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1970-05-13 第63回国会 衆議院 法務委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年五月十三日(水曜日)     午前十一時四十四分開議  出席委員    委員長 高橋 英吉君    理事 小澤 太郎君 理事 鍛冶 良作君    理事 小島 徹三君 理事 瀬戸山三男君    理事 田中伊三次君 理事 畑   和君    理事 沖本 泰幸君       石井  桂君    江藤 隆美君       島村 一郎君    永田 亮一君       羽田野忠文君    福永 健司君       松本 十郎君    黒田 寿男君       三宅 正一君    大野  潔君       林  孝矩君    岡沢 完治君       松本 善明君  出席政府委員         法務政務次官  大竹 太郎君         法務大臣官房長 安原 美穂君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         海上保安庁次長 林  陽一君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第一課長   田村 宣明君         法務省刑事局参         事官      大村 行雄君         海上保安庁警備         救難監     織田  巖君         法務委員会調査         室長      福山 忠義君     ————————————— 委員の異動 五月十三日  辞任         補欠選任   平林  剛君     安井 吉典君   岡沢 完治君     西村 榮一君 同日  理事佐々木良作君同月十二日委員辞任につき、  その補欠として佐々木良作君が理事に当選し  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  検察行政及び人権擁護に関する件(旅客船乗っ  取りに関する問題)  請 願  一 交通事犯民事訴訟簡易化等に関する請願   (福田篤泰紹介)(第一〇二一号)  二 在日中国人広州交易会参加に関する請願   (堂森芳夫紹介)(第二二三六号)  三 同(松本七郎紹介)(第二二三七号)  四 同(山本幸一紹介)(第二二三八号)  五 同(戸叶里子紹介)(第三一二三号)  六 名古屋矯正管区等管区交通事犯者集禁刑   務所設置に関する請願野田卯一君外百三十名   紹介)(第三二一〇号)  七 在日中国人広州交易会参加に関する請願外   十九件(下平正一紹介)(第三五二三号)  八 同外十九件(下平正一紹介)(第三六三三号)  九 同(土井たか子紹介)(第三六三四号)  一〇 同(畑和紹介)(第三六三五号)  一一 同外三十九件(三宅正一紹介)(第三六三   六号)  一二 同(安井吉典紹介)(第三六三七号)  一三 土地分筆等登記手続に関する請願沖本泰   幸君紹介)(第三七二〇号)  一四 裁判所法の一部を改正する法律案反対に関   する請願畑和紹介)(第三七二一号)  一五 在日中国人広州交易会参加に関する請願   外十九件(下平正一紹介)(第三七二二号)  一六 同外三十六件(三宅正一紹介)(第三七二   三号)  一七 同外十九件(下平正一紹介)(第三八〇八   号)  一八 同外十九件(下平正一紹介)(第三九一七   号)  一九 同(中嶋英夫紹介)(第三九一八号)  二〇 同外二十件(下平正一紹介)(第四〇三六   号)  二一 裁判所法の一部を改正する法律案反対に関   する請願岡沢完治紹介)(第四〇二九号)  二二 同(寒川喜一紹介)(第四〇三〇号)  二三 同(栗山礼行紹介)(第四〇三一号)  二四 同(西尾末廣君紹介)(第四〇三二号)  二五 同(西村榮一紹介)(第四〇三三号)  二六 同(吉田賢一紹介)(第四〇三四号)  二七 同(吉田泰造紹介)(第四〇三五号)  二八 同外二件(岡沢完治紹介)(第四一五七号)  二九 同(松本善明紹介)(第四一五八号)  三〇 在日中国人広州交易会参加に関する請願   外十九件(下平正一紹介)(第四六〇三号)  三一 同外十九件(下平正一紹介)(第四八二〇   号)  三二 同(小林進紹介)(第五〇二五号)  三三 同外十九件(下平正一紹介)(第五〇二六   号)  三四 同(小林進紹介)(第五二三〇号)  三五 同外十九件(下平正一紹介)(第五二三一   号)  三六 同(小林進紹介)(第五四八二号)  三七 同(小林進紹介)(第五六四三号)  三八 同外九件(中川嘉美紹介)(第六九〇八号)  三九 商法の一部改正反対に関する請願麻生良   方君紹介)(第七一二三号)  四〇 在日中国人広州交易会参加に関する請願   (安宅常彦紹介)(第七五四一号)      ————◇—————
  2. 高橋英吉

    高橋委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選任の件についておはかりいたします。  理事佐々木良作君が昨十二日理事辞任いたしましたので、理事が一名欠員となりました。その理事補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高橋英吉

    高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長は、理事佐々木良作君を指名いたします。      ————◇—————
  4. 高橋英吉

    高橋委員長 本日の請願日程全部を議題とし、審査を進めます。  今国会、本委員会に付託になりました請願は四十件であります。  各請願内容につきましては、文書表ですでに御承知のことと存じますし、また、先ほどの理事会において検討いたしましたので、紹介議員説明等を省略し、直ちに採決いたします。  本日の請願日程中、日程第六の請願は、採択の上内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 高橋英吉

    高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、ただいま議決いたしました請願に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 高橋英吉

    高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  7. 高橋英吉

    高橋委員長 今国会、本委員会に参考送付されました陳情書は、お手元に配付いたしてありますとおり、十一件であります。この際、御報告いたしておきます。      ————◇—————
  8. 高橋英吉

    高橋委員長 次に、検察行政及び人権擁護に関する件について、調査を進めます。  この際、昨十二日発生いたしました旅客船「ぷりんす」乗っ取り事件について、まず説明を聴取いたします。警察庁田村捜査第一課長
  9. 田村宣明

    田村説明員 昨日から発生しております、瀬戸内海における定期船の乗っ取り事件につきまして、事件の概略を御報告申し上げます。  まだ詳細の点につきまして、まとまってない部分がございますので、あらかじめ御了承いただきますようにお願い申し上げます。  五月十一日の午前零時ごろ、山口県の山陽町の国道上で、山口県警警察官交通取り締まり中に、交通違反乗用車を発見いたしまして、取り調べをいたしました結果、その乗用車盗難車であることが判明いたしましたので、乗車をしておりました三名を検問所に同行をしようといたしましたところ、犯人の一人が猟銃をかまえ、一人がナイフで切りかかりまして、警察官に二週間の傷を負わせて、自動車で二名が逃走をいたしました。一名はその場で逮捕をいたしております。  それで、事件発生と同時に、山口県警におきましては、県内並びに隣接府県緊急配備を指令いたしまして、約十二時間にわたって捜索を続けておったのでございますが、ついに捕捉することができないでおりましたところ、五月十二日の午後二時ちょっと前ごろに、このとき広島県警ではこの前日の手配によりまして県内配備をいたしておったのでございますが、二時ちょっと前ごろ、広島市内の山中にライフル銃を持った者が二名おるという通報を受けまして、直ちに配備中のパトロールカーをそちらに向けまして、ここで四名が手分けをして、その申告のありましたとおぼしき者を捜索をいたしておったわけでございます。  そのうち、警察官の一名が、被疑者と思われます二名を発見をいたしまして、逮捕をいたそうといたしましたところ、その犯人の一人が、通りがかりの軽四輪自動車をとめまして、運転者猟銃を突きつけまして、警察官説得をして凶器を捨てさせようとしたのでありますけれども、言うことを聞きませんので、威嚇射撃をいたしましたところ、激昂をいたしまして、運転手の頭に猟銃を当て、拳銃を捨てないと運転手を殺すという状況になりまして、やむなく拳銃をそこに捨てたわけでございます。ところが、被疑者運転手猟銃を突きつけて、その車で逃走いたしたのでございます。  それで、これと同時に約千名をこえる警察官を動員いたしまして県内捜索に当たったのでございますが、行くえがつかめないでおりましたところ、被疑者広島市内の立町にある銃砲店にあらわれまして、家人に拳銃を突きつけて脅迫をいたしまして、ライフル銃三丁、実包三百八十発を強奪いたしまして、人質と車両はその場に放置をして逃走いたしたのでございます。これは通報がややおくれまして、三十二分ごろ受けておるのでございますが、警察でも必死の捜索をいたしましたが、ついにこの姿がつかめないでおりますうちに、四時五十八分、五時ちょっと前ころに、県営の宇品桟橋にあらわれました。猟銃を発射しながら、この桟橋に停船をいたしておりました瀬戸内海汽船の「ぷりんす丸」に乗り込みまして、船長ら乗り組み員、乗客脅迫して人質といたしまして、同船を強制出港させたのでございます。この際に、被疑者の発砲によりまして民間人一名が一週間のけがをし、警察官一名が左胸右大腿に重傷を負っております。  船を出させましてから、船は呉沖から音戸を経まして愛媛県に入りまして、夜の十一時四十分過ぎに高浜港に入港をいたしたのでございます。この間、被疑者家族を岡山県から呼び寄せるなどいたしまして、説得につとめたのでございますが、被疑者犯行を断念せず、同港乗客全員と乗り組み員の一部、四名をおろしました後、給油をさせまして、午前一時ちょっと前に同港を出発いたしまして、今治港沖合いからUターンをして北上いたしまして、広島港に朝の八時五十五分ごろに入港をいたしたのでございます。  入港後、広島桟橋におきましては家族あるいは警察幹部がいろいろと説得をいたしたのでございますが、その間、その広島港に来るまでにも相当ライフルを発射いたしておりますけれども、広島港に再度入港いたしましてからも二十発ぐらいのたまを撃ち込みまして、これが民家のほうに飛び、あるいは警察官をねらって撃ち、あるいはときには説得に参りました父親とねえさんの乗っておる船のほうにも撃つというような状況でございまして、説得あるいは警告をいたしておったのでございますが、いま申し上げましたように、関係者生命に危害が及ぶおそれが多くなりまして、ほかに手段がないというふうに現地におきましては判断をいたしまして、到着後約一時間ぐらいたちました九時五十分過ぎに射撃をいたしまして、これが被疑者左胸に当たりまして、そこで逮捕をいたしたような次第でございます。  ただいま入りましたメモによりますと、十一時三十二分に犯人が死亡したというような連絡でございます。  これがこのたびの事件の概要でございます。     —————————————
  10. 高橋英吉

