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1970-06-18 第63回国会 参議院 公害対策特別委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年六月十八日(木曜日)    午前十時二十七分開会     —————————————    委員異動  五月十三日     辞任         補欠選任      松井  誠君     田中寿美子君  六月十七日     辞任         補欠選任      加藤シヅエ君     森中 守義君  六月十八日     辞任         補欠選任     久次米健太郎君     大谷藤之助君      内田 善利君     原田  立君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         占部 秀男君     理 事                 中津井 真君                 小野  明君     委 員                 大谷藤之助君                 鬼丸 勝之君                 川上 為治君                 木島 義夫君                 渡辺一太郎君                 森中 守義君                 小平 芳平君                 原田  立君                 須藤 五郎君    国務大臣        厚 生 大 臣  内田 常雄君        国 務 大 臣  山中 貞則君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        経済企画政務次        官        山口シヅエ君        経済企画庁国民        生活局長     矢野 智雄君        経済企画庁国民        生活局参事官   西川  喬君        厚生省環境衛生        局水道課長    国川 建二君        厚生省環境衛生        局公害部長    城戸 謙次君        厚生省薬務局薬        事課長      山高 章夫君        水産庁長官    大和田啓気君        通商産業省企業        局立地公害部長  柴崎 芳三君        通商産業省化学        工業局長     山下 英明君        通商産業省鉱山        石炭局長     本田 早苗君        通商産業省鉱山        保安局長     橋本 徳男君        運輸省港湾局計        画課長      大久保喜市君        気象庁次長    坂本 勁介君        建設省都市局下        水道課長     久保  赳君    参考人        水俣病補償処理        委員会会長    千種 達夫君        弁  護  士  戒能 通孝君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○公害対策樹立に関する調査  (大気汚染及び水質保全対策等に関する件)     —————————————
  2. 占部秀男

    委員長占部秀男君) ただいまから公害対策特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る五月十三日、松井誠君が委員辞任され、その補欠として田中寿美子君が選任をされました。  また、昨十七日、加藤シヅエ君が委員辞任され、その補欠として森中守義君が選任をされました。  また、本日、久次米健太郎君が委員辞任され、その補欠として大谷藤之助君が選任をされました。     —————————————
  3. 占部秀男

    委員長占部秀男君) この際、参考人出席要求に関する件についておはかりをいたします。  公害対策樹立に関する調査中、大気汚染及び水質保全対策等に関する件の調査のために、参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等については、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 御異議ないと認めます。さよう決定いたします。     —————————————
  6. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 公害対策樹立に関する調査を議題とし、大気汚染及び水質保全対策等に関する件について質疑を行ないます。  質疑のある方は、順次御発言をお願いいたします。
  7. 小野明

    小野明君 最初に、経済企画庁、通産、厚生、それぞれにお尋ねをいたしたいと思います。  まず経済企画庁ですが、洞海湾汚染の問題であります。さきに六十三国会水質保全法が議了をいたします際に、附帯決議をつけまして、すべての調査データについては公表をすべきである、こういう決議をつけてあるわけであります。その後、洞海湾汚染、あるいは福岡市における那珂川、御笠川、あるいは大牟田川の汚染、この福岡県内における汚染が相次いで発表された。また黒部の問題も同様でありますが、これらを見ますときに、すべてデータ政府が秘匿をしてしまっておる。しかも関係職員に口どめをしておるというような事実もあるわけであります。この附帯決議趣旨あるいは公害防止法趣旨からいいまして、きわめてこれがけしからぬやり方だと言わざるを得ぬわけであります。  そこで洞海湾の問題からお尋ねをいたしますが、これは企画庁が、福岡県それから通産局委嘱をいたしまして調査をいたしたわけであります。昨年の六月と八月に行なわれながら、この数字発表をされない。で、問題になりますのは、これを取り巻く二十二工場ということになっております。この二十二工場名前は明らかになっておる。そのうち問題なのは十四工場である。こういわれておる。さらにそのうち六工場については、現地通産局が召喚をいたしまして重点指導をやったと、こういわれておるのであります。この十四工場並びに六工場について、その名前をひとつ明らかにしてもらいたい。
  8. 西川喬

    説明員西川喬君) 水質調査の結果の公表の問題につきましては、これはいままではルールというものがございませんでした。経済企画庁におきましても、委託をいたしました場合に、現実には、調査をしましたところで必ずしもその調査が正確でないというようなケースもございまして、チェックをいたしますとミステークの調査もあったというようなことから、中央におきましても全部それをチェックいたしまして——そういたしませんと、いたずらに一般の関係住民をミスリードするというようなおそれがあるようなことから、従来は、ただ単に調査をしただけでは公表を認めなかったわけでございます。中央におきまして、調査結果を解析いたしまして、水質基準設定するための審議会部会を設置いたしまして審議を始めたときにおきましては、解析が全部終わっておりますので、その時点におきまして、汚濁の状況というものを審議会のほうに説明いたしまして、その時点公表というような形式を従来とってきたわけでございます。非常に公害問題が重要な問題となってまいりまして、緊急の場合もございますので、今回その公表ルールというものを定めましてそれに基づいて公表しようということにいたしまして、この調査結果を、県のほうにおきまして、調査を実施したところにおきまして、十分正確な、調査要領を完全に厳格に守りまして、県においてその調査データ責任をとれるということで、国のほうにその調査結果の報告を済ましたときにおいては公表して差しつかえないということで、そういうルールに統一したわけでございます。今後は、それに従いまして、流水の中の状況調査結果というものは、県のほうが責任をもちまして、絶対間違いのないという調査を実施いたしまして、その分析を終わりまして、これで十分である、確実であるということになれば、国にその報告をすると同時に公表して差しつかえない、こういうふうに決定いたしまして、通達も流したようなところでございます。  ただ、いま先生のおっしゃいました工場排水口調査でございますが、これは実は水質基準設定するための事前調査でございまして、このときには、工場側協力を得て調査をしているわけでございます。強制調査権限がございません、事前調査の場合には。その場合には、工場側協力を得まして、水質基準設定を円滑にいたすために調査をやっておるわけでございます。ですから、その調査を実施いたしました経緯から見まして、これを直ちに公表するということについては、今後ほかの水域へ波及する問題、あるいは当該水域におきまして水質基準設定しなければいけないわけでございますが、その設定に至りますまでの間の円滑さの問題等がございまして、指定水域になります前の、基準設定のための調査時点におきます排水口調査というのは、これは公表することはかえって問題が多いのではないかというような観点から、それにつきましても、やはり現地部会等の、その場合につきましては、部会等におきまして新しい基準設定する段階におきまして、初めて出せるというような方向をとらざるを得ないのではないだろうか、このように考えているわけでございます。水質基準設定されますと、その段階におきましてはこれは基準というのははっきりきまっておりますから、その基準を守っているかどうかということを、今度は調査する権限もございますから、それによりまして各工場排水実態というものも公表できるわけでございますが、事前調査におきましてはその点が若干違っているわけでございます。私どものほうといたしましても、現在の段階におきましては、水質基準設定のための調査におきます事前調査におきましての排水口調査は、工場協力を得て行なった調査につきましては、単独に、一方的にこちらで公表することは差し控えたい、このように考えております。ただ実態上の問題といたしまして、非常に問題となり得るようなケースの場合には、これは水質基準設定前におきましても、事前指導を行なうというような形をとっているわけでございますが、その事前指導につきましては、担当通産省厚生省のほうに連絡をとりまして指導をお願いしているようなわけでございます。ただいま先生のおっしゃいました六工場というものにつきましては、通産省のほうにお願いしておりますので、通産省のほうからお答えしていただきたいと思います。     —————————————
  9. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 質疑の途中でありますが、この際、委員異動について御報告いたします。  本日、内田善利君が委員辞任されまして、その補欠として原田立君が選任されました。     —————————————
  10. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 質疑を続行いたします。
  11. 小野明

    小野明君 答えられる前にあなたに尋ねたいが、あなたに尋ねてもしかたのないことかもしれないが、きょう公害特別委員会が開かれるというのは数日前にきまっている。第一、参事官だけで、担当局長も来ておらぬ。それから次官もおらぬ。それから長官も、いま次官は来たようだけれども時間におくれてくる、こういうことはまことにけしからぬじゃないですか。大体どういうかまえであなたたちはこの委員会に臨むのか、まずその辺からひとつ尋ねてみたい。
  12. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) 私おくれてまいりましてたいへん申しわけございません。ちょっと急な用で一、二仕事を片づけておりましたので、申しわけがありませんが、ともかく公害問題は私たちが進めております行政の中でも、最も現在重視しておりまして、特に直接所管しております水質保全法につきましては、それを十分推進する熱意には一向変わりありません。おくれてまいりましたことはおわびいたします。
  13. 山口シヅエ

    説明員山口シヅエ君) 一言申し上げます。実は、けさほど政務次官会議がありまして、やはり同じように公害問題が取り上げられておりまして、ただいまそのことでいろいろと意見の交換がございまして、私もこちらへ時間までに出席しなければならなかったのですが、そのときの私の聞き違いで、ただいま政府委員室で待機いたしておりましたら、こちらのほうが始まるということを聞いて、急遽こちらのほうへ飛んでまいりました。その間遅刻いたしましたことは申しわけなく、存じますが、どうぞよろしく御了解のほどお願いいたします。
  14. 小野明

    小野明君 第一、まあ大臣がおられぬということが国会軽視ではないかと思うのですけれども、これは聞いてみると、何か数日前から出張というようなことなんです。きょう次官として、いまのお話でわかりましたが、担当局長次官もこの開始時間に間に合わぬということは、まことに遺憾と思う。今後気をつけていただきたいと思う。  それからいま言われたが、通産局ですね、問題になっておる十四工場と六工場名前をひとつそれでは発表願います。
  15. 柴崎芳三

    説明員柴崎芳三君) 最初に六工場名前を申し上げます。新日本製鉄八幡京阪煉炭戸畑三菱化成黒崎三島興産三原金属、新日本製鉄化学、以上が具体的に改善勧告をいたしまして設備改善を進めさせておる工場でございます。それから十四工場につきましては、以上の六工場を含みまして十四工場名前を申し上げますと、旭硝子、日本水産戸畑明治精糖戸畑、それから日本炭砿、洞海化学触媒化成、それから日立金属、新日本製鉄戸畑、以上の十四社でございます。
  16. 小野明

    小野明君 次官、おくれてこられましたから、これは前回国会水質保全法が上がりますときに、長官が、今後は調査データについては公表をいたしますと、こういう言明があったことは御存じであろうと思います。ところが洞海湾が死の海だと、日本一の汚染だと、こういうことが発表されて以来、経企庁がひた隠しにデータについて隠しておるわけですね。誤った数値発表されてはというような御意見もありましたけれども、これは経企庁現地通産局にあるいは福岡県に委嘱をいたしまして、そこでそれぞれの試験所発表したものを誤っているとかなんとかいうことは、これはへ理屈でありまして、一応出たものはすなおに発表すると、これが長官言明趣旨であろうと思う。その辺をまずお尋ねしておきます。
  17. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) 先に私からお答えさせていただきます。調査いたしました結果につきましては、なるべく公表する原則を守っていきたいと思います。先ほど参事官からもお答えいたしましたように、調査結果につきましての公表ルールを徹底させるべく各都道府県にもすでに通達を出しました。それによって随時公表していくことにしております。従来から決して隠していたわけじゃありませんで、そのつどの公表ということはいたしませんでしたが、ある程度まとめては出しておりました。しかし、公害問題に対する関心が一段と強くなってきたということもありますし、また、なるべく早く住民にその状況を知らすことが適切であろうという判断から、今回の通達によりまして随時公表していくルールを確立したわけであります。ただ先ほど参事官からもお答えいたしましたように、排水口におきます状況は、現在企業に対しまして、水質基準をつくる、そういう目的のもとで調査協力してもらっておりますので、この点はまだ基準もきまりません前に一々出していくということは、今後こうした水質調査を実行していきます上に障害になるおそれもありますので、その点の公表原則として差し控えさしていただきたい、かように思っております。しかし、流水状況住民として当然深い関心を持ち、利害関係もできますので、この点は随時調査が終わり次第公表していく、かような原則を立てております。で、そうした趣旨に基づきまして、すでに都道府県通達を出し、趣旨の徹底をはかっております。
  18. 小野明

    小野明君 水質基準をつくるための前の調査だから発表ができない。そうすると、その調査データ発表しないでどんな水質基準をつくるのですか。いま県民洞海湾汚染に非常に不安を持っている。あなたたち排水口における調査データ発表しないで、かってに適当な水質基準をつくろうとしている、そう言われても間違いないのじゃないんですか。ことに排水口、響灘というのは公共水域、しかもこれは漁場に通じているわけです。公共水域です。それにどんどん汚染された排水をやるから、この調査データをあなたのほうが一方的に隠している。しかも水質基準をつくる、通産局設備改善指導をやる、一体何を基準にしてやっているのか。どういうデータが出たからこういうふうにやったのだと、こういうふうにこれはあからさまにしないと県民は納得しない、国民は納得しないですよ。そこで私が問題にしているのはシアンですが、この問題についてもあなた方はこの洞海湾全体の汚染発表されてから、随時発表していると言うが、さみだれ発表である。刺激しないようにばらばらに飛び飛びに発表している。しかもこの発表やり方を見ていると、奥洞海よりも中洞海のほうが汚染度が高いということを当初あなたたちは隠しておった。ある意図を持って、特に企業に遠慮をしてそうして数字発表しないという意図があまりにも濃厚過ぎる。だから私が要求したいのは、このシアンについても二十二工場排水口における調査結果、しかもこれは昨年の六月と八月にやられているのだから発表してもらいたい。
  19. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) 洞海湾につきましては、いま先生の御指摘のように、流水状況におきましてシアンかなり多量にございます。先般、閣議決定いたしました環境基準に照らしましても若干多い状況であります。また、排水口におきましては、先ほど申しましたような事情もございまして、個々排水口ごと数字発表は差し控えさせていただきたいと思いますが、いずれにいたしましても排水状況かなりシアンは多量に出ております。したがいまして、この点は早急に規制をする必要がございます。とりあえず、私どもといたしましては、こうした排水口データ関係官庁に連絡してございます。また今後この洞海湾につきまして、これを指定水域にし、水質基準をつくる必要がございますので、水質審議会ではさっそくこの状況をもとにして検討を進める必要がございます。現在、私どもといたしましては、とりあえず、かなりシアンが出ておりますので、通産省にはとりあえずこれを行政指導していただくように要請しますと同時に、一方で毒劇法違反の疑いもありますので、この点も厚生省でいま検討していただいておりますと同時に、個々水質基準設定につきましては、現地部会を開くことにもうすでに決定いたしておりまして、七月早々、私も参る予定でありますが、現地部会を開き、水質基準設定の段取りを早急に進めたいと、かように考えております。
  20. 小野明

    小野明君 シアンかなり高い数字であるとこれは言われても、幾らであるということを発表しない限りどういう程度かわからぬ。かなり高いのが非常に高いのかあるいはもっときわめて高いのか全然わからぬ、自分自身が。しかも、これが公害特別委員会、国権の最高機関の中で発表できない。議員が聞いて発表できない。それを拒否する理由は何ですか。
  21. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) 先ほど申し上げましたように、水質基準設定するという行政目的の上で調査協力を得ておりますので、個々排水口データ発表を差し控えさしていただきたいと思っておりますが、先ほどかなりシアンが実際に出ていると申しましたが、多いところでは二五PPM程度排水を出している工場もございます。
  22. 小野明

    小野明君 水質基準設定をするためのものだから、なお公表してもらわなきゃいかぬ。かなり高いところで二五と言っても、これはどこがそれだか、問題は六工場かもしれませんが。それをきちっと言うてもらわぬと、——前回衆議院で三二〇〇PPMあるいは八八〇と工場ごと指定をして、そういう数値が追及をされている、発表されております。そうすると、それは当たっておらぬとか、まるで判じもののような言い方をしても困る。この国会発表できない、公表できない。それが水質基準をつくるためのものである。それが国会発表できない理由としては私は納得できぬ。
  23. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) 水質基準をつくるためだと私、申しましたのは、私ども水質保全法を施行し、実行してまいりますにあたりましては、御承知のように、まず流水状況がどうであるかを把握し、それをどの程度の状態に持っていくかという目標を立てまして、その目標を達成するためにはいろいろ手段が必要でありますが、その重要な一つとして排水口規制をするわけであります。規制するにあたりましては、現在どの程度排水状況であるか、それを把握いたしまして、それと流水関係を結びつけましてその規制をしていくという、こういう目的現状を把握しております。それで、工場ごとにその規制をしていくわけでありますが、そうした調査の結果に基づきまして、水質審議会の議を経、また当然その過程において関係都道府県意見を聞いてまいるわけでありますが、したがいまして、そういう水質基準設定していく過程に必要な限りは、そのデータに基づいて検討をするわけでございます。したがいまして、あくまでもそうした水質基準をきめ、排水規制をする、その行政目的のために、特別にわれわれに立ち入り調査権はありませんが、そこら、工場協力してもらって、その調査をしておりますので、そうした水質保全法の施行上、これをそのつど、まだ基準が全然わからない前に公表していくということになりますと、その協力を得ている手前、どうも支障が起こる可能性がございますので、その点の発表を差し控えさせていただきたいと申し上げております。ただ、どこの工場がどうだということは、差し控えさせていただきますが、先ほど申しましたように、実際には多量のシアンが出ていることは事実であります。これは早急に何とか処理しなければならないというように考えております。  なお、ただいま先生がお話しの、三二〇〇PPMというような数字が一時報道されたようでありますが、これは三けた違って報道したようであります。三・二の誤りであったようであります。
  24. 小野明

    小野明君 排水口ごと規制ということはわかる。しかし、いずれは発表せんならぬものでしょう。水質基準をきめた時点発表をするのかそのあとにやるのか、いずれ発表せんならぬものでしょう。あなたは隠し通すつもりですか。
  25. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) 水質基準をきめますと、そこで工場ごとにどういう基準水質でなければならないかというのができますので、それに照らして現状がどうであるかという状況になりますと、従来も水質保全法に基づきまして指定水域設定し、水質基準をきめ、告示をするに際しましてはそうした状況は表に出していく考え方に立っております。
  26. 小野明

    小野明君 どうしてもあなたの言うことでは納得できぬわけです。それで、三けた違うということを言われましたね。三けた落とせば、そんな低い数値ですか。それと、それぞれ新日鉄、化成、それぞれ工場名をやっておるのだが、三けた落とせばそのとおりなんですか。
  27. 西川喬

    説明員西川喬君) 先日衆議院におきまして先生方から出ました数字につきましては、全部が三けた落としではございません。いろいろな数字がまじって入っておりまして、いま局長が申し上げましたように、三二〇〇PPMと申しましたのは、これは三けた狂っておりまして、三・二PPMでございます。それ以外に二けた狂っておるとかあるいはそのまま正確なもの、そのようないろいろな数字が入りまじっての、この前先生の御質問がございました。
  28. 小野明

    小野明君 これはいつまでもやりとりはしたくないけれども、あなたはいま発表すれば支障があると言われるのだが、どういう支障があるのですか。
  29. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) それは先ほどから申し上げておりますが、水質保全法を実行してまいりますのに、洞海湾に限らず、それぞれ関連する工場協力を得てその排水口調査をいたしております。これはあくまでも水質基準設定するというその行政目的に照らしまして、立ち入り調査権がなくても調査協力を得てやっておりますので、それを個々に、基準設定されない前に公表していくという原則をとりますと、その協力が得にくくなるおそれがありますので、この水質保全法を順調に、またその目的を達成し得るように施行していくためには、基準設定の前に一々公表していくということを差し控えさしていただきたい、かように申し上げている次第であります。
  30. 小野明

    小野明君 そんな姿勢ではいつまでたっても公害対策はできませんよ。あんたそう思いませんか。企業協力を得てと、それは最終的にはそうかもしれませんがね。あんたのところはこのようにひどいんですよと、だから、これだけの水質基準をきめますと、こういう姿勢でありませんと、やみからやみで、全くひた隠しにして納得のいかぬ水質基準をきめようとしておる。あんた方はこの公害——洞海湾を便所のようにしながら、そうしてもうけておる。この企業を是正するためにはどういう姿勢で臨まなきゃならぬか、その根本姿勢が問題だと思うのですよ。だから、きょう長官にぜひ来てもらいたかったんだが、残念ながら来ておらぬ。この点は、これは次官、あんたひとつ、きびしい姿勢で臨むという公害防止対策であってほしい。いま局長が言うような、数値発表しないで水質基準をきめる、こういうことで国民は納得すると思いますか。それだけあんたに聞いておきます。
  31. 山口シヅエ

    説明員山口シヅエ君) 先生の仰せのとおりだと思います。御意見を尊重いたしまして、よく長官にも先生のその御意向を伝えておきたいと存じております。
  32. 小野明

    小野明君 御意向を伝えるだけじゃいかぬわけですよ、シアンをきちっと調査しておるわけだから、問題は六工場と言うておるんだから。そこのシアン数値をきょうこの場で発表しなさい。この国会の場で発表できない理由としては理由にならぬと私は言っておるんです。どうしても発表してもらいたい。
  33. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) 私から先にお答えさしていただきます。  洞海湾の非常に汚濁が進んでいることは事実でありまして、私どもとしては、まず何はさておき、こういう状況を是正することが必要だと思っております。そのために、先ほども申しましたが、とりあえず行政指導でやってまいりますが、それだけではもちろん不十分でありますので、早急に水質基準をきめ、この規制に乗り出す、これが最も重要なことだと考えております。したがいまして、決してやみからやみへほうむるということじゃございませんで、この事実はわれわれのほうで把握しておりまして、それに基づきまして、この水質基準設定する関係者、水質審議会あるいは関係省あるいは関係都道府県、そことは十分にこのデータに基づきましてその是正をはかっていくつもりであります。いずれにしましても早急に水質基準をきめ、この規制をすることが先決問題だと思いまして、そのほうは厳重に進めてまいりたい、かように思っております。
  34. 小野明

    小野明君 そういう答弁はなれ合いで、またいいかげんな数値をきめてやるということにしか国民は受け取りませんよ、そういうことではね。あなたは昨年の六月と八月にやった調査データについては永久にこれはほうむってしまうつもりですか。それだけ最後に聞いておきます。
  35. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) 現在のデータに基づきまして水質基準設定の努力をしておりますが、そうした規制を進めてまいる過程において発表をすることも考えたいと、かように思います。
  36. 小野明

    小野明君 発表をするのかせぬのか、ぴしゃっと言うてもらいたい。
  37. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) 適当な時期において発表いたします。
  38. 小野明

    小野明君 それはいつですか。
  39. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) 現在、先ほども申し上げましたように、水質基準設定の準備を進めておりますので、そこで基準をはっきりきめまして、そのときにそれが十分流水の環境をよくするために必要であるかどうか、その辺に疑義が起こらないように、その基準をきめました時期においては何らかの形でそれを一般にも知らせよう、それが適当であるというように考えます。
  40. 小野明

    小野明君 いつごろ発表するのか、その時期をぴしゃっと言うてもらいたい。
  41. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) いま、いつという具体的な日限はまだきめられる段階ではございませんが、いずれにいたしましても、来月早々から現地部会を開きまして、この審議を進めますので、そうした時期との関連において適当だと判断される時期に、一般に納得のいくような方法をとりたいというふうに思います。
  42. 小野明

    小野明君 時期のめどを言ってもらいたいと言うている。
  43. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) なるべく早急に……。
  44. 小野明

    小野明君 なるべく早急にじゃ時期はわからない。
  45. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) まだその辺の具体的な段取りはこれから進めるわけでございますから、何月何日というところまではちょっとまだ申し上げる段階じゃありません。いまのところは七月早々に現地部会を開きますので、それに基づきまして大体八月か九月ころには基準設定する、そういう段取りに入れると思いますので、その辺の時期はまだこれから関係方面と十分詰めてまいらなければなりませんので、いま何月というところまではちょっと、恐縮ですが、そこまでいま見通しが立ちませんが、いずれにしましても、ただいま申しましたような時期の段取りでこれを進めてまいりますので、その経過によりまして、適当な時期にそういう状況を一般にも知らせるという方法はとりたいというふうに思っております。
  46. 小野明

    小野明君 あなたの答弁聞いておると、いつになるかわからぬ、一年先になるかわからぬというような感じがしていかぬわけです。これは七月上旬に始めて、そうすると、おそくとも九月までにはこのデータがなまで発表される、最悪の場合でも。そう受け取ってよろしいか。
  47. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) 現地部会を開きましてから、またさらに水質審議会を開催いたしまして、これは東京ででありますが、開催いたしまして、そこでこの基準案の設定をはかります。そうした段取りを経て基準をつくり、水質審議会の議を経て経済企画庁長官の告示という段取りになるわけであります。
  48. 小野明

    小野明君 手続はいいよ、時期を……。
  49. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) 時期がいつかは、今後の検討状況によりますが、こういうかなり汚濁が進んでおる状況でもありますので、なるべく早くいたしたいと思っております。それが八月、九月、あるいは十月か、その辺最後の告示の時期はいまの段階では明確にお答えするだけの段取りが進んでおりませんが、いずれにいたしましても、そう一年も先だというようなところまで引き延ばすつもりは毛頭ありません。とにかく早急にこの段取りを進めたいと思っております。
  50. 小野明

    小野明君 段取りを進めることを聞いておるんじゃないのですよ。そんなことはわかっておるから、当然これだけ汚染をしておれば、そういうことはやらなければならぬことはわかっている。  次官、いまのやりとりでおわかりでしょうが、なまず答弁で何を言っているかわからぬわけですよ。いつごろまでぴしゃっとなまのデータ発表すると、あなたのほうから答えてもらいたい。
  51. 山口シヅエ

    説明員山口シヅエ君) お答え申し上げます。早急にやらしていただきます。
  52. 小野明

    小野明君 めどを言いなさいというのです。早急じゃだめです。
  53. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) どうも時期をはっきり明示できませんので恐縮でありますが、御承知のように、水質基準設定していきます過程には、水質審議会の議を経るあるいは現地意見を聞くとかいろいろそういう段取りがございます。その段取りをなるべく早く進めたいと思っております。もちろん水質基準設定されますまでも、なるべくこうした汚濁の状況を改善する必要がございますので、その点は関係省において行政指導を早く進めていただくように私のほうからも要請しておりますし、関係省もそういう段取りで進めておられます。いずれにしても早急にこの基準をきめ、洞海湾のこの汚染を早く改善する努力を進めさしていただきたいと、かように思います。
  54. 小野明

    小野明君 どうしてもあなたはほんとうのことを言わぬが、どうせこれはもう一回委員会があるから、そのとき長官にひとつ答弁をしてもらおうと思います。  それから時間もありませんから、ここで洞海湾の砒素を調査しなかった理由は何ですか。
  55. 西川喬

    説明員西川喬君) 御承知のように、砒素は大体が鉱山のほうから出てくるのが一般の考え方でございまして、私どもの予備調査を、事前調査をいたしましたときに、あそこの工場から砒素が出るということを実は予測いたしておりませんでした。これはその推定が間違っておったわけでございますが、流水の中に出ましたものですから、これはどこかで砒素を出す工場があるに違いないということになりまして、正直なところ申しますと、あわてまして、ただいま砒素の調査を追加して排水口について調査している段階でございます。
  56. 小野明

    小野明君 追加調査をきめたのはずいぶん早かったと思いますが、調査をしたのではないですか。その結果はどうなっていますか。
  57. 西川喬

    説明員西川喬君) 現在調査中でございます。まだ調査はいたしておりません。
  58. 小野明

    小野明君 結果はいつごろわかるか。
  59. 西川喬

    説明員西川喬君) ことしの補足調査といたしまして、六月、七月、八月と三カ月にわたって調査をする予定にいたしております。三カ月間やりまして、それの平均としてのデータをつかみたい、このように考えております。
  60. 小野明

    小野明君 これだけ汚染しておるのだが、いまの局長の答弁を聞きますと、洞海湾の浄化対策というのは、水質基準だけをきめればそれで終わりと、こういうふうにしか受け取れぬが、一体これは浄化対策をどうするのか。
  61. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) もちろんこれは水質基準設定する、あるいはそれによって排水口規制だけでこの洞海湾汚染が防げるわけではございません。微量重金属につきましては、排水口規制で大半の目的を達成できると思いますが、しかし、そのほか、かなり汚濁が進んでおりますので、これは流水状況を改善するとかあるいはしゅんせつとか、いろいろこの対策は必要かと思います。この点も現地で十分現地部会を開きまして、そこで十分状況を把握しまして、関係省との間で個々環境基準を守るような総合的な施策を進めていく必要があると考えております。またそうした方向で努力してまいりたいというように思います。
  62. 小野明

    小野明君 気楽な答弁でまことに不満です。水質基準だけをきめてもできぬことは、浄化対策にならぬことはあなたもおわかりだろうと思う。これを取り巻く関係省としては、建設、通産、厚生、経企云々の大体これだけの省があるように思います。これだけがばらばらにやられておるから、これだけをがっちりした連絡会議、統合的な組織をもって水質基準をきめると同時に、運河方式あるいはグリーンベルト等、当面長期のこの二つにわたって、この浄化対策を早急に進めてもらいたいと思うが、あなたの答弁ではそういう内容が少しもうかがえぬが、一体どう考えるか、簡単に答えてもらいたい。
  63. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) 洞海湾につきましても、先般閣議決定いたしました環境基準に対して、これを当てはめをしてまいる必要があると思います。その過程におきましては、どういう対策を講じたらこの環境基準が守れるか、これはかなり具体的にその内容を詰めることにしております。この詰めにあたりましては、先生御指摘のように、関係省との間で十分協議いたしまして、実効性のある裏付けをもってこの環境基準を守るという、こういう方策を立てております。したがいまして、この環境基準がもうすでに設定されましたが、この洞海湾をそこに当てはめる過程におきましては、そうした関係省との間の具体策を閣議決定の段階でその裏付けを持つことにしております。
  64. 小野明

    小野明君 洞海湾についてはいまの答弁はまことに不満。それが一番基礎になるデータというものが、あなたひた隠しにしまして、企業協力が得られないというようなことばかり言っているから、あいまいな、おそらくその場ごまかしの対策というふうにしか私は受け取れぬ。やはりしっかりしたデータ国民公表するという中で、監視する中で、いま申し上げたような対策をひとつ樹立をしてもらいたい。  次に、大牟田川についてお聞きをいたしたい。時間もありませんから、汚染状況をひとつ簡潔に説明をいただきたいと思います。
  65. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) 厚生省として知っております範囲のことをお答え申し上げます。  四十四年二月の福岡県の測定によりますと、大牟田川及び有明川のカドミウム汚染の源の一つでございます三井金属鉱業三池製煉所、この排水中のカドミウム濃度〇・二二ないし〇・七二というようなことになっておりまして、有明湾のノリの漁場の海水中の濃度は〇・〇一六PPMと、いずれも高い数値を示しております。ただその後、福岡鉱山監督局で同製煉所排水処理施設の強化工事が本年一月二十日に完了しましたので、その後の総合排水調査しましたところ、〇・〇五五PPM、有明湾の利水地点で〇・〇二PPM以下になったということを発表いたしております。これに関連しまして申し上げたいのは、今年の六月六日に県で発表しました大牟田川河口海域におけるノリ等に関する調査結果というのによりますと、ノリの中にカドミウム濃度が平均一・一六PPMでありまして、対象となっております各地のノリの汚染に比べまして、かなり高い数値を示しております。ただノリにつきましては、摂取量が少ないということで影響の面におきましては、必ずしもそう大きなものでないと思っておりますが、対象地区と比べて非常に高いということ、同時に県が発表しました川の河口の川水中の濃度が〇・〇二ないし〇・〇六ということでございまして、環境基準〇・〇一を相当上回っておるということから、私どもといたしまして、今後水質基準によりまして、工場から排出されるカドミウムの水質基準を早期に設定するということが必要じゃないか、かように考えております。
  66. 小野明

    小野明君 鉛もずいぶん出ておるように聞いておりますが、このカドミウムと同時に、水質基準設定というのはいつごろになりますか。
  67. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) 大牟田川につきましては、先般閣議決定いたしました環境基準のうち、ただいま問題になっておりますこうした人の健康に関する八項目につきまして、今月の二十六日に水質審議会を開いて、ここで基準設定の運びにいたしたいと、かように考えております。
  68. 小野明

    小野明君 これは経企庁ですね、ヘドロをどう捨てるかということがいま現地では議論になっておるようですね、御存じですか。大牟田川のヘドロをさらいまして……このヘドロの対策について。
  69. 橋本徳男

