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1970-03-03 第63回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年三月三日(火曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 小平 久雄君 理事 田中 正巳君    理事 坪川 信三君 理事 藤枝 泉介君    理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君    理事 田中 武夫君 理事 大野  潔君    理事 今澄  勇君       足立 篤郎君    相川 勝六君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       大坪 保雄君    大野 市郎君       大村 襄治君    賀屋 興宣君       川崎 秀二君    上林山榮吉君       田中 龍夫君    灘尾 弘吉君       福田  一君    藤田 義光君       古内 広雄君    松浦周太郎君       森田重次郎君    川崎 寛治君       北山 愛郎君    高田 富之君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       細谷 治嘉君    堀  昌雄君       相沢 武彦君    近江巳記夫君       坂井 弘一君    松尾 正吉君       麻生 良方君    河村  勝君       谷口善太郎君    土橋 一吉君  出席政府委員         総理府総務副長         官       湊  徹郎君         行政管理政務次         官       黒木 利克君         経済企画政務次         官       山口シヅエ君         科学技術政務次         官       藤本 孝雄君         外務政務次官  竹内 黎一君         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省主計局次         長       船後 正道君         大蔵省主計局次         長       橋口  收君         文部政務次官  西岡 武夫君         厚生政務次官  橋本龍太郎君         農林政務次官  渡辺美智雄君         郵政政務次官  小渕 恵三君         建設政務次官  田村 良平君         自治政務次官  大石 八治君  出席公述人         日本勧業銀行調         査部長     中村 孝士君         国学院大学経済         学部教授    正木 千冬君         評  論  家 俵  萠子君         会  社  員 金城 幸俊君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      大沢  実君     ――――――――――――― 委員の異動  三月三日  辞任         補欠選任   赤松  勇君     高田 富之君   西宮  弘君     小林 信一君   細谷 治嘉君     堀  昌雄君  同日   小林 信一君     西宮  弘君   高田 富之君     赤松  勇君   堀  昌雄君     細谷 治嘉君     ――――――――――――― 本日の公聴会意見を聞いた案件  昭和四十五年度一般会計予算  昭和四十五年度特別会計予算  昭和四十五年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和四十五年度一般会計予算昭和四十五年度特別会計予算昭和四十五年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会に入ります。  本日、午前中に御出席を願いました公述人は、日本勧業銀行調査部長中村孝士君、国学院大学経済学部教授正木千冬君のお二人であります。  この際、御出席公述人各位にごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところを御出席いただきまして、まことにありがとうございました。御承知のとおり、国及び政府関係機関予算は国政の根幹をなす最重要議案でありまして、当委員会といたしましても慎重審議を続けておるわけでありますが、この機会に、各界の学識経験豊かな各位の有益な御意見を拝聴いたしまして、今後の予算審議の上において貴重な参考といたしたいと存ずる次第であります。何とぞ各位におかれましては、昭和四十五年度総予算に対しまして、それぞれ御専門の立場から忌憚のない御意見をお述べ願いたいと思う次第であります。  次に、御意見を承る順序といたしましては、まず中村公述人、続いて正木公述人順序で、約三十分程度ずつ一通りの御意見をお述べいただき、その後、公述人各位に対し一括して委員から質疑を願うことにいたしたいと思います。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を求められること、また、公述人委員に対しては質疑をすることができないことになっております。この点あらかじめ御承知おきを願いたいと存じます。  なお、委員各位に申し上げますが、公述人各位に対し御質疑のある方は、あらかじめ委員長にお申し出くださるようお願いいたします。  それでは、中村公述人から御意見を承りたいと存じます。中村公述人
  3. 中村孝士

    中村公述人 日本勧業銀行調査部長中村でございます。本日は、昭和四十五年度予算案につき意見を述べるようにとの御指示がございましたので、参上いたしました。  以下、平素私が考えておりますことを含めまして、予算問題点を申し上げたいと存じます。これに先立ちまして、本委員会で直接先生方に御報告申し上げる機会をお与えいただきましたことを、たいへん光栄に存ずる次第でございます。  予算の問題に入ります前に、まず、これを取り巻く経済環境日本経済の現段階における問題点などにつき、申し上げておきたいと存じます。  御高承のとおり、わが国は昨年九月から政策を転換いたしまして、引き締め体制に入ったわけでございますが、この三月で七カ月目を迎えることになります。これまでの経験からいたしますと、引き締めが始まりましてから大体六カ月ないし八カ月くらいで経済実態面に対する影響が出ていたようでございます。今回もほぼ同様でございまして、越年以降企業金融逼迫を契機といたしまして、企業間信用膨張在庫調整につながり、一部には、さらに進んで設備投資計画を再検討するといったような動きが出ております。そうは申しましても、生産、出荷の水準はまだ前年を一九%前後上回っておりますし、卸売り物価消費者物価も目立った衰えを見せていないのが現状でございまして、いましばらくの間は、財政金融両面にわたって調整効果の定着をはかるべき時期にあると考えております。ただ、引き締め期にはえてしてそれが行き過ぎてしまうといったようなことも起こりがちでございますから、関係当局におかれましては、きめのこまかい弾力的な配慮が必要であることは申すまでもございません。  一方、このような景気局面と離れまして、やや長期的な視野から日本経済発展段階を振り返ってみますと、六〇年代から七〇年代にかけまして、わが国経済の国際的な地位はとみに高まり、昨年末には国民総生産において西ドイツを抜き、自由世界第二位に進出いたしました。しかしながら、このような繁栄の影に、社会資本の立ちおくれや、地価を含めた物価上昇労働力逼迫や各種公害問題の発生などが未解決のままに残されておりますし、対外的には資本自由化特恵関税の実施、あるいはまた繊維交渉の帰趨がどうなるかといったような構造対策の展開を強く要請する面もございます。  このようなことを考えますと、本年度の予算案は、これを二つ角度から分析することが適当であると考えております。  まず第一は、当面の景気調整とからめて、予算ポリシーミックスの実をあげ得るような姿になっているかどうかということ、第二は、長期的に見た場合、財政による資源配分構造対策推進方向に合致しているかどうかということでございます。  そこで、景気調整の円滑な浸透をはかるという意味合いからは、まず予算性格が問題になるわけでございます。  予算景気動向に対してどのような影響力を持つかという点につきましては、財政需要拡大率経済成長率との関係歳出総額に占める投資的支出ウエート伸び率国債依存率変化、増減税の有無といったような四点が問題になると存じます。  財政需要拡大率につきましては、一般会計財政投融資との間で重複がございますので、先般発表されました政府経済見通しによりまして、政府財貨サービス購入伸びを見ますと、これには地方財政も入っておりますが、一四・八%になっております。勧業銀行では、ただいま四十五年度経済見通し検討中でございますが、四十五年度の経済成長率は、大体名目で一七%見当の伸びになるのではないかと考えております。そういたしますと、この一四・八%というのは、これをかなり下回ることになるわけでございます。  次に、一般会計に占める投資的支出ウエート伸びがどうなっているかということが問題でございます。それは、経常的な支出に比べまして、投資的な支出のほうが乗数効果が大きい。つまり、需要拡大力が高いからでございます。そこで、これを出してみますと、投資的な支出伸びは一七・四%と、経常的支出伸び一八・一%をやや下回っております。しかも、歳出総額に占める投資的支出の比重も、一八・九%と、前年度の一九%を下回っております。  さらに、財源面公債発行額を見ますと、四十五年度は国債及び政保債発行額は、前年度当初予定額に比べましてそれぞれ六百億円ずつ減額が見込まれております。その結果、一般会計における公債依存度は、前年度当初予算の七・二%から四十五年度は五・四%に低下することになっております。これら国債政保債は大部分が建設支出に見合うものと考えられますので、この面からは投資活動を抑制する効果があるものと見ております。  最後に、注目されますのは法人税の増徴が行なわれたことでございます。その引き上げ幅は一・七五%となっておりますが、これが今後企業収益を圧迫し、民間の投資活動を抑制する効果があろうかと存じます。ただ、この引き上げが適用されますのは五月期決算法人以後と伺っておりますので、当面の景気調整に役立つかどうかは多少疑問が残ります。  以上を要約いたしまして、四十五年度の予算案景気調整との関連で見ますと、ほぼ警戒中立型の性格を維持し得たものと考えております。ただ、景気局面との関連で考えますと、これから夏場にかけましてが、いわゆる引き締めの正念場に入るときであると考えられます。そういった意味合いからは、予算内容と同時に実行面における配慮も必要なことと存じます。つまり上期は極力支出を抑制する一方、国債等発行額を調整され、それらを下期以降に繰り延べるなどいたしまして、ポリシーミックスの実をあげられるよう望んでやみません。  第二に、資源配分政策ないしは構造対策という面で歳出内容がこれにマッチしているかどうかにつきまして、申し上げることにいたしたいと存じます。  この点につきましてはいろいろな角度から問題点を抽出することができると存じますが、ここでは、物価政策との関係国民生活改善社会資本充実との関係経済効率化との関係の三点にしぼりまして申し上げたいと存じます。  まず、物価政策への配慮という観点から四十五年度予算案を見ますと、積極的な対策と消極的な対策二つの面がうかがわれます。積極的な対策という点では、生産者消費者米価水準の据え置きだとか、小麦の政府売り渡し価格引き上げ見送り、さらには流通近代化のための財政投融資消費生活センターへの補助などが行なわれておりまして、物価政策は一歩前進した感が強いのでございます。一方、消極的な対策といたしましては、消費者物価上昇に伴う家計費負担増大を軽減し、あわせてゆとりある家計を実現するための手段として、課税最低限引き上げを含め所得税大幅減税が行なわれることになりました。所得税減税額は初年度で二千四百六十一億円にのぼっておりますが、これを四十五年度の個人所得と比較してみますと〇・四七%となりますが、これは四十一年度並みの大幅な減税でございます。ただ、その半面におきまして、このたび利子所得源泉分離課税源泉選択課税に移行することになりました。そして今後これが預金者心理並びに貯蓄動向にどのような影響を与えるかが注目されるところでございます。  次に、国民生活改善社会資本充実関係について申し上げたいと存じます。  今回は、国民資質向上をはじめといたしまして、健康増進消費者保護、さらには生活の場である住宅改善社会保障制度充実などにかなりの配分が行なわれております。すなわち、これらを合したものが一般会計では二兆九百八億円、財政投融資計画では一兆二千五百七十億円となっておりまして、その対前年度比伸び率はそれぞれ二六%、二二%と、予算総額伸びをはるかに上回っております。  こう見てまいりますと、予算全体を通じまして、次第に生活優先型の性格が強まりつつあることがうかがわれますし、七〇年代財政方向が少しずつ固まりつつあるように考えられます。  もっとも、この点につきましても全く問題がないわけではございません。特に財政投融資によるものにつきましては、もともとこれが郵便貯金などを中心とする有償の財源でまかなわれておりますから、将来、コスト高から料金高につながっていくおそれがあるということ。いま一つは、政府保証債の増発と元利償還とが重複したり、建設投資元本回収とが時期的にずれるといったようなことから、借りかえ発行がふえ、これが財政硬直化要因になるということが考えられなくもございません。したがいまして、これからの生活改善社会資本充実につきましては、その使途と財源選択について、慎重な配慮が必要かと存じます。  歳出面で注口されますいま一つの点は、経済効率化との関係でございます。  初めにも申し上げましたように、一九七〇年代の日本経済は、労働力不足の深刻化国際化の進展、あるいはまた情報化社会への移行といったさまざまな課題をかかえておりますので、このような環境条件変化に対応して、わが国経済基礎体質を強化し、安定成長の実現をはかるためには、経済効率化を一段と推し進めていく必要があると存じます。この点、四十五年度予算案におきましては、自主技術開発海外資源開発促進、一次産業開発輸入情報化推進などに関する支出が認められておりますし、一方、七〇年代における経済産業構造変化に対応して、住宅産業振興対策費であるとか、海洋開発対策費といったものが頭を出しております。  ただ、考えまするに、これからの産業育成という面につきましては、新規産業の勃興を助長するということももちろん大切なことでございますけれども、同時に、中小企業商業などを含めました既存産業の再開発も、無視できないところであろうかと存じます。この点、中小企業近代化につきましては、製造業に比較いたしまして、商業ないしは流通業近代化に対する歳出ないしは投融資が相対的に少ないように思われます。わが国中小商業は、諸外国のそれらに比べまして、零細、過剰であり、かつ生産性が低いといわれておりますが、流通部門資本自由化も遠からず行なわれるものと考えられますので、その競争力強化生産性向上は、刻下の急務であると存じます。  ところで、このような構造対策に充当すべき新規政策費は、四十五年度の場合わずか三千億円にすぎませんで、一兆二千億円に上る歳出増のうち、当然増経費がその約七割五分を占めるに至っております。このような当然増経費がだんだん大きくなってまいりますと、今後七〇年代の財政需要にこたえられなくなるばかりか、財政資金の効率的な運用が妨げられるおそれがございます。  そうした意味で、この際、思い切った行政改革を実施したり、既定経費のうち、整理できるものがないかどうかを洗い直したり、あるいはまた、後に申し上げますが、国と地方との財源調整制度を再検討されるなど、財政硬直化を打開する配慮が必要かと存じます。そうすることが、また今後における財政体質改善し、国民負担を軽減することにも結びついていくものと信じます。  以上、四十五年度国家予算案につきましてその問題点を申し上げたのでございますが、いま少しくお時間を拝借いたしまして、地方財政につきましても、ちょっと触れさしていただきたいと存じます。  今日、地方財政規模は、国の一般会計予算に匹敵するぐらいの規模になり、国民総生産のほぼ一〇%を占めるに至っております。しかもこの伸び率は、昨今、一般会計のそれを上回り、拡大を続けているわけでございます。もちろん、地方道整備や上下水道など、行政水準引き上げは今後も引き続き推進していかなければならない問題でございますし、特に都市周辺におきましては、人口急増に伴う行政需要増大や公害問題の解決など、その課題は多いのでございますが、国と地方との行政機構関係行政分担のあり方、あるいはまた租税徴収の技術的な検討などに、考慮すべき点があろうかと存じます。また、住民税課税最低限につきましても、所得税課税最低限との間になお三十万円ほどの開きが残っておりまして、これが住民にとりまして重圧感をもたらしていることも、事実のようでございます。この辺につきましても、今後の御配慮をお願いいたしたいところでございます。  以上、いろいろ申し上げましたが、これで私の公述を終わらしていただきます。長い間御清聴いただきまして、ありがとうございました。(拍手)
  4. 中野四郎

