運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1970-08-10 第63回国会 参議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年八月十日(月曜日)    午後一時七分開会     —————————————    委員の異動  七月十四日     辞任         補欠選任      高橋文五郎君     長谷川 仁君      小山邦太郎君     増原 恵吉君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         塚田十一郎君     理 事                 源田  実君                 川村 清一君                 渋谷 邦彦君     委 員                 伊藤 五郎君                 河口 陽一君                 増田  盛君                 増原 恵吉君                 山本 利壽君                 春日 正一君    国務大臣        外 務 大 臣  愛知 揆一君        国 務 大 臣  山中 貞則君    事務局側        常任委員会専門        員        小倉  満君    説明員        沖繩北方対策        庁長官      山野 幸吉君        防衛施設庁施設        部長       長坂  強君        厚生省保険局企        画課長      中野 徹雄君        水産庁長官    大和田啓気君        海上保安庁長官  手塚 良成君        海上保安庁次長  上原  啓君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告沖繩及び北方問題に関しての対策樹立に関する  調査  (当面の沖繩問題に関する件)  (北方領土及び北方海域における安全操業問題  等に関する件)     —————————————
  2. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) ただいまから沖繩及び北方問題に関する特別委員会を開会いたします。  沖繩及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査を議題といたします。  まず、先般、当委員会が行ないました「北方領土問題及び安全操業問題等に関する調査」のための委員派遣について、派遣委員から報告を聴取いたします。  川村委員
  3. 川村清一

    川村清一君 本特別委員会塚田委員長以下、山本渋谷、矢山の各委員及び私の計五名は、北方領土問題北方水域における安全操業問題及び北方地域居住者援護問題等調査のため、七月二十七日より五日間にわたって北海道に派遣されました。  一行は、まず札幌市において北海道当局及び関係団体より、これらの問題に関し概括的な説明要望を聞いた後、根室市及び羅臼町を訪問し、それぞれの当局者及び関係者からつぶさに現地の実情と要望を聴取したほか、海上保安庁巡視船北方水域視察を行ないました。  なお、札幌市における会議には、河口委員現地参加しました。  今回の視察結果を概括して申し上げますと、まず領土問題につきましては、あくまでわが国固有領土である歯舞色丹国後択捉四島の返還要求を貫徹すべきだという点で、各地、各団体意見は一致しており、むしろこれに対する各政党の意見及び国民世論の統一とそれに基づく粘り強い外交折衝が強く要望されたのであります。  次に、安全操業問題につきましては、人道上の見地からもできるだけ早期にその実現を切望するが、対象範囲はあくまで歯舞色丹国後択捉の四島周辺とすべきであり、また、できるだけ接岸操業が可能となるような協定実現を望むとの訴えがなされました。  次に、北方地域居住者援護等内政上の措置につきましては、たとえば旧漁業権補償の問題、旧北方協会に交付した国債の償還と今後の資金量拡充の問題、北方地域に対する戸籍事務の取り扱いと地方交付税交付の際の面積積算の問題、拿捕漁船員及び留守家族に対する援護措置拡充問題等、きわめて多岐にわたる要望が聞かれましたが、要するに、わが国固有領土に対する外交上の主張に見合う内政上の統一的な措置の実施が強く望まれたのであります。  以上、概略のみ申し上げましたが、詳細は文書をもって提出いたしますので、それを会議録に掲載してくださるよう委員長においてお取り計らいいただきたいと存じます。  以上で御報告を終わります。
  4. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 以上で派遣委員報告は終わりました。  なお、報告の際に御要望のありました派遣報告の詳細につきましては、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 御異議ないと認めます。さよう取り計らいます。     —————————————
  6. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) それでは、ただいまの派遣委員報告を含め、これより質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言願います。
  7. 川村清一

    川村清一君 本日はしばらくぶり外務大臣が御出席なされましたので、外務大臣を中心といたしましていろいろ御質疑を申し上げたいと思います。  最近、全日本自治団体労働組合がまとめた報告書は、現在行なわている沖繩復帰作業内容がほとんど県民に明らかにされず、しかも、琉球政府要望でさえ本土政府の指導によってまとめられていることを明らかにし、その結果、復帰準備作業県民不在で行なわれていることを指摘していると八月三日付の某新聞は報道しているのであります。  これに関連して、若干の問題について、外務大臣並びに防衛施設庁長官にお尋ねしたいと思います。  まず第一に、去る七月二日、防衛施設庁は去る二月から四月にかけて行なった沖繩軍事基地施設及び労務関係現地調査報告書発表いたしましたが、この報告書たるや、全くお粗末の一語に尽きるものであった、公表された資料米軍が使用している民・公有地種目別面積年間賃借料をしるした一枚のプリントにすぎず、それも昨年末の琉球政府が調べたものの焼き直しにすぎなかった、こう報道されておるのであります。これでは米軍基地全体の規模は全く明らかにされず、一体何のための現地調査を行なったのかとさえ言いたくなるしろものであった。伝えられるところによりますれば、米軍側同庁調査団に対し資料提供を渋ったことが一因だといわれるが、真相はどうなのか。返還に伴い地位協定移行が最も重要な課題であるとされているのに、このようなことで復帰準備がスムーズに進むと見ていいのかどうか。この点は防衛施設庁長官にお尋ねしたいのでありますが、防衛施設庁がまだ出席しておりませんので、この問題に関連してさらに外務大臣にお尋ねしたいのでありますが、米軍側のこの渋い態度にもかかわらず、防衛施設庁といたしましては、最初約三百ページの報告書を四十ページ程度に要約して発表しようとしたところが、外務省がこれに待ったをかけた、こう伝えられておるのであります。新聞に出ているのであります。これが事実であるとするならば、全く不可解なことでございます。外務省は一体どういう理由でこの報告書発表を差しとめたのか。これでは、復帰作業ガラス張りの中で行なわれることを望んでいる沖繩県民の希望に反するばかりでなく、逆に基地優先疑惑を深めさせる材料提供しているようなものであります。外務大臣はほんとうにこういうような措置防衛施設庁に対してしたのかどうか、はっきりひとつ御説明願いたい。まずお尋ねいたします。
  8. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まず、この復帰準備については、いずれ御質問に応じまして御説明いたしたいと思いますけれども、私の見ておりますところでは、順調にいっておると考えております。  それから防衛施設庁調査についての発表ぶりについても具体的なお尋ねがございましたが、何ぶんにもまだこの返還準備作業については鋭意努力を展開しているときでございますから、ものによりましては発表するに適しないものもあることは中間的の段階ではやむを得ないことかと思いますので、関係者の間で相談をいたしまして、発表文を取りまとめたという経緯があると承知いたしておりますけれども、特に秘密にしなければならないとか、あるいは、知らせないで秘密、独善的にやるがためにというような配慮でさようなことをやったということは全然ございませんので、御了承いただきたいと思います。
  9. 川村清一

    川村清一君 防衛施設庁相当の日数をかけて調査に行ったわけであります。ところが的確な調査ができなかったその原因は何かというと、アメリカ軍側がいろいろな資料提供することを渋った。便宜をはかってくれなかった。ある意味においては拒否した。こういう現実があって思うような調査ができなかった。これは事実でございますか。もしこれが事実であるとするならば、外務省としてはこういうアメリカ側態度に対してどういう御見解をお持ちになっているのか、これをお聞きしたい。
  10. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 現実調査に当たりましたほうからお答えをするのが適当だと思いますけれども、私は、故意に調査に非協力であるというようなことはなかったと思いますけれども、かりにさような場合がありますればこういうふうにいたす所存でおります。というのは、いささか全体のことになりますけれども東京におきましては、御案内のように六月五日からあらためて開始しておりますが、東京においては駐日大使と私との間で、返還作業進捗について、各方面で日米間で協力しておる作業を十分見ていきながら、必要な事項と思われるところをさらに督促をしたり、あるいは改善をしたり、あるいは調整をしたりということを役割りとした会談を定期的に始めていることは御承知のとおりと存じます。それから、何ぶんにも返還作業は非常に多岐にわたりますことは前々から当委員会で申し上げておりますとおりでありますが、たとえば東京におきましても、財政関係等につきましては、特に大蔵省とそれからアメリカ側の財務省との間の細部にわたる資料の突き合わせ、あるいは意見交換等を行なっておりますし、それからまた、防衛庁におきましてはもちろんそういう点についてのお話し合いを進めておられるし、一方現地においては御承知準備委員会相当活発に作業をいたしておりまして、第五回がすでに行なわれておるような状況でございます。それらの話し合いあるいは調査状況等において、ただいま御指摘のようなことがもしあれば、ひとつ私と駐日大使の間で必要と認めたことについては、さらに作業進捗等について双方協議をしながら、督促すべきもの、あるいは注意を喚起すべきもの、こういう事実につきましては十分注意をして、支障の起こらないようにしていきたい、こういうふうに考えておりますので、全体としてただいまお述べになりましたような趣旨に沿って適切にこの作業を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。ただ、先ほど申しましたように、なかなかその問題が多岐にわたりますし、また、複雑な問題が個別的にも多いわけでございますから、その話し合い幾らガラス張りと申しましても、これを全部を、たとえば議事録等というようなものは、かりにあるとしても、それを全部を公表するということには適当としないものも話し合い進行段階にはあり得るわけでございますから、そういう点については双方とも慎重に取り扱っているということは言えると思います。かように考えております。
  11. 川村清一

    川村清一君 施設庁に対してお尋ねいたします。  先ほども申し上げたのですが、二月から四月にかけて施設庁といたしましては沖繩米軍基地施設及び労務関係現地調査をなされた。それで七月の二日この報告書発表した。ところが、全くお粗末なもので、一枚のプリントにすぎなかった。しかも、それは民・公有地種目別面積とその年間賃借料をしるしたものだけであって、昨年末に琉球政府が調べたものの焼き直しにすぎなかった、こう伝えられておるのでありますが、これは一体事実かどうか。しかも、多額の費用を使い、大きな目的を持って調査に行ったんだが、そういうお粗末な調査しかできなかったのは、一にかかって米軍調査協力しなかった、資料提供を渋った、これが大きな原因であったと、こうも伝えられておる。しかも、もう一つ大きな問題は、それでも防衛施設庁としては約三百ページにわたる報告書を四十ページ程度に要約して発表しようとしたところが、外務省がこれはまずいと言ってそれをとめた、こういうようなことも伝えられておる。それは一体事実かどうか。もしそれが事実だとするならば、この復帰作業について一番重大な基地の問題、それから復帰協定には一番大きな問題は地位協定への移行の問題、こういう問題があるのだが、それらの問題に対して的確な始末をつけることができるのかどうか、非常に疑義を持たざるを得ないのであります。この点について施設庁の御見解を披瀝していただきたいと思います。
  12. 長坂強

    説明員長坂強君) 二月から四月にかけまして防衛施設庁担当者がそれぞれ沖繩に出向きまして、この沖繩復帰を目ざしましてのいわゆる防衛施設関係準備事務のためにどのようなことを心がけていったらいいかという目的をもちまして調査に出かけたわけでございますが、この間、なお今年またさらに再度、三度目、四度目というような調査を実は意図しておるわけでございまして、そのような意味におきましては調査はなお現在も進行中であるということが言えようかと思います。  過去におきます、つまり二月〜四月におきますところの現地におきましての琉球政府からの協力及び米軍からの協力は、所期しておりましたようにそれぞれ非常に双方とも協力的でありまして、今後どのようなところに重点をしぼってその調査を進めたらいいだろうか、そういう総括的なめどをつけますための調査といたしましては、ほぼ所期の目的を達することができたというふうに私ども庁内では調査団からの報告を聞いております。したがいまして、その今後の調査を進めるにあたってどのような点に重点を置いていったらいいか、どのような点に問題点があるのであろうかというようなことは、その目的を遂げてきたというふうに私どもは聞いております。  そこで、私どもの覚悟といたしましては、現在から外務省あるいは沖繩北方対策庁等関係省庁の御協力を得まして、この復帰までに、基地問題というものの沖繩におけるいろいろな問題、それに対してどのような対策を立てていったらいいだろうかということをだんだんに準備を進めまして、復帰時点までに誤りのないような処理をいたしたいということを念願いたしておる次第でございます。  以上でございます。
  13. 川村清一

    川村清一君 外務省からあなたのほうに対して、発表をとめるような何か示唆があったのかどうか、これを明らかにしていただきたいし、さらにあらためて調査報告書国民の前に明らかにしていただきたいということを私はここで要求するのですが、それができるかどうか、これをお答えいただきたい。
  14. 長坂強

    説明員長坂強君) このいわゆる基地の問題、防衛施設の問題は、きわめて住民の方々に大きな影響を及ぼすものであるというふうに、私どもは内地の経験を通しまして身にしみておるところでございまして、したがいまして、この問題が、いろいろな処理方針が確定いたす段階問題点の所在その他をいたずらに公表していくということは、一面におきましては、外交交渉によって事を進めてまいりますこの問題の性質上からいっても好ましくない影響が出てきてはいけない。また一面からいきますというと、あまり処理方針の確定しない前に軽々しく調査内容等を取り扱いまして、かえって沖繩現地に問題を引き起こしてはいけないという配慮から、きわめて慎重な態度をとっておるわけ合いをひとつ御了解いただきたいと存じます。したがいまして、外務省のほうから示唆があったかどうかというようなことは、実際ございませんので、これは全くこの問題の性質上からいきまして、しかも、この問題の置かれております現在の状況、つまり、外交交渉のまだ始まる始まらないというような段階におきますこの問題の置かれております現況からいきましてこのような慎重な態度をとっておるという点でございます。
  15. 川村清一

    川村清一君 それじゃ問題を次に移しますが、沖繩現地における日米準備委員会は、これまでにすでに五回の会合を進めております。その内容もほとんど発表しておりません。この秘密主義についても沖繩県民疑惑の声を強めております。たとえば七月六日の沖繩タイムスの社説は、「返還折衝秘密主義」と題して、すべてを秘密のベールに包もうとする本土政府、ことに外務省やり方にふんまんをぶちまけております。この際、これまでの五回の会合における討議の問題点日米双方提案などの経過を本委員会に明らかにしていただきたい。外務大臣に質問いたします。
  16. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ほど来の川村さんの御意見あるいは御質疑の中に問題が二つあると思うのですが、一つは、基地関係等について米軍側の非協力ということがあるのではないかどうか。これは私は、先ほど申しましたように、さような事実はないと思いますけれども、しかし、もしそういうことがあるような場合においては、先ほど申しましたように、私といたしましても、駐日大使と私との間の定期協議において、さようなことのないように十分な協力を求めるようにいたす所存でございますし、現在までのところは、先ほど申しましたように、順調に事が運んでおるように思います。もしそういうように事がいかないような場合、これは十分に私としても配慮してまいりたいと思います。  それからもう一つの問題は、調査をした事実、あるいはその中で、調査の結果と申しますか、中間的に出てきたようなことを、何もかにもこれを発表しろと言われましても、結局これは話し合いをまとめていくための一つ資料でありまた有力な材料であるわけでございまして、話し合い進捗に応じて、できるだけその話し合い状況というものが関係方々に御心配を与えないように十分配慮して、発表についても考慮してまいりたいと思いますが、事柄の性質が、ただいまも説明員から御答弁があったような性格の問題でございますから、何もかにも中を全部さらけ出してと言われても、これについては私は限度があると、こういうふうに申し上げざるを得ないと思います。  それから、その次の問題は準備委員会の問題でありますが、まあ批評批評として、準備委員会委員方々は熱心な会議を持たれて、相当に私はその経過発表されているように存じております。たとえば、一番最近は八月五日に第五回の準備委員会が行なわれたわけでありますが、この第五回の会議においては、御案内のように代理会議という一種の下部機構があるわけですが、代理会議から提出された資料、あるいは小委員会作業進捗状況についての報告を詳細に聞いてそれを承認をいたしたということが発表されておりますが、この内容としては、「返還時における民政の諸権限移行を円滑ならしめるための米国側からの包括的な提案があったのでそれを検討中である」ということを同時に明らかにいたしておるわけでございます。そして、たとえばその中には、第一段階、第二段階、第三段階というようなタイミングの点についても触れておる。これなども審議の過程としては非常に重要な事項だと思いますけれども、そういう点についても非常に明らかにされているようでございます。また、すでに御承知のところが多いことと思いますけれども準備委員会におかれても私はそういう点について十分の配慮を誠意を尽くしてやっておられるものと、かように確信いたしておりますが、なおまた御注意、御批判等がございますれば、それらにつきましても十分耳をかして、結局、思いはお互いに同じだと思いますから、目的が円滑に遂行されるように十分のひとつ配慮を今後ともしていきたいと思いますし、また、御理解ある御協力を今後ともお願いいたしたいと思います。
  17. 川村清一

