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1970-05-08 第63回国会 衆議院 内閣委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年五月八日(金曜日)     午前十一時十九分開議  出席委員    委員長 天野 公義君    理事 伊能繁次郎君 理事 熊谷 義雄君    理事 佐藤 文生君 理事 坂村 吉正君    理事 塩谷 一夫君 理事 大出  俊君    理事 伊藤惣助丸君 理事 和田 耕作君       阿部 文男君    伊藤宗一郎君      稻村佐近四郎君    加藤 陽三君       笠岡  喬君    鯨岡 兵輔君       辻  寛一君    中山 利生君       葉梨 信行君    堀田 政孝君       山口 敏夫君    木原  実君       佐藤 観樹君    高田 富之君       横路 孝弘君    鬼木 勝利君       渡部 一郎君    受田 新吉君       東中 光雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 小林 武治君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君  出席政府委員         法務大臣官房長 安原 美穂君         法務大臣官房会         計課長     伊藤 榮樹君         法務大臣官房司         法法制調査部長 影山  勇君         法務省民事局長 新谷 正夫君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         法務省矯正局長 勝尾 鐐三君         法務省入国管理         局長      吉田 健三君         運輸省自動車局         業務部長    見坊 力男君  委員外出席者         総理府恩給局次         長       中嶋 忠次君         法務大臣官房訟         務部長     香川 保一君         大蔵省理財局次         長       本間 英郎君         大蔵省理財局鑑         定参事官    三島 和夫君         建設省都市局都         市計画課長   大富  宏君         参  考  人         (株式会社新都         市開発センター         代表取締役社         長)      大池  眞君         内閣委員会調査         室長      茨木 純一君     ――――――――――――― 委員の異動 五月八日  辞任         補欠選任   古井 喜實君    稻村左四郎君 同日  辞任         補欠選任  稻村左四郎君     古井 喜實君     ――――――――――――― 五月七日  恩給共済年金調整に関する請願秋田大助  君紹介)(第七〇三二号)  同(井上普方紹介)(第七〇三三号)  同(池田正之輔君紹介)(第七〇三四号)  同(海部俊樹紹介)(第七〇三五号)  同(熊谷義雄紹介)(第七〇三六号)  同(久野忠治紹介)(第七〇三七号)  同(倉成正紹介)(第七〇三八号)  同外二件(河本敏夫紹介)(第七〇三九号)  同外四件(砂田重民紹介)(第七〇四〇号)  同(田川誠一紹介)(第七〇四一号)  同(田中榮一紹介)(第七〇四二号)  同(中尾栄一紹介)(第七〇四三号)  同外二件(永田亮一紹介)(第七〇四四号)  同外五件(永山忠則紹介)(第七〇四五号)  同(増岡博之紹介)(第七〇四六号)  同(八木徹雄紹介)(第七〇四七号)  同(浦野幸男紹介)(第七五〇九号)  同外一件(江崎真澄紹介)(第七五一〇号)  同(大西正男紹介)(第七五一一号)  同(加藤陽三紹介)(第七五一二号)  同(久保田円次紹介)(第七五一三号)  同(砂原格紹介)(第七五一四号)  同(中村梅吉紹介)(第七五一五号)  同(華山親義紹介)(第七五一六号)  同(藤井勝志紹介)(第七五一七号)  同外二件(早稻田柳右エ門紹介)(第七五一  八号)  一世一元制法制化に関する請願渡海元三郎  君紹介)(第七〇四八号)  同(山田久就君紹介)(第七五二四号)  人事行政厳正化に関する請願菅野和太郎君  紹介)(第七〇四九号)  国防省設置に関する請願菅野和太郎紹介)  (第七〇五〇号)  靖国神社国家護持早期実現に関する請願(赤  澤正道紹介)(第七〇五一号)  同(石井一紹介)(第七〇五二号)  同(小沢辰男紹介)(第七〇五三号)  同外六十七件(左藤恵紹介)(第七〇五四  号)  同(谷垣專一君紹介)(第七〇五五号)  同(永田亮一紹介)(第七〇五六号)  同(原健三郎紹介)(第七〇五七号)  同外六十四件(古川丈吉紹介)(第七〇五八  号)  同外三件(三ツ林弥太郎紹介)(第七〇五九  号)  同(江崎真澄紹介)(第七五二五号)  同外四件(福田篤泰紹介)(第七五二六号)  恩給共済年金調整等に関する請願外十件(  野呂恭一紹介)(第七〇六〇号)  同(山本幸雄紹介)(第七〇六一号)  靖国神社法制定反対に関する請願外二十四件(  麻生良方紹介)(第七〇六二号)  同外四百七十四件(池田禎治紹介)(第七〇  六三号)  同外四百五十七件(春日一幸紹介)(第七〇  六四号)  同外七十四件(川端文夫紹介)(第七〇六五  号)  同外四百十六件(河村勝紹介)(第七〇六六  号)  同外二十四件(鈴木一紹介)(第七〇六七  号)  同外二十四件(曽祢益紹介)(第七〇六八  号)  同外四百二十八件(塚本三郎紹介)(第七〇  六九号)  同外五十三件(竹本孫一紹介)(第七〇七〇  号)  同外七十四件(西尾末廣君紹介)(第七〇七一  号)  同外二十四件(門司亮紹介)(第七〇七二  号)  同外五十件(吉田賢一紹介)(第七〇七三  号)  同外四百九十九件(和田耕作紹介)(第七〇  七四号)  同外九十九件(渡辺武三紹介)(第七〇七五  号)  靖国神社国家管理反対に関する請願青柳盛  雄君紹介)(第七〇七六号)  同(浦井洋紹介)(第七〇七七号)  同(小林政子紹介)(第七〇七八号)  同(田代文久紹介)(第七〇七九号)  同外一件(谷口善太郎紹介)(第七〇八〇  号)  同(津川武一紹介)(第七〇八一号)  同(寺前巖紹介)(第七〇八二号)  同(土橋一吉紹介)(第七〇八三号)  同(東中光雄紹介)(第七〇八四号)  同(不破哲三紹介)(第七〇八五号)  同(米原昶紹介)(第七〇八六号)  同(林百郎君紹介)(第七〇八七号)  同(松本善明紹介)(第七〇八八号)  同(山原健二郎紹介)(第七〇八九号)  中小企業省設置に関する請願外五十七件(井岡  大治君紹介)(第七〇九〇号)  公職追放による警察退職者救済に関する請願(  大平正芳紹介)(第七〇九一号)  兵庫県一宮町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(新井彬之君紹介)(第七五一九号)  兵庫県神崎町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(新井彬之君紹介)(第七五二〇号)  旧軍人等の遺族に対する恩給等の特例に関する  法律の一部改正に関する請願八田貞義君紹  介)(第七五二一号)  傷病恩給等の不均衡是正に関する請願八田貞  義君紹介)(第七五二二号)  元満鉄職員恩給等通算に関する請願八田貞  義君紹介)(第七五二三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月七日  靖国神社国家護持に関する陳情書  (  第三六二号)  恩給法早期適正化に関する陳情書外二件  (第三六三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  五八号)  法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第三七号)      ――――◇―――――
  2. 天野公義

    天野委員長 これより会議を開きます。  恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鬼木勝利君。
  3. 鬼木勝利

    鬼木委員 恩給法改正につきまして、少々お尋ねをいたしたいのでございます。  恩給並びに共済組合掛け金の問題でございますが、御承知のとおり、恩給は百分の二の納金をいたしておった、ところが共済組合のほうは、非現業が千分の四十四、それから現業が千分の四十、なお、恩給受給は十七年、共済組合は二十年、こういうふうに違っております。むろんこれは内容も違っておるのでございますが、結局恩給法共済組合法にかわったということで、同じようなことと思いますが、どうしてこのようにかわったのか、その根拠お尋ねしたいと思います。
  4. 中嶋忠次

    中嶋説明員 恩給法納金は、先生のおっしゃるとおり、趣旨が共済組合法掛け金と同じようだというお考えもあると思いますが、恩給法は古い法律でございまして、従来、恩給法納金は、恩給としての給付の額に関係なく、国家へ納める金だという思想でつくられております。ところが、共済組合法におきましては、財源を明らかにするために、公務員のほうも給付額一定額負担しなければならないという、いわゆる保険数理に基づく制度に根本的に変えることによって、こういう差異が出てきたことだと考えております。
  5. 鬼木勝利

    鬼木委員 この共済組合というのは、読んで字のごとく、互助の精神に立っておるものと思いますが、かつての恩給納金は、一般歳入あるいは国家経済援助として利用されておった。共済組合のほうは、共済基本金として長期給付する、そういう点も加味して共済組合のほうに移行するように変えられたのでございますね。その点もひとつ。
  6. 中嶋忠次

    中嶋説明員 恩給制度のほうがいいか、共済制度のほうがいいかということにつきましては、相当議論のあったところでございますが、政府の方針といたしまして、公務員につきましても、他の一般勤労者と同様、社会保険方式による共済制度が適当であるという判断のもとに恩給制度が移行した次第でございます。したがいまして、恩給法といたしましては、その共済制度に移行できない部分だけをとって、現在もなお続いておるという状態でございます。
  7. 鬼木勝利

    鬼木委員 共済組合恩給制度はおのずから根本的に意味が違っておるということは了解されますが、そうしますと、恩給受給者は、国家に対して物心ともに非常に貢献をした人ということが考えられるのですね。長年の間国家のために公僕として尽くし、かつまた、納金一般歳入国家経済援助をした、こういうことになりますと、恩給受給者は少なくとも国に対して物心両面から非常に貢献をした人だ。ややともすると、恩給亡国だなんということを耳にすることもありますけれども、私は決してそうじゃないと思う。当然なことだと思うのですよ。そうすると、恩給受給者に対しては非常に優遇をしなければならぬ。そして常に親心を持った配慮が必要であると思うのですね。どういうふうにお考えでございますか。あとお尋ねする関係があるから、前提にこれをお尋ねしておるわけなんです。
  8. 山中貞則

    山中国務大臣 いまの問題は、恩給受給者すなわち恩給法第一条に定められている恩給を受ける権利を有する人たちに対する国の考え方でございますから、技術的な問題ではございませんし、私から申し述べさせていただきます。  私はそのような恩給を受ける権利を持っておる人々は、国家国民に対して公共立場においてその生涯をささげて退かれた人々でありますから、当然国民立場において、国家の名において、それに対して恩給を支給する義務を負うものである、こう考えております。そのような権利義務関係が、今日まで累次の議員立法を含む改正が、上塗り上塗りで参りましたために、あるいは財源上の理由等にもよりまして、受給権者方々恩給あり方について非常な不安を持っておられる、このことは恩給法精神からいって申しわけのないことだと考えまして、そこで今回の予算をつくるにあたりましては、その考え方が、理論的にもまた積算の基礎にもはっきりと打ち出せて、政府の合意として得られるものを求めるために懸命の努力をいたした次第でございます。でありますので、俗に積み残し分といわれております四・五%の半分の二・二五%についてだけは一月実施といたしまして、三カ月ずらして、財源措置を四十六年度予算に譲りましたものの、これは全くの最終的な、閣議直前における総ざらいのあげくの予算不足ということでとった措置でありまして、実質は公務員給与、物価の値上がり等について完全にこれをルートとして確立することが打ち立てられたものと考えております。でありますので、今回の措置によって、これから恩給受給者方々が、本来自分たちは当然国から恩給を給せられる権利を持つのである、その権利の実体についての不安というものが少なくとも大多数消えていったであろうと私は考えます。これからはこの慣行というものが、政府全体の立場において、財源主管省も含めまして、守られていくことによって、受給者方々の本来あるべき姿が取り戻されていくことになる、これは政治の場にある者として、今日まで敗戦による中断、混乱時代が中に介在したとはいえ、たいへん申しわけなかったことでございますし、やはりあるべき姿を取り戻すことがおそきに失したとはいえ、本然の、国家義務としてお支払いを申し上げるという、国の名において行なう行為の前提が確立したものであると考えまして、受給権者方々にも必ず御理解を賜わるものであると信じておる次第でございます。
  9. 鬼木勝利

    鬼木委員 恩給制度に対しての長官のお考えは私まことにありがたく思いますが、せっかく長官がそのようにお考えになっておりますけれども、今回の恩給制度改革にあたっても、非常に不満な点が多いので、順次そういう点について御質問申し上げたいと思います。  恩給外所得による普通恩給停止基準でございますが、いただいておりますところのこの資料によりますと、所得百二十万を百三十万に上げる、恩給年額を二十四万円を二十六万円に切り上げる改正をする、このように載っておりますが、私の計算によりますと、恩給年額二十四万円の方は二十六万一千円になるように思うのでございますが、正式な詳しいものでは二十四万に一・〇八七五をかけると二十六万一千円になるようでございます。いまの長官お話を承りましても、私はこれを二十六万に切り下げるんじゃなくして、なぜそれだけの親心があるならばこれを二十七万円に切り上げてもらえないか。ここの参考資料を拝見しましても、そういう点を私は痛切に感ずるのですね。わずかそこの一万のことを、あと切り捨てる。それは恩給局長でも何でもあなた方が御自分ポケットマネーを出されるんじゃないんだから。国家物心とも貢献をされた方々の、わずかなそこのことを切り捨ててしまうというようなことをやらないで、なぜそれを切り上げて二十六万円何がしは二十七万円にしてあげないか。事が非常にこまかいようでございますけれども、そういう根本的なお考え方を私は冒頭にお尋ねしたいわけです。その見解をひとつ承りたいのです。
  10. 山中貞則

    山中国務大臣 計算内容その他については事務当局にゆだねますが、二十六万一千円が求められた結果であるのに、二十六万にとどめて、それをなぜ二十七万にしなかったかというお話でありますけれども、二十六万一千円であるか二十六万円であるかの問題はあろうと思いますが、一千円を一万円に切り上げるというのは、やや少し乱暴でございまして、ということは、やはり理論的にあるいは計算上きちんと根拠のある数字でございませんと、これを愛情があるからといって、愛情で甘い計算をしたものは、やはり大蔵省としては、逆に言って、ある意味では別な責任、すなわち国民が納めた税金を正しく公平に支出するという本来の財政法を主管する役所として、そのような一応千円と出たものを一万円に切り上げるというような操作をいたしますと、そこらのところから逆に、本来私がどうしてもことし貫徹したかった恩給法基礎的なあり方の確立という問題も、全体がそういう便乗的なものと解されては混乱するおそれがあると考えまして、二十六万一千円の議論はあるかもしれませんが、一千円を一万円に切り上げるということについては、私としても少し乱暴であると考えた次第でございまして、今後そのようなことがマイナス要素に積み重なっていくんだということはないようにしていきたいと思いますが、常識上やはり切り上げ、切り下げは一応四捨五入ぐらいのラインにいきませんと、幾ら強引な私でもなかなか一千円を一万円に切り上げることは計算としては困難なようでございます。
  11. 鬼木勝利

    鬼木委員 長官のいまのお話は、全部私もあなたと同感です。それは昔から四捨五入と申しまして、五なら上に上げる、四は切り捨てる、これは計算基礎の場合には通念ですけれども、しかし恩給に限って私はなぜそんなことを申し上げるかというと、あとでこれはまたよくお聞きしますけれども、皆さんが恩給をスライドなさっているのが一年、二年、三年、全部損をしているのですよ。それはあとではっきり数字で申し上げます。全部損しています。だから正しい計算によって正しく行なわれておる形の上ならば、私はそういうことは申し上げない。何らかの方法によって優遇してあげなければ、二年、三年、みな損しているのです。それはあとでまたゆっくり申し上げますよ。長官が、数のこまかいことはおれはわからぬとおっしゃった、これは当然ですよ。長官がおわかりになるわけがない。非常に頭脳明晰であるけれども、そうはいかぬ。だから事務当局あとお尋ねしますが、決して今日の恩給スライドというものが現職公務員給与とぴたっと合っている、そんなことはありません。またあなたたちがスライドされても、みな二年、三年おくれている。だから私はその点を申し上げておるのです。そこに親心というものがないものか。恩給受給者という方は非常に今日皆さん困っておられるのです。だからその点は、いま長官がおっしゃいましたが、その程度のことは、私も四捨五入くらいのことはわかっておりますので、私の考えはそういう点から申し上げておるのですから、その点御了解いただけますでしょうか。
  12. 山中貞則

    山中国務大臣 年次がおくれておりますことも私は認めます。しかしながら、やはり実際の出ました結果というものを踏まえての予算要求を八月三十一日までにいたすわけでございますから、最近値をとると申しましても、限度がございます。その意味では実態においておくれておることもあるいは言えるかもしれないと思いますが、その意味公務員現職者給与とぴたりと一致していないという点は私も認めます。しかしながら、現職公務員は現在それぞれの公務員の地位において国家国民のために公共立場にある仕事を遂行しつつある方々であります。一方はその任務の遂行を果たされて、そして余生を送っておられる方々に、その御功労に対して国が義務的にそれの恩給支給という形で御援助を申し上げていることでございますから、現実には国家国民のための仕事そのものをやっていらっしゃらないという違いがございますので、今後も恩給受給者公務員現職というものがぴたりと一致していかせることについては、後ほど御質問もあるかと思いますが、どこらのところまでを一致させればそれが正しい反映になるのか。今回は六〇%にいたしておりますけれども、これらのことは議論のあるところでございましょうが、百分の百という形ではなかなかそこら議論がかえって紛糾するものを生ずるのではないかと考えますが、気持ちにおいては先生のおっしゃることそのものでございます。同感でございます。
  13. 鬼木勝利

    鬼木委員 次にお尋ねしたいのは、いまのお話の継続、それに関連したことであとでまたお尋ねしますが、この恩給制度並びに共済組合制度両者にまたがって退職する場合に受給される方ですね。現行の国の共済法やあるいは地方の共済法施行日以後の分については、その規定が変わった以後については、国と共済組合あるいは本人の三者負担になるということはわかっておりますが、恩給制度共済組合両者にまたがっている方、たとえば恩給制度で十三年なら十三年やった、それであと五年なら五年、十年なら十年今度は共済組合のほうに入っているという場合の支払い、そして退職した時点においてどういうふうな規定になっておりますか。私の聞くところによると、十一年以上、あるいは五年以上、それから五年未満とかいろいろあるようですが、その負担の割合はどういうふうになっておりますか、それについてちょっと御答弁してください。
  14. 中嶋忠次

    中嶋説明員 ただいまのお尋ねの点は、推測するところ、共済組合法法律規定の問題でございますので、完全なお答えができるかどうか若干疑問があるところでございますが、先生のおっしゃるとおり、恩給共済に移行するにいたしましても、その移行の時期までにつきましては、恩給法という法律によって、いわゆる期待権法律によって与えられてあったのでございますので、これを共済のほうへ取り入れる際におきましても、恩給制度担当者として当然責任を感じなければならないので、その当時のやり方等につきましても協議したわけでございますが、その結果は、大まかに申しまして、ただいま先生のおっしゃったような恩給が十七年——警察官などは十二年という短いものがありますが、十七年で恩給になる。ところが共済制度は二十年でなければ年金にならないというふうな間の調節といたしまして、先生も御指摘のように、かつての恩給公務員期間が長いもの、短いものによって、それぞれ期待権を保護すると申しますか、尊重いたしまして、二十年未満でも年金がつくような措置がしてございます。  それから、その共済組合法——共済組合法施行組合法によって違いますが、その施行恩給公務員期間分と申しますか、恩給法上の適用を受けておった時代金額計算につきましては、これまた計算方法を別途にしまして、少なくとも恩給法規定によって計算した金額よりも上回るとも下回らないような保証的な措置が講じてありまして、これらをひっくるめて新しい年金として年金給付することにしております。それから、その経費の負担の問題につきましては、原則といたしまして、恩給公務員期間分国家なり都道府県が負担するという形になっておると承知しております。
  15. 鬼木勝利

    鬼木委員 わかりました。そうしますると、三十四年の改正時にあたって、三十四年以前の恩給法適用を受けておった人と、今度は引き続き共済組合に移行したという方も、何らその間繁雑なことはなく、スムーズに退職時においては年金がもらえる、少しも不利にならないということですね。受給する方が、共済組合一本でいった人、恩給一本でいった人、それと共済組合恩給と両方にまたがっている人、その三者はいささかも受給の面において不利益をこうむるようなことはないということですね、そのように了解してよろしゅうございますか。
  16. 中嶋忠次

    中嶋説明員 総体的に申しまして、個々のものにつきましては、いろいろな個人的な理由があることから、これじゃ不満だというふうなあれはあるかもしれませんけれども、全体といたしましては、ただいま先生のおっしゃるとおり、恩給公務員当時退職した人と、それから恩給公務員期間共済組合期間にまたがって退職した人と、共済組合期間だけで退職した人の間にいわゆる不均衡というふうなものが生じないような措置は万般講じてあるということになっております。
  17. 鬼木勝利

    鬼木委員 時間がございませんので最大急行で参りますが、恩給受給者生活保護適用者について私は非常に不合理な点があるのではないかと思うのです。恩給受給者、あるいは共済組合も同じですが、こういう方は、在職中に先ほど申しますように百分の二あるいは百分の四の納付金あるいは掛け金をしておりながら、生活保護適用を受けておる人は何らそういうことはない。これはむろん社会保障制度でございますから、全然性質は違うものでございますけれども、生活保護適用を受けている方よりも、恩給受給者のほうが給付額が非常に少ない。私はこういう不合理なことはひとつ是正していただきたいと思うのでございます。だからといって、最低生活費としての生活保護費なんか、これはまことにお気の毒な方ですから、私は大いに増額してもらいたいと思うのでございますが、これはあなた方の関係じゃないと思いますが、在職中に非常にまじめに長年の間ししとして国に奉仕された方々が、先ほど長官のおっしゃるように、老後安心して生活ができるように、支給される恩給額が社会保障の生活費よりも下回る、この点について私は非常に納骨のできない点があるのですが、これはどういうものでしょうか。そういう点に、長官はどのようにお考えになるか。先ほど長官は、現職公務員恩給受給者との給与面においてそれを一〇〇%同じにするということはむずかしい、それはむろんそうだと思います。片方はもう休んでいらっしゃる方、片方はいまから上へどんどん伸びていくのですから、それは多少の違いはあるのでありますけれども、精神面から考えました場合には、今日国家公務員が元気で国のために奉仕ができるというのは、そういう先輩があったからこそこうして働けるのでありますから、むしろ老後安心して過ごせるように、国に貢献された人をより以上に優遇すべきだ。私、多少総務長官と見解が違うようですが、現実面においては長官のおっしゃるとおりです。片方は、常に日々動いておる動的なものです。片方は安らかに休養なさっておられる方でございますから、それは当然給与を是正していくということになれば、一歩、二歩おくれていくかもしれないということは考えられる。しかしながら、心理的面より考えましたならば、そういう国家貢献のあった人こそ現職の方よりももっと大事にすべきであるというのが私の考え方なんです。それはちょっと申し添えて言ったわけでございます。  そこで、いまの問題でございますが、生活保護適用者の問題と恩給受給者の最低の方との額について、どういうように長官はお考えですか。これは長官のお気持ちをも伺いたいのですが、なかなか簡単にはいきませんけれども……。
  18. 山中貞則

    山中国務大臣 現象面としては、まさにおっしゃることそのものが疑問を投げかけておるものであろうと考えております。軍人恩給を復活いたしまする際の議論にも、今後軍人恩給というもの、あるいは遺族等の新しい発生というものはないのであるから、社会保障制度の中で見るべきであるという議論も確かに存在したのですけれども、そういうことは、国の栄光の歴史であれ敗北の歴史であれ、その歴史の間において貢献された方々、その御遺族、そういう英霊等を冒涜する考え方であるという考え方のもとに、いろいろ異論はありましたが、軍人恩給の復活ということが行なわれたわけでございます。  ところで、その論とは異にいたしましょうが、生活保護の基準よりも低い恩給受給者がおられる、この点は明らかに問題点でありましょう。ただ、鬼木先生も、御経歴からして、恩給の実態についてはよく御承知でございましょうが、恩給計算方式は、その在職年数その他において一定の計算方式そのもので打ち出して結論を出しておるものでございますから、もし生活保護費以下の方がおられると仮定いたしましても、それらの数は非常に少ないものでありましょうし、またそれは在職年数の非常に短い——かと言って、恩給受給年限には達しておられるわけでございますから、短い方々だけに限られておる現象だと思います。この点は、恩給審議会等の答申等で特別に触れていないところでありますけれども、恩給の本質から考えて、生活保護費というものは、全く別な意味の政策的な要請で引き上げられつつありますので、これらの実態、いわゆる生活保護を受けざるを得ないとはいっても、その受給されておる人々と、恩給受給する権利を保有する人々との間で、一方が陥没するということは好ましい現象とは決して言えませんので、来年残されました審議会の答申の十項目を完全に実施する努力をいたしますが、そのあとにおいては、それらの現象がどのようにしたならば排除できるかについて、真剣な検討を加えてまいりたいと考えます。
  19. 鬼木勝利

    鬼木委員 総務長官お話、たいへん私、ありがたく思うのですが、自己負担と社会保障による支給との調整は、私はやはり必要じゃないかと思うのですよ。いま長官も問題点だと仰せになりましたが、これはなかなか私は容易なことじゃないと思うのですよ。一方は純然たる社会保障制度、片方は自己負担による年金でございますから、先ほどから申し上げておりますように、社会保障制度による生活困窮者を救うという年金は、いま長官もおっしゃるように、年々増額になっておる。私はこれはけっこうなことで、ぜひそうしていただきたいと思うのです。いまの長官の御答弁を私、拝聴しまして、まことにありがたく思いますが、ぜひ、できることならば、何らかひとつこれを御考慮に入れていただいて、改善していただければ幸いだと思います。  次に、先ほどからお話になっておりました恩給のスライド制の制度化ということについてちょっと私お尋ねしたいのですが、これは冒頭にあたって長官も非常に丁寧に御答弁をいただきましたが、公務員給与改定ということは、これは皆さまが御専門でございますので、私申し上げるまでもないのでございますが、毎年民間ベースが五%上昇したというような場合には、人事院は勧告をしなければならぬということになっておるように——また私どもも内閣委員で毎年それをやってきたのでございますが、しかるにこの恩給の物価その他によるスライド制については、その基準制度というものが確立していない。これは御承知のとおり、毎年政治問題化して、圧力団体がどうだこうだとか、非常にごたついておるようでございます。普通一般公務員退職なさった方あるいは旧軍人の方とか遺族の方とか、そういう方々恩給をスライドするところの何か制度をはっきりこの際確立していただきたい。今回の恩給の増額というのも、先ほど長官のおっしゃったように、そういうことを勘案されて恩給法改正ということになったのだ。それはわかりますが、こういうはっきりした制度化の基準がないから、毎たび毎たび〇・何ぼ本年と来年とで半分ずつ上げるとか上げぬとか、非常に繁雑をきわめておる、こういうふうに考えますが、これはひとつ長官の大英断によって、はっきり制度化していただきたいと、このように私は思うのです。この恩給審議会の答申にもはっきり出ておるのですよね。しかも恩給法の第二条ノ二にもはっきりこれは明記してあります、法的に。これは私が申し上げぬでも、そのくらいなことは皆さん方御専門で、釈迦に説法でございますけれども、「年金タル恩給ノ額ニ付テハ国民ノ生活水準、国家公務員給与、物価其ノ他ノ諸事情ニ著シキ変動ガ生ジタル場合ニ於テハ変動後ノ諸事情ヲ総合勘案シ速ニ改定ノ措置ヲ講ズルモノトス」、だから給与並びに生活水準、物価ということに根拠を置かなければならないということになっておるわけです。しかも四十三年の三月には、恩給審議会からも答申が出ておるわけです。「五パーセント以上消費者物価が上昇した場合にはそれに応じて恩給年額を改定すべきものとし、将来におけるその実効性を確保する観点から、これを制度化するなど所要の措置を講ずることが適当である。」こう恩給審議会から答申があっております。なおまた、「恩給受給者がかつて公務員であった者またはその遺族であることにかんがみ、国家公務員給与の上昇を勘案して——つまりベースアップしろということなんですね。「恩給年額調整を図ることが考えられる。」また、こういうふうにも書いてありますね。「この調整を行なうにあたっては、消費者物価の上昇に応じて恩給年額の改定を行なってもなお国家公務員給与水準と恩給との格差が著しく懸隔している場合には、それをある程度解消することにより調整することが望ましい。」これは長官のおっしゃったとおり、ある程度解消することにより調整することが望ましい。でございますので、現職公務員給与とぱっと符節を合わせるごとく一緒になるということは、なかなかむずかしいとであるかもしれぬ。これはまさしく長官のおっしゃっておることと私は完全に一致いたしておりますが、しかし、恩給審議会の答申よりもあまりにもはなはだしくかけ離れて実際行なっていらっしゃる。しかもこういうことを制度化していらっしゃれば、ことし半分上げて、来年また半分上げるとか、そういうことをなさらなくても、制度化していただければ、国家公務員給与を基準として、それから生活水準あるいは物価の点を考えてやっていただく。あるいは毎年民間のベースが五%上がればぱっと人事院が勧告するように、恩給もそれに当てはめる、こういうように何か制度化していただければ、私は事務当局の皆さん方もむしろ仕事がやりやすいと思う。どうでしょうか、長官、そういう点をひとつ……。
  20. 山中貞則

