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1970-02-24 第63回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年二月二十四日(火曜日)     午前十時八分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 小平 久雄君 理事 田中 正巳君    理事 坪川 信三君 理事 藤枝 泉介君    理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君    理事 田中 武夫君 理事 大野  潔君    理事 今澄  勇君       足立 篤郎君    相川 勝六君       赤澤 正道君    植木庚子郎君       江崎 真澄君    大坪 保雄君       大野 市郎君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    賀屋 興宣君       川崎 秀二君    上林山榮吉君       小坂善太郎君    笹山茂太郎君       田中 龍夫君    登坂重次郎君       西村 直己君    野田 卯一君       福田  一君    藤田 義光君       古内 広雄君    松浦周太郎君       松野 頼三君    森田重次郎君       赤松  勇君    川崎 寛治君       北山 愛郎君    久保 三郎君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       細谷 治嘉君    相沢 武彦君       坂井 弘一君    正木 良明君       松尾 正吉君    麻生 良方君       河村  勝君    谷口善太郎君       不破 哲三君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 小林 武治君         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 内田 常雄君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  宮澤 喜一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君         郵 政 大 臣 井出一太郎君         労 働 大 臣 野原 正勝君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         自 治 大 臣 秋田 大助君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (科学技術庁長         官)      西田 信一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中曽根康弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         内閣官房長官 木村 俊夫君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制次長  吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         総理府特別地域         連絡局長    山野 幸吉君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         防衛庁参事官  江藤 淳雄君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省欧亜局長 有田 圭輔君         外務省条約局長 井川 克一君         外務省国際連合         局長      西堀 正弘君         大蔵省主計局長 鳩山威一郎君         国税庁長官   吉國 二郎君         厚生省社会局長 伊部 英男君         農林大臣官房長 亀長 友義君         農林大臣官房予         算課長     大場 敏彦君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省農地局長 中野 和仁君         農林省畜産局長 太田 康二君         食糧庁長官   森本  修君         水産庁長官   大和田啓気君         通商産業省通商         局長      原田  明君         通商産業省重工         業局長     赤澤 璋一君         郵政大臣官房電         気通信監理官  牧野 康夫君         郵政省郵務局長 竹下 一記君         建設省計画局長 川島  博君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      大沢  実君     ————————————— 委員の異動 二月二十四日  辞任         補欠選任   正木 良明君     大橋 敏雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十五年度一般会計予算  昭和四十五年度特別会計予算  昭和四十五年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和四十五年度一般会計予算昭和四十五年度特別会計予算昭和四十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。正木良明君。
  3. 正木良明

    正木委員 私は、公明党を代表して、佐藤総理並びに関係閣僚に対して、主として外交問題、沖繩問題防衛問題について質問をいたします。  質問の第一は、日米安保条約に関するものであります。  日米安保条約に対する評価は、私ども公明党政府自民党考え方は、基本的に大きく相違いたしております。すなわち私どもは、日米安保条約を軸とする日米安保体制には反対の立場であり、これを段階的に解消すべきであると主張いたして、いるのであります。それに比べて政府は、この日米安保条約を是認し、かつ一九七〇年以降も相当長期にわたって継続すべきであると考えておる、いわゆる安保長期堅持。ここに両者の基本的な違いがあります。しかし、この安保に対する政府自民党考え方の中に、徐々に変化があらわれてきているのではないかと思うのであります。この点から質問に入りたいと思います。  それは、日米安保条約といわゆる自主防衛との関連においてであります。  わが国防衛については、政府は、日米安保条約自主防衛の比率を徐々に変化させてきているのではないか。すなわち、これを佐藤総理施政方針演説にとって見てまいりますとはっきりといたしますので、これを一応読んでみます。  第五十五国会昭和四十二年三月十四日でありますが、この衆議院本会議において、佐藤総理はこのようにおっしゃっておる。「政府は、日米安全保障条約のもとにわが国の安全と平和を確保してまいったのでありますが、今後ともこの条約関係を堅持するとともに、国際的環境に慎重に配意し、わが国力と国情に即応して自衛力自主的整備を進め、わが国安全保障に万全を期する決意であります。」このように総理はおっしゃっておる。それから、これは施政方針演説でありませんが、施政方針演説に対する質疑に対しての答弁の中で、——第五十七国会であります。このように、質問に対する答弁をおっしゃっております。昭和四十二年十二月八日のことであります。「次に申し上げたいのは、安保体制の問題であります。安保わが国の安全を確保する、その立場に立ってものごとを考えます場合に、御承知のように、私どものような考え方、いわゆる防衛体制自主防衛もするが、とにかく現状においては日米安全保障条約を軸にしてやるのだという考え方のものもございます。」昭和四十三年八月三日、第五十九国会における施政方針演説日米安全保障体制基調としてわが国の安全を確保する云々であります。これが、いわゆる日米安全保障下におけるところ自主防衛の漸増という考え方であります。したがいまして、この場合日米安全保障条約が軸となっておる。  ところが、昨年一月二十七日、第六十一国会におきましては、同じく施政方針演説において「政府は、今日まで、国力に応じ自衛力を漸増整備しつつ、日米安全保障体制と相まって脅威と紛争を未然に抑制してまいりました。」ここで、日米安全保障体制自主防衛はいわゆる均衡を保つという、フィフティー・フィフティーという関係になってきた。  そして本年二月十四日、先ほどの六十三国会におけるところ総理施政方針演説は、明らかにこれが逆転いたしまして、「自由を守り、平和に徹する基本的態度のもと、国力国情に応じて自衛力を整備し、その足らざるところ日米安全保障条約によって補完するという政策は、さきの総選挙の結果にも明らかなとおり、広範な国民的合意の上に」云々と、確信なさっておるのであります。  このように、昭和四十二年、四十三年、四十四年、四十五年と、きわめて短いこの数年間において、日米安全保障条約日米安保体制自主防衛、この関係が、明らかに主従が転倒してきたという結果になり、いまや自主防衛を軸として、日米安全保障条約はその足らざるところを補完するという役割りに、いわゆる相対的に低下してきた。  ここで感じますことは、佐藤総理の心境というか、佐藤内閣方針というか、日米安保条約評価は、自主防衛に対置いたしますときには低下してきている。ただいま申し上げたとおりでありますが、このような方針変化基調となるべき考え方というものを、総理からお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が申し上げるまでもなく、また、たぶん公明党も御賛成だと思いますが、自分の国はみずからの手で守る、みずからの力で守る、これが本来の独立国家あり方だろうと私は思います。いままでは御指摘のように、日本国力がなかなかそこまでついていない。あるいは国防という方面に国費を使うという、そういうことをあとにしても、とにかく国民生活あるいは民生に重点を置かなければならない、こういう状態であったと思います。しかしながら、ただいまは経済も発展し、わが国力はよほどふえてきております。したがいまして、特殊な兵器は持たないという国民的約束はありますが、本来の姿である、みずからの国はみずからの力で守る、この姿に返る、これが当然ではないだろうかと私は思っております。いまや経済力は世界第三位と、こういうことにもなっております。そういう国を守る、その守る姿勢、その姿勢はやはりわが国がみずからの手でこれを守る、こういうことが本来の姿ではないだろうか、私はかように考えております。
  5. 正木良明

    正木委員 ただいまの総理答弁によります、と、みずからの国をみずからの手で守るという精神基調というものは変化はない、これはもう初めからそうなのであるが、経済力がそれに伴わなかったので、いままでは民生安定のほうにその経済力を回しておったが、ようやく自主防衛を強化できるような経済力ができてきたので、この基本的な精神を生かして自主防衛を強化していこう、このように了解してよろしいですか。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりです。
  7. 正木良明

    正木委員 ここでまた一つこだわらざるを得ないのでありますが、そのことばの裏には、もはや民生安定はほぼでき上がったものであるというふうにお考えになっていらっしゃるわけですか。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はそこまでは申しておりません。
  9. 正木良明

    正木委員 しからば、民生安定はきわめて不満足ではあるが、しかし、自主防衛に回せるような財政的な余力が出てきたと判断した、このようにお考えになっているものと私は了解します。これは答えをもらっていると、またここで詰まってしまいますので……。しかし、これは問題だと思うのです。  そこで、防衛庁長官佐藤総理にお聞きしたいのですが、このように自主防衛をずっと強化していく、そして相対的に安保を補完的なものとしてずっと低下していく。これは先ごろ、まだ大臣御就任以前におっしゃった、この間からも論議になっておりますが、いわゆる中曽根防衛庁長官が、一九七五年に安保を再検討していいのではないか、こういう考え方総理のその考え方と、底流、方向において軌を一にするのではないかというふうに私は考えるのでありますが、この点、ひとつ両大臣からそれぞれ御答弁をいただきたい。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまわが国憲法という基本的な制限がございます、その範囲において私どもは必要なる自衛力を整備する、こういう方向でいま進んでおります。しかも、その自衛力憲法の制約の中、また特殊の兵器は持たない、持ち込みも許さない、つくらない、こういうような制限をしておりますので、おのずからその限度があるわけであります。したがって、ただいま、みずからの国はみずからの力でこれを守る、かように申しましても、おのずから制限のあること、これを私は否定するものではありません。また、それは守っていかなければなりません。また民生はさらにさらに向上、発展させていかなければならない、この二つが同じように並行して取り扱われる、こういう事態に進むことが私の考え方でございます。中曽根君も同じような考え方だろうと思います。一応お答えしておきます。
  11. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 自主防衛は必ずしも単独防衛ではない、集団保障のもとにおいても自主防衛は成り立つというのが、現代の国際間の普通の考え方であります。日本もそういう考えに入りまして、自主防衛集団防衛の組み合わせにおいて日本防衛を維持してまいりました。しかし、この間において、国力の伸長に応じて自主防衛比重が高まって、外国に依存する部分をできるだけ少なくしていこう、こういう国民の真剣な努力が実ってまいりまして、いま自主防衛比重が高まって、依存度は少なくなってきたのであります。しかし、日本憲法及びいままでの日本防衛政策から見ますとやはり限度がございまして、専守防衛ということに限ります。したがって、それ以外の要素は集団保障のほうに頼まなければなりません。これはずっと並行していくべきものであるだろうと思っております。ですから、私は、現状に大きな変更がない限りは、日米間の安全保障というものは半永久的に必要であると思う。しかし、その内容については、時代により、時により、両国の人心を洞察して内容変化していくでしょう、そういうことを申し上げました。そういう基本的観念に立っておるのでございます。
  12. 正木良明

    正木委員 そこで、御両者お話はうまく通じているようでもあるし、また、考え方が違うようでもありますが、いずれにしても足らざるところを補完する、これはいまの中曽根長官お話の中にもありましたが、それを集団防衛体制で補完していくというふうに受け取れる。  そこで、それじゃもう少し具体的に入って、足らざるところとは何ぞやということであります。何をもって補完するか。いわゆる集団安全保障体制ということになるのでありましょうが、それを具体的に、これを施政方針でおっしゃった総理にひとつ御説明をいただきたいと思います。
  13. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど中曽根君から申しましたように、わが憲法、これでは、戦争はしない——どもはただ、本土並びに国民の利益、国民を敵の侵略から局地的にこれを防御する、いわゆる通常兵器による防衛体制、これは私どもがやり得る、また、それをしよう、こういうことを申しておるわけであります。しかし、なかなか攻撃その他は通常兵器ばかりではないだろうと思いますので、そういう点において問題があるだろう、かように考えております。
  14. 正木良明

    正木委員 それで、それを具体的にということは、たとえばアメリカの核の抑止力を補完的なものとするというふうにお考えになっているのか。この間からは海空を含めてなんということをおっしゃっておりますが、その点を具体的にとお願い申し上げたわけであります。
  15. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまお答えしたとおりでございます。
  16. 正木良明

    正木委員 いや、お答えしたのじゃない、あなたの答えというのは、憲法で持つことのできないものを向こうにたよるということです。ですから、総理のただいまの御答弁によれば、憲法で持てないもの、いわゆる核を含めての攻撃的兵器以外は全部、それでは自主防衛で充足していこうと考えているというふうに私は受け取りますが、それでよろしゅうございますか。
  17. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 通常兵器による局地的な防衛、かまうに申しております。通常兵器ということを申しておるのです。そこに限度があります。
  18. 正木良明

    正木委員 それがまたわからなくなってくるのです。通常兵器、これはいわゆる核兵器通常兵器と分けるのが通常の場合でありますが、そうすると、核兵器以外の通常兵器は全部持つ。これは局地戦に使うとかなんとかということは意図の問題でありますから、その点について明確にしていただきたいということです。
  19. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、核兵器はもちろん持たない、このことをもう申しております。つくらないし、持たない、持ち込みも許さない、これが非核三原則ということを申しております。しかしながら、兵器は今後どんなものが出てくるか、私どもにはわかりません。そこで私は、通常兵器という表現をしておるのです。核兵器ばかりではございません。これは英明な正木君、おわかりだろうとかように思って、いままでの通常兵器は私どもは持ちますが、それ以外は持たない、かように申しておるわけです。
  20. 正木良明

    正木委員 総理非常に時間がもったいのうございますので、非常に恐縮でございますが、できるだけひとつ具体的にお答えいただきたいと思います。総理にとっては具体的かもわかりませんが、私は、国民にとってはきわめて具体的ではないお答えであると思うのです。というのは、いまの総理答えだと、先ほどからも申し上げているように、核兵器以外の通常兵器は全部自主防衛として日本が持つのだという答えにとれますよ、と申し上げておる。したがって、その点を明らかにしていただきたい。そうでないのかどうなのかということであります。
  21. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そこがいままでもはっきり申し上げておるように、国力国情に応じて通常兵器はこれは持つ、こういうことでございます。ただいま、だんだん防衛力防衛費がふえておる、こういって御指摘でございますが、私どもは、これが国力以上のものだとは思っておりません。私ども国力に応じた状況でこれを持っております。また国情にも応じたものだ、かように思っております。こういうものがどうも抽象的にならざるを得ない。だから、むしろ積極的に、こういう兵器はどうだ、かようにお尋ねがあれば、これは答えられるかと思います。私はむしろ、ただいま申し上げるように、これは一般的な観念通常兵器、しからざるもの、こういうような分け方をしておりますから、そういう表現をしておるわけで、これが抽象的だと言われておしかりを受けましても、これはちょっと無理だと思います。
  22. 正木良明

    正木委員 それを私だけが抽象的と申し上げているのではないのでありまして、あなたのほうの副総裁の川島さんも二月三日に、政府自民党首脳会議でそれをおっしゃっておる。七〇年代のわが国防衛体制あり方について、日本としては無制限軍事力を伸ばす意図のないことを内外に明らかにすべきだと——いまの国力国情という言い方であるならば、国力国情なんというきわめて抽象あいまいな表現で終わってしまっておる。だから、それをある程度明らかにしていかなければならないのではないかということを、川島さんは御提案になっていらっしゃるではありませんか。また、こういうこともおっしゃっていますね。アジア諸国外交官から、日本国防力はどこまで進むのか、自主防衛というのはどういう意味かなど、日本軍事力の将来について強い関心と懸念を表明された。——これは外国の人が心配や不安を感じる前に、それ以前にやはり日本国民が危惧や不安を感じます。私は当然のことであろうと思うのです。それをどの兵器なら持ちます、この兵器なら持ちます——それ全部、いわゆる年鑑の兵器一つ一つあげてお答えになれますか。また、予算委員会でそんなことをする必要のないことでしょう、時間もありませんから。だから、あなたが一つ一つ、こういう兵器ならどうですかというふうなお尋ねがあるならばお答えしましょうなんというお答えは、きわめて不親切なお答えだといわざるを得ないのです。したがって、こういうふうに解釈していいのでしょうか。通常兵器以外は持たぬ。その通常兵器国力国情に応じたもの以外は持たぬのだ。それはいままでと同じことなのであって、先ほどから申し上げておるように、自主防衛をだんだんに強化していこうとするあなた方の考え方、それを少しも説明したことにならないわけです。日米安保体制を補完的なこととし、自主防衛を主たるものとしていこうという考え方をお述べになった限りには、これはどこまでいくのだということを明らかにしてもらわなければならない、このように私は思うのでありますが、その点もう一度お答えをいただきたいと思うのです。
  23. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま防衛庁長官からもお答えされるだろうと思います。攻撃用のものは持たないというのは一つ制限ですね。その他防御、これは攻撃を受けた場合にそれに対処する、こういうことを申しておるわけですね。しかし、その対処する力というものがだんだん大きくなるんだ、かように申しても、これはやはり国力相応のものでなければならない。これに非常に力をかけて、これは防御だからどこまででも持つんだ、かようなことを申しておるわけではありません。しかし、私がいま考えますのに、わが国国力等からいたしまして、どこまでも外国にたよっておる、こういう状況は許されないのじゃないかと思います。外国自身から申しましても、やはり本来のことは日本自分でそれをやったらどうか。ことにまた皆さま方からも、そういうところ外国に依存するからこそ従属性があるとか、ずいぶん批判されるじゃございませんか。私はやっぱり独立国家というものは、みずからの国をみずから守る、その気概が必要だし、そうして国力の許す限りにおいてそういうものが整備される。一生懸命やっているけれども、やっぱり足りません、こう言うならば、外国も助けてくれるでしょうが、そこにやはり独自性自立性というものがあるのじゃないかと思います。軍備が必要でないとおっしゃるなら、これはまた別です。しかしながら、私はやはり自衛権は否定されないと思うから、自衛権を尊重する限り、ただいま申し上げるようなことが当然じゃないだろうかと思っております。しかし、私は無理をするつもりはございませんから、そこで国力国情に応じという制限もつけておるわけであります。でありますから、国民生活を犠牲にしてまで云々というようなそんな表現は、これはもちろん当たらないことであります。また、そういうことでやはり他国の力を借りましても、現在の状況下においてはそれは許されることだ、かように思っております。その辺のところを、これはもうずいぶんお話し申し上げたので、もう議論の余地はないように実は思っておりましたが、なおいろいろ疑問があるようですから、ただいまのように申し上げておきます。
  24. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 核兵器以外でも攻撃兵器を持たないと総理が申されたとおりでありまして、たとえばB52であるとかあるいは長距離弾道弾であるとか、こういうものはもちろん日本は持ちません。日本本土防衛に必要と思われる防衛的な兵器を持つ。現在の情勢で言いますと、たとえば防空能力というものがまだ非常に弱い状態です。あるいは海上警備力にいたしましても、沿岸防衛を全うするための兵力がまだ足りません。そういうような部分もおいおい埋めていかなければならぬ情勢にあるのであります。
  25. 正木良明

    正木委員 実は総理、こんなことはいままで論議し尽くされて、もう余地のないものだというお考えを改めていただきたいと私は思うのです。論議され尽くされたといいますか、論議されたということは私もよく承知しております。しかし、このような佐藤総理の心境の変化といいますか、方向が変わってきたということについて、この時点において、それをもっと具体的に国民の前に明らかにすべきでないか。このままエスカレートするならたいへんだ。単に国力国情というような抽象的な制限だけではいけないのではないかということを私は感じまして、御質問申し上げているわけでありますから。いまも総理お話の中に、自立性ということを仰せになりましたが、この自立性ということは非常に大事だと思うのです。しかし、それは何らかの形で明らかにしていかなければなりません。  そこで、それはどのような歯どめといいますか、いわゆる自主防衛への無制限のエスカレートについてどのような歯どめ、いわゆる国力国情ということ以外に、これを踏まえた上に、一歩進んでどういう具体的な考え方をお持ちになっているか。先ほどから経済力ということをおっしゃっておりますから、国民総生産の割合だとか、いわゆる民生福祉費との対比だとか、そのような財政的な問題での制限をつけようとなさっているのかどうか、そういう点を明らかにしていただきたい。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 基本的には、これは何といっても憲法第九条、さらにまた自衛隊法、そういうものが私どもをがんじがらめに縛って、ちゃんと限度をこしらえておる、かように御理解をいただきたい。あとの財政的な財源の分配の問題は、そのときどきに応じましてそれぞれ適当に処理される、かように私は考えております。
  27. 正木良明

    正木委員 もちろん、私ども憲法が最も大きな制約、歯どめであるというふうに考えます。しかし、この憲法解釈が、終戦後憲法が制定せられて以来、軍備のことに関しては非常に大きく拡大解釈されてきたということは、よもや佐藤総理はそれを否定なさらないだろうと思うのです。事実、内容国会答弁からも変わっております。こういうふうに憲法の解釈が、事、軍備、——こう言うと、あなたはそうじゃないなどとおっしゃるかもわかりませんのでことばを変えますが、自主防衛力といいますか、そういうものの解釈が非常に内容的に変質をしてきておる。これはもういわゆる世間常識の認めるところであります。だからこそ憲法が唯一の歯どめになるというふうな考え方について、国民は満幅の信頼をしていないわけなんです。これは歯どめになることは事実でありましょう。事実でありましょうが、その中に不安が残るというのが、正直な国民の気持ちであろうと私は思うのです。したがって、何らかの物理的な制約というものを他に加えなければならない。そうしてもらわなければ私たちは安心できないというのが、私は国民の声だと思うのです。そういう点、これは国民だけじゃなしに、いわゆる東南アジア諸国、発展途上国だって、日本軍事力が強化されるということについては、きわめて大きな不安を持っておるということが報ぜられて、総理も御存じだと思うのです。そういう点をやっぱり明らかにしていかないと、ほんとうに日本は何を考えているのかということを明らかにできない、このように私は思うのですが、もう一度御答弁をいただきたいと思います。
  28. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへんいい機会だと思います。こういう機会に日本の真の考えておることが明確になり、国会のこの議席を通じて国民の皆さん方に、また同時にそれが海外にまではっきりすれば、こんなしあわせなことはないと思います。  私が申し上げるまでもなく、憲法は戦争を放棄しております。しかし、自衛権そのものを否定はしておらない。これでわが国は、他国を攻撃するような、また脅威を与えるような兵器は持たない、そういう制限のあることもおわかりだと思う。また自衛隊法から申しましても、他国に出ていくというようなことはない。どこまでもわが国だけの問題だ。したがって、自分の国を守るという、これはもう防衛に専念する、だから他に出ていくということは絶対にないんだ。また、私どももさようなことを考えておらない。したがって、他国を攻撃するような軍隊というものは持たない。われわれが持つものは、ただ単に自国を守るという自衛隊のみだ、かように私は考えておりますので、この辺におのずから限度がある。また、これを国民とともどもに約束をして、そしてはっきり守っておるわけであります。  党によりましては、自衛隊、自衛力自身も否定される方があります。警察ならいいけれど自衛隊は持つべきじゃない、こういうような御批判の党もございますが、これはまた私ども考えが別でございます。私は、みずからの国を守る、自衛力を持つということは、独立国家として当然のことだ、かように思っておりますので、この点ははっきりしておきたい。しかし、それは他国を攻撃するようなものではない。自衛隊法も他国に出かけるというようなことは、これは禁止しておる。それではっきりするんじゃないか、かように思います。
  29. 正木良明

    正木委員 どうも堂々めぐりのような傾向がありますが、しかし、総理が非常に強い決意のようでありますので、それはそれといたしまして、そこでもう少し具体的な問題に入ります。  防衛庁長官にお願いしたいのですが、すでに防衛庁では第四次防の策定を進めているというふうに私どもは聞いておりますが、その基本的な方針といいますか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  30. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国防の基本方針にのっとりまして、日本の専守防衛力をつちかっていく、こういう考え方に立っております。  それで、現在の時点におきましては、陸上のほう、陸上自衛隊のほうは人員的には十七万九千の人員を擁しまして、大体この程度で当分はよろしい。ただ、機甲力及び機動力においてこれを補う必要がある。それから海上におきましては、海上警備力というのが非常に不足しております。この部分はかなりの程度補っていかなければならないのではないか。それから防空能力においてもまだ不足している部分が各地にございます。これは地域ごとに防空能力を補充していく。そういう考え方に立ちまして、この次は主として海、それに空、こういう方面にある程度力を入れて整備してまいりたい、こういう考え方でございます。
  31. 正木良明

    正木委員 海上自衛隊の戦力を非常に強くしようというように伺いました。これは通商線確保ということを目的としておやりになるわけですか。
  32. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 通商線と申しましても、近海における護衛という意味でございまして、よくいわれますように、マラッカ海峡まで行って防衛するというようなことは考えておりません。
  33. 正木良明

    正木委員 そこで、いまお話しの中にはございませんでしたが、私が他のほうの情報によって知るところによりますと、総理もおっしゃっておりましたが、軍事的緊張は全体的に緩和の方向に向かうであろう、したがって抑止的な効果が必要だ、防衛庁のほうでもそういうお考え、見通しから、わが国防衛力整備というものについては、直接戦闘行為を目的とするのではなくて、抑止力を非常に大きく評価して、この抑止力強化ということをやりたいというふうに私は聞きましたが、この点はどうですか。
  34. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 戦争を世界的に総合的に防止するというためには、いろんな力の組み合わせでその防止力——抑止している力が出てきているわけです。たとえば、ヨーロッパにおきましては、アメリカの核戦力というものが背景にあって、NATOの地上軍というものがやはりかなり抑止力としての力を果たしておる。日本の場合におきましても、日本自体の防衛力というものが整備されていることが、日米安全保障条約にプラスされて、抑止力となっておる要素もございます。しかし、抑止力ということをあまり強調しますと、力がエスカレートする危険性はあります。したがって、われわれのほうでは、やはり日本本土防衛総理が申されましたように、局地的な防衛戦を行なうに足るだけの力にとどめておく、そういう考えに立っておるわけです。
  35. 正木良明

    正木委員 最近、戦術的な核兵器が非常に進歩して、二〇三ミリ砲あたりで撃てるような核弾頭ができておると聞いておりますが、こういうものについても、先ほど総理の御答弁のように、これは戦術的であろうと核兵器でありますから、これは抑止効果があるといいましても絶対持たない、これは明言できますか。
  36. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 非核三原則を持っておりますし、それから原子力基本法によりまして、日本は原子兵器を持つことは禁止されておりますので、持ちません。
  37. 正木良明

    正木委員 第四次防の策定はいつごろになるのか。四次防の総額は、伝えられるところ、五兆円といわれておりますが、幾らぐらいになるのか、その点の見通しをお聞かせいただきたいと思います。
  38. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 四次防は四十七年から始まりますから、四十六年、来年の秋ごろまでに閣議決定に持っていきたいと思っております。そのために、ことしぐらいに防衛庁において素案の作業を終えるようにいたしたいと思っております。
  39. 正木良明

    正木委員 そこで、ちょっと問題が変わりますが、佐藤総理防衛力強化ですね、これはアメリカから帰ってくるたびにだんだん強化してくるというふうに私は感じるのです。時期的にそういうふうになっているのかもしれませんが、やっぱり佐藤さんのオーバーコミットメントがアメリカに対して相当あったのじゃないか。それと、私は非常に心配なことは、昨年の十月十六日の日経連の総会で、桜田代表常任理事から、日本自主防衛を真剣に考えるならば、憲法第九条をこのままにしておくのはどうかと思う、将来の集団防衛構想にはむしろじゃまになるという、いわゆる憲法第九条改正論というのが出てまいりました。これは御存じのとおりだと思います。  そこで、これは一つ政府が非常に——ここで前提として言っておかないとまずいのですが、私は決して憲法改正論者ではありませんので、その点はひとつよく御承知いただきたいと思いますが、こういう考え方が出てくるという背景は、先ほどから申し上げておる自衛力というものについての非常にあいまいな態度から生まれてきているのじゃないかというふうに私は考えるのです。そこで中曽根長官は、七〇年代には憲法の再確認行為を行なうべきだということをおっしゃったように私は聞いておりますが、この考え方は、日陰にあった自衛隊を日当りのいいところへ出してあげようと非常に配慮をなさっておるという長官にとって、この桜田さんと同じようなお考えですか。
  40. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私が申しましたのは、ある憲法ができた場合に、一世代、つまり大体三十年ぐらいたったら、その憲法がいいか悪いか、その効果はいかん、そういう点検をやる必要がある。ちょうど七五年過ぎると日本もそういう段階に入るから、そういう意味で総合的に全部点検してみたらいいだろう。それは九条ばかりを意味しているのではありません。私は、大体九条というものは次の世代にまかしたらどうか、そう考えております。そのほか、たとえば公金を教育や慈善の費用に使えないとか、あるいは最高裁判所の裁判官の国民審査がいいとか悪いとか、いろいろ国民のほうにも世論があります。そういうあらゆる点について、一世代たったら検討してみることはよかろう、そういう意味で申したのであります。
  41. 正木良明

    正木委員 これは長官、問題でして、私とあなたの考え方の違いであって、これはあえてここで論争しようとは思いませんが、少なくとも第九条については、次の世代に、解釈というか、どういうふうにするかということをまかしたらよろしいなんということは、私は、戦前派、戦中派としてはきわめて無責任な考え方だと思うのです。そういう考え方自体が、私はこれから大きな問題を起こしていくのではないかと思うのです。戦争の惨禍を知らない若い人たちがどんどんふえてきている。これは当然のことでありますが、やはり私たちは後世の人たちに対して、二度と戦争してはいかぬ、絶対戦争はやってはいかぬのだという思想を残していかなければならぬ、その責任があると私は思うのです。それを後世の人たちの考え方にまかす、そういうものを伝えないということは、私どもの世代にとってはきわめて無責任な考え方だと思うのですが、どうですか。
  42. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その御精神については全く同感であります。しかし、次の世代にいろんな考え方も起こりましょうし、そういう平和を維持していくためにどういう手段が適当かということは、国際情勢や周囲の変化によってまた変わっていくかもしれません。次の世代の、そういう変化に応ずる能力まで否定するということは、われわれは慎んだほうがいい。やはり日本の若い人たちを信用してだいじょうぶだ、そう思っておるわけであります。
  43. 正木良明

    正木委員 そこが問題だと私は言うのです。まあ、ここは見解の違うところでありますから、これをやっていると、これで時間をとってしまいますが、私は、原子爆弾の被害を受けた日本国民として、また先輩として、少なくともそのことだけは、はっきりと伝えていかなければならぬと思うのですよ。その精神は一緒だとおっしゃったのはいいけれども、私は、何も後世の、いわゆる次の世代の人たちは能力がないとかというような意味で申し上げているのではない。そういう、あいまいというか、無責任だと私は思うのですが、そういう態度であってはならぬと私は思うのです。これは予算委員会関係ありませんから、これはこれでいきますが、大体中曽根さんの思想というのは、この一言でわかりました。  それで、この重大な桜田発言があり、また、五月二十三日には植村会長が、また同月二十八日の日本兵器工業会総会においても、四十四年度事業活動方針が決定され、その中で、防衛産業における生産協調体制確立、国防技術の開発、情報交換など部会活動の強化、東南アジアへの兵器輸出の実現、防衛産業発展のため兵器工業会の拡大強化、防衛意識向上のための官民協調による国民への積極的PRなどをあげておるのであります。しかも、この同じ会合において、大久保新会長は「今後、防衛産業における過当競争を排除し、協調体制を確立するとともに、業界としては最良の軍需品を納入するように心がけたい。」同時にまた「政府も、こうした業界の意向をくんで、せめて防衛費をフランス並みにGNPの四%程度に引き上げてもらいたい。」こういうふうに言っておりますね。そのほかに、きわめてこれは極端な意見であろうと思うのでありますが、核開発の必要性さえ強調している人があります。したがいまして、もうあと残されたものは、先ほど申し上げたように、憲法を改正する——どもは改悪だと思いますが、そういう発言以外にはないというところまで来ておる。これは、兵器の国産化、これを最近非常に政府部内でも強調されておりますが、この兵器の国産化に始まるきわめて危険な産軍複合体の道を歩もうとするものではないかと私は思うのです。  アイゼンハワー元大統領が、これは有名な話でありますが、大統領辞任の告別の演説の中で、アメリカの将来にとってきわめて危険なのは、産軍複合体が強化されていくことだというふうにおっしゃいましたが、いま、このような形のものが日本に生まれつつあると私は思うのであります。総理はどのようにお考えになりますか。
  44. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへんいろいろの問題を提起されて、深憂——国家の前途を憂えていらっしゃる、その気持ちがわからないではございません。しかし、私は、皆さまにも申したとおり、佐藤内閣としては、憲法改正、その意思なし、こういうことをはっきり申し上げております。もちろん、この委員会を通じましても、私の気持ち、この意見、この決意、これは、はっきりさしたいと思います。したがいまして、ただいまいろいろ御心配になるような憲法改正というような問題は全然考えてもおりませんから、その辺は御安心をいただきたい。もちろん、個人のうちにはいろいろの議論をする方があります。これこそ言論自由であり、そういうことは、大いにまた尊重しなければならないことだと思っております。私は、その場合でも、憲法というような法律、基本的な法律になれば、これは何と申しましても国民の総意によってきまる問題でございますから、そういうことがいろいろ、一、二論議されたからといって、それで直ちに御心配なさるのはやや早いのではないかと思います。  ただ、そこで、憲法改正をしないとして、ただいまのような日本の国内の軍事産業というものは一体どうなるのか。私どもは、先ほど申したように、自衛隊の存在、自衛隊のあること、これは認めております。それで、自衛隊が持つところ兵器そのもの自身はやはり国産であったほうが望ましい。何もかもみんな買ってくる、拳銃まで買うとか、こういうことだとか、あるいはトラックも買うというようなことでなしに、自衛隊の必要な装備、これはやはり国産、またこの修理も国産が望ましい、かように思います。そういう意味で、いわゆる軍事産業だといわれるが、わが国の自衛隊をまかなうもの、それはやはり国産であるのが望ましいのではないか。今日までのところ、私は、日本の産業がそこまで全部整備されておるとは思いません。ジェットエンジンのある飛行機なども、これは外国から買わざるを得ない。こういうような点は、これからももっと整備していかなければならぬだろうと思います。  そうして、国内でまかなうだけならいいが、今度はそれが外国へ出ていくという話にもなる。そこらにまた誤解を生ずるのですが、この軍事産業の製品が外国に出ていく、こういうような場合には通産省は厳重に許可を与える。そこに三原則がありまして、その三原則に触れないもの、それだけが外国に送られている、こういうような状況でございますから、いろいろ問題はありますが、ただいまのところで大筋は間違いはないように私は思っております。さらにこれが行き過ぎるようなことがあれば、われわれも十分注意して、厳に行き過ぎがないように戒めなければならぬ、かように思います。その点では正木君と同じような立場で十分私もこの問題と取り組んでいくつもりであります。  以上、簡単ながらお答えいたします。
  45. 正木良明

