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1970-10-07 第63回国会 参議院 決算委員会 閉会後第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十月七日(水曜日)    午前十時十分開会     —————————————    委員異動  九月十一日     辞任         補欠選任      山崎 竜男君     温水 三郎君  九月十八日     辞任         補欠選任      三木 忠雄君     峯山 昭範君  十月七日     辞任         補欠選任      沢田  実君     上林繁次郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         森 元治郎君     理 事                 若林 正武君                 渡辺一太郎君                 和田 静夫君                 黒柳  明君                 高山 恒雄君     委 員                 佐田 一郎君                 菅野 儀作君                 高橋雄之助君                 長屋  茂君                 初村瀧一郎君                 矢野  登君                 西村 関一君                 二宮 文造君                 峯山 昭範君                 渡辺  武君    国務大臣        自 治 大 臣  秋田 大助君        国 務 大 臣  佐藤 一郎君        国 務 大 臣  山中 貞則君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        内閣官房長官  木村 俊夫君        行政管理庁行政        管理局管理官   北条 久弥君        北海道開発庁政        務次官      菅野 儀作君        防衛庁防衛局防        衛課長      大西誠一郎君        経済企画庁総合        開発局東北開発        株式会社監理官  広田 常雄君        沖繩北方対策        庁長官      山野 幸吉君        外務省アジア局        中国課長     橋本  恕君        厚生大臣官房審        議官       松下 廉蔵君        中小企業庁計画        部長       斎藤 太一君        自治省行政局選        挙部長      中村 啓一君        会計検査院事務        総局第一局長   中込 良吉君        会計検査院事務        総局第五局長   石川 達郎君    参考人        商工組合中央金        庫理事      小林 忠夫君        東北開発株式会        社総裁      亀井 茲建君        東北開発株式会        社理事      高見 豊治君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十三年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十三年度特別会計歳入歳出決算昭和四十三年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十三  年度政府関係機関決算書内閣提出) ○昭和四十三年度国有財産増減及び現在額総計算  書(内閣提出) ○昭和四十三年度国有財産無償貸付状況計算書  (内閣提出) ○派遣委員の報告に関する件     —————————————
  2. 森元治郎

    委員長森元治郎君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、沢田実君が委員辞任され、その補欠として上林繁次郎君が選任されました。
  3. 森元治郎

    委員長森元治郎君) 昭和四十三年度決算外二件を議題といたします。  本日は、行政管理庁及び防衛庁を除く総理府及び内閣決算につきまして審査を行ないます。  この際、おはかりいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 森元治郎

    委員長森元治郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それでは、これより質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 和田静夫

    和田静夫君 官房長官側都合尖閣列島問題、それから北海道の名寄の基地の問題、それから北海道から東北、新潟にかけてのエヒノコックス症の問題、そして最後政治資金規正法に関する問題というような順序——政府側出席関係でそういう順序にして若干の質問をいたします。  例の尖閣列島の問題が話題になっていますが、問題の発生、経緯の詳細を総務長官からまず説明を願いたいと存じます。
  6. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 新聞等報道をされておりますこととほぼ違いはない経過をたどっておりますが、中華民国としては日本サンフランシスコにおける講和条約に際し、日本側領土権について沖縄米側信託統治を前提とした統治にゆだねられるということについて何らの異存も表明しておりませんし、それに対して注意も喚起いたしておりません。それから二十年近くの間、それに対する領土的な発言というものも一切行なわれていなかったわけであります。エカフェ調査に端を発しまして、エカフェ調査二年、その後本土政府調査二年、ことしを含めて二年目でありますが、来年度もさらに調査を続行しようとする石油に中心を置いた地下資源探査というものから、ほぼ九州の地域に匹敵するような膨大な埋蔵量石油資源のあるらしきことが確定的となるに従いまして、それらに対して大陸だなという根拠に立って、国民政府米系資本ガルフ社に対して試掘権を認可したということに問題が発展してまいったのが最近の実情でありますが、領土問題については中国側においては何らの意思表示もいたしておりませんし、公的な中華民国政府として尖閣列島領土的に日本領土であるとも、あるいは懐疑的であるとも、否定的であるとも、中華民国政府領土であるとも言ってはおりません。また国民政府が行なった行為でないものとして、現実には尖閣列島青天白日旗が、すなわち中華民国の国旗が立てられたという事件がありまして、御承知のように現在の琉球政府警察海上巡視艇が参りまして、旗をおろしてきましたけれども、それについても特別の抗議等はなされておりません。でありますので、現在、外交当局とも相談をいたしつつ対応策を進めておりますが、領土問題ということについては外務大臣が国会で言明されておりますように、中華民国政府を含むあらゆる国との間に尖閣列島日本領土であることについての議論をする気は全然なく、また議論をされる覚えはないという立場で進むことになると思います。ただ資源の問題になりますと、大陸だな論争——大陸だな条約がありますことは御承知のとおりでありますが、しかし日本はそれにまだ加盟いたしておりませんし、批准いたしておりません。これは別な意味の北洋の大陸だな資源漁業資源論争の結果、日本としてはその条約調印をちゅうちょいたしておる段階にあるわけでありますけれども、他方においてこの大陸だな条約根拠として、大陸だなのあるべきそれぞれの関係国の位置についての設定あるいは決定というものが、ある場合においては国際司法裁判所においての決定となった例もありますし、あるいは両国の間において——関係国の間において円満に線引き中間線ということで落ち着いた例もあるようであります。あるいはまた無人島はその中に含まないという北海の例等もあるようでございますが、現在の尖閣列島の場合は、大陸だなの論争からいきますと、明らかに中国大陸大陸だなの最先端に突き出した無人島であるという事実は、これは否定することができませんし、琉球列島との間に二千メートルをこす海溝のあることも現実の問題であります。しかしながら明治二十八年の閣議決定、二十九年の勅令による石垣島の区画決定による日本尖閣列島に対する明確なる領土権のもとにおいて、その周辺における資源探査並びに鉱区権設定試掘採掘等行為国際法上から見て大陸だな論争にけりをつけなければならない問題であると同時に、日本側は一方的に日本領土周辺において大陸だなの論拠によって海底探査その他の行為が行なわれることを認めるということはでき得ないことであります。これについては中華民国政府日本側との間に話し合いを持つことを積極的に望んでいるという節も見られますので、領土問題を切り離して大陸だな資源開発に対する協力のしかた、あるいは基本的な権利線引き等について話し合いがいずれ行なわれることになるだろうと思います。これは日本政府側申し入れに対して中華民国において喜んで話し合いに応ずると言っておることではっきりいたしておるわけであります。総理府としては、それらの外交的な手段を直接行使はいたしておりませんが、来年度の予算で引き続き尖閣列島試掘への調査費を、一そう精密調査を続行するために計上すると同時に、現在琉球政府職員鉱区権設定等作業に従事する職員が五名しかおりませんので、膨大な万をこえる件数にのぼる申請件数処理というものについて事務的に整理がほぼ不可能に近い状態にあると判断をいたします。そこで、通産省といま協議いたしておりますが、通産省鉱区権設定等専門職員本土から出向、派遣いたしまして、琉球政府のそれらの職員と一体となって、沖縄事務局もそれに相呼応しながら、なるべく早くこの鉱区権の受理並びにその確定をいたし、できれば資源探査から試掘へやはり実績というものをつくり上げていかなければならないというふうに考えて、いま相談を進めているところでございます。  以上、概略の経過を申し上げます。
  7. 和田静夫

    和田静夫君 そこで七月に、国府アメリカガルフ社日本法人パシフィックガルフ社に対して尖閣列島を含む東シナ海大陸だなの海底探査許可を与えた。これに対して日本政府としては、どういう考え方をお持ちになり、この問題についての折衝ということはお考えになっておりますか。
  8. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは台湾政府が与えたのではなくて、台湾石油公司が与えたものであるというふうに見ておりますが、その後ガルフ以外の各社にも続々と与えているようであります。これらについては日本側のわれわれが今日まで探査いたしてまいりました地区との重複があるわけでありますから、これらの問題は、国民政府側意向国民政府側意向として、日本側意向というものをまだ国民政府としても明確につかんでいない点があるのではないかと思われる節もありますので、先ほど申しましたそれらの作業を急ぎながら、日本政府日本政府独自の行為をもってその探査行為を行なう、さらに試掘採掘へ進んでいく。有望であればそういう過程をとるわけでありますが、国府側との折衝とは別に、ガルフ日本法人ガルフというものとしての資格でその採掘権を申請し、許可されておる、探査権を許可されておるというふうなことは、やはり日本国内法人としてのガルフのあり方というもの等にも、やはり国としては無関心でいてよいかどうかという問題をも提起してくると思いますが、現在のところはまだ、確たるそのような動きもありませんし、そのような行為にまで日本政府は出ていないということであります。
  9. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、日本法人ガルフ自身が具体的に動き出したといち段階においては、どういう措置をされますか。
  10. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) お断わり申し上げてあるとおり、私、外交権のない立場にありますので、私の意向がそのまま日本外交手段として行使されるということにお受け取り願えるわけにはまいらないわけでありまして、私はやはり、私の考えは、ある場合は外務大臣を通じて話をしなければならないという、まことに隔靴掻痒の感のある大臣でありまして残念でありますが、私としては外務大臣外交手段を通じて、日本側のあるべき姿については厳然とした姿勢をもって臨みたいと考えております。
  11. 和田静夫

    和田静夫君 いまの問題について外務省、いかがですか。
  12. 橋本恕

    説明員橋本恕君) ただいまの問題についてお答えいたします。先ほど山中総務長官から御説明がございましたように、中国石油公司とそれからガルフ社との間に、東シナ海大陸だな海底資源開発に関する共同契約が調印されまして、これに基づいて共同開発、特にガルフ社探鉱探査調査に乗り出す計画を現にしております。しかしながら私ども承知しております限りでは、現実に具体的に東シナ海大陸だなの資源開発調査に至っておりません。そこで、外務省関係各省と御相談いたしまして、今年の八月から九月にかけまして、数回にわたって国民政府に対しまして公式に国民政府側の一方的な行為については日本政府としては認めるわけにいかない。この問題につきましては話し合いによって解決するという大前提のもとに、ともかくも一方的な行為を自重してほしい、自制してほしいということを数回にわたって国民政府側申し入れてございます。政府国民政府に対する申し入れの要点は、日華相互間において話し合いのつくまでの間は、国民政府側においても一方的な措置現実に行動に移すことは待ってほしいという申し入れでございます。
  13. 和田静夫

    和田静夫君 それとの関係で、琉球政府領有権の宣言をするとともに、いってみればいま出ている二万五千件くらいの鉱業権早期処理の問題で、一応年内にも認可をするために本土協力を求めて審理作業を進める方針、こういう琉球政府方針が出ました。これに対して本土政府としてはどのようにお考えになり、対処されますか。
  14. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 琉球からそういう正式の要請あるいは意思の表明はありませんが、そのようなことであったことは事実でありまして、琉球政府本土琉球県とか、沖縄県とかにかりに変わる場合に、日本国版図であり、現在の琉球政府版図である旨を明確にする——領域であることを明確にすることは当然のことであります。また琉球政府のほうには非公式ではありますが、施政権者である米側に向かっても、施政権範囲の中に明確に含まれておるし、射爆場に対しては補償も支払われておるし、また個人の所有に帰しておる島嶼については税金も納められておる実態を明確に把握して、施政権者としての立場からも公にその姿勢を明らかにして、アメリカという立場から台湾に対しても、そのことについてはものを言ってもらいたいというような要請をされてはどうか等の内々の指導はいたしておるわけでありますから、それらが琉球政府領土地域であるということを明確にされることは当然のことであります。さらに本土に対して、年内処理という要望はわかりますが、これはちょっと技術的に年内処理ということは不可能かもわかりませんが、少なくとも急いでそれを処理するということについては、私ども受ける用意があり、しかもそれに対して予算的に本年度予算を使用してでも琉球政府要望にこたえるための支出を行なって、協力してまいりたいと考えております。
  15. 和田静夫

    和田静夫君 最後に、尖閣列島領有権の問題というのは、尖閣列島——いまやりとりがありました周辺海底に眠る膨大な石油資源との関係で、わが国の利益に重大な関係があると思われます。特に沖縄開発関係で絶対に妥協ができない問題でありますが、それにつけても私が思うのは、四十年の日韓交渉のときに、島根県の沖合いにあるあの竹島、あの島の領有をめぐって、日本韓国との間でむずかしい外交交渉がいろいろ行なわれた。そうして、そのときには、あそこにすでに韓国軍隊が少数ではありますが駐在をしておるという既成事実、それを消してしまうことができなくて、結局あの問題というのは韓国に帰属をするという、そういう方向をたどっていっており、今後日韓の間で引き続き話し合っていく係争問題であるという形で問題をやり過ごしてしまっています。ですから、いま韓国はあの島の領有を自主的にしている。日本としてはあの島の領有根拠をたくさん持っていながら竹島を手放してしまっている、こういういきさつがあります。今度の尖閣列島の場合にも、いま総務長官からお話しのように青天白日旗が掲げられ、あるいは漁師も引き揚げたと言われています。あそこに台湾漁師上陸しているといった事実の積み重ねの上に、竹島と同じようなことになっていくことがたいへん懸念されます。その点は、政府にしっかりしてもらわなければならないのでありますが、そこらの見通しについて外務省はどのようにお考えになっておりますか。
  16. 橋本恕

    説明員橋本恕君) 尖閣列島領有権の問題につきましては、先ほども山中長官から御説明のございましたとおりに、サンフランシスコ平和条約第三条にいうところの南西諸島の一部であるということの解釈は、国際法的に確定しておるもの考えております。で、もっと具体的に申し上げますと、一九五三年に琉球米国民政府が布告第二十七号「琉球列島地理的境界」というものを公表いたしました。これを見ましても、尖閣列島平和条約第三条にいう南西諸島の一部であるということは米国も明確にしておりますし、それからごく最近では、ことしの九月に、アメリカ国務省報道官記者会見におきまして尖閣列島は明らかに南西諸島の一部であるということを明確にしております。のみならず、私ども承知いたしております限りでは、米国政府国民政府に対しまして、先ほどの解釈——つまり尖閣列島南西諸島の一部であって、七二年には日本返還される予定であるということを通報しているというふうに聞いております。したがいまして、本質的に竹島の問題とは違う、つまり国際法的にも、また現実におきましても、現実に来園の施政権下にあるわけでございますから、はるかに日本主張というものが強いと、かように考えております。そういうことがこの第一の基本的な点でございますが、もう一つ今後の問題について申し上げますと、先ほど御指摘がございました台湾漁民尖閣諸島に対する上陸その他の問題につきましては、できるだけ早急に国民政府側話し合いをいたしまして、このような不法行為といいますか、領土侵犯に類するたぐいは日華間の友好親善関係にかんがみて極力押えてほしいという趣旨を、国民政府側にできるだけ説得していくという考え方で現に作業を進めております。
  17. 和田静夫

    和田静夫君 国府の側は、言っててみればいま日本領土ではないと、そういうような立場に立ってかなり内外に対して領土宣言的な発言をあの当時も繰り返していましたね。で、それに対して、言ってみればわがほうの主張を強く今後ともしていくのだという程度では、とても了承できないのですが、この問題について積極的に外務省としてお取り組みになって、そしていままでの過程の結論はこうで、将来はこうしますという、そういう方針はありますか。
  18. 橋本恕

    説明員橋本恕君) 先ほど山中長官から御説明、御指摘がございましたとおりに、領有権の問題につきましては、再三繰り返し御説明申し上げましたとおりに、これは明確なる日本領土であることは議論の余地のない事実でございますから、したがいまして尖閣領有権は、中国に属するか、あるいは日本に属するか、あるいはその他の第三国に属するかということにつきましての交渉あるいは話し合いというものは、いかなる国の政府ともしない。したがいまして残るところの問題は、日本の明確なる領土である尖閣諸島、これに対して不法な行為が行なわれるという、その不法行為を何とかして除去していくということに、今後の外交交渉といいますか、話し合い主眼点がある、かように外務省としては考えております。
  19. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、私が例をあげた韓国との関係で起こった竹島はいわゆる明確に日本領土ではないという……どうですか。
  20. 橋本恕

    説明員橋本恕君) 私が先ほど申し上げましたのは、尖閣列島についての問題、領有権の問題について御説明したわけでございまして、竹島の問題がわが国領土であるということも、これもまたすでに何度も明確にされている点だと思います。
  21. 和田静夫

    和田静夫君 そうでしょう。竹島現状はああいろ現状にある。したがって私が尖閣列島に抱くところの危惧は、多くの国民が抱いているところの危惧になってきている。したがいまして、明確な領土であるというわが国態度、その主張だけでもって竹島的な問題が起こらないという保障がない。起こらない保障というもの外務省折衝を通じてありますか。そう質問したい。
  22. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 課長ではなかなか政府の決意と聞かれるとつらいところがあるでしょうから……。この尖閣列島の問題で、中華民国国民行為として、基隆あるいは宜蘭——台湾東北部漁業者の人々は、かつて台湾日本領土であった時代からも、また現在アメリカ施政権を行使している現状時代になっても漁業をずっと営んでおる。しかも沖縄本島石垣宮古等から出発するよりも到達する距離が近いというようなことから台湾側からいたしまして不断に漁業が行なわれている。逆に日本の漁船は尖閣列島近海では漁業をよけいしていない。これは、とる魚の種類その他にも問題はあると思うのですが、そういう現実があるわけです。ですから現在、台湾漁民の諸君があすこに、無人島でありますから、操業のついでに上陸して食事をしたり、あるいはちょっとした掘っ立て小屋みたいなもの休憩所みたいなものをつくったりしている事実はありますが、現在の琉球政府巡視艇等が参りまして、退去しなさいということを申しますと。しぶしぶではありますが、そう感情的にならないでやはり退去をしている事実がありますし、これを、占領終結——日本復帰前に力づくで中華民国政府という形で、無人島であるからといって尖閣列島上陸占拠等行為を行なうには、明らかにただいま外務省課長が申しましたように、米民政府の布令による占領地域に入っているわけでありますから、アメリカを相手にして上陸をしてくるということに一応なるわけでありまして、そういうことは中華民国政府考えていないでありましょうし、また先日完成いたしました三百五十トンの琉球警察の最新鋭巡視艇、これを当初沖縄本島に配置することに考えていたのでありますが、このような海域における問題が起こっておりますので、これを一番近い八重山群島石垣市に新鮮船を配置しよう。そして、それによって、起こるトラブルを常時未然に排除する努力を、警察権というものにおいても住民の権利立場から行使するようにしたいというふうに考えて、そのような方向琉球政府と意見が一致しているところでごございます。
  23. 和田静夫

    和田静夫君 いま述べられたように、アメリカとの関係においてあそこに漁師が永住しない、あるいは台湾軍隊が上がらないという形のことは、私たちもそういうふうに思うんです。問題は、総務長官が直接担当されている沖縄返還後に、そのような形のことが、いわゆる竹島との関係と同じようなことが残念ながら想定されますが、それに対して外務省側の答弁は納得させるものがありませんから、実はその辺を私は危惧しながら質問をしているわけです。その辺の態度についてひとつ明確に一ぺん答えていただきたい。
  24. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私の知り得た範囲でありますが、中華民国政府は、沖縄の七二年返還、その際においても何も注文をつけておりませんし、またただいまのような資源問題で、両国国境問題策定という問題を、かりにそういう角度から中華民国がとらえて、有利に解釈しようと思っているとしても、そのことを日本側の合意なくして、いわゆる日中間における具体的な紛争が生じるというようなことを決して好んでいない中華民国政府が、中国大陸政府との間において、あるいは国連のその関係における論争の中において、みずから孤立の道をたどることを最も警戒している国であることは——あるいは自粛している国であることは想像できるわけでありまして、表に立ちませんが、中華民国政府としても、このような小さな列島の占有権をめぐって、あるいはまた資源開発の面においても、日本側と徹底的な対立状態に入るということにおいて、得るものよりも失うものがあまりに大きい。それよりか孤立しない中華民国政府といういまの立場を確保することのほうが、より比較にならない重大な要素であるというふうに受け取っておるように、私としては相当な高官筋の情報をもって判断いたしておりますし、外務省は正規のルートをもってそのような感触を伝えてきているわけであります。
  25. 和田静夫

    和田静夫君 次に移りますが、実は私は六月に北海道を二週間——ちょうど開発庁長官が道北を回っているときに、私も道北を回っておった。それから今度は、十月にかけて、総務長官が道東をお回りになっているときに、私も北方領土問題のために道東を二週間回っておった。そこで、北海道開発問題で、きょうは決算ですからかなりのことを用意したのですが、これはあとは官房長官がお見えになってから言いますが、決算委員会の日程がきまってから担当大臣が外国へ出かけてしまう、こういう事態が起こって、非常に私としては政府に対して不信感を持っているのですが、ともあれ、その中で緊急を要する二点だけは、きょうの機会に北海道に関する問題で質問しておきたい。  その一つは、名寄の自衛隊の基地です。ことしに入ってから、私も名寄の基地を見てきました。北海道の名寄にホークミサイル基地がくるのではないかということが報ぜられている。名寄の市民はたいへんな不安にかられている。あそこで反対闘争が起こっているのは御存じのとおり。このことが、まず事実かどうかということです。
  26. 大西誠一郎

    説明員大西誠一郎君) お答え申し上げます。  昭和四十六年度の計画といたしまして名寄にホークの一高射群を建設することを計画いたしております。
  27. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっとその規模についてもう少し。
  28. 大西誠一郎

    説明員大西誠一郎君) 高射群の概要を申し上げますと、高射群は四個の射撃中隊と、二つのそれを支援する部隊からなりまして、人員は約六百九十名でございます。
  29. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、この六百九十名という人員は、いまのものにふえる、プラスになる、こういうことですか。
  30. 大西誠一郎

    説明員大西誠一郎君) そのとおりでございます。
  31. 和田静夫

    和田静夫君 過般、実は名寄の市長選挙がありまして、その市長選挙の応援に見えられた自民党の松浦衆議院議員がこういうふうに述べられたんです。——いま、名寄にホークが来ることになっているが四次防でホークのような小さなものではなくて、ナイキが計画されておる。そうなりますと——これは後ほど自治大臣が見えると思うんですが——過疎化に悩む名寄市は何の心配もありません。——こう述べられておるんですね。そこで、四次防の中でナイキは明確にここに配置されるのですか。
  32. 大西誠一郎

    説明員大西誠一郎君) 四次防につきましては、御承知のように現在検討中でございますので、明確なことを申し上げかねますが、現在北海道にはナイキが一つ。それからホークが今回配置いたします名寄を含めまして二ということになっております。
  33. 和田静夫

    和田静夫君 四次防の中で論議をきれておるナイキ配置問題、その中には名寄は含まれていますか。
  34. 大西誠一郎

    説明員大西誠一郎君) いま申し上げましたように確定的なことは申し上げられませんが、私どもが検討しております中には入っておりません。
  35. 和田静夫

    和田静夫君 ナイキが配置をされた場合、いまナイキ一基が北海道にありますね、一カ所。その規模はどうですか。
  36. 大西誠一郎

    説明員大西誠一郎君) 現在、千歳に司令部を置きますナイキの第三高射群というのがございますが、これは三個中隊からなりまして全部編成が完了いたしますと約七百名から八百名ということになります。
  37. 和田静夫

    和田静夫君 完成すると七百から八百。現在は……。
  38. 大西誠一郎

    説明員大西誠一郎君) 現在は、御承知のように長沼に配置される分がまだ終わっておりませんので、ちょっと私、正確なことを覚えておりませんが、二個中隊分と、それから本部と、それから長沼に配置する分の準備要員を含めまして七百程度ではないかと思います。
  39. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、先ほど言われましたように、全部配置が終わると七百から八百というのは、八百になるということですか。
  40. 大西誠一郎

    説明員大西誠一郎君) ちょっと私、いま手元に数字がありませんので正確なことを申し上げられませんのは残念でございますが、大体その程度ではないかと思います。
  41. 和田静夫

    和田静夫君 先ほどの松浦衆議院議員の引用で、四次防でナイキが計画されている。そこで、このナイキが計画をされるということは、ホークミサイルそのものは、射程距離が三十五キロ、射高約十五から三十キロ、発射速度が毎分五発、二発搭載(発射基二十四基)、そういうものでありますから、現在の高性能のナイキと比べた場合、だいぶ劣るということも考えられることから、ゆくゆくは、この攻撃型のナイキハーキュリーズの基地としていくことは、われわれとしては予測せざるを得ません。長沼の場合、これは、あれだけ問題になっていますから、そこに配置が成功するのかどうかわからないにしても、そういうことは当然予測されているわけです。それで、松浦さんの発言に確実性があるとして、かなりの実力者でしょうから、いま申し上げたことを私が類堆するのも当然だろうと思います。この松浦発言で、実は私が注目したことは、氏が四次防による名寄のナイキ基地化と名寄の過疎現象を結びつけて考えられている点なんです。ともすると過疎化しがちな北海道開発、そういう観点から、北海道開発庁としてはこうした軍事基地化を通しての過疎対策、そういうありがちな考え方に対して、どのような見解をお持ちになっているか、一見承りたいと思います。
  42. 菅野儀作

