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1970-05-06 第63回国会 衆議院 法務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年五月六日(水曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 高橋 英吉君    理事 小澤 太郎君 理事 鍛冶 良作君    理事 小島 徹三君 理事 瀬戸山三男君    理事 田中伊三次君 理事 畑   和君    理事 沖本 泰幸君       石井  桂君    江藤 隆美君       福永 健司君    黒田 寿男君       大野  潔君    林  孝矩君       岡沢 完治君    松本 善明君  出席国務大臣         法 務 大 臣 小林 武治君  出席政府委員         法務大臣官房長 安原 美穂君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         法務省矯正局長 勝尾 鐐三君  委員外出席者         法務委員会調査         室長      福山 忠義君     ――――――――――――― 委員の異動 五月六日  辞任         補欠選任   西村 榮一君     岡沢 完治君     ――――――――――――― 四月二十八日  裁判所法の一部を改正する法律案反対に関する  請願外二件(岡沢完治紹介)(第四一五七号)  同(松本善明紹介)(第四一五八号) 五月一日  在日中国人広州交易会参加に関する請願外十  九件(下平正一紹介)(第四六〇三号)  同外十九件(下平正一紹介)(第四八二〇号)  同(小林進紹介)(第五〇二五号)  同外十九件(下平正一紹介)(第五〇二六号) 同月二日  在日中国人広州交易会参加に関する請願(小  林進紹介)(第五二三〇号)  同外十九件(下平正一紹介)(第五二三一号)  同(小林進紹介)(第五四八二号)  同(小林進紹介)(第五六四三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月四日  戸籍法及び不動産登記法の改正に関する陳情書  (第  二六七号)  言論及び出版の自由等に関する陳情書  (第二六八号)  裁判所法の一部を改正する法律案反対に関する  陳情書外五件  (第三四二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  法務行政に関する件(静岡刑務所における行刑  運営問題)      ――――◇―――――
  2. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が所用のため、指名により私が委員長の職務を行ないます。  まず、委員派遣承認申請に関する件についておはかりいたします。  静岡刑務所における行刑運営について、明七日、現地に委員派遣し、その実態を調査するため、議長に対し、委員派遣承認申請を行ないたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、派遣委員の員数、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  5. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長代理 次に、法務行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。田中伊三次君。
  6. 田中伊三次

    田中(伊)委員 まず、金嬉老事件について二、三の点を明らかにしておきたいと思います。  この金は、収容をいたしましたのはいつで罪名は何であるか、まずこれをひとつ……。
  7. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 金嬉老静岡刑務所本所入所いたしましたのは、昭和四十三年三月七日でございます。罪名殺人等でございます。
  8. 田中伊三次

    田中(伊)委員 この金君はいままでも前科歴がありますね。それが刑務所収容された前歴は何回くらいあるか。そうしてもう一つついでに伺っておきますが、収容中に自殺をはかった事実があるようです。また服役規律に著しく違反をしたような重大な違反と見るべきものが相当量ある人物ではなかろうか、この点はどうでしょうか。
  9. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 金嬉老身分調によって判明いたしましたところを申し上げます。  それによりますと、昭和四十三年に静岡刑務所入所する前に刑務所に四回服役をいたしております。第一回は昭和二十一年、浜松刑務支所入所いたし、昭和二十四年十一月十七日、前橋刑務所仮釈放になっております。第二回目は昭和二十五年二月二十八日、浜松刑務支所入所いたし、昭和二十七年四月二日、新潟刑務所仮釈放一になっております。第三回目は昭和二十七年六月二十五日、静岡刑務所入所になっており、昭和三十四年二月十日、千葉刑務所仮釈放になっております。第四回目は昭和三十六年二月十六日、静岡刑務所入所いたし、小菅刑務所服役の上、昭和四十年九月十七日、横浜刑務所満期釈放になっております。  この間の服役中の行状等につきまして、同様に同人の身分調から判明しているところは、小菅刑務所服役中の昭和三十八年十月ごろから四十廣二月ごろまでの間に、同刑務所作業技官田彦光との間で信書の不正授受、金品の不正入手規律違反が発生いたし、川田技官懲戒免職に相なっております。  なお、この小菅刑務所記録によりますと、通声、すなわち収容者に話をする、あるいは作業を拒否する、あるいは職員に暴言を吐く等の規律違反で軽屏禁その他の処罰が科せられていることが記載されております。  自殺等につきましては、担当の職員等に対して、何か意に合わないことがありますと、自殺をしてやるとかということを再三述べているということがございます。
  10. 田中伊三次

    田中(伊)委員 そこで伺っておきたいのは、何回も収容されておる前歴がある、また服役の成績もよくない、こういうことが明らかであって、これを昭和四十三年三月七日に受け入れようというのであれば、刑務所としては当然に、受け入れた本人をどう処遇すべきか、この対策については、刑務所長以下最高責任者が集まって具体的な対策協議しておるはずであると思う。こういう協議があったかどうか。あったとすれば、どういう処遇をする考えであったのか、この内容を、差しつかえのないところをひとつ明らかにしていただきたい。
  11. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 金嬉老が今回の事件警察署留置中、あるいは留置前のいわゆる寸又峡の事件等につきましては、刑務所としてもすでに承知していたところでございますので、金嬉老入所する前、四十三年の二月二十五日ごろでございますが、刑務所長部長課長等のいわゆる刑務所幹部会議を開きまして、それまでの間、関係機関から金嬉老に関する情報入手いたしております、それらの情報、並びにたまたま入所当時の静岡刑務所管理部長並びに保安課長が、金嬉老小菅刑務所服役中の保安課長並びに保安課長補佐であった関係から、そのときの状況等を参考にいたしまして、金嬉老の受け入れにつきまして詳細な検討をいたした結果、刑務所としての処遇方針をきめております。  その処遇方針をきめた記録によりますと、警察捜査段階自殺をはかって、舌に咬傷があるという点、並びにいままでの服役歴について職員が困惑をしているという状況、並びに金嬉老の今回の事件殺人被害者静岡に組織を持っております派閥幹部であったというところから、いわゆる派閥復讐ということに関する情報等が多量に入っておりましたので、刑務所といたしましては、第一点として、自殺をさせないということ。第二点といたしましては、被害者関係復讐等が行なわれないように配慮する。第三点といたしましては、従来の服役歴にかんがみ、多数の職員処遇に当たるとその間に混乱を生ずるおそれがあるということで、金嬉老処遇につきましては、専従職員を指名して、もっぱらその専従職員に当たらしめる。そういう方針のもとに、金嬉老居房の指定をする際に一般収容者居房から隔離をする。またその戒護にあたりましては一対一の戒護に当たる。すなわち金嬉老居房の前に、一般収容者に対する戒護職員以外に専従職員を一名戒護に当たらせる。その他面会にあたりましては、一般収容者との接触を避けるように時間をずらせ、またそういう意味で、面会の場所も一般収容者面会室を使用せず、弁護人面会室を使用して、金嬉老面会の際には一般収容者面会を差しとめる。さらに入浴、運動等につきましても、すべて一般収容者よりもずらせて、一般収容者との間の接触をさせない等の詳細な取りきめ、協議をいたしまして、そのことを保安課長名で所内の職員に周知をさせているというのが概要でございます。
  12. 田中伊三次

    田中(伊)委員 大事な事柄が抜けておりはしないか。外部からの差し入れ、それから差し入れとよく似たもので、自分の金で外部から物を購入するという場合があるでしょう。差し入れ購入の場合にはどういう注意を払うかということについて協議があったのかどうか。
  13. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 差し入れ物品につきましては、すべて保安課長に提出をし、保安課長検閲を受けた後に、専従職員により本人交付をする。食事につきましては、原則として一般収容者と同様の食事をするが、本人が病気の状況等の場合には特別な食事の自弁の購入を許すということに取りきめをいたしております。
  14. 田中伊三次

    田中(伊)委員 差し入れの場合に、金に限り保安課長がみずからこれを調べる、保安課長の手を経て専従職員がこれに当たる、こういうことですね。——それは間違いなく今日までその特別の具体的方針を実行したのですか。
  15. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 御指摘の点が今回の事件についても重要な点に相なっておるわけでございますが、保安課長がすべて点検をする、そして専従職員交付をさせるという場合に、通常事務といたしましては、保安課長点検をいたしまして、領置係差し入れ係という一般の係がございます。その領置係のほうの事務に通して、その上で専従職員交付をするというのが当然のルートであるべきであったと思うのでございますが、それが一般領置係のほうを通さないような形にくずれてきていたというのが今回の事件の発端の一つと考えられます。
  16. 田中伊三次

    田中(伊)委員 差し入れがあった場合に、いまの特別の方針のごとくに保安課長が取り扱う、専従職員本人差し入れる、これが完全に実行されておったと仮定をすると、こういう事件は起こりにくいですね。差し入れ以外にも入る道はあるかもしれません、それは後に聞くが。少なくとも外部からの差し入れという手続によっては本件事件は起こる余地がない、完全にこれが実行されておったとするならば。完全に実行されておったのかどうかということをだれか責任ある者でこれを究明しましたか。
  17. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 差し入れの点につきまして、矯正局のほうから派遣をいたしました職員に専任で究明をさせました。その結果判明をいたしましたことは、差し入れ品がございますと、通常の場合、差し入れ係のほうで一つ一つ品物点検をいたしまして、本件関連においてはその上で保安課長にさらに見てもらう、こういう手続がとられるというのが本来の姿でございますが、それがいつしか領置係のほうが関与することがなくなっていたというのが第一点でございます。  それから、なお差し入れの場合、これは刑務所通常勤務時間内に行なわれるわけでございますが、金の場合につきましては、昭和四十四年の四月ごろからと思いますが、刑務所一般職員、すなわち領置係だとか差し入れ係だとかいう一般職員が退庁後、すなわち土曜日の午後に金だけにつきまして面会差し入れ等が行なわれていたという事実が判明いたしたのでございます。
  18. 田中伊三次

    田中(伊)委員 差し入れのたてまえを聞いておるのでなしに、金については課長がみずから物品を、差し入れ品を扱う。検閲をして、これを専従職員差し入れをさすということの実行を歴代課長がやったのかどうか。何人かの課長がかわっておるでしょう、いまおる課長のみならず。昭和四十三年三月七日にこれを収容して以後の保安課長、何人か何代かおるでしょう。これを一人一人厳格に究明しておるかということを聞いておるのです。
  19. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 究明の結果は、領置手続をとっているものにつきましては保安課長が見ておりますが、領置手続をとらないいわゆる専従職員が不正に持ち込んでいる場合には、保安課長は承知いたしておりませんでした。
  20. 田中伊三次

    田中(伊)委員 よくわかりました。やみ差し入れがあるというわけだね、あったかなかったかは別として。きめられた手続を踏まないで、課長に見せないで専従職員がやったのかだれがやったのかわからぬが、手続を踏まないでやみ差し入れをしたようなおそれがないではない、こう聞いてよろしいか。
  21. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 御指摘のとおり、いわゆるやみ差し入れが非常に大量であったということが今回判明いたしました。
  22. 田中伊三次

    田中(伊)委員 もう一つ、この差し入れに似たもの、問題になったような刃物その他が関係役人の知らぬ間に本人手元まで入っておったということが起こり得るのではないかと思われるもう一つケースに、物品の買い入れがあるでしょう。人の買ったものを差し入れてきたというのではなしに、本人被疑者の希望によって、被疑者の所持しておる金でこれを頼んで買い込んでもらった。この物品購入の場合の手続は金についてはどういうことがきめられておりましたか。
  23. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 四十三年の三月七日に金が入所いたして間もなくでございます。所長面接を申し入れまして、自分健康保持上、いわゆるつけものあるいは豚の関係料理、これを特に差し入れ許可してほしいという願いが出まして、その際に金のほうの要望は、掛川市内小料理店をやっております内妻のつくった料理差し入れ許可してほしいという願いでありましたが、それにつきまして所長のほうとしては、自宅の調理をした料理については許可をしない、そのかわり金の希望するものを役所のほうで購入をして許可をしてやる、こういう決定をいたしまして、それに基づきましていわゆる朝鮮づけといわれているようでございますが、つけものと、それから豚足、いわゆる豚の足につきまして購入をして差し入れという措置がとられるようになっております。その場合に、静岡刑務所の内にあります売店ではそのような特殊な食べものは取り扱っていない。さらに一刑務所の近辺が、移転後間もなくでありまして、一差し入れ屋あるいは商店がないということで、静岡市内職員購入に行きまして、それを金に差し入れる、こういう措置がとられております。
  24. 田中伊三次

    田中(伊)委員 食物以外のものはどうですか。
  25. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 入所当初の間は食物以外の購入差し入れ許可されておりませんでしたが、入所後半年ぐらいたったころ、これは四十三年の九月ごろということでございますが、自分機械いじりが好きなのでカメラ購入を許してもらいたい、そしてそのカメラをいろいろいじることを許可してもらいたいということで、それが許可されて一台入っております。なお、その後刑務所のほうに対して、訴訟準備のために弁護人に長い文章を書いて出すのが非常に労苦であるので、自分の主張をテープレコーダーに吹き込んで、そのテープをを弁護人に渡すことを許可してほしいという申し出がありまして、これも許されております。食品以外で正規手続をとって購入所持が許されておりますのは以上でございます。
  26. 田中伊三次

    田中(伊)委員 いろいろ差し入れ購入品の必要な理由、それも聞いていいんです。いいことなんだが、私の聞きたいのは、物品購入する場合、買ったものを差し入れてもらうのではなしに、自分購入する場合の手続については金に関して特別の手続がきめられておったのかということを聞きたいのですね。
  27. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 その点につきましては、金が入所時に携帯しておりました現金がございます。これは手続によりまして入所領置金ということで領置のほうに保管をされておりますので、その領置金によっていま言った物品を買ってそれを許可しているという、いわゆる領置金をおろしてそれを職員が持っていて、その金で外部に出かけて物品を買って入れていた、こういう事実が特別にございます。
  28. 田中伊三次

    田中(伊)委員 それは課長関係しないのですか。
  29. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 豚足、いわゆる朝鮮づけあるいはカメラテープレコーダー等につきましては、課長その他所長までこれは上がって許可に相なっております。並びにその領置金手続につきましても、上司のほうで許可を与えております。
  30. 田中伊三次

    田中(伊)委員 領置本人所有金、その領置金金額というものは帳簿上明らかですね。何を幾らで買ったかということの収支がありますね。その金を使って、手続上隠して物を買い込んできて、出刃ぼうちょうなら出刃ぼうちょうというものを本人にこっそり渡すということは会計上はできないことになっておりますね。金額が合わなくなる。そこはどうです。そこはこういうことじゃないですか。まだ聞くのは早いのかもしれぬけれども、時間を節約して先に聞いておくと、豚足を買いたい、塩辛いつけものを買いたい、幾らで買って幾ら金銭を支出をしたということは明らかになっているのですね。金額はそれで明らかになる。この購入の際に出刃ぼうちょうを買い込んで、あるいはやすりを買い込んでこれを持って帰るという余地は全くないか。  もう一つ聞きたいことは、一体被告人の金という人物はそんなにたくさん金を持っておるのですか。どうしてその金の収入があるのか。いろいろなものを買っておる。新聞によると写真機も八台買っておる。そんな大きな金を一体この被告人が持っておるのかどうか。どういう収入があって金を保管しておるのか。その金の保管しかたいかんによっては、金嬉老所持金出刃ぼうちょうを買い込んでくるという余地がないとは言えまい。これはどうでしょう。
  31. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 お尋ねの点につきましては、私のほうの調査といたしまして、いわゆる領置金の出し入れの記載、いつ幾日幾ら出た、いつ幾日幾ら入った、これはすべて刑務所簿冊上明らかに相なっております。そして、これはこういう趣旨で金が出された、領置金のいわゆる払い出しについての注がついております。一方、いわゆるその金を扱った専従職員の一人が、別途自分の手帳に、金嬉老の金がいつ幾日幾ら入った、いつ幾日幾ら出してこういう品物を買ったということが詳細年月日金額が書かれております。そのほかさらに金自身自分で、いつ幾日幾ら金領置金から出されて、それがいつ幾ら使われて、どういう品物自分のところに入ったということもまたメモをしたものがございます。これらを総合して比較調査いたしました結果、日時に一、二日のずれはございますが、この三者の証拠が符合をいたしております。その結果、金の関係専従職員が取り扱った金の合計は約五十万でございます。そうしてこの事件発覚と同時に調べましたときの専従職員帳簿では、残が七百十八円ということが記載をされておりました。  したがいまして、この金額をさらに出所を詰めてみますと、金の領置金だけではまかなえていないということでございます。すなわち五十万が全部金の領置金はなしに、その中には専従職員の数名が金から要求されて——約三名の専従職員であったと思いますが、合計しますと三万円をこえる金を金嬉老交付をしている。そういう金、さらに金嬉老内妻面会等に来たときに専従職員に不法に現金を渡しているということがうかがわれまして、結局約五十万前後の金が物品等購入に使われておりますが、その資金源としては、本来の領置金内妻等面会のときに不正に専従職員を介して持ち込まれた金、さらに勤務中に金を要求されて職員が渡した金、これらが食べものあるいは不正な持ち込み品物購入に充てられているというのが概要でございます。
  32. 田中伊三次