    正木委員 そこで、総理、そのお考えをもう一歩お進めくださって、武器の輸出について、これを禁止するというお考えはないものだろうかと私は申し上げたいのであります。  御存じのように、この間からの論議の中でも、またいまの御答弁にもございましたけれども、武器の輸出については、紛争当事国にやらないとか、共産圏にやらないとか、いろいろ制限をおつけになっているようでありますが、やはり輸出をするということの余地は残されているわけです。  私は、いまここでビアフラのことを思い出すのですがね。非常に悲惨な結果が向こうに生まれてまいりましたが、あの悲惨な結果は、大国からの武器輸出、武器の供与、こういうものがなければ、ああまで悲惨なものにならなかったのではないかと私は思うのです。しかも、あのビアフラにおいて紛争が起こってから実は武器が輸出されたのではないのです。武器が供与されたわけではないのです。ああいういわゆる紛争当事国といわれるような紛争が起こったところへ武器が輸出されたのではなくて、紛争以前にあの両者にそれぞれうしろについた大国から武器が供与されて、あのような悲惨な結果が生まれてきているのです。  総理はいつも、自由を守り、平和に徹しとおっしゃいます。非常にいいことばだと私は思うのですが、そのためにはやはりあくまでも自由を守り、事実、具体的に平和に徹してもらわなければならぬと私は思うのです。そのためには、いま輸出入管理令等において制限するという、また国連における決議においての制限という、そういうことだけではなくて、日本はほんとうに平和国家として武器は輸出をしないのだというために武器輸出禁止法をつくろう、こういうお考えはないかどうか、お聞かせいただきたいと思うのです。
  46. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまとっております武器輸出についての三原則、これで私は事足りておるように思います。いまおあげになりましたビアフラ、あの惨劇、さらにまたいま中近東、これがたいへんな問題だ。ここも外国がいろいろの武器を送っておることで、それは問題が起こっております。また私どもは過去の歴史において明治の維新の際、もしも外国から武器輸入をしたら、たいへんな惨禍が日本国内にあっただろうと思います。やはり日本民族の英知がこういうことを避けた、かように私は思って、非常に喜んでおります。私は、武器を製造しておる国内の業者も、あの明治維新の際に外国から武器を入れなかったあの気持ち、それはやはり理解しておると思いますので、外国に出すにいたしましても、そういうような問題があとへ残るようなことはないだろうと思います。  もう一つ申し上げますが、何を武器というか、こういう問題も一つあると思います。装備自身の問題があるわけです。あるいは、くつ——北鮮から韓国に入ってきたゲリラが日本製のくつをはいていたとかあるいは被服等にしても、わが国のものじゃないかとか、いろいろございますが、こういうようなもの、いわゆる平和のものが使い方によってはやはり武装の一部になる、武器ではございませんが、武装の一部になる、こういうこともございますから、いわゆる輸出を禁止、かように申しましても非常にむずかしいのじゃないだろうか、かように私は思っております。ただいまいわゆる三原則として守られておるもの、これは適当な方法じゃないだろうか。ただ単に警察用のものなどは、同じ武器といってもやはり出してよろしいのじゃないだろうか、かようにも思います。そこらにもいろいろ問題がありますので、ひとつさらに検討しないと、簡単に結論は出ないように思います。
  47. 正木良明

    正木委員 私は別にあげ足をとるつもりはないのですが、武器というものの範囲、判定というものはきわめてむずかしいとおっしゃった。これはもう、くつだって、被服だって、戦争に使われれば武器じゃないかといわんばかりのお話でありましたが、私はここで武器の範囲をまたあなたと論争しようと思いませんけれども、あなたがそういうあいまいなことをおっしゃる、そうして私を逆襲なさったおつもりでいらっしゃるのかわかりませんが、これじゃ、ぼくはそれをそのままあなたにお返ししたい。それじゃ、制限なさる武器はどういうおつもりなのですかということを聞きたい。どうなんですか、それは。
  48. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは通産省から答えさせます。
  49. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは具体的な過去の実績を申し上げましたほうかおわかりやすいと思いますので申し上げるわけでございますが、大体私どもが具体的に許可をしました武器というのはほとんど護身用の拳銃でございまして、先方が武器と考えておるかどうか必ずしもわかりませんが、昭和四十二年度に護身用拳銃が七千万円ばかり、四十三年度に護身用銃拳が六千万円、ほかに小銃が九丁、二十五万円ございます。四十四年度に護身用拳銃がただいままで四百万円ほど、仕向け先はほとんどアメリカ、ヨーロッパでありまして、先ほどの三原則に従って処置をしております。どうもこれらのものが、受け取るほうで武器として受け取っておるかどうか必ずしもはっきりいたしませんが、先般も申し上げましたように、正確を期する意味で私どもはこれを武器として考えお答えをしておるわけであります。
  50. 正木良明

    正木委員 よほど正直でいいと思いますね。それで総理、そういうふうにおっしやいましたが、買うほうにも明治維新当時の日本の英知があるかどうか、ないなんと言ったら失礼に当たりますが、あるかないか、それは私はわかりません。同時に、軍事産業のほうはそういう無謀なことはしないでしょうという期待をいまお聞かせいただいたわけです。いまやエコノミックアニマルと言われるくらい経済活動につきましてはちょっとした侵略者扱いを受けている。その日本のいわゆる商人が、産業界がそんなことを考えるわけはないだろうと私は思うのです。これもきわめて淡い期待にすぎないのではないかと思うのです。  そこで重ねて申しますがいまの実績からお聞かせいただいても、きわめて微々たるものであります。将来は大きく拡大するのかもわかりませんけれども、いずれにしても拡大するならば拡大するで、おそろしいことであるし、そうでないならば微々たるものであります。平和を標榜するわが日本国があえて死の商人になる必要はないと私は思うのでありますが、どうしてもこの武器輸出禁止法というような法律をおつくりになる気持ちはないか、少なくともこの問題を前向きに検討してみようという気持ちはないか、重ねて御答弁をいただきたいと思います。
  51. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどお答えしたとおりでございまして、私はいまの武器扱いの三原則、輸出を許さないというこの三原則で事足りる、かように思いますけれども、さらにもう一度よく検討しろ、かように仰せられるのですから、もちろん検討は続けてまいりたいと思います。
  52. 正木良明

    正木委員 したがいまして、検討する材料としては、公明党が武器輸出禁止法案を議員提案をいたす予定でございますので、その際あわせてよく御検討の対象としていただきたいと思います。  次に移ります。  先日来非常にやかましくいわれている日米共同声明でありますが、特に第四項。「朝鮮半島に依然として緊張状態が存在することに注目」し、「韓国の安全は日本自身の安全にとつて緊要である」ということを合意した。またプレス・クラブで前向き、すみやかに、——これはもう言い尽くされたことでありますが、ここで日米共同声明のニュアンス、またプレス・クラブで総理が御説明になったニュアンス、これはいわゆる朝鮮半島における緊張と日本の安全との関係、台湾におけるところ関係においてはやや台湾のほうが、朝鮮半島におけるものに準ずるというふうに低くなっているのではないかというふうに私は考えるのですが、この点はいかがでしょうか。
  53. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 明らかに書き分けたものでございます。
  54. 正木良明

    正木委員 書き分けてあるのは読めばわかるのでありまして、お考えとして違うのであるかということでありますが、それは書き分けてあるという意味に含まれていると解してよろしいですか。
  55. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 説明が不十分でおしかりを受けますが、御承知のように朝鮮半島には国連軍がいる、こう、いうこともございます。したがって、その朝鮮半島が、韓国自身が日本のすぐ隣りだということばかりでなく、さらにここに国連軍がいるという、そういう問題も一つあります。またもう一つ、台湾のほうは、台湾海峡は幸いにしてただいまは問題が起きておらない、こういう状態でもございます。そこでただいまのように二つに書き分けられておる、かように御了承いただきます。
  56. 正木良明

    正木委員 そこで、昨日のこの委員会で先輩の今澄議員から御質問がありまして、それを続けてという形で申し上げますが、国連の決議がない前にも、事前協議があったときの判断はあり得る。イエスかノーかは別として、判断はあり得る。国連の決議があれば当然のことイエスである、このようにお答えになりましたね。そこで、朝鮮半島に武力攻撃が発生してアメリカのほうから事前協議を受けた。この武力攻撃が発生したということの判断は、それではアメリカの判断を信用なさるのか、日本独自の判断をなさるのか、どちらですか。
  57. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 外務省からもお答えをいたさせますが、御承知のように、過去におきましても、プエブロ号事件あるいは偵察機が撃墜された、こういうようなときには、私どもは、別に相談も受けておらないし、別にこちらからどうこうも言っておりません。私は、もちろん日本考え方日本が独自の立場考える、これが自主性のあるやり方だ、かように思っております。もちろん日本の基地を使っておる米軍でございますから、当然、米軍が当方に何ら協議なしに行動することはない、かように私は思っております。
  58. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 一番大切な点は、いま総理からも言われましたような事前協議の問題にしぼって申しますれば、これは日本が自主的な判断で態度を決定するというのが一番の中心の眼目であると思います。  それから、朝鮮半島の緊張の問題については、御説明すると長くなりますが、従来もしばしば国会で御説明いたしておりますように、三十八度線を境にして休戦協定がある。それを守るために国連軍が駐とんしておるわけでございます。ところで、かりに組織的、計画的な大きな侵略行動が起こるというようなことになりますと、休戦協定では予想していないような事態となるわけでございます。そういう場合には、国連憲章の条章等に基づいた適宜な措置がとられると思いますけれども、休戦協定で予想しないような非常に大きな事件でも起こった場合には、在韓の国連軍が、もともと朝鮮半島の平和と安全のためという大きな目的から駐とんしておるわけでありますから、そういうものを排除するということを、さような場合に、目的とした行動が起こることは観念的には考えられるわけでございます。同時に、そういったような組織的な、計画的な大きな侵略行動が起こったというような場合におきましては、日本の安全とどういうふうなかかわりがあるかということを同時に判定しなければならない問題も起こるかと思います。さような場合に、先ほど申し上げましたように、かりに在日米軍が、日本におきまして、安保条約によって提供されておる地位や施設を利用して行動をしようというような場合に、事前協議がある場合がございます。その場合は、在日米軍が国連軍として行動する場合でありましても、いわゆる吉田・アチソン交換公文によりまして安保条約六条の事前協議を受けることになります。その場合は、最初に一番大事だと申し上げましたような、日本の自主的の判断でそれに対する態度をきめるということに相なるわけでございます。
  59. 正木良明

    正木委員 いわゆる休戦状態が破れてしまう、こういう場合、あらためて国連の決議が必要なのですか、前のがそのまま生きるのですか。
  60. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いま申しましたように、これは観念的な仮定のことでございますから、そういうことを前提にして申し上げますと、いまの在日国連軍は休戦協定を前提にして駐とんしているわけですけれども、休戦協定などが予想されないような、つまり破られたというような組織的な大規模な侵略行動があったような場合におきましては、当然国連としては、新たに安保理事会にかけて、それに対してどう対処するかというようなことがきめられなければならないと思いますが、その間におきまして、そういう緊迫した予想しない事態が起きたときには、本来の目的以外の、何と申しますか役割りになりますけれども、やはり一種の自衛的な措置として、その襲いかかってきたところの脅威に対してこれを排除するという役割りは当然許されるのではなかろうかと、こう考えるわけでございますね。同時にしかし、国連としては直ちにこれに対していかようにするかということは当然協議をされて、そこの決議が早く出ることが望ましいと思いますけれども、それが間に合わない場合も観念的にはあり得るのではないだろうか、こういうふうに考えたので、そういうことを前提にしてただいま御説明をいたしたわけです。
  61. 正木良明

    正木委員 あらためて国連の決議が必要であるというならば、おそらく安保理事会において、この前はソ連の欠席のときにあの安保理事会で決定が行なわれたのでありますが、ソ連が出席しているときにはおそらく拒否権が出されるのではないかというのが一般の予想です。そういうことになりますと、国連の決議というものは期待できない。そうすると、いわゆる国連決議のないままに、その以前にかもしれませんが、在日米軍が日本の施設区域を使って直接戦闘作戦行動に出る、そのために事前協議が行なわれる、こういうことはあり得ることであるし、その場合独自の判断をなさると言うが、その武力攻撃が発生したということ自体の情報なんというもの、いわゆる判断の材料になるものというのは、事実外務省が集められるかどうか、判断をするに足るだけの材料があるかどうか。これは私どもは、あのプエブロのときも偵察機事件のときもそうでありますが、一方的にアメリカの見解というものをうのみにして、そうして日本側の見解が出ておるというふうに感じております。そういうことから考えると、この日本独自の事前協議に対する判断というもの、これは非常にあぶなっかしいものではないか、いわゆるアメリカの判断にまかされてしまうのではないかというふうに考えるのですが、この点はどうでしょうか。
  62. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これはたびたび前提を繰り返すようですが、これはあくまで観念的な仮定の問題でございます。したがいまして、安保理事会においてもさような場合においては、たとえばどこの国が拒否権を発動するというようなことは考えたくないわけですね。ですから、そういうことも含めまして仮定の問題でございますが、要するに、ほかの条件を全部捨象していけば、結局この事前協議がかりにあったような場合にどうするかということなんでありますが、これは日本の安全ということをあくまで主眼に置いて、日本の国益の立場において判定をする。ですから当然それに足るだけの基礎の情報なり、あるいはそれをもとにして日本の安危ということについて、かりにイエスと答えなければならないというときであるというだけの十分な根拠と判断を持たなければならない、こういうふうに……(「具体的にはどうだ」と呼ぶ者あり)具体的には、そういう状況はあくまで観念的で仮定の場合でございますから、こうこうこういうようなことということは観念の遊戯としては申し上げられるかと思いますけれども、原則的な考え方だけを申し上げ、またその考え方で、私は必要にして十分であろうかと思っております。
  63. 正木良明

    正木委員 これをもう少し詰めたいのですが、これはちょっと詰まりそうにありません。けっこうです。  そこで、観念的な問題になるかもわかりませんが、イエスと言った場合、こういうことでお答え願いたいのですが、よろしくお願いします。  そこで、イエスと言った場合に予想せられること、これは私はもうきわめて重大な問題が起こってくると思うのです。といいますのは、少なくともイエスと言うということは、日本の施設区域を使って在日米軍が直接に戦闘作戦行動に移るわけです。いわゆる戦争になるわけです。このときには私はやはり戦時国際法によって相手方に報復の権利が生じるというふうに考えます。ということは、われわれの住む日本の国土が相手側の攻撃を受けるということになると私は思うのです。少なくともそれを覚悟しなければイエスということは言えないと思うのですが、その点、総理いかがですか。
  64. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 さらにそういう場合につけ加えなければならないと思いますのは、いま申しましたような仮定の問題ですけれども、国連としてそれに対処するのは、あくまで国連憲章にいわゆる自衛措置でございますから、これは攻撃的なものというのではなくて、防御のためあるいは自衛のためにぎりぎりやむを得ない措置ということでこの行動というものは限定されるということがもちろん前提になるわけでございます。
  65. 正木良明

    正木委員 そういう判定はいわゆる国連においてなされるのであって、それはおそらく長引くでしょう。結論的にはどうなるかわかりませんが、あなたのおっしゃるように、自衛措置というふうに見られるかもわかりませんが、それまでは長引くでしょう。しかし、それまでに日本の施設区域を使って在日米軍が攻撃をしておる、この事実については向こうは報復する権利がある、向こうの攻撃は正当化される、私はそのように思うのです。それを覚悟しなければ、おそらくこの事前協議にイエスということは言えないと思うのですが、イエスと言う場合は、それを覚悟して言いますか、それを聞いているのです。
  66. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 何しろそういう場合は予想したくもありませんし、そういう事態が起こらないために体制を整えておく、あるいは外交上の施策を大いに活用していくというのがわれわれの考え方でございますけれども、そういう場合は、日本国民全体として火の粉をほんとうにかぶってきて、これでは防衛しなければならないというようなたいへんな事態なんでありますから、わが国防衛のため、安全を確保するために必要なりという断定をするような場合というのは非常な事態であるということを同時に考えなければならないと思うのです。お断わりいたしますが、これはもうほんとうに仮定の、観念的な問題であって、そういうことが万々起こることのないように十二分のいろいろの配慮をしていかなければならないと思います。しかし、もしそういうような事態ということになれば、それはもう日本としてのたいへんな事態であるんだ、こういうことをやはり一方において、観念上の問題としては考えなければならないと思います。
  67. 正木良明

    正木委員 私は別に不安をかき立てるという意味ではなくて、少なくとも前向き、すみやかにという意味の中にイエスという考え方が入っておるとするならば、もしイエスと言ったときにはどうなるかということを、われわれとしては考えておかなければならぬという意味で申し上げているのです。おそらくイエスと言う場合には、その報復を覚悟することになれば、自衛隊法第七十七条によって防衛庁長官防衛出動の待機命令を出さなければならぬでしょう。もう少し緊迫してくれば、内閣総理大臣は自衛隊法第七十六条によって防衛出動命令を出さなければならぬでしょう。国会が開かれていなければ、あなたの責任で出さなければいけません。同時にまた予備自衛官の招集もやらなければならぬでしょう。そういうことでもう日本の国内というのは物情騒然としてくる。同時にまた私は非常に危険だと思うことは、かつて鳩山内閣当時に、自衛の範囲の中に先制攻撃権を入れているのです。いわゆる座して死を待つよりも敵の基地をたたくということ、それよりほかに手段がなければという前提は入っておりますが、しかし少なくともそれは自衛の範囲だというふうな見解がもう出されておるのです。そういうことから考えると、イエスと言う場合というのは、きわめて重要な場合を想定しなければならないということ。この点についてそういうことを覚悟して言うならば、イエスと言うのかどうかということを私はお尋ねしているのです。
  68. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 観念的には、日本の安全に対して非常にたいへんな事態になれば、日本の国を守るためにあらゆる覚悟をして自国を守らなければならない、私はそういうことであると思うのです。ですから、そういう場合はほんとうにたいへんな場合である、こういうふうに申し上げたほうがよろしいと思いますし、同時にそういう場合には、私は、日本の国を守るために当然そういう措置はとらるべきではないだろうか、それこそうしろ向きに対岸の火災祝しているわけにはいくまい、こういうふうな問題ではなかろうかと思います。
  69. 正木良明

    正木委員 このように解釈してよろしいですか。その場合にはイエスと言うのはもう当然のことである、イエスと言わなくたってたいへんなことが起こる、きわめて単純化するとそういうふうなお考えのように私は思うのです。そうしてこれをなお発展させて、もしかりに報復攻撃を受けたという場合、これは明らかに日米安保条約の第五条によって日米の共同防衛作戦が行なわれることになると私は思うのでありますが、この点はいかがですか。
  70. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほどからいろいろお答えしておりますが、まず一番最初の前提に戻りまして、先方が、これは毎年国連のアンカークで決議もございますし、あるいは休戦協定もすでに厳として存在するわけですが、そういうものを超越した武力の組織的な侵略行動が起こった場合という仮定の質問に立っておられるわけですね。ですからそれは、相手方が武力的な侵略を行なってきた場合、これに対する自衛、そしてその自衛に対して先方がまたかかってくれば、これは第二の侵略行為がまた先方に起こるわけです。そういうふうに理解しなければいけない問題じゃないかと思います。
  71. 正木良明

    正木委員 もちろん私もそんなことを歓迎しているわけでは決してないのです。私が言いたいことは、そういう状態が起こらないようにすることが一番大事なことであって、少なくともいわゆる朝鮮半島や台湾海峡に武力攻撃が発生して、アメリカから事前協議を受けるというような事態になっちゃだめなんです、ほんとうをいえば。それ以前にその緊張緩和の状態をつくり上げなければならぬということ、それが前提になっているのですよ。前提になっているのですが、もしも武力攻撃が起こったときに、前向き、すみやかに態度を決定するということが日米共同声明に基づく総理の見解として述べられているから、それにのっとって私は申し上げているのですから、決してあなたとぼくとは意見が違うわけはないのです。平和であるほうがいいのはさまっているのです。だからこそどうすればいいかということを考えなければならぬというのでいま論議しているということを御了解いただきたいと私は思うのです。  そこで、報復攻撃を受けるということは、いわゆる日本の領域を侵されるということですから、これは当然第五条が発動するのでしょう。どうなんですか。
  72. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いま申しましたように、最初侵略行動が起こるわけです。それに対して自衛をするわけですね。それに対してまた向こうが来るとすれば、それは報復どころではなくて、第二のまた侵略攻撃が組織的に展開されるわけです。したがって、日本といたしましては——結論は同じことなんです。安保条約の第五条のことをただいまお話しになりましたが、これは日本国自体が侵略を受ける場合を規定しているわけですから、これは当然安保条約第五条が発動されるし、またこれは憲法に基づいた自衛権の発動、こういうことになるわけでございます。
  73. 正木良明

    正木委員 そういうことになりました場合には、当然朝鮮半島の場合にはいわゆる米韓条約というものが連動しますね。いわゆる米日韓の共同作戦ということにならざるを得ないと思うのですが、その点はどうですか。
  74. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 その点は別にまた御説明しなければなりませんけれども、共同声明にも明らかでありますように、朝鮮半島の緊張状態その他に対する情勢の分析が共同声明には載せられております。しかし安保条約におけるところのいわゆる事前協議について、予約をするとかあるいはこういう場合にたとえば米韓条約が発動したからといって、それが自動的に日米安保条約による事前協議に対する日本の態度とはつながらないわけなんです。米韓条約というものがありますけれども、これは日本として何らの意味で義務として日本に義務を課されているわけでも、また義務ではなくとも、そういう場合を予想して日本は自動的に態度をきめるというような、安保条約の運用について何らの予約や約束をしていないというところがこの共同声明の大事なところであるわけでございます。
  75. 正木良明

    正木委員 事前協議のところへ戻ってはいけないのでありまして、私の話は事前協議が済んでしまったわけです。そうして、要するにアメリカを軸として、日米安保条約アメリカを軸として米韓——第五条が動き出したときには日米の共同作戦があるわけです。わかりますね。それは当然でしょう。そうしてアメリカが韓国へ行っているときは米韓が動いているのです。アメリカを中心として米日韓の共同作戦になるということは当然のことじゃないですか。それを考えて共同声明は出ていない、それはそうでしょう。そんなことは考えたって出せるわけはありませんからね。しかし、それは考えなければならないことだと言うのです。少なくともそういうふうな状態で大きな戦争に発展していくという可能性を秘めたいわゆる前向き、すみやかの態度決定ということになるのでありますので、私はこれを十分に慎重にやってもらいたいということを申し上げているわけだ。したがって、この事前協議において前向き、すみやかに態度を決定する中にイエスと言う場合には、そういうふうな状態というものまで予想しなければ言えないのではないかということを私は申し上げているわけです。どうですか、それは。
  76. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 それは、先ほど来、順を追うて御説明しているつもりですけれども、かりに安保条約の第五条が発動するような、実際日本国が侵略された場合ですね、そういう場合におきましては、安保条約におきまして日本の自衛隊と米軍とが共同して日本を守るわけでございまして、その場合においては、もう先ほどの在韓国連軍の状態とかあるいは米韓条約とかいうことと離れまして、日本自体の非常な危険というか侵された場合、そしてこれは米軍との日米安保条約による協力によって日本の国を守るんだということになりますと、これはもう米韓日の共同作戦とかいうような問題ではございません。私はそういうふうに理解いたします。
  77. 正木良明

    正木委員 しかし、向こうの領海へは踏み込まないとしても、少なくとも公海へは出ていくということはおっしゃっているじゃないですか。向こうが公海へ出てくればこっちも公海へ出ていっているのですから。それはここに米日韓三国が共同作戦をするということは当然だ。これはそういう態度でいらっしゃるのですからこれ以上あれでありますけれども、米日韓の共同作戦が行なわれるということは、常識的に考えて私は当然のことだと思うのです。そこで、そういう事態にならないために、先ほども申し上げたように、少なくともそういう武力攻撃が発生するという緊張状態が緩和されていく、アメリカからそんな事前協議を受けなくてもいいような状態日本がやはり分担してつくり上げていかなければならぬと私は思うのですね。  そこで、佐藤総理にお伺いしたいのですが、こういう点については、日韓条約の批准のための国会で、韓国とそういう条約を結んで北鮮との緊張がますます高まるのではないかというような質問がたびたび出されております。そのときに、佐藤総理は、北鮮と韓国との間の緊張状態というものをできるだけ緩和するように努力をしたい、日韓条約が締結されたということは、決してそういうものではありません、むしろこれから私は朝鮮半島におけるところの緊張状態緩和のために努力するんだという意味のことを何べんもおっしゃっていますね。そこで、私が申し上げた趣旨は、そのような朝鮮半島におけるところの緊張状態というものをなくすために、日本が懸命になって努力をしなければいかぬと私は思うのです。努力をしなければ、もしかりにそういう武力攻撃が発生したときに、日本の施設区域を使って米軍が出動したときには、そういう惨禍を日本は受けなければならぬという立場からいっても、それは未然に防がなければいかぬ。そこで、そういうふうに日韓国会のときには佐藤総理は御答弁になっていらっしゃるわけでありますが、そういう北鮮に対する何らかの手をお打ちになったかどうかをお聞きしたいわけです。
  78. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 正木君と外務大臣とのいろいろの論議を伺っておりまして、何だか基本的にどうも食い違っていやしないかと、かように思います。私が聞くところでは——この説明をするとまたさらに複雑になるかわかりませんが、私どもの外務当局並びに政府として考えますのは、日本は、どんなことがありましても、日本防衛についてはどこまでも、自衛隊もやるし、また日米安保条約でもやります。しかし、私どもがさらに公海——公海に出ていくのをとやかく言われては困りますが、いわゆる韓国の領海に入ってあるいは韓国にどういうような軍事的な動きをするとか、こういうようなことは絶対にないのですから、いわゆる日米韓の三国で軍事的な話し合いが行なわれるというのは私は当たらないと思う。これはひとつ明確にしておきたい。それからもう一つ、事の起こりが、まず平和が維持されておれば問題ございません。しかしながら、侵略行為があって、そうして韓国自身が侵略された、そのために、韓国にある国連軍を援助するために、在日する米軍が出かけてこれに協力する、その場合に事前協議はある。国連からそれは侵略行為だ、こう言ったから、それはわれわれがそういうことを了承してイエスとこう言った。そうして米軍が飛び立って出ていけば、日本基地が、これが攻撃されることになるのじゃないのか、当然第三国として攻撃する権利あり、かように言われますが、私はこの場合にいわゆる攻撃権があるという、それは当たらないと思う。いわゆる侵略に対する防衛措置として国連軍を助けに出かける。(正木委員「だから国連の決議以前にイエスと言った場合ですよ」と呼ぶ)だからその場合でも、私はこの状態が直ちに攻撃する権利あり、こういうことにはならないと思っておる。だから、いま言われますように、国連が侵略行為だと認定する以前に出たら、これは攻撃の目標になる、こういう言い方にいま訂正なさいましたが、(正木委員「いや訂正してない、そう言っている」と呼ぶ)そう言っておられますが、しかし、その場合もそういうこともありはしないか、われわれが攻撃を受けるようなことがありはしないか。権利のあるなしにかかわらず、私ども攻撃を受けることがあるんですね。権利があって当然攻撃するのじゃなくて、とにかく実力で攻撃を加える、そういう実力行使があるんじゃないか。そこにわれわれが国益を守る見地に立ってイエス、ノーを考えていかなければならない、かように私は考えておるのです。だからその実力行使、これがあれば当然侵略行為だ、かように私は考えますから、日本の自衛隊は発動する、こういうことでありますし、これは侵略になるから、日本に対する侵略だ。だから相手方は、それは米軍を攻撃したんで日本攻撃したんじゃない、かように言われるかわかりませんが、日本は明らかに攻撃されたことになるのです。だから、そういうような問題は、そういう紛争に巻き込まれないような処置をとるのがいわゆる私ども考え方で、イエスもありノーもある。こういうことで、それは重大な問題だからその具体的な事態について十分そのときに処置する、かように実は申しておるのであります。したがって、ただいままでの論戦ではこれで明確になるのじゃないだろうか、かように思います。  そこで、いまの北鮮と韓国との問題ですが、ただいまわれわれは韓国は承認している。北鮮は承認しておりません。しかしながら、人的やあるいは交易的なルートはちゃんと開かれておる。そういうものが積み重なってどういう状態になりますか、おそらく私どもこれを敵視している状態ではない、かように御理解をいただきたいと、かように思っております。
  79. 正木良明

    正木委員 総理お話を聞いておりますと、朝鮮半島において武力攻撃が発生するというのは十中八、九北鮮からの侵略行為だという判断の上にお立ちになっているようでありますが、どちらが侵略行為に出るかということはわかりませんよ。まだこれを論議しようと思いませんが、そういう認識は必要だと私は思う。同時にまた、国連の侵略者であるという非難決議が行なわれるということ、これはだいぶ時間がかかると思うのです。その前に事前協議が来たときには——それは国連でも侵略者という決議が行なわれるとこれはまた別の問題ですが、それ以前に事前協議が行なわれて、そうしてイエスと言った場合、これは当然アメリカの基地を攻撃したのであって、日本攻撃したのではないということなんですけれども日本が戦火に巻き込まれることは事実なんですね。同時にまた、報復攻撃をするという正当性が生まれるということなんです。日本の施設区域を使って在日米軍が出発しているんですから、攻撃を受けた相手側にとってはその進発した基地をたたくということ、これは正当性が生まれるということです。それを私は申し上げている。私は決して好もしいことであるとは思っておりません。したがって、そういう状態が起こらないような、緊張状態を緩和するということで十分にやっていただきたいと私は思うわけであります。  もう一つ、最後にお聞きいたしておきますが、——最後と言ったって質問の最後じゃありませんよ、いまの話の最後ですが、いわゆる自民党安保調査会の船田構想というのがあるんです。これは幾つか聞きたいのですが、もうあれですので、一つだけ申し上げます。  自衛隊の充足率が非常に低いということ、それと防衛庁の一部にもあるのでありますが、自主防衛なんというものをやろうとするならば、相当大きなものにしなければならぬという考え方、こういうものが相まっているのではないかと思うのでありますが、いわゆる郷土防衛隊といいますか、民兵組織論が頭を出しておるのでありますが、この点について長官、どのようにお考えになっておりますか。
  80. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 民兵組織は考えておりません。
  81. 正木良明