    説明員菅野儀作君) ただいま和田さんの御質問ですが、軍備の増強ということと過疎対策ということは、おのずから目的を別にしておりまして、軍備の拡充によって過疎対策の問題を処理するということは好ましくないことでありまするし、北海道庁といたしましても、そういうことを主体に考えてはおりません。いわゆる中小工業の誘致ということ、もしくは観光施設の拡充整備、そういうことを重点に道庁としては考えておる次第でございまして、軍備と結びつけて過疎対策を考えておるということはございません。
  43. 大西誠一郎

    説明員大西誠一郎君) ただいま先生に御説明の中のホークとナイキについての説明を若干補足さしていただきます。  まず、四次防ではナイキを置くということを検討しておりませんということは申し上げたとおりでございます。それで、ナイキとホークの関係は、ナイキは射界が約百三十キロでございます。ホークはただいま先生がお示しになりましたように三十五キロでございます。したがいまして、その防護する範囲というものが違いますのと、大体これは組み合わせて使うということで、ホークのほうは主として機動的に、陸上自衛隊の場合で申しますと、師団と一緒に行動するというような使い方もございます。したがって、ホークが古くなってナイキにかわるというようなことはございません。それからホークは、先ほど新たに置くというふうに申し上げましたけれども、名寄に関してはそのとおりでございますが、これは現在札幌付近にございます九十ミリ高射砲の大隊を廃止をいたしまして、そうして、このホークの高射群に変える。九十ミリ高射砲というのは、第二次大戦当時の兵器でございまして、非常に古いわけであります。それをやめましてホークにかえるということで、北海道全体の防空能力を改善するというような次第でございます。
  44. 和田静夫

    和田静夫君 防衛庁はいいです。  厚生省にちょっとまず確認をしますが、地方病対策の中のエヒノコックス関係の補助金ですね、昭和四十二年度、四十三年度、四十四年度、四十五年度。四十六年度の予算要求。この対策費の金額を教えてください。
  45. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) いまのお尋ねの対策費の総額は、昭和四十二年度が百二十五万二千円、四十三年度百二十五万二千円、四十四年度百二十万三千円、四十五年度百二十八万九千円でございます。四十六年度の要求額は百七士二万三千円でございます。
  46. 和田静夫

    和田静夫君 百七十三万三千円ですか、間違いありませんね。
  47. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) はい。
  48. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、エヒノコックスに関して若干の質問をいたします。
  49. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 失礼しました。ちょっと訂正さしていただきます。四十二年度から四十五年度まで申し上げました分は、国庫補助金だけの額でございます。それに対応いたします四十六年度の要求額は百三十五万九千円でございます。ほかに本省費を含めまして先ほど申し上げたわけでございます。
  50. 和田静夫

    和田静夫君 アラスカにしがなかったエヒノコックス症が礼文に移って、そして礼文で、日本で一番多くの病人を出して、それとの関係でもって総務長官も最近行かれたが、根室、釧路地域というのがいま最大の病人をかかえて、それが全道のものになって、同時に青森県、宮城県、岩手県あるいは新潟県、長野県、そして新潟県の直江津までこういうエヒノコックス症の、いま病人の点在がありますね。大体、点在はそういう形で確認をしておいてよろしいんですか。
  51. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 私ども承知しております限りでは、患者の発生は礼文島が従来大部分でございまして、あと御指摘のように、北海道の根室地区その他若干の地区に多少の患者の発生を見ております。それから本州地域で青森県その他に発生があるという報告は受けておりますが、具体的にどの県にどれだけの患者があるかという資料につきましては、申しわけございませんが、なお正確に把握いたしておりませんので、今後調査をいたしたいと思います。
  52. 和田静夫

    和田静夫君 実は、これは何べんも質問の中で申し上げたいと思うんですが、問題は百二十万、百三十万程度のものでやってこられた、そういう意味での行政が、難病といわれるエヒノコックス症というもの北海道から本州に渡らせた。そして東北から信越の一部までいま病人を出すようになってきている。これが将来にわたって本州、日本列島全体のものにならない保証がない。関門をくぐって九州に渡らないという保証はない。そういう観点から実は述べたいんですが、たとえば佐渡です。佐渡ケ島に病人が発生をした。そうしますと、アラスカから千島に移って、千島から礼文島の野ネズミを退治するためにというようなことでつがいのキツネを入れた。そうして大正十二年から約四十年以上ですね、言ってみれば病人がずっとこういう形で分布図的にはふえてきたんです。礼文は閉ざされた鳥であるがゆえに、ああいう形で患者がずっとふえていったと同じ形で、佐渡なら佐渡にひとつ入りまして——人から人にうつる病気ではないというけれども、その原因が究明されなければ、新潟県の佐渡に礼文と同じような状態がこないという保証はないことなんです。そういうことに対する研究機関と研究費用、まあ本省関係はいまのやつで引き算をしてみればわかるわけですが、そういったことで一体、厚生省はやっていけるおつもりなんですか。予算要求とのかね合い、いままでの決算の上に立って、こういうことでよろしいと思っていらっしゃるわけですか。
  53. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 現在厚生省で計上いたしております補助金は、これは先生御承知と思いますが、三分の一の補助金でございまして、地方費を加えましてこの三倍の額で主として健康診断によります早期発見、それから媒介動物の駆除というような対策を講じておるわけでございます。  それで、ただいま御指摘北海道地区以外の地区におきます散発的なエヒノコックス症の患者が、たまたま北海道と何らかの関連を持っておる人が向こうで感染をいたしましたもの——承知のように本疾病は潜伏期間が十年から十五年といわれておりますきわめて長いものでございますために、その媒介動物が本州に移入されて、そのために発生したのか、あるいは北海道に関連を持った際に向こうで感染いたしまして、本州で散発的な発生を見たのか、その辺の解明がなお十分になされておりませんので、今後御指摘のような意味で研究も並行して行なうことはきわめて必要だと思いますので、各県に連絡をいたしまして、そういった実態を把握いたしました上で十分な対策を講じてまいりたいと考えております。
  54. 和田静夫

    和田静夫君 いま潜伏期が十年から十五年で非常に長いものだと言われましたね。そんなことはないので、御存じのように総務長官も最近行ってこられたばかりだが、釧路の保健所管内では七歳の発病患者がいるわけです。したがって、たとえば考えられることは、ピクニックに行く。そこで野ギツネのふん、あるいは野犬のふん、飼っているネコ、あるいは飼育している犬、そういうものからの感染率というのはもうすでに考えられていますね。そういう飼われているところの犬が東北にも流れてくるなどというような感染ルートもあるでしょう。あるいは先ほど北海道開発庁次官が述べられたように、この数年、北海道というのは御存じのように観光ブームでわいております、ハイカーが横行している。それらの諸君がまあ名所を見て歩いたりしながら帰ってきた。九州に帰ってきた。五年か六年たったら発病をしないという保証はないわけですね。私は一番このことに対して憂えている、しろうとですが。北海道の根室の市役所の前に行くと、エヒノコックス症対策本部という看板がある。そうして根室や釧路地区の住民に対しては健康診断なり宣伝というものはかなり行き届いております。しかしながら、観光目的の開発が非常に政策としても進められているわけですから、たくさんの本州からの観光客は無用心にあの地域におけるところのわき水を飲む、あるいは未開発地に入っていく、あるいは阿寒を歩くなどというようなことを経ながら、帰ってきて数年たったならば、ガン症状と同じような形で、おそらく北海道の場合だとエヒノコックスじゃないかという疑問へいくと思うのですが、九州で発病したらガンじゃないかなということになるでしょう。そういうような関係の対策というのは、やっぱり私は北海道開発関係におけるところの観光政策との関係で、防疫の視点に立った厚生行政にそういう手抜かりというものがあるような気がするのですね。そういうことを考えた場合、いまあなたがたが予定をされているような予算ではとてもどうにもならぬのじゃないか。われわれも一緒になって、こういうような形のものに対しては、大蔵省に対して予算をもっとやるべきだというような意見を述べなきゃならぬと思いますが、そういう必要はありませんか。
  55. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) ただいまの和田先生の御指摘のように、北海道を旅行いたしました者が向こうでエヒノコックス症に感染いたしまして、それが本州へ戻ってきてから、あるいは九州の方もあると思いますが、発病するという可能性は考えられることであろうと思います。私、先ほど申し上げました現在青森県その他に散発的に見られます例も、そのような例であるかどうかというようなことを、県当局を通じて調査をいたしたいということも考えておりまして、そういう意味では北海道に旅行される方が帰って、まあ十伊前後と言われておりますが、御指摘のように根室では七歳の者の発生も見られておる。そういう例から見まして、ある時期において通常の症状に見られますような疑いがある場合には、早く検診を受けなければならないというようなPRは、今後北海道に旅行する人に対しては必要であろうと思います。その点は私どもも、これは予算の問題だけでなしに、PRは県を通じて、あるいは北海道庁を通じて可能な部面もございますので、できるだけ努力してまいりたいと考えております。
  56. 和田静夫

    和田静夫君 後者のほうの場合の答弁はわかりましたが、たとえば佐渡の例で申します場合、そういうところに対する言ってみれば防疫の視点に立ったところの行政の指導、それに伴うところの予算などということについてはお考えになりませんか。何もこれは佐渡に限りません。新潟なら新潟で直江津一、新潟で二という形にもうすでになってきております。長野県でももう一例出ております。岩手、青森等でも出ている。東北から北信に移ろうとしているエヒノコックスについて、厚生省はどういう措置をとられるつもりですか。
  57. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) ただいままで北海道、特に礼文島を中心といたしまして、私どもも道の協力を得まして調査いたしました。媒介動物の保虫率について考えてみますと、いまのお話のような畜犬あるいはネコ、野ネズミというようなものについても調査をいたしております。それから野ギツネについても調査をいたしておりますが、ただ従来の例では保虫率はやはり野ギツネが圧倒的に多うございまして、他の動物における保虫率はきわめて少ないわけでございます。そういうような例から見まして、いま御指摘のような散発的発生がはたして媒介動物がその地区にあって発色しているものか、あるいはそうではなくて、北海道へ旅行した人が向こうで感染したために発病したものか、そういった点を調査いたしませんと、同じく対策といたしましても、散発的な発生に対する早期発見、早期治療といろ対策をとるか、あるいは抜本的な媒介動物を絶滅するという対策をとるかという方策が明らかになりませんので、先ほど申し上げましたような県の協力を得まして、そういった伝染経路を把握いたしました上で、必要な対策は十分とらなければならないと思います。
  58. 和田静夫

    和田静夫君 佐渡は島だから例があげやすいからあげるのですが、礼文だって初めは一、いま佐渡で一、礼文では百三十三になった。佐渡で百三十三にならないという保証はない。礼文の場合は野ギツネを全滅させたと言われております、全滅ということがあり得るかどうかは別として。そしてわき水を飲んでおったのを簡易水道にした。佐渡の場合は、わき水を飲んでいる地域が幾らもあるというようなことになりますと、礼文と同じようなことになり得る条件というものは同等の条件として持っています。いま約束をされたような措置というものを、やはり早急にやることが好ましいと、こう思うのです。  時間がなくなってきておりますので二、三にしぼりますが、媒介動物をなくするという形のことを盛んに言われます。しかし、これは現地の保健所長その他ともじっくりいろいろ勉強させてもらってきました。実際問題としては媒介動物をなくしていくということは不可能に近い。おたくのほうでも資料はあがっているでしょうが、たとえば野犬なら野犬の増加率というのは、こういう形になっております。若干のものをつかまえれば、つかまえるほどふえていくという形になっております。それから飼いネコの飼い主に対して予防的にあれしなさいなどと言ったって、そのことが行なわれるなどということは常識的に考えられません。動物を愛護する方というのは、ある意味では異常なあれをお持ちになっておりますから、犬にしてもネコにしても。したがって、私は媒介動物を全滅させていくなどというような施策でもって万全かどうか、このエヒノコックスの問題についてはたいへんだと思うんです。その点について、たとえば衛生教育を徹底しながら犬を捨てないことだとか、ネコを捨てないことだとか、いろいろな言い方があるでしょう。それからキツネについては、たとえば根室地方の問題でいえば、非常に酪農がふえている。これは道東ばかりじゃなく、道北の場合はもっとそうです。それが死亡して放棄する、それに群がる。そうして感染をしていくなどというような経路もあって、キツネに繁殖してくる、たいへんな状態で繁殖をしております。これら病気の仲立ちをするという形のものについて、媒介動物を根絶をしていったならばよくなるんだという論法には、私はどうも納得ができないんです。その辺の対策というもの、キツネやら野ネコやら、野ネズミの対策の困難性というものをやっぱり一方で踏まえながら、かつ、たとえばニュージーランドとかオーストラリアなどの先進国で、犬なら犬に対する、あるいは羊なら羊に対する——笑い話じゃないですが、総務長官は最近北海道へ行かれた、おそらくジンギスカンを食べてこられたでしょう、私も同様に食べてきた。六年くらいたって同様にガン症状になったなどということにならない保証は全然ないですからね。明確に本州に渡ってきておる現状からいって、そういう意味でたいへんあれですが、たとえば犬の対策なら犬の対策を考えた場合に、飼い犬、飼いネコに対するところの健康診断の技法、日本の場合は、たいへん人間に対する予防的な、あるいは事後処置的な診断というものが行なわれておりますけれども、犬やネコに対するところのいわゆる健康診断的な技法というものがたいへんおくれておるといわれますね。ニュージーランドとオーストラリアを調べてみますと、その点に対するところの技法というものはたいへん進歩している。そういうことを考えますと、いまあなた方が用意をされている予算などでは、こういうところに手がつかない気がするんです。それでも手がついて、このままでいけばりっぱにできますというふうに確信を持ってお答えになられますか、これが二つ目。  三つ目は、アラスカで出たものが千島へ渡り、千島から礼文に渡り、北海道、そして本州に、佐渡に、そして将来は私は九州に、こうなるだろうと思うんですが、こういう状態において、やっぱり調べてみなければならないのは、アメリカのいわゆるこっち寄りの領土の付近、ソ連のこっち寄りの付近などなどで、これらの問題についての発生の状況やら、それに対する処置状況などというものについては調査が完了されておりますか。この三つについてお答え願います。
  59. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 第一点の中間宿主対策、最終宿主の場合でございますが、媒介動物だけで足りるかという点につきましては、私の説明が不十分でございまして、いま行なっております対策は、媒介動物を少なくするという対策と並行いたしまして、疑いのある患者に対する早期診断、これは皮内反応検査を行なって、その疑いのあるものについてはレントゲンその他の精密検査をするという方策をとっております。それによりまして早期治療をはかるという患者対策と両方を並行して行なっております。御指摘のように、媒介動物対策だけをもって決して足れりと考えているわけではございません。なお、媒介動物の中でも先ほど申し上げましたように、特にキツネの保虫率が多いというような点から、そういうものに中でも重点を置きまして、対策を講じてまいりたいというふうに考えております。  それから第二の、予算の内容の問題でございますが、予算の点は、御指摘のように、多ければ多いほど十分な対策を講じられるわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、予算の内容は三分の一の国庫補助金でございまして、道におきましても、あるいはその他の地方公共団体におきましても、これは住民の福祉対策といたしまして、相当な予算を計上していただいて、協力して進めておる状況でございます。患者の発生につきましても、多少減少の傾向を見ておりますので、その点は私どももできるだけ予算を有効に活用いたしまして、今後の対策を十分に進めてまいりたいと考えております。  それから第三の、外国の例につきまして、資料を集めておるかという点でございますが、これは非常に局部的な疾病でありますために、まことに残念でございますが、私いまのところ、外国の資料につきまして十分な知識を持ち合わせておりませんので、この点は今後資料をそろえまして、御説明を申し上げたいと思います。
  60. 和田静夫

    和田静夫君 答弁が抜けているところもあるんですが、たとえば犬やネコに対する健康診断の技法の開発法などについてもお聞きをしたい。それだけじゃとても足りないと思うのであれですけれども、もう一つは、北海道に対する企業進出がたいへんです。そうすると私は、これらの諸君に対する教育という問題についてはかなり必要だと思うのです。ところが、本州に育った諸君が、北海道に行って経験してきなさい、二、三年行ってきなさい、これ幸いとばかり北海道のすみずみまで見て回る、そして罹病しないという保証はない。そしてある一定の中堅幹部になって、本社勤務になって帰ってきた。そのころになると、おかしくなるというような可能性というものは、たいへん神経質に考えますが、明確に私は存在すると思う。そういう意味での企業に対する教育というもの北海道に進出をしていますから、たくさんの企業が。あの企業に対する教育というもの、それからさっき言った観光開発との関係で行くところの観光客に対する全体の衛生教育ももちろんのこと、それからもう一つは、過疎化現象と野ネズミの発生ですね。それから野犬、そういう中にハンターが入っていく、最近鉄砲撃ちがかなり多いですから、それらが罹病をするなどというような形に対する対策も必要でしょうし、そしてあの辺におけるところのわき水というのはやはり考えなきゃならぬ。礼文の蔓延状態から考えまして——などということの教育も必要です。  それらのことを考えて、最後質問ですが、北海道に出されているような形と同じものを、いますでに発生をしている青森県から新潟、長野県にわたって見ていかれるおつもりはないんですか、国庫補助を。
  61. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 第一点の、北海道へ企業関係等において短期に滞在されるといろ方につきましては、先ほど御指摘のありました観光客に対するPRと同じような意味で、これは道を通じ、あるいは主要な企業を通じまして、十分な対策を講じるということは必要であろうと思います。努力いたしたいと思います。  それから他の県に対する補助金を考えないかという点につきましては、先ほど申し上げましたように、そういった県におきましての発生の経路、それを至急調査をいたしまして、必要と認められまず場合には今後そういった点を考えていかなければならないのではないかというふうに考えております。  それから先ほど、お答えを漏らしましてたいへん恐縮でございますが、犬、ネコ等に対する診断方法の技法の確立、こういった点につきましては、今後専門家の意見を聞きましてできるだけ現地に対する指導をしてまいりたい、そういうふうに考えております。
  62. 和田静夫

    和田静夫君 ありがとうございました。  自治大臣がお見えになったようでありますが、実はきょう、北海道開発庁・科学技術庁長官に関する決算が用意されておりましたのであれなんですが、御本人は海外に出ておられますからお見えになりません。で、自治大臣に御出席願ったのですが、実は西田北海道開発庁・科学技術庁長官、そのことの関連で秋田自治大臣は、世論のきびしい批判を受けている政治資金のあり方を正すんだ、政治資金規正法に基づく収支報告書を提出していない不良政治団体の一掃に乗り出すという決意を固められて、七月六日に具体策の検討を事務当局に指示をされましたね、その点に関連をして自治大臣考え方をまずお聞きしたいのです。
  63. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) 政治資金規正法は、選挙並びに一般の政治活動の公正を期して健全なる民主政治の確立をはかるゆえんでございますので、これが法規の正確な履行をわれわれとしては高く評価し、考えなければならないと思います。それにつきまして収支報告書の提出がおくれておる、あるいははなはだしく怠っておられるものがあると見られる節がありますので、まことに遺憾に存じております。中には事実上消滅しておる団体で正式の届け出をしておられない団体もあろうかと想像もされますから、実情をまず調査すると同時に、未提出の団体につきましては収支報告書の早期の御提出を督促する必要がまずあろうかと思いまして、七月中、それらの団体に照会を出しまして早く収支報告書の御提出を求めると同時に、前に申し上げたようなことも想像されますので、その団体の存否、所在地あるいは代表者の変更の有無等を問い合わせる措置等もあわせまして照会をいたし、督促をいたした次第であり、ただいまなおそれを続けておる状態でございます。
  64. 和田静夫

    和田静夫君 そのとき同時に、期限までに報告書を提出しない団体には政治資金規正法の罰則を適用してどしどし処罰する、そういうお考え方というのは当然お持ちになっておられますか。
  65. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) まず実情を十分調査をいたして、その上でいろいろの点につきまして関係方面とも連絡をし、慎重に検討する必要があろうと考えておりますが、まず実情をはっきり把握することが必要であろうと考えております。
  66. 和田静夫

    和田静夫君 ところで、千代田区神田末広町九富士ハマホーム株式会社内を事務所の所在地として西田信一後援会が、政治資金規正法第六条第一項第三号に基づく届け出をされております。現に北海道開発庁長官であり科学技術庁長官である西田さんであります。この後援会は政治資金規正法第十二条に基づく報告をされていますか。自治省の政治資金収支報告書の公表に伴う説明資料の全部に私、目を通しました。四十三年、四十四年、これは完全に怠られています。したがって、官報にも掲載されていません。よろしいでしょうか。
  67. 中村啓一

    説明員(中村啓一君) ただいま和田先生の仰せのとおり西田信一後援会は政治資金規正法十二条に基づく届け出を四十三年、四十四年について怠っております。
  68. 和田静夫

    和田静夫君 千代田区永田町一の十一の三十五、全国町村会館別館五階に協同主義研究会というのがあります。これは井出郵政大臣の秘書官荻原秀男氏を主幹とし、会計責任者とする井出郵政大臣の後援団体であります。これは四十三年度四百九十万円という収支報告書が出ていますが、四十四年はいかがですか。
  69. 中村啓一

    説明員(中村啓一君) ただいま御指摘になりました協同主義研究会につきましては、その後の督促によりまして、四十三、四十四年とも報告書はおくれてでございますが、ございまして、その旨追加公表をいたしたところであります。
  70. 和田静夫

    和田静夫君 それは、いつ追加公表されましたか。
  71. 中村啓一

    説明員(中村啓一君) 初めに全体を取りまとめまして官報に公表したあと、約四カ月を経過したころでございましたか、それまでに督促によって集まりましたものをまとめまして、追加公表したわけでございます。
  72. 和田静夫

    和田静夫君 恐縮ですが、その官報を全部、私は持っているつもりですが、何月何日付ですか。
  73. 中村啓一

    説明員(中村啓一君) 日付につきましては、ここに持ち合わせておりませんので、直ちに調べまして申し上げます。
  74. 和田静夫

    和田静夫君 調べてください。やはり全国町村会館別館四階に西湖会があります。これは新聞などで有名なことですが、橋本運輸大臣の後援団体であります。同じ全国町村会館の五階にある近代化政策研究会、これも橋本登美三郎氏の第一秘書である香取衛氏が職務代行している団体です。この両者とも四十三年、四十四年と収支報告書を出しておりません。それはそうですね。
  75. 中村啓一

    説明員(中村啓一君) ただいま御指摘のありました西湖会並びに近代化政策研究会につきましては、四十三年はおくれて報告がございまして、追加公表をいたしました。また四十四年につきましては、上半期についてやはりおくれて届け出がありまして、追加公表をいたしました。四十四年の下期につきましてはまだ御報告をいただいておりませんが、連絡がついておりまして、急いで取りまとめたいという話をいまいたしておる段階でございます。
  76. 和田静夫

    和田静夫君 これも、いますぐ官報はわかりますか。
  77. 中村啓一

    説明員(中村啓一君) 追加公表いたしました官報日付につきましては、たいへん恐縮いたしますが、直ちに調べまして申し上げたいと思います。
  78. 和田静夫

    和田静夫君 直ちにというのは、いま論議をしている十二時までの間ですから。
  79. 中村啓一

    説明員(中村啓一君) わかりました。
  80. 和田静夫

    和田静夫君 佐藤経済企画庁長官の研政会は、四十三年度収支五百万円は届け出されていますが、四十四年度は私の見た限りの官報では出ていません。これは間違いありませんね。
  81. 中村啓一

    説明員(中村啓一君) ただいま御指摘のありました研政会につきましては、御指摘のとおりの事実関係であります。
  82. 和田静夫

    和田静夫君 千代田区平河町二の九、北野アームスビル八階にある山王経済研究会、千代田区平河町二の七、砂防会館にある新政治調査会、衆議院第一議員会館七一八号室、中曽根康弘議員の部屋にある近代政治研究会、これはいずれも中曽根防衛庁長官の後援団体であります。これらも四十三年度、四十四年度——念のために申し上げておきますが、山王経済研究会は中曽根さんの元の秘書で最近やめられた大石昭彌氏が主幹と職務代行をつとめておられます。小林克己氏、元の秘書が会計責任者。この会は財界人三十人ぐらいが中曽根さんを後援するため会費として毎月二十万円ぐらいを払っているという堤清二さんの証言と、それを認めた中曽根さんの発言——中曽根さんが新日本新聞を名誉棄損で告訴された報告書に公文書として載っておりますが、その存在は明確です。したがって、それに基づいて四十四年上半期報告二百二十四万五千円はおくればせながら出たように、これは仄聞しておるのであります。  それから、新政治調査会は、これは元の秘書官小林克己氏が主幹と職務代行ということなんですが、以上はよろしいですか。
  83. 中村啓一

