運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1970-03-07 第63回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年三月七日(土曜日)     午前十時七分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 小平 久雄君 理事 田中 正巳君    理事 坪川 信三君 理事 藤枝 泉介君    理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君    理事 田中 武夫君 理事 大野  潔君    理事 今澄  勇君       足立 篤郎君    相川 勝六君       赤澤 正道君    植木庚子郎君       大坪 保雄君    大野 市郎君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       賀屋 興宣君    川崎 秀二君       上林山榮吉君    小坂善太郎君       笹山茂太郎君    田中 龍夫君       登坂重次郎君    西村 直己君       野田 卯一君    藤田 義光君       松浦周太郎君    森田重次郎君       川崎 寛治君    久保 三郎君       小林 信一君    楢崎弥之助君       芳賀  貢君    相沢 武彦君       坂井 弘一君    伏木 和雄君       和田 一郎君    吉田 之久君       和田 春生君    谷口善太郎君       津川 武一君    不破 哲三君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 内田 常雄君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君         郵 政 大 臣 井出一太郎君         労 働 大 臣 野原 正勝君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         自 治 大 臣 秋田 大助君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中曽根康弘君  出席政府委員         国防会議事務局         長       海原  治君         内閣総理大臣官         房陸上交通安全         調査室長    平川 幸藏君         警察庁交通局長 久保 卓也君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         防衛庁人事教育         局長      内海  倫君         防衛庁参事官  江藤 淳雄君         防衛施設庁長官 山上 信重君         防衛施設庁総務         部長      鐘江 士郎君         防衛施設庁総務         部会計課長   高橋 定夫君         防衛施設庁施設         部長      鶴崎  敏君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         外務省条約局長 井川 克一君         大蔵省主計局長 鳩山威一郎君         大蔵省主税局長 細見  卓君         国税庁長官   吉國 二郎君         文部省大学学術         局長      村山 松雄君         文部省社会教育         局長      福原 匡彦君         文部省体育局長 木田  宏君         文部省管理局長 岩間英太郎君         厚生省公衆衛生         局長      村中 俊明君         厚生省環境衛生         局長      金光 克己君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省社会局長 伊部 英男君         厚生省児童家庭         局長      坂元貞一郎君         厚生省保険局長 梅本 純正君         厚生省年金局長 廣瀬 治郎君         農林大臣官房長 亀長 友義君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省農政局長 池田 俊也君         農林省農地局長 中野 和仁君         農林省畜産局長 太田 康二君         食糧庁長官   森本  修君         林野庁長官   松本 守雄君         水産庁長官   大和田啓気君         運輸省航空局長 手塚 良成君         海上保安庁長官 河君 一郎君         郵政省電波監理         局長      藤木  栄君         労働省職業安定         局長      住  榮作君         労働省職業訓練         局長      石黒 拓爾君         建設大臣官房長 志村 清一君         建設省計画局長 川島  博君         建設省都市局長 竹内 藤男君         建設省道路局長 蓑輪健二郎君         建設省住宅局長 大津留 温君         自治省財政局長 長野 士郎君         自治省税務局長 降矢 敬義君  委員外出席者         運輸大臣官房審         議官      内村 信行君         日本国有鉄道総         裁       磯崎  叡君         予算委員会調査         室長      大沢  実君     ————————————— 委員の異動 三月七日  辞任         補欠選任   岡沢 完治君     和田 春生君   土橋 一吉君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   小林 信一君     西宮  弘君   楢崎弥之助君     中谷 鉄也君   芳賀  貢君     細谷 治嘉君   伏木 和雄君     松本 忠助君   不破 哲三君     津川 武一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  分科会設置に関する件  昭和四十五年度一般会計予算  昭和四十五年度特別会計予算  昭和四十五年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和四十五年度一般会計予算昭和四十五年度特別会計予算昭和四十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括議題とし、一般質疑を続行いたします。相沢武彦君。
  3. 相沢武彦

    相沢委員 私は、公害問題と交通安全に関する問題を通しまして、質問を行なっていきたいと思います。  最初に、公害問題でございますが、世界的な経済の発展とはうらはらに、いま公害問題は人間の生存に大きな危険を与える状態となっておりますことは、御承知のとおりでございます。一九六八年に国連総会におきましては、人間環境に関する国際会議を一九七二年に行なうことが決議をされております。また、米国におきましてはニクソン大統領がみずから公害の追放に立ち上がっている記事がしばしば報道されておりますが、公明党では昨年来より公害に関する総点検を行ないましたところ、公害の最も被害意識の強いのは、騒音によるところの障害でございます。そこで、今回は時間もございませんので、特に基地におけるところの航空機騒音公害についてお尋ねをしてまいりたいと思います。  基地における住民が高性能のジェット機の激烈な爆音を浴びせられて、その結果身体にいろいろと障害を受けておるわけでございますが、こういった具体的な実例について、関係当局施設庁長官御存じかどうか、これをまずお尋ねしたいと思います。
  4. 山上信重

    山上政府委員 基地周辺におきまする騒音の問題につきましては、これの防止ということにつきましては、政府といたしましても最大努力を払っておるところでございまして、これらの障害防止のためには、御承知のとおり、防衛施設等周辺におけるところの障害防止等目的としますところの周辺整備法、この法律を適用いたしまして、周辺におきますところの騒音防止のために、学校、病院その他市町村の庁舎、いろいろな公共施設等を含めまして、防音対策につきまして最大限努力を払っておるところでございまして、明年度におきましても騒音防止のためには九十億の予算を計上いたしておる次第でございます。
  5. 相沢武彦

    相沢委員 私の質問した趣旨は、地域住民身体にどういった具体的な障害の事例があるのかということを御存じですかとお聞きしたわけでありまして、対策のほうはまだお聞きしてなかったのですが、私ども基地障害につきましていろいろ見聞したところ、聴力障害あるいは女性の生理不調、異常分べんあるいは血圧高進爆音中毒症、こういった人体にきわめて大きな悪影響があることがわかっております。私も二月に厚木基地、それから横田基地周辺住民方たちとお会いしましていろいろと調査したわけでございますが、爆音のたびに恐怖症にかかったように耳を押えて押し入れにかけ込む子供たちのことや、あるいは爆音のためになかなか夜中まで寝つかれないと訴える中学生や、また気持ちがいらいらして満足に家族と楽しい明るい話をすることができなくなった、こういう訴えをされる方がずいぶんふえております。  また、爆音身体に与える科学的なデータとして、ここに日本医科大学第二生理学教室高橋さん、また東大理学部人類学教室の許承貴氏の両人によるところの共同研究「性および成長過程における騒音環境への適応性の差異について」という論文がございますが、これは長期間ジェット機基地として使用され、現在もなお使用されているある飛行場周辺に住むところの乳幼児及び小中高校生を対象にして、いろいろと科学的に調査されたものでございます。ここの「考察および総括」のところだけをちょっと読んでみますと、「近年、人体騒音環境に曝らされる機会が増し、かつ強度の騒音による慢性被害は、感覚・自覚症状自律神経失調を通して全身に及ぶと考えられ、」「騒音が、ジェット機騒音のように極めて甚だしい場合には、機能的変化からさらに、身体的——器質的変化まで引き起こされることが予想され、」「著者等は、本調査の結果、この予想を裏付けることが出来た。すなわち、長期間ジェット機基地として使用されて来た、某飛行場周辺地域に居住する乳幼児および学校生徒発育騒音との関係を、一九六五、一九六六年の二回にわたって調査分析した結果、これが身体発育、殊に体重の増加に悪影響を及ぼしていることが明らかとなり、」しかもこの影響度は「女子よりも男子、低学年生徒より高学年生徒に強く影響」していることが明らかとなった、ということが書かれております。国の将来をになう少年の健全な体位向上をはかる上からも、ジェット機騒音による被害をもうすでに放置できないところに来ていると思うわけでございます。関係当局長官としては、単なる報告を聞かれ、いわゆる対策を考えてそれを命じてやらせるだけでなくて、こういった現場に飛び込んで、一体どういうような障害を受けているのか、地域住民がどんなに悩んでいるかという実態についても十分お知りになっていただきたい、このように思うのでありますが、長官の御見解を承りたいと思います。
  6. 山上信重

    山上政府委員 基地周辺住民のこうむる影響ということにつきましては、特に米軍自衛隊等施設を担当いたしておりまする私どもといたしましてもきわめて重大な関心を持っておるわけでございまして、かねて板付飛行場周辺を目途といたしました人体その他に与えるところの影響というものを数年にわたって研究をいたしております。その結果に基づくところの中間報告が昨年の春に出されておるのでございまして、これらにつきましてはいろいろさらに検討を続けてまいりたいと思っておりますし、またわれわれといたしましても、今後これらの影響につきましては最大限検討をし、また研究もいたしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  なお、これらの対策につきましては、先ほど申し上げたように政府としても最大努力を払ってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  7. 相沢武彦

    相沢委員 各基地では住民がその対策として航空機騒音軽減に対するいろいろ勧告をしているわけであります。厚木基地には地元爆音防止期成同盟等がありまして、いろいろな要求があり、所轄官庁とも話し合いがされて取りきめがされていると思うのですが、その内容については御存じでしょうか。
  8. 山上信重

    山上政府委員 厚木騒音規制措置につきましては、御承知のように、昭和三十八年に日米合同委員会で合意しました規制がございまするし、さらにこれを昨年改定いたしまして、基地騒音規制につきましてできるだけの措置をはかっておる次第でございます。
  9. 相沢武彦

    相沢委員 エンジンテスト時間を二時間短縮するとか、あるいは高度五百メートル以上を守るとかという、いろいろなこまかいことが取りきめもされておるわけですが、なかなかそれが履行されてないのです。その履行されるようなチェックの機関等はありますか、御質問します。
  10. 山上信重

    山上政府委員 厚木と限りませんが、騒音防止のためには日米間に航空機騒音対策分科委員会というのが合同委員会下部機関としてございまして、これには日米代表が出席いたしまして地元要望その他を十分しんしゃくいたしまして、これらの騒音防止対策について実施をいたしておる次第でございます。  なお、基地周辺市町村には、これは厚木ばかりではございませんが、いろいろ地元問題等を意見を交換するために連絡協議会というものを設置いたしまして、これらによって民間とそれから政府及び米軍との間の種々そういった騒音問題等を含むいろいろな問題を現地において相談し合う機会、こういうものをつくっておる次第でございます。
  11. 相沢武彦

    相沢委員 いろいろ取りきめられてもまた機関があっても、それが効果ある実行がされなくては何にもならないと思うわけでありまして、各基地ごと日本政府役人とそれから地元代表を加え、そうしてさらに米国側と、こういう構成によるところの規制措置履行監視委員会、履行したことをチェックする機関を設ける必要があると思うのです。この点と、もう一つ基地周辺航空機騒音自動記録計、これを常時設置して政府測定体制を完備しなければならぬと思いますが、この点について御見解を承りたいと思います。
  12. 山上信重

    山上政府委員 規制監視の問題につきましては、ただいまお答え申し上げましたとおり、日米合同委員会のもとにありますところの騒音対策分科委員会、これを十分に活用いたしまして、われわれといたしましては、問題があるつどこの分科会で相当真剣に改善策を取り上げ、あるいは必要な場合に反省をうながすというようなこともいたしておりますし、また各基地ごとにそういった連絡協議会がございますから、これらの活用を十分はかることによって私は有効ではないかと思っております。  もう一つの問題といたしまして、いまの自動記録計の問題につきましては今後十分に検討してまいりたい、かように考えております。
  13. 相沢武彦

    相沢委員 もし新設しないのならば、既存の機関効果のある実行ができるように厳重なる指導体制あるいは申し入れ等を行なっていただきたいと思います。  次に、まことにこまかい問題ではございますが、地域住民にとっては非常に悩んでいる問題なのでお聞きするわけでありますが、昨年の五月十二日に防衛庁厚木期成同盟会等要望によりまして、エンジンテスト消音機が二基設置されておりますが、これが効果があったかどうか確認をされていますかどうかお聞きしたいと思います。
  14. 山上信重

    山上政府委員 厚木に設置いたしました消音機はいわゆる固定式消音機というものでございまするので、これは正規の仕様に従ってつくっておりまするし、したがって、これに消音機を用いて消音する場合には相当の効果があるというふうに考えておる次第でございます。
  15. 相沢武彦

    相沢委員 機械効能書きを見て効果あると思っておりますというのじゃ困るのです。付近住民が実際に困っている問題は、修理のときのエンジンテストでなくて、発進時のときのエンジンテスト騒音によって悩んでおるわけでありまして、せっかく三億円の予算で購入されたこの二基の機械はあまり地域住民騒音の悩みを解消していないということは、非常に予算のむだづかいみたいなことになってしまって残念だと思うのですが、この発進時のエンジンテスト音を防ぐための何かの対策はできていましょうか。
  16. 山上信重

    山上政府委員 いま先生が御指摘のように、この固定式消音機エンジンテストをやる場合で、列線に入った場合のときには、固定でございまするから活用できないわけなんで、かような場合に対処する方法といたしましては、いわゆる障害防止壁、ウォールというものをつくってはおりまするが、これがまだ十分ではないようにも考えておりまするし、移動式消音機というものがございませんので、列線に入っての消音ということが必ずしも十分でないと思っております。これらにつきましては、今後米側に対しましても十分改善方をいろいろ協議してまいりたい、かように考えている次第でございます。
  17. 相沢武彦

    相沢委員 防音壁を増加するとかあるいは高さを増すとか、そういった措置を今後もとり続けていただきたいと思うのです。  次に、基地に関して自治大臣関連質問でお願いしたいと思います。それは、基地外居住米軍駐留軍人あるいは軍属非課税によりますところの自治体の減収問題ですが、大和市に例をあげますと、基地外居住者約五千人になるそうでございます。これらの軍人軍属給与所得を基礎としまして市民税を推算いたしますと、総額で年間約八千六百万円になるわけです。現実にこういった人たちは市内には居住しているわけですから市民みたいなものなんですが、実際には減収という考え方になるのですね。ということは、たとえばその軍人軍属が住んでいるためにじんかい、汚物の処理、これは一般市民と同じ立場でやってあげなければならない。また車両の使用によるところのその市町村道道路の損耗を考えますと非常な負担になる。ですから、今後この種の減収に対しては同額まで財源補てん措置を講ずべきではないか、こう思うわけですが、自治大臣はこういった実態をわかっていらっしゃって大蔵省のほうに折衝されたことがあるのかないのか、この点をお聞きしたいと思います。
  18. 秋田大助

    秋田国務大臣 駐留軍人並びにその家族住民税がただいま非課税になっておりまして、そこで当該市町村財政上の影響を受けておることは事実でございますので、今回施設等所在市町村調整交付金なる制度を創設をいたしまして、これによって考慮をしていきたい、こう考えております。  なお、基地が所在することに伴ういろいろ特別の財政需要につきましては、特別交付税によって措置してまいりましたが、今後も同様に措置をしてまいりたいと考えております。
  19. 相沢武彦

    相沢委員 そうしますと、今回首相の意向で特別調整交付金三億円計上されておりますが、これはこういった財源補てんのことを考慮に入れた配分をするのでございますか。
  20. 秋田大助

    秋田国務大臣 さようでございます。
  21. 相沢武彦

    相沢委員 了解しました。  また、騒音障害の問題に帰りますが、この際、沖繩基地障害についても触れておきたいと思うのです。沖繩返還をめぐりまして、全軍労の雇用問題その他今後の産業開発等さまざまな問題が起きてはおりますが、基地公害もないがしろにできない大問題であると思うのです。基地面積だけでも沖繩における米軍基地の密度というものは本土米軍基地の二百十数倍にあたる。しかも、その機能多様性日本国内米軍基地の規模とは比べものにならないという実態が昨年の公明党沖繩基地点検によってはっきりとわかりました。したがいまして、沖繩住民基地公害影響度本土とは比較できないほどの大きいものがあるわけでございます。その対策についてはいまから考える必要があると思うのです。  ここで質問は、施設庁長官総理府長官にお願いしますが、七二年に返還されたときに、現在国内で適用されておる特損法あるいは基地周辺整備法、これを適用して本土並み援助措置をとるのかどうか、それから返還までの間に何らかの手だてはないものかどうか、これについてお考えがあるかどうかを承りたいと思います。
  22. 山中貞則

    山中国務大臣 復帰いたしましたら、御指摘法律は全部自動的に適用になるわけでございます。今日までも琉球政府におきましては、米軍援助費の中から基地周辺のそのような防音対策等に対する予算措置を細々講じてはいるようでありますが、昨年の七月に施設庁を中心にいたしまして現地調査団を派遣いたしまして、米軍資金のみでやっていたのでは復帰までにやはり気の毒である。ということは、御指摘にもありましたように、沖繩基地は特殊な形態でありまして、人間の住んでおる地域の中に基地がせり出してきておると申しますか、もともと人間がびっしり住んでいるところが基地に潜入されていたという形が普通の形のようになっておりまするから、基地そのもの周辺住民の範囲の中に入り込んでおるような感じでありまして、このままでいけないということになりまして、ことしの予算で、初めてでありますけれども、新規に八千五百万円予算をとりまして、最初嘉手納基地B52の常駐してたいへん迷惑をかけておる地域周辺の小学校、幼稚園、保養園等につきまして補助をいたしまして防音工事をやろうということに乗り出しました。あと復帰までわずかの間でございますので、なるべくそれらの周辺の人々が復帰のときに法律をともにするのはもちろんのことでありますが、その前に本土よりも基地騒音障害に泣くということのないように努力して、来年度も引き続きこれを広げてまいりたいと思います。
  23. 相沢武彦

    相沢委員 ただいま長官からお話がありましたように、沖繩基地のうちで特に騒音障害のひどいのは、嘉手納基地でございます。その実態について長官も十分御承知とは思いますが、嘉手納の村の八七%が米軍に接収されておりまして、残されたわずか一三%の狭い土地に約三千百世帯、一万五千余人の住民が住んでおります。戦後二十五年の間、嘉手納の村人は連日連夜爆音に悩まされておりまして、再三米軍司令官在日米国大使あるいは高等弁務官日琉政府関係者に対して善処方を要請はしておりますが、なかなか思うような解決をされていないということでございまして、特にベトナム戦争の激化に伴って、B52が常駐するようになってからは、その騒音はまさにもう殺人的なんですね。ですから、村民の生活を全く破壊していると言っても過言でないほどのひどさでございます。ここに嘉手納基地周辺ジェット機騒音調査表がございます。長官、ごらんになったことがございましょうか。これは、日常生活を破壊し、人体悪影響を与える強烈なジェット機爆音発生状況を調べ、爆音防止抜本的対策を訴える資料とする、こういった調査目的のもとに一九六八年の二月一日から二月二十九日までの間、爆音発生時刻と継続時間及び阻害音量を、二十四時間継続して調査された表でございます。これを一々読み上げると時間がかかりますので、私、まとめてみたんですが、この二十九日間に百ホン以上の騒音を浴びせられたのが二百六十三回、時間にしまして十三時間六分十一秒だそうであります。七十ホン以上になりますとこれは二千二百八十回、一日平均に直してみますと、七十八回、時間にして二時間五十五分三十三秒、約三時間。このホンの問題ですが、国立公衆衛生院のある生理衛生学部長は、五十ホン以上をこえると、生理的機能影響があることはもうはっきりしている、こういうわけですから、七十ホン以上あるいは百ホン以上のすごい騒音を浴びせられたら、その人体に与える影響は目に余るものがあると思うわけなんです。ですから、嘉手納基地周辺の子供さんたちの中には、耳の聞こえなくなった子供さん、あるいは頭の変になっちゃった子供さん、こういう痛ましい犠牲者が次々と出ているわけでありまして、日本政府も多少は考えて援助されているようでありますが、もっともっとこの騒音対策にはいまから力を入れていただきたい、こう思うわけなんです。  ここに騒音におびえる現地の子供さんの訴える声を収録した小冊子がございます。「B52 いますぐ出ていけ! 核基地におびえる子どもらの訴え」という本でございますが、この中に嘉手納学校三年生の安次嶺明美さんという子供さんが、騒音を雷さんになぞらえて、「雷さん」という詩をつくってございますので、抜粋してちょっと読んでみたいと思います。  嘉手納に雷さんが住んでいる  空で暴れ過ぎてつかれてしまったのか  地上が気にいってしまったのか  なかなか帰ろうとしない  雷さんは気が荒い  嘉手納の皆が  もう少し静かにしてくれと頼んだら  砂の風を吹かしたり  井戸を燃やしたり  雷さんはこわい  空と地上を、行ったり来たりするため  ものすごい音を出す。  私達はもう雷さんのヒステリックな声に  慣れきってしまった  感覚がまひしてしまったのか  雷さんが大声でどなっても  それに気ずかないことがある  ああ、私達は狂ってしまいそうだ  雷さん、空へ帰って下さい こういう詩でございます。まあいかに子供たち騒音障害におびえ、またからだにこたえているかという一つの実証だと思います。  公明党は、近く沖繩の総点検を実施することになっておりますが、これは沖繩施政権返還に至るまでの体制づくりと含めまして、沖繩の総合開発に関する長期ビジョンを立てることが現在重要な課題となっておるわけでございますが、そこで経済、社会、福祉あるいは教育、農漁業、生活環境などのあらゆる面の実態を正確につかむために行なうわけでございます。まあ政府当局としましても、準備委員会等が発足しておりますが、沖繩に対する正確な認識、実態の把握というものがなくては、現地に即応した援助あるいは開発計画が立たないのじゃないかと思うのです。そこでこの基地公害につきましても、政府みずからのもっともっと徹底した調査をお願いしたい。特に沖繩基地住民本土政府のあたたかい思いやり、その実行というものを望んでいるわけでございますから、ここで本土政府の思いやりあるあたたかい心を示す一つの具体的な実践活動として、沖繩基地における住民被害意識調査、そして特に児童の騒音障害によるところの身体調査等をおやりになって、いまから対策に着手されるようにしていただきたいと思うのですが、長官の御決意を承りたいと思います。
  24. 山中貞則

    山中国務大臣 愛知外務大臣が答弁いたしておりまするように、七二年には沖繩が日本に返ってくるかわりに、雷さんは空に帰っていくわけでありますから、B52は常駐はなくなる、沖繩にはいなくなるということで、その中学生の詩にも、先のことでありますけれども、雷さんは空に帰る日は近いということが言えると思うのです。ただそれまでの間に、やはり先ほど答弁いたしましたような措置が必要でありますから、ことに百ホン以上というのは確かに御指摘のとおりありますし、銀座の日比谷交差点ですか、あそこが大体ふだん六十五から七十ホンぐらいの最も騒音度を示すわけですけれども、百ホンというと、ちょっと自分たちでは感覚的にはわからないぐらいのひどいものだと思っています。そこで、いま住民のそのような被害実態調査、並びに、最も重点を置いて小中学校の生徒たちの、あるいは幼稚園の子供たちのそういう被害というものをもう少し立ち入って研究調査しろという御要求でありますので、特別の調査費等を用いなくとも、そういうことは、私ども沖繩政府援助費その他によってできると思いますから、当面緊急なこととして、来年度予算防音対策に幾ら要求するかということの前提にもなりますので、御提言はそのまま受け取って調査したいと思います。
  25. 相沢武彦

    相沢委員 ただいま長官B52の常駐はなくなるという問題、きょうは外交、防衛の問題に触れませんが、ぜひ決断力と行動力に富んだ張り切り大臣といわれている長官ですから、この沖繩基地障害問題について、ひとつ陣頭指揮によって、やっていただけることを期待したいと思います。  次に、交通安全対策の問題に移りたいと思うのでございますが、現代は交通戦争の時代といわれますように、昭和三十四年以来わが国におきましては、毎年一万人以上の交通事故死者を出しております。昨年は一万六千余人という、また負傷者の数は百万人をこえるという非常に悲しい記録をつくったわけでございまして、この交通安全対策は、緊急かつ重要な課題になっていると思うのでございます。交通行政は各省それぞれの分担がありまして、交通安全対策を中心にした交通事故撲滅には、所管を越えて、各省が緊密な連絡をとって、真剣に取り組んでいかなければならないと思います。  ここで、特に運輸大臣、国家公安委員長、総理府総務長官等にお尋ねをしていくわけでありますが、閣僚の中では特にこの御三人が関係深いのでございまして、その手腕と決断力によって、この交通戦争がさらに拡大されるか、あるいは鎮圧されるか、これがきまると思うのでございます。しかもその誠意、努力というものは、毎年のデータの上にはっきりと出てまいりますので、相当なる覚悟をして臨んでいただきたいと思うのです。  そこでまず、運輸大臣にお願いしたいのですが、就任以来当面の運輸行政につきまして検討された結果、八項目の緊急対策の方向を固められたという記事が出ておりました。その中に、交通事故と公害対策の項目がございました。そこで、大臣御自身の交通事故対策に対する具体案がありましたら、簡単明瞭にお願いします。
  26. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 交通事故対策はなかなかむずかしい問題でありまして、私、就任以来、これが少なくとも増加を食いとめるといいますか、ダウンさしたいというので、山中総務長官及び関係大臣とも相談いたしまして、積極的な対策を考えようではないか、それぞれ各省の仕事がありますからして、その面からもこれを実施していこうということで、まず私のところでは、御承知のように、運輸行政を担当いたしておりますからして、陸上、海上及び空と、まあ海、空、陸にわたっておるわけでありますが、最近、陸上の全体の事故数は毎年激増する傾向にある。その原因はいろいろあります。一つには、道路の面でいえば、道路が自動車の増加数に比例しておらない。あるいはまた、空の場合におきましても、もちろん、安全性は努力されておるわけでありまするが、いろいろの面において飛行場の整備等も不十分である。こういうことからして、まず自動車関係といたしましては、御承知のように、欠陥車対策あるいは公害研究所等を設置しまして、積極的にこれらの事故のまず予防措置を行なう。同時にまた、軌道等の事故が多いわけでありまするが、これに対しては、とにかく人間が増加し、また交通量が増大している事実は、これは見のがせません。だからして、これを頭から押えるわけにはまいりませんので、その原因となっておりまする、たとえば踏切等の問題につきましても、できるだけ予算の上においても立体交差を行なう、あるいは、設備の上においても、踏切の安全設備を行なう。こういうことを進めていく一方、なかなか予算的には十分にはまいりませんので、全国的に踏切の総点検を行ないまして、場所によって、私はその踏切の車両の通行どめを断行していいのではないか。道路等につきましては、山中長官からお話がありましょうから触れませんけれども、この際は、もちろん予算措置を行なうと同時に、一方においては、政治的にあるいは行政的に強力なる手段を用いる以外に道はない。そういうことによって、いやしくも人間の生命を尊重する、こういうたてまえから、積極的な行政を行なってまいりたいと考えておりまするが、具体的問題については、御質問があればそれにお答えしたいと思います。
  27. 相沢武彦

    相沢委員 運輸大臣に対する質問はあとに回しまして、次に、陸上交通安全施策の総合調整を主唱している総理府総務長官にお尋ねしたいのですが、ことしは昨年より陸上交通事故者を減少させる見通しがあるのかないのか、食いとめられるのか、あるいはふえていくのか、その見通しだけについてお答え願います。
  28. 山中貞則

    山中国務大臣 先般当委員会でも答弁をいたしておりますが、三つの点、七大都市、百万以上の都市における一方交通の徹底、並びにそれに準ずる八十万以上の都市あたりを含めた幹線道路の右折を徹底的に禁止する手段、さらに、裏通りの細街路に対する通行禁止、もしくは学童等の通学時間帯の通行禁止、あるいは買物客の殺到するような商店街細路や住宅街等については、時速をほぼ十キロ以下に制限をするという、いろいろな点を、まず第一段階として出発をいたしております。目標は、昭和五十年までに現在の累増する交通事故の現状を半減させるということを目標にいたしております。ことしを出発点といたしまして、昭和五十年までに半減させる。これは口頭禅のように聞こえるかもしれませんが、アメリカでは、これは結果論でありましょうが、一九三五年から一九五五年に至る二十年間に、実は、交通事故が半減しておるわけなんです。そこで、アメリカはこれをとらえて、一九六九年から十年かかってさらにこれを半減させようという努力を展開しているやに聞いておりますが、私ども、やはりこれに向かっては、勇敢に交通事故の絶滅、少なくとも半減——増加を食いとめることはもちろんのこと、六年後には半減させるというぐらいの大目標のもとに、次々と施策を打ち出していくべきではなかろうか。ことに、アメリカの交通事故の五〇%近くは車対車もしくは車自身でありますが、日本の場合は車対人あるいは車対自転車に乗っておる人間ということが五〇%近くを占めておるという現状から見ますと、アメリカでは車は走る棺おけであり、日本は走る凶器である。だから、この凶器から人命を守るということが、日本の交通対策の第一の出発点であろう、かように考えまして、先ほど申し上げました目標を掲げて、主として警察庁中心でありますけれども、各省庁足並みをそろえて前進を開始したばかりでございます。
  29. 相沢武彦

    相沢委員 五十年までに半減させる、このことばだけは絶対に忘れないでいきたいと思うのですが、次に、交通事故を取り締まる直接の所管庁である公安委員長に、同じ問題で決意だけをお聞きしたいと思います。
  30. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 大体いまの山中総務長官のお答えで一応尽きているように思うのですけれども、警察の立場からの課題をもう少し具体的に申し上げます。  いま話が出ましたように、歩行者、自転車運転者の死亡事故を大幅に減少させるということにも焦点を合わせていきたい。同時に、車対車、車単独の事故が現在増加の傾向にありますことを特に抑制するという見地に立って臨みたい。そういうことで、当面できる限り、多くの警察官を動員して、また、交通巡視員制度を新設いたしまして、街頭における交通監視体制を強化していきたい。交通安全施設等整備事業の第二次三カ年計画を実施して、補助事業四十六億円、府県単独事業二百三十一億円、合計二百七十七億円をもって、信号機、道路標識、道路標示の整備をはかっていきたい。住宅地域などいわゆる裏通りにおける一時停止、一方通行などの交通規制をさらに拡大して、歩行者等の安全をはかるとともに、地方公共団体を中心とした地域交通安全活動や、事業所、団体等組織における交通安全教育が積極的に行なわれるよう助言、協力するなどをいたしまして、交通安全に関する国民運動の展開をはかり、また、免許更新時に講習等の充実につとめまして、運転者対策を推進していっておるのであります。  今日の交通事故の増勢を防止するためには、もとより警察だけで施策を推進すれば足りるというものではございませんで、関係機関、団体等が協力して、総合的な施策を有効適切に推進することといたし、さらに、国民の一人一人が交通安全についての認識を深め、正しい交通方法の実現につとめることが特に根本的に重大である、かように考えております。
  31. 相沢武彦