    正木委員 将来こういう問題が出てきたときには検討なさるおつもりがありますか。
  82. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 予備自衛官制度を拡充するという必要は非常にあると思いますが、民兵組織まで考えてはおりません。
  83. 正木良明

    正木委員 けっこうでしょう。  そこで、問題はまた次へ移ります。非常に簡単に申し上げます。これは総理と山中長官にお聞きいたしたいのでありますが、一部大蔵大臣が入るかもわかりません。  例の沖繩の米軍基地労務者の大量解雇問題でありますが、これは前置きは抜きまして、実情はもうすでによく御存じだと思います。この点について、施政権者であるまた雇用主であるところアメリカがこの問題を解決しなければならないのは、第一次的には当然のことだと私は思うのです。こういう点、政府も琉球政府に一臂の力をかすということでいろいろと交渉なさっておるようですが、一番新しい交渉の結果というものをお知らせをいただきたいと思うのです。
  84. 山中貞則

    ○山中国務大臣 このような紛争が日米双方の、単に沖繩のみならず、長い友好関係の上にも決してプラスにならないものであると考えますので、その解決にいま全力をあげておるところであります。しかしながら、施政権が現在米国になお復帰まではございますので、その施政権のあることを前提にいたしました中で雇用関係の改善、すなわち、直接雇用が紛争の遠因であり、根源であると思いますから、これはなるべく間接雇用に準じたものに切りかえる方法、あるいは後ほど御質問があるかもしれませんが、退職金の問題等について、双方からめながら外交ルートをもっていま折衝中でございます。
  85. 正木良明

    正木委員 この間私も沖繩へ参りました。ちょうどあの軍労問題が一番激しいときでございましたが、第三次をやるかやらないかというようなことで、非常に重要な時期であったわけでありますが、いろいろな方々とお会いしてまいりました。やはり沖繩自体としては非常に大きな矛盾をかかえておりまして、この矛盾は幾つかあるわけでありますが、中でも基地経済に依存するという形で起こってくる矛盾、ジレンマというものは非常に大きいようであります。したがいまして、沖繩の人たちにとりましてはできるだけあの第三次ストは避けたいという意向のようであります。第三次ストをやれば、基地内の兵隊はもう全部基地の外へ出さない、オフリミットになる。そうすると、そういう人たちで商売しておる人は干上がってしまう。そのために全軍労とそういう人たちの間に、まあ血の雨が降りそうになるような争いがあるというようなことも聞きまして、できるだけ第三次ストは避けられるような方向に持っていってあげるのが一番いい方法ではないかと私は思うのです。それは沖繩のかかえておるこれからの経済自立の道なんということを考えると、非常に大きな問題がありますが、とりあえずはこの軍労解雇問題を前向きで解決してあげていただきたいと私は思うのです。  そこで、一つは非常に劣悪な条件であるということです。少なくとも本土のそういう基地労務者と比べては沖繩の基地労務者が非常に劣悪な条件である。先ほども申し上げましたように、これは第一次的にはアメリカの責任であると思いますが、やはりわれわれ同胞として、同時にまた、一九七二年には返ってくる沖繩の人たちということであるならば、そうそうむげにもアメリカにまかせっ切りでいいものではないと私は思うのです。  そこで、非常に端的にお聞き申し上げますが、この退職金の問題について相当解決の方向に向かっているのか。それとも、本土並みということにつきましては非常に格差があるので、その問題については、本土のほうから何とか本土並みにするように、本土政府から上積みをしてやろうというような話が具体的に進んでいるのか、この点いかがでしょう。
  86. 山中貞則

    ○山中国務大臣 大体沖繩の全軍労の方々の退職金は本土に比べて三六%ぐらいの落差があると思います。また解雇予告期間も本土に比べましてたいへん短うございます。それらの点を考えまして、ただいま言われましたような、本土政府のほうで一時給付金のみならず、そのような退職金の落差分についてこちらが見るということにつきましては、これまた施政権の問題がございまするので、一九七〇年、七〇会計年度中はいかんともできがたいのであるというアメリカ側の意向の表明等に関しまして、私どももその点をもう少しよく調べました上で、こちらのほうが差額分を見るにいたしましても、やはり一番の紛争の根源は直接雇用形態から出発しているということを解決するために、こちらが金を出すことがかりにあり得るにしても、それはこれから総理を含む首脳部において政府の態度として相談をいたしますが、やはりアメリカ側も、本土においてもまだ占領期間中にこの雇用形態を改善した。すなわち、間接雇用に切りかえた前例もありますから、あまりにかたくなな態度をとらないで相談に乗ってほしいと思っておりますし、そのような感触も受けておりますので、それらの問題が見通しがつきますれば、あるいは解決が簡単につく問題ではないかとも考えております。気持ちの上では本土の方々と同じ条件をすみやかに適用してあげたいという気持ちは同じでございます。
  87. 正木良明

    正木委員 ランパート高等弁務官に会いましたときに、この間接雇用の問題が出ました。この間接雇用の問題については、私のほう、ランパートのほうも独自に検討を進めておるということを申しておりまして、非常に前向き、積極的な、先ほどの事前協議みたいなことを言っておりました。前向き、積極的にこの間接雇用の問題を検討しておるということであります。したがいまして、この間接雇用制に切りかえるということは、いま山中長官がおっしゃいましたように、一番ポイントになる問題であろうと思います。  この点について外務大臣、どうでしょうか、見込みはありますか。
  88. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま山中長官からお答えしたとおりで、外務省といたしましても、何ぶんにも明後年には沖繩が返還されるわけであります。そうなれば当然間接雇用、本土並みということになるわけでございます。したがいまして、現在からもうそこまでの期間のことでございますから、なるべくすみやかに間接雇用に移行ができるようにすることは、政府としても当然考えたいところなんでございます。  したがって、まあ法制上その他若干の問題はございますけれども、それこそ、これもことばを拝借するようでありますが、前向き、積極的にわれわれとしてもぜひ何とか軌道に乗せたいと思っておりますし、それから米側も、私の見るところでも真剣に前向きに検討してくれております。双方の研究が現在並行的に行なわれておりますが、随時米側との接触もさらに一そう緊密にして、なるべくすみやかに結論を出すようにいたしたいと思っております。
  89. 正木良明

    正木委員 国政参加の問題について、法理論的にはきわめて問題がありましたのに大英断をされたのでありますから、この問題も法理論的にはいささか問題がありとしても、それを政治的に乗り越えられないことはないと私は思いますので、その点はよろしくお願い申し上げておきます。  それと同時に、この間接雇用制がしかれて、間接雇用制になってからの人はよろしいが、間接雇用以前に解雇された人たちに対しては、これは解雇予告期間もくそもありません。結局あとはもう退職金しかないわけでありまして、この点について、退職金を結局本土政府から上積みしてあげるということ、これしかないと私は思うのでありますし、ランパート高等弁務官も、これは私の権限を越えたものであるが、沖繩の人たちが福祉を受けるということについて反対ではありません。もしこのことに反対するというならば、高等弁務官としての名前が後世に恥を残すでしょうぐらいまで言っておりましたから——よその金を使うのだから気楽なことを言っておるといえばそういうことがあるかもわかりませんが、こういう点、大蔵大臣どうですか、何とかしてあげるというわけにはいかなぬでしょうか。
  90. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私もランパート高等弁務官にも会いました。確かにおっしゃるとおり、淡白な軍人でございます。したがって、はっきりとものも申しますし、その限りにおいては、私も話し合いの前進のためにはたいへんけっこうな人物であると思っております。  現在すでに解雇された者、あるいは間接雇用形態に移行するまでに首切りされた人たちはどうするかという問題は、先ほど申しましたとおり、ただ祖国政府がしりぬぐいだけをさせられる、そして施政権の名のもとにおいて、その他のことは一切干渉を許さぬということだけでは、やはり外交のギブ・アンド・テイクからいっても少しどうかと思いますので、なるべくそういうことをしてあげたい。幸い向こうの会計年度とわれわれのほうの会計年度との間には三カ月のズレがございまして、したがって、一カ月の暫定予算の期間を除きましても、四十五年の五月、六月というものが現会計年度の向こう側とダブるわけでありますから、そこらのところで財源措置等も考慮できるものならば配慮しつつ、すみやかに本来の間接雇用形態に米側の譲歩あるいは好意的な配慮を期待する。ルートは外交ルートをとって折衝いたすということでございます。
  91. 正木良明

    正木委員 非常に時間がございませんで、もっとやりたいのですが、大事な点が残っておりますので、そのほうへ移ります。  総理、共同声明の第九項で、「総理大臣と大統領は、沖繩の施政権の日本への移転に関連して両国間において解決されるべき諸般の財政及び経済上の問題」ここでカッコがついておりますが、「(沖繩における米国企業の利益に関する問題も含む。)があることに留意して、その解決についての具体的な話合いをすみやかに開始する」ここでわざわざカッコをつけて、(沖繩における米国企業の利益に関する問題)というものを取り上げていらっしゃるわけでありますが、ここで外務大臣の説明によると、公平に扱うのだ、このようにおっしゃっておる。この真意は何でしょうか。アメリカが特に共同声明で企業利益の確保ということを意図しているのではないかと思うのでありますが、こういう点いかがでしょうか。
  92. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いま御引用になりました説明以外には、ただいまのところ具体的な問題としてはございませんけれども、米側としては、米国の企業がこの二十五年の間に沖繩で仕事をしておるものがございますものですから、それが返還後にも公平な取り扱いで処理をするようにしてもらいたい、そういう希望を持って、それもごもっともなことでございますから、その中にカッコをして、こういう問題があるということを念のためにそこに取り上げた次第でございます。
  93. 正木良明

    正木委員 端的に、もう時間がございませんので申し上げます。  各国の資本が沖繩にあるようでありますが、特にアメリカ資本の中で大きいのは、やはり石油資本です。私の調査によりますと、東洋石油精製、エッソ・スタンダード・イースタン、ガルフ・オイル、この三つがございます。特にエッソは投資総額が五千五百万ドル、ガルフにおきましては六千万ドルという膨大な投資をいたしておるわけであります。  そこで、通産大臣にお聞きしたいのでありますが、この沖繩の施政権返還時において、これらのアメリカ民間の資本直接投資については、外資法に定める外資審議会の意見は求める必要はありますか。そして、どのようにおやりになるおつもりですか。
  94. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 沖繩が返還になりましたら、石油業に対しては当然、私どもが従来やっております石油政策が適用されなければならないわけでございます。もっと具体的に申しますと、資本関係はいわゆる五〇、五〇というものをこえてもらっては困るということと、わが国の中で新しい元売りは認めない、こういうことになると思います。
  95. 正木良明

    正木委員 そうすると、いわゆる俗なことばになりますが、外資法がかぶる、石油業法が明らかにこの石油資本にはかぶる、こういうふうに確かに了解してよろしいですか。
  96. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そう御了解願ってけっこうでございますし、そのときになってにわかにそれを言い出したのでは先方も困るでございましょうから、すでにそういうことは関係の業者に伝えてございます。
  97. 正木良明

    正木委員 そこで、最近の新聞の伝えるところ、またいろいろの資料によりますと、これらアメリカ資本の出てきたのには、沖繩のいわゆる尖閣列島付近だといわれておるのでありますが、海底に非常に豊かな油田があるというふうにいわれておるわけであります。こういう海底の油田の開発ということもこれらの会社がやるのではないかというふうに思われるわけでありますが、これを本土資本もしくは本土政府が沖繩政府に何らかの財政援助を与えて、いわゆる公社みたいなものでもいいと思うのですが、そういう振興公社みたいなものでもいいと思うのでありますが、沖繩が非常に資源の乏しいところであるというところから、こういう海洋開発、海底資源の開発ということについてもっと力を入れていこうという考え方はございませんでしょうか。
  98. 山中貞則

    ○山中国務大臣 尖閣列島の石油資源調査に関しましては、私の所管いたします琉球援助費の中で昨年からことしと、二年続けて調査をいたしております。したがって、私どものほうの調査は本年度で終わりますので、通産省と本年度の予算をセットいたします際によく相談をいたしまして、この調査が終わりました後は通産省のサイドによる石油開発公団その他の直接の援助、開発等で具体的な石油資源の開発に乗り出すという計画になっておりますことを御説明申し上げておきます。
  99. 正木良明

    正木委員 先ほどの石油資本の問題でありますが、外務大臣、そうすると、わざわざカッコつきで米国資本の利益の問題ということについておっしゃったのは、特に理由がないように思われるのですが、この点はどうなんですか。
  100. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま通産大臣から、日本側としての態度というものは明らかにされているわけでございますが、そういう線で話し合いがつくと考えております。
  101. 正木良明

    正木委員 今後一九七二年までに、いわゆるかけ込みといわれるような米資本の投下があるというふうに考えられておりますが、これも明確に日本の国内法をかぶせるというふうに解釈してよろしいでしょうか。
  102. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私も実はそういうことを情報としてはちらちら耳にしておりますので、これは先ほど申しましたように、もう明後年には本土になるわけでございますから、そういう点については米側においても軽率な処理をしないように十分注意をいたしております。
  103. 正木良明

    正木委員 そうすると、アメリカの利益を云々ということばは何の意味もない。特に、大体カッコをつけたり、英文では「含む」ということになっておるのですが、これを取り出した理由というのはどういうことだったのですか。伝えられるところによると、アメリカ資本の利益を擁護するためにわざわざ押しつけられたといううわさがあるんだが、それはどうなんでしょうか。
  104. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 極端なことを申しますと、沖繩の施政権が日本に返還されて本土並みになるということにきまりましたものですから、現在やっておる事情、あるいは過去において事業をやってきたというようなことも全然もう認められないで、そのままもうストップで閉鎖だというようなことになってはたいへん困るというような趣旨も含めまして、アメリカ側としての心配があった、こういう背景でございます。
  105. 正木良明

    正木委員 最後に一つ、これも具体的にお聞きしたいとがたくさんあったのでありますが、時間がないようでありますので、一つだけ簡単に申し上げます。  北方領土の問題ですね。北方領土の問題で、いま非常に大きな壁にぶつかっているようであります。やはりソ連の主張が、御存じのようにいわゆるヤルタの秘密協定というものが表に立っているようであります。このヤルタ協定に対する見解というもの——ヤルタ協定というのは日本は参加いたしておりませんし、ポツダム宣言受諾をした翌年にそれが公開されたという関係もあり、全然日本が拘束されるものではないと私は思っておりますが、このヤルタ協定に対する見解と申しますか、といいますのは、やはり日米共同声明の第十一項で、総理は、第二次世界大戦中の日米間のおもな懸案が、沖繩返還によって終わりを告げたというふうにおっしゃっておる。私は、日米両国間において、純粋に二国間だけという意味におきましても、まだ懸案は残ると思うのですよ。これは一つは、私は原子爆弾の被害の問題があるだろうと思うのです。これはもちろんサンフランシスコ平和条約によって、請求権は放棄はいたしております。請求権は放棄はいたしておりますが、しかし、あの大量殺戮兵器で無事の非戦闘員を大量に殺したというような政治的な道義が残ると思うのです。これらについて、アメリカは何にもあいさつがないなんというのは、ぼくはおかしいと思うのですが、これはまあとにかくおいても、しかし、二国間というふうに限定するのじゃなくて、少なくともアメリカが一枚かんでいる——非常にことばは悪いですが、一枚加わっているという立場では、北方領土の解決というものが、少なくとも戦後処理の中の残されたものであると私は思うのです。そういう意味からいって、なぜアメリカが一枚加わっているかというと、このヤルタで加わっているわけなんですから、こういう意味において、アメリカを加えての何らかの交渉というような形、少なくともヤルタ協定に参加した米、英、ソの三国を向こうに回しての何らかの形の解決方法というものはないものかどうか、この点をお聞きしたいわけであります。
  106. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 「戦後は終わった」というあの表現も、一応というようなことばでも入れるかという、ずいぶん私もくふうしたのでございますが、しかし、まあ沖繩が返ってくるという大きな問題ですから、これで戦後は終わったと言ってもいいか、あるいはまた私自身が手がけて、沖繩が返らない限り戦後は終わらない、こう言ったこともありますので、これも一応と、あまり正確に言うことはいかがか、こういうので、実は施政方針演説ではやめたのであります。そこで、ただいま言われるように、ヤルタ協定あるいは北方領土そのものがやはり国民的なコンセンサスと申しますか、私やはりこの機会に明確にしておく必要があるのじゃないか、かように思っております。私どもが主張するもの、並びにサンフランシスコの場合に日本が放棄した範囲、こういうものをひとつ明確にしてみたいと思います。これらは外務大臣から詳細にお答えいたさせますから、お聞き取りいただきたいと思います。
  107. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まず、ヤルタ協定の問題でございますが、これは一九四五年の二月に、ただいまも御指摘のとおり、米英ソ三国間で結ばれたものでありますが、当時は秘密協定ということになっておりました。これはソ連の対日参戦を条件につくられたもののようでありまして、南樺太の対ソ返還、それから千島列島の対ソ引き渡しという条項がございますことは御承知のとおりでございます。ところが、この協定というものは、これら三国のいわば大きな対日参戦ということを目標にしたものでありますが、領土の最終的処理について三国間が協定したものではないというふうに理解すべきものではないかと思います。同時に、ただいま御指摘のように、わが国はこの当事者ではもちろんございません。それから、わが国が第二次大戦の終結の際に受諾いたしましたポツダム宣言にこのヤルタ協定は引用されておらないことも御承知のとおりでございます。そういう点から申しまして、ヤルタ協定というものは、この中の、たとえば千島列島というのがどういうものであるかというような、そういうふうなところにいろいろと論議をするのも一つでございましょうけれども、ヤルタ協定というものは、本件に関してはもう問題にしないでいくことも適当ではないかと考えております。  というのは、先般この委員会でも申し上げましたように、いろいろの沿革、条約、歴史、実情等を通観いたしまして、国民のコンセンサスを得る上からいいましても、一番みんなではっきり覚えて、これを端的、率直な根拠にするとよろしいと思いますのは、一八五五年の日魯通好条約でございます。これに当時のロシアとの間の、この北方領土についての非常に明確な規定がある。すなわち国後、択捉を含む国後、択捉から南のほうは明らかに日本国の領土であって、得撫から北がロシアの領土ということにきめられておるわけでございます。そしてこれがその後の南樺太交換条約その他にずっと根拠になっております。  こういう点から申しまして、ポツダム宣言あるいはカイロ宣言その他で、いわゆる日本が戦争その他によって奪った領土でないというところは固有の領土として認め、それ以外のところは放棄をするということが、日本に対して要請せられあるいは日本として受諾したことになっておりますが、そういういろいろの点から考えましても、この一八五五年のそもそもの日魯通好条約において明らかにこうなっているではないか、そうしてそのことは当時以降のソ連のつくりましたいろいろの地図においても、明確に日本領土となっておる地図もたくさんございます。そういう点から申しまして、いかなる意味から申しましても、国後、択捉は日本の領土であり、日本以外のところの領土であったことはないのだということ、これくらい明瞭な根拠づけはないのではないかと考えております。  したがいまして歯舞、色丹は御承知のような経過になっておりますから、それは当然でございますが、国後、択捉と歯舞、色丹の返還を固有領土として要請する、これがわがほうの根拠であり、強く主張してその実現をはかりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  108. 中野四郎

    中野委員長 正木君に申し上げますが、お約束の時間が経過しておりますので、その点お含みの上、結論をお急ぎ願います。
  109. 正木良明

    正木委員 そこで、サンフランシスコ平和条約第二条で放棄した分につきましても、実際はその帰属先をきめておりません。したがって、いわゆる条約署名の連合国の管理にゆだねられておるのではないかと私は思うのですが、その点について連合国管理のもとにその管理権を日本に引き渡してもらうというような形で返してもらえばというふうに私は思っておるのです。  それはおきますが、ともかくもそういう形で彼らはやはりヤルタ協定という——彼らというか、ソ連はヤルタ協定というものを表に立てて交渉してきている。どうしても、いまの放棄の問題も加えて、アメリカがこの中に入ってもらわなければ私は困ると思うのです。  それにつけても私は非常に不審なのは——最後にひとつだけお聞きしたいが、不審なのは、選挙中に佐藤総理、潜在主権なんておっしゃいましたね。あれはどういう発意で北方領土の潜在主権というようなことを仰せになったのか、ちょっと最後にその心境をお聞かせいただきたいと思うのです。
  110. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、私どもはこの固有の領土、ただいまソ連がこれを占有しておりますが、これは不法占拠だ、かように思っております。不法占拠ということ、端的にいえば、それはもうそれでこと足りるのであります。潜在主権とか回りくどいことを言うことはない。われわれの領土だ、だから不法占拠は解除しろ、さっそく引き下がれ、かように申せばいいことだと思います。  しかし、私がことに潜在主権ということばを使ったのは、何らかこの話し合いで、ただいまのような不法占拠だとかいって頭から議論いたしましても、なかなかソ連も簡単には話合わないだろう。そういうことを考えますと、やはり何かアプローチの方法はないんだろうか、かようにも思います。私は、この問題がただいまも議論になっておりますから、その経過を率直に申し上げて、そうしてこの問題を解決したいと思いますけれども、私はこういうことも一案ではないかと思っております。
  111. 正木良明

    正木委員 いまでもそう思っておりますか。
  112. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、日本の本来の固有の領土だ、かようには思っておりますけれども、これには間違いございません。
  113. 正木良明

    正木委員 潜在主権という考え方で交渉するというように、いまもお考えになっていらっしゃいますか。
  114. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまそういうことはもう思っておりません。
  115. 正木良明

    正木委員 いずれにいたしましても、選挙のときに「万歳、沖繩は帰った、次は北方領土だ」というふうに、でかでかとポスターをおつくりになって、だいぶ票をおかせぎになったわけであります。そういう手前からも、北方領土の解決の問題については、どうかひとつ今後とも十分に政府が先頭に立って力を入れていただきたい。  これをお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  116. 中野四郎

    中野委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。  午後の会議は一時より再開することといたします。  この際、暫時休憩をいたします。    午後零時十八分休憩      ————◇—————    午後一時八分開議
  117. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  これより質疑を続行いたします。川崎寛治君。
  118. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 私は、佐藤総理に対しまして、総理が初めて総理大臣になられた三十九年の十二月の臨時国会以来、安保、沖繩、特に沖繩の問題については幾たびか質問を行なってまいりました。総理沖繩問題に対する姿勢というもの、取り組みというものを私は終始見てまいったつもりでありますし、質問戦を通じて私は私なりに最も把握をしておる者の一人だ、こう思っておるわけでありますが、私が一貫をして、この総理の、特に三十九年の池田前総理と総裁を争いましたそのときの総裁選に出ます立候補声明、方針、そういうもの等も含めまして、総理沖繩問題に取り組んでまいった中で、一番もの足りなく思うこと、そしてそのことがいま沖繩百万のなま身の人間に起きておる問題、それは人権の問題が常に欠落をしておる、こういうことであります。そしてそれは国権の問題だけが先に出ます。安保が優先をされます。でありますから、施政権が日本側にないということで、絶えず出てまいります総理の対沖繩の政策というものは、そこに残念ながら沖繩百万県民の人権という問題については手がつかないということで終始一貫をいたしてまいっておるわけであります。  そのことが先ほど正木委員も少し触れられた点に関連をするのでありますが、今回の日米共同声明の第九項において、経済問題その他いろいろ触れておられます。しかし、特に米国の企業の利益ということが一項目それに入るわけであります。当時沖繩におります米人、アメリカから来ております商工会議所の諸君の代表が大統領に陳情いたしております。そうしたものが背景で出てまいっておると思いますけれども総理お尋ねをしたいまず第一の点は、その日米首脳会談において、七二年返還ということをめどにきめました。それまでの間二年あります。いまからいえば七〇年、七一年とあるわけですね。その間に、百万県民の人権を守り、生活を高めていく。そのことについて直ちに日米首脳会談と同時に、その時点から百万県民の問題を日本経済の一環として日本の中に組み込んで、七二年に向けて進めていくということについて話し合われたものであるかどうか。まずその一点をお尋ねいたしたいと思います。
  119. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、七二年、本土に、祖国に返してもらう、このことをお話をしておりますから、ただいまそのこと自身が沖繩県民同胞の人権につながるものだ、私はかように理解しております。いろいろなすべき事柄が多うございます。ただいまも取り組んでおるものがございますが、まず国会で国政参加の問題が、施政権返還前もうすでに取り上げられようとしておる。そうして国政参加を通じて沖繩県民の利益、これを国会国民全体が受けとめるように、そういう形に進めたいと思っております。  また、今日起きておるただいまの問題にいたしましても、軍労務者の解雇の問題等におきましても、やはりたよるべきものは、施政権は持っておらないが、本土政府だ。これは沖繩県民がひとしく期待をかけておるものだ、かように思っております。私どもなるほど施政権を持っておらない。どこまでも米軍自身の直接雇用の問題だ、かようには理論では申しますが、私どもは、あらゆる機会に同胞の権利、利益を擁護する、これが私ども立場でございます。ただいまは山中総務長官が担当して、そうして総理自身が取り組めないような問題もどんどん取り組んでおる、こういう現状でございます。これらのことはすでに御承知のことだと思います。やはり沖繩県民がたよりにするのは本土政府ではないだろうか、かように思っております。  私は、そういう意味で、本土政府が沖繩県民の期待に沿うように、最善の努力をいたすべきだ、かように思っております。
  120. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 次に、二十五年間——平和条約発効以後は二十五年になりませんけれども、二十五年間アメリカの施政下にある。そうしてアメリカが基地を自由に使える。このことは、日米安保体制堅持という佐藤内閣立場からいたしますならば、沖繩に米軍の基地があった、現にあるということ、そのことが日本の平和と繁栄に大いに役立っておる、こういう考えでこれまでまいったと思うのでありますけれども、いかがでありますか。
  121. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖繩の米軍基地が本土の繁栄に役立った、かように直接申すことではございません。私が申し上げ得るのは、日米安全保障条約日米間に締結をしておる。その条約自身がわが国の繁栄に非常に役立っておる。そうしてその場合におきましても、施政権下にある沖繩の軍基地、これはやはり日米安全保障条約の裏づけをなしておる一つの柱だ、かように私考えております。
  122. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 要するに、総理の言いたいことは、日米安全保障条約体制で繁栄があるんだ、こうおっしゃりたいんだろうと思うのですね。そこで、それは構造的にいうならば、とれまでも何べんも議論をしてきた点でありますけれども本土安保条約、沖繩は平和条約、それから本土の米軍は安保条約のもとの米軍、沖繩の米軍は平和条約第三条の米軍、こういうことですね。そのことが日本の繁栄に役立った、総理の御答弁を分析すれば、そういうふうになると思うのです。  といたしますならば、沖繩百万の県民がその中で自由と人権を奪われてそういう状態にあったこと、つまりそれが平和条約第三条のもとの米軍でありますね、基地であります。そうすればそれが返ってくるということについては、この二十五年間人権と生命と財産、そういうものが絶対権力のもとに押えられてきた。何べんかの侵害もあった。数限りない精神的な苦痛や肉体的な苦痛や物質的な苦痛というのを受けてきておるわけです。私は、総理はおそらく沖繩に対しては、だから援助も四十五年度の予算においてはたいへん大幅にしたんだ、こういうふうにおっしゃるだろうと思います。しかし、わずかな額、つまりアメリカ側がぐんと減らしておるのでありますから、当然のことであります。そうするならば、七二年返還、受け入れるまでの間における、そして受け入れたあとにおいても、本土姿勢としては、なかんずく本土政府姿勢としては、百万県民に対するこの二十五年間の苦痛、損害、二十一世紀における人権の擁護ということは、もう民主政治の一番の基本でありますけれども、そのことが二十五年間しいたげられてきておるということに対しては、わずかの援助で償えるものではないと思うのです。だから、私はまず沖繩のいろいろな問題をお尋ねします基本としての二十五年間の償い、ことばが適当であるかどうかわかりませんが、いわゆる条約三条のもとに自由を奪われてきた百万の同胞に対する慰謝料というか、損害賠償というか、そうしたものを支払わなければならないというのが、私は基本になければならぬと思うのです。いかがですか。
  123. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 敗戦で日本国民がひとしく苦しい状況にあった。中でも沖繩自身は戦場になった、そのために多数の犠牲者も生じた。その後引き続いてそれが占領された。こういうことで、私ども、沖繩県民が置かれておる実情について深い理解をまず持つことが必要だと思います。この点では各党とも同じようにこの沖繩県民の今日まで払ってきた犠牲なり苦しみなり苦痛なり、そういうものを十分理解することだ、かように私は思います。そうして全国民が、沖繩が返ってくる、その場合にあたたかくこれを迎える、そうしてほんとうに本土と一体にする、こういうことでなければならないと思います。幸いにして、ただいま各党とも沖繩県民の払った犠牲なり苦痛なり、こういうものについての認識が、同じように心から理解し、同情しておる。一日も早く本土並にしようというのもそういうことだ、かように考えております。そういう意味で、政府もあらゆる努力をすべきだ、かように思っております。
  124. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そういう基本的な姿勢の上で、具体的な問題についてお尋ねしてまいりたいと思いますけれども、軍雇用労働者の問題については、午前中も質問がございました。で、具体的にお尋ねしたいと思うのでありますが、まず外務大臣お尋ねをいたします。  午前中、正木委員に対して御答弁になった間接雇用の問題であります。法制上いろいろと問題があるが、こう言われておりますが、その問題は、どういう点でありますか。
  125. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まず第一に、基本的には、先ほど申し上げましたように、もう再来年には返還になって、間接雇用になるわけですから、それにできるだけ近いような形にいまからしておくことが望ましい姿である、こう考えて、前向きに、積極的に検討しております。  法制的の問題というのは、たとえば裁判権などの問題になってまいりますと、施政権がまだアメリカにあるというようなことにおいて若干の——紛争をかえって複雑にしはしないだろうかというようなこともあり得るかと思いますので、そういう点についても関係各省の間の専門的な検討をお願いをしておるわけでございます。
  126. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 裁判権だけの問題でありますか。
  127. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 そのほかにもいろいろ考えられることがあろうかと思いますけれども、基本的な考え方として、なるべくそういう点は建設的に、いま申しましたような基本線に向かっての努力という方向考えてまいりたい、こう思っております。こまかく申しまするといろいろ考えられることもあると思いますが、なるべくこれを建設的に何とか便法をということで考えてまいりたい、こう思っております。
  128. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 山中総務長官お尋ねをいたしますが、それでは具体的に、二月の十三日の日米協議委員会で正式に外交ルートに乗った、乗せた、こういうことで交渉に入っておるわけであります。で、アメリカ側も前向きに取り組もうとしておる、こういうことでありますが、大体いつをめどに詰めようということになっておるのでありますか。
  129. 山中貞則

