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1970-03-11 第63回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会昭和四十五年三月七日(土曜日)委員会 において、設置することに決した。 三月十日  本分科員委員長指名で、次の通り選任され  た。       小澤 太郎君    大野 市郎君       賀屋 興宣君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    田中 正巳君       中野 四郎君    赤松  勇君       楢崎弥之助君    矢野 絢也君       麻生 良方君    不破 哲三君 三月十日  大野市郎君が委員長指名で、主査に選任され  た。 ————————————————————— 昭和四十五年三月十一日(水曜日)    午前十一時三十七分開議  出席分科員    主査 大野 市郎君       小澤 太郎君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    田中 正巳君       中野 四郎君    赤松  勇君       岡田 利春君    楢崎弥之助君       小川新一郎君    渡部 一郎君       不破 哲三君    兼務 川崎 寛治君 兼務 北山 愛郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         外務政務次官  竹内 黎一君         外務大臣官房長 佐藤 正二君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省欧亜局長 有田 圭輔君         外務省条約局長 井川 克一君         外務省国際連合         局長      西堀 正弘君         海上保安庁次長 林  陽一君  分科員外出席者         法務省入国管理         局次長     瀧川 幹雄君         外務大臣官房領         事移住部長   遠藤 又男君     ————————————— 分科員の異動 三月十一日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     小川新一郎君   楢崎弥之助君     岡田 利春君   赤松  勇君     広瀬 秀吉君 同日  辞任         補欠選任   小川新一郎君     渡部 一郎君   広瀬 秀吉君     赤松  勇君   岡田 利春君     楢崎弥之助君 同日  辞任         補欠選任   渡部 一郎君     矢野 絢也君 同日  第一分科員川崎寛治君及び第五分科員北山愛郎  君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十五年度一般会計予算外務省所管      ————◇—————
  2. 大野市郎

    大野主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  私が本分科会主査をつとめることになりましたので、よろしく御協力をお願いいたします。  本分科会は、会計検査院、防衛庁外務省及び大蔵省所管につきまして審査を行なうことになっております。審査の順序は、お手元に配付いたしました日程により進めたいと存じますので、あらかじめ御了承をお願いいたします。  それでは、昭和四十五年度一般会計予算中、外務省所管を議題とし、説明を求めます。愛知外務大臣
  3. 愛知揆一

    愛知国務大臣 外務省所管昭和四十五年度予算について大要を御説明いたします。  予算総額は四百五十一億六百六十四万一千円で、これを主要経費別に区分いたしますと、科学技術振興費一億六千九百三十七万五千円、貿易振興及び経済協力費百二十二億二千二百四十万九千円、その他の事項経費三百二十七億一千四百八十五万七千円であります。また組織別に大別いたしますと、外務本省二百六十一億一千二百三十八万円、在外公館百八十九億九千四百二十六万一千円であります。  その内容についてご説明いたします。  第一、外務本省一般行政に必要な経費四十二億六千六百二十万二千円は、外務省設置法に定める本省内部部局及び付属機関である外務省研修所外務省大阪連絡事務所において所掌する一般事務処理するため必要な職員千四百八十六名の人件費及び事務費等であります。  第二、外交運営充実に必要な経費七億二千三百十万円は、諸外国との外交交渉により幾多の懸案の解決をはかり、また、各種条約協定締結する必要がありますが、これらの交渉わが国に有利に展開させるため本省において必要な工作費であります。  第三、アジア諸国に関する外交政策樹立に必要な経費六千三百八万八千円は、アジア諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整等を行なうため必要な経費であります。一第四、米州諸国に関する外交政策樹立に必要な経費八千四十七万七千円は、米州諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整等を行なうため必要な経費社団法人ラテンアメリカ協会補助金三千四百四十一万八千円、ニューヨーク日米協会新館建設費補助金三千五百万円であります。  第五、欧州大洋諸国に関する外交政策樹立に必要な経費二千七百六万三千円は、欧州大洋諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整等を行なうため必要な経費社団法人北方領土復帰期成同盟補助金七百六十五万円であります。  第六、中近東アフリカ諸国に関する外交政策樹立に必要な経費一千三百六十三万八千円は、中近東アフリカ諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整等を行なうため必要な経費社団法人アフリカ協会補助金四百八十三万六千円及び財団法人中東調査会補助金二百二十三万二千円であります。  第七、条約締結及び条約集編集等に必要な経費二千七百八十四万二千円は、国際条約締結及び加入に関する事務処理並びに条約集編集及び先例法規等調査研究に必要な事務費であります。  第八、国際協力に必要な経費五億九千八百八十九万二千円は、国際連合等国際機関との連絡、その活動調査研究等に必要な経費及び各種国際会議わが国代表派遣し、また、本邦国際会議を開催するため必要な経費財団法人日本国際連合協会補助金八千七百八十二万五千円、社団法人日本エカフェ協会補助金一千二十八万三千円及び財団法人日本ユニセフ協会補助金四百三十八万七千円であります。  第九、情報啓発事業及び国際文化事業実施に必要な経費十六億七千六百九十一万六千円は、国際情勢に関する国内啓発海外に対する本邦事情啓発及び文化交流事業等を通じて国際間の相互理解を深めるため必要な経費並びに財団法人国際学友会補助金一億三百二十二万九千円、財団法人国際文化振興会補助金二億三千六百七十四万二千円、財団法人国際教育情報センター補助金一千八百七十五万円、社団法人日本新聞協会補助金一千四百六十八万一千円及び啓発宣伝事業等委託費三億九千九百二十二万九千円であります。  第十、海外渡航関係事務処理に必要な経費四億一千七百六万七千円は、旅券法に基づき、旅券発給等海外渡航事務処理するため必要な経費及び同法に基づき事務の一部を都道府県に委託するための経費二億七万三千円であります。  第十一、万国博覧会接遇等に必要な経費六億一千六百九十四万三千円は、万国博覧会参加国来日元首等政府賓客接遇等に必要な経費であります、  第十二、国際経済情勢調査及び通商交渉準備等に必要な経費五千六百三十二万七千円は、国際経済に関する基礎的資料を広範かつ組織的に収集し、これに基づいて国際経済を的確に把握するための調査及び通商交渉を行なう際の準備等に必要な経費であります。  第十三、経済技術協力に必要な経費七十七億三千二十万四千円は、海外との経済技術協力に関する企画立案及びその実施総合調整並びに賠償等実施の円滑かつ統一的な処理をはかるため必要な経費と、コロンボ計画等に基づく技術者の受け入れ、派遣日本青年海外協力隊派遣各種技術訓練センター設置並びに医療農業及び一次産品開発のための技術協力実施に必要な委託費六十五億六千三百十九万一千円、経済開発計画実施設計等委託費一億五千万円、国際医療団補助金三百万円、海外農業開発財団補助金百五十万円と、海外技術協力事業団交付金九億五千百三十二万八千円等であります。前年度に比し十一億二千五百四十三万七千円の増加は、主として海外技術協力実施委託費及び海外技術協力事業団交付金増加によるものであります。  第十四、経済開発特別援助に必要な経費七億円は、南ベトナムのチョウライ病院改築等のために行なう援助に必要な経費であります。  第十五、海外技術協力事業団出資に必要な経費四億八千八百万円は、海外技術協力事業団事務所及び名古屋研修センター建設等に要する資金として同事業団に対し出資するため必要な経費であります。  第十六、国際原子力機関分担金等支払に必要な経費一億六千九百三十七万五千円は、わが国が加盟している国際原子力機関支払うため必要な分担金及び拠出金であります。  第十七、貿易振興及び経済協力に係る国際分担金等支払に必要な経費二十八億五千七百五十四万一千円は、わが国が加盟している貿易振興及び経済協力にかかる各種国際機関に対する分担金及び拠出金支払うため必要な経費であります。  第十八、国際分担金等支払に必要な経費三十五億六千二百七十二万八千円は、わが国が加盟している国際連合その他各種国際機関に対する分担金及び拠出金支払うため必要な経費であります。  第十九、移住振興に必要な経費二十億三千六百九十七万七千円は、移住政策企画立案及び中南米諸国に移住する者一千名を送出するため必要な事務費並び移住者渡航費等交付金一億五千十九万一千円及び海外移住事業団交付金十七億五千三百二十九万四千円等であります。  組織在外公館。  第一、在外公館事務運営等に必要な経費百四十九億九千六百十四万四千円は、既設公館百三十一館、三代表部千二百十三名と、四十五年度中に新設予定の在ホンジュラス大使館リオ・デ・ジャネイロ総領事館軍縮委員会日本政府代表部沖縄復帰準備委員会日本国政府代表事務所(仮称)設置のため新たに必要となった職員十三名並びに概設公館職員増加二十七名、計千二百五十三名の人件費及び事務費等であります。  第二、外交運営充実に必要な経費十九億九千十万円は、諸外国との外交交渉わが国に有利な展開を期するため在外公館において必要な工作費であります。  第三、輸入制限対策等に必要な経費三億九千三十三万七千円は、諸外国におけるわが国商品輸入制限運動等に対処して啓蒙宣伝運動実施する等のため必要な経費であります。  第四、対外宣伝及び国際文化事業実施に必要な経費四億九千九百七十四万五千円は、わが国と諸外国との親善に寄与するため、わが国政治経済及び文化等の実情を組織的に諸外国に紹介するとともに、国際文化交流を行なうため必要な経費であります。  第五、在外公館営繕等に必要な経費十五億一千七百九十三万五千円は、在パキスタン大使館事務所ほか三カ所の継続工事及び在スウェーデン大使館事務所ほか四カ所の建設費ほか七カ所の公邸事務所用土地建物購入費並びに二カ所の公務員宿舎建設費その他関連経費等であります。  以上がただいま上程されております外務省所管昭和四十五年度予算大要であります。何とぞ、慎重御審議のほどお願い申し上げます。
  4. 大野市郎

    大野主査 以上をもちまして、外務省所管予算説明を終わりました。     —————————————
  5. 大野市郎

    大野主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間は、一応本務員は一時間程度兼務員もしくは交代として分科員となられた方は三十分程度にとどめ、議事進行に御協力をお願いしたいと存じます。  なお、政府当局に申し上げます。質疑時間が限られておりますので、答弁は的確に、要領よく簡潔に行なうよう特に御注意申し上げます。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。楢崎弥之助君。
  6. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 まず、今回の広州交易会に行って再入国するために、在日華僑貿易商社から総計三十四名の許可申請が出されて、これに対して去る七日の日に三十四名のうち二十一名だけが許可されたわけであります。これは、それで打ち切られたのかどうか。あと許可がまだおりていない十三名は、まだ審議の過程にあるのか、これをお伺いしたい。
  7. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この問題につきましては、委員会でも政府の立場あるいは考え方を御説明いたしたわけでございますが、そういう基本的な考え方に基づきまして、関係省庁、慎重に協議をいたしまして、さような結論にいたしましたわけで、ただいまのところは、これで方針を決定いたした、かような状況にございます。
  8. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 それでは、もう二十一名だけで打ち切られたという意味ですか。
  9. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、慎重に各省庁の意見を取りまとめて出しました結論でございますから、ただいまとしては、これで打ち切りと申しますか、これで決定をいたしました、こういう状態でございます。
  10. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 許可できなかった、許可がおりなかった十三名の方については、許可できない理由というものは明らかにされておるのでしょうか。
  11. 愛知揆一

    愛知国務大臣 事務当局からお答え申し上げます。
  12. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 御説明申し上げます。  二十一名に許可することといたしましたのは、日中貿易促進など国益に合致するとともに、在留外国人管理に支障がないと認めたからでございまして、この以外の者につきましては、右基準に合致しないと認めたわけでございます。
  13. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 どのように合致しないか、具体的におっしゃってください。
  14. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 三十四名のうち四名につきましては、貿易業者でないということでございます。その余の者につきましては、あくまで経済的な目的で行っていただくという趣旨でございますので、政治的色彩の濃厚な方は、御遠慮いただきたい、個別審査の結果こういうことになった次第でございます。
  15. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 四名は直接貿易経済人ではない。じゃ、十三名のうちのあとの九名はどうなんですか。四名引くとあと九名残ります。
  16. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 九名につきましては、ただいまも申し上げましたとおり、政治的色彩が濃厚であるということから、個別審査の結果適当でないと認めたものでございます。
  17. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 どのように政治的色彩が濃いのですか。
  18. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 その詳細につきましては、関係省庁協議した結果でございまして、個々具体的に申し上げる材料は持っておりません。
  19. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 材料がなしに、よく政治的色彩が強いということが判定できましたですね。
  20. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 ただいま申し上げましたとおり、関係省庁との協議の結果でございます。
  21. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 関係省庁とはどことどこですか。
  22. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 もちろんその件は外務省関係ございませんが、警察庁でございます。
  23. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 では、あなたのほうは材料を持たないが、関係省庁とおっしゃいました、その関係省庁は警察だけですか
  24. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 法務省部内では公安調査庁でございます。
  25. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 では、警察庁公安調査庁調査の結果ですか。
  26. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 その調査の結果はそれぞれ違っておりまして、それでその材料に基づきまして協議した結果でございます。
  27. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 では、具体的に政治色が強いという、その内容は明らかになっておるのですか。
  28. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 政治色が強いと申し上げますのは、左派華僑総会幹部ということでございます。
  29. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 華僑総会に加入しておられる方は、全部政治色が強いということですか。
  30. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 ただいまも申し上げましたとおり、幹部その他で相当活躍しておられる方でございます。
  31. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 では、華僑総会幹部だけは政治色が強く、幹部でない方は許可したと、こういうことですか。
  32. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 幹部でございましても、活動が活発でない方もございますし、それは個々具体的に一々違うわけでございます。
  33. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 どういう活動なんですか、具体的にあげますと、華僑総会活動とは。
  34. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 具体的内容については承知しておりません。
  35. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 じゃ、あなた方は承知されないで、警察庁なり、公安調査庁が判定したものをうのみにされたわけですか。
  36. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 そういう材料に基づきまして協議をして、個別的に審査をしたわけでございます。
  37. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 材料を持たないとおっしゃるのは、いまそこに持たないという意味ですか、それとも法務省自体材料がないという意味なんですか、どうですか、材料を持たないとおっしゃったのは。
  38. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 材料法務省にはございます。
  39. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 いまそこにないという意味ですか。
  40. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 そうでございます。
  41. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 それでは、持ってきてください。
  42. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 これは、先ほども申し上げましたとおり、結論のみでございまして、いま御質問のございました政治活動はどういうことをやっているとか、そういう詳細のことは書いてございません。
  43. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 詳細なことは書いてない。何で判定されたのですか。どういうことなんですか、さっぱりわかりませんが。ただこの人が政治色が強いという一言だけが書いてあるのですか。どういう理由で、政治色が強いという理由は書いてないのですか、その警察庁なり、公安調査庁の調べというのは。
  44. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 先ほども申し上げましたとおり、左派華僑総会幹部政治的活動が活発であるかどうかという程度のことでございます。
  45. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 左派華僑総会ですか、そういうやつはあるのですか。
  46. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 私は正式な名前は存じておりません。
  47. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 そういうでたらめな答弁がありますか、詳細を知らずにどうして答弁するのですか。いま日中問題がどういう関係にあるか、外務大臣も一生懸命苦労しておるところです。それをよく知りもしないで、左派華僑総会、そういうことをよく言えますね。ここをどこと心得ておるのですか。だめですよ、そういう答弁じゃ。責任のある答弁をしてください。
  48. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 誤りでございましたら、取り消します。
  49. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 何が誤りじゃったのですか、どこが誤りだったのですか。どこが誤っておったのですか、あなたの答弁で。
  50. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 正式の名称を申し上げませんで、この点は……。
  51. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 じゃ正式の名称は何ですか。
  52. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 存じておりません。
  53. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 お聞きのとおりです。あれで答弁になりますか。私の質問時間は一時間ありますから、いま正確な資料を持っておいでなさい。委員長、お取り計らいを願います。
  54. 大野市郎

    大野主査 瀧川次長、ただいまの名称の問題は明らかにできるはずですから、お取り計らいください。
  55. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 では、いまの問題は正確なものが出てくるまで質問あとに回します。  外務大臣にお伺いをいたします。昨日の一般質問の続行になるわけです。  まず、防衛庁にお伺いしますが、B52が沖縄に駐留しておる。この沖縄駐留B52は米軍編成の中でどういう関係になっておりますか。そしてどういう部隊がおることになっておりますか。
  56. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 沖縄におりますB52の編成所属でございますが、戦略空軍というのが米本土のオマハというところにあります。この下に第三航空師団というのがあります。それはグァム島に本部があります。その第三航空師団の隷下に第四二五二戦略航空団というのがありますが、それが沖縄に所在しておるという編成所属になっております。沖縄におりますのは一スコードロンで、約十五機編成になっております。
  57. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 このB52は一九六二年の十月までに約七百四十四機生産され、十一ウィング、三十三スコードロン編成になっている。実際には約五百四、五十機が就役している。ことしになって一ウィング削減されて大体十ウィングになるはずです。一ウィングは三スコードロンからなる。そうすると、いまの御答弁からいけば約四十五機一ウィング、そういうことでよろしゅうございますか。
  58. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 一スコードロンの定数は十五機ということを聞いております。それからウィングが大体三スコードロン持っておりますウィングでありますと、四十五機編成になるわけでございます。ただ、実際に第三航空師団に所属しております航空団は、沖縄その他タイとかグアムとかにありますが、三スコードロン編成しているウィングもあるようでございます。
  59. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 ラオスで、せんだってのジャール平原なりあるいはホー・ルートを爆撃しているB52はどこから出撃しているか。
  60. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 ラオスに関しましてニクソン大統領あるいはレアード国防長官は、空軍が出ているということは言っておりますけれども、どこから出撃しているということは触れておりません。したがって、正確にはわかりかねます。
  61. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 防衛庁はもうよろしゅうございます。  そこで、本論に入ります。昨日の外務大臣の御答弁でいきますと、共同声明第四項、ベトナム戦争が解決していない場合の再協議、これは事前協議ではない、したがって沖縄の七二年本土並み返還は動かないところである、間違いないですね、それは。
  62. 愛知揆一

    愛知国務大臣 間違いございません。
  63. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 そうすると、返還時点においてB52というものは沖縄から一応引き揚げてもらう、そして沖縄に駐留したいときには駐留したいという申し入れがなければならない、これが本土並み。現にいま本土B52はないのですから。本土並みである以上B52は一応沖縄から帰ってもらって、もし駐留したいときはもう一ぺん駐留する、そういう要求をすることになるのじゃないでしょうか。
  64. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはいろいろの角度から論ぜらるべき問題だと思います。沖縄返還についてはきのうも詳しく申し上げましたからこれはあえて触れませんけれども、B52の問題については、B52が発進するような状態というものは、だんだんデスカレートしてくるであろう、それの期待に立っているわけでございますから、そういうことはあまり予想したくない。それからもう一つは、これはよく御承知のとおり、施政権がない従来から、沖縄B52の発進基地にしてもらうことは困るのであって、この点は外交交渉の上におきましても随時申し入れておるくらいでございますから、本土並み返還ということになれば、従来の私どもの気持ちで対処するということが当然な思考方法であるべきじゃないか、かように考えております。
  65. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 やや明確になったわけです。そうすると、七二年沖縄返還時にB52は沖縄から一応撤退をしてもらう、それが日本政府態度である、いいですね、それは。
  66. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それはいま申しましたとおり、そういうことは予想したくない、こういう願望を込めての私の態度でございます。
  67. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 いや、願望はよくわかるのです。願望はよくわかるのですが、要するに本土並みですから、B52は一応撤退してもらう、そうせぬと本土並みにならないわけでしょう。そのままずっと居すわるなんということは本土並みにならない、いいですね、それで。
  68. 愛知揆一

    愛知国務大臣 B52が沖縄基地からどこへどういうふうに発進するかということについては、返還後になれば当然事前協議対象になる、その点は本土並みです。
  69. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 そうするとB52の駐留いかん事前協議対象になる、いま明確に言われました、いいですね、それで。
  70. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そこのところで二つの観念があるので、何といいますか、条約あるいは本土並みの体系の中でB52の駐留自体ということになりますと、さようには言えないのではないか。発進ということになって戦闘作戦行動展開ということになれば、これは当然事前協議対象になる、これは観念的、法制的な問題としてお答えすればそういうことになるのです。
  71. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 私はそれを聞いてないのです。駐留自体事前協議対象になるとあなたははっきりおっしゃった。
  72. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いや、そうじゃない。
  73. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 いえ、おっしゃったじゃないですか。では、駐留自体事前協議対象にならないのですか。いわゆる配置の変更にならないのですか。
  74. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これも態様いかんに非常によると思いますけれども、事前協議対象になる了解事項というものははっきりしておりますから、その中に入るような態様なら事前協議対象になりますが、それに入らないものだったら、たとえば一機が駐留するというような場合においては、私はこの体系の上からいえば事前協議対象にならない、こういうように考えます。
  75. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 おかしいですね。それではB52は何機の駐留だったら事前協議対象になりますか。
  76. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点についてはもう前から確定的な解釈がありますから、それについて事務当局から御説明いたしたいと思います。
  77. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 B52が新たに一師団単位以上で駐留してくるという場合には、配置における重要なる変更として事前協議対象になるわけでございます。
  78. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 それが私は問題であるところだと思うのです。六〇年、いわゆるジェントルメンズ・アグリーメントで、重要な配置の変更は、航空の場合は一師団となっているが、その当時B52はなかった。六二年からです。だからB52までも一師団というのは、これはその六〇年段階のジェントルメンズ・アグリーメントには含まれていない。戦力からいうても、一航空団で一師団に匹敵するくらいな戦力ですよ。それを外務省としては、B52、B58もあります。どういう長距離戦略爆撃機でも、水爆搭載用の長距離戦略爆撃機でも、どういう戦力の強い爆撃機でも戦闘機でも、今後依然として六〇年のジェントルメンズ・アグリーメントにおける一師団ということで考えていくんですか。
  79. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは先ほど来申しておりますように、いろいろの前提を置いて考えなければなりませんけれども、現在のところは、その御批判は別として、六〇年来の安保条約並びにその関連取りきめ了解事項ということはそのままにしておりますし、沖縄返還についても、それがいわゆる本土並みである、こう理解いたしております。一艦、一機の駐留というようなことは事前協議対象になりませんが、ただ、いまもちょっとお触れになりましたように、これが核の搭載というようなことになりますと、また別に事前協議対象という問題が出てくるわけですね。ですから、これはあくまで事前協議対象としては駐留ということ、配備、装備、それから戦闘作戦行動、この三つのカテゴリーについては従来からの解釈を変えておりません。
  80. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 いま防衛庁の御答弁にありましたとおり、いま沖縄には二航空団、一スコードロン十五機がおる。この一スコードロン程度だと、それは事前協議対象になりませんか、どうしますか。
  81. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 米国の空軍の師団編成は、先ほど宍戸局長らもお話がございましたけれども、通常航空師団というのは、いまのウィング二ないしそれ以上、こういうことになっておりますので、六〇年の了解の基準でいけば、一スコードロンの配置の変更は事前協議対象にはならない程度の大きさであるという解釈でございます。
  82. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 そうしますと、外務省としては、現在配置をされておるB52は七二年返還の際にもそのままずっと居すわるということになりますね。それを黙過するということになるわけですか。
  83. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 返還のときにどういうものが残って返還されるかということは、いまの安保条約関連取りきめが適用される以前の問題でございますので、その返還のときにどういう部隊が残るかということは、安保条約六条の事前協議対象にはならない事項でございます。
  84. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 そうしますと、いま私が取り上げたような問題が、いわゆる四項の再協議内容になるわけですか。
  85. 愛知揆一

    愛知国務大臣 再協議ということばをお使いになりますが、要するに協議ですね。この内容というものは予想したくないときの協議ですから、内容をきめておりませんけれども、いま東郷局長から申しましたものは、それ以外によく私は申しますが、返還協定によって発効して返還されれば、もうあとは安保条約の取りきめがそのままかかりますけれども、その前に返還の準備、話し合い等におきまして、そういう問題等にも触れる余地のある問題だ、かように考えていいのではないかと思います。
  86. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 私は当然であろうと思うのです。こういう問題こそ、私はいわゆる四項の協議の中の重要な問題であろうという気がするのです。そうですね。  そうすると、もう一度集約しますが、B52の駐留は事前協議対象にいまの態様であればならない。言いかえれば、B52の駐留について米軍から事前協議の申し出がない限りは、そのままずっとB52は駐留し続ける、そういうことでいいんですね、外務省の理解としては。
  87. 愛知揆一

    愛知国務大臣 たとえば従来の本土におきましても、その理由はいろいろの場合があったようでありますけれども、ある程度B52というようなものが入ったことはございますね。たとえばそれは天候の関係だとか何とかいうことでありましょうけれども、これは事前協議対象ではございませんから、事前協議を受けたわけではございません。それと同じ考え方が法理論的には成り立つ。ただ私はさっき申しました——に、願望としてはまた別で、その願望を入れたわれわれの気持ちでもってこれから返還準備に当たっていく、こういうことに御理解いただいたらおわかりいただけるのじゃないでしょうか。
  88. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 そうしますと、くどいようですが、これはもう再来年起こり得る問題ですから。  そうすると、B52の駐留は、沖縄以外のいまの本土にも今後駐留する可能性は出てくるわけですね。
  89. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは駐留という、これは常識的な問題になりますけれども、(楢崎分科員「駐留ということばを使ってあるのです」と呼ぶ)駐留ということばではございません。駐留ということばではございませんが、台風の避難その他によって入ったことはある、こういうことを言っているわけでございます。
  90. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 では台風の緊急避難以外は本土には入れませんか、政策の方針としては。
  91. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは日本政府としては、本土からあるいは返還後の沖縄からは、戦闘作戦行動を容認したくない、そういう気持ちでやっているのですから、その点は常識的にひとつ御理解をいただければいいんじゃないかと思います。
  92. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 非常にお苦しい答弁のようですが、政策的には駐留は断わりたい、こういうことですね。
  93. 愛知揆一