    田中(伊)委員 そうするとこういうことですね。いまの答弁からすると、この間の手元領置しておる金のほかにやみ差し入れられたような現金が、領置金のほかに金個人のポケットの中にあった。幾らあったかはよくわからぬが相当量な金があった、こういうことは言えますね。
  33. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 御指摘のとおりでございます。
  34. 田中伊三次

    田中(伊)委員 そこで推定されることは、その金を看守に渡して、あるいは出刃ぼうちょうあるいはやすりというものを、いわゆる領置金による購入手続を踏まないで、一口にいえば手続外やみ購入をして差し入れたようなおそれがないといえない、こういう推定ができますが、これはどうでしょうか。
  35. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 ほうちょうの点につきまして、現在まで私のほうの調査判明いたしました事実は、御指摘の、金が不正に相当額が所持されていたという事実、さらに専従関係職員外部に、豚足等を買うということで町に出かけているという事実、さらに関係職員勤務中に金からほうちょうを示されまして、こういうものをおれは持っている、これでいつでも自殺でも何でもできる、これを上司にばらすとおまえの勤務中に事故を起こしてやると言われて、その職員上司に報告しないままに現在までに至った、こういう事実だけが私のほうの調査判明をいたしております。したがいまして、出刃ぼうちょう入手の経路につきましては、職員が不正に持ち込んだというケース十分可能性の強いものと考えられます。
  36. 田中伊三次

    田中(伊)委員 ここでちょっと角度の違う話を聞いておきたい。  昭和四十三年三月七日に身柄を収監した、それから専従職員を設けたというお話ですね。ちょっと私聞いておきたいのは、差し入れを扱ったり、金の物品購入の世話をしたり、専従職員以外の職員でこれをやった者はおりませんか。必ず専従職員に厳格に限ってこの両様の場合に取り扱いをさせたものかどうか。
  37. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 いわゆる正規の窓口を通してきたもの、これは差し入れ係領置係——これは専従職員ではございませんが、その正規を通してきたものにつきまして、検閲記載も全部終わったという段階で金の部屋にその正規手続を経たものを運んで持ち込むのは専従職員に限られていた。不正な持ち込みについては一般職員は全く関知していない、こういうことでございます。
  38. 田中伊三次

    田中(伊)委員 四十三年の三月七日から今日までに、専従職員も組み立てが変わっていますね。あるいは転任をする、退職をしたという者がおる。これは看守についても部長についても同様のことがいえるでしょう。延べ何人おるか。転任退職等、交代をした者を入れて延べ大体何人おりますか。
  39. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 延べ十六人でございます。
  40. 田中伊三次

    田中(伊)委員 この十六人について、事件発生以来——出刃ぼうちょう発覚以来という意味ですね、事が発生して以来、この十六名について徹底的に調べをしておりますか。そのうち何人について調べをしておるが、何人についてはこういう理由調べができない、こういうことですね。
  41. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 十六名のうち、金の専従を金の入所当時から約五カ月やっておりまして、配置がえになった職員が一人おりますが、この職員につきましては、配置がえ後、半年くらいたったあとで、いわゆる蒸発ということをいっておりますが、所在が不明になったというものが一名ございます。それ以外の専従職員については全部事情を聴取いたしております。
  42. 田中伊三次

    田中(伊)委員 まないたが発見されておりますね。ほうちょうまないた関連があるので、順序が先になるが、ここでちょっと聞いておきたいのは、金の食べたいというごちそう、豚足というもの、これはまないたを使って出刃ぼうちょうで一料理をしないと食べにくいものですか。つまり出刃ぼうちょうまないたというものは何がために所有をしておったのかということのねらいで聞くのです。料理関係があるのではないかということなんです。人を傷つける目的で出刃ぼうちょうを持っておったものか。ここらのところが聞きたい。豚足はそのまま食えるものか、まないた出刃ぼうちょうを用いて料理をしなければ食べにくいものなのか、これはどうでしょう。
  43. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 いわゆるまないたでございますが、現物を見ましたところ、板きれでございます。このいわゆるまないたにつきまして、専従職員の供述によりますと、金が入所してさほど日がたっていないころで、特別糧食の購入差し入れが許されて間もなくの時期でございますが、金が警察留置場にいたころ自殺をはかった、その際に舌に傷をしておるわけでございますが、この舌の傷の関係でかたいもの、ことにそしゃくのしにくいもの等については支障があるということを申し立てております。  御指摘豚足につきましては、これは一個五十円のものでございますが、私たち普通のそしゃく力ではやはり非常に処理しにくいものであるということ、それからそのほかに、金はニンニクの特別差し入れが許されておりますが、そのニンニクをやはり刻むという必要がある。それから朝鮮づけについても、さらにこまかく切って食べたいということで、担当の職員にいわゆるまないたを貸してほしいという要求がございまして、その担当の職員が受刑区の木工場に参りまして、板きれでございますが、一枚はラワン材、一枚は杉の板でございますが、これくらいの薄い板でございますが、この二枚を取りに行って、なおその際に、ニンニク等をすりつぶすのに必要だということで棒切れを切断をいたしまして、いわゆるすりこ木、こういわれているものですが、その二つを木工場から専従職員が持ち帰りまして、金に使わせているということを専従職員が供述をいたしております。現にそのまな板等につきましては相当ニンニクのにおいがするということ、それから油が相当しみ込んでいるということと、それからもう刃物であるならば相当長い刃物で傷がつきやすいと思われます−刃物とは断定いたしかねますが、ものを切った際につく傷、これが無数についている、そういういわゆるまないたが今回発見されておりますので、現在そういった点については私のほうで科学的な検査を依頼しております。
  44. 田中伊三次

    田中(伊)委員 まないたに鋭利なほうちょうのあとがある。これはお説のように、科学的に検査をすれば、そのほうちょうを用いてそのまな板を用いてやったものかどうか、これはもうちょっと時間をかければすぐにわかる。  そこで、被告人ほうちょうを持っておる、被告人ほうちょう所持の目的ですね。何に使いたいからこれを不正入手をしたのか。不正入手の経路は別にして、所持した目的、これは豚足、いまのお説のニンニク、それからつけもの、これを切り刻む、切り刻んですりこ木にかける、すりこ木にかけるまでにこれを切り刻む、そういう目的で不正入手をしておったものであろうということになるか。これによって看守を傷つけることもできるし、非常に極端な場合を想定すれば、裁判の進んでおる公判廷において気に入らぬ裁判官、気に入らぬ検事に襲いかかるということも考えられる。目的は何であったであろうかということが重大なことですね。お調べになったところでは、食物を切り刻むということが目的でまないたとあわせてほうちょうをほしがったのであろう、こういう想定ができますか。
  45. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 ただいま御説明申し上げましたように、料理用のまないたが発見されている、それを専従看守が不正に持ち込んでいるということ、なお金に対してハムの特別購入がなされております。これは相当大きなハムのようでございますが、そのハムを切るのにはやはりくだものナイフ等では切りにくいものであると思われる大きさのものでございます。そういった点からもし推定をするならば、料理用に使われた、また料理用に使うということで専従職員に持ち込ませたという可能性が私のほうの捜査の結果では強いということが言えるかと思います。
  46. 田中伊三次

    田中(伊)委員 もう一つ問題の物件の中にやすりがありますね。このやすりは鉄棒を切れば逃亡にも役立つ。先ほどのあれでは機械をいじることが好きな性向があるそうですね。機械いじりにはやすりが要るかもしれぬが、このやすりは一体何のために持ち込んでおったものか、推定できますか。
  47. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 お尋ねのやすりは全長が十一センチであったと思いますが、いわゆる目立てやすりでございます。その目立てやすりで鉄格子が切れるかどうかということにつきましては、気長に長時間をかけてやれば切れないことはないが、いわゆる逃走のために切るというのには適当なものではないということが言われると思います。したがいまして、金がカメラ、トランジスタラジオあるいはステレオだとかそのもろもろの電気器具あるいは機具類が不正に持ち込まれて所持しておりましたが、その修理だとかあるいは分解、組み立てといったような際に使って使えない品物ではないということは推定されます。
  48. 田中伊三次

    田中(伊)委員 そこで、明らかにしてもらいたいのは、との金の部屋の中に不正に所持しておったもの、ちょっと時間のかかることでないから品目一覧を、新聞にはいろいろ出ておるが、どんなものがあるか。
  49. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 不正に持ち込まれていたもの、ことばをかえて御説明申し上げるならば、領置手続をとられていないものにつきましては、申し上げますと、写真機三台、キャノンFT、望遠レンズ、ケースつきの三脚、ストロボ一個、フィルム五本、接写リング一、テープレコーダーソニー一台、テープ一その他付属品、トランジスタラジオソニー一台、ステレオアダプター一台、乾電池六.個、香水あきびん、写真の納品袋、かけ軸、ガラス製金魚ばち、活字その他シャツ類、ふろしき、百貨店の紙製の袋、品数にいたしまして約百点でございます。
  50. 田中伊三次

    田中(伊)委員 それ全部じゃないでしょう。もっとあるだろう。ほかに禁制品のたばこであるとかあぶないマッチだとかガソリン入りのライターとか新聞に出ておるぞ。みんな言いなさいよ。
  51. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 失礼いたしました。二十三日に現品に当たりましたものにつきましては、たばこのハイライト、新しい手のつけないものが一個、それから吸いかけで残っているものが十一本、それからピースが新しいものが一個、それからガスライター、それからベンジン、そのほかに、これは正規なものでございますが、不正規なものはいま申し上げたものでございます。
  52. 田中伊三次

    田中(伊)委員 大臣がお待ちになっておって非常に大事なことを伺うから、そこで矯正局に伺う最後のこととしてちょっと伺いたいのは、差し入れ物品購入と並んで大事なことなんですね、本件に関して言うと。それは、こういう不正なものすごいものを一体どうして部屋の中に、白昼公然と持っておったのかという問題。部屋の中に所持をしておったか、本人自分の服装にくっつけておったか以外に持ちようがないのですね。刑務所の官吏は何をしておったかということになる。これはあ然とするということ以外にない。これはみな新聞で読んでおるからきょうの話を平気で聞くんだが、突然この話を聞いたら驚かざるを得ない。部屋の検査、独房の検査は一体一日に何回検査するのですか。
  53. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 一般の原則といたしましては、最小限度一日一回ないし二回、さらに本人が部屋をあける場合——運動あるいは診断のために医務課へ行く、あるいは出廷のために部屋をあけていく、その本人が部屋にいない場合にはいわゆる細密捜検をする、これは基本の原則でございますが、それにつきましては専従職員に捜検を命じているだけで、それ以外の職員の手による捜検が一回も行なわれていなかったということが今回の調査−で判明いたしております。
  54. 田中伊三次

    田中(伊)委員 捜検、むずかしいことばですね。部屋の検査ということでしょう。独房の中、所持品を検査するということでしょうね。その検査のほかに、本人がからだにつけておる場合がある。本人の身体検査をせぬのですか。一日何回、どういう機会にやるか。
  55. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 身体捜検でございますが、これはまず朝、起床がございますと、本人を廊下の前に出して部屋を検査することになっております。そのほかに、本人が部屋の出入りをするたびには必ず、出るとき、入るときに触手検査、いわゆる着物の上からさわって検査をするということを行なうことになっております。
  56. 田中伊三次

    田中(伊)委員 そんなことで検査できぬでしょう、やすり一丁というような細いものを入れておるのに、触手検査で。裸にして検査するということは刑務所はやらないのか。
  57. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 検査の方法につきましては、いわゆる裸検身、それから簡易検身と触手検身とございます。裸検身は、いわゆる裸にして検身をする、簡易検身というのは、胸をあけさせ、ズボンを下に下げさせるという程度の検身でございますが、被告人につきましては触手検身というのがたてまえになっておりまして、裸検身あるいは簡易検身ということは、きわめて明らかな現象がある場合以外は行なわれていないというのが現在の実情でございます。
  58. 田中伊三次

    田中(伊)委員 検身というようなむずかしいことばが出てくるが、それは身体を検査する検身という意味ですね。何かガスの検針みたいだな。その検身は、一般論はいいが、金についてはどうですか、簡易検身をやったのか、触手検身をやったのか、裸検身をやったのか、やるべきであったというのか。金についてはどういう扱いをしておったか。
  59. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 触手検身だけでございまして、その触手検身もきわめて形式的、粗漏な検身しか行なわれていなかったと認められます。
  60. 田中伊三次

    田中(伊)委員 金の独房については室内の検査をやらなかったのじゃないのかね。検身もいいかげんであったということばがいま出たが、こうなった以上は、正直でいいですよ。部屋の検査はやらなかったのじゃないか、そういうおそれはないのか。やっておってそれだけのものが目につかぬなんということは、常識上考えられぬ。そこはどうでしょう。
  61. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 私のほうで取り調べ専従職員は一応やったと申しておりますが、いま御指摘のような実情から見ますと、やらなかったという認定もできると私は思います。
  62. 田中伊三次

    田中(伊)委員 確かにそういうふうに思われますね。これは十六名について、先ほど言った物品購入差し入れの場合と同様に、部屋の検査を厳格にやったものかどうか、身体検査を厳格にやったものかどうかということについては徹底的に究明したのですか。
  63. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 私のほうでは、専従職員並びに捜検関係簿冊関係職員上司等について事情を全部聴取いたしまして、ただいま私が申し上げましたような結論といたしまして、一応捜検簿という簿冊がございまして、その簿冊では捜検をしたというような記載がございますが、実態は行なわれていなかった、私はそのように認めざるを得ないと思っております。
  64. 田中伊三次

    田中(伊)委員 非常に言いにくいことを聞くのですが、えてして被告人から頼まれて、あるいは仲よくなって打ち解けが過ぎて、規則違反のことをやるという場合には、贈賄、収賄等の汚職を伴うのが普通です。本件について贈収賄を伴うておるというおそれはないのか。どんな形ででも、現金授受でなくともそれ以外の関係ででも、こういうはからいをしてやることによって係官が利益を得た、利につられてやったのだ、非常に厳格な意味でいう汚職、増収賄、金銭授受に限らないそういう傾向はあるのかないのか、ありのままに……。
  65. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 お尋ねの点につきましては、私自身、去る四月二十二日の夜、静岡刑務所からの電話報告を聞きました際に、直ちにこれは職員関係をしている、関係をしているとすれば、いままでの経験と申しますか実例から申して、必ず金あるいは物が動いているはずだ、このように私としては感じまして、翌朝私のほうの検事を現地調査派遣する際にも、その点を十分頭に置いて調査をするように指示をしたのでございます。現在までの私のほうの調査判明した限りにおきましては、たとえばある専従職員のごときは、自分の小づかいと申しますか、自分のさいふで約一年間にわたりましてたばこを八十個買って金に不正に交付をしている。あるいは金嬉老訴訟準備のために金が要るからカンパをしろと言われて、五百円という小さな額ですが、これを不正に交付をしている。あるいは万という金の借金を勤務中に申し込まれて、それを調達して不正に交付しているというような事実。並びに、カメラにつきましては、職員の持っているカメラと金の持っているカメラ付属品と交換授受をやっておりますが、その際に差額を職員のほうから足して交換をしているというような事実。現在まで判明した範囲ではそういうことです。さらに金の内妻が掛川で小料理店を経営しておりますが、あるいはそういうところに出入りをしているのではないかという点についても、私のほうで及ぶ範囲で調査をいたしました限りでは、十四人の専従職員につきましてはそれ以上の事実は得ることができなかったのでございます。  しかしながら、御指摘のように、一般常識としてそういう疑いはやはり完全には消えているというわけではございませんので、これは今後の調査等にまつことといたしまして、現在まで私のほうの調査判明した限りにおきましては、金なり物なりあるいはごちそうになっているというような点は、これを認める端緒を得ることができないというのが現状でございます。
  66. 田中伊三次

    田中(伊)委員 汚職がなければ珍しい。汚職がなかったとするならば、たいへんに不幸中の幸いとしなければならぬわけですね。しかし、新聞にはこういうことが出ておるのです。八台とか七台とかのカメラの中で、二台か三台のカメラは市価の半額で役人が買い求めた、そういう新聞記事がありますね。これはうそかな。どうでしょう。
  67. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 カメラの点につきまして御説明を申し上げます。(田中(伊)委員「ここにあるよ、新聞記事、これは一流新聞だからね」と呼ぶ)はい、承知いたしております。  これは、専従職員の中に数名、カメラの愛好会と申しますかの会員がおりまして、カメラいじりが非常にお好きな職員でございますが、本人が約三万幾らで買い求めていたキャノンでございます。これは職員の買い求めていた品物カメラでございます。これと金が持っているレンズだとかその他の付属品約十点ばかり、フィルム、特殊なフィルム等も入っているようですが、それと交換をしてくれということで交換をいたしております。その場合に、職員のほうのカメラにつきましては、これを一万一千五百円という値段にいたしまして、それから職員が金から買い求める付属品の合計を一万八千円という値段にしまして、職員のほうがその差額を足してこの付属品と交換をしているというのが一つございます。  それからいま一台は、これは職員——やはりキャノンのボデーでございますが、これはいい品物だというのが町のカメラ店の話でございます。そのボデーについて、やはり専従職員の話で、金の持っているカメラのレンズをその職員が買い求めるという話ができまして、その話が進められたのでありますが、金のほうでそのボデーがぜひほしい、レンズだけではなし自分の持っているカメラの一台を全部職員交付するから、職員の持っているボデーをほしいということで交換が行なわれております。金の持っているそのカメラというのが新品であるならば二万九千円の品物だということでございますが、すでに一年以上使用した中古であるということで、職員のほうがそれを二万一千円で買ったかと思いますが、二万一千円で買い求めている、これが報道されましたカメラ二台の詳細でございます。
  68. 田中伊三次