    中野委員長 ありがとうございました。  次に、正木公述人にお願いをいたします。正木公述人
  5. 正木千冬

    正木公述人 国学院大学正木でございます。前の公述人の方が非常に広い範囲にわたりまして予算問題を展開されましたので、私あまり申し添えることもないかと思いますが、若干の時間をちょうだいして、意見を述べさしていただきたいと思います。  この公述にあたりまして、先般来財政制度審議会あるいは物価安定政策会議からの提案等をもう一度読み直しまして、それから、それらの審議会答申等で取り上げられた基準とか問題点に即しながら、この昭和四十五年度予算の批判をいたしてまいりたいと思います。  財政審答申は、冒頭に、四十五年度予算経済社会の著しい変革の予想される七〇年代最初の予算であって、その適否が今後の経済運営に及ぼす影響はきわめて大きい、こう指摘しておりますが、この点については、公述最後に触れたいと存じます。  そこで、当面の経済情勢より判断されますところの、あるべき四十五年度予算規模性格につきまして、財政審は、警戒型の基調を堅持して、極力、国債及び政府保証債発行額を削減すること、財政の姿勢を正すとともに、予算規模国民経済とバランスのとれたものにすべきだ、こういうふうにしております。また物価安定政策会議のほうの主張は、特にきびしい物価情勢にかんがみて、来年度は国民所得ベース政府財貨サービス購入増加率、これが政府見通し経済成長率を相当下回るように歳出規模を抑制すべきだ、こういうふうに述べておるのであります。     〔委員長退席坪川委員長代理着席〕  ところで、現実の予算規模はどうであるかと申しますと、御承知のとおり、一般会計規模は七兆九千四百九十七億で、前年度比約一八%、財投計画額が三兆五千七百九十九億円で一六・三%、これに対する経済成長率名目の一五・八%、実質が一一・一%となっておりまして、これでわかりますように、四十五年度は、一般会計予算のほうも、財投計画規模も、いずれも政府見通し経済成長率を大幅に上回っておりまして、とうていこれが警戒型に組まれたというふうには言えないと思うのであります。  一般会計規模は、右に申しました公式のものでさえも一八%という増加率となっておりますが、昨日でありましたか、成立しました四十四年度補正の中の地方交付税の三百八十億円とか、あるいは米生産調整対策費二十億円とかいったものは、明らかにこれは四十五年度予算のワクとして考うべきでありますし、そのほかに空港整備特別会計を新設されたり、あるいはIMFの出資を一般会計から為替資金特別会計に移しております。そこで、前年度ベース並みに計算するといたしましたならば、いまのこの一般会計の姿というものはよほど過小に出てきておる。実質的には、私は一般会計伸びはほぼ二〇%に近いのではないかと考えるのであります。  なお、政府はこの予算におきまして、政府財貨サービス購入は前年度比一四・八%増の十二兆千三百億円である。で、経済成長率以下におさまっておるという弁明をされております。しかしながら、まだ地方財政計画さえ提示されておらないのであります。まあ、一般会計のほうから、あるいは地方債計画等から想像することはできましょうが、まず正確に推定いたしますには、地方財政計画というものを示されなければ、この中央及び地方を含めた政府財貨サービス購入額というものはわからないので、われわれはこれを否認もしませんが、信用もできないと思うのであります。  もう一つ申しますならば、国民経済計算上の財政支出といいますならば、それは政府財貨サービス購入プラス移転支出であります。移転支出伸び、これまた家計を通し、あるいは企業支出を誘導いたしまして、総需要水準を上げる要因でありまして、こちらのほうが、移転支出がふえたのは総需要水準に一向影響がないんだ、こういうような考え方はやや片寄った意見ではないか、こう思います。  それから、公債政策について一言したいのでありますが、四十五年度予算では国債発行を四千三百億円、また財投政府保証債発行を三千億円、いずれも昨年よりは六百億円ずつ減少いたしておりまして、これで景気抑制効果があると説明をされております。四十五年度の一般会計におきます国債依存度は五・四%とかなり下がるようになりましたが、これは一面で予算規模自体が相当ふくらんでおるということもあるのでありまして、この四千億円という国債が市中で楽々と消化できるかというと、私はそうではないのではないかと思います。さらに四十七年度以降考えられますところの新公債償還期が続々と来るのであります。申すまでもなく、四十七年の二千二百億、四十八年の七千百億、四十九年八千億、こういうような巨額の償還期が参ってくるのでありますから、どうしても四十五年、六年というときに、もっと大幅な公債削減が望ましいのではないか、こういうふうに感じるのであります。  次に、予算規模膨張を心配いたすゆえんは、財政面から景気刺激をすることによってすでに相当の危険をはらんでおります物価情勢をますます悪化させるのではないか、こういう心配からであります。御承知のように、物価安定政策会議提案では、放置すればわが国経済は全般的にインフレへの道を歩む危険があるとさえはっきりといっておりまして、この際の予算編成にあたって物価安定を最大の目標にすること、そして消費者物価目標を、上昇率を四%にまで引き下げるということを強く要請しているのです。ところが、政府の今回の予算における目標消費者物価上昇率は幾らかと言いますと四・八%であります。また、卸売り物価一・九%アップということになっております。ところが、最近改定になりました昭和四十四年度の政府見通しによりますと、CPIは五・七%にとどまるということでありますが、これはいまや六%を割ることは不可能になっていると思います。また、卸売り物価につきましても、この七カ月余にわたる金融引き締め下において、前年を三・何%を上回るような卸売り物価上昇が続いておるということ、これははなはだ重大な情勢であると思います。  こういう状態を見、また今度の予算というものを見ますと、私は四十五年度の物価上昇を四・八%に押えるということは不可能であり、結局、年末において五%あるいは六%に書きかえられるのではないか、こういうふうに断言せざるを得ないのであります。また、政府は従来紙の上の物価政策はおありだったと思いますが、ほんとうに物価政策をやるという姿勢ではなかったように思うのであります。  こういったことが、この七〇年経済にはたしてこのままでいけるかどうかということがいまや真剣に問われておるのだと思います。六〇年代の経済でありますならば、二年も高度成長が続くと、やがて国際均衡の破綻がきて、そこでブレーキがかかり、そして物価上昇は水に冷やされたのであります。  ところが、日本経済の構造変化というものが進みまして、いまや高度成長と国際収支の均衡とが併存するようになって、外からのブレーキが期待できなくなってきたのであります。それと同時に、四十一年の不況以来、卸売り価格が継続的に上がり出して、これまでの、消費者物価は上がるけれども卸売り物価は弱含み安定といった形がくずれて、両物価同時続騰といった欧米型の物価騰貴に近づいてきている。  そこで、物価安定政策会議は、財政警戒的な運用、それから通貨量の抑制、これは通貨の発行高を二〇%程度以下に食いとめなければいかぬ、こういう基調であります。また金融政策の実効性の強化、これは抽象的でありますが、日本銀行が幾ら締めようとしても、政策金融、特に輸出優遇とかあるいは中小企業とか、そういったような関係の優遇、政策金融のためにしり抜けになっている。これではいかぬ。もっと金融引き締めがしつかりときくような制度にしなければいかぬという提言となっておる。こういう情勢で非常に日本の物価情勢というものは今後真剣に考えなければならない時期に来ていると思うのであります。  次に、今度の予算が非常に政治優先的な形に組まれておるということでありますが、財政審は、社会経済変化が加速されると予想される七〇年代を迎えて、財政は変革に対応するために体質改善を急がなければならぬ、こういっておりますが、なかなか財政硬直化打開は進まない。そして四十五年度予算におきまして当然増が九千億円をこえるような状態であって、このままでいくならば財政の破綻すら予想せざるを得ない、こう指摘しておるのです。  ところが、この四十五年度予算編成ぶりを外からながめておりますると、私の言いますような財政の体質改善というようなことを一向進められたあとがなく、この予算ほどいわゆる政治優先であって、計画性とか歳出効果といったことを重んずべき財政原理がはなはだしくねじ曲げられた例はほとんどないんじゃないかと思います。少し失礼かと思いまするが、そういう例は幾らも指摘できるのであります。たとえば米の減産奨励金のいきさつであるとか、あるいは公共投資の関係で申しますならば、たとえば新道路整備五カ年計画ですね、これが採用になりましたし、本州四国架橋公団の設立の承認とか、新幹線鉄道網敷設計画に調査費をつけた、こういった例があります。現行の第五次道路整備計画が過小である。そして拡大訂正を要することはわかります。しかしながら、公共投資中最も重要な基幹的な道路計画の採用を、近日に政府内容を決定しようとしている新経済社会発展計画を待たずにきめるのは、順序が逆であります。しかもこの決定された事業費予算十兆三千五百億円でありますか、そのうち八千億ばかりの財源のめどがまだついていないとさえいわれております。それから本州、四国の間に三本の橋をかけるということは財政負担も非常に大きいし、その必要性がないということはだれも知りながら、そのどれを選ぶかという優先的な決定がきかないで、公団設立を認めてしまったように聞いております。また、新幹線鉄道網、九千キロでありますか、これの調査費がついた段階でありますが、すでに各地、各県庁所在地あたりでは期成同盟会が結成されつつあるというようにいわれております。この何年か後に全国にわたりまして広軌の超特急電車が走る、そうしたときに、一体現在の国鉄であるとか、あるいはこの五年間かけて整備されます幹線自動車道路であるとか、あるいはまた、そのころには発達していると思われる国内の航空路ですね、こういったものとの相互関係はどうなっているのか。国鉄がまるで干上がってしまうというようなことになってよろしいのかどうか。こういったような国の最も基幹的な輸送手段の長期建設計画が立てられる場合には、それこそいまのことばのシステム的な発想あるいは総合的な構想のもとに、慎重の上にも慎重に企画されるべきであると思います。  地方開発に結びつきました企画となりますと、とかく超党派の要求となりまして、大蔵省がこれに対して弱い。それで日本の財政をあずかる大蔵当局としましては、このような未熟な計画に対しては、もっともっと強い抵抗をなさるべきではなかったかと私は考えるのであります。  それから、水田大蔵大臣でありましたか、硬直化打開のキャンペーンのもとに四十三年度予算を編成されまして、そのとき総合予算主義というものの原則をつくられた。これは補正予算をつくらないという約束なんでありますが、四十三年度も四十四年度も実質増の補正予算が組まれて、まさに崩壊をいたしております。当時水田さんは、硬直化打開は一年では成果は出ない、両三年努力するから、その成果を期待してほしいと言われたかと思います。三年目のこの四十五年度予算の編成にあたって、大蔵部内から硬直化打開とか歳出合理化という声がほとんど出ない。これは一体どういうことであるかということを私は疑いたいと思うのであります。  それから、いささか問題を変えまして、四十五年度税制改正について申し述べますると、政府の今回の態度をある程度私は評価することができると思います。しかし、減税規模千七百六十八億円でありますが、これは予想されます自然増収額のわずか一二・八%程度でありますから、とうてい大幅減税と誇られるようなものではないと思うし、また国民生活上の減税の実感という点で考えてみますると、明年度の個人消費支出額というものは、政府の数字によりますと三十七兆円と想定されております。そのうちに年間六%ほどの物価騰貴が含まれているのでありますから、その物価騰貴によって失うものは幾らかというと、二兆一千億でありまして、この二兆一千億に対する純減税の割合は八%にしかならない。かりに所得税減税額をとってみたらどうかというと、これでも一一・七%でありまして、台所を潤すような減税でないことは確かであります。  ではこの税制改正のどこを評価するかと申しまするならば、第一点は所得税減税について税調の長期答申が完全実施に至ったという点、これは私は評価すべきだと思う。  そこで、この新しい税制のもとで日本の所得税負担が国際的にどのようになるかと申しまするならば、なかなか所得の総合度が違ったり課税単位のとり方が違ったりしまして、国際比較がむずかしいのでありますが、課税最低限や各国の平均所得者世帯の負担率等を比較してみますると、もし先方が税制を変えずに四十四年税制であるならば、英国より少し低いし、西独とはほぼ同じ水準になるといえましょう。アメリカとはまだかなり開きがあり、ニクソンの所得税改正が実現いたしますると、日米の格差はもっと開きます。  要するに、戦後国民はシャウプの所得税制に非常に苦しめられてきたのであります。それがだんだん手直しをされ、日本人の所得水準が西欧並みに近づいた今日において、その負担率がほぼ西欧並みになった。すなわち免税点なり税率が緩和されてきたということは、私は認められると思います。もちろん今後も賃金、物価上昇をにらみながら、所得税減税が続けられなければならないことは言うまでもありませんし、また特にこれと並行しながら、急務というべきは住民税の合理化とその大幅の軽減でありましょう。  第二点は法人税率の引き上げであります。これは当初税制調査会の作業予定になかったものと聞いておりますが、社会開発財源をつくる必要あるいは税制の弾力的な運用ということのために、法人税を戻すということで実現したわけであります。若干当初の予定よりも後退をして、財界の抵抗の強さというものをしみじみと感じさせるのであります。  それから利子・配当課税の是正というのが以上と並んで四十五年度税制改正の三本の柱とされておりますが、実質的に申しますと、最もやせ細った柱となってしまったのであります。利子・配当課税の優遇措置は、本年の三月で満期になるはずであります。この優遇措置による減収額は、利子分離課税で四百七十億、配当課税の特例で三百四十三億円、こういうふうに政府は発表いたしております。今回の是正措置で国がそれを取り戻す額は初年度で利子の三十億円だけであります。平年度になると両者合わせて百六十二億円でありますが、まことにお寒い戦果に終わっているのであります。  なぜこのようになったかと申しまするならば、利子課税が総合課税を原則とするということになりましたが、一方に非常に低い税率、すなわち二〇%、その後二五%になりますが、この低い税率で源泉選択制度を認めたために、年収二百七十万円以上の高額所得者は分離課税に逃げます。それより以下の少額所得者は貯蓄免税を利用するので、現実に総合課税を利用するという例はきわめてまれになってしまった。結局のところ、ことし満期となるべき利子分離の特別措置がさらに五年間延長されたにすぎない。わずかに現行税率の一五%が五%あるいは一〇%加重されたというにとどまるのであります。配当の源泉選択制度も、これは税調の意向を押し切って実験的になされた。たしか田中さんのときだと思います。これも利子の場合と同様にさらに五年継続が約束されたということになります。  以上の経緯を見てまいりますると、この六〇年代に終始資本蓄積原理が優先をしまして、課税の公正原理がねじ曲げられ後退をさせられた。七〇年代を迎えまして、ようやく理念的には資本蓄積優先ということが保ち得られなくなりまして、公正原理の復位が許されるようになった。こういう点が認められるわけであります。しかし、現実の壁は厚くて、金融証券資本は急激な現状の変更を食いとめるべく必死の努力がなされてきた。私は今回の税制改正案のうちで、この利子・配当措置の是正が最も不満であると申したいのであります。どうか、この国会において十分御審議の上、過渡期間を五年間というようなことでなくて、せめて三年くらいに短縮するとか、あるいは源泉選択制の税率をもう少し引き上げるべきである、こういうような修正がなされんことを強く要望をいたしたいのであります。  時間もございませんので、経費の配分について触れる余裕はございませんが、この四十五年度予算は、実質的にかなり膨大化しているにかかわらず、この七〇年代の第一年目の予算にふさわしいようなものがどこににじみ出ているかと申しますと、ふくらんでいるわりあいにそういうものが少ない。ふくらんでおります経費の多くは、六〇年代の軌道の単なる延長、すなわちいわゆる当然増的なもの、あるいは六〇年代の失敗のあと始末という、いわゆるうしろ向きのものが多いのであります。  財政制度審議会地方交付税率の是正とか、あるいは義務教育費関係の経費の地方と国との分担率の再検討とか、いろいろ具体的な提案もされておるにかかわらず、一向に取り上げられなかった。明らかに今日大きな政策転換が要請されているにかかわらず、予算の現実、すなわちザインはゾルレンと大いに食い違っておる。ここに過渡的な性格予算だ、こう言わざるを得ないのであります。  四十五年度歳出膨張額一兆二千百億ですが、これを分析いたしますと、第一に地方交付税交付金、国債費と予備費、それからその他事項というものの予算に属するものは四千六百十一億円、これはいずれも当然増的性格が強いのであります。残りの七千五百億円弱ですが、この中で費目の伸びの順で申しますと、食糧管理費の二七・七%、これを首位として、社会保障費の二〇%、防衛費の一七・八%、公共事業費の一七%、文教科学等の一五%が並ぶのでありますが、このトップにあります食糧管理費ですが、これは詳しく申すまでもありません。これはこの三千十六億円の食管への繰り入れと米減産対策費の八百十四億からなっているのでありますが、この二つだけでことしの農林省予算の四五%を占めております。これこそ六〇年代農政の到達点であります。これが七〇年代の日本の農政に脱皮するために、どうしても出血的大手術が要請されておるというわけなんであります。  社会保障費は二〇%増大で初めて一兆円をこしたというのでありますが、しかしこの増加額の六五%というのが、すなわち千二百三十八億円ですが、これは主として昨年末改定されました医療費のはね返りであり、それから三百九十三億円が年金の増加であり、残る三百七十億円でそのほかのもろもろのいわゆる生活改善生活扶助基準の改善とか一身障者対策、児童保護とか、母子福祉、老人福祉、一般保健対策等々のささやかな改善がすべてこの三百七十億の中でまかなわれざるを得ないという姿であります。  文教関係におきましても千二百億の増加でありますけれども、そのうち八百六十億を占めるものが義務教育、国立学校文教施設整備費等の系統に属するものでありまして、これについてもう少し国と地方との分担について考えたらどうかということが問題にされておるのであります。その残りで私大の経常費の助成とかあるいは若干の研究費の拡大がなされておるというわけですね。  それから、防衛費につきましては、一七・八%という伸びは創設以来の最高であるといって注目されておりますが、これは内容的に申しますれば、人件費の増加、債務負担額の予算化に伴う既定の増加が多いのであります。第三次防が確実に実施されておるということであります。問題はこの四十七年度に始まる第四次防がどのような性格規模にきまるかであります。沖繩基地を取り入れましたアジア安保体制下の防衛費の性格は、従来のような受動的なあるいは消極的なものから相当変わってこざるを得ないのではないか、こういうことが予想されるのであります。  四十五年度予算の持つ過渡期的ななまぬるさといいますか、そういったものは、この七〇年安保が規定いたしまする日本の外交防衛方針がそのベールをまだ脱ぐに至ってない、脱ぐまでのしばしの安らぎではないか、こういうふうなことを指摘して、一応私の公述を終わりたいと思います。(拍手)
  6. 坪川信三

    坪川委員長代理 どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  7. 坪川信三

    坪川委員長代理 これより両公述人に対する質疑に入ります。上林山榮吉君。
  8. 上林山榮吉

    ○上林山委員 ごく簡単に断片的に少しばかりお伺いしておきたいと思います。  まず正木公述人にお伺いいたしたいのですが、日本の消費物価は国際的に比較してみて特徴のあるものかどうか。たとえば消費者物価を調べてみると下がったものもある。家庭用品のごとき下がっておる。だが野菜のごときは天候その他自然的条件で上がっておる。この物価調整をするために、たとえば野菜のごときを外国から直ちに輸入できるかどうか。非常に困難じゃないだろうか。そういう調整ができないというような日本的な特異性というものをお認めになっておるかどうか。物価が上がった、上がったというけれども、上がったという意味における内容、この点はどういうふうにお考えになっておるか。また、それがもし原因でないとするならば、どういう根本的な原因が他にあるか、もしあるとすればこの対策をどういうふうにお考えになっておるか、簡単でけっこうですから、お伺いいたしたいと思います。
  9. 正木千冬

    正木公述人 いまの上林山先生の御質問でございますが、日本における消費者物価の特徴は何かといわれまするならば、これがすでに三十年代の始まりから非常に継続的に上がり続けてきておる。そしてその内容につきましてごく簡単に言いまするならば、一方において生産性の非常に高い近代工業があり、それがそれに応じた賃金水準を実現していく。ところが、一方の低生産性部門の企業、あるいは農業等は、打っちゃっておけば労働力をとられてしまうので、それに対する一つの対抗策として、それ自体は生産性が高くないにかかわらず、高い賃金を払わざるを得ない。それが結局物価に反映せざるを得ないというようなことが一番大きな原因であろう、そういう意味で、ある意味では生産性格差インフレーションといいますか、そういったようなものが基本的にあって、この情勢はいまの労働力不足というものが激化するに従いまして、このままで放置しておくならば、ますますこれが激化していく。  そこで御質問だったのでありますが、それに対処する対抗策はないかどうかということでありますが、確かに一部は輸入を自由化するということ、特に農産物、あるいは畜産物等においてできる限り――もちろん国内の混乱というものは、ある程度これはやむを得ないと思いますが、もう少しこれを強化するということ、そのほかにやはり基本的な問題は労働力面にあるとしまするならば、もっと労働力の流動化、あるいは中高年層をもっと労働供給として役立つようにするとか、あるいはサービス産業に向かう労働力をもう少し生産面に引き戻すような方向を何らかの方法で考える、こういったような労働力対策というものに重点を置かれるべきじゃないか。いままでは高度成長政策といいますと、とかく増産政策というようなことになっておりますが、単なる増産政策では、結局物価騰貴を抑制することはできなかったように私は思うのであります。そういう程度で……。
  10. 上林山榮吉

    ○上林山委員 物価の高騰の問題、特に消費者物価、野菜等に対する日本の特異的な物価上昇、これに対する御回答はちょっと意に満たぬのでありますけれども、時間の関係で省略をいたします。  次に中村公述人にお伺いいたしたいのでございます。  人それぞれ見ようによっていろいろ違うわけではありますけれども、所得税住民税を合わせますと、平年度で四十五年度は三千八百億程度の減税であります。従来に比較すれば確かに大幅減税ともいえるし、また人によってはこれは大幅ではないのだ、中幅ともいわないが、小幅ともいわないが、減税はしたにはしたけれども、大幅じゃないじゃないか、もっとやるべきじゃないか、こういう意見もあるわけですが、常識的にいってこの程度のものならば大幅減税といっていいのではないかという問題、これが一点。  第二点は、利子と配当の問題について相当論議があるわけでございますが、これは私は大いに前向きで論議していい問題だと思っておりますが、その標準というものについてはある程度考慮すべき問題があるのじゃないか。たとえば大衆投資家の保護というものはどの程度にやるべきものだろうか。現在大衆が投資している人員あるいは金額、こういうものは統計をお持ちにならなければおわかりにくいかとも思いますが、これまたきわめて一般的でけっこうでございますからお聞きするわけでございます。どれくらいであるものか。私は大衆投資家、いわゆる中産階級以下の投資家がだんだんふえてきつつある、こういうように見ているのでありますが、この点はどうか。これをお尋ねいたしておきたいと思います。
  11. 中村孝士

    中村公述人 ただいま先生がおっしゃいました初めの問題でございますが、今回の所得税並びに住民税を含めました減税幅が大幅であるかどうかという点につきましては、私は、中幅とか小幅とかいうような御意見もありますが、比較的大幅の部類に属するものと考えております。  それは若干統計をもって申し上げますと、この所得税減税が何に対してどのくらいの減税幅になっているかと申しますのは、先ほど私が公述の際に申し上げましたとおり、個人所得に対して減税額がどのくらいのウエートを占めているのかということが一番適当であると思います。そこで国民経済計算ベースにおける個人所得と毎年度の所得税減税額との割合をとってみますと、たとえば四十二年度〇・二七%、四十三年度〇・二七%、四十四年度〇・三三%、四十五年度〇・四七%というふうになっているわけでございまして、過去数年間を振り返ってみますと、ことしの減税幅はかなり大きいと申し上げてよろしいかと思います。  ただ、これ以上にもっと大きくすべきじゃなかったかという御意見もあるようでございますが、この所得税減税法人税あるいはその他の減税と同じように、やはり景気に対する刺激的な効果があるということも考慮しなければならないと思います。今日は、御案内のとおり、財政金融両面において引き締め政策を展開しているさなかでございますから、私はこれ以上大幅なもので景気をいたずらに刺激するようなものではないと考えますので、幅といたしましてはこの程度がけっこうではないかと考えているわけでございます。  第二の問題でございますが、最近大衆投資家というものがだんだんとふえてきている。そしてこの所得の保全とかあるいは増殖というものの一環として証券投資が拡大してきている。したがって、これをどのように保護するかというような御意見であったと思いますが、私は、その前に個人の所得というものがどのようなものに運用されるかという点につきましては、所得の水準に従いまして資産運用の形態が変わってくると考えます。つまり所得水準の低い人たちは銀行預金とかあるいは郵便貯金とかいうようなものに蓄積をいたします。だんだんと所得水準が上がってくるに従いまして、これが投資信託であるとか公社債であるとか株式とかに運用されると考えられるわけでございます。したがいまして、現在どのような個人の資産運用に優遇の重点を振り向けるかという点につきましては、私は、個人的には、まだ株式を優遇する以前の段階、つまり、銀行預金とか金融機関預金を優遇することによって、たとえば住宅を取得させるとか、あるいはその他教育費を何とかしてまかなうとかというような点に優遇の重点を振り向けていただきたい。それがだんだんと高まってまいりまして、七〇年代に入りまして個人の資産運用の形態が次第に多様化してまいりましたならば、それに従って、資産運用に対し、それぞれ優遇措置を講じていただくというのが順序ではないかと考えております。
  12. 坪川信三

    坪川委員長代理 大原亨君。
  13. 大原亨

    ○大原委員 中村公述人正木公述人に、それぞれ二問ずつ、一括して御質問いたします。  これは、中村公述人のほうにお願いしますが、日本の予算編成のときに決定いたします経済見通し経済運営の基本的な態度ですね。これは閣議決定でございますが、この経済見通しと実績が毎年非常に開きがあるわけであります。見通しは、GNPでも、国民所得――まあ、当然にそうなるわけですが、特に問題になっておる民間設備投資にいたしましては、非常に見通しと実績が開きがあるわけですね。これは、たとえば大蔵省なんかは、税収の見積もりを少なくするためにGNPの成長見通しを少なくするというふうに、一つ例をあげてみますと、そういう一つの操作をやるんだろうと私は思うのですよ。そのために見通しを低くやる。しかし、実際にそれだけにコントロールできるかというと、そういうコントロールをする能力は政府にはないわけです。経済企画庁にもないわけであります。私は、そこに非常に、いま、ひずみとか物価の問題、いろんな問題の根源があると思うわけです。  本年、この見通しを、それぞれ政府は立てておるわけですし、おたくの勧銀あるいは民間の金融機関も、これはかなり前の段階で、昨年の秋ごろにそれぞれ立てておられるわけですが、ことしの見通しで、GNPが名目で一五・八%、実質で一一・一%、問題の民間設備投資が一七・二%、こういうわけですけれども、かなり引き締めというふうな問題で固執されましたし、政府もいっているわけですが、本年は、一体この点について、金融関係の調査機関ではどういうふうに見通しを立てておられるのか。これは、やはり、かなりの引き締めをやりましても、うんと違うんじゃないかということが一つです。  それから、中村公述人にもう一つの点は、予算委員会でもいろいろ議論になったんですが、たとえば、消費者物価が六%も上昇すれば、都市銀行などの定期預金の金利よりも多いわけですね。これは道義的にいっても、あるいは、こつこつ働いている多数の勤労国民にとりましても、あるいは、老人や社会保障のそういう基盤を確立するという面からも、政府としては落第だと思うわけです。そういう点から考えて、たとえば、その点だけではないわけですが、やはり自由経済のもとで合理的な経済運営をするためには、金利を自由化する、引き上げるというか、完全な自由化ではありませんが、引き上げるということ、自由化ということについて、かなり議論もあったわけですが、そういう点について、どういう御意見をお持ちになっているか、これが第二点です。  それから正木公述人のほうにお願いしたい点は、経済企画庁には非常に官庁エコノミストがおりまして、数字をいろいろもてあそぶと言ったらおこるわけですが、いろいろ操作することに非常に興味があるのであります。しかし、中期経済計画をつくっても、長期経済計画をつくっても、一年ないし二年ともたないわけでありますね。経済見通しが違うように、一年ぐらいからもう、前からはずれていくわけであります。これをそういうふうなことでなしに――それは計画経済ではないということを言うわけですが、しかし誘導目標ではあるわけですから、そういう展望あるいは経済計画は。そこで、経済企画庁のあり方といいますか、経済企画庁が無力だから、いま機能的に人的に力がないから、閣議決定いたしましても経済あるいは財政全体のコントロールができないのか。この経済企画庁のあり方について御意見があれば聞かしてもらいたいということが一つですが、それと一緒に、これはいろいろ議論されたことがあるのですが、予算編成を大蔵省の主計局からとって、総理大臣の直属の予算庁とか予算局をつくっていくとかいうふうな形で、予算編成経済企画庁のあり方等について、やはり内閣全体というか、総理大臣のイニシアチブがとれるような、そういう形に私は変えていく必要があるのではないかという考えを持つわけです。機構上の問題だけではないと思うのですけれども、たとえば公共料金にいたしましても、経済企画庁は、ときどきもっともらしい意見は言うのですけれども、金と力はなかりけりで、大体失望させるわけであります。そういう点で、機構的な面等を含めて経済企画庁のあり方あるいは予算局の予算編成の問題等について、御意見があればひとつお聞かせいただきたい。  それから、社会資本充実と社会開発ということを佐藤総理も四年前に主張して、池田さんにかわって、池田君のような冷酷な経済一本じゃないんだ、おれは人間尊重でいくんだ、こう言って佐藤内閣は出発されたわけでありますが、しかし、この三、四年間見てみますと、これもやはり問題は大きくなっておるばかりであります。財政の放漫ということでいろいろな問題が議論になりますが、それだけでなしに、金融の流れを変えていく際に――こちらは金融の御専門ですが、たとえば郵便貯金や簡易保険をやっておる郵便局の金が財投のほうに流れていきますね。そのほうの流れを、都市銀行へ流れるよりもひとつ大きくしていく。たとえば郵便局などに小口の貸し出しなんかの制度をつけて、いまは預金をするだけですが、そういう貸し出しの制度等をつけて流れを変えていく。都市銀行を中心に民間設備投資へ流れ過ぎる、そういうことを変えていくようなこと、あるいは財投の中で、たとえばもう輸出もかなり伸びておるわけですから、輸出産業とか産業基盤のほうに財投を流すのではなしに、社会開発のほうへ流していく、そういう二つの面から操作をするようなことを考えないと、社会開発についてはおくれを取り戻すことができないのではないか。  こういう点について御所見をそれぞれお伺いさせていただきたいと思います。
  14. 中村孝士