    愛知国務大臣 要するに、しかし発進を認めないような気持ちを持っているものが、駐留という意味にもよりますね、私はいま過去の例として台風とか何とかいう場合には認めたといいますか、入ってきた事実があるということを申したわけでありまして、やはりそういう角度で律すべきものではないでしょうか。戦闘作戦行動を前提とするようなものは、戦闘作戦行動に対する日本側の気持ちというものは、もちろんこれは一般論としては、いつも申し上げるように、事前協議の提案に対しては、イエスもありノーもある、こうお答えしているわけですけれども、気持ちといいますか願望を含めていえば、以上申し上げたところで御理解いただけるんじゃないかと思います。
  94. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 大事な点ですから、くどいようですけれども、もう少し明確にしたいわけです。つまり政策としてはB52の駐留は認めない方針である、これでいいですね。緊急避難じゃないです。
  95. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いやいや、そういうふうにだめを押されると、こちらの答弁もかたくならざるを得ないのであって、B52の単純なる飛来とでも申しましょうか、それは、事情はいろいろございましょうけれども、事前協議対象にはなっておりませんということが一つの眼目でございますね。ですから、その駐留を認めるのか認めないのかとおっしゃられると、私の答弁もかたくなって、そこに対してはイエスとかなんとかということをはっきり言えなくなる。日米間の合意としては、戦闘作戦行動については事前協議でありますけれども、他の二項目の了解事項に触れないようなものであるならば、これは事前協議対象ではございませんから、おのずからそれによって処理されるということになると思います。
  96. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 そうしますと、きのうのやりとりからあわせて考えると、B52の、沖縄はもちろんのこと、本土における駐留もあり得る。イエスあるいはノーがあるというんですから、あり得る。それから、日本本土からのB52の出撃の場合もあり得る。そういうことですね。
  97. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは違うんでありましてね。駐留ということばをお使いになると、これは事前協議対象にはならない、その規模、態様にもよりますけれども、ならないものがあると思います。それはただそれだけのことです。何かこれが、話の模様によっては、ああ、駐留を認めるのか、それじゃ、本土B52がうんと来るのか、こういうふうになり、そして、ひいて本土沖縄化だというようなことに、ともするとなりがちでございますから、さようなものではございませんということを、念を押して申し上げておるわけです。
  98. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 私の駐留ということばがえらいお気にさわるようですが、いま沖縄B52がおりましょう。じゃ、いま沖縄B52がおる、ああいう態様と申しましょう。ああいう態様は、今後本土にもあり得るんですか。
  99. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そういうことは、私はあり得ないことであると思います。(楢崎分科員「あるかもしれないし、ないかもしれない。」と呼ぶ)お断わりしますけれども、駐留というようなことは、相当やはり作戦行動を前提としたようなものだと私は理解すべきだと思うのです。
  100. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 では、直接発進を前提としない駐留は認めない、こういうことになりますね、いまの答弁によると。
  101. 愛知揆一

    愛知国務大臣 直接発進を前提としないということが、災害その他の場合以外に考えられるかどうかということはまた別問題だと思いますけれども、要するに、了解事項によって規定されているところの範疇に入らないものは事前協議対象ではございませんから、日本政府としてイエスと言い、ノーと言う留保した権限を行使するわけにはまいりませんね。これは、あくまで法制的な問題でございます。  それから、沖縄本土並みということは、わしわれの一番基本的な考え方でございますから、沖縄の状況が返還後においてどうあるべきかということについては、事前協議とか、その法体系の出題のほかに、できるだけ日本の本土並みに実質的にしたい。たとえば、いわゆる基地といわれていますが、提供をする施設その他の点についても、今後の中身の上における返還準備の進め方において、これは取り上げらるべき問題じゃないかと思います。
  102. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 こういうことで時間を食いたくないんですけれども、いま沖縄には、先ほど防衛庁説明のとおり、第三航空師団の配下にある第四二五二戦略航空団がおるんですね。いま答弁した、防衛庁が。それは、七二年の段階にいけば、そのまま事前協議にかかわることなく居すわることになるんですね。居すわってもやむを得ないわけですね。そういうことでしょう。そうすると、結局、いま本土にはB52はないんだから、ああいう沖縄のような態様でB52はいないんですから、B52の現在の戦力があのままずっと返還後も引き継がれるということは、つまり、実態はわれわれが言う本土沖縄化、一つの面から言うと、そういうことになるんです。もしお断わりになるのなら、四二五二戦略航空団どうぞ帰ってください、撤退してくださいとおっしゃるんだったら、話は別ですよ。しかし、事前協議対象にならないとおっしゃるんだから、そのまま居すわるということになる。そうでしょう。
  103. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ですから、そこのところは非常に大事なところで、非常に突き詰めてお話しになっているから、私も突き詰めて御答弁するのですけれども、法制的、条約的にいえば、本土並みに安保条約が適用された場合に、事前協議対象になるものとならないものがございます。その場合に、事前協議対象にならないようなものが残るということは、観念的にはこれは事前協議対象にならないのですから、事実問題として考えていくよりほかにしようがない。  そこで、先ほど申したことをもう一ぺんお考えいただきたいのですけれども、政府といたしましては、施政権のない沖縄においても、沖縄基地B52に駐留され使われるということについては、沖縄県民の心情を理解しても、非常に困ったことだからやめてくださいということで——これはなかなか成果があがりませんで申しわけございませんけれども、非常な努力をしているわけでございますね。現在以上にアメリカの軍としては使いたかったかもしれないけれども、しかし、それを相当に押えて協力をしてもらっているという程度には、私は外交交渉の成果があったのじゃないかと思います。そういう姿勢をもっている政府でございますから、法制的な条約の適用ということとはまた別に、これはほかについても、基地のあり方、それから、たとえばこの間からいろいろ御論議がありまして、軍用一号道路をどうするんだ、現状のまますればこれに地位協定はかかるかもしらぬが、それでいいかどうかというような御論議もありましたが、そういうサブスタンスの問題については、今度は中身についても実質的に本土並み考え方でいくようにしたいというのがこれからの努力のかかるところではないか、これで私は御了察がいただけると思うのです。私は、おっしゃることは非常によくわかります。
  104. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 私の言っていることもよくわかるとおっしゃるし、大臣の言わんとするところも私はよくわかるのですが、ことばとしてはっきり言えないところがこの共同声明のなかなか微妙なところなんですね、ほんとうは。それでよろしゅうございましょう。願望としては、帰ってきていない、施政権のないいまですら、B52はどうぞのいてくださいと言っている政府だから、七二年返還時においてはこの姿勢を一そう強めてやる、こういうことですね。——まあいいでしょう。私の言っていることと同じだから、どうぞ帰ってくださいという態度で臨まれる、こういうことだと理解します。反論がない以上はそのように理解します。(愛知国務大臣「それは承っておきます」と呼ぶ)そういうことを言われるからまた……。どうしてそう言わなくちゃならぬのでしょうかね。では、いままでのやつは何のためにやりとりしたかわからないじゃないですか。承っておきますなんて、最後にそういうことを言う。いまのは不規則発言ですから、主査、あれはだめですよ。会議録にない。  そこで、きのうもやりとりしたのですが、極東の範囲の問題でやりとりしました。六〇年のあの安保の審議のときに、愛知外務大臣自身が特別委員として統一見解を岸総理に求められた。きのう読まれたような答弁があった。そこで、日本の基地を使って在日米軍が出撃し得る地域の中にベトナムは入るわけですね、いまの状態では。
  105. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはやはりきのうの議論に戻りますけれども、私は原則論を申し上げるのにとどめておきたいと思うのです、なかかな微妙な問題でございますから。
  106. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 どうして国会でそれが明らかにできないんでしょうか。きのうあなたは、出撃することも、イエスと言うこともあり得るという御答弁ですから、イエスと言われる場合は当然、ベトナムは安保条約第六条により日本の基地を使って米軍が直接出撃をし得る地域と判定した場合に、イエス、こうなるのでしょう、イエスと言う場合はね。それは間違いないですね。
  107. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これも二段がまえ、三段がまえの前提が私は必要だと思うのです。つまり日米両国が——ということは、日本自身が自分の安危に非常に関連の深いという平和、安全を守るために、たとえば米軍戦闘作戦行動に限定していえば、それがそのときの周囲の状態からどういうふうに影響されているか、またそれを自衛しなければならないかどうかという内容関係してまいりますね。ですから、端的に、ベトナムは含むか含まぬかとか、周辺地域はどういうふうな定義をするかということは、私は申し上げられないと思うのです。第一極東の範囲についても、いつも読み上げるようですが、これは地理学的にもなかなか限定できないことであるということは、統一解釈にもいっているくらいですから——これは大事なことだから、いま申しましたことで、私としてはそれ以外に申すことはございません。
  108. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 それで、きのうは範囲ということで聞きましたけれども、必ずしも極東の範囲と出撃し得る地域は違うんだというお答えですから、だからそのお答えに応じて、私は今度は質問をしているのです。では後段のほうの出撃し得る地域はベトナムは入ることがありますね、こう聞いている。つまりイエスと言うときがあるということは、そういう判定のときでしょう。
  109. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それはかりにベトナムが、日本の安全ということが、われわれからいえば。極東の安全なくしては確保できないという立場がこの統一解釈に出ているわけでございますね。ですから、直接その近隣のところであれば入る場合もありましょうし、入らない場合もありましょう。そういうふうに理解すべきであって、それでよけいなことを申すようですが、それならシベリアまで入るのか、あるいは世界じゅう入るのかとおっしゃれば、それはそういうことはございません。
  110. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 シベリアやら、私は言うておらぬですよ。ベトナムしか言うておらぬですよ。  きょうの新聞を読みますと、プーマ政府がパテト・ラオのほうに御提案、ちょっと話し合いたい。いわゆる平和へのきざしが見えてきた。たいへんけっこうだと思うのです。それにしても、現在のところはいわゆるラオスの内戦ということは、客観的に見るとベトナム戦争と一つのものである。そうすると、もしこれが不幸にして解決しないというときには、ラオスもベトナムと同じように第六条、直接出撃し得る地域に入る場合もあり得ますね。一つの戦争になっている。防衛庁がさっき答弁しましたとおり、B52はどこからラオス爆撃に出撃しているかわからぬということですから、あるいは沖縄から出撃しているかもしれぬ、いま現在。だからラオスも、ベトナム戦争が解決していない段階では、ラオスに対する直接出撃も、六条との関連であり得る、そのように考えていいんですか。
  111. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはまたお答えが長くなるとおしかりを覚悟してなんですけれども、私は、——私はというか、政府といたしましては、このラオスにつきましては、やはり主体的なものの考え方をすべきであるし、行動もすべきであると考えております。すでにいろいろの手は打っておりますし、きわめて最近におきましてもやはり一九六二年のジュネーブ協定を守るその方向で関係各国に対しても主体的の立場でできるだけの努力をしたい。したがって、観念的あるいは地理学的な問題じゃなくて、そうやってだんだんと国や領域が紛争の中に巻き込まれるようなことはできないように、ならないように、これに対して全力をあぐべきでありますから、いわゆるあなたのおことばでいう周辺地域というものはできるだけ限定的に考えていくべきである。そして、その成果は日本だけの努力でできることではありませんけれども、いまもお触れになりましたような当事国あるいは関係国の努力によって、大事に至らないことになるという見通しと確信をもって臨みたいと思っております。
  112. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 それはわかるのですよ。それはわかるのですが、ベトナムと同じようにもし片づいていない場合は、ラオスに直接出撃をしたいという事前協議の申し出があった場合、やはりイエスもありノーもある、こういうことですね。
  113. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはまた一般論になりまして、事前協議というものがイエスもありノーもある。同時に、しかし日本政府としてはいまもこれだけの努力をしておるのですから、ラオスに広がるというようなことはないようにしたいという……。
  114. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 広がっているのです。
  115. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ですから、それが広がっているとすれば、収縮させるように努力をしなければならぬ、そういう立場をとっておりますから、かりに観念的な問題としても、ラオスとかあるいはカンボジアだとかいう国名をあげて、そういうときの出撃行動についてはイエスと言うことがあるのかというようなことについては、現在のとの段階において私お答えすべきではないと思います。
  116. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 さっき防衛庁からの御答弁で、ラオスに現にB52が爆撃しているのでしょう。この事実はお認めになりますか。どこから出ておるかからないうこともさっき御答弁のとおりです。そうすると沖縄から出ているかもしれぬじゃないですか。現実の問題を聞いておるのです、願望は別として。政府願望はよくわかるのです。だから、ラオスへの直接出撃というような問題が起こらぬということは断言できませんでしょう。だから、そういう際にはやっぱりイエスもありノーもありますかと聞いておるのです。大臣が答えにくかったら条約局長でもいいのですよ。
  117. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはもう何べんお答えしても同じことなのです。つまり一般論として、事前協議というものは日米間で相談する問題ですね。こちらがノーと言えば、できないことですね。イエスと言えば、できることになるわけですね。しかし日本政府の現在の立場は、ラオスというようなところがまた混乱のちまたにならないことを、いわば政策として関係方面、関係国へも申し入れや協力を要請しているわけですから、この立場においては、私は現在どうであるかわかりませんけれども、日本が提供している基地についてのわれわれの考え方というものが明確になっておるということを御了解いただければけっこうなことではないかと思います。それ以上どこにどうなった場合にイエスと言うかどうかということは、これは軽々に言えない。しかし法理論的に日米安保条約の運用についていえば、事前協議があったときには、イエスと言うこともあれば、ノーと言うこともある。これは何べんでも繰り返さざるを得ないことです。
  118. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 私は、共同声明の中で韓国にもし武力攻撃が起こった際というあの四項の項目以前にこの問題のほうが、いまの情勢から考えて残念ながら現実に起こり得るんですよ。だから私は一番可能性のある問題として、これをこんなに時間をかけて追及しているんです。  そこで、いまの御答弁によると、そのときになってイエスもある、ノーもある、こういうことだと思いますから、ラオスもあるいは直接出撃の対象になるかもしれない、こういうことだと思うのですね。  そこで、六日にニクソン大統領ラオス問題について声明を出されております。これは公式声明ですからね。あの声明について、日本の外務省としては、あの声明の中からラオス内戦に対する介入について国際法的な正当性はどこにあると思われますか。
  119. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、お話のとおり、ずいぶん詳細なステートメントというか、メッセージが出ました。私も熟読いたしております。しかし問題は、それに対する日本外務省としてのコメントをすることもさりながら、私はやはり日本政府としての主体的なこのラオス問題についての努力というものを大いに展開しなければならない、かように考えておりますから、英ソ両議長国に対してはもちろんのこと、それからICCに参加している各国に対しましても、もう前々からの一九六二年のドクトリンに返ってこれが順守できるようにということについて積極的な動きをただいま展開しつつございます。
  120. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 そうしますと、あのニクソンの声明の中で、ソ連、英国両議長団に対していわゆる調停方を提案していますね。それを支持されますか。
  121. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは日本の政府としての考え方で、いまいろいろ順を追うて考えております。関係国の動向なども十分見据えていかなければならぬことでありますけれども、これは御承知のように、まあ必要なら政府委員からも御説明いたさせますが、とにかくプーマ政権というものは、いまさら御説明するまでもこざいませんが、いわゆる中立政権で、そして共産圏も含めてこれを支持する立場に立っており、そして共同議長国が英ソ両国である。そしてそのプーマ総理から日本の総理に対しても要請があり、またそれを受けてわれわれとしても、たとえばソ連に対しても私自身としても協力を要請している立場をいままでもとってきている。さらに日本としての主体的の立場で行動を展開いたしたいと思います。その中には米側が今度発表したものと似ているところもありましょうし、あるいは触れないところもございましょうし、あるいは以外に触れるところもあろうかもしれません。
  122. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 もういま非常に動き出しているんですね。いまから検討するじゃおそいんじゃないでしょうか。もう少し具体的に日本はどうするという何かはっきりしたものが一つでも二つでもこの際明らかにできますか。昨年ソ連に対してお願いをしたということはきのう聞きました。いまです、いま、具体的に何か考えていらっしゃることはありますか。
  123. 愛知揆一

    愛知国務大臣 とにかく日本といたしましては、何と申しますか、横に立って、しかし同時に非常に心配をしておる立場にありますから、この北と南との争いあるいはベトナム戦争のような状況がまたさらに拡大されないように、現中立政権というものが安定した立場に立って終息ができるように、これを基本の考え方にして従来もいろいろの努力をしていましたし、これからも続けてさらに一そうの努力をいたしたい、こう考えておるわけであります。
  124. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 時間が長くなるから……。努力をされるということは何回もきのうから聞いている。具体的には、たとえば日本も一ぺんこの際両議長国に明らかに提案をするとかなんとか具体的なものはありませんかと聞いているのです、努力するじゃなしに、事態は動き出しておるのですから。それをを聞いておる。
  125. 愛知揆一

    愛知国務大臣 具体的にというおことばですが、たとえばプーマ首相自身も一つの提案をいたしております。その中で早く両議長国をはじめ国際監視団、こういう関係国に対して会議を開いて話し合いをつけてもらうようにという要請をしております。こういう考え方に対してはわれわれも賛成でございますから、そこで日本政府としても、主体的な立場であらためてソ英両国はじめ関係国に対しまして、日本政府としての要請、そういうものを各国に向けて展開しつつございます。
  126. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 もういま具体的にされておるのですか。
  127. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いたしております。
  128. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 それはいつごろからされておるのですか。
  129. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実はあらためて数日前から各国に対する働きかけをいたしております。
  130. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 その内容をもう少し、どういう働きかけの内容か、簡単にひとつ……。
  131. 須之部量三

    ○須之部政府委員 御存じのとおり、日本は六二年協定のメンバー国ではございませんから、直ちにすぐどうこうというわけではございません。ただ、先ほどおっしゃいました議長国とか——一番関心を持ちますのはやはり議長国なりあるいは国際監視団の関係国でございますが、それらの国に対して、日本としても平和が再び回復されることを非常に強く望んでいるという意味で、それらの国の努力を要請したいという趣旨のアプローチをしております。
  132. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 そこで、もう時間があまりないようになりましたが、私は六日のニクソン声明を読んでみまして、ラオスに介入しているアメリカの立場の国際法的な正当性というものはどうしても見当たらないのです。それは六二年七月二十三日のジュネーブ宣言なりあるいは議定書を読んでみましても、私はアメリカの介入の正当性は見当たらない。たとえば念のため読んでおきますが、このラオスの中立に関する宣言の中でも、「(5)ラオス王国政府は、いずれの形式によるかを問わず、ラオス王国の国内問題に対する外国の干渉を許さない。(6)ラオス王国政府は、議定書第五条の規定を留保して、すべての外国の軍隊及び軍事要員のラオスからの撤退を要求するものとし、また、いかなる外国の軍隊又は軍事要員のラオスヘの導入をも許さない。」さらに今度は4です。「ラオス王国の主権、独立、中立、統一又は領土保全が侵害された場合又は侵害されるおそれがある場合には、これらの諸原則及びこの宣言の他の規定が遵守されることを確保するために必要と考えられる措置を検討するため、共同でラオス王国政府協議し、かつ、各政府間で協議するものとする。」あるいは議定書の第十五条「委員会は、この議定書の関係条項に定める特定の任務を遂行するにあたり、違反が行なわれたと考える妥当な理由があるときは、直接に又は査察団を派遣することにより調査を行なうものとする。」こういうことがあるのです。そうすると、プーマ政府の声明を読みますと、六十四年の段階でアメリカに対し援助を要請しております。そうすると、アメリカとしては、この六十二年のジュネーブ議定書からいえば、まず議長国なり、あるいはICCに訴えなさいというのが筋じゃないでしょうか。それを援助を受けたからといった理由で内戦に介入をして、そしていまベトナム戦争がああいう状態になって、にっちもさっちもいかないようになったいまの段階で、六日の日に両議長国に何らかの調停を要請するなどということは、国際法的な正当性がない。現にアメリカのフルブライト上院外交委員長もそれと同じことを言っておる。正当性について疑問があるということを言っておるわけです。だからラオスに対するB52の爆撃は中止をしなければならないということをフルブライト外交委員長ですら言っておるのですね。だから、B52のラオス爆撃に対する中止、そういうことは日本政府としてアメリカに要請をされるお気持ちはないか、フルブライト外交委員長ですら言っておることですが、どうでしょう。
  133. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私が先ほど来申しておるところは、日本国政府といたしましては、一九六二年の協定によって関係国間の話し合いが早急にまとまるということについて要請をするということを、何も最近だけではなくて、実は私自身にいたしましても、昨年の九月にもそれ相当の努力はしてまいりましたが、不幸にしてまだその実りがないわけです。その線をどうしても実らせようとこうしておるわけであります。アメリカにはアメリカにおいて大統領の声明もあれば、それに対して国内でもいろいろの論議や批評もありましょうけれども、それに対してとやかく申しますよりも、日本として、これは当事国ではございませんけれども、平和的な話し合いがついて、事態が急速に改善することを望むというのが、日本国民の全体の考え方であろうと思います。また主体的な立場において、そういう行動をとることが適当な措置ではないかと私は思います。
  134. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 きのうも申し上げたとおり、共同声明の四項にあるんですね。インドシナの平和に関する日本の努力というものが表明されておるのですから、私はそのとおりやりなさいということを言っておるわけですね。  それで、時間がありませんから、最後に一問します。  核防条約の問題です。核防条約が調印された、そうすると少なくとも二十五年間は日本は核をつくらず、持たず、こうなる。その義務を負う。そうすると、いわゆるアメリカの核の抑止力ということは、核防条約に日本が参加してその義務を遂行する以上は、二十五年間は少なくとも必要ですね。そう考えておられますか、アメリカの核抑止力。みずからはつくらず、持たずです。
  135. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはまだ実は核防条約に正式に加盟したわけではございませんですね。要するに一口に言えば、従来の日本としてのいろいろ努力の経過もあり、精神においては核の軍縮の義務というようなことがとられてきたことはけっこうだという趣旨に賛成して、調印はいたしましたけれども、批准ということについては十分慎重に考えなければならない、こういうふうに考えますから、そういったような点についてはこれからも国会で大いに御論議をいただいてしかるべき問題だと考えております。それから、いまの問題はいろいろの角度からお話しができると思いますけれども、もしこうしたものが日本の望ましいようなかっこうになってきて運営されていくということになれば、国際情勢もずいぶん違ってくるのじゃないかと思います。  それから同時に、核防条約というものは、もちろん安保条約というようなものを否定しておりませんですから、日本の安全というものは、かりにこれに正式に加盟しても、その面においては心配はない。しかし同時に、もちろんのことですが、脱退の権利も留保されるわけですし、それから五年ごとに条約自身がレビューされるというところもございますから、これはもう少し、原子力平和利用も含めて、これから情勢が進展するに伴って、政府としても考えるべきところはいろいろの面で考えて、批准に踏み切るかどうかということを、もう少し時間をかけて十分御論議をいただいて、そのあと政府態度を決定するということになる、かように私は現在考えております。
  136. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 私は、これを申し上げるのは、四十二年十二月の臨時国会、予算委員会、与党の松野委員の質問に答え、佐藤総理は、安保条約の一番中心の目的は、アメリカの核抑止力であると答弁なさったはずです。そうすると、核防条約にもし日本が参加するとして、参加した場合には、核防条約に参加しておる期間は、つまり二十五年間は少なくとも安保条約が必要ではないか。政府考え方からいくと、論理的にはこういうふうになるのではなかろうか。少なくとも二十五年間は安保条約は続けさせなくてはいけないというように、いまの政府答弁からすると、論理的にはなるのではないか。どうでしょう。
  137. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、現在の段階で、安保条約というものは相当長期間続けなければならない、かように考えております。そして、それが、先ほど申しましたように、安保条約においては、それに触れないというか、そういうことが前提に考えられるという点を私としては重視してまいりたいと思います。しかし、先ほど申しましたように、この核防条約をめぐるいろいろの考え方については、それこそ広く国民的な広場で大いに論議を各方面からされてしかるべき問題である、かように存じております。
  138. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 最後の一問にします。  そうしますと、参加した場合には、佐藤内閣が現在とっておられる政策、いわゆる非核三原則というものは、少なくとも二十五年間は続くわけですね。
  139. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは非常に長期的な展望の問題にもなりますけれども、私のごときはこの非核三原則というものをあくまで守っていきたいと思いますが、非核三原則を守り得るのにはさらに大きな前提というものが自分ではあると思うのです。それは端的にいえば、現状においては安保条約をこういうふうに私は考えておる、これは大いに御批判のあるところだと思いますけれども、私はさように考えております。同時に、核防条約については、先ほど申しましたように、五年ごとにレビューもできるし、たとえばNATOというものがどういうことになるかというようなことは、核防条約の中の脱退の理由の一つにあげられるだろうというような議論も外国筋では行なわれているというようなことも、興味のあるところではないかと思いますが、それらをひっくるめて、私は大いにこれから論議が展開されることが望ましいと思います。
  140. 楢崎弥之助

    楢崎分科員 そうしますと、相当長期にわたって安保条約は続けなくちゃならぬとおっしゃっているのですが、少なくとも核防条約の期限の二十五年間くらいは考えておられるのですか。
  141. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは非常に長期の展望ですから、現在の時点では相当長期の安保条約は必要である、それから非核三原則は、私は守り抜いていきたい、私はかように存じております。
  142. 小澤太郎

    小澤(太)主査代理 午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。   午後零時五十九分休憩      ————◇—————   午後二時四分開議
  143. 大野市郎

    大野主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  外務省所管に関する質疑を続行いたします。川崎寛治君。
  144. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 総括質問なり一般質問、あるいは午前中の論議等を通じて、極東の範囲の問題がずいぶん議論になっておりますが、ずいぶん混乱もあると思います。六〇年安保特別国会以来の統一解釈というものは再び繰り返さないでいただきたいと思います。  私は、第一分科会の番人を仰せつかっている立場上、本分科会は本務でないものですから、三十分に限られておりましてたいへん時間が制約されておりますので、答弁の点は整理をしてもらいたい、こう思います。  そこで、そういうものを整理することをいたしてみたいと思うのでありますが、安保条約条約適用区域はどこでありますか。
  145. 井川克一

    ○井川政府委員 申しわけございませんが、私、ちょっと御質問の御趣旨が……。
  146. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 安保条約の適用区域。これはいままでに何べんも議論されておるのですが、ここでちょっと整理しようと思うのですよ。
  147. 井川克一

    ○井川政府委員 安保条約の適用区域と申しますと、いわゆる第五条、武力攻撃に対する措置に関しましては、「日本国の施政の下にある領域」でございます。
  148. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 そうすると、それはつまり、六〇年安保のときには小笠原は入っていませんでしたね。それがいま小笠原が入りましたね。沖縄はいま入っておりませんね。そうすると、現在、安保条約の第六条の事前協議の適用の問題、この場合、日本への持ち込みという点になりますと、沖縄返還になる、条約適用区域が広がるという場合に広がりますね。よろしいですか。
  149. 井川克一

    ○井川政府委員 小笠原が返ってまいりましたので、第五条の「日本国の施設の下にある領域」になりました。沖縄が返ってまいりますると、かかる領域になります。
  150. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 歯舞、色丹、国後、択捉、竹島はどうなりますか。
  151. 井川克一

    ○井川政府委員 歯舞、色丹、現在は沖縄でございますね。それに国後、択捉、竹島は、現在日本の施政のもとにある領域ではございませんので、現在第五条のこの「領域」ではございません。
  152. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それは六〇年安保のときの回答と違うのですよ。小笠原、それから沖縄は入りません。しかし、歯舞、色丹、国後、択捉を入れているのですよ。竹島も日韓条約ではそれを入れているのですよ。ここをひとつ整理しておきたいと思うのです。そうですね。どうですか。
  153. 井川克一

