、特定会社と私的契約を結びまして——現在は法律かありませんから私的契約を結びまして、横浜市とその会社とが共同で研究した結果、一定の条件を整えることを要求いたします。そうしてその条件を成就してくださらない場合には横浜市が直接その設備を行なう。横浜市が代行して行なってしまう、工場の設備をですね。ずいぶん乱暴な話であります。そういう形をとり、その代執行をいたしました費用は請求することができるという契約にしてございます。しかし、これはあくまでも請求することができるという契約でありまして、それを履行していただけませんときには、その契約を基本として訴訟を起こさざるを得ない——私的契約ですから——という形になります。これは事実上たいへんな作業であります。したがって、私たちは市が一定の権限に基づいて会社に命令をし、会社がそれをやってくださらない場合には市がかわって執行する、代執行する、そういうものについて法律権限内でありますならば当然これを訴訟などに持っていかずに取れる、こういう形をとっていただけるとすれば、かなり腰も強くなり、りっぱな行動がとれるのじゃないだろうか、いまのは場合によりますと精神規定のような形になりかねないのであります。私は実際やるつもりでいますけれども、もしそういう場合が起これば、しかしやはり三年、五年と訴訟をやることになりますと、これはちょっと精神規定に近くなります。したがって、法律上そういう権限を与えていただけるとたいへん助かる、こういうことです。
  65. 内田善利

    内田善利君 いままで公害問題に対していろいろ問題が提起されておりますが、カドミウム関係、あるいは重金属関係あるいは亜硫酸ガスあるいは一酸化炭素等いろいろ問題が起こっておりますが、先ほども鈴木委員から問題が出されておりますように、パルプ工場ですが、全国的に製紙工場は非常に問題が多い、このように思うわけです。   〔理事久次米健太郎君退席、委員長着席〕 もうこの製紙工場の問題は早急に対策を講じなければたいへんな問題になるんじゃないかと、このように思うわけです。私もせんだって鹿児島の川内川の状況を見に行ったわけですけれども、ここにパルプ工場がございますが、有名なウナギとかコイとかあるいはシジミ貝とか、そういったものが全然とれなくなった。また接点方面にいる魚も異臭魚あるいは異形、変形魚といいますか、そういう異形の魚がとれる。私は事実その魚を見ておりませんけれども、そういった実情でその上流にあります中越パルプの川内工場を見てまいりましたが、一口に言いまして工場もお手上げの状態である、そういう感じがいたしました。  そこで一番最初にお聞きしたいことは、水域指定をいつされるのか、水質基準はいつ決定される見通しなのか、まずお聞きしたいと思うのです。
  66. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 答弁願う前に、それでは両参考人の方に申し上げますが、貴重な御意見を開陳していただきましてありがとうございました。御意見参考にいたしまして今後十分に検討してまいりたいと存じておりますが、本日はどうもありがとうございました。  それでは質疑を続行します。山中公害担当大臣
  67. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 飛鳥田市長からたいへん第一線の実務者として、しかも典型的な公害地区の市政の責任者としての御苦労を承りまして、国の体制の不備あるいは今日までの公害に対する国と地方自治体のあり方等につき、手抜かりのあった点等を具体的に御指摘をいただきまして、意欲のある市長さんであってなおこのとおりのむずかしい環境に置かれておるわけでありますので、ただいまの御意見を私も参考にさしていただきまして、いま急速に作業いたしております国と地方団体との基準設定、権限委任あるいはそれに対する財政措置、企業の負担等について、すみやかに第一線市町村長さん方の御苦労に報いる作業をしたいと考えます。
  68. 西川喬

    説明員(西川喬君) 川内川につきましては、すでに現地部会並びに第一回分中央部会を終了いたしております。水質基準設定の基本方針は大体審議をいただいております。現在基準案の作業中でございますので、この次の部会には基準案を審議会のほうに諮問いたしたい、このように考えております。大体目標といたしましては九月中には水質基準を設定することにいたしております。
  69. 内田善利

    内田善利君 九月中には水質基準を決定するということですが、あそこの終末処理施設でございますか、沈でん槽はもうごらんになったと思いますけれども、スラッジが沈でん槽の上まで来まして、その上を廃液が素通りしているというような状況を私は見たわけですが、こういう状況では幾ら水域指定をされても、あるいは水質基準をきめられてもどうにもならないのじゃないか。会社側にその施設を改善したらどうかと申しましたら、   〔委員長退席理事久次米健太郎君着席〕 資金繰りその他の面で非常に支障を来たしておる、公害防止事業団にも融資をお願いしておりますがというようなことでありまして、それでできますならば水質基準設定と同町に公害融資の面も大幅に考慮していただいて、廃液処理施設を早急に改善するよう手配できないものかと、このように思うわけですが、通産省のほういかがでしょう。
  70. 柴崎芳三

    説明員(柴崎芳三君) 中越パルプの川内工場がいろいろ地元で問題を起こしていることはわれわれも前から連絡を受けておりまして、慎重な態度でその監視、監督をしているわけでございますが、現在沈でん槽につきましては五つの槽がございまして、その五つの槽を交互に使いまして、ただいま先生から御指摘のオーバーフローするような形はできるだけないように厳重に監視しておるつもりでございますが、たまたま先年洪水がございまして、その洪水によりましてそこにたまっておった汚泥が一挙に流れ出して非常に被害状況を加速化させたというような実情でもございましたが、ただいま企画庁の説明にありました本年の九月に基準が決定する段階におきましては、さらに本施設は十分に再検討の上より合理的なより確実な形のものに切りかえさせたい、かように考えております。公害防止事業団に対する申し入れにつきましてはまだ基準が決定していないせいもあるかと思いますが、具体的な計画を持って申し込みに来ておる事例はないようでございます。ただこういうものに融資するのは公害防止事業団の非常に大きな役割りでございますので、会社の信用度その他につきましてはまた別途いろいろの形の保証その他の措置も考えまして積極的に融資をさせ、かつ設備を充実させるという方向で措置いたしたいと考えております。
  71. 内田善利

    内田善利君 なぜそういうことを言うかと申しますと、あすこは水質基準設定のための調査を何回もやっておられますが、川の水のPHにしても、COやSS等のため魚も住めなくなったし、非常にいま危険な状態にあるから、これをどうしたらいいかということになりますと、スラッジを捨てる……、いままでは川内市民も了承してあちこち捨てておりましたけれども、最近はその臭気その他の影響でもう聞かなくなった、もう捨てる場所がなくなった、そういうお手上げの状態です。焼却する方法、あるいは先ほどお話がありました海洋投棄というようなこともあるかもしれませんが、とにかくいまお手上げの状態である。そういう状況でありますので、これを緊急に改善する以外に方法はないのじゃないか。そういうふうに思ったからお聞きしたわけですが、それと同時に、いままでの公害対策が全部水域指定をして水質基準がきまらないとどうにも手が打てない。そういう状況で非常に私どももこの法的な問題について悩んできたわけですけれども、幸いにして中央公害対策本部ができましてこういった問題を早急に解決していってもらいたいと、そのように私も感じておったわけですが、この問題につきまして対策本部の副本部長はどのように考えられておるのか。次の臨時国会基本法改正をするということでありますが、その法改正は当然やっていただくものとして中央公害対策本部が直ちに実践力のある対策本部であっていただきたい。いまは緊急を要する国民の切望であり、熱望である、そのように感ずるわけです。田子の浦にしても、日本列島あらゆるところが汚染されておる。これに対して早く手を打っていただくための公害対策本部と私は解しておるわけですが、あるいは閣議決定等でやるべきことはどしどしやっていただきたい。いままで水質のことに例をとりましたけれども、水域指定をするのに二年も三年もかかって、そしてまた一年くらいかかって水質基準を設定する、そのあとそれぞれの省庁が手を打っていく、そういうようななまぬるい対策ではもうどうにもならないときがやってきている、そのように思うわけです。これに対して閣議決定できる事項はどんどん、実践して防止対策を講じていただきたい、もう田子の浦等もどうにもならなくなれば私は一時操業停止してでも国民の願いにこたえていただきたい、そのように思うわけですが、この点いかがでありましょうか。
  72. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 水域指定の問題は、確かに一つの水域を指定するのに二年かかるということは経企庁長官も認めておりまして、いま相談をいたしておりますのは、先ほど来概念的に申しましたが、全国の最低守らるべき最低の基準、ミニマムを国が設定するという法体系に変えまして、それから都道府県知事さんが自分たちの県内における掌握度から見て実に身近なものとして日常知っておられる河川が一本ないし二本くらい浮かび上がってくるわけでありますから、そういうものについて事前の手も含めて、事後処理ももちろんのことでありますが、知事さんの基準設定なり規制権限なりというものを大幅に認めていこうというのがその基本的ないまの姿勢であります。この方向は狂うことはないと思います。さらにそれをやるについては、先ほどの市長のお話にもありましたように、市町村の負担能力というものも考えてあげなければいけませんし、零細中小企業のことも考えてあげなければなりませんが、基本的にはそういうような公害を起こしておる企業がまず一義的に費用負担をする、費用負担区分を確定する、法定、定めるということでありましょうし、次に行なう事業について国がいま各種の補助率のかさ上げ特例等をいたしておりますが、公害の重要度にかんがみまして一般の公共事業と仕事は似ていても公害対策であるならば特別の高い補助率をもって行なう姿勢並びに法律でそれを明確にする、地方公共団体等については補助率並びに財政投融資あるいは起債等あるいは交付税等についてそれぞれの市町村がそのために特別の財政上の貧窮を来たさないようにしようという方向でございます。それで、いまこのことを作業いたしておるわけでありますが、緊急に閣議で基本方針をきめないで、一つだけ、一カ所だけあるいは二カ所だけというふうに取り上げていく問題をどうするかという御質問であったと思いますが、できれば機動隊の名のごとく、そういうふうにたとえば田子の浦については向こう三カ月一切の製紙工場に操業停止を命ずるというようなことをやっていいかどうか、ここらもたいへんむずかしい問題がありましょうし、三カ月の操業停止だけで倒れる企業も小さい会社にはあるでありましょう、ここらのところをよく研究をいたしまして、閣議決定くらいの便法でやっていかなければならない、緊急性のあるものをどういうふうに取り上げていくか、目下のところ、いまのところはどれとどれを閣議決定でやります、立法措置を待たずやりますというには前提としての多くの負担その他がございますので、少し時間をかしていただければ、だんだん明確なお答えをすることができるようになるかと考えます。
  73. 内田善利

    内田善利君 よくわかりました。  次にパルプ工場においてもう一つ問題は、クラフトパルプ工場だけかと思いますが、大気の汚染ですけれども、芒硝が相当出まして、この芒硝によってかわらに穴があいたりあるいはテレビのアンテナが腐食したり等々、いろいろ芒硝による被害が相当出ておりますが、この芒硝対策はどのようにするのか。川内工場では、一部地域に約三千万円の被害補償を行なっておるようでありますが、非常にこの芒硝対策ということがパルプ工場で問題であろうかと思いますが、パルプ工場の場合には悪臭に加えて廃液、さらに大気汚染と、もう上も下もの被害でありますが、芒硝対策についてはどのように考えておられるのか、通産省にお聞きしておきます。
  74. 柴崎芳三

    説明員(柴崎芳三君) 芒硝につきましては、クラフトパルプの廃液中に非常に多量に含まれておるわけでございまして、原則といたしましては、この廃液を完全に回収するというのがパルプ工場の大きな合理化対策一つになっておりまして、これはクラフトパルプのかすを燃焼させることによりまして、燃焼回収という方法をとっておるわけでございます。現在までいろいろ技術の進歩がございまして、この回収の割合は非常に高くなっております。ただその段階におきまして燃焼を行ないます場合に、回収されなかったものが煙突を通じまして大気中に放散されるということで芒硝の公害を起こしておるわけでございますが、現在芒硝は具体的な規制対象になっておりません関係上、通産省といたしましては、できるだけ現地の実情に応じまして、煙突の高さを高くするような行政指導を行なったり、あるいは現在基本的には新しいタイプの集じん機というものの技術開発を進めておりまして、まだ若干技術的な未検討の問題が残っておるものでございますから、具体的に設置させるまでには至っておりませんが、この新しいタイプの集じん機が完成されますと、ほとんど完全な形で芒硝の回収の役に立つということで、目下この開発を急ぎ、かつその設置を大いに促進したいという方向で考えておる次第でございます。
  75. 内田善利

    内田善利君 もう一つお聞きしたいと思いますが、川内川の場合では非常に底質が汚濁しており、黒色暗泥が約五センチくらい積もっておって、もう魚類等は生息できないというそういう状況になっております。さらに硫化物も存在して非常に危険な状態にある、そういう状況です。それと同時にスラッジ対策ですが、一体スラッジを緊急にどうするのか、どうしたら一番いいのか、この辺の問題ですね。もう捨てるところもなくなりました。そうして沈でん槽の上まで来ておる、こういう状況ですが、これに対する対策はどうしたらいいかお聞かせいただきたい。
  76. 柴崎芳三

    説明員(柴崎芳三君) 河底にたまりました汚泥に関しましては、たとえば、ケースは違いますが、北九州の大牟田川あたりにもそういう問題がございまして、この汚泥のしゅんせつについては各地方でいろいろ問題になっておるわけであります。現在基本法改正対象になっております土壌汚染のあるいは一種の形態であろうかというぐあいにわれわれは考えておるわけでございますが、いままでのところ、公害対策としての基本的なこれを解決するための措置法は法定されておりません。一般の河川のしゅんせつという方法によらざるを得ない実態でございますが、大牟田川の例では、これは県が中心になりまして、もちろん企業にも相当の資金を出させまして、一種の公共事業として河川をしゅんせついたしまして、その汚泥を排除しようというような計画があるわけでございます。現在、まだ川内川につきましてはわれわれ県当局ともこの問題を正面から取り上げて議論したケースはございませんが、できるだけ早い時期に本問題を取り上げまして、県当局と十分相談の上、解決の方法をはかりたいと考えております。  それからスラッジの問題でございますが、これは従来どこか場所を見つけて捨てるという方法が一般的に行なわれてきたわけでございますが、この方法は無限に続く方法ではございません。基本的にはこれを乾燥させ、燃焼させるための有効なボイラーを設置するという形が最後のきめ手になるかと思いますが、技術的に見ましても、あるいは資金的に見ましても、現在の中越パルプの個別ケースで考えますと、なかなかむずかしい問題がございまして、いま直ちにその方法をやれと会社に命令し、指導いたしましても会社としてはなかなかできがたい事情があるかと思いますが、その点なお今後十分会社との間で問題を詰めていきたい、かように考えておる次第でございます。
  77. 内田善利

    内田善利君 それじゃあと一問だけお願いしたいと思いますが、一般論として私は聞いておるのであって、中越パルプをもとにして聞いておるわけですが、われわれが家をつくるときでも排せつ物はどうするかというようなことを考えて、水洗にするとか、一応下水道はどこにつくるとか、まずそういうことを考えて私たちは家をつくるはずです。工場の場合でも、こんなにたくさん廃棄物がもう市民に被害を与えるようになってからその対策が一般的に講じられないということは、やはり私たち行政面の欠陥じゃないかと、そのように思うわけです。早急にこの産業廃棄物といいますか、残渣といいますか、スラッジといいますか、そういったものをどうするかという対策を講じていただきたい、このようにお願いして私の質問を終わります。
  78. 小平芳平

    小平芳平君 総務長官にお尋ねしますが、この田子の浦港の問題は六月十八日の本委員会質問したわけですが、要するに、政府委員の御答弁はいままでの御答弁と同じで、水質基準を早急にきめますとかあるいは指定水域になっていないので行政指導もから振りに終わったとか、こういう政府委員の御答弁しかなかったわけです。で、そういうところに企画庁長官なり通産大臣なりが出てこられてそして責任ある御答弁をし、また対策を立てられていけばこんなにせっぱ詰まるまでいかないうちに何らかの方法が立てられたんではなかろうか。しかし、山中長官公害担当大臣になられてこういうふうに御出席いただけることを私たちは非常に大きな前進であると、このように思います。それで再三先ほど大臣から御答弁がありましたが、指定水域、これがよくないんですね、実際問題として。結局いまの法律では企画庁長官は「関係産業に相当の損害が生じ、若しくは公衆衛生上看過し難い影響が生じ」、そうなった場合に調査を始め、水域指定をし、水質基準をきめると、こういうことをやっているからどうにもこうにもならなくなってしまう。先ほどから長官がおっしゃるように、これは根本的にやめると、指定水域制は廃止すると、このように受け取ってよろしいでしょうか。
  79. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) もっと簡単に申しますと、そういうめんどうくさいことをしないでも、日本じゅうの川も海も最低これ以上の汚濁は許さないという基準をきめまして、その姿勢でもって日本全国の水系にしても水面にしても対象にする、それを都道府県知事にさらに県の行政区域内の問題として取り上げてもらって権限委譲をしようというのが基本姿勢でございます。
  80. 小平芳平

    小平芳平君 それで指定水域制をやめて、指定水域制を廃止した結果、さしあたっていますぐパルプ工場による排水、廃液といいますか、排水によって田子の浦の問題、それから川内川の問題、こういうような問題が起きているわけです。最近、公害関係の役所をおやめになった方の述懐としまして、いろいろ手は打ったがパルプだけ残ったと、こういうことを述懐しておられたのですが、もう、そうした水質保全法を根本的に変えるという方針がきまったならば、こうしたパルプ工場に対して、大企業には大企業なりに、中小企業なら中小企業なりに、このパルプ工場の排水対策というものを厳重にすぐかけて、もしそのために臨時国会が必要なら臨時国会を開いて、そうして大企業ならば自分の工場敷地にあき地をたくさん持っているわけですから、先ほどの芒硝なんかの関係があって、たんぼやあるいは家屋敷を売ってほかへ引っ越した人がたくさんおります。したがって、そういう大工場の周辺にある大きなあき地にそうした処理施設をすぐ建設するように、そういう行政指導をしたらいかがですか。もし、三カ月ぐらいの操業中止もと先ほどおっしゃったですが、ほんとうに港が埋まってしまう、あるいは魚あるいは農産物の稲なんかも現に被害を受けて全く成長がよくない、そういう現状にあるのをごらんになって、この際、思い切ったパルプ工場に対する処置というものが必要な段階だと思いますが、いかがですか。
  81. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 基本的には私も同感であります。ただ具体的にどのような処置をとるか、法制上の処置あるいは取り締まり上の実行上の処置、これらについてはいろいろのケースによって違う問題もありましょうから、急いではおりますけれども、いますぐここで田子の浦の製紙工場を全部操業をストップさせるとか、あるいは海洋投棄がいいんだとか、あるいは吸い上げて焼却していくことが望ましいとかということが結論に到達していないわけです。そこで、たいへん答弁としては歯切れが悪うございましょうが、しばらく時間をかしていただきたい。要するにこれ以上の騒ぎにならないようにしなきゃならぬ。これは第一には企業に責任があるということだけは明確に申し上げておけると思います。
  82. 小平芳平

    小平芳平君 そこで、時間をかしていただきたいと、そうおっしゃることも無理ないと思いますけれども、非常にせっぱ詰まっているということは重々お感じだと思います。それでそうしたスラッジといいますか、廃棄物で、実際民間の人で研究をいたしましてこういうものができているんですね、工芸品とか、げたとか、あるいは建材ができているわけですね。ですから、そのまま海へ流していけば先ほど来問題のように船もとまってしまうようなひどいヘドロになってしまう。しかし、それを利用しようとすればこういうような工芸品とか、あるいはげたとか、こういうものがそれでできているわけです。こうした建材なんかが成功すれば相当大量にそれを利用できるわけです。ですから、昭和二十年八月十五日以来、文化国家日本ということが盛んに言われてきたわけですが、こうした船をつくる、あるいは自動車をつくる、新しい型の自動車をつくる、大型の船をつくる、そういう方面にはばく大な——ばく大というか、とにかくあらゆるお金と人材をつぎ込んで経済成長をしてきたと思います。ところが、こうした海に流れ込んでヘドロにしかならない、焼くか、それとも海洋投棄するか、どうにもならないものも、民間の研究者によりましてこういうような利用方法があるという、事実。ですから、これからの日本の産業として、あるいは研究としましてこうした産業廃棄物の問題を再利用するという、新しい価値を発見するという、こういう面には、公害に限りませんが、大きな力を入れていくべきだと、このように思います。で、この方は行役所もずいぶんあっちこっち歩かれたらしいのですが、結局これという取り合ってくれるところもないし、それで本人は六十五歳の方で、本人がなくなればこうした技術もこのまま、特許はとっているそうですけれども、そのまま埋もれてしまうわけです。ですから、こういう面に対する長官姿勢国務大臣としてこうした新しい技術開発にどのような姿勢をもって取り組まれるか、お尋ねしたい。
  83. 柴崎芳三

    説明員(柴崎芳三君) ただいま先生が御提示くださいましたその製品は実は私初めて見るものですから、どういう過程でどういうぐあいにつくるのか、詳細は存じていないわけでございますが、現在までの状況でございますと、パルプ廃液は非常に量が多いものですから、非常に量の多い中に、何百PPMという、これはPPM単位で申し上げますと濃度は高いわけでございますが、物質そのものから見ますと非常に薄いものがまざって出てくるということで、したがって、そういう繊維質を完全に吸収するためには非常に大きな設備が要る、相当資金もかかるというようなことで、要するに、集める技術そのものが非常にむずかしい問題点があるわけでございます。したがって、どういう形でその繊維質を集めるにいたしましても、その原料としての繊維質は相当コストが高くかかりまして、したがって、その利用の方法はいろいろの面で制限されてくるというぐあいに理解しておったわけでございますが、ただいま先生御提示のような新しい方法がそういった問題を克服して実現できるような状態でありますれば、これは大いに検討に値する、かように考えておる次第でございます。
  84. 小平芳平

    小平芳平君 現につくっている人がいるのです。そういうヘドロからこういうものができるということはちょっと信じられないわけです。しかし、それで採算が合うのかと言えば、もとはただだから合うというのですね。ですからこれは、もとはただよりも、むしろ通産省としては、大企業が、工場が困っているわけですね、処理に。ですから、むしろただどころか料金を払ってでも、そうした焼く場所もない、投げる場所もないようなものを処理してくれるわけですから、料金を払ってでもこういうものは大いに伸ばしていってもらいたい、このように思いますが、いかがですか。
  85. 柴崎芳三

    説明員(柴崎芳三君) どういう形で原料を集めて、どういう方法でそういった製品をつくっておりますかさっそく検討させていただきまして、これから大いに開発の可能性があるとすればわれわれもその方向で大いに援助もし促進もしたい、かように考えております。
  86. 久次米健太郎

    理事久次米健太郎君) これで午前の会議を終わります。午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時五十五分休憩      —————・—————    午後一時三十八分開会
  87. 占部秀男

    委員長占部秀男君) ただいまから公害対策特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言をお願いいたします。
  88. 沢田政治

    沢田政治君 午前中に同僚議員から公害についての基本的な事柄が質問されたわけでありますが、私は具体的なことについて質問いたしたいと思うわけです。主として鉱山局、通産省関係の方方にお伺いしたいと思います。つまり、そのことは金へん公害、カドミウムあるいは銅イオンというような金属イオン、この問題についてお伺いしたいと思います。  秋田県というと、非常にまあ鉱山の密集地帯でございます。たとえて言うならば、銅を例にとっても、日本の埋蔵量の半分が秋田県に埋蔵されておる、こういうような特殊な県であるわけであります。それだけまたやはり公害ということも非常に最近問題になってまいりました。たとえば比内地区比内町というところでありますが、弥助、羽貫谷地とか大巻地区はたいへん大きな問題になっているわけであります。一体これらの現在稼働している製錬所あるいは鉱山あるいは休廃止鉱山、こういうように公害の発生源になっておる鉱山というものは一体どれくらいあるか、これをはっきり把握しておるのかどうか、まずその点をお聞きしたいと思うのです。
  89. 莊清

    説明員(莊清君) 秋田県で県内で現在鉱山保安法に基づきまして監督を行なっております重金属関係の鉱山数は現在稼働中のものが約六十ございます。それからこのほかに休廃止鉱山が約四十くらいございます。
  90. 沢田政治

    沢田政治君 私の調査では、休廃止鉱山ですね、鉱山として存在した地区ですね、これが八十六、現に稼働しておる鉱山、製錬所十九だと思うのですが、そのほかにもあるのですか。私の記憶と調査が間違いですか。
  91. 莊清

    説明員(莊清君) 私のお答えしました数はいわゆる銅、鉛、亜鉛、それから砒素、水銀等重金属関係の特に公害防止上問題になる鉱山の関係について申し上げたので、先生の御指摘の鉱山数の内数になっておるかと思います。
  92. 沢田政治

