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1970-02-17 第63回国会 衆議院 本会議 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年二月十七日(火曜日)     —————————————  議事日程 第四号   昭和四十五年二月十七日     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑     ————————————— ○本日の会議に付した案件  議員請暇の件  国務大臣演説に対する質疑     午後一時五分開議
  2. 船田中

    議長船田中君) これより会議を開きます。      ————◇—————  議員請暇の件
  3. 船田中

    議長船田中君) おはかりいたします。  議員古井喜實君から、海外旅行のため、二月二十七日から三月三十一日まで三十三日間請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。      ————◇—————  国務大臣演説に対する質疑
  5. 船田中

    議長船田中君) これより国務大臣演説に対する質疑に入ります。成田知巳君。   〔成田知巳君登壇〕
  6. 成田知巳

    成田知巳君 一九七〇年代の幕明け国会に臨むにあたりまして、今後の日本政治経済外交はどうあるべきかについて、党の考え方を国民に訴え、国民批判を求めることは、われわれ政党に課せられた責務だと考えるものであります。(拍手)  いま日本国民は、七〇年代の日本が進むべき道として、憲法秩序を守る道か、それとも、これとは原理的に相いれない安保体制強化の道を選ぶかの選択の前に立たされておるのであります。  私は、憲法を守り、平和と民主主義国民生活向上をはかる道こそ、総理がいわれる、日本という国の存在が人類を豊かにするゆえんであると世界人々からひとしく認められる道であると確信するものであります。(拍手)  以下、私は、日本社会党を代表し、総選挙で示された国民批判を謙虚に受けとめながら、内外政策のあり方について総理の所信をただしたいと存じます。(拍手)  総理は、七〇年代に物心ともに豊かな国民生活基礎を築くと強調されまして、七〇年代の最初の年であることしを内政の年とも言われてこられました。はたして総理ことばにふさわしいような生活優先政治が、ことしその第一歩を踏み出そうとしておるのかどうか、政治顔そのものだといわれておる予算案を中心に総理にただしたいと存じます。  今次予算案に対し国民最大関心を払っている点は、言うまでもなく物価との関係であります。政府は、景気に対し警戒中立型の予算であると強調されておるのでありますが、一般会計伸び率は一七・九%、これは名目経済成長伸び率一五・八%を大きく上回っており、これは不況克服のため本格的な国債発行政策に踏み切った昭和四十一年度予算伸び率と同じなのであります。このことは、景気に対して警戒中立型予算とは決して言えないということ、むしろ識者の多くが指摘しておるように、景気刺激型のインフレ促進予算案と見るのが正しい見方だと考えるのであります。(拍手)  現に、予算案決定と同時に、総理景気行き過ぎの場合は繰り延べ使用をすると言わざるを得なかったこと、また、大蔵大臣金融政策で調整すると発言していることも、みずからこれを認めることになっておると思います。(拍手)いままで政府は、消費者物価が上がっても卸売り物価が安定しているからインフレではないと述べてとられたのでありますが、今日では、消費者物価卸売り物価が歩調を合わせて急上昇を続けております。  統計の示すところでは、昭和四十四年には、卸売り物価は四・二%上がっているだけではなく、消費者物価上昇に対する卸売り物価上昇寄与率は、四十三年の四%弱から二八%にもはね上がっておるのであります。このことはまことに重大だと思います。すなわち、高度経済成長卸売り物価を押し上げ、それが消費者物価を引き上げるという悪循環のインフレ構造日本経済に定着しつつあることを示しておるのであります。(拍手)しかも、鉄鋼、非鉄金属など設備近代化生産性向上が顕著に見られる部門ほど卸売り価格上昇が大きいということは、寡占、管理価格の弊を明瞭に物語っておると思います。(拍手)  総理は、高い生産性を実現している産業においてはその成果の一部を価格引き下げの形で社会に還元することを期待すると演説されましたが、はたして期待だけで実現できるでありましょうか。政府諮問機関である物価安定政策会議ですら、わが国経済全般的インフレの道を歩む危険があると指摘しているではありませんか。日本経済現状は、インフレの道を歩む危険ではなく、すでにインフレの道をどんどん歩んでいることを率直に認めるべきだと思います。(拍手現状の正確な認識なくしては、正しい物価対策の樹立も、その実行もとうていあり得ないと思います。総理は、日本経済現状一体どう見ておられるのか。経済成長物価の安定を両立さすと言いながら、経済成長を優先させてきたこと、このことが今日のインフレを招いた根本原因であるとお考えにならないのか。施政方針演説で述べられた総理物価対策は、いままでの繰り返しにしかすぎません。物価安定に関する総理の決意と具体策を、国民の納得するように明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)  今回の予算編成にあたりまして、国民が奇異の感を深くしたのは、この数年来財政硬直化を声を大にして叫んできた政府が、防衛費の増額だけは最優先的に聖域のごとく取り扱った結果、防衛費がこれまでの最高である一七・七%の伸び率を示したことであります。第三次防に次いで総額五兆円をこえる第四次防、そしてその次は第五次防と、際限なく軍事費は拡大されようとしております。再軍備に反対するわれわれはもちろんでありますが、軍備を認める立場人々も、政府一体日本の適正な防衛力限界をどこに置いているのかに疑問を持っておると思います。(拍手)確たる見通しもなくして、防衛費がどんどん膨張していく現状に、大きな不安を抱いておるのであります。  しかも、言うまでもありませんが、軍事費ほど再生産に役立たない支出はございません。軍事費の膨張がおそるべきインフレを引き起こすことは、戦前の日本や、いま名分のないベトナム戦争を戦っているアメリカ経済現状を見れば、明らかだと思います。(拍手)  今次予算案にあらわれた防衛費の急増は、自主防衛の名のもとに、七〇年代を通じて防衛予算をとめどもなく増加させていこうとする政府の意図を端的に示しているものであります。これでは政府がいかに経済持続的成長物価の安定を口にされましても、しょせんはことばだけに終わり、物価高騰と高い税金で苦しめられるのは国民だということになるでありましょう。総理は、国民生活防衛費関係をどのように理解し、防衛力限界をどこに置かれようとしておるのか。国力、国情に応じて自衛力を整備するというような抽象的なことばではなくして、具体的に国民の疑問に答えていただきたいと存じます。(拍手)  私は、総理に要請いたしたいと思います。  総理は、まず日本経済現状が危険な構造的インフレにおちいっていることを認めるべきであります。その上で、総需要を押えるため大企業設備投資を抑制し、これを計画化すること、税制改正財政投融資計画、日銀の運営改善を断行し、通貨の供給量を極力押えるべきであります。防衛関係予算についでは、当面これ以上の増大をストップし、さらに縮減し、国民福祉の充実に充てるべきであります。政府許認可権を有する公共料金の引き上げを一切認めないことはもちろんだと思います。ニクソン大統領予算教書で、ベトナム戦争で激増した国防費を大幅に削減し、生活優先予算の重点を置こうとしておることを他山の石として見習うべきだと考えるものであります。(拍手)  次に、土地問題についてお尋ねしたいと存じます。  物価値上がりの元凶といわれる土地価格高騰最大原因が、大企業の思惑による買い占め大都市周辺土地売り惜しみにあることは明らかであります。空閑地税土地増価税等によりまして、土地買い占め売り惜しみを押えるとともに、公共団体による土地開発を主体として、これに先買い権を与えるべきだと考えるのであります。  最近、東京問題調査会が、都知事に土地対策につきまして根本策次善策を提案しておりますが、根本策として、交付公債を発行し、土地先買いを強力に行なうことを提言しておるのは注目すべきことであります。総理は、この提言をどのようにお考えになられるのか。緊急を要する土地問題解決のための総理の言われる総合的土地対策とは一体何なのか、具体的にお示し願いたいと存じます。(拍手)  政府は、予算編成にあたりまして、今回の税制改正税制調査会長期答申目標は達成されたといわれております。しかし、この答申は三年前の国民所得基礎にしたものであり、その後の物価上昇国民生活の変化を考えるとき、ここで減税をストップすることはとうてい許されないと考えるのであります。(拍手)現に、今回の税制改正で、五人家族の勤労所得は百二万円までが無税でありますが、配当所得は実に三百四万円まで無税というように、不公平はかえって拡大いたしておるのであります。(拍手政府は、四十六年度以降にわたる新しい長期減税計画を打ち立てるとともに、特にサラリーマンの税負担の不公平を是正するため、勤労所得控除の拡大と税率の緩和をはかるべきだと考えるのでありますが、総理見解はいかがですか、お答えを願いたいと存じます。(拍手)  以上のほかにも今回の予算案は多くの問題を含んでおります。  第一に、昭和四十五年度から実施するとたびたび約束してきたはずの児童手当がまたまた見送られておるのであります。(拍手)  農民に生活できる転換作物の保証もせず、米の減反を押しつけて、政府農政の失敗を農民責任に転嫁しようとしております。米が余ったというならば、今後の農政はどうあるべきかのビジョンをまず農民に示し、農民の協力を求めるべきだと考えます。  社会保障は千九百億円増加したといっておりますが、医療費負担増加六百億円を差し引けば、わずかに一三・六%の伸びにしかすぎません。防衛費伸び率一七・七%に比較して、あまりにも少ないではありませんか。  高度経済成長は、都市公害産業公害を激増させております。この国民の敵である公害との戦い公害対策はあまりにも貧弱であります。公害との戦いは、いまや人類の共通の課題となっております。かつて総理は、公害必要悪だと言われたのでありますが、このような企業第一主義の思想は、もはや今日では通用しなくなっておるのであります。(拍手)  国連総会は、世界核戦争による絶滅は避け得ても、公害により同じような脅威を受けておる、政府産業界も必要な責任をとるべきだ、と決議しております。アメリカでも、一日一万ドルの罰金制度をつくるなど、公害対策政治の第一目標に掲げておるではありませんか。  この二、三の例で明らかなように、今次予算案は、内政の年という総理ことばにもかかわらず、国民生活優先予算にはほど遠い、国民期待をはなはだしく裏切るものであります。(拍手)  私は、この予算案を少しでも国民予算に近づけるため、最小限度、次のことを政府実行されるよう、提案いたしたいと存じます。  すなわち、予算審議を通して、国民生活向上のための、各党意見の一致を見られるような政策があれば、積極的に修正するという慣行を確立すべきだと思います。(拍手)これが実行に移されるならば、予算国民に身近なものとなり、政治不信は漸次解消され、議会国民の断絶も大きく埋められるでありましょう。総理が強調されたように、民主主義擁護国民的信念に高めることも、ことばの上だけではなく、このような具体的措置を通して初めて実現できるのであります。(拍手)その成否のかぎを握るのは与党自由民主党であります。たとえば公害対策のための思い切った立法、予算措置をとること、東京都がすでに実施に踏み切っておる児童手当制度、七十歳以上の老人の医療無料化等、世論が一致して支持する政策は、各党協議の上実現すべきではないでしょうか。(拍手与党総裁としての佐藤総理が前向きの姿勢を示されんことを心から期待してやまないものであります。(拍手)  次にお尋ねするのは、沖繩基地労働者の解雇問題であります。総理は、施政演説でこの問題に一言も触れられませんでしたが、日米両国政府の谷間に置かれ、苦悩の毎日を送っている基地労働者の心情を思うとき、まことに遺憾だといわなければなりません。(拍手日米共同声明には、沖繩にあるアメリカ企業の利益を守るための約束はなされておりますが、沖繩百万県民の民生安定については何ら触れられておりません。(拍手)この日米共同声明発表以来、沖繩米軍基地に働く労働者に対し首切りのあらしが吹き荒れておるのであります。もともと、基地労働者の多くは、沖繩軍事基地化により祖先伝来土地米軍に奪われ、やむを得ず軍事基地に働いておる人たちであります。しかもこの人たちに、基地の縮小もないのに、いな、基地が拡大されつつあるにもかかわらず、首切りが強行されておるのであります。基地労働者にしてみれば、使うだけ使って要らなくなれば首にするというこの仕打ちに、怒りに燃えるのは当然だと考えるのであります。(拍手)全軍労のストは、したがって、経済闘争というよりも、人権闘争としての性格を持っておるといわなければなりません。総理は、この問題を関係閣僚にだけまかすのではなく、総理みずから乗り出して、アメリカ側と交渉し、基地労働者最小限度の要求をかちとり、米軍による直接雇用を、本土政府を通ずる間接雇用に一日も早く切りかえるべきであります。  さらに進んで、沖繩平和経済開発沖繩県民生活向上のために、特に戦後二十五年のおくれを取り戻すためにも、一日も早く沖繩県民全面かつ完全な国政参加を実現するとともに、本土の各県以上に、財政上、経済上の積極的措置を講ずべきだと思います。これは沖繩人々を敗戦とともに里子に出した日本政府責任であり、日米共同声明を作成した総理の、沖繩人々に対する道義的、政治的責任だと考えるのであります。(拍手総理の所見を承りたいと存じます。  次に、外交政策についてお尋ねいたします。  日米共同声明は、昨年末の臨時国会実質的審議は全然行なわれないまま、総選挙に入ったのであります。この日米共同声明で私たちが一番危惧する点、すなわち、日本の平和と安全に危険だと思う点は、韓国台湾の安全を日本の安全と一体とみなしておる点であります。この前提に立てば、韓国台湾の安全が侵されたと政府が判断した場合、米軍日本基地からの出動を積極的に許すだけではなく、自衛隊出動も当然あり得ることと出争えなければなりません。安保条約には、日本の領域に外部から攻撃があった場合、日米は共同して行動するという取りきめになっておりますが、今回の日米共同声明により、日米共同行動をとる地域が、朝鮮半島台湾海峡にまで拡大されたと思わざるを得ないのであります。これが日米共同声明の核心であり、いわゆるアジア安保に拡大されたというゆえんでもあります。日米共同声明によりまして、安保条約の内容は、事実上大きく変質され、新条約が締結されたにひとしいこととなっております。(拍手)この事実を国民の前に明らかにし、国民の審判を受けることなく、安保条約自動延長は今度の選挙で承認されたということは、問題のはなはだしいすりかえであり、これほどの独断はないと思います。(拍手)  そこで、私は総理に、韓国あるいは台湾の安全というのは一体いかなる意味かを、この際明らかにしていただきたいと存じます。朝鮮民主主義人民共和国と韓国との間、あるいは中華人民共和国と蒋政権の紛争も、その規模いかんによっては、韓国あるいは台湾の安全が脅かされたものと解し、米軍日本基地からの出動を認めることになるのかどうかということであります。もしそうだとすれば、これは他国内政問題に対する介入であり、許すべからざることだと思いますが、総理一体日米共同声明の解釈としてどのような見解をお持ちか、明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)  以上に関連し、私は、日本アジアの平和と安全のために日本戦争に巻き込まれないこと、また戦争加害者になってはならないという立場から、アジア介入についての三原則を提起したいと存じます。  アジアにおいて、いま戦争の危険が集中しているのは、朝鮮半島台湾海峡であり、またベトナムでは現実に戦争が続けられております。言うまでもありませんが、南北朝鮮南北ベトナムの統一問題も、中国台湾関係も、いずれもそれぞれの民族内政問題であります。これをまず第一原則として確認すべきであります。  民族内政問題に外国が武力介入することは許されないことは当然であり、したがって、日本から米軍朝鮮台湾ベトナムに直接出動することに、断じてイエスを与えてはならないと思います。これが第二の原則であります。(拍手)  ましてや、他国内政問題に介入するため、自衛隊出動は、絶対許すべきではありません。これが第三原則であります。  伝えられるところによりますと、自由民主党内部にも、日中関係改善のため、不戦宣言を行なえとの主張があるようですが、私もその趣旨には大いに賛成であります。日中不戦はもちろんのこと、朝鮮人々とも戦わない、ベトナム民族とも戦わない、これが私の言うアジア介入の三原則であります。非核原則とともに、このアジア介入の三原則国会決議とするよう、自民党総裁として、佐藤総理積極的姿勢をとられんことを要望してやまないものであります。(拍手)  次に、これからの日本外交最大課題といわれておる中国問題に対する総理見解を承りたいと存じます。  総選挙のさなか、総理は、日中改善のため、場所と時を問わず、政府間接触を積極的に進めると、前向きの姿勢を示されたのでありますが、その後、総理中国問題に対する姿勢が、またまた後退したとしか考えられないことは、まことに残念でございます。  総理の言われる、国際緊張を緩和し、恒久的な平和な国際秩序を形成するその主軸は、特にアジアにおいては、日中関係改善日中友好促進をおいてほかにないことは、すでに国民の常識だと考えるのであります。(拍手)  もちろん、中国問題解決のためには、どうしても踏まなければならない多くの段階があります。政治原則政経不可分原則を認めることがそれであります。  昨年の日中覚書貿易調印の際、この原則はすでに確認されており、政府が右の原則を認める地ならしはできておるのであります。協定延長交渉のため、近く中国に出向かれる古井氏に、総理は、政経分離という旗じるしを振りかざすことは、あまり現実的ではない、政治経済は明確に分離できるものではないと言われたとも伝えられております。だとすれば、いま一歩進めて、政治原則政経不可分原則を確認することこそ、大きく動こうとしている中国をめぐる情勢に正しく対処する道ではないでしょうか。(拍手)  総理の勇断を願うとともに、私は、当面ぜひとも日中関係打開のため実行しなければならないこと、また、政府としても実行可能な問題について、善処を要請したいと存じます。  その第一は、中国国連代表権について、重要事項指定方式提案国になることをやめるということであります。(拍手)  その第二は、対中国貿易輸出入銀行資金使用を認めるということであります。(拍手)  その第三は、いま危機的状況にある日中の民間漁業協定政府間漁業協定に切りかえ、問題の前向きの解決をはかることであります。このことは、漁業問題のワクを越えて日中関係を前進さす突破口となると思うのであります。  いまや、米中会談再開に見られるように、米中の間は微妙な動きを見せており、いままでのような中国封じ込め外交方式は大きくくずれかかっております。  総理は、中国がより協調的かつ建設的な態度をとることを期待すると演説されましたが、もともと太平洋戦争の経過から見ても、より協調的、建設的な態度をとらなければならないのは日本ではないでしょうか。(拍手)また、中国は、米国との会談再開にあたりまして、平和五原則という協調的、建設的姿勢をすでに示しておるではありませんか。佐藤総理ことばをかりるならば、中国問題に取り組む発想を大転換し、アジアの平和と日本の国益を追求する時期はすでに到来いたしておるのであります。  総理は、中国問題を今後の日本外交の中にどのように位置づけられようとしておるのか、総理の対中国政策基本的なかまえ、それと、その具体化の道を国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)  次に、二月三日調印された核拡散防止条約について、総理見解を伺いたいと存じます。  核の拡散を防止するという大目的にはだれしも賛成であります。しかし、条約を結ぶとなれば、それは核兵器全面禁止完全廃棄を保障するものでなければなりません。ところが、今回の核防条約は、核保有国に核軍縮の義務を少しも負わしておりません。それどころか、核保有国核兵器の引き金を握っている限り、核兵器をどこに持ち込もうとも差しつかえがない。すなわち、横への核拡散は禁ずるが、縦の拡散は野放しという核保有国核独占を認める条約であります。  日本についていえば、核防条約は、安保条約及び日米共同声明一体となって、アメリカの核のかさのもとに日本を固定的に組み入れるだけではなく、日本への核持ち込みをも認めるという危険な結果をもたらすものであります。それだけではありません。核の平和利用についても、非核保有国がはなはだしい不平等取り扱いを受けておることは、天下周知の事実であります。  このように多くの問題点を持つ条約を、国会審議も待たないで調印した政府態度は、日米共同声明の危険な実態が明らかにされるのをおそれ、臨時国会での実質審議を一切省略して解散を行なった政府議会無視態度と相通ずるものがあるといわなければなりません。(拍手)  政府は、調印にあたり声明を出されましたが、この声明で取り上げられた多くの問題点は、条約批准条件なのか、それとも単なる希望の開陳にすぎないのか、その点、声明はまことにあいまいであります。総理の明快な見解を承りたいと存じます。  国会審議を経ないで早々条約調印に踏み切った政府は、少なくともその責任において次のことを実行すべきだと考えます。  米、英、仏、中、ソの核保有国を含めた世界各国首脳会議を開いて、核兵器全面禁止完全廃棄につき討議するとともに、その第一歩として、核保有国は、核兵器をいかなる時期いかなる状況においても他国より先に使用しないという協定を取りきめることを提唱すべきだと思います。原子力平和利用における不平等と差別をなくするため、特に米ソに向かって自主性あるき然たる態度で交渉し、少なくともこの条件がかなえられない限り批准は行なわないとの態度を貫くべきだと考えるのであります。(拍手)そして何よりも、その前提として、日本平和的立場に一点のあいまいさも残さぬよう、非核原則国会決議として確認するため、佐藤総理がイニシアチブをとられんことを強く要望したいと存じます。(拍手)  以上で質問を終わりたいと存じますが、最後に、最近国民が重大な関心を寄せておる言論出版の自由の問題につき一言触れたいと存じます。  憲法は、国民基本的権利として言論出版の自由を保障しております。これは、人間としての基本的権利であると同時に、政治制度としての民主主義の土台でもあり、政党間の問題という次元を越えた憲法基本にかかわる問題であります。よって、問題の所在を明らかにし、言論出版の自由、表現の自由を確保するために、国会の権威において良識をもって対処され、国民期待にこたえるべきだと考えるものであります。  以上、私は、党を代表して、重要な内外政策につき総理考えをただしたのでありますが、私の聞かんとするところは、同時に国民ひとしく総理の口から聞かんとするところだと思います。総理の具体的かつ明快な御答弁を心からお願いいたしまして、質問を終わる次第であります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
  7. 佐藤榮作