    中村公述人 初めの問題でございますが、経済見通し、これまで振り返ってみますと、政府経済見通しは、実績と照合いたしますと、どうも初めの見通しのほうが低過ぎたというような結果が出ているわけでございます。民間の金融機関等の見通しにつきましては、これよりも多少高い線にいっております。ただ、それでも、ここ数年を振り返ってみますと、実績に比べますと民間の金融機関等の見通しもまだ低かった。実際には日本経済の高成長が続いてしまったということが申し上げられると思います。ただ、この政府見通しは、おそらく、私推測いたしまするに、こういうふうに持っていきたいという願望を示されるもの、あるいはこういうような政策努力を意図するものというふうに考えておりますので、それはどうしてもやはり、たとえば物価にいたしましてもこの辺に押えたいという気持ちが出てくるものだと思いますので、私どものような予測のこうなるであろうというものと、多少そこに数字の食い違いが出てくることはやむを得ないのではないかと考えております。で、本年度につきましてもただいま私どものほうで検討中でございますが、四十五年度は名目では私どもは大体一七%ぐらい、実質では一二%弱ぐらいになるのではないかと考えております。御指摘の設備投資につきましては、政府見通しよりももうちょっと高くなるのではないかと思います。政府見通しの本年度の設備投資は十四兆六千五百億円ということになっておりますが、私どもは十五兆を上回るようになるのではないかと思います。これは今日金融引き締め政策がとられてはおりますけれども、まだ中堅企業を中心といたしまして設備投資の意欲が非常に強いようでございます。また都市銀行はかなり強力な金融引き締めの指導のもとにございますけれども、それ以外の金融機関で資金が調達できるというような面もございますので、私はことしの設備投資は政府見通しよりももう少し上のほうにいってしまうのではないかと考えているわけでございます。  それから第二の問題点でございますが、物価と利子率との関係から金利の自由化についてどう考えるかという御指摘がございました。私は、基本的にはわが国の場合に、制度的にも運営上も、従来金利の市場調整機能というものが諸外国よりもかなりおくれていた、あるいは低評価されていたのではないかと考えております。したがいまして、今後こういった金利を次第に自由化していくということが資源配分というものの上にもかなり役立ってくるものと思います。ただ、この点につきましては、いろいろな問題がございまして、預金金利、定期預金の金利を上回るような消費着物価上昇が起こっております。したがいまして、私どもといたしましては、今後関係当局の御指導のもとに預金金利の水準を少しずつ弾力化していくという方向で努力いたしておりますが、それ以外にまたもう少し長い目で、これは金融制度調査会等においていろいろ御議論を願っていると思いますけれども、もう少し利率のいい新しい定期預金、中期定期とかいうふうにいわれておりますが、そういうものを創設することによって預金者に生産性上昇の成果の一部を還元したいと考えております。ただ、この生産性向上の成果、金融機関が生産性向上に努力いたしまして、これをどのようなところにどのように配分するか、還元するかという点につきましては、銀行といたしまして預金者に還元をするということと同時に、やはり取引先、貸し出し先に対して貸し出し金利の引き下げという面で還元をする面も必要でございます。これは今後国際化等を控えまして、どうしても企業の競争力を助長するという意味合いからも必要でございまして、実際にワクの中で金利が弾力化され、その中でどのようにこれを配分していくかという点につきましては、いろいろな角度からこれを検討していかなければならないと考えております。
  15. 正木千冬

    正木公述人 私に二つの御質問が出たわけでありますが、最初の経済企画庁のあり方あるいはそれと関連しまして予算編成のあり方、あり場所とかいった問題なんですが、このあとのほうの予算編成権というものを大蔵省から離していいかどうかという問題、これは日本のかなり前からの懸案でございます。戦前のいわゆる非常事態、軍が非常に強い発言力を持っていた時代からそういった意見がたびたび出て、実はいまの企画庁の前身であるあれができたのも、そういった背景によっているわけであります。しかしながら、いろいろな面から考慮しまして、歳出面と歳入面あるいは公債の調達とかそういった面を切り離すということについては、どうも私は困難が多いのではないかと思います。で、いままでそれをたびたびいわれてきたわけでありまして、問題は、どうしたらその問題が解けるかといえば、一つはやはり国としての大きな政策というものをわずか数カ月間の予算の折衝できめるのじゃなくて、もうちょっと前もってしっかりした党なり政府との間の討議によってきめておく、それに従って予算をつけていくというような習慣がもっと確立しなければならないということもあると思います。で、いまのままの経済企画庁、それにいまよりもう少し予算政策に関する発言力を強化する、あるいはそこに主計局を移すというようなことも考えられないことはないと思いますが、私はやはりどちらかといえば、イギリスの大蔵省のように、むしろ大蔵省がほんとうに強力に長期的な財政プログラムと取り組むならば、大蔵省自体に経済企画庁を吸収する、そこに強力な副大臣級の長官を置いて、さらに経済研究所的なものをつけて強化する、しかしこの指揮権は大蔵省にある、大蔵省はそういった長期の計画、いろいろな予想と同時に財政の総括的な仕事をやる、こういった形のほうが現実的ではないかと思うのです。ただ、そうなりますと、閣内における大蔵大臣の地位が非常に強くなってしまう、そういったことがいまの日本の内閣制度といいますか、それにはたしてうまくいれられるかどうかという問題があります。イギリスの場合は、おそらく歴史的に大蔵大臣が首相に次ぐ、あるいは実質的な首相というような地位を持っておったからそういうことになってきたのだと思いますが、大蔵省は、いろいろな調査的な企画的な情報的な仕事をますます大蔵省に集中しているかのように私は聞いております。  それからアメリカの場合は国が違いますから、大統領府においてそういった機能が強化されておる。財務省というものがむしろ理財局とか主税局と一緒になったようなものであるように見られるわけですね。どちらがいいか。これは結局国のおい立ち、それらの国の政党内閣制であるかどうか、大統領制であるかどうかというようなことに関係してくるだろうと思うのであります。いずれにしましても、もう少しそういった企画官庁のバックになる政治力というものを強くする必要がある。いまのような経済企画庁では、実際お話しのように金と力はなかりけりになっておるのじゃないかと思います。  それから第二の問題、社会開発を今後進めていく上に、これは主として財源の問題であろうと思うのでありますが、いわゆる社会開発とか社会資本充実がおくれているとかそれが必要になったとかいわれますものでも、この十年ほど前といまとはよほどその必然性、その要求される需要そのものが変わってきておるように思います。いままでそういった社会資本といえば、主として国土開発的な、国土保全的ないわゆる純公共事業とか若干のそれに対する産業基盤的なものが優先であった。そこでいわゆる公共事業で片づいたわけですが、この数年来起こってくる財政需要、特にそういう資本投下的な財政需要の中にはとうていいままでのような公共事業的観念では割り切れないような問題、一方には公共資本を使いながらその受益者はほんとうに一部の国民が個人的に使用するような資本、たとえば公営住宅のようなものでありますが、そういったものを公共資本を投下してやっていく。あるいは企業が本来負担すべき公害の防止、それを助成するためのいろいろな施設、それをかわって国がつくってやる、こういったことだとか、あるいは本来なら地方団体がやるべき仕事を、地域が非常に拡大し大規模化するために、国が取り上げざるを得なくなってくる、いろいろな形の財政需要がありますので、それに対応する財源もあるいは税金であり、ある場合には料金であり、地方と国との共同であったり、いろいろな形になってきますが、いまは、先ほど特に提案されました財政投融資において、もっと生活基盤的なものに重点を振り向けて、生産基盤的な問題よりももっと生活基盤的なものに向けるというお話、これは私もそのほうに向けるべきだと思います。そしてそういう方面にこそ、実はいままでは財政投融資が、たとえば利子つきの資金が向けられてきておったのであります。そして、いろいろな保険であるとか郵便貯金であるとか年金だとかの金がある程度、四分の一とか半分とかいうものが優先的に振り向けられることになっておる。しかしながら、そちらの長期の保険的な年金的な資金というものは、一方には相当高い利子を生まなければならないわけです。しかも、それを投資する先の社会生活的な生活基盤的な社会資本の建設のほうは利子を払う力はない。そこで結局その差額は利子補給という形になる。私は、ある程度利子補給もやむを得ないし、むしろいままでのような公共投資に税金が行って、そして無利子の金がどんどん出ていく、しかも生活基盤的なものについてはもっぱら財政投融資にまかせられておる、こういう行き方はある程度是正すべきだと思うのです。そのためには相当の利子補給的な考案をしていかなければならない。それを一方においてある程度従来の公共事業の負担を、民間を参加させるなりあるいは受益者負担あるいは便益者負担というような考案を若干入れることによって、その国の負担を浮かせていくというようなことが徐々に行なわれていくのじゃなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  16. 坪川信三

    坪川委員長代理 西宮弘君。
  17. 西宮弘

    西宮委員 両先生に簡単にお尋ねをいたします。  まことに初歩的な質問でございますけれども、第一は、物価上昇率はどういうふうにごらんになっておられるか。特に金融機関などは政府見通しと違うというようなことを伺っておりますので、それをお聞きをいたしたいと思います。  第二は、経済の変動、景気の変動というようなものを人為的にどの程度コントロールできるのかという点でございます。たとえば財政とか金融とかいうのがその手段だと思いますが、財政の場合はとりわけ公共事業費を圧縮するというようなことが景気を刺激しない方策として考えられるのでありましょうが、昭和四十三年は特に公共事業費を強く圧縮をしたと思いますけれども、あのときなどはそういう点でどうであったのかというようなこと、あるいは金融の問題で申しますると、金利の引き上げというようなことで金融引き締めをいたしておりますが、たとえば昨年の秋やりましても、通貨の増発などは依然としてたいした変化をしておらないという、そういう状況下にあるように新聞等で読んでおりますけれども、そういう現実を見ながら、どの程度人間の力でコントロールできるのかというようなことでございます。  それから三番目は、財政硬直化の問題を特に正木先生は強く指摘をされたのでありますが、これは今日までは財政硬直化が何ら解決をされないで、しかしながら一面、自然増が非常に多かったということで救われてきておるわけであります。今後の見通しはどうなのかということ、これは正木先生は、特に前の国債の償還時期が到来する、こういうことから非常に困難だということを訴えておられたようであります。したがって、中村公述人にその点の御所見を伺いたいと思います。今後経済成長が依然として続いていく、そうすると当然に自然増は十分に期待できる。したがって、その中で問題は消化をされていくので、だから財政硬直化の問題などはそれほど神経質になる必要はないのじゃないか、こういうことが言い得るのかどうか、その辺の見通しでございます。  大体そういうことをお尋ねいたしたいと思います。
  18. 中村孝士

    中村公述人 三つ問題をいただきましたが、まず第一の消費者物価上昇率でございます。政府見通しでは四十五年度は四・八%の上昇を見込んでおられるようでございますが、最近、消費者物価につきましては一月は前年比で七・八%上昇というふうに、非常に大幅なものになりました。もちろん、この一月の消費者物価上昇の中には、生鮮食品を中心として、季節商品の値上がりが非常に大きゅうございますから、これがこのまま続いていくとは思いませんけれども、ただベースが上がってきておりますので、こういうものを足場にいたしまして、四十五年度の消費者物価はおそらく五%をこえていくような状態になるのではないかと考えられます。  卸売り物価につきましては、昨年は三%以上の上昇が見られたわけでございますが、これには鉄鋼とかあるいは非鉄金属といったような海外における市況高によるものがございますので、最近非鉄金属につきましては、海外市況がやや落ちつきを取り戻してきております。鉄鋼につきましても、部分的にはこれがある程度沈静化の方向をたどっておりますので、卸売り物価は、むしろ私は昨年四十四年よりは四十五年度のほうがもうちょっと伸び率が下がってくる、二%台になっていくのじゃないかと考えております。  第二の問題は、景気の変動を人為的に調整することがどの程度可能であるかという御指摘でございますが、この点は、私は、最近は財政金融両面にわたって政策調整の手段というものが非常に整備され、多様化されてきておりますので、この効果はかなり大きいと考えております。具体的に、財政政策につきましては、やはり増減税によって調整をするということは、景気の動きに若干ずれていくというようなことも考えられますので、何と申しましても、やはり歳出面での調整が中心になると思います。したがいまして、この点につきましては、歳出面で特にいまのような景気の行き過ぎというような場合におきましては、この景気に刺激的な効果を与える要素の大きい公共事業費とかその他の投資的な経費というものをある程度削減、合理化、繰り延べしていただくというようなことが考えられるのではないかと思います。またその財源の、何といいますか、そういう投資的な経費の財源面では、やはり公債発行等についても、これを調整していただくということが景気の刺激を避ける手段として考えられるのではないかと思います。  金融面におきましては、従来は日本銀行を中心として金融調整政策というものが展開されてきておりまして、今回も昨年の九月からだんだんと貸し出し額の調整、これは資金ポジション指導といわれておりますが、その結果あらわれてまいりますのは、銀行の貸し出し額の調整でございまして、これは昨年七-九月は、都市銀行等について見ますと、大体前年比七〇%増くらいでございましたが、昨年十-十二月は三〇%増くらいになりました。この一-三月は、伝えられるところによりますと数%の増加にとどまるというふうに伺っております。したがいまして、貸し出しがだんだんと圧縮されてまいりますので、企業としては設備投資計画や在庫投資計画を持っておりましても、資金面からこれができなくなるというような状態になっていくものと考えます。  御指摘の通貨の増発は、現金通貨、預金通貨ともに、昨年の年末あたりくらいで見ますと、残高ベースで前年比を一九%ないし二〇%くらい上回っておると思います。しかし、この預金通貨につきましては、最近銀行が貸し出しを締めておりますので、この流動性の預金の取りくずしがだんだんと起こっております。したがいまして、今後は企業間信用にも壁が出てまいりましょうし、手元の流動性が次第に乏しくなってまいりますので、預金通貨の動きにつきましても、伸び悩みの状態がこの春あたりからだんだん起こってくるのではないか。それから現金通貨につきましても、やはり消費の動きあるいは商取引の動きというものと関連いたしますが、これも次第に伸び悩みの方向に向かうような気配がもうすでにぼつぼつ出てきております。  そういう意味で、財政、金融、両面にわたって政策的な調整の機能が及ぶ範囲はかなり大きい。特にわが国の場合には、金融面におきましては、企業の自己資本依存率というものが外国に比べては非常に小さいわけでございますので、相対的に金融政策によるところの調整効果というものが大きいというふうに私は判断をいたしております。  それから、第三の財政硬直化につきましては、先ほども公述の中でちょっとお触れいたしましたが、やはり今後自然増収は高成長を背景にかなり伸びてくると思いますけれども、ただその中で、本年度等について見ましても、当然増経費というものが七割以上も占めているということになりますと、どうしても新規政策費というものが押さえられてまいります。特に、七〇年代は六〇年代と違いまして、構造変化が非常に著しい。しかもその変化のテンポが激しいということを考えますと、財政も当然機動的にこれに対処できるような体制になっていなければならないと思います。そういう意味では、やはり当然増経費というものを行政改革その他を通じましてなるべく圧縮いたしまして、弾力性を残しておく必要がある。そういう意味では私は、先生がおっしゃいましたように、やはり財政硬直化は今後とも引き続き排除していく努力をしなければならないと考えております。
  19. 正木千冬

    正木公述人 中村公述人が非常に詳しく御説明になりましたので、私、特にそれに加うべきものはないかと存じます。  私はどっちかというと、財政による景気調整といいますか、それはあまりに常に短期の景気情勢を念頭に置いて、財政はそう規模を敏感に動かすというよりも、むしろ財政、特に一般会計内容というものは大体においてほとんどきまった経費といいますか、そういった用途というものがあるので、それをそう景気だけの意味で伸ばしたり縮めたりはできないのだと思うのです。したがって、むしろ一般会計については大体あるべき成長に見合った、それを上回りもせず下回りもしない程度にかなりペースをそろえていくということが必要であると思います。そしてその他の財政投融資で若干の調整をはかるとか、あるいはたまたま年度間の増収が出たときに、それをどうするかといったときには、これを従来のように補正予算財源に使わないで、むしろ黒字としてこれをたくわえておくというような形で、いわゆる税のスタビライザー的な作用を来たしていくという形で、私は不景気なときは別問題として、一般財政についてはあまり景気変動を気にして伸ばしたり縮めたりしないほうがいいんじゃないかというようなことを考えておるわけでございます。
  20. 西宮弘

    西宮委員 もう一度、中村公述人に簡単にお尋ねいたします。  いまのお答えの中に、いまの企業体は他人資本に依存する度合いが高い、こういうお話があったわけでありますが、まさにそのとおりだと思います。同時にまた、長期負債というようなものがだんだんふえる傾向にあるわけですね。そういうことになりますと、借金を返すということが重大な問題になるわけであります。したがって、現在だんだんにインフレ傾向にある、こういうことをそういう企業体はむしろ内心は心ひそかに歓迎する、そういう気持ちがありはしないかというようなことが私ども懸念をされるわけですが、そういう傾向はないのだろうかどうだろうかということだけ伺いたいと思います。     〔坪川委員長代理退席、藤枝委員長代理着席〕
  21. 中村孝士

    中村公述人 ただいまの御指摘の点でございますが、アメリカでは最近インフレ気がまえというものが非常に強まってまいりまして、企業のみならず、個人の間におきましても、将来の経済変動に備えて借金をするというような、そしてそれを実物投資に振り向けるというような動きが出ているようでございますが、わが国の場合には、まだそれほど借り急ぎをするとかあるいはインフレに備えて固定投資をするというような動きは出ていないように思います。ただ企業といたしまして、自己資本比率が非常に低い。今日大企業中小企業を通じまして、おそらく二〇%を割り込んでいると思いますが、こういうような自己資本比率が非常に低い。つまり、相対的に借り入れ依存度が高いということは、企業として今後成長発展していくためにやはり一つのネックになるのじゃないかと思います。  そういうことば企業の経営者の方々も十分に御存じのようでございまして、なるべく負債の中でも、先生がおっしゃいましたような固定的な負債、長期的な負債、安定した負債というもので資金を調達をする。つまり、短期の資金を調達いたしまして設備投資等を行ないますと、資産、負債のバランスが非常にくずれてまいりますから、いざ引き締めというようなときには非常に危殆に瀕するというようなことがございますので、最近は安定的な負債ないしは自己資本を充実するというような意向が非常に強まってきているように思います。この傾向は私は非常にけっこうなことだと思いますが、今後特に国際化時代を控えて、特に中小企業等におきましては低開発国から新しい安い商品が上陸をしてくるというようなことになりましたり、あるいは景気の変動というものは幾ら安定成長を続けておりましてもその過程ではどうしても起こってくるわけでございますから、そういうときに金融引き締めの圧力がかかるということになりますと、借り入れ金の依存度が高いものほどやはりショックが大きいということになりますので、そういう点についてはやはり政策当局におかれても今後企業の自己資本の充実に重点を置いた政策を展開していただきたいと考えております。
  22. 藤枝泉介

    ○藤枝委員長代理 河村勝君。
  23. 河村勝

    ○河村委員 両公述人に簡単にまとめて御質問いたします。  両公述人の間で、いわゆる国民経済計算ベースによる政府財貨サービス購入が、政府ではGNPの伸び一五・八%に対して一四・七%、下回っているということで景気刺激的でないというのが政府の主張ですが、それに対して中村公述人は肯定的にお答えになって、それから正木さんは否定的なお答えでありました。それについて中村公述人に対しましては、この財貨サービス購入の計算には、資本支出の中で、日本の場合、特に非常に大きなウエートを占めております用地並びに用地補償費が入っておりません。これが伸び率が非常に高いわけですね。ですから、これを含めてかりに計算したら一体どのくらいになるものか。  それからさらに移転支出、これは正木公述人移転支出を含まないのはおかしいというお話でありましたが、全部でないまでも、ことしの場合なんか例の農地転換に対する補償費、これは確かに非常に景気刺激的なはずであります。こういうものを含めて計算するのが当然ではないかというふうに考えますが、景気刺激に対して説明をするためにはそれをどうお考えになりますか。  それから正木公述人に対しましては、地方財政のワクがきまっておらぬからほんとうのところはわからないのだ、こういう御説明がありましたが、これは従来こういう計算をやっております。従来の実績、政府が事前に計算したものとそれから事後の実績と、今日までどういう結果になっていますか、合っておるか合っておらないか。そうでなければそういうことが言えないのだろうと思うのです。それが両公述人に対して、二つでございます。  もう一つは、法人税引き上げの民間設備投資抑制効果、これは簡単に一%法人税引き上げたならば民間設備投資を何%くらい抑制する効果があるか。これを両公述人にそれぞれお考えをお伺いいたします。
  24. 中村孝士

    中村公述人 御指摘点、ポイントが三つございますが、まず第一の国民経済計算ベースにおきます財貨サービス購入というものが一四・七%である、そして経済成長率政府見通しでは一五・八%、私どものほうの見通しでは一七%であるということから、この景気刺激効果はあまり大きくないということを私が申し上げたわけでございますが、この点につきましては先ほど正木公述人から、こういった財貨サービス購入というものがだんだんと波及効果を生んでくるから、したがって、これは景気刺激的であるというような御意見が述べられたわけでございます。ただ私は、この国民経済計算の中における政府財貨サービス購入だけが波及効果を生むのではないと思います。     〔藤枝委員長代理退席、委員長着席〕 個人消費につきましても同様でございますし、民間設備投資につきましても同様でございます。ですから、その場合に波及効果とか誘発効果というものを取り上げるならば、すべての需要項目についてこれを取り上げるのが筋であるというような考え方を持っておりますので、この国民経済計算ベースにおける財貨サービス購入、つまり、有効需要に刺激的な効果を与えるかどうかというものは、そのものずばりでこれを取り上げてもよろしいんじゃないか。そういう意味では、これが私のほうの見通し一七%を下回っておりますので――これが一八なり一九なりということになっておりますと景気刺激的であるということになろうかと思いますが、私はそういう意味でこれは刺激的でないというふうにお答え申し上げたわけでございます。  それから、第二の地方財政につきましては、これはまだ地方財政計画が固まっておりませんので何とも申し上げられないわけでございまして、特にいままでの実績がどうであるかということは、ちょっと資料を持っておりませんのでよくわかりませんが、財政支出につきましては、私の記憶では、民間投資とかあるいは住宅投資ほど大きなブレはなかったように記憶いたしております。  それから、法人税引き上げ効果でございますが、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、今回の法人税引き上げというものは、五月期決算法人からこれが適用されるということになっておりますので、これが及ぶ範囲と申しますと、何と申しましても日本の場合には三月期、九月期決算法人というものが、会社数で大体三五%ぐらい占めております。それから配当金額で申しますと、これが四〇%ぐらいを占めております。したがいまして、そういう意味では、まるまる一年間を通じましてこれが投資を抑制する効果を生まないということになってくると思いますが、これがどの程度設備投資に影響を与えるかという点につきましては、これは大蔵省が試算をされたものがございます。これは一・七五ではなくて一・五%増税の場合でございますが、民間設備投資の伸び率が一・二ポイント減少するということになっております。今度は一・七五でございますから、これがもう少し大幅にこれを押し下げることになるのではないかと考えております。
  25. 正木千冬

