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1970-03-06 第63回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年三月六日(金曜日)     午後零時八分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 小平 久雄君 理事 田中 正巳君    理事 坪川 信三君 理事 藤枝 泉介君    理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君    理事 田中 武夫君 理事 大野  潔君    理事 今澄  勇君       足立 篤郎君    相川 勝六君       赤澤 正道君    植木庚子郎君       江崎 真澄君    大坪 保雄君       大野 市郎君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    賀屋 興宣君       川崎 秀二君    上林山榮吉君       小坂善太郎君    笹山茂太郎君       田中 龍夫君    登坂重次郎君       灘尾 弘吉君    西村 直己君       野田 卯一君    藤田 義光君       古内 広雄君    松浦周太郎君       森田重次郎君    久保 三郎君       小林  進君    楢崎弥之助君       西宮  弘君    細谷 治嘉君       山口 鶴男君    坂井 弘一君       林  孝矩君    伏木 和雄君       二見 伸明君    和田 一郎君       岡沢 完治君    吉田 元久君       谷口善太郎君    土橋 一吉君  出席国務大臣         法 務 大 臣 小林 武治君         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 内田 常雄君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  宮澤 喜一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君         郵 政 大 臣 井出一太郎君         労 働 大 臣 野原 正勝君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         自 治 大 臣 秋田 大助君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         行政管理庁行政         管理局長    河合 三良君         法務省矯正局長 勝尾 鐐三君         法務省入国管理         局長      吉田 健三君         外務省アジア局         長       須之部量三君         大蔵省主計局長 鳩山威一郎君         大蔵省国際金融         局長      奥村 輝之君         文部大臣官房長 安嶋  彌君         文部大臣官房会         計課長     安養寺重夫君         文部省初等中等         教育局長    宮地  茂君         文部省大学学術         局長      村山 松雄君         文部省体育局長 木田  宏君         文部省管理局長 岩間英太郎君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省社会局長 伊部 英男君         厚生省保険局長 梅本 純正君         農林大臣官房長 亀長 友義君         農林省農政局長 池田 俊也君         農林省畜産局長 太田 康二君         通商産業省通商         局長      原田  明君         通商産業省重工         業局長     赤澤 璋一君         運輸省港湾局長 栗栖 義明君         運輸省自動車局         長       黒住 忠行君         郵政省電波監理         局長      藤木  栄君         労働大臣官房長 岡部 實夫君         労働大臣官房会         計課長     増田 一郎君         労働省労働基準         局長      和田 勝美君         労働省職業安定         局長      住  榮作君         建設省計画局長 川島  博君         建設省都市局長 竹内 藤男君         建設省道路局長 蓑輪健二郎君         自治省行政局長 宮澤  弘君         自治省税務局長 降矢 敬義君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      大沢  実君     ————————————— 委員の異動 三月六日  辞任         補欠選任   相沢 武彦君     林  孝矩君   松尾 正吉君     和田 一郎君   不破 哲三君     土橋 一吉君 同日  辞任         補欠選任   小林  進君     川崎 寛治君   西宮  弘君     小林 信一君   細谷 治嘉君     芳賀  貢君   山口 鶴男君     赤松  勇君   林  孝矩君     相沢 武彦君   二見 伸明君     伏木 和雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十五年度一般会計予算  昭和四十五年度特別会計予算  昭和四十五年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和四十五年度一般会計予算昭和四十五年度特別会計予算昭和四十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括議題とし、一般質疑を続行いたします。小林進君。
  3. 小林進

    小林(進)委員 私は、社会党代表いたしまして、中国問題、厚生労働その他一般に関して御質問を申し上げたいと存じますが、質問に先立ちまして、回答を下さる大臣各位一言お願いをいたしておきたいのであります。それは、私に与えられた質問の時間は一時間半でございます。大臣答弁を含めて一時間半でございまするので、回答をなさる大臣側で、だらりだらりと御回答をなされまするというと、肝心の私の質問ができない。消極的な妨害行為を成立いたしまするので、その点は特に御注意をいただいて、簡潔に要領よくひとつ御答弁を願いたいと思います。特にこの点は厚生大臣お願いいたしておきまするが、えてしてあなたの答弁は、どうも官僚から学習してきたものをそのままるる述べられる通弊があるやに見ておりまするけれども、今回は特にひとつ簡潔に要領よくやっていただきたいということをお願いをいたしておきます。  私は、まず中国問題について外務大臣お尋ねをいたしたい。  佐藤総理も、一九七〇年は中国との関係をどうするかということが最も大きな焦点であるというふうに言われまして、中華人民共和国とは相互の理解を増進したい、政経分離ということばは使わない、相互納得すれば大使級会談までも持っていきたい、二つ中国論はとらない、日中間は子々孫々まで戦火は交えない、こういうような、一応前向きの発言を昨年の十月以来おやりになっているのであります。ところが、この委員会を通じて、しからばその発言をどう具体化されているのかという質問に対しては、残念ながら、いま何らの回答があらわれていないのであります。そこで、私どもがいま一番やはり懸念をいたしておりますることは、日米共同声明でございまして、韓国武力攻撃が発生し、米国日本国内の基地から出動するときは、日本政府は前向きに、かつすみやかに態度を決定する、国連侵略と認定したときにはもちろん、その前でも事前協議に前向きに対処する等々、こういうふうな強い発言があって、何かこう自衛権という名の大陸の侵攻作戦もあり得るような感じをわれわれに抱かせておられる。私はこの日米安保条約が初めて解決を結んだ第一回の条約について、なくなられた吉田総理大臣のその議事録をまた熟読をしてみたのでありまするが、その中で、なくなられる吉田首相はこう言っておられる。日本は今日防備がない、いわゆる真空状態に置かれておる、この安全を守る方式として集団的防衛方法考える以外に方法がない、この安全保障条約をそのために締結したのであって、これで十分とは言えないかもしれないが、一応これによって日本の回復した独立を守っていくのである、こう言われておるのでありまするが、これに対しても、これはどうもオタマジャクシだ、やがて十年たち二十年たったら、これがカエルに化けて、また昔の侵略の態勢に入っていくのではないかということを非常に懸念をして、当時平和を愛する社会党等からこの点を根強く追及をされておるのであります。いま第三回目の日米安保条約改定に伴うニクソンとの共同声明を見ると、もはや国内真空状態を、これを守りたいなどというささやかな考えからは大きく飛躍をいたしまして、いまの韓国台湾がすでに国防の第一線であると思わせるような、だれもがそう信じなければならないような、そういう文面が共同声明の中に盛られておって、われわれの予想どおり、もはやカエルに化けたのじゃないか、こういう不安を持たざるを得ないのであります。  これに加うるに財界の巨頭等が、まさにマラッカ海峡まで守らなければ日本経済の安全はあり得ないなどと言われて、だんだんどうも昔の大東亜共栄圏思想に返りつつあるのではないか。これは国民の率直な偽らざる気持ちであります。不安であります。でありまするから、こうしたニクソン佐藤首相との共同声明に対して、中国側は、この韓国台湾云々声明内容は、昔、日本軍国主義者たちが、かつて満州——いまの東北であります。満州日本生命線である、こういうことを国民に叫び続けながら満州侵略をやった、その当時と同じような一つ思想ではないか、これは中国七億人民に対する重大なる挑戦であると解さざるを得ない、かように言っているのであります。  私どもは第三者の立場でながめて、中国がこういう声明を出し、こういう危惧を持つのも、日本の過去の実績からながめてこれは無理からぬ一つの推測であると考えざるを得ないのであります。こういう中で、佐藤総理大臣が日中問題を改善をしたい、前向きに進めたいと言われているのでありますから、国民の側では、佐藤総理は一体これは真剣に言われているのかどうか、こういう一つの疑問を持っているわけであります。真剣に考えているのかどうか。一方ではニクソンとの共同声明の攻略的、侵略的と思われるような、そういう疑いを水増しするために、薄めるために、心にもない中華人民共和国との親善関係を口にされているのではないか、真意ではないのではないかという二つ考え方があるわけでございます。  そこで、もしほんとう佐藤総理が、日本中華人民共和国北京政府との友好親善を結びたい、前向きに前進したいというならば、そのことばだけではなくて、それが形の上に何らかあらわれなければならない、これが私の質問の要旨であります。質問重点はここなんです。それを具体的にどう示すかといえば、昨日覚書貿易代表として古井喜實代議士北京に向かって出発をされました。私は、この機会をとらえてその佐藤首相真意というものを北京側に伝える、国民にも明らかにする一番いいチャンスではないか、当然そうあるべきであると私は考えておる。  そこで、質問の第一でありますけれども、どうかわれわれ国民の、この共同声明に対する一つ懸念を解消する意味においても、ほんとう中華人民共和国との友好親善を促進する意味においても、こういう具体的な方法古井さんに持たせてやったんだ、私は持たせてやったものと確信する、総理はあれだけ言っているのでありますから。その持たしてやったであろう具体的な内容を、外務大臣を通じてここでお示しをいただきたい、これが質問の第一点であります。いかがでございましょう、外務大臣
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 非常に広範な前提からのお尋ねでございますので、なかなか簡単にお答えするのが困難ですけれども、特に御要望でございますから、簡潔にお答えいたしたいと思いますが、まず第一に、私は共同声明が、かつての満蒙侵略というようなことを思わせる、そういう環境や考え方でつくられたというようなことは全然ございませんことを重ねて明らかにいたしたいと思います。たとえば一九六七年の、当時はアメリカのほうは大統領がいまと違っておりますけれども、そのときの共同声明におけるいわば中国観とでも申しましょうか、それと今回のものとは私はやはり非常に変わっておると思います。俗なことばでいえば、ソフトになっておる、こういうことにお気づきになると思います。  それからこの委員会でもしばしば論議の対象になりましたが、プレス・クラブにおける佐藤総理の演説にも、台湾海峡をめぐる緊張というようなものは幸いにして予見されないということも明らかにしているわけでございまして、そうして全体の共同声明をカバーする思想国際緊張緩和ということである。しかし、今日流動する世界の情勢の中におきましても、体制を異にする国同士の間でも、いろいろの緊張緩和試みが行なわれておりますけれども、やはり自国安全保障ということについては、しっかりした一つ体制を持って、その上に立って緊張緩和をしようというのが、他の国際間の現状を見ましても明らかでありますように、安保条約によって日本の安全というものをはかりながら、国際緊張緩和をはかっていくということが、日本としての対中国政策のやはり要点ではなかろうかと考えます。  そういう前提に立って、政府といたしましては、北京政府との間にも、いまお述べになりました古井氏の努力というような民間ベース努力にも大いに期待をかけると同時に、政府としても北京政府との間に、第三国における大使級会談あるいは接触ということについては、すでに試みを始めておるような状況でございまして、こういうふうな努力ひとり芝居で、ひとり相撲をとるわけにもまいりませんので、やはり向こうの、対応する状況等に応じて、これからまたいろいろと考えを進めていかなければならない。こういう関係で、古井さんたちの使命についても大きな期待を持っておりますけれども政府としていま仰せになりましたおみやげというようなものを具体的に用意した、あるいはそのための相談をしたというようなことはございません。
  5. 小林進

    小林(進)委員 共同声明の中に、台湾日本の安全にとってきわめて重要だとか、あるいは韓国云々だとか、第一回の安保条約を結んだときには、吉田総理自体一言も口にしない、さわることをだめとしたものを、ゆうゆうといま出されているというこの思想の変化、それはちょうど私どもが、満州日本の安全な生命線だと言ったことばと、表現の方法において何ら変わりはないじゃないか。私は、ほんとう自国の安全を守るというならば、せめて最初にこれを結ばれた吉田総理ベースを守り抜く、そういう思想的根拠が必要ではないかと言っているのだが、きょうの質問はここは重点じゃないのです。重点じゃありませんから、これは後日あらためてあなたと論議することにしまして、けさ新聞によりますと、古井さんに——あなたは何のおみやげもないとおっしゃったけれども、何か渡航手続の問題について、北京日本覚書貿易事務所がある、そこで中国から日本に渡航したい人たち手続を簡略にやれるようなそういう簡素な処置をやりたい、やるというのか、そういうことを一つ持たしておあげになったというふなことが出ておる。私はけさそれを見て、これは実にささやかです、ささやかだが、ないよりはよろしい。いままで日本に滞在しておりました中国新聞記者やら、あるいは覚書貿易の諸君が、一たん北京へ帰ってまた日本に来るときなどには、こういう簡便な手続方法は講じられた。これを拡大しようということだ。何も従来にないことを新しく設けようというわけではなくて、拡大しようということであるが、それもないよりはいい。ないよりはいいが、ほんとうにこれをひとつおみやげにして持たしておやりになったのかどうか、一言でよろしい、お聞かせを願いたいと思うのであります。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は実は先般当委員会小坂委員質問がございましたときにも私はお答えしたわけですけれども、できれば香港まで何でもかんでも出向かなければ査証がとれないというようなことは技術的に何とか打開して、多少でも便宜をはかってあげることはできないだろうか。現に覚書事務所の職員などにつきましては便宜な措置を講じられておりますから、これを事務的にもう少し広げることばできないだろうかということを、いま政府として検討しておるのでございます。それをいまお尋ねになりました、おみやげにしたのかしないのかということは、少しずれるのですが、しかし、政府として検討を前向きにしておることは事実でございます。
  7. 小林進

    小林(進)委員 私はいまの大臣のおことばで、確かに前向きに検討されているというならけっこうだと思います。けっこうだが、そこまで検討されているならば、いま一歩進んで、中国代表を入れるためには、日本において日本人の身元引き受け人がなければ入れない、そういうようなことで全部これは締められているわけですね。昨年あたりでも、日本からは中国へ二千五百六十四人ぐらい訪中をしているわけです、交易会の問題もありましょうけれども。それに対して中国からは、四十年ごろには五、六百名も来ていたものが、昨年あたりわずかに十六人。人事往来にしてもあまりにもひど過ぎる。それはやっぱり法務省外務省が、身元引き受け人やら、思想調査やら、やかましいことをいうて事実入れないようにしている。こういうことも緩和していかなければ、佐藤総理の言われる日中関係をひとつ改善をしていきたいという具体的なあらわれにはならないではないかと、私はかように考えておるのでありまして、この点もひとつ御考慮いただきたい。  次に、いまもおっしゃった在外公館を通じて大使級接触をいまはかりつつある。けっこうです。私は非常にけっこうだと思っている。けれども、そこまでおやりになる気があるならば、いま古井さんが——大使級以上の大ものです。われわれの先輩だ。こうやっていま日本を離れて北京へ行かれたんだから、そこに行けばあなたの言われる在外公館大使級以上の会談というものは、古井さんを通じて十分できるわけです。何も北京を離れたそんなヨーロッパや中南米あたり大使をちょこちょこつついているよりは、堂々と古井さんにその任務を与えて北京でやらせればいいじゃないですか。そのお考えは一体どうなんでございますか。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 でありますから、ただいま申しましたように、古井さんの一行にも期待をいたしておると同時に、政府としてのたとえば、これはざっくばらんに申しまして、日本国内でも、アメリカ米中大使級会談をやっているではないか、形式的にも政府間の接触をはかるべきではないかというのも一つの大きな声にもなっておりますから、やはりいろいろの手を並行してやっていくことが私は妥当ではないかと思いまして、その一つ試みもやっているわけでございまして、古井さんの一行にも大きな期待はかけているわけでございます。
  9. 小林進

    小林(進)委員 そこで、アメリカのお話も出ましたが、そのアメリカはいまワルシャワにおいて米中大使間会談をやっております。なぜ米国の働きかけに対して北京政府が受諾に踏み切ったかというその理由のせんさくによりますると、こういうふうに解釈している。すなわち、アメリカの強力な第七艦隊、これが台湾海峡をいままで包囲していた。哨戒していた。それをアメリカ政府が減らした。敵性的な中国包囲作戦一環を、これをゆるめたということが直接いわゆる北京政府の強固なる態度を若干緩和せしめて、これがポーランドにおける米中会談中国側が応ずる直接の原因になった、アメリカさえもかくのごとく対中国政策緩和し、変えてきているではないか。だからほんとうにいまも日中会談を前向きにやるとするならば、態度をやわらげて、何かの具体的な問題を出さなければならないのは日本側なんだ。だからこの際、古井さんが北京に行かれるときに、具体的な問題をいまこそ日本が示して、アメリカが第七艦隊包囲をゆるめたがごときに該当するおみやげ日本政府が持たしてやるべきではないか。これは国民の世論ですよ。  その具体的な問題としては、ひとつ経済的な円と元との決済の問題等もくすぶっておりますけれども、こういうのは政治問題じゃないのだから、これも解決するような方向に古井さんに任務を与えたらどうか。北京と東京との飛行機の乗り入れ、これは、木村官房長官は来ておられませんが、これなどは院外においては、やってもいいと言っておる。あなたの政府代表が言っているのだから、こういうことも具体的に古井さんに任務を与えてやったかどうか。  それから、まあ閣僚ではありませんが、かつて外務大臣をやられた小坂善太郎氏等も、院外において、中国の要人を、実力者をこの際日本に招請をするということも一つの案ではないか、こういうことも提案しておられるのだが、これらの問題について、何か古井さんにおみやげを持たしてやってしかるべきだと私は思うのだが、どうでありますか、外務大臣、お持たせになりましたか。   〔委員長退席坪川委員長代理着席
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申し上げましたように、いろいろ考えておることは考えておりますけれども、これはまたかえって論議を呼ぶかもしれませんけれども古井さんのお立場ということもございますから、その辺のところは御了察をお願いいたしたいと思います。
  11. 小林進

    小林(進)委員 私はそこで、この委員会でもしばしば論ぜられた中国との改善策として、二つ中国論云々だとか、輸銀だとか、吉田書簡をどうせいとか、国連における重要事項指定方式を変えろとか、これはいろいろありました。これを繰り返していたのでは切りがないが、そういう問題は、政府側は困難だと言っているのだから、それは一応たな上げいたしまして、その前に簡単にやれることがある。当面直ちにやっていい問題が私は二つあると思う。  その第一は、やはり人事往来一環として、ことしの春四月からですか、広州で開かれる貿易交易会、多年の間、在日華商が、ひとつ参加をさしてくれと、いま政府に懇願しているはずです。こういうものは早急にそれを認めてやっても何ら支障がないのではないか。華商交易会における往来の問題であります。やろうと思えばすぐやれますでしょう。いかがでございますか、外務大臣、おやりになりますか。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まあ、この華僑の人たちは戦前から国内に在住して平穏無事に商売をやっておる。こういう人が今回の交易会に純粋なそういう経済目的で行ってみたい、こういう希望に対して、頭からそれはいけないのだという態度はとるべきでない、私はこういうふうな考え方を持っております。私はこういう考えを持っておりますが、関係庁との間に、いわば前向きに具体策を講じようということで、目下早急に結論を出すように検討中でございます。
  13. 小林進

    小林(進)委員 この問題についてもいろいろお聞きしたいのでありますが、時間の制約がありますから……。  いままでは人道的な場合に若干許可されていて、純経済的な問題で許可をされたことはまずないわけでありますから、この人たちがおいでになるということは、そういう意味においては一つ新しい道を開くことになる。非常にけっこうだと思います。いま三十四人ばかり申請が来ているようでありますが、ここへいくと、事務屋というものはけちんぼうで、三十四名がどうだから十名にせいとか二十名にせいとか、小刻みに削ったりするが、そういうけちなことのないように、気持ちよく往来を許す。だれが見てもほのぼのとするような、明るい気持ちになるような、そういう処置をとっていただきたい。これはお願いいたします。  第二番目の当面できる問題として言うのは、これはもうこの国会の中で論じ尽くされておりました中国の食肉輸入の問題です。この中国の食肉を輸入してくれという願望は、まさに、オーバーなことばで言えば、われわれ選挙区を通じ、東京を通じ、全国的な陳情を受けて、身の置き場に苦しむくらい激しいものであります。特に家庭の奥さん方はたいへんな要望です。なぜかならば、もはや牛肉などというものは、これはもう貴重品なんです。数の子並みです。庶民の口には入らない。それくらい切り詰められている。しかも現在、私のことばで言えば、独占の経済政策の中で労働の、密度が加わっていく、労働は過重になる。いまは夫婦で共かせぎである。その中で、彼らが明日の戦いのために仕事のために必要なものは栄養なんです。奥さん方は来て言いますよ。夫も疲れてくる、奥さんも共かせぎで疲れてくる、せめてあすの戦いのために栄養源のために肉をと思って肉屋の前に立ってみるけれども、手も足も出ない、出るのは涙だけだと言う。こういう苛斂誅求の政治の現状の中なんです。その中で、中国の肉が百グラム四十円そこそこで入ってくるというのだから、夢かとばかり、それを待望しておるにもかかわらず、一体この問題はどうかといえば、私もこまかく調査をした。技術的には全部解決しております。もはやこの問題は技術の問題ではない。全部解決しております。日本の獣医学界の最高権威者である先生方が、三十一年十月、四十年八月、四十一年三月と三回も中国を訪問している。これだけの調査を任務として、中国の家畜衛生管理の状況等を視察してまいりまして、その危険性が少しもない、こう言っている。自来、毎月中国から、家畜伝染病発病に関する月報が送られてきている。状況一つも変化をいたしておりません。だから問題はもはや政治問題です。政治問題一つなんです。ほんとう中国を親善国家として認めるか、国内における国民の食生活を潤すかいなかの問題だけなんだ。この食肉輸入の問題については、農林大臣、あなたの管轄です。あなたは一体どうお考えになっておるか。これを一つおやりになっても、それは大臣の善根はたいへんなものだ。勇気を持っておやりになりますか。お尋ねをいたしたいと思います。
  14. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 この問題は政治問題ではありませんで、政治問題のほうは外務大臣がお答えいただいておるようでありますから、私は農林大臣として技術的なことをお答えいたします。  この問題は、私どもの知っている限りは技術上の問題でございまして、私どもが慎重にかまえているのは技術上の問題でございます。海外の悪性伝染病につきましては、小林さんもよく御存じのように、一度わが国のような狭い国へ入ってさましたらたいへんなことになるわけでございますから、われわれとしては万全の措置をもって警戒しなければならない義務を持っておるわけであります。  いまお尋ね中国産の食肉の輸入禁止措置の解除の問題につきましても、このような家畜伝染病予防法の運用の一環として取り扱っておるのでありまして、いまいろいろお話がありましたが、四十一年の秋にわが国における家畜衛生関係専門家の参集を得まして、これまでの調査報告書に基づいて種々検討を加えました結果、中国における家畜衛生状況の全般的改善、向上につきましてはこれを認めつつも、特に口蹄疫に関しましてはその疫学的特性からして、わが国家畜に対する安全性が必ずしも十分に確証されているとは言いがたいとの結論を得たわけであります。こういう結論に基づきまして、以後農林省としてはそれまで口蹄疫に関して必ずしも十分明らかとされていない五項目、その第一は、過去における口蹄疫の発生状況と実害、第二は、いままで行なわれた口蹄疫の撲滅方法の具体的経過、第三は、口蹄疫ワクチンの性状、種類、製造方法、使用目的等、第四は、口蹄疫の診断方法、第五は、その他最近における不明疾病の発生の有無とその状況に関して資料の提供を受けることが本問題について必要なことでありまして、このようなより専門的検討を行なうために必要であるとの立場をとってきておるのでありまして、中国産食肉の輸入解禁問題につきましては、これら残された家畜衛生上の問題点の解決が前提であります。   〔坪川委員長代理退席、委員長着席〕
  15. 小林進

    小林(進)委員 私はあなたがその五項目を中国側に要望していることをみんな知っているのです。そんなことば言わずもがなの、相手国の名誉にかけてもそういうことを答えられないことを承知でおやりになっている。現実に三十一年には牛の枝肉六頭を試験的に中国から入れているのでございますよ。同時に、その結果に基づいてとりあえず月三百トンずつ入れますという、そういう取りきめもちゃんとできている。ただ、あのときに岸内閣の長崎国旗事件があって、あれで行き来がとだえて、それが中絶をいたしましたけれども、あの国旗事件がなければ、自来三十一年から毎月最低三百トンずつの中国の肉は入っていたのです。  それからいま一つ私が特に言いたいことば、坂田農林大臣はそれはもう許可されたのでございますよ。その許可することについても、昭和四十一年とあなたはおっしゃったが、その昭和四十一年に参議院の委員会の中でいまの事務次官の檜垣君がこう言っているのだ。わが党の渡辺勘吉君の質問に「これ以上調査すべき問題は残っていない」——あなたはいま調査していますと言うけれども。だからいやがらせであるというのはそれなんだ。当時の事務次官みずからが四十一年五月二十六日に「これ以上調査すべき問題は残っていない」と言っている。田中理事——当時中国に口蹄疫の調査に行っていた田中さんが正式な報告書を書いてくれたら、この問題については前向きに解決をいたします、こういう回答を与えていたわけです。あなたの幕僚自体がもう調査することはないという回答を与えている。そして坂田大臣は入れることを国民に約束した。私どもは、だから言うんだ。農林大臣の許可、不許可は技術の問題じゃない。大臣自体の性格と中国に対する敵性いかんの問題だ、こう言っている。坂田さんの次に松野さんがなられた。松野さんの次にいまここにいられる西村さんがなられた。その次にあなただ。だから巷間人々は言っています。この四人並べてだれが一番善良であり、だれが一番良心的か、それは坂田さんだ、庶民はみんなそう思っております。ならばこそ、その坂田さんは技術的に科学的に全部調査して、この食肉輸入を許すべきだと言った。次は松野さん。これはタカ派ですよ。だれが見たって、日本における反共防衛の巨頭で、だれもこの人が平和主義者だとは考えない。それが大臣就任とともにきちんとこれをやめちゃった。坂田さんが許可したものを中止せしめた。次が西村さんです。官僚の秀才です。官僚には腹がない。頭はいいけれども、腹はない。右すべきか左すべきか、許すべきか許すべからざるかをふわふわしながらじんぜん日を過ごして大臣のいすを去る。次になられたのがあなたですよ。そこでだ。だから中国の食肉輸入問題は——長谷川君、これは一休み。時間があればするけれども、時間がないから一服して、そこでいまあらわれたのがあなただ。そのあなたらの姿勢をやっぱり国民はみんな見ておりますよ。あなただって労働大臣をやられた。倉石労政のあり方も国民はちゃんと正しく批判している。時間がないから言いませんけれども、そのとき私はあなたを近藤勇だと言ったら、あなたは非常におこられた。あなたの頭にちょんまげを乗せて、大小二本をさしてやったら、幕末の明治維新のために働く志士をばさばさと切っていった反動近藤勇と同じじゃないかと言ったら、あなたはおこった。まあこれはじょうだん話でありますけれども、しかし、それはあなたの不法を言うのではない。あなたの労働行政の中にも若干そのにおいがあったからこそ私は言った。しかし、あなたは今度返り咲いて農林大臣になられた。その農林大臣になって勇ましく日本海のラッパを吹かれた。守るも攻めるもくろがねのということで大臣の地位を去られたが、またいまここで農林大臣になられて、いまこそこの食肉の問題をあなたの手で解決していただければ、国民のあなたに対する一つのイメージというものが私は変わってくると思う。われわれは誤解しておった、しかし、倉石農林大臣は、なるほど真意は実に心のあたたかい、りっぱな、やさしい方だ、われわれの要求するこういう願いをかなえてくれたという形になると私は思いまするし、私がいまも繰り返して言うように、五項目の問題はあなたは金科玉条のように言われたけれども、決してそんなのが食肉輸入を押える条件にはならない。それは、中国という独立国家に対する大きな侮辱と不信感を投げつけたにすぎない。向こうが、ない、命にかけてない、口蹄疫はありませんと、こう確約をいたしておるならば、私は、その問題ではもはや信頼をしていいじゃないか、かように考えているのであります。  時間がありませんから、入れるか入れないか、私の主張に賛意を表せられるならば、直ちに退場せられてもよろしい、私はそう思います。確約いたしますから……。ひとつこの問題をいま一度明確にやってください。入れると言明をしてくれませんか。
  16. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これは、政治問題を離れた、商売のことでありますから、買い手のほうが売り手の品物についていろいろ調べるのは当然なことだと思うのであります。しかも、先ほど申し上げましたように、もしこれが、わが国のような狭い国土に蔓延するようなことになったら取り返しのつかないことでございますので、売り手のほうでそういうように御自信があるならば、国際獣医学会なんかが東京に開かれましたとき、いろいろこういうような話もしておりましたが、そういうところで、技術者が専門的に見て安心のできるようなデータを送ってさえいただければ、それに基づいてやれるのでありまして、単に技術上の問題でございますので、ひとつそういうふうにしてもらいたいと思っているわけであります。
  17. 小林進

    小林(進)委員 私は、時間がないので、この問題はこれで打ち切ろうかと思った。大臣の決意をまた場所をかえて促進をすればいいと思ったが、たまたまいま売り手と買い手と、こうおっしゃったから、私はまた時間を浪費しなければいけない。  わが日本においても、この食肉の輸入については、覚書貿易において、買い手の日本側のほうで、百万トン買いつけますというちゃんと契約は結んでいるのだ。しかも友好商社のほうにおいては、さしあたり二百万トン、もうあなたのところの肉は一つも危険がない、安くて、りっぱで、おいしくて、実に上等の品物だから買いますという、あなたの最も信頼する古井さん自信が、百万トンの買い手として約束を結んでいられる。あとは政府のオーケーを待つのみという、そういうところまで来ているのです。買い手も売り手も話ができている。ただ権力を持っているあなたたちが、われわれのことばをもって言わせれば、頑迷固陋にして、これを処置しないというだけの問題でありますから、どうかその点はひとつ誤解のないように、いま一度ひとつ御考慮をいただきたいと思うのでございます。  外務大臣、いまの日中問題は、また結論が出ないような形になりましたけれども、ひとつ私の御質問申し上げたことは、拳拳服膺されまして、どうかひとつ前向きに、また、古井さんだって、すぐ電報を打てるのですから、連絡をとって御指示をいただきたい。  中国問題はこの程度にいたしておきます。  次に、私は、シベリア開発の問題についてお尋ねをいたしたいと思うのでございますが、まさにシベリアは、世界の大陸の中における最も未開拓の宝庫であるともいわれておりまして、この開発問題は私はたいへんな問題だと思うのであります。日本で不足している、金もあれば、銅もある、すずもある、雲母もある、ダイヤモンドさえも出るといわれておるのでありますが、一体このシベリアの開発について、日本経済にこれを取り入れて、一九七〇年長期の展望に立った経済社会発展計画を一体お考えになっているのかどうか。これは企画庁長官ですか。
  18. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 お答え申し上げます。  小林委員のいまのお話は、企画庁といたしましても、十分に検討をいたしておるところでございます。御存じの新全総におきまして、特に、従来とかく太平洋岸側に開発が偏在し過ぎておった、この方向を大きく改めるのが七〇年以後の開発の基本的な方針である、日本海方面をもう少し積極的に開発しよう、こういうことでございます。そうして、国土の利用を抜本的に再編成するということになっております。具体的には、御存じのように、北陸方面を縦貫するいわゆる高速道路なり、あるいは幹線網の設計の問題、あるいはまた対岸貿易の問題、いろいろと御存じのような問題をこれから検討していくつもりでおります。
  19. 小林進

    小林(進)委員 二月に永野重雄氏を団長とする経済使節団が行かれて、そこで日ソの経済交渉を行なわれた結果、共同声明というものをお出しになっているわけだ。そこで、天然ガスの開発や木材の開発輸入については話は前に延びたようでありますけれども、さしあたって新しい港をナホトカの近くにつくるということについては話が妥結をいたしまして、共同声明を発しているのであります。これに対して一体日本側はどう受け取って、どう処置をせられるのか、これを承りたいのでありますが、大蔵大臣
  20. 中野四郎

    中野委員長 国際金融局長から説明します。
  21. 奥村輝之

    ○奥村政府委員 ナホトカ港が狭くなりまして、今後シベリアで開発されるものを日本に持ってこなければならぬ、そのためにウランゲル港の開発というものは非常に重要であると聞いております。今後この港の設計について、まず具体的な話し合いが始まる。その後、設備、資材の提供をどうするかという問題になろうかと思いますが、私どもとしましては、産業界とソ連側との具体的な今後の話し合い、この進展をよく見守りまして、できるだけ前向きの形でこれに対処していきたいと考えております。
  22. 小林進