    川村清一君 次にお尋ねいたしますことは、復帰準備に関連して、ことに現在沖繩住民の憤激を買っている米兵犯罪の問題について政府基本的考え方をお尋ねいたしたいと思います。  去る七月三十一日に行なわれました米側琉球政府との合同捜査会議の結果、軍民捜査共助協定を近く改正して、沖繩側捜査官初動捜査段階から米兵の取り調べに立ち会い、また、必要な場合には基地内立ち入りもできるようになる模様でありますが、これは従来に比べて一歩前進したものでありまして、率直に歓迎するのにやぶさかではございません。しかし、最大の問題である裁判権の問題については、米側は依然として従来の考え方を変えておらず、八月五日の準備委員会でもその権限委譲については全く触れておらないようでありますが、この問題については政府は基本的にどのような見解を持っておるのか、外務大臣にお尋ねいたしたい。
  18. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 基本的にはこういうふうに考えております。  一九七二年の某月某日施政権返還が行なわれるということを前提にしてすべてが順調に進んでいるわけでございますから、その某月某日がきまりますれば、そのときに、裁判権であれ何であれ、施政権は全部完全に本土並み復帰することに相なるわけでございます。これを理屈めいた考え方で言えば、それまでは施政権アメリカ側にあるわけでありますけれども施政権返還ということのタイミングまで、そこまで政治的に約束されているんだから、その完全な本土並み施政権返還に至るまでの間においても、話し合いにおいて、あるいは政治的において、なしくずしに、円滑に、でき得ることは順次実質上委譲をしていくようにするというのがわれわれの考え方でございます。大きく言えばそういうふうな大きなワク組みの中で私は国政参加というようなこともできることになったんだと考えます。しかし、同時に、裁判権というようなものになってしまいますと、これが一〇〇%に委譲を受けるということになれば、もうそれで、七二年じゃなくて、もう今日施政権が実質的には全部返還になる、こういうことにも、理屈を言えば、なるわけでありますが、そこまで考えるのもちょっとどうであろうか。私ども政府といたしましては、司法制度というものもすべて返還の時期には一〇〇%本土並みになるんだ、これを前提にして、なるべくそれが円滑に進むように実際的な方法としていかなる方法があるか、特にただいま御指摘のような米軍人犯罪問題というふうなものは、われわれとしても黙視することのできない非常に大きな、重大な問題でございますから、したがって、現実的な方法として、捜査、逮捕というようなことについて琉球政府との協力関係を強化する。これに対して米側の好意的な協力を求める。ここでひとつまず現実的な方法として、大きく司法制度全面管理に向かって前進をする、こういうことで処理をしていくのが、何べんも申しますが、最も現実的なやり方じゃないか、この点について全力をあげていく、かような状況でございます。
  19. 川村清一

    川村清一君 先ほどの御答弁によりまして、準備委員会においては七二年復帰までのその期間を第一、第二第三の三段階に分けて実現していくという御説明があったわけでありますが、しかし、この問題は沖繩県民に対する人権上の重大な問題であるがゆえに、私は強くこれを指摘し、第一段階において取り上げるべき問題ではないか、かような立場から申し上げておるのであります。御承知のように、日本弁護士連合会は去る七月十八日の理事会で、「沖繩での米軍犯罪裁判管轄権米側から琉球政府裁判所に移管することは法理論上は施政権者である米側がその施政権の一部を手放すことにはならない、琉球裁判所といえども米国統治組織の一部であり、施政権ワク内で裁判分担役割りを変更するにすぎない」との見解を確認して、この法理論に基づいて「政府米軍人犯罪捜査権裁判権を原則として琉球政府機関の所管に移すよう米政府に強く交渉すべきだ」と要請しております。裁判権の移管は沖繩住民の一致した要望であり、立法院でも与野党一致してこれを要請する決議を採択しておるのであります。沖繩県民の民意を尊重するというのであるならば、日弁連のこの法理論をてことして、政府米政府に対しさらに強く折衝を行なうべきだと考えますが、外務大臣の御見解はいかがでございますか。
  20. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 日弁連の建議書も私も十分検討いたしました。これは在野法曹の権威ある御意見ですから、私もこれに対して非常な敬意を表しております。そして、そういう考え方法理論的にはあり得るということを私も承知いたしております。したがって、先ほど申しましたように、そういうことも頭に置いて、最も現実的に、最も実行可能で、そしてお役に立つ方法として、先ほど申しましたように、まず捜査、逮捕というようなところから適確に事を進めていきたい。これは私、口が過ぎるかもしれませんけれども、とにかくもうあと一年余りすれば復帰の時期になる。それまでに、法理論を展開して、それで、ああだこうだと言っていることももちろん必要でございましょうけれども、しかし、一番大事なことは、その間においても、沖繩方々に、すみやかに現状を改善する、そうして、米軍犯罪が少なくなるように適確にやっていくこと、地についたやり方で効果をあげていくということが、私ども政府の立場としては現在とるべき措置ではないか。かように考えているわけでございます。
  21. 川村清一

    川村清一君 外務省の何となく弱腰というものを非常に不満に思うわけでございますが、時間も経過しまして、一つの問題に突っ込んで議論していく余裕がございませんので問題を進めますが、ぜひひとつ人権上の問題でございますから、ただいまの外務大臣の御答弁によれば、裁判権の移管はいよいよ施政権全面返還のおりでなければ返ってこない、こういうことになります。その間沖繩県民の人権が常に無視されて、そういう事態が頻発しておる。このことをぜひ考えて善処していただきたいと思うわけであります。  次に、県民の意思尊重と秘密主義に関連して無視できないのは、いわゆる米資産の買い取りの問題であろうと思います。沖繩県民の一致した要求は、これら米資産は、施政権者として住民の福祉を当然にはかるべき義務と責任に基づいて出資されたものであり、その多くは沖繩県民の長年にわたる努力の結果増殖されたものであるから、日本政府として買い取りに応ずべきではないという点にあるわけであります。政府は「買い取り」という表現を故意に避けて、いわゆる「引き継ぎ」だとし、また、みなただというわけにはいかない、当然払うべきは払うとの方針で米側と折衝中のようでありますが、表現は何と言おうと、実質的には買い取りには違いはないと、かように考える。さきにわが党の矢山委員からも指摘がありましたが、初めから当然支払うのがあたりまえという姿勢で、はたして住民の意思に沿った自主的な外交と言えるのかどうか、はなはだ疑問に思うわけであります。さらに、これまで米側と数回にわたって打ち合わせを行なっているにもかかわらず、その経過等については全く秘密のベールに隠されまして、どういうことになっているのか、ちっともわからないのであります。この際、この問題に関連して折衝の経過問題点などを国民の前に明らかにしてほしいと思います。外務大臣のお答えをお願いします。
  22. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まず第一に、この請求権の問題に限らず、沖繩県民方々の御要望になっていることは、これを一〇〇%に達成してあげなければならない。こういう考え方を基本に政府としては持っておるわけでございます。その方向に向かってあらゆる努力をする。ただいまお話しがございましたが、自主的な立場というのは、そういうことではなかろうかと思います。この点につきましては、今後とも十二分に努力を傾倒してまいりたいと思っております。  そこで、この請求権の問題でございますが、ただいまも御指摘がございましたが、政府のこの点についての見解というのは、返還後の沖繩に残る米国資産というものが、日本側が引き継ぐことになっておることは、しばしば従来から明らかにしておるところでございますが、実はこの請求権の問題については、法律論もございますが、同時に、実体的にも不明確な点が非常に多い。で、これらの点について、まず十分に実態を究明することが政府としてはまず第一に必要なことであると、かように考えておるわけでございまして、先ほどお答えいたしましたように、こういう点につきましては、資料の突き合わせあるいは実態の調査ということについて、政府としては大蔵省、それからアメリカ側としては財務省、それぞれの専門家の間におきまして、実態の究明、資料の突き合わせというような点について現に鋭意努力が傾倒されているわけでございます。そして、それらの実態の究明の上に立って、先ほど申しましたような基本的な原則に沿い得るような解決点を見出すべく、努力をその上に立って続けたいと、かように考えておる次第でございますので、現在、こうこうこういうものとこうこうこういうものがこういうふうに存在する、その価値というものをいかに判定すべきか、法律的に見てこれをいかに処理すべきかという点について、まだ政府として国民の前に明らかにお話をすべき段階に至っていない、これが現状でございますので、これらの点につきまして的確な政府態度というものを表明するにつきましていま少しお待ちを願いたいと考えております。
  23. 川村清一

    川村清一君 山中総務長官がおいでになられまして、二時には御退席になられるそうでございますので、ぜひ山中総務長官にもお尋ねいたしたいので、問題を進めます。それは軍関係労働者の解雇問題についてでございます。七月三十一日、米第四軍労働委員会のヤコブソン議長は五百十六人に及ぶ軍雇用員の新たな解雇を発表いたしました。これに伴い、山中長官は同日夕刻米側に対し、「解雇予告期間の延長および退職金の増額についてなお一層の改善を図るよう要望するとともに、配置転換などにより失業者の数を最小限にとどめるよう申入れている」旨の談話を発表いたしました。さらに、特別給付金の形で見舞い金九千五百万円を総理府の今年度予算の中から支出することを明らかにいたしました。今回の特別給付金支給の手回しのよさにつきましては、一応現地では好感を持って迎えられておるようでございますし、私どももそのように評価するものであります。しかし、軍関係労働者の解雇旋風が再び吹き荒れまして、しかも、今後どの程度の解雇が行なわれるのか、全く明らかにされておらない現状では、軍関係労働者のみならず、沖繩全体に与える深刻な不安は本質的に何ら解決されていないと、こう思うわけであります。  そこで、山中総務長官にお尋ねいたしますが、政府は今回の解雇を事前に察知して、解雇予告期間の延長や退職金の増額等を申し入れていたようでございますが、これに対する米側の反応はどうであったのか。特に解雇予告期間の本土並み九十日という線は今後実現される見込みがあるのかどうか。この点を総務長官にお尋ねいたします。
  24. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 解雇予告期間の延長本土並みにつきましては、総理に相談をいたしました際、総理のほうから、ぜひ愛知君と連絡をとって、そしてアメリカ側と交渉し、本土並みに上げるように努力をせよという直接の指示も受けました。したがって、外務大臣と連絡をとりながら、あとう限りの努力をしている最中でございます。退職金の本土との差額につきましては、先般は初めてのケースであり、本土においては米軍が全部支払っているものを、施政権者たる沖繩において支払わないその不足分を本土のほうから払うべき筋合いであるかどうか、その議論にたいへん時間を要したのでございます。しかしながら、払う義務があるということは、財政法上どうしても言えなかったのでありますが、払わなければいけない、払ってあげなければいけない、解雇された人たちに対し、復帰の決定した沖繩に対する祖国の姿勢として踏み切るべきであるということから措置をとったわけであります。幾分の時間を要しました。しかしながら、今回は解雇の当不当、あるいは撤回要求の、いれる、いれられないは別にして、不幸にして解雇をされた人たちに対しては、前回並みの措置をとりますということをやる必要があるということで、事前に大蔵省も含めての相談をいたした次第であります。  なお、予告期間の延長につきましては、外務省筋より直ちに行動を起こしていただいておりまして、私のところにも、ランバー上局等弁務官あたりの、それを日本の総理の要望であるということ等伝えた際の反響等については聞いておりますけれどもアメリカ側が、しからば直ちにいま、四十五日ないし六十日に分かれておる、本土に対して幾分足らない点について、今回の解雇者に直ちに適用して本土並みにするかどうかの回答をいまだに受け取っていないというのが事実でございます。
  25. 川村清一

    川村清一君 その問題につきましては、私どもがことしの二月沖繩に参りまして、ランパート高等弁務官に会った際に申し上げて、その際弁務官はどういうお答えをしたかというと、この問題については、現地米軍は、外交ルートによる話し合いのつくことを前提として解決したい、いわゆる外交ルートでこの問題を解決したい、こういうことを強く述べられておったのであります。一体、外務大臣及び外務当局は、どの程度この問題解決のために真剣に折衝に取り組んでいるのか。前国会中、私どもはこれをたびたび質問した。外務大臣は、目下折衝中、こういう御答弁であった。その後の折衝の結果は、どのように問題解決にこれは進んでおるのかどうかさっぱりわからない。きわめて外務省はこの問題解決のためには不熱心ではないかと、かように考えるのでありますが、外務大臣の率直な御答弁をお聞かせいただきたいと思います。
  26. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいま総務長官からお答えのあったとおりでありまして、外務省といたしましては、もう前々からこの予告期間、退職手当の問題についてはあらゆる努力を外交的に展開してきていることは御承知のとおりだと思いますが、特に今回の場合におきましても、予告期間の問題については佐藤総理自身も非常にこの点については関心を深くしておりまして、従来からの外交関係の努力に加えて、あらためて特に総理からの要請として、またさらに補強をしてくれということの指示も受けたわけでございまして、これに力を得まして、一そう強力な外交折衝を展開しておる。これはただいまランパート氏のお話も出ましたけれども、また前々から事情を御承知のように、雇用形態が米側におきましてもいろいろの系統があることは御承知のとおりだと思います。これはランパート司令官だけの立場では同情と理解を示しておっても、彼の権限としてはなし得ざることが多いわけでありますから、これは御指摘のとおり、いわゆる外交チャンネルにおいての折衝とその結果を求めるよりほかにないわけであります。先方の外交機関といたしましても、もう累次の、かつ、長きにわたる折衝でありますから、日本側の要請、希望、特に佐藤総理自身のまた強い要請ということについては十分の理解を示しておりますから、ただいまこの時点で九十日になるということは申し上げられませんけれども、私は大きく期得を持ってこの推移を待ちたいと、また、さらに機会あるごとにこの点については努力を続けていきたいと、かように考えております。
  27. 川村清一

    川村清一君 この問題につきましては山中長官にたびたびお尋ねし、山中長官は非常な熱意を持って御答弁されて、私自身は敬服しておるのであります。その際山中長官は、私にばかり質問するんではなくて、外務大臣もそばに置いて質問してくれと、こういうお話等もあったので、私はきょうは外務大臣に質問している。山中長官が幾ら張り切っても、外交折衝権がないので、外交折衝権を持つ外務大臣にお尋ねをしておる。  そこで山中長官にお尋ねしますが、いま外務大臣からお話がありましたし、また、あなたも先ほど答弁されましたが、解雇予告期間の延長や退職金の増額、この問題もアメリカ側にはいろんな問題があって非常に強い壁が横たわっておるということを私承知しておるわけであります。こういう現状で、はたして山中長官が前国会でここで言明いたしました「間接雇用に準ずる制度が実現する」と、こういうあなたの言明が一体実現する見通しがあるのかどうか一率直な御意見を伺いたいのであります。
  28. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これも私自身が解決する問題ではないわけですけれども、私としては、雇用問題というのは、解決が見られますれば、内政の問題に移るわけですから、少なくともその接点の問題であることは間違いありませんので、もし米側から、中間的なものあるいはまともに本土に準じたもの等について、その形態の回答さえあれば、それに対して本土の施設庁も含めて現地琉球政府とともに一体になって雇用事務の処理に当たりたいということにおいては変わりはありませんし、外務大臣と私の間においても意見の相違はいまだかつてありません。しかし、これが米側がどのような形をもって回答してくるかについて具体的な感触をいまだに得ておりませんが、米側においても、琉球政府の行政能力の検討をしたり、あるいはどのような形ならばそのような雇用形態というものが考えられ得るか等の問題については、向こう側自体においても検討しておるということは知っておりますので、その合意が得られますれば、直ちに対応できるように、私どものほうとしては内政上の準備において万端怠りのないようにしておるところでございます。
  29. 川村清一