    正木公述人 私、地方財政計画が出てないからこの財貨サービス計算、政府のいっているのはわからぬということに、もうちょっとつけ加えさせていただきますが、御承知のように、あの政府財貨サービス購入というのは、国の一般会計、特別会計、政府機関でございますね、公団その他まで入っておりますし、それから地方財政一般会計、特別会計、それから地方の公共の特殊会社、法人まで入っておるわけです。それらのものが完全に資料がそろって出るのはいつかということになると、たいへんおくれるわけであります。結局こういった想定をするときに何が一番早く利用できるだろうかと申しますならば、この段階では近く出る地方財政計画でございます。  地方財政計画が現実の地方財政規模と合っているかと申しますと、これがたいへん違っておるのは御承知のとおりで、おそらく三千億くらいは規模によって違っていると思います。したがいまして、企画庁なり大蔵省なりがたとえば計画される場合も、この発表されます地方財政計画を現実の姿に直して計算し直して、その上でいまの政府財貨サービスの計算をされるのだと思います。最近国の予算あるいは地方財政から国民経済計算規模に換算し直すにはどうしたらいいかという研究が若干進められておりまして、たしか私が見ました範囲では、経済企画庁の研究所からそれに関するレポートが出ております。それには大体、ごく簡単に申しますと、国のほうでは経常消費がどういうふうにしたら出せるか、あるいは資本支出については予算のどういう面を寄せてどういう係数で換算すればよろしいかとか、それから地方財政関係については地方財政計画にある係数をかけてこれを出すというような式が大体いま示されておるようであります。私は、そういったものがありますから、地方財政計画が出ておりますればそれで自分でも試算ができるわけですが、現在ではできておらない。  それから、私が遺憾に思いますのは、政府予算がきまった後になって経済見通しの各項目を発表されるわけですが、実は政府原案が出たときにもうすでにあの数字はきまっておるわけです。ただそこには政府財政支出の数字が抜けておる。それはほかの項目は全部きまっているわけですから、あれから引いたもので見ますと大体一四・八%ぐらいに見ているなということはわかったわけです。しかし、そのころは政府にしましても国にしても、特別会計の規模がわからなければいわんや地方財政規模はわかってない。ですから、何もきまってないときに政府財政政府の購入のベースがもう組み込まれているわけですね。そういう意味においては私はかなり疑問を抱く、こう申しているわけでございます。
  26. 河村勝

    ○河村委員 一点だけ。中村さんさっき大蔵省の試算で一・五%、引き下げの場合には一・二%抑制効果がある、こうおっしゃいましたね。今度一・七五%引き下げるのだからもうちょっと上回るというお話でしたが、この一・七五%というのは留保分だけでなしに全部含むのじゃないんですか。そうなるとだいぶ違ってきやしませんか。
  27. 中村孝士

    中村公述人 この法人税、大蔵省の試算は、私はよく算定の根拠を伺っておりませんが、法人税に事業税も含んでいるようでございます。ただこの場合に一・五%増税を考えておりますので、法人税率は今度一・七五になりましたので、法人税率の引き上げ幅が大きくなりますとダウンの幅がもうちょっと大きくなる……。
  28. 河村勝

    ○河村委員 留保分だけですから。一・七五というのは留保分に対してだけでしょう。
  29. 中村孝士

    中村公述人 さようでございます。
  30. 河村勝

    ○河村委員 一・五というのはそうじゃないんじゃありませんかということです。全体で、配当分に対しても――いいです。けっこうです。  終わります。
  31. 中野四郎

    中野委員長 土橋一吉君。
  32. 土橋一吉

    ○土橋委員 両公述人にお聞きしたいのでございますが、私たちは、最近の物価が非常に上がっておりまして、労働者、一般勤労市民は耐えがたい生活に苦しんでおると思うのであります。したがって、今年度予算においても、すでにいろいろお話がございましたように、どうしても物価を下げるということがまことに重大な問題でございますが、特に中村公述人のお話を承っておりますと、物価を下げることについてどういうお考えを持っていらっしゃるのか。私たちは公共料金を上げたり、あるいは現在独占物価といわれるようなものが鉄鋼製品などに見られますように、たいへん上がっております。あるいは非鉄金属についても同様でございますが、そういうばく大な利潤をあげておる大資本のもうけを押えるためには、国会においてこれらの企業内容を十分調査して、そうして過酷な物価引き上げの独占物価については、これを慎重に調査し、あるいは国会においてそういう権限をもってこれを下げることが必要だというふうに考えておるわけです。  同時に、昨年度予算におきましても六兆七千数百億の予算、きのう成立しました補正予算で二千四百億追加いたしましたが、結論においては大体七兆円の予算といってもよろしいと思います。今年度予算は七兆九千数百億でございますが、これも、総合予算主義などと称しておりますけれども、また年度の終わりになりますと、相当の追加予算を要求してくると思うわけです。こういう年々膨張する国家財政そのものが、やはりインフレを招来するものというふうに考えております。したがって、こういうものについて大幅の削減をする必要があると考えております。特に財政投融資の面などについて、景気をあまり刺激しないような方向に、特に社会保障関係に重点を置くべきであろうというふうに考えております。  また、間接税などが御承知のように非常に高いわけです。したがって、大幅の生活必需品に対する間接税の削減か、ないしはこれを廃止をする方法をとらなければ物価は下がらないというふうに考えておりますが、そういう点について両公述人の御意見をお聞きしたいと思うのであります。  特に正木公述人から、今年度予算は体質改善を中心としてはいない、むしろ政治的な予算ではなかろうか、こういうまことに至当な御意見が述べられたと思いますが、こういう点について、それでは政治的な予算だというならば、最も顕著な内容は一体どういう点についてそういう点が示されるのか、またそういう点について、物価との関係上どういうふうにすればよろしいのかというような点について御意見を聞かしていただくと、非常に幸いだと思う次第でございます。どうぞよろしくお願いします。
  33. 中村孝士

    中村公述人 物価対策についての御意見がございましたが、これは卸売り物価消費者物価、それぞれ多少対策のあり方と申しますか、方向というものは違ってくるかと思いますが、消費者物価について考えてみますと、まず消費者物価上昇している要因といたしましては、私は三つあると思います。まず第一は、需要拡大をして、これに対して生産なり供給体制が追いついていかないということがございます。それから第二番目は、先生が御指摘になりました管理価格でございます。これがやはり下方硬直性をもたらしていると申しますか、そういう面があろうかと思います。それから第三は中小企業、サービス業等の低生産性部門におけるところの人手不足とか原材料高とか、こういうものが物価上昇さしているというふうに考えられますので、物価上昇をこのような三つの要因に分けてみますと、それぞれにおいてやはり対策を講じていかなければならないと思います。  まず、第一の需要増大と供給体制のアンバランスという点につきましては、いま行なわれておりますような財政金融両面からする景気調整によりまして、需要の行き過ぎを押えるということが喫緊の課題であると思いますが、それと同時に、生産性向上して生産物の供給をふやすとか、あるいは輸入を促進するということによって価格を安定させる必要があろうかと思います。  それから、第二の管理価格につきましては、大企業等におきまして、生産性向上したにもかかわらず価格の引き下げが行なわれていないという点につきましては、何らかの形でこれが指導され、これが消費者に還元されるような方策が考慮されなければならないと思います。  第三の低生産性部門の介在につきましては、やはり中小企業、サービス業といったようなものの近代化政策というものがさらに前進をする必要があろうかと思います。この点につきましては、私が先ほど公述で申し上げたように、最近は、製造部門のみならず、流通部門におけるコストの上昇というものが非常に目立ってきておりますので、流通近代化政策というものがさらに前進させられる必要があるのではないかと思います。  それから、財政投融資につきましては、御指摘がございましたように、やはり今後そういった、どのような資金をもって財政投融資財源が構成されているかということと、これをどのような部門に振り向けるか、財源と運用との関係につきまして洗い直して考えていく必要があろうかと思います。そういたしませんと、有償の財源を特定の部門に集中いたしますと、これが料金の引き上げとか価格の上昇に結びついてくるということがございますからでございます。  それから間接税につきましては、間接税の廃止あるいは削減という御意見でございましたが、これは税体系上、わが国所得税を中心といたしました直接税のウエートが非常に高いわけでございまして、外国に比べますと間接税の比重が非常に低いわけでございます。しかも、こういうことが所得税とか住民税の負担の重圧感というものを生み出しているのではないかと思いますので、将来は多少間接税がふえると申しますか、間接税のほうに移行することによって所得税負担を下げていくという考え方もやはりあるのではないかと思います。ただその場合に、間接税をふやすということになりますと、やはり対象がどういうものであるかということによりまして、これが消費者物価上昇を誘発するというような悪循環が出てまいりますので、この点については十分配慮していただく必要があろうかと思います。
  34. 正木千冬

    正木公述人 御質問のうち二つの点についてお答えをさしていただきたいと思います。  物価をどうしたら引き下げられるかということにつきましては、たいへんむずかしい問題で、短期的な対策、それから長期的ないろいろな意味での構造政策なり輸入政策なりとかみ合わした政策が必要だ、こういうことになるわけでございます。この委員会から私ちょうだいしたのでありますが、政府はこの四十五年度の物価対策にどんな予算をつけたかという資料が出ております。たいへんな金額がついたことになっておるわけであります。それによりますと、一般会計で八千四百五十三億円、特別会計では七百億円、合計九千百五十四億円というのが物価対策のために支出されるはずである、こういうことになっておりまして、また財政投融資におきましても、事業規模ないし貸し付け規模として並んでおりまして、それを合計しますと実に三兆千七百四十一億円、こういった資料が企画庁から出ております。物価対策関連予算という名前でございますが、前年度より五千億円増、一八・七%も増加しておる、こういう資料だったと思います。世界中どこを探しても、物価対策にこれほど大きなお金をかけられた国はないと思いますし、それで効果が上がっていない国はまたおかしいと思うのでありますが、実はこういう資料が企画庁ともあろうところから出てくるところに、やはり政府物価対策に対する考え方というものがほんとうの意味において地についておらない。何でもかんでも低生産部門への助成策あるいは必需物資の増産対策、こういったものに全部物価対策として考えられておる。こういうような形で、ほんとうの意味の物価対策費としてはこのうちごくごくわずかの流通対策の費用であるとか、あるいは物価取り締まりの費用とかいったものが行政費としてのあれだろうと私は思います。たまたま公共事業の料金を抑制するために補給金を出すとか、あるいは長期な金を借りかえてやるとか、そういったような財政投融資の操作というものはありましょうが、そればかりではなくて、財政投融資のほとんど全額が、この資料によりますと物価対策に役立つのだ、こういうところにたいへん間違いがあるんで、やはりこれからの物価対策というのは、主として国際開放的な経済に向かう世界価格体系の中での供給を増加するというような点において構造政策にも向けなければならないし、そういったものから考えますと、いままでつけておった予算はかなり逆な効果を生んでおるんじゃないか、物価を上げるために金が使われておるんじゃないかというようなことさえあるんで、こういう点をひとつ企画庁にも反省してもらいたい。こういったものが出るということは私はおかしいと思うのであります。  それから、先ほど私が申しました、今度の予算が体質改善よりも政治優先だという点、これは私若干申し上げたつもりでありますが、公共事業に予算を向けられることば当然だと思いますが、それにはやはり、大きな計画でありますから、マスタープランがまずできて、それに従って各港湾なり道路なり鉄道網なりというものが従っていくべきなんで、日本の場合は個別計画が先にバラバラの年次において企画されて、そしてそのあとで、マスタープランというべき国の長期計画がそれをくっつけて、のみ込んでつくられていく。だから合わないんだと思うのです。そういうことをやっておりますと、これは結局非常に大きなむだができるんじゃなかろうか。もちろん日本の財政経済力というのは非常に大きくなりましたから、橋を三本かけたってかまわないんだ、それから九千キロの鉄道網を引いたってかまわないんだという、非常に勇敢な御意見も下村さんあたりから出ておることは承知いたしておりますが、それにしてもやはり優先順位もありましょうし、もっとシステム的な慎重な計画のもとにやるべきだ。そういうことでなしに、今度は特に未熟な計画がぽいぽいと予算をつけられたというところに問題があるということを申し上げて――こういうことを続けておりますと、結局財政の大きな破綻を導くだろうということを私は申し上げておるわけでございます。
  35. 土橋一吉

    ○土橋委員 中村公述人にもう一つお願いしたいのですが、いまあなたのお話をいろいろ承りますと、勧銀では大体見通しは一七%くらいだろう、政府は一四%だといっているが、これで大体自分が考えておるような内容に近いんじゃないかというような御意見のように承るんですが、はたしてそうかどうか。  もう一つは、赤字公債発行は特に私たちは好ましくないと考えておるわけです。この赤字公債の元金、利息の返済も近くまたやってくるし、今年度予算でも相当な額を占めておるのでありますが、これはやはり物価を上げる一つ要因になっておるんじゃないかというふうに思いますが、そういう点はどういうふうにお考えですか。  次は、正木公述人にお願いをしたいのですが、先ほどのお話でございますと、ことしの五千七百億の防衛費が第三次防衛力整備五カ年計画の最後予算であったと考えております。その中で、あなたの公述の中では、人件費が多いんじゃないかというような御説明があったように私は記憶しておりますが、実はそうではなくて、これは第四次防衛力整備五カ年計画で、最近新聞紙上などで伝えられておりますように、四兆数千億ないしは五兆円にもなろうかといわれておるような、あるいはもっとそれよりも多いような記事も新聞に出ております。たとえば五兆円をこえて六兆円近くなるんじゃないかというような意見もありますが、いずれにしても国内において兵器の生産をすることを中心とするこういう膨大な予算を編成しようとする政府政策に対して私たちは反対なんです。こんなことは国内の戦争体制といいますか、軍国主義体制といいましょうか、あるいは治安体制を一そう強化する自民党の非常に政治的な意図を盛った予算であります。特に日米共同声明以後、こういう点が非常に顕著になってまいりました。このことは、日本全体の戦争と侵略の体制を強化するものだといっても過言ではないのでございまして、こういう方向に国家の財政が使われて、そして物価を下げるとか――あるいは膨大な国家財政を組んでいくような、こういう仕組みに私たちは非常に危険と不安を感じておるわけです。そういう点について、もう一度知っていらっしゃる内容について御説明を願えれば、非常に幸いだと思っておる次第でございます。
  36. 中村孝士

    中村公述人 初めの点でございますが、先ほど申し上げましたが、私もただいま四十五年度経済見通しを固めている段階でございまして、まだはっきりと結論が出たわけではございませんが、試算をいたしてみますと、名目では大体一七%くらい、実質では一二%弱くらいになるのではないかと思います。これは先ほども申し上げましたが、やはり政府経済見通しは努力目標的な性格がかなり強いと思いますので、私どもは実際にどういう足取りでどういう項目がどのくらいふくれていくかということを積み上げて計算してみますと、大体そのくらいのところにいってしまうのではないかと考えているわけでございます。大体市中銀行で、いろいろなところで見通しを立てておられますが、これらもやはり大体政府見通しを上回っているようでございます。  それから第二の点につきましては、現在発行されております公債性格がどうであるかということは非常にむずかしい問題でございますが、やはり本年度は、現在景気調整を行なっているわけでございますので、金融面から引き締めを行なっておりますけれども、やはり財政面においてもこれと歩調を合わせて、ある程度需要を調整していくという必要があろうかと思いますので、私はなるべく、特に国債発行額につきましては、できる限り削減をしていただく、そして下期以降、不況といいますか、調整がどのような形になるかということが予測できませんが、もし落ち込むようなおそれがあったときには、それを弾力的に出していただく、こういう上、下別に調整をはかっていただく必要があるのではないかと考えております。
  37. 正木千冬

    正木公述人 お答えいたします。  防衛費につきましてちょっと補足的にお答えさせていただきますが、ことしの防衛費一七・八%の伸び、非常に高い伸びだといわれておるのでありますが、この内容は、主として人件費の増加、それから器材費ももちろんだんだんふえてきておりますが、この器材費の大部分、おそらく八割くらいのものは過去の二年、三年前の発注された国庫債務負担行為の予算化によるもので、大体防衛庁の予算伸び方というのは、人件費の増加と、それから過去の債務負担行為の予算化によって伸びております。  それでは新規の防衛庁の予算はどこに出るかというと、これは新しく獲得する国庫債務負担行為であります。ことしの予算をちょっと見ましたけれども、特に特色と見られますものは、従来は国庫債務負担行為の期間は五年あるいは三年でありますが、今度の場合に限って全部の債務負担行為の期限は四十五、四十六、四十七年だったと思います。そういう点で、若干債務負担行為の要求のしかたが違っておる、それはいま出しておるものが三次防を中心としたものであって、四次防の内容にはまだ入っていないのではないか、そういう点で、私は、ことしの予算は率は大きいけれども、三次防の線にそのまま走っているのだということを申したわけであります。もちろん、私も非常に心配しております、この第四次防がどのような規模性格になるか。簡単に、経済力がこうなったから一%は出せるのだとか、あるいは〇・七%がいいとか、こういった議論は全く私はこっけいでもあり、国防というような真剣な問題をばかにしたものであると思うのであります。むしろほんとうの日本の平和政策、国策の上に立って、必要なものはそのつどつくるべきであって、何%ときめてやるべきじゃないし、それから、野党の方々が政府から答弁を引き出すために、国防費を何%ぐらいまでは可能かというような議論を盛んになされますが、とかくするとそれが宣伝と申しますか、それまでいいのだというような形になって固定化してしまうおそれが従来もあったように思いますので、どうかそうではなくて、どういう基準で国防費というものを見るかという根本に立ち返って御議論を願いたいと思うのでございます。
  38. 中野四郎

    中野委員長 中村正木公述人には御多忙のところ長時間にわたり貴重な御意見をお述べをいただきまして、まことにありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。  午後は一時三十分より再開することとし、暫時休憩をいたします。     午後零時二十一分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十九分開議
  39. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十五年度総予算について公聴会を続行いたします。  午後に御出席いただきました公述人は、評論家でいらっしゃる俵繭子君、会社員でいらっしゃる金城幸俊君のお二人であります。  この際、御出席公述人各位にごあいさつを申し上げます。  本日は、たいへん御多用中のところを御出席いただきまして、まことにありがとうございました。御承知のとおり、国及び政府関係機関予算は国政の根幹をなす最重要議案でありまして、当委員会といたしましても慎重審議を続けておるわけでありますが、この機会に、各位の有益な御意見を拝聴いたしまして、今後の予算審議の上において貴重な参考といたしたいと存ずる次第であります。何とぞ各位におかれましては、昭和四十五年度総予算に対しまして、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べ願いたいと思う次第であります。  次に、御意見を承る順序といたしましては、まず俵公述人、続いて金城公述人の順で、約三十分以内で一とおりの御意見をお述べいただき、そのあとで公述人各位に対して一括して委員から質疑を願うことにいたしたいと思います。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を求められること、また公述人委員に対しては質疑をすることができないことになっておりまするので、この点あらかじめ御承知おきを願います。  それでは俵公述人から御意見を承りたいと存じます。俵公述人
  40. 俵萠子