    ○井川政府委員 私の記憶に間違いがございませんでしたらば、当時から歯舞、色丹、国後、択捉は入らないと御答弁申し上げておったと記憶いたします。
  154. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それは違うんですよ。答弁しているじゃないですか。私は、このことはあまり議論するのはきょう問題じゃないです。だから、いずれ沖特委員会なりでもう一ぺんこれは整理しますけれども、六〇年安保のときには入っているのですよ、答弁に。そこで、その沖縄が入っていない。沖縄がいま入っておりませんね。そうしますと、沖縄返還に応じて沖縄が日本の領域に入ってくる。施政下に入る。沖縄が日米安保条約条約適用区域になる。ということは、つまり、そこで新しい配置の変更が当然出るわけですね。いかがですか。
  155. 井川克一

    ○井川政府委員 返ってまいりました後に、返ってまいりますと同時に、大臣が常に申されておりますように、安保条約その他の取りきめが適用になりますので、入ってきた後に、いま御指摘の配備の変更、装備の変更云々の問題が生じます。
  156. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それでは、現在沖縄にある米軍、陸海空、いずれにいたしましても、それは当然すべて配置の変更として、先ほど午前中アメリカ局長答弁になった、陸軍、空軍一個師団、海軍一機動部隊という、その範疇の問題は当然検討しなければならない事項ですね、事前協議として。
  157. 井川克一

    ○井川政府委員 東郷局長はそう御答弁になったものとは私は理解しておりません。東郷局長は、返還後にそういうもろもろの事前協議云々の問題が生ずる、そうお答えになったと私は理解しております。
  158. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それじゃ、現在米軍にあるのは、その配置の変更として事前協議対象にならない、こういうことですか。
  159. 井川克一

    ○井川政府委員 現在は、安保条約その他の関連取りきめが沖縄に適用になっておりませんので、そういう問題は起こりません。
  160. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 いまは起こらぬはずですよ。だから、返還になるときには、当然配置の重要な変更の問題として、事前協議にかけなければいけませんですね。ということは——このことを議論するとぼくは時間がないのですよ。ということは、問題は七二年までの間にいかにでも米軍が、もし事前協議の重要なる配置の変更の問題でないと——核だけは別にしますよ。そうすると、陸軍、空軍、海軍、この配置、この問題は、つまり事前協議の重要なる配置の変更として検討事項でないともし言うならば、七二年までの間に、施政権返還があるまでの間に米軍沖縄基地を増強すればそれは全部そのまま条約適用区域として在日米軍になる、こういうことですか。
  161. 井川克一

    ○井川政府委員 その間もろもろの話し合いが行なわれると思いまするが、安保条約上は事前協議対象にはなりません。
  162. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それでは、これは残します。  では米軍の駐留目的区域はどこでありますか。
  163. 井川克一

    ○井川政府委員 安保条約第六条に「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」云々と規定されております。
  164. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それでは、駐留目的区域というのは、いわゆる極東の範囲として、共通の関心を有する地域ないし地理的な概念、こういうところを言ってきた、その範囲でございますか。
  165. 井川克一

    ○井川政府委員 まことに申しわけございませんが、御質問の趣旨が私よくくみ取れなかったのでございますけれども、この目的のために日本国に駐留を許すということになっております。ただいま読み上げましたとおりでございます。
  166. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それでは、出動区域はどうなりますか、在日米軍の出動区域。これはきのう愛知国務大臣答弁に関連をして、私はお尋ねをしていきたいと思っていま整理をしておるわけです。米軍の出動区域はどこになりますか。
  167. 井川克一

    ○井川政府委員 たびたび愛知大臣が御答弁申し上げているとおりでございまして、統一見解に明記されております。またこれを読みますと時間が……。
  168. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それでは米軍の出動区域と米軍の駐留目的区域というのは同じだということでありますか。
  169. 井川克一

    ○井川政府委員 さようでないということを愛知外務大臣しばしば御答弁になっているところと理解しております。
  170. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それではさっきのと違うじゃないですか。駐留目的区域と出動区域は違うんだ、こういうわけでしょう。
  171. 井川克一

    ○井川政府委員 さようでございます。出動目的区域というおことばが、私には実は理解いたしかねるわけであります。
  172. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 いま出動目的区域なんて言っておりませんよ。私は出動区域はどこですかと言っている。
  173. 井川克一

    ○井川政府委員 それは統一見解に示されておるし、愛知外務大臣がたびたびお答え申し上げているところでございます。
  174. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 愛知外務大臣どうなんですか。米軍の駐留目的区域というのと米軍の出動区域というのを整理して御説明願いたいと思います。
  175. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは整理をしてもしなくても統一見解どおりでございまして、これも恐縮ですが、読み上げると時間がかかるとおしかりを受けるとあれですから、これはもう何べん申し上げても同じなんですが、昭和三十五年二月二十六日以降政府がしばしば申し上げておるとおりでございます。
  176. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それでは、六〇年安保のときには、出動区域と駐留目的区域については違うのだ。しかし大体それは、つまり駐留目的区域とそれからこの極東の範囲というのは違うのだ。それはきのうも愛知外務大臣答弁されておりますね。きのうのやつを読みますと、愛知外務大臣は、米軍戦闘作戦行動は必ずしも安保条約の極東に局限されないだろう、こういうふうに愛知外務大臣はきのうお答えになっておるわけです。そうしますと、駐留米軍の行動の範囲は極東の範囲と別個の概念であるが、おおむね極東の範囲と合致する。これが六〇年安保のときの政府答弁ですよ。いかがですか。
  177. 愛知揆一

    愛知国務大臣 駐留目的区域ということばを政府としてあまり使っておりませんで、いわゆる極東の範囲ということばで統一見解以来出しておりますが、極東の安全が周辺地域に起こった事情のために脅威されるような場合に、米軍わが国の施設区域を使用して行動する範囲、その行動する範囲は必ずしも条約にいう極東に局限されているわけではございません。これが統一解釈であり今日のわれわれの態度でございます。
  178. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それでは、周辺地域の事情で脅威を感ずる事態になった場合と、それはだれが判定をするのでありますか。
  179. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そうなると問題は、先ほど楢崎委員との問答にもございますように、観念的にはいろいろの場合が想定されましょうが、戦闘作戦行動に限定して考える場合に、在日米軍の施設区域から米軍が出動のための戦闘作戦行動事前協議をかけてきた場合に、その出動作戦行動の、出ていこうとする場合に対する戦闘作戦行動が、わが国の国益から見て、なるほどこれは必要であるなということを事前協議のために主体的に日本政府がきめる。これはそのときの状態において判定すべき問題でありますから、どこどこといって地域をあらかじめ想定するというような性質のものではない、こういうことになるわけです。
  180. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 そこで私は区域のことを申しません。これは範囲ということと極東の平和と安全ということとごっちゃになっちゃっておるわけですよ。だから極東の平和と安全ということを国連憲章のいかなる機関が授権をしておるのですか。
  181. 愛知揆一

    愛知国務大臣 国連憲章とこれは直接には関係はないと私は思います。日米安保条約において定められたところによって日米両国がこの条約を運用するものである。そして、しかし日米安保条約は、申すまでもございませんが、第一条なり第七条によって国連憲章に定められている自衛権あるいは集団自衛権の発動ということで、ここにかかわりはございますけれども、川崎さんのおっしゃるこの解釈の基準というようなものは国連憲章に直接関連するものではない、こういうように考えていいのではないかと思います。
  182. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 そうだと思います。確かにそうだと思うのです。国連憲章のどこからも極東の平和と安全という判定は出てこないわけなんですね。アメリカなりあるいは共産圏にいたしましても、いずれの国が結んでおります安全保障条約、二国間にしろ集団安全保障条約にしろ、極東の概念はどこにもないわけですね。どの条約にもない。その点はお認めになりますか。
  183. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この条約全体がただいま申しましたように第一条で目的、性格は明らかになっておるわけですから、そういう意味では国連憲章の考え方を基礎といたしておる。ここに非常に重大なかかわりがあるわけだと思います。
  184. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それがアメリカの出動区域との関連にもなってくるわけです。  そこでもう少し、時間の関係もありますから、具体的に問題だけ整理しておきたいと思いますけれども、日本がアメリカの出撃、戦闘作戦行動にオーケーを、イエスを与え得る法的根拠は何でありますか。
  185. 愛知揆一

    愛知国務大臣 第六条、交換公文によって事前協議ということがきめられている。事前協議に対する態度として、日本が自主的判断権を持っている、こういうわけだと思います。
  186. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 ところが、極東条項だ、こういうわけですね。極東条項の極東の平和と安全というのは、国連憲章のいかなる条文からも出てこない。しかし、集団安全保障体制というのは、個別的な自衛権あるいは集団的な自衛権、いずれにしても自衛権の行使としてしか認められていない。そうしますと、国連憲章の上で、国連のいかなる機関からも、国連憲章の上のいかなるところからも授権をされていない。極東の平和と安全という、つまりアメリカの政治的な判断による脅威、このことで在日米軍基地が使われる、こういうことになるわけであります。私は、極東の範囲の問題と同時に、これは先般の予算委員会でも、この点食い違って整理がついていないわけでありますけれども、極東の平和というのは、愛知外務大臣答弁されたように、国連憲章のどこからもないのだというのであるならば、国連協力の日本の姿勢というものはたいへん問題になる、こう思うのです。だから、集団自衛権の行使として米軍が、米韓条約、米台条約あるいは米比条約、ANZUSあるいはSEATO、そういうものによって米軍が集団自衛権の行使として行動する、そのことはあり得ることですね。そのことはあり得るけれども、しかし、そのことと日本の基地利用という軍事的な措置の問題、これは国連憲章の上からは明確にならぬわけです。その点をひとつ明確にしていただきたいと思います。
  187. 愛知揆一

    愛知国務大臣 何といいますか、私から言うと、非常に一方的に断定的な前提のもとに御意見を御開陳になっているのであって、私はそこが一番いつでも問題になると思うのですけれども、根本の発想が——私、言わしていただきたいのは、安保条約は何のためにあるのか、だれのためにあるのかということから、まず最初にここで意見が非常に相違していると私は思うのです。日本の安全のためにあるのだ、そこで日本の安全に対して自衛権を行使する、そうしてこれを集団自衛権の活用としてやっていくというのが日米安保条約ではないか。したがって、日本の自衛権という考え方、あるいは集団安全保障という考え方がそこから出てきているわけです。私が言うのは、極東の範囲というようなことを、国連憲章の上に定義つけたものはございませんけれども(川崎(寛)分科員「極東の範囲を聞いているのではない」と呼ぶ)しかし、そこへ結びつけてのお尋ねなのですから、そういうことをおっしゃるならば、その次に言いたいのは、これもよけいなことかもしれませんが、たとえば中ソ友好同盟条約というようなものは、日本を特定敵国扱いにしておりますね。そういう条約の例もあるが、それとは全然違うのですね、この安保条約考え方、あるいは規定のしかたというのは。それから、これもしばしば申し上げるところですけれども、米韓、米比、ANZUS、SEATOと日米安保条約関係はございませんから、その点も明らかにしておきたいと思います。
  188. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 私はいまストレートに、米韓、米比云々というものが条約上クロスしている、コミットしているというようなことは言いませんよ。それはいずれあらためてしたいと思うのですが、安保条約自体が国連憲章に基づいて、こう前文で明確にしておるわけなんです。ところが、その中で、極東の平和と安全ということ、脅威という問題、その脅威の判定者、それが国際連合憲章に基づかない。日本の平和を守るためだ、だからいいじゃないかということにはならないと思うのです。だから極東の平和ということが国際連合憲章の上から出ないということを外務大臣もお認めになっておるわけですから、このことは総理が総括質問の際におきましても、今澄委員なりあるいは私に対しても答弁しておるところですが、国連の認定がなくても韓国に対しての米軍の発動に対してのイエスがあり得るんだということを言っておりますが、そこにもかかってくるわけです。だから極東の平和というものはどこから授権されておるのか。これは国際法の上においてはたいへん大きな問題だと思う。もう一ぺん明らかにしていただきたいと思います。
  189. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は日本のために安保条約は存在する、日本の自衛のためには、極東の安全なくしては日本の自衛がない。これはだれから授権されるとかなんとか、そういう問題ではございません。そういうのが安保条約の規定である、かように考えております。
  190. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 そうすると、国際連合以前の考え方じゃないですか。日本の安全のためであればいいんだということであれば、国際連合体制以前の考え方ですよ。だから国際連合憲章の上から出てこない極東の平和と安全、もう一ぺん明確にしてください。
  191. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは、幾ら御議論申し上げても、平行線になると思います。私は、日本の自衛というものは、たとえば韓国に非常なテンションが組織的に起こったというような場合と関連なくしては考えられない。これがすなわち日本の自衛である。これはどこから授権とかなんとかいうようなものではない。そしてその自衛権の行使というものが集団自衛権の行使ということで国連憲章に基礎を置いておることは、第一条あるいは第七条によっても明確である、こういう考え方でございます。
  192. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 米韓防衛同盟条約が発動する、そうしてアメリカが作戦行動を、集団自衛権の行使として行動する、そのことはあり得ますね。国際連合憲章の上においてもあり得ますね。しかしその際にアメリカが日本の施設、区域を利用して作戦行動を行なうということについてオーケーを与える根拠、それは先ほど極東条項だ、こう言われた。しかし、国連憲章の規定の上からいきますならば、日本にとっては、米軍が米韓条約で動くということは個別的自衛権ではないわけですね。そうすると、地域的な取りきめによるものでもありませんね。それから安保理事会の決議によるものでもない、こういうことになってきますならば、米軍が日本の施設、区域を使って作戦行動を行なうということに対して日本が基地協力をやる、この基地協力が義務になりますね。それは国際連合憲章の上からは、どこからも出てきませんね。いかがですか。
  193. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いまお述べになっている中身はいろんな問題が組み合っていろいろお尋ねですから、どこからお答えしていいかわかりませんけれども、私は一番明確にしたい一つの点は米韓条約で、米韓が約束しておることが内容がいかようであっても、これによっての約束が日米安保条約の義務として履行されるということはない、日本の安全と関連する極東の状況に対して日本が特に事前協議ということについては主体的な判断で国益のためにイエス・オア・ノーを言うわけです。これは全然別の法体系のことであります。認識とか情勢の判断とかいうことはまた別にありましょうけれども、全くこれは条約的には相互関連がない、ことに沖縄施政権が日本に返還されれば、米韓あるいは米華条約とは条文の上でも全く関係がなくなってしまうことは御承知のとおりだと思います。
  194. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 そうしますと、アメリカが極東の平和と安全について脅威を感ずる場合に、その行動はアメリカの自衛権の行使それ以外であってもよろしいということになるわけですか。
  195. 愛知揆一

    愛知国務大臣 やはり基本的な発想やとらえ方に関連してくるわけですが、あなたの御所見は、日本の安全というようなこととは全然別な問題をお考えになっておって、たとえばアメリカの世界戦略体制の一環として、日米安保条約が自由に日本の意思なくして壟断されるのである、少なくともそのおそれがあるような条約だという基本的発想にお立ちですから、そういう御議論に私はなってくるのじゃないかと思います。ですから、基本的には私は日本の安全のためにある日米安保条約であるという見解をとる政府との間には、そのことは幾ら論議しても結局平行線になる、こう私は申し上げざるを得ないと思います。
  196. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それでは共同声明の第七項でうたっております国際的な義務ということは何でありますか。
  197. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 ここで申しております義務というのは、米国が極東の自由諸国と結んでおる防衛条約上の義務というものをさしております。
  198. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 そうでしょう。そうすると、具体的にはそれは何と何と何ですか。
  199. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 アメリカと韓国、アメリカと台湾、アメリカとフィリプン、それから申すまでもなく日米安保条約、これらの義務でございます。
  200. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 これらじゃないんです。ANZUSもそうですね。SEATOもそうですね。
  201. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 ANZUS、SEATOになりますと、極東の範囲外のことになりますので、ここで特にさしておる義務はそこまでは含んでおりません。
  202. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 そうすると米韓、米台、米比、そして日米安保条約、これがアメリカの、第七項でいっておる防衛条約上の国際的な義務、こういうことになるわけでありますか。
  203. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 さようでございます。
  204. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 もう時間があれですのでたいへん恐縮なんですが、これは後の機会にまた譲りたいと思いますけれども、そういたしますと、それらの条約に基づいてアメリカが事がある場合に自衛権の行使をやる。個別的、集団的自衛権の行使をやる。そのことに対して日本の基地が使われるわけなんですね。だから、そうなればなるほど極東の範囲も非常に大きな問題です。これまで議論になっておるように、極東の範囲もたいへん大きな問題でありますけれども、極東の平和と安全、極東にある脅威というもの、それが国際連合憲章に基づかなくてもいいのだ。それは、川崎は日本の平和と安全を考えていないのだ、こういうふうにあなたはきめつけてかかるが、それはたいへんな偏見ですよ。そうじゃなくて、われわれはほんとうにこの国際の法体制の中で日本の平和と安全を守るためにはどうすべきかということを考えるわけで、それだからゆえに国際連合憲章に基づかないその極東における国際の平和と安全という問題についてはまさに食い違っておりますけれども、私は政府答弁に納得できないわけです。そうしてそれゆえにこの安保条約のアジアにおける、つまり他のどの条約よりも、極東にある不安定な状況の中で日米安保条約がどの地域ともコミットしてくる。それは米軍の出動区域なり極東の範囲なり、しかも両国の共通の関心を持つ地域ということになれば、それは極東の情勢の変化によってその関心を持つ地域というものは変わっていくわけでしょう。だからその危険性を私は言うわけなんです。ですから国際的な義務との関連においても、極東の平和と安全が国際連合憲章と無関係であってもいいという言い方をすると、あるいはまた反論があるかもわかりませんけれども、それと食い違っておるという点についてはたいへん問題がある、こう思います。
  205. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そこは非常に大事なことで、先ほどの私の御答弁でもわかりいただいているかと思いますが、念のためにそれを申しますと、共同声明の発表のときに、私から要旨を説明して公にしているものがございますが、その中でもはっきりメンションしておきましたけれども、このくだりは、当然のことではありますけれども、個々の具体的の事態について日本が事前協議に対する態度を明確にしたものではございません。これはあくまでアメリカが米韓条約を結んでいる、あるいは米華条約を結んでいる、それは事実でございます。アメリカはそれに対して義務を負っている。しかしもしそれが自動的に日本の義務だというふうにお考えになるならば、日米安保条約第六条なんというものは必要ない、こういうことになるわけで、これがいわゆる六条によって事前協議という制度ができたゆえんでもあるし、これが大事なところだと思うのです。これはあくまで日本の立場において主体的に、こういう場合の常として、観念論ですけれども、基地を提供したというような場合に、提供されたほうが自由に使えるのか、あるいは観念的な問題としては普通かもしれないが、その使わせることについて提供したほうが権利を留保していくというのが事前協議の制度なんであって、法律的、条約的に、ほかの日本の関係していない条約上の義務が日本を拘束するということになっていない、ここは非常に大事なところだと思います。したがって、そういったような他国間の条約上の履行の義務が、自動的、機械的に日本の義務にはもちろんならないんだ。当然のことながら、これは事前協議その他の予約ということにはなっていないのだということに御注目願いたいと思いますし、それから基本的に日米安保条約の基本の問題になると思うのですが、国連憲章に違反しているというのは一体どこから出てくる議論なんでしょうか。私これに対しては、政府といたしまして非常に川崎さんの御見解に対して反対意見を持っておりますこと、しかもこれは私だけではなくて一貫した意見であり、またこれは非常に大事なところでございますから、あえて一言申し上げておきます、
  206. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 私は事前協議の予約論は申し上げておりません。むしろそのことよりもイエス、ノーの協議をするということに安保条約の重要性があると思います。そしてさらに極東の平和の問題について、極東の平和というものがつまり総理大臣の答弁にもあるように、国連の認定なしに、認定の以前にも米軍の行動についてオーケーを与えるということが出かねない。つまり極東の平和と安全、しかもその極東の平和と安全が国連憲章に基づかないというところに私はたいへん問題がある、こう思っておるわけです。しかしこれは私与えられた時間を越しましたから、あと質問者も多いので終わりますけれども、これは外務大臣ともたいへん大きく食い違っておりますから、あらためていずれかの機会にまた質問さしてもらいたい、こういうふうに思います。  終わります。
  207. 愛知揆一

    愛知国務大臣 一言、これはたいへん大事なことですから念のために申し上げておきますけれども、国連の決議なしにとかどうとかいうことが出てきたのは、三十八度線をめぐる休戦協定、それから休戦協定が予想しないような、かりに組織的大規模な行動、脅威がかかってきた場合に、国連の決議がない場合であっても国連軍あるいは国連として防衛の措置をとらなければならないような場合に、これが在日米軍に対して提供されている日本の基地に関連する問題として非常に限定された問題についての論議でございまして、一般的な、安保条約が国連憲章に違反しているとか、国連決議がなくとも、国連の意思に反しても行動するがための戦略体制をつくったものだというふうに、もしこれが報道されるようなことがあったらたいへんなことでございますから、私はあえてこの点はっきり申し上げておきます。
  208. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 私、終わろうと思いましたけれども、いまの点で一つだけお尋ねしておきたいと思います。  それでは、極東の範囲の中で、韓国とその他の地域というのは、これは明らかに区別がある、こう思います。その点いかがでありますか。
  209. 愛知揆一

    愛知国務大臣 安保条約上の極東の範囲についての解釈は、もうしばしば申し上げたとおりでございます。今度は別の観点に立って、韓国の緊張ということについては、国連がここに顔を出しておるというか、その仲裁役に出ているわけでございますね。そういう点と、それからたとえば台湾海峡の状態とは、これは違うということは言えると思います。
  210. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 終わります。
  211. 大野市郎

  212. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 私は外務大臣に未承認国への日本の渡航問題また旅券の交付問題に関係して一点、それから原子力のウラン問題について一点。二点お尋ねいたします。  最初に、外務大臣にお尋ねいたしますが、昨日の午後四時五十分ごろから首相官邸で重要な会議が、小林法務大臣、保利、木村正副官房長官の間に行なわれたことを知っておりますか。
  213. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は知っておりません。
  214. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 私はなぜこの問題を提起したかと申しますと、これは重要な、いま外務省で検討しております、また外務大臣がおっしゃっておるような未承認国への渡航自由化問題について、実は固めておられたということを、この新聞のほんの片すみに出ていることをお尋ねしているわけです。「政府は十日午後四時五十分から首相官邸で小林法相、保利、木村正副官房長官の三者会談を開き、在日華商の広州交易会参加問題北朝鮮への里帰り問題について最終的に意見を調整した。会談後、小林法相は「華商二団体から“再入国”」」云々というこの記事が出ておりますが、私が疑問に思うことは、これら重大な問題について、主務官庁であり、最高責任者である外務大臣をはずして、なぜこのような三者会談が行なわれたかということについて疑問を感じておるので、そのはずされた理由、また、どうしても大臣が参加できなくて、政務次官とかその他の方をこの席に入れたのか、どうなんですか。
  215. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私はそういう会議があったことを知りませんし、その時期は国会の中におったと思います。
  216. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 これは大臣、大事なことだと思うのですね。法務大臣が語るといって、こういうことを言っておりますけれども、実は法務大臣がいれば一番いいんですが、法務大臣がいらっしゃいませんので、これは明らかに愛知外務大臣をばかにしたのか、それとも外務省の見解など聞かなくても、このような大事な帰国問題という問題について外相の意見等を聞かずに煮詰めたものなのか、この点はっきりしてもらわなければ困るのでございますが、どうなんでしょうか、大臣。これはほんとうにこういう問題は通知がないのですか。
  217. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それはばかにされたか何かわかりませんけれども、私はその事実は承知しておりませんから、その事実だけをお答えするほかないと思います。
  218. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 これは明らかに、ただいまもお話しがあったように、保利官房長官また木村官房副長官、それから法務大臣の三者だけで話し合いがついたということについては、まことに遺憾である、こう思いますか。
  219. 愛知揆一

    愛知国務大臣 しかし、そこにいないのですから、どういう話が行なわれたか、どういう結論が出たか、結論の次第によっては猛然と反対意見を申します。
  220. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 これは確かに猛然と反対しなければならない重大な事件でございます。これはあとでまた官房長官等にお尋ねしたり法務大臣にお尋ねしなければならぬと思う。その内容については、もちろんこれは大臣はキャッチしておりませんが、新聞にほんのちょっと出ております。大事な問題で、実はこういう大きな問題はもっと大きく出てしかるべきでありますが、出なかったという点をまず私は不審に思ったので、お尋ねをしておるわけであります。  次に、未承認国への渡航の自由について大臣が腹を固めたということを、この新聞で私知ったのでございますが、大体この未承認国はどことどこで、一体どういう構想でございますか。
  221. 愛知揆一

    愛知国務大臣 大体一つは中国大陸、それから北朝鮮、北ベトナム、それから東ドイツというようなところが一応あげられるかと思います。
  222. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 愛知国務大臣はこの旅券法改正に関連した未承認国への日本人の渡航並びに向こうからの人たちを全面的に自由にする方針を固めたと、ちょっとここに出ておりますが、その点についてのお考えをお尋ねしたい。
  223. 愛知揆一

    愛知国務大臣 基本的に未承認国との間でも、たとえば商取引でありますとか、スポーツの関係でありますとか、こういうことについて相手国が日本の国民を入れることを慫慂しているとか、積極的に賛成だとかというようなことについては、なるべく手続を簡素化したらどうだろうか、まずそういうところから入っていきたいというようなところなんです。従来からもずいぶんこれについては配慮いたしておりますが、しかし、これはいずれ旅券法の御審議を外務委員会でお願いをしなければならないわけで、その際にまた詳細にいろいろ御意見も伺いたいと思っておりますけれども、承認国に対しては、各国の例もそうでありますように、今度数次旅券で五カ年間有効ということをやりまして、最近のような海外渡航者が激増している現状にかんがみて、物理的にも取り扱いに困難を感じておりますから、これはこれでよろしいのですが、未承認国については、やっぱり原則的に個別審査にならざるを得ませんから、そういう審査の手続などについてできるだけ簡素にしてあげることが望ましいのではないか、これを基本的に考えております。しかし、未承認国との間にはあるいはいろいろ考えなければならない事柄もございましょうから、一般的な基準というよりも、やはりケース・バイ・ケースの審査に際しての心がまえというものをできれば広くしていこう。しかし、相手国の状況その他によりましては、一律にはいかぬことも大いにあり得ることであろう、これは心していかなければならないところであろうと考えております。
  224. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 たとえばスポーツ、経済——ただいまお話を承りましたが、ある一国が政治目的——政治目的といってもいろいろ定義がありますが、スポーツとか経済とか観光とかとはまた違った、明らかに政治的な問題で入国してきたいという向こうからの要請、これに対しては、大臣のいまおっしゃったような未承認国の渡航問題については、いままでよりも柔軟な態度で臨むのですか、どうですか。
  225. 愛知揆一