    ○山中国務大臣 政府は、昨年十二月の閣議決定並びにことしの一月、それぞれアメリカ側に対して申し入れもいたしております。先般の日米協議委員会におきましても、それらの申し入れを踏まえての議論はいたしましたけれども変化といえば、いままで沖繩の軍労務者の問題は、日本と米国との両政府間の問題ではないという非公式の態度をとっておりましたものが、一応日本と米国政府との問題として今後正式外交ルートを通じて話し合っていこうということに変わった、前進を見たということで、その後それを裏づけるようなアメリカ側の動きも、現地を通じてもいろいろと来月あたりからあるようでございます。
  130. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 来月ごろからあるということになると、その外交ルートというのは、外務大臣、それはどことどこのルートになるわけですか。
  131. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは本件に限らないと申しますか、ほかにもたぐさんございますけれども、返還に伴ういろいろの問題につきましては、在来からあります沖繩問題についての日米協議委員会、これを、米側と話し合いまして、東京における本体として、基本的な事項についての解明をやることにいたしております。  それから現地におきましては、これはもう最も近い機会にお願いいたしたいと思いますが、所要の国内立法も必要かと思いますが、準備委員会をつくることに御承知のとおり共同声明でなっておりますので、それに必要な国内法の法案の御審議もなるべくすみやかに提案してお願いいたしたいと思いますが、それに先んじてすでに通常の外交ルートの上におきまして、いま申しました間接雇用の問題をはじめ具体的な問題の取り上げ方はすでにある程度の準備は始めております。したがいまして、間接雇用の問題につきましても、これは実は日米間の話し合いもありますが、同時に、日本側におきましても、労働法制の関係その他あるいは財政的な問題もございましょう。そういう意味で、関係各省の間でも建設的な意見と申しますか、立案、審議に協力してもらいたいと思っておりますので、それらと並行的に、現在の状況ではアメリカアメリカとして、間接雇用に向かうのについてはどういう点がアメリカとして問題点になるか、そしてそのうちのこうこうこういう点はアメリカ側としては改善といいますか、改善策ができるという方向で、向こうは向こうとしていま検討しておる。もうちょっと時間をかしてもらいたいというのが現状でございます。  ですから、日本側も内部的に、それからアメリカアメリカ側として、そして随時日米間の、いま申しました協議委員会の下部機構あるいは、これが通常の外交ルートといまのところはなっておりますが、そういうところで相談をすることにしております。
  132. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 通常の外交ルートあるいは準備委員会、こういうことになりますと、準備委員会が発足までは決着はつかぬというふうに、端的に伺わざるを得ないのであります。準備委員会の発足を待たずして通常の外交ルートで解決のできる問題だと思うのです。しかし、それが準備委員会の発足がなければならぬということなのか、並行でということになれば、準備委員会が発足しているずっと先までということにまだ延びていくわけでありますが、その辺いかがですか。  そこで、これだけでやりとりしておりますと、時間がかかりますから、もう少し議論を具体的に詰めたいと思います。  山中総務長官お尋ねをしますが、現在アメリカ側と話し合いに入っておるその詰め方、つまり日本側が提案をしておる具体的な間接雇用制度のあり方は、どういう問題でありますか。そして国内において、いま外務大臣が各省間とこう言われましたが、各省間にある調整をしなければならないおもな問題点は何であるか、そのことをまず明らかにしていただきたいと思います。
  133. 山中貞則

    ○山中国務大臣 御承知でもありましょうが、日米協議委員会は、総理府予算の内容について話し合うのが主たる議題でございますので、したがって、こまかに詰めて話をしておるわけではございません。こちら側の二回に及ぶ要望、あるいは会議の席におけるまた意見交換等を通じてお互いが今後検討していこうということでありますが、こちら側として考えられる形態というものはどういうことかといえば、これは、いま愛知外務大臣の言われたように、まだ政府の内部の調整の段階でございますから、はっきりとしたことは最終的に言えませんが、考えられる形態としていろいろありますけれども、一番簡単なのは、日本政府が自体で、現地において防衛庁の施設庁というものが、本土に準じた同じ形式でもって直接雇用の第一義的雇用者の立場をとるということだと思うのですけれども、これはやはり施政権の関係でたいへん困難なケースであろう。次は、では、琉球政府が自体でもって、そのような機関を持って第一次調達者の立場に立つということをやる場合に、その能力なり行政機構なりの問題もありますが、かりに本土からそれを加勢するにいたしましても、やはり琉球政府と施政権者のアメリカと実は対等の関係にあるかどうかという問題もたいへん疑問なしとしないところでありますから、これも一つのケースとしては考えられますが、非常に障害が多かろう。それならば、琉球政府の外局的な考え方の機関としてこの調達機関を置いて、そこで第一次雇用を受けとめて、その機関がアメリカ側とソフトな話し合いに入るという本土に準じた措置というものは考えられないか。そのためには、直接は布令第百十六号のスト権その他の問題もありますし、大きくは裁判管轄権の問題その他等の問題もございますが、これらは、いずれもあまりそれにこだわっておりますと形式そのものが前進いたしませんので、それらが障害があることを前提にして、その障害の中でどのように解決できる方法がありやということにお互いの相談をしぼっていったらどうだろうかといま思っておりますが、これは今後のやはり政府側内部の問題としても相談をいたしますが、相談相手は先ほど申しました防衛施設庁でありますから防衛庁長官、財源の問題でありますから大蔵大臣、さらに雇用問題としては労働大臣あたりの御協力もいただければと思っております。さらにルートとしての外務大臣、そして責任者としての総理大臣等々の横の連絡を緊密にとるという意味において、それらの各機関との協議ということになろうかと思います。
  134. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうしますと、日本本土内でまだ議論が詰まっていないわけですから、それは大体いつごろまでにめどをつけて——つまりアメリカ側には、だから、ばく然とした基本の話だけしか言っていない、日本の国内は、いま言われたように総理府、防衛庁あるいは外務省、労働省、いろいろあって、それが統一されていない。しかも準備委員会の発足その他という条件が一つある、こういうことになりますと、いつになるかわからぬ、こういう不安が現地にはあるわけですね、そこで、政府としては大体いつごろまでをめどに日本政府内の意思を統一をするつもりなのか、そしてアメリカ側と具体的なそういう詰め方に入るつもりなのか、ただ外交ルート、外交ルートといったって、それは外交ルートといったら何もかも外交ルートに乗っているようで、何が何やらわけがわからぬというのが実際ですから、その辺をひとつ明確にしていただきたい。いつをめどに、どういうふうに詰めていくか。
  135. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私が申し上げましたのは、政府部内で意見が詰まっていないというのではなくて、アメリカ側が施政権者としてどのような形で乗ってくるかということについて見定めがついたら、簡単に話がつくと思うのです。これを反対するものも役所として特別にあるわけじゃありませんし、また、こういうものは障害を一々議論しておってはなかなか実現に近づきませんから、やはり一番拙速をとうとぶ問題ということで、私、どうも野人でありますから、外交官でもありませんし、そこらのところは批判もあるかと思いますけれども、いま何をしてあげなければならないのかという、祖国の責任という立場に立って進めるべき問題は的確にとらえて押していく、そのことで専門の外務大臣その他の御協力を願うということにしていきたいと思います。
  136. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 民族の良心のうずきで、ひとつ大いにやっていただきたい、こう思うのです。同じ鹿児島だし、われわれ鹿児島と沖繩という関係からいっても、この点はひとつお互いに打開のためには全力を尽くさなければならぬ、こういうふうに思うわけです。  そこで、大蔵大臣お尋ねをいたしますが、四十五年度の対沖繩援助予算の中では処置できないと思います。現在本委員会で審議をしております予算の上では処置できないわけであります。そういたしますと、これは後ほど申し上げるもう一つ退職金の上積みの問題もあるわけですから、その点もひとつ聞いておいていただいて、あとでまとめて大蔵大臣にひとつお尋ねをし、打開の道を伺いたい、こういうふうに思います。  総務長官お尋ねをいたしますが、第二の問題として退職金の本土並みの問題であります。先ほど正木委員にもそうした点を答弁になっておるわけでありますけれども、この退職金の問題もあわせて——これは現に組まれておる四十五年度の援助予算の中では見られないわけですね。そういたしますと、この退職金の上積みの問題とあわせて間接雇用にする場合の予算措置、財源措置、こういう問題については、これは政府の大きな方針として決定をいただかなければならない問題だと思うのです。その点大蔵大臣としては、総務長官なり外務大臣が進めておりますそういう方向に従って結論が出れば、一般会計の予備費から直ちに処置をするということについては御異論はないと思うのでありますが、いかがでありますか。
  137. 福田一

    福田国務大臣 ただいま全軍労と米軍政府との間の直接の関係になっておるわけでありまして、まだ日本政府が介入すべき立場にないわけでありますから、これは四十四年度といたしましてももちろんでございますが、四十五年度といたしましても、日本政府が退職金の上積みをするという筋合いのものではございません。しかし、制度が変わってくるということになりますれば、そのときの時点においてまた再検討いたします。
  138. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうしますと、退職金の上積みの問題も、間接雇用制度について日米間の了解がつかなければだめだ、こういうことですね。つまりその上で、あとはアメリカ側の債務だとかいろいろな問題等もあるでありましょうが、しかし、そういうことも含めまして、要するに制度について了解を詰める、その上で一致をすれば大蔵大臣としても処置をする、こういうことでありますね。  そういたしますと、最後に総理大臣お尋ねをいたしますが、いろいろと施政権が返っていないということであるでありましょうが、現に——そうしてあの悲惨な戦いというか、まさに憲法の上における職業選択の自由、居住移転の自由もないままに今日まできたために起きておる問題でもあるわけです。だから、まさに人権の問題を本土に訴えておるわけでありますから、ただ単に軍と軍労働者の労使の問題だということではなくて、やはり冒頭お尋ねをしました基本的な姿勢というか態度に基づいてすみやかに御処置を願いたい、こう思うわけであります。その点、大蔵大臣答弁も含めまして、大蔵大臣もそのように制度が変われば、こういうことでありますが、その点については制度が固まればということにはたいへんな時間がかかると思うのです。だから、それに時間をかからせないために、総務長官も野人で苦労をしておるというのでありますが、いま閣僚でありますから、当然閣僚として閣内一致をして、総理の指揮のもとにこの問題についてはすみやかに解決をつけるという基本的な態度を伺いたいと思います。
  139. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申しましたとおり、私ども本土の者は、本土政府は、沖繩県民の期待に沿うように最善の努力をしなければならないと思います。しかし、ただいまいろいろ意見がかわされたように、施政権を持たない実情にあること、これは厳然たる事実でございますし、私どもそういう点から何かと両者の間に、本土と沖繩との間に差別のあることを認めざるを得ない現状でございます。しかし、これをいかにして埋めるか、そういう事柄についてこの上ともお知恵も拝借いたしますし、本土の皆さん方ともどもによく沖繩県民の苦しい立場も理解して、そうしてあたたかく迎えるようにしよう、かように私は考えます。ただいまどういうような処置をとるか、こういう具体的なものについてなかなか申し上げかねますけれども、私どもの気持ちは、何とかしてただいまのような施政権のないそういう状態のもと、またアメリカ自身がそこを治めており、また軍が直接雇用である、こういうような関係のあることを認めながら、われわれで可能なことはできないか、そういうことをいろいろ知恵を持ち寄ってみたい、かように思っております。
  140. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 せっかく総理に伺ったあとで、これはたいへん失礼な質問のしかたになるかもしれませんけれども、ちょっと気になりますので、もう少し詰めたいと思いますが、これは長官のほうがいいと思いますので、総務長官のほうにお尋ねしますが、三月一ぱいでめどがつきますか。そしてめどがついた場合には、退職金の上積みも含めて予算を措置するということについては、大蔵大臣は明確に御答弁をいただけますね。この二つ、伺います。
  141. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私はなるべく早くやりたいと思っております。したがって、三月に入って早く詰まったほうがいいという希望を持っておりますけれども、しかし、かといって相手のあることでありますから、三月中にきめられるかとおっしゃると、きめたい希望を持って努力するけれども、そうなるかどうかについては、相手方のあることであるから、努力をするということにとどめざるを得ないと思います。
  142. 福田一

    福田国務大臣 先ほど申し上げましたように、四十四年度でも四十五年度でも、いまの体制では支出をする道はありません。ただ制度が変わりますれば、その制度の変わり方いかんですね。その内容もよく聞いてみなければなりませんけれども、その変更に応じて関係各省と十分協議をいたします。
  143. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 次に、返還協定の問題についてお尋ねをいたします。  外務大臣は返還協定の交渉にいつごろから入られるのか。特にこの返還協定の問題は、昨日の防衛庁長官答弁にもありましたように、沖繩の局地防衛あり方というのは返還協定による基地の態様いかんにかかってくるのだから、まだそれがなければ見通しがつかない、こういうことであります。いずれにいたしましても、沖繩の局地防衛あるいは第四次防、そうしたものに全部かかってまいります一つの基本がここにかかっておるわけでありますが、それよりこの返還協定というものがいつごろからどのような形で進められるのか、まずお尋ねをいたしたいと思います。
  144. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほどもちょっと触れた点でございますけれども、返還協定に入って協議をし得るような体制を早急につくることがまず第一に必要でございます。これは先ほども申しましたように、東京における日米協議委員会は、いままでは沖繩の援助費を日米両国政府で相談し合う場になっておりましたけれども、この性格を変えまして、進んで返還協定に関連するいろいろの問題についての相談をする場にすることに考えております。同時に、共同声明によるところの那覇に日米双方の準備委員会をつくりまして、この東京と那覇の、協議委員会、そして準備委員会、これが両輪になって返還協定の内容として必要ないろいろの実態についての協議や調査や、そのほか万般の仕事をできるだけ促進をしたい、こういうように考えておりますが、同時に、これも先ほど申しましたように、そういう委員会の性格変更とかあるいは準備委員会の法制上の措置ができない前におきましても、私としては返還協定がなるべくすみやかにできるようにしたいと思いますから、現にもうアメリカ側とは、通常の外交チャンネルを通じまして、いろいろの相談あるいは今後の日程、取り上げ方等についても相談をいたしております。
  145. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それは相手のある問題でありますから、なかなかお答えにくいかとも思いますが、大体いつまでをめどにして——これは国会にかけなければいけませんですね、いつごろおかけになる予定で進めていくのか、大体のめどを伺いたいと思います。
  146. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 一九七二年中の返還がもうきまっておりますので、一九七二年の早期にもう返還が効力を発生して、実際上返還ができるようにというところを目途にいたしまして、それに何でもかんでも間に合わせるように、またその間において国会の御審議も十分願わなければなりませんので、それらも勘考いたしまして、非常にこれは日程的には詰まった日程にならざるを得ないと思っておりますので、何と申しますかスピードアップしていかなければならないと思っております。ただいまのところは何月までにどう、何月までにどうというところなので日程的に積めておりませんが、これからもいろいろ御質疑もあると思いますけれども、諸般の問題について実態の調査ということを考えますだけでも相当の日数と真剣な取り上げ方が必要であり、かつ日米の合意がなければ実態的な問題についてはきめかねるものも多うございますから、それとこの協定自身の草案と並行して進めていかなければならないと思っております。  それからなお、ただいまお尋ねがございましたが、返還協定といたしましては、取り上げるべきものは、カテゴリーからいえば、小笠原、奄美等の場合と同じような姿になろうかと思うのでありますけれども、その幅や深さというものは比較になりませんために、相当急ぎまして、先ほど申しましたような最終の目標にもう間違いなく到達するようにしなければならない、こう考えております。
  147. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 まず一番大きい問題は基地の扱いだ、こう思います。そこで地位協定の問題であります。この地位協定の問題については、昨日もここで議論がございました。現行の地位協定そのままを沖繩の米軍基地に返還後適用と、こういう方針でまいるわけでありますね、いかがでありますか。
  148. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 前々から御説明いたしておりますように、安保条約及びその関連の一切の取りきめ、解釈というものは、何らの変更なしに沖繩に適用するということになっておりますので、地位協定につきましても、現在の本土の地位協定に返還のときにすっかりそのまま適用ができるようにすべての準備を進めなければならない、これもまたなかなかの大仕事であろうと思っておりますが、そういうふうに考えております。
  149. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 安保条約並びに関連取りきめという場合の関連取りきめは何と何でありますか。
  150. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 安保条約、それから国会の御審議をいただいた交換公文も、いただかなかった政府声明その他の了解事項等も、全部含めて何らの変更なしにと、こういうことでございます。
  151. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは現在沖繩の——まあ外務大臣はまだ行っておられないので、沖繩の現地を御存じない、こう思いますが、一号国道線の下には石油のパイプラインが通っております。住宅地のどまん中に軍用油線の標識も立っております。そういうところに、現在の基地そのままに地位協定をかけて、そして提供区域、提供施設と、こういうふうにしていくのですか。それともこれは基地の機能はそこなわないようにする、住民の生活については決して住民の生活というものを圧迫をしないようにする、そういうきわめて魔術をやるようなうまいことが沖繩の基地でできると、そういうふうにお考えになっておるのでありますか、いかがでありますか。
  152. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは日本側から提供する施設、区域につきまして地位協定が本土並みにかぶるということにするのがいわゆる本土並みの返還、こういう仕組みの中でやらなければならないと思います。同時に基地につきましては、不急不要とでも申しましょうか、そういうものの整理というようなことを別個にこれは協議をしていかなければならないと思います。ですから、ただいまの御質問に直接のお答えになりませんけれども、問題の所在はよく御理解いただけると思います。
  153. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、防衛庁長官は、地位協定改定について自衛隊管理、共同使用、そういうこと等で改定というか検討する、こういうことでありましたし、外務大臣のほうは七二年返還にあたって地位協定の問題については現行のまま適用、こう言われた。明らかに食い違いがあると思いますし、国民には混乱をもたらす、こういうふうに思います。  そこで総理大臣お尋ねをするのでありますが、総理大臣も、昨日は官房長官防衛庁長官、外務大臣の間で検討と、こういうことであったのでありますが、本土並み、現行のものそのまま適用、こういうことになれば、少なくとも七二年まではこの地位協定についてはいじれない、これが外務大臣答弁からは出てくると思うのであります。そうしますと、昨日の総理答弁というのは少し食い違いがあるんじゃないか、こういうふうに思いますから、その点もう一度あらためて政府としての地位協定に対する態度というものを明らかにしていただきたいと思います。
  154. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来外務大臣の話を聞いていますと、これはもう厳格にただいま施政権がアメリカにある、そういうもとにおいての、わがほうで正面を切って主張し得ることと、こういうことで話をしておられる、かように思います。私はしかし、先ほども総務長官から種々お答えをいたしましたように、私どもは沖繩が……(川崎(寛)委員「聞いたことに答えてくださいよ。時間が全然、長い答弁をやるから」と呼ぶ)まあしかし、一応経過をお聞き願いたい。  それで、山中長官からもお答えいたしましたように、本土と沖繩との一体化をはかり得る、そういうような事柄については今日からでもやらなければならない、かように私は思っておりますので、そういう意味の努力の余地はあるのではないか、かように思います。したがって、ただいま厳格に理論構成だけでものごとをやらないで交渉の余地があるのじゃないか、かように思いますから、その辺は御理解をいただきたいと思います。
  155. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうすると現行のまま適用でないというか、検討、交渉、あり得る、こういうことですね。だから、総理にもう一ぺんお答えいただきますけれども、その前に外務大臣お尋ねをいたしますけれども、現在一号線は軍用道路です。軍用地です。だから、この上で上原君たちが一昨年ビラまきをしたならば——基地の中で集会ができないから、帰ってくる労働者に対して軍用道路の上で、一号線の国道線の上でビラまきをした。そうしたら、軍事基地内だということで逮捕されたわけです。そしてほうり込まれたわけですね。そうすると、そこが提供区域ということになりますならば、アメリカがかってにいつでもストップできる、通させない。いまはもうバスも通っております。車も走っておる。しかし、それをいつでもとめることもできるわけです。あなたがいつも言う本土になるのだというその沖繩においても、そういう状態というものを現行の地位協定のもとにおいて今後依然として継続をさせる、こういうことになるのじゃないですか、結果的には。その点いかがですか。外務大臣、まずはっきりしていただきたいと思います。
  156. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ですから、こちらから提供する施設、区域ということになれば、それに地位協定が本土並みにかかる、こういうことになるわけです。先ほど申し上げましたように、それはまた別の問題になるのではなかろうかと思います。
  157. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、そういう沖繩の那覇から嘉手納等にかけて油のパイプラインがずっと地下をめぐっておりますけれども、そういうものは十分に撤去をさせて、そうして燃える井戸水の問題等は起こさせない、そういう状況にして施設、区域の提供をやる、こういうことですか、いかがでありますか。
  158. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 それが、先ほども申しましたように、これからの話し合いの的になるわけでございましょう。いま的確に、先ほど申しましたように、その中身についてまだ的確なお答えをする段階ではございません。
  159. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは最初の、最初というか前のほうの外務大臣答弁と、いまの検討があるんだ、こういうことになってきた。理論的じゃだめなのだ、こう総理大臣も言われた。そうすると、この地位協定の適用の問題については、いろいろと検討しなければならぬ点があるのだ、現行のままではどういくかわからぬ、こういうことが返還協定の中においては重要な検討の一つになるというふうに理解をしてよろしいのでありますか。
  160. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは当然川崎君にはわかっていただけるだろうと思うのですが、本土の場合と沖繩の場合は施政権が別でございますから、したがって沖繩はアメリカが施政権者であり、そうしてそのもとにおいていろいろ施設をしております。また本土の場合は、本土、これはわれわれが施政権者であり、主権者であります。そうしていま施設を提供しておる、こういう関係でございます。今度沖繩が返ってくれば、これが本土並みになるわけであります。その返るまでの期間中、これをいかにするかというのがいま議論の問題だと……(川崎(寛)委員「私は返ってからの議論をしておるのですよ。」と呼ぶ)返ってからですか。(川崎(寛)委員「だから返るまでは、ずれる問題でしょう。」と呼ぶ)だから、私がいま議論しているのは、返るまで、もう必ず返ることになっているんだから、返るまでの間をどうしようかということに私は聞いたのでございますが、返ってから後なら、これはもう本土並みになること、これは明らかですから、本土の施設どおりにわれわれがきめ得ることなんです。ただ、いまはその中間でありますから差があるが、それを当然返ってくるものとして、何とか本土に近づけるような方法はないかという、そういうことでお互いがいま知恵をしぼっておる最中だ、そういうところに交渉があるんだ、こういうお話をしておるわけです。この点でおわかりいただきたいと思います。
  161. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そこで、そうすると外務大臣総理答弁は少し違っているんじゃないかというふうに感じますが、要するに返還後の沖繩に適用する地位協定については、きのうは官房長官防衛庁長官と外務大臣で検討、こう言われたのですよ。地位協定の問題については、本土の米軍基地の管理、共同使用、そういう問題等も含めて検討しよう、こう言った。外務大臣は、本土並みにするんですから、いまの安保条約、関連取りきめ、それをすべてをそのまま適用するんですと、こう言うのです。そうするならば、そこには変更はないということでしょう。ところがきのうは総理は、改定について検討するんだ、こういうふうになった。それならば沖繩の返還を通じて、いまの沖繩の基地の態様というものをなるべく可能なようにし、軍事基地の機能というものを落とさないようにということで、地位協定の適用を考え、検討していく、こういうことになるならば、本土の沖繩化ということがそこに出てくるわけです。当然じゃないですか。いまの沖繩はアメリカが施政権を持って、国道でもどこでも、パイプラインも何もかも通しているわけなんだから、そういう基地というものを、これから日本に返った場合に、提供するわけでしょう。提供する際に、その地位協定はいまの地位協定をそのまま適用する、こうでなくちゃならぬわけです、理論的には。しかし、先ほど防衛庁長官のほうで検討ということと、言うことがからんでくれば、沖繩の基地のいまの機能というものを保障するために、沖繩の基地に、米軍側に有利なような地位協定の改定ということが当然問題になってくる。だから、総理が言われる昨日の答弁の、地位協定の改定について検討しておるということでありますが、その点は間違いないのでありますかという点で、明らかにしてもらいたいのです。
  162. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 川崎さんも御理解いただいていると思うのですけれども、問題が二つあるわけでございますね。主としてといいますか、昨日の論議というのは、地位協定というもの全体についての論議でございまして、これは私も地位協定の将来というものについてはいろいろ改善の余地があろうと、こういうことについて検討をするということについては私も異議はございません。同時に、きのう具体的な間近な問題としては、現行の地位協定の中でも、さらに改善をする運営もあるでしょうということを申し上げた。これは本土を中心にしての地位協定一般の問題についてのきのうは御論議であったと思います。それからきょうの御論議は、沖繩に対して安保条約関連取りきめがどういうふうに適用されるのかと、こういうお問いでございますから、共同声明におきましては現在の本土並みということを、全部をこれをかけるということになっておりますと、こういうことを申し上げて、そのとおりなんであります。ですから、これはまた将来の仮定の問題になりますけれども、返還のときに、地位協定というものが現在の姿よりも変わっておるといたしますれば、その変わった姿が本土並みに適用が沖繩にされなければならないと、こういうことに観念上はなるわけであります。理論構成は。そういうことで御理解を願いたいと思います。
  163. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 きのうは本土の基地の共同使用の問題について議論がありまして、私はことばが足りないところがありました。それば、できるだけ現状の地位協定でいける部分はそれで応用していこう、たとえば反復使用であるとか、あるいは断続的使用であるとかそういういろんなケースがあるわけです。そういうものが二条四項(b)項ですか、あれの一時使用という概念に含まれればそれでいいんではないか。しかしいろいろ整理してみて、どうしてもそれではいけないという部分がかりに将来あるとすれば、それは検討しよう、そういう意味で言ったのです。で、いまの地位協定で応用でいける部分が、私は検討してみましたらかなりあるようです。かなりあるようですから、これは先方と徐々にそういう話し合いを進めていくということでございますから、時日の経過の中に確かめてみないと、将来どういうふうに検討していく必要があるかどうかはいまのところまだ言えない。しかし私は、できるだけ早くそういう事態へ持っていきたいから、応用でできる部面を広げていきたい、そう考えております。
  164. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そこで、防衛庁長官が言う国内のほうの問題、それはそれだけにまた問題があるわけですよね。   〔委員長退席、藤枝委員長代理着席〕 外務大臣のほうが、どうも沖繩のほうに適用する地位協定のあり方の問題でいま議論をしておる。  で、そうなりますと、外務大臣、もう一ぺんお尋ねしますけれども、折衝の過程——だから実際に返還する、返還というのをもっと前にいえば、返還協定で煮詰まるという段階ですね、時間的にいえば。時間的にいえば返還協定で最終的に煮詰まるという段階において、現行の地位協定が検討されることもあり得るのか、現行の地位協定を変えなければならないという検討にはならぬのか、つまり沖繩の基地というものの扱いは、返還協定が決定をする最終的に妥結する段階においても、現行の地位協定そのままでいけると見ておるのか、やはりそれはアメリカ側との交渉によっては検討せざるを得ないこともあり得ると、こういうことになるのでありますか。
  165. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 その点は先ほどお答えした中に含まっているつもりなんですけれども、沖繩の返還につきましては地位協定を変更なしに適用すると、こういうことになっておりますから、そういうことでまいるべきであると考えております。  ただ、さっき御指摘になりましたのは、たとえば、これも観念的に申すわけですけれども、現在のまんまの状態が実質的にそのまんまで、法制的にそのまんま本土並みというのだと、さっき御指摘になったような問題もあろうかと思われますが、これは返還協定自身の問題よりも、そのサブスタンスの問題ですね。そういうことになりますね。ですから、それは別のまた問題である、私はかように考えておりますが、しかし、これはいわば返還話の中に入ってくる問題ではある。返還協定というもの自体は、実質がたくさんございますけれども、それだけではカバーできないところがあるのじゃなかろうかと私は思いますが、それらの点については、先ほど申しましたように、今後十分に日本側としても検討し、そして米側とも十分にこれは協議をしなければならない事柄である、かように存じております。
  166. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 日米共同声明そのものになかなか入れないので、少し先を急ぎますけれども、それに入る前にもう一つ詰めておきたいと思います。  先ほど私が申し上げましたように、本土の米軍は安保条約のもとの米軍である、沖繩における米軍は平和条約第三条の米軍である。そこで、施政権が返還になったときには、これは一本になって在日米軍になる。このことについて、これは総理お尋ねをしますが、在日米軍の性格が大きく変わる、私はこういうふうに思います。現在の本土の米軍と沖繩の米軍、平和条約第三条のもとの米軍は、これは太平洋軍司令官のほうに直結をしておりますし、四軍ばらばらで司令部があるわけですね。これが一本になって、しかもいま平和条約第三条で極東の範囲の制限もない、そういう問題の行動範囲も持っております、機能も持っております。だからそういう点について、在日米軍というのが従来の在日米軍の性格そのままで残るのか、あるいは大きな変化というものがあり得るのか、そういう点が問題になってくると思います。いかがでありますか。
  167. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも私は、お尋ねになることが何を言っておられるのかよくわからないのです。先ほども、本土が沖繩化だと、こういうようなことばが出てきました。今度もまたいまのような点で本土の沖繩化、そういうことでも考えていらっしゃるかなと、かように思うのです。とにかく今度は沖繩が本土に返ってくる、また在日米軍、それが沖繩にある米軍をも加えて在日米軍そのものになる、かように思います。数はふえるでしょうが、その性格は変わってはおりません。その点をはっきり申し上げておけば、これでいわゆる沖繩化、本土が沖繩化するんじゃないんだと、それはおわかりだろう、また本土の米軍も本来の米軍化されるんじゃないんだと、こういうこともおわかりだろうと思います。とにかく、それは数はふえますよ、数はふえる。しかしながら、それによって本土の米軍まで性格が変わる、こういうことはございません。これはもうはっきり申し上げ得る。
  168. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 沖繩におります米軍は、いわば旧安保条約のもとの米軍と同じ状態にいまあるわけですね。だからこれはただ本土に返って変わらぬのだということにはならぬわけなんです、機能の上では。それがわからぬところに問題があるわけであって、これはあと共同声明の問題とも関連をいたしてまいりますけれども、たとえば空軍の第三百十三師団には、嘉手納におります戦略空軍に対する発言権というのはないのです。三百十三師団には何にもないのです。そういうものがただいまは返ってきたときに、これはベトナム条項の問題とも関連をするでありましょうが、そういうのが存在するということになれば、いまの米軍とは違ってくるのですよ。これは将来のいろいろの問題が出てくるということを明らかにしておきたい、こういうふうに思います。  では次に、大蔵大臣お尋ねをいたしますが、アメリカ資産の買い取りの問題がいろいろとあります。私はこれだけ議論するには時間が惜しいのでいたしません、結論だけ伺いたいのです。  本来、電力にいたしましても、水道その他あるいは開発金融公社その他にいたしましても、これは沖繩県民の汗の結晶なんです。だから、それを米軍の資産として買い取れ、これは国際法上もないんです。現在の地位協定の上からも出てこないのですね。それに対して、政府としては、買い取るという方針なのかどうか、まずこの点を明らかにしてもらいたいと思います。
  169. 福田一

    福田国務大臣 それらの問題は、これからぽつぽつ検討に入りたいと思っております。なるべくわが国に有利にこれらの問題が解決されるように最善の努力を尽くしたいと存じております。
  170. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 次には通貨の問題でありますが、この通貨の問題の場合のまず非常に大きな問題は、これは昨日もお答えがあったのでありますけれども、円の切り上げがやはりかかってくるのです。七二年、実際の切りかえという場合の問題になるわけでありますから、ちょっと問題が先まで過ぎると言って御答弁はできないかもわかりませんけれども、その点については、返還にあたって、ないということで、県民の不安というものについては明確に答えられますか、いかがでありますか。
  171. 福田一