    説明員(橋本徳男君) ヘドロの問題につきましては、先生おっしゃいましたとおり、非常に問題がございます。それでさっそく御承知のように、これは県市それから監督局、通産局と寄りまして四者会談をつくりまして、ヘドロ対策問題を二月以来いろいろ検討してまいりまして、結局ヘドロしゅんせつというふうな結論に達しまして県がそれをやる、さしあたって県がやりますが、そのヘドロ自体を捨てる場所という点につきましては、これは企業サイドでその場所を提供するというふうなことで、三井開発が所有しておる土地をヘドロの捨て場所ということで提供したのでございますが、ヘドロのしゅんせつをいたしますと、川が一定期間濁るというふうなことで、漁民組合が現在問題にしております。それで基本的な観点からむしろヘドロを早急にさらう必要があるというふうなことで、特に市が中心になり、県も加わっていただきましていま漁民との折衝を続け、その話のつき次第どろさらいをするという、こういうふうな段階になっておる次第でございます。
  70. 小野明

    小野明君 水産庁長官お見えですから……いま大牟田水域のノリについては非常に漁民が大きな不安を持っていると思います。これの漁民の要求ですね、完全補償の方途を被害の状況とあわせて、ひとつ対策を説明いただきたい。
  71. 大和田啓気

    説明員大和田啓気君) 大牟田川の河口のノリにつきまして先ほど厚生省からお答えがございましたように、相当カドミウムを含んでおるということでございます。ただ厚生省で、人体に摂取してどの程度の影響があるかという一つの目安として、〇・三ミリグラム、一日成人の摂取量としてそういう基準がございますが、その基準に照らしますと、先ほど申し上げた一・二八PPMということでいきますと、大体一人一日八十枚ないし九十枚くらいノリを食べないと、この問題になる基準には達しないということでございます。私ども有明ノリというのは一種のブランドということではございませんけれども、相当名声を博しているノリでございますので、いますぐこのノリが非常に危険だといって消費者を不安にさらすということは、私は得策ではないというふうに考えております。また事実そういう事実もございません。しかし、今後の問題といたしまして、カドミウム汚染その他の汚染が進みますと、これは私ども放置できない問題になるわけでございますから、当面の対策としてカドミウム汚染が進まないように、これは関係省にも私のほうから十分御注意を申し上げ、また県当局も指導もいたしたい。ただ現在のカドミウムの含有量程度で有明ノリが危険だというふうに私どもは言わないほうが事実に即しておりますし、また、当地方の漁民のためでもあるというふうに考えておるわけであります。
  72. 小野明

    小野明君 非常に汚染度が五倍くらい、二・一五PPMというような高い数値を出している、これは問題になる企業というのはどこですか。
  73. 橋本徳男

    説明員(橋本徳男君) 三井の三池製煉所が中心だと思っております。ただしかし、それ以外にもメッキ工場もあるので、これは県のほうでその実態調査してもらっておるということで、われわれとしましては、三井金属製煉所に対しまして実は昨年二月、五月、十一月と調査をいたしまして、それで昨年の八月に設備の改善命令を出しまして、その設備の改善が本年の一月の末に完成いたしました。したがいまして、このノリは完成前からの養殖というふうなことでございますが、しかし、こういう問題になりましたので、もう一度製煉所に対しまして、さらに今度は水を流さないように循環使用をさせようというふうなことですでに改善指示をいたしまして、できるだけ循環使用が可能な段階までやらせてみようということで改善を現在やらせておる次第でございます。
  74. 小野明

    小野明君 最後の問題ですが、福岡市の那珂川、御笠川ですね、これも国の対象になる工場としては福岡製紙ということになっておるようで、あとは県のようですが、これの汚染実態というのはどういうものですか。
  75. 西川喬

    説明員西川喬君) 御笠川、那珂川につきましては、すでに水質基準設定が行なわれているわけでございますが、現在の状況といたしましては、やはり過去の状況よりも悪化が進んでおります。全般的に昭和三十年代の後半に比べますと非常に水質の悪化が進んでおります。現在水質基準が必ず完全に守られているかどうかという問題もデータによりましてあるようでございます。それでその辺のところにつきましても今後関係省あるいは関係県と十分打ち合わせいたしまして対策の徹底を期してまいりたいと、このように考えております。ただ微量重金属関係につきましては、シアンにつきましてわずかに痕跡を認められるところがございますが、一応検出限界以下でございます。クロームにつきまして一カ所検出限界をわずかに上回っておるようなところがございます。一般的に申しますと、やはりBODの汚濁がなかなか規定どおり、当初予定したようによくならないというような状況でございます。もう少しアフターケアの実態を解析いたしまして、今回環境基準設定されることになりますので、その環境基準の当てはめ行為を行ないますときに、今後の総合的な対策というものを検討してまいりたい、このように考えております。
  76. 小野明

    小野明君 このCODあるいはSS、セノール、シアン等を見ますと、中洞海よりも高い汚染ですね、この数値を見ますと。それで総合的な対策といっても内容がよくわからぬ。どう指導するのか、はっきりしたひとつ方針を簡単に説明をしてもらいたい。
  77. 西川喬

    説明員西川喬君) この御笠川、那珂川はともに福岡の市内河川でございまして、その汚濁の濃度の大半が家庭下水のほうにウエートが移ってきておるわけでございます。この家庭下水を処理しますためにはどうしても下水道の促進以外には手段がないわけでございます。今後環境基準設定の当てはめ行為をいたしますときに、下水道をどのような年次計画をもちまして計画的に推進するか、そういうことをはっきり決定いたしたい、このように考えております。
  78. 小野明

    小野明君 以上で私の質問を、午前の分を終わるわけですが、結局経済企画庁のあなたが数字を言わないでひた隠しに隠して企業となれ合いの公害防止対策ということしか明らかにならない。これでは私は公害防止対策は進まぬ。特に水質を、水を持っておる経済企画庁がそういう姿勢ではもう問題にならぬと思う。次官、これはそういった姿勢について自民党の中にもいろいろ意見があるようですけれども、ひとつきっちり企業規制する、ありとあらゆる数値国民の前に明らかにする、こういう姿勢を十分確立してもらいたいと思います。最後に要望したいと思います。
  79. 山口シヅエ

    説明員山口シヅエ君) 非常に貴重な御意見でございますので、よく御要望を実現するように努力をいたしたいと存じております。まことにありがとうございました。
  80. 占部秀男

    委員長占部秀男君) この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は御多忙中にもかかわりませず、本特別委員会に御出席くださいましてまことにありがとうございます。  ただいまからそれぞれの立場の各位に若干その実情をお伺いしまして調査の参考に資したいと存じておりますので、よろしく御意見を御発表いただきたいと思います。  それでは質疑を続行いたします。
  81. 森中守義

    森中守義君 各参考人の方々にはたいへん御多忙の中をおいでいただきましてありがとうございます。  そこで私はお尋ねに入ります前に、ちょっと理事会の内容をお聞きしたい。と申しますのは、私が出席を求めておりました公害事業団の原理事長、それからチッソの江頭社長、この御両者がどういうことで出席できないのか。つまり、けさずいぶん早い時間でしたからね、事業団のちょっと名前を失念しましたが、担当の人から質問の内容はどういうものだろうか。つまり、その前提になるのは、理事長が出席をするという前提で私にお尋ねになった。それがどういうことで出席できないのか。少なくとも事業団というものは公の機関であります。国会出席の義務がある。これが出てこないというのはどういうことか。それからチッソの江頭社長が出ないというのはまことに私は遺憾だと思う。衆議院においては拒まれたということのようですが、きょう、実は千種さんおいでになっておりますけれども、処理委員会の内容としては、原因の追及等が全く行なわれていない。ところが、十七年という長い間人を殺し、人をあやめ、人を傷つける、その当の本人が正確に、私は明らかに過失がある、まあいわば当事者ですよ。ですから、あなたにいろいろ聞くよりも、過失の問題になると、経営の主体であるチッソの責任者が国会に出てこないという法はない。まあこれは私は行政当局においては別でしょうけれども、いやしくも国会においては参考人ということで呼ぶこと自体がおかしいと思う、本来は。しかし、一歩譲って証人喚問という形をとらないで、世間に対する日本チッソのもろもろの疑惑を国会を通じて解明をするために、みずから進んで出てこられるのが至当だと思う。のみならず、熊本の地方裁判所で係争が続けられている問題ですが、明らかに過失を否認しておる。一体過失なのか無過失なのか。しかも、江頭書簡というものが先般出て、政府の決定に従うということを患者に渡している。そういうように、書簡に従うと言っておきながら、訴訟段階になれば過失を認めない。こういう、実は非常に重大な問題がある。ですから、これは処理委員会の会長にいろいろお尋ねすることはもちろんですが、当然江頭社長が国会出席をして、その立場より国民に釈明をする。これは、私は現代における産業社会の責任者のとるべき態度だと、こう思う。それを、何がゆえに委員長理事打ち合わせ会議で、本来なら進んで、これは参考人じゃないよ、証人として国会は喚問をすべきだ。これくらいの強い姿勢を委員長理事会はとられてしかるべきじゃないか。なぜそういうことがとられなかったのか。いわんや外国に出張かなんかしているというなら別ですが、たしか東京におられるようですね。どうして国会に出てこないのか。この辺のことをひとつ委員長から少し釈明を求めたい。
  82. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 念のため、ただいまの森中委員の質問に対してお答えいたしますが、きょう、理事会で申請された各参考人の方々を招致するために努力をいたしました。原理事長は兵庫県赤穂市に仕事で出張中でありまして、きょうは来られない。それから江頭氏についても、いろいろの連絡をいたしましたが、どうしてもきょうは都合がつかない、こういうことでありました。  なお、あなたがおいでになる前に一応委員の方々には申し上げておきましたが、来月の九日に委員会を開くということにしましたから、あらためてまた理事会でこの点もひとつ努力をしたいと、かように考えております。
  83. 森中守義

    森中守義君 前者についてはよくわかりました。そこで、来月の九日の問題ですが、これは私は参考人であろうと証人であろうとかまいませんけれども、要するに水俣の江頭社長が出てこないという法はない。出ないというならば喚問の形をとってもらいたい。いかなることがあっても、参議院においては江頭氏の出席を拒むということは、国民の名において許されない。これはひとつ委員長理事会でとくと審議の上、そういう決定をしていただいて、来月の九日にはいかなることがあっても江頭社長を呼んでもらいたい。これは強い私の意見として申し述べて、少しお尋ねに入りたいと思います。  それと、あとで厚生大臣が見えるそうですから、多少質問の内容が重複するかもわかりませんけれども、まず、戒能参考人お尋ねしたい。  二十八年に事件が発生をしております。それより大体星霜幾十年と言いますが、まさに十七年の歳月が流れている。この間に奪われた生命、新しく生まれた胎児性の子供。私も数回現場を見ました。八ミリも三十二、三年の段階国会に私は持ち込んだことがある。泥土も持ってきたことがあります。非常に悲惨な状態である。   〔委員長退席、理事小野明君着席〕 こういうまさに近代社会にあってはならないような悲惨なできごとがある。こういう事件でありながら、十六年ないしは十七年というあまりにも長過ぎる、どうしてこういう長過ぎた時期を——どもは、ただ単に長過ぎたということでは済まされないような気持ちで私は一ぱいなんです。そこで、長過ぎたには長過ぎた理由があろうと思う。むろんこれはほとんどの患者という患者が零細な漁民である、あるいは治療に通うバス代にも困るという、ほんとうにボーダーライン以下の人だったわけです。これに対して日本チッソといえばまさに近代の技術を誇る、生産を誇る、あるいはその財力を誇る、太刀打ちのできないような相手だったと思うんですね。この辺に、言ってしまえば産業社会と一般社会の力のバランスが完全にない、そのためにたとえば熊大を中心にした問題究明のためのいろんな進め方にしてもあるいは市民運動にしても、あるいは政府やり方にしても、かなり巨大な力を誇るチッソの有形無形の手が動いている、こういう見方を私はしておるのであります。ことに局限された水俣という地域におきましては、先生も御存じでございましょうが、チッソの町といわれ、極端な例をとれば、ある市長が立候補する、対立候補が出る、どちらがチッソに顔を向けておるか、どちらがチッソに背を向けておるか、つまりそのことによってチッソの軍配が変わってくる。つまりチッソの影響下になければ、極端な例を言えば選挙に当選もできない。その力を得て当選をした市長は、当然ある種のリモートコントロール、リモコンがついている。言いかえれば、局限された地域における政治支配が行なわれる、あるいはチッソの関連産業がいろいろある、そういうことで経済支配が非常に強い、こういうところに長過ぎた十七年というものを私はもう一回見詰め直してみる必要があろうかと思うのであります。そういうのが今日の各地に頻発をする、多発をする公害問題をこじらす最大の要因ではないか、こういうところに産業社会と一般社会、これと政治、経済の結びつきというものをこの際私どもは解明をしなければ、幾ら小手先の技術論、小手先の公害解消論を唱えても、あまり実効があがらないという気がしてしかたがない。したがって、戒能参考人のこの辺に対する御所見を最初お尋ねしておきたいと思います。
  84. 戒能通孝

    参考人(戒能通孝君) 水俣病が有機水銀中毒であるということは、現在でははっきりしております。しかし、有機水銀中毒であることがわかるまでに、病人が多発いたしましてから最低七、八年かかっているわけでございます。この七、八年もかかっているという理由の一つは、これはチッソが自分の工場を開放してくれなかったということにあったと言っていいと思うのでございます。汚水の排水源にもし熊大の先生方を近づけているならば、何が入っているだろうかということがわれわれに早くわかったんじゃないかと思っております。これはいまの仮定でございますから、はたしてどうなるかわかりませんけれども、しかし、もし当時昭和三十年前後におきまして、できるだけこの工場を開放し、熊大の先生方を自由に工場を案内していてくれたならば、これは有機水銀が相当多量に出ているということはわかったんじゃないかと思うのでございます。チッソのほうでは、無機水銀を使っていた、それが有機に変わった、私たちは知らなかったという主張がございますけれども、しかし、チッソ自身が研究者を近づけなかったという事実があるということだけは否定できないと思うのでございます。  それからもう一つは、推測の学説というのが相当大量にございました。たとえばアミン説、これは現在東京工業大学の教授である北浦教授が主張されましたけれども、こういうものがだいぶ解明に対しまして時間的な阻害を与えたというふうに感じているわけでございます。さらに爆薬のせいだというふうな議論もございました。これもやはり爆薬のせいでないということを証明しなければならないという結果といたしまして、相当解明のために時間が阻害されたと思うのでございます。特にひどかったのは、無機水銀を使っている、だから有機水銀中毒という現象は起こらないという主張でございます。無機水銀から有機に変わるというふうなこと、これは工場の廃液を自由に採取することが認められておれば、もっと早くわかっていたはずだ、少なくともそういう仮定は成り立つというふうに私は考えているわけでございます。したがって、その点におきましてはチッソの責任というのは非常に重要であるというふうに感じているわけでございます。  さらにまた、熊大の研究過程におきまして、研究費が提供されなかった。ああいう難病でございますから、文部省その他はできるだけ研究費を出すべきではなかったんだろうかと思います。私は直接知りませんけれども、宇井純という方の書かれました「公害の政治学」という書物によりますと、熊大では若干医学博士の乱造をやった、学位論文の審査で一万円の審査料をとっておりますが、一万円とったやつを研究費に充ててしまったことまで書いているわけでございます。こういう窮状に大学を追い込んで、そして研究が進まなかったというのは、私はやはり文部省の責任ではなかったろうか、あるいは学術会議などがそれに対しまして協力すべきにもかかわらず、協力しなかった責任ではなかったろうかというふうな印象を持つわけです。ともかく有機水銀中毒という現象が非常に後になって発見されたということは、これはいろんな企業ないし国の責任の問題を無視して解決するわけにいかない、理解するわけにいかないと思うわけでございます。ああいう現象があったら、できるだけ即時に研究体制を整えて、そしてできるだけ自由な研究方法を提供すべきではなかったろうかという印象はいまでも私は持っておるわけでございます。病人は非常に悲惨でございますが、ああいう病人というふうなものが多発することを何とか防ぐ、一人でも防ぐというのが当然ではなかったかと思っているわけでございます。
  85. 森中守義

    森中守義君 いま一つ次のお尋ねでございますが、四十三年の九月六日の政府見解ですね、これによれば、明らかに企業側に責任がある。こういう趣旨の認定が行なわれた。そこで、この種の認定ということは、単なる認定にとどまるものであるのか、少なくともその後の行政裁量を見ておりますと、たとえば、企業に対する拘束をしていない、あるいは被害者に対する手の施しをしていない、ただ認定をしたと、これですべてが終わっているのです。この辺が一体民法上の問題であるのか、関係省の関係において一連の問題として単に認定でとどまるべきであると。しかし、私の常識的な判断でいくならば、認定がおり、つまりその段階において加害者、被害者というこういう因果関係というものは非常に明瞭になったと思う、であるとするならば、当然加害者、被害者というそういう関係において行政措置がとらるべきであるということが私は当然だと、こう思うのですが、そういうことが今回は全然とられていない。認定のやりっぱなし、やりっぱなしであったことが、つまりいろんな経路をたどって処理委員会へと発展し、しかも処理委員会というものが患者会を分断した、しかも結果において、まさか人の命を単価によってはじき出すことは困難でございましょうけれども、おそらくだれしもが得心のでき得ないような、まさに不当なもので終息をさせようとした。この辺に私は、政府は認定をしたと、そこまではよかったにしても、むろん時期的にはおそいと思いますよ、ですけれども、単に認定にとどまっていいものかどうか。これは将来、たとえば四日市であろうと、あるいは福岡であろうと、将来予見をされるこの種問題について、一つ一つのケースについて認定が行なわれる、認定はただ認定にとどまる、あと行政的な拘束力を持たない。こういうことになると、非常に問題が重要だと思う。ですから、その辺のことを、つまり法律的な立場から、専門家のお立場からどういうふうにお考えになりましょうか。
  86. 戒能通孝

    参考人(戒能通孝君) 相当やっかいな問題でございますが、もし認定というものがなかった状態で被害者が訴訟を起こしたらどうなるか、昭和三十四年くらいの状態で被害者が訴訟を起こしたらどうなるか、被害者はおそらく因果関係の立証はできなかったと思います。できるにしても、非常に貧弱だったと思うのです。だから三十四年の段階で訴訟を起こしたら、これは被害者はおそらく負けただろうと思います。政府の認定があった結果、現在訴訟を起こしておりますが、現在の段階では因果関係についてはおそらく被害者側は非常に容易に立証ができる、もし被告側が納得しなければ厚生大臣を証人に呼べばいいのではないか。まさか厚生大臣も、当時の厚生大臣が全然無資料で認定したということはあり得ないので、厚生省の全機能をあげて調査した結果、ある結論に到達したわけでございますから、その報告は必ず裁判所でも行なわれただろうと思います。したがって、現在の段階では、因果関係の証明というのは非常にやさしくなった。もっとはっきり申しますと、加害者及び加害の事実を知ったときという民法の規定がほぼこの場合には当てはまることになるのではないかと思うのでございます。ただしかし、それからさらに認定した政府が、加害者であるところのチッソ株式会社に何かをしろということを命ずることができるだろうか、これになりますと、現行法のもとでは確かにございません。民法上の損害賠償義務を履行せよということを政府が命令いたしましても、チッソ株式会社はそれを拒否する権利がございます。これは裁判所の判決ではございませんので、勧告があっても聞かなくても済むということになるわけでございます。そこで、政府がやったことは、結局千種さんの委員会によって処理をしたという形になったんじゃないかと思うのでございます。で、私としてはもう一歩進んでもよかったのではないだろうか。政府はもし被害者が訴訟を起こすならば、訴訟資金を援助する、そのための経費は援助するというふうなことはやってもよかったのではないだろうか。また、被害者に対して判決が出るまでの一つの暫定措置として、もし賠償額として適当な金額があるとすれば、それを貸し付けるようなことをしてもよかったのではなかろうか。特に病人の治療の件でございます。治療及び看護の件でございます。これについては、被害者の家族に相当金額を貸し付けて訴訟で勝訴判決を得たならば、それから返してもらうというふうな手続をとってもよかったのではないだろうか。認定よりも、むしろ進んだ態度をとってもよかったのではないだろうかという印象は持つわけでございます。現在政府がやっていることは何かといいますというと、裁判所が訴訟費用を免除するという手続だけでございまして、それ以外のことは何もしていないというところに、私どもも法律家としてきわめて不満を持っているわけでございます。もう少し親切な行動をとってもいいのではないだろうかというふうな印象を持っているわけでございます。  それから、さらにまた千種さんの委員会の経費でございますが、これも政府は負担しなかった。昨年度に予算がないからというので水俣市に負担さした。そしてそれを何かあとで交付金で返したというふうな手続をとっていたそうでございます。これは私は真偽をよく存じませんが、とにかく水俣市に処理委員会の経費を負担さしたというふうなことは、私ちょっとひど過ぎるのじゃないかという感じがいたします。もし処理委員会の経費ということになってくれば、もし私が大臣だったら、おれのふところから出すよというふうなことを、おれが貸すよというふうなことをやってもよかったのじゃないか。そうでないと、やはり中立性がくずれてくるのじゃないか。水俣市は御存じのとおり、過去十何年かにわたってチッソの工場長であると同時に、有機水銀を流した化学処理、それをなさる方が長いこと市長をしておられ、そしてその方の影響力というものがまだ残っている状態でございますから、何だかもう初めからチッソ側の立場でむしろ委員会ができたというような印象を与えるので、これは委員会の中立性という点から申しましてもはなはだまずいことだというふうに感じているわけでございます。千種さんのほうなんかはそれを御存じなかったかもしれませんけれども、私ならそういう委員会というふうなものはちょっと承諾はできないのではないかと思っております。
  87. 森中守義

    森中守義君 いまの御所見からまいりますと、確かに現行法の民法上拘束できない——まあかりに何かしても企業が拒否できる。ところが、これはやはり将来の問題としまして、さっき申し上げましたように、同じことが再び繰り返される可能性がある。しかし、やはり認定は認定でよろしい、まあ、あとどういうように裁量するのか、当事者間の話し合いだというふうになるとすれば、何としても私はこれは整理つかないような気がする。ですから、いまこの段階において、政府責任ある認定を加えたならば、それによってそれぞれ拘束し得るような民法の改正あるいは公害に関する特定法の制定、こういうものが公害を撲滅するという前向きの姿勢で考えていくならば必要とお思いでございましょうか。どうでしょうか。
  88. 戒能通孝

    参考人(戒能通孝君) 私としては、先回公害処理法案が国会に出され、そのときに、その点の規定が全然ないような公害処理法案というようなものは全然意味がないのじゃないか。現に公害防止事業団というふうなものがございます。公害防止事業団が企業全体からあるお金を受け取りまして、そしてそれを支払うというふうな制度が認められるなら、公害認定という手続があったら、少なくとも何かの支払いが行なわれるというふうな制度を持たなかったらきわめて不完全じゃないだろうか。特に水俣病をとってみましても、昭和三十三、四年ころでございますと、私は、チッソから出たものだというふうに考えられたと思いますが、しかし、チッソから出た何であるかというようなことを具体的に証明することはむずかしかった——チッソのほうは知っていたかもしれませんけれども。しかし、被害者のほうからそれを証明することはきわめて困難であった。だがしかし、ほかに原因が考えられないとすれば、大体チッソから出たのじゃないか。アミン説などございましたけれども、しかしアミン説だけでは説明がつかない。それから、さらにまた爆薬説もございましたけれども、爆薬説では説明がつかない。何らかの企業廃棄物であるということが言えるなら、少なくとも企業責任があるということは言えたろうと思うのでございますから、したがって、その段階で、当時の金額で被害者側は、死者一人について三百万円要求していたわけでございます。その要求はそんなに過大なものだとは思いませんので、その要求の全額もしくは大部分というふうなものをどこかの手続で支払う道があったのじゃないか。これは法律がないからというよりも何よりも、支払うために努力しなかったから払わなかったのだ。法律というようなものは、特に行政法規になりますといろいろな解釈が行なわれておりまして、意思があればずいぶんいろいろなことができます。ところが、意思がなかったから払わなかったのだ。また、現在の段階でも、適切な救済を与える意思がないから必要な法規ができないのだというふうにどうも考えざるを得ないのじゃないか。意思があれば法律くらい幾らでもできるのじゃないか。事柄の性質から申しまして、国会に提案いたしましてもおそらく各党の方が、これぐらいのことはいいだろうとおっしゃるのじゃないかという、原案は幾らでも考えることはできるのじゃないかと思います。その原案を考えない、考えようとする意思がなかったところに問題があるのじゃないかと私は考えているわけでございます。
  89. 森中守義

    森中守義君 ちょっといまお触れになりましたことについて、政府関係に聞いておきたいと思います。山口さんのほかに、そのお隣はどこですか。
  90. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) 経済企画庁の生活局でございます。
  91. 森中守義

    森中守義君 その隣は……。
  92. 西川喬

    説明員西川喬君) 企画庁でございます。
  93. 森中守義

    森中守義君 その隣は……。
  94. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) 厚生省でございます。
  95. 森中守義

    森中守義君 厚生省……。これはいままでしばしば問題にしてきたのですがね。要するに、公害の一元的な問題がない。閣議で決定してはどうかということはよく言われますね。先年私が予算委員会でこういう問題を出したことがある。水俣市が、この問題が正式に表に出たあと現在まで、この病気のために費やしてきた金は約八千六百万、これを市議会はそのつど決議をして、いずれ問題の決着がついたならば、政府なりあるいは過失の責任者が、当然市のほうに返済をするであろう、まあ、いわば条件つきで市の議会が決議している、金を出しているのですよ。御承知のように、水俣市といえどもまあ従前は日本チッソで市の財政の約五〇%あるいは六〇%ぐらいの税収があった。まあ最近はだいぶ違う。そこで、水俣市の財政も非常に枯渇した、だからこの八千何百万を何とかしてもらわなければならぬということで、しばしばわれわれにも陳情がある。それを先年の予算委員会では、大蔵大臣の福田さんと当時の自治大臣の野田さんに、じゃこれはどうするのだと言ったところが、平衡交付金あるいは特交の中でこの分は見たいと思うと。しかしそれも、特交あるいは平交といっても、ある意味では政府裁量によるわけだから、出るかどうかわからぬ。けれども、そういう自治体の乏しい財源の中で、原因不明の問題を処理しなければならぬ、患者のめんどうを見なくちゃならぬということで自治体が八千数百万を出した。全然それを国がめんどう見ようとしない、ここにも国の責任があると思うんですね。それと、さっきお話しになった千種さんの問題ですが、確かにきょう私は聞きたいと思っていた。たしかお手当が二十数万だったそうですね。それに水俣に一回おいでになる旅費その他、各委員の皆さん方に一人当たり二百万だか百五十万だかの予算が要る。これを市に出せ、市や県が何とかしてくれと厚生省にいってきたのだから、頼む以上は経費はそっち持ちだということで、まるまる聞かなくちゃならぬぞ、こういう実はおっかぶせがあったように聞いておるのです。そういう二十数万円の手当が当を得ているかどうか私はよく知りません。知りませんが、要するに、国としてこういう財政の乏しい自治体に依存をする、まかせっ放しにする、あるいは出させる、処理機関の経費までもおっかぶせるということは、これは質問というよりも糾弾になりますが、まことにけしからぬという一語に尽きる。大体関係の向きにおいてはこういうことをどう考えておりますか。残念ながらきょうは、企画庁の政務次官に聞いてもしようがないかもしれないけれども、まことに遺憾千万。しかもきょう出てこいといっても一人も出てこない。あなたじゃ話にならぬでしょうがね。これはひとつ、いまそこにすわっている諸君に答えられるのなら答えてもらいたい。まことにけしからぬ。要するに、一体、いろいろなことを閣議できめた、各省で詰めていると言っているけれども、こういう財源措置についてはどうしようと思っているのですか。厚生省でもどこでもいいですよ。
  96. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) ただいまの点でございますが、処理委員会の経費につきましては、特に厚生大臣が中に入りまして、いろいろこの委員会という土俵をつくることに尽力しましたというような経緯もございまして、厚生省と水俣市が相談をいたしまして、委員会の事務の運営処理に要する経費につきましては水俣市と厚生省で負担する、かようなことになっているわけでございます。いわば訴訟の場合におきましては裁判所が全部やることでございまして、この運営費等はすでに国の予算に計上されているわけでございますが、今回はそういうような訴訟がないということで、さような取り扱いをしたわけでございます。  なお、いまの御質問にございました特別交付税でどうということでございますが、これは自治省の問題でございますから、具体的な数字を詳細には承知しておりませんが、先般衆議院のほうの産業公害特別委員会で説明ありましたところでは、大体千二百万円程度、四十五年度の特別交付税で見ている、こういう説明があったように聞いております。
  97. 森中守義

    森中守義君 あと全体的な答えがないな。それはそれでわかりましたがね。
  98. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) 具体的な問題につきましては、直接所掌しておりませんので正確な答弁ができかねますが、しかし、この公害問題に関連いたしまして、国あるいは地方公共団体のその責任及び費用の分担につきましては、ただいま先生の御指摘の点も含めましていろいろ問題があるかと思いますので、この点は関係省と十分今後研究し、問題の焦点を詰めて改善の努力をさしていただきたいというふうに思います。
  99. 森中守義

    森中守義君 ちょっと余談になりましたが、戒能参考人にもう一つお尋ねしたい。  さっきお触れになりました処理委員会の件ですが、これはいろいろいきさつがあったことは私も知っております。しかし、これを要約してみれば、何か筋書きがつくられている。たとえば患者は生活にあえぎ、患者自体が悲惨さに耐えかねて、認定があったから早く始末をつけようとする、こういう実は焦燥感があったことは事実だと思う。ですから、そういう弱点につけ込んだという表現が適当かどうかわかりませんが、多分にそういう感じがするのですね。あるいは会社も当事者間の解決をしようとしたり、それで市や県などが厚生省とぐるになったという感じがしてしようがないのですが、じゃ、とにかく持ってこい、そっちから頼んだようなかっこうをとれよ、こういうわけで頼み込まして、そこで恩を着せ回って、おそらくさっきお話にあった民法上の問題も当然計算に入っていたと思うのです。厚生省はそういうことは仕事じゃないよ、しかし頼まれたからにはしてやる、そういう一つの形態を相談づくでやりながら、頼んだからには文句は言うな、経費はそっちで持て、特にあれは、厚生省の前の公害部長の武藤君は、私にこんなことを言ったことがあるのですよ。これは厚生省のほんとうの仕事じゃないのです、頼まれたからしょうがない、しかし、各委員と相談をしてくれというには、きめたことには従わなければならぬぞということが最初からはっきりしておらなければ、引き受けてくれる人はおりません、こう言ったことがある。これは同僚の阿具根君と私の同席の席だったと思う。そのときに、不遜なことを言うな、君らの思うような参考人あるいは処理委員を選定しようとすれば、そういうことだろう。しかし、わが国における善意ある良識のある人はたくさんいる。そういうより広範な人にお願いするならば、手当は要らない、旅費も要らない、おれがやってやろうという、そういう実は学者にしてもあるいは弁護士にしても有識者がたくさんおられるのじゃないか、そういう人から選べばいいだろう。文句は言うな、きめたことには従えという、そういう人間を選ぼうとするから選べないのだ、こう私は言ったことがありますが、まあ結果において私はこれは当たっていると思う。そこで、こういう認定のあとの処理の方式というものが妥当とお思いでしょうか。ことに裁判に行っても、下級裁判所がある、中級、上級というふうにあります。したがって、ものの理非というものは一発勝負でどんぴしゃり一回で終わるということはなかなかあり得ないと思う。ですから今回の場合でも、千種会長がどういう姿勢であったかはここでいろいろ申し上げぬけれども、いろいろないきさつからして大体察しはつく。そして千種委員会が適当でないという——千種さんは適当であると思っているかもわからないが、世の中はそういうふうに思っておらない。非常にきびしい批判を加える。そこで千種委員会が適当でないという結論を出したならば、当然これは裁判でいう二審ですね、そういうところに持ち込んでいくとか、つまりこのお願い書、確認書の内容からいけば、主権在民の現在における国民の訴権を奪う、あるいは自由制限を加える、こういう状態です。訴権の剥奪はする、制限を加えるという状態で、処理委員会が開かれるならば、当然その救済の方法を考えておかなくちゃならない。その救済の方法は二審制じゃないか、こういうふうに私は、あの時点においても現在でも考えを変えておりませんが、一体今回の処理方式というものがきわめて当を得たものであったかどうか。あるいは将来の一つの展望として、こういう方式でいいかどうか。この点の御意見を伺っておきたい。なお、この点については千種さんのほうからも、今回の処理方式がオールであるのか。なお欠陥があったかどうか。当たられたあなたとしては、二審制をつくったほうがよかったとか、いやこれでいいんだというお考えかどうか、お伺いしたい。戒能参考人のあとにひとつお示しをいただきたい。
  100. 戒能通孝