    相沢委員 各大臣からいろいろ御答弁があったわけでございますが、私は、交通事故防止のための対策は、いろいろな観点から講じられ、考えられると思いますが、一つの観点として、事故原因の科学的な解明がされなくては、真の防止対策は立てられない、このように思うわけなんです。交通災害というのは、陸上事故、海上事故、航空事故と、こうありますが、どの分野におきましても、まだまだ事故原因の科学的究明という分野については未開発、力が入っていないんじゃないかという気がするわけです。  陸上事故につきまして考えますと、ここに昭和四十四年度版「陸上における交通事故 その現状と対策」というのが総理府から出されております。ここに警察庁の資料で「事故原因別発生件数」という一覧表がございますが、これは酔っぱらい運転あるいは無免許運転と、ずっと区分がございまして、法律違反の分類を出した件数別のものでございます。今後交通事故が発生する背景には、いろいろな複雑な要因がからみ合っているわけでございますから、心理学上から見たドライバーの精神状態、あるいは生活環境と疲労度といったような医学的な見地からの追及、あるいは道路構造上、あるいは環境、照明、いろいろな角度からの科学的な事故分析をする必要があるのじゃないか、こう思います。これにも出ておりますが、昭和四十一年度から特別研究促進調整費による交通事故防止に関する研究が行なわれているようでございますが、もっともっと今後この面に意欲的に取り組まなければならないんじゃないか、こう思います。交通事故防止に関する調査研究費、これは今年度一億八千三百万円、昨年より六千八百万円減っているわけですが、こういった面の予算の問題、あるいは研究機関、現在で十分と思うかどうか、もっともっとこれに力を入れるかどうか、総理府長官からお答えをいただきたいと思います。
  32. 山中貞則

    山中国務大臣 私の役所は実施官庁ではございませんので、そのような書類をまとめたりなどはいたしますが、その具体的な構想あるいは今後どういう形でやっていくか等については、所轄官庁のほうからの答弁にかえてほしいと思います。
  33. 相沢武彦

    相沢委員 具体例で今度聞いてまいります。  海上事故を見ましてもそうですが、昨年一月以来あまりにも大型船舶の沈没事故が続き過ぎております。同じころの季節、しかも同じ北太平洋の海域で四件も起きたということは、世界に誇ってきた日本造船技術の面目を失する残念な事件だと思うのです。今回試験航海を行なって、船体構造の上、また気象、海象関係もあわせて科学的な原因追及を行なうそうでございますが、ぜひおざなりな調査に終わらないように、徹底してやっていただきたい。この点に対する運輸大臣の御決意を承りたいと思います。
  34. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 御質問のとおり、本州の東方海域で約一年間に大型船の四隻の遭難があったわけでありまして、まことに遺憾に存ずる次第であります。  この原因究明につきましては、法律上海難審判庁において原因を徹底的に検討するわけでありますが、せんだっての「かりふおるにや丸」の遭難事故にかんがみまして、海難審判庁で原因究明を積極的に進めると同時に、運輸省の中で大型専用船海難特別調査委員会というものを専門家をもってつくりまして、とりあえず大型船のこういうような事故の発生はどこにあるのか。もちろん、これは気象、海象その他船の構造の問題及び航行等の技術の問題等、いろいろあると思いまするが、いずれにせよ大型船に対して総点検を行なおうということで、この特別調査委員会を設置いたしますと同時に、運輸大臣の名において、大体二百メートル以上の大型船に対しては、直ちに実際上の総点検——ただ見るというだけじゃなく、構造等についてその後の状況を調べるという措置を行なって、現在やっておるわけであります。三月一ぱいには大体六割程度を終了して、これはまあ就航しておりますから、帰ってきた船を調べるということになりますので、全部を終わるのには五月一ぱいかかりますけれども、早急にまず構造の方面から総点検を行なう、そういう措置をとっておるわけであります。ただ問題は、もちろん国際的な技術標準に従って船をつくっておりますから、原則論からいえば構造云々の問題はいろいろの議論があると思いますけれども、その国際的な基準に従って造船が行なわれているわけなのであります。  ただいま相沢さんから御質問があったように、日本は世界第一の造船国である、その日本でつくった船がこのような事件を起こすということは、日本の名誉のためにもこれは考えざるを得ない。そういう意味において十分に構造上の問題については今後追及をいたしてまいりますと同時に、ただ、本州東方の海域のある一定地域においてこの大型船の遭難が起きたということには、構造上の問題とともに、気象、海象等の問題もあるいはあるのではなかろうか。自然の力というものはわれわれの経験を越えて御承知のように大きな力を発揮するものでありますから、いわゆる三角波との関係、気象における変化と、海象においてそれにどういう変化をもたらしておるのか、そういうような総合立体的な調査をも含めて現在これが進行中であります。われわれは日本の名誉のためにこのようなことが再びないよう最善の措置を講じて海難防止につとめたい、かように考えておる次第であります。
  35. 相沢武彦

    相沢委員 運輸省の船舶技術研究所における研究ということで書いてあるのですが、陸上交通の事故防止をはかるためにいろいろ研究されているとあるのです。いわゆる船舶の事故防止の科学的な研究所というものはありましょうか、また今後もっともっとそれを強化するお考えがあるかどうか承りたいと思います。
  36. 内村信行

    ○内村説明員 御答弁申し上げます。  船舶についての研究でございますけれども、現在運輸省には研究所といたしまして、船舶技術研究所、それから港湾技術研究所、電子航法研究所、あるいは気象研究所、それから交通安全工学研究所といったような研究所がございます。その中で海に関するものといたしましては、船舶技術研究所を主体といたしまして、あるいは港湾技術研究所でありますとか、あるいは電子航法研究所、気象研究所、そういったものでそれぞれの研究をいたしておりますが、そういうものを総合的に取りまとめて研究いたしたい、こう考えております。
  37. 相沢武彦

    相沢委員 運輸大臣もこういった研究所に対して、もっともっと研究の分野を進めるような督励をお願いしておきたいと思うのです。  次に、航空事故の問題に移りまして、四十一年の二月四日羽田沖で墜落した全日空ボーイング727の事故原因技術調査団の問題についてです。この事故は百三十三人という多くのとうとい人命が失われた事件でありまして、現在全日空の補償額を不満とした遺族から民事訴訟等も起こされておりまして、非常に国民から成り行きが注目されておる事件であります。調査団員の一人である山名正夫委員が最終報告書の取りまとめ方を非難して運輸大臣に辞表を提出したことが二月三日付の各紙に発表されております。この記事を見ますと、航空局長らの慰留も拒否したそうでありますが、現在この辞表の取り扱いはどうなっておるのでありましょうか。
  38. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 この調査団一行は、まる四年間かかって、遭難機の原因調査を進めてまいったわけであります。その間におきましていろいろ意見が食い違っておるように聞いておりますが、私の手元まではまだ辞表は参っておりません。そうして最終的な報告もまだなされておりませんので、最終的な報告がありました場合において、これらをあわせて検討したい、かように考えております。
  39. 相沢武彦

    相沢委員 そうしますと、まだ正式な辞任にはなっておらないということですね。政府は、この事故原因の最終結論は、事故技術調査団の答申をもって、公表して、この事故原因の真因の追及はそれで打ち切るのでしょうか。その点のことはどうでしょうか。
  40. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 政府としましては、斯界の権威者をもって調査団を構成したのでありますから、この調査団報告があればそれをもって最終的に判断をしなければならぬ、かように考えております。
  41. 相沢武彦

    相沢委員 山名氏の辞意表明についての記事の中で私が最も関心を持って見たことは、最後の総会で結論を含む草案について賛否を述べるようにと言われたというところなんですが、事故調査報告書の形式というものは、調査、解析、結論、最終結論、こういうように項目が並んで、調査のたびごとに報告書を新しく書きかえて提出するそうでございますが、調査と解析の項目は個々の内容が少しずつ変わっていった、こういわれております。山名氏は専門分野の力学的論理の必然性を求めまして、理論とこれまでの経験の不足を新しい実験を重ねて補って、機体に何かの異常が起きたのではないかという推理を組み立てているわけで、そこで最終結論を出すにはもっと調査をすべきだという意見の方です。  そこで、お伺いしたいのですが、航空機の性能というものは日進月歩していくものですし、事故原因についてもこれまでの事例や経験の範囲を越えた種類の事故が起き得ると思うわけなんです。ですから、これまでの経験や事例を絶対条件にして判断してはならないと思うのでありまして、この山名氏の研究成果を何らかの機会に公表する——個人の自由を政府は関知しないと言われるかもしれませんが、とにかくかなり関心を呼んで、山名説を究明し、公表してほしい、こういう諸者の声もありますので、政府はこの航空機事故についての事故原因の解明に一そう徹底した姿勢で取り組んでほしいと思うわけでございます。そうすることが百三十三人にも及ぶとうとい犠牲者の霊に対するせめてもの慰め、償いになるんじゃないかと思いますので、この点についての大臣の御見解を承りたいと思います。
  42. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 文明を進めるということは、確かに科学文明に対する人類の挑戦であると思います、あるいは競争といってもよろしい。そういう意味におきまして、このような事故が起きた場合については、おっしゃるように、科学的追及はあくまでしなければならぬ。木村団長は、その意味におきましては、まる四年以上というような従来にない期間を費やして科学的な究明につとめたわけでありまして、山名委員の提案に対しても私は直接の報告を受けたわけじゃありませんけれども関係者の中間的な報告によれば、一年余にわたって、その推測によるところの理論につきましても、科学的分野も究明をいたした、かように聞いております。しかしながら、いろいろ誤解があってはなりませんので、おそらく、答申が行なわれる場合は、山名委員の提案にかかわるそれの研究等も十分に発表せられる、かように私は信じておる次第であります。
  43. 相沢武彦

    相沢委員 もう一つ運輸大臣に、これは注文したいことなんでございますが、四十二年の七月に、運輸省の航空局の中に航空事故調査課というのが設置されたそうでございます。専門家を置いているわけでございますが、大臣は、何人でやっていらっしゃるか御存じでございますか。
  44. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 従来兼務でやっておりましたものを、航空事故調査専門官というものを六名置きまして、その他なお十二名程度がこれらにかかわっておるわけであります。しかし、これで十分だとは考えません。ことに科学進歩のはなはだしいおりからでありますから、なお十分にこれらの施設及び人員等も強化していきたい、かように考えております。
  45. 相沢武彦

    相沢委員 物的な調査研究機関としては、科学技術庁に航空宇宙技術研究所等もありますし、防衛庁にもあるそうでございますが、やはり航空事故の直接の調査の係員としては、この事故調査課の専門家の方がかけ回るわけでございまして、航空局の事故調査の体制を諸外国に比べると非常に貧弱だと思うのですが、この際もっと人員を増加して強化するという決断を大臣としてはとられる意思があるかどうか。
  46. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 仰せのとおり、まことに十分じゃありません。これは本年度の予算では間に合いかねますが、しかし、本年度の予算におきましてもできるだけの措置は講じておりますが、御承知のようにジャンボ、近くはSST等の超スピードの飛行機が参りますからして、全国の主要飛行場に対しては、ある意味においては専門家も配置する必要もありますし、将来の事故のためのいわゆる訓練等も必要でありますから、次年度におきましてはなお一そうの力を込めて航空上の安全を確保したい、かように考えております。
  47. 相沢武彦

    相沢委員 いま大臣がおっしゃったように、ジャンボであるとかあるいはその他陸上列車、いろいろな交通機関網が、船にしても飛行機にしても列車にしても、ますますスピードアップされるし大型化される、それだけに一たん事故が起きれば一瞬にして多くの人命が失われるという危険性を伴うのでありまして、やはりこれに対する事故防止のための事故原因の解明をした上で真の事故対策を講ずるということは、非常に重要な課題になると思いますので、一そう御努力をお願いしたいと思うわけでございます。  次に、現在の交通安全対策の欠陥は、各行政体制のばらばらな点にあるということをよくいわれておりまして、政府でもこの点は、行政対策の一本化を考え始め、各省連携を緊密にして今後努力がなされていくと思いますが、確かに交通安全に対する総合的な見地に立った一貫性のある対策に欠けていたことが、どれほど交通災害を増大させているかしれないと思うのです。  これは建設省の関係だと思いますが、具体例をあげますと、中央高速道路に一貫性のなさ、見通しの甘さが端的にあらわれていると思うのです。中央高速道路は四十二年の十二月、調布から八王子がまず四車線で開始されまして、四十三年の十二月、八王子から相模湖二車線開通、四十四年三月、相模湖から河口湖まで二車線開通、こうなっております。開通後予想外の利用車両の増加、事故件数の発生に驚きまして、中央分離帯のない二車線から四車線へ切りかえ工事をやることになったわけでございますが、建設省は当初一日平均七千台を予想したといわれるのですが、たちまちこれが一万台を突破した。現在休日には一万七、八千台が利用している。そうしたところが、事故が頻発するので、昨年の八月に追加四車線工事を申請した、こういうわけですが、当初の見通しに甘さがあったと思うのですけれども、この点いかがでございますか。
  48. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 御指摘のとおり、中央道建設当時は、これほどの多量の車両が集中するとは考えていなかったようです。高速道路が開通して六カ月目の調査によりまして、いま御指摘のように、最初一日六千台と想定しておったのが、一万二千台になっておる。現在では祭日等は二万台か、大体そこまでなっておるという状況でございまして、その点は明らかに建設当時の想定は、現実に起こっておる情勢から見れば、たいへん甘かったというか、予想が低かったということは、はっきり申し上げなければならぬことだと思います。
  49. 相沢武彦

    相沢委員 そこで、中央高速道路開通後今日までの事故件数のデータについて大臣は御存じでございましょうか。
  50. 蓑輪健二郎

    ○蓑輪政府委員 現在、私の手元の資料を見ますと、中央高速道路として四百五十二名の死傷者を出しております。そのうち、調布−八王子間が六十四名に対しまして、八王子−河口湖間が三百八十八名というような、非常に大きな数字になっております。
  51. 相沢武彦

    相沢委員 私が警察庁交通局からいただいた資料によりますと、昭和四十二年の開通以来、四十二年度の発生件数が十四件で死亡ゼロ、四十三年度は百十六件で死亡二名、四十四年度が発生件数五百三十、死者二十九名、開通以来の発生件数六百六十で三十一名。四十四年度が急激にふえているわけです。事故件数、死者が。  用地は初めから四車線分取得されていたそうですが、最初から四車線の道路工事をしようという計画はなかったのでしょうね。もし最初から四車線で開通されたら、これだけの多くの死傷者を出さなくても済んだのじゃないか、こう思うわけです。これは政府所管官庁の見通しの甘さに大きな事故が生まれた責任があると思うのですが、この点についての御所見を承りたい。
  52. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 交通事故による死傷者の原因は、ドライバーのマナーもありますし、車そのものの問題もございますし、それから道路構造上の問題があると思います。その意味におきまして、御指摘のとおり、当初中央道はそれほどの車が入らないという見通しに立っておったものでございますから、その意味で特に二車線でこれは間に合うというふうな想定をしたことが実際と違っておったということでございまして、この点は見通しが誤ったと指摘されれば、そのとおりといわざるを得ないと思います。  そこで、現在は本年度予算から四車線にすると同時に、はっきりと分離帯もつけて、道路構造における事故原因をなくするという構想のもとに進めておる次第でございます。
  53. 相沢武彦

    相沢委員 追加四車線工事の計画では八王子—大月間四十四・六キロを四十八年をめどとして行なうことになっているというのですが、かなり期間があるわけです。この間まだ二車線で続くわけで、いろいろな事故原因は考えられますが、やはり二車線よりは四車線のほうが事故件数は減ると思うのですね、車対車がぶつかりませんから。  それともう一つは、工事費の問題を、みみっちいですが、考えてみたのです。四十年度と四十五年度の場合、道路工事費を対比しますと、どれぐらいの割り高になっておりましょうか、おわかりなればお知らせをいただきたいと思います。
  54. 蓑輪健二郎

    ○蓑輪政府委員 道路の工事費につきましては、用地の値上がりその他の値上がりで単価が上がってくると思います。ただ、なかなか同じ道路を次の年やったら幾らというような統計はございませんが、大体私たち考えておりますのは四、五%くらいの増加ではないかと思います。ただ年々道路の規格を非常によくしておりますので、その規格の増の分とほんとうの単価の増の分、なかなかこれが分離できないものでございまして、はっきりしたことをちょっと言えませんが、常識的にいうと、やはりいま言ったような数字ではないかというふうに考えております。
  55. 相沢武彦

    相沢委員 いろいろな点から考えられておりますが、やはり年々工事費はいろいろな角度で高くなっていると思うのです。こういった資材や人件費の値上がりから考えますと、やはり二重投資みたいなことも感じられるわけですが、そういったことで、今後かなり長期的な見通しを持った道路工事計画というものを立てるべきであると思いますが、その点についてもう一回建設大臣からお話を伺いたいと思います。
  56. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 御指摘のとおり、二重投資になるようなことは、これは厳に慎まなければならぬと思っております。そこで、建設省といたしましては、国道、特に高速自動車道路につきましては、今後の日本経済の発展に伴う車両の相当の増加と、それから高速道を利用するコンテナ等の発達を予想しますれば、相当構造上の質の向上をはからなければならぬ、かように思っております。そういう観点からして、そういう点を配慮するとともに、一般道路につきましても、これはかなりの質的向上をはからなきゃならないと思いまして、近く道路構造令を改正いたしまして、それにこたえるつもりでございます。  なおまた、これには相当の道路予算が必要でございますので、昭和四十五年を起点とする道路五カ年計画を改定いたしまして、十兆三千五百億の長期計画を立て、さらにそれに対する特定財源もこれは来年度予算編成までにははっきりと確定してもらうということで大蔵大臣にも申し入れ、それを進めておるものであります。さらに、国家資金だけではなかなか道路の需要にこたえることができませんので、今度は地方道路公社法案を制定していただきまして、これによりまして民間資金、民間の能力を十分に活用してまいりたい、かように思っておる次第でございます。
  57. 相沢武彦

    相沢委員 問題を移しまして、交通事故者の中でも特に痛ましい犠牲者は、いたいけな幼児、児童の事故だと思うのですが、お見受けしたところ、文部大臣はいよいよ出番が来たような態勢を整えておりますので、昨年の交通事故による死亡者のうち、義務教育児童の死者が何人にのぼっているのか、もし文部大臣がおわかりならば御返答いただきたいと思います。——けっこうです。国家公安委員長から正確な数字を発表していただきたいと思います。さらに、この児童の事故者が年々減少の方向に進んでいるのか、あるいは増加しているのかもあわせて御返答賜わりたいと思います。公安委員長にお願いいたします。
  58. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。  昭和四十四年中における中学生以下の子供の交通事故による被害者は、死者約一千九百人であります。四十三年に比べて約八%の増加を示しております。また、負傷者数は、四十四年度約十一万四千五百人で、その前年に比べて約一二%の増加を示しております。  このような事故の減少をはかるために、警察としましては、教育委員会、学校等と協力して、子供の年齢層に応じて、自転車の正しい乗り方教室、子供の交通教室などを開設いたしまして、実地指導を通じて交通安全に関する知識の普及をはかるほか、各種広報活動の推進に今後一そうつとめてまいりたいと思います。また交通の現場においては、例年四月に実施しております子供を交通事故から守る運動、その他の機会をとらえまして、通学、通園路に警察官を配置して事故の防止をはかるとともに、いわゆる裏通りにおける交通規制の強化につとめ、また子供の安全な遊び場を確保するための交通規制を実施して、昨年の夏休み期間中は全国で四百十カ所の遊び場を設けたところであります。今後もこのような方向で臨んでいきたいと存じております。
  59. 相沢武彦

    相沢委員 文部大臣にお尋ねしますが、いまの発表のように、一昨年に比べますと、死亡者で八%、それから負傷者で一二%も学童の交通事故死傷者がふえておるわけですが、こういう事態に対して文部大臣自身が関係各省に、いわゆる児童の交通事故対策あるいは減少について申し入れをしたことがございますか。
  60. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 児童の死者あるいは負傷者というのがだんだんふえておるということはまことに遺憾なことでございまして、関係各省と連絡をとりつつ、この撲滅という目標に向かっていかなければならぬことは申すまでもないことでございます。これで見ますと、七歳から十二歳までが五百十六人、十三歳から十五歳までが二百十三人、それから六歳以下が千三百七人というふうになっておる。これは四十四年一月から十二月までの統計でございまして、就学前の子供たちに非常に多いということが一つの特徴かと思うので、私たちでは、たとえば小学校、中学校の教科の保健においては「事故災害とその防止」の中で、特に交通安全を重視して指導をいたしております。また幼稚園につきましては、幼稚園に参りますとき、あるいは帰りますときを含めまして、安全教育の徹底をはかっておるわけでございます。  実践的な指導といたしましては、小学校、中学校におきましては、学校行事等に時間を設けまして、その徹底をはかっておるわけでございますが、ちょうど昭和四十二年に御案内の「交通安全指導の手びき」という、非常に詳しく具体的にいたしました手引き書をつくりまして、これを全部に配布すると同時に、この指導に当たっておる。ことに小学校、中学校の心身の発展段階に応じたこまかな具体的な指導をやっておるということでございます。それから、幼児につきましては、特に家庭の両親あるいはPTAその他におきまして、その指導の徹底をはかっておる。  それからまたもう一つは、学校の中に安全センターをつくりまして、まだこれも全国的に見ますると非常に少ない数ではございますけれども、たとえば四十四年度四十八カ所、四十五年度には四十六カ所安全センターを設けまして、実際の訓練をいたすようにしておる次第でございます。
  61. 相沢武彦

    相沢委員 確かに交通安全対策はいろいろ考えられまして、安全施設の拡大とかあるいは交通取り締まりの規則の強化、こういうことも大事でありますが、事故防止の大きなきめ手として交通安全教育に抜本的な検討を加える時期が来ておる、こういわれております。特にいまも大臣がおっしゃったように、幼児から小学校、中学校生徒に対してまで交通安全教育という資本投下がどうしても必要になってきておると思うのです。一月二十七日ですか閣僚会議で、小中学校生の人格形成過程から一般学科と同じように交通道徳の教育を施すべきである、新学期から取り上げるよう要望する、こういう記事が出ておりましたが、これ以降大臣のところで具体的な案でも立てられましたでしょうか。そのことについてお聞きしたいと思います。
  62. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 この問題は、この前の、御指摘の閣議におきましていろいろ話が出まして、一応総務長官のところでまとめて協議をして進めていく、実施に移っていくということになっておる次第でございます。
  63. 相沢武彦

    相沢委員 そうしますと、全部総務長官のほうにまかせきりで、文部大臣としては何もお考えにならないということでございますか。もう一ぺんお聞きします。
  64. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 一応調整的な意味におきまして、あるいは全体的な計画のもとにおいてこの交通事故防止ということをやらなければいけないわけでございまして、教育の部面につきましては、私のところでやりたいと考えております。
  65. 山中貞則

    山中国務大臣 その問題ずばりではございませんが、いろいろな教育の場所あるいは家庭のしつけというようなことに関係がありますわけで、昔なら外で遊んでいらっしゃいとよく親は言ったものですけれども、いまは外で遊んでいらっしゃいと子供に言えない社会環境を持っているということは、われわれはたいへん残念なことだと思います。そのことによって先ほどのような対策も、通学路については時間帯を設けて禁止等をやろうといっておるわけでありますが、いままで大体春秋二回の交通安全週間を、惰性のように五月にやっておりましたのを、今回はそのようなことも配慮いたしまして、四月の、入学児、入園児等が新しく通い始める時期と符節を合わせまして、交通安全週間というものを設けまして、一カ月繰り上げてそういうことに対応してみたいという企画もすでに定めております。
  66. 相沢武彦

    相沢委員 最近、生涯教育ということもいわれておるわけでございますが、交通問題を教育の観点から考えますと、交通道徳あるいは交通マナーというものは、今後の高度文明社会に生きていく現代人にとっては必要欠くべからざる生涯教育だと思うのです。今後ますます交通網が発達するでしょうし、また自動車等も普及してくるのですから、子供から老人に至るまで、すべての人にとって交通教育、交通マナーというものは人生の必須科目じゃないか、こう思います。  そこで、幼稚園から小学校、中学校に至るまで、総合的かつ統一的な交通安全教育のカリキュラムをつくって実施をすべきだ、しかも単に交通事故にあわないためだけの消極的な教育じゃなくて、少なくとも十歳から十五歳までの生徒に対しては、自転車を使用して規律ある運転者としてのしつけも行なう。自分はもちろん、他人にもたらす危険も教える、将来自分が車を運転する場合の責任を自覚させる、こういうようにしていくことが必要だと思うのです。現在、運転手の方は全部学校を卒業してから運転技術を学び、免許をとるわけですが、ちまたで無暴運転をしている若い青年たち、この人たちは、技術は学んだかもしれないけれども、交通道徳は身につかなかったという何よりの証拠だと思うのです。欠陥車の問題が昨年は非常に取り上げられましたけれども、どんなに車を安全にしても、性格的に欠陥のある人が運転したら、これは欠陥車と変わらないということでございまして、欠陥人が運転すれば走る凶器そのものでございます。そこで、どうしても幼少から交通安全に対する認識、歩行者、運転者としての権利、義務、責任というものを身につけさせておくことが大事だと思うわけなんです。たとえば週に一時間程度の教育でもけっこうですから、中学を卒業するときには、あとは専門的な交通規則、運転技術をマスターすれば免許を与えてもよいぐらいに、交通安全教育というものを、幼稚園、小学校、中学校、一貫して実施をすべきだと思いますが、この点についての文部大臣の御意見はいかがですか。
  67. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 交通週間等で、私、生徒児童あるいは先生方と座談会をやったようなこともございます。そうしますと、生徒たちが申しますのは、われわれ生徒たちよりもむしろおとなのほうが交通道徳を守らないんだという声が非常に強いので、かなり小中校におきましては、まだ十分だとは申しませんけれども、徹底した指導と教育が行なわれておるというふうに思います。  したがいまして、小学校の一年、二年につきましては、たとえば歩行、横断等の基本的な行動を反復訓練して身につけさせることを中心とし、三年、四年につきましてはその上に危険の予知、判断、自主的な行動等がとれるように指導し、五年、六年につきましては事故原因、予防のしかた等を理解させるとともに、身につけることを正しく実践させる意欲、自分の安全のほかに、いまおっしゃいました他人の安全についても考えさせることを指導し、中学校におきましては、複雑な条件下において交通の流れを妨げないように正しく行動することを指導するとともに、交通法規その他将来の運転者としての基礎的な指導を行なうこととしておるということで、大体こういうような基本的な考え方でもっていま進めておるということであります。
  68. 相沢武彦

    相沢委員 いまお話に出ましたけれども、いわゆる地域社会における交通安全教育の問題が出ました。確かに交通マナー、交通道徳が一番低いのは家庭の主婦だ、こういうふうにいわれておるわけなんですが、それじゃ交通災害に対して関心を持っていないかというと、そうではないのですね。各機関地域の社会の交通安全教育あるいはいろいろな催しがありますけれども、なかなか集まらない、思うような成果があがらない。聞く機会がないということ、また催しがあっても、会合まで出向いて話を聞いたり何かするのはおっくうだ、こういうことで、私たちは地域社会、特に婦人を対象に交通安全教育、交通道徳、マナーというものを浸透させるためには今後やはりテレビなんかを活用したらどうかと思うのです。それぐらいマスコミ界に働きかけていただいて、効果のあるようなことを考える必要があるのではないか。ですから、子供が学校で学んできて親に話す、親もまたそういったものから知識を得て子供たちと話し合っていく、いわゆる家族ぐるみ、地域社会ぐるみ、こういった所轄官庁がそれこそ総合的な交通安全対策を考えなければ、この事故防止はできないというように思いますが、総務長官関係でありますか、マスコミに対する働きかけ、特にテレビ活用ということによる婦人層に対する交通道徳の浸透という点について御意見を承りたいと思います。
  69. 山中貞則

    山中国務大臣 いまNHKが自発的に、当然でありますけれども、公共放送として、スポンサーなしでスポット的にある交通の状況を映して、ぱっととめて、あっ、あぶないというようなあれを見せながら、横断歩道は正しく渡りましょうとかやってくれております。これは公共放送でありますから、自発的にやってくれておるNHKの放送だと思うのでありますが、これ以外にも民間放送その他の御協力を得て、そして交通安全思想というものが家庭の茶の間から目で入ってくるということは、どのように効果が大きいかは、たとえば指名手配の犯人が警察の全国捜査網では何日も逃げ延びても、テレビに出たら一ぺんにつかまってしまうということがここ二、三回出ておりますように、相当な威力が発揮されると思いますので、そこらの点はまだ具体的な構想を持っておりませんので、ただいまのお話をヒントにしてこれから少し検討してみまして、場合によってはそのような方向に予算を使ってみようかとも考えます。
  70. 相沢武彦

    相沢委員 ずっと各大臣に交通安全対策の問題で御答弁いただいたのですが、まだまだ熱意が乏しいという気がするわけなんです。失礼ですが、お並びの各閣僚の中で家族が交通事故にあわれた経験のある方がいらっしゃいましたらちょっと合い図をしていただきたいと思います。——それは非常にお気の毒だと思います。きのうも私、ある局長さんにお会いしましたら、奥さんがむちうち症になりまして、なかなかなおらない。しかも冬季間は非常にぐあいが悪くなって、その局長さん、朝早くから起きて家の中をあたためてあげなければならないというようなことで、非常に難儀をされておる。その弁償の交渉にしても、相手もまた気の毒な家庭の方、こういうわけで、交通災害問題というものは非常に不幸をもたらすものなんですね。私ども国政に携わる者として、毎日の死傷者の数を聞くたびに胸を痛め、またえりを正して交通災害絶滅へ異常な努力を払っていかなければならないと考えるわけなんです。  私、昭和三十五年から四十四年度まで、陸、海、空別の交通事故の件数と死者を調べてみましたら、空ではこの十年間に事故件数四百十件、死者五百四十七名、海では救助を求めて連絡があった発生件数では三万三十六隻、行くえ不明及び死者が六千四百三十一人にのぼっておりますし、陸上では死者十三万二千五百三人、負傷者五百六万五千七百六十一人、膨大な数にのぼっておるわけでございます。自衛隊の場合は万一他国からの侵略に備えて防衛力を増していくというわけですが、それよりもまず国内における交通戦争による戦死者、これをなくすことに全閣僚、また私どもが全力をあげなければならないと思うのです。ともかくこの交通災害撲滅の一大国民運動を展開しなければならない時期に来ていると思います。  そこで、この交通災害撲滅国民推進本部を設置して、佐藤総理大臣を本部長に、各大臣が推進副本部長、こういうわけで国民総ぐるみの運動までに盛り上げるべきではないか、こういうふうに考えますが、ひとつ運輸大臣からでもぜひこの趣旨を総理大臣にお伝え願いたい。このことをお願いしまして、質問を終わりたいと思います。
  71. 中野四郎