    小林(進)委員 こういう役人の回答じゃ、どうもだめなんだよ。だめなんだよといったって、ただ、この問題については、共同声明には、三月三十一日までに設計契約を結び、七〇年、今年末までには、港湾建設用の設備や機械や資材の供給に関する諸契約を結ぶために残されたすべての問題を早急に解決することに同意したという共同声明が出ている。  この共同声明に対して大蔵大臣は、たしか私は新聞紙上だと思いましたけれども、これはけっこうだから、大蔵省としても、この投資、まあ金だ、国家資金の投資をすることもひとつ行ないたい。考慮じゃなくて、これをやりたいというふうなお話をされたように私は記憶をしている。その点を私はお聞きしたい。
  23. 奥村輝之

    ○奥村政府委員 いま申しましたように、前向きで私ども検討するわけであります。ただ、資材の供与、信用供与の金額、条件等につきましては、まだ未定でございまして、今後の話し合いを続けることになっております。
  24. 小林進

    小林(進)委員 そういう金をどういう形で出すの。
  25. 奥村輝之

    ○奥村政府委員 これを輸銀融資によりますかどうしますかという点については、具体的に計画が進展しますのに応じて話し合いが具体化してまいると思います。
  26. 小林進

    小林(進)委員 相手国へ、ウランゲル港か、大きな港をつくって、対日貿易をひとつ盛んにやらせようという、私は非常にけっこうだと思う。非常によいこと、けっこうでございますが、その貿易を受け入れる日本側の港が一体どうなるか。ウラジオストックから、いまのウランゲル港からナホトカに至る一番近道は、日本側は新潟港です。新潟港が一番近い。向こうだけをりっぱにして、こっちをりっぱにしなければ何にもならないと私は思う。品物が入らぬじゃないか。だから、この計画は相並行して進まなければならないが、一体この新潟港に対する計画はどうなっているのか、運輸大臣
  27. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 新潟港につきましては、現在港湾整備五カ年計画で昭和四十三年から四十七年までの計画を盛ってございますが、その中で、東港と申しまして、俗称新港といっておりますが、その港をいま建設中でございます。そういうふうな、ウランゲル港の開発に関連いたしまして、新しい受け入れ施設が必要になりましたら一緒に検討したいと思います。
  28. 小林進

    小林(進)委員 こういう事務的な回答のために貴重な時間を費やすのは実に残念しごくなんです。いま東港が行なわれて国家経費が約二百億円くらい投ぜられて完成に近づいている、そんなことはわかっていますよ。水深は幾らですか。いま計画は十メートルあるのですか。十メートルくらいの水深で五カ年計画をやって二百億くらいやって、あの膨大なシベリア開発を行なう、木材から天然ガスからあらゆる銅から金からダイヤモンドまで入れるような港に、一体それがなりますか。少なくともシベリアから中国の大陸を見て、ウラル山脈を越えてヨーロッパに至るためには、まさに新潟は表の玄関ですよ。その玄関港としてどういう規模をつくるのかという、いまそれを一九七〇年、企画庁のいう新経済開発計画とともにそういう作業を進めなくてはいかぬ、そう言っているのですよ。少なくとも二十万トンや三十万トンくらいの船がちゃんと入るくらいの企画がなければだめではないか。その企画があるかないか承っているのです。ないならないでよろしい。
  29. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 現在の計画では水深十二メートルの計画で進めておりまして、約四万五千トンないし五万トンの船は入ります。将来相手国との距離によりまして船の大きさもいろいろございますので、その輸送形態に応じましていろいろと対応してまいりたいと思います。
  30. 小林進

    小林(進)委員 私の質問と答えとは次元が違う。とても話にならぬ。三万トンや五万トンの船を入れますという話を聞いていられますか。これからよその国まで行って、よその国の港まで対外投資でこれをつくり上げて、五十年、六十年の計画を進めようというときに、四万トンの船とはこれは一体何事だ。運輸大臣を早く呼んでいらっしゃい。それまで質問は留保いたしまして、次はひとつ国内問題に移りたいと思います。  厚生大臣にお伺いいたしますが、いまから十年前に社会保障政策委員会、これは大内委員会ともいっております。そこで十年後のわが日本の社会保障の姿はかくあらなければならない、それに向かって政府はひとつ大いに努力、精進せい、期するところは十年後社会保障を充実することによって、せめてヨーロッパの十年のおくれに追いつけ、ヨーロッパと同じにせいというのではないが、十年の努力で、その十年の開きを縮めろ、こういうことを根幹とした勧告がなされた。これに対して歴代の大臣は、それぞれ拳拳服膺いたします、それは必ず努力いたします、こういう公約をしておられる。十年の歳月が経てまいりました。その間において、勧告が行なわれた当時と今日と比較して、一体日本経済の成長はどれだけ伸びたのか、国民の総所得がどう伸びたのか。その中で社会保障費はどういう進歩と変貌を遂げたのか、お示しをいただきたい。
  31. 内田常雄

    ○内田国務大臣 この十年間に日本経済成長が私は三倍くらいになったと思いますが、それに対しまして社会保障給付費のほうは、国民所得に対する割合から申しますと、ほとんど伸びていないともいえるような状態にあることを私は認めざるを得ません。
  32. 小林進

    小林(進)委員 経済の成長も三倍になったろうし、国民の総所得もまた三倍になった。けれども、社会保障は何も伸びていない。当時、国民年金一つとらえても、一カ月千円でやったものがたった千八百円、これで生きていきなさい。ことしの十月から二千円だろう。ふえてないじゃないか。千八百円ですよ。そういうさばまで読んで、そうして国民を痛めつけておる。この貧弱な社会保障で一体わが日本経済成長を喜ばれるかどうかという問題なんだ。まことに社会保障に対する現政府の姿勢の悪さというものは、もうお話にならぬです。  私は、あなたの発行いたしましたこの厚生白書というものをくまなく読むのです。厚生白書ばかりでない、私は本を読むことが好きですから、博学にして、多読にしてほうぼうのものを読んでおる。この中で一つ気に入ったことばがある。それは総論の中に、「経済発展は、それ自体に価値があるのではなく、それによって国民の福祉を向上し、人をして人たるに値する充実した生活をおくらせることに役立って、はじめて価値あるものとなるのである。」経済の成長なんというものは無価値なものだ、こんなものは。この経済の成長を、人としての価値、人としての充実した生活を送らせることに活用して初めてこの経済の成長が価値あるものになるのだという、これは実にいいことばですよ。実際にこのとおり行なわれておりますか。
  33. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私どもが世に問うております厚生白書の文言を引用されまして、たいへん御激励をいただいて、ありがたいと存じます。  ところで、私は話を簡単にいたしますために、経済成長に対しまして社会保障の国民所得に対する割合は、おおむねあまり伸びていないということを申し上げましたが、実態は十年前に比べて非常に伸びておることは、その本にも書いてあるとおりでございます。と申しますのは、この十年間の国民所得の伸び方が非常に激しかったために、社会保障のほうの給付も伸びましたけれども、それとの対比においては伸びがそんなに目立たなかったというようなことでございまして、ヨーロッパのように経済成長がほとんどない国におきましては、社会保障の伸び方というものはわりあいに目立ってきておるのと対比して考えていただきたいということと、もう一つは、社会保障の柱になりますのは、医療保障のほか国民保障、いまおっしゃった年金等でございますが、年金ができまして、ことに国民年金は十年足らずでございますので、これから年金が成熟する過程におきまして、国民所得に対する比率は当然上がってまいる。つまり、年金受領者の数が日本ではまだそれほど多くなっていない、また、老齢化の現象も現在進んでないということをあらわしておりますが、私は満足いたしませんので、さらに一そうつとめます。
  34. 小林進

    小林(進)委員 経済成長の中の谷間に置かれておるのが社会保障であるということを、私を納得させていただく理論には何もなっておりません。私はその社会保障の問題はしばらくあとにいたしまして、ともかくこの経済成長のひずみの中で働く勤労大衆だとか、あるいはまた底辺に沈んでいく人たちを底上げして、りっぱな国民の権利と生活を守る、そういう行政は、私は労働省と厚生——他にもないというのじゃない。けれども、それを中心になって戦わなければならない省は、私は労働省と厚生省だと思う。ところが、やはりこの独占資本の中に、経済の成長だけを眼目にして、そのためには全部を犠牲にしようというこの体制がだんだん強化せられてきて、血も涙もない行政が続けられていくと同時に、厚生省と労働省の比重がだんだん落ちてくる。厚生大臣労働大臣の比重もだんだん落ちてくる。残念しごくなんですよ、私は。ほんとうに進歩的なヨーロッパ、あるいは後進国から進歩的な国家へ躍進しようとする国々における労働大臣とか厚生大臣の地位というものは非常に高い。  それで、時間があったら、みんな各国の大臣のランクをあなたに示してもらいたいくらいなんです。高い。ところが、わが国にくると逆になっちゃって、国は経済成長を続けて第三番目、第二番目になるに従って労働大臣厚生大臣のランクがだんだん落ちてくるじゃないですか。残念そうな顔をしたってだめだ。実際なんだから、それが。それからまず問題の姿勢を変えていかなければだめだと思う。  それで、時間がないから私はその例を示すのはやめて、一つの例として私は労働省の一般予算についてお伺いするのだが、この高度成長に手をつけて以来十年間、一体日本労働者はどれだけ増加したか、その中における労働省の予算がどれだけふえたか、どうぞお聞かせを願いたい。
  35. 野原正勝

    ○野原国務大臣 お答えいたします。  労働省の予算はまあ微増という程度で、最近はあまりふえておりません。これはやはり労働者、特に失業者がだんだんと減ってきたということから、失対事業というふうなものがだんだん弱くなってまいりまして、特別失対事業などは廃止になったというふうなことから、特に本年の予算におきましては伸び率が非常に低い。これは遺憾でありますが、しかし、必要な面にはかなり充実をしておるようでございます。しかし、必ずしも十分でないことは認めざるを得ないと考えております。
  36. 小林進

    小林(進)委員 ここに資料がありますが、これを一々読み上げていたら時間がかかるからやめますけれども大臣、こっちをごらんなさい。あなたが言っているように、ことしあたりの特別失対が減ったから労働省の予算が減ったなんという、そういうちゃちな説明では追いつく問題じゃないのです。もっとその問題で議論するなら私も言いますよ。特別失対事業を打ち切ったのは一体だれだ。いま失業者がいませんか、厚生大臣、失業者はいませんか。いま求人難だなんていうのはとんでもない間違いだ。中高年層の求職者の世の中にはんらんしている姿が見えませんか、あなた。中高年層は老齢年金ももらえないのだ。生きていけないのだ。再就職のために雨の日も風の日も通っているけれども、こういう求職者に対してあなた方一体どれだけの職業を与えていますか。そういう中で、とうとう失対事業、失業者がいないような話で、首を切っておいて、そうして労働省の予算が減ったのはこのためですなんというそんな子供だまし——まああなたは労働行政はしろうとだから、私はしろうとをあまりいじめようと思わないけれども、そういう答弁じゃいけませんですな。私は申し上げるが、三十五年から四十五年の労働省の毎年の予算がありますよ。いいですか。その伸び率が幾らですか。昭和三十五年がたった六%、三十六年が一五%、自来ずっと来ていますけれども、四十二年がわずかに三%の伸びだ。四十三年が四%の伸びです。四十四年が四%の伸びです。四十五年に至ってはわずかに三%。国家の総予算が一八%も伸びている中で、労働省の予算はわずかに三%の伸びだ。四%、四%、三%じゃないですか。しかも労働省の予算が総予算の中に占める比率は、今年度は一・四九%だ。一・四九%などという、これくらいの予算しかないのなら、もう労働省なんかやめなさい。国の総予算の中に二%ももらえないような、そんな省なら省をやめたらいいと私は思っておる。いいですか、極端かもしれませんけれども。  労働者は毎年ふえているのです。いまここに元労働大臣もいらっしゃる。あなたは農林行政を得意とするところだ。むしろ倉石さんと入れかわってもよろしいくらいだ。その農林の中に毎年離農対策だの、百姓をずんずん追い出しておいて、追い出された農民が季節労働者になったり、あるいはまあこげついたり、ひっついたりしながらも、全国的に労働者は毎年ふえているじゃありませんですか。一体、いま就業者は何名いますか。全国における就業者、働いている労働者は総数幾らありますか。
  37. 野原正勝

    ○野原国務大臣 労働行政にはしろうとでございますが、おおむね三千万人あるわけでございます。  国の予算の総額については、まことに御指摘のとおり、一・四九%というまことに低い数字でございます。こういう面は十分中身も検討いたしておりますが、必ずしも十分でないということを痛感しております。
  38. 小林進

    小林(進)委員 その十分ならざる点が一体どこへしわ寄せされているか、それをひとつ考えてもらいたい。労働省ができたときに、あなたたちの対象になる労働者は一体何名あったか。その数は実に寂々たるものであった。それが加速度的に伸びていって、三千万名にも伸びているにもかかわらず、労働省の行政だけはだんだんしぼんでくるような形にあるということは、これはいまのわが日本の歴代の内閣がいかに勤労大衆というものを軽蔑し、働く労働者の価値というものを認めないかということの端的なあらわれなんだよ。私に言わしむるならば、労働省の予算をふやして労働監督官だとか、労働基準法の完全なる実施だとか、あるいは職安行政だとか、そういうものを強めていくことは、独占の支配にとって不利だ、有利じゃない、だから意識的に私は労働省の予算を締めてきたと解せざるを得ない。  時間もないからお尋ねしますが、労働基準法という法律は、労働者の生活と権利を守るたった一つのとりでの法律だ。この労働基準法は正しく守られておりますか。法律どおり正しく守られておりますか。守られておるという自信があったら、ひとつお答えいただきたい。
  39. 野原正勝

    ○野原国務大臣 厳格に守られておると承知しております。
  40. 小林進

    小林(進)委員 これは重大な問題でございますよ。私は名前を言うと支障がありますから申し上げませんけれども、やはり他の責任ある地位から、日本労働基準法は七五%の企業の中で守られておらぬ、労働基準法を正しく守っておる企業、事業所はたかだか二五%であるという回答もとっておる。いいですか。いまのことばをあなたのほうは訂正しないでいいですか、いま一回……。
  41. 野原正勝

    ○野原国務大臣 労働基準法は厳格に守られておると承知しておりますが、現実にはかなりむずかしい問題が出ておる。そこで最近における、たとえばタクシー料金の問題等も、労働基準法の観点から審査をいたしました。ところが、遺憾ながら相当数の基準に合わないものが出てきたということで、やはりタクシー料金の値上げについては、労働基準法によって改善命令が十分に徹底してできたということができますまでは、しばらくタクシー料金の値上げをすべきでないというふうなことをやっておるわけであります。具体的にはかなり遺憾な面もありますけれども、一応たてまえとしては、労働基準法は守られておる、一生懸命やっておるということになっております。  ただ、監督官の数が残念ながら非常に少ないのであります。本年は七十五名ばかり増員になりまして、どうやら増員はありますけれども、もっとほんとうは、全国の事業所等の数から見れば、かなり労働基準局の監督官の数をふやすべきであるという主張をしておるのでありますが、必ずしも十分な満足いけるような段階ではないということでございます。
  42. 小林進

    小林(進)委員 労働基準法が正しく守られているなんというのは、大臣、あなただけですよ、答弁されているのは。省に帰ってまたよく御相談されて——あなたも勉強するのに忙しいからここまで勉強しなかったかもしれませんけれども、それから労働基準監督官がいま少ないという、だからそれをふやそうと、私はそれも言いたかったのです。労働者の権利と生活を守ってくれるためには、この労働監督官の公正な監督行政にまつ以外にないのですよ。いま二千七百名でしょう。日本じゅうの事業所は幾つありますか。二千七百名の監督官の中で、現実に監督行政に携わっている監督官は何名いますか、それをひとつ。——それじゃそこでひとつゆっくり相談してもらって……。  大蔵大臣がお見えになりましたので、実はあなたのお留守中に回答をいただくことは済んでしまったわけです。済んでしまったわけでありますが、せっかくおいでになりましたからお尋ねいたしますけれども、例のシベリア開発に基づくナホトカの隣の新港をつくることを永野ミッションでおきめになってきた。共同声明で三月の末日までに契約書を取りかわして、年末までには資材から機械から一切のものを、こまかい契約を全部完成してしまおう、こういう共同声明、これに対してあなたは新聞談話をお出しになった。その談話の内容を私はお尋ねしたい、こういうことなんですよ。この問題について……。
  43. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 永野ミッションの報告を永野会長から承りました。その中には、ナホトカ以外に、ウランゲル港という港をつくりたい、そういう話が両国の間に持ち上がっておる。それから木材、チップの長期輸入計画、その他鉄や石炭また天然ガスの資源開発、そういう問題が討議されたという話ですが、私はその中で特に印象を持ったのは、ウランゲル港の新設であります。日本の協力によってこれができ上がるということになれば、日ソの経済交流の上に裨益するところ甚大であろう、こういうふうに考えまして、その旨を新聞社にお話を申し上げた、こういうことでございます。
  44. 小林進

    小林(進)委員 いや私は、そのウランゲル港の開港といいますか、工事ですね、新港ですから。それにあなたは投資をしてもよろしい、日本政府がお金を出してもいい、こういうことを言われたんだ。あなたに企画庁長官みたいな返事は要らないのであって、あなたは金を持っているのですから、金を実際に出してその事業を促進する具体的な計画と意欲をお持ちになっているかどうか、それを私はお聞きしたがった。
  45. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 まだ金のほうの具体的な条件の話までいっておりません。しかし、これが煮詰まって適正な話し合ができますれば、私は、積極的に輸銀の資金を使用するなどのことを考えてしかるべき案件である、かように考えております。
  46. 小林進

    小林(進)委員 いや、けっこうでございました。どうかひとつこの問題はぜひ促進いただくと同時に、先ほども言いましたので繰り返しませんけれども、その対岸が、一番近いのが新潟港でございますので、向こうだけよくしてこっちをよくしなくちゃ、これは載せた品物も港に入らない。新潟港もあわせて大いにりっぱにする。これは輸銀というわけにはいきません。これは一般のあなたの国家財政の中でタイアップするような大きな計画——そのときにはあなたは総理大臣になっておられるかもしれませんから、なおさらけっこうだと思います。  そこで、回答ができましたらひとつ労働大臣
  47. 和田勝美

    和田政府委員 数字でございますので、私からお答え申し上げます。  適用事業場は全部で約二百五十万事業場でございまして、対象労働者は三千百万程度、監督官は四十五年度には七十五人ふえまして約二千八百人、そういうことでございます。
  48. 小林進

    小林(進)委員 私の言いたいのはここなんですよ。二百五十万の事業所があるのです。ここで労働者は、生活のために労働を売りながら、生命をすり減らしながら働いている。それは数にして三千百万人というんだ。これを監督して、安全、衛生から時間の問題まで正しく行なわれているかどうか、それを監督していくのが基準監督局の業務だ。その人数がたった二千八百人でしょう。一人平均幾らになるか、勘定もできないくらいだ。その二千八百人だって全部監督官じゃない。その中で、ちゃんと庶務もいれば会計もいるんだ。現実に監督している者がこの中では——君と議論したってだめだけれども、いないんだ。こういうところにわが日本のいわゆる労働行政の盲点がある。これがひいてはいわゆる労働災害になってあらわれてくる。労働災害の数は幾らですか。減っていますか。最近、ここ十年間の労働災害の推移をひとつ承りましょうか。
  49. 和田勝美

    和田政府委員 お答え申し上げます。  昭和三十六年がピークでございまして、四十八万件ぐらいでございました。現在では三十八万件ぐらいに減っております。なお、これは八日以上の死傷者の数でございます。
  50. 小林進

    小林(進)委員 だんだん時間が迫りましたので質問を繰り返しているわけにはいきませんけれども、私の調査によれば、死傷者、いわゆる労働災害で八日間以上を休業をした死傷者は、確かに前年の比率では減っているかもしれないけれども、そのかわり災害というものがだんだん大きくなってきている。だんだん大きくなってきて、いわゆる死傷者というものは、これは四十三年の統計ですけれども、三五%も増加をいたしておりまして、死亡者の総数が六千九十人だ。一・七%の増なんだ。しかし、その中には公務員や船員は抜けているのですぞ。これは民間の事業所だけだ。その中から毎年六千人から七千人ずつ労働災害で死んでいるのです。いいですか。これを何らの手を打たないで、ただ数字のいたずらだけでじんぜん日を過ごしているというこのやり方がはなはだけしからぬではないか。一体どこに日本経済成長世界で二番目だの一番目だという大きなことを言われる理由があるか。  私はまたここで言いますよ。労働災害だ、労働監督行政の不始末が全部だとは言わぬけれども、これがもっと徹底すれば、この六千名、七千名のとうとい人命をそこなわぬでよろしい。いま一つは何だ。いま一つの人殺しは、これは自動車だ。これだってことしは一万六千人から七千人も死んでいるでありましょう。傷害被害者だけでもやはり百万から二百万人に達しているでありましょう。何ですか。一体だれが悪いんだ。この自動車災害でとうとい人命を失わせているのは一体だれですか。それは命をなくしてくるのは、酔っぱらいもあるだろう、運転未熟もあるでしょう。それは自己の責任かもしらぬけれども、私はそこにも行政のまずさというものがちゃんと隠されていると思う。そのまずさの一つは運輸行政であり、一つは通産行政だ。  通産大臣いますか。——その通産大臣に言うけれども、一体わが日本の道路の中に、最高時速何百キロを出してよろしいという道路がありますか。時間がないから私は言いませんけれども、おそらくあの東名高速道路ですか、あそこだって最高百二十キロですか。そうすれば百二十キロ以上を出せるところはわが日本国内にはないはずだ。ないところへ一体なぜ百八十キロだの二百キロ出すような自動車の構造を許しているか、生産を許しているか。なぜ許しているのか。独占資本は、もうけるために、彼らにスピードを争わさしているのだ。二百だの二百五十だのというスペードを出す車をつくっている。なぜ一体、走れもしない、飛べもしないのに、そういうスピードの自動車を許可するのか。いま一万六千名あるいは百万とか二百万とか死傷者が出ている自動車交通の事故の、全部とは言わぬけれども、そのおもなるものはスピード違反ですよ。スピードを出して走れるような車をつくっている。だから出してみたい。だからそれが事故のもとになる。そういう根本を通産行政や政府の行政の中にやらぬでおいて、ちょっとスピードを出し過ぎた者だけを引っぱって、やれ罰金だの免許証取りますのと、弱者だけを痛めつけている。独占だけにはもうけるだけもうけさしている。一体こういう行政のやり方がいいのですか。基準行政から飛んで通産省まで行ってしまったけれども、人殺しをやっていることにおいては変わりがないから言ったんであります。通産大臣、いかがですか。私はこれを称して広義における不作為の作為というんですよ。みずから手を下さずして人を殺している。みずから手を下して人を殺しているのと幾ばくの違いがあるかという。それくらい真剣に考えてもらわなければ、とうとい人間の命を守る行政というものは徹底しませんよ。いかがですか、通産大臣
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 追い越しのときでありますとか、あるいは高速道路へ入りますときの一種の加速性能が必要だという問題もあるのではないかと思うので、それで最高速度一ばいの、余裕なしの能力でいいのか、何がしかのマージンを持たなければならないのかという問題は、また別にあるのではないかと思いますが、私もはっきり詳しいことがわかりませんので、研究をさしていただきます。
  52. 小林進

    小林(進)委員 こうやってお話をしている間でもスピードのために毎日人が死んでいっているんだ。その中で、研究さしていただきますという、そういう答弁だ。これがほんとうに人道的なあたたかいものの考え方であるか、私は疑わざるを得ない。  たまたま私は不作為の作為犯などという殺人罪の問題を出しましたから、あわせて厚生大臣にお伺いいたします。もう時間が三分か五分しかありませんから先を急ぎますけれども、いま老人の中で寝たきりの老人が七十歳以上で二十万、六十歳以上では三十万。その三十万の老人の中で、寝たきりだけれども、四分の一は自分の配偶者がめんどうを見てくれる、あるいは半分はお嫁さんが寝たきりの病人のめんどうを見てくれる。その中にはもう、おしめをして、おしっこにも行けない老人が二二%から二五%ぐらいいるんです。それも半分は配偶者がめんどうを見てくれる。その中には配偶者も親戚、身内もなくて、何もたよりのない、しかもおしめをしつばなしの老人、これが幾らいますか御存じですか。
  53. 内田常雄

    ○内田国務大臣 寝たきり老人の数は、私が勉強したところによりますと、先生がおっしゃる以上、意外に多いことを私は発見いたしました。六十歳以上だともう四十万人ぐらいいます。それに対していま家族がめんどうを見れない人を特別養護老人ホームというものに入れて差し上げるわけでありますが、そこに入っている人の数から数えますと、それは非常に不満足な状態にあることを私は申し上げざるを得ないと思います。
  54. 小林進

    小林(進)委員 その四十万まで計算してもらったのはよかったけれども、その中には確かにだれもめんどうを見てくれない、見てくれる手数がない、友人も知人も親戚もいない、しかも医者にも一回もかかれない一この寝たきり老人の中には一カ月に一回医者にかかる人もいます、二月に一回かかる人もいるけれども、ほとんど医者にもかかれない。こういう医者にもかかれない、めんどうも見てくれない、おしめもしてくれない寝たきりだという老人、私の推定ではおそらく四万から六万おりましょう。その中で、あなた特別養護ホームをつくると言ったけれども、その病床が幾つくらいありますか。二千五百しかないじゃないですか。この六万にも近い寝たきり老人の人たちを病床に一体どう収容するのですか。だれが手配するのですか。ホームヘルパーですか。家庭奉仕員ですか。行っておりませんよ。これを私は、先ほどじゃないが、やはり不作為の作為じゃないかという。どんなに寝たきりでも貧乏でも、日本国民であれば憲法二十七条によって人並みの生活と生きるだけの権利を与えられているはずだ。その権利を与えられているものをあなたたちは何もしてくれないじゃないか、医者にかけてくれないじゃないか、めんどうを見てくれないじゃないか、病床も入れないじゃないか。不作為の作為犯と言って悪いかね。手を下さずして死ぬのを待つのみの行政であるから、これは確かに広義の意味における殺人犯——と言ってはちょっとことばはなんだけれども、一体こう表現して言い過ぎかどうか。私は、独占企業の発展の中にはこうした血も涙もないことが幾つも行なわれている一つの例証として申し上げている。あなたどうですか。
  55. 内田常雄

    ○内田国務大臣 おっしゃるとおり、その特別養護老人ホームに収容されている人は数千人ぐらいしかいない。でありますので、私はこの特別養護老人ホームというものの整備にできるだけつとめたいということと、しかし、急に間に合いませんから、それ以外のものは実は本年度から、この四十四年度から、新しくいまの家庭奉仕員の制度を設けまして、そしてたしか四千四、五百名の家庭奉仕員を設けてあるわけであります。そのほか医者と看護婦を連れてできるだけ回診をさせて、一般検査のみならず、精密検査もさせるようなことを始めましたけれども、まだまだ足りないということは小林先生と私は同感でございます。
  56. 小林進

    小林(進)委員 まあ繰り返していてはとても切りがありませんけれども、いまともかく病床にも入れない、巡回もない、医者にもかかれない人たちは、何といっても死ぬのを待っている以外にないのです。それをあなたたちはお待ちになっているんです。お待ちになっている行政、死ぬのを待ち行政と私はこう言う。そういう行政が人生の底辺の中にごろんごろんとしているということを私はいま申し上げている。  もう与えられた時間もなくなりましたから、そこで私は労働省に申し上げておく。  全国一律の最低賃金の二十六号のILO批准も、これはおやりになれない。ILOの理事国でありながらおやりになっていないはずだが、一体労災に関する百二十一号のILOの批准もおやりになるのかどうか、私はひとつお尋ねをしたい。二つ条約——わが日本が常任国なのにまだ国際的な労働行政の中に仲間入りできないなんていうのは恥ずかしい千万だと思うんだけれども、最賃に関するこの国際条約、労災に関する国際条約、百二十一号、これは当然加盟しなくちゃならぬ。日本は加盟する義務がありますよ。まだやっていないでしょう。まだやっていないはずです。条件がそろわないから、労働者をいじめているから、これはできないんです。
  57. 野原正勝

    ○野原国務大臣 ILOの批准につきましては、国内体制を漸次整備しておりますが、百五号につきましては、どうやらその体制ができたようでございます。百二十一号につきましては、今後の労働災害補償法の改正によりまして、どうやら国際水準に到達するわけでございます。そうなりますれば批准条件が整うということでございますから、あらためて検討した上でできるだけ早く批准をいたしたいと考えておるわけです。
  58. 小林進

    小林(進)委員 私は、委員長、時間に協力せんならぬので結論を急ぎますが、いま一つは、私は実はこれから今年度国会で一番重大——いや、今年じゃありません、一九七〇年代を展望いたしまして、国の内政の中で一番大きな問題は、私は農村問題だと思う。この十年間はいかにして農民を農村から追い出すかというけぶり出し農政が続いていくと思う。おそらく九百万農民労働者、これを五百万に減らすか四百万に減らすか、これがいわゆる農民年金となったりあるいは減産、減反対策となったり、私はだんだんこれは過酷になっていくと思うんだが、それでその追い出す——これは労働大臣、十年間の総合農政等もあなたみずから立案されたんだ。そうして農村の反別も減らす、あなたも計画せられた。しかし、あなたの計画はちゃちだ。もっともっと大きく農民は農村から追い出される。一体その計画をおやりになったときに——私は農林大臣労働大臣両方にお聞きするんだ。そのたんぼも減らす、お米もつくるな、低賃金労働者になって、あなた方は都会へ行って働け。その追い出す農村の抑制というものに対して、一体いかなる企画といかなる構想をお持ちになっていたのか。離農年金なんかいいですよ。それはいいが、それ以外に農村から追い出されるこの農民を一体どこへ落ち着かせる計画をお持ちになっているのか、お聞かせを願いたいのですよ。
  59. 野原正勝

    ○野原国務大臣 農村の方々が、追い出すわけじゃございませんが、ほかに職を求めていく、離農する方がだんだんふえてまいると予想しております。そこで、そういう方々がよりよき労働条件を与えられるために、実は新しく職業訓練をできるだけ多くやりたい。そうしてそういう人たちが技能訓練等を受けまして、いい条件で転職できますようにいたしたいと考えております。また同時に、農村地帯には多勢の相談員制度を設けまして、一々農村の方々に懇切丁寧に就職その他のあっせんをやり、いろいろな相談に応じていく。そのためには巡回相談所なども設けるつもりでございますし、あるいはいろいろな各団体等のお力もかりまして、協議会等も設けてやりたいと考えております。同時に、職業訓練中は訓練手当を支給したり、あるいは移転手当、あるいは住居手当その他の手当も、石炭の問題と大体同じような方式で、あたたかい思いやりのある対策を講じていこうということで、とりあえず本年は四億一千万ほどの予算を計上しまして、新しく労働省のほうで農村対策、総合農政の一環としてのいろいろな対策を進めてまいろうということでいま検討しております。必ずしも十分ではないかもしれませんが、これを新しい方向として、これからしっかりと守っていこう、こういうことでございます。
  60. 小林進