    田中(伊)委員 これは大臣にも特にお聞き取りをいただいておきたい最後の質問ですが、一体いままでの法務当局の説明を聞いておると、金というのはなかなかたいした男だということですね。困った意味でたいへんな人物だということですね。金の言うことを何でも聞いておる。金のいやなことは何もやらぬ。何が部屋にあっても知らぬ顔。捜検をいたしましたと称するが、身体検査をする気がない。もってのほかのできごとだ。  そこで、聞きたいのは、これを徹底的に究明するためには、行政職の手だけでは十分いかないのじゃないですか。これは何か方法はないのか。しかしながら、法務省の監督官庁が腕によりをかけて今後は徹底的に究明して真相を明らかにしてみせるという自信があるのか、検察の発動を求めてやろうとでもいうのか、自分の手でやってみせるというのか、そこのところはまず局長、どうでしょうか。
  69. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 お尋ねの点につきましては、たとえばこれは押収されております。……(田中(伊)委員「簡単簡単」と呼ぶ)お尋ねの点につきましては、去る五月四日に私のほうの調査した結果を全部取りまとめて検察庁に報告をいたしまして、検察庁の協力を依頼いたしました。
  70. 田中伊三次

    田中(伊)委員 協力を依頼すると言うたって、検察庁というものは憲法があり、刑事訴訟法がある。協力を求めるなんと言ったって簡単にいかぬでしょう。犯罪の嫌疑、罪の成立を疑う余地がなければ、検察の発動のしようがない。幾ら余地のあるような資料の提供ができておりますか。検察の見解は、乗り出して徹底的に、身体を拘束して留置してでも取り調べをしてみる、刑務関係職員を逮捕してでも、国家のために、弛緩した官紀の振粛のためには断固やってみるという決心を持ってくれるような資料は提出してありますか。
  71. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 私のほうの調査結果の詳細を検察庁のほうで検討をされた結果と思いますが、私の承知しているところでは、昨日来直ちに検察庁のほうが乗り出して活動を開始しております。今後どのような具体的な進め方がされるか、これは検察庁の問題でございますが、実情はそのように私のほうは承知いたしております。
  72. 田中伊三次

    田中(伊)委員 最後に、大臣にお尋ねいたします。  お聞きのとおりの事情ですね。こういうことが今後もう一度起こっては申しわけない。もってのほかのできごとでございます。すっかり調べがついてしまうまでには相当な日子がかかると思うが、これは私のことばが過ぎるかもしれぬけれども、日本全国の刑務所の中に、静岡に限らず、似たようなことは断じてないということが言いかねるんじゃなかろうか。きょうの答弁をずっと聞いてみると、似たような事件が絶無であるということを明確に言い切る自信がないのではなかろうか、こう考えるときに、この事件を契機として、弛緩した官紀の振粛を行なうことが必要だというのが私の意見であります。法務大臣は、こまかいことはお考えにならぬでも、何よりもぴんと考えてもらわなければならぬことは、全国の刑務所の官紀をこれを契機として振粛する、災いを転じて福となす、これに持っていく考え方がなければならぬと思います。全部事件が終結をして、調べるべきものを全部調べて事が明らかになるには何十日か何百日かの日がかかる。そういうものを待たないで、こういう事実があったことは間違いはないのだから、この事実を契機として、全国に対して官吏の服務規律を厳格に守る、弛緩した官紀の振粛であります。どうもこの事件調査をし、質問をし、意見を聞いてみると、官紀弛緩以外にないのですね。差し入れ手続をきめられたとおり踏んでおればこの事件は起こらなかった。差し入れ手続をきめられたとおり踏んでおってそれ以外のことがなければこの事件は起こらない。かりに万が一にも何か一個の物品について違反が起こっておったとしても、部屋の中の検査が厳格に行なわれておればすぐ発覚する。部屋を出るときに服装にくっつけて持って歩いたとするならば、身体検査をすれば直ちにこれは出てくる。規律はよくできているのです、たてまえは。その規律のとおりに実行すれば本件のごときことは起こらない。官紀の弛緩で起こっているわけであります。人物に押されたのか、金におどされたのか、何にいたしましても、これは全国に対して法務大臣として責任のあるおふれをお出しになる必要がある。規則が守られてないから起こっている。それ以外に原因はない。だれがいつどうしたかということがこれから先の調べを待たなければわからないだけで、規則どおり守られていないから本件事件が起こっておるんだということだけはまさに間違いはない。第三者が入り込んできてほうちょうを渡した事実はない、こう考えられる。取り調べの落着を待たずしてすみやかに全国におふれをお出しになることが必要である。法務大臣の御意見を承りたい。
  73. 小林武治

    小林国務大臣 これはもうお話しのとおり、私ども全くあり得べからざることが起きておる、あ然としたということは私もはっきり申し上げ、きわめて残念に存じておるのでございます。取り調べの内容等につきましては、いろいろいまお話がありましたが、これはとにかくもう、たとえば部屋の点検等をしなかった、またしても、あることを承知して見過ごした、また今回の発端になりました面会に行く際にも出刃ぼうちょうを持って面会に行っておった、何も検査しておらなかった、そういうことはきわめて明瞭であります。したがって、今回の問題は、せんじ詰めればどうも刑事事件として立件することは非常に困難な様子である。行政的な取り調べにおいてはいまのところわからない。とにかく出刃ぼうちょうはひとりで歩いてきたのではない。だれかが入れたに違いない。私は刑務所員の中におるというふうに考えております。  さようなわけでありまして、全くこれはもう何とも申しわけのできない、綱紀の弛緩である、職務の怠慢である。むしろ怠慢以上のことであるというふうに私は考えておるのでございまして、これはお話しのように、事件の落着等は相当にまだ調査を要します。したがって私は、お話しのように、そのことは全国の刑務所においても心配が絶対ないといえない。まずこの事件を聞いた最初において、静岡刑務所内においてかかる取り扱いは金一人に限るのか、そのほかに全体の綱紀はどうなっておるのかということを聞いたのでありますが、これはもう金だけが特別のものである、こういうことであるから、それならそれだけでもまだ不幸中の幸いである、こういうふうに申したのであります。  金という人物が、聞くところによれば、知能指数も一四〇とかいう非常に常人に比べて知能の高い人間でありまして、人物に押されたと申しますか、あるいはおどされたかどうかは別といたしまして、とにかくみんな看守その他が金にのまれておったんだというふうな感じを持つのでありまして、私はこれにつきましては、いまの行政的な手続においてはもうこれ以上調査の進行はできない。何も白状させるったって黙っておるものはどうにもなりません。したがって、これの終了を待つことはなく、私は実は当事者において非常に大きな規律違反がある、こういうことであるからして、全貌が明らかにならないでも私はこれらの関係者は全部行政処分をしてもらいたい、すべしということを強く指示し、今週中にはそういうところまで運んでもらいたいということを指示しておりますし、お話しの、全国の収容施設については、われわれもこの際は必ずしも自信を持たない。したがって私は、これを契機として、かようなことのないように努力すると同時に、全国収容施設の総点検をしてもらいたい、そうしてその結果を報告をしてもらうと同時に、こういう事件の出ないように、これは強い通達を出すように、これまた今週中にそういう通達を出してもらいたいということを事務当局に強く指示をいたしてございます。  いずれにいたしましても、これは要するに刑務行政に対する世間の信用をこれほど失墜させた大きな事件はない、かように考えておるのでありまして、これを契機としてお互いに十分に戒めなければならぬということ、と同時に、私はいま申したように、全国的な総点検をこの際ぜひさせる、こういうことを申しておるのでありまして、私どもはこれを十分反省の資料といたしまして、今後かような不始末、ふしだらなことのないようにいたしたいと、強く決意をいたしておることをお答えとして申し上げておきます。
  74. 田中伊三次

    田中(伊)委員 いま大臣のおことばの中に出てきましたように、この事件は金に押された、感心せぬ意味で大人物である金に押された。幸いにして汚職はありそうにないが、金に押されてついかくのごとく深みに入った。これは大臣、どうすれば押されぬようになるかということを考える。私はこう思う。  高等学校を卒業した者を矯正研修所に入れて訓練を施して刑務官として外に出しているのです。この矯正研修所の教育にも反省すべき点がある。知能指数その程度の金に押されるなどということは、訓練がしっかりしておればあるべきものじゃない。研修所の教育訓練というものを再検討して反省をする必要がある。そうしてそれが出てまいりまして、派遣をされて、刑務官になって第一線に出てきたときに、刑務官吏に対して日々の教育、日々の訓練というものが必要ですね。朝礼なら朝礼というものを通じて日々に精神訓練をする。これは訓練不足です、教育足らずです。教育足らず、訓練不足がついにこういうことになっておる。矯正研修所を徹底的に検討する、教育訓練を改める、強化する。この研修所を卒業して第一線に配置された者は、日々一定の時間を通じて教育訓練をしっかりやっていく、これがまさに必要だということをそのまま教えた事件本件事件のように思われる。大臣の御見解を承りたい。
  75. 小林武治

    小林国務大臣 お話しのとおりだと考えます。したがって、御趣旨に沿って強くこれから善処いたしたい、かように考えます。
  76. 田中伊三次

    田中(伊)委員 終わります。
  77. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長代理 この際、委員長からちょっと補足的にお尋ねしておきます。  先ほどの法務省からの御説明の中にありましたが、五十万円前後の金が出入りしておる、当初に領置された金は幾らだったのですか。
  78. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 ちょっといま正確な数字は持ち合わせておりませんが、当初本人が持っていた金は一万円前後であったということであります。
  79. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長代理 詳細な資料を持っておられぬようだけれども、当初幾ら持っておったかぐらいはまっ先に調べておく必要があるのですが、どうですか、もう少し明確にしなさい。
  80. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 一万六千円であります。
  81. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長代理 それからもう一つ、ステレオを持っておったということですが、どのくらいの大きさですか。
  82. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 ステレオアダプターというのでございまして、いわゆるテレビジョンの中型ぐらいの大きさのものでございます。
  83. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長代理 それは電源はどういうように使っておったのですか。
  84. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 電源は全部乾電池でやらしていたということでございます。
  85. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長代理 ソケットの要らないステレオですね。
  86. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 さようでございます。
  87. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長代理 いずれにしても、そういうものはどこかにしまっておって聞くというものじゃない、部屋に飾ってあったのだろうと思うのですが、どうですか。
  88. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 部屋に置いてあったものでございます。
  89. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長代理 これはさきの質疑応答で明らかになっておると思いますが、そういうものがあるということになれば、これは捜検も何も全然しておらなかった、金の特殊事情かもしれぬが、放任しておった、常識でそう見られるのです。何というか、乱脈の限りを尽くしておったということが言えるのじゃないかと思うのですけれども……。
  90. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 御指摘のとおりでございまして、捜検も行なわれていなかった、いわゆる専従職員以外の者の捜検も全然行なわれていなかったということでございます。
  91. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長代理 もう一つ聞いておきますが、刑務所長は月に一回か年に何回か、全部見て回るという制度はないのか、慣行はないのですか。
  92. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 少なくとも、毎日一回は舎房並びに工場等を巡回することを強く私のほうから指示をいたしてございます。
  93. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長代理 指示しておると言うが、そういう内規か何かあるのですか。刑務所長はすわっておるだけですか。特定の人に限られておるというところに問題が発生したのじゃないかと思いますが……。
  94. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 これは施設の運営管理について全般の責任を持っております所長でございますので、当然回る義務があるというように考えております。
  95. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長代理 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  96. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長代理 速記を始めて。  この際、午後一時三十分再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時十八分休憩      ————◇—————     午後一時四十八分開議
  97. 高橋英吉

    ○高橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  法務行政に関する件について調査を続行いたします。畑和君。
  98. 畑和

    ○畑委員 先ほど田中委員のほうから、法務省に対して相当こまかい質問がございました。その質疑応答をじっと拝聴いたしておったのでありますが、大体新聞等でわれわれももう相当承知はしておったけれども、さらになまで矯正局長との一問一答を聞いておって、どなたも感じたと思うんだが、まことにあ然たらざるを得ないという一言に尽きると思うのです。どういう経路でああしたものが入ったかというようなこと等につきましては、まだわからない部面がある。その辺をひとつ徹底的に究明してもらいたいと思います。  ところで、法務省のほうでは一体この金嬉老に対して普通の囚人あるいは未決囚と特別に違う扱いをするようにというようなことを公式、非公式を問わず何か指図したことはございませんか。おたくのほうでないとしても、東京矯正管区か何か、そういった上の機関があるけれども、そういった上から暗黙の了解とか、そういった暗黙のうちの指図とか、こういうものがなければ私はこれはできない仕事だったと思うのです。そういう点で、専従している看守だけのことじゃ決してない。問題は私はそこにある、こういうふうに思っておるんです。その辺をひとつ十分メスを入れる必要があるんじゃないか。少なくとも刑務所長は相当の程度これは暗黙に了解しておったに違いない。その当時、その上の管区長もある程度特別扱いをしておるんだということは少なくとも承知をしておったものだと思う。その辺が私は一番問題だと思うのです。単に一人や二人の専従看守に責任をなすりつけるべき問題ではなくて、むしろ上のほうの上級官僚がちゃんと承知している、こういうことでなければ、あれだけの百点にものぼる不法なものを入れることを一看守、あるいは二人や三人の看守でできようはずがないんです。そこが一番私は問題だと思うのです。その辺についてあなたのほうではそういうことは全然知らなかったと言われるのか、どの程度知っていたのか、その点をひとつ伺っておきたいと思います。
  99. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 御指摘の点につきましては、私自身最も痛感しているところの問題でございます。  それで、金嬉老が四十三年の三月七日に入所したということにつきましては、直ちに入所の報告を私受領いたしております。その内容は、要するにこういう容疑事実で入所したというだけの報告でございます。その後約二週間を経まして、さらに現地の刑務所長から、金嬉老入所したについて、現地としてはこういう処遇方針をもってこういう措置を講じたという、さらに処遇に関する詳細な報告書が参っております。これは私もその中身は読んで承知いたしております。その処遇方針、体制の中に、先ほど申し上げました問題の専従の問題が含まれておりました。そのほか自殺防止のためには金嬉老居房に指定された房についてガラス、いわゆる通常のガラスをはずして、人工の樹脂か何かでつくったガラスを入れたということも書いてございます。それからさらに、処遇についてはつとめて一般収容者と変わった処遇をしない方針であるということも書いてございます。  その後につきましては、私のほうへ報告書等は、公判の関係等の報告書が参っておりますが、それ以外の報告書が来ておりませんので、その点いまにして私としては非常にうかつであったとは思いますが、詳細なことは承知してなかったのでございます。  ただ、私の承知しておりますのは、昭和四十三年の七月ごろ、静岡刑務所職員の懲戒問題につきまして、現地の所長が管区に相談に来ている。その相談の帰りに私のほうへその所長が立ち寄っております。そのときに、その懲戒を受けた職員が人事院に提訴をいたしておりますが、その提訴の申し立て書の中に、保安課長その他幹部がいわばでたらめの処遇をしているということを言及した人事院への申し立て書が出ておりますが、その申し立て書のことについて現地の所長から、このような事実はないのだという、これは口頭の説明でございますが、ございまして、その段階において、いまにして思えば問題の発端があったということを承知いたしております。  さらにこれは四十三年の六月でございますが、監獄法に基づきます巡閲という制度がございます。その際に私のほうから巡閲官が、これは六月の中ごろでございますが、静岡の本所に巡閲に行っておりまして、その巡閲の際に帰ってきてから私に対する報告で、金嬉老のこと等についても刑務所長等に一応尋ねたが、特別な異常な点は見受けられなかった、こういう報告を私受けております。  私が承知いたしておりますのは以上申し上げた点でございます。  なお、御指摘のありましたように、これが第一線の専従職員だけでやれないことではないかという点につきましては、現在までの私どもの調査結果を総合いたしまして、結局現地におきましては刑務所長部長課長、これが第一線で困惑をしております専従職員の困惑状況に対して、これを知らなかったと申しますか、場合によってはあえて知ろうとしなかったのではないか。したがいまして、また第一線の職員から具体的な問題について保安課長管理部長所長の指示を求めた際に、的確な指示をしていないというように私自身は今度の事件を通じて調査の結果考えております。したがいまして、今度の事件の大きな背景ということになりますと、上級の幹部が第一線の専従職員に対して適切な指示を与えなかった。また専従という制度が逆目に出たと申しますか、いわゆる施設の他の全職員がこれを支持するあるいはバックアップをしてやる、そういう支援体制に欠けるところがあった、これが本件の基本的な背景をなすものであり、また原因ではないかというのが私の率直な考えでございます。
  100. 畑和