    説明員(中村啓一君) ただいま和田先生からお話のございました山王経済研究会代表者は大石昭彌であります。また新政治調査会代表者は小林克己であります。近代政治研究会代表者は上和田義彦となっておりまして、御指摘になりました事実関係につきましては、おおむね御指摘のとおりであろうと存じておりますが、届け出の点につきましては、新政治調査会並びに近代政治研究会は遺憾ながら四十三、四十四両年とも届け出はいたしておりません。山王経済研究会につきましては、先ほどと同じ状態で追加報告がございまして、四十三年と四十四年の上期につきましては報告がございますが、下期はございません。
  84. 和田静夫

    和田静夫君 時間がなくなってきましたから急ぎますが、いま確認したとおりです。  ところで、自治大臣、自治省が七月十日で集約されたはずなんですが、法律によると、六月三十日限りのものを翌月の十日までの間と、こうなっておりますが、その昭和四十五年上半期政治資金収支報告書の公表がまだなされておりませんが、これはなぜですか。
  85. 中村啓一

    説明員(中村啓一君) お話のございましたように、四十五年の上半期につきましては七月十日が一応の期限になっておりますが、この点につきましてはいろいろな問題もございまして、六月三十日までを十日間の間で全部整理をして出すという点については、かなり事実問題として困難があるようでございます。そこで私どもはできるだけ早く御提出をいただくようにということでお話をいたしておりまして、九月いっぱいまでにかなり集まっております。私どもはなお未提出の団体につきまして督促をいたしまして、できるだけ早い機会に全体をまとめて四十五年上期を公表いたしたいと存じております。
  86. 和田静夫

    和田静夫君 いま秋田自治大臣を中心としてこのことについて努力をされておる立場を私は認めていますから、あまりくどいことは言いませんが、いま言われるような答弁で、十日間でまとめることがどうしてもできないということがわかっておるなら、政治資金規正法の改正問題というのは早くから問題になっておることですから、それにやはり着手をされるべきである。現存しておる法律は法律なんですからね。その辺はかなり問題だと思うんです。この現存しておる政治資金規正法の十二条の第一項によれば、政党、協会その他の団体の会計責任者は、毎年六月三十日及び十二月三十一日現在で、収支報告書を、おのおのその日の翌日から十日以内に自治大臣に提出しなければならない。例年この収支報告書を出している団体が届け出団体の実は半数に満たないですね。これは資料全部に当たってみましたけれども、ことしもごたぶんに漏れずに、この十二条を順守した団体があまりにも少ない。  そこで冒頭、自治大臣に確認をした、言ってみれば自治大臣の談話支持という形になった。こういうふうに私は思うのですが、その理解はそれでよろしいですか。
  87. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) ただいま申し上げましたとおり、政治資金規正法の規定はこれを順守しなければならない。かように思いますので、十二条関係につきましては、これの順守方につきまして極力督促をいたしておる次第でございます。
  88. 和田静夫

    和田静夫君 したがって、この十二条を守っていない団体というのは、自治大臣が言われるとおりの不良団体である、こういうことになりますね。内閣官房長官がお見えなので、時間の関係もありますから質問をいたします。  まず第一は、いまお聞きになったように、現閣僚のうちの五人がこういう不良政治団体から推薦を受け、支持される。残念ながらそういう形になっています、結果的には。これに対してどういう見解をお持ちになっているか。  さらに、西田北海道開発庁長官・科学技術庁長官は、本日四十三年度決算についてここで審議を受ける立場にあり、そしてこの日程は、閣議が彼の海外出張計画を立てない前にきまっていました。私は、その日程をきめてから、北海道開発関係決算のために北海道に二週間出かけました。十六日に出かけて、十人目の朝、北海道で起きて北海道新聞を見たら、閣議がそのことをきめたことを報じていました。たいへん私は不見識な話だと思う。こういう形というものはやはり決算軽視です。内閣総理大臣でさえ、国会中にはこの決算委員会に、佐藤さんになってから二、三回出るという慣行ができてきているのに、そういう形がとられるということはたいへん不見識です。この二つについて木村さんのほうから御答弁を願いたい。
  89. 木村俊夫

    説明員(木村俊夫君) まず、西田科学技術庁長官の海外出張でありますが、政府としましては、国務大臣が海外にしろ国内にしろ出張いたしますときには、十分国会審議の日程等を勘案して出るのは当然でございまして、その際に国会関係の了承を取りつけずに出るということは、原則としてあり得ないわけでございますが、たまたま連絡不十分等のために現実にそういう不都合が生じておりますことは、まことに申しわけないと存じます。ただ海外出張のときには当然臨時代理が置かれておりまして、国会における責任を十分果たせると思いますけれども、今後こういう不都合のないように十分注意をいたしたいと思います。第二の問題でございますが、いま私初めて承ったところでございます。この関係は当然自治省として、また選管の管轄でもございますので一ただ政治道義上の問題といたしましては、少なくとも閣僚の任にある者の関係する団体はそういうようなことのないように、十分今後も注意をいたしたいと、かように考えます。
  90. 和田静夫

    和田静夫君 これは、この部分については佐藤総理にも十分お伝えを願って、今後やはり適当な措置をとられるように希望いたしますが、これはお約束願えますね。
  91. 木村俊夫

    説明員(木村俊夫君) 十分その点注意してまいります。
  92. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃ副長官はよろしゅうございます。  政治資金規正法の二十五条によりますと、第十二条の報告書提出の義務を怠った場合に、会計責任者は「五年以下の禁錮又は五千円以上十万円以下の罰金」です。また、この会計責任者の監督について「相当の注意を怠ったとき」は、その者は「千円以上五万円以下の罰金」です。自治大臣がほんとうに今日の状況を遺憾と考えられ、いま官房副長官佐藤総理にも伝えて適当な措置をすることをお約束されたように、そういう意味で佐藤内閣姿勢を正す意味からも、さきに示した五大臣、そのうちの一大臣はあとからということになっておりますが、あと四大臣です。その一大臣についても、まだ官報掲載を確認しておりませんから、五大臣と言わせてもらいますが、五大臣の後援団体を含めて、不良政治団体にこの条項を適用して発動する、そういうことになりますか、いかがですか。
  93. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) 先ほど申し上げましたとおり、実情をとくと調査をいたして、その上でひとつ関係方面とも、いろいろの点がございますので、連絡をいたして、そうして十分討議をいたし、検討いたしていきたいと考えております。
  94. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、自治大臣にもう一度、お願いをというか、意見を述べておきますが、政治資金規正法の六条の二号、三号の関係であります、これはもう読み上げるまでもなく、同一の都道府県の区域内で二以上の市町村の区域にわたる場合、三号の、二以上の都道府県の区域にわたる場合の、自治大臣への報告です。この辺は案外行き届いているのかもしれません。問題はその二号のほうですね。二号のほうは、これはもうほとんど怠られているのじゃないかということですが、いま例をあげろと言えば、時間がかかりますからあげません。  そこで、三十条で選管の指揮監督権、それから三十一条で報告、資料の提出要求権をお持ちになっています。そこで現職の佐藤内閣大臣に関する各地方の分を、提出要求権を発動されて、指示をして、資料として御提出願いたい。できますか。
  95. 中村啓一

    説明員(中村啓一君) 初めに先ほど和田先生からお話のありました追加公表いたしました官報の日時について事実関係を申し上げます、たいへんおくれまして恐縮でありますが。何回にも分けてやっております。四十三年の十二月二十七日、四十四年の六月十七日、四十五年の一月十日、四十五年の二月二十七日というぐあいに、何回にも分けてやっております。  先生からただいまお話のございました六条関係の励行その他の問題につきましては、いろいろと御指摘のような、必ずしも順守されていないという事実のあることは仰せのとおりでありますが、私どもは何とかして行政的に、それぞれの団体に御迷惑でもうんとしつこく連絡をして、この法律を順守していただきますように、事務的に最善を尽くしてまいりたいというふうに存じておるところでございます。お話のありました都道府県段階で活動をしております団体は、全国で約一万に近い数になっております。しかし、それは届け出のあります数でございまして、現実にどこまで活動し、あるいは現実に毎年どこまで収支があるかという点につきましては、おそらく必ずしもその数までにあるとは言いかねるものと思っております。で、お話のありました点は、都道府県を通じまして把握し得る限りの事実については、私どももこの際、全国の都道府県段階の政治団体におきまする政治資金報告励行の有無を把握するという意味合いも含めまして、照会して、当たってみたいというふうに存じております。
  96. 和田静夫

    和田静夫君 あと二十分ぐらいしかなくなりましたからあれですが、実はちょっと横道にそれますが、商工中金のほうにちょっと伺います。六脚ブロックですね。倒産をした技研興業を中心とする六脚ブロックについて、商工中金が六脚ブロックに貸し付けた額、それはどれだけですか。
  97. 小林忠夫

    参考人(小林忠夫君) 六脚ブロック協同組合を通じまして技研興業株式会社に対する融資は、三十七年九月の二十日から取引を開始いたしました。その後、四十五年一月三十一日に不渡りを出しまして倒産いたしましたが、その間経常的な運転資金、これは商業手形を担保にいたしまして融資をいたしました。それから年末、盆の単名融資、それから六脚ブロック関係の製造の設備資金、これを前後三回に分けていたしておりまして、最終的な四十五年の一月末倒産時におきましての融資残高全体で一億二千三百万円でございます。現在の融資残高でございますが、その後回収につとめまして、現在八百八十七万八千円の残高になっております。そういうような状況でございます。
  98. 和田静夫

    和田静夫君 中小企業庁に……。商工中金と中小企業庁に次の問いに答えてもらいたいのですが、実はこの六脚ブロックの性格をほんとうは決算委員会としてもっと論議をしなければなりませんが、私も時間がありませんから、あらためて通産省のときにこの問題はやりますから、それは中小企業庁、用意をしておいてください。  そこで、これはもう明確に、技術興業に対する六脚ブロック事業協同組合というものは、かつての稲村産業と東豊産業協同組合と同じ形の資金の通り抜けであります。したがってもう、技研が倒れてしまえば——二十一世紀の産業だとかいろいろなことが言われておりましたが、倒れてしまえば協同組合自身も実はほとんど壊滅状態と同じ。こういうことになっております。いまそこにいっている。——用意しておるのですが、時間がなくなったものですからあれですが、この技研の倒産の当時、技研の社長・岩佐氏個人の仮払い金が一億三千万、これはもう明確に亀井常務が外に向かって発表しておりますから明らかになっております。その使途について、政治献金、そして妻経営の会社設備資金、そして若干の税金、こういうことになっております。その三つの点について、皆さん方は倒産をされてからいろいろ折衝されて調べられたわけですから、この指導官庁である中小企業庁のほうは、その事実関係についてこの機会にちょっと明らかにしてもらいたい。
  99. 斎藤太一

    説明員(斎藤太一君) 技研興業が倒産いたしましたけれども、この技研興業の社長に対しまして会社から仮払い等があったかどうかについては、中小企業庁としては内容を詳細に承知いたしておりません。
  100. 和田静夫

    和田静夫君 中金のほうは、その折衝過程で内容の検討をされましたか。
  101. 小林忠夫

    参考人(小林忠夫君) 仮払い金のありますのはわかりましたが、その内容等につきましては十分調査いたしておりません。
  102. 和田静夫

    和田静夫君 これは、もっとこの辺は詳しく実はやらなければなりませんが、次回に回しますからあれですが、実はいま申し上げた六脚ブロック、技研グループ。この技研グループは、先ほどの報告では四十四年度下半期以降怠られている、なおまたあとも怠られている。中曽根さんの山王経済研究会のメンバー——この山王経済研究会は、先ほどもちょっと触れましたが、若手実業家約三十人で構成されている。防衛庁から発注を受けている小松製作所社長の河合良一さん、鹿島建設副社長の石川さん、西武デパート社長の堤清二さんなどと並んで技研興業社長の岩佐信幸氏、そしてその六脚ブロックの一社であります遠藤建設社長の遠藤宗祐さん、こういうことになっていまして、この技研の役員会には常に中曽根さんが出席されていた。これもまあそういう状態になっているということが明らかであります。  そこで、この山王経済研究会が収支報告未報告の団体、言いかえれば不良政治団体であります。そして、この山王経済研究会のメンバーである技研グループが、実はいま全部をつまびらかにすることはできませんでしたが、概略名前を言ったとおり、六脚ブロック協同組合事件を起こして、そして一億何千万かの使途不明金を出した、こういうことになっています。私は、こういうような、いま一例しかあげませんが、現閣僚の、結果的に井出さんの分は追加公表されているとしても、四十五年度の分についてはまだ未発表ですから、五閣僚です。五閣僚の名前をあげて、それらの人々の関係する団体の具体的法律違反を問題にしました。なぜそんなことをしたのかというのは、実はそうでもしなかったならば政治資金規正法問題というのは、いつもうやむやになるからなんです。実は私のほんとうに言いたいことは、いま自治大臣が七月六日の発表以来真剣にやられようとしているそのことを、やはり完全に遂行してもらうということ、そういうものを側面的にこの機会に、われわれの側としてはできる範囲協力をするという立場、同時に今日、政治資金規正法に基づく届け出団体の多くが何々研究会などというかっこうのいい名称をとりながら、実は政治家の資金づくりの単なる便法、しかも法の網の目をくぐった綱渡り的な金づくりのそれになっているように思われます。これはまた、天下がそういうふうに認識しているのじゃないかと思うのです。政治資金規正法に関する部分を佐藤総理以下主要な方々が何べんも早く手をつけて改正すると言いながら、結果的にはなされてきていないことによって私は明らかだと思うのです。たとえば、ちょっと調べてみたのです。佐藤総理は政経研究会、育政会、アジア研究会という三つの団体をお持ちになっています。一体、今日だれがこれらの団体で政治、経済の研究がなされ、アジア研究がなされていると信じているでしょうか。政経研究会は、たとえば東京の五八一の〇四五一をこれは回してみたら明らかなのです。五八一の〇四五一の電話を実は回してみました。そして、政経研究会をお願いしますといったら出たグランド・ホテルの交換手は「そんなものはありません」、こうなんです。そこで、それじゃ主幹者の遠藤毅さんを呼んでくださいと、遠藤毅さんを言っても、それはわかりません。それじゃ会計責任者の森重光正さんを呼んでくださいと言っても、わかりません。わからないはずなんです。職務代行の小宮山重四郎さんを呼んでくださいと言っても、わかりません。それもそのはずです、総理大臣の私設秘書官の大津正さんの名義で四百十三号室が借りられているだけなんです。通じません。大津正さんと言わなければ通じません、そんな名前で——。ここに公式の一覧表全部を持っていますが、役員名簿に出ておりません。しかも、その金の使われ方などというものを見てみますと、四十四年下期、政経研究会は研究費という名目で七月十人目、瀬戸山三男さん、二階堂進さん、木村武雄さん、稲葉澄雄さん——この人は議員じゃなくて団体役員です。そういう人々にそれぞれ一千万円ずつ配っている。十月十日に郡祐一さん、大森久司さん、同じ委員会で日ごろお世話になっている方の名は省きますが、山下春江さん、横山フクさん、赤間文三さん、後藤義隆さん、中津井真さん、こういった人々に同じく一千万円ずつ。また十月二十五日、田中茂穂、木村睦男、郡祐一、宮崎正雄さん、土屋義彦さん、柴田栄さん、そういう人々にやはり一千万円ずつ。やはり佐藤総理の育政会についても同じことが言えますね。育政会では八月二十九日、調査費として一千万円ずつ、二木謙吾さん、寺尾豊さん、前田さん、長谷川さん。九月五日、五十万ずつ五十人に——名前は言いません。これは議員ですよ。あるいは二月二十九日、アジア研究という名前で郡さん以下六人、これは一千万円ずつ。九月には五十万、四十七人。こういうことになっております。どらもまあ、佐藤さんの四選問題というのが何かスムーズにいっているような気がしますが、こういうような形のことを私たちは一体これでいいのだろうかということを考えるんです。実は、自治大臣はこうした状況を変革すべく勇断をもって政治資金規正法の抜本改正を決意すべきだと私は思うんです。きょう関係決算との関連で——こういうことというものは、早い機会にやはりいま自治大臣が指示されているようなことの遂行を通じてなされていく。そこに私は、自治大臣が真剣にそれにお取り組みになるならば、そして佐藤総理がそれを取り上げていかれるならば、言ってみれば、国民は歴史に残る名大臣としてあなたの名前を記憶し続けるでしょう。私はそのことを信じて疑いません。そういう御決意が自治大臣におありでしょうか。
  103. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) 先ほども申し上げましたとおり、実情をよく把握の上、善処をいたしたいと考えております。
  104. 和田静夫

    和田静夫君 私が述べました意見について十分しんしゃくをされるように希望いたします。  どうもありがとうございました。
  105. 渡辺武

    渡辺武君 本題に入る前に、依然として残っております沖縄への渡航制限の問題、この点についてひとつ総務長官にお尋ねしたいと思います。  最近日本共産党の機関紙であります赤旗の記者の塚平君外二名の渡航申請が拒否されました。それからまた御存じかと思いますけれども、「沖縄」という映画をとりました製作担当者の山本薩夫さん、それから監督の武田敦さん、俳優の鈴木瑞穂さん、女優の佐々木愛さん、これらの四人の方が渡航の申請を出しておられましたけれども、佐々木さんだけが許可されました。あとの方は全部拒否されるという事態が起こりました。この問題については本院でもしばしば問題になって、そのつど総務長官からも努力するという趣旨の御答弁が約束されておりますが、いまだにこらいった状態が続いているわけです。で、この沖縄に対する渡航の問題については、もうすでに一般的にはほとんど自由化されているというのが常識的な事態だと思います。出入国管理という、いわゆる出国の中で、約三一%が沖縄渡航だということでも、このことは証明されていると思うのです。ところが、一般的にこのように自由化されていながら、日本共産党及び民主団体からの渡航申請については、いま申し上げたように差別的な拒否が行なわれているという事態だと思うのです。私は、このことは憲法に保障された渡航の自由ということにも著しく反しておりますし、そうしてまた特に沖縄の選挙を前にしてのこの渡航制限というのは、選挙の公平、自由、このことも阻害している。同時にまた新聞記者の渡航を拒否するというようなことは、報道の自由に対する重大なる侵害だというふうに考えます。  去る九月十二日に本院の沖縄特別委員会で長官は、わが党の春日議員の質問に対して、渡航拒否の理由、また許諾の基準について、米民政府から、回答をもらうように申し入れているというような答弁がございましたけれども、その結果はどんなふうになっておりますか、お答えいただきたいと思います。
  106. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私のほうは、ちもろん御趣旨のとおり自由な出入国という立場をとっておりますから、まあわが国としても法務省サイドにおいて若干の引っかかる点もあるようではあります、一部特定国についてですが。それは別として、原則は、私たち沖縄に関する限り渡航業務についてはチェックもいたしておりませんし、その手続の簡素化も努力をいたしておりますし、またその事務を一部特定的に事務の繁雑あるいはそれらの件数の多い県に委譲までいたして、それらの渡航者の便宜をはかる努力を一貫して続けております。これまでも努力してまいりました結果として、ある程度、たとえば国会議員ならば全員、その秘書も含む、あるいはその他の公務員等、奄美大島地区の居住者等も含めて、いろいろと前進してきたことも事実であります。しかし反面においては、わが国がそういう態度をとっておりましても、施政権者である米側としては、公安局の立場から入域許可といろ立場をもって拒否件数がありますことは私も承知いたしておりますし、原則的にたいへん遺憾なことだと思っております。かりにその権利を行使し続けても、あと残るところわずかの年数であり、日米友好ということを念ずるならば、そのような、私たちから見れば不必要あるいは神経過敏に近いそういうチェックというものは、必要ないのではなかろうかと私は思うわけです。これはアメリカに対しても直接、間接、そのようなことはもうやめたらいいじゃないかということも申し述べておりますし、そのようなことをなぜするのかということに対する、いまおっしゃったような回答も求めておりますが、しかし施政権の裏側が裁判管轄権であるという強固なる態度の一環として、入域許可についての公安局審査というものも、これは施政権を持っている間は続けるというような、きびしい態度を私たちは感じ取るわけであります。しかし、このようなことは決して好ましいことでありませんので、私も特定の団体の方々あるいは特定の人々について氏名をあげて、特定の人を入れぬようにとかなんとかということはできないということをはっきり申しましたし、姿勢として、どのような立場の人であろうと差別してはならないし、そのようなことは日米相互のためにならないということを言い続けてきておりますが、私たちのその主張に対し、あるいは回答を求める件については、全然米側としては回答がないということがいまの現実であります。
  107. 渡辺武

    渡辺武君 アメリカがいまに至るまでそういう不当なことをやっているということは、これは全く国辱ものだと思うんです、ぼくは。実際これはけしからぬですよ。特に今度選挙を前にして、特別な政党あるいは特定の政治勢力に対してこういう差別が公然と行なわれているということについては、選挙の公正を特に妨げるものだということについて、私どもたびたびこれは申し上げてきました。最近では沖縄の祖国復帰協議会も同じような趣旨から拒否の撤回要求を決議して、六日にはアメリカの民政府に対して抗議しております。いま長官もこれは遺憾だというふうに言っておられましたけれども、全くこれは遺憾のことであります。一体、この渡航実現のために、もっと断固たる処置をとるべきじゃなかろうか。もしこのような状態を残したままで沖縄の選挙が行なわれるということになりますと、沖縄から選出されてくる議員の資格、あるいはまたさらに言えば、この国会の構成そのものが著しく妨げられるということにもなってくるかと思う。したがいまして、これは日本の国政にとっての重大問題だと思う。ですから、日本政府として、もっと断固たる態度を示すべきじゃないかというふうに私は思います。その点を要請すると同時に、長官は今後1なおこういう問題が引き続いて起こっているわけですから、一体具体的にどういう措置をおとりになるのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  108. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 米側施政権を持っておる地域に対して入域許可という立場を放棄しない限り、私のほうはいま言ったような姿勢をとり続ける以外に手はない。それを強硬手段といっても、日本政府が自衛艦に乗せて強行突破して送り届けるというわけにもいきませんから、私としてはやっぱり外交手段あるいは私自身の所管しておる渡航業務をたてにとっての主張という形で、日本側主張を繰り返し述べる以外にはない。これはやはり相手のあることであって、日本側がこう思うということだけで米側がそれをそのとおりだと言ってくれないというのが、遺憾ながら現実であります。私自身の主張しておることが、あるいは米側にとっては少し行き過ぎた主張であるという考えもあるいは持っておるかもしれませんが、そのような反応ももちろん何もありませんけれども、しかしこのようなかたくなな態度というものがもたらすプラスの要素は何もないと、私はそう主張しております。でありますから、これ以上にどのような態度をとるかと言われても、やはり根気強くそのようなことは米側にとっても長い目で見てプラスにならないのだ、幾らがんばってみても復帰の時点においてその権限は消滅するのである。それは抵抗できない物理的な問題だということを繰り返し主張して、自覚を促していく以外にはない。そのほかに手段をとろうと思っても、あなたもそう私に説明する特別な手段を持っておられるわけではないと私も思いますが、問題は誠心誠意——わが国は内地から沖縄に行く場合において何もチェックしてないんですから、現に事務委譲までやろうという段階へきているわけですから、アメリカももう日本領土の一部であるということに対して自覚を十分持ってほしい。そしてあとは、やはり施政権者として惜しまれて去るくらいの気持ちになってもらいたい。そのように、あとの残った施政権の期間を過ごしてもらいたいものだということを、直接間接私としては訴えておるわけであります。
  109. 渡辺武

    渡辺武君 別に自衛隊機に乗せて送り込めというようなことを私は言っているわけではないのですよ。しかしやはり総務長官としてアメリカ側に対して公式にこの抗議をするというようなことも、当然私はやられてしかるべきものじゃないか。あるいは日米協議委員会ですね、ここの席上でこの問題を問題にして、そうして撤回を迫るというようなことも当然やられてしかるべきものじゃないか。その点はどうでしょう。
  110. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 日米協議会が不断に開かれておりますと、こういう問題も当然議題として検討すべき対象だと思います。近く来年度予算等に関連して会う機会でもありますれば、そういうことも含みに置いて交渉したいと思いますが、ただ私の立場から、外交権たる抗議をするという行為については、ちょっとそのことがプラスになるかどうか、見通しの問題もありましょうし、そういう形がいいのかどらか、私としてはそう開き直った形で交渉すべき事柄としてやったほうが、結果がプラスになるであろうという判断を実は抱き得ない点がございます。たいへん申しわけない話でありますが、そのほうが歯切れはよろしいのです、しかし、いかんとも歯が立たない。壁に向かって歯切れよくやりましても、その結果が生まれないので、国会からは私の誠意があらわれていないというふうに受け取られることはやむを得ないと考えます。
  111. 渡辺武