    山中国務大臣 それもごもっともな御意見でございますが、恩給法第二条に書いてございますその趣旨と、審議会が答申をいたしました表現にやや微妙な変化がございます。それは戦後発足いたしました人事院制度というものの勧告の実態、あるいはそのよって立つところというようなものが毎年はっきりしておりますために、その審議会の答申では、人事院給与勧告の実態というようなことから表現が少し違ってきたかと思いますが、しかし、恩給法第二条の精神をゆがめておるものでは断じてないわけです。  そこで、私どもといたしましては、先ほど来半分残したとおっしゃいますが、これは理論的には積み残した分の四・五%は全部政府として確認をしたわけでございまして、私のほうと大蔵省のほうの責任者との間で合意に達したものを、財源計算上どうしても公開財源六百五十億の中で、若干でございますが足りませんので、半分は三カ月ずれて一月実施ということで、予算措置を四十六年度に繰り越しただけのことでございます。ですから、今日までに値切ったり何かしたような感じがいたしましたものとは少し違うのでございまして、理論的にはきちんとなっております。でありまするから、四十三年の物価や公務員給与、その実態については正確に今年度予算に組み込んでございまするので、来年度予算が国会を通りましたので、今回は理論的にきちんとなされたもので、若干の分が一月の実施になったのでありまして、理論的にはこれはきちんと整理されたものでございます。  ところで、これを制度化する問題でございますが、イギリス、フランス、ドイツ、それぞれ違いますけれども、やはりある意味のスライド制と申しますか、きちんとした、受給者が客観的に自分たちの将来はどうなるという判断が明らかになるような形にしてあるわけでございます。私どもはやはり将来アメリカを含めたヨーロッパのそういう国々の制度、ことに歴史の長い国家においては確立した制度でございますので、わが日本もそれに対応できるような、外国から見てもなるほどとうなずける制度というものをすみやかに確立する必要があることは同感でございます。ただ一方において、各種公的年金制度というものがございまして、この中でもいろいろとまたニュアンスの違いがございまするし、この公的年金制度をほっておいて、恩給だけを、たとえば物価なりあるいは公務員給与の六割なら六割というものを自動的にスライドしていくんだ、あるいは国民生活水準といいますと、国民所得は世界の二十位だから二十番目でいいというようなことにもなりませんし、どこをとったらいいんだという、可処分所得にいくべきか、生計費のほうにいくべきか、いろいろと取り方がむずかしい面もありましょうが、要するに、制度としても完全にスライドさせる、あるいは政策的なスライドをする、あるいはその中間の半スライド制にするといういろいろな具体的な手段がまたさらにあり得るかと思いますので、公的年金制度の審議会というものですでに三年目になっておりますが、このようなことをどのようにして年金制度で全体の調整をとるべきか、現在は恩給が先行してそれについていくような形でありますから、その意味では、ことし恩給が理論的にあるいは積算的にきちんと整理されたことは、他の公的年金にもこれが右へならえで、整理された形をとられることになって相当大きな前進だと思いますが、これを法文化し、制度化するという問題はたいへんむずかしい問題がございますので、私決して逃げるわけではございませんから、積極的な結論を求めるための、制度化するための努力、その作業をさらに精力的に続けてまいりまして、受給者方々が未来を展望されて、自分たちは将来はどうなるのだという安心した見通しに立っていかれることを、恩給の当然の義務として私たちは果たさなければなりませんから、そういう方向に向かって努力をいたすつもりでございます。
  21. 鬼木勝利

    鬼木委員 長官のいまの御説明で理論的にはまことにりっぱで、そのとおりでございます。非常によくできております。なお、これは恩給対策に対しての一歩前進だ、まさにそのとおり、これは一歩も二歩も前進だ。長官は一歩とおっしゃるが、私は二歩、こう言ってもいい非常に前進だと思います。しかしながら、長官のおっしゃるように、理論的によくできておりますけれども、私が先ほどからるる申し上げておりますように、今度の改定も、そもそもその淵源をたずねますと、四十年十月の恩給水準を基準として、これは事務当局のお方、よく聞いていただきたいと思うのですが、四十年十月を基礎として、四十三年の三月に審議会が答申をしております。そこで今度は四十三年の八月に、五一・三%の概算要求をなさっておる。これは間違っておったら、ひとつ事務当局の皆さんが専門なんだから、もちはもち屋だから、鬼木はわからぬなりに言っているんだ——しかし案外わかっていますからね。そこで五一・三%の概算要求をされた。ところが四十四年の十月に第一回の恩給調整をやった。そのときに四四・八%、皆さんはやっている。そこでいま長官がおっしゃったように、六・五%の積み残しというのができたわけなんです。ようございますか。そこで、それを是正しよう。ところが、その是正が今度の改正となったわけでございますけれども、またまた受給者に対しては非常な不利益をこうむっている。それは四十五年度に半分、四十六年度に半分、だから理論的には一応調整はできますけれども、その間の不利益というものは非常に大きいわけなんですよ。そこは、こまかい数字はわからぬと長官はおっしゃっておる。そのとおり、おわかりになるわけがないと思う。そういうことで私は長官をどうだこうだと責めているのではありませんよ。大体私の申し上げておるお話は、長官もわかっていただけると思うのですが、その間の不利益は非常に大きいものなんですよ。国家公務員なんかは、たとえば五月からベースアップをやるんだというのを、いままでは十月からやったり九月からやっておった。それだけでも損をしているわけですね。だけれども、全部追給をもらっているのですね。ところがこの恩給受給者に限っては、調整のできた点に、その起こった起点から調整のできた間の不利益というものは、いままでは常にこういうふうになってきておるわけなんです。そこは長官も将来は諸外国の例にならって何とかしたいというお考えでございますので、私はその点は非常にありがたく思うのでございますが、今日まではそういう点において非常に損をしております。不利益をこうむっております。しかも恩給審議会が四十三年の三月に答申をして、第一回の調整が四十四年の十月、こういうことになるのでございますから、そこでもうすでに調整までに  一年も二年もおくれたことになっております。しかもその調整の時点において六・五%の積み残し、それを今度また是正をなさるということで、一応調整はできますけれども、またそれをことしと来年に分けて半分ずつやっていく、こういうことになってきますので、その問の恩給受給者のこうむった不利益というものは非常に大きいのだ。こういう繁雑にして、しかも、これは長官にはなはだ相すみませんけれども、やり方が非常に不手ぎわなんです。私、あなた方に文句を言っているわけじゃありませんけれども、恩給に対して、いま長官がおっしゃるように、一歩も二歩も前進で、これは非常にありがたいのでございますけれども、せっかくおやりになっても、こういうことを制度化していないというと、毎たび繰り返していかなければならぬと私は思うのです。そこで、そういう点を根本的に抜本的にぴしゃっと制度化すれば、皆さんも手間も要らない。そうして恩給制度というものは一般のものには非常にわかりにくいのですよ。一体自分恩給は今度どうなるのか、あるいはやめて恩給はどれだけつくのか。恩給制度というものは非常にむずかしいのですよ。いま長官もおっしゃっておる。退職して老後自分の行く末はどうなっていく、恩給は幾らもらってどうなっていく、先見えがずっとしていく、こういうふうにやりたいと仰せになっておる。そういうことを考えましたときに、これは絶対制度化すべきである。いま私が申し上げました恩給調整の、いわゆるスライド制の操作に対して恩給事務当局はどのようにお考えでございますか。
  22. 山中貞則

    山中国務大臣 私、最初に申し上げたことは、数字のことは私はわからないとは申し上げておりませんので、計算方式その他については事務当局から答弁をいたさせますと申し上げました。そんな無責任な大臣をやっておるつもりはございません。この二・二五%を一月実施で三カ月ずらしまして、財源措置を四十六年にいたしました全責任は私にございます。これは事務当局は、恩給局長以下だれも列席いたしておりません。私自身が大蔵省側の立場に立って全部そろばんをはじいてみましても、なおかつ大臣折衝四回、閣議の予定時間を二時間ずらしてがんばってみましても、保利官房長官が立ち会って政治的に早く解決しろとせっつかれましても、どうしてもこの問題については、私は、今回は理論的に確立をしたいという願望の前に一歩も引けない、しかしながら、全く最終的に、ポケットでいうならたばこのかすももう残っていないというところまで詰めまして、やむを得ず私の責任において、二・二五%については理論計算の数値上、求められた結果の金額について両者合議いたしました結果、なお三カ月ずらすことに、私が政治家として決断をいたしました。このことについて受給者方々に、確かに三カ月のマイナスを与えたことは、私の政治家としての全責任をもっておわびを申し上げます。しかしながら、今回のとりました措置によりまして、四十六年度予算以降においては、この理論的な構成を双方認め合ったわけでございますから、かりに大蔵省を中心とする政府の姿勢において、今度はこれをまたもとのように戻して、めちゃくちゃに——と言ってはおかしいのですが、理論的でないような予算の査定なり詰め方をするというようなことをするといたしますならば、財源当局は理論的にきちんと承認し合ったものを否定する新しい理論を何か発見しない限りは、この制度はくずせないものになりました。したがって、私が来年度予算を最終的に担当する立場にあるかどうかは別にいたしまして、どなたにかわられても、今後はこのルールに従って予算が編成されていくことは間違いのない事実であろうと考えます。したがって、第一次査定においてほぼその全額が内示さるべき恩給あり方というものが打ち立てられたと私は確信をいたしておるわけでございまして、今後この問題につきましては、さらに私も責任を持ってそのルールが守られるように努力をいたしてまいります。  さらに恩給受給する人々が、自分たちがどうなるか、法律を読んでみてもわからない、この点はまさしくそのとおりでございまして、昨日も御答弁を申し上げましたが、恩給法を第一条から附則、附則と積み重ねた最終ページまで全部読んでみて、自分はよくわかったと思う者が、私のほうの役人でも一体何人いるだろうか。私自身も目が充血するほど読んでみました。しかしながら、たいへんわかりにくい。一体法律はだれのためにあるのだ。問われるまでもなく、それはその法律によって恩恵を受けあるいは権利を持つ人々が、自分たちのその権利の実体を正確に把握できるものが法律でなければなりません。その意味では、恩給法というものがたいへん難解にして、しかも基本法はごくわずかなページでありながらつけ加え、つけ加えで、上塗りが重ねられて読みにくい、判読しにくいものであることは、私はそのとおりだと思います。  そこできのうの答弁で、来年は審議会の答申の残り十項目をきちんと片をつけるならば、あと残った問題の議論は引き続きするにしても、ここらをチャンスとして、時間がかかっても恩給法というものを、国民立場において、受給権者立場において、きれいな一本の法律に、かたかな書きも明治以来のものを改めましてすっきりしたものにしたいという答弁をいたしたわけでございます。事務当局は、大臣はどうもたいへんな仕事を命ずるらしいというので恐慌を来たしておるようでありますし、法制局のほうは、これは私のことですから六カ月以内と時間を限るとかなんとか言いやしないかと思ったのでしょう、やらされたんでは、いまの法制局はもうこの恩給法改正だけで半年寝れないというような心配もしておるそうでございますが、しかしながら、一方、大蔵省では国税通則法の膨大なものを三年がかりで改正をいたしました。これはやはり一方的に国民から税を取り立てるという考え方から、納税していただく方々の御理解を求めるという新しい考え方に立たなければならない。この目的のもとにたいへん困難な作業を重ね、三年後に成果を得たものと私はその価値を評価するものでございますが、しかし、恩給法も、第一、かたかな書きであること自体において私は直すべき根本的な理由もあると思いますので、法制局長官ともよく相談をいたしまして、たいへんな労力と時間を要すると思いますけれども、恩給法受給権者がごらんになって、なるほど自分たちのための法律であるとお考えになるようなすっきりしたものに改める努力をしてみたいと考える次第でございます。
  23. 鬼木勝利

    鬼木委員 いまの長官の御説明で非常に詳しくよくわかりましたが、この恩給法の審議につきましては、昨年度の改正につきましても、附帯決議がつけてあるのです。今回もまた、先ほどから申しておりますように、制度化とかあるいは立法の簡素化、いま御説明がありましたような点についても、附帯決議をつけようというような考えを持っております。  そこで長官は非常に謙虚に全部自分責任だと仰せになりましたが、それは今回の恩給法改正については、あるいは長官のおっしゃるようなお立場としてはそうかもしれませんけれども、私は過去のことを申し上げておるので、別に長官を責めておるわけではございません。過去の恩給調整は、受給者が不利益をこうむっておる点が多いので、そういう点を勘案して制度化していただくとたいへん都合がいい、こういうことを申し上げたわけでございます。  実は、もう少しお尋ねしたいのでございますが、時間がないので、いかがでございますか。私は十一日の日に継続質問をいたしたいと思いますが、その点はっきり御確約がいただければ、きょうは中途でちょっと中止いたしますが、その点、委員長いかがでございますか。これははっきりしていただけませんか。きょう恩給法は可決して上げるというのでしょう。上げたあとで質問をしなければならぬのですから、これは非常に変態です。ですから、可決したものをあとで質問なんかというようなことを言われたんじゃ……。大体きょうは十時半から始まっておれば、私は当然できるのです。理事会がおそくなって、それで質問を制約するなんということは、筋が通りませんよ。ほんとうですよ。ですから、その点をはっきりしていただけば、私はきょうは引き下がります。わからぬことは申し上げません。
  24. 山中貞則

    山中国務大臣 私は所管の委員会に出るのはもうちっともいやじゃございません。質疑応答を通じて、党が違い、思想が違い、立場が違うといえども、全部国民のことを考え議論するのでございますから、責任の衝にある大臣といたしまして、いつでも時間のある限り私は飛んでまいりますし、時間のある限り質疑に真摯に答えるつもりでおりますので、恩給法が通ったあと恩給の質問などは受けないというようなことは断じて申しません。私はいつでも、日程を合わせられる限りにおいて、新しい未来への議論として拝聴し、意見を交換するつもりでございます。
  25. 鬼木勝利

    鬼木委員 さすがに長官、まことに御人格りっぱな長官でございますので、さもあらんと思いましたけれども、一応念のために委員会ではっきりしておかぬと、ただ黙約だとか話し合いじゃ困ります。その点けじめをつけておかぬと、ものごとにはけじめが大事でございますので、その点長官、あしからず御了承願います。  それでは、十一日の日にまた私、継続質問をいたしますので、本日はこれで私の質問は一時中断をいたします。
  26. 天野公義

    天野委員長 受田新吉君。
  27. 受田新吉

    ○受田委員 たいへん短時間でありますから、速射砲的な質疑、それに対する答弁をお願いして、任務を果たしたいと思います。  恩給法の性格は、国家補償方式である。国家公務員法第百七条にも退職年金制度の性格がうたってありますが、それは、在職中に国家社会に奉仕した、その期間中に自分所得を蓄積する能力を喪失されておる、その減損を補てんするというような意味を含めて、退職後の生活を十分満たそうという趣旨であるように毛書いてあります。そこで恩給法という法律そのものについても一つの限界が来ていることは長官いま指摘されたとおり、かたかなで非常にむずかしい文語体、「スヘカラス」というようなことになっておる旧式の法律である。しかし、これを改めようとするとたいへんな作業であって、とうてい現状では不可能だと、法制局長官もこの委員会で私の質問に何回か答えております。それを長官はいま、断固としてやり抜こうという決意を表明されたのでございますが、私たいへんけっこうだと思います。  そこで、はっきり申し上げたいのですが、恩給ということばは恩恵的なにおいがし、明治八年にスタートした軍人恩給の論功行賞的な性格から始まって、さらに恩恵説、それからいま申し上げたような在職中の減損補てん説、いろいろな説がそこから生まれてきた。一方では組合方式で、雇用人からスタートした共済制度が生まれて、そうした身分に関係なく平等に病気その他まで含めた共済制度が誕生してきた。恩給法はその中で、軍人恩給に端を発し、文官が途中で入って、そこに非常に古いタイプの恩典的な性格が残っておる、こういえるのです。そこで私、あなたのような近代的な感覚を持った閣僚に考えていただきたいのですが、恩給という名称は旧恩給法規定を受ける職員に適用されておる。それから十数年前から国家公務員共済組合法のスタートによって、そのほうでは組合管掌方式の年金その他が支給されておる。公務員退職の時点によって、恩給法適用を受けるか共済組合法適用を受けるかというかっこうになっておる。そして一方は恩給局がその扱いをし、一方は大蔵省がこれを扱っておる。同じ公務員であって、退職の時点によって恩給局のお世話になるのと大蔵省のお世話になるのと二つある。これはちょっと問題があるので、この機会に長官恩給ということばをむしろすかっとやめて、国家公務員法第百七条に人事院が新しい感覚で規定した退職年金という形に切りかえる、そして国家公務員は、恩給法適用を受ける職員も、共済組合法適用を受ける職員も、退職年金という形で、それを扱う役所が総理府の中にあるかりに公務員年金局とする、大蔵省の組合管掌方式も恩給局へ持ってきて、その恩給局を発展解消して、ここに公務員全体の年金制度を扱う公務員年金局をつくる、そして国民年金その他の年金は公的性格を持つものでありますが、一般的な社会保障の線の年金は厚生省がやる、こういう形を私昭和三十二年から提唱しておるのです。提唱して後に、一方の国民年金局は厚生省にできた。総理府には、大蔵省に持っていかぬと、国家公務員全体を含む、国民年金でないほうの公務員年金を総括してやる公務員年金局を設置せよと、歴代の長官に私自来十年間提唱し続けておる。大蔵省所管の分まで持ってきて、公務員年金局として一貫して、現職者は人事局がやる、退職者は公務員年金局がやるという、この国家行政組織法の改正については名案であるとお考えかどうか、御答弁を願いたい。
  28. 山中貞則

    山中国務大臣 日本語は便利でありますから、戦前は天皇陛下の命を受けた仕事をする国家の職員である、したがって、恩給というのも恩賜というような意味給付であったということも成り立つかと思います。しかし今日の時代では、その生涯を国家国民のためにささげていただいた方々退職後、その御恩に対して、国民の税金の結集である国の予算から給付するというふうにとっても——私が日本語というのは便利なものだと言ったのはそこですけれども、いまは国民がそういうふうに感謝しているのだと言っても差しつかえないと思います。ですから、恩給という名前を特別に変えなければならないものとも思いませんが、一方の他の公的年金、ことに共済をともに総理府で所管してみたらどうだという御提案も、これまた価値のある御提案と考えますが、しかしながら、総理府が所掌いたす問題の中で、プロパーの問題はたいへん少ない中で、恩給局はその最たるものでございます。これに対して責任を持つのは恩給局並びにそれの責任者である総理府総務長官ということが明確なものでございます。そこにはたして一般国家公務員共済の組織そのものまでも持ち込み得るような総理府の存在というものであるかどうか、行政組織法の上から考えて、やはり現在の財政主管省の大蔵省、あるいは担当大臣は回り持ちみたいなことをしておるようでありますが、こういうことではなりませんので、局というようなものをつくって全部を統合するということも一つのお考えですけれども、むしろ私は、後ほど御質問もあるのでございましょうが、やはり公的年金制度も含めたスライド制という問題を、私のところの公的年金制度調整連絡会議において幸いはかっておりますので、ここで私のほうがリードしながら、なるべく早く諸外国に比肩し得る日本の新しい制度というものに向かって、受給権者が未来にわたって安心できる制度の確立ということに当面精力を傾けてまいりたいと思います。御意見については、私反対ではございません。
  29. 受田新吉

    ○受田委員 すかっとした御答弁です。当然この現職退職者を一貫して公務員給与体系を、政府としては筋を通してもらいたい。その願いをいつも持ってきておるのですが、少し先の質問にまで理想的な御答弁もあったわけで、私自身としては退職者が退職の時点で、別の法律の支配を受けて処遇が変わってくるということがあってはならない。現職国家に有形、無形の奉仕をし、在職中には私企業にも関係しない、かってに商売ができないような、国家公務員法はきびしい制約をしておりますね。したがって、余分の商売でもやってもうけることのできる他の民間の人と違ったきびしい制約がある。国家、社会への非常なきびしい奉仕者であるということになりますと、退職後もその在職中にきびしい制約をあえて甘んじて受けて、奉仕を続けた人たちに対する報いが公平になければならぬという意味で、退職後のかつての公務員給与の性格を持つ年金ですね、これは給与の性格を持つものと私は判断します。これは現職とその延長的性格を持つものでなければならない。退職時の時点の給与を基本にして、その後国家公務員現職が昇給すれば退職者も当然上がる、こういうスライド制が当然しかるべきものであると考えます。この点、この方式については理路整然たる総理府総務長官としてどうお考えでありますか。
  30. 山中貞則

    山中国務大臣 国家公務員給与ベース、物価、国民の生活水準、こういうもの等をやはり法律に基づいて、私どもは勘案したスライド制というものを考えていかなければならない義務があろうと思います。しかしながら、そのやり方については、現在の公的年金の各種体系を見ましても、発足、淵源、沿革、いろいろと違いますために、まずこれらのものを総括いたしまして、公的年金制度等を含めて、あるいは恩給がすでに一歩前進したと、私はことしの予算で自信を、確信を持っておりますが、そのような形で全体の制度というものがあなたのお示しになるような方向に進むよう作業を進めてまいるつもりでございます。
  31. 受田新吉

    ○受田委員 恩給法の二条の二項にはその問題が一つとらえられております。しかし、この法律ができまして、すでにもう数年たってきておる段階で、現職国家公務員のベースは約六万というところまできておる。しかしながら、退職者のベースは、政府がこのたびの扱いをされた基準を見ましても、三十六年と四十三年までのこの七年間の上昇を公務員給与は五五・七と見る、また物価は四四・八と見ておいでになる。その間にも相当の差ができておる。その差の扱いについては、物価というものを基準にされた上に、公務員給与の上昇率から物価の上昇を引いたものに十分の六をかけているということは、この間から論議のとおり、この十分の六に非常に問題があるのでございますが、これは物価を基準にしたような計算をしているところに問題があるので、恩給法の二条の二には公務員給与が一番先に書いてある。一番これが第一条件である。あと国民生活とか物価とかいうのは、その次のほうに並べてあるので、当然第一順位は国家公務員給与というものを基準とすべきものであるということについては、長官として妥当とお考えでしょうか。
  32. 山中貞則

    山中国務大臣 解釈は私も違っておりませんが、現職公務員として、現に国家国民のために公僕の立場をもって仕事をしておられる人々、その俸給額全額を、すでに仕事を終えられた功労者で、現実には仕事をしておられないで恩給受給する権利を持っておられる方々と同じようにするということについては、やはりそこに物価の問題に関連する生活の基本は守ってあげなければならない。いわゆる生活給的なものについては、公務員と同じようにしてあげなければならない。しかし、職務に伴う分野については、いま現に職務を執行しておられないという点で、先ほど申しました百分の百ということについては、少し問題があろう。しかし、基本的な考え方は、第二条の趣旨をくんで、さらに恩給審議会の生活給的なものを加味した物価の五%というものを念頭に置いた方式をできるよう努力いたしたいと思います。
  33. 受田新吉

    ○受田委員 大体近づいた御答弁だと思います。国家公務員給与——戦前は国家公務員給与がすべて恩給の基準でございました。そうして戦前は退職制度もない。現在の国家公務員退職手当暫定措置法のようなものはなかった。そうして共済制度も雇用者にひそかにある程度で、堂々とした共済制度というものもなかった。したがって退職金がない。おまけに退職時の給与を基準にして恩給がつけられた関係で、特に戦前の退職者というものは非常に低い基準で恩給金額が決定され、その後数次の改正はされましたけれども、しかしながら、依然として、現在の同種の職種と比べると、低い水準に置かれております。そうして、古い人には退職金がなかったが、いまはそれぞれの退職制度も出ている。そうすると、古い退職者は著しい低水準に置かれているという問題が一つあるのですね。このことについては、旧制度のものは、当時の退職時における俸給を基礎にして、その後公務員給与を基準に、その恩給額が引き上げられたという現実があるわけです。ところが、いまの制度適用を受ける人々には、物価というものが基準にされるというような、あの恩給審議会の答申にはひとつ問題ができた。これは性格的にあの審議会は、ほかの問題は非常に妥当なものを拝見しますけれども、この恩給法の二条の二項については、審議会はいささか社会保障的なほうに認識を置かれた答申だと思うのです。そこで、法の精神の第二条の二は、公務員給与を第一順位にしておるということを長官は認識していただかないと、これは、審議会の答申は、あの部分については、ちょっと時代の感覚がずれているという点において問題がある。尊重するというところは、「適当である。」というところを尊重すべきだ。何もかもそのままうのみにするというのではないのですから、やはり法の精神恩給法の二条の二が基準になっている。そうして公務員給与が基準で、あとは「勘案」するという対象であるという判断をしていけばいい、私はこう思うのです。それで、いまの生活維持部分と生活改善部分と職務給部分の三部分を十と見られて、そのうちの六だけが生活改善部分と判断されたようですが、この判断の基準は、十分の六というのは十分の七に見てもいいし、十分の八に見てもいいと思うのですが、事務当局はどう判断されますか。
  34. 中嶋忠次

    中嶋説明員 先生の御指摘のような御議論のあるところでございますが、一般に先ほど大臣からお答え申し上げましたように、納税者である国民全般が納得する範囲の生活改善分というのは、六〇%くらいと見るのが適当であると考えております。
  35. 受田新吉

    ○受田委員 一般国民が判断するという基準は、だれがされたのですか。妥当であるという判断は、だれがされたのですか。一般国民が妥当だと判断して十分の六としたのは、どなたとどなたが判断されたのですか。
  36. 中嶋忠次

    中嶋説明員 二条の二の規定、それから恩給審議会の答申の趣旨を尊重いたしますと、先ほど申し上げました、いわゆる公務員給与のうちの生活改善分だけを取り入れて、職務給的な部分をまだ取り入れるべきでないということについて、一般国民の皆さまの御支持がいただけるという判断に立ったわけでございまして、その生活分の算定方式といたしましては、公務員の各職階による特別の給与を除く意味の操作をしてできた数字の結果が六〇%でございます。
  37. 受田新吉

    ○受田委員 この判断の基礎は一体だれがやられたのかを私はいまお尋ねしておるので、局長、次長を中心に恩給局がそういう判断をされたと解釈してよろしゅうございますか。そしてそれを長官が承認してくれた、かような了承でよろしゅうございますか。
  38. 中嶋忠次