    ○畑委員 分限懲戒を受けた看守の人事院提訴の問題についての資料として提出されたものを矯正局長はお読みになりましたか。
  101. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 申し立て書並びにそれに対する施設側の答弁書と申しますか、これは私目を通しております。
  102. 畑和

    ○畑委員 それは評価No1、No2と二つに分かれていたでしょう。私は現にこの鈴木平という人と会っています。この間浜松まで行ってこの鈴木平というもとの看守に会って、いろいろ刑務所の内部の模様等も相当詳しく聞いてまいりました。その人が明らかにそのときに指摘をしているのですね。それはあなたも目を通されたというからには、そのとき知っていなければならない。あなたは所長に対して大いに——実はこういうことがあると言ったら、口頭でそういう事実はない、こう言ったという。あなたはあまり人がよ過ぎるんだ。あなたがもう少しいろいろな手で調べてみれば、当然そのとおり出てきたはずだと思うのですね。それが全然なされておらなかったということだと思うのです。  そうすると、とにかくあなたの手元までそれが行っているわけだ。そのとき鈴木平という人は、こういう処分をする人はこういういろいろないいかげんなことをやっておる、私も悪いかもしれぬけれども、こういう人が私を処分することができるのかというような意味での処分者の評価ということで資料を提出して、人事院の公平委員長の二俣順次郎さんという人に対して要望を明確に出して、それが刑務所長に一通、それから管区警察や矯正管区長に一通明らかに渡されておる。その人は今度の事件があってから二俣さんにわざわざ電話をかけて、そうして渡してくれてありますか、渡しました、こう言って、あなたのあのときのことは実際でしたね、こういう話があったそうだが、そのときにもつとメスを入れれば今日のようなことはなかったと思うんだ。そういう点では刑務所長けしからぬと思うんだ。そのときの所長はだれですか。何という所長ですか、衆初のあれは。
  103. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 金が入所してまいりました三月七日当時の刑務所長は佐藤文一と申します。しかし、この佐藤文一所長は三月十六日付で異動によりまして静岡刑務所を離れまして、後任として参りましたのが柏木所長でございます。その柏木所長が本年の三月十六日まで刑務所長でございました。
  104. 畑和

    ○畑委員 こういうふうになったことは、先ほど私が申しましたとおり、一、二の看守のやったことで済まされることじゃないのです。刑務所長以下管理部長、それから当時の保安課長、こういう人がやはり明らかにそれを知っていなければできないことなんです。しかもそういった人々は栄転しているじゃありませんか。浅井という当時の保安課長、この間やめて網走の刑務所管理部長に栄転している。みんなこういう人たちは栄転さしている。栄転ということを約束済みで、それでこういう仕事に当たらしているということとしか思えない。どうもそういうような話を私はこの間聞いてきたのであります。特別に金嬉老というのはああいう男だから、何とかして自棄を起こさぬように、それでごきげんをとろうという方針刑務所長以下おったに違いない。あるいは矯正管区あたりでももっとこの辺を厳正に監査をすれば、今日のようなのぼせた結果にはならずに済んだと思う。  そういう点で、監査もたまにはやっておるのだろうけれども、話を聞くとその監査がいつもいいかげんな監査らしいですね。矯正管区から行く監査はとてもいいかげんな監査である。大臣も聞いておいてください。現に分限を受けた、それは実に分限懲戒を受けたのだが、これも聞いてみるとずいぶんいろいろ無理な分限ですね。そういうものはどんどんやめさせていって、そうして一方そうした金嬉老に対しては特別待遇をしておる。金嬉老の特別待遇はけしからぬということで出しておっても、結局それは握りつぶされてしまう。そのときから厳重にそれを改めておったらば今日のようなことはなかったに違いない。そういう点できわめて怠慢だ。要するに官僚が、役人が事なかれ主義で、あそこだけは高いコンクリートの壁ですから別世界だ。一つの治外法権みたいなものだ。  そこで、例の明治四十一年かにつくられた監獄法がそのまま、大日本帝国というのだけが消されてあとはそのまま通用しているいまの監獄法、その監獄法のもとで別世界での行刑が行なわれている。私は監獄法それ自体も早く近代的なものにしなければいかぬと思う。そういうもくろみもあるそうでありますが、いろんなほかの関係もあってそれが延び延びになってしまったという話を聞くのですけれども、これ自体をもっと民主化してもっと近代的なものに変えなければならぬと思う。あの世界では、ほんとうに別世界であって上司が下僚に対して非常な官僚的な扱いをしておるようであります。そういうこともいろいろ影響して今日のようなものになっておると私は思うのでありますが、そういう点で矯正局長、どう考えておられるか、その辺についてあなたの御意見を承りたい。
  105. 小林武治

    小林国務大臣 いま局長に御質問なさったわけでありますが、私からひとつ申し上げておきたいと思います。  これはもう何もかも弁解の余地はない、全くずさん、だらしがなくて話にならぬ、こういうふうに私も考えております。全くこれは矯正当局としても強い反省を必要とするのでありまして、先ほどお話しのありましたように、昨年ですか、やめた方からの申告が矯正局にも来ておるようでありますが、その方が多少違ったところがあるというのでみな一緒に葬ってしまった。そうして事実が含まれておるいまのずさんな管理方法についても調査を怠った、こういうことでありまして、私は、矯正当局のやはり上部層においてもあの際お話しのように調査すればもっと早く発見できた。これをいわば没書にしてそのまま不問に付しておった。この辺も責任は大きい、私はこういうふうに思っております。実は、東京新聞に、四、五日前にも大きく出ております。やはりああいう内容が当時申告されておったということを聞いております。これを不問に付したということは、私はまことに怠慢であるというふうに考えておりまして、これらのことについてはもう弁解の余地はありません。まことに残念な事態である。ことさらにだらしのないこととか不正とかいうことを憎む気持ちが私は非常に強い。したがって、これ自体についても、私自身が非常な責任を感ずると同時に、関係者がいかにもだらしがない、こういうことで適当な処置をしなければならぬというふうに思っております。  いま監獄法のお話が出ましたが、これは一事が万事で、刑務所になってからもう何年になりますか。日本には監獄なんてありません。ところが、いまだに監獄法がこれに適用される法律である。この点についてもいかにも怠慢だ。実は一カ月か二カ月前にまだ監獄法というものがあるのを私が発見しまして、私はまことに驚嘆をいたしたのでございます。日本にどこに監獄があるのだ。あらゆる組織法規その他みな刑務所に直っておるのに、監獄法が現実に生きておる唯一の刑務所に適用する法律だということで、これらはやはりこれ一つをもってしても、矯正関係の行政がどんなにおくれておるか、なまけておるか、こういうことを私は感じたのでございます。  そういうことでございますので、明治四十一年の監獄法というものがいままだ生きておるなんということはまことに私ども驚いた次第で、これはもうさっそく次の国会には全面改正をひとつ出して国会の御審議を願おうということで私は指示をいたしております。いままで監獄法改正案が出ましたが、上品な意見なり議論ばかりしておってまとまらない。全く学者その他の方々が、非常なりっぱな御意見を出されるが、甲論乙駁しておって結論は出ないというのがいままでの状況であるのでございまして、とにかくその結論を出して立法するということが一番大事なことであるが、何年も前、もう四年も五年も前から研究を始めた、そんな古いことは自慢にはならぬ、古いことは醜態の証拠だということまで私は当局に申しておるのであります。そういうわけでありまして、まことにこれは監獄法というものがあること自体、全体から見ましていまの行政というものが非常な欠陥を持っておるというふうに私は考えております。いまのようにいろいろ議論を戦わしたから、この辺で結論を出して、そして次の国会にはぜひこれの全面改正の案をひとつ御審議を願う、こういうことにいたしております。私はもうせめてこの四月一ぱいくらいに事務当局のいまの行刑法に関する意見をまとめて、そして法制審議会にかけて十月ごろまでにはひとつ結論を得て、次の国会には出せる、こういうふうな考えをいまいたしております。  いま畑委員の言われることについては、もう一言もございません。これはもう十分われわれとしては反省しなければならぬ、かように考えておることを申し上げておきます。
  106. 畑和

    ○畑委員 私もずいぶん前から監獄法という文字が気になってならないのでありまして、いつか機会あらば私の提案をしようと思っておったのですが、今度の事件でさらにそれを痛感したのです。前時代的なものでありまして、やはり新しいものに、新憲法になったのですから、それを早くやりかえなければならぬ、こう思っておったのですが、たまたま大臣も同じ意見のようでありまして、これはひとつさっそく改めてもらいたい。ただしかし、やはり前進的な建設的な前向きな改正であってほしい、世界の行刑にあまりおくれをとらないように、そういった世界の行刑もよくにらみ合わしてやってもらいたい。やった以上はやはりきちっと行なうこと、大体いまの監獄法自体がもう時代に合わないのだと思うのです。それで一方こうした金嬉老みたいに特別待遇をする場合もあるし、そうでなくてやかまし過ぎるような場合もずいぶんある。  実は、私のところへ東京拘置所の被告島田哲男という、これはいま控訴中で、例の学生事件や何かで一年もかかっているそうですよ。これは裁判所の関係刑務所関係ではないが、刑務所で預かっておるわけだ。それから来るのが、ずいぶん長文の、そういう処置に対するいろいろな意見などが来ておるのです。これを見ましても、ずいぶん刑務所のやり方が、ほんとうにあそこだけ厚い壁の中の、悪い意味での別世界のようなことがしみじみこれでわかるのです。この間の「よど号」事件のときも、新聞が購読できるのですが、ほとんどまっ黒く三日間ばかり塗りつぶされてきた。この問題については例の中に入っている学生の連中が訴訟を起こしていますね、あとで見たのですが。たまたまそれより前にこの被告がこの問題を取り上げて、人権じゅうりんだ、こういうことも言うてきておりますし、またさらに面会時間なんかにつきましても、せっかく女房が何カ月かに一ぺん会いに来るのに、わずかに五分間ということはないはずなんですね。それは忙しいから切り詰められるのかしらぬけれども、わざわざ旅費を使って来て、そして女房と会うのに五分間でもう終わり、こういうことなんで、非常に憤慨して書いています。これもまた人権じゅうりんだと思います。監獄法にはそんな短い時間でないように書いてある。おそらく三十分かそこいらの時間は与えるようにしておるはずだと思うのです、いろいろ忙しいからということでそういうことになるのだろうけれども。  それから、もう一つ差し入れ屋ですが、食べものあるいは書籍などを被告人たちが買いに行く。ところが、その品物がまことに高い。しかも不良品が多い。食べものでもひどいそうです。しかも一軒に限られておる。それだからその間にどうも不正が行なわれている模様がある。こういうようなことで、書籍でも一軒しか許されないというようなことで、被告人たちの要求しているようなものでないものを無理にとらさせるようなことになる、こういうことを言っておる。  またさらに、中に入っている収容者、この人たちの食事の中に薬を入れておるらしい。要するにあまり興奮しないようにおとなしくさせるようにそういう薬も入れておるようであって、これは非常にまじめに、いずれ近いうちに家に帰れる、それだのに夫婦生活ができなくなる、非常に人権じゅうりんだというようなことが書いてある。非常にまじめな意味でおこってここに書いてきております。  それから、非常に不衛生だ。ネズミがかけ回る、ネズミまでばかにしやがる、こういうようなことが書いてある。  実際これは現実に上のほうの人が行って見て、そして改善しなければならぬところが相当多いのじゃないかと思う。あれは別世界だからというので、そういう別世界で相当な人権じゅうりんが行なわれておる。そういう意味からも、一方には金嬉老のように特別待遇で、殿さまみたいに、われわれの生活よりも場合によってはいいくらいだ、そういう扱いを受けておる人があるかと思うと、また規則で認められておるものも十分に処遇をしておらぬというような面が相当あると思う。そういう点を、やはり監獄法そのものを改めると同時に、全部の収容者に対してやはり平等にやらなければならぬ。今度の問題は、特別に金嬉老にだけ特別待遇を与えておったということだったから世間は承知をしない。全部が同じようなものならいいのですけれども、それが人によってこうも違うということになると、これは一たん明るみに出た以上は、やはり世間が承知するはずはないわけです。しかもそれは単なる一看守や二、三人の看守ではなくて、保安課長管理部長、さらには刑務所長までがおそらくこれは知っていたに違いない。もう当時の人はやめていたり、あるいはほかへ移転したりしておりますけれども、こういう者こそ厳重に処分すべきだ。一番末端の専従看守よりもその人たちのほうが罪が深いと思う。これが問題だと思う。教育のやり直しというのは、一番下の看守幾ら教育をしたってだめですよ。その上の上級の刑務職員が御身お大事に、事なかれ主義で、何とか金嬉老をおだてて金嬉老が事故を起こさないようにということで、何でもかんでもエスカレートするままにいろいろ与えていったということがこういう事件になったと思う。これはたまたま金嬉老事件関連して、この前から東京拘置所内の収容者から手紙を受け取っておりますので、この際関連する意味で大体荒筋を申したわけですが、ひとつこういう点を十分改善もしてもらうと同時に、公平に扱ってもらいたい、かように思います。  それから、こういったことはさっき田中委員も言われましたが、単に私は静岡刑務所だけの問題ではなかろうと思う。これはどこの刑務所でも多かれ少なかれ行なわれておると思う。そういうことであってはならぬわけでありますが、特に静岡刑務所の場合は特徴的にこの問題があらわれてきたと思うのです。一体こういうことを承知ですか。私はこの間その方にも会っていろいろ聞いてきたのですけれども、矯正管区のほうでときたま監査に行きますね。そうすると何かそういうときに、どうも管区の人と刑務所の上級職員との間でマージャンの大会をやるそうだ。それがかけマージャンだそうだ。それでしかもそれが終わってからキャバレーなんかに公用車で行く。その金はどこから出るかというと、養豚の訓練と称して豚を飼っている、その豚の上がりでそういうことをやっているものがある。こういう話がある。これはやはりうそじゃないと私は思う。こういうことがやはり全体の綱紀が弛緩するもとになる。それから、ある幹部のごときは、やはり養豚場の豚を売った金でおやじの葬式費用に充てたりなんかしておるそうだ。それから、ある幹部収容されている前科三犯の窃盗男に——養豚場の回りにぐるりと水がめぐらしてある、それにアヒルを飼っているそうだ、そのアヒルを盗ましてそれで自分の家庭のほうの食ぜんに供している、こういうこともあるそうであります。これじゃしめしがつかないですね。やはりそういうことをやると、その囚人には弱い点を握られていますから、したがって、その囚人に対しては特別待遇をせざるを得ないということになってくるのですね。これは既決囚ですが、それでたばこを自由に吸わせたり、外出もどんどん自由になったり、こういうようなことに現になっておるそうです。それでいて上司はまた下のほうの看守等に対してはなかなかうるさい。そして敬礼をしたのにおまえ敬礼しなかった、いや敬礼しました、こう言うと上司抗弁というのでこれまたおまえやめさせる、こういうようなことを言う。とびらを締めたのに締めろ、いやもう締めましたと言うと、これまた上司抗弁というものがいまでも厳然としてあるのだそうです。敬礼をしたとか、昔の軍隊みたいなもので、そういう社会がいまの日本にある、一番おくれている社会じゃないかと思う。あの囚人を入れておくということで高いへいがめぐらされておるけれども、その高いへいの中で、われわれの常識では考えられない前時代的なそういった上下の関係が行なわれている。これじゃ心服しないと思う。また囚人にもなめられるということにもなる。  こういう点を聞いて私は実はあぜんとしたわけなんです。私は大体うそはないと思う。大体私が会ったその鈴木平という人は、どういうわけで懲戒免になったか、あなたは御承知かもしれませんけれども、この人は酒が大好きな人らしい。それでひとつまた反面義侠心のある男らしい。二人の看守警察官を志望しその試験を受けようということで休暇願いを出しても上司がこれを取り上げない。そこでしかたがないので、その二人は病気欠勤ということで実は試験を受けようとした。試験を受けた。ところが、それを上司に見つかって、おまえ免職だ、こう言われる。こんなくらいのことでというので鈴木というのが男気で抗議を申し込んだということです。同時にまた、知り合いの警察署長に会って相談しようと思って出かけたらさいふを忘れた。しかたがないものだから、あと払いということでタクシー賃をあと払いにした。それが結局刑務所のほうに照会があって、こういう人がいますか。ただ乗りしたわけじゃないんだそうだが、そういう照会があって、こういう人がいるか、どういうことですか、こういうことです、おまえただ乗りしたな、ということ等がございまして、それからまた上司とやり合う。それで外へ行って一ぱいやって、そこから電話をかけて、金嬉老の問題等を、かってなことをしていやがるというようなことで、電話を上司にかけた。それがそういった内部の問題を公衆のいる前で電話したりなんかしたのは官吏として不謹慎だ。確かにそれはそうだと思います。そういう点はあるかと思います。しかし、それによって結局最後には懲戒免、こういうことなんだ。  そういう点が、上司と下僚との関係が先ほど私が申し上げましたような古いやり方がずっと残っている。こういうことも一つの大きな今度の背景じゃないかと私は思う。したがって、下のほうの末端のほうばかりやかましく言ってもだめなんだ。上の人たちがみずから範を示す、温情をもって下僚に接する、こういうことでなくて、ただ上司と下僚という関係で押えつけるということだけでやる。しかも上司がりっぱな人ならばいいけれども、そうでない、何か刑務所の建築か何かにもからんでどうもいかがわしいような問題もあるというような話も聞いてきましたけれども、しかし、これは実際にこれだけの証拠があるわけじゃありませんから、私申しませんけれども、いろいろそういったようなことがあるようでございます。やはりこういう点をひとつ全部洗いざらいにさらけ出してやらなければならぬ。ただ下のほうだけ責めて凶器がどうの、だれがやったのというだけではだめだ。その人のいわく、法務委員会あるいは検事というようなことで、別の立場の人にならば話すでしょう、さもないとなかなか看守たちも口がかたくてほうちょうの経路なども話さぬというようなことを言うておりましたけれども、こういう静岡刑務所の綱紀の弛緩、これは必ずしも静岡だけじゃないと思う。ほかに転勤したり何かしていますからね。だから、ほかにも大同小異のことが行なわれておるのじゃないか。  私が幾つか並べましたけれども、そういう点で矯正局長、何かお気づきの点はありますか。先ほどの養豚の問題、マージャンの問題、そういう点があるといわれるのですけれども、この辺については何ら知らないということですか。どうでしょう。
  107. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 最初にマージャンのことについて、矯正施設の職員は、御承知のように朝家を出ましてから勤務が終わるまで家に帰らない。また、官舎に居住をしているという関係で、一つのやはりレクリエーションの道をマージャンに求める傾向があるということは、私、気のついているところでございます。したがいまして、私が地方に参りますときには、できるだけいわゆる刑務所の待機所がございますが、そこに宿泊だけをお願いをしまして、翌朝早くからいろいろ動作時限を見るようにつとめております。その際に、マージャンを刑務所職員がやってはならないとは言わないが、夜おそい時間までやらないということ、それから、局等からの巡閲その他で出張をした場合には、そういう外部の人とのマージャンは避けるということ等についての注意は私としてはしてきているつもりでございます。そのようなわけで、わりあいにマージャンが盛んであるという風潮については、私もそういうことはあり得るというように考えております。しかしながら、いわゆるかけマージャン等のことについてはやっていないというように私なりには考えております。しかしながら、この点はなお十分注意をして見ていかなければならないことだと思っております。  次に、豚の問題でございますが、この点につきましては、刑務所職員の親睦団体としていわゆる職員会というものがございまして、その職員会の運営資金の一部として養豚をやっているということについては承知をいたしております。そのために、その養豚の経営のしかた並びにその利益の使途については厳重にこれを改善する必要があるということで、一昨年でございますが、各行刑施設での豚を持っているところの有無、あるいはその手続等について監査をいたしまして、是正すべきところは是正させると同時に、その利益の使途につきましては収容者に還元をするということと、それから職員に広く還元をするということを私、指示をいたしまして、毎年一回、三月の決算期後にその概要を書面で報告を取るようにつとめると同時に、職員会の運営につきましては、全職員の中から代表者を選んで、その職員会の役員として支出計画等について関与をしてこれを運用させていくという方針を、現在のところ私としては一応確立させたつもりでおりますが、なお、御指摘のような点につきましてはさらに留意をしてまいりたいと思っております。  なお、鈴木平の懲戒の関係につきましては、私、人事院関係の書類を承知しております。その処置した懲戒分限の理由につきましては、四十三年の五月に人事院の決定があったわけでございますが、その際の分限の事由になった対象と申しますのは、要するに酒に酔っぱらって臭気をふんぷんとさせながら朝登庁して勤務につこうとした、あるいは本人の通勤途上でございますが、掛川等に多くおりて、掛川の小料理屋で酒を飲んで泥酔をして乱暴をしたとか、あるいは警察の保護を受けたとか、こういった事実、それからいま御指摘がございましたが、やはり掛川から夜の十一時ごろと思いますが、保安課長のところに酔っぱらって電話をかけてきております。そのときの電話の内容もはっきりいたしておりますが、そういった本人の行動について刑務官としてふさわしくないということで分限の懲戒をいたしておるわけでありますが、その前に所長から、たしか二度であったと思いますが、やはり同様なことで反省を求められております。それがなお十分効果があがらないままに、なおいま申し上げましたような事件があったということで分限懲戒の処分を所長が行なったというように、人事院関係記録からは私も承知いたしておるところであります。したがいまして、鈴木平につきましては、そういう状況での登庁が間々ありますので、一般収容者戒護には当たらせられないということで、主としていわゆる事務系と申しますかそういう仕事に当たらせていたというふうに私としては承知いたしておるようなわけでございます。
  108. 畑和