    ○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 成田委員長にお答えいたします。  施政方針演説で申し述べましたとおり、一九七〇年代は、わが国といたしましても、さらに大いなる前進と飛躍が期待できる時代であると同時に、試練の時代でもあると考えます。国民のエネルギーを結集して、一そう国力の充実をはからなければなりませんが、中でも政治責任はきわめて重大であります。国会における実りある論議を通じて、国運の進展に寄与したいと念願しております。具体的な問題に入る前に、まず、この点につきましての御協力を特にお願いいたしたいと思います。  さて、平和を確保し、国民生活向上をはかるという基本的な命題につきましては、成田委員長も、私も、変わりはないと思いますが、問題は、方法論の違いであります。成田委員長は、七〇年代の進路として、憲法秩序を守るか、安保体制を強化するかの、二者択一だ、この議論を展開されましたが、私は、さようには考えません。  戦後、四分の一世紀を経て、民主主義日本国民の生活感覚の中に溶け込んでいるという私の認識は、演説で申し述べたとおりであります。さらに、日米安保体制のもとにあって、平和が確保され、経済が発展してきたという厳然たる事実があります。さらに、このたびの総選挙の最も大きい争点の一つでもありました。もちろん、真の国民福祉を実現するためには、各分野にわたって、もっともっと努力しなければならないことはたくさんありますが、自由を守り、平和に徹するわが党の基本姿勢を変更する必要はないし、また、変更すべきでないと信ずるものであります。(拍手)  なお、私は、現行憲法改正する必要はない、かように考えておりますので、この点も、あらためて表明しておきます。  次に、経済発展に伴う国民生活上の諸問題については、私も深く心を痛めております。私が、七〇年代は内政の年だと申したのも、まさにこの点であります。これらの諸問題の多くは、世界の先進諸国が現在経験しつつあるところでありますが、中には、わが国だけが体験しつつある特殊な課題もあることは、御承知のとおりであります。  これからの日本政治最大の仕事の第一は、伸びゆく経済力をいかにして国民の福祉に結びつけるかということであり、第二には、アジアの国々の発展にいかにして寄与していくかということであると思います。  成田君が御指摘のように、日本経済発展について、エコノミックアニマルという批判があることは事実であります。この点は、政府国民も自律自戒しなければならないと思います。民生安定こそ緊張緊和への道であるという信念に基づいて、各国の理解を得つつ、その独自性を尊重して、できる限りの寄与をなすべきであると、かように信じております。  次に、四十五年度の予算に関連して若干の御質問がありました。  まず成田君は、この予算に対し、国民生活優先の精神が見られていないとの御批判でありましたが、決してそのようなことはありません。かつてない大幅な所得税の減税、きめこまかい社会保障の充実、社会資本の整備の促進公害対策の強化など、いずれも国民生活優先のあらわれであります。私は、この予算こそ、内政の年である七〇年にふさわしい充実した予算であると確信するものであります。(拍手)  また、成田君はこの予算に対し、物価引き上げ予算と言われましたが、法人税負担を引き上げ、さらには公債発行額を縮減するなど、総需要を適正に保つための配慮は十分に払っております。さらにまた、消費者米価の水準を据え置き、極力公共料金の抑制をはかるなど、政府としては物価の抑制を第一の課題として来年度予算の編成に当たったところであります。  通貨の供給量を押えよとの御意見は全く同感であります。このため、政府、日銀としても、つとに昨年九月以来金融引き締め政策を実施してきたところであり、最近、ようやくその効果があらわれ始めているようであります。  私は、現在の時点を、成田君のようにインフレ構造が定着したとは考えておりませんが、物価上昇を放置してインフレへの道を歩むことは厳に避けねばならないことはもちろんであり、今後の財政金融の運営にあたりましては、物価安定を第一義に置いて、慎重かつ弾力的な運営を行なってまいる所存であります。  次に、防衛予算について御発言がありましたが、国防に関して健全な認識を持つ大多数の国民諸君は、成田君と同じような考え方は持ってはおりません。国力、国情に応じて自衛力を着実に充実するというわが国防の基本方針のもとに、第三次防衛力整備計画の線に従って防衛予算を編成したものであります。私は、防衛予算だけが国防をささえるものとは考えておりません。民生の安定こそ、何よりも国防の基本となるものであり、そのような意味合いにおいて、国民生活を圧迫するような防衛予算考えられるはずがありません。(拍手)今回の防衛予算が、社会保障社会資本の充実等の、国民生活と直接関係する分野の予算と均衡のとれた予算であることを、よく御理解いただきたいと思います。  次に、土地先買い権についてでありますが、政府としては、かねてから公共事業の円滑な実施を将来の望ましい地域づくりのために、公共用地等の先行的取得が望ましいと考え土地開発基金を設置させるなど、地方公共団体を指導してきたところであります。成田君が先買い権を認めよと主張されることは、政府として大いに歓迎するところであり、公共用地の取得にあたりましては、今後、十分の御協力をいただけるものと期待いたしております。(拍手)  東京問題調査会の提案につきましては、示唆を含む点が多く見受けられますので、とるべき点、とるべきそのものにつきましては、今後の土地政策の推進にあたって、十分参考にしてまいる考えであります。  次に、所得税の減税について、成田委員長はきわめて不十分であるとの御批判がありましたが、国税、地方税を通じて、平年度三千八百億円にのぼるこの減税は、かつてない大幅なものであり、困難な財政事情の中で、一方において法人税負担の引き上げを実施しながら行なう減税であることは、むしろ高く評価さるべきであると自負いたしております。(拍手)  また、多年の懸案であった利子配当課税につきましても、国民の貯蓄に及ぼす心理的影響に十分配意しながら、その漸進的な改善をはかったところであり、所得税の大幅減税と相まって、税負担の公平化は一そう進められるものと考えております。  また、成田委員長は、四十六年度以降も長期減税目標を立てよとの御意見でありますが、税制調査会の御意見をも十分に伺った上で検討したいと考えております。  いずれにいたしましても、今後の経済成長の推移や経済構造の変化、あるいは財政金融政策のあり方などに即応した新しい税制のあり方につきましては、十分の検討を加えてまいる決意であり、その場合、中堅サラリーマンを中心とする所得税の減税につきましては、なお今後とも努力してまいりたいと考えております。  児童手当、農業政策社会保障、公共対策などについてきびしい御批判をいただきました。(「公害だよ」と呼ぶ者あり)公害も同様に御批判がございました。私は、これらの問題は、いずれ予算委員会その他を通じて明確に論議がかわされることだと思いますが、成田君の御提案になりました予算修正権の問題について一言触れたいと思います。  これらの問題についてぜひとも不十分だから予算修正の慣行を確立せよとの御提言でありますが、この予算は、先ほども申し上げたように、内政の年にふさわしい国民生活重視の予算であります。政府責任をもってこの編成に当たったのでありまして、議院内閣制のたてまえに即して、与党である自由民主党の意見は十分にしんしゃくして編成されたものであり、御提言のように、各党一致した基本的な修正が行なわれる余地は、残念ながらないことをはっきり申し上げておきます。(拍手、発言する者多し)  沖繩問題についてお答えいたします。  政府としても、沖繩における米軍の一連の解雇措置を重視し、離職者の生活保障の見地から、米側に対し、退職手当の増額、解雇予告期間の延長等につき善処方を求めてきております。今後とも引き続き復帰準備の一環として、沖繩の軍関係労務者雇用条件本土基地労務者の雇用条件に近づけるよう、米側との話し合いを続けていく考えであります。しかしながら、全軍労のストの問題は、米軍側と全軍労の間の問題であり、政府としてこれに直接介入する考えはありません。政府としては、両当事者が問題点についてしんぼう強く話し合いを続け、一日も早く双方の納得し得る解決に到達することを望んでおります。  次に、日米共同声明アジアの平和との関連についてお尋ねがありました。  わが国の安全は、極東の平和と安全なくしては十全を期し得ないことは明らかであります。特に、韓国や中華民国のような近隣諸国の安全は、わが国の安全にとって重大な関心事であり、万一これが侵されるような事態が発生すれば、まさしくわが国の安全にとってゆゆしいことでありますから、このような場合には、事前協議を適正に運用して、前向きの態度をもって事態に対処することは当然であります。この点は、昨年の臨時国会演説でも申し述べたとおりであります。また、わが国の自衛隊の任務は侵略からわが国を防衛することであって、海外に出動することは、憲法のたてまえ上からもあり得ません。御提案の三原則の御趣旨は、つまるところ、朝鮮半島台湾地域に侵略が行なわれても、在日米軍出動しないことを確認せよということだと思いますが、この提案は、さきに述べたような認識を欠くものであり、わが国の自由と平和を確保するための日米安全保障条約を十分に機能せしむるゆえんではないと思います。  また、分裂国家の問題は、当事者間の平和的な話し合いを通じ、公正な方法により解決することが最も望ましいことは申すまでもありません。しかしながら、この問題と、わが国を含む極東の安全を確保する米軍の役割りとは、同一に論じ得ない問題であります。  中国大陸との関係につきましての政府態度は、選挙中、選挙後を問わず、特に変わってはおりません。すなわち、日本中国大陸とが、相互の立場と国際環境の現実を理解し合い、尊重し合えば、体制の相違を越えて友好関係の増進が可能であるとの考え方に基づき、わがほうから各種接触の門戸を開放しておくのが政府政策であります。先方が希望するならば、双方が合意し得る場所において大使級の政府間接触の道を開きたいと考えております。  国連における重要事項指定の提案国となるかどうかについては、今後さらに慎重に検討いたします。ただいまきめておりません。  輸銀融資については、固定的な態度をとらず、ケース・バイ・ケースに検討する従前からの方針を堅持しておりまして、変わりはありません。  日中間の漁業協定は、現在の情勢では民間協定であることが望ましいと考えておりますが、政府としては安全操業の確保には強い関心を有しており、本年六月において民間協定が延長されることを希望しているのであります。  問題の日中間の基本態度いかん——以上説明いたしましたとおり、私どもはどこまでも自由を守り、平和に徹する国柄でありますし、善隣友好、これまた外交の基調でありますから、これらの点で善処してまいりたい、かように考えております。  次に、核防条約についてお尋ねがございました。これをお答えをいたします。  まず、核保有国が進んで具体的な核軍縮措置をとることが、この条約の目的を達成するため必要であると考えます。今後とも軍縮委員会等あらゆる機会をとらえて、その促進を強く訴えてまいります。  核の平和利用については、わが国のような非核保有国のみが国際原子力機関による査察を受けるという不平等があります。しかし、この条約の実施にあたって、非核保有国原子力平和利用を不当に制約することになってはならないとの精神はこの条約の基調になっておりますから、政府としては、査察の実施の面での差別待遇がないよう、国際原子力機関との査察協定を作成する上で努力する所存であります。  また、委員長の提唱されている核兵器の先制使用禁止協定は、元来保有国間で考えられるべき問題でありますが、すべての保有国が参加しなければ無意味であろうと、かように考えます。  次に、本条約では核の持ち込みを禁じてはおりませんが、わが国につきましては、政府非核原則を堅持しておりますので、わが国への核持ち込みはあり得ません。  調印の際の政府声明批准条件かいなかというお尋ねでありますが、軍縮交渉が中止になったり、非核保有国の安全保障に関する措置が実施されなかった場合とか、また平和利用の査察協定の内容が実質的に不利であれば、批准について考え直す必要があると考えます。十分御審議をお願いいたします。  最後に、言論出版の自由についてでありますが、言論出版の自由は民主主義社会基本をなすものであり、政府としても、言論出版が不当に抑圧されることのないように十分に配慮しなければならないと、かように考えます。  以上、お答えをいたします。(拍手)     —————————————
  8. 船田中