    ○俵公述人 御紹介いただきました俵繭子でございます。  私は政治あるいは財政のことに関しましてはしろうとでございまして、専門的なことを申し上げるわけにはいきませんけれども、現在小学校の三年生とそれから幼稚園の子供を育てております一人の母親あるいは主婦といたしまして、今度の予算案を見た実感を率直に述べさせていただきたいと存じます。  佐藤総理大臣が施政方針演説をなさいまして、私もテレビあるいは新聞で聞かせていただきましたけれども、その内容はいろいろたいへんごりっぱな内容でございまして、特に一九七〇年代というのは内面の充実のときにしたいということをおっしゃいました。先進国としての国際責任というものをその次に考えるという、こういう施政方針演説を伺いまして、私は一人の主婦としてたいへんうれしゅうございました。その内面の充実ということは、同時に国民生活充実であるというふうなお話もございましたので、私は四十五年度予算に対してたいへん期待をもって拝見いたしました。  ところが、正直にまず私の感想を申し上げますと、佐藤さんのおっしゃった内面の充実ということはこの程度のものであったかという感じでございます。太平洋新時代というふうなことばも聞いております。そして今度の予算では防衛費の伸びがたいへん著しいということも聞いております。しかし、私は生活関係予算を見まして、ああこんなによくなるのかというふうな飛び立つような喜びというものは感じられませんでした。  以下、こういう点につきまして、具体的に一つ一つ私の感想を述べさせていただきたいと存じます。  第一は、私ども主婦の一番頭の痛い問題、つまりわが家の家計ということで申し上げたいと思います。  ちょうど三日前からタクシーも上がりまして、きょう私は国会へ来ますのにタクシーには乗りませんで地下鉄で参りましたけれども、二月の一日からは医療費が上がっております。また私が昨日買いました大根は、皆さま方は直接市場にいらっしゃらないのでおわかりじゃないかと思いますけれども、大体長さが十センチ、直径が七センチのもので五十円でございました。それからきのう買いました白菜というのは半分で――一つではございません。一つのものをすぱっと半分に切りましたその半分が五十円でございます。またキャベツは一玉百円でございます。こういうふうに特に野菜の値上がりがたいへんひどいのは、からから天気が続いたせいと万博のせいだというふうに聞いておりますけれども、私ども主婦のさいふは、からから天気があっても万博があっても特にふえるわけではないので、非常な痛手をこうむっているわけでございます。  また決してその値上がりというのは野菜だけではございませんで、非常に私事を申し上げますけれども、今度一年生に上がりますむすこのランドセルを買いに行きましてびっくりいたしました。主年前に一年生に上がった娘のランドセルは四千円で買えましたけれども、今度は六千五百円出さなければ買えませんでした。いろいろなものがこういう形で上がっているわけでございます。  総理府統計局の全国消費者物価指数というのを拝見いたしますと、一月というのは前年の同月に比べて七・八%のアップになっている。そして四十四年度の物価上昇というのは六%台になるだろうという予測がなされておりました。確かに七・八%というのは非常に痛手でございますが、特に私ども主婦にとっては、大根、タマネギ、ジャガイモといった毎日の料理に欠かせないものが去年の二倍になっているということは、たいへんな痛手でございます。  こういうふうに申し上げますと、あるいは皆さん方の中から、それでも賃金は一五%上がっているではないか、物価はそれに比べて六%だという御意見があるかもしれませんが、確かに私も相対的に私どもの暮らしがよくなってきていることは認めます。しかし私はそればあたりまえだと思います。一年間一生懸命働いて、生活が少しぐらい楽になるのはあたりまえのことでございまして、それについて楽になっているじゃないかというふうな言われ方をするのは当を得ないと思います。  また減税の問題をおっしゃる方もあるかと思います。今度は大幅な減税をしたという御意見もあろうかと思いますが、今度の減税も、部課長クラスには相当恩恵があったと思いますが、百万円前後のサラリーマンは、もともとたいした税金を払っていないわけでございまして、それが減税になうても、物価高に見合うほどの家計の楽さという感じは生まれてこないわけでございます。  生鮮食料品のこういう値上がりに対しまして、今度の予算案を拝見しておりますと、その値上がり防止あるいは価格安定に対しての予算がそれほど組まれていないという感じを私は受けます。たとえば卸売り市場に施設整備補助費というものをお出しになっていらっしゃいますが、これはわずかに二十六億円という金額でございました。それに比べまして余った野菜を捨てることに予算がついているのを見まして、何とも割り切れない思いを私は抱いております。  こういう生鮮食料品に対しまして、指定産地制度というものがございますが、その品目がわずかにいまのところ七種類でしかございません。これをもう少し品目をふやしていただいて、計画出荷あるいは計画消費ということがもっとできるようにし、そして集まってきた野菜を大都市の周辺で冷凍庫に入れて、そして高くなってきたときあるいは品物が足りないときには出してくださるというふうな、冷凍の貯蔵の装置というものを、公営で安い保管料でもっと積極的に取り上げていただきたい。生鮮食料品の値上がりに関しましては、私どもはもう何べんも何べんも言っているわけですが、それに対してこの程度の予算しかつかなかったということは、私は納得ができません。  その次は、やはり私どもの家計にとりまして最近は非常にその比率は減ってきておりますお米の問題でございますが、取り上げてみたいと思います。  お米に関しましては、鳥や豚のえさにするための予算が七十億ついておりました。また今度は学校給食にお米を給食するという案も出ておりました。私の子供もごみ箱がわりにお米を食べさせられるのかなということを感じておりますけれども、それほど余っているお米というものが値段が下がらないということは、私ども都会のサラリーマン主婦としてはたいへん不可解なことでございます。私は、食管制度の専門的なことはよくわかりませんが、余っているものは下がるという、そういう非常に単純なロジックからいいますと、これは何としても不可解です。どう見ても成り立たない程度の規模の農業というものを経済原理を無視してまで保護するということは、私には理解できません。先日、倉石大臣からお米の買い入れ制限をにおわすような御発言がございましたけれども、そういうこそくな手段をなさるぐらいなら、いっそ食管制度そのものをなくしてしまったらどうなのかという感じすら抱きます。  それからもう一つ予算を拝見していまして、とてもとてもふしぎだと思いましたことは、転作休耕奨励金のことでございます。十アール当たり三万五千円というお金、そして総額八百十四億円というものが払われるということになっております。  私はあるところで、福田大蔵大臣が御出席の座談会の記事を読んだことがございますが、そのお話の中に、全国平均にして十アール当たりの農家の純手取りは一万数千円だろうという御発言がございましたことを記憶しております。また大蔵原案でも、最初の案は二万一千円ちょっとであったというふうに聞いております。それがどうして最終段階で三万五千円になったのか、これは私にはどう考えてみてもわからない今回の予算の最大のふしぎでございます。  物価のことに関しましては、まだいろいろ申し上げたいのですが、時間が三十分というふうにきめられておりますので、第二番目の私の感想としては、私どもの生活の不安と不便という点について申し上げたいと思います。  不安と不便と申しますのは、病気とか事故とか老後とかといったことでございますが、私は私なりに、いい国家とはあるいはいい社会とは、安心して子供が育てられ、病気になってもだいじょうぶで、そして豊かな老後が送れる、そういう国家あるいは社会のことをいうのだと思っておりますが、今回の社会保障費を拝見しておりますと、一兆円台に乗ったことは確かに画期的なことではございますが、この二二%増というもののうちの七%は医療費に食われてしまい、実質は一五%であるということは、たとえば防衛費の一七・七%増に比べまして、社会保障というものがそれほど優遇されたとは考えられないわけでございます。その中でたいへん私どもの関心を呼んでおりました児童手当というものがございました。これは佐藤さんの長年の公約でございました。私は個人的には二千円や三千円の児童手当をいただくよりは、もう一人赤ちゃんを生んで寝かせる場所がある家がほしいと思っております。あるいは子供をもう一人生んでも、家計の中で教育費あるいは物価の問題で苦しまなくて済むというふうなそういう状態にしてほしい。あるいは子供がもう一人生まれても保育所に子供を預けて働けるようなそういう状態にしてほしい、そういう問題のほうが先決であって、児童手当は、ないよりはあったほうがいいですけれども、それが決してもう一人子供を持ちたいという私どもの願いに対して、決定的な切り札にはならないというふうに考えておりますし、もう一つ非常な抵抗感がありますのは、児童手当というものが非常な人口政策というにおいがすることで、私どもは、人口政策のために子供を生むのではないという、そういう抵抗感があるわけでございます。この児童手当問題に関しましては、何か私の印象では、人気取りのキャッチフレーズとして飛びついたけれども、飛びついた人も実は目的や根拠がよくわかってなかったのではないかという気がいたしますから、この際もう一度慎重に考え直されてはいかがかと存じます。  それから赤ん坊の問題に関連いたしまして、これは社会保障の問題ではございませんが、私どもの生活の中では社会保障とかなんとかというふうに分かれているわけではなくて、全部生活の問題ひっくるまっておりますので、ついでに関連して申し上げますと、赤ん坊が生めないということは、それはいろいろな問題がありますが、一番大きいのは住宅の問題だということでございます。二DKで三人も生んだら踏みつぶしてしまうわけです。しかるに、今度の住宅関係予算を拝見しておりますと、公営住宅は十二万戸削られておりました。狭い狭いといわれている公営住宅の広さに関しましても、たとえば住宅公団で今度二平方メートルふえたそうでございます。けれども、二平方メートルというのは赤ん坊のふとんが一枚ひけるかひけないかという広さでございまして、赤ん坊はじっと寝ているわけではなくて、飛んで、はねて、歩くわけですから、とても、このくらいふやしてもらっても、もう一人生むなどということはできないという感じがするわけでございます。  それから、私たちのマイホームの夢というのは非常に楽しい、主婦の一つの生きがいにすらなっている夢でございますけれども、このマイホームの最大のガンである地価対策ということを考えますと、今度の予算の中で地価対策に関してついた予算は、地価公示費という四千七百万円が計上されていただけのように思いました。住宅につきましては、まだまだ申し上げたいことはいろいろございますけれども、とにかく私はこの問題の解決をぜひ予算の中で見せてもらいたかったと思うものでございます。  その次は、やはり子供を安心して生みそして育てるために、現代の社会で非常に必要なものとして私は保育所というものをあげたいと思います。働くおかあさんが増加しております。私もその一人でございます。また、社会も企業も主婦の労働力を要求してきております。にもかかわらず、主婦というものは家庭をしょい、子供をしょっているわけですが、その子供に対する社会のサービスというものが、貧困ということはでは足りない、もう何と言っていいかわからないほど貧困なわけです。私どもは前から、保育所が足りない、保育所がないから私どもは働きに出られないということを、もう長い間、長い間言い続けておりましたけれども、今度の予算でも社会福祉施設の整備費を見ますと、老人ホームを含めまして五十三億円しかついておりません。こういうところで引き合いに出すのはどうかとも思いますが、つい私としては――休耕奨励金に政治加算として大体三百十四億ぐらいついているんじゃないかという感じがするのですが、その三百十四億という数字とこの五十三億円という数字を見比べてしまうわけでございます。  それから、保育所のことに関しましては、皆さん方も常に見聞していらっしゃると思いますが、保母さんの陳情がたくさんあると思います。保母さんの数につきまして、今度五千人の増員が要求されておりましたけれども、認められましたのはわずかに六百余人でございました。保母さんというのは、一度ごらんになるとわかりますが、とにかく手が足りなくて、赤ちゃんというのは、もう十カ月もたちますと十キロもございます。あるいは三つぐらいになりますと十五キロあるいは二十キロの体重があるわけでございます。その重い子供を抱いたりかかえたりして十時間もあるいは九時間も働き続けているその保母さんの数が足りないということを、私どもは前から何べんも言っておりましたけれども、それについてわずかこの程度の増員しか認めていただけないということは、実情がわかっていらっしゃらないのじゃないかという感じを抱くわけです。  そしてまた、その保母さんの待遇でございますけれども、たとえば昨年の保母さんの賃金は三万一千三百六円でございました。それが今度の予算で三万一千五百十円になりました。そのアップの幅は〇・七%でございます。私たち日本全体の賃金アップが一五%あるのに、保母さんは一年たって〇・七%しか上がっていない。上がって三万一千五百十円である。信じられないような悪い労働条件でございます。  また施設長、つまり保育園の園長さんという方たちの賃金も例にあげたいと思いますが、施設長さんの賃金は、去年四十四年度で四万百六十九円でございました。それが四十五年度では四万三千六十七円、上げ幅は七・二%でございます。施設長さんといえばもう皆さん中年で、そして奥さんも子供もいらっしゃるわけです。そして非常に貧しい日本の社会保障をささえていらっしゃる方たちです。こういう人たちの賃金が四万三千円でいいのだろうかということで、私はもし私自身がそういう立場だったら、とても暮らしていけないという感じを持つわけでございます。こういう点について、大幅なアップが認められなかったというととは、やはりこれもまた実情を御存じないのではないかという気がするわけでございます。  また保育所の子供たちの措置費でございますけれども、これは昨年度の数字でございますが、一人一カ月三千七百二十円、これは大体四歳、五歳児のことでございますが、この四、五歳児一日の二人当たりの純預け料、つまりさまざまな経費を引いてしまった子供の純預け料を計算いたしますと、昨年度の予算で一日に八十八円でございます。人間の子供を一日預けまして、その純預け料が八十八円、都心のこのあたりの駐車場の自動車の預け代は一時間百円でございます。あるいは国鉄の駅で手荷物を預けまして二つで百円でございます。人間の子供が一日八十八円で自動車が一時間百円というのは、私には納得できないわけでございます。  それから今度新しくつきました予算といたしまして、福祉施設の日用品費がございます。これがついたということは、ささやかなものですが、非常に助かっているだろうと思いますが、たとえばその中で肢体不自由児施設の子供が一人月額千二百三十一円となっております。自衛隊の皆さん方も一生懸命働いてくださるのですから、待遇をよくしてあげるのはいいことだと思いますけれども、しかしたとえば今度の自衛隊の方々の営舎費が一挙に二倍強になって五千五十円になって、トイレットペーパーが一メートルから二メートルに伸びたというこの大幅な伸び方と、施設の子供たち、手足の不自由な子供たちの一カ月の日用品費が千二百三十一円というのは、比べてみますと、私は少しこの子供たちのほうがかわいそうだという気がいたします。  今度の予算の中で、たとえば看護婦さんが不足しているから看護婦さんの養成費がかなり増額されております。また保母さんの養成費も保母不足ということにこたえまして計上されております。けれども、私はこういう施設の職員の方々あるいは保母さんの労働条件を見ておりますと、養成費など幾らおつけになりましても、問題はなり手がないということではないのか、この問題をどうするのか、なり手がなくて、幾ら養成所をつくっても、しかたがないとは言いませんが、無意味だという気がするわけでございます。こういう点につきまして、看護婦不足あるいは保母不足というもののほんとうの原因を考えるならば、もっとその人たちの待遇改善というものに予算は使われるべきではなかったかと考えます。  それからもう一つは老人福祉の問題でございます。今度の予算ではずいぶんきめこまかないろいろな項目が新しくできたり、あるいはふえたりしております。それはたいへんけっこうなことだと思います。たとえば白内障のお年寄りの方に無料で手術をするといった費用も認められているし、かなりきめのこまかなものが見受けられますけれども、しかし、何か私は老人福祉ということで言いますと、一番大切な、一番基本的なことが抜けているような気がいたします。その一番大切で一番基本的なことというのは、全部お金のかかることでございます。  一つは、お年寄りの方の所得保障でございます。現在の国民年金の夫婦で二万円という金額ですが、私は、一生懸命働いてきた人の年金というものは、せめて夫婦で四万円になってほしい、したいというふうに考えておりますが、その点についての進歩はさほど見受けられませんでした。  それからもう一つは、老人医療の問題です。これは医療保険制度の抜本改革でもいわれておりますけれども、老人のための健康保険というものを別につくって、老人が長期療養をすることを全部国で見るというふうにしていただければ、私たちは年をとって病気になっても安心というふうになるのではないだろうか、そういう点につきましてやはりもっとこの社会保障の問題は、きめこまかなことも必要だけれども、一番基本的なお金のかかることですけれども、大事なことをやっていただきたかったという気がいたします。  それからもう一つは、社会保障予算を拝見しておりまして、たとえば白内障の手術費が出るようになった、これはたいへんいいことですけれども、しかし白内障の手術をするお医者さんというものは、日本でほんとうに十本の指の中に入るくらいの数しか名医というものがいない、また病院もないということがいわれております。手術するお金は出たけれども、手術する病院も先生もいないということでは、これはせっかくの善政が泣こうというものだと思います。  そしてまた、妊産婦の無料検診というのがかなり大幅に広げられました。大体一年にお産をする人の半分くらいの女性は無料で検診が受けられることになりました。これはたいへんうれしいことではございますけれども、最近は御承知のように女性がつとめております。つとめておる女性が幾ら無料で検診が受けられるからといいましても、労基法でお産中に健康検診を受けるための特別の休みというものは認められておりません。したがって、会社を休んで、あるいはその日のもうけを減らさなければお医者さまに行けないという事情がございます。  いろいろなことを考えますと、私は、社会保障というものは個々の一つ一つ政策だけでは効果が少なくて、もっと社会保障のシステム化というような形で考えられていかなければ、ほんとうの効果というものはあがらないというふうに考えます。  最後に、私は、教育の問題に触れてみたいと思います。  教育については、今後たとえば私立大学に補助が出るというふうな画期的な予算もございました。けれども、じっと見ておりますと、今度の予算のほとんどは大学とかあるいは科学技術とか原子力とか宇宙開発といった、そういう方面に文教予算というものが使われておりまして、たとえば私たちがいまたいへん悩んでいる問題、幼稚園の保育料が高いという問題がございます。大学に行っている人はいま同一年齢人口の二五%ぐらいですが、幼稚園には同一年齢人口の八〇%が行っているわけです。そして私立の幼稚園はいま幼稚園全体の中で約八割を占めております。この私立の幼稚園に子供をやりますためには、大体一カ月五千円はかかります。この五千円を払うのは若い、月給の安い親たちなんです。ですから幼稚園に子供をもし二人やるということになれば、若いサラリーマンはほんとうに困ってしまうわけです。そういう年の小さい子供たちに対する予算というものは、何も組まれていないということを発見いたしました。幼児教育を重視するなどというのは本気でいっていたのかしらという感じがしたわけでございます。やはり人間づくりというものの基礎が小さいときの教育であるということは、これは間違いのないところでございまして、大学はもめて騒ぐから、うるさいから予算をつけておく、しかし、幼稚園の子供は騒がないから何もお金を出さないというのは、私はひどいと思います。もっと、ロケットよりも、人間尊重の精神で教育の問題は考えてほしかったと思うのです。  たとえば、私どもの小学一校でいま一番問題になっておりますことは、性教育でございます。ほんとうにおかあさま方はこの問題に困っていらっしゃいます。私も困っている母親の一人でございまして、子供たちにとても口では言いにくい、そういうところを、私の場合には、個人的に性教育の本を買いまして、子供に与えることによって何とか切り抜けているわけでございますが、たとえば、この個人的に買う性教育の本というのが、一冊、私の買ったものは八百円いたしましたが、こういうものを買えない階層というものが幾らもございます。教科書の無償配付ということはすでに実現いたしましたけれども、しかし、たとえば人間教育の過程の中で欠かせない性育教についてのテキストというものについて、何にも配慮されていないというのが現状ではないかと思います。また、その調査研究に関する費用というものを、今度の予算の中で組まれているとは見受けられませんでした。やはり教育というものは、私は、そういう親が一番困っている問題、あるいは人間形成の中でどうしても欠かすことができないといった問題にお金を使うべきではないのか。そういうことから考えますと、たとえば、これは私のほんの試案でございますけれども、性教育のテキストを一人一人の子供、あるいはそれが無理なら、せめて一クラスに一冊でも予算をつけて配ってあげるというような政策が考えられてしかるべきではないか。そうすれば、私たち親はほんとうに助かるわけでございます。そういう意味でのきめこまかさというものは、私は、今回の教育予算の中には見つけられませんでした。  まだいろいろ申し上げたいこともございますが、私に与えられました時間が参りましたので、一応これで終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  41. 中野四郎

    中野委員長 ありがとうございました。  次に、金城公述人
  42. 金城幸俊

    ○金城公述人 私は、昭和四十五年度の予算案について、一般の中から御指名を賜わりました金城幸俊でございます。  私は、何ぶんにもしろうとでございますので、予算といいましても、はなはだばく然としておりまして、非常に雲をつかむような数字でございますから、その個々について申し上げることはできませんので、私たち庶民に最も関係の深いと思われます二、三の点について、意見を述べさしていただきます。  いわゆる警戒中立型というふうに銘打たれております昭和四十五年度の予算案は、非常に膨大な数字の金額でございまして、私どもは、雲のかなたで何かアポロが月の石を採取しているのをテレビで見たときのような感じでもって、この数字を受け取りました。このような大型予算がいいのか悪いのかという論議については、私は専門家でもございませんので、わかりません。  佐藤総理大臣は、この政府案が決定されましたときに、物価などへ悪影響を及ぼさないように弾力的な運用をするということを言われたと聞いております。きわめて個人的な意見を申し上げますならば、二、三日前の新聞に、昭和四十四年度の全国消費者物価上昇率は六%を上回るというふうに報道されております。はなはだ抽象的な意見で、六%と申しましてもわかりかねますので、私は、つい二、三日前、スーパーマーケットへ行きまして調べてまいりました。いま、この私のこぶしほどのジャガイモ一個、これは百六十グラムですけれども、これの値段が大体二十五円。このジャガイモがそれでは去年のいまごろ幾らだったかと申しますと、十八円からせいぜい二十円どまり。大体二割ぐらいアップしているわけです。物価上昇を抑制するということがこれからの課題でございますのに、こういう大型予算で、もしも物価抑制のできなかったというふうになりますと、たいへん困ります。  それから、ことしは減税が二千四百億円実施されるということで、私ども働いております者には、減税というとたいへん喜ばしいことだというふうに考えておりますが、さて二千四百億円減税になりましても、たとえば、また、きわめて個人的な意見ですけれども、いま年収百万円の方がおりまして、配偶者及び扶養家族一人の方の所得税は、大体二万二千円弱というふうになっておりますが、その二万二千円の税金のうち、さて二千四百億円の中にどのくらい吸収されているのだろうか、減税の率がどのくらい吸収されているのだろうかと思いますと、実際それが実施されて、給料袋をとって中をあけてみないとわからないというふうなことで、かりに二万二千円の税金が一万円ぐらい減税になっておれば、これはたいへん喜ばしいと私は思うわけですけれども、さてそれがどのくらいになるかわかりませんので、減税といいましても、額だけが大きいような気がいたしまして、なかなかぴんとこないというのが実情だろうと思います。毎年、減税減税とかけ声だけがたいへん大きいような感じがしまして、これは実際実施されてみると、われわれの仲間の間でも非常に、何だこれだけのものかというような不満が出まして、期待が大きかっただけに、いつもがっかりするというのが、例年のならわしになっているようでございます。  それから、また、最近いわゆる公害問題というのが非常に新聞紙上などを通しまして騒がれております。自動車の排気ガス等によります公害だとか、あるいはことしの正月に東京、千葉、埼玉の三都県で、いわゆるくさい水問題が発生しまして、これはどうやら利根川上流の工場が流しております廃液がその原因じゃないだろうかと、これもまだはっきりしたそういう結果は出ておりませんのですが、たとえば最近の全国の主要河川の合成洗剤の主成分でありますABS、アルキルベンゼンスルフォン酸ソーダと申しますが、これが昭和三十五年ですと〇・五PPMだったのが、昭和四十三年になりますと一・五PPMと、十倍にも増加しているという結果が発表されております。また、岩手大学の田中助教授は、ネズミに体重一キログラム当たり二百ミリグラムのABSを投与したら、脳のない奇形児が生まれたという実験結果を報告しております。そのような結果が出まして、どうやら公害問題というものが世間でもだいぶうるさくなってきた。ところが、では今年度の公害対策費としてどのくらい計上されておりますかといって見ますと、各省庁合わせても百九十八億円しか計上されておらないという結果になっております。これはアメリカの例を引くとたいへん申しわけないのですけれども、ニクソン政権が水質の保全経費だけでも四億ドルという膨大な数字を計上しているのに比べますと、非常なもの足りなさを感じます。  ことしは内政の年であるというふうにいわれまして、佐藤総理みずからが国民の皆さんにPRをしたわけでございますから、私どもとしては、もっと内政に力を入れてほしかったというふうに考えております。内政問題は外交問題に比べましてはなはだじみな問題でございまして、なかなか一般受けをしないような問題じゃないかと思いますけれども、私どもは、その身近な問題から政治という大きな力で処理していただかないことには、安心して市民生活を営んでいくことができないというふうに考えております。  私は、限られた時間でございますので、ただいまいろいろ申し上げましたけれども、物価の問題にしましても、あるいは減税の問題にしましても、公害の問題にしましても、非常にもの足りない、諸外国の例を引きましても非常にもの足りないというふうに感じました。もっともっと積極的な施策を講ずる余地が残されていたのではないだろうか、いまでもそのように考えております。  また、そういう悲観的な材料ばかりかと申しますと、あながちそうでもございませんで、たとえば、先ほどもお話がありましたように、社会保障関係が前年に比べると二二・二%も大きくなっているということは、それなりに成果があったのではないかと思っております。ことに年収百万円以下の方の妊産婦の件なんかは、早い話が、私でもすぐ該当するような問題で、いままで家内が産院に通うたびに幾らかの金を出していたものが、今度出さなくてもよくなるということは、それなりに喜ばしいことじゃないかと思います。  以上、非常に概略的に申しまして、何ぶん私もこういう席で意見を述べるということははなはだふなれなものですから、脈絡のないことを申し上げたと思いますが、本年度の予算案は、いろいろな面でたいへん不満はある。私もいろいろこまかいのを調べてみますと、非常に不満だらけだ。しかし、不満だらけなだけじゃなしに、中にはいい点もあるのだというふうに私は解釈しまして、もちろん公約のとおりいろいろ中身を実行していただくという意味合いを兼ねて、この予算案はおおむねにおいてぼくは賛成だというふうに考えております。さて、どこが賛成でどこが反対というふうにこまかいことを私はここで申し上げられませんし、またそのような識見もございませんが、おおむね賛成であるというふうに申し上げておきます。  はなはだ簡単でありますけれども、私が本年度予算案に対して感じたことをごく大まかに申し上げました。(拍手)
  43. 中野四郎