    福田国務大臣 この間お答えいたしましたとおり、円の切り上げにつきましては、全然これを考えておりません。  それから、返還時におきましては、そのときにおける対米比率、これによってそのドルの回収が行なわれる、かように御了承を願います。
  172. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 次に、沖繩にあります核兵器の問題についてお尋ねをしたいと思います。  メースBはなるほど撤去をされたような、そういう新聞も昨年の暮れに出たわけでありますけれども、メースBの発射台は撤去になったのでありますか、撤去されるのでありますか。それから、現在沖繩にあります核兵器はほかに何があるか、これは防衛庁長官ですか、外務大臣ですか、明らかにしてもらいたいと思います。
  173. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 現在のところは施政権が向こうにありますから、現在の状況は私はつまびらかにいたしておりません。返還のときにきれいになっておる、その後は入れない、これだけははっきりいたしております。
  174. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それじゃ発射台はわからぬということですね。これが一つ。それから、現在沖繩に核弾頭はどういうのがあるか。——わからぬと言うのですか。ただわからぬだけで——そうすると、トップシークレットで、これは結局わからぬじまいですよ。わかっていますよ。現在、ナイキ、F105の戦闘爆撃機、YF12の戦略偵察攻撃機、それから原子力潜水艦のサブロック、そしてさらに放射能の処理施設、こういうものが沖繩には核としてあるわけですね。これも全部つまり両用兵器。その核弾頭も、返還に際しては全部撤去されるということを明言できますね、総理大臣
  175. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これこそ本土における非核三原則、それがそのまま沖繩に適用される、かように御了承いただきたい。それに間違いはございません。
  176. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、これは同じ答弁をしないようにしていただきたいのです。ということは、第八項の核の問題でありますが、これは核でなしに、ただ日本政策とだけ述べられておるわけですね。なぜここに非核三原則を明確に記入できなかったか。アメリカ安保条約の中にアメリカの基本的な政策というものを、バンデンバーグ条項にいたしましても、安保条約の第三条に明記をしておるわけであります。だから日本も、せめてこの共同声明、条約でない、両国のトップが共同声明をいたすのでありますから、その共同声明の中に、日本政策などという、わからない、抽象的なことばではなくて、バンデンバーグ決議を安保条約の第三条に明記をしておるように、あなたがほんとうに国民に誓うならば、そして諸国の諸国民に明確に誓うなら、なぜ非核三原則の日本のこの原則というものを——日本の原則でない、佐藤内閣の原則ですが、佐藤内閣政策というものを、この共同声明の第八項の中に明記できなかったのか、その理由を明確にしていただきたいと思います。
  177. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 総理からも御答弁があると思いますけれども日本国民の核というものに対する考え方、コンセンサス、これがまず根本であって、そこから出てくるところの、世界的にも有名な日本の非核三原則というものは、もうあまりにも明瞭なことでありまして、ここに日本国民の核に対する考え方というものを基礎にした日本政府政策というものがよく理解ができたという、ことで、私はもう十分なことではないかと思います。何も教条主義的に三原則とか五原則とやるばかりが能ではなかろうと私は考えます。
  178. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それは三百代言のような答弁であります。国民がわかっておる、諸外国もわかっておるというけれども、それならば、なぜ——これは今澄委員からもきのういろいろ御指摘がありましたけれども日本総理や外務大臣の言っておることと、アメリカ側の国務省筋だとかそれぞれアメリカ政府筋だとかというところが言っておることと、なぜ食い違ってくるのか。そういう食い違いをなくすためには、日本の基本的な政策というもの、憲法に基づいたそうした政策というものは、明確にこうした共同声明の中においては明記すべきであります。それを、わかっているはずだとかなんとかと、いろいろな解釈があるときには、その解釈にあいまいさを残さないために、明確な日本国民憲法に基づいた方向というものを明記させるのがあたりまえじゃないですか。なぜできないのですか。もう一度明らかにしていただきたい。これは総理にお願いいたしたいと思います。
  179. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、あらゆる機会に非核三原則、これを堅持するということを申しております。案外、これは冗談にとられては困りますが、私の顔を見たら、非核三原則に見えるんじゃないかしら、こうまで実は思っておるのです。それほど実は有名なものを、私の、何と申しますか、一番表現しやすい、軍事関係において、核について、かように実は私は思っておりますので、このくらいはっきりしたことはない。しかし、ただいまも言われるように、なぜ書かなかったか、かように言われると、なるほどな、やっぱり書いたほうがよかったかなと、かようにも実は思いますけれども、私は、しかし、その全体を読んでいただくと、これはもう十分わかるのじゃないか、かように思います。  ことに、メースBも早く撤去するというアメリカの声明等から見ましても、ただいまのところ、私は、その点で疑う人は川崎君くらいかなと実は思っておるので、私はこの点ではもうあらゆる機会に申し上げておりますし、またきょうもこの席でこうして申し上げております。(大原委員アメリカに対して言ったらどうだ」と呼ぶ)これはもうアメリカに対しても、よく知っておりますので、この点では絶対に誤解のないように、どうか川崎君といわず大原君といわず、皆さん方も御理解をひとついただくようにお願いしておきます。
  180. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これは自民党政策でも何でもなくて、佐藤内閣の非核三原則なんですね。これはもういままで何べんも議論されておるのでありますけれども、蒸し返しになって残念でありますが、佐藤内閣は永久でないわけですよ。今度の総裁公選でどうされるか、これはもうおたくのことでありますから知りませんけれども、しかしそれはそれとして、この共同声明はこれから日本国民を縛っていくのですね。だから、日本政策という場合に日本国民政策じゃなくて、佐藤内閣政策なんですね。でありますから、これはいまになって明記しておけばよかったなというふうなことでは、私はたいへん無責任だと思う。特に、なぜアメリカ側において違う解釈が出ておるか。その違う解釈が、つまり第八条は日本への核の再持ち込みの権利を留保されておるんだ、こういうことで、あるいは朝鮮半島に事があるときには戦術核兵器持ち込み等があり得るんだ、こういうふうなこと等がいろいろいわれておるわけでありますね。なぜ、そういう違った解釈が本土側、日本側とアメリカ側で出るの、その違う解釈が出るゆえんをどう思いますか、明らかにしていただきたいと思います。
  181. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私も一国の代表者でございます。またニクソン大統領もこれはアメリカを代表しておられる方であります。そういう方からとやかくの議論が出るならば、これは別でございましょう。私はもうはっきり申し上げますが、責任を持ってさような持ち込みは許さない、そのことで完全に意見が一致しておる、このことをはっきり御了承いただきたい、それより以上には申し上げることはございません。
  182. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 ジョンソン国務次官のブリーフィングその他いろいろあります。ニクソン大統領自身は言っていないでしょう。しかしジョンソン国務次官がブリーフィングですら、その点は明確に解説をしておる。その他いろいろいわれておるということは、あなたが何ぼここで力んでみても、残念ながら依然として疑問は残るわけです。だからその疑問が残るということが、安保条約全体についてもいろいろな疑問をまた生んでくるわけで、ありまして、この点はたいへん遺憾だと思います。あなたとこのことを議論をしておっても繰り返しになると思いますから、この点は残念ながら了解できないということで終わらざるを得ないと思います。  そこで共同声明そのものに入ってまいりたいと思いますが、共同声明の第六項以下で沖繩返還を定めたわけであります。しかし、この沖繩返還がきまります前提は、言うまでもなく共同声明の第三項、四項、五項、このことが前提になって、その認識の上に立って第六項の沖繩返還ということがきまった、こういうことにこの共同声明は読まざるを得ないと思うのですね。その点は間違いありませんですね。
  183. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 昨日もとの点に触れたわけですけれども、第一項はこういう場合の定形的な文章でありますが、二項から三、四とは……(川崎(寛)委員「いいですよ、時間がないから、聞いていることだけを……」と呼ぶ)しかし大事な点ですから……。国際情勢、特に極東の情勢についての相互の認識が十分に話し合われた。そのことがまとめて書かれているわけであって、それから沖繩返還については六項、七項がその重点事項でございますが、それとこれとは並列されてあるわけなんです。したがって沖繩返還の問題については六、七、八項を中心にお読み取りいただければよろしいわけだと私は思います。
  184. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 並列ではない。この構成上からいけば、論理構造からいけば、第三項で極東における米国の防衛義務を日本が認めたわけですね。その上に立って、今度はこの義務に基づいた米軍の極東における存在がこの地域の平和維持の強力な抑止力になっているということを高く評価をしたわけですね。そして米軍が抑止力である以上、常にその軍事的義務を十分に果たし得るような態勢が整っていなくてはならないんだ、こういう原則。そして次に極東の平和と日本の平和とが密接不可分であるということの認識。で、沖繩、本土の米軍基地の機能が返還によって——いま言ったそれらのものをひっくるめて、本土、沖繩の米軍の軍事基地の機能が返還によってそこなわれないようなものである、これが沖繩返還の前提だ、こういうふうにいわざるを得ないわけであります。その点は間違いありませんですね、外務大臣
  185. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 もちろん非常に大切なことでありますけれども、それを何か条件としてというふうなお話に私はちょっとひっかかるわけで、先ほど念のために申し上げたわけでございます。
  186. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは安保条約の運用あるいは付属交換公文による事前協議なりその他の運用、そういうものを総理や外務大臣が言うように運用をしていくならば——論理を認めておるわけではないのですよ、その論理でいくならば、台湾や韓国についてもあなた方が言うような米軍の行動、それは出てくると思うのですね。あなた方が言う事前協議の運用というものはイエスもノーもあるのだ、こう言う。協議に応じてイエスもノーもあるのだ、こう言う。なぜここでわざわざ韓国や台湾のことがこの共同声明の中に安保の運用とからんで出てこなければならなかったのか、その点を明確にしていただきたいと思います、総理大臣
  187. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 日本の安全ということから申しまして、朝鮮半島の緊張あるいは台湾の問題が非常に密接な関係にあるということは、私はアジア情勢について日本立場からいいましても当然のことではないかと思いますが、そういう点について双方の首脳の認識が合ったということがその情勢判断の中に書かれてある、そのことはお話しのとおりでございます。
  188. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 沖繩の施政権が返還をされることによって、沖繩が米韓、米台その他米比なりANZUSなりのそれぞれの防衛同盟条約の条約適用区域からははずれますね。そうすると、米韓条約なりあるいは米台条約なりで沖繩の基地の従来の機能というものを条約の上では果たしていけないことになりますね。外務大臣、その点いかがでありますか。
  189. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 米韓、米華条約では、沖繩がアメリカの施政権下になくなれば、施政権下にある米軍云々というところが沖繩には適用がなくなります。そういう点では関係がなくなります。  それからSEATO条約はもともと関係はございませんですね。それからANZUSと米比条約につきましては残りますけれども、これはいまの本土にある在日米軍と同じステータスになる、こういう意味で関係は残るといえば残りますが、これは条約上の文理上の問題でございます。  それからもう一つは、いまのお尋ねの中に入っていなかったかもしれませんけれども、今度はアメリカが、そういうふうに日本との、あるいは沖繩との条約の文言上の問題とは別にして、アメリカが米韓条約によって義務を履行するということが即日本安全保障条約の運用の上において自動的に義務を発生するとか、あるいは事前協議に際する日本の自主的な判断や態度に直接に関係してくるというようなことにはならないのがこの共同声明の趣旨でございます。
  190. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そこで、米韓なり米台条約なりを米比条約等のそのスタイルに変えて、米軍の飛行機なり艦船なりという米比なりANZUSなりのそういう構造に変える、現在の米華条約の適用区域というのは明確になっております。米韓条約でもなっておりますわね、いま御答弁のとおり。そこでそれに現在のANZUSなり米比なりと同じようなものに沖繩の米軍を持っていこうとすれば、米韓なり米台なり、条約の条文改正ということもあり得るわけですね。そういうことはあり得るということで、予測できますか。
  191. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まあこれは日本の外務大臣が御答弁する守備範囲外だと思います。したがって、私からはお答えをしないほうが適当かと思います。
  192. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは沖繩の基地の機能というものを、米韓なり米台なりそういう条約でアメリカが負っておる国際義務——国際義務が何であるかわかりませんけれども、共同声明の上では国際義務などということばで書かれておりますわね。そのアメリカが沖繩の基地から果たすであろう防衛同盟条約上の義務というものを、今回の共同声明で保障をした。先ほど外務大臣が言われたように、ストレートには米韓同盟条約なり米華防衛同盟条約なりに沖繩の基地の機能はつながらないことになるわけですよね。それは先ほど、条約適用区域からはずれたことによってそうなる、こう言われた。しかしそのなった沖繩の基地の機能というものを、米韓条約なり米台条約なりの上で、なかんずく沖繩の基地というものが機能し得るように、それを保障したのが今度の共同声明だ、そういうことになるではないですか。だからあなたは、日米安保条約は米韓防衛同盟条約と無関係です、関係はありませんとこう言われた。しかしそのことを、沖繩が日本の施政権下に返ることによって失われていくアメリカの対韓国なり台湾なりの条約上の義務というものについて、それを佐藤総理がニクソン大統領に約束をしたということが今回の共同声明のたいへん大きな問題だ。だからおっしゃられるように、条約上はストレートに日米安保条約と米韓防衛同盟条約とは結びません。しかし安保条約の運用としては、まさに佐藤内閣姿勢としては、その米韓防衛同盟条約と米台防衛同盟条約を日米安保条約に結ぶということを今回の共同声明で誓った、そう言わざるを得ないではないですか。それでなければ沖繩の基地の機能が、米韓防衛同盟条約に基づいてアメリカが軍事行動を起こすときに、その日本の基地の機能というものを米韓同盟条約で負っておるアメリカの義務の保障ということになってこないわけであります力そしてこれはきのうまでの間いろいろ議論をした、これから詰めたいと思います問題にも関連をしてくるわけであります。でありますから、今回の共同声明というのがたいへん大きな飛躍をした。その点については間違いなく指摘せざるを得ない、こう思うのであります。総理大臣、いかがでありますか。
  193. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 どうもそういうこともお考えになるのかなというふうに、私率直な感じを申し上げますとそう思うのでございまして、米韓あるいは米華条約と、そういう意味での関連などは毛頭ございません。
  194. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 あるじゃないですか。機能しているじゃないですか。
  195. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 毛頭ございません。というのは、こういうことを申し上げるのも御参考かと思いますけれども先ほど申し上げましたように、米比、ANZUS両条約では、沖繩の関係が残ることは日本本土と同様だと申しましたのは、在外の米軍の問題について規定しておって、どこにおりましても、米国以外に所在する米軍が攻撃を受けた場合には、締約国の一方がそれに対して防衛の義務を負っているわけでございますね。ですから、たとえば米比条約によれば、日本にあるところの米軍がどこかの国から攻撃を受けた場合に、この米軍を助けるためにフィリピンの軍隊が飛んできて防御に当たるというようなことがこの条約の内容になっているわけでございます。その場合に——そういう場合があるだろうか。かりに、これも観念上の問題ですが、あったといたしましても、そのときに在日米軍がどういう行動をするかということについて、事前協議をしなければならないようなことに触れるような場合には、当然在日の米軍は事前協議の対象になるわけですね。それから、大体がこの条約の日本に関連するところといえばそういうところなんでございますから、私はアメリカといたしましても、米韓あるいは米華条約から沖繩地域に所在する米軍がはずれましても、何もたいしたことはないと考えているのだろうというふうに私は理解しておりますから、いま御指摘のような議論が出てくるというようなことは、私には全然考えられません。
  196. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 実は私、川崎君のお尋ねを聞いていてしばしばわからなかったのですが、ようやくいまの結論で、はあなるほどこういうことを聞きたかったのか、それじゃもっと端的にどうして聞かれないのか。あの書いてある事柄にそういうようなものはございませんし、また私どももちゃんとはっきり申し上げておりますように、憲法は守るし、自衛隊法も守る、もうそういうところでぴしゃっとワクがはめられておるのです。でありますから、ニクソン大統領も米国の主権者である。私が出かけて二人で相談しても、幾らどれだけの権限を持ったにしても憲法や自衛隊法を改正するような力はございません。したがって、この共同コミュニケで約束した事柄でいままでの関係が変わるのではございません。したがって、本土が沖繩化されるのではない。本土に沖繩が返ってくるように、また本土で取りきめたものがそのまま沖繩へ適用になるように、そういう約束をしたのがその共同コミュニケでございます。どうも私話が食い違っている、わからない、どういうところだろうかと思ったら、ようやく最後になってわかりましたが、はっきり申し上げておきます。
  197. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 具体的に、それじゃその問題をもう少し詰めてみたいと思うのです。きのうの答弁で、国連の認定がなくても事前協議でイエスと言うことがある。つまり韓国に事があった場合ですね。そういうことを言われた。これを、その議論に入る前にもう少し詰めておきたいと思うのでありますが、韓国に侵略の行動があったとき、それはゆゆしき問題だ。日本の平和と安全にとってゆゆしき問題だ。なぜゆゆしき問題ですか。条約の上からいって、それはまさにベトナムでアメリカがドミノ理論を展開したことと何ら変わらない。今度の共同声明で、韓国なり台湾なりにこうしたアメリカの義務の履行ということについて保障をする、こういうことが朝鮮半島における民族自決の問題あるいは中国の民族の自決の問題、そういうことに対して明らかにその点は内政干渉をしておる、こう言わざるを得ないと思うのです。でありますから、ベトナムがやられたら、そのことは共産化されることだといった論理とどこが変わるか。だからそのことは、一九五〇年代のあの国連軍の論理というものが、この日米安保条約のもとにおいては明確にまたよみがえってきておる、共同声明の中においてはよみがえってきておる、こう言わざるを得ないと思うのです。それは七〇年全体を通じての日本姿勢日本のアジアにおける緊張緩和の姿勢の大きな基本ともかかわってくるのでありますけれども、なぜ今日、六〇年代の、アメリカがかってな戦争をやることに対して歯どめになるのだといった事前協議の条項というものを、イエス、ノーということで行動を保障をしていく、こういう冷戦構造のほうに今日返らなければならなかったのか、その点を明確にしていただきたいと思います。
  198. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 事前協議、これはもちろんそのことばどおりです。事前協議、これはもうノーもありイエスもあるから協議でございます。これが一つだけの問題でノーばかりだ、こういうならば事前協議じゃございません。それは通告をしてもそういうことは必ずけ飛ばすんだということでノーだということですから、これはもう協議の余地はない。事前協議という限りにおいては、イエスもありノーもある……(川崎(寛)委員「もうその事前協議の解釈なんか聞いておりませんよ」と呼ぶ)じゃ、その点はもうおわかりですね。  そこで、韓国、朝鮮半島に事変が起きたらこれはたいへんな問題だと私は申しております。川崎君はそれはなぜかと言われる。問題にされないのですか。私はたいへんな問題だと思う。このくらい国際関係が緊密になっておる際に、隣の国で問題が起きると、そういうものを等閑視できない、こういう状況だと私は思っております。私どもは、だからこそ緊張を緩和して、事態が起こらないように起こらないように、朝から晩まで願っておる、そういうことでございますから、それらの点がもしも、そんなことは他国のことだ、考えるに及ばない、こうおっしゃるならば、それはもう見解の相違でありますから、お答えする必要はないように思います。私はいま直ちにその戦争に介入しようというのではありません。その事態を安閑として見ておるわけにいかないというのが私の気持ちでございます。
  199. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 朝鮮問題については二つの大きな対立点があるわけです。国連の中においてもですね。それは何かといえば、朝鮮問題の処理というのは、平和的な処理ということと戦時的な処理という二つがあるわけなんです。一九四七年には平和的な処理の問題として、国連に付託をされておるわけです。しかし五〇年に紛争が起き、戦争が起きて、このことでまさに反共同盟軍としての国連軍というのが一九五〇年の国連の決議でつくられたわけでありますけれども、五三年に休戦になっておる。だから五〇年の朝鮮問題の処理というのは、休戦協定で一応終わらにゃいかぬわけです。当然緊張緩和という姿勢でいくならば、四七年の平和的な処理の方向に返るのが当然である。それがそこに返ろうとしないで、その五三年以降何回も決議をされてきた一方的な国連軍という——強制行動をとったことは国連軍としては一回しかないこの朝鮮の処理でありますけれども、その戦時処理としてとられたことを、二十年後の今日においても依然として継承しなければならぬというところに、佐藤内閣の朝鮮問題全体に対する姿勢の基本があると思うのです。だからなぜ四七年の平和的な処理の問題としての国連の方向に返れないのか。朝鮮戦争のときの国連の体制というものを吉田・アチソン交換公文でもずっと引き継いで来ておるわけです。六〇年代においては歯どめだ、日本関係のない戦争には巻き込まれないようにするんだ、歯どめです、こういうことで事前協議を運用することを国会においても幾たびか繰り返してきた。しかし、それがなぜもう一度冷戦構造のほうに返らなくちゃならぬのか。あるいは、わからぬとあなたは言うかもわかりません。しかし三十八度線なり台湾海峡なり十七度線なりというものを考えた場合には、日本が七〇年代においてアジアでとっていかなければならない姿勢、基本を考えた場合に、今回の共同声明というものの方向というのは、まさに対立から緊張緩和、交渉へという方向に、アジアにある冷戦構造を、日米安保条約というものを基本にしておる冷戦構造というものを、緊張緩和の方向に持っていくという姿勢でないと……。だから具体的に問題をもう少し詰めてまいりますけれども、一番基本の点においてはなぜそういう方向に返らなければならなかったのか。そういう朝鮮半島の情勢というふうに佐藤・ニクソン会談においては話し合ったのか、認識を一つにしたのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  200. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 イデオロギーでそれぞれの国がそれぞれの政府をつくっておる、こういうような事柄について、私はとやかくは申しません。民族自決、これはもう承認する。アメリカもまたそういうことを認めておる。これはもう本会議でもはっきりそういう説明をいたしておりますから、そこには誤解がないと思います。しかし、紛争自体はとにかく困りますから、それが平和であることが望ましいのであります。朝鮮半島の韓国と北鮮との間のあの境界線はどうしてできたのか、これは国連が中に入ってつくった線ではございませんか。さように考えると、この状態でやはり推移する、そうして両国民がそのうちにほんとに一民族一国家というような状態変化できるなら、このくらい望ましいことはないと思います。私は中国の場合も同様だと思います。私どもは二つの中国論を議論はしておらないつもりです。これはもうどこまでも一つでございます。  そういう意味で、現実の問題としての処理の問題と、またわれわれがみずからを守る立場からいろいろ考える事柄と、これが矛盾しないように、他国には干渉しない、そういうこともはっきり申し上げておるわけであります。したがいまして、私は、いま共同声明を読みながら疑問を持たれるように、他国の内政に干渉する、あるいは自国がさらに憲法できめたものより以上に他国を攻撃する姿勢であるとかいうようなところは、全然ないことをよく御理解いただきたいと思います。
  201. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 具体的に詰めたいと思いますが、きのうの議論とも関連をしてまいりますけれども、米軍が日本を基地として韓国に行動する、その場合に米軍は集団自衛権に基づいて行動しているわけですね。だから日本がこのことに対して日本の基地の提供ということは、日本は重要な軍事的な措置をとることになるわけですね。そこで、国連の認定なしにその場合に日本が基地を使うことを認め得るという根拠はどこから出てくるのか、国連憲章の上のどこから出てくるのか、そのことを明らかにしていただきたいと思います。
  202. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本独立国家ですから、みずからが非常な危険を感ずる、あるいはまた必ず侵略を受けるおそれが非常に顕著な場合、そういうときに自衛の手段をとるのは当然だろうと思います。
  203. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それは個別的な自衛権の行使ではないはずですね。ただ国家の主権として急迫不正の侵害がある、しかし国連憲章の五十一条でいっておるそうした集団自衛権の行使としても、あるいは個別的な自衛権の行使としてもそれは出てこないと思うのです。いかがでありますか。
  204. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この問題については昨日も、きょう午前中にも御議論のあったところでありますけれども、現在国連軍が韓国に駐とんしておりますが、これは一九五〇年の安保理の決議によってできたものであることは御承知のとおりであると思います。そして朝鮮の安全と平和を守ることが目的ということになっておりまして、その後毎年国連におきましてはアンカルクにおいて決議が行なわれて、この軍の任務というものが確認されておる、これも御承知のとおりだと思います。  一方、一九六六年であったかと思いますけれども、朝鮮の問題については、正確な文章を覚えておりませんけれども、平和的な話し合い等によって民主的な統一ができることが望ましいという決議も行なわれておりますが、現実の事態はその決議のような趣旨にはいきませんので、やはり国連軍の使命、駐とんということが引き続きずっと各国によって承認されておる。   〔藤枝委員長代理退席、委員長着席〕 そこで休戦協定がございますけれども、この休戦協定が予想しないような事態が、たとえば組織的、計画的に行なわれたような場合にはどうなるかということについては、決議とかあるいはそれにかわるものはできておりませんけれども、もしそういうものが、予想されないような急迫の事態が大規模に起こった場合、あるいはそれがただいま総理がおっしゃったような日本の安危にかかわるような事態になるというような場合においては、在日米軍が国連軍として出動をする必要があるということで、事前協議を求めてくることは観念的にはあり得る。そのときには、日本の国益を中心にし、あるいは国連の態度やその他に対する協力ということも勘考して、日本として自主的な立場をもって態度をきめます、これが私は、この国連との関連における朝鮮半島についての日本の態度でありてしかるべきである、かように考えております。
  205. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 具体的にお尋ねをしますけれども総理もこれは答弁をされましたが、認定がある前に行動した米軍の行動を認める、その結果攻撃日本が受ける、こうなれば安保条約の第五条の発動、このことは昨年の本委員会でも私が指摘をいたした点でもあります。そうなれば、つまり国連の認定なしに米軍の軍事行動を認める、オーケーを与えるということの結果、報復を受ければ、そこには日米韓の共同防衛体制に入っていく。先ほど米韓、日米安保条約の間には関係がない、こういうことでありましたが、日本と韓国との間に防衛同盟条約はないわけでありますけれども、しかしいまの論理を推し進めていきますならば、日米韓の間に日米韓の共同防衛体制をつくらなければならない、そういう事態に発展をしていくということは明確でありますね。総理大臣いかがでありますか。
  206. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん不明確です。私ども考えることは、日本が侵害を受けた場合、そのとき初めて日本自衛隊が立ち上がる、侵略を受けた場合。だからそれだけの問題です。これは韓国自身が問題がなくても、日本自身が攻撃を受ければ日本は立ち上がらざるを得ない。私は、韓国が侵略を受けて、そうして日本駐在の米軍が行って、そうして日本が報復を受ける、こういう議論をいまなさいますが、われわれはとにかく戦争に巻き込まれることを極度に忌避しているというか、これはもう絶対に戦争に巻き込まれるようなことはしたくない、そういう点は十分考えるということを何度も申し上げております。また国連軍が攻撃を受け、国連がそれを侵略行為だと認めた場合に、在日の米軍がこれの救援に行った、そこで日本から米軍が立ったんだからそれに報復権があるのだ、かような議論はないということも申し上げております。したがって、私、どこまでも日本自体の問題、それを考えお答えをしております。だから、アメリカあるいは韓国、そういうものと日本との間をこんがらがらさないように、截然と分けてひとつ考えていただきたい。私どもは、日本自身が積極的な侵害を受けない限り、自衛隊を動かす考えはございません。また在日米軍も、ただいまその前もってもあり得るということを私は申しましたが、われわれは極端に戦争に巻き込まれないように努力する決意でございますから、その辺は誤解のないように願っておきます。
  207. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 先ほど外務大臣答弁をされた、朝鮮における国連の関係、これらからまいりますと、本来安保条約の第六条の極東条項というものは、これは朝鮮における国連軍をよしんば是認をしたといたしましても、そこから出てくる極東というのは朝鮮に限らなければならない、こう思うのであります。そこから出てくるものは朝鮮だけに限らなくちゃならないはずなんです。それは朝鮮の国連軍を認めたとしてですよ、それを前提としてみても限らなければならない。そうじゃないですか。ところが、それが極東の平和ということで広がりを持ってしまう。しかもこの極東の平和は、六〇年安保のときの解釈よりもさらに広がってきておる。共通の目的と共通の関心、そういう地域ということになるならば、六〇年安保のときの地理学上のものではないのだ、こういった指摘よりもざらに広がりを持ってきておる。そのことは、日米安保条約がこれまで戦争に巻き込まれないということをいいながら、むしろ今度の共同声明においては積極的にアメリカの極東戦略にコミットしてくる方向というものをより出してきておる。そのことは、総理が言われるアジアにおける緊張緩和という方向とは全く逆行する、こういわざるを得ないと思うのです。では、極東の平和というのはだれが判定をするのでありますか、伺いたいと思います。
  208. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これもしばしば繰り返しておりますから議論をいたしませんで、事実だけを申し上げたいと思いますが、昨日も申し上げましたとおりに今度の共同声明による沖繩の施政権の返還によりまして、日米安保条約上の極東の範囲が変わるかどうかというお尋ねに対しましては、変わることは全くございませんということを昨日もはっきり申し上げているとおりでございます。そしてこれは、昭和三十五年二月二十六日、最初に出ました、当時岸内閣の岸総理大臣によります極東の政府統一解釈のとおりを私は申し上げているわけです。一般的な用語として用いられている極東は、地理学上正確に画定されたものではないけれども安保条約上の極東は、日米両国が平一和、安全維持に共通の関心を特に有しておる地域であって、かかる区域は大体においてフィリピン以北云々である、こう昨日も申しましたのは、その当時からの政府の統一見解でございまして、今日も全然これに変わるところはございません。
  209. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 解釈は変わらないのだ、こう言っておりますけれども、それならば極東の平和——外務大臣の御答弁はいま範囲を答えておられる。私が聞いておるのは、極東の平和ということをアメリカは国連からその判定を委嘱されておるのですか、こう伺いたいのであります。極東の平和というのは、だれが判定をするのです。そのことをひとつ明確にしていただきたいのです。国連憲章の上のどこから出てくるか。
  210. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 日本政府立場というものは、ただいま申し上げたとおりの考え方でございます。  それから、国連は国連として、御承知のように所定の手続によって、あるいは安保理でありますとか、あるいは総会でありますとか、あるいは朝鮮の問題に限定をすればアンカークでこの種の問題は取り上げられ、そこで結論が出るのが通例でございます。
  211. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それならばきのうの議論にまた返りますけれども、認定がなければならぬわけですね。国連憲章三十九条の認定がなければならぬわけです。そうでしょう。そうすると、認定なしに平和が脅かされておるということに対する行動は出てこないわけです。いかがですか。
  212. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いろいろの角度から御議論をなさるので、なかなかお答えしにくいのですけれども、韓国におりますのは、三十八度線の平和を守り、休戦協定を守ろうというのは国連軍でございますから、その国連軍は国連の決議その他によってその職務が明確になっておる。それからその休戦協定などで予想されないような非常な緊迫した、かつ大規模、組織的、計画的なようなものが起こった場合には、あらためて国連で決議をするというようなことが間に合わない場合も観念的にはあり得るでございましょう。しかし、国連軍として与えられておる任務は、朝鮮における安全と平和ということがまた抽象的に全体にかぶった職務でもございますから、そういうふうな急迫した、かつ大規模な攻撃にさらされたというようなときに、これを排除するというそういう目的を持っていないものだと解することはできないのではなかろうか、かように昨日お答えしたわけでございます。
  213. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そこで、この二十年間も生きておる休戦以後の決議、そのこと自体がおかしいというのですよ。だから国連が本来の、たとえば五六年のスエズ、五八年の中東、六〇年のコンゴ、六四年のキプロス、こういうところで結成されてまいりました本来の国連軍というものと、この朝鮮国連軍というのは明らかに性格が違うわけです。明らかに性格が違うその五〇年代の冷戦構造であるものを、今日の時代においてもなおかつもう一ぺん起こしてくる。その決議の上に立って日本が縛られるということが、要するに日中の問題にいたしましても、対アジアの問題にしても、日本がフリーハンドを持ち得ない一番の基本にかかってくるわけです。だから、日本が朝鮮半島をめぐるあるいはアジアにおける緊張緩和をほんとうに先頭に立って考えよう、こういうのであるならば、先ほど申し上げましたようなスエズなりコンゴなりそちらのほうの国連軍と違う性格のこの国連軍というものをなぜいつまでも日本が支持をするか。そしてさらに決議の共同提案国に日本がなっていくということが、極東における緊張をさらに激化をさせる道ではないか、そういわざるを得ないわけです。  だから、七〇年代に向かうアジアの日本としての進むべき方向は、その朝鮮問題についても戦時の処理を依然として引き継ぐ冷戦構造ではなくて、その前に返った平和的な処理の方向に持っていく、そうした環境をつくり上げていくところ日本役割りがなければならない。なぜその方向に行けないのかという点が、日本の国策の一番基本の問題だと思うのです。そしてそれが佐藤内閣の七〇年代における一番の基本になる、こう思うわけです。その点をひとつ明確にしてもらいたい。
  214. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いままでは、国連軍の性格あるいは国連軍が攻撃にさらされた場合という具体的なお尋ねでしたから、そういう角度でお答えをいたしたのでありますが、今度はもっと大きな立場に立ってのお尋ねでございますから、そういう点に触れて申しますれば、先ほども触れましたように、たとえば一九六六年、これはもうずっと最近のことでありますが、国連総会で、朝鮮問題に関する決議が行なわれますときに、わが国は共同提案国になっております。その決議は、朝鮮における国連の目的は、朝鮮において平和的な手段によって代議制の政体のもとに統一された独立の民主的な朝鮮を確立することが目的になっておりますことは、御承知のとおりと思います。これは日本が共同提案国になって、向かうべき道についての日本姿勢というものは、この中にも明らかになっております。こういう点は先ほど総理からもお話がありましたように、今度の共同声明にもこういったような気持ちは十分底に流れておる、私はかように理解しております。これが今後における基本的な考え方でなければならない。つまり、国際緊張の緩和ということが大目標でなければならない、こう考えておるわけです。  しかし、一九六六年以降、この決議ができましたあとにおきましても、毎年のやはり国連の総会やアンカークにおきましては、いまの国連軍の使命、性格というものがいつも再確認されておる。ということは、日本のみならず、大多数の国々、国連の構成国の大多数の国々が、いまだ現実の問題としては、三十八度線を前にしての緊張が去っていない、こういう認識に立って、多数の国が、この国連軍の使命、性格というものをはっきり認めていかざるを得ない、これが現実の姿であるということも御認識いただいているところかと思います。
  215. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 時間の関係もありますから、ひとつもう少し詰めていきたいと思いますが、ラオスに対して米軍が爆撃をいたしております。このことは明らかに一九六二年のラオス中立宣言に反すると思います。日本政府の態度を明らかにしていただきたいと思います。
  216. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ラオスの状況につきましては、的確な詳細の報告を御説明するまでの資料はまだございませんけれども、ラオスの治安状況が相当に乱れているということは、客観的な事実のようでございます。なお、今後の状況も見守りまして、十分注視してまいりたいと思いますけれども、ただいま政府としての見解を申し上げる段階ではないと思います。
  217. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 B52が爆撃を行なっておるのでありますが、これは当然タイのウタパオあるいは沖繩の嘉手納、こういうふうに判断をせざるを得ないと思います。そういたしますと、嘉手納からラオスに爆撃が行なわれておる、こうなりますと、この問題は解決のめどがついていない。さらにはベトナム自体も七二年に解決されるということを期待をしておる、こういうことになりますが、ベトナムの解決についてもたいへんわからない状態にあるわけであります。そういたしますと、このB52のラオス爆撃の問題についても、いずれ日本政府としてもベトナムの爆撃と同様問題になってまいると思うわけであります。でありますから、いまは情報がわからぬ、こういうことでありますので、政府としてもなかなか言えないのだと思いますけれども、ラオスの中立協定の違反である、あるいはラオスに対する爆撃の根拠というものが不明確なまま、いまアメリカの議会でもこのことは問題になっております。明らかにせよということで議論になっておるわけでありますが、わが日本の領土の、返ってきていない沖繩の基地がその問題に使われておるということについては、重大な関心を持たざるを得ないわけであります。でありますから、この点については、議論が少し進み過ぎるかもわかりませんけれども、ベトナム同様爆撃、こういうことになりますならば、極東の範囲はさらに広がっていく、こういうことになるわけでありますか、いかがでありますか。
  218. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 極東の範囲につきましては、先ほどもくどく申し上げましたのが政府の統一解釈でございますから、さように御承知を願いたいと思います。この範囲を拡張するというような事実はございません。
  219. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 極東の範囲というのは、私は事前協議以上に大きな問題だと思うのです。極東の範囲よりも、極東の平和という問題ですね。この問題は非常に大きいと思うのです。実際にこの極東の平和の問題を日米間で協議をする機関は日米安全保障協議委員会でありますか、いかがでありますか。
  220. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 極東の範囲については、いま申し上げましたとおりでございます。  それから、白米安保協議委員会は安保条約についての協議をするところでございますから、主として具体的な、たとえば先ほどお話が出ておりましたが、地位協定の問題その他がむしろ論ぜられるところであって、いまお尋ねのような広般な問題につては、少なくともいままでは議題になったことはございません。
  221. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 具体的に議論をしなければならない、こういうふうになった場合に、日米安保協議委員会は、外務大臣防衛庁長官ですね。アメリカ側は大使と太平洋軍司令官だ。そこで共通の関心を話し合う、こういうことになれば、日本側が極東の範囲についてこれまで持ってきた解釈というもの、アメリカ側が関心を持つ地域というもの、それは明らかに食い違ってくると思うのです。たとえば太平洋軍司令官がこの極東の地域を考える場合には、当然太平洋軍司令官の管轄内を極東として考えてくる。そうなれば、今日太平洋軍司令官のもとにあります第七艦隊の担当区域というのが太平洋軍司令部においては極東にされておるわけですね。そのアメリカの世界戦略における極東区域というものと、日本政府国会答弁をしてきております極東区域というもの、これは区域の問題であると同時に、極東の平和の問題として非常に大きな関連が出てくるわけです。今日第七艦隊の範囲というのは、北はベーリング海から南は南極、東はハワイ西方の東経百六十度から西はインド洋上の東経九十度、こういう広さの範囲を第七艦隊が極東区域として防衛しておるわけです。そうしますと、アメリカの戦略上の極東、しかも極東の平和、極東の範囲ということで軍事行動を行なう。その軍事戦略家の立場からいう極東というものと、政治的に答弁をしておます日本国会における極東というもの、それがきわめて食い違ってくることはもう明確だと思うのです。その点は絶対に食い違いはないのかどうか。そしてアメリカの共通の関心を持つ——そこに地理学的なものでないという非常に大きな幅を持ってきておるわけでありますが、その点をひとつ明確にしてもらいたい。これまでも極東の範囲は限定されないんだ、共通の関心を持つ地域なんだ、こういうことになるならば、まさに第七艦隊の米軍戦略上の極東の区域まで広がるではないか、こういう点を指摘せざるを得ないのであります。その点を明確にしていただきたいと思います。
  222. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 たびたび申し上げますように、安保条約上の極東は日米両国が平和、安全の維持に共通の関心を特に有している区域でありまして、かかる区域は大体においてフィリピン以北であります。これがわれわれの解釈でございまして、アメリカの第七艦隊の守備範囲がどこまでか私は存じませんけれども、そういうものに支配され、影響されるものではございません。
  223. 中野四郎