    愛知国務大臣 気持ちとしては柔軟に扱いたいところでございますが、さっきおしかりも受けたように、これは外務省だけでも処理ができないようなこともございますものですから、そこは関係官庁と十分に意思の疎通を必要とすると思います。
  226. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 そこで、先ほどの話になるのでございますが、そのような問題を早く解決しなければならぬ、われわれはそう思っているわけです。そこでまことに言いにくいことを大臣に申し上げたわけですけれども、どうかひとつ御了解いただきたい。  次に、朝鮮民主主義人民共和国に対して、北朝鮮でございますが、人道上の見地から、帰国の問題では相当議論が出ております。今回、墓参りのことで約一年ぶりに何人か政府は認められたと聞いておりますが、一体何人申請が出ておって、何人今回帰国を認められるのですか。
  227. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは実は率直に申しますと、法務省の所管になっておりますので、法務省当局からお聞き取りいただくとありがたいと思いますが、私の考えとしては、純粋に人道的な立場で、ごく少数の高齢者などが墓参りのためにというようなことならば、取り上げてもいいのではないかと考えております。これは私、ちょっと時間をとって恐縮なんでありますけれども、先ほどもちょっと申しましたように、未承認国を数あげましたけれども、それぞれの事情あるいは環境が違いますものですから、一がいに何とも申し上げることはできないかと思います。
  228. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 法務省、来ておりますか。
  229. 大野市郎

    大野主査 来ておりません。
  230. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 そうすると、北朝鮮の問題で正確なことがお答えいただけないのでありますが、新聞では六人と出ておりますが、外務大臣の知っている範囲では、六人なんでございましょうか。
  231. 愛知揆一

    愛知国務大臣 きわめて少数ということを聞いておりますし、それならば、先ほども申し上げましたように、たとえば高齢者で墓参のためというようなことが、国内のそのほうの担当の官庁でオーケーだというのならば、これは私としても取り上げてしかるべき問題ではないかと思いますけれども、いまここで断定的にお答えするまでにまだ熟しておりません。
  232. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 そうしますと、新聞発表で四人とか五人とか六人とか、こういう数字が出てきておるのですが、こういう数字は一体どこから新聞社へ出るのですか。
  233. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これも率直に申し上げるわけでございますけれども、昨年もこの種類の問題についてだいぶ問題がございまして、先般も予算委員会でお聞き取りであったかと思いますけれども、これはいろいろルートもあるようでございますから、いろいろのルートからうわさなり希望なりが出ることも多いのではないかと思います。最終的にきまっているわけではないと私は承知しております。
  234. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 そうしますと、この六人という数字は、まだ確たる数字でない。そうしますと、ただいま大臣から承ったように、人道的立場に立って、老人とか墓参とかに限られれば、まだまだこんな六人程度ではない。北朝鮮への今回の帰国問題という問題に対しては、数字が上がってくると理解してよろしいでしょうか。
  235. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは先ほども関連したいろいろの問題ということを申し上げましたが、やはり地域地域によっていろいろと慎重に考慮しなければならない要素もあるようでございますから、なおとくと検討することにさせていただきたいと思います。
  236. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 大臣、私ふしぎに思うことが一つあるのです。この国会ですら数字もはっきりしない。大臣も、これは前向きに取り組んでいこうということを、こうやって私とのやりとりの中で論じているわけですね。それが韓国ではすでにこの問題を取り上げまして、政府の高官筋が正式に外務省へ抗議を申し込んできていると新聞記事に載っておりますが、これはどう理解したらいいのですか。
  237. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは問題によっていろいろございますけれども、こういう種類の情報等については、近隣の国もずいぶん、率直に言って、懸念を持っている向きもございまして、抗議というほどでなくても、いろいろの意見をいってこられたり、照会があったり、そういうことは、この問題に限らず、日常よくあることがございまして、われわれといたしましても、日本側の立場というものをあらゆる機会に友好国については十分説明するといいますか、協力、理解を求めるように従来ともよく努力をいたしておる次第でございます。
  238. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 私は建設委員なもんで、外務に対してはあまりよく勉強もしておりませんし、外務大臣とこういうお話もきようで二回目なんですけれども、外務大臣、一国の外交で一市民が抗議したというのなら、それは私も黙認いたしますが、韓国の外務次官ですか、そういう方が正式に外務省へ抗議を申し込んだというような新聞記事が出ているのに、ケース・バイ・ケースでやる、またそういうことはいろいろあるのだと、簡単にいなされる問題でないと私は思うのです。私は外交問題に対してはあまり勉強しておりませんから、大臣にそう言われれば、そうかなという気持ちにもなりますが、素朴な第三者の質問としても、こういう点はどうしてももっと重要視しなければならない。何人帰そうと日本政府がやることだ——内政干渉に通じるのじゃないかと私は思うのです。それは日韓外交関係ではいろいろあるでしょう。けれども、人道上の問題で北朝鮮の方々が帰りたい、大臣もこれは人間としてとるべき道なんだ。思想、イデオロギーを別としてもこういう問題は取り上げていかなければならない問題じゃないか。それをただ単なるイデオロギーの問題とか条約の問題とかで、わが国のそういう姿勢に対して一々けちをつけてくる、こういうところに大臣の御苦心があるんだと私は陰ながら御同情しているわけです。でありますから、これが正式であるのかないのか。ほかの局長さんでけっこうです。こういうことが事実あったのかどうか。大臣はお忙しくてなかなかそういうことまで御関知できなかったら、その方面の専門の方からどなたかお答えいただきたい。
  239. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は十分なお答えができないかもしれませんけれども、一口申し上げますと、率直に言って、分裂国家とでも申しましょうか、非常に不幸な事態が特に日本の周辺にあるということが、また日本外交の非常にむずかしい要素を占めておるということは御了察をいただきたいと思います  それから、これはあえてえらそうなことを言うわけでもございませんけれども、日本の地位というのがいろいろの意味で向上してきて、目に見えないところでも非常にほかからたよられているということで、いろいろと日本に対する要請あるいは陳情あるいは依頼というようなこともずいぶんたくさんございまして、その中にはとりようによっては内政干渉みたいに見えるものもないことはないわけですが、ここは苦しいけれども大きな立場に立って、ただいまもお話がございましたが、人道上の問題というようなことについては関係の筋に多少忍耐強い——時間的な要素なども必要だと思いますけれども、忍耐強く説得をしたりして、道を切り開いていくという実際上のこともございますことを御了察願いたいと思います。
  240. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 大臣、非常に御苦心なさっておりますし、人道上の問題で前向きに取り組んでいくのだというお考えでありますから、私もそれ以上追及いたしませんが、これが未承認国への渡航の自由化になりますと、北朝鮮と韓国の問題になりますと、前にも増して大きな紛争、またけちがついてきたり、わが国の外交上にいろいろと大きな問題が出てまいることを私は懸念をするのです。この点はいかがでしょうか。
  241. 愛知揆一

    愛知国務大臣 同時にもう一つ大切なことは、基本外交の姿勢として、イデオロギーを異にする、体制の異なるものともどこともできるだけ友好関係を保っていきたいというのが、国際緊張緩和の政策の基本であると思いますので、そういうことを頭に置き、かつ具体的には、先ほどもたいへんぶしつけなことばを使いましたけれども、現実になかなか苦労のある点もあわせて考えていかなければならない。その辺を苦労して道を切り開いていきたいと思っているわけでございます。
  242. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 日本と朝鮮の貿易に関して、商社員の北朝鮮への旅券の取り扱いというものは今後どうなるのでありましょうか。いままでこの点では非常に大きな問題になっておったと思いますが、私はこの点よく理解しておりませんので、お答えいただきたいと思います。
  243. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは先ほど申しましたように、旅券法の御審議を願いますときに、前国会でも非常に御熱心に御論議をいただいたわけでございますけれども、やはり一つには貿易上の問題というようなことについての必要性ということもありましょうが、また他面におきまして、具体的に陸上で境を接し、かつ先ほども御論議がございましたが、三十八度線をめぐって、いまこういうような状態にあるということも客観的な事実でございますので、そういう点についての関係国の心配、懸念というものもやはり理解をして処理をしなければなるまい。これは内政干渉とかなんとかいう問題じゃなくて、やはり日本自身も考えていかなければならぬところがあるのじゃないか。そこで未承認国というのも、先ほど申しましたように、いまお話しの北朝鮮もあり、それから中国本土もあり、あるいは北ベトナムあり、あるいは東独というようなものもございますが、その国あるいは地域によって若干の考慮しなければならない要素も違いましょうし、したがって扱い方の結果も違ってくることがあろう。いずれこの北朝鮮との人的交流の問題については、近く旅券法の御審議が始まるわけでございますが、またその機会にもいろいろとそれぞれの立場等もお聞き取りをいただきたいと思います。
  244. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 私そのときにまた勉強さしていただきます。  現在のことでひとつお尋ねしますが、渡航に際して渡航趣意書というものがあるようでございますが、渡航する場合には渡航趣意書というものが、承認国では何通ぐらい要るのか、また未承認国ではどれくらい要るのか、今後この渡航趣意書というものは数を減らしていくのか、専門的なこまかい点でございますが、どうなるか、この一点が一つ……。
  245. 愛知揆一

    愛知国務大臣 こまかいところは政府委員から答弁いたしますが、御承知のように、承認国に対してはそういう手続は原則的に要りませんし、それからなお旅券法の改正ができましたら、これは非常に自由になるわけです。  それから先ほども私ちょっと触れたのでありますが、いままで未承認国へ出国希望の者についての証明書等については、相当多数の証明書の写しをとっておりますが、こういうところを簡素化したいというところから始めたいと思っておるわけでございます。これは原則的な考え方でございます。
  246. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 ただいまも大臣は承認国はとっておらないというお話でございましたが、ソ連とか共産圏のところではとっておるのではありませんか。
  247. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点、間違いました。承認共産国の場合は五通とっておるのが現状でございます。
  248. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 好ましくない国——おかしい表現でございますが、相手の国の方から招聘する方がないとか、目的がはっきりしないとか、そういう趣意書にいろいろ書かれる以前において外務省が行きたいと希望をしている人に断念させるような勧告をすることがありますか。
  249. 遠藤又男

    ○遠藤説明員 その点につきましては、事前にいろいろ御相談に乗ることがございます。その際に、国に応じて、こういう状況ですということを申し上げておるわけでございます。渡航趣意書を持ってまいりますときには、国によってそれぞれみんな違うわけでございますから、見通しとしては大体こういうふうになるというようなことまでいろいろ御注意も申し上げておるわけでございます。
  250. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 共産圏へ行くときに、そういう御注意があって、あなた、あまり行かないほうがいいのじゃないかとか、言論妨害でわが党がいろいろと事前のことでとやかくいわれておりますが、これは渡航妨害というようなことにまで、拡大解釈すればできないこともない。こういう好ましからざる——何のために、こういう勧告をするのか、なぜ注意を申し上げるのか、その人のためを思ってやっているのか、どうなんですか。
  251. 遠藤又男

    ○遠藤説明員 共産圏へ渡航する場合、いろいろな場合がございますが、それぞれにつきましてどういう事情か、それをお聞きするわけでございます。相手国、渡航先によってそれぞれ問題があるということもいま申し上げましたけれども、特に海外に出た場合の邦人の保護という観点から、またいろいろと相談に乗ることがあるわけであります。相手、渡航先につきまして、どういう現状になっているかということを申し上げるわけであります。
  252. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 その点で水かけ論になってしまうのですが、そういううわさもあります。そこで私はちょっと聞いたのでありますが、時間がございませんので、この点はまたあとでゆっくり聞かせていただきます。  これは外務大臣、日本の第三の火といわれている原子力のウラン開発については大事な問題だと思うのでございますが、わが国がフランスと合弁で行なうアフリカのウラン開発という問題が大きくクローズアップされてまいりました。外務大臣はこのような国策に沿ったウラン開発という国の大きな事業に対しては、一体どのようにお考えか、また法的保護も含めて、今後財政的または精神的の物心両面の援助というものをどういうようにお考えになっておられますか。
  253. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはまことにごもっともでございまして、これも先般の予算委員会でもお話が出たことと思いますけれども、日本政府としては積極的にウラン資源の確保ということに、これからますます努力を新たにしなければならない。たとえばフランスから、ニジェールですか、ウラン資源の共同開発計画というようなことについても話があるようでございますが、民間あるいは科学技術庁等において検討されているようですけれども、政府全体としては、いろいろの観点から考えて、取り上げて適当と思われるものについては、積極的な援助をするという態度で考えられております。
  254. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 三月十六日から二十三日にかけてフランスの原子力庁のマビール生産局長わが国との合弁問題で日本側の意見その他を聞きに来るということを聞いておりますが、これに対する政府側の対策、また応対、そういうものは一体どうなっておるのでございますか。
  255. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 これはただいま愛知大臣が申されましたように、あくまで民間ベースの交渉でございますので、三月の中旬以降に参りますフランスのマビール原子力庁生産部長との直接の交渉は、あくまで民間と申しますのは、日本の主たる電力会社、それから主たる鉱山会社、この方々がいま集まって、そして組織を考えておられます一つの会社が、これはいまのところ仮称でございますけれども、それと直接交渉が行なわれる、そういうことになっておりまして、この交渉がまとまった段階におきましては、政府として、いま大臣が申されましたように、できるだけの積極的な援助をしていきたい、こう考えております。
  256. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 ニジェールに対しては領事館か何か、これから置くお考えがございますか。
  257. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 ニジェールは現在のところ象牙海岸の大使館の兼轄になっております。したがって、領事館は置いておらないのでございますが、現在ニジェールには日本人で居住している人はおらないと私了解しております。そういうウランの開発等の促進に伴いまして、居住する日本人も多くなるかもしれないと思いますので、領事館の設置の問題は今後検討したいと思っております。
  258. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 質問時間がまいりましたから、私、これで終わらしていただきますが、華商二団体から再入国の問題につきまして、先ほど申しましたように商社員が二十一名よりは認めないという新聞の記事につきましては、お話が、外務大臣はその席におられなかったのだからできないというのでございますが、こういうふうに数字まではっきりしてきたということについて、外務当局では、この華商の広州の交易に対する再入国は一体何人申し込みがあって、何人くらい許可するお考えでございましょうか。
  259. 愛知揆一

    愛知国務大臣 華商の広州交易会への渡航の希望でございますけれども、これは私の考え方は、長年平穏無事に商いにいそしんでおられた方で、この交易会に行って商売上の知識も大いに得たいというそういう目的の方を、従来はこういうことは認めてなかったわけなんですが、これを頭から認めないという態度はこの節とるべきではないのではないだろうか、こういう考え方処理をしようと考えたわけでございます。  ところで、冒頭のお話のことはこれに関連しているかもしれませんが、そこで私は国内的な——先ほど楢崎委員の御質問のときにもこの点御指摘があったわけですけれども、国内的な関係官庁でございますね。そのほうに依頼といいますか、そのほうに審査は依頼いたしまして、そこから出てきたものを私のほうとしては受け入れたわけでございます。  その報告によりますと、申請しました在日華僑が三十四名であって、そのうち二十一名を個別審査でもって許可し、十三名を不許可とした。それから個人個人について警察と公安調査庁が中心で個別審査をした。したがって、これは警察、公安調査庁からの私への回答でございますけれども、政治活動をするおそれのある者、特に中共系の華僑総会、東京華僑総会という総会でございますが、その事務専従者であって、純粋に商業活動に従事するとは認められない者を不許可とした。それから生活の本拠を本邦に持つ者以外を不許可とした。これは一人だけのようでございます。それからそのほかに公安上問題があると認められる者あるいはそのおそれが顕著と見られる者あるいは前科がある者、納税義務を履行していない者あるいはわが国の法令に違反した者というような方々を不許可とした、こういう報告が来ております。
  260. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 私の質問はこれで終わらせていただきます。たいへんありがとうございました。  ただ、一言お願いをしたいことは、冒頭にもあったようなことはまことに残念でございますので、佐藤内閣の中でも有能なる大臣をはずすなんということは、私もまことに憤慨しておるわけでございますから、どうかひとつ十二分に外務当局の御意見等を出していただきたい。北朝鮮に対しては人道的な立場に立って、帰国問題に対しては、今回の未承認国渡航の自由化に伴ってさらに前進されることを私お願い申し上げまして終わらしていただきます。
  261. 大野市郎

  262. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 私は、本日国際連合関係の問題にしぼりまして御質問申し上げたいと思います。  きょうは私は単なる質問ではなくて、私の提案も申し上げて懇談するがごとく行ないたい、こう考えておるわけでございますので、よろしくお願いいたします。  私たちは、国連協力は日本の外交の大きな柱でもありますし、それに対する外務省当局の努力についても存知しておるつもりでございますが、わが党といたしましては、かねてより、国連アジア本部を日本に設置する提案を行ないまして、佐藤総理大臣や官房長官等からもそれに対する比較的好意的な、また前向きの御返答を賜わったわけであります。あらためて外務大臣にこの問題についての御見解をまず承りたいと思うのでありますが、私はまず私どもの見解を先に申し上げさせていただきたいのであります。  国際連合に対する協力というものは何かというと、日本国内では比較的サービス業みたいな形で受け取られているのでありますが、日本を平和国家としまた文化国家として位置づけるためにも、また最近の強大な経済発展の結果、世界的にもエコノミックアニマルというような形で、わが国経済発展は必ずしもわが国の外交のプラスにならない面を多く生じてきた、また日本のこのような大発展というものが戦前のような武装国家として諸外国に君臨するような雰囲気が多くあるのではないかという恐怖を一掃することができない、こういう現実的な要請が片一方にある、また二国間外交というものが従来は主として考えられておるし、その二国間外交のみが外交の主体であるかのごとく考えられているけれども、現在においては多国間外交が国際外交場裏においてはきわめて大きな重要な任務を持っておる、そういう点を考えるならば、国際連合に対する協力の姿勢というものは単なる協力、単なるサービスではなくて、わが国の外交方針の重要な柱となるべきではないか、そういうように私は考えておるわけであります。そのためにも国連の機関に対する協力という姿勢を一歩進めて、国際連合の各機構が比較的欧米中心になっておりまして、アジア方面にはその機関も少ない、またその機構の、国際連合の行なわなければならない諸事業というものもアジア方面にはきわめて多い、そういう状況がある以上は、わが国としても国際連合協力の実をあげるためにも、これらの新しい外交問題の局面を開くためにも、国連アジア本部を日本に置こうという提案を行ない、かつそれに対するところの積極的な姿勢をもって取り組むということがわが国の外交の大きな局面を開くゆえんではないか、そう考えているわけでございます。あえて私が申すまでもないことではあると思いますけれども、まず話の始まりで外務大臣の御見解を承りたいと存じます。
  263. 愛知揆一

    愛知国務大臣 かねがね私も公明党の方々が御熱心に国連のアジア本部を日本に設けたいというお考えを持っておられて、国連のほうにももう直接に意見もお出しになっており、また国連のほうからも、とりあえずと申しますか、一応の反応もあったように、この経過は私もずっとフォローいたしておるわけでございます。お考えについて私何も異議はないので、そういうことが実現できることは望ましい、これは御趣旨において私もけっこうなことだと考えております。もちろんこれを実らせていくためには、ずいぶんいろいろと越えていかなければならない障害があり得るように思いますけれども、考えられるその障害とか、それを乗り越えてさらに積極的に、日本としてこういうふうにやるんだという構想を具体的に積み上げていくというようなことに努力を新たにしていくことが適当ではないだろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  264. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 まず、ただいまお話をしていただきましたように、私たちとしては国連事務総長のウ・タントさんにお手紙を出しましたし、その返事も参っておるわけでありますが、また第二回日米議員懇談会の際に、マスキー上院議員を初めとする一行に対しましては、この構想について説得をいたしました。非常な賛意の返事をもらいましたし、それから東南アジア諸国から訪れますところの政党の代表団に対しまして、数カ国に対しましてこれを直接話しまして、内諾といいますか、非常に好意的な返事をいただいておるわけでありますが、私がきょう申し上げたいのは、この国連アジア本部の構想を一歩進めるために、きょうは一つの提案をしたい、こう考えておるわけでございます。  それは国連で使うところの会議場をさしあたりまして日本で建設する。それには当然事務局とか付属施設とか相当の面積が必要とされますし、東京都の近郊にそういったものをつくったらどうか、こう考えているわけであります。どういう名称をつけたらよろしいのか、国連コンパウンドとでもいうか、国連関係のそういう大型のものをつくったらどうか。それはもちろん地方自治体とも関連がございますでしょうが、積極的に外務省がイニシアチブをとってそういうものをおつくりになったらどうか。われわれとしても後援するにやぶさかではないのですが、こういうものをつくったらどうか。またその中には、そういうことを言いますのは、御承知のとおりでありまして、あえて申し上げるまでもないと存じますが、意外と国連関係会議場というものが少ないようでありまして、ジュネーブの軍縮会議の行なわれるときに多少会場が狭かったとか、また私が伺うところによりますと、エカフェ等が行なわれている会場がしばしば一ぱいであって、地元政府に懇願をしながら会場を得ているというような事情も私は伺いまして、実際にはどれほどの大きさがあるものかにつきましても伺ってみましたところが、関係百数十カ国、東南アジアだけの場合ではもっと少なくはなりますが、それらの人々の随員を含めた相当人数が入るものが数カ所同時にあるということが必要だというお話を伺いました。建物としては相当大きなものではございますけれども、そういうものを日本においてつくるということが、国連協力費の中からでも捻出してつくるということができますならば、日本のそういう国際会議場のセンターとして、国連関係会議場のセンターとして非常に有効に使うことができるのではないか、こう考えているわけでございますが、こういう考え方についていかがなものか、私は外務大臣に率直に私の提案を申し上げたい、こう思うわけであります。
  265. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほどもお話がありましたように、アジア国連本部というところまで構想を展開していこうというようなことがこうして話題になるくらいでございますから、私はそういう御計画があることについては大いに評価いたし、またいろいろの具体的な計画等についても、外務省といたしましてもいろいろ御相談に乗ったり、御協力をしたり、そういうことにやぶさかではございません。     〔主査退席、小澤(太)主査代理着席〕 いままでも国際会議場、たとえば京都などにもつくったことは御承知のとおりでございますけれども、ただいまお話しのようなことでございますと、かなり大規模なものでなければならぬかと思います。自然かなりの政治力を発揮してやっていかなければならないかと思いますし、また基本的には国連当局の積極的な協力や支持がないといかぬかと思いますけれども、それらの点も十分頭に入れて、私はこれまた主義として御賛成申し上げたいと思います。
  266. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 もうすでに御賛成になっていればあとのことは申し上げるまでもないわけでありますが、私はもう一つあらためて将来のために申し上げたいと存じますが、オーストラリアにおきましても、最近国際連合機関のIAEA、原子力機関、あるいは工業力開発に関する機関等を導入することに成功したようでありますが、当初におきまして非常に大きな建物を国内でつくって、五カ年計画で大体こういった機関の誘致に成功したようであります。私はこの例は私たちの非常に大きな参考になるのではないか。外務大臣にこんなことを申し上げるのはまことに失礼でありますけれども、私はこういう例がありまするので、それと似たやり方を国民的な支持の上にやるのはどうか、こう考えているわけでございます。  私はもう一つ考えておるのでありますが、国連当局側の考え方というものが確かにおっしゃるように大事じゃないかと存じます。私どもが実はウ・タントさんからの返事をいただきましたときに、一つだけ保留事項がついております。それは御承知のとおり、エカフェの問題と重複する構想が私たちの構想の中にございます。既存のエカフェの機関をわが国に直ちに持ってくるというような構想を打ち出しますならば、これは大きなマイナスを生ずることは明らかでございますから、私としてもそれを強力に最初から推すというようなことは、かえってうまくないと思います。またそういう必要もないかと存じます。問題は、大事なことは、わが国の国連協力に対する姿勢と国内に対する大きな啓蒙の実をあげ、世界の平和に役に立たせることが大事なのでありますから、それはまだ後の問題にしても、後の時点において、より総合的なエカフェを上回る機関を考えてもいいのではないかと考えるわけであります。したがいまして、私は国連当局がどう考えているかということのために、ウ・タントさんの手紙をちょっと申し上げておきたいと存ずるのであります。その全部でありませんが、その一部の中に、もうすでに外務大臣のほうには差し上げたかと存じますが、「貴下も御自身で認めておられますように、貴下の提案は日本政府の政策として具体化した上で、日本における国連の政治経済活動として実現できるものであります。同時にこの提案は国連加盟諸国、とりわけアジア・極東地域諸国の支持を得なければならないでしょう。」こういうふうにございますとおり、日本政府の政策としてこれが取り上げられるということが大事な問題になると存じます。したがって、私は公明党がやったとか、やらなかったとか、私たちがイニシアチブをとったとか、とらぬとか、こういう末梢的なことでこの問題を進めることは、非常にマイナスが多いと考える段階になったと存じます。野党としてやり得べき範囲は相当やったわけでございますので、政府においてこの考え方を取り上げていただきたい、こう思うのであります。率直に言って、いますぐどうこうと決定的な御返事は無理かとも存じますけれども、これを日本政府の政策としての具体化を私はぜひともお願いをしたい。そしてこういう国連会議場の提案をいたしました理由も、この辺から取り組む段においてはほとんど問題はないのではないかと私は考えるものですから、ぜひ外務大臣に努力をしていただきたい、政策として取り上げていただきたい、こう思うのでありますが、御返事を賜わりたいと存じます。
  267. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御指摘のとおりでございまして、私もその写しを拝見さしていただいたのですけれども、結局これは日本政府が主体的に責任を持って計画できるのかどうかということで、ボールをけ返してこられたような感じが一つ。  それからもう一つは、私もこれはごもっともだと思うのですけれども、従来もいろいろのことがあったようですが、ことにアジア諸国が、日本で計画をした場合にほんとうにこれを支持してくれるかということが一つの基本的な条件になるのではないか。したがって、会議場ということも、やはりアジア本部というようなことを頭に描きながら進めなければならないと思いますので、アジア本部というものをつくる場合、その運営、何を取り上げていくか、その中身、これはやっぱり一種の国連の新しい生まれかわりの姿のようなこともイメージとしては持っていかなければならないのではないかとひそかに私も考えたわけですが、そういう点について建設的な考え方を、こういう点に同じような意見を持ち、意欲を持たれる方々の間で、政府がもちろん本気にならなければなりませんけれども、多くの方々の御協力をいただきながら、具体的、建設的に積み上げていくようにまず機運を醸成していくことが必要ではないか、かように考えるわけでございます。
  268. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 私は、外務大臣が、精一ぱいの御答弁をいただいたと思います。  そこで、さらに進みまして、私は、こういう機関ができましたならば、最初に、機関全体をつくるということはともかくとして、まず会議場をつくってしまう。その次にできることは何か。それは、国内関係の国連諸機関というものをこれにあわせてくっつけたらどうか。また、先日来話題になっております国連大学、国際大学というようなものがお話に出ておるようでございますし、先日、総理、外務大臣あるいは大蔵大臣等からも好意的な御返事があったと伺っておるのでありますが、こういったものも、この機関の大きな国際連合関係のコンパウンドの中に含めていったらどうか。また、近日中に、将来設置されることが当然予想されるような国連機関の中で、わが国に当然招聘してよさそうな機関があるのではないか。私が新聞記事等でうかがいますところでは、公害に関するところの機関とか、あるいは海洋開発、海底利用等に関するところの機関が必要だという議論が、最近は国際連合の中で議論されているようでありますが、そういったような機関を招聘することも、こういう建物をつくっておったならば、相当積極的に意思表示ができるのではないか。それはまた、わが国の国連関係に出ていらっしゃる皆さま方が実際的にそういう仕事をなさる場合において、こういう提案を持っておることは、非常に有力な武器にもなり、有力な政策的なアドバンテージになるのじゃないか、私はこう考えておるのでありますが、この辺はいかがでありましょうか。
  269. 愛知揆一