    渡辺武君 歯切れがいいとおっしゃいましたけれどもね、やはりこういう日本の、何といいますか、国の権利に関する問題、こういう問題についての侵害は、これはやはり断固たる態度をとるべきだと思うのですね。アメリカ側がどういうような意図を持つかにかかわりなく、国民権利政府当局として断固たる態度でもって守るということが私は必要だと思う。長官に重ねてその点を要望して、次の質問に移ります。  私は、先月の中旬ころに沖縄に視察に行ってまいりました。そこで何よりも強く印象を受けましたのは、これはもちろん本島の三分の一を占めているアメリカの軍事基地でございました。これは沖縄に基地があるというようなものじゃないのですね。直接現地に行ってみますと、沖縄アメリカ軍基地が君臨している。そうして沖縄県民はその陰に追いやられているというのが私の見た偽らない印象です。このような事態を見るにつけましても、私は七二年返還の美名のもとで、この基地を依然として残す。さらにはまた、増強さえ許しているという佐藤内閣の政策に、強い憤りを覚えました。このような事態のもとで、県民の生活状態、経済状態もきわめて深刻でありまして、緊急に解決を要する問題が山積しております。ここにもアメリカの軍事占領体制の残虐さというものが実に生き生きとあらわれていると思いますけれども、私は同時に、この責任は、戦後四分の一世紀にわたって沖縄アメリカに売り渡し、そうしてまた沖縄県民の苦しみを見殺しにしてきた自民党政府も負わなければならないというふうに思っておるわけです。長官沖縄に行かれて、そのことはよくごらんになってこられたと思うのですね。日本人であるならば、私は現地の実情に胸を痛めて、県民の声に謙虚に耳を傾けるべきだというふうに考えます。  そこで伺いますけれども総理府が九月の二十九日に発表しました四十六年度の沖縄復帰対策費総理府案、これは六百七十億三千九百万円というふうに金額がなっております。で、近く大蔵省に正式の概算要求を提出するというふうに伺っておりますけれども、この大蔵省に出される正式の概算要求、これはどのくらいの規模のものになる予定ですか。その点まず伺いたいと思います。
  112. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 沖縄現状日本人であるならばとおっしゃいましたが、私も日本人でございます。民族として感ずることは同じことであろうと思います。ことに中部、南部の人口密集地域に期せずして基地が密集しておるという事態は、基地の周辺に県民がぶら下がって生活を余儀なくされている象徴的な村が嘉手納村だというふうに私も受け取っております。そこで本日、中曽根長官がもうしばらくすると着くでしょうが、歓迎を受けるのか受けないのか、そこらのところ微妙な動きもあるようですけれども、そういうことは別にいたしまして、やはり民生というものを優先にした沖縄の今後のあり方というものは十分考えていかなきゃなりませんし、ことに那覇市の問題等は都市計画すら初めからレイアウトの対象にされていないで、ただ基地があって、人が住みついて、家が建ったというような状態の、戦後やむを得ない経過を経ておりますので、これらはせめて都市計画に何とかかっこうを整えさせるためには、いろいろの本土政府の特別な援助が必要でありますが、なかんずく基地等の所在については十分に交渉の対象として民生施設のほうへ、あるいは民生優先というふうに向かっていくべき範囲で努力すべきものだと私は考えております。  第二点の、来年度予算に関しましては、ただいま言われました数字に、米を五方トン売却いたしまして現地で積み立てて、低利長期の融資の財源として貸し出します三士二億というものを乗せますと——丸めて申し上げますが、七百三億台ということになると思います。
  113. 渡辺武

    渡辺武君 沖縄側からは来年度予算案についていろいろ要請があったかと思うのです。その第一次の要請額、これは約一千八十億円程度であったというふうに私聞いておりますけれども、その点どうでしょうか。
  114. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 昨年はそういうふうに言われ、また現地でもそういうふうな、自分たちは幾ら要求したんだけれども総理府段階でこれだけに要求が減っちゃったという議論が行なわれました。これは、沖縄県民のためにも私たち政府としてとってはならない姿だと思いまして、ことしはそういう要求の違いがないように最大限の努力をして詰めましたし、琉球政府の行政能力とかなんとかということばに籍口することは許されない。沖縄事務局沖縄北方対策庁の沖縄事務局は共同作業、共同責任と心得るということも現地で訓辞もいたしてありますし、したがって、ひんぱんな連絡、往来、調整、意見の交換をいたしました。その結果、琉球政府としても琉球政府要請案というものと、さらに琉球政府としては全体的に、できればこれだけのものがさらにほしいという第二次追加要求と申しますか、正式の要求と別に、ふろしき包みを一個ぶら下げてきてという、ちょっと変わった姿になりましたが、私どもはそれでも誠意を持ってそのふろしき包みのほうもいただけるものはいただくということで、正式要求の中に落としていいものは合意の上落とす。たとえば一例でありますが、復帰の前の年に税務署を全部新築しようというような予算がございました。こういうものは返ってから大蔵省の諸君がつくるであろう。だから、わざわざそういうものに金をやらぬでもいいじゃありませんかということで、そういうものには合意が得られるというようなことで、よく相談をいたしまして、今回は少なくとも七百億に関する限りは両者合意を得ているわけであります。しかしながら、主席としてはさらに九十億くらいのものがほしかったということを記者会見等で言っておられますが、結論としては、今回は共同作業みたいなことをやったので、総理府要求の満額獲得ということに向かって、今後琉球政府も一体となって努力をしたいというふうに締めくくっておられる感触でもお察し願えるとおり、ことしは日米——ことに総理府琉球政府、日琉であります。日米でなく日琉、ことに総理府琉球政府という立場においての意見の相違の極力ないように調整をいたしまして、いまのところは七百三億はもちろん予算要求額でありますから、全額取るということはいまここで言明はできませんが、琉球政府の願望は、現時点においては九十億くらいは最終の詰めにおいて残ったけれども、それは本土と現地との違い等もございます。休暇の買い上げとか、いろいろな問題等も含まれておりますから、なかなか詰めにくいものも中に入っておりまして、それらのことは承知の上で、現在では一体となって大蔵省に向かっての編成作業に行動を起こすということで結論は一致していると、私は判断をいたしております。
  115. 渡辺武

    渡辺武君 どうも私がいろいろ現地へ行って聞いたところと、いま長官の言われたところとは、かなり食い違いがあるような感じですね。琉球政府のほうからは、第一次要請額として先ほど数字を申しましたけれども、約一千百億の要請を出している。これが総理府との折衝の中でだいぶ削られていて、結局のところ、先ほど申しましたような約七百億円になってしまったということですね。ですから、やはりこれでは現地の切実な要求は十分満たされる額じゃなかろうというふうに思いますし、また、現地の人たちもその点について同じようなことを言っておりました。特に米穀資金を入れても約七百億、この中身を検討してみますと、沖縄県民にとって必要でないと思われるようなもの、あるいはまた、必要かもわからぬが、当面緊急には必要でないと思われるような費目もかなりあるのじゃないだろうかというふうに思います。  そこで伺いたいんですけれども、この総理府の対策費の案の中に本土からアルミ五社ですね、これが沖縄に進出するということで融資を考えておられるということを聞きました。輸銀ベースの融資ですね、これがどのくらい費用として組まれているか、この点お知らせいただきたいと思います。  それからまたコンビナート用地の造成調査でね。これの費用もアルミ五社の進出と同じように、琉球政府の第一次要請案の中には入っていなかった。ところが総理府のほうでこれをつけたというような話も聞いておりますけれども、これらの金額はどのくらいなのか、それを伺いたいと思います。
  116. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) アルミの沖縄進出に伴う財投は組んでございません。それからあとのこまかな数字は対策庁長官に答えさせていただきます。
  117. 山野幸吉

    説明員(山野幸吉君) 埋め立て等、そういう工場用地をつくるための経費のお話でありましたが、これも私ども考えておりません。
  118. 渡辺武

    渡辺武君 コンビナート用地造成調査というのは組んでいないですね。——そうですか。  それから北部水資源調査のための予算ですね。これも組まれているというふうに聞きましたが、これはいま御承知のとおり沖縄の水資源はほとんどアメリカに握られてしまっている。軍用が主であって、沖縄県民の飲料水その他はその中からわずかにおこぼれとして与えられているという状態だと思いますね。そういう事態を前提として、しかもこれから先、本土あるいはアメリカから大企業が沖縄に進出する、そのための工業用水を供給しなければならぬというようなことですね。これを中心として北部水資源調査というようなものが行なわれているのではないかというふうに思われます。で、これの予算は一体どのくらい組まれているか。それを伺いたいと思います。
  119. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 金額は対策庁長官にお答えいたさせますが、まず、現在の民政府の管轄下にあります水道公社については、復帰後は、まだ全体として発表いたすまでに至っておりませんが、県営水道として沖縄県で運営してもらうようにしたいと考えますし、また沖縄政府考えておられる中部圏としての中核都市づくり、こういうものには、当然現在でも内地に比べて飲料水が満足であると思われない沖縄県民の新しい中核都市づくりというものに、どうしても必要な水というものがあります。ですから、現在の福地ダム一次、二次等はすべてが、これは飲料水でありますし、将来安波川、晋久川等の問題等も飲料水供給というものが石川浄水場を通じて中南部の周密地区に送られることが主眼になっているわけであります。しかしながら、その調査は企業が出ていくために必要となるから調査をするのではなくて、すでにことしの予算から北部水系調査というものをいたしておりますので、何をやるにしてもまず水というものがなければ沖縄列島の未来の繁栄につながることは、雇用対策の上からも、所得の向上の上からも、単に企業進出というその場、その角度だけをとらえて議論するのではなくして、全体に水をどうするかという問題を沖縄ではやはり前提として解決しなければなりません。でありますから、これからこの塩屋湾をせきとめた淡水化による工業用水の確保等々はこれからの問題として調査の対象になってくるわけでありまして、それは、あながちそのために沖縄の人たちの上水道用水を取り上げてしまうのだというような考えは毛頭持っていないわけでございます。
  120. 山野幸吉

    説明員(山野幸吉君) まあ要求額でございますが、水資源調査としては約四億七千万円要求しております。
  121. 渡辺武

    渡辺武君 水が民生のために役に立つということは、これは当然のことですね。しかし、同時に沖縄という特殊な条件のもとで、これが米軍基地にも使われ、さらにはまた、今後沖縄に進出する日本もしくはアメリカの大企業の工業用水として使われるということも、これまた否定することのできない事実だと思うのですね。ですから、そういうような点が事実上やっぱり重点になってしまうのではないか。これは沖縄の軍事基地その他という条件を、これはそのまま残して、そうしてやれば、そういうことにならざるを得ない、私はそう思います。  さらに伺いたいのは、復帰記念事業費としてここには四十五億九千四百万円の予算要求が出されておりますけれども、この内容はどういうものなのか、これをお聞かせいただきたいと思います。
  122. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 昨年から継続いたしております復帰記念事業は、主要五島の循環道路の第二年分並びに摩文仁丘の戦跡記念公園の第二年度分、さらにことしから遺骨の収集その他、さらに推定されるもう一段下の壕をきれいにトンネルを掘って整備する作業を含む、私有地を含めたりして記念公園にしようと考えておりまする旧海軍壕、こういうものが新しいものとして頭を出しておるわけでございます。  その他記念事業に入れてありますもの、ホーバークラフト購入について、これは内地でもちょっと例のないことでございますので、やっぱり復帰記念事業に入れました。これを入れることの可否等はございましょうが、水資源開発も復帰記念事業の中に入れてございます。
  123. 渡辺武

    渡辺武君 北部一周道路ですね、これも復帰記念事業の中に入っていると聞きましたが、その費用はどのぐらいですか。
  124. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 当初私どもは、全体の五島循環道路で七十数億で済むだろうと思っていたのですが、これは琉球政府の一応の試算というものを根底にしてそのままを大蔵省に持っていったわけですけれども、その後建設省に現地を詳しく調査してもらいまして、一番金を食うのが北部の循環道路であるということがわかりまして、北部循環道路だけで当初予定いたしておりました七十数億は全部食っちゃうだろうということになるわけであります。
  125. 渡辺武

    渡辺武君 七十数億がそれに全部かかるとすると、四十五億九千四百万円というワクからははみ出すんじゃないですか。
  126. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私が申しておりますのは、三カ年間で完成させるための総額を申し上げているのであって、単年度の額とは——これはまた進捗率その他を見ませんと、予算成立もおくれましたし、現地でも初めての大事業でございますので、本土の業者は感情的にいろいろな問題があるからシャットアウトして、現地の業者だけでこれを行なう。その指導は本土が行なうという形をとっておりますので、年度割りの金額の是非についてはまた別の問題があろうかと思います。
  127. 渡辺武

    渡辺武君 この総理府案ですね、この中にはどのぐらい組まれているかということを伺いたい。
  128. 山野幸吉

    説明員(山野幸吉君) 正確な資料を持ってきておりませんが、約二十億ぐらい入っておるように承知いたしております。
  129. 渡辺武

    渡辺武君 私の伺ったところによりますと、約三十五億というような数字を聞きました。やはり相当大きな費用ですね。別にこれを全然要らないんだというふうに私ども考えているわけじゃないんですが、しかし、あとからこれは質問の中で明らかにしたいと思いますけれども、いま沖縄県民の生活上あるいは医療上で直面している問題というものは非常に大きいのですね。ですから、そういうものをまず優先すること、これが何よりも復帰記念事業の最たるものじゃなかろうかというふうに私は思います。  それから、もう時間もないので、はしょりますが、那覇空港の整備、それから訓練飛行場の設置、これらはおそらく将来自衛隊の沖縄進駐に備えてのものじゃないかと思うんですけれども、これらについてはどのぐらいの費用が来年度予算要求の中に組まれているのか、その点を伺いたいと思います。
  130. 山野幸吉

    説明員(山野幸吉君) 那覇空港は、私どもは軍用のことを考えておりませんので、もっぱら民営の部分でございますが、約十三億、それから例のパイロット訓練飛行場には一般会計で四億を組んでおります。
  131. 渡辺武

    渡辺武君 アルミ五社の進出、それからコンビナートの造成調査、これらの費用が含まれていないということでありますが、それらを除いてもかなりな額が、やはりいま県民が直接求めているもの以外の予算として組まれていることが明らかじゃないかと思うんです。だからこれらの、言ってみれば急を要しないというような費用を除いてみますというと、当初約一千百億の第一次要求額がざらに大幅に削られたと、半分近く削られたということが言えるのじゃないかと思うんです。私は、これでは県民の切実な要求というものには十分にこたえられないというふうに思います。ですから、総理府琉球政府話し合いでと言われましたけれども琉球政府が胸の中に抱いている不満というものは、私は否定すべくもない事実だと思います。ですから、この来年度概算要求ですね、これはもっと増額されるべきだ、特に民生安定を中心にして増額されるべきじゃなかろうかというふうに思いますが、その点どうでしょうか。  それからまた、米穀資金が先ほどの御答弁では来年度五万トン、三十三億円を予定しているというふうに言われましたけれども、現地の消費は約九万トンと私聞いております。そのうち沖縄の中でとれるものが約一万トン。そうしますと約八万トンは、これは本土から持っていくことのできるものだと思うのですね。したがって、五万トンをさらに八万トンにふやして、三十三億円の米穀資金をこれまたもっと増額したらどうだろうかというふうに思いますけれども、その点どうでしょうか。
  132. 山野幸吉

    説明員(山野幸吉君) まあ那覇空港にしましても、パイロット訓練飛行場にしましても、琉球政府のほうから強い要請があったわけでございまして、別にこれは要請を無視して一方的にやった予算ではございません。那覇空港も御承知のように民間のいろいろターミナルビルあるいは新しいエプロン等の設置は非常に急を要しておるわけでございます。それからまたそのために他の一般住民の福祉関係の経費がなおざりにされているというような趣旨の御指摘がありましたけれども、この表にもございますように、明年度は社会福祉、医療で約五十七億、本年度の約倍額を要求しておるわけでございます。それからたとえば文教経費におきましても五十億近くの増額要求をやっておる。まあこれは通るか通らないかは別でございますが、私はそう片寄ったものとは考えていないわけでございます。  それから第二点の米穀資金でございますが、これは御指摘のように総需要は九万トンでございますが、島産米は一万トンで八万トンの余裕があるわけです。しかし、今年度は三万トン、これまでに日米で話し合いして三万トンで話し合いがついたわけでござ、まして、一挙にこれを全額ということになると、いろいろ話し合いの問題でございますから、これは相互のコマーシャルベースの米側沖縄側との話し合いの問題でございますし、一挙に本土米に全部切りかえるということには困難があると思いますし、また私どもはこの五万トンを最終的に確保したいとは思っていますが、これもまだ確定したものではございません。大体この程度は確保したい。それから財政投融資をごらんになりますとわかりますように、融資総額を今年度七十億であったのを九十八億ふやしまして、百六十八億程度の要求になっておるわけでございまして、この中身には農業関係の融資が相当あるわけでございます。したがいまして、まあ最終的に、総務長官からいまお答えいただきましたように、琉球政府が非常に不満であるという要求額ではないと私ども承知しております。この間、私も向こうへ参りまして、屋良主席、副主席、局長と個別にずっと話し合いをしたんでございますが、この要求額については大体納得していただいておる。かように私は考えておる次第でございます。
  133. 渡辺武

    渡辺武君 総務長官が一時退席されましたので、質問順序を変えまして、少し個別の問題を伺いたいと思います。  まず、この総理府案の中には、健康保険制度、これについての予算要求が出ておりません。これは私調べてみますと、四十四年度以降ずっとこの費目はないわけですな。なぜ来年度予算要求の中にこの健康保険制度についての予算が載っていないのか、この点伺いたいと思います。
  134. 山野幸吉

    説明員(山野幸吉君) 実はこの国民健康保険でございますが、これは昨年……
  135. 渡辺武

    渡辺武君 国民健康保険じゃなくて、健康保険。
  136. 山野幸吉

    説明員(山野幸吉君) 健康保険でございますか、健康保険につきましては、この事務費の補助を国政機関運営費の中へ突っ込みで入れてありまして、明年度六十億の要求をしております。本年度は二十八億でございましたが、その中に健康保険の事務費の補助も入れてあるわけでございます。ここへ費目は健康保険としては出てきておりません。
  137. 渡辺武

    渡辺武君 事務費の補助だけであって、あそこは全部、言ってみれば本土政府管掌保険と同じ制度だと思うのですね。したがって健保会計の問題が当然問題になるはずです。それについて予算が組まれていないということなんですね。つまり事務費の補助はあるということであって、健保会計そのものについての、健保制度そのものについては予算が組まれていないという状況なんですが、調べてみますと沖縄の健康保険制度は非常に大幅な黒字で、約千八百万ドルですか、邦貨に直しまして六十億円くらいの黒字になっているということを聞きました。本土では赤字だ赤字だといわれているのに沖縄では黒字になっている。これはかなり検討を要する問題じゃなかろうかと思います。その根源は、沖縄の健康保険制度が本土の健康保険制度とは違っているというところに大きな原因があると思いますけれども、その辺、御検討をしておられるかどうか、伺いたいと思います。
  138. 山野幸吉

    説明員(山野幸吉君) 御指摘のとおり沖縄は、いま医療保険でやっておりますが、結局本土と違いまして現物給付でなくて、いわば後払い制度になっておるわけでございます。そういう事情も影響してか、千八百万ドルの黒字がありまして、したがいまして今回の予算の中ではそういう健康保険制度の援助費というものは見ていないわけでございますが、復帰対策としまして本土へ帰った場合にこの医療保険をどうするかという問題は、もう私ども厚生省等と協議しながら具体的に検討を進めておりまして、一つはいまの現物給付でないのをやはり現物給付に切りかえていかなければいけない。その場合の医療機関ですね、あるいは医療機関の設置の問題とか、医師の問題とか、それから診療基金制度の体系、いろいろな点数表とか、そういう関係の準備をしなければいかぬわけでございます。琉球政府もそういう準備を始めておりますが、まだ医師会の賛成が得られないので、現地でなかなか話し合いが進んでいないというのが実情であります。いずれにしましても、ここに今年度の予算でも、来年の四、五、六、三カ月は国民健康保険を実施するというたてまえで予算を計上しておりまして、それからこの予算要求でも年間予算を要求しているわけです、国民健康保険の。そうしますと、この実施について医療保険の当面しておるそういう諸改革の問題は、どうしても解決をしなければいかぬ問題でございまして、そこらの問題は、ひとつ、できるだけ早急に琉球政府と厚生省と、私のところで十分話し合いをして皆保険体制に持っていきたいというぐあいに考えております。
  139. 渡辺武

    渡辺武君 沖縄の健康保険制度は、いま、あと払い制度の問題を言われましたけれども、そのほかにいろいろ本土と違ったところがあるわけですな。総報酬制もそうですし、それから給付率も非常に低いというような問題もありますし、あるいはまた保健所その他の数が非常に少なくて、そうしてあとから払った医療費を取りに行こうと思っても、その条件が十分整わないために、事実上払いっぱなしになっているというような問題もあるし、いろいろ問題は山積をしていると思うのです。本土復帰にあたって、これは完全に本土並みにする御意向があるのかどうか。それからまた、そのためにはいろいろな条件が必要だと思いますけれども、その条件はどういう点をどういうふうにしたらいいと思われるのか、その点重ねて伺いたいと思います。
  140. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 国民健康保健は、今年度予算で内地並みに進めていこうということで、現物給付というものは、人間のけがとか疾病とか、予測しない不幸な事態に見舞われたときに原則的に望まれることであるということで、本土並みの制度の導入のために予算を組んだのでありますが、実際に単独の市町村で実行できる財政能力なり行政能力のある市町村のほうがむしろ数が少ないという感じの沖縄であります、たくさんの離島がございますし。そこで、いま指導しておりますのは、離島等はなるべく一部事務組合等をつくって、そしてみんなでそれをプールしながら運営していく。さらに医師の充足等を半面はかっていくということをやっておるわけでありますが、本土に帰りましたならば、それらの措置をさらに明確にするために、ことしの予算で指導を続けてまいりますし、本土並みの状態が復帰の時点から直ちに実行できるように指導してまいりたいと思います。
  141. 渡辺武

    渡辺武君 私の伺っているのは健康保険制度でございます。いわゆる政府管掌の健康保険制度でございます。
  142. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) すみません。
  143. 渡辺武

    渡辺武君 そこで、健康保険制度、これも本土復帰にあたって本土並みにするというふうにいま御答弁もありまして、長官の御答弁も重ねて伺いたいと思うのでありますけれども、もう七二年返還ということになれば、あとわずか一年とそこそこということなんで、おそらく当然来年度予算案の中にはその準備のための予算が組まれなければならないというふうに私考えて検討してみましたが、組まれていない。事務費だけだということですね。これは、言明されたのと実情とが違うのじゃないかというふうに思います。今後どんなふうにして本土並みにするための対策を講じていかれるのか、その点を伺いたいと思います。
  144. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは、実は事業費的なものでなくて、やはり本土復帰と同時に本土並みに切りかえる、スムーズに事務の移行を完ぺきにするという意味で、私どものいま要求しております予算の執行でそれが実行できると思っております。
  145. 渡辺武