    中嶋説明員 そのとおりでございます。担当局といたしまして検討いたしまして、その結果、長官の御承認を得た次第でございます。
  39. 受田新吉

    ○受田委員 国家公務員及び一般職の給与法を含む俸給表の問題が規定の上に生まれておるのですけれども、その中には国家公務員法の六十四条の、例の給与準則の中にある俸給表というものの説明がしてある。「俸給表は、生計費、民間における賃金その他人事院の決定する適当な事情を考慮して定められ、且つ、等級又は職級ごとに明確な俸給額の幅を定めていなければならない。」とあるのでありまして、生計費、民間における賃金その他人事院の決定する諸事情が勘案されて国家公務員の俸給表がきまっている。したがって、その中には物価というものも当然入っておるし、生計費も入っておる、そして公務員給与というものがきまっておるのです。公務員給与と物価とは別系統ではないのです。公務員給与というものの中にははっきりと生計費とか物価とか皆入っておる。したがって、公務員給与をひとつ基準にするだけで、異常に消費者物価が上昇して政策的に公務員給与をがまんせよということで低い水準に置く事態が起こったら別だが、普通の場合は、公務員給与を基準にして退職者の給与をおきめになるのが私は筋として通ると思うので、公務員給与そのものがすかっとした、いま次長が仰せられたような要素を一応含んで公務員給与がきまっておるという点では、私の見方において、長官考え方としては、受田の考え方が通る、公務員給与は一応そういう前提できまっておるということであれば、政策的に物価ということを考慮する場合があるということは別として、普通の場合には公務員給与を基準にしても、そう間違いはない、こういう観点が生まれると私は思うのです。どうでしょうか。
  40. 山中貞則

    山中国務大臣 理論的にそのとおりでございますが、法律というものは、今日の時点あるいは今日までの、たとえば終戦以来今日までの二十五年間というものだけで、将来の二十五年間も同じであろうということはちょっと言えないだろうと思います。しかし、法律は依然として基本的な考え方はやはり一本でいきますから、そうすると、やがて日本がデフレ状態になった場合等については、たとえば例は適当でないかもしれませんが、よもやと思いましたが、米が過剰になったために、同じ生産費所得補償方式による米価の求め方をとりながらも、標準偏差の平均反収に近づけていくことによって、結果、据え置いているということ等が現実には一つ例が出てきておるわけでございますけれども、日本全体がいつまでも物価やあるいは生計費が引き続き対前年比上昇を続けていくものであれば、やはり法律をつくります場合には、そのような場合にどのようなときにでもスライドしていくのだという場合においては、恩給受給者の本質から考えて、私は既得権であると思います。その既得権に現在その年の時点における、一例としてデフレという現象によってそれがスライドされてへこむというようなことがあってはなりませんので、そこらの点も十分長期的な展望に立って法律制度を取り入れる場合には、山中というやつがおってばかなことをやったものだというそしりをされないように、作業を私の責任においてしなければならないので、御趣旨はごもっともでございますので、作業についてはより慎重な態度で進めてまいりたいと考えます。
  41. 受田新吉

    ○受田委員 長官、趣旨としては私の提案に賛成だ、ただ扱いについては慎重にやらなければならぬという御答弁でございます。私はその扱いを慎重にやるという長官のお気持ちも非常によくわかる。  そこで従来、戦前は公務員給与基準が恩給法できまっておった。その中から職務給部分が十分の一か二かあり、また生活水準部分を一か二にして、生活改善部分を六にして計算して、退職時の俸給を基礎にした退職者の給与がきまってくるというこのやり方について、ひとつそれでは、いま十分の六という基準を出された、この十分の六の生活維持部分を考えると同時に、職務給は現実にはないけれども、かつて官庁の局長であった人が退職後もやはり局長らしい暮らしをしていかれるように、おつき合いの上でも局長局長らしい、課長課長らしいおつき合いがやっていけるように、そうすると職務給部分というものは全然無視するというわけにいかぬ。退職後一応体面を保つという意味からも、また文化生活を保持するという意味からも、職務給部分については、退職時にはその性質はないといっても、事実かつて課長であり、かつて局長であり、かつて大臣であったというその者についての責任部分というものは、退職後も責任があるわけです。かつて大臣をやった者がおかしな行動はできない。山中先生だってなかなかむずかしくなる。かつては大臣だっただけに、世間からきびしい批判も出るから、退職後やはり職務給の延長部分というものは全然無視はできないと私は思う。そういう意味から言えば、大臣をやったということになると、なかなかやかましいことになる。——佳境に入らんとするところで実に残念だが、やれるところまでやる。倒れて後やむだ。  そこで、はっきりお答え願いたいのだが、かれこれ議論してもしようがないが、十分の六を十分の八にするとか十分の九にして——十分の十とは言わぬけれども、八にし、九にするということは可能かどうかをひとつお聞きしたい。
  42. 中嶋忠次

    中嶋説明員 先生の御意見拝聴いたしましたが、ちょっと事務的に補足説明さしていただきますと、物価だけ除いて物価と別立てにした考えだとおっしゃいますけれども、実は審議会の答申が物価について義務づける趣旨のあれをしておりますから、それだけは確保しなければなりませんので、こういう計算方式をとったわけでございまして、結論から申し上げますと、公務員給与だけを考えますと、いわゆる積み残し分については、積み残し分を入れましたいわゆる経過措置分については公務員給与の九二%を見ておる形になりますし、昭和四十三年度における公務員給与の上昇分につきましては八七%を見ておる形になりますので、結論といたしますと、その物価の考えは、計算の途中は別問題として、物価の考えを抜きましても、公務員給与の中に物価が入っておることを想定しまして、公務員給与だけであれしますと、ただいま申し上げましたように、経過措置分では九二%、四十三年度の公務員給与の上昇分については八七%を容認するという形になっておりますので、結論といたしましては、長官も申し上げましたとおり、先生の趣旨に近い数字になっていると思います。
  43. 受田新吉

    ○受田委員 積み残し分の計算まで入れて八七・五%をいま指摘されているんだが、二二・五というのは積み残し部分ですから、その部分をいまここで新しい退職者の給与をきめる基準に過去のものを持ち込んで、合わせたら八七・五%になるというのはおかしい議論です。なるべく退職者の給与現職の現在もらっている給与に近いところでスライドしていただこうという理論をいま述べておるんだから、積み残し部分をここに持ち込む考え方というのはおかしい。私はその意味では、時間もないから、どうせ十一日に私はまたやるから、もうこまかいことはやむを得ないから、基本的なことだけ、法律を通そうということに協力しなければいかぬので、この理論は非常に大事な問題ですから私は申し上げたいのですが、現職が六万円ベースであるならば退職者はせめて五万五千円くらいの——一年くらいのずれはやむを得ませんが、なるべくそれに近い、一年という一歩前くらいで、十分の九くらいのところへ落ちつけていくという配慮は政治的にも必要じゃないか。そういうものをスライド制——スライド制といっても、これはなかなか完全に一致しません。一年くらいのずれが出ることは退職者もがまんしていただかなければならぬ。しかしせめて十分の九くらいのところへまで追っかけてくるスライド制というものを考えてやるべきじゃないか。したがって、かける十分の六を、かける十分の九、いま十分の十はむずかしいが、その一歩前という意味で、公務員給与を基準にして十分の九、その他を十分の一ほど参考にして十分の十にするというような考え方が一応成り立つことは成り立つと私は思います。そういう方向で長官としてはスライド制をしくとすれば、いま計算基礎になった三つの要素の中で、まん中の部分だけをおとりになっている。生活改善部分の比重をもっと強くされて、最高十分の九くらいのところへまでもっていく。完璧なところまでいかなくても、その一歩前の十分の九くらいのところまでスライド制を前進するお考えをお持ちであるかどうか。長官のそういうお気持ちがあれば、私のこの質問はやめたいと思います。
  44. 山中貞則

    山中国務大臣 数字というものは恣意的にいじるということはなかなかむずかしゅうございますが、しかし、その結果の及ぼす影響は非常に大きいものを持っていますから、やはり十分の六という積算は、現在の公務員給与の実態を分析いたしました結果求められた数値でございます。でありますので、これを九とか八とかいうことを即答はいたしかねますが、しかし反面、退職された後、なるほど職階というものは持っておられないし、しかしながらそれらしい生活環境の中でいかなければならない。この点は確かに恩給法第二条の原則でいって、国民の生活水準というものに合わせていかなければならぬというのは、そこらのことだと思います。今後はその点を十分考えて、私としては、これを制度化する場合において、あくまでも基本法の第二条に重点を置いて考えてまいるつもりでございます。
  45. 受田新吉

    ○受田委員 次長がおっしゃったのは、審議会の答申の物価というものの五%を常に念頭に持っておられる。それを持っておられるからこじれてくる。  そこで、公務員給与を基準に考えるといういまの長官の意見であるならば、この審議会の答申を無視していいのです。あとの答申部分はなかなかいいところがあるから尊重するが、法律の意思に反した答申をした部分は一応これはおあずけにする。これは恩給法の二の二を基礎にして、公務員給与を基準にしてあとはつけ足り、考えても考えなくてもいい、つまり消費者物価などは考えても考えなくても、基準は国家公務員給与基礎にして、退職者はせめて十分の九くらいのところまでは、実施時期のずれ等があるから全部とはいかぬが、十分の九くらいのところで追っかけてくるというようなスライド制に長官としては持っていこうかなというにおいがぶんぷんとかげる答弁があった。審議会答申にとらわれておると、いつまでたっても消費者物価にこだわりますよ。恩給法二の二の、すなわち公務員給与のほうを基準にするというたてまえでスライド制を考えられるというところで政治的な配慮をされる長官の御意思があれば、私はそれでこの質問は終わります。
  46. 山中貞則

    山中国務大臣 審議会が恩給法の第二条の法文をよく承知しながらも物価五%という点について明確な表現をしておりますのは、やはり戦後人事院制度というものが創設をされまして、その人事院の給与勧告の前提が五%がとられておるところに大きく左右された委員の心証がそこにあらわれたものと感じております。したがって、戦前の基本法と戦後の人事院制度発足による公務員給与の勧告制度の実態を踏まえた審議会の答申との間に微妙な表現のニュアンスの相違があることは、やむを得ないことだと思います。その双方いずれをも尊重すべき根拠があると考えまして、基本法の趣旨に忠実にのっとりながら、なおかつ審議会の御意向も現実に無視はできないものであって、排除すべきものではないと考えて今後処理してまいりたいと思います。
  47. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、長官の御意思は、恩給法の二の二を基礎にして考える。それから審議会の答申は物価が異常に高くなったような場合を想定したとき、消費者物価というものをそのときに特別に政治的に考えるというのであって、恩給法の二が基礎であって、物価のことをいうておる審議会の答申は参考にする、その意味の御答弁である。恩給法の二の二と審議会答申は同じ比重に考えるということになると、あなた御自身が法律を粗末にして審議会答申を大事にする大臣で、とんでもない考え違いになると思うが、法律精神を第一に考えて、審議会答申を参考にするという趣旨と了解させていただいてよいかどうか。
  48. 山中貞則

    山中国務大臣 法律改正せざる限りいつまでも生き続けるものでありまして、それを審議会答申がありましたからといって、法律を、審議会は否定する見解もとり得なければ、答申も出し得ないことは当然と考える次第でございます。
  49. 受田新吉

    ○受田委員 それで非常にはっきりした。同様な比重のにおいがしたから、それをただしたわけです。  長官は非常に御熱意があるから、月曜日にまたお尋ねするとして、きょうはこれで終わります。
  50. 和田耕作

    和田(耕)委員 関連して。昨日、答弁があったと思いますけれども、私は満鉄社員だったことがあることを非常に名誉に感じておりますが、しかし満鉄社員の現在は非常にみじめな状態でございまして、シベリア抑留の期間を——私、シベリアに五年おったことがあります。この期間を当然恩給の期間に通算していただけるように御配慮いただきたいと思います。
  51. 山中貞則

    山中国務大臣 審議会の答申いたしました二十六項目の残り十項目に入っておりますので、来年度予算において実現をはかるつもりでございます。
  52. 和田耕作

    和田(耕)委員 ありがとうございました。
  53. 天野公義

    天野委員長 本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  54. 天野公義

    天野委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  恩給法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  55. 天野公義

    天野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  56. 天野公義

    天野委員長 この際、塩谷一夫君外三名より、本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。塩谷一夫君。
  57. 塩谷一夫

    ○塩谷委員 ただいま議題となりました自由民主党、日本社会党、公明党、民社党四党共同提案にかかる恩給法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、提案者を代表してその趣旨を御説明申し上げます。  まず案文を朗読いたします。    恩給法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について速かに善処するよう要望する。  一、恩給法第二条ノ二の規定について、その制定の趣旨にかんがみ、国家公務員給与を基準として、国民の生活水準、消費者物価その他を考慮の上その制度化を図ること。  二、恩給に関する立法の簡素化その他法制上の諸問題について、国民の要望に沿うよう抜本的検討を加えること。  右決議する。  本案の趣旨については、先般来の当委員会における同僚議員の質疑を通じてすでに明らかになっておることと存じます。よろしく御賛同をお願いいたします。
  58. 天野公義

    天野委員長 採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  59. 天野公義

    天野委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付すことに決しました。  この際、山中総務長官から発言を求められておりますので、これを許します。山中総務長官
  60. 山中貞則

    山中国務大臣 ただいま多数をもって可決されました本委員会の附帯決議につきましては、その御趣旨に対して、十分尊重するとともに、その具体化に努力をいたすつもりでございます。     —————————————
  61. 天野公義

    天野委員長 なお、ただいま可決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 天野公義

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  63. 天野公義

    天野委員長 本会議散会後委員会を再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時休憩      ————◇—————    午後二時二十一分開議
  64. 天野公義

    天野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  法務省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案の審査に関し、株式会社新都市開発センター取締役社長大池眞君が参考人として出席されております。  参考人には、御多用中のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございました。  なお、参考人の御意見は質疑をもって聴取することといたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  65. 大出俊

    ○大出委員 大池さんにたいへん忙しいところをお出かけいただきまして、まことに恐縮でございます。  実は、この新都市開発センター、大池さんのおやりになっておられる会社の設立並びに事業計画等をめぐりまして、かつまた幾つかの拘置所等を、東京拘置所あと地の払い下げというものと見合った建物交換の形でつくるという国との契約が一方あるわけでございまして、これらの問題をめぐりまして地元の池袋の周辺の方々などからもいろいろ質問がございましたり、それなりの苦情がございましたり、相当数がある。実はこの委員会は何回か、刑務所の移築等につきまして、設置法の改正でございますから、手がけてきたのでございますが、どうやらこれが一番最後になるだろうと思いますので、そういう意味では、やはりそういう苦情等があるのに委員会は何らこれを取り上げなかったということであっては、後ほど問題でも起こりますと、たいへんどうも審議の責任ということで事欠くことになる、そういうふうに考えましたので、国との関係なりあるいは計画の内容なり、公共性の強いお仕事をなさるということもございますから——もちろん用途指定もついておりますが、五年ということでございましょうし、そこらの点で私どもにいささか納得のいかない点もあります。そこらを実は率直に御回答をいただいて、先々ひとつそういう意味での私どもの意見をお取り上げいただきたいという気がいたします。重ねて申し上げますが、たいへんお忙しいところを恐縮でございます。  そこでまず一つは、豊島でございますから、副都心計画などというものもございますので、そういう意味で東京都の首都圏の整備計画というものとの関連がおありになるだろうと思います。本来、東京都の側あるいは首都圏整備委員会の側からの話でこれだけのメンバーをそろえての会社設立をおはかりになったものか、あるいは皆さんのほうでどなたかが計画をお持ちになって、東京都側に働きかけをなさって、あるいは首都圏整備委員会の側にものを申し上げてという形のこの会社の設立になったのか、そのあたりの出発のところをひとつお聞かせいただければ幸いなんです。
  66. 大池眞

    ○大池参考人 大出議員からの、当開発センターのでき上がる発起人時代の、どういう経緯ででき上がったかというお話でございますが、これは閣議で、三十三年に、五年後を目ざして東京拘置所を移転するということが御決定になったようでございます。したがいまして、五年後に東京拘置所が移転されましたあと地にどういうものを計画されておるであろうかということが一番大きな問題であったのでございますが、これには東京都のほうの首都圏の整備をしておられます方々のほうでもいろいろ御研究の結果がございまして、学者等に研究をさせて、あれがもし移転をしたあとには、少なくともこういうものはつくりたいというような御希望の点が数々あったように承っております。ところが法務省のほうといたしまして、五年後にあれを移転させる土地がなかなか見つからずに、具体化していなかったと聞いております。  その後いよいよ五年が近づいてまいりましたので、どこか適当な土地をさがしたいということで、法務省の方々のほうでも御検討をされておったやに聞いておりますが、いよいよこれを移転しましたあとに、池袋のほうの副都心計画として東京都のほうでもお持ちになっておるものは私どものほうとしても多少承っておった次第でありまして、東京都が中心となって、このあと地を計画されるであろうと考えておった次第であります。ところが東京都のほうといたしましては、オリンピックとの関係もございまして、公共施設にする公共事業費というものが非常に足りなくて、あのあと地の計画には、東京都としてはいま手を出すというようなことはとうてい困難であるというお話を承っておった次第であります。  そのような関係から、それならばあそこの副都心の計画を中心にして、財界のおも立った方々にお願いをして、あの土地が、民間団体としての財界を中心とした会社ができ上がりまして、もしそれにお譲り願えるということになるならばたいへんけっこうではなかろうかというような話し合いが二、三の有力な方々から出まして、それならばまずそういう方々を中心にひとつあそこを開発する発起人会のようなものをつくりまして、そこで検討してみたらばどうであろうかというようなことで、当初五、六人の名前が——井深大さん、安西正夫さん、今里広記さん、石川六郎さん、小林中さん、清水雅さん、それから永野重雄さん、堤清二さん、水野成夫さん、それに私も一枚加わりまして、このような方々が話し合いをして、これを巣鴨拘置所移転のあと地に協力して一つの仕事といいますか、開発事業を行なってみたらどうだろうかというような話し合いができ上がりまして、そういうことで一番最初にスタートしたというのが始まりでございました。
  67. 大出俊

    ○大出委員 これは一番最初は、発起人の前の印刷物によりますと、最近資料を御提出いただきましたが、抜けております。中村梅吉さんなんかも入っておりましたね。
  68. 大池眞

    ○大池参考人 一番最初中村梅吉さんがおられまして、途中大臣になられまして、おれはいやだよと言って引っ込まれたのであります。
  69. 大出俊

    ○大出委員 そういうことがあった。そこで、先ほど首都圏整備委員会お話も出ましたが、こちらのほうにはすでにそのときはもう計画があったわけでございますか。
  70. 大池眞

    ○大池参考人 東京都のほうには、そのときにははっきりしたこうという計画はなかったように聞いております。
  71. 大出俊

    ○大出委員 そうしますと、発起人の皆さんがお集まりになって、どなたかが中心になってプランをおつくりになった、こう理解をしてよろしゅうございますか。
  72. 大池眞

    ○大池参考人 さようでございます。
  73. 大出俊

    ○大出委員 そこで、株主の皆さんでございますが、私の手元にいまある資料では、四十七名の方が株主になっておられるわけでありますけれども、この丸地安次さんとおっしゃるのですか、この方は、たいへん恐縮な言い方でございますが、どちらの方でございましょうか。
  74. 大池眞

    ○大池参考人 どなたでございますか。
  75. 大出俊

    ○大出委員 丸地さん。
  76. 大池眞

    ○大池参考人 丸地さんは三菱地所の重役さんでございます。
  77. 大出俊

    ○大出委員 これはちょっと耳にしていることなんですが、三菱地所の方がどこか刑務所の移転先のお世話をした場所がございましたか。
  78. 大池眞

    ○大池参考人 三菱地所が移転先の世話をしたことはございません。
  79. 大出俊

    ○大出委員 そこで、四十七名の方々——そうしますと、三菱地所株式会社は、会社として株主になっておられるのですね。そして、丸地さんという方は個人としてやはり株主になっている、こういうかっこうでございますか。
  80. 大池眞

    ○大池参考人 さようでございます。
  81. 大出俊

    ○大出委員 そこから先承るのはいろいろ立ち入り過ぎますのでやめますけれども、三菱地所さん、それから株式会社西武百貨店、西武鉄道株式会社、東京電力株式会社、大成建設株式会社、三菱信託銀行株式会社、それから大林組さん、鹿島建設株式会社、清水建設株式会社、竹中工務店、東宝株式会社——映画の東宝でございますね。日本銅管株式会社、富士製鉄株式会社、株式会社藤田組、三菱電機、八幡製鉄、日本勧業銀行、日本不動産銀行、富士銀行、三菱銀行、東京瓦斯、東京急行、日本興業銀行、日本長期信用銀行、三菱重工、明治生命、東急不動産、東武鉄道、三菱商事、東急建設、東急百貨店、日本ビクター、三菱金属、それから第一銀行、サンケイビル、住友銀行、三井不動産、日本空港ビル、あと安西さんが個人でお入りになって、それからソニー、日本精工、東京シティ・エアターミナル株式会社、先ほどの丸地さん、それから大池さんと小林中さん、堤清二さん、中村建城さん、こういうことに株主の皆さんなっておられるわけでございます。  実は一つの問題は、地元の方々との話し合いというようなことが行なわれていたのかどうかという点、この株主の皆さん方の中には、地元の方々が実はお入りになっていないように思うのです。地元の商店街の皆さんからいろいろお話がある中に、これは私は真疑のほどはよくわからないのですけれども、地元はかつて東京拘置所があって、逃亡者があったということになるとサイレンが鳴って夜起こされたり何かして、長い間苦労してきている。そこで、商店街の皆さんが池袋に地下駐車場の会社をつくろうということで申請をした。ところが、結果的に地元ではなくて、地下駐車場株式会社が別に認可をされて、これは大池さんがおやりになっておられるようでありますけれども、そちらに行ってしまった。また今度は三十何階のビルを二つつくるなどという話が始まっているんだけれども、ここで五千坪くらいの公園をつくってくれということを地元は都に言っておった。ところが二千坪の公園にという話になったのだが、それが三十六階のビルということになると、周辺に多少の庭的なものがなければならぬ。公園といえばていさいがいいんだけれども、どうも三十六階のビルの中庭式なものにしかなっていない。どいてくれることは長年の念願だからありがたいのだけれども、さてそこにきて株主の皆さんの顔ぶれをながめてみても、いずれもこれは、片や建設会社であり、片や銀行であり、片や百貨店であり、片や鉄道の会社であり、バスの会社である。そうするとバスターミナルをつくってやって、ハスが入ってくる。関係会社が全部この株主になってくる。鉄道との関係も当然出てくる。さて建物ということになると、超一流の建設会社がずらり入っている。さらに電気工事その他付帯するものも引き受けていけるものが会社の中には全部ある。したがって、ショッピングセンターといってみても、これは各百貨店関係がずらりと並んでいるわけでありますから、そういうことになってくるとどうもこの株主におなりになった会社がそれぞれ自分仕事をこのワクの中で分け合ってやっていけるようにできているのではないか。地元としては非常に不可解な気がする。そういう大きな資本、大きな会社が入ってきて、それぞれの利益をそこで得ていくという方向に計画が将来発展するのだとすると、その周辺で苦労した地元の人々立場は一体どうなるだろうかという問題も一面出てくるわけでありまして、いわばどうもうまくでき過ぎているのじゃないか。しかもその契約の相手方が国であり、しかも法務省である。こういうことになると、地元としてはどうも少し納得がいきかねる点があるのだ、実はこういう意味お話が幾つもあるんですよ。したがって、この株主の方々を、発起人の方々をお選びになって計画をお立てになるこの計画と、この資本投入をなさる関係法人あるいは個人の方々との関係ですね、ここらのところはこの計画とどういうからみ合いになるのか。とにかく資本投入をする、そのことは間違いではないと思うのでありますけれども、それなりのことは見返りが全部くっついているのじゃないかという、ここらのところは、言われてみれば計画上そうなっているような気もするのです。そこらはずばり承ったほうがいいと思って聞くのですが、そこらのところを頭にお置きになって、おたくの会社は将来は何をお建てになるんだからこのくらいお持ちください、あるいはおたくはこういう計画で百貨店をつくるならそこにお入りください、おたくの会社はバス会社ですから、ターミナルができればこういうことになるからいらっしゃいという話になっているんだとすると、あとは銀行が銀行団を組織できそうなほどあるのですが、金融面でこちらの関係が出てくるから入っていてくれということになってくると、どうも何か少し、確かに地元の方の言われる一面もなきにしもあらずという気がするのであります。発起人という方々の中心になって今日までお進めいただいた大池さんの立場から、地元のそういう声もありますので、その辺をどういうふうにお組み立てになっておられるのか、承りたいわけでございます。ぶしつけで少しずけずけ申し上げて恐縮でございますけれども……。
  82. 大池眞

    ○大池参考人 ただいま大出議員さんからは、株主の名簿をごらんになりまして、地元が一人も入っていないじゃないかということで、何か御疑念をお持ちのような御質問でございますが、私どものほうといたしましては、この拘置所が移転されましたあと地を手に入れますその費用並びにその条件的な諸種の公共事業並びにそれのかわりにつくって差し上げるべき六カ所の刑務所、これらの費用等を考えますと、相当ばく大なものになるのでありまして、そういうものを全部こしらえてお国へ差し上げて、その代償としてあと地を手に入れまして、そのあと地へ、これは株式会社でございまするから、何とかしてペイするような、しかもそれが池袋副都心の発展に寄与し、並びに日本全体の上から見ましても、なるほどりっぱな開発事業であるという社会的な責任を果たさねばならぬのでございまして、それには手に入れるまでの費用以上に数百億の金が要ることが予定をされておりましたので、したがいまして、会社を設立いたしまして、それからそのスタートをする。またお国のほうでもそういう会社ならば、ひとつ契約を結ぶ相手方と認めてよろしいという信用を得るためには、民間の相当有力な方々に株主となっていただいて、その資本を獲得せねばならぬので、先ほど申し上げましたような発起人のところで、それではどのような方々を株主にお願いしたらいいであろうかということで、おのおの手を分けて御相談をしてでき上がったのが、ただいま持っておる株主の表でございます。したがいまして、そういう際に、地元のほうでもこの株主におれをぜひ入れてくれというような強い希望なりそういう意見が出ておれば、私どものほうとしては当然その方々考えたわけでございますが、たまたまその当時これができ上がるかどうか、また、はたしておまえさんたちの会社ができても、そこへ契約の相手方として選定されるかどうかというようなこともわからない時代でございました。一番最初は御承知のとおり十六億の資金をもって始まった次第でございまして、それが倍額増資になった結果こういうようなことに相なった次第でございます。したがいまして、その当時から地元の希望があるのにそれを無視したということではございませんので、また地元のほうにそこまで手を回すことなくしてたまたま十六億の金の一応配分ができ上がってできたものがこれでございます。したがいまして、そのような意図は、先ほど御疑念にありました地元の意思を全然無視してこれらの株主がそこで非常な営利的な仕事をして、それによって利益を得ようというような考え方はおそらくあり得ないだろうと思っております。私どもとしては、池袋開発のためにぜひ財界の皆さんの御協力を得たいということで足を運びまして、でき上がったのがこの株主の方々でございまして、そういう意味合いで毛頭そういう考えのないことだけを申し上げておきます。
  83. 大出俊