    小林(進)委員 この農村の離職者対策というものは、私は農林大臣労働大臣にじっくりお聞きしたいのでありますが、もうお約束の時間が過ぎましたので、まことに残念でありますが、これはまた場所を改めてお願いすることにいたしまして、最後の一問だけですが、これはわが社会党が最も重点を置いている問題ですので、簡潔に御答弁をいただいて終わりにしたいと思います。  それは同和対策の問題であります。これは昭和四十四年の国家予算の中では二十七億二千万円が組み入れられておる。四十五年になりますと、これが四十二億三千七百万円になっている。大蔵大臣立場から言われれば、五五%も予算をふやしたじゃないか、こうおっしゃるかもしれませんが、これはわが党をはじめといたしまして、同和関係の全国の人たちが一番不満を持っている問題です。なぜかならば、昨年の七月に同和対策事業特別措置法という法律が通っていて、この法律に基づいて十年間で長期の計画を組みながら、人間的に不当に差別をせられている——これはわが日本の恥部です。こういう問題を経済の面から根本的に解決していこうという、そういう法律が立案されたわけです。これを立案させるために十二年間国会でこの関係者が自民党政府を相手にお願いをしてきたわけです。理解を詰めてようやくそれが成功し三この特別措置法によって、三百年来泣いてきた人たちのこの苦難の道にせめて経済的にひとつ明るい道を入れようじゃないかというそのさ中に、与えられた予算がたった四十二億というのじゃ、とてもこれは泣ききれぬというのがいまの実情なんであります。この問題をどうかひとつ徹底的にやってほしいという切実な要求でありましたけれども、時間がありません。  そこで、私は結論的に申し上げるが、この法律を実施するにあたりましては、前期の五年間にいままで建設や文教に出ているもろもろの問題を全部集約をしまして、それをもう五年間で解決をする、あとの五年間でその至らざる点を補足しながら、十年で同和問題はもう終わりにしよう、その意味における時限立法です。大体それに要する金というものは何千億円でございましょう。その中で、その前期五年間の計画の一年度目が四十四年度から始まってたった二十七億。いま二年目です。二年目がたった四十二億。ならば残す三年間で何が一体できるか。この問題は大きくひとつ増額をお願いできないか、徹底的にやっていただけないかということが一つです。  いま一つは、いままでの同和対策の問題、これを行なう窓口として総理府の中で同和対策のセクションを一つ設けてもらえないか。これは総務長官であります。  以上だけひとつお尋ねをしておきたいと思います。
  61. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 予算につきましては、昭和四十五年度でもまあ努力をしたつもりでございます。しかし、この予算の背景には長期計画が措置法によってあるわけでございますから、この長期計画を踏んまえまして今後とも前向き、積極的に努力をいたしていきたい、かように存じます。
  62. 山中貞則

    ○山中国大臣 私のほうで扱っておりますが、昨年の七月に長期十カ年計画を策定をいたしまして、それはすでに実行に入っているわけであります。  私の基本的な考え方は、私ども日本民族がこのような問題をいつまでも収拾ができないということは民族の恥であるというふうに考えております。したがって、これには積極的に政治家の責任として取り組むべきものであると考えまして、今回は協議会が期限が切れますので、別途総理府設置法で期限を長期十カ年計画の前期五カ年に合わせた残りの四年間これを延長して、引き続き御意見を承りながら事業の推進というものに誤りなきを期したい、こう考えて、その措置も別途立法、提出いたしている次第でございます。
  63. 小林進

    小林(進)委員 以上で終わります。
  64. 中野四郎

    中野委員長 これにて小林君の質疑は終了いたしました。  次に、岡沢完治君。
  65. 岡沢完治

    ○岡沢委員 私は、きょう、三つないし四つの課題について質問を申し上げたいと思います。  最初に道州制の問題、そして地価対策、大学問題、行政改革、時間によりまして若干つけ加えさしていただくことを御了解願いまして、最初に地方制度の根幹に触れます道州制の問題からお尋ねをいたしたいと思います。  ただ、冒頭、いささか不満を申し上げたいのは、私はこの道州制の問題を取り上げるにつきまして、過日の予算委員会でも社会党細谷議員の質問に関連して、総理が、道州制の問題をお取り上げになったときに、———————————ということを御発言になりまして物議をかもしたようでございますが、私もそういう趣旨で道州制を冒頭にお尋ねさしていただこう。   〔委員長退席坪川委員長代理着席〕 まあ総括ではございませんから、総理の御出席は無理だと思いまして、官房長官に出席をお願いしたわけでございますけれども、残念ながら出てもらえませんでした。その出ていただけない理由について、内閣官房プロパーの問題なら出るけれどもという釈明がございました。昨日の社会党の安宅委員質問には出られまして、内閣プロパーの問題以外にもお答えになっておられました。社会党の議運の理事の要求であれば出て、まあ民社党は、三十名ということで残念ながら出席してもらえなかった。非常に寂しい感じがいたしました。やはり予算委員会の場合は、人数に、また時間に制約があるわけでございますから、総理を除く閣僚の場合、やはり要求に応じていただきたかったということを最初に申し上げざるを得ないわけでございます。  このいわゆる道州制の問題、一般に廃県置州といわれておりますけれども、この道州制の問題につきまして、総理は、テレビの対談あるいは本委員会における答弁等を通じましても、いわゆる屋上屋を重ねるものであるという趣旨から、きわめて消極的な態度をお示しになっておると私たちは理解いたしております。しかし、現在の日本の社会経済発展、地方の実情等を考えました場合、たとえば市町村の場合に例をとってみますと、徳川時代約七万あったという村落単位、明治初年七万といわれておりますけれども、明治二十二年の市制、町村制施行の当時は一万五千に整理され、それが、いわゆる昭和二十八年町村合併促進法制定当時約一万といわれました町村が、その後三年間に四千に縮小統合されまして、その後やはり時代の趨勢に応じて、現在は市町村の数は三千二百といわれます。ところが府県制に関します限り、明治百年を経過いたしまして、明治四年の廃藩置県のときの基準が大体そのまま維持されまして、明治三十二年のいわゆる府県制施行の三府四十三県の大原則が現在まで維持されているわけでございます。ここで、私が指摘するまでもなしに、地方行財政上の大きな課題であります水の問題あるいは道路の問題あるいは住宅の問題、公害の問題、港湾の問題、空港の問題あるいはまた教職員の適正配置の問題等考えましても、いずれも現在の府県制度では、あまりにも発展した日本の社会経済の現状とは合わないのではないか。現在のこの一都一道二府四十三県の地方制度は、あまりに狭小過ぎて、中央、地方を通じての行財政上の需要に応じ切れないし、一つの大きな壁になっておるのではないかと思うわけでございますけれども、これについて、最初に自治大臣から見解を聞きたいと思います。
  66. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 経済なり、産業なり、社会の目まぐるしい発展に対応いたしまして、地方公共団体のあり方がどうあるべきかという問題に関連いたしまして、道州制は検討に値する問題でありまして、ただいま地方制度調査会においても、論議をされておるところであり、私どもといたしましても、十分これとの関連のみならず、また地方自治体といたしましても、いろいろと検討をいたしておるところであります。  なお、第十次の地方制度調査会の御答申に基づきまして、政府といたしましては、さきに都道府県合併特例法案を出しましたいきさつもございますが、これとの関連等も十分考慮いたしまして、道州制について検討をいたしてまいりたいと思っております。
  67. 岡沢完治

    ○岡沢委員 ここで大蔵大臣お尋ねをいたしたいと思いますが、私の理解が誤りでなければ、福田大蔵大臣は、かつては道州制に非常に積極的な姿勢をお示しになっておられたと承っております。総理への最も近い距離におられる大臣として見識のあるところを御披露いただいて、特にまた現在御所管の税の有効な利用、活用というような面からも、この府県制を一応廃止して道州制に移行するという問題についての大所高所からの御見解を聞きたいと思います。
  68. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は、この問題で政府代表してお答えをするという立場にはないのです。ですから、私見を申し上げさしてもらいますが、私は、いわゆる道州制というか広域行政への大改革ですね、これは、もう大賛成で、これは、われわれがぜひ解決しなければならぬ問題である、こういうふうに考えております。とにかくお話のとおり、われわれの生活環境というものは非常な変わり方である。特に戦後四半世紀の間の変わり方というものは目まぐるしいものがあるわけです。それに対しまして、われわれの生活をささえる中央、地方の行政機構というものが、百年前の体制そのままである。これでいいかというと、私は、決してそれでよくないと思うのです。ただ、この問題は、もう非常に大きな問題であり、国民のすべての人に関心のある大問題でありまするので、これは、やはり国民世論が完熟する、これが前提として大事な問題じゃあるまいか、そういうふうに見るのであります。先般総理が、当委員会におきましても、御質問に答えておられるが、非常に慎重なかまえのお答えだという印象で伺っておったわけでありますが、どうも旗を政府が振ってというような性格のものではない。これは、もうこの段階に来たら、ひとつわれわれの行政組織をやり直そうじゃないかという国民の盛り上がる背景というものを持って初めてこの問題は成功裏に実現できるのだ、こういうふうに存じまして、私も所管の問題ではございませんけれども、ひそかにそういう方向に世論がおもむくということにつきましては、重大な関心を持っているということを率直に申し上げます。
  69. 岡沢完治

    ○岡沢委員 大蔵大臣から非常に率直な御意見をいただきました。内閣を代表してでないという御前提がございましたけれども、国務大臣として、また内閣の中の主柱のお一人として、私は、その御決意には敬意を表しますし、またその識見につきましても、大いに共感するところでございます。ただ、総理に対する御遠慮もあったのでございましょうが、非常に慎重な総理態度についての共鳴的な御発言は、ちょっと御真意ではないような感じがいたしますのと、それから、いまこういう問題はきわめて重大な問題だ、私もそう思いますし、またせっかちにプロセスを無視した実現なんていうことの考えられないことは、おっしゃるとおりだと思いますけれども、ただ、おっしゃった中で、政府が指導して旗を振ってやるべきではなしに、世論の盛り上がりを待つべきだという御指摘がございました。私は、もちろんあとで質問の中身にもその問題を出すわけでございますけれども、住民を無視した、あるいは住民の利益を度外視した地方制度の改革というものはあり得ないと思いますけれども、しかし、やはり政府こそ先見性、識見性を持って、ある意味では正しい方向に世論を指導するということも、むしろ政治の責任ではないか。最終的には主権者たる国民が、あるいは住民が判断をするといたしまして、住民は最近の風潮からいたしましても、マイホーム主義で自分の目先のことしか考えない方が多いわけでありますから、こういうときには、やはり政治の指導性というものを発揮していただく最適な課題ではないか。百年前に廃藩置県が行なわれ、明治百年の今日、一九七〇年代の課題として、廃県置州というのは、私は単なるスローガンではなしに、時代の要請ではないかと思うわけでございます。  ここで、佐藤経企庁長官お尋ねいたしたいと思いますが、私はこの道州制の問題と、新全国総合開発計画の効率的な運用とは切っても切れないと思うわけでございますが、この新全総との関連から見て、現在の府県制度が妥当であるかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  70. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 いまお話がございましたように、新全総におきましては、今後の二十年間におけるわが国の経済発展、いわゆる高密度化し、情報化する社会というものの実現を想定して、いろいろな角度から検討しておりますが、特にこの行政の問題につきましては、一日経済圏、一日でもって往復できる、こういう経済圏というものが、交通その他の異常な発展によりまして、非常に広範化しつつある。そういうことを頭に描きまして、今後、いまの府県制度というものでは律し切れない多くの経済的な問題が出てくるであろうということを十分に想定いたしまして、御承知のように広域圏の問題を提唱しましたりしております。もっとも、新全総の中で行政組織としての具体的な府県制あるいは道州制について特に言及はいたしておりませんけれども、そこに内包している思想というものは、やはり今後府県制度だけでは吸収し切れないいろいろな問題を処理するために、新しいブロック的な、何らかの意味のそういう機関というものが必要になるであろうということをサゼストしておるわけであります。
  71. 岡沢完治

    ○岡沢委員 ここで御出席の文部大臣に、直接関係ないので居眠りしておられましたけれども、やはり先ほどちょっと私が触れましたように、いまの過密・過疎の問題とも関連いたしまして、教職員の適正配置というような問題を考えましても、やはり府県制が一つの壁になっておると思うわけでございますが、そういう文部行政の観点から、大臣の御見解を聞きたいと思います。文部行政といわゆる道州制との関連制、お尋ねいたします。
  72. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私も、個人的に申しますと、やはり広域行政ということに向かわなきゃならぬというふうに思っております。文部省の立場から申しましても、やはりそのような方向に行くのが望ましいのではないかというふうに考えております。
  73. 岡沢完治

    ○岡沢委員 せっかく御出席の荒木長官に、行管庁長官立場から、いわゆる二重行政あるいは二元行政の問題、行政簡素化、合理化の観点から一つと、それから、やはり国家公安委員長のお立場から、いわゆる警察行政の立場から見た府県制の関連性についてお尋ねいたします。
  74. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 行管長官立場国家公安委員長の立場、双方の立場から見て、いわゆる道州制をどう思うかというお尋ねかと思うのですけれども、個人的な感触を申し上げても意味をなさないと存じますから、慎重にかまえまして、感想を申し上げることは略したいと思います。  ただ、現実問題としましては、たとえば犯罪の捜査、公安委員長立場で申し上げれば、犯罪の捜査が広域的になる。高速道路ができれば、きょう東京で犯罪を犯した者が、その日のうちに大阪や九州まで移動しないとも限らない。交通事故といたしましても、都道府県の境域でもって守備範囲を定めておる。そのことが不便なしとはしないと思います。ただ、現実には、たとえば高速道路ならば二十キロオーバーランを許すという取りきめをいたしまして、現実に即応いたしております。また高速道路でない場合でも、二キロの相互乗り入れ的なバトンタッチをやることによって現実問題に対処するということで、実際上の支障はないように取り計らってはおります。また、そういうことをしなければならぬことが、御質問の広域行政であったほうがベターじゃないかというふうな意味合いもなしとはしませんけれども、冒頭に申し上げましたように、立法論的にはあえて申し上げないで、現実即応のことでもって当面を処理いたしておる。  また、行政管理庁長官としての立場から見ましても、現行憲法及び憲法に基づくところの現行法律制度、行政組織法、各省庁設置法等、それぞれの守備範囲を定めまして、そののりを越えないように相互協力しながらやっていくのにどうすればいいかという考え方で現実には即しておりますので、あえていま直ちに現状ではかくかくの支障があるから、断じて道州制でなければならぬというふうには思いません。
  75. 岡沢完治

    ○岡沢委員 さっき秋田自治大臣、きわめて慎重な、大臣らしい御答弁でございましたが、大臣のもとの細郷事務次官、四十四年十月御就任のときの直後の発言に、「地方自治の根幹は市町村だから、まずこれの広域運用を徹底することが先決である。府県合併や道州制には障害が多くて、無理に形だけ整えようとしてもよい結果は出ない。」という御発言がございます。これがおそらく佐藤総理の慎重な発言の出所だという感じがするわけでございますけれども、事務当局としてのこういう発言はわからないではございませんし、また、われわれ考えております道州制、あるいは一部で伝えられております道州制も、市町村はむしろ強化するという方向にあることは事実でありますし、また、それが正しいと思います。ただしかし、大臣の御答弁とこの細郷事務次官の御発言とは、若干の食い違いを感ぜざるを得ませんし、特に、私見としてではありますが、大蔵大臣の御発言等とは大きく食い違う感じがいたします。  また、私は、地方行政全般、行財政、財源の配分にいたしましても、事務分配にいたしましても、やはり今後の長期的な、あるいは広い視野から見た計画的な地方行政ということはきわめて大切であって、かりに広域市町村圏の育成ということが当面の急務でありましても、やはり将来の方向として道州制を指向するということを前提にした場合とそうでない場合とは、大きく具体的な現実な処置も変わってくるのじゃないかというふうな感じがいたします。この事務次官の御発言と結びつけて、再度自治大臣の道州制に対する御見解を聞きます。
  76. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 自治次官の発言も私の発言も、趣旨においてたいした差はないと思います。  そこで、やはり地方自治行政を監督しておる者といたしまして、現実の立場と今後のあるべき将来のビジョンを描く立場二つございまして、どちらに重点を置いたかの発言によって、発言のニュアンスが変わってくる、そういう性格のもので、細郷君の発言が多少われわれと違っておるのではないかという感じを抱かしめたのではなかろうかと思うのでございます。私といたしましても、やはり地方行政の一番の基本は市町村の行政にあろうと思います。この市町村の行政が時代に即してある程度の広域化の要請を取り入れて、あるべき姿にあるということが一番大事でございます。その上に府県の姿がどうなっていくだろうか、また、府県単位の広域行政というものがいかなる姿になるのか、それは単なる府県合併でいくのか、いわゆる道州制の形になるのかという発展段階になっていくのでございまして、これらの点については、やはり時代に即して積極的に、前向きに考えていかなければならないと思っております。  この点、事務次官も同じ考えだろうと思うのですが、現実面をよけい重視したきらいは多少あろうかと思います。したがって、われわれと事務次官との発言に根本的に食い違いはないと思います。  しこうして、道州制の問題を、これは検討すべき将来の上級の地方行政機関として考えるべきものといたしましても、これは唱える人によっていろいろの内容がございましょう。これの功罪、賛否半ばいたしておりますが、固定的な道州制の内容というものはまだきまってないわけでございますから、ここいらに検討を加えながら、よく慎重な態度をとると同時に、ただいま大蔵大臣もおっしゃったとおり、いたずらに先に進んで、理屈の上からだけで地方住民の意思も無視し、その了解、その納得、その地方住民の感情というものを取り入れないで先へ進んだ場合は、いろいろの紛糾、摩擦を起こすわけでございまするから、やはり発展的にいろいろ交通であるとか通信であるとか、こういうものの発展とともに地方住民の感情の成熟を待ちまして、あるべき姿に落ちつけていくということを当然考えるべきであろうと思います。  したがって、私どもはこの問題について前向きの観点をもって大いに検討をいたしたい、こう考えておるのでありますが、いたずらに柿を青いうちからたたき落とすというような態度は、これは慎むべきものであろう、こういう感じを持ちまして、積極的に、前向きにこれの検討には向かっておるわけでございます。
  77. 岡沢完治

    ○岡沢委員 逃げた答弁ですけれども、前向きに向かうと言いながら、実際には事務次官のことばを肯定したような感じでございます。  この道州制については、大臣も十分御承知のとおり、昭和三十二年の第四次地方制度調査会の答申がございます、当時は地方制という名前を使っていたようでございますけれども。これがせっかく地方制度調査会としては結論を出しながら、実際上政治の世界からは消えていったという歴史がございます。それからもう十三年もたっておるわけであります。この広域行政の必要性、あるいは現在の過密・過疎の問題、大都市問題、いずれの解決にも府県制の打破ということは不可欠だと私自身は信じますけれども、しかし、いつも言われながら現実の日程ではうやむやのうちに目前を糊塗して過ごされてきた。私は、この一九七〇年、新しい時代に、これが早急に実現できるような小さい課題でないことは十分承知いたしておりますけれども、やはり具体的にその検討に踏み出すべき時期ではないかと思います。  大臣はいま、検討を始めたとおっしゃいましたが、何か具体的にこの問題について自治省として取り組んでおられる実績がありましたらお伝えいただきたい。あわせまして、この問題につきましては、言い出した人々が財界であるだけに、いわゆる住民無視の産業優先といいますか、経済効率だけを考えた制度だという批判がございます。これについてどのようにお考えになりますか。あわせまして、住民自治あるいは地方自治と道州制との関連について、大臣はどう考えておられるか、お尋ねいたします。
  78. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 細郷次官の考えによりウエートを置いているのじゃないかというお話でございますが、それはいささか誤解ではないかと思います。細郷君も道州制のことを否定的に考えているわけじゃなくて、道州制というものがしつかりできますためにも、基本の市町村の段階における地方自治団体が、時代に即したあるべき姿にしっかりなければ、これは道州制というもののほんとうの姿が出てこないわけでありますから、その意味におきまして市町村単位における広域行政というものをしっかりやるということを強調されたものだと私は思います。私も、その意味におきまして道州制というものを真に固めるためには、その前提の条件としてやはり市町村段階における広域形態が確立しておることが必要であろうと思います。その上に立ちまして道州制がどういう形をとるか、もう道州制という形をとると人口が数千万にもなり、その機構とか下部機構とか、あるいは市町村数のあり方いかんによらず、それは単なる国と地方との中間的団体な地方団体ではないのだというような意見もある。私がそうだと申すのではございませんよ。そういう意見もございますので、そういう点もよく考えまして、そうして前向きにこれを検討したい。  それがために何か省内に特別の機関を設けたか、そういうことはございませんが、関係局、関係者において、また、われわれ常に寄るときには真剣にこの問題を論じて研究に入っておるわけでございます。
  79. 岡沢完治

    ○岡沢委員 大臣、私はまたそのほかに、産業優先の制度じゃないかという問題と、地方自治との関連もお尋ねしたはずであります。
  80. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 産業優先の考えからだけこれが提唱されておるとは思っておりません。たまたま財界人によりまして強くこれが主張されておりますので、世間に、これは産業の利益のために主張されておるのではないかという誤解が一部あるようでありますが、私はそういうものじゃない、また、この本質はそういうものであってはならないと考えておるのでございまして、地方自治行政のあるべき姿を検討する場合に、当然この道州制の問題は前向きに検討されなければならないものである、こう考えております。
  81. 岡沢完治

    ○岡沢委員 地方自治との関連。
  82. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 ただいま地方自治との関係は、そういうふうな関連において把握をしておるということを申し上げたつもりでございます。
  83. 岡沢完治

    ○岡沢委員 いまの御答弁、必ずしも私は反対ではございませんし、そういう理解でいいような感じがいたします。主唱者が財界人であるから財界エゴイズムだ、あるいは経済効率だけを考えた提案とは、私はすなおに提案内容を見ました場合に、考えることはできないかと思います。  ところで、過去三回お出しになりました都道府県合併特例法を今国会にはお出しにならない。そのならない理由ですね。道州制との関係もあるような感じも私はいたしますし、ほんとうの趣旨はどこにあるのか、大臣からお答えいただきたいと思います。
  84. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 道州制の問題はただいま検討しておるということは申し上げましたから、必ずしもこれに反対だからこの都道府県合併特例法は出したのだという意味ではございませんが、自主的に、自発的に合併しようという団体に対する道をあけておく意味におきまして、これは一つの貴重な考え方であり施策であると思いまして、私どもはこれを御提案を申し上げ、また、この国会に御提案を申し上げる強い希望を持っておりましたけれども、御承知のとおりこの会期が短いというやむを得ざる情勢によりまして、今回はこの提案を見合わせましたが、次の機会にはこれを成立を期しておる次第でございます。
  85. 岡沢完治

    ○岡沢委員 宮澤通産大臣がお見えでございませんが、その弟さんで自治省の行政局長宮澤弘さんは「新国土計画論」というきわめて見識の高い書物をお書きになっておられますし、行政の一人のエキスパートかと思います。この機会に政府委員として御見解を聞かしていただくとともに、もし大蔵大臣等のお考え政府のお考えに将来なった場合に、道州制実現のプロセスといいますか、事務的にどういうことが考えられるかという点を一応この機会にお尋ねしておきたいと思います。
  86. 宮澤弘

    宮澤政府委員 私の全く個人的なささやかな研究の問題でございますので、本来こういう公の席上で申し上げるのはどうかと思いますけれども、御質問でございますので、あえて申し上げさしていただきたいと思います。  私は、現在の府県の姿はいずれ変わってくるだろうと思っております。いずれと申しますのは、一定の時期があり、一定の条件があるわけでありますが、私は、それは三つの条件が充足をされたとき、あるいはそういう時期ではなかろうか、こういうふうに思っております。  その一つは、先ほどもお話に出てまいりましたけれども、やはり住民に身近な仕事というものは市町村で大体カバーできる——カバーしなければならないわけでありますが、カバーできる行政上、財政上の体制が整うということがまず第一であろうと思います。  それから第二番目は、府県制度の改革なりあるいは道州制の問題と申しますのは、私は単に狭い意味の地方制度だけの改革ではないと思うのでございます。やはり国、地方を通ずる基本的な制度のあり方、基本的な国、地方を通ずる問題として考えるべきである、こういうふうに思っております。  それから第三番目は、先ほど各大臣からも御答弁がございましたけれども、やはりこの府県制度なり道州制の問題につきまして、国民の世論と申しますか、国民の間にこの問題の問題意識というものが相当浸透していかなければならない、こういうふうに考えているわけでございます。浸透と申しましても、先ほど岡沢委員もおっしゃいましたように、やはりいろいろな機会にあらゆる方面からこういう問題についての問題が投げかけられる、それにつれて国民の議論が活発になってくる、こういうふうにも思っておりますので、今回財界がああいう提案をされたということにつきましては、私はこの問題を、結論がどうなるかは別にいたしまして、議論を進めるために一つの大きなステップではないか、こういうふうに考えております。  それからさらに、この問題が具体化する場合の手続と申しますか、そういう御質問でございますが、これにつきましては、先ほど大臣も申しましたように、内閣総理大臣の諮問機関でございます地方制度調査会でおそらくその問題は今後議論をされると思います。私どもも私どもなりに現在、たとえばイギリスの地方制度の改革についての調査を始めておりまして、いろいろ調査をいたしておりますので、地方制度調査会の結論をまって、それによって私ども事務当局が手続を進めていく、こういうことになろうかと思います。
  87. 岡沢完治

    ○岡沢委員 この問題ばかりで時間をとるわけにはまいらないわけでございますが、私はここに関経連が出しました地方制度の根本的改革に対する意見というのを持っております。時間的に制約がありますけれども、私はここで朗読させていただく価値があると思いますので、二、三分いただきまして、読んでみたいと思います。   地方制度は、地域住民の生存と福祉の向上に重要かつ広範な関係を有する行政を民主的かつ効率的に行ない、あわせて地域社会の基盤構造の変貌に伴う行政需要の変化に十分即応し得るものでなければならない。   しかるに、現行の府県制度はかような要請に応ずるだけの能力に乏しい。すなわち  (1)、最近の科学文明技術の進展により拡大した社会圏・生活圏にくらべて、府県の規模はいちじるしく狭小化し、そのため国土総合開発のための大規模プロジェクトの実施はもとより、近年の緊急課題である過密・過疎現象に対する適切な施策がほとんど不可能となっている。  (2)、膨脹する都市と府県との間には、ほとんど例外なしに事務分担領域をめぐる対立抗争あるいは二重行政の弊害がみられ、行政の非能率ひいては住民の税負担の増加を招いている。  (3)、府県区域を越える広域行政需要の増大とこれに応ずる府県総合行政力・自治能力のいちじるしい低下に伴ない、府県行政事務は漸次国に吸収され、国の地方出先機関濫設の弊を招いている。  (4)、一方、市町村は昭和二十八年以来の市町村合併により行政能力が強化され、その結果府県より移譲さるべき事務が増加している。  (5)、さらに今後の地方行政における行政需要の高度化・複雑化を考える時、多くの有能な人材・相当な財政規模が必要になると思われるが、現在の制度の下ではこれに十分応じられない府県が少なくない。この意見、私は傾聴に値すると思います。  これで道州制に関する質問を終わらせていただきまして、行政管理庁長官がお見えでございますので、これから行政の改革に関連したお尋ねをしたいと思います。この問題につきましても、実は内閣官房長官のご出席をお願いしたのですが、出席していただけなかったのは非常に残念であるということを披露した上でお尋ねしたいと思います。  この三月四日に、大臣も御承知のとおり、行政改革に関する意見書というのが行政監理委員会の民間委員の六人の方から出されました。これは、委員長である荒木長官はお入りにならないで、民間の方六人だけが逆に委員長あてにお出しになったような形式をとっております。これはおそらく異例だと思うわけでございまして、内閣総理大臣の諮問機関的な役割りから、あるいはまた政府の行政のお目付役という立場からも、大臣もお入りになって委員長立場から総理に御注文をおつけになるというのが普通の形式ではないかと思いますが、今度の場合は異例な措置がとられました。そのいきさつについてお尋ねいたします。
  88. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 いきさつの詳しいことは私も存じません。想像はできますけれども、存じません。ただ、想像を含めて申し上げれば、出された意見そのものの個々の課題というものは、やはり一つの示唆に富む課題であることは確かだと受けとめますが、行管長官であり委員長である者も含めて委員会の意見として出すとならば、それが当然実行に移るための現実即応の順序、体系等が裏づけされなければ結論が出にくい意味がございます。そういうことを考慮されて民間の有識者としての委員立場からする一つの見識を表明されるという意味合いを中心に、私を除いた六人の委員の方の連名の考え方が発表され、私にも手渡ししていただきました。総理にもこのことを伝えてくださいと書いてあります。本日、総理のところにもむろんお届けしました。関係省庁にも伝えたいと思っております。  いきさつは以上のとおりでございまして、詳しいことは一人一人にお尋ねせんければわからないと申したほうが真相に近うございます。
  89. 岡沢完治

    ○岡沢委員 私は、この六人の委員の方が長官にお出しになりました意見書のコピーをここに持っております。新聞には大々的に報道されましたけれども、コピーを見て驚いたわけでございますが、原稿用紙に方々消したりつけ加えたりした、非常に急いだ形跡がございます。三月四日に急いで六人の方がこういう意見書を出された。中にも書いておられますけれども、第三次佐藤内閣成立直後の総理の記者会見や、国会における質疑応答等を通じ、今次内閣が行政改革に前向きの姿勢を示していると解されているのに、現実の予算編成にあたっては、政府が数年来一貫してとり続けた行政機構の膨張あるいは特殊法人の新設等の抑制に対する熱意が必ずしも生かされていない感があるということを指摘しております。荒木長官をお入れにならなかった理由もこの辺にあろうと思うわけでございまして、総理が任命された六人の方ですら、この内閣に対してはかなりきびしい批判的なことばを言外に含んだ指摘をされているわけであります。  この中身を見ますと、私は今度のこの意見書はかなり具体的に、従来に見られない説得力を持って貫かれているような感じがいたします。ことに食糧事務所の問題等につきましては、われわれも直感的に感じておったことでございますけれども、職員が二万七千人おりまして、米の検査には二万一千人当たっておるわけでございますが、実際に必要な数字は一万二千人といわれているわけであります。しかも、米の抜き取り検査は、年間を通じまして実働の日は九十三日といわれております。あとはどうしているのか、まあこれは倉庫の見回りだといわれておりますけれども、このごろは倉庫も完備して、ネズミもおらないし、あまり見回る必要もないようでございます。食糧事務所につとめている私の友人もおりますので言いにくいのでございますけれども、率直にいいますと、周囲の人々は、雨の日はマージャンをやっている、晴れの日は釣りだというふうに非難をしておる事実もございます。もっともその米のほか三十二品目の農産物の検査をしておるといわれておりますけれども、実際にはあまりこまか過ぎた穴を掘るような指摘がなされて、かえって農民や農協は困っておるというのが実際のようであります。私は、この食糧事務所におつとめの職員の方々が決してふまじめな方ばかりだとは思いません。むしろまじめな方も多いと思います。まじめな方が多いだけに、仕事がなければよけいに御本人としても不満だろうし、処置なしだろうと思います。今度の意見書を見ましても、具体的に配置転換等、また農林関係での必要な部門も指摘されて、いわゆる出血でない整理の方法考えておられるようでございます。私は、その他の御指摘も含めまして、今度の行監の六人の方々の意見、まさに聞くべきものがあろうと思います。  この行政改革は、いままでも何回か指摘されましたように、言うはやさしい、実行はむずかしいという性質のものでございます。しかし、やはりこの辺で勇断が必要ではないか、税金のむだ使いということにつきましてはお互いに大いに反省もし、また留意をすべき問題ではないか。よく言われておりますように、アメリカの国会議員は、どうしてむだ使いを省くかと、予算の節約に努力をする。日本は、大臣も含めまして国会みんなが予算のぶんどりに力を注ぐ。この辺に私は問題があろうかと思うわけでございますが、行管長官の御意見をお聞きしたいと思います。
  90. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 監理委員の方々の御指摘の中に、いまお話が出ましたように、行政改革にあまり熱意がない、能率があがってないじゃないかというがごときくだりがあります。現象的にごらんになれば、そうおっしゃる意味もわかります。ただ、行政改革とは一体何か。端的に申せば、少数精鋭でもって簡素合理化された組織機構のもとに行政サービスを低下させないで能率高くよりよき行政需要に応じていくということかと思います。その意味で公社、公団その他の整理問題もむろん出てまいりましょうし、あるいは行政機構そのものの縮小等の課題も出てまいると思うのであります。また、今度指摘されました諸問題もまさにその課題の一つだと存じます。  ですけれども、まず第一に、いわゆるパーキンソンの法則と通称される、そこに役人がおれば仕事をふやしてまた増員増員と積み重ねていく傾向がある。これは日本のみならず、外国でもそう言われておるようですけれども日本でもその例外じゃなしに、明治以来いまだかつて定員が減ったためしがないということも、行政改革の基本的課、題として臨調答申に指摘されておるところであります。まずもってそれに手を染めることが先決であろうということで、過ぐる通常国会でいわゆる総定員法といわれるものを通していただきました、この総定員法の趣旨に従って、前年度の予算・につきましても、四十五年度の予算編成につきましても、定員に関しましてはその趣旨を生かすことができるはずであり、できたと存じております。そういうことで一つの路線は引いていただいた。さらに次には、行政組織法の再検討の課題が私はあると思います。  いつかも申し上げたことでございますが、占領中に——戦前は行政機構定員あるいは公務員の処遇等につきましても、すべて旧帝国憲法上、天皇の大権事項とされ、各省官制通則、各省庁の設置法に相当する官制あるいは高等官、判任官の官等俸給令等、すべてこれ勅令でございましたが、勅令、詔勅のたぐいは新しい憲法の趣旨に反するものはすべて無効とされ、占領中にマッカーサー司令部の指示のもとに新しい組織がつくられ、かつ動いて今日に至っておる。いまから二十五年前に国家行政組織法がつくられたんでありますけれども、これも占領中マッカーサー司令部の指示のもとに、将来に向かって新憲法の趣旨そのものに即するといたしましても、はたして適切であったかどうかという課題を投げかけておると思うのであります。これの再検討をすることによって、現在、将来に対処するその検討こそが、また行政改革の基本課題の一つであろうかと心得ます。  それはそれとして、今後の問題でありますけれども、現実に指摘されましたことも、たとえば食糧事務所を廃止したらどうだ、少なくとも配置転換でうんと縮小したらどうだ、私どもも直感的にそう思います。ですけれども、これは食管法という法律を施行するために必要であればこそ置かれた組織であります。機構であります。いま総合農政が日程にのぼっておりまして、国会でも御論議中でもあります。政府としましてもそれぞれの対策を検討いたし、御審議を願いつつあるその一環として考えねばならない政策課題でもあるわけであります。ですから、問題点を指摘された意味においてはその見識に敬意を表するにやぶさかではありませんけれども、いま直ちにこれをこんなふうにやりますということを申し上げるには時期的に適切じゃない。そこで、農林省とも大蔵省ともむろん連絡調整の機能を発揮しながら検討せねばならぬと思いますが、そういう意味合いでもろもろの課題が国の政策課題と密着しておりますので、その問題点を解きほぐしながら適切な結論を出すように十分検討しろという示唆を与えられたと、かように存じておりまして、着実にこれと取り組みながら成果をあげる努力をしてまいりたい、ただ新聞記事にでかでかと書かれる課題が活字になったことだけで改革が行なわれたということじゃないのでありまして、そうでなくても、じみちに前進していくことが行政改革の本来の姿であろう、かように私は受けとめて、微力ながら努力をささげたいと存じております。
  91. 岡沢完治