    沢田政治君 特に問題になるのは他の公害と違って第二次産業、第三次産業の公害の場合は、そこの工場なりその事業主体が操業をやめると結局公害の発生源がなくなる、こういうことに相なるわけです。ところが金属鉱山の公害の場合は半永久的に続くわけであります。鉱山が稼働しようが休廃止しようが、永久にと言っても大げさでないほど、これは続くと思うわけなのであります。そういうことなので、これはいま急にそうなったのじゃない。これは鉱山の実態からいっても、鉱山が稼働しなくとも、そこにあった鉱山から廃水、坑内水が流れ込む、こういう特殊な事業体だと思うのであります。これに対する予防措置というものを、今日あるを予期してほんとうに真剣になって鉱山保安局がやってきたのかどうか。私はいささか疑問を感ぜざるを得ないわけです。これをどう思いますか。
  93. 莊清

    説明員(莊清君) 御指摘の点はまことに重大な点だと思いますが、正直のところ、これら休廃止鉱山の鉱害問題に対します従来の監督、指導というものは必ずしも十分でない点が多かった、こういうふうに反省いたしております。今後はこれらの調査、検査に特に力を入れると同時に、必要な予算措置等も考えなければならない、こういうふうに存じております。
  94. 沢田政治

    沢田政治君 いままでの調査なり監督はあまり適正でなかった、こういう反省をしておられるようですが、適正でなかった、万全でなかったという中身が、たとえば坑内の排水許容量ですか、許容基準が甘かったということを言っておるのか。たとえば人的に監督官なり調査員が足りなくてできなかったのか。その両者のいずれかですか。
  95. 莊清

    説明員(莊清君) 一番の問題点は、従来鉱山からの排水につきまして、主としてPHの関係を重視いたしております。それ以外の重金属関係につきましては、ほとんど指導、監督も行なっていなかったという点が指導監督の質的な面では一番重要ではないかと思います。特に休廃止鉱山につきましては検査は行なってはおりましたけれども、PHのみの検査しか過去において行なわれておりません。今後はこれらの内容の充実の問題になると思います。もちろん監督官の充実も御指摘のとおり今後心がけなければならない点だと存じます。
  96. 沢田政治

    沢田政治君 PHの調査はかなりやっておったということを言われておりますけれども、これはやっておると思います。ただ、非常に原始的なPHの測定であるわけですね。一日に三回くらい坑内水を原始的な手法でもって見る、こういうことではだめだ、やっぱり四六時中監視しておらなくては。これは鉱山側が加害者ということがいえるかどうかわかりませんが加害者になると思います。そのほうにおまかせするということじゃ、PHの測定でもぼくは万全じゃないと思うんですよ。PHの測定を一日二回くらい検査する方法もありますよ、と同時にまた、最近の機械で自動的にPHが中性であるかどうか、六・五あるいは八・五に保たれておるかどうか、あるいはそれ以下であるか、そういうのを記録する装置があると思うんですね。したがって、将来PHの測定だけとらえても、そういう記録装置によって、争いが起こった場合はこういう記録があるんだ、機械だからうそつきませんから、永続的に記録をずっととっていく、そういうものをほんとうにやらせる気があるのかどうか。私は少しでも積極性があるならば、いま現在でもPHの測定はそういうことが可能であったんじゃないかと思うんです。これは相当膨大な金をとられるものじゃありませんから、それをやらぬというところに、何というか、鉱山保安に対する怠慢といいますか、やっぱり積極性がないと思うんですけれども、いかがですか。
  97. 莊清

    説明員(莊清君) PHの自動測定につきましても、過去におきまして御指摘のとおり不十分であったということを反省いたしております。最近特に重金属が大きな問題になってまいりましたので、沈でん池によりまして中和するということが、PHの管理にもまた重金属の沈でんにも一番効果がありますので、これを強力に推進しておりますが、その際にPHの自動測定装置の取りつけ等も実施いたして、着々整備につとめておるところでございますが、まだ整備の過程にございまして、御指摘のとおり不十分な点が多いと思います。今後特に自動測定記録という点には重点を置いて努力いたしたいと考えております。
  98. 沢田政治

    沢田政治君 どうもしろうとの私が考えても、もうすでにやる気があったならば、いま指摘したようにできることがあるわけです。質問されてから今後やりますということでは、非常にこれは一億総ざんげで、その心情たるや非常にくむべきものがあるけれども、残念だと思うんですよ。だから、ただ、単なる答弁だけじゃなくてやらせればできるんだから、これはしっかりやってもらいたいと思うわけです。  それとやはりいま稼働している鉱山でも若干問題がありますが、稼働しておらない、しかも、だれが所有者であったのかさえもわからないような、これは徳川時代から、徳川時代のことを言ってみてもしようがありませんが、憲法が始まってからも休廃止鉱山の鉱業権がぼんぼん移動したというものがたいへんあるわけです。したがって、これが過失であろうが無過失であろうが、故意であろうが、すでに所有者がおらぬわけだ。しかも、現実にその罪を犯したものが存在しないわけだ。こういうような休廃止鉱山に対する賠償なり原状回復なり公害防除をどのようにしますか。
  99. 莊清

    説明員(莊清君) 先生御指摘のような鉱山は重金属関係につきましても相当数ございます。従来、これにつきましては措置がきわめて不十分でございましたが、今年度から調査を開始いたしております。明年度予算におきましては相当額の予算をとりまして、関係の県に補助金として交付して、国と県が共同してこれらの法律上の義務者がないとか、不明確であると、こういうものにつきましては、公害防止上必要な坑口の閉塞でありますとか、水の処理、こういう工事を実施いたしたいと考えております。
  100. 沢田政治

    沢田政治君 国と県でまあ非常に公害を起こした当事者がおらぬというものに対しては、国と県でやると答弁のようですが、これは県までその負担を持たせるということは理論上、道義上どうかと思うんです。そういうのは鉱山を操業するということになると、鉱業法に基づいて、いまの法律じゃ鉱山局長ですね、さらには鉱山保安監督部長の協議の結果、施業案というものを出させて、しかもそれが将来公害が起こるだろう、現実に起こるだろう、起こる可能性のあるものに対して許可、認可を与えるのが通産省なわけですね。行政責任があると思います。いまの鉱業法からいったならば地方自治体にこれを許可したり、認可したり、変更を求めたりする権限はないわけです。それを結果的にそういうような対象者のおらぬ、発生の原因者がおらぬ鉱害を県のほうも負担せいということは法律上からいっても、道義上からいってもおかしいと思いますよ。明らかにこれは国の行政責任だと思いますよ、いかがですか、非常に問題になってくると思いますよ。
  101. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 御指摘のように、鉱業権の認可あるいは鉱業権の実施についての計画、施業案は国がやっておるわけでございますが、公害保安局長がいま考えておりますのは、現実に鉱害があって、それが鉱害が生じておる原因というものがいろいろ鉱業だけのために出たかというような問題があるわけでございまして、先般も松尾の鉱山が閉山いたしまして、従来から若干鉱山汚水とそれから水そのものに酸性を含んでおるというようなこともありまして、先般国とそれから岩手県のほうとでこれに対する対策を講じておるわけでございますが、こうした考え方をベースにして今後休廃止鉱山についての鉱害の防止について局長が申し上げたような考え方でやっていこうというふうにお答えをしたものと思うわけでございますが、施業案その他鉱業権の認可については御指摘のとおりでございます。
  102. 沢田政治

    沢田政治君 岩手県のほうで松尾鉱山、硫黄山、かなりこれは閉山的になりましたね、閉山までいきませんでしたが、規模が非常に縮小されましたね。岩手県のほうで松尾に関する限り県のほうもそれを了としてまあ話し合いがついたからいいものの、たとえば秋田県あるいは青森県、鉱山のある県が法律的にいっても県がこれに負担するのはおかしいと、こう言い出されて、しかもこの原状回復なり防除が進まなかった場合、そこで迷惑するのは住民だと思いますね、そうでしょう。したがって、どことどこが責任があるのかということを法律的にもあるいは道義的にもやはり明確にする必要があるのじゃないかと思う。ただ何となく行政的に話し合いをして何とか両者でやりたいと、こういう甘い考え方では私は非常に大きい紛争が起こるような気がしますが、いかがですか。
  103. 莊清

    説明員(莊清君) 休廃止鉱山で会社の解散その他の理由によりまして、鉱業権者がすでに消滅してしまっておるという状態のものにつきましては、いわゆる鉱業権の設定以前の状態に法的には戻ってしまっておるのでございますので、これに伴います鉱害の問題につきましては、国もしくは地方自治体におきまして公の立場から、地域住民に対する鉱害の防止を公の見地から行なうという以外にないと存じますが、当面の秋田県等の問題につきましては問題も大きゅうございますので、県当局とも最近打ち合わせをいたしておりますけれども、県のほうでも県内の農業その他各方面への鉱害の影響ということをぜひ県の事業として処理する必要がある。ついては国のほうでも応分の財政的な援助という措置があってしかるべきではないかというふうなことでいまお打ち合わせをしておりまして、県ともお打ち合わせの上で先ほど申し上げましたような国の一般会計からの補助制度として確立したい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  104. 沢田政治

    沢田政治君 私この問題で議論しようと思いませんよ、思いませんけれども、これはどうも私納得できません。というのは非常に厳重な審査を経て、そうして通産省がこれを許可する、自治体はこれに介入できない。鉱害が起こった、しかもその責任対象者がおらぬ。その場合どう考えてみても全然関係のない県民が納めた税金で私企業のこの鉱害復旧あるいは防止のための金を出さなければならぬということは、地域住民立場から考えても、これは納得できないんですよ。この点少し考えてほしいと思うんですよ。議論しても始まりませんから、これでよしますが、これは考えるべき事項じゃないかと思うんです。  これは責任者ですね、鉱業権者が現在現存しない場合も問題があるのです。非常に鉱業権が転々と変わったと、そうして明治の初期のころは相当三千人ぐらいの従業員を擁する大鉱山であって、そうして相当の利潤をそこからあげた、ところがその者が鉱業権を放棄して弱小の鉱山に鉱区を譲り渡したと、ところがその弱小の鉱山が全然資力もない、山も稼働しておらない、鉱区を保有しておるだけだと、そうして今日公害が出ておる、今日じゃない、明治以来ずっと五十年も六十年も続いておる。そこで利潤行為をやったので、鉱害が累々と堆積されておると、したがって、ほんとうの原因というのは旧鉱業権者、営利行為をやった者にあるわけです。ところが、いまの鉱業法からいくというと、それを現在所有しておる者ということになるわけです。ところが、それには資力がない。どうなりますか、こういう場合は。
  105. 莊清

    説明員(莊清君) 鉱業法の昭和十四年の改正によりまして、それ以後につきましては、鉱業権が転々と譲渡されましても鉱害が発生しました場合には鉱業権者が連帯して責任を負うというふうな趣旨の規定も設けられておりますが、それ以前につきましては、そういう規定はさかのぼることがないものというふうに私どもは解釈いたしております。それで御指摘のような場合が間々あるわけでございますが、そういう現在の鉱業権者、経営者が無資力の場合、いわゆる資力がなくて無資力の場合につきましても、それに要します鉱害の復旧の部分につきましては、費用を実際に負担し得る応分の負担というものは、これは当然だと思いますけれども、それがきわめて限界がある、ほとんど無資力であるというふうな場合につきましては、実は先ほど申し上げました予算措置の問題に含めまして考えておるわけでございます。
  106. 沢田政治

    沢田政治君 具体的に私お聞きしますが、たくさんありますよ、たくさん、こう言っておったのじゃ、これは五時間も六時間もかかりますが、秋田県の角館町、ここの三菱合資でやった山でありますが、日三市鉱山の場合、旧三菱合資会社ですかが持っておった山なわけですね。非常にここが三菱重工業をつくった資源先なんだと、こう地元の人が言っておりますが、そこが持っておったわけです。ところが、終戦後だったと思いますが、荒川鉱業というような吹けば飛ぶような鉱業権者にかわっているわけですね。したがって、いま鉱害が発生しておる、しかも無資力とは言えないけれども、企業限度がある、能力限度がある、やはり県だ、国だとこういうことで議論になっておるわけです、砂防堰堤一つつくるにしても。そして責任のなすり合いをしておったのでは、迷惑をするのはこれは地域住民だけだと思うのですね。したがって、こういう場合はこれはどうするのですか。これは企業に持っていったって持つ力もない、しかも国はあまり責任がない、県もない、こういうことでは解決がつかぬし、地域住民は迷惑の、何というかしっぱなしだと思うのです。これはどうするつもりですか。
  107. 莊清

    説明員(莊清君) 実はこの御指摘のございました日三市鉱山の件につきましては、私まだ詳細調査いたしておりませんですが、現在稼働中の鉱山であって、鉱害が現に発生し、または発生のおそれが大きい、しかも無資力ないしそれに近いというふうな状態のものにつきましては、先ほど鉱山石炭局長から、県と国による、松尾銅山の例ですが、坑口閉塞のための代執行を現に工事として行ないつつあるという答弁をいたしましたが、必要に応じましてこれは地元とも御相談の上、今後ともそういう措置をやはり積極的に講ずる必要があると考えております。
  108. 沢田政治

    沢田政治君 日三市鉱山の場合、あまり事情に精通しておらぬのだけれども、これは不勉強だと思うのですよ。現に地元ではカドミウムに汚染されているということで、地域住民が嫁に来手もないし、もらい手もない、しかもその周辺からとれた農産物が非常にもう何というか、神経過敏になっていて売れない、まさに社会問題より地域では人道問題になっているわけですね。それをあまり精通しておらぬということは非常に遺憾のきわみだと思うのですね、これは。というのは、これは仙台の保安局だと思いますが、監督局だと思いますが、一度通達を出しておるわけですね、こうしなさいということをね。その通達の内容もわかりませんか。
  109. 莊清

    説明員(莊清君) まことに恐縮でございますが、存じておりません。
  110. 沢田政治

    沢田政治君 これはあきれてものをいえないほどなんですが、だめですねえ、そういうことでは。  それで、たとえば廃水基準ですね、坑内水あるいは洗鉱水、あるいは鉱滓の浸透水ですね、こういうものの基準もその鉱山鉱山によって違うわけですよ。たとえばこの同じ米代川水系でも鉱山によって違う。この違う理由はどういうところにあるのですか。
  111. 莊清

    説明員(莊清君) これは、鉱山によって利水地点に非常に近いところで排水口を設けておる場合と、利水点に比較的遠い地点に排水口が設けられておる場合といろいろございます。現在の河川水質環境基準というのが定められておりますが、その基準に合わせまして個々の鉱山の個々の排出口につきましては先ほど申し上げましたような利水点との関係、距離に応じまして若干の差が出ておる、こういう状況でございます。
  112. 沢田政治

    沢田政治君 全く、何というか、でたらめなんですよ、たとえばもう少し坑内廃水の許容基準というものをやはり洗い直すべきだと思うのです、考え直してください。たとえば鉛山鉱山、十和田湖ですね、国立公園、あそこの鉱業所長が鉱害が非常に問題になったということを苦にして自殺をしたと、一ヵ月ほど前ですか、まあほんとうにそれで死んだのかどうか私は知りませんが、新聞等はそう報じていますね、さもありなんと思うのです。やっぱり地域住民に迷惑をかけているということはたいへんなことですから、その場合、鉱山保安監督部の許容基準どおり流したと言っているわけですね、事実はどうかわかりませんよ、ところが、その許容基準と水産用水基準ですね、これとは違うわけですね、だから鉱山の排水基準は生物を殺すか生かすかと、こういう角度から基準をきめられておるのか、人体の影響等を考えてこれはつくられておるものか、どうもその辺の因果関係が私はわからぬわけですね。少なくとも農作物に影響するとこれは人間に影響しますから、それに基準量を合わせるべきだと思うのですね。そういうことを、基準を変える気持ちがあるのかどうか、これをお聞きしたいと思うのです。
  113. 莊清

    説明員(莊清君) まさに御指摘のとおりの問題と考えております。利水点におきますカドミウムその他物質ごとの環境基準というのが最近厳密に全国的に定められましたので、それに合わせて規制をそれぞれの鉱山の排出口について十分それにマッチした形で行なうのが当然のことでございまして、それにマッチしないものがかりにあるとすれば、早急に修正をするということが当然であると考えております。
  114. 沢田政治

    沢田政治君 何を聞いてもおっしゃるとおりということで、もっともおっしゃるとおりにならなくちゃこれはふしぎだと思うのですが、しっかりやってくださいよ。  それともう一つお聞きしたいことは、厚生省のほうにお聞きしたいわけですが、非常に鉱害がやかましくなってきた、非常に神経過敏になってきた、これは当然だと思うのです。行政機関の前にそれぞれの政党サイドといいますか、あるいは病院サイドといいますか、学者サイドといいますか、こういう立場から現に秋田県でもそれぞれの調査がなされておるわけです、それでけっこうだと思います、私は。事人命に関する限りは政党サイドであろうがあるいは宗教サイドであろうが学者サイドであろうが、これはけっこうだと思います。私、心から歓迎しますが、これは一種の行政に対する、公害問題に取り組む政府基本的な姿勢行政に対する不信だと思うのです。これはこのことだけでも私はたいへんな責任だと思うのです。ところが、それはけっこうだし私も歓迎します、私ども調査したいと思いますが、私その結果たとえば比内の弥助地区あるいは角館町の日三市鉱山等を、鉱害が起こっておるという地区を、ほとんど住民と接触してみました、その結果、一様に歓迎はしております、たとえばサイドが報道機関であろうがこれを取りあげていただく、警鐘乱打をしていただくということについては非常に喜んでおるわけでありますが、一種のとまどいも感じておるわけです。というのは、ある人はある医師にみてもらった結果、重症だと宣言をされた、尿たん白等でも異常があると診断された。ところが日本で最も権威あるといわれる医師が、いや、あなたは何でもない。ところが軽症だと言われた者が重症だと言われた、こういうことで、私もあまり医学知識がありませんが、素朴な被害者が何を信用していいのか、非常に不安と焦燥に明け暮れておる、狭い地域でございますので、どこそれのだれが被害を受けているということになると嫁に行く手も婿にもらい手もない、野菜も売れないと、こういうことで被害を受けた被害意識が一そう深刻になっていることは事実です。したがって、最も信用のある機関が統一的に被害汚染可能地区を全部対象にして明確な判断を出してもらいたいというのが住民の多くの声であったことは事実です。したがって、本来ならば、そういう民間サイドとか政党サイドよりももっと早くこれは国がやっておらなくちゃならぬことだったと思うんです。したがって、そういう被害を受けて一そうまた苦痛が深刻になっておる、精神的にも動揺しておる。こういうところを厚生省のほうで統一的に——まあ厚生省は最近信用しませんね。国の機関とこれは民間とで被害者が出るとか診断も非常に食い違っておりますね。甘いんですよ。どっちが正しいか、私はこれは論断はしませんよ。したがって、最も公平と思われる第三者の機関なりたとえばそこの県の医師会なりに国が費用を出して委託して、実はこうこうであるということを統一的に調査する気持ちがあるのかないのか、どうですか。当然やるべきだと思うのですが、厚生省のほうではどう考えていますか。
  115. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) いまの点は、先生のおっしゃることは全く同感でございまして、厚生省としましては、カドミウム等につきましては、昨年暫定対策要綱を示しまして、いずれにしても第一義的な調査なる検査、これはひとつ県のほうに責任をもってやってもらう、それでなおかつ問題のある場合には、国に連絡して国のほうでまたできるだけの協力をするというような体制をしいておるのでありますけれども、今後カドミウムに限らず、特定の物質による公害、そういったものが先生のおっしゃるような方向で実際には発見されるといいますか、一応取り上げられるケースも非常に多いだろうと思います。私どもとしては、対策要綱に盛られておるようなまず県の責任ある所要の、機関が第一義的に責任ある調査なりあるいは審査等を行なうと、国としてはそれにできるだけお手伝いをすると、そういう方向に全般についてそういうことが徹底するようにさらに努力いたしたいと考えます。
  116. 沢田政治

    沢田政治君 汚染米の問題は米どころの秋田でも深刻な問題になっております。現に静岡県が某県、某県、某県からとれたものを引き受けないと、これは当然だと思うんです。やはり人間の命はすべての産業に優先しなければならないから、これは当然だと思うんですが、秋田でもやはり問題になっているわけです。たとえばいま問題になっている弥助地区ですか、あそこの地区でもこれは厚生省のきめた一PPM以下です。これは〇・五PPMに近いような数字でありますが、県としてはその米であっても市場に回さぬと、こういうことを言っておるわけです。そこで非常に各方面から取りざたされておるわけですが、厚生省のきめたカドミウムの一PPMというのは、これはほんとうに国として責任をもって将来一PPMを続けて食べても絶対未来永劫に人体に影響がないと、こういうような科学的な裏づけがあって出されたものですか。そうでなければ、確信がなければ、やはり人間の命というのは重大だ、これは私が何回も繰り返すまでもなく、行政的に全くきびしい態度で暫定的に出した〇・四PPM以下ならば以下とする。私はほんとうに人命というものを中心に考えたならばシビアーにすべきじゃないかと思うんですけれども、この根拠は幾らも書かれておるし答弁もしておるようですが、納得いかぬですね私としては。どういうことですかこれは。国民全体に、なるほどそれなら安心じゃというような根拠がありますか、あったらお出し願いたいと思うんです。
  117. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 一・〇あるいは精米で〇・九PPMの根拠いかんというお尋ねでございますけれども、これは非常に専門的になりますので、詳細は省略いたしますが、いずれにしましても、厚生省が委嘱しました専門の調査班において十分学術的な討議を重ねた上、さらにそれを行政べースで相当の安全率と言いますか、そういったものを見込んだ上で一応定めたものでございますので、現段階においては、私どもはその数字が妥当であろうかと思っております。  なお、この点につきましては、しかし、食品衛生法の立場からもいろいろと検討が要るということで、過般食品衛生調査会の専門の先生方にもお集まりいただいたのでございますけれども、その際に先生おっしゃる未来永劫絶対だいじょうぶか云々ということになりますと、やはり所要の実験等データをそろえなければなりませんので、それは多少時間がかかる。しかし、少なくともいまの段階においては一・〇PPM以下が有害であるという断定はできないという感触も実はお聞きしておりますので、私どもとしては、いまのところあの数字をもって万全であるというふうに一応考えております。
  118. 沢田政治