    ○大出委員 地元の方のお話を私も何人か承ってみましたけれども、ここが食い違うわけですよ。つまり大池さんはそういうふうに仰せになりました、そのとおりだと思いますが、地元の皆さんは全く中味は知らなかったのですね。何がどういうふうに進行しているのかを知らされていない。たとえば、先ほど私がだから例に上げたのですが、地下駐車場の件なんかでも、地元の申請はしたが、あとか先かわかりませんが、ほかからも申請が出た。自分たちは地元でやろうとしたのだから地元に許可になるだろうと思っておったが、ならなかった。これには経過がありますから一がいに——私一口で申し上げておりますから、おのおのそれは言い分が官庁の側にもあるのだと思います。思いますが、地元に長く住んでいる人の感情からすると、そういう気持ちになる。さてこれだけのものが進行する、つまり長年苦労して刑務所の周辺で生活してきた商店街その他の方々ですから、それなりにこの商店街の開発は考えている。ところが全く知らないで、しかもそれは国有地でございますから、てっぺんでぽんと契約を結ばれてしまうと、地元の方々は手も足も出ないわけですよ。そこまで事が進んでしまって契約ができて、だんだん耳に入ってくることになる。拘置所あと——六カ所の刑務所をつくって差し上げるとおっしゃるが、そうではない。建物交換のかっこうで手続を経て払い下げを受ける。そうすると、これは五十何億かになる。さて六カ所の建物を建てて建物交換をするということになると、四十何億かになる。青梅のようなことが、契約変更でその後変わっておる。  そこで、そういうことになると、大きな意味でまた資本投入するのですから、大きな意味で採算がとれるかとれないかという頭があってやるのですから、当然株式会社なんだから、さて刑務所がどいたあと地がどのくらい、土地価格そのものにしても値上がりするものかということだって、当然評価する場合にはそれは見込まれませんから、それはそれで株式会社として仕事をしていく側とすれば、そこらだって考えなければならぬ計算基礎にはなるわけでありまして、そういう要素がからみ合って皆さんの計画が進む。地元は全く知らない。いわばつんぼさじきですね。そういう形で、しかも国が、つまり日本のまさに財界を代表するような方々との間ですぽんと話がきまって、しかも、あとから申し上げますが、会社ができ、すぐターミナルの許可がおり、都市計画決定その他の関係で建設省が特許をする、こう進んでいっているわけですからね。そうすると、全く苦労した地元の人たちはいるのだが、そこに大きな資本集団が乗り込んで、東京副都心といわれるところに乗り込んで、しかも国有地を一括払い下げを受ける。建物は建てますけれども、それこそ摩天楼式なものをおつくりになる。そうなると、地元としては、非常に高いですから、三十六階とかあるいは一説には六十階だとか、三十六階二つだとかいろいろな話があります。そうすると、日照権の問題とか電波障害の問題なんか周辺に起こります。霞が関ビルや貿易会館の問題もある。そういうところで全くつんぼさじきで進めていったということの背景に、東京の首都圏整備委員会などがあることは百も承知のことで、これには当時の東京都も承知のことで、皆さんと腹を合わせてそう進めていった。法務省が相手ですから、これまた建設省にしても運輸省にしても、全部てっぺんで了解して事を進めていった。こうなると、この仕事というものは全く国民という立場からいってどっちを向いていたんだということになる。私どものような感覚からすると、どうもそう見えるわけでありまして、そこを実は伺っておるわけであります。したがって、地元からそういう話がなかったから、こうおっしゃるのですけれども、なかったからとか何とかいうことではなしに、ものごとをその土地でやろうとすれば、長年苦労した方がいる、そこの刑務所、拘置所がどこかに移転するという計画が出てくるならば、その地元の人たちはその国有地二万坪のあと地をどうにもしたい、こうにもしたいという気持ちがあったのだろうと思う、町内会ということでもあるいは商店会ということでも。だとすると、そこいらに、全くつんぼさじきのようなことで事が進んでしまうと、どうもそれが、どくのだからおまえたちいいじゃないかということだけでは済まないという気が私はしまして、実はそれが私のほうへいろいろな意見になって来るのだろうということの原因でもあろうと思いましたので、実はそこのところをいまお尋ねしたわけなんであります。言ってこなかったから入れなかったのだ。私は、何もこの中に入れてやれと言っておるわけではない。地元の計画、地元の希望というものをどういうふうにお考えになって進めているかということを聞きたかった。いまの御答弁だと、そこを配慮しなかったということになる。結果的にはそうじゃないかと思うのですが、そこのところはいかがでございましょうか。
  84. 大池眞

    ○大池参考人 ただいまの大出議員のお話は、ごもっともなことだと思っておりますが、私どものほうの考えといたしましては、この土地を取得するまでの金をいかにして集めて会社を立てて、それからその資本をもとにして義務づけられたものをつくって差し上げて、それからその土地を取得する、取得したその土地にいかなるものを建てて、それからどういうように地元の皆さんに満足していただけるようなものにするかということは、これからのことでございまして、この問題とは切り離して考えておる次第でございます。
  85. 大出俊

    ○大出委員 だがしかし、少し先に進み過ぎてしまいますが、事業計画は皆さんのほうですでにお立てになっているのですね。これは法務省の方ともいろいろ相談をされているのですね。そうすると、これはもうどういうものをつくるということはきまってしまっている。バスターミナルあるいはまた駐車場ですか、高速道路ですか、これはずっと全部ほぼワク組みはきまってしまっていて、一番最後のほうに、時の経済情勢の変動に応じて計画変更はあり得る、こうあるのですが、四十八年までに建てるということになっていますね。そしてそれから先五年の用途指定がついている。これは五年ですから、五十三年ということになりますと、そこから先は指定が切れてしまう、こういうわけでございますから、実際このきまっているものをいまさら大筋を変えようがない。だからこれからということをおっしゃるわけですけれども、先ほど地元が言ってこないから相談しなかった、こういうお話ですが、どうもそこらがいささかひっかかる感じがするのですが、それはまた後ほどこまかい点で伺いたいのであります。  そこで、六カ所の建て物をつくってといういまお話がございました。これは実はお建てになっている会社が——会社との契約はおたくでされるわけでございますからね、法務省じゃございません。予決令という令がございます。この九十九条の二十一号だと思いますけれども、ここに基づきまして、随意契約の形をおとりになる、国とおたくのほうとの間で。そこでさて今度は、建てる仕事をやっていくのはおたくのほうが主になって、法務省の契約の相手方である大池さんのほうが主になって、工事会社との契約をお結びになる、こういう手続ですね。きのう実は法務省の方に承ったら、十社からの会社を集めた競争入札をやったのだ、こう言っておるのですが、結果として出てきておりますのは、下野黒羽の場合は大成建設、それから川越の場合には清水建設、旭川は大成建設、岡山が藤田組、浦和が大林、東京拘置所が鹿島、こうなっているわけですね。これは竹中さんが抜けておるだけで、株主の中で一億五千万ないし一億のつまり投資をしておられる会社が全部建設工事をおとりになっておる。これは考えてみれば無理もないので、役員の方、あるいは会社側の方々の中で、株主でございますから、当然関係者がお入りになっておるわけでありますから、まああるいは入札さしてもそこに落ちるようになっておるのかもしれませんけれども、このあたりは、まことにどうもふに落ちないので、したがって、先ほど私は、おたくは幾らぐらいお出しください、そのかわり投資であるから、刑務所の工事もありますよ、おたくは幾ら株主になっていただけますか、あとで三十八階のビルの建築もございますよ、あるいはバスターミナルもございますよ、あるいは高速道路もありますよというかっこうで入ってきたとすれば、一つもふしぎはないのですよ。資本投入をしたからそこに落ちておる。これは少しでも違っておるところがあれば別なんだけれども、これだけ見てもそういうかっこうになる。だとすると、将来に向かって、いろいろなものを建てるのにも、おおむねこのワク組みの中で進んでいくのだろうと思わざるを得ないのであります。そこらはどういう形で——おたくのほうは、どこは何々会社に、これはあらかじめそういうふうにお考えでおきめになってやっておる、これをわれわれにおっしゃっていただければよろしいのでございますが、そこらのところはどういうふうになっておるのでありますか。ふしぎな話なんですが……。
  86. 大池眞

    ○大池参考人 いままでこしらえました刑務所の引き受けが、たまたま大林以下が株主になっておられたために、ただいまのような御質問があったと思います。私どものほうとしては、株主以外の建設会社が引き受けてもけっこうな話なんで、これに引き受けてもらわなければならないということはございません。したがいまして、一つの刑務所を入札いたします際には、いわゆるA級のりっぱな会社、これならばよろしいというような会社を——もちろん法務省等でもお調べを願った結果、そういうものがよろしいというようなのを十数社一緒にいたしまして、入札をさせた次第でございます。不幸にして、私どもの予定価格には一回も達したことはございません。予定価格といいますか、契約しようとした価格が安過ぎましたのか、どうしても落ちません。したがいまして、数回やってみましても、途中から辞退をしてどんどんだめになって、結局最後に二、三社が残って、やってみる、やってみてもなかなか落ちないということで、そのうちの最低のものと随契をした結果がただいま申しましたような各所のものをその会社に引き受けていただいた次第でございます。したがいまして、私どものほうは、こういう仕事があるからおまえさんたちのほうにするから、株主になってくれというようなことは絶対にございません。たまたま株主の会社が最低価格を入れておったためにそれで極力交渉した結果、予定価格で引き受けてもらったということの結論に相なった次第でございます。
  87. 大出俊

    ○大出委員 これは社会奉仕をする株式会社というのはあまりございませんで、特に大企業というのは、その利潤についてはなかなかきびしいですよ。私どもも横浜で大きな建築を頼まれまして、苦労させられた時期もあったのでありますけれども、これは桜木町駅前の建物だって二十七億ですからね。地元の方々がほとんど全部出資してやっておるわけですから、その意味では全く地元の方々がやった仕事だということでございます。  ところで、入札ということでございますけれども、これもまた決算委員会なんかでもよく問題が出ますように、業者の側というのは、一体価格の勘どころはどこなんだということを非常にあの手この手で探られるわけですが、とにかくこれだけ出資されておって、株主でございまして、またここに役員というものがあります。そこいらはみんな関係がございますから、そうなればそのつぼの中はわかっておるということになっておるはずであります。そんなにたわやかではございません。そうなると、結果的にいろいろありましたでしょう。いまおたくのようなお気持ちでおやりになっておるかもしれません。けれども、結果的に、請負っておるものは、全部株主関係の会社ばかりです。これだけは間違いない事実です。先々も、いろいろやったのだけれども、そうなるということが次々出てくるかもしれません、ほかはとらないから。そんなことをやってしまったら、片っ端から損をする工事をやっておるということになる。そうだとすれば、これはたいへんな損を承知で奉仕をしておるということになる。ということになると、さてわからないのは、そういうお気持ちでおやりになるならば、利益を考えていないのですから、そうすると、一つの例ですけれども、このたび問題になっておる黒羽、ここはみんなおおむね坪三千円です。おおむねと申し上げますが、三千円でお買い上げになっておる、植竹英雄さんから。春彦さんの御子息さんだと思いますが、そんなところで適正な価格ということになっております関係で、法務省のほうでは坪千九十円、そうすると、二千円足らずのものがその間に差金を生じておる。これは青梅から向こうへ変えたということもございましょう。しかし、いずれにしても——あるいは急がなければならぬという特急料かもしれません。四十八年までということがあるからかもしれませんが、それにしても六万坪だということになりますと、一億何がしの金が、そこで経理上は赤字になるはずです。  きのう法務省の方の御答弁によりますと、聞いているという範囲である、皆さんの会社から承っているという限りでものを申し上げれば、採算がとれるようである、そうすると、この一億何がしの金、採算がとれるようであるということになりますと、やはり当然それだけの利益というものは見込んでおることになる。そうなる。そうでなければ、これは赤字のままなんですから。  さて、その赤字のままでは、国の責任上、民間の株式会社を赤字にして国は刑務所をつくりましたじゃ、事済まぬ、国の責任問題になる。だから当然、これは赤字にはならぬはずです。そうすると、いまお話しのような、何もかもどうも安過ぎるから引き受け手がないようなことをやっておって、それは先ほどのように、たいへんな資本投資をこれからする、建てて差し上げる四十何億という金だけじゃないはずです。そうすると、そんなに、財界の大御所といえども、大きな工事をしているのですから、甘いものじゃない、まず株式会社でございますから、社団でもなければあるいは財団でもない。そうなると、営利事業をやる会社ですから、ただ一つだけあるのは、一つのワク組みをするときに、公共性の強い、これは先ほど申し上げました予決令等の関係もございます、あるいは用途指定の関係もございます、そういうワクが一つだけある。あるけれども、性格はそうではない、こういうことになるわけなんでございまして、ですから、私は、採算がとれるという一億何がしという金は、皆さんの計算上、どこに、どういうふうに入って、そろばんがはじけて、どこでそれは償還をされていくのか、そういう計画が皆さんのほうにないとすれば、皆さんのお話を聞いて、そういうことになるだろうという判断を法務省がするわけにいかぬわけですから、そこらのところをこの委員会責任上、皆さんの会社に、いま大池さんがおっしゃるようなやり方なんだから赤字ばかり出てしまうということ、これは捨ててはおけない、国の仕事ですから。そういう点は明らかにする必要がある、そういう意味で、そこらは一体どういうふうに、その一億何がしは、特急料は還元をし、埋めておいでになるおつもりなのか、お聞きしたいのでございます。
  88. 大池眞

    ○大池参考人 ただいまの御質問は、黒羽の土地が大蔵省の評価では一千円ちょっとである、これを現実に買い取ったのは坪当たり三千円ぐらいになったじゃないか、そうすると、二千円も損をして、現実には一億一千五百万程度のものを吐き出したような形になったのじゃないか。お説のとおりでございます。  私どもとしては、大蔵省が千百円以下の評価をしておられるのですから、少なくともこれに近いもので手に入れるべくあらゆる努力をいたした次第でありますが、何せよ、先ほどの御質問中にもありましたように、四十八年中にはこしらえてしなければいかぬという義務を負っておるわけでございますから、また、ものがもので、刑務所のことでございますので、すでに青梅のようなのは、最初はあれで地元の一応の了承を得たのが、非常な反対を受けてころっとだめになりました。したがいまして、これがかえ地を少なくともそっちに見つけなければならないという事情にもありました際に、たまたま黒羽の土地が見当たりまして、この土地ならば地元の反対も一応ないという見通しがつきましたので、それならば、これをどうしても、何とかして買い取らなければいかぬということで、ありとあらゆる努力をいたしました。その結果が、何としても三千円を下るわけにはいかなかった。したがいまして、私どもとしては、それならばもうここをやめてしまって他にかえ地をさがすか、あるいはもうこの計画自体を全部棒に振ってしまってやめてしまうかという立場に追い込まれておったわけであります。したがいまして、ある意味においては足もとを見られたという結果になるのかもしれませんけれども、最終的にはもう三千円は出そうという腹をきめまして、それで買い取った次第であります。  したがいまして、いまおっしゃるような一億一千万以上の土地に対する、われわれの考えた以外の赤字が出た次第であります。  この一億以上の赤字の処理をどうするか、こういうお話でございますが、これはいま申し上げましたとおり、土地を買い取ってそれをするまでの間の費用は、いま仕事はしておりませんので、全部資本でまかなっていく以外にございません。したがいまして、この五月以降、ただいまの三十二億を倍額増資をし、六十四億にして、それですべてをまかなうということにいたしてございます。したがいまして、それならば、今後、そういうしょい込んだ赤字を何でカバーするか、こういうお話でございますが、これは今後池袋のあと地が手に入りました際に、これに、いま、当初の計画では三十六階建てというようなビルをつくってカバーしなければいかぬというのが、当時積算をした目論見書でありまして、これは各省にも出してある次第であります。したがいまして、そのとおりでいけなければ、ある部面はもうけの少ないものは減らして、利益のあるものをふやすというような、多少の細工は当然行なわれなければならぬかと思っております。いわゆるそういうリアリティーを今後いたしまして、この前の目論見書でも数年間は赤字が続いて、ペイするまでには相当な年数で、七、八年かかるという予定の表はできております。これがまた八、九年になりますか、そういうことはわかりませんが、とにかくそういう、これからの将来のことは何とかしてペイをするような努力をいたさなければならぬと苦慮している次第でございます。
  89. 大出俊

    ○大出委員 だからそこに問題があるのですね。たとえば東京都がやるとかなんとかいうときに、あるいはある意味の公的機関がやるということにすれば、それなりに、これは副都心計画なんですから、都が議会の承認を得て、赤字になればなったような処理ができる。ところがこれは株式会社でございまして、資本投入、民間資本を入れているわけでございますから、赤字であるということでは事が済まない。だから、ここでうたってある計画の中身もそういう意味で変えなければならぬかもしれない。経済情勢の変化に応じて変えるように書いてございます、この計画書を拝見いたしますと。そうすると、その変わる部分はどういうことになるかというと、公共性がきわめて強いのだから、だから国はこの会社を、事業計画と見合って、つまり契約もしたし、あるいは運輸省もバスターミナルの許可もしたし、すぐ追っかけて、全くそれこそこんなにスムーズにいくならだれも苦労することはないのでありますけれども、建設省も措置をしたし、こうなっておるのです。  さて、ここから先どういう障害があるかわかりませんが、そのためにペイしようということになるとすると、その部分だけきわめて営利性の強いものに計画の中身は変わっていかなければならぬことになる。しかも、先々五年という用途指定しかついておりませんから、さらにそこから先はまた変わるかもしれない。しかも拘置所はなくなるのですから。そうすると、地価の変動だって当然あり得るわけでありますから、これを評価をし直していけば、あるいはこれは地価のたいへんな値上がりということになるとすると、その面の利益だってこれは将来見込めるかもしれないという要素が幾つもあるのですね。  私の心配するのは、資本の原理でございますから、これは入っている民間資本がおのおの利潤追求に——相当きびしいものを持ち合っている会社でございますので、そうすると、どうしてもそちらのほうの、つまり資本に対する利潤というものをあげていこうという方向に動く。ここまで言ってしまっていいかどうかわかりませんが、現に中村建城さんが大池さんにおかわりになっている。そのおかわりになった最初の、当初契約の契約書の中身については中村建城さん、あとの変更契約の中身は、社長さんは大池さん、こうかわっておられる。何でこれはかわったのだろうか。中村建城さんは前の大蔵省主計局長さんでございます。大池さんは事務総長さんでございますから、ここにも資本の原理が働いているのですね。聞いてみると、役員問題について、どっちのほうに引っ張っていかれてしまったら困ってしまう、三菱グループがどっちを向いては困るとか、鉄道関係のほうは、それはこっちからかえろとか、つまりそれはなぜかというと、将来計画に対する利潤の問題は、計画を立てる役員の方々が、こっちに寄って立てられれば投入した資本に対する利潤が違ってくる、だからそこまでが争いの種に現になっていると私は聞いておる。そうなると、これは非常に危険なことになるという心配を私はするのです。しかも、これは事、ほかならぬ法務省というととろが皆さんと随契をされておられるわけです。それは予決令に基づく成規の手続だとおっしゃっても、国民という立場から見ると納得しがたいものになる。地元をおっぽらかして、大資本だけ集まって金もうけをする。それは東京都も首都圏整備委員会もみんなやっている。おまけに、法務省は百も承知でやったんじゃないかということになったら、これはおさまりがつかぬ。うまくいかぬと思う。たまたま黒羽に移すということは法律事項でございますから、法務省設置法改正なんですから、拘置所が移るんですから、それはよろしゅうございますということになるのは、これは、やはりこの点は解明しなければならぬ、明らかにしなければならぬという気持ちで実は御質問申し上げておるということでございますので、お忙しいところを御足労いただいたわけでございますが、いまのお話からすると、どうもそっちのほうにいきそうな感じなんですけれども、利潤の上がりそうなものに切りかえていって、それだけのものは上げていくという実は御答弁なんですから。そうでしょう。ここにあるこの計画は、その面に関する限りは、それだけ変わる、こういうことになる。  さて、これをおつくりになる四十八年、その時点までまだ数年あります。こういう建築は思ったより金がかかるものなんですよ、いずれの場合でも。当初計画を変更しなければならぬというのは、いつの場合もそうです。ですから、そういう面からいたしますと、私も実はたいへんなお手伝いをさせられて往生をしたわけです。自分の経験で、二十七億の建物ですから、そこへ地下鉄を、途中から、十六号国道の下に地下鉄桜木町駅をつくるなんというので、向こう側へ移せというのですから、地下鉄審議会でビル計画の中で抱かざるを得ない。それで半年間ストップ。横浜市の交通局の計画がまとまらなければならぬというので、その間金が要る。半年間何もしないということになると、今度は、その分だけまた当初計画を変更して、利潤の追求をと、こういうことになるわけですね。それに、大きな会社が一ぱい入っているのですから、これは、さっきもちょっと申し上げましたが、役員の問題なんかは、なぜかというと、割り振り、分担のおのおの考え方があるからでしょう。それで、争いが起こってまた少し延びる。延びれば、仕事あとにしなければならないのですから、金利がかかる。それを織り込んで採算をとろうとするからまた変わる。こういうことになっていきますと、将来何になっちまうのかということですね。ここまで実はどうも心配をせざるを得ないのですけれども、大池さん、いままでやってこられた御経験上、そういう御心配はございませんですか。
  90. 大池眞

    ○大池参考人 たいへん、会社の将来のことについての御忠告まで入った御意見で、感謝をいたしております。  私どものほうの会社が公共事業として義務づけられました千四百三十台分の公共駐車場、並びに、近距離、長距離用の三十六バース、それと、高速道路の五号線の引き込み、この三条件は、公共事業としてこれをやるということのために、あの土地の譲り渡しの意味の三者契約ができ上がっておる次第でありまして、この三つは、単にそれだけのものができればよろしいというものじゃございません、実際が。これは、あの一万六千四、五百坪の全面的に人道と車道とを分けまして、それから地下一階から地上三階までの全面的にコンコースをつくって、その地上一階並びに地下一、二階に駐車場をつくる。また、一、三階のほうにバスターミナルを三十六バースつくる。そこへ、いまの五号線のインターチェンジを引き込んでくる。こういうものがすっかり全面的におおいかぶさってしまうのであります。なるほど、契約上は五年というものが義務づけられた年数でありますが、五年たってしまえば、それじゃ、そんなものはあとどうとも変わるんじゃないか、こういうことが考えられましても、実質問題としては、もう変わり得ないわけであります。公共事業的な面のものをつくってしまえば、これの中から収益はほとんどございません。したがいまして、そういうものの収益を何でカバーするかといえば、地上に、最初のもくろみでは、三十六階建てのものをつくる、こういうことでございます。その三十六階建てのものも、いまおっしゃるように、どんなものでもいいじゃないかというわけにはまいりませんが、池袋付近に最も不足しておるような児童の体育館を中心とするとか、文化施設もつくるとか、いろいろなものを計画しておるわけでございますが、こういうものでもまた収益というものは十分に得られる。したがいまして、それに配するに、ショッピングセンター的なもの、ビジネスセンター的なもの、あるいはホテルというようなものを計画したのが当初の案でございます。したがいまして、そういう当初の案を再検討いたしまして、しかも、その後数年の間に日本経済もすっかり変わって開放経済になった、そういうようなものとにらみ合わせて、将来池袋の副都心としての発展性が最も考えられるようなものをその上のほうへつくる。三十六階建てとわれわれがもくろんでおりましたものを、場合によれば三十七階、八階というようなものをつくっても、そこでこういうものをやれば収益が出てくるんじゃなかろうか、そういうものを考えなければならないという段階に達しておりますので、経済事情によって多少の修正があるんじゃなかろうかということが考えられておる次第でございます。  私どもは、最初お国と御相談を申し上げました主目的の諸種の計画そのものを全面的に変えて、営利を追求するというような意図は毛頭持っておりません。当初のものはできるだけ忠実にやってみまして、なおかつ、そこで修正し得るものがあれば修正をして、こういうことにしたらいいじゃないかというようなことを考えておる次第でございまして、先ほどいろいろ御忠告を受けて、ありがとうございます。そういう点も十分考慮をいたしまして、今後の検討の資料にいたしたいと考えております。
  91. 大出俊

    ○大出委員 伊藤委員もおいでになりますし、また大池さんはお忙しいところお出かけをいただいておりますので、延々と長い質問をする気はございませんが、私も実は幾つか、規模はもちろん違いますけれども、横浜の市長が私の党の市長なものですから、どうもやむを得ずお手伝いをさせられているのであります。したがって、そういういささかの経験からいたしますと、これは建設省が専用許可をするなどという場合でも、ある意味公共性の強い面が一緒でなければ、なかなか民間会社に専用許可をしないわけですね。市の場合でもそうでありますが、十六号国道なら十六号国道というものは、たいへん交通が煩瑣である。路面横断が非常に危険である。かといって、歩道橋をかけるといっても、交通量が多過ぎるからそれはできない。そうすると地下道を掘らなければならぬ。その地下道は何になるかというと公道になる。その関連施設の先に、今度は地下鉄の駅ができる。コンコースが必要になる。こうなりますと、その方面で相当の面積をとってしまう。これは当然のことですね。そこに高速道路が入ってくる。こういうわけでございますから、さて、それを一公共団体がまかなえるかというと、まかない切れない。横浜市なら横浜市で計算すると、それには六千四百万しか出せないのです。そうすると、周辺の商店街をやっている人が、そっちへ抜けていくわけでありますから、何とか資金援助をする、民間資金を投入するという話になって、七千万なら七千万入ってくる。そこで、一億三千四百万で地下道をつくる。そうすると、そこに駅ビルをつくり、地下街をつくっても、それに付帯して、今度は地下鉄計画の駅をかかえなければならぬ。地下駐車場その他の付置義務を負わされている。そういうことになってまいりますと、それは民間資本でやろうとすれば並みたいていのことじゃない。公共団体なら別です、予算で赤字を処理していけばいいのですから。そうなると、私たち、事、志に反して、どうしても公共性という面から経営方式が変わってこなければならぬ。だから、その点ではずいぶん苦労もするんだが、しかし性格も変わる、こういうものなんですね。  いまのお話を聞いておりましても、三階までということになると、そこにターミナルを入れてくる。コンコース部分、関連施設部分が相当出てきてしまう。これは人の安全も考えなければいけません。そうなると、三十六階とすれば、三階なら三階というところで切って、そこから下はまさにきめられたとおりの公共施設、さてそこから上のところは一つ間違えば三十六階が四十階になっても、中には六十階くらいになるのじゃないかという話もありましたけれども、そういうことにしても採算をとらなければならぬ。これは、私の経験もありますけれども、児童会館なんていったって、採算のとれるものじゃないですよ。だから、そうなると、これはやはり児童会館を狭くしてショッピングセンターを広げるとか、テナントを募集してとるのですから、テナント段階になると、これは地元ということになるかもしれません。しかしその地元も、坪当たり単価が高くなってしまえば、地元のけちな商店に入ってくれといったって資金がない。天下の大商人を連れてきてそこにすぽんと入れてしまう。そうすると地元はまた泣くということになる。そういう関係が全部出てくる。高ければ高いほど、全体の計画から見ますと、ショッピングセンターは非常に広いです。私は広過ぎるという感じがするのですが、この計画、つまり法務省の皆さんがおっしゃっている公共性ということを中心にするならば、この計画はいささかどうも私はふに落ちないのですけれども、しかも今度はそのテナント募集まで発展をするとすれば、それはおそらく坪当たり権利金その他相当高いものになってしまう。そうすると地元は、とてもじゃないが手も足も出ない結果になってしまう。こういうふうに考えざるを得ないのですよ。ですから私はこのあたりにくると、実はどうも法務省の皆さんに、国が刑務所を建てるというのに、おそらくそこまでお考えになっておやりになったのだろうとは思うんだけれども、何で民間の皆さんに、こういう会社に、相当な財界の方々がいろんな意味で苦心をされている、大池さんはじめ御苦労だろうと思うのですが、そういう苦労までさせて、地元の皆さんがどうも感心しないという感情になるようなことになりかねないことまでやって、刑務所を建てる云々という形にしなければいけなかったのか。それはもう少し国と東京都の間で話し合うとか、方法はなかったのか、あるいは他の公団式のものもあるわけですから、そういうふうなものを使わなかったのかというふうな気が実はするのですけれども、これは大池さんに申し上げてもしようがないのですが、そこを実は非常に心配をしていたわけであります。先ほど御質問申し上げました中心は——その一億なにがしというのは、階を上につないで延ばしてもつまり、多少は事業変更をしてもペイできるという形におけるそろばんをはじきたい、こういう意味の御答弁でございましたから、その限りそれはわかるわけであります。そこで、この計画でこれをお進めになって、四十八年までに大体形がつくというお見通しをもうすでにお持ちでございますか。
  92. 大池眞