    参考人(戒能通孝君) 処理委員会ができた当時でございますが、私は水俣の日吉さんという市会議員の方から、どんなことになるだろうかという意見を聞かれました。人選は一任する、結論はそれに従う、この二つの条件がついている。これは単に被害者のほうだけではなくて、チッソのそういう条件がついているというふうに聞きましたが、もしそういう条件がついておるならば、お金を払うチッソのほうは大体予算を知らしているのじゃないか。私の印象では一億から一億五千万円くらいの範囲じゃなかったかと思っておりました。大体一億から一億五千万円の範囲で解決してくれるようにというふうに厚生省にも頼み、それからそのことが前提になって人選を一任する。結論にも従うというふうな協定書に——覚え書きでございますが、それにチッソもサインしたのだろうというふうに私は申したことがございました。結果から見ますと、やはりそのとおりになっておりまして、総額一億六千万円でございますが、大体そのくらいのところでおさまっているようでございます。ともかく、ある会社が金を払うというときに、どんな条件でもいいから従うという、そういう白紙にはしなかろう。大体予算によって——その予算は厚生省を通してなり、あるいはどこを通してだか、これはわかりませんけれども、大体におきまして、この範囲でおさめてくれというようなことくらいは述べているのじゃないかというように考えたわけでございます。したがって、その金額が妥当であったか妥当でなかったかの問題は別といたしまして、ともかく処理委員会といっても実質的には分け方の委員会にすぎなかったのじゃないか。総額は大体きまっていたのじゃないか。その分け方の委員会にすぎなかったのじゃないか。少なくとも千種さんの委員会には、この辺の金額でという話は必ずあったのだろう。どんな金額でもいい、一人当たり一千万でも一千五百万でも、あるいは、なぶり殺しにしたのだから五千万でもいい、一億でもいいという話ではなかったのだろうかというふうに、これは推測しているわけでございます。したがって、私としては、何か結論が出た——処理委員会最初にあって、その結論に従わせるための手続が行なわれたにすぎないのじゃないか。まあ、これは私の推測でございますから、はっきり申し上げて私はそういう事実は存じません。したがって、単なる推測でございますけれども、私としてはそのような推測をしているということだけ申し上げる以外にございません。  したがって、今後もし処理委員会というふうな方式ができたとしても、加害者のほうで出す金を初めからきめちゃって、そしてこの範囲でおさめろ。あとどういうふうに分けるかは、あなたのかってだというふうな形の処理委員会がもしできるとすれば、これははなはだ困るのじゃないか。理屈はあとで何とでもつきます。加害者に過失がなかったという理屈も一応つくと思います。なぜならば、昭和三十年前後の状態から申しますというと、無機水銀が有機水銀に変わるというふうなことは、たぶん応用化学の教科書に書いてなかったと思います。それからまた、有機水銀がある工場から流れてくる。きわめて微量の有機水銀が魚なんかに蓄積される。したがって、その魚を食べると病気になるというふうなことも、たぶん応用化学なんかの教科書には書いてなかったろうと思います。したがって、教科書に書いてないからおれたちは知らなかったのだ。知らないのが当然だったというふうに考えれば、因果関係もないという理屈は出てくると思うのでございます。しかし、それならなぜ自分で実験し、自分で調査しなかったかということを私らもきわめて不満に思っております。  いままでチッソがあの水俣病を起こすまで、ほかの企業が水俣病的な病気を起こさなかったということは、人のいない環境で有機水銀を使ったとか、使った有機水銀の量がきわめて微量であったということでございまして、大量の水銀を使った場合にはそれ相応の検査をしていかなければいけなかったのじゃないか。工場廃液そのものを、安全の立場から申しますと、企業の安全という立場から申しますと、廃液ごとに調査していくのが、これが当然の義務じゃなかったろうかと思うのです。化学工業技師としての当然の義務ではなかったろうかというふうに感ずるわけでございます。チッソの前身である新日本窒素株式会社というのは、宇井君なんかも入りたかったそうでございまして、きわめて優秀な技術陣を持っている会社でございます。したがって、このきわめて優秀な技術陣が、もし、本気になってその廃液を調査していたならば、もっと早くこの事態を発見できたのじゃないか。ところが、日本の応用化学の優秀な技術者というのは、最近では違うようでございますが、少し前までは、公害的なものはぶった切るほうがよかったのだ。外国から青写真を買ってくる。この青写真から、これは要らない、これは要らないとみんな落としていく部分というものは大体公害除去に当たる部分だということまでいわれておりました。公害除去的な要素というものについてはほとんど無関心であった。その結果、あんな悲惨な現象が起こったのでございますから、少なくともこれは優秀な技術者としての、新規な化学的な方法の開発者としての技師という立場から申しますと、業務上の過失があったというふうなことを考えてもいいのじゃないか。かりに過失がないと仮定いたしましても、具体的な過失が証明できないと仮定いたしましても、排水口それ自身が土地工作物でございますから、土地工作物に瑕疵があったというふうなことも考えていいのじゃないかと私はいまでも思っているわけでございます。私としては、瑕疵の存否、過失の存否というふうなのが、これが本格的に検討されない処理委員会というのは、結局つかみ金になる。初めから予算があったかなかったかにかかわらず、結局においてつかみ金になる。つかみ金の委員会にすぎなかったというふうにしか思えないのであります。どっちにしてもつかみ金かもしれませんけれども、裁判にしても結局目の子算になると思うのですが、この目の子算的な要素というものがより多い委員会ができ上がったのじゃないだろうか。もし、それがよかったか悪かったかということになりますと、これは行政の問題でございますので、とやかく申せませんけれども、しかし、とにかくそういう委員会というものがあまり前例になると困るというふうに感じております。  それから、特に水俣の町は被害者に冷たい町でございます。お金が来そうになるというと、おれも水銀が飲みたいということを隣で言う。だからその点で萎縮してしまう。それから金が来たら幾ら貸してくれるかというようなことも言う人がいる。その点で被害者が萎縮してしまうという事実はあったように思います。
  101. 千種達夫

    参考人(千種達夫君) 先ほどからおっしゃいましたことはごもっともな点が多いと思います。ただ、まあ、あっせんを依頼したといいますのは、これは契約書の中にもありますように、決して無条件で依頼しているわけではございません。それは解決に至るまでの過程委員会現地の水俣の患者を十分調査して、当事者双方からよく事情を聞いて、また、双方の意見を調整しながら論議を尽くした上で、示す結論には従うからよろしくお願いするという旨の依頼書が出されておるのでありまして、こうして両者からの依頼に基づいて厚生大臣が処理委員委嘱されたのであります。しかし、私どもはその依頼を受けました当時には、これは単なるあっせんの依頼で、決してこれは仲裁を依頼されたものではない。したがって、このあっせんが気にいるならば和解してもよろしい。しかし、これが気にいらないならば裁判されてもいい、これは仲裁裁定だということになりますというと、訴権が奪われるような結果になりますけれども、そうでない限り、憲法に保障されておりますように、何人も裁判を受ける権利を奪われることはないということが規定されておりますから、裁判を受ける権利を奪うことはできないのであります。ですから、私どもがあっせんにあたりましても、決して当事者に無理じいしたことはありません。もし、これに従うならばということで両者の間をただあっせんしただけでありますし、そのあっせんの結果、患者側の代表者が水俣に帰りまして、患者に対しましても、よくそのことを話したところが、みんな一致して拍手をもってこれに賛成をしたということを聞いておるわけでありまして、決してこれを強要したということではございません。  先ほど委員会が会社から一億円ということで総ワクをきめられて、そのワク内で処理したのだというようなことをお考えになっておるようなことを戒能さんが言われたのですけれども、これは何かのお聞き違いでありまして、私どもはそんな依頼は絶対に受けたことはないということをここで明言いたします。その結果から申しましても、私どもが出しました案を申しますというと、死亡者に対する金額、それから生存者に対しましては年金を払いますし、そのほかに一時金も払いますし、いろいろな面で救済しておりますけれども、これから払います年金を、もしその生存者が余命年数生きたならば、それだけでも五億二千八百万円になります。なお、今回支払う一時金が一億七千七百六十九万円になります。これを合わせますというと、七億五百六十九万円になります。もし、いま訴訟派の人々がこの額で妥結するということになりますならば、おそらく十億円をこえるだろうと思う。そのような決して制約を受けてこのあっせんをしたものではないということだけを申し上げまして、また後に御質問がございましたならば申し上げたいと思います。
  102. 森中守義

    森中守義君 非常に問題が具体的になってきて、重要なことなんですが、さっき私が原則論的なお尋ねを申し上げた内容の一つをいま千種さんがお触れになりました。つまり、違憲の問題ですね。それで、たしか確認書からお願い書ということで表題は変わっているが、内容についてはみんな全く一緒なんですね。ところが、いま千種会長の話によれば、いや訴権に制限を加えたあるいは訴権を放棄させたものではない、これを不満として提訴しようとどうしようとそれは自由なんだ、こういうお話のようですが、その辺が私は厚生省と処理委員会の話がどうなっていたのか、いやしくもこの確認書を現地に出す前に私は見たことがある、けしからぬと、これは。つまり、その段階においてはこれは訴権を奪うのだ、あるいは制限を加えた、放棄させた、しかも一連の流れを全部私は知っておりますから、むしろそれは千種さんがそれは君の言うとおりだということは言えないでしょう。かりにそういうことがあったとしても、あったかどうか知りませんが、言えないでしょうが、よしんばお立場上、形式的にそういうお話があったにしても、その当初にさかのぼって内容を見れば、明らかにこの文言というのは、確認書からお願いに変わっておるけれども、これは確かに訴権の制限です、あるいは放棄ですよ。しかも、これは多少沿革的なことで恐縮ですが、水俣というのは、さっきお話しになったように、熊本県と鹿児島県の県境です。藩制時代においてもやはりあそこは薩摩と肥後の境です。したがって、藩境警備のために両藩がかなりしのぎを削っておる。言ってしまえば両藩の圧制のもとに水俣はおかれた。言うべからず、聞くべからず、この辺に私は県民意識というものがその地域独特のものとして潜在化しておるんじゃないか、こういう理解をしておるのです。そこへもってきてチッソが権力支配をする、あるいは経済支配をする。その中においてこういうものを、チッソよりももっと強いといわれる厚生省役人からさあどうだ、一任するなら一任するで文句を言うな、だれに頼もうとそれはまかせるか、文言としてこういうものを包括する以上、明らかに、あなたはいやそれは訴権の制限でも放棄でもないと、こう言われるのですけれども、片一方のほうではやはりそういう理解をせざるを得ないじゃないでしょうかね。ですから私は、当初厚生省委員委嘱した際にどういう会話があったのか、文言はこうなっておるが、委員としては憲法を侵すようなことはないですよというふうなお話があったのか、その辺のいきさつがよく私には理解できない、あなたの言われたとおりならば。これは新聞等でもよく言っておりますが、これは不満足だ、だれ一人あなた方が出されたものを忍びがたきことを忍びますと言った人はおりません。みんな不満を爆発させておる。しかもあの案を提示されたときの厚生省の状態はどうですか。各新聞も一斉にその状態をあばきたてた。何も秘密を極秘に付して、一般社会と隔絶をする、報道機関と隔絶してまでしなければならぬという理由がなかったと思う。そういう措置がとられておる。だから戒能参考人のお話ではございませんけれども、やはり推理をしたりあるいは邪推をしていけば、その裏にはどういうものがあったのか、何かはかり知れないような黒いものがあったような気がしてしようがない、そういうことを私は考えるのですが、要は、本論に返りますけれども、こういう表現、確認書からお願い書に変わったといっても、少なくともこういう処理をしようという場合に、文言の中に、ただことばとしていまあなたが言われるように、訴権の制限、放棄をさせていないのだと言われるならば、文言の中にそういうものを表現しておくのが適当じゃなかったかと思う。その点については両参考人どういうふうにお考えでございますか。将来の問題としてこういう本体の中に明らかにそれを表現しておく。そうでなければ、全部が弁護士さんでもないし、全部が法律の知識があるわけでもないでしょう。そういうことになれば、やはり確認書であろうと、お願い書であろうと、まかせるならまかせるから、不満な場合は訴権はあくまで留保する、こういった文言が表現されてしかるべきじゃないかと思うのですが、いかがでございますか。
  103. 千種達夫

    参考人(千種達夫君) この文書は、私も見せてもらいましたけれども、私どもの受け取りました感じは、厚生省側もそうでありますし、私どももこれによって仲裁裁定のようなものを承諾しておるものだというふうには受け取りませんでした。そしてまた、実際の場合におきましても、もしその一方が出しました案に対しましても、それには従うことはできませんということを申しましたならば、このあっせんというものは全然できるものではありません。何ら裁判のようにこちらの案を押しつける権利があるのではない。全く私どもは裁判と違いまして、当事者が従わなかったならば裁判するぞと言う権限が与えられておるわけではありませんので、当事者の信頼にのみ基づいてあっせんをしておるわけであります。当事者の信頼なくしてあっせんというものは絶対にできるものでないということは、私どもも長い間裁判官として和解をしておりましてよく知っておるわけであります。だから、この依頼書というものはその意味でなるべくそのいろいろ事情を尽くしてあっせんしてくれたならば、できるだけそれに協力するというその姿勢を出したものであるにすぎないと私どもは解釈しておりましたので、決してその案を双方に強制しようとはいたしませんでした。したがって、最後には患者側のほうの要求が出まして、その要求につきましていろいろと会社側のほうにのんでもらうように説得いたしまして、会社側がそれをのんで患者側の意見どおりにきまったというわけでありまして、決してそれを強制したものではない。将来におきましても、裁判のようにこれを強制する権限があるわけではありませんので、どちらかの一方でもこれに不信がありますならば、このあっせんというものは絶対に成り立ちません。相互の信頼の上にのみ立つものであるというふうに私どもは考えております。
  104. 森中守義

    森中守義君 ちょっとお伺いしますが、いま確かにお述べになりましたように、相互信頼ということは、これは私は最低の基調だと思うんですね。しかし、いまの御説からいきますと、あっせんというものがすべて一〇〇%でなければならぬ、こういうところに問題があると思う。おそらく社会通念あるいは過去のいろんな事案からしまして、あっせんが必ずしも一〇〇%であったということは全体の案件の中のわずかだと思うんですね。不調に終わる場合がある。しかし、不調に終わるということは信頼がないということではない。やはり個々の内容によって、承諾できるのかあるいは承諾できないかという、まあこの辺に私は調不調の判断があると思いますから、あっせんが不調に終わるということはすべてが信頼がないということではない。ですから、私はその点に少しやっぱりもののお考え方と私の考えは違うような気がするんですね。頼まれたからには一〇〇%だよ——しかし、これはやっぱり社会の通念に従うのが法曹界においても採用されてもいいんじゃないかというような気がするんですね。ですから、その点は私の主張が間違っておれば訂正もいたしますけれども、この場合におきましては当然憲法の保障条項がある。しかも、それはあなた方がこのお願い書をみずから原稿をつくり、みずから提示されたわけではないから、あなたにそのことを詰めるわけにはまいりませんけれども、要は、厚生省政府機関が媒介をしてこういう確認書、お願い書をつくった。原本をつくったんですよ。厚生省がつくったんですよ、原本を。私は見たんです、それを最初に。それを向こうに渡してやった。それをとった。もちろんとる段階に数回にわたる市関係者ですとかあるいは患者側の代表の接触があったようです。この辺でよかろう。つまり、まあおおむねのことはまかせます、文句は言いませんということを最初からおっかぶせている。そのこと自体が、この中につまり憲法の保障条項の表現がない。だから、ここでお尋ねしておるのは、将来に向かって明らかにこういう場合の解放条項、救済条項を設けておくのが当を得ているのか、あるいはこのとおりでいいかということを実はお尋ね申しているわけですが、非常にくどいようですけれども、もう一回御両所から憲法に関連をした問題としてお答え願っておきたい。
  105. 戒能通孝

    参考人(戒能通孝君) いまの問題でございますが、これには二つの問題があると思います。一つは、水俣の空気でございます。水俣という町は、これは先ほど申し上げたように、被害者に対しては非常に冷たい町でございます。で、被害者は漁民でございます。で、水俣市というところは漁民は非常な少数派でございます。大部分の水俣の方というのは、チッソの従業員もしくはチッソを相手にするところの商人でございまして、ほとんどが漁業とは関係ございません。その漁民だけが被害者でございますので、漁民に対する空気というのはわりあいに冷とうございます。でしたがって、あっせんがあるというふうなお話があれば、それに対して漁民の側から申しますとほとんど従わざるを得ない。現在訴訟を起こしている人たちにいたしましても、実はどうしようかとずいぶん迷った人が多うございます。で迷っているから、一体あっせんというのはどのくらいのことになるだろうかという質問が私のところに来たのだろうと思いますけれども、私としては私の推測を申したので、別に情報があって申したのではございません。したがって、私の推測だけを申したのでございまして、たぶんあっせんというのは、被害者に対して満足の結果にはならないだろうという説明をしたわけでございます。それが一つの動機になったかどうかわかりませんけれども、私としては、その当時水俣に行っておりませんので、具体的な動機になったかどうかわかりませんけれども、しかし、ともかくあっせんは受けないほうがいい、訴訟にしたほうがいいという人たちが相当大量に出た。これはよほど決心しなければできなかったことでございます。でそういう非常に重苦しい空気をはねのけて訴訟にまで踏み切ったということ自体が、それ自体が非常に大きな決心が必要だったものでございます。ほっておけばあっせんということになり、それからあっせんには従わなくちゃならないというその先入見といいますか、そうした一種の人間の考え方のなれというふうなものがある町でございますから、したがって、あっせんはほとんど訴訟ということを考えないことを前提にしてのあっせんを受けたという形になっているといっていいと思います。  それからもう一つは、最初の覚え書き、お願いの、この文章では、仲裁に対しては絶対に従いますという文句があったはずでございます。実はきょう公害の話というので、柳町かなんかの話でおしかりを受けるかと思って持ってまいっておりませんけれども、私がもらいました案には、たしか絶対に従いますという文字があったと思うのでございます。しかし、絶対に従うというのはちょっと乱暴じゃないかというので、これは現在訴訟を起こしている人たちも入りまして、そうしてお願い書の中から落としてもらったわけでございまして、したがって、千種さんのほうに渡ったお願いというのは、原案とは違ったものが行っているはずでございます。もし千種さんのほうで、どんな案が初めにできたのかということを御調査くだされば、訴権は放棄して、訴訟はしないという当然の前提になっていたということは御理解いただくことができたのだろうと思うのでございます。  それからもう一つでございますが、処理委員会の結果に対しましては、現地の人は別に満足しているわけでございません。したがって、今後数年たちますと、あるいは数年たたないうちに、お金はすぐなくなってしまいます。おそらくまた問題がぶり返してくる。あるいは昭和三十四年のときと同じじゃないかという話がまたぶり返してくるのではないだろうかという懸念を私は持つわけでございます。ただあっせんを頼んだ被害者の方々にもミスはございました。私は日吉さんを通してだったと思いますけれども、とにかく問題は法律問題なんだから、昭和三十四年の見舞い金契約書というのが、はたして有効か無効かというのが重要な問題なんだから、やはり弁護士を依頼して弁護士にこの問題を若干処理してもらうようにしたらいいだろう、法律論については弁護士に依頼したほうがいいんじゃないかというアドバイスはいたしました。しかし、被害者の方たちは、おれたちだけでやるのだ、人には頼まないのだ、自分たちだけでやるのだ、こういうことを前提にして処理委員会の中に入っていったわけでございます。したがって、法律問題は全然討議されていないはずでございます。また、討議する能力のあった人はいないと思うのでございます。したがって、昭和三十四年の見舞い金契約が有効か無効か、この辺のところについての論議、過失の有無、あるいはまた土地工作物の瑕疵の有無その他についての議論は全然行なわれていなかったのではなかろうかと思うのでございます。そういう意味におきまして、結果的には——少なくとも結果的には被害者の意見というものを十分聞いたとは言えないというものができ上がっていると思うのでございます。被害者の意見というのを聞いたというのは最後の段階に聞いたにすぎないのであって、その途中で被害者の意見をほんとうに聞いたかどうかとなると、私は聞いたとは言いにくいんじゃないかと思うのです。私どもかけ出しの弁護士でございますので、幾つも訴訟をしたことはございませんが、しかし、裁判をやって和解する、和解するという場合におきましては大体このくらいいくと負けそうだとか、勝ちそうだとかということがほぼわかるから和解するのでございまして、勝つか負けるか全然わからないところで和解の勧告がありましても、実はその和解というのは大体不成立になっているわけでございます。あの場合には私としては、もし厚生省が仲に入っておられたら、あんた方も弁護士を置いたほうがいいと、少なくとも法律家に相談したほうがいいというようなことを助言してくださってもよかったのではないかという気がいたしております。この辺のところが手続的にも弁護人のない裁判という形になってしまったんじゃないだろうかという印象は持っているわけであります。
  106. 小野明

    ○理事(小野明君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  107. 小野明

    ○理事(小野明君) 速記を起こして。
  108. 千種達夫

    参考人(千種達夫君) どうも、質問以外の問題が次々に出てきますので、何を申し上げていいかわかりませんが、先ほどの御質問の点につきましては、そういう確約書など将来のことですから、これは私が述べるべき筋合いのものじゃないと思いますけれども、何もそういう確約書なんかなくてもよろしいと思います。ただ、しかし、誠実にあっせんに応じるという姿勢がない限りは、何の権力も持たないあっせん委員会にはあっせんできませんから、そういう方はむしろ裁判所に行くべきであると思います。
  109. 森中守義

    森中守義君 これで時間切れになっておりますので、簡略にもう一言だけお尋ねいたしますが、せんだって熊本地裁における二回目か三回目かの弁論の際、訴訟側の弁護団の皆さんが今回のこの事件は毒物及び劇物取り締まり、これらに違反をする疑いがある、こういうことが弁論の際に問題が提起されたようです。そこで各条項どれをさされているかよくわかりませんが、おそらく私の認識からいくならば十六条の二及び十八条、先生方条項全部目を通しておるかどうかわかりませんが、非常に重大な問題が弁護団側から提起されておる、これについて戒能先生、もしこの問題について確かにそういう疑いがあるとかないとかいうそういうお考えがおありかどうか。それからいま一つは、大臣に一ぺんお伺いしたいと思っていましたが、江頭書簡によれば、政府の認定に従う。こういうところが、被告側つまり会社側の弁護人の第二回目の準備書面では、それは知らぬ。つまりは会社の、企業の過失は認めない、さっき御意見がありました可能性の問題、予見可能の問題については三十年段階では全くわからなかったのだ、こういうことを強調しながら、要するに過失はない、こういう無過失の論を展開した。ですから、いまになってみると、政府の認定を当初会社は認め、現状に至ってはこれを認めない。つまり政府意見書に対する対抗措置をとろうとしておる。非常に問題がここでまたむずかしい方向に発展をしていく可能性があると私は見ておる。この辺について、裁判の展望をここで求めるということはたいへん無理かと思いますが、この状態をどういうように判断をされるか、この二点についてお尋ね申し上げて、たいへん長時間恐縮でございましたが、私のお尋ねを終わりたいと思います。
  110. 千種達夫

    参考人(千種達夫君) ついでに、先ほど戒能さんのおっしゃいましたことにつきましてちょっと弁解をさせていただきたいと思いますが、私どもは患者側の意見を聞かなかったかのようにおっしゃいますが、代表者を通じて聞いただけではなくて、ただ代表者を通じて聞いただけでは不十分でありますので、水俣にも委員全部が数回参りましたが、患者一人一人に当たりまして、そしてその意見を聞きました、代表者だけから聞いたのでありまするならば、むしろ黙っておる人の声が聞こえないということを心配いたしまして、そして一人一人に当たりまして、来れない人についてはその代理者に来てもらいまして詳しく聞いたわけであります。なお、委員の中には行政官であった経歴の方もおられますし、お医者専門の方もおられますので、お医者専門の方は細川さんをはじめとしまして、そして熊本の医大の先生や、これはわれわれも会いましたが、そうした医学的な立場から十分検討されました。それからこの委員会というものは当事者のためにあっせんをするのでありまして、裁判所のように法律的な判断をするのが任務ではありません。法律的な判断をするならば、裁判所のように証人を喚問し、そして宣誓をさして、そして違反した者については処罰するだけの十分の権力を持ってしない限りは真実をつかめるものではないのです。先ほどからいろいろ申されました御意見がございまして、そういうことは私どもも聞いてはおります。しかし、その前提たる事実が事実としてあったかということを私どもは確かめない限りは、その声があるというだけで、それを真実なりということを断定することはできないのであります。だから法律的責任という点から申しますというと、因果関係がまず必要でありますが、これは厚生省意見発表もありますから、因果関係があるということはこれは認められると私は思うのです。しかし、過失の点ということになりますと、過失は一体いつの時点でやったか、三十一年に最も多数の五十二人の患者が出ておるのでありますが、このネコの実験やそのほかはその後のことでもあると思われますが、あまりそういう具体的なことに入りますと、何か意見を述べたようなことになってもいけませんので遠慮したいと思います。それから先ほど言われました工作物の設置保存の瑕疵という点ももちろん考えております。考えておるからこそ、述べた中には過失がなければ責任がないということは一つも書いてありません。因果関係があるということだけで直ちに損害賠償責任が現在の法律のところでは出ていないということを述べているだけであります。また、和解契約とかあるいは見舞い金契約とかいうことが言われております。昭和三十四年の十二月三十日の契約書が取りかわされておりますその中に、だれも知っておりますように、もし将来水俣病が会社の工場排水に起因することが決定した場合においても、新たに補償金の要求は一切行なわないものとするという条項があります。この条項をめぐりましていろいろ解釈論として分かれておりますが、それらの点につきましても私どもとしては十分調査したつもりでございます。ただ、われわれはそういう権力を与えられてない。しかも、現在裁判上争いになっておるものを委員会がこうであるというようなことを明言することははなはだ裁判に対して悪い影響を与えると思います。われわれは長い間裁判官をやっておりましたときに、現に裁判中の、行なわれておる事柄について世間でとやかく結論を出すというような事柄は遠慮すべきものであるということを考えておりますために、調べたけれども委員会意見というものは決定しなかったと、ただ、こういう問題があるということを発表するにとどめたのであります。また同時に、その補償額が少ないということをしばしば申されました。これは補償額が少ないという前提としては、会社側に完全なる責任があるということを前提としての御議論のように伺っております。しかし、会社側に完全な責任があるかどうかということが今日双方の間で争いになっておることでありまして、われわれは当事者から、その法律上の必要がないとしましても、少なくとも法律をやっておる者が加わっておる以上は、法律上のある程度の判断はしなければ損害賠償の補償の額というものはきまらないのでありまして、しかし、裁判でありますならば、これは会社側に責任があるかないかということだけできまってしまうのですが、しかし、この問題は、法律論だけで片づけることのできる問題ではないのです。あの水俣に参りましてもたくさんの患者をわれわれはまのあたりに見ておるのであります。これらの人々が幾ら金額をもらったところでその精神的な苦痛はいやされるものじゃありません。わずか四百万やそこらの金をもらって死亡者がそれで満足できるか、私は絶対にできるものじゃないと思っております。しかし、それにもかかわらず、やはり会社としましては、法律上の責任の有無について争いがあったとしても、ともかくも社会的、道義的な責任は少なくともそのチッソの排水と因果関係があるということがわかるならばそれを尽くすのが当然であるという考え方に立ちまして、私どもは法律上の責任の有無の問題も検討いたしまして、それも含めてはおります。けれども、さらに社会的、道義的責任を感じてもらうという意味で、これは裁判でできないことを私どもはあっせんしたのでありまして、裁判でやることになりますならば、これはやはり法律に従わざるを得ない。法律は国会でおつくりになるものでありますから、この国会のおつくりになった法律を無視して裁判官がほしいままに裁判をするということは許されない。法律が不備であるならばそれを直されるのは国会責任であります。その法律の範囲内において裁判官がいかにしてこれを時代に適応するように解釈しようかということについて非常に骨を折る。われわれがあっせんをいたしますならば、そういう法律論を避けても、また法律論を一応頭の中に入れておきましても、ある程度の額が出せるというところに、そこにあっせんの妙味あるいは裁判上ならば和解、和解で終わる事件のほうが多いのであります。今日のこの場合に、命の値段が高いの安いのということばかりが問題にされますけれども、患者側の要求は、すでにその死亡した人は契約によって一時金をもらって一応事済みになっておる。しかし、これもふやしてはもらいたい。けれども、それよりももっと困っておるのは、不具廃疾になっておる人々のことを考えてもらいたい。これらの人々は生きていかなければならぬ。死んだ人は生活費も要らない、医療費も要らない。働くことができないということはもちろんですけれども、しかし、現在生きている重症患者というものはこれから生きていかなければならない、働くこともできない、生活費も要るのだと、だからふやしてもらいたいという患者側の希望もありまして、年金というものを死ぬるまで払うことにしております。最高三十八万円。それから同時に、本来ならば水俣病で死ななければ弔慰金というものは法律上は取れないものであるかもしれませんけれども、しかし、すべての人に二百万円からそのほかの金を現在一時払うことにしております。あるいは葬式費用なども払うことにいたしまして、多い人は一人について二千万円以上になっております。こうして、死亡者の補償ももちろんしなければなりませんが、生存者の保護というものにもっと目をつけなければならぬ。これらが私どもが一番苦労して、どのように保護していくか。そして三年ごとにスライドする、そうしなければ物価の騰貴に応ずることができない、こういうふうに考えまして、先ほど申しましたように、生存者に対する年金だけでも五億二千八百万円も、さらにそれに対しましてスライドをしますというと、非常に大きな金額になっておるということを御了解願いたいと思います。
  111. 森中守義

    森中守義君 たいへんどうも、さっきもこれで終わると申しながら、恐縮ですが、あと一問だけひとつ御了承願いたい。  非常に私はその当初から疑問にしておりましたのは、いまお話しになりました——あとで大臣見えてからでもお尋ねしようと思ったのですが、いまのお話によりますと、あっせんの本旨というものは社会的、道義的、こういうものに基づいておる、したがって、過失とか無過失、そういう因果関係に基づいたものじゃないと、違いますか——、私はいまの御説明をそういうふうに聞いたのですが、そこで、私は、多少議論になりますが、江頭書簡によれば、こういっているのですが、「去る九月二十六日厚生省より水俣病は当社水俣工場排水に基因する公害病であるとの政府見解が発表されました 当社といたしましてはこの政府見解に従う所存でございます」、   〔理事小野明君退席、理事中津井真君着席〕 こういう言い方をしております。そこで、私は、処理委員会が一体どういう原則を踏まえて処理をなさったのか、それがいまでもどうしてもわからないのですよ。しかるにいま千種さんのほうから、社会的、道義的にそれを踏まえたというような御説明だったので、そうであるとするならば、会社みずからが認めて政府の見解に従うと、こういっておる、それならば過失を認めた上に立って当然この処理というものは行なわれるべきではなかったのか、それが全然表面に出ていない、この辺に処理委員会の性格あるいは議論の内容、処理方式の原則というのがわからない。まあそれをひとづかいつまんでもう一回お答えいただきたいのと、それから非常に極端な言い方をするならば、社会的、道義的ということであれば、要するに代価をはじき出す、失われた人命、将来なお病床に呻吟をするであろう社会の片隅になすこともなくかろうじて命を長らえていく人たちに対するその代価をはじき出したというのにすぎぬのじゃないか、こういう気がしてしようがないのですがね。その辺に私は処理委員会に非常に疑問を持つ。ですからもう一回、くどいようですけれども、一体どういう原則をもって、どういう方針のもとにこういう処理裁決をなさったのか、もう一回正確にお答えをいただきたい。
  112. 千種達夫

    参考人(千種達夫君) 法律的な責任関係を全然無視したのではないということは先ほども申し上げたとおりであります。ただ、法律的責任だけで判断したのではなくして、さらに道義的また社会的責任ということをも加えて両者を考えた上で案を出したということを先ほど申し上げておいたのであります。というのは、法律的責任だけではなかなか法律上は時代の要求に応じて直ちに進んでこない、そのギャップを埋めるのがやはり和解であり、あっせんである。法律上ではどうしてもできにくいものがありましても、道義的、社会的という問題で埋め合わせることがやはり必要な場合が起こってくる。だから私どもは両者の立場から考えて、ただに一方的な社会的、道義的な問題だけを考えたのではないということをお答えしておきます。   〔理事中津井真君退席、理事小野明君着席〕  それからもう一つ、会社が責任を認めたということは私は知りませんが、おそらく因果関係があるということについての責任を認めたという趣旨であろうと思います。会社側に過失があるということは終始私どものほうにも認めておったということはないのであります。  それから生存者、死亡者に対する代価というものにつきましても、やはり慰謝料的なものを十分とは言えませんかもしれませんがある程度考えた。しかし、裁判上最も大きな問題になるのは金額の点から申しますというと、その人がもし生きておったならば得たであろうにかかわらずその利益を得なかったことによる損害賠償が、特に若い者につきましては非常に多いことになりますので——老人につきましてはまた別でございますけれども、こういう点もやはりしんしゃくして年齢によって額を変えたということをお答えいたします。
  113. 小野明