    渡辺武君 長官自身も沖縄の健康保険制度については、医者の門をたたくということをちゅうちょさせるような制度だというふうなことを言っておられるのですね。また、六十億円黒字が出ているというのは、それだけ患者からしぼり取ったその余りだというふうに当然考えられるわけです。沖縄では大問題になっているわけですよ。ですから、来年度予算の中で事務的な分野については多少の補助をつける。しかし、健保会計そのものについて何の触れられるところもないというところで、一体復帰にあたって本土並みにするというのがほんとうだろうかということを非常に疑問に思っているのです。その点どうでしょうか。  具体的に伺いますと、まず医者不足の問題であろうと思うのです。もしこれが現物給付制にすれば——これはいままで医者の門をたたくのを手控えさせておると、長官御自身も言っておられたように、そういう面が一応その面では除かれるわけで、医者にかかる面も非常にふえていくだろう。そのときに医者不足の問題をどういうふうに解決するのか。また医療施設、保健所その他、これも非常に不足している。これが整わなければ、形の上では本土並みに、もしかりにしたとしても、実体の伴わないものに私はなると思う。その点をどうされるのか。  それからまた、今後健保会計の赤字が当然予想されるわけですけれども、その点についてはどうされるのか。この辺はどんなふうにお考えでしょうか。
  146. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 医師不足ということの問題は、これは長年指摘されたことで、それをせめて本土派遣医師というようなもので、沖縄現地の医師の方々がなかなか行きたがらないようなところに、御苦労ですが行っていただくという制度をとってきたわけですが、それでもなおかつ診療所があって医者が来ない。また、派遣医師も予算で組んだようになかなか皆さん行ってくださらないで、執行残が残ってしまうということが現実の問題でございます。ですから沖縄では御承知のように医介補という、本土の医師法から言えば診療、治療行為等の許されない資格の方々が、現地においてはそういう行為を行なって今日まで僻地医療等に尽くしてこられた方々もおられますので、これらの方々には要望として、復帰しても当分の間はそういう行為をできるようにという御要望もありますが、私はむしろ、こちらのほうから皆さま方にはこれまで御苦労をかけたけれども、なかなか正規の医師の充足が急速には困難であるので、引き続きそういうことをやってほしい。そのためには法律制度その他については私にまかしてください、ただし、皆さんも居住に便利な那覇とか中部のところに開業を——何か集まってくるような感じがありますので、若い人たちもまだおられるようだから、二年交代でも三年交代でもいいから、なるべく自主的に相談して、離島やその他の医師不足地帯というものは医介補がささえているという現実を示してほしい。それが国会に特例法を出すときの私の答弁のささえになるというようなことも考えてお願いをして、両者気持ちよくこれからもやっていこうということになりました。大局的な展望から見ますと、しかし依然として沖縄の今後の医師不足は続くと思われるわけでありますから、なるべく早く琉球大学を国立大学に移管したあと、そこに医学部を設けるということを目標としながらも、当面は新那覇病院を琉大附属病院という形にしますが、琉大には医学部がありませんから、保健学部の付属病院のような形に、まあ保健学部と連携をとるような形のものになるでしょうが、沖縄の場合にはそれでもちょっと変則になると思いますが、やむを得ないことだと思いますし、さらに普通の大学の付属病院よりももっと地域社会的な、広域的な医療行為あるいはその他の貢献のできるような性格の病院として、せめて医師の充足までの期間を少しでもお役に立つような新那覇病院につくり上げてみたい、こういうふうに考えております。中部病院のハワイ大学からの派遣医師の月俸二千ドルというのは、ちょっと予算要求するのにも——アメリカ側が打ち切るということをはっきり言っておりますし、一カ月二千ドルというのはたいへんな高給でありますので、一人月七十二万という要求をちゅうちょしたわけでありますけれども、やはりハワイ大学のそういう派遣医師の人々に中部病院から引き揚げられると、沖縄の医療に現在でも問題点があるところに大きな穴があく。日本側がすぐ肩がわりするということは、資格その他簡単にめどがつきませんので、思い切って現在のハワイ大学の人たちの待遇をそのまま日本政府のほうで肩がわりいたしますから、しばらくいていただきたいという形の予算要求等でいろいろと努力はしておるわけでありますが、根底には、そのような沖縄の現在は医療保険を考える上においては最も恵まれないところであるという認識を私もいたしておりますが、保険会計の問題は、これは復帰すれば当然——本土のほうもゆうゆうとやっておるわけではございませんで、やはりいろいろ皆保険の問題は問題があるわけでありますが、これは一連の問題としてとらえることによって、沖縄だけについてぎすぎすした形の本土復帰、本土並みということはとらないつもりでございます。
  147. 渡辺武

    渡辺武君 いまお話のあった医介補の問題あるいは保健学部の問題、これはお医者さんではないのですね。だからして診療や治療ができる人ではないわけです。ですからこれをいかに増強しようとも、それは補助にはなるにしても、やはり、健保制度を本土並みにするという点では不十分だと言わなければならない。  それからまた、琉球大学の医学部設置の問題については、あとからさらに質問したいと思いますけれども、これも即席のことではとうてい間に合わない。七二年返還がもし事実だとして、その返還時に本土並みにするとすれば、これはとうてい医学部設置ということだけでは間に合わない。基本的にはそうすべきだと思いますけれども、間に合わない。どうしても来年度中くらいに健康保険制度を本土並みにするにあたって、必要な条件を整えなければならないと、私はそう思います。その条件を整えずして幾ら本土並みにすると言っても、これは国民健康保険の問題と同じように、形はなっても実施は困難だということにならざるを得ないんじゃないでしょうか。  それで伺いたいのですけれども、来年度、この予算案の中で本土からの医師の派遣ですね、これはどのくらいに見ておられるか。それからまた診療所その他ですね、診療所の医療施設の充実、これについてはどのくらいの予算を組んでおられるか、それを伺いたいと思います。
  148. 山野幸吉

    説明員(山野幸吉君) 派遣医師につきましては、いま総務長官からお答えのありましたように、なかなか医師が、応募者がないわけでございます。したがいまして実は、私ども琉球政府協力して医師の募集等をやっておりますけれども、非常に困難がありまして、待遇改善等の問題もありますが、なかなか要望が満たされない。それで、まあ明年度の予算でも本年度と同様に無医地区には十五名、その他の政府医療機関等への派遣医師、歯科医師を含めまして二十五名を要求しているわけでございます。
  149. 渡辺武

    渡辺武君 四十三年度の決算ですから四十三年度の決算書を見てみましたところが、この沖縄への本土からの医師、歯科医師派遣費、これは使い残りが出ているのですね。その原因はいまおっしゃったように予算を組んでも行く人がないというところに原因があると思います。   〔委員長退席、理事和田静夫君着席〕 それが四十三年度にもあらわれているし、またそれから来年度の予算の中で皆さんそういうことをおっしゃっている。これは解決のためにもう少し本気になってお考えいただきたいことだと思う。これなくしては健康保険制度を本土並みにすると言っても実体の伴わないものになるんじゃなかろうか。その点が一つと、それからもう一つ保健所建設ですね。これについては琉球政府側からは要求があったと思いますけれども総理府のほうはこれを全額削ったということを私聞いております。また政府立の病院施設の整備費、これも琉球政府側からは要求があったけれども総理府はこれを全額削ったということを聞いておりますが、この辺どうですか。こういうことをやっていたんでは医師もなければ、医療施設も整わないということになるんじゃないでしょうか。
  150. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) お医者さんが行ってくださらないという現実は、内地のほうでも僻地、離島等において間々見られる現象であります。医師の都市集中という偏在も、医療金融公庫等の融資においては、すでに相当開業医が認められる地域では、相当きびしい基準で、新規に認めないで、地方のほうへ行くような資金面の誘導等もあるわけですけれども、なかなかそれが現実にはむずかしい。沖縄においてはそれが極端にあらわれておると思うのでありまして、全体の数が少ない上にそれが偏在をしておる。しかもさらに、沖縄に行っていただく場合には医師が現在おられる那覇市あたりに集中する。その点が求人というふうなことがほとんどできないでたいへん御苦労願う西表島その他の離島の小さいところへ行ってもらうわけでございますから、十分懇請をして、道義心にも訴えていろいろとお願いをしておりますが、行ってくれないというのに行けという命令権もございませんし、そこらのところは医師会の御協力等も得ておるわけでありますけれども、思うにまかせない現状であるということは否定できないと思います。あとこまかな予算の問題は長官からお答えさせます。
  151. 山野幸吉

    説明員(山野幸吉君) 病院の整備費につきましては、いま話の中に出ました那覇新病院を中心に充実整備することにしておりますが、その他におきましても要求額の中に病院の外来棟の整備費とか、名護の病院の整備費等をこの予算の中に入れておりますので、全く無視して全然計上しなかったということではないと思います。それは何かお間違いじゃないかと思います。
  152. 渡辺武

    渡辺武君 医師を派遣したいけれどもなかなか行く人がない。それから名護その他多少の御答弁がありましたけれども、しかし保健所の建設、政府立病院の整備費、これが全額削られている、琉球政府の要求額が。これが私は客観的な事実だと思うのですね。ですから、そういう状態では、これは本土並みにすると言ってみても、私は健康保険制度は実体の伴わないものになる、どうしてもこの点は改めていただかなければならぬと思うのですね。  それからまた、医学部設置の問題ですけれども、これはもう佐藤首相が沖縄に行かれて琉球大学に医学部を設置するということを公言された。ところが実際実現したのは何かといえば、先ほどお話のあったような保健学部。お医者さんの養成機関じゃないのです、これは。ですから、私、文部省に伺ったところによりますと、もしあそこに医学部が設置されなければ、先ほど山中長官は付属病院にしたいというようにおっしゃいますけれども、保健学部に付属病院というのは考えられないというのですよ。だから琉球大学が国立になっても、医学部が設置されなければ、この琉球大学の医学部はこれは復帰時には切り離さなければならぬというようなことを文部省の方は言っておられる。一体、この点はどうされるつもりなのか。ほんとうに医学部を設置されるのか、保健学部なんというようなことにしりつぼみになるのじゃなかろうか。これは沖縄の人たちが心配しているところです。この点、どうでしょうか。
  153. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 医学部はつくります。つくりますが、来年とかいう時点ではちょっとまだむずかしいということでございます。十分準備をしてからつくりたい。  それから保健学部は切り離すという意向が、どっか文部省か何かであったということでございますが、これは沖縄に関する限り私が全部責任を負っております。新那覇病院は、国立に移管さるべき琉球大学の付属病院にいたします。
  154. 渡辺武

    渡辺武君 時間もないので、先ほど長官御退席中に留保していた質問を一、二簡単にやりたいと思うのです。  一つは、先ほど、琉球政府が国家事務をやっていてその経費を払っている。それについて予算をつけたというふうに言っておりますけれども、この費用をこれは私の調べた資料によると、一九七一会計年度——これは沖縄の会計年度ですが——だけで琉球政府予算の二八・四%、百九十六億七千四百万円にも及んでおる。それがこれを見てみますと、行政運営費として六十四億八千七百万円がついているだけだ。とうていこれでは琉球政府の財政窮乏の状態を克服することはできないと思う。国家事務経費は、これは当然全額日本政府として出すべきものだと思うけれども、その点どうでしょうか。
  155. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 国政事務経費は全額出すわけであります。さらに予算要求額をここで議論するとたいへん問題だと思うのですけれども、要求額の議論ですからこれを前提として、そのほかに本土の県であったならば地方交付税に相当する額を六十億ほど県政運営費で見たということであります。国政運営費は、今度は拾うだけ拾って、琉球政府の気のつかないものでこっちのほうではこういう補助制度があるというものを全部両方から知恵を出し合ってつくったものでありますから、原則については変わっておりません。
  156. 渡辺武

    渡辺武君 私、調査してみますと、琉球政府の第一次案ですね、これですと約二百六十億円くらいの国家事務経費を負担しているというようなことになっているかと思うのです。いまの長官の御答弁では、そのうちのほんの一部分を日本政府が負担したにすぎないということになっております。この点は時間がないので一々御答弁いただくわけにいきませんが、この点はともかく根本的に改善していただきたいというふうに思います。また、いま御答弁のありました地方交付税交付金、これも琉球政府が市町村にみずからの負担でいままでは出していた、そのうちの一部分をこれを交付税交付金として今度つけたというにすぎないと私は思うのですね。いままで日本政府琉球政府のいわゆる援助、補助として出されたのは、ほとんどこれはひもつきで、このために補助はきたけれども、それについての付帯経費やあるいはまた対応費を琉球政府があらためて組まなければならないというようなことで、これまた琉球政府の財政困難の重大な原因になっている。私は、この補助方式ですね、これはやめて、本土の市町村、県並みに地方交付税交付金という方式にすべきだというふうに思いますけれども、その点どうなのか。  それからもう一つ、時間がないのでまとめて伺いますけれどもアメリカ琉球政府に対する、いわゆる援助ですね。高等弁務官資金、その他米国民政府からの援助資金、これまたひもつきになっている。これもまた財政困難の重大な原因になっているわけですけれども、こういう費用は全部これは琉球政府予算に組み入れて、琉球政府の自主的な使用にまかせるべきじゃないかというふうに思いますけれども、この点どうなのか。  それからまた、国有地、県有地ですね。これも管理を琉球政府に移して、そしていままでアメリカがこれを県民に賃貸して賃貸料を取っているという不当なことをやっております。また県有地、国有地を自分で使っておきながら何ら地代も払っていないというようなこともやっております。この累積した分は全部、これは琉球政府に支払われるべきだというふうに思います。  また、例の電力、水道、開発金融の三公社ですね。これも無償で琉球政府に引き渡して——彼らがいままであげた利益、剰与金は大体百億円をこえているといわれておりますが、これまた琉球政府に渡すべきだと思いますが、これらの点について長官の御見解を伺いたいと思います。
  157. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 一ぺんに、こう、だっとやられたので、質問のほうは簡単でしょうが、答弁はそう簡単にいかなくなってしまうのですが、事業費は全部ひもつきで、対応費が要るとおっしゃいますけれども、補助率は、本土の離島振興法あるいは奄美振興法、あるいは北海道開発法その他で、あるいは後進地域の特別——後進地域の補助率かさ上げと俗にいわれております補助率の引き上げ等のいずれをとっても最高の補助率をもってやるようにしております。ということは、全額、一〇〇%持てということになるかもしれませんが、一〇〇%持つということになりますと、復帰までは、やはり国税に入るべきものを球琉政府の収入として得ておるわけでありますし、またほかの県に似たような、県自体の財政収入もやはりあることは否定できないわけですから、一〇〇%の補助ということはやはり問題があろう。でありますので、そのかわりに六十億の政府の自由に使える金と申しますか、交付税方式をいま当てはめて計算することはできないけれども、ほぼ計算の可能な、ぎりぎり一ぱいを組んでみたということでございます。それからアメリカのほうの援助金の中で、財源を琉球政府が取ってもいいもの、たとえば融資課徴金等でありますが、これは本来は国の収入の形式の中に入る収入でありますけれども、現行政形態の中では当然琉球政府が取るべきもの等を含めて、アメリカ政府のほうが民政収入としてそれをあげて、米政府援助として沖縄側に渡しておる。こういう形式も改めることがもういいんじゃないかということは申し入れをいたしております。したがってアメリカから来年度は全く援助を受けなくとも、祖国のほうで全部見ますからということを申しておるのですが、アメリカはやはり施政権があるうちはめんどうをある程度見る。したがって収入もある程度はとるということを依然として譲らない状態が現在でございます。それから国、県有地の中で、アメリカ側が施政権者としてそれを管理することはあっても、賃貸料を取ってそれを県民に使わしたということの償いを、いわゆる貸し借り勘定で琉球政府側に払えというようなことについては、全体的に資産引き継ぎの問題としてアメリカの財務省と日本の大蔵省との間で今後相談をしていくつもりでありますが、三公社については剰余金が相当あるということでありますが、すべてこれは事業費もしくは融資、そういうものに再び回されておる原資になっておりまして、その意味では剰余金そのものがそっくり別に金がためてあるという形のものではありません。しかし原則として琉球政府のほうに引き渡すということは私も賛成でありますが、問題なのは電力でございまして、電力は計算をしてみますと、本島電力料金の二倍以上の高い離島電力料金を全く念頭に置かず、新しい需要に対処するための新しい電源の開発も全くしないということを念頭に置いて計算をしてみましても、現在のままで琉球政府の県営電力供給公社にいたしますと、消費者の段階、すなわち小売り値を二〇%上げないと採算がとれないというようなことに現実計算ではなりますので、それでもなお琉球政府営でおやりになるならば、将来の県営事業として私らは反対はしないけれども、しかしそういうつじつまを合わせるために苦しいことをやっていかたければならないのはどうだろうか。復帰記念に与えられたものの中の一つに電力料金の二〇%引き上げというような採算上やむを得ない措置をとることは好ましくない。だから何かこれは本土の電発等と関連を、よく私のほうで検討するから、発電の段階琉球側でおやりになれば大体ペイすると思いますから、発電、逆電は電発その他等と構想を考えてみようじゃありませんかという意味で問題を投げかけております。しかしそれでも、計算表その他全部差し上げたのですが、まだ回答はまいっておりませんし、やはりたてまえは県に渡せということでありますから、そういう御主張でありますならば、私たちとしては県に渡すことも異存は別にありません。
  158. 黒柳明

    ○黒柳明君 ちょっと長官の時間が二時までということで、なるたけ簡潔に質問したいと思います。  昭和四十年の八月十九日だったのですが、佐藤総理が沖縄を訪問いたしまして、ただいま若干話が出ました琉球大学付属病院、新那覇病院ですね、この建設を約束された。四十三年から国の補助金、予算がつきまして現在建設中、来年あたり完成する予定である、こういうことを伺いました。私は、コンピューターがそこに導入されると、この問題についてちょっと疑義があるので、お伺いしたいわけですが、まずその新那覇病院の四十三年からの建設の経過、それから予算、どのくらいずつ出ているか、これについてお答えいただきたいと思います。
  159. 山野幸吉

    説明員(山野幸吉君) お話のように佐藤総理が沖縄へ行かれましたときに医学部設置の問題が出まして、そこでその直後に医学部問題懇談会というのを総理府の諮問機関のようなものとしてつくりまして、武見会長が議長になっておられますが、そこで一体琉大に医学部がいまの時点で設置できるかというような問題をいろいろ検討されました結果、まあ医学部の設置は早急にはいろいろな諸条件が満たされなければいかぬので無理だ。そこで、さしあたり保健学部を設置すると同時に、いま御指摘の新那覇病院を建設して将来の医学部ができた場合の付属病院にしていこうということになったわけでございます。これは非常に精力的にこの医学関係の先生方がお集まりになりまして琉球政府の厚生局あるいは琉大のこの責任者等も参加されて、数十回にわたる会合を持たって出た結論であります。で、その結果、新那覇病院は昭和四十三年度に建設費として二億一千二百四十一万四千円が計上され、四十四年度には七億八千百万円が計上され、四十五年度に十億八千九百七十八万円が計上されたのであります。そして工事は順調に進んでおりまして、四十六年度の予算には、いま御指摘になりましたコンピューター等の経費を含めた備品等を中心にして約六億八千万の要求をしておるところであります。ベッド数は三百ベッドになっております。
  160. 黒柳明

    ○黒柳明君 大体四十三、四十四、四十五で二十一億ぐらいですね。四十六年が六億八千万、それは日本政府沖縄との比率はどのくらいになりましょうか。日本はどのくらいの割合の分担になりましょうか。
  161. 山野幸吉

    説明員(山野幸吉君) これは八割補助になっております。
  162. 黒柳明

    ○黒柳明君 そこで四十六年の概算要求ですね、六億八千万。そのうちコンピューターの導入部分、その予算はどのくらい組み込まれておるのでしょうか。
  163. 山野幸吉

    説明員(山野幸吉君) コンピューターのレンタルの賃借料が一億四千四百万、月千二百万の十二ヵ月、それからそれにコンピューターの送料が三千万、一億七千四百万ばかしであります。
  164. 黒柳明

    ○黒柳明君 大体六億八千万のうち一億七千万がコンピューター導入部分の予算である。これは借りるわけですね。そこで沖縄北方対策庁の中に琉球大学に病院を設置する準備委員会ですか、これは法制上の規則がない委員会、こう承っておりますけれども、これはどういう性格なのか、その中にどういう部会があるか。その部会はいつごろからあるのか、その部会の構成はどういう構成なのか、その部会長はどういう人なのか、そこらあたりを教えていただきたい。
  165. 山野幸吉

    説明員(山野幸吉君) メンバーが相当交代いたしましたりしまして正確にお答えできないわけでございますが、御承知のように武見先生が座長、それに私、それから厚生省の医務局長、それから文部省の大学学術局長、それから東大と福岡、久留米の医学部長、それからアシスタントがそのほかに入っております。それから琉球政府からは、これは必要なときに出てもらっておりますが、琉球大学からは事務局長、それから琉球政府の厚生局長等が出席されておるわけであります。以上であります。
  166. 黒柳明

    ○黒柳明君 準備委員会あるいは医学問題に関する懇談会の会長が武見さんですね。
  167. 山野幸吉

    説明員(山野幸吉君) はい。
  168. 黒柳明

    ○黒柳明君 その中のコンピューター導入に対しての部会がありますね。その部会長、その部会についていま私お伺いしたのですが、病院全体じゃなくて、コンピューターの……。
  169. 山野幸吉

    説明員(山野幸吉君) 施設整備専門部会というのがございまして、委員には慶応大学の医学部教授の倉田正一さん、それから専門委員として名城病院顧問山元さん、名古屋大学工学部助教授柳沢さん、東京都衛生研究所長の辺野喜さん、厚生省病院管理研究所の鈴木さん、以上でございます。それからまあ私のところの課長とか、あるいは文部省、厚生省の担当課長。倉田先生が部会長でございます。
  170. 黒柳明

    ○黒柳明君 若干整理しますと、要するに、この琉球大学の付属病院である新那覇病院、これの問題の懇談会会長が武見さん、その中の部会がありまして、慶応大学の倉田教授を中心にしてのそうそうたるメンバーが集まっていらっしゃる。こういうことであると思います。当然これは四十六年の予算なんですから、まだ予算決定がされておりません。予算決定後に、応札ということもございまして、どこのコンピューターを入れるか、こういう段階になることはあたりまえだと思うのですが、そういう理解で間違っていないと思いますが、いかがでしょうか。
  171. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) そのとおりです。
  172. 黒柳明

    ○黒柳明君 ところが、いまそちらに持っていきますけれども、表題「沖縄新那覇病院システム展開計画」、これは係員の名前が書いてあります。一九七〇年八月二十日、これは三菱の書類です。そこにこう.書いてある。要するに、表題に書いてある「新那覇病院システム展開計画」のことですね。「当計画は慶応大病院管理学教室(倉田教授)との打ち合わせに基づいて決定されたものである。」さらに、七〇年九月二日、「一九七一年十月一日開院目標に新那覇病院の建設工事が進められている。その中のコンピューターシステムの機種決定権は施設部会長倉田教授が持っている。当社と慶大医学部と共同研究で鋭意検討が進められている。」その他云々。赤線の部分がちゃんと書いてある。いま聞くところによりますと、このコンピューター、これは専門家でないとなかなかわからない。私も、総理府の方と接触して——これはおまかせするよりありません——こういうことらしいのです。最終的予算なんかはそうじゃないと思いますが、どこにするかということは。いろいろな三菱との話も若干あるやに聞きましたが、私先ほど申しましたように、当然どこのコンピューターを使うかどうかということまでには至っていないわけです。ところが、実際のこの部会長である倉田さんが相当のこれに対する決定権は持っている。これは私もはっきり聞いております。そうすると、総理府としまして、諮問機関のようにして御意見を承っている部会の部会長が、すでに三菱と鋭意新那覇病院に入れるコンピューターを共同研究している。すでにそれがもう三菱の機種であるかのような決定が、このマル秘の書類によると、されている。こういうことですけれども、これは一体どういうふうに受け取ったらいいのでしょうか。
  173. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私の段階で、はたして保健学部の付属病院たる新那覇病院に本土の国立大学でも完備していないコンピューターシステムの導入の予算要求をすべきであるかどうかということについても相当議論しました。しかしながら、先ほどお答えも一部いたしましたが、新那覇病院はやはり地域総合病院として、地域に広く貢献し、できれば全県民の健康その他のカルテ等について集録できるような機能を持たせることが、あるいはいいかもしれないという判断等も一部にございました。私としては、これは最初はコンピューターの購入というようなことでありましたが、コンピューターの償却、あるいは日進月歩の技術面の革新、そのようなことから考えて、高いようでもレンタルでいったほうがいいというような判断等は私がいたしました。しかし、大蔵省に要求したからこれが取れるということには限っていないことはおわかりだと思いますし、大蔵もまた新那覇病院にだけそういうような総合的な機能を持つコンピューターシステム導入ということに同意するかどうかは、これからの折衝であります。しかしながら、見積もりのためにそういうことをされたのかもしれませんが、しかし、そのようなマル秘書類でやっておる会社があるとすれば、その会社のコンピューターは導入しないことを明確にいたしておきます。しかも、その決定権は、大体琉球政府にゆだねられておるわけでありますから、そのようなことを注意して機種の選択をするように申し上げておきますが、そのような不穏当なことを社内でやっておるとすれば、私が関係する範囲内においてそのような会社のものを採用しないようにいたします。
  174. 黒柳明