    ○大池参考人 予定どおり進むものと考えております。
  93. 大出俊

    ○大出委員 最後でございますが、運輸省がバスターミナルの許可をした。おたくの会社が設立をされたのは四十一年の十月十四日、そして四十一年の一月に池袋副都心計画を定めたわけですね。十二月二十七日に都市計画事業を決定をした一昭和四十一年十二月二十四日付で運輸省から自動車ターミナル事業の免許をお受けになった。引き続いて十二月二十七日付で東京都知事を経由して建設省から特許と申しますか、許可を得たというのでありますが、このあたり非常に進行が早いのですね。会社ができる、とたんにターミナルの免許はとれる、都を経由して建設省は許可をする、ここらあたりは、中村さんも入っておられたせいかもしれませんけれども、前建設大臣でございますから……。どうもあまり短期間にばたばた片づいているわけでありますが、これは何か首都圏整備委員会事務局あるいは東京都なりのほうと、こういう予定はあらかじめ組んでおやりになったわけでございますか。
  94. 大池眞

    ○大池参考人 いまお話しのような予定を組んで進めたわけではございません。ただ当時私ども、いわゆる発起人をこしらえまして、会社をスタートする前に、はたしてお国のほうで、私どものほうがそういう会社をつくっても、これを相手としていただけるかいただけないかということが疑問になりますし、うっかり先走って会社をつくったところで、そんなものは相手にせぬぞと言われたら、これは何にもならぬわけでございますから、創立事務所というものをこしらえまして、私が事務所長という形で東京都なり運輸省等と十分いろいろと連絡いたしまして、私どものほうは都のほうでお考えになっておるものならばぜひ私どものほうでやりますからということで、先ほど申し上げました三階建てのコンコースをつくって、人道、車道を分けて少なくともこういうようにしたらこれくらいはできるじゃないかというような事務的なことは首都圏整備のほうや都の方々と打ち合わせをして、そういうものをこしらえるのならどれくらいの費用がかかるだろうかというようなことを事前にいろいろやっておりまして、これが少なくとも一年半くらいかかったと思っております。したがいまして、そういうものを東京都のほうで引き受けてくれるなら、お前さんのほうにもし契約ができた場合には、そういうものの許可をしてもよろしいだろうというような見通しを十分つけまして、それで運輸省のほうも十分、三十六バースのものならこういうところにこういうものをつくったらいいじゃないかということで青写真等も研究をしていただきまして、そういうような事前のものが全部でき上がって、これならば許可をしていただいても、会社をつくってもだいじょうぶだという見通しがつきましたので、会社を創立いたしまして、創立すると同時に正式の申請書としてお願いをして、許可を得た。これがとんとんとそういうぐあいにうまくいったという事実だけでございまして、あらかじめそういう予定をつくってやったわけじゃございません。自然にでき上がった次第でございます。
  95. 大出俊

    ○大出委員 これで私終わりますが、希望を一つ申し上げておきます。公共性が強いというので国は皆さんの会社と契約を結んだわけでございますから、計画変更という一項がございますけれども、これはどうもこれから先時間がかかりますからね。あんなことになっちゃったんじゃということにならぬように、これは御配慮いただきたいと思うのであります。  もう一つは、これは残念なことなんですが、いま旧市街の市街地開発をやる場合に、店舗であれ何であれ、建っている建物を全部こわしてしまわないと、これは裸の土地にしないというと、銀行は金を貸しませんからね。そこが実は商店の逃げ場がないですね。それで実は中小商店の諸君の現に商売しているところの再開発が非常にむずかしいというんですね。ついそうなると、大きな資本がどこからか入ってきて、みんなのんでしまうということになる。泣くのは地元の中小の商店街が泣く。調べてみると、こういう形が至るところにあるわけであります。ほんとうならば、そっちで商売ができるように逃げ場をつくってあげて、いまやっている、長年親代々やってきた土地だけは自分の土地である、その上の店舗をとってしまえば、場所が場所ですからたいへんな地価評価になりますから、銀行は金を貸すのですから、その一画、一ブロックを全部とってしまう、そのために逃げ場がこっちにできた、そうすると、これは地元の力で再開発ができる。大資本を投入して利潤がそっちのほうにいってしまわないでも、これはできる。だから東京拘置所というものが移るんだとすれば、逃げ場があるわけですから、ほんとうならば地元の将来というものを考えて、長年苦労した方々なんですから、そういう計画が立てられてしかるべきだったんじゃないかという気が私なりにするのです。その点が頭にあって最初御質問申し上げたところが、たまたま土地の取得に急であって、二回目の御答弁によれば、これから実は地元の皆さんとやらなければならぬというお話が出てまいりました。したがって、繰り言を申し上げるようですが、先々また事ごとにどうも地元から、私は別にあそこが選挙区でも何でもありませんが、苦情が参るようなこともこれまた迷惑なことでありますから、そこらのところは十二分に御配慮を賜わりますよう一言申し添えまして、きょうはたいへんお忙しいところを私どもの審議のためにたいへんな御協力を賜わりましたことを厚く御礼を申し上げまして、終わらしていただきたいと思います。
  96. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 関連。ただいま大出委員からるるお話がございまして大体のことはわかったわけですが、実は私も地元におりまして、もう二十年から住んでおります。この問題については、私も区会議員もやり、当時予算委員長もやった経験もございますが、そういった中では話が全く不明であったわけであります。たまさかこの問題が出まして、黒羽移転の問題が出まして、もう少し事情を聞こうと思いまして、おたくにお電話したわけです。資料があったらいただきたいと申し上げましたら、特に資料はない、聞きたいことがあったら言うから言ってくれ、こういう取りつく島のないようなお話でございまして、私も一応前々から地元の区議会、あるいはまた行政面の長である区長、助役等についても、どうなっているんだということについていろいろ聞いても、あなた方のほうではっきり聞いてもらわなければ地元はさっぱりわからぬ、ただ地元のほうとしてはあの単鴨刑務所がなくなるということでもう目的は達成するんだからいいんだ、その後のことについては中村先生が、あるいは公党政治によって行なわれているんだろうから、むしろ伊藤先生あたりが聞いていただきたい、こういうようなお話があったわけであります。私もそういったことから資料要求をいたしまして、実は三月十七日に予算の分科会で質問いたしました。そしてようやくその資料はきのう午後になっていただいたわけであります。そこでいろいろなわからないことを聞いていこう。——私は決してこういった計画をやめたほうがいいとか、あるいはまた刑務所の移転について反対だとかいうことではないわけであります。こういった事業の経過についてまた黒い霧があるということも言っているわけではないわけであります。ただ国有地というものの払い下げの基本原則からいいまして、一民間会社が払い下げを受けるにあたって、もう少し地元なり——あるいはまた法律にある原則に従ってやってほしかった。さらにまた資料を見てみますと、発起人がかわったり、また役員が大幅に交代したり、さらに資本が増額されたり、それはまあ会社のことですからいろいろあるかもしれません。しかし、そういったことが今後さらにあり得るとすれば、最初の事業の目的が、また最初の国のつけた条件がどうなることやらという心配も出てくるわけであります。そういった意味できょうは率直にお伺いしたいというわけで、私も関連して伺うわけでありますが、この発起人がまたかわったわけですけれども、その理由でございますね。それから元の主計局長である中村建城さんから、社長さんにかわった理由。何もかわる必要はなかったんじゃないかとは思うのですけれども。あるいはまた株主さんの中でもだいぶ交代しているわけですね。謄本なんかによりましても、だいぶ何回かかわってきているわけです。こういったことについて、簡単でけっこうですが、経過をまず教えていただきたいと思うのです。
  97. 大池眞

    ○大池参考人 ただいま御質問の発起人がかわったというのは、最初事務局をつくりまして、それから会社をいよいよつくるという時代に会社設立の発起人をこしらえた次第でありまして、そのときには前の中村さんは、先ほども大出さんの御質問にお答えしましたが、大臣になられましたものですから、前に発起人に顔をそろえておりましたのですがやめて、それからそのあとの、会社をつくる場合の発起人というものには、従来発起人でありましたところへ、一番最初の発起人のあとに、江戸英雄さん、清水康雄さん、本間喜平さん、竹中錬一さん、それから渡辺武次郎さん、この五名だけが従来の発起人に追加をされまして、会社設立のときの発起人になったわけであります。今度いよいよ会社ができまして役員を選びます際には、ただいま申し上げました江戸さんなり清水さんなり本間さんなり竹中さんはのかれまして、他の者が取締役あるいは顧問、相談役というような形で残った次第でございまして、発起人の方のかわり方という意味においてはたいした違いはございません。  ただ、中村社長がおやめになりまして、私があと社長に相なりました経緯につきましては、これは全く私自身もよく事情がわかりません。中村さんが定時株主総会を開く少し前に私のところへ参りまして、おれは急にやめたくなってやめるんだから、おまえあとは引き受けろ、こういうお話でしたから、私はいやだという話で……。ところがもう会社設立に間もないときでございますので、御本人はどうしてもやめるということでおやめになりました。中村さんがおやめになりましたものですから、中村さんと御一緒に参りまして、総務部長をやっておりました一の瀬さんがおやめになった次第でございます。そこで私はすぐ、社長はどうしても急なことで、私にそんなことができるかできないかもわかりませんし、ごめんこうむるということでおりましたが、当時専務ということで名前が残っておりましたので、社長がなくて、だれも代表のない会社というものはないから、とにかく代表取締役にはなれ——これも総会直前でございました。それで適当な社長が見当たるまでいたし方ないでしょうからということで、専務のままで代表取締役を引き受けた次第でございます。このあと皆さんで正式にりっぱな社長をさがしておられたと思います。なかなか適当な者が見当たらないものですから、形の上からしても困るから、おまえ社長になれと言われて私も困ったのですが、適当な者をさがしていただくまでいたし方ありませんということでお引き受けをして今日に至っておる次第でございます。
  98. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 この事業については一時東京都においてやれといったけれども、東京都においてはとうていできないということで、国に戻ってきた。そこでこういったことが考えられてつくられたという経過は知っているわけでありますが、そのときに動いた有力な方々はどういうメンバーの人たちですか。
  99. 大池眞

    ○大池参考人 それは私初耳で全然存じません。東京都にやれということも、それも全然存じません。
  100. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それはここにも資料はありますけれども、本来ならば東京都があのあと地利用について一切引き受けるべきであったはずであります。それを御存じないということはちょっと遺憾だと思うのですが、いずれにしても……
  101. 大池眞

    ○大池参考人 東京都でというのは、事業をですか。
  102. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 そうです。
  103. 大池眞

    ○大池参考人 それは存じております。先ほど大出さんの御質問のときにも申し上げましたが、当然東京都があのあと地の開発の事業については仕事をするのが至当である、われわれのほうももちろんそう考えておった次第でございます。しかしながら、東京都のほうは当時オリンピック等もございまして、公共事業費が全然ないので、とうてい手をつけるわけにはいかないということで手を引いたということを承知いたしておりまして、それならばあそこが五年先にどいたときに、東京都のほうでやらなければ、何にもしないわけにもいかないから、それでは財界の有力な者を集めてひとつ発起人をつくって、できれば会社にして、それから国と契約ができればあそこであと地の開発事業をしようじゃないかということで話がだんだん進んできた次第でございます。
  104. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 その有力な方々のメンバーはどなただったでしょうか。
  105. 大池眞

    ○大池参考人 それは水野成夫さん、小林中さん、安西正夫さん、井深大さん、清水雅さん、石川六郎さん、今里広記さん、永野重雄さん、堤清二さん、以上でございます。
  106. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 最初の発起人で中村先生は……。
  107. 大池眞

    ○大池参考人 中村先生は大臣になられてすぐやめてしまいました。
  108. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 ですから、やめてしまいましたけれども……。
  109. 大池眞

    ○大池参考人 やめるまではもちろんここに中村さんが入っておりました。
  110. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それで、この免許を受けたことについてでございますが、当時池袋西口にも国際興業であるとか東武バスであるとかという四つのバス会社が集まりまして、バスターミナルの免許を受けたことも私は知っておるわけであります。いまそれが取り消されてこちらに移ったとも私から見れば感ずるわけなんですけれども、そういったことと関連があるのかどうか。また、その会社が民間会社で、これは法規上何ら違反はしていないわけでありますけれども、非常に短い期間で免許を受けられた、登記を受けられた。これは普通数カ月が常識でありますけれども、設立後一カ月、二カ月のうちに受けられておられるということについては、いろいろと前々から話があった上でできたのではないか、こういうお話もあるわけであります。そういったいきさつについても、多少先ほど説明を聞きましたが、補足していただくことがあれば言っていただきたい。  さらに、事業計画でございます。ただいま三十六階ということでございますけれども、一説には六十階くらいという話も聞いておるわけでありますが、もうすぐですね、この問題が片づきますと着工しなければならない。たとえば三十六階の基礎と六十階の基礎とでは全然違うのではないかと思われます。ですから、そういった点がまた決定されておるならば、計画されておるならば、その内容についてもこの際明らかにしていただきたい、そう思います。
  111. 大池眞

    ○大池参考人 ただいまのバス会社等のお話でございますが、私ども聞いておりますのは、西口のほうの豊島師範のあと、あそこが、豊島師範等が動きますので、そのあとへバスターミナルをつくりたいということで、いまの国際興業その他の方々が計画をしておったということは聞いております。そのままバスターミナルがだめになったからということで、私どものほうの会社とは関係は全然ございません。  それから、許可があまりとんとんいっておるから、前もってその話があったのじゃないか、こういうお話。その点につきましては、先ほども実は申し上げた次第でございまして、発起人がそういうことはけっこうだということになっても、いざ会社をつくって、それから政府側と交渉しても、民間にああいう膨大な国有地を払い下げるということはいままであまり聞いておりませんので、はたして私どもが計画したようなことをやっても、相手にしていただけるか、いただけないか、わからぬ。東京都のほうでは前もってあそこに首都圏整備のほうである計画を持っておられた、そういうこともありますので、都のほうと十分お話をしまして、もしおまえのほうに譲り渡すということがあり得た場合には、東京都ではこういう計画を持っておるが、そういうものは引き受けてやるかといったものが千四百三十台以上の駐車場並びに近距離、遠距離のバスターミナル、この三十六バースにするしないは運輸省のほうとのお話し合いできまった次第でございますが、東京都のほうもその程度のものは必要じゃないか。それと、あそこへ高速五号線が通っていくので、この高速五号線をあの中に引き入れて、それとインターチェンジをつくる。この三つの条件をおまえのほうは引き受けてくれられるかという話がありまして、もちろんそれは引き受けましょう。これを引き受けるならばどういう形でやるかというような、今度具体的の基本設計等の打ち合わせをいたしまして、そういう設計であるならば、私どものほうはいたしましょうという話がつきまして、そういうことでまず自分のほうで必要な程度の資本金が集まるならば、そういうりっぱな会社がかりにできれば、いま申し込みのところもほかにないようだから、十分相手にはなるという見通しがつきましたので、至急に発起人代表をこしらえまして、会社を設立いたしました。さっそく正式に都のほう並びに法務省、運輸省方面にお願いを申し上げて、それがわりあいに早くいった次第でありますが、そこの正式の出願をするまでの間には一年以上もかかって、こういうものをつくる、ああいうものをつくるというようないろいろの打ち合わせを事前にいたしました。それが時間が長かったものですから、最終的には非常に早くいった次第であります。
  112. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 もう一つ、事業計画についてでありますが……。
  113. 大池眞

    ○大池参考人 言い落としました。  事業計画は、当初は三十六階建てということで進めてございます。しかし、先ほども申し上げましたが、黒羽の土地にしましても一億以上の予定外の、契約外の負担がございます。なお高速道路の五号線の引き入れにつきましても、一部の土地をどうしても買い取らなければならぬというような問題が残っております。これらに対する金等も考えなければなりません。相当契約外の負担金額がかさむのじゃなかろうかと考えております。したがいまして、三十六階建てでいいのか、あるいは多少階数をふやしてもペイするようなプランを具体的につくらなければならないのじゃないかということは、ただいま鋭意検討中でございまして、もちろん具体的にはまだきまっておりません。大体の青写真ができれば、そういうものでひとつやりたい。これについては先ほど大出さんからもお話しのように、地元の了承も十分得たい、こう考えておる次第でございます。
  114. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 いままでのことはやはり何かと批判される原因は大いにあったと思います。現に私は地元に住んでおりまして、区会議員も経て現在まで来ましたが、その間なお全然その計画等は知らなかったわけであります。一部の方は知っていたかもわかりませんけれども、しかし地元に住む方々は、どうなることやら、いまでもわからないわけであります。ですから、いまお話がありましたけれども、今後は十分考えていただくといたしましても、非常に大きな超高層なビルができるということは事実なんですね。霞が関よりも国際貿易会館よりもあるいは大きくなるかもしれない可能性がある。そうなりますと、現にそういう超高層ビルができてどういう現象が起きておるかと言いますと、一つはその建物による電波障害がございますね。それから要するに突風等による被害あるいはまた日照権の問題、こういった問題が必ず出てくるのじゃないかと思うのです。さらに災害時における補償の問題等々、いろいろあるのじゃないかと思うのです。しかしながら、用途指定については五年間でございますけれども、そのあと、株式会社でありますから、国の監督権、調査権が全然及ばなくなるわけですね。そういった点で私は心配する面がまだまだたくさんあるわけであります。たとえば、あの辺一帯は、相当大きな刑務所で、たまたま脱獄があった——空襲時においてはあのサイレンで逃げ回ったけれども、終戦後においてもなおかつ脱獄囚のために、暑いときかぎをかけながらふるえた事実も私は体験しております。さらにあのあと地が、今度は移転されてあのあと地が地元に返ってきた、または都市計画の中で使われていく。非常にうれしいわけでありますけれども、反面またそういうような超高層ビルによるいろんな弊害が出る、そうして地域住民には何にも還元がない、こういうことが地元の人間としては一番心配している点であり、また今後あの計画についていろいろと批判をするのではないか、こう私は考えているわけであります。したがって、そういったことのないように地域住民とは密接な連携を持ちながら、さらに、地元というのはやはり区でありますが、その執行部または、あそこに副都心委員会がございますが、そういったところなどにも十二分の説明がなされて、地域住民が納得するような活用方法考えていただきたい。特に私は、地域住民のために、まさかあの超高層の中に老人ホームとか身体障害者施設といっても、都市のどまん中にそういう福祉施設ということについては、用途がちょっと不向きではないかと思いますけれども、ただ婦人センターであるとか母子センターであるとか、とにかく地域住民が、巣鴨の刑務所のあとに、地域にもこういう開放される施設ができたんだ、またできるんだという、その計画の進行について、むしろ早くできないかなという期待を持たせるようなあと地利用をしていただきたいということを、地元の人たちは願っているのですね。どうかそういったことも頭に置いてやっていただきたいと思います。  きょうはお忙しい中をおいでいただきまして、たいへんありがとうございました。私の質問を終わります。
  115. 天野公義

    天野委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。参考人には、御多用中のところ長時間にわたり御出席をいただき、まことにありがとうございました。     —————————————
  116. 天野公義

    天野委員長 政府当局に対する質疑を続行いたします。大出俊君。
  117. 大出俊

    ○大出委員 大臣、お休みの期間が少しあったようですけれども、大体お聞きになっておられたと思います。  昨日も大臣の御答弁をいただいておりますから、これ以上申し上げることはないのですけれども、つまりさっきすでに申し上げたように、地元ということが今日まであまり考慮に入っていないというふうなこともあって、一つの地域で問題になっているというようなことでございます。これはなぜかというと、さっき大池さんのお話がありましたように、地元の皆さんが知らない間に計画その他がどんどん進行してきた、ようやく最近地元の人たちの間にその中身が明らかになってきたということなんですね、出発は。ですから私は、やはりそこらのところも非常に大きな問題があると思っております。できてしまったことですから、いまさらとやかく申し上げてもいたし方がございませんが、これからなお年月がかかりますから、四十八年というところでございますしいたしますので、そのあたりを十分御配慮いただいてできるだけ——これは民間会社でございまして、監督権という点については問題がございましょうが、とにかく契約の相手方でございますので、せっかく法務省が善意で、小菅に東京拘置所を移して黒羽に新しいかつ近代的な刑務所をつくろう、こういうことでございますから、それ自体が悪いわけでは決してございません。刑務所がどく、これは決して悪いわけではございません。ございませんが、昨日大臣の答弁にございましたような点で、いささか、本来あり得べきいい姿ではなかったのではないかと思いますから、あとで問題が起こって、相手が国であるということで妙なことになりますと、私どもも責任上困ったことになりますので、その辺の御意図に誤りなきを期していただいて、当初目的に沿うような形のお進め方を、相手方の会社にも十分、行政的な面ということでなしに、契約の相手方という意味で、特に慎重にお進めおきいただきたいと思っております。お答え願います。
  118. 小林武治

    小林国務大臣 いろいろの御意見ごもっともと存じますので、これからも法務当局においては、ひとつ責任をもって、地元の御意見も聴取をいたしまして適当に処置してまいりたい、かように考えます。
  119. 大出俊

    ○大出委員 もう一つ、先ほどのお話では、三十六階がまた何階か高くなるというお話でございまして、そこらで特急料その他を乗せてペイしていこう、こういうことでございますから、二千坪というような公園用地、それが庭のようなことになる。そういう意味でもいろいろ問題があります。日照権とか電波障害という問題が起こりかねない地域でございますから、そこらのところも、地域住民の動向というものも十分御考慮いただきまして、納得し得るような形にお進めいただきたいと思います。これはお願いでございます。そこで、事の経緯というのを明らかにさせていただいたのですが、そのことが実は先々何かあった場合におきましては、ここまで明らかになっているということが、結果的にはよかったということになるのではないかと思っております。時間がありませんので、あと、中身をこまかくは申し上げませんが、ここでひとつ私の足元の横浜にも実は刑務所がございまして、横浜刑務所、こういうふうにいっているんだろうと思いますが、ここは実は一昨年でございましたか、新しい建築物ができ上がりまして、私、実は所長さんにもお目にかかって、当時いろいろお話ししてきた経緯もございますが、周辺が高台でございまして、特に裏になるところが、非常に商い土地でございます。市街地がどんどんできまして、特に横浜の発展の度合いが激しいものですから、至るところ家になってしまう。そうすると、学校のPTAのおかあさんの会合の席で、作業をしておるのが全部周辺の高台の家から見える。まさに一目で見える。こういう状態ですから、そういう意味で、ここに刑務所がこのままあるということについては、どうも親の立場から見て適当でない、こういう意見等が学校のおかあさんたちの会合で出るというので、学校の先生方から実は私に何とかしてもらいたい、それからまた横浜市長あてに周辺のそういう方々だとか、町内会の方々からもうこの辺でひとつどこかに移してもらえないかという陳情がたび重なっておる。横浜市長飛鳥田氏から私にこの委員会の機会にぜひ小林大臣に、市のほうも市長の立場からしても非常に困っておるんだという実情を訴えておいてほしい、こういう実は依頼を受けておりまして、そう片端から、いまも移転問題でこれだけ御苦労されておるのに、たいへんな御苦労をされたと思いますけれども、また移転かという、規模も小さくありませんしということでございまして、私もなかなか申し上げにくいのですけれども、その実情を市長に申し上げました。それにもかかわらずたってその点は大臣に強く要望しておいてもらいたいということでございますから、そこをまず大臣に申し上げて、たいへん発展してしまったところであることは御認識いただいておると思いますので、将来の展望として、こういう地域に刑務所の位置する場所がなってしまったことについてはどうしたらいいだろうかという点の御意見をいただきたいのでございます。
  120. 小林武治

    小林国務大臣 これはもういまのお話のように、昭和四十三年の三月に未決拘置監ですか、これができて、いまのところ建物としてはりっぱだ、こういうことになっておりますが、実はこれにつきましては、大出委員のところにもお話があったようでございますが、住民あるいは横浜市からまだあらためて移転要請が出ておりません。だからこれからの問題としていろいろ御希望が出ると思いますが、その上でひとつ御相談申し上げたい、こういうことになっております。法務省としてはむしろ今度初めてお聞きする御要望である、こういうことになっております。
  121. 大出俊

    ○大出委員 市から意見を出せといいますと、あす市議会できめてすぐ出すことも可能でありますが、市長も市議会の議員の全体会議の席上へ出ているのでありますから……。ただ、そういう意味の住民運動にもなっていきますと、なかなかこれはめんどうなことになります。予算という問題ともからんでくるしいたしますから。私は、市のそういう雲行きにあるということをこの席上で申し上げまして——実は、昨年は、刑務道路といいますか、この刑務所のへいのところの道路が側溝がございませんから、へいの側に降った雨が全部隣の住宅に流れ込んでしまうという状況にありまして、非常に赤土のままになっておったりいたしますので、実は刑務所の所長さんにお目にかかって相談をした結果、また市長とも相談をした結果、そこの刑務道路のところは横浜市の道路ではございませんから、たいした金ではないけれども、直接的に市が負担をするとやはり問題になるというので、所長さんに相談をしたら、所長さんは、周辺の空気もわかっているから、材料だけでもいただければ直してしまいたい、こういうことで、だいぶ手を入れていただいたわけです。その点は感謝申し上げますが、あと一カ所だけ、ちょうど差し入れをする古い店がございまして、浅野屋と申しまして、そこの前のところがまだ手がついていないところがあります。市のほうにも、市でやれるところはやってくれということを私、言っておきましたけれども、そこらのところも、市のほうも、出先の皆さんの機関から御連絡をいただいて、なるべく早く決着をつけていただくというふうに市のほうは心得ておると思いますので、御配慮いただきたいと思います。そうすれば、一応まわりが全部片づきますから、その上で、地元の要望は要望といたしまして、せっかく周辺全部手をつけて決着をつけたわけだから、しかも、建物も建ったばかりであるということで、その辺のことも、地域の皆さんに話して、これはあとまた時間をかけて相談させていただく、こう思っておりますので、最後の残っておる点を……。
  122. 小林武治

    小林国務大臣 これはまあお話しのように、一部整備ができた。他のほうも市と協議の上で、おそらく近く整備が完成する。こういうふうに予定を立てております。  それから、なお、移転問題については、どうせなかなか、ちょっとの間にやれるわけじゃありませんから、市のほうで希望があるなら正式に申し出をいただいて、そして御相談をしていく、こういうことにいたしたいと存じますから、さように、もしおついでがあるなら、市のほうにも御連絡を願います。
  123. 大出俊

    ○大出委員 あの刑務所の移転をするとなりますと、相当な金額がかかりますでしょうな。
  124. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 金額もさることながら、これをどこへ持っていくか、その移転先が非常にむずかしいわけでございまして、そういう意味で、地元の絶大な御協力もございませんとこれはできませんので、金のことよりむしろそちらのほうが問題だと思います。
  125. 大出俊

    ○大出委員 大臣のいまお話もございますから、そこでまた市の当局側とよく相談をさせていただきたいと思っております。  そこで、きのう実は、大臣がちょうどおいでになりませんで、参議院のほうにおいでになっている間に、少年法問題につきまして、刑事局長さんとの間でやりとりを、政務次官もお見えいただいてわずかな時間やったわけでございますが、さて、そこで大臣にというところで、きのう時間がなくなりましたので、実は私がその締めくくりの意味での質問を申し上げたいと思っておりましたが、たまたま党のほうの用事がございまして、たいへん恐縮なんでございますが、横路君にかわって、ひとつ関連で最後のところだけ御質問を続けさしていただきたい、こう思うわけであります。  ただ、私が一言申し上げておきたいのは、三月十七日でございましたか、予算の分科会で、私どもの党の中谷君の質問に大臣がお答えになられまして、何か四者会議みたいな形で少し相談をしてもらいたい、まあある程度根回しをしたんだけれども、なかなか進まない、進まないので、なるべく早く法制審議会に持ち込みたい、そうして法律改正、つまり少年法改正をいつ出すのかと言われれば、私の希望としては、法制審議会で十分論議をいただいて、来年の国会で法改正を行ないたいというふうに望んでいる。こういう趣旨の実は御答弁があるわけでありますが、あとから専門屋でもありますから横路君のほうからこまかくお話し申し上げると思いますけれども、これは四十一年来の長い懸案でございまして、いまだに、きのう申し上げましたが、裁判所側のいろいろな意見も聞いてみましたが、家庭局長さんその他面接会いまして聞いてみましたが、非常に強い実は反対意見をお持ちでごさいました。なおかつ、犯罪件数——凶悪犯あるいは刑事犯等の件数なども、総体的に見ると、あの四十一年ころはピークでございました。あと減ってきている傾向がございますし、特段、いまここで大臣がそれほど急いで来年とおっしゃるほどのものかどうか、この点について私は常に疑問を持つわけなんです。これだけ学者間におきましても大きな反論がある中で、そう早急にこの件は法制審議会に持ち込むべきではない。もう少し国の機関相互の話し合いもすべきだし、世の中の学者諸君、日弁連その他の方々の反対もありますから、十分そういう点等の話し合い弔詰めるべきではないかというふうに実は思っているわけでございますが、何か特に来年法制化してお出しになると大臣の言っておられる根拠たるべきものがおありになるんなら、この際、その点を明らかにしておいていただきたい、この一点だけ承っておきます。
  126. 小林武治