    沢田政治君 どうも、何と言いますか、厚生省がそう言っても国民が納得しないんですよ。なおかつ不安を感じておるのですよ。いまの答弁の最後にも一・〇PPM以下は有害だとは断定できないということばを言っておりますけれども、無害であるという断定もできないでしょう。証拠もないでしょう。そうなった場合にはどっちをとるかということになると、少しでもやはり人命を守る。暫定的とか何かことばは言っていますけれども、人類は未来永劫に生きなくちゃならぬ。生きる権利があるのですから、暫定どころじゃない。人間の命が暫定的であるならば、それは暫定でけっこうでしょうが、どうもこれはやはり国民に納得いくような明確な調査をして、明確なやはり何と言うか、資料を公表すべきだと思うのです。  それと、また話戻って、最後に、まあ鉱山石炭局長に今度はお伺いしますが、どうも私は、いまの鉱業法は時代おくれだと思うのです。というのは、鉱山を見つけた——見つけたじゃない、可能ですね、ここに鉱石があるだろうということを見つけたならば、若干の手続をとって、先願、これは先に何と言いますか、おれのものだということを申請すると鉱業権を持つわけですね。したがって、だれでもいいんです、これは。したがって、そういう人が投機的に鉱山をやる、まあ山師ということばはどういう意味かわかりませんが、山師のような人もいる。そうして、若干掘って、坑内廃水を流してどこかへ消えていくと、こういうことでは私はやはり法的にも不備じゃないかと思うのです。もちろん私はやはり鉱物資源——海洋を含めて、これはやはり国民全体のものだと思うのです。一人の人間が利権の対象にしてそれを権利、財産権にすべきじゃないという基本的な考え方は私は変わりはありません。しかし、それを議論しておったのじゃしようがありません。したがって、いまの政治体制のもとでも、やはり公害というものを考えるならば、これはやっぱり国民の財産である。こういう立場からこの採掘する場合、させる場合、認可する場合、この人間がはたして保証できるかどうか、将来にわたってもやはり補償の能力があるかどうか。その補償の能力を判定することと同時に、それを確約させるように鉱業法を抜本的に私は改正すべきじゃないかというのが一つ。  時間がありませんので、項目を並べます。と同時に、石炭には鉱害に関する二法があると思うわけです。原状回復を中心にしておるようですが、そうして、若干何がしかの額を一トン当たり積み立てさせて、鉱害に充てるようになっておるようですが、金属鉱物の場合にはないわけです。石炭の場合は原状回復なり何かすると、それでもう鉱害は終わりになるわけです。ところが、カドミウムなんかというのは、どういうようにしても将来永続的に公害が起こっていくわけです。これに対してなぜ別の法律をつくらないのか。われわれはいま検討しておりますが、そこに着目しなかったのか。この点は非常に不可解でなりません。これをやる気があるのかどうか。政府当局としても、もちろん議員は立法権がありますので、私どもも考えておりますが、そういう立法のことについて考えておるのかどうか、その点をお聞きしたいと思うのです。
  119. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) お答えいたします。鉱業権につきましては、専門の沢田先生御指摘のとおり、現在の法律の体制では先願主義になっております。先願主義をとっております理由は、国民全体が平等に鉱業権に参加する機会を与える、あるいは鉱物の発見、開発を促進する、あるいは適格者の選定というのが非常に困難であるというような事情で、現在の鉱業法は御指摘のとおり先願主義をとっておるわけであります。御指摘のように、地下資源を有効に、しかも秩序立って他に迷惑を及ぼさないように開発するために、能力を有するものに鉱業権を付与するべきではなかろうか、広い意味でいわゆる能力主義と申しておりますが、この能力主義を採用する考えはどうかという御指摘でございますが、現在のところでは出願件数が非常に膨大でもございますし、出願が競合しておる場合が多いものでございますので、この競合した鉱業出願を行政機関が裁量によりまして鉱業適格能力を適切、具体的に判断するということになりますと、これは非常に困難であるということもございまして、能力主義の採用に踏み切ることについては非常に慎重になっておる次第でございます。ただ御指摘のように、的確に鉱業権を実施して、その際生ずる鉱公害の防止あるいは鉱害賠償の実施についてできるものだけを考慮してはどうかという点につきましては、先生御承知のように、第四十六国会に鉱業法の改正が提出されたわけでございますが、五十国会までいろいろ御審議もありましたが廃案になったという経緯もございまして、現在のところ公害問題が非常に重要であるということとからみまして、現行鉱業法を運用するにあたりましては、一つは鉱業権の実施計画である施業案の認可に際しまして公害防止の点を厳重にチェックするということと、実際の鉱業権の実施であります操業にあたりましては、鉱山保安法に基づきまして指導を行なうということによって、御指摘のような線に沿った効果をあげようという運用をいたしておるというのが現状であります。
  120. 沢田政治

    沢田政治君 一つだけ、これを最後にしますが、やはり法律の整備も考えてほしいと思うのです。われわれも考えなければなりません。同時にいまあるものもやっておらぬです。たとえば鉱業法の百十七条ですか、たしか第三項だったと思うのですが、供託の項がありますね。そして将来起こり得るだろう鉱害のそういうものに充てるためにそれぞれ各企業に百分の一ですか、鉱物の場合は。こえない範囲で供託を命じることができるわけですよね。なぜやっておらぬのか。おそらく昭和十四年からだったら相当これによって鉱害を防ぐ財源を見つけたはずだと思うのですよ。これもやっておらぬ。なぜやらぬかと言ったら適切な答弁おそらくできないと思うのですよ。だから答弁しなくてもいいですよ。こういうふうにできるものもやっておらぬし、全く保安体制と言いますか、鉱害対策というのを、全く産業オンリーで、べったりで、何もやっておらぬということに尽きると思うのですよ。だから私はこれ以上言いませんが、十分な反省を求めます、これは。時間がありませんので、これは三日でも四日でもあなた方を追及したいと思うのだが、与えられた時間が四十分なので終わりますが、もっと前向きにやるべきだと思うのです。これは納得しませんよ、国民は。  終わります。
  121. 鈴木強

    鈴木強君 時間がないですから端的に伺います。警察庁に最初に伺いますが、光化学スモッグあるいはオキシダントの発生源が自動車の排気ガスに大きな原因があるということは明らかです。そこでこの犯人を退治する措置としていわゆるCOの規制をやりましたね。このCO規制について八月一日から実施をされるというので私たちは強い期待を持っておりました。ところがこの取り締まりについて警察庁が七日の日に全国都道府県県警に対して、罰則は当分の間適用しない、CO濃度がおおむね九%以上の車両に対して整備通告を行なう、こういう二つの基準を明らかにして通達を出しているようです。私がふしぎに思うのは道路運送車両法の保安基準、新車が四・五%、それから中古車が五・五%になっておりますが、この道路運送車両法の保安基準よりも甘い基準をどういう根拠できめて警察庁がそういう通達を出したのか。これはせっかく公害防止の一環としてやられたこの対策というものが何か後退するような気もするし、せっかくやろうとするところに水をぶっかけられたような気もするわけです。一体どうしてこういう通達を出したのか。まずここからお伺いします。
  122. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) 大気中のCOの削減の方法は、警察関係といたしましては一つには交通の円滑化ということであり、二つにはいまのCOそのものの取り締まりということであります。そこで、ただいまの御質問の取り締まりの面でありますが、そこで取り締まりにあたって現在自動車関係排出基準がどういうふうになっておるかと申しますと、ただいま言われましたように、常時アイドリングのときに五・五の基準を持っていなければならないというのが保安基準でございますが、保安基準というものはそのままでは罰則はございません。それに違反したからといってすぐに罰則はない。警察が取り締まるというときには罰則がつくわけです。そこの基準がまず一つある。  それから、なぜ五・五を基準にしなかったかというのは二つ理由があります。一つ法律的な問題でありますが、法律にはこういうことが書いてあります。全文は略しますが、「ばい煙等の発散防止装置を備えていないか、又はこれらの装置が調整されていないため他人に著しい迷惑を及ぼすおそれがある自動車」云々となっております。これは道交法の第六十三条の二でありますけれども、これによりますると、発散防止装置を備えていないか、あるいはその装置が調整されていないためというのは保安基準に合致しない場合と解釈しております。さらにこの条文では他人に著しい迷惑を及ぼすおそれがある場合ということになっておりまして、五・五%の基準をこえると、それが直ちに他人に迷惑を及ぼすおそれがあるのかないのかという問題が若干あります。時に刑事罰の場合には、ある一人が悪いということであって、大ぜいの人が悪いという問題はない。責任を追及する場合は、ある個人であります。そこで、ある個人が五・五をこえたからといって、すぐに他人に著しい迷惑を及ぼすかどうか。大ぜい集まって初めて他人に迷惑を及ぼすおそれがあるというような観点があります。そこでこういったことを背景にいたしまして五・五%でもそれをこえれば違反になるとは考えまするけれども、まだいまの法解釈が確定されておらない。しかし、今日のような公害が非常に著しくなった場合にはそれがもう少し厳格に解釈をされて、五・五%をこえたら一台でもすぐ他人に著しい迷惑を及ぼすのだという解釈がおそらく確定されるようになると思いますけれども、その辺に若干の法律のあいまいさがあるということが第一点であります。  それから実際上の問題といたしましては、現在運転者は自分の車が五・五をこえているかどうか、たいへん多くの一酸化炭素を出しているかどうかということは全然知っておりません。この前の一斉指導取り締まりをやりました場合にも、むしろ運転者のほうから自分の車も調べてくれと言ってくるような状況でございます。ところで、全国に自動車整備工場は約五万八千工場あるそうでありますけれども、その中で、このテスター、測定機を備えているものが一万六千ないし二万だそうであります。したがいまして、運転者が自分の車を検査してもらおうと思っても検査される体制が十分そろっておらないというようなことがあります。そこで違法の意識のない、しかも車をすぐ直せるかどうかわからない状況で、直ちに警察が取り締まるという場合には、これは罰則がつくわけでありますから、そういった責任追及をするのは少し酷ではなかろうか、むしろ今日の問題はCOを幾らかでも減すというところに重点がある、そういう点からいいますと、警察は陸運事務所あるいは自動車整備振興会、そういったところと協調、協力をしながら、第一線で取り締まりをやる場合に住まず軽微なものはその場で直してしまう。五・五に直すにはキャブレターを少しいじれば普通の場合はよろしいそうで、そういうことでどしどしと警告指導をしながら現場で直していくということのほうがより効果があるのではないか。いたずらに罪人をつくるのがわれわれの任務ではない。特に公害の場合には絶えずそういう状況をつくる必要がある。さらにわれわれのほうではいま通産省のほうにもお願いしておりますけれども、ガソリンスタンドにこういった調整のサービスをやってもらうというようなことで、CO全般を減らしていくということに重点がある、あるいはその中で悪質なものが出てくる、あるいは現場じゃ直せないようなエンジンの不調なものがあるというようなものについてはこれは罰則の適用も考える、あるいは整備通告書を交付するというようなことを考える。そういうようなことを考えればさしあたって今日の状況では九%ぐらいが適当ではないか。漸次そういうものを一般の情勢が整備されるにつれてだんだんと下げていくということが望ましいのではなかろうかというふうに考えた次第でございます。
  123. 鈴木強

    鈴木強君 警察の取り締まりの範囲ですね、それは私もけっこうだと思うんです。罪人をつくらずCOをなくするという、そういう考え方に立って取り締まりをするということは非常に民主的で私はいいと思うんです。ただ私が聞いているのは、道路運送車両法できめられた基準というものがあるわけですから、この基準がいまあなたのおっしゃるように直ちに罰則に適用できるかどうか、国民の健康に影響があるのかないのかという判定は、これはなかなかむずかしいと思うんです。しかし、この基準をつくったということはそれぞれの、政府政府として検討を重ねた結果つくった基準だと思うんですね。そこへもってきてあなたのほうで九%以上の車両に対して整備通告を行なうというならば、九%以上というのは政府よりもまだなお甘い基準ですからね、おかしいじゃないかと、逆にこういうふうに私は思うんです。ですから九%とした根拠というものを私は聞いているんですよ。そこでその点答えてもらいたい。それから同時に長官伺いたいのですけれども、この警察庁が七日に出したこの通達に対しては政府として——これは政府機関ですから、当然了承を与えておるものと思うんですが、相談があってこういうふうなものを出したのかどうか、その点もう一つ詳しく伺っておきたい。
  124. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) 九%そのものに根拠があるわけではございません。これは先ほど新車の場合に四・五%と言われましたが、一応いまの段階で罰則の適用のある整備通告書を交付するということをやるならば四・五の倍ぐらいが適当ではなかろうか、この点は運輸省とも相談しながらやったわけでありますが、これは先ほども申しましたように、今日の時点でそうであるということでありまして、ついでに言うならば、この整備通告書を出しますと、本人はその車を整備した後に警察署あるいは陸運事務所に行ってそれを見てもらうということに法律上なっております。ところが現在、警察署にまだそういったものがそろっておりません。いま予備費で要求をしようとしている段階でありますが、そういうような観点でこの秋ぐらいまではいまの基準でいくよりほかないのではなかろうかというふうに考えたわけであります。
  125. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) いま久保局長が話いたしましたが、局長の口から公害問題が出るというふうに時代が変わってまいりました。というのはいままでは交通対策、人命尊重、交通事故防止という意味から警察の取り締まり行政を主にお願いをしておったわけであります。その姿勢を一本化するために政府のほうに私を責任者とする交通対策本部を置いて常時連絡をとっていたわけでありますが、しかし、柳町の公害事件から始まって、鉛をとったら今度は芳香族のほうが逆に問題を提起してきたと、あるいは全体の廃棄物で空に上がっていく物質そのものが全体的に光化学現象を起こすもとになっているらしいというようなことがだんだん議論されてくるようになりまして、交通対策のいわゆる都市交通というものと公害の排気ガスという問題における自動車の地位というものがどうも接点がダブってまいったわけです。そこで警察庁としては、私どものほうは一応連絡を受けてはおりますが、具体的には厚生省相談をいたしまして、おそらく厚生省と警察庁が自動車の問題にしても何にしても両者で相談をしたというのは珍しいできごとの一つだと思うのですけれども、どうもそこまで視野を広く、しかも多角的にものをとらえなければならないように自動車というものの存在が意義づけられてきたということを意味しているものと思います。でありますから、これからは交通対策面の自動車というものと公害発生源の排気ガスを出す自動車というものとを、一つの面からとらえて有機的な対策を立てていかなければならぬと考えます。今回の取り締まりの問題は局長が言っておりまするように、直ちにその基準をこえたそのものを罰するというところにいくには問題点が確かにあるでございましょうから、これからそれらの点もさらに政府として総合調整をいたしまして、警察の取り締まり面でも、公害の面から見た自動車の基準によってここまではぴしっと取り締まるという体制を警察で安心して行なえるような基準方法その他を設定してまいりたいと思います。
  126. 鈴木強

    鈴木強君 これはCOの測定器そのものが足りかくて、十分に政府指定工場にすらない、そういう問題があるわけです。先般来警視庁の一斉取り締まりをしていただいたのですが、四〇数%ですか、違反車があるということですね。これを一々通告をし整備をさせるということについてはおそらく工場の能力もないと思うんです。私はむしろそういう方向に問題があるので、こうした通達を出さざるを得なかったと思うのです。確かに道路運送車両法というのがあるのですから、その車両法に基づいてきめられた保安基準に違反した場合には当然これは罰則は適用しなければならぬと思うんです。その場合に道交法六十二条なり六十三条なりの罰則をそのまま移していくということは非常に問題があるというので、その点はあなたもおっしゃったと思うんです。だからその点は大いにこれは法律を変えて、取り締まりというのは最後の手段ですから、そうでなかったら皆さんが取り締まる権限も非常に薄くなるのですから、最悪の場合はこれは罰則も適用されるのだ、そういう意味においてはやはり法律も変えなければならぬでしょう。問題はCOの測定器が足りないというから、いま大急ぎで東京でも都の公害臨時議会でもってそのことについて予算をふやしておるようですけれども、そういうところに根本原因があるのです。だからもっと東京だけでなくて、大阪とか、横浜とか、名古屋とか、大都市においては少なくともこのCOの検査ということはやられておると思いますから、そういう点を政府としてもう少し取り締まりが実施できるような素地をつくってやらなければいかぬでしょう。それが長官あなたのところの責務じゃないですか。そういう点がどうしても後手後手になっているのです。取り締まりだけが先に行って大事な準備体制ができてないというのが今日の結果を生んだ原因だと思うんですよ。そういう点を反省してぜひ積極的にやってほしいと思うんです。簡単ですよ。
  127. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 警察に全部のできごとの尻ぬぐいをさせる国家というものはあまり感心しないと思うのです。その意味ではいまの警察はたいへん気の毒だと思います。しかしながら、たとえば企業の面においてもアメリカの市場に輸出する車については、きびしい基準をパスしなければ輸入させませんから、したがって、輸出用の車にはほぼ四万円前後コストの高くなるような浄化装置その他をつけて輸出をし、国内においては、それだけ高くなるからというので競争のたてまえもあって国内販売車にはそのようなアメリカ向け規制みたいなものはなるべくコストを安くするために省いてあるというような考え方が今後許されるかどうか、私はやはりそこらに大きな問題があるのではないかと思います。やはり企業というものが反社会的な存在を許されないということはすでに今日はっきりと指摘されることでありますし、低開発地域工業誘致とか、新産都市その他いろんなことで一意狂奔ということばに近い誘致合戦をやりました市町村長さん方も、今日においてはやはり公害企業というものについては住民ぐるみで考え込んでしまうという状態がすでに発生しておりますから、やはり今日では企業というものの社会的な自分たち責任ということを考えて、企業の段階、自動車ならば製造会社の段階からこの問題を徹底させることによって、いまさしあたりは、そういう測定器等も必要でありましょうが、基準に初めから合致する車でなければ売らない、あるいは下取りの中古車を再び市場に販売する場合において、それらの装置の装着を販売メーカーにおいてなされない限りは販売ができないのだというようなほうの面をもう少し具体的にやってみたい。こういうようなことによって警察の取り締まり面もずいぶんやりやすくなるのではなかろうかというふうにも考えるわけであります。
  128. 鈴木強

    鈴木強君 それは、輸出車に排気ガス浄化装置がついておって、国内につけ得ないということは大きな問題でありますから、これは長官おっしゃるように、国内においてもそういう装置をつけていただくのは当然ですからね。問題は、さっき申し上げたようなCOの具体的な検査の問題が出ているわけですから、これに必要な体制をつくってやることが大事じゃないかということを私は聞いておるわけです。その点は、ひとつ長官としても万全の配慮をしてもらいたいと思うのです。  もう一つ簡単に時間がないから済ませますが、総理大臣が七日の閣議で、トラックの都心乗り入れについて規制したらどうか、全面的に時間を区切って、こういう発言をされたそうですね。私、新聞で拝見しました。この前に、別の委員会長官は、総理から公害問題にからんで都心乗り入れの規制をしたらどうかということが言われているのだけれども、私は慎重論だ、こういう意見がありました。私たちは少なくとも公害対策の一環としてかなり思い切った措置をとらなければ、もうどうにもならないだろうという気持ちを持っているのですね。ところが、長官がそういうふうな話をしておりました。時間がなかったからあのときはそのままになったのですけれども、少なくとも、総理がそういう御趣旨であるならば、それが実現できるような方法で検討していくのがあなたの立場だと思うのですが、その検討していくあなたが、どうも慎重論だということになりますと——そこには幾つかの理由をあげておりました。だがしかし、前向きにこの問題はやはり検討しなければいかぬと思う。たまたまこういうトラックを交通対策の面からとらえたと思うのですね、総理は。そうじゃなくて、せっかくいままで公害を含めた大幅なかなり思い切った規制ということが検討されているわけですから、これはぜひひとつ前向きで検討してもらいたいと思うのですけれども、現在のいろいろな法規、制度もあると思いますけれども、これはどうなんですかね、ひとつ見通しを伺いたい。
  129. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私の性格ですから、直ちに都心乗り入れの禁止もしくは徹底的規制というものを打ち出したいわけです。しかし、都心といっても地域をどこまでに限るのか、あるいは限られたとして、その地域の中の人たちは、主として営業分野に従事する人たちですが、そこに住んで商売をしているからしかたがないのだといって、現在自動車の中の六割が営業用であるというような事態から考えまして、それを一律にぴしっと締め切った場合に、その中で、締め切られた地域の中での生活というものをどうしてあげることができるのかという問題等を私としてはいま慎重に検討しているということを申し上げたわけでして、総理としては、しかし時間帯によるトラック、これはまさしくあなたのおっしゃるように交通対策の面で、人間に対して自動車が危害を加えるほうならば自動車同士であってもトラックのほうが、明らかにどちらが悪くてもぶつかったらトラックのほうが勝ちなんですから、そういう意味では若干トラックのほうにやはり注意してもらわなければならない要素があるわけですから、そういう意味での要素を含んだ指示ではあるのですけれども総理において何回もそういう意見を述べておられるわけですから、私のほうでも実施可能な方法をいま検討中であります。たとえば、七環には、七環以内に通過車両は立ち入ることを禁止するといっても、なかなか私は通過車両ですからと言って七環以内に入るかどうか、むずかしい問題がありますし、しかし、光化学の予報等を前の日に天気予報みたいにやろうという東京都の企てもあるようでありますが、それがその日によって、午前十時ごろになると、その日の風のぐあい、あるいは温度のぐあい、晴天、雨天のぐあい、あるいはスモッグのたまりぐあい等で、ほぼ予測がつくでありましょうから、そうすると、予測がついた場合において、十一時から一時までの間は、環七以内においては絶対にいかなる自動車も、人命その他に影響のある救急自動車、火災その他そういうものを除いては、一斉にエンジンをとめて、現在進行中のその場所において停止して、二時間どうしようと、昼めしの時間にしようとけっこうですけれども、動いてはいかぬということをやろうかとか、その場合には、知らせる方法は、どうも空襲を思い出していけないのですが、全部一斉にサイレンを鳴らすことにしようとか、いろいろなことを考えておりますが、私はやりたくないということでもないし、やらないという意味でもありませんので、やはり都心乗り入れを規制するについても、少なくとも慎重な準備が要りますので、たとえば乗用車は入れてはいかぬ、それでいいじゃないかと言いますけれども、乗用車を入れない場合には、やはり郊外に相当大きな駐車場のスペースを国が設けて、そこに無料駐車させて、新たに発生する大量の輸送機関をそこに配慮して都心まで運んであげませんと、あとは歩いて行け、満員の地下鉄、バス等がぎゅうぎゅうでもあとは知らぬというわけにもいかぬと思いますから、その意味で私としては、珍しく慎重な態度をとっておるということでありまして、意欲においては、いますぐにばしっとやったら気持ちがいいだろうと思うのですけれども、私、そこまで言っておりませんが、何らか名案を考えてみたいと思います。
  130. 小平芳平

    小平芳平君 鉱業法について、先ほど沢田委員質問に対してお答えのあった点、あるいはなかった点あったようですので、確認をいたしたいのですが、鉱業法第百十七条の三項の、通商産業局長は云々の項目、供託の項目、これはいまだに供託しておらないというのはおかしいわけですね。現行法律すら守っていないという、そういう怠慢のそしりを免れない。したがって、この供託は、鉱業権者に対してすぐ供託をさせるという、こういう方針でいくのが当然と思いますが、その点が一つ。それから次に、休廃止鉱山について、休廃止鉱山の処理、これが今回秋田県に行ってみましても、もうそれこそ明治以来の、あるいは江戸時代以来の鉱滓が山と積まれている。そこのところを川が流れている。あるいは雨が降ると押し流されてくる。そうしてこういう状態が続く限り、この住民は絶えず健康被害、鉱業による、この鉱山による健康被害、鉱害というものから縁が切れないわけです。したがって、この点については、国が予算を取って積極的対策を立てるという点が一つ。それから特にこの現在の鉱業法は、そうした重金属による健康被害ということが念頭にない時代のものと思います。したがって、鉱業法は、そうした重金属による健康被害、鉱害ということを頭に置いて総点検して、直すべきものは直すということが必要だと思います。以上、三点について。
  131. 莊清

    説明員(莊清君) 第一点の鉱業法第百十七条三項の積み立て金の問題でございますが、従来全然行なわれておりませんでした。これは今日の非鉄金属鉱山の鉱害が全国的に多発しておるという現状にかんがみまして、前向きに当然に対処すべきことだと通産省としては考えております。具体的にいろいろ実施上の問題その他あるかと思いますが、すでに鉱山関係業界のほうにもこの問題について検討をすべきであるという話をいたしまして、これから至急検討いたしたいと考えております。  第二点の休廃止鉱山におきますたとえば古い時代の鉱滓等が放置されているのじゃないかという御指摘でございますが、お話のございました秋田県の大巻鉱山で、いまここに典型的な例が一つございますが、これにつきましては、監督部を通じて検査もいたしましたし、また本省からも最近人を派遣いたしまして調査いたさせました結果、早急にこれを一定の場所に水等が流れ出さないような形で十分に密閉をして埋め込む等の措置で処理をすべきであるというふうに判断いたしました。現在、鉱業権者に対しても、その方向で措置するように指示をいたしまして、具体的に検討を進めております。なお、先ほども申し上げましたように、こういう場合で、現在の鉱業権者が必ずしも法律上の責任のないような古いものでございまして、なお、現在の鉱業権者がとうていその処分にたえられないというような事態がありまして、それが鉱害防止の上から緊要な場合には、たとえば代執行等の方法も今後とも場合により必要になるかと思います。そういう場合にはまたそういう手段を講じてまいりたいと思います。  鉱業法の問題につきましては、鉱山石炭局長から……。
  132. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 御指摘の重金属等についての配慮が鉱業法にないのではないかという点でございますが、この点についてはやはり鉱害問題として処理すべき性質の問題であろうと思います。大気汚染あるいは水の汚染等の問題でございますので、これらについては保安法あるいは関係法令の整備によってこれらの鉱害が生じないように処置すべきであるというふうに考えております。
  133. 小平芳平

    小平芳平君 じゃあいまの局長にお尋ねいたしますが、どうして現在ある供託すらやっていないのですか。
  134. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 御指摘の問題につきましては、かねてから御指摘も受けておりまして、これらについてはその実施について考えてまいったわけでございますが、先ほど公害保安局長からお答えした線で解決をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  135. 小平芳平