    議長船田中君) 水田三喜男君。   〔水田三喜男君登壇〕
  9. 水田三喜男

    ○水田三喜男君 私は、自由民主党を代表し、七〇年代における国政の基本課題について、佐藤総理大臣に対し、質問を行なうものであります。  まず第一に質問いたしたいと存じますことは、民主政治の運営についてであります。  いまや一九七〇年代の黎明を迎え、時代は新たな変革期、躍進期に入ろうとしております。総理が述べられましたように、七〇年代はわが国の偉大な発展の年代であり、また多くの試練に直面する時代であるとも思われるのであります。この七〇年代を迎えるにあたって行なわれましたさきの総選挙は、わが自由民主党に三百名という圧倒的多数の議席を与えました。(拍手)一方、野党は、第一党の社会党が大きく動き、野党多党化の現象がいよいよ顕著になってまいりました。この現象は、はたして何を意味するものであろうかを、われわれは冷静に判断し、今後の国政を誤りなく運営しなければならぬと思うのであります。(拍手)  今回の総選挙の結果が示しました意義は、国民の大多数がわが自由民主党の現実的な政策を支持し、七〇年代も引き続き、わが党に政権を託する意思を明らかにしたということであります。(拍手)  この選挙における最大の争点は、沖繩の早期復帰と日米安保体制の堅持でありましたが、安保条約の廃棄や非武装中立の主張はもちろん、沖繩の無条件即時全面返還等、現実無視の要求はきびしい国民の審判を受けたのであります。(拍手)一部勢力のいわゆる七〇年闘争は、国民の良識によって否定されたものといわなければなりません。(拍手)私は、すべての政党は、この国民の審判をすなおに受けとめて、国政の基本に関する外交、防衛、教育等の問題につきましては、できるだけ国民的合意に到達するよう真剣に、率直に話し合うべきであると思うのであります。(拍手)  四分の一世紀にわたる戦後の政治から脱却しようとする七〇年代は、もはや対決と分裂の時代であってはなりません。あくまでも合意と創造発展の年代とすべきであります。国民が無意義な対立抗争をやめ、力を結集して新時代の建設に前進するならば、輝かしい日本の時代は開かれるものと私は確信いたします。(拍手)  そのためには、三百名の議席を与えられた自由民主党が、決しておごることなく、野党の各党に接触し、重要な国政については常に協力を求める謙虚さが必要であることは言うまでもありませんが、同時に、民主政治の運営を円滑ならしめるためのルールを、この際国会において確立することが何よりもの急務であり、国民に対する各党共同の責務であると私は思うのであります。(拍手)  いわゆる国会の正常化は、叫ばれてよりすでに久しいものがあります。毎国会ごとに与野党の話し合いが行なわれ、改善への努力がなされているにもかかわらず、ついに今日までその実効を見ることができないことは、悲しむべき事実であります。重要議案の成立を阻止するためには、依然として委員会の開会拒否や議事引き延ばしの動議戦術が行なわれ、また採決の場における牛歩戦術はいまだにあとを断っておりません。一方、実力行使によって議事や採決が妨害され、他方、これらに対抗して審議の早期打ち切りや強行採決が行なおれている国会の姿は、決して国民の負託にこたえるゆえんではあり得ません。国民の多くは、国会混乱の真因を理解することができず、与野党対立の争点すら明らかにされないような国会運営のあり方は、まさに国民不在のルールなき政治遊戯といわれてもいたし方ありません。(拍手)かくては議会民主主義に対する国民の信頼を長くつなぎとめることが不可能であろうことを、私は深刻におそれるものであります。  現行の国会法は、したがって、すみやかに改正されなければなりません。終戦後の新憲法が、明治憲法の経験を基礎として運営されました関係から、現行制度はその発足の当時から矛盾を内包しております。すなわち、個人本位か政党本位か、さらにまた、本会議中心主義か委員会中心主義かの問題をはじめとして、議長の権限や権威の確立、不適当な先例と慣行の改廃等々、懸案はいまだ一つも解決されておらないしのであります。少数者の意見が公正に尊重され、多数決原理がゆがめられない議会制度を確立することが民主政治前提であるとしますならば、現行の国会法は何としてもすみやかに改正されなければなりません。(拍手)  佐藤総理は、施政演説におきましてこの問題に触れられ、次のような趣旨を述べられました。すなわち、民主主義国民のためのものである。近時、国民の間に行政の能率化、裁判の迅速化、国会運営の正常化を望む声が一段と高まっている。立法府、行政府、司法府は、それぞれの立場において国民の声にこたえる努力をすべきである。政府としては、その条件の整備に格段の努力をいたす所存であるとのことでありましたが、国会運営の正常化に対し、はたして政府はいかなる条件の整備に努力されようとするのでありましょうか。総理の言われている条件の整備とは、はたしていかなることでありましょうか。総理大臣の御所信をお伺いしたいのであります。  総理の述べられますように、国会の正常化は、確かに国会みずからの立場において解決さるべき問題であります。国会みずからの手によって、与野党すべての責任においてなさるべきであることは言うまでもありません。  しかしながら、私は、この問題に関する限り、政府責任もまたきわめて重大であることを指摘せざるを得ないのであります。すなわち、国権の最高機関である国会の解散が政府の恣意によって随時行なわれ得た従来の慣行が、国会の正常化に寄与するものであったとは必ずしも思われないからであります。近代民主主義憲法は、政府の一方的意思による議会の解散を否定するのが通例であります。いやしくも立法府を構成する国会議員の任期が行政府の一方的意思によって左右せらるるがごときは、民主主義憲法の指向するところではないからであります。したがいまして、国会の正常化は決して政府と無関係なものではあり得ません。私は、国会混乱の遠因は、むしろ政府における憲法運用の態度の中に根ざしているものであることを憂えざるを得ないのであります。(拍手国会議員の任期が保障されない限り、議員は常に選挙運動に追われて落ちつかず、国会の公正な審議と採決が常に選挙用のゼスチュアによって妨げられる実情も、決してゆえなしとは思われないのであります。(拍手)したがいまして、私は、国会運営の正常化は、まずもって、憲法の定むる議員の任期が憲法を運用する政府によって保障されることから出発しなければならないと思うのであります。(拍手)  経済が高度の成長を遂げているにもかかわらず、政治運営の姿がこれに伴わず、旧態依然とした幼稚さを、われわれはもはやこれ以上国民の前に露呈すべきではありません。(拍手)ことに白昼列をなして国会の議場を牛歩するがごときは、どう考えてみましても、七〇年代における国民代表の姿として内外に誇り得るものではありません。(拍手)私は、国会が一日も早く国民によって尊敬される姿を取り戻すよう、与野党各位一そうの御精進をここに訴えますと同時に、憲法の運用におきまして、政府は、今後、民主政治の育成のため、いかなる考慮を用意されておられるのか。私は、この際、佐藤総理の熱意ある御所信を重ねてお伺いするものであります。(拍手)  質問の第二は、国、地方を通ずる行政の改革についてであります。  国民の福祉を増大させ、正しい民主政治を定着させるためのいま一つの要件は、言うまでもなく、行政の運営が適正であり、効率的であることであります。公務員や公共企業体の職員が、国民への奉仕者としてその責務を果たすためには、最小限の定員で最大限の能率を発揮し、国民の利益に役立たなければなりません。現状は、はたしてその要請にこたえているでありましょうか。社会の進展につれて新たな行政需要が続々発生し、社会の複雑化に伴って行政はますます専門化し、分化せざるを得ないために、行政機構は近年膨大化の一途をたどってまいりました。その結果、国家公務員と政府関係機関職員、地方公務員の総数は四百数十万人となり、人件費は三兆円をこえるに至っております。その間、法律と政令もまた増加の一途をたどり、三千数百件にも達して、行政の複雑化はますます国民の負担を重からしめ、また、公共企業の非能率は、公共料金を高めるものとして世論の指摘を受けておりますことは、御承知のとおりであります。  政府は、さきに、これら世論の要請にこたえて大規模な臨時行政調査会を設置し、行政改革に関する意見の答申を求めました。臨時調査会の答申は、きわめて貴重な労作として高く評価されたものでありますが、自来五カ年、今日に至るまで、政府によって採択され、実施されたものがきわめて少ない実情につきましては、けだし相応の理由があるものと思われるのであります。  すなわち、行政機構の合理化は、ひとり中央政府機関のみの改廃、統合によって求め得られるものではありません。中央、地方を通ずる行政事務の合理的な配分を基礎として、機構の全体的、有機的な改革を企図するものでなかったら、その実効を期することはできないからであります。  わが党は、昨年の暮れ、広域行政機構についての試案をつくり、これを政府に示したのでありますが、このような試案が策定されるに至りました理由もまた、地方における経済圏の急速な拡大に対して、現行の行政組織がその機能を効果的に発揮することが不可能となっているからであります。いわゆる府県の合併問題は、かつてわが党において論ぜられたところであり、さらに最近に至りましては、民間の経済団体等によって、いわゆる道州制論が提唱されておりますことも御承知のとおりであります。現在の都道府県の行政区域は、約一世紀前、明治四年に行なわれた廃藩置県以来のものであります。すでに百年近くを過ぎて、わが国の経済社会が革新的な変貌を遂げるに至りました七〇年代におきまして、県制を廃し道州制を置こうとする廃県置州の要望が胎動いたしておりますことも、ふしぎとすることではありません。むしろ当然な動きであろうと思うのであります。  したがって、今後における行政改革は、広域行政の角度から再検討されなければならぬことは言うまでもありません。広域行政機構のあり方と関係なしに、これを無視して中央機構の合理化のみを推進することは困難であります。  それゆえに私は、ここに引き続いて第二の大規模な行政調査会の設置が必要となってきましたことを痛感するものであります。新しい調査会において、広域行政の角度から、中央、地方を通ずる行政組織全体の総検討が行なわれますならば、さきに出された臨時調査会の答申も、初めてその所を得るものと思われるのであります。総理大臣の御所見を伺いたいと存じます。(拍手)  総理施政演説の中におきまして、行政の能率化に対しましても、次のような趣旨を述べられております。すなわち、それぞれの立場でこのような国民の声に応じて、その機能が十分に発揮されるようさらにつとめなければならないと思う、政府としてはその条件の整備に格段の努力をいたす所存であると触れられておりますが、行政機構の合理化と簡素化、公務員の能率向上と綱紀の粛正こそは、七〇年代におけるわが国民の飛躍と繁栄を左右する重大な要件であるといわなければなりません。(拍手)  かつて臨時行政調査会長であられた佐藤喜一郎氏は、行政の改革が一日おくれることは日本の再建が一日おくれることであると言われておりますが、その立論は決して誤りではないと思うのであります。特に中央、地方を通ずる行政事務の合理的配分は緊急な課題であるといわなければなりません。  一例をあげますならば、現在国税の事務に従事する税務職員は約五万一千人でありますが、地方税に従事する職員数は八万六千人であり、中央と地方を合わせれば十三万七千人に及ぶのでありますが、もしも税制改正が企てられ、付加税制度の導入が行なわれて事務の重複が省かれるとしましたら、地方税職員によって国税職員の不足を補うことも十分に可能であるといわれております。  また、農林省における統計調査事務所と食糧事務所の定員は、合計しておよそ四万人でありますが、一方、都道府県、市町村の農林関係職員は十二万二千人をこえております。合わせて十六万人の職員によって従事される事務量は、はたして均衡を得た適正な行政配分であるかいなかは、早くより指摘されているところであります。(拍手)  問題は、合理化であり、能率化であります。国民経済の求めるところは、簡素なる行政であり、人的資源構成の均衡であります。公務員の待遇は常に適正に改善されなければなりませんが、行政事務の推移によって、配置の転換は常に迅速に行なわれなければなりません。行政機構の改革は、総理の言わるるとおり、いまや国民の声となっております。行政の能率化は、国民の委託を受けて政権を担当する政府固有の義務であり、行政府本来の責任であると存じます。  私は、この際、佐藤総理の英知と勇断を強く要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
  10. 佐藤榮作

