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1970-03-05 第63回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年三月五日(木曜日)    午前十時五分開議  出席委員   委員長 中野 四郎君    理事 小平 久雄君 理事 田中 正巳君    理事 坪川 信三君 理事 藤枝 泉介君    理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君    理事 田中 武夫君 理事 大野  潔君    理事 今澄  勇君       足立 篤郎君    相川 勝六君       赤澤 正道君    植木庚子郎君       小沢 一郎君    大野 市郎君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       賀屋 興宣君    上林山榮吉君       小坂善太郎君    笹山茂太郎君       田中 龍夫君    登坂重次郎君       灘尾 弘吉君    西村 直己君       野田 卯一君    福田  一君       藤田 義光君    古内 広雄君       松浦周太郎君    松野 頼三君       森田重次郎君    安宅 常彦君       赤松  勇君    川崎 寛治君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       細谷 治嘉君    横山 利秋君       相沢 武彦君    新井 彬之君       鶴岡  洋君    二見 伸明君       松尾 正吉君    岡沢 完治君       吉田 之久君    谷口善太郎君       不破 哲三君  出席国務大臣         法 務 大 臣 小林 武治君         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         厚 生 大 臣 内田 常雄君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  宮澤 喜一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君         労 働 大 臣 野原 正勝君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         自 治 大 臣 秋田 大助君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)保利  茂君         国 務 大 臣         (国家公安委員         長)         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君  出席政府委員         人事院総裁   佐藤 達夫君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         法務省入国管理         局長      吉田 健三君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省欧亜局長 有田 圭輔君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         外務省条約局長 井川 克一君         外務省国際連合         局長      西堀 正弘君         大蔵省主計局長 鳩山威一郎君         大蔵省主税局長 細見  卓君         厚生省公衆衛生         局長      村中 俊明君         厚生省環境衛生         局長      金光 克己君         農林大臣官房長 亀長 友義君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省農政局長 池田 俊也君         農林省農地局長 中野 和仁君         農林省畜産局長 太田 康二君         農林省蚕糸園芸         局長      荒勝  巖君         食糧庁長官   森本  修君         林野庁長官   松本 守雄君         水産庁長官   大和田啓気君         通商産業省通商         局長      原田  明君         通商産業省企業         局長      両角 良彦君         通商産業省化学         工業局長    山下 英明君         通商産業省繊維         雑貨局長    三宅 幸夫君         中小企業庁長官 吉光  久君         運輸大臣官房長 鈴木 珊吉君         海上保安庁長官 河毛 一郎君         労働省職業安定         局長      住  榮作君         労働省職業訓練         局長      石黒 拓爾君         建設大臣官房長 志村 清一君         建設省計画局長 川島  博君         建設省都市局長 竹内 藤男君  委員外出席者         日本電信電話公         社総裁     米澤  滋君         参  考  人         (日本赤十字社         社長)     東 龍太郎君         予算委員会調査         室長      大沢  実君     ――――――――――――― 委員の異動 三月五日  辞任         補欠選任   江崎 真澄君     小沢 一郎君   相沢 武彦君     鶴岡  洋君   河村  勝君     吉田 之久君   土橋 一吉君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   小沢 一郎君     江崎 真澄君   安宅 常彦君     北山 愛郎君   赤松  勇君     山口 鶴男君   川崎 寛治君     小林  進君   横山 利秋君     久保 三郎君   新井 彬之君     坂井 弘一君   鶴岡  洋君     相沢 武彦君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十五年度一般会計予算  昭和四十五年度特別会計予算  昭和四十五年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和四十五年度一般会計予算昭和四十五年度特別会計予算昭和四十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括議題とし、一般質疑に入ります。足立篤郎君。
  3. 足立篤郎

    足立委員 大臣方の時間の御都合もあるようでございますから、まず、外務通産大臣に対しまして、繊維問題につきまして御質問を申し上げます。  この繊維の問題につきましては、まさにきわものでございまして、先般来各委員から相当突っ込んだ質疑応答が行なわれております。問題点はほとんど出尽くした感がございますが、実は私は政府与党である自由民主党の一員であります。自由民主党におきましても、この問題に対しましては真剣に取り組んでおるということを、ぜひ本日申し上げたいと思っておるわけであります。ことに、わが党には繊維対策特別委員会が設けられ、かつて通産大臣をおやりになった福田一君が委員長で、熱心にこの問題に対処し、特に昨秋は使節団アメリカへ送りまして、アメリカ当局はじめ国会側とも熱心な話し合いをいたしてまいったような次第でございます。  私は、質問に入る前にはっきり申し上げたいのは、先般来野党の諸君からきわめて熱心な緻密な質問がございましたが、私ども自由民主党立場におきましても全く同じ憂いを持っておる、同じ考えを持っておるということをこの際明白にいたしておきたいと思います。  続いて、具体的な問題について質問に入りますが、実は四日ばかり前にアメリカ大使館から送られてきた「ニュース速報」、私はこれを読んでみましてたいへん驚いたのであります。それはマイヤー大使論文が載っておりまして、たいへん長い論文で、約八ページにわたっておりますが、非常に砕けた書き出しで、「「もうかりまっか」この大阪のあいさつは、私たちすべてを喜ばせてくれる。」という書き出しで始まっておりますが、問題はもう全部繊維の問題に尽きておりまして、特にマイヤー大使の意図は、いまやかましい問題になっているこの繊維問題について、私ども日本人を説得しようとする意欲がありありとわかります。しかも、内容はなかなか要点をつかんでおりますし、私どももいろいろこの繊維の問題を勉強してまいりましたが、マイヤー大使はなかなかの政治家だということがよくわかるわけであります。したがって、この問題点を、ごく簡単でございますから、読み上げてみたいと思いますが、「繊維問題を検討する場合には、木だけでなく森を見ることが重要である。そうしないと、人をまごつかせる統計の泥沼にはまりこんでしまうことになる。ある人の定義によると、統計専門家とは、裏付けのない仮定から、前もって考えた結論へ達することのできる人である。」という皮肉たっぷりな言い方をしておりますが、これはもうおわかりのとおり、わがほうが要求している被害の実態についてアメリカ側に証明を求めておりますが、さような統計数字というものは全く意味のないものであるということですね。これをこうした比喩によってけなして、軽くかわしておるということがわかるわけであります。  なお、私がこのマイヤー大使論文の中で非常に注目した点は、次のようなくだりがあります。「核心問題は、外国からの輸入品米国における繊維品価格構造に与える影響である。生産コストが上昇の一途をたどってきたにもかかわらず、米国繊維品の卸し売り価格は、この数年来ほとんど上がっていない。米国会社は、外国製輸入品からの価格競争に対抗するか、それとも主要な得意先を失うかという、どちらにしてもかんばしくない二者択一を迫られた。当然ながら、彼らは前者を選んだ。その結果、利ざやは急激に減少し、利益は驚くほど低下した。」次に、ミルズ会社等の大手の会社収益状況がごくあらまし記載されております。私は、実は先ほど申し上げたわが党の福田委員長はじめの方々アメリカを訪問した際に、先方の繊維代表等と懇談して強く感じた点の中に、このプライスの問題があるということをかねがね聞いておったわけであります。日本から出ます数量――アメリカ外国から輸入している数量は化繊ではわずか総需要の三・二%といわれております。日本はその約三分の一だから一%強ということになるわけで、数量的にいえば、アメリカ業者がいわゆるインジュリーを受けるような数量でないことは明らかであります。アメリカ需要も年々伸びているわけでありますから、これでアメリカ業者が、あるいは政界がこれほど大騒ぎをするとは思えないのでありますが、やはりいまこのマイヤー大使論文にありますように、核心の問題は価格の問題だ。これによってアメリカ繊維会社収益率も非常に落ちて困っておるのだというのが、私はやはり本音じゃないかと思うのです。私もしろうとなりにいろいろ考えてみましたが、この価格協定というのは、国際間の協定はいろいろあるようでありますが、事、繊維に関しては、非常に品目が多い。したがって、これはなかなか国際間の協定価格最低保障といいますか、協定をするということは非常にむずかしいのじゃないかと思うが、かりにこれがある程度有効にできるとするならば、アメリカ業者が身に感じているインジュリーなるものは、これによって大部分解決できるような気もするわけなんです。どうでしょうか、通産大臣、何かこれに対してお考えになっていらっしゃるかどうか。また、価格協定というようなことが無理な点もあると思いますが、通産大臣のお考えをこの際伺っておきたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは非常に有益な問題の御提起だと実は思うのでございます。私どもも、そういう角度からこの問題の解決のかぎがないかということをいろいろ考えて、実は内々では見ておりますが、二つ考える道があるかと思います。  一つは、いま言われましたような国際協定が可能であるか、たとえば小麦とか砂糖などでございますが、こういうものには御承知のように国際協定があるわけでございます。そうして、価格についてもある程度の安定帯を設けているわけでございますが、どうもこれは銘柄が、いまちょうど御指摘になりましたように、簡単なものでありますと可能でありますけれども繊維のように銘柄が無数にある、しかも毎年変わっていくというようなものについては、どうも小麦やなんぞの方式は可能でないと思われるのであります。  次に、今度は国際協定でなくて、もし日本輸出品価格が非常に安いということで同種アメリカ品物を脅かしているといたしますと、こちら側だけで輸出のための価格カルテルが結べるかという問題がもう一つあろうと思いますが、どうもそれを考えてみましても、実際問題としては、日本からの輸出同種アメリカ品物に対して非常に安い、そういう事実は毫もないらしく思われるのであります。  そこで少し詳しく申し上げる必要がございましたら、品目別に、なぜそういうことになっているかということを申し上げてよろしゅうございますが、お時間の関係はどうですか。――こういうふうに聞いておるのでございます。  まず、化合繊の織物につきましては、量産の可能な大番手のものでありますと、わが国からの輸出に四〇%の関税がかかっております。そうしますと、関税を払いました後は日本からの輸出品のほうが、アメリカ同種のものよりは事実高いわけであります。そこでアメリカ品不足にでもなりませんとこういうものは内需には使いませんで、アメリカが輸入いたしますのは、主として加工してさらに再輸出をする、いわば原料として輸入しております。これでございますと関税が還付になりますので、したがって関税を払わない状態においては日本のものが安い。ただ、それは再輸出アメリカが使っているというようでございます。それから毛織物については、いわば日本から売っておりますものはファンシーなものでございまして、アメリカでつくっておりますのは大体プレインといわれるものでございます。日本からのもののほうが高級でございまして、したがって、日本からのもののほうが高いということになっておるようでございます。  それから化合繊衣料品でございますけれども、これは確かに日本から入っておりますものが安いのでございますけれども、聞きますと、大体アメリカのマーケットには化合繊衣料品三つ価格帯のようなものがございまして、輸入品が一番安い、それからアメリカ国産品ブランドのないものが次に高い、一番高いのはアメリカ国産品ブランドのあるものということで、これらは需要層も違いますし、価格帯で大体分かれておるということのようでございます。したがって、この点でも日本からの輸入品アメリカ国内産品と競合をして、価格的に脅威を与えているという事実はなさそうでございます。  ただ、おっしゃいますように、日本からの輸入品が、いわゆる輸入品として一番安いレインジにいつまでもおるということはいかがかと思われますので、だんだん高級化をし、多様化をして、アメリカ国内品ぐらいな扱いを受けるようなプライスレインジに入っていくという努力は必要であろうと思っておりますけれども、ただ、いままでのところはそうなっておるようでございます。
  5. 足立篤郎

    足立委員 私もこのマイヤー大使論文を読みまして、実はいま通産大臣がおっしゃったようなことを調べてみました。非常に驚いたのは、私も実は日本からの輸出は安ものだろうと想像しておったのですが、調べてみますと必ずしも安ものばかりじゃないのです。確かにこれは、韓国あたりのものが一番最低のようですね。いま三つレインジとおっしゃったが、私が調べたところでは、大体アメリカあたりのデパートでは、プライスレインジというものが四つになっておるようです。最低のものが、実はこれは皮肉な話ですが、アメリカ製品韓国製品で、まあABCDにすると、一番下のDがいま申し上げたので、Cは日本製品や台湾、香港が多い。もちろんこの中に韓国製品も入っております。むしろアメリカ製品は最高級ですね。セーターあたりで十五ドル以上というような、最高級のものと最低のものでアメリカはもうけている。中間が日本製品だというようなことのようでありますし、またポリエステル関係なんかは、日本からの輸出品は値段が相当上がってきておる。四十一年を一〇〇とすると、四十三年においては一六三になっている。こういうふうに上がっているのですから、いわゆるダンピングのような形でアメリカ業界インジュリーを与えているということではどうもないように思います、これは品目がたくさんありますから一概には言えませんが。したがってどうも、この核心問題とマイヤー大使指摘している価格の問題は、確かに一つ問題点ではあるが、どうもせんじ詰めていくと、これが解決のきめ手になるとは言えないようでございますけれども、これはいま通産大臣もおっしゃったように、確かに検討の価値のある問題だと思いますので、今後の問題として御検討願います。  なお、外務大臣に伺いますが、マイヤー大使論文を見まして、おそらく外務大臣もお読みだと思いますが、非常に感心したのです。マイヤー大使が非常に熱心にわれわれにこういうものを配っている。日ごろの活動でもおそらくこういうものがにじみ出ていると思うのでありますが、なかなか説得力があるのです。たとえばこういう項目があります。「米国友好国日本に対して、対米繊維輸出を中止してくれとか、削減してくれとか頼んでいるのでもなければ、輸出横ばい状態にとどめてくれと頼んでいるのでもないのである。われわれが要請していることはひとえに、秩序正しい輸出増大日本が協力することなのである。この要請道理にかなったものであり、心からの要請である。協力はわれわれ両国の繊維工業に恩恵をもたらすであろう。」かような言い方で、なかなかこれは、これだけ読んでいますと、こっちがほろっとするような説得力のある言い方なんですね。しかしアメリカが提示してきている一次案はもちろん、第二次案でも包括規制でありまして、うっかりこれをのめばLTAと同じようになるという強い警戒心を私どもは持っていますから、額面どおりには受け取れませんが、私がきょう特に外務大臣に申し上げたいのは、こうした大使努力というものですね、そう言うと、私与党立場でたいへんどうも言いにくいのですが、下田大使の場合にはこの委員会で問題になったように、委員会に喚問しようという強い意見まであったくらいでありまして、どうも業界方々の話を聞いてみても、また昨秋アメリカへ渡った福田ミッションあたり人たち意見を聞いてみても、日本のほんとうに困っている、言いたいところをアメリカ政界なり業界がどうもよく認識してない。これでははたしてワシントンの大使館が十分なPRあるいはキャンペーンをやっているとは思えない、こういうふうな率直な話を聞いているわけなんです。一面下田大使日本へ向かってはなかなか勇敢な放送をおやりになる。これがこの委員会で強く問題になったわけでありますが、外務大臣はいままで繊維問題について、アメリカに対するキャンペーンについて、ああせよこうせよというような御指示をしたことがあるか。私はきのう党のほうで吉野公使の話を聞いたときに、外務省としては日本に駐在するアメリカのおもなる新聞社等の、あるいは報道機関の取材にあたっている記者等を集めてそうしたPRをやったことがない、こういうふうな話を聞いていささかがっかりしたのですけれども、本国においてもどうも外務省がそういう積極的な行動をしてない。アメリカにおいても大使日本を向いては勇敢にものを言うが、はたして相手国に対してそれ相応の活動をしているかということについてはどうも疑問なきにあらずという状態で、私ども非常に残念に思っているわけであります。沖繩問題のときはなかなか思い切った発言をしまして、国内で大問題になったことは外務大臣よく御承知のとおり。あの当時私も自民党で下田大使の話をじかに聞きました。下田大使説明を聞きますと、自分は決して核つきを主張したんじゃないのだ、沖繩返還を急げというのならば、すぐにでもというのならば、核つきはやむを得ないじゃないか、つまり核を抜けというのならば時間がおくれますよと、ものの道理を言っただけであるという説明でございまして、なかなかじょうずに説明するものですから、私どももああそうかなと思って実は聞き流したんですが、結果から見ますと、この下田大使日本向け発言というものは、逆な皮肉な言い方かもしれませんが、私は非常に大きな功績をあげたと思っているのですね。というのはあれで世論が沸騰しましたよ。これはどうしても核抜き本土並みだというナショナルコンセンサスがあれによって生まれたと言っても言い過ぎじゃないと思う。そのきっかけをつくったものは下田大使のちょっと外交官と思えないような思い切った発言がそのきっかけをつくったと思う。もし下田大使がそこまでそろばんに入れてあの発言をあえてやったとするならば、これは大政治家ですよ。これはたいへんなものだ。それと同じように、今度は繊維問題でわれわれ日本側を刺激するような発言をあえて何回もやる、これによって国内のいわゆるナショナルコンセンサスが燃え上がってきて、もうてこでも動かぬということになって日本が有利に解決すれば、下田大使功績は二度続くわけなんですが、外務大臣はこの下田大使人物評はどのようにお考えか、率直にお答え願いたいと思います。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 非常に率直な御批判をいただいて恐縮でございますが、こうした問題については、御指摘がございますように、日本の主張というか、日本に与える予想される――仮定の問題ですけれども被害というようなことは、社会党の加藤議員からも御指摘があったわけですけれども、そういう点を含めてPR活動その他が足りなかったのではないかという御批判は率直に受け入れて、なお十分の努力をしたいと思います。  マイヤー大使のいまの論文、これは私から批評する限りではございませんが、なかなかいいことが書いてあるんですね。しかし現実に交渉の――交渉といいますか、具体的に提案されておりますことは、どうもそれとはだいぶ違っておることはいまさら申し上げるまでもないことでございまして、ある意味ではそうした意見書というものが逆にまたわれわれをしてアメリカの蒙を開かなければならないという刺激剤になる点もあるように私は思われるわけでございまして、そういうふうな考え方がますますアメリカ側からも出てくるように、そうして、形はどうであろうとも、いわゆるコンプリヘンシブル、包括的な規制になるような案がいま出ているわけですから、これはそこにあげられたような論文言い方とは違ったことなんですから、こういう点は十分アメリカ側にも考え直してもらわなければならない、この点をいままず第一の問題として、これだけ長い時間かかって――私も実は昨年の五月にスタンズ長官が来て論戦をしましてからもうやがて一年近くになりますが、まだこちらの事情あるいは考え方というものがこの程度しかわかってこないのかということを非常に残念に思っているくらいでございますから、この点については今後ともなお一そうの努力をいたしたいと考えております。  下田大使人物評等につきましては、私からあえてるる申し上げるまでもございませんが、私はりっぱな信頼のできる大使であると信頼をいたしておる次第でございます。
  7. 足立篤郎

    足立委員 いま外務大臣から、はからずも、アメリカ側の理解が、もう一年たっても理解してくれない、残念だという趣旨のお話がございましたが、私も全く同感でございます。というのは、私はアメリカのほうに根本的な誤解というよりも誤信があるのじゃないかと思うんですね。それは、一言で言えば、占領政治当時その衝に当ったのがいま商務省でこのことを推進する旗頭になっているというような話も聞きますが、日本という国は非常に御しやすい国だ、つまり政府はオールマイテイだ、特に内閣総理大臣が声をかければ、これはもう政府はもちろん業界も必ず言うことを聞くのだ、昔からそういう訓練を受けた国民なんで、なんだかんだ言っても、いざとなればまとまるのだ、こういうふうな根本的な誤信があるのじゃないか。     〔委員長退席、坪川委員長代理着席〕 これは特に占領政治当時GHQ等におられた方はよけいそういう感じを強く持っているのじゃないかと思うので、その後の日本の成長というものについては認識不足の点が根本にあるのじゃないか。わが党の福田君あたりがアメリカへ行ったときに、いろいろ話し合ってみると、LTAの第一条の説明をして、ほかの繊維にはもう拡大しないという約束をアメリカはしているじゃないかということを言っても、知らぬと言うんですね。それからガット十九条の話をしても、知らぬと――これは知らぬのじゃない、とぼけているのじゃないかと思いますが、そういうふうな非常に横着な態度といいますか、それが明らかに見えるというのですが、結局は日本は佐藤総理が腹をきめて号令をかければ、いやおうなしに業界ももうついてくるのだ、政府のいわゆる行政指導というものは、日本は摩訶不思議な力を持っているというような考え方アメリカが持っているのじゃないか。したがって、政府をねじ伏せれば何でもできるのだ、こういうふうなことじゃないかと私は思うんですけれどもね。しかし、今日の日本におきましては、政府の行政指導というものにも限界がある。ことにこうした輸出については、日本繊維についてはアメリカ以上に自由な取引をやっている国でありますから、その全く自由なものを、前のLTAのようなものを今度化繊について、あるいは毛織物についてやれということ自体、私どもは全く無理だ、こんなふうに思っております。  そこで、外務大臣に伺いますが、吉野公使が帰朝いたしまして、いろいろな報告、情報等を入手されたと思いますが、きょう何か十一時ごろですか、飛行機で吉野公使は帰任されるようでありますが、結論としてどのような対案を吉野公使に持たせたのか、その点をひとつ御発表いただきたいと思います。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 きわめて短期間ではございましたけれども、やはり対米話し合いを断絶させることは適当でないというような趣旨から、一時帰国をさせまして、十分承知しておることとは思いましたけれども日本政府としての考え方をさらに十分にたたき込む、同時にアメリカの最近の事情も聴取いたしまして、本日帰したわけでございます。  いまのお尋ねの前提でございますが、私が吉野君の報告を聞いた中で想像している以上に新しいことは、傾向としてはございませんでしたけれども、やはり第一次案、第二次案を通し、あるいはその後のアメリカ繊維関係者全体を通じて、底に流れている空気というもの、やっぱりコンプリヘンシブの考え方というものがいまだにずいぶん強いんだなと、その点を私としてはあらためて感じましたので、これを打ち破ることがどうしてもやはり第一の要点だろう、かように考えました。  それからもう一つは、アメリカの現在の政府は、申し上げるまでもないですが、国会内においては少数与党でありますような関係もあって、米議会の内部で最近通商法案の政府からの提案があって、これに関する公聴会が今月の、もう来週から始まる。それを契機にして、どうも輸入制限立法の動きがまたあらためて非常に熾烈になるのではないか。もしそういうことがこの繊維問題にからんで表に出てくると、これはアメリカの現政権として対日親善友好関係ということからいってはなはだ望ましくないことであるので、何とかそういうことが防げるようにという意味も込めて何とか早急に話がつかぬものだろうかということに非常な焦慮を感じているというのが、二つの私の受けた印象の中のおもな点でございますから、それを頭に置いて、先ほど来御意見も承りましたような点で、アメリカ日本側に立っての理解というものを一そう進めることがアメリカ政府側に対しては非常にここは努力のしどころであり、山場である、こういうような感じを抱いたわけです。  そこで、吉野公使政府としての対案をどういうふうに持たしたかという、その次のお尋ねでございますが、まあ対案ということばにもいろいろ意味が広いと思いますけれども、いまるる申し上げましたように、やっぱり基本が肝心なので、いかなる意味でも包括的な規制というようなことを毛や化合繊全部について考えるような結果になるような案は、これはもう全然問題にならない。それからガット精神に基づいて暫時、たとえば十九条を援用するならするで、それまでの暫時の間インジュリーがあるということ、あるいは重大なインジュリーのおそれがあるというものを限定的にとらえて検討をするというのならば、それには検討に応ずる用意がある。それからもう一つは、これももう申すまでもないことなんでありますけれども、これは多数の関係国があるのだから、終局的には多数国間との協議を通じてでなければ結論は出ない問題でありますよということをまたさらに念を入れて、本件を扱う基本的な日本側の姿勢というものを明らかにしたものを持たせることが妥当であると、かように考えたわけでございますから具体的な、たとえば自主規制をやるとか、あるいは何についてやるとかいうようなことは、全然含めてはございません。まだその基礎の話し合いで煮詰めるところが非常に残っている、あるいはそこが全然打開されていないということでございますから、広い意味の、本件を取り上げる日本政府としての姿勢、まあいわば応酬要領というようなものを吉野公使に十分たたき込んで帰らせたという状況でございます。
  9. 足立篤郎

    足立委員 通産大臣に伺いますが、わが国の業界ではこの問題についてあくまで筋を通せ、こういうことなんですが、筋を通せと一口に言うことばを、日本通産大臣としてはどういうふうに受け取っていらっしゃるか、御発表願いたいですがね。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま外務大臣が言われましたようなものの考え方に、私としても尽きるのでございますが、つまり重大な被害あるいはそのおそれというようなものがある場合には規制ということを考えてもいい、同時に、それはしかし日本だけの問題ではなく、むしろ日本以外の国が関係しておる場合が多いと思われますので、そういうものの考え方は多国間で歩調をそろえてやる、こういうことが前提にならなければ話し合いというものはできない。これが業界の申します筋ということだろう。私もそう思っております。
  11. 足立篤郎

    足立委員 まあそのアメリカ被害があるということを認定することは、マイヤー大使論文にもあるとおり、非常にむずかしい問題だと私も思いますが、その場合に判定の基準になる項目としてはどういう点が考えられるか。時間がありませんから、私のほうから申し上げてみますが、たとえばアメリカの輸入が急激にふえたというその品目について検討をする、あるいはアメリカの生産が急激にダウンをした、これはもちろん輸入品の影響によってダウンした、あるいはある品目価格が非常に下落をした、これはある品目だけ下落するということはファッションの関係も出てきますから、一がいには言えせんが、繊維全体の下落ということになろうかと思いますが、なお雇用が急激に減少した、もちろんこれは企業の転廃業、他に転業したほうがもうかるからというのでさっさとやめる場合がアメリカにはずいぶんあるようでありますが、あるいは合理化による人員整理、そういうものは雇用の減少には私は勘定に入れるべきじゃないと思いますが、一般的にいって企業が不振になって雇用が減少した、あるいは企業の収益率が低下してきた、また輸入品と実質的に競合しておる、マフラーのように向こうはほとんどもうつくっていないというもの、こういうものは幾ら入ったって私ども関係ないと思うのですが、実質的に競合しておるものについては、向こうがいま申し上げたような被害があれば検討に値する、こんなふうに私どもはしろうとなりに考えているのですが、どうでしょうか。通産大臣からお答えいただけますか。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまの御理解でまことに正確だと思います。
  13. 足立篤郎

    足立委員 何ぶんどうも時間が足りないものですから論じ尽くせませんが、私は、きのう実は吉野公使の、アメリカにおける事情などもいろいろ伺いましたが、もう話の大部分は、アメリカ側の動きがきわめて激しい。ことに国会方面ではもう是が非でも立法せよという気がまえだ、議員のうち三百人くらいがこれに賛成しているというような話ばかり聞きまして、まあ吉野公使は非常にまじめな人柄だから、ほんとうのことをおっしゃったには違いないと思うが、聞いている私ども立場から申し上げますと、何かいかにもどうかつを受けているような感じを受けたわけです。それも三百人といっても、私は繊維関係プロパーの議員ではないと思うので、いまいろいろ伝えられているその他の品目日本からの輸入を何とか押えようと考えておる業界は数多くありますから、それらの人々が繊維で突破口をあけて、何とか日本からの輸入を規制しようという腹がまえがあって、この繊維の議員団に便乗して加わって三百人になったのではないかという疑いはありますが、どうも日本に対するこうしたやり方は、この問加藤清二君はオキュパイド・ジャパンということばを使いましたが、私どもそういうことばはどうも使いたくありませんが、とにかく日本くみしやすしと見て、多国間で協定すべきものを日本を目のかたきにして、こうした攻勢に出てくる。まあ私の個人の気持ち――これは自民党という立場では申し上げられませんが、個人の気持ちを率直に申し上げれば、どうもアメリカは白い手袋をはめてタキシードを着て商売をやる。しかし内面は、ときにはむちをふるって強引な商売もやる、こういうふうな印象が押え切れないわけです。もしアメリカがほんとうにインジュリーを受けてどうにもならないというのならば、あえてガットの制裁を覚悟の上で立法をすべきじゃないかというふうにも私は思います。まあこれは、いま外務大臣は、そういうことになればたいへんだ、日米間の友好関係がくずれるとおっしゃいますが、日本だって法律によって百何品目規制をやっているのですから、アメリカ側だって、世界一の大国とはいいながら、ほんとうに困ったというのなら、あっさり筋の通った立法をやってこの問題を片づけたらいいじゃないかというふうに、私個人としてはそういう感じを持ちます。かえってこういう関係で日米間がごたごたしまして、アメリカの圧力に屈して、ついにLTAの愚を繰り返して、轍を踏んで、またここに毛や化合繊規制を受けるというと、日本人の気持ちというものは、あとに残るしこりは屈辱感ですね。これは将来の日米間の友好にかえってじゃまになると私は思う。あっさりアメリカが立法すれば、これは非難はするでしょうが、アメリカがもう背に腹はかえられずにやったのだ、日本だってやっているじゃないかということで、これはかえってあっさりすると思う。アメリカはそれは自由貿易主義を唱えてきた立場上やりたくないから、日本に自主規制を求めていると思いますが、これは非常に虫のいいやり方だと思うのです。もしアメリカが法律を出してアメリカ自身の輸入規制をやれば、これはたいへんな手間ひまがかかりますよ。おそらく現在統計さえも不十分なアメリカ政府が、これはやりきれないと思う。何万人という人を置いてチェックしなければ、おそらく完全な輸入規制はできないと思う。ところが日本は、じゃ輸出規制が簡単にできるかというと、これは御承知のとおり、そんな簡単なものじゃない。ただ輸出を円満にやるために非常な苦労をして、手数をかけて輸出規制をやっているのでしょう。その手間ひまを日本に押しつけておいて、ガットの面からいえば、アメリカは涼しい顔をして、白い手袋で商売をする。それで日本が自主規制をやったのだからガットの制裁は何ら受けない、これはかってにやったことだということで涼しい顔をしておる。これではあまりに虫がよすぎると思うのです。私どもアメリカが立法することについて、これをおどしだ、あるいはどうかつだという受け取り方をするのでありますが、むしろあっさりおやりなさいといったほうが、日米関係の将来に私はいいんじゃないかと思うのですが、時間がないし、どうもこのことについて外務大臣の答弁を求めても無理のように思いますから、松浦周太郎君から、これは農林関係の問題のようですけれども、関連質問の申し出があり、大臣の御都合で私の持ち時間の間にはさんでいただくことになっておりますから、私は、この際、私どもの主張を十項目に分けてはっきり記録にとどめさしていただきたいと思っております。  この繊維問題に対する私どもの主張として、第一は、化合繊製品需要は新素材、新商品の開発と無限の可能性を持ちつつ爆発的に増大しつつある。需要が停滞ぎみの綿製品と全く事情が異なる。これが第一であります。  第二は、米国繊維産業は新たな輸入制限措置を必要とするような困難な立場ではない。米国衣料品業界の将来は非常に明るいという見方を私どもはしております。  第三は、日本からの繊維二次製品米国産業の供給し得ない分野を主として補完しておりまして、何ら米国産業にインジュリーを与えていない。  第四は、ファッション時代において繊維の二次製品のあすの流行を予測することはきわめて困難である。ファッション時代においては米国繊維産業は極東諸国との競争上かえって優位に立っていると私ども考える。なぜならば、われわれはファッションのあとを追っていかなければならないからであります。  第五は、アメリカ向けの毛・化合繊輸出問題は特定少数品目の自主規制にとどまることはあり得ず、一品目規制は多数の品目に及び、さらに他の商品に波及すると考えております。これはLTAの実績が示すとおりであります。  第六は、繊維二次製品輸出業界は中小の専門業者を基盤としておりまして、輸入制限はわが国の社会的、政治的な大問題を引き起こすと私ども考えております。  第七は、毛・化合繊製品の輸入制限はニクソン政権のインフレ抑制策と逆行して、米国の消費者にかえってインジュリーを与えるというふうに思っております。  第八は、米国の毛・化合繊業界日本の二倍以上の高関税に保護されております。米国繊維に関し世界で唯一のオープンマーケットであると主張しておりますが、事実上はきわめて制限的でありまして、むしろ日本こそ、唯一完全なオープンマーケットであります。  第九は、わが国が対米綿製品の自主規制を開始した一九五六、七年当時と現在とでは全く事情が異なっておりますし、対米綿製品規制で体験した、正直者がばかをみるあやまちを二度と繰り返すべきでないと考えております。  最後、第十は、貿易の拡大を基本精神とし、ガットの例外として暫定的性格を持って実施されたはずのLTAは輸入制限の具にのみ利用され、永久化、固定化しようとしております。要するに、対米綿製品規制は自主規制とは名ばかりで、実態は輸入クォータと何ら変わらず、いずれも商取引の流動性を全く無視したシビアな規制をしいられているからであります。  以上、十項目に分けまして私どもの主張を明らかにして、綿製品繊維関係の私の質問を一応終わらしていただきます。
  14. 坪川信三