    中野委員長 どうもありがとうございました。      ――――◇―――――
  44. 中野四郎

    中野委員長 これより両公述人に対する質疑に入ります。高田富之君。
  45. 高田富之

    高田委員 最初に、俵さんにちょっとお伺いいたします。  お米の問題でありますとか野菜の問題、その他たいへん具体的な例をおあげになりまして、ただいま、物価の非常に急上昇しておることがいかに家計に大きな影響を与えているかという御指摘がございまして、全くそのとおりだと思うのでありますが、そこで、私いろいろ農村関係のことに携わっておりますもので、申し上げればいろいろ申し上げたいことがございますが、たとえば米の問題にしましてもあるいは野菜の問題にしましても、非常に物価の上がるときと下がるときとが極端でございますね。あなたも御指摘になったキャベツなんか、余ったのを捨てることについて予算がついたというような話ですが、ほんとうに営々辛苦してつくりましても、全くただになってしまう、片づける費用もないというようなことがあったかと思いますと、今度はその次の年あたりにはべらぼうに高値が出る、こういうふうなことが繰り返されておるわけであります。こういうことをなくして安定的に供給できるようになれば、生産者もよし、消費者もいいわけで、非常にその点には苦労が要るわけです。また、米の問題も同じでございまして、非常に足らないので一生懸命つくらされて、一生懸命つくってようやく成果があがったら、今度はやめろ、こういうようなことですから、農家の立場としますと、これはなかなか苦しい状況でございます。現に農業に携わる人はどんどん減っていくという状態で、若い人などは農業を志す者はほとんどなくなっちまうというようなことでございます。  そこで、あなたのような有識者の御婦人の方々が先頭に立たれまして、そうして家庭の奥さま方で、特にこういう農産物その他魚など食料品関係で困っているというこの切実な声をひっさげて、同時に、生産に携わっておる奥さま方、特にいま農村ではほとんど奥さんが従事しておるので、だんなさまはほとんど出かせぎに行ったりしておる方が多いわけですね。ですから、いま一番大事なことは、生産者の立場で非常な不満を持ち、困っておる、特に農家の御婦人たちと、家庭の消費者の立場で困っておられる奥さま方とが、何とかして十分話し合いをしながら、そこで統一的な強い御婦人の要望をお出しになれば、かなり大きくこれは国の政治にも響く力強い声になるのじゃないかなということを、いつも実は感じておるわけです。ややもしますと、事情がよくわかりませんと、お互いに理解し合わないために、相手方を何か非難するような気分が感情的に出てくるということになりましたのでは、盛り上がるべきものが正しい力となって盛り上がらないでおしまいになっちゃうということがございますので、これらの点につきまして、お考えがございましたら、お伺いしたい、こう思います。  それからもう一つは、ただいま米が非常に余りまして、実は困っておるわけで、政府としましても、あれやこれや非常に試行錯誤的な施策を次々とやっておるわけです。非常に非難も批判も多いわけですが、私どもその一つの、解決策にはならぬと思いますが、いままでパンでありました学校給食をお米に全面的に変えたら、幾分かは助かるわけでございます。何十万トンか助かるわけなんですが、しかし、これにも予算上の問題もありましょうし、いろいろ障害はあろうとは思いますが、せっかく日本でできるものですから、外国から買った小麦粉を使わなくてもいいのじゃないかなと思いますが、これはおかあさま方の立場から、学童給食をもしそういうふうにしたらということについては、いままでやってきました学童給食に対する御批判もございましょうし、その切りかえようという声に対しては、どんなお考えでございますか。そういう点もお聞かせ願いたいと思います。  それから、いまの物価高の中におきましても、一般的なインフレ現象、いろいろな原因からくる物価高もあるわけですが、同時に、品物によりますと、消費者の無知というものにつけ込んで、実際の生産費の何倍とか何十倍とか、べらぼうな売り値で通用しておるという品物が実はあるわけでありまして、特に薬品類、市販されておる一般のいわゆる大衆保健薬というようなものあるいは化粧品類、こういうふうなものには生産原価の何十倍というようなものがあるわけでありますし、それが誇大広告によって消費者の関心をかき立てまして、そしてそういう専門的な知識がございませんから、宣伝だけを信頼して、いつの間にかそういう高いものが高いものでないような考えになってしまうというようなことが、かなり大きく家計にも響いておると思うのであります。そういうふうな点につきまして、東京都で「かしこい消費者」というパンフみたいなものをお出しになって、特別のまたいろいろな催しなどもされておるようですが、そういういわゆる消費者の啓蒙といいますか、消費者行政、これがいまは非常に立ちおくれておると思うのです。こういうふうな消費者行政をもっと充実させる運動あるいは消費者自身の運動というものもあろうかと思うのですが、そういう面で御婦人の声というものは相当尊重されなければならない面がたくさんあろうと思いますので、これらにつきまして、もしお考えがございましたら、お述べいただきたいと思います。  それからもう一つは、いろいろいまこまかい社会保障その他たいへん適切な御指摘があったと思うのですが、いずれも御指摘になったことは力の弱い分野でありますために、いわゆる圧力団体と関係ございませんために、とかく政治の上で無視されがちなところを一つ一つ御指摘になったと思うのでございます。そういう点を考えますと、いまの日本の政治の一番根本的な欠陥は何だろうかといえば、結局大きな圧力に国の政治が動かされているのではないか。その圧力中の最大なものは一体何だろうと考えてみますと、私は財界だと思うのですね。いまの日本の経済界というものを完全に左右しております膨大な財力、この財界というものが政治に対して及ぼしております力というのは、決定的だと私は思います。これは政治資金というものの中身をちょっと考えれば想像つくことでありまして、とにかくちょっとしたことで、選挙のときにも何百億というような金が動くとか、あるいは与党の総裁選挙に何十億という金が動くとか、とうてい普通の者には想像もつかない膨大な金が政党に、また派閥に、個人に、献金されておる。おそらくそれらのものは正当な支出、正当な受け入れとしてどこにも明らかになっていない部分、やみから出てやみに消費されておる政治関係の金というものは、膨大なものであろうと思う。しかも、それはつかみようさえもないということであります。表面に出ているもので発表されますものを見ましても、実に膨大なものが動いております。これが政治に作用しないはずはないと私は思います。選挙における買収、法定選挙費用の何十倍というような費用が使われることが常識化しているというような事実、選挙違反が当選者の何割というようなものであるということなどを考えましても、金権政治、金を持った圧力によって政治が左右されておる。これが最も大きな圧力ではないかと思います。  御婦人は、すでに参政権を得て、有権者の半分以上を占めておりますし、御婦人の立場から、そういう点は非常に的確に、公正に、鋭く主張されて――男性の社会関係というのはいろいろ複雑でございますから、ある場合には、そういう圧力団体の中に入っておったり、いろいろな利害関係から、必ずしも正論がスムーズには出ない弱味があると思うのです。そういう点でむしろ婦人団体とか、団体でないまでも、御婦人の大きな一般的な声というものがもしもっと強く出るならば、そういう面への批判というものがもっと強く出ていいのではないかなと思うのです。たとえば、よくおしゃもじ部隊といいますが、御婦人団体がいろいろな問題で動かれるので、かなりあれも大きな影響は持っていると思うのですが、しかし、議員の歳費が上がるとかなんとかいう、これももちろん重要でありますけれども、そういうときにばかりやられるのではなくて、もっと根本的な政治の浄化といいますか、政治資金規正法をつくれ、なぜつくらぬのかというような部分にもっともっと御婦人の声が高まってしかるべきだなということをいつも思うのです。それらの点につきまして、御見解が承れれば承りたいと思います。  それから金城さんに一つだけお伺いいたしますが、さっきのお話の中にもございましたが、非常に物価が上がる。特に住宅問題というのは、一般のサラリーマンにとりましては、非常に大きな問題なんですが、最近土地の値上がりが非常にひどくなってまいりまして、マイホームを夢見ましても、なかなか手に入らない。営々として貯金しましても、どんどん金の値打ちは下がってしまう、地価はどんどん上がっていくというようなことで、これは非常に大きな悩みをなしておると思うのでありますが、特にこの問題で、最近行なわれました新都市計画法、これでもって都市計画区域に線を引きまして――御承知ですね、線を引かれました中でないと、家は建てられないということになりましたね。そうしますと、線を引かれました中は、もういまどんどん値が上がっておるわけです、それ以外は建てられないのですから――売り惜しみもいままでよりももっとひどくなるわけでありまして、当分持っておって値上がりを楽しむことにますますなろうと思うのですね。それに反しましてあの線の外ですと、いままでサラリーマンの皆さんが、あそこいらはちょっと駅から遠いけれども、多少不便だけれども、値が安いからというようなことで、宅地になっているところ、あるいは農地の転用を当てにしたり、あるいは山林になっているところなどを目当てに楽しんでいた人たちが私は相当あると思うのです。ところが、そういうところは今度建てちゃいかぬという、ことになってしまったのですね。これらについてあなた方はどういうお考えをお持ちであるかですね。それをひとつお伺いしたいと思います。
  46. 俵萠子

    ○俵公述人 高田さんでいらっしゃいましたか、いまの御質問の方のお名前は。
  47. 中野四郎

    中野委員長 高田さんです。
  48. 俵萠子

    ○俵公述人 高田さんにお答えいたします。  先ほどの生鮮食料品の価格の安定について、もっと生産者と消費者が話し合ってみてはどうかという御意見がございましたが、もちろん私たちは望むところでございますし、私が先ほど申し上げたことの中であるいはちょっと誤解を招いた面があったかもしれませんが、私は決して生産者生活を圧迫したり、あるいは生産者がけしからぬというふうなことを申し上げるつもりはなかったのであって、たくさんとれたのならば、それをためておいて、たとえば、最近冷凍のおミカンが昔に比べましてとてもおいしく食べられるようになりましたけれども、ああいう形でお野菜というものをプールしておいて、そして今度足りないときにそれを出すというふうな形をつくってほしいということを申し上げたわけでございます。決してお互いの生活を圧迫したい、あるいはしようということではございませんので、念のため申し添えさしていただきます。  もちろん、この話し合いにつきましては、個々の婦人団体、たとえば主婦連あたりでもやっているようでございますが、もっと主婦の一般的な層にまでこの話し合いの機会が浸透するような組織づくりというものは、当然考えられていいと思います。しかし、私は、ただ話し合いだけの段階ではもうない。物価の問題はもう前からいわれていたのであって、いまさら私たちがそれぞれお互いに話し合ってこれから何とかというような、そんなゆうちょうな段階ではないのであって、冷凍庫をさっさとつくってもらいたいという段階だということを申し上げたわけでございます。  それからもう一つの、学校給食にお米を入れるということでございますけれども、私は子供が小学校に入りましたころから、あるいは子供が生まれましたころから聞かされておりましたのは、パン食は頭のいい子をつくるというキャッチフレーズでございまして、別にキャッチフレーズで頭のいい子をつくりたいということではございませんが、本を読んでみると、パン食をしていると、とても頭がよくなるのだとか、あるいはからだの調子がいいんだとかいうふうに書いてありまして、子供にはなるべくパン食をすすめるようにしておりましたし、そして学校給食も、そういう科学的な根拠に基づいてパン食が行なわれれているのだというふうに理解してまいりました。ところが、何か最近急に風向きが変わりまして、パン食は頭をよくするという声があまり聞こえなくなってきたと思うと、突然学校給食にお米を入れるという話が出てきたわけでございます。私は、学校で子供にお食事を出すということは、ただ母親を怠けさせるために給食があるのではなくて、その給食の中に一つの教育的効果なり意味があって行なわれているのだと思います。全くそういうものがないのであれば、学校でわざわざ給食をすることの意味はないわけですから、学校で給食をする限りにおいて、給食というものは教育の中の一つであるというふうに考えるべきだ。そうしますと、正しい栄養のとり方とかあるいは理想的なメニューとかあるいは正しい食べ方ということが、学校給食の中であわせて子供に教えられるべきだと思うのです。それが、きのうまではパン食が非常にいい栄養なんだということをいわれていて、きょうからはお米なんだということになりますと、私はどうも給食に関する教育理念というものがしつかりしてないのじゃないかという気がするわけで、もっと皮肉な言い方をしますと、子供は農業政策の失敗のごみだめだという感じがするわけでございます。それは私は母親として許せない。やはり……。(発言する者あり)だったらば、お米のほうがパンよりはいいんだという科学的根拠をお示しいただきたいと思うわけでございます。  それから、三番目の消費者の無知のことでございます。確かに私どもは、原価百円に満たないクリームを千円だといって買っては塗りたくって喜んでいるという面がございます。それは認めますが、しかし私は、化粧品に関しましては、ちょっとこういう席で申し上げるにはやや文学的な表現に過ぎるかもしれませんが、必ずしもお金ということを合理的に考えて使うのではなくて、千円だと思って塗っていることによる精神的な張りというもの、これは私はやはりある程度は認めていいんじゃないかと思う。それはむだだという方は使わない。ここのけじめさえはっきりしておればよろしいことで、きかなくても千円のを塗って翌日何となく顔がきれいになったような気がするというのは楽しいものだから、そういうことについての自由は侵害できないのじゃないかと思います。ただ非常に合理精神に徹し、あるいは物価が非常に上がってまいりますと、そんな楽しみ、ぜいたくということはできなくなる。それは当然消費者自身がみずからぜいたくを放棄するということを考えればいいのであって、その点についてあまり言うことは、何か化粧品というものの性格を見誤ることになるのじゃないかという気もするわけです。  誇大広告の問題に関しましては、これは当然取り締まらなくてはならない、全く同感でございます。また消費者の啓蒙運動があまりなされていない、これも事実でございまして、私も「かしこい消費者」というパンフレットを毎度見ておりますけれども、最近化粧品なんかのあの優美な広告に比べまして「かしこい消費者」は何ともはやあじけないパンフレットでございまして、あれを読むにはかなりの努力を要するわけでございます。そういう状況の中に置かれている消費者に対して、何とかもっとアピールする消費者の啓蒙運動というものは、当然考えられなくてはいけないということは私もかねがね考えております。  それから、先ほどの四番目の御質問でございました圧力に弱い政治というもの、もう少し女性がそういった金権政治に対して声をあげるべきだという御指摘でございました。まさに私はそれを聞きながら、私自身たいへん恥ずかしく思いました。私たち女性のたいへんな欠点というのは、政治に対する無関心、あるいは関心のある場合には不信感あるいはあきらめといったことで、非常に政治に対して消極的でございます。そういう点について、私も職業柄しばしば婦人を啓蒙する発言をいたしますけれども、なかなかこの婦人の声が団結して高まるというところまでいかない。これは私自身歯がゆく思っている問題でございまして、即座に名案はないかと言われましても、なかなか名案も出てまいりません。ただ、この状況というものを放置しておきますと、ますます政治に対する無関心層あるいは不信感というものがふえていくという点で、やはり女性ももう一度反省して、政治に対してもっと関心なり発言をしていくという態度を身につけたい、これは私は職業柄そういう機会をとらえて、事あるごとにやっていきたいというふうに考えております。  最後に関しましては、たいへんたよりないお返事で申しわけございませんが、お答えにかえさせていただきます。
  49. 金城幸俊

    ○金城公述人 お答えします。  土地の値上がりというものはもう数年も前からの問題でございまして、私も実は借家に住んでおりますのですが、自分が土地を買って家を建てようなどという夢はさらさら捨ててもう久しくなりますけれども、たとえば土地を持っている人が得をするということで、先ほど御質問のように、ある一定の区域に法律を定めて、その以内ならば家を建ててもよろしいというふうなことになりますと、何か法律でもって、ただ理屈、理論といいますか、そういう問題だけが出されて、あとは私のほうの知ったことではないということになりますと、幾らどんな法律ができようとも、それを行動でもって示していただかないと、やはり土地の値上がりというものはますます高くなるのではないかと思います。  それで通勤圏内一時間半ですとか、限度が一時間半だといいましても、なかなかその時間から通ってくるというのは実は少ないのでございまして、私どもも大体二時間ぐらい――私どもの周辺でも、つい三年ぐらい前はたんぼだったのですけれども、それが当時はせいぜい三万円ぐらいの地価が、いまでは付近にちょっとした商店街ができた関係で、もう十万円か十五万円ぐらいに値上がりしているということで、土地の値上がりというものは、たとえば法律をきめたからといって、それで抑制できるものではないというふうに私は考えます。ですから、それは何かもっと政治的な、ただ単に法律を発布するということじゃなしに、大きな、たとえば住宅公団とか、そういう公団が住宅をたくさん建てて低家賃で住まわせるというような、何か具体的な行動でもって示していただかないことには、ただ単に法律をたくさんつくっても、それが適用されるということだけではなかなか土地の値上がりとかその他も――土地に限りませんけれども、値上がりというものを抑制することはできないのじゃないかと私は思います。  私も実は具体的に、さてどういう施策を講ずればたとえば土地の値上がりを抑制することができるかということを示してほしいと言われましても、なかなかそういう案もございませんので、はなはだ抽象的な御返事になりましたけれども、要はやはり何か政治的な大きな力でもって、具体的な行動でもって示していただかないことには、これはなかなか解決できない問題じゃないかと思います。
  50. 中野四郎

    中野委員長 堀昌雄君。
  51. 堀昌雄

    ○堀委員 俵公述人にお伺いをいたします。  お話を聞いておりまして、私たいへん適切な御指摘があって、私どもたいへんいい公述をしていただいたと思うのでありますけれども、ちょっと残念ながらその数がやや正確を欠いておりますので、せっかくのお話でございますので、ちょっと私それの点だけは正確を期しておいたほうがいいのじゃないかと思うので、少しそれについて申し上げておきたいと思うのです。  先ほど幼稚園の保育料のお話が出まして、私、幾らであるかそれはわかりません。ただそのときに、同年の子供の中で幼稚園に行っておりますのが八〇%ある、こうおっしゃったのですが、実際には四十四年五月一日の文部省の調査によりますと、五一・七%というのが実は正確な数字でございます。同時に私立が全体の中の八〇%あるというふうにおっしゃいましたけれども、昭和四十四年では、全体の幼稚園数は一万四百十八でありまして、その中の私立が六千六百三十一、国を含めての国公立が三千七百八十七でありますから、実数は六三%ということになります。  私がこういうことをいま申し上げているのは、非常にいいお話なものですから、実はそれをよりオーソライズする意味では、御承知のように各種の統計が政府刊行物の販売所にございます。これからひとつこういういいお話をいろいろなところでしていただきたいわけですが、それについては少しその出所を正確にしてお話をいただければ、私はより国民に対する説得力も大きいし、政府側もそれについては耳を傾けるのではないかと思いますので、ちょっと私、気がつきましたのでその点を申し上げたいわけです。  その次に、お話の中でちょっと残念なことが一つありましたのは、老人福祉についての白内障の無料手術の件は、これは実は地方自治体でずいぶん前からやっておりましたことを国が取り上げるようになったことでたいへんいいのですが、そのときに受け入れ側として、     〔委員長退席、小平(久)委員長代理着席〕 眼科のそういう優秀な手術者というのは十指に余るぐらいしかない、だから病院や医師の数が十分ないのにそういう制度というのはうまくないのじゃないか、こういう御指摘だったのですが、これはちょっと事実に違う点があるわけです。というのは、私、医者でございますし、事情がよくわかっているわけですが現在眼科の専門医眼科だけを標榜しております専門医が四千五百八十七人全国におります。眼科だけを専門に表示しております者ならば、本来白内障の手術は可能でございますけれども、同時に、全国的にはたいていかなりのところに公的病院なり眼科の専門病院というものがございますから、いま私も急に数を数えるわけにはいきませんけれども、こういう制度がとられればその手術に支障のあるような眼科の態勢ではないということだけは、ちょっとこの際はっきり申し上げておいたほうがいいのではないのか。お話のことはいいんですけれども、ちょっと白内障の手術が全国に十数人しかできないなどというのはかなり事実と相違をいたしますので、御参考のために申し上げておきたいと思うのです。  それから、看護婦養成に関することで、確かに待遇改善予算がない、これも私も大賛成でございます。ただこの看護婦問題というのは、国が管理しておりますものは国立病院その他だけでありますけれども、御承知のように、医療機関というのは国だけではなくて、公的、私的なものがずいぶんたくさんありますから、看護婦の待遇改善の問題というのはちょっと国の予算だけではなかなかやりにくい。その場合にやはり私ども考えなければならないのは、さっきからもおっしゃっておりますけれども、各種のシステム的な対策が必要だということについては私も全く同意見なんでありまして、ですから、その点では私ちょっと数日前に予算委員会で総理との間に、看護婦養成に関する勤労学生控除の問題を取り上げて、政府側からこれに対してやるという答弁を得ておりますけれども、あるいはいまの待遇改善の中で、これは私の試案なんですけれども、たとえば看護婦を何年間かやった人たちには看護婦をやったということに対する何らかの特殊な年金制度か何かを考えれば、私はこの問題は非常に変わってくるのじゃないかと思うのですね。女性としてある特定の非常に重要な職業に従事をして、十年間なら十年間、十五年なら十五年看護婦をおやりになったら、単に一般の公務員というような形でなくて、看護婦を何年かやったということに対して、たとえば五十五歳なら五十五歳とか、そういうところで特殊の何か年金制度のようなものができるならば、これは私はかなり数多くの人が看護婦というものを志願する道が開かれるのじゃないか。要するに看護婦になりたいという刺激といいますか、インセンティブがやはりシステム的にいろいろな角度から考えられないと、なかなか養成の問題はむずかしいので、この点は御指摘のように養成費も必要だし、さらに待遇改善についての予算も必要でありますけれども、同時に、いまのような多角的な対策をひとつ講じられることがきわめて重要だという感じがしておるわけであります。  以上で、お話しになった点のちょっと気づいた点を申し上げたわけですけれども、私のほうからちょっと特にお伺いをしたいのは、いまの主婦の立場に立っていらして、税金の問題ですね、私、そのほうが専門なものですから、税金の問題の中で特にこういうふうなことが行なわれれば婦人の立場としては税制上非常に望ましいことだ――それは減税のあり方であれ何であれけっこうでありますけれども、特に税金の問題について婦人の立場からのお考えをひとつ承れればたいへん幸いだと思います。  以上、時間を節約する意味で一括してお伺いいたしましたが、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  52. 俵萠子