    ○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 水田君御指摘のとおり、さきの総選挙の結果は、率直に申しまして、重大な意味を持っておると思います。われわれ自由民主党は、多党化時代といわれる選挙において三百の議席を与えられたのでありますが、国民の審判の意味するところは明らかであります。  すなわち、十年前の安保改定期において国論を二分したにがい経験を持つ日本国民は、再びその混乱を招くことを避けたと言えるのであります。(拍手)そうして、わが自由民主党政策を支持し、政局を安定するに足る議席を与えると同時に、一九七〇年代をりっぱに乗り切って、進歩と発展をはかる責任を負託したのであります。私は、責任の重大さを痛感しており、わが党が政治姿勢を正して国民のための政治に全力を尽くすことこそ、国民期待にこたえるゆえんであると信ずるものであります。(拍手)  また、政治の進歩のため、尽くすべき論議を国内的に尽くすべきは当然でありますが、不毛の対立や分裂を避ける努力が必要なこともまた明らかであり、われわれが特に心しなければならないことであると思います。  私は、先般沖繩返還交渉のため訪米する際にも、各党党首との会談をお願いしたのでありますが、今後とも重大な問題につきましては同様の心がまえで処してまいりたいと、かように考えております。  水田君は、議会民主主義のあり方についてその信念を披瀝されました。私も全く同感であります。国会が開会されるたびごとに正常化ということが問題になりますが、国民政治に対する信頼を高めることの第一の要諦は、国会が正常に運営されるということであることは申すまでもありません。このわかり切ったことがなかなか行なえないというところに、大きな問題があると思います。私どもは、さきの選挙であらためて洗礼を受けて出直してきたのでありますから、この際、過去のいきさつにとらわれず、初心に返り、議会政治基本ルールに基づいて行動しなければならないと思います。国会法の改正につきましては、私も全面的に賛成であります。議長の権威を確立することや審議の能率化をはかることなど、国会がその機能を十分果たすために改めなければならない点は多々あります。しかしながら、これこそ与野党の合意が何よりも必要な課題でありますから、真剣に取り組んで、早急に結論を出していただきたいものだと念願しております。また、国会の正常化という問題は、ひとり国会だけの問題ではなく、政府責任もまた大であることは、水田君御指摘のとおりであります。国会審議促進するため、政府としては法案提出の迅速化、資料の整備充実などなお一段と努力いたしますが、同時に、行政の能率を向上させるために、立法府におかれましても一そうの御協力をお願いしたいと思います。  次に、行政能率の向上、裁判の迅速化、国会運営の正常化をはかるための各種条件の整備は、政府としても大きな関心を払っており、予算措置等の面について今後ともさらに努力する所存であり、昭和四十五年度予算におきましても、裁判官の増員など十分に配慮した次第であります。  次に、国会の解散については、早急な解散を慎むべきであり、また、憲法で定められた議員の任期はできるだけ保障さるべきであると御意見がありました。政府に解散権の存することはもとよりでありますが、水田君の御意見を十分に参考として、慎重な憲法の運用をはかる所存であります。  次に、行政改革の問題についてお答えいたします。  水田君は、国民の福祉増進を願い、広域行政の将来を思って、行政機構の改革、国と地方を通ずる行政改革、広域行政の必要性等について指摘されました。社会経済の進展に即応して、むだのない能率的な行政を維持することが政府の重大な責務であることは、水田君御指摘のとおりであります。いろいろと御批判はありますが、政府はかねてから、臨時行政調査会の答申の趣旨を尊重しつつ行政機構の改革を進めており、一省庁一局削減や特殊法人の整理を行ない、また三カ年計画による許認可、報告事項の整理、三年間五%の定員削減等を実施しているところであります。  次に、臨時行政調査会の答申が十分に生かされていないという御意見もありました。答申の中には現行の行政制度の基本に触れるものもあって、短兵急にその全面的な実施をはかることが困難であるという事情もありますが、政府としては、今後とも行政機構の改革に真剣に取り組み、実現可能のものから逐次実施して、着実に行政改革の実効をあげてまいる所存であります。  次に、中央地方を通ずる行政事務の合理的な配分について御要望がありました。行政改革については、中央地方を通ずる国全体としての観点に立って対処すべき問題も少なくないと考えられます。今後とも真剣に取り組んでまいりたいと考えます。  最後に、広域行政問題について、地方制度調査会において、地方制度の基本的なあり方の一環として総合的な検討を願っておりますので、別途新たな調査会をこの際設置することは考えておりませんが、政府としては、これらの意見を参考としつつ、前向きに対処したいと考えておる次第であります。  なお、その他御高見をこの機会にいろいろお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。(拍手)     —————————————
  11. 船田中

    議長船田中君) 竹入義勝君。   〔竹入義勝君登壇〕
  12. 竹入義勝

    ○竹入義勝君 私は、公明党を代表して、佐藤総理に質問をいたしたいと思います。  まず、外交の諸問題についてでありますが、国際社会の平和を実現することは全人類の求める理想であり、平和憲法を高らかに掲げる日本国民の悲願であります。しかしながら、核戦争による人類絶滅の危機が依然として重くのしかかっている現在、世界唯一の核被爆国であるわが国が、絶対平和実現のためこん身の努力を払うことこそ、人類の歴史に対して課せられたわが国の厳粛なる使命であり、日本外交最大目標であると思うのであります。しかしながら、ただいたずらに理想にのみ拘泥し、現実を無視する議論に走ってはならないことも、当然のことであります。  私は、わが国における外交、防衛についての議論が、いたずらに平行論議やタブー扱いすることなく、国民の前でそれぞれの立場の功罪が明確に論じられ、国民の正確な選択が可能な素地をつくっていくことが、当面する議会人の責務であると確信をするものであります。(拍手)このときを迎え、今日わが国の外交に要求されるものは、みずからの立場を正当化するためその事実を隠したり、現状を維持しようとする硬直的な姿勢ではなくして、現状を改革しようとする積極的な自主平和外交であると確信をするものであります。  いま外交問題についてわが国が最も必要なことは、抽象的なことばではなく、アジアの緊張緩和をわが国はいかに実現するかという具体的施策であろうと思うのであります。(拍手)  以下、七〇年代のわが国が直面する外交の重要課題に対し、二、三お伺いをいたしたいと思いますが、総理の率直かつ明快なる答弁をお示し願いたいのであります。  質問の第一は、対中国問題についてであります。十四日の所信表明において、総理は、沖繩返還実現によって戦後は終わる趣旨の発言がありましたが、領土問題においては北方領土の返還、政治問題においては日本と北京政府との間に国交が正常化されない限り、戦後は終わったとは決して言い得ないと思うのであります。(拍手)北京政府の出方いかんによってわが国の対中国方針を対応させていくという消極策では、中国問題の前進はあり得ないと思うのであります。  昨年末の選挙期間中、総理は、日中関係改善のために、大使級会談を提唱いたしました。しかし、所信表明演説は全くうしろ向きで、総理日中関係改善姿勢は、単なる口先だけの外交辞令にすぎなかったと中国側が受け取ったとしてもやむを得ないのではないでしょうか。これは今後の日中国交回復に大きな禍根を残したといわざるを得ないのであります。国際信義上かかることの積み重ねが与える悪影響は、想像以上のものがあろうかと思います。少なくとも中国敵視の姿勢をやめることが肝要であり、さらに中国の国連加盟の推進ないしは国連加盟を妨げる一切の行動に同調すべきではないと思うのであります。  また、対中国貿易においても、輸銀使用問題は、すでに政府が吉田書簡は超越されていると言明したのでありますから、この際一歩進めて、吉田書簡を事実上廃棄し、輸銀使用の問題を前向きに解決して、日中貿易の促進をはかるべきでありましょう。総理の確たる所信を承りたいと思うのであります。(拍手)  日米共同声明問題点はあまりにも数多く、核抜き本土並みは単なるスローガンにすぎないのではないかと心配をいたしております。日米交渉の実質は、きわめて危険な内容を含んだものであることは、前国会において指摘をいたしたとおりであります。特に、第四項の朝鮮半島並びに台湾地域における緊張が日本の存立に直接関係あるということを確認し合い、韓国並びに台湾に対し武力攻撃が発生したときには、事前協議に対し前向きかつすみやかに態度を決定することを明らかにされたのは、きわめて重要であります。これは、いかに総理が抽象的な言いのがれをしても、事実上事前協議制、すなわち、戦争巻き込まれへの歯どめが全くなくなったことを意味するものであって、もしそうでないならば、その旨を具体的にこの本会議の席上で明言せられたいのであります。(拍手)  また、沖繩並びに本土基地への有事核持ち込みの可能性が第八項において生まれたのではないかと国民は心配をいたしております。現在までの政府の答弁においては、その疑問を全く消し去ることはできません。将来にわたって非核原則を堅持し、核の存置並びに核持ち込みを絶対行なわないという保証を国民の前に明らかにすべきであります。これらの点について、総理の明確なるお答えをいただきたいと思うのであります。  私は、先日沖繩へ参りました。一九七二年本土復帰を前にしての沖繩県民の最も大きな関心事は、復帰のためのあらゆる体制づくりを本土政府がどのように考え、また、現地県民の要望を取り入れてくれるかということでありました。  沖繩の祖国復帰という問題に対しては、確かに県民のコンセンサスは形成されておりました。しかし、本土復帰を前にして沖繩経済をどうするのか、既存の企業やそこに働く労働者の将来はどうなるのか、また、米軍基地に反対しながらも基地経済に依存せざるを得ない沖繩百万の県民は、いま大きなジレンマにおちいっているのであります。現在行なわれているアメリカ基地労務者大量解雇の問題は、実にこの矛盾の象徴であると私は思うのであります。われわれは、一九七二年沖繩本土復帰をめどとして、このような沖繩のかかえる矛盾を解決しなければならないのであります。それは、沖繩県民に対し、本土政府国民の当然果たすべき償いであり、義務であると思うからであります。すなわち、沖繩県民の生活水準の向上、豊かで平和な環境づくりに最大の誠意と努力を傾け尽くさなければならないのであります。この観点から、まず一九七二年返還時まで米軍基地の撤去ないし縮小を実現したいとわれわれは思いますが、総理の所信を伺いたいのであります。  次に、沖繩経済自立への道はあらゆる問題解決へのかぎとなるべきものであります。すなわち、基地依存経済から脱却し、沖繩経済自立を全うするに足る基盤づくりについて、その構想が明確かつ早急に確立されねばなりません。その点についての総理の所信を伺いたいのであります。  なお、沖繩の総合開発、経済自立へのための特別措置法を制定する考えはあるか、総理見解をお示し願いたいのであります。  現在、軍労務者及び家族を含めて関係者が沖繩人口の約四分の一、二十五万に達するといわれる軍労解雇問題は、沖繩全土をおおう最大の問題であります。この点について政府は、アメリカ政府との間に解雇撤回、退職金の本土並み支給、解雇予告期間の延長、さらには間接雇用制移行問題など、どのように交渉をしたのか。さらに、アメリカがそれを行なわない場合、政府はみずから退職金の支出、間接雇用制への切りかえなど、この際統一された総理の構想、見解をお示し願いたいのであります。  次に、沖繩県民国政参加は、すでに衆議院において着々準備が進められており、沖繩県から選出される議員の地位、権限は、ほぼ本土並みとなる案が検討されつつあることは御承知のとおりであります。しかし、一九七二年施政権返還以前には、沖繩における不逮捕特権並びに免責特権についてはこれが保障されず、さらに参議院全国区選出議員については、選挙権並びに被選挙権は与えられないことになるようであります。しかし、これらの権利が欠けることは、完全な本土並みの議員の地位が保障されないことであります。参議院全国区については、沖繩県民国政参加は完全とは言えないのであります。日本国会並びに琉球立法院における立法措置は、当然それぞれの立法権に属することであり、行政府の干渉を受けるべきものではありませんが、アメリカ政府の持つ施政権の関連において、アメリカ政府の了解を、外交権を持つ政府において交渉すべきものがあるのではないかと考えるのであります。すなわち、沖繩における不逮捕特権、免責特権、選挙運動のための渡航の自由の保障について、アメリカ政府との交渉はすでに進めておられることと思いますが、総理はどのように考えておられるか、所信を承りたいのであります。  次に、核拡散防止条約についてであります。  政府は、国内になお根強い早期調印慎重論を無視して調印いたしました。もとよりわが党は、この条約基本的精神に対しましては何ら異議をとなえるものではありません。  そこで伺いたいことは、かねてより指摘されております核保有国の軍縮義務、わが国をはじめ非核保有国の安全保障の明記、核の平和利用の不平等性、条約期限の長期性を、今後いかなる方法によって解決されようとするか。さらに、中国並びにフランスの核保有国の不参加についてはどのように対処するつもりか、この点についてであります。総理の明確なるお答えをいただきたいと思うわけであります。  核兵器を絶滅することを究極の目的とするわが党の党是からいっても、核武装には断じて反対であります。