    ○坪川委員長代理 松浦周太郎君より関連質疑の申し出があります。足立委員の持ち時間内でこれを許します。松浦周太郎君。
  15. 松浦周太郎

    ○松浦(周)委員 足立さんにお譲りを受けました時間は二十分でありますから、これをはみ出さないように努力をいたします。したがって、書いてまいりましたから、できるだけ短く質問いたしますので、明快に短く答弁をしていただきたいと思います。  それは、日ソ漁業交渉に対する問題であります。本予算委員会質疑応答を聞いておりますと、特に外交問題については、米ソ東西を問わず  一貫した自主性をもって臨まなければならないのでございますが、米国については細密に掘り下げられておりますけれども、ソ連については、あまりタッチされないのは一体どういうものでございましょうか。沖繩の返還のめどがついた現在、北方領土、千島の返還こそ、民族の切なる悲願でございます。これらのことについて多くの質問者がなかったのは、はなはだ遺憾とするところであります。特に、目下行なわれつつある日ソ漁業交渉は難航し、行き詰まりの状態が続いておると伝えられておりますが、その原因、現在までの交渉経過並びに見通しについてはどうなっておるか。国民はこの成り行きを注目しておるのでありますが、いままでに質問が行なわれないので、この機会に、関連して時間をいただいてお伺いをいたすのでございます。  まず、カニについてでございます。まず第一に、カニの交渉はどうなっているのであるか。大陸だなの資源と公海自由の原則が日ソ間で戦わされて、昨年は一応はこの両案をたな上げして、現実的に解決をしたが、ソ連は昨年は、自分の国であまり利用しない種類のカニ資源があるにもかかわらず、日本に対し大幅な削減を主張いたしました。日本側にとってはたいへんな損害でございました。大体ソ連は、大陸だなは自分の庭である、その庭の先に咲いている花を恵んでやるのであるから、日本発言権はないのだという意識があまりにも強過ぎる傾向にあると私は思います。この大陸だなと公海の自由の原則との関係において、外務大臣はどう考えられるか。また農林大臣に対しましては、カニ資源の関係について、日ソ間の技術的な食い違いをどう解決され、カニの漁場並びにその数量についての見通しはどうであるかという二点を、まずカニについてお伺いをしたいと思います。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 カニについての日ソの交渉については、二月九日にモスクワで今年は開始いたしたわけでございますが、すでに相当の時日が経過いたしましたけれども、双方の見解が対立しております。そして交渉が、ただいまも御指摘のように難航いたしておりますが、同時に、今月の二日から第十四回の日ソ漁業交渉、これはサケ・マス交渉でございますね、これは予定どおり始まりましたので、これと並行して、カニについても交渉を続行することにいたしております。  それから、内容の問題でございますが、これもただいま御指摘のとおりで、わがほうとしては、カニは公海の漁業資源である、そして資源状態が良好であるという立場を堅持しておるわけですが、ソ連のほうは、大陸だな資源である、こういう主張であり、かつ資源状態が悪化している、こういう立場をとっているのが、基本的に難航しておる原因でございます。しかし、大陸だな資源の問題については、従来からもしばしば日本政府の態度を明らかにしておりますように、大陸だな資源として日本は認めるわけにいかない。これは、大陸だなにつきましての条約の論争もございますが、日本政府としては、一貫してこれに対して反対の立場をとっておる。これは御承知のとおりでございますから、この基本線を維持して、昨年もそうでございましたが、実際問題として、その論争は論争として妥結をするということをあるいは考えなければならぬかと今年も考えております。
  17. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 一般的なお話は、ただいま外務大臣からありましたから省略いたしますが、御存じのように大陸だなの主張をいたしておりますために、いままでは日ソ漁業委員会でカニもサケ・マスも同時にやっておったのでありますが、向こうの主張ががんこでありますので、ことしから、やむを得ず、こちらは同じメンバーでありますけれども、カニだけは切り離して交渉が行なわれておるわけであります。いま外務大臣の御報告にありましたように、先方は技術的に見て資源が非常に枯渇しているという主張でありますが、わがほうは技術的に見てそうではない、こういう主張で対立をいたしておるわけであります。現在は両方とも平行線で交渉をしておるわけでありますけれども、同時にサケ・マスのほうももう始まっている。そこで、私どもといたしましては、従来の主張を曲げるべき理由が何もございませんので、なお強くこちらの希望を述べて折衝を継続中であります。現在の段階でどうなっておるかということは、ちょっといま申し上げかねる状況でございます。
  18. 松浦周太郎

    ○松浦(周)委員 次は、サケ・マスの問題でございますが、お話しのように、三月二日にサケ・マスの問題が始まったのですが、その前に、モイセーエフ氏は、タス通信を通じて本年のマスは不漁の年である、資源状態がきわめて悪化しているからマスの全面的禁止の必要があると言い、またベニについても規制を強化する必要がある等の報道をしております。これはまことに重大な問題である。会議に入る前にこういうことを代表的な新聞を通じて言っているということは、まことに重大であります。これは外務大臣に対しまして、このことは一体どういうお考えをもってお臨みになるかということを私はお伺いするのであります。  同時に、農林大臣については、この技術的な議論について、相当な技術的な反駁論は持ってお臨みになっておられることと思いますが、この際これを明らかにして、心配しておる国民に安心を与えていただきたい。同時に、今年の先の見通しは困難であるとはいわれるが、相当の設備をもって用意をしておる業界においては、約一千五十億ぐらいの水あげをこのサケ・マス及び北洋漁業全体においてはやっておりますのでございますから、これについて農林大臣はどういうお考えをもってこの技術的の見解を解決される考えであるかということを、まずお伺いいたします。
  19. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御指摘のとおり、このサケ・マス交渉に入るに先立って、モイセーエフ・ソ連代表が、ソ連の新聞紙に、記者に答えたのか積極的であるかわかりませんが、意見を発表しておる、これは事実でございます。そして、それから想像されることは、この交渉について、なかなかソ連としてのかたい態度を表明してくるであろうということは予想されるわけでありますけれども、しかし、この交渉は始まったばかりでございますし、本交渉においてモイセーエフ代表は、日本側代表に対しては、まださような発言はしておらないわけでございますから、あくまでこれは本交渉の場において意見を大いに戦わしていくべきであると考えております。それから、内容的には農林大臣からお答えをいただくほうが適当であると思いますけれども日本側としては、科学的な根拠に基づいて、十分の主張をなし得る自信を持って、そしてこの交渉に臨んでおるわけでございますから、今後の努力によってこの難局を打開してまいりたいと思っております。
  20. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまお話しのようなことを、日ソ漁業委員会を前にして、交渉の代表者がそのような見解を述べたということを、私どものほうでも承っておるわけでございますが、これはソ連側の一方的な見解に偏しておると思います。ソ連側の交渉態度を示すものとして、私どもといたしましては重大な関心を持たざるを得ないのでありますが、今後わがほうの代表者と委員会で十分討議させたいと考えておる次第でございます。いまお話しのように、サケ・マスの資源状態の評価につきましては、日ソ漁業委員会において、日ソ双方の漁獲資源、調査資料、研究成果などを持ち寄って、科学的討議を経て、公正妥当な結論を出すべきものと考えておるわけでありますが、したがって、ことし――マスは一年おきに豊漁、不漁を繰り返し、本年はちょうど不漁年に当たるわけでありますが、不漁年におけるマスの資源状態は、三十九年を底として近年は回復基調にございまして、今年来遊するマスの親に当たる四十三年のマスの資源状況も、ソ連側指摘のように特に少ないという事実もなかったのでございまして、本年の来遊状況も四十三年と同程度のものになるとわがほうは判断しているわけであります。  ベニザケにつきましてては、本年はアラスカ系の大豊漁の年に当たりまして、全体としても資源状態は例年になくよいと考えております。また、西カムチャッカ系につきましても、沖合いにおける未成魚の漁獲状況から見ましても、ソ連側の指摘のようなことは全くありませんで、近年の平均に近い来遊が予想されておるわけであります。  サケ・マスの資源評価につきましては、日ソ漁業委員会で、いまのような事情を根拠にいたしまして、科学的なものに基づいて十分論議を尽くさせたいと思っております。
  21. 松浦周太郎

    ○松浦(周)委員 次に、ニシンの問題でありますが、これもモイセーエフ氏はさらに、第一は、オリュートル・ニシンについては全面的に禁止する、またオホーツク海のニシンにおいても規制を強化する必要のあることを指摘しております。以上はいずれも日本側の乱獲に基づくものであると断じておる。これに対する政府の所信はどうですか。  私は少し向こうが言い過ぎじゃないかと思うのです。特に、昨年は日ソ両国においてはこの問題については、意見の交換を行なって、禁止区域の設定をして、漁船の削減を話し合って、現実的にこれをきめておるのです。それに日本だけが乱獲を行なっておるというようなことを――自分のほうも、とっているのです。それで日本だけにその罪をかぶせてこういうことを言うということは、日本の外交上から見てもはなはだけしからぬと思うのですよ。一体、向こうの人たちはこういうことを言い過ぎるのです。だから、こちらのほうの側においても割合負けしないようにひとつがんばってもらたい。ほんとうの話ですよ、これは。これは漁民の偽らざる叫びなんです。これについて両大臣の御意見を……。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まことに御説ごもっともだと思います。日本側の漁民と申しますか、水産関係者は、日ソ漁業委員会で合意いたしました事項については、私は実に忠実にこれを順奉していると思うのでありまして、日本側の乱獲云々などといういうことは、事実に反しているといわざるを得ないわけでございますから、こういう点を踏んまえて、十分御期待に沿うような交渉をさせるつもりでございます。
  23. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ニシンにつきまして、ソ連側は昨年の日ソ漁業委員会におきまして、オリュートルのニシンの全面禁漁及び西カムチャッカ・ニシンにつきまして、産卵の前及び産卵期の禁漁を主張しこれについて討議を行ないました結果、これら水域における操業隻数の制限、禁漁区域の設定を行なうことに合意いたしました。昨年のわが国のこれら水域におけるニシンの操業は、この日ソ漁業委員会の決定に従って、日ソの合意どおりに行なわれたものでございまして、決して乱獲ではなくて、ソ連の非難は事実に反し、根拠のないものであると確信しております。  なお、本年の規制措置につきましては、科学委員会におきまして日ソ双方の資料に基づいて科学的に審議を尽くしまして、双方の合意のもとに決定されるべきものであると考えております。
  24. 松浦周太郎

    ○松浦(周)委員 努力をお願いいたしたいと思います。  オホーツク海という海は、サケ・マスについてはソ連の独占的な漁場なんです。全然日本人の手を入れさせないのです。しかし、日本の領土もオホーツク海に相当の長い面積を持っておる。その日本の領土の前において、はえなわをも、それから刺し網もさせない。日本海及び太平洋は北緯四十八度以下においてはさせております。しかし、オホーツク海は波打ちぎわからやらせないのです。このことについては、長年北海道の漁民の泣くような叫びなんです。その叫びは、天理にもとるというのです。なぜならば、北海道に流れておる全河川がサケ・マス全面禁止です。それで自然ふ化と人口ふ化と両方やっておりますが、おそらく天文学的数字の人口ふ化と自然ふ化が放流されております。それがオホーツク海をのぼっていくものを全然とらせないというその仕事を、だれがやっておるかというと、政府の補助金によって漁業組合がやっているのです。その漁業組合が一匹もとらせないとは、あまりにもひどいじゃないですか。これは天理にもとりますよ。この交渉ぐらいは日本外務省及び農林省はできないのかとわれわれに訴えてくるのです。このことは、いまの交渉の中で一番小さな問題です。一番小さな問題であるけれども、天理にもどるということを銘記してもらいたい。これについて、あとで御答弁を願いたいと思います。  私はもう三分しかありませから結論に入ります。非常に御迷惑をかけますから。  今年の日ソ漁業交渉は、わが国の北洋漁業の死命を制するような重大な岐路に立っております。その前途は決して楽観を許さないものがあります。いままでと違うのです。現在の生産及び水揚げ数量は、四十三年の状況を見ると、サケ・マスにおいて四百億、カニにおいて二百億、ニシンにおいて五十億、トロール並びに底びき漁業が四百億、総計にいたしまして千五十億が四十三年でありますから、最近は漁価が上がっておりますので、千二百億ぐらい水揚げをいたしております。のみならず、この北洋漁業というものは、日本民族が歴史的にずいぶん長い沿革を持っておるのです。そして日本人の血と汗によって開拓されたものなんです。この北洋漁業の重要性にかんがみて、政府はもっと本腰を入れて、現地の代表が十分の力を発揮することのできるように、日本側の代表を強力にバックアップして、あるいは訓令を発して、最後までねばり強く交渉されなければならないと思います。これが前提要件だと思う。  しかしながら、また反面を考えれば、シベリアの開発とかその他国際情勢の問題もありますから、結論においては交渉が円満に妥結されて、日ソ両国の友好親善の実があがることがまた国際外交上きわめて重要な問題であるとも考えます。でありますから、このことを深く銘記せられまして、今後とも交渉の成り行きを十分に重視し、最悪の事態に備えて万遺憾なき措置を講じられることが最善のことであると私は思います。このために全力を政府は尽くすべきであると思います。  さきの、オホーツク海の独占的な態度に対する考え方、一尾もとらせないというオホーツク海の漁民の嘆きに対する政府のあたたかいお答え、この基本条項に対する政府の心がまえを両大臣からお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
  25. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まことにごもっともな御質問でございます。私といたしましても、昨年もずいぶん苦労いたしましたが、今年はなお一そう難航が予想される。また、それだけにわがほうの水産業に対しても非常に大きな影響を及ぼしかねない問題でございますから、全力をあげて万遺憾なきを期してまいりたい、かように考えております。  特に、北洋におけるサケ・マス、カニ漁業は、ただいまも御指摘がございましたが、伝統的にわが漁民が開発したもの、そういう点から申しましても、資源の保護ということが重要なことは申すまでもございませんけれども、こういう伝統的な関係から申しましても、有益な資源はあとう限り合理的に利用するということに根拠を置きまして、外交交渉も東京からも十分バックアップいたしまして、万遺漏なきを期したいと考えております。
  26. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 オホーツク海につきましては、第三回の日ソ漁業委員会以来禁漁になっておるわけでありますが、わがほうといたしましても、資源状態等について十分な資料を整え、私どもはただいまお話しになりましたような方向に向かって努力をしているための研究をいまやっております。  今回の交渉のことにつきましては、ただいま外務大臣が御答弁申し上げましたとおりでありまして、全力をあげて成果をあげるようにいたしたいと思っております。
  27. 松浦周太郎

    ○松浦(周)委員 オホーツク海の沿岸に対してもう少しあたたかみのある方向を向こうに承認させることはできませんか。これは全く天理にもとるのです。自分でふ化、放流したものに対して、一尾もとらせないなんて。北海道の全河川は禁止河川です。それで全部自然ふ化と人工ふ化を政府の予算でやっているのです。それは全くおかしいじゃありませんか。そこの点はもう少し同情のある答弁をしてください。
  28. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 松浦さんのお時間がなかったようですからはしょってあれでありますが、いまさっき申し上げましたように、農林省、水産庁といたしましては、先方が第三回以来禁漁を主張してまいりました理由に基づいて、そういう理由が正当なるものなりやいなやということについて資源的にわれわれは立証するためにいろいろな調査研究を続けておるわけでございますので、外務省とも協力いたしまして、そういうわがほうの主張の根拠がだんだん積み重ねられてまいりましたときには、十分そういう方向について努力をしなければならない、こう思っていま研究を続けておるところでございます。
  29. 足立篤郎

    足立委員 私は、米の生産調整の問題に関連して、二、三伺いたいと思います。  私は、実は二十年前から米の統制撤廃を強く叫んできた一人でございますが、今日の段階におきましては、逆に食管制度はどうしても守っていかなくちゃならぬと思っております。そのためには、本年計画されております米の生産調整はこれまたどうしてもなし遂げる必要があると考えておるのであります。万一、今日の段階においてこの食管制度が崩壊した場合を考えますと、これはおそるべき結果が起こるのではないかと私は思っております。それは単に農民に大きな打撃を与えるだけではなくて、おそらく日本経済全体が大ゆれにゆれまして、米価はもう半値以下に下がるだろうと思います。いま政府がもてあましている貯蔵米は、農家の納屋の中で夜泣きをするという状態が起こってまいります。農村の購売力はがた落ちになりますし、したがって、いま農村にどんどん売れている自動車をはじめ、テレビその他の電気製品などは売れ行きがぱたりととまりましょう。また、農村を得意先にしている地方の商工業者、言かえるならば、中小企業、こういうものも火の消えたような打撃を受けると思います。大きくいえば、日本経済は成長どころじゃなくなって、大恐慌が起こるともいえると思うのであります。  したがって、食管制度を守ることは、単に農民を保護するというような考え方ではなくて、これはよく世間では、これまでして農民を保護する必要があるか、これは過保護の上塗りじゃないかというような意見も聞こえますのであえて伺うわけでありますが、これはもうここまで来ますと、当面は不可欠の政策であって、日本経済の安定成長を守るためにやむを得ない、背に腹はかえられない、こういうふうに私は感じているのであります。大蔵大臣はどういうふうにお考えでございましょうか。
  30. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまの足立委員の御所見、私も全く同意見です。やはり食おさまって初めて民生は安定する、その根幹をなすものは食糧行政である、こういうふうに考えます。とにかく戦中からなじんできたこの食管制度、これが崩壊するというようなことがあると、食生活に広く深刻な影響があるであろう、こういうふうに思います。農民もまた食管制度を維持したいという願いを持っておる。ですから、何とかくふうをこらして、これが立ち行くようにという最善の努力をしているというのがいま政府の姿勢でございます。
  31. 足立篤郎

    足立委員 そこで続けて伺いますが、他の委員からもたびたび指摘されたことでありますが、米の生産調整をいわば強行するということは、非常に無理な政策であることは申すまでもありません。米価を据え置いて一割の生産調整をしいるということは、米に依存する農民はことしは所得を一割削られるということでありますから、これは事、重大であることは言うまでもないのでありますが、しかし、一面において、いま私が指摘したように、食管制度がもしも崩壊するようなことがあれば、それこそそれ以上に事、重大だということを多くの農民も理解をしてくれておる。のみならず、知事会や生産者の団体である農協等もこのことをよく承知してくれて、協力を約束してくれているわけであります。もちろんこれは、生産調整奨励補助金なるものが三万五千円以上出るということを前提にして協力を約束してくれているのでありますが、しかし、農民の個々の心理というものは非常に私は微妙だと思うのであります。理屈はわかる、頭ではわかるが、しかし、そうかといって自分がこの犠牲になってことしは所得を減らされるというのではどうにもがまんができない、こういう非常に微妙な悩みを持っておると私は思います。これはおそらく全国の稲作農民の共通した心理ではないかというふうに考えております。  したがって、この米の生産調整をことしやり遂げるというためにはいろいろなくふうが必要でございまして、知事会や農協その他市町村関係、みんながいろいろな対策を練ってくれておるので、いろいろな政策をあわせて、どうにかこれが達成できればまずありがたいことだと私ども実は考えているわけであります。その中で、わりあいにいま順調に農民の理解を得て減産効果をあげ得ると思っておるのは、御承知の通年土地改良というのがあります。これはたとえば東北、北陸方面あたりでは、土地改良をやろうといたしましても、冬場は工場ができませんので、私ども実はかねて東北、北陸方面を視察いたしましたが、理想的な圃場整備ができておるのは開田をしたところだけなんですね。これは機械化ができております。しかし、在来の反収十五俵とかいって自慢しているような秋田県あたりの米どころへ行ってみましても、実は圃場整備は案外進んでいない。私ども静岡県のように、県民の消費する米の半分ぐらいしかとれないような米の赤字県がかえって土地改良は全国で一番進んでいるほうだと思う。というのは、気候風土に恵まれまして、従来は刈り取りが終わってから冬場に工事が終わって春の作付に問に合うように土地改良ができた、こういう利点があったわけですけれども、しかし問題は、むしろ米どころといわれる東北、北陸あたりの主産地の土地改良等を解決しなければ、総理が言うような機械化農業、近代化農業というものはできないのであります。したがって、今度のこの生産調整は、そうしたいままでやりたくてもできなかった土地改良がこの施策によって進むということは、農民にとっても非常なプラスであります。国策の面からいっても、大所高所に立っても非常なプラスになる、私はこういうふうに思っております。  その土地改良をやるのに、ことしは全国平均で三万五千七十三円、この奨励金をもらって通年土地改良をやるということで農民も理解し、協力してくれているのですが、実はこの委員会において大蔵大臣及び農林大臣の御答弁を聞いていると、米の生産調整奨励金はことし限りの措置である、まことにどうも、私から言わせるとぶっきらぼうな御返事であります。予算はことし限りには違いないが、そう言われてしまいますと、ことし、いま申し上げたようにいろいろな角度から施策が行なわれるのですが、これを理解して協力しようとしておる多くの農民に対して非常に大きな精神的なショックを与えるのではないか。これは甘えて、何年でもペンペン草をはやしておいて補助金をくれというのではなくて、これがことしで打ち切られるというような感じを持ちますと、せっかくことしうまくいこうとしている生産調整にかえってひびが入るという心配がありますので、もう一度ひとつ、これは特に大蔵大臣にお答えをいただきたいのです。まあ将来の約束はできぬと言われればそれっきりですが、かつて、だれよりもだれよりも農民を愛すとおっしゃった大蔵大臣が、この辺について御配慮がないはずはないと思うので、政治家としての御答弁を願いたいと思います。
  32. 福田赳夫

    福田国務大臣 今度百五十万トンの減産措置をとる、これはもう非常に画期的なことだと思うのです。何とかしてこれを成功さしたい。そこで初めて食管制度維持という大目標のために柱が一つ立つ、こういうふうに考えておるのです。  しかし、奨励金を百万トンに対して出すということになりますが、さあそれじゃ四十六年度はどうするんだ、四十七年度はどうするんだということになると、奨励金を出すだけでは事の解決にならない。そこで、先般ここで私が申し上げたのですが、他用途にあまた水田が転用されるということを考えなければならない。そこで、さしあたり四十五年度においては五十万トン分、つまり十一万八千ヘクタールの水田の他用途転用ということを考えたわけなんであります。そういう非常に画期的なことでございますので、奨励金を出すということで満足してはいかぬ。この措置はこの措置として四十五年度には実行しますけれども、その成り行きを見まして、四十六年度以降のことはまた真剣に考えなければならぬ、こういうことを申し上げているわけであります。
  33. 足立篤郎

    足立委員 おっしゃるとおり、私も、この作付転換が円満に行なわれればこれにこしたことはないと思います。しかしではなぜ米がこんなに余るような状態になったかという根本にさかのぼって検討してみないと、その答えは簡単には出ないと思うのです。言いかえるならば、米は食管制度で守られておりますし、これほど徹底した価格保障制度はないわけですね。しかも単位当たりの生産力は相当上がってきた。これは農薬の進歩や肥培管理の向上、技術の向上等いろいろあります。したがって、簡単にいえば、米をつくることが一番経済的に安定をしているし、有利であるというその条件につちかわれて米が余るようになってきたということだと思うのですね。したがって、いまの大蔵大臣のおっしゃることはまさにそのとおりで、私もそう思いますが、それを達成するためには、やはりいま言われている総合農政というものを、この際、かりに二重の投資になりましても、思い切って進めていかないと、これはだめじゃないか。  というのは、この米のほうを今度は冷たく扱って、後退させてバランスをとるというのじゃなくて、いままでむしろ手が届かなかった果樹、畜産、蔬菜園芸、そういうふうな他の種目についてこの際、生産奨励といいますか、価格保障制度あたりを徹底し、流通機構を整備し、政府があたたかい手を差し伸べることによって、そういうものに転換をしても豊作貧乏にならないという保障が得られて、安心をして転換できる素地をつくってやるということがまず第一に先決問題だと私は思います。このためにはたいへん金もかかるわけですけれども、一方、米のほうの赤字負担をしょいながら、こういう新しい農政に手を差し伸べるということは、非常に財政上からいうと無理ではありますが、実は一番早道だと私は思うのです。大蔵大臣、どんなふうにお考えですか。
  34. 福田赳夫

    福田国務大臣 足立委員のおっしゃること、よくわかります。わかりますが、反三万五千円というとこれはかなり高い金なんです。私は、まあまあとにかく粗収入にしまして反収六万円だ、そこへ三万円出す、まあせいぜい三万円か、こういうふうに思ったんですが、これを最終的には三万五千円とした。これは全国知事会あたりで、ぜひ何とか三万五千円は出すべきだ、そうなればわれわれも全面的に協力できる、こういう話なんです。ぜひこの減反措置を成功さしたい、それにはここでちびるべきではないというので、三万五千円という額を支出することを決意したわけなんです。  そこで、四十六年度もあるいはその先もまた同じような措置がとられるのだというようなことになったら、根本的な措置である水田の他用途への転用、こういう考え方が消えてしまいやしないかということをおそれるのであります。やはり根本的には、水田が他の用途に転用される、あるいは公共用地に徴用されるとかあるいは工業用途に向かっていくとか、そういうことではじめて基本的なこの問題の解決になる、こういうふうに考える。その上において、支障がありやしないか、そういうようなことも考えながら、とにかく四十五年度においては十一万八千ヘクタールの他用途への転用、これを成功させなければならぬ。その成功をさせるためには将来のことは考えるいとまがない、そこに全力を集中しなければならぬ、こういうふうに考えているわけでありまして、農家が何とかしてこれによって農家の願いとする食管制度維持への道を切り開いていただきたいという念願からそう言っておるわけであります。
  35. 足立篤郎

    足立委員 大蔵大臣と私とは若干どうも認識の相違があって、議論が行き違ったように思うのです。大蔵大臣は、まあ三万五千円以上出したんだから知事会や農協も協力するというので、これは大蔵大臣がねらっておるように大部分が転作でもうことし勝負がついて、あとは政府にそうやっかいかけずにいけるのを期待しているのだ、こういうことだった。どうも私どもの認識は、もちろん一部はいくでしょう。一部はいくでしょうが、それはごく限られた、非常に恵まれた土地条件のもとにあるところは可能かもしれません。しかし、現在の大部分の水田は、なかなかそれは転作しようとしても土地条件が転作に適しない場合が多いわけですね。だから、もしこれをどこまでも転作で片づけよう、全部を転作で片づけようとするならば、これは思い切って構造改善あたりにこまかな配慮をいたしまして、たとえば一例を申し上げますと、山合いのたんぼで二町歩か三町歩しかないけれども、両方の山をブルでくずして果樹の団地をつくるとか、あるいは蔬菜、畜産、そうした方面に転換できるような土地条件をつくってやる。それはいま御承知のとおり、団体営で補助金の対象になるのは二十町歩以上ですから、山合いあたりのそう手軽なところでは、一カ所では団体営の対象にならないわけなんです。     〔坪川委員長代理退席、小平(久)委員長代理着席〕  それを今度はそうした生産調整という大きな見地に立って、たとえば一つの町村をまとめまして、数カ所あっても二十町歩以上の計画が実行されるならば、一つの地域とみなして補助対象にして構造改善を進めていく。そうすれば、これはもう永久に水田には返りませんよ。一番大蔵大臣の言われる目的を達するわけなんです。いまのままでその水田をいきなり、それじゃ畑作物に転換をして飼料作物をつくれ、こう言われましても、よほど土地条件が恵まれたところでなければこれは不可能に近いところが大部分じゃないかと私は思うのです。  だから、なかなか大蔵大臣がおっしゃるように簡単にはこれは進まないので、私どもは、ことしは背に腹はかえられないので、米をともかく減らさなければいかぬので、ありとあらゆるくふうをして、農林省もそうだと思うですが、さっき申し上げた通年土地改良等に便乗して合理的に米を減らさせる、これは農民も納得しますから、こういう手をいろいろ加えてことしの問題を解決するが、同時に、私が、さっき指摘したのは、これからの総合農政というものを、これは金がかかるけれども、思い切っておやりになる腹を大蔵大臣にきめてもらわないと、根本的な解決はできませんよ、こういうことを申し上げたのです。  そこで、農林大臣どうですか、いまの私の意見についてどういうお感じをお持ちですか。
  36. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 百五十万トン以上減らそうということの考え方から、政府部内ではいろいろな意見も研究されておるわけでありますが、農林側の立場から見た一つの側面として、私は、やはり水田はなるほど他に転換したい、しかし、いまお話しのように、その作付転換をするのとうまく調整しながら構造改善事業を取り入れていくということが、われわれのサイドから考え一番大事なことではないか。したがって、そのためには土地条件、資本装備等について十分な検討をしなければなりません。そこで、ただいま農林省では、地方の県知事、それから農業団体等に研究してもらっておるわけでありますが、それぞれの地域においてこの転換についてどういうような方向をとっていくのが一番その地域に適しておるかという研究を、地方農政局と話し合って研究を進めさしておるわけであります。  したがって、私どもは、一面においていまのような他用途に転換されるものができることはそれはけっこう。しかし、私どもは、御承知のように米は余っておりますけれども、ほかのものでなお輸入防圧をしてわが国で自給していきたい農作物もかなりあるのでありますから、そういう方向にできるだけ転換していくようにした、こう考えて構造改善も考えておるわけであります。
  37. 足立篤郎