    愛知国務大臣 非常に建設的な御意見、かつ、具体的な御構想を伺って、力強いと思うわけでありますけれども、確かに私もこの間、実は率直に申しまして、そう具体的な提案までを考えたわけではないのですけれども、ちょうどいまお触れになりました公害問題ですね、いま人類的、全世界的に、いわゆる都市問題というようなことばで呼ばれているような問題については、実は現在でも、私は、日本は決して大きな目ざましいことをやっているとは思わないのですが、それにもかかわらず、諸外国から相当日本の知恵や考え方を借りたいという提案というか、申し入れもあるくらいですから、こういう面こそ、ひとつ国際協力の舞台で日本が大いに活躍すべき舞台ではなかろうかという趣旨を本会議でも申したことがあるわけでございますから、基本的なお考えについては、私もほんとうに敬意を表するわけであります。そういう方向で考えるべきだ、いまのところ、考えるべきだというだけで、まだ具体的にいろいろ申し上げるまで研究を進めておりませんけれども…。  それから、国際大学につきましては、その後もお話が出た機会もあるのですけれども、国連のウ・タン総長の提案というものがまだ非常に抽象的であるものですから、やはり原則的に日本に誘致したいということについては、もちろんわれわれ前向きでやっておるのですけれども、こういう点については、幸い来月ウ・タン事務総長が来日いたしますので、もう少し向こうの意見を聞いてみ、まだ具体案をテーブルの上にのせてという時期ではございませんけれども、全体の取り上げ方等について、彼も、抽象的ではあるが、あれだけの提案をしているわけでございますから、ちょうど来日の機会でもございますので、少し話し合ってみるのもいいことではないか、こんなふうにも考えているわけでございます。  国際大学については、もう早くも、私どもが積極的な意図を表明したものですから、日本の国内でも、数カ所で、自分の地域がいいというような積極的な意思表示をされる地方自治団体あるいは地方の有力者というような方々もおられるくらいで、機運は相当前向きに出てきているのでありますので、こういう環境の中にあって、やはりお話しのような線を延ばしていきたいものだ、こういうふうに思っております。
  270. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 そこまでお話が出ましたので、あとは私、これはちょっと伺ってみたいと思っていることがあるのですが、国連関係の諸機関の中で、アジア方面に関してまだ全然支部のようなものや事務局のようなものがないものがございます。たとえばIMFであるとか、IAEAとか、ITUとか、WMOとか、こういったような機関については、先進諸国の間こそまさに問題が多いのだから、アジア諸国ではあまり問題はないといえばいえるのではないかと存じます。しかしながら、いま開発途上にあります諸外国が、もう見る見る大きくなってまいりましたし、この際、こういったアジア関係の諸機関というもので、当然国連の関係の出店と申しますか、そういったものがあっていいのではないかと私は思っております。  したがいまして、この国連会議場の建設とあわせて、あるいはあわせなくてもけっこうでありますが、こういった機関のアジア支部を積極的に日本に招聘したい、こういう意思表示をすることは、非常にプラスになるのではないかと私はまた考えているわけであります。もちろんそれには、こういったものを招くことのプラスとマイナスは私はまだよくわかっておりませんが、私がしろうと目で考えますところは、こういったものの機関が日本にあるということが、日本の国内における大きなPRにもなるし、関係機関の発展のためにもプラスになっていくし、また国際会議がしばしば開かれて、大きな刺激の種にもなるし、いいのではないだろうか。そうしますならば、むしろ積極的にこういったものの招聘にも取り組まれたらいかがか、こう考えるわけでありますが、ひとつその辺も聞かしていただきたいと存ずるわけであります。
  271. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これもまた原則論としては私はけっこうなことだと思います。いま、国連の系統の組織で、かなりブランチはできているのですけれども、ささやかなものだということではないかと思います。  それから、もう一つ、先ほどちょっと本部のところで申しましたけれども、アジア各国、どちらかというと、開発途上国の動向や考え方というものも、すなおに日本の考え方が受け入れられるようにしていくことが非常に大事じゃないか。さすがにウ・タンがそのことを手紙の中にうたい込んでいるのも、そういう心配りがあるのではないかと私は読んだのですけれども、やりようによりますと、何でもかんでも日本に取り込むというふうにとられても、これはまたせっかくのこちらの純粋な気持ちがそのまま受け取られない場合もあるような感じもいたします。その辺のところは、よほどまた慎重に措置をする必要があろうかと思いますが、いま申しましたように、原則的にそうしたお考え方には私は全然異論はございません。
  272. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 もう時間になったようでございますから、私は最後にお伺いするのでありますが、国連アジア本部という考え方でございますが、どうも公明党だけの専売特許みたいな形になってきてしまいました。ちょっとおもしろいものを見せていただきましたので、私も申し上げておきたいのですが、一九四七年三月二十七日の国連の決議の中で、これはエカフェに関する議論でありますが、エカフェの本部は極東アジアの国連事務所、つまり私たちのいう国連アジア本部事務所に置かるべきであるというような決議が行なわれたようでございます。これを見ますと、国連アジア極東地域の本部というものは、予想されておるエカフェの本部は一時的に当時上海に置かれたといういきさつがあるようでございます。したがいまして、エカフェの本部は、将来極東アジア本部ができたならば、そっちへ動かすという含みがあったようでございます。当然御承知だろうと存じます。  そこで、私は、この国連アジア極東地域本部、略称国連アジア本部といっておりますが、こういったものを積極的に取り組んでいくことが、ウ・タントさんの手紙の趣旨にもかないますし、国連協力という問題におけるところのわが国の国策にもかなうものであり、政府としてぜひとも全力をあげて取り組んでいただきたい。きょうは外務大臣から最大限の御答弁をいただきましたが、具体的な政府の施策として取り上げていただきますよう、さらにもう一歩お願いいたしまして、私の質問といたします。
  273. 愛知揆一

    愛知国務大臣 承知いたしました。大いに検討いたしたいと思います。
  274. 大野市郎

  275. 不破哲三

    不破分科員 きょうは、日米共同声明の問題点について、総括質問でも伺いましたけれども、それに続いた形で外務大臣にお伺いしたいと思うのです。  それで、最初は事前協議の問題ですけれども、事前協議については、第六条に関する交換公文で、配置の変更、それから装備の重大な変更、それから戦闘作戦行動への発進の許諾ですね、この三つの点が事前協議にかかるというふうに取りきめられておりますが、日本の領域の中での部隊の移動ですね。これは規模のいかんにかかわらず事前協議対象にならないかどうか、まず伺いたいと思います。
  276. 井川克一

    ○井川政府委員 なっておりません。
  277. 不破哲三

    不破分科員 そうしますと、日本の領域の中での米軍部隊の移動は、従来は移動された場合、大きな移動があった場合、政府に通告でもありますか。
  278. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 通常の場合、さような報告はございません。
  279. 不破哲三

    不破分科員 次に伺いますけれども、これは先ほども午前中、楢崎委員の質疑の際に議論されたことのおさらいみたいになるのですけれども、七二年に施政権返還になる際、いま現在、沖縄には米軍の陸海空軍の部隊がある。それで、その部隊が核を除いて、核問題は共同声明で規定がされておりますけれども、核を除いて、その部隊がどれだけの規模の部隊であっても、それ以外の、核以外の部隊が存続することに関しては、七二年の返還の時点では事前協議で日本がイエスともノーとも言うというような対象にはならないかどうか、そのことを伺いたいと思います。
  280. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは先ほどの問答でも明らかになっていると思いますけれども、それは対象になりません。
  281. 不破哲三

    不破分科員 そうしますと、現在これまでの事前協議の解釈ですと、部隊の配置の変更という場合、確かに海軍では一機動部隊、それから陸軍、空軍では一個師団以上の配置の変更が事前協議対象になるというふうに伺っていたわけですけれども、確かに現在沖縄に一個師団以上の部隊がそれぞれ存在している。しかし、それは在日米軍に追加されることにはなるけれども、施政権返還の時点で沖縄にいる部隊としては、これは日本政府もいろいろ願望はあるでしょうけれども、事前協議対象にはならない。つまりこれを駐留を拒否するとかいう対象にはならないというふうに考えてよろしいでしょうか。
  282. 愛知揆一

    愛知国務大臣 結論的にはそうなんです。これはちょうど六〇年の安保改定のときに、事前協議という制度が始まりましたですね、あのときと同じだと言うと少し常識的であるかもしれませんけれども、そういうことだと思います。
  283. 不破哲三

    不破分科員 そうしますと、その際、これも午前中の議論に関係をするのですけれども、B52の部隊ですね。空軍の中のB52が属している第四二五二戦略飛行連隊ですか、あるいは海軍の中の第三海兵師団ですね。こういう部隊はそれぞれ戦闘作戦行動への直接発進、これを大体主任務にした部隊なんですけれども、そういう部隊も含めて、任務としては発進を前提としているけれども、直接の発進の許諾ではありませんから、そういう部隊が師団規模で存在する場合でも、これは事前協議対象にならない。念のためにですけれども、そう考えていいわけですね。
  284. 愛知揆一

    愛知国務大臣 法律的、条約的にはそういうことになります。それは午前中に私、意見を申し上げましたとおりでございます。
  285. 不破哲三

    不破分科員 そうしますと、その次の問題ですけれども、施政権返還をされると、沖縄は日本の本土と同じように本土並みに扱われるということになりますね。そうしますと、沖縄で七二年返還時に駐留を日本が認めるといいますか、事実上許諾を与える性質のものでないわけですから、存続を、駐留を認めたまま施政権返還されるということになった場合、沖縄に現在駐留している部隊が日本の本土に移動することについては、これは事前協議対象にならない、こういうように考えざるを得ないと思うのですが、その点いかがでしょうか。
  286. 井川克一

    ○井川政府委員 条約的には仰せのとおりだと思います。
  287. 不破哲三

    不破分科員 そうしますと、B52が沖縄に存続したまま施政権返還されるということになった場合、これまでとは違って、本土へのB52の駐留問題は違った性質を持ってくる。つまり、日本の本土の領域外からB52が移ってくる場合とは違って、すでに日本の領域の中に入ってきた。施政権返還後、沖縄地域からB52が本土へ移駐する場合には、いままでの慣例どおりでいうと、通告もなしに実行されるということもあり得るわけですね。
  288. 井川克一

    ○井川政府委員 条約的に申し上げますならば、現在一個師団以内のB52ならば、本土に入りますのも事前協議対象にならないわけでございますので、ちょっと御指摘の例がその一個師団以上という場合でございましょうか。
  289. 不破哲三

    不破分科員 一個師団以上の場合があってもということです。法的なことを伺っているわけで、一個師団以上の場合があっても、七二年返還時に沖縄にある場合には、それが本土に移ってくることは今度は事前協議対象にならないということになりますね。
  290. 井川克一

    ○井川政府委員 一個師団以上ならば、そういうことになります。
  291. 不破哲三

    不破分科員 それで、そこのところに私は今度の返還協定の——返還協定といいますか、沖縄返還についての交渉のかなり重要な問題の一つがあると思うわけです。つまり、いままで配置の変更、大規模な部隊が在日米軍に追加をされるということについては、事前協議でかなり厳重に規制をされていたわけですね。ところが、今度の沖縄返還とこれが結びつきますと、これから七二年までに沖縄における米軍が一体どうなるかということについては、日本の政府の側から法的には拘束するすべがないわけですね。ところが、最近の状況を見てみますと、B52の問題だけではなく、たとえば現在ベトナムで戦闘している第三海兵師団などが、地上戦闘が縮小されれば、ほぼ全軍が沖縄に帰って、そこで常駐体制をとる。そのための宿舎や基地の建設もいま進められているということが、新聞などでも伝えられているわけです。そうしますと、この日本の本土への米軍の駐留という問題は、配置の重要な変更ということで規制をされていたものが、今度は沖縄へまず一たん置かれると、これはもう事前協議対象にならないし、それがまた日本の本土へ移る場合には、先ほどの東郷アメリカ局長の御答弁ですと、従来はかなりの規模の部隊の移動であっても日本側に通告もされなかったというふうに伺っているのですけれども、そうなると、いままでの日本の本土基地の態様、これもかなり変化をしてこざるを得ない、たとえば、ちょっと長くなって恐縮なんですけれども、沖縄基地というのは緊急発進体制を前提にしている基地ですから、たとえば第三海兵師団のようにすぐベトナムで事態が起きれば敵前上陸に行くような部隊もいるわけですね。B52のように攻撃するための部隊もいる。そういう基地の態様と、日本の本土基地の態様となかり違っていたものが、今度は法制的にいくと、沖縄で認めた部隊は全部日本の本土へ来ても認めざるを得ない。法的にはこれをチェックする筋合いがない。かなり危険な問題を残すと思うのですが、この点についての御見解はいかがでしょうか。
  292. 井川克一

    ○井川政府委員 法律的に不破先生のおっしゃるとおりでございます。ただ、不破先生、ただいまも基地の態様ということばをお用いになった思いますが、まさしく日本国土内におきます施設及び区域の提供は、合同委員会によります日米両国政府協議対象になっております。合意でございます。したがいまして、事前協議には、先生の御指摘のとおり法的には一個師団以上だとなりませんが、しかしながら、基地の提供という意味の制約があると思います。
  293. 不破哲三

    不破分科員 ただ先ほどの御答弁ですと、いままで現在の安保が結ばれてから十年でありますけれども、移動について、アメリカ側からは事前にも事後にも通告なり報告を受けたことがなかったというアメリカ局長答弁がありました。そうしますと、その点の保障なしに緊急発進体制にある基地をそのまま日本の領域内に取り込んだ場合に、その点で非常に危険な事態ですね。以前から本土沖縄化と言うと外相はかなりきびしく否定されるわけでありますけれども、そういう点では緊急発進体制にある沖縄基地と同じような事態が日本の本土にも生まれかねないということが法的には認めざるを得ないんじゃないかと思うのですけれども、その点どうでしょうか。
  294. 井川克一

    ○井川政府委員 東郷局長がお答え申し上げたとおりでございまして、ただ先ほど基地の態様というお話がありましたから、私も申し上げたわけでございまするけれども、従来日本のすでに提供されております基地間の移動というものが、東郷局長のお話しでございますと事前の通告なしで行なわれていたわけでございます。今度はそういう非常に大きな問題になりますると、私しろうとでわかりませんけれども、新しい施設及び区域というふうになりますれば、そこに日本の政府の意思が入ってまいるわけでございます。
  295. 不破哲三

    不破分科員 それから、もう一つ伺いますけれども、戦闘作戦行動の解釈ですけれども、いままでB52の発進問題がしばしば具体的な問題として問題になりました。たとえば、沖縄にある海兵師団のように、沖縄から直接戦闘命令を持って出ていって、ベトナムのようなところへ直接上陸するというような場合には戦闘作戦行動のための基地利用というふうにあてはまるかどうかですね。その点の解釈を伺いたいと思います。
  296. 井川克一

    ○井川政府委員 上陸作戦でございますね。戦闘作戦行動に該当いたします。
  297. 不破哲三

    不破分科員 では、この問題は沖縄のそういう発進基地としての機能が、機能的には本土の側に移行するかなり重大な危険性を持っているということが御答弁で明らかになりましたので、次の問題に移りたいと思います。  次の問題は、総括質問のときにも伺った問題なんですけれども、今度の日米共同声明あるいは日米首脳会談で——あのときにも強調しましたが、非常に重要な問題の一つは、アメリカが戦闘作戦行動に日本の施設区域を利用しようという場合に、日本政府がこれを拒諾する場合があるという性質の問題ですね。これが今度の会談で提起されたことだと私どもは理解をしているわけですけれども、その点に関連して若干伺いたいと思うのです。  初めに前置き的な質問になるのですけれども、この問題は日米共同声明の本文には書いてないわけですね、戦闘作戦行動への基地利用という問題というのは。それで総理のナショナル・プレス・クラブでの演説でその問題は述べられている。  それで、この演説の性格ですね。これはやはり日本政府の公的な態度表明といいますか、日本政府が今後とるべき政治的方針についての公式の説明というふうに受け取るべき筋合いのものだと思いますけれども、その点どうでしょうか。
  298. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は私から繰り返すようでございますけれども、日米共同声明が出まして、それから日本側記者団に会見をして、それからプレス・クラブで外人記者団と会見したわけですから、総理大臣としての公式記者会見ということは申せると思います。しかし、前々から申しておりますように、これはくどいですけれども、日米間の合意とかなんとかいうものじゃなくて、総理大臣としての意見をこの共同声明において申した、こういう性格のものでございます。
  299. 不破哲三

    不破分科員 このナショナル・プレス・クラブでやった演説の内容が、日米首脳会談の中で日本側からアメリカ側に話をされたという経緯はありますか。
  300. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、事実関係はこういうことになっております。あのときに発表いたしましたものはプレス・クラブのもの、それから邦人記者団に話しましたもの、それからそのときに私から話しましたもの、これらは全部用意ができておりましたから、アドバンスの意味で儀礼的にアメリカ側にも渡しました。ですから、アメリカ側としては、記者会見より前にこれを読んでいたということはあり得ることでございます。
  301. 不破哲三

    不破分科員 そのアメリカ側に渡したあるいは説明したのは共同声明がつくられる以前、つまり調印される以前ですか、以後ですか。
  302. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは共同声明でつくられる以後でありましたことは申すまでもないところでございます。
  303. 不破哲三

    不破分科員 ところがその点について、これまたよく愛知外務大臣が、ジョンソン説明を持ち出しますと、あれは責任のない政府の非公式の説明だと言われるのですけれども、少なくともそれは経過について書いてないのではないかと私ども考えるわけなんです。ところが、このジョンソン説明を見ますと、ナショナル・プレス・クラブでの演説について、こういうことが記載をされているわけですね。プレス・クラブでの演説は両国間の交渉事項ではありませんでした、これは愛知外相が言われるとおりなんです。ところが交渉の過程で首相が、自分はこれこれのことを言おうと思っていると発言し、そうしてアメリカ側は、首相がこれこれのことを演説する意向である事実を考慮に入れた次第です、それからまたジョンソン氏は、コミュニケと演説の一体論を述べているわけですけれども、事実関係のところを言いますと、コミュニケにおいてアメリカが同意するにあたっては、首相が日本政府の名において政策声明の演説も行なう予定だったという事実を考慮した、つまりこの調印前に首相から、日米会談でナショナル・プレス・クラブでの演説について説明があって、そのことをアメリカは考慮をして、そういう演説がやられることを考慮してこのコミュニケに同意をしたのだということを、ともかく国務次官が政府代表して、非公式であるにしろ、アメリカの新聞記者を集めて説明をするときに説明をしている。またこれはいまの愛知外相の説明とは非常に違うと思うのです。それからまた時間の点でも、私もふしぎに思うのですけれども、共同声明が採択されたのがアメリカ時間で十一月二十一日の午前十一時十分です。それから佐藤首相が記者会見をされ、愛知外相が共同声明の解釈を発表されたのがその日の午前十一時二十八分と三十分と、新聞により説がありますけれども、大体その程度であります。それでプレス・クラブでの演説を首相がされたのがその日の午後一時です。ところがその以前に国務次官の背景説明がありまして、それが愛知外相、佐藤首相の記者会見の始まる十分後、十一時四十分に始まっているわけですね。その中でプレス・クラブでの演説を用意をされて、そうしてその内容とコミュニケの内容を不可分のものとして、アメリカ側が首相の演説が行なわれる以前に説明をし、その中で、私が先ほど言ったような、これは交渉過程で首相から説明されたものであるということが言われ、そうしてこういう演説をやる予定であるということを前提にしてわれわれは調印したのだというふうに言っている。これは愛知外相のいま説明をされたこととはかなり違うと思うのですけれども、その点いかがでしょうか。
  304. 愛知揆一

    愛知国務大臣 たいへんこまかく時間的にもいろいろ言及されたわけですけれども、これだけの共同声明が十一時何分かにAからZまでまとまるわけじゃございませんで、実質的に合意ができましたのが、会談が始まりましてから——これはいつもそういう会談ではそういう段取りになるわけですけれども、会談の三日目にはもうすでにできておったわけです。そのできることを前提にして、演説の原稿や私の説明を一生懸命でつくったわけでございます。これがもう時間的な関係で、共同声明ができてからあとの作文になっておることは疑いのない事実、また事実そのとおりなのであります。  それから、これは御疑念があれば、結局総理大臣と大統領との二人だけの会談、通訳は入りましたけれども、その当事者からお聞き取りいただくのが一番けっこうですし、それからこの点は総理大臣がすでに解明いたしております。この二人の合意は共同声明にあらわれたとおりであって、そのほかの秘密の話し合いも何もございません。それもまた事実でございますから、この点も御留意おきを願いたいと思います。同時に、この二人以外から公権的な解釈というものはあり得るはずはない、これも当然のことではないかと思います。
  305. 不破哲三

    不破分科員 私は、解釈問題を引用したわけではなく、事実問題についてのジョンソン説明を引用したわけなんです。先ほど愛知外相が、共同声明を調印したあと、アドバンスとして渡したというふうに説明をされたわけですけれども、そうすると調印の前に、アメリカにこの内容を知らせた、つまり大体の合意ができたあとで、調印の前にナショナル・プレス・クラブでの演説を渡しておる。そしてアメリカ側は共同声明に調印するにあたって、ジョンソン次官が説明をするように——これはアメリカ側の思惑ですから、首相がこういう演説をするであろうということを考慮したことはあり得る、こういうふうに考えていいのでしょうか。
  306. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いま調印というおことばもありましたけれども、調印というようなことは、共同声明ですからございません。  それで、実質的に二日目にできておりましたから、三日目にこれでお互いによろしいということで、そこには何の修文も何もない。そして前夜その成文に合意ができましたから、さっき言ったように、それをもとにいたしまして、一生懸命演説の原稿をつくった、こういう時間的な関係になりますから、プレス・クラブの演説の草稿が内容に影響しているというようなことはございません。
  307. 不破哲三

    不破分科員 私がかなりこまかい経過の問題を申し上げましたのは、ナショナル・プレス・クラブの演説が両国政府の合意でもないし、法的拘束力を持たないけれども、実際の経過を見ると、日本政府の今後とるべき政治方針についての公的な態度表明、あるいは共同声明の精神についての公的な解釈という性格を非常に持っていることを明らかにしたかったわけなんです。  それで次に移りたいと思います。  このナショナル・プレス・クラブでの演説の中には、例の「事前協議に対し前向きにかつすみやかに態度を決定する」という有名な文句があるわけですね。それで、この点について少し解釈論を伺いたいわけですけれども、事前協議一般についてはイエスもあればノーもある。これは佐藤首相も愛知外相も繰り返し言われているところなんです。それで、その際、日本政府の自主的な判断で対処をする。ただ、この事前協議の一般論でとまらない問題がやはりこの演説の内容には、日本政府政治方針として表明されているようだ。つまり「万一韓国に対し武力攻撃が発生し、これに対処するため米軍が日本国内の施設・区域を戦闘作戦行動発進基地として使用しなければならないような事態が生じた場合」というように、非常に特別な場合を想定をして、それに対する対処ぶりですね、そういうときに事前協議が起こったときの日本政府の対処ぶりを説明をされておる。そして、この対処ぶりは、ただ一般に、事前協議にはイエスもあればノーもあるというような態度でなしに、それよりもう少し限定された意味ですね、前向きに態度を決定するということが言われているわけですね。この前向きというのは、英文のほうを読んでみますと、ポジティブリーと書かれている。これは普通の字引きで引くと、肯定的というふうに書かれているわけで、これがイエスではないかというふうな解釈を当然生むわけですけれども、この場合、一般的に事前協議にはイエスもあればノーもあるということよりも、もっと限定した意味があるはずだと思うのですけれども、前向きに事前協議に対処するというのは、正確にいうとどういう意味であるか、伺いたいと思うのです。先日、前向きのイエスも前向きのノーもあるという回答が総括質問の際にありましたけれども、これではことばのあやであって、公的に表明したことの内容説明にはならないと思うので、あらためて伺いたいと思うのです。
  308. 愛知揆一

    愛知国務大臣 一つは、いまのお尋ねの最初にありましたけれども、総理大臣のプレス・クラブでの演説というのは、たしか同じようなことをそのまた前の邦人記者会見のときにも言うておるはずだと思います。それが一つ。  それから、総理大臣の言われたその気持ちは、まず第一に、個別的なケースについて事前にイエスの予約をするのだというような気持ちは全然ございませんでした。それでこれをかみ砕いて申せば、たとえていえば、事前協議という問題について、この間も自分でも例を引いておられたようですけれども、隣に大きなことが起こった場合に、対岸の火災と見ることはできない、言いかえれば、わが身に火の粉が猛然と降りかかってきたような場合に、これはうしろ向きに逃げ出したり、回避することはできない、そういう意味においてこれは前向きに取り組まなければいけない、この姿勢をあらわしたものだと思いますから、したがって、前向きに取り組んでも、やはり事前協議の一般論からいえば、予約したわけではないから、ノーということもあり得る、総理はこういう説明をしておりました。私から注釈すれば、そういう意味だと思います。
  309. 不破哲三