    ○俵公述人 堀さんにお答えいたします。  私、最後のほう時間をだいぶ経過いたしましたために、原稿から目を離してしゃべってしまいまして、幼稚園児が八〇%というのはたしか東京都の数字であったと思います。勘違いいたしました。  それから、私立幼稚園の数字は、御指摘のように、私のやはりこれミスでございましたので、六三%と訂正させていただきます。御指摘を受けまして、ありがとうございました。  それから白内障のお医者さまの問題でございますが、これは私も別に医療のほうの専門家ではございませんので、厚生省の方に伺ってみたわけでございます。そうしましたら、白内障の名医といわれる人は日本全国に十人ぐらいであるというふうなお話を聞きまして、私はそのことを言うつもりでおりましたのですが、ことばをあるいは落としたかもしれません。その点もあわせて訂正させていただきます。  それから、看護婦の問題でございます。私の申し上げたことに対して御賛同いただきましてありがたかったのでございますが、看護婦さんにしましても、保母さんにしましても、幾ら待遇を改善しましても、たとえば昔のナイチンゲール精神とか、一種の職業に対するやはりあこがれといいますか、そういうものが失われてきているということも非常に大きな問題で、保母さん、看護婦さんというのが女性にとってあこがれの職業になるにはどうしたらいいのかというようなことも考えてみなくちゃいけない。これはたいへんむずかしい問題ですが、その中で、私がある病院の看護婦さんから聞きました話、ここにメモがございますけれども、二十三歳の都立の病院の看護婦さんですが、現在の不満として、第一番に給料が安いということをあげておられました。月に十回夜勤をして三万四千円である。アルバイトのお医者さま、当直医が一回の夜勤料で五千円を取っているのを見ると、ばかばかしくなると書いておられます。  それから寄宿舎で集団生活が相部屋なので、解放感がない、相部屋はいやだということを書いておられました。それから特に、その相部屋の相手が年長の女性だと気疲れがひどいということなんです。それからもう一つは、お医者さま自身の看護婦さんに対する態度が非常にいやなんだ。たとえばほとんどのお医者さまが看護婦さんの職務に理解がなくて、奴隷扱いをするとか、あるいは自分の志望する科に勤務ができないとか、まあいろいろなことを、とても読んでいると長くなりますので省きますけれども、そういったことを不満として述べておられるのを聞きまして、やはりこれは単にお給料を上げるということだけではなくて、いろいろな面でこの看護婦さんのお仕事の内容には改善すべきところがあるのだということを感じております。  それから、最後の税金についての御質問でございますが、これは私は別に税金の専門家ではございませんので、御参考になるようなことが申し上げられるかどうかはわかりませんけれども、ただ、私が日ごろ税金について思っておりますのは、たとえば奥さんに対する控除がございます。今度幾らになったか、またうろ覚えで申し上げますと、間違えるといけませんから数字は申し上げませんけれども、妻に対する控除に比べまして、たとえば子供に対する控除の額は大体半分ぐらいであったかと思いますが、私はあるとき、一体親と子供とどちらがたくさんものを食べるだろうかと思いまして、一週間の献立を全部書き出してみたことがございます。たとえばパン何きれ、ジャムどれぐらいということまで、全部一週間書いてみたことがございました。そうしましたら、太り過ぎを警戒してあまり食べない親に比べまして、子供のほうは大体上の子で三倍、下の子で二倍ぐらい食べているのに驚いたことがあるのです。そういうことからいいますと、たいへん食費が上がっております現在、子供に対する控除が奥さんの半分であるというのは一体妥当なのかどうか、実情に即していないのじゃないかという感じを持ちました。また着るものにいたしましても、私どもですと、十年前のものでもファッションさえ気にかけなければ着られますけれども、子供は確実に二年ごとに着られなくなるわけです、洋服が小さくなりまして。衣料費もおとなよりかかるのです。子供服のほうがおとな服よりも高いわけなんですね。そういう点で、一体子供に対する控除が現在の奥さんの約半額ということでいいのかどうか、これについて私はたいへん疑問を持っております。  それからもう一つは、これはむしろ専門家にいろいろ御検討いただきたいと思うことでございますけれども、たとえば奥さんの内助の功というものを現在の税制ではあまり認めていません。それに対して、たとえばある一定額の限度を設けてでもいいから、奥さんの取り分というものをむしろ税の中ではっきりさせてみてはどうか。合算方式といいますか、二分二乗方式といいますか、ああいうことの検討というのも一度声があがったように聞いておりますが、その後それほど議論されているようにも見受けられませんので、二分二乗方式などということについて御検討いただければ、妻の立場としては内助の座というものが非常に確立されて気持ちがいいのではないだろうかというような気がいたしております。その点につきましては、しろうとでございますから単に感想にとどまりますが、お答えにかえさせていただきます。
  53. 堀昌雄

    ○堀委員 金城公述人にお伺いをいたしますが、一般の公述人として希望なすったわけでしょうか、お話を聞いておりますと、いろんなお話がありましたけれど、特にここへ来てぜひ言いたかったという一番重要な部分というのはどこをお考えになっているでしょうか。要するに、おいでになって公述人としてこのことはひとつ国民の声としてぜひみなに聞かせておきたいという点を、重ねてたいへん恐縮なんですが、エキスのところでけっこうですが、それだけをひとつちょっと伺いたいと思います。
  54. 金城幸俊

    ○金城公述人 お答えします。  私は、公害の問題を今度積極的にやっていただきたいと思います。私どもは、たとえば空気にしましても水にしましても、それがなければ一日たりとも生きていけない。その空気ないし水の中に不純物がまじっているということになりますと、まず私たちはいますぐ死んでしまう。多少大げさになりますけれども、要するにわれわれの体内の中にそういう不純物が入ってくるということは、われわれだけでなしに、子々孫々までももしもそれの影響が出てきては困りますので、私はそういうものを国家的行事として、政策の中で盛り込んで大々的にやっていただきたい。減税とか物価というのはとかくクローズアップされますけれども、公害の問題はなかなかクローズアップはされなくて、私もそういうものに対してたいへん興味があるのですけれども、私にはたいへん歯がゆく思います。  以上です。
  55. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  56. 小平久雄

    ○小平(久)委員長代理 坂井弘一君。
  57. 坂井弘一

    ○坂井委員 意見を申し上げることはなるべく控えまして、簡単にお二人にお尋ねしたいと思います。いろいろ御指摘がございまして、まことに一々ごもっともだなと非常に参考になり、また感銘するお答えがございました。  最初に物価の問題でございますけれども、最近の物価上昇というのが非常に大きい、何とか安定しなきゃならぬ、これはみんなの同じ気持ちなんですけれども、なかなか物価の安定ということについてはきめ手がないというのですか、非常にむずかしい問題であります。そこで、公共料金の値上げをストップしろとか、あるいはまた流通機構の改善だとか、あるいはまた管理価格等の問題、いろいろ論議されるわけですけれども、なかなかきめ手が出てこないというのが現実じゃないかと思うわけですが、先ほど生鮮食料品、ことにそうした消費者物価を中心とした、実際に台所から見たほんとに容易ならぬ物価の値上がりの状態、これは御意見、御指摘どおりだと思うのです。そうしたまず消費者物価をどうしたならば一体値上げを押え安定させることができるか、何が一番きめ手になるか、一体きめ手というのは何なんだろうかとひとつ端的に――たいへんむずかしい問題でしょうけれども、きめ手になるのは一体何か、こうすれば物価は安定するんだというような何かお考えがあればひとつお聞かせを願いたい。  それから社会保障関係については、きわめて具体的にこまやかな予算上の御指摘もございました。これまたよく御意見を拝聴したのですが、ただ社会保障予算に比べて防衛予算、これはどうしても防衛費は必要である、自主防衛のためにはやむを得ないんだ、こういう考え方のもとに年々防衛費が増大してきておる。この防衛予算についてはどうお考えになっていらっしゃるか。この程度でいいとするのか、あるいはもっとふやしたほうがいいのか、ついては限度はこれくらいだというような御意見がございましたならばお聞かせをいただきたい。  それからさらに、社会保障関係の中で児童手当のことについて触れられました。お話をお伺いしておりますと、いますぐにはこの児童手当をやる必要はさしたる必要はないのではないか、それよりもまず住宅問題あるいはまた保育所、幼稚園等を大量建設しなければならぬじゃないか、こういう御意見だったように思うのですけれども、なるほど住宅問題も非常に大事な問題でありますし、幼稚園、保育園もなお増設しなければならぬ、こう考えます。ただしかし、かといって、この児童手当は御承知のとおりもう世界の六十九カ国ですでにやっておりますことでありまして、日本が社会保障政策の中で非常におくれている部面に、この児童手当がないということ、これは各方面から指摘されております。また御承知のとおり、これはすでに政府としても総理としても、児童手当は何とかして早く実現しなければならない。かねがね公約でございまして、今年度予算ではこれがまた再び見送られるというような形になったわけですけれども、何としてもこれは来年度には児童手当を実現するように努力したい、これは大方の皆さんの御意見でありまして、われわれも強力に推進していかなければならぬ、こう思っているわけであります。確かに御指摘のとおり人口政策、こういう面もあろうと思うのです。しかし、お話にあったような人気取りの政策、これにはちょっと反論がございます。これはさておきまして、先ほどお話では幼児教育に大体月五千円もかかる、これはたいへんなことでございます。そういう点からしましても、やはり児童手当はせめて月三千円くらいのものは早く実現さして、幼児の育児あるいはまた健全な児童の育成、そうした点から児童手当は早急に実現するように推進していきたい、いかなければならぬ問題ではないか、こう考えるわけでございます。この点についてどのようにお考えになっていらっしゃるか、そこら辺のところを御意見をお伺いいたしたい。  以上三点でございますが、お二人からそれぞれの立場で御意見をお聞かせいただけたら幸いでございます。
  58. 俵萠子

    ○俵公述人 物価問題のきめ手は何かという御質問でございますが、私は、そういうことはむしろ政治家のほうが本職でいらして、それを考えるのが政治家の御職業だと思っております。私にあべこべに聞かれるのは心外でございまして、むしろこちらのほうがお伺いしたいことでございまして、政治家の方が一生懸命考えてわからないことを、私に何かいい知恵はないかと言われて出てくるような簡単なものだったら、すでに解決しているんだろう、そういう点で私は、あまりしろうと的な意見を申し上げてもしかたがないから、皆さんにしっかり実行していただきたいということをお願いして、逆にこの御質問は御返上申し上げます。  それから二番目の防衛費の限界でございますが、これも私は防衛問題の専門家ではございません。したがって、どのぐらいの限界が適当であるかということは私はお答えできませんが、ただ今度の防衛費の内容を見ておりますと、一七・七%アップしております。その大部分は自衛隊の皆さん方の待遇改善のために使われているというところで、比較的私どもには抵抗なく入ってきたということは申せますが、ただおのずから限界はあって、この調子でふえ続けていくということにはいささかの危惧の念を抱いております。これについても、むしろ皆さん方のほうでお考えいただきたいと思います。  それから社会保障の問題でございますが、児童手当について、私は個人的見解として先ほどの意見を申し上げました。それに対しまして、人気取りということばには抵抗があるということをおっしゃいまして、また世界の六十九カ国がすでに実施しているとおっしゃいましたが、私は現実の問題といたしまして、もしいま私に毎月三千円上げるから三人目を生めと言われましても、いまの住宅事情で、たとえば三千円もらって一いま私がかりに六畳一間のアパートあるいは2DKの団地にいたとしまして、一人の子供を育てるためにはもう一間なければならない。もう一間広いところへ移るために三千円で一体移れるだろうか。いま東京都内の畳一畳が二千円ということが言われております。私はやはり子供を育てる場合に、まず第一番に、生もうかということを考える場合に、その子供を置く場所ということを考えてしまうわけです。ベビーベッドをどこへ置くのか、赤ちゃんのふとんをどこへ敷くのかということを考えますと、幾ら三千円いただきましても、現状では私は三人目は生めないという感じがするわけでございます。したがって私は、児童手当は要らないとは言わない、あったほうがいいにきまっていますけれども、それよりももっと先に片づけるものを片づけなければ、児童手当の効果もあがらないのではないかということを言いたいわけです。別に六十九カ国がやっていても、私は日本は日本の線でいけばいいと思っております。その点につきまして、児童手当というものが要らないということではなく、児童手当よりもっとほかにやらなければならない、生める条件というものはもっとさまざまあるんだということを私は言いたかったわけでございます。
  59. 坂井弘一

    ○坂井委員 金城さん、いまの同じ問題に対して……。
  60. 金城幸俊

    ○金城公述人 お答えします。  物価抑制の問題については私ども全くしろうともしろうとでございまして、およそ何もお答えできませんけれども、物価が上がるということは、たとえばその何かの目安がありまして、公共料金が上がったからそれにつれて物価が上がるとか、あるいは春闘でもって賃金が上がったから、それにつれて物価が上がるんだという何だか循環論法みたような、どちらが原因だということもわからない状態なものですから、たとえばそういう相手が上がったからこっちも上がったんだというような考えはこの際取っ払って、もっと純粋にといいますか、もっと最初に返って考えてみてはどうかというふうに私は思います。その具体的なことは申し上げられませんけれども、要するに相手が上がったからこれにつられてこっちのほうも上がっているんだというようなことは、やはりわれわれとしては何か納得のいかない結果になると思います。  それから防衛費の限界ということでございますけれども、たとえば防衛費が上がるということは、私は個人的な意見で申しますと、すぐ戦争ということを連想するわけです。最新兵器を装備するために金が要るのだなというふうに、実に単純に解釈するわけです。だもんですから、そういう意味ならば――もちろん自分の国は自分で守るということは私は大いに賛成ですけれども、何か戦争ということに結びつきますと、自分の国は自分で守るという理由づけもすなおには受け取れない。ですから限界がどのくらいかという御質問に対しても私はわかりません。  最後の児童手当の件でございますが、私はまだ学齢に達する子供を持っておりませんので、児童手当のことはじかには感じとしては受け取れないのですけれども、私の友人が実は公団に住んでおりまして、2DKで一万五千円ですか、それの家賃を払っておりますけれども、非常に高いということを言っておるわけです。それよりも県営のほうが安いんじゃないかとか、市営のほうが安いんじゃないか。国のなさることよりも市あるいは県のやっておられるほうが安い。私どもは、単純に考えますと、膨大な費用で全国的な規模でやられる国のほうの住宅施策が優先しているのではないかと思って、公団住宅の高いということに対しては私もだいぶ抵抗を感じておるわけです。  さてどちらにしましょうかというふうな問題になりますと、私個人の意見を申し上げますと、私はやはりその分住宅事情の改善に回していただき、たいというふうに考えます。  以上です。
  61. 坂井弘一

    ○坂井委員 けっこうです。
  62. 小平久雄

    ○小平(久)委員長代理 田中正巳君。
  63. 田中正巳

    田中(正)委員 俵公述人にお伺いをいたします。  私、別に政策的なことをいろいろお伺いをしようという気はございませんが、さっき公述の中にいろいろ数字がございましたが、どうしても納得のいかぬ数字がたくさんあるわけでございます。私もいま資料を持っておりませんので、二点ほど承らしていただきたいと思います。  一つは、保育所の保母の給与の改善、たしか〇・七%とかいうふうにおっしゃいましたが、一体これはどういう算定の根拠か承りたい。  それからもう一つは、保育所の子供を預ったら一日八十八円とかおっしゃいましたが、これまた一体どういう算定の根拠か、この算定の根拠だけひとつ承らしていただきたいと思います。
  64. 俵萠子

    ○俵公述人 先ほどの保母さんの賃金のことでございますが、これは厚生省のほうに問い合わせまして聞いた数字でございます。そして先ほど申し上げましたのは、本俸だけの金額でございます。ボーナスは別でございます。そしてこの数字に関しましては、おそらく母子福祉の担当者がはじいたものだと思います。私はそれ以上調査する方法がございませんから、その数字を使わせていただきました。聞きましたことは正確に申し上げたつもりでございます。  それから四十四年度の子供の預け料というのは、実際に私立の保育園の施設長をなさっていらっしゃいます「コンドウシゲキ」さんとお読みするのでしょうか、お名前はっきり読み方がわかりませんが、その方の御本の「集団保育とこころの発達」という中に出てまいります数字でございまして――この方は東京の武蔵野市の西久保保育園の園長をなさっていらっしゃいます。ここに読みがございますが、近藤薫樹さんとおっしゃいます。この方は御自分で園をやっておられる方ですから、数字については正確だと私は思いますが、その御本の中にその数字が出てくるわけでございます。ちょっとその部分を読みますと――よろしいですか。この本を読んでいただきますと、最後のほうに子供の純預け料は一日八十八円であるというのが書いてございます。その点御了承いただきたいと思います。
  65. 田中正巳

    田中(正)委員 それぞれ根拠がおありのようですが、私どもの調べとはだいぶ違うのでございまして、実は第一の保母のベースアップというか、給与改善、これはなかなか実は複雑でございまして、昨年実は号俸改定をいたしまして、そこでことしの一月から号俸改定がなされる。それと、これは御承知のとおり人事院勧告がございますと、これにリンクをするわけでございまして、したがって、このあと人事院勧告が出るとまた上がるものでございますから、したがっておそらく〇・七%というのは三年間の格差解消のためのお金だろうと思いますので、数字の根拠が全く違いまして、非常に平板な計算をいたしましても、大体ことし五千円ぐらいアップになっているものと私どもは理解をいたしておりますので、数字のとり方についていささか誤解がおありのようでございます。いまここで詰める必要もございませんが、お帰りになりましたら、ひとつさらに計算をし直していただければ幸いだというふうに思います。  でれからいま一つの、保育児の預け料八十八円という数字、その御本は一体どういう根拠からお出しになったか、これも私にはわかりませんけれども、大体これは三歳未満児と三歳以上児との間に何が違いますけれども、三歳未満児ですと、D5階層の場合、これは満度に取っておりますが、一万二千五百円ということでございます。しかもこれは国費でございますから、これに地方自治体が二割負担をいたしておりますから、一万六千円ぐらいになるわけでございまして、これを保育日数二十五で割れば一日六百数十円ということになるだろうというふうに思います。     〔小平委員長代理退席、委員長着席〕 それから三歳以上児についても大体六千円ぐらい、同じ算式をやりますとそうなりますので、いずれにしても八十八円という数字はちょっとどこから出てきたのか、その御本が根拠だそうでございますから何ですが、ひとつこれもまた、もしここで私のいまの数字が違うとおっしゃることがすぐ出てまいりましたら御返事を賜わってもけっこうでございますが、そうでなければ、ひとつお帰りになってからさらに計算し直していただければ幸いだと思います。
  66. 俵萠子

    ○俵公述人 私が申し上げました八十八円というのは、一切の経費を引いてしまって、純預け料ということばを使いました。それを聞き落とされたのではないかと思います。  それからもう一つは、三歳児未満とは申し上げませんで、四、五歳児ということで申し上げましたので、その点も御了承いただきたいと思います。
  67. 田中正巳

    田中(正)委員 結局その数字は父兄が払う保育料を保育日で逆算するとそういうふうになるということだろうと私は思います。その裏に、確かにそれに見合う保育料を払っておられる親御さんがぼくはおられると思うのですが、御承知のとおりAからD5までずっと階層がありまして、その陰には国なり地方自治体が負担をしている部分がございますから、実際にかかっている金はそうではないのだ、つまり国や地方自治体におんぶしたあとを引いて、つまりお世話になった部分を引いて、その親御さんが払った部分、つまり公費負担をのいてしまったあとを計算するとそういう金額になるということだろうと思いますから、その計算では国やあるいは地方自治体が社会政策費あるいは社会福祉事業費でもって払った部分が全部ネグレクトされているという数字になるのではなかろうかと思いますので、その点御配慮あるのだろうと思いますけれども、どうも私どもの数字と違って、しかもそれが自動車の預け料と比較になんかなさりますと非常にショッキングなアピールがございますので、その辺いま一度ひとつ御勉強になっていただきたい、かように思います。
  68. 中野四郎

    中野委員長 麻生良方君。
  69. 麻生良方

    ○麻生委員 きょうはたいへん御苦労さまでございます。たいへん貴重な御意見を拝聴いたしまして、実に私どももまた一つの観点としてたいへん収穫がありました。お礼を申し上げます。  いま数字の点等いろいろありましたが、私どもはここで数字の細部について論議をするというよりかも、むしろ一般の国民があるいは主婦がどういう立場から国の予算をながめているかということを知りたいと思いまして、公述人としてお招きをしたのでありますから、数字の点については関係当局も来ておりますから、あとでまた十分ひとつお打ち合わせをしていただきたい、こういうふうに思います。  たとえばその一つの例として保母の給与の値上がり率が少ないという御意見、これも俵さんがおっしゃったような観点に立てばそうなる模様でありますけれども、正確に政府的立場で言うと、昭和四十四年の四月の一日に二万六千九百八十七円、それから一回ベアがあって、四十五年の一月一日に三万一千三百六円、それから今度三万一千五百十円、こういうふうになっているのだそうです。だけれども、私に言わしむれば、あまりこれはたいした問題ではないので、結果的に現在の三万一千五百十円で完全に保母としての役目がつとめられるか、こういう御意見をおっしゃったのだろうと思いますから、政府当局もそういうつもりでお聞き取りをいただきたい、こういうふうに、これは私のお願いであります。  それからちょっと質問に入りますが、住宅問題について触れられておりまして、いま御承知のように政府住宅対策、ある意味では相当力を入れているのですけれども、何せ土地が高くて通勤場所からかなり離れたところに住宅を建てざるを得ない。たぶん俵さん御承知のように、いまつくりかけている公営、都営団地は、都心部からいずれもたぶん一時間半以上の通勤時間を要するのですね。あなたの御主人もかつてサラリーマンであったと思いますけれども、一時間半片道使って通勤して、往復三時間ですね。これであなたの御主人がおうちにお帰りになって、それで健全な御夫婦生活ができるかどうか、あなたの御体験を、ちょっとこの点はお伺いをしておきたいと思うわけです。これが一つです。  それからもう一つは、消費者問題の例が先ほど社会党の委員の方からも出ました。私はいつでしたかテレビで消費者の方々三十人ぐらいを前に置いて、私も招かれて実はリンゴを食べさせられたのです。そうしますとリンゴが五つぐらい並んでいまして、まず見てくれで一番おいしいリンゴだと思うのはどれか、みなに質問したのですね。そうしたらデリシャスとかインドリンゴとかいうのを、みんな主婦の方はこれが一番おいしいだろう、こういうふうに答えたのですね。そこで今度は、全部知らないうちにそれを切りまして、そうして全部こま切れにして、どれがどれだかわからないようにして食べさせられた。そうして今度はどのリンゴが一番おいしかったかという答えを出してもらいましたら、見てくれが一番悪くてだれも一番おいしいだろうと言わなかったリンゴを食べてみたら一番おいしかったという答えが全部出たのです。これは私は消費者のあり方に一つの問題を投じたものとして非常に興味深くこのテレビに出たのですけれども、いま一般に消費者はずいぶんいろんなことを言うのですね。たとえば何もけしからぬ、かにもけしからぬというのですけれども、私は消費者というのは一般概念であって、消費者であるといえども必ずどこかで収入を得ていらっしゃる。たとえば賃金が上がるのがけしからぬ、だから物価が上がるんだ、こう言うけれども、そのだんなさんは奥さんの知らないところではち巻きを巻いて賃上げ闘争をやっている。それから理髪屋さんのおかみさんは物価が高いといって絶対反対を言うけれども、理髪の料金だけは上げてくれ、こう言って御主人は陳情に来る。こういう矛盾が絶えず消費者の問題にはつきまとってくるわけですね。こういうような問題について、あなた御自身が消費者の立場と、それからあなたの収入、これは自由職業で得られているんだろうと思いますが、かつてあなたの御主人がサラリーマンであったころを顧みられまして、これは御感想でけっこうですが、ひとつお述べをいただきたい。  それから最後に、あなた非常に特異なことを言われた。性教育の問題に触れられたのですけれども、たいへん貴重な御意見だと思うのですが、私は率直にいって、私自身も子供のころあまり性教育なんか受けたことはないのです。私の子供も、いまもう大学四年、下が大学二年で、上のほうはたいへん早熟で、ついこの間結婚してもう一緒に生活しているんですけれども、私の女房も私も特に子供に性教育というものを意識的に施した覚えはないんですけれども、けっこうすこやかに夫婦生活しているんですね。私もいつの間にか覚えまして、いま健全に夫婦生活を営んでおります。あなたはその性教育の教材まで国家予算でつくれ、こういう御意見でしたけれども、もう少しその御意見の根拠になるもの、それからあなたがお求めになったとおっしゃるその八百円の御本というのはどんなことが書いてあるのか、ちょっとお示しをいただければありがたいと思います。  以上であります。
  70. 俵萠子