    ○岡沢委員 荒木大臣国家公安委員長としてはきわめて明快な御答弁をなさるわけですが、行管庁長官としてはへ理屈としか思えない御答弁ではないか。行政改革がむずかしいことは先ほど指摘いたしました。しかし、この委員会が勇を鼓して、しかもいわばていさいもかまわずに意見書を出した。この予算委員会に間に合わしたいというお気持ちだったと思います。行政の膨張にたまりかねた意見書だと私は見るべきだと思うのです。私の党に春日大先輩がおられますが、春日さんの好きなことばに、理屈はあとから貨車でついてくるということをおっしゃいます。どろぼうにも三分の理屈ということがありますし、今度のいまの御答弁、私は法律を無視せいとは言いません。しかし、法律は何のためにあるかということになりましたら、国民の暮らしと健康を守る、あるいは税金を有効に使うというためにこそあるべきなんだ。三百もこえる大議席を持っておる自民党でございますから、私は正しい方向に法律を改正されることが、むずかしい問題ではないと思います。やはり荒木さんらしい勇断を持って行政改革に取り組んでいただくべきではないかということを指摘申し上げ、ことにこの意見書の最後に「緊急に取り組むべき改革事項と考えられるものをあげて、強くその実現を要望する」という趣旨を生かされるべきではないかと思う次第でございます。  建設大臣がお見えになりましたので、ぜひ前へ来ていただきまして、きょうの私の一番大きな質問の地価対策について建設大臣に、これこそ政治的決断を持った御答弁をいただきたいと思うわけでございます。  地価の異常な上昇、この問題につきましてはもう何回か論じ尽くされました。しかし私は、まだまだ論ずる価値があるし、また論じなければならないと信ずるものでございます。地価の異常な上昇がどういう弊害をもたらしておるかということを、ここで一々指摘することは避けたいと思いますけれども国民の最も大きな願いである住宅の問題あるいは物価の問題とも不可分の関係がございますし、交通事故あるいは貯蓄心の低下、あるいは政治不信、あるいは欲求不満——たちの河村委員がこの席で地価の急騰は諸悪の元凶だという指摘をされましたが、まさにそのような感じがいたします。現在における最大の政治的な課題あるいはガンだと申し上げてもいいように思います。そのためにでしょうけれども総理も施政方針演説でもこの地価問題にお触れになりましたし、経企庁長官もお触れになりました。総理のおことばじゃありませんが、沖繩返還なくして戦後は終わらない。私は、住宅問題の解決なくして戦後は終わらないと内政的にはいえるのではないかと思います。そしてまた、佐藤政府もことしは内政の年ということをおっしゃっておられます。この内政の課題の中で、先ほどの質問にもございました、年間二万人の死亡者を出し、百万人に近い負傷者を出す交通事故の問題とからんで、この土地の値段の急騰の問題は最大の課題だと申し上げてもいいと私は思います。  また、佐藤内閣の功績——私は野党でございますけれども、沖繩返還あるいは日韓の問題等の解決を通じまして、必ずしもその功績を評価するにやぶさかなものではありませんけれども、この土地に関する限りは、まあ異常な値上がりは約十年間続いておるわけでございますが、ことに佐藤内閣が成立以来その傾向を強めておるということを考えましても、最大の失政と申しますか、最大の失敗ではないか。いかにいろいろな理屈をおつけになりましても、また、従来もいろいろこの問題と取り組んでおられる姿勢はわかりますけれども、現実に地価が上がり続けておるということは政治の失敗だ、地価対策に関する限りは自民党政治は落第だと指摘しても決して間違いではないと私は思うわけでございます。  これに関連して、建設大臣は二月十五日のNHKテレビで、五年間に地価は必ず下げてみせる、また下げなければならないということを言明されたわけでございます。しかもその席で、これについてはむしろ野党の諸君の協力が要るという御指摘もございました。そういうことを踏まえながら、私はこの地価問題について若干の質問をさしていただきます。  地価はどうしたら下げられるかというその問題を解明するためには、なぜ上がったかということがまず解かれなければならないと思います。地価上昇の原因についていかにお考えになるか、建設大臣と経企庁長官お尋ねいたします。
  92. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 御指摘のとおり、地価の上昇は経済的な合理性を越えて行なわれておるというところに非常に問題があると思います。  その原因いかんということでございますが、これを論ずるならば、非常にいろいろの複雑なる要素が複合しておることは事実でございまするが、まず端的に申しまして、経済の発展に伴う都市への産業と人口の集中と、一面における過疎現象等の、このことが一つの大きな社会的、経済的な基盤をなしていると言うことができるでございましょう。  その次に、日本においては公的機関、地方自治団体が実は土地を持っていることが非常に少ない。他の外国でございますと、これはほとんどシティからずっと歴史的に発展したために、相当の公共用地を持っております。たとえばロンドンでもベルリンでもその他も持っておりまして、これが相当程度交換できる余地を持っておったが、日本にはそれがなかったということ。  それからさらに、土地所有に関する観念が違っているということです。戦後新憲法で私有権の制限が行なわれておりますけれども、実質上は土地についてだけはほとんど絶対的所有権があるかのごとき風習が今日まで続いておるということ。しかも国が公共のためにやる事業でありましても、一たび国がその事業をやると、いつの間にか論理がすりかえられまして、国家権力のやることの反対だということで、一般国民の利益のためにやったことに対して非常な抵抗がある。政治的イデオロギーとも一緒になって抵抗されたために、土地収用等がなかなかできなかったということ。  それからもう一つは、戦後銀行等が都市などで、経済の合理性を越えた高値で一部営業上買っていくと、それが写真相場になりまして、それが相場として出てくる。あるいは電源開発等が、ごく少数の人々の抵抗をできるだけ時間的に早く解決するために、これも経済外的な評価をして買い上げる。これがまたあらゆるダム建設その他に写真相場として定着してしまう。あるいは道路、都市開発等の計画を政府が進めていく場合に、それが計画を立てられるまでは地域住民は盛んに陳情して促進を求めてきますが、いよいよ予算化してこれが実行するところになると、条件闘争になったり、これがなかなか進まない。そうしてそれが政治的な運動として、国家権力に対する闘争という形として出てくるために、これがなかなか解決できないというようなことと、それから現実に今日までは農地法がございまして、これが農地転用というものは原則として行なわないということになってまいりますと、日本の産業が平地に立地しておる今日、それからまた都市が平地に大体存在するということになりますと、農地の改廃が原則としてできないというような状況になりますれば、限られた土地が非常に高値になるというようなことが累積して、今日の土地価格の非常な急激な値上がりが続いておる、こう申していいのではないかと思います。
  93. 岡沢完治

    ○岡沢委員 経企庁長官、いまの原因とあわせて、長官経済演説における中身の中で強力な総合土地対策を進めるということをおっしゃっておられますが、その中身もあわせておっしゃっていただきたい。
  94. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 日本の地価の今日ような上昇につきましての解明は、いま建設大臣がほぼ尽くされていると思います。さらに加えますならば、いまお話しのありましたような事態を背景にいたしまして、さらにいわゆる売り惜しみ現象が生じておる、あるいはやや買い急ぐというか、投機的な要素を持った一部の買い占め的な要素がある、こういうようなこともいろいろ加わっておると思います。いずれにしましても、その基本は経済の急成長、所得の急上昇、これがやはり基本に横たわっておると思います。  さらに、今後われわれは、これは建設大臣の所管でもございますし、今後、建設大臣が大きな見地から方針をお立てになると思いますが、住宅政策というものは、日本のように土地問題のむずかしいことを前提にいたしました際の住宅政策のあり方、これもやはり相当われわれは検討を要するのではなかろうか。つまり、もともと土地問題というのは、住宅政策から生じておる問題であろうと思います。住宅に対する急激なる需要、それに対する供給の不足、これからもともと出ておる問題だと思います。  そこで、住宅の需要が起こりますと、常に土地の需要があわせて起こるというようなやり方では、なかなかこの土地問題はむずかしい。できるだけ土地の需要をあまり刺激しないで、住宅の供給を増加する方法は何か。そうしますと、結局これは、わりあいに住みごこちのいい借家をよけいふやすことである。私たち戦前の経験もありますが、豊富な借家がある場合においては、持ち家に対する欲求というものはあまり強く出てまいりません。日本においても、ある程度まで十分に、相当の住宅が行き渡りましたときには、今日ほどネコもしゃくしも土地まで持たなければいかぬという持ち家の需要がだいぶ減るであろうということが、専門家によっても指摘されております。そうした日本における特殊な土地事情というものとあわせた住宅政策の遂行、これが今後大きな問題になろう、こういうふうに考えております。  いま御要求のありました、いわゆる総合的な解決、これは私どもも十分に心がけるつもりでございます。その対策につきましては、すでに新聞等にも出ておりますし、各種の審議会でもすでに報告が出ております。一、二をあげますれば、要するに、一方において需要の抑制である。この需要の抑制については、すでに政府の決定等に基づきまして、工場が首都圏のようないわゆる都市圏内に集中することを抑制するというような問題もございますし、それからまた一方におきまして、どうしたら供給ができるか。これについては、すでに御承知のように、土地保有者に対して固定資産税等を増税をする、あるいは都市計画税を取り上げる、こういうような問題もございますし、あるいはまた、日本におけるところのこれだけの土地の需給のアンバランスというものを解決しようとする際には、どうしても、いわゆる可住地域の増加と、それに対する通勤距離というものを短縮していかなければならない。すなわち、通勤交通機関の高速化、こういうようなものについて、それに対する社会資本の供給がいささかおくれておる等、いろいろとございますから、そういう問題について、われわれはなお、従来と同じ時間でさらに遠方から通勤が可能になる、こういうような意味の交通資本の充実、こういうこともいろいろあわせて考えなければなりません。  建設大臣からもお話があろうと思いますが、その中におきましても、農地法というものをせっかく緩和いたしましても、いま申し上げましたように売り惜しみ現象、これは何も短期的な売り惜しみだけではなくして、およそ土地の保有者が長期にわたって土地の値上がり期待のために売り惜しんでいるという現象が相当広がっておりますから、これを何とかしなければならぬ。そうしますと、どうしても固定資産税等の問題にも手をつけなければならないと思います。ただ、御存じのように、この各種の審議会等の答申にもございますように、この土地政策というものは斉合性が大事である。一つだけ突っ走ってやっても、逆に反動的な結果を招くことが多い。これは確かに私も十分注意したいと思います。御存じのように、区画整理事業が一向に進まない。そうすると、ただこの固定資産税だけかければ、結局スプロールの現象を生ずるだけである、こういうようなこともすでに指摘をされておるところであります。あるいはまた、現在の農家に対して固定資産税をかけて、そうして手放すようにしむけるのはいいのでありますけれども、それを一部の資本が来て買い占めるというようなことになったのでは、元も子もなくなるわけであります。私たちは、そこいらのところをよほど配慮しながら、しかしいま提案されているところの提案に対しては、十分深い関心を持ちまして、これの実現をできるだけ前向きにやっていかなければならない、土地の政策については、今日もうそこまで来ておる、こういうような考え方を持っております。
  95. 岡沢完治

    ○岡沢委員 いまの御答弁がすべて間違っているとは私はもちろん思いません。しかし、建設大臣がいみじくも御指摘になりましたように、経済合理性を越えて地価が上がっている。経企庁長官は、経済の膨張あるいは所得の急増等も影響しているということをおっしゃいましたが、そのいわゆる経済的な理由を越えた異常な値上がりというのが、現実の地価であります。もちろん私がここで地価というのは、大都市近郊の地価に限っているわけでございますけれども、私は経企庁長官ほどの頭もございませんし、専門家でもありませんけれども、端的に申し上げまして、いろいろの理屈はありますけれども、なぜ土地が上がるかというのは、これは土地を持っておれば上がるから、買えばもうかるからなんです。金利よりも高い。他の物価よりも高い。これは売り惜しみということをおっしゃいますけれども、まあ人間すべてエコノミックアニマル的な性格を持っておるとすれば、もうかるものを手放すばかはおらないわけであります。また、買えばもうかることがわかっておれば、みなが土地を金があれば買いたがる。貯金の利子よりも高い値上がりのする土地を買うのは、むしろ私は当然だろうと思う。むしろ経済合理性を越えた異常な値上がりというのは、その意味からも、私は政治の責任ではないか、政治が悪かったから、この際政治的な方途でこの値上がりを解決できる道はあるし、またしなければならないという立場から、特に建設大臣とこれから論議を重ねたいと思うわけでございますけれども、結局、いまのように、土地を持っておると、固定資産税は安い、必ず値上がりする。この持てばもうかる、買えばもうかるという神話を、どうして打ちくだくかということが必要だろうと思います。  この点について、もちろん憲法二十九条の私権の尊重、財産権尊重の規定がございます。私は法律上土地の有効利用あるいは適切な利用を日本の憲法がじゃましているとは思わないわけでございますけれども、ここで、せっかく法制局長官がお見えでございますので、私は、現在の日本国憲法二十九条の財産権の尊重の規定が土地の有効利用計画を法律上阻害しているかどうか、それが一つのガンになっているかどうかということを、まずお尋ねいたしたいと思います。
  96. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答えを申し上げます。  ただいままでの御質疑に応じて政府側からの御答弁がございましたが、主として実際の経済現象といいますか、そういう面からのお話でございまして、それが基本の問題だと思います。  憲法は、十分御承知のように、確かに二十九条で財産権を保障はいたしております。そういう意味で、私有財産制の保障をなすものとして、日本経済体制一つの柱をなしているものであることは明らかでございますが、しかし前にも申し上げましたが、昔からの財産権というような絶対的内容を持つものであるかのような考え方、これは一七八九年あたりの人権宣言以来そういう考え方が支配的でございましたが、それはだんだんに変わってまいりまして、例のワイマール憲法とかいうようなところからだんだん変わってまいりまして、いまの憲法でも、やはり絶対的な内容というものでなくて、社会的性格をになった、あるいは社会から信託されたようなものの考え方になりつつあるわけでございます。これは規定を見ればすぐわかりますが、「財産権は、これを侵してはならない。」というのが確かに大原則でございますが、その財産権の内容は、公共の福祉に適合するように法律で定めるということが歴然と規定してございます。公共の福祉に適合するように法律で定める。これは、戦後土地所有権に一番大きな変革をもたらしました農地所有権などは、まさにこの二項の、公共の福祉に適合するように法律で定めた一つの典型であると思います。したがって、そういうような見地から、何が公共の福祉であるかというのはむろんむずかしい問題ではございますが、そういう観点からする所有権あるいは財産権の内容を変えていくという余地はむろんある。それから財産権の内容が定められた、その財産権の行使のしかた、これもわざわざ御指摘するまでもなく、近ごろは行使について非常な制限を加えている立法がございます。私有財産を徴収する道もございます。これはむろん正当な補償のもとにではございますが、あれこれ考えてみました場合に、むろん私有財産の保障の規定でございますから、むやみやたらにこれを侵してならぬことはむろん当然でございますが、いままで申し上げたように、公共の福祉に適合するという見地からこれにある種の制約を加えていく道はある。それがどういう道を講じたらいいのかは私が申し上げることではないと思いますが、二十九条の規定の解釈上どう考えていくべきかということについては、いま申し上げたようなことであろうかと思います。
  97. 岡沢完治

    ○岡沢委員 法制局長官に重ねて伺いたい。たとえば土地の合理的な利用、あるいは適正な利用のため使うということは、二十九条の二項でいう「公共の福祉」、あるいは三項でいう「公共のため」というのに該当するかどうか、この辺をお尋ねいたします。
  98. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 第三項のほうから申し上げますが、第三項のほうは、申し上げるまでもなく、私有財産を国で取り上げる場合の話でございますから、利用の点についてどうかというお話でございますと、むしろ財産権の行使について制約を加える場合が多いのではないかと思います。で、そういう場合につきまして、公共の福祉としてはどういうことが考えられるかということでございますが、これはどうも具体的な場合に、この場合にこういうことをするのはどうかというようなことになりませんと、実はむろん私が確たることを申し上げられるかどうかわかりませんが、お答えはすることができると思いますけれども一般的な考え方としては、どうもきわめて明快にお答えすることはできません。ただ、公共の福祉という場合に、近ごろよく問題になっております言論・出版の自由と公共の福祉との関係とか、そういうものとは、経済生活の自由というものは非常に違っておる。精神生活の自由に対しては、これは昔ながら公共の福祉の制約というものは非常に厳重に解さなければならない。それは憲法の規定の上からいいますと、言論、出版、集会、結社の自由はこれを保障するというように端的に規定しておりますけれども経済生活の自由あたりになりますと、いま申し上げたように、その権利の内容それ自身が公共の福祉に適合するようにという制約をもともとかぶっておるわけでございますので、だいぶ話が違うというのと、それからその場合の公共の福祉のあり方というものは、社会的、政策的妥当性といいますか、国民がどう考えるか、常識がどう判断するかということに帰着すると思います。したがって、その点で私は近ごろ非常に注視に値すると思いますのは、各政党における所有権に対しての考え方というものを注意深く見ておりますが、私権よりも公共の福祉のほうを優先させるとか、これはまた簡単にそうなると問題だと思いますが、そういう考え方一般にだんだんに醸成されつつあるということは、私は非常に注目を——私に関する限り関心を持つわけでございます。むろんそれが乱に流れてはいけませんが、要は、財産権に対する公共の福祉という場合には、社会的経済的妥当性、そういうものを頭に入れて考えればよろしいものであるということだけを申し上げるにとどめるほかはございません。
  99. 岡沢完治

    ○岡沢委員 いまの法制局長官のお答えをかみしめましても、日本のように四つの島に一億の人ロー土地は生産がきかないものだということを前提にいたしました場合に、特にまた住宅問題が現下の最大の国内的な課題であるということを考えました場合に、いわゆる土地を商品と見ないで、その所有よりも利用、活用のほうを重点に置いた解釈は憲法上も妥当なように解していいという御趣旨だと思いますし、私もまたそうあるべきではないかと思います。そういう点から、私はここで先ほど来指摘してまいりました建設大臣の二月十五日のテレビの対談における御言明、具体的には公共団体による土地先買いの期間を一年でなしに四、五年先にも可能にするために土地収用法の一部改正、もう一つは、これは私は一番大きな土地抑制のきめ手になろうと思いますけれども、いわゆる土地の時価課税、先ほど私が指摘いたしましたように、土地を持っておればもうかる、あるいは買えばもうかる、そのために現在は近郊の農家はほとんど売らない、逆に買い手のほうは、最近の状態では生命保険会社とか商事会社はもとよりでありますけれども、百貨店まで別の部門で不動産の買い占めにかかっておる。こういう傾向。結局これは長期的に見ればもうかることが明らかだから、金のあるものは、昔の小金を持っていた個人を離れて大企業までが不動産獲得に乗り出したということが言えると思いますけれども、こういう風潮を是正する一つ方法は、私はきわめて簡単だ。買ってももうからない、あるいは使わないで持っておれば持ちきれないという政策を政治的に実行することだと思うわけであります。  そういう点からいいますと、たびたび指摘はされましたし、特に今度系統的に東京問題調査会が二月六日に答申をいたしました中身が私は大体これに該当すると思いますけれども、要するに、土地は有効に利用する者でなければ、持っておれば損をするという制度に私はすべきだ。その一番端的な方法は、結局時価課税を徹底する。これにつきましては、ここでちょうちょうすることは避けたいと思いますけれども、現実に東京近郊で六万も十万もしておる土地の固定資産の評価額が千円前後ということ、これが一番大きな原因になっておると私は思いますので、時価に見合った評価をする、そして、固定資産税率を上げますと東北とか北陸なんかの農山村の固定資産の所有者に非常に大きな迷惑をかけますから、率は上げない。またそういう意味からも都市計画税はやはり率も上げる。そして大都市における小さい土地所有者が被害をこうむらないように、自分の住宅だけを持っているような人がこの改正によって被害を受けないように、課税最低限の基礎控除を大きく見るというような方法で、私は弊害を是正しながら、現在の大都市近郊の土地所有者が寝ながらにして値上がりを待っておる事実を規制できるのではないかということで、結局時価課税をやるということについて政治的な決断をなさるべき時期ではないか。また、建設大臣自身がNHKのテレビを通じて、わしはやるのだ、また問題はむしろ野党側にある、あるいはまた国民の支持にあるということをおっしゃいました。まあ幸か不幸か、自民党は三百名、私の所属しております法務委員会の高橋委員長によりますと三百三名だとおっしゃいます。これだけの絶対多数を持っておられる自民党の国務大臣の、しかもテレビを通じた公式発言でございましたから、この時価課税の問題と土地収用法の改正の問題、少なくとも私の党はこのいずれにも賛成をするという方向で御協力したいと思いますけれども大臣の明快な御答弁お願いいたします。
  100. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。  端的に申しまして、私がテレビで申し上げたことの信念は、私は変わりありません。そうあるべきだと思っておる。ただし、私はテレビで申し上げましたように、私が全体の権限を持っておるのでございませんので、固定資産税その他のあれについてはこれはほとんど自治大臣の権限でありまするので、自治大臣にもよくその点を申し入れております。  それから土地収用権の問題については、昭和四十二年で改正はいたしまして、もとこれが裁定時の価額であったのを事業認定時にして一歩前進いたしたのでありまするが、現在の状況から見ますれば、御指摘のように先買い権をもう少し強化してしかるべきであるという考えを持っています。これらの問題については、地価対策の審議会等がございまして、これらの機関にもはかって、その御答申をいただいて、関係閣僚ともよく相談の上、これを実施したいと思います。  それから、税制については、これは端的にすぐやるということになりますとかなりの激変が起こりますもので、そこで税制調査会等においても、ある程度の時間をかけて、そうして漸次時価に近づくようなくふうをすべきであるという答申も出ているようであります。私もそう思います。問題は、これは単なる立法措置だけではなかなかいかないというのは、いまあなたも御理解してくださいましたように、国民の合意を得てこれをやらないと、また反作用もありまするので、できるだけそうしたところの国民の合意を得るべき条件をとりつつ、そうしていまの立法措置を講じていくのが正しいのではないか、こう思っておる次第でございます。
  101. 岡沢完治

    ○岡沢委員 最後にうまい逃げ道を国民の合意というところに求められましたけれども、水上公述人がこの予算委員会でも述べておられましたが、わずかの人の利益のために国益が犠牲にされることは許されない。私は国民の大多数はおそらく異議はない。自民党は今度の選挙を通じて三百名をこえた、国民の支持があるということを常におっしゃいますわけですが、こういう問題の場合、また国民にげたを預けるということではなしに、自民党単独でも十分法案は通せるので、われわれも協力すると言っているわけですから、この時価課税の問題、確かにそれは税制調査会等の経路を経られることを阻止はいたしませんけれども、しかし私は、この問題は冒頭指摘しましたように、いわばもう政治の一番のガンだ。しかもこれは進行している。ほうって置けばますます転移をする。そして土地持ち族と土地なし族の不均衡、格差、これはある場合には社会不安にまで及ぶと思いますし、またまじめに働く労働者の方がちゃんとした職業を持っておっても自分の土地と家は持てない。政治の責任だ、政治の失敗だと申し上げてもいいんじゃないか。幾らGNP世界三位だとおっしゃっても、鳥ですら巣を持っている。日本国民が土地も家も持てない。これは政治の最大の課題じゃないか。ある人も指摘されましたように、日本の戦後の経済発展が、農地改革ということが一つの大きな出発点になったと同じような意味で、都市における農地改革という意味で、時価課税、これは具体的に法律一本変えればできないわけではないわけなんで、まさに政府の政治的な決断いかんがこの地価問題の解決のきめ手を握っている。先ほどいろんな理由をお述べになりましたけれども、それは理屈なわけで、また一面の真理であることは私は否定しませんが、端的に、能率的な運用をしないで土地を持っておるということは、もうからないで損になるんだという政策を実行されるべき時期ではないかということを指摘申し上げまして、時間の関係でこの地価問題についての質問を終わりたいと思います。  あとわずかの時間でございますけれども、教育問題を中心にして文部大臣等にお尋ねをいたしたいと思います。  大学紛争はこれは非常に喜ばしい結果と申し上げてもいいと思いますが、昨年のような大荒れを見ないで、最近は非常に平静な状態にあるといえるかと思います。ここで一応文部大臣に、大学紛争、高校紛争の、現時点における実態を簡単に明らかにしていただきたいと思います。
  102. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 昨年大学紛争の影響を受けまして、かなり高等学校におきましても、入学式とかあるいは卒業式とかいうときに問題を起こしましたし、あるいはまた授業ボイコット、あるいは占拠、あるいは政治運動に狂奔をしてつかまるというような事態もございましたけれども、大学紛争が一応平穏化するにつれまして、高校生のこのような過激な行動も漸次なくなりつつあります。全然絶無だとは申しませんけれども、下火になってまいったことは喜ばしいことだと思っております。卒業式につきましても、東京、千葉、埼玉など数県を除きまして、大部分の卒業式も平穏に終わったようでございます。もちろん多少問題があった事例はございますけれども、全体といたしましては平穏に終わった。それから大学のほうは、たとえば昨年の一月十八日ごろ十八校くらいが国公立、私立合わせまして紛争校でございまして、それからだんだん激化しまして七十五校、あるいは一番ピーク時は七十七校というようなことでございましたけれども、昨年の八月以来急激に激減いたしまして、ただいまでは国立と私立と合わせましてわずかに十校ということになりましたし、長期紛争校は一校もないという程度までおさまってまいった次第でございます。
  103. 岡沢完治

    ○岡沢委員 確かにいま文部大臣の御報告のとおり平静に返ってきつつあることは喜ばしいことでありますけれども、たとえば私の友人で京都大学の鎌倉昇という教授が突然、これは病気でしたけれども、倒れました。しかし、最大の原因が大学紛争による心労であったということが指摘されております。東京工業大学の新楽教授あるいは東京医科歯科大学の石原教授あるいは九州大学の鬼頭教授、いずれもこの大学問題を苦にして自殺をしておられますし、最近の三月二日でしたか日大生の中村君がやはり京王線の駅前の乱闘事件に関連をして命を失っております。昨年一年間の学生が裁判所で起訴されたという数字だけでも二千六百人をこえる。現に千名近い学生がまだ拘置所あるいは留置場におる。警察官のほうの損害も昨年一年だけで五千人をこえる負傷者を出しておられる。入院者も二百名をこえておる。この大学紛争が与えた社会的、経済的あるいは心理的被害、あるいは学問の進歩における被害というのは、はかり知れないものがあったと思います。しかし、われわれとしては、あるいはまた政治の立場の、政府としても国会議員としても、災いを転じて幸いにするというのが一つのあるべき姿かと思います。平静に返ったこの時点で大学紛争はわれわれに何を残し、何を教えたかという点を静かに考えてみるべき時期ではないか。そういう点から最初に文部大臣、文教行政の立場から昨年来あるいはここ数年来荒れ狂った大学紛争から何を学ばれ、また何をこれから参考にするための資料としてかちとられたかというような点をお尋ねいたしたいと思います。
  104. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 昨年の非常な大学紛争の高まり、激化、そして急激にこれが激減した、この一連の経過を考えてみますと、やはり基本的には一部の暴力を手段として、あるいは大学を拠点として革命をやろうという一部学生の政治主張、そういうことに最大の原因があった。しかもその学生たちが政治上の問題をはっきり意識して目的にしてやっておった。と申しまするのは、政治上の課題でございまする沖繩の問題あるいはベトナムの問題あるいは愛知外務大臣の渡米の問題、そういうような政治的課題がなくなりますと、火の消えたような形になってきたということは、基本的には、やはり一部学生の暴力集団、しかもそれに対して有効適切な処置がとれなかった大学当局というところに原因があろうかと思いますが、しかし、この一年間の紛争を通じまして、私たちが教えられましたことは、やはり大学それ自体にも欠陥がある、改善すべき多くのものがある、そして大学は社会の変化に対応したところの管理、運営あるいは研究、教育のあり方をやらなければならないという、このことを教えてくれたというふうに思いますし、また同時に大学当局自身も、いままでのような象牙の塔のような考え方ではなくて、税金を納めておる国民の意思を十分に踏まえて、大学の管理、運営、教育、研究をやってもらわなければならぬ。ただ学問の自由、大学の自治ということを口だけで唱えておってもだめであって、ほんとうに学問の自由と大学の自治を現実に行なうためには、どういうような組織にするならばいいんだということに対して、しっかりしたやはり考え方を持ち、またそういうような考え方から新しい大学の具体策というものを考えていただかなければならぬのじゃないかということを私は教えてくれたんじゃないかと思います。また同時に、大学の問題は大学だけの問題じゃなくて、やはりそれに続くところの高等学校の教育あるいは中学校、小学校あるいは幼稚園、そういうような教育それ自体にも問題があるのではないだろうか、いな、この大学を包んでおる社会全体、あるいは昭和二十一年以来のこのデモクラシーというものが、制度の上において、あるいは法律の上においてはいろいろ改革がなされたけれども、それを運用しておる人、あるいはわれわれおとなにも、やはり民主主義というものを身につけておるかどうかということを反省させる一つの教訓を教えたというふうに思いますし、またそれらのことを含めてわれわれ文部省といたしましても、十分適切な大学対策を持たなかった、新しい国民のための大学つくりに対しまして積極的な具体策を持たなかったということも、私は反省をいたしておる次第でございます。
  105. 坪川信三