    不破分科員 韓国、朝鮮半島に事態が起きた場合、この事態に対して前向きに取り組むというならまだ話がわかるのですけれども、そのことに関連をして、米軍から日本の基地戦闘作戦行動に使わしてくれという事前協議があった場合に——非常に特殊な問題提起です。これに対して前向きに取り組むというのですから、これはもう近火お見舞いというようなことではないわけですね、きわめて具体的な問題なんです。だからノーという場合もあり得るということを認めたとしても、一般の場合よりもその場合にはイエスという可能性がより強いということは明らかなのではないかと思うのですけれども、どうでしょうか。
  310. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一段に、いま私が申しましたように、ほんとうに火の粉をかぶってくるぞ、日本の安全のためにたいへんな事態だぞというような見方で対処しなければならない、そういう姿勢をあらわしたものだと私は理解をいたしております。  同時に、これはそこのお尋ねに直接関連がないかもしれませんけれども、全体の調子が、そういうふうな気持ちでいるということによって危険を抑止することができる、そういう事態の起こらざることを期待し、かつ、そういう考え方でいるのだということが、そういう姿勢によって防がれるのだ、こういう気持ちが底に流れているということが総理のプレス・クラブ演説の気持ちだ、かように思っております。私はそういう考え方なんです。
  311. 不破哲三

    不破分科員 そうすると、外相の解釈ですと、事前協議に対する対処の方針ですね、これは前向きという条件をつけたこの事態でも、そこに書かれていないほかの場合でも変わりはないという御答弁ですか。
  312. 愛知揆一

    愛知国務大臣 やはりそこには一般的な認識というか、問題のとらえ方があるわけであって、近接したお隣の地域に日本としてみてわかる問題、猛然と火の粉が降りかかるような事態というものは、たいへんなことですという、この気持ちですね。そういう場合に、こうこうこういうようなことがあったら、それに対してうしろ向きではおられないだろう、しかし、うしろ向きでないということは、前向きにノーと言うこともあるということをもちろん含んでおるわけだ、かように思います。
  313. 不破哲三

    不破分科員 だから念を押して聞くわけですけれども、ノーと言うことがあり得るということは言えるわけですけれども、そのほかの場合と比べて、わざわざ事前協議に対して前向きに態度を決定するということを言われているわけですから、それなら、事前協議に対する対処のしかたは——火の粉が落ちているわけですね、この事態は。そういうことが起きないようにという願望の問題ではなしは、起きた事態についてどうするかという態度をあらわしているわけですから、事前協議に対する対処ぶりとしては、一般の場合よりもイエスの可能性が強い、それとも、一般の場合とこの場合と、事前協議に対する対処ぶりという具体的な問題について聞いているわけですけれども、変わりがないという御答弁なのかどうか。
  314. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その前提に、至近距離に事故があった場合と遠くに事故があった場合と、その取り上げ方が違うのじゃないかと思います。そこの認識については、遠隔の地域と近接した地域の取り上げ方は、私は違うだろうと思います。しかし、だからといってそのときに、日本の国益からいって、イエスと言うことには限らない。ノーということもあり得るということは、やはり当然のことではないだろうかと思うのです。
  315. 不破哲三

    不破分科員 だから、ノーと言うことがあり得るということを前提にした上で、そのほかの場合と、前向きに態度を決定するという場合の違いはどこにあるのかという、態度の問題です。  たとえば、私どもが去年の十一月二十九日に、政府質問主意書を提出しました。その中で、朝鮮半島で起きるいろいろな事態を想定して、私どもが質問した場合に、回答はやはり明確に区別をしてあるわけです。韓国に対する武力攻撃、すなわち組織的、計画的な武力行為が行なわれるという事態となれば、この事前協議に対しては前向きに態度を決定するという方針だ。しかし、同じ朝鮮半島の問題であっても、それ以外の種々の武力紛争が起きた場合には、事前協議に対してどのように態度を決定するかは、これはそのときどきで決定するしかないというように、明らかに、同じ朝鮮半島、お隣の事態についても区別した回答を、政府みずからがされているわけですね。そうすると、やはりこれは区別があるんだ。前向きに対処するという場合には、それはノーと言う場合もあり得ないことではないだろうけれども、ほかの場合よりはイエスと言う可能性を非常に強く含んだ規定ではないか。そしてまた、英文にしてみれば、先ほども言いましたように、前を向いておるか、うしろを向いておるかというよりも、ネガティブリーに対するポジティブリーという、非常に断言的な表現が使われるのですが、それがアメリカ側の了解になっているということになりますと、そういう解釈では通らないかと思うのですが、どうでしょう。
  316. 愛知揆一

    愛知国務大臣 不破さんのポイントにしておられること、私もよく理解できます。そして、いま私は非常に平たい例で申したのですけれども、遠いところ、近いところというふうに私は例を申し上げましたけれども、一つは、その攻撃の規模や態様にももちろんよります。ですから、質問主意書に対して御答弁申しましたような気持ちを私いま申したのですが、もう少し突っ込んでみれば、イエスもノーもありますけれども、ノーと言うことが日本の国益からいって非常にあぶないようなこともあり得るかもしれないというような一般的な情勢判断ということ、あるいはその危険の態様によっては、ほんとうにもうわが身に火の粉が振りかかってとてもたいへんだという場合のことを言っているのだ、こういうふうに御理解いただければいいと思うのです。同時に、そのときの状態によって、しかもその場合でもノーと言うことはあり得る、こういうふうな御理解をいただければ適当かと思います。
  317. 不破哲三

    不破分科員 そうしますと、これまた言って反論がくるとまたやらなければいけないのですが、一般の事前協議という場合にはイエスもあり得る、前向きの事前協議の場合にはノーもあり得るという程度の違い、つまり前向きの場合はイエスがかなり本流になるけれども、こっちのほうはノーもあり得るんだというくらいに、いままでの御答弁で理解をしなければいけなくなると思うのですが、それはそこら辺にいたしまして、次へ進みたいと思います。  それでイエスと言う場合、これは今度の日米会談で戦闘作戦行動に対してイエスと言うことがある。ともかくあるということはやはり現実問題として特定な地域、特定な状態に関連をして提起されたものですから、これは国民の立場からいって、一体イエスと言う場合にはどれだけの結果を生み出すことになるのかということは、いろんな角度から吟味する必要が出てきておる事態だと思うのです。それで多少突っ込んだところを伺いたいと思うのです。  よく外相は、大体そういうことは好ましくないことだからあまり突っ込んで考えないほうがいいという趣旨の御答弁をされるのですけれども、条約とか協定とか法律とか、あるいは外交的な態度表明ということは、むしろ極限の場合にそれがどう働くかということまで想定して確かめて初めてほんとうの意味が明らかになり、どういう約束をしたか、あるいはどういう態度表明をしたかということが明らかになると思いますので、多少こまかいところに入ってもおつき合い願いたいのですけれども、戦闘作戦行動でのイエスと言う場合、ともかくこういう状態があり得る。そういう場合にアメリカ軍が朝鮮半島ではこういう事態が起きた、ぜひ日本の基地戦闘作戦行動に使いたいという場合に、日本側がそれに対処してイエス、ノーを言う場合に、あれこれの行動の中身、戦闘作戦の中身に立ち入って、この作戦行動は認めるけれども、この作戦行動は認めないとか、そういった立ち入ったイエス、ノーの関係にあるのか、つまり米軍の作戦の中身にも介入するようなイエス、ノーという関係にあるのか。それとも、イエスと言う場合には、先日も伺ったのでダブりますけれども、との範囲の行動は包括的に認めるというような形になるのか。ここのところはかなりその後の結果に影響を及ぼす問題ですから、もう一度伺いたいのです。
  318. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点は御満足いただけないかもしれないのですけれども、私は、基本的には従来からこの問題についてはこういうふうに考えております。  この種の安全保障の、しかも自衛ということに限定した考え方からいきますと、この場合、この場合、この場合とコンピューターにかけたような、ありとあらゆる場合を想定して、この場合はこう、この場合はこうということは、この条約の性格や本質からいって私は望ましくない、こういうふうに基本的に考えております。たとえば、いまの段階でこうこうこういう場合にはこうだ、また細部にわたってイエスの場合、ノーの場合などということは、私の意見ではかえって抑止力ということに差しさわりが来る。そうして同時に、その穴をくぐるような場合がさらけ出されてしまうというようなことは、私は国益上からいってどうだろうか。ですから、これは観念上、政策論議じゃなくて、たとえばゼミナール的に——現実の政治とか国家の最高の目的である安全保障ということから離れて、ゼミナール的な論議でございますならば、私はコンピューター的なあらゆるケースをいろいろと精緻の限りを尽くして予測しながら、それに対してこの場合はイエス、この場合はノーと言うこともあり得ましょうけれども、この場合におきましてはまず第一に事前協議にかかるというような事態を起こさないようにするということがもっと大きな目標でもありますし、また、かまえ方はがっちりしておいて、ケース・バイ・ケースで適時適切な国益を守る判断をするということが本件に対して処する基本的な態度でなければならないのではないだろうか、私はこう思っておりますということをまず前提に申し上げたいと思います。  したがって、これから先は観念上の問題になるかと思いますけれども、この間も申し上げましたように、それなら事前協議というものは一艦一機の戦闘発進行動、この事前協議に対して常に取り上げるのかといえば、そうでない場合も私は観念上は考えられる、そういう性格の問題ではないか、まず私のお答えできる限界はこの程度、前段に申しましたようなフィロソフィーのもとでございますから、この点御了承願いたいと思います。
  319. 不破哲三

    不破分科員 いま自衛の問題に関連してと言われましたので、ちょっと補足的に伺いたいのですけれども、たとえば首相の演説で想定をされた事態、あるいはもっと公式に言えば、政府の当初に書かれたような事態です。韓国に対する武力攻撃というような事態が起きたのは、日本にとって自衛権を発動するような事態とお考えなのですか、それとも、一口に自衛といっても、韓国あるいは国連軍の自衛という意味で自衛を言われたんですか。
  320. 愛知揆一

    愛知国務大臣 もちろん、これは日本の自衛ということを中心にして申し上げました。
  321. 不破哲三

    不破分科員 そうすると、外相の解釈ですと、朝鮮半島でそのような事態が起きたら、それは即、日本側にとって自衛権が発動を必要とするような、あるいは発動を正当とするような、そういう事態だとお考えなんでしょうか。
  322. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いいえ、日本の安全と申したら一番正確だと思います。日本の安全のために……。
  323. 不破哲三

    不破分科員 安全ということであれば、共同声明の文言に戻るわけですから、それこそ地球上、すべての事態が安全にかかわりありといえば言えるわけで、一般的になるわけですけれども、自衛ということになりますと、これは自衛権の発動というのは、非常に厳格な条件が国際的に規定されておりますから、伺ったわけです。  それで、先へ続けますと、いま包括的に認める場合があり得るということも言われました。私ども、実際問題を想定して、たとえば、アメリカ側がベトナムの戦争に沖縄基地を使用しているという状態を考えてみると、一たん、これを朝鮮半島の事態に引き移して考えてみますと、そういう事態で日本政府の側が、アメリカの事前協議に前向きにといいますか、イエスという態度を与えるという場合は、もうそれこそ、いま外相が言われたように、一機一艦の発進のすみずみまで、日本が作戦行動のこまかい展開にまで責任を負うというような形で事前協議などというものはあり得ないだろう。これは常識的に、だれでも推定ができるわけですけれども、それで、実際に、一定の範囲の基地の使用とかいうことになるかもしれませんが、連続的な作戦行動ですね、この事態に即応した作戦行動についての許諾をあらかじめ与えるということになるだろう。——これは私の推定です。しかし、外相の御答弁でも、そういう場合も観念的にはあり得るということなので、その対策をもう一つ伺いたいのですけれども、そうやって、一ぺん朝鮮半島の事態について、日本の基地戦闘作戦行動への使用を日本側が許諾した場合、途中で日本側の考えが変わったからといって、その許諾を撤回するととはできるかどうか。たとえば、ベトナムの例で言えば、一番最初に一九六五年にアメリカ軍が北爆を始めたときに、かりに——これはたとえですよ——許諾を与えた。しかし、その後、あまり長続きするからというので、これを撤回するとかいうようなことが、事の性質上、できるものであるかどうか。例はちょっと悪いかもしれませんけれども、事態の性質の例として申し上げたのですが、そのことを伺いたいと思います。
  324. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これも私、はっきり申し上げておきますけれども、さっき申しましたように、観念的な問題で、事前協議という問題を申し上げれば、一艦一機の一つ一つについて、事前協議ということがない場合も、観念的にはあるであろうと申し上げただけであって、政府は、包括的に事前協議を与えるのだというふうに、この問答が報道されることは、たいへん私は困りますから、その点は念を押しておきます。一艦一機だけの許諾ということだけでない場合も観念的にあり得るであろう。包括的に発進政府許可するであろうと答弁したというふうに、報道界の方がお書きにならないように、いまの答弁を念を押しておきたいと思います。  それから、朝鮮半島の問題についてのお話でございましたが、これも予算委員会等でも申し上げましたように、朝鮮半島の問題について言うと、長く申しませんけれども、休戦協定というものがあり、三十八度線の現状はこうであるが、休戦協定が予想していないような組織的、計画的な大規模の侵略というようなものがあった場合、かりにそういう場合が考えられた場合に、国連がどういう態度に出るであろうか、また、その国連軍に対してその行動が非常にさんたんたる状態になって追い詰められてくれば、日本の安全にどういうふうに関連する場合があるだろうかということを日本の側から考えて、そういう場合には前向きに考えなければならない問題もあり得るだろうということを総理のプレス・クラブの演説が申しておるわけですから、起こり得ないことを希望しながら言っているわけです。  それから、そこで、在日米軍がかりに発動したとして、あるいは日本の自衛隊が自衛隊の許されている範囲で国土の防衛をやりました場合、これはその後にどういう事態が起こるかといっても、これはそういう前提なんでありますから、こちらがやることに対して向こうがさらに襲いかかってくるということになれば、これは第二の侵略が起こって……(不破分科員「いや、まだそこまで話はいっていない」と呼ぶ)そういうことに考えざるを得ない。したがって、そういう環境の中で、いまお尋ねのようなことに対しても処理しなければならないわけですから、これも観念的な問題ですけれども、事前協議に対してあくまで主体的な立場で臨むわけですから、一ぺんイエスと言って途中でノーということも、これも観念的には私は考えられるケースであると思います。
  325. 不破哲三

    不破分科員 観念的に、観念的にと言われますけれども、そう言われると、六〇年以来の事前協議論争はほとんど全部観念的な議論で、何にもやってこなくてよかったということになるわけです。やはり事前協議という規定で日本のアメリカ軍基地の使用の問題についてあれだけ議論をしておるのは、そういう極限状態についてはっきり把握しておかないとぐあいが悪いから討論しておるわけです。しかも、あの包括的な許諾の問題は、何も私が机上で考え出したことでなくて、国会でもすでにその文書の存在が明らかになっている。例の三矢作戦書ですね、あすこでは、事態が起こるとともに、包括的に事前協議の許諾を与えるということが想定されて文書化されておるわけですね。ですから、私は、単なる観念的な問題ではない、現実的な問題として伺っているわけなんですけれども、これを全部観念的だということで逃げられるのは、やはり一種の言いのがれだというふうに見ざるを得ないと思います。ただ、それは注釈です。  それで、いま外相が言われた朝鮮での事態の問題は、あらためてあとで伺いたいと思うのですけれども、あとで、イエスもあればノーもあると言われましたけれども、事前協議はたしか、アメリカの側からしか発議権がないというのがいままでの政府の解釈でしたね。この問題に関しては、一ぺん戦闘作戦行動を許諾して、それで途中で日本の政府の見解が変わった場合には、日本の側から発議権があるというふうにお考えでしょうか。
  326. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはまた、その条約論争になるのですけれども、事前協議というのは私はこう考えているんです。ある国が自分の国の中で地域、施設を盟約国に対して提供をしたということだけにとどめてみれば、そこの使用権というのは自由であるのが本則ですね。それに対して提供した——この場合においては日本国が権利を留保しているわけですね。ですから、留保したほうに、そこを使いたい側から協議をかけてくるのが、これは条約論としても当然だと思うのです。向こうが義務を負っているわけで官ね。こちらが留保した権利に対して、施設、地域の供与を受けたアメリカ側が協議をしなければならない義務を負うておるわけですから、それは義務を負うているほうから発議するのが私は条約論としては当然だと思う。しかし、同時に、この安保条約では、四条の随時協議ということもございますから、何時でもこちらからまた、かりに六条だけでは足りない場合があれば、四条で十分補うことはできる。つまり、その意味においては発議権がこちらにあると、こういう運用をして一向差しつかえない。これがその条約の構成でございます。
  327. 不破哲三

    不破分科員 四条の協議と六条の協議はかなり性格が違うわけですね。六条の協議の場合には、交換公文ですか、共同声明ですか、で、日本側に拒否権があるというのが公的に認められているというのが政府の解釈でした。しかし、四条の協議の場合には日本側に拒否権はないわけですね。ですから、問題は、その点で六条の事前協議が日本側から発議機があって、たとえば、一たん戦闘作戦行動を許諾したけれども、途中で態度が変わったら、日本側も事前協議を待って一たん許諾したものを拒否することができるかどうか、これは戦闘作戦行動の許諾ということを考える場合にかなり重要な問題なんです。だから、その点について四条にかわるのではなしに、六条の問題として伺いたいと思います。
  328. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その六条の場合も、協議を受けたその協議内容にもよりますね。先ほどお話になりましたのは、どんどんそれが雪だるまみたいになるということは、協議を受けて、かりにイエスといった事態をオーバーするような場合のことを言われておるのじゃないでしょうか。協議に対しての、協議以上の問題になるわけですね。その場合には、当然六条も引用できると私は思うし、それから、私はいま正確に申し上げたつもりですが、四条によっても十分六条を補完する法律的、条約的根拠がある、補完する意味で十分である。本来の条約論からいえば、向こうの権利を縛っている義務なんですから、義務を負うておるほうが発議をするのが当然だ、これは条約論の本則だと思うのです。しかし、何らかの場合にこちらがそれに対してさらに異議を唱えるということについては、随時協議でもこれはカバーできるはずではありませんかというのが私の見解でございます。
  329. 不破哲三

    不破分科員 それじゃ端的に伺って、六条については発議権は日本の側にあるのですか、ないのですか。
  330. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点はしばしば論争のある点でございますけれども、私は、あるといえばあるとも言えますけれども、条約の本則論、通説からいえば、向こうが本来発議権を持っておると解するのが私は通説だと思うのです。
  331. 不破哲三

    不破分科員 そうすると、そういう場合には四条の随時協議でやるしかないということになると思うのですけれども……。
  332. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いや、その六条の場合だって、そのケースによって違いますし……。
  333. 不破哲三

    不破分科員 ある場合には発議権があるわけですか。条件、条件によってはそう理解していいわけですね。——日本の政府の側からの六条の事前協議の発議権もある。——わかりました。  それから次の問題は、そういう戦闘作戦行動への発進をもし日本が認めた場合に、日本が一体この武力紛争なり武力衝突あるいは戦争状態に対して、日本が国際法上どういう地位に立つかという問題が、日本への影響を考えますと、これは非常に大きな問題になるわけです。この点では、結果論として日本自体が戦争に巻き込まれる重大な危険がある。総理のことばをかりれば、沖縄施政権返還後使わしても、東京も攻撃を受ける危険がある。結果論からいえばそういう危険な状態にあることは、総理も外相もいままで認められたわけですね。ただ、そういう攻撃を受けた場合に、これが不当な攻撃であるかどうかということについては、この前第二の侵略行動ということで説明をされました。しかし、きょうもそのことが言われたわけですけれども、国際法上一体日本がどういう立場に立つかということを考えた場合に、一番問題になるのは、戦時、国際法で領土の不可侵を認められている中立国の立場に立っているのか、それとも交戦国のカテゴリーに入るのか、そこのところが非常に問題になるわけですね。どっちが侵略だということは、個々の戦争について両側からいろいろ言い合うことですし、これは仮定の問題ですから簡単に議論はできませんけれども、しかし、こちら側が相手が侵略だ、かりにこちら側で一方的に言ったとしても、その戦争に関してはもう中立国も交戦国も区別がないというわけにはまいらないと思うのです。やはりどういう経過で始まった戦争においても、たとえば国連が決議で侵略の認定をし、——その認定した決議そのものが問題なんですけれども、例の朝鮮戦争の場合でもやはり中立国と交戦国の区別が厳然としてあって、国際法上扱われているわけです。一たん日本がアメリカの戦闘作戦行動に日本の基地を使わせた場合に、日本は領土の不可侵を予約できる、宣言できる中立国の立場に立つのか、それとも交戦国の立場に立つのか、この点をどうお考えでしょうか。
  334. 井川克一

    ○井川政府委員 先生かねて御存じだと思いますけれども、中立国の地位というものが、第一次大戦後、特に最近国際連合の成立を見まして大幅に変更されたということはよく御存じのとおりだと思います。したがいまして、伝統的意味における中立国というものが、はたして国連加盟国の地位と両立し得るものであるかどうかという根本論さえ常に戦わされておるところであります。そうして、ただいまのような御設問の場合に、現在におきまして、侵略国は第三国に中立国義務の履行を要求することはできないというのが、現在の国際連合憲章に基づくところの国際法の解釈の通説だと思います。したがいまして、もちろん政治的に中立に立つことはできます。しかしながら、侵略国が第三国に対して中立国の義務を履行するように求めるということ、したがいまして、中立国の義務違反であると主張することはできないというのが、私は現在の通説だと思います。また国際連合憲章のいかなる規定を見ましても、第三国たる加盟国が厳格な中立の地位に立つことを命ずる規定はどこにもございません。
  335. 不破哲三

    不破分科員 いまの議論は二つの問題をちょっと混同されておると思うのです。つまり、いわば特定な戦争に対する中立ですね、特定な戦争に対する特定の中立のそのことと、どんな軍事同盟にも入らないというステータスとしての中立の問題、この二つは明確に異なる概念なんで、これはたえとば朝鮮戦争の場合に、あるいはいろいろな同盟に加盟しておる国であっても、朝鮮戦争とか、あるいはベトナムの戦争とか特定の戦争には中立国としての立場をとれるわけです。これはたとえば朝鮮戦争の休戦協定をごらんになれば、中立国と交戦国の区別は明らかにしておるわけですね。だからいまの国連の加盟義務との両立云々の問題は議論がありますが、オーストリアのような中立国が国連に加盟しておるから実際的に解決されておる問題ですけれども、私がいま申し上げているのは、そういうステータスとしての中立国ではなくて、特定の戦争が起きた場合に、戦時中に特定の戦争に対して中立国としての立場をとるのか、あるいは交戦国としての立場をとるのか、これは明確にいまでもあると思うのです。
  336. 井川克一

    ○井川政府委員 私、ことばが足りませんでしたかもしれませんが、後者の場合、一般的な場合ではなくて、特定の紛争の場合について申し上げたつもりでございます。確かに御説のとおり、また私が申し上げたと思いますけれども、自分で中立国の立場に立つということはできます。しかし、一方侵略国が第三国に対して中立の義務を守れという要求をする権利はないということが国際法の通説だと思います。
  337. 不破哲三

    不破分科員 その通説というものの根拠をいつかお示しいただきたいのですけれども、これはまた国際法のどちらが通説かということは国家の多数決できまりませんから、国際的にどういう理論が通用するかということできまるわけです。ここの舞台の中だけでこれが通説でございますといっても、実際の国際交渉の中で通用しなければ意味がないわけです。その点では、そういう国連と国連非加盟国の紛争の場合にどう当てはまるか、いろいろ議論のあることは私も知っておるわけですけれども、いまあなたが言われた説明国際的に定立されておるとは考えられない。ただ先ほど外相が言われたように、ゼミナールでありませんから、これ以上議論をしても不適当かと思いますが、日本側あるいは同盟を結んでおるアメリカ側が侵略だと認定したことで、いままでの外相の説明だと、国連の決議さえない場合に軍事行動の始まることがあるというふうに言われておるわけです。それで、そのときに認定をするのはアメリカあるいは韓国あるいは日本、それしかないわけで、この一方的な認定で相手が侵略だから、もうそこには中立と交戦国の国際法上の一切の区別はなくなるのだという議論は、根拠のないことだけを申し上げて次へ移りたいと思います。  それから、先ほど朝鮮の場合について、国連軍の問題を外相が問題にされました。それからまた予算委員会の総括質問の際にも、総理がこの共同声明で、なぜ特に朝鮮だけをほかの台湾の問題と切り離して特別に表現を使ってあるのかという質問に答えて、これはただ隣であるからだけではない、国連軍がいるからだということを言われました。それで最後に国連軍の問題に関して二、三質問をしたいのですが、もうちょっと時間をよろしいでしょうか。
  338. 大野市郎

    大野主査 できるだけ御協力ください。
  339. 不破哲三

    不破分科員 一つは、いま朝鮮で国連軍と名乗っている軍隊は、国連のいかなる機関の指揮統制下にあるのか、それを伺いたいと思うのです。
  340. 井川克一

    ○井川政府委員 国連局長がおりませんので、あるいは間違えるかも存じませんけれども、国連軍は、一九五〇年七月七日の安保理決議八十四号によって合衆国のもとにある統一司令部の指揮下に置かれたものである……。
  341. 不破哲三

    不破分科員 起源はそうなんですけれども、国連軍の実際の行動、軍事行動その他、それを国連のいかなる機関が監督し、あるいは統制しているのでしょうか。
  342. 井川克一

    ○井川政府委員 どうもお答えにならないかと思いますけれども、起源は御存じのとおり六月二十七日の安保理の決議に基づいておりまするが、その後毎年総会において決議が行なわれておりまして、その駐留目的なども、明示されていると思っております。
  343. 不破哲三

    不破分科員 質問は、実際の国連軍の軍事行動が、いまでもあるわけです。これをだれが、国連のいかなる機関が——総会に報告するのは事後報告ですから、いかなる機関が監督し統制しているかという問題で、もしそういう機関があるのが発見されましたら後日報告いただきたいと思うのですが、私はそういう機関はないと思うのです。  それから時間がありませんから次へ進ましていただきます。  国連軍の司令官はだれが任命するのでしょう。
  344. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 これは一九五〇年の七月の決議だと存じますけれども、国連軍は統一司令部としての米軍の統治下に置かれる、指揮下に置くという決議ができております。したがいまして、国連軍の司令官は米軍、さかのぼって申しますと米国大統領が任命するということになります。
  345. 不破哲三