    小林国務大臣 これは御承知のとおり、もう長い間相談をされております。それで、諸外国などもいままで、年齢引き下げか引き上げか、とにかく、そのことはもうほとんどが実施されておる。それから、日本におきましても、もう戦前は、いまの十八、十九はいわゆるおとな扱いしておった。アメリカさんが来て変えた——まあこれは言い過ぎかもしれませんが、しかし、事実はそう。そういうわけでありまして、私は、いまぜひやらなければならぬか、こういうことになると、それはいま、ことしと来年とどれだけ差があるかということになると、そう大きな差はありません。ただ、私は、すでにおくれ過ぎておる。それでもう、案ができたのも四十一年であって、それからいろいろ論議をしたが、なかなかまとまらぬ。それじゃ、これは一年、二年延ばしてまとまるか、円滑にみないくかというと、これもきわめて疑問であります。それからもう一つは、最高裁あるいは裁判所方面も反対していますが、たとえば今度道路交通法の改正で、とにかく交通反則金というものについて裁判所も譲られた。あれは、やはりこの問題を一部分空洞化したというふうな——譲られたか譲られぬかこれは知りませんが、とにかく、そういう事実がある。これは大きいですよ、交通反則金を十八、十九にかけるということは。これはとにかく、今度皆さんがおきめになった。こういう事実もありますし、それから、これは議論をしておっても、私は政治というものは、議論ばかりしているのは政治じゃありません。四十一年から四年も五年もやっておって、何もきまらない。一つも前進しない。これでは、私は、やはり当務者としては怠慢じゃないかというふうに思わざるを得ない。とにかく、きめなければならぬ。政治というのは、これをほうっておくわけにはいきません。どっちかにきめてやらなければならぬ。そのきめるということは、やはり一つの決断と一つの勇気がなければできませんが、たとえば大出さんがおっしゃるように、それじゃ再来年ならきまるか、こういうことになると、私は期待できない。そういうことになれば、これはやはりある程度世論がきめる問題じゃないか、あるいは国会できめられる問題じゃないか、こういうふうになるから、私は、とにかく、前進をしようじゃないか。これはもう小田原評定を幾らしておっても、名論卓説が出るだけが政治じゃない。だからして、私は、法務省としては、この際、踏み切ってもらいたい。要するに、前進をさせてもらいたい。私は、必ずしも、次の国会にかかるかどうかについては自信を持ちません。しかし、持ち出さなければ、いつまでたっても同じでありますから、私は、ひとつこの際、法制審議会で皆さんの論議をしてもらいたい、こういう趣旨でありまして、そのことを私は事務当局に、六月十日までにはとにかく一通りの話を各省とも打ち合わせて、そうして、つかなくともやむを得ないから六月十日までには諮問をすべし、こういう命令を出しておるのでございまして、結果はわかりませんが、とにかく政治というものは前進させなければならぬ。ある程度のところで見切りをつけることが必要である。議論ばかりしておったのではあきあきしてしまう。そういうふうな考え方でございます。いま申すようにことしと来年とどれだけ違うかというと、それは事実上そう違いはありませんが、それがどこで踏み切りをつけるか、こういうことでございます。
  127. 大出俊

    ○大出委員 大臣のお考えははっきりしたと思うのです。六月十日までに諮問をすべしと命令をしたとおっしゃるのですから。そうすると法制審議会に、命令された事務当局はかける努力をしなければならぬことになる。  そこで問題は二つあるのです。いま大臣のおっしゃった中でこれは聞き捨てならぬことがある。一つは道交法の改正、いまお話しの反則金です。これが少年法改正の外堀を埋めるということになっては困る——大臣そこまでおっしゃってはこれは事件ですが、外堀を埋めることになったのじゃ困るということで、たいへん論争があったわけですね。最高裁判所の側、家庭局長さんの側も念を押した。法務省の皆さんと話し合って、それは外堀を埋めるのじゃない。附帯決議もありますよ。そのことはかたく約束をされて、実は道交法改正に最終的に裁判所の側は同調した。おまけにもう一つ問題がある。これは何歳から一体運転免許というものを与えるかという点については、大きな問題は産業サイドの要請もあるわけです。本来なら与えるべき年齢でない方々についても、この世の中で仕事をしていくのだから、運転できなければ困るという側面も一つある。そういうことで少年法と直接的関連をつけられて、いま大臣が言われるように何しろ道交法のほうだって引き下げたのだからと、こうなると、そうじゃない、それは関連がないのだ、全く別な次元の問題なんだということをかたく約束をして附帯決議もくっつけて成立をしている。それをいきなり大臣がそこまで持ち出されたのじゃ、同じ国会ですから、それは私はお取り消しをいただきたいと思うのです。  それからもう一つの問題は、大臣はたいへん前進になる、こうおっしゃるのだけれども、片一方家庭局長さん、裁判所側はたいへんな後退になりますという。それは法務省側は前進になるとお考えかもしれないが、片やたいへんな後退だ、国際的にもどんどん年齢は引き下げている、こうおっしゃる。最高裁の方々の言っていることも、また、きのう私、ここで五人の方の共著で書いておられる本の中身にもちょっと触れましたが、西ドイツの論議過程なども紹介されておりますけれども、こちらは引き下げるという空気になっている。そうなりますと、そこらじゅう大臣の言うようにどんどん引き上げているわけではありません。また二十六年の改正、つまり年齢引き下げをやった。しかし改正時点で、当時戦後GHQ——学者がものの本に解明しておりますが、決して当時GHQから言われた筋合いのものではないということも、史実上明確なんです。そうでないことは明らかなんです。そういうふうに大臣におっしゃられると、これはものを申さなければならなくなるわけでありますが、論議をされていることと、附帯決議がついておったり、法務省と裁判所が相談した中で、違ったことを大臣がおっしゃる。これは全くやはり理論ですから、そういう言い方でものごとを進められるとなりますと、かえっていろいろ問題が紛糾をいたします。そこらはいませっかくの大臣の答弁ですが、私は小林さんが厚生大臣をおやりになっているころからこの席で、健保問題から始まって、ずいぶん何べんも御質問しておりますから、大臣の性格がわからぬわけではありませんけれども、ちょっとこれは記録に残る問題ですから、そこのところは手直しをしておいていただきませんと穏やかでないと思うので、ひとつ再答弁をお願いしたい。
  128. 小林武治

    小林国務大臣 穏やかでなければ訂正することは一向差しつかえありませんが、しかしとにかく結果は交通反則金をかけることになった。どういう事情であろうが、やはりそこまで引き下げなければならなかった事情が交通取り締まりの上であるのでしょう。しかしこのことは私は別に例とはいたしません。例とすることはやめます。しかし結果的にはそういう事例が一つ出てきたということは一つの大きな……
  129. 大出俊

    ○大出委員 おっしゃらぬほうがいい。
  130. 小林武治

    小林国務大臣 それじゃそういうようなことは直しておいてけっこうです。しかしとにかくいろいろな議論があるが、これは結局だれがきめるか。やはり最後は国会できめていただく以外にないが、国会できめるのにはだれか出さなければきめようがない。しかしこれはいつまでも放置しておいてはいかぬ。とにかく何らかの方法を講じなければならぬ。こういうふうに私は思っております。法制審議会に出すというのは、何もわれわれが押しつけてどうこうというのではない。そこで十分に議論していただこう。そして要するに前進というのは、その作業が前進するという意味でありまして、改正が前進だという意味で私は申しておるわけではありません。立法作業が前進の方向に行く、こういう意味でございます。いずれにしましても、とにかくただ事務的に役所の間でこう交渉しておってはらちが明かぬ。だから公式の場でひとつ議論を十分してもらいたいということ。いま申すように結論は、これだけの問題は、大きく申せば世論、そして国会できめていただく以外にない。しかし国会も、これをただいつまでもうやむやにしておいていいというお考えではあるまいと思いますが、その点いかがでしょうか。いつかやはり何らかの解決をすべきじゃないのか、こういうふうなお考えがあるのじゃないでしょうか。
  131. 大出俊

    ○大出委員 私が大臣のいるその席に参りまして御答弁を申し上げるとなれば、現行少年法を改正する必然性はない、こう申し上げざるを得ないわけでございまして、私も別に法律専門家ではございませんで、大臣もあるいはそうかもしれないと思うのであります。逓信院の副総裁をおやりになっている時代から私はよく知っておるわけでございますから、したがってこのあたりで問題点が幾つかございますので、横路君に私、かわらしていただきまして、関連質問ということで何点か中身については問題点を出し合っておいたということにさせていただきたいと思います。
  132. 横路孝弘

    ○横路委員 あといろいろ質問があるようですので、簡単に二、三お尋ねしたいと思うのですけれども、いま放置しておいてはともかくいけないのだ、こうおっしゃったわけなんですけれども、いままでこの問題が決着しなかったのには、それなりのやはり理由があるわけですね。これはすでにもう二十年以上現行の少年法のもとで運用されているわけです。だから実際にその運用をやってきた中でこういう問題が出てきたから改正しなければならぬというならば、それはそれで話がわかるのですけれども、まとまらぬで、そういった話し合いが行なわれているだけだから、ともかく放置しておいては困るから作業を進めようというのでは、これはやはり基本的な姿勢としては私は問題があるんじゃないかと思う。この少年法の改正の問題にしても、裁判所のほうも、あるいは弁護士会のほうも、警察のほうも、みんな一致して反対しているのです。そしてこういうぐあいに変えたらいいんじゃないかという点があるわけですね。そこで私大臣にお尋ねしたいのは、きのうの刑事局長の答弁ですと、四月の末から何か最高裁の事務局のほうと具体的な草案に基づいて話し合いが始まったようでありますけれども、その中でいま法制審議会のほうにかけるのだというお話でありましたが、一致する点はあるわけですね。裁判所のほうとだって、あるいは日弁連そのほかの法曹界の全体の中で一致する点もあるわけです。たとえば国選の付添人の制度についてはどこも反対していない。あるいは保護処分の内容、種類というものをふやす点についても、これはいろいろその内容についてはこまかい問題点はあるでしょうけれども、大体の傾向としてはそんなに反対はない。だから私は法制審議会にいきなりかけるというのではなくて、一致した点についてだけ諮問するというのが、この問題の取り扱いとしては正しい取り扱いの方法じゃないかと思うのです。その点についての大臣のお答えをいただきたい。
  133. 小林武治

    小林国務大臣 これはこの改正に反対する者がある、また法務省は改正したい、こういうことからして、法務省は所管の省として改正の方向に持っていきたい。これを進めることが何が悪いか。法制審議会にかけることが何が悪いか。その審議会においてどういうふうに取り扱われるかは審議会の問題で、そこでまた裁判所も弁護士も何か意見があるなら、十分戦わしたらよかろうと思います。それからして、かけたあとどんな結論が出るかわかりませんよ。いまあなたのおっしゃるように、一致したことだけやれという答申が出るかもしれません。結果のことはまだわれわれ予想しておりません。とにかくかけて、真剣に作業前進のために努力をしてもらいたい、こういうことでございます。
  134. 横路孝弘

    ○横路委員 大臣の権限というのは実質的にどういう権限があるのかよくわかりませんけれども、しかしともかく何でもいいからやれということではなくて、これが長い期間いろいろ議論されてきたにはそれだけの背景があるのです。ですから私はやはりこの問題は法曹界あるいは国民を含めて非常に大きな問題になっているのですから、いま問題になっているのは、この適用年齢の問題と先議権の問題ですね、一番各方面から反対があるのは。各方面から反対があるが、賛成しているのは法務省だけで、あとは最高裁も日弁連も警察庁も反対している。だからその辺のところを大臣としても実情をよく把握されてから、その上でやるべきじゃないか。放置しておいては困るからともかくやれということを事務当局に命じたというのでは、少し大臣としても強権を発動し過ぎるのじゃないか。その点いかがでございますか。
  135. 小林武治

    小林国務大臣 これは何年も何年も議論してきて——こういうものは大きく申していわゆる政治上の問題、それでとにかくこれを直したい、こういう希望も大きく持っている、そしてまた直すべきでないという意見もある。こういうことになると、ただお互いに言い合っておったって、これはどうですか。もうどうしても公の広場へ持ち出してやればやっただけの値打ちがあるので、お互いに、こそこそとは申しませんが、役所同士で話をしたってらちがあきませんわ。そういうことだから、ある程度こういうふうなものはこれを前進させるあるいは大づかみにしてやる、こういうことがなければ、議論して重箱のすみをほじくっておったのでは問題は片づきませんわ。そういうことで、多少あなたから見れば乱暴かもしれぬが、何もこれでもって法案をつくってしまおう、こういうことではない。もっと大きい立場でひとつ論議してもらおう、こういうことでやっておるので、何がおかしいか。法制審議会というりっぱな諮問機関があるので、そこでもって天下の権威者に集まってやってもらえば、われわれはそれをリードしたり押しつけたりしようとは思いません。しかし、そういうことでなければ一つもらちがあかぬ、ということばはどうかと思うが、作業というものは前進しない。ですからやってもらいたい、こういうことでございます。
  136. 横路孝弘

    ○横路委員 今度の少年法の改正内容というのは非常に大きな問題をたくさん含んでいるのです。学界だってほとんど反対ですよ。実際の仕事に携わっている家庭裁判所のほうだって反対しているんです。そういう実情を見ないで、作業がおくれているから、そのことだけを進めるんだ。重箱のすみをほじくるような問題だ。そういう問題ですか、この少年法の改正の問題は。そういう問題じゃないんです。  そこで、私一つお尋ねしたいのですけれども、改正しなければならない必然性、必要性というのは一体どこにあるのですか。
  137. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 今回の少年法の改正の必要性でございますが、これは昨日も当委員会で大出委員の御質問にお答えしたとおりでございます。  法務省におきましては昭和四十一年に改正の構想を二案発表いたしておりますが、それを通じまして、法務当局といたしましては、その必要性は、現在の少年につきまして年齢層に応じた刑事政策を実現していきたいという柱が第一点でございます。  第二点は、この非行少年あるいは犯罪少年を取り扱う関係諸機関の間の協力関係をより緊密に実現していきたいという点が第二点でございます。  第三点は、犯罪少年の処遇、執行面の整備充実をはかりたい。  この三点が大きく言いまして今回のあるいは従来の少年法改正の必要性と考えておる点でございます。
  138. 横路孝弘

    ○横路委員 その三点については特に問題がないのです。いまおっしゃいました年齢層に応じた取り扱いというのは、そのことがなぜ適用年限の引き下げになるのですか。何か裁判所のほうで新しく草案をつくられたというきのうの答弁でした。私その内容は知らないわけですけれども、しかし昭和四十一年当時出された改正草案というものとそんなにお変わりになっているわけじゃないわけでしょう。いずれにせよ二十歳の年限を十八歳まで引き下げる、そうして十八歳から二十三歳なら二十三歳の間に新しい制度を持ち込むということ。いままでの取り扱いは、二十歳の少年に対しては、いまおっしゃったようなそれに応じた取り扱いというのは、具体的に家庭裁判所の中でやられているのです。その運用の中で、いままで二十年間やってきてどこにどういう問題が生じたから今度こういう改正をしなければならぬのだというその辺の必要性ですね、あるいは説得性というもの、これがなかったら私はいけないと思う。そこのところをお尋ねしている。
  139. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 その必要性は私いま抽象的に三点として申し上げたわけでございます。  これをもう少し具体的に申し上げますと、第一点の年齢層に応じた刑事政策の実現をはかりたいという点は、御指摘のとおり現在は二十歳未満の者を少年といたしまして一律に少年法の適用を受けておるわけでございますけれども、やはり現実の問題といたしまして現在の日本の青少年の状態を見ますと、その犯罪現象の面におきましてもまたその少年の心身の発達状況におきましても、十八、十九歳の者と十七歳以下の者とはいろいろな点で異なった様相を示しております。その異なった様相を前提にいたしまして、十八、十九歳あるいは場合によれば二十二歳までということも考えられると思いますけれども、この辺の年齢層とい小ものを一つの別の年齢、少年にもあらず成人にもあらずという一つの中間的な年齢層としてとらえていって、これに刑事政策的な処遇を講じていくということが現下非常に必要なことではなかろうかということがまず考えられるわけでございます。  それから第二点として、私が関係機関の協力関係の実現ということできわめて抽象的に申し上げましたけれども、現在御承知のとおり、少年犯罪は総数におきまして全犯罪の約二〇%になるわけでございます。しかもその刑法犯のうちで、いわゆる主要刑法犯と申しておりますが、主要刑法犯につきまして少年の犯すものが大体三五%という数になっておるわけでございます。わが国の犯罪政策あるいは刑事政策という面から見ましても、これだけの大きい量を占めております少年層の犯罪というものにつきましては、これは一国の対処すべき大きな問題であろうと思うわけでございますけれども、現下の法制のもとにおきましては、二十歳以下の少年の犯罪というものはあげて家庭裁判所がお引き受けになっておるわけでございます。この家庭裁判所のおやりになります主たるもの——もちろんいろいろ手続に従っておやりになるわけでございますが、いわゆる保護処分を中心とする保護手続でございますが、これだけ大きなウエートを占めておる少年犯罪というものが家庭裁判所の現行少年法に基づくいわゆる保護処分を中心とした手続だけでいいのかどうかという問題がございます。少年の犯罪に関係いたしますものといたしましては警察もございます。検察庁もございます。あるいは矯正機関もございます。保護機関もございます。これらの家庭裁判所以外の関係機関というものが協力関係を実現していって大きい少年犯罪問題に対処していく必要性が痛感されるわけでございます。この二点を具体的に申し上げる次第でございます。
  140. 横路孝弘

    ○横路委員 いまのお話を聞いておりますと、何か家庭裁判所というのは保護処分だけやっているような印象を受けるのですけれども、実際には十八歳、十九歳の少年について検察官送致だってやっているのじゃないですか。その件数は家庭裁判所の記録によりますと、たとえば成人の主要刑法犯等についての起訴率あるいは処分率と現実にはそんなに変わらないのです。その辺のこまかい議論は、私も関連でございますし、時間がありませんから、それは法務委員会で詳しくやりますけれども、いまのお答えですと、何か保護処分だけやっていて何も処罰してないのじゃないかということですが、現実には検察官送致でもって十八、十九の少年についても相当処罰されている。  それからもう一つは、いま主要刑法犯についても何か三五%というお話だったけれども、主要刑法犯というとり方によるのかもしれませんが、家庭裁判所のほうの資料によると、昭和四十四年度の場合は二八・五%、だんだん下がってきているのですね。たとえば殺人についても、昭和四十四年は一一・四%で十年来の最低になっている。強盗についても四〇・八%でやはり最低、強姦についても同じで、だんだん下がってきているわけですね。法務省のほうから問題が提起された昭和四十一年当時には、そこがちょうど一番上り坂のピークになっている。これがだんだん伸びていくということであれば、問題提起として私はそれでいいと思うのです。しかしだんだん下がってきている。しかも起訴率なり何なりを調べてみても、特に年長少年の場合はむしろ成人よりもきびしい処分になっている。たとえば、成人の場合ですと略式でもって罰金で済むなんというケースがある。少年の場合は、そういうケースでも少年院に入れたりして保護のいろいろな手を加えている。だから、ばく然とものをおっしゃられても困るのです。具体的に数字的にこうです、あるいは具体的に運用した結果、家庭裁判所の運用にはこういう問題点があります……。私も法務省のほうで提起された問題全部について反対という立場からものを言っているのじゃないのです。先ほど申し上げましたように、保護処分の内容を多様化するという問題とか、あるいは国選の付添人制度というものを確立するという問題、こういう問題についてはけっこうなことなんです。ぜひやってもらいたいと思うのです。ところが、適用年齢の引き下げと先議権の問題になると、それをいまやらなければならぬ必然性、必要性がどうも明らかじゃないのです。  事務当局のほうに私お尋ねしたいのですけれども、そうすると、大臣がやれと言うことだからそれはやらざるを得ないのでしょうけれども、その辺のところの事実、実態ですね、いまの運用の中から少年法を改正しなければならぬ必要性、やはりもうちょっと資料に基づいて、事実に基づいてものを言っていただきたいと私は思うのです。その点をちょっと最後にお答えいただきたいと思います。
  141. 小林武治

    小林国務大臣 ただいまのことに対するお答えではありませんが、私は委員長に申し上げたい。  とにかく、司法制度の本質に関するような議論は、りっぱに法務委員会という場があるから、内閣委員長と法務委員長の御相談の上でひとつ適宜配分をしていただきたい、こういうふうに思うのです。いま法務省設置法という法律をここにお願いしてあるわけですが、それとこれとの関連もどの程度の問題かということもありますから、願わくはいまの本質的な問題はひとつ法務委員会の場で、われわれも十分お答え申し上げるから、法務委員長と内閣委員長でさようなことにお取り計らいを願いたい、こういうことを申し上げておきます。
  142. 天野公義

    天野委員長 大臣に申し上げますが、設置法はその省全般に関する問題であると思いますので、ある程度はやはり関連事項としてそういうことに入れると思いますし、少年法の問題も、法にひっかかった者は刑務所なり何なり関連が出てくるかもしれませんので、やはり関連事項としてある程度は質疑が許されてしかるべきであると思います。ただし、質問者のほうも、法務委員会の問題と本委員会の問題の良識的な判断によって善処していただきたいと思います。
  143. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 それでは簡単に申し上げます。  ただいま御指摘の点は、最近の少年犯罪の現状はむしろ減ってきておるのじゃなかろうかという御指摘でございます。この点につきましては、三十九年をピークといたしまして、その後わずかながら減ってきておる、現在いわば横ばいという段階でございます。  それから第二点、家裁は保護処分だけをやっておるように言うじゃないかという御指摘でございますが、私はさようには申していないのでありまして、保護手続を中心とするというふうに申し上げておるわけでございます。もちろん家裁の御審理の結果、刑事処分が相当であるということで検察官送致になる分もございます。私は家裁の現下の手続を申し上げておるわけでございまして、保護処分を中心とした保護手続というふうに申し上げたわけでございます。  それから第三点の、全部関係機関が賛成しておるものといたしまして、それだけをやったらいいじゃないかという御指摘でございますが、この点は私ども昭和四十一年の五月に構想を発表いたしましてからの各方面の御意見を集約してみますと、各方面が全部御賛成になっておるのは国選の付添人制度だけでございます。弁護士会もこの点は御賛成になっておるわけでございますけれども、保護処分の多様化という点につきましては実は弁護士会は反対でございます。それから先ほどの御指摘で、年齢の点については警察が反対しているじゃないかという点でございましたが、警察は二十二歳、二十三歳までを少年といいますか青年とするか、その点については疑問があるということでございまして、十八歳、十九歳をかりに青年としてやることにつきましては決して反対していない状況でございます。
  144. 横路孝弘

    ○横路委員 これでやめたいと思いますけれども、小林法務大臣はなかなか意欲的に、少年法の改正もやりたい、監獄法の改正もやりたい、この次は出入国管理法も出すのだというお話ですが、何もかも全部任期中にはできぬと思うのです。そうした意味では、必要性ということになれば、私が一昨日質問をしましたように、監獄法はやはりその運用の実態の中からこれを改正する必然性というのが出てくる、少年法についてその運用の実態の中から改正する必然性はなかなか見つけることが困難だ、そういうことで法務省の方だけですとどうも話がなかなか進みませんから、今度は最高裁判所のほうからも人を来ていただいて、法務委員会のほうでやりたいと思います。  どうも小林法務大臣は私に対してどういうわけかなかなか挑発的でありまして、私のような若輩のあれでやられるとお気にさわるのかもしれませんけれども、お互いに国会という場なんですから、事実をもとにして、その中でもってどれが実質的に国民の生活、犯罪をなくしていく、少年の更生なら更生という観点に立って一番いいのかという点を、やはりお互い、観念じゃなくて事実に即して、実態に基づいて議論していきたい。私はそういうことでこの間の監獄法の問題についてもお尋ねし、きょうの少年法の問題についても、これは基本的な点だけですけれども、やはりものを言わなければならないということで発言したわけであります。その辺のところをお考えいただきまして、私はこれでやめたいと思います。
  145. 小林武治

    小林国務大臣 もうおっしゃること当然でありますから、われわれも十分ひとつ法務委員会お話を願いたい、かように考えます。
  146. 天野公義

    天野委員長 伊藤惣助丸君。
  147. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 私は新都市開発センターの参考人に来ていただきまして、るるその事業の概要について質問したわけでありますが、それに関連いたしまして、東京拘置所の移転をめぐる問題点をさらにまた質問したいと思います。  先般来から伺ってまいりましたが、だいぶ移転計画については変更があるようでございますが、その東京拘置所の移転計画、すなわち変更になった現状においての計画の概要について伺いたいと思います。
  148. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 東京拘置所の移転計画といたしましては、簡単に申しますと、現在の東京拘置所あと地を株式会社新都市開発センターに払い下げる。そのかわり新都市開発センターにおきまして東京拘置所、黒羽刑務所、旭川刑務所、岡山刑務所、川越少年刑務所及び浦和拘置所を建築いたしまして、これを国に引き渡たす。そういたしまして、その間の差金につきましては、これを現金で国庫に納めると、こういうことになっております。
  149. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 その変更になった分の移転計画、資金計画ですか、そのことについても計数的でけっこうですから、概要を御説明願いたいと思います。
  150. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 あるいはお尋ねいただいておることと食い違うかもしれませんが、私が理解しましたところでお答えいたします。  いわゆる建築交換の対象として渡します東京拘置所あと地の評価額が五十三億六千百万円余り、それから交換で受け取ります土地、建物、これが合計いたしまして四十七億四百万円あまりでございまして、その間の差金が六億五千七百万円、かようになっております。
  151. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 この国有財産の問題については先般来からお話がありますように、建築交換方式ということでございますが、この法的根拠は、要するに国の庁舎等の使用調整に関する特別措置法または特定国有財産整備特別会計法、さらに契約については予算決算会計令の九十九条の二十一号、これによって行なわれる。このように伺っておりますが、予決令を見ますと、すなわち公共用あるいは公用または公益事業の用に供するために直接公共団体あるいは事業主体に売り払う場合に限って随意契約ができる、こういうふうにあるわけでございますが、それは先般伺ったわけであります。そこで伺いたいのですが、その場合、今度の新都市開発センターは株式会社になっております。確かに先ほど来からの事業概要を伺ってみましても、公共用に一部は使われているわけでありますが、この辺のところをもう少し伺いたいわけです。
  152. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 かようないわゆる建築交換方式といわれますことを行ないます法的根拠は、ただいま御指摘のとおりでございます。株式会社新都市開発センターが予決令九十九条の二十一号のどれに当たるかということでございますが、要するに公共の事業を行なう事業ということに当たるわけでございまして、それに当たります根拠といたしましては、都市計画法に基づきます都市計画事業の主体であるというところが、その根拠になるわけでございます。
  153. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それはまたあとで、バスターミナルや高速道路の免許を受けたときについて、運輸省または建設省の人から聞きたいと思っておりますが、要するに都市計画に合う公益事業がその事業体の一部にあれば、国有財産といえども民間に払い下げをするということになるわけですか。
  154. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 いま御質問の点は非常に多岐にわたると思いますが、常識的に考えまして、本件の場合に契約の内容として、用途指定というふうにはっきりうたわれておりますように、敷地の上を公共目的の都市計画事業で一応おおうわけであります。そういう意味で都市計画の主体、すなわち予決令にいう公共事業の用途というふうに考えているわけであります。
  155. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 大蔵省の人に伺いたいのでありますが、国有財産の扱い方、国有財産の払い下げについて、基本的な条件といいますか、その処分の基本方針といいますか、そういったことについての原則論をお伺いします。
  156. 本間英郎