    高橋委員長 これより質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。田中伊三次君。
  11. 田中伊三次

    田中(伊)委員 最近のハイジャッキング傾向は、法務省も御承知のとおり、まさに世界的な傾向である。だんだんこの危険は濃くなりつつある。しかもこれは航空機だけではなく、昨今の問題としては船舶についても同様のことが起こっておる。海や空ばかりではなかろう。場合によっては陸上においても起こりかねない。たとえば、汽車において、電車において、大型バスにおいて、こういう事態というものは発生しないとは言えない。  きょうは三点を聞きたいのでありますが、第一点として聞いておきたいのは、航空機ハイジャック法をこの間提出をするときに、なぜ一体船舶汽車電車大型バス等、海についても陸についてもこのことを配慮しなかったか。法制審議会は一体何をしているのか。法制審議会答申に従ってこの重要な意味のある法案を出したのでしょうが、いま私の言いました点について、どういう事情航空機に限ったのかということ、これをまずお尋ねをいたします。
  12. 辻辰三郎

    辻政府委員 先般御審議をいただきました航空機の強取等の処罰に関する法律案立案に際して、どうして船舶を入れなかったかという御指摘でございます。実はこの法案は、御案内のとおり、三月三十一日のハイジャックを契機として急遽立案されたものでございますが、その立案の過程におきまして、法務省事務当局といたしましては、先ほど御指摘のように、航空機のほかに船舶もその対象にすべきであるという考え方をとっておったわけでございます。電車とか大型バスはしばらくおきまして、少なくとも船舶航空機と同様に対象にすべきであるという考え方を持ったわけでございます。  その考え方根拠は、やはり航行中の航空機または船舶というものは、一般社会から隔絶された特殊な社会であるという観点におきましては共通するものを持っているというところから、さように考えたわけでございます。そういたしまして、この立案を得まして、法務省案といたしましては、法制審議会に対しましては船舶をも含めた案を法務大臣から諮問をいたしたわけでございます。そういたしまして、法制審議会総会も、刑事法部会におきましても、この対象航空機のみならず船舶をも加えるという案で御審議を願いまして、その結果船舶もやはり対象にすべきであるという原案どおりの御答申が出たわけでございます。  そこで、今回のいわゆるハイジャック法案につきましては、かねがねこの法案は早くとにかく成立を願いたいということが法務大臣をはじめ国会方面の御意向もさようでございました。そこで、そのためには国会方面で御異議のない内容にすべきであるという考えになりまして、船舶を入れるかどうかにつきましては実は内々国会方面の各党の御意見を承ったわけでございます。そういたしますと、船舶をこの際対象にすることについては異議があるという御意見もまた強かったわけでございまして、その異論となります理屈の根拠でございますが、これはやはり何といいましても、船舶の形状や性能におきまして、大小あるいは機能の違いというものはたいへん差が大きいわけでございまして、大は大型客船から、小はその辺のろかいをもって運航する船まで入ってしまう。そこにはいろいろ意味が違うのじゃなかろうか。もっとこれをやる場合には、船舶を入れる場合には、船舶の必要な限定を要するのじゃなかろうかという点が御反対意見の最も強い点でございました。それの限定をはかってまいりますと、時期的にたいへん切迫しておりましたので、これは今国会には間に合わない、国会方面で御異議のない内容について、ともかくこの航空機だけの法案を先につくるべきである、こういう意見が固まってまいりまして、法務省といたしましても、法制審議会答申の中から船舶だけを削除いたしまして、航空機として国会法案を提出した次第でございます。
  13. 田中伊三次

    田中(伊)委員 その第一段では、ハイジャッキング傾向にかんがみて、航空機のみならず、船についても、汽車電車大型バス等陸上についても配慮すべきではないかという立法必要性について、私は御意見を聞いておる。  そこで、航空機に関するハイジャック法制定に際しては、立案当時にそういう事情があったということはよくわかります。よくわかりますが、ものの考え方が、机の上でものを考えるからそういう議論になる。大型航空機であろう小型航空機であろうが、超大型の船であろうが超小型のうが、こういう犯罪を起こそうと計画するやつがおるとすると、一番簡単にやれるのは大型バスです。拳銃を持ってバスに乗り込み人質をとる、犯人はこれが一番やりやすい。   〔委員長退席瀬戸山委員長代理着席〕 ことに世界的傾向になっておるというときに、ハイジャッキングをめぐるこの情勢判断をしてみるというと、船の形が大きいか小さいかなんということは問題でない。処罰法をつくるたてまえからは、大きかろうが小さかろうが、一定の形において社会と隔絶して犯罪を起こしているということにおいては、私は陸も海も同じものだと考える。制定経過がそういう経過であったということは一応了承しますが、これは一体海についての立法が必要だと法務省考えるのか。陸についても汽車電車大型バスなどというものについても必要ありとお考えになるかどうか。必要性はどうお考えになるか。
  14. 辻辰三郎

    辻政府委員 ただいま申し上げましたとおり、法務省当局におきましては、このいわゆるハイジャック法案のような処罰法規につきましては、船舶についても航空機と同じ対象にして処罰する必要があると考えておるわけでございます。それからバスとか電車とか陸上交通機関につきましては、これはまた具体的な事情は多少違うのではなかろうかと考えておるわけでございます。
  15. 田中伊三次

    田中(伊)委員 国会はきょう終わりで、延長はないという見通しであります。したがって、非常に急を要することではないが、どうも時間的にはあまりゆっくり考えてもらっては困るので、臨時国会であろう通常国会であろうが、次期国会には少なくとも船舶についてのハイジャック法を提案する、それから汽車電車大型バス等についても検討する、こういう答えができるかどうか。
  16. 辻辰三郎

    辻政府委員 船舶につきましては、もともと法務省事務当局といたしましては必要であると考えておるわけでございますし、これはその方向で事務当局としては十分作業ができると考えておる  それから、バス電車等陸上機関につきましては、その必要性は御指摘のとおりであろうと思うわけでございますが、航空機船舶と同じような犯罪類型になるのかどうかというような点につきまして、なお検討すべき問題が多いと思います。しかしながら、先ほど来御指摘情勢でございますから、そういうものにつきましても、早急に、事務当局といたしましては、検討していきたいと考えております。
  17. 田中伊三次

    田中(伊)委員 それから、この立法内容についてひとつ注文をしておきたい。  この間、当委員会でパスをして参議院に送付いたしましたハイジャック法というものは、飛行機地上にとまっておる間に起こったものは適用がない、そういう場合においてはあるいは強盗として罰するか、殺人として罰するか、傷害として罰するか、脅迫として罰するか以外に道はないということですね。これは、その区別は間違いではなかろうか。とまっておろう地上を走っておろうが、つまり滑走路の上にあろうが離陸をして空中にあろうが、これは区別すべきものではないのではないか、あとから考えてみてそう思うのです。国会もたよりない話で、この間審議をしたときになぜそれを言わなかったのかということですが、これがやはり人間らしいところで、あとからものを考えるとそうだということがわかるのですね。わかるから、法律改正ということが必要になる。動いておろうが動いておるまいが、とまっておろうがおるまいが、これはちっとも関係ない、こう私は考える。今度の場合、航空機についても、汽車電車大型バスについてもお考えを願うときには、この点も同時に考えてもらいたい。とまっておる、おらぬにかかわらず、いやしくも航空機の中で、いやしくも船舶の中で、いやしくも汽車の中、電車の中、バスの中で起こったというものは、同様に罰するのだということが必要だと思います。危険の度合いが違いましょうから、情状は違うかもわかりません。しかし、処罰ではなかろう。とまっておる場合においても、このハイジャック法適用はすべきものではないか。これはいかがでしょう。
  18. 辻辰三郎

    辻政府委員 いわゆるハイジャック法案におきまして、その対象航行中の航空機に限りました理由は、航行中という一般社会から隔絶された状態においての犯行である、それは犯行が非常にしやすいということと、すでにそのときには一つの全く閉鎖された社会になっておるわけでございまして、そこの乗客等生命身体安全等につきましてもたいへん危機が強いというようなことから、航行中に限っておるわけでございまして、これはいわゆるハイジャックというものはそういう航行中に初めて機長なら機長をおどして自分はどこかへ行ってしまうというものを世界的にハイジャックというふうに考えておったというところに、このハイジャック法案もまた航行中に限ったゆえんがあろうと思うのでございます。  そこで、航行中でない、とまっておる航空機であるとか船舶という場合には、やはりこの犯人逮捕であるとか犯罪の鎮圧というものは、航行中と違いまして、そこに大きな差があろうかと思うわけでございます。そういう観点から、このハイジャック法航行中に限ったわけでございますけれども、ただいま御指摘のような航空機船舶陸上交通機関を含め、かつ、航行中であろう航行中でなかろうと、すべてそれを対象にすべしというお考えになってまいりますと、犯罪の性質がやはり不法監禁といいますか、そういうものと、一つの最も大きい要素において、別の犯罪になるといいますか、そういう考え方のほうがむしろ強く出てくるのじゃなかろうかと思うわけでございます。御案内のとおり、現在のこのハイジャック法は、乗客及び乗り組み員の生命身体、自由の保護、それから航空の安全の保護航空機そのもの保護、かようなものを一括この保護法益にいたしておるわけでございますが、その場合に、バスであるとか電車であるとかいうことになりますと、だいぶん事情が変わってくるのじゃないかと考えるわけでございます。
  19. 田中伊三次