    坪川委員長代理 岡沢君に申し上げますが、申し合わせの時間も過ぎましたので、結論をお急ぎ願います。
  106. 岡沢完治

    ○岡沢委員 時間がまいりましたが、ただここで、せっかく大蔵大臣にお待ちいただきましたので、国有財産の被害、あるいは財政支出の関連から大学紛争についての大蔵大臣の所見、あわせまして法務大臣、おそれ入りますが、この少年、過激学生、十九歳までの学生が非常に多かったわけですが、幸いに少年の場合には鑑別所に入りまして、鑑別結果というのが出ているわけでありますが、この鑑別結果を中心に法務大臣立場から学生紛争についての御所見がありましたら、お答えをいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。大蔵大臣に最初にお願いいたします。
  107. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 一昨年から始まりました学園紛争、これによりまして国立大学で受けた国有財産に対する損害、これは約十三億円であります。これに対しましては応急的に七億円の支出をいたしまして、まあ授業には支障はないというふうにしようとしておるわけでございますが、根本的にどういう復旧をするか、これはまあ残されておる問題でございます。で、この学園紛争については、いま文部大臣からお話がありましたように、理由はいろいろあると思う。しかしこれは国有財産に対し損害を及ぼす。しかも国有財産は国民の共同の財産ですから、これに損害を及ぼすという行為は、刑事的にも民事的にも追及されなければならぬ、こう考えておるわけです。刑事責任の問題は私の所管の問題じゃございませんけれども、民事責任、これにつきましては、ぜひこれを妥当に解決してもらいたいということを文部大臣のほうへ要請をしておるわけであります。文部省においてもせっかく努力をいたしておるという最中でございます。
  108. 小林武治

    小林国務大臣 法務当局におきましては、暴力というものは絶対に排除すべし、それが学園であろうと、どこであろうと同様の問題である、こういうことで、これらにきびしく対処したということは、これによりまして暴力排除というものが社会生活の基本を守るものだ、こういうことを示したつもりでございます。  この紛争によりまして、私、多少数字を申し上げますが、昭和四十三年一月から四十四年十二月末までに全国のお尋ねの少年鑑別所に収容した公安事件の関係少年の総数は七百七十六名ございます。このうち一番たくさん入ったのが東京少年鑑別所、こういうことになっておりまして、四十四年度中の収容少年が五百六十一名、その鑑別の結果を中心にしまして、多少御参考になるかと存じまして、矯正当局の所見をひとつ申し上げておきます。  これら少年の中で暴力的なイデオロギーを確信的に持ち、自発的に暴力行為に走ったと思われる者はきわめて少ないのでございます。特に昭和四十四年の夏以降は高等学校の生徒が多く収容されるようになりまして、この傾向は一そう顕著となっておるのでありますが、鑑別結果によるそれぞれの少年の資質、性質面の特徴としては、次のような点が目立っておるのでございます。すなわち、大体知能はほとんどの者が普通以上である。そして正常な判断力、理解力を持っておる。それから異常な性格の者はほとんど見られなかった。しかし軽はずみな、上っ調子な子供、あるいは反対に内気で神経質な者との両極端の特徴を示す者が多かった。それからして、その他の性格的の特徴としましては、無気力あるいは依存性、あるいは持久力を欠いておる、現実を見詰める力が不足しておる、付和雷同性を示す者が目立っておる。それから家庭環境につきましては、両親が健在で中流以上の家庭の出身者が多くなっておる。しかも両親の生活態度については、さほど問題のない者が多い。しかし養育態度に問題点があったと推定されるものがあるのでございます。以上から申し上げられることは、これら少年らのほとんどは特に性格面の欠陥はないにかかわらず、青年期特有の情緒不安定、あるいは自我の拡張欲求などが、激しい社会の動きに刺激されてゆがめられておる。また年上のリーダーの扇動等によって誤った正義感や仲間への一体感などにかられて、暴力的非行に走った、こういうふうな所見を持っておることを申し上げておきます。
  109. 坪川信三