    ○理事(小野明君) 戒能参考人、簡単にお願いいたします。
  114. 戒能通孝

    参考人(戒能通孝君) 先ほど御質問がございましたのでお答え申し上げます。  第一の点でございます。毒物劇物があるかという点は、私はまだ勉強しておりませんのでお答えできないのであります。  第二の点でございますが、因果関係があるかどうか。私としては、因果関係があるというふうに考えております。と同時に、因果関係があるということは、すでに昭和三十四年の見舞い金契約が和解契約であるという会社側の主張の中ですでに容認されているのではないだろうかと考えておるわけであります。昭和三十四年の和解契約というのは、これは内容的には無効だと思います。無効ならいかなる法律効果もないかというと、そうは申せません。少なくとも何らかの効果がある。責任があるということを承認したという点においての効果はあるというふうに考えておるわけであります。  それから先ほど千種さんのおっしゃいました点でございますが、処理委員会で患者一人一人について調査なさった。調査なさったかもしれませんけれども、あの患者というのはほんとうにものの言える患者かと私は疑問でございます。特にこの問題については三十四年の見舞い金契約がどうである、過失がどうであるというふうなことが問題になり得べき事件でございますので、これについて説明のできる人たちではなかったと思っているわけであります。  さらに生命の価格でございますが、生命の価格というのは、私も千種さんと同様に何億円払ってもそれ自体補償できないと思っているわけであります。しかし、幸か不幸か現在の社会では、一応金銭に直すという形をとっているわけでございます。で、したがって、豚一匹の値段で人間が処理される。牛一頭の値段で人間が処理されるということは私は反対でございます。やはり人間は人間並みの価格というものをとっていいのではないかというふうに私は感じているわけでございます。したがって、現段階で人間の価格というのをもし問題にするならば——価格というのははなはだまずいことばでございますが、もしそれを問題にするならば、三百万円を四百万円に上げたというふうな、何か団体交渉的な、賃上げ交渉的な、あるいはボーナス交渉的な上げ方というものは絶対によくない。三百万円でしかたがないものなら三百万円で決定すべきである。それを四百万円に上げたということ自体が、私は人間というものを値をつけて取引していたという態度になるのではないかと感じているわけでございます。
  115. 小野明

    ○理事(小野明君) 参考人の方々に申し上げますが、本日は貴重な御意見を開陳していただきまして、まことにありがとうございました。皆さま方の御意見を参考といたしまして、今後十分に検討をいたしたいと存じます。本日はどうもありがとうございました。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  116. 小野明

    ○理事(小野明君) それでは速記を起こして。
  117. 森中守義

    森中守義君 厚生大臣に時間がありませんから少しお尋ねいたします。最近、訴訟派という皆さんによって水俣病問題で訴訟が起こされている。弁論の経過などはよくお聞きになっていますか。おそらく非常に重要な問題だから、逐一報告を受けておられるのは当然だと思うのですが、経過、御存じですか。
  118. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 私は現在におきましては聞いておりません。
  119. 森中守義

    森中守義君 それではちょっと説明を要する点もありますが、前の厚生大臣園田さんの時代に出された認定と対抗するような状態になっている。それはどういうことかと言いますと、要するに、一般的な常識に従えば国の認定、昭和四十三年のころの。これからいくならば、明らかにチッソに過失がある。まあこういうことになるわけなんですね。したがって、認定が出た直後に、これはまあごらんになっているでしょうが、これを称して江頭書簡と言うべきかどうかわかりませんが、江頭豊さんが各患者あてにわび証文を出した。これはさっきも読み上げてみたのですが、「厚生省より水俣病は当社水俣工場排水に基因する公害病であるとの政府見解が発表されました 当社といたしましてはこの政府見解に従う所存でございます」、まあこういう内容のものであります。しかも「この際決意を新たにし今後再びこのような公害病をおこさぬよう努力いたす覚悟でございます」。わび状であり、誓約書ですね、これからこんなことは絶対にいたしません……。で、こういうものを公にしておきながら、裁判に至ったならば過失はないんだ、過失はない。しかもあとでも議論にもなりますが、おそらく工場で使っている各種の化学材料というものは病気を発生させるという可能性はあるけれども、事実問題として、そういう自分の会社がたれ流した廃液によって発病したとは思わない。つまりあずかり知らぬという、こういう趣旨の準備書面を実は出している。そうなればおそらく相当の機関を動員し、相当の学究者に委嘱されて判定された国の認定に対して、当社は従うと言いながら、態度を変えてあずかり知りませんよという、こういう裁判での論争に発展しているのです。この事実を知っておるかどうか。これは非常に重大な問題ですよ。むろん法廷は国会と同じように真実を追求し、言論を展開するところですから、原告であろうと被告であろうと、おのおのの意見の開陳はけっこうです。しかし、政府の認定がおりて、これに従うということを表明した。国に対してそのことを言っております。ところが、裁判ではそうじゃない。こういう場合に、当然道筋から言っても、当時ああいうように承知をしたのだが現在はそうではありませんよという、そういうチッソから意思の表明を大臣は受けたのかどうか。もし受けていないで訴訟でそういうことを言っているというならば、一体厚生大臣はどうするつもりですか。認定を出しながら最初それを認めておる。まだ認めないと、こういうようにチッソの態度が変わってきている。これは過失、無過失という態度に非常に問題があります。政府認定に対する対抗的な措置をとろうとしているところに問題がある。これを厚生大臣どういうふうにお考えになりますか。
  120. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 私は会社側に立って会社のために弁護するつもりは毛頭ございませんが、いま森中さんから仰せられた経緯につきましては、厚生省——この水俣病の疾患、不幸なできごとの原因は、その窒素会社の製品製造工程から発する水銀に原因をしてそれが魚類の体内に蓄積され、それを食べることによって患者が発生したのだという、その病気と原因との因果関係を、厚生省が当時のいろいろな迷いといいますか、抗弁を振り切ってそういう見解を下した。簡単に申しますと、因果関係厚生省の権威のもとにはっきりさせた。こういうことであると私は考えまして、そのことにつきましては、私はいまでも厚生省の見解を変えるつもりは全くございません。おそらく訴訟で争われておりますことにつきましては、会社側も厚生省のその認定をひっくり返そうということではなくて、これは厚生省が公の機関として認定したのだから、その認定は認めざるを得ないが、その水銀を流して病気を発生させるに至る過程において、会社側に過失なり故意なりそういうものがあったかなかったかということを論争の点にされておるのではないかと私は思います。
  121. 森中守義

    森中守義君 そうしますと、その認定というのは、そう簡単に変えられるものでもないし、チッソが何と言おうと厚生省の方針は変わらない。あくまでも因果関係においてはその原因及び責任はチッソにある。この方針は変わらないということですね。
  122. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) いや、もう特別化学の大転換でもありまして厚生省の認定をひっくり返すとか、学界とかそういう方面の反証でも別の面から出てくればともかくといたしまして、現在の調査に対してはそれをくつがえすような事実があらわれていないと私は考えるものでございますから、厚生省の昭和四十三年の原因認定はそのまま変えるつもりはございません。
  123. 森中守義

    森中守義君 わかりました。他の議員の持ち時間をいただいていますので、あまり時間がありませんからあと一、二問で終わりますが、先ほど千種さんからいろいろ御意見を聞きました。その中の一つに、例のお願い書ということにだいぶ議論を集中してみたのです。ところが、この千種さんの御所見からいけば、要するに、国民の固有の権利である訴権を制限したり、あるいは放棄をさせるということじゃないんだ、異議があれば当然異議を申し立てるべきであろうし、あるいは裁判に訴えてもしかるべきであろう、こういう意見が言われた。ところが、ここに問題なのは、厚生省が当時、確認書、若干変形さして、お願い、こういうように変わっているんですね。内容ほとんど変わっていない。しかるにこの内容の文言からいくならば、少なくとも、お願いします、よろしかろう、聞いてやろう、そのかわりに、一任をするからには文句を言うな、どういう人に委員委嘱しようと、その委員の皆さん方がどういう決定をしようと要するに服従するか、こういう絶対的に近いような文言でこれがきめられておる。そうなると、処理委員会は、いやそういう趣旨のもとにやったんじゃないと、こう言う。訴権は当然解放される、あるいは仲裁されるべきものである、こういう意見ですね。厚生省行政指導におけるこのお願い書というのはそういうふうになっていない。ですから私は、当初に委員委嘱されるときに、国民の固有の権利までもこのお願い書、確認書等によって否認をしてもよろしいという、いわば一種の強制的な進め方であったのではないかというように思うのです。これはいまなお疑問ですが、まずこれが第一点。それから第二点は、先ほど申し上げた訴訟の段階で、毒物及び劇薬等の取締法に違反をするということが指摘され始めた。そこでこの法律の所管、その運営は厚生省がやる。この内容はかなりきついものがあります。当然国民の生命を保全すべき法律ですからきつくなくちゃいかぬ。ところが、昭和二十八年から始まったこの事件、さらに死亡者はふえる。あまつさえ胎児性患者も累増する。こういう状態の中で、当然この種法律が発動されて、工場への立ち入り検査はもちろん、はたして毒薬、劇物等を扱っているのかどうか、しかもその扱い状態というものは適法であったかどうか、こういうことが行政措置として厚生省とってきたのかどうか。いま訴訟段階の議論からいくならば、残念ながらそういうものはない、こういうような経過をたどっているやに私は見るのです。そうなると、過失責任者がチッソとはいいながら、その一半の責任は国にもある。当然取り締まるべき法律がある。その法律を発動しないでほったらかしておいて、やれ患者が出た、死者が出たということで事が済むとはぼくは思わないんですよ。その辺の経緯をひとつ第二点としてお尋ねしておきます。
  124. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 今回の水俣事件の補償処理委員会が和解のあっせんをせられまして、そうして結論が出たわけでございますが、私は、昨年の処理委員会の三人の委員の方々にこの和解のあっせんをお願いするときの詳しい経緯は私は知りません。知りませんが、現在の厚生大臣といたしまして、ただいま森中さんがお述べになりました文書も、自分で調べたり読んだりいたしてみました。また、そのことにつきまして関係官にも意見を尋ねました結果、私の判断では、あのお願い書、確認書ということは、委員の人選については厚生大臣にしかるべき人物を頼む——私が聞いたところによりますと、地元にもしかるべき方々がおるはずではないか。知事もおられるし市長もおられるし、あるいは漁業組合長もおられるし、あるいは医療の関係者の方々もおられましょうから、そういう方面からしかるべき人を自主的に双方で出せないかというようなことも両当事者に申し述べたところが、現地においては全くそういう人はないので、ひとつ厚生大臣に公平な人をお願いすると、こういうたっての御要望が両当事者からございまして、もちろん一部の人々は訴訟に走ったわけでございますが、訴訟に走らない人々からそういうお願いがございまして、きょうの千種先生を含む三人の方々を厚生大臣から委嘱を申し上げました。ところが、これは、私は法律家ではございませんけれども、私の判断では、和解のあっせんをお願いしたわけでありますから、和解についての案がどのように進みましても、途中においても、あるいは和解の最終案というものが、三人の委員の方々が了知された段階においても両当事者が聞き入れなければ、せっかくの御尽力でございましたが、これに応ずるわけにいかないということを申し述べて、そしていま森中先生が仰せられました固有の裁判所に出訴する権利というものをそのまま持ち続けるということはどうであろうと私は思うものでございます。しかるに、いろいろの御批判はあるようでございますが、両当事者ともこの三人委員会の結論に、万事それでまいりたいと、こういうことで和解の契約書を今回結ばれたはずでございます。そうなりますと、まあ訴訟ができるかできないかということは今後の課題でございまして、これは法律的に非常に微妙な問題があると存じますが、私にはその辺はわかりませんが、お尋ねがございました範囲におきましては、第一点はただいまお答え申し上げたとおりでございます。  第二点の劇物、毒物取締法におきまして、チッソ株式会社の取り扱い水銀につきまして、適正な取り扱いが法に基づいてなされておったかどうかということに対する当時からのその厚生省行政管理あるいは厚生省意見を受けての都道府県、保健所等の行政管理のことにつきましては、これはもう私にはよくわかりません。しかし、幸いここにずっと前からこれらの問題については研究をいたしております公害部長がおりますので、これは薬務局長がおるとなおいいんですが、答弁をさせたいと思います。
  125. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) いまの毒物、劇物の関係の法規に違反するかどうかということでございますが、この点につきましては、関係の薬務局の見解では、結論的には違反ではないという見解をとっております。これはメチル水銀化合物の製造、輸入、販売を目的としているものではございませんから、メチル水銀化合物に関する毒物、劇物の営業者ではないということでございまして、結局第二十二条第五項の業務上の取り扱い者に該当するという見解でございます。本法におきまして準用されます十一条等のたとえば毒物、劇物の取り扱いの規定、こういうものは観念的には適用されるわけでございますが、メチル水銀化合物が水に溶けまして排出されるという状態は毒物ではないので、したがって、十一条の規制はその限りにおいて及ばないということになります。同様な理由から十五条の廃棄等の規制も及ばない、これが薬務局の見解でございまして、私どもの所管ではございませんが、かように了承いたしております。
  126. 森中守義

    森中守義君 これで終わりますので、少し質問の項目が多いのでよく整理してもらいたい。いまのその取締法違反でない、この問題は次の機会にやりましょう。私も違反しているという、そういう確証に近いものを持っているわけです。この次にそれをやりましょう。  そこで最終のお尋ねとして認定の問題であるが、何としても認定はあくまで急ぐべきであって、水俣事件のように十数年も放置すべきことは許されない、よってこの種類似事件の認定はまず急ぐこと、同時にまた恒常的な認定の方式を定着させる必要があると思うが、厚相の考えはどうでありましょうか。これが第一点。それから、ただ認定のやりっぱなしであとは何にもしない、これじゃ困る。ところが民法の解釈からいけば、現行法においてはそういう拘束力がない、加害者について拘束できない、こういう実は説明がありました。そこでこういう現行法を少し検討を加えられて、できるだけすみやかな機会に、国が認定を出したならば直ちに加害、被害という因果関係が出るわけですから、そういうものを行政的に拘束し得る法改正、もしくは国が単独立法、こういうことをお考えになるかどうか、これが第二点です。それと常々言ってきましたように、やはり公害のポジションが非常に多面多岐にわたり過ぎる、これはどうしても統一してもらわなくちゃ困る。同時に財政の問題、水俣の場合には約八千数百万円を市が立てかえて自治体が金を出しておるのですよ。いずれ加害者がはっきりしたならば国もしくは加害者が補てんをするであろうという、こういう期待のもとに市議会が決議している。がしかし、財政的に窮乏しています。公害が逐年多発の傾向にあるので、こういう原因不明であるとか調査を進めねばならぬという場合に特定の財源の用意をされるかどうか、これが第三点。それから水俣には潜在性というのかあるいは不顕性というのか、まだまだ水俣病の患者が相当数いるであろう、こういうことが今日ささやかれている。ついては当該の地域について一斉に検診を行ない積極的に患者の発見にこの際踏み切るかどうか。同時に水俣病患者の認定があまりにも厳格過ぎる、がしかし、それは一言で言うならば、企業側、会社側のサイドに立っておる、こういう実は批判が非常に強い。したがって、いま少し対外的に非常に精密に検査を加えた結果、要因が有機水銀にあるとするならばすみやかに基準の緩和を行ない、水俣病の認定をするかどうか、これが第四点。それから次の問題は、水俣に関係したことでなくて、全体的な問題ですが、公害の環境基準をつくれということが両院においてしばしば政府に要請されてまいりました。で、こういう基準を一体次の国会で出すという用意があるかどうか、これが次の問題。それから国の公害研究をやるような総合的な機関がない、厚生省には衛生何とかというのがありますね。あるいは科学技術庁がある。文部省にも学術研究所みたいなのがあるようですが、要するに、この際公害を勉強しようと思うならば日本に行け——まことにあまり好ましからぬことがいわれている。こういうことじゃ困りますから、権威ある国の公害研究機関をおつくりになるかどうか。もちろんこれは研究にとどまらず調査機関でもなければならぬ、この点についてどういうようにお考えになるのか。それとさっきの毒物関係の取締法の中には監視官が配置されていますね。こういうものを単なる特定の法律のもとにおける監視制度でなくて、公害全体に普遍性を持つ査察制度あるいは監視制度、こういう恒常的な機関の設置及び担当官の配置、こういったものはお考えにならないのか。たいへん時間がありませんので次の機会に譲ることにいたしまして、最後は幾つも複数質問になって恐縮ですが、それぞれお答えいただいて私の質問を終わりたいと思います。
  127. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) お答え申し上げます。  劇毒法の問題につきましては、私どものほうでもなお十分研究、勉強させまして、お答えを次の機会にさせていただきます。  それから公害と公害に基づく病気との関係の認定、これは私は早くやるほうがいいと存じます。ただ、これは私どもが政治的にいまのこういう環境のもとに早くやればいいということだけで済むものではございませんで、結局はやはりその環境の測定、それに関連するそこの住民の健康についての精密診査、それもただ一本の健康診査だけではなしに、何か複数診査のような方法をとらないと正確な結論が出ないということがございまして、結局科学技術といいますか、衛生といいますか、そういう方面の問題にも深いかかわりがございますので、私はここで大臣として、実はこういうことだけを言い切るわけにはまいりませんけれども、できる限りそのような諸問題をすみやかに取り上げまして、そして原因結果の認定を急ぐことは、私は大臣として自分の省にも大いに強く要求をしてまいりたいと思います。また認定をいたした場合には、認定のやりっぱなしということではなしに、その原因と結果——因果関係というものは同時に早くはっきりさせ、水俣病におきましても水俣病の徴候があらわれましたのは昭和三十年代であったと思いますが、厚生省が認定をいたしましたのは、十数年もあと、こういうことでございますが、私はそれはもっと早くやって、そしてそれらに対する措置、方向をきめるべきだと考えます。ただ、因果関係の認定をいたしましても、お尋ねの中にもございましたが、その公害発生個所と病気との関連において故意があるか、過失があるかということは、これはなかなか簡単に認定できる問題ではないと私は考えますので、それはそれといたしまして、ともかく原因、結果だけは早く認定する。なお、森中さんもあるいはお気づきかと存じますが、私はこのごろ原因、結果——因果関係がはっきりした以上は、今日の高密度の社会といいますか、今日のような企業、また人間の集中等が起こっておる事態のもとにおいては昔の故意、過失だけの法理をどこまで貫けるか、もっと新しい時代に適する法律というものを考えるべき時期に来ているんじゃないか、また、プレスの皆さま方はそれを承知で無過失責任の原理を厚生大臣が言い出している、こういうようなことをおっしゃっておられますが、無過失責任の原理といいますか、ともかく新時代にふさわしい、高密度社会に適する新しい法律というものを私は公害対策については、これはやはり検討を要すべき時代に来ておるのではないかということを私は常々——常々と申しますか、最近申し述べておるわけでございます。  それから、公害のポジションが多岐多面であって、はなはだ国民の皆さん方は御迷惑だ、こういうふうにおっしゃるわけですが、公害の発生の現象、要因というようなものも複雑多岐になっております上に、行政官庁の関係するところが非常に多いために、その間国民の皆さま方にも行政の政治性というようなことにつきまして不信の念を与えておることも私は看取をいたしておりますので、これは先般の閣議におきまして総理大臣からも特に発言がございまして、公害と取り組む内閣といいますか、各省庁のその取り組みの組織、対応の姿勢についても検討すべきだと、こういうような発言がございましたが、ちょうどいま山中総務長官も来ておられますが、あるいは総務長官、官房長官の線でこういう問題の端緒をつけていただくことにいたしておりますので、これにつきましても、私は社会、国民の要望にこたえる行政運営というものの仕組みを整えるべきだと考えます。  それから水俣病に関連する地方財政の負担のあと始末の問題でございますが、これは私がここでとうてい言い切れる問題ではございませんが、ただ御承知と思いますが、これまでもそういう事態があったことも中央では認識をいたしまして地方交付税の特別交付金の中に、ある程度のその歳出要因としてこれを織り込みまして、そうして特別交付税の交付をいたしてまいってきておるはずでございます。  その他の問題につきましては、私は、これはできる限り地方に御迷惑のかからぬように進めてまいりたいと思いますが、正直に申しまして言い切れません。  それから、水俣病の潜在患者がまだ現地にたくさんおるかもしれない、徹底的に診査をすべし、こういうような御意向であったと存じます。また、それに関連して水俣病認定の基準を緩和しろ、こういう御要望がございますが、私は、水俣病というようなこと、水銀が原因だという水俣病というものが潜在的にも存在する限り、私ども少なくとも厚生省の立場においてそれを隠すことはすべきでない。やはりそれは洗いざらいできる限りの潜在患者につきましても診査をいたしまして、そうしてその疑いがある方々につきましては、やはり水俣病の認定をいたしまして、負担の関係はどうなるのか別といたしまして、そういうことを考えてまいりたいと思っております。ただ現地におきましては、言い過ぎかもしれませんが、そのことにつきましては一般の関係者の方々の間に必ずしもそれを歓迎する空気ばかりではないということもあるようでございまして、それらの点につきましては、これは国と、それから熊本県当局、市、あるいは保健所等の方面と十分に打ち合わしてやってまいりたいと思います。  それから環境基準設定をどしどしやって国会に出せということでございますが、まことに必要でございまして、今日までできております環境基準は亜硫酸ガス、一酸化炭素でありますとか、最近、水に関連をいたしまして、水質についての環境基準がおおむね、一〇〇%ではないようでありますけれども、九〇%近くできております。これに続いて私どもは粉じんとかそれから騒音とか、そういうものについての環境基準検討をいたしておりまして、遠からずその結論が出るわけでございますが、それは法律できめるものではございませんので、国会に提案をして御決定を願うということではございませんが、行政的に閣議決定をすることになっておりますが、そういうものをきめました場合には、できる限りいい機会をとらえまして、国会の諸先生にも御説明を申し上げたり、また、その基準がどのように適用されるかということについても御説明を申し上げたいと存じます。  それから公害の研究機関がいろいろの方面にございます。地方なんかも非常に熱心でございまして、このごろは公害衛生研究所というようなものがおもなところにはだんだんできております。従来は単に衛生研究所といっておったものを、公害を上にかぶせて公害衛生研究所ということになっておる状況でもありますが、中央にも御指摘のように、厚生省の管下にも幾つかのそれらを取り上げておる機関がございますが、しかし、これを一つにまとめて公害衛生研究所というようなものをぜひつくることが必要だということで、昭和四十五年度におきましても、若干準備費を獲得をいたしまして、マスタープランを計画中でございますので、逐次ひとつ事業に移してまいりまして、できる限り早く御要望にこたえる所存でございます。  それから公害監視員というようなものをふやせ、これはまあ御要望の趣旨は、たとえば食品につきましては、十分とは言えませんけれども、食品衛生監視員とかあるいは薬の薬事の監視員というようなものがあるわけでございますが、それと同じような意味でという御趣旨と思いますが、少し型が違うものでございますので、それがいいか、御提案のようなことがいいか、あるいはいまの保健所なり県の衛生部なり、厚生省の機関なりというものを有機的に連携し、従来その連携が必ずしも有機的ではないし、またかなりタイムラグがありまして、お互いに非常に迷惑をしたことがありましたが、そういうことを詰めていく面が有効である面もございますので、これは検討させていただきたいと存じます。  以上でございます。   〔理事小野明君退席、理事中津井真君着席〕
  128. 小野明

    小野明君 時間がありませんから、端的に質問いたしたいと思います。  最初に厚生大臣にお尋ねをいたします。  先ほど経済企画庁に質問いたしたわけですが、どうしてもこの工場排水口シアンについて数字を言わないわけですね。経済企画庁が言わない。なぜかというと、企業協力を求めてやらなければならぬからと、こういう答弁であります、経済企画庁は。この事実と、最近はこの環境汚染がひどくなりまして、大臣も御承知のように、企業か人間かと、こう二つ並べてみましたときに、健康保護という場合には優先的に考える。ところが、環境の保護という場合には経済の発展との調和と、こうなっておるわけですね。基本法のたてまえがそうなっておりますね。ところが、最近は環境の破壊、環境の汚染即人間の健康の害と、もうこれは一体のものとしてとらえなければならぬようになっておると思うのであります。その辺で、この基本法にいう環境の保全のための経済の発展と健康の保護と、これをやはり別個にとらえて、健康保護ということを優先的に、この公害行政を、公害対策を進める必要があるのではないか。先般の新聞によりますと、大臣構想としてその辺のことも若干出ておったようですが、その辺の基本的なつかまえ方について見解を伺いたい。
  129. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 水中におけるシアン化合物の基準といいますか、これは水中全体における環境基準のようなものと、それから水中におけるシアンの存在の理想的な状態を達成するためにいろいろな施設から排出されるそのシアンの排出基準と、両方あるわけでありますが、私が間違ったことを申し上げますと大恥をかきますので、専門家にすぐあとから御説明させることにいたします。  それからお尋ねの公害対策基本法、あるいは大気汚染防止法も、水質保全法もそうでございますが、産業の健全なる発展との調和という問題でございますが、これはまあ結論から申しますと、私は厚生省検討すべき大きな課題の一つとして検討すべしという大臣指示を事務当局に出しましたので、事務当局でも検討をいたしておるわけでございます。しかし、私の率直な気持ちを申しますと、そのことはあたりまえのことでありますから、あたりまえのことを持ち出すことによって、国民の皆さま方に不安や、また政府の公害対策の姿勢について不信の感を起こすのはよくないので、あたりまえのことは取っておいたらよいのではないか。公害対策だけ先走って、そして経済の発展なり雇用なりというものはどうなってもよい、沈んでしまってもよいということを私は言っておるわけではないわけでありまして、公害対策基本法なり、大気汚染防止法なりというのは、国民の健康保全法なり、環境汚染防止法なのだから、その中で、それ以外のことを、あたりまえのことかもしれませんけれども、言うておくのは、法体系としてかなり珍しい法体系だと思います。いろいろな産業に関する事業法とか産業立法などを見ましても、その中で、産業を運営する場合には健康に留意しろとか環境汚染に留意しろとかいう衛生条項というものはございません。金融などに関する為替管理法とかその他金融立法を見ましても、これはやはり貨幣価値の維持とか通貨価値の保全とかインフレ是正とかいうような意味から法体系ができているわけでありまして、そのために事業の運営が困るようなことをしちゃいかぬとか——もっともそういうことは私は書いてないと思いますので、わけは同じでありますので、厚生省の私どもといたしましては、先ほど申すような考え方で検討すべきだと、こういうことを述べているわけでございますので、小野先生の御説を傾聴いたした次第でございます。
  130. 小野明

    小野明君 そういたしますと、たいへん大事なところでありますから、公害関係法においては健康の保護、環境保全、こういうものにしぼってこの法体系を整備したい、その他のものは入れない、こういうことですね。
  131. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) まあ簡単に言いますと、わかりやすく言いますと、そういうようなことで厚生大臣の私としては持ち出すつもりでございます。その辺は、ここに総務長官もおりまして、厚生大臣の言うことも大切だけれども、またほかにも大切な面があるというようなことで調整をしてくださると思いますが、しかし、私は、私が持ち出しているようなことがいいと考えております。
  132. 小野明

    小野明君 総務長官にいまの点もお尋ねいたしておかなければならぬと思いますが、非常に最近公害がきびしいピッチで進んでまいりまして、それをチェックするのにやはり他の要素が入ってきている。だから、いまのような厚生大臣の答弁をいただいたわけですが、所管省として全体を総括する総理府総務長官としてはどのようにお考えなのか、そういう点をひとつお尋ねしておきます。
  133. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 私たちの住む国土の構造、産業の構造、あるいは居住環境、人間の生活する態様等の急激な変化に伴いまして、考えられなかったような事態が次々と起こってまいりますし、医学の進歩等から、かつては公害の範疇ではなかったと思っていたものが、やはりそれも公害であったというようなこと等が後ほど証明されてきたりなどいたします現状から見ますと、率直に言って、今日までの政府のとってまいりました公害の諸措置、立法もしくは行政上の措置等が後手後手に回っているきらいがなきにしもあらずであるというようなことから、総理のほうが閣議において指示をされまして、私の手元で総合的に政治の姿勢として、国の政治が公害にどのように対処するかを打ち出すべきであるということの決定がなされましたため、私のほうでそれをいま鋭意作業中でございます。厚生大臣が述べられましたことは、当然人命保護、尊重の立場から、厚生省として、たとえば産業の健全な発展の条項に関して削除すべきであるという見解にしても、あるいは基準の中に、これは別な法律でありますけれども、土壌も入れるべきであるとか、いろいろの意見が出されておりますが、これらも当然のことであると思います。ただ、それらを政府の姿勢としてそのまま打ち出せない現在は行政の機構になっております。通産大臣はどう思うのだということが一方なければなりませんし、そのために現在とられております公害対策会議をそのまま開きましても、甲論乙駁するようなことではこれは醜態でございますから、そこで、その前に、総理の意を体して、政治の姿勢として、関係各省の間でトップ会談ないし事務的な段階等において私の手元で調整あっせんにつとめて国の姿勢を打ち出していくというようなことで、可能な点を次々と明らかにしていく。必要なものはあたりまえのものとして公害対策会議にかけた形をとるものもありますし、そうでないものは、たとえば公害対策基本法において別に法律で定めるとなっておるはずの企業の費用負担等についていまだにじんぜん日をむなしゅうしておる、そのようなことは直ちに通産省なりどこなりがやるという決意をいたしますれば、これはもうその問題は一つ解決をするわけでありますから、次の通常国会に間に合わせるようにせいということがきまれば、すでにそこに大きな総理指示の具体的な前進が見られるわけでございます。そのような点を踏まえまして、公害の多様化、あるいは予測できざる事態に政治が後手後手に回らないように、一人といえども人命が政治の遅滞によって失われることのないようにという気持ちを打ち出すために、私を中心にそのようなことを検討を開始する指示があった。その作業はすでに具体的に開始いたしておりますし、来月の初めごろに具体的なものをだんだん関係各省と相談を表に出しながら進めていく予定でおります。
  134. 小野明

    小野明君 総務長官、そういたしますと、いま厚生大臣が答弁をされた趣旨というものは、長官としては、総括をされる長官としてはこの趣旨を踏まえてこの関係閣僚会議ですか、そういうものの中に貫いていくと、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  135. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 関係閣僚会議というほど表立ったものになるかどうかですね。たとえば、いま繊維問題で外務大臣、通産大臣、あるいは総理大臣、官房長官、それぞれ時間を見ては集まって相談をして、意思の統一あるいは国内の体制等の、いろいろのお互いの立場からする見解の調整をはかっておる。そういうような形で解決できるものは、別段閣僚会議というものを開かないほうが、かえって、あらためて開いた閣議の場において担当大臣として引くに引けない議論の中に追い込んでいくよりも、かえってやりやすいのではないかと思う点もございます。ですから、会議の形はそういうふうに関係閣僚会議という名称にするかどうかは別でありますが、少なくとも閣僚という責任者を中心にして、私で根回しをして、次々と政治の姿勢を後手にならないように打ち出していく措置をとっていくということであります。したがって、厚生大臣のすべての発言を私聞いていたわけではありませんが、厚生大臣としておそらくどういう姿勢でものを言われたであろうことは、これは察するに余りあるものがありますから、まさか違ったことを言っておられないでしょうから、そういうことが公害問題論議の出発点にならなければならないのであろう。しかし、それを受ける場合において、通産省なら通産省というものを例にとって悪うございますが、はたしてそれについてそのとおりであると、このまま公害対策会議に持ち出してイエスと言うかどうかの問題があります。そこらのところの調整をやりたい、一例をあげればそういうことです。経企庁でも、水質汚濁基準を一方には持っておりますし、あるいは一方ではやはり見通し的なものを立てる場合において、産業の発展ということを重点にした計画立案の担当省でもありますから、まあ二律背反的な面、あるいは板ばさみの面等を持っておる役所でもありましょうから、こういうところの感触等も聞かなければならないでしょうし、要するに厚生大臣の考え方というものが公害問題の基本である、そこからの出発点であるという意味においては、私も意見は変わりはないということでございます。
  136. 小野明