    ○黒柳明君 非常に明確なる御答弁をいただきまして、そのあと私つけ加える何ものもありませんが、私がいままで総理府の方といろんな接触した範囲におきましては、ただいま申しましたように、これは専門家にまかせるよりほかない。ですから、この部会の権限といいますか、方向というものに相当ウエートがかかっているだろう。なかんずく部会長が相当の権限を持つことは必然性があるわけです。しかし予算がまだ決定したわけじゃない、しかしこれが決定する方向に当然持っていってもらいたい、これは総理府としてそういう考えがあるわけですし、問題は、これはうわさですから、私はそこまでどうこうということを追及したくありませんが、倉田さんの上司は武見さん、これが会長、今度は佐藤さんが約束したことをもってなんというようなことがいろいろうわさされているわけで、念のために、すみません、これは長官に見ていただいて……。こういう書類を部内で制作して、倉田さんが圧力をかけたか、あるいは倉田さんが圧力をかけられたか、ともかく鋭意検討しているというような、こういう不穏当な書類をつくって、何をどうやっているかわかりません、現場を私、見たわけじゃございませんけれども、そういうことがあると、これは琉球政府が入札する、きめるといいましても、いまも話がありましたように、ある程度ひもつきになりまして、最終的には琉球政府にまかせるんですけれども、この部会が相当これに対して権限を持つことも間違いないと総理府の方がそうおっしゃっていますから、琉球政府にまかせる段階におきまして、そういうことがなされているということについて、ひとつ長官も頭に入れていただいて、決してコンピューターは使わない、こういうことを——使う使わないは、最終的にはいいものは使っていただいてもよかろうと、こう言いたくなりますけれども、またこれは冗談じゃなくて、聞くところによりますと、日本無線、これは厚生省のほうから資料をもらいました、現実に信州大でも金沢大でも、秋田、大阪、まあコンピューターシステムを取り入れている病院が十五、六ありますけれども、日立、日本電気、富士通等で、三菱はぐっと開発でも一段二段おくれていると、こういうことですし、まあソフトウエアなんかの問題でも、どこの社が得意かと、こういうこともありますけれども、ともかく国内的にはこういうふうに他社におくれをとっているわけです。それがまあ沖縄に行けばどうかと、一時は試験的なものだとこういわれたこともありましたけれども、試験的なものであったらこれはなおさらたいへんなことだと私たち思います。ですから、まあそんなことはないと思いますけれども、総理大臣が約束したことである、会長が武見さんである。あるいはその直系の教授である倉田さんが実際の権力を持っていると、こういうようなことから、そういう社内の秘密書類が出ているということは——まあ出ているのじゃなくて出てきたということなんですけれども、これは非常にやっぱりそういう方向に向くのじゃないかという問題点があります。まあ念のためにお伺いしたいのですが、そういう要するに研究の方向——三菱を除いてですね——日本電気でもあるいは東芝でも研究させているということはないでしょうか、どこかの社に。
  175. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 全くありません。
  176. 黒柳明

    ○黒柳明君 となれば、当然三菱一社が慶応大学の倉田さんと共同研究しているなんということは、これはもうとんでもない話ですね。他社にもそういう指示を与えてその中で研究していると、こうなればまあどれがいいかという、こういう試作段階、検討段階ということも言えますが、全くそういうことを指示していないのに、一社だけが、しかもそういう実権を持っている倉田さんとともに共同研究を鋭意進めているという、あまりにもこれは人に先んじ、熱心のあまりにちょっと行き過ぎじゃないか。そこに問題があるということで、内部の人から突き上げが出ております。まあこの点、先ほど申しましたように非常に明快なる長官の御答弁がありまして、ぜひとも、まあ来年になりますとまた一億七千万予算がつけば、まあつくのじゃないかと思いますけれども佐藤総理が約束したことですからね、つくのじゃないかと思いますが、それがついた段階においては、ひとつ公平なる応札というものをやっていただきたいと、まあ蛇足ですけれども——最後長官の御答弁をもう一度お伺いしたい。
  177. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) とらぬタヌキの皮算用の段階であまり会社の名前をあげると、ときには逆にコマーシャルということにもなりますから、いま、先ほど申しましたような決意でありますし、絶対に新生沖縄の前途に、第一歩にいささかなりときずのつくようなことの絶対にないようにいたします。
  178. 和田静夫

    ○理事(和田静夫君) 速記をちょっととめてください。   〔速記中止〕
  179. 和田静夫

    ○理事(和田静夫君) 速記を起こしてください。
  180. 二宮文造

    ○二宮文造君 東北開発株式会社の総裁にお忙しいところ御出席をいただきまして厚くお礼を申します。  私は、「昭和四十三年度決算検査報告」、この一六〇ページに掲載されております経済企画庁所管の東北開発株式会社、この問題について若干質問をいたしたいと思うわけであります。  この検査報告によりますと、「東北開発株式会社の昭和四三営業年度末の資本金は一〇五億一〇〇〇万円(うち政府出資一〇四億〇七五〇万円)で、前営業年度末に比べて一五億増加している。」、さらにその末尾には「しかして、四三営業年度末における累積欠損金は人八億一五九三万余円で、」云々と書かれております。ここで理解できますことは、百五億一千万の資本金を得ているこの東北開発が四十三年度末で八十八億余の累積欠損額を計上している、正味資産が差し引き三十数億しかない、こういうふうな理解の程度になると思うのです。しかも、この四十三営業年度におきましては、検査報告によりますと、「当期損失金は一〇億四五三九万余円になっている。これは、セメント事業で六億一八一六万余円、ハードボード事業で八四九八万余円の利益を生じだが、化工事業で福島工場の営業譲渡等に伴い七億八四七九万余円、本社部門で東北造船株式会社の減資損、砂鉄鉱区処理引当損等の計上により九億五七二〇万余円の損失を生じたこと等によるものである。」こういうふうな記載になっております。で、全体の問題は後ほどお伺いするとしまして、特に記載されております福島工場の営業譲渡、これに伴って七億八千四百七十九万余円の赤字が出た。したがって、この福島工場及び高萩充填所と、買い受け会社は、たしか福島製鋼株式会社だったと思いますが、その売買、財産の処分について、あらましを東北開発のほうからお伺いをいたします。
  181. 亀井茲建

    参考人(亀井茲建君) お答え申し上げます。  この経緯につきましてはいろいろ事情がございますので、少し詳しく経過を御報告したほうがいいと存じますので、私にかわりまして高見理事から御報告申し上げます。
  182. 高見豊治

    参考人(高見豊治君) 福島の東北開発株式会社の福島工場、これはカーバイドを生産しておる工場でございますが、これを四十三年度末に福島製鋼株式会社に営業譲渡いたしましたが、この経緯について簡単に御説明いたしたいと思います。  この福島工場は、東北開発株式会社の前身でございます東北興業株式会社時代昭和二十二年につくられました工場でございまして、主として肥料でございます石灰窒素と、その原料になりますカーバイドを生産いたしておる工場でございます。ところが、昭和三十二年以降、東北開発株式会社がこの工場を引き継ぎまして、当時はまだ直営工場としては、このカーバイド工場は東北開発株式会社の基幹工場でございましたけれども、三十年度の後半に至りますと、この福島工場で生産いたしますカーバイドは、当時の技術革新によりまして、石油精製品によりましてこれが非常に市場を圧迫されまして、産業といたしましては、将来のない工場であると判断されまして、当時毎年営業損が、このカーバイドを生産し、販売するだけで一億を上回る赤字を出すに至っておりました。しかも業績といたしまして、石油精製品に押されまして、カーバイド工場といたしましては自家発電を持っている工場、もしくはそれを有機精製部門にカーバイドを直ちに自分のところで利用できる会社は、カーバイドを生産しても営業的に成り立ちますけれども、当社のように電気は買電でございますし、しかも、カーバイドは全量売るというような場合におきましては、企業的に毎年一億の赤字を出すというふうに、企業的に成り立たないという判断から昭和三十九年に当社が再建に入ったわけでありますけれども、その再建にあたりましては、すみやかにこの福島工場を整理するようにという、計画においてお示しがございました。それで当社といたしましては、これをどう整理するかということに種々努力いたしましたけれども、なかなかこの整理はむずかしい問題でございまして、当初考えましたのは、会社の中でこのカーバイドを業種転換いたしたい。たとえばフェロアロイであるとか、塩化ビニールであるとか、酢酸ビニールであるとかいうものの生産に業種転換いたしたいということで、種々努力いたしましたけれども、当時の経済下の状況で、どうしてもこれがうまくまいらないということで、会社内における業種転換は断念するに至りまして、これをやはり外に営業譲渡しなければならないというように考えた次第でございます。  それで、まず最初にカーバイドの同業の業種と申しますと、昭和電工さん、日本カーバイドさん、電気化学工業さんであるとかいうのが同業でございますけれども、そこに引き取っていただけないかということの交渉を種々いたしましたけれども、当時カーバイドそのものが斜陽化いたしておりましたので、昭和電工さん自身もすでに自社のカーバイド工場を少し減ずるというときでございますし、いろいろございましたが、当時最後に相手になっていただきましたのが電気化学工業さんでございます。当時これの折衝をいたしましたところ、電化工業さんの条件は、当時の工場の簿価は大体固定資産は約四億二千万くらいのものでございまして、従業員が二百七十人おりましたけれども、その電化工業さんの条件提示は、その固定資産の簿価四億二千万のものを五千万、そして従業員二百七十人を百人引き取るという非常に苛烈な条件でございます。種々折衝いたしました結果、その固定資産五千万を一億五千万、従業員百人を二百人というような条件にまで条件がまとまってまいりましたところ、当時電化工業さんの上層部に交代等がございまして、この話は破談になった次第でございます。しかも、昭和四十三年度が当社の再建計画の五年目でございまして、最終年度になっておりました。しかも、この工場は化工事業をやっておりますことによって、毎年一億数千万円の営業損が重なってまいりますし、しかも、この整理によります従業員の退職金は一年おくれるごとに一億円を上回っていく状況でございましたので、当社といたしましては、この再建の終わります四十三年度末までに、ぜひこの工場を何とかして合理化により営業譲渡を実現いたしたいというように考えておった次第でございます。ところが、ちょうど電気化学工業さんの話が破談になりました直後、地元の福島製鋼株式会社、これは鋳鋼の生産工場でございます。主として日野ディーゼルに鋳鋼を納めておる会社でございますが、自動車産業の拡大に伴う設備拡張のために、当社福島工場の土地を譲っていただけないかという話が内々まいりましたので、会社といたしましては、これは福島の化工工場を営業譲渡いたしますのに最後のチャンスであるというように考えた次第でございます。それで、当時やはり有力銀行筋等のいろいろな情報によりますと、もう当社自体が同業各社に営業譲渡いたしますときに、電化さんのような非常に苛烈な条件でしか買っていただけないような状態、そうして同業各社のいろいろな例を聞いてみますと、富山県のある企業におきましては、土地が三億数千万のものを二億で譲渡されているというような実例もございます。それで当社といたしましては、簿価約四億二千万でございますが、そのうち固定資産の土地が簿価では約二千数百万でございますけれども、当時これを日本不動産研究所等に鑑定評価していただきますと、約二億二、三千万の評価がございました。それで当社といたしましては、この営業譲渡をやる場合、当然二百七十名をこえる従業員を全部職を失うことなく引き取っていただくということが一つの条件でございましたし、そしていま申しますように、この事業を継続することによって累積する赤字の増大を防ぎたいという気持ちもございましたので、最後のチャンスであるということで、簿価を割ってもやはりこれは四十三年度末までに営業譲渡を実施いたしたいというふうに決心した次第でございます。そのときに福島製鋼に譲ります——これはやはり評価その他を参考といたしまして、当社として決心いたしましたのは、土地のさら地価格の評価額約二億三千万を下がらない価格で営業譲渡いたしたいという決心をいたしまして、種々福島製鋼と交渉いたしました結果、固定資産につきましては二億七千五百万、それから流動資産は、これは簿価でお譲りいたしたわけでございますが、一億九千六百万をもってこの福島製鋼に対する営業譲渡を実施いたしたわけでございます。当然そのときにおきましては、当社におります二百七十名の従業員は、わずか三名、これは家庭の都合によりまして福島製鋼に参りませんでしたけれども、あとの二百七十一名はすべて当社におるときの労働条件を下回らない条件で引き取っていただくということで、この営業譲渡を昭和四十四年三月三十一日に正式契約いたしまして実施いたしました次第でございます。簡単でございますが……。
  183. 二宮文造

    ○二宮文造君 御説明をいただきましたけれども、やや正確を欠きますので、私のほうの手元の資料で数字を申し上げてみたいと思います。確認をしていただきたい。  まず、土地あるいは工場建物、それから社宅などの建物、その他構築物、機械装置、こういう固定資産を、その固定資産の四十四年三月末の帳簿価格は四億二千百三十三万八千百五十一円、これを最終的に東北開発が譲渡いたしました金額は二億七千六百万円、そのほか流動資産として一億九千六百二万六千六百八十六円、これを譲渡価格として一億九千七百二十六万千六百二十八円、合計帳簿価格が六億一千七百三十六万四千八百三十七円に対する譲渡金額が四億七千三百二十六万一千六百二十八円、差し引き帳簿価格だけで——簿価だけで比較をいたしますと、この譲渡損が一億四千四百十万三千二百九円、こういう勘定になるだろうと思うわけであります。ただ、これは単純な比較でありまして、たとえば土地の四十四年三月末の簿価は三千三十六万八千八百三十一円、それをおたくのほうで操業中止の評価額として二億二千五百五十九万六千円、こういうふうに比較をされておりますと、これは非常に極端な比較のしかたですけれども、土地の簿価と評価額との間に一億九千万円の差額がある。あとの簿価はそのままにして、この一億九千万円を簿価に加えますと、八億一千二百万円、こういう計算になるわけです。それと譲渡価格とを引きますと、土地の値上がり分、値上がりのひどいもの——いわゆるその処分価格と簿価とが極端に差があいているものを除外して考えてみますと、譲渡損というのは三億三千九百万円という試算になるわけです。これは非常に意地の悪い比較のしかたでして、そういうことは当然考えられてないと思うんですが、まあ、いまるる説明をいただきました。で、欠損工場である、従業員を引き取ってくれる、こういう条件のもとに一応張簿上の一億四千万の譲渡損はやむを得なかったと、こういうふうな見解でありますけれども、私どもはこれは少し不当に安いのではないか、それがために会計検査院のほうからは、現地の調査をきれて会社に対して質問状を出しておられますが、まあ、非常に長文な質問状ですから、かいつまんでどういう趣旨の照会を出されたか、この点、会計検査院のほうからお伺いしたい。
  184. 石川達郎

    説明員(石川達郎君) 東北開発株式会社は、先ほどお話のありましたように、そのほとんどが財政資金によって運営されているわけでございます。したがいまして、その財政資金の効率的な使用という観点から、われわれ特にこの会社に対しましては関心を持ちまして検査をしてまいってきているわけでございます。その際、生産計画から個々の会計経理に至るまで精細な調査をいたしているわけでございますが、ただいまお話のありました福島工場の譲渡に伴います土地評価につきましては、お話にありましたように昨年の十月に会社に対しまして照会を発しております。その要旨でございますが、この評価にあたりまして、まず通例の場合ですと、鑑定評価を依頼いたします場合には大体二以上ということになっているわけでございますが、この際は一つだけの鑑定価格を参考にされたということ、さらに評価時点の問題でございますが、この評価をいたしましたのが四十…年一月でございますが、契約締結の時点は四十三年十二月、ほぼ一年近くの年月を経過しているわけでございます。このような場合には当然に、その間の土地価格の値上がりを見込みまして時点修正ということを行なうのが当然でありますが、これを行なっていない点が一つ、そのような観点からこの土地の評価が、われわれもいろいろとほかに実例を調べたわけでございますが、われわれの調べたごく一つの事例でございますけれども、われわれの感触といたしましては、会社は一平方メートル当たり千七百二十六円で譲渡をいたしているわけでございますが、それがわれわれの計算によりますと、二千三百八十四円というような価格が周囲の状況等から妥当ではなかろうか、かような感触を持ったわけでございます。土地の評価につきましては以上のとおりでございます。
  185. 二宮文造

    ○二宮文造君 あと工場建物とか、社宅とか、一括して疑問点を全部あげてください。
  186. 石川達郎

    説明員(石川達郎君) 次に、福島中心街より南方約七キロメートルのところにこの残滓捨て場というものがございます。その捨て場の評価でございますが、これを平方メートル当たり千四百四十円という評価をいたしているわけでございますが、これがのり地であるという理由をもちまして相当な減価をした結果、三〇%の減価をいたしているわけでございますが、われわれの心証からいたしますれば、これは若干の整地をいたしますれば、あえてこれをのり地として評価する要もなかろうというような感触を一つ持ったわけでございます。  次に申し上げますことは、八島田アパートの評価でございますが、このアパートは、これを建設する際に厚生年金の還元融資を受けているわけでございます。この資金の償還がまだ未済であるということをもちまして、このアパートの評価を落としておったという事態があったわけでございます。  次に申し上げます事項は、高萩の充填所の建物、機械等の評価でございます。これは解体撤去するということを条件に、その分だけの減価をいたしたわけでございますが、これは現状を見ましても、現在、日立酸素株式会社に営業を委託して、溶解アセチレンの販売を行なっているような事態から見ましても、これはあえて解体撤去というような評価をする必要はなかったのではないか、かような考えをもって照会をいたしたわけでございます。  以上でございます。   〔理事和田静夫君退席、委員長着席〕
  187. 二宮文造

    ○二宮文造君 どうも説明が明快を欠きますので、私のほうからまた補足説明をしなきゃならなくなっております。要するに、財産処分にあたっての評価の姿勢がまず第一に問題になる。四十三年の十二月に契約をし、四十四年の三月三十一日をもって譲渡したにもかかわらず、その財産の評価の時点は四十三年一月である。約一年前の、こういう土地価格が非常に上昇気分にあるときに、一年以上前の評価を基準にして売買をしたということ、それから鑑定をするにあたって、不動産研究所一つだけをたよりにして、通例二以上の評価鑑定を依頼することが通常の例にもかかわらず、その努力をしてない、あるいは付近の売買実例というものを全然無視してしまっている。こういうふうな評価鑑定の姿勢から、いわゆる買い手市場になってしまった。福島製鋼のおそらく言い値のようなかっこうで処分されて、結論として会計検査院が試算をしました金額と実際の売買の価額との間に、一億二百九十八万三千円の開きがある。東北開発は財産の処分にあたって一億円以上の国損をもたらしたというのが、この会計検査院の質問状であります。この質問状に対して、東北開発はどのような回答をされたのか、要約御説明願いたい。
  188. 高見豊治

    参考人(高見豊治君) ただいまの会計検査院の御照会に対して、会社側がどう努力したかということでございますが、これにあたりましては、最初私が説明いたしましたように、この工場を閉鎖いたしまして、従業員二百七十名を全部当社の責任において人員整理を行ない、その後就職を全部考えるといろかっこうにおきまして、残った固定資産その他を年月をかげてこれを売却するというケースとは当社は考えておらなかった次第でございます。従業員二百七十名を付しまして、しかもそのままカーバイドの営業を行ないながら福島製鋼に譲渡いたしましたときには、二年間くらいはカ−バイドの操業を行なわれますけれども、そのうちに鋳鋼に転換されるということでございますので、そういう意味のものの営業譲渡でございましたので、なかなか問題はむずかしゅうございました。そして、ただいま会計検査院の申されました不動産研究所一つだけで、二つ以上ないのはおかしいじゃないかとか、時点修正がないとかいうお話でございますが、この問題につきましては、確かに検査院の言うように、評価をいたす場合におきましてはそのとおりかと存じますけれども、当時この東北開発株式会社が、四十三年は再建の最終年度でございましたし、しかも当時、東北開発株式会社の従業員は、この福島工場分離に絶対反対を唱えておりまして、その中でこういう作業をやるためには非常に隠密裏に行動する必要がございましたので、これをオープンにして正規の、ただいま申されましたようなことがとり行なえないような事情もあったということは御了察いただきたいと思います。  それから、その意味におきまして、当社といたしましては、この当社が評価いたしましたのは操業中止評価ということでございまして、これはこの営業譲渡におきましてはいろいろな評価方法がございます。たとえば収益還元法であるとか、物的積み上げ法とかいう方法がございますけれども、これは普通その事業が黒字で、しかも事業としてはある程度長期にわたって操業されるという場合の営業譲渡の場合の評価法でございまして、当社のカーバイド工場のように、先行きが非常に暗い、しかも現実に毎年一億数千万の赤字操業をいたしました工場の営業譲渡の評価には適当でない。これは有力銀行筋も、そういうことを申されておりますけれども、そういうふうなことから、操業を続けながら営業譲渡をいたしますけれども、福島製鋼で二年間の間にこのカーバイドの操業をやめられて鋳鋼に転換されるという意味から、当社といたしましてはその評価をいたします場合に、固定資産のうち土地につきましてはさら地価額で評価いたしましたし、建物、構築物につきましては解体取りこわし評価をいたしまして評価をいたした次第でございます。で、もちろんそれがそういうふうな売買ならば、その評価によってやるべきであるとは思いますけれども、ただいまるる説明いたしましたように、従業員二百七十人をつけての営業譲渡であったことと、しかも、当社がその前に営業譲渡をはかったときの相手の非常な過酷な条件1ということは、この工場そのものに対する売買の場合の一種の市場価格的なものではなかったかというふうな判断、しかも他社の同じようなカーバイド工場の営業譲渡等を参考にいたしますと、やはり相当に簿価を割り、しかも評価額を割っての譲渡が行なわれておるということを勘案いたしまして、しかも四十三年度中にこれを実施いたしませんと、当社の再建達成がだいぶ危ぶまれるという状況もございましたし、しかも、これは一年おくれるごとに営業損が一億数千万、従業員の退職金が一億三千万というふうにふえてまいる状況でございましたので、四十三年にこの福島製鋼から話がありましたときに、さっきも申しましたように操業中止評価を評価といたしまして、当社といたしましては、そのうちの土地価格の評価額二億二千五百万を下らない額でこの営業譲渡を実現いたしたいというふうに考えまして、鋭意努力いたしましたということでございまして、確かにそういうもの考える場合におきます評価の手続等におきまして、検査院の御指摘になっておるような事務上のミスがございましたことは、これがいま申しましたように非常に隠密裏に会社として考えざるを得なかったというような経緯、相手方との交渉も非常に隠密裏にやらざるを得なかった。私が福島に行くにつきましても、福島へ行くということがわかれば、これは従業員がすぐ福島工場の分離ということで会社としては大騒動になるというふうに、隠密行動すらございました状況の中で、この評価の作業を行ない、譲渡の交渉を行なったというふうな経緯等をごしんしゃくいただきまして、よろしくお願いいたします。
  189. 二宮文造

    ○二宮文造君 御説明をいただいたんですが、その御説明は、非常にシビアな言い方かもしれませんけれども、財産を処分する上の基本的な条件にはならないわけです。会計検査院がおたくに質問をしております。逆な意味での取り上げ方をしております。たとえば、こういうふうな表現があります。「譲り受け人の既存の工場は福島市内にあって、敷地狭隘のため拡張の余地がなく、将来の発展を考え、かねてから進出場所を物色していたこと、譲り受け人は人手不足のおりから退職手当支払い済みの電気炉作業員を多数確保できたこと、福島工場は譲り受け人の現工場に近く、かつ専用側線、受電設備等が敷設済みであるなどを勘案すれば、必ずしも貴会社が考えるような有利な譲渡であったとは認められない。」要するに従業員を全部引き継いでもらうことが、結局評価をこういうふうにせざるを得なかった、こういう東北開発側の説明をここで破っております。これに対するおたくの回答は、いまの高見理事の答弁をそのまま繰り返しているにすぎないわけであります。たとえば、なるほどカーバイドの市況がよろしくない、従来赤字を出してきた。福島製鋼はこれを転換する、したがって、工場施設あるいはそういうもの一切を解体処分価格で計算をしたと、こうおっしゃいますけれども、これが東北開発当時の福島工場の全景であります。それから引き継いだ——福島製鋼吾妻工場として引き継がれておりますが、これが四十五年八月の全景であります。一年半たって工場内の建物を解体処分価格で計算をされておりますけれども、福島製鋼の吾妻工場ではごく一部分鋳鉄工場二千五百坪の敷地については、これはこのように建物が変わっておりますけれども、あとはほとんどが利用されております。それからまた、先ほど隠密裏にやらざるを得なかった。——隠密裏にやるということは評価時点で修正をしないでいいということにはならない。あるいは付近の売買価格を調査し、それを評価の参照にしないといろ理由にはならない。要するに東北開発としては何でもいいからぶった切ってしまえ、ぶった切るについては処分損が出てきても、どうせ累積赤字は八十数億もかかえているのだからという安易な経営方針というものが、こういう売買での、大きく言えば国損を生み出したのではないか。お話を聞いておりますと、いかにも妥当なようなお話でありますけれども、あなたのほうから検査院に出された回答にはすべての段にわたって遺憾である、遺憾である、遺憾である。もうすでにこういう契約は過去にさかのぼれませんから、やったことはもうそれでおわびをしておけばしまいだと、こういう姿勢ではならぬと思うのです。あるいはもっとこまかい指摘がたくさんあります。高萩のほうも、これは高萩のアセチレンのほうは、福島製鋼吾妻工場は設備の増強をはかっております。解体処分価格ではございません。設備の増強をはかって拡張しております。また業績もあげております。すべての点にわたって東北開発の処分の価格、姿勢というものが私には納得できないわけですが、あえてもう一度御答弁を願いたい。何ならばこまかい問題に入って数字を突き合わしてみたいと思います。
  190. 高見豊治

    参考人(高見豊治君) 福島製鋼の現在の状況でございますけれども、福島製鋼におきましてはカーバイドの生産は本年の十二月をもって終わるようでございます。それから現在福島工場の中に最新式の鋳鋼設備、百メートル平方でございますので約三千坪の……。
  191. 二宮文造