    小平芳平君 そういうふうにゆっくりしたことを言っていても、現実問題、この重金属による鉱害はまず植物にあらわれる。したがって、稲などがまるっきり黄色くただれたみたいになってしまって根も伸びない。したがって、葉も黄色くなって縮れてしまう。現実にそういう重金属による鉱害が目の前にあらわれているのに、補償する者もなければかけ合う者もおらない。鉱業権者が明確な場合、現在採掘している場合ならばまだ話し合う先もあるわけですが、それすらないようなところがあるわけです。いまお話の大巻鉱山の場合などは、確かに採掘はしているのですが、とにかくシックナーとか、排水口だとか、もう全くお話にならない荒涼たる場面です。ですから、そういう点をもっと真剣に取り組んでいただかなくちゃ困ると思うのですね。それから第一、鉱山保安監督官が監督に来ることになっておるようですけれども、その人に聞いてみたいくらいです。大巻鉱山の場合なんか排水口というのは一体どこのことをいうのか。排水口の段階基準に合っておると言うのですが、排水口というのは一体どこの場所をいうのか。そういうのが現状じゃありませんか、この場合などは。——いいです、答弁しなくても。  それから厚生省は健康被害あるいは環境被害というものをどのように調査なさっていますか。
  136. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) ただいままでに県からの連絡で当方が承知しております状況は、健康被害等につきましては県のほうで七月末以降住民検診を実施いたしましたが、これは六十二名が受診いたしまして、その中で尿たん白陽性が二名、尿糖陽性が一名出ておりまして、これについてさらに精密検査を進めておるということでございます。なお富山県の萩野博士が十九名ほど診断されまして、そのうち重症の三名を御自分の病院のほうに検診のために連れていかれたわけですが、やはり重症の他の三名については現在、県立の中央病院で精密検査が進められております。残り十三名——全部で十九名ということでございますので残り十三名おりますが、これにつきましても逐次県立の中央病院で精密検査を進める予定と聞いております。したがいまして、厚生省としましては、これらの精密検査の結果を見まして、すみやかに必要な対策なり指導なりを考えたいということでございます。  それから汚染状況につきまして、これはとりあえず井戸でございますが、秋田県でやはり七月中旬に十三カ所の井戸水を調査しましたところ、カドミウムの飲料水暫定基準を越えるものが三カ所、それから亜鉛の水質基準を越えるものが九カ所、鉛の水質基準を越えるものが一カ所ございました。特に亜鉛等についてはかなり高い数字が報ぜられております。したがいまして、これらの井戸は全部現在では使用を禁止いたしまして、別に井戸を掘って給水を開始しているということでございます。いずれにしましても飲料水等直接人の健康にかかわる問題でございますので、精密調査の結果を待ちまして、先ほど申しましたように適切な指導を加えてまいりたいと思います。
  137. 小平芳平

    小平芳平君 井戸が、もう子供のときから使っていた井戸が、突然、この井戸は重金属による鉱毒が心配だから飲んではいけないと言われた、そういうときの驚き、それからまた、実際の稲とか、そういう植物の受けている被害、それからまた第一、岡山大学の小林教授の分析では水が硫酸が多く、かんがい用水で三九九PPM、井戸水で二一四PPM、こういう酸性の水を飲んでいるものですから、からだ全体が酸性になる。そうして重金属が入れば非常に健康被害を受ける可能性が強い。実際に小林教授の分析では尿がpHが四・五というふうに言っておられましたが、われわれしろうとがあそこでもってはかってみても確かに四か五です。これは県の公害課長も立ち会っておりますから、実際に立又鉱山から出てきたところの川はどこではかってもpH四か五にしかとれない。ところが会社側は、いや六点幾つだと、こう言っているのです。しかし、そういうようなでたらめなことを言っているということです。それから健康被害のほうは、いま、ちょっといまの説明は、ちょっと事実そうかなと思う点もあるのですが、萩野博士が行なった健康被害調査では、百二十一名の方が診断を受けて、神経痛が四十六名、それから変形性脊椎症というのが十四名、約半分の人はそういう神経痛とかあるいは脊椎症というものをわずらっているという、これが重金属に関係がありはしないかという点については、さらにそのカドミウムならカドミウムの分析の結果を見なければ断定はできないわけですが、こういう状況にありまして、そうした井戸水の問題あるいはかんがい用水の問題、それからそういう神経痛等の多いという点、そういう点からしてこの早急な対策が立てられなければ、実際問題、骨がポキポキ折れるようになってからじゃ間に合わないわけですよね。ですから、少しもっと積極的な姿勢が必要だと思いますが、いかがですか。
  138. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) この疾病のほうの関係の、健康関係のほうの精密検査も大体、おおむね入院期間三、四日程度で一応の結果がわかるのではないかといわれておりますが、いずれにいたしましても、早急にデータをそろえまして県と相談してまいりたいと思います。
  139. 小平芳平

    小平芳平君 それから、じゃこれで終わりますが、先ほどの質問に、〇・九PPMが安全かという質問に、これは先回の委員会で岡山大の小林教授が、それは〇・九PPMは高過ぎると、〇・四が正しいと、こういうふうにいろいろな点から説明したわけです。厚生省の計算のここがおかしいということを指摘したわけです。その後、NHKのスタジオ一〇二等でもこの両者の御意見が述べられております。  で、いずれにしても、公害部長、この〇・四から〇・九の間のお米は、汚染されていることは間違いないのですよ、汚染されていることは。したがって、汚染されていることを承知で食べますか。喜んで食べますか。あるいはそういう〇・九PPMで絶対間違いないという、その基準が永久に変わらないと言う必要は毛頭ないじゃないですか。これは〇・七のほうがまだ安全性があるだろうし、〇・四のほうがまだ安全性があるだろう。これは当然じゃないですか。
  140. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 先ほどもお答えいたしましたように、〇・九、玄米で一・〇PPMでいいかというこの数字自体に、この結論を得るまでのまあ学問上の前提と申しますか、その点について一部の先生に異論があるということは承知しておりますけれども、しかし、全体の結論は、厚生省が委嘱しました専門の先生方の一致した結論で、少なくとも学問的にいまの段階でこれを否定する根拠は見当たらないというふうに考えております。  ただ、先生お話しのように、これが科学的に未来永劫にわたってということになりますと、先ほども食品衛生調査会のことを申し上げましたように、やはりそれなりのデータでしかるべき実験等も行なってみなければわからない。いまの段階では少なくとも有害ときめつけることはできないということでございまして、そういう点から、もともといろいろ安全率も見ておりますし、この安全基準としては一応現段階では妥当なものと考えておりますが消費者の、感情からしますれば、先生おっしゃるように、汚染度の多いものと少ないもの、いずれを選ぶか。また、それが単に消費者の感情ということじゃなしに、食品衛生といいますか、安全上も望ましいということは間違いないところであろうかと存じます。
  141. 内田善利

    内田善利君 関連で質問させていただきますが、いま「一部の先生」と言われましたけれども、私は岡山大学の小林教授のことではないかと思いますが、小林教授はやはり厚生省のカドミウム汚染調査班の班員でもありましたし、一部の先生の説だからといってむげに私は取り入れないということはこれは国民の目から見た場合ですね、あのように先月の十何日でしたか、国民の耳に放送、目に放送されました以上は、学問的論争であろうとも私ははっきりすべきじゃないか。われわれ国民は、米の、汚染地区の米は平均が〇・六六PPMだということも知っておりますし、非汚染地区の最高のカドミウムは大体〇・四PPMくらいまで含んでおるということは暫定基準をきめたときの基準だと、こう承っております。それならば〇・四PPM以上のカドミウムを含んだ米というのは非汚染地域にはない米なんです。そういう米を食べていいのかどうか、私は疑問に思いますと同時に、たとえば私たちは食事をする場合にハエが一ぱいたかっておればもちろん食べません。これは大腸菌を含んでいるかしれないし、人間のためによくないから食べません。ハエが一匹でも二匹でもついていてもあなた食べますか。われわれ国民はそういう感情なんです。カドミウムが、非汚染地区の最高のカドミウムの含有量は〇・四PPMだ。それ以上はもう汚染米なんです。そういう暫定基準をきめておりながら今回〇・九PPMにしたということはやはり国民としては納得がいかない。また、あの放送の中で、小林教授と前公害課長は平行線で終わったように私は思うのです。まあ、分析のしかたが違うと一日の摂取量と排せつ量の尿の中のカドミウムの量、こういうきめかたが根本が違っておるから計算の方程式も違ってきておる。根本の分析方法につきますと私たちは何も知りませんけれども、尿の中のカドミウムの量のはかり方が、一方は弱酸の酢酸を使っており、一方は濃塩酸の強酸を使っている。そうしますと、カドミウムは酸が強いほど出てくる。そういうところまでは私たちも知っておりますけれども、そうなりますと、尿の中のカドミウムの分析方法がまだ足らないのじゃないか、そのように感ずるわけです。そうなってきますと、根本的にこれは考える必要があるのじゃないか。むげに、厚生省ではこのように断定したというのじゃなくて、小林教授もカドミウムの汚染については私は権威であると思うのです。また、先ほど申しましたように、厚生省の一班員としてカドミウムの調査に携わっておる。そういう方の論説をむげに拒絶する、そういう態度ですね。あくまでも、厚生省は小林教授のおっしゃっていることをどのように研究し検討し結論を出しておられるのか、その辺をお聞きしたいと思って関連質問をいたしました。
  142. 山本宜正

    説明員(山本宜正君) 私、八月一日付で公害課長を拝命いたしましたので、前の課長からの申し継ぎという形でお答えさしていただきます。  この尿の検査の方法につきましてもそれを酢酸酸性にする、あるいはそのほかの酸によって酸性にするということについては、一応この研究班の中でも金沢大学にクロスチェックの意味でサンプルを二分いたしまして送付して、その結果として有意差がないという検討を加えているというぐあいに聞いております。そういう意味ではデータの検討には間違いがないものと私ども聞いております。  なお、この安全基準をきめる段階におきましては非常に学問的にむずかしい話になろうかと思いますが、尿中に出る量を算定いたしまして、それから逆算をいたしましてそのほかの食物からもとるカドミウムを考えに入れまして、それらの上で一応安全率を考えてきめられる、かように考えてよろしいように思います。
  143. 内田善利

    内田善利君 関連質問で申しわけありませんが、長官はこの点についてはどのように考えておられるかお聞きしたいと思います。
  144. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まだあまり問題点に提起されていないかと思いますが、問題は生産農民の人たちが自分たちのつくった米を国が買ってくれるのかくれないのかという問題と、国はそれを消費者に配給するのかしないのかという問題、それが食管法上のたてまえはどうなるのか、買うべきものを買わないということで生産者に対して生産数量に対応する金額を払うのか払わないのか、それは賠償金なのか、政府の買い上げ資金なのか、その米はどうするのか、あるいは安中その他で反当八万五千ですか、そういうもので話が一応農民と会社側との間にはついたというようなばらばらのケースでございまして、これをやはり私の手元でいま農林省厚生省両方に関係もありますし、いまの基準の問題もありますし、要するに国民がということを皆さん申しておられますように、生産する人も国民ですし、配給を受ける人も国民ですから、国民から見てほんとうにだいじょうぶなのかどうなのか、それは食管法上国がどう扱うのかというような問題等をすみやかに明らかにする必要があると考えまして、いま農林省を督励をいたしておるわけでございます。要するに、国民の不安感を除く必要があるということを学問上もまた行政上も明らかにする必要があろうかと考えて努力しておるところであります。
  145. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 山中長官、佐藤総理は七月三十一日の公害対策本部を設置するにあたりましてみずから本部長となり、政府責任を明らかにする姿勢を示されたと思うんです。そこで、きょうは当委員会出席され、国会質疑を通じて国民の前にその所信を表明されるものと私は期待しておりました。各党の委員総理出席を要請されたようでありますが、私も総理出席を要望しておきました。ところが、残念なことに出席なさらないのですね。今日、公害問題が全国民の関心を高めておるときに、どのような理由か存じませんが、はなはだ遺憾なことだと私は考えます。これでは総理の熱意が疑われてもしかたがないと、こういうことになると思うのです。流行歌にもあるとおり、熱意があるなら態度で示すべきだと私は思うのですが、口先でうまいことばかり言っても、熱意が実際に示されないんでは、私たち総理の熱意を信用することができないと思うのです。山中長官政府代表として出ていらっしゃるようですから、私は総理に対する質問長官にしたいと思うのです。  山中長官は、午前中の占部委員長質問に対しまして、総理は、人間尊重時代に来たと、こういうように語ったと、こういうふうにあなた答えておられるのです。それでは、私はことばじりをとらえるようになりますが、従来は人間尊重時代ではなかったのか、企業尊重の時代であったのか、企業本位の時代であったのか、こういうことに私はなると思うのです。おそらくそういう意味でないとはあなたは打ち消されるだろうとは思いますが、こういうことばが不用意に出ること自体が私はおかしいことだと思うのです。やはり自民党の大臣諸君の腹の中にはほんとうに人間を尊重するという気持ちが薄いのじゃなかろうか。やはり企業本位の気持ちが多いんじゃなかろうか、こういうことを私は言えると思うのです。第一、この公害対策基本法ができたいきさつね、これから見ましても、そのことは明らかに私は人命より経済成長に重点が置かれておると、こういうことがはっきり言えると思うのです。  そこで、私は質問を続けますが、公害対策は企業優先の立場ではなく、人間優先の立場に立って行なわなければならない。これが私たち考え方です、基本的な。その見地から申しますならば、公害対策基本法は、全面的、根本的に改正しなければならないと考えます。その改正の中心点と申しますのは、あの公害基本法国会にかけられたときにも私たちも問題にして、あの公害対策基本法に反対する大きな一つの理由になったわけでありますが、まああの基本法ができるときには社会党と共産党が反対したと私は思っておるのでありますが、その反対理由の大きい点は、国民生命と健康を犠牲にし、企業優先を保障しておるあの第一条の第二項、経済の健全な発展との調和条項を削除し、人間優先の立場住民生命、健康、生活の擁護を第一として、これを破壊する大企業の横暴を押えることを私は基本としなければならぬ、こういう点であの法律に私は反対をいたしました。だから今日ほんとうに政府人間尊重ということに目ざめたならば、まず第一、この次に抜本的改正をするならば、この点をまず第一取り上げて私は変えていかなきゃならぬ、こう確信をいたしておりますよ。ところが、八月四日開かれました公害関係閣僚会議で、公害対策基本法を全面的に再検討し、次の通常国会改正案を提出する方針をきめておるようでございますが、新聞報道を見ますると、各閣僚の見解がばらばらで、一条二項の調和条項は削除するということが確認されておらないのです。きょうは各大臣出席なすったら私は各大臣に一々この点を確かめておきたい、大臣意見を伺うつもりでおりましたが、それもきょうは山中長官一人で、ほかの大臣出席していない。八月五日の読売新聞の切り抜きを持っておりますが、その切り抜きによりますると、内田厚生大臣は、この企業と経済との調和、この条項は削除するのが当然だと、こういうふうに語っておられます。山中長官は、また、避けて通ることはあり得ない、こういうことばで、削除ということばを使わないで、明確な答弁を避けていらっしゃるのです。また、宮澤通産相は、加害者、被害者のせんさくをしない。国、地方公共団体、企業、住民の四者の責任でこれは解決していかなきゃならぬ。一部手直しは小手先であり、小手先だけのことでは解決しない、全面書きかえをしなきゃならぬと、こう言いながらも、やはり削除問題には触れていらっしゃらない。うまいこと逃げておるわけなんです。そこで私は、まあ時間があればこの各新聞読売、朝日、毎日の切り抜きを読んでもいいんですが、時間がないようですから、率直に私は山中長官伺いたい。一条二項のいわゆる経済との調和云々の条項を今度抜本的改正するときに、おそらく次の国会に出される予定だろうと思いますが、この条項を私たちは削除すべきだ、まず削除すべきだ、こういうふうに考えておりますが、山中長官は、この条項を削除するのかしないのか、この点をはっきりとここでまずお答えを願いたいと思います。
  146. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) よけいなことを答弁するようですが、前置きがありましたから、ちょっと総理姿勢の問題ですが、私が人間尊重というものを掲げた総理であると言いましたのは、総裁選に、わが党の内部の問題ですが、総裁選に立候補するにあたりまして、経済万能ではいかぬのだ、人間尊重ということを考えなければいかぬということを掲げて総理になった人である。その内閣のもとでこのような現象が起こっていることにひどく心痛していることを申したつもりであります。誤解があったら私のほうの言い方が悪かったわけでありますが、そのために本来ならば総理府において大体本部をつくりまして、総理本部長になることが一、二ケースがあるわけですけれども総理府に置いたのでは各省大臣の指揮ができぬ、これを内閣に置いて、そのためには自動的に総理府総務長官が副本部長になるという形になりませんので、そこで公害担当の大臣を閣議において指名をしたという異例の決意を示したものであります。そのために私は担当大臣として、いかなるどろもヘドロも私がかぶるということで、いまおつき合いと申しますか、何時間でも皆さま方の気の済むまで私の気持ちを述べたいと考えておるわけでございます。これからも一生懸命やります。  それから、基本法の問題でございますが、これはなるほどある新聞にまるで見ていたような問答ふうに書いてあるのもございました。しかし、これはどうも推測してつづり合わせたものでございまして、だれもその場にいたわけではございません。だれが何と言ってだれがどう言ったというものでは、そういうふうな形のものが正確である上はなかなか申しにくいのですが、私の立場は、いわば厚生省はすでに三ヵ月ほど前に基本法第一条第二項の調和条項は削除すべきであるということを内外に明らかにいたしました。私はこれは厚生省姿勢としては当然のことであったろうと思います。しかしながら、その後通産省は沈黙を守っておりますから、この沈黙は賛成なのか反対なのかいずれ議論する気なのか、いずれにしても黙っておるという事実が一方にあるわけでありますので、最初の調整も第一番目にこれに取り組むべきだという先生のお話がありましたとおり、最初の関係閣僚会議でもしぼりまして、基本法の問題の第一条第二項の問題を議論しようということで通産大臣と厚生大臣と若干ニュアンスは異なりますが、経企庁長官を入れまして、私が会議を主宰した形で進めたわけであります。それを会議を進めるにあたって、私はこっちのほうに加勢するのだといって司会をいたすのはなかなかたいへん、口では簡単でございますが、それぞれいずれも閣僚でございますし、それぞれ国務大臣としての見識並びに義務を負っているものでありますから、一方的に押しつけた結論を出していいかどうかということについては、私も第一回目については内心考えるところがございましたために、あのような一応の基本的な話し合いをしたわけでありますが、基本法の抜本的な改正をいたしまする際においては、これを人間尊重を土台としたあくまでも日本の経済発展の陰に人間の尊厳が押しつぶされていくということを絶対に見のがさない、これは憲章ともいうべき新たにつくりかえられるであろう基本法において明確に人間尊重の土台をはっきりと示していくんだということにおいて意見の一致を見たわけであります。したがって、私は先ほど盲腸にたとえて虫垂炎症云々と申しましたが、これも虫垂炎を起こして政治的に第一条第二項が切開の必要に迫られているわけでありますから、また私どものからだには痛みが感ぜられるわけでありますから、当然第一条第二項を避けた基本法改正ということはあり得ないということを申したわけでありますけれども、第一回目の会合の直後でありますから、そういう表現にとどまっておるわけでありまして、明日もまた閣議前一時間ほど詰めをいたしたいと思いますが、逐次そういうものは明確に表現してまいりたいと存じますが、それらの基本法の全面洗い変えの際に第一条第二項が生き残るということはあり得ないということだけは明確に申し上げておきたいと存じます。
  147. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もう一つ確認しておきますが、それじゃ第一条第二項は削除すると、生き得ないということは削除するというふうに理解していいんですか。そこをはっきり言ってください。
  148. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 削除すると明言するについては、通産大臣がよろしゅうございますという返事をやはり所管大臣として私としてはいただいて、それから政府姿勢として総理の意向も聞いてきめたいと思いますが、方向は間違いなくその方向で進んでおりますし、通産大臣もいずれその返事をすることははっきりと申しております。
  149. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、通産大臣が反対すれば、削除しないこともあり得ると、しかし、通産大臣もそういう削除するという方向に来ておるだろうから、来ておると理解できるから、抜本改正のときは削除する、こういうふうにはっきりあなたに言い切ってもらいたいんだな。
  150. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 通産大臣もニューライトとかなんとかいうことで政治生命が未来に残っておる政治家の一人だと思いますから、ここらで時勢の流れを見誤るようなそういう政治行動はとらないということを信じておりますし、また、二人だけで話し合いもしておりますから、私にははっきりした信念、見通しはございますが、ここで通産大臣と私が最終的に削除するということを発表しますというと、通告しないで、少なくとも通告もしないままで答弁をすることだけはお許しを願いたい。武士の情けでお許しを願いたいと申し上げておるわけです。
  151. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 通産大臣のみならず、山中長官も未来に向かって発展していく政治家だと思うんですよ。だから私は武士の情けじゃないけれども、あなたの言うことを、私は、削除するという方向に努力しているんだと、それで必ず削除できるもんだと、私はそういうふうに理解しておきますが、いいですね。
  152. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) いいです。
  153. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もう一点、もう時間なさそうですからね。八月四日毎日新聞夕刊の報道の中にこういうことがあるわけですね、「さらに山中総務長官は「国の基準は最低基準であり、地方の実情に応じて法律に上乗せする形で条例を強化すべきであり、そうした条例法律違反とするのはおかしい」との考えを基本に、国と地方権限の範囲も公害基本法の中に盛込みたい考えである。」こういうふうにあなたが述べたと、こういうふうに毎日新聞は報道しているんですが、これも私はそういうお考えを確かに述べられたと、間違いないということをここで確認しておきたいんです。
  154. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 国の基準は最低の基準であり、というんではなくて、最低基準として今後そういう方向に法律を変えていきたい。国の基準は最低であるというふうにしていくことによって権限委譲等を地方にすることが伴いますと、いま議論されている法律をこえて条例基準がきびしいのは違反かどうかというつまらない議論ではなく、そのほうがまた実態的にも正しいと思いますから、これからの作業の方向を言っているわけであって、これからの作業の方向は、国は最低基準を示すべきものである、そういうことに立って作業をしていくということであります。
  155. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 朝からも、地方自治体で条例をつくる場合に、国の基準よりも強い基準をきめることが違法かどうかという問題が論議されたと思うんですが、地方の実態で国の基準よりも強い基準をつくることは差しつかえない、こういうように考えていいわけですね。
  156. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 現在の法解釈、法体系のもとでは国の法律に定められた基準地方自治体が上回って条例規制し罰するということは私は違法であると思います。しかし、そういう議論をしておることが間違っておる、現在はもうそういう時代ではなくて、地方自治体をもっと信頼して知事さん以下におまかせしていい分野はどんどんまかせる。国民だってくみ取りまで国の責任だと言っているとはよもや思いませんけれども、そういうことはやはり地方の事業でありましょうし、財源その他も考えながら基本的に姿勢を変えていくということを申しておるわけでございます。
  157. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そういう意向も今度の公害基本法をつくるときに盛り込むということを確認していいですね。
  158. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) そのとおりです。
  159. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでよろしい、長官に対する質問は。
  160. 田中寿美子

    田中寿美子君 長官がもう帰られるそうですから、私は一点だけ長官に確認というか御意見を伺っておきたいのです。それはただいまの公害対策基本法の問題で、その目的のところの第二項を削除するということについては私、須藤委員と同じような立場から何回もこの委員会で各大臣に申し入れておるわけでありますが、   〔委員長退席理事久次米健太郎君着席〕 その際に、その基本法改正の目的だけでなくて、定義を変えなければならないと思います。けさ占部委員から土壌の汚染、産業廃棄物を入れるようにということを提案されて、長官もそれに賛成だと言われたというふうに私は聞いておりますが、実は社会党が公害対策の政策として提案いたしました中で、第一点は、その目的の第二項を削除するということ、それから公害対策基本法公害の定義の中に大気汚染水質汚濁、土壌汚染、それから産業廃棄物などを入れるようにということを提案しているわけです。それを賛成していただいているものと見まして、そしてその場合に、けさ占部委員が農薬を公害の扱いにせよというふうに言われたと思うのですが、それについては研究すると言われたのです。この農薬を公害扱いするというより、これはその定義の中に土壌の汚染が入りますと、大気並びに水の汚染それから土壌の汚染には非常に農薬が大きな役割りを果たしている。最近は非常に農薬の汚染の問題がはっきり出ていると思いますので、ですから農薬を環境汚染の有害物質というふうな取り扱いをして公害扱いをすべきではないかと私も考えるわけです。したがいまして、大気汚染防止法とか、水質汚濁とか、土壌汚染を防止するためのどうしても環境基準をつくらなければいけない、その環境基準の中に農薬というのを入れてはどうか、農薬の中のたとえば特定のもの、有機塩素系農薬というようなものを入れるべきではないかと思うのですが、その辺を、つまり定義を改めることと、それから環境汚染するものとして農薬を公害扱いにするべきではないかと思うのですが、その辺を御意見をお聞かせいただきたい。
  161. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 占部委員からそう言われたからはいと言ったのじゃなくて、意見が一致したということです。農薬のほうは、私のほうから、農薬問題には触れておられませんですけれども、農薬の問題も議論しておりますという形で申し上げた、正確にはそうでございます。農薬の問題はただいまの御提案も一つの示唆に富んだものでございますし、さしあたりはいま農林大臣が、農薬の問題は農林省としては加害者であり並びに被害者でもあるという立場でもありますし、農林省自体がまず農薬の問題についてどのような、独自で法改正も考えたいとまで農林大臣は言っておりますから、それらの考えを見まして、典型六公害のほかに土壌、生活環境廃棄物、産業廃棄物、そのほかに別に農薬という項目を立てるかどうか、この点は目下のところ慎重に検討しておりますということを申し上げております。     —————————————
  162. 久次米健太郎