    小野明君 総務長官、これは御参考までに申し上げておきたいのですが、ぜひその厚生大臣の言われた姿勢というものを貫いて、調整というものをはかっていただきたいと思うのです。  それで、先般宮澤通産大臣が公害対策特別委員会出席をされた、その際、もちろんわれわれも企業の発展というものを全然無視しろということを言っておるのではないのです。これは企業は他に迷惑をかけてはならぬ、この原則は打ち立てられるべきである、こういうことをはっきり答弁なさっておるわけであります。おそらく佐藤総理もそれを若干薄めたような、答弁を聞くと感じがいたしますが、当該通産大臣がそういう答弁をなさっておる。公害というのはまさに他に迷惑をかけ、健康、命を阻害しておるわけでありますから、これは重大問題である。一番総務長官が心配をなさる通産大臣がそういう姿勢でありますから、これは問題はないのではないかと思いますが、重ねてその辺の決意のほどをひとつお伺いをしておきたい。
  137. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 私が一例を通産にとったのが悪かったとすればあるいは誤解を招いたかもしれませんが、通産を例にとったついでにお話をいたしますと、宮澤君はいろいろな呼び方があると思いますが、ニューライトと呼ばれているグループの一人のようでもあります。またそれぐらいの新しい呼び名を受けるぐらいの感覚を持ちませんと、わが保守党も先細りが目に見えておりますから、そういうりっぱな人材が役所に地位を占めておるということは、ある意味においてはタイムリーなことであると考えます。私はそういう意味で通産がどうと言っておるのではなくて、そういう問題を調整しないで会議を開いて、ぶざまな議論をしてはならない、すなわちそのために政治が後手に回る。そこで総理のもとで指示を受けた者としてそのあっせんに当たろうということでございますから、相当強力なるあっせんもするつもりでございまして、ある意味では厚生大臣の意向を私は尊重いたしますが、厚生大臣だからこうせいと言われたらそのとおりにするというものでもないのであります、これは各省大臣全部そうでございますが。そういう気持ちで、その気持ちは厚生大臣のおっしゃることが公害問題の出発点ということにおいて変わりはないのでございます。
  138. 小野明

    小野明君 だいぶおたくのほうの党内も荒れておるようでございますから、ひとつ原点に立って公害防止対策をそれこそ後手後手にならないように進めていただきたいと思います。  それから厚生大臣、いま基本法にいう公害防止計画というのがございますね。これが四日市に適用され、あるいは京葉に適用されるが、一向に実効をあげたということを聞かない、またあがるというふうに私も見ておらない、期待はしておりますけれどもね。そこで、福岡県のように北九州には大気汚染、ばいじんがまたぞろふえておる、あるいは学童、幼稚園の調査をしたところがぜんそくが日本一である、十人に一人はぜんそくである、あるいは洞海湾は死の海である、福岡における御笠川、那珂川においては洞海より以上の汚染である、大牟田川はカドミウム、ノリの被害もある、こういった地域に対しましては特に大きな災害でありますから、現地対策本部、こういうふうな緊急に動きやすいような機構組織というものが考えられないものかどうか、そういった中で厚生省なり、総理府が中心になってやりませんと、ばらばら行政というものはいつまでたっても私は直らない、公害防止計画の中ではばらばら行政というものは私は直らぬのではないか、こう見ておるのですが、何かそういう一つの新しい構想で当面の公害防止対策を打ち立てませんと県民の不安というものは除去できない、おまけに経済企画庁データを直したままである、国民の前に公表しないということがこの委員会でも明らかになったんですが、こういう段階では政府の姿勢にそれこそ大きな疑問を持っておるわけです。そういった点について厚生大臣の所管大臣としての見解、それから総理府総務長官もひとつその辺を、ばらばら行政をどう手直しするかという意味でその辺もひとつお伺いをいたしたいと思います。
  139. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) まず公害対策基本法にございます公害防止計画の課題でございますが、これは小野先生も御承知のように、公害防止計画というのは抽象的のことばではございませんで、年次計画をもちましておおむね一事業年度に三カ所から五カ所くらいの地域、都市を選びまして、それに対しまして公害防止の総合計画を国と地方で打ち合わせ、しかもその中身は閣議決定までいたして、そして各地域ではこの防止計画に基づいて都市計画もやれと、あるいはその他の諸施策も打ち出せと、こういう仕組みを規定をいたしておるものでございます。それの防止計画をつくります前には、公害防止基本方針というものを関係の公共団体と打ち合わせてまずつくりまして、それも閣議決定をいたしまして、その基本方針に基づいて、いま申し述べましたような計画を立てるわけであります。ところが、それはもう非常に多岐にわたる計画でございますので、非常に多面的、多岐でありますと同時に、何といいましても、非常に金がかかるわけであります。たとえば緩衝緑地帯をつくったり、あるいは下水装置を整備したり、あるいは清掃施設について適切なる計画を立て直したり、あるいは工場地域と住宅地域との間に必要なる整備をする、あるいはその川のつけかえまでやるということになりますので、いわば新都市計画、いま新しい新都市計画法でやっております、そういう計画に上のせするような部門もたくさんあるわけでございますので、これをやらせますためには、地方公共団体としての財政、それに対する国の助成財政、さらに総務長官もちょっと先ほど触れましたような企業の費用負担という問題がございまして、結局、その財政処理計画というものが、今日現在におきましては、実は確立をいたしておりません。しかし、そのことにつきましては、ただいま関係各省庁会議を持ちまして、近くその財政処理の方針要綱というようなものもつくることでございます。まあ、これも総務長官のところへ持ち込んで、各省の意見をまとめてもらわなくちゃならぬわけでありますが、それができますと、すでに御承知のように、千葉市原でありますとか、あるいは四日市でございますとか、あるいは岡山県水島、この三地域につきましてはもう財政上の措置さえきまれば、公害防止計画の、その最終案が閣議に持ち込めると、こういうふうな段階まで来ておりますので、これらの財政措置を急いでおります。さらに引き続きまして、新しい地域として、鹿島でありますとか、あるいは東京とか名古屋とか大阪とか、川崎、尼崎とか、また九州におきましても、北九州でありますとか、大分、鶴崎、ああいうような地域は、厚生省、私どものほうで公害防止計画の対象とする地域といたしまして、来年度までに予定をいたしておりますので、財政計画要綱さえできますれば、またそれに対応して政府が金を出す、また、地方公共団体も企業も費用負担をするということになりますれば、今後一瀉千里に進むものでございますので、そのように御理解をいただきとうございます。
  140. 小野明

    小野明君 まことに公害防止計画というのは、ことばが足りませんでしたが、長期の展望ももちろん必要ですけれども、いまおっしゃったような内容を受けてやることである。しかし、当面、この大きな汚染が急激に増加しておる地域については、そういった現地対策本部というようなものを設けて、このばらばら行政の弊というものを、やっぱりなくすべきではないか、そういったものを考慮すべきではないかという点をお答えいただきたい。
  141. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) まことにごもっともな御所論と存じます。このことにつきましては、幸い地方でも非常にこの公害対策には重点を注いでまいりまして、ほとんど今日では、全国の府県に公害課あるいは公害対策本部あるいは公害対策室というようなものをつくられまして、そこに、府県の公害に関するいろんな行政機能を集約をするような形を、ごく最近とってまいってきております。それに地元の市の公害関係のセクションとか、あるいは保健所の機能とかいうようなものを結びつけますと同時に、厚生省からでも、問題のあります地域については、でき得る限り人を派遣いたしまして、そして、中央、地方、また地方における縦横の連絡がつくようなことをさせるようにつとめております。また、総務長官の前で、私が陳情するようなかっこうになりますが、その厚生省がそういう場合に人を派遣しようといたしましても、どうにもならぬほど人が足りないわけでございまして、小野さんがたくさんお述べになりましたところに一人ずつ人を派遣しましたならば、中央に残る人はだれもいません。こういうようなかっこうでございますので、何としてもこれの充実を考えたいということで、今後ぜひひとつ内閣の力も借りまして、まず中央の私どものほうの機構整備をやりたい。それと同時にそれまでのつなぎといたしましては、これも御承知のように、ひとつ厚生省としては、公害臨戦態勢をつくろう、一公害部だけにまかせておかないで、他のあらゆる部局というものが機動的に、いろいろな公害問題と取り組むし、情報も集めて、対応策も立てるということにいたしまして、厚生省の中に公害対策連絡協議会というものをつくりまして、そして、それの責任者は事務次官にいたしまして、公害部長は全くそこの幹事役というようなことで、厚生省全体を動かすように、とりあえず中央においてはまあいたしたわけでございますが、御要望によりまして、地方のほうとも十分連絡をつけてまいる所存でございます。
  142. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 国民の目から見ても、ばらばら行政の感があるというようなことを、総理がやはり感じられたのでありましょうから、そういう指示をされたのでありまして、ばらばら行政が具体的に事務の段階、あるいは政治的な背景の段階で、どのような場所がネックになって、どんな問題が存在しておるかというのを、とことん洗い出していまいるところです。ですから厚生大臣が一瀉千里と言われましたが、それが一瀉百里にならないように、私のほうでも、いまそういうことを、障害物を逐次えぐり出しておるところでございます。たとえば法律と条例の基準がどうとかこうとか、いろいろ議論がありますけれども、ある場合によっては、もう法律と条例の関係を議論する前に、地方にそういうものを委譲してしかるべきものは委譲して、地域の住民責任を持つ知事さんが、どんどん基準をつくっておやりになればよろしいものは、あえて中央基準の法律にこだわる必要はないんじゃないかというものもあると思います。そういった基本的な問題も含めて、各省のばらばらのセクショナリズム行政のために、国民のためにあるべき公害行政が阻害されることがないようにというのが、総理指示の真意でありますから、それを踏まえて私がその調整に当たるということでございます。
  143. 小野明

    小野明君 最後に公害部長、洞海湾シアンの問題が明らかにならなかったことが、非常な私は不満であります。そこで、この問題に対する見解といいますか、これはシアンですから、毒物及び劇物取締法ですね、これにも当然、第一表にあげられておると思いますが、その辺のところから、これを厚生省として放置してよろしいものかどうか、その辺をひとつ御答弁をいただきたい。
  144. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) 洞海湾工場の中で、シアンを出しておる、毒劇法に違反する程度のものを出しておるというところにつきましては、経済企画庁のほうから連絡を受けましたので、これに基づきまして、それぞれ対策を立てると、これが所管の薬務局の考え方でございます。その中で特に工場全体を、先ほどお話が出ておりましたように、六工場ございますが、そのうち二工場はその工程の中で、無機シアン化物たる毒物を扱っておりますメッキ工場であります。他の四工場は、製造工程の中で何らかのシアン化合物を生成し、これが廃液の中に含まれて排出されている工場であります。したがって、この二工場につきましては、毒物劇物取締法で廃棄の規制がされておるわけでございまして、その廃棄の方法で定めております二PPM以下の基準に適合しない場合におきましては、当然この違反になるわけでございます。他の工場につきましては、シアンの生成物の実態がまだ現在の段階ではわかりませんし、その廃棄の方法が、現行法令の適用とどういう関係になるかという点につきまして、目下違反の疑いのあります工場につきまして、薬務局のほうで調査を県と連絡をとりながらやっておる段階でございます。この関係につきましても、できるだけ早く検討するということになっておるわけでございます。いずれにしましても、報告を受けました工場が毒物法違反であるということがはっきりしました段階におきましては、これの厳正なる措置をとりたいという考えであります。
  145. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は、初めに厚生大臣に、生命と健康を守る政府責任者の厚生大臣に二、三のお尋ねをいたしますが、初めに上水道の問題について具体的な問題点を一、二あげてお尋ねいたします。  けさの新聞では、島根で全国水道研究発表会というものが持たれている。この研究会では、水道管から亜鉛が検出されているという、   〔理事中津井真君退席、理事小野明君着席〕 この島根県のほうで発表されるものとしては、五十倍という、水道法の基準の一PPMの五十倍の五〇PPM、あるいは二二・四PPM、あるいは三三PPMというものが検出されているということが発表される、ということが報道されております。そうしてこのいろいろな各方面の意見をずっと述べておられますが、五、六PPMで吐きけあるいは下痢をする、もよおす。あるいは一PPMでも、熱するとお湯が白く濁る、あるいは四、五PPMで水が白く濁る、こういうようなことが報告されるということが報道されておりますが、この亜鉛メッキは、この水道管は、東京の場合も同じですし、また、全国多くの水道管が亜鉛メッキの管を使っているわけです、現実問題としましては。そうしてまた何年かのうちには必ずメッキがはげて流れてくる、水道に流れ出す。そういう亜鉛に汚染された水をわれわれ、全国民といってはあるいは多過ぎるかもしれませんが、われわれが飲んでいるのだということになるわけですが、こういう問題はひとつ厚生省、どういう取り組み方をしていらっしゃるか、お尋ねします。
  146. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 島根県の問題は、私の耳にも前に入ったことがございましたが、きょう新聞にまた出ておったようでございます。私の耳にも入りましたので、私が、一体鉄管を亜鉛メッキして、そんなものを水道に使っていいのかということで係員に文句をつけましたところが、それは一つの規格があって、水道に使うための規格でございましょう、通産省工業技術院のJIS規格があって、それに合致するものを使わせておるので、通常は危険がありません。しかしまた、その亜鉛メッキに基因しないで、水道の原水の中にその亜鉛分がある場合もあるので、そういう場合にはアルカリ中和というような方法を行なうことにいたしておりまして、心配はないのです。それで島根県でも、百六十八件簡易水道を調べたところが問題がございまして、亜鉛の検出された水道が四件あったけれども、それらはいずれも   〔理事小野明君退席、理事中津井真君着席〕 処置がつきまして、あとへ心配を残すものではなかった、こういう報告がございました。しかし、けさの新聞によりますと、その話ではなしに、いま小平先生からお話があったように、五〇PPMくらいの亜鉛が含まれておったというようなお話で、そのことについては私はまだ十分聞いておりませんので、水道課長を呼んでおきましたので、水道課長からぜひお聞き取りをいただきたいと存じます。
  147. 小平芳平

    ○小平芳平君 一つはいま大臣がお述べになったJIS規格自体に問題があるということもいわれておりますし、そうしてまた、実際に検査をしているのかどうか。ときたまたま、こうした島根県でそうした検査をして、そういう結果が報告されているということであって、実際東京でわれわれが飲んでいる水はどのような亜鉛の検査をなされているか、その点について課長さんからお答えを願いたい。
  148. 国川建二

    説明員(国川建二君) 亜鉛につきましては、水道法の省令の中で水質検査をしなければならない項目にされておりまして、これは毎日は検査いたしておりませんけれども、東京におきましても、年四回は末端の亜鉛の量について検査いたしております。  それからなおJIS規格につきましては、これは亜鉛メッキ鋼管と水質との関連が非常にございます。その辺の学問的な問題がまだ十分解明されておりませんので、現在まではいまの規格で十分であると考えておりますけれども、たとえば地下水のような非常に遊離炭酸が多いような場合には亜鉛が非常に溶けやすいというようなことがございますが、パイプの使用の基準と申しますか、この取り扱いについて考えるか、あるいは規格についてももう少し手を加えるかどうか、これにつきましては今後検討いたしたいと思います。
  149. 小平芳平

    ○小平芳平君 東京の場合は年四回検査するわけですが、何カ所検査して、どれだけの結果が出ておりますか。
  150. 国川建二

    説明員(国川建二君) 正確な件数は覚えておりませんが、各浄水場系統にはそれぞれ少なくとも一カ所ずつは行なっておりますので、少なくとも六、七カ所以上になっていると思います。またその結果につきましては、十分水質基準に入っております。
  151. 小平芳平

    ○小平芳平君 PPMは。
  152. 国川建二

    説明員(国川建二君) 水質基準、つまり一PPM以下におさまっております。
  153. 小平芳平

    ○小平芳平君 水道管の中で特にこうした亜鉛メッキの管を使っているのは、家庭あるいはビルに引く場合に使うわけでしょう。この家庭あるいはビルに引くその管に問題があるのに、この広い全東京の中で六、七カ所やるだけで十分だと思いますか。あるいは年四回で十分だと思いますか。  そこで大臣にお尋ねしますが、こうした危険なものは——要するにJIS規格自体も学問的に問題があるというわけです。したがって、こうした危険が伴うような水道管は当然もう禁止すべきである、かわるものがあるわけですから。ですから、それぞれの家庭でどういう規格の、自分の家の水道管はどういう規格の水道管だからどれくらい安全だ、どれくらいだいじょうぶだというものが、どこだってわかっておらないわけです、これは実際問題として。しかもここで、島根県でこう発表されているような結果となれば、当然亜鉛メッキ管なんていうものはいつまでも使っているべきじゃない。これはすみやかにかえるべきだ、目標を立ててかえるべきだと思いますが、いかがでしょう。
  154. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 小平先生の御意見はごもっともだと思います。が、これは厚生省の中にもいろいろ専門の機関もございますので、こういう機会に、十分それらの適否について科学的にも経験的にも洗い直しまして、そうして対処いたすべきだと私は考えますので、そういうふうに命じたいと存じております。
  155. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから次は別の問題ですが、北海道の下川町というところに三菱金属鉱山下川鉱業所というのがあるわけです。これは通産省関係になるわけですが、鉛と亜鉛をより分けた廃水を池に沈でんさせておいて、その沈でん池からあふれる水を下へ流す。そこの名寄川というところに流れていくわけですが、この数年、悪臭が漂って魚も住まなくなった。そこで住民水質検査を要求した。その結果、排水の中からカドミウムが、微量ですがカドミウムが検出された。こういうことがあるわけです。問題は、これは通産省にあとで尋ねることにしますが、この名寄川の下流に行きますと、名寄市ではこの水を水道に使っているわけです。ですから、この鉱山の排水が流れ出す、鉱山の排水の中にはカドミウムが検出されたと、その水を飲料水に使っているわけです、市民が生活に。で、当然ここでは不安が高まっているわけですが、——そこで一度全部申し上げますと、地元としては、沈でん池に入れて上澄みを流しているわけですが、下の下流では水道にも使っていることでもありますので、もっと沈でん池をさらにふやすとか、二重三重の沈でんにするとか、あるいは常に監視測定をするような体制、カドミウムなんかが流れ出していて、知らないでいたなんというようなことがないような監視測定の体制をとってほしいと、こういうことが要望として出るわけですが、これはいかがですか。
  156. 橋本徳男

    説明員(橋本徳男君) ただいまの問題につきましては通産省のほうからお答えするのが適当かと思います。  下川鉱山につきましては、昨年の六月以降、監督局のほうにおきまして四回ばかりいろいろ立ち入り検査をし、いろんな改善をさしております。そしてまた、同時に水質調査等もやっております。昨年の六月、十一月それぞれカドミウム等の調査をやっておりますが、その六月、十一月の調査によりますれば、いずれもいわゆる基準点を下回っておりまして、たとえていいますと、かんがい用水の取り入れ口でも〇・〇〇一五といったように、通常の基準、いわゆる〇・〇一のさらに十分の一といったような数字でございます。したがいまして、それよりも、下流にございまする水道用水の取り入れ口につきましては、さらに不検出というふうなところまでなって改善されてきております。したがいまして、ほとんどまあ問題はないんではないかというふうには考えておりますが、なお現地においても、いろいろそういった過去においては必ずしも十分ではなかった点もございますし、また今後においてもいろんな変化からそういう問題が出ないように実は操業の状態、操業の形態をいろいろチェックをいたしまして、したがいまして、その操業の形態から不測のことが起きないようにということで、最近におきましても中和装置を自動的にこれが行なえるような施設改善の指示をいたしまして、近くその完了を見る運びになっております。
  157. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから大臣ですね、そういうことは私も述べているわけです。要するに、このカドミウムがそういう基準をオーバーして流れ出ているから水道に使うのは危険だと言っているのではないのです。そうではなくて、通産省は、要するに排出基準以下だから、それ以上に沈でん池をつくれとかそういうことは言いにくいというわけですよね。言いにくい。できないというわけです、はっきり言えば。また、厚生省のほうでは、それはその町から二十五キロも山の中のことなんだからと、こういうことも言うわけです。しかし、こうした水道ですからね、上水道ですから、二十四時間その水を飲み水にも市民は使ったりしているわけですから、政治の取り組み方としては、微量だからどうの、あるいは遠い先のことだからどうのじゃなくて、もう少しいま私の述べた程度のことは、沈でん槽をさらにつくる、これも可能だと思うのですね。できないわけじゃないんですから。あるいは常時監視測定をしていく、これも当然のことだと思うのですね、そういうことは。水道に使っているという特殊な山でもありますので、そういうことは厚生大臣がそういうことを命令できないかもしれませんけれども、そういう取り組み方でなくちゃならないと思いますが——こう申し上げているわけです。
  158. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) ちょうど私のところへ資料が届きましたが、その件は小平先生が言われるような心配もございましたので、北海道庁の衛生部に昨年の昭和四十四年七月三十一日と本年の六月四日に、原水及び上水の水質検査をさせましたところが、原水及び上水中にはカドミウムは検出されていない、こういう報告がございました。しかし、通産省の申されることを信用しないわけじゃ決してありませんけれども、二十五キロ上流にはそういう鉱山があるわけでありますから、続いてもっと間を置いて、常にひとつ水質検査をして、地域の水道利用者を安心させてほしいということを重ねて私のほうからも北海道庁に申したいと存じます。
  159. 小平芳平

    ○小平芳平君 次は、私の大臣に対する質問が限定されていますから飛び飛びになって恐縮ですが、大気汚染についてお尋ねしますが、これも静岡県の富士市及びその周辺の市町村で、まあ製紙工場あるいはアルミニウム工場、こういうところから亜硫酸ガス、あるいは弗素、こういうものが排出されるために非常に大気汚染がはなはだしい。NHKの宇宙中継の番組みの地球管理計画というのにも静岡県の富士市が登場しているわけですが、ここでもって、通産省にあとで尋ねますので、いま厚生大臣にお尋ねする点は、この辺の健康調査についてです。やはり先ほども公害防止計画法あるいは公害基本法、いろんな法律ができても、公害が減らないじゃないかというお尋ねがあったのですが、やはり富士市にも減るどころかふえている。特にこうした地元では学童について健康調査をしたところが、汚染校は倍、ぜんそく及び気管支炎が倍の人数が調査結果として出ている。汚染といいますのは年間平均して〇・〇七七PPMとか、こうしたひどい汚染がある。こうなると、それこそ四日市の倍にも汚染されたところに、平均してのことですが、住んでる住民がいるわけです。そうしてこうした健康調査の結果は学童で倍、それから乳幼児、未就学児の健康調査の結果は三〇・一%、七十三名中二十二名が有症児、これが千葉大学で精密検査をしてもらった。藤間地区というところです。こういうように健康がむしばまれている。特に乳幼児とか学童とかあるいはお年寄りが、老人がまっ先にこうして健康をむしばまれているということは、きわめて重要な問題である。したがって、実際動くのは通産省かもしれませんけれども、健康と生命を守る厚生省としても、もっと強い姿勢で大気汚染防止に取り組んでいただくべきだと、このように思いますが、いかがですか。
  160. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) これも仰せのとおりでございます。しかし、このことにつきましては、厚生省も静岡県と相談をいたしまして、いろいろのことをやってまいっているそうでございます。すなわち厚生省におきましては五カ年間のばい煙と影響調査の経験を静岡県のほうに持ち込んで、そうして、と同時に静岡県に厚生省からも担当官を派遣いたしまして、いまお話のございましたように、千葉大学と共同して富士保健所、それから富士市の医師会などを中心に学童の健康調査をいたしましたところが、児童の学校欠席状況は、この状況の悪いと判断される地域の学校と、それから大気汚染等が少ない学校と、同じ程度で変わらないが、しかし、汚染校と思われる地域の学校の学童のうち、ぜんそくの症状を呈するものの割合は、きれいな地域の学校の約二倍と、それから感冒の罹患傾向等の既往症——のどが痛い、たんが出るなどの自覚症も、汚染校と思われる地域の学童のほうが高く出ていると、こういうことを厚生省も把握をいたしております。しかし、その汚染状況は東京都の都内の状況と大体同じ程度で、これは決していいというわけではございませんが、これの環境汚染の改善とかあるいは学童の健康管理につきましては、静岡県を督励して、そうして十分それらの対策につきましても抜かりのないようにということを厚生省から現在でも申し入れていると、こういう状況でございます。今後もこれらに対する監視、注意を怠らないようにしてまいるべきだと存じます。
  161. 小平芳平

    ○小平芳平君 汚染の状態は東京と変わらないと大臣言われますが、亜硫酸ガスによる汚染は、厚生省としてある基準をきめているわけですよね。で、その亜硫酸ガスによる汚染の年平均でこの資料は出ておりますが、厚生省基準を上回っている地域、要するに工場地帯は上回っているわけですね。しかも上回っている地域においてそういう健康障害を訴えているわけですので、当然これは基準以下にする努力をしてもらわなくちゃならないじゃないですか。
  162. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) これも私のところに資料が届いておりますが、仰せのとおり、ここに八つほどの学校地区があげてございますが、多いところは、いおう酸化物の賦存状況といいますか、状況が、環境基準の〇・〇五をこえまして〇・〇七七あるいは〇・〇六七、また〇・〇六〇、また〇・〇五二と、ちょっと多いですね。それからまた低いところもございまして、〇・〇四七、〇・〇三七、〇・〇一四、それから〇・〇二八というようなところもございますけれども、半分ぐらいはやはり厚生省がきめておる環境基準を超過いたしております。そこで、これに対しましては、特別排出規制というものをかけるように地元の知事のほうとも打ち合わせをいたしまして、それがかけられる状況調査を現在やっておりますので、環境基準以下に富士市の全域がなるようにそういう措置を講じさせなければならないと私は考えます。
  163. 小平芳平

    ○小平芳平君 それからもう一つは、名古屋市南部それから伊勢湾にかけての工場、いま建設している工場もありますし、また大工場群が建設されておりますが、これについては昭和四十三年の公害特別委員会で、私が、名古屋市南部は現在でも汚染され、あるいは大気汚染によってこうした健康被害を訴えている人が多いと。厚生省として健康調査をすべきではないかということを発言して、厚生省も、そのときには、県、市と相談して進めるというお答えがあったわけですが、その後四十三年から四十四年にかけて、さらに厚生省のきめたいおう酸化物、年平均の汚染基準ですね、基準を上回っている。その上さらに東海市、知多町、この方面には大工場がいま続々と建設中なんですが、そうなりますと、ますます住民の健康被害というものが問題になるわけですが、厚生省としては、こうした前々からあるところの名古屋市南部の汚染地帯の健康状態と、新しく東海市、知多町、この辺ではやはり厚生省基準を上回って汚染されているという県の調査報告がありますが、厚生省としてはどのような把握をしていらっしゃるか。対策を持っていらっしゃるか。
  164. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) 大気汚染状況でございますが、名古屋市につきましては名古屋市南部の事前調査をはじめ、各種の調査が行なわれておりまして、その中で降下ばいじんにつきましては、最近の測定成績で、特に住宅地域、商業地域も工業地域もいずれも高いわけでありますが、概して商業地域が高いということになっております。それからいおう酸化物も自動測定記録及び二酸化鉛法によりまして測定がございますが、やはり商業地域は高くなっております。この健康に及ぼす調査といたしましては、四十二年名古屋市が名古屋大学に委託して住民に対して行なったものと、四十四年一月から三月にかけまして学童について行なったものと、それから四十五年度から五カ年計画で今後計画中のものとがあります。地区の住民大気汚染の影響を強く訴えておりまして、自覚症状も汚染地区住民が多く、肺機能の低下その他多角的な成績も汚染地区のほうで著しいと、こういうことでございます。四十四年度の調査成績はまだ報告されておりません。名古屋市としましては、これらの資料に基づきまして地域住民の健康管理を進めると、こういうことになっているわけでございます。  それから名古屋南部でございますが、名古屋南部につきましては、四十一年から三年間大気汚染観測も厚生省としてやっておりますが、調査によりまして、特に大気汚染のいおう酸化物のほかに浮遊粉じん及びその成分である鉄だとかマンガン、鉛、こういうような金属も検出され、今後留意する必要があるということになっています。ただこれはそういう——名古屋市もそうでございますが、名古屋南部につきましては、いおう酸化物の自動測定記録計をはじめいろいろ整備が不十分でございまして、後背地の汚染状況として必ずしも十分把握されていないということでございますが、私どもとしましては、まずそういうような測定の設備を十分整備しました上でその上に立って適正な対策を今後立てていく、こういうぐあいにやってもらうように指導している段階でございます。
  165. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうことで、そういう経過は私も聞いて知っているわけですので、ですから大臣に申し上げたいことは、もう少し積極的に、どうも工場地帯、前々からの工場地帯というものは、何となく東京と同じだからしようがないだろうというような、川崎と同じだからこの程度でがまんしようというようなものではなくて、前々からの工場地帯もそうした厚生省がきめた基準を上回っているということがはっきりしているのですから、積極的な健康を守る姿勢が必要だということを申し上げているのですが、これはよろしゅうございますね、厚生大臣。
  166. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) これは私の一番泣きどころでございますが、厚生省というものは、通産省が地方に通商産業局を全国に持ったり、大蔵省が国税局、財務局を持ったり、あるいは農林省が農政局を持ったりというのがないのでございます。全く頭ばかりで手足は結局都道府県知事、あるいはそのもとの衛生部、民生部さらには保健所というようなものを使う以外にないわけでございまして、ああしたい、こうしたいと思いましても、自分の直接の機関がございませんので、これはまあ中央、地方の行政機構全体の問題といたしましては私はないほうがいいともいえるのかもしれません、一般論といたしましては。しかし、公害などで先生からいろいろおしかりを受けましても、すぐそれならばわがほうの機関でということができませんので、とにかく隔靴掻痒でございますが、正直に申しまして名古屋方面のその公共団体の公害に対する取り組み方というものが私どもの気にいっておりません。でありますから、これはもうしっかりネジを巻く以外にないし、またネジの巻き足りない分は私どものほうからもやはりお手伝いをする以外にない、かように考えますので、誠意をもちまして、名古屋はほっといてもいいんだ、東京と同じ程度ならしんぼうできるじゃないか、こういうようなつもりでおろうとはいたしませんが、どうぞまたこの上とも御激励をいただきたいと思います。
  167. 原田立

    原田立君 先ほど水俣病補償の千種委員長が来ていろいろと質疑がかわされたわけでありますが、厚生大臣の立場で今回の補償額の決定をごらんになって妥当であったのか、あるいはまだこれは少ないと思っておられるのか、御見解はいかがですか。
  168. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) たいへんむずかしいお尋ねでございまして、これは私が厚生大臣でもやめてしまったあとでございますならば、個人としての感想も言えるかもしれませんが、何しろ厚生大臣が、天下で一番公平で各方面のことについて御理解のあられる三人の方にお願いをして検討をしていただき、その結果につきまして患者の互助会の皆さま方もまた会社側の方も納得をされて契約を結んでおることでございますので、私がそのお尋ねのことにつきまして高かったか安かったかということを申し上げ得ない実は立場でございます。しかし、皮肉で申すわけではございませんが、患者互助会の代表の方々は、その話し合いが済みましたあと私のところに、いろいろお骨折りをおかけいたしましておかげさまでまとまりましてというお礼に見えました。会社のほうは一向礼にも見えておらない、こういう状況でございます。
  169. 原田立

    原田立君 先ほど千種委員長の特に強調しておったのは、いま生存している人たち、これが今後どんなに苦労しながら生きていかなければいけないかという点を非常に強調なさっておられました。私もまことにそのとおりだと思うんです。それで生存者のいわゆる年金、これが幾らかと思って調べてみたら年三十八万円であります。一カ月に直せば三万一千円です。それでぼくはその点を厚生大臣に実は聞きたいと思っておったんですが、なくなられた方々の補償額についてもいろいろ意見はおありだろうと思うが、生存している人たちの今後の生活のしかたについては、三万一千円、年三十八万円の補償額の年金では少ないんじゃないか、こうぼくは指摘したいのです。で、質問を先へ進めれば、そういうようなこれから生きていく人たちに対してただ三十八万円の年金だけでは生活は苦しい。御家族の方もたいへん御苦労しておられる。だからそこを何かもっとプラスになるような、増収になるような処置が国でとられないものだろうかどうだろうか、その点どうですか。
  170. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 当事者間で話がついたわけでございまして、その金額の多寡については私は批判を避けなければならないことは申し上げたとおりでございますが、ただそれはそれとして、国からも何か別にめんどうを見られるか、こういうお尋ねのことにつきましては、現在では御承知のとおり、公害による健康被害者に対する特別措置法で医療費でございましょうか、あるいは医療手当でございましょうか、そういうものが出ているわけでございますが、今度会社側と話し合いがきまれば、それはそれに置きかわらなければならない、こういうことになってしまう。これはプラスじゃなくてマイナスのような話でございます。それからもう一つ、この中には、ごく少数の方でいらっしゃいますが、生活保護費を受けておられる方があるはずでございます。それらの方に対しまして生活保護法の正面から申しますと、当然この所得認定ですか、資産認定というものをいたしますので生活保護費はゼロになってしまうわけでございますが、その辺のことは今回会社から受けられる補償金と申しますか、年金などの金額あるいはその使い道その他の事情をもさらに調べて、でき得る限り温情のあるような方向に持っていけますように、何か厚生省所属の審議会でございますか委員会でございますか、あるようでございますので、その方々に対しても御相談を申し上げております。私といたしましては、できるだけあたたかい気持ちで国は国としてそういう場合に接してまいりたい、こういう気持ちだけは持っております。これがどのようになりますか、いまここで生活保護費はそのままだということは申し上げかねますけれども、気持ちだけを申し述べますと、そういうことでございます。
  171. 原田立

