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国務大臣(
橋本登美三郎君) せんだっての伊藤さんの御質問に対して十分意を尽くさなかったところがあると思いますが、根本はそういう
考え方なんです。もっと少し広い
意味で申し上げますれば、大体私
自身の
考え方は、おそらく昭和六十年といいますか、いまから十五年先に
日本の都市化された人口というものは大体八〇%近い、
あとの二〇%がいわゆる山間地帯ということになる。これは全国的に見ましてもそういう傾向になっておる。都市化される人口は三万以上の市を含むと、こういうことです。現在の都市形成の姿から見ても、たとえば東海道ベルト地帯、これは東海道だけではなく、山口、下関まで通じて、この沿線は全く同じような都市
状態をいまでは現出しておる。と同様に、これは将来は
常磐線といいますか、これを流れていったこの地帯は大きなベルト地帯に将来なるでありましょうから、ここに人口が集中していく。こういう
意味で過密、過疎の問題は全国的に、言うなればこれは
新幹線網なりあるいは高速自動車網なりあるいは飛行場等の整備、こういうことによって全国的な調整というものはある程度とれるわけであります。それは非常に広い
意味の調整であります。しかし、ローカルの地域、ある一定の地域から考えると、たとえば
東京においても過密と過疎がある。
東京あたりは過疎は非常に少ないんですが、相当大きなところでもいわゆる過密と過疎地帯がある。ですから、ある地域をとるならば、たとえば県とかあるいは府とかいうような点をとりますというと、明らかに過密地帯と過疎地帯というものが将来ともにこれはあらわれてくる。これはどういうことかといえば、今後の産業構造の変化がいわゆる管理センターとして都市が重要視されてくる。それで工業地帯必ずしも人口がふえるわけではない。たとえば工業地帯の最近の統計を見ましても、四日市工業地帯はいわゆる全体の人口はふえておりますけれ
ども、しかしながら
鹿島工業地帯と比べますと、
鹿島の一人当たりの従業員の生産能力は、四日市の三倍強である。すなわち三人の人の分を一人でやれる。最近新しくできました水島工業地帯、これに比べても、いわゆる水島の二人当たりの従業員の仕事を一人で
鹿島ではやれる。並びにモータリゼーションが進みつつある。こういう
状態から見て、いろいろの問題で管理センター的な役割り、大都市における管理センター的な役割りが非常に増大してくる。プログラマーあるいはそうしたようなコンピューター・システムの
状況からして、そういう人間がどんどんふえてくる。こういう
状態から見て、都市における人口を抑制するということは非常に困難である。産業構造の変化からどうしてもこれに集中せざるを得ない。その中で動かせるものは、学校関係の教育機関を相当の距離に引き離すということはできますけれ
ども、政治、産業面ではどうしても一カ所に集まる傾向ができてくるわけであります。しかし、実際そういっても、小さな地域にたくさんの人間が寄ることはできませんから、たとえば
東京でいうならば、
東京圏というところ、あるいはそれに準ずる地域まで含めてこれを
東京の
経済及び政治、産業の地域である、こう規定してよろしいのであります。そうなりますと、いわゆる地下鉄というものは、その地下鉄が
最初生まれました
事情は、陸上
交通が非常に困難になってきて、そこで路面
電車を撤去して、それを広い
道路として使おうというところにもちろんこれは発生原因があります。でありますから、当初地下鉄というものは、路面
電車のかわりとして地下にもぐったという動機は十分に察せられるのでありますけれ
ども、その後十年間における産業構造の変化からして、それだけでは済まなくなってきた。そうして相当広地域に大都市
交通圏というものは広げなければならぬ。
東京でいえば五十キロ以内は通勤距離、大阪でいえば三十キロ以内は通勤距離である。こういう情勢になってまいりますと、単に路面
電車が地下にもぐったというだけで使命が終わるわけではなくして、同様に管理センターとしての大都市の機能を十分に果たすためには、相当の距離までこれは延ばさなければ
意味がなくなってまいったのが現状であります。
で、そういう
意味からいって、居住地域にとらわれるようないわゆる形式で地下鉄が生まれると、いろいろな障害が出てくる。その
一つの例は、大阪でもそうでありますが、御
承知のように万博が大阪府の中にある。したがって、市営地下鉄がそこまで入っていくことは好まないし、またいろいろの
事情からして、もちろんほかの
事情もありましたけれ
ども、結局、あれを延ばすことができずして、北大阪急行電鉄というものを新しくつくって、それが責任を負うという形になって、この北大阪急行電鉄は府及び市それに阪急が資本形成をしております。しかしながら、これは非常に無理な形であって、将来ともに、なかなかあんな短い線で経営をやっていこうということになれば、私は非常に無理があるだろうと思うのです。そういう
意味で、これからいわゆる許可するような地下鉄については、できるだけいま言ったように大都市、いわゆる通勤距離が大都市に延びてまいるのでありますからして、そういう形の可能ないわゆる経営形態が必要であろう。そのために私は複合形式と申しておりますが、複合形式とは場所によっていろいろ違います。ところによっては県と市が出資をして行なうという形もありましょうし、あるいはその付近に私鉄を持っておって、それらが一緒に入って、そして私鉄を
乗り入れるという必要性もあって私鉄が入るという三者の複合形式もありましょうが、いずれにせよ、小地域にとどまらないということ、少なくとも普通の都市であっても三十キロまでは将来延びる、半径から考えて、大
東京のごときは五十キロ以上延びる、こういう点から考えて、いわゆる資本形成をする。同時に、運営形態もそれに伴うという形式がいわゆる将来の地下鉄経営の形式であろう。こういう
前提に立って、そこで四十五
年度の
予算において、従来は地下鉄に対する単なる助成という消極的な
方針でありましたが、四十五
年度予算は必要
経費の二分の一を国が負担する、こういう
制度をとる。二分の一は地方公共団体が持つ。こういう形式をとったゆえんのものも、そうした将来への展望を私は考えながら、そういう
制度を新たに
決定をしたのであります。この点についていろいろ皆さんからの御
意見もあろうと思いまするが、私はこのような
意味で、いわゆる複合形式というものが必要ではないだろうか、こういうことを
お話をしたわけであります。