    川村清一君 総務長官、もう一問だけ、恐縮ですがお願いいたします。  これは外務大臣と総務長官、お二人の御答弁を承りたいのであります。  去る八月の五日の第五回準備委員会の席上、アメリカ側は、民政の部分的な権限委譲提案はいたしましたが、たてまえとしては復帰の日まで施政の全権と責任を留保することを明らかにしたといわれておるのであります。一方において米側があくまで施政権者としての権利を主張するのであれば、他方においてそのアメリカが持つ義務も果たさせるように強い姿勢で折衝し、反省を求めるべきではないかと私は考えるのであります。経済的な側面、すなわち財政援助の大幅削減や労務者の大量の解雇で施政権者としての責任を放棄しておきながら、裁判権委譲や新しい雇用制度の実現には応じられないというのは、全くてまえかってな論理ではないかと思うのであります。外務省の姿勢に対し私ははなはだ遺憾に思う。外務大臣の率直な御見解を伺いたいし、なお、山中総務長官の御所信もこの際お伺いしておきたいと思います。
  30. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私から先に答弁いたしますが、そのような姿勢の問題に関連をして私のほうで一番頭の痛いのは、米側施政権者として今日まで琉球政府に長年にわたって援助してまいりました琉政援助、この金が、ことしの経過でわかりまするように、すでに議会に出されておるものも下院で九十五万ドルの削減がなされておるというようなこと等もありまして、たいへん困っておるわけです。ですから、私のほうはすっぱりと、もう一九七二会計年度、こちらで言うならば昭和四十六年度予算においては、米側からそのような内政的な財源になり得る援助というものはゼロであるということを覚悟して予算を組もうかということを検討しておるわけでありますけれども、一方、聞くところによりますと、ある筋のルートによりますと、米側としてはやはり全面放棄ということはしない、であるから、やはり幾ばくかの援助というものはしていくんだ、少なくともことしの予算ぐらいは来年度も施政権者としては琉政援助をしたいやに聞いております。私のほうでは、琉政援助は全く行なわないと米側が言明をいたしますならば、米側のほうで現在徴収しております一番大きなもの、輸出課徴金の推定千四百万ドル、あるいは現在琉球政府の財源の中に見込まれましたが、まだ議論の煮詰まってない感じのあります沖繩県国外の所得税あるいは自動車通行税、そういうもの等についても全面的に琉球政府に財源を移すべきであるということ等も伝えてありますので、放棄するならば収入も全部放棄してもらいたいということを言っております。でありますから、アメリカのほうでは課徴金は手放したくない、したがって、援助もすると言っているのかもしれませんが、いずれにしても私どものほうは、放棄するならば収入源も放棄してもらいたいということでありますし、そのかわり、祖国政府の責任において昭和四十六年度予算は完全に復帰の前年としてのふさわしい予算を組もう、こういう作業をいたしております。しかし、アメリカ側の意向としては、外務大臣からお聞き願ったほうがよろしいですが、完全に私どもの昭和四十六年度予算に見合う向こう側としての最終年次の施政権内の予算において琉球政府に対する支出を全くゼロにするという意思はないやに聞いておるわけであります。ここらのところは、予算編成を沖繩援助費については八月三十一日の締め切りを一カ月延ばしてもらいまして、九月一ぱいで作業することにいたしておりますので、幾分時間がございますので、さらに外交ルートその他の正確な情報をもとにして予算を組んでいきたいと考えます。
  31. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) この問題についてのアメリカ側考え方あるいは子想される態度としては、沖繩についての行政費というものを全部出さないということは考えていないように私は見受けておりますが、正確なところは、いま少し時間的な余裕を見ませんと、どういうふうな考え方が固まってくるかということについてはまだ見通しをはっきり申し上げることはできないと思います。しかし、日本の政府側としては、一面からいうと、先ほど申し上げましたように、先般の沖繩復帰準備委員会でも段階を分けたということについて、いろいろまた御批判もあり御質問もあろうかと思いますが、アメリカ側としてもともかく包括的にできる限りの行政権委譲ということを一方で出しておる。そこまで聞いておりますから、日本政府の覚悟というか態度としては、ただいま総務長官からもお話があったように、日本政府としていかなる場合におきましても沖繩県民本土並みという点を、先ほど来くどく申しておりますが、そういう基本線に立って十分こちらとしてはまかなっていくんだという態度で私は行ってしかるべきものではないかと、かように存じます。
  32. 川村清一

    川村清一君 最後に、外務大臣に尖閣列島の問題についてお尋ねいたします。総理府をはじめ各種機関の調査によりますと、沖繩の尖閣列島を含む東シナ海の大陸だなには、世界でも有数の石油資源が埋蔵されていると推定され、この開発が実現すれば、復帰後の沖繩経済自立にとってはかり知れない寄与をするであろうといわれております。この尖閣列島は明治時代に現在の石垣市に編入されており、戦前は日本人も住んでいたことは御案内のとおりだと思うわけであります。しかし、油田開発の可能性が強いと見られるだけに、台湾の国民政府は、尖閣列島は日本領土でないとして自国による領有権を主張し、舞台裏で日本と争っていると伝えられております。今後尖閣列島の領有問題をめぐって国民政府との間に紛争が顕在化した場合、わが国としてはどのような根拠に基づいて領有権の主張をし、どのような解決をはかるおつもりであるか、この点についてお尋ねをいたします。
  33. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 尖閣列島については、これがわがほうの南西諸島の一部であるというわがほうのかねがねの主張あるいは姿勢というものは、過去の経緯からいいまして、国民政府承知をしておる。そして、わが国のそうした姿勢、立場に対して国民政府から公式に抗議とか異議とかを申してきた事実はないんであります、これは今日までの経過からいいまして。しかし、ただいま御指摘がございましたように、尖閣列島周辺の海底の油田に対して国民政府側としてこれに関心を持ち、あるいはすでにある種の計画を持ってその実行に移ろうとしているということは、政府としても重大な関心を持っておるわけでございまして、中華民国側に対しまして、この石油開発、尖閣列島周辺の大陸だなに対して先方が一方的にさようなことを言ったり、また地図、海図等の上でこういうことを設定したとしても、国際法上これは全然有効なものとはならないのだということを、こうした風評を耳にいたしましたときに政府として公式に申し込れをいたしております。かような状況でございますので、今後におきましても十分この問題につきましては関心を持って対処してまいりたいと思っています。
  34. 川村清一

    川村清一君 十分な関心を持って対処していきたいという観念的な外務大臣の御意向は了解いたしましたが、しかし、問題は具体的に進んでおるのでございます。最近伝えられているところによりますれば、尖閣列島周辺の海域を含む東シナ海の大陸だなについて、国民政府はアメリカのガルフ・オイルの子会社であるパシフィック・ガルフ社に対し石油鉱区権を与えたと八月一日付の某新聞は報道しております。このことは、尖閣列島は当然日本の領土であるとするわが国の立場とまっこうから対立し、外務省としても、非公式ながら、国民政府の一方的な行為は国際法違反であるとの見解を明らかにしているようでありますが、こういうように具体的に問題が進んできておる。観念的な政府のお考えはわかりましたが、この問題に対してどう対処していかれるのか、この点を明らかにしていただきたい。
  35. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは観念的な問題ではなくて、事実、大きな問題でございますから、先ほど申し上げましたように、日本政府としては国民政府に対しましても、かような一方的な宣言とかあるいは鉱区の設定等をやったって、これは国際法上無効なんであるということの申し入れをしておるということは政府としての具体的な態度でありまして、かようなことは国民政府としても軽々に私は行ない得ないことであると思いますが、ただいま申しましたように、申し入れをしているということは、これを重要な外交案件として国民政府に対して十分日本政府としてとるべき措置についてはやっておると申しましょうか、ことばが練れませんけれども、十分な工作といいますか、話し合いといいますか、これを展開中でございます。
  36. 川村清一

    川村清一君 どうも外務大臣の御答弁は歯切れが悪いのでぴんとこないのですが、職掌柄慎重ならざるを得ないものだとまあ善意に解釈して、私もこれ以上追及いたしませんけれども、しかし、大臣、早晩東シナ海の沿岸諸国——具体的には日本、国民政府、韓国、中国大陸の四カ国——の間でこの大陸だな境界をいかに確定するかが大きな問題になることが予想されるのでありますが、これに対して政府はどう対処していくかという方針を現在持たれておるのかどうか、この点をお聞きしておきたいと思います。
  37. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 大陸だな問題は前々から国会においても御説明いたしておりますが、現在大陸棚条約というようなものもありますが、日本は日本の主体的な立場に立って大陸棚条約には参加しておらないことは御承知のとおりでございます。同時に、しかし、これは国民政府との間の関係だけではなくて、たとえば対ソ連関係においても、あるいは対韓国関係においても、あるいはまた世界的に日本と直接関係がないところにおきましても、これはいろいろの意味で今後大いに紛争の種になりがちな問題でございますから、政府といたしましては、非常に大きな国際的な問題として、あらためてこれを全般的に取り上げていく。大陸だな問題に対してはどういう主体的な立場をとるべきであるか、あるいは、これには前々から御質問もいただいておりますが、領海問題等々もからめまして、主体的な立場を確立をして、そうして条約的にも、あるいは経済関係その他から申しまして、国際的な一つの環境において、できるならばよるべき基準というものを確立することが適当である。これはしかし相当長い時間もかかる問題でありますが、これは日本といたしましても十分な国際的な関心を求めつつ、よるべき基準、考え方というものをそれぞれの国が一方的にかってに主張したからといって、それでおさまるものではございませんから、大きくひとつ網をかけて、よるべき基準というものについての考え方を確立するような努力を展開すべきである、かように考えております。
  38. 川村清一