    理事久次米健太郎君) 質疑の途中でありますが、委員異動について御報告いたします。  本日、小平芳平君が委員辞任をされ、その補欠として多田省吾君が選任されました。     —————————————
  163. 久次米健太郎

    理事久次米健太郎君) 質疑を続行いたします。
  164. 田中寿美子

    田中寿美子君 沖繩のほうにおいでになるのでございましたら、城戸事務局長がいらっしゃいますので、   〔理事久次米健太郎君退席、委員長着席〕 農薬の大気汚染のことをお尋ねしたいと思います。先ほどこちらのほうから一問だけ山中長官にということでございましたから。  それでは、いま続いて、農薬は水の中にも入るし土の中にも入る、空気も汚染するわけですから、前回のこの公害対策委員会のときに、城戸さんがまだ厚生省公害部長をしていらっしゃいましたときにこのことを申し上げたはずでございます。環境を汚染するものとして、特に有機塩素系殺虫剤、BHC、DDTなどを中心にして、あるいはドリン剤などを環境汚染物質として公害扱いをすべきではないかということを申し上げたのでありますが、このごろ非常に方々から環境汚染の実態が証明されつつあるのですが、事務局長はどういうふうにその辺をお考えになりますか。
  165. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) ただいま公害対策基本法改正との関連での御質問に引き続きまして、農薬の問題の御指摘でございますが、私どもとしましては農薬が大気汚染なり水の汚染なりこういうものを生じます限りにおきましては、現在におきましても当然公害だと考えておるわけでございます。ただ、さいぜんお答えしましたように、農薬がそのまま農作物に吸収されて残留農薬の問題として出てくると、この問題はこの公害の問題と若干違った、食品衛生上の問題だろうか、こういうお答えをしたわけでございます。それからなお、土壌汚染ということが別個に議論されているわけでございますが、水の汚濁あるいは大気の汚染、それに引き続きます土壌の汚染、こういうことがあった場合、それに農薬が関与しておりますれば当然その土壌汚染も農薬にからんで一つ公害の源である、かように解釈しているわけであります。
  166. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしたら、現状でも、たとえば大気や水を農薬が汚染していれば公害として扱うのだというお答えでございますが、そうすると、大気汚染防止法の施行令の中にある特定有害物質というものの中にBHCとかDDTというものは入っておりませんでした、そういうものを入れるべきじゃないか。それから、水質汚濁に関して、水質基準にも入れるべきではないかと思います。
  167. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) 私、申し上げましたのは、この公害の定義から言って、農薬が公害につながる場合があり得るということを申したわけでございまして、それをどの法律の体系でどう位置づけしていくか、これとはおのずから別個の問題でございます。農薬取締法の関係もございますし、その他関係法令もございますし、この辺は慎重に検討して、最も完全なる対策ができるよう各方面から検討していく、こういう姿勢でなければいかぬだろうと思うのでございます。
  168. 田中寿美子

    田中寿美子君 農薬取締法とかそれから食品衛生法で扱うことのできない部分があるわけですね、だから、公害の中に入れて扱うべきだということを私申し上げておるので、公害部長さんの御意見はいかがですか。
  169. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) まだ就任して十日目の新米部長でございます。いまお尋ねの件でございますけれども、農薬については現実に農薬取締法ですかがございますので、はたしてそういう農薬取り締まりの面、この法律規制以外に農薬というものが、いずれにしても農薬の公害に寄与しておるという事実はございましょうが、いまのその取締法の規制でそういう、漏れるものがあるのかどうかについては、またそのことによっては先生のおっしゃるようなことも特定の有害物質としてとられるなり何なり、そういう規制が必要だろうと思いますけれども、この間の事情につきまして、ちょっと私まだ自信を持って判断できる資料を持ち合わせておりませんので、しばらく時間をおかし願いたいと思います。
  170. 田中寿美子

    田中寿美子君 農薬取締法それから食品衛生法のそれぞれで取り締まるという観点じゃなくて、たとえばこれは私は牛乳のBHC汚染の点について、農薬の汚染、食品並びに環境汚染のことをきょう質疑したいと思っているわけなんですけれども、たとえば牛乳というのを、牛乳の中にBHCを入れてつくるわけじゃないのですね、つくる人は、生産者は。それは牛が食べるえさの中に、えさに使いますところの稲わらが汚染されているから、それじゃその稲は何で汚染されるかというと、直接の、農民が散布する場合と、それからそれだけではないと思いますね。私は土壌からも入るだろうし、水からも入るだろう、そういうふうな環境がよごれていることによってその食品がよごされてくる、これは牛乳だけではないと思いますね、くだものでもあるいは米でも、さっきからカドミウムの汚染のことがたくさん言われておりますけれども、米からもやはりBHCは出てくる。そうしますと、まわりの環境がよごれているために食品がよごれてくる、こういう関係になってきたときに、これは、そういう今度はその食品を扱ったものが直接取り締まりの対象にはならなかったりするわけですから、ですからもっと広くそれを食べる人間の立場からいってどうしたらいいかということを考えるのが公害対策だろうと思いますので、公害部長さんには、ぜひこの際、先ほど申しましたように、最初の目的の第二項を除くことはもちろんでございますが、公害の定義の中に土壌汚染とかあるいは産業廃棄物、都市廃棄物、そういうものも入れて定義を広めることと同時に、それぞれの環境基準をつくりますときに農薬などの中の有害なものを入れていくという方針でつくっていただきたいということを申し上げたいわけです。  それで、私、五月に三回ぐらいにわたってBHC農薬の牛乳汚染の問題をお尋ねしたわけですが、その当時全国にたくさん牛乳の脂肪の中に出ていたベータBHCですね、それを続いて毎月全国的な調査をしてほしいということを申し上げたんですが、その後のデータでございますが、どういうふうになっているかということを報告していただきたいと思います。
  171. 神林三男

    説明員(神林三男君) 昭和四十五年の四月二十一日の食品衛生調査会の見解に従いまして厚生省は、とりあえず農林省に対しまして生産者に対する対策の徹底をお願いするとともに、全国的に各都道府県に対しましてその残存量の検査を指示したわけでございます。その結果、現在まで二十数府県の一応成績が出てまいっておるわけでございますが、これにつきまして、四月の二十一日のいわゆる八都道府県の残留量のうちの平均をしました最高値、長崎のベータの場合でございますが、一・二八八PPMよりも多いという数値は現在出ておりませんです。それからやはりこれは全国的に見ますと東日本のほうが西日本のほうよりも低いという傾向は従来と同じでございまして、特に市乳につきましてやった結果では、従来の数値の大体半分ぐらいの数値が出ておるという状況でございます。
  172. 田中寿美子

    田中寿美子君 一体に西日本の汚染がまだずっと高いわけですね。これでこれは二月から五月、六月にかけての調査の資料を私は見ましたけれども、愛知、大阪、兵庫、奈良、特に愛知、兵庫、奈良などはまだ高いですね。そういうところ、岡山それから佐賀、長崎、宮崎、高知もです。全体として思うように数値が落ちていないんですね。これはどういうことでしょう。四月発表の当時、五月の委員会のとき、青草が出て、そしてBHCのついたわらも食べさせなくなるから、牛乳は急速にきれいになるだろうということでしたけれども、数値で見ますと思うように落ちていないわけなんですがね、これはまだ当分こういうことなんでございましょうか。
  173. 神林三男

    説明員(神林三男君) これにつきましては、原因いろいろございますけれども、一応ベータBHCの半減期というものですか、そういうものはかなり長い期間にわたるということが一つの原因でございまして、青草に切りかえてすぐ値が〇・〇〇幾らというような値になるというようなわけにはまいりませんけれども、一応本年の一月、二月に比べましてかなり減っておるという事態でございまして、なお、こういう高いところに対しましては私たちのほうでも特別にいろいろ稲わらに対する対策とか、そういうものをひとつ十分やっていただきたいということを農林省とも連絡をいたしておりますし、府県もそのような措置をとっておると考えております。
  174. 田中寿美子

    田中寿美子君 愛知は二月が〇・二五三PPM、それで五月が〇・六四四とたいへん高くなっておりますね。個体の検査の中で非常に高いのも出ておりますね。これはどういうわけですか。かえって上がっているわけですね。
  175. 神林三男

    説明員(神林三男君) これが私たちも原因いろいろ調べてみたわけでございますけれども、やはり相変わらず汚染された稲わらを食ったというようなところにあるんじゃないかというふうに、これは推定しておるわけでございまして、おそらくこの特に高かったのにつきましては、場合によればある程度経時的な変化というものも長期見る必要もあるかと思いますけれども、一応そういうような個体差が多少ある、それでこれはおそらくやはりわらを食ったんではないかというふうに考えておるわけでございます。
  176. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、農林省の指導がたいへんあのときはもう即座に効果が出るように言われていたんですけれども、指導が十分でなかったように思うのですが、いかがでございますか。
  177. 斎藤吉郎

    説明員(斎藤吉郎君) ただいま田中先生のお話しございましたように、前回でございますか、五月の時点におきまして、やがて時期的に申しまして青草の使用期に入り、さらにわれわれのほうの従来からやっておりました指導を全組織をあげて強力にやるということで、傾向といたしまして今後はそういう高い数値というものは漸減するであろうということを確かに申し上げたわけでございます。ただ、いまお話のございましたような一地方等におきまして、若干逆に高い数値がある程度出たというようなこともございまして、これははなはだ遺憾に存ずる次第でございますけれども、たまたまそういう点があったということで、あるいはおしかりを受けるのみで弁解にならないわけでございますが、全体といたしましては、今回の厚生省の御発表によりますれば、依然きわめて残留度の高かった地方の残留度というものにつきましては、やはりかなり低下をしているというぐあいに存じておるわけでございまして、ただ一部残留量の低下がそれほど顕著に見られない、横ばいであるというような地方がございますこともこれも事実でございまして、この点まことにわれわれの指導が完全に行き渡っていないということで御容赦を願うわけでございますけれども、その後やはりいろいろとそれぞれの各県におきましても努力を続けておりまして、一つにはクーラーステーションにまで、クーラーステーションごとに入りまして、なま乳の検査を実施いたしますというようなことによりまして、残留度の高い地域を早期的に把握をいたしまして、これらの地域に対しまして重点的な指導を行なって、問題を解消していくという努力も一方とっております。たとえば岡山県——先ほど先生の御指摘の中にございましたが、岡山県などはすでにそのための実施中でございます。さらに愛知県についても、近々にそうした実施にとりかかるという形が出ております。さらに酪農家あるいは水稲作農家に対しましてもこの問題の趣旨をさらに一そう徹底をさせまして、農薬の使用規制あるいは稲わらの給与に関しますところのいわば月間運動と申しますか、県ぐるみの運動を展開をするということで、これも岡山県におきましてはすでに七月の十日から八月の十日までの一カ月間をきれいな牛乳の推進月間というようなかっこうでやっております。さらに八月の二十日前後からはBHCの——ことばは悪いのでございますけれども、BHC追放運動と申しますか、そういったような県ぐるみの運動も展開する予定になっておるというようなことでございまして、まあ先生の御指摘ございました、いまはもうすでにそういうものはなくなっているはずだという御指摘でございますけれども、現在の状態を踏まえまして、各県それぞれ真剣に取り組んでおります。私どもとしましてもこれらと十分に連絡をとりまして、現在の時点での問題の解消に努力をしているところでございますので、何ぷんとも御了承をいただきたいと思います。
  178. 田中寿美子

    田中寿美子君 それで一体どのくらいの速度でどのくらいの期間にBHCをなくそうとしておられるのかということを伺いたいと思うのでございますけれども厚生省の指導基準は〇・一PPMでございますね。大体そのくらいで指導している。そうすると軒並みに〇・一より高い西日本。それから高知ですが、一番最初この汚染牛乳の発表で口火を切られました高知、私先日行ってきました。いまでも〇・二一と、ある程度は落ちたけれども、ほんとうになかなか思うように下がらない、一体これはどういうところに原因があるというふうに厚生省の食品のほうを扱っていらっしゃる方はお考えになるのか。
  179. 神林三男

    説明員(神林三男君) 〇・一という数値は、私のほうはとりあえずこの前一月、二月の値が出たときに、高い府県に対しては〇・五まで下げてくださいということを申し上げたわけでございます。今回の成績を見ますと、かなり〇・五に近い値が出てきておりますから、今後の目標値といたしましては〇・一まで下げていただきたいという一つの今後の指導方針というのですか、そういう形で〇・一という数字がいま出ておるわけでございますが、この高いのは、やはり先ほど申し上げましたとおり、おそらくベーターBHCというようなものの体内における半減期というものがかなり時間がかかるんじゃないか、これはいろいろの説がございまして、数年にわたるというような説もございますが、はっきりした科学的データもございませんから、ここで私いま申し上げられませんですが、私のほうの考えといたしましては、とりあえずこのBHCの問題、ベータを含めまして、一応青草を食べている期間、これは四月から十月ごろまでが一つのめどになるのではないかというふうに考えております。それからさらに十一月から三月まで、これは稲わらをかなり食べ出すときでございますが、この値がどうなるか、この両方の値を勘案した上でいろいろ今後の対策もさらに見ていきたいというふうに考えております。現在ではとりあえずこれをできるだけ少なくしていっていただきたいという方針で臨んでおるわけでございます。
  180. 田中寿美子

    田中寿美子君 前回私が、いろいろな食品からBHCが吸収されるのではないか、それで肉類、それから卵、魚、水、土、米その他を調べてほしいということを申し上げましたけれども、そういう調査がいま進んでおりますかどうか。私いただきました部分的には愛媛大学の調査、それから食品化学課のほうから出ております資料によりまして、たいへん古いものですね、玄米とか白米とか米ぬかなんかの調査があるだけで、ほとんどいままでのところないわけですが、そういう日常の食品全体からからだの中に入っていく、そして動物の体内にも蓄積されるし、人間の内臓にも蓄積されていく、そういうことがあるから、たとえばかりに牛がBHCのつかない稲わらを食べても、いまおっしゃったように残留する期間が相当長くてなかなか半減するまでに時間がかかる、そこへもってきてほかの方面からも入ってくるということであれば、これは非常にたいへんだと思うのですが、その点はいかがですか。
  181. 神林三男

    説明員(神林三男君) 私たちは乳幼児の主食あるいは病人の主食であるという意味で、とりあえずは目下のところ牛乳の検査というものに重点を置いているわけでございますが、すでに先生御指摘のごとく、これはやはり他の動物性の食品に検査対象を広げていく必要があるということで、都道府県にも現在お願いをいたしまして、ほかの肉であるとかあるいは卵であるとか、そういうものについてもひとつ今後データを出していただきたいというふうに要望しておる次第でございますが、まだ現在のところ、私たちのところにはデータは出ておりませんが、とりあえず衛生試験所でほかの乳製品というようなものを調査した結果は、現在のところ調整粉乳では十五県の検査をいたしましたが、一応ベータで申し上げますと、〇・〇六四PPMぐらいの数値が十五県の平均で出ておりますし、バター八県は、これはやはりベータで申し上げますと、〇・三七三ぐらいの値でございます。いずれにせよ、これはわりあい私たちは低い値だと考えておりますが、なおほかの食品につきましても八都道府県を督励いたしまして、データを早く出すようにいたしていきたいというふうに考えております。
  182. 田中寿美子

    田中寿美子君 いままでベータのほうは非常に調べられておりませんね。食品化学課から出された資料を見ましてもほとんど全部ガンマBHCですね。ですからベータについて調べられたデータが非常に少なくて、高知では衛生研究所の人たちが人体の七十四件について内臓の分析をしておりますね。それくらいで、はっきりしたのがないし、ぜひこれはやっていただかなければならないのですが、その調査能力の問題が一つあるかと思いますが、そのことはもう少しあとにしまして、それで実は農林省はいまおっしゃいましたようになかなか思うように減っていかないけれども、どういうふうな指導をして実際に減らそうとしていらっしゃるのかということについて多少の疑問があるわけなんです。せんだって高知に参りましたら、高知は御存じのように、まだ〇・二二一というような数値を出している。これは七月の数値です。そしてあすこは現在学校給食を拒否しておりますね。五〇%くらいの学校が牛乳を飲ませないというふうに非常に消費者も不安がっている。消費者も不安だし、それから酪農民のほうはこれでは自分たちは立ち行かないのではないか、高知は日本のうちに入っていないのではないかというぐらいにひがんでいる。一体農林省厚生省もこのことにどういうふうに対応するような指導をしに行かれたのかどうか。私の聞いたところでも、農民たちは来てもらわなかったと言っております。
  183. 神林三男

    説明員(神林三男君) 高知県につきましてはやはりそういう不安が生じておるということを聞きましたものですから、私六月の二十六日かと思いますが、いまちょっと正確に調べておりますけれども……、六月の二十七日でございますか、私高知県に参りまして、これは学校給食関係の主催の講習会というのですか、討論会というのですか、それに出席いたしまして、一応食品衛生調査会の残留農薬部会及び乳肉水産食品部会の見解を皆さまにお示しいたしまして、そして目下のところ衛生上の問題はございませんというふうな見解を示してまいりました。なおいろいろの疑問に答えてまいったわけでございますが、必ずしもそのときの印象では一〇〇%不安が解消されたとは私は考えておりませんが、できるだけそういうふうな努力は積み重ねていっているつもりでございます。
  184. 田中寿美子

    田中寿美子君 神林課長の行かれたことは聞いたのですが、農林省の指導は……。
  185. 斎藤吉郎

    説明員(斎藤吉郎君) ただいま田中先生御指摘のとおり、農林省といたしまして特別に高知県に人を派遣いたしましたということは確かにいたしておりません。ただし御案内のとおり、やはり前回と申しますか、春以来の状況につきまして全国的にいろいろと私どものほうでは各県の当事者とブロック会議あるいはその他のいろいろな会議があるつど協議をするといったようなことを何回となく重ねてまいっておりまして、各県とのこの問題に対します農林省との連係と申しますか、それは全国的に言ってきわめて緊密に行なってきたというぐあいに考えているわけでございます。成果がなかなかあがらないではないかというおしかりでございますけれども、現地に参りませんからと申しまして、これをないがしろにし、ことに高知県が日本の外であるというふうに考えたことはごうもないわけでございまして、そういうことで今回までの段階におきまして、農林省との間ではやはり高知県当局とも十分連絡をとってやってきております。ただ今後ともどうしてもやはり現地に行かなければならないというような状況が起こりますれば、これはもう当然参りまするのにやぶさかであるわけではございませんで、そういうことで今後は処してまいりたいと思います。なお、学校給食を高知県で若干の学校がとめているというような事情、これも承知しておるわけでございます。私どもといたしましては、ただいま厚生省のほうからもお話がございましたように、特に直ちに非常に問題が生ずるということはない、あのときの調査会の御答申の線に従いまして学校給食そのものがきわめて有害なものであるということには賛成いたしかねるのでございまして、私どもとしては、厚生省の出されました線に従いまして学校給食も当然継続をしてもらうということを姿勢の中心に置いておるというのが現状でございます。
  186. 田中寿美子

    田中寿美子君 消費者は非常に不安ですから、有害なものは少しでもあってはならない、それがほんとうだと思います。ですからそういう場合にはやはり牛乳がほんとうにBHCがゼロになるように急速に施策をとらなければならないのだと思うのですが、高知の農民たちはもうこんなことならばBHCは一切やめてほしい。実は高知は三年来BHCは規制している県でございます。お米にもBHCを使わないというのがたてまえになっている。しかし、農民に聞いてみると、共同防除のときには使わない。しかし、個々には使うことがある。これはなぜかというと、やはり売ってくれるんだから使わないわけにはいかないということが一つ、それからそれじゃ稲わらを食べさせないで済むかというと、日本の酪農民で北海道を除いては稲わらを食べさせないでやれるような酪農民はない。だから絶対に稲わらを使わざるを得ない。そうすれば、稲わらにBHCが残留しない方法、つまりこれを使わせないという方法にするほかはないんではないかということを言っておるんですけれども、依然としてその点が、農林省はどういう立場ですか、やはりあるだけのBHCは、農薬は売ってしまうまで待つと、こういう態度でございますか。
  187. 福田秀夫

    説明員(福田秀夫君) BHCの使用に関するいろいろ御指摘がございましたけれども、BHCは稲作の場合は御承知のように、二化メイ虫とウンカ類の防除に使われておったわけでございますが、大体二化メイ虫の防除にはかつてはパラチオン剤が一番よく使われておったわけですが、これが慢性毒性の問題で四十四年度末をもちまして使用をやめました。それによって二化メイ虫の防除剤としましては非常にたくさんBHCというものがパラチオン剤のかわりとして使われるようになったわけでございますが、このBHCをやめますと、二化メイ虫の防除剤として使われますものが他の有機燐剤ということになりますが、他の有機燐剤は蔬菜、果樹、その他にもいろいろ使う用途がございまして、その生産量から見まして、本年度の二化メイ虫の第一世代の防除に直ちにその生産量が間に合うというわけにまいりませんということがございました。それからもう一方、昨年末から正月にかけましての農林省における調査によりますと、稲の初期だけにBHCを使った場合は稲の葉に残るBHCの量が後期まで使った場合よりも一けたぐらい少ないという数値がございまして、そういうふうに稲作の初期だけにBHCを使った地帯の牛乳汚染の程度は非常に軽いというデータもございました。その両面から、ことしBHCが牛乳から出てくるという問題が出ましたときに、直ちにBHCの使用を全面的に中止いたしますと、二化メイ虫の防除に非常な支障を来たすということがございました。そういう点から直ちに全部のBHCを使用禁止というわけにはまいらないということで、稲作の初期だけに使おうということで穂ばらみ期以後の使用を中止するという手段をとってまいりました。なお、稲作の二化メイ虫以外にも林業などにおきましてもBHC以外の代替農薬が現在見つかっておらないということもございまして、そのような稲作以外にもBHCがいろいろな用途がございましたものですから、BHCを全面的に禁止するというわけにはまいらず、すでに触れましたような使用規制の方法をとってまいったわけでございます。
  188. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうすると、来年は二化メイ虫のための新しい有機燐剤は間に合いますか。
  189. 福田秀夫

    説明員(福田秀夫君) すでにBHCの製造は中止しておりますので、現在現時点における在庫量を調査中でございますが、この数字が出ませんとはっきりしたことはわかりませんが、もう残りがほとんど少ないものと思われますし、ことしはこれから二化メイ虫の第二世代の防除がございますが、すでに穂ばらみ期に大部分の地帯が入っておりますので、今後穂ばらみ期以後に使わせないことにしておりますので、ことしの第二世代防除を含めまして来年以降二化メイ虫防除はかわりの有機燐剤等で間に合わせようと考えておるわけでございます。
  190. 田中寿美子

    田中寿美子君 いま県によって、もう二十県ぐらいは自主的に規制をしてBHCをほとんど使わないようにするという、農林省よりはもっと進んだ規制をしている県があるわけですね。それはどういうことを意味しているか。つまり、たとえば高知県とか、鳥取県など、米については早くからBHC農薬を、有機塩素糸農薬を使っている県がある、もうそろそろその農薬の効果が薄れてきている、早晩カーバメートとか、新しい農薬に切りかえる時期に来たのではないかというふうな気もするのですが、そういうことで二十県あまりの県が自主的に規制をきびしくしているのか、それとも……それはどういう理由ですか。つまりBHCのついた野菜、米、牛乳などが売れなくなるからと、こういう考え方からですか、どっちですか。
  191. 福田秀夫