    ○二宮文造君 二千五百坪。
  192. 高見豊治

    参考人(高見豊治君) 約十億の設備と聞いておりますけれども、現在これが稼働いたしております。これが現在の福島製鋼の現状でございます。  それから、確かに操業中止評価の問題と譲渡価格との問題でございますけれども、福島製鋼が現地にあって設備拡張を考えている、従業員もほしいということから見れば云々という御質問でございましたけれども、われわれといたしましては、転換のときの固定資産の相手の申し出が最終的に一億五千万であったこと、従業員の二百人以上といったものを全員引き取っていただく。しかも当社の福島工場の従業員は非常に高年齢者が多うございまして、二百七十名の平均年齢が三九・七歳だったと存じております。そういうふうな非常な高年齢者も含めて全員引き取っていただくというような条件等を勘案いたしますと、やはり転換のときに一億五千万から、固定資産で申しますと、二億七千五百万まで上がったわけでございますけれども、そういう中には、こういう状況が含まれているのではないかというふうに私は理解いたしておる次第でございます。それで何べんも陳弁申し上げるようでございますけれども、これはやはり評価そのものにつきましては、確かに検査院の御指摘のとおりいろいろな事務的なミスもございましたけれども、われわれといたしましては、何度も申しますように、この営業譲渡を四十三年度中にやるということを、われわれといたしましては再建計画を終了さす意味におきまして一つの使命に考えておりましたということもございました。そういう意味からこの二億七千五百万というものを、何度も申しますように、他の売買実例等から判断いたしまして、土地のさら地価格でございます二億七千五百万を下がらない価格で営業譲渡の交渉をして、なるべく有利な価格にいたしたいということで福島製鋼と交渉した次第でございます。
  193. 二宮文造

    ○二宮文造君 ですが、現状は福島製鋼吾妻工場の新工場は確かにこの写真に出ております。しかし、これが非常にくしくも同じような角度から写真がとられておりますので、東北開発自体の施設の利用のしかたと、現在の福島製鋼の施設の利用のしかたが一目瞭然になるわけです。この二千五百坪——敷地二万五、六千坪の中の二千五百坪については確かに建てかえをしております。しかし、あとの施設はほとんど全部が利用されていると見なければならない、これでもう鋳鋼工場は完成しているわけですから。そういたしますと、このあと残った建物あるいは機械装置その他一切を解体処分価格で計算をした東北開発態度はよかったかどうか。私はそこにも問題が出てくると思うのです。要するにたとえば入札方式がなかった、あるいは評価時点のあれがなかった。こういうことについては再三説明されますけれども、何らお答えにならない。また、おたくから会計検査院に出された回答文ですね。この回答文についてはもう各項目において遺憾に存じます、こういう陳弁にこれつとめております。ということは、会計検査院から指摘をされて、東北開発の財産処分の姿勢は非常に弱い。何か親方日の丸的な、赤字が出てきても、その赤字は政府出資でカバーしてもらう。こういうふうな従来非難がございました。これは正確であるかどうかは別としまして、そういう非難があったそのままの姿勢でこの財産の処分に当たっているのではないか。将来の問題も含みますので、私はあえてこの福島工場の売却について、処分の姿勢についてこだわるわけであります。たとえば、この工場建物につきましては帳簿価格は一億九千九百万という帳簿価格であるにもかかわらず、解体費用が三千四百万円かかり、それをスクラップにして売れば二千百万円にしかならない。こういう計算で一億九千九百万円もあった工場建物を千三百万円のマイナスにして売却してしまった。しかし、現状はこのように利用されている。こういう評価でよろしかったかどうか、どうでしょうか。
  194. 高見豊治

    参考人(高見豊治君) これは評価につきましては、評価そのもので譲渡できるかどうかという問題もございますけれども、何度も申しますように、なぜ操業中止評価をいたしたかと申しますと、最初説明いたしましたように、こういうふうな赤字操業をいたしておりまして、しかも、業績的に先行きのない業種の評価といたしましては、普通の営業譲渡における評価でございます収益還元法でございますとか、物的積み上げの評価というものは普通適用されないものでございます。それで会社といたしましては、やむを得ず一応の譲渡価格を勘案いたします前に、どういう評価をいたそうかということで考えましたのが操業中止評価という方法でございました。その場合は土地はさら地価格で評価する。建物、構築物はこれは福、島製鋼に渡りますと、この建物は二十二年にできた建物が相当ございますので、相当古くなっておりますし、最新の製鋼工場を設備されるとなるならば、これはほとんどもろ取りこわして新しくされるだろうというふうな観点から、建物、構築物につきましては取りこわし価格で評価いたしたいということでございます。
  195. 二宮文造

    ○二宮文造君 おっしゃる意味はわかりますよ。さら地価格で評価しました、ところが、さら地価格の評価のしかたが——おたくのほうは千七百二十六円、会計検査院がうんと安く見積っておたくの言い分を一〇〇。パーセントに採用してでも平米当たり二千三百八十四円、こういう差が出てきます。また、あるいは機械装置にしましても一億円もある機械装置に解体費が千百万円かかる。そうしてそれをスクラップにして売れば三千五百万円、要するに一億一千万円の機械設備を二千万少々で評価してしまっている。また、アパートの評価のしかた、それから高萩の評価のしかたも右へならえ。こういうふうな評価のしかたというものが将来も東北開発に引き継がれるとしますと、私は問題だと思うのです。  そこで、いろいろ指摘をいたしましたけれども、今後の問題として、東北開発内部でこの財産の処分についてもっと的確な内規をおつくりになる必要が私はあると思うのですが、この点はいかがでしょうか。考えますか、考えませんか。たとえば国有財産の払い下げ処分については明確なる規定がございます。それを準用されるおつもりかどうか。あるいはさらに私企業ですから、特殊法人とは言いながら営利を目的とする会社ですから、もっとシビアに内規をおつくりにならぬのですか。そういう姿勢はあるかどうか。
  196. 亀井茲建

    参考人(亀井茲建君) この種の問題につきましては、確かにいま御指摘のとおり、こうした機関でございましても、十分一般的な合理的な取引ということをまず前提にして考えていかにゃならぬことだと思いますし、今後、運営上十分その点は気をつけてまいるつもりでございます。  なお、内規につきましては、かえって規則を設けますことが、今後、取引の上で円滑を欠くという、いわゆる自縄自縛といったようなことにもなりかねないこともございますから、十分その点は研究してみたいと思います。
  197. 二宮文造

    ○二宮文造君 ちょっと最後の、後段の総裁の御説明が私納得ができないのですが、内規をつくると自縄自縛になるというのはどういう意味でしょう。
  198. 亀井茲建

    参考人(亀井茲建君) いや、必ずしも自縄自縛になるとは確言いたしませんけれども、かえって規則が問題を運びます上に、それにとらわれるというようなことがありがちでございますので、その点も研究してみたいということであります。
  199. 二宮文造

    ○二宮文造君 企画庁の監理官がお見えになっておりますが、いまの私の質問に対する総裁の答弁でよろしゅうございますか。私、この財産処分の評価についていろいろな問題を提起しました。しかし、それはもうすべて過去でございます。いまさらここで問題にしても覆水は盆に返りませんけれども東北開発のいままでの業績というもの考えますと、この辺で何らかのしっかりしたものをつくっておかないと、累積赤字というものはいろいろな形で出てくると思うのです。そういうことも考えながら提案をしたわけですが、非常に消極的な御答弁で、監督官庁である経済企画庁の考えを私は伺いたい。財産処分について私提案しました。たとえば国有財産の払い下げ、売り払いあるいは貸し付けというような、そういう規定を準用するお気持ちはないかどうか、具体的な答弁がないのですが、この点どうでしょうか。
  200. 広田常雄

    説明員(広田常雄君) ただいまの御指摘でございますが、会社におきまして、財産譲渡の内規が欠如いたしておりますが、将来この会社の性格がきわめて公的なものである点、それから開発株式会社としての営利を考えなければならない点等を考慮いたしまして、また会社とも十分相談いたしまして適切な措置をとっていきたいと、かように考えております。
  201. 二宮文造

    ○二宮文造君 満足し得ない答弁ですけれども、これは将来必ず問題を起こしますので、明確な方針をおきめいただきたいと思うわけであります。  で私、会計検査院にお伺いしたいのですが、これだけ的確な質問書を出してですよ、そうしてそれに対する東北開発の答弁書というものは的をはずれた——的をはずれたといいますか、会計検査院の指摘をそのまま遺憾に存じますという回答をしてきたにもかかわらず、この検査報告にはその点のいきさつが全然述べられていない。これはいまから考えますと、会計検査院のサイド、それから東北開発、これだけの承知していることであって、国民は一切知らされていない。会計検査院の指摘によれば、それだけでも一億円以上の国損に準ずるようなことがあったのではないかと、こうしているにもかかわらず、検査報告に掲記しない、こういうことでいいのでしょうか。なぜ掲記しなかったか、その間の事情を御説明願いたい。
  202. 石川達郎

    説明員(石川達郎君) 検査の結果につきまして達法あるいは不当と認めました事項につきましては、できるだけ検査報告に掲記いたしまして、御審議の参考に供しているわけでございます。  そこで、この問題でございますが、われわれも照会で個々の内容に詳細に当たりまして、幾多の欠隔を指摘したわけでございますが、われわれはいわば積み上げ計算と申しますか、そういう方法でいたしたわけでございますが、東北開発株式会社の側におかれましては、この回答で御承知のように、いわば全体評価と申しますか、そういう評価をされておるわけでございます。そういう全体評価をせざるを得なかった事情等はわれわれも承知したわけでございまして、その間にわれわれも全体評価というものがきわめて不当であるというまでの結論を実は当時持たなかったわけでございます。加うるに、われわれも先方の評価に対しまして、それを上回る評価が妥当ではないかというようなことを照会では言っているわけでございますけれども、国有財産の土地価格の評価につきましては絶対的なものもございませんし、その一億という数字を絶対額として出すということにつきまして相当ちゅうちょする点があったわけでございます。かような理由によりまして、これを検査報告に掲記するということを見合わせたわけでございますが、しかしながら、要するにわれわれが言わんとするところは、これも先ほども申し上げましたように国の財政資金によって運営されているわけでございます。そこで、その財産の処分というものが、たとえ会社経営の合理化の上でやむを得ない措置といたしましても、その基礎資料の把握等につきましては、十分な配慮が必要ではなかろうかという点につきまして、この照会とは別にそういう注意的な照会をいたしたわけでございます。
  203. 二宮文造

    ○二宮文造君 この照会とは別に注意的な照会を出されたと、これはいつお出しになりました。
  204. 石川達郎

    説明員(石川達郎君) いま原本を持ち合わせておりませんので、はっきりした日時がわかりかねますけれども、四十四年の十二月の末ごろであったかと思います。
  205. 二宮文造

    ○二宮文造君 その照会は公表されますか。会計検査院から東北開発に照会をした、注意を喚起したことであって、それは公表されないでしょう。
  206. 石川達郎

    説明員(石川達郎君) これは局長名で総裁あてに発遣しておりますので、公表はいたされません。
  207. 二宮文造

    ○二宮文造君 私が言うのはその点なんです。おそらく、これだけの具体的な指摘をなさったのは、現地で検査をされて、それで具体的な指摘をした。会計検査院の第一線の検査の方が一生懸命努力をしてきた。その後、会社の回答文を勘案し、この検査報告に掲記するかしないかの採択をするのは、私は最終的には検査官会議だと思います。そうすると、第一線の会計検査院の職員が一生懸命努力をし、国損の防止をしなければならないと懸命に作業をしても、それが結果としてあらわれてこないということになりますと、検査院の職員の士気に影響するんではないか。全然この間の経緯がこの検査報告に関する限り読めませんね。これは私、はなはだ遺憾だと思うんです。たとえば、やりとりがあったということをここに指摘をすべきではなかったか、こう思うんですがいかがでしょう。
  208. 石川達郎

    説明員(石川達郎君) お答えする前に、先ほど申し上げました日時の点でございますが、訂正をさせていただきます。四十四年の十一月二十九日に発遣をいたしております。  それから、ただいまおっしゃいましたことは一々ごもっともでございます。ただ当時そういう判断をしたということを申し上げたわけでございまして、検査報告の記述全体につきましては、われわれも絶えず検討いたしているわけでございます。特に、この内容の記述ということが従来ややもすれば平板的で、決算の数字を並べるにすぎなかった。東北開発株式会社につきましては、赤字の生じた経過等も多少記述してございまして、そこに多少の批判もまじえているわけでございますが、必ずしも十分ではなかったということを反省いたしまして、本年度におきましても、それらの点について慎重に検討をいたしておる次第でございます。当時の判断につきましていろいろ御批判はありましょうけれども、その点をひとつ御理解をいただきたいと思います。
  209. 二宮文造

    ○二宮文造君 ちょっと意味がわからないのですが、私申し上げるのは、たしか特殊法人は九十以上あると思うのです。そして、ただ東北開発には非常にお気の毒ですけれども、こういうふうな事件があった。それを会計検査院がこの検査報告にその概略を指摘するということが、九十以上の特殊法人のいわゆる財産処分などについて、やはりその姿勢を正すということになると思うのです。従来会計検査院の検査報告は氷山の一角だ、あとはほとんどがなあなあで消されてしまっている。不当事項というもの、不正事項というものはもう氷山の一角しか表示されない。こういうふうに会計検査院の姿勢を云々されているわけです。また、その職員の方にも、そういうふうな意見を持つ方も相当にあるわけですね。ですから、検査院本来の使命に立脚して考えるならば、こういう問題は詳細に——それは最終的な判断がどうあろうとも、こういう面において指摘をした。そして会社からはこういうふうなあれがあったけれどもというただし書きをつけてもけっこうですが、前後のいきさつは明快にすべきではないか。私この問題を知るに至りましたのは、ただここで三十八年からずっと検査報告を見ておりますと、東北開発の本社部門の欠損があまりにも大き過ぎる。従来投融資していた直轄部門についても赤字があまりにも多過ぎる。なぜこんなに赤字が出るのだろうか。最終的に福島工場はどうなんだろうかと、こういう推測で、書類をちょうだいしているうちに、こういう問題が出てきたわけです。ですから、検査報告を単に読むだけではこのようないきさつは明らかになってこない。この点、私は明らかに会計検査院が今後姿勢を改めていかなければならぬ、こういう問題だと思いますが、検査院の職責上今後どうされるおつもりなのか。この種の問題については、その書き方は別として、こういう検査報告に掲記をしていく方向にするのかしないのか、これをお伺いしておきたい。重要な問題です。
  210. 石川達郎

    説明員(石川達郎君) 私も局長といたしまして、個々の調査官が検査の途上におきまして指摘した事項は、できるだけこれは生かしていこうという心がまえでやっておりまするし、これはひとり私だけの心がまえではなかろうと思います。院全体として上層部はそういう考えでいるわけでございます。そこで照会、やりとりをあげるべきではないかというお尋ねでございますが、年間の照会件数というふうなものはずいぶん多いわけでございます。その中には簡単な注意的な照会もございまするし、その一つ一つにつきまして掲記するということは、これは事実上繁雑でございますし、まあできないことと思いますが、そのうち価値あるものと判断いたしましたものは、これはちゅうちょなく掲載するというような考えで従来もしてまいったわけでございます。この問題に限りまして、いろいろ御批判を受けましたことは、私としても恐縮に存ずるわけでございますが、心がまえといたしましてはさような心がまえで絶えずやっているわけでございます。
  211. 二宮文造

    ○二宮文造君 それからまた、ついでに会計検査院にお伺いしますが、特殊法人がたくさんありますね。その中で、特にこの東北開発に関する限りは毎年度、このようにして概略を説明されているのはどういう趣旨ですか。全部が全部特殊法人は載っていないですが、東北開発だけこのように毎年たんねんに経理状況が検査報告の中に記載されております。特にこの東北開発、あるいは日本航空機製造株式会社等もありますが、この特殊法人の中で検査報告に載せる特殊法人と、載せない特殊法人があるのは、どういうセレクションをなさるのか。
  212. 石川達郎

    説明員(石川達郎君) 非常に適切な御質問であろうかと思います。政府関係機関につきましては、これは全部載せているわけでございますが、その他の特殊法人につきましては、われわれ、年度初めにおきまして検査の重点団体というもの考えるわけでございます。その際問題になりますものは、やはり東北開発株式会社でありますとか、日本航空機製造——経営が不振である、赤字を多額に生じている、そういう団体はやはり検査して赤字そのものが批判の手がかりになるというような意味で、特に検査を重点的にやっているわけでございます。そういう観点から団体を選びまして掲記をいたしているわけでございます。
  213. 二宮文造

    ○二宮文造君 ですから、特に選んで載せた会社でしょう。その会社の財産処分について特に問題点を具体的に指摘をしたんですから、私何も——照会した件数は七千余件も八千余件もあると思うんで、それを全部あげろというんじゃなくて、わざわざこの会社は累積欠損額が大きい、従来も経理状況についてとかくの風評がある。したがって、この会社を選んで検査報告に載せるんですから、その会社に対する財産処分のやり方について疑点が出たときには当然ここに載せるべきではなかったか。——これはまた過去になります。しかし、将来のためにひとつ十分にそういう問題を考慮して、東北開発ばかりでなく特殊法人全体の姿勢を正すことに援用していただきたい、こういうわけであります。  したがって、この福島工場の問題については、私はいまだに売却の価格について釈然としません。こういう姿勢は改めていただきたい。それから、さらにいろいろ調べてきますと、三十八年ごろから四十三年に至るまでの間に累積欠損額が六十数億円という。これは毎年政府が出資をします金額が十億、十二億と出資をしておりますが、それが全部赤字の穴埋めに使われてしまって、東北開発としては前へ進んでいくような姿勢が全くない。この六十数億の累積欠損額というものは三十八年から四十三年までにそれだけのものが出たというのですが、その理由を大まかでけっこうですから御説明願いたい。
  214. 高見豊治

    参考人(高見豊治君) お答えいたします。  確かに先生のおっしゃられますように三十八年から四十三年までの当社の累積欠損金は六十一億八千八百万とふえております。これには事情がございまして、実は三十八年度末におきまして、当時の東北開発株式会社の財務状況を申し上げますと、三十八年末の東北開発株式会社の資本金が約三十六億円でございます。その当時の欠損金が三十五億七千万でございまして、正味資本金が約四千万円くらいしか残らないという状況でございました。しかも、当時持っておりました政府保証の東北開発株式会社社債が約百二十五億、しかも、そのほかに未稼働資産であるとかいうようなものも相当持っておりまして、もうほとんど経営困難に至った状態でございました。その時点におきまして経済企画庁のほうからの御指示によりまして、三十九年を初年度とし五年間、四十三年度を末年といたします当社の再建計画ができたわけでございます。  それで、この再建計画と申しますのは、こういうふうな、ほとんど経営不可能になっている会社におきます企業体質を改善し、財務体質を改善する、そのためのいろんな合理化も行なう。直営事業におきますセメント、ハードボード事業の事業体質も改善する。同時に持っておりますいろんな未稼働資産であるとか、貸し倒れ債権であるとかいうようなもの整理する。そうして、四十三年度末の再建計画が済んだ時点におきましては、りっぱに会社が更生いたしまして、総合収益において黒字が計上できるような会社にするというのが再建計画でございます。そのために政府から約六十億の再建資金の援助をいただくということで、再建計画が成り立っておりまして、そういう意味から三十九年を初年度として再建計画に入ってまいりました。ここでちょっと累年を申しますと、当時、三十九年に入りましたときは、現在直営事業で持っておりますセメント事業は、非常に企業規模が小そうございまして、その当時の規模では、企業収益をあげるほどのものではございませんでしたので、この再建期間中に別途政府保証の社債等によりまして、設備拡張を行ない、再建終了時点においては、企業体質としてできる規模までに大きくする。ハードボード事業も同じく設備拡張を行ないまして、適正企業規模にする。そうして、化工事業におきましては、さっき説明いたしましたように、先行き、業種として見込みがないので、これは整理するというふうなことで、直営事業の方針が示されました。そのほか、当時持っておりました赤字とか、百二十五億の社債償還とか、その他いろんな未稼働資産等の整理であるとかいうようなことも、この五年間に逐次やっていくという計画でございまして、それを三十九年、四十年から逐次やっていきまして、この間、政府から再建出資をしていただきまして、それの整理をやっていったわけでございますが、この場合に再建出資を片方でいただきまして、その整理したものは赤字に計上していくというかっこうで、資本金の累増と赤字の累増と両立てでまいっております。  それから現在におきましては、四十四年度末におきまして資本金総額は百十五億一千万でございますが、現在の赤字は八十四億でございます。ですから再建当初の三十八年度末におきましては、正味資本金が約四千万しかなかったのが、現在の時点におきましては約三十億の正味資本にふえているというかっこうになっているわけでございます。  そのほか、当時の百二十五億の社債による非常に過大な笠利負担によってほとんど企業経営ができない状態になっておりました、その社債は、昭和四十四年度末におきましては約六十九億に減っておるというような状態に相なっておるわけでございます。さらに申しますと、これを累年経常損益と特別損失、純損益ということで御説明いたしますと、三十八年は経常損益では約十億、三十九年が約十一億、四十年が約十億、四十一年が四億四千八百万という赤字が累年出ておりますが、四十二年からこれが逆転いたしまして、経常損益におきましては、四十二年に一億五千万の黒字、四十三年には六億三千万の黒字、四十四年が六億七千二百万の黒字というふうに、セメント、ハードボード事業の規模を適正にして、会社内における合理化を行ない、財務体質を改善した結果、この直営二事業等におきます経常損益が、ここに好転してきて、業績が上がったことが、これでおわかりいただけると思います。  それから、特別損失におきましては、三十八年に約二億六千五百万、三十九年に五億四千七百万、四十年に九億九千七百万、四十一年に二億四千七百万、四十二年に一億八千三百万、四十三年に十七億九千八百万、四十四年に四億四千四百万という特別損失が出ております。これは、こまかく説明いたしますと非常に冗長になりますから、簡単に申しますと、当社の持っておりました、いわゆる再建にかかりましたときの当社のうみを出すものが各年次に入ってきておるということで、この特別損失を政府からいただきます再建資金によって赤字整理をいたしまして、当社の財務体質を改善いたしたということでございます。特に、再建最終年度におきます特別損失十七億というものは、このときの純損益は十億の赤字でございまして、経常損益におきましては六億三千万の黒字でございましたけれども、再建の最終年度でございますので、ここに十七億九千八百万の特別損失を計上して再建を終了いたしたのでございます。この十七億九千八百万の特別損失の中に福島工場の譲渡によります譲渡損一億四千四百万、福島工場の従業員に支払いました退職金五億七千万というもの、それから砂鉄の鉱区が経済的な変動によりまして評価減になりました、これの引き当て損六億九千万というふうな、従来懸案になっておりました当社の問題を、昭和四十三年度末に特別損失として計上いたして、再建の財務を完了いたしたということに相なっております。そういう意味におきまして、三十九年から四十三年まではその再建の進捗に従いまして一その整備に従いまして、ずっと赤字が出てまいっておるということでございまして、その中には当時セメント、ハードボード等の企業規模の小さいところの営業損もございますし、化工事業を持っておりましたための営業損もございましたけれども、大部分は当時特別損失によってこれを予定的に計画されたものを逐次実施いたしまして、赤字整理いたしたという次第でございます。
  215. 二宮文造

    ○二宮文造君 るる御説明をいただいたわけでありますけれども、不良部門を切り捨てることによって、会社の経営を立ち直らすことに懸命であった。ようやくその実績があらわれてきたということは、私もうなずけます。しかし、その間の企業努力がもう一歩足りないんではないかというふうな感じがしてならないわけであります。  個々の問題について私疑問に思いますので、端的にお伺いをしますが、昭和三十八年の四月に設立をされましたむつ製鉄及び砂鉄原料株式会社、この二つの会社は一年少々で解散になっております。三十九年の五月及び九月にそれぞれ解散になっております。そうしますと、存続は両社ともわずかに一年数カ月にかかわらず、このむつ製鉄及び砂鉄原料株式会社関係の欠損額が十四億円にのぼるのはどういうわけですか。会社の存続期間がわずかに一年数カ月、その債務の引き継ぎや何かで十四億円にのぼる欠損額を計上しなきゃならぬというのは、私納得できないんですが、どういう事情で一年わずかの間に十四億も欠損をしたんでしよう。
  216. 高見豊治