    ○畑委員 いまのマージャンの話ですが、マージャンも結局やはり監査をゆるやかにやってもらいたいというような趣旨で、実際には刑務所側がわざと負けるんだそうです。それで上から来た人が勝って帰る、こういうことだという話を聞いております。これは上下の関係でときどきこういうことはあると思うのです。そういうことが、実際どうか知らぬけれども、相当あり得ることだ、こういうところからやはり直していかないと今度のような事件が出てくる、私はこういうふうに思う。それで申したわけですが、今後ともそういった点をひとつはっきり正してやってもらわなければいかぬと思うのです。  鈴木平という人の人事関係、分限懲戒の問題につきましては、本人も確かに酒が好きで、そういう点もあったろうと思うのだが、そのときに金嬉老の問題を出して大いに主張したそうだけれども、それはそれで握りつぶされた。しかし、結局結果においては鈴木平の言う指摘が当たっておった、こういうことになるわけです。大いに心すべきことだと私は思う。実際にはあした現地に参りまして、われわれいろいろ詳しく調査をしてまいるつもりでございますけれども、これを機会に行刑関係を正しく運営してやってもらいたいと私は思います。これを徹底的に最後まで解明をしなければならない。  ほうちょうの問題が最後に残っておりますね。ほうちょうはこれは刑事問題になりますね。刀剣所持の問題になってくる。したがって、だれかがやったに違いないが、なかなかそれが出てこないのだと思うのだけれども、やはり事実は事実として明らかにして、ほうちょうの問題についてはこのまま迷宮入りだということのないようにしていただきたい。部内だけでうまく解決してしまうというようなやり方は私はいけないと思う。新聞なども行政処分を早くやる、これはそういったところで片づけるということのようだ、こういうような趣旨の新聞報道等もなされておる。そうした誤解を受けないように、あくまでも事実は事実として究明し、先ほど田中委員のほうから話がありましたけれども、検察陣のほうも動いておるようでありますが、ひとつ徹底的なメスを加えて、特に私が先ほどから言っておりますのは、一般の下の実際に処遇に当たっておる看守だけでなくて、その上の、ほかへ栄転した人々、こういった人々を徹底的に調べて実態をえぐり出せば、その実態の上からどう刑務所行刑を改革したらいいかということの結論が出てくるのだと思う。これはやはり中途はんぱに、いいかげんなことで済ましてはならぬというふうに考えておるわけであります。この問題は金嬉老事件としてあのとおり世間周知のああいった事件があった。それにまたその処遇をめぐってこうした大きな問題になったわけであります。  もうこれで質問を終わりたいと思うのですが、大臣として先ほど来大体御決意は承ったようなわけでありますけれども、最後に責任者として大臣の考え方をひとつ述べてもらいたいと思います。
  109. 小林武治

    小林国務大臣 もうお話しのことは私はまことにごもっともだと存じます。それで午前中にもお答えいたしましたように、他の施設においても同様の心配がないとは限らないのでありますから、私は既往のことについてはそれぞれ責任を明確にするということと同時に、これからのことにつきましては、全国の収容施設に対しましておそらく明日は強い通知を出して、そして刑務所における取り扱い方の総点検ということを指示をいたすということにいたして、それについてのそれぞれの報告を求めて、さらに検討する。今回の事件というものがわれわれが一面からいえば非常に大きな反省の資料をもらった、こういうことにも考えておりますので、こういうことを繰り返さないようなくふうを十分いたしたい、かように考えております。
  110. 畑和

    ○畑委員 最後にしようと思ったのですが、ちょっと聞くのを忘れたことがありますので……。  先ほども田中委員のほうからいろいろ質問があって、最初に金嬉老が持っていた金が一万何がしという、わずかな金であった。ところで、金嬉老がいろいろたくさんのものを買ったり、あるいは食べるために買ったりしたものの金の総計が五十万くらいになる、こういうことのようですが、この金の出入りをもっと正確に調べてもらいたい。これは相当重大だと思うのです。話によると、なお刑務所のほうのそういった豚か何か知らぬけれども、そうしたものの浮かした金である程度まかなわれているというようなうわさすら私は聞いておる。そうだとすれば、事きわめて重大だと思うのです。単なるうわさであってくれればいいと思うのですが、その辺詳細にひとつあとをたどってはっきりさしてもらいたい、こう思います。それはひとつ矯正局長のほうに要望しておきます。どうですか、やってくれますか。
  111. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 ただいまの点につきましては、すべて資料がございますので、何月何日にだれが持ってきたか、あるいは郵送されてきたか、それはすべてわかっておりますので、いまそのリストをつくらせております。  それから、なお念のために申し上げますが、五十万というのは金嬉老が不法に所持していた金でございます。そのほかにいわゆる正規領置手続をとられた金、いわゆる内妻から正式に差し入れる、あるいは外部の出版屋からの金嬉老あての印税等の金は、この五十万のほかにございます。これも詳細なリストの作成いたしておりますが、これは百五十万以上にのぼる見込みでございます。これはいわゆる正規に送られてきた金でございます。五十万というのは不正に所持していた金でございまして、この詳細については、だれから幾ら送られてきたか、だれから幾らこの不正の金が金嬉老のために積み立てられたか、これは私のほうの調査でまとまると申し上げてよろしいと思います。
  112. 畑和

    ○畑委員 それをわれわれにも見せてくれるのは差しつかえないと思いますね、別にほかに公表するわけではないから。  それからもう一つ、先ほど私が申しております鈴木平という人の人事の分限懲戒のときの資料として、彼が出したという資料、これもひとつ提出してもらいたい。いいでしょう、別にほかに公表するわけでもないから。
  113. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 いまの金の関係のリストについては私たち作成いたしております。  それから、なお人事院の記録につきましては、原本の保管が官房のほうにございますので、私がここで一存でお約束はいたしかねますが、そのようにはからいたいと思っております。
  114. 畑和

    ○畑委員 以上で終わります。
  115. 高橋英吉

    ○高橋委員長 次は、林孝矩君。林君に申し上げます。法務大臣は、内閣委員会に出席のために退席したいと申し出がありますので、したがって、大臣に質問がありますれば、先に質問してください。そして随時引き取っていただきます。
  116. 林孝矩

    ○林(孝)委員 けっこうです。  今回の事件をきっかけとして、先ほど来法務大臣から、全国の刑務所の総点検を行なう、監獄法も改めるという話がございました。この全国の刑務所の総点検の問題でございますけれども、全国にある刑務所の実態といいますか、どれだけ刑務所があって、そこで働いている人たちの人員はどれくらいになるのか、その点について現在わかりましたら、ちょっとお伺いしておきたいと思うのです。
  117. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 行刑施設は刑務所と拘置所にございますが、いわゆる行刑施設の本所が全国で七十三ございます。そのうち拘置所として独立しているものが七つ、それから刑務所が五十七、少年刑務所が九つ、合計七十三。そのほかに本所の支所が百十四ございます。拘置支所が百三、刑務支所が十一でございます。  そこに収容されている収容者の現在員でございますが、本年の三月三十一日現在で収容されていた収容者の総数は四万八千九百二十二名でございます。これは御承知のように出入りがございますが、おおむね五万前後必ず毎日いる、このように理解しております。  それから、そこに働いております行刑職員の数でございますが一万六千六百七十八名、これは保安、事務その他を含めての職員数でございます。
  118. 林孝矩

    ○林(孝)委員 矯正局長に確認しておきたいのでありますけれども、この総点検に関して矯正局長としてどういう考えで臨まれるか、その点をお伺いします。
  119. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 私のほうといたしましては、各施設ごとにいわゆる処遇上非常に問題を持っている収容者というのはその数をつかんでおります。たとえば逃走のおそれがあると認められる者、あるいは自殺をするおそれがあると認められる者、あるいはけんかをするおそれがあると認められる者、これは刑務所のいわゆる分類関係の技官等の助けをかりて一応の分類をいたしておりますが、その総数につきましては私のほうで六千八百名というようにつかんでおりますので、まずこの約七千名のいわゆる収容上いろいろ問題を持っている収容者、これについての処遇がどういうぐあいに行なわれているかということを早急に総点検をする予定でございます。
  120. 高橋英吉

    ○高橋委員長 林君、大臣が急ぎますから、大臣に対する質問をやらせてください。よろしゅうございますか。——岡沢完治君。
  121. 岡沢完治

    岡沢委員 この金嬉老の問題につきましては、大臣も矯正局長も非常に恐縮の意を表しておられますし、私たちも必ずしも深入りをするという気持ちはございませんけれども、しかし、どうしても国民の立場から考えまして、二、三の問題について大臣自身の御意見をお聞かせいただきたいやむを得ない感じがございます。  それは、法の番人といわれる法務省の直接の管下で起こった事件である。それから大臣には言いにくいですけれども、大臣の御出身地の静岡県の刑務所で起こった事件であるということも含めまして、法の執行者に、大臣自身の表現をかりましても、考えられないような不正事件が起こった。しかもこの事件が起こっただけではなしに、この発覚金嬉老自身の弁護人に対する発言によって明るみに出た。実態は先ほどの畑委員の質問等によっても大体感じられますごとく、場合によっては矯正局自身も知られないはずはなかったと考えられるケース、しかも昭和四十三年以来約二年間も同じ状態が続いておりながらいままで放置されたというような点に、普通の、単に金嬉老の犯した、あるいは担当看守の犯した事件以上のものを国民の立場から究明したい。これがはっきりしない限りは、やはり大臣もおっしゃっておりましたように、今後も同種の事件が他の刑務所あるいは拘置所、鑑別所で起こらないという保証はないという感じがするわけであります。ことに事件発覚後もう二週間たちます。しかるに、いまだ最も問題とさるべき出刃ぼうちょうにつきましては、その出所も、差し入れた日時も、経過も明らかにされていないわけです。法務省の同じいわば内部の事件であるだけに、くさいものにふたをするのではないかという心配も、国民の立場からは否定はできません。平井検事がお調べになったということでありますけれども、これは調査ということばを使っております。捜査ではないわけであります。なぜ静岡地検の検察官が——先ほど来ほうちょうにいたしましても、あるいは爆発物に類する粉末があったというような指摘もありました。あるいはこの種の事件で当然考えられる脅迫あるいは贈収賄ということも当然疑いが持たれてしかるべきであります。犯罪の確定、これは裁判所が裁判の結果確定するわけで、疑いがあれば捜査するのは当然であります。しかるに、いままでの段階で、二週間も経過をしながら、国民から見ればまことになまぬるいとしか考えられない捜査、調査しか行なわれておらないというところにも大きな疑問がございます。  また、きょうの御答弁では、処分をするということをおっしゃっておられますけれども、やはりタイミングを失しない、しかも適正な処分、先ほど畑委員からも、単に担当の下僚の役人だけではなしに、前任者を含めた上層部の責任についてもお触れになりました。私たち、ことさらにまじめな職員にまで疑いの目を向ける気持ちはございませんけれども、しかし、しかるべき処分はタイミングを失せずに行なわれるということがせめてものこの事件の救いでなければならないと思うわけでございます。  国民がこの事件によって与えられた法に対する不信、あるいは先ほど説明がございました五万人の収容者に対する不平等の扱いについての不満、あるいは矯正職員あるいは行刑施設のあり方についての大きな問題点のクローズアップ、いろいろな意味でこの事件は数々の問題をわれわれに提起いたしました。朝から田中委員、畑委員も重ねておっしゃっておられました災いを転じて福となすという気持ちは、われわれ国政に参加する者としては必要だと思います。その意味から、いま申しました発覚の端緒あるいはその後の取り調べ、処分、一連のこの事件と離れたその後の処置等につきまして、国民の前にこの機会に法務大臣として明らかにしていただきたい。見解を聞きます。
  122. 小林武治