政府の説明するところによれば、わが国の核拡散防止条約不参加が、将来日本の核武装を意図するものであるとの他の諸国の批判があり、その誤解を解くためにも核防条約に参加すべきであるというものでありましたけれども、その批判に対しては、かねてよりわれわれが主張している非核原則国会決議ないしは非核武装宣言を行なうことによって解消できると思うのであります。これら核防条約調印並びに批准に関する疑問について、総理見解を明らかにしていただきたいと思うのであります。  次に、社会保障政策についてお伺いをいたします。昭和三十七年、社会保障制度審議会は、わが国の社会保障水準と西欧諸国の水準を比較し、その大きい格差を指摘していることはすでに御承知のとおりであります。現在における社会保障の国際比較を、振替所得において見ますと、西ドイツ、フランス、イタリア等主要諸国ではほぼ二〇%台に達しているのに対し、わが国の振替所得は五・五%前後の横ばい状態になることが十分に予測されるのであります。総理は、七〇年代を偉大な十年とするため、新しい指針の第一に、世界のどの国にも先がけて、経済繁栄の中で発生する人間的社会的問題をみごとに解決すべきであると述べられておりますが、すでに国民生産は二千億ドルをこえんとし、十年後にはさらに三倍程度に増大することも不可能ではないと推測されるところから、振替所得から見た社会保障水準の向上をどのように考えておられるか、具体的な目標を明らかにしていただきたいのであります。(拍手)  次に、今日の社会保障の中で、所得保障がきわめて未成熟であることを指摘せざるを得ないのであります。一九六三年における主要国の年金給付費の対国民所得比は、アメリカ三・三%ないし西ドイツ八%に比べ、わが国は一九六七年においてすらわずかに〇・四%であって、全く低調であることが明らかなのであります。  このような現況から、まず深刻化する老齢人口に対して、早急に、総合的な老人福祉対策も含めて、いわゆる公的年金制度の総合調整等の根本的改善措置についてどのような見解をお持ちか、お尋ねするものであります。  さらに、わが国の所得保障水準の低さを助長するものに、児童手当制度の見送りがあります。児童手当昭和四十五年度実施については、昨年六月の社労委員会における前厚相の確約もあり、総理自身四十年一月の就任初の施政方針演説で創設を約束して以来、昭和四十二年三月の予算委員会における四十三年から実現したいという発言に始まり、四十四年二月の委員会において、再三にわたり佐藤内閣として最善を尽くすと答弁されており、また、昨年二回の党首会談においても、児童手当実現について総理のきわめて前向きな答弁をいただいたばかりであります。にもかかわらず、新年度予算案において公約を破棄した政治的、道義的責任についてどのようにお考えになるか、明らかにお伺いをしたいと思うのであります。(拍手)  次に、成人病のうち、特にガンの死亡率が世界の上位を占め、ガン対策の確立が国民から強く求められております。その特殊性から、ガン対策のための特別法の制定について検討する意思があるかどうか、答弁を願いたいのであります。  また、現在約百六十七万人といわれる心身障害児者については、本人はもとより、その保護者の物心両面にわたる労苦は、まさに当事者でなければ容易に理解できない悲惨なものがあり、スモン病、筋ジストロフィーのごとき因果関係のいまだ明瞭でない疾病に対しては、全く放置されているといっても過言ではありません。  これら社会病ともいうべき患者の療養並びに社会復帰施設の緊急増備とともに、根本的救済の方策の確立のため、障害者基本法の立法化が強い世論となっております。総理は、これらについてどのようにお考えになっておられるか、お伺いをしたいのであります。  物価の安定は現経済計画の柱でありますが、政府物価対策は、経済の予測を離れた成長によってみじんに砕かれ、その間、総理は、押えようのない物価高騰の言いわけに苦慮し、言を左右にして、結局は、高度成長のもとでは五%程度の物価上昇はやむを得ないと放言し、現福田大蔵大臣も、かつて、高度成長のもとで物価上昇は当然と、物価安定の熱意のなさを暴露し、国民世論の反発を大きく買ったのであります。いま国民の最も求めているものは、経済成長物価安定の両立であり、これこそ政府物価政策基本姿勢でなければならないのであります。これはきわめて努力の要することではありましょうが、この際、万難を排して実現せねばならないのであります。実に物価安定政策会議の提言の基本もここに置かれていると思うのであります。この経済成長下における物価安定を達成するという熱意を基盤にして、具体的な物価政策が立案され、勇気ある実行がなければならないと思うのでありますが、総理の所信を承りたいのであります。(拍手)  この基本姿勢から、公共料金抑制について、抑制の程度の基準についての解釈と、抑制が可能である基本的施策を明らかにされたいのであります。  さらに、競争条件の整備については、現状は、日本経済の高度成長に名をかりて、八幡、富士合併に見られる独禁法の骨抜きや、公正取引委員長の閣僚化説等、むしろ一連の独禁政策の弱体化が見られますが、施政方針に示された競争条件の整備は、独占禁止の強化を基本とすべきであります。これに対する総理見解を明らかにしていただきたいのであります。  次に、政府公害対策についての基本姿勢を伺いたい。  公害防止、公害対策が究極のところぶつかり合う接点は、国民の健康保持や快適な生活を守ることに重点を置くか、経済成長のために産業優先、経済第一主義政策に重点を置くかできめられてくると思うのであります。歴代自民党内閣のとり続けてきた政策基本は、経済成長を目ざす産業優先政策であり、そのひずみが国民生活のあらゆる面に人間性喪失という形で生まれ、公害問題は、その規模においても被害内容においても、重要な政治課題として提起されております。したがって、公害対策基本姿勢としては、国民の健康保持、生命、財産の保護を第一義とすべきことは当然でありますが、政府公害行政の基本姿勢をこの際明確にしていただきたいと思うのであります。  この基本姿勢に立って、あくまでも経済発展との調和の名のもとに、産業優先政策に沿って制定された現行公害基本法の第一条などの改正を、すみやかに行なうべきであると考えますが、総理見解を伺いたいのであります。(拍手)  同時に、公害発生源となる企業社会責任は、産業のモラルとして当然視されるべきでありますが、公害行政の上ですみやかに具体化するとともに、設備融資の措置、さらに公害予防対策と表裏一体とすべき調査研究体制等について、総理の所信をお答えいただきたいと思うのであります。  次に、住宅、土地問題について伺いたいのであります。  政府の四十一年からの住宅建設五カ年計画は、ついに完遂できませんでした。総理府の四十三年度住宅統計調査によると、住宅不足に苦しむものは三百六十万世帯といわれており、しかも、平均住居面積は狭くなる一方であることを示し、加えて二百万世帯は、各戸に手洗いや台所のない設備共用住宅であると発表され、さらに家賃が三十八年の統計に比べて、七割も値上がりをしていることが報告されているのであります。このことは、住宅建設五カ年計画の当初発表された、すべての世帯が経済成長発展に応じ、適切な規模、構造、環境のよい住宅に住むことができるようにという目標とはほど遠い結果となっていることを、政府みずからが発表したことにほかならず、住宅難が内容的、質量ともに深刻さを増していることを如実にあらわすものであります。  先月十九日、住宅宅地審議会は、四十五年度予算編成に際し、低所得者や勤労者に対する公共賃貸住宅の大量供給を最優先すべきであるとしておりますが、これは現状に即した当然な建議であります。しかるに、根本建設大臣は、政府が住宅を建設するのは限度があるので、公共から民間にその主役をかえる政策転換が必要だと述べておられますが、これなどは全く現状を無視した論議であります。  政府は、四十六年から始まる第二期五カ年計画の策定にあたっては、公共住宅に重点を置き、民間自力建設の配分を減らすとともに、公営住宅の建設を著しくはばんできた地方公共団体の超過負担の問題及び住宅団地造成に伴う関連公共事業に対する助成措置や、建設用地の入手のための助成措置を強化すべきであると思うのでありますが、総理としてはどのようなお考えをお持ちか、伺いたいのであります。  また、わが国の大都市における住宅問題の解決を困難にしているものは、世界にも類例のない地価の騰貴であります。  政府は、土地対策について、これまで唱えてきた土地開発の推進、土地税制改正先買い権による土地取得等の手法によって、はたして土地問題を解決し得るかどうか。この点、国民政府に対して大きな不信感を持っておりますが、これらについて総理はどう対処されるか、その所信を承りたいのであります。  さらに、減反農地の買い上げ問題は、その地点の選定及び機構をどうするかによって、土地問題にきわめて大きい影響を与えるものと思われます。政府は、減反農地の処理にあたっては、都市計画上の土地利用区分の原則を堅持する方針であろうと思いますが、その構想と手法について説明を願いたいのであります。  同時にまた考えられることは、減反農地の区域については、早急に全国的な利用区分の線引きを行ない、これを市街化区域内にとり、宅地、道路、その他公共用地の先行取得をこの際はかるべきであると思うが、この減反農地の区域の方向づけと都市周辺の土地供給不足の関連について、基本的にどのような考えをお持ちか、この際お伺いをしたいのであります。  次に、税制並びに減税についてであります。  昨年、わが党が実施した税制総点検によると、全回答者の九三%に当たる人が重税感を訴え、さらにその三七・二%の人は、その理由を税制の不公平にあると答えております。  政府は、四十五年度は史上最大減税とうたい上げておりますが、その中身は、最近の標準世帯構成が、夫婦子供二人であることと、税調答申より二年間の実施のズレから見て、二年間の物価上昇を差し引けば、大幅減税は何ら中身のないものになっているのであります。(拍手)すなわち、税負担率から見ればむしろ〇・三%の上昇となり、租税負担率は約二〇%になると見込まれるのであります。減税とはいうものの、換言すれば、一種の取り過ぎの調整にすぎない。政府とすれば、大幅な自然増収が見込まれながら、それに対する減税として国民に還元する部分はごくわずかであり、このような税制が続く限り、国民は高負担の道を歩まされていることになるのであります。  総理は、このような現行税制に対し、どのように今後の改正考えられるか。  また、かねてからわが党が主張してきた課税最低限百三十万円までの引き上げに対してどのような考えを持っておられるか、お答えを願いたいのであります。少なくとも給与所得控除中の定額部分十万円を十五万円に引き上げる用意はあるかないか、特にこの際お伺いをしたいと思うのであります。  利子・配当所得に対する優遇措置は、現に配当所得だけで生活する標準世帯を例にとると、二百八十二万円まで無税であったものが、今回の税制改正案によれば、三百四万円まで無税になります。これと同等の収入のサラリーマンの場合には、三十八万三千円の所得税がかかることになり、税負担の不公平は一そうはなはだしくなりますが、勤勉に働く多くの勤労者は、この不公平の理由に対しひとしく疑問を持つものであります。  したがって、総理は、国民に対し、この不公平をあえて是正し得ない理由を勤労所得者の前に明らかにすべく、明確なるお答えをいただきたいと思うのであります。(拍手)  同時に、このような利子・配当所得に対する優遇措置を廃止し、また交際費に対する課税の強化、大企業に対する租税特別措置の改廃等を通して、国民の納得できる税制改正を行なうべきであると考えるものでありますが、この点も総理見解を明らかにしていただきたいのであります。  七〇年代の農政は、重大なひずみをかかえた六〇年代農政を打破し、構造政策生産政策、価格政策の三本の柱を中心とする調和のとれた新路線を切り開くべきであります。経済発展とそれに伴う社会的変動の中で、総理は七〇年代のわが国農業の位置づけをどのように考えておられるか、またいかなる農業ビジョンを持っておられるのか、この際答弁を願いたいのであります。  農産物の輸入自由化と自給率についてでありますが、財界や政府の一部の中には、安価な農産物の輸入を推進すべきであるという声があります。しかし、わが国の農産物輸入量は年々増大し、現在における輸入額は年間二十四億六百万ドルに達し、イギリス、アメリカ、西ドイツに次いでいまや世界第四位の農産物輸入国になっており、自給率においては、昭和四十三年度においては米を除き六九%にまで低下しているのであります。また、アメリカやフランスなど諸外国では、輸出農産物に対して輸出税制や輸出保険など特別優遇措置を講じ、強力なる輸出振興をはかっている現状から見て、今後の自由化はわが国の農家経営を脅かし、農産物市場の一部独占化を招くおそれも十分予想できるのであります。このような現状に立って、政府一体わが国の農産物の自給率をどの程度に維持していくのか、明確なるお考えを伺いたいのであります。  政府は、米の過剰化現象を解決すべく、四十五年度において百五十万トンの米の減産を打ち出しておりますが、昨年の稲作転換実績五千五百ヘクタールと比べると、十アール当たりの補償価格が三万五千七十三円と上昇したとはいえ、米に見合う転換作目のない現在、実行は不可能と思われるのであります。一連の政府農政を見るとき、なしくずしに食管制を改廃していこうとする意図が見られるのであります。この際、総理の食管制度に対する考えを明らかにしていただきたいと思うのであります。(拍手)  以上で私の質問を終わりますが、総理答弁の中にも、本年以降七〇年代は内政の年である、このように総理は明確なる言明をいたしております。質問が多岐にわたっております。どうか十分なる答弁を要求をいたしまして、私の質問を終わりといたします。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
  13. 佐藤榮作