    原田立君 実は質問しようと思った問題が先に出ちまったものですから。この生活保護費のことを言う前に治療費、診察料であるとか薬代であるとか、あるいはまた看護料、実際、患者の人たちは、それはそれはこういうことを言ったのじゃ申しわけないのですけれども、とにかくスローモーションである、人に会おうとしない。また胎児性の子供なんかはもう全然食べることも、ことばを出すこともできないというふうな子供もいる、またおとなもいるわけであります。それで私の言いたいのは、治療費、看護料、通院交通費等は現在こうやって補償がたとえきまったとしても、年金がきまったとしてもこれは従来どおり行なうべきだ。先ほど大臣のお話の中に、それはとってかわってなくなってしまうのだという意味のお話がございましたが、それはまだ御決定ではないはずです。ですから、これは大臣のお考えで継続をしてもらいたい。きょうここで答弁ができないなら、お持ち帰りになって検討だけは十分していただきたい。こう思いますが、いかがですか。
  172. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) ちょっと私間違っちゃいけませんので部長から……。
  173. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) 補償処理委員会があっせんをいたしました経過から申しますと、経過の途中でいまお話しの医療手当を年金額に含めるかどうかはいろいろ御議論があったのですが、最終的にはその分も織り込んであっせんを継続したいということで、水俣病にかかる補償案というものの中にはその点がはっきりしているわけです。したがって、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法第七条の規定により、医療手当の額に相当する金額も含まれるということが明示してございます。したがいまして、これにつきましては別途特別措置法による給付はできないということになるわけであります。それから医療費、介護手当に相当する分でございますが、これもいまの案の中に治療費及び介護費といたしまして、これにつきましては別途会社側が支払うということになっているわけでございまして、御心配のような年金があるから一切治療費自己負担分あるいは介護手当を出すべきときに出せないということにならないように手当てしているわけであります。
  174. 原田立

    原田立君 そうしますと、あれですか、年金三十八万円、十二カ月で直すと三万一千円、それにプラス治療費等は出る、そういうようなお話ですね。それから看護料、通院交通費というような面はどうなるんですか。——いや、大臣、私はそんなことを強く議論したくはないんです。要するに、いろんなことが取りきめられただろうと思うが、結論的に、これから今後生きていく人たちが年金三十八万円である。わずか三十八万円。月に直せば三万一千円である。非常に少ない。そういうことをまずがっちりとらえておいて、企業がやるのがぼくは当然だと思うが、企業はやらないんですから、だから国でもっと手厚く処置をすべきではないか。それが、先ほど大臣は温情をもって云々と言いましたけれども、公害問題についてはそういう温情とかなんとかではなしに、これは国でやる当然の責任である、私はそういう立場でいまいろいろお聞きをしているわけです。ですから、年金額が非常に少ない。きまった年金額が非常に少ないと。だから、それにプラスになるようなことがあってもマイナスになってはならない。それで、いまの治療費とか看護料とか交通費とか、こういう問題になるわけです。それと、先ほど生活保護費の話がありましたけれども、二世帯とうとう切られたと、やられるべきものがとうとうきちゃったというふうな、非常に困ったというふうな声を聞いております。これなどもマイナスになるような処置ではなしに、プラスになるような、公害病なんですから、ほかの病気と違うんですから、そういう特殊条件を前提において、こういう気の毒な人たちに対するもっともっとあたたかい処置、国が責任をもってやるべきだという、そういう立場からも行なうべきではないかと。  ちょっとだらだらとした話になりましたけれども、大臣の所見をお伺いしたい。
  175. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 原田さんのお気持ち、私もたいへんよくわかります。しかし、いまの制度が御承知のように、公害病の健康被害者に対する特別措置法では、その原因者の補償が決定するまでの間、医療費、医療手当それから介護料というようなものを認定患者に支給するたてまえになっておりまして、それは原因者の補償がはっきりしてそちらからお金が出るようなことになりますとそれに置きかえると、こういうたてまえであの法律ができておりまして、公害によって健康を害された方に対しましては、原因者の補償等のほかに、国がいつまでも並行して医料費あるいはその他の見舞い金等を支払うと、こういうたてまえになっておりませんことは御承知のとおりでございます。そこで、私もよくわかりませんでしたが、いまの治療費とか介護料とかいうものにつきましては、会社が生存者年金のほかに別に支払うと、こういうたてまえだということでございますし、また、その医療手当につきましては、年金の中に含められてあると、こういう話し合いで和解ができているということでございますので、先生の気持ちは私、よくわかりますけれども、いま直ちに新しい制度として、国がそのほかに特別の見舞い金等を続けるという道がないのではないかと思うわけでございます。そして、生活保護費の問題につきましては、これは公害による被害者に対する温情問題というのではなしに、別に生活保護体系として出されているお金ではございますが、しかし、先生のおっしゃるようなことは、これはお互いいまの世に生を受けている者といたしまして、気持ちがよくわかりますので、でき得る範囲の患者家庭に対して利益となるような計らいはできないものかというようなことで研究をさしていただいている、こういうわけでございます。別に何か特別の制度でもございまして、そうして国から年金を出すということの含みがあれば別でございますが、それがないものでございますから、いかにも薄情のようでございますが、そういうことです。ただ生存者の方にも年金のほかに一時金というものが出ることにきまったと、こういうふうに私どもは理解をいたしております。
  176. 原田立

    原田立君 それが、一時金だって出るからいいじゃないかというのじゃないでしょうが、少ないのですよ。これはまた、こうやって補償金が入るであろうというので、いままですでにだいぶ借金してきているのですよ。入ればすぐ返さなければならない。そういう事情もあるのです。で、やっぱりある程度生活の基礎になってくるのは、どうしても年金だと思う。その年金が、何度も申し上げて恐縮なんですけれども、三十八万円である。十二カ月に直せば三万一千円である。それでは非常に少ない。だから、何とか処置ができないかということを申し上げておる。大臣のお話の中に、現在そういうふうな制度はないから、できないのだというお話でしたが、そんならば、国会は立法機関なんですから、そういうような人たちに対して、公害病ですね、公害病の人たちに対するそういった手厚い態度としての立法化ということも、厚生省としては十分考えていいのじゃないだろうか、こう思いますが、いかがですか。
  177. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 私がこの場でお答えを申し上げられることは、先生の御提言として承って、研究をさしていただきます、こういうこと以外には公式的には申し上げられない、こういう次第でございます。
  178. 原田立

    原田立君 じゃ、それはうしろ向きの御答弁であっては私は納得しがたいけれども、前向きの答弁ということで承っておきます。また何回となく委員会でお伺いしたいと思いますから。  それから、あそこに湯之児リハビリテーションがあって、そこに胎児性の患者が、子供さんが十四名ですか、いま入院しております。手足がこんな曲がったおとなの人たちも七、八人入っております。そこのお医者さんといろいろ話し合いをしてきたんですが、こういうような人たちは、もう一生涯国で、市で、現在では市で抱え切りでいかなければならない。そのためにもコロニーとかあるいはナーシングホーム等をぜひともつくってもらいたい、かように申しておりました。去る四月三日の参議院の予算委員会で、私、厚生大臣にお伺いしたときにも、ちゃんと検討いたしますという前向きの御答弁をいただきました。まだ一カ月しかたっていないから、その後どうなっておられるか、その点お伺いしたい。
  179. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 不幸にして胎児性の水俣病等で生まれながらの心身障害になられた子供さん方、まことに気の毒なわけであります。でありますので、これは何とかそういうお子さま方を収容してめんどうを見られるような、いわばコロニー的なものがあってしかるべきだという気持ちを私は持ち続けております。ただ、水俣病の該当者だけでコロニーが運営できるわけでもないので、この機会に、さらに入所対象者の範囲も広げたような意味での施設にしたらよかろうと思うわけでございますが、これはその、すぐ国立でそういう施設をつくる、こういうことは現実の問題としてなかなかむずかしいことは申し上げるまでもないところでありますので、   〔理事中津井真君退席、理事小野明君着席〕 熊本県とも打ち合わせまして、そうしてその建設主体、運営主体をどういう形にするかということを、もう少し詰めさせていただいた上で、だんだん形のあるものにせざるを得ない、こういうふうに考えておりまして、私はそういうことについての構想、ビジョンというものを放棄をいたしておりません。
  180. 原田立

    原田立君 水俣病の子供たちだけでつくるのは無理だという、そういうお話ですけれども、お医者さんたちは水俣病の子供たちだけでつくってくれ、そういう要望が強いのです。というのは、あそこの湯之児のリハビリテーションも一番最初はそんなような意味合いでつくられたそうです。だけれども経営が成り立つか成り立たないか、そんなところの考えもあったのでしょう、ほかの患者もどんどんどんどん入っていって、結局その水俣病の胎児性の子供たちの手当てのしかたがだんだんとこう粗雑になってきている、そういう現状なんです。だからこの前四月三日に御質問したのです。ですからまだ大臣、そんなちょっとうまくいかないのだというような御答弁をいまいただくとは私実に意外千万です。あの当時るる実情は申し上げたとおりなんです。それでこれはぜひともこの胎児性の患者のためのコロニーとかあるいはナーシングホーム、これは十分つくっていただきたい、そういうのに対して金を出し惜しみはすべきではない、そういうものこそもうどこにも救い手がないのですから、そういう人たちこそもっと手厚い態度を、対策を講ずべきではないか、こう思うのです。重ねてお伺いします。
  181. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 私はいまここで公害部長と若干の問答をかわしておるのですが、その仕事は、所管にこだわるわけじゃありません、それはすべて私の仕事ですけれども、児童局長にやらせておることでございます。それでその方面の考え方、あるいは現地の考え方もそうかもしれませんが、重症心身障害児の施設とする場合には、水俣病のお子さま方だけを収容する施設であるよりも、さらにより広い、その対象のお子さま方と一緒にその療育といいますか、をしたほうが現実には非常にいいのだということで、そういう意見もあるようでございます。もっともさらに大きくなって授産とかなんとかいうような場面が生じましたときには、それはその関係の方だけを対象とする施設というか施策というか、方法なども考えなければならぬのでしょうが、いまの場合の収容施設としてはただいま申し述べたほうがよろしいと、こういう意見もあるそうで、その辺まだ具体的にこうすると、こういうことに残念ながらきまっておりません。金を惜しむべきでは、もちろんないわけでありましょうが、私どももできる限りの予算をとりまして、そして水俣病その他の公害の被害者等も含めた、最も有効にして適切なる方面に厚生省の予算を使うことはもちろんでございますので、もう少しそれらの検討を続けさしていただきたいと存じます。
  182. 原田立

    原田立君 その検討も、でき上がっていく方向の検討ならぼくはけっこうなんです。ただ現状こういう公的な手当てのしかたがないからもうだめなんだ、だけれども何とか検討してみようだなどという後向きの検討なら私は拒否したい、もっと前向きでやっていただけるものと、こう理解いたしておきます。それからいまの、じゃあこういう子供たちが分度は大きくなった場合の授産所の問題、いま大臣のお話があったのですが、生存者の人たちも軽い人もおります、中くらいの人もおります、重い人もおりますけれども、大体軽症ないし中症くらいな人たち、そういう人たちの社会復帰のためのいわゆる研究機関をつくってほしいというのが現地の要望でありました。ところが、厚生省、国のほうでは、新潟の第二水俣病と同一歩調をとるようにしているから、熊本のことだけを取り上げてやるわけにはいかないということで、いまもってそれが前進が一つもない、三年くらい前から前進が一つもない、こういうふうなことでありました。この問題も過日の予算委員会で大臣にお伺いしたらば、マスタープランをつくってしっかりやっていきたいというふうな御答弁がありました。先ほどの質問とちょっとダブリましたけれども、すでに一カ月たったわけです。どういうふうな結論になられたか。
  183. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) こういうことにいたしましたから、大臣判こを押してくれと、こういうようなまとまった具体案はまだできておらないようでございます。しかし、そういう不幸なお子さま方を対象とするのが厚生省の仕事でございますので、先生から重ねてそういう御意見があったことを、きょうここに、申しわけございませんが、その方面の児童局あるいは社会局の諸君がおりませんので、私からさらに督励をいたすようにいたしたいと思います。
  184. 原田立

    原田立君 これで終わりにしたいと思うのですが、今度の補償問題で、各新聞社あるいはいろいろな評論等にも寄せられているのは、期待はずれの水俣病補償案であったという声が圧倒的に強いわけです。ですから、それについてはもっと一考を要しなければいけない。  私もう一つ申し上げたいと思うのは、この水俣病、この補償について、今後もいわゆる一つのデータとして貴重な資料になるのだろうと思いますが、公害審査会にこれをストレートに右へならえということでやる先例としたのでは相ならないのじゃないか、かように思うのですが、こういう補償問題についての早急な取り上げ、こういうことを行なうべきではないか、今回こうやって水俣病の補償が不満足ながらきまった結論を踏んまえて、何らかの措置を加えるべきではないか、かように思うのですが、いかがですか。
  185. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) これもよく御承知のように、今回の処理は私があの三人の処理委員会の方々に解決策を諮問して、その御答申をいただいて、厚生大臣の判断で、厚生大臣の政治的責任で決定したということではないわけでございますので、私はあの処理の結論に、高い安いをも含めましていまここで批判をいたさないのでありますが、私どもが感じておりますところによりましても、今回の補償処理委員会をつくって処理いたしました経緯というものは、やや異例のケースだと思います。これは先ほどの処理委員会の座長の千種先生からもお話があったようでございますが、三十四年でございますか、すでに先発した一つの処理契約がなされておったこととか、あるいはまた新しい事件として発生したものではもちろんないわけでありますので、そういうところに特異性があったわけであります。しかし、先般の国会で成立をいたしました紛争処理法に基づく中央処理審査会、これは全く新しく出発をいたしますものでありますから、今回の事件の取り上げ方とは違ったタイプで私は処理されるものと考えますので、したがって、おのずから先生のおっしゃるようなことの心配はなしに、これが動きます場合には、今回の三人委員会の経過あるいはその進行などは全く例にならないで運営をされるものと私は考えております。
  186. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 現在国会で鉛公害の問題が非常にやかましくなっておりますときに、私はもしも国会の車が鉛のガソリンを使っておってはこれは外に対して申しわけないと思いまして、十二日の日に、衆参両院の議長に、国会がまず率先して無鉛ガソリンを使うこと、それからCOを取るためにはアフターバーナーを全部の車につけることと、こういう二つの申し入れをいたしました。きょうその返事がまいりまして、アフターバーナーはすぐ二、三種類を取り寄せて、各車に取りつけて、どれが一番効果があるかということがわかればそれをごく最近に全車につける。こういう返事がございました。それから無鉛ガソリンの問題は、これはエンジンを取りかえなきゃならぬという問題があるので今月末売り出されるオクタン価八十九から九十というこれを今月末から全部切りかえてそれを使うことにいたしますと、こういう返事がまいりました。私はこれでまあちょっと安心をして、私は無鉛化が一番よいと思いますが、それはまず日を待つこととしまして、そういう状態で私は国会議員として安心をして質問することができると思うんです。  そこで私は質問に入るわけですが、衆議院におきまして、先日米原議員の要求に対しまして、通産省発表いたしました各社のガソリンと、四アルキル鉛の添加量の内容について私は質問いたしたいと思うんです。ここにもありますが、十九社のアルキル鉛の添加量の量は出していますけれども、その会社の名前はABCからSまでの十九で会社の名前を明らかにしていないのです。これでは自動車にガソリンを使う人がどこのガソリンが一番鉛の含有量が少ないかということを判断してですね、そのガソリンを使って、できるだけ鉛公害のないようにしようと思いましても、その選択権がこれでは無視されてしまって、選択ができないじゃないですか、ABCではそうでしょう。だからこういう際は、企業の秘密とか企業の利益というようなことを第一に置くのじゃなしに、国民の健康という立場に立って会社はいまたくさんもうけているのですから、その利益が少々少なくなってもあたりまえじゃないでしょうか。だからこの会社名を私は明らかにすべきだと思うのですが、それに対して簡単に答えてくださいよ。
  187. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 御承知のように、鉛公害につきましては、従来からはエンジンのいまおっしゃいましたアフターバーナーに対して四鉛化鉛が触媒を腐食するということでそれを除くことが必要だという面で、無鉛化を進めようという基本的な考え方であった。ところが、先般の柳町の実情から見ますと、鉛が人体にも影響するということから、できるだけ早急に鉛を少なくとも低減していくことが必要であるということで……。
  188. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そんなことを聞いているのじゃないよ。
  189. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 六月六日に早急に各社に鉛の低減を命じました。したがいまして、早急に各社とも鉛の加鉛量を減少するということで、今後の製品をすみやかに低い加鉛量を表示することに相なった、そこで御指摘のように、従来はそういう趣旨から加鉛量に設備関係でいろいろ差があったのでございますが、今回の措置で加鉛量を急速に低減するということにいたしておりますので、この際は各社の量は過去のものにもなるという事情もございますので、この際発表はしないでおくべきではなかろうかというふうに考えるわけであります。
  190. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 このABCからSまで見まして、みな含有量は違うのですよね。だからほんとうに使用者が選択して使うということをたてまえとするならば、会社名を発表すべきですよ。それを発表しないというのは、国民の健康よりも会社の営業が大切だという通産省のこの考え方は、これは私は許すことができない、そこでこの間、通産省が出しましたこの表を見ましても、この内容もきわめて不明確なものだといわなければならぬと思うのですね。ここでいう四アルキル鉛という問題ですね、この問題について私は三つ質問しますがね、第一は、ガソリン添加剤としての四アルキル鉛液をいうものか、ここで通産省発表しているこれは四アルキル鉛液をいうものか、また第二番目は、四アルキル鉛そのものなのか、三番目は四アルキル鉛を四エチル鉛に換算したものかどうか、この三つです。
  191. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) お答えいたします。四エチル鉛換算でございます。
  192. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それはそうしておきましょう。  名古屋市立大学奥谷教授が昨年七月に調査し、発表したガソリン加鉛量分析結果に対しまして、通産省は名古屋通産局に対して調査を命じたと思いますが、どのような調査をしようとするのか。調査の内容、項目を明らかにしてもらいたい。これが一点です。  もう一つ、その調査結果が判明していたら、ここでその結果を報告してもらいたい。
  193. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 製油工場におきましては、ガソリン量とそれに混入する四エチル鉛との量がそれぞれメーターで出るようになっておりまして、これを当時の実績を調査するということにいたしております。現在まだ調査中で、まだ手元にまいっておりませんので、いま御報告できない状態でございます。
  194. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 毒物劇物取締法の施行令第五条にいう四アルキル鉛とは、具体的に何をさしておるのか、また、ここに示されておる基準を守らせるための指導はどのように行なわれておるのか、この点をお尋ねします。
  195. 山高章夫

    説明員(山高章夫君) ただいま御質問のございました毒物及び劇物取締法施行令五条の混入の割合の規定でございますが、ここに書いてあります四アルキル鉛を含有する製剤と申しますのは、これは四アルキル鉛の特性に着目しまして、それを利用することを目的としてできた製剤という意味でございまして、混入の割合は四アルキル鉛でございます。
  196. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 混入は四エチル鉛のことですね、そこをはっきりしていってください。
  197. 山高章夫

    説明員(山高章夫君) お答え申し上げます。四アルキルと申しました場合、四エチル及び四メチルを総称して申すわけであります。
  198. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 先ほど答弁で、この通産省発表したこの表は四アルキル鉛を四エチル鉛と、これに換算したものだということを先ほど答弁になりましたが、私たちのほうで、——たちのほうというと語弊がありますが、東京保健生活協同組合検査部です。ここであなたたちがABCしか発表しないから、九つのところで、ガソリンスタンドでガソリンを買ってまいりまして、そうして原子吸光分析法によって私たちは分析いたしました。その結果を申し上げますが、東亜モービルのガソリンは四エチル鉛の場合二・三九PPMです、それから大協石油は五・六PPM、丸善が三・七六PPM、昭和シェルが三・五六PPM、共同が三・六九PPM、エッソゼネラルが二・八七PPM、日石カルテックスが三・一四PPM、三菱石油が三・二八PPM、出光が五・〇六PPMとなっております。これはなんじゃないですか、この毒物のこれでいくならばアルキルが四・九二以上は違反だとこういうことになっておりますが、これで見ましたならば、大協とそれから出光は明らかに五・六と五・〇六になっておるのですから、明らかに違反になっているんじゃないですか、なぜこれを禁止しないのですか。そういうことを見のがしているんじゃないですか。
  199. 山高章夫

    説明員(山高章夫君) ただいまの先生のお話のあげられました加鉛ガソリンの四アルキル鉛の含有量の御発表でございますが、突然でございますので、毒劇法五条に換算できませんが、お話のように、もし大協なり出光がこの条文に明らかに違反しているということが確認できれば、やはりしかるべき措置をとらなければならないと考えます。
  200. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これは重大な問題でございまして、あなたたちのほうで積極的に発表するならわれわれこんな苦労せぬでもいいんです。それをABからSまで十九、わけのわからぬ発表をするからそれではわれわれで発表しなければならぬ。そこであなた苦労して九つのスタンドでガソリンを買ってきて、それで分析したんじゃないですか、その結果がこうじゃないですか、あなたたちこれに対してはっきりした資料持っていないから話できないじゃないですか。なんでそこのところ研究していないのですか。
  201. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 単位がわからなかったそうです。CCかマイクログラムかわからない。
  202. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あのね、CC・ガロンですね。
  203. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) ガロン当たりCCでしょう、PPMじゃない。
  204. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 CC・ガロンです。
  205. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) ガロン当たりCCということで、われわれのほうは整理をいたしておるわけでございまして、JIS規格でいきますと〇・八CC以下ということに相なっております。したがいまして、ガロン当たりですと三コンマ強ということに相なりますので、いま先生の御指摘のように、五コンマという数字になりますと、これはわれわれのほうとしてはよく実情につきまして検討しなければならないというふうに存じます。先般来は、六月十五日に実は先般の三つの指示に従いまして、各社急速に減少する数値を今後の生産の加鉛量として提出をしてまいりまして、平均いたしますと、ガロン当たり一CC前後にするということに相なっております。今後の生産でございます。
  206. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) ちょっと速記をとめて。
  207. 小野明

    ○理事(小野明君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  208. 小野明

    ○理事(小野明君) 速記を起こして。
  209. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) われわれのいま手元にある数字ではそういう大きな数字になっておりませんが、いま御指摘の事実につきましては調査させていただきたいと存じます。重ねて申し上げたいのは、今後の生産につきましては、先般の応急対策に応じまして、各社ともガロン当たり一CC前後ということで加鉛量を生産計画の中に組み入れるということに相なっておりまして、これは実績を確認して加鉛量の低減を確保してまいりたいというふうに考える次第でございます。
  210. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでは私のこれがあなた間違っているというならば、責任を持って至急に各社のこれを発表しなさい。発表しないとこれがほんとうになりますよ。責任を持って発表しなさい。発表しないでこちらが検討したものをそれを間違っているなどと言うことできないでしょう。そんなことはできないじゃないですか。筋が通らぬ。だから発表しなさい、各社。  それから次に申しますが、四アルキル鉛というのは一般的総称でしょう。エチルもメチルも両方総称したものが四アルキル鉛ということになっているのでしょう。一般的総称であって、現実にはこういうものは存在していないのじゃないですか。存在しているのですか、四アルキル鉛というものが。存在していないと思うのですね。存在しているのは四エチル鉛、四メチル鉛ですね。それが存在している。そういう存在しているものを毒劇物としてきわめて危険なものを具体的な物質として取り締まる必要が私はあると思うのですね、こういう実在のものをですね。厚生省としては、だから、この毒劇物取締法施行令第五条違反の検査をどのような方法で行なっておるのか、これを私は明らかにしてほしいと思うのです。四アルキル鉛というものが実在するのか、それを検査の基準としてやっておるのか、何を基準としてこういうことをやっているのか、そこを伺っておきたいのです。
  211. 山高章夫

    説明員(山高章夫君) ただいま四アルキル鉛というものが実在するかしないかというお話でございます。四アルキル鉛はおっしゃるように、鉛とアルキル基でございますが、これはエチル基とメチル基でございますが、それとの化合物を言っておるわけでございまして、具体的に個々になりますと、四エチル鉛とか四メチル鉛ということになります。
  212. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 だからこの毒劇物の取締法に入れる場合は、その実在のものを入れて、四エチル鉛の場合はこうこうだ、四メチル鉛の場合はこうこうだというふうにしていかなければ、実在しないものをここに入れるということはおかしいじゃないですか。だからこれは法改正をしなければいけないのと違いますか。それでないと国民はみんな迷惑しますよ、わけがわからないものだから。
  213. 山高章夫

    説明員(山高章夫君) ただいまの御指摘でございますが、四エチル鉛を入れる場合は四エチル鉛で混入の割合を測定いたしますし、四メチル鉛を入れた場合には四メチル鉛で測定いたしまして、結局包括的に大きく押え込んでおるという形でございます。
  214. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それではここへ「四アルキル鉛を含有する製剤は」というようなことばじゃなしに、実在する四エチルなら四エチル、四メチルなら四メチルと、この二つにして、この場合はこれだけの含有量はいかぬ、これだけはいかぬというふうに書くほうが私は親切だと思うんですよ。実際に、実在しないものの名前をあげて、そうしてこの法律を書くんだって、法律見た人はわからないじゃないですか。実際にこれを四アルキル鉛を入れるんならともかくも、そうじゃない。入れる場合は四エチル鉛でしょう、四メチル鉛でしょう。だから、実際に即した法律をつくる必要がないかと、これは法改正が必要じゃないかということをぼくは言っているんですよ。
  215. 山高章夫

    説明員(山高章夫君) アルキル鉛でございますが、結局名前が包括的なものでございますが、これが結合子が四本ございまして、それにメチル、エチルがいろいろな形で結合するわけでございます。したがって、そういうものを全部押えるという意味で四アルキル鉛として指定してございます。
  216. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それじゃ、さっき現地の測定結果で、四エチル鉛の値を採用するならば明らかに違反した数値が出てくる。こうした際に、石油メーカーが自分の社では四メチル鉛を使っている、こういうふうに言ったときに、そのような言いわけは一体通用するんですか、どうですか。
  217. 山高章夫

    説明員(山高章夫君) ただいまの御質問のような言い方は、本施行令の適用にあたっては通用しないと思います。
  218. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 通用しない。この法律に四アルキル鉛を使っている、こういうふうになっておって、そうして私のほうでは四メチルを使っておりますと、こういう場合に、その言いわけが四エチルなら当然法に触れるんですよ、先ほど申しましたように。それが四メチルならば法に触れぬということにもなるんですがね。しかし、四エチルを使っておって、四メチルを使っておりますと、こう言った場合に、そういう言いわけをどうしてわれわれは防ぐことができるんですか。
  219. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 先ほど私のほうで御説明申し上げましたのが四エチル鉛あるいは四メチル鉛あるいはこれの混合液を入れてオクタン価を上げるという実際の加鉛の作業をやっておるわけでございます。その際、数値といたしましては四二チル鉛で数値を出す、こういうことにいたしておるわけでございまして、四メチル鉛の場合は、四エチル鉛に換算する場合、一・四倍ということで換算をして数値を出しておるわけでございます。
  220. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私はこう思うんですよね。そういういろいろなわけのわからぬようなことをするんじゃなしに、毒劇物取締法施行令の内容は直ちに四エチル鉛の添加量を規制する、こういうことで私は改正すべきだと、こういうふうに私は思うんですが、大臣どうですか。そういうふうに簡潔にみながわかるように改正したほうがいいんじゃないですか、これは。
  221. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 私はどうもこの答弁を聞いていて歯がゆくてしかたがない。私は応用化学の素養はございませんが、どうしてこれだけたくさん学者がそろっていて、須藤先生が納得するような説明ができないのかと思う。大臣がみずかな御答弁をいたしますが、鉛にはまず有機と無機がある。それでその有機のほうの中にはエチルもあればメチルもあれば、もっと構造式が違って、エチルでもメチルでもない第三鉛も第四鉛もあるんだそうです。あるらしいです。そこで、そういう有機鉛のどれでもこれ以上入れちゃいけないということで、それの総称的にアルキル鉛を一定の割合以上入れちゃいかぬ、こういうことになっているようでございまして、したがって、エチル幾らと書くとメチル入れたものは助かっちゃう。エチルまたはメチルと書くと、エチルでもない、メチルでもない有機鉛を入れたものはこれに触れないということになるので、総称では四アルキル鉛、これも水銀でも同じでありますが、そういう言い方をしておる、こういうことのようでございます。どうでしょうか、そうだと思いますが。なお、これは私のほうでもすぐ帰って、ほんとうの技術者の上役とも相談させまして、委員会開いていただかなくても、須藤先生のほうにこういうことで御理解願いますということで、よく御説明申し上げるようにさせたいと思いますので、この件はお進めをいただきたいと思います。
  222. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それじゃその点は、大臣がせっかくない知恵をしぼられてお答えになったようですから、私もそれを多として、ここは預かっておきましょう。  それじゃ時間がありませんので、最後の質問でございますが、通産省発表したところによりますと、一年後には加鉛量を半減させるという発表ですね、そうですね。五年後には無鉛化させていく、こう言っております。私はこのようなあいまいなことではどうも納得がゆかぬと思うんですね。直ちに無鉛化の措置をとることを私は要求したいと思うんですね。
  223. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 七月一日からです、半分にするのは。
  224. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 半減はわかりました。無鉛化をできるだけ早く、直ちにできなければ数カ月にはそういう措置をとるという、そういう姿勢があってもらいたいと思いますね。しかし、通産省の言う一年後半減、こういう内容についても、その内容がきわめて私は不十分なものだと言わなければならないと思います。  そこで、鉛そのものとしての半減か、あるいは四エチル鉛としての半減か、また、四メチル鉛そのものの半減か、そこを明らかにしておいていただきたいと思うんです。というのは、こういう問題、あいまいなことではいかぬと思いますので、この際、排気ガス鉛の被害に悩むところの国民に対しまして許されないことと思いますので、その点三点、明らかにしておいていただきたい。
  225. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) ただいま須藤先生から御指摘がございましたが、四エチル鉛の減少につきましては、この七月から実施に移すように指導いたしまして、いま、加鉛量の低減の計画はすでに手元に参っておるわけでございます。これによりますと、特に多いハイオクタン価につきまして、半分弱の加鉛量に落として混合生産するということでございます。それから五年間ということになりましたのは、現在、御承知のように、たくさんの自動車が、五、六百万台走っておるわけでございまして、その中にやはりハイオクタンのものを採用して走っているというものもございまして、これらのものをやはり運用するということが必要のみならず、エンジンの構造として、鉛を添加しておきますとエンジンを保護するという機能を果たしております。これを抜いてしまいますと、弁座等につきまして材質を変えなければならぬというような問題もございまして、それらの研究をする意味で、自動車公害対策小委員会のところで研究を進めて、五年以内というのが目下の目途でございますが、できるだけ早く実現したいということで検討を急ぐということにいたしておるわけでございます。
  226. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、この半減は四エチル鉛の半減。
  227. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 四エチル鉛換算の半減でございまして、そのことは即、鉛そのものの減少ということでございます。
  228. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 大臣、この鉛問題がクローズアップされたときに、私は通産省厚生省の係の人に部屋に来てもらいました。そしていろいろ話をしたんです。何でこういうことをほうっておくのかと言ったら、われわれは、省は、費用が足りない、人手がないので研究が不十分な面があると言うのですね。それで私は、費用が足りないなら何で大蔵省に要求せぬかと、こう言ったのです。そうしたら、われわれは要求しても査定のときに大蔵省に削られてしまって十分な費用をもらえないと、こう言うのですね。そんなときこそ何で国民の代表である国会議員に言ってこないか、そうすればわれわれ大蔵省に足を運んで、あなたたちが十分研究のできるような費用をひとつ取ろうじゃないか、それでいかなければ国民の前に、国民の皆さん、われわれはこういうふうにやりたいと思うが、大蔵省が金を削るために十分な研究ができませんということをなぜ国民の前に訴えないか、そうすれば問題解決するじゃないかと、こう私は答えたのですが、来年のこういう問題について厚生省通産省は研究費を大幅に要求なさいますかどうか。それからそれに対して査定をする場合に——ここに大蔵大臣がいないので、私は大蔵大臣に来てほしかったのですけれども、いないから。大蔵省の態度は一体どうなのか、厚生大臣ともあろう方が大蔵省の査定で費用を削られることに黙っておるのではなく、国民の健康を守るためには絶対こういう費用が要るんだ、この研究には要るんだという立場を守って十分なことをしていってもらいたいと思うのですが、どうですか。
  229. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 私も全く同じ気持ちでおりますので、昭和四十六年度における予算要求の際には、いやしくもわずかばかりの予算がとれないから研究ができないということのないようにぜひいたしたいと思いますが、またどうぞひとつ国会の諸先生からも御支援をいただきたいと思います。
  230. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 大蔵省来ておりますね、だれか来ているのですか、政府委員、来ているのではないですか。
  231. 小野明