    中野委員長 これにて相沢君の質疑は終了いたしました。  次に、小林信一君。
  72. 小林信一

    小林(信)委員 私は、総理大臣の施政方針の中で教育問題が非常に強く取り上げられましたが、これについて大体私の考えを申し上げながら政府の意見をお聞きしようと思うのですが、公安委員長がお急ぎのようでございますので、公安委員長に一言、あとでお聞きしようと思った問題でありますが、お聞きしてまいります。  それは、プロ野球に生まれました不祥事の問題でございます。野球の問題につきましては、近年日本のこれに対する熱意というのか愛好というのか、非常に高まってきておりまして、ことに高校野球等の中ではかなり若い青少年に対して興味を持たせると同時に、あの母校の名誉とかあるいは若い人たちの情熱、そういうものを傾けての戦いというふうなものは非常にいい影響を与えておると思います。しかし、私が常にこの問題で心配しておったものが、——そういう点ではアメリカあたりは非常に進んだ国なんですが、これが単に愛好でなくてギャンブルの対象になるというふうなことが多く見られております。日本の野球に対する愛好あるいは熱情というふうなものがそういうものにいつやられるか、やられないように、これは国民全体が守っていかなければならぬことなんですが、どうして守っていくかということで心配しておったのですが、やはり日本にもそういう事実があらわれたということは非常に残念なことなんです。これは青少年に与える点からも、政治の中でも十分注意をしていかなければならないと思うのです。その点、特に関係を持っておるのは文部省でございますので、文部大臣から詳しく承りたいのですが、陰に暴力団と選手との関係というふうなものがあるとか、あるいはこういうものを賭博的なものであやつるというふうな、そういう社会悪というものが生まれてくるわけなんですが、こういう点に対して公安委員長としてこの一つの問題からどんなお考えを持っておいでになるか、一言お聞きし、今後公安委員長の責任というような面からも私は十分意を用いていただかなければならぬと思うのですが、その御所見をまず承りたいと思います。
  73. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お話しの点は、私は新聞でしか存じませんけれども、伝えるがごとくんば、陰に暴力団がいて選手を引っぱり込んで八百長をやってということが問題の主眼点のようであります。お話しのように暴力団そのものが野球と結びつこうと結びつくまいと、無法者の集団であり、不法行為を犯すおそれのある集団として常に注目いたしておるところでありまして、犯罪を犯すことがあるなら、むろん容赦すべきではない。同時に、プロ野球の選手をおそらく当初は脅迫して引っぱり込んだんじゃないかと推察されますけれども、やはりその裏には犯罪がある。暴力をはじめとする犯罪を犯すものとして今後も徹底的に取り締まっていくべきことも当然と思い、また御心配のように、私もテレビ野球ファンでございますが、その陰にそういういまわしさがあるとなれば、興味半減となるどころかゼロになることをおそれる一人でもあります。  そういう点は別といたしまして、いずれにしろ、そういう忌まわしいことの起こりませんように、今後もさらに一そうの取り締まりをやっていきたいと存じます。
  74. 小林信一

    小林(信)委員 お忙しいようでございますので、その問題はあとで文部大臣からお聞きすることにいたして、本論へ入っていきたいと思うのです。  総理大臣の施政方針演説について私は私の意見を申し上げたいのですが、総理大臣もいないし、きのうは官房長官のほうから、どういう質問をするかというようなことで、官房長官が代理に立ってくれるような様子でした。したがって、懇切丁寧に私の質問要項を申し上げておいたところ、またどうも都合が悪いから出られないというようなことでございまして、私も目標がございませんから、文部大臣は当然教育担当者であるのですが、私の考えは、教育は文部大臣にまかせろというふうな気持ちがどうも閣僚にあって、そのために私たちの教育に対する問題点がたくさん生まれてくるような気がするわけです。したがって、きょうはやがて総理にもなるといわれております大蔵大臣もおられますから、大蔵大臣をひとつ閣僚全体の代表者にして、私は質問申し上げたいと思うのです。  御承知のように、総理は今回の施政方針演説の中では、教育問題を非常に重視されて演説をされました。第一番、内政の問題の第一として民主主義を取り上げられたのですが、この民主主義擁護という問題も何かただ政治の責任だけにしかおっしゃっておられないのです。私はやっぱりこの問題ももっと教育を通しての民主主義擁護ということを教育的に考えていくべきじゃないかという一つの意見もあったわけです。それに続きまして教育問題が取り上げられました。確かに教育に対する熱意は十分うかがえるのですが、しかし、その演説をされる論旨あるいはその一つ一つの問題点というふうなものでは、もっと総理大臣みずから教育に対して理解を深めていかなければいけない。そして教育というのは学校とかあるいは先生とか文部省とかということでなく、われわれ人間は、もう後輩に対しては先生であり、教師であり、教育者であるというぐらいの考えを持たなければ、ほんとうに教育の水準というものは上がっていかないと思うのです。そういう意味では総理大臣なんかは最大の教育者であるという考えで、いま教育の問題は何だということをもっとしっかりつかまえなければいけないという気が私はしたのです。  と申しますのは、いま日本の教育に関心のある者はもちろんでありますが、ことに中教審の中間報告にもその点が強く取り上げられておりますし、先日参りましたOECDの教育調査団もこの点を強く指摘しております。もちろん現場の先生たちはこのことを特に意識して今日教育に当たっておるように私は思います。その点、日本の教育はことに経済成長を気にして非常に功利的に走り過ぎておる。そういう中から人間形成というふうなことが最近強くいわれるようになってきておると思うのです。その功利的に動き過ぎておる、走り過ぎておる教育、これがいま教育に対する一番の重大な問題だと思うのですが、そういう点に総理が強く触れない、意識しない、そういう教育観に立っているところが、私は非常に残念に思うわけです。  そこで、総理の演説を総括してみれば、いまの経済成長は教育を基盤にして行なわれたものであるというふうに、非常に教育に対してその協力を感謝しているわけなんです。この点をもし総理がそういうふうに考えておるとするならば、もっと教育優先の教育行政が行なわるべきじゃないか。実際において父兄の負担というふうなものを犠牲にして教育がなされておる。せめて父兄負担の軽減とか、あるいは法律制度の中できめてあるけれども、当分の間やらないというふうなことでもってとめられている問題等を一日も早く解除していかなければいかぬと思うのですが、教育優先の政策というものは、残念ながらないような気が私にはいたします。     〔委員長退席、藤枝委員長代理着席〕 そうして、いま総理は、教育の内容と教育の制度を検討し直す時期ではないかということを言っています。要するに教育制度を変える、教育内容を変えるということだと思いますが、それの根拠は何にあるかというと、社会構造が変化したから、国際化の時代になってきたからというふうなことで理由を言っております。もっと日本の現実あるいは教育の課程、そういうものからこうしなければならないのだというのならばとにかくですが、社会構造が変化したから教育も変えていかなければいけないのだ、制度を変えていかなければいけないのだ、あるいは国際化時代に入ったから制度を変えていかなければならぬというふうなことでは、私はほんとうに一貫した教育観を持っておらないというふうにも指摘をしなければならないと思うのです。  そうして、その内容について多少言っておりますけれども、依然として学校教育の責任あるいは家庭のしつけの問題というふうなことが取り上げられておりますが、先ほど申しました閣僚の諸公が、それぞれの担当する問題はもちろんでございますが、それをいかに教育と結びつけるかというぐらいに、社会全体が教育に対しての関心とか考え方とかいうものを持たなければ、私はこれ以上水準を上げていくことは困難だと思うのですが、そういう点について非常に足りないんじゃないか。批判をしては申しわけないのですが、そういう考えを持っておりまして、そういう点から、きわめて一般国民の素朴な教育に対する要求というものを私は並べて、それぞれの関係大臣にお聞きをしてまいりたいと思うのです。  まず、そういう点で意思統一をしております大蔵大臣として、いまの私の簡単な見解でありますが、御異議がありましたら申し述べていただいて、特に繁栄という問題について私はこの際お聞きしたいのですが、総理は必ず繁栄ということばを使って、その繁栄は、世界第二位の総生産額になったとか、あるいは今後何年たてば、今日の総生産額はさらに三倍になるとかいうふうに強調されまして、政治の目的は繁栄にあるかのような印象を国民に与えておる。また、国民もそれを受けて、もうかりさえすればいいんだ、それが自分たちの価値観である、人生観であるというふうな情勢が強くなっておるんですが、私はこれはきわめて危険なものだと思うのです。そういうふうに考えるんですが、繁栄の問題についての大蔵大臣の考え方をお聞かせ願いたいと思うのです。
  75. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 総理は、また内閣は、教育問題を非常に重視しておるんです。これは総理のことばをかりて言いますれば、一九七〇年代は教育の世代であると、そこまで強調をしておるくらい教育問題を重視をしておる。私も、教育ということは、現段階における日本にとりましてたいへんなことである、そう思っております。つまり、いくさには負けましたけれども、四半世紀たって今日すばらしい日本国ができた。考えてみますると、しかしこれは、物的側面におきましては確かにわが日本は世界における第二の地位を獲得し、世界じゅうからも注目を浴びるような日本国になった。しかし、国民の一人一人の心の問題、この側面をとらえてみると、私はまだまだ日本の国づくり、戦後の経営というものは、この面におきましてははなはだ徹底を欠いている。物心両面の国づくりということを考えてみると、物の面においては一応成功はいたしておるというふうに考えまするけれども、国民の心の側面、この問題はこれからが問題なんだとさえ思うのであります。やっぱり物の面、これもまだ進めなければなりませんけれども、こっちのほうは手を抜いても、これからはわが国民の一人一人の人間つくりという問題に国家全体が取り組んでいくべき時期に来ておる。その一人一人が健康にして、しかも情操豊かで知識水準も高い、そうして社会に対する連帯感の高いそういう国民、それが形成するところの日本社会、そういうものを目ざして、そこに大きなアクセント、ウエートをつけて政治に取り組むべき時期に来ておる、こういうふうに考えておるわけであります。  いま繁栄という問題について特に御指摘がありましたが、私は、そういう意味において繁栄ということばかりにとらわれておってはいかない、これももとより進めなければならぬと思います。私は、ずっと戦後を顧みてみまして、占領政策ということがわが国に大きな影響を及ぼしたと、こういうふうに見ておるんです。つまり、戦後食うや食わずで、この日を食っていければいいんだという環境に置かれた一人一人の国民の中に、いつしかせつな主義というか、瞬間主義というか、そういうものが生まれる。また同時に、自分だけが生き抜けばいいというエゴイズム、自分本位の考え方、連帯感を抜きにした考え方というものが生まれる。そこへ朝鮮戦争を契機といたしまして、降ってわいたように経済の花が咲く。私は昭和元禄ということを言いましたが、あの昭和元禄的風潮というものは、そういう中にかもし出されたというふうに思うわけでございます。心の問題が立ちおくれておる、物質の問題だけが先に進んじゃったという傾向がどうも見のがせないのが今日の日本の現状じゃあるまいか。それを取り戻し、それを補っていくということは、国のいま当面しておる最も大きな問題である、そういう認識を持っておるのであります。
  76. 小林信一

    小林(信)委員 大臣もわかってはおいでになるのでしょうけれども、やはり政党とかあるいは内閣とかいう立場に立つと、とかく繁栄というものを高く振りかざして、その手柄を誇りたがる。これは無理もないことだと思うのですが、そういうことが非常に強過ぎて、そして繁栄だけが、もうかりさえすればいいということが、これが人間目的であり、何かそれが社会の目的であるかのような印象の中から、いま大臣は精神面をもっとよくしなければいけないと言うけれども、すでにもう社会の中には社会悪が強くはびこったり、あるいは腐敗とか堕落とか、あるいは享楽を追うとかいうふうな悪い精神面がだんだん強くなっていく。いまのプロ野球の問題じゃないんですが、ああいうものの中にまでそういうものが出てきておる。だから、精神面を重視しなければならぬというときに、繁栄ということにあまり誇りを主張しておる中で、かえって、どうしたらこの腐敗を、どうしたらこの堕落を、あるいはどうしたらこの社会悪を是正することができるかというふうな、よくするどころじゃない、悪くなったものをいかにして是正するかというふうなことで、かえって苦労しなければならぬようになってしまうと思うのです。  そういう論議をしてまいりますと非常に時間がとれてしまうので、ここで、OECDが教育調査団を日本に送ってまいりましたが、私は、これは何か意味があるんじゃないかというふうにとりましたが、このことについて——総理も長時間会っております。私たち各政党の文教関係代表もあの人たちと会ったことがありますが、その前に総理が会っておりまして、幾ら待っていても帰ってこない。われわれは招かれたほうなんですが、招くほうが出てこない。おかしいと思ったら、総理が非常に話に花を咲かして、よけいな時間をとったという話があるのですが、そういう点で、総理も会っておるし、あるいは閣僚の皆さんも会っておいでになると思うのですが、このことについて、文部大臣でもけっこうですが、もしその真意がわかったらお知らせ願いたいと思うのです。
  77. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 OECDのエグザミナーの人たちがやってまいりまして、たとえばライシャワー博士だとかあるはフォール、前のフランスの文部大臣とかが参りまして、私も数回お会いをいたしました。最後に、帰られますときに総括的な意見を述べられたのでございますが、それを要約いたしますと、教育政策を考えていく場合に、一つには社会的、つまり人間的、質的視点でとらえるべきだ、二番目には政治的視点、それから技術的、経済的、量的視点でとらえるべきだというようなことからして、日本の教育の課題につきまして四点の指摘がございました。  一つは、もう少し高等教育への財政投資と申しますか、それが十分果たされなければならないんじゃないか。特に国立、私立の格差の問題、あるいは各大学の格差の問題、それから入学試験制度がどうなのかというような問題、それからまた人間形成の問題、つまり人間疎外とか何とかいわれておる、やはり創造的人間形成ということについて考えなければいけないんじゃないか、あるいは教育と研究との関係につきましてもう少し投資が行なわれなければならぬのじゃないか、それから政府学校と学生との間にもう少しコミュニケーションが行なわれなければいけないんじゃないか、というような点を申されたわけでございます。
  78. 小林信一

    小林(信)委員 私どもも会ったときに、非常に外交官的なそういう点を見せたり、それからほんとうにむき出しのところを見せたりしたんですが、文部大臣とお会いするようなときにはきわめて儀礼的なところが多いと思うのです。いまの御説明を聞いておれば、私にはそういうふうに印象づけられる。私たちと話をしたものを申し上げれば、日本は世界にない経済成長をやっておる、経済発展をやっておる、それだけにまた危険性も非常に強いというような指摘をして、日本はかつて富国強兵という明治時代の国策に教育が全面的に協力したことがある。しかし、その教育の協力は結局は大きな危険を招いたじゃないか。今回の経済成長にやはり同じように協力しているけれども、教育はただ繁栄だけを目ざしてはならない。その繁栄の中に民主主義がしっかり根強く確立できるようにということは、結局一人一人の人間が主体性を確立しておって、どんなに大きな経済力というものが権威をふるっても、一人一人がそれにりっぱに抵抗していくことができるような、そういう教育が必要である。ということは、結局人間形成の問題だと思うのですよ。そういうような問題とか、あるいは日本の経済成長の大きな原因というのは、日本が外国に見るような軍備を持たないからなんだ。ライシャワーさんなんかことに、軍備はむだですよと、そういうふうな率直な指摘を私どもは受けておるんですが、私はこれはただその人たちの言うとおりになれということではなくて、日本人全体がその点では経済成長というものにただ凱歌をあげてはいけない、その点では教育という問題が最も用心しなければならぬじゃないかということを私は感じているわけで、やはり同じように受け取っておいでになると思うのですが、それと同じように中教審の中間報告も功利的な教育そのことが指摘してありまして、私は繁栄だけを謳歌する、そうして国民全体を何かもうけさえすればいいというふうな価値観の中に追い込むいまの政治姿勢というものを政府は反省すべきじゃないか、用心すべきじゃないかということを私は申し上げたかったわけであります。なお、これについて御意見があればお聞きしたいと思うのですが、時間がございません。  そこで、総理はとにかく今日の繁栄の基盤を築いたものは教育であるというふうに言っている。だが総理はそう考えておっても、大蔵大臣ががんこなのか、教育に理解がないのか、私はそれほど教育を重視した行政というものは進んでおらないような気がする。まことに率直に申し上げて失礼でありますが、そういう点からひとつ大蔵大臣を大体中心として皆さんの意見を承りたいのですが、いま一般父兄が一番要望していることは、父兄の負担を軽減さしてくれということだと思うのです。ことに一般物価が高くなると教育費もそれに応じて——というよりも、いろんな調査を見ますというと、一般物価よりも教育費がかえって毎年よけいに上がっておるわけですね。そういう点でこの父兄負担を軽減してくれということでいろんな注文があります。施設、設備も国の補助がありますが、その総額をふやしてもらいたい、あるいは坪単価をもっと上げてもらいたいとか、あるいは補助率を上げてもらいだいとかいうようなものがあるのは、それは幾ら寄付行為ということはいけないといったって、教育を愛する父兄は、いろんな設備をするためには、やはりそれがいけなくても寄付をするのが親の情けであって、そういうものにたよっていくのがいまの学校整備の問題だと思うのです。しかし、そういうことはもうすでに口がすっくぱなるほど言って、なお文部省が弱いのか大蔵省が強いのか、なかなかこの点は改革されない。これは私どもねばり強くやっていくわけですが、そこでひとつ千葉県の館山市で四月一日からその市内の小中学校の生徒の学用品を全部市がまかなってやるという——義務教育の無償ということが憲法に明示されておるけれども、いつになっても実現しない。教科書がようやく昨年の四月完全な配布ができたくらいでもって、政府の施策を待っておったのではどうしようもないというところで、この館山市はこれに完全に踏み切ろうとしておるわけなんです。そういう気持ちは各地方自治体に強いんですよ。しかし、いろいろな財政的な面でこれができなかったけれども、まず館山市がそういう点で踏み切った。こういうような地方自治体の意向というものが強くなってきたら、大蔵大臣はどうしますか。やはりそれはできるところはやるがいいということでそのまま放置するか、それじゃ教育の機会均等という面で大きな責任問題になってくると思うのですが、これは館山市だけの問題でなくて、父兄負担の軽減という問題でこういうふうな事実もあらわれておるという点から、私は大蔵大臣の所見をお伺いしたいと思うのです。
  79. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 館山市でどの程度の学用品の支給をいたしましたか、私も承知をいたしませんが、おそらくノートだとかあるいは鉛筆だとか、そういうようなものを市が支給するということでもしたのではないかというふうに思います。思いますが、とにかく政府並びに地方公共団体は、義務教育に対しましては全責任を負っておるわけなんです。とにかく無償というか、授業料は一切取らぬ、こういうたてまえで、憲法の精神でやっておるわけでございますが、おとうさん、おかあさんの負担をすべき部分と国また地方公共団体が介入、関与しなければならぬ部分との限界というものは非常に微妙であり、全部が全部まで、鉛筆やノートまでを地方公共団体あるいは国が持つべきかどうか、これはよく考えてみなければならぬところであると思います。しかし、それにいたしましても、家、貧困にして十分に帳面も鉛筆も買えませんというようなことがあっては、これはたいへんなんですから、それに対しては生活保護対策もありまするし、準生活保護児童対策というものもありまするし、これは国といたしましても万全のかまえをいたしておるわけなんです。地方によりまして非常に住民の希望等もありまして、地方自治団体が鉛筆買いまで出すというところがあって、私は別に支障があるとも思いません。けっこうな状態じゃないかというふうに思いませんけれども、何が何でも、親たちが喜んで自分の親としての責任でこれはやるんだという部面まで、国が積極的に介入していくんだというところまで考える必要があるかどうかにつきましては、せっかくのお話でございますが、多大の疑問を抱く、そういうような感じがいたします。
  80. 小林信一

    小林(信)委員 あまりたいしたことはないだろうというふうにお考えになってはいけませんから申し上げますが、大体一人の生徒に五十五品目にわたって支給するんですよ。鉛筆、ノートぐらいだろうとお思いになるかもしれませんが、これはたいしたものですよ。しかし、それはやはり根本的なものは義務教育は無償という憲法の精神を順奉したことと、もう一つは、やはりこれは親の愛情というふうなものが固まったものだと思うのです。私はこれを大蔵省にやれなんていうことを言うわけじゃない。いままで法律に規定をして、それが十分に実施されない面くらいは、大蔵大臣やりなさいということなんですよ。そういうふうに受け取ってもらいたいのです。  そこで自治大臣にお伺いいたしますが、このいまのお話、これは地方交付税の中から出して、それを扱っておる自治省としては考えていかなければならぬわけだと思うのですが、やはり館山市の問題よりも、そういう熱意を持つ市町村もあるけれども、基準財政需要額に盛られた教育費すらなかなか出せない町村があります。いま学校の先生たちは、校長さんを中心として、基準財政需要額に盛り込まれておる当然学校が受けてもいい金は一体幾らあるだろうか、それを一生懸命探索して、これくらいは学校へ出してもいいんじゃないかといって、きょうきょうとしてその費用をこっちにもらいたいということで努力しているのですが、基準財政需要額に盛り込まれておるものが、ほんとうに、完全に市町村の教育費の中に盛り込まれるかどうか、そういう点について考えたことがあるかどうか、私はお伺いしたいと思うのです。
  81. 秋田大助

    秋田国務大臣 ただいま大蔵大臣からもお話のありましたとおり、義務教育において国及び地方団体で負担すべき、いわゆる公費で負担すべき額あるいは父兄において負担すべき額、ここの境界というのは微妙なものがあり、いろいろ国の経済財政の事情によりまして、時代によってその分界点は変わってくると思います。しかし、国が非常に重視する教育の問題でございます。したがって、できるだけ地方におきましても、いま館山市の例を伺いましたが、公費でまかなうべき分野が高かるべきことは自治大臣としても希望するところでございます。それがりっぱな国と社会をつくる基礎であるからでございます。しかし、それじゃどれだけ具体的に、どういう水準かということになりますと、むずかしい問題もございます。いたずらに、ことばは妙でございますが、過保護に至っても、また地方自治団体が行なうその他の行政水準の維持に悪影響を及ぼすということであってもならないわけでございます。この交付税の算定において、基準財政需要額の算定におきましては、これの効率を十分期しながら、地方団体におきましてもなるべくその効果を十分享受できるような状態に持っていきたいと思います。同時に地方団体がその財政の余力において館山市のようなことができるところは、ある程度私の言う過保護にならない範囲においてできるだけのことを施策のうちに盛られることは望ましいことでありまして、その範囲においてはそういう傾向に地方団体が行かれるように指導してまいりたいと考えております。
  82. 小林信一

    小林(信)委員 もう一ぺん念を押しますが、総理は、日本が非常に金持ちになった、その繁栄の基盤は教育にある、こういう前提を、これは閣僚全部統一して持っておるわけなんですから、そういう点をよく考えていただいて、これからのいろんな要求に対してお答え願いたいと思うのですよ。言うときには金持ちだと言うけれども、今度はいよいよ自分の責任になってくると、あまり金持ちでないというふうな、そういう言い方をされたり、それから将来総生産額が三倍になる、百五十兆円になるというふうなことを考えたら、やはりそれに到達する教育としてはそれなりに考えていかなければならぬ。そういう将来の見通し、教育が一番大事なのは、将来の見通しというものが確立できておって、そして人間性豊かな人間をつくるということが基本的な問題でございますので、どうかそういう教育の原則というものを考えてお答え願いたいと思うのです。  そこで文部大臣に、これはまた委員会でいろいろお願いをするのですが、大蔵大臣もいることですからお願いしたいことは、いま父兄負担の軽減という問題で希望しておることは、子供を一々東京へ出して大学へやるということは、父兄には非常に大きな痛手なんですね。しかし、これからの経済事情、社会構造を考えれば、もう大学ぐらい出しておかなければいけない、技術革新というものは当然要求される、学歴というものも要求されるということから教育をしておるわけなんですが、せめて東京へ来れない家庭の子供たちもそれの水準に追いつくように、地方大学に夜間部というふうなものをもっと多くして、働きながら勉強する、そうして東京へ来なくても、下宿料を出さなくても勉強できて大学を卒業できるというような面とか、あるいは高校に専攻科というものが設けられて非常に好評を博しているところがあるのですよ。これもやはり働きながら勉強しておるわけですが、そういう配慮をこれから十分してやることが父兄負担の軽減の一助だと私は思うのですが、こういうふうな点について大臣の御所見を承りたいと思います。
  83. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 小林さんも御承知のとおりに、たとえば国立大学にはすでに室蘭工業大学をはじめとしまして九大学、十二の夜間学部を開設しております。それから二十の夜間短期大学を併設しております。そういう意味から申しまして、今後夜間学部等の増設というようなことについては考えていかなければならぬこと、だと思います。また、高等学校に専攻科を設けて、働きながら学ぶ青年に均等に機会を与えるということ、それから今度御審議をわずらわしておることしの予算におきましても、農業高校に専攻科を設けまして、一たん農業高校を出ました人たちで総合農政の観点においていろいろまた再び教育を受けたい、研究をしたいという人たちのためにこの専攻科をつくったわけでございますが、これもいま御指摘のようなことにかなうのじゃなかろうかと思います。  ただ、先ほどの館山市のお話ですが、これは館山市の財政事情がどうだったかは知りませんけれども、しかし私は、自治大臣もおっしゃいますように、あまり過保護になってもいかがかという気がするのです。たとえば大蔵大臣もおっしゃいますように、要保護家庭、準要保護家庭についてはちゃんともう措置がついておるのでございますから、ただ鉛筆とかゴムとかノートとかいうようなものは、むしろ相当に経済的には不如意であってもお父さんやお母さんが出すというような、そこに親の愛情というものが子供につながり、そして人間形成というものができるのじゃないだろうか。  冒頭に小林さんが御指摘になりました繁栄という問題についてのお話でございますけれども、終戦後廃墟の中に立った日本が、とにかく物的な生産をあげないことにはどうにもならないのだ、ああいう動物以下の生活において精神論を言ったってだめなんだ、こういうことで、われわれはほんとうにまず物をつくることに専心をし、そしてその成果をあげてきた。しかし、それが逆に今度は心の問題を忘れさせるような結果を生んでおるというところにいま問題が出てきておる。だから、一時終戦直後にいわれた唯物主義、唯物思想というもの、あまりにも物中心に物事を考える、すべては物だけで割り切れるのだという考え方、物それ自体が精神を規定していくのだ、こういうような考え方それ自体が片寄っておるのであって、やはり物心両面において考えなければいけない。つまり経済成長と同時に精神生活を豊かにする、あるいは情緒性を豊かにする、あるいは人に迷惑をかけぬような、そういうモラルをつちかうということに重点を置かなければならない。そのことの意味において、総理は、どうも二十年このかた考えてみると、われわれに一端の責任があるようだけれども、どうも知的教育だけに偏重したようなことがある、これからはやはり徳性であるとか、あるいは情緒性であるとか、そういう豊かな人間性をつちかうような教育をやらなければならぬと思うと、こういうことをおっしゃっておるので、これは私は非常に時宜を得たことであるし、一九七〇年代の日本に課された課題である。それがまた先ほど御指摘になりましたOECDあたりの指摘された点でもあります。これはしかし何も指摘されたからそう思っておるということじゃなくて、われわれ自身がそう思っておるわけでございます。そういうような気持ちを持っておるということを申し上げておきたいと思います。
  84. 小林信一

    小林(信)委員 どうも私の言うことのほうは形式で、言いたいことを言うような感じがするのですが、唯物的な主張というものが強くなったというのは、これは一体だれがやったのだというのが、私のいませっかく申し上げているところなんです。政治そのものにそういう姿勢があったんじゃないか。そういう中で教育というものが、ただ経済成長に協力さえすればいいのだ、教育本来のものが全体的な政治の中で軽視されておった。総理大臣があれだけ大演説をぶったわけです。そうしたら、本会議でも、野党の質問の中に、与党の質問の中に、教育問題が取り上げられるような演説がありそうなものだと思ったのだが、ない。それから予算委員会の総括の中でも、あれほど刺激を与えた総理の演説ですから、教育の問題が出ると思ったが、出ない。これはわが党を含めて、非常に残念に思うのです。ということは、社会全般が教育は大事だとは言っているけれども、それは子供を学校にやること、先生の問題、政治の中じゃ文部省、というふうに、教育というものがまだほんとうに一般人全体のものになっておらない。私はそういうところに教育行政の目を向けていかなければいけないと思うのです。大臣が指摘しておる知的偏重の問題、これは経済成長政策がやった、こういう反省を政府がしなければ、あれは意味がないのです。  それから学校教育、家庭教育を総理大臣が指摘をしております。私は社会教育という問題が一番問題だと思うのです。日本の教育は世界水準を凌駕しておるというようなことを言うけれども、その中でもって、一つ社会教育は残念ながらどこの国よりもおくれておるということを指摘するような教育観を総理大臣が持ち、それを継承して文部大臣が文教行政をやるようでなければいけないと思うのです。そのことはまた何かあったらひとつ言ってください。私はもう次に移るから、大臣の発言のときでいいです。  その次に、問題はやはり僻地教育の問題だと思うのですが、この僻地教育は、いままで盛んに言っておりますし、僻地教育振興の政策というものも、ほんとうにいつも文教政策の中で問題にはされておりますけれども、私はこの際、こういうふうに閣僚がそろっておる中で聞いてもらいたいと思うのですが、とにかく所得の格差というものも大臣がすでに主張されておる。ところが、文化的格差というものは私は所得格差よりもっと大きな問題だと思うのです。それは最近地方財政が豊かになっているというけれども、見えるところだけは確かにりっぱにしました。道路でも、建物でも、諸官庁でも、りっぱになった。しかし、市の中でも中心から離れておるところなんかは、道路なんかもう全然顧みられておらないというようなところから考えても、もっとそういう点で政策を総合的に、教育の問題を中心にして私は考慮してもらいたいと思うのです。  具体的な問題を申し上げれば、ある僻地に行きました。中学校に行って、あなたのところの高等学校進学はどれくらいですか、と言ったら、この三月卒業する生徒が十七人だけれども、その中で高等学校に進む者は、昨年よりもたいへんふえましたが六人であります、こう言うのです。三分の一ですね。いま全国平均が八〇%になろうとしておる。こういう勢いでいけば一〇〇%になるだろうと思ったら大間違いである。あとの二〇%というものは、その文化的な格差、あるいは所得の格差、政治から放置されておるところが、そのあとの二〇%なんです。そういうところから高等学校にやるにはどれくらい費用がかかりますかと言ったら、大学へ子供をやると同じことなんですね。もしほんとうの僻地教育振興をやるならば、高等学校に行く子供があったら、それに対して政府が、貧困家庭ということでなく、僻地なるがゆえに何か援助をするというような、そういう積極的な政策が私はほしいのですと要望しておりますが、これは大きな問題なんですよ。  もっと小さい問題を全閣僚に聞いてもらいたい。私はある僻地に行さました。渓谷の一番最後の部落に行ったのです。二十二、三戸ありましたが、そこのおかあさんたちに会って、あなた方はいま政治の中で何が一番ほしいかと聞いたら、学校に通うのにトンネルが三つある。そのトンネルは、林産物を運ぶのですから、舗装なんかされておりませんよ。中が、くしゃくしゃなんです。しかも電気がついていない。せめてあそこのトンネルの中に電気をつけてもらいたい。電気ぐらいは市がつけてくれそうなものですねと言ったら、配電線が非常に遠くにある、その遠くからそこまで幾本か柱をつくらなければならぬ、そのことができないから依然として電気がつかないのだ。わずかな費用だと思うのですが、それすら辺地にはやってくれない。都会地では誘拐魔なんていって盛んに子供のことを心配しておりますが、二里も三里も通う——小学校ですから二里も三里もではないのですが、トンネルを三つ、暗い中をくぐっていく、百メートルぐらいありましたが、そこへ電灯がつかない。自治大臣、これはひとつ聞いてもらいたいと思うのですよ。  それから、昨年の十二月二十七日ですが、朝、ちょっと雪が降ったのです。そしたら、その雪が凍ったわけです。それが、橋の上の雪が凍っておったために子供がすべり落ちて、三十メートルも下に落ちて死んだ。そこの人たちがいま私のところに盛んに手紙をくれますが、スクールバスは無理かもしらぬが、せめてスクールジープですか、これをひとつ買ってもらいたい。そうすれば——学校統合ということが最近非常に多くなって、統合されるために、かつての分教場というものが廃止されておりますが、そういう子供たちがこんな命がけで学校に通うことはなくなるのだということが放置されておるのだ。金持ちになった日本ならば、また教育が経済成長の恩人であるならば、そういうこまかいところにもつと配慮をして、ほんとうに手の行き届いた教育をこの際すべきではないか、こう思うのです。  これについて、特に自治大臣関係があり、それから高校進学の問題で、そんなことにまで大蔵大臣、ひとつ思いやりが持てるかどうか、お二人から聞いてみたいと思うのです。
  85. 秋田大助