    田中(伊)委員 机の上で考えると、そういう議論が出てくる。航行中であろう陸上にあろうが、水の上にとまっておろうが、海上を走っておろうが、同じことじゃありませんか。世の中の大事な秩序、国家の法益を侵害するという意味においては、とまっておっても動いておっても、同じことじゃないのか。この間韓国の飛行場ではとまっておったでしょう。これは犯罪中にとまった。こっちが拳銃を引くまでに向こうが爆弾を投げるというんだから、とまっておったって、手がつかぬじゃないですか。動いておってもとまっておっても、社会秩序を破り、秩序の保持を妨げ、国の法益を侵害するという点については変わりはないのじゃないか。これを乗っ取って、拳銃を突きつけてさあエンジンを始動させろ、エンジンが動き始めれば船も動くし飛行機も動く、これはあまり区別して考えるべきものではないというふうに思う。停止中であっても、この種の犯罪はこの特別法をもって厳重なる処断をするのだということをうたっておく必要がある、こう考えるので、これは法制審議会意見をあらためて聞く必要があるのかないのか、こまかい手続のことは知らぬが、この点についてはひとつ時間をかけて検討していただきたい。どうでしょうか。
  20. 辻辰三郎

    辻政府委員 検討させていただきます。
  21. 田中伊三次

    田中(伊)委員 それから立法論の第二段として聞きたいのは、立法の方法ですね。検討する範囲は船があり、汽車があり、電車があり、大型バスがあるということになるわけだが、かりにやるべきだということになったときに、これは私の考えですが、この間のハイジャック法改正する。この間つくったものを改正するというのはおかしいが、まあしかたがない。国会もぼんやりしておった、提案者もなおぼんやりしておった。ぼんやりが集まった結果こういうものが先に出てしまった、こういうことなんだから、しかたがないから、これを改正していこうという一つの方法が立法技術としてある。それからもう一つは、これは単独立法で来たものであるから、刑事法規の特別法なんだから、やはりもう一本航空機と同様に船舶ハイジャック法制定しよう、汽車電車バスについても必要ありという結果になるならば、これも独立して何本かつくろう。簡単な法律だから何本つくってもいいのです。これはどうお考えでしょう。そう法律を何本もつくらずに——しかし幾らか事情は違いますね。陸上にあるものと海上にあるものと空中にあるものとは、危険の度合いも幾らか違う。これはどうお考えでしょう。
  22. 辻辰三郎

    辻政府委員 この点につきましては、私ども今後検討をいたします検討の結果とも関連のある問題であろうと思うわけでございます。先ほど来申し上げておりますように、陸上の交通機関ということになってまいりますと、やはり不法監禁というようなものが法益としては最も強く考えられるべきものでなかろうかと思うのでございます。そういうふうにいたしますと、現在のハイジャック法なんかとは犯罪の性格が多少といいますか、相当違ってくるのじゃなかろうかと思うわけでございまして、私ども事務当局といたしましては、これが単行法でいけるものなのか、あるいはまた御指摘のような別の一本の単行法になるのか、ばらばらの単行法になるのか、その辺もあわせまして十分検討させていただきたいと考えております。
  23. 田中伊三次

    田中(伊)委員 そこで、以上のようなことを検討してやる場合は、臨時国会であろう通常国会であろうが、次期国会に提出を間に合わす、次の国会の発頭にこれを提出する、こういう必要がある、のんびりはできぬと思うのであります。何が起こるかわからぬ。国会審議しておる最中にちゃんと海が起こっておる。陸も起こるおそれがある、こう考えるのですが、次期国会に提出するという決意はいかがでしょう。
  24. 辻辰三郎

    辻政府委員 ともかく、事務当局といたしましては、すみやかに検討させていただきたいと考えております。
  25. 田中伊三次

    田中(伊)委員 これは急ぎ次期国会に提出せよ、こういうことで要望をしておきます。  それからもう一つは、厳罰方針ということについて第三に御意見を聞いておきたい。現在は航行中の航空機について乗っ取りをやった場合には、たしか七年以上無期ですね。人を殺した場合、死に至らしめた場合においては無期、死刑になっておる。これはなまぬるいのじゃないか。人を殺さなければ無期にも死刑にもならぬ。刑罰法規のたてまえはそういうことでしょう、常識としては。こういう特別立法をやる場合においては、厳罰方針をとらないとあまり効果はない。人を傷つけたる場合においても無期または死刑にすべきではないか。これは異例の立法です。刑罰法規において、罰則を規定する罰則の内容としては、異例かつ抜群のものです。これによって人を死に至らしめた場合はもちろん、人を傷つけたる場合においても無期または死刑にする。死刑一本というわけにまいりますまい。殺さぬでも、傷がついただけでいけない、無期または死刑にするのだという立法が必要であると考える。  それから、七年以上というこの刑も軽過ぎる。この点についても検討する必要があろうと思います。いかがでしょう。
  26. 辻辰三郎

    辻政府委員 ただいまハイジャック法につきまして、人が死んだ場合だけが死刑または無期であって、人を傷つけた場合には、一条の無期または七年以上という罰条にかかるにすぎない、これは二条のほうになるようにしろというおことばでございます。この点につきましては、この法案立案の過程におきましては、現行の刑罰法規との関連におきまして、この法定刑を考えたわけでございます。このハイジャック法の一条の無期または七年以上という法定刑につきましては、この犯罪から人の傷害が出た場合には無期または七年、これだけでもたいへん重い刑でございます。傷害の結果はその中に含まれて評価されておる。人が死んだ場合に初めて二条の死刑または無期になるという考え方をとったわけでございます。これは御案内のとおり、現行刑法におきましても、強盗強姦は致死の場合に初めて死刑または無期になるわけでございまして、単なる強盗強姦は——単なるといいますか、強盗強姦は無期または七年、こうなっておりまして、ちょうど刑法の二百四十一条の法定刑とバランスをとったということになるわけでございます。  そこで、これはまだ足らない、もっと重くしろという御指摘でございますが、御指摘の点、ごもっともの点もあろうかと思うのでございます。また他面、御案内のとおり、死刑を廃止するかどうかという死刑問題の議論が現在世界的な思潮として、死刑を縮小のほうに持っていこうという一つの行刑主張もございまして、そういう面からして、この際、死刑に当たる罪は極力減すべしという考え方も根強くあるわけでございます。それやこれやで、このハイジャック法案は、ただいま申し上げたような法定刑になったわけでございますが、これも将来の検討の際には十分いま御指摘のような点を勘案さしていただきたいと思います。
  27. 田中伊三次

    田中(伊)委員 最後に、一口御意見を聞いておきたい。  これは大臣がおられれば、ぜひ重要な発言をしてもらいたいと考えたのですが、日本ではどのような凶悪な犯罪であっても、警官は銃殺をするということを避ける。なまでいけどりにして、裁判にかけて死刑になっている犯人にも、犯人の人権があるわけで、人権擁護の見地からいって当然のことである。きょうの新聞の写真を見ると、犯人ライフル銃を持って欄干を歩いておる。こんなもの銃殺するのはわけないです。相当な大きさに写真が出ておる遠方から銃殺するということはわけもへちまもないように思う。凶悪なる現行犯に対しては、やむを得ざるときには銃殺は差しつかえないんだ、文明国としては非常に行き過ぎた法律内容のごとくに一応考えられるけれども、こういうことについて立法措置は必要でないか。正当防衛、緊急避難としてこれを銃殺するということは差しつかえないという理論はあるのですが、凶悪なる犯罪を防止するためには、やむを得ないときは、銃殺差しつかえがないということを法律の明文によってつくり上げるという制度はいかがでしょう。やるべきであるという見解であります。
  28. 辻辰三郎

    辻政府委員 これは私どもの事務当局の所管かどうかは疑問でございますが、ただいまの御指摘の点は、御案内のとおり、警察官職務執行法の七条の所定の場合には警察官が武器を使用でき、かつまた一定の場合には、人に危害を与えることがあるというところまでは現行法で規定されておるわけでございます。ただいまの今回の事件も、この警察官職務執行法の七条によりまして、発砲があったものと私は推察をいたしますけれども、これでなお足らないという御意見であれば、私どもまたその御意見を十分に検討さしていただきたいと考えておるわけでございます。
  29. 田中伊三次

    田中(伊)委員 凶悪犯に対しては銃殺をもって臨むべし、場合によって銃殺差しつかえはないということを立法化すべきだ。むろんやたらにやられては困る。やたらにやられて度を越えても困るけれども、やむを得ざる場合においては銃殺やむを得ずということが立法化されるべきものと思います。これをひとつ検討をしてもらいたい。いかがでしょう。
  30. 辻辰三郎

    辻政府委員 ただいまの御意見につきましては、事務当局としてお答えできるかどうか疑問でございますが、事務当局といたしましては、一応現在では、やはり犯罪に対しては刑事手続によってその刑事責任を追及していくというのが大原則であろう考えておるわけでございます。
  31. 田中伊三次

    田中(伊)委員 終わります。
  32. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 畑和君。
  33. 畑和