    小林国務大臣 通常こういう問題に対する懲戒というようなことは、大体取り調べその他が一段落ついてから、こういうふうなやり方をいたしておりますが、私はこの事件についてはとにかくだれ某が何を渡した、こういうことよりか、刑務所全体がこういうふうな失態を演じたということはまぎれもない事態でございますから、取り調べが十分終局に近づかぬでも、とにかく早く責任を明確にする必要があるということで、まだ取り調べをいたし、あるいは場合によっては検察の捜査もまたなければならない場合もあり得る、私はこういうふうに思って、事件全体を検察当局にも検討をしてもらっておる。こういうことでございまして、この方面のこれからの出方については私は存じません。検察当局におまかせいたしてあるわけであります。  とにかく行政当局としては、この始末をできるだけ早くしなければならぬということで、実は、いまの監督責任等もすべて含めて、私が指示したのは、今週中にやってもらいたい、こういうことをやるべしという指示をいたしております。まだ若干あれがあるから間に合うかどうかいまはっきりわかりませんが、さようなことを一応したい。そしてあとの事態でもっと明確になれば、またやり直すということでなくて、処分の追加ということもあり得る。こういうことで、いままでの一般事例とは違って、私はこの際一応責任を明確にしたいというふうに思っておりますし、また、これが全国の刑務所に対する一つの非常に大きな反省の資料になる、こういうことでありますから、おそらく明日あたりは全国的にいわゆる大臣の依命通牒を出せる、私はきょうにもその書類を裁決しようということを言っております。そういうことでもって、一般の事柄からいけば、事務的に見れば多少早過ぎるのじゃないか、こういうふうな異論もありますが、そういうことでなくて、もしいま申すようにあとでもっと事態が明確になって、そしてもっと責任を加重すべきものがあればそのときの問題にして、この際は一応処置をきめたい、こういうふうに思っております。  このことは、もうお話しのとおり、何ら弁解の余地がない、まったくずさんと申すかだらしがないと申すか、お話にならないようなことであるということを私も考えたものでありまして、もう少し早くやりようがあったのじゃないか。たとえば先ほどお話しがあったように、矯正局に対してもそういう申告めいたものがあったそうであります。それを、本人が多少酒癖が悪いとかなんとかということで一緒に片づけてしまって、不問に付しておった、こういうことも矯正局の中にもあるように私は聞いておるのでございます。それから、ここには御承知のように矯正管区というのがありますが、これも相当にふだんからそういうものを監督しなければならぬし、そういう方面においてもこのことをある程度知っておったのじゃないか、こういうこともいわれておるのでありますが、かような点も監督不行き届きとして、やはりある程度処置をしなければならぬというふうに思っております。  さようなわけで、むしろ異例と申さなければなりませんが、皆さんから見ればおそいということも考えられますし、役所から見れば、まだ片づかぬうちにどうかというような問題もありますが、とにかく早くに責任を明確にして、一日も早く全国の反省を促すことが必要である、こういうことで私はいまのような処置をすることにいたしておるのであります。
  123. 岡沢完治

    岡沢委員 いまの処分の問題は、私は適当な時期に適正な処分ということを申しましたが、必ずしも責任が明確にならない段階で急ぎ過ぎて、一人の人の社会的な生命を失わせるということを求めているわけではございません。むしろこれ以上に、たとえばほうちょうの問題等、二週間もたつのにいまだにその経路がわからない。だれがいつ、どういう目的で、どういう方法で差し入れたかわからないというようなことは、国民から見てどう考えても不可解であります。その辺を、特に捜査、調査のほうをもっと早く適正にやるべきではないかということを指摘したかったわけでございます。  この事件の背景は、林委員お待ちいただいての質問でございますので、長々することは避けたいと思いますけれども、金嬉老自身の特別な性格なり能力なりも原因でしょうし、静岡刑務所自身の問題、いま大臣がお答えになりました東京矯正管区の問題、あるいは法務省矯正局の問題、いろいろ考えられると思います。あわせまして、先ほど畑委員の質問に答えられまして、監獄法の改正の問題等お触れになりましたが、法の不備あるいは法の改正を怠った政治、あるいは国会の立場からの反省も求められてしかるべきだと思います。あるいはまた、所内の指揮監督系統の機構、制度上の問題等もあろうかと思います。  この辺につきまして、大臣は監獄法の改正を来国会には出したいということを言明なさいましたけれども、しかし二、三年前にも、赤間法務大臣のころに一応の草案が出て、来年には出すということが新聞報道されたこともございましたが、結局はここ二、三年うやむやのうちに推移したわけであります。大臣自身も御答弁の中でお触れになりましたが、ほんとうにこの機会に災いを転じて福にするという一つの方向として、明治四十一年来の監獄法の改正あるいは同法施行規則の改正等について——この間ハイジャック法がきわめて短期間のうちに制定を見ましたこと、これは喜んでいいのか悲しんでいいのかちょっと問題でございますけれども、同じような意味で公害罪の問題等につきましても指摘いたしましたが、法制審議会の審議のあり方等につきましてもぜひこの機会に御検討をいただいて、タイミングを失しない、法が時代の進歩におくれないような適正な処置を政府としてもおとりいただきたいということを指摘したいと思うわけであります。  その他の点につきましては局長にあとでお尋ねすることにいたしまして、最後に、けさ理事会で、わが党の塚本三郎委員が言論・出版妨害につきまして法務大臣に質疑の予告をいたしております。また、きょう時間の許す限り質問を許すことになっておりますので、内閣委員会のほうにもわが党から依頼をしておりますが、そちらのほうの用務が済みましたらぜひ法務委員会にも御出席いただきたいということを希望いたしまして、大臣に対する質問を終わります。
  124. 小林武治

    小林国務大臣 先ほどお答え申し上げたとおり、監獄法につきましては、事務当局も受け合って必ず間に合うようにいたします、こういう申し出がございますから、できるというふうに思います。また、公害罪のこともお話がありました。これも非常にむずかしいことでありますが、これはもう時期を失するべきでない、そこまでいまの時勢は来ておるというふうに私も認識をいたすのでございまして、非常にめんどうな立法でございますが、ぜひひとつやりたいというふうに思っております。  とにかく私も、変なお願いを申し上げて恐縮ですが、法務省の法律には、たとえばこれからここでお願いする訴訟費用臨時措置法、あの民事訴訟費用法、刑事訴訟費用法は明治二十三年というとんでもない気の遠くなるような法律がいまでも生きておって、毎年毎年こう薬ばりをして臨時措置法としてお願いしておる。私はこれはたいへん醜態であると思いますから、来年はいろいろなことをお願いすることになりますが、法務委員会の各位においてもぜひひとつお助けを願いたい、こういうことを申し上げておきます。
  125. 高橋英吉

    ○高橋委員長 松本善明君。
  126. 松本善明

    松本(善)委員 金嬉老事件については同僚委員もいろいろこまかくやりましたし、この点についての綱紀を正しくしなければならないということについては、言うまでもないことでありますが、この事件は当然のことであるけれども、矯正行政全体についてのあり方あるいは今後のやり方ということに発展をせざるを得ないというふうに思うわけです。  私は法務大臣に、他の委員とちょっと違った観点からごく簡単に大きな点をお聞きしておきたいと思うのですけれども、刑務所の中にいる既決囚あるいは未決囚がこういう問題を外に出すということは非常にむずかしいことである。刑務所の中で行なわれておることが一般世間には非常に出にくい。おそらく刑務所看守の人たちも、こういうことがこれだけ大きく外へ出てくるということは予想もしなかったであろうと思うのです。これまではその隠れみのといいますか、世の中には出ないのだということでいろいろなことが刑務所の中では行なわれておる。あるいは前にも国会で問題になりましたけれども、刑務所職員のリンチ事件、そういうようなことが起こっております。これの根本の問題は、やはり刑務所の中での既決囚あるいは未決囚の人権が完全に保障されているということの自信が看守の皆さんにもあるかどうかという点が一つの裏の面の問題になっているのじゃないか。処遇が非常に悪いということであれば、いろいろな要求についてもこれは考えざるを得ないというようなことを考えたり、いろいろなそういう総合的な検討をする必要があろうかと思うわけであります。そういう意味でこの監獄法の改正も含めまして、矯正行政全体について、この中で刑を受けている人あるいは未決の人たちの人権を制度的にきちっと保障するということが一つの大きな問題点ではないかというふうに思うわけです。この点についての法務大臣の御意見を伺っておきたいというふうに思うわけであります。
  127. 小林武治

    小林国務大臣 これはお話しのとおり、優遇をされる人もあるし、そうでない人もある。はたして十分人権が擁護されているかどうかということを私が断言するわけにもまいりません。そういうことがないようにぜひしなければならぬと思いますが、しかし、個々具体的には必ずしも問題がないということではあるまい、そういうふうに思います。これは今後十分注意をしなければならぬと思います。  第一に、とにかく監獄法というものがあって、そしていろいろな、時勢に合うようなことは通牒、通達で全部間に合わせておる、こういう状態でございまして、ほとんどもういまのような矯正局長の通牒みたいなものでもって間に合わせをしておる状態、非常に私は不完全だと思うのです。これはいま現に案をまとめつつありますから、これはどなたからでもよろしゅうございますから、私はそれぞれの御意見なりを承ってこの次の国会で直すのだ、こういうことでやりたいと思いますから、それで御注意があったらぜひわれわれとしても承りたい。いまのように人権が擁護され過ぎる、それから擁護されないという二つの例があるのじゃないか。こういうことはやはりこの際の反省事項として考えていきたい、かように思います。
  128. 松本善明

    松本(善)委員 私の申しますのは、両方の例といいますよりは、こういう事件の背景にもあるのじゃないか、やはり刑務所の中の人権保障というのはその国の人権保障がどの程度のものであるかということを最もよく示すことになるかと思うのです。人権保障というのは制度的にきちっとこれでだいじょうぶなんだということが刑務所職員も確信できるというような状態になっていれば、いろいろの、たとえば刃物を入れるとか、そういうようなことがあり得るわけがないと思うのです。そういう二つの例、片っ方で人権が保障され過ぎているんだ、片っ方では人権が侵されているんだという二つの例として私はあげたのではなくて、制度的に刑務所の中での人権保障というものを確立するということが、今後こういう事件をなくすという点でも一つの大きな問題点になるのではないか。その点についての法務大臣の御意見を伺ったわけであります。
  129. 小林武治

    小林国務大臣 いまのお話の点については、やはり明確にして、そしてよりどころを一つつくらなければならぬというふうに考えております。
  130. 松本善明

    松本(善)委員 もう一つ全体の問題でお聞きしておきたいのは、綱紀を正しくするということは当然のことでありますが、いま申しましたように、刑務所の中にいる受刑者あるいは未決囚というものは、人権が一番侵害されやすい人たちである。ものごとは、何ごとも行き過ぎてはならないのでありまして、これが契機になってもちろん綱紀を正しくするということが全体に行なわれなければなりませんけれども、やはり同時にその結果が、金嬉老事件がほかの受刑者全体に非常に迷惑な影響を及ぼすというようなことになってもいけないというふうに思うわけであります。その点につきましての法務大臣の御意見を伺っておきたいというふうに思います。
  131. 小林武治

    小林国務大臣 それはお話しのとおりでありまして、ことばとして返事をすれば、あくまでルールに従って適正でなければならぬ、そういう注意をいたしたいと思います。
  132. 松本善明

    松本(善)委員 終わります。
  133. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そこで、こうした事件を再び起こさないためにということでお伺いするわけでありますけれども、かつて松山刑務所で、刑務所内の暴行事件とかいろいろの事件がありました折に、今後こういう問題が起こらないようにということで、矯正局としていろいろ決議をされたりあるいは法務委員会で答弁をされたりしておりますけれども、そのことについて矯正局長は御存じでしょうか。
  134. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 松山事件につきましては、私、当時官房の経理部長をいたしておりまして、松山事件の際に私現地に出向きまして、調査の一端をになっております。したがいまして、お尋ねの点については承知いたしております。  あの事件後にとられました措置を申し上げますと、あの事件は御承知のように、白昼、派閥関係者のいわゆる殺傷事件で多数の被告人収容された。それに対して刑務官のほうが押されて、その処遇の後退が逐次エスカレートしていった事件というようにおよそのところ理解いたしております。それに対してとりました処置といたしましては、いわゆる派閥関係収容者を一カ所の施設に多く集めないようにするということで、それぞれの観点からふるい分けまして、これを全国の各施設に分散をいたす処置をとっております。その処置は現在までなお行なわれております。それと同時に、職員等に対してのいろんな脅迫的なあるいは誘惑的なことがあった場合に、全施設の職員があげてこれを側面から支援をしてやるという体制をとる。そして万一そういうことがあった場合には、直ちに刑事的なものについては検察庁等に通知をして捜査をしてもらうという措置をとる。大きな柱といたしましては、この二つの線に沿って現在までとられてきている次第でございます。
  135. 林孝矩

    ○林(孝)委員 処置の問題でありますけれども、たとえば当時の法務委員会記録を見ますと、幾つもの点について今後こういうようにしていくという答弁がなされておるわけです。そのことについて、その当時の答弁をされたのは布施説明員、その御答弁の中に、今後の処置あるいはこういう刑務所内の事件が起こらないようにということで、処遇方針の確立はもとより、警備体制の確立、職員の士気高揚、職員規律の維持、巡視等に関して決意あるいは具体的にこうやっていくということが答弁されておるわけなんですけれども、この点についての実施がはたして現在までどのように行なわれてきたか。この一つ一つについて、もし完ぺきに行なわれてきたとしたならば、こういう問題は再び起こるということに対しては非常に抑止力になったのではないかというふうに思うわけです。そういう意味から、その一つ一つについて、この点はこういうふうに実施してきたという今日までの実施状況をこの際明確にしておきたい、そのように思うわけであります。
  136. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 御指摘の点につきましては、昭和四十一年七月三十日付で矯正局長の通達が出ております。通達は、暴力団関係被告人に関する事故防止についてという通達でございます。その通達の中に、処遇方針の確立、担当職員の人選、職員の士気の高揚、職員規律の維持というのが柱に相なっております。  処遇方針の確立については、検察庁、警察、矯正関係の施設、地域団体、法務局、人権擁護局等の緊密な連絡によって、情報をすみやかにキャッチをするという点が行なわれてきております。その情報入手した場合には、ファイリングシステムとして、記録できちっと整理をしておいて、それに基づいて具体的な該当の被告人入所してきた場合には、刑務官会議、これは課長クラス以上でございますが、刑務官会議にはかって具体的な処遇を決定をして、さらに周知徹底をはかるという処置をとることが指示されております。大体これが最初の処遇方針の確立に関連したものでございますが、この点につきましては行なわれてきているというように私は見ております。  次の方針としましては、警備体制の確立でございますが、処遇に当たる担当職員の人選について、適格者を選ぶのに間違いがないようにするということ、そうしてそのように選定された担当職員に対しては、本人勤務歴を勘案の上必要な自所研修というものを加えるということ。さらに、担当職員について増員をする、事態が非常に困難だと思われるような場合には増員をするということ。それから先ほど申し上げました分散収容、これが処遇関係でまずうたわれておりますが、ただいま申し上げましたうちで、担当職員の人選と、必要に応じた担当職員の増員につきましては、必ずしも適切に行なわれたかどうかについては疑問を持っております。  その次には、監督者の巡回励行ということが行なわれておりますが、この監督者の巡回励行につきましても、不十分なものがあったのではないかと思います。  次に、物的設備の充実ということがうたわれております。これは警備関係配置とかあるいは担当職員の増員について、いろいろ予算的な制約等がございますが、それらの問題の際に、もし人が足りないという場合にはテレビを備えつけるとか警報機を備えつけるとかということをはかるということが出ておりますが、これにつきましては、その後の予算の折衝におきまして、警備用器具ということで、テレビあるいは警報機等の処置を講じまして一応の充実ははかられていると思いますが、なお不十分な点は免れないと思っております。  その次には、職員の士気の高揚といたしまして、職員及びその家族の保護という問題でございます。これにつきましては、検察庁、警察等の協力を得まして、一応保護につきましては行なわれてきていると思います。  その関連において、下意上達ということと職員の一体感の構成ということがうたわれておりますが、この下意上達並びに職員の一体感の構成につきましては不十分なものがあるということを認めざるを得ないと私は思っております。  最後に、職員規律の維持といたしまして自所における研修計画を立てるということがうたわれております。御承知のように、矯正職員の研修につきましては、矯正研修所の本所並びに各管区の支所で行なわれておりますが、この点が建物の関係あるいは予算等の関係で人員もおのずから制約があるわけでございますが、その足りないところはそれぞれの施設で職員の研修をやるということに相なっております。この点につきましても、その後予算的に自所の研修の経費の増額を受けまして、これも不十分ながら行なわれているのでございます。  以上申し上げましたように、松山事件関連において通達されました対策については、ただいま申し上げたような実情であるということを申し上げる次第であります。
  137. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いまお伺いしますと、ほとんどが不十分、そういうことになるわけであります。たとえば担当職員の人選一つを考えてみても、間違いはなかったかということなんですけれども、実際問題として現在岐阜刑務所、網走刑務所管理部長になっておる二人の人も栄転という形がとられておりますけれども、その人が担当しておったときにすでにこの問題の芽が出ておるわけでありますが、それがその人の問題にならずに栄転という処置になっている。こういう問題、これも非常に軽率な扱いではないかと思いますし、また巡視が不十分である。じゃ一体この巡視に対しては、ただ不十分だといういまの感想的な答えでありましたけれども、現在どういう形で行なわれておるのか、その担当者はどういう人が担当しておるのか、矯正管区の幹部が監視に行くときがあるのか、また刑務所長等の場合はどうなのか、ふだんはどういう形なのか、そういう点についてもお伺いしたいと思います。  また、下意上達ということもいま出ましたけれども、報道によりますと、金被告の件について訴えていった人が首になっておる。先ほど来そういう話もございました。そういうふうな所内の状態、こういう点をどう考えるか。  また、施設の問題を取り上げてみても、かぎがかけられてなかった。金被告を二階の独房から女区の房へ移したのはどういう理由によるのか、そういう問題も非常に不明確であります。  そうした一つ一つの問題に対して、もう少し具体的に、事件の起こった原因となった点、それから今後そういう問題に対して具体的にこういうふうにしていく——これは松山刑務所のときにこういう問題が起こって、今後こういうふうにしていきたいという決意が、すでにこのように不十分なままで来ているわけですから、同じような考え方で今後臨みますと、先ほどの総点検意味もなくなってしまいますし、こういう問題が第二、第三と起こってますます世間のひんしゅくを買い、刑務所に対する非常に不安な気持ちを起こさせてしまう。そういう面からもっともっと前回以上に真剣に取り組んだそういう御答弁をいただきたい。私は重ねてそのことについてお伺いしたいと思います。
  138. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 金嬉老被告の場合につきましては、四十三年の二月二十五日であったと思いますが、ここに申し上げました刑務官会議を開きまして、金嬉老が近く入所をしてくるについて具体的にどういう処遇をしていくかという処遇方針並びに具体的な処遇について刑務官会議にはかっているのでございます。その刑務官会議にはかった結果、保安課長達示ということでこれを文書にいたしまして各職員に周知の徹底がはかられている、ここまでは今回の調査の結果記録的にも認められるところでございます。ところが、その保安課長達示というものそれ自体はきわめて詳細にわたったものでございますが、今度の事件はそれが行なわれなかった、途中からくずれていったというところに大きな問題があるというように見ております。  それから、翌年の四十四年六月二十七日に金嬉老を拘置監の二階二十八房という独居房から女子区の雑居の一室に移しております。そのときの理由としては、当時いわゆるASPACの関係で多数の収容者が出る見込みであるということで、独居房をあける必要が生じたというところから、金嬉老につきましては、本人の二十八房の回りをいわゆる一般収容者からできるだけ隔離をする、接触を保たせないようにするということで空房等も設けてあったわけでございます。そういう関係で、独居房をあけるについて金嬉老をどこに移すかという問題これも刑務官会議とまでは構成人員からは言えないと思いますが、関係課長部長所長のもとに集まりまして、どこにいわゆる金嬉老を移すかということを会議にかけております。その際に、結局金嬉老一般の被告とできるだけ接触させないようにするという最初の基本方針から、いわゆる一般の未決監の部屋を使うということは不適当である、さらに金嬉老のために一般の成人男子の雑居を一つ使うということについては、収容の能力の関係からそれも不適当であるということで、最後に浮かびましたのが女区が、これが定員が十二名でございますが、収容者があってもせいぜい一、二名という状況であったということで、その女区の一画である雑居房、これを金の移転先ということで決定いたしております。その際にやはり会議状況調査してみますと、松山事件のときにいわゆる女性との贈賄関係事件が起きておりますので、いわゆる女子区に入れた場合にそういう問題が起きるということを考えなければならないということで、その女子区につきましては他の女子部屋との間に仕切りをいたしまして、完全に通行ができないようにして女子区の雑居房をあけて、そこに移そう、そういう経過が金嬉老の特別区といわれているものが指定された経緯に相なっているわけでございます。  したがいまして、今度の調査を総合してみますと、最初の処遇方針の中で専従職員を当てるということにつきまして、それ自体については私は間違っていないと思うのでございますが、その専従職員を適当な時期にやはり交代をさせるという必要があったと思うのでございます。三カ月とかあるいは半年の間にその専従職員を交代させるという措置を講ずべきであったということ、並びにその専従職員といっても、それは戒護に直接専従するという意味でありまして、その専従職員を全施設の職員がバックアップをするという一体感の構成が当然裏づけられていなければならなかったと思うのであります。その裏づけがされないままに終わっているということ、それから下意上達の件につきましても、専従職員のほうから幹部に金の処遇にからんだ問題を報告している際に、幹部が適切な指示を与えていない。そのことから専従職員が結局幹部を信頼しないようになったという点、それらの点が今度の問題の全体的な原因であると私は考えるのでございます。
  139. 林孝矩