    ○本間説明員 お答え申し上げます。  大蔵省所管の普通財産につきましては、いろいろな財産がございます。たとえば相続税の規定によりまして、国に物納された財産、あるいは旧水路、あるいは旧農道等、建設省、農林省から引き継ぎを受けました国有財産につきましては、引き継ぐ以前におきます権限ある省庁から使用許可あるいは占用許可等を受けておられる使用権者があります。そういう財産がございます。これらの財産につきましては、私たちといたしまして、特に国の必要といたします場合を除き、これらの使用権限のある方々に対して処分をするということをいたしております。これらの財産以外の財産につきましては、いわゆるさら地でございますが、これらの財産につきましては、国の必要性あるいは地方公共団体の必要性等を考えまして、公用や公共用を優先的に考え、そして適切な処理をいたしたい、かように考えておるところでございます。
  157. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 この東京拘置所の払い下げについては、どういうふうに考えられて処分されたのですか。
  158. 本間英郎

    ○本間説明員 お答え申し上げます。  株式会社新都市開発センターにおきましては、東京都心の計画街路事業並びに自動車駐車場事業等の免許を受けておるわけでございますから、センターが実施いたしますこれらの仕事は、その相当部分につきまして、都市計画並びにその地域社会の開発のためにきわめて公共性の高い事業を実施するやに承っておるところでございます。
  159. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 ここで私、率直に申し上げますが、要するに、あの国有地については、大蔵大臣からも、直接質問して伺ったことがございますが、原則としては国有財産は払い下げしない。ただしかし、する条件としては、地方自治体あるいは公共企業体、あるいは長期にその国有地を占有し、しかも公共に使用するものに限って、その国有財産の払い下げをするのだ、こういう福田大蔵大臣の答弁を予算の分科会で伺ったわけでありますが、そうなりますと、この予決令という中の制限、都市計画法とは多少変わるかもしれませんが、確かに公共事業、公共性は、その一部にはありますけれども、しかし、その一部にあるからといって、全体を含めて、株式会社という民間に払い下げる根拠とはならない。あるいはまた、認可するならば、むしろ財団法人なり、公益法人なりというものに限って払い下げをすべきではないか。こう率直に思うわけでありますが、その点について、いかがでしょうか。
  160. 本間英郎

    ○本間説明員 先ほど私申し上げましたのは、大蔵省所管普通財団につきましての処分の基本方針を申し上げたわけでございますが、本件につきましては、東京拘置所の移転に関連する問題でございます。したがいまして、私のほうからお答えを申し上げるのはいかがかと存ずる次第でございますが、先ほど申し上げましたように、株式会社新都市開発センターは、先ほど来参考人その他法務省会計課長からお話がありましたように、きわめて公共的な仕事をしておるわけでございますし、そのほかにも児童会館であるとか体育施設、そのほかそういった地元のために寄与すると思われます集会施設であるとか、そういうものを運営されるやに承っておりますので、公共的な色彩がきわめて強い事業を営む法人であると理解いたしておる次第でございます。
  161. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 そのことは、また最後に大臣から伺いたいと思いますが、その新都市開発センターというものが、昭和四十一年十月十四日に新設されたわけですね。そしてその年の十二月二十四日付で、運輸省から自動車ターミナル事業としてバスターミナル事業の認可を受けております。さらに十二月二十七日付で、東京都知事を経由して建設省から、池袋副都心の東京都市計画街路事業及び東京都市計画自動車駐車場事業として、道路並びに駐車場建設の免許を受けているわけでありますが、そこで、まず運輸省の方から聞きたいのですが、そのときのいきさつについて説明願いたいと思います。
  162. 見坊力男

    ○見坊説明員 免許の関係でございますが、十月十四日に申請がございまして、この免許にあたりましては、自動車ターミナル法に免許基準がございますが、それに該当しているかどうかということを判定するほかに、さらに公安委員会あるいは道路管理者の意見を照会いたして処分をいたすわけでございますが、十一月中に道路管理者並びに公安委員会の意見照会も終わりまして、十二月の二十四日に免許処分をいたしたわけでございます。
  163. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 そのターミナル法の免許基準に適合したから許可したということでございますね。どの点が適合したのですか。
  164. 見坊力男

    ○見坊説明員 免許基準には五つございまして、「当該一般自動車ターミナルの位置が自動車運送事業の輸送網の中心として適切なものであること。」二番目に「当該一般自動車ターミナルの規模が当該地区における輸送量に対して適切なものであること。」「三 当該事業の遂行上適切な事業計画を有するものであること。」「四 当該事業を適確に遂行するに足りる能力を有するものであること。」「五 その他当該事業の開始が公益上必要であり、かつ、適切なものであること。」この五つの免許基準がございますが、このすべてに該当いたしておるわけでございます。
  165. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 法的に、理論的に適合しても、実体はどうなんですか。たとえば例は違いますが、個人営業のタクシーの申請なんかは、それこそ申請しても、四年も五年もかかって、そして認可されてもなおかつ一年もかかって免許がおりる。そういったものに比べて、公共企業体とか東京都であるならば、こういうことも可能だと思いますが、株式会社という——有力な方が、たとえバックにいたとしても、個人であることには変わりがない。その場合、設立後一カ月あるいは二カ月、どんなに早くても、いままでの事例は数カ月かかっております。それがこれに限って一カ月、二カ月ということである。さらに、いかに法に適合したからといって、何を基準に申請を認可したのか。実体的な面からいきましても、定款を見ましても、何回も何回も変更し、言うならば、よろよろといまなお行く先が不安定であるというような一つの企業体であります。そういったことについて、いま読み上げました条文のうちの適当であるというところが、私はちょっとおかしいのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  166. 見坊力男

    ○見坊説明員 いまお話がございました一般のタクシーの免許のような場合には、先生おっしゃいましたように、相当日数がかかっております。これは件数が多いということ、それから人手も足りないということでかかっておりますが、これを、なるべく早く処理しようということで、行政のやり方も簡素化していこうということでやっております。  本件につきましては、ハイヤー、タクシーと違いまして、陸運局で扱うのではなくて、本省の事案でございますので、本省で書類的にも早く処理できるということであろうと思います。
  167. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 要するに、これができ上がるのは、大体昭和四十八年ごろですね。ということになりますと、だいぶ期間がかかりますし、また考えてみますと、一般常識からいいましても、もう少し会社の実体というものを見きわめた上で扱うのがほんとうではなかったかということが一つと、それからもう一つは、ちょうど同じころ、池袋の西口にあります現在の国際興業とか東武バスとか西武バスとかいう四つの会社が、たしかバスの免許を受けたと思うのです。これらは現在やっておって実績もありますが——私は、決してそんな会社に関係ありませんけれども、そういったものに免許をおろし、なおかつ、その西口にあります土地が、そういったほうには向かないで、言うならば、こちらのほうのそういった会社に対して便宜おろすということならば、私は常識として納得できるわけでありますが、そちらのほうの会社は免許を取り消した。そしてこれからやろうとする会社に、しかも設立後二カ月もたたないものにまたたく間に免許をおろしておる。法律には適合しておる。しかし実体的に適合してない。実体的に非常に不安定な会社です。まだまだ海のものか山のものかわからないというのが現況です。要するに事業計画も定まっていない。三十六階にするのか六十階にするのか、これも明らかではない。自分も社長にされたけれども、なりたくなくてなったんだ——そんな経過についてはまたあとで聞きますけれども、そういうような会社なんですね。そういったことについて、どんな有力な人が当時いたかわかりません、先ほど聞きましたけれども、ただ単に財界だけの方々がいたからといって、簡単に役所が免許なんておろすものではないと私は思うのです。そういった点について、そのときのことをいま伺いたいと思うのです。
  168. 見坊力男

    ○見坊説明員 われわれといたしましては、申請がございましたらできるだけ早く処理をしたいということをいつも努力いたしておるわけでございますが、先ほどお話のございました西口のターミナルにつきましては、これはまだ免許は取り消しいたしておりません。ただ実際問題といたしまして、あそこの利用計画が東京都あるいは地元との間で十分話が詰まらないということで、工事施行の期限を延長いたしておりまして、ことしの九月末まで一年間一応延長いたしたわけでございます。われわれといたしましてはその後早く話のつくことを期待いたしておりますが、ただ西口で予定されておりますバスはわりあい近距離のバスでございます。この都市開発センターに予定されておりますバスは、長距離あるいは中距離のバスでございます。計画といたしましては一応性格を異にするというふうに考えております。
  169. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 このことはいろいろまたありますけれども、時間がありませんから、あなたが主任じゃないし、当時のことでありますし、またいろいろなことを私聞いておりますが、まあ運輸省についてはそれだけ伺っておきたいと思うのです。きょうはどうもありがとうございました。  それから建設省の人に伺いたいのですが、同じように、この池袋副都心東池袋三丁目付近再開発に関する東京都市計画街路事業及び東京都市計画自動車駐車場事業、この特許をおろしたわけですが、そのいきさつと当時の状況といいますか、その点について同じように伺いたいと思うのです。
  170. 大富宏

    ○大富説明員 参考人からも詳しく御説明が出ておりましたけれども、たまたま東京拘置所の移転という時期をとらまえまして、新宿副都心と同じようにここにも池袋の副都心計画を立てようということで考えられたものでございますが、ここは約七・五ヘクタールございますが、おおむね自動車駐車場あるいはバスターミナルといった業務地区にするというのを重点に置きまして、たまたまそこに首都高速道路五号線が入ってまいります。その出入り口もここに設ける。さらに壁面線を後退して本地区周辺街路の幅員二十メートルを二十五メートルに広げる。その機会にまた周辺地区の環境施設としての都市計画公園もつくろう、こういうことで基本計画が立てられたわけでございます。  これに基づく都市計画の決定が四十一年の一月にあってございますが、さらに十月にこれを若干変更しました。変更の理由は、一月の都市計画の決定は面積が〇・二五ヘクタールの公園の規模で、ちょっと狭かったのであります。それを十月に〇・六ヘクタール——約千八百坪になりますが、公園面積を広げたという計画変更を行なっております。  それを今度都市計画事業ということになりますと、当時まだ旧都市計画法でございますけれども、行政庁がこれを施行するのが原則でございますけれども、旧都市計画法の五条で、行政庁でない者にも特許を与えてこれをやらせるという条文がございます。新都市開発センターのほうから特許の申請が出ましたのが四十一年十月二十八日でございます。すべて旧法時代には東京都知事、府県知事を経由して建設大臣に進達が出されますが、それが十二月二十二日に都知事のほうから進達がございまして、建設大臣がこれを受けまして都市計画審議会にもかけ、それで四十一年の十二月二十七日に特許いたした次第でございます。
  171. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 いまのお話は「都市計画事業の認可等」の五十九条の五項のお話だと思うのですがね、ただその六項にはこう書いてあるのですね。「都道府県知事は、前項の認可をしようとするときは、あらかじめ、関係地方公共団体の長の意見をきかなければならない。」私は当時は豊島の区会議員でございました。私たちが、新都市開発センターについてどんな会社なのか、どんな人が発起人のメンバーなのかと聞いても明らかにされませんでした。そして私が予算委員長を当時やりまして、いろいろ質問が出ましたが明らかにすることができなかった。そしてその当時になって、会社ができたと同時に、都市計画の中で免許を受けた、こういう話を聞いたわけであります。しかし最近私もいろいろなことを聞いているわけでありますが、このことが次にある「地方公共団体の長」というならばやはり東京都知事でありますが、なおかつ現地のその区長なり議長なりの意見を聞いた上で免許を与える、こうなるのが私はこの場合はあたりまえじゃないかと思うのですね。そういったことがなされていなかった。この点についてどうなんですか。
  172. 大富宏

    ○大富説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、この都市計画決定及び特許の処分は旧都市計画法で処理がなされております。したがいましてこの特許は旧都市計画法の五条二項に基づいて行なっておるわけでございますが、その場合建設大臣が特許を行なう場合には都市計画審議会の議を経てこれをきめるわけです。当時の東京都の東京都市計画地方審議会の委員の中に、いま先生が御指摘になりました地元の区長さんも委員になっておられます。議会の議長さんも委員になっておられます。旧法体系では審議会で地元の意見を十分反映させるという仕組みだったわけです。
  173. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 要するにその辺が——当時のことは私もよく知っているわけですよ——聞いてもわからなかった。免許がおりてあとでわかったわけですよ。しかも、先ほど大池眞さんが見えましたが、現在池袋地下駐車場の社長さんでもあります。この地下駐車場の免許をめぐりまして、地元と池袋地下駐車場と二つ申請があった。ところが、地元が先に申請したその地下駐車場に対して、あとから申請したほうに免許を与えたということも当時あったのです。さらにこの問題について当時の有力者の中に中村先生などもおったわけでございますが、そのときの建設大臣はどなたですか。
  174. 大富宏

    ○大富説明員 西村英一であります。
  175. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 要するに、この辺に私は納得のできない点があるわけでございます。ただ先ほど申しましたその法の解釈の上だけでも、現在のこの会社の実体の面からいっても、たとえそれが法律上、理論上または形式上適合したとしても、やはり実体的には非常に不安定であった。発起人がかわり、重役がかわり、定款の問題を見ましても、何回となく変更しているわけでありますね。そしてまた、その事業計画というものが明らかにされない限りは、免許を受けられないわけですよ。ところが、当時は三十六階のビル二むねと聞いておりました。最近いただいた事業計画には三十六階のもの一むね、またうわさによりますと、それでは採算にあわないから四十階か六十階にするということも言われているわけであります。そういったことについて、当然それだけの大きなものですから、変更があることは予想されるわけでありますけれども、あまりにも内容的からいっても、免許を下す条件ではなかったのじゃないか。成立後一カ月、二カ月のうちに、運輸省も東京都においても建設省においても免許をおろしたのが非常に早かった。そして、その社長には元大蔵省主計局長の中村建城さんがなったというところに、いろいろと思うことがあるわけであります。あなたは別にあれですから、その点だけわかればいいわけです。きょうはどうもたいへんありがとうございました。  こういった一つの免許あるいは特許について経緯があったわけでございますが、次に東京拘置所の土地の評価について伺いたいと思います。先般も伺いましたが、そのときに評価をしたのは非常に信頼度が高いといわれる日本不動産研究所というところだ。それから、数個の信頼のおける鑑定業者に依頼した、こういわれておりますが、どんな会社がどういう評価をしたのか。その点を伺いたいと思います。
  176. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 お答えいたしますが、実はこの新都市開発センター関係につきましては、昭和四十一年度予算案並びに昭和四十四年度予算案、両予算案におきまして特定国有財産特別会計の内訳といたしまして、この新都市開発センターを相手とする建築交換方式をいたしますことにつきまして、詳細御審議を賜わったわけでありまして、このたび伊藤委員から三たびの詳細なお尋ねを受けておるわけで、たいへん恐縮に存じておるわけでございますが、先般の衆議院予算委員会の分科会でも申し上げましたように、この土地の評価につきましては私どものほうで日本不動産研究所、さらに住友信託銀行等の信託銀行、こういう民間精通者の鑑定を取りまとめまして、これを財務局のほうへお届けいたしました。これも昨日御説明申し上げましたように、大蔵省の御当局のほうで所定の基準に従って実際の評価額をお出しいただいたわけでございます。それらの書類は大蔵省の御当局のほうにまいっておるはずでございます。
  177. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それでその評価については、いろいろな角度から評価されたというふうに聞いております。それも実はきのう伺いましたが、それに加えまして、これは昭和四十二年の十月二十日付け毎日新聞でございまするが、土地の評価をめぐりましていろいろ書いてあります。「黒い霧と新聞(1)」というところです。別に私は黒い霧があると言っているわけじゃない。ただしかしそのときに、当時は第一回目の土地の評価は坪約二十七万だったわけですね。変更になりまして約三十三万になりましたが、しかし、こう書いてあります。「拘置所の土地が坪二十万だって。そりゃあバカ安値だ。捨売りにしたって四十万はかたいね。現に拘置所のすぐそばで、最近、道路公団が高速道路用地を買った。坪六十六万でしたよ」こういうふうに書いてあります。さらにその付近にあります拘置所に隣接しております金物屋さんは、当時坪七十万円で土地の売買をしているわけです。この評価について簡単に伺いたいのですが、いただいた資料においては、これはたしか一括した評価になっております。もう現在の時点においての評価は正しくないかもしれませんが、あの辺一帯はいま買おうと思っても土地がないくらい非常に貴重な場所でもある。また値段についても高いことがいわれておりますけれども、そのときの評価について簡単にもう少しわかるように御説明願いたいと思います。
  178. 三島和夫

    ○三島説明員 昭和四十二年の契約に際しましての評価を一応申し上げます。当時評価いたしましたのは国の評価基準によりまして相続税課税価額から見た価格あるいは固定資産税課税価額から見た価格、それに付近の売買事情を採用いたしまして、国の基準価格を一応坪当たり三十三万九千円と評価したわけであります。それにその土地の上にはいろいろの古い建物がございます。したがいましてこれらの解体整地費を平方メートル当たり千二百七十八円、坪当たり約四千円になりますが、これを控除いたしました。なおこの土地につきましては東京都のほうからこの土地の周辺に道路を拡幅する予定だ、しかもこれの負担は都市開発センター負担において行なえ、こういうふうになりました。したがいまして道路のつぶれ地がございます。これが約二千坪ございます。これを総体の坪数から見ますと約一二%、したがってその二二%の控除をいたしまして算定価格を平方メートル当たり八万八千円、約九万円といたしました。なおこれにつきまして民間精通者の意見を、先ほど法務省のほうからお答えございましたように、民間精通者を通常ならば三社でございますけれども、本地につきましては特に問題が多いということで六社採用いたしました。この民間精通者から出した価格が平方メートル当たり七万九千三百二十二円でございます。これらを平均いたしまして、平方メートル当たり八万三千六百九十七円、坪当たりにいたしますと二十七万六千円、かように評価いたしたわけであります。  なおただいま先生おっしゃいました新聞記事にございますこの付近の六十万という価格は、確かに六十万というのがございます。これは放射八号線沿いのいわゆる池袋の五差路と申しますか、その付近の非常に地価の高いいわゆる表通りの土地を首都高速道路公団が買収した価格であります。それらの価格等から比較いたしますと、この価格は適切な価格である、かように考えております。なお、首都高速道路公団の買収いたしました価格は、そういう表通りでないところの買収価格は約二十六万から二十四万という価格がございます。その根拠はそういう放射八号あるいは環状五号、そういった道路から少し入った土地でございますが、そういう付近の価格から見て適切な価格である、かように考えておるわけでございます。
  179. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 これは国有財産でありますから、ずいぶんいろいろな面で引いておりますがね。評価というのはそんな道路分が幾らだとかあるいは取りこわし分が坪四千円と見るとかいうようなことは、その評価のしかたは正しくないと思うんですよ。たとえば一般の山を削って造成をして土地を売買する、そういう場合なんかは、全部含めて一括してそれこそもう坪当たり幾らというなにがあって評価するのじゃないですか。それはもう、言うならば取りこわしまでも含めて全部それを差し引いて非常に安い評価をしていると、われわれは一般的に見るわけですね。それがたとえば東京都なり公共企業体などにそういう寛大な措置をとるということについてはわかる。ただしかし、その前には公園もでき、また三十六階も立つ。当然その前は空閑地になり、また道路にも使用される。ここにほんとうに道路というものをとるならば、そんなものを買わなければいい。またはやらなければいい。要するにそこら辺が一般の不動産鑑定の人が見ても非常におかしい、こういうふうに言われておるところですよ。  時間がありませんので、さらにあなたの言いわけを聞こうと思いませんからけっこうでございますが、いずれにしても非常に評価としては妥当だと言いますが、地元の人は安いな、現在ではあの辺一帯ですともうどんなにしても六、七十万以下はない。しかも四十一年、四十二年、最後は四十三年ころですか、変更になったときの評価というのは。そういったことから見ても、この辺は大いに疑義のある評価といえるのじゃないかと思うんですね。それはそれでけっこうです。  それで要するに、この新都市開発センターの免許さらにまた特許、こういったことを受けて、現在いろいろ会社の内容なんかも、増資がされたりあるいはまた変更がなされようとしているということでございますが、当然こういった計画については大蔵省は聞いていると思うんですね。たとえ新都市開発センターが、そのときの情勢——「なお、本計画は完成時点における社会経済等の諸情勢に即応し、修正されることがある。」という、この一項目があったからといっても、これは一方的な計画の変更を認めるというようには私は思わないわけです。そこで先ほど来からのお話にもありましたように、もう黒羽刑務所の移転について相当赤字にもなっておる、その資金の返済計画から考えてみても現在の計画ではだめだ、いま鋭意検討中である、と言われておりますが、その点について大蔵省も当然話は聞いていると思うんです。どういう計画が考えられておりますか。
  180. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 大蔵省は新都市開発センターに対する監督官庁でございませんが、お尋ねのような趣旨で新都市開発センター事業の行くえを最も関心をもって見守らなければなりませんのは私どもであると存じます。当該契約の当事者は私と関東財務局長と新都市開発センターの社長であるわけでございます。先般来いろいろお尋ねをいただいておりますように事業内容が非常に大きゅうございまして、地元の方の御関心さらには諸先生方の御関心も集まっておるわけでございますので、誠心誠意この新都市開発センターによります事業計画の遂行につきまして十分な関心をもって万遺漏なきを期してまいりたい、かように存ずる次第でございます。
  181. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 長い間大臣にいろいろここでお聞きいただいたんですが、もうそろそろあとの方にも迷惑をかけますので結論を出したいと思います。  要するに、この国有財産の払い下げをめぐってはいろいろな問題があった。さらに計画が変更され、会社の役員が変更され、そしてまた今後その計画が修正されてどういうものになるか。私たちも地元でございますので、非常に関心をもって今後も注目するわけでございますが、かつて大臣は、こういう国有財産の払い下げについては基本原則からもはずれておる——はずれておるとは言わないけれども、まあ本来ならば公共団体でなければならない、この問題については例外的措置である、このようにもおっしゃっているわけであります。したがって私も全くそのとおりであって、こんなことが悪い前例になってはいけない、ましてや国有財産というのは国民共有の財産でございますし、またその国有財産の払い下げをめぐっては国民だれしもが納得できるような払い下げでなければならない、このように私も考えておる一人でございます。したがって、今後のことについて大臣は、少なくともこの計画が地域住民や、さらにまた本来の目的を達成するように十分な配慮をしていただきたい、こう考えるわけでございますので、大臣の所見を伺いたいと思います。
  182. 小林武治

    小林国務大臣 国有財産の払い下げは、もうお話しのようにあとう限り慎重を期さなければならぬ。私どもも、今後またこの種の問題は刑務所問題について出てくると思いますが、相手はあくまでもやはり公共団体その他の公共法人でなければならぬ、こういうふうに考えております。東京の場合はいろいろ私も聞きましたが、全くこれは万策尽きたというか、要するに東京都がやれば何でもなかったのでありますが、それをお受けにならぬ、こういうことでほんとうの例外的措置としてこういう措置がなされた、こういうことでございます。したがって法務省といたしましても、今後この計画が実施されるについては十分の責任を持たなければならぬというふうに思うのでありまして、これは一会計課長の問題ではありません。今後とも法務省の首脳部においても、この問題の処置については十分な監督をしていきたいと思っております。ただ監督そのものが、当時の契約の内容が一応児童会館だとかなんとかいろいろ指定してありますが、大体一種の限定がしてある、こういうことでございますが、これは事柄の性質もありますし、先ほどお答え申し上げましたように、地元の方の御意見もまたよくお聞きいたして適正にこの結末が得られるように、このことについてひとつ十分法務省は責任をもってやってまいりたい、かように考えております。
  183. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 またこれは大臣に判断願いたいと思うのですが、たとえ三十六階あるいは四十階あるいは六十階の超高層のビルができた場合でも、国における用途制限というものは五年間ということになっておりますね。そこで考えられますことは、超高層ができたあとの対策です。一つはそういった超高層ができれば、霞が関にもございますし浜松町にもありますが、非常に突風の被害だとか、テレビの難視聴であるとか、あるいはまた日照権の問題であるとか、さらにまたその災害時における補償の問題であるとか、いろいろなことがあるわけです。そうなりますと、国の監督権、調査権というのは、用途制限といいますか五年間においてはできるとしても、あるいはまたバスターミナルとか、さらにまた高速道路とか駐車場の免許についての監督はできるとしても、全体の監督はできない。こういう点から見まして、現在株式会社ではありますけれども非常に公共性が強い、それをまた主たる事業としているということであるならば、私はいまからでもおそくないと思うのですが、たとえば公益法人、いうならば社団法人とか財団法人とかいうように切りかえて、もし何かのときには国も都もあげて応援できるような、また副都心計画がスムーズにできるように、四苦八苦で非常に苦しんで現在の計画がいまなされておりますが、そうではなくて、そういったような扱いができるかできないか、その点大臣はどういうふうに判断なされますか。私はできるものはそうすべきではないか、こう思うのですが、その点について御意見を聞かせていただきたい。
  184. 小林武治

    小林国務大臣 いまお話しのことはきわめて困難なことであろうと私は思います。しかし五年以後の問題についても、たとえば日照権の問題あるいは電波の障害の問題、これらの問題についてはいわゆる法律上の権限としてはなかなか容喙することはむずかしかろうと思いますが、私は五年以内においても、これらの点については、われわれのほうが十分仲介とかあっせんとかできるようなことも、これから話し合ってまいりたい、こういうふうに思います。  あと組織をどうこうなどということは、これはもうもっともなお話と思いますが、しかし実現はきわめて困難であろう、こういうふうに私は思います。
  185. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 要するに、昭和四十八年に完成する、そのあと五年間、昭和五十三年ごろに、もうすでに国の監督権やそういったものがなくなってしまうという事実があるわけですね。これはやはり何らかの方法でその点は考えなければならぬと私は思います。  それで、この問題がどうしてこういうふうに何回も質問され、また言われてきたかということにつきましては、一つは、全く上のほうでのみ計画され免許を受けておった。地元が放置されておった。地元が言えば入れたのにという先ほどの参考人のお話もありましたが、最初から地元を差しおいてやったところに問題がある。またもう一つは、本来からいって、国有財産の払い下げについては一つの原則論がある。基本方針がある。それに当たらないいわゆる例外的処置を考えた。そこに大きな問題がある。本来ならば、当然東京都がやるべきだ。またそれにかわる公共団体がやるべきところであった。さらには、東京都ができないから困ってやったというけれども、なぜその前に公募しなかったかということも、私はいまさらながらその問題を感ずるわけであります。そういった点において、どうか大臣の今後の措置についても十分なる措置をお願いしまして、最後に簡単に大臣からそのことについてのお話を伺って質問を終わりたいと思います。
  186. 小林武治

    小林国務大臣 ただいまお話しの趣旨は、われわれも十分尊重して考えてまいりたい、かように思います。
  187. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 終わります。
  188. 天野公義

  189. 和田耕作

    和田(耕)委員 大臣、先ほど私、法務委員会の同僚の報告を受けたのですけれども、金嬉老の事件、一尺以上の出刃ぼうちょうを持ち込んだというあの事件ですね。新聞の報道では、何か看守がやったという自白をしたという記事を読んだような覚えがあったので、もうとうにわかっておるものだと思っておったところが、まだわからぬそうですね。
  190. 小林武治

    小林国務大臣 いままでの調査のところではわかっておりません。
  191. 和田耕作

    和田(耕)委員 あれはもう半月以上にもなる事件なんですけれども、非常に単純な事件で、ああいう一尺以上の出刃ぼうちょうが房に持ち込まれたということがわかっておって半月以上もたつのに、どうしてこれがわからないのかわからない。私も実は、これは自分の悪事の数々を申し上げてまことに悪いのですけれども、戦前に日本の刑務所にも満州の奉天の刑務所にもおったことがある。これくらいのナイフを入れたり、あるいはちょっとした食べものを入れたりすることはできても、一尺以上の、しかもああいう出刃ぼうちょうを天下の最も規律のきびしいといわれる日本の刑務所に持ち込んだという事実が明らかになっておるのに、どうして半月以上もわからないのか、大臣、どう思われますか。
  192. 小林武治