    ○畑委員 法務大臣もちょうど参議院に出ておるようで、せめて次官をと思ったら、次官は勲章の授章の立ち会いなんかで出られないそうだけれども、せめて次官くらいいないと困るんですけれども、しかし、そう言っても時間の制約がありますから、質問を始めます。  今度の問題は、いわゆるシージャックというか、船の強奪事件というのが一部にあるわけであります。一番最終はそれだ。その前に幾つかの犯罪が積み重ねられて、最後に船の乗っ取りということになったという点において、この間起こりましたいわゆるスカイジャックの問題とはいささか違うと思う。しかし、船を乗っ取ったという点については飛行機乗っ取りと同じように、この間ハイジャックの問題について立法がなされましたけれども、その際にもこれは問題になっていた。しかし、今度も完全に同じだとは私は思わない。その目的などが、この間の「よど号」の事件の場合には、赤軍の人々は明らかに飛行機を乗っ取って、その運航を支配して、そして北朝鮮に飛ぼう、初めからそういった意図だった。今度の場合には不良少年がいろいろな犯罪を積み重ねて、最後に出港しようとする定期観光船に乗って、そして乗客等人質にして逮捕を免れようとしたというようなことにおいて、この間の問題とは少し違うと思う。しかし、そういう公共的な乗りものの乗っ取りだという点については同じである。そういうことからいろいろ区分けをして考えてみたいと思うのです。  先ほど田中委員のほうからは、どういうわけでこの間船舶まで入れなかったかということについて御質疑があった。それに対して答弁もございました。実はその点については、われわれもある意味でいえば同じ責任があるわけですが、しかし、田中委員はあの当時、ハイジャックの問題当時おられなかったからその経過、いきさつ等をあまり御承知なかったろうと思う。われわれも実はあの問題が起きたときに、この取り締まりの法案をつくれということで要望もいたしました。最初船舶も入っておったわけでありますけれども、船舶の場合と飛行機の場合とはそのスピードにおいて、安全性において相当違うというようなこともあり、またそれをつかまえたりなどするのに、飛行機の場合と船とはなかなか決着をつける、逮捕したり何かすることについての難易の問題等もある、それが一つと、それから同時にまた船の大小というようなことも、ただ一律に船舶ということで定義づけるということになると問題もあろう。それからさらにまた、船舶については多くの乗り組み員がおる場合が多い。そういう人たちのいわゆるストライキ行為というものなどとの関連で、この船舶を入れることによって、よほど注意しないとそういったものまでが新しく設けられる法律によって規制をされるようなおそれがないか、こういった点でわれわれも船舶については慎重を期すべきである、こういう立場で反対ということではなかったつもりです。ハイジャックが起きたからというので、それで船舶まで一緒くたにとりあえず急いでそれをやるというのは危険がありやせぬか、慎重にすべきではないかというような意見をわれわれは申したわけです。それで法務省のほうでは、法制審議会には船舶も含めてはかり、法制審議会もそれを入れたほうがよろしいという意見だったそうでありますけれども、われわれ、あまりどろなわ式にやって先ほど言うたようなそしりを受けてはいかぬというようなことで、実は船舶についてこの際は譲ったほうがよろしくはないかという意見を申した。ところが、実際にはこういう事件が起きたわけでありまして、あまりにも現実となるのが早過ぎたというようなことで、先ほど田中委員のほうから言われたような御質問となったわけだと思う。  経過はそういうことでありまして、これは大体与野党を通じての意見であったということについて、田中委員も御了解願いたい。われわれも決して反対というわけじゃないけれども、船舶の場合は飛行機の場合と違ってよほど慎重にやる必要がある、こういうことだったのであります。しかし、現実にはまことに皮肉な話に、同じこの国会の会期中にその船舶の乗り取りということが実現してしまったわけです。それはもちろん「よど号」事件と同じように、それ自体が目的ではない。ほかの犯罪を積み重ねて、最後に逮捕を免れるために船を乗っ取って逃げ回るというようなケースであるという点において少しは違いがあるけれども、やはり乗り取りという点では同じだということだと思うのです。  ところで、私がさっきちょっと聞き漏らしたのですが、犯人が死ぬようになった場合のことですね、もう一度最後のことを話してくれませんか。射殺ということになるのかどうか。
  34. 田村宣明

    田村説明員 発射に至ります直前の状況について、私ども承知をしておるところを申し上げたいと思います。  先ほども申し上げましたが、「ぷりんす丸」が再び広島港の桟橋に着きましたのは、大体朝の八時五十分過ぎでございます。大体二、三分ごろかと思われます。着きましてから、被疑者のほうは、前日広島県警逮捕されております共犯者、相被疑者に会わしてもらいたいということを条件として申し出てきたのでございます。これは船長がその間の使者になりまして、いままでもまたこの後もその役目を果たしておるのでございますが、船長を通じまして共犯に会わせてもらいたい。そこで警察側といたしましても、これは直ちに会わせるということではなくて、何とか説得をし、またすきをねらって逮捕をいたしたいということで、たとえば会う場所でございますとかあるいは会った後はどうするのかというようなこともこちらから出したりいたしまして時間が進行しておったんでございますが、その間にも被疑者のほうは何発かライフルを撃っておりまして、パトカーあるいは付近の——これはまだ詳細な調査ができておりませんので正確にはわかりませんのですが、パトカーあるいは近所の建物、それから機動隊員などを建物の陰などに隠して配置をいたしておりますのですが、それが姿をあらわしますとそれをねらい撃ちをする、こういうふうな状況が続いておったわけでございます。  それで、九時三十分過ぎから三、四分間にわたりまして、これはいままでも何回かお願いをしておったんでございますけれども、この被疑者のおとうさんとおねえさんに来てもらっておりますので、船に乗って近づきましてさらに説得をいたしたのでございます。しかし、一向に歩み寄る模様もございません。九時四十分過ぎになりますと、その船長を通じまして、実は昨日ラジオなどでも聞いておるけれども、給油というようなことで警察側は時間を延ばしておるが、自分にもいろいろ覚悟はあるというようなことを言いながら、さらにここで五、六発撃っておるのでございます。この過程で、父親と姉が乗っております船のほうに向かっても射撃をいたしておる、そういうふうな状況でございますので、さらに警察側の幹部が四十五分ごろから五、六分にわたりまして、凶器を捨てて自首するように説得と警告を続けたのでございます。ところが、この間にも被疑者は発砲をいたしまして、さらにこの船員を人質にしても出港しようというようなことも言うておりまして、船員のほうを銃を持ちながら何回も振り返るというようなことで、この間さらに数発のライフルを撃っておるわけでございます。  で、着きましてから約一時間ほどの間に二十発くらいのライフルを撃っておりまして、最後の説得の段階におきましてもさらに発砲をいたしておる。その状況は、先ほど来申し上げましたように、一般の浜のほうに向かって撃っておりますので、市民にも被害が及ぶおそれがございます。あるいは警察官、それから乗り組み員の人にも危害が及ぶおそれがあるということで、この警告の最後の段階で発砲をいたしましたところで正当防衛、やむを得ないという現地の判断で発砲をいたしまして、これが命中して死亡されたということで、非常に好ましくない形で事件が終了した、こういうふうな状況でございます。
  35. 畑和

    ○畑委員 それで、犯人に向かって何発撃ったんですか。何発撃ってどこへ当って、致命傷はどの辺ですか。
  36. 田村宣明

    田村説明員 私、出てまいりますときに聞いておりますところでは、命中したのは一発でございまして、左の胸というふうに聞いております。
  37. 畑和

    ○畑委員 距離は発砲するところから犯人のところまでどのくらいあったんですか。
  38. 田村宣明

    田村説明員 距離はちょっと聞き漏らしておりまして、いまは承知をいたしておりません。(田中(伊)委員「銃は」と呼ぶ)銃はライフルです。
  39. 畑和

    ○畑委員 相当射撃の名手を狩り集めていったようなことが新聞の記事にもありました。要するに最後のときにはやむを得ないということで相当射撃の名手をすぐって現地に出張さしたというような新聞の記事がありますけれども、最後のときにはそれをやろうという腹があったものと思うのですが、いまの田中委員の言いっぷりからしますれば、むしろこういった犯人は射殺をすべきだ、こういうような御議論がありましたけれども、私はにわかにそれに賛成できないので、どうしても正当防衛、緊急避難、やむを得ない場合は別といたしまして、犯人といえどもできるだけ生かしてつかまえる、こういうことが必要だと思う。そういう点について、やむを得ない処置であったかどうかということについては、私はこの程度のことではまだ納得するというわけにも必ずしもまいらぬけれども、非常に凶悪な犯人であるというようなこと、たまもふんだんに持っておって、相当射撃の回数も多くやっておった、こういうような点から、ある程度警察の処置も認められるのであります。よく外国では、アメリカあたりではすぐ射殺してしまうけれども、日本の場合はそれを相当慎重にやって、どうしても緊急やむを得ないというような、正当防衛の範囲に当たるような場合以外は、意識的に射殺をするというようなことは、私はこれはあってはならぬと思う。やはりそういう撃ち合いの場において、緊急避難というような場合であるならば容認されるけれども、それ以上の場合、日本の法の現在の状態からいうと、それは許されないのだと私は思う。その点は私は相当研究問題だと思いますけれども、そういう趣旨でお尋ねいたしたわけでございます。  この事件考えてみますると、この逮捕に至るまでの警察の処置というのが非常に後手後手と回っておる。これは新聞、あげて全部そういった論評もいたしております。大体いままでの事件が、やはりほとんど同じようなことを繰り返して、警察逮捕に至るまでの活動が後手後手に回っておったということで、この事件ばかりではないが、特にこの事件はそういう感じが非常に強いのでありまして、山口県に最初発生し、それから広島に行って、広島からさらに船に乗って四国へ行って、それからまた広島へ戻ってくる、こういうような経過をたどって、相当ほんろうされた事件だったと思うのであります。その点について、きのう発生したばかりでありますし、正確に言うとおとといですか、それでありますから、まだ詳しいことはわかっておりませんけれども、新聞等の報ずるところによりますと、初動捜査が非常におそかったんじゃないかというふうに私は思う。大体警察官逮捕に行くような場合にも、最初一人で行っていますね。それで無線機なども携帯しておらぬ、こういうことだそうで、したがって、ほかに連絡をとりようがない、こういうようなこともあったようです。同時にまた、比較的に近くに何人かの警察官がおったはずだ。五十メートルくらいのところに警察官がおったはずなのに、発砲してもそのままだったというような記事も載っております、事実はどうか知りませんけれども。それからまたさらに、何やらという警察官が、最初にこの犯人をつかまえようとして追尾をしていって、それで通りかかった自動車を呼びとめて、それに乗っていった、そうしたところが、途中で物陰から出てくる男を認めたのでその自動車からおりた、そうしたら逆に、犯人はその自動車にまた乗り込んで、警察官からピストルを奪った、こういうような新聞記事でありますけれども、あなたのさっきの報告だと、警官がその自動車に乗っていったのではなくて、犯人が乗ったようなことになっていますが、どうでしょうか。初め警察官が追尾のために呼びとめて乗っていったのが、途中でその犯人を認めておりて、そこで何か運転手人質にして、ピストルもよこせというようなことで、ピストルも取られちゃった、威嚇射撃を一発やったけれどもだめだった、こういうような新聞の記事になっておりますが、あなたの場合にはそういったことでなかったように思うのですが、その点どちらがほんとうなのか、もう一度伺いたい。
  40. 田村宣明