    ○林(孝)委員 金被告が収容されておった女区の大きさといいますか、いま収容能力の問題が出ましたけれども、部屋の大きさはどのような規模のものですか。
  140. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 畳にいたしまして六畳でございます。
  141. 林孝矩

    ○林(孝)委員 非常にASPAC等で収容者が多いというときに、そうした六畳の一部屋を与えるということ自体が非常に矛盾しているのではないかというように思うわけです。ましてかぎがかかっていなかった。ガラスで仕切りをしておってかぎがかけてなかったら、ガラスの仕切りというものは意味がなくなるのではないか、そういった現場の問題が多過ぎるように思います。  午前中に田中委員のほうからいろいろ具体的の問題の質問がありました。それ以外に、房の中に持ち込まれておったらしいという想像的な記事でありますけれども、いろいろな雑誌等の報道を見ますと、電熱器だとかあるいは電気冷蔵庫が表に置いてあったとか、一時はポータブルテレビが持ち込まれたことがあるというふうなことまで出ております。私がお聞きしたいのは、こうした特別な待遇をなぜしなければならなかったのか、その点についてであります。
  142. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 お尋ねの金嬉老の房の施錠がなされていなかったという問題につきましては、昼間施錠をされていなかったということは事実でございます。  それから、電熱器の問題でございますが、これも職員金嬉老の調理用ということで持参をしていた。そして担当台の横に置いて、必要に応じて金嬉老に使わせていたということも事実でございます。  それから、なぜ特別待遇をしなければならなかったのかという点につきまして、いわゆる担当の職員にどういう動機でこのようなことをしたのかということを直接調べたわけでございますが、担当職員の供述といたしましては、当初、絶対自殺をさせてはならないということと、それから公判が開かれているわけでございますが、その際に出廷拒否等をさせないで、できるだけ裁判には出廷をさせるということを強く言われていたわけでございます。そういうことがまず頭にありまして、その心理状況のところに、具体的には出廷を拒否するとか、あるいは自殺をしてやるとかいうことを金嬉老から言われているわけでございますが、そういう問題が起きたときに、上司に報告もいたしているわけでございますが、その上司がこうしろ、ああしろという的確な指示をしていないということが今回の調査の結果認められるのでございます。結局関係職員は、事故のないように、事故のないようにという気持ち、しかも何かトラブルが起きたときに関係上司が的確な指示をしてくれなかった。結局自分たちで事故のないようにということをするためにこのようなことをしたということを申し述べております。  それから、なおお尋ねのありましたテレビでございますが、これは金の領置金で買いまして、直ちに宅下げと私どものことばでは申しますが、内妻のほうに宅下げをしておりまして、ございませんでした、今回調査に参りましたときには。  それから、冷蔵庫につきましては、金の部屋あるいは金の戒護をしている廊下には冷蔵庫はございませんでして、静岡刑務所全体の炊事用に冷蔵庫がございますが、その冷蔵庫を、金がハムの喫食を要求いたしまして、その買ったハムを炊事用の冷蔵庫に保管をしていたという事実が認められたのでございます。
  143. 林孝矩

    ○林(孝)委員 なぜそういう特別待遇をしなければならなかったかという回答にはなっていないような感じであります。たとえばカメラ等にしたって、三万円、四万円、七万円という、キャノンなどのカメラだったらそれくらいしますけれども、またストロボだとかいろんなものになりますと、その刑務所の中でそういうものは必要でないわけです。常識的な判断から考えて、三台のカメラと、それからそういうストロボ、接写リングなんというのはカメラを趣味にしておっても非常に高度な技術も必要ですし、その刑務所の中で写すといったって、写すところはないわけですから。そういうものが事実持ち込まれておる。それを、そこまでしなければならなかった。それを見て、またそれに対して何にも感じなかった、感じておっても言えなかったかもしれないのですけれども、そこまでしなければならなかった理由というものはどこにあるのか。たとえばそのカメラ三台のうち二台を看守にやった。しかし看守にやったけれども、今回の問題が起こったので全部返却したという、そういうことも報道されておるわけなんです、うわさとして。ですから、なぜそこまで特別待遇しなければならなかったのか。そうしたいま御答弁あった問題以外にあるのではないかと思うわけでありますけれども、どうでしょう。
  144. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 現物が四月二十二日以後、金の部屋になかったのでございますが、金はしばしばカメラだとか、あるいは先ほど申し上げましたテレビだとか、あるいは女子の衣類でございますとか、こういうものを自分領置金等で買いまして、それを直ちに家族のほうに宅下げをしているわけでございます。したがいまして、これは金がどういうつもりで相当な品物を家族、内妻のほうにそういうことをやってやったのかは、金のほうが取り調べに応じませんのでわかりませんが、そういう品物が相当あるわけでございます。それからカメラにつきましても、自分購入を担当の専従職員に依頼をして、専従職員が買ってきますと、それを数日で家族のほうに渡してくれといって渡っている品物もございます。それからなお、本人が持っていたカメラ調べてみますと、金がそのカメラ自分の生活状況と申しますか、刑務所でおれはこういう生活をしているというようなスナップをとりまして、これをやはり家族に渡しているという事実が認められたわけでございます。  そういったところから、この品物がどういう動機で要求され、どういうつもりで看守が便宜をはかったのかということの想像が一応できるわけでございますが、その場合に当然御指摘のように、そういうことをすることによって職員が裏で金をもらっているとか、あるいは何らかの物的な供応を受けているのじゃないかということは私も常識的にはそれを当然考えているわけでございますが、いままでのわれわれの調査ではそれを疑うだけの端緒がうかがえないのでございます。しかしながら、これはやはり常識としてそういうことがあるということは十分一応考えられますので、その点はやはりどうしてもこの際にはっきりと解明をしておく必要があると考えまして、その点について検察庁のほうにお願いをしてあるというのが現状でございます。
  145. 林孝矩

    ○林(孝)委員 その刑務所の中で、先ほど御答弁にありましたように、もし事故が起こった場合、何かあった場合、その担当している看守がたとえば首になるとかあるいは格下げになるとか、いろいろなそういう処置があるために、事故のないようにないようにと、またそういう問題があっても上司にわからないようにと、そういうふうな環境で看守としての仕事をしておったというふうに考えられるわけなんですけれども、そう矯正局長はお思いにはならないでしょうか。
  146. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 その点は調査の過程においても認められるのでございます。今回の四十三年の三月七日入所以来本年の四月二十二日までの経過を見てみますと、最初はたばこ一本、二本というのが、これは四十三年の五月ごろから始まっております。それが相重なって、そのつど上司にばらす、あばれてやるとかいうようなことも言われ、また現にたばこは禁制品でございますので、それが明らかになると自分の責任を問われる、こういう心理状態にも追い込まれていたということも、今回の調査の結果認められるところでございます。
  147. 林孝矩

    ○林(孝)委員 このことについてこうした質問をいたしますのは、たとえば他の未決の収容者、そうした人たちの場合においては、そういう問題が要求された場合には禁制品は断わるとか、そういうふうな形で運営が行なわれているのではないかと思うわけです。そのように差別があるわけですね。そういう差別をしなければならなかったというのは、やはりいま御答弁の中にもありましたような、そういう看守と金被告との人間関係、結びつき等に大きな原因があるのではないかと思うのですけれども、他の場合はそういうことは行なわれてないわけですね。
  148. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 いわゆる収容者からたばこあるいは信書の不正授受等が要求された場合には、直ちに上司に報告をするということは、これは刑務官の基本の第一歩でございまして、これは研修その他あらゆる機会に徹底をはかっているところでございまして、そのために刑務所の中で幾多の、たばこ等に関する申し出があったということが発見されております。数にして申し上げますと、あるいは収容者同士あるいは職員に対する暴行傷害という事件が年間約八千九百件ばかりございますが、そのうちの大体七千件がたばこでございます。これはすべて、いわゆる誘われた職員申し出、あるいは先ほど申し上げました居房の捜検だとかあるいは施設内の捜検等の際に発見されているところでございまして、数字的な状況等から見ましても他の施設ではその点が励行されている。もちろん例外としてあって、われわれがまだ発見できないものがあるかもしれませんが、まずいまの数字等を見ましても、職員がその点については十分努力をしていると私は見ているわけでございます。
  149. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そこで、今回の事件が起こって調査が始まって、その結果でありますけれども、十日を過ぎてもやすりほうちょう等の入手経路が判明しない。今後これからの作業として、こうした不明な点に対していまのままの作業を続けていかれるのか、それとも新たに、そういう不明な点をはっきりさせるための何らかの措置をとられるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  150. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 その点につきましては、ほうちょう、それから白い粉でございますか、それからやすり等につきましては、金嬉老の公判の進行の関係において検察庁としてもその点を究明する必要があるわけでございまして、その点で検察庁としてはすでに公判の、われわれ補充捜査と申しておりますが、補充捜査をやっているわけでございますので、検察庁の補充捜査の過程において解明されることを期待すると同時に、私のほうといたしまして、なお職員について調査を進めていきたい。外部のやめた職員等で金に接触していた職員等もあることでございますが、そういう点につきましては検察庁のほうにもお願いして十分調べていただく。同時に、現在この事件のためで、調査中に高血圧の症状で取り調べが中断をしている職員もいるのでございますが、そういったいままでの調査の中で不十分な点について私のほうでなお調査を続ける、いまのところ、およそそういう方針で考えております。
  151. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いまの補充捜査は現在行なわれているのであって、いまのままその補充捜査というところに重点を置いて進めていくのか、そのままの作業を続けていくのか。これでは入手経路も判明しないということで新たな措置をとられるのか、そういう点を伺っておるわけです。
  152. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 その点につきましては、去る五月四日に全部の調査の資料を検察庁に提出をいたしまして、その資料に基づきまして検察庁独自の調査を開始してもらうことを依頼をいたしまして、検察庁としては翌五日から直ちに活動を開始しているということを承知いたしております。
  153. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、あと一点でありますけれども、管理体制の問題です。現在の静岡刑務所の監視体制はどのようになっているか、その点を具体的に詳しくお願いいたします。
  154. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 本事件発覚をいたしまして、直ちに金嬉老につきましてはいわゆる女子の特別区から一般の拘置監の独居房に移してございます。と同時に、関係看守職員を多数私のほうで取り調べを進めておりますので、管理体制に穴があいてはまた一大事でございますので、とりあえず現在東京拘置所から十名の職員を応援に出しまして、未決監の管理に直接当たらせると同時に、東京矯正管区から二部長保安課長を現在現地に駐留させまして、所長幹部の相談にあずからせ、管理に遺憾のないように現在期しておりますが、この点につきましては、なお不十分な点があれば応援体制をさらに強化してまいりたい、このように考えております。
  155. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、追加でありますけれども、今後の問題として、こうした事件の再発を防ぐために適正なる措置一つとして、担当人事の問題とかあるいは処遇の問題、待遇、それから採用人事の問題、こうした問題に対する具体的な企画等が現在できておりますでしょうか。
  156. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 いわゆる第一線職員につきましては、一つは採用の問題がございます。この点につきましては、御承知と思いますが、人事院の刑務官採用試験で採用しているのでございますが、志願者が逐次減少をいたしております。志願者の減少は即採用者の質的な低下を招くおそれもあるわけでございますので、その採用について人事院となお協議をいたしておりますが、多くの志願者をまず獲得するように刑務所側としてのやはりPRと申しますか、この点についてなおくふうをこらすということ。それから採用後、各現場に配置する前に矯正研修所に入所させて、そこで基本的な研修を行なった上で現場に配置をする、この点につきましては一昨年から曲がりなりにも実施しているわけでございますが、研修所の建物とかあるいは全体の職員の数等の問題で十分に行なわれていないのを、今後はさらに予算の面でこの十分な予算を獲得しまして、新規採用の職員は必ず研修所で一定期間の研修を経た後に現地に配置をするという体制を強化してまいりたいと思っております。そのほかに専門研修というのを研修所で行なっているわけでございますが、その専門研修の中にいわゆる未決の処遇に当たっている職員の研修を取り入れていく。それからさらに一般職員、特に管理部門の職員に対する再研修とかいうことを計画的にぜひ実現したいということを考えております。  それからさらに、これは士気の高揚の一端と考えておりますが、刑務官の待遇全般について、その向上について実現をはかっていく。現在予算上で私のほうでやっておりますのは、さまつなことではございますが、舎房担当の手当だとかあるいは作業上の手当だとかあるいは衣服の整備、新しい衣服をまんべんなく本人に支給できるようにするとか、そういった面についての実施を現に一部やっておりますが、さらにこれを拡充をしていきたい、このように考えております。
  157. 林孝矩

    ○林(孝)委員 最後に、先ほども申し上げましたように、こうした問題を再び起こさないための真剣なる検討をされて具体的な方針を、不十分という結果ではなしに十分実施しているという報告ができるようにがんばっていただきたいと思いますし、今回の問題が下級職員はなしに、むしろ上級職員あるいは矯正管区の幹部、そうした人たちがもっと真剣に巡視あるいは監視の管理体制をしいてやっておれば早期発見を可能にしたと考えられますし、今後はそういう怠慢な幹部はなしに、問題が再び起こらないように厳正なる職務遂行をお願いしたい、そのように思います。  以上で終わらせていただきます。
  158. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 御指摘の点は深く肝に銘ずる次第でございまして、これについて明確な再建策を立ててやらなければ、他の多くのまじめな職員に対してももうまことに申しわけないの一言に尽くるわけでございますので、この点は私も全力をあげて、全責任を持って実現に邁進いたしたいと考えております。
  159. 高橋英吉