    足立委員 どうも時間がなくなってしまいまして、中途はんぱですけれども、大蔵省は通年土地改良で休耕する分に今度の生産調整奨励金を出すのはきらっていらっしゃるようです。というのは、土地改良を終わればまた米づくりを始めてよりよき水田としてよみがえるのだから、それに奨励金を出すのはどうもあまり賛成できないということで、これは今度はお出しになるようですけれども、私は実は逆なんですよ、それを言いたいのです。総理は、二言目には農業の近代化、機械化が必要だということをおっしゃるが、そのとおりなんだ。これはやはりいま農林省が野菜なんかで考えていますね、主産地指定、ああいう考え方、きょうの新聞にもちらっと出ていますが、これを徹底していく必要があると思うのですね。そしてやはり米についても主産地をはっきりしまして――これは県単位ではちょっと無理だと思います、私どもの県の中でも主産地は三つや四つはあるのですから。ほかにはミカンもできない、お茶もないというところがあるのですから、無理だと思うが、しかし、主産地をやはり指定しまして、そこについては政府が徹度的にめんどうを見る。そのかわり、総理が言うように機械化までめんどうを見る。どうも今度の農林省の予算でも、機械化についての考え方が私は足らぬように思うが、時間がないから、これは質問の形式でお伺いできないのが残念です。総理がおっしゃるなら、もっと機械化まで――機械化といってもなかなかたいへんなんですよ。八郎潟をごらんになればおわかりのとおり、大型のトラクターからコンバインから、運搬用のダンプカーから火力の乾燥機、それからカントリーエレベーターまで整備しなければ、ほんとうの機械化はできないのです。それまでできればいわゆる団地営農制度になりますね。私らの地方にもありますが、百八十町歩くらいを一団地として、おそらくいままで百人以上の農民がつくったところを八人で請負耕作をやっておる。あと労力は余ってしまいますね。動員するのは田植えどきだけですよ、これは日曜でいいのですから。そうしますと、あとはみな他の専業の農業に生きていく。温室をやるとか、果樹とか、畜産とか。しかし、大部分はやはり工場へ吸収されていく、農工一体でこの農業問題を解決していく、工場誘致が活発に行なわれる、こういうことだと思うのです。  したがって、私が、実は申し上げたいのは、来年はこの土地改良についての生産調整奨励金というものはぜひ考えていただかぬと、――もっと幅広く考えていただいて、特に東北や北陸のような米の主産地については、土地改良、圃場整備がどんどん進むようにやっていただかないと、近代化、機械化ということを総理がおっしゃっても、これはから念仏になってしまう。これは思い切ってやらなければいかぬと思うのです。それには、ことしは出したけれども、来年は通年で耕作を休んで土地改良をやっても一文も補助金を出しませんよ、農民のためだから休んでおやりなさいといっても、これは無理な話なんだ。そういうふうな事情もありますので、ひとつ、だれよりも農民を愛する大蔵大臣に幅広くお考えおき願いたいと思って、あえて申し上げたのです。  まだいろいろ申し上げたいことはたくさんあるけれども、しり切れトンボになってしまいました。まことに残念ですが、時間が来ましたからこれで終わらしていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  38. 小平久雄

    ○小平(久)委員長代理 これにて足立君の質疑は終了いたしました。  次に、横山利秋君。
  39. 横山利秋

    横山委員 だれよりも農民を愛する大蔵大臣だそうですが、だれよりも中小企業を愛すとは一言もまだ言ったことがない模様であります。私は、主として中小企業問題につきまして、まず両大臣からひとつ、これからの中小企業のあり方について、腹蔵のない御意見を伺いたいと思うのであります。  中小企業を目じりのしわだと言う人がある。どういう意味かといいますと、にこっと笑うと目じりにしわが寄る。泣いたときにも目じりにしわが寄る。要するに、インフレになってもデフレになってもしわ寄せが来る、こういう意味だそうであります。いまは高度成長の時代ですけれども、それならば、不渡り倒産はなくなったのか、あるいはまたいろいろな中小企業問題はなくなったのかといいますと、そうではない。言うならば、高度成長下の不渡り倒産、こういう状況がいまなお引き続き続いておる。本委員会で中小企業論争がしばしば行なわれたことがある。そのときには、歩積み・両建てが非常にこの予算委員会の中心になったときがある。あるいはまた、倒産の数が毎月毎月更新していくということが議論になったことがある。その傾向はいまでも終わっていないのに、やまっていないのに、何かしら中小企業問題が政治の舞台から影をひそめておるということは、一体どういうことであろうか。ここに何か中小企業問題の低迷がいまあると思うのであります。  私がまず第一に伺いたいのは、この日本の経済あるいは産業の激しい推移の中で、今後の中小企業は、好むと好まざるとにかかわらず――好むやつはないのですから、好まざるにかかわらずにきまっているのですが、非常な危機にさらされる。いままでのこのような激動期における中小企業のあり方なり政府の対策について、基本的な考えをまず聞きたいのであります。  最近ちらほらいたします政府考え方の中に、中小企業に対して経済の合理性を求める、あるいは自助努力、つまり自分でやる気のあるやつは助けるという自助努力、その二つのことばが非常に強く出てきました。いままで与党も野党も言っておった社会政策的な見地あるいはまた格差是正の見地、そういう視野が非常に少なくなってきた。現に政府のいろいろな書いてあるものを見ましても、そういうことばがなくなってきて、あくまでやはり開放経済なりあるいは後進国の追い上げなりいろいろな問題の中でひとつがんばってくれというのはわかるけれども、経済の合理性と自助努力の二点に集中をしていく、こういう傾向が見られると思うのであります。私の判断に誤りがあるのかどうなのか、私はまずそれがいいとか悪いとかいうことを議論しないで、政府の中小企業政策の基本的方向がいままでと少し違ってきたのではないかということをまずただしたい。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 中小企業の問題は、通商産業大臣にとりましては一番大切な問題だというふうに私は考えております。そこで、ただいま御指摘になりました点ですが、それは政府の基本方針が変わったと申しますよりは、おそらくは最近の労働の需給関係からいたしまして、中小企業にとって一番の問題は、金融もさようでございますけれども、労務の確保ということが非常に大きな問題になってまいりました。昨日来通産局長会議をやっておりますが、各地とも一番の中小企業の問題はいまや労務であるということを報告をしております。したがって、中小企業の側で自分でやっていく覚悟があるないということは、結局労務を確保し得るかし得ないかということに関係をしてまいりますので、そういう面からただいま御指摘になりましたような考え方の変化が生まれてきたのではなかろうか、こう思っておるわけでございます。
  41. 横山利秋

    横山委員 この労務の問題ももちろんそうだけれども、基本的な政策の集中する重点的な政策として、私はずっと政府のいろいろなものを見まして、こういうことを痛感する。第一に、弱者救済型といってはことばが悪いんだけれども、気の毒だから何とかしてやろうという。あるいは社会政策型、そういう中小企業政策から、経済の合理性を追求する中小企業政策、これが第一。第二番目は、いま話があった、やる気のある中小企業は助けてやろう、やる気のないやつはまあしようがないじゃないかというのが第二。第三番目には、総花的では意味がないから重点的にやろうじゃないかという考え方がやっぱりいろいろなところへ出ている。それから第四番目に、特恵関税などで後進国の追い上げを受ける。追い上げを受けるときに手を貸してもしょせんこの中小企業は無理だ、そういうものはしかたがないじゃないかという考え方が出ている。その次には物価の面から見て中小企業のカルテルは、もう前にも国会で問題になったんだけれども、カルテルは再検討したらどうだという考え方が最近出ている。それから事業活動の不利補正についてももう一ぺん再検討したらどうかという考え方が出ている。それから中小企業の分野調整。大企業が中小企業の中へ入ってきてはいかぬぞという分野調整をしようとする考え方ももう時代おくれではないか、こういう考え方が出ている。  以上、政府のいろいろな審議会やいろいろな政府の中小企業の基本方針なんかを見てみまして、そういう感覚が最近中小企業政策に非常にしのび寄っておる。そうならそうで、またぼくは議論があるのですよ。けれども問題の政策の焦点というものをこの際はっきり言ったらどうだ、こういう気がするのですが、どうですか。
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 かつて中小企業問題というのはすぐに失業の問題に密接に結びついておったわけでございます。そういう意味ではその企業者だけの問題ではなくて、そこに雇用されている人々の生活の問題ということであったわけでございますが、最近はその点は幸か不幸かいわゆる失業問題とはだいぶ問題が離れてくる傾向にございます。そこでただいま言われましたようないろいろな問題意識が出てきておる。ただいまおあげになりました多くのものは、私はやはり確かにそういう意識の動きがあるというふうに考えるわけでございます。特恵の問題も言われましたとおりと思います。     〔小平(久)委員長代理退席、委員長着席〕 でありますけれども、それは大まかにいわば、シェーマとしてはいえることでございますが、なかなかそういう早く動く情勢に企業はすぐに即応できるものではございませんから、そういう意味ではかりにどうしても転換をしなければならないというような情勢があるといたしましても、やはりその後退作戦というのには十分親切に時間をかけてめんどうを見てやっていくという配慮は依然として要るのではないか、私はこう思っております。
  43. 横山利秋

    横山委員 まだ歯車がかみ合っていませんね。いい悪いはともかく、政府の中小企業について私があげた八点、この八点を政府もそうだと思っておるなら、そのようにはっきりおっしゃったらどうかと言うのです。私は決して自分が当て推量で八点をあげたわけではない。たとえば、中小企業政策審議会の今後の中小企業政策の方向、この中小企業政策の基本的方向と出ておる欄を見ますと、経済合理性の差し示す方向に沿って中小企業の振興をはかることである。この際政府はあくまで企業の自主性を尊重し、みずから立ち上がろうとする中小企業者に対し正しい方向を助言したり、必要な援助を与えるなど自助努力を助長していくことでなければならないと書いてある。つまりこのこと自身はいいんですよ。けれども、このことばを裏を返して言いますと、経済合理性の差し示さないものはだめだ、企業の自主性を尊重してみずから立ち上がらない中小企業はだめだ、自助努力を持ってない中小企業はだめだ――だめとは言わないが、政策の恩恵を与えない、こういう方向になっておることは明白であります。  それから新経済社会発展計画の一環として経済審議会に中小企業流通問題研究会が発表した第四章の政策を見ますと、競争の程度が大きければ大きいほど、資源は一そう有効に配分され、価格は低くなり、生産も理想的産出高に近づく。中小企業問題に競争原理を取り入れておる。つまりいままでの社会政策的な立場、何とかして二重構造を解消していこうというような立場は、もうここにはないと私は言うのです。  今度はこの四十五年度中小企業政策の重点、ここにあります一番最後の結論として、「政府は以上のような認識のもとに、昭和四十五年度においては予算面、金融面、税制面等あらゆる面から新しい時代に挑戦する中小企業者の自助努力を助長するため、中小企業対策を以下に述べるよう拡充する。その際、重要かつ緊急に解決すべき問題について重点的に施策を講ずることにより施策の効率的な実施を期することにある。」まさにこれは今日までの中小企業政策から一歩転換ではないか。私が言いたいのは、転換なら転換ということをはっきり言って――あなたは後退作戦に触れましたが、もっと率直に、この時代における政府の中小企業に対する考え方を明らかにすべきではないか。何かこういうていさいのいいことばかり言っておって、さっきあげた八点、裏返して言えばやる気のないやつはだめだとか、もうお気の毒だからと助けてやるような考えはやめだとか、そういうことを表へ出さずに、裏で、つぶれるやつはつぶれるにまかせておけというような考え方があったのでは、これは不親切きわまるものではないか。もっと率直にその政府考えを明白に言ったらどうだ。こういういままで政府が書いてあることの裏返しのことを実は私は問題にするわけです。もっと率直に話をしてもらいたい。
  44. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 中小企業政策審議会の答申は、確かに従来とかなり違った考え方を割り切って出しております。その中には私も基本方針として同感だと思うものが多うございます。ですが、現実に行政をやってまいる立場から申しますと、そうすべての人が割り切って直ちに身軽に行動できるわけではございません。そういう意味で、やはり方向はそうであっても現実になかなか即応できない人に対しては、やはりこれは一つの社会問題でございますから、親切に対応していかなければいけない。そういう心がまえが必要だと私は考えておるのでございます。
  45. 横山利秋

    横山委員 話が違うじゃありませんか。それならば、四十五年度中小企業政策の重点、これは政府の印刷物ですよ。その中になぜあなたの言うような、いま最後につけ加えられたことが書いてないか。そういうことは何も書いてないじゃありませんか。新しい時代に挑戦する中小企業者の自助努力を助長するための政策が行なわれると書いてあるじゃありませんか。あなたの言うことはちっとも書いてないじゃありませんか。どうなんです。
  46. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは文字であらわされました政策というようなもの以前の、政治をやる者の根本的な心がまえだと私は思います。
  47. 横山利秋

    横山委員 それはおかしいよ。これは政府がこの明年度の予算に関してわれわれに全部配付された中小企業政策の重点、その中の基本方針の中に、いま私が指摘したことがちゃんと書いてあるじゃありませんか。あなたはそれは書いてあってもそれをうそだ、これは社会政策的見地はやると言っている、それじゃ何ですか、これは間違いじゃないですか。どうしてこんなものが出るんですか。
  48. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 決して間違いだと申し上げておるのではございません。ただ、政治をやり、政策をやるもののもっと基本的な態度の問題として、弱いもの、すぐに即応できないものに対しては親切でなければならないということは、その文字に書かれました政策以前の心がまえの問題だと思っておるのでございます。
  49. 横山利秋

    横山委員 私は心がまえの問題を言っているのじゃない、政策の問題を言っている。この政府の中小企業政策の重点となっておる結論として、明年度の予算が、中小企業政策をこういうことでやります、やりますよと書いてあるのにかかわらず、あなたは、それは文字の問題だと、実際はそうではないというのは、通産大臣としておかしいではないかと私は言っている。ここに書いてあることはうそですか。ここに書いてあるのは、新しい政策で新しい時代に挑戦する中小企業者の企業努力を助長するために中小企業政策をやると書いてある。もしもあなたの言うようなことがあるならば、それもそうではあるけれども、気の毒な中小企業や、社会政策的な見地をもあわせて加味するものとすると書かなければ、うそではないか。実はこれが本音ではないか。あなたがどういう考ええを持たれようが、今度中小企業政策を行なわれるに際しては、ここに書いてあるのが公式の考えではないかというのです。
  50. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政策の重点としては、それでよろしゅうございますが、政策を運営するのは私どもでございますから、運営する基本的な心がまえというものは、私が申し上げたようなことである。
  51. 横山利秋

    横山委員 どうもそっけない答弁、ということは、要するに自信がなくておっしゃったと解釈をいたします。この論争は、もう聞いている人がわかりますから、それ以上は言いまません。  その次に、開放経済、自由化、特恵関税等、いままでと違って、少なくともいまの質疑応答の中でありますように、中小企業に非常な激動を与える。政府が行なう推進している構造改善事業の中からも、格差の増大は中小企業に生まれるのは必至だ、あるいは不渡り倒産も必至だ。転廃業は当然、好むと好まざるとにかかわらず、政策的にも出ざるを得ない。業種転換も行なわざるを得ない。合併や協業は政府の推進しているところなんだ。こういう自分の考えはさておいて、これからの中小企業は、七〇年代にどういうふうな足取りをたどるかという意味において言っておるわけですが、いままでより経済変動がきびしくなるということについて、政府の経済政策、中小企業政策がそうなら、率直にこの際考えるべきことを大胆に出したらどうかというのです。つまりうしろ向きの問題です。むしろ向きの問題についてももっと大胆に出したらどうだということなんです。政策上中小企業の責任にあらざる問題、たとえばいい例がチクロです。あとでチクロに触れますけれども、チクロと公害は違うのです。公害は中小企業者なり企業が悪い。ところがチクロのほうは政府が使っていいと言っておった。それがあしたからいかぬということになった。それで禁止となった。企業に責任はない。私はそう思うのです。政府はそれに対して責任はとらぬという。この問題はあとにいたしましても、中小企業の責任にあらざる不渡り倒産や協業や合併や、そういうものがこれから続出をしていく。経済の波動が非常に激しいのでね。それで一歩進めてその問題についての政策を出さなければならぬときではないか、こういうことなんですが、どう思います。
  52. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘の点は、私もそういうふうに理解をいたします。  そこで、構造改善でありますとかあるいは近代化促進でありますとか、ただいま御審議を願っております予算の中でも相当大きな金を使って、そういういわゆる近代化あるいは合理化というものをもうしばらく前から始めておるのだ、こういうふうに問題を考えております。
  53. 横山利秋

    横山委員 一つ一つの業種ごとの構造改善がなかなか進んでおりません。あなたもそれは十分御存じだと思うのですけれども、中小企業の全国的なあるいは地域的な構造改善というのは、言うにやすく行なうにかたいと私は思っています。私も幾つか体験していますが、容易なことじゃありません。なぜ容易でないかということなんです。たとえば繊維設備の制限問題のあの例を考えてみますと、あの問題とそれから中小企業問題との比較をしてみると、私はわかるような気がするわけであります。しかし、繊維設備の問題の場合には、一つの大きな柱があります。法律という柱、推進力があります。ところが、これからの中小企業の問題には推進をする法律がありません。ですから私は、これからの中小企業経済の変動の中で中小企業に新しい方向を示し適応の対策を立てる、第二番目に個々の構造改善に思想的支柱理論的支柱を与える、構造改善の基本的政策をそこでつくる、犠牲となる転廃業者の救済の道を開く、そのために設備の買い上げ、あるいは税制、金融の特別措置、そういうものの基本的な柱を立てる、零細企業や小企業政策についてしっかりここで立てる、政府機構に中小企業政策の推進力を強化するということ、個々の業種の構造改善が進まないのはひとつ推進力となる柱が足らないからだと私は思う。もちろんそれは推進力ばかりではなくて呼び水が足りません。呼び水が足らないのですから、それらを含めてこの際中小企業振興臨時措置法を制定すべきではないか、こういうふうに考えますが、いかがですか。
  54. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のことがわからないではございませんが、事実問題といたしましては中小企業基本法をはじめ近代化促進法あるいはただいま御指摘になりました繊維についての構造改善の臨時措置法等、それらのものが実際施策の中心になっておって、たとえば近代化促進にいたしましても、御承知のように、業種というものを非常に狭く限っておるわけではございません。かなり広く取り入れておる。それが進みますと、今度構造改善のほうに持っていく、それもだんだんに拡大をしておるということでございますから、私は大筋の部分はその考え方で推し進めていっていいのではなかろうかと思っております。
  55. 横山利秋

    横山委員 いま中小企業に関する法律は非常に多い。そうして中小企業がそれらの関係する法律について知識がきわめて薄い。それは県庁やあるいは通産局の役人がポケットに入れておって、頭を下げてきた中小企業にちらちら見せる程度のことで、その点について中小企業は残念ながら知識が非常に薄い。そういう中小企業に対してこの激動期、いまや組織論ではないと思うのですね。私は実際の政策論だと思うのですね。そういう中小企業に対して、これからの中小企業のあり方なりあるいは呼び水なりあるいは構造改善の基本的な方針なり、そういうものを樹立して、全体の中小企業の近代化をはかる方向を示す意味において、私はそれが政治的にも必要だ、こう痛感をするわけであります。重ねて御意見を伺いたい。
  56. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに私ども痛感いたしますのは、法律はいろいろある、金融の道も政府としては講じておるつもりである、しかし、中小、ことに小企業の場合に企業主と法律なり金融との間にギャップがあるわけでございます。それはなぜかと考えますと、やはり無理もないことでありますが、従来一人でもうすべてのことを中小企業主がやってきた。銀行で金を借りるのに、帳簿をつくれと言いましても、なかなかそこまではできなかったというのがいままでの姿であったと私は思うのであります。このごろ若い二世の人たちがだいぶおとうさんを助けてそういうことをやるようになりましたので、法律も幾らか見るようになった。銀行に持ち出すような企業の計数的な整理も幾らかできるようになったということであろうと思います。でございますから、法律あるいは金融の用意もこれは基本的に大事ですが、それらのことを周知徹底させたり、あるいは記帳の指導をしたり、商工会議所でありますとか、商工会でありますとか、そういう人たちの中小企業に対する啓発と申しますか、そういう指導面での問題が私は大事なのではないだろうか。ギャップをどうやって埋めるかということは、私はそういう形で埋めるのがやはり本筋ではなかろうかと考えまして、四十五年度の予算でも、そういう措置をいろいろお願いを申し上げておりますわけでございます。
  57. 横山利秋

    横山委員 この開放経済に際して、大企業に対する政府の接触なり指導はきわめて具体的であり、きわめて指導的であるにかかわらず、中小企業に対するお考えなり施策というものが、いまの通産大臣のお話のようであるとすれば、きわめて微温的であって、きわめて進歩的でないという点を私は非常に残念に思うのであります。これからの中小企業が、好むと好まざるとにかかわらず、ほんとうにたいへんな激動のあらしの中にあるときに、いまのようなお考えで放置されるといいますか、私の言う放置は、中以上のところはまだいいんですよ。いわゆる中堅以下から小企業、零細企業がいまの通産大臣のお話では何と新鮮味のないお考えであるかということを痛感をせざるを得ないのであります。  この際、大蔵大臣に聞いておきますが、きのう通産大臣が全国通産局長会議で、いますぐ金融引き締めの緩和は必要と考えていないということを明らかにしました。あわせて、企業間信用がふえる結果、中小企業に不当にしわが寄らないようにする、こういう発言をされました。この裏打ちを一ぺん大蔵大臣に聞いておきたいと思うのです。この金融の引き締めが三月の末にはピークになるのじゃないか。明年度の予算が実際動き出す以前の問題が生じたのではないかと思うのであります。この問聞いてみますと、コールがすでに八分二厘、月越しで九分二厘五毛、だから市中の中小企業金融機関、信用金庫や信用組合などはいまコールに回したほうが得なんですよ。手形割り引きの手数料が七分二厘五毛ですから、一分ぐらいは完全に違うわけです。場合によっては二分違う。だから、いまあぶなっかしい中小企業に貸すよりも、コールに回したほうが得なんです。それとも、もうすでに手形サイトの延長が始まっている、選別融資が始まっている、歩積み・両建ての拘束預金が強化され始めている、こういう状況なんですから、明年度の予算以前の問題として、三月、四月の中小企業の金融の引き締めの状態というものは、私はたいへん憂慮にたえないような気がするんです。通産大臣が、もしそうなったら不当にしわが寄らせないようにするという意味は、もしどころではなく、私は現実の問題だと考えている。この端境期ということばが適当かどうかわかりませんが、端境期の中小企業金融について、どういうような具体策でおやりになりますか、伺いたい。
  58. 福田赳夫

    福田国務大臣 金融調整政策の効果はもう出始まっている、こういうふうに見ております。そうしてそれは特に都市銀行をはじめ銀行です。この金融につきましては、かなり窮屈になってきております。ただ相互銀行でありますとか、あるいは信用金庫、そういう中小相手の金融機関のほうは、それに比べますと、引き締めの効果がまだそうは出てきてはおらない。こういう状態と見ておるのでありますが、これは何としても中小企業というものは弱い立場にあるものですから、金融調整政策の影響をはだに感ずるそういう階層だと思うんです。そういう階層に対しましては、この調整政策の成り行きを見まして、大蔵省としても対処していかなければならぬ、こういうふうに考えまして、状況の推移をよく見ておるというのが現在の状況でございます。
  59. 横山利秋

    横山委員 きのうの通産局長会議では、もうあなたのような甘い考えでなくて、現実的に各局長から指摘をされておるんですよ。ただ言われておることが、私の言うように三月末にはかなりきびしくなるということなんです。だから三月、四月、五月といいますか、その辺の手当てがどうしても必要だと思うのです。どういう方法でなさいますか。
  60. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう状況でございますので、中小企業金融の状況をよくいま注視しているというのが現状でございます。状況の推移によりまして、これはいろいろの方途があると思いますが、弾力的な対処のしかたを特に中小企業に対しましてはしなければならぬ、そういうふうに考えております。
  61. 横山利秋

    横山委員 市中金融機関の引き締めが深刻化すれば、必然的に町の金融業が動き出す時期になると思うのです。私はかつてこの委員会でも大蔵委員会でも取り上げたことがあるのですが、二、三年前、町の金融業がたいへんな脱税やいろいろな問題を起こしました。そのときには、こういうような存在は、いま全国に五万から七万人ぐらいの金貸し業がある。手形割り引き業者がある。それもまた好むと好まざるとにかかわらず社会の一定の地位を占めてやっている。ただこういう引き締めになると、ますますそのところへ走っていく中小企業が多くなる。まだ店舗をしっかりと張って信用のあるところならばいいけれども、一番悪質な出資の取締法、相互銀行法、預金等不当契約取締法、証取法の違反をやったり、暴力金融をやっておるところへ中小企業は走っていく可能性がある。この間私が自治省で聞いてみましたところ、四十四年に五百五件、四十三年は四百六十六件、四十二年は三百五十八件、漸増の状況にある。このような金融機関のあり方について政府が放任しておる。県知事に委任して、県知事に届け出れば商売は幾らでもやれる。あとはだれがやっているかというと警察がやっているだけですね。この間東北一円の毛利金融を警察が手入れをいたしました。私は新聞を見てびっくりしたのですが、不特定多数の人から預金を集めてはいかぬことに法律はなっている。ところが毛利金融は驚くなかれ九十の支店を持っている。九十の支店を持って預金を――結局何と言おうと預金です。預金を集めて金貸し業をやっている。不法にも四十五億円かき集めたと宮城県警は見ている、こういうわけです。これは一体、ますます引き締めの状況においてどうあるべきかという点であります。  国家公安委員長、警察の元締めとして私はお伺いしたいのでありますが、警察の取り締まりだけで、県知事が取り締まりもしてない状況で、この種の問題について責任が一体負えるのであろうか。取り締まり官庁として、取り締まりという以前に行政的な方法というものがなさるべきではないか、こう考えますが、いかがでございますか。
  62. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 警察はそこに違法行為があればみずからの責任において犯罪を予防し、もしくは検挙するということを当然にやっております。しかし、現実問題は情報のキャッチがなかなか容易でないといううらみはあるかもしれません。被害者からの届け等によって捜査を開始するということが多いようでありますが、いずれにしましても、現行制度のもとの法規に従って、警察責任は懸命の努力をしながら果たしつつあると存じます。  なお、もっと具体的なお答えが必要であれば、政府委員から御答弁申し上げます。
  63. 横山利秋

    横山委員 私が聞いているのはこういうことなんです。取り締まりをやっておるけれども、この引き締め下においてはどんどんこういうような金融が発展をすることは必至である。また正常な運営をなさっておられる金融業は別として、警察の網にかからないものが潜在的にたくさんあると思われる。あなた方がそういう監督をしておって、今度は閣僚の一人として、取り締まりだけでいいであろうか、どこも監督官庁がない、行政指導するところがない、そういうところでいいであろうかとあなたに聞いているのです。そういう意味を閣僚として聞いている。
  64. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 いま御指摘の点についてお答え申し上げます。  警察としましても、出資等取締法違反のような行政法令違反につきましては、ただ単に違反者の検挙ということだけでその行政目的が実現されるとは考えておりません。それに対する所轄の都道府県知事等関係当局による違法状態の防止等の所要の措置が必要であると考えるのでありまして、これがため事件の通報及び適当の措置を要する事項を連絡することによって、所轄官においてはその趣旨、内容をよく理解して、所要の指導等を実施されるものと期待しておる次第であります。
  65. 横山利秋

    横山委員 期待をしておられるのですが、期待される大臣はだれですか。だれがおこたえになるのですか。
  66. 福田赳夫

    福田国務大臣 町の金融業は私ども見ておりましていろいろ問題を起こしておるという点もあります。ありますが、他面におきまして一つの社会的な需要に基づいて起きておるものなんです。しかもその業態というものが非常に多数であり、かつ雑多である、こういうような点から、金融行政の対象としてこれを監督するということは少し行き過ぎではあるまいか、そういうふうに考え、ただいまはもっぱら警察行政のほうに御期待を申し上げている、こういうのが現状でございます。
  67. 横山利秋

    横山委員 おかしな話ですね。町の金融業のために塗炭の苦しみを受けている中小企業は実に多いですよ。そして、金融が引き締めになると市中金融機関が貸してくれぬから、そこへかけ込むのがわんさとまた出てくる。これは、警察がやると、おれは知らぬこっちゃ、あなたはそうとでも言いそうな顔です。大体大蔵省というところは、市中銀行のトップクラスはちやほやするけれども、下のほうになるとおれの知らぬことだ、信用組合も県知事だ、町の金貸し業も知らぬことだ、おれはめんどうくさくて、そんなことはできやしないよとでも言わんばかりのお顔であります。けれども、法律があるのですよ。法律がある以上は、法律に違反したら警察のごやっかいになるにしても、法律がう永く運用されるような責任はあなたにあるのですよ。それについて何をしているのですか。何にもしていないじゃありませんか。けしからぬじゃありませんか。だれよりも中小企業をもっと愛しなさいよ。
  68. 福田赳夫

    福田国務大臣 でありますから、警察行政の効果的な運営に御期待を申し上げている、こういうふうに申し上げているわけなんであります。しかし、金融引き締めになると、御指摘のように、中小企業の人がこういう町の金融機関に足を踏み込むというようなケースもあり得ることであります。さようなことも考え、地方の通産局にはそれぞれ中小企業の相談所というものがある。それから商工会でも同様な機構があると思います。あるいは商工会議所でもそういう機構があると思うのです。そういうところへ中小企業の人が気軽に相談をかけてもらいたい、そういうふうに思います。私どもといたしましては、昭和四十年、四十一年、あの大不況――今日の比ではとてもありません。あのときに中小企業をどういうふうに庇護したらいいだろうということを横山さんなんかも知恵を貸してくださいまして、いろいろ考えたわけであります。そのときの経験も持っております。そういう経験も生かしながら、今度のこの金融調整はどうしてもやっていかなければならぬ金融調整です。しかし、これが不当に過重に中小企業にしわ寄せになっては相ならぬということは、かたく私どもも戒めておるわけでございまして、最善を尽くしてよけいな御迷惑がかからぬというふうにはぜひいたしたい、かように考えております。
  69. 横山利秋

    横山委員 答弁、不満です。私が最初口を切ったように、中小企業でも上のほうの採算ベースに合っているところ、あるいは努力すれば合いそうなところは政策の恩恵があるのですよ。けれども、私がいまずっと指摘しておるところはそういうところじゃないのです。そういうところについてはあなた方は知らぬ顔をなさっておるのはけしからぬじゃないかと思う。  次は、信用組合です。信用組合はやっぱり中小企業の金融機関の大きなウエートを占めておりまして、全国で信用組合は五百四十二組合、預金としても二兆、この信用組合が名古屋におきましては不動信用組合、東京におきましては昼夜信用組合、全く私は指導がなっておらぬと思う。あれでどのくらいの中小企業が泣いたかわからぬ。この信用組合の認可は、たとえば私ども愛知県で言いますと十二ある。静岡はたしか二組合かそこらしかないでしょう。岐阜ではこの間県知事の選挙で、二つの信用組合が、あっちの知事候補に銭を送った、こっちの知事候補に銭を送ったといって大騒動になった問題がありますね。結局これは知事さんの選挙基盤になっておる。信用組合を認可してやるといって自分の背景につける、片一方の対立候補の保守党のもう一人の人は、それに対して対抗手段のことを考える。こういうようなことではいかぬですよ。しかも名古屋の不動信用組合なんて、暴力団が背景にあったということが明らかになっている。いまや信用組合は一定の中小企業金融の役割りをしている。それが中小企業協同組合法だ、協同組合だという定義、基盤、あるいはまた協同組合による金融事業に関する法律のそういう基盤になっておることがおかしくはないか。これだけの安定したというか、一定の基盤を占めておる全国五百有余の信用組合について、金融機関としてこの際定義をきちんとして、信用組合法を単独に制定する必要の時期に差しかかっているのではないか、こう思いますがいかがですか。
  70. 福田赳夫