    参考人(高見豊治君) 東北開発株式会社におきます砂鉄事業の設立から中止に至る間の経緯につきまして、私もあまりつまびらかにいたしておりませんけれども、私の聞いておりますところによりますと、この事業は下北地方に非常に埋蔵されておると当時想定されました——全国の六〇%ぐらいは埋蔵されておるようでございますけれども、この砂鉄を利用して製鉄事業を興すということが当初の目的だったように聞いております。そのために三十八年に、むつ製鉄株式会社と砂鉄原料株式会社が設立されておりますが、製鉄技術におきますいろいろな技術革新であるとか、砂鉄の経済的な変動であるとかいうことから、この事業をやはり発足して続けることになれば非常な損を招くというふうなことから、四十年の四月二十三日の閣議了解でこのむつ製鉄事業の推進が断念されたというふうな経緯に私は聞いております。  それで、なぜ十四億になったかと申しますと、むつ製鉄株式会社にはこれは三つ原因がございます。一つはむつ製鉄株式会社は資本金総額五億円でございますが、清算にあたりましてこれの配分は約九百三十万でございます。そういうところから清算損失と、この会社に東北開発株式会社から融資をしておりました融資金利息の免除とか引き継ぎ資産の処分損を加えますと、このむつ製鉄株式会社の清算結了による当社の損が約四億六百六十万でございます。それから第二番は、砂鉄原料株式会社も清算いたしまして、これの清算損失が約三億二千三百万でございます。これを合わせて約七億でございますが、そのほかに砂鉄原料株式会社から引き継ぎました鉱区は、砂鉄の——当時この砂鉄事業を始めますときの経済的な砂鉄の単価というものが約三千六百円であったというふろに私は聞いておりますが、現在時点におきましては、砂鉄はフィリピンから約トン二千五百円で入るというふうな経済的な価値の変動がございまして、現在簿価で持っております約七億四千七百万の砂鉄鉱区を現在時点で評価いたしますと、六千万前後のものにしか経済的評価がないであろうということから、四十二年度末にこれの砂鉄の評価減に見合う合理化措置引き当て金として六億九千万円を計上いたした。これを欠損金と見ますと、説明いたしました上記の二つと足しまして約十四億二千万が、製鉄事業中止に伴う当社がしょった赤字になるということに相なる次第でございます。
  217. 二宮文造

    ○二宮文造君 ちょっとそれの途中でありますけれども長官が時間の関係で退席なさるようなので、長官にお伺いをしておきたいわけでありますけれども、この東北開発について、まあ財産の処分の姿勢についても私若干疑問な点があるということで伺いました。それからまた、業績も好転してきたというお話でありますけれども、その企業努力というものがもう一歩のようにも感ずる。今後八十数億円の累積赤字をかかえた——この東北開発株式会社法によりますと、減資も法の中の第何条かに書かれております。私、普通会社を運営する場合には、もうとても正味資産も追いつかない、ばく大な累積赤字をかかえている場合に減資という措置をとって、いわゆる財務諸表をきれいにして、再発足していくのが通常ではないか。現に、この東北開発が出資をしております東北造船も減資をしました。そのはね返りを東北開発欠損金として計上しております。投融資会社の欠損はまるっきり減資の場合もかつぐ、それをそのまま東北開発の累積赤字にしていくというやり方は、もうこの会社の将来の運営に非常に影響するんじゃないか。したがって、これはどういう手続が要るか、私はわかりませんけれども、そこに働いている従業員の方も、会社がばく大な累積赤字をかかえているということが、ベースアップの問題にしても、あるいは労働条件の改善にしても、やっぱり頭にくるわけです。頭に大きくおっかぶさってくる。この際、東北開発を将来いわゆる企業として運営をするためには、いろいろ改善しなきゃならぬ問題もありますけれども、その営業方針それから資本の問題、これらについての長官の御意見を私は伺っておきたい。そして、せっかくここまで上向きしてきたんですから、そういう作業もしながら、これを経営改善させる一助にしたい。こう思うわけですけれども、私の気持ちはそうなんですが、長官考え方はどうでしょうか。また将来の方針ですね、方向を伺っておきたいと思います。
  218. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 私も、いまいろいろと質疑を拝聴しておりまして、なかなか東北開発株式会社の整備を行なうにあたりまして、いろいろな問題があったということを拝聴していたのですが、御承知のように、東北開発株式会社は過去において非常に問題がございまして、そういうことで、先ほどからも御説明がございましたように、三十八年から四十三年にわたりまして、いわゆる五カ年計画の再建期間というものを設けまして、そしてその間にできるだけきれいにしてまいる。今後とても見込みのないというようなものについて、できるだけ事業内容をきれいにしていこう。そういうふうなことでもって非常な努力が払われたと思います。政府も、また会社側も相当これについては努力したと思います。その間、先ほども指摘がありましたが、会社の経営はどっちかというと、過去の赤字をいかにしてなくすかということにむしろ努力が集中されまして、その間経営について積極的な面で大いに発揮するという余裕がなかったように思われますし、また財政当局もこうした状況のもとにあまり積極的に出資を肯定しない。これまた当然の成り行きであったと思います。それが経済界の好況というようなことも手伝いまして、四十四年からいわゆる単年度の黒字が出るようになってきたのは御存じのとおりであります。そういうようなことから、ここに東北開発株式会社についてその前途に明るさが認められるようになってまいった。これはやはりこの間の合理化あるいは整理の苦労が、ある点で私は実ったと思います。この間にいろいろと問題もあったように感じますが、とにかくこの結果がこういうふうになってきたと思います。そこで東北開発株式会社について二様の議論がございまして、せっかくこういうふうになってきたのだから、もう何といいますか、消極的に、ここらのところでもってあまりもう事業というものは積極的に広げていかないで、そしてやっていったらどうかという意見も一部にあったようであります。率直に申しまして、まだ単年度黒字が出たばかりでありますが、そうした方向づけについて私はもうちょっと時間をかげて、十分に検討していいと思っておりますけれども、ただいまのところ政府といたしましては、せっかくこういうふうに事業も好転してきている。これにはかなり、好況であるということだけでなくして、いわゆる赤字の要因であった企業の切り捨てを行なったこと、それからたとえばセメントやハードボードのように、ある程度事業規模が拡大してまいるに従いまして、いわゆる生産単位としても計算が合ってくると、こういうふうなものも出てきておりますし、いろいろと事業の先行きを考えますと、まだまだこれについて希望を持つことができる。そういうような点がございますので、これについて何もそう消極的にならなくてもいいじゃないか。もう少し事業を拡張していく。特に東北開発の問題は、御存じのように、企画庁といたしましては、いわゆる新全国総合開発計画という全体の今後におけるところの地方開発、全国的な国土の再編、こういう一環としても、東北開発は今後重要な課題になるわけでございます。そういうようなことも頭に入れて考えますと、あまりこれを消極的に考える必要はないんじゃないか、こういう感じを目下持っております。もっとも、また一面、別の意見としまして、こういう民間でもできる産業というものは、政府の特殊法人の仕事としてはできるだけ整理していくべきである。これは純経済的な観点とまた違うところの一つの意見でございますし、そういう点は今後われわれはよく検討したいと思っておりますけれども政府のやる特殊法人は、最初の開発の一番むずかしい段階だけを受け持って、とかく赤字になりがちだ。そういうようなことばかり受け持たないで、やはり私は相当事業をやって、黒字を大いにエンジョイするというような方向に進めて少しも差しつかえない。いますぐ民間に移転するかどうかということは、そういう意味においてもまだ結論を出すには早い。こう心得ておるんですけれども、いろいろとそういうような意味で、この東北開発の進路につきましては問題がございます。一面、累積赤字というものは依然としてあります。今後、会社の経営の黒字によってどのくらいのテンポでもってこれを償却していけるか、そこらも十分に検討いたしたいと思います。そういう意味におきまして、いま直ちに減資に踏み込むというのは時期尚早のように思われます。ここらの点については、個々の、ただいま申し上げましたようないろいろな角度からの検討をいたしまして、それによってひとつ十分に考えを立ててまいる必要があるのではなかろうかというふうに、目下のところ考えております。もちろん今後われわれもずいぶん高い月謝を払って、こういう教訓を得た際でございますから、一面において東北開発の政策的な必要性というものを十分に頭に置きながらも、なおかつ、十分これら経営については一そう厳密な検討を加えまして、いやしくも過去において起こったような、そうしたことのないように、われわれとしても厳にこれについては警戒をいたさなければならない。会社の当事者もこの点については十分心得ておられると思うのでありまして、経企庁といたしましてもそうした観点から指導を行なってまいりたい、こういうふうに考えております。
  219. 二宮文造

    ○二宮文造君 聞くだけ聞いてください。重ねての答弁は要りません。私は、いまこのような過大な累積赤字をかかえている場合には、労働条件——あるいは福祉部門も含めて労働条件にも非常な影響を来たす。こういうようなことを申し上げましたけれども、先ほど来赤字だ、赤字だといわれて、いわば不良資産、不良部門として、過大な欠損までして売り渡した。売却をして福島製鋼に引き継がれた従業員は、ことしのベースアップは平均一万六百円です。東北開発のベースアップは七千六百円です。それから四十五年の夏期手当は福島製鋼に引き継がれた方々は平均十四万円、それから東北開発の場合は八万円です。こういうふうに、これは単なる比較ですが、一方は花形産業であり、一方はまあ累積赤字をかかえた、いわばまあ特殊法人だという制約はあるかもしれませんけれども、要するにうみだらけであった工場が、そこへ引き継がれて——カーバイドをつくっていた職員東北開発職員とはこれほどの開きがあるということは、やっぱり今後の会社の運営、そこに働く方々の士気を高揚するためにも、一応参考にしていただかなければならぬじゃないか。こういう意味で金額をここで例示してみました。その点について、今後の運営監督について意を用いていただきたいと思います。長官けっこうです。  先ほどのむつ製鉄に返りますが、このむつ製鉄は、おっしゃるとおりいろいろなことがあったようですが、建物も何もつくらない、ただ単に土地を造成しただけですね。それからまた砂鉄原料も、この鉱区についてはどこかから買ったんだろうと思うのですが、この砂鉄原料が鉱区を引き継いだ、引き継いだ会社及びその買い受け代金が七億ですか。大ざっぱでけっこうですが、鉱区の買収代金は幾らなんですか。
  220. 高見豊治

    参考人(高見豊治君) 東北開発株式会社が砂鉄原料株式会社から引き継ぎました鉱区の簿価が、四十三年度末で約七億四千七百万になっております。ですから、砂鉄原料株式会社が清算になりましたのが四十一年でございますので、その当時引き継いだ額は、これよりちょっと上回っているとは思いますけれども、粗鋼その他で幾分鉱区も使っておりますので、その数字はつまびらかではございませんけれども、約この金額に近い金額が砂鉄原料株式会社が鉱区を買った金額だと私は推測いたしております。
  221. 二宮文造

    ○二宮文造君 買った会社はどこなんですか、砂鉄原料が鉱区を買った会社——相手先。
  222. 高見豊治

    参考人(高見豊治君) 買った会社は、三倉鉱業株式会社、それから和賀仙人鉱山株式会社、それから東京鉄鋼株式会社、東北砂鉄鋼業株式会社、中外鋼業株式会社等から鉱区を買収いたしております。
  223. 二宮文造

    ○二宮文造君 まあ従来、東北開発が何か政治会社とか何とかいうふうな汚名を残した時代の遺産ではなかろうかと思います。一年何がしにして、買ったものを評価損にしなきゃならぬというふうな事態、これは私非常に問題があろうかと思います。それはそれで、むつ製鉄原料の欠損の由来はわかりました。  それから今度は、昭和四十年の三月三十一日の貸借対照表によりますと、造成土地が十億何がしとなっております。それから四十五年三月三十一日の貸借対照表によりますと、造成土地が七百万に減っております。これはおそらく秋田の造成土地をその間に売却されたと思うのですが、この秋田の土地の造成価格ですね、——簿価になりますか、それと秋田県に売った売却価格との比較はどうでしょう。
  224. 高見豊治

    参考人(高見豊治君) 秋田県に売却いたしましたときには——いまちょっと調べておりますが、総体で申しますと、秋田の当初の造成土地は、約二十五万八千坪でございます。これの簿価が八億八千九百三十八万四千円でございます。これは四十三年度までにほとんど——三十四年から三十八年の間、三十九年、四十年、四十一年、四十二年というふうに逐次売却いたしておりますけれども、最終的に申しますと、八億八千九百三十八万四千円の簿価に対しまして売り上げ額は九億二千百六十八万八千円でございまして、約三千二百三十万五千円の益金を出しております。
  225. 二宮文造

    ○二宮文造君 これもやっぱり普通の売買じゃありませんね。三十八年ごろに造成して、最終的に四十三年か四年に売却をして、その間に四年五年の時を経過して、そして簿価程度で売ってしまうというのも、ちょっと通常考えられないです、最近の土地の需要、土地の価格の上昇というもの考えますとね。やっぱりこれは東北開発のそういうしきたりなんですか。公共団体なんかに売る場合は東北開発はもうけなくていいんだ、造成価格で売ればいいのだ、こういうような方針なんでしょうか。
  226. 高見豊治

    参考人(高見豊治君) 当社が造成いたしましたのは、私もあまり事情をつまびらかにいたしておりませんけれども、当時はやはり県の計画の中で、県が分担して造成する、当社が分担して造成するというふうなかっこうで、工業用地として全体の中の一部として当社が分担して造成していったというふうに聞いております。そこに県が工場を誘致いたしてまいります場合に、当社の土地は直接企業に売る場合もございますけれど、大部分はやはり公共団体等に土地の造成費程度で譲るというのが終局的な見地ではなかったかというふうに、これは的確な答弁でございませんけれども、私あまり事情をつまびらかにいたしておりませんので、そういう事情ではなかったかというふうに推測いたしております。で、土地の問題につきまして全体的にお答えいたしてよろしゅうございましょうか。
  227. 二宮文造

    ○二宮文造君 いやもうけっこうです、方針がきまれば。申し合わせの時間が来たようでございますので、最後整理をしながら、若干まだお伺いしたい点があります。  まず会計検査院に一この秋田の土地の売却について調査をされたかどうか。その実態はどうであったか。その点の何か照会があったかどうか。これは私手元に資料がありませんので、そういう事実があったかどうかということだけ。あればそれを説明していただきたい。  それから東北開発にお伺いしたいのは、いままでの経営の姿勢というものに釈然としないものがあります。ただ現況として、私この助成会社一覧表をちょうだいしまして気になりますことは、たとえば東北造船、この東北造船の投融資総額が八億三千万、保証額が一億四千四百万、こういう金額になっておりますにかかわらず、この東北造船の固定資産の総額は十億しかない。さらに、ここは他からの借り入れ金が二十四億円もある。それからまた厚木ナイロンにしましても、投融資総額が四億四千六百万円、これは固定資産総額が十四億二千万ありますけれども、そのほか他からの借り入れ金が十一億七千万円ある。さらにまた東北ホモボードの投融資額が十二億一千七百九十万で、保証額が八千百万円あるとなっておりますが、その固定資産の総額が十億しかない。投融資額に及ばない。しかも他から借り入れ金が七億六千五百万円ある。とのホモボードと東北造船のこれだけの投融資額、保証額あるいはそれらの会社の他からの借り入れ金、こういうものを見合いながらこの三社に対して東北開発は今後どういう姿勢をおとりになるのか。また、それらを含めて投融資助成会社がずいぶんありますけれども、黒字に好転している、いわば配当金ですね、配当金を計上している会社は二社しかない。総体に業績がよろしくない。これらをどういうふうに今後運営されていくおつもりなのか、これをお伺いしたい。特に三社については具体的にお伺いをしたい。  それから行政管理庁がよく行政改革の問題で、臨調なんかでは学校給食会、あるいは東北開発と、この整理すべき会社の筆頭に掲げられてきた。その後、何回かの閣議決定があって存続をさせると、こういうふうな方針にいま政府は固まっているようでありますけれども、会計検査院はいわゆる会計面での検査をやります。しかし、会社の運営方針、いわゆる行政監察的なものは、いまは一体どこが担当されるのだろうか。この政府が九九%まで出資をした「東北開発」、その営業方針には会計検査院はタッチすることはできない。もちろん経済企画庁は監督官庁としてその指導監督はしておりますけれども、別途行政管理庁はそれだけの行政監察という大きな使命を持っておられるので、おそらくいままでは行政監察をなさったことがない。こう聞いておりますが、今後その対象として東北開発の積極的な経営というものの一助にしていただきたいのですが、それができるのかできないのか。また行政管理庁としての東北開発に対する見解、これらをお伺いして私の質問を終わりにしたい、このように思います。それぞれ御答弁願いたいと思います。
  228. 石川達郎

    説明員(石川達郎君) 秋田における造成土地の売り払いにつきましては、検査の際その実態を十分調査をいたしたわけでございますが、先ほどお話のありましたように、これは公共団体に売り払うというような事情を勘案いたしまして、特にこれを問題として指摘するというようなことはいたしておりません。
  229. 北条久弥

    説明員(北条久弥君) お答え申し上げます。  まず最初の点でございますが、行政管理庁といたしましては、東北開発株式会社に対しましてはいわゆる監察というようなものはできないことになっております。それからまた、監察に関連いたします調査というようなものも一応できないことになっております。ただ、管理局の所管業務といたしまして特殊法人の新設等に関する審査業務がございます。これの関連において、法律に規定されました主要な制度、目的等の改変がある場合に審査業務の一環として調査ができることになっております。なお従来、行政改革の一環としていろいろ調査をいたしましたのは、この審査業務の延長というような観点から実施したものでございまして、これの結果、東北開発株式会社につきましては、財政再建ができた暁に東北開発のあり方との関連において、慎重に主務省において検討するということになっておりますので、私どものほうといたしましては、その結果を待ちまして、われわれの判断をいたしたいと、こう考えております。以上でございます。
  230. 二宮文造

    ○二宮文造君 われわれの判断いたすというのは、やる……。
  231. 北条久弥

    説明員(北条久弥君) 当面おやりというか、閣議決定の線に沿いまして主務省庁がそれぞれの判断をいたしまして、東北開発のあり方について御検討なさるということでございますので、われわれはそれを待っていたい、こういうことでございます。
  232. 二宮文造

    ○二宮文造君 だから、管理庁としては、今後も東北開発とはノータッチでいくと。
  233. 北条久弥

    説明員(北条久弥君) そういうことではございませんのでございますが、審査の段階におきまして東北開発をたとえば廃止するとか、目的の変更があるという場合には当然審査の対象になってまいりますので、その暁には私のほうでは審査の一環として判断をいたす、こういうことでございます。
  234. 二宮文造

    ○二宮文造君 私がお伺いするのは、政府が九九%出資をして、そうしてつくられたこの東北開発、そうして業績も好転をしてきた。ただし、手放しでその将来を楽観するわけにはいかぬわけです。先ほども経企庁長官がお話になったように、いろいろな議論政府部内にある。やはり国民の税金を相当につぎ込んだ会社ですから、存続するのなら存続するで、所定の方向でやはり運営をしてもらわなければならぬ。そのためには、経企庁ももちろん指導はしておりますでしょう。しかし、その経企庁の行政監察をやるのが管理庁ですから、そういう意味では経済企画庁の指導監督の部門にある東北開発株式会社、これもまた経済企画庁を行政監察するその一環として、当然これは把握できるのではないか。そうすると、そこにいわゆる行政監察という意味で東北開発にまた適当なサゼッションを与えることができる。そうやって周囲から盛り上げて東北開発の運営というものを善処していただきたいというのが私の趣旨ですが、あなたの答弁によりますと、監察はできません。将来、廃止するとか、目的を変更するとか、そういう特殊な事情が起こったときに初めて管理庁としては立ち上がりますと、それまでは何ら手出しができませんというような答弁のように伺ったのですが、それではちょっと隔靴掻痒の感があるのですが、その点はどうなんですか。
  235. 北条久弥

    説明員(北条久弥君) お答え申し上げます。  私の御答弁が少し十分でなかったので、先生に御理解いただけなかったかと思いますが、おっしゃるとおりでございまして、行政管理庁といたしましては、経済企画庁の監察に関連しまして、当然そういう面では指導行政ということで内容についてまでタッチできるのでございます。したがいまして、今後、企画庁の東北開発に関する指導行政の監察がある場合には、当然に内容にまで立ち至ることができると考えております。以上でございます。
  236. 亀井茲建

    参考人(亀井茲建君) 先ほど御質疑いただきました会社の今後の運営につきましての考え方を取りまとめて申し上げたいと存じます。  お聞き及びのとおり、従来、会社といたしましては、東北一円を見渡しまして資源開発に資する企業をもっぱら育成してまいった次第でございますから、その間、相当な効果もございましたが、またお聞き及びのようないろいろなこともございまして、そのうちで最も基本となると思われますセメントとハードボード、この二つを直接の仕事といたしまして推し、その運営にできるだけの努力をいたしておる次第でございまして、これらの運営につきましてこの種機関の考え方といたしましては、まず公共性ということが先に立つかと思うのですが、株式会社の形をとり、また国の大事な資金を使わせていただいておるということから申しましても、できるだけやはり採算性ということを考えまして、今後運営していきたいと考えております。その点におきまして、おかげでセメントもハードボードもまず人並みのところまではまいりましたけれども、なお一そう努力を重ねまして、量の面もさることながら、質の面につきましても十分お役に立つようなものをつくっていきたいということで努力いたしております。  なお、たまたま会社の実態はお聞き及びの現状でございまするが、東北一円を見渡しましていま非常に開発の上において大事なところに立ち至っております。これを取りまとめますと、やはり東北一円に残されております未開発の山林原野、これをいかに有効に利用していくかということが、どなたに伺っても一番喫緊な事柄になっております。さきに新たに全国総合開発計画が立てられまして、それを受けまして東北一円でも早急に開発をしていかなければならないところが多々出てまいっておりますので、そのうちから最も緊急迅速を要すると思われますところの二、三点を、基盤整備の意味における一つのモデルケースとしてつくっていきたいということを考えまして、いま監督官庁である企画庁を通じまして、来年度予算についてもいろいろとお願いをしておる現状でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  237. 二宮文造

    ○二宮文造君 私の聞いているのは、東北造船、東北ホモボード、この経理が非常に悪いのだけれども、この二社についての方針はどうしますかということです。
  238. 亀井茲建

    参考人(亀井茲建君) その点につきましては、高見理事から少し具体的に申し上げます。
  239. 高見豊治

    参考人(高見豊治君) 先生の御指摘は、配当のことと……
  240. 二宮文造

    ○二宮文造君 ホモボードと、それから東北造船です。
  241. 高見豊治

    参考人(高見豊治君) 東北ホモボードは、これは大体当社が七五%でございますが、この業種はいわゆるホモボードでございまして——当社が直営で持っておりますのはハードボード——いわゆる住宅関連の材料を提供しておる企業でございますが、ちょうど四十二年から四十六年にこれは財務整備のための再建に入っております。四十六年までの財務整備と並行いたしまして、現在一億七千万円の設備の増設も行なっております。ですから、再建による財務整備が完了し、この設備増設が完了いたしますと、現在の住宅関連のものから考えますと、これは当社の直覚のハードボード工業と一緒の常業的な面もございますので、現在この二、三年の営業も好転いたしておりますので、現在の累積赤字は二億三千万でございますけれども、そういう意味におきまして再建が済み、企業の増設が終わりますと、逐次この累積赤字も解消していけるのではないかという見通しを持っております。当社といたしましては、このホモボードは、直営事業のハードボードと同じように、これも準直営的に考えて将来運営してまいりたいというふうに考えております。  それから、東北造船につきましては、これは四十三年の再建計画の最終時点におきまして減資による財務整備等を行ないまして、現在は日本鋼管株式会社にこの経営をほとんど全面的に委託しております。でその結果、非常にその後の業績も好転いたしまして、将来におきましても、当社が八億にのぼる投融資をいたしておりますけれども、逐次償還される見通しが立っております。造船におきます借り入れ金が多いということは、これはまあ建造船等の延べ払い関係等が経理的に表現されておりますので、これは造船関係としては普通の経理ではなかろうかというふうに感じております。  それから、厚木むつナイロンにおきましては、これは厚木ナイロンと当社との共同出資による下北にございます工場でございますが、現在のところ低工法によります特別償却をやっておりますので、まだ決算上の利益を得るに至っておりませんけれども、非常に業績がよろしゅうございまして、この特別償却が済む期間後におきましては、これは将来の見通しとしては利益を持ち、現在当社から相当の投融資をいたしておりますけれども、これも順調に回収できる見通しになっております。
  242. 二宮文造

    ○二宮文造君 伺いました。最後にひとつ、非常に将来に展望を持っていらっしゃるようなんで、高見理事もまだ任期もだいぶございます。ですから、ただいまの答弁が二、三年のうちに食い違わないように鋭意激励をお願いしたいと思います。  本日はありがとうございました。
  243. 森元治郎

    委員長森元治郎君) 他に御発言もないようですから、行政管理庁及び防衛庁を除く総理府並びに内閣決算につきましては、この程度にいたします。     —————————————
  244. 森元治郎

    委員長森元治郎君) この際、派遣委員の報告につきまして、おはかりいたします。  去る七月九日の委員会の決定に基づき、第一班として島根県及び鳥取県に二名を、第二班として青森県及び秋田県に三名を、それぞれ四日間の日程をもって委員を派遣いたしましたが、これら派遣委員の報告は、会議録に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  245. 森元治郎

    委員長森元治郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十七分散会      —————・—————