    ○理事(小野明君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  232. 小野明

    ○理事(小野明君) 速記起こして。  二十分間暫時休憩いたします。    午後三時四十四分休憩      —————・—————    午後四時十分開会   〔理事小野明委員長席に着く〕
  233. 小野明

    ○理事(小野明君) それではただいまから公害対策特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続いて質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  234. 小平芳平

    ○小平芳平君 静岡県に田子ノ浦港という港があるのですが、この田子ノ浦港は付近のパルプ工場をはじめとする工場排水でもう埋まってしまうんですね。港の機能も、もう麻痺寸前、また一つの埠頭はもう使えない。あるいは五月には、入港した船が貨物を積んで出港しようとしたけれども出られなくなってしまったというようなこと、あるいは東京の新聞にも大きく写真で「萬葉遠くヘドロの浦」、こういうように写真が出ております。こういう公害がこれだけ全国的に取り上げられているときに、いまだにまるっきり公害に対する考えがないにもほどがある。せっかく建設した港すら埋まってしまって船が出入りできなくなっておる、そんな港が現にいま日本の国にあるという、そういうようなことは非常に問題であると思います。初めに、運輸省のほうから港の現状について御説明を願いたい。
  235. 大久保喜市

    説明員大久保喜市君) お答え申し上げます。  ただいま先生の御指摘のように、田子ノ浦港、これは昭和三十三年に着工いたしまして、人工の堀り込みの港湾としてつくった港でございますが、現在、ことに今年になりましてから埋没が激しく、先生御指摘のような状態になっておるという事実でございます。  ただいまの御質問にお答えする意味で、田子ノ浦港の現状についていささか詳しく御説明申し上げたいと思います。  田子ノ浦港は、昭和三十三年に着工いたしまして、もうほぼ九〇%ができあがっております。それでその中の主力になるところの埠頭は、中央埠頭、吉原埠頭、富士埠頭、こういうところに水深九メートルの岸壁をはじめといたしまして、幾つかの大型船の岸壁を用意いたしたわけでございます。それで、建設の当初から沼川及び潤井川の上流にございますところの製紙工場からの製紙かすのまじった工場排水、これの流下が問題になっておりまして、これらにつきまして、あの地域の計画といたしましては、港湾の事業とは別途に岳南排水路建設の計画がございました。この岳南排水路の建設の計画が実現いたしますというと、それによって港内に流下する工場排水は緩和される、こういう判断のもとにこれが完成までの暫定措置といたしまして、岸壁の前面の埋没に対しては維持しゅんせつを行なう、こういうようなことでその川口のところの廃かすのたまる付近は少し余分に掘りまして、そこからポンプ船でたまったものを毎年維持しゅんせつをしていたというのが現状でございます。それで、最近数年間の実績から申しますというと、おおむね年間百万立米の維持しゅんせつをやることによりまして水深の維持が可能でございまして、年々静岡県といたしましては、港湾管理者は静岡県でございますので、港湾管理者は一億円ないし、一億五千万円程度の維持しゅんせつ費をかけまして、しゅんせつをやっておるわけでございます。ところが、本年度この埋没しゅんせつの工事をやるにつきまして、埋没対策としての維持しゅんせつをやるにつきまして、その捨て場が漁民の方々の同意を得られない、こういうような事態に立ち至りまして、ことしの三月からこのしゅんせつ工事がストップしていると、こういうようなことのために、先生の御指摘にございますように、このうちの川口に近いところの部分の岸壁の水深が非常に浅くなりまして、吉原埠頭に至りましては水深が一メートルないし二メートルというような浅いことになって、使用不能の個所が出てきた、こういうような状況にございます。港湾管理者といたしましては何とかこの維持しゅんせつをはかりまして、この港湾の機能の低下を防ぎたいと考えて努力してまいったわけでございますが、漁業補償問題が難航いたしまして、これができない。そういうようなことから、先生の御指摘のございますように、非常に憂慮すべき状態に立ち至ったというのが現状でございます。
  236. 小平芳平

    ○小平芳平君 港湾管理者としては、維持しゅんせつで港の機能を維持しようとなさるその御努力はわかりますが、通産省それから企画庁にお尋ねしますけれども、その前に下水道の問題でお尋ねしますが、そうした維持しゅんせつをしなければならないこと自体が問題で、そういうようなどろどろのまるでいま御説明のあった潤井川というのは、それこそ富士山麓の上流では飲料水すら取るようなきれいな川ですが、その川に向かって製紙工場からもうどろどろのものをそのまま放流する。そのために悪臭とそれから川といい、港といい、あわとヘドロと悪臭と、そういうもので見るにたえない現状にあるわけです。そういうところで港湾管理者はただ掘ることだけ考えるのはやむを得ないとしても、これは通産省としても企画庁としても、こんな公害に対して何ら考慮を払わないで、ただ生産だけする。それは中小企業工場も数多くありますけれども、大手の工場といえば数社なんですから、しかもその大手の工場から流れ出しているところの写真も私はとってきて持っておりますが、こんな状態で放任しておくなんというのは考えられない。そこであとで建設省のほうからお答えを願いますが、特別都市下水路というものをつくった、缶南排水路というものをつくったわけでございますが、これは終末処理施設がないわけですね。ですからこれもちょうどうまく、各工場から流し出されるものをみんな合わせて港へほうり込んでいるというのが現状のように思いますが、建設省としては、この特別都市下水路がどういうような計画で着工されて、現在どうなっているか、おわかりだったらお答えを願いたいと思います。
  237. 久保赳

    説明員(久保赳君) ただいま先生御指摘の地域には、静岡県が事業主体の缶南下水道事業が進行中でございますが、その計画は毎秒二十八トンにわたる工場排水を集めまして、最終的には処理の上放流をすると、こういう計画になっておりますが、現状では、御指摘のとおり、まだ処理場の建設がなされておりません。しかし、計画といたしましては処理をして、主として問題が浮遊物が多量に含まれるというところが一番あの地方の問題でございますので、浮遊物を除去した上で放流をする計画になっております。ただし、これにはかなりな建設費がかかりますので、短期間には無理だと思いますけれども、処理をした上放流するという計画になっておるのは間違いございません。
  238. 小平芳平

    ○小平芳平君 大体いつごろそれができる見通しでしょうか。
  239. 久保赳

    説明員(久保赳君) 一つの問題は、あの地方にはまだ水質基準がきまっておりませんので、どの程度に放流をするかということにつきまして、海洋関係の方及び漁業関係の方とも意見を調整をした上設計にかかる予定にいたしておりますが、現在それらの関係者の方で委員会を構成をしておりまして、その設計をどういうふうにしたらいいか、処理の程度、放流水水質基準水質をどのようにしたらいいかということを意見の調整中でございますが、いまのところまだ調整がとれておりませんので、はっきりお答えを申し上げる段階ではございません。
  240. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうお聞きのようなわけで、下水路はつくったけれども終末処理の設計すらまだできておらない、しかし、港は埋まるばかりだと、そういう現状で、企画庁あるいは通産省はその問題をどのように把握し指導しておられるか、御答弁願いたい。
  241. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) ただいま御指摘の田子ノ浦につきましては、パルプ工場から相当汚濁した水が流されてきておりまして、その状況につきましては私どもも非常に憂慮しております。川に一般に流していきます分は県が条例で規制しておりますが、一番問題は缶南排水路への排水及びその処理の問題であることはいま御指摘のとおりです。で、現行の水質保全法では公共用水域についての水質基準をきめることになっておるわけでありますが、都市下水路は公共用水域に入りませんので、現行法ではそこの場所で規制する方法がございません。私どもとしていま一番念願しておりますのは、この缶南排水路から排出するところのそこに処理施設ができ、そこの水質基準設定していくということでございます。この点、ただいま建設省からお答えになりましたように、せっかく努力をされておるわけでありますが、この缶南排水路の処理の進捗状況とにらみ合わせまして、私どものほうとしても、ここに水質基準設定をはかっていきたいと思っております。現在その点につきまして、ただいま建設省からもお話がありましたが、地元はじめ関係者の間でなるべく早くこの点の意見の調整をはかってまいりたいと、かように考えております。
  242. 柴崎芳三

    説明員柴崎芳三君) 富士地区の状況は、先生御指摘のとおりでございまして、現在紙パルプ工場が約百五十ございまして、大企業と中小企業をいわゆる三百人以上と三百人以下で分けますと、三十対百十というような形になっておる次第でございますが、一日の排水量が約二百万トンということで、ほかの地区にはないような非常に大規模の製紙工業地帯になっております。でこの地域は、ただいままでの各省の説明にありましたように、缶南排水路というものを中心にして、排水系統が構成されてきたという特殊な事情がございまして、たしか着工は昭和二十六年というぐあいに聞いておりますが、非常に前からこの問題に目をつけまして、缶南排水路ができ上がりました当初は、非常に独創的ないい水路ができて市民は非常に助かったということで、各方面から見学者が殺到したというような状況でもあったわけでございますが、その後の生産状況との関連で、非常にそれがまた汚水の根源になるということで、県でもこの缶南排水路を今後いかに展開していくかということをいま検討中でございまして、われわれ聞いておる話では、缶南排水路汚水問題研究会というものをつくりまして、現在の缶南排水路の終末処理施設と、それから第二期の缶南排水路の構想をいろいろ考えておるようでございます。われわれも通産省としての立場で、この研究会の作業を大いに促進し、できるだけの協力態勢をとりたいというぐあいに考えております。で当面の対策といたしましては、缶南排水路に排水するその原水を、できるだけ工場の中で処理して、その原水の質を向上させようということで、各企業指導いたしまして、処理施設設置を督励しているわけでございますが、現在手元にありますデータでは、一年以内に設置する工場が二十三ございます。二年ないし三年のうち設置を計画しているものが四十八ございます。ただ立地条件の上でとてもできないというものが約七十五ありまして、これは工場の敷地が非常に狭くて、中小企業でございますが、非常に狭くて何ともならぬというような状況でございますので、さらに現地の事情に合わせまして、いろいろの援助手段その他を導入いたしましてまず工場内の処理施設を充実していきたい、かように考えております。
  243. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういう地元の話し合いのつくのを待っているのだというような御答弁では、いつまでたったってきれいにならないわけです。川も港もきれいにならないわけです。ですから通産省は、企業に対して、パルプ産業は、特に通産省が直接指導するわけでしょう、地元の通産局長が直接工場指導できるわけでしょう。したがって、大臣も次官もおられませんけれども、実際操業停止なり、操業短縮なり、そういうこともやむを得ないくらいの強い態度で、きびしく排水処理施設というものをつけるようにして、設置するようにしていかないことには、そういう地元の意見を聞いているのだ、下水路に期待をしておるのだ、そんなことだけじゃありませんですよ、問題点は。潤井川へだって出しているじゃありませんか。潤井川にそれじゃ終末処理施設をつくるのですか。ですから第一段階企業に対して、これだけ全国的に公害が問題化しているときに、何の処理もしないでそのどろどろの廃水というか廃液というか、もう港の管理者の話では毎日七千トンくらいの廃棄物が流されてきて、うち半分ぐらいが沈下してしまうというふうにいっている現状ですね。私はこれは港の機能ということが一つと、それ以上に大事なことは、環境がおかされているという点からいっても、この港へ小学校の子供たちが絵をかきに来ておりますが、臭い風に吹かれながら何をかいているのかと思ってのぞいて見ると、海のところがぶくぶくのあわだけかいているのですね。そういうようなことを放任しておいては、非常にこの公害行政上から考えてもよろしくない、このように思うのですが、通産省としては、もっと積極的な態度というものが打ち出されてしかるべきだと思いますが、いかがですか。
  244. 柴崎芳三

    説明員柴崎芳三君) ただいま、私、話の順序を、缶南排水路の次に個々企業設備の問題に移しましたので若干強さが足りなかったかと思いますが、通産省の第一の対策は、現在の各企業で敷地に余裕がありその能力のあるものにつきましては、全力をあげて各工場内に原水の処理施設をつくりなさいということで指導しておりまして、その結果が先ほど申し上げたような数字になっておるわけでございます。権限の問題でございますが、確かにパルプは通商産業大臣の権限下にありまして、通産局におりておるわけでございますが、ただこれは指定地域でないものですから、からぶりになりまして、われわれの行政指導もまだ現実に強制力を持っておりません。したがいまして、この地区の水質調査し、かつこれを水域の地域指定にするという作業を企画庁と共同の上至急進めまして、強制力を持った行政指導という体制もできるだけ早く確立したい、かように考えております。
  245. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは企画庁はいつごろ指定する見通しが立ちますか。
  246. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) 先ほどもちょっとお答えいたしましたように、現在の水質保全法のたてまえからまいりますと、缶南排水路の処理ということ、その終末処理というのが一番望ましいわけでありますが、ただこの点につきましては、先ほどから御答弁ありましたように、若干時間がかかりますけれども……。
  247. 小平芳平

    ○小平芳平君 いつごろと言えばいいのですよ。
  248. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) ただいま通産省からお答えのありましたように、パルプ工場からの排水のことも含めまして、なるべく早急に規制の体制に持っていきたいと、かように考えております。
  249. 小平芳平

    ○小平芳平君 なるべく早急っていつのことですか。そういうことを、岳南排水路のことだってわかってますよ。問題はいま建設省からも通産省からも説明されたような現状をどうするかという問題です、現状を。相談しておりますとか、なるべく早急になんと言っていて、そうした港の機能も問題ではありますが、そういう環境の悪化をそのままほっておく、それが問題だと私は申し上げておるのです。
  250. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) 私らのほうといたしましても、なるべく早急にこれを指定水域にし、基準設定をはかってまいりたいと思っておりますが、何ぶんにもこの手はずを踏んでまいります上には県の意向を十分に聞いていくことにしておりまして、その点の調整もございますので、いまいつということを具体的に申し上げられないのはたいへん残念でありますが、なるべく早くやってまいりたいと、かように考えております。
  251. 小平芳平

    ○小平芳平君 これは通産省に申し上げますけれども、確かにそうした地域指定も問題でしょうけれども、なるべく早急にということしか企画庁はおっしゃらないけれども、問題は、この企業が公害に取り組む姿勢が大事だということを私はるる述べているのです。あんな廃液というか、廃水というか、まるっきり目をそむけるようなものをあのきれいな富士山ろくの川へ流し、海へ平気で流すというそれが問題だというのですよ、そうじゃありませんか、それは企業企業の使命があり、また分野もあることは十分わかりますけれども、公害が問題になることは当然のこと、もうわかり切っているようなものを平気で流して、そうして自分の工場から出るそういうものを何ら手を加えようとしないことが問題である。ですから通産省のちゃんとした的確な指導なり処置を希望いたします。  それからもう一つは、先ほど厚生大臣が出席されているときにも触れましたが、同じその地方の大気汚染、これは厚生大臣も、私が持っている資料と同じものを、富士保健所で出された資料を先ほど読み上げられましたので省略いたしますが、通産省に伺いますけれども、ここの企業は確かに排水についてはいままで述べたような現状にある上に、こうした大気汚染についても少なくともほかの地域に比べてのんびりしてい過ぎやしないか、それはまあ低硫黄の燃料を使うようになったとか、高煙突をつくったとかいうことを言われますけれども、現実に汚染が悪化していたんでは、住民は健康を害していくわけですから、そういう点についてももっとしっかりした指導通産省からあってほしいと思いますがいかがですか。
  252. 柴崎芳三

    説明員柴崎芳三君) 御指摘のように、当地区はSO2の汚染につきましても、現在はあまりいい地域ではございません。四十四年度の調査によりますと十測定点のうち五つの測定点で環境基準を越えている状況でございます。このような状態を押えまして、現在通産省でやっております方策は、まず第一に、産業公害総合事前調査という方式を四十四年度に実行いたしまして、現在そのデータに基づいて風洞実験をやっておるわけでございますが、その実験を待ちまして、各企業に的確な排煙関係設備の改善を指導いたしまして、気象条件に応じてできるだけ早い時期に汚染の度合いを減らそうという努力をしておるわけでございます。それと並びまして、ことしの二月に排出基準の改定を行ないまして、これは特にきびしく改定いたしまして、以前のK値から比較いたしますと四六%程度カットしたわけでございます。その四六%カットいたしましたK値一四・〇でございますが、これで計算してみますと、現在あります煙突三百六十四本のうち百十二本が不合格、したがいまして、これらの工場からは改善計画を出させまして、その改善計画に従いまして、ことしの九月ないし十月までには完全にこのK値を実現できるような形で現在強力に指導しておるところでございます。で、特にここで注意しなければならない点は、富士山ろくという非常に特殊な地形条件のもとにありますので、非常に波の時期が多い、それから風向きも普通の地域よりも非常に違うということで、高度の汚染地域がどこかに生ずるというよりは、非常に、あまり濃度は高くないけれどもその高くない濃度のSO2が累積して、全体として悪い結果が出るというようなデータをわれわれ握っておりますので、そういう地理条件に相応いたしました高煙突化、集合化、あるいは低硫黄燃料の使用というものを現実の指導の具体的内容として含ませまして実行しておる次第でございます。
  253. 小平芳平

    ○小平芳平君 確かに富士山ろくという特殊な地域においてあらゆる公害を集めておりますね。ここはまるで公害の見本市のようなものです。いまの硫黄酸化物の汚染とともに、環境汚染として現地住民として気持ちの悪いのは硫酸ソーダ、芒硝といっておるようでありますが、が落ちてくる、ぺたっとくっついちゃう。それが自動車の屋根や洗たくものに落ちてくる。あるいは悪臭、夏になると窓をあけられない。パルプ工場のあのくさいにおい、これは大部分の人が御経験だと思いますが、あるいは農作物あるいはトタンとか、そういうものに対する被害が深刻になってきている。まあそういうような点も通産省は把握していらっしゃると思いますので、いまおっしゃったような趣旨規制を強めて、そうして実際の効果があがるようにしていただきたいと思います。そのように御要望いたします。  次に、同じ富士川を越してすぐ隣に日本軽金属蒲原工場というのがあります。ここではアルミニウムの生産をしておりますが、このアルミ工場からまた弗素による大気汚染が生ずる。で、この弗素による大気汚染はほかにもありまして、たとえば昭和電工喜多方工場というような古い工場もありますが、こうした古く何十年来操業してきた工場周辺に共通する点をあげてみますと、まず第一に、養蚕がだめになって蚕は永久に飼えない。まず何里四方かにわたってアルミ工場ができたためにもう養蚕は永久にできない。そうして次に、梅やカキのようなくだものが実らなくなってしまう。農家であっても自分の庭から梅やカキを取って食べるということがもう考えられなくなってしまう。それから稲は比較的強いと初め思われていたんですが、去年も、おととしも、その前も、最近のデータを見ましても、減収である。これは何か協議会のようなものをつくりまして相談した結果、千何百万円とか二千万円というような金額を工場側として農民に補償をしている。こういうような弗素による被害がある。いまでもこの工場に近い畑へ行ってみますと、確かにキャベツとかネギなんかがもうからからになっちゃって枯れてしまうのですね。ですから、こういうように、いま申しました喜多方とか蒲原のアルミ工場は戦前からですか、ずっと稼働しておりますので、こうした弗素による公害はもう何十年来受けてきているわけです。  ただ、私がここで通産当局にお尋ねしたい点は、一体いつになったらこうした公害をなくすことが可能かという点なんです。まあ稲の減収に対する補償を会社としても一千万円、二千万円毎年現実に出しているわけですから、これは出さなくなったほうが会社としてもそれを願うところであろうし、ましてくだものなり野菜ぐらいは十分食べられるようなそういう環境を取り戻すようにすることが一体可能なのかどうか、そういう点は通産省はどのように考えていらっしゃいますか。
  254. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 御指摘のように、日本軽金属の蒲原工場あるいは昭和電工の喜多方工場は古い工場でございまして、弗化水素の防除設備は一応設備したのでございますけれども、効果が十分でなかったために御指摘のような桑園あるいは果樹園、あるいは水稲等に対する影響が出ておりまして、それに対する防除が必要になっております。そこで弗素公害対策として防除設備の増強をはかりまして、現在弗化水素の排出濃度を逐次低下する方向に持ってまいっております。  弗化水素はアルミの電解炉から発生いたしまして、電解炉から直接抜くのと、電解炉室を密閉にいたしまして、密閉にした部屋から弗素ガスを抜くということでやっておりますが、今後はさらに洗浄等の増強、あるいは屋根にスプレーをつけまして、そのスプレーによって液でガスを吸収するという方法をとりますと大体一ないし一・五PPM程度にまで下げられるという目標で現在増強をはかっております。従来はかなり高い弗化水素が漏れておりまして、これによる農作物の被害があったわけでございますが、そういう方向で弗化水素の放出を極力避けるという設備の増強を逐次やっており、今後もそういう計画でまいる予定でおるわけでございます。ちなみに住友化学の新設の磯浦工場につきましては四十四年度に操業いたしまして、この際は氷晶石の分解を最初にやるものと、それから回収の効率が必ずしも設計どおりでなかったために若干被害を生じましたけれども、四十四年度にはほとんど被害がなくなっておりますので、こうした対策の効果を目標にして古いほうの喜多方、浦原工場についても弗素対策を講ずるように指導いたしておるわけであります。
  255. 小平芳平

    ○小平芳平君 それで、こういう設備ができたらいまいうような農作物の被害がなくなるという見通しはできますか、できませんか。
  256. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 現在われわれのほうで御研究を願っておりますが、学者の間ではまだ弗化水素による農作物の被害を生じない標準がこれだけだということにつきましての断定的な意見の一致は見ておらないわけでございますので、経験的に一ないし一・五程度で現在被害が非常に減少いたしておりますので、それをまず実現するということで設備の増強をはかっておる次第でございます。
  257. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは、その一ないし一・五に下げるという、そういう希望の数値であって、いま私のあげた工場は被害は減っておりませんから、少なくとも稲作に対する補償はここ数年減っておりません。それで、減ってないじゃないか、会社は何億の公害防止設備をつくったというが、補償額が減ってないじゃないかといったら、それは米の上がった分だけ減ったのだといっていましたがね。そういうような状態では非常に農民に、いま言うような公害を、まあ被害が出たままになっているのが現状だということを問題点としてさらに御研究を願いたい。  それから次に、名古屋の問題ですが、先ほど大気汚染については厚生大臣から御答弁があったのですが、やはり通産省としてもこの名古屋の、あるいは名古屋市南部の事前調査をおやりになったわけですが、それでやはり四十三年十一月の委員会で私が問題にしたときには、そういう問題が起きないための事前調査をやったんだというふうな御答弁があったんですが、依然として汚染は高い数値が記録されているという、こういう問題があるわけです。もう一段の規制をして、工場がふえる一方ですから、いま現実に。そうしてそうした集合した結果においてもできるだけ健康被害のないそういう基準が必要だと思いますが、いかがですか。
  258. 柴崎芳三

    説明員柴崎芳三君) ただいま御指摘の産業公害総合事前調査でございますが、六十九工場を対象に行ないまして、現在データに基づきまして各会社に具体的に改善計画を指示しております。その過程であらわれました現象は、特に名古屋の南区——港の周辺でございますが、ここに集まっておる工場が煙突が低くかつ排煙量が非常に大きいということで、五年先を見込んで風洞実験並びに計算をやってみますと、会社のいまのままでいったならば〇・九以上の非常に高濃度の汚染地域がその若干北のほうにあらわれるという点が非常にはっきり出てまいります。われわれもその数値にはびっくりしたわけであります。これは要するに、会社の計画をそのままプロットした場合の化学的な予想値でございまして、これをいかに改善するかというところにわれわれの行政的な努力があるわけでございます。したがいまして、会社に対する改善目標の指示は非常にきびしい線で現在やっておりまして、ただ単に南区に存在する工場だけでなく、名古屋南部の臨海工業地帯の工場を全部含めまして四十八年度には環境基準を完全に満足できる体制にこれを進めようということで、つい二、三日前会社の具体的な計画が全部そろいまして、その計画に従いまして総合的な指導を開始したところでございます。
  259. 小平芳平

    ○小平芳平君 いつも国会では、総合調査をやって心配ないようにするという御答弁があるわけですが、これが実際の効果があがるように、実際の測定結果が下がったと、あるいは少なくとも健康被害というようなことは心配しなくてもいいということを期待しております。  それから次に、ちょっと時間を急ぎますので……。名古屋港の汚染についてですが、これは企画庁のほうも、県の調査は県の調査がございますね、発表した。これによりますと相当の汚染がはなはだしい、水銀やシアンが検出されたということが報道されておりますが、これに対する企画庁の今後の計画についていかがですか。
  260. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) 名古屋港につきましては、四十四年度に水質基準設定調査をいたしました。現在、その資料を整理、解析中でございます。私の手元にございます資料ですと、現在、シアンは検出されておりません。それからトータル水銀は水中ゼロないし〇・二八PPM出ております。いずれにしましても、この調査結果をただいま解析中でありまして、本年度中に指定水域指定水質基準設定をいたしたいと、そういう方針でいま取り組んでおります。で、その際には、環境基準がすでにきまっておりますが、そのうちの健康にかかわります八項目を全部規制する予定でおります。なお、御承知かと思いますが、メチル水銀につきましては、すでに昨年の二月にこの地域を指定し、規制をしております。
  261. 小平芳平

    ○小平芳平君 ちょっと私が持っておる資料といまの御答弁とは違いますけれども、まあ要するに年内に水域指定になるわけですね、結局は。それで先ほど小野委員から洞海湾調査結果を発表するようにという御質問があったのに対して、何か企業排水口調査結果を発表できないように盛んにお答えになっていましたが、愛知県など、発表になっていますね。この三井東圧の地点は幾らと、東亜合成の地点は幾ら、そしてこれにはどろからは全水銀で最高八九〇、平均三八三というものが発表になっている。
  262. 西川喬

    説明員西川喬君) ただいまのあれは排水基準ではございませんで、その地先海域の水質ではないだろうかと思われるわけでございますけれども、もちろん、企画庁のほうといたしましては、先ほども申し上げましたように、隠しているということではございませんので、地元のほうにおきまして協力を得ました会社の同意があるならば、私たちのほうでは公表しても差しつかえないということでございまして、地方のほうでそういう数字をもし出されるとしましたならば、あるいは同意の結果、公表したのではないだろうかと、このように思うわけでございます。
  263. 小平芳平

    ○小平芳平君 同意でもないでしょうね。新聞に発表された段階で、三井東圧の工業所長はエチル水銀が検出されたというのはふに落ちないというような談話を出していますがね。あるいは東亜合成の管理部長、この人もメチル水銀が出るはずはないというような談話を出していますがね。ですから、そうあなたのほうで、企画庁でおっしゃるような秘密主義というか、隠しているというが、まあそうじゃないと言うけれども、結果としては出そうとなさらない。さっきの答弁はまことにおかしな答弁だと思って私は聞いていたのですが、ちゃんと出ているのですよ。
  264. 西川喬

    説明員西川喬君) ただいまの先生がおっしゃいましたのは、メチル水銀を排出するおそれがある工場につきましては、これはすでに指定水域になっているわけでございます。で、指定水域になりましたところにつきましては、排水の結果は規制がかかっているわけでございますから、これは権限を持って調査してその結果を公表しても差しつかえないわけでございます。ですから、この水域につきましては、アルキル水銀関係並びに総水銀関係につきまして規制のかかっております工場については公表すると、こういうことになっております。
  265. 小平芳平

    ○小平芳平君 まあほかのことも全部発表してありますよ、PHから何からね。で、そういうことを言っていても、私の質問はあと一つで終わりですが、長良川で十数トンのアユが死んだと、あるいは狩野川では何十万尾のアユが死んだということが起きたわけですが、こういう場合、どこが責任を持って調べてくれるのか、あるいは防止体制をしいてくれるのか。結局、漁民としては大量の魚が年々死んでいく。大損害だ、大被害だ。ところが去年の木曽川の例を見てもおわかりのように、結果はうやむやということで、一体どこが責任を持ってやってくれるか、これはいかがですか。
  266. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) 長良川につきましてはやはり四十四年度に調査を実施いたしまして、これも調査結果に基づきまして、現在早急に部会を開き、水質基準をきめたいと思っております。それでなおアユが死にましたのは、何か工場からだいぶアルカリ性の強いものが出ておるようでありまして、この点につきましては、さっそく通産省のほうで現在その工場の操業を中止する等の処置で、この問題の処理を現在やっておられるようであります。
  267. 小平芳平

    ○小平芳平君 通産省何もやっていないでしょう。要するに、そういうような、まず住民からアユが大量に浮いているという報告が入った。どこの係がいるか、どこの係が。どうですか、それは。
  268. 柴崎芳三

    説明員柴崎芳三君) そういう問題が起こりました場合に、直ちに出動いたしますのは、所轄の通産局に公害担当の課ないしは班がございまして、そこの人員を早急に派遣する体制になっております。ただ河川全体を相当幅広く調査しなければならないというようなことで、やはり県と常に共同体制で調査するということになっておりますが、案件によりましては必ずしも工場でないこともあり、下水その他の関係もございますので、必ずしも通産局と県だけで必ず調査をやるということではございませんで、やはりその場合場合に応じた一つのチームというものがすぐに出動する体制になっております。
  269. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから結局何もきまっていないんですよ。魚が死んだ。まず県の水産課に報告が入る。あるいはこれは工場排水が原因かもしれないぞと言って県の公害課が見に行く。そのころは何時間も何十時間もたってからですから、そんな魚が死ぬような排水工場から出ている時間じゃないですよ、もう。そんなときにのこのこ行って排水を取ってきて検査しても何にもなりませんよ。そういうのが現状です。せめて警察ならばそういうことには捜査がなれているから——なれているというと変ですが、警察が捜査してくれるかと思って聞いたら、警察の問題でもないというのでしょう。自然に川で魚が死んだだけじゃ警察が動かないということで、いつも漁民は泣き寝入りをしているわけです。そこで結局監視体制というものが現行、現状としてないからいけない。特に長良川の場合は製紙工場で苛性ソーダを使っている工場があった。ところがそのアユの死因というものが強アルカリのもので死んだのじゃないかということが発表された。ところがその工場に行っても中和装置がないのですね。確かに沈でん槽はあって、何か沈でんさして、放流はさしているけれども、中和装置がない。こういうのもおかしいわけでしょう、いかがですか。
  270. 柴崎芳三

    説明員柴崎芳三君) ただいま先生御指摘の製紙工場は田中製紙であろうかと思いますが、田中製紙の現状は確かに中和槽を持っておりません。われわれが通産局を通じまして調査いたしました結果では、田中製紙の排水系統が二つに分かれておりまして、一つは長良川系統に排出口があるわけでございます。これにはアルカリは一切まじらない形で設計されております。アルカリがまじります排水口は曽代用水というのに口があいておりまして、これは水系として長良川とは全然関係がなかったわけです。曽代用水のほうには非常に大量の水と同時にアルカリ性の物質が流れ出すものですから、河川の自乗作用も加えますと、若干下流にいけばほとんど検出できない程度になるというようなことで、従来中和槽を持っていなかったようでございますが、しかし、それでは非常に不十分であるということで、この件が田中製紙の責任であるという断定はわれわれのほうとしてはできなかったわけでございますが、とにかく中和槽はつくりなさいということで、現在中和槽の設置を指導しております。
  271. 原田立

    原田立君 先ほど小野委員から北九州の洞海湾のことについて質問がございまして、お伺いしたわけでありますが、あそこの周辺には約九百三十の事業場があり、三十人以上の従業員を擁する工場から排水が約四百六万トン、それから二十九人以下の従業員の工場で五万二千トン、家庭下水等が十一万二千トン、合計いわゆるきたない水が四百二十二万八千トンも毎日流れ込んでいる。その大半が三十人以上の従業員、四百六万四千立方メートル、すなわち九六・一%とたいへん多いわけです。それは経企庁御存じだろうと思うけれども、そういうふうにたくさんのきたない水が流れ込んでいるあの洞海湾現状のようにきたなくなるまで放置しておいたのは、経企庁の多分に政治的な重大な責任があるんじゃないか、私そう思う。現在のようにきたなくなった汚染責任局長並びに次官はどういうふうにお考えですか。
  272. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) 私ども、全国の河川等につきまして基本計画を立て、逐次指定水域指定水質基準設定をはかってまいっております。その際、やはり地元府県の意向を十分くみながら漸次やってまいってきているわけでございます。この洞海湾につきましては、地元のほうから私どもに参りました意見において、必ずしもそういう規制を早く進めてくれという希望もそう強くなかったという事情もありまして、申しわけないですがおくれていたわけでございます。しかし、いずれにしましても、先ほど小野委員の御質問にもお答えいたしましたように、来月早々から具体的なこの基準設定の段取りに移りたい、かように考えております。
  273. 山口シヅエ