    田村説明員 大筋はただいま御指摘のとおりでございまして、五月十二日の午後二時ちょっと前に、広島市内の住民の方から、二人の男がどうも猟銃を持っている様子であるという通報がございまして、あるいは山口県警から手配中の事件被疑者ではないかというふうに考えまして、当時すでに配備をいたしておったのでございますが、現場付近におりましたパトロールカーに現場急行を指示いたしたわけでございます。この指示によりまして、いま御指摘のパトカーが現場に到着をいたしましたところ、すでにそこにはもう一台到着いたしておりまして、合計四名の警察官がその二人組がおるという通報のございました付近を手分けをして捜査をいたしておったわけでございます。ところが、そのうちの一巡査が、迫井という巡査でございますが、これが道路上を歩いている被疑者らしい二人を発見をいたしたのでございます。少し距離がございましたので、通りがかった軽四輪の貨物自動車に便乗をさしてもらいまして、この方が被害者になったわけでございますけれども、便乗をさせてもらってそばまで行きまして、十メートルぐらい離れたところでおろしてもらいまして、そこであとについていって職務質問をしようとしたわけでございます。ところが、この乗せてもらいました軽四輪は、警察官をおろしますと、警察官あとに置くと申しますか、前進をいたしまして、この二名の被疑者のわきを通って前に出ようとしたわけでございます。ところが、そのときに被疑者がこの車をとめまして、これは猟銃を持っておったわけでございますが、その運転手猟銃を突きつけまして、すぐあとにこの巡査が追尾をしてきたわけでございますが、拳銃を投げろ、投げないと撃つぞと言って脅迫をいたしたわけでございます。そこで巡査は、被疑者は二人おったわけでございますが、この犯行を断念させようといたしまして、拳銃を一発威嚇射撃をいたしたわけでございます。これはまあ当時の判断としては最もよろしかろうという本人の判断でやったわけでございますが、これによって被疑者はかえって激昂いたしまして、この軽四輪車の運転手の顔のところに猟銃を突きつけまして、拳銃を捨てろ、捨てないと撃つぞと言っていまにも発射せんとする状況になったわけでございます。そこで巡査は、被害者の生命があぶないということで、しかし拳銃をそのまま渡したのではあぶないと思いまして、たまを抜きましてすぐそばにありましたみぞの中に捨てようとしたところが、被疑者は奪いました自動車のほうを指さしまして、その左のところに捨てろ、こういうことを言って、相変わらずその猟銃を顔のところに突きつけているという状況でございますので、これは運転手生命に危険を及ぼしてはいかぬという判断から、やむを得ず、被疑者の言うとおりに、自動車のところに拳銃を置きましたところが、さらにその実包をよこせということで、やむを得ず実包を投げ込んだということでございます。そこでこの被疑者は、猟銃運転手に突きつけまして自動車を運転させて、逃走をいたしたということでございまして、何かこのときにもっとほかの措置をとることはできなかったかということが考えられるのでございますけれども、その場にいました警察官は、それ以外にやはり方法がないという判断をいたして、そういうふうな措置をとったような次第でございます。  なお、被疑者は二人おったのでございますが、一人は、自動車で逃げた被疑者と問答中に逃走をいたしておったのでございますが、その巡査はこれをさがしまして、その現場の付近でこの一名については格闘の上逮捕をしておる、こういうふうな状況でございまして、私、先ほどもそういうような趣旨で報告をいたしましたので、ただいま先生の御指摘になりましたことと大筋におきましては一緒でございます。
  41. 畑和

    ○畑委員 よく西部劇などに出てくるように、ピストルを捨てろと言われて捨てちゃったわけだが、その当時の状況としては、やはりその運転手生命をかばうという点から見れば、まあ了としなくちゃならない点もあろうと思う。けれども、警察官であった場合、それでいいのかというような若干疑問もないではないのであります。  いずれにいたしましても、いろいろ新聞の記事等を見ましても、警察逮捕に対するいろいろな活動がどうも後手後手に回っておったことは言いのがれはできないと思う。いろいろ学生たちの取り締まりのためには装備もまた人員も相当使ってやっておるけれども、こういう点に対する警察全体の配慮が足りないのじゃないか。こうした凶悪犯人も出るのでありますから、したがってそういう一般の判事警察、こういうものに対してどうも手薄ではないのかと私は思う。無線機などの携帯の場合もそうだと思います。それからまた、ただ一人でいるというのもやはりぐあいが悪い。やはり四人ぐらいおったら二人ずつに分かれていくというようなことでなければこういう結果になるのではないか、そう思う。ともかく私は、警察逮捕に至るまでの最初の、しかも初動の捜査に非常に欠けるところがあったというふうに思います。どうお考えか、その点、あなたも責任ある地位というよりも、第一課長ですから無理かもしれんけれども、そうは思いませんか。
  42. 田村宣明

    田村説明員 初動捜査の状況について最初に簡単に申し上げたいと思いますが、最初に山口県警におきまして、山陽町でこの三人の被疑者を職務質問をいたしまして、そのうち一名を逮捕いたしまして、二名に逃走されておるのでございます。その際、警察官の一人が猟銃を頭にぶつけられ、これをはねのけたところが、もう一人の被疑者に短刀で刺されまして二週間の負傷をしたのでございますが、このときは相手の短刀は格闘の上もぎとっておりますけれども、多勢に無勢で結局は逃走をされております。それと同時に、これは深夜のご前零時過ぎの事件でございますが、山口県警といたしましては、警察官三百名に、パトロールカーを六十台動員をいたしまして、約十二時間にわたりまして検問、張り込み、検索を実施をいたしておるわけでございます。また、この境を接します広島、島根等におきましても、数時間にわたり、広島はまた次の日の朝の、途中ちょっと抜けておりますが、次の日の朝の六時まで、やはり二百名ばかりの警察官を動員し、パトロールカーを数十台動員いたしまして、検問、検索あるいは旅館等の検索にも当たっておったのでございます。しかしながら、これが広島県にあらわれるまでついに捕捉することができなかったという状況でございます。  次に、ただいま申し上げました拳銃を捨てさせられた場面になるのでございますが、このときは県内大体六百名前後の警察官配備をいたしておりました。拳銃を取られたということで直ちに次第に増強をいたしまして、この銃砲店にあらわれましたころには約干名余りの警官が県内約九十カ所にわたりまして検問をし、またこの中の検索を行なう等の措置を講じておったのでございますけれども、これまた残念ながら捕捉するに至っておらないのでございます。  それで、その体制で警戒を続けておったのでございますが、この宇品の桟橋にあらわれるまでやはり被疑者を捕捉することができない、途中で一人逮捕しておりますので、残りの一名でございますが、そういう状況でございます。  緊急配備につきましては、道路の数も非常に多うございまして、その全部について配置をするということはできないことでございますけれども、その場合にやはり最も可能性のあるところについて配備をするということを効率的にやらなければならないわけでございます。そういうふうな判断に立って広島県警においても配備をいたし、山口県警においてもやったものと思われます。それからまた、かりに配備をいたしましても、通行しております車両を全部とめるということもなかなかできにくい場合もあるのでございます。しかしながら、御指摘のようにこれだけの、山口県警なりあるいは広島県警、夜間の体制なり、全体の警察官の数から見ましてもできるだけの配備をやったわけでございますけれども、結果的にはついに捕捉をすることができなかったということでございますので、今後もひとつこの配備網の敷き方、あるいは逮捕いたしております被疑者について逃走経路の追跡というようなことを今後十分しさいに検討いたしまして、今後さらに改善すべき点があれば十分これを改善をいたしまして、緊急配備による捕捉というものの効率をもっと上げるような努力をいたしてまいらなければならない、このように考えております。
  43. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 委員長からちょっと注文がありますが、ほかにまだ相当数の質疑者もありますし、要点を簡略に質疑応答願います。
  44. 畑和

    ○畑委員 事実関係になるものだからどうしても応答が長過ぎるわけで、これはやむを得ないことだと思うのですが、短くやります。  そのほかにもいろいろ聞きたいことあるんですよ。鉄道で彼らが行ったことに対して警察があまりその点に気がつかなかった。一番最後におりるところで張り込んではいた、三名の刑事が張り込んでおったが、とうとうその二人も見過ごした、こういうような新聞記事も載っています。幾ら人数をよけい動員しても、動員する人数だけではだめなんで、頭を使って、こまかくいろいろなところも配慮をして、あれもこれもということで漏れのないようにやることが、私は指揮官のやるべき仕事だと思うのです。幾ら人数だけ全部動員しましたといったって、それじゃだめなので、結局効果をあげなければだめなのです。もっともいまいろいろ交通機関等が四通八達しているし、確かにあなたの言われるようになかなか全部を捕捉するということはむずかしいと思う。その点はわかるのでありますけれども、その辺もう少し頭を使って、早くのうちに何とかこれを防遏するというようなことがほしかったと思います。長くなりますからその事実関係はこれで終わります。  そこで、新聞にも出ておりますけれども、今度の問題も非常に人質という点が大きな問題になっています。自動車運転手の場合も人質だ、それからまた船を乗っ取って乗客人質にして、その後乗客はおろしたけれども、従業員、船員をくぎづけにして、これまた人質に使った、こういう人質という点において非常に特徴的だと思う。「よど号」の場合も同じであります。最近までのいわゆる人質事件というのが、警察庁の調べで、新聞の報ずるところによると、三十六年の十二月八日から、これはずっと新聞に出てますけれども、今度で二十件目だそうであります。この間のハイジャックも含めて二十件目、しかもこの間のハイジャック事件以後、同じような人質事件が非常に多い。四月に四件、五月に入ってからも今度の事件を含めて四件、こういういわゆる人質による犯罪がふえておるわけであります。ところで、人質という問題については、特別に刑法においては規定しておらぬ、ただ不法監禁あるいは脅迫、こういうことで取り締まっている以外にほかにないわけであります。不法監禁の場合は三カ月から五年という法定刑だし、また脅迫の場合は二年以下、こういうような法定刑、非常に軽い。ところで、最近起こっている事件が全部そういうふうに人質というものを道具にしてやっている事件であります。  そこで、この人質ということについて、そのこと自体をひとつ、人質犯罪というか、この点について特別の立法でもしてやることでないと、こういった事件が非常にどんどん多くなるのではないか。特に人質ということによって犯罪の目的を遂げるという場合には特に重く処罰をするというようなことで、一般に対して警告を発するということが必要な段階に来てはいないか、こういった意見が非常に多くなっておるようであります。私もその点について同感なんであります。ただ、これを法律的にどう規定するかということ、そういった人質犯という犯罪を一体つくるかどうかという点については、なかなか急に判断するわけにもまいらぬと思いますけれども、こういう犯罪類型一つ新しく考えて、そしてやってみてはどうかというふうに考えるのですが、この点について刑事局のほうでは何か考えがございますか。  それから警察のほうとしても何かそういう人質一つ犯罪類型をつくるということになると、取り締まりやすいというか、まあ一般犯罪予防上非常にやりやすい、こういうことかとも思うのですが、この点について法務省の刑事局、それから警察庁のほうの御意見を承りたい。
  45. 大竹太郎