    坪川委員長代理 これにて岡沢君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次に、山口鶴男君。
  110. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 最初に大蔵大臣お尋ねしたいと思いますが、実は過日、当予算委員会の総括質問の際に、わが党の細谷委員が地方行財政について非常にきめのこまかい具体的な質問を展開されました。そのあと、たまたま道州制の質問に移られましたときに、佐藤総理——大臣も聞いておられたと思いますが、━━━━━━━━━━━━━━━━━と、こういうことを言われました。私は非常に遺憾に存じました。かねがね佐藤総理は一九七〇年は内政の年である、七〇年代は内政に力を入れる時代である、こういうことを言っておられるわけですね。では内政を実際にになうものはだれか、こう考えれば、私は地方公共団体、自治体がその大きな役割りをになわなければならぬと思っております。しかるに細谷委員が地方公共団体、自治体に対するところの行財政の問題をきわめて真摯に質問されたのに対して、その質問が終わって他の問題に移られたとたんに、━━━━━━━━━━━━━━━━━、こういうことを言われたことは、佐藤総理大臣は、地方行財政の質問は予算委員会質問らしくない、かような認識を持っておる、かように理解せざるを得ないと思うのですね。私はまことにおかしいと思うんです。そんなことを言うようなら、もう内政の年だなんということは言わぬほうがよろしい。(「自治大臣はおこらなければならぬ」と呼ぶ者あり)一九七〇年代は内政が重要だということは言わぬほうがよろしい。当然、いまお話があったように、自治大臣もおこらなければならぬことは当日も申し上げました。しかし、予算に関しては大蔵大臣が編成をされました。予算委員会におきましては大蔵大臣は一番責任があると思うんです。佐藤総理大臣ことばも聞いておられたと思うんです。大蔵大臣として、私がいま申し上げました佐藤総理発言というものに対して、一体どのような御所信を持っておられるのですか、御見解をひとつ承りたいと思うんです。
  111. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 佐藤総理は地方財政に対しましては常々重大な関心を持っておるのでありまして、国会のこういう審議ばかりじゃございません、閣議その他の機会におきましても、地方財政には非常な高い関心を持って勉強もし、検討もしておる、こういうふうに存じておりますので、この間何か総理からの発言があったというような話でございますが、それは決して地方財政を軽視するというような趣旨のものでは全然あり得ない、かように考えております。
  112. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そう言われますけれども、しかし現実を振り返ってもらいたいと思うんですよ。細谷さんの質問は、地方行財政の質問に終始をしたわけです。その間には、ここにも行管長官がおられますが、地方事務官の問題がいまなお解決をしていないじゃないかというような問題もございました。まさに地方行財政の質問に終始をしたわけです。そして道州制の質問に移ったとたんに、━━━━━━━━━━━━━━━━━、こういうことを言われたのですから、これは幾ら大蔵大臣が、佐藤総理大臣は地方行財政について非常に関心を払っておられる、こう申しましても、思わず本心が出た、やはり私どもはこう理解せざるを得ないと思うんですね。自治大臣、どうですか、あなたの所管する問題をたんねんに聞かれて、これに対して予算委員会らしくないような発言総理からされたということに対して、自治大臣としても当然私はふんまんやるかたないお気持ちがあったんじゃないかと思うんです。幾ら温厚な英国紳士といわれる秋田自治大臣も、このことについては憤激したのではないかと思うのですが、ひとつ御所見を承りたいと思います。
  113. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 七〇年代がまさに内政の年であり、その内政の中心は地方自治行政にあることはお説のとおりでございまして、総理もその本旨については十分御理解とそのお考えをお持ちなのでありまして、この間の表現につきましては多少の誤解があるやに思いますが、総理の御本心はやはり内政充実にあるものと私は心得ております。   〔坪川委員長代理退席、委員長着席〕
  114. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いま委員長が交代されて予算委員長がおすわりになりましたが、当時予算委員長委員長席についておられました。この問題については理事会で取り扱いを相談される、こういうことだったようですから、当然理事会で慎重に扱われるだろうと思いますから、その点はひとつ委員長にも十分配慮をお願いをいたしまして、同じようなことを繰り返してもしかたありませんから、この問題についてはここで一応ケリをつけておきましょう。  次に、私は最近問題になっております東京都の公務員の給与改定、この問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  昨日、自民党の鯨岡議員が地方行政委員会に参りまして、この問題について自治大臣といろいろ議論をされました。地方自治法二百四十六条の二、ここに規定がございまして、「内閣総理大臣は、普通地方公共団体の事務の処理又はその長の事務の管理及び執行が法令の規定に違反していると認めるとき、又は確保すべき収入を不当に確保せず、不当に経費を支出し、若しくは不当に財産を処分する等著しく事務の適正な執行を欠き、且つ、明らかに公益を害しているものがあると認めるときは、当該普通地方公共団体又はその長に対し、その事務の処理又は管理及び執行について違反の是正又は改善のため必要な措置を講ずべきことを求めることができる。」こういう規定があります。この規定に反するのではないか、東京都がもしかりに五月実施をするということになれば、当然この規定を発動して内閣総理大臣はその是正を求めるべきではないか、こういう趣旨の考え方を展開をされました。そしてさらに地方財政法第二条「地方公共団体は、その財政の健全な運営に努め、いやしくも国の政策に反し、又は国の財政若しくは他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を行ってはならない。」これに当たるのではないか。こういうようなことを言われたのであります。しかし、私はこのような考え方はたいへん間違っている。東京都に設置してあります東京都の人事委員会が五月実施を勧告をした、その勧告を受けて東京都の知事が勧告の完全実施をやろう、こう踏み切ったことは、これはまさに違法な措置でもなければ、不届きな措置でもないと思う。きわめて当然なやり方なんでありまして、あえて言うならば、人事院勧告、これを無視してそれを完全実施しない政府のほうが間違っておるということははっきり言えると思うのであります。さすがに秋田自治大臣、法律について十分な認識をお持ちでございまして、東京都のこの五月実施の問題は地方自治法の二百四十六条の二には当たらぬ、内閣総理大臣がこの是正を求める、こういう事項には当たらぬという見解を示されたわけでありますが、やはり予算委員会におきましても、あらためて私は自治大臣の明確な見解というものをひとつここで発表していただきたいと思うのです。  それからさらに私は、言うならば、この自民党の委員はあえてこの地方財政法の第二条を間違って解釈している、かようにいわざるを得ないと思うのです。地方財政法の第二条には二項がございまして、ここには「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行ってはならない。」こうある。しかし現実はどうですか、たくさんの超過負担が現在地方公共団体にあるじゃありませんか。国の補助金等が不充分なために、自治体はばく大な超過負担に悩んでいるというのが現実案です。まさに地方財政第二条に違反するのは、担をしいている国だといわざるを得ないと思うのですね。そうじゃないですか、大臣。したがって、この問題に関して地方自治法並びに地方財政法、これに関する自治大臣の明確な所見をひとつ承りたいと思います。
  115. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 お答えいたします。  二百四十六条の二につきましては、昨日地方行政委員会でお答え申し上げましたとおり、内閣総理大臣の措置が発動する所要の要件としては、これは「著しく事務の適正な執行を欠き、且つ、明らかに公益を害しているものがあると認めるとき」と、二つの条件が重なっておるのでございます。そこで、美濃部東京都知事の今回のベースアップを国の公務員の例と異なって一カ月繰り上げて施行するということが、著しく事務の適正な執行を欠くかどうかということにつきましては、いろいろ議論があるところであろうと思いますが、それは別としても、少なくとも「且つ、明らかに公益を害しているものがあると認めるとき」、その行為自体において東京都庁の内部におきまして、それが著しく公益を害しているかどうか、この公益を害する範囲というのは、そこの事態にとどめるべきものであって、厳格に解釈する必要があろうと思います。そういう観点から見まして、この要件を十分満たしておるということには、私はちゅうちょを感じます。したがいまして、この二百四十六条の二を適用するわけにはいかぬのである、こう私は解釈をいまでもいたしております。  それから、地方財政法第二条の問題でございますが、「地方公共団体は、その財政の健全な運営に努め、いやしくも国の政策に反し、又は国の財政若しくは他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を行ってはならない。」もちろん二項がありまして、「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行ってはならない。」というようなことがございますが、第一項に反するかどうか、私はこの点は全然、残念ながら山口さんと多少意見を異にするのでありまして、この一項には触れるものがある。しかし、これはひとつの訓示的な、教育的な規定でございまして、さればこそ、非常に私は美濃部都知事の今回の措置というものは、穏当を欠く非常に不適当であるという見地に立ちまして、反省を求めた次第でございます。
  116. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大臣、いまのおことばは、どうも私は受け取れぬと思うのですよ。累を及ぼすような事柄だというようなお話をされましたが、一体それじゃ国はどうなんですか。訓示規定であると言われましたけれども、「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行ってはならない」とありますね。いま超過負担は一体どのくらいありますか。これはもう自治省でも、昭和四十二年大蔵省と自治省とが共同調査をやりまして、当時きわめて限定された数項目ではあっても、三百十一億にのぼる超過負担がある。ちょうどここに藤枝予算委員がおられますが、藤枝さんが自治大臣のころですよ。調査をして超過負担があるということを認めた。そうしてこれを三カ年間に逐次改善をしていくということで、毎年毎年約三百億、ことしは四百五十億円ばかりの措置をするそうでありますが、それをもってしても、いまでもまだ超過負担は解消されていないでしょう。地方公共団体に負担を転嫁しているのは国じゃありませんか。そういう意味では、まさにずばり、この地方財政法の二条に触れるのは国の施策だといわなきゃいかぬと思うのですね。そういうことをたなに上げておいて、そうして今回の東京都のやり方に対して、訓示規定ではあるが、どうも累を及ぼすようなことをやっておる、不当な措置だというようなことを言う資格がありますか、一体、自治大臣。この第二条二項に対する国の責任はどうなるのですか。
  117. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 超過負担は、確かにそういうことがありますものですから、漸次これを解消すべく具体的な計画を立てて処置をいたしておるのでございまして、まさにこの趣旨に反する行為をやっておるというものではないと思います。これを十分踏まえまして、これに即するような措置を国がとりつつあるわけでございます。
  118. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 国の施策については、いままで転嫁することは確かにしておったけれども、これから改善措置を講じているからいいのだ、地方公共団体のほうは別だ、こういうような議論は私は受け取れません。  あえて、この問題についてもさらにお尋ねしたいと思いますが、何か東京都の平均賃金は低いけれども、ラスパイレス方式で同一学歴、同一勤続年数、こういうものを比較すると、国家公務員よりも東京都の職員のほうが高いというようなことを自治省は言っておるようですが、私はそのことについては別に見解を求めません。  それならば私は聞きたいと思うのですが、現実、町村はどうですか。三千近くある町村、この公務員の給与実態は一体どうですか。ラスパイレス方式で、同一学歴、同一勤続年数で比較をしたら、一体どうですか。これは自治省の調査によっても二割以上低いという結果になっている。で、自治法の二百四十五条ですか、自治大臣が地方公共団体に対して助言ができますね、指導ができるというようなことから、美濃部さんには自治大臣がお会いになっていろいろなお話をしたようでありますけれども、それならば、当然国よりもラスパイレス方式で著しく低い三千もある町村、これをほうっておくという手はないと思うのですね。それではラスパイレス方式で低い賃金実態の町村長を呼んで、自治大臣のほうから注意を促したということが一度でもあるのですか、一体。片方はせぬでおいて、片方だけ文句を言うというのはおかしいじゃないですか。そういうことを片手落ちと言うのですよ。一体、低いほうの是正措置については何をやってきましたか。このことをひとつはっきりお答えをいただきたいと思います。
  119. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 確かに町村の職員給与はラスパイレス方式で計算をいたしまして、低くなっておる。この点につきましては、やはりケース・バイ・ケースでいろいろ措置をとりまして、是正につとめておるところでございまして、これはいろいろ地方の事情、初任給の場合のいろいろ高低等によるものでありまして、これが是正につきましてはケース・バイ・ケースで処置をとっておるのでございますが、東京都の場合、やはり人事委員会の勧告にはお従いになっておりますけれども、必ずしもこれに絶対従わなければならないという法律的な要請はないのでありまして、尊重すべきは当然でございますが……。そこで東京都においてはラスパイレス方式で見ても二五%ばかり高い。その際、東京都をお上げになり、かっこれが支給時期において一月さかのぼられる、いろいろ期末手当等のはね返り等もこの場合は含まれておるようでありまして、二・四カ月の国家の公務員よりは厚遇されるというような事情になりますと、やはり全体の調和という点から、これは地方財政全体の仕組みからいささかどうか。かつまた国家公務員と地方公務員との給与に関する法規のたてまえから、いささかどうも不都合じゃなかろうかというので、これらの点を申し上げ、かついろいろ東京都でもまだやっていただかなければならない施策があるじゃないか、そういうほうに、余裕があれば回していただいたらどうだろうというような感じを十分にいたすものでございますから、理を尽くして反省を求めた次第でございます。
  120. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私の聞いておることに答えないじゃないですか。高いほうには文句をつけて、低いほうにはケース・バイ・ケースなどと言っていますが、結局何もやっていないわけでしょう。呼びつけて、自治大臣がいわば自治法二百四十五条によるところのこの助言なり、勧告なりというものはやっているわけじゃないですから、そっちのほうは何もやっていない。低いほうは何もやらぬで、高いほうにばかり文句をつけるのは片手落ちではないかと、こう私は聞いておるのですよ。そっちのほうをお答えなさい。問題は、そういうことで低いほうに対して何らの措置もやらぬでいる自治省、そういうところに現在の自治省の姿勢が間違っておるということを私は言いたいわけです。しかし、このことばかりやっておりますと、時間がなくなりますから……。最終的には二百四十六条の二にいう自治大臣改善の措置は求めぬ、このことだけはまあまあいい答弁でありますから、その点はひとつ明確にいたしまして、先のほうへ進行さしていただきましょう。  大蔵大臣お尋ねしたいと思うのですが、昭和四十四年度予算編成に対しまして、自治大臣と大蔵大臣との間で覚え書きをかわされましたね。内容はもう十分承知をしておられると思うのです。この覚え書きはいまなお私どもは生きておる、かように考えるわけですが、大臣の御見解はどうでしょうか。
  121. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いまなお健在であります。
  122. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 明確な答弁で、けっこうでございます。  それならばお尋ねをいたしたいと思うのですが、覚え書としまして、「当分の間、相互に、地方交付税の率の変更を求めることはしないこととするとともに、昭和四十三及び四十四年度においてとられた特例措置」——赤澤さんがおられませんが、昭和四十三年に赤澤さんが自治大臣のころ、国が四百五十億借りましたね。それから昭和四十四年度六百九十億借りられましたね。この「特例措置を今後は避けるようにすることとし、別途地方交付税の年度間調整の措置を検討する。」と、こうなっています。私は昨年でありますが、地方行政委員会に大蔵大臣に出席をいただきまして、この覚え書きについて質疑をしたことを覚えております。「当分の間」とは一体どういう期間をさすのか。それからまた「避ける」ということは一体どういうことなのかということをお尋ねをいたしました。大臣からも明確な御答弁があったわけです。ところが昭和四十五年度の予算編成にあたって、交付税率三二%を二%下げるということを大蔵省は一応提案をいたしましたね。いろいろ自治省との間にやりとりがあったようでありますが、当分の間変更を求めることはしないということに対して、変更を求めた大蔵省の態度は、覚え書きが死んでいるというなら別ですよ、覚え書きが生きているという大臣の御認識の上に立った場合、非常に私は奇妙な感じをせざるを得ないわけです。それからさらに昭和四十五年度におきましては、三百億を借りるということをまたいたしましたね。避けるということでありますのに、何でまた昭和四十五年度に同じようなことを引き続いてやられたのか。この点いかがですか。
  123. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 山口さんは、これは非常によく御承知のはずなんですが、とにかく四十四年度の国の予算は六兆七千億、その中で地方交付税が一兆三千億あるんです。その一兆三千億ある交付税は、四十五年度になりますと一挙に四千億ふえる。これじゃなかなか国の財政のほうがもたぬ。編成も非常に困難になる。そこで最小限、私は、四十五年度においては中央、地方で千億円の財源調整が必要じゃないか、こういうふうに考えるに至ったわけです。しかし、いま御指摘のように、四十四年度予算の編成の際には覚え書きまで交換しまして、第一は三二%という率は変えません、第二は四十三年度にやったような借り貸し方式はとりません、そのかわり年度間調整のことについて別途制度的な検討をいたしましょう、こういうふうにしたのです。その方式に従ってやろうというふうに努力をしてみたのです。しましたが、この年度間調整というのが非常に制度的にむずかしい問題でありまして、ついに四十五年度予算編成までには、これについて成案を得るに至らない。そこでこれは私は非常に遺憾に思っております。御指摘のような状況で去年は地方行政委員会にも参りまして、その覚え書きを御披露いたしまして、この御披露した覚え書きに従って、地方財政の問題は処理したいとこう申し上げた私といたしましては、まことに遺憾千万なんです。しかし、まあもともと考えてみれば、中央、地方、車の両輪のようなものなんで、この二つのものが相協同して予算の編成に当たる、これはまた当然なことなんです。そこで自治省にもお願いをいたしまして、三百億円の借り入れということをいたす、そういうことにいたしたわけでありまして、この点が私は遺憾だ、こういうふうに申し上げる。しかし三二%は、当分の間は動かしません、こういうふうに両大臣で約束をいたしました。これはそのとおりに貫くことにいたしまして、一時私は自治大臣兼務かなんという批判まで受けたような次第でございます。さようないきさつでございますことを御了承を願いたいと存じます。
  124. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 これがそのときの議事録ですね。私、一つ一つの事項についてもお尋ねをして、大臣からお答えをいただいているわけです。まず「当分の間」とは一体どういう期間をさすのかという私の質問に対して、大臣は、「中央、地方の行政配分を根本的にやり直す」−行政管理庁長官もおられるから聞いていていただきたいと思いますが、「中央、地方の行政配分を根本的にやり直すという時期まで、こういう意味であります。」、こう言っておるわけです。先ほども民社党の岡沢委員からさっぱり行政改革は進んでいないが、こういうようなお尋ねがあったようですが、ことし何ら進展をしていないわけですし、「当分の間」という——例の地方事務移管ですね、二十数年もまだ「当分の間」で、そうしていまなお解決をしていない、「中央、地方の行政配分」というのは、全くこれは解決をしていないというふうに言えると思いますね。それを根本的にやり直す時期まで「当分の間」というのだということから見れば、ことし結果的には三二%ということになりましたが、途中において大蔵省が二%下げる、こういう提案を自治省にしたということは、これは覚え書きが生きているという以上、私はこれはやはり遺憾なことだ、かようにいわざるを得ないと思うのですね。それからさらに、この「避ける」という問題は一体どうなのか、貸し借りは避けるという意味は一体どうなのかということに対して、福田大蔵大臣は、そういうことはしないという意味なんだ、貸し借りはしないという意味だ、こう明確に言っておる。しかるに今回また三百億を貸し借りするという結果になりました。あとのほうは、明らかに私は、国会において大臣答弁されたことを破ったということだと思うのですね。国会において大臣が約束したことを破るということは、私は重大な背信行為だと思う。これはたいへん私は遺憾だと思います。どうですか、いま一度重ねてお尋ねをしたいと思うのですが、覚え書きが生きている、明確にお答えになった、国会において私どもにお約束をされたことを破ったのは一体どういうことなのか。
  125. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 そのいきさつは先ほども申し上げたとおりでございますが、要点は、年度間調整の制度が話がつかない、なかなかできない、こういうことなんです。そっちのほうで片づけば中央、地方の財源調整もあるいはできたかもしれません。それが決着に至らない、そういう関係で、また借り貸しを反復しなければならぬ、こういうことになったわけでございますが、私はこの点は、昨年の国会でも皆さんにはっきりこういうことは避けていきたいということを申し上げたいきさつもあるので、まことに遺憾なことだと存じております。
  126. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大蔵大臣、先ほども不規則発言にもありましたように、総理に一番最短距離にあるといわれる実力大臣、そういう大臣がやはり国会において約束したことを破るということでは、私は残念だ。ということは、同じ選挙区の大先輩でありますが、やはり遺憾だということを声を大きくして申し上げておかなければいかぬだろうと思うのです。自治大臣どうなんですか。とにかく内政の年だ、自治大臣任務たるやまさに各省大臣よりもはるかに重たいという時期じゃありませんか。そういうときに、せっかく昨年の覚え書きがありながら、いわば強姦されたようなかっこうで三百億また借りられたということは、私は自治大臣の責任だと思うのです。自治大臣のお考えはどうでしょうか。
  127. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 いまの問題にお答えする前に、先ほどの問題で一応私からも申し上げたいことがございますので、その点について発言をお許し願いたいと思います。  給与が低いほうだけあまりしないで、高いほうだけいじるのは片手落ちじゃないかというお話でございますが、低いほうについても処置をするとともに、著しく高いものは全体の調和の上から御考慮を願いたいということをお願いすることは当然やるべきことでございまして、決して片手落ちではないと考えておりますので、その点はどうぞ御了解を願いたいと思います。  しこうして、三百億円の貸し借りの問題でございます。ただいま大蔵大臣からもお話のありましたとおり、まことに遺憾なことでありまして、私も極力これは避けたいと思いまして、相当折衝申し上げたのでございます。しかしながら、内政の年といわれる七〇年代の初頭にあたりまして、地方行政の水準をある程度に維持するための財源といたしまして、地方の公共団体の自主財源も自然増収、かつ国税三税についても自然増収の大体の傾向が看取されましたので、ある程度の行政水準を維持していくのにこと欠かないという結論を見きわめまして、いろいろ諸般の事情等あり、大蔵省からのきついいろいろの御要望等の調整等も考えまして、諸般の事情上、万やむを得ずああいう措置をとったのでございます。これによりまして、繰り返すようでございますが、御心配の地方行財政における一定水準の維持を続け、かつ健全財政を堅持するに大綱を誤らない、こう考えましたので、大局を判断をしてとった処置でございます。御了承を願いたいと存じます。
  128. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 自治大臣、私が尋ねなかったことにまでお答えになりましたけれども、片手落ちではない、低いほうに対しても是正の措置を講じ、高いほうについても押えるような努力をするということはいいじゃないか、こういうようなお話でございましたが、この点について、私も時間の関係でこれ以上やりたくありませんが、片方はちゃんと呼んで自治大臣みずから注意を促しておるんでしょう。片方についてはそういうことは全然しておらぬじゃありませんか。そういう形式から見たって全く片手落ちですよ。そういうことは十分反省してもらわなければならぬと思うのです。  それからついでに申し上げておきたいと思うのですが、人事院勧告あるいは人事委員会勧告は、法律的には何も従わなければならぬという義務規定ではない、尊重はする必要はあるんだ、こういうような言い方も自治大臣は先ほどされました。これはまたたいへんな認識の誤りだと思うのです。これは公務員制度の上からいって、ストライキ権あるいは団体交渉権というものを奪った代償として、人事院制度でこのような勧告というものを行なうようになっているわけなんですから、権利だけは取り上げて、その代償措置である人事院勧告、人事委員会勧告は尊重するだけでいいんだ、こういうことでは、これまた私は重大な片手落ちだといわなければならぬのです。そういう姿勢が私は問題だと言っているのですよ。しかし、このことはもう二百四十六条の二に関する限り、自治大臣としてもある程度明確な御答弁をしていますから、これ以上私は言いませんけれども、とにかく自治省の姿勢というものは改めなければいかぬということだけここで申し上げておきたいと思います。  それから次に、後段の御答弁でありますけれども、三百億貸しても現在の地方公共団体の一定の財政運営の水準は確保できる。だから、残念だけれども、覚え書きがあったけれども、三百億貸すことに同意したんだというようなお答えでありましたけれども、それではいまの地方公共団体の財政水準は十分か、私はそんなことはないと思う。このことはあとで逐次、お尋ねをしたいと思いますが、先ほど私が申しました超過負担ですね。この超過負担が地方財政を著しく圧迫をしているというのは、地方公共団体に行けばだれも言っています。昨年の国会に十幾つかの市長から、地方財政法二十条の二に基づく意見書が出てまいりました。超過負担が非常に多いということを、具体的な数字をあげて指摘をしておりました。地方行政委員会としても、従来自治、大蔵両省でやった調査というのは不十分である、したがって、さらに範囲を広げて超過負担の完全解消をはかるべきだ、こういう決議までやっているわけなんです。今後この超過負担の解消、地方公共団体の財政を圧迫している一つの要因であるこの超過負担について、自治大臣、今後どうするおつもりですか。三カ年計画でやってきたから、もう昭和四十五年度地方財政計画で何とか四百五十億程度解消するからいいんだ、これで終わりだ、そういうおつもりですか。そんなことは私はないと思うのです。ひとつはっきりした御見解を示してください。
  129. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 ただいまおっしゃいましたとおり、四十五年度につきましては約四百五十億円程度の解消措置を講じたいと思っております。なお今後、超過負担の実態を精査いたしまして、これが解消につとめてまいる所存でございます。
  130. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 さらにこまかい点はあとでまたお尋ねをいたしたいと思います。  大臣、先ほど年度間調整のことを言われましたね。年度間調整を検討すると覚え書きに書いてありますね。検討してみたがまとまらなかった、いろいろむずかしい問題がある、したがって、やむを得ずしないということになっている貸し借りをまた三百億やった、こういうことであります。しかし、これは覚え書きのたてまえからいって、きわめて遺憾なことである、こう申されました。そこでお尋ねをいたしますが、昭和四十六年度は貸し借りは絶対いたしませんか。これはどうですか。
  131. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 去年ああいうことを皆さんに申し上げて、ことしはしくじったわけでありますから、その点は大いに反省をいたしておるわけです。四十六年度以降どうするか、これにつきましては、まず年度間調整というものをどうするか、これを鋭意検討してみる、最善を尽くしてみる、かように考えております。
  132. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 総括質問の際に、わが党の細谷委員が交付税の問題について質問をされました。翌日の新聞を拝見いたしましたら、好況時には交付税率自体再検討しなければならぬ、こういうような御答弁総理並びに大蔵大臣がされた、こういうことが報道されておりました。しかも細谷委員は、沖繩返還の問題とからめてこの問題を議論しておられました。三二%で現在の四十六都道府県の交付税をまかなっている。そこに沖繩が復帰し、沖繩県ということになる。当然沖繩県の財政需要にもこたえなければいかぬ、それから沖繩にありますところの幾つかの市町村、これの財政についてもめんどうを見なければいかぬ、そうなってくると当然交付税率を上げなければ、これは従来の四十六都道府県の交付税をピンはねすることになるじゃないか、こういう趣旨の議論までされておったのであります。そのようなときに「当分の間」、しかもこの「当分の間」は、中央、地方を通じて行政の再配分が行なわれる、やり直し、こういうときだ。それまでは当分の間というのだ、それまでは変更は求めないのだ、こういう覚え書きがある。沖繩が返還されたということは新しい財政事情ですから、こういうときに三二%がふえるというかっこうで変更することは私は当然だと思う。覚え書きの趣旨にもこれは反しないと思うのです。この覚え書きは沖繩の財政事情のことを考慮しているわけじゃないでしょうから、これは当然です。しかるに、好況のときには交付税率の変更をすることもあり得るのだ、好況のときはということでありますから、当然三二%を減らすことも検討したい、こういう意味だろうと思うのです。こういうことでは、私は全くこれはうしろ向きだと思うのです。このこともたいへん私は重要な問題だと思うのですが、この点はどうなんですか。
  133. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 中央、地方の財政は、そのときの中央、地方の財政事情を勘案いたしまして調整の道というものがなければならぬ、そういうふうに考えるわけです。しかし、覚え書きの精神というか、それは御承知のように三二%は下げもしないし上げもしない、こういうことなんです。これはひとつお互いの両財政の安定のために守っていきたい。しからば、それじゃ調整はどうするかというので、ことし考えたのは補助金を地方にかなりの額を肩がわりしていただきたい、こういうことなんです。具体的に申し上げますと、国民健康保険、これに対しまして四五%国が持っておる。そのうち五%だけを地方にことしはひとつ持っていただけぬかと、こういうお願い。それから義務教育費の教科書、これにつきましても一部をひとつ肩がわりしていただけないか、そういうようなお願いをいたしたい、こう考えたわけでありますが、諸般の情勢を考えますると、それがなかなかむずかしいというふうに判断をいたしまして、まあ万策尽き、覚え書きには反しまするけれどもやむを得ない、ことしはひとつ三百億円の借り貸し方式を採用せざるを得ないかな、かような結論に到達したわけであります。
  134. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 しかし、遺憾な措置であり反省もしておるということですから、来年はそういうことはやらぬというふうに受け取りたいと思います。それでいいわけですね。
  135. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 まあ中央・地方の年度調整をどういうふうにするか、私は、ことしの段階で考えた場合には、補助金ということを考えたわけなんです。しかし、これが実際問題としてうまくいかなかった。しかし、これはまたさらに検討はしてみたいというふうに思っておりますが、とにかく年度間調整の措置に全力を尽くしてみる、その上これができないというようなことになった場合にどうするか、これは覚え書きの精神は私は尊重したいと思いますが、具体的にどういう措置をとるかという問題はその際にひとつ考えてみたい、かように考えております。
  136. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 年度間調整につきましても、昨年の地方行政委員会お尋ねをいたしました。この国と地方との間の財源調整というものはおかしい、当然自治体がそれぞれの立場に立って年度間調整をするとか、あるいは自治省が自主的にこの調整をするとか、こういう方法でなければおかしいではないかと、こう私は尋ねましたが、大臣は「交付税についてはそのとおりだと思います。」こういうふうにお答えになっておるわけですね。したがって私は、年度間調整があり得るということになれば、地方制度調査会がいっているように、一般会計を通すことなくこの三二%に相当する金を国税収納金整理資金から交付税及び譲与税配付金特別会計に繰り入れる、こういう制度をまず私は打ち立てるべきだと思うのです。その上で、この交付税及び譲与税配付金特別会計の中において調整をするということなら、私は一応筋が通った解決策ではないか、かように思うのですが、そういう制度は大臣いかにお考えですか。
  137. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これはなかなかむずかしい問題と考えます。つまり交付税交付金制度そもそもが、これは中央財政が地方財政のでこぼこを調整しようという趣旨から発足をしておる。したがって、国で集めるところのいわゆる三税ですね、これは国で受け入れまして、そして地方の状況に従ってこれを地方団体に交付する、こういうたてまえをとるべきものである。これを直接交付税のほうに入れるということは、そういう交付税制度の基本に関する問題であるばかりじゃない、たとえば今度は法人税の収入は一体幾らなんだろう、所得税の収入は幾らであろうかというようなことを考える場合におきましても、さあ国のほうの会計を見たんじゃその全貌というのははっきりしません。特別会計のほうあるいは地方財政のほうまで調べてみないと、この所得税の総額もわからぬ、こういうような実際上変なことにもなります。  さようなことを彼此考えますと、このたてまえはこれは容易に動かすべからざるものである、かような結論であります。
  138. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 しかし大蔵大臣、今回の予算は警戒中立型の予算だ、しかしそれに反するじゃないか、伸び率が一七・九五%ですかというようなことがテレビの討論会等で問題になりましたね。大蔵大臣がそれに答えて言うのには、いや交付税、が非常に伸びておる、二四・何%伸びておる、結局そういうものが大きくなっているから、しかもそれは地方公共団体の財源だ、したがって、−体の一般会計の予算規模というのは、それを除外すれば、伸び率は非常に低いのですよということを大臣も言っておられましたですね。そういうことを言っておられるなら、私がいま申し上げた提案ですね、直接特別会計に繰り入れるということをすれば、いま言ったような言いわけを大臣もせぬで済むわけなんですから。そういう意味からも私が申し上げた提案ないしは地方制度調査会が答申している考え方というものは非常に妥当性があるのじゃないか、かように思います。あくまでも自主的に地方公共団体が調整をするか、あるいは自治省が自主的な立場に立ってこの調整の機能をするということになれば、いま言った私の提案どおりにすることが一番いいと思う。そうでなければ、どうしたって国と地方との間の貸し借りみたいなかっこうにならざるを得ない。あるいはそうでなければ、いま大蔵大臣が言ったように、補助金をそれじゃ切ろうかというようなことしかないというかっこうにならざるを得ないじゃありませんか。しかし、時間もあれですから、大臣、覚え書きはいまなお生きている、それから昨年私に対して答えたことはそのとおりであって、今回の措置は非常に残念であり反省もしている、こういう御答弁でありますから、明年はこの覚え書きの線に沿ってきちんとおやりになるということをここで私としても確信をいたしまして、あとの問題に移りたいと思います。  自治大臣、現在の財政措置で地方公共団体の財政水準が何とかまあ維持できるんじゃないかというようなお話をされましたが、私は現在過密・過疎といわれる——大都市におきましては、これは思い切った都市改造もしなければいかぬ、こういうときに、いま大都市が、かつては富裕団体といわれた大都市が非常にたくさんな仕事をかかえて苦労している姿というのは、私は大臣も十分認識をしておられると思うんです。また一方におきましては、過疎地域、人口のどんどん流出する過疎地域において、過疎地域の自治体がどのような困難な状況の中で財政運営をやっているかということも、これは大臣十分御承知だろうと思うんですね。でありますから、当然大都市は大都市としてのそこに住んでいる住民のしあわせを守る、こういう観点からの一定のシビルミニマムを考え、それを達成するための計画をつくりまして、そうしてそれを実行していくということは、私は当然なさなければならぬ問題だと思うのです。また自治省とすれば、そういった各地方公共団体のシビルミニマムを達成するに必要な、いわば国全体のナショナルミニマムというものを考えるべき時期に来ているということも、大臣否定しないだろうと思うのですね。今後十年あるいは二十年、三十年、こういった見通しを立てて、それでは大都市あるいは中都市、過疎地域の農山村あるいは漁村はどの程度の財政需要が必要であり、現在の低い公共施設の水準をどのように改善していったらいいのかということを考えますならば、私は現在の地方の財政というものは決して豊かでもないし、むしろ非常に窮迫をしているというふうに考えてもいいだろうと思うのです。  そこで私は一つの提案をしたいと思うのですが、そういった一つの観点に立ち、現在の交付税制度、府県においては一律百五十万というのを標準団体として、財政需要というものを計算していますね。いま府県はどうですか。一番大きな東京都は一千万をこえている。一番小さな府県、鳥取県あたりは五十万くらいだといわれていますが、非常に格差があるわけです。市はどうか、全国に四百六十四の市が現在あるそうでありますが、大きいのは大阪市が三百万をこえている。中には三万を割っている市も現在ある、こういう状態ですね。また三千近い町村、これも非常に人口のばらつきというものがあるでしょう。こういうものが人口十万を基準として財政需要が計算をされている。こういうことは私はもう時代からはるかに取り残された制度だといって差しつかえないと思いますね。現在コンピューターその他非常に科学技術の発達しているときに、やはり五年、十年あるいは二十年、こういった将来を見通し、現在低い地方公共団体の公共施設の水準、これをどう改善をしていくか、こういう観点から新たに幾つかのものさしをつくって、そうしてあらためて自治体のあるべき姿あるべき財政需要というものを算定する時期に来ているのではないか。また、そういうことは可能ではないか、かように思うのです。こういう点は一体どうでしょうか。
  139. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 御趣旨はよくわかりました。それで交付税の算定における標準団体のお話がありましたが、その標準団体及びその行政規模等につきまして新たな行政需要に対処するとともに、長期的な目標、水準の設定を通じまして、いろいろの公共施設の整備事業費を計画的に基準財政需要額に算入することができますよう、従来からその是正をはかってきたところでございまして、これにつきましてはただいま山口先生からのお話のとおり、シビルミニマムの計画をひとつ立てまして、それに即しまして大体の方向をきめ、組織的に、具体的に長期的視野に立っていま御指摘の点が行なわれるよう、研究、討議を重ね、適当な処置をとってまいりたい。今後とも検討してまいる所存でございます。
  140. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 次に、地方税の問題を一、二お尋ねしたいと思います。  いま指定都市は大阪市を初めといたしまして、いずれも交付団体になっています。私はこういうことは非常におかしいと思うのですね。その理由をいろいろ検討いたしますと、結局法人税——法人の納めるところの税金ですね、これが国と府県に非常に片寄っている。事業税を含めての話でありますが、法人課税は国に六六・四%、それから県に対して二七・四%、市町村はわずか六・二%です。今度法人税を一・七五%引き上げました。これに対して市町村にのみ法人税割を与えるというかっこうになりましたから、幾らか市町村の分が昭和四十五年度におきましてはふえるかと思います。しかし、これはたいした量にはならぬと思  います。そうしますと、大まかにいって三分の二を国がとり、三分の一近くを府県が法人事業税を中心にしてとり、市町村はわずか六・二%だ、こういうところに問題があるのじゃないか。したがって法人課税につきましてはもっと市町村のウェートというものを思い切ってふやす、こう  いった意味で再配分を行なうべきじゃないか、かように思います。これに対する大蔵大臣の見解を承っておきたい。
  141. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私はその点を計数的に追跡したことはまだないのですが、しかし、地方を歩きまして、私が実感としてはだに感ずることは、地方とひとしく申しましても、府県と市町村との間にどうも乖離がある。こういう感じがしてならないのです。   そこで二つ問題があるのじゃないかと思うのす。あなたから国と地方との取り分ということがありましたが、これは私はないと思う。大体そんなところがバランスを得ているところじゃないかと思いますが、今度は地方の中での税の分け合いの問題、もう一つは交付税です。交付税の配分、これが市町村に適正にいっているのかどうか。その辺に問題があるのじゃないかという感じがしてならないので、今後とも私は主管の仕事じゃございませんけれども、勉強してみたい、かように考えているところでございます。
  142. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私も大臣の意見に同感です。私は国と地方を考えることも必要だと思いますが、同時に府県と市町村、これはやはり考えてみるべきだと思います。私ども考え方としても、やはり基礎的自治体は市町村です。したがって、市町村の財政をもっと強化する必要がある。税の面においても、それから交付税の配分においても、もっと市町村というものを重視すべきじゃないか、こう思っています。検討を約束されましたから、ひとつこれは十分検討してみてください。  それから次に、建設大臣もおられますからお尋ねしたいと思うのですが、道路財源の問題です。市町村道の長さは八十三万キロあるそうです。地球の赤道のまわりが四万キロですから、赤道のまわりを二十回回るだけ、現在日本には市町村道があるという状況。しかし、この市町村道は住民の側から見れば生活道路。やはり住民の側からすれば、いきなり国道に出るという人は少ないのです。市町村道に出、それから府県道に出、国道に出るというのが順序だと思うのですね。ですから、住民の福祉の向上という面では、市町村道をもっともっと重視しなければいかぬと私は思う。ところが、この道路財源はどうかというと、昭和四十四年度は、自動車取得税、それから反則金、このうちから市町村に配分される金額が四百九十七億、昭和四十五年は五百三十六億の予定だそうでありますが、この揮発油税等、国が持っている道路財源から見ますと、一割以下ですよ。まあ一割程度ですね。ことしが五千百億をこえていると思いますから、約一割だと思います。昨年もほぼ同じような四千数百億円でありますから、昨年の場合もほぼ一割だと思いますが、これではあまりにも市町村道に対する道路財源が乏し過ぎるのではないか。今度新たにまた道路整備五カ年計画もおつくりになるようでありますが、一応その中で市町村道の整備幾ら、こうやりましても、財源を付与しなくては私は何にもならぬと思う。ところがどうも建設省の考え方は、道路財源を与えることには反対をして、市町村道に対しても補助金を少しずつでもふやしていけばいいじゃないかというようなお考えのようですが、私はこれは間違いだと思う。やはりこの際ある程度道路財源を市町村に付与するということについては、大蔵省もそれから建設省も積極的になるべきだし、自治省はもちろんだと思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  143. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 御指摘のとおり、道路整備特別措置法ができてから国道、地方道のうちでも主要地方道は相当よくなりました。ところが非常に町村道が立ちおくれておりまして、これを何とかしなければならぬ、そういうことも今度の新しい道路五カ年計画に重点として取り上げている次第であります。これは御承知のように、広域生活圏の設定と関連しまして、そうした生活圏等においては都市と各過疎化しておるような地域をも結ぶ道路網をつくっていかないと、この問題が解決できない。そういう点から検討いたしまして、今後運営にあたりましては、従来は市町村道については御指摘のようなあまりめんどうを見ていないとも思われる点がありますので、今度は広域行政圏あるいは生活圏あるいはさらにはいわゆる新総合農政のたてまえから、各市町村に工業団地とかあるいは住宅団地あるいはいろいろの工場を持っていった場合に、それらが市町村道であろうとも、これについては公共事業で機動的に政府が助成をしてやっていくという方針でございます。ただ、これを、御指摘のように、市町村固有の財源として特定財源をやることについてはこれはかなりの問題がございますし、非常に地域差もありますので、現在のところは、いまの自動車取得税のほかに都市計画税があるだけでございまして、特定財源をやるということの発想はまあ考えられますけれども、具体的になるとなかなかむずかしい問題なので、むしろただいま申し上げたような方法で、特別会計から道路、市町村道を昇格してやって、機動的に予算をつけてやるというほうが合理的ではなかろうかというふうに考えている次第でございます。
  144. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 建設省はそういうお考えのようですが、私はやはりそのほかに、揮発油税は国がみなとりまして県に対しては幾らか譲与していますが、これはやはり市町村にも譲与するとかあるいは別途の財源を考えるとか、市町村道の財源というのはいかにも貧弱過ぎる、これを充実するということが必要だ。建設省が考えるように、補助対象に逐次していけばいいじゃないかという考え方だけでは私はいかぬと思う。そういうことよりはむしろ市町村に道路財源を付与するということに力を入れるべきだ、かように思っています。この点は大蔵大臣、先ほど市町村がどうもやはり財政的にも問題があるじゃないかという御感想も示しているわけですから、あわせてその点も検討してみてください。  それから次に固定資産税の問題ですが、いま新都市計画法に基づきまして線引きが行なわれています。各地で非常に問題があるようです。これは建設大臣もよく御存じのとおりですが、そこで問題なのは、市街化区域に編入された農地、この農地の固定資産税の扱いを一体どうするのかという問題です。新都市計画法が衆議院において通過いたしました際に、附帯決議もつけています。また税制調査会もある程度都市的要件を具備したところから逐次宅地並みの課税をやっていったらどうかということもいっているわけです。一ぺんに市街化区域に編入されたということで、都市的施設もまだできていない農地にまで全部宅地並みの課税をするということでは私は問題だと思うのです。この点、自治大臣、どうですか。
  145. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 この問題は、先週でございましたか、お答えしたと思いますが、いろいろ問題は御承知のとおりございます。いま申されました都市的設備の完備した地域というものは、ことばの上ではそう表現ができますが、実態は何かということになると、はなはだむずかしくなって、結局そういう規制をした意義がなくなるという点もございます。この点は線引きの完成を見きわめて処置をするという点も相当考慮しなければならない問題であろうと思います。しこうして、結局市街化区域内の農地を固定資産税においていかに処置をするか、これは税制だけの観点から処置し切れない点がございます。土地政策一般に対する考えがきまって、固定資産税の課税というものは補完的作用をそれになしてくるものでありますから、やはり土地政策そのものの根本をきめなければなりません。そこで、自治省といたしましては、やはり関係方面と連絡を密にいたしまして、慎重に検討してまいりたいと思いますが、この市街化区域における農地の問題が都市問題あるいは都市における土地の価格の問題、ひいて物価問題の大きな要素をなしておることはよく認識しておりますので、先般もお答えをいたしましたが、われわれは前向きの気持ちでおりますが、十分検討をしてまいりたいと思っております。
  146. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いま現に線引きの作業が行なわれている。しかるに自治省のほうでは、固定資産税の課税方式についてもまだきまっていないというようなことでは、これは困ると思うのですね。しかもそういうことが不明確であるからこそ、線引きの作業においてもいろいろな支障が起きているという現実ではありませんか。私は土地課税の問題はまた新たな観点から取り上げるべきだと思うのです。そして、この農地の固定資産税については、やはり衆議院の附帯決議それから税制調査会の考え方というものを尊重して、市街化区域に入ったらすべて宅地並みに扱うなどということはすべきでないという見解だけをここで申し上げておきたいと思います。  それから次にお尋ねしたいのは、過疎問題であります。山中総務長官もおられますが、いま私どもとしましては、過疎地域対策特別措置法案を四派共同でもって何とか成立をさせたいということで努力をいたしております。しかし、この法案につきましては、やはり一面過疎地域の町村の財政対策という面が非常に強いのでありまして、いわゆる農山漁村過疎地域の産業の振興、それからさらにはこれらの地域の開発という点については必ずしも十分ではありません。したがいまして、昨年保利官房長官に対しましてもこの点を尋ねました。政府としても、この過疎地域対策特別措置法の成立をお願いしたい、しかし同時により抜本的な過疎立法というものを政府としても考えたい、こう言っておられるわけであります。本日は保利官房長官もおられませんので、自治大臣お尋ねしますが、そういった抜本的な過疎対策を政府としても当然考える責任があるのじゃないと思うのですが、いかがですか。簡単にずばり答えてください。
  147. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 昨年からのいきさつもございまして、議員立法を出していただいております。これは政府とも十分連絡済みのものもありますので、ひとつこれが成立を期したい、こう考えております。それが施行の結果に徴しましてさらに改善を加うべきものがあるという結論に達しました際には、慎重な検討の結果、政府においてもこれが積極的に改正に取り組んでまいりたい、こういう考え方を持っております。
  148. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いや、もう初めからこの過疎立法では十分でない点はたくさんあるのですよ。確かに過疎地域の町村財政に対して、これは援助になることは明らかですけれども、しかし、過疎地域の開発、その地域の産業振興、そして雇用対策、こういった面は十分ではありません、それからさらに過疎地域対策の重要な柱ともいうべき集落再編成の問題についても十分ではない。ですから、当然そういう点は明らかなんですから、いまのような消極的な態度でなしに、議員立法の成立を期することはけっこうでありますが、より抜本的な過疎対策の立法を政府として考えるというくらいの姿勢は必要だと思うのです。そうでなければだめですよ、これは。どうですか、一言で答えてください。
  149. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 その気持ちはございますが、いきさつ上、まずさしあたりまして議員立法の通過を期して、これの欠陥がもし出ましたときには処置をいたしますけれども、これをある程度活用することによりまして、相当程度の所期の目的を達し得るのじゃなかろうか。その実際に適用、運用しました結果に徴してまた善処いたしたいと考えております。
  150. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 もう欠陥は初めから明確なんですから、どうも自治大臣はあまり積極的な姿勢でないので残念ですが、これは時間がありませんから、この程度にしておきます。  それから次に、私は、どうも政府というのは自治体を尊重する考え方が乏しいと思うのです。ということは、地方自治法に九十九条の二項というのがあります。自治体が議会において議決をいたしまして、意見書を各行政庁に提出できることになっています。これが昨年におきましては全部で一千五百二十九件各内閣官房に出ているそうでありますから、あるいはそれ以上の数が各行政庁にいっているかもしれません。国会は請願があればその請願を審査して、その結果をそれぞれの請願者に対して報告をいたしております。ところが行政庁はどうですか、せっかく都道府県議会あるいは市町村議会が議決をして出した意見書に対して、これはもらったきりで全然その処理をしてないじゃありませんか。私はそういうことば遺憾だと思うのです。確かに自治法九十九条の二項には返事をせいというような義務規定はありませんけれども、せめて国会の請願の扱い方くらいは丁寧な扱い方をするのが行政庁の任務だし、それが地方自治を尊重する、内政の年というゆえんでもあろうと私は思うのです。この点、自治大臣どうですか。軽く扱われ過ぎているのじゃありませんか、これは。
  151. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 ただいま御指摘のとおり、内閣に提出されました意見書は、四十四年中、内閣官房で受理分一千五百二十九件、このほか自治省においても六百八十二件、昭和四十四年中受理をいたしました。各省それぞれ精査すれば相当の件数にのぼっておろうと思います。これらの意見書の提出を受けまして、各省庁におきましては関係部局において慎重に検討し、それぞれとるべきものは施策の上に反映をさせるようにつとめておることは御承知のとおりでございます。これに対して返事が出てない、不親切でもあろうし、せっかくの国民の意思に対してとるべき措置ではなかろう、何とか考えたらいいじゃないかという御意見でございます。一々御返事申し上げるとすればたいへんな事務量になるわけでございまして、従来実際上相当尊重しておるからという見地で御返事をしてないのです。しかし私、この点につきましては、一々御返事を申し上げるということもたいへんかと思いますが、まとめまして、一年のうちに二回とか一回とか適当な時期に、こういうところからこういう御意見をいただいた。大体その時期時期で種類がございます。それをある程度仕分けまして、こういう御意見がこういう方面から何通来た、これに対しては大体こういう措置をしたのだ、これは遺憾ながらやれなかったのだというようなものを、それぞれの機関の広報、PRの雑誌等を通じまして発表をして、それをもって御返事にかえるというような措置ぐらいはとることが親切な行政になりはしないかというようなことを考えておりますので、ひとつ事務当局に検討を命じて、できるだけ御趣旨に沿う措置をとってみたらどうか。ひとつ研究いたしてみたいと思っております。
  152. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それはいま大臣が言われた方法もけっこうだと思うです。各省庁みなPRの雑誌をお持ちのようでありますから、各省に対して来た意見書はこういう措置をしたということを年に二回なり三回なりまとめて公表するということをやっていただけば、十分意思が通ずるだろうと思うのですね。とにかく自治体の議会が議決をして意見書として送付したものが全くナシのつぶてだということでは、私は残念だと思いますので、それはひとつ各省庁すべてにわたってやっていただくようにひとつお願いをしておきます。  それから選挙制度の問題ですが、明年は地方統一選挙があります。私は、内政の年だというならば、自治体の選挙というものは重視すべきじゃないかと思います。ところが、残念ながら、現在都道府県、市町村におきまして選挙の状況を見ますと、公営化というのがほとんど進んでいません。国会の選挙におきましては、今回テレビ等も導入されまして非常に公営化がさらに進んでおるわけでありますが、自治体ではさっぱり公営化というものが進んでいない。資料をいただきましたが、市長選挙あるいは市会議員の選挙、町村長の選挙、町村会議員の選挙、都道府県会議員の選挙も同様でありますが、公営化というものが非常におくれています。この点、やはり現在の選挙法を改正して公営化を一歩進めたらどうですか。せめて公報ぐらいはあらゆる選挙について出すことを規定したほうがよろしいのじゃないかと私は思うのです。  それからさらに、都道府県会議員の選挙区、昭和二十二年は二名区、三名区、四名区というのが中心でした。ところがその後推移をいたしますと、一名区というのが非常にふえたわけであります。いま自治省は広域市町村圏とか、いろいろな構想を打ち出しています。いま生活圏も広くなったわけですね。しかもこの制度ができたのは、国会の選挙も三名区以上、複数区が原則になっている、したがって、都道府県会議員の選挙も複数が妥当ではないか、こういう思想昭和二十二年は始まったと思うのです。ところが、その後の推移を見ますと、一名区が非常にふえている。これは私はやはりまずいと思います。そういう意味では、公職選挙法の特に地方選挙の公営化、それから都道府県選挙の区割り——郡、市となっていますが、郡なんというものは、いま法律の中には公職選挙法にしか残っていませんよ。ほかに郡なんというものは法律にはないのですから、そういう古ぼけたものはもうやめたほうがいい。どうですか、明年の地方統一選挙に間に合わせて、この公職選挙法のうち特に地方選挙については思っ切って改正するというお考えはありませんか。
  153. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 いまお話しの、地方選挙に公営化を徹底しろというお話ですが、まあいろいろ地方の事務能力等にもいろいろ問題があり、ケース・バイ・ケースで、やはり地方の能力、実情に即してまかせておいたほうがいいのじゃないかという考えをいまのところまだ持っております。しこうして、いろいろ三万市等もできてきて、郡、市の人口の少ないものもあったりして、地方選挙の定員で一名区ができる、こういうことは事実ございます。だからひとつ一人区は考え直すという御意見でございますけれども、やはり郡、市というものはほかにないとおっしゃいますけれども、やはり選挙においては地方住民の感情の上に残っておるわけであります。郡、市の代表とか、わが市の代表とか。やはり選挙区をつくる場合にこれを全然無視するわけにいかず、それじゃほかに何かいい基準があるかと申しますと、どうもあまり適当なものも考えられない。そこで人口の多少を修正するためのあるいは合区であるとか分区であるということは考えるべきでありましょうけれども、いま直ちに郡、市の観念を取り払ってしまって、即刻来年度の統一選挙から何か新しい選挙区割りを考えろということは十分研究、検討してみたいと思いますけれども、直ちにいまそういう方針で来年実行に移すということを申し上げることは、まだいたしかねると思っております。
  154. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大臣、明治の方でしょうから、郡に対してだいぶ郷愁をお持ちのようですけれども、もういま昭和生まれが人口の大半を占めている状態です。私は大正生まれですけれども、私どもは郡役所なんというのがあったことは知らないですよ。年配の方にお話を聞いて、そんなものがあったかということなんでしてね。郡というものは、こういうことばは法律には公職選挙法にしかないですよ。そういうものにこだわっているということは、私は時代おくれだと思うのです。自治省だっていま広域市町村圏を一生懸命やっているじゃありませんか。そういうときに、郡にこだわるというのはうしろ向きですよ。したがって、これは前向きに検討いただきたい。  それからどうも法律改正までなかなかはっきりした御答弁をいただけないのですが、公営化についても、昭和二十二年、紙のなかった時代にできた法律なんです。いま用紙なんというのは幾らでも買える時代でしょう。たいした事務じゃありませんよ。ですから、公営化についてもずばり法律でやる。やれぬとなれば、ひとつ公営化を大いにやれということをこれこそ自治大臣徹底的に指導したらどうですか。この公営化を指導する面は一体どうですか。
  155. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 公営化の方向に指導することは心がけたいと思っております。
  156. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 国家公安委員長がおられますから、ちょっとお尋ねしたいと思います。  警察もどうもあまり地方自治を尊重していない。現行の警察法自体、私はけしからぬと思います。しかし昭和三十七年最高裁の判決で、自治体警察を府県警察にかえるからといって、地方自治の本旨を必ずしも害するものではない、こういう判決が出ております。しかしその思想はやはり都道府県といえども自治体である、自治体である都道府県警察に統合することは地方自治には反しないんだ、こういう趣旨だと思うのです。ところが最近は国家警察的な傾向が非常に強い。特に渡辺私案なんというのがありまして、何か国家警察のようなことを自民党の一部の方が考えておるようですが、これは誤りだと思います。  そこでお尋ねしたいのは、実際は都道府県警察であるのに警備の予算等は国庫支弁金で警察庁から都道府県に流れるでしょう。ですから、都道府県議会で一体警備に金がどう来てどう使われたかということは、審議の対象になっていませんよ。そういう資料を出すことは県警本部は現実に拒否しています。しかしこれは私は間違いだと思うのです。自治体警察、府県警察という思想に立つならば、警察の予算については少なくとも住民の代表である都道府県議会で十分審議の対象にすべきだと思うのです。これはどうですか。  それから政令等で警察官の増員等を指示しますね。また施行令の附録でもって副総監を置けなんということをぽんときめる。政令というのは国会の議論の対象になっていないのですから、そういうものが都道府県知事を拘束するということは私はこれまたおかしいと思う。あまりにも現在の警察制度は自治体警察、自治体である都道府県の警察という観点から離れていると思うのです。もっと地方自治を尊重してくださいよ、公安委員長、自治体警察なんですから、府県警察なんですから。どうですか。
  157. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 私が個人的に尊重すると申し上げても意味ないことで、法律制度そのものが尊重するようにできていると思います。  それから全額国庫支弁、地方自治体警察の機能を発揮するための国庫支弁金、これは国庫金の支弁をする経理をやっておりますために、聞きますと、地方財政と同じ形式でないものですから、お求めがあってもそのとおりのお答えができない場合があるということを承知いたしております。ことさら秘密にする必要は私はないと心得ます。  それから、政令でもって定員等をきめるのはおかしいじゃないかという御指摘のようでございましたが、これは警察法そのものの委任による政令によって、そうしてよろしいということにお許しを得ていることを実施しているにとどまることじゃなかろうか、立法論としては別でございますけれども、現行法上妥当なことだろう、かように思います。
  158. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 確かにいまの制度ではそうなっています。しかし、本来の自治体警察という観点に立つならば、私はいまの制度自体は再検討する必要があるのではないか。少なくともその国庫支弁金については公開してはならぬということはないのですから、これくらいは都道府県議会で十分内容論議できるような、そういうくらいの措置はとったっていいと私は思うのです。別に法令違反じゃないでしょう。  もう時間が来ましたので私はこれ以上申しません。またあらためて地方行政委員会で警察制度の問題については議論をしたいと思います。  最後に、山中総務長官がお見えでありますから、同和対策の問題についてお尋ねしたいと思います。  先ほど小林委員からこの問題についてもお尋ねがございました。私は今回の昭和四十五年度の予算におきまして、同和対策の予算が五五・七%の伸び率を示して四十二億になった。伸び率からいえば確かに伸びたように見えますけれども、しかし、この同和対策の必要性が叫ばれ、そうしてこの特別措置法も制定されました現在、どうもこの予算では私は不十分だと思うのです。別途に一般の補助金のワクの中に六十億あるということも聞いております。また起債につきましても七十億計上されておりますことも承知いたしております。しかし、これではあまりにも少ないのではないか。問題は昭和四十二年に御調査をされたそうでありますが、これは特別措置法制定以前です。法律制定後において、やはり三分の二以上の補助金があるのだ、それからまた起債に対しては八〇%元利償還についても措置をするのだ、こういう制度が打ち立てられた時代において、市町村で一体どれくらいの同和対策の事業に対して要求があるのか、こういった調査をあらためてやり直す必要があるのではないかと思うのです。そうでなければ私はだめだと思うのです。したがって、そういう調査の上にあらためて十カ年計画をつくる。そうして前期の五カ年計画、後期の五カ年計画において抜本的な同和対策を進めていく、こういうことが必要じゃないかと思うのです。  山中総務長官は、閣議においても勇敢にこの発言をせられ、非常に官僚に対しても思い切った独創的な見解を示されて非常に御活躍をいただいておりますことを心から敬意を表しているわけでありますが、せっかくこのような長官が実現いたしましたときに、この問題をひとつ抜本的に進めていただきたい、この点はどうでしょうか。
  159. 山中貞則

    ○山中国大臣 確かに前回の調査は、特別措置法によって国が責任を持ってただいま御発言になりましたような内容の助成措置をいたしますことを踏まえた上の調査ではないことは事実でありまして、だから中には相当大きな府県でありまして、持ち出しがふえるばかりだからということで、報告をしなかった府県もあるやに私も聞いております。ただその後特別措置法と、それから閣議の十カ年計画等の策定等の全容が明らかになるにつれて、大体該当府県と思われるところから補完報告をしていただいておりまして、いまのところ特別の支障はないように見ておりますが、私としては、しかし、このような法律ができて、しかもこのようなことの議論を絶えずしなければならないという国としての責任を私たちは感じなければならぬと思っております。したがって、この問題の補完がどの程度いきわたっているか、それらをよく調査をいたしまして、一斉調査というものがどうしても必要であるという認識に立ったならば、その調査をするにやぶさかではありません。また私のところは行政実施の官庁でなくして、各省にまたがっているものを私のほうで調整するということになっておりまして、安易に過ごせばあと始末みたいな、ただひさしを貸しておるような気持ちで処理してもできぬこともないと思いますが、私は小林進君にも答えましたように、こういう問題を議論すること、そのことが日本の政治として反省しなければならないことだと思いますから、このようなことについては勇敢に真心をもって取り組んでいく姿勢を具体的に示していきたいと考えております。
  160. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしますと、法律制定後の新たな需要というものも当然考えられる。したがって調査もやり直すつもりがある、こういう御答弁でありますから、これはひとつ早急に特別措置法制定後の調査をぜひとも早急にやっていただくことを強く要請をいたしておきたいと思います。  そこで問題になりますのは、この起債でありますが、七十億の起債、二十億が補助事業に対する分で、五十億が単独分だ、こういうふうにお伺いをいたしております。で、八〇%元利償還を見る起債については補助分だけだ、しかもこれが公営企業債、それから準公営企業債、これについては除くんだ、普通補助事業に対する起債についてはこの八割の償還を見るんだ、こういうようなことが昨年の国会において八木委員と当時の野田自治大臣との間のやりとりで明確になっているようであります。そこで問題になりますのは、住宅ですね。これは、住宅に対する起債というのは、公営企業債でもしなければ、準公営企業債でもない。地方債計画の中では住宅事業ということで別ワクになっておるわけです。でありますから、当然この住宅に対して補助金が三分の二出る。あとの残りは起債で措置する。この起債については当然八〇%の元利償還を見るべきものである、かように私は理論的にいってもそうなるだろうと思うのです。したがいまして、この点につきましては私の申します趣旨は間違っていないだろうと思うのですが、この点総務長官お尋ねしたいと思うのです。何といいましても、同和対策事業の窓口である総務長官として、そういう趣旨で私は今後とも御努力をいただく、対処をいただくということにぜひともお願いをいたしたい。またそうすることがこの法律制定の趣旨ではないか、かように思うのでありますが、この点どうでしょうか。
  161. 山中貞則