    説明員(福田秀夫君) 先ほど申しましたように、BHCは稲作では二化メイ虫とか、ウンカ類の防除に使っておりまして、ウンカ類につきましてはカーバメート剤というかわりの農薬がすでに開発されておりまして、先生御指摘のとおり、ウンカ類につきましてはBHCの効果がだいぶ薄らいできたということはわれわれも認識しておりまして、かつカーバメート剤がだいぶたくさん出回ってきておりますので、これにつきましては直ちにBHCを切りかえましても、より効果もあるし環境汚染の心配もないので切りかえられると思います。ウンカ類は秋に防除いたしますので、私どもとしましてはその点も考えまして、ウンカ類の防除につきましてはBHCを使う必要はないだろうということから、稲の穂ばらみ期以後は使用を中止したわけでございますが、御指摘のように、幾つかの県で全面的にBHCを規制したというのは、主として西日本の牛乳の汚染度が高かった県でございまして、これらの県におきましてはやはり牛乳の汚染を全速力で軽減しませんというとその地方の牛乳が、先ほど来お話しございましたように、高知県で給食に取り入れなくなったというようなこともございますものですから、県としましてはその辺を考えまして、代替農薬が間に合う限りBHCを使わないということにいたしたものと考えられます。
  192. 田中寿美子

    田中寿美子君 国際的にもBHCやDDTを、つまり有機塩素系の殺虫剤を使った農作物がボイコットされる傾向にある、国内的にもみんなそうなってきた。そうしたらこの際私は思い切って、県によっては農協の倉庫にあるBHCを回収した県もあります、そのくらい思い切ったことをもうしてもいいんではないかと思うのですけれども、それができないのですか、どうですか。BHCの現在量などを聞かしていただきたい。
  193. 福田秀夫

    説明員(福田秀夫君) 御質問の一番終わりのほうからお答えしてまいろうかと思いますが、BHCの現在量でございますけれども、その前に大体ことし使われました量を調べてみますというと、四十四年度末におきまして原体メーカーの在庫が全体として九千八百五十トンございました。そのうち、ことしの一月から三月までに二千百七十トンが輸出とか、工業薬品原料等国内の農薬以外のものに消費されまして、千三百九十一トンが国内の製剤メーカーに出荷されております。原体としましては、したがいまして三月末でもって六千二百八十九トン残っておりますが、これは今後ほとんど輸出される見込みがついております。一方、四十四年度末の製剤メーカーにおける製剤の在庫を調べてみますると、製剤としまして約二万六千六百トンございました。それで先ほど申しましたように、一月から三月の間に原体が製剤メーカーのほうに流れましたので、それからできました製剤を合わせますと約三万トンの製剤がことしは国内向けとして供給可能な量となります。例年使われております量が七万トンないし九万トンでございますので、この三万トンという製剤の量は例年の二分の一以下ないし三分の一ぐらいに相当いたすものでございまして、例年どおりに使用していけば穂ばらみ期に完全に使い切ってなくすまでには少し足りないぐらいではないかと考えられますが、ことしは方々で規制を強めておりますので、そのように使い切れるかどうか問題があると思います。そこで現在、二化メイ虫第一世代防除終了時における各県の在庫を目下調査中でございまして、現在まだ手元に数字が参っておりませんのでお答えできませんが、間もなくそのような数字がそろうと思います。いずれにしましても残りはわずかのものであって、今後残ったものが使われるとすれば、先ほどちょっと申し上げました林業関係でBHCの代替農薬が開発されない点があるというふうに聞いておりますが、そういった大気汚染にあまり影響のない程度の範囲におきまして、林業等において若干そういうものが使われるかというふうに思っております。
  194. 田中寿美子

    田中寿美子君 六千二百八十九トン残っているわけですね、現在まで。
  195. 福田秀夫

    説明員(福田秀夫君) 原体でございます。
  196. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうすると、それを製剤した場合にこれはもっと非常にたくさんになるんでしょう。それでいま、ことし三万トン使って残りが少なくなると言われるけれども、残りは原体では現在六千二百八十九トンの中から三万トンの製剤をするわけですね。ことしじゅうに使う分はそれだけですか。つまりどのくらい残る予定ですか、有体と製剤と両方で。だからそれは非常にわずかのものならば回収してもいいんじゃないかと思うのですがね。
  197. 福田秀夫

    説明員(福田秀夫君) いまの六千二百八十九トンというのは輸出用に向けられる予定のものでございまして……、
  198. 田中寿美子

    田中寿美子君 先ほどの三万トン……。
  199. 福田秀夫

    説明員(福田秀夫君) 千三百九十一トンがすでに製剤化されまして、それを含めまして製剤が三万トンでございます。
  200. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしたら、ことし使ったあとどれだけ残りますか。
  201. 福田秀夫

    説明員(福田秀夫君) それをいま調査中でございますが、例年の例から見ますと、例年一年間の使用量の二分の一ないし三分の一になっておりますので、おそらく残る量はきわめて少ないのではないかというふうに考えております。それで、それが先ほど申しましたように、二化メイ虫第一世代防除終了時における在庫の調査というものを各県に依頼しておりますので、それが集まりませんとちょっといまわかりませんが、ただ例年七万ないし九万トン使っておったことから比べまして、ことしは三万程度しか国内向けが出ておりませんので、残るものはきわめて少ないのではないかと考えているわけでございます。
  202. 田中寿美子

    田中寿美子君 日本のいまの消費量というものは非常に多いのですね。世界じゅう全体と匹敵するような——世界全体で四万二千トン、日本は四万五千トン、たいへん生産して使うわけですね。かりに三分の一になったところで非常に多いわけです。それで、いまおっしゃった製剤にしてことしももうすでに残してしまった。それで大至急その数量を調べて、そうしてそれを全部回収するぐらいのことをやっていただきたいのです。そうしない限りなかなかこれは減ってきません。やはり、あると農民はやっているわけですからね。その辺はどうかということと、それからわずかではあったのですが林業関係に使う、これは大気汚染がないというけれども、林業関係大気汚染をするものだ、空中から散布するものですから。ですから、空中にも汚染するし、水にも汚染するし、土にもしみ込むということがありますから、除草剤と一緒に汚染するんじゃないかと思うのですがね。
  203. 福田秀夫

    説明員(福田秀夫君) 御指摘のとおり、わが国で使われているBHCは非常に多いのでございますが、これはわが国はDDTを非常にわずかしか使っておりませんで、欧米諸外国はBHCではなくてDDTのほうを主として使ってまいりました。わが国はBHCのほうを主として使ってまいったという関係もございまして、BHCの使用量が非常に多くなっております。それから残りましたものにつきましては、ただいま御指摘のとおり、またお答えしましたとおり、調査をやっておりますので、なるべく急いでその残留量の調査をまとめてその結果を見た上で、それを回収するなどの措置を検討してみたいと考えておりますが、林業の点は、これは林野庁のほうで、林業にBHCをやめた場合に、ほかの薬が開発されていないので、もう少し使いたいというお話がございましたのですが、その場合でも林野においてBHCを使っている面積は、いまちょっと林野の数字を持っておりませんが、全林野の〇・五%くらいと聞いておりまして、そのくらいの面積であるから、大気汚染関係がないということで、林業のほうでもなるべく早く代替農薬の見込みをつけたいということを申しておりますので、林業のほうとの話し合いにもよりますけれども、私どもとしましては、いずれにしましても、残留量の実態を掌握して、その上でその残留した農薬をどうするかということを検討してみたいと考えております。
  204. 田中寿美子

    田中寿美子君 考え方を私は変えていただきたいのです。つまり外国ではDDTを使っている。日本ではその分だけBHCを使っている。DDTは溶解しますから残留しない。それでも外国では長年蓄積していって神経をおかすということで問題になっている。DDTよりももっと猛毒性があってそうしてDDTよりも残留性の強いBHCが非常に問題なんですから、今後はやはり、この点はDDTと同じだ、DDTのかわりだという考え方にならないで、そしてアメリカはDDTを三十日以内に実際に製造を禁止するようになっている。それから同時に、これはそういうドリン剤、つまり、有機塩素系の農薬というものは、非常にそういう意味であぶないから、ぜひそれをやめるという方針を、急には、いますぐにというと、それはいまの米作農家が困るというかもしれませんが、もう聞いてみると、お米の農家もいまはやめてほしいのですね、有機系の農薬であるから。あるから使うのだけれども、これでくさいお米ができたり、それからくだものだって売れないということで、気持ちではこれはやめるという方向にぜひ政策を立てていただきたい。  そこで厚生省にお伺いしたいのですが、先ほど指導基準を〇・一くらいのところまで置いていきたいと言われたのですけれども、いまお聞きになったようなBHC農薬が在庫されているということと、農業の政策、方針なんかを考えてみて、一体、残留基準をだんだん減らしてゼロに近くするにはどれくらいかかると思っておりますか。これは目標がないと減らしていくことができないと思うのですが、それについて農林省に相当強い圧力をかけることができるのか、どうですか。
  205. 神林三男

    説明員(神林三男君) これは諸外国の例を見ましても、たとえば先生おそらくお読みになっていると思いますが、アメリカにおけるDDTという問題についても、これをゼロにするということはほとんど不可能でございまして、わが国でもこのBHCをゼロにするということは、私たちあくまで理想ではそういう考えを持っておりますが、これは、特に牛乳につきましては、先ほども申し上げましたとおり、乳幼児の主食であり、老人の主食であるという観点から、そういう気持ちは持っておりますが、実際にゼロにするということはなかなか実行のむずかしい問題であるというふうに考えております。これはどのくらいになったらゼロになるかという問題もやはり、私たち至急、とにかく下げる対策をやった結果でないと、いまのところ私たちも申し上げられないと思いますが、ただ私どもとしても、こうやって下げろ下げろと言っても、無為無策にすぎないわけでございまして、これはFAO、WHOの国際機関でも申しておりますように、いま一日許容摂取量のきまっているのはもとよりのこと、きまっていないものをまず実態調査をしろということが言われておるわけでございまして、この実態調査、特に先ほど申し上げましたとおり、青草を食っている十月時分まで、あるいは稲わらに切りかえました冬場の来年の三月時分というようなデータを見まして、それを勘案いたしまして、あるいは私たちとしては食品衛生の立場から、残存量の規制というようなことを当然、今後検討していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  206. 田中寿美子

    田中寿美子君 DDTとかBHCの量ですね。残留するものを、許容量というものはほんとうは考えてはいけないのだと思います。だから、ほんとうになくすることのほうが正しいので、WHOの考え方では許容基準がきまっていないものはゼロと考えて取り扱うというふうにしておりますけれども、ですから、やっぱりそういう方向に厚生省は向かっていかなければならないと思います。水銀剤の場合四十二年から三年計画で、ことしそれでも出ているということは言われるけれどもほとんどなくなった。BHCの場合はそういう考え方農林省厚生省と協力して、それこそあしたからゼロ近くにしろと、これは架空のことになりましょうか。どのくらいの期間の間に目標を定めてなくしてしまう、こういうことは考えられないでしょうか、どうでしょうか。
  207. 斎藤吉郎

    説明員(斎藤吉郎君) 何年間かかって牛乳をはじめといたしますところのものについてゼロに近い方向へ持っていくかという何か計画的なそういうことがないかというお話でございますけれども、先生もおっしゃいましたように、逆に何年かかって消すというようなものではなくて、なるべく少ないほうに全力を注ぎまして、近い将来においてこれをより安心な状態に置くということが基本かと考えます。実は先ほど来申し上げる機会を逸しておったわけでございますが、先ほど先生のお話しになりました中に、西日本等の二十数県については自主的にやめておるところがあるのではないかというお話もあったわけでございます。実はこれには一つどものほうでとりました施策もからんでいるわけでございます。いわゆる過去におきまして農薬の使用度の高かったいわゆる西日本の地域対象にいたしまして、いわばBHC等の無使用の乳牛用の流通稲わら生産対策事業という名前で、これの先般来実施に入ったところでございます。これとのからみ合いにおきまして、おそらく先生のおっしゃいました二十数県というもののこれに対します態度があらわれた、顕在化したということであろうかと思います。これは御案内のとおり、酪農家が乳牛用のえさ、飼料として購入いたしますところの稲わらにつきましての安全性を確保するということの措置としてとったわけでございまして、農協等が事業主体となりましてこれを実施するわけでございますが、いわゆる稲作の初期にBHCを使用していない稲わら、これを流通させようということで、この流通する稲わらにBHCがからみませんようにしまして、酪農家自身が自分で自給をいたしますところのみずからの稲わらとあわせまして、ことしの秋以降はことしはBHC等が使用されない稲わらだけで乳牛に給与をしていくということに資したいということで組んだ施策でございます。このことによりまして代替の農薬の購入費あるいはそのBHCの無使用ということでの、そういう意味合いのことを含めましての補助金というものを稲作農家に交付をするということで補助金額全体では約八千万円でございますが、これを組みまして西日本の各県でこういうことをやっておるわけでございます。したがいまして、この成果があがりますれば、先ほど来のBHC製剤の全体の関係と相まちまして明年度以降は飛躍的な改善がさせられるというぐあいに私どもは考えているわけでございまして、当面そういうことでひとつこの事態を改善いたしたいということで仕組んでいるわけでございます。
  208. 田中寿美子

    田中寿美子君 ことしの春の委員会のとき、この秋から以後ことし年末の牛乳にBHCが相当出るということであったらこれはたいへんなことであると言ったと思います。それで、そのためにほんとうに徹底したやり方をしなければいけないと思いましたけれども、いまの御説明で、酪農民がそういうことを自主的にやることを促進した、その場合に汚染されていない稲わらが十分酪農民に行き渡るほどあるのかどうか、そういう特定の地域が十分それを自給するだけのものがあるのかどうかということを知りたい。そうしてそういうものがあるとして、需給関係がきちんと、農林省も指導しなければできないはずだと思う。自主的にといっても、どこから稲わらを持ってきていいかわからない。その辺をきちんとしなければならないはずだと思います。さしあたってそういうことをちゃんとなさるのでございましょうかね。
  209. 斎藤吉郎

    説明員(斎藤吉郎君) ただいま申し上げましたように、実はこの制度を組みまして実施に入りまして、まだ二十数県というお話しございましたけれども、完全に全部がまだ出そろっておらないという事情でございますが、とにかくこの新しい対策をとりまして緒についたというところでございまして、これで全体の需給関係と申しますか、そういう無汚染の稲わらが、どこからどこへきちんと行って、過不足ないようにということを全体的に立てるというところまでは、まだ現在行っておりませんけれども、それを一つの契機といたしまして、やはり中心になりますのは農協等でございますので、そういった組織、組合の力というものを中心にいたしまして、これはぜひともうまく回転していくように、今後ともの指導もあわせてやっていきたいというぐあいに考えております。なおさらに、いわゆる米作転換等との関連もございまして、これらでやはりいろいろと飼料対策等もあわせ考えていくことになりますので、稲わらばかりではなしに、それらとも関連を持ちます飼料作物の供給といったようなこともあわせてやりますれば、明年度以降は格段の改善がはかられるのではないかというぐあいに考えておるわけでございます。
  210. 田中寿美子

    田中寿美子君 これが最後です。  下部農民のところに行きますと、農林省がそういうことをしてくれているというようなことをよくわかっていない。それは農協を通じて、ほんとうに強力にやらなければいけない問題だと思います。本気でやっていただきたいと思います。  それから最後に、これは公害対策本部並びに公害対策部長さんの御意見を聞きたいのですけれども、全体として調査機能が非常に不足ですね。それでたとえばBHCを検出するような器械、分析器ですね、それを備えている衛生研究所というのは非常に少ない。そういうものはやはり絶対に必要なものだろうと思う。それからそのほかBHCに限りません、先ほどから問題になっているカドミウムにしても、衛生研究所の調査費というか、もっと設備費もとらなければ、せっかく本格的に公害対策本部を発足するというなら、調査機能も拡大するというか、本格的なものを、たくさんの予算をとって、たとえば人体の内臓の検査なんというのは、手術をしたときの内臓の検査をするようなこともやらなければ、これは動物検査もそうですし、人体検査もそういうやり方でしなければいけないと思いますので、こういうことについて非常に意欲的な予算の取り組みをしておられるのかどうか、お伺いしたい。
  211. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) 公害対策本部もまだ発足したばかりでございますので、各省のそういう予算、特に来年度予算要求に関しましてヒヤリングを行なっている段階でございます。もちろん今後先生御指摘のような、できるだけ調査機能——分析、測定、あらゆるものを含めましての調査機能が、各省を通じまして拡充されるように期待しておるものでございます。
  212. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 公害関係調査研究等の経費につきましては、ちょうど厚生省の場合、ただいま部内で調整しておりますので、思い切って大幅な予算を計上するように努力したいと思っております。
  213. 多田省吾

    多田省吾君 私は農地汚染を主題にして若干お尋ねしたいと思います。カドミウムのみならず、全国の汚染というものは非常にひどくなっております。昨年の四月一日の調査でも被害地が千五百三十六地区で被害面積も十八万八千ヘクタールになっている、こういう発表もございました。特に渡良瀬川の流域のごときは八千四百ヘクタールにわたって銅による汚染がはなはだしくて、そして米等も半分くらいしかもうとれない、そういう状況になっております。で、この正確な調査をなさっているのか。その対策をどのようになさっておられるのか。  特にカドミウムの汚染地区は、全国で要観察地区がことしになって黒部市を含めて五つの観察地区になっておりますけれども、また最近は先ほども質問がございましたけれども、秋田県の弥助地区あるいは福島県でも東邦亜鉛のいわき市、さらについ数日前も日曹金属株式会社の会津製錬所によるカドミウム汚染が磐梯町に起こっておりまして、相当の汚染が伝えられておりまして、特にここでも一PPMをこえるところの、玄米の汚染が一・六PPMである、こういう報告が東京教育大学の森下助手によってなされておりますけれども、こうした各地にカドミウム汚染地区が増加するような姿がございます。全国で六十工場のカドミウムの工場があるようでありますけれども、こういった完全な調査はいつころまでになさるのか、そしてさらに要観察地区を秋田あるいは福島県にわたって追加なされるのはいつころなのか、この二点を最初にお尋ねしたいと思います。
  214. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 亜鉛鉱山等の、あるいは亜鉛製錬所等の汚染調査につきましては、できるだけ早い機会に調査を終わるように指導しているところでありますが、具体的にいまお尋ねの秋田と福島県の汚染地帯が報告されておりますけれども、これを要観察地域として指定するかどうかにつきましては、先ほど御質問もございましたが、特に福島県の磐梯町の場合はこれから県のほうが急いで調査をするということになっておりまして、いずれにしましても、その調査結果を見なければなりませんし、秋田の場合も、まあ調査の結果いかんではやはりもう一度私どものほうでいろいろと指導いたしまして、精密な検診、調査等が必要になろうかと思いますので、いまの段階におきましては要観察地帯にどうこうということはいまのところは考えていないわけであります。
  215. 多田省吾

    多田省吾君 秋田やあるいは磐梯町等は、それではいつころ厚生省として、あるいは公害対策本部として、調査なさるおつもりなんですか。  それから、いま、この磐梯町は県にやらしているという段階だそうですが、この対策本部あるいは厚生省としてはいつころいらっしゃる予定ですか。
  216. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 秋田の場合は、いずれにしましても、現に検診なり、所要の調査が進行中でございますので、一通りのデータは近日中に出るだろうと思います。福島県のほうも、こういう事件が報ぜられまして所要の調査体制等きわめて機敏にとられたのでありますけれども、そのものはやはりある程度の時間がかかろうかと思いますので、それを見た上で所要の措置を講じたいと思います。
  217. 多田省吾

    多田省吾君 最初の質問ですね、昨年四月一日の調査で十八万八千ヘクタールが汚染していると、こういう農林省調査があったわけですが、その後、調査なさったのか。あるいは、その後、正確な調査をどのようになさろうとしているのか。
  218. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 昨年、暫定対策要綱を示しまして、指示しました県につきましては、来月中に各県からその一応の状況の報告を求めることになっております。
  219. 多田省吾

    多田省吾君 まず農地汚染の前にお尋ねしたいのですけれども、最近イタイイタイ病の第一期、第二期症状であるかあるいはカドミウム中毒症であるかはっきりしませんけれども、とにかく安中市でもいわゆる指曲がり奇病というものが数十名観察された。あるいは会社側がその工場の方々の診察を労働基準局に求めてやったところが、尿中のカルシウム、たん白ですかが非常に多い人が十四人も見受けられた、こういう報告もあります。あるいは先ほどの弥助地区の指曲がり病あるいはまた新しく磐梯町にやはりこういった指曲がり病が起こっている、こういうことが報告されております。で、この前も私どもが安中市の患者の方を三人萩野病院に送ったわけでございますが、その診察結果でも、まあ確かにリューマチも併発しているようであるけれども、第一関節が異常に曲がって、またはれて、またすごく痛い。その方もあの東邦亜鉛につとめて十何年カドミウムをいじっていた人なんです。そういう人の正確な調査はいろいろむずかしいと思いますけれども、とにかく各地にそういった病気が起こっているということは、あの神通川の流域の三十年間も神通川の水を飲んだりあるいはその付近の米を食べたりしていた方が、いわゆる萩野博士によれば、第四期、第五期イタイイタイ病症状を起こしているという姿があるわけでありますけれども、こういったいま述べたようなその他の地域はまだ十年、十五年のキャリアしかありませんので、まだ将来のことはわからない。しかしながら、第一期、第二期症状あるいはカドミウム中毒症ということも考えられるのじゃないかということで、まあ萩野氏なんかもこういったことに対して変形性の指関節症というかりの名前をつけて診察しているわけでありますけれども厚生省としても各県にばらばらにそういう病気の症状が起こっている以上、やはり計画的に国として富山市の中央病院の医師とかあるいは萩野病院の医師とかそういった方々も含めた診察団をつくって、いまばらばらに各病院で診察している状況でありますけれども、そうじゃなくてやはり一本化して調べるべき状況ではないか。患者の方々も非常に心配しているし、またいろいろの危険を感じております。また、事実そういったすごく痛くてどうしようもないという症状も訴えているわけでございます。このようなカドミウムの汚染地域あるいは要観察地域に起こっているところの病気については一貫した態度をとるべきだと思いますけれども、いかがですか。
  220. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 医学的な診断等につきましては要綱そのものでも詳細な指示をいたしておりますが、いまお尋ねのように、私どものほうの研究班は手元にあるわけでございますので、連絡その他について常時お集まりいただきまして、その間遺憾のないようにいたしたいと存じます。  それからただいま指曲がりの問題が述べられたのでありますけれども、安中等で何名かのこういう症状の方が報告されておりますけれども、先月末の鑑別診断研究班、これは私どものほうの個々において県からいろいろ出されましたデータ等を調べました結果、これは、この班には先生ただいまお述べになりました富山の萩野先生も入っておられるのでありますけれども、一応いまのところはカドミウム中毒との関連を支持するという方はおいでになりませんので、まあだからといってどうということはございませんけれども、いずれにしましても安中のケースはそういうことでございますけれども、今後そういう全国的に統一された診断の検診等の確保の点につきましては、十分注意してまいりたいと存じます。
  221. 多田省吾

    多田省吾君 その、いま研究班で萩野博士をまじえて検討したとおっしゃいましたけれども、それはいつの時点ですか。
  222. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 先月の二十三日でございます。
  223. 多田省吾

    多田省吾君 そのあとでまあさらに磐梯町あたりにそういった同じような奇病が出ているのです。そのほか、まあその二十三日の時点ではっきりしたそれじゃ尿中のたん白とかあるいはカドミウム量とかあるいは血液検査とか、そういったあらゆるものをほんとにやったのかどうか。それはどうなんですか。
  224. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) これは、群馬県から精密検診を受けられた十五名についての検査の所見、それから指の骨についてレントゲン・フィルム等が添付されてまいっておりますので、一応必要なデータはそろっておるものと考えてよろしいと思います。
  225. 多田省吾

    多田省吾君 そういったデータだけじゃなくて、やはり研究班において直接診察等をなさらないと、こういった微妙な問題は統一的な見解が出ないんだと思いますけれども、どうですか。
  226. 山本宜正

    説明員(山本宜正君) 部長がお答えいたしましたのに若干補足させていただきます。  昨年からイタイイタイ病及びカドミウム中毒症の鑑別診断ということで、萩野博士も含めまして全国のこれらの病気の診断に関する専門家を集めて、それぞれの個々のケースにつきまして従来のもの、それから、これからのものにつきましても鑑別診断を行なうという体制をとっております。これにつきましては、それぞれの地域に出向いて行って調査をするという方法もございますが、それぞれの地域から集められた診断のための必要な資料をすべてそろえまして、それを多数の先生方の目で公平に見て判断する、このような方法を講じておりまして、この八月にもその次の会の計画をいたしております。そこで十分検討したい、かように考えております。
  227. 多田省吾