    ○大竹政府委員 今度の問題についての御質問でございますが、御承知のようにあの「よど号」事件法律がたしかきょう参議院を通るのかと思います。あのときに船舶を入れてはどうかというような、特別法に入れてはどうかというような議論もあったことは御承知ろうと思うわけでございます。しかし、今度の事件自動車についても自動車運転手脅迫して云々というような問題その他から考えまして、この人質についても特別法をということでございますが、御承知のように誘拐事件につきましては、子供を人質に取って財物を要求した者に対しては特別に刑を重くしたわけでございますが、そういうようなことからいたしまして、今度の事件等を考えました場合には、刑法の中で特別な立法にするか、または特別法として別にいまおっしゃったような事件を取り上げるか、これは法律技術としてもなかなかむずかしい問題だろうと思うわけでございます。今度の事件で特別そういう感を深くするわけでございます。省内においては特にこの問題については意見はまだまとまっておらないのでございますが、いまの御意見もございますので、さっそく省内でもこれらの点について相談をしてみたいと思うわけでございます。詳細は、参事官が見えておるようでございますので、お答えをさせたいと思います。
  46. 大村行雄

    ○大村説明員 先ほど政務次官からお話がありましたような事情でございまして、省内で現在そういった問題について具体的にどうするかということは検討いたしておりませんが、まあ船舶航空機電車バスといったようなものを全部ひっくるめて人質対策ということになれば、いわゆる監禁罪の加重類型というものを設けることの当否というような形で検討されることになろうかと思います。今後そういう面についても検討してみたいと思っております。
  47. 畑和

    ○畑委員 私もやるとすればそういう監禁罪の加重の類型でやる以外にはなかろうと思うのですが、このハイジャックの問題はまたハイジャックの問題で別、それで人質という点を中心として考えた場合、いまの監禁罪の特にそれを加重する何か類型を考えてみる、こういう方向があろうと思うのです。最近非常にこれがはやっていて、ひきょうなやり方だと思うのですね。自分の逮捕を免れるために人質を取って、それに害を与えるぞということでおどかして、それで逮捕を免れて逃走する、こういうようなやり方はやはり相当厳重に処分する必要があろうと思う。そういう意味人質について特に重点を置いてやはり一つ犯罪類型考えてみる必要があろう。しかし、今度の問題は「よど号」事件に次いで今度は船の乗っ取りでもありましたし、非常に注目を引いた事件であります。しかも最後に犯人の射殺ということで片づいたという何かちょっとあと味が悪いような感じもする事件であります。  まだあとの方もございますので、私の質問はこれだけにいたします。どうも長時間済みませんでした。
  48. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 沖本泰幸君。
  49. 沖本泰幸

    沖本委員 いま政務次官から十分検討したい、こういうお話が出たわけでございますが、昨日もこの事件が起きてすぐほかの同僚議員の中からも、今度の乗っ取り事件法案についてどうして船舶をはずしたのだ、それ見ろ、起きたではないか、こういうたちまち非難の声があがりまして、実は船の規定の範囲がずいぶん広いからなかなかむずかしくて、今度の場合は船舶の問題をはずしたことになるのだと一生懸命こっちが政府にかわって説明しているようなことがたくさんあったわけです。これは当然国民の皆さんも、きょう参議院のほうでこの法案が通るというようなことになれば、それが除かれているということで問題になってくると思いますので、大臣のほうにおかれましても法制審議会のほうと十分検討していただいて、早急にこういう問題が次の国会でもきちんとした法律になるように考えていただきたい。また人質問題につきましても、ただいま畑先生が御発言になりましたが、私たちも同感でございまして、アメリカあたりは誘拐罪に相当きびしい刑罰で臨んでおるわけでございますし、また国民の安全をはかっていく上から、この問題は十分考えていただきたいと思うわけです。  しかし、こういう問題を考えてみますと、刑法とかこういうものは、ただ法律だけが通って法律の条文がある、こういうことで国民の中であまり大ぜいに知られない、いつの間にか法律が変わっておった、こういうことで終わったのでは、特別の人だけしか知っていない、こういうことになりますと、法律をつくった効果というものが案外薄れるのじゃないか。最近は政府も盛んにテレビ等を通じていろいろな問題についてPRもはかっていらっしゃるわけですから、たとえばハイジャック問題とかこういう問題を取り上げて、法律でこういう規定があるのだ、あるいはこういうふうに罰せられるとか、そういうPR的なことを考えて組んでいただく。そうして国民の皆さんに法律を十分に周知していただくということも、やはり大きく犯罪防止に役立つのじゃないか、こういう考えもするわけでございます。ぜひともこういう問題を十分お考えになっていただいて、そういう番組もテレビの中へ組んでもらってやっていただくようにしていただきたい、こういうふうに私は要望したいわけでございます。  そこで、これは田村課長さんにお伺いしますが、狙撃隊を大阪から送った、こういうことなんですが、私の疑問になりますのは、何か特別の目的をもってこういう方々を訓練しておるのか、こう、いう機構があるのか、あるいは警察庁のほうにはこういうことを予測されてどの程度殺傷ができるような武器をお持ちになっていらっしゃるか、こういう点が疑問になるわけですが、その点おわかりでございましたら聞かしていただきたいと思います。
  50. 田村宣明

    田村説明員 私の直接の所管事項でございませんが、私の承知いたしておりますところでは、このライフル銃につきましては、四十三年の二月でございましたか、金嬉老事件というのが発生をいたしまして、あの際にいろいろ射撃の問題が出たわけでございます。当時精巧な照準鏡のついたライフルを持っておりまして、ライフル拳銃では勝負にならないということで、何かそういうものを検討しなければならないのではないかということがきっかけになりまして、現在東京、大阪等の主要都府県に、合わせまして全国で二十五丁、これだけ警察として保有いたしておる、こういうことで適宜訓練をやっておるというふうに聞いております。
  51. 沖本泰幸

    沖本委員 御所管ではありませんから深くお伺いすることはできませんけれども、一応こういう問題は、先ほども御質問がありましたけれども、初動的な段階で防止するのが一番大事なことなわけです。この問題の事実関係についていろいろな御説明がありましたけれども、日航機のときにすでに類似した事件が起きるのじゃないかという危惧を一様にみな持ったのですが、そういう危惧について何らかの形で警察庁のほうもお考えになり、あるいは体制とかいろいろな研究、対策、こういうものをお立てになったのじゃないかと思うわけですが、そういうものがあったのかなかったのか、この点についてお伺いいたします。
  52. 田村宣明

    田村説明員 今回の船舶不法奪取と申しますか、乗っ取り事件関係をいたしまして考えますと、警察といたしましては、日常活動のうちにおきまして、桟橋地区における警ら活動でございますとか、あるいは船舶の発着時における警戒、そういうようなものによりまして犯罪の防止などについてつとめておるのでございますけれども、御承知のように、このたびの事件はなかなか事前にその発生を予知するということが性質上むずかしい事案ではなかったかというふうに思われるのであります。そういうようなこともございまして、特定の宇品港あるいは特定の「ぷりんす丸」というようなものについては、警察として格別な警戒措置はとっておらなかったというのが実情でございます。
  53. 沖本泰幸

    沖本委員 そういうものでなくて、あらゆる可能な起こり得るいろいろな事件を想定されて、そういう問題に対する警察官の訓練であるとかあるいは体制づくりであるとか、そういうものを日航機の事件以後にお始めになったのかどうかという点になるわけですが、その点いかがですか。
  54. 田村宣明

    田村説明員 日航機事件以後警察庁としてとっております措置について私が承知いたしておりますところでは、国内の空港、これにつきましては、それぞれその空港の飛行機の発着の便の多少等に応じまして、日航機の事件以後厳重な警戒をいたしておりますし、また荷物等の危険物の発見というようなことについてもその警戒の中でつとめていく、こういう体制をとっておるというふうに聞いております。
  55. 沖本泰幸

    沖本委員 突っ込んだことは伺えないのですが、それにつきましてもさっきの狙撃の問題ですが、そういう問題になると自衛隊の専門みたいに思えるわけなんです。自衛隊が出動するということはいろいろ問題があるわけで、これは別の方向から考えなければならない場合もありますけれども、たとえば一つの単位をとって狙撃という点を考えて自衛隊に出てもらうとかなんとかいうようなことで、警察庁といろいろなお話し合いなんかはなかったのですか。あるいはそういうことについていろいろ討議をしていらっしゃるようなものはないのですか。
  56. 田村宣明

