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国務大臣(佐藤榮作君) ただいまお話しになりますように、交通の総合
対策、総合
計画、これはどうしても進めていかなければなりません。これは
一つだけで事足りるというものではございません。でありますから、今回も皆さんから御
審議をいただいたように、今度の運輸政策
審議会、ここでは総合交通政策を樹立すると、そういうことになったようでございます。これはたいへんけっこうなことだと思います。役所がそれぞれ別でございましても、一カ所責任を持つ官庁が出てくることが望ましい、かように思います。ただ、いま道路行政まで
運輸省で持てと、こうは言われないのですから、いまの
審議会で事足りるのではないかと、かように思います。
そこでもう
一つ、
鉄道の場合にいろいろの
競争相手がある。空には
飛行機、陸上には
自動車、また
海上には
船舶、そこで
鉄道の
使命はどうなるのかと、こういう話でございます。私はまあそういうことも必要だろうと思いますが、まず船の場合に、一時はもう
海上輸送が全部でありました。しかしやはり貨物輸送の面では
海上輸送は残らざるを得ない。旅客輸送、これはもう太平洋にも大西洋にもかつてのような豪華
旅客船はなくなりました。そういうふうに変わりましたが、しかし貨物の大量輸送、これがどうしても船がまだ役立つ。事故は起こしておりますが、十万トンさらに二十万トンというような、いわゆる大きな船が使われております。ちょうど同じ
鉄道の場合も、
自動車と
——やはりそういう点で
自動車がまかなえないものがあるのではないか。いま東京でももうすでにそういう
状態が起きております。都市集中化して、ある一定の時間になりますと
自動車がはんらんしておる。ずいぶん相当大きな道はつくったつもりでありますが、その道ではまかない切れないようになる。それかといって道をどんどん広げるわけにもいかない。そうすると、やはり一定の
地域には
自動車の乗り入ればむしろ遠慮してもらって、やはりただいまのような通勤輸送、これは
鉄道がまかなわざるを得ない、引き受けざるを得ない、そういう
時代もくるのではないか。
私はアメリカに行ってみて、ニューヨークなどはそういうような
状態であります。あの金持ちのロックフェラーさんが私と会うときに、わざわざタクシーに乗って来られる。自家用車を持たないはずはない。しかし、タリータウンという郊外からニューヨークに通っておる。どうも、そうして自家用車を乗りつけてくると、そうすると、もうニューヨークの町は全体がそうなっていくと、すっかり交通は麻痺する、かようなことでありますから、あのロングアイランドに行ってみると、昔の日本の駅のようにいつでも自転車がどんどん駅の構内に置かれておりましたが、最近はロングアイランドでは
自動車が置かれておる。そこまでは家庭から
自動車で乗りつけてくるが、それから先は列車に乗って都市交通で市内に入る、こういうようなことになっておる。したがって、私、いまの
自動車にもやはり限度がある。もうすでに私どももそういうことを感じつつある。また、さきに皆さん方からもお話が出ておるように、どうも
自動車のもとではお互いの安全が確保されない。まずトラックを何とかしてくれ。だからトラックが走れるその時間帯は制限すべきじゃないか。夜、走らせたらどうか、あるいはトラックの走れない区域をつくったらどうか、こういうように制限の方向に向かっておられると思います。また、乗用車自身もそういう時期にきておるのではないだろうか、かように思います。また一方交通、あるいは右回り、Uターン禁止、いろいろ交通上の制限があらわれております。いまその程度で
自動車は使われておりますが、それがもっとふえてまいりますと、不便になってどうにもならない。ちょうどわれわれが野球を見物に行くと、あとの帰りが自家用車が引き出せない、ああいうように都市そのものがなってきた。そういうようなことを考えますと、やはり
鉄道の受け持つ範囲というものはあるように思います。
交通機関の最も大事なことは、多量に、快適に、しかも安全なる輸送だと、こういうところにあるように思いますので、私は、現在のスピード並びに安全性から申しまして、特別な軌道を使っておるだけに、専用軌道を使っておるだけに、この
鉄道のほうが安全であり、そうしてまたスピードも出せる、また正確でもある、こういうことが信頼のできる交通機関ではないだろうかと思います。そういう
意味で、これから先のことはわかりませんけれども、いろいろくふうされて、ずいぶん変わっていくと思います。ただいま大型旅客機が太平洋を飛ぶようになりました。これなぞも一列車分それが飛んでおるような
時代でございますから、もう
旅客船の
時代は過ぎたと、かように考えておりますが、しかし国内におきましてもそういう
時代がこないわけでもないだろうと思います。私は、いまもっとスピードアップをしないことには、どうも交通機能を果たし得ないように思います。ことに太平洋岸と日本海とはずいぶん発展の
状態が違っておる。また生活の
状態も違う。しかしながら、これを
飛行機で横断するのにはまず三十分あるいはせいぜい一時間、こういうように非常に短距離にあると思います。私東北地方を旅行いたしまして、東北の岩手から秋田に行くのに
飛行機ならわずか三十分です。こういうような非常な近距離にありながら、どうしてこれが一体として開発できないのか、そこらに疑問を持たされているのでございます。しかし、航空機ばかりがいわゆる発展を促進するものでもございませんし、ここらにもひとつわれわれがくふうしなければならないと思う。そのためにも御
指摘にありましたように、総合交通施策、これはもう絶対に必要だ、かように考えますので、御
指摘になりました点は、いずれも私も賛成でございますし、またそういう方向で進みたいと思います。まだただいまの
状態では、日本のこれから先の国内交通は非常に変わるだろうとは思いますけれども、ただいまのところ、まだまだ
鉄道を必要とする範囲が広い。そういう
意味で、ただいま必要な財源を確保したい、かように思っておる次第でございます。
ただその場合に、いまもお話にありますように、裏日本と太平洋岸、この間を二つを並行した
幹線が必要なんじゃないかということ、これも私首肯できますけれども、とにかく背骨になるようなもの自身すらない現状において、さらにその次の
段階の二つのものを考える。そして肋骨をつくれ、こういうところまではちょっといきかねるわけです。まず第一は、一本筋を通すことだ。そのほうが先じゃないだろうか、かように思っておりますし、また、ものによりましては特別にくふうをし、そうして
鉄道審議会でどういう線区を選ぶか、それを十分考えて緊急度等に相応するような
対策を立てていきたいと思います。
とにかく
幹線道路、
幹線鉄道をつくると、非常に多額な費用を要しますので、これが一地方に片寄って投資されることは、これは国費といたしましても、国費の使い方が非常に片寄る、こういうことにもなりかねないのでありますから、できるだけそういうものはまんべんなく使用できるように、そういうようなくふうをし、そういう
計画を立てるべきだ、かように思っております。