    秋田国務大臣 教育の機会は均等であり、教育を受ける状態に格差が地方によってあってはならないのでありまして、なるべくこれを縮めていく。しかし、文化的な格差までの点を考えますと、単なる教育対策ではなくて、ただいま小林先生もおっしゃったとおり、僻地開発の計画とその他の施策とを総合的に集中すべきことは当然でございます。過疎地域対策に関しまして、近く立法も議員立法でされるわけでございまして、これを受けて、辺地債なり過疎債等も予算上持っておりますから、これが運用によりましてただいまのような問題の解決に資したい。また普通交付税の基準財政需要額におきましてもこの点を従来考慮してまいっておるのでございまして、昭和四十五年度におきましては、小学校及び中学校の遠距離通学児童生徒のための通学対策費として二十一億円を算入することを予定しておるわけでございます。  なお、先ほど申し上げました辺地の通学対策事業といたしましては、スクールバス、通学路等に辺地債を四十四年度は約二億円充てることになり、四十五年度も相当額を盛ることを予定いたしておるのでございます。御参考までに四十四年度の遠距離通学対策費の算入方法につき申し上げますと、遠距離通学児童生徒通学対策費として、小学校は、四キロ以上、児童一人当たり三千八百七円、中学校は六キロ以上、生徒一人当たり七千百七十五円、スクールバス、スクールボートの通学費として一台当たり九万七千五百六十六円、それから寄宿舎の維持運営費といたしまして、入舎児童生徒一人当たり三万二千四百六十五円というような基準配分をいたしておるのでありまして、今後とも、お示しの辺地教育の振興につきましては各施策を総合いたしまして、十分御趣旨に沿うように処置を進めてまいりたいと考えております。
  86. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 僻地対策につきましては、いま自治大臣からお答えをしたようなわけで、いろいろな角度から総合的に取り組んでおるわけでございます。先ほどの御指摘では、高等学校就学率、これをどうするんだ、こういうことでございますが、これは教育に非常に熱心な御家庭であり、本人もそういう高等学校進学の希望があるという際におきましては、育英資金というような制度もあります。これを御活用願いたいし、またそこまで行かぬでも、親が責任をもってこの子は育てるんだという気概を持った御家庭等もあろうかと思いますが、とにかく、教育は機会均等でなければなりませんから、育英資金の活用等あまねく行き渡るように今後とも努力はしなければならぬ、かように考えます。
  87. 小林信一

    小林(信)委員 自治大臣のお考えを聞いても、大蔵大臣のお考えを聞いても、確かに熱意はおありでしょうが、私が希望するものは、ここで思い切って従来にない勇敢な予算措置をしてこういう問題を解決をする意思はないかというふうなことが私のねらいでありまして、いまのような御答弁、これは常に僻地問題を扱うときにお聞きすることなんで、それでは総理大臣がせっかくあれだけ教育に熱意を持っておっても、その裏づけというものは実にさびしいものだというように解釈せざるを得ないわけなんです。  そこで、これは厚生大臣にお伺いしたいのですが、おそらく全国的にそういう点があると思うのです。ある小学校が簡易水道の設備を持っておったのですが、その取り入れ口がきわめて粗雑だったために、集団赤痢にかかった事実があります。私はそれを見て、そういう事実がたくさんあるだろう、それから大臣御承知のように、道志村ですね、あそこに火事があった。大火です。非常な渓谷の中の山村ですが、それが至るところへ飛び火をして、たくさんな類焼があったのですが、その中で学校が焼け残ったわけですよ。その学校の話を聞いたら、やはりここに水道設備がないのですね。川の水をためて、こして飲んでいるような状態ですが、話に聞けば、簡易水道というのは何人なければその施設の補助をもらうことができないというふうな話があった。そういう赤痢を予防するというふうな面、あるいは火災を予防するというふうな面という点からいたしましても、私はこれは文部省だけの問題でなく、厚生省もそういう点はやはり思い切った措置をして、僻地の学校等には十分な配慮をしてもらいたいと思うのです。厚生大臣が大臣就任のときに、あるところで言ったことを私は覚えておりますよ。私が厚生大臣の役目を完全に果たすためには、私に文部大臣の職権も持たしてもらいたい、大蔵大臣の職権も持たしてもらえば、厚生大臣の仕事が十分に果たせると言ったことを私は覚えております。それがほんとうだと思うのですよ。その心境でなければ、それぞれ担当大臣の責任が果たせないと思うのですが、その心境で私はがんばってもらいたいと思うのです。その意味では、まず教育に関係をした問題として児童手当の問題、これは厚生省の仕事として考えておられるのでしょうが、私はやはり教育のほうからも、このことはいままで要請をし続けてきたものですが、なかなか、声だけは出るけれども実現できない。厚生大臣、このときにこれを実現をする御意思があるかどうか。  続いて、心身障害児の問題がありますが、厚生省の仕事として、これらの療養という問題を考えると思うのですが、あわせてそういう場合に、私は教育の問題も並行してやってもらいたい。これは前からそういう問題がたくさんあったのですが、この際、並んでおる文部大臣と二人で、そういう点をほんとうに理解し合って、心身障害児がただ療養だけでなく、その間も教育できるような配慮をしてほしいと思うのですが、そういうことが可能であるかどうか。  それから、時間がなくなってしまいましたので一緒に申し上げてしまいますが、さっきの交通災害の問題で、私はやはり文部大臣、さらに厚生大臣にお願いしようと思ったのですが、何といっても広場というものが、いま盛んに要望されております。しかし、これもやはり小さいちびっこ広場というふうなものを市町村長の配慮でもってつくられておりますけれども、ほんとうに交通災害をなくすような遊び場というものはつくられない。厚生大臣の責任として、こういう問題が考慮されておるかどうか。  と同時に、交通災害の問題では、文部大臣、私は、交通指導官とか、外国にありますような安全官とか、そういう交通専門の教師というのか指導員というのか、そういうものをやはり設置しなければ、先ほどのお話を聞いておっても、ほんとうに児童を交通災害から守るという仕事はできないと思うのですよ。いまの教師がいろいろな雑用を控えておって、その中で交通指導をするということ、設備だってそうですよ、全然交通指導をする部屋なんというものはあてがわれておらないと思うのですよ。だから私は特に指導盲あるいは安全官というようなものを設置する必要があるのじゃないか、こういう要望を持っておりますので、一緒にお答え願いたいと思うのです。  それから厚生大臣に、きのうも文教委員会で問題になったのですが、いま秋田大学の医学部を設置しようとしておる。はたして看護婦というものが確保できるかどうかというふうな論議が出た中で、文部大臣のほうから、厚生省でも養成に懸命になっておるが、文部省でも一生懸命やっておると言われたけれども、文部省のほうはどうしても少ないようです。この点について厚生大臣が、厚生大臣自体としてだけでなく、文部省と協力の中でやらなければいけないと思う。  それから、たくさん一ぺんに申し上げますが、私は将来を見通してというふうな教育行政を行なうためには、ただいわゆる教育でなく、子供のからだを守るという保健というふうな面では、児童病院のようなものを建てて、ほんとうにその健康管理をする要があると思うのですよ。いまの校医だとかあるいは学校歯科医だとかあるいは学校薬剤師、こういうようなものは一応は整備されておりますが、年間二万や三万の謝礼をもらってでは、ほんとうに健康管理なんというものは、お医者さんたちにやってもらうことはできないと思うのです。養護教諭だって置かなければならないと法律に書いてあるけれども、当分の間置かなくてよろしいというあれに隠れて、いまもって完全配置がなされておらない。そういう児童の健康管理ということを考えれば、厚生大臣の手腕にまつものが多いと思うのですが、そういう点をひとつ御考慮願いたい。  それから、お医者さんの問題でありますが、文部大臣はきのう、四千何百人の医学部入学が、まだ医者を充足するのに足りない、こう言っておりますが、厚生大臣のほうは、三千人以上をこえてはならない、そういう要望が文部省に出されておると私は確かに聞いております。それはわかりますよ。お医者さんはあんまり同業者がふえないほうがいいから、厚生大臣のほうに注文をして、あまりつくらないように、生産しないように要望していると思うのです。ところが、文部大臣に言わせれば、ことしの四千五百人でもまだ少ないというようなことを言っておるのですが、一体ここら辺の矛盾はどう厚生大臣は考えているか。ということは、お医者さんがふえるということは、無医村が解消できるということにもなると思うのです。そういう点でお伺いしたいと思うのです。
  88. 内田常雄

    ○内田国務大臣 小林先生からたくさん御意見をまぜての御質問がございました。  まず、水道の問題でございますが、厚生省というのはたいへんいいところでございまして、環境衛生の見地からできるだけ簡易水道のみならず、水道水源の開発とかあるいは広域水道というようなことにもわたりまするし、また、現在の簡易水道というものは先ほど小林先生のお話もございましたように、ある規模以上、つまり、給水人口が百万人以上でなければ簡易水道として補助金はもらえない仕組みになっていますが、実はそれ以下の、百万人以下のものにつきましても給水施設としてこれも補助を出しております。そして水道に関するこれらの国の助成予算は、実は毎年飛躍的にふえておりまして、てまえみそを申し述べるわけではありませんが、私は今度の予算大蔵省との査定の場合にも、水道の予算は思い切ってふやさせることに成功をいたしました。簡易水道だけを申しましても、年々四百カ所程度は簡易水道をつくらせております。したがって、いまの衛生関係におきましても、私は、まず簡易水道あるいは少なくとも給水施設、そういうものをできるだけつくることがまず第一、その次はでき上がった水道につきましてその衛生基準を守らせるために、都道府県なりあるいは保健所等が常に基準の順守についてできる限り監視督励をしてまいる、この両方で水道問題は対処いたしてまいるつもりで、昭和四十五年度におきましても、これらの各項にわたりまして、水道については相当の施策をやってまいる所存でございますので、お含みをいただきたいと思います。     〔藤枝委員長代理退席、委員長着席〕  それから、児童手当のお話がございましたが、私が就任いたす前に、何年かにわたりまして、その児童手当につきましては政府としてもお約束をいたしており、また、この国会におきましても強い御要望があってきておることは私も承りましたので、ぜひひとつ私が何とかこの児童手当の問題は緒につけたいということで、現在厚生省に置かれておりまする、各方面の学識経験者等にお集まりをいただいておる児童手当審議会の方々にも無理にもお願いをいたして、何とかことしの八月くらいまでにはひとつ一応まとまった児童手当についての構想をお示しを願いたいというようなことをお願いをいたしております。これは私は前向きでできる限り努力をいたすものでありますことは、私ばかりでなしに、総理大臣もしばしば予算委員会、この席でも述べておるとおりでございますので、これは引き続いて努力をさせていただきます。  それから、第三番目は心身障害者の教育の問題についてのお説でございましたが、これは特殊学級とか養護学校とかいうものがあることはもちろんでありますけれども、しかし、私は、いま国がみずからつくったり、あるいは国が助成をして、各都道府県あるいは社会福祉関係の法人などがつくっておられる心身障害者の施設の中に、これらの養護学校の分教室というようなものを持ち込んでいただく、あるいはまたそれが困難な場合には、その心身障害施設そのものの中に教育の要素を取り入れて、そしてほんとうにおことばのように厚生省と文部省が一緒になって、心身障害者でも勉強できる——そういう子供たちについては、その身障の種類、程度に応じた教育というものを心身障害児の福祉施設の中でやれるようなことをやってまいりたいと思います。  これは小林先生に私からひとつお願いがあるのでございますが、私もこの間見ましたが、小林さんの御郷里の山梨県の育精学園というのがございます。これは心身障害児の福利施設でありますが、小林先生が御要望なさるとおり、教育施設を中に取り込みましてまことによくやっておりますので、ぜひひとつ見ていただきたい。私どももあれは一つのモデルだと考えるものでございます。  それから、児童の遊び場あるいは児童に対する諸般の御要望がございましたが、これは決して自慢はできませんけれども、現在のところはまことに乏しい施設と申すほかございませんけれども、厚生省では一つの児童福祉対策といたしまして、各地域に児童園——児童公園を小さくいたしたものでございます。これは所管のことを申すわけではございませんが、児童公園となりますと、建設省の御所管だそうでございます。私のほうにいただければ非常にいいのですがが、それは公園だから建設省だ、こういうことだそうでございまして、それ以下の小さい——また小さいからといって役に立たぬとは申しませんが、児童園、それから児童館、これは杉並区でたいへん大きなものをつくっておりますからぜひ一ぺんごらんを願いたいのでありますが、こういうものを国が助成をしてやらせておりますことを御記憶をいただきたいと思います。  それから、医者が不足でありますことは、厚生省におきましてもまことに困っております。ことに僻地の話がございましたが、それに関連いたしまして、厚生省では僻地診療所というものをつくっておりますが、そこに行く医者がない。建物や施設だけはできても医者がないというような状況で、したがって、明年度からは、ないところはしようがないから、人口の多いところに親元病院という——主として公立病院でありますが、国立あるいは県立、市町村立等の病院を親元病院といたしまして、そこに助成費を出しまして、そこのお医者さんをいまの僻地診療所のほうに応援をさせるというようなことも考えておりまするし、また患者の輸送あるいは医師の巡回車、そういうようなものにつきましても助成をすることを考えておりますが、お医者さんは足りません。現在たしか十一万五千人くらいのお医者さんでございまして、その絶対数が必ずしも足りないということではありませんけれども、配置がはなはだ不均衡でございます。しかし、やはり諸外国に比べましても、医者の総数の人口に対する割合も若干足りないようでございますので、文部省に対しましてはぜひ医者の養成の学校をふやすようにお願いをいたしております。ことしも秋田に医学部が新設されるはずでございますし、また私立の医科大学の申請がありますが、それも私のほうから文部省のほうに申し出ておりまして、三千人をこえてはいけないというようなことは全く申しておりません。  児童病院などにつきましては、これは——長いからもうやめますけれども、母子保健の構想あるいは保健所等を動員する児童の一般検診あるいは精密検診等の方法も予算をつけまして、先生の御心配になっておることをできる限り埋めていくようにやってまいることでございます。  いろいろたくさん問題がありましたが、もし落としましたら、またもう一ぺん再質問していただきます。
  89. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 児童手当制度の問題につきましては、いま厚生大臣がお述べになりましたように、審議会の結果を実は心待ちにしておるということでございます。  それから、心身障害児の教育の問題につきましても厚生大臣からお答えになりましたように、厚生省と文部省とよく連絡をとりつつやってまいりたいと考えております。  それから、久里浜に御承知のように特殊教育総合センターというものを——医学的にもあるいは教育学的にも心理学的にもあるいは社会学的にも、あらゆる学問の総合的な観点から心身障害児の教育の方法あるいは職業教育のやり方を実際的にやるということの建設も、ことしからやるようにやっておりますから、これにひとつ御期待をいただきたいというふうに思います。  それから、交通安全の問題で交通指導員を置いたらどうかということでございます。非常にいい御提案とは思いますけれども、なかなかそこまでいまわれわれは考えておりません。とにかくいま交通安全指導員は全国に約二十三万人おりまして、地方公共団体、警察、交通安全協会その他各団体寄って、生徒児童に対して、あるいは先生方を中心としていろいろやっておるわけでございます。ただ、指導員を設けたからこれでいけるとも言えないので、やはり関係団体との緊密な連絡のもとに交通災害の防止につとめなければならない、かように考えております。  それから先ほど山中長官も申しましたように、われわれの若い時代だったら外で遊ぶところがあったわけでございますが、今日では都市ではなかなか遊べないということでございますから、私はやはり学校のグラウンド等が日曜日等においては子供の運動の場として提供されるような仕組みを考えなければいけないということで、ただいまグラウンドの開放ということについて進めておるわけでございますけれども、しかし、これが日曜日における管理者をどうするかというような問題で、なかなか実際はむずかしい段階でございます。しかし、これはさらに努力をしてまいりたい、かように考えております。  それから、学校にちゃんとしたお医者さんをというような御趣旨だったと思いますけれども、いまのところはやはりいまのお医者さん、校医あるいは薬剤師、そういうような方々あるいは養護教諭をこれから漸次置いてないところにも置くような方向で子供たちの健康管理を確保したい、かように考えておる次第であります。
  90. 小林信一

    小林(信)委員 委員長、私が始まったのが十分くらいおくれていましたね。だから十分くらい延びてもいいですね。もう予定したものがたいへんにたまっておりますので、予算委員会はやはりなかなかきびしくて——七分だそうですが、じゃ七分までにいたしますが、やはり予算だけに、出すのもなかなかきびしいですね。  じゃ、まとめて大臣に申し上げますが、その前に、内田厚生大臣のお話を聞いておりますと何もかもみんなよくなりそうでありますが、結局はこういうものはモデル的なものであったり、お医者さんの問題あたりも、絶対量というものはあるんだけれども、しかし、部分的に偏在するというふうなことは、先ほど申しましたお医者さんの考え方というのが、やはりもうけさえすればいいんだ。医者の使命ということより、もうけさえすればいいんだ。これは自由かもしれませんよ。しかし、そういうふうな教育的な考え方というものが一般人にない。そこに私はもっと大きな見地の教育というものがほしいんだというわけですが、できるなら厚生大臣、ただお医者さんの自由にまかせるのではなくて、僻地の診療所にも行くような、そういう考え方の指導というふうなものもこれは私は厚生大臣としてやるべきだと思うのです。年じゅうお医者さんの圧力に屈しておるような厚生大臣では、私は意味がないと思うのです。  それから、文部大臣の御答弁に至っては、これはもう文教委員会で聞いておるような状態で、もっと力強いものをほしくて私は申し上げたのですが、これから申し上げることは特にひとつ信念を持ってお答え願いたいと思うのです。大蔵大臣によく聞こえるように……。  まず第一番に、大学の問題ですが、大学法ができて、その当時の問題ときょうの問題とがどうだったということをここで論議することは残念ながらできませんので、確かに暴力排除という問題はできたといってもいいと私は思うのです。しかし、大事な大学問題に対するところのあの中から出てきた要望というふうなものはどこかへ行ってしまって、一番問題だった私立学校に入学するのに何百万円とられるというふうな、そういう悪らつな大学経営というものに対しての——これは学生だけでなく、一般世論のきびしい批判もあったわけですが、しかし、大学問題の処理のしかたというものがうまくなかったために、ことしの各大学のあり方を見ても、何十万円持ってこい、何百万円持ってこい、ひどいところは一千万円持ってくれば入学さしてやるというふうな大学経営というものが依然としてなされておる。これは私は一面、大学法を強行した政府側に大きな責任があると思うのです。こういうものは解消できておるなら解消いたしましたということを明言していただきたいし、そういうものがなおかつ行なわれるならば、これに対して文部省はこういう態度をとりますということを明確にしてもらいたいと思うのです。  その次の問題は、最近よくいわれておりますが、教育界に人材確保をぜひやってもらいたい。今日のような情勢では、人材を確保することはできない。結局それは優遇措置をするということなんですが、文部省としては調査費をとってこの問題と取っ組んでおるというのですが、もし教員をもっと優遇すべきであるという判断が出て調査費を組んでおるならば、成案が出るまで暫定措置として優遇策を講ずるべきじゃないか、そうして教員の人材確保を計画すべきじゃないか、こう考えるものであります。  また、この人材確保の中に障害になっておる問題は府県差という問題が非常にあります。東京都とすぐ隣の山梨県では、先生になるならば東京の先生になりたい、こういうふうな希望があるくらい待遇上の格差というものが出ておる。こういう問題は政治上の、教育行政上の問題ではないのか。それから定年という問題も、一方は六十歳以上、一方は五十五歳とか五十六歳とかというふうに差がつけられておる、こういう問題はどうするのか。  それから三番目の問題は、教育効果をもっとあげるために、この際勇敢に予算措置をしてほしいという問題を羅列いたします。  事務職員、養護教諭、これも全校配置が希望されておるのですが、この際思い切ってやる勇気はないか。  それから学校図書館の司書、これもPTAとかあるいは町村の負担でもってなされておりますけれども、これを公費でまかなうような考え方を持って、学校図書館の育成というものをはかる考えはないか。  それから、専科の教員を新しい定数法の改正によって考えられました。しかし、この県はこの人数でやりなさい、その中で専科教員がとれるならばとりなさいという実に窮屈なものであって、そういう制度はできたけれども、専科教員の配置というものはない。これが確保できるような措置を講ずべきだということが強い要望でありますが、これができるかどうか。  それから理振法、これは文部大臣が手がけた法律です。そのために確かに国の費用はたくさん出てきた。そうして機械が購入された。そのために非常にもうけている会社なんかも出てきておりますが、会社ももうけた、国からも費用が出た、設備はできた、しかし運営にあたって困っておるのです。りっぱな機械が設備されたけれども、その機械を使うためには授業の前一時間なり二時間なり準備をしなければならぬ、使ったあと、始末をしなければならぬ、それがめんどうで——めんどうでということではない、時間がないからせっかくのものも持ちぐされになっておる状態。これが地方の要望では小中学校にも助手を置いてくれないかということを言っております。技術革新が要望されるときに、せっかく理振法はつくられましたけれども、これがほんとうに効果をあげておらないという点に対しての御見解を願いたい。  それから、金持ちになった日本が、自動車の無免許運転はこれは厳罰にされる。ところが、教師の無免許授業はいまかえって奨励されておるような状態である。特にそれが僻地に多いという問題について、まとめてひとつ文部大臣からお答え願いたいと思います。
  91. 中野四郎

    中野委員長 時間の制約がありますので、政府側の答弁は簡潔にしてください。
  92. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 去年の大学紛争が一応収拾過程に入っておりますことは、一応認めていただきたいと思うのでございます。そしてまた、ことしの入学試験も、一期校の試験も多少のトラブルはありましたけれども、これが実施されたということは認めていただきたいと思います。  それから、私立大学に対する助成というのは、これはやはり画期的なことであるということはひとつお認めいただきたいというふうに思います。  それから、いまのお話でございますが、現在判明いたしましたところによりますと、授業料につきましては〇・六%、入学金については四・〇%で、総額で〇・七%くらいの増額になっている。低額になっておるということで、そうひどいあれではないのじゃないかというふうに思っております。  それから、教育界に人材を求めるために教員の待遇の問題、これはお説のとおりで、昨年来調査費をつけまして、そしてこの待遇改善のためにいま調査をしておるわけでございますが、何をいたしましても、このように産業界が景気がようございますと、人材がそちらへ流れるという傾向がございますし、教育界に人材を多くということが教育をりっぱにすることでございますから、しかもこれは広域的な作業等につきましても、たとえば当該府県の教育委員会あるいは教員養成の大学と研究あるいは協議をいたしておる、そして解決方策を見出したいと考えておるわけであります。  それから、教育効果をあげるために、事務職員、養護教諭、学校図書館の司書、理科教育の助手を全校配置し、また専攻教員の充足をはかるべきだと思うがどうか、これはまさにそのとおりだと思います。ただいま、四十四年に義務教育標準法を改定いたしまして、四十四年度から第三次の五カ年計画に入っておるわけでございますが、その中におきまして、養護教員あるいは事務職員定数の算定率を引き上げるというようなことを考えてまいっておりますが、全校配置というところになりますと、一応この五カ年計画が終わらないと何とも申し上げようがない。  それから、理科教育の助手、これについては、今度八億の数学に対する予算も取れましたことでございますから、今後やはり検討すべき課題だというふうに思っております。  それから、専攻教員の充足、これもわれわれも前向きに考えていかなければならない。ただ、十八学級の学校では、大体いままで二・三人というふうな計算方法をとっておりましたけれども、これが三人ということでございますから、専攻科の教員が十八学級においては確保ができるということでございます。  それから、中学校の無免許授業の解消についての御指摘でございますが、これは遺憾ながら御指摘のとおりでございまして、この解消には全力をあげてつとめなければならないと考えておる次第であります。
  93. 小林信一

    小林(信)委員 大蔵大臣に一々これについての御感想を聞きたいのですが、残念ながら時間がありませんから、十分御承知願いたいと思います。  最後に、総理大臣が、大学法が問題になっておるころ、新幹線大学というふうな銘を打ちまして、放送大学の問題を出されたのですが、放送大学については期待もあるし、また心配もしておる向きがたくさんあります。この際、私の最も心配するところは、チャンネルというものはあるのか、それから一体主体になるのはだれなんだということが非常に心配であります。郵政大臣が来ておられますので、郵政大臣に、最近のテレビそれからラジオ放送の中にもっと教育問題が取り上げられていいんじゃないか、よい教育放送、そういう要望が非常に強いわけですが、しかし、それにこたえるのではなくて、劣悪な放送というものが非常に多くなってきておる。これは非常に寒心にたえない問題であります。それとあわせて、放送大学に対する郵政省側の御意見も賜わり、それから文部大臣からは文部省側の御意見も賜わりたい。  そして重要な問題は、新しい社会構造ということをうたっておるのですが、これが、そうなるからそのために教育をするのか、あるいは政治がそういう社会構造、次の社会構造をこういうふうに考えるから、それに向かってこういう教育をするのだというのか。総理大臣のあの演説では、そうなるから教育がそれに追いついていくのだというふうな印象にもとれるのですよ。そんな消極的な教育をやっておるからいつでも弱いものになっていくのだというような点についてもっと聞きたいのですが、これは委員会でまたひとつお聞きいたします。  以上で私の質問は終わりますが、御答弁願います。
  94. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 お答えをいたします。  小林さんが御心配なすっておるのは、はたして電波その他の準備がいいのか、こういう点でございましたが、これは私どもではテレビジョン並びにラジオそれぞれ一系統ずつ用意をいたしまして、全国ネットでこれができるようにという配慮はいたしております。  さらにまた、これは社会教育にもわたるわけでありますが、いわゆる劣悪なる番組は困るではないか、こういう御指摘でありまして、これは、御承知のとおり、番組向上委員会というものもございますし、あるいは番組向上センターといった機関もございまして、前者は主として自主的に各放送事業者が集まりまして、番組の向上を期していこうというねらいでありますし、あとのほうは現に、かような番組をひとつ作成をして、これを民放その他に流していこうという施設もやっておるわけでありまして、私どもの役所としましても、これは免許の切りかえというふうなこともあるわけでありますが、決して伝家の宝刀を抜くというのじゃございませんけれども、そういう立場において常に注意を喚起するということはいたしてまいる所存でございます。  残余のことは文部大臣からお答えがあると思います。
  95. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 放送を主たる教育方法とする新しい大学の設立につきましては、昨年の十一月に放送大学準備調査会を設置をいたしまして、放送大学の性格、設立主体、対象、教育方法、設置学科、大学組織、放送の実施機関等についてすでに十一回の会合を重ねて検討を進めております。  放送大学の設立主体及び機構につきましては、現行の国立大学の方式とするか、あるいは別の組織管理形態、たとえば特殊法人とするのが適当であるか、放送大学の特殊性並びに大学制度全体の改善の方向とにらみ合わせて、慎重に検討をいたしたいと考えております。  放送大学の対象につきましては、きのうも申し上げましたように、一つには、高等教育の機会均等の観点から、勉学の意思を持ちながら大学に学べなかった勤労青年あるいは主婦というような方々、第二には、生涯教育の機会拡充の観点から、科学技術の進展に対応し、新しい知識、技術を求める社会人、職業人、三番目には、高等学校の新規卒業者等幅広い層の教育要求にこたえられるよう検討いたしておるわけでございます。  大学はやはり社会的なものでございますから、社会と無関係に大学というものが存在いたしません。したがいまして、やはり社会のいろいろの要請、特に学問に対する個人の要求、ニードというものは高まりこそすれ減ることはないのじゃないか。こういう形において、こういうメディアを通じまして、広くそういう知識を授け、あるいは研究機会を与え、あるいは学ぶ機会を与えるということは、私はこれからの新しい大学、あるいは放送大学が果たさなければならない役割りであるというふうに考えておる次第でございます。  それから先ほどのギャンブルの、野球の問題につきましては、先ほど警察当局から御答弁になりましたけれども、われわれといたしましても、あのようなことがやはり悪い影響を青少年に与えるというようなことでございまするので、そのような団体がみずから社会的責任を感ぜられまして、大いに自粛自戒、そうしてほんとうの意味の野球の精神を発揮して“子供たちにいい影響を与えるようにしていただきたいものだと考えておる次第でございます。
  96. 中野四郎

    中野委員長 これにて小林君の質疑は終了いたしました。  午後の会議は、二時より再開することといたします。  この際、暫時休憩をいたします。     午後一時十一分休憩      ————◇—————     午後二時十分開議
  97. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  最近、本委員会に出席要求をされている閣僚の出席時間が遅延され、予算審議に重大な支障を来たしている実情にかんがみ、本日の理事懇談会において、野党理事より閣僚の出席の時間厳守について特に厳重な申し入れがありましたので、政府関係におかれては時間を厳守されるよう御注意を申し上げます。  一般質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  98. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣にお尋ねしますが、農業基本法の第六条に基づく昭和四十四年度の農業の動向に関する年次報告がいまだ国会に提出されていないわけであります。これは、例年に比較しますと、すでに一カ月以上提出がおくれておるわけですが、このことはすなわち予算審議にも重大な影響のある問題でありますので、いかなる理由で農業白書の提出を怠っておるかという点について、説明を願いたいと思います。
  99. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 おくらしておるわけではありませんけれども御存じのようにことしは本予算の編成もおくれておりましたので、いろいろそういうことの関係で遅延いたしておりますが、三月中には決定をいたしまして、御報告いたしたいと思っております。
  100. 芳賀貢