    川村清一君 この問題につきましては、本日は時間がありませんのでこの程度にしておいて、いずれかの機会にまた深めていろいろ質疑をいたしたいと思います。  最後に、北洋の安全操業及び墓参の問題についてお尋ねいたします。北洋の安全操業の問題につきましては、万博で来日されたイシコフ漁業相との会談の結果に基づいて日本政府からすでに具体案なるものがソ連政府に対し提示されたと伝えられましてから、今日まで相当の日数を経過しておるのでございます。しかし、その後、これに対するソ連側の対応がどうであるのか何ら報道されておりません。一体どのような情勢に現在あるのか、現地の漁民は大きな期待を寄せて一日千秋の思いで待ち焦がれているのが実情でございます。この際、今日までの経過と今後の見通しについて外務大臣の御意見をお尋ねいたしたいと思います。  さらに、ことしの墓参についてはどうなっているのか先月の委員会で私質問いたしまして、対策庁長官から、八月中に墓参ができ得るよう外務省を通じてソ連側と折衝中である、こういう御答弁をいただいておるのでありますが、現在折衝が行なわれているのかどうか、実現可能な見通しがあるのかどうか、これらについて最後に外務大臣の御答弁を賜わって私の質問を終わりたいと存じます。
  39. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まず、安全操業の問題はもうたびたび御質疑をいただいておりまして、進捗していないということでたびたびおしかりもいただいておったわけでございますが、ようやくソ連側も話し合いに乗ってくる態勢を示して、七月十四日にわがほうとしての案を正式に、先方がイシコフ漁業大臣を本件の担当者として指名いたしましたので、駐ソ中川大使から申し入れをいたしました。そうしてイシコフ大臣からは、日本側の申し入れ並びに具体的な話し合いを開始するのに、いましばらく自分のほうの研究に時間的余裕を持たしてくれということで、その「いましばらく」という期間は大体一〜二カ月とこちらは予想いたしておりますが、さらにおくれるようなことがあれば、十分督促いたしたいと思います。というのは、万博でノビコフ副首相一行が参りましたときは、即時にでも始めるということを言明し、かつ、その後、先方の都合によって、六月中にはひとつ話し合いを開始しようという段階もあったのが、七月十四日に先方が当方の申し入れを正式に受け付けるということになったわけでございまして、しばしばおくれておりますから、さらにまた遷延するようなことがあれば、十分督促いたしたいと思っております。そうして、従来からのいろいろの不幸な拿捕、抑留等の経験からいたしましても、どうしてもやはり安全操業の水域は歯舞色丹の沿岸だけではなくて、当然、国後択捉の沿岸にも及ぶべきものである。これを当方としては強く主張することといたしまして、国後択捉歯舞色丹、距岸三海里以遠十二海里以内を操業の実施区域とする、それから先方の、日本への寄港は認めないというような線を主にいたしました正式の交渉の皮切りという原案にいたしておるわけでございます。先ほど来申しておりますような状況でございますから、今後なるべくすみやかに妥結を求めるように折衝を展開いたしたいと思っております。  それから墓参については、いままでの経過をよく御承知でございますから省略いたしますが、本年ももちろんぜひ実現したいと考えておるわけでございまして、北方の諸島とそれからソ連本土にある墓地への墓参ということにいたしたいと考えまして、北方諸島への墓参については六月五日、それからソ連本土への墓参については六月の九日に具体的にソ連に申し入れを行なったわけでございます。で、ソ連側としては、関係機関と相談をして、検討の上で回答をするということを言っておるのでございますけれども、その返事がなかなかおくれておりますので、七月の十日、それからさらに八月の五日、両回にわたりまして回答を督促しておるのでありますが、今日のところ、まだ回答が来ておりません。したがって、あとう限り予定しております時期に実現ができますように、督促に督促を重ねたいと考えております。  それから、北方の諸島の申し入れました地点は、御承知と思いますけれども念のために申し上げますと、多楽島古別、色丹島能登呂及び斜古丹、択捉島の紗那、国後島の乳呑路及び古釜布の六カ所でございます。それからソ連本土はウランウデ及びザビタィヤでございまして、日本側としては、八月下旬に実施をいたしたい。一昨年の経過からいたしまして、それよりおくれますと、実現の見込みが薄くなりますので、八月下旬には実現をしたいということで、再々申し入れ、あるいは督促をしておるという現況でございます。
  40. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 沖繩返還が決定し、いよいよ今後の外交の焦点はあげて北方領土返還にしぼられてくるであろう、このように判断されるわけであります。戦後二十五年間外務省としても機会あるたびごとに国の方針というものをソ連側にも伝えてこられたといういきさつがございますけれども、   〔委員長退席、理事源田実君着席〕 一向に北方領土返還については進捗しない、これが現実の姿でありますが、さらに今月の一日に、ポツダム宣言二十五周年を記念してコスイギン首相は、ポツダム宣言をやはりかたく守っていかなければならないという趣旨のことを述べております。そうなりますと、北方領土返還というものは壁にぶつかっているどころではない。極端な見方をすれば、絶望に近いんではないかという感じさえするわけであります。外務省当局はこのコスイギン首相についての発言をどう一体受け取られて分析されているか。
  41. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まあ、おことばを返すようですけれども、絶望に近いなどとはとんでもないことでございます。まあ、そういうふうな見方もする人があるようで心配にたえないという御趣旨の御質問かと思います。私もその点で同感でございます。政府といたしましては、まあ、この政府のとっている見解、立場というものは、私どもは全国民の支持を受けて、あるいは全国民の合意に基づくものであると、かような確信の上に立って、もう忍耐強く、その態度返還を求めて実現を期したいと、微動だもしておるわけではございません。最近のソ連の指導者等がいろいろの機会に言ったり、書いたりしておることも私は承知いたしておりますが、一言だけ基本的に申し上げたいと思いますけれども、たとえば、ヨーロッパのある種の、第二次大戦後にきめられたといいますか、でき上がった国境というようなものについて、一つ考え方ができつつあるやに見えますけれども、これは日本のソ連との関係における北方領土問題とは全く性格の違った問題であって、ヨーロッパにおいて、たとえば関係各国あるいはこれが東西両陣営の緩和というような政治的な問題の中の一つとして、ある種のことにかりに合意が行なわれたとしても、それとこれとは全然別問題であるということを、私は日本の国民国民的確信として確立しておく必要があるのではなかろうかと、かように存ずるわけでございます。さような考え方から、微動だもすべきではないし、ひとつぜひ全国民がこの上ともに御協力をいただきたいと思います。
  42. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いまのべられたその経緯等については、私も十分承知しているつもりでございます。ただ、話というものは、その表現の内容等によっていかようにでも拡大解釈ができる場合等もございましょう。あるいは、その一つのことばの底に隠された意図というものを判断しなければならない場合等もあるのではないか。これは申すまでもないことだと思うのであります。ただいま外務大臣の言われた、絶対微動だにもしない——これはまことにけっこうだと思います。忍耐強く——これまたけっこうだと思います、外交には忍耐が当然つきものでございますから。しかし、やはり何らかの方法で打開もしなければなりませんでしょうし、そのためには、今回の発言というものは、おそらくいままで一貫していたソ連指導者の発言というものをさらに裏打ちをするような、そういうものだったんではなかろうかと、こういう疑惑が出てくるわけであります。そうした意味から、当局としてはどのように分析をされているのか。あくまでも欧州の事情と北方領土の本質は違う——これはわかります。わかりますけれども、ソ連側の意図の分析として、判断の基準として、はたしてそれでいいのかどうなのか、甘過ぎはしまいかというその点をお尋ねしているわけであります。
  43. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは屡次申し上げておりますように、また、私自身も直接衝に当たりまして、壁の厚いことは否定できないと思います。したがって、忍耐強く事に当たらなければなりませんし、また、これは決して私の意見では全然ございませんけれども、最近における独ソ間の交渉とか、あるいは独波間の交渉とか、あるいはヨーロッパにはヨーロッパなりに一つのムードが出てきている。ある一つの非常に例外的な見解だと私は思いますけれども、そういう状況がだんだん出てくると、日本の要求している北方領土問題についてはいい面が出てくるのではないかという見方をしておるきわめて例外的な論評でありますけれども、そういうものも出てきておるということも、また一つの見方ではないかと思われるわけであります。いま、甘くはないかというお話があって、さらに甘いことを申し上げるわけでは決してございませんけれども、ただ前々から申しておりますように、私の経験上も、やはり沖繩の問題と同じように、日ソ関係は決して悪くはない。私は、日ソ関係のいろいろの点からも、さらに親善友好関係というものが、これ以上に双方の利益のために伸びてくるその間に、やはり忍耐強くやっていくことによって解決の曙光を見出すこともできるのではないか、私はこういうことも考慮の中に入れて、かつ、この何々宣言とか何々条約ということになりますれば、先ほどポツダム宣言の話がございましたが、カイロ宣言もあり、その他のいろいろな宣言もあり、ことに日本とソ連との間には、前々から申し上げておりますような一八五五年の日魯通好条約という厳然たる領土問題に対する非常に明確な取りきめがある。あるいはまた、第二次世界大戦に関連するいろいろな宣言においても、領土拡大ということが、ソ連も参加してはっきりと世界に誇示されているわけですから、そういう点と合わせて、ほんとうにこれはあくまで貫徹すべく努力を怠らずにまいるべき問題であると、かように思っております。
  44. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 そういたしますと、今後さらに日ソ間の友好状態というものが続く限り、可能性というものがきっと見出される。それは早いかおそいかは即断はできないと思うのでありますが、絶対に可能性はあり得るのだ。くどいようでありますけれども、そのように理解をしてよろしゅうございますか。
  45. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは私は、もう絶対的に返還をなし遂げなければならない、この可能性があるかどうかという可能性をつくり上げるというのがわがほうの立場でなければならない、かように考えております。
  46. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 もちろん、可能性をつくり上げていく、そういう環境をつくり上げていくということが必要であれば、いま大臣としては、今後の折衝にあたって単独の折衝もございましょう、あるいはそのほかにどういう具体的な方途をお持ちになっていらっしゃるのかということをお聞きしたい。
  47. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) お尋ねの中には、たとえばサンフランシスコ条約、これの主たる推進国であったところをはじめ関係国の協力を求めるというようなことも示唆されての御質問だと思いますけれども、私はそれも決して有効でないことはないと思いますけれども、やはり、これは、私の見解をもっていたしますれば、日ソ間で解決すべき問題で、また、それが適当でもあり有効である、かような見解を私としては持っております。
  48. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 過去においてポーツマス条約を締結される際に、アメリカ大統領の介添えがあったという歴史的な経緯があるわけでありますが、そういうような方法は、いまおっしゃられたとおり、考えない、あくまでも単独折衝がこれは理想的であるということでよろしゅうございますか。
  49. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まず前提として、私は先ほども言いましたように、日ソ間の状況というものは、共同宣言というような形ではあるけれども、国交が回復している、そして現在の両国の関係というものは悪くはないと、私はかように観察しておるわけであります。そしていろいろの面におきまして双方の利益になるようなことが一つ一つ前進している。この環境の中でこそ、平和条約を締結すべき状態にもう来つつある。平和条約を阻害しているものはただ一つなんであって、これに対してソ連側が、いままでの態度あるいは言動というものもさることながら、前向きにこういった関係をさらに前進をさせるために、大所高所に立って、日本との友好親善関係においてこの北方領土問題にひとつ決断をしてくれる。望ましいことはそれではないかというところに解決の道を認めることが、私は最善であると考えております。しかし、先ほど申し上げましたように、その他、他国の協力を求めるというようなことも、まあ、やり方によってはけっこうなことかもしれません。これを否定するものでは決してございません。
  50. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 まあ、今後の友好親善のきずなを強める一環として相互における利益というものを増進するという意味のこともお話がございました。私の先ほどの、具体的にどういう方途をお持ちかというお尋ねについては触れていらっしゃらなかったようでありますが、はしなくもいまそういうような考え方を述べられたようであります。ならば、今後日本としてソ連に利益を与えるためにどのような方法というものが考えられるか。まあ、かつてはシベリアにおけるプラント輸出というようなこともいわれた時期もございました。現状を踏まえた上で、いまソ連が要求するものは何か、そしてまた、日本として与えられるその範囲はどういうものなのか、まあ、そうした事実関係を結ぶことによってさらに日ソ友好親善というものが強化されていく、このようになろうと思うんであります。その辺の今後に対する方針はどのようなものをお持ちになっていらっしゃるのか。
  51. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 領土問題については、従来から繰り返し主張しておりますことは、私は、国際的にも歴史的にも法律的にも根拠の十二分にあることですから、絶対にこれを堅持して譲らない。そして目的達成に邁進する。多少の時がかかるでしょうけれども、忍耐強くやっていく。これに私は徹していくべきだと思います。  一面、日ソ間の関係におきましては、よく御承知のとおり、たとえば最近ではウランゲルの港をつくるということについては、日本側としてはこれは双方の利益になることでありますから、日本の国益からいっても協力にやぶさかでない。具体的にこれは進行していることは御承知のとおりでございます。そのほか、数え上げますとずいぶん具体的な問題がございます。量においてはソ連側が日本側に期待していることのほうがはるかに多いように思われますけれども、これらはやはり日本の国益の立場からいって経済的に適当であるか、あるいは、その他広い意味で国益から考えて適当であるというものについては、政府の方針として、まあいわばプロジェクトごとに協力して、適当なものは協力をする。しかし、これは経済問題としての範疇の中できちんと割り切って態度をきめるべきものである、かように存じております。
  52. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 まあ、その辺のからみというものは、将来時をかせいでみなければわからないと思うのであります。先ほどおっしゃった中に、日ソ平和条約締結にあたって、一つだけ解決されればもうその手がかりは得られるのだというお話でございました。その一つとはどういうことでございましょうか。
  53. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 歯舞色丹はもちろんですが、国後択捉返還をしてさえくれれば日本はいつでも平和条約締結の用意があるということは、かねがねの日本政府の方針でございます。
  54. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 それは日本側の主張であって、ソ連側はどうなんでございましょう。
  55. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) それが平和条約ができないでいる今日の状況であることは御承知のとおりでございまして、ソ連側の領土問題に対する態度が変わらない限りは、この問題は決着ができないわけでございます。
  56. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いままでのそれぞれの立場から発言された経緯というものを振り返ってみますと、まあ、あるときは沖繩返還された、あるときは日米安全保障条約が廃棄された等々のそういう事態が到来したときに、日ソ平和条約締結という現実が生まれてくる、こういうふうにいわれてきたわけでありますが、また、今日までの国会を通してもそうしたことが繰り返され論議をされてきたことも記憶しております。そういうような問題が障害になっているということはございませんか。
  57. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これはですね、最近の日ソの、何といいましょうか、問題についてのソ連側の言っていること、これを詳細に申し上げませんと、誤解を生ずるかと思いますが、一口に端的に申しますと、ソ連側の言うことはそのたびごとで違いますし、それから、それの意味するところはどうかということは、またいろいろの解釈や分析のしかたもあろうと思います。私は、先ほど来申し上げておりますように、日本側としては領土問題さえ片づけば平和条約は直ちにその日のうちにでも調印をやりますよということは、これはもうずいぶん長い前からの政府態度であるということを繰り返して申し上げてございます。
  58. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 次に申し上げたいことは、先ほども安全操業の点について質疑がかわされておりましたけれども、当面緊急に解決を迫られている問題は、何といっても安全操業の問題ではなかろうかと、このように判断されるわけでありますし、昨年訪ソされた愛知外務大臣は、愛知提案として出された中に、三海里から十二海里という説をとっておられます。単純な文章でありますから、それだけでは要を得ないかもしれませんけれども、三海里から十二海里という非常に幅のある設定のしかたというものは、やはり問題を起こしやすい。ところが、先ほどの御答弁を伺っておりますと、三海里説というふうにこれは途中で訂正されたのかどうかわかりませんけれども、そのように伺ったわけでありますけれども、まず、この点から明確に再確認をいたしたい意味からお尋ねをしたいと思います。
  59. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) その経緯は昨年九月に発しているわけでありますけれども先ほども申し上げました七月十四日、中川大使を通じてイシコフ大臣にこれから話し合いを始めるのに際してあらためて正式に日本側が提案をしたものは、先ほど申しましたように、四つの島の周辺の三海里ないし十二海里の水域を安全操業の水域とする、そして、それについては附表を付しまして地図の上でこちらの提案をいたしております。ですから、正確にはかってみると三海里とか十二海里にならない場合もあります。「おおよそ三海里ないし十二海里」と申し上げることがさらに正確を期し得るゆえんかと思います。そういうことで、これを基礎にして話し合いに入ろうというのがこちらの提案でございますから、これから向こうの出方もいろいろございましょうが、こまかいことについては一方的にこちらの希望するような提案は、こまかい点は、正式に出すものからは、省いておいたわけでございます。
  60. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 私の記憶に間違いがなければ、いままで、根室市を中心として特に引き揚げ者が多いといわれるいわゆる北海道東部を視察されたのは、いま列席されておるのは有田局長一人じゃないかと、いろんな経緯からずっと判断してみますと、そのように理解しておったわけであります。おそらく有田局長も現地を見られ、または現地方々の強い要望をお聞きになったろうと思うのであります。とにかく二十五年間というもの絶えず危険にさらされながら操業しなければならなかったという事実、まあ、この間においては赤城試案というものが出されたり、そしてまた、やっとこの段階愛知提案なるものが出されている。非常にその間の取り運びというものがおそ過ぎたうらみがあるわけでありますけれども、これは決して一北海道地域、あるいは根室、羅臼等を中心としたそういう限定された地域の問題ではなくして、日本全体の問題であることは論をまたないわけでありますけれども、今日なおその拿捕が続く。しかも、昨年八月にはソ連軍艦に日本の漁船が追突されて十二名中十一名死亡するという、こういうふらちな事件が続いているわけであります。そこで、安全操業はもう今日までも何回となく当局に対してもいろんな委員会を通じて強く要求されてきているところでございますけれども先ほど冒頭に申し上げましたように、今日北方領土返還というものが最大の焦点として脚光を浴びる現在、当然積極的にこの問題に取り組んでいただきたいというのは言うまでもないことだろうと思うのであります。その見通しでございますが、先ほど、まず最初の折衝の段階として一ヵ月ないし二カ月中には回答を得られるだろうと、そうでなければ、さらに督促をして進める、こういうようなお話がございました。もちろん、それも必要でございましょう。せっかく駐ソ大使もおるわけでございますので、その辺はやはり絶えず連携をとっていただいて、早く話し合いの場を持っていただいて、日本の主張するその三海里というものを強調してもらいたい、実現してもらいたい。で、この十二海里説というのは非常にソ連側としては強く固執している。いまわれわれが理解している中では、そのように感じているのですけれども、この点、大臣は、必ず近い将来において、話し合いの結果、こちらの主張する三海里説というものが妥当と認められるような方向にいくかどうか。いままでの経緯が経緯であっただけに、非常にむずかしいものがあるように思われるのでございますけれども、当事者にとってみれば、これはもう急を要する問題でありますだけに、その感触だけでも、明快な責任ある答弁とまでいかなくても、その辺、国民に希望を持たせる意味からも、当局としてはこのような決意で折衝に臨みたいし、また、何としても三海里説というものの実現をかちとっていきたい、その辺の所信をお聞かせいただきたい。
  61. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私の率直な感触を申し上げますと、とにかくソ連というところは、どういう関係か知りませんが、なかなか日本人のようにせっかちではございませんから、多少日本人のものさしからいえば、何を外務省しているのだというおしかりを受けることも私どもは覚悟いたしております。しかし、昨年の九月以降においては、たとえば拿捕抑留者に対する措置などについて見ますと、とにかく昨年末には特赦とかなんとかいうことで一掃して帰してくれましたし、その後拿捕、抑留になりました人は現在二十二人か残っております、本年になりましてから。先方の態度としても、こういう拿捕、抑留ということはできるだけ少なくしたり釈放したりすることに協力するのだけれども、やはり基本的に操業の水域が話し合いがきまらないことがこういうことの原因になっているのだということは、率直に認めてくるような態度に私は変化してきているように思うのです。そうして、先般ノビコフ副首相一行が参りましたときも、安全操業の問題については、とにかくあなたが昨年九月提案したことを基礎にして話し合いに入りましょう、イシコフを代表者にわがほうとしては任命しましたということを、先方が参りましたときに、回答といいますか、これを正式に申し入れた。そうして、その後いろいろの経緯がまたありましたけれども、六月中には始めようと言っていたのが七月十四日になって、六月三十日から見れば二週間たちますけれども、従来の例からいうと、少し速度が早まってきたようなこれは私の率直な感じで、決して甘く見ておるわけでも何でもございませんが、安全操業の問題に対しましては、かなり先方としても、何とかしなければならないという気持ちは、一時よりはかなりこちらのほうに近づいてきたのではないかと想像される節がございますから、   〔理事源田実君退席、委員長着席〕 私は先ほど申しましたように、私の勘として、ここ一、二カ月のうちにかなり話が煮詰め得るのではないかと、こういうふうに期待しているわけでございます。
  62. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 最後に、北方領土の問題については、これからもしばしば機会をとらまえてお尋ねをすることはできるだろうと思いますから、きょうはこの程度にしておきますけれども、最後の質問として沖繩の問題を一点だけ、これは答弁は簡単でけっこうでございますが、先般の日韓閣僚会議をやった際に、崔外務大臣が強調された演説の中に、沖繩の軍事的機能、それから敏速な基地使用が阻害されないように希望すると。これは沖繩返還協定ができ上がる直後においての強い要望だろうと思うのです。それに対して外務大臣は、昨年十一月の日米共同声明を引き合いに出されまして、日韓関係は微動だにしないのだということを、あたかも崔外務大臣の発言を裏書きするような言い方をされていらっしゃる。こうしてみると、いろいろな最近の沖繩の変化せる実情から見て、基地のやはりその機能というものが強化されはしないか——C5Aの離着陸というような——どうもそういう感じがしてならないわけであります。その背景には、沖繩返還になれば、当然安保条約の取りきめによって事前協議の対象になるようなことがいろいろ出てくるであろう、そういうわずらわしいことでは、おそらく今後の軍事的機能というものが、あるいは韓国の要望するように、あるいは台湾の要望するようなぐあいにいかないのじゃないだろうかということで、既成事実をつくる上に、現在沖繩基地というものが強化されるような可能性というものを持っていやしないか。最近の外務大臣あるいは崔外務大臣の発言等から見て、そのように感じられるわけでありますけれども、この点についてのお考えを述べていただきまして私の質問を終わらしていただきます。
  63. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 日韓の閣僚会議におきましては、全体会議もやり、個別会談もやり、非公式会談もやりましたから、そしてしかも、非常に自由な意見の交換がございましたから、いろいろの点にいろいろ触れられてそれがいろいろに伝えられて、またいろいろと御懸念をそこからお持ちになった、これも無理からぬところだと思いますけれども政府としての態度といたしましては、あの会議が終わりましてから出しました共同声明、これは非常に長いものでございますけれども、あれは両国政府の同意したものでございます。同時に、それ以外の点は、意見の言いっぱなしは双方にあったかもしれませんけれども、これは両国を拘束するようなものではございませんことは申すまでもないところでございます。  それから、内容といいますか、サブスタンスといいますか、それについてのお尋ねでございましたが、今回の日韓会談においては、朴大統領も初めから言明いたしておりましたように、韓国に在留しておる米軍の撤退問題その他について、もう何も向こうから話がないし、いわんや合意されたものもございませんから、日米間の話し合いは御承知のとおりの昨年十一月にできたものがあり、それから日韓間の合意としては、ただいま申しました共同声明に盛られた考え方に合意しておるだけでございまして、この日韓会談が沖繩基地の態様等に何らかの影響がある、あるいは関連があるというふうには考えておりません。
  64. 春日正一

    ○春日正一君 沖繩返還交渉の問題についてですけれども先ほど外務大臣の御答弁で、この交渉はかなり順調に、ひんぱんに進められておるということですけれども、この交渉で取り上げるべき主要な課題と項目ですね、それから、それぞれの項目における問題点、これを知らしていただきたいのですけれども、時間がありませんから、これ、まあ一々言っておったら、その説明だけでも相当時間がかかりますし、きょうの時間がありませんから、これを一覧表にして出していただきたいと思うのですけれども、それやっていただけますか。
  65. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) その点は、資料のほうは考えてみますが、簡単に申し上げますと、これまでの話し合いを通じて明らかとなりました交渉事項としては、先ほどもいろいろ御意見を承りましたが、沖繩住民の請求権の取り扱い、裁判等に関連する諸問題の取り扱い、米国資産の処理、在沖繩米国外資系企業の取り扱い等がございます。このほか、もちろんのことでございますが、施政権返還の日から沖繩地位協定をそのまま適用するために十分の話し合いを詰めなければならない。大きな点を取り上げますと、この種の問題がございます。
  66. 春日正一