    中野委員長 川崎君に御注意を申し上げますが、お約束の時間がだいぶ経過しておりますので、この点お含みの上、結論をお急ぎ願います。
  224. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 対アジア政策の基本の問題を、醜い日本人であるとかあるいはエコノミックアニマルであるとかといういろいろなことで今日問われておるわけであります。そういうことは、これまで内にひそんでおりました日本が、いま経済力がつくことによって、アジアに経済進出というか、経済行動を強めてきておるわけです。その日本国民の、なかんずくそうして出ていく若者の力というものはあふれるものがあるわけですね。しかし、そのあふれるものがアジアに出ていく場合に、日本の基本的なアジアに対する態度というのが明確でなければ、この点は誤解を招くわけです。そしてそのことが今日、エコノミックアニマルであるとかあるいはイエローヤンキーであるとか、あるいはさらにはおたくの自民党の中からはエロチックアニマルであるとかということばまで出るほどたいへん残念な状態にあるわけです。  そこで、このほんとうにアジアの国々から信頼をされて、そして日本がアジアの発展途上にあります国々の経済開発に協力をして、真にアジアの発展に寄与する、平和的方向を進めていくという点は明らかに日本の態度にかかってくると思うのです。そしてその態度がいま防衛費の問題にもあらわれておるわけでありますし、さらには、経済進出、資本進出のあり方にも問題があるし、あるいは今回の共同声明における冷戦構造への逆戻りというふうなものも、アジアにおいてたいへんな誤解を与えておる、こう思います。だから、日本がアジアに出ていく一番大きな態度というもの、アジアに出ていく態度というものの基本は何か、これは武器輸出の問題も、きょう午前中いろいろ議論もございました。しかし私は、やはり日本に余裕ができたならば武器輸出もするのだ、こういうような方向で、宮澤大臣答弁も前の菅野大臣のときからしますとだいぶ前進をしてきております。前進というか、幅を広げようとしておる。そういうことが今日アジアから日本が誤解をされる根本だ、こう思います。だからまず第一に、武器輸出禁止の法律というものをつくること、それから平和憲法に基づいて日本が行動していく、ただ憲法を改正しませんという消極的なことでなくて、日本の対外行動の基本にもう一度平和憲法が全面的に据えられなければならないということを明確にしなければならない、こう思うのです。  でありますから、日米共同声明からまいりますそうした冷戦構造への逆行、これはどうも短い時間で十分に議論がかみ合いませんでした。しかし私は、今回の共同声明によって韓国なり台湾なりとのコミットあるいは日米韓台の防衛体制の問題等、こうした点で逆行すべきでない。その点をひとつ総理大臣からアジアに対する日本の態度、憲法に基づいた基本姿勢というものを明確にしてもらいたい、こう思います。
  225. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もう川崎君に何度も申し上げるわけにいかないと思いますが、私どもは平和憲法のもとでどこまでも自由を守り平和に徹する、そういう立場わが国の存立の基礎を築いております。この点を明確にしてまいりたいと思います。しかしながら、まことに残念なことには、国内におきまして、ただいま申し上げるような自由を守り平和に徹する、このことが十分理解されておらない。たとえば今回の日米共同コミュニケにいたしましても、これはたいへん逆行している、そろそろまたよろいのそでがあらわれている、こういうような言い方をされること、ここらにアジアの国民日本を理解しにくいものがある、かように思うのじゃないかと思います。  私は、何と申しましても、まず日本国民一つの信念を持って、ほんとうに自由を守り、平和に徹するその心がけ、これにひとつコンセンサスをつくってもらって、そして、われわれがやっておることがただいまお尋ねがありましたようなそういうような方向で行っているものでないことをよく御理解いただきたいと思います。まず、日本国民からわが政府の態度を十分理解していただくことが何よりも先じゃないだろうか、かように思います。
  226. 中野四郎

    中野委員長 これにて川崎君の質疑は終了いたしました。  次に、西宮弘君。
  227. 西宮弘

    ○西宮委員 私は、ただいま農業の問題が非常に大事になっておりますので、この問題についてお尋ねをしたいのでありますが、何しろ総理に対するお尋ねでありますから、きわめて基本的な問題をお尋ねをしたいと思います。  そこで、その基本的な問題の第一として、政府国民と言う場合には農民を含むのかどうか、こういうことを伺いたいと思います。
  228. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん全国民をさして国民と、かように申しております。
  229. 西宮弘

    ○西宮委員 もちろん全国民だから含む、こういう話でありますが、私は、先般佐藤内閣が閣議で決定をされた昭和四十五年度の予算編成方針でありますか、これを見ますると、「国民生活の充実向上を図っていくために」こういうことで左記の事項を実施をするとうたいまして、その中に書きましたのは、「食糧管理特別会計繰り入れについては、両米価水準を据え置くこと」それから「米作転換のための措置をとること」この二点だけを取り上げておるわけでございます。それ以外には全く何もない。そうすると、この二点ですね、両米価の据え置き、さらに米作転換、いわゆる一割減反でありますが、これはどう考えてみても、少なくとも農民の場合に、生活の充実向上のためだ、こういうふうには理解できないと思うのでありますが、どういう関係ですか。
  230. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が申し上げるまでもなく、いわゆる専業農家、こればかりが農家ではございません。また兼業農家も多数あること、これらのことを考えながら最近の国民所得の増加、ことに農村におきましても農作に従事しておられる方々の所得の増加等も考えられる、かようにお考えいただきたいのであります。  いまの両米価を据え置くという、これは生産者米価、消費者米価、これが両米価といわれる表現でございます。必ずしも消費者米価を据え置くことが、消費者である農民の方に非常に不利益だとは私は思っておりません。生産者米価が据え置かれるということ自身がずいぶん不利益だろう、かようにも言われようとするのでございますけれども、さようなものではないと、かように思います。ことに私、ただいま申したように、専業農家の場合には、米つくり、これはたいへんな問題だ、かように思いますけれども、その専業農家でも果樹をつくったりあるいは蔬菜をつくったり園芸栽培、牧畜をやったりいろいろやっておられますから、一がいにこれで農民を考えておらぬ、こういう非難は当たらないんじゃないか。それよりも、もっと実際的にいまの米の余っておる状況のもとにおいて、いかにして米作農民の方々の協力を得るか、その意気込みをそがないようにすること、これが大事じゃないだろうかと私は考えております。  そういう意味で、西宮君のお尋ねも私はあまり皮肉にばかりはとっておるつもりはございません。おそらくこれからさらにそういう方向に発展されるのだろうと、かように思ってお答えいたします。
  231. 西宮弘

    ○西宮委員 確かに、たとえば兼業農家であるとかないしは米と関係のない農家とか、こういう人は消費者米価が据え置かれるということには利益を感ずるだろうと思います。しかし、少なくとも農民の大半は米作農民であって、したがって、米作農民の場合は、その両米価の据え置きということが重大なる影響を持つ、あるいはまたいわゆる  一割減反というような問題はさらに重大な関係だ、こういうことはまさにそのとおりだと思うのですよ。ただ誤解のないようにお断わりをいたしますが、私は何も米価は上げさえすればいいんだ、あるいはまた、農民のためには一円でも二円でも金を政府から出させればいいんだ、そういうような無責任なことを考えているわけではないんで、そういうつもりで言っているわけではありません。  しかし、少なくともこの発想は、私は重大な間違いがあると思うのですよ。つまり見出しは「国民生活の充実向上」こういうことをねらいにいたしまして、取り上げておるのは、いま総理は畜産とか果樹とかいろいろなことを言いましたけれども、そういうことは何も書いてないわけですよ。ただ書いてあるのは、両米価の据え置きと一割減反の問題を書いている。したがって、これは明らかに——総理の気持ちはわかりますよ。いま言われた気持ちはわかりますが、少なくともこの発想のしかた、つまりこれはきわめて不用意の間にこういうことを書いているのだろうと思う。だから、人間というのはしばしば不用意の間に本心が出るもので、ここでもその本心を暴露しているのじゃないか、私はそういうふうに思うわけです。どう考えてみても、米価の据え置きというようなことは理屈に合わないわけですね。こんなに物価がどんどん上がっている中で米価だけを据え置くというのは、私はどうしても理屈に合わないと思うのですが、この点どういう理屈をお考えになりますか。
  232. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも農家に対する思いやりがないということをもう一言私にも弁解さしていただきたい。  財政演説をよくお聞き取りだったと思います。大蔵大臣はそれで各般にわたって説明した、かように申しておりますから、ただいまその書き方の資料だけで判断しないで、ところどころで本心が出てくるんだ、こういう皮肉は言われないようにひとつお願いしておきます。  ときに、ただいまのような問題について、私は、何と申しますか、最近の米の需給状況、これを見まして、非常に過剰生産というか、生産が効果をあげている。一体どこから出てきているのか、これはやはり米の生産について、過去において米は不足であった。これは国民の主食だ、そういう意味で過保護の状況であったのではないだろうかと思います。そういう意味で、何とかかんとかして米作中心の農業が展開された。その結果がただいまのように米が過剰、残るようになった。しかも、わずかじゃございません。その数量は、私があらためて申し上げるまでもなく、非常な数量が残るようになりました。そうして、一方で国際米価というものと比較してみると、日本の米価は非常にいいところへとどまっている、こういう状況になっております。しかし、なかなか米価は高いが、いわゆる近代的産業としての生産性は向上されたのかどうか、こういうことを見ると、私はくふうすべき点が非常にあるように思います。いろいろ機械は使われて省力化、その方向にはいっておりますけれども、その機械が十分に使われておらないという、そういうものもあります。そこらをもう一度ひとつ反省してみようじゃないかという、それがただいま言うようなずいぶんドラスチックな思い切った処置でございます。これはたいへん農村の方々に申しわけのないような、一般労賃はどんどん上がっているにかかわらず、この生産者米価を据え置く、そういうようなドラスチックな処置をとらざるを得なくなった、ここらに私は問題があるように思います。  しかし、ただいま農業協同組合なりあるいは市町村なりあるいは府県なり等も今回の措置については積極的に協力しつつございます。これらの点を勘案しながら、こういうような思い切った、また農村の方に非常な打撃を与えるような処置がとられないで済むような方法はないだろうか。これからとにかく軌道に乗せることが本筋だろう、かように思ってただいま農政問題と取り組んでいるような次第であります。必ず皆さん方からは取り組み方がおそいとおしかりを受けるだろうと思います。しかし、これはやはり農業の性格上、豊凶、これは天候に左右されやすいものでございますから、そういう点も手当てのしかたがおくれたという点、これもエクスキューズにはなりますが、御理解をいただきたいと思います。
  233. 西宮弘

    ○西宮委員 どうも総理答弁が、あとで私も聞こうと思ったんですが、先の先まで答弁をしてしまわれるので、たいへんに困るのですよ。困るのは、それは先でもけっこうでありますが、ただ時間が限られておりますから、聞きました点だけお答えを願いたいと思うのでありますが、私は、この物価の上がっている中で、生産者米価を据え置くというのは理屈に合わないのではないか。だから、そこはどういう理屈をおつけになりますかということを聞いたんで、そこだけ一言で答えてください。
  234. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは価格構成上やむを得なかった、かように御了承いただきたい。
  235. 西宮弘

    ○西宮委員 価格構成上やむを得なかったというのじゃ、まさに答弁にならないと思うのですが、言いたいのは、あるいは近ごろしきりに新聞等の談話等でいっておりすまから——たいへんに余ってきたんですね。さっきも総理が言われたように、過剰になってきたんで、したがって、いわゆる物がたくさん出れば物価は安くなるんだ、そういう経済原則に従っているんだ、こういうおつもりかと思いますけれども、そういうことですか。あまりお答えが長過ぎるのは困るんだけれども……。
  236. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来申し上げますように、現在の米価は過去から積み上げて相当なところへ行っている。そうしてただいま過剰になっている。そこで据え置くという結果でございます。
  237. 西宮弘

    ○西宮委員 過去から積み上げてと言われるならぱ、一つだけ申し上げて、これは総理にもぜひとも十分御了解を得ておいていただきたいと思うのでありますが、私は、今日米価がこのように高くなったのは、実はもとをただせば、事の起こりは農民の責任では全くないと思うのですよ。全然農民の責任ではないと思う。日本で初めて日本政府が米価をきめたのは昭和二十八年であります。つまり独立をしてですね。昭和二十八年であります。そのときに一万をこえる米価になったわけであります。正しく言うと、一万六百八十二円という米価になったわけでありますが、それから七年間、昭和三十五年までは米価は一銭も一厘も値上げをしませんでした。その間に消費者物価は一四%足らず値上がりをしたわけであります。つまり年率二%足らずの値上がりであります。だから、年率二%足らずの値上がりをする中で、米価は一銭も一厘も値上げをしませんでした。だから私は、もしも今日までその程度の物価の値上がりが続いておったとするならば、昭和四十五年の今日もなおかつ大体似たり寄ったりの米価であったのではないかと思う。上がっても多少上がったという程度で済んだんじゃないかと思う。ところが、御承知のように、昭和三十五年の暮からいわゆる経済成長ということで、物価が急激に上がり始めた。そこで、やむを得ず三十六年から米価もこれについて上がらざるを得なくなったわけです。ですから、最初の七年間は物価が高騰する中でがまんをしてきた農民は、三十五年に日本経済政策が大転換をする中で、結局米価も上げざるを得ないというところに追い込まれてきたんで、この事実だけはぜひとも十分御了解を願っておきたいと思う。だから、少なくともその事の起こりは、農民の責任ではない、農民とは全く縁もゆかりもない、そういう原因から出発をしたんだということだけは、十分御了解を願っておきたいと思うのであります。
  238. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 別に答弁を求められておりませんが、私は、農村の農民に責任があると、かように申しておるわけではありません。私は同時に、この農業自身が近代化されることあるいは生産性を高めるという、そういう努力が払われてしかるべきであったろう、かように思います。それはむしろ指導者側にそういう責任の大部分はある、かように考えております。
  239. 西宮弘

    ○西宮委員 指導者側といえば、まず第一の指導者は政府でありましょうから、政府にも大きな責任があるということを反省しておられるならば、あえてこれ以上その問題を追及いたしません。  さらに私は、いわゆる生産がふえてきたんで、過剰になったんでいわゆる経済の原則に従って下がるんだというのならば、あの食糧が足りなかった時代、あの当時にはその経済原則は何ら適用されなかったわけですよ。いまもう一ぺん思い返してみたいと思うのでありますが、あのときは、たとえば昭和二十一年には、政府の買い上げ価格は五百五十円であったわけであります。やみ価格の平均は四千八百二十二円であったわけであります。ちょうど九倍足らずの倍率であったわけであります。ですから、そういう値段で強制的な買い上げをした、これが当時の現実なんだ。だから、その経済の原則は、余ったときには適用するけれども、足りないときには全く適用しない、こういうことは私はどうしても納得できないのであります。  そこで、私は、実は政府の閣僚の皆さんが農業問題についてどういうことをお考えになっているだろうかということを、参考のために知りたいと思いましたので、この間の選挙の際の公報を拝見したのであります。そうすると、それぞれいろいろなことを書いておられますが、いまの米価の問題について特にわかりやすく書いておられますのが荒木萬壽夫候補者でございます。したがいまして、ちょっとここだけ御紹介をいたします。「年々の豊凶に依つて政策が動揺するようでは農民の生活が安定する筈はない。物価があがれば米価を上げるのは当然の事である。殊に農民所得が一般勤労者」云々、そこは飛ばしまして、「唯単に豊作だからと言って米価を据え置く事は農民に高度成長によるしわ寄せを強いるものと言いわざるを得ない」こういうことで、非常にわかりやすく書いておられるわけですね。私は正直のところいままでは荒木さんという方は非常におっかない人のように思っておったわけです。ところが、決して、どうしてどうして、これを見ますと、まことに親切な方だということを再認識をいたしまして、私の認識の誤りを訂正したいと思うのであります。荒木さんは、今日は閣僚の一人として内閣におられるわけですから、荒木さんはこの説を主張する。したがいまして、もし万一内閣としては、米価据え置きだ、こういうことを決定しようとすれば、当然に閣内は不統一、内閣は瓦解をする、こういうことにならざるを得ないと思うので、そういうことにならぬようにぜひお願いをいたしたいと思います。——時間がありませんから、進行いたしましょう。私はそういう意味で、内閣の不統一になって瓦解をすることのないように、したがって、米価の据え置きなんということがないように希望しておきたいと思います。申し入れをいたしておきます。(「答弁答弁」と呼ぶ者あり)それじゃ、総理、一言。
  240. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 選挙の公約事項等について十分説得をいたしまして、内閣は意見の不統一を来たさないようにいたすつもりでございます。いろいろ御心配をいただいてまことにありがとうございます。お礼を申し上げます。  また、私は選挙の際に西宮君の選挙区に参りまして、そして聴衆から、米価は一体どうするんだ、こういうことを特に尋ねられまして、そのおりに私答えたのは、ただいま米がたくさんある、こういうときこそ近代化をはかり、合理化をし、そして近代的農業を確立する最もいい時期じゃないか、米の足らないときにはなかなかそういう余裕はないんだ、近代化だとかなんとかいっているわけにいかない。耕して山巓に至り、川の底までも掘ってそこを水田にするようだ、けれども、もう今度はこうなったんだから、ここで思い切ってひとつ近代化をはかろう。こういう演説をいたしましたことをつけ加えさせていただきます。
  241. 西宮弘

    ○西宮委員 例によって長くなりますので、ひとつその点だけくれぐれもお願いいたします。ただし、荒木さんは、これは公報に載っけた選挙の公約なんですから、簡単に説得するなんということで片づけられたんでは、これはまさに選挙民に対する重大なる食言だと思うのですね。そういうことは許されないと思う。ぜひひとつ……。  先へ進みたいと思いますが、総理は、こういう際にぜひ農民に対して——いま非常に農民が不安におちいっているということは、総理もよく十分御承知だと思いますが、ぜひほんとうのビジョンを示していただきたいと思うのです。私は、農民諸君が今日まで果たしてまいりました歴史的な役割り、これはまことに大きなものがあったと思います。こういう点を十分に評価をして、そこから出発をする、こういうことでなければ、ほんとうの農政は確立されないということを考えるわけであります。ところが、政府政策を見ましても、いわゆる農業問題はありまするけれども、農民問題はないといってもよろしいほど農民の問題が軽視をされておるのではないかと思います。  私は、そこで一つ次にお尋ねしたいのは、最近の農政がいわゆる場当たり農政とかあるいはネコの目農政とかいうことをいわれるのでありますが、それに対する総理の所感はいかがですか。
  242. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま言われる前段、私も同感でございます。今日、私どもがかように生活ができ、また国内秩序が保てる、これは農村の方々が米作に励んでいただいたその結果であります。そのもとにおいて今日おくれておるその生産性を近代化していき、そうしてりっぱな産業にすること、これが私ども役割りだ、かように思います。  口の悪い人たちからネコの目農政だとかいわれておりますが、これはまことに残念でございまして、そういう点で私は農政自身がなかなか簡単なものでないこと、これもわかりますから、よく皆さん方の御意見も伺って、そうしてりっぱな農政を推進していく、その決意でございます。
  243. 西宮弘

    ○西宮委員 ネコの目農政と口の悪い人からいわれていると言われますけれども、これはあえて口が悪い人が悪口を言うのではなしに、私は今日までの政府のやってまいりました農政、これを見れば、何としてもそう考えざるを得ないと思うのですよ。おそらく総理御自身だって、まあ答弁だからああいう答弁用のことばを使っておられるのだと思いますけれども、いままでの農政があまりにも変転をしてきた、絶えず変転を繰り返してきたということは、十分御承知じゃないかと思うのです。  私は東北の人間でありますから、たとえば東北のことを例にとって申しますると、東北七県知事会議が、これは新潟も含みますけれども、東北地方を食糧の供給基地にする、こういうことを知事会として決定をして提言をしたことがあるわけであります。昭和四十一年の八月。四十一年と申しますのは、ちょうど日本では初めて食糧は生産が需要をほんのわずかだけ上回ってきたというときでありますが、そのとき食糧の供給基地になる、こういうことを唱えまして、決議をいたしまして、政府に要請をいたしました。政府はいろいろとそれに対して、今日まで直接間接指導をしてきた、あるいは助力をしてきたというのでありますが、その間に、たとえば秋田県では健康な稲つくり運動であるとか、福島県では四・六運動であるとか——四・六運動というのは、四割増収で、六割は省力農業、山形では六十万トン米つくり運動、宮城県では部落ぐるみ一割増産運動、青森県では四・六米つくり運動、これは平均が四石で目標は六石という意味であります。新潟県では百万石増産運動。こういうことで、この七県いずれも増産運動をきわめて熱心に展開をしてきたわけであります。これに対して政府としては、いろいろと助言、助力をしてこられましたけれども、この運動が間違いであるというようなことで指摘をされたことはもちろんない。あるいは九州では、特に佐賀などでは新佐賀段階こういう米つくり運動がこれまた熱心に提唱されてきたわけであります。  こういうふうに少なくとも政府は米つくりを奨励してきた。そういうことに相呼応して、地方の責任者がこういう運動に熱心に取り組んできたというのは、けだし当然だと思うのでありますが、私は一つ御紹介をいたします。これは秋田県の知事が、昨年の十一月二十八日開きました農民の大会でありますが、ここでは反収七百五十キロ以上とった者を表彰する。こういうことで、五千人の農民を集めて表彰式を行ないました。そこで、その知事があいさつをしていわく、一割減反をしても二割増産をすればよろしい、そういうあいさつをしたところが集まった五千人の農民は割れるような拍手を贈った、こういうことが新聞に出ておるわけであります。これは昨年の十一月二十八日ですよ。もういろいろと生産調整などという問題が盛んに出ておるとき。そのとき、もちろんその秋田の知事といえども、そういう事情を知らないはずはない。しかし、それにもかかわらず、農民の前でこういう演説をしなければならなかった。これは知事も非常に苦しかった。つまり今日まで、さっき申し上げたように、食糧の基地だ、こういうことで取り組んできたわけでありますから、そうして農民を鞭撻をしてきたわけでありますから、そこで、それだけの該当者が出たので、それを集めて表彰式をやったわけですから、そういう演説をしたのも知事としてはいろいろ苦心をされたのではないかと思うのでありますが、私はこういうのを見ると、これは喜劇ではなしに、まさに悲劇だと思うのですね。しかも、そこで農民が万雷の拍手を贈ったというのは、その万雷の拍手の中に、何とかしてそういう事態になってくれ、われわれは米をつくっても、そのつくる米が十分に政府に買い上げをされて、われわれは安心をして米つくりがやれる、そういう農業をやってもらいたい、そういう祈りを込めて、そういう心からの願いを込めて万雷の拍手を贈ったのだろうと思うのですよ。だから、そういう農民の心情はまことに私は察するに余りがあると思う。  私はそういう点についてもう一ぺん総理お尋ねをいたしますが、さっき指導者も反省すべきであるということを言いましたけれども、今日までのいわゆるネコの目農政といわれる——総理は単にそれは口の悪い人の悪口だと言われたけれども、私はそうだと思いませんよ。だから、総理は、そういう点について、今日までの農政の指導について反省をするのかしないのか、その一点を伺いたいと思います。
  244. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん反省をしております。そうしてただいま申すことばで、端的に長くならないように申せば、いわゆる総合農政を展開する、こういうことばでございます。おわかりだろうと思います。
  245. 西宮弘

    ○西宮委員 私は、反省をするけれども、総合農政をやるからいいじゃないかというふうにしか聞こえないわけですけれども、そうではなしに、今日まで増産、増産といって、しりをたたいてきた政府が、一ぺんに、急激にここでストップではなしに、バックをしろいうわけです。フルスピードで前進をしてきたやつを今度は突然バックをしろ、これじゃ日本じゅうの農家がみなむち打ち症になってしまうと思うのですよ。いまの農政が全くむち打ち症農政だ、こういうことを言う人もあるわけです。私は全くそのとおりだと思うのです。  農林大臣お尋ねをいたしますが、いままでの干拓開田ですね、これはどういうふうにお扱いになりますか。
  246. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御存じのように、継続事業がたくさん全国にございます。そこで、先ほど質疑応答もございましたように、米がいま非常に過剰でございます。この圃場整備その他干拓等につきましては・いままでやってまいりましたにはそれぞれの歴史もございますので、いままでの継続事業につきましては、基幹的な事業は継続してやっていただくことにいたします。ただし、目的が水田であるものは、目的を転換してもらって、畑地のほうにつくり直してもらう。そういうことで、できるだけ継続してやってまいるようにいたしたい、こう思っております。
  247. 西宮弘

    ○西宮委員 今日まで直轄でやっておりました干拓は十四あったはずでありますが、その中で特に、たとえば茨城県の高浜入りですか、あるいは佐賀干拓であるとか、こういうのは四十二年に始めているのですね。私はずいぶん無定見だと思うのです。四十二年という年は、もう大豊作でたいへんに余ったといわれるときだが、四十一年ではとんとんになったわけですね。したがって、四十二年にこういう計画を始めて、しかもこれには、たとえば漁業権の補償というようなことにずいぶん苦労をして、たいへんな金を使ってきたわけです。それがすっかり漁業権の補償もできて、金をかけてやった、そうしたら、とたんに今度は水田はいかぬ、畑作に切りかえろ、こういうことなどは、現地の農民にとりましては、まことに深刻な問題だと思うんですが、そういう点はどうお考えでございますか。
  248. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いまのようなお話の一番いい例か、茨城県の高浜入りだと思います。これは事情をよく調べてみますと、いまお話しのように、漁業補償等を地元の県知事その他多くの土地の方々が中に入りまして、たいへん苦労をしてようやく話をまとめてやり始めるということになった事情もございますので、先ほど申し上げましたように、他の用途に転換してもらうことを条件にいたしまして、仕事は継続してあげるようにいたすことが地元の人に安心してもらうゆえんではないか、こういうことで継続させるようにいたしております。
  249. 西宮弘

    ○西宮委員 あるいは八郎潟の問題について、これもお尋ねをしたいのでありますが、これは途中で計画を変更して、これからはやめてしまう、こういうことになったわけですね。これなども七百億もの非常な大金を投じてやることになっておったわけですよ。おそらく五百億くらいはもうすでに使ったんじゃないかと思うんですが、むろん、その使ったのは、これからも農業をやりましょうけれども、しかし、それは全体として七百億で、あれだけのスケールでやる、こういうことで、あらゆるものが設計されているわけですよ。ところが、それが途中で半分で切れてしまったということでは、最初の計画が計画どおりに実行できないということは当然なんです。したがって、今日すでに入った四百何戸の入植者は非常にろうばいしているわけですね。あるいは非常な深刻な不安におちいっている。こういうことは新聞等でも十分御承知のとおりなんだけれども、こういう点についてどういうふうに処置をされるお考えですか。
  250. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 八郎潟につきましては、お説のようなことでありますが、あれは外国から技術を入れたりして、非常にたいした意気込みで始めました干拓事業でございますが、今日まで四百六十戸入っておると思います。約半分でございます。そこで、ただいま研修に来ておりますのは、もう自分の郷里の家を売り払ったりなどして、あそこへ永久に住みつくつもりで入ってきておる研修者を帰れというわけにもまいりませんので、その人人をもって終わりにいたしまして、新しい募集はいたさないことにいたしております。  もう一つ、そこで漁業権などを持っておりました者に、一定の土地を交換してあげるというお約束も地元民とございますので、その程度のものは実行いたすようにして、あとにつきましては、あの地域に対して何が一番適当であるかということ、たとえば畜産等を試験的にやってみて、あとの土地は生かしていかれるように研究を続けてまいりたい、こう思っております。
  251. 西宮弘

