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北山分科員 やはりその点は、日本が施設を貸す、そして
米軍が行動する、その結果としてそれが日本の安全のためになるとかそういうことになるかもしれませんが、しかしいまの安保
条約にはいわゆる極東の平和と安全については関連はあるけれども、日本には直接的な
協力の義務はないですよ。
米軍がその施設を使って、その結果としてあるいは日本の安全に影響はあるかもしれない。しかし、日本がアメリカと直接に極東の平和と安全に
協力するなんという義務はないのです。そこが一歩踏み込んだから問題なんです。今度の
共同声明のジョンソン
説明では、実にデリケートに書いているのですね。こう書いてありますね。
米軍の出動と
事前協議のところで、「日本は一般に、安保
条約と
米軍基地は日本防衛のためだけのもので、日本は日本以外のいかなるものの防衛にも関心がないとの
態度をとってきた。その日本が他地域の防衛に関心をもち、かかわりをもつということ、これがこんどの重要な出来事だ。」ジョンソン国務次官はこう言っているじゃないですか。そこに非常にデリケートな差が出てきたわけです。だからこそ
米軍が他の国、極東の国々あるいは韓国とか台湾とかとの
条約、防衛上の義務を守るための行動、それが結果としては日本の平和と安全とうらはらになるということを日本が認めている。そのことはすなわち、将来
沖縄なり
本土なりにおる
米軍が他の国々との
条約の義務を履行するために行動することがやはり日本の平和と安全のためであるという立場で
協力する姿勢に変わってきたのです。そういう点が非常に違うのです。正直に読めば、率直に私はそういうふうに読み取れると思うのです。やはり四十二年の
共同声明と今度の
共同声明で、いわゆる安保体制、
条約そのものの文句は変わらない、しかしながら、それがだんだんに日本が日本だけのことじゃなくて、韓国や台湾、そういうところの防衛、極東の平和と安全の防衛の責任まで踏み込まれてきているという点が非常に違う、私どもはどうしてもこのように理解せざるを得ないのですが、こういう点はどんなに言ってもいろいろとじょうずに
説明するでしょうから、私は指摘だけしておきます。
それから時間がありませんからもう一点だけ。これはちょっと大きな問題なんですが、
外務省のパンフレット「日米安保
条約早わかり」、それから総理府の去年出した「日本の安全を守るには」という。パンフレットがありますね。ところが何を守るかということについて、
外務省の文書ではさすがに非常に慎重に書いてあるのです。「つぎに、日本と米国とは、自由を基調とする民主主義
政治体制という点で同じ国がらです。また、この仕組みのもとに、社会、
経済の在り方などの面でも基本的な共通点が多いのです。このため、「何を守るか」という点についても、」日米両国の間には多くの共通点がある。非常に慎重に書いています。ところが総理府のものを見ると、初めから国の独立とか国民の生活以外に自由民主の体制を守るのがいわゆる守る
対象なんだということを実に堂々と強調しているのですね。そこで私は、防衛とか安全保障とかいうけれども、特に日米安保
条約のような
外国との防衛
条約あるいは軍事同盟の中に国内体制をお互いに守り合う約束をするということはちょっとおかしいのじゃないか、そう思うのです。
時間がないからかいつまんで言いますと、アメリカが
関係しているような北大西洋
条約とかあるいは東南アジアの集団防衛
条約、こういうものがみな自由な諸制度を強化していくことでいまのいわゆる資本主義の体制を守るという趣旨が書いてあるのです。どっちかといえば、昔の神聖同盟とかあるいは防共協定みたいな同盟ですね。したがって、共産主義とか社会主義というものが敵になっていく。だから守る
対象というものは極東とかいうような地域じゃなくて、極東の中の自由世界なんです。韓国の
政府、台湾の
政府、南ベトナムの
政府、これが守る
対象なんですよ。安保
条約の表面にはそういうことは書いてありませんが、実質はそうなんです。ところが、かえって社会主義陣営のたとえばワルシャワ
条約とかあるいは中ソの友好同盟
条約、こういうものの中には厳格にこれを区別しているのです。国内体制というものはいわゆる内政不干渉の原則、あるいは体制の異なるものもこの
条約には参加できるというように、この点は非常に厳格に書いていますね。社会主義の体制を守るなんということを目的としているものはほとんどないのですよ。それが同じ軍事同盟でも違うと思うので、私は国内問題である体制の問題を
外国と守り合う、そういうものを防衛の
対象にする、安全保障の
対象にするということは間違っていると思うのですよ。こういう点について
外務大臣はどのようにお考えですか。