    ○春日正一君 それで、いまの御説明だけではあれですし、五月二十六日の商業新聞には、「沖繩返還協定の主要項目と問題点」ということで、復帰準備委員会の日本政府代表部が検討したものだというようなことで、二十二項目、いま言われたような問題も含めて、しかも、こういう問題があるのだというようなことで出されておりますね。ああいう程度のものは知らせていただきたいと思うのですけれども、どうですか。もう一度。
  67. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) いまそのあれを持っておりませんが、ある新聞にあの当時二十数項目にわたって問題が出ておりましたが、あれは、いかなる意味でも、日米両国の関係者から出た資料をもとにしたものではないようでございまして、有能なる記者の方が非常な御勉強をされて、想像され得るようなことをきわめて手ぎわよくまとめられて、一見するといかにも私どもがまとめたように見えたのでありますけれども、率直に申しまして、あの当時、あの段階にまとめたものはまだなかったのでございます。先ほど申し上げましたように、適当な資料ができましたらその点は考えてみますが、いまお話しするようなものをここに持っておりませんものですから、どういうものが出せますか、ちょっと研究させていただきたいと思います。
  68. 春日正一

    ○春日正一君 これは沖繩返還協定ということに最終的にはなると思うのですけれども、それがまとまってしまってから、国会に出てから議論を始めたんでは、もう実際上手おくれになるわけでしょう。協定に賛成か反対かというような形で問題が出されてきてしまって、修正することも何もできないということがいままでの政府の主張でもありますから、そうすると、この協定交渉を多少やっておる過程で、まさに国会でその問題についての論議もし、それを協定に反映をするということをしなければ、国会の機能を果たす場所がないわけです。そういう意味で、私のほうでもこの新聞に出た二十二項目というのはかなり参考になりますけれども、やはり政府としてこういう問題があるんだということを国会にお出しになって、ここの議論の種にしていただくということがやはり政府として当然やるべき態度じゃないか、そういうことでお願いしているわけです。だから、これはぜひ出すように、あとから私のほうでも催促いたしますけれども、していただきたいと思います。  それから次の問題ですけれども日米共同声明によりますと、「沖繩返還に際しては日米安保条約及びこれに関連する諸取決めが変更なしに適用される」ということになっておって、これを根拠にして政府沖繩返還本土並みである、こう言っておいでになるわけですけれども、この「関連する諸取決め」とは何かということで昨年の暮れに私の出した質問の主意書の問いに答えている。それは、「安保条約とともに国会の承認を得ている条約第六条の実施に関する交換公文、吉田・アチソン交換公文等に関する交換公文、相互防衛援助協定に関する交換公文及び地位協定を指す」、こういうふうにはっきり件名をあげて答弁しておられるのですけれども、しかし、国会の承認を得ているもの以外に、たとえば地位協定についての合意議事録、あるいは安保国会のときに出された「合同委員会の合意書に関連して実施されている重要事項」というようなものがあります。ここにその写したものがありますけれども、これ見てみますと、非常に重要なものがたくさん入っているわけですけれども、こういうものは「関連する諸取決め」に入るのか入らぬのかということです。
  69. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは法律的になりますから、場合によりましたら条約局長から答弁をいたすほうが適当かと思いますが、確かに春日さんの御指摘のとおり、昨年十一月の質問主意書にお答えいたしましたのは、条約第六条の実施に関する交換公文、それから吉田・アチソン交換公文等に関する交換公文、それから相互防衛援助協定に関する交換公文、地位協定、こういうことを明確にお答えいたしました。  なお、私は本件についての御答弁に際しましてこういうことを申し上げております。これら、つまり安保条約に対しまして公定的な解釈ですね、そういうものも、この本文が本土並みなんですから、公定的な両方での了解事項というようなものは、やはりこの中に入りましょう、こうお答えをいたしております。
  70. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、そのお答えの中から判断すれば、いま私の言いましたような国会の承認は得ていないけれども、それらの承認を得た交換公文なり協定なりに基づいて取り決められた諸取りきめというものは当然そのまま沖繩に適用になると、こう解釈していいわけですか。
  71. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 原則的には、そのとおりだと思います。
  72. 春日正一

    ○春日正一君 そうなりますと、たとえば「合同委員会の合意書に関連して実施されている重要事項」というものの中には、「航空交通管制について」という項目があって、これは長いから読んでいると時間がありませんから私、はしょりますけれども、「昭和二十七年六月の合意」では、日本にその能力がないからアメリカがかわってこの航空交通管制の仕事はやるということになっているのですね。ところが、「昭和三十四年六月の合意」では、「米軍提供している飛行場周辺の飛行場管制業務、進入管制業務を除き、すべて、日本側において運営する」云々ということで、あといろいろありますけれども、大体、この航空管制業務は日本に返される、こういうことになっているのです。現在そういうことで実際行なわれておるわけでしょう。そうすると、沖繩が返ってくれば当然この条項は沖繩に適用され、沖繩における航空の管制も、基地の周辺を除いては、日本政府に属するということになると思うのですけれども、その点、間違いないですか。
  73. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) それはただいまも御指摘のありましたように、時の変遷とか事情の変更によって合意される、そして国会に御承認をいただいたワクの中のものであるならば、これはある程度流動的で差しつかえない性質の問題である、こういうふうに理解いたします。
  74. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、これはたいへんなことになるわけですけれども、「ある程度流動的である」ということになりますと、沖繩については航空管制権は依然としてアメリカ軍が持っておるということになれば、これは本土並みでも何でもなくなってしまうわけで、そういう取りきめに基づいていま言われた合同委員会での合意書に関連して実施される事項とか、そういうようなものについては、沖繩について個別に取りきめを新たにしていくと、本土と違ったということになるわけですか。
  75. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) それはいまも申しましたように、地位協定ワクの中、あるいは交換公文のワクの中の技術的な問題については、従来もそうであると同様に、本土並みの中で、そういうことは、いまも御指摘のように、ときによって改善といいますか、改正されておるわけでございますから、地位協定ワクの中であるならば、一向、本土並みと変わりはない、かように存じます。
  76. 春日正一

    ○春日正一君 私は、「ワクの中」といっても、航空管制権というようなものは非常に大事なものでしょう。アメリカなんか、裁判権は何だとかどうだとか言って、なかなか施政権を放そうとしないけれども、日本の施政権の中で航空管制権というようなものは非常に大事なものでしょう。そういうものが、ただその「ワクの中」だということで随時離されるというようなことになれば、沖繩に対してはそういう意味で幾らでも例外がつくられていくということになる、いまの基地の現状にあわせて。本土並みだということの意味は一体どういうことになるのか。名目的なものになるんじゃないか。そういう意味で私、もう一度確かめてお聞きしますけれども、この航空管制権についての問題というのは、そのままストレートに沖繩に適用されるということになるのか、あるいは沖繩については別に合同委員会で話をきめるというのか、そこをはっきり聞かせていただきたい。
  77. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これはあくまでも、前前から御答弁しておりますとおり、安保条約に関連する諸取りきめは、そのまま何の変更もなしに沖繩に適用される、これがあくまでも原則でございます。
  78. 春日正一

    ○春日正一君 それでは、これを適用されるというふうに受け取ります。  それからもう一つだけお聞きしますけれども外務大臣、この前の国会の答弁で、「沖繩返還に際して本土と異質の基地地位協定を適用できるようにこれをあらかじめ改定するようなことはしない」というふうに答弁されておいでになります。それから、「本土の地位協定をかぶせない基地の実態が沖繩にあるとしても、それは地位協定をどうするという問題ではなくて、サブスタンス——実質の問題である返還交渉の中で処理していくべき問題である」というふうな答弁もされております。そこで、返還協定でカバーできない実質ということで政府が検討した結果たとえばどういうものがあるのかという点をお聞きしたいし、もう一つは、そういう返還協定でカバーできない、あるいはいまの地位協定でカバーできないような問題は、これはやはり排除する。返還協定でカバーできないものをそのまま置いておくということになりますと、たとえて例を言いますと、最初の安保のときに、安保体制に移行するときに五十くらい日米間で合意できない基地があって、これは合意できないからということで、そのままずっと移行してきて、いまでもその一部は残っておるというように私聞いておるんですけれども、結局、そういうことになってしまう。沖繩にいまある実態があって、それが、日本の地位協定の立場あるいは返還協定で交渉しても一致ができないということでそのまま残されていたら、結局、本土並みというような実態はつくられないんじゃないか。そういう意味では返還協定でカバーできないような実態は排除するということを原則としていかなければならぬのじゃないかと思うんですけれども、その点だけお聞きして私の質問は終わります。
  79. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私が申しました趣旨は、主として地位協定というものを変えるのではないかという角度に立ってのお尋ねが、春日さんからの御質疑だけではなくて、ほかの方からの御質疑の中にもそういう趣旨が出て、そうしてそれを受けてお尋ねになりましたから、私は、地位協定沖繩返還までに改定するということは考えるべきではないと思います、地位協定をそのまま適用するというところに本土並み返還の意義があると思いますと、こういう趣旨を私はくどく申し上げたわけでございまして、その考え方は全然変わっておりません。
  80. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 速記ちょっととめて。   〔速記中止〕
  81. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 速記をつけてください。
  82. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 初めにお尋ねしたいことは、北方地域の海辺を警備する巡視船の件であります。現状として、十分にその役割りを果たしておられるかどうか、その辺からお尋ねをいたしましょう。
  83. 上原啓

    説明員(上原啓君) お答え申し上げます。  現在、北方関係と申しますと、手前どもの出先といたしましては、第一管区海上保安本部に属します根室海上保安部と、そのまた指揮下にございます羅臼海上保安署がございますが、それらに配属されております巡視船艇は、根室保安部自体におきまして三百五十トン型巡視船二隻、それから十二メータ一型巡視艇一隻、羅臼におきまして二十三メーター型の巡視艇一隻、こういう状況でございまして、通常の北方関係の業務につきましては、現在のところ支障を来たしておりません。これらの船艇は、修繕とかなんとかというようなことで行動できません場合には、釧路とか、函館とか、他の基地から巡視船艇を回すということによってまかなっておりますので、現状におきましては特に支障を感じておりません。
  84. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 現地のいろんな方々意見をお尋ねになった上でのお返事でございましょうか。私、先般視察に参りまして、それぞれの方々にお目にかかってお話を承りました。本部長にも会いましたけれども、現状としてまことに情けないというのが結論だったのです。私、いまなぜこのことを——きょうはほんとうは運輸大臣の出席を求めたのですけれども、何か病気のために出られないということで、やむなく長官に御出席を願うということになったわけであります。できれば昭和四十六年度の予算にぜひとも計上してもらいたいと、それを獲得するための働きかけを強力に展開してもらいたいということを申し上げたいためにそういう話を申し上げているわけであります。少なくとも現状においては、海難救助の面でも十分にその機能を発揮することは残念ながらむずかしい、こういうお話等も承りました。もちろん隻数についてはふやすということもなかなか困難でございましょう。せめてその装備の点でもっと優秀な船を回してもらいたいというのが現地の実情であったわけでありますけれども、その辺はいかがでございましょうか。
  85. 上原啓

    説明員(上原啓君) お答え申し上げます。  四十五年度の予算で新造いたします予定の二十三メーター型の新しい型の巡視艇一隻を根室の海上保安部に配属する予定でございます。そのほか。四十六年度の予算におきましては、これはまだ海上保安庁部内限りの計画でございますが、釧路に所属しております老朽化いたしております大型巡視船の代船といたしまして、一千トン級の大型巡視船を代替新造を要求したいというぐあいに考えております。これは相当行動力もございますし、特に救難なんかにつきましては、相当威力を発揮するものと、このように期待しておる次第でございます。
  86. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 ですから、私はことばじりをつかまえて言うわけじゃありませんけれども、今日までは支障がなかったとおっしゃっている。そのあとでお尋ねをしてみると、昭和四十五年度の予算でもって新造船が配備になると、まあこういう、お話と若干矛盾したお答えをいただいたわけであります。それはこれからの問題でございましょう、今後配備されるであろうその巡視船、いま具体的な速力であるとか等々についてはお尋ねをしませんでしたけれども、はたして十分に業績をあげ得られるという確信がございますか。
  87. 上原啓

    説明員(上原啓君) お答えを申し上げます。  まあ、十分にとおっしゃいます意味が、どの程度のことかよくわかりませんが、現在海上保安庁の技術といたしましては、現在海上保安庁全体の勢力を占めております約三百隻の巡視船艇のうちでは最も性能の優秀な船艇となる、そういう予定でございます。
  88. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 まあ、一番問題にされているのは、レーダーがどういうものがついているか。現在の「くなしり」と「ゆうばり」でございますか、この二隻のレーダー、まことに貧弱だということであります。それが一つ。それからもう一つは、流氷の時期に万が一流氷に接触した場合、耐え得られるだけの能力を持っているのかどうか。そういうふうなことが、海難救助の場合であっても、あるいは不幸にして拿捕された船員を迎えに行く場合においても、非常に重要なポイントになりはしないだろうか。あるいは拿捕の危険にさらされているいわゆる危険水域を航行している場合に、相当の速力がありませんと、まあ、ああいう広い公海上でございますから、なかなか徹底しがたい。しかも、先ほど申し上げたように、レーダーが弱いために、なかなか映らない場合もある、こういう話まで聞いておるわけであります。そういったものを一切、もちろん本庁としてもそういう実情を報告も受けておられるであろうと思いますし、そういうことを全部含めた上で、ただいまお話がございました新造船は十分にその能力を発揮することができると、このように理解してよろしゅうございますか。
  89. 上原啓

    説明員(上原啓君) お答え申し上げます。  レーダーその他の装備につきましては、確かに若干不備な面があるかと思っております。当庁といたしましては、もちろん一基は全部装備さしておりますけれども、さらに予備機の装備というような問題がございまして、これは早急に実現したいと思っております。  なお、耐氷構造の問題につきましては、現在三百五十トン型程度の船舶では耐氷構造にするということは非常に困難なことであるというぐあいに理解いたしております。現在氷の中でも若干の行動ができますのは「宗谷」一隻でございまして、冬季におきましては「宗谷」を北方に回すということはこれは常例となっておる次第でございます。
  90. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 結論的に申しますと、いま私はむしろ改善してもらいたいという意味で申し上げているんでありまして、十分私の申し上げている意図をくまれて改善できるということでございますね。念を押してお尋ねしておきますよ。
  91. 上原啓

    説明員(上原啓君) 先生の御意見、まことにごもっともでございまして、予算の状況その他許します限り、特に現地の職員たちが安心して士気高らかに国境警備の仕事ができますように、装備の改善その他につきましては、できるだけの努力をいたしたいと存じております。
  92. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 巡視船と同様に、もっと高度な面から海難救助等をやる場合に、航空機の使用ということがやはり非常に大事ではないか。残念なことに全天候の飛行機が一機もない。しかも、千歳空港に二機待機して、何かあった場合でも、千歳空港から飛んでこなければならない。これでは、もう実際事故があってから捜索に乗り出すまで少なくとも二時間ぐらいはそこで浪費をしてしまう、何とかその点もならないものでございましょうかという切実な訴えを聞いてきたんでございますが、そういう点の改良は将来においてなされるおつもりでございますか。
  93. 上原啓

    説明員(上原啓君) 申し上げます。  航空機の関係につきましては、現在当庁では、普通の飛行機十機とそれからヘリコプター十機、合わせて二十機を持っておりますが、遠距離行動ができますのはYS11型の改造型一機にすぎない次第でございます。したがいまして、当庁といたしましては、まず救難その他の長距離行動ができる航空機の充実を第一に重点を置くべきであるという考え方から、来年度の予算におきましても要求いたしたいと存じておりますし、特にYS型につきましては第二機目の建造はもうすでに決定しておる次第でございまして、まず絶対量をふやすということを最大の眼目といたしておる次第でございます。
  94. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 長官もつい先ごろ北方地域視察して帰ってこられたばかりであります。私たちと入れかわりに行かれたそうであります。おそらくいま私がお尋ねしているその点については、前回航空局長もやられたそういうお立場から、おそらくいま次長がお答えになったように、航空機の配備という問題については非常に大事な問題ではないか、これは間違いなく昭和四十六年の予算に要求されますか。
  95. 手塚良成

    説明員(手塚良成君) 初めにおわびを申し上げておきますが、公害対策委員会のほうで御質問が予定されておりましたので、待機をいたしておりましたために、当初からこちらにお伺いできませんで、たいへん申しわけございませんでした。  いま御質問の飛行機の点につきましては、海難救助あるいは警備という立場に立ちました場合に、飛行機のスピード、航続距離あるいはこれによる直接救助というような観点から見ますと、非常にこれが高能率でありますので、船艇ももちろん充実をいたしたいと思いますけれども、特にこの航空機による面というのが私ども非常に現状においては弱いというふうに感じております。したがって、この航空機自体についての強化という点を今後急速に進めたいと、なかんずく、ただいま次長も御答弁申し上げましたように、遠距離用のものについて航空機の内容が現状は非常に貧弱だと考えますので、その遠距離海難救助、警備に必要な航空機、これを整備いたしたいと思っております。来年度当面大型のヘリコプターを予算要求をするということに実は先般おおむね省内において確定をいたしました。来年ではそう一挙に多数は要求はできないと思いますけれども、ぜひ要求をして実現をはかりたい、かように考えております。
  96. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 せっかくそういう方針で予算要求をされるにあたりまして、もう一つ、一番現場に近い地域、たとえば根室でもけっこうでありましょう、あるいは羅臼周辺でもけっこうでございましょう、ヘリポートをつくって、新しく最も高性能のあるいはシコルスキーでもけっこうでございます、そういうヘリコプターの配備というものは考えられませんか。
  97. 手塚良成