    芳賀委員 先日農林省の官房の担当の調査課長に連絡をして、どういうわけで農業白書の提出がおくれておるかということを尋ねたわけであります。その際、昨年末の総選挙があり、また予算の編成上でおくれていますという、当然のようなことを言っておるわけですが、この年次報告は四十四年度の年次報告ということにはなるが、内容は統計的な問題についてはほとんど四十三年度の動向というものが中心になっておるわけですからして、そうなると昨年末の総選挙が白書の作業に支障を来たすということは、これは絶対ないわけです。それからもう一つ昭和四十五年に講ずべき農業の施策についても同時に提出をするわけでありますが、これはすでに政府予算案が提案されておりまして、予算案の中にこれらの問題はすべて包括されておるわけです。そうしますと、政府としてすでに予算案を国会に提案して審議を行なっておる。農林省だけがひとり四十五年度の予算関係のある講ずべき施策というものがまとまらぬということは、これは納得のできない点であります。そうなると、何らかの理由があって、大臣が指示して、ことさらに白書の提出を少なくとも衆議院の予算委員会が終わるまでは怠るべきであるというような特別の指示をしておるんじゃないかというふうに考えるわけです。この点はどうなんですか。
  101. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お話のようなことは全然ありませんし、またそういうことをする必要もありません。御承知のように政府でつくっております全体の予算のほかに農林省予算を抜粋いたしましてあの解説書も出ておることでありますから、私のほうでは、もう一般に見ていただくための資料を一生懸命で作成して、予算の説明についてはああいうことでありますが、その他なすべきことなどについては、おくれておってまことに遺憾でありますが、今月中にはまとめて御報告をいたしたい、こう思っております。
  102. 芳賀貢

    芳賀委員 農林省の事務当局もおくれておるのが当然であるというような応答をしておるわけですね。だから大臣が直接指示をしてなければ、担当の局長でもいいですよ。当然やれることをやっていないのですからね。そういうものを提出の必要がないというわけにはいかぬでしょう、農業基本法の第六条に定めてあるわけだから。どうも最近の農林省の姿勢というのは、われわれ常識人が見ては全然理解のできない点が多々あるわけです。
  103. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 芳賀さん御存じのように、三月になりましてやりましたときも前になかったことはないのでありますが、そういう理屈じゃなくて、私どもは鋭意やっておるわけでありますけれども、何しろ衆議院解散後の新しい国会で、暫定予算のこともあり、かたがたおくれておることははなはだ遺憾でありますが、決しておくれるのはあたりまえだというふうなことを申す者は農林省の中にはないと思いますが、そういうことについて誤解がありましたら御容赦を願いまして、私も鋭意督励していま作成させております。どうぞ御了承願いたいと思います。
  104. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、領海の問題と漁業専管水域の問題について、これは外務大臣並びに農林大臣にお尋ねします。  まず第一には、最近における世界の沿岸国の領海拡大の傾向あるいはまた漁業専管水域の設定の動向等については常に関心を持って調査し、対応されておると思うわけです。ですから、まずそれらの動向を説明してもらって、しかる後に日本の政府としては領海並びに漁業専管水域の問題等については、これは多年にわたる問題事項ということになっておるわけでありますから、政府の統一的な方針というものはどうであるか、またこれに対して近く海洋法会議等が開催される場合においては、日本としてはどういう態度で、どういう方針をもってこれに臨むかというような点についても、これは具体的に説明してもらいたいと思う。
  105. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 お話しのように、この領海問題、専管水域の問題につきましては、しばしばいろいろの方面から御論議のある問題でありますので、政府といたしましても、各国の状況などに十分の注視をしておりますし、また日本としてとるべき態度というものも十分に検討しておるわけでございます。  第一の御質問ですけれども、領海につきましては、三海里説をとっておりますのがわが国を含めて米英仏等二十カ国でございます。それから六海里説をとっておるのが八カ国、十二海里説が四十カ国、また二百海里説が五カ国、以上のほか四海里、十海里、十八海里、百三十海里と、それぞれの主張がございます。  漁業水域については、米英加豪等十三カ国が十二海里の漁業水域を一方的に主張しております。その他六海里、十五海里、二百海里等の主張がございます。  政府といたしましては、従来から述べておりますように、領海というものについては、全世界的に国際法上みんなが認め、確立した規則は、現在は領海の幅員は三海里を限度とするということになっておりますので、この説の上に立脚しているわけでございます。しかし、この問題については、ただいまも御指摘がございましたように、海洋法の国際会議その他もございまして、いろいろの経過がございますが、一口に申せば、領海というものは一方的に各国がそれぞれ主張し得るものではございません。また、その領海の範囲を越えて公海の一部に専管水域というものをつくるにいたしましても、一方的にこれが認められるわけのものではございませんから、主張は主張として、全世界的に確立された規則というものがつくられることが望ましい。そこで、たとえば何海里というものは領海として認めるべきであるということに世界的に一致される説があれば、三海里説を政府としては固執するわけではございません。しかし、かりにこれが何海里ということにきまりましても、その次の段階でそれを越えて、隣接の水域に対して各国がそれぞれ専管水域というようなものを主張し続けるということであっては、やはりこれは非常に困ったことでございますから、きめる場合にはそういう点について、領海については何海里、それから隣接水域についてはこういうことで全世界的に協定ができるんだということでなければ、これに応ずることはできない、こういう態度で今後もまた海洋法の国際会議どもございますでしょうが、そういう主張でまいるつもりでございます。
  106. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 政府としての統一見解はただいま外務大臣がお述べになったとおりでございます。
  107. 芳賀貢

    芳賀委員 いま外務大臣から、政府として、国際通念上からいえば三海里説というものが妥当であるというようなことでありますが、現実には先ほど説明のありましたとおり、単に領海だけの幅員を三海里としておる国は日本を含めて六カ国しかないわけですね、先ほど述べられた二十一カ国という中には、領海三海里のほかに漁業専管水域を十二海里設定するということになっておるわけですから、日本のごとく領海三海里説だけを固執して漁業専管水域についても何らこれを設ける主張をしないという国は、残念ながら、沿岸国九十六カ国のうち日本を含めて六カ国だけしかないということになるわけです。  もう一つの問題は、領海の幅員を広げるという問題、あるいはまた漁業専管水域を設定するというようなことについては、当然関係国との合意等が必要であるというような主張のようであります。しかし、一方的に領海の幅員を拡大し、一方的に漁業専管水域を十二海里あるいは二百海里設けたという場合に、日本がこれを承認しない、認めないという主張をたとえばしても、現実的に日本の遠洋漁船等がその相手国の沿岸あるいは相手が主張する領海の水域内あるいは専管水域内に入って操業した場合においては、しばしば拿捕されるというような事態が起きておるわけです。そういう事態に対して、日本の政府としては、領海三海里以上を一方的に宣言した国に対しては当然これを認めないという立場に立って、それでは日本の出漁船団の利益を擁護してきたかということになると、そういうことは全然していないわけでしょう。ですから日本側が、相手国が一方的にこれを宣言したから認めないということを繰り返しても、大勢的にはほとんどが領海を広げあるいは専管水域を設定しておるという現実ですから、これをわが国の国益に照らした場合に、一体領海というものを現状の線でとどめるべきであるか、あるいは沿岸漁業等を守るという立場の上に立って適切な漁業専管水域をわが国においても設定すべきでないかというふうにわれわれは以前から主張しておるわけです。ですから、この点について国際的にやはり実現可能な態度というものをわがほうにおいても明確にして、それに取り組む必要があるのではないかというふうに考えるわけで、この点を中心に私はただしておるわけです。もう一度政府としての基本的な方針というものを明確にしてもらいたい。
  108. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これはまことにごもっともなお尋ねであると思います。そこで、先ほど申しましたように、領海というものは全世界的に認められた規則でなければならないわけでございまして、それ以外に専管水域をつくるというようなことは、公海自由の原則にもとるものである、これが基本的な考え方でなければならないわけでございますが、日本といたしましても、水産日本でもございますし、非常に密接な関係のあるような国々との間には、御承知のように二国間で専管水域についての取りきめをいたしておるところも相当ございますわけで、そういう国々との間には、二国の間には、合意された専管水域内での安全操業あるいはそれに違反した場合の取りきめというものができているわけでございます。これが一つ。  それからもう一つは、やはりお説のとおりだと思うのでありまして、国際会議におきまして日本の主張は非常に私は筋の通った主張だと思うのです。三海里というのがかりに六海里であっても、あるいは、そのほかの海里であってもいいと思いますが、それについて万国が合意するような一つの規則をつくり上げる、それから必要ならばそれ以外の隣接の水域について専管水域というものを万国的に認めるかどうかということは問題ですが、認めるなら認めるでみんなが合意した、そして守れるような専管水域というものを決定をするというてとにするように、この上ともに努力をいたしたいと思うわけでございます。すでにこれは詳細御承知のことと思いますが、過去におきましても、国際会議等における日本の主張あるいは協力というようなことは十分にしておるつもりでございますが、なかなか各国の主張あるいは利害等、いろいろの立場からの意見がありますために、場合によりますれば日本が賛成したものもあり、あるいは棄権したものもございますけれども、こういった過去の経緯からごらんいただきましても、日本の続けてきているこの努力というものは、私は必ずや各国の理解を得るような状況になってくるもの、ぜひそういうふうな道に進みたい、かように考えるわけでございまして、三海里あるいはその他に固執するという考え方ではございません。
  109. 芳賀貢

    芳賀委員 一九五八年並びに一九六〇年の海洋法会議に日本も出席して、特に一九五八年の際は領海に関する条約の中で、領海の幅員をどうするかという点が、これが決定を見ないで今日に至っておるわけです。そういうような経過もあるわけですから、外務大臣の言われたような方針で臨むということになれば、その時期は到来しないと思うのですよ。ですからほとんどもう九〇%の沿岸国が領海を広げあるいは専管水域を設定して自国の利益を擁護するという立場に立っておるわけですから、特に日本のごとさ沿岸漁業に相当大きなウエートを置いておる国においては、やはり自国の沿岸漁業を守るという立場から見ても、この際早急に方針を立てて、——農林大臣におかれても、外務大臣の答弁のとおりでございますでは、私は済まないと思うのですよ。きょう早急に政府の方針が固まらないとすれば、これは分科会等においてでもよろしいですから、もう少し前向きな現実的な実行可能な方針というものを、国会を通じて明らかにしてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  110. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 たとえば一九六〇年の国際会議におきまして、日本としては、領海の幅員六海里まで、漁業水域十二海里まで、ただし同水域で過去五年間操業実績を持つ国は十年間引き続き操業を継続し得る、こういう提案ができ上がりましたことは御承知のとおりですが、これには日本政府は賛成したわけでございます。これは一つの示唆としてお受け取りいただけると思いますが、これでみんながまとまってくれればたいへんけっこうだったと思うのですけれども、これは委員会の段階ではそういうことになったのですけれども、本会議になりましたところが、先ほど申しましたように、専管水域に隣接している水域については沿岸国が特定の優先権を持つんだ、こういうふうな修正案が出たために、この点については日本としては絶対に反対でございますから棄権をした、こういう経緯がございまして、私がいまここに経過的にも一つの示唆があると申し上げたとおり、たとえばこういう考え方が全世界的に承認されるように、これを政府としては望んでいるわけでございますから、今後におきましても、この線に沿うような努力を強力に続けて、この問題に国際的な決着がつくようにいたしたい、これがまた国益を守るゆえんではないか、かように考えているわけでございます。
  111. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、米の生産調整の問題についてお尋ねいたします。この問題についても、委員会等を通じての政府側の答弁あるいはまた両院の本会議等における政府の答弁等を見ても、容易に統一した方針というものが固まらぬようであります。  そこで、この機会にお尋ねしたいのでありますが、昨年の十一月二十六日に政府と与党である自民党の首脳部におかれましては、党と政府の申し合わせなるものを確認しているわけです。この第一は、食管制度の根幹はこれを堅持する、第二は、緊急措置として百五十万トン以上の米の生産調整を行なう、第三は、これに伴う転作等につき強力な助成措置を講ずる、第四は、新規開田、増反は厳に抑制する、第五は、昭和四十五年度から米による学校給食を行なう、第六は、農業生産の地域分担を早急に明確にし、これに沿って施策を強力に推進する。この際の党側出席者は、田中幹事長、鈴木総務会長、根本政調会長、西村総合農政調査会長、野原総合農政調査会小委員長政府側としては、保利内閣官房長官、福田大蔵大臣、長谷川農林大臣ということになっておるわけです。そこで幸いと申しますか、昨年は党務を担当しておられた皆さんも、功績があって、今度は閣僚になった方もおられるわけであります。ですから、この十一月二十六日の党と政府の申し合わせというものはこの機会においても確認できると思うわけでありますが、この点をひとつ大蔵大臣から説明を願いたいと思います。
  112. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいま芳賀さんからお話しの政府、与党の申し合わせば、そのとおりだと思います。私はいま原文を持っておりませんから、文言についてははっきりしたことは覚えておりませんけれども、趣旨はそのとおりであります。なぜそれをつくったかと申しますと、それより前に農業協同組合から百五十万トン生産調整構想というものが打ち出されたわけであります。政府、与党はこれにつきまして相談をしたのですが、これはたいへんなことだ。つまり、いままで農業協同組合といえば、米の増産また米価の引き上げ、そういうことを非常な力を入れまして主張しておった。それが一転して、今度は生産調整をやる、つまり減反を行なう、これはたいへんなことなんだ、そのこと自体がたいへんだ。政府、与党は集まりましてこの問題を協議したのですが、この考え方は大事に育てなければいかぬ、ついては政府、与党として統一した見解を農業協同組合に対して示す必要がある、こういうので会合を持ち、ただいまお読みになったような六項目の点について意見統一をしまして農業協同組合に回答——回答というか申し上げた、こういう次第でございます。
  113. 芳賀貢

    芳賀委員 さらに衆議院解散の日の十二月二日に第二回の申し合わせが同じ顔ぶれの皆さんでなされたわけでありまして、これは十一月二十六日の申し合わせを受けて実行方策として、第一に、生産調整の目標を百五十万トン以上とする、以下六項目について具体的に申し合わせが行なわれておるわけであります。  そこでお尋ねしたい点は、この政府並びに与党の申し合わせの方針を受けて農協を中心とした農業団体におきましては、十二月の三日に申し合わせ並びに政府と党に対する要請を行なっておる。これは結局、十一月二十六日の党と政府の申し合わせの第一の方針である食管制度を堅持するためには、当面する米の過剰傾向に対して、これを調整することが必要であるということになっておるわけですね。その目的というものは、米の生産調整を通じて食管制度を堅持しなければならぬという政府並びに与党の姿勢が明らかにされたので、これを全国の中央段階における農協中央会あるいは各連の会長合同会議等においては、政府がそのような食管堅持を大前提とした生産調整に臨むということであれば、生産調整そのものには原則的に問題があるけれども、食管を守るという大原則の上に立った場合に、生産者団体としても政府並びに与党の方針に協力しますと、こういうことになっておるわけです。ですから問題は、この政府、与党の示した食管堅持の根本方針、これを信頼して全国の生産者団体が食管堅持のためには政府の方針に協力して生産調整をやらなければならぬ、こういうことになっておるわけであります。それがたとえば二月十九日の参議院本会議における倉石農林大臣の答弁、またその後の福田大蔵大臣のしばしばの発言等を見ると、この食管制度を堅持するあるいは根幹を堅持するということの内容が何であるかということが不明になってしまったわけですね。これはたいへんな事態になっておるわけです。ですからして、たとえば倉石発言が二月十九日に参議院本会議で行なわれたあとの二月の二十一日に、農協を代表した全中会長の宮脇会長が農林省並びに自民党に対して抗議の申し入れを行なっていることは、これはもう大臣御承知のとおりであります。その中で参考になる点を申し上げますと、宮脇全中会長の語った内容は次のとおり。これは新聞に掲載されておる内容であります。「倉石発言は、法解釈上のことをいったのかもしれないが、農業団体は、生産調整に協力しようと苦心しているとき、あのような発言をされたのでは農民に不安と混乱をまねくだけである。食管の根幹は、政府が米を独占集荷、独占配給することが、当然含まれているはずだ。佐藤首相も今国会で、食管を堅持するといっておきながら、倉石農相がこれに反することをするのは、刀を農民にあずけておいて、中身を抜きとってサヤだけをもたせるようなものだ。国の施策と農民の利益が一致するならわれわれは政府と一緒にやっていくつもりであるが、政府が裏切るようなことをするのでは、行動をともにすることもできなくなる。政府との旅は、キンチャク切りと旅をしているようなもので、サイフを寝るときまで、とられないように用心しなければならないのか。」と、こういう全中会長の発言が新聞に掲載されております。まさか私は倉石農林大臣あるいは福田大蔵大臣がきんちゃく切りのように見えるとは言いませんが、しかし、政府並びに与党が食管制度は必ず守るということを前提にして、守るためには、当面した過剰対策を進めるための生産調整というものが、目的を果たすまでの間必要であるということを呼びかけて、食管制度を今後守るという政府の責任が明らかであるならば、生産者はこの際生産調整に協力しましょうということになっておるわけです。これが、たとえば米の買い入れ制限をやる場合に食糧管理法の改正の必要はない。あるいはまた米の政府全量買い上げというものは、これは食管の根幹には入らないというような、そういう発言をされておるということは、重大な不信行為であると思うわけです。ですからこの際、政府と自民党が申し合わせをされた十一月二十六日のこの食管制度を守るという大前提というものについて、これとの関連で、たとえば食管法の改正は要しないで、米の買い入れ制限を政府の政令等の改正によってやれるという考えの上に立っておるのか。あるいは食管法の立場の上に立った場合であっても、米の全量買い上げというものは、食管法が政府に義務を課したものでないというような判断の上に現在も立っておられるかどうか。この点、政府としての統一された方針というものを明確にしてもらいたい。
  114. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 参議院の本会議で私が前川君にお答えいたしましたことは、いろいろに報道をされておりますけれども、食管法の改正をしないでも買い入れ制限はできるのかというお尋ねでありましたので、私は、食管法第三条の考え方からいえば、その限りにおいては法改正は要らないものであると、こういう簡単な答弁をいたしたのがいろいろに伝えられております。しかし、私は、その後しばしばあらゆる機会に申しておりますように、佐藤内閣総理大臣も、本委員会でも本会議でも、食管制度の根幹はあくまでも維持していく、こういうことを言っておられるのでありますから、その点においては同じ佐藤内閣の農林大臣でありますから全く同様であります。ただ、いまそういうことを考えているのかというお尋ねがしばしばありますので、それは考えてはおりません。いま一生懸命でやっておられる最中に、できなかったときのことはなど考えるべきではない——実は本日も正午に全国の農協中央会の会長の諸君の数百名おられる大会に臨みまして、私の見解を述べたのですが、この人たちはみな私の申すことに少しの不安も感じておりませんし、ただいま宮脇君の談話というのが、どこに出ておったか、まだそれは私は読んでおりませんけれども、あの人は御存じのようにきわめて酒脱な人でありますから、いろいろおもしろいことをおっしゃるかもしれませんが、その後何べんか会って、そして私どもの考え方と一致しておる、したがって、協力を願っておるわけであります。そういうことでありまして、私はもちろんのこと、先ほど自民党のお話がございましたから、つけ加えて申しますが、私どもが考え方をきめますためには、自由民主党に総合農政調査会というものがございまして、そこの方針と常に緊密な提携をいたしまして、歩調を合わせてやっておることでありますから、私の申し上げました、その参議院の本会議のことは、法解釈上その限りにおいてはそういう必要はないと思う、こういうことを申したのでありまして、あとのことにつきましては、これからどうするのだ、これからは、いまの場合さようなことは考えておりません、こういうことを終始一貫申しているわけでありますが、ただいま食管のことがだいぶお話がございましたけれども芳賀さんも御存じのように、いま、もしこの調子で行ってしまいますならば、食管制度は崩壊してしまうであろうという危機感は、全国の農村の人々が持っておりますし、きょう私がそういうようなことを農協中央会の演説でも申しましたけれども、皆さん同じような考えでございますので、食管の根幹を維持していくことが、日本の農政、いままで米を中核にしてやってまいりましたこの農政を推進してまいるには必要なことであると私は思っておりますので、そういう意味から行きましても、ぜひ生産調整はやってもらって、食管の制度を維持してまいりたい、こう思っておるわけであります。
  115. 芳賀貢

    芳賀委員 全中会長の宮脇君にしても、あなたに会うたんびにきんちゃく切りと言うわけにもいかぬですからね。一度くらい言ってそれが新聞に載れば、大体国民に伝わっておるわけだから、それ以上失礼なことを繰り返すわけにはいかぬと思うのですよ。  そこで、与党との間に常に一致した方針の上に立っておるということを言われておるわけですからして、この際、建設大臣になるまでは与党の政調会長をやられておった根本さんですから、一体与党自民党といたされては、食管の堅持あるいは食管の根幹を堅持するという場合、一体米の買い入れ制限等について、これは食管法を改正しないで、一片の政令の改正等によって行政府がやれるというような考えに立っておられるのか。もう一つは食管制度のもとにおける生産者の生産した米を、全量政府に生産者は売り渡す。政府は全量買い入れるというこのことが、食管の根幹の外であるというふうな、そういう考えというものを、与党においては方針として持っておられるのかどうか、その点を聞かしてもらいたいと思う。
  116. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 私が昨年まで政調会長をしておったことは事実でございます。そこで御承知のように米が非常に過剰になっておるので、このまま無制限に買い入れていく、しかも値段を上げるということになりますれば、いかにこれを守ろうとしても、物理的にも財政的にも破綻する。そこで米価は据え置き、かっこれを法的に買い入れ制限というような措置を講ずるよりは、やはり農民団体並びに地方自治体の首脳の人々の御理解のもとに、この米の生産を減らすということが政治的に最も合理的な方法ではなかろうかということで、数次私は農業団体の皆さんに会っているのです。最初のときには相当抵抗がございましたが、現実に古々米がこのようにふえ、かつ、消費者がどんどん米を買わなくなるという事実から見れば、やはり政府、与党が考えておることは妥当である、したがって、農業団体も積極的にこれに協力しよう、こういうことであの話が出たわけでございます。したがって、その当時においては法解釈をどうこうということには触れていないのです。これはそういうような法理論の解釈がどうあるということで解決すべき問題ではなくして、政府の方針に対する農民の皆さんの理解と合意、これがこの問題解決のかぎであるということで、そうしたのでございます。食管法の解釈については、ただいま倉石農林大臣が、これは法そのものの文理解釈はどうかという質問に対する答えでございまして、その限りにおいてはそうであろうと思います。ただ、私は現在党の執行部を代表しておりませんから、その点についての私の責任というか、それ以上のことを言うことは、私は適当ではないと思いますけれども、一般的に党内におきましては、この米の過剰については、単に食管法の改正とかあるいは行政措置というだけで解決する問題ではなくして、これは非常に大きな日本の経済の体質的な変革時期にあたりまして、その中における農業関係にあらわれた一つの現象と見ておるのでございます。したがいまして、これにはあるいは農工一体とかあるいは新農政といわれまするように、一面においては他の産業を地方に誘致して、そうしてこういうような問題を解決するということがございまするので、そういう意味でやっておりまするので、法解釈については、文理解釈としてはそうだと思います。
  117. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、食管法の法的解釈については倉石見解と同様である、食管法の改正をしないで買い入れ制限はできるというふうに、前政調会長は考えておるわけですね。  もう一つ、答弁が漏れましたが、米の全量買い上げですね。政府の全量買い上げというものは食管制度の根幹には入らないということを倉石農林大臣は政府の統一見解として発表されておるわけです。ですから、与党自民党におかれましても、全量買い入れするとかしないとかという問題は、これは根幹ではないんだ、根幹の外だというふうにあなたも考えておられるわけですか。
  118. 中野四郎

    中野委員長 ちょっと根本君、これは建設大臣としてのあれじゃないのですから、だから所管外ですから……。
  119. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 その意味で、私ほ先ほど言ったように、党におったときの発想は、この法解釈には全然触れておりません。
  120. 芳賀貢

    芳賀委員 全量買い上げは食管の外か内かということを聞いているのです。根幹の問題。
  121. 中野四郎

    中野委員長 芳賀君にちょっと申し上げますが……。
  122. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 ただいま委員長から申されましたように、これは建設大臣として申し上げることでなく、法解釈については農林大臣が責任をもって御答弁したわけであります。
  123. 芳賀貢

    芳賀委員 委員長に申し上げます。政府の席に与党であろうと野党であろうと党を代表する者は着席はできないわけですが、この十一月二十六日ないし十二月二日の政府と与党自民党の申し合わせの中に時の政調会長の根本龍太郎君が名を連ねておるわけです。だから、いまは建設大臣であるが、その当時は与党を代表する政調会長の立場にあったので、この申し合わせがなされた時点において党の政調会長としてこれらの問題についてはどういう判断を党側の立場で持っておられたかということを参考までに私はいま聞いておるわけです。そういう前提で聞いておるわけですから、委員長も間違わぬように進行をお願いいたします。
  124. 中野四郎

    中野委員長 間違っていませんけれども、建設大臣として出席しておるのでありますから、職制上、いまのような御意見、質問がありましても、これに答えてはいますけれども、ちょっと委員会の運営上考えなければならぬと考えまするので、やはり農林大臣がその責任者としておることですから、どうぞ農林大臣からの答弁を求めていただきたいと思います。(発言する者あり)  ちょっと書かないでおいてください。     〔速記中止〕
  125. 中野四郎

    中野委員長 始めて。  芳賀君。
  126. 芳賀貢

    芳賀委員 だいぶ御苦心のようですから、質問を進めます。  それでは、全量買い上げの問題は、これは政府及び自民党としては食管の根幹の外であるというふうにしばしば外部に表明されておるわけです。この点は非常に大事な点ですから、これは直接関係のある大蔵大臣並びに農林大臣からこの点を明らかにしてもらいたい。
  127. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これは私ばかりじゃありませんで、今までの国会でもしばしば政府当局から説明してございますが、食管制度の根幹ということについての考え方は、その一般的定義といたしましては、法律に書いてありますように、「国民食糧ノ確保及国民経済ノ安定」という大目的に沿うために必要な政府の食糧管理のあり方をいうものである、こういうふうに従来理解いたしておるわけであります。したがって、この食管法という法のたてまえからいって買い入れ制限というのはできるのか、こういうお話でありますから、この法律を改正しないでも買い入れ制限はできる、いま私が申しました限りにおいては支障はないものと認める、こういう法的解釈を従来どおり申し上げておるわけでありますが、さてしからば、先ほど来お話のありましたように、それなら一体やるのかやらないのか。これは、ただいまはそんなことを考える時期ではありませんし、そういう考えは持っておりません、こういうことを言っているわけであります。
  128. 芳賀貢

    芳賀委員 法律上の解釈としては、食管法の改正を要しないで、買い入れ制限は政府の行政措置でやれるという、この点は政府の方針並びに与党の方針もそうであるということはようやくわかりました。  もう一つは、食管の根幹の中に全量買い入れの問題あるいは制限買い入れの問題が含まれておるかどうかという点ですね。倉石農林大臣並びに福田大蔵大臣は、この全量買い上げ等の問題は食管の根幹以外の問題であるということを言っておられるわけですから、この点は全国の生産者が非常に関心を持っておる点です。ここで明快にしてもらいたいのですよ。
  129. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 この法ができましたころは、御存じのように昭和十七年でありまして、たいへん窮迫しておったときでございます。そのころこの法律ができたわけでありますが、ただいまのように需給が緩和されまして、御承知のように自主流通米というようなものもできておるのでありまして、全量を政府が買い上げなければならないということには、その法律の解釈からいえば当然にはなってこないのだ、しかし御存じのように当初以来全量を買い上げてずっとやってきておるのでありますから、現実にはそういうふうに行なわれておるのでありますが、法の解釈から申せば全量買い上げの義務があると、この三条からそういうことが当然出てくるということにはならない、こういう解釈をいたしておるわけであります。
  130. 芳賀貢

    芳賀委員 大事な点ですから、わかるまでお尋ねします。  十一月二十六日の党と政府の申し合わせの一番目の一番大切な、食管制度の根幹はこれを堅持する。この中に全量買い上げの問題がわれわれは当然含まっておる、生産者もすべて、食管の根幹を堅持するということを言っておるが、従来同様政府は、食管制度を通じて生産者の生産した米を当然全量買い入れる、政府としてこれは義務を持っておるというふうに、これはもう歴史的に理解しておるわけです。だからいまここで、根幹の中にそれが入っているかどうかなんということは聞く必要もないのですよ。しかし政府の責任ある者が、根幹の中にそれが入っておらないということを言っておるわけですからして、この機会にほんとうに、政府並びに与党の申し合わせに基づく食管の根幹堅持の中に、それは入っているのか入っていないのかということを明らかにしてもらいたい。これは簡単な問題ですよ、答えは。入っているというのか、入っておらないというのか。たまには大蔵大臣も答弁しなさいよ。
  131. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いまの続きでございますから申し上げます。食管法第三条から出てくる精神では全量買い上げの義務が政府にあるとは解釈しておらないのであります。
  132. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは党と政府の申し合わせに基づくところの食管制度の根幹の中には、全量買い上げの義務というものは入っておらないということですね。あなたは申し合わせのときはいないじゃないですか。
  133. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いま農林大臣ですから。——そこで自由民主党のその中に私はなるほど入っておりませんが、先ほども申し上げましたように、事の経過を見ますと、初め生産者に割り当てました量、それはそれとして、さらにこれも政府に売りたいという考えで持ってくるものは無制限に買っておったのが現実の歴史でございますので、政府に売りたいといって持ってこられるものは全量いままで政府が買い上げておりました。これはそのとおりであります。ただ法律的にどうなるかというお話であったから、そういうことについて、その限りにおいては政府が義務を持っておるものではない こういうことを言っておるのであります。それから自由民主党と政府の当時のお考えは、これは本年と申しますか、すなわち四十五年度において生産者からの米の買い入れ制限をやらない、こういう考え方をはっきりいたしておるものだと私も理解をいたしております。
  134. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは申し合わせを作成された当事者である福田大蔵大臣にぜひこの点を明らかにしてもらいたい。私は四十四年十一月二十六日の申し合わせというものは、これは一の、食管制度の根幹はこれを堅持するというのは、単に立法上の解釈論をここに載せたのではないと思うのですよ。生産調整をする場合の実行方策をどうするかということについて、まず大前提である昭和十七年から続いた食管制度はこれを堅持するということに出発されておるわけですからして、この実行方針の第一である根幹堅持の中に、全量買い上げの点は当然含まっておるというふうに私ども社会党としては判断しておりますし、また全国の生産農民もそのとおりに判断しておるわけです。これが違うというような説がしばしば国会において、主として倉石農林大臣から流されておるわけですからして、倉石農林大臣はこの時点では農林大臣でありませんので、やはりこの際、申し合わせを作成されました福田大蔵大臣からこの点を明らかにしてもらいたいと思います。
  135. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 食管制度の根幹はこれを堅持する、その食管制度の根幹とは、ただいま倉石農林大臣があなたに申し上げたとおりです。これが全量買い上げがどうなるか、こういう点につきましては、これは食管法上さような義務はありません。これは政治問題、政策問題として考えるべき問題である、かように考えております。
  136. 芳賀貢