    ○山中国大臣 趣旨はお説のとおりだと思いますが、自治省の定められました法律の中にカッコ書きで住宅が排除されておりますですね。だから、ここのところを大蔵、自治の間で話を詰めて、さらにその排除された中から、同和関係の立法を背景とした事業については例外とするという条項等が生まれれば、この問題は解決すると思うのです。ただ他省のことでありまして、私がそこまでやれということが実は私の場合言えませんが、秋田さんは、私の党内のことを申して恐縮ですが、一貫して同和対策の特別委員長をしておられまして、私は政務調査会におりまして渋ちんのほうで査定みたいなことをしたのですが、秋田さんの熱意は在野時代にたいへん私は高く評価しております。それを踏まえて、秋田自治大臣が所管事項としてどのような処理をされるか、それについて私の援助が必要ならば私もその援助を惜しむものではありません。
  162. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 自治大臣、どうもほかのいろいろお尋ねしたことについては歯切れの悪い面もあったのですが、この点についてはひとつ歯切れのいい前向きの御答弁をいただきたいと思うのですが、いかがですか。
  163. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 この問題は、同和対策特別措置法制定作成にあたりまして、御承知のとおり四党協議会がございました。その協議会の中でまた小委員のようなものができまして、いろいろ細部についてのお打ち合わせをしたわけでございます。その中に、公営企業、準公営企業などその事業の収入を当該地方債の元利償還金に充てることができる事業に対する地方債を除いて、その他の国庫負担金または補助金を得て行なった事業に対する地方債について特別措置法第十条の規定の適用を受けるように指定ができるんだ、こうなっている。そこで、それにもかかわらず、これをもう無視して指定をして八〇%交付税で見れる措置をとるんだということは、いまも総務長官からも明確にお話があったように、その規定に反してやるというわけにはいまのところ私いかぬと思います。そこでひとつ四党協議会の協議をやり直していただきますれば、この点が大手を振ってできるということにもなりますが、しかし、なかなかこの点は問題があろうと思います。したがいまして、なお私といたしましては同和対策事業が前向きに推進をされて、この法制定の趣旨を達成できるように、趣旨においていろいろ措置を、考慮を別途してみたい、こういう考えでございます。
  164. 中野四郎

    中野委員長 これにて山口君の質疑は終了いたしました。  次に、坂井弘一君。
  165. 坂井弘一

    ○坂井委員 私は当面する文教の諸問題、それから同和問題についてお尋ねしたいと思います。時間の都合で同和問題から先に入りたいと思います。終わりましたならば、関係大臣お引き取り願ってけっこうであります。  ただいまも同和問題につきまして、小林山口委員から質問があったわけでございますけれども、どうももう一つ答弁が歯切れが悪いような感じがいたします。非常にこの問題大事な問題でございますし、角度を少し変えまして、あるいはまた確認にもなるかとも思いますけれども、少しお尋ねをしてみたいと思います。  そこで、昨年の七月の十日にこの同和対策事業の特別措置法が施行されまして、いよいよその実質的な第一歩が踏み出された。ところで本年度の予算が同和関係予算で四十二億、いまもお話がございましたが、確かに伸び率から見ますと、五五・六%、非常に大幅でございます。しかし、この実質を考えますと必ずしもこの額は大きいとは言えない。ことに、考えてみますと、地方におきまして非常に力を入れているわけでございますけれども、たとえば大阪府が百億、大阪市で百十億です。京都におきましても二十億の同和関係予算を見込んでおりまして、これに比べて国全体が四十二億、こうなりますと、これはもうはるかにけたが違って、戦闘機二機分である。はたしてこのような予算でもってこの特別措置法が十分に生かされていくかどうか、十年の時限立法でございます。そう考えてまいりますと、この問題がこれでもって解決するであろうかと考えていったときに、非常に疑問に感ずるわけでございまして、政府は特別措置法を制定したから、これで十年ほっておけばこの問題は解決する、こういうようなずるいお考えではなかろうかと思います。   〔委員長退席坪川委員長代理着席〕 思いますけれども、いま申しましたように非常に額が小さい。したがって、何としてもこの十年間において完全実施、要求されるようなこの問題が解決するような方向に向かっていくためには、今後やはり十分な予算措置が必要ではないか、その見通しについて、ひとつ大蔵大臣から、先ほども前向き、積極的に考えていきたい、こういう御答弁があったわけでございますが、なおひとつ具体的に明確に示していただきたい。
  166. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 昭和四十五年度の同和対策予算は、これは同和対策特別措置法、またそれに基づく長期計画、それに従いまして、ずいぶんこれでも努力をしたつもりでございます。まあことしで終わりというわけじゃありません、長期にやっていくわけでありますが、ことしの段階とすると、この程度でまあまあというふうに考えているわけですが、この問題は長期にわたるわけですから、今後とも鋭意積極的に取り組んでいく、そういう所信でございます。
  167. 坂井弘一

    ○坂井委員 御熱意あることばですけれども、そこで総務長官お尋ねしたいと思うのです。政府の同和対策長期計画、この基本方針に従いまして、各省が計画を立てた。ところが、この各省の計画自体が非常にばらばらではないか、個々な状態にあるために十分な長期計画の効果があらわれないのではないか、こういう点を私は非常に感ずるわけでございます。いわゆる総合性に欠けているんではないか、こう思うわけでございますけれども、御見解いかがでしょうか。
  168. 山中貞則

    ○山中国大臣 率直に認めます。閣議決定をいたしまして、前期、後期の長期十カ年計画を策定したわけでありますが、これからはその考え方なり、あるいはそれに対するアプローチなり、やはり統一された政府の見解というものが予算に示されるということが必要であると私も考えます。そこで私就任いたしましてからは、そういうことについて今後努力をしてまいりたいと思いますが、さしあたりは期限の切れます同和対策協議会を、もう法律ができて十カ年計画も話がついておるのだから、その協議会は要らないのではないかという意見もありましたし、延ばすとしても、いままで二年ずつ延ばしてきたから二年でいいじゃないかという意見もありましたし、いろいろありましたけれども、しかしやはり前期五カ年のあと残り四年という間は、それらの学識、専門家の方々の御意見をいまのような角度から、いろいろとできあがった予算なり、執行のあり方、あるいはその取り上げ方の有機的なあり方等についての御批判を絶えずいただいていくことが、政府の同和対策の一貫性なり、あるいは現実性に役に立つと考えます。今国会に総理府設置法の中にその協議会をあと四年間延ばします、前期五カ年の期間に対応させますというものを出しておるのは、その考え方のあらわれでございまして、いまの御指摘の点に沿うように努力をいたしてみます。
  169. 坂井弘一

    ○坂井委員 重ねて総務長官お尋ねしますけれども、先ほども御指摘がありましたが、政府の長期計画の基礎が、四十二年度の全国部落調査によってこの長期計画ができあがってきた。そうしますと、特別措置法以前であって、まあ当年は多くの地方自治体が財政負担を非常におそれて、ごく控えめな事業量しか出しておらない。こういう現状がございます。ですから、こういう資料に基づいて長期計画を立てた、ここに一つの欠陥があろうかと思います。したがって今後のために、あらためて科学的な全部落の調査をして、さらに各市町村のマスタープランをその中に組み入れる、そういうようなことを考えまして、長期計画資料をまずつくる。これは、そういう必要があるならば、先ほどの御答弁によりますと、その方向に行きたいという、こういう御答弁であったかと思うのですけれども、必要あるならばというよりも確かに必要があると私は思のです。必要があるから、ここですぐに長期計画の資料を一応つくるべきだ、まずその点についてのお考えと、さらにこの問題は、国の責任で根本的に解決するためには、やはり総合的な長期計画が必要である。いまお話ございました各省ばらばらであるという施策を改めまして、総理府の窓口機能を強化する。そうして徹底的に強化いたしまして、統一性のある総合的な基本方針に基づいて、さらに具体的な年次計画あるいはまたその事業量を策定する。それが最も緊要である、こう私思うのですけれども、総務長官いかがでしょうか。
  170. 山中貞則

    ○山中国大臣 この問題は、私は予算の金額の議論でもありましょうし、計画の内容の議論でもありましょう。しかし半面においては、われわれ民族の心の問題でもあろうかと思います。私たちの誇りは同一民族、同一言語というところにも、やはりバイタリティーの基礎があるわけでありますから、ここらのところに何かひっかかるものがある民族であってはならない。そういうことにおいて取り組むべき性格のものと思いますので、したがって、そのような考え方から諸施策を進めてまいりますが、私の総理府の窓口と申しますか、行政をもっと各省行政の上に権限を強く持ったものにしてやったらどうだという御意見も、たいへんありがたい御意見ではありますけれども総理府自体の役所の性格が、行政事務を直接行なうという仕事をいたしておりません。そこで、やはり各省がばらばらであってはいけないし、あるいはなまけている省があってはいけないし、バランスを失ってはいけない。そのようなところで各省の担当者を集めまして幹事会その他を開いて、絶えずあるべき姿に向かってチェックをし、推進をいたしておるということでございまして、窓口の権限強化、そのことだけで解決する問題でもなかろう。しかし、私としては人をふやしたり、機構をふやしたりすることがなくても、やはりこれも取り組み方の心の問題でありますから、やりよういかんによっては前進があり得るものだと考えますので、ただいまのお話はやはり受けとめまして、十分に機能の発揮できるような努力をしたいと思います。
  171. 坂井弘一

    ○坂井委員 いま地方自治体が一番困っている問題は、基準単価と実質単価の違いですね。これで非常に困っておる。さらには用地先行取得、これができない。あるいはまた元利償還に要する経費の問題、さらにまた融資措置、あるいは起債の限度額、こういう点で地方自治体が非常に困っております。大蔵大臣が昨年の六月五日でございますか、内閣委員会で単価の問題については実態に即したようにするから御安心願いたい、こういうことを言っていらっしゃる。さらに「先行取得を含め土地買収費、整地費等の財源措置が必要であることはお話のとおりであります。これらの土地買収費、整地費等で国庫補助の対象とすることが適当でないというものにつきましては、起債の措置を講じ、事業の推進に支障のないように善処いたします。」こう証明されております。地方自治体は、そういうふうにされたのではございますけれども、ますますその負担が増大をして、非常な窮地に追い込まれておる、そういう現状でございます。先ほども答弁ございましたけれども、大蔵大臣はそうした言明をされていらっしゃるわけであります。ひとつあたたかみのある御答弁お願いいたしたい。
  172. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 昨年内閣委員会答弁をいたしましたとおりにいたしておるわけです。つまり実際の単価と予算単価の違いがあるじゃないか、これを是正せよ、こういうことに対しましては、その節申し上げましたとおり、是正の措置を四十五年度におきましては実行しておるわけであります。  なお、これは刻々そういう問題は物価の変動等に伴いまして起こってまいりまするから、これは今年度限りではございません。今後も続けてまいります。また土地等の先行取得に対しましては、起債措置を講ずる、こういうことを申し上げたわけですが、これもそのとおり、今度地方の起債計画の中に同和対策ワクを設定いたしまして、その確保をはかるか、かような措置をとっておるわけであります。
  173. 坂井弘一

    ○坂井委員 それでは自治大臣お尋ねしたい。  「公営企業、準公営企業など、その事業の収入を当該地方債の元利償還金に充てることができる事業に対する地方債を除きまして、国庫負担金または補助金を得て行なった事業に対する地方債を指定する考えでございます。」こう言われておるわけでございますけれども、この元利償還金の基準財政需要額への算入、このことについては、大蔵省、自治省あるいは建設省にいろいろ意見の食い違いがございます。そこで秋田自治大臣あなたはこの特別措置法の生みの親である、こういわれております。ひとつ自治大臣の御努力なりあっせんでこの問題をぜひとも解決していただきたいと思いますし、事自治省に関する問題については、自治大臣はひとつ完ぺきな措置を講じていただきたい。先ほどもございましたけれども、ことにこの特別措置法第十条の規定を適用なされるのかどうか、この辺についてひとつ自治大臣の御意見をお伺いしたい。
  174. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 先ほど山口さんにお答えいたしましたとおり、四党協議会の協議できまりました線からいきますと、これは十条の規定を適用して指定するというわけにはいかぬわけでございます。そこで四党協議会の線をひとつやり直していただくなり、そこのもとをひとつ直さないと、私、いかに前向きの意図を持っていましょうとも、いまここで、それを方針に反して十条で指定をするということはちょっといたしかねるのでございます。そこで、もとをひとつ直す必要がある、こういうことを申し上げたわけでございます。しかし、この方法でなしに何かこの問題を解決する方法があるかないか、すなわち地方団体の負担を軽減すればいいのでございますから、そこいらの点について別途検討をしてみたい、こう考えておるわけでございます。  なお、先ほど、同和対策費として国はわずか四十億しか出していない、戦闘機二機分並みだというお話しでございますが、この点はひとつ、別途国家が出しておるものがございますので、四十億という認識はちょっと改めておいていただきたいと思いますので申し添えたいと思います。それは住宅分に対する経費が計算上抜けておるのでございまして、それを入れますと、同和向け住宅分が八十四億——この点についていま問題が起きているわけですね、公営住宅、その分が八十四億ほどございます。別途起債等も七十億ありますので、それらを合わしますと百九十億ほどの配慮がされておるんだということは、ひとつお含みおきを願いたいと思います。
  175. 坂井弘一

    ○坂井委員 自治大臣のおっしゃることよくわかるのですけれども、しかし、いわゆる十年の時限立法でもって、はたしてこの特別措置法に盛られる内容自体が完全に実施できるかどうかということを考えていきますと、これはきわめて不安であります。そういう点から、何としてもひとつ自治大臣になお一段の御努力お願いしたい。地方におきましても、こうした超過負担で非常に困っております。いまの御答弁にもございました、いろいろと住宅、起債等含めますとかなりな額になる、これはよくわかりますけれども、それではたして満足かというと、決してそうではないというこの現状をひとつ、御認識は十分なされてはいらっしゃると思いますけれども、さらにひとつお骨折りをいただきたいということを御要望申し上げたいわけでございます。  最後に、総務長官に重ねてのお尋ねになるかと思いますけれども、いま申しましたとおり、十年で完全実施ということは非常に困難だろう、私、こう考えます。地方自治体に対するしわ寄せいうものも非常は大きい。そこであらためてこの同和対策審議会の答弁を尊重をいたしまして、いわれなき差別に長年非常に苦しんできた、そうした全国六千部落、三百万人といわれますが、そういう人たちの長い間の要求は当然これは尊重されなければならぬことでございまして、したがいまして具体的な総合計画、それから事業量、これをひとつ早急に策定して、そうして完全実施されるように、どうかそうしたひとつ御決意のほどを、重ねてでございますけれども承って、この問題に対して終わりたいと思います。
  176. 山中貞則

    ○山中国大臣 おっしゃっておられることは、閣議決定の十カ年計画の内容が、たとえばはっきりしている典型的な例でいえば、道路五カ年計画とかなんとかというふうに、金額がきっちりきまって、その初年度が四十五年度に幾らであったかというようなふうにはっきりしていないという点にあるだろうと思うのです。ところが、これも、計画はなるほど長期計画として展望はできますが、それに対して予算額をたとえば前期五カ年で幾ら投入するという計画として取り上げるには少し性格を異にいたしておりまするので、御趣旨は私もよくわかっておりますから、それらの線に沿えるような、私のほうの手元で各省の幹事会を開いて、なるべくその輪郭が、近い形がとれるようなものを研究してみたいと思いますが、道路計画のようにぴったりと五年間で幾らであるというふうになかなかできにくい性格のものであることは御了解を賜わりたいと思います。
  177. 坂井弘一

    ○坂井委員 総務長官、自治大臣、けっこうでござます。  次は文教関係の問題に移りたいと思うのですが、まず最初にことし一九七〇年は教育の年である、総理も教育重視の年だ、こういうようなことをおっしゃっておりました。ところがこの文教予算を見ますと、どうもその伸びがもう一つぱっとしないのではないか。文教関係、ことにこの文部省関係の予算は総額で八千四百五十五億でございます。これは前年度に比べますと二二・七%の伸びでございまして、この伸び率はここ数年の平均の伸び率である。一般会計予算全体の伸び一七・九%から比べますと、これはもうはるかに低いわけですね。ところでこの文部省関係の予算の特徴は、動かしがたい予算が非常に大きいということ。まあ義務教育の教職員の人件費、これは半額持ちまして国庫負担分、これが五一%を占める。あるいはまた国立学校特別会計繰り入れ分、これが約三〇%ございます。合わせて八〇%こえる。したがって、二〇%足らずということですね。そういうものでもってなかなか新味のある味は出せない。いわゆる非常に中身に乏しい予算になって、こういうことではないかと思うのですけれども、文部、大蔵両大臣にひとつ御所見を伺って、順次質問に入っていきたいと思います。
  178. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 本年度は、御指摘のように総額で八千九百億円でございまして、二二・七%でございます。しかし、昨年度の当初予算はやはり一三・〇%でございまして、少しふえておるわけでございます。しかし、私はこれで非常に十分である、満足すべきであるというふうには考えておりません。今度の予算編成におきましては、かなり私は意欲的にきめこまかにやったつもりでございます。たとえて申しますと、私立大学に対しまして百三十二億の人件費を含む経常費を計上した、これは私は画期的なことだと思います。そして医学部、歯学部、理学部はもちろん、社会、人文にも及んでおる。また高専さらに短大にも及んでおるということでございまして、百六十万人といわれる大学生、それに対しまして、従来は三十万の国立大学の学生だけが相当の国の助成を受けておった。しかし、今日私立大学の社会に貢献しておる貢献度ということを考えた場合には、私立大学の百数万の学生一人当たりに対しましても、やはり国はある程度助成すべきではなかろうかという考えを持っておったわけでございますが、ようやくその画期的な予算が認められたということはひとつ御了解を賜わりたいと思うのでございます。また初中局で、たとえば従来教材費の中で取り上げられておりました数学教育の設備費補助に加えまして、新たに理科教育振興法の中で八億を計上いたしましたが、今日の非常に発展をいたしておりまする科学技術の発展に対して、小、中、高の段階から基礎的な数学教育をやるということは、かなり私は思い切った施策であろうかと思いまして、この点も私は申し上げておきたいというふうに思いますし、その他いろいろございますけれども、乏しい、不十分ながらかなりきめこまかに私は編成をいたしましたと申し上げられるかと思うのでございます。
  179. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいま文部大臣からお話がありましたように、四十五年度の文部省予算は、内容的にはかなり充実したものであり、私立大学措置なんかという新しい問題も押し出されておる。こういうものです。ただ、それが予算の総体の伸び率から見ると、どうも少ないじゃないか、こういうようなお話でございますが、文部省予算はそもそも大半がこれは人件費なんです。ですから、これは人件費一般の伸び率によってそれが伸びるということで、全体の予算の伸び率を控え目にさしておる、こういうことになります。それからもう一つは、大学の急増対策、これが一段落でありまして、増募人員も減少しておる、こういう状態でありまして、それらの特殊要因を考えますと、決して他の費目と比べてこれが伸びが低い、という性質のものじゃございません。かなり充実した予算と心得ております。
  180. 坂井弘一

    ○坂井委員 この文教の関係の予算は人件費がおもなものである、ここはよくわかるわけでありますけれども、またことしは私学の人件費補助六十九億、経常費で百三十八億、これもいまお話がございました。これもよくわかります。一応の評価はできます。この点についてはあとで触れるといたしましても、私はやはり教育重視の年と言うからには、もう少しこの予算が伸びてもよかったのではないか。たとえば、いま大蔵大臣おっしゃいますけれども、伸び率も低いけれども、予算全体の規模から見ましても、昨年度は一般会計のうち文教予算が一一・〇一%だった。それがことしは一〇・六三%、これはダウンしているのですね。文教予算が一〇%内外ということ、これが高いか低いかは一応論外としておくとして、昨年に比べて規模、構成率が落ちるということ、これでもってはたして文教、教育の年にふさわしい予算であるかどうか。こう考えてきますと、これは必ずしもこの予算が十分であるとは言えないのじゃないか。したがって、そういう点からなおひとつ文教関係には予算を奮発して、あまりけちけちなさらないようにしていただきまして、もう一押しこれからひとつ文教に対して大蔵大臣として力を入れていこう、こういう姿勢であっていただきたいと思うわけですけれども一言でけっこうですからひとつお願いします。
  181. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 予算の中における文教費の構成比が多少四十四年度に比べると落ちます。しかし、これは四十五年度では地方交付税が非常に伸びるというようなことでありまして、そういう影響でありますが、内容は決して充実されないものではない、私はかように考えておりますが、教育はほんとうに大事な問題でありますので、財教面においても十分配意してまいる、かような決意でございます。
  182. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 先ほど大蔵大臣から、文部省の予算は人件費がおもだ、そのとおりだと思いますけれども、しかし、物件費にいたしましても、文部省の予算の中で一番皆さん方も御関心の深いのは、たとえば小中高の学校の建築費あるいは体育館等でございます。それについて申しますと、たとえばことしは四百三十三億円でございまして、かなりついておるわけでございます。たとえば小学校校舎にいたしますと、昨年度に比較いたしますと一四一・六で四一%増、それから屋体にいたしますと一八%増、小中学校の危険建物にいたしますると一九・四%、それから特殊学校の建物につきましては二五%増、あるいは幼稚園につきましては三三%増ということで、かなりきめこまかには大蔵省も考えていただいてはおりますし、われわれの考え方も貫いておる、こういうふうに御了承賜わりたいと思います。
  183. 坂井弘一

    ○坂井委員 そこで、総理は施政演説の中で、今日までの日本の教育は知的教育に偏して、人間形成という面がおろそかになってきた。そこで「家庭におけるしつけをはじめ、職場その他国民生活のあらゆる分野における人間教育が必要である」、いわゆる人間教育ということを非常に強調なさっていらっしゃるわけです。私、一体この人間教育ということが予算面にどういうように反映されているのか、どこにあらわれているのだろうか、これをいろいろ考えてみたのですけれども、どうももう一つはっきりわからない。ひとつ教えていただきたいと思うのです。文部大臣いかがでしょう。
  184. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 総理がおっしゃいましたことは、どうも全般的に見て知的教育だけに終始しておるきらいはないか。そうして、たとえば高等学校段階においても友情をあたため合うとかあるいは人間関係をうまくするとかそういうようなこと、あるいは人に迷惑をかけないとか、あるいは人の立場に立ってものを考えるとか、そういうようなモラル、そういうものを身につけるということが、やはり小中高の段階において教育として必要じゃないか。ところが、それが入学試験のやり方等にも原因があろうかと思うけれども、どうもその辺について、あまり、知識を与えることだけが教育なんだというものの考え方が、一般的にも父兄のほうでもそうだし、とにかく小学校に入れて大学を卒業するまで特急列車で突っ走らせる、そして社会に早く出そう、その子供が能力があろうがなかろうがおかまいなしに、とにかく追いかけられて試験、試験ということで上へ上へと進まされる。ある子供に対してはむしろ足踏みさせて、そして教育をやるということのほうが、本人の将来のためにもいいのではないか、そのことがむしろ人間教育につながるのではなかろうか、そういうことから考えた場合に、やはり高等学校以下の教育について、知的教育だけが重視されて、そしてたとえば体育であるとかあるいは道徳教育であるとかいうことがおろそかにされてきたのではなかろうか。また、文部省としても、そういうような指導をあるいは行なってきたのではなかろうか。あるいは現場の先生それ自体が、なかなかそういうことに目を向けないで、当面の入学試験ということに追われて、単に知識を授けるということだけに専念してきたように思う。こういうことで、総理は人間教育ということをおっしゃったと思います。私どもといたしましては、そういう意味でございますから、昔からいわれておりますように、やはり教育というのは知的教育と同時に道徳教育、徳性をつちかうというようなこと、あるいは体育を盛んにしまして健全なる身体を養うということ、昔のことばにございますように、健全なる身体に健全なる精神が宿るといわれたことは現在もなお生きておる。このような科学技術の非常に目まぐるしい発展、あるいは産業構造の変化、あるいは都市集中、過密、こういう、ともすると人間疎外というような問題が非常に出てきておるさなかには、むしろ汗を流して体育をして伸び伸びとやるというようなことが、やはり高等学校、中学校、小学校において行なわれなければならないのじゃないか。そのような意味合いから、たとえば体育局関係の面におきましても相当の予算を計上しておる、こういうふうに御了解を賜わりたいと思います。
  185. 坂井弘一

    ○坂井委員 総理はさらに施政演説の中で、教育が内政の柱の一つであるということから、教育の刷新ですね、いま申しましたいわゆる人間教育を強調されまして、そうした中から「幼児教育から大学まで、教育の内容及び制度の全般にわたって新時代に即した教育体系をつくり上げ、もって国運興隆の基礎を確立したいと念願しております。」まことにごりっぱなことを申されました。  そこで、この新しい教育体系、これはどういう教育体系なのか、基本的な新しい教育体系の構想を文部大臣にお伺いしたい。
  186. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 ただいま私が申し上げましたように、今日のたとえば大学紛争のゲバ学生の原因というものは、単に大学の仕組みがどうだとか、あるいは大学当局がこれにき然たる態度をとらなかったとかいうようなことも一つの原因ではございますけれども、そうでなくてやはり大学に入る前の高等学校教育、中学校教育、小学校教育あるいは幼稚園教育、いな子供の生まれました家庭教育それ自体にも問題があるのじゃなかろうかというようなことがだんだんわかってしまったわけでございまして、むしろその就学前教育はどうなければならないか、あるいはもう少し早朝教育をやったほうがいいのじゃないかという議論もございます。あるいは義務教育を一年早くしたほうがいいのじゃないかという議論もあります。それかと思うと、そうじゃないんだ、逆にやはり就学前教育は学校教育とは違うのであって、就学前教育においてはあまりものを覚えさせるとか字を書かせるとか、あるいはまた算術を教えるとかいうことじゃなくて、身の回りのことをちゃんと始末ができるというような、そういう人間的なほんとうの心情を養うような教育を、むしろ就学前教育においてやらなければならぬのじゃなかろうかというような議論がいろいろございます。  したがいまして、政府といたしましては、中央教育審議会に四十二年に諮問をいたしまして、この幼稚園から大学までの教育制度は六・三・三・四としてこうやって出発をして二十五年になるけれども、一体これでいいのかどうなのかということに対して総点検をしようということで、ただいまやっておるわけでございます。
  187. 坂井弘一

    ○坂井委員 中教審でいろいろと検討されていらっしゃるようでございますけれども、そういたしますと、いわゆる新しい教育体系をこれから生み出していこう、考え出していこうというのですから、いわゆる六・三制を改革する、こういうことに了解してよろしいわけですか。
  188. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 六・三・三・四を改善するかあるいは改革するか、そのことを含めていま中教審で検討しておる、こういうふうに御了解を賜りたいと思います。
  189. 坂井弘一

    ○坂井委員 六・三制に対してはいろいろ御意見、批判等もあるようでございます。私、確かに新しい教育体系、これは考えなければならぬと思うのですけれども、その前に今日のこの六・三制自体が非常に国民的な支持を得ている。ある意味では定着してきたのではないか。少し資料は古いですけれども、昨年の三月でございましたか、読売新聞の教育世論調査、これによりますと、いわゆる六・三制教育が非常によい、こう答えているものが六六・九%もある。反対に悪いと思うものがわずかに一三・八%である。そういうことから考えますと、むしろこの六・三制を改革じゃなくして前向きに改善していく、あるいは拡充していく、そういう方向が考えられなければならぬのではないか。それが全然無視されて、直ちに改革ということになるといささか飛躍し過ぎるのではないか、こういうような批判もあるようでございますけれども、こういう点に対してどうでしょうか。はたしてこの六・三制は現体制をなおもう少し手直しをして、そうして実のある、内容のあるものにしていけないかどうか。そういう点を御検討なさったかどうか。
  190. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 手順といたしましては、ただいま私は中教審でそのことを含めて検討していると申しましたけれども、私の考え方からいたしますと、やはり先生のお話には少し近いのでございまして、六・三・三制度の採用ということが、日本の今日の教育制度がかなり開放的な制度になってきた。その点ヨーロッパ型の大学——高等教育機関を含めまして、制度というものが個人個人の持っておる能力というものを、まだ身分的にあるいは経済的な制約のもとにおいて最大限に活用するということに欠けておる。その点については日本が六・三・三・四制度をとったことは一応評価すべきであるという考えでございまして、ことに確かに小、中が義務教育になりこれが九九%、そして今日では高等学校に入る者がもう都会では八〇%をこえるというようなことになり、かつ高等教育機関、これも短大から旧制の大学等のような学術を中心とした大学まで幅はございますけれども、とにもかくにも当該年齢人口二〇%の人が高等教育を受けられるということは、やはり画期的なことであるし、その一つのメカニズムを生み出したものはやはり六・三・三・四制度であるというふうに、私は思います。  しかも、いまこの六・三・三・四の問題についていろいろ、たとえば人間教育がどうだこうだ、あるいはあのような大学生を生み出したものはこれにあるのだという議論がございますけれども、むしろそうじゃなくて、この制度自身を変えなければそれはできないのか、それともむしろ高等学校、中学校、小学校の先生それ自身の教育のやり方等について考え直すとか、あるいはわれわれの指導要領等を改善するとか、あるいは入学試験制度について抜本的な改革をやるとか、あるいは先ほど申しましたように、単に小学校へ入れたら大学までもう落第もさせずにすっといくということでなくて、昔ありましたように、天才の者は飛び級を許すとかあるいは原級にとどまるとかいうようなことも、父兄や先生たちほんとうの教育的確信を持ってやられるならば、相当に現制度においても改善される部面が非常に多いのじゃなかろうかというような気はいたしております。  しかし、手順といたしましては、先ほど申しましたように、やはり私といたしましては、中央教育審議会に諮問をいたしておりますから、この答申を待って考えてまいりたいというふうに思っております。
  191. 坂井弘一

    ○坂井委員 私、端的に申し上げて、運用面においてもう少しくふうがされたならばもっともっと効果があがるという余地があったにもかかわらず、直ちに制度の責任である、こういう考え方はおかしいということを申し上げたのであります。そういうことから、何としてもこの教育改革、やはり新しい改革をしていかなければならぬ、体系をつくり上げていかなければならぬ、こういうことになりますると、教育改革そのものは国家の一大事業である。したがって、当然国民の意見を聞くべきである。決して一政党あるいは一官庁の手に負えるものではない、私はこう思うわけでございます。いわゆる国民のコンセンサスあるいは協力、これがなくして改革の成果をあげることはできない、こう思うわけです。  そこでまず何が大事かというと、国民の意識の向上、これをはかっていかなければ、意識の向上に手を下さないで事実上教育改革というものは私はスタートしない、こう思うわけです。そこで、いかにして教育改革に対する国民の関心を高めるか、あるいはまた、どのような形で国民を参加させていくか、これを具体化し、実現していくということが、私は、大きな政府に課せられた、あるいは文部当局に課せられた任務であろうかと、まあこう思うわけでございますけれども、文部大臣、御意見いかがでしょうか。
  192. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 教育制度は、これはもう国家百年にかかわる問題でございます。したがいまして、やはり国民大多数の合意を求めつつ、制度の改革はやっていかなきゃならぬということは、もうお説のとおりに私は考えております。したがいまして、私は就任以来、いままでの中央教育審議会のやり方を改めまして、そうして一応、中央教育審議会で御検討になりましたものを一つの試案として世間に問う。あるいはたとえば新しい大学の構想につきましても、国公私立の大学の当局と意見の交換をやる、あるいはいろいろの各種の団体の方々とも意見の交換をやる、あるいはまた、この三月の末になりますけれども、公聴会を開いて、そして国民の意見も求めるというような形で、この試案を中間報告にまとめていただく。そしてまた、その中間報告を私が受け取った段階において、またそれを国民に聞くというような手だてをしながら、おっしゃるような国民各界各層の意見をなるたけ取り入れつつ、そしてこの制度化の手順を踏んでまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございまして、全く同感でございます。   〔坪川委員長代理退席、委員長着席〕
  193. 坂井弘一