    説明員山口シヅエ君) ただいま局長からお答え申し上げましたとおりでございますが、七月上旬に現地部会を開催いたしまして、具体的な調査審議を始めることに相なっておりますが、その結果、水質審議会におきまして八月から九月にかけまして規制の案が示されるように相なる予定になっております。
  274. 原田立

    原田立君 西川参事官に聞きますけれども、この前私たち現地へ行って湾内を見てきて、そうして佐藤長官に申し入れをしました。そのときに、七月に現地部会を開くということだったから、もっと早くしろとこう次官に申し入れた。そうしたらば、早くしますと、次官は確約しておった。ところがきょう、いまのお話を聞いてみると、やっぱり七月にずれ込むようです。私さっきからそれを聞いててたいへん不満に思ってるのですけれども、どうして早くできなかったのか。あなた直接あの場にいたのだから説明してもらいたい。
  275. 西川喬

    説明員西川喬君) あのとき当初予定しておりましたのは、六月末の審議会におきまして部会を設置いたしまして七月中に現地部会、このような予定でおったわけでございますが、非常に問題が緊迫してまいりましたので、六月末の審議会というのを繰り上げまして、持ち回りによりまして各委員の、審議会先生方の承諾を得ましてこれを約一カ月繰り上げまして六月五日に審議会の中に洞海湾部会を設置いたしまして、それで部会を設置いたしまして、現状分析その他のあれを準備いたします関係で約一カ月ということで六月末に部会を設置、七月末に現地部会という予定が七月にずれ込んだわけでございますけれども、約一カ月弱繰り上がりまして六月初旬に部会設置、七月初めに現地部会。約一カ月弱繰り上げたわけでございます。
  276. 原田立

    原田立君 ちょっと私が勘違いしていたのか……。  通産省にちょっとお聞きしますけれども工場排水規制法第三条の水質の保全のところの項に、「特定施設を設置している者は、その特定施設から排水される汚水等の処理を適切にし、公共用水域水質の保全に心掛けなければならない。」と、こういうふうにありますけれども、「特定施設」とは一体どういうものなのか、それが一つ。  それからその施設をつくっている工場、事業場数はこの周辺でどのくらいあるのか、それが二つ目。  それから「処理を適切にし、」と、こういうふうにあるのですが、処理施設は現在どのような状態で備わっているのか、それから今後の見通し。時間がないからあわせてお答えいただきたい。
  277. 柴崎芳三

    説明員柴崎芳三君) 「特定施設」と申しますのは、水質保全上問題になる施設につきまして政令で定めた施設でございまして、その数は実は非常に多いためにここで一々あげるわけにはいきませんが、現在の特定施設としては百七十九指定しております。  それから第二点の、その周辺に存在する企業の数でございますが、大体われわれは工場数で約七十工場というぐあいに推定しております。今回の調査の対象はそのうちの二十二工場ということでございます。で、今後の対策でございますが、まず大前提はただいまお話しの水域指定とそれから基準設定でございますが、その前の段階でそのまま放置することはできないというような観点から、実は調査の結果が去年の十二月発表になったわけでございます。その十二月の段階にこの二十二工場のうち十六工場に対しまして直ちに改善の指示をいたしました。それから特にその中の六工場に対しましては具体的な改善計画を出させまして、その改善計画の実行を求め、現に六月六日に通産局の総務部長が工場に立ち入りましてその計画の実施状況を見ております。まあそういうふうな形で水質基準設定される前でもできるだけ早く排水の質を改善しょうというような努力をしておるわけでございます。水質基準が決定されればもちろんそれにあわせまして万全な策をとらせたい、かように考えております。
  278. 原田立

    原田立君 経企庁にお伺いしますが、先月でしたか、水質審議会環境基準が示され、それが公示されたわけですけれども、それを河川並びに湖沼ですか、何段階かのものが出ましたが、それから見ると洞海湾というのはもうてんで話にならない。それはいろいろデータが出ているからおわかりだと思うのですが、その水質審議会で示された環境基準どおりのようなものを洞海湾に適用しますか。
  279. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) この環境基準がもうすでにきまっておりますが、どの河川なり湖沼をどれに適用するか、これは逐次きめて閣議決定してまいりたいと思います。洞海湾につきましても、先ほどから申し上げておりますように、これから現地に行きましても十分調査審議して水質基準設定をやってまいるわけでありますが、当然その段階においてこの環境基準に対する当てはめ行為もいたします。その場合にこの環境基準に当てはめましてもそれが守られるように実施されなければなりませんので、その実施の手段といたしましては、排水規制これが一つ中心になりますが、それだけでは十分でないのでありまして、そのほかのたとえば流水の環境を変えるとか、この環境基準を達成するために必要な対策を関係省と十分打ち合わせてきめまして、その裏づけのもとでこの環境基準に対する当てはめ行為をし、閣議決定をする予定でございます。したがいまして、そうした諸般の対策、もちろんそのうち人間の健康に関するものはそこで即時実施されることになりますが、その他の項目につきましては、そうした対策の裏づけを持ちながら実施期間をきめてまいることにしております。その場合の実施期間といたしましてはなるべく早急にということでありますが、原則として五年以内に達成する、万やむを得ない場合にもそれに近いところできめるという方針になっておりますが、いずれにしましてもこの環境基準をきめ、これに対する当てはめをきめ、それを守るための具体的な裏づけは関係各省と協議し、その裏づけのもとで閣議決定をしていく、こういう手はずになります。
  280. 原田立

    原田立君 過日現地へ行ってその湾内を一巡してきたのですけれども、あの水の色が青、それから紫、茶色、黒、黄色、こげ茶、もういわゆる七色の水。で、厚生省のほうにお伺いするのですけれども、この奥洞海のほうが住民がすぐそばにいるわけです。厚生省のほうとしては洞海湾があんなふうにきたなくなっている、悪臭がひどい、そういうようなことは住民の健康保持のためからいけば、まことにあんな状態になったのでは困るのではないか、とんでもないのではないかと、こういうふうに考えているのだろうと思うのだけれどもその点どうですか。
  281. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) 私の知っている範囲で、洞海湾は非常に汚染されている、何とかきれいにしなければならぬということは全く同感でございます。で、いま環境基準の当てはめだとか、あるいは水質基準設定とか、いろいろなお話が出ておりますが、私どもとしましては、四十五年度の公害防止計画策定地域に北九州が入っているわけでございますが、当然この湾を含めまして公害防止計画を策定されますように、今度の公害防止委員会をつくる上では努力したいと思っているわけです。
  282. 原田立

    原田立君 通産省、九百三十からの工場があり、だいぶおもだった川でも十本、十二、三本入っております。それで排水口工場から出てくる直接の排水口、これは一体どのくらいの数があるんですか。
  283. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) 洞海湾全体の工場排水口の数は正確には把握しておりません。ただ、今回の二十二工場につきまして調査いたしましたのが、七十五か七十六でございます。その比率でいきますと、まあ一工場三ないし四程度排水口を持っておるということになるわけでございますが、ただ調査対象工場は非常に大きな工場であったわけでございますので、その対象にならなかった工場排水口はそれより比率的に若干低いのではないか、かように考えております。
  284. 原田立

    原田立君 そこで、その対象工場二十二の工場を含めて、あそこでいろいろ製品がつくられておると思うんですが、どういうような危険物がそのまま流せば含まれるか、それはもうすでにわかっておいでだろうと思うんです。
  285. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) 今回企画庁から指示されました調査項目としてただいま先生が御指摘のものに該当すると思われますのは、フェノール、シアン、アンモニア態窒素、クロム、カドミウムというようなところでございまして、これらにつきましてはそれぞれの排水口におきまして調査を実施したわけでございます。
  286. 原田立

    原田立君 有機燐、や砒素、それから水銀、それはいかがですか。
  287. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) 水銀はやっておりますが、その他の砒素と、もう一つは何でございますか。
  288. 原田立

    原田立君 有機燐、鉛……。
  289. 城戸謙次

    説明員(城戸謙次君) これは企画庁の調査対象の指示の中には入っておりません。
  290. 原田立

    原田立君 経企庁に聞きますけれども、いま申し上げたような砒素とか有機燐とか、鉛だとか、そういうのも当然入れて調査なさるべきじゃないですか。ないしはその周辺工場に、通産省のほうから聞いてもいいけれども、そういうものが出る工場はないのかどうか、ぼくはあるんだろうと思うんだが……。
  291. 西川喬

    説明員西川喬君) 企画庁のほうにおきまして事前調査をいたしましたときには、周辺の工場の業種それから製品、それらのものから判定いたしまして、このようなものを出すおそれがあるということで選んだわけでございますが、先ほどお答え申し上げましたように、砒素につきましては経企庁のほうにおきましてもぬかっておりまして、まさかあそこに砒素を出す工場はないんではないだろうかと、ところが、流水中に発見されましたものですから、砒素につきましては現在早急に補足調査をやっておるわけでございます。そのようなわけで、やはり業種と関連いたしまして出すおそれのある、こういうものは可能性があるというものを選んで調査対象といたしております。
  292. 原田立

    原田立君 いま指摘したやつはどうかと聞いているの。
  293. 西川喬

    説明員西川喬君) いま申し上げましたような観点で調査項目を選びましたので、砒素につきましてはミステークがあったわけでございますが、いま経企庁のほうの考えといたしましては、先生のおっしゃいました有機燐、鉛、亜鉛についてはこれを出すおそれのある工場は周辺にはないというふうに判断をいたしております。
  294. 原田立

    原田立君 それでは先ほど小平委員も、また小野委員からも指摘がありましたけれども事前調査をしたデータについては企業側に協力をしてもらってつくったんだから、事前公表はしないのだというお話であった。で、すでに調査した段階でこれはもう有害なんだというようなことは、もういま考えてみれば半年も一年も前の調査でわかっている。だから、もし法律的に不備で、そういうのが事前調査のものも公表できないのだったら法改正をして、そうして事前調査の分についても公表できるようにしたらばいいのじゃないか、こう思うのだが、時間がないから簡単に答えてください。
  295. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) 水質保全法につきましては、まだいろいろ私ども現行法では不備だと思われます点が感ぜられますので、新たな観点でいま検討を始めておりますが、先生御指摘の点も含めて研究さしていただきたいと思います。
  296. 原田立

    原田立君 で、具体的に洞海湾をどういうふうにきれいにするつもりなのか。経企庁はただ水質基準をきめればいい、と。それだけではきれいにはならない。通産省のほうも工場排水をしっかりやるといっておるけれども、それだけでもまだ満足いくようなものにはならないと思うのだけれども、先ほど小野委員が浄化対策についてどう考えておるのかという質問があったけれども、それに対してはっきりした答えがなかった。あわせてもう一ぺん答えてもらいたい。
  297. 西川喬

    説明員西川喬君) 先生御指摘のように、洞海湾ケースのような場合には排水規制だけで必ずしも環境基準が達成されるかどうか非常に問題があろうかと思います。今度指定水域にいたしまして水質基準設定いたしますときには、必ずそこの環境基準の当てはめを閣議決定をいたします。この閣議決定の段階におきまして環境基準を達成するための方策、これは水質保全法による水質規制だけではなく、関係各省が全部その方策をきめまして、それによりまして、先ほど局長からもお答え申し上げましたように、達成期間も考えてやるわけでございます。その時点におきまして環境基準をきめますときに、関係省と詰めたい。そういうものを、具体的方策を確立して完全な環境基準を何年か後には達成できるという総合的な施策を確立して決定いたしたい、このように考えておるわけでございます。いろいろ具体的な案としては、もちろん水質規制を強化する、それから下水道を整備する、あるいは遠賀川からの流入の浄化用水の導入を考える、あるいは海水を使っての循環を考える、いろいろな構想のものがあるようでございます。しかし、非常に問題点はいろいろ多うございます。それらの問題点につきましては、環境基準を定めますときに関係省と十分あれして何らかの方策を確立いたしたい、このように考えております。
  298. 原田立

    原田立君 共同処理場をつくってそうして汚水対策というもの、工場排水の対策に対する考えはないですか。
  299. 西川喬

    説明員西川喬君) 工場排水の共同処理場というのは非常にむずかしゅうございます。工場汚水だけを集めましても、やはりこれは工場汚水の共同処理場ができますれば、それぞれの工場におきます処理もこれはできるわけでございまして、そのような問題ございますけれども、もちろん先ほど申し上げました下水道整備やなんかとも関連いたしまして、公害除去施設の効率的な装置というようなことから、あれだけ工場が周辺にずっと立地しておるわけでございますから、建設省のほうで、下水道のほうでやっております、いわゆる特別都市下水道方式のような共同処理場、このような問題も一つの方策として考えられるかもしれません。それらの問題につきましても、十分関係省と協議してまいりたい、このように考えております。
  300. 原田立

    原田立君 現地ではまず場所がないのです。だから共同処理場をつくって集めてやるしかないという、そういう意見が大体大きい意見でした。遠賀川の水を導水して洞海湾の水を流すということも、それも夢物語のような意見だと、こう言っていました。だから具体的に共同処理場というものがまず最初にできるのじゃないかと、こう思うのですが、まだそこら辺研究を詰めていないのだったらまた次回にお伺いするとして、いずれにしても洞海湾をきれいにするための積極的な前向きの姿勢を経企庁十分持ってもらいたいと思います。  それから通産省ですね。もちろん水質基準が確定されなければ強いことは言えないのだというような、そんな弱腰ではなしに、もっと強力な姿勢でやってもらいたいと、こう思うのです。ほんとうは大臣から私は決意のほどをお聞きしたいところなのだけれども、大臣いないから、あなたかわって答弁をしてください。両方から……。
  301. 柴崎芳三

    説明員柴崎芳三君) 先般、先生を中心といたします調査団の結果を通産大臣並びに通産次官にお申し入れがありました。その時点におきましても、われわれはさらに決意を新たにいたしまして、関連の工場に対しまして、特にその中の大規模の会社に対しましては、直接通産省にも招致いたしまして改善計画の内容を聞き、かつさらに一そう努力するように強く要請してまいったわけでございます。今後もそういった姿勢で、強い態度で臨みたいと、かように考えております。
  302. 矢野智雄

    説明員矢野智雄君) 洞海湾につきましては、先ほどもお答えいたしましたが、七月の五日ですか、いずれにしましても、上旬に現地部会を開きます。私も参る予定でございますが、そこで地元の方々からいろいろなこれの処理の方策につきましていろいろ意見が出ると思いますので、そういう点を十分聞いてみたいと思います。また、もし先生がいま御指摘のような意見が出ません場合には、私のほうからも質問をし、そうした方策について現地で十分調べて、いずれにしましても早急にこの洞海湾がきれいになりますように、十分私のほうも努力してまいりたいと思います。私のほうの大臣も非常に強い関心を持っておりますので、早急に努力をしてまいりたいと思います。
  303. 原田立

    原田立君 ちょっと順番が狂ってしまいましたけれども、響灘のほうに現在埋め立て工事をやっていて、そこにまた新たに企業が出ることになっておりますが、そういうふうに埋め立て工事が次々にできるということは、あの洞海湾の長さがだんだんだん長くなるという、そういう現象を呈してくると思うのです。それで現在その入り口、中洞海、奥洞海、これを見ますと、奥洞海はとんでもないほど汚染されているわけです。響灘のほうに埋め立てができればできるほど、現在の中洞海のほうまでもずんずん汚染されていくのじゃないかと実は心配しているわけなんです。それで、そういうふうなことがあっちゃならないし、この埋め立て土地に進出する企業工場ですね、工場とその公害提携は地元市長が行なうものであろうと思いますが、通産省はどのように指導をしているのか。
  304. 柴崎芳三

    説明員柴崎芳三君) 実は、響灘の埋め立てにつきましては、運輸省の指導のもとに北九州港湾管理組合というものが埋め立てを実施しておるようでございまして、まだわれわれといたしましてはこの土地にどういう企業がどういう形でという姿は的確に把握しておりません。ただ、洞海湾がこれ以上によごれる可能性がある場合には、可能性のあるような企業が出てくる場合には、強力に指導したいということは常々考えておるところでございまして、水域指定その他との関連もありまして、法的な強制力を持った強い体制でまいりたい、かように考えております。
  305. 原田立

    原田立君 谷市長にも申し入れしてきたのですけれども、実は自分のほうに権限がないのでたいへん困っている、それで政令都市の市長にもそういう調査、監督の権限を移すようにしてもらいたい、こういうふうな意見がありました。で、この前次官にお話ししたら、それはまあ法改正しなければそういうわけにはいかないんだっていうようなお答えがあった。それで、知事ばかりでなしに、政令都市の長にもそういうふうな権限移譲等を行なったならばいいんじゃないだろうか、特に北九州なんかの場合には非常に大きな都市なんですから、ほかの、まあ六大都市を含めて、政令都市の長に権限移譲等を行なうような姿勢に持っていくべきではないか、こう思うんですけどもどうですか。
  306. 柴崎芳三

    説明員柴崎芳三君) 河川につきましては、ただ単にこういった工排法に基づきます管理監督の問題だけでなく、河川管理者という形で建設大臣なりあるいは都道府県知事なりが一体として管理していくという、別の体系もございますので、はたして政令都市だけを抜き出しまして、その中の一部分を市長にも権限をおろしてやることが、全体を見ました場合に妥当であるかどうか、若干問題があると思われまして、この前先生御指摘のあとでもわれわれいろいろ検討してまいっておるわけでございますが、まだ実は検討中でございまして、基本的な方向を探り出すまでには至っておりません。
  307. 原田立

    原田立君 ちょっと話が違いますが、水産庁にお伺いしますけれども、鹿児島県の薩摩半島の喜入というところに石油コンビナートがあって、非常に危険ではないかというような声が地元の人たちからありました。  それからまたいわゆる新産、工特都市の関係の大分鶴崎地区あるいは有明不知火、こういうふうなところが海洋汚濁が非常に心配だというような意見がございました。洞海湾と関連してお聞きしているわけなんですけれども洞海湾周辺といいますか、響灘のほうにどんどんと埋め立てして、工場が進出してくる、そうすると当然あそこの響灘が汚染されてくるのではないか、たいへんそういう点で心配しているのですが、幾つも幾つもお聞きしましたけれども、それらに関連してお答え願います。
  308. 大和田啓気

    説明員大和田啓気君) 鹿児島県の喜入の石油の基地の漁業の被害につきましては、鹿児島湾内でとれる魚、特にボラが油のくさみがあるということで、漁業者が会社を相手にして損害賠償の要求をいたしておりまして、それがことしの一月でございますか、解決をいたしたようでございます。また、鶴崎におきましても、これは石油の基地ではございませんで、石油精製工場でございますが、タンカーの送油操作のミスで昨年の七月でございますか、油が流れ出まして若干の漁業被害、特に定置網その他漁具が汚染をするという問題がございまして、これも補償の問題が片づいたようでございます。油といいますか、原油あるいは石油を扱う工場ができますと、漁業との関係でトラブルが起こりがちでございますので、漁業者がそういう工場の設置について反対をするという問題がよくあるわけでございます。今後ともきわめて優良な漁場につきましてはできるだけ公害を防ぐため、私ども相当な予算措置を講じて、沿岸漁業の構造改善事業というのをやっておりますけれども、できるだけ公害を避ける方向で漁場の改良、造成をつとめるわけでございますけれども、漁業——水といいますか、海面を漁業だけで専有するといいますか、一切の化学工業の進出をはばむということも、これも国民経済から考えていかがかと思いますので、それはそれぞれの現地で、やはり、県あるいは場合によりましては国が中に入って調整をするという態度でやっておるわけでございます。今後とも、そう、まあ四角定木というとおかしいですけれども、一切漁業が優先をして、化学工業の進出を許さないという、そういうかたい態度ではございませんで、すぐれた漁場で、今後とも国民食糧の確保という点で確保すべき漁場については、十分こちら側で主張をいたしますけれども、場合によりましては、十分の公害の防止施設を講じてもらった上で、そういう企業の進出も許すという、そういう、いわば柔軟な態度で、しかも漁業者の利益を守るという態度で、私ども水産行政をやってまいりたいと、そう考えておるわけでございます。
  309. 原田立

    原田立君 この前、予算委員会でも御質問したんですが、大牟田市の三井東圧化学、ここでは、いわゆるスラッジを、工場廃液を自分の工場敷地内の谷をせき切り、廃液を投下しているのですが、この事実を申し上げたらば、たいへんこれは危険だと、何の、どの局長でしたかな、そういうふうに答弁がありました。それと関連してというふうなことにいうと、また、そこら辺はまだはっきりわからないんだが、大牟田市内のいわゆる井戸、普通の井戸ですね、井戸の水が使えないと、こういって市内の人たちが非常に心配しております。伏流水の検査等はこれは行なったのかどうか、まず、それをひとつお聞きしたい。それからいま前段にある三井東圧化学の早鐘工場の中の谷をせき切り、廃液を入れておること、局長は危険だとこう言っておったんだけれども、それに対する改善指示は一体どうなっておるのか、その二つをお聞きしたい。
  310. 山下英明

    説明員(山下英明君) 予算委員会で申し上げましたとおり、私どもがあの場所につきましては、二次公害の危険があるということで、検討を進めております。御承知のように、旧火薬工場あと地、工場から離れたところに、自分の工場内の敷地にコンクリートのへいをつくって、一種の沈でん池として使っておるわけです。といいますことは、普通工場廃水で、海、川に流してぐあい悪いものをそこに沈でん、水分を蒸発させて沈でんさせておるわけです。予算委員会の後も工場から事情を聴取いたしましたが、御指摘のとおりに、将来、これを一体どうするのかということにつきましては、工場側もまだ明快な案を持っておりません。海洋投棄にするか、その他の技術開発によって、危険物を処理するか、ただ何年くらいこれが現状で続くかという点につきましては、なお、十年は現状で続けられるであろうという見通しでございます。しかしながら、私どもとしては、二次公害全般につきまして、幸い予算も取れておりますので、全国的な調査を開始したところでございます。  市民の井戸水が汚濁しておるという点につきましては、私ども存じませんで、きょう初めて聞いたわけでございますが、それと沈でん池とが関係あるかどうかもあわせて調査したいと考えております。
  311. 原田立

    原田立君 経企庁のほうにお聞きするのですけれども、大牟田川に前回水質基準がきめられたのだけれども、そのときにカドミが入っていなかった。現実に今度はカドミが出てきた。そういう不手ぎわをやっておるわけです、あなた方のところでは。それで、やはり予算委員会のときに、カドミも水質基準の中に入れるべきだと、こう申し上げたところが、佐藤長官は、入れると、明快に御答弁があった。その後の処置はどうなっておりますか。
  312. 西川喬

    説明員西川喬君) 当時の水質基準が、大牟田が指定になりましたときは、カドミがイタイイタイ病の原因であるということは厚生省の見解のほうではっきりしておったわけでございますが、カドミのいわゆる許容限界値と申しますか、そういう必ず自然界にも存在するものでございまして、その数値を、排出の数値あるいは水質基準数値をどのようにきめたらいいかということが、まだ学術的にも結論的なところまでいっておりませんでした。そのために、いままでの指定水域にはカドミを指定したケースが全然ございませんでしたが、今回環境基準をきめまして、人の健康にかかわります項目につきましては全水域に適用するということで、数値につきましても決定いたしました。そのようなことから、いままでの指定水域全部につきまして、今後起こり得ることを防ぐために、現在カドミウムあるいはああいうあすこの項目にのっておりませんのを、出していないところにつきましても、新設企業というものが来る場合には、そのおそれがあるわけでございますので、あの八項目全部につきまして指定水域全部について基準設定するということで、六月二十六日の水質審議会に諮問する予定でおります。
  313. 原田立

    原田立君 三井東圧化学排水口が、第一と第二とあるそうでありますが、第一排水口は一万六千トン毎日流れている。第二排水口は四千トン流れている。第一第二合計して——シアンまたはフェノール等の排水は、大体第一第二合計すると基準値よりも下がるわけですけれども、第二のほうの排水口は、シアンもフェノールも予定よりかなりオーバーしている。御承知だろうと思うのです。私も数字は持ってきておりますけれども、こういうのはごまかしだと思うのですね。第一と第二と合計して二万トンという排水量、それに対する基準以下だからいいじゃないか、こういうことは理屈にならないと思う。で、この第二排水口のほうですね、これはもっと厳重な処置をしなければいけないのじゃないか、こう思うのだが、経企庁どうですか。それから通産省のほうも、この問題どうですか。
  314. 西川喬

    説明員西川喬君) 従来、一つの工場につきまして排水口を二つ以上持っております場合には、いわゆる公共用水域に対する影響といたしましては、それの加重平均でよろしいという指導をいたしてまいりました。汚濁源の、一般の環境に及ぼします汚濁源というものにつきましては、加重平均という考え方も成り立つかとも思いますが、健康にかかわります場合には、それが相当大きな工場になりまして口が離れているような場合におきまして、これは問題が生じようかと思います。そういう点から、加重平均というものを全部について認めるかどうかについて現在検討中でございます。そのような観点で、大体指導といたしましては、できる限り排水口を統合する、統合して出しなさいという指導を、通産省のほうと御相談してとっているわけでございますが、どうしてもその統合が工場内にできないということで、口が分かれております場合の加重平均のとり方というものにつきましては、今後検討いたしたいと思います。
  315. 柴崎芳三

    説明員柴崎芳三君) ただいまの問題につきましては、西川参事官が御説明申し上げたとおり、通産省も全く同意見でございまして、そういう方向で企画庁との間で相談しておる最中でございますが、ただ、いままで長い歴史の中で、先生が御指摘されたような指導基準指導しておるわけですから、工場の中には完全にそういう体系ですべての排水施設をつくり上げておるところもたくさんありますので、できるだけそれらを個々排水口基準に合うように指導は大いに強化してまいりたいと思うわけでございますが、かりに基準の解釈をそういう形にして適用したといたしましても、若干の日にちは必要ではないか、かように考えます。特にこの御指摘の三井東圧化学の問題でございますが、四十四年の十一月から水質基準が適用されたわけですが、それに基づいて、四十四年の十一月二十七日に県で検査した結果では、先生御指摘のとおりの数値が出ておりまして、そこで県では、活性汚泥法の処理設備をこの工場は持っておるわけでございますから、その管理が非常に不十分ではないかということで、その運転管理をより科学的に、かつ慎重にやるという指導をいたしました結果、ことし一月に実施した検査では、以前ほど第一排水口第二排水口の差というものはなくなりましてそれぞれ基準値に近づいておる、悪いほうは基準値に近づいておるというような結果を得ております。なおこういった方向でさらに指導していきたいと、かように考えております。
  316. 原田立

    原田立君 それは、西川さんは大牟田知っているかどうか知らぬけれども、とにかくあの現場へ行って見てごらんなさい。話にならないですよ。くさいしね。で、第一と第二の排水口の間はたしか五百メートル離れておりましたよ。もう少し現場をよく見て、そしてそういうひどいところはもっと適切にやってもらいたいと思うのですよ。お願いしますよ。  それから、時間がないので最後にしますが、北九州の大気汚染が非常にひどいことはもう新聞等で、るる出ていますから御承知だろうと思うのですが、気象庁の方来ていますか——。これも谷市長に洞海湾の申し入れをしに行ったときに、測候所の設置をひとつ。ぜひやってもらいたい。皿倉山に逆転層の調査のもつけたし、また場所も下見に来ているのだが、いまもってちっともきめてくれない。大気汚染がひどいので、せめて測候所があればもっと早く対処できる。ぜひ早くつけるようにしてもらいたい、そういう要望がありました。なぜ測候所設置が北九州の場合おくれているのか、また今後の見通しはどうなのか、そこら辺、あわせてお答え願いたい。
  317. 坂本勁介

    説明員(坂本勁介君) 最初に観測施設の点から申し上げますけれども大気汚染等に関します、それだけとの関連での上での観測施設の展開そのものにつきましても、気象庁ここ二、三年来ずっとあちらこちらのところで要求してまいっているところでありますけれども、一部といいますか、相当部門その地方公共団体で負担すべき部分があるのじゃないかといったようなことで、現在その辺で財政当局と実は話し合いが折り合っていないのが実情でございます。  それから北九州市に測候所をつくりますことにつきましては、最初に一般論を申し上げて非常に恐縮でございますけれども、組織の新設と申しますか、非常になかなか実はむずかしい実情にございまして、ということと、第二に実は内々の恥を申し上げるようでございますが、気象庁全般にわたってながめました場合に、実は気象庁、戦前は地方気象台というのだけが国の機関でございました。その他地方の測候所といったようなものは、すべて地方公共団体で気象業務を営んでおったわけでございます。それをそのまま合体させました形で今日の気象庁という形に実はなってきたわけでございます。いわば積み木細工のような形なんですけれども、全国的に見ました場合に、そういった観点の上から、測候所の配分、配置のあり方が全国的に必ずしも適正でないと実は私どもも考えておりますし、必ずや、いろんな組織の新設の要求を出します場合には、勢いそういった点にまで触れて全般的検討を迫られるようなことにもなりますので、そういった、全般的に測候所の配置を全国的に再検討し直します一環の中で、あれだけの大都会でございますから、私どもも北九州市に何とか何らかの組織的なものをつくっていく必要があろうかと考えておりますけれども、そういう関連の中でものごとを解決してまいりませんと、そこだけの組織の新設ということではなかなか予算要求といたしましては通らないような実情でございますので、そういう全般との関連の中で、前向きに北九州市に早急に測候所を新設していくような方向で検討いたしたいと思います。
  318. 原田立

    原田立君 私にはおしまいのほうはよくわかったのだけれども、前のほうは何だかお話がさっぱり見当がつかない、たいへん失礼なんですけれども。それで、とにかく百万都市の北九州市ですよね、そのほか大きなところもたくさんありますけれども。それから、九州ではあと大牟田が非常にきたないところです、とにかく青い空が見えないわけですから。そこで、スモッグ警報を出すにしても、測候所があればもっと早くできるのだ。かねがね陳情しているのですけれども、ちっともきまらない、何とか早くきめるように努力願いたい、こういう話なんで、それでお聞きしているわけです。最後の、何とか早くつくるようにしたいという話は、そこのところはわかったのですけれども、それじゃ、早くといっていつごろになるのか、どういうふうなコースをとっていくのか、具体的に、ではいつごろ北九州の測候所はつくる、計画の中に入れるということをお答えできたらばお答え願いたい。
  319. 坂本勁介

    説明員(坂本勁介君) 検討最中でございまして、申しわけありませんが、いつごろということは明快には御返事申し上げかねます。ただ、先ほどの中途のところ辺であるいはおわかりにくかったかもしれませんが、戦前、要するにそういう形で積み木細工のようにいわば気象庁の組織はなっておりますので、一例を申し上げますと、たとえばこの近くの神奈川県では、もちろん県庁所在地には地方気象台というのがあるわけでございますが、あれだけの広さで、それ以外には測候所が全然ございません。ところが、お隣の静岡県になりますと、静岡市には当然地方気象台があるわけでございますけれども、それ以外には三島とか、網代とか、下田の付近の長津呂とか、あるいは浜松とか、五つ、六つ測候所があるというような実情でございます。そういったように、全国的に非常に測候所の展開がアンバランスであるというのが実は当庁の実情でございます。(「それを直したらいいじゃないか」と呼ぶ者あり)そこで、それを直さないで組織の新設をそのまま持ち出しますことは、いままでの測候所の配置計画そのものまでも当然再検討を迫られることになりますし、また当然それは私どもとしてもすべきだと思っておりますので、その作業に取りかかっております。(「さっさとせいよ」と呼ぶ者あり)さっさといたしております。それで、まだ時間のほどは明確には申し上げかねますけれども先生御承知のように、あれだけの大都会でございますので、そのままでほうっておいていいとは私ども考えておりません。そういう中で、いろいろな配置統合といったような形の中で北九州市にできるだけ測候所をつくっていくという方向で前向きに検討したいと現在考えておる最中でございます。
  320. 小野明

    ○理事(小野明君) これは、この前の国会のときに、次長、私も尋ねたのです。そのときの答弁とあなたいま一つも変わらぬ。一つも変わらぬ。だから、もう少し、これはそんなに要求があることはおわかりでしょうからね、きっちりしたそれこそ前向きのめどを立てた答弁をしてもらわぬとこれはいかぬ。その場のがれの答弁にしか私には聞こえぬわけだ。
  321. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ぼくはこれからやろうと思ったら一時間時間かかっちゃう。それであんたの御都合もあるようですから、きょうは私はもう質問すること取りやめますよ。そのかわり次の九日の日には十分時間をとっていただきたいということと、どうも一日じゃこれ大ぜいの議員がやってきてやると足りないですよ。だからこの次は、九日は参考人を呼ぶんだから、だから九、十と二日間ぜひともとって十分審議のできるようにひとつ考えていただきたいと思います。これを申し添えまして、私はきょう質問やめます。
  322. 小野明

    ○理事(小野明君) はいありがとうございます。  本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後六時一分散会