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西村関一君 時間がありませんから端的に
お尋ねをしたい。
今回起こりました日航機の「よど」号ハイジャック問題でございます。
政府、特に外務大臣がこの数日来非常な心労をされた。そうして、不幸中の幸いと申しますか、乗員及び乗客が無傷で帰ってくることができた。飛行機の機体も返されたということは不幸中の幸いだったと思うのです。この
事件を通しまして国民だれしも痛感いたしましたことは、朝鮮半島をめぐる南北問題のきびしさということであったと思うのであります。もちろん、私は、山村政務次官や乗務員の方々の英雄的な行動、機宜を得た処置、そういうものに対しましてこれを称賛するにやぶさかでないものでございます。がしかし、何か割り切れないものがあとに尾を引いておる。それは「よど」号の航跡の問題です。つまり、羽田を出発してから福岡の空港に着き、さらに平壌に向かうと思われておりましたものが、にわかに金浦空港に着陸をした。そういうような一連の「よど」号の航跡をめぐっていろいろな説が流れておるわけであります。こういうことに対して
外務省、外務大臣としては、「よど」号は平壌に行くものというふうにお
考えになって、朝赤その他に手配をなさった。そのことの発表に行かれた情報文化
局長が発表する前に「よど」号は金浦空港に着いたということを言われたというので、発表することもできないで帰ってこられたというようなことも聞いておりますが、こういうことが一体どういうところでそういう筋書
——と言っては語弊があるのですけれども、運ばれたかということに対しまして、国民はだれしも疑問を持っているのであります。一部伝えられるところによりますと、外国の報道等も参酌しますると、これは特に
イギリスあたりの論調を見ますると、米軍と韓国
軍隊と日航との合作だというようなことを言っておる
向きもあります。私はその真偽のほどをつかむことができないのでございますけれども、ということは、とりもなおさず、南北朝鮮の非常なきびしさというものが今度の日航
事件を通じまして如実に国民及び世界の人々の前にあらわれたということにあると思うのです。
政府は韓国
政府の好意に対してまた処置に対してあらん限りの賛辞を呈しておられる。私も、よくやっていただいたということにつきましては、そのことそれ
一つ一つにつきましてはとやかく申し上げるものではございません。何か問題があとを引いているということでございます。そういうことに対しまして朝鮮民主主義人民共和国
——北鮮側の
態度は、これはいまさら申し上げるまでもございませんが、予想に反してあのように、まあ私はあえて申し上げますが、国民の予想に反して、ほとんど即時「よど」号、山村次官、乗務員たちを返したということは、私は、北側の、北鮮側のこれは何かためにするやり方だとは
考えないのでございます。やはり、こういう
事件が突発した、こういう
事件が突発して、これをどう処理するかということについてはどこまでも善意を貫いていきたいと、こういうことで、
日本に恩義を着せようとかなんとか、ためにしようとかいう
考えじゃなくて、あくまでも善意を貫いていこうという、そういう
考え方のあらわれであったと受け取っていきたいのであります。でありますから、私はこの点に対しまして、外務大臣はしばしば新聞記者発表あるいはテレビの放送、
国会の答弁等に述べておられますけれども、本
外務委員会におきましても、この
事件の一連の経過を通じまして、今後こういう事態が再び発生しないように、われわれとしても
政府当局が十分な配慮をせられることを期待するものでございますが、しかし、これを契機として、いま朝鮮半島に二つの国家
——いわゆる分離国家が存在しておるという現状そのものは、先ほど来
お話しのございましたインドシナ半島をめぐる
情勢から見ましても、非常にきびしいものがあるわけです。そういう中におきまして
わが国のとるべき外交方針というものは、これはやはり日米
安全保障条約下にある
わが国政府としては、もちろん、あるいは日韓
条約というものを通じてどういう姿勢であるかということはおのずからわかるわけでございますけれども、しかし、こういう
国際情勢のきびしさの中にあって、今後アジアの大国として
日本がどのような指導的役割りを果たしていくかということについては、あくまでも私は善意を貫いていただきたい、善意を貫く外交姿勢を立ててもらいたい、イデオロギーを越えて、そういうことを私は
政府に、この災いを転じて今後の
日本の進路を進める上において非常に大事な点じゃないかと思いますので、時間がありませんから、その一点だけを伺っておきたいと思います。