    説明員(手塚良成君) 大型ヘリコプターを入手いたしました暁に、これをいかなる方法で機動力を発揮させるかということにつきましては、ただいま慎重に検討いたしております。先生のおっしゃいますように、沿岸重要なるところにできるだけ多数のヘリポートがありますと、いろいろな意味においてこれは便利であるには違いないと思う次第でございますが、やはりいろんな関連もございますので、そう多数もいかがかということで、現状北海道内の各飛行場を見ますときに、一応それぞれ海難救助上あるいは警備上重要と思われます場所には民間の飛行場もございます。そういったところで一つの根拠地をきめまして、そういった飛行場を活用いたしますならば、必ずしも多数のヘリポートを独自の立場において持つ必要はなかろうというふうに考えております。来年の予算におきましてはそういった意味の要求は、ただいままだ、飛行機そのものの入手の時期から見ましても一年先に延びますので、さらに今後検討をいたしました上で結論を得たいと思っております。
  98. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 話がちょっと前後しましたけれども、巡視船のほうに話を戻します。巡視船の内部構造を見ましたときに、非常に奇異に感じましたことは、先ほどの御説明にもありましたように、最も必要と思われるレーダーの装備は弱い、貧弱であるというのにかかわらず、機関砲を備えているわけです。ナンセンスな話なんです。一体機関砲は何のために必要なのか。あんなものはないほうがむしろよろしい。実際困るらしいんですよ。一年に一回とか二回形式的に演習をするんですと、こう言っていました。何のための演習かと、こうなるのです。軍艦でもない。その辺にも、やはり船をつくられる場合に、もっと巡視船なら巡視船らしいそういうつくり方というものがあると思う。何といっても最大の眼目は漁船の拿捕されるのが未然に防がれるということ、あるいは海難にあった人たちを緊急に救助する。しぼって言うならば、その二点に集約されるのではなかろうかと私は思う。したがいまして、そういうところにもっと金をかけた能力の高い船をつくっていただく必要があるんじゃないか、先ほどの御説明で、私はそこまで触れずにお伺いしましたが、近く一千トンの船もできることであると。そういう新しい船については、いま申し上げたようなやはり装備があるんですか。
  99. 手塚良成

    説明員(手塚良成君) 巡視船の装備につきましては、私どももできるだけ高性能のものにいたしたいということは、先生の御指摘のとおりに考えております。ただ、先ほどすでに説明があったかとも思いますが、現状持っております巡視船につきましては、必ずしも最新鋭のものばかりではございませんので、すでに耐用年数が来ておるもの、あるいはその間近なもの等がございまして、それが過去の経緯からいたしまして、いまの機関砲等、必ずしも現実面で直接役に立たないというようなものを積んでおる船が相当数あるわけでございます。これらのものを、年を追いまして、一定のスケジュールのもとに代替建造をするという方針をただいま進行中であるわけです。そういった中で新しく来年、これも特に要求をいたしたいと思って内定をいたしておりますものに、千トンの船への代船を考えておりますが、こういった船につきましては、ただいまのようなレーダーその他最新鋭のものをできるだけ多数整備をして充実をしたい。なお、いま巡視船の中でそういったような整備が全部整っておるわけではございませんが、少なくともここ数年来代船建造で進捗をしておりますような巡視船については、そういったレーダー等の搭載は、これは実施をいたしております。さらになお、新しいそういったものがどんどん開発される時期でございますので、できるだけそういうのを取り入れたい。なおまた、保安庁の巡視船その他現実の問題といたしまして、実質的な増強といいますか、数量的な増強がなかなか困難な現状でありますので、特に整備等、性能等を向上させることによってそういった実質的な増強をはかろうと考えておりますので、そういう意味からも、搭載の装備につきましては、できるだけ新しいものを充実さしていきたいと、かように考えております。
  100. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いずれにしても、一面においては漁民の生命を預かるという大事な役割りを持つ保安庁でありますので、昭和四十六年度の予算要求にあたりましては、いま答弁がありましたような方向に向かってぜひともその改革をしていっていただきたい。いずれ昭和四十六年度の予算審議が通常国会で行なわれるであろうと思いますけれども、運輸大臣のほうにも長官から強力にそれを申し入れをされて、万全の体制を特にその北方地域においては確立をしていただきたい、航空機を含めて申し上げておきたいわけであります。  そこで、巡視船等に携わっております公務員の方々、この方々の給与は別といたしましても、やはり厚生関係の恩恵というものが、一般と比較してみますと必ずしも良好であるとは言えない、そういう実情を聞いてまいりました。この点についても特にああいうへんぴなところでございますので、いろんなことを考えられて、希望を持った仕事ができるようないわゆる環境にしていくという努力はされているだろうと思うんでございますけれども、この点についていかがでございますか。
  101. 手塚良成

    説明員(手塚良成君) 非常にあたたかい御質問で感謝いたすわけでございますが、私どもも、ああいった辺境の地におきまして、人命救助という最も大切なことに携わっております巡視船艇あるいは救難用航空機に関与をいたしております船員、搭乗員等につきましては、できるだけ現行法体系の中におきます有利な条件に当てはまるように努力をしております。まあ、あの地におきまして、いろいろ御陳情をお受けになったと思いますが、そういった一般給与的な面のほかに、やはり住居等につきましては必ずしも十分にはいってない。有事即応の体制におきまして、できるだけ船あるいは飛行機の近くに住居を持たなければなりませんものが、必ずしもそういうものが十分にいっていないという点などにつきましても、私どもは常時そういう面の改善をはかるべくいろいろ努力をいたしておりますが、来年度予算におきましても、そういった手当、あるいは住宅問題あるいは庁舎等につきまして、できるだけの努力を払って、あの地域で奮闘しております連中の努力に報いたい、かように考えております。
  102. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 次に、旧漁業権の補償ついてお尋ねをいたしたいと思います。  まあ、この問題については今日までしばしば論議されてきたいきさつがありますが、北方協会の設立に伴って旧漁業権者に対しての補償というような形をとって一応の終止符が打たれたというふうになっておるわけであります。しかし、現実に地元に行っていろいろな方々に伺ってみますと、やはり生活条件の格差がございます。たとえば更生資金を借りよう、あるいは事業資金を借りようという場合でも、保証人が必要であるし担保が必要である。まあ、引き揚げ者が着のみ着のままで帰ってきておる現状から考えてみれば、担保もない、保証人もない。結局は窮迫したそういう生活の中に追い込まれておる。まあ、そういう数字的な面については資料によって明らかにされておりますけれども、ただ、この北方協会だけを見て、旧漁業権者に対しての一応の恩恵を与えた形になっているのだから、行政権の及ばない今日、すでに一切の補償というものは消滅したと解釈されるというようなことをもう一ぺん洗い直してみて、いわゆる道義的な一面から、旧漁業権者に対する補償の手というものは差し伸べられないものかということからお尋ねをしていきたい。これはまず最初に水産庁長官にお尋ねをし、それから山中総務長官にあわせて今後の基本的な考え方というものをお伺いしてみたいと思います。
  103. 大和田啓気

    説明員大和田啓気君) 北方領土における旧漁業権の補償の問題は、実は十年前後議論がある問題でございまして、私どもしばしば各省庁関係者が集まりまして討議をいたしました結果、現在のいわば統一された見解といたしましては、昭和二十一年のいわゆる行政分離措置によりまして北方領土にわが国の法令が適用されない状態になりましたことから、その時点ににおいて旧漁業権は消滅したと、したがいまして、昭和二十五年から二十七年にかけまして私ども漁業制度の改革をやったわけで、それに伴いまして補償措置を講じたわけでございますけれども、その当時におきましては補償の対象となるべき漁業権はすでに北方領土においては消滅しているというふうに考えざるを得ないというのが結論でございます。ただ、それだけで問題が処理されるわけではございませんので、そういういまいろいろお述べいただきました事情等を勘案いたしまして、当時の北方協会、現在の北方領土問題対策協会に十億円の国債を財源として旧漁業権者等に対して生活資金あるいは事業資金等の貸し付けをやっておるわけでございまして、漁業権の補償という形ではこの問題はなかなか前進をいたさない、むしろ、十億の国債を財源として北方領土問題対策協会においていろいろな措置を今後ますます努力をして検討していくということに私どもつとめるべきだというふうに考えておるわけでございます。
  104. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 大体解釈は水産庁長官の述べたところが政府の統一見解となっているわけでありますが、かといって、国債の償還年次が参りましたときにこれを一挙に関係者が分配してしまうということになりますと、実質上私たちはやはり壁が厚くても日本に返してもらいたいということを言っておりますので、返ってきたときには、漁業権をもと持っていて現在は補償を受けて持っていないのだという形になっても、また理論上困りますし、そこらのところは地元の関係者方々の意向をよくくみながら、なおかつ、償還時が参りましても基金の性能を果たしながら、消滅した形ではあっても、復帰後においてはそれが足がかりとなって再び漁業その他が営まれるよう、特に漁業において既得権というものが一応存在しておる、復帰した時点においては再び存在するわけでありますから、それらの点において、完全消滅の形まで、十億を漁業権の補償だとは完全に言っていないということでありますから、その解釈のとらえ方を、漁業補償とも言わず、かといって漁業補償にかわるべきものであるという解釈も成り立つということくらいでしばらくおいていって、外交交渉の落ちつく先を見るべきでなかろうかというふうに考えておるわけであります。
  105. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 なるほど、今後の外交交渉の推移を見た上でという、言うなれば、あるいは気の長い話かもしれないということを心配するわけであります。御承知のとおり、北海道におきましては、道庁はじめ、一致して旧漁業権に対する補償をやってもらいたい、これはもう切実な願いがございます。おそらく二十五年間にわたって繰り返し繰り返し国会等にも陳情が出されてまいったわけであります。それは水産庁長官もよく御承知のとおりであります。確かに北方協会の性格等から考えてみましても、完全な補償というわけにはもちろんまいらない。しかし、いま望んでいることは、将来のことは将来といたしましても、これから十年たち二十年たってまいりますれば、引き揚げ者はおそらく半減し、あるいは全部引き揚げ者といわれるような人たちはいなくなるであろう。新しい世代になった場合、かりに返還になった場合でありましても、今度漁業を興す方々は次の世代がとってかわるということになれば、そういう面から考えましても、やはり喜ばしい政治の恩恵というものをいま与えてあげることが一番望ましいのじゃないだろうか。道理の上から考えましても、どうもその辺がすっきりしないのですね。なるほど、その法律的な面からいえば、一刀両断で、もう補償の対象ではないのだと。学者の意見等においてもそういう見解を持っておられる、あるいはまた、補償の対象として留保されるべきものであるという見解を持っておられる方等々、いろいろあるわけであります。そうした中で、やはりことに零細漁民が多いわけでございますので、そういった方々を対象としても、私はこの際、もう一ぺんいままでの旧漁業権というものに対しての考え方を洗い直していただきまして補償すべきではないか。これからまた検討する、考えてみようというのでは時間がいたずらに経過するばかりでありまして、そのときになってみて補償を与えても、いま一番ほしいときに与えられた場合と、はたしてどういう結果が生まれるであろうかというような点も当然考えなければなりませんので、再度水産庁長官としては、いままでの経験の上に立たれて、いろんな人の意見等も踏まえながら、やはり国としての施策の一環として当然この旧漁業権者に対し補償すべきではないかという、そういう対策を、まっ正面からお取り組みになって、お立てになる御用意があるかどうか。
  106. 大和田啓気

    説明員大和田啓気君) 私ども、この問題につきましては相当深刻に考えて、ずいぶん長い間かかって討議をいたした問題でございまして、旧漁業権者に対する補償という形では私は問題はなかなか進まない、そういうふうに考えます。そうして、この協会に対する十億円の交付金をどういうふうに今後も活用していくかということに問題を考えることが、より現実的ではないかというふうに考える次第でございます。
  107. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 ならばですね、十億円の国債のワク内で十分な成果をあげられるであろうかということを考えますと、現状はそういっていないのですね。たとえば十億の中からあがる利息が六千万円と、こういわれております。もうすでに管理費だけで三千万円以上かかるといわれておる。そういうようないま非常に苦しい状況にあって、現状として、はたして手直しをしなくてもいいのかどうか、これまた問題ではないだろうか。この点については、むしろ山中総務長官に、今後のそういう取り扱いについてどうしたらいいのかというお考えがおありになるだろうと思いますので、お述べをいただきたいと思います。
  108. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 最近どうも気になるできごとが二つほどございました。一つは、ポツダム宣言の加盟各国に対するブレジネフ書簡というもの、すなわち、戦後の境界はこのままでもう済んでしまったこととして固定すべきであるという言い方と、それから、最近ドイツとの間に協議がととのいつつある、二国間における大戦末期の停戦時の領土に対する合意というような傾向を見ますと、日本が、ただでさえいままで厚い壁に苦しんでまいりました北方領土の交渉相手の依然として強固な壁というものが、だんだんそれをソ連の国家政策として、個別にではありますが、ゆるぎない姿勢を打ち出しつつあるような気がしてならないのであります。そういうことを考えますと、ただいまあなたが御心配されますように、一体、観念の、ことば上のもてあそびに終わってしまうのではないか。いつのまにかそれらの人たちはすでに二十五年、さらに今後何年一体待たされるのか。待ってその日が来るのか、まことにわれわれとしては残念な見通しも一方においてはあるということを考えます場合に、しからば、最も悲観的な見方に立ってそれを考えますと、領土を放棄するとかなんとかということは別にして、現実的に悲観的な見方に立った場合に、いまの十億の交付公債見返りの果実をもって細々と生業資金、漁業資金その他の援助をしている姿このままでいいのかどうか。これは私自身も政治家として心の中に考えるところがございます。しかし、ここでいままでやってまいりました制度を基本的にどう変えるつもりですとか、あるいは、どういう方針に転換いたしますというところまでの具体的な結論には立ち至っておりません。率直に私の最近の不安な気持ちを申し上げただけでございます。
  109. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 たしか水産庁長官は四時に出られるそうでありますので、もう一ぺんお尋ねしておきます。  拿捕漁船に対して保険がかけられますね。ところが、あれは組合がかけるようになっておるのか、事業主がかけるようになっておるのか、私、こまかいことは知りませんけれども、現状として保険がつけやすいようになっているのか。保険がつけられないばかりに、拿捕された、それで保険金がもらえない、こういう悲しい事実も聞いております。その辺の運用というものは合理的に行なわれているのでございましょうか。
  110. 大和田啓気

    説明員大和田啓気君) 拿捕に関連いたしまして、保険関係で申し上げますと二つございます。  一つは、漁船の特殊保険、それからもう一つは抑留された場合の漁船乗組員の給与保険でございます。  漁船の特殊保険につきましては、これは十分行きわたりまして、最近の拿捕された船につきましても、保険にかかっていなかったという場合は、私ども非常に少ないというふうに承知をいたしておりますわけでございます。  それから、乗組員の給与保険でございますが、これは保険料を事業主がかけるという関係で、あるいは、ときとしてこの保険にかかっておらないで拿捕された船員がございます。これに対しましては、わずかでございますけれども、国が見舞い金を差し上げておるわけでございます。まあ、私ども、こういう船員の不安ということを解消いたしますためにも、できるだけ安全操業ということを強力に進めてまいっておるわけでございます。現状といたしましては、船あるいは乗組員等につきまして、それがほとんど効果がない、利用されている向きが非常に少ないという状態ではございませんで、ただ完璧な状態ではないというふうに申し上げてよかろうと思います。
  111. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 漁船の形、トン数等によってかけられる保険金額にもいろいろ種類が出てくるのは当然だと思うんであります。国で再保険をする限りにおきましては、この際民間の保険会社に責任を持たせるという考え方はできないものなのかどうなのか。いわゆる年間を通じての契約をきちんとやって、保険のかけ忘れということがないような、そういう配慮あるいはその指導というものがなされるべきではなかろうか。少なくとも拿捕された場合におきましても、損害を最小限度に食いとめることができる。それで次の機会に再びその保険金でもって漁船を建造するなり装備をするなりして操業に従事できるというような方向に向けてあげられはしまいかという、これは私のたいへん中身を知らない質問かもしれませんけれども、その辺はどうでございますか。
  112. 大和田啓気