    ○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 竹入君にお答えいたします。  私は、今後とも外交、防衛問題につきまして、国民との各種の触れ合いを通じて、あるべき施策を検討していく所存であります。  今日まで、わが国で外交、防衛論議が不毛になりがちだった理由は、とかく議論が国際政治の現実に立脚せず、抽象的、観念的か、あるいは独善的になりがちであったからだと思います。  お説のとおり、今後世界平和のために日本がになう責任はますます重大となるのであります。したがって、常に国際情勢を綿密に分析し、その中でわが国の安全と繁栄を確保しつつ、いかにして世界平和の維持に貢献していくべきかを考えるべきであると思います。  わが国の安全については、これまで国会でも種々議論され、国民の理解も深まりつつありますが、さらに国会の討議等を通じ、国民の一そうの御理解を得ていくように努力する考えでございます。  次に、前の成田委員長の質問にもお答えしたとおり、日中問題につきましては、日中間大使級会談について、政府態度は一貫しております。双方が合意し得る場所で大使級の政府間接触が可能であり、そのための門戸は常に開放されております。政府が望んでいるのは、政府間の対話の道が開かれ、まず相互間の不必要な警戒心や誤解が解消されることであり、さればこそ政府は、北京政府がその対外関係において、より協調的かつ建設的な態度をとることを期待しているのであります。  また、日米安保条約の存在が中国本土との関係改善を阻害するとは、私は考えておりません。わが国と中共とは政治体制を異にしていますが、このようなお互いの立場立場として認め合った上で、歴史的、地理的に深い関係にある日本中国本土との間に友好関係が生まれることが望ましいのであり、むしろお互いの立場をはっきりさせることが、真の友好関係をつくり出すゆえんであると私は思います。  わが国は、中国代表権問題の帰趨がアジア、ひいては世界の平和と安定に及ぼす影響の大なることにかんがみ、本問題が国連憲章十八条にいう重要問題として慎重に取り扱われるべきであるとの立場をとってきており、この点は従来と変わっておりません。  また、いわゆる吉田書簡は、しばしば申し述べたとおり、元来が私信であって、条約協定のように政府を拘束する取りきめではないので、廃棄するとかしないとか、こういうような問題ではないのであります。  輸銀資金の使用につきましては、従来から具体的な問題ごとに諸般の事情を勘案して、ケース・バイ・ケースで処理することにしており、今後ともこの方針に変わりはありません。  昨年の秋の日米共同声明にも明らかなとおり、沖繩の施政権返還にあたっては、日米安保条約及びこれに関連する諸取りきめが何ら変更なしに沖繩に適用されることに日米間の合意を見ております。したがって、日米安保条約第六条に基づく事前協議の制度も、本土における場合と全く同様に沖繩に適用されます。米国政府との、沖繩の返還に関連して、事前協議における回答を予約したようなことは全くないことでありまして、これまでもすでに明らかにしてきたところであります。  他方、わが国の安全は、極東の平和と安全なくしては十全を期し得ず、したがって、韓国や中華民国のような近隣諸国の安全は、わが国の安全にとって重大な関心事であり、万一これが侵されるような事態が発生すれば、まさしくわが国の安全にとってもゆゆしきことであります。このような場合に、わが国が自主的判断により事前協議を適正に運用し、前向きの態度をもって事態に対処することは、むしろ当然のことであると私は思います。(拍手)  沖繩本土への有事核持ち込みについてのお尋ねがありました。政府は、今後とも非核原則を堅持する方針であり、返還後の沖繩につきましても同様の方針で臨むことは、すでに明らかにしてきたとおりであります。したがって、核の有事持ち込みはありませんから、重ねてお尋ねを受けないように、どうぞ御安心いただきたいと思います。(発言する者あり)はっきり申し上げます。  次に、施政権返還後の沖繩には日米安保条約が適用されることになります。したがって、安保条約の目的に照らして必要な米軍基地沖繩に残り、引き続きわが国を含む極東の安全維持のために有効な機能を維持することは、国の安全のために必要であります。しかしながら、現在本土におきましても、日米間の話し合いを通じて、日米安保条約の目的に照らして、不要不急な基地はこれを整理縮小していくことになっていることでもあり、施政権返還後の沖繩に残るべき米軍基地につきましても、同様の見地から整理統合が行なわれるべきは当然であります。この見地から、政府としては今後行なわれる地位協定沖繩への適用準備のための日米間の協議、また、施政権返還後の日米安保体制下の日米協議等を通じて米側と十分話し合い、日米安保条約の目的に照らして、妥当かつ可能な範囲内での基地の整理統合を実現してまいりたいと考えております。  次に、沖繩の祖国復帰に備えて、復帰後の沖繩経済の開発振興をいかにするかという基本構想を固める必要のあることは、言うまでもありません。  沖繩経済振興の方向としては、その地域的特性を生かし、第一次産業において砂糖やパイン産業のほか、新たに畜産物、生鮮食料品などの本土向け供給基地として、第二次産業においては高度加工工業にあわせて、石油等の装置産業など鉱工業の新たな開発地域として、また第三次産業におきましては、観光、レクリエーション地域、及び日本と東南アジアを結ぶ文化交流のセンターとして、それぞれその可能性を検討していく方針であります。  なお、沖繩の開発を促進するためには、何らかの特別立法が必要であると考えておりますが、その構想につきましては、今後逐次固めていく方針であります。  沖繩における米軍基地労務者の解雇問題につきましては、米国政府に対し、数次にわたり退職手当の増額、解雇予告期間の延長、解雇予定者の米軍内部内での配置転換、米軍基地内での職業訓練の実施等の措置を考慮するよう申し入れてまいりました。  また、同時に、離職者に対し本土の場合に準じた特別給付金等の支給、本土就職希望者に対する援助、琉球政府による職業訓練の充実等に関する予算措置を講じてまいりました。  政府としては、沖繩の軍関係労務者の地位をできる限り本土基地労務者の地位に近づけるよう、今後とも復帰準備の一環として米側との話し合いを続けてまいる所存であります。  また、間接雇用の問題につきましては、施政権返還後は、当然沖繩軍労務者の雇用関係本土と同様、地位協定下での間接雇用制に移行することでもあり、今後復帰準備の一環として、日米間でそのための準備を進めていくこととなっております。  施政権返還前の沖繩における現在の雇用形態に何らかの変更を加え、本土間接雇用に準じた制度を導入し得るかいなかの問題につきましては、法律的にも実態的にも、なお検討を要するところであります。しかしながら、施政権返還前においても、沖繩の軍関係労務者の地位をできるだけ本土基地労務者の地位に近づけるために、可能な限りの努力を払ってまいる考えであります。  次に、国政参加の問題であります。国政参加沖繩代表にいかなる権限を与えるか等につきましては、目下国会で御検討いただいている段階であり、政府としては、御指摘のような具体的な問題について、米側との折衝はまだ行なっておりません。これらの問題につきましては、米側といかなる協議を行なう必要があるか、これは国会の御決定を得た上で検討することといたします。  核防条約は、すでに百カ国近い国が署名を終えている現在、わが国はいまだに署名しないということともなれば、わが国が核兵器をつくる能力を有していることでもあり、わが国の意図について無用の誤解を招くおそれがあります。他方、条約が発効するとの見通しのもとに、核軍縮、安全保障、原子力平和利用等の問題についてのわが国政府の主張をより効果的に実現するためには、本条約発動以前に調印することが適当であると考えた次第であります。署名はいたしましたが、その批准につきましては、十分国会審議をお願いすることは申すまでもないことであります。  次に、核保有国の軍縮の義務につきまして、本条約中に、軍縮交渉を誠実に行なうとの規定が設けられたのはわが国などの主張によるものであり、また、五年ごとの条約レビュー会議で、軍縮の進行状況を検討することになっております。米ソ間では、すでに戦略兵器制限交渉が開始されておりますが、わが国としては、右交渉の推移を注意深く見守るとともに、ジュネーブにおける軍縮委員会等において、核兵器国の軍縮実現に努力する考えであります。  次に、安全保障の問題でありますが、非核保有国での安全につきましては、わが国などの主張により、条約中に、国際関係において武力による威嚇または武力の行使を慎むべきこととされており、また、米英ソ三国も、核による侵略、威嚇の対象となった非核兵器国に対しては、国連憲章に従い、援助提供のため直ちに安全保障理事会の行動を求める意図がある旨を宣言しております。  核の平和利用につきましては、確かに、本条約核兵器国が査察を受ける義務が規定されていないことは遺憾でありますが、米英両国は、自発的に国際原子力機関の査察を受けるとの意向を表明しております。ソ連につきましても、従来の閉鎖的な態度を捨てることを強く期待するものであります。わが国としましては、査察の実施の面での差別待遇がないよう、国際原子力機関との査察協定を作成する上で努力していく所存であります。  中共及びフランスの不参加につきましては、両国が非核兵器国に対して核兵器を譲渡したり、製造の援助をすることは、自国の利益保護という点から実現性に乏しく、特にフランスは、条約に加入する核兵器国と同様に行動する旨を声明しております。したがって、両国が加入しなければ核不拡散の意味は全くなくなるというようなことではございません。  非核原則は私の、佐藤内閣の政策であって、国会決議すべきものではないと考えております。まだ非核武装宣言を行なわずとも、わが国政府態度は、国の内外を問わず、明らかなものであると信じます。  次に、内政に関連して、社会保障に関して幾つかの質問がありました。  まず、一九七〇年代、十年の具体的目標を振替所得によって示せとのお尋ねでありますが、残念ながら、十年後を具体的にお示しできる段階ではまだございません。現段階におきましては、経済審議会におきまして新しい経済社会発展計画を検討中であり、いずれその策定の暁におきましては、計画目標年次である昭和五十年度の姿について明らかにできるものと考えております。いずれにせよ、七〇年代を迎え、社会保障の充実は、人間尊重の精神に基づく社会開発の中心的施策として重視してまいる決意であることを、まずはっきりと申し上げておきます。  次に、公的年金制度の総合調整を抜本的に進めよとの御意見でありました。この問題は、竹入君も十分御承知のように、きわめてむずかしい問題を含んでおりますので、政府としては鋭意検討を進めてはおりますが、率直に申して、簡単には結論を得られそうに、ただいまのところありません。もちろん、今後ともその努力を続けてまいりますが、この間において、各種年金についてそれぞれ歩調を合わせた適切な改善措置を講じて、いやしくも均衡を失することのないよう留意してまいりたいと考えます。  なお、老人福祉対策につきましては、一般施策の充実と相まって、近年の公的年金面の顕著な充実により目ざましい改善を見ていることは、竹入君もお認めいただけることと考えます。  次に、児童手当は、来年度予算におきましては、まことに遺憾ながらその実現を見送らざるを得ませんでしたが、私は、今後ともこの実現に向かって積極的に努力してまいる決意であります。何ぶん新しい、しかも大きな制度であるだけに、社会保障の他の制度や税制なり給与制度などとの関連において調整を要する問題が多く、このため、児童手当審議会から最終的な答申をいただくためには、なお若干の時間を要する段階であると聞いております。また、その実現と円滑な運営のためには、企業及び地方団体の十分な御理解と御協力が何よりも必要でありますが、そのような意味合いからは、残念ながら十分に実現の機がまだ熟しているとは申せません。私は、引き続き、児童手当の実現のため最大限の努力は払ってまいる所存でありますので、児童手当の制度が今後の社会保障の諸施策の中にあって最も妥当な位置づけが得られ、かつ、国民各界各層の同意を得られるように、公明党の各位をはじめ、せっかくこの制度を推進されている皆さま方の御支援をいただきたいものと、かように考えます。率直にお答えした次第であります。  次に、ガン対策でありますが、現段階におきましては、ガンの原因究明、ガン診療施設整備等の前提条件をまず解決することが必要であり、当面これに全力をあげることとし、特別法の制定につきましては考えておりません。  また、心身障害者につきましては、新しく国立の心身障害者の福祉施設を開設するほか、障害福祉年金や特別児童扶養手当の増額を行なうなど、十分意を用いているところであります。  次に、物価問題についてお答えをいたします。  まず、経済成長物価安定との関係につきましては、あまりにも高い経済成長のもとにおきましては物価の安定は至難のことであり、物価問題の混乱は経済成長を阻害する要因に発展するおそれがあります。一面、物価への波及をおそれるあまり、経済成長そのものにあまりにも消極的姿勢をとることは、これまた許されるところではありません。両者の調和をはかることが今後の日本経済の安定した発展の基盤となるものであり、先般策定した四十五年経済の見通しは、この意味で適切妥当なものと考えております。  次に、公共料金につきましては、これを安易に引き上げることは、直接国民生活の負担となるばかりでなく、政府物価問題に取り組む基本姿勢を示すものとして、他の分野にも少なからざる影響を持つものと考えます。したがって、政府としては、昭和四十五年度においても公共料金の値上げを極力抑制する方針であります。すなわち、政府が直接決定する米価、麦価は据え置くこととし、その他の公共料金についても、事業経営の徹底的な合理化を求め、このような経営努力なくしては料金引き上げを認めないこととしております。  また、竹入君からは、独禁政策を強化せよとの御要望でありました。私は、わが国ではいわゆる独占の弊害は必ずしもあらわれていないと考えますので、この点は竹入君とやや見解が異なりますが、今後とも独占禁止法の厳正な運用をはかるとともに、輸入の活用、労働力の流動化の促進等により、公正な競争条件を整備してまいる所存であります。  次に、公害対策基本法は、人間の生命、健康は何ものにも増して尊長されなければならないという理念に基づき、講ずべき公害対策基本を示したものであります。したがって、これを改正するつもりは、ただいまのところありません。  次に、企業責任を強化せよとの御意見がありましたが、公害防止の第一次的な責任は、その発生源である事業者にあることは御指摘のとおりであり、私もさきの国会におきまして、公害企業責任は十分に追及さるべきであることを申し上げたところであります。  先般の施政方針演説で、私は、公害は現代の悩みであると申し上げましたが、精神的、社会的な豊かさを実現するためには、公害はぜひとも解決しなければならぬ問題であり、今後とも着実かつ強力に、公害防止のための施策を進めてまいる決意であります。公害行政に徹せよとの御意見は、政府に対する一そうの御鞭撻のことばと伺っておきます。  次に、住宅、土地の問題についてお答えいたします。  まず、第一期住宅建設五カ年計画は、目標を達していないという御指摘でありましたが、政府としては、総合的に見て、計画戸数六百七十万戸を若干上回る戸数が建設されたものと見込んでおり、計画は達成されるものと見込んでおります。  なお、昭和四十六年度以降も引き続き第二期住宅建設五カ年計画を策定して、住宅対策を強力に推進する考えでありますが、その際には、竹入君から御指摘のありました問題についても十分配慮してまいりたいと考えます。  また、土地問題については、土地の有効利用の促進、国有地、公有地の活用、地価公示の拡充、土地税制改善等の各般の施策を総合的に実施することが必要であり、その推進をはかるとともに、都市地域における宅地需給の緩和をはかるための施策を強力に進めてまいる所存であります。複雑な問題がからむ土地対策のむずかしさは先進国共通の悩みであり、建設的な御意見を歓迎すると同時に、国民各位の御協力を願う次第であります。  次に、減反農地の買い上げに関連して、まず都市計画法との関連でありますが、都市計画上、集団的優良農地は市街化調整区域に含められ、市街化が抑制されて、その保全がはかられる一方、市街化区域内の農地につきましては、農地転用の許可を不要とすることによって、宅地の供給を推進することとしております。  次に、公共用地の先行取得との関連につきましては、米の生産調整に資するとともに、公共用地の計画的確保にも役立つので、先行取得制度を積極的に活用したいと考えております。  次に、税制減税について種々の御意見がありました。まず、その実態は減税ではなくて増税ではないかという御意見がありました。国民所得に対する税負担は、四十四年度の一八・七%に対して、四十五年度では一八・八%になっております。しかしながら、最も直接国民税負担感としてあらわれる所得税につきましては、特に中堅サラリーマンを対象に大幅な減税を行なった結果、大多数の勤労者諸君の税負担は大幅に軽減されました。また、国民所得に対する税負担率だけで直ちに国際的な税負担の軽重を判断するわけにもまいりませんが、この一八・八%という水準は、欧米先進国に対してかなり低いものであることは誤りのないところでありますので、つけ加えておきます。ただし、このように申したからといって、今後所得税の減税が全く不必要であると考えているものではありません。今後の財政状況にも応じ、さらに中堅サラリーマンの減税につきましては引き続き努力してまいりたいと考えます。また、その他税制一般については、税制調査会の御意見をも十分伺って、七〇年代にふさわしい税制のあり方について慎重に検討してまいりたいと考えます。  次に、課税最低限を百三十万円にせよとの御意見でありますが、これはすでに今回の改正で、英国、西独を上回る国際的水準に十分達したものであり、さらに百三十万円に引き上げることは、ただいま考えておりません。また、給与所得控除の定額控除も、おおむね妥当な水準であり、これを大きく引き上げることは考えておりません。  次に、租税特別措置法についてでありますが、これまでしばしば申し上げたように、その政策、目的との調整をはかりつつ、逐次必要な改廃を弾力的に行なっていく所存であります。四十五年度におきましても、一歩前進がはかられたものであります。さよう御了承いただきます。  次に、竹入君からは、わが国農政基本的な問題についてお尋ねがありました。  農業は、わが国の発展のために、大きな役割りを果たしてまいりましたが、今後も農業の健全な発展がなければ、わが国が均衡のとれた豊かな国として成長することは期待できません。そのためには、農業は高能率、高生産性の近代的産業へと脱皮する必要があり、そのため、農地法の改正、農業基盤の整備などの構造政策を拡充して、農業の近代化をはかるほか、農業に従事する若い世代に魅力と自信を与えるために、道路、住宅など、農村の生活環境の整備をはかって、豊かな、住みよい農村を実現することが肝要であります。日本農業は、有史以来の米作中心の農業から転換を迫られており、それだけに多くの困難な問題に際会しておりますが、政府としては、これに十分の支援を惜しまない決意であります。  次に、農産物の輸入自由化の問題でありますが、貿易自由化の一般的基本方針と総合農政の転換期にある国内農業への影響を十分に考慮しつつ、慎重にとり進めてまいる所存であります。  また、国内自給率につきましては、基本的な考え方としては、国民の必要とする食糧はなるべく国内でまかなうことが望ましいのであります。かように考えますが、このほか、わが国経済全体としての効率の問題あるいは消費者物価への影響などを考慮する必要もあり、端的に自給率として目標を設定することはいかがかと考えます。  次に、食管制度についてでありますが、食管制度は国民食糧の確保、国民経済の安定のために重要な役割りを果たしてきたものであります。食管制度の根幹は維持するという基本方針は、かねてから申し上げているとおりであり、これを撤回するつもりはありません。重ねてはっきり申し上げておきます。(拍手)この基本方針のもとにおいて、今後とも食管制度が情勢の変化に対応しつつ、その役割りを的確に果たし得るように考えてまいることが必要であり、当面の問題として米の需給の均衡をはかり、減産目標の達成に全力をあげで取り組むことが緊要の課題であると考えます。  以上、各般にわたるお尋ねに一応お答えいたしましたが、なお、限られた時間でありますので、不十分な点がありましたら、他の機会にお尋ねをいただき、また同時に、長い答弁をよくお聞き取りいただきまして、ありがとうございました。(拍手)     —————————————
  14. 船田中