    芳賀委員 だからこれは政策問題でしょう、政府と与党自民党の申し合わせですから。政策実行の基本として現行の食管制度の根幹を堅持するということは、これは実行論として明らかにされておるわけですから、その場合一番生産者と関係のある問題は、本年生産された米の政府に対する全量売り渡し、明年度生産された米の全量政府への売り渡しというもの、これはもう当然生産者としての権利として主張できる点ですからして、これが自民党並びに政府の申し合わせの根幹の中に入っておらないということになれば、これはたいへんなことになるわけであります。ですから、この一点を明確にして、全国の農民諸君の疑念を解いてもらいたいと思うのですよ。——これは大蔵大臣に聞いているのですよ。
  137. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 先ほど申し上げましたように、その申し合わせばどういういきさつか、こういいますと、これは農協のほうから一割減反問題、また一割減産問題という構想が出たわけなんです。それに対して意思表示をしなければならぬということに相なりまして、相談した結果がそういうふうになった。なったんだが、いま減産問題、減反問題がどういういきさつで出てきたのか、こういうことを考えてみますると、これは農村のほうでも、このままにしておいたんでは食管制度が一体どうなるか非常に心配だという危機感が出てきておる。この問題も同時に自由民主党並びに政府は意見統一をして答えておいたほうがよかろう、こういうので、第一項「食管制度の根幹はこれを堅持する。」こういうふうに表現をいたしたわけでございまして、そのとき法律論をいたしまして、食管法上どうのこうのというようなことじゃないのです。あくまでも食管制度は堅持するということを農民に申し上げておきたい、こういうことですが、食管制度とは何ぞやということになれば、倉石農林大臣からただいま申し上げたとおりである、さよう御了承願います。
  138. 芳賀貢

    芳賀委員 どうもこの点だけが明確でないんですね。繰り返して私が尋ねておるのに明快な答弁ができないということになれば、これは根幹の中に全量買い上げの問題は含まっていないということですね。そういうふうに解釈していいですか。政府並びに与党自民党におかれては……。
  139. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 そういう法律的にどうのこうのということを議論して書いたわけじゃないのです。食管制度を守る、守りたい、これが農民の願いである。その願いを実現するにはどうすればいいかということが農民の間から一割減反という声になって出てきたんだ。その心情もくみまして、われわれはここで答えておかなければいかぬというので、第一項、食管制度はこれを堅持する、こういう表現をした、かように御理解願います。
  140. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは大蔵大臣、これは単なるまくらことばですね。——委員長、注意してください。
  141. 中野四郎

    中野委員長 ちょっと私語をば……。
  142. 芳賀貢

    芳賀委員 この申し合わせの第一の食管制度の堅持というのは、これは単なるまくらことばで、何も意味がないというわけですね。そうであれば、そうだと言ってもらえばいいですよ。——いや、あなたはいいですよ、このときおらないのだから。まだ農林大臣になっていないのだから。
  143. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 そのときはおりませんでしたけれども、前大臣からの引き継ぎもありますし、それから予算編成は私がやったわけでありますから。  そこで、先ほど来お読みの党と政府との話し合いのときに、ことに予算の大詰めのときに、ただいまごらんになっておるような趣旨のものを、私も執行部からも、それから長谷川前農林農林大臣からもいただきまして、その経路の説明を受けておりますから、本来ならば、いまごろの時期に買い入れ制限をやるのかやらないのかなんということをおくびにも言うのは失礼だと思って、そんなことは考えておらないのでありますから、そんなことを考えずに一生懸命でやってもらいたいという立場でありましたけれども、いま法律論が出てまいりましたので、その法律の解釈につきましては、ずっと政府が持ち続けておる見解を私も説明を申し上げたというだけであります。しかし、それなら、その党と政府との申し合わせの趣旨はどうなるんだ、こういうお話になりますと、前大臣から継承いたしておりますので、私は、買い入れ制限ということは全然考えておりません、こういうことですから、その党と政府の申し合わせの趣旨を尊重しているわけであります。  それで、芳賀さんにはよけいなことを申し上げるようで失礼でありますけれども、私どもがどうするかということを言う前に、生産調整ということについては、地方の農村の人々も農業団体も知事さんも、これはこうしなければだめだということを考えられてまいりました。その大きな原因の一つに、このままでいけば食管制度はパンクしてしまう、どういうことになるかわからなくなるという危機感をみなお持ちでありますので、その点は、私ども全く同感でありますので、期せずして一致した見解で生産調整が行なわれておるのでありますから、できなかったときどうするかということをいままでもお尋ねを受けましたときに、そんなこといま申したくありませんと申しておったのはそういう趣旨でありますが、やむを得ないというふうなときには、なぜできなかったんだろう、かりにできない場合に、どういう理由でできなかったんだろうと、そういう諸般の状況を調べまして、それぞれの関係筋とも相談をして、どうやったらいいかということをそのときに考えるべきことであって、いま、もしできなかったら買い入れ制限をやるなどということは、私、すなわち政府では考えておりません。
  144. 芳賀貢

    芳賀委員 買い入れ制限をやる考えがないということは、買い入れ制限はしないということですね、ことしは。考えがないというなら、それではしないのかということになる。
  145. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 考えがないということは、しないと同じことじゃないですかな。そういうふうに、どっちの言い方でもけっこうでございますが、そういうふうなことでございます。
  146. 芳賀貢

    芳賀委員 これは大事な点ですからね、はっきりしてくださいよ。だから、農林大臣だけじゃなくて、政府としては米の買い入れ制限をやることを考えておらないということを、いまあなたが政府代表して言っているわけだから、考えておらないということは、買い入れ制限は今後もしないということですね。これを明確にしてください。
  147. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先ほど申し上げましたように、今回政府がやっております百五十万トン以上の生産調整がかりに本年不可能であったという場合には、なぜこういうことになったんであろうかということについて掘り下げて検討をして、政府のとるべき処置をそれぞれの、与党並びにその他の機関の御意見を承りながら考え直していかなければならないことは当然でありまして、今後もやらないとかなんとかという政策面につきましては、いま私がここでそんなことを申すことはたいへん危険でありますので、少なくとも、ただいま百五十万トンの生産調整を御協力願っておるのでありますから、今年の間に私どもがそういうことをやろうというふうなことは全然考えておりませんと、こういうことであります。
  148. 芳賀貢

    芳賀委員 どうもあなたの答弁はけつがないですね。  そこで、食管制度ですから、食管特別会計を所管しておられる大蔵大臣にこれをお尋ねするわけですが、いま農林大臣は、買い入れ制限をやる考えは持っておらないということを繰り返して言っておられるわけです。考えを持っておらないのであれば、やらないということかというと、いや、それはわからぬということを言っているわけですからね。それでは、大蔵大臣としては、政府として考えておらないということであれば、政府としては買い入れ制限を行なわないということをこの際言明できるかどうか。失礼ですが、たまたま福田さんと倉石さんは同門じゃなくて同派でしょう。同派の仲だから、あまり意思の疎通が欠けておるということは思えないですけれどもね。この際、大蔵大臣から明確にしてもらいたい。
  149. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいま全量買い入れはいたしませんということは考えておらない、それなればこそいろんな手を尽くして、そういう制限をするような事態に至らないように努力をいたしておる、かように御理解願います。
  150. 芳賀貢

    芳賀委員 くどいようですが、それでは考えがない、それでは買い入れ制限は行なわないということを明らかにしてもらいたいです。政府としては買い入れ制限は行なわない、これは大蔵大臣から……。簡単じゃないですか。
  151. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいまのこの予算において、全量買い上げを取りやめるというようなことは考えておらないんです。そんな事態に至らないようにというので、あらゆる努力をしておる、かように御理解願います。
  152. 芳賀貢

    芳賀委員 だから、それであれば、全量買い上げをするということでしょう。そうじゃないですか、その点を明らかにしてください。
  153. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先ほども申しておりますように、もうすでに自主流通米というのが活発に流行いたしておるような次第で、全量買い上げの義務というのは私はおかしいと思うんです。ことしは買い入れ制限というものはいたしませんと、こういうことでありますから、それでもう御理解はいただけると、きわめてはっきりしていると思います。
  154. 芳賀貢

    芳賀委員 だから、きわめてはっきりしておるというのであれば、じゃ全量買い入れしますということは言えるじゃないですか。
  155. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 全量買い上げにはなりませんよ。自主流通米というふうなものは、一体自主流通米ですからして配給の制度はパスしておりますけれども御存じのとおり、政府の買い上げには関係ないのでございますから、これは専門家の芳賀さんによけいなことを申してなんですけれども、そういうもんじゃないでしょうかな。
  156. 芳賀貢

    芳賀委員 そういう三百代言のようなことを聞いておるわけじゃないですよ。いいですか、自主流通米というのは、これはやみ米と違うわけですから、政府の食管の制度の管理のもとに自主流通米としても置かれておるわけですよね。ですから、政府に売り渡す直接の売り渡しと一生産者が自主的に判断して、そうして政府の管理行為を通じて自主流通米を政府に扱ってもらうという、こういうことになっておるわけですから、だからここで言う全量買い上げというものは当然——自主流通米というものはこれは直通ルートで消費者に行くわけですから、従来どおり政府に売り渡し申し込みをして買い入れてもらいたいという事前売り渡しの希望については、これは制限をしないで全量買い上げをするというのがたてまえじゃないですか。一国の農林大臣がそのくらいのことをわからぬでつとまらぬでしょう。難局に取り組むわけにいかぬじゃないですか。だから、全量買い上げをするのかということは、私はいま行なわれておる制度のもとで必ずするんであろうということを聞いておるのですよ。だから、行政庁としてやるというのであればやるということを明確にすればいいじゃないですか。
  157. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 どうも私の言っていることを十分おくみ取りいただけないようですが、政府に初め予約いたしますね、そのほかにも持ってこられればいままではそれもどんどん買っておりました。買い入れ制限はいたさないのでありますから、これからも従来と同じようなことであります。本年は買い入れ制限はいたさないということは、予約のほかにお持ちになったものは政府は従来どおり買い上げますと、こういうことでありますから、きわめて明白じゃないかと思うのですが……。
  158. 芳賀貢

    芳賀委員 これは質問の結果、明確にだんだんなったわけですからね。  それでは、政府の行政措置にまかされてあるわけですが、今年生産される生産者の米の取り扱いについては、現在ある政令によって定められておる米の売り渡し令に基づいて、いわゆる事前売り渡し制度というものは当然続けられるわけですね。そうなると当然六月あるいは七月を期して予約の申し込みを生産者からとるということにこれはなるわけです。この売り渡し令は毎年毎年昭和何年度産米ということで、四十五年度であれば四十五年度の産米についてはということで、政令をもってこれは行なうわけです。ですから、この売り渡し令なるものは政府の責任においてこれを堅持して、従来どおり昭和三十年から続けられておるところの事前売り渡し制、いわゆる予約売り渡し制についてはこれを存続するということは、政府の責任において明らかにできると思うんですが、この点はいかがですか。
  159. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 予約売り渡し制は従来どおりいたします。
  160. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、政府と与党の申し合わせに基づいて二月の四日に、全国の農協団体が米の生産調整対策に関する要請を政府並びに与党に行なっておることは御承知のとおりであります。その中に大事な点がありますからして、これに対しては政府としてどうなされるかという点を明らかにしてもらいたいと思います。  第一の点は「昭和四十四年度の転作も生産調整対象にふくめ、向う少くとも三カ年間以上継続の事業とすること。」つまり今年政府が方針を出されました生産調整の休耕、転作に対する奨励金の措置というものは、少なくてもことしから向こう三カ年間は継続して行なうべきであるという点であります。それから第二の点は、生産調整の奨励金は十アール当たりいかなる地域においても最低二万円を補償すべきである。第三は、「集団的な転作、休耕を行なう場合は、補償金を増額すること。」第四は、「米の生産調整の補償金については、課税関係が生じないよう措置すること。また、稲作転換を実施した場合、当該年次以降一定期間、各年次の農業所得の計算上、転換直前の農地から生じた農業所得の金額を限度として、転換後の農地から生じた農業所得の金額を課税対象から除外すること。」五は、「生産調整補償金の交付は、おそくとも、八月中とすること。」この中で、私は特にこの機会を通じて、第一の休耕、転作に対する奨励金の国の支出については、少なくても三カ年以上継続してもらいたいというこの点に対してどういうお考えであるかという点と、それから当然休耕、転作等については一定額の奨励金が支出されるわけでありますが、これに対して課税関係が生じないように措置すること、つまり所得税については、所得税の対象にしないとか、こういう点でありますが、これらの点について政府として方針が定まっておればこの機会に明らかにしておいてもらいたい。
  161. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私から税のほうについて申し上げますが、今回の四十五年度の奨励金につきましては、転作につきましては一時所得の措置をとります、それから休耕につきましては一般の農業所得としての扱いをする、かような方針であります。いずれの場合にいたしましても、そう御心配になるような結果にはなるまい、かように考えております。
  162. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 生産調整対策費の補助金を三年継続してやってもらいたいという要望はございました。けれども、国が来年度予算を編成するにあたりましては、財政当局のお考えもあって、臨時のものであるから本年だけにする、こういう方針が一応きめられたわけであります。
  163. 芳賀貢

    芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、昭和四十五年度に生産される生産者米価について、政府としましては、総理大臣並びに大蔵大臣、農林大臣におかれても、四十五年産米についてはこれを連続据え置きにするということを言明されておるわけですが、これは食管法のたてまえから見ても、二カ年間生産者米価をくぎづけにするということは大きな問題があるわけです。ですから、この点について、これは食管法の第三条二項の規定に基づいて算定をするのではなくて、昨年、今年は政治的な配慮で生産者米価を据え置きするというふうに、われわれは政府の態度を見ておるわけですが、この点について明確にしてもらいたいと思います。
  164. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お答えいたします。  政府といたしましては、現在の米の供給過剰の実情にかんがみまして、生産者米価の水準を据え置く方針をとることが適当であると考えまして、その方針を明らかにいたしておるわけであります。すなわち、四十五年産米の算定にあたりまして、いまお話しのどういう方式をとるかということについては、いまの段階では何とも申し上げられない状態であります。
  165. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは食管法第三条二項による、いわゆる米の生産費を中心にして、物価あるいは労賃、それから経済事情等を参酌して、そして米の再生産を確保することを旨としてきめるのではなくて、米が過剰傾向であるので、生産調整をやっておる段階であるので、ことしも食管法のたてまえを無視して、政治的な配慮で頭から据え置きをする、据え置きになるような計算については、いまはまだ明確になっておらぬが、知恵をしぼって据え置きの答えが出るようにして、それを他日、米価審議会にかけて、そのとおりの答申を得て、そうして据え置き決定する、こういうスケジュールですね。どうですか。
  166. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 米価の決定にあたりましては、やはり法律の定めておるところに従ってきめてまいるわけでありますから、いまあなたのおっしゃったように、先入観を持って、どうしよう、こうしようということではないのでありまして、法に従ってやってまいる。
  167. 芳賀貢

    芳賀委員 最初からきめておるじゃないですか。総理大臣の施政演説の中においても、大蔵大臣の財政演説の中においても、農林大臣の農林委員会における農政の方針の中でも、昭和四十五年度産米については、これを据え置きすることを決定しておるということを言っておるわけですから、もう何も法律なんか要らぬじゃないですか、最初から据え置くということで言っておるわけですから。そうなれば、昨年も据え置き、ことしも据え置くということになれば、たとえば物価の面から見れば二カ年間で一二%以上消費者物価が上昇している。労賃の関係については、四十三年度は一四%、四十四年度は一六%、民間の平均賃金が上昇しているわけだから、二年間で賃金上昇は三〇%ということになるわけです。そういうような事情というものを全然反映しないで、頭からことしの米価は据え置きというような、そういうことをきめることは、これは食管法のたてまえを無視して政治的に米価を抑制するということになるわけです。そういうふうにやるわけですね。
  168. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いまお話しのように、二年間においては、物価、それから労働賃金等それぞれ上昇を見ていることはそのとおりでありますが、私どもただいまいろいろな資料を集めまして、米価審議会に提出して御判断を願うべき資料を収集している最中でありますから、米価の決定は、そのわれわれが集めました資料に基づいて米審が決定して、われわれに答申をしてくれるわけでありますから、そういうものを参酌していかなければなりませんが、大体においていまの需給の状況が御存じのような状況でありますので、私どもとしては、その生産を特に刺激するような態度はいまはとらないことがいいではないかという、そういう考え方はありますが、いずれにしても米審の答申を待って判断をしていくことは当然であります。
  169. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、外務大臣に主としてお尋ねしたいのでありますが、昨年の十一月初旬にガットの事務局長のロング氏が来日しまして、約十日間ほど滞在したことは御承知のとおりです。その当時の新聞によりますと、ガットの事務局長は、外務大臣あるいは農林大臣、大蔵大臣にも会われたと思うわけです。その中で食糧政策の問題に触れて、第一には、日本においては食糧の輸出実績が非常に少ないので、今後も貿易政策を通じて食糧の海外輸出についてはこれを押えるべきである。第二の点は、日本の現在の国内の食糧の生産と自給度というもの、これを基礎にして、これ以上国内の食糧農産物の自給度が向上するようにしないようにすべきである。第三の点は、日本の政府においては、自国の農業の保護政策については、これを強化するということでなくて、できるだけ保護政策を緩和する方向に行くべきである。この三点についてガットの事務局長から日本の政府の担当大臣に申し出があったということが、当時の新聞で伝えられているわけであります。  これは、われわれが見ると、明らかに日本の政府に対する内政上の干渉であるというような点も見受けられるわけであります。今後の総合農政を進める途上において、このようにガットからの強い農業政策上の抑制の勧告を受けるような事態というものについては、政府としても当然明確な立場の上に立って自分の国の政策遂行に当たるべきであるというふうに考えるわけですが、これは外務大臣並びに——農林大臣は当時まだなっていませんので、大蔵大臣からもあわせて答えてもらいたいと思います。
  170. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ガットの事務局長のロング氏が昨年の秋、来日いたしまして、いろいろ意見の交換をいたしたのでございますが、これは、特に何かの具体的な問題についての意見調整とか、あるいは話し合いをまとめるという目的で来日したわけではございませんから、一般的な意見交換に終わっております。  それから、いま三点おあげになりましたけれども、実は私との会談のときには、そういう具体的な問題はございませんでした、特に農産物につきましては。ただ、彼がそのときに私との話で強調して言ったことは、いわゆる残存輸入制限の緩和問題等について、日本側の一そうの努力を切にお願いするということについては、かなり強い意見の表示がございました。これに対して、一般論としては、もちろんその趣旨において、日本としても努力をその方向に向かってやっているわけでございますけれども、私のほうからむしろ、日本においては特にこの総合農政の展開という一つの農業政策の展開時期にあたっているような状況下において、日本の農業政策の非常に大事な時期であるので、特に農産物については、日本の国情、現状からいいまして、自由化というような問題についてもなかなか困難な要素があるということを、かなり詳細に私としても説明につとめておきました。彼は農業問題については、EECにおいても、あるいはそのほかの国においても、たとえば輸出奨励金の問題とか、あるいは価格支持政策の関係とか、いろいろ実に複雑な問題が多くて、ガットとしてもなかなか困っておるんだけれども、ひとつ終局的な自由化ということについては、日本側におかれても十分研究をさらに進めてもらいたいという希望を残して帰ったわけでございます。私といたしましては、これは当時も農林省その他とも十分打ち合わせておいたわけでございますが、主としていま申しました日本の農業政策の現状あるいは農村の状況その他について、できるだけ詳細に説明をいたしまして、彼の参考に供するように努力をいたしたつもりでございます。
  171. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、土地政策の問題について、これは建設大臣並びに農林大臣にお尋ねしたいのですが、最近生産調整の一環として、三十五万ヘクタールの水田を転用するというような問題もあるし、あるいはまた、農地法の転用基準の緩和を事務次官通達で行なって、優良な農地の転用が進むような、そういう行政的な措置も講じておるわけです。私どもとしては、この際、狭い国土というものが、土地が高度に活用されるということが、国土の総合開発あるいは経済社会発展の上から見ても、一番望ましいことでありますからして、基本的には土地の総合利用計画というものを、政府においても責任の省を定めて、そこで中心的に総合的にやる必要があるんでないかと考えるわけです。現在においては、建設省、農林省、経済企画庁それぞれの分担は持っておりますが、これを統合して政策実行をやるというような中心の所管省がないのですね。したがって、こういう点については、土地利用計画あるいは土地利用区分というものを国としてどう発展さしていくかというような問題についても、今回の水田の転用問題等とあわして、この際、方針が固まっておれば明らかにしてもらいたいわけであります。  もう一つの問題は、昨年も国会において廃案になりました国有林活用法案でありますが、これを再度今国会に提出するというような気配もあるわけでありますが、既存の優良農地さえも、これを転用して農地以外に向けるというようないまの政府の方針のもとにおいて、大事な国有林を中心として林野をまたこれを開放して、そうして農用地を造成するというようなことは、昨年とことしの事情の変化から見て、政府としては慎重にこれを取り扱う必要があるのじゃないかと思うわけであります。特に農林省関係予算の中でも、林野庁の予算では、ことしの転用される山間部の水田等については造林事業を進めるというような予算さえも計上されておるわけであります。既存の農地に造林をしなければならぬというような状態の中で、そうして木材の需要は、一年間の総需要に対して五〇%程度外材に依存しなければならぬというような状態ですからして、この森林資源とかあるいは木材の生産は、米と違って過剰状態ということにはなっていないわけです。ですから、こういうような諸般の事情を踏まえた場合においては、みだりに単に政治的な意図だけで、去年つぶれたからまた出すというようなことは、これは慎重を要するのではないかというふうに考えるわけであります。  この二点について、建設大臣及び農林大臣から答弁をしてもらいたい。
  172. 中野四郎

    中野委員長 答弁は簡潔に願います。
  173. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答えいたします。  政府は新しい、いわゆる新全総で日本経済の発展に対応する総合的な土地利用の大綱をきめております。それに従いまして、われわれは都市化の進んでいるところは新都市計画法で有効にこれを活用し、農業関係は農林大臣が御説明になると思いまするが、農業振興地域を規定して、そうして、その間、道路あるいは上下水道等を公的資金も十分動員して社会開発をすることによって、その目的を達成したい、こう思っておる次第です。
  174. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農地につきましては、御存じのように、農業振興地域措置法等に私どもの考え方が出ておるわけでありますが、いま、なるほど水田はああいうことで若干の水田を他用途に転用しようといたしておりますが、それが必ずしも農地を壊廃させる住宅とかそういうものだけではなくて、ほかに転作する、そういうこともあるわけであります。究極において、私どもといたしましては、日本の農業というものはできるだけ自給度を高め、維持してまいるという考え方のもとに、その土地についてはわれわれ計画的に保持してまいるつもりでありますので、今度のいろいろな措置につきましても、やっぱり農地をわれわれが農業として大事に取り扱っていかなければならぬという考え方は一向変わっておらないわけであります。  もう一つ、国有林活用に関する法律案、これは御承知のように国有林で、今度の予算でかなり造林、林道等に大幅な、従来よりも大きな予算をつけておりますのは、御指摘のようにやっぱり外材が非常な勢いをもって需要されてきておりますようなときに、なお一そう私ども国内の需要が必要でありますが、その他いま地域分担等定めまして、できるだけ日本に足りない畜産等の事業を活発にやってまいるために、やはり地方自治体等の力をそういう方面に活用することがいいんではないか。それに国有林の地域を開放して、さらに将来その方面の収穫を得ていくように考えるべきではないか、こういうことであの法律案を出したいと思っているわけであります。
  175. 中野四郎

    中野委員長 もう時間が参っておりまするから……。
  176. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、離農問題について……。
  177. 中野四郎

    中野委員長 もう時間が参っておりますから……。
  178. 芳賀貢

    芳賀委員 もう一問でいいです。
  179. 中野四郎

    中野委員長 お約束の時間ですから、結論にしてください。
  180. 芳賀貢

    芳賀委員 労働大臣にお尋ねしますが、今回の政府の総合農政の方針を見ても、従来よりも積極的に離農政策を進める、そういう方途が明らかであります。そうなりますと、離農が激化した場合に、他産業における離農者の就業の機会あるいは就業についての再訓練の問題、あるいはまた、離農者に対する重厚な離農手当の問題等については、これはやはり労働行政の面から見ても重厚に配慮しないと、受け入れ体制がないままに脱農政策だけを進めるということになれば、これは社会問題にもなるということは御承知のとおりであります。幸いにして長年農政に経験のある野原さんが労働行政を担当されたわけですからして、この際、離農者に対する政府としての積極的な対応策をどうするかという点について明確にしてもらいたいわけです。  それからもう一点は、これは国鉄の総裁にお尋ねしますが、今回農林省の畜産予算の中に、なま乳の遠距離輸送の調査実験事業の予算というものが一千万円計上されておるわけですが、これは当然国鉄の設備——輸送力によってなま乳を生産地から東京のごとき消費地に輸送するということが期待されるわけでありますので、これに対する国鉄としての、たとえば牛乳列車等の設備の問題あるいは輸送の迅速化の問題、あるいはまたこれに対する運賃経費等がどういうことになるかというような問題についても、この機会に、新しい政策の実現ですからして、説明を願いたいわけであります。
  181. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 総合農政を進めてまいります間において、やはり大規模経営を推進してまいるわけでありますから、そういうことに協力していただく方で小さな農業をやっている方々は、農業から他産業に転向したいと思われる方がかなりございます。そういう方々に対していま労働省、通産省とも協力いたしまして、そういう方々に対する新しい職場及びそのための職業訓練等行なうことにいたしておりますので、離農者必ずしもいま御指摘のようになるわけではありませんで、むしろ他産業で所得の多い方面に転換される、また、そういう場合にはいままでやっておりましたのをおやめになるわけでありますから、今度できます農業者年金等でもその方たちをカバーすることのできる措置を講じてまいりたい、こう思っているわけであります。
  182. 野原正勝

    ○野原国務大臣 農村から他の職業等に転換したい人がだんだんふえてくるということを予想いたしまして、離農者対策としまして農村に相談員制度をつくったり、あるいは巡回相談をする、あるいは職業訓練なども徹底して行なう、あるいはそれには手当あるいは補助金等を与えまして、離農の円滑化をはかってまいりたいということで、目下真剣に総合農政の展開に対しましての対策を講じておるところでございます。このたびの政策の実現によってかなり効果があがるということを考えておるわけでございます。
  183. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 なま牛乳の濃縮したものの輸送につきましては、すでに国鉄といたしまして昭和四十年から試験をやっておりまして、あのとき約千七百トンほど輸送いたしまして、当時の速度と設備におきましても、北海道——東京間、常温で摂氏四度で確保できる、こういう実績が出ております。その後あまり農林省のほうから御要請がございませんでそのままになっておりましたが、最近、先生がいまおっしゃったとおり、ことしからいよいよ農林省のほうも本格的に調査をするというふうなお話で、私どものほうといたしましては、当時に比較いたしまして輸送器具もすなわちコンテナ、冷蔵コンテナあるいは冷凍コンテナがすでに千百個ぐらいもうできております。またコンテナ列車も当時から比べるとずっとスピードも速くなっております。私どもといたしましては、ぜひひとつ農林省のごあっせんで、少しでも、一ときも早く濃縮牛乳を輸送させていただきたいということを考えております。受け入れ体制は完全にできております。
  184. 中野四郎