    説明員大和田啓気君) 国が再保険をいたしております漁船保険のほかに、大型の漁船につきましては民間の保険をやっておるわけでございます。しかし、百トン未満の船につきましては、政府において掛け金について国庫負担を相当やっておるわけでございますので、いわゆる漁民が使います漁船については、ほとんど全部国営保険に乗っているというのが現状でございます。また、この保険事業は特殊保険を含めまして漁船組合がやっておるわけで、漁船保険組合が実施いたしておりまして、これは漁業協同組合とも密接な関係を持って仕事をいたしておりますので、まず漁船保険あるいは特殊保険に対する啓蒙宣伝というのは私は相当行き届いておる。その点の御心配は私はあまりないのではないかというふうに思います。
  113. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 ところがですね、おっしゃったほうが間違っているのかどうかわかりませんけれども、少なくとも聞いた範囲では、百トン未満の船についてはその危険を負担する期間が三ヵ月である、三カ月が切れればまた新しく保険をつけなければならない。たまたまその日が日曜日であった場合に、業務が完全に停止されているために、保険をかけるにもかけられない。かけないままに操業に出かけてしまって、漁船が拿捕されて非常に困っておるんですというのが漁業協同組合の代表者からの意見であったわけです。そうしますと、いま長官の御答弁から伺いますと、その辺がずいぶん矛盾しているんではないか。そういうことがないように、私は先ほど申し上げましたような御質問を申し上げているわけです。
  114. 大和田啓気

    説明員大和田啓気君) 三カ月の保険期間というのは特殊保険の場合でございます。あるいは特別な例として、いまお話しになりましたようなまずいケースが私はあったのではないかというふうに思います。これは漁船保険組合あるいは漁業協同組合に対して私どもの指導もあるいは徹底しておらない部分があるのかと存じますが、今後そういう例がないように十分注意して漁船保険組合あるいは漁業協同組合の指導に当たりたいというふうに考えております。
  115. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 その点は、念には念を入れて御配慮をしていただきたい。たとえかりに一人でもそういう方があったとしても、これは行政指導の上でまことに遺憾であると言わざるを得ないのでありますので、私が申すまでもなく、いままで拿捕されて帰ってこられた方々、再建不可能というようなケースが非常に多いということも聞き及んでおります。せめてその危険を最小限度に食い止める一環として、その辺の行政指導というものの万全を期していただきたい。私は再度その点をお願いをしておきたいと思うんであります。  それから、漁業権の補償については、たいへんむずかしいという、結論から申し上げれば、そういうようなことになると思います。で、山中長官に再びこの問題について申し上げたいことは、現在扱われております十億円の基金、これをふやすお考えはないかどうか。
  116. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) そこらの問題も含めて、私、先ほど答弁をしたつもりでございますが、いま結論として、ふやすとか、あるいはもう一ぺん再検討するというところまで、私、到達いたしておりません。非常に厚い壁をますます——引き揚げてきて、一日千秋の思いで自分たちの墳墓の地を待っておられる人たちの希望の灯がだんだん薄くなっていくような気がしてならない。その点を政治家としてこのころ考えるところがあるということを申し上げたわけでありまして、まだ十億円をふやすという具体的な問題に取り組んでいるわけではございません。
  117. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 次にお尋ね申し上げたいことは、沖繩返還と比較いたしまして、この北方領土の問題は、とかくいままで隠れた存在としてあまり国民的な世論というものを巻き起こすだけの迫力というものに乏しかったのではないかということを非常に残念に思うわけであります。むしろ沖繩と同様に、あるいは面積その他の資源等から考えてみれば、沖繩よりもと言いたいくらいに重要な問題である。こういう点から、沖繩返還もきまった昨今、勢い、これから北方領土に向けられるであろうということは時の趨勢であろうと思います。そうしますと、一体、国民の世論というものを喚起するためには、やはりイニシアチブを持っておられる政府が先頭に立たれてやるべきでありましょう。もちろん、それぞれのいろいろな組織がいまパンフレットをつくったり、あるいはチラシをつくったりして、相当懸命な努力を続けておられることもわれわれ承知をしております。けれども、限られた資金で限られた範囲でもって啓蒙宣伝をこれからも強力に推進していこうということには限度がやはり私はあるであろうと思う。したがいまして、沖繩返還と並んでやはり国民的な世論を啓発するためには、あるいは対策庁のほうにおきましても、鋭意、どうしたらいいのかという基本的な考え方を持っていらっしゃるのではないだろうか。むしろ、いままでこうした問題が相当激しく取り上げられてよかったはずなんでありますけれども、残念ながらあまり表面化されなかったといううらみがございます。したがいまして、この問題について、今後、どういう方針に立って臨まれていくのか。この辺の考え方をお尋ねしておきたいと思います。
  118. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) とりわけてきわ立った目立つようなアイデアがなかなかないのですけれども、いつぞや答弁もいたしましたとおり、郵政大臣に、発行する切手に北方領土がきちんと組み込まれて、何のための切手だろうと見たところ、北方領土が明確に国民の意識に浸透するように、あるいは再び北方領土に対して国民が目ざめるようにという意味の切手であるというようなことがわかるようにしてもらえないかというようなことを頼んだことがございますが、いまだ実行段階に来たという返事を承っておりませんけれども、それはささたる例ではありますけれども、あらゆる機会をとらえて、わざわざ「北方領土刊行物」というものではあるいは興味のない人は見ないかもしれませんし、やはり自然にそれを見てもらうにはどうしてもテレビ等の利用というのが非常に効果がございまして、広報番組の中等においては、北方領土の問題をなるべく重点に取り上げるように配慮もいたしております。現在は沖繩の問題がたいへん焦眉の問題をたくさんかかえておりますので、放送の中身も沖繩の問題が番組としては多いのですけれども、それでも題名は「南の島北の島」というて、あまり芸がないのですけれども、いわゆる沖繩北方領土というものに関するテーマを主題にした番組でありますということで、その題名はそういう題名をつけておる。いろいろな苦労をしておるわけでありますが、なお、御指示の方向もよくわかりますので、知恵を出し合ってみていきたいと考えます。
  119. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 それから、これも啓発の一環となるでありましょうけれども、特に青少年に対する教育、これはもうすでに昭和四十六年度の予算に盛り込むという方向が打ち出されているようでありますけれども北方領土のことについてせめて教科書の中に盛り込んで、次代を引き継ぐ青少年が北方領土の何たるかを十分に理解をする資料にしたい、これも現地としては非常に強い要望がございます。これも予算要求の面では大体政府考え方は固まったのでございましょうか。
  120. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) まだ、沖繩と並び北方問題につきましては予算を第一ラウンドもいたしておりません。午前中ですか、先ほども申しましたように、八月三十一日締め切りの沖繩・北方の予算を除きました予算にいま全力を傾けておりますので、それらの問題につきましては、予算の積算のしかた、あるいは文部省との連絡その他についての具体的な私の段階における動きをまだいたしていないのでございます。
  121. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 時間がありませんので、あと一、二、はしょって申し上げて終わりにしたいと思いますが、北方領土の問題については、もっといろいろな角度から別の機会にお尋ねをいたします。  次に、沖繩の問題についてお尋ねをするわけでありますが、過般の委員会におきまして長官は、返還以前においても、なし得るあとう限りの範囲で実現させたいという構想を述べられております。特にその中にはいろいろな問題が多岐にわたりますが、いまやはり現地側として一番強く日本政府に対して願っていることは、産業の振興、あるいはその立ちおくれている福祉行政の強化拡充と、こうした問題にしぼられはしないかと、こう思うのでございます。産業の振興と一口に言いましても、非常に中身がいろいろな要素を持っておりますので、一がいには言えないと思うのでございます。直接その住民に関係のある福祉行政について、昭和四十六年度の予算編成ももうそろそろ締めくくりの段階に来ているのであろうと思われるのでありますけれども、特にこの最も要望されております中に、病院が少ない、あるいは身体障害者関係の施設が少ない、保育所等も当然でございましょう。そういう差し迫った問題がございます。せめて返還の前に国としてこうした問題の解決をはかってあげることが現状として最も大事なことではないだろうか、このように思うわけですけれども、その辺は相当進んだ状態において取り組まれていらっしゃるのでございましょうか。
  122. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) たびたび申し上げておりますとおり、復帰前にでもできれば本土並みにこぎつけなければならないものとして、私は教育と社会保障をあげました。その社会保障制度の中で医療から、あるいは保育所から、その他の社会福祉施設万般に至る立ちおくれというものがたいへん目にとまりますし、本土において結核の脅威はすでに過去のものとなっておりますが、沖繩では依然として結核というものがたいへん高い罹病率もしくは死亡率を示す。あるいは、文明国において私どもがすでに大体排除し終わった形になっておりますハンセン氏病等については、まだまだ沖繩においては密度が高いといいますか、気の毒な環境の方が多い。これらのことを考えますと、やはり社会福祉施設に対する国の予算というものを、補助、融資その他を全面的に本土並みに手厚く開始いたしますると同時に、琉球政府自体が、復帰前の予算において十分に財源上の手当てができまするような配慮を、四十六年度予算では重点項目として、社会保障政策、社会政策費というものを盛り込んでいきたいと考えて作業中でございます。
  123. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 最後に、産業々々と言うよりも企業誘致、これもけっこうであるけれども、現在東京を中心としてたいへんな影響を与えております公害、これを非常におそれているようであります。おそらく有名企業が進出をいたすことになりますれば、必然的に公害の問題が出てくるであろう。たまたま長官は公害対策の副本部長に就任されたといういきさつもありますので、この点についての関連と、それから、公害防止に対する、しかも、よごれていない地域でございますだけに、どのような考え方を持ってこれから対処されるのか、それをお尋ねして私の質問を終わらしていただきます。
  124. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これもたびたび申し上げておりますし、現地でも琉球政府主席その他責任者の方々等にもたびたび申し上げて注意を喚起しておるのでありますが、先般東京に持ってこられました琉球政府の「経済振興十カ年計画」というようなものの中においても、産業立地を中城湾、すなわち沖繩本島の最も人口密集地帯である東海岸に求めて設計をしておられます。私としては、これをなるべく北のほうに回すようにということで、工業用水の確保の問題をいろいろな角度から取り上げまして、北部に工業立地条件を定めるようにしたらよろしいと、すなわち、人口が比較的希薄でありますし、また、一ぺんにばい煙その他が平たん部をおおうような地形ではございませんし、相当な山を控えておりますので、そういう意味で、北のほうに設計してみてほしいということも言っておりますけれども琉球政府のほうの計画も長年の歳月を要した計画でありましょうから、そう簡単に変更もできなかったこととは思いますが、最近持ってこられました計画の中には、依然として中城湾を中核とし、都市の周辺に企業立地の適地としての青写真がつくられているわけです。私としては、やはり今後、計画は計画、実行は実行として、よく連絡もとりながら、なるべく公害問題等が起こらないように、一ぺん失われたならば再び取り返しがつかないもの、それが沖繩には一ぱいあるわけでありますから、私たちは沖繩で、戦争ですでに文化的な遺産、心のかてを多く失ったわけであります。その傷あとは大きく残っているわけでありますが、さらにこの上、美しい水や空や緑を失うようなことは絶対にしてはならない。かといって、沖繩のすべての人々の所得を向上させるための人口流失を防ぐ手段を講じなければならないたいへんむずかしい仕事を余儀なくされると思うんです。でありまするので、本土のほうの企業等で沖繩に企業立地を定め、もしくは定める可能性があるかどうかについての調査に参りまする人々は、必ず事前にお会いをいたしまして、私としては、なるべく人口密集地帯を避けていただきたい。サンゴ礁を埋め立てるのが単価が安上がりならば、北のほうの大浦湾その他にも安いところがあるんだから、ことに工業用水等も近くにあるんだし、ぜひ北に調査を進めてもらいたい。造船工業会も本部半島の渡久地湾等は適地と思うからぜひ足を伸ばして行っていただきたいと言って、私みたいなしろうとでございますが、たいへん差し出がましい口出しをしておるわけであります。そこらは一に、沖繩の人々をいかに今後繁栄の道をたどらしていくか、それに対して、繁栄の半面に本土がすでに苦い汁をなめつつある、繁栄の陰にいかに人間の尊厳の失なわれないようにするか、失なって二度と返らないものを失なわないようにするかということについては、日夜心を砕いておるところでございますが、意思の疎通を欠かないように、業界とも琉球政府とも今後とも十分に連絡をとって、そのような配慮をしてまいるつもりであります。
  125. 春日正一

    ○春日正一君 私は沖繩の医療——おもに医療保障の問題についてお聞きしたいんですけれども、初めに幾らか実体的な問題について事実をお聞きして、その上で社会保険の制度の問題、移行問題等をお聞きをしたいというふうに思います。  初めに結核、精神障害、ハンセン氏病、性病等の有病率ですね、沖繩と本土の比較、これを数字で聞かしていただきたいんですが。
  126. 山野幸吉

    説明員(山野幸吉君) まず性病について申し上げますと、これは主として各琉球政府の保健所が、本土と違いまして保健所でクリニック——一般住民の集団検診等を行なっておりますが、昭和四十二年度における性病患者は、梅毒が二千七百五十五人、淋病が千三百八十一人という数字になっておりまして、淋病のほうは昭和三十八年まで漸減の傾向を示していましたが、最近はややふえておるという実態であります。  それから保健所の実態でございますが、公衆衛生の第一線機関として保健所が中枢的な機能を果たしておりますが、これは本所が六カ所で支所が七カ所、出張所が十一カ所、こういうことになっております。しかし、これらの保健所は医療従事者が不足しておりますのと、それから結核在宅患者が非常に多いので、その管理、治療等のために本来の業務が非常に行き届かないという実態でございます。  医師の実態でございますが、昭和四十三年末で医師は四百四十七人、人口十万対四十六・三人、本土の昭和四十二年末現在における実数が百十一人でございますから大体三分の一、本土で最低の県が七十三人になっていますから、それでも二分の一強というような、医師の不足が非常に目立っております。まあ、これらを補いますために医介補とか歯科医介補とかいう制度がございますが、まあ、いずれにしても医師は非常に不足している。  医療機関につきましては、これは病院数が十九、診療所数が二百九十八、このほかに歯科診療所が九十九カ所あります。しかし、この病院数も、本土と比較しますときわめて数として不足しておる。  病床数は六千六百七十三床という実態でございまして、一般病床が二千九百八十床、精神病床が千二百九十八床、伝染病床が六十一床、結核病床が千十四床、らいの病床が千三百二十床、こういうことになっておりますが、この病床数も、ここでは一々比較を申し上げませんが、本土の水準と比較しまして、きわめて数の上からは不足しておるわけであります。  結核病患者につきましては、いま大臣からもお話がありましたように、まだまだ沖繩ではこの結核病患者が非常に多く、毎年相当数を本土の病院に収容しておるという実態でございます。
  127. 春日正一

    ○春日正一君 大体そういうことでありますけれども、まあ、私のほうで本土との比較を調べたもの、こっちで言いますから、もしえらい間違いがあったら、それは違っていますというように言っていただきたいんですが、有病率——結核で、沖繩が十万人について千百六十三、本土が八百九十五、こういう数ですね。精神病が二十六、本土が十三、約倍。それからハンセン氏病は十九、本土が一ですから十九倍。これは一番高いですね。それから性病の罹患率は十九に対して六、ほどですから、これも三倍というような、非常に本土に比べて高い。それから医者の数は先ほど対策庁の長官も言われましたから省きますけれども、病院、診療所にしても本土と比べてみると、病院数で約四分の一くらいですか、それから診療所の数で二分の一くらい、ベッドの数で三分の一くらい、大体このくらいひどく差があると思います。  そこで、次に医療保険制度についてお聞きしますけれども、現在沖繩で行なわれておる保険制度というもの、それからその給付の方式、内容ですね、これはどういうことになっていますか。
  128. 山野幸吉

    説明員(山野幸吉君) 御承知のように、この沖繩では国民健康保険制度はまだ実施していないのでございまして、医療保険制度でございます。そうして、この医療保険制度に政府職員、市町村職員、従業員五人以上の企業の従事者、労務者等が入っておりまして、沖繩の住民総数の約四割がこの医療保険制度の恩典を受けておるという実態でございます。国民健康保険制度は明年の第四・四半期を目途に整備、発足するという予定で、これに対する日本政府の援助も予算化されておるわけであります。厚生年金、国民年金制度、公立学校共済組合法、これは昭和四十三年から施行しております。四十四年度からは農林漁業団体組合法、公務員等共済組合法が公布されております。それから一般保険の給付につきましては、いわゆる現物給付ではございませんで、補償制度になっておりまして七割の補償に相なっておるわけでございます。で、これが、国民健康保険が実施されるようになれば、この現物給付の問題が、現物給付になっていくわけでございますが、何ぶんにも沖繩におきましては医療機関の整備状況、それからいま御指摘ありました医師の数等から見まして、それからまた市町村の財政事情等も考えますと、なかなか国民健康保険の実施には問題点が山積しておりまして、目下琉球政府のほうで鋭意検討中でございます。
  129. 春日正一