    議長船田中君) 西村榮一君。   〔西村榮一君登壇〕
  15. 西村榮一

    ○西村榮一君 当面する一九七〇年代は、わが国にとって、また世界にとって、激しい変化と進歩の年代であります。私は、この重要時期を迎えるにあたり、民社党を代表いたしまして、今後のわが国の外交内政基本的進路とその具体策について、佐藤内閣の方針をただしたいと存じます。(拍手)  私は、一九七〇年代に向かうわが国の基本路線は、次の三つでなければならないと存じます。  第一は、国内にあっては、現在の工業経済国家の立場を土台として他国の追随を許さない高度の教育福祉国家を建設することであります。世界でも驚異の的であるわが国の経済発展のエネルギーを、いかにして国民福祉の増大に直結させるか、これこそ今後の内政上の重要課題であります。  その第二は、アジアの繁栄に対する使命遂行であります。七〇年代の国際政局は、多極化、流動化の方向をたどり、その集約はアジアの激動となってあらわれようといたしております。しかも、南北問題は、もし今後その対策を誤るならば、新たなる国際緊張ないしは人類の悲劇を生み出す要素を持っております。したがって、七〇年代における日本の使命は、工業経済国家、教育福祉国家、非軍事大国という三つの体質を生かし、アジアの開発途上国に対し積極的な経済、技術援助を実行し、アジア諸国の平和的繁栄の中にわが国の繁栄を同時に確保する体制を確立すべきであります。(拍手)さらに、アジアから緊張を取り除く重要な課題として、アジアの両大国である日中関係改善に積極的かつ長期の努力を傾注すべきであります。(拍手)  その第三は、世界平和の積極的創造であります。七〇年代の各面の変化を展望するとき、国際政治における真の力は、軍事力から経済力に移行すると確信いたします。この認識を基礎として日米両国間の再検討をなすべきであります。それには日米安保条約の改定から取り組むべきだと存じます。(拍手)同時に、これまでのエコノミックアニマルから、世界の平和に積極的に責任を負う国家に発展すべきであります。  私は、以上の三つが七〇年代に向かうわが国の基本路線でなければならないと考えております。  佐藤総理は、施政演説において、情勢分析と未来に対する展望をお述べになりました。私がこの際問わんとするものは、この激動の一九七〇年代に向かって、わが国をしていかなる国家に成長発展せしめ、国民福祉を守るとともに、世界政治に対する使命をいかなる方策によって果たされんとするのか、その具体的方針を承りたいのであります。(拍手)  お伺いしたい第二の問題は、内政のビジョンと関連する政府財政政策についてであります。  昭和四十五年度政府予算案に対して、私は大きな失望を禁じ得ません。  その第一の理由は、財政基本課題であるインフレの抑制という重要課題が全く放棄されてしまったことであります。  第二は、財政硬直化現象に対するメスが全く加えられなかったことであります。佐藤総理の長年の公約であり、勇断が要求されていた行政機構の根本的改革は、またも有言不実行に終わりました。また、農業対策についても、現下最も緊急事とされるその近代化計画について何らの対策を示さず、政府の食糧政策の失敗のしりぬぐいのために多額の財政資金が投入されるなど、財政のむだ使いが顕著であることであります。(拍手)  第三は、今日の国民生活上の重要な課題である物価抑制と公害防止について、その対策が全く確立されなかったことであります。同時に、社会保障、交通災害、住宅、土地政策など、国民生活向上と生活環境の整備を約束する予算もきわめておざなりであります。この結果、政府財政政策は、将来の経済並びに国民福祉の発展、向上に逆行し、いたずらに圧力団体に屈服して国民の血税を浪費した無責任にして背信的予算といわざるを得ません。(拍手)  いま国民は激しい都市化現象の中にあって、世界一高い生鮮食料品と住宅難に苦悶しております。しかし、もし政府が各面の圧力を排し、勇断をもって食料品輸入の自由化を拡大し、かつ生鮮食料品部門の流通機構の改善を断行いたしまするならば、食料物価は二割ないし三割程度は引き下げることが可能であります。(拍手)現に、いま政府がフランス方式の採用を決意し、中国からの食肉輸入に踏み切るならば、肉類は直らに三割前後値下げが可能となり、物価政策外交の面で一石二鳥の成果をあげ得るにかかわらず、何ゆえこれをちゅうちょするのでありますか。私の理解に苦しむところであります。(拍手)  また、土地問題につきましては、先ほど来、同僚議員が各面の角度から述べられましたので、私は簡単に提案だけ申し上げます。三年の期間を設定して、それ以後投機的に値上がりを待っている休閑地に対しては、政府、自治体機関以外には売れないなどの思い切った措置をとるならば、それによって勤労者は政府並びに公共機関から安い宅地を購入し得ることになり、土地、住宅問題は大幅に改善されると確信いたします。土地問題は、もはや経済上の問題にあらず、社会問題であり、政治決断の問題であります。  これらのことを順を追うて実行に移すことが、政府財政政策に課せられた使命であると思うのであります。  佐藤総理は、一九七〇年は内政の年だと主張されております。しからば、その公約に基づき、国民がいま切実に改善を要求している物価抑制、減税公害、住宅、交通、土地並びに今後大きな社会問題となるであろう老人対策も含めた社会保障の七つの政策について、七〇年の政策でその第一歩を踏み出すとともに、五年後にはこうして社会福祉を実現するという年次計画を立案し、その具体的青写真を国民の前に提示すべき責任があると思いますが、佐藤総理にその意思ありやいなやを伺いたいと存じます。(拍手)  十四日の施政演説で、経済企画庁長官は、インフレとの戦いに勝つことなくして今後のわが国の発展はあり得ない、物価問題は議論の段階から実行の段階になっている、と述べられたが、これは、私もきわめて同感であります。しかし、この考え方が四十五年度の財政政策の中に、どこに生かされておるのでありますか。(拍手)遺憾ながら、どこを見渡してもそれは見当たりません。政治とは、聡明な諸君に申すまでもなく、一時的気休めのことばではありません。その実践の方策を示すとともに、行政の実績によってその政治の賢愚、優劣を判断するのでありまして、現在の国民生活の苦悶を克服し、政治の信頼性を確立するため、この点、内閣総理大臣から、明快なる御説明を承りたいと存じます。(拍手)  お伺いしたい第三の問題は、今後のわが国外交の重要課題である日中関係改善に対する佐藤内閣の方針についてであります。日中関係打開の重要性は、申すまでもなく、アジアにおける緊張の緩和と世界平和に直結する重要問題であります。  私は、一年半ほど前に、日中関係を前進させる具体的措置の一つとして、日中大使級会談の早期実現を提案いたしましたが、今日、政府がおそまきながらそれに手をつけようとしていることは、きわめて喜ばしいことであります。  日中国交回復について、自民党の内部には、不戦宣言あるいは航空機乗り入れに応ずる用意があると意思表示されております。それも一つの賢明な策だと思います。しかしながら、中国は、原則を重視する国民であるとともに、きわめて現実的な国民でもあります。したがって、それらの諸点を考慮し、長期の展望に立つとともに、まず足元から現実的に一歩一歩解決を着実に積み重ねていくべきであると思います。  それがために当面取り組まなければならない重要課題は、経済交流の大幅な拡大であります。このためにわが国が中国に対してとるべき施策は、かつての吉田書簡には一切拘束されない立場に立って、輸銀資金の全面使用を認め、特にプラント輸出に対し相当の延べ払いを容認することが何よりも先決であります。もしそれらの措置がとられるならば、日中貿易は大幅に拡大し、中国経済建設に日本は不可欠の地位を築くことになります。  第二に、日本はこの際、大局的見地に立って北京政府国連代表権を承認し、そのことを台湾政府をして事実上納得させる外交努力を傾注すべきであります。それとともに、台湾政府との経済交流はなおこの上とも緊密にするという態度をとるべきでありますが、この際、私は、先ほどの竹入議員に対する総理の御答弁の中に、輸銀の活用に対してはケース・バイ・ケースで実績をもって行ないたいと述べられたのでありますが、しからば、総理大臣の言われるケース・バイ・ケースの定義、取り扱いの大綱について、この際明らかにしておいていただきたいと思います。(拍手)  第三に、それらのとこを土台として、航空、郵便、気象、人的交流などの政府協定並びに通商代表部の設置を促進すべきであります。  第四に、北京政府の国連参加に対して、日本はいまや前向きの姿勢をとるべきであります。日本重要事項指定方式を捨てる場合には、中南米、アフリカ諸国の同調によって、中国の国連参加が大きく前進することは周知のとおりであります。わが国は、いまや、大局的見地に立って、重要事項指定方式との訣別を決意すべき時期であります。選挙中の総理大臣の言明からして、この私の中国政策に対する提案には賛成されるものと確信いたしますが、しかし、最近の政府中国政策を見るとき、輸銀資金使用に対する態度などから判断いたしまして、著しき後退の感なきにあらず。それは佐藤総理の心境の変化でありますか、それとも、何らかの具体的情勢の変化に基づくものでありますか。私の提案に対する賛否の御回答とともに、この間の事情を具体的に御説明いただきたいのであります。(拍手)  第四の問題は、今後の日米関係のあり方についてであります。  戦後二十五年の国際情勢の変化と、日米両国間の政治的、経済的著しい変化は、今日、日米関係の再検討を強く求めていると存じます。その具体的課題は、ほかならぬ日米安保条約の再検討の問題であります。それは七十年代に向かう日本が、新しい国家姿勢と使命を確立する上で必ず実行しなければならない課題だと存じます。  先般、佐藤総理は、沖繩返還交渉の日米共同コミュニケにおいて、日米安保条約自動延長を予約されましたが、これは歴史の進展に逆行した軽率きわまる行為といわざるを得ません。その理由は次の諸点であります。  第一は、国際情勢の激しい変化であります。  占領政策の新しい発展として日米安保条約が誕生してから、すでに二十年の歳月が過ぎました。当時の日米安保条約は、まぎれもなく米ソ冷戦の所産として生まれたのであります。しかし、この状況は、いまやその様相を一変いたしております。同時に、占領、貧困、廃墟の中にあった日本は、今日、国民の努力によって世界で第三位の経済国家に発展し、五年後には一人当たり三千八百ドルの国民所得を持つ世界の一流国家に成長しようとしているのであります。この結果、わが国は、その国力を基礎として、南北問題の解決と、そのためのアジア諸国に対する経済援助の強化、アジア太平洋の平和の確立等に対して積極的な使命を果たさなければならない立場に置かれておるのであります。  このような日本が、いまなお二十五年の惰性を続け、米国の軍事力の庇護のもとに従属国的地位にあることは、もはや主体的にも客観的にも許されないところであります。すなわち、国内的にはこれによっていたずらに国論の分断を助長し、正しい意味での自主防衛体制の確立を阻害いたしております。また、対外的には対等な日米関係の樹立をそこね、かつ今後のわが国の国際的使命の遂行に多くのマイナスを招来いたします。  その第二は、他国との同盟のあり方の再検討の必要性であります。  朝鮮戦争ベトナム戦争の教訓を見るまでもなく、真の平和の創造は武力と軍事同盟だけをもってしては、とうてい達成できません。それ以上に重要なことは、経済政治、文化、教育等の力であります。  その一つのあらわれとして、一月末にイギリスのウィルソン首相はワシントンを訪問し、ニクソン大統領との会談に際して、両国で討議さるべき問題は、軍事ブロックの問題にあらずして、新しい国際展望に立つ世界政策の再検討であると提案いたしたのであります。すでにNATOの条約についても、東西の緊張緩和のために軍事同盟の性格を薄めて、それを補う新しい政治体制のきずなをつくり出そうとする胎動が始まりつつあります。すなわち、国際情勢の変化、平和達成条件の変革、そして軍事力の機能低下は、これまでの軍事同盟のあり方に根本的再検討の必要性を提起いたしておるのであります。佐藤総理は真剣にこの点をお考えいただきたい。  その第三は、米国の世界政策基本原則の変化であります。  グアム・ドクトリンを見るまでもなく、ベトナム戦争の苦い経験は、米国の世界政策にいまや根本的変化をもたらしつつあります。それはベトナム戦争ベトナム化であり、アジア防衛のアジア化であり、そして欧州防衛の欧州化にほかなりません。  こうした米国の安全保障体制の変化は、今後の日本防衛、在日米軍基地についても必然的に変化を招来いたしております。かつて日本の外務省は、核つき返還でなければ沖繩は返らないと予測して誤りをおかしました。いままた、米国への基地撤去要求、常時駐留の排除は片務条約の強化になり、米国がのまないと強調して、再び大きな誤りをおかしつつあるのであります。(拍手)しかしながら、すでに米国は、われわれが予想したとおり、これまでの海外基地依存の戦略から遠隔駐留の戦略への転換をはかるため、在日米軍基地自衛隊管理、すなわち常時駐留の取りやめを真剣に検討いたしておるのであります。現に、佐藤内閣の閣僚である中曽根防衛庁長官もその方向を明らかにしております。  私は、以上の諸点を冷静に判断するならば、日米条約の再検討、すなわち、基地の撤廃と常時駐留の排除を主軸として軍事同盟の性格を薄め、友好的方向に安保条約の改定を行なうことこそ、七〇年代に向かう日本第一歩でなければならないと考えます。(拍手日米安保条約の再検討に対する佐藤総理の率直な御答弁を求めたいのでありますが、同時に、この際、安保改定の実質的第一歩である在日米軍基地自衛隊管理については、所管大臣として防衛庁長官はこれに賛成されておるのであります。この際、この賛成論が防衛庁長官の個人の意見にすぎないのか、あるいは佐藤内閣の統一的意見であるのか、明確にしていただきたと思います。(拍手)これが政府の統一的見解であるとするならば、政府は、実質的に駐留なき安保の方向に踏み切られつつあるものと私は解釈いたします。(拍手)また、防衛庁長官の個人的意見にすぎないとするならば、所管大臣として内閣の方針に反することになります。この点、内閣総理大臣として政府の統一的方針を明確にしていただきたいと存じます。(「北方領土はどうした」と呼ぶ者あり)返還を要求します。日本人として当然です。(拍手)  最後に、現下のわが国にとって重大視するいま一つの大きな問題は、核拡散防止条約に対する政府態度であります。  去る二月三日、政府は突如として核防条約調印に踏み切られました。これは、わが国の将来に重大な禍根を残すものといわざるを得ません。すなわち、核防条約政治的ねらいは、核拡散防止という、何人も否定しがたい大義名分をもって、非核兵器保有国の核従属性と核の平和利用面における後進的地位を固定化せんとするところにあることは、きわめて明瞭であります。その証拠に、本条約においては、核軍縮に対する核保有国の義務は、その具体的方策が何ら示されておりません。また、非核保有国の安全保障についても、条約では全く触れられず、単に安保理事会の一片の決議によってお茶を濁しておるのであります。みずから核兵器開発についてフリーハンドの立場を保持しながら、他国に対してはその手を縛り、さらにその国の安全保障については条約では一切の責任を負わないというのが核防条約の偽らざる実体であります。まさにこれは第二のベルサイユ条約といわざるを得ません。(拍手)  さらにわが国として重要なことは、原子力の平和利用に対する査察の不平等性であります。いま世界は、二十一世紀に向かって核エネルギー時代を迎えようとしております。したがって、原子力の平和利用に対するフリーハンドの確立は、近代国家にとっては、まさに死活的課題であります。しかるに核防条約では、周知のとおり、核保有国と非保有国との間の核の平和利用査察については、明らかに差別が存在いたしております。すなわち、非核保有国の査察は行なうけれども、自分の国の査察は許可しないという点であります。もしこのような現状のまま条約を承認するならば、わが国は将来、経済的後進国の地位に停滞し、核エネルギー時代下にあって、日本経済、文化は半身不随におちいり、わが国が、二十一世紀のバスから転落する結果になることは、火を見るよりも明らかであります。しかも、本条約は、二十五年の長きにわたって、わが国の自由を拘束するのであります。加えて、中国、フランス等、核保有国条約不参加、インド、ブラジル等潜在的核保有国条約調印も重視すべきであります。  政府は、本条約調印を急ぐ理由として、国際的孤立化、なかんずく西ドイツの調印を理由の一つとしてあげておりますが、これは全く理由になりません。西ドイツは西ドイツ、日本日本であります。西ドイツの場合は、条約調印にあたって、東方政策について代償を取りつけるとともに、核の平和利用、査察について、独自の保障を得て行なわれておると見るのが常識であります。(拍手)しかるに、日本の場合は、それらの点について、何一つ代償も保障も得ていないのであります。いな、その努力を真剣になさなかったというのが実情であり、外交上の怠慢そのものといわねばなりません。(拍手政府はこの点を言いのがれるために、調印批准とは別だと説明しておりますが、これは国民を欺き、かつ国際信義に反す態度といわねばなりまん。また、このような国の将来に関する重要問題については、国会において十分論議を尽くし、国民の理解を求めて賛否を決すべきであって、いやしくも、外交戦術上の目前の利害関係から事を決すべきではありません。しかるに、政府は、そのための努力を怠り、国会の再開に先立って怱々の間に調印したことは、国民国会を無視し、かつ愚弄した態度と断言せざるを得ません。(拍手)  そこで、私は、佐藤総理に率直にお尋ねいたします。  二月三日の政府声明でも明らかなように、いま私が指摘した核保有国の核軍縮、非核国に対する安全保障、原子力の平和利用の平等性等について、政府も同様、現在の核防条約がきわめて不満足なものであることを認めておられます。といたしますならば、この点、今後の交渉の結果、満足する結論が得られない場合、政府自身その批准を拒否する決意をお持ちなのかどうか。  同時に、政府は、その声明において、条約第十条に基づく脱退の権利を留保する旨を明らかにしておられます。はたしてその場合、共同制裁等の排除について、いかなる保障措置を取りつけ得るのでありますか。すなわち、核保有国協定不履行に基づく非核保有国条約脱退について制裁措置は行なわない旨、保障を取りつけられるやいなや、この点を明確にしておくとともに、さらに重ねて、本条約世界日本の平和的利益を阻害する事態が発生するならば、断固として脱退するだけの決意を佐藤総理はお持ちであるのか、この点、明確なる御答弁を求めます。(拍手)  これで私の質問は終わるのでありますが、しかし、先ほどの成田委員長への御答弁の中に、聞き捨てならぬ問題が二点あります。これは議会人としてただしておかねばならぬ重要事項であります。  成田委員長の核軍縮に対する質問に対して、佐藤総理は、それは核保有国の問題であって、われわれが関与すべき問題ではないという意味のお答えになりました。これは的はずれにして認識の欠如した答弁であります。核軍縮は、世界平和を達成するという人類の悲願であります。この認識なくして政治を語る資格はありません。したがって、核軍縮は、核保有国だけの問題じゃなくして、全人類的なものであるということの御認識をいただきたいのであります。(拍手)  次に、この際、総理大臣の政治姿勢についてただしておきたいことは、同じく成田委員長の質問に対して、あなたは次のごとく答えられております。予算案については議院内閣制のたてまえにより、与党の意見を十分聞いて作成したものであるから、残念ながら各党一致で修正する余地はありません、かように答えておられます。しからば、私は、この点について、議会与党だけの議会ではありません。国民選挙された四百八十六名の議会であります。したがって、国民のしあわせと国家の利益のためには、党利党略を捨てて修正するだけの心がまえがなければ、民主主義政治家であり国民の代表とは言いかねるのであります。(拍手与党だけが承認するならば修正する必要ないという意味を述べられたことは、総理の胸中、自民党あって国家と国民なく、議会政治を無視する独裁専制政治でなければならないのでありまして、私はこの点、佐藤総理の深き反省を求めて、質問を終わる次第であります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
  16. 佐藤榮作