    ○高橋委員長 松本善明君。
  160. 松本善明

    松本(善)委員 先ほど法務大臣にもお聞きしたわけでありますけれども、この種の事件が起こります原因の一つには、やはり刑務所の中で起こったことが普通の世の中にはわからない。何か隔離をされた社会になっていて、刑務所の中のことが知らされにくい状態になっているのではないかと思いますけれども、その点について矯正局としてはどういう配慮をしておるのか。また、今後この事件が起こった経緯にかんがみてどういうふうにしていこうというふうに考えておられるか。その点について一言伺いたいわけです。
  161. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 御指摘のように刑務所というものの考え方でございますが、なるべく中に入っている収容者を外の目に触れさせないようにというのが古い監獄の考え方であったと私は見ておりますが、現在はそうではなしに、刑務所を社会に見せるというのが刑務所自身の運営を進歩させるためにも必要なことであるというように私自身は考えております。したがいまして、私としましては従来から刑務所の参観の申し出が民間からございます、その場合には施設の具体的な運営管理に特別な支障があれば別ですが、外部からの参観の申し入れ等があった場合には、これに応じて、刑務所の中を見てもらうという処置をとらせておりますが、その考え方をまた引き続き維持していきたいというように考えております。  それからいま一つは、すでに御承知だと思うのでございますが、現在の法規では未決囚の処遇について明確な条文がございません。この未決囚の処遇について明確な条文がなくて、そのつどそのつど照会だとか通達等でまかなわれてきていたという点に、未決の処遇に当たっている職員を困らせたと思うのでございますが、この未決囚の処遇について明確な基準を打ち立てる、このことは監獄法の改正の一つのポイントにしているわけでございます。  それから、収容者との外部交通の問題がございます。通信、面会等がございます。この外部通信関係につきましても、現行監獄法はすべて所長の自由裁量にゆだねられておりまして、具体的な基準とかそういったものが法律に定められておりませんが、その点について法律の中に明確にできるものはできるだけ明確にして、施設長の自由裁量の判断に誤りのないようにしてやりたい。  さらに、情願という制度がございます。収容者が不服の申し立てがあった場合、その情願制度について現在の監獄法は不備なのではないかという点を考えまして、その点についても監獄法で手当てをしてまいりたい、現在私が考えておりますおもな点は以上でございます。
  162. 松本善明

    松本(善)委員 それからもう一つ、受刑者あるいは未決の収容者、この人たちが監獄の中のことを話すというのは非常に勇気が要るといいますか、私どもが経験をしておるのでも、中で暴行を受けたというようなことも問題にしようかというと、これはどうしてもしないでくれ、あとが困るからということが間々あるわけで、そういうようなことが起こらないような方法というものは何か考えられておるでしょうか。
  163. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 その点につきましては、本人からたとえば手紙によって外部に知らせたいというような願い出があった場合に、看守のほうでそれを押えるというようなことはしないように、ただし、御承知と思いますが、虚偽の点あるいは明らかに虚偽だと思われる点、あるいは手紙の内容に刑事事件の内容を含んでいるような文言があった場合、あるいは逃走だとかそういうようなことを書くというような場合、こういう点についてはその点の削除を求める、あるいは応じなければその点の訂正を求める、あるいは削除をするということにつきましては、これは当然私はやるべきだと思いますが、それ以外につきましては決して外部との交通を押えることのないようにということを、繰り返し私としては機会あるごとに申しているわけでございますが、その点のなお一そうの明確化をはかってまいりたい、このように考えております。
  164. 松本善明

    松本(善)委員 前にこの委員会で青森の刑務所におけるリンチ事件のことが問題になりましたが、詳しくなくてけっこうですけれども、あれは一体どうなりましたでしょう。
  165. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 検察庁の取り調べの結果、刑務所職員が三名、青森地方裁判所に起訴されまして、現在裁判進行中でございますが、一応順調に証人の調べが行なわれております。いつごろ結審になるか、ただいま私記憶いたしておりませんが、裁判の進行は、一応順調に審理は進んでいるというように承知いたしております。
  166. 松本善明

    松本(善)委員 刑務所内での収容者の人権の保障ということが制度的に確実になっていて、そして刑務所職員処遇について確信を持てるような状態ということが、こういうような事件を起こさないための一つの条件になるというふうにも思いますし、また同時に、刑務所行政を近代化をし、人権を保障していくということにもなるかと思いますが、そういう観点から考えられておる改善点というのはどういうものでしょうか。
  167. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 その点につきましては、いわゆる第一線の職員の執務基準と申しますか、これをすでに作成いたしまして、約四、五百ページになろうかと思いますが、これを作成して近く印刷に付しまして、研修所の教材に使う、あるいは各現場における自所研修の教材に使うということを現在考えてやっております。
  168. 松本善明

    松本(善)委員 その執務基準というのは資料として御提供いただけますか。
  169. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 現在印刷中でございますので、この扱いをどうするかということについては、私まだそこまで考えておりませんが、できるだけ御要望に沿うようにいたしたいと思います。
  170. 松本善明

    松本(善)委員 先ほどお話しのように、未決の一収容者についてはちゃんとした基準がない、通達などでやられているということでありますが、やはり外部的にも、この取り扱いの基準というものが明確になっていくという必要があろうかというふうに思うわけですけれども、そういう点ではその執務基準なども公表していくというほうが、ガラス張りにしていく、そして刑務所というものが何か隔絶されたところでないということにしていくためにも、また人権保障のためにも必要であろうかと思いますが、いかがですか。
  171. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 御趣旨については私、同感でございますが、具体的には、たとえばいろいろな刑務所の内部の機械の操作だとか、刑務所の中に現在用意されておりますいろいろな設備関係等のことにも触れられているかと思いますので、その点は、私の立場といたしまして慎重に検討をさせていただきたいと思います。
  172. 松本善明

    松本(善)委員 前向きに検討をされたいというふうに思います。  もう一つ伺いたいのは、この静岡刑務所で起こった事態を正しく解決をしていく、綱紀を正しくしていくということはもちろんのことでありますし、これは各委員がおやりになったので、私ここで触れないわけでありますけれども、このことのために、それでは何でも収容者にきびしくすればいいのだというふうになっても、これは非常に困ることではないかというふうにも思うのです。先ほど、抽象的なことばではありましたが、法務大臣は適切にということでありましたけれども、この点についての配慮、そういう点についてはどういうふうにやっていこうというふうにお考えでありますか。
  173. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 いわゆる金嬉老関係のような処遇を、われわれは処遇が後退したということばを使っておりますが、そういう意味はなしに、本来適正に行なうべき処遇が逆に悪くなっておると申しますか、そういう意味でもわれわれは処遇の後退ということを言っております。この種の事件があったからといって、各収容者の特性に応じてそれぞれの適当な弾力性のある処遇というものが、また具体的な妥当性という意味から行なわれて差しつかえないと私は思っておりますが、そういう意味から後退がないということは、私は、別途この点も注意をするということで、通牒等についてその点も触れてまいりたいと思っております。
  174. 松本善明

    松本(善)委員 行政協定の十七条に関して、アメリカ合衆国軍隊の構成員、軍属、家族の身柄の拘束については特別の協定がありますが、日本の収容者とのおもな違い——そう詳しくお聞きするわけではありませんが、大きな違いをお話し願います。
  175. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 食べものの点、それ以外には特別な差異はないと私は考えております。
  176. 松本善明

    松本(善)委員 それから日本の刑務所における処遇、この処遇の実情は国際的に見てどういう水準にあるでしょうか。
  177. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 御承知のように、これは条約ではございませんが、被収容者処遇最低基準規則というのがございます。この規則の中に収容者についてはこういう処遇があるべきだということが約五、六十カ条だと思っておりますが、書いてございます。それについて私のほうで昨年実態調査をやりました結果から申し上げますと、処遇最低基準規則に掲げられている基準についての充足率はおおむね七五、六%というように記憶いたしております。この被収容者処遇最低基準規則の各国の充足状況ということについて、若干の外国の研究がございますが、それによりますと、これは全くまちまちでございまして、非常に充足率のいいところが、たとえばこれはイスラエル等であったかと思いますが、これは九〇%をこえておるというようなことが報告されておりますが、大体の基準から申し上げますと、日本はこの充足率からいえば一応上位に入るというように承知いたしております。
  178. 松本善明

    松本(善)委員 この事件の起こりましたのを契機として、この矯正行政を収容者の人権保障とそれから近代的なものにするように、一そうの努力をしてもらいたいということを要望して、質問を終わりたいと思います。
  179. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 御指摘の点につきましては、全力をあげて実現いたしたいと思っております。
  180. 高橋英吉

    ○高橋委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  181. 高橋英吉

    ○高橋委員長 速記を始めてください。  岡沢君。
  182. 岡沢完治

    岡沢委員 時間がおそいのに質問の機会を与えていただきまして恐縮でございますが、必ず五時までにやめるということで質問を続行させていただきます。  矯正局長にお尋ねいたしますが、刑務所内の新聞検閲、ラジオの聴取等はどういう基準で、実際上どういう取り扱いをなされておるか、根拠の法規と扱いの実態をお尋ねいたします。
  183. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 新聞につきましては、監獄法第三十一条「在監者文書、図画ノ閲読ヲ請フトキハ之ヲ許ス 文書、図画ノ閲読ニ関スル制限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム」それを受けまして監獄法施行規則の八十六条でございますが、「文書図画ノ閲読ハ拘禁ノ目的ニ反セズ且ツ監獄ノ紀律ニ害ナキモノニ限リ之ヲ許ス 文書図画多数其他ノ事由ニ因リ監獄ノ取扱ニ著シク困難ヲ来タス虞アルトキハ其種類又ハ箇数ヲ制限スルコトヲ得」この施行規則を受けまして昭和四十一年の十二月十三日に、「収容者に閲読させる図書、新聞紙等取扱規程」というのが大臣訓令で出ております。その中に、次の各号に該当するものでなければ、未決拘禁者に閲読させる図書、新聞紙その他の文書、図画は差し入れができないということになっております。その基準は、「罪証隠滅に資するおそれのないもの」「身柄の確保を阻害するおそれのないもの」「紀律を害するおそれのないもの」ということになっており、さらに「所長において適当であると認めるときは、支障となる部分を抹消し、又は切り取った上、その閲読を許すことができる」となっております。  さらに依命通牒が出ておりまして、右取扱規程の運用についてという中に、未決拘禁者に対しては、「当該施設に収容中の被疑者被告人が罪証隠滅に利用するおそれのあるもの」「逃走、暴動等の刑務事故を取り扱ったもの」「所内の秩序紊乱をあおり、そそのかすおそれのあるもの」「風俗上問題となるようなことを露骨に描写したもの」「犯罪の手段、方法等を詳細に伝えたもの」「通信文又は削除しがたい書き込みのあるものあるいは故意に工作を加えたもの」などはその閲読を許さないこと、これが基本的な取り扱いの基準でございます。
  184. 岡沢完治

    岡沢委員 時間の関係でラジオの聴取あるいはその他の物品持ち込み等についての答弁は求めないことにいたしますけれども、いまの局長のお答えによりましても、きょう法務大臣自身がきわめて時代に合わないとお認めになりました監獄法、それに基づく施行規則あるいは依命通牒、基準の法令自体が実際上現実の矯正目的あるいは社会情勢の変化等に合っていないことが明らかであります。今度の場合も、一般被疑者被告人あるいは受刑者には全く想像もされないようなカメラテープレコーダーあるいは朝鮮づけ等が正規手続でこれは認められたという御答弁がございました。刑務所内の扱いが刑務所当局の裁量だけで、ある受刑者、被告人にはきわめて寛大に、ある被告人被疑者あるいは受刑者には不当に人権がじゅうりんされるような意味できびし過ぎるということも、けさ来の委員会の各委員の質問で指摘されたとおりであります。そういう点、私はやはり公平の原則ということも一つの大きな教育行刑の内容として大切なものだと思いますし、それ以上に法令の改正あるいはその基準の明確さ、あるいは現に学生被告人から起こされておりますような知る権利を妨害するというような不当な新聞閲読等の規制というような問題についても、先ほども指摘をさしていただきましたように、これを契機にせっかくの不幸な金嬉老事件を逆に災いを幸いに転ずる方向でのチャンスにしてもらえたらという感じがするわけでございます。ぜひこの機会に新聞及びラジオの聴取等も含めた新しい、この情報化時代にふさわしい、一方で受刑者に対する拘束あるいは行刑の目的を阻害しない範囲内でやはり国民としての人権を確保する。それがかえって本人たちの更生あるいは社会へ復帰したときの順応性をむしろいい方向で準備させることになろうと思うのです。あまりにも隔絶された方向で知らせない、あるいは去勢をしてしまう、それが刑務所を出てすぐまた犯罪を起こすという累犯の原因にもなる場合が多いのではないか。ある意味では開放的に、ある意味では公平な扱いを形成されるような行刑上の取り扱いを、監獄法改正を法務大臣自身が言明されたこの機会にぜひ御検討いただきたい、こう思うのであります。  先ほど大臣のおられるときに私が指摘いたしましたこの発覚の動機、もし金嬉老自身が弁護人にあるいは記者に発表しなかったら、この事件はまだ表に出ないままで内部で陰性に浸透し、先ほど指摘がありましたように、担当の浅川という保安課長が逆に網走の管理部長に栄転をする、これは無理が通れば道理が引っ込むような、むしろ職員の立場から見た場合に、事なかれ主義の、あるいはじょうずに世渡りをする者が職員としては正しいのではないかというような錯覚を職員自身に与えるような、あるいはまた先ほど矯正局長もお答えになっておられましたが、まじめな職員自分の職務に疑問を持つような状態をまだ今後も続けさせたのではないか。幸か不幸かこの事件金嬉老自身がみずから弁護人を通じて国民の前に明らかにしたという皮肉な事件でもあるわけなんで、この辺を考えました場合、もしそういう事態がなかった場合の事件の進展等を考えますと、非常に心配限りないものを感ずるわけであります。この辺もぜひ御検討いただきたいと思うわけでございます。  この機会に、局長のお考えになっております、また一部すでに答申も出ておりますけれども、監獄法改正の重要点、中身等について腹案がありましたらお答えいただきたいと思います。
  185. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 御指摘の点につきましては、われわれの矯正運営自体について世人の疑惑を解くためにも、また第一線の看守が自信を持って仕事ができるためにも、具体的な文書、図画に限らず、執務の具体的な基準を明らかに示すということが必要であると存じます。監獄法の改正の要点につきましては、まず拘禁の目的を明確にする、さらにその内容といたしましては、人権の保護とそれから拘禁の目的、さらに収容者の社会復帰を目的とする、これを柱にいたしまして全条文を貫いてまいりたい。その中で御指摘の点について関連いたしますのは、外部交通の問題であります。その中には文書、図画、ラジオ、面会等すべて含まれますが、外部交通の関係において禁止される場合というのをできるだけ明確に法律に書き、またそれを受けて政令、省令に譲っていく、そしてそれ以外のことについてはできるというたてまえで明確にしていきたいと思っております。さらに収容者の不平不満についての道を制度的に現在よりももっと充実したものにしていくという点が、御指摘の点に最も関連して現在想を練っている最中でございます。
  186. 岡沢完治

    岡沢委員 時間の関係で答弁を求めないで最後に私の見解を述べて終わりたいと思いますけれども、この事件の背景と申しますか、原因と申しますかはきわめて多岐にわたると思いますが、私自身実際の原因に最も当たっているのではないかと思いますのは、刑務所自身にあるいは担当者に弱みがある、それにつけ込まれましてだんだんエスカレートしていったということではないか。そうしますと、やはり刑務所の機構上あるいは法規上、あるいは実際の扱い上、あるいは刑務官の人の問題、けさ田中委員からも御指摘がございましたが、そういう面で私はいまの行刑施設、行刑内容についてぜひ受刑者からあるいは被疑者から、被告人から、頭のいい金嬉老の場合でなくともつけ込まれるような欠陥をなくするということが、またこういう同種の事件を防ぐ一つの方法だろうと思います。そういう点につきまして、ぜひ先ほど申しました法改正とあわせまして総点検をなさって、改めるべき点をぜひこの機会に思い切って改めていただいて、かえってこの事件が明るい、しかも国民から信頼される行刑への転換点にしてもらえたらと思うわけであります。  特にもう一点、これは大臣のおられるときに強く指摘いたしましたけれども、金嬉老がこの事件外部に発表して以来二週間もたつのに、いまだに、先ほど申しました刃物の出所等が明らかにされない、経路が明らかにされないということ自体、法務省に綱紀粛正の能力があるのかどうかという点が、この事件とは離れて非常に大きな問題であろうと思います。私は厳正な処分ということも要求いたしましたけれども、それは必ずしも拙速をたっとぶわけではございませんが、少なくとも捜査については、国民にこの機会に、内部の事件だからといって甘過ぎるとか、あるいはさらにさんずいの事件が起こることをおそれて手控えているのではないかという印象を与えないためにも、厳正な捜査、きびしいといいますか、適切な捜査をさらに早急にやっていただきたいということをお願いして、質問を終わります。
  187. 高橋英吉

    ○高橋委員長 この際、申し上げます。  沖繩の法曹人に対する弁護士資格特別措置法案の成立について、沖繩法曹会会長比嘉良仁君から本委員会あてに礼状が参っておりますので、御報告いたします。  本日は、この程度にとどめ、次回は、来たる八日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後五時一分散会