    中野委員長 これにて芳賀君の質疑は終了いたしました。  次に、吉田之久君。
  185. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 私は、初めに防衛問題に関しまして若干の質問を、中曽根防衛庁長官並びに一部海原国防会議事務局長にいたしたいと思う次第でございます。  長官は、就任以来きわめて活発な行動や発言を続けておられるのでありまして、われわれはそれなりにそんたくし、注目している次第でございますが、去る二月十三日にあなたは日本の防衛と防衛庁・自衛隊を診断する会の初会合を開いておられます。これは聞くところによりますと、民間有識者による自衛隊のあり方についてのいろんな意見を言う会、聞く会だというふうに聞いているわけでございますが、一体この自衛隊を診断する会はどういう性格のものであり、またどの程度の構想として今後とも持続していこうと考えておられるのかどうか、承りたいと思います。
  186. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 防衛庁並びに日本の防衛問題に関しまして、民間有識者の御意見を拝聴し、私に対する勧告書兼でき得べくんばこれはプライベートなものでございますが、国民に対するレポートというような形でアマチュアの考えを率直に聞かしていただきたい、こういう考えで始めたものでございます。
  187. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 わが党の麻生代議士を通じまして、同盟のほうからも一人出してもらえないだろうかというようなお話もあったようでございますが、それはあくまでも中曽根個人としてのプライベートな会であり、かつレポートを提出していただくまでの一時的な会合であると考えていいわけでありますか、それとも、あなたが今後ともさらに組織を拡大し、またこの規模のものを各地で会合を開いていく、あるいは相なるべくはずっと持続的にこの種の会合が持たれることによって、わが国のシビリアンコントロールの一つの前進になると考えてやっておられることなのでありますかどうか。
  188. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 この会は、中曽根個人というプライベートなものではございませんで、防衛庁長官たる中曽根に対する勧告、御教導の資料としていただきたい、こう思ってつくりましたものでございます。したがいまして、防衛庁では、見学等につきましてはいろいろ便宜供与等のサービスもいたさなければならぬと思っております。  この会は、一応仕事が終わりましたならば、目下のところは解散するのが適当であると考えていますが、会員の皆さんの御意見によりましては、ときたま集まって私に対する助言の機関としていただくことも考慮してよろしいと思います。これは実績を見た上のことであると思います。  それから、地方につきましては、これは地方の陸海空等につきましてこの実績を見まして、地方ごとにそういうものをつくる必要があればつくったらいいのではないかと思っていますが、それらも今度の報告や勧告の内容を拝見いたしまして考えてみたいと思う次第でございます。
  189. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 最初の試みとして、アマチュアの人たちを集めて、いろんな率直な意見を聞こうという趣旨であることはわかりました。私は察するに、長官の真意の中には、そういう会合を広げていくことによって、わが国の自衛隊がもっと愛され、親しまれ、そしてたのもしがられるものにしなければならない、一つのシビリアンとの密着の試みであるというふうに考えてのことだと思うわけでございますが、同時に、もっと積極的に長官自身が、わが国の防衛を論じ、かつわが国のシビリアンコントロールを完全なものにしていくためには、この際防衛委員会なるものを正式に国会内において設置すべきであるという考え方をお持ちにならないかどうか。われわれ民社党はつとにこの考え方を持っているのでございますけれども、まずその辺の御見解を承りたいと思います。
  190. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その点につきましては、民社党の考えと全く同感でございます。けさ私、新聞及びパンフレットで民社党の防衛委員会設置に関するお考えを拝見いたしましたが、非常に共鳴を覚えた次第でございます。日本の防衛問題というものは、自民党とか財界の一部でささやかれたり処理されている防衛問題ではいけないのでございまして、国民全体の防衛であり、自衛隊でなければならぬと思います。そういうことを確保する一番のキーポイントは、国民代表である国会においてそれを掌握する常設委員会があることが最も望ましい。国権の最高機関たる国会にそれを専門に掌握する委員会がないということは、シビリアンコントロールの面から見ましても、私は欠けているところがあるのではないかと思いますし、私らといたしましても、十分監督していただきたいと思っているわけでございます。そういう点からいたしまして、これは国会のことでございますから政党間の協議でおきめくださることでございますが、自民党に対しましてつくっていただくようにお願いしておるところでございます。
  191. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 この機会に、われら民社党が防衛委員会設置に対する見解を持っておりますことの内容にもしも誤解があってはならないと思いますので、さらに明らかにいたしておきたいと思う次第であります。  われわれは、衆参両院に防衛委員会を設置すべきである。われわれは、昭和四十年衆議院予算委員会において設けられた三矢研究委員会において、国会に防衛委員会を設置すべきであるとの主張をして以来、毎国会ごとにこれを強く主張し続けてきております。したがって、昨年末の総選挙によって構成された今国会において、必ずこれを設置すべきであることをすでに強く議院運営委員会に提案をいたしております。     〔委員長退席、小平(久)委員長代理着席〕 防衛費は年々増大を続け、本年度は五千六百九十五億円に達している。しかもことし六月以降、安保体制は流動的になり、昭和四十七年から始まる四次防の必要経費については膨大な見積もりが伝えられております。経済的に見ても、シビリアンコントロールを確実にしなければならぬ状況に立ち至っております。まして防衛は国の政治の最も重要な機能一つでありまして、戦前のように統帥大権の陰に隠れた軍事の暴走はわが国を破滅に追いやった、この教訓を生かす道はシビリアンコントロールの確立以外にはないと考えます。われわれはこの機会に、シビリアンコントロールはおざなりの文民優位という程度の解釈ではなしに、もっと具体的に議会を通ずる国民の軍事に対する統制という見解に立って、国会においてこの防衛委員会というものが確立されなければならないという考え方をかたく持続いたしている次第でございます。  特に防衛に関する自民党政府の態度は、これまで一貫して避けて通る式のものでありました。政府機関である国防会議は開店休業のていであり、政府の防衛方針は少しも明らかにされなかったことをわれわれは強く憂慮をしているのであります。野党も、防衛庁、自衛隊のあらさがしや枝葉末節の論議に終始し、本格的な論議に及ぶことが少なかったと考えるのでありまして、これらの問題をはっきりさせるためには、国会法を改正して常任委員会とすべきであるが、とりあえずは特別委員会として出発することも妨げないものと考えるという見解を明らかにしているのであります。いまも長官が申されましたけれども、すでに内閣としてはその方針にほぼ見解の一致を見ておられるようにわれわれは考えますし、問題は、さらに自民党をあなたの立場からも説得されまして、こうした委員会を早く確立されなければならないと思うのであります。  同時に私は、いま触れられました中にもありますように、国防会議のあり方についてであります。巷間伝えられるところによりますと、どうも防衛庁と国防会議との間は何かしっくりいかないのではないか、何かある種の対立抗争があるのではないかというようなささやきさえときどきわれわれに聞かれるわけであります。われわれはそのことを信じたくはございませんけれども、怪文書などが間々乱れ飛ぶという事実を知っております。最近またまた海原国防会議事務局長が四次防のあり方に対して、中曽根長官のしばしばあちこちで発表しておられる構想と大きく食違う見解を新聞に明らかにいたしておられますけれども、この点について、いままで四次防のあり方に対し、長官は国防会議といろいろと協議をされてきたのかどうか、まずお伺いいたしたいと思います。
  192. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 まず、いまお読みになりました民社党の防衛委員会設置に関する御趣旨には、全面的に同感であります。特に日本のいままでの政治における安全保障問題の論議を見ますと、非常に高度の国家戦略並びに国家戦略から来る外交戦略や防衛戦略というものの論議が非常に欠けているように思います。兵器があるとかないとか、三矢作戦がどうだとかこうだとかという部分的、局部的な論争はありますけれども、最も大事な非常にハイレベルにおける国家戦略というものが、外交と組み合わせ国際情勢と組み合わせながら論ぜられておる向きが少ないのであります。そういう非常に高度の国家戦略から外交戦略も防衛戦略も出てくると思いますが、そういう点について国民代表の声を十分拝聴する必要があると私は思うのです。それが国民的合意をつくる基本である、そういうように考えておりますので、そういう点でいろいろ御教示をいただけばありがたいと思っております。  第二に、四次防の問題につきましては、現在策定中でございますが、この秋を目ざして防衛庁内部の意見を固めたいと思っております。まだ内部でいろいろな基準やその他を考究している最中でございまして、外へ出すという段階に至っておりません。したがって、国防会議事務局ともまだ連絡はしておらぬと私思っております。ある程度目鼻だちが整いましたならば国防会議事務局と連絡をとるということになりますが、いまは国会対策等で忙殺されておりまして、ゆっくり腰を据えて綿密に検討してみるという余裕がまだございませんので、国会でも終わりましたら、じっくり固めていきたいと考えておるわけでございます。  海原君の発言につきましては新聞紙上で拝見いたしましたが、まああれはつぶやきを新聞に書かれたんじゃないか、不用意な発言じゃないかと思いまして、別に意に介しておりません。おそらく海原君も、非常に不本意な迷惑な気持ちであれを見たのではないかと思って同情しておる次第でございます。
  193. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 秋をめどに四次防に対する考え方の統一を急ごうということで、現時点においてはまだ何ら国防会議と連絡をとっていないという御説明であります。そういう全然まだ連絡がとられていない段階において、長官あなたはみずから、四次防の構想はこのくらいである、予算はこういうふうに組むべきであろう、ないしはこの程度のワクにおさめるべきではないか、あるいは海空についてさらに重点を置くべきではないかというようなことを記者発表などされているわけであります。そういうことは、全然国防会議と連絡をとられていない今日の段階において、すでに大いにあなた自身が発表されていいことなのであろうかどうかという問題をまずお伺いいたしたい。
  194. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私は、新聞記者会見で言うよりも先に国会でいろいろ御質問がございましたから、国民代表の皆さんには、聞かれますから、自分の腹づもりと申しますか、目見当みたいなことを申し上げて、それを一つの考えの基準にして検討していくつもりでおるわけであります。確定したわけではありませんが、自分は目下のところこういうふうに考えておりますということを率直に申し上げたのでございます。それ以上のことにわたってはおりません。このことは、やはり国権の最高機関である国会に対して、私たちは最大限言うべきことは申し上げておかなければならぬ、そう思ってやっておることでございます。
  195. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 国会が開かれたから、国民の代表である国会議員の質問に対してはみずからの腹づもりを述べなければならない、まことに当然でございます。したがって、これは単なるつぶやきではない。そうすると、その腹づもりというものは、当然今後の四次防に対する重要な影響力を持ってくることは言うまでもございません。そういうものを今日の時点において国防会議は何の連絡も受けないままで発表されるとするならば、国防会議としてはそれに対してもせめてつぶやきぐらいはしなければならなくなってくるのではないかとわれわれは考えますけれども長官はその辺のところをどういうようにお考えになりますか。
  196. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 国防会議にかけるとなりますと、非常に正式な、フォーマルな形になってまいりますから、かけるのは非常に慎重にしなければならないと思うのです。少なくとも、防衛庁内部において全体として構想が固まらなければ、そう軽々にかけるべきものでないと思います。まあ、防衛庁の輪郭ができたころ国防会議懇談会にかける、非公式な懇談会にかけるということはあり得るとは思います。しかしまだその段階にも至っておらないわけでありますから、慎重にしておるわけでございます。
  197. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 あなたももちろんシビリアンの一人でありますけれども、わが国のシビリアンコントロールの根幹は国防会議であります。ないしはその前段階における国防会議懇談会であります。したがって、今日この時点においては、すでにあらかじめ懇談程度は始められておらなければならない。ましてその国防会議の事務局長あたりと全然接触がされないままに今国会の防衛論争が進んでいる、重大な四次防に対する輪郭が明らかにされようとしているということは、シビリアンコントロールのたてまえから申しましても、非常に大きな欠陥をはらみながらこの四次防が進められていくのではないかというようなことは憂慮にたえないのでございます。  そこで、まあその辺の論議は一応それまでといたしまして、現にあなたの見解とそして海原事務局長の考え方とが確かに新聞紙上では一つの食い違いを見せながら国民の前にクローズアップしてきております。われわれは国会議員として、このクローズアップされている現実をとらえながら若干の問題をお二人に聞きただしていかなければならないと思う次第でございますが、その前に海原国防会議事務局長から、今度の新聞発表されました幾つかの内容につきまして、どういう考え方からこの構想を述べられたのであるか、承っておきたいと思います。
  198. 海原治

    ○海原政府委員 お答えいたします。  先日のある新聞に載りました私の見解という記事でございますが、これは、実はその新聞の記者の方が私の部屋に見えられまして、国防会議の事務局はいま何をしておるかという、私のところの事務の現状についてのお尋ねがございました。そこで私は、現在私のところの事務局でやっておりますところの事務の内容についての御説明をしたわけでございます。先ほど伺っておりますと、私が防衛庁の構想あるいは中曽根長官の構想についての批判をしたようにおとりになっておりますが、そういうことは絶対ございません。その場合に私が御説明しましたことは、実は二つの前提条件をつけておるわけでございます。  第一は、私どもはあくまで事務局でございます。私自身事務局長でございますから、政策について云々する資格はございません。現状につきましての問題点の整理をしておきますことが、将来国防会議の皆様方が問題を検討されます場合に必要なことと考えまして、国防の現状におきますところの問題点の整理をしておる、いわば事務的なそういう勉強をしておるんだということを御説明をしたわけです。  それから第二の条件としまして、私ども検討いたします防衛力というものは、実際に自衛隊の人々が武器をとって戦う力というものとして防衛力を見た場合の話でございます。防衛力ということばの定義にはいろいろございますが、私ども国防会議事務局としましては将来のことも考えておりますので、防衛力というのは実際に外敵の侵略に対抗して自衛隊が武器をとって戦う場合、その戦う力がどうあるべきかということについて考えるべきだろう、こういうことでございまして、この二つの条件というものを前提にしまして、事務局として事務的な検討をしておるということの御説明をしたわけでございます。
  199. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 新聞記者がいま国防会議が何をしておるのかと聞かれるのは当然だと思います。これほど四次防の問題がだんだんと問われようとしているときに、先ほど申されたように何ら連絡を受けてないし、国防会議は一体何を考えているか、それに対して事務局長がいろいろと新聞に載っているようなことを発表された、ないしは述べられた。で、私は、その見解を聞いた国民や新聞記者やわれわれが、これは長官との考え方に大きな食い違いがあるのではないかと思って書くこともまたむしろ当然だと思います。そこで私は、海原事務局長が四点ほど明らかにされているわけでございますが、この辺のところを長官としてはどのように考えておられるのかということから質問をしていきたいと思います。  まず第一の問題は、三次防の総点検をしなければ四次防に入れないではないか、特に三次防の中で「「人」の確保をはじめ諸整備の遅れが目立ち、これをどうすべきかという肝心な点が見のがされているのが現状」であるというふうに述べております。これについて中曽根長官のほうは三次防の総点検についてどのような考え方を現在お持ちになっているか、お述べいただきたいと思います。
  200. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 あの新聞に出ました記事はフォーマルなものではないので、いまもここで海原君が申し述べましたように、事務局としての分限をわきまえて限度内の発言をしたように自分も考えていますし、当然そうあるべきであると思っております。したがって、私がここで、公の場で論評すべき対象となる値打ちのないものである、そう思っているのです。ですから、これを私の論評の対象にするということ自体が適当でないと思いますので、申し上げないほうがいいと思います。
  201. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 しからば、ぼく自身がこの問題について質問を行ないますので、お答えをいただきたいと思います。
  202. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 吉田委員の御質問ですと、いわゆる海原発言と称せられたあの記事の中には、なかなかいいことも言っていると私は思うのです、率直に言って。そういう意味で、私は長官に就任以来、庁内放送までして、自分に意見を言いたいものは何でも言え、電話でも手紙でもいい、そういうことを言って、それが「朝雲」に載せられましたので、全国の自衛官やいろいろな人から手紙が参りますが、非常にいいことを言ってくれてきている人も実はあります。そういう意味で、大蔵次官であろうが、企画庁の次官であろうが、どこの人でも言ってきてくれることはありがたいことですから、私は虚心たんかいに承ってみたいと思っているわけです。  そういう意味で、あの新聞記事も権威のあるものとしては見ませんでしたが、内容自体がいいか悪いかという点で見ますと、なかなか傾聴すべきものもあるのだ、私と同じところもある、そういう気もいたしました。たとえばいまの三次防の点検をした上で四次防にかからなければならぬというのは正論です。私も着任以来、いままでの日本の防衛体系や考え方を総点検する、そういうことを宣言して着任もしておりますので、目下それをやっている最中です。それをまねして言っているのじゃないかとも私は思うわけです。しかし、いまの人員整備という問題も、これも非常に重要な要素を含む問題でございまして、特にこれから日本の高度経済成長を考えてまいりますと、非常に若年の労働者層、人口層が減っていくわけです。景気もずっと持続するという見込みになると、自衛官の志願者はもっと減っていくという危険性が十分あるわけです。そういう中にあって装備をどういうふうにしていくか、人間機械とのバランスをどういうふうにしていくかということは、もう非常に重要問題のうちの一つの中に入ってくると、いろいろいま考えている最中なのであります。そういう観点からこの問題をとらうべき重要問題であると認識しておりますが、しかし、結論をどうするかということはまだ申し上げる段階に至っておりません。
  203. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 同時に、いまも長官が申されましたとおり、今後エキスパート隊員と申しますか、相当高度な技術を体得した隊員がいなければその機械、兵器というものは一切動かすことができない。ところが、いま三次防を顧みて一番その辺のところが未解決なのではないかという憂いは、私もともにするものでございまして、この問題につきましては、早急にひとつ総点検の作業を進められなければならない。一体、これらの重要な問題についての作業はことしのいつごろまでに終わろうとなさっているのであるかという問題が、質問一つであります。  さらに、いま一つは、たまたま海原さんが指摘され、私もまた確かにその点は論ぜられなければならないと思います。一つは、四次防の予算というものの総ワクはどのようにしてきめられることが正しいのであるか。ただ、ここまでやってきたからさらに積み上げていこう、積み上げられるだけ積み上げればいいのであるという考え方が一つ成り立ちます。さらには、わが国の高度経済の成長あるいは国民総生産の伸びぐあいによって、防衛費の総ワクというものはこの程度であるべきであろうという考え方も当然成り立ちます。ともかくできるまでのところをやっていこうじゃないか、どうせ完全なものではないのだから、まあまあ伸ばせられれば伸ばせられるだけ得だわというような考え方もないではありません。この辺のところ、理論的に申しましても、今日の日本の置かれている現状から見ても、あるいはまた、沖繩が返ってこようという前夜である今日の段階においても、四次防の総ワクというものはどういう要素から検討されなければならないかという考え方の基本的な構想についてお述べをいただきたいと思います。
  204. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 まず第一に、いつごろまでに点検をするかということでございますが、時期的には夏ごろまでに庁内では終わらしたいと思っております。  第三番目に、充足率の問題でございますが、現在自衛隊の平均充足率は八九%ないし九〇%程度です。それで、陸のほうは約八八%。これは人員が多うございます。十七万九千人という定員がございます。ところが、海空のほうはほとんど九四%から九六%くらいの充足率です。それで、ものによりますが、飛行機の搭乗員あるいはレーダーの管制員、通信関係、そういうものは、多いものは一五%程度の充足率をもって、ほとんど一〇〇%をオーバーしております。これらは非常に専門職でございまして、容易に代替できない職種でございますから、これはエキスパートを養成して、たとえばファントムが入ってくればすぐそれに乗れるようにいまから準備しておるわけでございます。しかし、それ以外の陸上部面については、必ずしも一〇〇%充足しておく必要はないと私、考えております。いざというときにそれだけ充員できる、そして予備自衛官も招集し得る、そういうフレームをつくっておいて、常時は質のいいものでこれを維持しておく。そういう潜在力が非常に大事であると考えております。  それから、予算につきましては、何を中心にやるかといえば、まず第一は、何といっても必要度合いです。つまり、日本を防衛するために現在の客観情勢から見てどういう種類、どういう機能が必要であるか、どういうコンビネーションがまた必要であるか、そういう必要度合いが一番大事な中心のアイテムであり、それからそれに応じて今度は国力とのバランス、ほかの政策とのバランス、そういう観点が第二に必要であるだろうと思っております。三次防がこうだから四次防が積み上げでこの程度いくとか、額を大体絶対的にきめていくという考え方はとりません。むしろ、いま申し上げたような必要性からこれは発足すべきものである、そういうふうに考えております。
  205. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 この機会に海原事務局長から伺いたいのでございますけれども、われわれの一つの考え方としては、海と空を強くすること、日本の島国の防衛というものはむしろそのことが非常に重大なのではないかというふうに考えるわけでございますし、また陸のほうについては、いま長官も申されましたように、ほんとうに良質な最小限度のものを常に備えておいて、あとは緊急の場合にはそれぞれ補完していくという方法がとれると思うのでありますけれども、事務局長の場合に、こういうものの考え方についてはあなたはどう考えておられるか。
  206. 海原治

    ○海原政府委員 先ほども申し上げましたように、私は国防会議の事務局長であります。これは合議体の事務局でございますから、いまお尋ねになりましたような、いわゆる行政組織としての政策について発言する資格はないと思うのであります。いま防衛庁長官からお話がございましたように、今後の防衛力の整備につきましては、防衛庁としてもいまいろいろと基礎的な作業をしておられる段階でございます。そのまとまりましたものが、先ほどのお話によりますと、やがて国防会議の議に付せられるべく私どものところに参るわけでございますから、それをいただきまして、事務局としましては、国防会議を構成しておられます各省庁の幹事あるいは議員の方々に、そういう問題点を添えまして、こういうことについての御審議をいただきたいということを取り計らうのが私の職責でございまして、海空についてどう思うかということを申し上げることは私の権限外のことでございますから、ひとつお許しいただきたいと思います。
  207. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 わかりました。そうすると、国防会議の事務局長というのは、単にいろいろな資料の取りまとめをやったり、各省庁に対する連絡をつけたり、また国防会議のいろいろなおぜん立てをするということにすぎないわけですね。そうすると、シビリアンコントロールというのは、その上に乗っかられる各閣僚たちがそれぞれ政治的に判断してわが国の防衛のあり方について結論を下される。結局、事務局長というものは単なる一つの事務官にすぎないのであって、わが国の防衛に対する何らの定見もあるいは政策も述べない立場のものなのかどうか。そういうものを中心として置かれる国防会議というものが、ほんとうにシビリアンコントロールを達成していくことができるのだろうかどうだろうか。こういう組織論について長官は何ともお考えにならないのですか。
  208. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 おことばを返すようでございますが、先ほど国防会議がシビリアンコントロールの中心だと申されましたが、私はそうじゃないと思います。シビリアンコントロールの中心は国会だろうと思うのです。何といっても国民代表であられる国会が中心であって、国会の考えに従って政府も動き、国防会議も動き、防衛庁も動く、そういうものだろうと思うのです。  それで、国防会議におきましては、やはり会議の議員の意見が中心でございまして、事務局長というのはその庶務課長にすぎないだろう。事務屋でありますから、政策論を述べる地位ではないと思うのです。ですから、極端にいえば文書を集め、文書を発送し、—————、そういうようなことではないかと私は思うのです。国防会議の職責とか何かというものは、これは総理府に所属しておりまして、総理府総務長官か内閣総理大臣か、そういう系統のもので、防衛庁とは別の系統にございますので、ほかの役所の権限にわたりますので、ことばはこの程度で避けたいと思います。
  209. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 賢明な長官が、たまたま国防会議の事務局長の性格や任務について語られるときだけは、けっこう何か意識しておられるというふうな発言にしかいまはとれないのでありまして、どうも私もいささか気になるのでありますけれども、もちろんシビリアンコントロールの中心は国会であります。しかし、国会は行政をするところではございませんので、その国会の意を受けて、国防会議というものは、わが国の防衛力というものは今後このように展開されるべきであるということを決定する重要な機関だと思うのです。したがって、私は、シビリアンコントロールの最後の詰めばこの国防会議においてなされるべきものであり、その意思はすべて国会の意思を反映して動かされるべきものである、このように考えておりまして、その重要な国防会議の事務局長が単に庶務屋さんであり、—————とは、おそらくあなたの失言でございましょうけれども、それほど軽い性格のものであっていいのかどうかという点で、非常に大きな疑問を抱きますが、これは一つの組織論でございますので、いずれ機会を改めてまた論議をいたしたいと思う次第であります。  要するに、中曽根長官のいまの御説明を聞きますと、今日の時点においては明確なる四次防に対する構想というものはまだでき上がっていないというふうに判断していいわけですね。述べられている総ワクの問題であるとか重点の問題であるとか、あるいはその他の問題、まだ何らコンクリートされていない段階であるというふうに認識して、これからのあなたの発言をしばらくの間承っていけばいいということになるのでございますか。
  210. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 おっしゃるとおりでございます。
  211. 小平久雄