    不破分科員 詳しいことは時間がありませんので略しますけれども、いまの答弁でもはっきりしているように、在韓国連軍といいますと、いかにもいまの国連そのものとの協力関係のもとにあるから、われわれは在韓国連軍に協力しなければならぬという理屈が立つように思うのですけれども、実は国連軍というものは七月七日の決議で設置されて以来、司令官はアメリカ大統領が任命をする。それから指揮監督も全部米国がやっている。ただ国連とかかわりがあるのは、統一司令部が参加する諸国の旗と並べて国際連合旗を作戦中使用することができるという規定があるだけで、旗以外にはほとんど関係がない。その行動について総会に若干の報告をするというだけで、そういう性格の軍隊であるということ、その点では、コンゴで活動した軍隊とは性格を異にしている。このことを見ておく必要があると思うのです。  もう一つ、外相がよく休戦協定を守るために国連軍がいると言われますけれども、休戦協定にはこういう条項があります。「朝鮮の国境外から増援の軍事要員を入れることを停止する。」あるいは「朝鮮の国境外から増援の作戦用航空機、装甲車、兵器及び弾薬をもち込むことを停止する。」これは実は休戦協定が結ばれたときの非常に重要な内容だったわけです。ところが、現在の国連軍、実際には米軍ですけれども、というのは、休戦協定時に比べれば、はるかに装備にしても人員にしても増強されているわけですね。一番大きな違いは核武装を始めたということなんです。休戦協定時には核武装がありませんでしたけれども、いま原子戦体制にあることはだれでも知っている。一体朝鮮国連軍がこの条項を含めて休戦協定を守っておる軍隊だと外相は判定されているのかどうか、伺いたいと思います。
  346. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、これは正確な日時や何かは別としまして、朝鮮及び国連軍の問題、その性格、任務等については、とにかく国連総会、それから毎年のアンカーク、これにおいて十分報告をとり、また決議もしておるのですから、この性格や任務というものは休戦協定のために存在するものである、かように理解いたしております。そして同時に、これはよけいなことかもしれませんが、休戦協定が予想もしないような事態が北のほうから起こってくるというような場合のことがこれまでいろいろ論議の対象になっておった、かように私は理解しております。
  347. 不破哲三

    不破分科員 いまの休戦協定のこの条項を含めて国連軍が休戦協定を守っているかどうかという質問はどうでしょう。
  348. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そのこまかいあれについてはいろいろ御議論があるかもしれませんけれども、しかし毎年のアンカーク、朝鮮統一委員会ですね。これがあれだけ関係多数国が集まって、そうして相談し合い、その決議あるいはその方針に従って国連軍のステータスというものが承認され、かつ任務を与えられているのですから、私は、さかのぼってこの国連軍の性格というものは、休戦協定成立のときに期待されたような行動……(不破分科員「守っているのか。」と呼ぶ)守っていると理解してしかるべきじゃないかと私は思います。
  349. 不破哲三

    不破分科員 もう質問の時間がありませんので、これで終わります。
  350. 須之部量三

    ○須之部政府委員 いまの点はたしか一九五七年六月二十一日でございますが、国連軍の司令部のほうから、この休戦協定のいまおっしゃいました条項について北側のほうで守らなかったために、自分のほうもこれに拘束されないという通報を行なっております。
  351. 不破哲三

    不破分科員 そこが問題だと思うのです。つまり、休戦協定を守っている、守っていると外相は言われましたけれども、一九五七年の六月二十一日に、いま補足がありましたように、国連軍なるもののほうから、この一番肝心な軍事条項を一方的に破棄するという宣言を実はやっておるわけですね。そこでこの宣言をやって、国連軍のいわゆるペントミック化といいますか、原子戦体制化をやってきておる。これは周知のことなんですけれども、外相なり政府なりが、朝鮮半島の事態が日本の安全に非常にかかわりがあって、絶えず実情をよく知らなければいかぬということを強調されている立場からいえば、国連軍のこういう実態についても正確に調査をされ——それから国連軍と国連の関係についても、問題はいざという場合、国連軍が行動を開始するという場合に、これの監督権をだれが持っておるのかという点が一番問題なところなんで、これはいままでの答弁からもアメリカ側が持っているということはかなり明確になったと思うのです。  そういう点について、もう時間がありませんから、国連及び休戦協定の側からの質問を終わりますけれども、いままでに休戦協定の破棄宣言をしたのは国連軍側からやられたこれだけなんですから、その点を明らかにして、質問を終わりたいと思います。
  352. 須之部量三

    ○須之部政府委員 いまの御主張でございますが、その前に共産側が国連側の数次にわたる抗議にかかわらず違反行為を繰り返したということの結果として、国連軍側がいまの通告を行なったということだけつけ加えておきたいと思います。
  353. 不破哲三

    不破分科員 発言は終わると言ったあとで発言があったので、一言言っておきますが、そのときの通告でも、国連軍の側のことばをかりれば共産側ですけれども、その違反行為というのは、核武装を正当化するに足るような違反行為はほとんど指摘できなかった。ところがそれに対して、それを口実にして今日に至るような大規模な核武装を正当化したわけですから、これはだれが見ても正当とはいえないわけですね。そのことを意見として申し上げて、質問を終わります。
  354. 大野市郎

  355. 北山愛郎

    北山分科員 私は日米共同声明関係した二、三の問題について、きわめて常識的な問題についてお尋ねをしたいと思います。  第一の問題は、例の核抜き本土並み沖縄返還でございますが、これは率直にかいつまんで言いますと、私がアメリカ政府であるとすれば、いわゆる非核三原則なるものも、実は日本政府の政策では、アメリカの核抑止力が前提条件になっておる。これが日本政府の政策ですから、それに違背しないのだから、日本及び極東の安全を守るために核兵器を持ち込む必要があるという持ち込みの申し入れができるような感じがするのですが、その辺はどうですか。
  356. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点はしばしば申し上げましたのを繰り返すことになりますけれども、共同声明の第八項で、「核兵器に対する日本国民の特殊な感情及びこれを背景とする日本政府の政策」、これの詳細な説明に対して深い理解を示して、沖縄返還を、日本の政策に背馳しないように実施する旨を確約をした、こういうことになっておりますので、いまの御意見は御意見といたしまして、日本国民が核兵器というものに対して、いわゆる原爆の唯一の被害国であるそのことをも含めて、ほんとに世界的にユニークな立場と心情を持っているということを非常によくわからせるということが中心になり、かつこれに深い理解を示したということが中心であったという点を、まず第一に御注目いただきたいと思っておるわけでございます。
  357. 北山愛郎

    北山分科員 私の質問に答えてないのですね。私はそういうものも含めてアメリカがよく理解しているということは、日本国民は核兵器を持たないあるいは持ち込ませないというような感情を持っておる、これもよくわかり、また日本政府の政策としては、その上にさらにそのことができるのは、アメリカの核兵器の抑止力のおかげである、これが日本政府の政策である、こういうことを十分国民感情並びに政府の政策も両方よく理解した上で、結論的にいえば日本政府の政策に背馳しないように約束したのでありますから、したがって、国民感情は国民感情です。政府の政策というのはアメリカの核抑止力を認めるというそういう日本政府の政策でありますから、したがって、私がアメリカ政府であれば、日本及び極東の安全のために核兵器を持ち込むことが必要であるという申し入れを事前協議としてやれるのじゃないか、こういうふうに考えるのですが、その点をお答え願いたいと思います。
  358. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点は安保条約の抑止力にたよっているというのが政府の基本的な考え方でございます。これがまず第一点。そうすると、アメリカとしては核を日本に持ち込むということを考える場合があるのではないか、これが第二のお尋ねだと思いますけれども、これは安保条約の、今日もいろいろ御議論がございましたけれども、第六条に基づく事前協議ということで、条約上の構成からいえばアメリカもそういうことを考えることがあり得る、しかしそれに対して、日本としてはそういうことは困るということで、日本の政策というものを十分理解して沖縄核抜きにしましょう、こういうことになっている、これが実情であると思います。そのアメリカの、というよりは日米安保条約の構成からいえばまさに本土並みで、先般も委員会で申し上げましたように、本土並みだということででもあるいは必要にして十分であったかもしれませんけれども、特に核の点について、この第八項を国民的な世論の上に立って設定し、合意を求めたというのが真相でございます。
  359. 北山愛郎

    北山分科員 まだお答えしてないわけですね。要するに、共同声明の約束、取りきめ上は、いま申し上げたようにはっきり書いておりますが、アメリカは事前協議の権利は留保しているわけですから。そうはっきりと書いてありますが、その根拠になるのは、日本政府の政策の中にはアメリカの核抑止力を認めているのです。ですから、当然そういう申し入れをしても、それは日本政府の政策に背馳しないのだということで、事前協議の申し入れができるのじゃないですか。やればやれるのじゃないですか、アメリカ政府は、そういうことは絶対ないと言い切れますか、共同声明の取りきめ上は。あなたはどういうふうに自分で主観的にお考えになろうとも、共同声明の文面の約束上は、そういう理由でもって持ち込みをアメリカ政府から申し入れることができるのじゃないですか。そういう場合があり得るのじゃないですか。
  360. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ですから、それは条約の制度とすれば、現在もそうなっております。そうなっておりますけれども、政策の問題として、さようなことは日本としては非核三原則で承知いたしませんということははっきりしているわけであります。核抑止力というものは、さらに進んでいえば、たとえば沖縄に核を持っていなくても、これを撤去したって抑止力というものは大きな意味で存在する、私はかように考えるわけでございます。
  361. 北山愛郎

    北山分科員 そうすると、そういうふうな理由でもってアメリカ政府事前協議の申し入れをすることがあり得る、その場合にすべてノーと言うわけですね、日本政府としては。
  362. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ですから、条約上はそういう制度になっておりますけれども、しかし、実際の運用上の問題からいえばそういうことはしない。これはさかのぼって、六〇年の改定のときにもさかのぼりますが、事前協議の制度、それから了解事項、さらにそれを補完する岸・アイク共同声明、こういうところで十分に日本の政策の立場は貫かれておる。さらにそれを第八項で沖縄返還に伴っても明らかにいたしたというのが真相でございます。
  363. 北山愛郎

    北山分科員 私の聞きたいのは、実はアメリカ政府が国民感情である非核三原則そのものに違背しないと約束したというのなら、向こうからも言い出してこないだろうと思うのです。しかし、共同声明の取りきめの上においては、日本政府の政策に背馳しない。日本国民の感情はまたその下にあるわけですね。ですから、私はそういう可能性が条約上、取りきめ上あり得る。その際に、そういう場合があっても、常に非核三原則、国民感情を十分考えて、日本政府はノーと言うのですかと私は聞いておるのです、そういう場合があれば。
  364. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは何べんも申しておりますが、ノーと思います。
  365. 北山愛郎

    北山分科員 次に、B52の撤去について、現在ですよ、七二年でなくて現時点において、現在十五機もあるそうですが、これについて御承知のように沖縄県民のほとんど大部分の人が撤去してもらいたい、こういう要望を持っております。また屋良主席もそのために努力すると言っております、また、本土の国民の中においても、このB52が沖縄基地として発進しているという事態、これをなくしてもらいたい、こういう要望が強いわけです。ですから、現時点、七二年返還前において、私は、政府がこれについて、やはり国民の政府ですから撤去の申し入れをする、こういうことは当然やるべきことじゃないかと思うのですが、この点どうなんですか。
  366. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは長々と申し上げませんけれども、私も就任以来、先ほども申し上げておったところですけれども、沖縄施政権がございません。現状においても、かねてから外交交渉のルートを通しまして、B52の撤去ということについて再々折衝いたしております。そして、御承知のとおり、これは恒久的なものでありませんが、暫定的なもので、すみやかにB52を撤去するようにしたいという意向の表明は米側もいたしておるわけでございますけれども、まだその時期に、至っていないというのが現状で、この点については今後も大いに努力をいたしたいと考えております。
  367. 北山愛郎

    北山分科員 それでは今後、B52の撤去について外務省としてはアメリカ側に申し入れをする、そうういうふうに了解してよろしいですか。
  368. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そういうふうに御了解くだすってかまいません。
  369. 北山愛郎

    北山分科員 やはり七二年時点においてB52がどうなるかこうなるか、これは非常に関係があると思うのです。どうも共同声明を見ると、御承知のように第六項においては総理大臣と大統領は、現在のような極東情勢のもとにおいて、沖縄にある米軍が重要な役割りを果たしていることを認めている。したがって、B52なんかが果たしておる役割りを認めておるというような共同声明になっておるものですから、七二年時点は別として、現状ではどうもこのB52なり沖縄におる米軍が果たしておる役割りを認めておる政府としては、どうもアメリカに言い出しにくいんじゃないか、もう言い出せないのではないか、こういうふうに実は心配しておるのです。しかし何としてもいま申し上げたとおりで、現在でもあのとおりにB52が沖縄から発進をして爆撃をやっておるという事態は、これは許せないと思うのです。特に私はここで国民の世論として、これは二年ばかり前ですけれども、日本世論調査会の調査によると、米国はベトナムでアジアの平和と自由を守るために共産主義の侵略と戦っているといっていますが、この主張に納得していますかという問いに対して、イエスというのが一三・三%、ノーが五二・七%もあるのですね。そのことを国民の大多数は認めていない。それから昨年一月の朝日新聞の世論調査におきましても、沖縄米軍は日本の国を守るのに役立っていますかという問いに対して、役立っているというのが一九%で、役立っていないというのが実に四五%もある。こういうことで、沖縄の人たちはもちろんのことですが、日本の国民でも、いまの沖縄基地にしてそしてベトナムのああいうきたない戦争をやっておる、こういうことは許せないというのが国民の大多数の感情だと思うのです。ですから、ぜひこれは現状において政府は努力してもらいたい。私はそういう素朴な県民の気持ちやあるいは国民の気持ちを政府がまじめに受け入れて努力すべきだ、こういうふうに考えるものです。それができなかったら、七二年時点も同じことなんです。その点をまず指摘しておきます。  それからその次ですが、実は昨年十一月の共同声明とそれから四十一年十一月の佐藤・ジョンソンの共同声明、どうもこの二つの共同声明によって安保条約というものが質的に変わってきたんじゃないかというふうな、これが大体における通説ですね。いわゆる極東の安全、平和、これにまで日本が責任を負うようになってきたんだ、こういうのが通説なんです。政府は、安保条約はことしの六月二十三日に自動延長だ、こう言っております。自動延長というのは、要するに従来の安保条約がそのままの形で延長されることなんです。実はこの共同声明によってその安保条約というものが質的に変わった。変わっていないというふうに言われるのですか、変わったと思っておられるのですか。
  370. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはしばしば申し上げておりますように、変わっておりません。この安保条約というものをこのままの姿で自動継続をするというのが政府の基本方針であります。
  371. 北山愛郎

    北山分科員 ところが六〇年当時の政府説明あるいはいろいろな政府のパンフレットを見ましても、これは外務省のやつもございますが、安保条約によってアメリカは日本が武力攻撃を受けたときに防衛してくれるのだ、しかし、日本は施設を提供するのであって、アメリカを守るのではないのだ、そしてアメリカはその施設を使って日本及び極東の安全、平和のために活動するのだ。しかしそれも無制限ではなくて、事前協議でチェックできる。非常に基本的な問題は、その際にアメリカが極東の平和と安全のために活動する行動に対して、日本は直接には責任を負ってなかったんですね。ただ、困るというときだけはノーと言う。そういうのがいままでの安保条約だった、そういうふうに思われるのですが、今度の場合は、今度の共同声明においても、日本を基地として米軍が、あるいは米韓の条約あるいは米台の条約、そういう条約の防衛の義務を果たすということに対しても、それを認め、それをやりやすくするという、いわゆる極東の平和と安全のことにまで日本がタッチしていく、コミットしていくという点が非常に違うのではないですか。
  372. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはもうあらゆる角度から何べんも申し上げておりますように、結論として変わっておらないことは私は御了承いただきたいと思うのです。というのは、安保条約の——くどいようでありますが、条約の解釈、それから一連の取りきめ、その他定義、解釈、全然これは六〇年代と変えておりません、こういうことでありますので、その点からもこの考え方は御了承いただけると思います。しさいに御点検いただければ、たとえばよく御質疑がございますが、具体的ないろいろな御質疑についても詳細にお答えしておるように、この安保条約というものの役割りあるいはこれの考え方あるいは了解というようなものについては、何ら変更を加えておりません。
  373. 北山愛郎

    北山分科員 それならば、四十二年の共同声明に明白に書いてあるのですが、日本及び極東の平和と安全の確保にアメリカと協力するという約束をしておりますね。現在の安保条約にそういう義務はどこにあるのですか。
  374. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この条約の文章についての解釈等は政府委員から詳しく御説明申し上げますけれども、日本を含む極東の安全ということを守るためと言うのが正確でありますし、それからもう少し平たく言えば、極東の安全なくして日本の安全はない、こういうのがその一番の基礎の考え方であります。そしてまた、そういう意味合いにおきまして日本の安全のためにこの安保条約というものが絶対に必要なものである、かような考え方であります。
  375. 北山愛郎

    北山分科員 極東の安全と日本の安全とが関連があるということは、これは従来からも言われておったのです。しかし、その日本が極東の平和と安全に協力するということと、関連があるという認識とは違うのですよ。協力するというのは一つの行動を約束することなんです。そういう義務は一体いまの安保条約のどこにあるか、それを明らかにしてもらいたい。
  376. 愛知揆一

    愛知国務大臣 たとえば、先ほどもちょっとお話がございましたが、米韓条約等によってアメリカが守っている義務の履行について、安保条約の運用上、具体的に日本が義務を守る、機械的、自動的に、さようなことは一切ございません。そういうところからもおわかりいただけると思います。
  377. 北山愛郎

    北山分科員 いや、私の言うのに答えてないのです。いまの安保条約の中に、日本が極東の平和と安全の確保に協力するという義務は、どこに書いてありますかと言うのです。そのことを答えてください。
  378. 井川克一

    ○井川政府委員 ちょっと御趣旨がわからないのでございますけれども、日米安保条約前文に、「両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、」というふうにまずこの条約の目的を明示しております。
  379. 北山愛郎

    北山分科員 共通の関心を持っているということは、とうの昔にわかっているのです。私の言うのは、今度の共同声明には明快に書いておりませんが、四十二年の共同声明で第五項にはっきり書いてあるのですね。日本及び極東の平和と安全の確保に日米が協力するということを約束しているのじゃないですか。そういうことはいまの安保条約のどこにあるのですかと言うのです。どこにもないじゃないですか。共通の関心を持ったりお互いに協議をしたりするということはありますよ。しかし、協力するということは安保条約にはないですよ。
  380. 井川克一

    ○井川政府委員 いま御指摘の四十二年、一九六七年の共同声明第五項に「総理大臣と大統領は、日本を含む極東の安全保障の問題について、隔意なく意見を交換した。両者は、日本の安全と極東の平和及び安全の確保のため、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約を堅持することが両国の基本政策であることを明らかにした。」このくだりでございますか。
  381. 北山愛郎

    北山分科員 そうです。
  382. 井川克一

    ○井川政府委員 この確保のため、日本国とアメリカ合衆国との間の安保条約を堅持することが両国の基本政策であることを明らかにした、こう書いてあると思いますけれども。
  383. 北山愛郎

    北山分科員 だからいまの安保条約から、日本だけじゃなくて、極東の平和と安全の確保に日本がアメリカと協力するという義務はどこにあるかというのです。共同声明にはそういう文句はあるのですよ。
  384. 井川克一

    ○井川政府委員 この安保条約全体がそういう仕組みの上に成り立っていると私どもは理解いたしております。まず前文に先ほど申し上げましたことがございます。また第四条に、「日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときは」「協議する。」ということになっております。それから第六条に、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」「施設及び区域を使用することを許される。」全体の構成としてそういうふうにこの条約はなっていると理解しております。
  385. 北山愛郎

    北山分科員 やはりその点は、日本が施設を貸す、そして米軍が行動する、その結果としてそれが日本の安全のためになるとかそういうことになるかもしれませんが、しかしいまの安保条約にはいわゆる極東の平和と安全については関連はあるけれども、日本には直接的な協力の義務はないですよ。米軍がその施設を使って、その結果としてあるいは日本の安全に影響はあるかもしれない。しかし、日本がアメリカと直接に極東の平和と安全に協力するなんという義務はないのです。そこが一歩踏み込んだから問題なんです。今度の共同声明のジョンソン説明では、実にデリケートに書いているのですね。こう書いてありますね。米軍の出動と事前協議のところで、「日本は一般に、安保条約米軍基地は日本防衛のためだけのもので、日本は日本以外のいかなるものの防衛にも関心がないとの態度をとってきた。その日本が他地域の防衛に関心をもち、かかわりをもつということ、これがこんどの重要な出来事だ。」ジョンソン国務次官はこう言っているじゃないですか。そこに非常にデリケートな差が出てきたわけです。だからこそ米軍が他の国、極東の国々あるいは韓国とか台湾とかとの条約、防衛上の義務を守るための行動、それが結果としては日本の平和と安全とうらはらになるということを日本が認めている。そのことはすなわち、将来沖縄なり本土なりにおる米軍が他の国々との条約の義務を履行するために行動することがやはり日本の平和と安全のためであるという立場で協力する姿勢に変わってきたのです。そういう点が非常に違うのです。正直に読めば、率直に私はそういうふうに読み取れると思うのです。やはり四十二年の共同声明と今度の共同声明で、いわゆる安保体制、条約そのものの文句は変わらない、しかしながら、それがだんだんに日本が日本だけのことじゃなくて、韓国や台湾、そういうところの防衛、極東の平和と安全の防衛の責任まで踏み込まれてきているという点が非常に違う、私どもはどうしてもこのように理解せざるを得ないのですが、こういう点はどんなに言ってもいろいろとじょうずに説明するでしょうから、私は指摘だけしておきます。  それから時間がありませんからもう一点だけ。これはちょっと大きな問題なんですが、外務省のパンフレット「日米安保条約早わかり」、それから総理府の去年出した「日本の安全を守るには」という。パンフレットがありますね。ところが何を守るかということについて、外務省の文書ではさすがに非常に慎重に書いてあるのです。「つぎに、日本と米国とは、自由を基調とする民主主義政治体制という点で同じ国がらです。また、この仕組みのもとに、社会、経済の在り方などの面でも基本的な共通点が多いのです。このため、「何を守るか」という点についても、」日米両国の間には多くの共通点がある。非常に慎重に書いています。ところが総理府のものを見ると、初めから国の独立とか国民の生活以外に自由民主の体制を守るのがいわゆる守る対象なんだということを実に堂々と強調しているのですね。そこで私は、防衛とか安全保障とかいうけれども、特に日米安保条約のような外国との防衛条約あるいは軍事同盟の中に国内体制をお互いに守り合う約束をするということはちょっとおかしいのじゃないか、そう思うのです。  時間がないからかいつまんで言いますと、アメリカが関係しているような北大西洋条約とかあるいは東南アジアの集団防衛条約、こういうものがみな自由な諸制度を強化していくことでいまのいわゆる資本主義の体制を守るという趣旨が書いてあるのです。どっちかといえば、昔の神聖同盟とかあるいは防共協定みたいな同盟ですね。したがって、共産主義とか社会主義というものが敵になっていく。だから守る対象というものは極東とかいうような地域じゃなくて、極東の中の自由世界なんです。韓国の政府、台湾の政府、南ベトナムの政府、これが守る対象なんですよ。安保条約の表面にはそういうことは書いてありませんが、実質はそうなんです。ところが、かえって社会主義陣営のたとえばワルシャワ条約とかあるいは中ソの友好同盟条約、こういうものの中には厳格にこれを区別しているのです。国内体制というものはいわゆる内政不干渉の原則、あるいは体制の異なるものもこの条約には参加できるというように、この点は非常に厳格に書いていますね。社会主義の体制を守るなんということを目的としているものはほとんどないのですよ。それが同じ軍事同盟でも違うと思うので、私は国内問題である体制の問題を外国と守り合う、そういうものを防衛の対象にする、安全保障の対象にするということは間違っていると思うのですよ。こういう点について外務大臣はどのようにお考えですか。
  386. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いろいろ御意見を伺いましたが、私は日米安保条約について、お互いの国内体制を内政干渉的に守り合うというような思想があるとは思いません。これは第二条にも規定されているように、いろいろの面で相協力して世界の平和のために貢献しようということが趣旨であり、かつこれも何べんも繰り返しておりますが、前文や第一条で国連憲章を引いておるところでも、これはおわかりいただけると思うので、おことばを返すようでございますけれども、中ソ友好同盟条約などが日本を仮想敵国にしているという攻守同盟条約などとは、私は性格が全然違うものだと思います。私は、日本の国益のために、こうした社会主義国同士の攻守同盟条約のほうがよい条約だなどとは、私はおことばを返すようでございますが、賛成できない考え方であると思います。  それから先ほどの問題でございますけれども、これは時間がないところに多くを申しませんけれども、やはり私どもというか、政府考え方は、今回の共同声明にもございますように、基本的な考え方は、「日本の安全は極東における国際の平和と安全なくしては十分に維持することができない」、この点がやはり安保条約の根幹ではないかと思います。やはり日本の立場から見て、日本の安全ということと関連して、先ほど申しましたように、日本の安全のためにこの条約はあるんだということが基礎観念になっております。したがいまして、一九六〇年の改定以来、私どもとしてはその考え方を堅持しておりますし、したがってまた、事前協議の問題その他につきましても、たとえばアメリカはほかの国と条約を結んで義務を守るという立場にありますけれども、それだからといって、それが機械的に自動的に日本の事前協議制度というものをこわすようなことがあってはならないのだ。あくまで今度の共同声明におきましても、事前協議の運用等について事前に予約をする、あるいは米国が他の国と条約を結んで義務を持っているからといって、それが機械的に日本の留保している権原である事前協議に対する日本の態度の決定を拘束されるというようなことは全然やらないんだということがはっきりしておると思いますし、またそのはっきりしている考え方を今後の運用の上におきましても、十分に気をつけてまいりたい、かように考えております。
  387. 北山愛郎