    ○西宮委員 最初の計画の半分しか人が入っておらない。そういうことで、最初は全体の大きいものを干拓するために金を使ってきたわけです。したがって、半分の人でそれを負担するということになると、その一人の負担額がふえていく、こういう問題が出るおそれがあるわけだけれども、そういう点は全くないですか。つまり計画変更のために負担がふえる、そういう結果になることは絶対ありませんか。まあ答弁だけしておいてください。
  252. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 あれは全部で大体九百何戸入って一つのりっぱな村ができることになって、もう町長さんもできておるし、組合もできておるし、倉庫もそれなりにりっぱなものを計画してあるわけであります。そういう新しくできてまいりました自治体などの問題もあるやに思いますけれども、いま申し上げましたようなことで、あとのほうは他の用途に転換するつもりでありますから、そのために入植者について迷惑のかからないように、もちろん私どもでは用意をいたしたいと思います。
  253. 西宮弘

    ○西宮委員 それじゃ、少なくとも負担がふえるということはないということだけは明瞭にしておいてもらいたいと思うのです。  そういうことで、九百何戸が入って、それで全体としていわゆる大農方式の新しい農業のモデルをあそこでやろうとしたわけですよ。それができないということは、入植した人たちが非常に大きなショックを受けていることは当然だけれども、同時に、それだけではなしに、私は全国の農民が失望していると思うのです。つまり、ああいう新しい形態の農業をあそこでやってもらう、それが今後の日本の農業の一つの指標になるならば、モデルになるならば、ぜひそれを参考にしたい、そういう期待をしておった人がたくさんあると思う。したがって、あれが中途はんぱに終わってしまうということは、全国の農民にとって大きな問題だと思う。総理、いま申し上げたような急激なストップかバックか、そういうことで、たいへんな損害を受けているわけですよ。私は政府の責任重大だということを申し上げたんです。  そこで、それでは政府はどういう指導をしてきたか。さっきも申し上げたように、昭和四十一年で米はとんとんになったわけですね。四十二年のときに、佐藤内閣総理大臣は、施政方針の中ではこう言っているわけです。「生産の振興をはかるなどの対策を積極的に進め」云々と、農業の問題については、生産の振興をはかるなどの対策を積極的に進めると、ここでもやはり相も変わらず従来の生産増強ということでハッパをかけているわけです。農林大臣や大蔵大臣はもとより全くそのとおりの、それを裏づけをした指導をしているわけであります。農林大臣、大蔵大臣は所信表明というんですかな、あの中でそういう同じことを繰り返しているわけであります。その次の昭和四十三年、この年は、もう四十二年でたいへんな過剰になったといわれた時代なんですね。その四十三年に佐藤内閣総理大臣は農業問題については一言も触れておらない。全然触れておらないわけであります。それはなぜなのか。いまにして思うと、どうしていいかわからぬという状態であったのかもしれませんね。とにかく一言も触れておらないということでありました。私どもはまことに無責任だと思うのであります。佐藤総理大臣は農業問題には一言も触れておらない。大蔵大臣は所信表明の中で予算の説明をしておりまするけれども、ここでも米が過剰だというようなことは一言も言っておらないわけであります。農林大臣は西村さんでありましたけれども、「主要な農産物について長期的視点に立ってその生産振興を図る」云々と、こういうことを言っているだけです。農林大臣は生産振興をはかる云々と、こういうことで、米が過剰だなんということは、ここでも一言も言ってない。これが昭和四十三年ですよ。四十四年、つまり昨年になって初めて、佐藤総理大臣は「米の生産が需要を大幅に上回る一方、」云々ということで、ここではその生産が需要を上回ったということを初めて言っているわけです。そして、農林大臣は、「米の生産が増加しているため大幅に緩和し、」つまり食糧事情は緩和をしておるということを言っているだけだ。今後ともこの基調変化はないと考えます、食糧事情が緩和したということを農林大臣は言っているだけ。そのときの農林大臣は長谷川大臣でございます。そして施策としては「米の主産地域を中心として」つまり米の主産地を中心にして生産を伸ばしていくんだ、主産地を中心として生産性の向上をはかり云云と、こういうことを言っている。そして新規開田を極力抑制いたしますということも言っている。そしていろいろ長々述べてまいりまして、「以上申し述べましたような米対策を進めるにあたっては、農家の方々にいたずらに不安を与えることがないよう特に留意し、農家の方々をはじめ農業関係者の理解と納得を得て、その円滑な推進につとめる所存であります。」ということを言っているだけで、何を言っているのかよくわからないのですけれども、「その円滑な推進」というのは何をさすのか。前のほうから読んでみると、やはり米の生産をいっているんだろうと思うのですが、少なくとも、生産過剰になったから生産を押えるんだというようなことは一言も言っておらぬ。ただ一つ言っているのは、この新規開田はやめるんだ。それで昭和四十四年に初めて新規開田の調査費をストップをしたわけですよ。昨年ですね。私は、これではあまりにも無責任ではないかと思う。もし今日行なわれるようなこういう事態が来るならば——もう四十二年、四十二年と続いて余った、余ったと言って騒いでおるのですが、それに対して農林大臣の説明そのものが、食糧は緩和したということを言っているだけだし、主産地を中心にして云々ということで、最後のほうでは円滑に推進をはかるというようなことを言っておるだけで、その米が余ったから生産を押えようというようなことは、少なくとも一言も言っておらぬ。わずかに取り上げたのが、初めて新規開田の調査費はやめると、こういうことを言っておる。これでは何と考えても、政府政策、指導がまことに無定見だ、こういうことを申し上げても決して過言ではないと思うのですが、その点もう一ぺん総理お答えを願います。
  254. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま詳細に過去の施政方針演説その他を続み上げられた、そのとおりでございます。私はただ一言申し上げてみたいのは、米の生産、これはよほど天候に左右されがちでございます。豊凶というものは、そういう非常に天候いかんできまってきたというのが在来の型でございます。最近は農法が非常に進みましたから、ある程度天候も克服し得るような状況になっておりますし、水害などもたいしたものもございません。そういう点で、やや事態を甘く見た、見過ごした、こういうような反省はあってしかるべきだ、かように思います。そういう意味で、私どももその責任の重大さを痛感しておるような次第であります。
  255. 西宮弘

    ○西宮委員 天候のいかんで豊凶が左右されるのだ、こういうことなら、将来もそういう心配があるのではないか。だから、一割減反などというのは危険ではないか、こういうこともいわざるを得ないと思うのですが、いま食糧が余った、余ったと政府でいっておりますのは、決してそういう天候の問題ではなしに、農業技術の改善なり、そういうことで米の増産が定着した、こういうことを政府は常にいっているわけですからね。だから、今度はそういう天気のかげんだなどということを、かってにおっしゃらないようにしていただきたいと思う。そういうことでは、農民はますます迷わされる一方だと思うのです。それでは、また天気が悪くなるかもしらぬから、やはり減産などをやらないで、どんどんつくったほうがいいではないかという農民も出てくるだろうし、そういう、いわばその場のがれの答弁をされないように、ぜひお願いしておきたいと思う。こういうふうに昨年まで依然として食糧の増産ということを——増産ということばを使ったかどうかは別にして、さっき申しましたとおりの説明をしてきているわけですよ。そういうことならば、私はむしろ、これは国家賠償法にも該当する問題ではないかと思うのですよ。もちろん法律の規定がそのままこれに適用されるとは思いません。それほど私もむちゃなことは申しませんけれども、少なくとも国家賠償法の精神にそむくのではないかということだけはいえると思う。つまり「公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国は賠償の責に任ずる。」これが国家賠償法の規定なんでありますが、いままでああいう状態で生産を督励してきて、今度は急に減産をしろ、こういうことをいわれるのでは、減産をされる農民ははなはだ迷惑千万なのでありまするから、そういうことになりますると、まさに国家賠償法の精神にそむくといってもあえて過言ではないと思う。   〔委員長退席、小平(久)委員長代理着席〕 総理は、さっきの答弁の中で、十分に反省をしておる、こういうお話でありますから、これ以上その点を追及いたしません。  さて、いわゆる減反問題は来年以降はどうなるのかということで大蔵大臣は前の質問者に御答弁がありましたが、農林大臣はいかにお考えでございますか。ことしやりましたような措置を来年もとるのですか、とらないのですか。
  256. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ことしの百五十万トンというのは、もうすでによく御存じだと思いますが、百万トンは農業団体その他でする。そこで来年はどうするかというと、やはり私どもは百五十万トンの生産調整が必ずできるものであるという自信を持ってスタートいたしておるわけでありますから、その結果を見て、これからのことを考えるべきではないか。いまみなが協力して着手していただいたときに、来年からどうするなんということをあまり考えないほうがいいのではないか、こう思っております。
  257. 西宮弘

    ○西宮委員 私の質問のしかたが悪かったかもしれませんけれども、来年どうするかと言ったのは予算措置のことです。ですから、ことしは百万トシを対象にして予算を組んだわけだけれども、来年はあの点はどうなのか。つまり反当たり三万五千七十三円というあの問題は、来年はどうするのかということです。
  258. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 十アール三万五千七十三円、あれはことしだけ一応実行してみるつもりであります。
  259. 西宮弘

    ○西宮委員 ことしだけ一応実行してみる、つまり来年はやらないということなんですか。大蔵大臣は来年はやらぬということを言っているのですが、農林大臣もそれで一向差しつかえないわけですか。
  260. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 政府方針に全面的に協力していただくという決定のありました知事会、議長会、市町村長会及び農業団体等では、これは継続して少なくとも三年間ぐらいはめんどう見てもらうことが願わしい、こういう御要望でありましたけれども、私どもといたしましても、その間、御存じのように農政というものはなかなかむずかしいものですからして、でき得るならばあるいはそういうことも取り上げたほうがいいかと思いましたけれども、それは政府部内ではさようなことになりませんでした。したがって、あれは本年限りのもの、こういうことです。
  261. 西宮弘

    ○西宮委員 そうしますと、こういうことになるわけですね。ことしの計画によると五十万トン分は廃田をする、田を廃止をする、こういうことになりますから、計画どおりにいけばそのとおりになるのでしょう。そうすると、百万トンに該当する分は、ことしは稲の作付はやめる、しかし、来年はもう一回作付をするかもしれぬ、こういうことになるわけですね。
  262. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 この間私どものほうで全国の農政局長会議などをやりまして、との趣旨の徹底するように、それからまた地方の状況等もよく報告を受けたのでありますが、米をつくっていらっしゃる農家の方々御自身が、このままでは食管制度の根幹も維持していくことがむずかしくなるのではないかというふうな御心配を持っておられるという話でありますが、やはり米をつくっていらっしゃる方々が現状の米の状況というものをよく御存じでありますので、私は、政府の期待しておる調整はこの方々の御理解によって実行できるものだ、こう思っておるわけでありますから、来年またむぞうさに米をつくられるということになれば、ただいまと同じような結果にあるいはなるかもしれません。そういうことになることはたいへんなことでありますが、そういうことのないように期待しながら、どうなりますか、そのときの経過を見てみんなで相談してきめてまいりたい、こう思っておるわけであります。
  263. 西宮弘

    ○西宮委員 佐藤総理大臣、これは私はまことに重大な問題だと思うのですよ。五十万トン分は政府の計画どおりかりにいったと仮定して、あと残り百万トンに該当する水田はことしはやめる。来年は一文も出さない。したがって、農民はおそらくそれをつくるでしょう。ただし、つくるということになれば、これは農民にとってはたいへんな話ですね。雑草はどんどんとはえてしまうし、来年またつくるということはたいへんな苦労、迷惑だと思うのだけれども、しかし、おそらくつくるだろう。なぜならば、ことしは、三万五千円が安いか高いかは別問題にして、とにかく休耕に対する補償が出るわけですね。ところが、来年は一文も出ない、こういうことになれば、一割減反というのは——農林大臣は、農家自身もそういう点を反省をして協力をしてくれるだろう、こういうことを言っているけれども、一割減反ということは、たとえば労働者についていうならば、十日に一ぺんは休みなさい、給料は一割減らします、あるいは商店についていうならば、かりに一日十万円の売り上げがあるならば、あしたからは九万円にしなさい、こういうことを政府から命令されたと同じことなんですね。そういうことが簡単に——私は売り上げを九万円でがまんをいたします、こういうことができる道理がない。ことしはそれに対する補償があるから、それじゃやりましょうということになったとしても、来年からはそういう補償は一文もしない、こういうことで全く同じことをやれ、つまり労働者は十日に一ぺんは休んで、その分だけどこかへ行って出かせぎをしてこい、そうすれば、休んだ分だけ補てんされるだろうというのと全く同じことなんですね。あるいは、それでは労働者とあえて言わないで、たとえば現在の閣僚の皆さんでもけっこうだと思う。どなたでもけっこうだと思うのだけれども、こういう人が、給料は一割減らしてもらいたい、十日に一ぺん休ましてもらいたい、こういうことで簡単に話がつくならば、これはそれでけっこうだと思うのであります。あるいはもう一つ、こういうことが可能ならば、農民も喜んで賛成しましょう。つまり現在の物価を一割減らす。こういうことがもしできれば、それならば農民はおそらく甘んじて賛成すると思いますけれども、ほかの人はみんな従来どおりにほうっておいて、農民だけ協力をしてくれるでしょうなんということは、それは少し虫がよ過ぎるのじゃないですか。
  264. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私のことばが足りませんでしたので少し補足さしていただきますが、私どもとしては、たてまえとしてはやっぱり休耕でなくて全部が転換していただくことが望ましいのでありますけれども、なかなかそういう期待はむずかしいだろうと思います。そこで、いま私どものほうでは、全国のいわゆる地域分担といいますか、その地方地方にふさわしいような生産物に転換していってもらいたい、そのためにはできるだけ御協力申し上げたい、しかもこれは政府が命令するわけでございませんので、生産調整に協力していただく市町村長さんたちが中心になられまして、その地域、地域で計画を立てて、ひとつお進めを願いたい、そういうことに対して、やっぱりそれなりに私ども農林省は御協力を申し上げたい、そして転換された作物によって農業が営んでいかれるようにお骨折りをいたしたい、こう言っておるわけであります。
  265. 西宮弘

    ○西宮委員 別に農林大臣のおことばが足りなかったわけでも何でもないので、私どもよくわかっていますよ。むろん、そういうふうに他の農産物に転換ができる、こういうことであればこれは何も問題ない。もしそれができるなら初めから減反も減産も考える必要なんか毛頭ないわけですよ。さっき朗読いたしましたように、昭和四十四年の農林大臣の所信表明には、そのことをうたっているわけです。だから、そういうことができておれば、一つも心配も苦労もないわけですよ。ところが、そういうことは容易にできない。それでは、もう全く農民はいたずらにいまの政治にほんろうされるだけだ、こう私はいわざるを得ないと思うのです。全く無定見な、無方針な農政に振り回されてしまう、こういうことを私は痛切に心配をいたします。  そこで、私は角度を変えてお尋ねをしたいが、そういう減反とか減産とかいう前にやるべき手があるのではないか。一つは米の消費拡大であります。二つは輸出の増進であります。米の消費拡大の問題についても、たとえば学童給食であるとかあるいは沖繩に米を輸出をすることであるとか、あるいは搗精度を引き上げる。つまりもっと米の精白度を高める。そうすれば米とぬかが分離をされるわけであります。そういうやり方もとれる。あるいはまた、現在酒をつくるのにはアルコールを添加をしておりますから、このアルコールの添加をやめて米を充てる。米で酒をつくる。これは終戦後米が足りなくなったのでアルコール添加ということが始まったのだそうでありますから、それをもとの米に戻す。こういうことでも相当お米の需要が伸びてくる。あるいはまた米もさらに精米を厳重にやりまして、ほんとの完全粒だけを配給にする。そして不完全粒、いわゆる胴割れだとかなんとかいったような米は排除をして、それは最初から肥料に回す。こういうようなことも一つの手ではないかと思うのであります。あるいはまたきのう問題になりました備蓄米の制度を設けるとか、いろいろそういう手だてがあるので、まず消費の拡大をはかる。こういうことが必要だと思うのだが、いままで小麦の消費拡大にはずいぶんいろんな手が打たれてきたわけであります。小麦の調理、料理のしかた、食い方なんというようなことは、日本政府が指導しただけでなしに、たとえばアメリカ合衆国小麦連合の出先機関が日本にもあって、これがたいへんな力を入れて、たいへんな金をかけて宣伝をしているわけです。ですから小麦のほうはずいぶん力が入ってきたのだけれども、米の消費拡大ということには何の手も打たれなかったということが問題だと思う。  もう一つだけ同時に輸出の問題を申し上げて御意見を聞きたいと思うのですが、輸出の問題も、最近インドネシア、パキスタン、韓国、あるいはごく少量でありますが沖繩、これはほんの少量です。二千トンばかりでありますが、そういう手が打たれておりまするけれども、もっとこれを拡大する道はないのかということを私ども考えるわけですが、この点はいかがですか。
  266. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 大切なことだと思いますので、いままで、御存じのように、米の栄養価というものを日本人は過小評価している傾向もありますので、農林省ではそういうことも大いに強調するわけでありますが、お説のように、学校給食につきまして文部省その他といろいろ協議をいたしておるわけであります。  それから酒米、みそ、しょうゆ——酒米などは御存じのように自主流通米をどんどん取り入れておるわけでありますが、みそ、しょうゆの原料等にもやってまいりたい。  それから、いま御指摘のように、すでに輸出はいたしておりますが、ただいま法律的にちょっとネックもありますので、この国会で御審議願いたいと思いまして、延べ払い制度で海外に米の供与ができるような法律をつくって輸出を増強してまいりたい、こう思っております。  それからまた全購連等と話し合いまして、家畜の飼料等についても向こうでも非常に研究をしていてくれるわけでありますが、そのようにいたしまして、古々米の販路の拡大には農林省一生懸命でやっておるわけであります。
  267. 西宮弘

    ○西宮委員 最後に大臣が言われました輸出の問題について、これは総理に一言お尋ねをしたいと思うのですが、輸出を阻害している要因には、一つにはコストの問題があると思いますよ。つまり米の値段の問題が。これはあとで私申し上げたいと思うのだが、もう一つの重大な問題は輸出のライバルになる国から抵抗があるということですね。特にアメリカの抵抗が強いということ、私はこの点はまことに重大だと思うのですね。むろん国際貿易でありますから、決して簡単ではない、いろいろな条件があることは理解できますが、アメリカ自分の国の余剰農産物を売るためにはまことに強引なやり方をして世界に市場を拡張してきたわけですね。日本などにもMSAをはじめとして、たいへんな勢いで乗り込んできたわけですね。それにもかかわらず今日、アメリカ日本が海外にわずかな食糧を出すことについて重大な抵抗をしている。たとえば六月三十日からローマで開かれたFAOの余剰処理委員会においては、日本が現在実施している韓国に対する米の供与、韓国に出したやつですね。それに対してはきわめて強い抗議を申し込んできておるわけです。あるいは昨年の七月二十九日でしたかに行ないました日米貿易経済合同委員会においては、アメリカの農務長官は、「日本が東南アジアなどに米を輸出していることには大きな関心をもっている。日本が韓国に米を輸出したことによって米国は数百万ドルの損をした。」こういうことを発言しておるわけですね。あるいはさらに米だけではないので、たとえば「日本のかんきつ業者が輸入調整をしようとしているが、これは自由貿易の原則に反する。」あるいはさらに「日本の農業政策をみると、ダイズ、トウモロコシなど国際価格面で負けている品目についても国内増産をしようとしているのは問題がある。私は自由貿易主義者であり、日本の検討を長く待っているわけにはいかない。」これはハーディン農務長官の発言でありまするけれども、ずいぶん人をばかにした話だと思うのですね。日本の国内で大豆やトウモロコシをさらに増産しようとすると、そういうことには絶対反対だ、あるいは日本の古々米を家畜のえさに回すということについてもわれわれは重大なる関心を持っておるということを言っておる。つまり日本の古々米を家畜のえさにされたのでは、日本に対してアメリカのトウモロコシが売れなくなるのではないか、こういうことを言っておる。重大なる関心を持っておるということは、これは外交官のことばでありましょうが、われわれ平民のことばに翻訳をすると、やるならやってみろ、おれのほうには覚悟がある、こういうことだと思うのですね。ずいぶん私は失礼千万だと思うのですね。いかに安保条約第二条があるとしても、これでは日本はまるっ切りアメリカの属国じゃありませんか。佐藤総理もっていかんとなす。お答え願いたいと思います。
  268. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本は完全な独立国で、アメリカの属国ではございません。本気でさように言っておられるとは思いませんが、私は、いまの米の問題、輸出の問題になりますと、これはなかなか——一番の問題はやはり何といってもコストの問題です。値段の問題です。したがいまして、韓国に日本の米を出すにいたしましても、いわゆる即時決済というような形ではない、特別な条件で、実物貸与のような形、そうして、しかも金利、それをある程度見込んで増量、量をふやして返してもらう、こういうような出し方をいたしております。  ただいまアメリカが一番の相手だと言われるが、実は最も相手として心配しておるのは東南アジアの諸国であります。タイ、ビルマあるいは台湾等、これが一番の問題であります。韓国への米の場合でも、中華民国、台湾の食糧庁長官、これは、いずれ日本は韓国をある程度援助するだろうから、まず自分ところの米を買って、そしてそれを韓国に売ってくれないか、こういうようなことまでも申しております。またタイ自身が——私は、これは直接タイの大使から話を持ち込まれて聞いた話でありますので取り次ぎではありませんが、いわゆるインドネシアに対して日本は援助しておる。その日本の援助額の範囲内で日本の米の処理をしようとしたら、そういうことをやられてはタイ米が売れない、タイの一番いいお得意を日本へ取られるのだ、こういうことをいわれました。しかし、日本が援助するその金額で日本の米を処理するについてとやかく言われないで、これは認めてもらわなければならない、こういうことで私は説得にかかりました。これは全額ではございません。全額日本の米を出したわけでもない。そこらにやはりつき合いもありますから、タイの米のことも考えながら、私ども日本米の輸出を考えた。したがって、これからいろいろ米の問題になりますが、問題の輸出は、値段さえ十分であれば、これは十分輸出競争のできる問題だろうと思います。その場合に一番気になりますのは、アメリカを別にはおそれませんが、東南アジアの諸国、他に輸出するようないい品物がないようなところで、一次産品、こういうようなものが唯一の輸出品であるようなタイ、ビルマ等については、私どもはやはりその国のために考えてやらなければならぬだろう、かように思ってやや遠慮しておるような次第であります。先ほど沖繩に対する米の話が出ましたが、これも価格の問題であります。私ども日本米とアメリカの加州米との価格の差、それは何とかして補給しないと、沖繩の人たちが、内地米はほしいけれども、非常に高くなる。これではとてもやっていけない。倍になった、こういうようなことでは困ると思いますので、そこらの点もありますから、これは数量的にあまりふえなかったのはそういうような意味でもあります。百万の人口についてわずかな量を輸出したということ、これは不十分であることは御指摘のとおりであります。しかし、私どもなおいろいろくふういたしまして、もうこれからは、米も外国に対してやはり援助物資の中の一つとして取り扱っていきたい、かように思っております。パキスタン等に対してもそれ、あるいはビアフラ等のあの難民救済等にもやはり米が役立つんだ、かように思っております。
  269. 西宮弘

    ○西宮委員 私も、タイやビルマがライバルの国であるということもよくわかっております。ただ、さっき読み上げたのは、日米経済合同委員会、日本アメリカの会談の中で、そういうことがアメリカ側から強く出ている。これを見る限りにおいては、全く日本アメリカの属国だと言われてもやむを得ないというふうに私は考えるので、その点を強く指摘したんだが、アメリカに対してはそういうことはしない、こういういまの総理答弁でありましたから、私はぜひそういう強い態度で当たってもらいたいと思います。  コストの問題は、私が申し上げたが、あとであらためて申し上げます。  念のために一言だけ農林大臣に伺っておきますが、いわゆる今回の減反あるいは減産ですね、これはあくまでも自主的なものだ、こういうことで、いやしくもそれをやらないからといって行政的な報復措置みたいなものを加える、たとえば補助金を減らすとか、いろいろなそういったようなことが新聞等に出ておりますから、万々なかろうと思いますけれども、念のために一言伺っておきます。
  270. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 報復措置というのはどういうことかよくわかりませんけれども、私どもはそういうことをまだ考えておりません。
  271. 西宮弘

    ○西宮委員 今度の減反のために五十万トン相当の土地を買い上げさせる、こういうことは、これはまあすでに前の方も質問いたしましたけれども、私は全く言語道断だと思うのです。それは政府のきわめて思いつきで出てきたというふうに新聞ではいっておりますが、そうではないかと思う。農地法の第一条には「耕作者の地位の安定と農業生産力の増進とを図ることを目的とする。」——総理もひとつ聞いてください。農地法の第一条はそう書いてあるわけです。だから、今回のああいうやり方で、特に次官通牒——まだ通牒は外には出てないようでありますが、次官通牒で全く骨抜きにされてしまう。農地法は「耕作者の地位の安定と農業生産力の増進とを図ることを目的とする。」こういう法律なんですからね。それを単に一事務次官の通牒によって、これがほとんど骨抜きにされてしまう、こういうことは私は何としても納得できないと思う。あるいはまた、佐藤総理、今日まで政府が一貫してとってきた方針は、農家の経営規模を拡大して、それで国際競争に耐える農家を育成するんだということを言ってきたわけですね。ところが、そういうふうに強引に農地をつぶしてしまうということではおよそ逆行ずると思うのです。そういう点はどういうふうにお考えでございますか。
  272. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 西宮さんのいまのお話にありましたように、わが国の農業というものは、やはりどこまでも近代化して、経営規模を広げることによってコストダウンをして、国際競争力にかちうるしっかりした体質の農業をつくっていかなければだめだ、こういう考え方でございますので、ただいま国会に農地法を提出いたしておる。これはやっぱり規模拡大が大きなねらいでございます。農業者年金制度などというのも、やっぱりそういうことの構想の一つのあらわれでございますが、いまお話のございました、たぶん農転のことを御指摘になったのだと思いますが、私どもといたしましては、御存知のように、純粋に専業農家というものが大体農業有業者のうちの二割ぐらいでありまして、その他は多く兼業農家でございます。私ども地方の様子を見ておりましても、大きい規模の農業をつくっていく過程においても、わが国においては当分の間はやっぱり兼業農家というものは継続していくんではないか。したがって、農家所得全体をふやしてまいるということには、やはり兼業農家の所得もふやすようなことを考えていかなければならないんではないだろうか。農政審議会あたりでも、そういうことについてのいろいろ研究資料を出していっていただくわけでありますが、そういうことを考えますときに、やはり私どもとしては、地方にできるだけ産業を分散してまいりたい。また、いま高度成長のもとにおいてそういう傾向が非常に多いのでありますけれども、農転が支障になるという苦情がだいぶございます。  そこで、私どもといたしましては、農地のスプロール化を防ぐ、しかも、一種農地というものはできるだけ確保して農業の経営を十分にやれるような警戒はしながら、二種、三種を若干広げて、そういうところで新しい産業を誘致して、農村にある労働力で現金収入を得させるようにやりたい、こういう考えなのでございますので、農業というものは、いま水田が問題になっておりますけれども、   〔小平(久)委員長代理退席、委員長着席〕 これは西宮さんよく御存じのように、EECあたりでもマンスホルトプランなどを見ても、五百万ヘクタールも農地をやめて、大じかけに木でも植えるかといったような革命的なことを考え出しているような状態でありまして、わが国でもやっぱり産業構造の変化に伴って考えていくべきではないか。そういうことで、農業基盤は、この前、御賛成いただきました農業振興地域の整備に関する法律がございますが、あれは農林省及び政府の農業に対する精神でございますので、ああいう精神は守り続けながら、しかも、いま余っておる米に対する施策のために農転を緩和して産業を地方に分散させよう、こういう考えでありますので、私ども農業に対する考え方というものには少しの変化もないわけでございます。
  273. 西宮弘

    ○西宮委員 農業に対しては少しの変化もないと言うんだけれども、規模拡大を唯一の政策目標に掲げてきた政府として、農地を積極的につぶしてしまうということは、私どもは何としても納得できないわけです。  時間がありませんから建設大臣に伺いますが、この問題に関連して、不動産業者が盛んに暗躍をしているという話を聞くのです。たとえば東京周辺でも四千四百ヘクタールが市街化区域になる。そういうことになると、そこの土地はたいへん高くなる。したがって、調整区域の中に進出をしていく。元来調整区域というのは農業を守っていく、農業を守るといいますか、農地を保全する、こういうことをねらいにしておったわけですけれども、そこにどんどん食い込んでいく、こういうことになれば、当然スプロールという問題があるし、同時にまた、たいへんな問題が起こってくるわけですけれども、そういう点で、東京周辺では相当もうすでに買い占めている。新聞等によると、仮登記の済んだ分だけでも六万ヘクタールもある、こういうことをいわれているのですが、建設大臣のお考えはいかがですか。
  274. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 市街化区域と市街化調整区域と分けておるのでございまして、この市街化区域になりますれば、自動的に農地法の適用がはずれるということは、すでにこれは皆さんの御承認を得て立法化できておるのでございます。従前から都市周辺で非常に宅地が少ないために、非常に無秩序に宅地開発がやられておりましたので、その状況を防ぐために市街化区域と調整区域をつくったのでございます。これはいまの転用問題より早く立法されたものでございまして、いま直ちにこの市街化区域と調整区域と農地転用とをからめて論ずることは、必ずしも適当ではないと思います。むしろわれわれは調整区域をはりきりと確定することによってスプロール化を防ぐということを考えております。それから市街化区域につきましても、これはこの立法の趣旨から見ましても、無秩序にこれを不動産業者がかってに開発することを防いで、それぞれ住宅地域あるいは工業地域、商業地域というふうに計画を立てまして、その線に沿って開発していくということでございます。  御質問はありませんでしたけれども、続いてあるかもしれませんから申し上げますが、現在大体市街化区域に編入さるべきものと推定されている中に十八万ヘクタールの水田がある、こう見られておりまするが、詳細については、これはまだわかりません。現在いろいろと調査中でございます。
  275. 西宮弘

    ○西宮委員 先般倉石発言として、だいぶ世論の関心を呼んだわけでありますが、いまの食管法のもとで買い入れ制限はできるんだ、こういうことを言われたわけであります。これは重大な問題でありますから、佐藤総理お尋ねをしたいと思うのですが、ただし倉石大臣はそれは法律解釈としてはできるんだ、ただしやらないんだ、実際はやらないんだ、こういうことを言われた。しかし、やらないんだと言われておりますのを、新聞なり、あるいは国会答弁なりお聞きをいたしましても、いずれもいまはやらない、いますぐはやらない、四十五年はやらない、こういうことを言っているわけであります。したがって、まあ言いかえるならば、いまはやらないんだが、この次はやるとか、あるいは四十五年はやらないが、四十六年はやるとか、そういう含みを十分持っている発言だと思うのですよ。そこで私はこの問題について明快な御答弁を願いたいと思うのであります。私は、これは少なくとも政府の政治責任としてはやるべきではない、こういうことを特に強調したいわけです。これはぜひ佐藤総理も私の申し上げることを御理解をいただきたいと考えるわけです。私は、もちろんその買い入れ制限はしないと言ったところで、未来永劫、日本の国で米づくり農業がある限りやらないなんて、そんな非常識なことを言っているわけじゃない。これにはスケジュールを示すべきだということをまず申し上げたいと思う。そして先刻来総理も言われ、農林大臣も強調されておるように、いわゆる農業の転換をはかるのだ、果樹や畜産に転換をはかるのだ、こういうことであるならば、その転換が完了するまではやるべきでない、こういうことをぜひ明らかにしてもらいたいと思う。まず、そこがひとつわかってからにしましょう。佐藤総理ひとつお願いします。——短くお願います。
  276. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これは誤解を生ずるといけませんから、間違いのないように申し上げます。  私が十九日の参議院の本会議で、参議院の前川君の御質問に対し、食管法第三条は、「国民食糧ノ確保及国民経済ノ安定ヲ図ル」という同法の目的を達成するため、政府が買い入れて管理する必要のある米を政府に売り渡す義務があることを規定いたしておるわけでありますから、政府に無制限買い入れの義務があることをこの法律で規定いたしておるわけではございませんので、この法律を解釈する限りにおいては無制限買い入れ、いわゆる買い入れ制限というのは、法律を改正しなくてもできるんだ、こうお答えいたしたわけであります。したがって、しからばそれをやるのかやらないのかということにいまお話が言及したようでありますが、先ほど来申し上げておりますように、農業団体及び地方の公共団体等が一生懸命で協力していていただくまつ最中に、できなかったときのことを言うというのは、はなはだ申しわけないことでございますので、それはそのときの様子でひとつ検討をしていかなければならぬではないか、こう思っておるわけであります。
  277. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは法解釈の問題というよりも、とにかく農村、農民、いわゆる米づくりの方々に不安を与えてはたいへんだと思います。そこで私どもしばしば申し上げておりますのは、食管の根幹は維持する、こういうことをはっきり申しております。この点が、根幹とは一体何だ、こういうような話になったりして、いろいろ議論を紛糾をさせておりますが、大体ただいまの状況のもとにおいて政府の直接買い入れというものが主になる。しかし一方で自主流通米がすでにあることは御承知のとおりでありますから、そういうものも併用されるところに食管制度の確保があるのでございます。だから、そういう点もあわせて政府は食管会計の根幹を維持する、こういう態度でおる。また農村の米つくりの方々が不安を持たれないようにお願いをしたい。ただいまも減産また減反、そういうようないろいろの計画を進めておりますが、私は必ず御協力が得られるものだ、かように私は期待いたしております。
  278. 西宮弘