    ○小平(久)委員長代理 中曽根防衛庁長官に申し上げますが、先ほどの御発言中、国防会議事務局長は云々のうち━━━━━といったような発言はいかがかと思うのですが、お取り消しになったらいかがですか。
  212. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その部分はどうぞ取り消していただきたいと思います。
  213. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 次に、きょうの新聞でございますけれども、「在日基地を大幅整理」、「米軍が非公式連絡」、そしてその内容は、陸軍は、ほぼ全面撤収するであろう、その時期は米会計年度の七一年度の始まりから一年間、したがって来年の七月くらいまでに終了するであろうというようなことが書かれているわけでございます。非公式連絡でございますので、どの程度明らかにされるべきであるか、われわれはその慣例を知りませんけれども、今日の段階においてきわめて重要な問題でございますので、明らかにでき得る範囲を御説明いただきたいと思います。
  214. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 あの情報についてはどこから出たかわかりませんが、そういう正確な、正式な情報には接しておりません。断片的にこの辺がこうなるであろうという予想は二、三は聞いておりました。しかし、ああいうふうに体系的に八カ所残るとか、あるいはどの基地はいつどうなるとか、あるいは沖繩に全部が集中されるとか、そういうようなことは、一部は外信を通じてアメリカの国防省の意見として聞きましたし、そういう程度のことはございますけれども、ああいう包括的な話というものにはまだ接しておりません。
  215. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 それではそれはそれとして、あなたは常にアメリカ軍の基地がだんだん撤収されていく場合に、当然米軍基地と自衛隊とが一時共同管理をする場合が各地で起こってくるであろう、それに対していろいろと防衛庁としてもそろそろ対策を考えていかなければならないというような発言をなさっていると聞いておりますけれども、現にこの新聞記事のとおりになるのかならないのかは別として、そういう問題が今後急速に出てくる場合があり得ると思うのであります。また、こういう本土における変化が起こってくる場合には、やがて将来沖繩においてもまた同様のことが行なわれるはずでございます。この場合に米軍基地と自衛隊とが今後どのような施設の管理を有効に果たしていくかという点につきまして、現在のあなたのお考え方を御説明いただきたいと思います。
  216. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 米軍が撤収するからこちらがかわりに入るということを申し上げてはおりません。私は、着任以来、自主防衛ということを言いまして、自分の国は自分で守る、足りないところは友好国と協力し合う、そういう原則で防衛問題を処理していきたいと申しておるのでございまして、自分の国は自分で守るという独立国家として当然の姿に戻ろうということであります。だから、アメリカの兵力に代替してやろうという考え方ではありません。日本の自然体に戻ろう、自然の姿に戻ろうという考え方で申しておるのです。たまたまアメリカ側からの情報で、アメリカ軍が基地を整理するということが最近出てまいったのでございまして、そういう事態も出てくれば、たまたまそれと調整するという考え方になってくるのだろうとは思います。しかし、基本精神は自主防衛の考え方に立って、自分の国は自分で守るという原則を拡充していく、そういう考え方で申し上げておるわけであります。そこで、これはアメリカ軍とも協議いたしまして、ある程度長期的な調整をお互いでしていって、各基地ごと点検をして、両者の計画を吻合させて、そして段階的にこれを処理していく、基地ごとにケース・バイ・ケースでいくということになるのではないかと思います。しかし、私らの考えでは、やはり自分の国を守るということはその国民の責任であって、たとえどんな貧乏な国でも国を守るということはやっていることであります。したがって、日本人もそういう国際的な同じレベルの仕事をやるべきであって、憲法の範囲内でやるといわれていることはやるべきである、そう考えておるわけでございまして、自主的管理をできるだけ進めるという方向に今後努力をしてまいりたいと思います。
  217. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 自主防衛の態度はまさにわれわれも同感であります。当然独立国家としてはそうなければならないと思います。しかし、その自然体に戻る間に、今日の日本の置かれている現状から考えて、一つの過渡的な段階が当然あり得ると思うのです。その場合に、アメリカは施設を日本に一応返還するけれども、しかし有事の際には必ず貸してくれるであろうなということを一札残して立ち去るはずでございます。今日まで現に板付においてそういう例がございました。われわれは、こういう問題がこれからどんどん起こってくることを想定するならば、いわゆる地位協定の条項について若干の再検討をしておかないと、いつまでたっても各地でばらばらの、むしばみの個別管理というものが生まれてきはしないか、あるいは非常にまぎらわしい一時的な使用という問題が出てきはしないか、この辺のところを何かそろそろ情勢の変化に対応して、地位協定というものに対しての再検討というものが、合同委員会でやられてもいい時期ではないかというふうに考えるのでございますけれども、そういうお考え方はお持ちにならないでしょうか。
  218. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これは米軍と話し合いを進めまして、各基地ごとにケース・バイ・ケースに点検して、計画を調整してみませんと、はっきりその結果は出てまいりません。現在庁内で各基地ごとに、日本としてどの程度やれるか検討せよ、そういう作業を命じておる最中でございます。そういう事態が出てまいりました場合には、基地の態様によって、前にもここで申し上げましたように、共同使用あるいは一時使用あるいは継続的使用あるいは民間に対する返還、さまざまな態様が考えられると思うのです。それらは地位協定の解釈によってできるだけ処理していきたい。  それで、いま御指摘になっている問題は、二条四項(b)の問題だろうと思うのです。そこで、外務省側ともいろいろ相談をしてみましたが、一時使用あるいは反復的使用あるいは継続的使用というようなものは常にずっと密着して、へばりついているわけではないのでありまして、そういうようなものは東富士の演習場のように、たまに来て、いつからいつまでといって使っていく、これは一時使用としてやっているわけです。そういう形態が非常に多いし、反復使用、継続使用という考え方であの条項を適用して処理するものが非常に多いだろう、そういう考え方によって処理していきたい。それでもカバーできない部分については、先方といろいろな形態を協議し、また将来その検討の結果、地位協定の改正が必要であるという部分が出てくれば、適当なときに改正をしなければならぬだろう、そう考えております。
  219. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 以上で防衛問題に対する質問を終わりまして、次に農業問題の質問に入りたいと思います。  農業問題につきましては、先日来この委員会におきましてあらゆる委員から繰り返し激しく質問が続けられているわけでございます。私は、特に農林大臣にお伺いいたしたいのでございますけれども政府は総合農政なるものを用意いたしておられますが、その総合農政が今後、たとえば向こう十年間ならば十年間にわたって具体的にどういうプログラムで進んでいこうとするのか、そういう年次別の計画というもののところまでははっきりと踏み込んでいないのではないかというふうな気がしてならないのであります。いつも論議されておりますように、今日の農民の心配は実はそこにあるわけでありまして、一体いつごろの時期に日本の政府は日本の農業政策をどの程度まで引き上げていくのであろうか、どの程度までその体質を転換させていくのであろうか、こういうような具体的なスケジュールができ上がらないと、なかなかに農民というものは先に対する不安を取り除くことができないと思うのでありまして、米の重要な問題に差しかかっているこの時期において、政府は長期にわたる年次別計画を示されるべきであると思いますけれども、大臣はどのようにお考えでございますか。
  220. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 政府は総合農政の具体化をはかるために、昨年農政審議会の答申の線に沿いまして鋭意検討を行なってまいりましたが、去る二月二十日の閣議におきまして「総合農政の推進について」をとりまとめました。この「総合農政の推進について」におきましては、総合農政の基本的方向を示すとともに、四十五年度において講じようとする施策を公表いたすわけでありますが、ただいまお話しのように、年次計画等につきましては、私ども、与党であります自由民主党の総合農政調査会のほうでも鋭意検討を続けておっていただきますので、政府の諮問機関である農政審議会及び与党であります自由民主党の総合農政調査会と緊密な提携を保ちながら、基本の方針はこの間申しましたような方針が内閣で立っておるわけでございますけれども、これを具体化してまいりますためには、いま申しましたようないろいろな機関及び与党のそれぞれの機関と提携をいたしながら、これから策定をいたしてまいりたいと思っておりますが、基本の方針はこの間閣議で決定いたしまして発表いたしました方向でございます。
  221. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 いまいろいろと大臣のほうでもお考えのようでございますけれども、それならば、たとえば具体的に日本の農業の場合、他の産業と比べての比較生産性というものはたしか三六%ぐらいの低位なところにあるというふうに聞いておりますが、この生産性を将来どの時期にどの程度まで高め得るものであろうか、完全に他産業と肩を同じく比べていくぐらいのところまでいくのはしょせん無理であっても、七〇%、八〇%のところまでは伸ばし得るのではないか。現に今日農業人口というものはどんどん減ってきているではないか、一時一千万を数えられた農業人口が五百万人ぐらいまで減少していくのではないか、それによって当然耕作反別というものが倍加してまいります。しかし、ただ単に五反の水田が一町になるだけでは比較生産性というものが一挙に飛躍して上がるわけではございませんので、さらに国際農業との競争のでき得る体質に高めていくためにはどういう手だてを講じていかなければならないのか、かつその時期はいつごろなのであろうか、そのことによって今日六四%まで保護政策で国がいろいろと農民のめんどうを見ていかなければならないその負担というものが大きく減少してくるわけでございまして、この辺の問題がもう少しはっきりしないと、今後日本の農業はどうなるのであろうか、われわれは青年として日本の農村を引き継いでいいのであろうかどうだろうかという問題を解決することにならないと思うのですが、特に生産性の問題について御所見を承りたいと思います。
  222. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私どもが一番心配し、努力をいたしておりますことについていまお触れになったわけでありますが、内輪の話でございますけれども、総合農政調査会の中の小委員会の方々も一応の中間的報告を出していただいております。そういうようなこと及び近くまた開かれます農政審議会等の意見を徴しながら計画を進めてまいるわけでありますが、いまお話のございましたように、いま何と申しましてもやはり鎖国経済ではないわけでありますからして、いまお話しのような国際経済の中に立って、わが国の農業がその競争力を維持してまいるためにはある程度の体質改善が必要であることはもうおわかりのとおりでございますので、私どもはできるだけ自給度を維持し、同時にまた国際競争力に立ち向かえるように、規模の大きな、そして生産コストを比較的安くして、しかも農業としての収益をあげ得るような規模拡大をまずやってまいりたい。そういうしっかりした自立経営の農家を中核にいたしまして、それにやはり周囲に付属いたしております、現在で申せば兼業農家が大体八割ございますので、その八割の中のまた四分六の程度で若干数が多いのが第二種兼業農家でございますので、そういう方々は、規模拡大と申しましてもなかなか長期的に時間がかかってまいるはずでございます。しかし、総括的にはイギリスなどがそういうあとを踏んでおりますが、やはり純粋農業人口というものはかなり減ってまいるはずでありますが、その農業人口が減少するにもかかわらず、わが国の農業生産というものが増加していかれるような体制を整備しなければいかぬと思います。同時に、またそこにあります兼業農家には、農外所得によって農家の経済を維持していかれるように、わが国の特殊性でありますので、そういうことにも力を入れながらやってまいりたい。その計画をいま党と連携を保ちながら立案をいたしておる最中でございます。
  223. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 特にいま農民の人たちの中にある不安は、政府は米が余った、米が余ったと言っているけれども、現に海外から、たとえば鶏の飼料を八〇%買っているではないか。     〔小平(久)委員長代理退席、委員長着席〕 あるいはパンの原料である小麦も同じく八〇%、あるいはとうふなどの原料である大豆は九〇%も輸入にたよっているではないか。また脱脂粉乳もますます外国から輸入がふえているではないか。外国から輸入するものはどんどんふえながら、なおかつ米だけが余っているので、米を少なくしろということだけでは問題の解決にならないではないか。休耕、転作、大いにけっこうだ。しかし、この機会にわれわれ農民に対して、ならば、日本はこれら今日外国から輸入している食糧というものをここ何年間の間にみずから何十%つくるであろう。そうして最終的にはたとえば七〇%ならば七〇%この種のものはみずから自給するであろう。もちろん国際貿易いよいよ自由化のときでありまして、農作物といえどもどんどん輸入、輸出はされなければなりませんけれども、全部が全部一様にいくわけではないとしても、大体の自給度のめどというものを国家みずから立てられるべきではないか。そういうものとからみ合った今度の米の減反あるいは減量、こういうものであるならば、われわれももっと安心して、しかも期待を持ってついていけるであろうにという考え方が非常に強いわけであります。  そこで、農林大臣としてはいま申し上げましたような日本の食糧事情の大きな変化、あるいは革命にも近い転換、こういう中で日本の農業の各品目にわたる自給度を大体どの程度確立していこうとするのか、こういう構想を当然お持ちであろうと思いますけれども、その辺のところを大まかに御説明いただきたいと思うのです。
  224. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御承知のように、米は数字的に申せば一一四%でございますから、自給は緩和どころではない、若干供給が上回っておる。そこで生産調整ということを考えてきておるわけでありますが、その他のものにつきましては、まあ麦が三〇%程度、これは現状でございます。その他は八〇%ないし八三%前後を維持しておるわけでありますが、その中にいま御指摘になりましたように、たとえば豚を考えてみましょう、鶏を考えてみましょう。その飼料の多くの部分が輸入にまっておることは御指摘のとおりであります。したがって、私どもはできるだけ自給度を維持すると申しましても、やはりそういう飼料関係などを考慮してみますと、これからそういう方面に大いに力を入れていかなければならぬのではないだろうか。それからして、肉が足りない。肉のためには草地造成をいたさなければなりません。したがって、そういう必要なものを増強していくことについてわれわれの計画をおよそ持っておりますけれども、それを、ただいまこういう総合農政というものを推進してまいるわけでございますので、私どもが押しつけるということでなくて、地方の自治体または農業団体等と緊密な提携をいたしまして、地方地方にこの人たちが適当であると考えておるようなものについて、たとえば自治体、県知事、同時にわれわれの地方農政局等がその地方の実情に応じたもので、どのようにこの自給度を維持してまいるために生産をやらせるかということの計画を逐次進めさしておるというのが現状の段階でございます。
  225. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 まさにお説のとおりだと思います。そういうことで地方の農業団体あるいは自治体におきましても、ひとつ日本の新しい農業の体質改善をわれわれみずからもひとつ責任を負ってやろうじゃないかという機運が最近非常に強くなってきております。しかもその一番まじめな声はどういう形で出てきておるか。それはこの際地域別生産分担計画を樹立しようじゃないか、そして実行しようじゃないか、農産物価格保障制度を完備してもらおうではないか、こういう考え方であります。  そこで、大蔵大臣もいらっしゃいますが、常に問題になっておりますのは、この生産調整奨励金、これはことし一年の単年度で終わってしまうのか、あるいは三年間続くのであろうか。この大きな変化をスムーズに、しかも完全になし遂げていくためには、これは単に米が余っているから、ともかくいますぐ、ことしだけ減らすのだ、来年のことはわからない、場合によれば食管制度そのものも考えなければならないのだというふうなほのめかし方ではなしに、食管制度は守るから、しかし米だけに偏重した日本の農業では行き詰まってしまうであろうから、ひとつこの辺で本格的に、すべて農民も農業団体も政治も一丸となって問題を処理していこうじゃないか、まずこういう姿勢に立たなければならない。そして農民団体が申しておりますことは、まずこの奨励金というものを少なくとも三年間継続されなければならない。しかもそれはただ不用意に三年間続いているのではなしに、その間米をつくらずに休ませながら、しかも政府も農業団体も、先ほど申しましたように地方別に計画生産の計画を立てて、それを一つずつ実施に入っていこうではないか。まず第一年度においては計画を樹立しようじゃないか、第二年度においては試験的に実施しようじゃないか、第三年度においては完全実施しようじゃないか、しかも先ほど私が申し上げましたように、全体の各農作物のバランスがとれるような一つのめどのもとに、だんだんとそういう計画、そして実行に入っていこうじゃないか、こういう考え方をまじめな農業団体——おそらくすべての農業団体は全部まじめでございますから、日本じゅうの農業団体はいま真剣にそれを考えていると思うのです。こういう重要なときに、国会の審議の中で、大蔵大臣や農林大臣の先ほど来の答弁を聞いておりましても、もう一歩踏み込んではっきりとおっしゃらないというのでは、問題は解決しないと思うのですが、その点農林大臣、大蔵大臣、それぞれ、私どもがいま申し上げたことに対しましてはどういうふうにお考えになるか。またそれが正しいとお考えになるならば、今後この奨励金の問題をどうしようとするのかどいうことをお答えいただきたい。
  226. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ものの考え方の道筋としては、吉田さんのいまおっしゃること、私はごもっともだと思うのです。ただ、今日当面問題になっております減反、この問題はとにかく去年の秋、農業団体がこれを持ち出した、こういうようなことであり、その後総選挙もある、こういうことでありまして、そういう長い目の、計画のある政策としての取り上げ方ができない。そこでとにかくさしあたり四十五年度におきましても米が余って困る、こういうのですから、農業協同組合のいう減反、減産構想をひとつ具体化しよう、こういうことになったのです。それについては農業協同組合でも要望する奨励金を出そう、こういうことにいたしましたが、しかし、その先をどうするかということは、お話しのように、これは時間をかけてひとつ考えてみる必要がある。四十六年度以降におきましても、また奨励金をこういうままで出すかどうか、それがはたしていいことか悪いことか、そういう問題も考えなければならぬ。そこで四十五年度はとにかくこの年度限りの措置として奨励金は出すが、その後のことにつきましては、ただいまお話もありましたような、そういう考え方等ももちろん踏んまえまして、ひとつ検討してみたい、こういうのが私どもの姿勢でございます。
  227. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 予算を編成するにあたりまして、政府の方針というのは、ただいま大蔵大臣がお述べになったとおりでございますが、農業というものは、申すまでもなく御存じのように、きわめて時間をかけてしっかりやっていかなければならないものでございますから、いまお話のありましたように、ことし生産調整をやって初年度いまの三万五千円を奨励金として出しましたが、その結果を見まして、私どもとしてはその結果にかんがみて、これからのことを考えなければならぬわけでありますが、私どもの希望といたしましては、御承知のように生産調整というようなことは今回わが国で初めて大じかけにやることでありますし、大体農作物が過剰で非常に困難をしておる経験というのは、わが国の米は今度初めてのやり方でありますけれども、ヨーロッパにもございますし、アメリカにも同じような経過がございます。やっぱりそういう経過にかんがみてみまして、私どもとしては、農業団体及び農家の人々がほんとうに今日以後の日本の農政をしっかりしたものに育て上げていくために、できやすいようにしてまいることが必要であると思うのであります。そういうことにつきましては、農林省としての立場は、これからできるだけやりやすくなるように努力を継続してまいりたい、こういうことでひとつ御了承を願いたいと思います。
  228. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 よい結果が出て、さらに将来に向かってよい方向が継続されていくことをわれわれは心から期待するわけです。同時に、農民も非常に真剣になっておりますから、あんまり疑ってかかって心配ばかりするというふうなことよりも、もっとこの際、政府はいろいろと次々と構想を発表していかれるということが、私は今日非常に重要なことだと思いますので、これは特にあえて申し上げておく次第でございます。  それから、休耕、転作の場合に、今度は非常に大ざっぱに、何をつくってもいいわということで奨励金がつくようであります。とりあえずそうでもしなければらちがあかない。そこで、農民の側では、じゃ草ぼうぼうでほうっておいたのでは来年以降全然たんぼがだめになってしまうので、やっぱり何かをつくらなければならない。そこで当然一番手ごろにつくり得る農作物というものは、やっぱり蔬菜であります。レタスとかキュウリとかトマトとかイチゴとか、そういうものにおそらく移っていくだろうと思うのです。これが他の一般の農民の野菜をつくっている人たちに対して、非常に深刻な影響や混乱を与えないだろうかという問題が一つであります。  それからいま一つは、特に大蔵大臣に申し上げたいのでございますが、農民の側から言うならば、三万五千円何がしかの奨励金をもらっても、いま申しましたように、蔬菜をつくる、一生懸命つくったけれども、それは非常に価格が市場で変動いたしております。せっかくつくったけれどもほとんど収入にならなかった、売れませんと書かれて、むなしく捨てて帰らなければならないようなことが各地で続いております。にもかかわらず、この農民に対する税金なんですけれども、これがきわめて画一的に課せられております。たとえばイチゴの場合には反収十五万円、私ども関西の近郊農業の場合ですけれども、イチゴの場合には、おしなべて反収十五万円と査定されております。あるいはキュウリ、ナス、トマトの場合には反収三十万円と税務署がきめてかかってくるわけであります。お米の場合は御承知のとおり四万八千円であります。だから、結局三万五千円何がしの奨励金をもらったところで、蔬菜をつくったけれども、税金だけうんと高くなっちゃった。しかも市場価格は全く安定しない。だから、やっぱり変わりたいけれども、米が余っているという現状はわかるけれども、やっぱりこのまま米でもつくっておったほうが安全なのではないだろうかというふうな心理的な動きというものが、いま非常に敏感に出てきております。かつて吉田茂さんが、米がないときに、米がなければ値段を上げろ、そうしたら、米は必ずできるよとおっしゃって、今日このようになっちゃった。私は、ほかの先ほどのたとえば酪農にしても、あるいは蔬菜にしても、その他だんだん高級化していく日本の食糧事情に対応する供給というものは、いま申しましたような税制の問題からももっと親切に配慮されれば、自然な転換というものが自発的に行なわれていくのではないかというふうな気がするわけなんです。この辺、大蔵大臣はお気づきになったことがあるかどうか。
  229. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 奨励金を出しますが、一体税金はどうなんだろうという点につきましても配意はしておるので、先ほど芳賀さんにもお答えをいたしたとおりでございますが、いま吉田さんのおっしゃるのはそうじゃなくて、一般の農家に対する課税ですね。この問題かと思うのです。それにつきましては農家は、御承知のことと思いますが、帳面をつくってそうして経費がどういうふうにがかったのだというような記帳方式をしておらないのが、これは大体でございます。そういうようなことで、いま国税庁のほうでは便宜的に、米については、この辺の地域でありますれば所得が反当たり四万五千円であろう、あるいはこの辺ならば四万八千円であろう、こういう基準をつくりましてお願いをしておる、こういう状況なんです。その基準が適正であるかどうか、こういうことでありますが、これは適正でなければならぬ。これが不当に安いということになると、他に対して権衡を失するということにもなりまするから、これは適正でなければならぬわけでございますが、これは農林省のいろいろな資料、いろいろな統計なんかもありますから、そういうものをできるだけ幅広く参酌いたしまして、いま基準をつくっておるわけでございます。基準がどうも、適正を欠くというようなことがありますれば、これはもうたいへんなことでありまするから、そういう点については今後とも気をつけてまいりたい、かように考えます。
  230. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 次に、米の消費拡大の問題について、いろいろ政府もそれなりにお考えのようでございますけれども、私はもっと積極的にやってもいいと思うのです。こういう休耕や転作でわざわざ奨励金を出したり、あるいは鳥のえさにしたりするようなことをするよりも、もっと米そのものが消費される余地があるとするならば、それを拡大していくということは、今日の政治の急務だと思います。私は、そういう点で、米の精白度というものが十年一日のごとく全然変わっていない、この点に一つの問題がありはしないか。現に新米、古米、古々米——古々米がずいぶん余って困りますけれども、全国の農協の組織において試食会をやった。十分に精白して食べてみたところ、一番おいしいのはどれだといってやってみたら、結果的には古々米が一番おいしいという結果が出た。これは全販連の一つの実例として出ております。ほとんど炊飯器で食事をするようになって、米のたき方は画一的になってまいりました。古米がまずいとか古々米が食えないというのじゃなしに、むしろ精白度を高めることによってもっと米というものはなじまれ、そして国民に消費されるだろうと私は考えます。いわゆる自由米というものをつくって、そして一方の配給米のほうはいままでどおりの精白度に押えておいて、どちらかといえばまずくしておいて、そして自由米を売ることによって、むしろそのほうが利益があるではないかという配給業者の思惑と、たまたまいままでの制度とがぴたっと合っておるところに、この米が一向に消費されないという一つの問題があるのではないかというふうに私は考えます。この点農林大臣はいかがですか。
  231. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 需要拡大をはかることは当然必要なことでありまして、政府学校給食をはじめいろいろな——たとえば、みそ、しょうゆの原料にもいままでは安い外国米を充てておりましたのを内地米にするとか、いろいろやっておるわけでありますが、ただいまのこの精白のことについてはずいぶんそういう御意見がございます。その点について、いかがでしょうか、事務当局でそのほうを担当しておる者に御説明申し上げさせましょうか。
  232. 森本修

    ○森本政府委員 現在配給米に回しております米は、大体九〇%程度の精白度でやっておるわけであります。これは種々の従来の経過からいきますと、通常の米としてはいわゆる完全精米ということになっておりまして、ほぼ十分な精白度だというふうに私どもは思っております。したがいまして、いま言われましたような説も私どもとしては聞いておるわけでございますが、そういうことをいたしましたことで、確実に一体食味がどの程度上昇するであろうかといったようなことも今後十分考えなければなりませんし、また精白度をそういうふうに上げてまいりまして、末端における配給の適正化をはかるために判別がうまくできるかどうかといったようなことも、実際問題としては十分研究しなければならぬ問題でございますので、今後引き続いて検討してまいりたいということになっております。
  233. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 大蔵大臣、いまお聞きのとおりなんです。これが武士の商法というか、お役人の商売だと思うのです。昔、大阪で、銀バスとそれから青いバスと二つ、同じ路線を同じ回数だけ走っておった。同じように経営しているはずなのに、一方はたいへんな赤字が出て一方は株式でりっぱな地歩を築いておった。米の場合も、買い上げは、これは政府が当然しなければなりません、食管制度を堅持しながら。しかし、売る問題についてはもっと積極的に売ろうとする努力をしなければ——これで精白度は十分でございますという、衛生的な、理論的な精白度ではなしに、ほんとうに米が国民の中にこれほど余っているのをどう消費さしていくかという問題は、いまの時点においては考えられなければならない問題だと思うのです。そういうことさえなされておるならば、いま、全然たんぼを遊ばしておいても三万五千円上げましょう、何だか非常に不合理な、また決していい例ではないことをあえてやらなければならないというふうな事態は回避できたのではないかというふうに考えますので、どうかこの点は、大蔵大臣のお立場からも十分ひとつ今後検討されるべき問題ではないかというふうに考えます。  ついでに、この水田十一万八千ヘクタールをひとつ買い上げして、新しい宅地などに転換していこう、こういう計画を見てとって、さっそく全国農協中央会がいわゆる農協団地というものをつくろうではないかという考え方を発表しておられます。厳密には農住都市構想というようでございますけれども、そしてそれはこの五年間に首都圏や近畿圏などで二十万戸を建設しよう、こういう構想のようであります。これは非常に多くのメリットを農民側にも与える構想であろうと思います。しかし、こういう差し迫った計画が、建設大臣もおられますけれども、いわゆる新都市計画法の推進——調整区域、市街化区域の線引きがいま真剣にやられている段階で、どういう影響を与えていくであろうか、またこういう新しい農協団地というものが今後の都市計画の推進に支障を来たしたりはしないであろうかという点について、御見解を承りたいと思います。
  234. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 御承知のように、現在市街化区域と調整区域に線引きしております。この市街化区域は現在都市化しておるもの、あるいは十年以内に都市化するということを予定されるところを市街化区域に入れようとするものであります。その他のところがいわゆる調整区域になっております。  市街化区域に入りますれば、自動的に農地法が排除されるというか、いわゆる転換が自由にされておりまするので、その点が若干心配なようでありまするが、これにつきましては、都市計画法によりましてちゃんと許可してこれはやらせることにしております。したがいまして、その地区についてスプロール化することのないようにするのが都市計画法でございます。  それから、いまの調整区域内には相当の農地、水田がございます。ここは原則として農業振興地域として残るものが多いと思います。しかし、そういうところにありましても、いま御指摘のような農業団体が相当の規模のもとに計画的な住宅団地をつくるということになりますれば、これは区画整理組合等あるいはその他の方法をもってやるであろうし、また、そういうふうにわれわれも指導申し上げたいと思っています。そういうことになりますれば、農業団体がやることによってスプロール化は出てこない、かえって農地を買い上げることによって地価を上げたり抵抗を受けるよりは、むしろそのまま土地所有をさしてその上に住宅をつくるということは、両方から見てこれはメリットがあるということで、大いにわれわれもこれに関心を持って協力したいと思っております。
  235. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 この農協団地に対して、労働大臣の場合——農村のまん中にそういうものができてきます。いま建設大臣は、都市計画と背馳しないだろう、こうおっしゃっておりますけれども、実際工場や職場と離れたところにでき得る場合もあり得るでしょうし、その辺の調整というものがよっぽどよくとられれば非常に大きな効果を発揮すると思うのですが、こういう新しい農村にできる農協団地に対して、労働大臣としてはそろそろいろいろな希望などを申し述べられていい時期だと思うわけでございますが、何か考えられたことはございますか。
  236. 野原正勝

    ○野原国務大臣 農村地帯にいろいろな工場が分散できる、そうして通勤可能な地帯から農村の人たちもその工場に通勤する、そういうことはむしろ理想でありまして、このことは実はヨーロッパなどでもすでにもうそういう政策はとられております。日本でも当然そういう方向に進みたいということで、その政策は今後も積極的に進めたい、こういうことで考えておるわけでございます。
  237. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 次に、引き続いて労働大臣にお聞きしたいのですが、この農村の大きな変化がこれから出てまいります。そこで、当然農村から中高年齢層の人たちがいわゆる町の職場に就職をしたいという希望者がますますふえてくるだろうと思うのです。一方、中小企業の場合には人手不足がどんどん目立ってきております。この辺の中高年齢層をどのように雇用を拡大していくか、また、それを中小企業にどのように定着させていくか、ないしは各部門にわたって官公庁あるいは大企業、中小企業にわたって中高年齢層を必ずこのぐらいは採用しなければなりませんぞというような一つの基準というものを政治の力で設けていくべきではないかというふうな考え方をわれわれは持つわけでございますけれども、日本の今後の経済発展のために非常に重要な問題だと思いますが、労働大臣はいかがお考えでございますか。
  238. 野原正勝

    ○野原国務大臣 中高年齢層の方々が非常に今後の問題になってまいると思います。こういう方々に対しましては、むしろ思い切った職業訓練等によりまして、よりよい労働条件を与えまして、その人たちが有利な条件で就職ができるように職業の訓練がまず第一だと思う。同時に、中小企業等に対しましては近代化を進めていく、あるいは協業化を進めるといったような段階があろうと思いますが、いずれにしましても、そういった農村からの新しい労働力をできるだけ多く日本の産業経済の労働力として動員できるような体制を進めてまいりたい。そのためには思い切ってやはり訓練手当等を出し、あるいは転職の際におけるいろいろな特別な手当を支給いたしまして、その方面にできるだけ多くの人たちが安心して就職できるようにいたしたい。そのためにいろいろな、さまざまな施設を整えてやることが必要でございます。そういった日本の労働力不足の対策について、農村地帯からできるだけ大ぜいの人たちが安心していい条件で働き得るような条件を整備していこう、そういう対策をこれから進めていくことにしております。
  239. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 次に、同和対策についてちょっと触れてみたいと思うのです。  きのうあたり各党からすべてこの問題が出されたわけでございます。特に秋田自治大臣がいらっしゃいます、あるいは奥野委員もおられますが、この同和対策特別措置法ができるときに、自民党の四党協議会の方々が最終的に非常に深い悩みを示されました。それは、わが国の憲法においては差別というのはあってはならないと明記してある。にもかかわらず、その憲法を受けてつくるべき法律の中に現にかくかくの差別がございます、だからこうしなければなりませんというふうな法律をつくるということが正しいのであろうかどうかという点の悩みでございました。しかし、われわれは、現に差別がある以上、急速にこれを解決しなければならないのだから、ともかく時限立法として早く法律をつくろうではありませんかという形であの措置法ができておるわけなんです。  したがって、私は、この段階にこれが法律としてでき上がり、これが新たな政治問題となってしまった以上、これがいままでどおりのスピードで、あるいは同じような予算額でだらだらと進んでいくべき問題では全くなくなってきたという考え方を強く持つものでございます。現に大蔵大臣もあのときの委員会で、どうかおまかせください、断固迅速に処理いたしますということを明快にお答えになっております。にもかかわらず、今度出されました予算はわずかに四十二億、非常に問題にならないと思うのです。同時に一方、建設予算の中に、住宅分に対する別な予算のワクが自治大臣は八十四億あるのだ、こうおっしゃいました。われわれは六十億だと聞いておるわけなんです。この辺の把握のしかたも非常にむずかしいところに、この同和問題の特別難解な問題もあろうと思います。  そこで、大蔵大臣は、十年間にこの特別な措置法というものは完全に目的を達して、そしてなくなっていかなければならない性格のものである。だとするならば、ただ去年から五〇%ふえているというパーセンテージの伸び方で満足しておられるべき状態ではない。まして各省庁から出してきた予算を四割ぐらい削っておられるとは一体何たることかという感じがしてならないのでございますが、この点、大蔵大臣のお考え方を聞きたい。同時に、あとで自治大臣のほうからそういう数字の食い違いなどにつきまして、どちらが正しいのか、明らかにしていただきたいと思います。
  240. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 同和対策予算一般会計予算では五五%増ということになっておりますが、そのほかに、これから事業計画を個々具体的に個所づけをしていくという過程において明らかにされるものはかなり多いのです。住宅費でありますとか、下水道でありますとか、そういうものであります。それからさらに、地方の負担となるものもまた多いわけでございまするが、特に地方におきましては、今度は起債につきまして特別ワクまで設定をしてこれを推進しよう。個所づけの部分がありますので、総体が幾らになるということを申し上げかねますが、これはかなりの額が同和対策に投ぜられる、かようにお考えくださってよろしかろうと思います。  同和対策は四十五年が二年目になる、これで終わりじゃないのです。これからがいよいよこの問題の推進の山にかかるわけでございますが、ただいま私が各省から伺っておる段階におきましては、これで大体長期計画の大筋を実行できる、こういうふうに私は判断をいたしております。
  241. 秋田大助

    秋田国務大臣 住宅関係の同和関係予算、昨日事務当局に念を押しまして御発表申し上げた。ただいまそれが違うじゃないかという御指摘でございますので、もう一ぺんただいま事務当局に念を押しましたが、八十四億であるという回答でございます。なおしかし、この点につきましては後刻しさいに検討してみたいと思います。  四十二、三億のほかに八十四億、これは当然国からの同和対策予算として考えられ、計上されておるものでありますが、ほかに四十五年度からは七十億という同和関係の起債ワクもございます。そのほか特別交付税あるいは普通交付税の基準財政需要額における算定基礎というものを考慮いたしますと、四十五年度は二百億前後の金が出ておるという計算になります。これは十年間に延ばしますれば、今後の伸びもございましょうから、国家が同和対策事業の推進に相当の予算の裏づけをしておるということは言えるのではなかろうかと存じております。
  242. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 額が非常に多い多いと喧伝されているわけでございますけれども、いままでからなされておる額が一ぱい入っているわけでございます。それから新しい法律ができたのです。しかもこの法律ができた以上は、十年以内に解決をしなければならないのです。またこの法律を延長しようというふうなことであっては、これは憲法のもと、おかしい問題なんですから、そういう意味で、いままでの分と同じように出されている分を数字の中へ割り込んで、そうして二百億円近いのでございますよというふうなことは説明にならないと私は思います。特に同和対策関係予算総括表の中に、政府みずからが、建設省の関係は約六十億円を計上いたしておりますと書かれているわけなんです。だから、その辺の食い違いは、時間がございませんのでいずれ後日明らかにいたしたいと思います。  ただ大蔵大臣に重ねて申し上げておきたいことは、これは総括行政です、総合行政です。各省が、おれのところだけががんばったってどうにもならぬからなというふうな気持ちで予算要求をしていったのでは、それはいつまでたっても解決しない問題でございますので、思い切り出してこい、しかもこの問題に対しては一切削らないからというぐらいの気がまえでやらなければ、この問題は解決しないし、法律までできて解決しないということになれば、将来の日本の歴史のゆゆしい問題になると思いますので、特に強く申し上げておきたいと思います。  最後に、実はあと二、三分しかございませんけれども、最近新聞紙上等で伝えられている精神病院に見られる乱脈ぶりでございます。先ほど大蔵大臣は、わが国の国民は良識豊かにして情操の富んだ、そして社会的連帯感の強い国民になっていかなければならないと思う、と申されましたけれども、全く逆のことが今日精神病院において随所に見られるということは嘆かわしい次第でございます。これが国民総生産世界第二位を誇る大国のなすべきことであるか、あっていいことであるのかというふうな感じがしてなりません。書かれていること、まことに続むにたえないことでありまして、続み上げることを差し控えさせていただきます。厚生大臣、一体この問題に対してはどのように考えておられるのかということを特にお伺いいたしたいと思います。
  243. 内田常雄

    ○内田国務大臣 吉田委員が御指摘のような事態が一部の精神病院にありましたことを聞きまして、私もまことに遺憾しごくに存じております。  精神障害者につきましては、実は昭和二十五年ごろの精神衛生法というような法律で、入院される場合には、措置入院患者については国と地方公共団体がお金を出し合って、公費で患者のめんどうを見ることになっておりますために、そういう患者を入院させるための精神病院の指定を都道府県知事がいたすことにしておりますが、今度の事態にもかんがみまして、さっそく都道府県知事のほうと連絡をとりましてその指定を取り消しまして、そして措置入院患者をそういうところでは扱わせない、こういうような措置を実はとらせております。そればかりではございません。ほかに医療監視員というようなものの制度もございますので、措置入院患者ばかりでなしに、自費で入院せられる患者が入っておる精神病院などにつきましても、今後医療監視員の制度を十分に活用することを都道府県に対して督励をいたしまして、そして御指摘のような事態がないように私どもはつとめなければならないと考えておるものでございます。
  244. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 もちろん監視、監督を強硬にやってもらわなければ、これはゆゆしい問題でございます。しかし、そういう院長や経営者も悪いことは悪うございます、これは全く許しがたい問題でありますけれども、同時に、私は政府そのものもけしからぬと思います。これはいかに強弁されましてもだめです。というのは、公的病院が一様に赤字であるという事実です。政府みずからが国や地方団体にやらしておられる精神病院は、わずかに三百機関しかありません。民間の場合に千五十、合計千三百五十、このうち、厚生省のほうの担当課長にきのう聞いたのでございますけれども、その公的病院のほうはもうかっているのか、あるいは何とかやっていけているのかという質問をいたしますと、全部一様に赤字でございます。公的病院が赤字なんです、大蔵大臣。私的機関が赤字にならないはずはありません。しかし、私的機関はもうけなければなりません。そこで悪い、犯罪的な管理、運営というものが発生する。原因は私は政府にあると思う。完全に黒字で何とかやっていける、ないしは確かにまじめにやってもうかる機関にならなければ、この悪の根源は断てない。それでも悪いことをする連中があれば、これは容赦なく厳罰に処さなければならないというのが私の考えでありまして、その点最後に重ねて厚生大臣の所信を承りまして、私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  245. 内田常雄

    ○内田国務大臣 吉田先生が御承知のとおり、私どもは各府県に府県立の精神病院を設置することを義務づけております。しかし、それができない場合には民間の病院をそのかわりに指定することも認めまして、これらのものにつきましてはできる限り指導も助成もいたすということでございまして、全部が先生御指摘のような状態にもないと思います。ことにこの二月から医療費の引き上げがございまして、その引き上げは特に病院関係に厚くなっておりますことも、先生御承知のとおりでございますので、全部赤字ということも言いがたい。ことに私は、私ごとを申して恐縮でありますが、私の選挙区山梨県に北病院というのがありまして、私はそれを見てまいりましたが、これは実に開放的に、いままでの精神病院の範を脱したまことにいい経営をしていることを見まして、私は安心しておった。そのとたんにこういう他の方面で民間病院に起こりまして、私もがっかりしておるわけでありますが、これは先ほども申しますように、公私を通じまして、一そう私どもは指導、助成とともに管理も厳重にいたしてまいりたいと思います。
  246. 中野四郎

    中野委員長 これにて吉田君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  247. 中野四郎

    中野委員長 この際、分科会の件についておはかりいたします。  理事会の協議によりまして、昭和四十五年度総予算審査のため、五個の分科会を設置することとし、分科の区分は、第一分科会は、皇室費、国会、裁判所、内閣、防衛庁経済企画庁を除く総理府、法務省及び文部省所管並びに他の分科会の所管以外の事項。第二分科会は、会計検査院、防衛庁、外務省及び大蔵省所管。第三分科会は、厚生省、労働省及び自治省所管。第四分科会は、経済企画庁、農林省及び通商産業省所管。第五分科会は、運輸省、郵政省及び建設省所管。  以上のとおりといたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。       〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  248. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  次に、分科会の分科員の配置及び主査の選任、また、委員の異動に伴う分科員の補欠選任並びに主査の辞任及び補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。       〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  249. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  明後九日は、午前十時より委員会を開会し、和田春生君、松本忠助君、中谷鉄也君及び谷口善太郎君の一般質疑を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十二分散会