    福田国務大臣 信用組合ができましてから二十年近くになるわけですね。今日の信用組合ができる最初の段階におきまして、あるいは独立の金融立法を要するか、あるいは協同組合体制の中でやるかというような議論もあったのですが、とにかくこれは組合組織の盛り上がる自主的な機構だからというので、今日のような仕組みになり、監督行政としては知事がこれに当たる、こういうふうになっておりますが、この金融機関もだんだんと発展をしてまいりまして、今日では中小企業金融としてかなり重要な役割りを尽くすようになってきた、そういう段階でありますので、これをどういうふうに位置づけるか、これはこれからの課題としてひとつ十分検討してみたい、こういうふうに考えております。
  71. 横山利秋

    横山委員 次には、最近特筆すべき問題として、チクロの使用禁止――この間大原委員質問したので、あまり重複することは避けたいと思うのですが、私はチクロだけの問題ではなくして、先ほどからるる言っておりますように、これは政府の政策によって中小企業が打撃を受けた一番顕著な例と思うのです。私は質問主意書を出し、その回答を厚生省からもらった。あれを読んで、すべての関係業界三十何団体がほんとうに憤激の極に達した。ばかにしている、業界の人によれば、業界被害を受けたのは二月二十八日現在百十三億――百十三億の被害を与えたと、政府も、人によればという意味で使っておりますけれども、認めておる。この問題についてははっきりしてもらいたいのですが、厚生大臣に伺いますけれども業界に責任が一体あるかないかということが第一、第二番目に、政府に責任があるかないかということ、第三番目に一体その損害はだれが負担すべきなのが順当であるか、以上伺います。簡潔に……。
  72. 内田常雄

    ○内田国務大臣 チクロを添加物に使っておることは公に許されておったのでありますから、私は業界に責任がある問題ではないと思います。しかし政府といたしましては健康第一という考え方あるいはまた世論に照らしまして、アメリカをはじめ世界の各方面でそれの発ガン性と毒性が取り上げられました以上、これを放置するわけにもまいりません。したがいまして、食品衛生法の趣旨に従いましてこれを食品添加物からはずしたわけでありますので、私は政府がまた法律上の責任があるとも考えないものでございます。ただ政府といたしましては、そういう場合、業界の損失をでき得る限り少なからしめることを考えることは、私は行政のあり方として親切なあり方であるとも考えるものでございますが、そのために一応全部網をかけて昨年の十一月に添加物からはずしたものをその後の国際の動き等にかんがみまして、一部は販売、陳列等の期間を延期をしてまいった。またその問私どもといたしましては、金融所管あるいは食品そのものの所管の農林、通産等の各省に対しまして、金融上その他のめんどうはぜひ見てもらいたいという意味の行政上親切な連絡、通達などは私どもはいたしておるわけでございます。  最後のだれが損害を負担するかという問題でございますが、できる限り損害を少なからしめるという趣旨、ただいま申し上げましたとおりの措置を講じましたが、それでも残ります損害につきましては、私はこれは一部はまあ御承知のように民事訴訟で損害賠償の訴えも出ておりますので、その方面の判定をも待たなければなりませんけれども、食品業者といたしまして私は、そういう一般的に毒性のことが取り上げられました食品につきましてはやはり販売を停止するというような社会的の協力の責務のようなものもあると考えますので、その辺のことにつきましては政府のほうもいろいろ親切に考えますが、業界においてもそういう食品販売業者としての社会的責任も自覚して、それぞれの面において処理するより他に方法がないと私は考えるものでございます。
  73. 横山利秋

    横山委員 業界に責任はない、政府に責任はない、被害業界が負え簡単に言うとこういうことらしいですね。ただ、あなたの言葉の中に、何でそんなことをおっしゃるか私はよくわからぬが、行政訴訟をやっていらっしゃるからという意味がある。それはどういう意味なんですか。行政訴訟で負けたら払います、これはあたりまえのことなんだが、どうも行政訴訟で負けることがあり得るという判断もあるわけなんですね。そういうことですね。私はこの問題はチクロだけでなくて、これからも起こることだ。これからも起こることの中で、業界に責任がないとあなたが断言するならば、いま政府のやっていることはあまりにもひどいじゃないか、こう思うのです。たとえば廃棄方法あるいは処分方法、私が中部でかん詰め業界に聞いてみましたら、三十四万ケースある。三十六個入りだから千二百二十四万個ある。トラックで千台分だ。これは十月なんです。十月にどのくらい減るか知らぬけれども、どこへ捨てろというんだ。粉末ジュースをどこへ捨てろというんだ。トラックに積んで厚生省の前へ持っていったら厚生省が処理してくれるのか。まじめな話ですよ。冗談じゃないよ。まじめな話ですよ。廃棄をしろ、回収をしろと政府が言う権限はどこにあるのか。廃棄をしろ、回収をしろという以上は、その廃棄や回収までくらいの金は政府はめんどうを見るだろうな、こういうふうに私はお伺いするのですが、どうです。
  74. 内田常雄

    ○内田国務大臣 どうも私は法律論には弱いのでございますが、食品衛生法のたてまえから申しますと、製造あるいは販売、陳列、使用というようなことが規定をしてございまして、回収をすることにつきましては触れてない。これは触れてないことは私は非常に不親切かとも思うわけでありますが、今回の措置におきましては製造をして現に存在するものについては猶予期間を置きまして、その以後は販売ができない、あるいは陳列ができないというところまできめてあるわけであります。それでも残ったものは一体どうなるかということにつきましてはきめてもないわけでありまして、これは行政の不親切といいますか、あるいは法の不備ということもあると思いますけれども、それらにつきましては行政的に厚生省なりあるいは直接監督の任に当たる保健所その他地方機関とも協議をいたしまして、できる限り妥当な措置を講ずるほかはないのではないかと私は思います。
  75. 横山利秋

    横山委員 業界に責任がないものを、それは製造、使用の中止まではわかるけれども、それをあなたのほうは行政指導として回収しろ、廃棄しろと命じておるわけだ。それで業界にしてみれば回収をせざるを得ないです。その回収費用まで……。それからどこへ捨てるか。穴を掘って捨てるか、どこかへ持っていって捨ててくるか。とにかくべらぼうな大きな数量になるのですよ、これ。それをそこまでおまえの銭でやれということは、私はあまりにも冷たい措置ではないか、こう思うのです。これから喫茶店や食堂でチクロの入ったかん詰めやあるいはつけものを買って、それをお客さんに売るとそれは違法ですね。ところが消費者が直接それを買ってくるのは適法なんですね。消費者は処分できないし、消費者に直接売ってもいいのですが、おかしなことが起こる。きょうの新聞にももうすでに載っておりましたがね、表示が書いてないということで。とにかくこれらの問題を含めまして、私は結局この際政府が思いを新たにして、単にチクロばかりでなくて、これからこういうことが起こる。特恵関税の問題にしてもいろいろな問題でこういう問題が続出すると思う。だからこの際、百尺竿頭一歩を進めて思い切った措置をされたほうが、先ほどから通産大臣に私がお話を進めている意味においても、これからのこの激動期における中小企業の体質改善にしても業種転換にしても、いろいろな問題についてもこの際思い切って一歩進められる措置をとったらどうか。私は別にお百姓の三万五千円と比較するつもりはありません。けれども、世間では言うておる。お百姓とまあ法律的立場は多少違うからなんですけれども、常識的にいえば、お百姓に米をつくってはならぬ、そのかわり反当り三万五千円は出す、こう言う。中小企業にそれをやってはならぬ、損害はおまえが持て、こういうことだというのです、みんなが。だから私はそれじゃほんとうに気の毒だ。この際もう理屈はどうあろうとも、いままでの政府がチクロの業界に対してとった態度から一歩前へ出ことは、単にチクロの問題でなくて、これからの中小企業に対して前向きにいろいろなことをやってもらう意味においても重要ではないか。これをやらなければ、かん詰め業界であろうが粉末業界であろうがどんどん訴訟をやることは間違いないと私は思っている。また訴訟で勝つ自信があると彼らは言っておる。だから、その意味においても私はいまのようなやり方で、これで業界の責任ではない、政府の責任ではない、損害は業界が持て、それじゃちょっとえらいじゃないか、こう思うのですが、きょうは総理大臣がおらぬけれども、結局銭のほうに関係いたします、それから中小企業政策に関係いたしますから、それをひとつ大蔵大臣通産大臣の善意ある答弁を伺いたいと思います。
  76. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ非常ににむずかしい問題の御指摘でございます。あるいはこれは見方によると公害問題というような問題の処置とも関連するような問題かもしれません。政府のとった一挙一動、これがどういう責任を生ずるか、こういう問題で、きわめて困難、複雑な問題だ、かように考えますが、おっしゃることは、よく意図はわかります。政府としても慎重に、また掘り下げて検討したい、かように存じます。
  77. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 とりあえず昨年暮れに、融資について特段の考慮をしてもらうようにということで、政府関係の中小の三機関、それから信用保証協会に申しまして、融資の実績も現在まである程度あるわけであります。しかし、これが融資だけで片づく問題なのかどうかということは、私は確かに問題があると思います。全く新しい問題でございまして、業界側に罪があったということはいえないのでありますから、大蔵大臣のお話もそういう御趣旨かと思いますが、やはりいろいろ考えてみる必要があるのではないかと思います。
  78. 横山利秋

    横山委員 両大臣の善処をひとつ特にこの際要望しておきたい。くれぐれも言いますが、チクロだけではない、私は総合的な見地からそれをいま一歩踏み出すことが、今後の中小企業の激動期における業種転換なりいろいろな問題に大きな意味がある、こう思います。  次は、最近話題の商品取引について御質問をします。  これは通産大臣か農林大臣に言ったがいいかわかりませんけれども、私が質問するに際して、商品取引事故の調査総括表をくれと言ったのです。どうしてもお出しにならぬのですね。最後に私が、じゃ各企業ごとの名前は書かぬでもいい、名前のところだけ空欄にして出してくれ、こう言ったところ、これも本日もってお出しにならぬ。そうして全体の事故の件数と被害額総額だけお話しをいたしましょう――私はおこったんです。ばかなことがあるか。大体農林省、通産省は、仲買人をかばっている。仲買い人に対する苦情があるやつを、通産省も農林省も適当に処理をしてしまって、だからこういう騒ぎになったんだ。これが事実立証されているような気がするわけであります。  この際、商品取引事故の調査総括表を本委員会に提出してもらいたいと思いますが、いかがですか。
  79. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは横山委員も御承知でいらっしゃると思いますが、通産省所管の商品は糸のほかゴムでございます。合計で五品目でございます。これについては、いま御指摘のありましたような事故等々は別段起こっておりません。監督関係は商品別に監督をするということになっておりますので、通産関係のものでございましたら、業者の申告をとりまして、資料としてお目にかけることができるかと思います。
  80. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 最近取引所で、農林関係の所管しておる物資につきましてとかくいろいろな話がありますし、また私どものところへも直接たくさんの手紙も参ります。直接訴えてくる者がある。そこでこのことにつきまして、当局を督励いたしましていろいろ研究しているところであります。
  81. 横山利秋

    横山委員 いまその話を聞いているのじゃないのです。総括表を出してくださるかどうかです。
  82. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 それは、実は私どものほうでも、たくさんの商社、取引仲買い人がございますから、そこでそれを御存じのように今度は許可制にいたします関係で、いまそれらの内容、それからやり方等を実は非常に厳密に調査検討しているところであります。そこで、許可のような場合には、現在までの経過を十分参考にいたしまして態度をきめたいと思いますので、したがって、いまこれからやっていかれる商社がそういうことの信用上どういうことになるかということも考えておりまするので、慎重にいたしておるわけでございます。
  83. 横山利秋

    横山委員 そういう態度が仲買い人をのさばらせているのです。悪質な仲買い人をのさばらせているのですよ。あなたのほうが、いまこれほど天下の大騒ぎになっております問題、これについて事故の総括表を本委員会に提出しない。仲買い人の名誉に関することだとおっしゃるらしい。仲買い人が悪いことをしたことをかばうわけですか。そういうような悪質な仲買い人こそ免許してはならぬのです。ならぬものをなぜかばう。出せばいいじゃないですか。出すとあなたのほうでぐあいが悪いことでもあるのですか。いま大事なことは、いい仲買い人と悪い仲買い人を区別することであり、悪質な仲買い人はどんなに資産が多くてもこの際免許しない。その勇断をふるうためには、それは全部が全部悪いばかりではない、たまに二件や三件あったって、間違いと気違いはどこにでもあるのですから、二件や三件あったからといって免許するなと私は申しません。けれども、驚くべき事故件数が私の手元へ来ているわけです。私はその書類をあるところから拝見しましたよ。驚くべき数の事故件数じゃないですか。膨大なその弁償金じゃないですか。それでもそれは氷山の一角ではないか。それほどのものを、なぜ事故の総括表を本委員会に提出してくれという要求にこたえられないのか。そこがあなたのほうの今日の問題を招いた私は一番大事な点だと思う。お出しにならぬですか。通産大臣は出すというのですが、なぜ農林大臣だけ出さぬ。
  84. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農林省は悪徳のものをかばおうという意思は毛頭ありません。しかし、これから免許制度、許可制にするときに、その資料に必要な資料をいま集めておるところでありますので、そういう慎重に検討しておる最中にそういうものを公表することははばかりがある、こういう慎重な態度でやっておるのでありまして、私どもとしては、現在までの段階でこれが悪いとかあれが悪いとかいうことをもし公表いたしまして、それに間違いでもありましたならば、われわれは重大なる責任を負わなければなりません。現在の段階では、そういう立場でひそかに厳重に調査しておる最中でありますので、公表することはいたしかねるのであります。
  85. 横山利秋

    横山委員 私はたいへん不満であります。そういう態度が仲買い人に対して厳重な監督規制が行なわれない証拠だと思います。けれども、次に進みます。  きょうの新聞でアズキ相場に失敗して自殺をした記事が載りました。これは週刊誌でありますが、お読みになったかわかりませんが、いやになってやめた外務員の証言、「私は49人のお客をコロした」ということが書いてあります。私どもの手元へたくさんの投書が来ています。八王子の大塚さんからは、「私は主人を交通事故でなくして、その保険金等合わせて二百五十万をだまされて、二歳と四歳の子供をかかえて路頭に迷っています。」時間の関係で全部読み上げるのは省略をいたしますけれども、私は全部が悪いというのじゃないのですよ。けれども、この手記を読んでみましても、これらの投書を読んでみましても、今日のこの商品取引の現状はまことに憂うべきものがあると考えておるわけであります。この機会に、これだけ世論が高まったときに思い切った措置をしなければならぬと痛感をしています。昨年来の預かり金、委託証拠金は六百二十二億と推定されております。この六百二十二億の中で、驚くなかれわずか半年で百七十三億ふえているというのですね。どこにこんな商売があるでありましょうか。六百二十二億の中で百七十三億が半年の間にふえている。セールスは八千三百人。これは登録外務員でありますけれども、そのほかにその倍、約一万六千人の無届けの外務員がおる。純資産が二十億をこえた会社が数社ある。異常な膨張じゃありませんか。この異常な膨張の陰にごうごうたる非難、マスコミあげての追及、そうして続々と出てくる紛議。これに対して一方仲買い人は何をしていますか。この間、飛行機をチャーターしてこの騒ぎの中を台湾旅行に出かける仲買い人の団体があった。もうけた仲買い人は不動産屋をやっている、ボクシングジムをやっている、馬持ちをやっている。副業だから何をやってもいいといいながら、あまりにもふざけた態度ではありませんか。そういうことについて政府は一体何をしておったかと私は言いたいと思うのであります。  ここに、四十二年の商工委員会でありますが、商品取引所法の一部を改正する法律案に対する附帯決議を御披露いたしたいと思います。「政府は、本法施行にあたり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。一、最近における商品取引の実態にかんがみ、商品取引所のあり方について根本的検討を加えること。二、経済の実情に対応し、上場商品の適格性について再検討すること。三、過当投機の抑制および委託者の保護について、さらに万全の対策を講ずること。」三年前の本院の決議です。この本院の決議が何ら実行されてないところにこういう事態がある。いわんや来年の一月に許可制度になるに際して、仲買い人の営業姿勢ということがあまり問題にならずに、実は資産さえあれば、収支がりっぱであれば許可するという傾向をもたらしておる。そのためにもうかけ込みのように、何でもセールスをふやす。違法であろうと何であろうと知ったこっちゃない。私の家の町内会にも軒並みにセールスがやってきております。一万六千人と八千人、二万四千人のセールスが会社の中におって、いつもおるわけじゃない。全部町へ出ている。町へ出ることは違法であることはわかり切った話だ。それが堂々と行なわれている。電話勧誘なんかもうざらなことだ。この四十九人を殺したという手記を読んでみますと、なまなましくそれが書いてある。「私はとてもこれはもうやっていけない。四十九人のお客を殺して、最後に一千万円をすった人の家をたずねてもう私はこの仕事をやめる」こう言ってやめて、この手記を本田清太郎という人が書いているのですね。私は、その意味においては、この本院の決議を政府が全くなおぎりにしておったところに問題の本質がある、こう思いますが、どなたがお答えになるのですか。どなたがお答えになるのが法規上適当でしょうかまずそれを伺います。
  86. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いま上場されておる物資がこちらの所管なものですから、私からお答えいたします。  その前に横山さんに誤解のないようにお願いいたしたいと思いましたのは、実は私就任いたしましてまだわずかの日数でありますが、就任早々事務当局にもこの商品取引所のことについて厳重に調査検討するように命令いたしまして、事務当局はそういう意思でやっておるのでありますが、業界においてもきわめてそのことを神経過敏に受け取っておるようであります。しかし、私はいまいろいろお話のございました御趣旨の中の大部分につきまして同じような憂いを持っておるものであります。非常に極端な例がたくさんございまして、事務当局よりも私自身が実際に事情をよく知っております。そこでそれはなるべく極秘裏にしておこうと思いましたのは、もし私がそういうことを口外いたしましたときに、いままで安心しておったしろうとのお客さんのほうにも動揺を生ずるようなことになって、迷惑をかけてはいかぬというおもんぱかりから慎重にやっておるわけでありますが。農林省としては、ただいま問題になっておりますような問題について、決してなおざりにしておるわけではありませんし、先ほど申し上げましたような許可制にいたしますまでの間に十分に研究いたしまして、社会の御期待にそむかないように処置をいたしたい。農林省所管の物資のことについては、そういう決意でおるわけであります。
  87. 横山利秋

    横山委員 通産大臣にお答えをしていただいてもいいのでありますが、ここに一つ問題があると思うのです。私がいまどなたがお答えになるのが法規上正しいのかというて聞いたら、私の所管があるから私が答える、通産大臣も答える……、内閣を代表して責任を持ってお答えになる閣僚はだれですかという点についてどなたもお答えにならない。どうもフィフティー・フィフティーらしいですね。その二元行政に実はぼくは問題があると思っているのです。  念のために私が整理いたしました不法行為を同僚諸君にも聞いてもらいたいと思うのですが、もうかるから買えと言って仲買い人は売る自己玉の問題であります。だからお客さんが損しなければ自分のところがもうからない、そのためには売るべきでないにかかわらず売れと言う、こういう仕組みがある。第二番目には、客との売り買いを取引所を通さないのみ行為。第三番目は元本保証ができるとうそを言う。第四番目は、してはならない戸別訪問をする。第五番目は、客がいやだと言っても引き延ばす、もうやめてくれと言っても引き延ばす。第六番目は、証拠金がなくなってもお客に知らせない薄敷きが行なわれている。第七番目は計算書を送っても証拠金は仲買い人がのみ込むガブのみがある。第八番目はかってに売り買いして計算書だけ送りつける。第九番目はめちゃくちゃな電話勧誘。全部じゃないですよ。仲買い人の全部がやっているというのじゃないですよ、くどく言いますけれども。しかし、こういうことをやることによってぐんと伸びた会社がある、仲買い人があるということを私は言いたい。まじめな営業態度を持っておる仲買い人の皆さんにはたいへん迷惑だと思う。その人たちはいまではおれたちのためにも厳重に処分してくれということを仲間同士で言っている。ところがいまの運営はそうではない。処分は取引所が行なう、あるいは農林省が行なう、通産省が行なう。取引所の処分の人たちには仲買い人が相当の数を占めている。同業者を処分せんならぬ、まあまあということになるのはあたりまえ。仲買い人が監督を受けるのは通産省と農林省だ。一方で処分を受けても片一方では処分を受けないから、名古屋の取引所で処分を受けたら東京で商売をやればいい、繊維で取引の処分を受けたら今度は穀物でやればいい。その処分の原因は営業姿勢にあるのではないか。営業姿勢で処分を受けたにかかわらず、向こうの支店でやるならいい、こっちの取引でやるならいいということが一体常識的にあり得るか。というところは制度の問題だと思う。その制度をさかのぼっていくと、今度の問題でもそうですよ。農林省は穀物取引所の専務なり常務を集める、通産省は繊維取引所の常務なり専務を集める。両方同じことを議論しておる、同じことを両省で話し合っておる。そういう二元行政に問題があるし、それから取引所の機能は証券取引所に比べますと全く指導力がない、私は痛感をしています。この際、何も証券取引所がりっぱだというわけじゃありません。りっぱだというわけではないけれども、少なくとも証券取引所に匹敵するような指導力を商品取引、繊維、穀物取引所に育て上げなければいけない。このためにはいま英断をふるって、悪質な仲買いがどんなに大きな会社であろうと免許しない。この措置をずばっとやることによってこの粛清の道が開けてくる。それを政治家に頼まれたから、あるいはあの人がこう言ったからといって、今日までも例があるけれども政治家がちょこちょこ出ていって処分を穏便にしろという事例があった。私は時間がありませんけれども、だからこの際、商品取引の現状については英断をふるってもらいたい、こう思いますが、いかがでしょう。
  88. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまお話しのような趣旨をわれわれも十分承知いたしておりますので、詳細に材料を集め検討して処置してまいりたい、こう思っております。
  89. 横山利秋

    横山委員 本来ならばこれは両大臣にそれぞれ同じ立場でお答えを願うというのはおかしな話で、総理大臣にほんとうはお答えを願わなければならぬ。私の言っている行政の一元化ということは、機構的にどっちかがほんとうの責任を持ってもらいたいということなんです。その責任が両方に分担されておるというところに機動力を欠いておる原因が私はあると思うのです。  それからもう一つ、この際それじゃ、農林大臣にお伺いしたいんでありますが、たとえばアズキですね。アズキは北海道で出ているだけだ。それで外国から輸入をする。そういうアズキがこの取引所の上場商品として一体適当であろうかどうか。これはまさに投機ではなくて、もうばくちではないかと思うのです。そういうことに国民がお金を出すことの国民経済的な価値というものが一体どこにあるだろうかと私はふしぎでならぬのであります。この際、上場商品についても洗い直しをすべきだ。アズキを買う、しろうとがアズキのことを知ってるわけじゃないですよ。もうかるからということだけなんです。アズキに投資することによってアズキの生産がふえ、国民経済に役立つという理論的背景は何にもないですね。上場商品を一ぺん洗い直すことについてお考えを願ったらどうかと思いますが、いかがですか。
  90. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 商品取引所につきましてはいろいろの説がございます。たとえば生糸などでもやはり同じような議論があるわけがありまして、アズキにつきましてもいろいろ御意見がございます。したがって、私どもはこの際、いろいろなことをあわせてひとつ十分専門家等にも御協力を願って研究を進めてまいりたいと思っています。
  91. 横山利秋

    横山委員 時間の関係で、もう一つ二つ聞きたいのでありますけれども、お客さまに売れといっておきながら自分が買うという自己玉の問題であります。私は法理論を展開するつもりはありません、時間がありませんから。ただ常識的にアズキがいまもうかるから、繊維がもうかるから買いなさいといっておいて、その仲買い人は自分では売っているわけですね。これはいま三〇%の制限はあります。三〇%にしたということは、大体それはおかしいということからなっている。けれども、三〇%であろうがなかろうが、いまもうかるからお客に売れといいながら自分は危険予防のために買っていく。その意味ではお客が損したら自分はもうかる。この手記にはその事例が、その情景が明白に出ています。そういう自己玉をこの際やめさせたらどうかと思いますが、いかがですか。
  92. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 自己玉の問題も改革すべき事柄の中にいろいろ研究資料として出てきておることであります。そういうことも一切含めて研究をいたしたいと思っております。
  93. 横山利秋

    横山委員 研究、研究と言っておれば済むかとお思いかもしれませんが、四十二年の衆議院の附帯決議で、私がいま声を大にして言っていることはもうちゃんとわれら同僚諸君が決議をしていることですよ。商品取引所について根本的再検討を加えよ、上場商品の適格性について再検討を加えよ、過当投機の抑制及び委託者の保護について万全を期せよと、こう書いてあることがなぜ行なわれなかったか、なぜ政府がこれをしなかったかという理由を一ぺん聞かしてもらいましょう。
  94. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私も詳しくはわかりませんけれども、結局、商品取引所というものは、もう申し上げるまでもないことでありますが、商品の流通と価格の安定というために、本来そういう趣旨で設けられたものでございますから、したがって当業者主義になっておるわけで、そういう意味では自己玉が本来の姿であったのだと私は思うのでございます。それが御指摘のように全く関係のない大衆投資家が入ってきたということで、法本来の考えた商品取引所というものが、ある意味で変質をし始めている。そこで、先ほどおっしゃいましたように、全部の建て玉の中の三割で自己玉を切ろう、こういうことであるんだと思うのでございます。ですから、本来の趣旨からいえば、むしろ当業者だけが自己玉でもって売り買いをするということであったのではないんだろうか、その辺が理論的に割り切れていないのではないかというふうに、私はそういうふうに見ておるのでございます。
  95. 横山利秋

    横山委員 この当業者、実需家はいまの問題の外になる。仲買い人のほうですね。仲買い人のほうというのは、本来、まあ常識的にいえばお客に頼まれて売り買いをするんですね。売り買いに徹すればいい。その諸君が何で自己玉をやるかというと、お客をつぶして自分のところはもうかるから自己玉をやるのだ。ブローカーならブローカーに徹底させるべきだというんです。自己玉、つまり実需家、当業者でやるならばやるに徹せさせるべきだ、その完全分離をこの際はかったらどうかというのです。法理論を展開すると時間がありませんから言いません。証券取引所の場合にもディーラーとブローカーの問題はずいぶん議論をいたしました。歴史があることはわかる。わかるけれども、三〇%までに下げた理論が――下げたけれども、まだ実効があがらずにますます問題が発生をしているこの機会に、自己玉を廃止すべきだ。なるほどあなたの言うように会員制度から出発をした。けれども、いまの商品取引所でもあるいは証券取引所でも、かりに基礎は会員制度であるからといったって、公共性が増大していることは免れがたい。公共性が強いことはもう言うまでもないことです。だから、いまの法体系から公共性を重視して第三者を理事にもっとどんどんと入れるとか、紛争処理は第三者がやるとか、仲買い人の数を理事から減らすとか、そういう公共性をふやす。時代の流れに従って商品取引所の運営に思い切ったメスを入れる、こういうことでなければならぬ。歴史の出発点からいってももう歴史は変わっておる。地球は回っておるんですから、この際歴史にこだわらずに、商品取引所のあり方をひとつ変えるべきだと思う。要するに、私はいま大衆から――政府にも来ているそうでありますが、私どもにわんさと注文がきておる。この機会に商品取引所の問題について十分思い切った措置をしてもらいたい。その意味におきましては行政の一元化、取引所の指導力の強化、専業仲買い人の自己玉の禁止、大衆投資家の保護徹底等の保護措置をしなければなりません。その意味においては法律を改正しなければならず、行政運営の態度も思い切って変えなければなりません。来年の許可を前にして、この際この許可についていろいろ問題があり、事務が渋滞していることはわかるけれども、さりとて許可のためにやって、いま当面あらしのごとくわき上がっている問題を農林省も通産省も放置しておるかのごとき感を私は受けるわけであります。法改正を含めて思い切った措置をなさるかどうか、最後に伺いたい。両大臣から伺います。
  96. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先ほど申し上げましたが、私どものほうでは来年新しい制度で許可制をいたしますので、そのために詳細に調査検討をしておるわけでありますが、私どもとしては、いまお説のように、いろいろな意味において法改正の問題も考えられないことではないのでありますが、その前に私は、ただいまの許可制のときまでにいろいろなものを摘出して研究して、それで許可制を実施するときに誤りのないようなやり方をすることによって、まず円満に進めているんではないか、こういう期待を持っておるのであります。いますぐに法改正についてどうこうということを御返事いたしかねるときであります。
  97. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 当初の目的はともかく、現実には大衆投資家が全く入ってきてしまったような状態でございますから、いま言われましたようなこともよく考え、農林大臣も非常にお考えのようでございますから、両省よく緊密に連絡をして処置をしてまいりたいと思います。
  98. 横山利秋

    横山委員 私の質問はこれで終わるわけでありますが、両大臣の御答弁にはたいへん不満であります。あらためて別途の角度で委員会において追及をいたしたいと思います。      ――――◇―――――
  99. 中野四郎

    中野委員長 これにて横山君の質疑は終了いたしました。
  100. 中野四郎

    中野委員長 この際、参考人出頭要求の件についておはかりをいたします。  昭和四十五年度総予算審査に関し、本日の安宅常彦君の質疑の際、日本赤十字社社長東竜太郎君の出席を求め意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  101. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  午後の会議は本会議散会後直ちに開くこととし、暫時休憩をいたします。     午後一時二分休憩      ――――◇―――――     午後二時十九分開議
  102. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  一般質疑を続行いたします。二見伸明君。
  103. 二見伸明

