○今
政府委員 基本的な考えにつきましては、きょう午前中
文部大臣がるる
説明されたとおりでありまして、やはり
著作者の
権利の厚い
保護をはかるということが、この
著作権法の
第一義的な
意義でありまして、その
利用者の公正にしてかつ
調和ある
利用、そのような両者との間の
関係もいま仰せのとおりでありまして、ただ七十年も前につくられた
著作権法が、今日まで部分的には
改正がございましたが、根本的な
改正は今回が初めてでございまして、いろいろな問題を含んでおりますのは、つまり七十年間の
日本の
著作物に対するさまざまな
考え方が、七十年間のあるいは成長と申しますか、経路をたどったのでありまして、まず
日本の
著作権法が明治三十二年にできまして、すぐに当時の
ベルヌ条約に加盟いたしました。この
ベルヌ条約の線に沿ってさまざまな
改正も行なわれたのでありまして、今後もそのような経路を通るだろうと思います。しかしながら、やはり
日本と諸外国との間の非常な習慣上の相違がございます。アメリカのほうでもまた万国
著作権条約というものをつくって、これにも
日本は加盟しておるということと、またいろいろな
著作物の種類の変化というものが歴史的にもこの間にさまざまに行なわれまして、たとえばいろいろ論議がございましたが、例を申しますと
映画のような問題でございます。
映画は、アメリカにおいては大体会社を
中心にしてできておりまして、会社と
著作者との
関係は雇用
関係になっているというような習慣がございます。またヨーロッパのほうでは、
ベルヌ条約関係では、フランスのように大体会社というものが早くつぶれまして、ユニオンというような
制度で、監督のユニオンと申しますか、組合でございます、監督の組合あるいはカメラマンの組合、俳優の組合というものがあって、一本一本の企画をだれかが立てて、またその人が金を集めてきて、その組合からこれにはこの監督がいい、このカメラマンがいいというようにして、一本勝負のような組織でございまして、そのために
ベルヌ条約の性格が、そういうように
著作者というものの
立場あるいは
考え方というものは、その習慣によって違っております。それを
日本はまず会社というもので
映画を出発させたものでありますから、アメリカ的でありますが、技術的にあるいは監督、カメラマンなどは非常にヨーロッパの影響を受けてヨーロッパ的であるというような、非常に複雑な
関係がございます。また今度の新しくできました
隣接権の問題あるいはレコードの問題というようなものの
考え方も、ヨーロッパの習慣では、
日本のような喫茶店というものはヨーロッパにございません。かつまた、音楽をカフェーとかキャバレーなどで演奏しますのには、レコードを用いるよりもはるかに多く実演をやっておりまして、レコードにかえることによりまして
実演者が失業をするというような状態、ですから、レコードの
著作権料を相当取るということは、あるいは
実演者の失業を
保護するというような
意味が相当強いのでございます。また
日本は、いわゆるヨーロッパ風のカフェーというものがなくて、いわゆる喫茶店というようにこれを訳しますと、大学の近所だとかあるいはいろいろな町のはずれのほうにある小さなものまでレコードをやっている。別に
実演者を擁護する必要はない。お茶を飲んで音楽、レコードを聞いたからといって一々
著作権料を取り立てていたら、取り立てるほうに非常な労力と人手、費用が要りまして、事実実行不可能じゃないかという、
日本と西欧とのそういう習慣上の相違というようなものをどういうように調整するか。それから、
著作権法でこうきめましても、なかなか実際上の問題になりますと非常にむずかしくて、これも事実に即して今日の
著作権法に書いたわけであります。両者ともいろいろな話し合いをして、まず双方の大体の理解に到達したと思うのでございます。そういう点で、
国内法であると同時に
国際法の性格を持ち、かつまたさまざまの国際的、と申しましても、二つの
著作権がある、こういうような問題も勘案して、今日のこの
著作権法ができたのでありまして、やや複雑であったり、先ほども写真の年限などというような
お話もございましたが、これも各国のものを勘案しての結論でございまして、これが決定的と申すのでないのですから、どうかそういう点もひとつ十分
日本の実情というものをお考えになって御決定を願いたいと思います。そういう
意味で、非常に幅の広い
国内的な
著作権であると同時に、国際性をも勘案して、できることならば二十年ごとに
改正する、この
ベルヌ条約に、どこかにわれわれが加盟し得るような形にいたしたいという理想を追っているのでありまして、ただいまでは
昭和三年のローマ法からまだ進んでいない状態であります。この点も勘案して今度の
著作法は立案されたのでありまして、どうかひとつそういう
著作権法の草案立案にあたりまして、さまざまな考慮と理想と申しますか、そういうものまで含めて書かれてあるのでありまして、十分な御検討をお願いいたしたいと思います。