    ○俵公述人 いろいろ何かプライバシーの侵害みたいな御質問が出まして、いささか答えにくいのですけれども、住宅の問題でございますが、何も主人が一時間半の距離を通っていたということではなくて、私自身が一時間半、往復三時間の距離を通いながら二人の子供を出産し、そして育て、サラリーマン稼業をしておったわけでございますから、私自身の経験のほうを申し上げたほうがいいと思うのでございます。  片道一時間半、往復三時間、そしてその間に乗りかえが二回、地下鉄に乗りまして池袋で降りまして、池袋から西武池袋線に乗りましてひばりケ丘の駅で降りて、ホームでかけ足をするわけです。最終の駅で降りてなおかけ足をして、一番先に走っていってバスの停留所に並ばなければ、バスでわすれない、そういう団地に住んでおりまして、正直に申し上げまして疲労感というのは口でも筆でも言えませんでした。帰りましたらもう口をきくのもいやでございまして、かわいい子供が待っていてもにっこりともしてやれないような状態でございました。われわれは非常に疲労して、とげとげして、そのための夫婦げんかあるいは家庭の不和というものは数え切れなかったと思います。そういう現実が私は長距離通勤の実態だと思います。これはやった者にしかわからない苦しみだと思います。  それからもう一つ、それがあまりにきつかったために、私は新宿の公社のアパートに移りまして、会社からの通勤時間が二十五分というところへかわったわけでございますが、そのときに通勤時間が違うとこんなにも体力が違うものかと、ほんとうに驚くばかり疲労感が違いました。帰ってから夫婦で一緒にボーリングに行くというような体力が確保されていました。ああ家が近いというのはサラリーマンにとっても非常に大切なことなんだ、とにかくやはりサラリーマンの住宅というのは職住接近の方法で考えられなければいけないということを痛感いたしました。ただその場合に、私が一番心配いたしますことは、職住接近をしても、夫婦だけでそこに住むのではなくて、子供も一緒に住むということでございます。市街地の高層の職住接近の住宅に住む場合に、子供も一緒に住めるような生活環境というものを合わせた市街地開発、これをぜひとも考えていただきたいというのが私の願いでございます。  それからリンゴのお話が出ましたが、私はそんなばかな消費者ではございません。インドリンゴなんかは人さまからいただいたとき以外には食べたことはございません。あれはたいへんまずいので、また私は好きじゃないので、ジューサーあるいはミキサーにかけていただくというようなことをしておりますけれども、消費者というものを一般的に非常に概念的にとらえてはいけないのじゃないか。たとえば、ただいま非常にジャガイモが上がっております。で、主婦たちが集まった会話にジャガイモは大きいのを買ったほうが得よ、どうしてというと、小さいのを買っても皮をむくと減るから大きいののほうが得だというような、そういうこまかいやりくりまで主婦はしているのでございます。もちろん主婦の中にもそれはいろいろな人がおりまして、中には見てくれに非常にだまかされる人もいるかと思いますけれども、私はもうやはり必要は発明の母でして、そういうやりくりについては主婦は知っているとむしろ信じたいと思います。  それからもう一つ、御質問の要旨がよくわからなかったのですが、消費者であると同時にサラリーマンである、つまり賃金が上がるということと物価が下がってほしいということの矛盾についてどう考えるかという御質問だと思いましたけれども、その点につきましては、私は賃金は上がるのが当然で、そして物価はあんまり上がらないでほしいという考え方で、絶対に上がるなとは申しません。けれども、おのずから限度があって、佐藤さんがおっしゃっていらっしゃいましたように、四%という線ならばまあまあがまんはできるだろうというふうに私は考えている主婦の一人でございます。したがって、その点について別に矛盾は感じておりません。  それから最後の性教育に関する御質問でございますが、これは麻生さんぐらいの御年配の方は皆さんそうおっしゃるんでございますが、やはり時代が、私どもの育った時代といま子供たちの育っている時代とが違うわけでございます。たとえば、私どもは親からあるいは先生から教えてもらわなければ、何も知らないでかなりの年齢までいくことができた。けれども、いまは幼稚園の子供でもスカートまくりをしてハレンチ学園を読むわけでございます。現に私のむすこもそれを読み、スカートまくりをしておりまして、そういう性情報の過剰の中で、しかも心はまだ非常に幼いという子供たちに対して、性の正しい考え方あるいは知識というものを教えてやらないから、さまざまな犯罪というものが現にいろいろ生まれてきているのではないかと思いますし、また性のモラルの混乱ということも起こっているし、あるいは非常にまじめな子供たちに悩みとか不安というものがあると私は思うわけです。したがって、ぼくは受けなかったから要らないじゃないかという御発言は、社会情勢変化というものを見落とした御発言ではないかと思います。現に私は、いまちょうどなぜなぜ時代で一番質問の多い子供を育てておりまして、たいへんに性の情報が多いものですから、もうほんとにどぎまぎするような質問を毎日のようにぶつけられているわけでございます。たとえばこういう席で申し上げるのはどうかとは思いますが、ハレンチ学園を幼稚園の子供が見ておりまして、どうして一番見たいところが隠れているんだとか、そういうことを質問するわけでございます。それに対して私が何と答えればいいか、私ばかりではなくて、おかあさん方皆さんが困っていらっしゃる。私はいろいろなおかあさま方と接するのが職業でございますが、毎日のように話し合いでその困っているということが切実に感じられるわけです。それから女の子の誘拐事件というような誘拐事件が続発いたしておりますけれども、これを防ぐにも、むしろ正確にこういうことになっているんだから、あなたは自分の身を守らなくてはならないんだというふうに説明したほうが現代っ子はよくわかってくれるわけです。そういう意味でも、私は、身の安全あるいは健全な性のモラルその他いろいろなことから考えて、昔と違っていまの時代には性教育が必要なんではないかと考えておりまして、ここに幼児のためには一番いいテキストだといわれている性教育の本がありますが、これを買い求めまして、子供たちに読んでやったわけでございます。この本は、ごらんのようにこういう場面も出てまいりますし、こういう場面も出てまいりますし、それからもちろん雌しべ雄しべのことも出てまいります。そして最後には人間の問題も出てまいりまして、とても私が口では言えないことが非常に美しく正確にかかれているわけでございます。この本は私が本屋で見て非常にいいなと思って子供に買ってきて読んでやったわけでございますが、これが定価八百円、そうしますと、わが家の一カ月のお米代の約半分ぐらいに当たりまして、やはり相当な金額でございますから、たとえばこういうふうな教育がしてやりたいと思っていても、経済的に許さなければこういう機会が与えられない。しかも学校教育では正式のカリキュラムとして、いま性教育というものが取り入れられていないという状況では、親は困っているんだろうと考えます。であったならば、むしろ性教育の副読本という形ですべての子供に行き渡る、貧富の格差なく行き渡るというふうな考え方が、私は当然教育の予算の中に取り入れられてしかるべきではなかったかということで、ほんの一例でございましたが、申し上げました。
  71. 麻生良方

    ○麻生委員 どうも御高説ありがとうございました。
  72. 中野四郎

    中野委員長 土橋君。
  73. 土橋一吉

    ○土橋委員 俵、金城両公述人、まことに御苦労さまでございました。  最初俵さんにちょっとお尋ねしたいのですが、いろいろ具体的な数字をあげまして、議員のほうからいろいろ訂正などがございましたが、私は、俵さんが最初、私は実感を述べる、私は国民生活を守るという佐藤首相の議会における答弁などから見て、私の感じたことを具体的に述べると、こういう前提があったのでありますから、私は多少のパーセンテージなどの訂正があっても、そう気になさることもないし、また実感を述べられたのですからして、私は非常によかったと思います。特に生活の、物価の値上がりにつきましては、私ども非常に啓発をされるようないろいろなお話がございまして、私も貧乏人でございますから、よくわかります、非常によくわかります。特にキャベツが最近上がりておりまして、私のうちでもつけようと思っておりますが、一個百円でございますから、ちょっとつけることを手控えをしておるというようなことは全く同感です。ただお話の中で物価が二倍上がっておるのじゃないか、こういうお話がございまして、まことにごもっともでございます。政府の諸君やまた自民党の諸君は、この物価が二倍になっておるという主婦の端的な発言に対して、もっと反省をしてもらいたいというのが私の考えです。それからランドセルの例をあげられましたが、ランドセルが何年たったかが具体的によくわかりませんでしたけれども、四千円が六千五百円になっておる、これはまさに約五〇%前後の値上がりです。こういうことについても、まことに私はごもっともであって、不都合だと思います。ただ一の問題で、ごみ箱給食というふうにおっしゃった点が非常に私は印象的であったわけです。と申しますのは、アメリカの余剰農産物をどんどん入れまして、米の生産などについて特に最近は減らしておりますが、あるいはカリフォルニア米などの輸入に伴いまして、米が余っておるというような説明をしておる自民党の政策の中から、主婦の皆さんが米の問題についてごみ箱給食というふうにおっしゃるその根拠は、先ほどのお話で大体よくわかりました。栄養があるのはパン食だ、パン食は非常にいいと、こういう宣伝が、決して私はこれは根拠がないものとは思いません。そういう例もあったと思います。たとえばそば屋に行きましても、そばを食べると非常に栄養がある。というのは、うどん粉を食えということなんですね。アメリカのうどん粉を食えという宣伝に使っておることも私よく承知しておりますけれども、最近はそういう宣伝もそば屋さんではなくなってしまいました。そうすれば、そういう宣伝をしてアメリカの小麦粉を食わせるような体制をとったという自民党の責任ではないかというふうに私は考えております。こういう点で非常に参考になりました。  二番目の問題に入りまして、ちょっとお尋ねしたい点は、いろいろたくさんお話しくださいまして、特にずばりと聞きたい点は、生活が非常に不安であって不便だ、こういう点をお話しになったと思うのです。その具体的な例として、いろいろな点をあげていただきまして、たいへんけっこうだと思いますが、先ほどの近藤薫樹さんの本について、自民党の委員の諸君からいろいろ質問が出ましたが、私は正しい本だと思います。近藤薫樹さんはここ十五、六年間以上も保育所の園長として非常に奮闘された方でございますので、その本は間違いない本だと私は信じております。そこでたとえば、いまのお話の諸経費を引いた実際の預かり料は八十八円、タクシーは百円、その他いろいろな例があげられておりますが、まことに不都合といわなければなりません。こういう点について、たいへん私も勉強させてもらいましたが、特に保育所の幹部あるいは所長さんが四万三千六十二円だということをちょっと承ったのですが、これはあまりにも低いのじゃないでしょうか。保母さんももちろん低いのですが、これを上げなければなりませんし、特に医療労働者など非常に低いわけです。これは国立療養所におきましても、たいへん低いので問題になっておりますが、人事院制度そのものが非常に疑問のあるものであって、国家公務員の賃金が民間と比較しても非常に低いわけでございます。それは人事院の勧告が御承知のように低いということと、政府が、特に勧告が出てからまた一年たった次の予算でこの問題を決定するというような問題がからんでおるわけです。そういうものをひっくるめて人事院制度そのものも私たちは検討しなければなりませんし、これはアメリカ軍の全日支配のもとにできた、要するに公務員のスト権を取り上げての占領政策一つであったと思うわけです。ですから独立国家となれば、当然人事院制度も再検討して、やはり労使の力関係によって賃金体系をきめるのが、わが国の憲法の基本的な観点であると思っておるわけですが、そういう点について、あなたの御意見もちょっと聞きたいわけです。  もう一つは、入院助産の問題ですが、大体年間所得が三十万円足らずであったと思いますが、それ以下でなければ入院助産の恩典に浴することはできないわけです。今日、あなたも仰せになりましたように、働く労働者が非常に苦しい。それで政府は高度経済成長政策だとか安定経済と申しまして、国力は非常に上がったなどと言っておりますが、働く労働者は非常に苦しいわけです。そういうところで、入院助産制度をもっと東京都といわず全国的にこれを広めまして、働く者の奥さんが安心して子供の生めるような体制をとりたいというふうに私ども考えておりますが、こういう点について、婦人は生命を生み、生命を育てる最も重要な生産者の一人であると考えております。機械あるいは米をつくることも非常に大事ですけれども、しかし子供を育てるということは、それ以上に大事な問題だと私は思うわけです。そういう入院助産に対する体制をもっと強めなければならぬというふうに考えております。  次は、三番目の教育の問題をお話しくださいまして、これも非常によかったと思います。わが国の憲法で規定しておりますのは、義務教育は全額国庫負担ということを明記しておりますのにかかわりませず、今日やはり子供さんの費用は、非常にかかっているわけです。学童に対する費用はかかっておりますが、単に教科書の無料配付ということは、もちろん当然でありますけれども、給食費とか、いろいろな教材とか、あるいは工具とか、あるいはPTAなどでいろいろな金を集めている、こういう制度が平然として行なわれておりますので、私どもはこういう制度をなくしたらよろしい。義務教育である限りは全部国庫において負担すべきだ、こういうふうに考えておりますが、そういう点についてどうお考えになっておるのか。  最後に、一番大事な問題は財政の問題でございますが、いま有価証券や株券を持って暮らしていらっしゃる方は二百八十数万円までは税金がかかりません。ところが勤労者であれば、それが六十万円ないし七十万円であっても課税をされておるわけです。これは自民党という政党が中心として内閣を構成しております関係上、こういう全く勤労者を無視したことが平然として行なわれておりますが、ここで租税特別措置法によって税金を免れておる方がたくさんございます。その免れておる金額が一兆九千億円ほどあると、われわれは今日まで科学的に計算いたしまして、こういう内容を調べておりますが、この租税特別措置法などによって多くの大資本家といわれる人、あるいは非常に大きな事業をやっておる人、財界、そういう諸君が税金を免れておるわけです。こういうのを取り立てることが至当だとわれわれは考えておりますが、そういう点について公述人の皆さんは一体どう考えておられるのか。あるいは、特に土地の問題、地価の問題については、多くの方がお話しくださったように、たいへん困っていらっしゃる。私も立川から通っておるのです。やはり一時間電車の中に立って、つり皮を持って、この議会まで来るのはなかなかつらいです。ですから、こういう問題についても、やはりもっともっと研究しなければなりませんが、特に不都合なのは脱税の問題です。これは私鉄大資本とかあるいは大きな不動産業者とかあるいはその他の業者がどんどん三多摩で、御承知のようにたくさんの丘陵地帯を安く買い上げております。そうして学校を建てる人でも学校を建てないでほっぽらかしておくとか、あるいはいろいろなことを予想いたしまして、土地の投機をやる諸君が非常にはびこっております。そういう諸君はほとんど脱税をしております。こういう問題について、脱税の金額が約二兆円ほどあるといわれておりますが、そういうものを徹底的に取り上げて、国家財源を充当しながら、先ほどお話がございましたような諸問題を解決をすると同時に、児童手当などを支給する、こういう方向にやったら、そういう点も解決するのじゃないかというふうに考えております。  一番最後に、アメリカの軍事基地が御承知のように三多摩にはたくさんございまして――これは全国的でございます。東京にもたくさんございますが、いま立川の飛行場でアメリカの飛行機が飛ばなくなったといっておるわけです。立川の十二万市民は、これを返してくれ、そしてここへもっと立川市の将来の発展のためにも住宅を建てるとか、あるいはもっと立川市民のためになるようなことをやってくれ、こういう要求が出ております。また、横田の基地も、御承知のように、約二百七十万坪といわれる広大な土地がアメリカに占領されておるわけです。これらの基地をもし開放するとすれば、三多摩だけでも東京の港区に匹敵するほどの広大な地域があるわけです。そのほかに、東京都有地あるいは河川敷などを利用しましたり、あるいはゴルフ場などというので膨大な土地が使われておりますが、あるいは自衛隊もたくさん土地を持っておりますが、こういうのを開放するならば、かなり住宅問題は解決をするというふうに共産党は考えております。私たちは、年間百万世帯くらいの公営住宅や低家賃住宅を大量に建設する必要があるという政策を掲げておりますが、そういう点について皆さんのお考えはどうであるのか、そういうことについてどういうことを考えておられるのか、ちょっとお聞きしたいと思うのでございます。  たくさんお話をいたしましたが、御意見なりあるいは皆さんのお考えを聞かしていただけば非常に幸いに存じております。
  74. 俵萠子

    ○俵公述人 いろいろ御質問がございましたけれども、私が答えるのが適当だと思われるものにつきましてだけお返事をいたします。  その中で、入院助産制度というお話がございました。御承知のように、赤ちゃんの死亡率がたいへん減りましたことは、私どもにとりましてたいへんうれしいことでございますが、おかあさんの、妊婦の死亡率が高いという点が先進国の中では非常に目立っております。そういうことから、今回のたとえば妊産婦の無料検診といった政策も出てきたのだと思いますが、おっしゃるように、いまだに辺地であるために、あるいは経済的な事情から、入院してお産ができないおかあさま方が非常にたくさんいらっしゃいます。この点につきまして、入院助産制度をもっと徹底的にして、みんなが病院に入って安心してお産ができるようにするという御意見には全く賛成でございます。  それからもう一つはお産の費用でございますが、昨年のニュースの中で私がたいへんショッキングでございましたのは、たしかあれは相模原市であったかと思いますが、ある女性が妊娠いたしまして、そうしてお産の費用を、一生懸命パチンコ屋で働いて四万円ためた。で、入院をしたけれども病院からの請求書には七万円とあった。差額の三万円が払えなかったために、彼女は子供を病院に残して蒸発してしまったという事件がございました。こういうような女性に対しては、ほんとうにきめこまやかにお産の費用を出してやれるような、そういう制度というものができなければいけない、あの問題につきまして女は無責任である、母親は無責任であるということがしきりにマスコミで論評されましたが、私は、無責任であるのはむしろそういう女性がお金を出してもらえない制度そのものにあるのじゃないだろうか、あるいはそういう女性をほったらかして蒸発した男性自身ではないのかとたいへん腹が立ったわけでございます。そういうようなこともあわせて、私は、ぜひ実行されたらいいなと考えております。  それから、義務教育の費用でございますが、確かにおっしゃるように教科書はただでいただけますが、学級費は、これは取っている学校もありますし取っていない学校もあるのです。たとえばセロテープ代とかあるいはピン代とかクリップ代とか、ささやかなものにつきまして結局公費が十分に出ていないわけです。それを結局親が負担する。名目はたいがい学級費というような形で集められる場合が多いようでございますが、そういう形でやはり私どもは負担しているわけでございます。その問題はPTAでもしばしば話題になりまして、やはりこういうことは私たちが負担するのではなくて、もっと公費として要求していかなければならないということをしきりに話し合い、あるいは言っておりますけれども、この点については、まさに私も同意見で、今後はこういった親の負担というものをなくしていくべきだ。ただ一部の学校にPTAの会費まで教育委員会が負担するという妙なことがございましたが、あれは私はPTAの精神というものを忘れた非常に間違った考え方だと思っております。PTAというものは、これは任意のボランティア団体として、参加する者が当然みずからのお金で活動すべき性質の団体であって、その辺に多少の混乱があることはたいへん残念だと思います。  それから、租税特別措置法で税を免れている人たちがいる。この不公平につきましては、いまさら私が申し上げるまでもなく、もう新聞その他でしばしば言われているところであり、サラリーマンの方々がおっしゃる税の負担の不公平ということですね。これはもうまさに長い間サラリーマン稼業をしておりまして、そのとおりだと思います。脱税のニュースを聞くたびに、こんなに脱税ができる職業があるのかなと、うらやましいと言うサラリーマンがいっぱいいるわけで、そういう不公平感というものをなくすために、やはり脱税を摘発するGメンをもっとふやす必要があるのじゃないかということは、いつも考えております。  そのほかアメリカの軍事基地、特に立川基地のあとに住宅をという御意見でございましたか、立川もたいへん遠うございます。たぶん通勤にお疲れだと思いますが、なるべくそこに仕事場と住宅と両方接近した形で、そうして主婦の再就職も非常に容易であるというような形の開発を考えていただけたら、それが一番家庭生活を守る方法である。主婦が遠いところから都心まで働きに出てくると長い間家庭を留守にし、かぎっ子にするというようなことは悲しむべきいろんな不幸な事件が起こっておりますので、その点については、住宅だけということではなくて、総合的に考えていただきたいと存じます。
  75. 金城幸俊

    ○金城公述人 お答えします。いまたくさん御質問なさいまして、私はそういう問題に一々お答えできませんので、ごく二、三の件についてお答えします。  実は、義務教育の全額国庫負担ということなのですけれども、私どもも義務教育のときには、PTA会費だとかその他学校維持のための寄付金というものを徴収されまして、だいぶ痛い目にあってきておりまして、――もっともその当時と現在ではいろいろ社会情勢あるいは個人の所得の問題なんかもだいぶかわってきまして、当時私どもは――私が小学校を出たのが昭和二十六年で、中学が二十九年、高等学校が三十二年でございますが、教育費ですか、そういうのを負担するのにたいへん四苦八苦しておったという記憶があります。しかしながら、とにかくぼくはそれでも学校を出てきた。もちろん、現在義務教育、中学までの方がどのくらいの教育費を負担しておられるか私はわかりませんが、もしもそういうものを国庫で負担することができるならば、たいへん望ましいと、私は現在私人として、そういう希望があればたいへんけっこうなことだと思います。  それから脱税の件でございますが、実は新聞等で報道されております脱税ということに対して、私どもたいへん腹立たしいような、それからまた一面、先ほど申されたように、そんなお金をどこへ隠すんだろうかという、うらやましいような気分になったことは事実でございます。こういうものが、やはり脱税というものが世の中にはびこっているようでは、われわれ意欲的な気持ちで仕事をしようと思いましても、つい気分的なゆるみがあって、早い話が、苦しくなったら何か銀行強盗でもやろうじゃないかということになりかねません。ついきのうもそういう事例がありまして、私どもはふんまんやる方ないわけですけれども、やはり脱税というものは徹底的に取り締まっていただきたいと考えております。  それから基地の問題でございますが、住宅だけに限って申し上げますと、たとえば住宅を建てるということはたいへんいいことだと思います。そのかわり建てた住宅は通勤に不便だとか家賃が高いということになりますと、せっかく建てていただいても入居者がいないとか少ないとかで、国のお金を寝かせておくということにもなりかねません。ですからやはりもっと総合的な施策を講じていただきたいと思います。ただ単に、住宅を建てたからそちらへ住みなさいとか、入居者は募集しますというだけでは、たいへん困ります。  以上です。
  76. 中野四郎

    中野委員長 俵、金城両公述人には、御多忙のところ長時間にわたって貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございます。厚くお礼を申し上げます。  明四日は、午前十時より公聴会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時三分散会