    ○二見委員 私は、七〇年代の内政問題の中で最大の課題であります農業問題につきまして、農林大臣をはじめ、各大臣に若干の質問をいたしたいと思います。  私は、現在日本に米が余り過ぎているというこの事実、そしてこの状態が続くならば日本がたいへんな事態になるということは十分認識はしております。しかし、米過剰という事態を招いた責任は、これは決して農民にあるのではない、農家にこの責任があるのではないと私は思います。現在の米過剰問題は、すでに農業基本法が制定された当時から予見されていた問題であり、途中、一時、米不足時代のときもあったとはいえ、いやむしろそういうときにこそ政府に農政に対する的確な長期にわたる見通しがあったならば、現在このような事態には至らなかったのではないだろうか、こう考えております。したがって、現在のこの事態を招いたことは、ひとえに政府の責任以外の何ものでもない、私はこのように断ずるわけであります。  しかし、現在の農業に取り組んでおります政府の姿勢というものをよく見た場合に、どうも政府は自分の責任をたな上げをして、むしろ農家の犠牲においてこれからの農業を進めていこうとしているのではないか、こういう疑問すら感ずるわけであります。農林大臣もお聞き及びになっていることとは思いますけれども、農家には、政府の逆のことをやれば、むしろそのほうが農家はもうかるんだ、こういう根強い考えもあります。私は、これほど政府の農政を鋭くえぐったことばはないと思います。日本国民の一人として、これほどまた悲しいこともないと考えております。私は、農業をこうした事態におちいらしたことに対して、もし政府が心から反省をするとするならば、今後、農家が安心して農業にいそしめるような環境をつくっていかなければならない。それに対して最大の努力を傾けていくのが、私は反省の実をあげるただ一つの方法であると思います。  まず冒頭にお尋ねしたいのでありますが、農林大臣は今後の農政について、産業政策的な方向に姿勢を持っていくのか、あるいはいままでと同じように社会政策的な立場でもって農業を推し進めようとしていくのか、その点をまず冒頭にお伺いしたいと思います。
  104. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 米の過剰になりましたことは、もうすでに御存じのように、農基法ができましたのは三十六年でありますが、三十七年には、政府は食糧の長期見通しを発表しております。その長期見通しの中には、これから食糧はやや緩和の状況になっていくであろう、こういうことを言っておるわけであります。しかしその後の経過を見ておりますというと、三十八年をピークといたしまして、一時は減りましたけれども、そのうちにまた情勢が変化をして、やがて昭和四十年にはたいへんな不足になりまして、大体百万トンほど外米を輸入せざるを得なかった。当時、全国の県知事諸君は、各自分の県で米づくり運動というようなものを熱心に始めました。ところが、あのころからわが国の経済も、いわゆる高度成長に伴って国民一般の所得がふえるに従って食生活が変化してまいりました。御存じのように毎年毎年、あれ以来一人当たりの米の消費量が減退しているのと、今度は逆比例で、技術あるいは肥料、農薬の進歩もあるでしょうけれども、とにかく逆に反当の収量がふえるようになってまいりました。そういう結果、今日のような過剰な状態になってきた、こういうことでありますので、私どもといたしましては、この際どうしてもある程度の生産調整をしていくということがいままで食管制度というものを維持してまいりました農政全体の中において大事なことである、こういう考えに立ったものですから、生産調整をやるようになった次第であります。  そこで、ほんのただいまも農業団体の方々といろいろなお打ち合わせをしておったのでありますが、私どもといたしましては、米はいまのような状況であるからもちろん生産調整はしなければなりませんが、それに加えて今度は、たとえば作付の転換をしてどういうように、同じような所得が確保できるかという、そういうことについてつとめて努力をするのが私どものつとめであります。そういうことについて努力いたすのはもちろんでありますが、大体いまお話しのように、私どもはいま非常に高度成長してまいります日本の産業構造の中で、農業というものもやはり他産業に比べて劣らない所得を確保し得るような農業形態を維持しなければならない。政府及び自由民主党で言っております総合農政の眼目もそこにあるわけであります。したがって、農地法の改正案等も御審議願っておるわけでありますが、そういう趣旨もやはり比較的規模の大きな専業農家をできるだけ育成していきたい。しかし統計にもありますように、大体八割が兼業農家でありますから、この兼業農家の所得も増進することを考えなければならない、そういう二つの道を調和させながら農業所得というものを維持し、農村の形態も、あわせて住みよい農村、つまり近代的な農村として育成してまいりたい、こういう考えでございますので、われわれは、昭和四十五年度の予算をごらんくだすってもわりますように、米の調整にも力を入れますけれども、圃場整備であるとかその他のことには昨年に劣らざる予算――劣らざるではない、昨年度にも増して増額をいたしまして、経営基盤をしっかりしてまいるようにつとめておる次第であります。
  105. 二見伸明

    ○二見委員 今後の方向として経営規模を大きくしていくというお話でございました。  十八日に政府がまとめた「総合農政の推進について」の中で、農政の基本的な方向として、自立経営農家を農業の中核的にない手として着実に発展させることをうたっております。そうして、自立経営規模としては昭和五十二年に年間二百万円の農業所得を必要とする。そのために水稲単作経営の場合ですと四ないし五ヘクタール、酪農経営の場合には搾乳牛二十頭が必要だ、こういうふうに基本的方向として打ち出されておるわけです。  それで、まず自立経営農家についてお尋ねしたいのですが、実はこの自立経営農家というのはいままで政府の農業政策のいわばうたい文句であったわけです。しかし、自立経営農家がこの数年どれほど大幅に伸びているかというと、これは思うとおりに伸びていないのが私は実情じゃないかと思います。しかし、現在こういう方針を打ち出された以上、おそらく農林省といたしましても、自立経営農家を育成するためにはこういう方策をとっていくんだという具体策がおありだろうと思いますので、その具体策をまずお伺いしたいと思います。
  106. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 総合農政の基本の考え方の中に、いまお話しのように自立経営の可能な農家を育成してまいりたい。そこで、そのおよその目標の規模はいまあなたがお示しになったことをわれわれのほうで出しておるわけでありますが、私どもは、自立経営の農家を育成いたしてまいりますためにも、いろいろな障害を除去していかなければなりません。そういう意味で、たとえば農地法の改正などもその一つであります。それからして、農業としては自分の規模は小さくてこのままで自立していくことの不可能であるというお考えに立って他産業に転向いたしたいというような方々の農地をできるならば自立を考える農家に移譲してもらいたいのでありますが、そういうことはいやだとおっしゃる方は、やはり今度は農協法を改正いたしまして、農協が委託経営のできるような法律に改正になりますので、農協に預けていただいて、そして農協が小作人の立場に立ち、それからいまの畑を持っている人が地主の立場に立って、スムーズに、農協によって委託の経営ができるようにしていきたい。それはひとえに小さなたんぼで農業的生産性をあげ得ざるものを、規模を大きくして経営を合理的にしようという考え方からであります。したがって、そういうことのためには、小さなたんぼを持っていらっしゃる方が移譲しやすいように、農業年金制度の一部がその目的を果たすために経営移譲に対して年金を差し上げるといったようなことで、私どもとしてはいろいろな手段を講じて、自営すなわち自立できる農家を育成してまいりたい、こういう考えであります。
  107. 二見伸明

    ○二見委員 政府としては、自立経営農家は大体何戸くらいを予定しておるわけですか。
  108. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いま政府で経済社会発展計画についていろいろやっておるわけでありますが、あの計画は、いままで出ておりましたものを改定しようといたしておるわけでありますが、高度経済成長に伴い、また農業のほうでも省力がだんだん行なわれてまいりますので、非常に変化が多くなってはきておりますけれども、大体農業に従事していくであろうと思われるものがいままで年々三%程度減少してまいりますが、そういう農業就業人口が減退するにもかかわらず、生産力は劣らないようにしていくのが、つまり経営規模の拡大ということになるわけでありますから、一応いま策定いたしておる計画について何%に見ておるかということ、いま私資料を持っておりませんので、その点計画に参加しておる事務当局から御説明申し上げます。
  109. 亀長友義

    亀長政府委員 現在のところ、いわゆる自立経営農家というのは全戸数の九・九%、大体一割程度だというように考えております。この基準としましては、大体人口五万未満の町村の農業以外の人と所得が均衡する、年間百十四万円であったかと思いますが、そのあたりの農業所得があるものという考えでございます。現在この一割の農家で、生産物のシェアは大体三割を占めております。農林大臣からも話がありましたように、こういう自立農家が農業生産のかなりの部分を占めるようにしていきたいというのが目標でございまして、いま具体的な数字としては、私ども計画は持っておりませんけれども、兼業が八割もございますという状況を考えまして、自立農家の育成に、おのずから兼業とのからみで、ある程度の目標を設定しなければならないと思っておりますが、現段階では、いま九・九という実情でございますので、先ほど大臣から御説明申し上げましたような施策を拡充することによって、相当な生産の分野を占めるように努力をしたいという程度に現在は考えております。
  110. 二見伸明

    ○二見委員 目標策定が非常にむずかしい作業であるということは私もわかります。ところで、私も自立経営農家というのは非常に理想的な形で好ましいと思うわけですけれども、これを経営していく場合に隘路もあるんじゃないか。その一つは、何と申しましても、今度の三十五万ヘクタールに当たる減反問題であります。いままでの委員会でだいぶ質疑もされておりますけれども、これによって土地価格が上がるんじゃないか。そのために規模を拡大したくても農地が所得できないのではないかという一つの隘路がある。同時に今度の減反政策そのものが農林省のお考えになっている規模拡大とは逆行するものではないか、こういう意見もある。私もそのとおりだと思います。こういう点については農林大臣はどういうふうにお考えになっているのかその点をお願いしたいと思います。
  111. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 率直に申しまして、私自身もたいへん心配いたしておりますのは、さっきお話し申し上げましように、米は生産調整をしなければなりませが、農業は維持してまいらなければならぬ。維持していくために、しっかりした農業経営のできるような経営体をつくりたいと、こう思っておるわけであります。このごろは、たとえば新都市計画法というようなものができてまいりまして、その中に含まれておる農地が大体三十九万ヘクタールほどございます。そのうち十八万ヘクタールほどは水田であります。私は去る国会で農業振興地域の措置法をつくっていただきました。そういう考え方や農地法の改正案や農協法の改正案の思想の中に一貫して流れているものは、経営規模を大きくして農業を健全に育成していきたいという考え方なのであります。農業振興地域の法律も同じ目的であります。ところがこの都市計画法の中に入っております水田及び畑地を持っておられる農家の一部の人々は、調整区域でなくて、自分の持っておる田も市街化区域に入れてくれというふうな希望を述べられる者が全国にたくさんおる実情を考えてみますと、農業者という方々考えていらっしゃることがどこにあるんだろうということを、実は私個人としてたいへん悩み、また心配しておるところであります。しかし、反面において今度百万トン以上の生産調整をやるにつけましても、逆の考え方で農協自体がたいへん熱心に、土地がスプロール化されることは非常に困るのであって、農協が自分の力で土地を買い取って、そして健全なる経営がやれるよい農地を保存したいという考え方、これらはたいへんわれわれの考えておるありがたいお考えのほうでありまして、したがって、今度の百万トンの調整につきましても、一種農地については、これは農業経営のためにどこまで保存すべきものであるとわれわれは考えておるのでありまして、したがって、いまこれからの農業の発展を考えましても、私は今度のやり方で農業の規模をしっかりしてまいろうということの支障にはなるべくならないように、農地転用等の許可の場合においてもそういうことに十分な意を注ぎながら対処してまいるつもりであります。
  112. 二見伸明

    ○二見委員 もう一点こまかいことになりますけれどもお尋ねいたしますけれども、酪農の場合、搾乳牛が二十頭くらいの規模、こういうことでございますけれども、内地の場合ですと、搾乳牛二十頭飼うためには粗飼料の耕地といいますか、それが大体四ヘクタールくらい必要だ、こういわれているわけです。一頭〇・二ヘクタールくらい必要だ。もし家族労働でやった場合、搾乳牛二十頭ということになると、それだけでもって手一ぱいであって、とうてい飼料をつくるまで間に合わないというのが実情だ、こういわれているわけでありますけれども、農林省の計画によるとそういう点の労働力の問題はどういうふうにお考えになっているわけですか。
  113. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 このごろは御承知のように、酪農、畜産でもだいぶ省力化が進んでまいっておりますので、いまちょっと最近の記録を申し上げたいと思いますが、昭和四十三年の統計調査の牛乳生産費調査によりますと、搾乳牛二十頭ないし二十九頭の階層では、飼養管理労働時間と飼料作労働時間を含めて一頭当たり二百九十六時間であります。二十頭といたしますると五千九百二十時間となるわけでありますが、これは農業専従者二人と補助者一人という平均的な家族労働構成を持つ家族経営で現状においても十分可能であるということであります。しかし、今後はなお技術の進歩もありますし、労働生産性の向上が期待されておりますから、いま申し上げました二十頭前後の酪農家では、専従者二人とそれから補助者一人で十分である、こういう統計になっております。
  114. 二見伸明

    ○二見委員 それは大臣、自分で飼料をつくってのデーターですか。乳しぼりだけですか。それは自分で一生懸命畑を耕して牧草をつくる、その労力も含めてそういうことになるわけですか。
  115. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 飼います管理労働時間と、飼料をつくる労働時間を合わせた数字でございます。
  116. 二見伸明

    ○二見委員 もう一点この点についてお伺いしておきますけれども、先ほどでき得るならば兼業農家には他産業に移ってもらいたい、こういうような御答弁だったように思うわけです。そうすると、今後の農政の方向としては、いろいろ調和もしなければならないというようなお話もありましたけれども、自立経営農家を育成するためには、あからさまなことばでいえば、兼業はやめてもらう、農業はやめてもらおう、そういうふうにいわば二本立てといいますか、農民にとってみれば二本立ての姿勢で臨んでいくということになるわけでしょうか。
  117. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 二見さん御存じのように、わが国でも有名な学者の中には、かえってわが国の農業は兼業を主とすべきであるという有力の御意見もありますし、私ども自分の郷里その他歩いてみまして、やはり、わが国では、兼業というものをそんな安直に片づけてしまうことは、間違いではないかということを痛感いたしておる次第であります。  幸い政府でも、地方にできるだけ産業を分割してまいって、そうして太平洋ベルト地帯に人口の七割も集まってしまうようなことを思われておる将来の計画は決してよい計画ではないという考え方で、地方に産業を分散しよう。そのためには私は、申し上げましたことばがちょっと足りなかったかもしれませんが、兼業をなくしてしまえというのではありませんで、地方に余っているそういう労働力には、いま通産省と労働省と農林省とが相談をいたしまして、地方に出ていこうとする産業を計画的にやってもらって、そして余っておる地方の労働力をこの次に来るであろうところの産業にあらかじめ間に合うように、労働省関係で職業訓練をしてもらって、その間は訓練手当も出して、そして一方においては農業はやりながらも、余っておる労働力をもって所得をふやしていこう。そういうためにはやはり交通の便をよくしなければいけませんので、地方道、農道等の拡充をしてまいりたい、こういうような考えであります。
  118. 二見伸明

    ○二見委員 次に三十五万ヘクタールの減反について二、三お尋ねしたいと思いますけれども、最初にまず三万五千円の奨励金の支払いについて、農地法第二十条との関係についてお尋ねをしたいと思います。  農地法第二十条の第二項によりますと、賃貸借解約について「前項の許可は、左に掲げる場合でなければしてはならない。」とありまして、その第一に、「賃借人が信義に反した行為をした場合」こういう規定があります。今回政府は二十三万二千ヘクタールについては、休耕もしくは転作という方向で施策を進めていくわけでありますけれども、もし小作人が休耕した場合に、その休耕したということが「賃借人が信義に反した行為をした場合」これに該当して賃貸借関係が解約されるのかどうか、その点をまずお尋ねしいと思います。
  119. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ちょっと事務当局から御説明申し上げます。
  120. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、今回の生産奨励金は、生産調整を実施する水田について耕作の権原を有する者に交付するということになっております。したがいまして、小作地につきましてはその小作本人に払うということになるわけでございますけれども、いま御指摘のように、この農地法二十条というのがございまして、そういう場合にあるいは地主のほうから小作人に対しまして土地を返してくれという場合があるかと思います。その場合に全部が全部すぐ返さなければいかぬということはありませんけれども、この二十条にもございますように、地主が自作を相当とするというような場合にはあるいは返さざるを得ないということもあり得るかと思います。  そこで、指導方針といたしましては、今度の生産調整の場合に、小作地は休耕の対象としないようにしたいというふうに考えていきたいと考えております。
  121. 二見伸明

    ○二見委員 小作地は休耕の対象にしない、これは要するにおたくのほうの指導としてこう出ているわけですね。しかし、もし小作人が、私は三万五千円ほしいのだ、だから休耕したいのだと言った場合には、これにひっかかって、それはかまいませんけれども、もし休耕すればこういうことによって契約は解除になりますよ、こういうふうになるわけですね。
  122. 中野和仁

    中野政府委員 先ほど申し上げましたように、非常に微妙な地主と小作人間の論争になるかと思いますので、方針といたしましては、ただいま申し上げたように、小作ちは休耕の対象にしないほうがいいということで指導したいというふうに考えておるわけでございます。ただ、どうしてもそこを休耕しなければならぬ場合もあり得るかと思います。たとえば集団的にまとめて休耕したいというような場合がございます。その場合には市町村なり農協なりが、単に地主と小作人の間だけでなくて、中に入りまして、地主の承諾をとってその一年のためにすぐ農地を引き揚げるということでないように指導いたしたいというふうに考えております。
  123. 二見伸明

    ○二見委員 それからもう一点。それは契約解除だなんという大げさものではなくて、小作人が、私は一年間休耕してもかまわない。その場合に、当然三万五千円は小作人に支給されるわけですけれども、地主が、小作人が休耕するのならば私がかわりにたんぼをつくりましょう、こういう場合も予想されるわけです。その場合にはどうなりますか。
  124. 中野和仁

    中野政府委員 最初に申し上げましたように、耕作権というのは耕作をする権利でございますから、それを休むということになりますと、地主のほうからは、休むくらいなら私に返せということがあり得るわけでございます。その場合に、現在は普通の場合は両方の申請で知事の許可を受けなければ解約になりません。ただその場合も、地主が自作を相当とする、しかも地主の経営能力と、それから小作人のほうの生活の水準というようなものをいろいろ判断した上で知事が許可をするかどうかきめるわけでございますから、いま、おっしゃいましたように、一がいにすぐに地主のほうに土地が戻るともいえません。そうでない場合もあるわけでございます。
  125. 二見伸明

    ○二見委員 そうでなくて、契約を解除するなんという大げさなことではなくて、一年間休むなら私にかわりにつくらしてくださいと地主が言ってきた場合、これも実際に考えられるわけです。その場合には、三万五千円は耕作者のほうに入って、地主はゆうゆうとたんぼを耕す、契約はもちろん解除になっていない、そういう場合です。
  126. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまの場合は、その土地は耕作されるわけでございますから、その小作人のほうに三万五千円は行かないというふうに思います。
  127. 二見伸明

    ○二見委員 そうすると、小作人にとってみれば、自分はやめたいのだけれども、地主が一年間だけつくらしてくれ、契約は解除をするわけじゃない、あいているのだから一年間つくらしてくれ、むしろ地主のほうが下手に申し出た場合に、うっかりああそうですか、こう言った場合には耕作者はもうどうしようもないわけですな。三万五千円ももらえない。もちろんたんぼを耕せませんから、そこからは収量もあがってこない、こういうわけですね。
  128. 中野和仁

    中野政府委員 おそらくいまの場合は、小作人のほうはそう簡単に土地は返さないのではないかと思いますけれども、そういう場合にもし承諾をして地主に土地を返してしまえば、以後は耕作者の権利はなくなるわけでございます。
  129. 二見伸明

    ○二見委員 農地局長、ちょっとどうも私のほうのことばに誤解があるみたいなんですが、そうじゃなくて、耕作者が土地を一年間休むでしょう。その一年間だけ地主が、じゃ私がかわりにつくりますよ、こう言ってきた場合、契約を解除するとかなんとか大げさな問題じゃなくて、そういう場合には三万五千円は耕作者の手にほんとうに渡るのか、あるいは、そうなった場合には地主が耕しちゃったのだからもうだめなのか、耕作者は全然もらえないのか。その点をはっきりしてもらいませんと、実際にこの問題は起こってきているのです。
  130. 中野和仁

    中野政府委員 ただいま申し上げましたように、休むかほかに転作する場合に三万五千円が出るわけでございますから、その土地を小作人か地主が耕作すれば、水稲をつくれば奨励金は出ないということになるわけでございます。
  131. 二見伸明

    ○二見委員 もう一点ですが、いわゆるやみ小作というのがありますね。正規の小作関係を結んでいるのではなくて、やみ小作というのが実際にあります。おたくのほうでお調べになるとあまりデータが上がらないそうですが、かなりあるそうです。その場合に、いわゆるやみ小作人が休耕した場合に、これは法律の上ではあらわれてきませんから、三万五千円は地主のふところに入るわけですか。
  132. 中野和仁

    中野政府委員 現在の農地法によりますと、農業委員会の許可を受けて賃貸借契約を結ぶわけでございますから、当然やみ小作につきましては農地法上無効でございます。したがって、そういう土地について地主側が休むといえば、その年の作付するのは地主側にあるというふうに判断せざるを得ないと思っております。
  133. 二見伸明

    ○二見委員 ところで、二十三万二千ヘクタール休耕ないし転作ということでございますけれども、農林省としては休耕が望ましいのか、転作のほうが望ましいのか、まずその点をお伺いします。農林大臣
  134. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 なるべく転作が望ましいわけであります。
  135. 二見伸明

    ○二見委員 それでおたくのほうの米生産調整対策実施要綱によりますと、何に転作したらいいかというものとして、「稲から飼料作物、野菜、果樹、地域特産物等への作付転換を円滑に推進するよう指導するものとする。」こうなっております。農林省のほうで転作が望ましいというならば、飼料作物は大体この程度までならば需給のバランスがとれるのだ、野菜もこの程度までならば需給のバランスがとれるのだ、果樹はこうだ、こういうおおよその目安があってしかるべきだと私は思うのですが、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  136. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 全体の大体の需要供給の関係の計画はありますけれども、いまのような場合に、これは個々別々の農家でありますし、また地方によって実情が違いますので、農林省はしばらく前この方針をきめましたときから、地方の県知事、地方農政局長と打ち合わせまして、それぞれ転作をしていただける地域について先方のお考え等を考慮に入れまして、転作がしやすいように、しかし、いまちょっとお話のありました野菜のごときは、あまりたくさんつくられてしまってもたいへん困ることになりますので、そういうことを勘案しながら、地方の当局または農業団体等ともいろいろその実情に即したやり方をとってもらうようにいま指導いたしておるところであります。
  137. 二見伸明

    ○二見委員 実情に沿った方法をとっていただく、こういうお話でございますけれども、今度の二十三万ヘクタールについての政府のいろろなやり方を見ておりますと、ただ単に府県に割り当てるだけだ。それをどう推進していったならば農家が安心して転作できるのか、そういう点についてはほとんど配慮がなされていない。むしろ県や市町村、これが実際には推進母体としてやらなければならない。しかも県や市町村のほうでは農家から突き上げを食って困っている。転作しろといったって、野菜をどれだけつくったならばもうかるのだかわからないじゃないか、こういうような突き上げがかなり来ておるわけです。農家にとってみれば、二十三万へクタールを休耕あるいは転作するというのは大問題、われわれが想像している以上に大きな問題であります。しかも時期は三月に入って、もう種をまかなければならない時期に来ているわけです。  もし政府が米の過剰を真剣に考えていたならば、どうしても生産調整が必要だというふうにお考えになっていたならば、ことしの一月に突如として出てくるようなことではなくて、ほんとうならばもう一年も前に、実はこういう状態になるからこういうふうにしなければならないという、現在農林省があかされておる構想を少なくとも出して、しかも一年間十分に準備期間を置くなり調査期間を置くなりして、そしてまた転作しても、こういうものはこの程度転作すればだいじょうぶですよ、また価格保障もこのようにいたしますよ、こういうような誠意があるといいますか、あたたかみのある農政がとられてしかるべきだったと私は思うのです。この点についてはいかがですか。
  138. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御存じのように、こういう傾向になることはわかっておったでありましょう。米づくりの人々自体もそうであります。農業団体もそうであります。そこで、昨年はとにかく一万ヘクタールを減らしてみようということでああいうことをやったことは御存じであります。  今度、昨年の暮れから政府、農業団体、全国の知事会、町村長会等いろいろな代表者に集まっていただきまして、推進協議会が持たれました。そこで、それぞれの県知事、市町村長、農業団体の代表者たちが何回か相談を重ねられました結果、政府考えております百五十万トン以上の生産調整に全面的に協力いたしましょう、こういうふうになりましたときに、さてこれから実際に指導してまいるのは知事であり、市町村長であるということでありますので、この間御決定を願いました補正予算に二十億円というものをつけましたのは、それぞれの地域地域に即応して転換していくために、たとえば小規模な土地改良も必要であろうし、機械等の小型の設備も必要であろう、そういうような具体的な要望が知事、市町村長たちから出てまいっておりますので、そういうことを取り入れて、そのお金を二十億円御審議を願ったわけであります。したがって、私どものほうとしてはいま緊密な連絡を地方ととりながら、これが完全に成立いたしますように、全国に手分けをして鋭意御協力を願っておる、こういうわけであります。
  139. 二見伸明

    ○二見委員 もし減産が予定どおりに行なわれなかったとしても、それは決して農家の責任ではない、こう私は考えますけれども、その点はよろしいですか。
  140. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 何べんか申し上げますように、農業団体その他公共団体の長がみな一致してこの方針を支持し、協力するという申し合わせをしてきておるのでありますから、私どもそれを御信頼申し上げて、できるだけ成功するように期待しておるわけでありますから、その成果があがらないうちに、できなかったらというふうなことは御遠慮申し上げているほうがいいんじゃないかと思います。
  141. 二見伸明

    ○二見委員 大蔵大臣にお尋ねします。  新聞報道でございますけれども、奨励金がきまった当時、農業団体の要求どおりの休耕奨励金を認めた。百万トンの減産が実現するかどうかは一〇〇%農民の出方にかかっていると大蔵大臣は語られたそうでありますけれども、これはどういう意味でございましょうか。
  142. 福田赳夫

    福田国務大臣 さようなことばづかいは使っておらぬ。私もその辺は慎重に語っておるのでありまして この奨励金、私は反三万円が適当と考えた、これが限度だと考えた。しかし、三万五千円を支出せよという知事会側の強い要請があるので、これを取り入れるということになると、知事会その他の公共団体の協力も強力にこれを期待できる、かように考えて三万五千円とふんばったんだ、こういう説明をしておるのでありまして、ただいまお話しのようなことばづかいはいたしておりません。
  143. 二見伸明

    ○二見委員 農林大臣は、一生懸命各市町村の御協力を願って成功するように現在努力中なので、できなかったらどうするかということだけは慎んでいただきたい、こういう御答弁でございました。しかし、農家にはそれだけでは割り切れないものがあるわけです。もしわれわれが思うとおり協力ができなくて、あるいは協力はしたつもりではあるけれども、ほかのほうでむしろ米を増産してしまったために、政府が予定している以上の米がとれてしまった。そうなったならば、政府としては、協力しなかったじゃないかということを理由にして、買い入れ制限だとかあるいは食管制度を改めるだとか、そういうふうな強硬手段に出てくるんじゃないだろうか、こういう不安が農家の中にあるわけです。  そういうものがないならばないでよろしいし、もしあるならば私はこれは大きな問題になると思いますけれども、御答弁をお願いしたいと思います。
  144. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先ほど申し上げましたように、一生懸命でやっていてくださる最中に、できなかったらどうするぞなんということはとんでもない失礼なことで、全面的に農村の方々を御信頼申し上げておるわけであります。
  145. 二見伸明

    ○二見委員 三十五万ヘクタールについて、二十一日にわが党の矢野書記長の質問に対して大蔵大臣は、三年間で他目的に転用するんだ、そしてその十一万八千ヘクタールというのはその一環だ、こういうような御答弁をされたように思います。また、二十七日には農林大臣は、三年じゃなくてこれは二年なんだ、こういうように御答弁されたと聞いておりますけれども、これはどちらがほんとうなんでしょうか。
  146. 福田赳夫

    福田国務大臣 この間、矢野さんから御質問がありまして、一体十一万八千ヘクタールはどこから出てきたのだ、こういうお話でございますので、私は奨励金を百五十万トンに対して出すという話があるが、ただ単に奨励金を出すということでは、これは一体片づくことになるのかならないのか非常に疑問だ。むしろ三十五万ヘクタールを他用途に転用する、ここで初めて根本的な解決になるのだ、こういう意見は私はもっともな意見だと思う。そこで、他用途に転用すると申しましても、あるいはそれがそう短期間に片づかないかもしらぬ。三年かかるか五年かかるかわかりません。わかりませんが、根本的な解決は三十五万ヘクタール全部が他用途に転用されるということで初めて完全な措置となる、こういうふうに考え、そして初年度たる四十五年度においてはどうするかというと、三十五万ヘクタールの三分の一をひとつ試みてみようということで、この数字はきまりましたという御説明をいたしておるわけなんです。  ですから、三年に買おう、五年に買おうとか、また三年、五年の間に他用途に全部転用するという具体的な計画をまだ持っておるわけじゃないのです。農林省のほうで二年、農地法の制限緩和という区切り方をいたしましたが、これはさしあたり二年ということで、この二年、三年、五年というのに理論的なつながりがあるというふうには考えておりません。
  147. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 何かお間違いじゃなかったかと思うのですが、私は二年というふうなことを申したことはないのでありまして、それはたぶん農地転用を暫定的に二年間ゆるめる、こういうことを申した。農林大臣立場といたしましては、先ほど来申し上げておるように、われわれ一億に余る人口をかかえておる国で、できるだけ農業の自給度は維持していきたいというたてまえでありますから、農地転用などを緩和するにいたしましても、いまわれわれが目的を達成するためにとりあえず二年間はゆるめましょうということで、その経過にかんがみてどうするかということはそのとき考えることだと、農転のことで申し上げたはずであります。
  148. 二見伸明

    ○二見委員 大蔵大臣は、三十五万ヘクタールを三年間という特別な理論的な期限があるわけじゃない、ただ三十五万ヘクタールはともかく農地外転用しなければならぬという意味でおっしゃったのだ、十一万ヘクタールというのは、大体三年を目標にすればその三分の一だ、こういう計算なわけですね。大蔵大臣はそういう計画を持っていらっしゃる。農林省としてはそういう方向は是認するわけでありますか。
  149. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 それは予算決定の最中に、ただいま大蔵大臣の言われましたような御意見も出ましたし、それから趣旨はそういうことであるかもしれませんが、少なくとも予算面にあらわれております政府の方針としては、百万トン分は生産調整、他のものは農地を他用途に転用することによって五十万トンを減らしていく、こういうたてまえがいま出ておる政府の方針でございます。
  150. 二見伸明

    ○二見委員 実は、この点ははっきりしておいてもらわないと困るのですけれども、十一万八千ヘクタールの残り二十三万二千ヘクタールですね。要するに、あと農地外転用の対象になるのは、大蔵大臣の答弁からいけば二十二万二千ヘクタールが農地外転用ということになるわけです。農家のほうの受け取り方としては、それではことし休耕したものあるいは転作したものを対象にするのか、あるいはそれとは全然別に、二十三万何千ヘクタールは農地外転用ということになるのか、その点をまずはっきりしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  151. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 そういう方針につきましては、ことし私どもが計画を立てました目的がどの程度にどういうことになったかというときに、諸情勢を勘案いたしまして政府の方針はきめるのでありまして、その状況はいまから予断をすることはできないのではないか、こう思っています。
  152. 二見伸明