    ○春日正一君 大体そういうことで政管健保みたいのものに、公務員も含めてですね、入っている。大体加入者は人口の三分の一ぐらいですね。あとは全然保険がないというような状態ですけれども、しかも、この保険がいわゆる現金払いといいますか、補償払いといいますか、そういうものであるために、一定の金を持ってないと医者にもかかれないし、それから、かかった場合でも、たとえば医者に患者が支払ういわゆる料金と保険給付のほうできめている基準料金との間に相当の差があって、だから、患者の保険のほうからもらう金というのは、七割と言っているけれども、実際には四〇%か、よくて五〇%ぐらいという実態というぐあいに聞いておりますけれども、その点どうですか。
  130. 中野徹雄

    説明員(中野徹雄君) 御質問の点でございますが、その場合に、現実に医師が患者から取ります料金、つまり実際の料金とそれから償還基準として採用されておりますところの点数表による点数と突き合わさなければならないわけでございますが、社会保険関係の事務所のほうに提出いたします、いわば患者が償還を受けるためのその支払いは償還基準に沿って作成されておるわけでございまして、実際にその患者が医師に対してどれくらい払ったかということについては、実はそれをつまびらかにいたす資料がございません。したがいまして、先生の御質問に対して明確にお返事をするデータを持ち合わさないわけでございますけれども、昭和四十四年の七月から十二月まで宮古の事務所で——これは局部的なものでございますれけども——調査いたしましたところによりますと、この数字そのものの信頼度のいかんは別といたしまして、入院のときに多少償還率が低いようでございますが、その他のものにつきましては七〇%に非常に近い、全体として六八%の償還率という数字が一応手元にございますけれども、ただその数字がどの程度実態に即するのか、これについては残念ながら自信がないわけでございます。
  131. 春日正一

    ○春日正一君 私のさっき言った四〇%ないし五〇%というのは、六七年ですか、日弁連の調査団が行ったときの調査報告ですが、そういうことになっておるわけです。  そこで、あとこまかい実態もありますけれども、時間がありませんからじかにお聞きしますけれども、とにかく沖繩がアメリカの支配のもとでいままで非常に立ちおくれてきたし、そういう結果としていま言ったような病気も非常に多いし、社会保障制度もおくれておるというような状態になっている。これに対して当然日本の政府が責任を持ってこの問題を解決しなければならぬと思うのですけれども、それを前提として幾つかお聞きするのですけれども沖繩返還されるという——七二年の某月某日外務大臣は言いますけれども——時点では、完全に本土の医療保険制度、そういうものは沖繩に実施されるという状態になっておらなければならぬというふうに思うのですけれども、その点はそういう見通しで進められておるわけですか。
  132. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これはそうなければならぬと思いますが、先ほどども対策庁長官より申しましたように、数多くのネックがございます。いまは償還率の問題等がお話がありましたが、それは医者にかかった人たちの問題でありまして、けがをしたり病気になったときにまず医者の門をたたくということをちゅうちょさせる制度でありますから、自分のさいふと相談しなければ医者に行けないというこの制度をすみやかに改めなければならぬと考えまして、ことしの予算でその措置をとることになっているわけであります。本年度の四十五年度予算からであります。しかしながら、実施するにあたりましては、非常に大きな問題点は、第一に医師の全体の数が非常に少ない上に偏在がある。でありますから、診療所があって医師がなく、あるいは全く診療所さえないような島すらあるというような現状から考えまして、どうしてもこれをある程度普遍的に国民健康保険の体制の中に入っていただくには、診療行為を行なうお医者さんがいてくれなければどうにもならぬわけでありまするから、   〔委員長退席、理事源田実君着席〕 先般沖繩で医介補、歯科医介補の方の皆さまにもお会いをいたしまして、向こうのほうは私どものほうへ、復帰後も自分たちがなお診療行為ができるように資格を与えてもらいたいという陳情であったようでありますが、私どものほうでは、当分の間、身分その他のことを考えないで、幸いにして医介補であるために医療行為が未熟であって死亡者がふえているとかなんとかいうことはないようですから、ぜひひとつ診療行為を続けてほしい、そのために身分保障は私のほうで責任を持ちますが、しかし、それには条件があるというところで、私そこで皆さまに沖繩の地図に医介補の分布状況をしるしたものをお示ししまして、このような安易な点在、すなわち生活しやすいところ、あるいは医介補がおられなくても一般の診療医がおられるはずのところに一ぱいおられる。これらのところをひとつぜひみんなで早急に相談していただいて、診療所があっても医者のいない島、あるいは診療所すらもなくて病人が苦しんでおる島、そういう島にぜひ医介補の皆さまが進んで行ってほしい。三年交代でもいい、二年交代でもいいからそういう盲点のないように埋めてほしい。そのときに私は初めて皆さま方の医療行為の特例を国会に提出をして、沖繩の医療は医介補、歯科医介補によってささえられていることが説明することが可能になるでしょうということで、強く要請をいたしました。   〔理事源田実君退席、委員長着席〕 幸い皆さんもそのことの趣旨を了解されまして、直ちに緊急の会合をやって、若い者から一番不便なところのほうへどんどん出すようにしますから実績を見てください、こういうふうに言ってくれまして、たいへん感激したわけでありますけれども、それらの問題の解決。  さらにいま一つは、市町村の財政力の貧困ということから、どうしても、いま現在、来年の一月一日から国民健康保険を実施できますという町村をさがしたならば、できる町村は何カ町村ありますかという問いかけをしたほうが早いだろうと思われるような実態でございますので、そこで、医師の偏在等をも考えまして、どうしても現地では一部事務組合的なもので、特に離島、群島が幾つか一緒になられて、会計上は一緒の会計をやって、共通の国民健康保険一部事務組合的なものでぜひひとつ出発してほしいというようなことを私からもお願いをいたしますし、また、行政上の立場からも、琉球政府とそれらの点について相談をいたしているところでございます。支払い制度をすみやかに、さいふと相談しなくても診療を受けられるという制度の確立、これはもうすでに一歩を踏み出しました。さらに国民健康保険を実施するための市町村財政上の配慮、これが第二であります。そして、そのために医介補の方々も含めた、沖繩の、せめて現地にいらっしゃる方々の医師の偏在を防ぎ、健康保険の運営に最少限支障のないようにしていただくということをいま一生懸命努力しているところでございます。
  133. 春日正一

    ○春日正一君 大体大筋はそういうことだと思うのですけれども、いまもお話の中にあるように、制度としては、復帰するという時点では、本土のものと合わせていくようにということなんだけれども、実際に国保を実施するにしても、いま長官のお話しのように、実際各市町村で一斉にスタートできるかということになると、医師その他の問題でも問題がある。だから、制度の問題と中身の問題と、これをどういうふうにつり合いとらしていくかということがいまの問題としては一番大事な問題だと思うのですけれども、長官のお話にあった、いまの保険制度で、つまり、幾らかお金を持たなければいけない、五ドルなければ不安だというふうに言っておりますね、現地の人は。それくらい常に持ってなければ病気のときに医者に行けないというような状態をなくすということは考えておられるような話だったのですけれども、これは具体的に言うとどういうことになるのですか。私、よくのみ込めなかったのですけれども、ついでに全部あれしてしまいますから、その点が一つ。  それから、そういうふうな状態だし、特に七割の人たちあるいは離島の人たちなんかはこの恩恵を受けてないし、七割近くの人がこの保険に現に入ってないわけですから、こういう人たちの医療の問題とすれば、生活保護法による医療保護という問題これが非常に大事になってくるのじゃないかというふうに思うわけです。ところが、その点からいいますと、本土の生活保護の基準に比べても、たとえば三級地の奄美大島の名瀬、これが七十七ドル七十六セントですか、あるいは四級地の奄美群島地域——沖永良部とか与論とかいうようなああいうところでも六十九ドル二十二セントというのが、沖繩の場合は六十一ドル十二セントですか、大体、それで那覇から全部含めてそういうことになっておるというように聞いておるのですけれども、これを本土並みに上げて適用するということをやっただけでも、沖繩の人たちが相当医療保護ということで医療が受けられるような条件があるのじゃないか、そういうふうに思うのですけれども、こういう点はぜひやってもらいたいと思うのですけれども、おやりになるかどうか、その問題。  もう一つは、いま申しました国民健康保険制度を創設するということで、四十六年一月一日実施ということで琉球政府は言っているようですけれども、しかし、実際に市町村で、いま長官が言われたように、やれるところはどれくらいかというふうに勘定したほうが早いというような実態になっておるということになりますと、やはりこれは医者の問題、それから市町村財政の問題、両方からあると思うのですけれども、医者不足という問題、いま医介補を十分活用するということを言われて、これも大事だと思うのですけれども、それにしてみたところで、やはり先ほど冒頭にお聞きしたように、本土との医者の比率というものはうんと開きがあるわけですから、やはりこういう点はどうしても必要なところに医者を派遣するために、相当ないい条件で、ぜひ沖繩のどこそこに行ってくれという形で政府が医者を派遣するということが緊急に必要なんじゃないか。長官は、琉球大学に医学部を設けるとか、本土に医学の留学生をふやすとか、医者の養成の問題は以前言っておられますし、それは根本解決の問題として必要ですけれども、しかし、いま制度が発足しようとするときに、足りなくて出られないという問題を、医者が足りないからおくれてもしかたがないでは、これは済まぬ問題じゃないか。どうしてもやらなければならぬということになれば、十分とは言えないまでも、やはり必要なところへ派遣する医者を本土の政府が手当てをして、たとえばそういうところに行くんですから、やはり一定のいい条件をつけて、そういうことだからぜひ行ってくれという形でさがして行かせるというふうな努力をしてこの充足をやる必要があるのじゃないか。  それからもう一つは、やはり国保を発足するにあたって、市町村財政、これが非常に苦しいようですから、当然こういうものに対しては国として十分な補助といいますか、負担というものを国のほうで持つというふうなことにして、それこそ特例で、出発と同時に、多少の例外があるとしても、例外のほうが主であって正常のほうが例外になるようなことにならぬように発足できるというためには、相当その点でやはり保険財政に対する補助というようなものが必要だというふうに思うのですけれども、この点で来年度の予算、これには国保の問題、あるいは先ほどの健保の問題、医者の問題、そういう関係でどのくらい組んでいただけるか、その点大体腹づもりを聞かしていただきたいのですがね、そこが一番大事なところだと思うのですよ。
  134. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) まず最初の制度について、なるほど本年度中に発足するようだが、それは実際上返還までに完全に本土並みになり得るかどうかという問題でございますが、これはたいへん悲観的でございます。制度としては沖繩も同じようになる。しかしながら、その実施については非常にむずかしい町村が多いだろうと思います。現在内地においても二カ町村まだ実施できない離島がございます。したがって、現在の日本の国民皆保険は、二カ町村だけ国民健康保険を離島のために実施できない町村があるのだということを私たちは知っておるわけでありますが、そのことから考えましても、やはり相当な手当てをしなければ、沖繩においては復帰のあとも独力で健康保険をやれるような市町村がやはり依然として数が少ないのじゃないか、その点をたいへん心配をいたしておるわけでございます。  先ほど何か落としたと思いましたのは、ヘリコプターとそれから巡回診療船でございましたが、これもやはりそういう意味では機動力を発揮してくれることによって救急医療、もしくは正常な国民健康保険の診療給付等に大きく役立ってくれるものと期待しておるわけでございまして、これらはできれば来年度予算等でももう少し考えられれば考えてみたいと思っておりますが、さしあたりはどのように活用ができるか、琉球政府の医師の乗り組みその他の活用計画その他をよく拝見をしてみなければならぬと考えております。  生活保護の問題も、当然復帰いたしますと、生活保護というものの結果として、沖繩における比重が相当高いことになるかもしれません。これはたいへん好ましくないことであり、残念なことでありますけれども現実には主食が本土の半分くらいで買えるのだ、生活のかてとしての何とか生きていく道はわりといい条件が一方にあるとしましても、全体の生活の状態から考えて、場合によってはやはり生活保護の医療給付というようなことが相当国のほうでめんどうを見てあげなければいけないのじゃないかと思われる島々がございます。結果論で、基地論争をするつもりはございませんが、結果論で、本島の一部には非常に繁栄をしておる、所得も高いところもございますから、そこのところは特別な本土と比べて特色のあるほど生活保護階層がふえるという心配もないかと思いますけれども、やはりそれらの点も復帰後しばらくは主食も据え置いて、本土の食管は売買差損を持ちながら、沖繩には現在の国際価格並みの配給を内地米でしようというようなつもりでおりますし、来年度予算にはそれを量をさらに三万トンからふやしていきたいと考えておるわけでございます。  医師の確保の問題で政府のほう自体も何かしろということでございまして、医科大学の将来の問題は別にいたしましても、もうこれはすでに何べんも続けておることですけれども、財源に例をとりますと、専門医は二十五人だけ派遣する予算のワクはございますけれども、実際に行ってもらった人は十人しか行ってもらっておりませんし、無医地区に駐在してもらう人の予算は十五人取っておりますが、これも現在実際に行ってくれて苦労していらっしゃる方——先般、私、離島に参りまして、非常な御苦労をねぎらってもきましたし、私に対してしかふんまんのやり場のないつらい思いをたたきつけられもいたしました。しかし、たいへん苦労をしていただいておりますが、しかし、予算ワク一ぱいどうしても確保することができない。歯科医等につきましても、巡回歯科医を三人確保しておりますが、予算定員上はそうでありましても、行ってくれた人は二人であるというようなこともございます。さらにまた、中部病院等において現在アメリカが月俸二千ドルというようなたいへんな金額の医者を連れてきて治療、診療もしくは沖繩医療のレベルの向上にたいへん貢献をしておりますけれども、来年はそういうものはやめるということをはっきり申しておりますので、そうすると、沖繩にいる現在のアメリカ人の医者を日本政府が給料をまかなおうとしても、一人月二千ドルというようなべらぼうな金を出せるかというと、とっても出せないと思います。そうするとおこって帰ってしまうかもしれません。おってくれても、せいぜい日本政府が出すとすれば千ドル出せば日本政府としては大奮発であるというような感じもいたしますので、やがて中部病院等は県立病院みたいな形で公立病院として医師の確保をはかっていかなきゃならぬ。そういうような問題等も踏まえておりますが、要するに、こちらのほうがお願いをしてみてもなかなかまた行ってもらう人もそうたくさんはございませんし、国費留学で内地のほうに来て、医者になる資格を持って診療行為ができるようになっても、皆さんが全部さっさと使命どおりに沖繩に帰ってみんなのために医療行為をしておられるかというと、国費留学の問題もそう簡単には全面的に成功しておるとも言えない節もございまして、ここらは、たいへん医者という職業の方々のあるべき平均水準の生活のレベル環境というものから考えて、ことばで言うはやさしく確保はたいへんむずかしい問題だと考えます。  なお、将来の問題としての町村の財政力の問題でございますが、どうしても沖繩においては町村合併をいま少しく促進をしてもらう、あるいは本土政府のほうがそれらに援助をすることによりまして、無用な町村——無用と申しますか、むやみと細分化された町村が本土に比べて目につき過ぎますので、ぜひ町村合併を進めてほしい。そして合併したために単一町村としてのむだな出費も少なる半面、力も二倍になるわけでありますから、町村合併等も推進しながら、市町村財政の充実に努力をしてまいりたいと思いますが、四十六年度予算においては、もし本土であったならばどういう交付税というものが行くか、あるいはどういう金額の起債というものが認められるか、これを十分念頭に置いていく。現在は沖繩の県内の市場では、起債といってもそれは名目のみの起債である。民間の銀行から五年償還の高い金利の金を借りておるのが起債といわれるものであるというようなことを考えますときに、町村役場を銀行の金を借りてりっぱな鉄筋の建物を建てておる。これは台風その他の影響を受けてどうしてもつくらなければならない必要に迫られてつくった鉄筋の庁舎でも、五年間に金を返さなければならぬ。そうすると、鉄筋の庁舎をつくって、その庁舎がその銀行への償還財源を生むような利潤は何もあげてくれないわけですから、村長さんにたいへんですねと言ったんですけれども、それらのもの等を考えますと、象徴的なものでございますので、当然本土の町村であったならば借り得る政府債、市町村債というものがなるべく本土並みになるように復帰前にも措置をして、市町村の財政力を充実せしめて、少なくとも人間が生存するための必要な医療保障の底辺をつくるために、市町村財政の支障をなるべく少なくするように努力をしていきたいと考えます。
  135. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 他に御発言もなければ、本調査に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十五分散会      —————・—————