    ○坂井委員 国民各界各層の意見を十分取り入れていくと、こういうお考えだということでございましたけれども、この中教審の、ことに大学試案の中間答申、これに対していろいろな批判があるわけです。国大協の加藤東大総長は、要するに上からワクをはめるような改革に対しては反対だ、こういう御意見をおっしゃっていらっしゃるようです。両者が非常に対立したような形にある。そこへ今度は、日本学術会議の山崎委員長も、大学の自治を危うくするのではないか、非常に批判的であったように思います。中教審はこの社会の要請あるいは公共性、こういうことを非常に強く押し出して、管理主義の色合いが濃いし、あるいは官僚的発想が非常に強いのではないか、こういうような批判であろうかと思うのですけれども、これに対して国大協案は、国家的な計画性に反発して、国立のエゴイズムが非常に目立つような感じもいたすわけでございます。そこで今度は私大のほうですけれども、足れはどうにもまだ足並みがそろわないような形だ。  こういう中で、中教審イコール政府、これはそのままに当たらないと思いますけれども、ともするとそういうような形で、中教審でも当然広い国民の意見を求めるということで、公聴会等開いて十分聞いて、それを反映さしていこうという方向にあるとは思いますけれども、結論的には、中教審の答申がおそらくこの大学改革の中に一番強く出されてくるということになってきますと、どうもいわゆる各界各層、幅広い国民の意見というものが、もう一つ十分に取り入れられない、そういう心配があるんではないか。国民的なそういうエネルギーを十分に吸収して、そして民主的な、あるいはまた政治的にも中立で自主性のある、そういう改革の方向を生み出していかなきゃならぬ。  念には念を押しての質問でございますけれども、そういう点、十分御配慮はされていらっしゃると思うのですけれども、なお文部大臣からひとつ……。
  194. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 この中教審の試案に対しまして、たとえば国大協が批判的である、あるいは東大の学長がいろいろものを言う、それから学術会議がものをおっしゃる、これ非常に私はけっこうなことだというふうに思うんです。そうして私から申しますと、この中教審の試案に対して、一体東大がこういうことを言うた、しかし今日、合理的に考えたらどっちのほうがよりいいんだ、あるいはまた学術会議があんなことを言っているけれども、一体どうなんだということを、国民自身が批判をするということで、いろいろの批判があることをむしろ私は喜んでおる次第でございます。聞くべきものがあるならば、十分これを取り入れていきたいというふうに考えておるわけでございます。  国立大学協会のこの調査、広範なものでございます。しかし、これをよく読んでみますると、たとえば教育と研究との問題、あるいは大学と社会との問題、あるいは多様化、多元化というような問題意識については、かなり中教審とダブっておるし、考え方が同じである。しいて違うところがあるとするならば、その発想自体にその相違点があるんじゃなかろうか、こういうふうに思うのでございまして、まあ加藤学長あたりも言っておりますように、何か上から押しつけるようなことが気に食わぬのだ、こういうことでございます。  あるいはまた、何か拒否権は認むべきではないんだ、こういうことでございますけれども、それじゃ、現在の大学の制度はどういうふうになっておるかというならば、その人事の選考権というのは、まさに大学側が持っておるということになっておるのでございまして、ほとんど紙一重といってもいいくらいに変わってはおらないということ、そしてそのことをまだ拒否権、拒否権というようなことだけを問題にして、学問の自由と大学の自治ということが、これだけ膨大な大学になり、膨大な学生を擁しておって、どうやってそれが現実に機能するかという、その組織や教育研究の管理運営等についてのこの検討はなされていない。ただ、学問の自由、大学の自治を侵すんじゃなかろうかというようなことで、具体的に入ってきてない。われわれから言うならば、学問の自由と大学の自治というものは、二十四、五年間、大学側に直接の責任があるようになっておるわけですから、一体それじゃこの二十年、大学それ自体は何でこの社会の変化に対して新しい大学の構想を出してこなかったのか、そうしてこういうような紛争を起こしてしまったのかと言いたいぐらいでございます。そこが、国立大学について言うならば、納税者の一般の市民の気持ちあるいは意思を反映した学問の自由、大学の自治ということを考えてこなかったところに、学生からも問われ、世の中からも問われておるところがあるんじゃなかろうか。それをまだ依然としてあの国大協の新聞に出ましたような発言がその発想として出てくるということそれ自体、むしろ大学の先生方がお考えになったほうがいいんじゃないかというのが、国民の大方の考え方ではなかろうかというふうに私は思います。  しかも、これは単に日本で問題になっているばかりじゃなくて、世界も非常に日本のこの中教審の試案に対しては関心を持っておりまして、この一月の十二日から二週間にわたって、OECDの専門の人たちが、たとえばフランスのフォール、前の文部大臣あるいは首相もやりましたあの方を団長として調査をして、かなりわれわれと一緒に意見の交換をやったわけですけれども、高く評価をしておるということも申し添えておきたいと思うわけでございます。  私は、すなおに、大学の先生方やあるいはまた学術会議の人々も、この案と自分たちの案とでオーバーラップしているところはどこなんだというところで、これから先の新しい大学というのは、政府と大学とが一体となって考えていかなければやっていけなんだ、こういう認識にひとつ立ってもらいたいということを念願するわけでございます。その意味合いにおいて、中教審が公聴会を開いたり、あるいはそれを投げかけたり、そうしていろいろの批判をくみ取るということをやっておられることに対しまして、非常に私は敬意を表しておる次第でございます。
  195. 坂井弘一

    ○坂井委員 文部大臣、非常に強い姿勢を示されたようでございます。私は、これから改革の中で出てくる具体的な問題を拾い上げながら、そういう中から進めてまいりたいと思いますので、時間があまりございませんので、ひとつ簡単明瞭な御答弁お願いしたいと思うのです。  戦後の日本の教育が、中等あるいは高等教育、この大衆化を進めるにあたってなしくずしのような状態でやってきた。そこで当然起こってくる問題として、学力水準あるいは教育水準というものが非常に落ちてきたのではないか。ただ、就学率に関する限りは非常にわが国は高いわけですね。これはよくいわれることでございますが、昭和二十二年に発足した六・三制の教育の量的な普及が非常に急激でございました。義務化された中学校教育は当初から一〇〇%、それから昭和二十五年度四二・五%でありました高校の進学率が今日では約八〇%に及ぼうとしておる。あるいはまた、昭和二十五年度に二十四万人でありました大学、短大の学生数が、今日では百六十万ともいわれる。校数にしまして三百五十校から八百五十校と非常にふくれまして、学生数で六倍強、校数で二倍以上、こういう増加ぶりでございます。同一年齢人口に占める割合でいきますと約二〇%にもなろうか、こういう現状でございます。就学率が高い、量的な拡大ということは非常にけっこうだと思うのですけれども、この量的な繁栄を手放しで喜べない状態にある。いわゆる質的な低下——この戦後教育は、私、端的にいいまして、量的な普及は教育の質を犠牲にしてなされてきたのではないか。しかも、このような増加の傾向というものは、これからなお量的な増加がどんどん進んでいくであろう、こう予想されるわけでございます。したがって、こういう状態がこのまま推移していくならば、量と質の格差がますますひどくなってくる、重大な危機に立たされるのではないか、こう考えるわけでございます。私、思いますことは、教育の量的拡大と質的な充実というものは決して矛盾するものではない、また、あってはならない、両者は均衡しながら発展させていかなければならない。これは施策が当を得たならば必ずしも不可能なことではない。これはそうさせていかなければならぬ問題だと思うのです。  そこで、お尋ねしたいことは、今後高等教育を希望する者が非常にふえてくると思うのですけれども、これをどういうふうに見ていらっしゃるかということ、それから、大体今日までの高等教育のこの量的な普及に対して何か原則があったのかどうか。原則があってこの量的な拡大を来たしたのかどうか、その辺のところをひとつ簡単でけっこうでございます、簡明にお願いいたしたいと思います。
  196. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 それは率直に申し上げまして、長期計画といいますか、それはなかったと申して差しつかえない。それで、これからやはり長期計画を立てなければならぬ。中教審でも、四月から中間答申を得ますが、さらに来年の最終答申までにその長期計画をお願いするということになっております。しかしながら、先ほどから申しますふうに、ヨーロッパ社会と日本が最近において経済成長についても非常に飛躍的な成長をしたというのも、やはり六・三・三・四を採用したというところにあるわけで、やはりお説のとおりに、いままでは量的拡大を急ぐのあまり、質的なことについて十分でなかったということは率直にこれを認め、これから先は質的充実ということに力を入れなければならない。  ただ、考えますことは、戦前におきまするたとえば大学卒業者というものと、現在のたとえば二〇%の上の五%なら五%の人を比較した場合は、決して戦前の人たちに劣ってはおらないというふうに私は思いますし、入ってまいりますのが、昔はA、Bの上くらいしか大体大学に入らなかった。いまではA、B、C、Dみたいな人までも入ってくる。また、大学の先生のほうも昔はAクラスでございましたけれども、その先生自身もA、B、Cというふうになってきておるということも考えなければいけないということでございます。これはお説のとおりに量的拡大だけではなくて、質的充実というのが私に与えられた責任かと考えておる次第でございます。
  197. 坂井弘一

    ○坂井委員 要するに、いままでは計画がなかった、無計画あるいは無原則な状態で今日のこの量的拡大を来たしたのだ、当然質を上げていかなければならない、こういうお答けでございます。  そこで、一つ心配になりますことは、経済の高度成長でいまのところは需給関係に顕著な破綻が見られない。ところが、だんだんと経済の成長も鈍化していくということが予想されますし、そうしたときに、いわゆる高学歴所有者の職業ラダー下降現象というものが今日一般化しつつあるようなすでに状態でございます。そうしますと、ここ数年、あるいはまたなお先において、いわゆる深刻な雇用問題が起こってくるのではないか、こういう心配が一つあるわけです。そういう心配がないと判断されるか、あるいは心配ありとすればこれに対してどう対処されるか、何かそういう点でお考えがございましたら大蔵大臣
  198. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 その点は私は見方は逆なんです。もうわが国が七〇年代に最大の当面しておる問題は、雇用関係が逼迫するであろう、これをどういうふうに充実していくか、こういうことにあるだろう、かように見ております。
  199. 坂井弘一

    ○坂井委員 確かに量的な拡大はなお拡大してよろしいと思う。同時に、質量ともに相まったところの拡大ですね。頭脳の流出ということがよくいわれるのですが、進出ということはあまりなかった。当然東南アジア方面に対してそうした技術的な頭脳というものが今後進出していく、そういう方向に考えていかなければならぬ。そういう上に立っての質量ともに相まったところの拡大ということを考えてみるべきである、こう思うわけであります。  ところで、いまも質の問題が出たわけでありますけれども、必ずしもこの質のことにつきましては、非常に悪いというのですけれども、いまも文部大臣おっしゃっておりますけれども、教授の質の低下、これは一つ大きな問題だと思うのです。教授も一個の人間でございますから、教育者であると同時に研究者でなければならぬと思うのです。ところが、有能なそういう教授の絶対数が不足しておる、あるいはまた、いま申しました質の低下、これが今日の教育の質のダウンの最たるものではないか、非常に大きな原因ではないか、こう思うわけでございますけれども、しからばこの教授がいますぐに間に合うか、速成できますか。しかし、考えてみますと、やはり有能なそうした人材がないかといえば決してないことはない。いわゆる野にあって起用されないそういう人をもっともっと起用していくような努力とあるいはシステムということが当然必要ではないか、考えなければならぬのではないか、こう思うわけでございますけれども、文部大臣、いかがでしょう。
  200. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 いい教授を得るということは最大の課題だと思っております。それにはやはり待遇問題もからんでまいる。したがいまして、もう少し大学の先生方の待遇も改善していく方向に努力をしなければならぬというふうに考えております。  それから、先ほど質的充実ということを簡単に申しましたけれども、もう一つ考えをいただきたいと思いますることは、大学ということで短大も大学、それから研究面を中心とした昔の大学というものも大学ということで呼ばれておるわけでございますが、むしろ高等教育機関と呼んだほうが適切かと思うのでございます。したがいまして、質の充実といいましても、やはり研究中心の大学と、それから一般高等職業教育をやる大学と、あるいはまた教員養成の大学、あるいは短大、あるいは高専、こういうようなものを高等教育機関という範疇の中に入れるとするならば、やはりその目的、性格をはっきりさせて、そうして研究中心の大学にはかくかくしかじか、短大にはこうだというような管理運営のやり方、教育研究のやり方というものがなされなければならないのではないか。つまり、教育を重視する大学と、あるいは研究を重視する大学とやはりここに仕分けをして、あるいは教育投資もやっていかなければならないのではないか、あるいは研究中心のところの大学の先生に対してどうやっていくかという待遇の面も考えていかなければならぬのではないか。こういう研究中心の大学についてはむしろ民間の技術者やエキスパートの人がまた大学に帰ってこられる、あるいは採用ができるというような道も開く、あるいは大学がそういう門戸を開くことがやはり必要なんだというふうに私は考えております。そういう仕組みもやはり今後考えていかなければならないというふうに思います。
  201. 坂井弘一

    ○坂井委員 目的、性格別のいわゆる高等教育の多様化、このことについては、いろいろと論議のあるところでございます。  このことはさておきまして、いまの問題からさらに関連いたしまして、要するに開かれた大学ということがよく言われるわけでございます。開かれた大学というのは、まず大学の学部間、ここから開いて、それから大学間も開いていく。これから進めなければいけないのじゃないか。当然その間、大学間の交流あるいは連携。そこで考えられますことは、学習単位を流通するとか、あるいは研究を交換し合うとか、あるいはまた図書館の相互公開をやるとか、あるいはまた教授の交流、そうした可能な範囲においてだんだんと交流を進めていく。そういう中から大学が開かれて、結論的には国民のために開かれた大学、こういうことに通ずるのではないか。また同時に研究と教育の問題、こういうことも解決する一つの大きな方法ではないか、こう考えるわけですけれども、文部大臣、どうお考えになりますか。
  202. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 昨年、一年前でございますけれども、たとえば東大を考えると、助手を含めまして教官が三千五百、そして事務職員が五千。八千五百で一万五、六千の大学院及び学生を教育、研究させ、そしてその管理運営をしておるというのは、われわれ一般国民から見ると、ふしぎでたまらない。ところが大学の先生に聞きますと、それでも先生が足りないのだ、人が足りないのだということをよくおっしゃるわけです。あるいは教育環境が悪いのだとおっしゃるわけです。しかし、戦前は一教官当たり学生数は八人でございます。これが、たとえば駒場のほうは一対二十くらいですけれども、本郷に参りますと、一対四・八、医学部のごときは一対一・二ぐらいだったのです。なぜこういうようなことがやれないのだ。十四の研究所があるけれども、その教授や助教授は将来ノーベル賞をもらわれるようなりっぱな人がおるにかかわらず、その人が講義を持たない。そうして私立大学には講義をしに来ておる。そういうことを改めて、もう少し研究所の人たちも本郷に来たり、あるいは本郷の人が駒場に行ったり、駒場の教官が本郷に行ったり、そういうような仕組みというものは、大学自治を唱えるのだったならば、考えたっていいじゃないかということを私は盛んに言った。ところが今日東大の学長は、全学出動、全教官が出動して、そうしてたとえばカリキュラムの問題にしましても、一般教育二年とかあるいは専門教育二年というようなことをやめて、四年間に一般教育をやるというような仕組みを考えられ、そうしてその全教官が一致してこれに当たるというこの知恵がようやく出てきたわけです。ですから、私から言わせると、東大の学長あたりが、新聞を見ますと、いかにも私たち考え方が非常に開いておるように思いますけれども、ある部面については、だんだん、だんだん、わかってこられたというか、オーバーラップしてきたというふうに私は考えるのでございまして、これはやはり、この大学問題というものがこの紛争を通じて国民に非常に関心を持たれた間において、そのコンセスサスがだんだん得られてきたというふうに私は思うのでございます。そういうことを大学の先生方がお気づきになってどんどん改革をやっていただく、そうしてまたわれわれもそれに協力をする、こういう形で新しい大学をつくっていきたいというふうに私は考えておる次第でございます。
  203. 坂井弘一

    ○坂井委員 文部大臣のおっしゃること、わからぬことはございません。交流するということ、これはそういう方向で確かにいいのだ、こうおっしゃるわけでございますので、その点については同じでございまして、何もございませんが、ただ大学側の、あるいは高等教育側の責任にされるその考え方ですね、これにはいささか私は問題があろうと思うのです。やはり先ほど申しましたように、量的な拡大に対して質の低下というようなこと、これはやはり根本的な原則て計画性、そういうものがなくして今日の量的な繁栄を来たしたということは、これは行政者の責任だろうと思うのです。そういう点を踏まえた上で、これからの大学改革、教育体系というものをはたしてどうしていこうか、こういうことになってきたわけでございますので、そこのところはひとつ十分に心得た上で、文部大臣として取り組んでいただきたい、こう思うわけでございます。  それで、今度私大の人件費の補助を出されます。非常にけっこうだと思うのですけれども、ただ心配のあることは、いわゆる金を出すけれども口も出すということになるのではないか。監督権の強化あるいはまた独自性が侵されるのではないか、こういう心配が非常にあるようでございますけれども、その点については、そういう心配はない、金は出すけれども口は出さぬのだ、おそらくこうおっしゃるだろうと思うのですが、私大をコントロールできる自信がついたから今度金を出すことに踏み切ったのだ、またこういうお考え方も出てこようかと思う。  そこで、私学法の改正を今度出される、私学振興財団法案の附則で出される、こういうことを聞くわけでございます。そういたしますと、技術的には確かに財団法案一本の提出で済むという面もあろうかと思いますけれども、むしろ私学法改正案として提出したならばかなりの反発があるのではないか、それをかわすために実質的な私学法の改正をしていこう、こういう意図があるのではないか、こういうふうに心配もされるようでございますけれども、介入の心配はなしとするか、あるいはいささかあるのだということなのか、その辺をひとつ、簡単でけっこうでございますから……。
  204. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 質的な充実ということを私は申し上げたのですが、実を申しますと、国立大学の三十万に対しては相当に質的な充実が実は行なわれておるわけなんで、これは世界的な水準に比べましても決して劣っておるとは私は思っておりません。むしろ私立大学の百万を一緒にしまして、それを頭割りにした場合に、非常に質的低下が実はあるわけです。そういう悪条件にもかかわらず、私立大学が今日まで営々として人材を出し、あるいは教育をやり、研究をやってこられたと思うのでございます。しかし、やはりこれから先は、私立に対しましてもある程度の助成なくしては、その学生の教育研究の質を高めることはできないという一つ考え方から、今度は私学助成に踏み切ったわけでございまして、まさに私立大学の百数万の教育研究の質を高めるためにこそ、私たちは国としてお金を出すということでございます。  また、国民の税金、お金を出すからには、これが不当に使われたり、不正な、たとえば私学でいろいろ問題を起こしておるようなことに使われておることは断じて許すべきではないのであって、その経理上の問題に対してはむしろ口を出すべきであると私は考えておる。しかし、だからといって、私学の特色ある建学の精神やあるいは教育のやり方や研究のやり方、あるいは人事の問題について、いささかたりとも私は介入しようというふうなことは考えておりません。
  205. 坂井弘一

    ○坂井委員 介入の意図は全くない、こういうお答えでございますので、そのまま信用したいのですけれども、なかなかそういうわけにはいかぬ。金の面では介入する。金の面で介入すると、これは大きな介入になってくると思うのです。ただ、財務会計書類の提出ということ、これは私は当然じゃないかと思うのです。国が援助する金を出すということ、それをいかに民主的に配分するかということ、これはおのずから別の問題であろうと思います。経理を公開する、これは当然のことだと思うのです。これは問題ないのですけれども、ただ立ち入り調査権の問題だとか、学科増あるいは定員増の計画に対する変更、中止勧告権あるいは設備、授業についての変更権、こういうものが出てまいりますと、これはどうも少し心配になってまいります。何となく衣の下からよろいがちらついているように思うのですけれども、介入しないように十分配慮されるそうでございますので、一応これはこの辺でおきまして、時間がありませんので、次の問題に移りたいと思います。  今度、銀行ローンによる奨学金制度がいま検討されているようでございます。これは御承知のとおり、学生が非常に高額の授業料によりましてたいへん困っております。ことに私大の場合、授業料が非常に高い。多額な寄付金等によりまして、父兄の負担も容易ならぬものがある。そういう中から今度銀行ローンによる奨学金制度という新しい制度が検討されるということは非常にけっこうなことでございまして、かねがね公明党で銀行ローンによる奨学金制度を主張しておりますが、この構想について具体的にこの実現が見通しがついておるのかどうか、ごく簡単でけっこうですからお願いしたいと思います。
  206. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 この銀行ローンの考え方は、実は私が文部大臣になります前に、党の文教制度調査会長をしておるときに具体案をつくったわけであります。いまの育英会の方々と相談をしております。今度調査費を計上していただいておりますが、いま御指摘のとおりに、私立大学といえども相当経済的に不如意な家庭から子供たちが通っておるわけでございます。現にここに役人の局長さんたちや、それからわれわれおりますけれども、実はわれわれの子供が二人も私立大学に入るとなると、これはもうたいへんなことなんでございまして、こういうような銀行ローンの考え方を取り入れた制度がもし生まれるとするならば、これは非常にいいのではなかろうかというふうに私は考えておるわけでございまして、十分アメリカ等の制度等も検討いたしまして、実現をはかりたいというふうに私は意欲を持っております。
  207. 坂井弘一

    ○坂井委員 実現をはかるように積極的にやっていこうということでおられるようでございますので、どうかひとつ早く実現できるように御努力を願いたい。なおまた、これは大蔵大臣のほうもよろしくひとつ。銀行ローンに対する利子の補給だとかいろいろ問題が出てこようかと思うのですが、そういう点についてもひとつ十分な御配慮をお願いいたしたいと思うわけであります。御答弁はけっこうであります。  それから放送大学の構想がだんだんといま審議が進んでいるようでございますけれども、この放送大学構想、いわゆる電波を教育に用いるという考え方、この考え方には賛成でございます。ただどういう形態の放送大学になっていくのか、それからこの放送大学をつくる目的というものは一体何なのかということがはっきりしないと、いろいろまた問題が起こってこようかと思うのです。ちまたでは、当時放送大学構想が打ち上げられたときは、いわゆる大学紛争ということがございまして、何となく問題を一時的に糊塗する政治的な意図が非常に強くて放送大学が出てきたのではないかというような心配もあったようでございます。しかし、そういうことであったならば、これはならぬと思うのです。いわゆる閉ざされた大学から開かれた大学へ、そういう考え方に立ってそういうメリットを考えましたときに、あるいはまた放送大学の秘められたる豊かな未来への可能性、そういうことを考えてまいりますと、この放送大学構想というものは教育の新しいあり方として十分評価できますし、それだけに政治的な先行を戒めて、十分国民のために開かれた放送大学、それができ上がっていかなければ意味がないのではないか、そうあってこそ大きな意味があるのではないか、こう考えるわけでございます。  そこで実際にこの放送大学が具体的な話題になりました昨年の九月九日に、当時の河本郵政大臣、そして坂田文部大臣、お二人の間で三点の合意点があった。その一つは、四十六年四月を開校のめどとする、二つ目には、テレビはUHFを使うのだというようなこと、あるいはまたラジオは大電力の中波を使用する、三つ目には、この放送大学を受講しておったならば資格付与をするのだ、こういうような点についてであったかと思うのであります。  ところで、はたして来年四月に発足できるかと考えますと、これはどうやら無理だと思うのです。一体いつごろ発足になるか、その辺のところを、ひとつ性格、形態と、この放送大学はいつできるかという点についてお願いします。
  208. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 放送大学の構想というのは、前々から実は検討いたしておった課題でございます。とにかくこれくらいマスメディアが発達し、そしてテレビが発達して、しかも、たとえば一流の大学の先生の講義が電波を通して家庭まで行ける世の中になっておるわけですから、これを利用しない手はないわけでございます。したがいまして、わが国におきましては、高等学校の段階におきましては、すでにNHKにおきまして、あるいはまた十二チャンネルにおきまして、また産業界においても、学校の教育においてもこのテレビを使う教育というものをやっておるわけなんです。イギリスより先に実はこれをやっておるわけなんです。だからイギリスの人たちがむしろ日本に見に来たという経緯もございます。しかし、もちろんウィルソンがあのときに演説をいたしましてから、営々と努力をして、そうして来年の一月に開校をするというところまで進んできたように思うわけでございますが、われわれの技術から考えるならば、ある程度はこれは行けるんじゃなかろうかということで、昨年、河本郵政大臣と私と相談をいたしまして、そして郵政大臣のほうでは主として波の問題について確保していただくということと、それから私のほうではそのカリキュラムをどういうふうにしたほうがいいのか、あるいはまた、どういう人たちを教育をさせるのかというふうなことをいろいろ考えまして、結局放送大学懇談会をまずつくって、基本的なことについて検討していただきます。これは石坂泰三さんを会長とする。それから先は文部省の諮問機関として放送大学準備調査会というのを発足させ、松方三郎君を会長として今日まで十一回も会合をやっております。高等教育の機会均等の観点から、勉学の意思を持ちながら大学に学べなかった勤労青年、それから主婦、それから二番目は、生涯教育の機会拡充の観点から、科学技術の伸展に対応し、新しい知識、技術を求める社会人、職業人、それから高等学校の新規卒業者等、電波の許す限り幅広い層の教育要求にこたえられるよう検討中でございます。来年の四月ということはめどとはいたしておりますし、最善の努力はいたしておりますけれども、ただちょっと大きい問題でございますから、一面において意欲を持ち、積極的にやらなければなりませんけれども、同時にやはり慎重にやらなければならないと考えて、いま全力をふるって検討いたしておるところでございます。
  209. 坂井弘一

    ○坂井委員 この独立した形の放送大学、単なるそういう形の放送大学ということになりますと、これはどうももう一つ効果がないのではないか。これは放送大学新構想の一環としての考えから出たことでありますれば、むしろナンセンスではないかと思います。そういうことになりますと、通信制大学を一校ふやしたという程度にとどまってしまうのではないか。それではいけないのであって、いわゆる社会の要請にこたえて創設するからには、最高の権威ある大学を社会に開放する、こういうことでなくてはならぬと思うですね。  そこで放送事業のしさいは、私たち考えるわけですが、国公、私立を問わず、その自主性にまかせて、そうして学生はこの放送講義を使用して単位とすることができる公開講座の制度、資格付与につながるものでなくてはならぬ。同時にまた、社会人の再教育、あるいは広く学問の国民大衆への公開となり、だれでも大学へ行ける道を広くという、そうした構想の放送大学、そうであってこそ初めて意義があるのではないか、こう思うわけでございます。  同時にまた、これを実施するにあたって、非常に大きな問題としてやはり電波の問題がある。これはどうでしょうか、郵政大臣。電波のほうは問題ないでしょうか。NHKにまかせるのだとかいう話もございますが、他の民放との関係でなかなかいろいろ議論があるようでございます。ことにまた、ラジオの場合ですと、再編成の問題も起こってまいりまして、非常に困難ではないか。そういうことでつまずきますと、せっかくの放送大学がスタートできないというようなことになるのではないか、こういう点を非常に心配するわけですけれども、郵政大臣、どうでしょう。この辺は心配ございませんか。
  210. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 いま放送大学の内容については文部大臣からも御答弁があり、また坂井委員からもいろいろ御提示に相なりました。私のほうは、おっしゃいますように、この伝達手段である電波をどうするかということでありますが、これにつきましては、これを最大限に活用していただくという意味におきまして、テレビジョンにおいて一系列、ラジオにおいて一系列、これを準備をしておるわけであります。おっしゃるように、いまのラジオのほうは中波、短波、あるいは音声放送、これらに関する再編成という問題はございますけれども、いかなる無理をしてでも、これだけ世論が高まっておる時期でございますから、これに対する私どもの準備はこれから周到にやってまいりたい、こういう所存でおるわけでであります。
  211. 坂井弘一

    ○坂井委員 電波の関係につきましては、これもまあいろいろ問題があるようでございまして、たとえばカリキュラムの編成あるいは番組の企画、立案は放送大学でやる、制作と送り出しは放送会社のほうがやる、こういう形にならざるを得ないのではないかと思うわけですけれども、この場合に放送法の第三条、いわゆる「放送番組編集の自由」これについていささか疑義が出てくるのではないか、こういう点が問題にあがってくるのではないかと思うわけでございますけれども、どうでしょうか、こういう点についてはいわゆる放送法の改正をしなければならぬじゃないかというような意見もあるようでございますけれども、郵政大臣、どうお考えになりますか。
  212. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 御指摘の放送法第三条は、これはまあ放送の、いうならば鉄則みたいなものでございまして、この自主、自律といいますか、これを侵すものであってはならない、これは私どもたてまえであります。しかし、この大学設置主体というようなものがどういうふうな形になるか、これは文部省のほうでやっていらっしゃる準備調査会、このほうの結論が出ませんと、まだ何ともいえない問題だろうと思うのでございます。したがいまして、いまおっしゃるような趣旨も含めまして、放送法の改正に一体至らなければならぬかどうか、これはやはり今後の慎重な検討課題にいたしたい、かように考えております。
  213. 坂井弘一

    ○坂井委員 どうかこの放送大学につきましては、やはり文部、郵政両省の両大臣、ひとつなお密接なる連携のもとに進めていただかないと、いわゆる電波の関係なんかが非常に問題になってくる複雑な問題でございますので、その辺のところを十分お考えになっていらっしゃるとは思うのですけれども、よくしていただいて、願わくは私が先ほど申し上げましたような形態での開かれた放送大学、そういう放送大学が早く出発できますようにひとつ御努力お願いしたいと思うのです。  その中でもう一つだけ気になることがございますので文部大臣にお聞きしたいのですが、やはりスクーリングということ、これは一番問題ではないかと思うのです。イギリスではいわゆるオープンユニバーシティー、これが来年発足が予定されております。ところが学生数二万人に対して二千人の指導教官、チューターの用意をしておる。そういう慎重なる準備の上に立って初めてスタートする、こういうことでございます。そういたしますと、わが国の場合は非常に不足するのじゃないか、準備できるのかどうか、こういう点がいささか心もとなく思うわけでございます。どうでしょうか、心配ないでしょうか。
  214. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 いまおっしゃるスクーリングは非常に大事な問題だと思います。イギリスがなぜクルーリングを大事にするかというのは、オックスフォード、ケンブリッジのあの全寮制度に根づく教育というからには、やはりチューターがおって、個人的な面接指導ということで初めて教育というものが成り立つのだという考え方があって、しかもこのチューターのもとに二週間義務づけられて、そして寄宿舎に泊まってやるということ、これはやはりわれわれとしても一応考えなければならないことで、スクーリングをどうするかということは、これからの大きい課題だと私は考えております。ただイギリスのような形までいけるかどうかということは問題があるかと思います。
  215. 坂井弘一

    ○坂井委員 時間が参ったようでございですので、この辺でとどめたいと思いますが、いよいよ放送大学がスタートするということになりますと、いま申しましたスクーリングというようなことで当然出席をするという立場の学生は勤労学生、これが現在の通教生のような形で非常に多くなるのではないか。そうなりましたときに、やはりスクーリング出席に対する社会的な保証、有給保証あるいはまた育英資金を拡充していって、十分にスクーリングに出席できるようなそういう裏づけ、援助をひとつしなければならぬではないか。同時に、そういうことも考えあわせて一日も早くこの放送大学がスタートできるように御努力を願いたいことを最後に申しまして、質問を終わりたいと思います。
  216. 中野四郎

    中野委員長 これにて坂井君の質疑は終了いたしました。  明七日は、午前十時より委員会を開会し、相沢武彦君、小林信一君、芳賀貢君及び吉田之久君の一般質疑を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時三十七分散会