    ○二見委員 農林大臣はいまから予断することはできないとおっしゃいますけれども、大蔵大臣は三年ないし五年でもって三十五万ヘクタールは農地外農用するんだとはっきりおっしゃっているわけです。そのとおりダイレクトに受け取れば、農家はことし休耕あるいは転作した分を三年ないし五年でもってこれは農地外転用しなければならないんだ、こういうふうに受け取ります。
  153. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、三年ないし五年で三十五万ヘクタールが全部水田以外の用途に転用されるという計画があるということを申しておるわけじゃないのです。そういう考え方、これが大事なんだ。この大事な考え方を踏んまえなければいかぬ。     〔委員長退席、藤枝委員長代理着席〕 つまり、三十五万ヘクタールのうち四十五年度におきましては二十三万ヘクタールに対して奨励金を出すということになる。この奨励金の措置によりまして、休耕という形をとるものも対象になりまするし、また、転作というものもこの対象になります。転作が定着をするということになれば、水田の用途が他に転用されたと私は言っていいと思うのです。それから四十五年度において残りの十一万八千ヘクタールに対しましては他用途転用の措置を考えておる、こういうふうに申し上げておるわけでございますが、その他用途へ転用というのを頭の中で考えてみると、農家が自分で、あるいは農住というようなことがいわれますが、ああいう形で転用ということも考えられると思います。あるいはさらに農業協同組合がこれを買い取る、そして他に転用するという形も考えられると思う。あるいは地方公共団体が土地基金を使って先行取得をするというようなことも考えられるし、また、政府が地方公共団体にお願いをいたしまして先行取得を行なう、こういうような場合も考えられる。つまり、そういうことを総合いたしまして、とにかく三十五万ヘクタール、百五十万トン分が余っているんですから、この余っているものに対してこの転用措置が行き届きますれば、まず根本的な需給調整対策になるであろう、この考え方自身を申しているのでありまして、まだ計画が熟しておるという段階ではないのであります。
  154. 二見伸明

    ○二見委員 いま土地開発基金のことが出ましたので自治大臣にお尋ねしますけれども、四十五年度の土地開発基金は六百億、こう聞いておりますけれども、これはどの程度の市町村に交付されるわけでありますか。
  155. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 四十五年度の六百億を予定いたしております土地開発基金の対象町村は、大都市周辺の町村を予定いたしております。
  156. 二見伸明

    ○二見委員 私、聞いたところによると、大都市周辺でおよそ千二百の市町村に交付されると聞いております。そして全国に市町村の数は二千八百近くあるはずです。そのうち千二百ばかりの市町村に土地開発基金六百億円は交付されるんだ、残りの千五百幾つかの町村は、小さいという理由でもって交付の対象にはならない。しかし、そういう小さな町村であっても土地を買いたいというような意向がないとはいえないわけです。そういう点に対しては自治大臣はどういうふうに対策を進められるわけですか。
  157. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 大都市周辺の町村とそれ以外の町村におきましては、先行取得に対する緊急の需要度が多少違おうと思いますが、しかし、一がいに申されません。したがいまして、いま対象に予定いたしております千二百市町村以外の分につきましては、別に地方債の制度の中で先行取得債の制度がございますから、これを活用いたしまして、それでこの分につきましても需要が相当あり、また、これに対する供給があります場合には、ワク外債、縁故債あるいは交付債というようなもので、その要望を満たしてまいりたい、こう考えております。
  158. 二見伸明

    ○二見委員 農林大臣、今度の水田買い上げについて、自治省では、土地開発基金を水田買い上げに優先的に使うとか、先行取得債を出すとか、あるいは縁故債という話もあります。特に縁故債なんという場合は、現在非常に金融も逼迫しておりますので、なかなかむずかしい客観情勢にあると思いますけれども、そういう中でもし地方自治団体が水田買い上げのための縁故債を出した場合に、農林省としてはお礼の意味も兼ねて利子補給をしてやるぐらいの配慮があるかどうか、農林大臣のお考えを聞きたいと思います。
  159. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいま政府部内で各省の御協力で所期の目的を達成するように御研究願っておる最中でございますので、私どものほうはまだ何にもそういうことに、他省のことについては考えておりません。
  160. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほど申し上げましたように、これは土地を買い上げると申しましても、買い上げる主体が――自己利用の場合は買い上げる、買い上げないの問題は起こりません。買い上げの起こる場合は、一つは農協でございますね。農協は農協資金を持っております。しかし、その資金を使って支払いを受ける相手はだれであるかというと農家なんです。農家はその売り払い代金を、おそらくこれは農協も協力すると思いますが、農業協同組合に預託をする、あるいは一部銀行というようなことになるかもしれませんが、消費購買化されない性格を持つと思うのです。ですから金がぐるぐる回る、そういうことで、かなりこれは資金的にはゆとりを持った運用ということに相なるであろう、こういうふうに考えます。  それから、地方公共団体が収買をするという場合はどうなるかというと、土地基金を使う場合もあるといういま自治大臣の話、そのとおりです。その際は問題はない。それから縁故債を使うということですね。その際も、そのいずれの場合においても相手はやはり農家なんでありまして、農家は農業協同組合にこれを預託する、またあるいは一部は銀行に預託をするということになるだろうと思うのです。これは購買力化しないわけであります。そこでその資金はまた銀行なり、縁故債として貸し出しを地方団体に対して行なった当該金融機関なり農業協同組合なりに戻ってくる。こういうことで金融調整下でありますけれども、特殊な性格を持つであろう、こういうふうに思いまして、私は資金自体ではそう問題はないと思います。  それからもう一つは、利子補給みたいなものを考えるかというお話でございますが、土地基金を活用してやるという際におきまして、これはもともと自治体の自主的な判断においていままでも行なう考えであったので、これに対して利子補給の必要はないと考えまするし、また、先ほど申し上げました中央政府が地方にお願いをして先行取得していただくという際におきましては、あとで利息を加味した価格をもって買い上げますので、その場合におきましても利子補給の必要はない。農業協同組合が今度はスプロール化を防ぐというようなことで買い上げるという際においてどうするかというような問題が残っておりますが、これも私はいまここで考えまして、利子補給をする必要はないんじゃないかなというような考え方をいたしておるわけであります。
  161. 二見伸明

    ○二見委員 建設大臣にお尋ねしますけれども、現在おそらく調査中という御答弁があるいは返ってくるかもしれませんけれども、十一万八千ヘクタールの水田買い上げについて、建設省としてはどの程度まで協力できるのか。すでに調査が終わっていれば終わっている段階でもけっこうですし、調査中であるならば、現在のおおよそのめどでもけっこうでございますから、明らかにしていただきたいと思います。
  162. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 建設省といたしましては、御承知のように、道路、河川、住宅等の先行取得的な措置もとらなければならぬとは思っております。ただし、これにつきましては、建設省直接でなかなか調べにくいのです。そこで、現在各地建、さらに地建から委嘱をいたしまして各都道府県、あるいはまた公団等による用地取得の調査をいま委嘱しております。それから、そのほかに民間デベロッパーの協会がございますので、そちらのほうに――きのう補正予算がついたばかりで、まだ実際のお金もいただいておりませんので、あらかじめこういうことを委嘱したいから調査をお願いするという段階でございまして、どの程度かということは、いまちょっと数字をつかみかねておるのでございます。なるべくすみやかに委嘱した調査がまとまってくることをいま期待しておる次第でございます。
  163. 二見伸明

    ○二見委員 通産大臣にお尋ねしますけれども、十一万八千ヘクタールという土地は決して狭くない。東京の中では大体半分ぐらいの土地だろうと思います。通産省としては大規模工業基地開発構想、これで五十年までに工業用地を二十万ヘクタールにしよう、こういう御計画があるように聞いておりますけれども、おそらく今度の水田買い上げはこの計画の一環として対処するのじゃなかろうかと思います。具体的に、通産省としては現在の段階では、十一万八千ヘクタール、おおよその見込みとしてどの程度までは協力できるというふうに見通しが立っているのでしょうか。
  164. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは私は、場所と値段によるのだと思うのでございます。あたりまえのことを申し上げるようですが、しかし、企業側では場所がよければかなり土地がほしいということは事実でございまして、いままでそれが農地の許可がなかったということで詰まっておるわけでございますから、そこでいま企業側と、これは二万社ほどに聞いておりますが、調査をしつつありますのと、県を通じてどのくらいのまとまったものが、どういう立地条件で出てくるかを調査をしております。  なお、昭和五十年二十万ヘクタール、昭和六十年云々という全国総合開発計画の考え方は、どっちかと申しますとかなり大きなロットの土地を過密地域でないところに求めなければ、今後のコンビナート等は大きくなってまいりますから困るので、むしろそういうほうの発想でございます。
  165. 二見伸明

    ○二見委員 農林大臣にお尋ねしますけれども、私が農林省からいただいた資料によりますと、昭和五十二年の水稲面積は二百七十六万六千ヘクタール、こういうことになっております。ということは、約六十万ヘクタールをこれから減らすということになるわけですけれども、この六十万ヘクタールがすべて他の農作物に転換できるかということになると、これは私はむずかしいんじゃないかと思います。当然六十万ヘクタールは、あるものは飼料に、あるものは果樹に、あるものは野菜にというふうに振り分けはするでしょうけれども、それ以外にも工業や住宅に回される土地もかなりあるんじゃないだろうかと思います。  そうした場合に、いま当面しております十一万八千ヘクタールとも関係することではございますけれども、農業のほうからいけば売りたくない、農業のほうで売りたいという土地と、企業のほうで買いたいという土地あるいは建設省としては買いたいという土地、これは全部必ずしも一致するとは限らないわけです。企業側の立場でもって農地の買収が進められれば、農地がスプロール化する、農業が衰退するということは、これはもう火を見るより明らかでありますけれども、そういう点は今後どういうふうに調整されていくのか、これは基本的な考え方だけをお尋ねしたいと思います。
  166. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 この間、農林省の方針といたしまして、農地転用についての緩和措置を次官通達で出しました。あの要旨の中にも指摘いたしておるわけでありますが、私どもは、一種農地として、しかも土地改良等をいたしましたような広域の地域につきましてはなるべく転用はしないようにということでありますが、あと二種農地、三種農地の地域をかなり緩和措置をいたしておりますので、通産その他で農地を所望される方々はいままで、いまもお話しになりましたように、農地転用がきびしかったので進出が困難であるという苦情がかなり地方から出ておりますので、私どもは一種農地は確保し、農業の基本は守りながら今回の転用はかなりいけるものではないか、こういうふうに想定いたしておるわけであります。
  167. 二見伸明

    ○二見委員 通産大臣、御予定があるようでございますので、簡単に一問だけお尋ねしておきます。  実は通産省が音頭をとって、地方に企業をどんどん分散させる傾向にあるわけです。これは地方にとっても決して悪いことではございませんけれども一つお願いがあるわけです。それはどういうことかといいますと、単に地方へ行けば労賃が安いからいいぞという、もちろんそういう安直なお考えはないとは思います。だけれども、そういう安直な考えを企業に持たしてもらっては困るということ。それから企業が地方に進出する場合には、企業の業種にもよりますけれども、公害問題がこれから地方に起こってくるわけです。そういう点を配慮して――農政の方向からいけば離農者もこれから増加してくるだろう。離農者がふえることがいいことか悪いことかは別といたしまして、離農者がふえてくるだろう。あるいは小さなたんぼを持ちながらでも職業につく人もこれからふえてくるだろうと思います。そういう人の所得が向上するように、ひとつ通産省のほうからも企業のほうに働きかけてもらいたい、行政指導してもらいたい、この点お願いしておきたいわけです。
  168. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御趣旨はまことにごもっともでございます。ことに地方に企業が出ますと、従来いわゆる下請なんかに働いておりました技術者を引き抜くという問題がまた別にございます。両方の問題ともあわせまして、そういうことをなるべくしてくれないように、企業にはかねがね申しておりますけれども、そういうつもりで行政をいたします。
  169. 二見伸明

    ○二見委員 食管制度の問題についてお尋ねします。  倉石農林大臣が、食管法を改正しないでも米の買い入れ制限はできるんだ、ただしこれは法解釈としてはできるんだ、こういう御発言をなさいました。農家にしてみれば、生産者米価がすでに据置かれている、自主流通米制度がとられている、この二点をもって食管制度というのはもう実質的には改正されたも同然だ、こういうふうに農業者は受けとめているわけであります。そういうさなかに、買い入れ制限は法解釈としてはできるんだというこの御発言がどれほど農家に深刻な影響を与えたのか、この点を農林大臣に反省もしていただきたいし、そういう農家の方々の心理的な影響というものも考えていただきたいと思うわけです。  ところでこの食管制度、食管法でもって法的に、法解釈からいけば買い入れ制限できるという問題でありますけれども、食管法制定当時、井野国務大臣がどういうふうに提案理由の説明で述べているかというと、主要食糧に関する限り、農民が安んじて増産に従い得るように、生産せられたる米麦は、必ず政府がこれを買うという体制を明らかにいたしまして、国民食糧の確保と国民経済の安定をはからんとするものであります、こう述べているわけです。また平野力三委員は「第三条の命令を以て定むるものを全部政府に売渡すべしと云う此の解釈は、農家の飯米以外のものを全部売渡せ、斯う云うことに解釈して宜しいのですか」こう質問しているのに対して湯河食糧管理局長官は「大体左様でございます」と、こういうふうに答弁しているわけです。ということは、食管法が制定された当時の立法精神というのは、農家からは全量、米を買い上げるというのがたてまえになっている。それが立法精神になっている。これはたしか昭和十七、八年当時の制定だと思いますけれども、それから三十数年たって確かに客観情勢はその当時から見ればいまと全く変わったかもしれないけれども、客観情勢が変わったということでもってこの法に対する解釈が百八十度も変わっていいものかどうなのか、この点を農林大臣にお尋ねしたいと思います。
  170. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 食管法は、いまおっしゃったように、国民経済の安定、国民食糧の確保、こういうことが眼目であることはもちろんのことでありますが、この間お尋ねいただきましたのは、食管法を改正しないでも買い入れ制限はできるのかという話でありましたから、それは法律上はできるという解釈が立ちますと言っておるだけでありまして、ただいま御指摘のように長年の間わが国では――昭和十七年に食管法ができました当時というのは、申すまでもなく食糧が不足のときであって、そして一般的にその配給が行き渡るような目的のためにあの当時の法はつくられたように説明がしてございますが、いま事情が変わってはおりますけれども、そういうたてまえでできた法律でございますので、無制限の買い入れというのがもう定着して慣習づけられておるのでありますから、それをいまどうこうするなどということを私ども考えておるわけではないのであります。  そこで、私どもといたしましては、先ほどからお話し申し上げておりますように、生産調整に一生懸命で御協力を願っておるような方々に向かって御不安を与えるようなことを少しも考えたくないのでありまして、そういう意思は毛頭ないということをあらためてここで申し上げておきます。
  171. 二見伸明

    ○二見委員 農林大臣から、今年度は、四十五年度は買い入れ制限しないという御答弁は再々私も聞いております。だけど、農政の基本的方向の中でこういうふうにいわれているわけですね。農産物価格に対して「需給事情を十分反映しないうらみのあった価格政策の運用を改めて、今後は需給の長期的実勢を反映した価格の形成と価格の安定に重点を移す方向で推進する必要がある。」この基本的方向の中では食管制度については全然触れておりませんけれども、どうもこの農産物価格に対する見解は、いまは買い入れ制限もしないし、こういうことはしないけれども、農政の基本的方向としては、食管は改正するんだ、米も経済原理のもとに置くのだ、こういうふうに勘ぐられるわけです。こういう意図があるからこういう文章が出てくるんじゃないか、こういう不安があるわけですが、いかがでしょうか。
  172. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ほんの先ほども農業団体の方々といろんなお話をして、地方の現実に生産調整をやっていただく状況を承っておったわけでありますが、食管の根幹すら維持することができなくなるではないかという不安を一番お持ちなのは、米づくりの農家自身でございます。農業団体であります。県知事であります。そういう方々がたいへん心配していていただくわけでございますので、そういう方々に御協力を願っていま画期的な生産調整をしておるわけでありますが、内閣総理大臣もしばしば申し上げておりますように、食管制度の根幹は断じて動かさないと、こういうことを声明していらっしゃるのでありますから、私どものつくりました文章がへたなところはひとつそういうことで御理解を願いたいと思います。
  173. 二見伸明

    ○二見委員 きょうの毎日新聞の読者相談室の回答の中でこういうことがあるんです。「政府は四十五年産米から生産者米価に銘柄格差制度を導入する方針で検討を急いでいます。」こういうきょうの毎日新聞の読者相談室の回答なんですが、これは事実でございますか。
  174. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 とにかくいまたいへん米が余ってきているようなときに、一般の方々のお話を聞いておりますと、まずい米を高く売りつける手はないじゃないかとか、いろいろなことをおっしゃる方がございます。一つの流通商品という立場に立って見れば、消費者側からお考えになれば、それは当然に出てくることでございますし、多くの方々はこの際銘柄格差を取り入れるべきであると、こういうことをいわれております。有力な方面からのそういうお話もございますけれども、私どもといたしましては、銘柄格差というものを採用いたしますのには、十分な基礎的調査研究をしてからでないと考えをきめるわけにいきませんので、いまもっぱらそういう専門家に御依頼をいたしまして、そういうものを採用できるかどうかということについて検討を続けておる最中でありまして、何もきまったわけではございません。
  175. 二見伸明

    ○二見委員 検討中はけっこうなんですけれども、農家にしてみればもう種まきの時期はきているんです。それで検討した結果、九月ごろ銘柄格差を設けるなんという結論が出された日には、農家にとってはそれこそ踏んだりけったりみたいなものなんです。十五年度は絶対やらない、銘柄格差は設けない、このはっきりした御答弁をお願いしたいと思います。
  176. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 なるべく研究を急いでいただきまして、農家の方に御迷惑にならないように早く態度を決定いたすべきでありますが、いま一生懸命で研究している最中であります。
  177. 二見伸明

    ○二見委員 どうも四十五年度にやりそうな気がするわけであります。いいですか、もう種まきの時期は来ているんですよ。これで農家が安心して三十五万ヘクタール削られた残りの土地でもって米をつくろうと思うのに、銘柄格差をはたして設けるのか設けないのか、ここいら辺の不安感があったのでは、農家としては安心して農業にいそしむことができないわけです。来年、再来年どうするかは、それは政府のほうで検討していただくとしても、少なくてももうここまで押し詰まってきたんだ、だからことしは四十五年度産米については銘柄格差は設けないんだ、だから安心していままでどおりお米をつくってください、私はこういうふうに農林大臣に言ってもらいたいのです。そうして農家の方々に安心してもらいたいと思っているんです。いかがでしょうか。     〔藤枝委員長代理退席、委員長着席〕
  178. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 需給の状態がこういうふうに緩和されてきておるときでありますので、やはり私どもは消費者側の要望も十分尊重する必要があると思うのであります。そういう角度で考えまして、等級間格差の拡大というふうなことについては、これは具体的に検討を掘り下げてやっておりますが、銘柄格差はなかなかむずかしいことでございますので、なるべく早く結論は出したいのでありますけれども、まだそこまで至っておらないわけであります。
  179. 二見伸明

    ○二見委員 ことしも、これからもまた米価審議会が開かれるわけでありますけれども政府が買い入れを予定しているのがたしか六百五十万トンですね。不幸にしてそれをこえちゃった場合です。買い入れ制限するしないは別といたしまして、それをこえてしまった場合には、当然米審でもってこえた分についてはどうするかという論議が起こってくると思います。六百五十万トンについては、生産者米価据え置きで一応方針はきまっておりますけれども、それをこえた分については、あるいは米価を引き下げる、いわゆる二段米価といいますか、そういう方向も出てくるんではないかと思いますけれども、もし米価審議会で二段米価を採用するような答申が出た場合に、農林大臣としてはそれはそのまま採用なさいますか。それとも、いままでどおり基本線を貫いていかれますか。どちらですか。
  180. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先輩のことばをまねするようでいけませんが、そういう仮定のことでうかつに御返事を申し上げることのできないいま段階でございますので、どうぞあしからず。
  181. 二見伸明

    ○二見委員 時間もありませんので、はしょって質問してまいりますけれども、大蔵大臣は先ほど食管制度は維持すると、こう御答弁なさいました。たしか午前中の足立先生の質問にですね。ただ、食管会計が赤字になって困るのは国のさいふを握っていらっしゃる大蔵大臣なわけです。大蔵大臣としては、現在はそう言わざるを得ないことはよくわかりますけれども、大蔵大臣の本音としてはいかがでしょうか、食管制度は、やはりこのまま当分、野党であるわれわれが要求しているように堅持するというお立場をとっていただけるのか、ことしはやむを得ず食管制度の根幹は守るけれども、二年ないし三年後にはおれとしても考えがあるんだ、こういうふうになるかどうか、その点はっきりお願いしたいと思います。
  182. 福田赳夫

    福田国務大臣 農民が食管制度の維持を非常に要望しておる、今日の農民は非常に追い詰められた立場にあると思うのです。この追い詰められた農民の気持ちというものを十分理解を持って対処をしなければならない、こういうふうに考えておると同時に、やはり食管制度は三十年近くの長い歴史をもってこの国民生活の中になじんでおることでもございまして、これが崩壊するということは、食糧政策に非常に大きな変化だ、こういうふうに考えます。そういうようなことで、何とかしてこの食管制度の維持には努力をいたしたい、ということで、さしあたり四十五年の予算におきましても多額の金を出して減産政策というものを打ち出しておる。これもほんとうにできますれば、食管制度堅持という上に大きな働きをなすことと思いますが、そういう努力をしておるのです。いまは、どういうふうに先々のことを考えるか、こういうふうに問われましても、私どもはそういう涙ぐましい努力をしておるという最中でございますので、先々のことはひとつ控えさしていただきたいと思います。
  183. 二見伸明

    ○二見委員 時間もありませんので、労働大臣にまとめてお尋ねしたいと思います。  一つは、農林省は農業近代化の前提条件として離農促進を援助する、こううたっておるわけです。当然これは農林省だけでできる問題じゃなくて、労働省もかなりバックアップしなければならない問題でありますけれども、農林省のこの方策にバックアップしてどういう対策を考えておられるのか、内容を明らかにしていただきたいと思います。
  184. 野原正勝

    ○野原国務大臣 お答えいたします。  総合農政の進展に伴いまして、農業を離れることを希望する方がふえてまいると予想されるのでありますが、これらの人々に対しまして、職業能力の開発あるいは職業相談あるいは職業訓練といったようなことで他産業への就労の援助等を積極的にやるということであります。  具体的に申しますと、第一に、農村地域において、専修職業訓練校における職業訓練を拡充強化する。同時に簡易職業訓練施設を設置いたしまして、必要に応じ手当を支給しながら農業従事者の実態に即した農外就労のための職業訓練を行なうことにいたします。第二に、農業者転職相談員の設置等による相談活動の拡充及び職業紹介の強化をはかるわけでございます。これは相談員を五百二十名ばかり予定しておりますが、同時に巡回相談所というふうなものも設けることになっております。次に第三には、農業者の転職を援助するための特別給付金を支給するということを行ないます。第四は、離農者が他の産業の職場に就職することを容易ならしめるため、手当を支給しつつ職場の適応訓練を実施するということでありますが、これは各工場その他におきまして、工場にもある程度の手当を支給するというふうなことで円滑にやってまいりたい。第五には、離農転職者の実態を把握するために調査を行なうわけでありますが総合的な農外就労対策の実施体制の確立をはかるというふうなことでございまして、具体的には四億一千万円ほどの予算を計上いたしまして、あらゆる面から農村の実態に即した総合農政の施策に十分な対策を講じたいと考えておるわけでございます。すでにもうその方針に基づきまして労働省は全面的に協力申し上げるという決心でございます。
  185. 二見伸明

    ○二見委員 実は茨城県の下妻市というところで、農協が主体となりまして農家の意向調査をやったわけです。そうした結果、出てきたのは三十ないし四十アールといういわば零細農家は絶対に農地を手放さない、むしろ兼業を望んでおるわけです。その理由はいろいろありますけれども、その中の理由の一つとしては、近在の工場につとめても所得が低い、給料が低いために土地を手放すなんということはとうてい思いも寄らないというのが大きな理由を占めておるようなんです。私は、離農のよしあしを別といたしまして、離農を希望している人にとっても、そういう給与面での大きな問題があるんじゃないかと思います。確かに東京と比べれば、私は労働省から府県別の給与所得の実態をいただきまして調べましたけれども、かなりの格差があります。そういう面を考えて、そういう人たちの給与を、所得を向上させるためにも、ここで労働省にどうしても検討していただきたいと思うのは、現在行なわれております最低賃金制度、ほとんど現在は業者協定が主となっておるようでありますけれども、あれを全国一律の最賃制に改められないものかどうか。むしろそういうふうに制度改正をして所得のレベルアップをはかっていただきたい、こういうふうに労働省にお願いするわけでありますけれども、この点はいかがでございましょうか。
  186. 野原正勝

    ○野原国務大臣 最低賃金の問題は、業者協定はこの前の改正でもうすでにやめることになっておるわけでございます。ただ問題は、中・高年齢層の方々の所得の問題は、一応いろいろ心配しておりますが、これらにつきましては、その実態に応じまして、やはり職業訓練その他によって労働の質を向上させる、同時に、訓練等によりまして適当した職場に十分働き得るような体制づくりをいたしましてやってまいるつもりでございますが、最低賃金制は、すでに業者協定等はないのでありますから……
  187. 二見伸明

    ○二見委員 地域間協定はどうですか。
  188. 野原正勝

    ○野原国務大臣 地域問協定等につきましては、今後できるだけ実態に即して改善を加えたいと考えております。
  189. 二見伸明

    ○二見委員 以上で終わります。
  190. 中野四郎

    中野委員長 これにて二見君の質疑は終了いたしました。  次に、安宅常彦君。
  191. 安宅常彦

    安宅委員 まず最初に、官房長官、質問に入る前に申し上げたいのですが、予算の質問を私がやるということになったら、たくさんの人々が、どういう内容でしょうかと各省ごとに問い合わせにくる。内容を言わないと、がんばって、大臣におこられますからとか何とか粘って、仕事にならない。それから、たとえばいわゆる天下りですね。一般職の公務員――高級公務員ですね、それが他産業に転職をした、こういう問題について、総理府総務長官も去年はこの問題について綱紀粛正の通達を出しているのですが、そういうことを聞きたいからあなたのほうを呼ぶかもしらぬぞと言ったら、来て、私のほうの権限外でございます。それから、さっき倉石さんが食管法の見解を出しましたね。そうすると、この問題で取り締まるほうはたいへん困ると思うのです。だから、警察庁長官どうだと言ったら、それは出られない。それから法務大臣どうですかと言ったら、法務大臣の権限外でございます。何かみんな大臣にたいへん忠実な方々なのかもしれませんが、盛んに大臣を出さないくめんをする。言論の内容を聞かなければというような、最近はやりの、そういうことに類した発言が多い。私ら、こういうことはたいへんまずいことだと思うのですよ。どういうものでしょうか、官房長官、そういう風習はやめたほうがいいのじゃないかと思うのです。  それから、それに関連して申し上げますと、行政管理庁長官なんかよく聞いておいてもらいたいのですが、行管が音頭をとりまして、そうして部局の改廃を行なう。去年縮小したでしょう。そうしたら、何とか局長というのが何とか部長になって、たとえば通産省でしたか、石炭局が部になった。そうすると、いままで政府委員であった人が説明がつかなくなるので、その人は部長でも何でもいいが政府委員に復活させてくれという。とにかく、機構を縮小した行管が一番先に、政府委員にまた復活させてくれとお願いに来るのです。こういう風潮ですね。だからこそ、ここ最近ひどいですよ。前はそんなことはなかったのだ、表現が非常に悪くておこられるかもしれませんけれども、ずっとうしろの長いすあたりに――これは一般質問のときはあまり来ないようですけれども、総括質問のときなどは、各省の、ふろしきを持ったお役人さんが、電信柱の線にとまったツバメみたいにずらりと並んで、ちょこんと座っていますよ。そうして通路が一ぱいになるほどになる。こうしたことをしなければ国会運営ができないというのは、私は非常に残念だと思うのです。ですから、大体こういうことだということぐらいは礼儀ですから、そしてまた、何と言うんでしょうか、何が出るかわからない、お釈迦さまでない限りわからない場合もあるでしょうから、こういうことですよということぐらい私は言いますけれども、その具体的な内容までみな聞かれなければ答弁できないなどという意味にとれる発言で、部屋に朝から晩まで粘られたんじゃ、とっても仕事になりませんが、そういうことを含めて、こういう傾向はいいものかどうか、悪いものかどうか、ひとつ官房長官から――あなた、内閣の大番頭で、副総理格だそうでありますから、ひとつ答弁していただきたいと思うのです。
  192. 保利茂

    ○保利国務大臣 私がお答えできることであるかどうかわかりませんけれども、これは私、ざっくばらんに申し上げまして、せっかく御質問をいただく、十分のお答えができて、そうして国政審議をなめらかにやっていただくという上からいきますというと、質問者側の御意向にはあるいは反するかもしれませんけれども、できるだけ、こういう問題を取り上げる、こういう問題が大事だということをお示しいただくことが、御審議をなめらかにし、かつ国政の進展に役立つんじゃないか。これは安宅さん、私よりもよく御承知だと思うのですけれども、私も一ぺんイギリスの国会を見ましたことがあるのですけれども、イギリスでは、質問の要旨をあらかじめ渡しておいて、その事項以外には問答しないというような、何もイギリスが先進国だということを言うわけじゃございませんけれども、そういうふうにしてやはり国政の実質審議が行なわれておるということを聞いたことがありますけれども、そういう意味で、質問者側にはずいぶん御迷惑なこともあろうと思いますけれども、相なるべくばそういうことで、ひとつ双方の便益のためにやっていただくことがけっこうじゃないだろうかというように私は思うわけでございます。
  193. 安宅常彦

    安宅委員 どういうことだと、簡単なこういう概要、それから数字を求めるような場合は資料を出してくださいとか、こういうことは、私らも何もどっか足で引っかけようとか、け飛ばしてやろうとかいうのじゃないのですから、そういうことはやりますよ。しかし、もう詳しく何でも聞かなきゃおこられるらしいんだな。ああいう風潮。ふろしきを持った役人さんがあんなにたくさんいるのだったら、行管長官、もし荒木さんなんかそのままやっていたら、直ちにあれ縮小だと言うところじゃなかったかと思うくらい、そんなに人がおるんだろうかと思うほど、役所をからにして来ている、こういう点は改めてもらわなきゃならないと思います。  そんなことでやりとりしていたら時間がなくなりますから、官房長官、何というのですか、たいへんでいねいな答弁で、三月三日、あなたが記者会見で、日本におられる中国人の方々、在日華僑の方々が四月十五日から中国の広州で開かれる広州交易会に参加申請を出しているわけですが、これはひとつ参加させるようにしたいものだという意味の記者会見で発表がございましたが、この点、各新聞の新聞論調などを見ておりますと、いろいろまだ障害なんかもあるのではないか。外務省筋がどうのとか、いろいろ書いてありますが、あなたが相当の権威をもって発表したことでありますから、実現をするものと私は受け取っておりますが、そういうように理解してよろしゅうございますか。
  194. 保利茂

