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国務大臣(
愛知揆一君) これは
政府の立場から言うと、二面から御
説明申し上げなければならないと思うのですが、
一つは経過において、この
条約が、草案がつくられてからの数年来の経過から申しまして、
日本は非常に積極的に、いわばこの精神に
賛成を表して、なおよりよき
条約になることについて
努力をしてまいりました結果、核兵器保有国の軍縮義務というものが
本文の中に登場してきたと、あるいは五年ごとのレビューということもこの中に取り入れられたというような点は、特に
日本の主張が非常に取り入れられたくだりでございます。そういうことを背景にして一九六八年の国連の春の総会で、国連の勧奨決議に積極的に
賛成の立場を明らかにしたというような経過から申しましても、列国に対して
日本が核防
条約に積極的な熱意を表明していく、こういうことが言えるわけで、そういう点でも、
賛成の意を、精神において
賛成すべきだということが具体的に経過においてもはっきりしている。
それからもう
一つのアングルから申しますと、核兵器保有国は軍縮義務をただうたっただけではなくてその具体的な
措置について確約ができるところまで行っていないけれども、とにかく核をこれ以上拡散しないということは、
一つの核というものに対して特殊の感じを持っている
日本国民の感情にもアピールするところがあるのではないだろうか。それからさらに、これは
署名をして賛意を表して中に入って、さらにそういったような点についての加盟国の
努力が推進されるとするならばこれはいいことではないかという意味で、精神的な賛意ということが根拠づけられるのではないだろうかと、こういうふうに私は両面から考えておるんです。ですから、この核防
条約には、もういまさら申すまでもございませんけれども、核の軍縮あるいは絶滅ということについて、これからも大いにやらなければならない。しかし、それがまだ現状では満足ではない。あるいは非核保有国に対する安全保障ということがどうやって確保できるであろうかということもまだこの
条約の加盟国において十分な熱意が示されていない。あるいは、さらには原子力平和利用についても守るべき査察
協定がまだできていないし、これに対して
日本としては大いに言い分があるわけでございますが、まあ、そういう点をこれから十分見澄ました上で、批准をするか、
国会に
承認をお願いする
手続をとるかどうかということを、むしろ考えようによっては、いまをスタートにして、あらためて国民的に大いに論議をしていただきたいと、こういうような気持ちで現在おるわけでございます。本来ならば、
条約というものは調印をすれば批准をするのが当然だと——これは確かにそういう理屈はあると思いますが、この
条約はマルティの
条約でも一ありますし、それから、たとえばいま申しましたような平和利用の査察あるいは保障
協定にしましても、中身がまだできていない。こういったものに対しては
日本としても前例をもって、調印はしたが批准はしていない
条約は相当たくさんございますが、いわんや、今度のこの核防
条約のような性格及び
内容のものについては、これは当然私は調印と批准を離して考えなければならないものだと思います、ユートラム諸国もそういう
態度をとっておりますから。そこで今回の場合は調印と批准とを離して、調印はするけれども、批准はこれからの十分な国民的な合意の上に立ってやらなければならない、こういうふうに考えているわけでございます。