    田村説明員 このことにつきましては、私全く聞いておりません。
  57. 沖本泰幸

    沖本委員 それからもう一つは、われわれがきのうからきょうにかけてテレビあるいは新聞で見ておった段階では、犯人が取ったのは拳銃ライフル銃のように聞いておったんですが、けさの御説明では散弾銃、猟銃というものが初めの段階から飛び出してきておるわけです。これは警備体制、いろいろな秘密保持でこういう問題を報道されずに隠しておったのか。あるいはあと調査でこういうことがおわかりになったのか。どちらでしょう。
  58. 田村宣明

    田村説明員 別に隠しておったというようなことはございません。簡単に申し上げますと、一番先に猟銃を一丁持っておったのでありますが、これはいまのところ確実に被害はつけておりませんけれども、広島県内で盗んだものであるというふうに考えております。それから次に警察官拳銃を先ほど申し上げましたようないきさつで手に入れました。次に銃砲店に参りまして散弾銃を一丁、それからライフル銃を二丁、これだけをそこで入手いたしておるという状況でございます。
  59. 沖本泰幸

    沖本委員 先般のライフル魔の事件から、銃砲店のこういう銃砲の保管管理、こういうこと、あるいは金嬉老の事件以来相当きびしく社会問題になってきたわけなんですが、銃砲店のこういう危険物の保管管理というものは——もっとも今度の場合、拳銃を突きつけられて出させられたわけですけれども、かぎをかけるとか、相当な免許証がなければ出さないとか、そういうような形であれば、その間手間どるようなこともあるわけなんですけれども、そういう点は詳しいことはわからないにしても、現在までのそういうものの保管管理というものはどういう体制をおとりになっていたか、御存じないでしょうか。
  60. 田村宣明

    田村説明員 警察庁といたしましても、金嬉老事件の後、私が聞いておりますのでは、数回にわたって通達も出しておりますし、他の行政官庁ともいろいろと連絡、協力をいたしまして取り締まりに当たっておりますし、さらに警察官が直接銃砲店に行きまして、いろいろな保管等について状況を聞いて調べるというようなことも全国的にやった、こういうふうに承知をいたしております。
  61. 沖本泰幸

    沖本委員 そういう点に何かやすやすと取られたというところに、まだ深くお調べにならなければわからないと思いますけれども、まだまだ銃砲店のこういう危険物の保管管理というものにもすきがあるのじゃないか、こういうふうにも考えられるわけですから、こういう点は十分御配慮をしていただいて、いま非常にレジャーで猟がはやっておるわけですから、銃砲を持つ方も多数ふえておる、こういうところから、こういう点は厳重に登録をとるとかいろいろな問題が出るようにしていただきたいわけです。こういうものの抜けたところからやはり人質事件にも波及していくというようなことになるわけですから、銃砲とか刀剣の取り締まりはもっとさらに厳重をきわめていただきたい、こういうふうに考えます。  最後にもう一点お伺いしたいのですが、これは事実関係で、報道によりますと、結局海の銀座、こういわれている瀬戸内海ではちょうどシーズンですから、船が激しく通っておった。ところが、犯人の乗った船に対してみんなデッキの上に出て見ておった。そこで撃ち込まれたらたいへんけが人が出るかもわからない、こういうことなんですが、それに対しての港、港で警備体制、警戒体制が非常に手薄だった。全然なかったところもあるというような報道も聞いたわけでございますが、そういう点が少し手落ちじゃなかったか。国民の側にもこういう問題に対する体制というものに問題があるわけですけれども、最近は何か起きるとワッというようなことが多いわけですから、そういう点、十分初動体制で危険性のある地域にはすぐ何らかの形で警報を出して、いろいろな注意を与えて体制をとるような準備をしていただかなければ、不測の事態が起きるのじゃないか、こういうふうに考えられるわけですが、その点について御回答願います。
  62. 林陽一

    ○林政府委員 ただいま先生の御質問の点でございますが、本船は広島港を出まして松山へ参りまして、松山から今治沖まで参りまして、本朝五時二十五分にUターンをいたしまして、日本で一番危険な狭水道の来島海峡を二度通りまして、結局広島へ戻っておるわけでございます。漁船その他も多数出漁しておる時期でございます。夜間でございますから遊覧船等はおらなかったわけでございますが、確かに危険はございました。したがいまして、そういうような危険も考慮し、一方犯人を監視し追跡するというような二つの意味から、巡視船艇を十二隻出しまして、常時本船を取り囲むような形で前後左右を警戒して、さらに漁船等に対しては警告をする体制をとっておりましたわけでございます。一方、外国船等もございますので、昨日航行警報を発しまして、このような犯人の乗った危険な船がおるから注意するようにという措置もとっております。
  63. 沖本泰幸

    沖本委員 いろいろな島があって、いろいろな港があって、いろいろなところへ警察官がいらっしゃるわけです。ですから、第一の段階で船が出たというときにはどこへ行くかわからないわけですから、その段階で各港なり何なり、また警察なりに配備体制とか、また船に乗るお客さんに対して、こういうふうな危険なライフル銃を持っている犯人がこういう船に乗ってどこへ行くかわからないから、見た場合でもデッキの上に上がって見ないようにとか、そういうこまかい注意が必要だと思うのですね。港についても初めの体制で、どこに着くかわからないからということで、十分警戒していただかなければならないと思うのですけれども、保安庁のほうでは追跡なさったわけですが、そういう点少し手抜かりだった、こういうふうな報道があったわけです。そういう点について十分今後いまの問題を検討なさいまして、これからの体制づくりをしていただきたい、こういうふうにお願いをいたしまして、質問を終わります。
  64. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 岡沢完治君。
  65. 岡沢完治

    岡沢委員 自席から三点ほど質問したいと思います。  最初に、海上保安庁と警察おそろいでございますので、海上の刑事犯罪についてのいわゆる守備範囲といいますか、法律上の犯罪捜査の責任範囲、あるいはその協力関係、また次長を前にして非常に言いにくいわけですけれども、田村課長のおられる警察でしたら、凶悪犯人に対する逮捕とか捜査については専門でございますけれども、海上保安庁はそういう点では幾らか不安といいますか、専門的には経験の未熟さというものがあり得るのじゃないか。その辺の問題を今度の犯罪と結びつけまして、法的にどういうふうに守備範囲がなっておるか、それから協力関係が十分にできておるかどうか、あるいは海上保安庁としてこういう凶悪犯罪に対する捜査あるいは検挙についての十分な訓練等なさっておられるかどうか、お尋ねいたします。
  66. 林陽一

    ○林政府委員 海上保安庁は海上における法令の励行、それから犯罪の取り締まり等を、海上保安庁法によってその任務といたしております。したがいまして、陸上につきましては、海上において起きた犯罪につきまして追跡して陸上まで及ぶことができますが、陸上で起きた犯罪陸上で終わります犯罪については管轄権はございません。警察に比べますと、確かに取り扱い犯罪件数も少のうございますし、先生御指摘のようなところもあるかと思いますが、今回の事件につきましては、非常に警察との協力体制がうまくいきまして、本庁間並びに現地の海上保安庁の出先関係及び警察の出先機関間でも密接に連絡いたしましたし、それから具体的な例をあげますと、海上保安庁のYS11機で昨晩海上保安庁の長官と警察庁の高松刑事局長が一緒に現地の松山におもむきまして、けさも松山から広島まで一緒に行き、絶えず連絡しながら仕事をした、お互いに足りないところを補いながら助け合って仕事をしたということになっております。
  67. 田村宣明

    田村説明員 警察のほうの立場からも、警察警察活動は特に陸上、海上ということはございませんけれども、ただいま海上保安庁の次長からお答えになりましたように、その事案、事案によりまして適切な措置を講じておる次第でございまして、今回の事件につきましては、ただいま申し上げたとおりきわめて緊密な連絡、協力のもとに事案の処理に当たってまいったという次第でございます。
  68. 岡沢完治

    岡沢委員 今度の場合、必ずしも両者の権限の競合といいますか、なわ張り争い的な悪い面は出なかったようで、非常に不幸中の幸いでございますけれども、それでは警察のほうでは警察犯罪捜査は海上のどの分まで及ぶのか、特に港における水上警察との関係を含めまして、それでは実際にどの範囲の海域までは警察が捜査をし得るのか、その辺を明らかにしていただきたいと思います。
  69. 田村宣明

    田村説明員 理屈といたしましては、日本の領海内につきましては、警察の権限が及ぶというふうに私ども考えております。ただ事件によりましてそれぞれ内容、背景といいますか、そういうものがございますので、事件事件によりまして適切に処理をしてまいるというふうにしてやっておるわけでございます。
  70. 岡沢完治

    岡沢委員 直接きのうの問題とは関係ありませんので、深く掘り下げることは避けたいと思いますけれども一、たとえば海に溺死体があった、あるいは自殺、殺人といいますか、死体があったというような場合の捜査につきまして、海上保安庁と警察で、いい意味では責任の遂行上かもしれませんが、死体の取り合いとか、実際の捜査の面でなわ張り争いがあるという例を間々聞くわけであります。そういう点につきまして、たとえば具体的に相模湾に死体があった、これを警察が捜査できるのかどうか、その辺の法律上の権限関係、それから実際上の慣行をお尋ねいたします。
  71. 田村宣明

    田村説明員 先ほども申し上げましたように、理屈としては警察として捜査をやることができるというふうに私ども考えておりますが、先ほど来申し上げておりますように、それぞれの事件事件によりまして、内容もまた背景も異なってまいりますので、一がいに一律に、こういう事件はどちらがやるというふうにはちょっときめかねると思いますので、そのときそのときの状況に応じてこれを処理しておるという状況でございます。
  72. 岡沢完治