    ○保利国務大臣 この広州の交易会の具体的なことでなしに、中国大陸との人事の交流をもっと促進したらいいじゃないか、基本的には私はそう思っております。それは総理大臣も申されておりましたように、お互いにどうも国情を知らなさ過ぎるのではないかということを嘆いておられる。まさにそうだと思うわけです。しかし、その交流がなめらかに思うようにいかなかったのには、いかなかった理由がやはりそれぞれあるようでございます。これはいろいろ意見の分かれるところだろうと思う。そういう意味において、大陸と日本との両国民といいますか、それぞれその国の国情を知り合うということは何をおいても大事なことじゃないだろうか。その限りにおいては私は前向きである。しかし、ともすると、どうも法秩序というか、社会秩序というか、政治体制というか、そういうものをひっかき回すというようなことにこれができたのでは、これは困る。日本はやはりりっぱな独立国であり、社会秩序を保っていかなければ、公安秩序を保っていかなければならないわけです。そういうことでなかなかきびしい何があったんだろうと思うのですけれども、お話の出ております問題は、実は私は、記者団から聞かれましたときは、そういうことを知らなかったのですけれども、原則的には、そういうお互いの国情を知り合うということはたいへん大事なことじゃないだろうか。そこで、それからなるほどそういうものが出ておるということを聞きまして内々何してみますと、いませっかく関係省で御相談されておるということでございますし、まだそこへ立ち入ってかれこれ私ども申し上げることではございませんけれども、しかしどうせ外務大臣や法務大臣等で御心配になっておられることでございましょうし、かたがたひとつ御相談をして、これこそいわゆる前向きで検討をして結論を出すようにしたらどうだろうか、私、ただいまそういうふうに思っております。
  195. 安宅常彦

    安宅委員 そうしますと、重ねて質問いたしますが、法務大臣外務大臣とはまだ御相談になっていないということでございますか。
  196. 保利茂

    ○保利国務大臣 そうでございます。
  197. 安宅常彦

    安宅委員 私は、また新聞発表をするくらいですから、たいへんうまくいっておるのだと思って、喜んで、保利大官房長官だと、こう少し持ち上げてほめてやろうというか、無礼な言い方かもしれませんけれども、そういう気持ちで質問に立ったのですが、そうしますと、大体各省のそういう意見というものを取りまとめる任務も官房長官はお持ちなわけでありますから、ひとつ官房長官が前向きで検討するということにこの予算委員会で答弁をなさった、こういうことについては外務省、法務省、それぞれ管轄権限があると思いますが、両大臣からその官房長官のおっしゃった前向きの姿勢で相談に応じ、その実現に努力をするといいますか、あるいはまたもう努力をさせるつもりでおりましたとか、こういうことになっておる段階だと私は思います。三月三日に発表される――四月十五日からこれが開始されるわけでありますから、その以前に行かなければなりません。派遣するとすれば、準備も必要でしょう。ただ手ぶらで行くわけはないわけです、交易会でありますから。そういうことを考えてみますと、すでに各省とも前向きの姿勢が具体化されているものと私は思いますが、両大臣からの答弁を願いたいと思います。
  198. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そのとおりでございます。  なお一言つけ加えれば、従来はこういう問題について、ともすると、これはいかぬというような感じが先に立っておりましたけれども、長い間平穏無事に日本国内に住んでおられて仕事をしておられた華僑の方々が純粋にいま伝えられているような目的で往来するというようなことについては、こういうことはいかぬのだと、頭からそういうふうな考え方を持つのは、今後におきまして私は誤りではなかろうか、そういう姿勢で関係各官庁と御相談をすでに始めております。
  199. 小林武治

    小林国務大臣 外務大臣からお答えのとおりでございます。
  200. 安宅常彦

    安宅委員 相談を始めておられる、官房長官の記者会見による新聞記事に載ったことも含めて前向きの姿勢だということですから、私はそういうふうに理解いたします。  それで問題は、これは在日華僑の皆さんのことについて、いま外務大臣が、長年平穏無事でおられたこういう方々を、そういう純粋な交易会やそういうところには出してやるのが当然だという意味発言でありますから、ここで私も、それならば在日朝鮮人の問題、この問題についてもやはり同様の考え方政府は対処しなければならないのじゃないか。たとえば、ただいまの話は交易会のことでありまして、これが実現される運びだと私は確信をいたしますが、たいへんいいことであります。ところが在日朝鮮人の問題については、商売上のことはもちろんのこと、いわゆる人道主義に基づいてということで、たいへん崇高な気持ちから、岸内閣当時に締結されたカルカッタ協定に基づいて帰国をさせておった。しかもこれは再入国するのではなくて帰国するだけであります。こういう問題について、いま二年ほど、協定日本政府によって一方的に打ち切られてそのままになっているわけです。こういうことは人道主義の立場からも遺憾なことだと考えまして、一昨年の予算委員会におきましても、あるいはきのうも参議院で亀田得治さんが質問をされておると思いますが、一昨年の予算委員会におきまして、二月二十八にわが党の楢崎君がこの席で、一万七千人の諸君が、前からの協定に準じて取り扱わなければならない人を含めてたいへんな希望者をそのままにしている、しかもその希望者は、当然帰れるものと思って荷物をまとめてみたり、いろいろあいさつ回りをしてみたり、そういうことをしているうちに火事にあったり、いろんなひどい状態になっている。これは在日朝鮮人が日本に昔住むことにならざるを得なかったそういう歴史的な過程からいって、これは当然帰国の事業というものを再開しなければならないのではないか、こういう質問をいたしておりますが、当時園田国務大臣は「この問題は、政府といたしましても人道的立場から処置をいたし、日赤にその交渉を一任しておったものでありまして、政治問題あるいは国際政治の問題とは全然切り離して処理をいたしております。今後につきましても、この問題については人道的立場から国際政治問題と切り離して善処したいと考えております。」という答弁をし、同じく内閣総理大臣が、ただいまお尋ねがありましたが云々ということで、大体同様の答弁をなされているのであります。これはちょっと申し上げますと、「また、今日もなお、日赤が在来から、政治とは別に、人道上の見地から話し合いを続ける、こういう立場に立てば、また相手のほうも協議する、こういうことであれば、私は協議をして、ぜひそういうものをまとめたい、かように思っております。ただいまこれが不調になったこと、まことに私残念に思っております。」こういう答弁をしておるわけであります。この方針は現在でも変わりはない、こういうふうに理解してよろしゅうございますか、官房長官。
  201. 保利茂

    ○保利国務大臣 そのことについて政府の方針が変わったというふうには私は承知いたしておりません。
  202. 安宅常彦

    安宅委員 それでは、日赤の社長さんがおいでになっておられると思いますが、たとえばモスクワにおける会談あるいはまたコロンボにおける会談などを、たいへん困難な中で、日赤が日赤独自の立場で赤十字精神に基づいて、そして人道的な立場からこの帰国事業というものが今後も継続できるように、再開できるようにという努力をされておることについて、私は敬意を表しておるわけであります。特に今度社長さんに東さんがなられまして、そういうことについて非常に見識の高いお方だというふうに聞いておりますが、この問題についていろいろやりとりが事実あったわけであります。書簡を交換したり会談をやったりしたわけでありますが、その過程で、人道上の立場で日赤がこれをまとめるために最大の努力をする、こういう決意でおられることと思いますが、所見を伺いたいと思います。
  203. 東龍太郎

    ○東参考人 日本赤十字社といたしましては、ただいま御質問の中で御指摘もございましたとおり、この問題を人道的な立場から処理したいというので今日まで参っております。なお、私が社長に就任いたしましたのは、コロンボ会談がまことに残念な結果になりましたそのあとでございまして、社長就任以来この問題の解決を一日も早くいたしたいと思って努力をいたしましたが、まことに不敏、不徳のいたすところでありますか、今日まで円満な解決の兆を見出し得ないということはまことに残念でございますが、その考えは少しも変わっておりません。
  204. 安宅常彦

    安宅委員 社長さん、重ねてお伺いいたしますが、いろいろな経過を詳しくあなたのほうはお知りだと思います。私どもの感触では、一万七千人のすでに申請をしておる方々の分や今後帰国を希望する方々、こういう問題を一括して交渉をするということをずっといままでやってきておられるようですが、その方針を貫くことによって、やはりこの問題はそういう精神で話し合いをされるということが、この帰国問題を解決に導く大きな原動力になる、私はそう確信をしております。あなたのほうも同じ立場でありますから、このことは当然そのとおりだというふうにお考えであると思いますが、この点についてもお伺いいたしたいと存じます。
  205. 東龍太郎

    ○東参考人 そのとおりでございます。二つの種類の帰還の問題がございますが、その両者を同時に解決をしたいという考えで今日まできておりますし、今後もその方針で進むつもりでございます。
  206. 安宅常彦

    安宅委員 官房長官にお伺いいたしますが、こういう日赤の努力というものに対しまして、ひとつあなたのほうも、所管庁の権限とか相当いろいろあると思いますが、日赤の自主性といいますか、いままでの努力というものを尊重して、ひとつ日赤におまかせを願いたい、おまかせといいますか、日赤の自主性を尊重して政府もその態度でこの問題に臨んでいただきたい、こういうふうに考えますが、いかがでしょうか。
  207. 保利茂

    ○保利国務大臣 先ほどの園田さんや総理の御答弁にもありますように、日赤の御活動に期待をいたしておるということでございますから、期待をいたしておって、それに反するような処置はなかなかとるべきじゃなかろうと思っております。
  208. 安宅常彦

    安宅委員 それではこの帰国の問題は終わりますが、こういう状態というものは、先ほどちょっと申し上げましたが、中国の問題についてたいへん好意ある御処置が願えるという話であります。在日朝鮮人の場合には何かいままでいろいろな問題点がたくさんございまして、たとえば帰国の問題も、そういう政府の御方針ならば、だんだんと近いうちにそれは解決できるだろうと、私非常に明るい希望を持つに至りました。在日朝鮮人といえども、これは在日華僑の皆さんと同じことでありますから、同じように自分の祖国である朝鮮民主主義人民共和国に対して、ぜひ墓参なり、また、おじいさんがなくなりそうだとか、いろいろなそういう時期に帰りたいというのは人間として当然のことだと思います。しかも、これはむずかしいことを言うようでありますけれども、こういう方々の問題についても憲法第二十二条に明確に規定されておりますし、居住地の選択の自由、こういうものも国際的に世界人権宣言やその他で明らかにされている今日でありますから、これを政府が、何か事をかまえて許可をしないという立場をとられていることは非常に残念だと思うのですね。こういうことについては、去年朝鮮民主主義人民共和国の二十周年記念日に際して、いろいろなお祝いの行事があるから二十人ほどひとつこのお祝いに参加をさせていただくために出入国を許可してもらいたいという申請を出したところが、政府はこれを許可しませんでした。そのためにいま裁判所にそれが持ち込まれて、地方裁判所も高等裁判所も国側が敗訴をしているわけであります。こういう状態、もう最高裁を残すのみになっておりますが、事実上二審においてもう敗れておるのですから、こういうことで裁判だゴバンだといってけんかすることをやめて、官房長官、どうですか、大きいところを見せて――中国のほうは大きいところを見せて、朝鮮のほうはだめだという理屈はないと思うのですが、そういうことについてもあなたのほうでひとつそういうような考え方に立つという立場をとることはできないのですか、どうですか。
  209. 保利茂

    ○保利国務大臣 人道的な立場から、純粋の人道的な立場から扱われてきておると思います。それは今後といえども同じことだと思うわけです。しかし、事はやはり国際関係に関することでございますから、この点はひとつ外務大臣からお聞き取りをいただきたい。
  210. 安宅常彦

    安宅委員 人道上の問題だと言いながら国際問題だと言うのはどうもおかしいですよ。国際問題だ、国際政治に影響があるということをあなたはほのめかしているのです。人道問題というのはそういうものなしに、あなたのほうではヒューマニズムだとかむずかしいことを言いますけれども、そういう立場に立ってものごとを処理する、こういう立場をとってもらいたいと私は思っているわけです。これは外務大臣よりも法務大臣、具体的にこの問題はいま法廷に持ち込まれているわけですが、法廷に持ち込まれているから、私はその結果を見るだけでありますというふうに答弁をしたような顔でございますけれども、実際、あなたは被告になっているわけですからつらい立場でしょうが、しかし権限はあなたの権限に属することであります。したがって、こういう問題については、なるほど地裁も高裁も、国のほうが少し無理であるようだという判決を出しているのですから、よし来た、それならばという気持ちを起こすのが、政治家というものは大体そういうものだと思うのですが、どうでしょうか、法務大臣
  211. 小林武治

    小林国務大臣 いまのお話はありますが、実はいませっかく裁判所の意見を求められておる、二審も済んで最高裁、じきに間もなく決定も出る、こういうことでありますから、この問題につきましてはそれを待っておる。あなたのおっしゃるような答弁になってまことに恐縮でございますが、そういうところでございます。
  212. 安宅常彦

    安宅委員 では重ねて質問いたしますが、ちょうどあなたの前任者である西郷さんが法務大臣のとき二人ばかり――こういうことです。たくさんの人がこの記念日とか何かにかかわらず、いろいろ墓参や、あまり年とったし、もう故郷の空を見て、国の親類などとも会いたい、こういうようなことから出国の申請と入国の申請を出しておった。ところが橋本さんが官房長官のときでございますかね、三人許可したのです。一人は病気で行かなかったので、米屋さんをしている人とブリキ屋さんをしている人と二人帰ったのです。それから去年西郷さんのときにたくさんの方々から、いろいろとみんなでその団体や何かと相談をして二十人申請をしたのです。ところが西郷さん、たいへん好意を示してくれまして、私、日本社会党の朝鮮問題特別委員長というものをやっているのでありますが、そういう関係だと思いますが、私のところにわざわざおいでになりまして、安宅君、このたび二十人のうちから大体十名ほど帰せる、こういう話。それからさらにまた連絡がございまして、十名といったけれども、結局八名だ、八名を帰すことになったと、その人名まで全部私に教えてくれまして、八名、今度新聞記者会見で大臣も発表されるし私も発表した。ところがどういう理由だかわかりませんが、その二名だけはかんべんしてくれ、一ぺんにやると韓国がむくれるのでばらばらに帰してやるのだとか、ばらばらでは、何ぼ何でも日本の法務省が決定し、閣議でも了解を得たものをするわけにいかぬから、八名だけ集団で帰してやるけれども、あとの二名はかんべんしてくれ――かんべんしてくれというのはもう少し待ってくれという話なんです。もう少し待ってくれがもう一年も待たされているのですが、あなたのほうでも純粋にこういう人道上の問題で、祖国に往来できる、こういうことについて相当前向きの姿勢をとられておったのにかかわらず、ただいまのような答弁というのは解せないのであります。その二名はどうしてくれるのでありますか、それをちょっと聞きたいのです。
  213. 小林武治

    小林国務大臣 いまの裁判になっておりますものは別にいたしまして、これはそちらの決定を待つ、そのほかの方々が相当な申請が出ておりますが、裁判とは別途にこれらの人々のことを調査をいたしております。いまのお話の分も含めて別に調査をしておる。できるだけ早く結論を出したい、こういうつもりでおります。
  214. 安宅常彦

    安宅委員 私が言っているのは、たくさんの人方が申請に来ている。それは調査をするのはたいへんでしょう、それはわかりますよ。だからこの前調査も完了し、一たん内閣としてきまって、氏名も発表したものを、もう少し待ってくれ、こういうようなことを言って、もう少しが一年もになっているのだが、何も理由はないのです。橋爪さんという方ですか、資格審査課長さんなんかもうすぐ出ますよなんて、当時言っていたのです。それが何らかの理由でそのままになっている。これは調査も全部済みの方々なんです。こういうことまであなたのほうでとめておくということは、私は非常に解せない。いまテレビのクイズだってみんな海外旅行が懸賞になっているのですよ。そんなときに自分の国に帰ることぐらい、政府でやるくらいはいいのではないかと思うのですが、どうですか、特に二名の分に限ってどうするかを……。みんな待たされているのです。一人は横須賀の人で、横須賀市長からせんべつまでもらって、ぐあい悪くて困ると言うのです。荷物は、その人は何か私がいろいろ朝鮮の友人から聞いたところでは、喜んじゃって家まで全部処分したものですから――当然ですよ、行くところがないから荷物を全部朝鮮総連の本部に置いてあるそうです。こんなことをして待ってくれ、待ってくれって――これは待たせる身より待つ身はりらいということがあります。きざな話でも、そんな一年も待たせる手はないでしょう。そういうことは、せっかく調査いたしましてなんて、調査は済んでいるのですから、これはひとつあなたから答弁願いたい。
  215. 小林武治

    小林国務大臣 これは理屈を言うわけじゃありませんが、昨年の残っている二名は正式に許可をしたことはないのでございまして、許可をしておってそのままにしておる、こういう問題ではありません。その当時そういうお話は出ておりまして、調査も一応済ましたが、正式にいわゆる出国、入国許可をしておるものではありません。そのことだけはひとつ申し上げておきます。
  216. 安宅常彦

    安宅委員 そういう答弁になると、私はおかしいと思うのですよ。法務大臣がわざわざ私のところに来て、氏名まで発表していって、そして新聞記者会見で法務大臣が全部発表して、テレビでも報道になった。知らなかった、隣の人から教えてもらって、私は帰れるのだといってたいへん喜んだ、そういう人が何ですか、正式に許可になったものではありませんなんて。じゃ、大臣がかわったからいいようなものですが、今度は西郷さんがうそをついたことになりますかね。そんな権威のないことになら――ないような原稿を、うしろの役人、出しなさいよ、大臣は知らないんだから、西郷さんが言った――南洲の孫じゃないか。それがいいと言ってわざわざ私のところに来て発表し、新聞記者にも発表し、テレビにも放送した。私がかってに発表したのじゃない。大臣が発表したのでしょう。それを今度は正式に許可になったものではありませんから御了承願います――御了承なんかできませんよ。どうなんですか。法務省、おかしいじゃないか。大臣は新任だからそういういきさつは知らないかもしれないけれども、そうしたら、前任者の大臣立場はどうなってもかまわないようなメモを渡してよこして、どうするのですか、あなた方は。大臣、そういう答弁は前の大臣の西郷さんの名誉に関することですよ。そのことのいきさつについてよくわからぬから、ひとつ西郷さんと話し合うということだったらよほど顔は立てることになるけれども、あなた、そんなあっさり言い切っていいのですかね。だれです、そんな紙をよこしたやつは。とんでもない。
  217. 小林武治

    小林国務大臣 役所の仕事には形式がありまして、いまよく申すように――だから私は形式的に許可は与えておらぬ。そういうわけで、いまたとえばそういうことを発表したとか、あるいは知らしたか、こういう問題はあったかもしれませんが、いまの二人には正式な許可をしておらぬ、そういうことは事実であります。
  218. 安宅常彦

    安宅委員 そうすると、西郷前法務大臣は重大な食言をしたということになる。そのために生活が脅かされたり、名誉が傷つけられたり、たいへんみんなにふしぎに思われたり、人々に迷惑がかかることを、西郷さんがうそをついたことになりますよ。いいのですか。じゃ、詳しい政府委員はあとおりますか。その事情、大臣が記者会見したときに大臣一人で記者会見したはずはない。必ずだれかが、役人さんがついていたはずだ。私のところにも一人来た。名前を言ってもいいけれども、名誉のためにきょうは言わないが、そういうことを発表したこと、公党に対して発表し、新聞記者に発表したことが許可にならないことを発表したということでありますか。どうなんですか。これはどっちなんです。
  219. 吉田健三

    吉田政府委員 御答弁申し上げます。  昨年のこの事件のときに私はまだ就任しておりませんので、正確なことではないかもしれませんが、私が引き継いでおりますのは、八名の決定というのは、正式に決定されたものではなく、個々の人に、審査の結果正式発表はしておらないはずでございまして、日赤のほうの……
  220. 安宅常彦

    安宅委員 記者会見で言ったじゃないか。
  221. 吉田健三

    吉田政府委員 法務省は記者会見をやっておらないと私は聞いておりますがもう一度その点調査をいたしまして、答弁申し上げることにいたしたいと思います。
  222. 安宅常彦

    安宅委員 あなた方はおかしいですよ。今度は記者会見してないと伺っている――それはもしそれが事実だったらまだいいでしょうがね。ところが新聞記者の皆さんは、何の船で帰るのでしょうか、何月何日に出るのでしょうか――実は私は船の名前をちょっと間違って覚えておったものですから、君の言うことはうそだな、これは何々丸だと、新聞記者のほうから法務省から聞いてきたといって、その名前の書き方まで漢字――いま朝鮮では漢字を使いませんから、漢字で書くとどういうようになるのかということまでみな聞いてきて、むずかしい字があるということまで言って、そうして法務省では新聞記者に字まで教えているんですよ。だから新聞は非常にあれは正確でしたよ。どこどこに在住しているというのがちゃんとわかって、何月何日、何々丸で帰る、ここまで発表したのは法務省ですよ、出どころは。それでも正式決定してないし、新聞記者に発表してないということですか。そんなばかなことありますかね。
  223. 吉田健三

    吉田政府委員 ただいま私が責任者でございますので、一応御答弁いたしますが、この決定は法務省が正式に決定して発表したり新聞記者会見をしたものではございませんので、関係の党あるいは団体のほうで新聞記者を集められて発表されたものと私は了解しております。したがいまして、法務省のほうでは何名の人にどういうふうに決定になったかということを正式に公表し、発表したものではございません。個別的な審査で真に人道的なケースに該当する人に対して個々に発表といいますか、通知をしておるわけでございます。
  224. 安宅常彦

    安宅委員 そんなことで議論しておると時間ばかりたってだめだから……。それでは私は言いますが新聞記者にはたいへん義理立てた答弁ですね。そうすると、安宅常彦に対して発表したのは正式じゃないのか。国会議員です、私は。その問題で社会党の責任者ですよ。わざわざ、大臣に電話をかけてどうなったんですかなんて聞いたんじゃないですよ。向こうから発表したんですよ。新聞記者発表は正式だけれども、社会党の朝鮮問題特別委員長安宅さんですなと言って電話をかけてよこして、いろいろ言うから、今度、私のところで朝鮮問題特別委員会を開いておるからぜひいらっしゃいと言ったら、そうですかなんて、わざわざ太いからだをこうしてきて、そうしてそこで、みんないるところで発表した。これは正式発表じゃないのですか。新聞記者に言うときは正式発表で、国会の公党に発表するときは正式発表でなくて責任を問われないという考え方ですか。そういう考え方が大体間違いなんですよ。あなた言ったじゃないか、政党が発表したって。いまそこで言ったじゃないか。政党が発表したといっても、法務大臣から聞いたから発表したんですよ。知らないこと発表できないじゃないですか。  これはここで私はすったもんだしたくありません。したがって法務大臣、この問題は重要なことですよ。ですから西郷さんがそこまでおっしゃったのですから、この事実は消すことができません。私らが発表したのでしようなんて変な答弁をしているけれども、私が聞かないものを発表しようがないのですからどんな字を書くのか、何歳で、また何の船で行くまで、そんなこと私がわかりますかね、あなたに聞かなければ。どこかでスパイがおってあなたのところから何か持ってきて、私に教えて私が発表したんだったら、これは話が違う。そうじゃない。だからそのいきさつを明らかにするために、私と大臣と事務当局者と西郷さんと話をして、これは円満に帰れるように早急に、そういう話し合いをするということだったら、きょうはすわったりがんばったりしないで、すっといきますが、どうですか大臣、いいでしょう、それは。
  225. 小林武治

    小林国務大臣 そういうお話をすることはけっこうでございますし、これは、たとえば代議士先生に対して決定前にお知らせするということは現実にある。たとえば……。
  226. 安宅常彦

    安宅委員 まだがんばるのか。そういうことあるの。
  227. 小林武治

    小林国務大臣 それはありますよ。決定する前に、いろいろの関係で事前にお知らせする、こういうようなことはないとは限らないのでございまして、これは、西郷さんもあるいはそういう気持ちで先生にお話しになったかもしれません。しかし、いずれにしましても、これらの問題については、いまここにおる者はその真相がよくわかりませんから……。
  228. 安宅常彦

    安宅委員 そういうことを言うんなら、それじゃ西郷さんを呼ぶか。私は、何も事をかまえようとするのじゃなくて、そういう話をしたのだから、四人で話をしたらどうですかと、そういう、言うならば妥協案みたいなことまで言っておるのに、あなた、正式に発表しないうちに代議士に言った理由があるのなら――そういうふうに決定しましたからというので、わざわざ来たのですよ。内定だなんて言っていないんだから……。証人全部出して、ここで西郷さん呼んでやりますか。そんなばかなことを言いなさんな。
  229. 中野四郎

    中野委員長 安宅君に申し上げますが、安宅君の質疑中に、調査をして、はっきりした御答弁をするようにいたしますから、御了承を願って、進行を願います。
  230. 安宅常彦

    安宅委員 それではこの問題――ただ、そういう考えがどうしても、地裁で敗れ、高裁で敗れてもがんばる。この間、実は松川事件のことで、もとの被告団、いまは原告で政府を国家賠償法ですか何かで裁判に持ち込んでいる方々と一緒に大臣を訪問したのですが、これも、裁判所側では、国側の、国が被告ですが、その何か口頭弁論みたいなものをやってもらいたいと証人申請を出したけれども、それは必要ない、こういうところまで第二審でそれが行っておるのですね。だから、もう国のほうで、どうせ一審の金額は少ないのですけれども、出したほうがいいのじゃないですかという話をしに行ったら、やはりお役人のなわ張りというのですか、メンツというのでしょうか、そういうことで、それは控訴を取り下げないでがんばるのだ、こういうふうにおっしゃっておりましたが、もう少し血の通う政治というものが私は必要じゃないか。特に小林さんが今度法務大臣になられまして、国民の権益というものを守るためにひとつ努力をするという、たいへん小林さんらしい信念をテレビで申されておるのですから、お役人衆は、いろいろなことをあなたに進講するかもしれません、そういう場合の判断というのは、ぜひ誤らないようにお願いをしたい、こういうことだけは申し上げておきたいと思います。  それではあと、こういう事柄が朝鮮の問題についてはたくさんあるのですね。たとえば国籍の問題だってそうです。いま、朝鮮の国籍になって、外国人登録法によってやっておる、その国籍欄に朝鮮と書くと、非常に国側がきらって、いろいろなことをやる。それから、韓国と書いてもらうと、たいへんにこにこする。たとえば、何か、数のうちですから、朝鮮人も日本人も同じこと、刑法に触れるようなことがあって、一年以上の刑罰に処せられた。そういうときに、刑務所を出た、こういう段階で、永住権の問題があるからひとつ韓国籍に変えたらどうだという。韓国籍に書くとそのままだけれども、そうでない人は、朝鮮籍の場合には、なるほどそれは法令の二十六条でしたか、二十三条にあるのを適用したのだと、あなたのほうで強弁すればそのとおりですけれども、すぐ大村の収容所送りにしてしまう。もう大体とっつかまっただけで、あわてて韓国籍に変えたなどという例がたくさんあるのです。こういう差別というものは、やはり直すようにしなければ、どうしても、先ほど官房長官が言った日朝親善というのでしょうか、どこの国とも仲よくいたしていきますという総理のそういう立場というものと相反するようなことになると思うのです。  こういうことについて、いろいろな例がございますけれども、要はひとつ、そういう差別はたいへんけしからぬことでありますから、この問題で具体的に、きょうは時間がありませんから、いろいろ法務委員会等でお尋ねをすることがあるかもしれません。そういうときまでに、在来の考え方、先ほど官房長官が言いました、何かそれは広州の交易会あたりに行くことがいかぬことだという考え方、これは外務大臣でしたね、おっしゃいました。そうではなくて、それは当然ほんとうに純粋にそれに行くのだったらいいじゃないかという考え方でいま作業を進めておるという話でしたが、やはり法務省もそういう立場になって答弁できるような、そういう態勢をひとつつくっておいていただきたいと思います。これは要望でありますが、法務大臣、どうでしょうか。そういうことについて、ひとつ私も、よしやってみよう、新しい大臣になったときでありますから、こういう気持ちがおありだと思いますが、いかがでしょう。
  231. 小林武治

    小林国務大臣 おっしゃるような気持ちでやっていきたいと思います。
  232. 安宅常彦

    安宅委員 それで、官房長官、これは運輸大臣関係があるのでございますが、どうも日韓条約によって南朝鮮のほうと親善友好関係に入っているのでということが、いろいろなこういう問題を持ち出すと、すぐ政府方々やあるいはまた役人衆が言うことば、まくらことばみたいになっております。だから差が相当あるのは当然だという意味、あるいは朝鮮民主主義人民共和国、皆さんいわゆる北鮮といっていますが、そういうほうとは、なかなかもってうまくいかないんだということを言い出すための、まくらことばみたいに、日韓条約があるから、日韓条約があるから、こう言っておられるのです。  私、去年、朝鮮民主主義人民共和国を訪問したのです。ところが、その帰りのときに、十月十二日の夜と、それから次の日の十三日の日中ですが、二回、あれは韓国のですか――私は忙しいものですからまだ編集も何にもしてないのですけれども、八ミリのフィルムを持っているんです。たしか一〇二という数字が出ておったと思います。警備艇か何かが参りましてストップ、停船命令を出しまして舷々相摩すというか、そこまで来て積み荷は何だ、どこへ行くのか、それからどこの港から出発したのか、こういうような質問を盛んにする。それで私らは日本の国会議員として公海を――天下の公道ということばがありますが、公海を航行中に何も韓国ごときの警備艇から停船命令をかけられるような悪いことはしていませんからね、頭に来た。そしたら船長が、先生かんべんしてください、おとなしくしていてください、私ら商売に差しつかえるし、あぶないと言うんです。そしてまた幾ら私が八ミリの名手であっても、夜はどうもライトがなければ写りませんから写しませんでしたが、次の日のはカラーでうまく出ていますよ。それで停船命令ですね、夜の場合は信号弾。それで停船命令がかかったというので今度はデッキの上から八ミリを向けたら、今度は最後まで同じような質問をするのじゃなくて、安宅常彦におそれをなしたのかそれはわからぬけれども、停船命令をかけておいて、あと行ってもいいも何も言わずにその警備艇というものはすっと行っちゃったんです。そういうことについて海上保安庁あたりは知っているのか。それから船長の話によりますと、あるいはその他の調査によりますと、日本の朝鮮に行く商船はほとんどやられるというんです。みんな知っているのです。三十八度線沖あたりに来て一回、それから釜山近くになると一回、大体出るころだなんて言っているんですね。だからそういうことをしょっちゅうやられていることを海上保安庁の諸君が知っているのか、それは大臣に報告になっているのか、このことについてちょっと聞きたいと思います。
  233. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 ただいまの安宅さんの質問の事件は次のようなことだろうと思いますから、概略その点について申し上げます。これは船長が帰りましてから海上保安庁に来てもらいまして話を聞いたわけでありますから、船長の話としてお聞きおきを願います。  第一祐生丸は昭和四十四年十月十二日午前十時十五分北朝鮮興南を出港し大阪に向かう途中、同日の午後十時ごろ注文津、これは韓国の江原道でありますが、東方約二十五海里の海上で一回、さらに十三日午後二時ごろ迎日湾、これは韓国の慶尚北道、東方約三十海里の海上で一回、それぞれ一千トンくらいの韓国海軍駆逐艦らしいものにより発光信号及び信号旗によって誰何または停船命令を受けました。そして停船した。第一祐生丸は第一回目約四十分、第二回目約三十分停船をしましたが、同軍艦による接舷や臨検は受けていないという報告であります。しかしこの船長の報告内容によれば、当然これは公海中のできごとでありますからして、したがって、国際法上違法のおそれがある、かように考えましたので、本件を運輸省といたしましては外務省に報告しまして、外務省からは十一月二十九日付で口上書をもって韓国側に抗議した旨の連絡を受け取っております。その後の経過はまだ聞いておりません。そこで、このようなことがいまおっしゃったようにしばしばあるやに聞いておりますけれども、海上保安庁の警備といいますか、哨戒の船をもってして広い公海を警戒することもなかなかむずかしいのでありまして、さようなことのために徹底した措置ができませんが、しかしこのような事件が起きれば、さっそく外務省を通じて厳重にその申し入れをいたしておるのは従来どおりであります。  以上御報告申し上げます。  その他は外交上の問題でありますから、外務省の答弁を願います。
  234. 愛知揆一