    多田省吾君 まあそういった県の県庁、保健所等ではやっているようでありますけれども、私が言いたいのは、各地にそういった奇病が生じていると。で、みんな生命の危険さえ感じているわけなんです。実際イタイイタイ病の病気を扱った医師といえば、はっきりいってまあ富山の中央病院の医師とかあるいは萩野病院の医師とか、そういった限られた医師しかいないのです。ですから、そういった医師を含めたところのやはり現地調査、現地診断というものを組織的に現地でやらなければ、私はこういった地域住民の方々の病気に対する不安は消えないと思います。そういったことが毎日のように新聞に報道されておりながら、また、この委員会でも昨年来いろいろ言われておりながら、そういった総合的な診断ができないということは非常に残念だと、私はそういう姿勢を示していただきたいと思う。実際にいまイタイイタイといっている、そういったイタイイタイ病ではないか、こういって悩んでいる人が大ぜいいるわけなんですから、指曲がり病、こういった奇病がわかったのもつい七月ごろですか、もうここ二、三カ月ではありませんか。そういった状況から見て、早急に私はこういった一貫した国の診察団あるいは研究班の現地派遣によって徹底的な診断を行なうべきであると、こういうことを私は主張するわけです。そういうことをやられるおつもりはございませんか。
  228. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) まあ特定の先生を常時というのもなかなかむずかしいことと思いますけれども、いずれにしましても適正かつ公正な鑑別診断法の確立につきましては、全力を尽くしたいと思っております。
  229. 多田省吾

    多田省吾君 まあ何んだか納得できませんけれども、時間もありませんので次にカドミウム汚染米について若干お尋ねいたします。  先ほどからの質問のように、私も玄米で一PPM、精白米では〇・九PPMの基準というものは非常に不満でございます。まあ、実際この愛知県あるいは福島県あるいは最近では静岡県なんかも特定の地域の、あるいは〇・四PPM以上のお米の配給はしない、こういう食糧事務所もだんだんふえてきております。そういった、もうそういう人道的な考えから食糧事務所が各県でそういった対策を講じているということに対して、農林省は、食糧庁は、どういう判断を持っておられるのですか。
  230. 中村健次郎

    説明員中村健次郎君) カドミウム汚染米の配給につきましての取り扱いにつきましては、各県あるいは各事務所にも私のほうから連絡をいたしまして、各地で問題が起こるたびにすぐ連絡をとってもらう。それで相談をして配給その他の操作をやっております。基本的には先般七月の二十四日に、厚生省で学者の方にお集まり願って一応の食品衛生上の安全基準と申しますか、一PPM未満のものについては有害とは考えられないという結論が出ましたが、それを受けまして農林省としては、カドミウム環境汚染要観察地域の中で一PPM以上の地域の米はこれは配給しないということをはっきり指示しておりますし、さらに要観察地域の中で一PPM未満の米でございましても、これは食品衛生上からいえば安全と見られるわけでございますけれども、現在の需給事情並びに消費者の中に非常にそれに対する不安が充満しているという状態を考慮いたしまして、これも配給に回さないということをきめております。  なお、自主流通米等につきましても、こういった地域の米は自主流通米にしないように指示をいたしております。  なお、農家の保有米につきましては、一PPM以上ときめられました地域の農家に対しましては、保有米を食べないで政府から配給米を配給するという措置をとる。かつ、そうでない要観察地域のところでございましても、特に希望する農家があればこれには配給をするという措置をきめております。
  231. 多田省吾

    多田省吾君 恒久的な対策ですね、先ほど出ましたけれども、食品衛生法第七条による、カドミウム汚染は恒久的にどの程度までを汚染米として扱うか。あるいはその前に暫定基準も必要かと思いますが、それはいま研究会等をつくってやっておられるということでございますが、その暫定基準あるいは恒久的な最終決定は、食品衛生法による最終決定はいつごろなさる予定ですか。
  232. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 目下私どものほうで作業をしておりまして、まあ関係方面の御意見等も聞きながらできるだけ早い機会に現行の告示の改正等の問題を検討してまいりたいと考えております。
  233. 多田省吾

    多田省吾君 できるだけ早い機会にといいましてもきちんとやるまでには二年くらいかかるという話もありますし、そういったきちんとした最終決定の前に暫定基準も設けるというような話も聞いておりますけれども、そういった関係はどうなんですか。
  234. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 食品衛生上の問題としましてはその暫定的といいますか、恒久的な、つまり完全な科学的データをそろえ、それに基づいた基準ということになりますと、先ほども申し上げましたように、やはり相当の年数がかかるわけでございます。そこで、先般の食品衛生調査会ではそういうことじゃとうてい間に合わないので、当面の問題として少なくとも一・〇PPM以下ならば有害とはいえないというまあ感触をいわばいただいたわけでございまして、これをいま一応暫定的な安全基準というふうに言っておるわけでございますけれども、この基準をさらに暫定的な、いわば食品衛生法上の成分規格等の告示とすることについて検討しておるという意味でございます。
  235. 多田省吾

    多田省吾君 じゃ、農林省にお尋ねしますけれども、〇・四PPM以上のいわゆる一PPM未満のお米については、要観察地域については配給米に回さないと、こうおっしゃいましたけれども、たとえば福島県なんかの場合はまだ要観察地域になっておりませんけれども、これは回すんですか。
  236. 中村健次郎

    説明員中村健次郎君) その点につきましては、要観察地域というのは、私のほうでは大体いまの一PPM以下あるいは〇・四PPM以上の地域というものの中から出ると、こういうふうに考えておりますので、現在のところは要観察地域の米は配給に回さないと、こういうふうに言っておるわけでございますけれども、今後そういった現在要観察地域になっていない地帯につきまして、調査の結果〇・四PPMを上回るというふうな地帯がございましたら、厚生省とよく相談をいたしまして、できるだけ早く要観察地域に、まあ、必要ならばしていただいて、その地帯の米は配給に回さない、こういう措置をとってまいりたい、このように思っておりますが、ただ調査が権威のある機関においてやられたものを基準にしてやりませんと、いろいろ混乱が起こりますので、権威のある調査に基づいて私のほうの配給操作は考えてまいりたい、このように思っております。
  237. 多田省吾

    多田省吾君 こまかい問題でありますけれども、安中市におきましては、農政部長にもきのう聞いてきたんですけれども、十一・二ヘクタールというのは、これは一PPM以上の汚染地域だということで、これは会社との間に補償が大体内定しているわけでございます。ところが、ことしの産米によってまた調べて、それが広がるかどうかはやらなくちゃいけないと思います。その点で、いままでは水質汚染だけの地域のたんぼを調べていたようであります。ところが、御存じのように、東邦亜鉛はいわゆる粉じんによっても相当畑等がカドミウムによって汚染されておるわけです。ですから、相当遠いところでもいわゆる汚染米が出る可能性がございます。そういうカドミウムの粉じんによる汚染ですね、それはまだ県当局では調べていないわけです。そういう点も調べる必要があるのではないかという点ですね。それから今度〇・四PPM以上のいわゆるなわ張りを今度県で厚生省指示に従っていま作業を進めているわけですが、それについてはいわゆるカドミウムの検出等の器械が非常に不備で難航しているわけです、はっきり言って。尿中のカドミウム量を調べるのに二、三カ月かかるとか、器械がない、あるいは技術者が未熟であると、そういった岡山大の小林教授が使っておられるようなカドミウム分析機なんかやはり大量につくって、技術者を養成して、そういった汚染の地域を持っている県に対して補助でもしなければ、そういった対策が早急に立てられないんじゃないかと、こう思います。その点はひとつ公害対策本部でもやはり国庫補助等によってそういう器械を県にどんどん据えつけるということをお考えになっていただきたいと思います。この点の御見解を承りたい。  それからもう一点でございますけれども、実は安中市の汚染状態はお米もたいへんでありますけれども、お米よりもむしろ小麦やあるいは野菜が非常に汚染しておるわけです。これは昨年の公害委員会において小林教授が参考人として来たときに書類も提出しておりますけれども、小麦においては二・三PPMと、こういう結果が出ております。それからサトイモなんかも一七PPMと、白菜なんかも調べたらもう四一PPM、こういった数字が出ております。  それで、私もきのう行ったのですけれども、この安中のサトイモ、こういうカドミウム汚染によってこういう状態ですよ。こういうものを地域住民の方々は、カドミウム汚染しているのじゃないかという疑いを、危険を感じながらも食べざるを得ないのです。また、小麦なんかもあの辺は畑が非常に多いのですから、その小麦を実際にうどんなんかにして食べているわけです。あの辺はうどんを非常に多食している地域です。もう毎日のように、毎食のように食べているところですよ。そうして、しかも、小麦のほうが米よりも五倍、六倍も汚染度が高いのですよ。ですから、私は食管法によって小麦のやはり買い上げの義務もあることでございますから、少なくとも小麦ぐらいはやはり汚染度を厚生省として出すべきじゃないか。もう去年からも小麦があぶないということいつも言われておる。しかも米と併食している小麦、そうして、野菜、こういったカドミウムを含有しているところのやはり安全基準というものを厚生省として出すべきじゃないか。特に小麦においては早急に急ぐべきではないかと思います。どうですか。
  238. 山本宜正

    説明員(山本宜正君) 安中地域の小麦につきましても、四十四年度に測定をしております。濃度の範囲が一・〇六PPMから三・五六PPMということでございます。なお、これに対する食べてよろしいか悪いかということにつきましては、その地域の食生活の状況を勘案いたしまして、それで、その限界を考えていこう。こういうことで作業を進めているというわけでございます。
  239. 多田省吾

    多田省吾君 まあ小麦の調査もやっていると、そうして、一・〇六から三・五六ですか、相当高い汚染度ですね、これは。それで、私もいま申し上げましたように、安中の地域は非常に小麦あるいはうどんというものを多食している地域だ。そういった観点から、それじゃいつごろ、いま実際食べているじゃありませんか、いつごろその安全度をきめようとなさっているのですか。
  240. 山本宜正

    説明員(山本宜正君) 安中地域につきましては、その地域の食生活と申しましたが、詳細に調べたところでは、米の摂取量が一人一日当たり平均二百六十七グラム、それに対しまして小麦粉の摂取量が七十七・六グラム、こういうぐあいに、約、米に対しまして小麦の摂取量が四分の一強という程度になっておりますので、一応その地域の玄米の濃度と比較いたしまして問題ないであろう。こういうぐあいに考えられます。
  241. 多田省吾

    多田省吾君 ですから、そういう点も一PPMにきめた状況と同じように、全然官僚的で個人差も考えない、そういうきめ方だと思うのです。米の摂取量が二百六十七グラムでしょう。まあ小麦が七十七・六グラム、そのほか野菜だってありますよ。それで、特にその地域は前から小麦の摂取量が多いのです、二倍、三倍に加算される。そういう地域で、しかも、中にはお米は全然食べないで、小麦を多食している人もあるかもしれません。特に農村の御婦人等はそうです。特にいままでイタイイタイ病になったり、あるいはそういう指曲がり病になったりする方々はほとんど農村の子供を生まれた体験のある御婦人が多い。そういった個人差等も考えたならば、そういうきめ方は私はできないと思う。
  242. 山本宜正

    説明員(山本宜正君) ただいま小麦と玄米の関係だけの割合で申し上げましたけれども、私ども研究班の見解によりますと、そのほかの食物すべてを考えまして、それぞれの中に最高に入っていた場合を考え、さらにそれに安全率を勘案いたしまして数値を決定した、こういう手続になっております。
  243. 多田省吾

    多田省吾君 ですから、そのようなお考えでは小麦は幾らとっていようとも、その量が少ないのだから安全基準は定める必要はないと、食管法によってはっきり買い上げ義務があるにもかかわらず、お米と小麦を区別なさろう、こういう考えなんですか。
  244. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 先ほど申し上げておりますように、米とその他の野菜あるいは地元と地元外、そういうことで少なくとも米以外の野菜等につきましては、県内、地元、その他等いろいろ想定いたしまして、従来出されておるデータの中で一番高い値、一番悪い状態を想定して、それらを総合的に、最終的には米をもって代表して、その米の基準を示したものでございますので、いまのところでは、そういう前提で作業いたしましたので、いずれにしても米の基準のみをもって汚染度等をはかろうとする指標としては十分である、そういうふうに考えておるわけでございます。
  245. 多田省吾

    多田省吾君 それじゃ小麦や野菜については、もう何十PPMあろうとも、それはやはり安全度がきめられない以上はどうしても小麦、三とか五PPMに汚染された小麦粉なんかも政府は買い上げをし、それを平気で売るしと、そういうことをなさるおつもりなんですか。
  246. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 買い上げ等の問題は、これはまた私どもの所管外の問題でございますけれども、いやしくもそのような値で示された以上、米について最小限そのような値をこえているかこえていないかを判断すれば、当該地方における一般的なと言いますか、当該地方における食生活のあれから見まして、これだけをとにかく指標として安全かどうかを判断するに十分である、そういう判断に立っておるわけでございます。
  247. 多田省吾

    多田省吾君 時間もありませんので、これでやめますけれども、結局小麦だって米と同じように食管法に示された主食なんですよ。その主食の中の一つがただ米よりも少し食べる量が少ないというだけで、しかも人によっては、地域によっては同等に食べる人もあります。しかもいわゆる政府が買い上げ、配給ルートにも回されております。その麦の安全度をきめないというのは片手落ちじゃありませんか。しかも地元の方々はそこを強く要求しております、地元の方々は。そこはもう一考お願いしたいと思います。対策本部としてどうですか、城戸局長
  248. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) 私、前に厚生省におりました意味合いで申し上げますけれども厚生省公害部長から申し上げたとおりでございます。四地域についてどのような食生活の状態になっているか、どのような汚染の状態になっているか、こういうことを勘案しまして、一番摂取量の多い米につきましての安全基準をつくったということでございます。したがって、その前提といたしまして、水が非常に汚染されているということがあれば根底からその基準はくつがえるわけでございまして、あくまでもそういう四地域の実態に即した基準によるということで確立されているわけでございます。
  249. 多田省吾

    多田省吾君 どうしても納得できませんけれども、私どもはもうそういったお米と同じように麦を摂取している状況もありますから、同じ主食なんですから、また政府の買い上げも義務づけられているのだし、あるいは配給もなされているんだし、これは早急にきめていただきたいと、こう思います。  それから、最後に、時間なくなりましたけれども、日本最古の公害公害第一号といわれる渡良瀬川公害につきましては、四十一年の参議院の商工委員会でも取り上げられ、昨年にも四月に私もここで質問させていただきましたけれども、とにかく七千二百ヘクタールが銅によって汚染されて、そうして一文の補償ももらっていないわけです。しかも収穫は土地の等級でもあの辺は一等地です、十二、三俵とれたんです、それが五、六俵しかとれないんです。そうして年間の損害は水質保全審議会のあの第六部会でも三億五千万といわれている。われわれの調査では十億円以上にも及ぼうというんです。そういう日本の恥部である一番昔から公害のあった渡良瀬川流域の公害については、政府の取り組み方というのは非常に私は消極的であると思うんです。で、せいぜい五十年までに客土事業をやるというようなことを言っておりますけれども、まああとでちょっとそれをお知らせ願いたいと思いますけれども、とにかくひどい。あの試験田を見ましても、これはカドミウムの安中の稲ですけれども、これは黄色くなっておりますけれども、これほどじゃありませんけれども、これは農業試験場からもらってきたんです、盗んできたもんじゃありません。一般のそういう対象区においては大体こういった稲の成長です。ところが、客土を三十センチあるいは二十センチしたところは相当普通の成長を示しているわけです。こんなに違う。そういった公害が歴然としているにもかかわらず補償も何ももらえない。しかも客土事業も五十年までの計画としてあまり進んでいない。こういった観点で私は根絶期成同盟もあったんですが、何だか県や政府の骨抜きにあって、非常に巧妙な政策でやられているように私は感じます。そういうものを言えない方々のために、国は公害対策本部もできたんです、何をもってその対策を講じようとなされているのか私は疑問に思うんです。そういう意味でひとつこれは徹底的にあの七千二百ヘクタールにも及ぶ農地汚染、カドミウムも少し入っているという調査もありますし、砒素なんかも非常に多いんです。あの渡良瀬川の水を桐生やあるいは足利では飲んでいる。〇・五五PPMという基準ぎりぎりまで来たときも去年は何回もありますよ。そういう飲料水の関係もあります。特に農地汚染、これは非常にひどいものがあります。これは最後にどういう対策を講じようとなされているのか、ひとつ責任ある御回答をお願いしたいと思います。
  250. 西川喬

    説明員(西川喬君) 渡良瀬川につきましては、いま先生のおっしゃいましたような特別審議会においてもずいぶん問題が多うございましたが、その審議によりまして現在基準設定をいたして基準がかかっております。しかしながら、あそこの基準はちょっとほかの工場排水法等の基準と違いまして、非常に異例の形態になっているわけでございますが、約三分の二以上が自然の排水の中に出てくるわけでございます。そのような観点からこれを除去する方法といたしまして、いろいろ検討いたしまして、砂防堰堤のかさ上げをする。それによりまして、雨が降りました一般の場合には、汚濁と申しますのは流量がふえますとそれが希釈されて薄くなるわけでございますが、渡良瀬川の場合には、銅の場合につきましては、自然に堆積している銅分が流量がふえまして雨が降りました場合に流出してくるというような状況になっておるわけでございます。そのために砂防堰堤をかさ上げいたしまして、雨がある程度降った流量をそこで飲み込んで一時貯留する。さらにそれを沈でん池に持ち込みまして沈でんさせてから流すというような対策を講ずることにいたしまして、その砂防堰堤ができ上がりましたのが昨年の十二月でございます。それまでの間、暫定的な目標をつくっておりまして、砂防堰堤ができ上がりまして、今年度、四十五年からは下流の利水地点におきます、基準点におきます銅の濃度をかんがい期間中におきまして、ならしまして平均一・五PPMに押えるということを目標にいたしております。これはかんがい期間中の平均でございますから、かんがい期間中が全部終わりませんとどうであったかということはわからないわけでございます。現在その観測をずっと続けておりまして、砂防堰堤によりましてそういう対策がはたして所期どおりの効果があったかなかったか、本年度かんがい期間中終わりましたところでこのデータを検討いたしまして、それによりまして判断いたしたい。その一・五PPMというものをきめましたときには、大体農林省のほうの計画といたしましては、農業の被害を軽減するために、利水のほうにおきまして〇・〇二PPM、農業用水を使う地点におきまして〇・〇二PPMという主張があったわけでございますが、どうしてもそこまでの落とせる見通しがございませんでしたので、四十年周期と考えておりました客土の期間を二十年周期というふうに期間を短縮するということで基準をきめたわけでございます。この客土のほうは、これは農林省のほうの農地の改良工事として、防除工事として実施されるわけでございます。二十年周期で行なうということで基準をきめたわけでございます。そのようなわけでございまして砂防堰堤の対策ができましたのが昨年の十二月、それから今後農林省のほうにおきます客土工事というものの計画を進めていただかなければいけないわけでございます。現在農林省のほうにおきましては、客土工事の効果につきまして、現在、先生が持ってまいりましたような試験をやっておるわけでございます。その辺のところはまた今後客土工事の計画的実施ということにつきましても、よく農林省のほうと協議してまいりたい、このように考えております。
  251. 多田省吾

    多田省吾君 もう一点、時間がかかってすみませんが、通産省でもやはり古河鉱業に対する監督というものは非常に不十分だと思うのです。たとえば原堆積場はじめ十四あると言われておりますけれども、ことしの五月十一日に桐生市の水道局が正式に調べた結果でも、原堆積場に雨が降ったときに砒素が五六PPM、それからカッパーが二〇OPPM、鉄が七、四四OPPM、こういう大量の汚染水が流れておるのです。それから、先ほどお話があった三分の二が自然のと言いますけれども、これは非常におかしな考えであって、根本はやはり古河鉱業が九十年前から掘ったために、堆積場ができたために、そういったことから自然に流れたという判断は私は間違いだと思う。そういうやはり鉱山があるためにこういった汚染がひどくなされているわけですから、やはり通産省でもこの原堆積場なんかは特に私は監督をしなければならないと思うのです。  それから先ほどお尋ねしましたが、農林省では、これからの予定として客土事業を何億円で、十三億円なんという方針もありますけれども、あれはいつまでに、しかも現地の方々にまた負担を負わすのですか。こういったことをひとつ簡明にお答え願います。  これで私の質問を終わります。
  252. 住吉勇三

    説明員(住吉勇三君) ただいまお話しございました十三億でございますが、これは四十年かと思いますが、その時分に客土をした場合の費用を概算したものでございまして、その後物価上昇その他ございますので、現時点におきましてはこの金額も当然ふえてきておるものと考えられます。私どものほうといたしましては、その後新しい都市計画法ができましていま市街化区域、調整区域など線引き問題が起こっております。これが太田市などにおきましてはこの市街化区域と調整区域の線引きの問題が非常に現地で詰めておられるように伺っております。なお、先ほど先生からお話しがございましたが、確かに現在やっております試験区域におきまして排土なりやった地区というのは対象区よりも明らかに成績がいいという結果は出ておりますけれども、客土をどのくらいした場合が一番経済的で結果がいいかとか、排土をする必要があるかどうかとかというような問題等もございまして、そういった関連もあれいたしまして、客土だけしてもらいたいというような地帯と、圃場整備も一緒にやってもらいたいというような地区等も地区内あって、これらの点につきまして、現在県のほうを通じまして地元の意見をまとめていただきまして、一本になりましたらその方向につなぎまして、したがいまして、私どもは事業実施の方向に進んでいきたいということでいま県のほうを督促いたしまして、地元関係者の意見を一本にまとめていただくように強くお願いしておるところでございます。
  253. 多田省吾

    多田省吾君 通産省、いいですか。
  254. 莊清

    説明員(莊清君) 御指摘の足尾銅山の件につきましては、足尾鉱山の堆積場の件につきましては、水が大量に出ました際に下流におきましての汚染が強いという事実が確かにございました。それで、その後旧堆積場につきましては特に重点を置きまして、上に被覆をするとかあるいは水路を整備するとかというふうな改善工事を逐次実施をしておりまして、現在におきましては、桐生市の水道取り入れ口におきます砒素の数値も相当基準よりも下回っておると考えております。なお、農地の全般の汚染のために著しい減収になっているというその問題でございますが、非常に広大な土地が汚染されておるわけでございますけれども、まあ今後国のほうでこの地域全体に対して先ほど客土工事並びに……。
  255. 多田省吾

    多田省吾君 原堆積場をどうするのですかと聞いているのです。古河鉱業は来年の三月からしか被覆しないと言っているのですから、それを督促する考えはないのですか。
  256. 莊清