    岡沢委員 ここでこの問題だけを追及する気持ちはございませんが、よく聞きますのは、海上保安庁としては自分の範囲内の事件警察にお渡しになることをちゅうちょされる。そのために先ほどの初動捜査がおくれて犯罪検挙ができなかったというような例につきましても聞くわけでございます。今後ぜひ今度の事件のように緊密な協力体制がとられることをお願いしたいと思うのです。  川藤射殺についての武器の使用の理由は、いわゆる正当防衛なのか緊急避難なのか、あるいはそれともこの際一般予防として——日航機の乗っ取りが曲がりなりにも成功したというようなことが、先ほど指摘されておりますような人質犯罪を誘発しておるということにかんがみて、みせしめ的に行なわれた狙撃なのか、その辺もしいまの段階で課長として承知しておられるなら、その理由の主たるものが何であるかということを明らかにしてもらいたいと思います。
  73. 田村宣明

    田村説明員 先ほど来お答えを申し上げましたように、警察といたしましては、何とか説得その他の方法によりまして、このような形でなくて事件を解決いたしたいということで、あらゆる努力を尽くしてまいったのでございまして、決してみせしめに撃つとかそういうふうなことは毛頭考えておらなかったところでございます。そういうようなことでございまして、ほんとうに今回の場合には現地の判断は、私どもも離れておりますので、それを尊重せざるを得ないわけではございますが、現地の判断といたしましては、警職法の七条の規定にあります正当防衛に該当する場合である、こういう判断のもとに、広島県警察としてはまことにやむを得ざる措置としてこういう措置をとったものである、こういうふうに聞いておりますので、なお今後もこういう点については十分慎重を期してまいらなければならないと思っておりますが、現在までに私どもが聞いておりますところはそういうふうな次第でございます。
  74. 岡沢完治

    岡沢委員 最後に、各委員からも指摘がありましたように、先月四件、今月同じく四件、流行の傾向があります人質犯罪を予防する方法といいますか、予防策について、政務次官から、単なる法務的な観点だけではなしに、教育上の問題等も含めて、もし御見解がありましたら明らかにしてもらいたいと思います。
  75. 大竹太郎

    ○大竹政府委員 教育上その他からもというお話がございますが、そういう点については私から答弁することはどうかと思いますのでかんべんさしていただきますが、先ほど畑委員からもお話がございましたように、少なくとも法務省はこの際何かこれらの対策として、「よど」号事件に対しましたように、もう少し広くこの種の事件考えて早急に立法をしなければならないのではないかということを現在考えておるわけでございますが、まだ具体的に省内で話が進められておりませんので、早急に省内の意見を固めまして、できるだけ近い機会の国会においてお願いをいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  76. 岡沢完治

    岡沢委員 いまの御答弁は結局厳罰ということに通ずるのだと思います。それも一つの方法だと思いますが、あわせまして警察の立場から、こういう犯罪の誘発あるいは流行をとめる方策につきまして、御見解がありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  77. 田村宣明

    田村説明員 私ども捜査をやるという立場から考えますと、この種犯罪はいろいろとその性質上むずかしい事柄が多いのでございますけれども、やはりこういう事件が発生いたしました場合には、一刻も早く被害者を無事に救出をいたしまして、犯人を検挙をする、これを早く効率的にやるということが捜査という立場からは最も有力なと申しますか有効な防遏手段の一つではないか、こういうふうに考えておりますので、今後ともいろいろと研究をいたしまして、一そうその効率的な捜査ができますように努力をいたしたい、かように考えております。
  78. 岡沢完治

    岡沢委員 終わります。
  79. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 松本善明君。
  80. 松本善明

    松本(善)委員 この種の犯罪を防ごうということで、いきなりこういう事件については射殺とか発砲というようなことで解決していくのが原則であるということになっていくのは非常に危険であるわけです。これはどのような犯罪者でありましても、公正な裁判をして処罰をするという方向にいくのが当然のことであろうかと思います。  それから問題は、立法という話も出ておるわけでありますけれども、今度の事件についての状況などを見ますと、犯人が刑の重さを考えてやっているというふうにももちろん考えられない。この犯罪の予防についてはいま岡沢委員も聞かれましたけれども、海上保安庁はこの種海上犯罪の予防策について現状においてはどういうことを考えておられるかということについてお答えいただきたいと思います。
  81. 林陽一

    ○林政府委員 海上保安庁といたしましては、昨年浮島丸事件というのがございまして、一部の学生が沖繩航路の浮島丸の船長を強要いたしまして沖繩まで行って、沖繩の警察逮捕された事件がございます。それと本年四月の「よど号」事件にかんがみまして、その後この種の犯罪の情報収集につとめております。従来からやっておりますが、そのような活動を強化いたしております。  それからさらに、警察等の関係機関との連絡を強化し、さらに海運会社との連絡も強化するような体制をつくっております。それから船舶の立ち入り検査も疑わしき場合には行なうというようにいたしております。さらに挙動不審者、さらに凶器、爆発物等を所持しております疑いの濃い者を早期に発見するように努力いたしております。それから海運会社につきましては、このような犯罪が起きましたときにブリッジに容易に上がれないようにするというような物的な措置を講ずるように指導をしてきております。  しかしながら、今回のように思想的背景がないと申しますか、いわば計画的でない偶発的ともいえますような犯罪につきましては、事前にこれを察知することが困難でございますので、実はあのような場所であのような船についてこのような犯罪が起きるということは考えておらなかったわけでございます。  以上が簡単に申しまして、海上保安庁がとってきておる措置でございます。  さらに、先ほどから諸先生の御指摘もございましたけれども、海上保安庁を含めます運輸省といたしましては、航空機の乗っ取りに対します特別法と同じような法律が海上の類似の犯罪についても制定されまして、刑罰が強化されることを希望しております。
  82. 松本善明

    松本(善)委員 物的設備の整備というのはいまちょっと言われましたけれども、そのほかにはどういうことが考えられますか。船についての予防のための物的設備ですね。特別な考えはありませんですか。
  83. 林陽一

    ○林政府委員 予算の関係その他でまだ実施するには至っておりませんが、警察が空港で行なっておりますような、乗船者の所持品の中に凶器、爆発物がありますようなときには、これを早期に発見できるような設備などもほしいとは思っております。
  84. 松本善明

    松本(善)委員 私の言いますのは、船の構造やその他でくふうできることはないのかということなんです。
  85. 林陽一

    ○林政府委員 まだ検討の段階でございまして、これといったような名案はございません。
  86. 松本善明

    松本(善)委員 法務省にお伺いしたいのでありますが、ハイジャック防止法のときに船舶を入れておいたほうがいいんじゃないかという議論もあるわけですが、また先ほど刑事局長が答弁された中では、これについて法務省としては船舶考えたいということであるということなんです。これはハイジャック防止法の中に入れていくという方向をいま考えておるのか、それとも先ほどお話がありました監禁罪の加重類型ということを考えるのか、そういったような立法の大まかな構想は全くないのか、それとも大きな方向は考えているのか、この点を伺いたいのであります。
  87. 大竹太郎

    ○大竹政府委員 実は「よど号」事件のとき、御承知のように船舶をあの法律案の中に入れようということを考えたわけでございますが、そのほかのいわゆる監禁罪として広く別な法律または刑法の中で加重その他を具体的に考える段階にはまだいっておりません。今度の事件を機会に早急に省内で相談をいたしまして、具体的な方向をきめてまいりたいと思っておるわけでございます。
  88. 松本善明

    松本(善)委員 それから、この問題については、船舶ということであればその範囲の問題が問題だということがいわれておりましたけれども、この点についてはどういう考え法務省内にあったのか、どこまで含めるかというような点についてのお考えを聞かしていただきたい。
  89. 大村行雄

    ○大村説明員 船舶の範囲でございますが、海上衝突予防法などに規定されております船舶の範囲は非常に広く、いわゆるくり舟、ボート類まで全部入ってしまう。そういうことになりますと、ほとんど無限に近いことになりますので、特別立法としてそういうものまで入れることには問題がありはしないかというような考え方もございますし、あるいは刑法の一条に規定しております船舶あるいは艦船とかいう解釈では、そういう船の範囲については無限的な解釈をしているのでございますから、現行の刑法の解釈でまかなえるのではないかというような考え方もございまして、両論あったわけでございます。法制審議会におきましても、その範囲につきましては、いま申したように二つの考え方があったわけでございますが、結局船舶についてどの範囲まで取り入れるかということについては、なお慎重に検討する必要があるというような考え方がかなり強く出ておりました。しかし、結論的には、法制審議会としましては、船舶についても対象として規定すべきだということで答申がなされたわけでございます。
  90. 松本善明

    松本(善)委員 その範囲との関係もあるわけですが、海上で働いておる労働者のいろいろの争議行為その他が起こる、そういうものに関係をしていくとたいへん問題が起こるのじゃないか。そういうような点での論議はどういうふうになされたのか、話してもらいたいと思います。
  91. 大村行雄

    ○大村説明員 ただいまの御質問のような点につきましては、法制審議会で直接取り上げられたようなことはございませんが、立案の過程では種々の面から検討されたわけでございます。今度の立法で一番問題になるとすれば、四条の偽計、威力といったあの条文ではないかと思いますが、現在の刑法上、いわゆる業務妨害に該当するものであれば今度の新立法にも同じように該当してくるのではないかということで、とりたててあの新立法ができたからそれが争議の関係で直接影響があるというようなことはないだろうということで進められたわけでございます。
  92. 松本善明

    松本(善)委員 まだこれからの話になりますのでこの程度にしておきますが、確かめておきたいのは、ハイジャック防止法に船舶を加えるということを法務省は現在具体的な構想にしておるというわけではないというふうに伺ってよろしいですか、それも含めて全体がまだ固まってない、こういうふうに伺っていいでしょうか。
  93. 大竹太郎

    ○大竹政府委員 あとのほうであります。
  94. 松本善明

    松本(善)委員 終わります。
  95. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 それでは、本日はこの程度にしておきます。      ————◇—————
  96. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 本国会は、御承知のとおりきょうで終わる予定になっておりますが、委員長所用のため退席しておりますので、私から申し上げます。  長日月にわたって、慎重に国政に御尽力いただきましてほんとうにありがとうございました。これから夏季に向かいますので、どうかひとつ皆さんも健康に留意されて御活躍を願います。本日は、これにて散会いたします。(拍手)    午後一時四十九分散会