    愛知国務大臣 一言つけ加えておきます。  ただいま運輸大臣から御答弁がありましたとおりで、公海上におけるかかる停船行為というものは国際法に違反いたします。したがいまして政府としては昨年十一月二十九日付の口上書をもって韓国軍艦の公海上における停船命令は国際法に違反する行為である旨強く抗議し、かかる事件の再発を防止するよう申し入れました。ただいままでのところ、その後類似の事件が起こったということは聞いておりません。
  235. 安宅常彦

    安宅委員 これは私らが乗っていたから意識的にやったのか、そんなこともないだろうが、やはり人間というのはちょっとひねくれるものでございまして、調査したんですよ。そうしたら、そのときの船長さんも言ってましたが、しょっちゅうだって言うんです。船長はなれたもんで、御苦労さまでしたなんてマイクで言っているんですよ。あっちも日本語がわかると見えて、手を振ったりして帰っていくのか何かわかりませんけれども、帰りは停船命令だけかけて、あとすっと行ってしまったのですが、しょっちゅうだというんですね。だからカメラなんかとらないでくれ、あとで機関銃でやられたらかなわぬし、先生もあぶないし、私は商売をやって意地悪くされるといって日本の船長がたいへんびくびくしているんですね。あなた方は大国だなんてがんばっているけれども、その大国日本の船長が気の毒なくらい萎縮してますよ。しょっちゅうやられるというのです。そういうことはあまり船長さん方は日本政府に一々あの船長は報告するなんて言われたら商売上困るのじゃないか。やはり商売人ですから、案外報告が来ない場合もあるんじゃないですか。船長やその他の方々に聞いてみたら、しょっちゅうやられているというのです。これは積み荷は何かまで聞くんですよ。それから行き先はどこか、どこから出発したか、大体どういうような人が乗っているのかということまでやられたこともあると言ってましたが、そのときは言わなかったらしいですが、昼のときはもちろん私がカメラをかまえておったら、あと逃げていってしまったから、逃げていく軍艦の姿がこれに写ってます。うまく写ってますよ。あとから見てください。これは番号までみなはっきりします。私はカメラはうまいもんですからね。そういうことをやられておる。あなたは厳重に抗議したそうですが、厳重に抗議した回答は、韓国政府というのですか、朴政権のほうから来たのですか、大臣
  236. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いま申しましたように公文書をもって抗議をし、そうしてさような事態の再発が起こらないようにということの申し入れをいたしまして、これは了承というか、そういう抗議を受けることは向こうとすれば当然のことですね。その後の状況においてはさような事態は再発していない、こういうふうに私のほうは理解……(安宅委員「返事は来たかというんです」と呼ぶ)かような場合には通常……(安宅委員「なしのつぶてでいいのか」と呼ぶ)それで効果は十分に発揮していると思います。
  237. 安宅常彦

    安宅委員 日本の国会議安宅常彦もなめられたもんですね。これは実際そういうことがたくさんある。たいへんいい国だってあなた方言うけれども、こういうふうに国際法を犯して、そして私どもが――もし大臣が乗っていたとしますよ、大問題になるんじゃないでしょうか。残念ながら安宅常彦は野党でありますから大臣になれませんけれども……。大臣がえらいのじゃなくて、国会議員が低いのじゃなくて、いまの社会通念はそういうものの判断、価値の判断のものさしが違うから。いやな話ですが、同じじゃないでしょうかね。そういう意味で船長さんがそういうことをやられようと、大臣がそういうことをやられようと、国会議員がそういうことをやられようと、同じことじゃないでしょうか。ただ大臣がやられなかったから、あまりたいしたことないので口上書でやったのかしらぬけれども、通知をしてもなしのつぶてだなんて、そんなことはありませんよ。ここで議論したってつまらないから、外交のことは安宅知らないからちょうどいいあんばいだと思って、それでごまかそうとしてもそれはだめです。まあともかくそういうことがある。  さらにまた、この間何かコレラ菌を朝鮮側が発注したなどという新聞記事が出ました。私どもの調査によりますと、何か第五管区の海上保安本部ですか、その警備救難部長さんという人が、これはオフレコというか、オフレコじゃなくて、あなたに特別情報として教えると言ったか、共同通信の記者を呼んで、それで柳田株式会社という貿易会社――いわゆる北鮮と密輸の容疑で捜査してきたけれども、その過程で柳田という貿易会社の佐野さんという第二営業部長が、取り調べに対して、コレラ菌の密輸依頼を受けたという、そういう事実があるんだというようなことを発表した。そのために共同の記者さんは、これは大事件だというので飛びついた。ところが各新聞記者がその日の夕方、五管本部に取材しに行ったら、そのときは当局は、コレラ菌云々は事件になるような根拠はないということを言明したために、おおむね記事にならなかった。だんだん日がたつにつれて、そのことを、やはり共同通信の中にある合同通信というのですか、南鮮系の新聞があって、その記者が本国にこれを送った。こういうことから南朝鮮のほうで大騒ぎになって、何か臨時議会を開いてみたり、今度、防毒面を何とかして防除体制を強化しろとか大騒ぎをしている。よく聞いてみたら、五管本部のほうでは事件にならないんだと一たん言いながら、今度あとでは、これは最高の秘密に属するもので、ことしの主要な捜査対象となるというような発表をした。こういうふうに情勢がぐらぐら変わっているのですけれども、そういう私どもの調査なんです。その私ども調査したことと大体変わりはないでしょうかね。そういういきさつがあったということを知っておられるんじゃないかと思うのですが、どうですか。
  238. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 事実に関する問題でございますので、私、海上保安庁長官でございますが、御説明申し上げたいと思います。  ただいまお話がありましたようなことで、五管本部の基本的な方針がぐらぐらしたという点につきましては、私どもは五管本部のほうにいろいろ照会いたしましたが、そういう事実はないもの、こういうふうに思っております。ただ、五管本部の結論は、いま先生がおっしゃったとおりでございます。
  239. 安宅常彦

    安宅委員 主要捜査対象になる、こういうことですか。
  240. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 ちょっと言い方が不正確でございますが、最初におっしゃいましたように、これは事件にはならないということでございます。
  241. 安宅常彦

    安宅委員 こういうことを、五管本部が事件にもならないことを新聞記者に発表するというのは、さっきの話よりもっと悪いですね。それこそ捜査対象にならぬようなものをそれじゃなぜ新聞記者に発表したのですか。私の調査では、警備救難部長という人が発表したというふうに私は聞いている。
  242. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 お答え申し上げます。  この点につきましては、新聞関係との関係がまずかったのではなかろうか、こういうふうに思いまして、私どもは五管本部に対しましても、今後このような誤解を起こさないように措置するようにその後伝えておりますが、まことに申しわけないと思います。
  243. 安宅常彦

    安宅委員 新聞発表のやり方に遺憾の点があったということ、これは重大ですね。たとえあなたの政府はというか、日本政府は、もっとも承認国でないかもしらぬけれども、厳然たる独立国である朝鮮民主主義人民共和国の体面をけがし、柳田という会社に重大な不利益を与えた。そしてその人はそれについて取り調べられたために、あの人スパイじゃないかなどとまで、みんなの目で見られる。重大なことをあなた方がやったということにお気づきになりませんか。
  244. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 お答え申し上げます。  この関係につきまして、そのようなことが新聞で問題になったということにつきましては、先ほど申し上げましたように遺憾であると存じますが、ただこれは、私どものほうが積極的に新聞に、いわゆる先生のおっしゃいますような発表という形でやったものではございませんで、その点は御了承いただきたいと思います。
  245. 安宅常彦

    安宅委員 その手続その他の問題についてまたあなたと議論しているとえらい時間がなくなって、天下りが抜けてしまうから、あとでこれも詳しく真相を明らかにするための論議をしなければならないと思います。これは国際的な問題でありますから、しかも一商社にそのためにたいへん大きな迷惑をかけていることを、ただ、遺憾でございますと国会であやまった、こういうことだけでは済む問題じゃないと思います。  さらに、厚生省の検疫課長の実川さんという人ですか、この人が南朝鮮の新聞の記者と一問一答をやっていることが、南朝鮮の新聞に書いてあります。これによりますと、朝鮮大学にもコレラ菌はあるのだということを実川さんが言ったということが、向こうの新聞に書いてあるんですよ。このコレラ菌というのは非常に意識的なでっち上げというのでしょうかね、「得たりや応とばかりコレラ菌事件」とこう毎日新聞に書いてありますが、得たりや応、向こうでは何かそういう日本と朝鮮民主主義人民共和国との親善を妨害するための得たりや応という意味にとれるのですけれども、そういうことまで書いてある。いろいろ調査をしてみたら、その記事を見たら、ほとんど実川という人は、何というのでしょうか、その発言において遺憾な点は一つもないのです。ただ、当然朝鮮大学にもコレラ菌があるのではないかという南朝鮮の新聞記者の質問に対して――朝鮮語の直訳になりますが、「あると知る」、こういうふうになっているのだそうです。私は訳してもらったのですが、だから、あると思うという意味か、それよりも強い当然あるだろうというのか、あると知るというのですから、あるというふうにも訳せることばで新聞に書いてあるのですが、厚生省でこのことについて実川さんから事情を聞いたり何かしたことがありますか。
  246. 村中俊明

    ○村中政府委員 お答えいたします。  この東亜日報の記事は去る二月の十四日の記事かと思いますが、その前に実は日報の記者が検疫課長を訪れまして、ただいまお話のございましたコレラのことについて話があったそうであります。ただしこの記事にあるような一問一答のような内容についてはなかった。新聞の記事を見てさっそく担当の取材記者を呼びまして、訂正方を申し入れたけれども、いまだにその訂正がされていない。そこで、去る三日の日に担当記者に再度来庁を求めて申し入れを文書にして手渡した、こういうことでございます。
  247. 安宅常彦

    安宅委員 これを実川さんには私どもやはりいろいろ聞いてみたのです。それは朝鮮大学なんていうことばさえも出なかったと言っているんですね。私はそれを信じます。だから問題はありませんけれども、こういうことを針小棒大というか、まるきり言ったこともないことを新聞にでかんと書いて、そうして今度何かわあわあ大騒ぎをする。こういう国が親善友好の関係に立って、そして何か言うと国会議員の乗っている船がとめられてみたり、こういうことはどうですかね、外務大臣、どうなんですか。これはいわゆる韓国に対して口上書なんというものじゃないですよ。非常に国際的ないろいろな問題が起きるから、厳重注意してもらいたいということについて、外交文書の相当の強い文書で――これは安宅常彦を口上書でやってしまったんだからしようがないが、そういう立場をとってもらわなければならないと思うのです。承るところによると、何か帰国の問題だなんかというと仲よくなるような情報が向こうで新聞記事になると、こっちに来ている大使さんかあるいは大使館の役人さんか知りませんけれども、すぐ国交断絶だなんて言ってくるそうですね。私は名前は言いませんけれども、相当有力な方から聞いたことがあるのです。しょっちゅう来るので、うるさくてかなわぬということまで聞いたことがありますがね。そんなことを言うんだったら、断絶でもたまにしてみるかぐらいのことを言うくらいな、まさかけんかしろという意味じゃありませんが、こっちだって強い態度をとったらどうですか。こんな悪いことばかりしている国に、そう何もへっちゃらへっちゃらしていることはないじゃないかと思うのですが、どうですか、外務大臣
  248. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御意見はひとつ十分尊重いたしまして、今後いろいろと注意してまいりたい。  それから、いまのコレラ菌の問題は、私のほうの立場においても、実に各省庁の御協力をいただきまして、事実がないことを確信を持って発表いたしましたから、御参考までに申し上げます。
  249. 安宅常彦

    安宅委員 それでは、きょうぜひ私は提案を含めての内閣の諸大臣に、特にこの問題についていろいろと御努力を賜わっておる行管長官や官房長官などに質疑をしたいと思っているのですが、いわゆる天下りの問題であります。  荒木さん、あなたは去年議院運営委員会に御出席されまして、一般職の公務員の他の企業へのやめたあとの転職といいますか、この問題と、それから公社、公団、特殊法人の問題等について議論がありました際、政府はこの問題について非常に頭を痛めておる、行管長官としては、公社、公団、特殊法人のこのたびの設立は万やむを得ないものにしぼって、たった一つ許可をしただけであります、あとは全部各省の申請を拒否いたしました、こういうふうに言われました。ところが今日、今年度の予算案の中にある経費のあれを見てみますと、私が見ただけでもうすでに大体五つ以上ある。長官は、去年は議院運営委員会でたいへんみえを切ったのですが、どうですか。
  250. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 議院運営委員会に出席いたしまして、いまお話しのような趣旨のことをお答えしたことは記憶しております。今日もその考え方に変わりはございません。  ところで、四十五年度の予算に関連しましては新しく三つを認める態度をとっております。それ以外は、幾つかあるとおっしゃいましたが、スクラップ・アンド・ビルド式に数としてはふやさないということで、人身御供を出してもらったところだけを認めるというやり方をいたしております。  三つ認めましたのは、厚生省の関係の心身障害者福祉協会、これは新設であります。これは行管としましては設置することを積極的に慫慂したくらいであります。その必要性を痛感したからであります。第二は農業者年金基金であります。いわゆる総合農政の一環として、当面のカレントトピックスに関連する課題といたしまして、その必要性があるかと存じまして賛成をいたしました。第三は本州四国連絡橋の公団でございます。これもすでに万々御承知のような段階に来ておる一種の政治課題でもあり、関係府県の数百万の住民の関心事でもある、したがって公団の形でこの架橋のことに取っ組むことが適当であろう、かように存じまして認めることにいたしました。
  251. 安宅常彦

    安宅委員 何か承るところによりますと、そのほかに情報処理振興事業団であるとか、それから何かあなたのほうの対象外だといわれておりましたが、運輸省のタクシー近代化センターというか、それも特殊法人みたいなものでしょう。そういうのも対象外であるけれども、事実上予算に盛り込まれているのじゃないですか。運輸大臣そうでしょう。どうなんですか。
  252. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 これは先ほどお話のあった公団、公社のようなものではありません。まあ運輸省が監督をする機関ではあります。予算的にはわずかなものが助成金として出されるということでありまして、御承知のように、タクシー業界はいろいろの体質改善を必要とします。運転手の教育問題、それから安全車の問題たいへん大事な仕事であります。さような空気があるので、けっこうでありますから、助成して思い切った近代化政策をやっていこう、こういうことからこれを認めておるわけであります。
  253. 安宅常彦

    安宅委員 まあ公社、公団ではないけれども、特殊法人ですな、これは、そういうことになりますと。どっちみち財団法人か何かになるのでしょう。ですから、荒木さん、去年は何も野党からだけじゃなくて、議院運営委員長であった久野さんからも相当きつい意見というものが出されているのです。これは当時官房副長官が出ておりましたから、ぜひきょうは副長官と思っておったのですが、何か都合があるのだそうであります。この公社、公団というものがなぜできるのか。たとえば四国の橋をかけるのになぜそういう公団が要るのでしょう。たとえば去年問題になったのでは、日本道路公団、首都高速道路公団、それから阪神の何か道路公団というのがある。そのうちぼやぼやしていると群馬公団なんてできるかもしれぬ。福田さんがいるからまさかできないと思いますが、そういうことではなしに、中京の道路公団というのは話が出ておったのですよ。議運の委員長は中京出身でしょう。名古屋出身ですよ。そういう話があるから反対だといっていろいろ――それを一般の市中銀行からですか金が集められるというように、役人さん、じょうずに、道路公団とは別に機構を変えているけれども、そういうふうにして道路公団に一緒にしたらいいじゃないですか。たとえば公団が全然要らないとは言わないまでも、それくらいのことをしたらどうか、橋だって建設省の道路局長がやっていることだ。なぜそんな公団が要るのですか。  そういうことを考えてみると、荒木さん、何か新聞に大きく載ったり、知事がたいへん苦労しているから、三つの県が競争しているからなんというので、何かそんなムードに押されて公団をつくるというのは、去年の議院運営委員会におけるあなたの発言とは思えない発言がきょう出てきているので、どうしても私はたいへん遺憾なことだと思うのです。これは橋をかけるのだもの、建設省がやればいいのです。何も公団は必要ないでしょう。そういうことを考えなければならないのじゃないでしょうか。私は時間がないから、一々言いわけや何か聞きたくないのです。そういう方針をはっきりしてもらいたいために言うのですが、たとえば運輸省には鉄道建設公団というのがありますね。いわゆる鉄建公団ですね。これは前の前の前の議長さん、綾部さんが何か総裁になったようですが、ここには何人職員がいるかということを大臣知っていますか。おそらく知らないでしょうね。政府委員でいいですからちょっと答弁してください。
  254. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま資料がございませんので、たいへん申しわけございませんけれども、人数はわからないのでございます。
  255. 安宅常彦

    安宅委員 およそはわかるでしょう。
  256. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 おおよそのところは大体わかっておりますけれども、正確にはわかりません。職員として約二百人くらいと存じますけれども、ちょっと資料がないもので、よくわからないのでございます。申しわけございません。
  257. 安宅常彦

    安宅委員 こういう公団が、鉄道は赤字だ、赤字だ、赤字だと国鉄公社はわあわあ言っている。国鉄公社が赤字だというのと別に、赤字になる鉄道を一生懸命つくっているんですね。まるっきり合理化の方針とは反対の方向にまた大蔵省も予算をつけて、そしてやらせているんです。これは大蔵大臣、矛盾を感じませんか。どうですか。
  258. 福田赳夫

    福田国務大臣 この公団をつくる当時におきましては、まあこの公団の使命は非常に大きかったのです。その後国鉄の財政問題、非常に苦しくなってきておりますが、まあ長い目で見ると、今日におきましてもこの公団の使命はどうしても必要なものである、こういうふうに考えております。
  259. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 先ほどの本四連絡架橋公団の問題は別々にやってはどうか、せっかく鉄建公団があるんだから、あるいは建設省には道路公団がある。ただこれは安宅さん御承知のように、でき上がった橋の上に鉄道を載っけるわけじゃないのです。したがって、橋を、鉄道を載っけられるようなものをつくらなくちゃならぬ。これはどうしても一緒でないと技術的には困難がある。これはおわかりになるはずです。そういう意味でもってこれはむだな公団じゃなく、どうしても必要な公団だということは十分に御了解を願いたいのであります。
  260. 安宅常彦

    安宅委員 それでは、前の議院運営委員会でぜひ廃止したいとして、廃止しているのも少しありますという木村官房副長官のお話でありましたが、その中でまだ廃止になっていないのがたくさんあります。これは職員が少ないからなんとかという意味じゃありませんけれども、漁業共済基金というのが農林省の管轄にありますね。これは職員は何人ですか。これも大臣知らないでしょうな。いないな、大臣。じゃ政府委員でいい。だれか農林省おりますか。――まあ、これはいい。私どもの調査によると四人しかいないのです。四人ですよ。これしかいないのです。少ないのになると日本蚕糸事業団というのは、これは私は廃止するかしないかは別として、廃止しろという意味で言っているんじゃありませんけれども、三十一人しかおりません。こういうところが去年問題になりましてね。たとえばわが党の勝澤さんが発言しているんですが、国有鉄道には四十七万人の人がいる。ところが、この厚生省関係の環境衛生金融公庫というのがあるが、この機構は、人数で何か文句を言うわけじゃないけれども、四十五人しかいない。四十五人のところの理事長が四十一万の報酬を受けているんです。国有鉄道の四十七万人の人を動かし、日本の動脈を扱っている国鉄総裁が、これは何ぽかというと報酬は四十七万円なんですね。こういうような報酬の面からいっても何かそぐわないことはおかしいではないか。しかもこの環境衛生金融公庫の理事長というのが、去年の話ですが五十六歳で、理事が五十五歳で、次の理事も五十五歳で、それからもう一人は五十三歳だ。そしてそれから監事というふうになるけれども理事長は東大法科の十二年、筆頭の理事は十三年、その次は十四年、その次は十五年、監事は中央大学、こうなっている。こういうような人がおって四十人ぐらいしかいない。そして理事長は四十何万円の報酬をもらっている。一体どういう仕事を、そんなに鉄道の総裁ほどの大仕事をやっているのだろうかという疑問を投げかけられているんですよ。こういう公社、公団に、これは大学卒の学歴だけ言いましたけれども、すべてこれは官僚出身である。こういうことをそのまま捨てていいのかどうか。  なぜそんなことを言うかといいますと、これは公社、公団に関しては、やめた役人が人事院の審査を通らないでストレートに行けるという、言うなれば、悪く言えばうば捨て山、よく言っても何か別な仕事をひとつしてやろうと、役人の手によってやる機構として、この公団、公社、特殊法人というものが出たものじゃないということは、大蔵大臣、あなたも知っているとおりです。そうでしょう。民間の有能な人を入れるために報酬も少し高くし、機動的な活動もできるようにということで、公社、公団、特殊法人ができたものだと思うのです。みんな役人上がりが幹部をしておって、四十五人の人を使う。ほんとうの話をすれば、人数でいえばその辺の現場の課長級だ。それが四十万の報酬をもらっている。これは高級官僚にとってはこたえられないというところなんです。そういうことになりがちだから、ふやすのはだめだと私どもは言い、政府もそうだと言い、そしていろいろ改善も官房のほうでは苦心さんたんをしてやっておる。ところが、話が逆だと思うのです。それができるであろうか、できないであろうか、下相談があったか、なかったか、知らないけれども、まず予算が先についてしまう、ないものに対して、本年度予算に。予算がついたぞ、大蔵大臣ありがとうございましたというので、それから各省で今度はあわてて公団の法律をつくって衆議院に出す。あべこべじゃないでしょうか。こういうものは必要だというので政府で立案し、衆議院がオーケーだ、そこでこれは予算をつけなければならないということになるのがあたりまえだと思うのですが、できもしないうちから予算を――予算だから、あくまでも予定だから出すのはあたりまえだという理屈をこねられればそうですが、こういうことについてどんどん雨後のタケノコほどふえていく。いま百八か百と十一くらいあるはずです。それを一年に一つにしぼりましたと去年大みえを切った荒木さん、一つふえたって十年では十ふえますよ。今度さっき言ったような、橋本さんの話によれば、公団というものじゃなくてまあなんてうまくごまかしたけれども、そういうものを含めたら、五つも六つもふえたらどうなります。十年後に三百くらいになってしまう、公社、公団、特殊法人というのが。そこにはほとんど、大体六七%くらいがいわゆる天下り官僚によって役員が占められているのです。公社、公団を設立するときの趣旨とはまるっきり違ってきた。こういう趨勢というものを官房長官はつかんでおられると思いますが、どうでしょうか。
  261. 保利茂

    ○保利国務大臣 先ほどから政府側から御答弁があっておりますように、公団、公社等の新しい設置はできるだけ押える、避けるというその原則は貫かねばならないということで、ずいぶん無理な押え方もされておるようでございます。しかし、何さまご案内のように、今日の国政事務というものは非常に複雑多岐にわたっておりますから、全部がその各省庁で行なうということは事実上不可能である。本来国の業務として行なうべきものをできるだけ能率的に行なっていくようにするために、それぞれの理由から公団、公社等が設けられておるわけでございます。しかし、お話のように、すでにもう大体用務を果たしておるのじゃないかというようなものは、一面やはり整理されていくということが大事じゃないかというような基本的な考えで対処してまいりたい。  同時にまた、天下りとおっしゃいますけれども、そういうように本来国が行なうべき業務をかわって行なうわけでございますから、運営の円滑、目的を達していくために国家事務にたんのうな人がどうしてもたくさん入っていくということは、これは余儀ないことだろうと思う。ただ公団、公社の主要役員等につきましては、これはまあ閣僚異動等がありますたびに、今回もまた一月十四日組閣後初閣議におきましても、公団、公社の主要な人事については、それぞれの権限はもちろん尊重せられなければなりませんけれども、国会等の御論議等もございますから、そういう点にこたえて、内閣側とあらかじめ十分相談をしてやっていくようにということをやっておるわけでございます。御了承いただきたいと思います。
  262. 安宅常彦

    安宅委員 まあいろいろあなたはおっしゃいますが、そういう状況というものは弊害が伴っていると、いま世論から指弾を受けているのです。そういう風潮をあなたは感じ取っておられるでしょうねという質問なんですが、そんなことは意に介さないということですか、そうすると。そんな役人なんか行くのはあたりまえだみたいないまの答弁ですね。
  263. 保利茂

    ○保利国務大臣 前々国会の決算委員会等においてのいろいろな御論議、あるいは議員発議等によっていろいろのものが出されておるということもよく承知をいたしておりまして、それを頭に置いて、そして批判をできるだけ受けないように厳正に運用していきたい。
  264. 安宅常彦

    安宅委員 これは与党方々からもたいへん問題になりまして、去年たいへん大きく盛り上がったわけです。議院運営委員会では久野委員長がそういう発言をしておられるという例まで言いましたが、当時の決算委員長の中川さんが、特殊法人の役員の給与等の規制についてということで、いろいろとみんな与野党の理事さんが話し合いまして、法律案までつくったんですね。ところが、与党のほうから修正案が出る。これはどういう修正かといいますと、一般職の公務員、それと同じくらいに扱ったらどうかと、こういう話、それを一般を取ってくれというのです、一般職を。一般職を取れば一番偉いのは総理大臣だよね。当時五十何万円だ。それにしたいためにがんばって、官僚陣営からも相当抵抗があって、自民党さんからも一般職のところを削らないと困るという。それは退職資金を今度三分の一減らしたなんて福田さん大ぼらこいていますけれども、あれではまだだめですよ。ただいま言ったように国鉄総裁が四十何万円で、たった四、五人のところの総裁、理事長が四十万円なんという手は、幾ら考えたってないでしょう。やはりそういうものは質と量との関係があると思うのです、労働というか職責というか。だからこういうことを考えますと、しかも役人が役所でやる仕事の延長みたいなものですから、役人が行く場合が往々あると思いますと官房長官は言う。それだったら、そこの公団に行ったために、いままで十何万円だか二十万円しかもらっていない人が、いきなり四十何万になるなんという、そんな手はない。  だから私は、中川さんが考えられたこの法律案――やはり不満はあるんですよ。だけれども、これぐらいだったら、まずひとつ手をかけるという意味で賛成したいと思っておった。今度同じ法律を与党方々と、同じ意見を持っている人がおるわけですから、やはり議員の法律でひとつ出したい、こういう場合には自民党の中からまた修正案でなければだめだなどということをおっしゃらないような立場をひとつとってもらえないかということを、総理が出たら総理に話ししょうと思っておった。しかし、各省の大臣の皆さん、特に官房長官はそういうことについて相当いろいろといままで心配していた立場ですから、そういうことだったら成立にひとつ協力しようじゃないかと、こういうことぐらい言ってもらえると思って、私は非常に期待をしてあなたの出席をぜひということを申し上げたんですが、どうでしょうかね、官房長官。
  265. 保利茂

    ○保利国務大臣 国会の発議でそれがまとまれば、これはもう尊重しなければならぬことはあたりまえのことでございます。ただ一面のなには、役人の天下りはいかぬ、だから広く官民を通じて適材を集めなければいけない、そういうことで退職金の基準等も、できるだけ広く民間の優秀な人を集めたいというような趣意でできているものだ。しかし、それも国会の御論議等もあるもんですから、大蔵大臣が言われたように、三分の一減らすというようなことでやっているわけでございますから、ただ人さえ集めればいいというわけじゃないんで、やはり有能な人を得るためにはそれだけの措置はしなければいかぬじゃないかと私は思います。
  266. 安宅常彦

    安宅委員 そうこまいことまで官房長官が知っているはずはないし、それは知らぬでもいいと思うんだが、役人から行った人は一般の国家公務員並みでいいじゃないか。民間からそういう有能な人を出してくるという場合には、これによらないという法律案なんです。中川さんの案というのはなかなか考えた法律案ですよ。あなた知らないから、答弁でそんなことを言っているんで、それはだめだよ。そういうことだったらいいじゃないですか、官房長官、あなたはどうですか。
  267. 中野四郎

    中野委員長 安宅君に申し上げますが、お約束の時間がだいぶ経過しておりますので、その点をお含みの上、結論をお急ぎ願いたいと存じます。
  268. 安宅常彦

    安宅委員 残念ですが、時間が来たようです。実は人事院総裁にも私は御足労を願っておりまして、それからデータ通信のことも非常に重要な段階ですからぜひやろうと思っていたんですが、何かおかしな話でがんばったり、法務省がえらいところで粘るもんだから、当てがはずれてしまいました。人事院総裁の問題等についてはどっかでまたやることにいたします。  それから情報産業、情報通信のことについて、非常に日本の産業の将来の構造の問題で重要なことですから、自主的な方針というものを立ててもらいたいという意味質問をしようと思ったのですが、時間がなくて残念です。  では、法務省の答弁だけはどうなっているんでしょうか。
  269. 中野四郎

    中野委員長 先刻の安宅君の北鮮への帰還許可に関する問題について、法務大臣の報告を求めます。
  270. 小林武治

    小林国務大臣 先ほどお尋ねの件でありますが、調査いたしましたが、時間の関係もありますので、当時の事情をさらによく関係者について詳細調査をいたしたいと存じます。  かような程度の答弁でまことに恐縮に存じますが、御了承願います。
  271. 中野四郎

    中野委員長 これにて安宅君の質疑は終了いたしました。  明六日は、正午より委員会を開会し、小林進君、岡沢完治君、山口鶴男君及び坂井弘一君の一般質疑を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十八分散会