    ○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 西村君にお答えいたします。  わが国が今後国際社会の進運に先んずるためにも、また人間性豊かな社会の調和ある発展をはかるためにも、教育の充実はきわめて重要なことであります。私は、西村委員長の御意見に同感の意を表するものであります。  現在、中央教育審議会におきまして教育制度全般について検討中でありますが、国政の最も重要な課題として、教育の内容及び制度の全般にわたって、時代の進展に即した教育体系をつくり上げることに努力したいと考えております。しかしこの問題は、国民各界、各層の合意を得なければ、十分の成果をあげることはむずかしいので、御協力を特にお願いする次第であります。  ことに、お使いになりました教育福祉国家というこのことばは、ちょっと私としても初めて伺うことばでございますので、その概念としては私自身が十分理解しない点もあるかと思います。それらの点は、いずれ御高示をいただきたい、かように思っております。  次に、最も望ましいアジアの姿は、民族や宗教や文化を異にするアジアの諸国が、自由と独立とを享受しつつ、相互に協力してともに繁栄することであります。このため、これらアジアの諸国に対し、軍事的でない側面から協力することこそ、わが国が一九七〇年代における国家目標の一つとして追求すべき課題であると信じます。  また、われわれの目標は平和であり、そのためには、一方において戦争を抑止する不断の決意と努力を維持しつつ、他方において緊張緩和を促進し、さらに平和を恒久的なものとする国際秩序の形成につとめなければなりません。具体的には自衛力の整備と日米安保体制の堅持、各国との友好関係と相互理解の一そうの増進、南北問題解決のための貢献、国連の強化と軍縮への努力、そして国際的な各種交流の促進であると思います。  次に、施政方針演説におきまして、私は、わが国の国情と国民性に合致した独自の目標を達成するために、内面の充実並びに外における繁栄と外に対する責務との調和の二つの指針を掲げました。わが国は世界にも例のない高度成長を続けていますが、これに見合う精神的、社会的豊かさの実現を同時に考えなければならないという前人未踏の課題に直面しています。また、繁栄の果実をひとりわが国だけのために享受するのではなく、世界全体の繁栄と平和のための責任感を常に忘れないような国となること、これこそわれわれが実現しなければならない国家像であると思います。この二つの目標の達成は容易なものとは思いませんが、それだけに七〇年代の日本のビジョンとしてふさわしいものと信じます。  次に、予算についてお答えをいたします。  西村君は、特に物価公害問題を無視した政治的犯罪行為——そのとおりのことばを使われたとは申しませんが、ともいうべき予算であるとの御批判がありました。この点は、西村委員長としてもいろいろ考えられたことだと思いますが、私はやや御発言と違いはしないかと思っております。物価対策につきまして十分の配慮を払ったことは、さきに成田君にお答えしたとおりでありますし、公害対策にしても、めったに政府の施策をほめることのないマスコミ等でも、率直にその充実ぶりを伝えているところであります。どうかもう一度よく予算内容をごらんいただきまして、やはりいい点はいいといって、そのままお認めをいただきたいと思います。(拍手)  もちろん、私は今回の予算をもちまして、これで十分だ、すべてが満足いったと、かように私自身も考えてはおりませんし、また各方面の御意見もさらにさらによく承って今後の予算編成の際の参考にすべきだ、かように私思っておりますので、御叱正のほどお願いをしておきます。  次に、食料品の価格を安定させるために、輸入の活用、流通機構の改善についての御要望がありました。政府としても、今後とも需給の動向に即した輸入政策の弾力的な運用につとめるとともに、卸売り市場の整備、改善、小売り業の大型化等を積極的に推進する所存であります。  ただ、御提案の中国大陸からの食肉輸入の問題につきましては、これは簡単なものではありませんので、なお検討を要する問題であると考えます。ただいま、輸入さえうまくいけば直ちに肉の値段が下がるように言われますが、国際的価格もただいまはたいへん高くなっておりますので、輸入いたしただけでそれが片づくものでもないように思います。  次に、土地対策についての御提案がありました。投機目的による休閑地をはじめとする未利用地の利用促進をはかることは、考え方としては望ましい方策でありますが、その実行につきましては種々複雑な問題がありますので、なお今後とも十分検討してまいりたいと存じますし、また各方面の御協力もぜひお願いしたい、かように思っております。  次に、西村君からは、物価減税公害、老人対策を含む社会保障等、七項目について五カ年計画を策定せよとの御提案がありました。このうち住宅、道路につきましては、すでに五カ年計画が策定されております。また公害につきましても、地域ごとに年次計画的な防止施策の推進が検討されております。その他の事項につきましても、ただいま作業が進められている新経済社会発展計画に大筋の考え方を織り込んでまいる考え方であります。いましばらくお待ちを願いたいと思います。  次に、中国問題についてお答えをいたします。  いままでもいろいろお答えをしたのでありますが、御指摘のとおり、日本中国本土との関係は、アジアの緊張緩和と世界平和に直結する重要な問題であります。したがって、日本中国本土との間に安定した関係をつくることが望ましいことは申すまでもありません。中国大陸との関係改善のために友好関係を積み上げていく方法として、当面経済交流の拡大をはかることはもとより賛成であります。日本中国本土最大の貿易相手国であり、昨年のわが国と中国大陸の間の貿易量が六億二千五百万ドルにのぼり、戦後の最大値を記録したことは喜ばしいことであると考えます。  輸銀資金の使用は、従来から具体的な問題ごとに諸般の事情を勘案して、ケース・バイ・ケースで処理することにしており、この点では竹入委員長にもお答えしたとおりであります。今後ともこの方針に変わりはありません。  また、政府としては国民政府中国の正統政府と認め、これとの友好関係を堅持しながら、他方、中国大陸に北京政府が存在するという事実は事実として認めつつ、日中関係改善をはかっていきたいという方針を従来から一貫してとってまいりました。  中国大陸との人的交流につきましては、政府としてもできる限り促進していきたいと考えており、また郵便、気象、電信、電話等に関する業務当局者間の取りきめにつきましては、北京政府が応ずるならば、政府としてこれを前向きに検討する用意があります。  通商代表部の設置につきましては、法律的に種々検討すべき問題があり、むしろ近く開始される日中覚書貿易交渉が双方の満足すべき結果をもたらし、その結果、双方の覚書貿易事務所が日中貿易拡大のため、より積極的な役割りを果たすに至ることを期待しております。  国連における中国代表権問題につきましては、その問題の重要性にかんがみ、引き続き慎重に対処したいと考えております。  なお、中国政策に関する政府姿勢が後退したとの御指摘でありますが、政府としては、北京政府がより協調的かつ建設的な態度をとることを期待し、相互理解が促進されることを望む姿勢に変わりはございません。(「選挙で言ったことと違うぞ」と呼ぶ者あり)ただいま申すように、別に変わりはございません。  次に、日米安保条約自動延長を予約したことは軽率との、実はおしかりを受けました。しかし、政府としましては、わが国をめぐる極東情勢の現状及び見通しにかんがみまして、安保条約が存続することがわが国の国益に合致すると確信しており、日米共同声明においても、双方がそれぞれ安保条約を堅持する意図を有することを相互に明らかにし合った次第であります。これは、十分慎重に検討に検討を重ねたものであり、軽率な行為とは考えておりません。  また、わが国は、米国がわが国において施設、区域を使用するのを許しておりますが、このことは、現在の国際情勢下においては、このようにして米軍がわが国に駐留していることが、安保条約の目的とするわが国の安全保障のため必要な戦争抑止力を構成しているからであります。それはまた、安保条約において、米国が一方的にになっているわが国防衛の責務の見合いの関係に立つものであります。政府としては、国際情勢の現状及び見通しにかんがみ、わが国に必要かつ可能な自衛力を保持するとともに、その足らざるところを補うため、今後とも安保条約を存続することがわが国の国益に合致するものと確信しております。  また、対米従属云々というような御指摘は、全く当を得ていないといわざるを得ません。(拍手)西村委員長の年来の主張はわからないではありませんが、責任ある政府としては、現在の国際情勢下において、基地供与の問題を含めて安保条約を再検討する考えはございません。  さきに、米国は、アジアの安全保障の確保の見地から、同地域におけるその国際的責任を引き続き果たす体制にあり、グアム・ドクトリンは、一国の防衛はその国が第一義的責任を負うことを期待しつつ、同時に、すでになされている条約上の公約を順守することを明らかにしたものであります。これは日米安保体制の背景となる国際環境を基本的に変更するものではなく、わが国としては、今後とも日米安全保障体制を現在の形で堅持していくことが必要かつ妥当なものと考えております。  なお、かかる観点から有事駐留という考え方は、これが現在の諸条件のもとにおいて実行可能であるかいなかが問題であり、政府としては、現在の国際情勢のもとにおいては、かかる考え方をとることはできません。  次に、政府は、これからの在日米軍の施設、区域のあり方については、国際情勢の推移、軍事技術の進歩、わが国防衛の整備の進捗状況等を勘案して、個々の施設、区域の機能、態様等に応じ、可能な範囲において自衛隊に移管し、米軍に共同使用せしむる方向で検討していく所存であります。お尋ねがありましたが、中曽根防衛庁長官個人の意見でないことをこの機会にはっきり申し上げておきます。このような考え方は、有事駐留の構想とは基本的に異なるものであることを誤解のなきように申し添えておきます。  次に、政府がなぜ核防条約調印したかにつきましては、すでに竹入委員長のお尋ねにお答えしたとおりでございますが、さらにこの際つけ加えさせていただくならば、わが国が平和外交立場に立つ限り、この条約の意義を率直に認め、これに参加することによってわが国のユニークな国際的責任と役割りを果たすべきであるというのが政府基本的な考え方であることを申し上げるものであります。  なお、西村委員長の非核兵器国の従属性、後進性についての御懸念でありますが、条約が、核兵器の所持、製造等の点以外については、核兵器保有国と非核保有国との間に差別を設けるものではなく、同等に核の平和利用促進し得るものであります。この点も御理解を得たいと思います。  核軍縮につきましては、軍縮交渉が誠実に進められているかどうか、これを十分注視するとともに、軍縮委員会でもこの点から十分の発言を行なっていく所存であります。  安全保障につきましては、国連での措置が実施されなかった場合には、わが国としても批准考え直す所存であります。さらに、わが国については、日米安保条約による安全保障が確保されております。  原子力の平和利用に対する査察の問題は、査察の平等が確保される見通しが得られた上で批准手続をとる考えであり、今後国際原子力機関においてわが国の主張を強く行なっていくために、この際署名したのであります。私は、署名によってわが国の国益がそこなわれることはないと確信しております。また、条約文は一昨年六月に確定したものでありますが、武力不行使の約束、査察規定の修正、軍縮義務の約束の規定等は、わが国の要求と努力により入れられたものであり、わが国は何もしなかったという御指摘は当たっておりません。西ドイツが調印前に問題にしたのは、同国が国連に加盟していないため、武力不行使の約束が同国に適用されるかいなかの疑問であり、わが国の場合はそのような事情は存在していないのであります。  また、この条約につき、国民の理解を求めるための努力を怠ったというおしかりでございますが、すでに昨年の国会で本件につき質疑が行なわれております。また、関係官庁におきましても、国民の理解を得るよう努力してきたと信じていますが、今後さらに一そうの努力をいたさせることはもちろんであります。  調印批准前提とすることは当然であります。しかし、国際原子力機関と締結する査察協定の内容が明らかになるまで批准しないとの態度が国際信義に反するものとは私は考えておりません。  さらに、査察協定がわが国にとり実質的に不利とならぬよう国際原子力機関等において強く主張してまいりますが、条約批准は、査察協定の内容がわが国にだけ不利なものとならないかどうかを十分考慮した上で検討する所存であります。  最後に、この条約の脱退の規定により、いかなる国も異常な状態の発生により自国の至高の利益を危うくされると認めるときは、その国だけの判断で脱退できることになっております。異常な事態としては、たとえば、NATOが崩壊した場合、その構成国が本条約から脱退をしても、それを非難することはない旨明らかにされております。これは、日米安保条約にも当てはまるものであります。もちろん、脱退は軽々しく行なうべきではありませんが、わが国の至高の利益がそこなわれた場合には、脱退することもあるのは当然であります。  ただいま、この核拡散防止条約、これはまことに新しい、また、これからのわが国の国益にも重大なる影響を及ぼす問題でございますから、私どももこれと取り組んでいる姿勢、これはただ単に批准前提として調印をしたんだ、当然そこで批准しますというような簡単な論理でなしに、この実害、それなどをよく考え、そして国際的平和にわれわれが存在し得るかどうか、この上とも検討する決意でございますから、どうか、それらの点で、この批准に際してまで、皆さん方の御意見も十分聞かしていただきたいと思います。(拍手)  次に、二つの点を御指摘になりました。核保有国の問題だとかように申して、たとえば核軍縮、これは人類の悲願だから、われわれも当然核保有国に対して要求すべきだということであります。西村君はさように言われたんだと思います。私も、核保有国の問題だといって無関心であるつもりはございません。しかしながら、それぞれの国がりっぱな主権を持っておるのでございますから、その主権は尊重しなければならない。だから、私は、それらの国々が独自の立場で考うべきことだ、かように考えたからであります。  もう一つの問題、予算編成について与党だけで問題を解決しようというなら、国会はかってにやったらいいだろうと言わんばかりのお話でございます。私は、もちろん、とるべき意見は少数意見といえども採用するにやぶさかでありません。この点を、お尋ねがありましたから、重ねて申し上げておきます。  以上、お答えをいたします。(拍手)      ————◇—————
  17. 加藤六月

    ○加藤六月君 国務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明十八日午後二時より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  18. 船田中

    議長船田中君) 加藤六月君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時四分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 小林 武治君         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 内田 常雄君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  宮澤 喜一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君         郵 政 大 臣 井出一太郎君         労 働 大 臣 野原 正勝君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         自 治 大 臣 秋田 大助君         国 務 大 臣 荒木萬壽夫君         国 務 大 臣 佐藤 一郎君         国 務 大 臣 中曽根康弘君         国 務 大 臣 西田 信一君         国 務 大 臣 保利 茂君君         国 務 大 臣 山中貞則君君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君