    説明員(莊清君) 原堆積場につきましても同様工事をさせまして、促進する方針でございます。
  257. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ぼくは質問に入る前に、委員長一つの提案があるのですがね。きょうの審議ぶりを見ていましても、皆さんの割り当て時間、相当こえていますよ、こえているということはいかに問題が多いかということだと思うのですよ。だから、この際、月にわずか一日くらいの委員会で済ますのではなくて、二日やるとか三日やるとか、やはり皆さんが十分に審議のできるだけ時間をとってやるというのがぼくはこの委員会姿勢でなくちゃならぬと思うのです。だから、今後の委員会あり方について委員長はよく検討して、皆さんがすべて満足のできる質疑ができるように私はしていただきたい、これが委員長のつとめだろうと思いますので、審議に入る前に私は申し入れたいと思うのです。  きょう、私は大阪府下における大気汚染問題、ばいじん問題などについて質問するわけですが、この前ここから、公害委員会から調査団が出ました。しかし、どうしたことか大阪を素通りと言っていいと思うのですがね、大阪の何か、府の研究所のようなところへちょっと行っただけで資料を袋へ入れて持って帰っただけで、実際に大阪府下の状態は調査してない、私はなはだ遺憾だと思うのです。そして、帰ってこられた報告を聞きますと、いやにけっこうずくめの報告でありまして、私はそれに参加しておりませんから、正式委員としてははあっと思ったんですがね、ああいうあり方は私はいけないと思うんです。やはり関西へ行くならば、関西で最も問題になっておるところを視察して問題点を明らかにする必要があると私は思いますよ。  そこで私は、国会調査団が行ってくれないから、この間二日かけて行ってきました。その報告をここでしながら政府当局の考えをひとつただしたいと思うんです。  大阪府下における亜硫酸ガス汚染状況環境基準を上回っておるという状態が多発しておるんです。一例を申しますならば、これは堺地区なんですが、大阪府の公害監視センターでも年間を通じ一時間値の平均値が〇・〇六PPMになっておるんです。これは政府のきめた〇・〇五PPMを上回っております。それから市立衛生研究所、ここでも〇・〇六五PPM、それから淀中学校では〇・〇七六PPM、それから此花区の区役所、これが〇・〇六五です。もう一つ広尾小学校では〇・〇六二、まだこえておるところはほかにもありますよ。布施保健所が〇・〇六PPM、それから守口保健所〇・〇五四PPM、それから吹田の保健所〇・〇五九PPMです。こういうふうに政府できめた〇・〇五PPMをはるかに上回っておるところがあるんです。しかも堺地区だけじゃなしに、布施とか吹田とか守口、東大阪市、そういうところで広範囲にこういう状態が起こっておるわけなんですね。これは、堺地区のは煙突を高くしたら汚染はなくなるだろうという非常に安易なものの考え方の結果、煙突を高くしたために広範囲にこういう状態が広がったということなんです。大阪というのは、御存じのように、北と東と南が山で囲まれておるんです。だから、煙突を高くしたってその山の向こうには行かないわけなんです。みんなそこの周辺にずうっと固まっちまうと、こういう状態が大阪にあるということを皆さんに認識しておいていただきたいんですね。それからこれは堺、尼崎などの大工業地帯から排出されるものの影響であること、こう私は見るわけですが、その例証としまして、大阪府におきますところの年間重油使用量、これが四十二年には五百十七万六千キロリットル、四十三年が五百五十三万一千キロリットル、四十四年になると六百二十四万八千キロリットル、こういうふうに大阪府下でもずうっとふえてきておりますが、特に堺市におきましてはふえ方が非常に大きいんです。堺市は四十年には九十二万四千キロリットル、それが四十二年になりますと二百三十九万五千キロリットル、四十三年になると二百八十万二千キロリットル、四十四年になると飛躍して三百三十一万四千キロリットル、それから高石では四十二年に五万六千キロリットル、四十三年には四万九千キロリットル、四十四年が十七万六千キロリットル、こういうふうにふえております。この堺と高石を合計した率でいきますと何と四十年と四十四年の比は三・五倍というように大きくなっておるんですね。それほどふえております。また、この堺や高石地区は大阪府全体に比較しますと、大阪府下の五五%をここでたいておるということなんですね。こういうことがはっきりするわけですが、したがって、そこから出る排気ガスは非常に大きくて、大阪府下全体の排気ガスの四二・五%を堺と高石で出しておるわけなんです。したがいまして、こういうことから起こる堺地区の健康状態というものは、これはもうあとでまた私は説明しますが、非常に悪くなっておるということは明らかだと思う。一例を申しますならば、こういう状態のために、浜寺公園の松というものが非常に最近枯れ出しておるんですね。浜寺公園といえば、大阪府のいわゆる別荘地帯、私たちも昔はここに水泳に行きました。大きなりっぱな松林がずっとあって、浜もきれい、水もきれい、松もきれいで、ここは大阪府民のいこいの場所だったんです。ところが、その前に埋め立て地ができて、そこにたくさんの公害を出すところの工場がたくさん立ち並んだために、最近浜寺公園の松が、ここには二千五百本からの大きな松があるわけですが、そのうち約半数が枯れてきておるという事実があるわけです。このことは私はきょうの新聞を見ましたら、木更津におきましても今度は庭木が枯れ出した、こういう記事が出ておりましたが、これと同じ状態だと言えると思うのですね。私は堺市内の民家をずっと訪問して歩きましたが、その民家の庭木の松やモミジというような木もみな立ち枯れてきておる、これを見てくださいと言って市民が訴えておるんです。このことはやがて私は人体に対する被害の前兆として重視しなければならない、こういうふうに思います。  それから、質問あとでかためてしますが、降下ばいじんの問題ですが、堺市内の十八カ所の降下ばいじん量の測定によりまするとたいへんな量が出ておるんです。私ここに表を持っておりますが、これ一々ずっと読み上げるのも相当時間がかかりますので、新日鉄のあの堺工場の構内の降下ばいじん量を昨年の十二月を調べますると、一平方キロその中に降る降下ばいじんが百五十五トンなんです。これは私はたいへんな量だと思うのです。そうすると皆さんは、何だそれは最も多いところだけ言って、少ないところを言わんじゃないかと言うかもわかりませんが、そうじゃないのです。大体年平均七十二トン、そして多いときは百五十五トン、こういう数が出ておるんです。私はずっと町を歩きました。そして市民の訴えも聞きました。道に置いてある自動車の上を見ますると、茶っぽい粉が積もっておるんですよ。こうなぜるとざらざらとするようなんですね。これは明らかに私は鉄粉だと思うんです。鉄鉱石の粉だと思うんですが、また家庭訪問をしますると、家庭の庭石、これなんかも全部黒かった石がいまや赤っ茶けてしまったといって市民が私に訴えておりました。これは臨海工業地帯全体からの排出物と考えます。新日鉄だけではないとは考えますが、特に新日鉄の堺製鉄所からの排出物の影響が私は大きいものだと思うんです。そこで、通産省に対しまして、私質問をするわけですが、こういう状態を通産省としてどう考えるか。約七万トンの鉄鉱石、しかもそれは粉にした鉱石が来るわけですが、その積みおろしの際の鉄粉の、鉄鉱石の粉の飛散を一体どう処理するのか。また、野積み中に風で吹き飛ぶ、それをどういうふうに処理しようとするのか。また、溶鉱炉への搬入時の飛散など、防止対策はどのようにしておるかと、こういうことをまず通産省にお尋ねしたいと思います。
  258. 莊清

    説明員(莊清君) 新日鉄の堺製鉄所の降下ばいじんの問題でございますが、御指摘のとおり、工場の一番西の南の端に鉄鉱石が陸上げされておりまして、この影響ということが多分に考えられるわけでございます。現在通産省におきましては、目下厚生省におきまして浮遊粉じん全般につきましての環境基準の設定について御検討が進められておりますので、それにも備えまして、全国の製鉄所に対しまして生産担当部局のほうにおきまして、詳細な——原料段階、製鉄所の製鋼段階その他いろいろな段階でいろんな粉じんが発生するわけでございますので、現在は法の規制対象にはなっておりませんけれども、これらにつきまして詳細な全国的な調査を行ない、どういうふうに対策を講ずべきかを検討するということで目下調査を進めておるところでございます。  新日鉄の御指摘の堺工場の荷役の際、あるいは野積みの際、あるいは溶鉱炉挿入の際等に現実に実際に今日どういう予防措置を講じておるかという点につきましては、その調査の結果明白になるわけでございますけれども、とにかく通産省といたしましては、堺工場につきましても、もちろん今後浮遊粉じんの一般的な環境基準の設定に備えまして実情を十分調べておるわけでございますので、その結果に基づきまして十分指導し、浮遊粉じんが環境基準の範囲内にとどまるように十分指導をする、こういう方針でいま鋭意勉強しておるところでございます。
  259. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 官僚のあなたに毒づいてまことにすまない気がしますが、そういうことであなたたち役目済ましておってはたいへんだと思いますよ。私ですら現地に行ってこういうように調べてきているんですよ。ところが、いまから調べましてどうのこうの、役人で行政官がそんなのんびりしたこと言っていて、それで今日のこの公害問題解決しますか。とてもできませんよ、そんなことじゃ。もっともっと積極的に公害調査のために、研究のために金が要るなら、これだけ金よこせとはっきり言うがいいし、大いにどんどんと出かけて、われわれが言わなくてもちゃんともっと積極的にやらなくちゃいかぬじゃないですか。それがぼくは行政官のつとめだと思いますよ。一体何をしているんですかと、こう私は言いたい、失礼ながらですよ。しかし、まああんたもまだ新任早々ですから、そこまでいっていないから、私はこれ以上は言わぬけれども、しかし、大体が公害に対して、通産省にしろ、厚生省にしろ、少しのんびり屋じゃないですか。もっと真剣にやってくださいよ。それでないととてもこの全国に広がっている、いまや公害の中にわれわれ日本人は住んでおる、命を的にして日本に住んでおると、こう言わなきゃならぬような状態、こんな最悪な状態がそんなのんきなことで解決できると思いますか。とてもできませんよ、それは。もっと真剣にやってくださいよ。それでないと迷惑するのは市民、国民ですよ。まあしっかりやってくださいよ。  それから厚生省に対しまして一つ質問しますが、いま法局な措置がないと通産省の人は答えましたが、この大気汚染防止法二条一項ですね、持っていらっしゃるだろうと思いますが、においては、「「ばい煙」とは、燃料その他の物の燃焼に伴い発生するいおう酸化物」、「すすその他の粉じん」と、こういうふうに言っているのですがね。堺市の例に見られる降下ばいじんは規制対象にもされていないのですよ。だから通産省の局長は法的な対象になってないと、こういうふうなお答えだと思いますが、これではいかぬですね。だから新たに法律の整備を考えるべきだと、そういうふうに私は考えるのです。どうですか、厚生省はこれに対して法律の整備を考えていらっしゃいますか。降下ばいじんをこの規制の中に入れるように処理をされる考えですか。ひとつはっきりしておいていただきたい。
  260. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 御指摘のように、現行法では物の燃焼に伴い発生する場合に限定しておりますので、それ以外にもいろいろと、たとえば機械工程とかあるいは原材料置き場等、そういういわゆる野積みのばい煙、粉じんという問題も起きて、現実に影響を及ぼしておるわけでございますので、今回対策本部の設置等に伴いまして基本法あるいは関連法をこの際全部見直そうではないかということになっておりますので、大気汚染防止法改正一つ問題点として検討しなければならないというふうに考えております。
  261. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その次は、堺の三宝地区にいま慢性気管支炎が非常に多くなっているという点です。この堺製鉄所に隣接する堺市松屋町、神南辺町など、いわゆる三宝地区ですね。三宝地区と称しておりますが、三つの宝の地区です。三宝地区のほとんど全世帯三百六十九世帯につきまして、大阪成人病センターの慢性気管支炎の問診表、これによりまして調査しました結果、こういうことがわかりました。ここに調査の結果いろいろな面がありますが、四十歳以上の慢性気管支炎有症率といいますね、これは一六・二%となっておるのです。この一六・二%ということは四日市ぜんそくでやかましく言われた四日市の一五%よりも上回っております。また尼崎の一四・四%よりも堺の三宝地区は上回っている比率なんです。そこで厚生省に私お尋ねいたしますが、このような住民被害は亜硫酸ガスと同時に堺製鉄所などによる降下ばいじんによる影響もあると私は思いますが、どうお考えになりますか。また、付近住民に対し国の責任でさらに精密な健康診断をする必要があると思いますが、どうでございますか。三番目は公害被害者に対し公害病としての認定を直ちに行なうべきだと思いますが、厚生省はどういうふうにお考えになりますか。
  262. 山本宜正

    説明員(山本宜正君) ただいま先生からお聞きした数字は明らかに高い影響があると、かように考えられます。その影響が亜硫酸ガスそのほかの原因によるかどうかにつきましては、これは府とも十分連絡をいたしまして、これが即刻調査努力したい、かように考えております。なお、これらにつきまして被害者救済法による対象とするかいなかにつきましては、その調査の結果早急に考えていきたい、かように存じます。
  263. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 だって四日市では公害病に指定されているんでしょう、そうでしょう、四日市よりも亜硫酸ガスの比率が高いのです。そこで起こるぜんそくは四日市では公害病として認定されるのなら、堺の三宝地区だって公害病として認定して一向差しつかえないのじゃないですか。何でそんなのんきなこと、調べた後とかなんとか言うのです。一刻も早くこういうふうにしてほしいということは町民の訴えですよ。そんなこと言っておっちゃいかぬですよ、どうですか。
  264. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 被害救済法の適用にあたりまして一応汚染地域指定があるわけでございますけれども、その指定基準は汚染度の高いということと一応の有症率を示すということでありますけれども、ただいまの数字、それ自体からお聞きしますと、一応この基準に数字的には合うと言えると思うのでありますけれども、この調査がどのような程度になされたのかどうか、さらに府とも十分相談いたしまして、やはり指定するからにはそれなりの精密な調査が必要と考えられますので、いずれにしましてもそういうものを待って考えたいというふうに考えております。
  265. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 至急調査して、そうして市民の皆さんが迷惑をしておるのですから、至急それを善処するように厚生省としてぼくは努力してもらいたいと思うのですよ。のんびりしておっちゃいかぬですよ。至急やってください。  それじゃ次に、こういうふうに堺の海岸地帯が埋め立てられたために、堺市民、あの辺高石市、こういうところは非常なひどい目にあっているわけですが、そこへ持ってきて、また埋め立てを大阪府が始めたわけですよ。それで私は現地を見にいきました。泉北地区追加埋め立て地百五十七万平米ですね。それだけの埋め立て地をつくるというのですよ。ところが、いま現在、このように浜寺公園の松が枯れたりしておる原因は、その目の前にゼネラル石油精製工場があります。それから大日本インキ化学工業、三井東圧化学、それから興亜石油、日本石油、こういうふうに公害源が一ぱいあるわけですね。そこへ持ってきていま申しましたように、大きな埋め立てをやっており、何を持ってくるかといったらここへ石油タンクを持ってくる、だから公害は出ない、こういう大阪府の人は言い方をするのです。ところが、何のためにそこにタンクをつくるのかといえば、こういう周辺にある石油精製工場が石油を使うために大きなタンクヤードをつくるわけですね。そうしたら、いま現在よりも、もっともっと公害がひどくなるということは、これはもう明らかなんです。そのために高石市の人たちは非常に現在でももうこんなひどい公害が起きているのに、これ以上ここへ石油精製工場が建てられ、またそういうタンクの基地ができるのじゃたまったものじゃないというので、埋め立て地追加埋め立ての反対運動をやっておるのです。これは高石市の市民が署名運動をとって歩いておりましたが、一万四、五千人が反対署名をして、そして市長はじめ全員がこれに反対をしております。ここにもそういう内容のものがありますが、タンク基地反対で高石市議会が反対したという記事も大阪の新聞に出ております。そういう状態なんです。これは非常に危険な状態にあると思います。この間、大阪府の企業関係の部長さんが説明に出てきまして、私いろいろ話を聞きました。そうすると、私はこれを中止したらどうだと、こう言ったのです。そうしたらいや、この埋め立て地はどうしても埋め立てますと言ってがんばるわけなんです。それじゃ建設省は許可をしているかと言ったら、建設省は船の航行に差しつかえがなければこれは問題がないというんです。それじゃ、船の航行に差しつかえがなければ公害源をどんどんつくっていっていいかということなんですね、いまぶつかっている問題は。これじゃ、私はいかぬと思う。やはり公害源をなくすためにどうしたらいいか。公害源が来るような土地をつくらなければいいんですね。ところが、大阪府の係はどうしても土地を埋め立てると言って力んでいる。こういうことに対して政府としては何らか行政指導を私はする必要があると思うんですが、どうなんですか。これは自治省の人は来てないんで、あなたたち意見を聞いておきたいと思うんですよ。
  266. 柴崎芳三

    説明員(柴崎芳三君) 先生御指摘のとおり、堺・泉北地区は非常にその背後に直ちに過密と申しますか、非常に人口の稠密な地帯を控えまして、問題の地点であることは事実でございます。したがいまして、この地点の問題につきましては前前から通産省としても注意をしておりまして、私自身現に最近半年の間に二回ばかり現地へ出向きまして、いろいろな状態を調査してまいりました。現在大阪府が考えております埋め立てにつきましても、その埋め立て自身をやめさせる権限は通産省にはございませんし、それを強制するわけにもまいりませんので、このでき上がった土地に企業を誘致する場合には十分な上にも十分注意してくださいということを従来から言っておりまして、最近聞いております話では、先生が御指摘の石油関係のタンクのほかにLNGを使ったガス、それから鉄鋼関係の流通基地というようなことで、従来よりは幅広い形で立地企業の選定をやっておるようでございます。原油タンクができればあるいは製品タンクができればそれだけ油がふえるではないかという御指摘でございますが、これからもやはり堺・泉北地区の経済活動がある程度のカーブを描いて上昇することはこれは必至であろうかと思いますが、われわれといたしましては、その場合に問題になりますのはSO2の排出総量である。重油の消費量が増加してもSO2の排出総量が増加しなければ一応公害問題の進行というものはそこで断ち切れるのではないかという考え方で、大阪府で持っておりますブルー・スカイ計画というものをわれわれの産業公害総合事前調査の手法の中にはっきりと織り込みまして、いろいろ現在各企業の増設する場合の設備の設置について指導しておる最中でございますが、現在一応持っております数値といたしましては、四十二年度の堺・泉北地区のSO2の総排出量が一時間当たりで七千七百五十ノルマル立米でございます。それが会社の計画そのままの場合どうなるかというと、会社の計画そのままでございますと、四十七年度におきましては一万四千二百二十ノルマル立米になる。しかし、これではもうたいへんなことでございますので、いろいろ指導改善計画をつくらせました結果、現在では四十七年度には約七千四百三十ノルマル立米程度でおさまるであろう、したがって、四十二年度の状態で大体将来はいけるのではないかという数値を持っております。で、現在の平均の硫黄分が二・〇%程度でございますが、われわれが四十七年度を目標にして指導しております重油の平均硫黄分は一・〇七%でございまして約半減をするわけでございます。こういったような指導を重ねながら、できるだけこの泉北地区の公害問題をカットしていきたい、それが現在持っております方針でございます。
  267. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もう一問。  私は、いわゆる基本基準環境基準というものはこれは非常にデリケートな関係にある問題だと思う。あなたはいま基本的な基準の問題だけを言いましたよ。だから、硫黄分を下げた重油を使っていけばそれで問題は解決する、こう言っておりますが、かりに硫黄分が半減されても、そこでたく重油が倍になれば同じなんです。環境基準は同じなんです。三倍になれば環境基準の上からいったら前より悪くなるんですよ、硫黄分が低下してもたく量が多くなれば。だから環境基準はこうだときめればそれは動かす必要がないと思う。また、人体に関係のないだけの環境基準をきめなければいかぬ。しかし、もう一つの硫黄分の含有のその基準というものは、これは常に直していかなければならぬ問題だと、私はこういうふうに思うのですよ。使用量がふえればそれだけどんどん基準を下げてきびしくしていく。これが必要だと思うのですよ。だからいまあなたは、これだけの油にするつもりだからこの問題は解決すると言うが、そのときにどれだけ油をたくかということなんですね。先ほども私資料で申しましたように、堺地区というのはどんどんこれがふえているのです。今後ますますふえていくのです。そういうときに、そういう基準だけにたよっておってはいけないので、あくまでも環境基準を厳守するというこの姿勢を私は守っていかないと、対人間の問題は私は解決しない問題だと、こう思うのですがね。そこをどういうふうにするつもりですか。あくまでも環境基準を越えないという決意を持っているのですか、どうなんですか。これは非常に大きな問題ですから、この際はっきりしておきましょうや、環境基準第一主義かどうか。
  268. 柴崎芳三

    説明員(柴崎芳三君) ただいま先生の御指摘まことに重大な点でございます。結局現在のあの地域環境基準を守るためには、その地域におきますSO2の総排出量をある数値でフィックスさせまして、その範囲内でとどめるという対策をとらざるを得ないかと、これは堺・泉北地区だけではなくて、鹿島におきましても千葉におきましても、そういった数値を一応予測いたしましていろいろ指導しておるわけであります。この堺・泉北地区の場合には、四十七年で七千四百三十ノルマル立米パー・アワー、これでは正直なところまだ環境基準を完全に達成できません、この地区は、御承知のように、環境基準達成のための十年目標地域でございます。一応の中間値ということでさらに努力をしなければならないわけでありまして、そのためには生産活動がいかに上昇しようともこの約七千立米という総排出量の数値はそのままフィックスいたしまして、その分は他の燃料を使うか、あるいは重油であるならばSO2のさらに低いものを使わせるというような形で指導していかなければならないわけでございまして、千葉の五井、姉崎地区ではその数値が大体一万立米、そこを天井といたしまして、その範囲内であらゆる今後の企業の増設、増産をその範囲内で押えていくというような対策をとっておるわけでございまして、こういった考え方はおそらくこれからこれに類似した地域に対しましては、よりシビアに適用していかなければならないものとわれわれは考えております。
  269. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、きょう全部質問しようと思うと、まだ一時間近くかかるんですが、しかし、いま尼崎の問題がちょっと出ましたから、私はそれについて一言申したいんですがね。関西電力の尼崎第三発電所が建設されるときに、おそらく関西電力から通産省に対して設立願いを出してきておると思うんです。そのときの文書は来ているはずです。どういう理由で建設したいとこういうのか、それを私はきのう提出してもらうように依頼したんですが、ありましたら私はきょういただいて帰りますわね。というのはですよ、私はこの間兵庫県へ参りました。兵庫県庁で生活部長といろいろ話した。そうすると、兵庫県庁も尼崎市役所も全部関西電力の第三発電所については問題を持っているんですね。というのは、第三発電所ができるときの条件として、第一、第二発電所を第三ができたときはこれを予備的なものにしてしまう、もうほとんどたかない、こういう一札を通産省へ入れて、そして設立は認められた。それで、それを持ってきて県庁にも承認しろ、尼崎市役所にも承認しろということで私たちは通産省に出した文書を信用して、そうして設立を認めたと言うのです。ところが、確かにそのグラフが出ていますが、そういう設立願いが出ているはずです、四十年か四十一年に通産省に。確かにそのグラフで見ると、四十一年は第一はゼロ、それから第二のほうは四十四年にはもう一%強の形に下がってきているのですね。ところが、最近この第一、第二がまた煙を吹き出したというわけですね。それで表を見ますると、第一は四十四年度の四月には二千六百キロリットルですかね、それから五月は一万三千三百キロリットル、こういうふうにずっと書いてある。第二も同じように書いているのですね。そうすると尼崎や兵庫県庁にしてみると関電に一ぱい食わされたという、こういう気持ちがあるのですね、県庁の当局にも。それで私が行ったらそういう不満を私にぶちまけましたよ。それで私はあくる日関電の火力支配人に来てもらいました、尼崎へ。そうして第三発電所の事務所で二時間ほど話し合いました。そうすると、その支配人の言うのには、確かに私たちは四十一年には第一、第二は第三ができたらもうたかぬという決意を持っておったのだ、ところが、その後電力事情が変わってきましたので、そうしていま第一、第二もたかざるを得ない、こういうことだと言うのですよ。そこで私は、関西電力といえば関西第一の企業じゃないか、その第一の企業の重役さんたちが何人おるか知らぬが、重役さんたちが一年後に電力事情がどうなるかという見通しがつかなかったとするならば関西電力の重役さんはぼんくらぞろいじゃないですかとぼくは言った。しかし、そうじゃないでしょう。関電の重役ともあろう者がぼんくらじゃつとまろうはずがない。みんなりっぱな人だと思いますよ。決して頭の悪い人じゃない。だからちゃんとこの日本の高度成長政策の中における電力事情が一年後にどうなるか、二年後にどうなるかくらいの見通しは持っておったはずだと思うのですね。持っておって、そうしてもうやめますというような心にもないでたらめを言って県庁や市民をだまくらかしたことと違いますかと、私はこう言ったのですよ。そうしたらいや決して県や市をだまくらかすというようなそういう気持ちは毛頭ございませんでしたと、誠心誠意そのつもりでおったが、電力事情が変わったためこうだと、こう言うのですね。それじゃ私は……。
  270. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 須藤先生、簡潔にひとつ。
  271. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その電力事情が変わったということを県庁や市に申し入れましたかと言ったのです。そうしたら、当分たかしてもらいたいということを申し出たのです。それに対して、市は了承したとは返事していないと、しかし、関電の事情はよくわかりましたというような意味の手紙は受け取ったので、もう了承を願ったものと、たくことを許可してもらったものだと思っていまたいていますと、こう言うのですが、こうなると、関電と県・市の問題になるので、私はそのとき、これは県と市と関電の問題だから、ぼくはもうこれで話はやめる、打ち切る。だから大いに、こちらはこう答えている、こちらはこう言っているというのですから、私は大いにけんかしなさいと言って帰ってきたのですがね。こういうことはやはり起こってきますよ。まだほかにもありますから、それはこの次にいたしましょう。ですからいま申しましたように、環境基準というものはきちんときめて、そうして環境基準というものはあくまでも守っていく。そこら辺にそうした工場がたくさんできて、そこからどんどんたいたら、おそらく環境基準というものはくずれていくわけでありますから、その環境基準をくずさないという姿勢が私は日本の公害対策として一番重要な点だと思うのですよ。その点意見を述べていただいて、私の質問は、きょうはそれで終わりましょう。
  272. 柴崎芳三

    説明員(柴崎芳三君) ただいま先生が事例を引かれまして、環境基準を確実に守るための重要さを強調されたわけでありますが、われわれも全く同じ考えでございまして、生活環境の確保ということを第一の命題にいたしまして、いろいろの施策を進めてまいりたい、かように考えております。
  273. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 本日の調査は、この程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後六時三分散会