    北山分科員 時間がありませんし、御迷惑になると悪いですから、締めくくりますけれども、まず第一の問題、いまあとのほうでお触れになったのですが、安保条約というものが、だんだん日本の役割りを広げて、そしてアメリカの肩がわりをさせられる心配をわれわれはしておるのですよ。どうやら今度の共同声明はその一歩を踏み出して、肩がわりとまではいかぬが、片棒をかつぐ入り口まで来ているんではないか、こういうふうな印象を受けるのです。これはアメリカの歴代大統領、政府の一貫したねらいなんですよ。ニクソンがはっきり言っておるじゃないですか。ニクソンが大統領になる前、こういう演説をしているでしょう。六八年二月の演説で、こう言っているのです。「長い目で見れば、沖縄を日本に返すのが米国の政策であるべきだと考える。日本の参加なしでは、アジアにおける真の集団安全保障は作りえないということをわれわれがよく認識することが重要だと思う。日本が指導者としての役目を果せるとき、沖縄はたしかに返還できると考える。」こう言っておりますね。あるいはフォーリン・アフェアーズに書いた六七年十月号の論文の中でこういっておる。「はげしい経済的高揚にともない、かならず日本はアジアにおける勢力均衡の維持に、外交的かつ軍事的により大きな役割を果すことになろう。——このより大きな役割は、なかでも、”陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない”と特に規定した現行日本国憲法の条項の改正をもたらすであろう。」こういっておるのです。やはりこれがニクソンのみならずアメリカの、あのサンフランシスコ講和条約時代にトルーマン大統領が演説した、あれから一貫したアメリカの日本に対する期待じゃないか、そうしてみれば、それを考えあわせてみて、私どもは今度の共同声明は非常に心配、憂慮をしておるのです。  そこで私はお尋ねするのですが、このようなニクソンの大統領になる前の論文なり、演説文ですが、そのようには断じてならない、その道は日本はとらない、そういうための憲法の改正はしない、こういうことを外務大臣明言できますか。  もう一つ、例の体制の問題ですがね、これは非常に大きな問題なんで、時間が足りないからこれで終わっておきますが、私は問題提起として出しておきたい。  なぜかといえば、やはり安全保障なり防衛について国民の合意を求める、こう言っているでしょう。イデオロギーが入っていたのでは合意が求められないですよ。初めから一定の体制を守ることが安全保障だ、——国内体制というのは、昔から何千年も日本は同じ体制じゃないのですよ。時代の進展によってこれは国民のそれこそ合意でもって新しい体制に発展するのがこれは当然なんです。日本の国は、日本人というのは、神代以来あるでしょう。それを守るという考え方、これについてはおそらく国民的合意が得られる。手段方法については、これは意見が違う点があっても、日本の国の独立とか、あるいは国民の生命、財産、これを守ろうということについては、われわれも賛成ですよ。ただし、その上にプラスアルファで、いまの資本主義の体制を自衛隊で守ろうということになったら、これじゃ国民的合意は得られないのですよ。だからこの点は、私はすでに安保条約がそのようなかっこうになっておりますから、ここですぐどうのこうのと言うわけではありませんけれども、そうではない。これを改めないと、将来の大きな問題として、特に外国との関係において、いわゆる体制の異なる国と——国内体制という問題は、これはそれぞれの国がきめるんだ、国民がきめるんだ、安全保障とか外交の問題は、これは別なんだというたてまえを貫くということが、私は世界の平和の大きな前進にも必要だ、こういうふうに考えるのです。国内的にも必要だ、そういう点で私は問題を提起だけしておきまして、もしお考えがあったら、これについてもあわせてお答えを願いたい。
  388. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず具体的な問題ですけれども、一番最初にお触れになったアメリカの政策の問題ですけれども、ここでニクソンが大統領になって、それから一番最近の、たとえば外交教書の中で、日本に対する期待ということは、非常に多くのことばが費やされておるけれども、私がここを非常に重視したのは、同時に、しかし日本あるいは日本国民の欲せざるようなことをアメリカとして期待すべきでない。このくだりは——特に日本のことに触れて、このくだりが入っているということは、私は非常に大きな意義があるし、この点を私は評価いたしたいと思います。  それからその次に、憲法の問題にお触れになりましたが、憲法はしばしば総理大臣が言明しておりますように、憲法改正ということは考えておりません。したがって徴兵だとか、海外派兵だとか、あるいはこれはその点に触れると、またいろいろ法律的論議がありましょうが、非核三原則ということを守り抜いていく、こういうことは現内閣の一番かたく持していきたい方針であることも、いまさら申し上げるまでもありません。  それから最後の点、コンセンサスのお話がありました。私もその考えの、何といいますか、コンセンサスを求めていきたいということには、私も心から賛成でございますが、同時に、独立を守り、そして国民がどこの国にもないような自由と繁栄をこの上ともに謳歌できるような、そういう考え方でコンセンサスを求めていく。これは理想だけではいかないので、いま頭から自衛隊などで云々というおことばがございましたけれども、やはりそういう点にも踏み込んで、いきなり結論をお出しにならないで、コンセンサスを終局的に求めていこうということでお考えいただければ、私どもも非常にありがたいと考えておるわけでございます。そうして同時に、国際的には、これは私自身もしばしば申しておりますが、体制の異なる国々とも親善、友好関係をもっていきたい。現実の上に踏まえながら漸を追うて、その目的を達成するようにしたい、こういう考え方でおりますことを、蛇足でございますが、つけ加えておきたいと思います。
  389. 大野市郎

  390. 岡田利春

    岡田分科員 私は、北方海域の安全操業の問題について、政府の見解をただしたいと存じます。  北方海域における安全操業の要望というのは、サンフランシスコ平和条約が発効する昭和二十七年の年に、現地から政府に対して、特に安全操業に関する条約発効に伴っての措置を実は要望されているわけです。以来、この北方海域における安全操業の問題がしばしば要望されてまいったのでありますけれども、北方領土自体に対する政府の統一的な見解は、昭和三十年ごろに出されておりますから、いわば長い間問題が放置をされてきた。今日依然として安全操業の体制が確立できないということは、私は非常に遺憾であると思うわけであります。特に昨年末までで千三百十四隻の船が捕獲をされて、一万一千二十六人が実は抑留をされておる、こういう実績が示されております。  そこで、まず第一に私がお尋ねをいたしたいことは、政府としては、この北方海域における安全操業の問題を、どのような角度で一体受け取められておるのか、こういう点について見解を承りたいと思います。
  391. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはまことにごもっともな御質疑でございまして、私も実に重大な関心を常に持って努力もいたしておるわけでございます。  まず安全操業の問題でございますけれども、これは、一番最近のところで申しますと、昨年の九月私がモスクワに参りましたときに、基本的な提案をいたしたわけでございます。これは、御承知と思いますけれども、歯舞、色丹、国後、択捉の周辺海域で三ないし十二海里の水域における日本漁民の安全操業が認められるように、これを第一の基本原則にいたしまして、ぜひひとつ具体的な折衝に入ってもらいたいということを提案いたした。ソ連政府幹部は、関係省庁も多いので、ひとつその提案に対して検討をするということを約束いたしたわけでございます。これで相当進むことを期待しておるのでありますが、しかし、まだ具体的な相談に入る体制には先方が出てきておりません。  なお、御参考まででございますけれども、私は、その提案をいたしましたけれども、こちらがかりそめにも入漁料を払うというようなことはいかぬということは、同時に表明いたしております。ただ原則を認めるならば、たとえば若干の操業についてのわが方の自主的の規制でありますとか、あるいは日本側の漁民の病気でありますとか、万一遭難した場合等を予想して救援等について、そういった面の協力に対して、ソ連側に対し、ある種の経済協力、たとえば漁獲量の一定量を分けるとかというような点ならば検討の余地がある、そういうようなワクの中でぜひ前向きに検討してほしいという要請を強くいたしておりますし、いまも、そういった基本線で話し合いが進むように、大いにソ連側に対して要請を続けておるわけでございます。  それから抑留漁夫あるいは漁船の問題に対しましては、その当時も、ちょうどたまたま非常に不幸な事件がございましたときでもございますので、これはとにかく一ぺん全部釈放をしてくれるように要請をいたしました。こちらの要望どおりではございませんでしたけれども、昨年末あたりから相当大幅の釈放は出ているが、しかし、これはとうてい満足するような状況ではございませんので、これらにつきましても鋭意努力を重ねていきたい、まあ大ざっぱにいままでのところを申し上げますと、以上のような経過でございます。
  392. 岡田利春

    岡田分科員 大体いま大臣が説明をされた内容については、私は承知をいたしておるわけです。問題は、安全操業の問題をどういう立場で受けとめるのか。ここは非常に大事な問題だと私は思うわけです。大臣が訪ソをされて、特に北方領土の問題について、それぞれコスイギン首相やあるいはグロムイコ外相と会談をされている。しかし、安全操業の問題については、クズネツォフ外相代理とこの問題について大臣と話し合いがされた。いま述べられたのは、その結果の立場であろうかと私は思います。ただ、この安全操業の問題は、北方領土の問題と表裏一体の関係にあるという立場で安全操業の問題を受けとめられようとしているのか。長い間の懸案事項であり、現実に漁夫が拿捕されている、こういう人道的な立場に立って——あの北方海域の沿岸漁民の実情から判断して、まず人道的な立場に立って安全操業の問題を解決されようとするのか、この点がやはり非常に大切なことではなかろうか。昨年、私は大臣に質問をいたしておるのでありますけれども、そのときには、まだ方針も固まっていなかったようでありますし、中川大使等に対しては、入漁料を払うかどうか、いずれにしても議論のあったところでございますし、そういう面から受けとめて、この面をまず明確にしなければ、今後この交渉を進める上に大きな障害になるであろう、私はこう判断をしているのですが、この立場は一体いかがなんです。
  393. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は、基本的に、領土問題につきましては、国民的要望に基づいて強力な折衝を展開しつつあるわけでありますけれども、それはそれといたしまして、とりあえず人道的な立場に立ちまして、安全操業が、先ほど申しましたような基本線で早く妥結することが望ましいと思います。不幸な事件が起こりますのも、結局この安全操業の問題が片づかないからでございますし、それから先ほど私が申しましたような提案ならば、とりあえず暫定的な措置ではあるけれども、基本線を曲げることでないわけでございますから、日本の立場として両立していくことである、しかし取り上げ方としては、まずとりあえず人道的な立場に立って安全操業の問題を確保しなければならぬ、こういうような姿勢で臨んでいるわけでございます。
  394. 岡田利春

    岡田分科員 大臣、御承知のように、民間協定でありますけれども、コンブの問題については、貝殻島等周辺の安全操業が民間協定で行なわれている。しかも、これは、いわば入漁料、そういう形式で一応今日では二年間の協定で安全に操業ができる体制に実はあるわけです。大臣がソビエトに参りまして、十二海里か三海里までの水域で安全操業をする、その条件として、まず第一には、漁獲物の提供について考慮する、経済技術面への協力についても考えたい、また出漁のある程度の規制は、日本側としても自主的に規制に応ずる用意がある、そういう点で、これから話し合いをしたい、こう述べられたように私は聞いておるわけです。これは、入漁料方式は絶対いかぬと大臣はおっしゃったわけですが、いま言われた人道的立場に立って安全操業を考える場合に、絶対にいかぬというのは、どうもコンブ協定は民間協定であるとはいいながら、そういう経過からかんがみて、絶対的な条件にはならぬのではなかろうか、こう思うのですが、見解はいかがでしょうか。
  395. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは交渉上の問題でもございますし、私は、日本政府の基本的態度としては、やはり入漁料という角度では取り上げるべきではない。それから民間のコンブ協定も、必ずしも入漁料ということでやっているわけではないように思いまするし、この点は、日本の政府としてはやはりきちっとした態度で臨むべきではなかろうかと思っております。そこで、ただいま御指摘のございますような方法ならば、話し合ってもいいのではないか。要はしかし、人道的な立場で早く安全操業問題の話し合いをして、これから、相手のある話し合いでございますから、向こうの出方も見ながら、こちらはやはり押えるべきものはきちっと押えながら、この人道的な問題がすみやかに妥結ができるようにしたい、こういう姿勢で臨みたいと思います。
  396. 岡田利春

    岡田分科員 もちろん交渉事項でございますすら、入漁料ということば自体にもいろいろ問題があろうかと思いますけれども、いわば人道的な問題でありますから、ある程度弾力的に、許容できるものは許容する、そういう弾力的な態度交渉に臨まれることが私は望ましいのではないかと思うのですが、その点特に私の意見も述べておきたいと思います。  その際ソビエト側としては、かつての歯舞、色丹の安全操業に関する赤城私案という問題が提供されて、ソビエト側は、これに対してソビエト漁船の日本寄港という問題が提供された。これは大臣が行かれた場合にも、依然この提案は有効であるという印象があったのではないかと思うのですが、その後も、これにこだわるものではないけれども、一応その提案は有効である、安全操業に関しては有効であるというととが大使館筋等からも伝えられておるわけです。  そこで私は、この漁船寄港という問題は、そう言われておりますけれども、一体内容は何なのか。いろいろ解釈ができるわけですね。政府としてソビエト側の日本寄港の具体的な内容について承知をしておることがあるかどうか、この点承りたいと思います。
  397. 愛知揆一

    愛知国務大臣 日本の港に対する入港問題につきましては、これは御承知のように、他国との関係もございますものですから、私がソ連に参りましたときにも、この点については態度を明らかにして、これを引きかえに認めろとか、あるいは引きかえではなくて、向こうがまずこれを認めてくれという態度に対しましては、私は否定的な態度で応酬をいたしておきました。そこでその後、これは正式な政府代表というわけではございませんが、その後も赤城氏が訪ソしたこともございますけれども、その間、その後の情報等によりますると、最近は日本に対する入港問題というものをあまり強く表面には押し出してこない。見ようによりましては、ソ連側も日本の立場というものに理解が多少進んできたのかなとも思いますけれども、なお様子をよく見守ってまいりたいと思います。先ほど申しましたように、安全操業、人道問題をすみやかに片づけたい。しかし、守るべき線は守っていきたい、こういう基本線で、向こうがネゴシエーションに出てくれることを私としては期待しております。
  398. 岡田利春

    岡田分科員 そういたしますと、外務大臣が訪ソされたときの交渉は、お互いに協議をしよう、こういう合意といいますか、一応意見が一致をしたわけですから、もちろん双方の事情もあるでしょうけれども、日本政府としては、今後安全操業に関する日ソ間の協議をどのような角度で進められていこうとするのか、そういう点については、その後九月以来相当時間もたっているわけですから、検討もされ、またある方針も一応きめられておるのではなかろうか、こう思うのですが、この点をお聞かせ願いたい。
  399. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実は、もしこの内容に入っての協議に応ずるということになりますれば、たとえば場所はモスクワでも東京でもよろしいと想います。そこですみやかにその具体的な折衝の内容に入りたいわけですが、それに臨む日本側は、いま私が考えておりますのは、先ほど申しましたこと並びに岡田委員から御指摘がございましたような点を腹に置いて交渉に臨もうということで、やはり一番の基本線は、とにかく三海里から十二海里の水域で安全操業を認めてくれということで、若干譲るべきところは、たとえば自主規制であるとかあるいは漁獲量の一定のワクとか、若干の協力であるとかいうようなことは腹に置きながら、相手のあることでございますから、そこは多少柔軟的にやったほうが意見交換がしやすいのではないか、こういうふうに考えております。
  400. 岡田利春

    岡田分科員 私どももいろいろな問題についてソ連大使館との接触等もいたし、特に私の地元の問題でございますので、いままでもいろいろ話をいたしているわけですが、特に私は、安全操業と、こうばく然と言いますけれども、一体日本側で、この限られた北方海域でどういう形の安全操業を期待しているのか、たとえば対象漁獲の魚種は一体どう考えているのか、さらにまた船種、隻数はどう考えているのか、漁期や資源保護については一体どういう考えを持っているのか、さらにまたこれに見合う考え方先ほど大臣からも述べられましたけれども、そういうものが、やはりある程度実態を調査した上に立って、案というもの、日本側の希望するものがつくられなければおかしいのではないか、あなたが一応交渉の糸口をつけようということで、安全操業の話をしよう、安全操業の話をしようと言うだけでは、私はちょっと今日の段階では、人道上の立場に立てば、どうも具体性に欠けるのではなかろうか、そういう点ではそういうプランをまずつくるべきであろう、こういう見解を持っておるのでありますけれども、この点についてはいかがですか。
  401. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これもまことにごもっともな御意見でございまして、私も基本線としてはそういうふうに考える。そうしてとにかく話し合いに入ってきたら、こちらも相当に考えた案を——これは外務省ではとても専門的にそこまでいきませんので、水産庁とも従来から十分協議しているつもりでございますけれども、いろいろの案で、向こうの出方に応じてこちらも適宜柔軟性をもって交渉に当たってしかるべきではないかと思います。  いま一つは、専門的に私ども詳しく御説明するだけの用意がございませんのと、もう一つは、ここに持ってきておりましても、いまこの段階でこちらの国会で公にいたしますと、また交渉ごとでもございますから、もう少し時期をお待ちいただければありがたいと思っているわけでございます。
  402. 岡田利春

    岡田分科員 私どもはコンブ漁業協定の隻数増加の問題とか、あるいは抑留船員の釈放問題とか、あるいはまた、特に沿岸漁民に関係する昨年の日ソ漁業交渉における零細漁民、沿岸漁民のカニ漁の実績確保の問題とか、いろいろいままで話し合いをした経験を持っているわけですが、その面からいいますと、人道問題であるとともに、沿岸漁民がそこに魚があるからとりに行く、いわゆる生活上の問題と、こういう二つの論点というものがやはりあるのではなかろうか、そういう意味では、すぐ近い海域でありますから容易に零細漁民や中小、特に小ですが、その漁民が船を持って魚をとりに行ける、そうしてまた拿捕されている実績内容等を検討しますと、いわば小漁民、零細漁民、こういう人々が実は圧倒的に多いわけです。ですから、やはり安全操業というものは、もう一つの面では、わが国の沿岸漁民や零細漁民、小漁民といいますか、漁業家といいますか、そういう立場に立って安全操業を望むのだ、こういう姿勢でぴしっと整理をされて、また主張されなければならないのではなかろうかと私は思います。私はそういう意味においては、ソビエト側としても、コンブ漁業協定に示したように、人道問題や生活上の問題、こういう点についての理解というものがいままでのいろいろな接触を通じてやはり相当進んでいるのではなかろうか、こう考えるのでありますけれども、今後交渉をするにあたって、私のこういう考え方に外する所感を承りたいと思います。
  403. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実は私も岡田委員と同じような観測をしております。ソ連側に対しましても、先方の理解、協力を求めることが第一でございますが、最近の一般的状況や情報あるいは感じられるクライメートは決して悪くないように思いますので、このムードの中でぜひ解決を急ぎたい、かように存じておるわけでございます。  ただ一方、現に行なわれておる漁業交渉などは相当難航はしておりますけれども、いま日ソ間の一般的なあれは必ずしも悪くないように私は思いますので、この環境の中において、ほんとうに一日も早く話をきめるようにしたいと思って、今後とも、御同様の御観測のようでございますから、私どもも大いに勇気を得て邁進いたしたいと思います。
  404. 岡田利春

    岡田分科員 当然わが国の提案が、三海里から十二海里の間の安全操業という問題について問題を提起いたしております。いずれにしても、そういう協定が成立するにあたっては、相互それを順守をするということが、非常に問題の地点だけに、また積極的にそういう立場を明らかにする必要もあるのではなかろうか。たとえば十二海里と三海里の間が安全操業を希望している海域でありますけれども、これが協定に達すれば、わが国としては三海里以内には漁船が入らないように国の責任において指導監督をする、こういう面もやはり明確にならないと、この問題は煮詰まっていかないと思うわけです。同時にそういう点も明らかにする御意思がございますか。
  405. 愛知揆一

    愛知国務大臣 やはり協定をまとめたならば、それを誠実にこちらも履行しなければならないと思いますので、先ほどは別な意味で申し上げましたけれども、やはりそういう点にこちらとしても自主的にきちっとした態度と誠意を示す実績をあげなければなるまい。それは覚悟いたさなければならないと思っております。
  406. 岡田利春

    岡田分科員 交渉のこれからの協議の進展状況によってもいろいろ問題点が出てくるのではなかろうかと思います。しかし、いままでの経過から見ますと非常に明るいような感じはしますけれども、またそう簡単に拙速主義に問題が解決するとも思えない要因も実はあるわけです。私はそういう点から考えますと、いま質疑で明らかになったような問題点を踏んまえれば、あながち政府間協定でなければならないということもないのではなかろうか。いま申し上げました点を踏んまえて、コンブ協定と同じような民間協定を結ぶことも別にやぶさかではないのではないか、こう思うのですが、そういう弾力的な面でとにかく安全操業問題の解決をはかるという点についてはいかがですか。
  407. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはまあその点については御意見として承っておきたいと思いますけれども、実は先ほどもちょっと申しましたが、私は少し楽観に過ぎたかもしれないといま反省しておりますけれども、昨年中にできたらば、当時の農林大臣でございましたけれども、長谷川農林大臣とも寄り寄り相談しておりまして、場合によったら長谷川農林大臣に御苦労を願おうというところまで実はこちらも心組んでおったようなわけでございますが、そういうタイミングでは向こうが交渉開始の用意を示さなかったものですから、これが流れまして、残念に思っておりますけれども、政府間といたしましても相当積極的にいろいろ工作をいたしておりまして、ただいまの御意見は御意見として参考に伺わしていただきます。
  408. 岡田利春

    岡田分科員 特にこの問題に限って、いま大臣から答弁された趣旨にのっとれば、これはもう各党が異論のないところだと思うのです。完全に一致できる問題だと思うのです。私は、そういう意味においてはある程度、各党超党派で国会議員団の面でも、特にそういう立場について説明をし接触を求めていくということも、この問題については大臣が明確に答弁された限りでは有効ではないか、こういう見解を持っておるわけですが、この点について大臣はどういう御意見を持っておりますか。
  409. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この問題に限らず、現在ソ連に国会の方々もお出かけになる例も多うございますし、国会方面でも超党派的にいろいろと側面的にも御協力願えばたいへんありがたいことだと思います。
  410. 岡田利春

    岡田分科員 北方領土の問題はいろいろ問題点もございますけれども、旧樺太については各党間これは異論のないところだと思うのです。各党とも旧樺太の問題については、領土権の問題についてはサンフランシスコ平和条約で放棄をしているという点で現実にソビエトが占有しているという点についてもそう問題のないところではなかろうか、こう思うのであります。しかもすでに経済的には樺太、サガレンと北海道とを天然ガスの直接パイプラインで結ぶような話まで出てきておるという面から見ても、政府自体としてもこれはそう問題がないのだと思うわけです。そういう意味では北方経済圏の確立という立場に立って、もちろん沿海州あるいはシベリアを含めて旧樺太との経済的な協力関係とか人の往来、こういう面については、ある程度いまの日ソ関係の中では積極的にこれを発展をさせていくという方向が望ましいと私は思うわけですが、外務省としては特にこの件について障害があるとか、いろいろ問題点がございますか。
  411. 愛知揆一

    愛知国務大臣 サガレンの天然ガスの開発問題でございますね、これは御承知の日ソ、ソ日経済委員会が中心になって民間ベースで若干の話し合いが進められておるようでございます。私もその状況はよく承知いたしております。ついせんだって第四回のこの会議がございましたが、そのときに日本側は北樺太のオハの天然ガスを海底パイプでもって北海道に輸入するという問題について、ソ連側と話し合いに入る用意があるということは明らかにしたわけであります。それからヤクーツクの天然ガスにつきましては、わが国内の需要の問題もありますので、今後慎重に検討をするという旨をこちら側で表明したところが、ソ連側は北樺太の天然ガス開発を第一段階として実施することには賛成するけれども、それはヤクーツクの天然ガス開発を前提とするものでなければならないという態度を先方がとったようでございます。そして第一段階からヤクーツク・ガス用の口径の大きなパイプを北樺太から北海道間に布設すべきことを主張して、日ソ双方の考え方が食い違ってきておりますので、双方の専門委員会で北樺太から口径の大きなパイプによって天然ガスを引く場合の資金量、コスト計算、あるいは北樺太を経由しない輸入の方法というようないろいろの点について、あらためて検討していこうということに落ちついたようでございます。このようにこの問題はまだ検討すべき点も多いのでありますけれども、政府としましては、商業上の採算にまず合ろかどうか、それからいろいろの意味わが国益に沿い得るものであるかどうかという点に考慮を払いながら協力をしていこうと、こういう考え方で、いまその成り行きを見守っているという状況でございます。
  412. 岡田利春

    岡田分科員 先ほど来のあれで、北方海域における安全操業の立場について公式に政府態度が明確になったことを、非常に私は喜んでおるわけです。  それと同時に、昭和四十一年第十一進洋丸事件というのがございまして、この問題に対して外務省はソ連政府に対する賠償請求といいますか、こういうことがすでに行なわれておると思うのです。それと同時に第八多与丸、昭和四十四年、昨年五月二十五日に多与丸事件というのがございます。それと、外相訪ソ前の四十四年八月九日第十三福寿丸事件がございます。この点については外務省としてはどのように扱われ、すでに外交上この問題についてルートに乗っておるのかどうか、この点について御説明をいただきたいと思います。
  413. 有田圭輔

    ○有田政府委員 ただいまお話がありましたように、第十一進洋丸事件、それから第八多与丸事件、それからごく最近には第十三福寿丸事件が発生いたしまして、まことに遺憾なことでございます。外務省といたしましては、事件が起こりましたことを承知しますと同時に、在ソ日本国大使館を通じまして、ソ連側に抗議をし、かつ国際法上損害賠償等について留保すべき点を明らかにしまして、申し入れをいたしました。その後ソ連側は、これらの事件につきまして、それぞれソ連側には責任はない、第一次的に、これらの船は、ソ連の領海を侵犯して不法漁労を行なっているものである、あるいは場合によりましては、国際海上衝突予防規則に違反して危険な操業をしたためにこのような事件が起こったのであるから、ソ連側としても遺憾ではあるけれども、しかしその責任はかかって日本側にあるのだということで、意見は対立したままでございます。しかしながら、われわれとしては了承することができませんものですから、引き続き強くソ連側に抗議をし、また関係者から損害賠償についての請求がありました場合には、直ちにソ連側にこれを取り次ぎまして、その支払いを強く求めていくというように考えております。
  414. 岡田利春

    岡田分科員 時間がございませんから、終わりますけれども、この種の問題は、先ほど例を申し上げましたように、第十一進洋丸事件でも相当時間が経過しているけれども、いま言われた点で非常に解決が困難なわけです。この種の問題が解決されたということは、私も聞いていないわけですが、前にも幾多問題はあったようでありますけれども、そう大きな問題には、その当時はあきらめと言いますか、ならなかったと思うわけです。  そこで私は、もちろんそういう外交ルートでの折衝も進めなければなりませんけれども、国内措置としてもこの点はある程度考えるべきではなかろうか。私の記憶では、見舞い金二十万程度ですか、もうずいぶん古い話ですが、そのままなわけです。もちろんこういう種の性格ではございますけれども、今日まで、戦後二十五年間あの海域の問題が解決していないという面から見れば、やはり政府としてもある程度こういう種の事件については、現在の情勢に適合したような措置を考えてしかるべきではなかろうか、こう思うわけです。もちろんこれは見舞い金ではございますけれども、そういう意味で、ある程度額の引き上げといいますか、そういう政治のあたたかい面で検討されてしかるべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  415. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実はこの問題につきましては、関係省庁でも非常に憂慮をいたしておりまして、何とかしなければならないということで、実態調査等を進めておるはずでございます。ちょうどいまそのほうの担当の者が来ておりませんので、私、詳細をここで御説明できないのを申しわけないと思うのですけれども、非常に関心を深くしておる。それからとるべき措置について検討しておるということだけは確かでございます。
  416. 岡田利春

    岡田分科員 これで終わります。  どうぞひとつ、大体安全操業の問題は、今年度解決する課題としてやはり政府は受けとめて、あらゆる角度から積極的に努力すべきだ、こう考えます。そういう点について特に強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  417. 大野市郎

    大野主査 次回は明十二日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四分散会