    ○西宮委員 私は、いわゆる食管の根幹を守ると言われるけれども、根幹とは何ぞやという点について倉石農林大臣食糧庁長官が、しかもこれは法制局と協議をし、あるいは農林省事務当局と打ち合わせをした、こういうことで非常に、いわば手続を全部踏んで統一見解だとして述べておるわけですが、それを見ると、「国民の食糧を安定的に確保するとともに、生産者に米の再生産ができるような価格を確保する」、まあその二点だということをいっておるわけですね。つまり、農民がつくった米は買うのか買わぬのか、そういうことは食管の根幹ではない、こういうことをいっているわけですね。——総理は首を横に振ったから、反対だというなら、私はあえて言う必要がないのだけれども、こういう考えならば私は重大な問題だと思うのですよ。しかも私は法律解釈論としてもいろいろ議論があると思いますけれども、この間、江田書記長が質問をいたしましたように、全く同じ法律でこの前は重大な買い上げを強要したと、こういうことがあるわけであります。たとえば、終戦直後には強権発動をした件数が一万一千二百二十件、あるいは食管法違反で摘発をされた人が、これは昭和二十四年でありますが六十九万六千六十一件、あの法律のために約七十万人の人間が罪人にされているわけです。そういう重大な仕事をしてきたあの法律なんですよ。だから今度は、さっき農林大臣等も、協力を得て、協力を得てということを言っているわけですね。だから政府に米を売らないということは、かつては重大なる犯罪であり、今回は協力なんだ。だから言いかえるならば、二十年前にはこれはもう罪人になってひっくくるのだ、今度は感謝状だ、表彰状を出すのだ、こういうことが一つの法律でいえるか。こういうことは江田書記長が指摘をした点ですが、私も全く同様だと思います。あるいは食管法の第三条には、これは価格の問題でありますが、政府の買い入れ価格は米穀の再生産を確保することを旨としてきめるのだ、だから米穀の再生産をさせるのだということを目的にしているわけですね。第一条は御承知のとおり「国民食糧ノ確保」云々ということを言っておる。国民食糧の確保をさせるためには、生産者につくってもらわなくちゃならないわけですよ。つくらせるためには、再生産が確保できなければならぬ。ところが百俵売りたいという農家に、八十俵しか買いません、あとの二十俵はどぶに捨ててくれ、こういうことを言ったのでは、私は絶対に再生産の確保にはなり得ないと思うのです。したがって、第一条でいうところ国民の食糧の確保はできない、消費者に食糧の配給はできない、こういうことになるのは、これは当然だと思うのですね。ですから、私は法律解釈としても、実はかなり疑問があると思うのですよ。いわんや政治論としては、私はさっきも申し上げましたが、現在の閣僚の皆さんは、この点についてはいずれも明快にこの間の選挙において言っているわけです。たとえば佐藤榮作候補者は、農は国の大本である、農家の所得が安定し、向上するように万全の努力をするというようなことを言っておる。根本龍太郎さんは政務調査会長であります。この方は「農は、国のもとである」、まあ総理大臣と同じようなことを言っているわけですね。「農は、国のもとである」との政治信念のもとにおいて、農業に対しては、引き続きお米の主産地として——主産地というのは秋田県のことをさしていると思いますが、の立場を確立をいたします。「食管制度は、必ず、守ります。」保利官房長官も、「皆さん、今日米が自由に放ってあったとしたならば、価格は暴落し、農村は惨たんたる状況に陥ったでありましょう。私はここに思いをいたし、食管制度の根幹を堅持して農家所得を保証し、農村を守ります。」こういうことを言っておる。野原正勝さんは総合農政の委員長でございます。「農業生産の地域分担を明確にし、適地適産の実効をあげる作業を、私の責任で急いでおります。」学校給食などの消費拡大をはかるほか、食糧不足に悩む国への輸出援助も行ない、食管制度崩壊の危機を打開、避けます、どういうことを言っている。その他等等、全部同じようなことを言っておるわけです。しいて違ったことを言っている方をあげますると、山中貞則さんがカンショ、サツマイモのことを強調しておられる。中曽根康弘さんはコンニャクのことを強調されておる。これだけが違うだけで、あとはいずれも食管の堅持、総合農政の推進ということをうたっておるわけです。ついでながら福田赳夫候補者は特にその決意のほどを披瀝をいたしまして、「燃ゆる心で日本を背負って、福田赳失は今日もゆく」、こういうことで公報の最後を結んでおるわけでございます。  そこで、私は、言いたいことは、もし食管制度を改革をするならば、これはこの次の選挙でやらなければいけませんよ。これは選挙で公約をしたことなんです。自民党のパンフレットを私はたくさん持っておりますが、みんな同じようなことを言っているわけです。ですから、もし万一食管制度に手をつけるあるいは買い入れ制限をする——買い入れ制限するなんということを言った人はもちろん一人もいない。だからそういうことをおやりになるならば、これは選挙において国民の声を聞かなければならぬ。これは次の選挙までこの問題はお預けだということだけは明確にしていただかなければならぬと思います。どうぞ御答弁を願います。これは総理大臣に、答えてください。
  279. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これは大事なことですから、ちょっとお願いします。
  280. 西宮弘

    ○西宮委員 時間がないから……。
  281. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 時間はもう……簡単にやります。  食管制度のことについて買い入れ制限の問題が出ておりますけれども、いまも御説明がありましたように、食管制度の根幹と私ども考えておりますのは、その一般的定義としては、いまお話のように、国民食糧の確保及び国民経済の安定という大目的に沿うために必要な政府の食糧管理のあり方を申すものでございまして、米管理の場合には、根幹とは国民の基本的な食糧である米の必要量を確保し、国民経済の安定をはかるため政府が責任を持って米の需給及び価格を調整し、米の配給について必要な規制を行なうことである、そういうことでございまして、この法律の解釈上、法改正しないでもできるんだということを、簡単に法律解釈としてお答えいたしたのでありますが、私ども現在の段階では、先ほど申しましたように、いま一生懸命で生産調整に励んでいただいておるその方に向かって買い入れ制限云々なんということは言うべきではありませんし、またそういうことをただいま農林大臣としては全然考えておらないわけでございますから、誤解のないように明確にしておきたいと思う。
  282. 西宮弘

    ○西宮委員 繰り返して申し上げますが、おそらく、言いたいことは、今度の百五十万トンの減産がうまくできるかできないか、できなかったらそのときにやるのだ、こういうことを言おうとしているのだと思うんですよ。それはすでに倉石さん自身が新聞記者会見で、もしそのとおりにいかなければ、来年は、四十六年は食管制度の改正をしなければならぬ、こういうことを言っている。あるいは西村さんは——総合農政の会長ですが、西村さんは、そのときこそ食管制度の改正のお話が持ち上がるのではないかと言っておられる。福田さんは、減産が達成されなければ次の手が打ちやすくなる、こういうことを言っている。これは新聞に書いてあるとおりのことばですよ。だから、これはいかにも今度の百五十万トンはうまくいかないことを見越して言っている。あるいは、少し皮肉な言い方をするならば、まあそうなってくれればけっこうだ、そのときこそ食管制度も改正をするし、あるいは、いわゆる次の手というのはどういう手か知らぬけれども、たとえば買い入れ制限などをやるのだ、こういう百五十万トンの減産がことしできなければ次の手を打つのだ、こういうことを言っておられるのだと思う。だから私は、少なくとも選挙においてはそういうことは一言も言っていないんだから、もしやるとするならば、これはこの次の選挙のときにその問題を問題として提起をしなければならぬ、こういうことを申し上げているのですから、佐藤総理ひとつこれに答えてください。
  283. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来いろいろお答えしましたが、私は食管制度の根幹は維持する、これに変わりはございません。ただ西宮君からいろいろ例を出してお話しになったのは、極端な例ばかりで、ちょっとその例をそのままいただけないんです。たとえば食糧が非常に不足の時分、先ほどお話がありましたが、配給価格の九倍あるいは十倍のやみ値で売られた、そういう時分にやみが横行した。なかなか米を集めることは困難だが、それはやみ値では十倍にもなる、そういうのでやみ価格で米は売られておる。そういうのを取り締まるのは当然だと私は思います。だからそういう例を引き合いに出されてはちょっと困る。ただいまはそうじゃない。やみで売ろうにも、やみで売るほうが安いといわれるから、だからいま政府でぜひとも買ってくれ、こういわれるのではないかと思うのですね。ただいまそういうところに食管会計の持っておるよさがあると思います。私は、一番大事なことは、いま農民の方、米づくりの方々が非常に不安を持っておられる。そういう際に、政府自身が食管会計の根幹を維持する。その態度を守ることは何よりも大事なことじゃないかと思います。そうして、それをただいますでにもう始まっておる自主流通米というか、そういうような制度でうまい米、それをひとつつくってほしい、こういうように政府も呼びかけておるのでありますし、ことに西宮君のところ、宮城県などは米どころでもあるし、うまい米がとれるところ、すし米もできるし、同時にいいお酒もできるわけですから、そういうようなうまい米をどんどんふやしてもらう。まあ多収穫、それだけに頼らないように、国民の、消費者の気持ちにもなっていただく、ここに共存共栄の道があるのじゃないだろうか、私はかように思いますので、どうぞよろしくお願いします。
  284. 西宮弘

    ○西宮委員 私ももちろん消費者の立場も十分考えておりまするし、かりに食管法をなくすというようなことになったらば、これはおそらく消費者にも大打撃だと思うのですよ。これは、この間、自主流通米を経験してみて、彼らもわかったと思う。つまり、自主流通米ということになって政府が財政負担をしないということだけでも米が高くなった。これはたいへんなことになったということを消費者の皆さんも言っておるわけです。したがって、もし食管制度がなくなる、あるいは大きく後退をする、こういうことになったらば、消費者にとっても大問題だと私は考えるわけです。したがって、そういう点も十分考えて、私も冒頭に申し上げたように、ただ米価を上げればいいんだとか、農民のつくったものをむりむり買わせればいいんだとか、そんな無責任なことは決して言っておりませんから、どうかその点は誤解のないようにしていただきたい。ほんとうにそういう点で私は、政府がいっているような他の農産物に切りかえができていきさえすれば、米作は減反して減少をしてよろしいのですから、それまではぜひとも食管制度は今日のままで維持しなければならぬということを強く申し上げておきたいと思います。  さて、私は、残っておる時間で、こういう問題が起こってくるそもそもの原因を追及したいと思うのであります。これは要するに、財界がこの問題について提言をしておる。往々にして農業団体等を圧力団体だといわれまするけれども、私は今日の政治における最大の圧力団体は財界だと考えておるわけです。たとえばこの食管問題についても、「われわれは昭和四十四年十月末までに、米の間接管理への移行条件の整備を終え、食管法の改正によって米の間接管理に踏み出すよう強く要請する」、こういうことを提言をいたしましたのは、昭和四十二年であります。昭和四十二年に経済同友会はこういう提言をしておる。昭和四十四年十月末までに間接統制に移行する条件の整備をしろ、そうして食管法を改正をしろ、こういうことを言っておるわけです。この要請にこたえて、昭和四十四年の十月末というのでありますから、その前の八月一日から自主流通米という制度を設けまして、これによって財界の提言を実現をしたと考えるのでありまするが、私は、ここで言いたいことは、今日財界が日本の政治を大きく動かしておる、こういう事実について私は指摘をしたい。  したがって、以下私は、政治資金規制の問題についてお尋ねをしたい。私は、政治資金規正法を今回出すのかどうかというようなことをお尋ねをしたいと思いましたけれども佐藤総理は出さないということを言明をされたので、これでは取りつく島がなくなってしまいました。総理は、すでに三回提案をしておる、こういうことを答弁のたびごとに繰り返しておるのでありますが、しかし三回提案をしたというのは、これはいずれも会期ぎりぎりのところで提案をしてみたり、あるいはまた与党の委員長が雲隠れをしてしまって委員会を流してしまったり、そういうことで審議しようにも審議できない、こういう状態で政治資金規正法は葬ってしまったわけです。三回提案をしたということを盛んに繰り返されるけれども、これはいずれも与党自民党がこの法律を流してしまったんだ。こういう事実は厳たる事実で、いかに国民が健忘症でありましても、これだけは忘れておらないと思います。したがって、この点は私は、厳重に申し入れをしておきたいと思う。  あの政治資金規正法の中で最大のねらいは、あれによって政治資金をできるだけ明瞭にして国民の批判の前に立たせる、こういうことがねらいであるわけでありまするが、たとえばあれによって提出をされまする書類を見ますると、今度一月に出ましたのは二六%——寄付金で扱っておりますのは二六%、これは寄付金だけしかどこからもらったということを明らかにいたしませんから、二六%しか明らかになっておらない。その前の昭和四十三年の上期は四六%、その前の四十二年の上期は五六%、こういうふうに、五六%、四六%、二六%というふうに、だんだんこの寄付で扱っておりますのは低下をしているわけです。二六%が公開をされておることは、言いかえるならば、七四%は全くやみに葬られているということであります。あるいは自民党の中の集金組織でありまする国民協会などは十四億を集めておりまするけれども、そのうちでその寄付者が明らかになっておりますのはわずかに〇・二%であります。九割九分八厘は全くの不明なんであります。これはいまの法律の盲点をついておるわけですね。それは法律上の扱いとしては合法だ、こういうことになりましょう。だから、せっかくの政治資金規正法のねらいである点を、完全に盲点をくぐってこういう扱いをするということが最大の問題である。なぜこういうふうに隠さなければならないのか。要するにこれは政治と金が結びついて、要するに献金をする人たちが何らかの意図を持って献金をする。そういうことのために公開ができない。もしそれがそういう意図がないならば、堂々と公開をすべきですよ。彼は浄財だと称するんだから、浄財ならば堂々と公開したらいい。それを公開をできないでだんだんこれを隠してしまう。これは明らかにそういう不公正な、いわゆるやみ取引をしておるからだ。こういうことを断言せざるを得ない。しかも、寄付をする人たちはそろばん高い経済人ですよ、財界人ですよ。こういう人がどぶに捨てるつもりで何億という金を、何十億という金を出すはずはない。私は、その点をどうしても明らかにしていただかなければならぬと思います。  国税庁長官に伺いたいと思いまするけれども、前回の選挙で自民党では、各候補者に二百万の公認料と百万の貸し付け金を交付されたそうでありますが、これに対して国税庁長官はその後、私が前の国会で要求したようなことをお調べになったかどうか。一言だけ簡単にお答えをいただきたいと思います。
  285. 吉國一郎

    吉國(二)政府委員 ただいまお尋ねのございました四十二年度の選挙でございますかの貸し付け金百万円につきましては、相当数の方が公職選挙法百八十九条の届け出をしておいでになります。これが貸し付け金の性格を持つのかあるいはそのままもらい切りになるのか、この点私どもつまびらかにいたしませんが、公職選挙法によって届け出をいたしておりますと、これが債務免除になりましても、いわば非課税所得になるわけでございます。申告をしておられない方の場合は、もしもこれが返済しないでいいということになればそのときに雑所得の収入金額になると思います。したがいまして、その分を収入金額として申告をされるならば、それに対して政治活動に伴う経費がそれだけなければ、所得になるという結果になっていると思います。
  286. 西宮弘

    ○西宮委員 相当数の方が届け出をしていると言われまするけれども、私の調べたところでは、二百五十名の中で二十五名です、公職選挙法で届け出をしている方は。ですから大部分の方がその届け出もしておらない、こういうことでございます。長官はかわりましたけれども、前の長官はこういうふうに答弁をしておられるわけです。「貸し付け金というのが単に名目であって、実質上返す必要がなく、金利もきまっておらない、返済の条件もきまっておらないというのでありますれば、それは名目上貸し付け金でありましても貸し付け金と認めるわけにいかない。したがって、それを収入を得たものとせざるを得ないというふうに考えるわけであります。そこで私、せんだって自民党の経理局長さんにお目にかかって、あの百万円はいかなる性質のものでございますかということをお尋ねしたのでございます。そのときのお話でございますと、今度のはほんとうの貸し付け金であって、いずれ返済する条件をきめて返済を受けるんだ、」以下云々とあって、したがってこれは十分調査をする、こういうことを言っておられる。その当時の長官はかわりましたけれども、こういう答弁をしておられるわけです。ですから、私は十分にその点を明らかにして調査をしてもらいたいと思う。これは長官も御承知でありましょうが、選挙の金を選挙法に従って届けをするわけですね。しかし届けをしない金もあるわけですよ。現実にあるわけです。しなくても、実際上選挙にかかる金もあるわけです。実は自治省で発行しております雑誌の中に、前回の選挙の際には、私自身のそういう金も全部明らかにいたしました。したがって、私自身が選挙法の法定費用を超過しているわけです。こういう費目については超過をするんだ、こういうことで私は自分の経理を公開をしているわけでありますが、そういうのもあるわけです。そういうことはおそらく長官も十分御承知だと思うけれども、そういうことを十分承知の上で、しかもなおかつこれが返済をされておらない、こういうことであれば、この泉長官答弁のとおりだと思う。私は、ぜひともこの点を明らかにしていただきたいと思う。  それから私が、こういうことを申し上げると、何かいかにもみみっちい問題を取り上げておるようで、私自身も非常に心苦しいのでありますが、私は、実はこの金の問題は重大な問題だと思うのですよ。ことに自民党の皆さんからごらんになったら、百万円なんという問題は、これは全く小さな金額で、おそらく問題にされないと思うのでありますが、しかし、事は決して、性質としてたやすいものではないと私は考えるわけでございます。  そこで、実は閣僚の皆さんにお尋ねをしたいと思うのですが、時間もございませんので、たいへん恐縮でございまするが、さっぱり登壇をされない方がございますので、どなたでもけっこうでございますが、内田大臣にひとつお尋ねをいたします。あなたの法定費用は幾らでございますか。
  287. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私は、出納責任者にすべておまかせをいたしてりますので、いまここで記憶はございません。
  288. 西宮弘

    ○西宮委員 一人ずつお聞きをするとたいへんけっこうなんでありますが、時間がありませんので、それでは御自分のこの間の選挙の法定費用は幾らであったかということをもし御承知の方がございましたら、どなたでもけっこうでございますからお知らせを願いたいと思います。——御発言のないところを見ると、その点はどなたも御承知ないようでございます。内田大臣は三百一方九千三百円でございます。  そこで私は、佐藤総理に、むしろ総裁としてお尋ねをしたいと思うのでありますが、それは今回、この間の選挙では二百万と二百万、合計四百万をお出しになりました。しかし、これはすでに法定費用をこえているわけですよ。ここにお集まりの閣僚の皆さんで四百万に達している方は一人もないわけでございます。おそらく候補者全部がそうだろうと思いますが、それならば、四百万お出しになったわけでありますが、それについてお尋ねをしたいのは、私はこの前の国会でその点をお尋ねをいたしまして、当時木村官房長官が出席をされましたので、あのときは法定費用は三百万を下っておったわけであります。したがって、三百万出すということは、それがすでに法定費用を超過をしている、一体そういうことはいいのかどうかということでお尋ねをいたしましたらば、木村官房長官が、それは非常に遺憾なことだ、こういうことを繰り返し答えられたわけでございます。そこで私は、それではそのことを佐藤総理に十分伝えてもらいたい——こう書いてあります。木村官房長官の御答弁は、「金をかけないようにしようとしても、やはり現在の制度では金のかかる選挙になるのも現実でございます」、こういう答弁でありましたので、私は、それでは官房長官は、あなたはその法定費用は守らなくてもよろしい、こういうおつもりですかと申し上げたらば、決してそうではありません、法定費用はぜひとも守らなければなりません、どういうことでありましたので、私は、それでは自民党がお出しになりました三百万はすでに法定費用をこえている、だからそのことを佐藤総理にお伝えをしていただいて、佐藤総理から答弁をもらいたいと思うのですが、それは引き受けてくれますかと質問をいたしましたら、官房長官は、いま御要望のありました点はよく伝えます、私は党人として総裁に伝えることをお約束いたします、こういうふうに木村長官答えておるわけでございます。佐藤総理はその点についてお伝えを受けたかどうか、お尋ねをいたします。
  289. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 よく伺っております。
  290. 西宮弘

    ○西宮委員 よく伺っておるにしては、今回四百万出したということは、これまた全く同様なんですよ。その法定費用以上のものを出しておる。そういうことがすでに問題ではないか。私は、そういうところにおそらく、先ほど厚生大臣の御答弁を伺いましたけれども、その法定費用についての御認識がない。これはもちろん御繁忙な閣僚の皆さんですから、一々覚えておらなくてもやむを得ないと思います。しかし、およそそういう観念がないのではないか。新聞等で見ますると、ことしはたいへんな経済界の好景気のために献金が非常に潤沢に来た、選挙の資金がきわめて潤沢であった、こういうことを新聞等で盛んに報道をしておるわけです。したがって、新聞で伝えられるようなことであるならば、あるいは十当八落であるとか八当七落であるとか、そういうことが巷間堂々と伝えられている、こういうところにそもそも根本的な問題があるんだ、こういうことを私は強く指摘をしないわけにはまいりません。私は、ぜひともそういう点について根本的に反省をして、姿勢を改めていただきたい。私はいつもこういうことを申し上げて、ほんとうに失礼だと思うのですよ、思いますけれども、私はそういう点から政治の姿勢を正してこなければ、政治に対する国民の信頼は次第次第に薄らいでいく。佐藤総理は、この前も御答弁の中で、決して国民の政治不信はないのだ、こういうことを言っておられましたけれども、たとえば今回の棄権率の問題等に見ましても、やはり政治に対する信頼がだんだん薄らいでいる、こういうことはおおうことのできない現実だと思います。しかも、その根本にこういう問題が横たわっておるのだということを私は特に強調をしておきたいと思います。  国税庁長官にもう一つだけ伺いますが、時間がありませんので内容を申し上げませんけれども、政治資金規正法の届けによりますると、もっともっと大量の金、何千万という大量の金が渡されているという報告があるわけです。しかし受け取った方はそれをどういうふうに使ったかについては何ら報告がない。したがって、これがもし収入、所得になっておるとすれば課税の対象になる、どれは当然だと思うのです。そういう点について、私が、だいぶ前、前回の選挙の後の国会でありますが、指摘をいたしましたところが、それは十分その実態を調査をいたしますと答えた。そこで、それではどの程度から調査をするのだといって聞きましたところが、一件当たり百万円以上というものについては調査をすることにいたしますと言う。それではいままでやっておったのかと申しましたところが、従来はそういう調査は必ずしも十分に行なわれておりません、昨年になりましてから私どものほうでそういう調査をいたすようにいたしたのでありまして、従来は必ずしもその調査はしておりません。——昨年というのは昭和四十一年であります。そこで私は、それではつまり昨年度初めてやったのかと申しましたら、「さようでございます。」そして長官は私の質問にさらに答えて「これは税務当局としてはまことに申しわけないわけでございますが、そういう調査がなされておらなかったのは、非常に遺憾に存じております。」こう答弁をしております。したがって、私はこの点はぜひとも明らかにしてほしいということを強く要請をしておったのでございまするが、かわった長官はそういう点について御調査をなさっておったかどうか伺います。
  291. 吉國一郎

    吉國(二)政府委員 政治資金規制法の関係の資料につきましては、これを、一切の申告等々をチェックをいたしまして、非常に相違の大きいもの等について実地調査をするということは泉長官以来続けてやっております。御承知のとおり、政治家所得につきましては、泉長官のとき以来国会とも十分お打ち合わせをいたしまして、雑所得の収入金額と必要経費という問題について定義を明らかにいたしましたので、おそらくその後、申告そのものは正確になっていると私は信じておりますが、やはり資料は資料として活用するという立場をとっておるわけでございます。
  292. 西宮弘

    ○西宮委員 長官に一言だけ伺いますが、それではそういう点について泉長官と同じように、厳重に調査をする、調査をして報告してもらうということをお約束できますね。
  293. 吉國一郎

    吉國(二)政府委員 個別の人名等はもちろん従来も発表しておりませんが、総合的な数字は、集計ができました場合には御報告できると思います。
  294. 西宮弘

    ○西宮委員 それが重大だと思うのですね。それは前の泉長官答弁とは全く違うので、泉長官——私は具体的に名前をあげて質問しているわけですよ、全部具体的に名前をあげて。そうしたらそれに対して、十分調査をしてお答えをいたします、こういうことを約束しておる。それができないのですか。
  295. 吉國一郎

    吉國(二)政府委員 当時の記録によりますと、泉長官も、個人の個々の所得については秘密にわたる点もあるので、もちろん実態を調査いたしますが、その結果としては総括でお答えをしておるはずでございます。個々の方の所得内容については、更正決定内容については一切申し上げてないはずでございます。
  296. 西宮弘

    ○西宮委員 私はその当時お尋ねしたのは、具体的な名前をあげて、しかも使途が不明瞭である——それは何も使途をここで発表してもらわなくてよろしいわけですよ。というのは、それが正当なあれに使われておるならば、それは税の対象になるはずはないのですから、それを何も何に何ぼ使ったというようなことは言ってもらうつもりは毛頭ない。そうではなしに、それが個人の収入、所得に帰しておるというような実態があれば、それは当然に明らかにしなければならぬ。したがって、その点は必ず明瞭にしてもらわなければならないと私は思う。だから私はその点を——実を申しますると、ある特定の方を、それはただいま調査中ですから、この次までには報告をいたします、こういうことばで、特定の個人についてまで言っているわけですよ。目下調査中でありますということで言っておるわけですよ。だからそういう点は、私はもしそれが課税の対象になるという、そういう収入であるならば、これはぜひとも明確にしてもらわなければならぬということを申し上げておきます。  時間がありませんからこの程度にとどめざるを得ませんけれども、私はぜひ佐藤総理、繰り返して申しますが、たいへんみみっちい問題を取り上げて恐縮だと思うのでありますが、こういうところにそもそもいろいろな問題が、いわゆる黒い霧と称されるような問題が起こってくる、こういうことになるわけでございます。私は警察庁長官も出席要求をしておきましたので、今度の選挙違反について、たとえば新聞等では、閣僚五名を含んで選挙違反がある、こういうことなどがありますので、こういう内容ども明らかにしてもらいたいと思ったわけです。新聞にはその閣僚の名前も全部出ているわけです。もちろん軽微な違反の方もありましょうから、そういう点を明らかにしてもらいたいと思いましたが、時間がありませんから、これは省略をいたします。あるいはこういう問題が次々に起こってくる。稻村左近四郎さんでしたかな、あの方の事件などもまことに遺憾な事件だと思うのですよ。私は時間があればぜひこういうことも明らかにしていただきたいと思って警察庁長官には連絡をしておったのでありますが、時間がありませんから、残念ながらできません。しかし、ああいう問題が相続いで起こる、こういうことではまことに私は残念千万だと思うのであります。あの稻村左近四郎さんは、みずからお書きになった書物の中に、「政治家はこれでよいのか」こういう書物を出版をしておられます。ちょうど十年前の出版でございますが、まさしく政治家はこれでよいのか、こういうことがいま問われている問題だと思います。世間から問われている問題だと思うのであります。そういう方が、残念ながら今度選挙に関連をいたしましても、閣僚五名を含んで選挙違反がある、あるいはその中には、その中というのは閣僚ではありませんよ。自民党の方の中には相当悪質な問題として取り上げられている方もあるわけでございます。総理のそういう問題に対する姿勢お尋ねをして質問を終わります。
  297. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろお話がございました。ことに政治資金等から始まりまして、政治家の言動等についてまでの御批判、御意見を聞かしていただきまして、私は誤解を避ける意味で、自民党が四百万円−二百万円は渡し、二百万円を金を貸した、これは明らかに法定選挙費用をオーバーしておる、こういう御指摘でありますので、この点で、国民皆さま方は、ただいまのお話を聞かれた方は、何か自民党は全部選挙違反をしておる、法定以上の金を使っておる、かように誤解を受けると困ると思いますので、その点は説明が必要だと思います。二百万円は私どもは法定選挙費用の補助をいたしたのであります。また先ほども御指摘になりましたように、自分も、選挙の際のいろいろの諸雑費がこれに関連してかかることがあるのだ、そういうものを公開するとやはり選挙費用、法定費用をオーバーしておる、こういうことを西宮君も言われました。ただいま貸した二百万円、まさしくそういう部類に属するのでありまして、自民党自身がそのいわゆる法定費用を全部頭から無視したような印象にとれる発言は、これだけはちょっと困りますので、その点を私から説明をしておきます。  またお話しになりましたように、選挙費用を厳格に守ること、これが最も大事なことだとおっしゃったこと、これについては私も同感であります。この選挙費用、こういうところがルーズになることが政治の乱れのもとでもあります。ことに私などは、ただいま総理をしておりますし、あらゆる面で必ず監視されておる、かように思いますので、私の選挙をやります諸君には、特にその点を厳重に注意するようにと、かように申しておりますから、間違いはよもやあろうとは思えません。おそらく、それぞれの方々も、ただいま、なかなかうるさい問題になりつつありますので、こういう点は厳正に自己を批判し、規律しておられることだ、かように思います。私は、これはただ単に政界の黒い霧というよりも、積極的に政治の姿勢を正す、その際の、われわれ政治家が当然とるべき処置だ、かように実は思っております。この上とも十分気をつけてまいりたいと思っております。  ただ、政治資金規正法、これを出せというお話がありますが、私はこの国会には出さないということを申しました。これはいろいろ考えてみますると、どうも選挙費用だけを、選挙資金、政治資金だけを取り上げて云々するのは、やや不適当ではないだろうか。選挙制度その他等も、やはりからんでいるんじゃないだろうか、かように思いますので、一つのグループとして問題を取り上げないと、その一部だけを取り上げたのでは、なかなか正鵠を得にくい、かようにも実は思っておるような次第であります。しかし、これは私がこれから選挙区制とも取り組んで、政治資金規正法をやろう、かようにまで考え方をまとめておるわけじゃありません。まだまだ私もどういうようにしたらいいか、どうも政治資金だけを引き抜いてやることはいろいろ問題があるのじゃないだろうか、こういうことをただ投げかけて皆さんの御批判を仰いでいることでございますから、ただいま選挙区制まで手をつける、こう言ったじゃないかと言われないように、誤解のないようにお願いしておきます。  とにかく、お話しになりましたことは、みみっちいことではない。これは政治家が当然とるべき、またてんたんであるべき、さような問題だ、かように思います。
  298. 西宮弘

    ○西宮委員 一言だけ。——もちろん二百万、二百万、合計四百万、そういうことで選挙が行なわれておるならば、私は決してこういうことを申し上げませんよ。だけれども、現実はそういうこととはおよそかけ離れいて、まるでけたが違っている。だから、そういう点を十分に注意をしていただいて、ほんとうに政治の姿勢を正すために佐藤内閣が大いに力を入れていただくということを要望いたしておきます。
  299. 中野四郎

    中野委員長 これにて西宮君の質疑は終了いたしました。  明日は、午前十時より委員会を開会し、麻生良方君、大橋敏雄君及び久保三郎君の総括質疑を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十三分散会