    小林国務大臣 私もあきれておるわけでございます。出刃ぼうちょうの経路がわからない。これはもうわれわれもいわば一種の第三者でありますが、まことに、そういうようなことがあるのかと私も非常にあ然といたしたのであります。これは私の想像では、とにかく刑務所の中の人はどういう経路か知っておるに違いありません。ただ言わない。いろいろなお調べをなさったがとにかく言わない。これは、言わないということは刑務所の中でもそれぞれ仲間意識もありましょうし、それはいいことじゃありませんが、とにかく言わない。この言わないということは、ほかの犯罪人の調べ等についてもやっぱり黙秘をしておればさっぱりわからない、こういうことでありまして、いわゆる行政調査の範囲において非常な努力をしているが言わない。それらの調査においても、中には調査が少しきびし過ぎて血圧が上がっていま寝ておるなんという人もあるのですが、とにかくそれくらいしてもわからぬ。要するに、内部ではわからぬということで、やむを得ずこれはある程度外部の者も調べなければいかぬ。それには刑務所あるいは行政調査ではできません。したがって、いま検察のほうでこれらの捜査をいたしております。こういうことでございまして、全く私どもとしても面目次第もない。世間でもまことにあきれておられると思いますが、とにかくわかりません。しかし、わからないままではほっておかれないのでありまして、検察庁の手を通じて調べたい、こういうふうに思っております。しかも、中の者が知っておるに違いないと私は思います。しかし、どうしても言わない。どうしても言わないというと、科学的調査とかあるいは外からの調査とか、いろいろなことをこれから加味しておやりになると思いますが、このことはやはりどうしても究明しなければならぬというふうに考えております。
  193. 和田耕作

    和田(耕)委員 普通の会社でこういうことがあったならば、それでも問題ですけれども、天下の法務省の直轄の刑務所で起こったことで、これはたいへんな失態ですね。事件そのものよりも、わからないということが大きな失態かもわからない、そういうふうに私は思うのです。調べのしかたが悪いのじゃないですか。いままでの調べはどういうふうな方法でおやりになったのか。
  194. 小林武治

    小林国務大臣 これは実は刑務所内の問題だから、第一次的にはとにかく法務省の矯正局付の検事が行ってお調べになっておる、こういうことであります。この検事も相当な、老練と申してはなにかわかりませんが、相当な方であるのでありまして、この方が行って専門に数日にわたって調べたが、とにかく供述をする方がない。こういうことがいまの状態であります。いま申すように、この五月四日からは一つの刑事問題といたしまして、静岡の検察庁から検事が二名出て、これが専任でこのことを調べておられる。こういうことであるから、やがて何か判明せぬかということを期待いたしております。
  195. 和田耕作

    和田(耕)委員 特に私の驚くべき事件は、金嬉老がそれを持っておったというよりは、その事件があったというよりは、いま申し上げたとおり、こういう単純な事件が、しかも司法部内の直轄のところで半月もかかってわからないという、この事実のほうがもっと大きな問題だと私は考えるのです。  先ほど申し上げたように、私が満鉄におりましたときに、満鉄調査部事件という思想事件があった。奉天の監獄にしばらく滞在したのですけれども、そのときに私は、満州国の警察というのはほんとうにだめだな、いまにつぶれるなと思った最初のことはそのことなんです。ちょうど正月に、向こうのモヒの密売をしたのが入っておりまして、これが入ってくると、金をたくさん持っている。これは関係の手下がたくさんおるということで、看守を買収して、そして当時、ちょうど私と同じ房にモヒの密輸の業者がおったのですけれども、これがおったおかげで、私はその正月はたいへんいい正月をした。酒は入るし、ハチみつは入るし、パンは入るし、何でもかんでも入るのですね。そうしているうちに、私は発しんチフスにかかって死ぬか生きるかの思いをしたことがあるのですけれども、国の一番の綱紀粛正の問題は、ここがくずれたら、もうほんとうに申し上げようのないようなことになってしまう。その前に私は、企画院事件という事件がありまして、日本のそういうところにもやっかいになったことがあるのですけれども、日本のそういうところと比べて、満州の状態というのは非常にひどいなという感じを受けた。これは案外私は、最近景気も非常にいいし、いろんな世の中のことが刑務所の中にも入ってきたんだなという感じがしたんですけれども、それだけにこれは非常に重要な事件だ、こう受け取ってもらわなければならない。それは、出刃があったということよりも、原因がわからないということがもっと大きな事件だということをぜひともひとつお考えになって、刑事事件としてぜひともきびしく調べをして、一日も早く天下に明らかになるようにやってもらいたいと思うのですね。
  196. 小林武治

    小林国務大臣 いまの刑務所内の調べでは、たとえば所長も三人目になっておる。あるいは管理部長も保安課長もかわっておる、しかもやめた人が幾人もおる。このやめた人の調べということはちょっとできません。部内におる者は調べましたが。そういうことであって、これはわずかな期間の間に入ったものじゃない、あるいは相当長期にわたっている問題じゃないか。したがって、そういうことを知っている人もやめた中にもおりはせぬか。あるいは外部にもおりはせぬか。こういうことで、外を調べるためにはやっぱり刑事事件としてでなければ調べられない。そういうことでやっておりますから、おっしゃるとおり、その出刃ぼうちょうがあったことよりも、わからぬことのほうがもっと重大だということを私も十分な認識を持っております。その認識のもとにいまやっておる、こういうことでございます。
  197. 和田耕作

    和田(耕)委員 いま大臣もおっしゃるように、もしかばうという感じがあるとするなれば——それは当然、それがあるからわからないわけだと思うのです。もしそういうことになれば、これはばくち打ちの集団と同じなんですよね。かばうべきものをかばえばいいんですけれども、かばっちゃいけないものをかばっておるということ、これだけははっきり指摘できるわけなんですね。こういうことで刑務所、つまり国家権力の一つの重要な行使の場がこういうように乱れてくるということ、これは全くゆゆしい問題だと私は思うのですね。ひとつこれは大臣も現地に行って督励されて、そういうふうな妙なばくち打ちのような、身内をかばうような感じをなくして、そうして今後この取り調べを少し督励していただきたい、このように思うのですけれども、どうでしょうか。
  198. 小林武治

    小林国務大臣 よくわかりました。さよういたしたいと思います。
  199. 和田耕作

    和田(耕)委員 それでもう一つ、いまの東京拘置所の問題に関連しまして、私実は選挙区は東京四区の中野、杉並、渋谷なんですけれども、中野の刑務所も、もう久しく前から地元から移転の要望がありまして、そして移転先その他の問題についていろいろ苦心をしておる。私ども、いろいろ相談にも乗ったことがありますけれども、中野の刑務所の移転問題は現在どういう段階になっておりますか。
  200. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 中野の刑務所の移転問題につきましては、地元のほうから正式に要請を受けております。したがいまして、私のほうとしては中野区のみならず東京都とも移転先の候補地を早く見つけて、その上で具体化をいたしたいということで、私のほうの全国約二十三ばかりの刑務所について移転の要請がございますので、その計画の中に入れて検討をいたしております。
  201. 和田耕作

    和田(耕)委員 法務省のほうも移転はさせたいと思うし、地元ものいてもらいたいと思うけれども、なかなか移転先が見つからないということで、いまの東京拘置所の問題も中野の刑務所の問題も、全国都心のまん中にある他の刑務所については全部そういう問題があると思うのですね。そこで私はこの前の法務大臣に、それに関した陳情に行きましたときに、こういうことを申し上げた。この刑務所を東京近くの島に、まあ島流しというのはちょっとあれが悪いのですけれども、島をひとつ刑務所のようなものにして、そして日本の受刑者を収容するというような考えをなさらないのかということを申し上げたことがある。これは非常にいい考えだから一ぺん検討させましょうということを、前の前の大臣が言っておられたのですけれども、そういうことは考慮になったことはございますか。
  202. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 いわゆる島を一体として刑務所にするということについては検討いたしております。現在のところ世界各国でそういう形のものがあるかどうか。あるとすればどういうやり方をやっているかということを検討いたしておりますが、現段階で私が考えておりますのは、ある島を恒久的な刑務所ということにいたしますと、職員、家族の生活問題、教育問題等をどうしても解決をしてやらなくちゃならぬという、これは現実問題としての非常に解決の困難な問題が一つ伴うわけでございます。といたしますと、ある島のたとえば開発をやる。それを一年がかりでやる、二年がかりでやるというような場合に、そういう開発に従事をさせるという形で、それの適格者を全国から五百名とか百名とかいうものを送りまして、開発の事業が終わったならばまた次のそういうところをさがしていく。一種の移動キャンプ式な形。そういたしますと職員も随時交代をさせる、あるいは休暇に帰らせるということができるわけでございます。こういう形は現にフィリピンが非常に多くの島をかかえているようでございますので、いわゆる農業キャンプといったような形である程度実現をしているようでございますので、そういう形のほうが実現の可能性があるのではなかろうかということで、現在私としてはそういう構想で案を進めているような次第であります。
  203. 和田耕作

    和田(耕)委員 これはひとつ本気になって一度そういう島、日本にはたくさん島がありますから、検討していただきたいと思うのです。と申しますのは、人によっては島流しなんということはかなり非人道的だということを言う人もおるかもわかりませんけれども、そうじゃないんですよ。私こう申し上げるのは、ソ連に五年ほど抑留されておったことがありました。日本の政府のときには日本の政府で奉天の監獄にはめられたり、ソ連に行ったらいい待遇を受けるかと思ったら、逆に向こうの収容所にはめられて、五年ほどおったことがあるのですけれども、その五年間の生活で私感じたことは、向こうのそういう刑務所に似たキャンプの生活は日本の刑務所とは違って、たばこを吸っちゃいかぬとか、あるいは大きな声を出しちゃいかぬとか、あるいは部屋へ帰ったらちゃんとすわっておらなければいかぬ、横になっちゃいかぬとか、そういうことは一切ないんですね。そしてかなりそういう点では自由な生活を送らしておる。そして仕事はうんとさして、そしてそこでやっている。向こうではごく簡単な刑でも五年、十年の刑は平気で打つのです。そういう長期の刑にたえられるのは、そういうふうな刑務所の生活、片一方仕事をさせながら片一方は帰ってくれば慰安会もときどきはやる、たばこも吸う。酒はあれですけれども、女のほうも、ちょっと分けておりますけれども、女の人もおりますし、まあそういう問題があるかないかよく知りませんけれども、そういうふうな状態のもとで長期の刑を執行して、しかもわりあいにその結果がいいというような判断、わりあい伸び伸びしていますね。そういうことを感じたわけですけれども、日本もそういう問題を考えてみる必要があるんじゃないか。日本の刑務所あるいは拘置所の中は小さな部屋でじっとすわって、そして横になっちゃすぐおこられる、そしてときどき持ってきてもろうためしを食う、それから規則が非常にきびしい、こういうような状態より、特に青少年の拘置所あるいは刑務所は、そういうふうな適当な島を選んで、島の開発なりあるいは漁場の問題、魚をとるようなことでもしてやらしていくということのほうがはるかに人道的であるし、人間としての刑務所での受刑者の生活もできるようになる。確かに、おっしゃるように職員の問題はあります。ありますけれども、これは解決できない問題じゃないと思うのですね。いまの大都市の中の巣鴨の拘置所でも中野の刑務所でも、何とかして動かしたいと思っても行き場所がないというときでもあるのですから、ぜひともそういうふうな問題を検討していただきたいと思うのです。ひとつもう一ぺん……。
  204. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 御指摘のように、人間を狭い場所に閉じ込めておきますと、まず五年間以上になりますとその人間の自主性と申しますか、これがなくなるというように外国の学者等も報告をいたしているところでございます。したがいまして、ことに長期囚の場合については最初はやはり規律を教えると申しますか、この必要があろうと思いますが、後半と申しますか釈放まぎわにおきましては自主性を与えていくというためにも、いま言った島等を利用した釈放前のむしろ教育訓練、こういうことを私はぜひとも考えたいと思っております。
  205. 和田耕作

    和田(耕)委員 大臣もひとつその問題は、私いま簡単なことばで申し上げておるのですけれども、ぜひともそれを実現するようにひとつお考え願いたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  206. 小林武治

    小林国務大臣 承知いたしました。
  207. 和田耕作

    和田(耕)委員 中野の問題は、いまのところ見通しはつかないのですか。
  208. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 移転候補地についてまだ具体的なめどがつきかねておりますので、はっきりした見通しをいま立てることができないような状況でございます。
  209. 和田耕作

    和田(耕)委員 この移転のときにも、先ほどから東京拘置所で起こっているような問題が、同じように非常にいい場所ですからいろいろと起こってくると思いますけれども、ぜひともひとつ御注意をいただきたいと思うのです。  それでもう一つ私はぜひともこの機会にお聞きしておきたいことがあるのですけれども、これはこの数年来ときどき週刊誌なんかでも騒がれておりますが、人工授精の問題ですね。私がこの問題を一ぺん質問したいというと、おまえさん柄に合わぬからやめておけということをいわれておったのですけれども、これは今後の人道上の問題でもあるし、法体系の中でも、この問題をいまからもう考えておくべき時期だと私は思う。  人工授精の問題については、昭和二十三年ごろから慶応大学のある教授が中心になってこれを研究して実行を始めた。その後京都大学とか日本大学でもすでにそういうことを実施しておる。現在どれくらいの人がそういうことを実施されておるかということについてのお調べはございますか。
  210. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 わが国で人工授精がどの程度行なわれておりますか、そのことを公表した的確なものはないようでございます。と申しますのは、事柄が事柄でございますので、むしろこれは秘密にすべきであるというふうな考え方が支配的であろうかと思うのでございます。  御承知と思いますけれども、この人工授精が最初に行なわれましたのは、もうすでに百七十年も前にイギリスで行なわれたようでございます。そのイギリスで大体一万人ぐらいではあるまいか。アメリカが一番多いようでございます。これが十万人くらい。フランスで大体年間千人ないし数千人くらいではあるまいかという推測は立てられております。しかしいずれも的確な統計をとっているわけでもございませんし、またそれは困難であろうと思います。そういう状況になっております。わが国の場合にもその点の数字を明らかにしたものは現在のところ私は見ておりません。
  211. 和田耕作

    和田(耕)委員 私が調べたところによりますと、日本でも数千を下らないというふうにいわれれておるのです。しかも昭和二十三年ですからもう二十二歳か二十三歳くらいになって結婚適齢期にもなってきているということですね。そういう場合に、いまの民法でもその他の法律でも、こういうことを予想してつくってないことは事実なわけで、こういう人たちがそういう民法上の親権、親だとか子供だとかというような問題の事件が起こった場合にどういうふうにされるつもりなのか。そろそろ検討しておく必要があるのではないですか。
  212. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 この問題は各国ともそれぞれ検討はいたしておるようでございますけれども、これには宗教上の問題もからみますし、道徳的な問題もございます。また国民感情としてどうすべきかという問題もございますし、法律の面のみならず医学とか衛生学とか優生学とかそういった面に非常に深い関係があるわけでございます。したがいまして、各国ともいろいろな研究はいたしておりますが、いまだにこれを法律として成文化したところはないようでございます。わが国におきましても先年この問題が取り上げられましていろいろ論議されたことも承知いたしております。しかし何ぶんにも事柄が特異な性質のものでございますので、非常にむずかしい問題であろうかと考えております。  ただ、現行法でどうこれをさばくかということになりますと、御承知のように民法七百七十二条の嫡出性の推定の規定がございます。特段の事情がなければ人工授精を行ないましたその妻と夫がやはり親としてその子供を届け出しておると思います。その場合にはいろいろの条件はございますが、一応民法の規定によってその夫婦間の子であるという推定を受けているのではないかと思います。そういたしますと、もうすでに二十過ぎということになりますとその嫡出性を否定することは法律上できなくなっております。したがって、これはその夫婦が自分の子供としてそういう方法をとったということでございますので、そこにはもう親子関係が設定されておるというふうに見て現在は処理されておるだろう、このように考えます。
  213. 和田耕作

    和田(耕)委員 夫婦が合意の場合はいいのですけれども、たとえばおやじさんが承知してないという場合なんかはどうなりますか。
  214. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 夫が承知しておりませんでも民法七百七十二条の規定によって、あの要件を備えますならば夫婦間の子であるという推定を一応受けるわけでございます。したがいまして、その後その事実を知ってから一年以内に夫が嫡出否認の訴えを起こさない限りは、これをくつがえすことはできない、このようになるわけでございます。したがいまして夫の同意なき場合、いま申し上げるように嫡出関係をそのまま維持しておるということが多いのではないかと思いますけれども、夫がどうしてもそれは承知できないということでございますれば、訴えを起こしてその父と子の関係がないということを判決で確定することは可能でございます。
  215. 和田耕作

    和田(耕)委員 もう一つ、結婚して初めて子供が生まれる、法律ではそういうことになっているわけですけれども、未婚の娘さんがそういうことをした場合に、その子供ははたしてどういう立場になるかということですね。
  216. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 婚姻関係がございませんので、これは夫婦間の子である、いわゆる嫡出子であるというわけにはまいりません。したがいまして、一般の婚姻関係にない者同士で関係ができて子供が生まれた場合と同様でございまして、これは母の子ということにならざるを得ないと思います。
  217. 和田耕作

    和田(耕)委員 この問題については、いま二つ、三つの例についていろいろお答えがございましたけれども、これが数千あるいは数万ということになってまいりますと、そういうふうなことだけではなかなか処理できない問題がいろいろ出てくるように思うのです。したがって、こういうふうないろいろのケースを考えて、新たに法律的に処置をする問題を検討してみる必要がありませんか。
  218. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 先ほども申し上げましたように、各国におきましても、法律草案までつくっておるようなところもございますけれども、これがなかなか法律になるところまでは行っていないのが実情でございます。それにはそれなりにそれぞれの国情あるいは国民感情というものもございますために、一がいにはそうまいらないのではないかと思います。確かに仰せのように現在の民法は人工授精ということは全然予想もしておりませんでしたころにできたものでございますだけに、こういう問題が多くなってくるといたしますれば、それはそれなりに検討を要することだろうと思います。ただ先ほど申し上げましたように、これはただ法律論だけの問題ではございません。法律論と申しますのは、身分関係法としてつかまえるという問題にとどまりませんで、いろいろの面から検討を要する問題でありますだけに、たいへん困難な問題ではないかと思っております。
  219. 和田耕作

    和田(耕)委員 これはあるりっぱな法学者がいろいろ問題にしておる幾つかの論文があるのですけれども、いまの問題と関連して、たとえばおむこさんが死んだ、その精液を何かの方法で保存をして、その精液を使って奥さんが妊娠をしたというような場合が起こると、これはどうなりますか。
  220. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 夫がなくなりました後に、たとえ夫の精液でありましょうとも、それを使って人工授精を行なったという場合には、もうすでに婚姻解消後の受胎になります。したがいまして、これは夫婦間の子であるというわけにはまいらないと思います。ただしかし、先ほど申し上げました民法七百七十二条の推定を受け得るような場合もあろうかと思います。この場合にはやはり一応嫡出子の推定を受けるわけでありますが、それによって相続関係を害されるというものが出ますれば、その者からさらに嫡出否認の訴えもできるわけでございます。しかし先ほど申し上げましたように、これは婚姻関係というものが解消した後でございます。実質的にはそれは夫婦間の子であるというわけにはいかないであろう、このように考えます。
  221. 和田耕作

    和田(耕)委員 最近では堕胎というのが世界一多い日本だと思ったら、今度は人工授精がごくわずかなときにも数千、おそらくそれ以上かもしれません。そういうふうな形で出てきておるということもあって、こういう問題を、特に例外的な問題としては、いまおっしゃるような形で処理はできても、数千、数万という形になってきますと、いままでの法律だけではなかなか処理できないような問題が、あるいは処理できてもそれが正当であるかどうかということについてのいろいろな疑義も出てくるわけでございますから、この問題は数がどれぐらいあるかということとともに、ひとつこれも本気になって検討してみる時期じゃないかと思うのですけれども、あらためてそのことについてお尋ねいたします。
  222. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 実は民法の改正につきまして、法制審議会にもおはかりいたしまして研究をいたしております。この人工授精の問題を特に取り上げたわけではございませんが、民法全般にわたりましてただいま検討をいたしております。親族法、相続法の分野におきましても研究を続けておりましたけれども、最近の社会事情が非常に激変いたしております。これに対応して財産法関係のほうの改正を急ぐのではあるまいかというふうな観点から、ただいま財産法のほうに実は力を入れておる状況でございます。いずれ身分法関係の検討に入る時期が参ろうと思いますが、そういう際には当然この問題も取り上げられてしかるべき問題であろう、このように考えます。
  223. 和田耕作

    和田(耕)委員 まだいろいろと伺いたいことありますけれども、同僚委員の受田委員から補足的な質問があると思いますから、私の質問はこれで終わります。
  224. 受田新吉

    ○受田委員 和田委員に引き続いて質問させてもらいます。短時間に能率をあげます。  法務大臣、法務行政の最高責任者としてお伺いしたい点がございます。これは指摘するまでもないのですけれども、三権分立の国家機関の中で国民から最も信頼されているのは司法機関である。立法機関にはとかくのうわさが絶え間ない。私自身を含めてまことに申しわけない。行政機関、これまたしかり。ただ一つ司法機関は厳として司法権の独立と、そこに行なわれる裁判の神聖さ、またそこに勤務する裁判官のまことにりっぱな態度等が手伝いをして、司法権に対する信頼はささやかながら国民の救いであると私は思うのです。法務大臣の見解を承りたい。
  225. 小林武治

    小林国務大臣 まことに同感でございます。
  226. 受田新吉

    ○受田委員 同感でいらっしゃる大臣に、司法権そのものに対する尊厳を傷つけない意味で、その司法権をりっぱに守り育てる法務行政上の問題点を指摘して、御意見を承りたいと思います。  裁判官はその任用基準がきわめてきびしくて、その中からエリートとして選ばれる方々である。司法修習生という研修期間を経て、そこへ行く過程における、幾多の道程における他の職種と違う厳粛なものがあるのですけれども、その関門を越えて裁判官になった皆さんが——裁判官の忌避の問題をさっきから論議されておるから、重ねて私この問題には触れませんが、その裁判官が、思想は自由であり、また言論も自由であるという立場に立つ国家公務員であると同時に、一方においてはその最も貴重な司法権を担当している裁判官という意味から、李下に冠を正さず、瓜田にくつをうがたず、こういう意味の一方における高い責任を保ちながら、一方司法権の神聖さに対処する職務に遂行していただけるようにこいねがう気持ち、大臣同感であるかどうか。
  227. 小林武治

    小林国務大臣 私も国民の一人として同感でございます。
  228. 受田新吉

    ○受田委員 最高裁判所長官の任命手続で、法務大臣の果たされる役割りをお示し願いたい。
  229. 小林武治

    小林国務大臣 裁判官の任命でございましょうか。
  230. 受田新吉

    ○受田委員 最高裁判所長官
  231. 小林武治

    小林国務大臣 最高裁判所の長官は、私には果たせる役目がありません。
  232. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと法務大臣がその人事にタッチし得る限界、人事は最高裁判所が裁判官の人事を担当するのですけれども、法務大臣が裁判官の人事にタッチし得るとすれば、裁判官忌避以外には全然ないかどうか。
  233. 小林武治

    小林国務大臣 裁判官の任命についてはタッチし得る余地がありません。
  234. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、裁判官というのはまことに独特の権威を持ち、行政府の一切の干渉から排除される、こういう結論が出たようです。
  235. 小林武治

    小林国務大臣 その点はどうかというと、これは内閣で任命いたしますから法務大臣がタッチしない。しかしこれは内閣が任命するということだから、内閣が行政府かどうかこれはいろいろ問題がありましょうが、絶対にこれは行政府関係はないということは申せないと思います。内閣が任命するということになっております。
  236. 受田新吉

    ○受田委員 法務大臣は主管大臣として、最高裁判所長官以下最高裁判所裁判官の任命には、その内閣の閣僚の一人としてタッチしておられることになっていますね、事実問題として。
  237. 小林武治

    小林国務大臣 私は、法律問題を申し上げますればそれは内閣総理大臣が任命されるだろうから、あるいは御相談あるかもしれませんが、それは事実問題、陰の問題でありまして、法律上の問題ではありません。
  238. 受田新吉

    ○受田委員 法務大臣に相談なしに総理大臣が任命されるとするならば、法務大臣は、総理からも全然法務大臣の資格なきものとして除外されておられる方であると認めます。そういう法務大臣で小林先生はないと私は信ずるわけでございます。  そこで裁判官の忌避の問題はもう論議しません。けれども長沼ナイキ事件、この事件に、裁判官という立場でなくて、ほかの問題として、では私は質問いたしましょう。  民間の弁護団が国防計画等について、計画書等に対する証拠物件の提出を要求されておると聞きますが、法務省はまだ耳にしておられませんかどうか、お聞きいたします。
  239. 小林武治

    小林国務大臣 何か札幌の裁判所がいろいろの書類を委託提出とかいう形でおやりになっている、こういうことは聞いております。
  240. 受田新吉

    ○受田委員 証拠調べの必要上、国の国防計画を聞きたいという要望が弁護団から出されておると私も聞いておる。この国防計画というのは、防衛庁の機密事項に属するものもなきにしもあらずと思うのですけれども、こうした証拠調べ等で要求された書類に対しては、官庁といたしまして、法務省を含めて国務大臣として御答弁願いたいのですが、機密に関する事項は除外することができるようになっているのかどうか。
  241. 小林武治

    小林国務大臣 私は法律家でないからよくわかりませんが、聞いているところによれば、今回の問題は防衛庁に提出を委託するということになっておりますから、出すか出さぬかは防衛庁長官の判断によるものと思います。
  242. 受田新吉

    ○受田委員 国の機密に関するような事項に対して証拠調べとして要求があったような場合に拒否できるものかどうか。法務省は機密に関する事項を担当しておられる一部の職責があるのでございますが、この法務省の機密に関する事項というのは法務省だけの機密事項かどうか、高等部の問題等も含めて一般的なものを含むのかどうか。法務省設置法の中の所管事項にある機密に関する事項というのはどういうことか。これはほかの下僚の方でけっこうです。
  243. 香川保一

    ○香川説明員 ただいまの長沼事件の関係の文書送付委託、これは防衛庁に対してなされているわけでございますが、これは防衛庁が機密に属するということであれば提出を拒否することはできるわけでございます。法務省に対してそういう書類の提出委託がございましても、これは法務省自身の所管する書面でない、つまり法務省は持っていないものですから、これは見当違いということになるわけであります。
  244. 受田新吉

    ○受田委員 法務省が御所管として担当している機密に関する事項というのは、何ですか。
  245. 小林武治

    小林国務大臣 それは法務省に関するものと解します。
  246. 受田新吉

    ○受田委員 法務省独特の機密、こう了解してよろしゅうございますね。  そこで、裁判の厳正ということを私ども心から期待し、またこれが厳正でなければ国家統治の基本がくずれるわけでございますので、それを常に心から念じておる。その念じておることを疑わないでおって初めて日本の司法権の尊厳があるわけです。ところが、そこへ勤務する裁判官自身は、思想、言論の自由ということでいろいろ右的な人もおる、左的な人もおる。左の極端な人であると右の方々の批判をする、右の極端な人がおると今度は左の人の批判をするということで、裁判官自身が批判を受けるようになると、その裁判の神聖、司法権の独立にひびがくると私は思うのです。したがって、裁判官というものはできるだけ国民の多数の人から信頼され、そしてその行動においてもりっぱに国民の期待にこたえるようにありたい、こういう願いを私自身は持っているわけです。ところが、あなたは法務行政の責任者でありまして、そうした司法官の人事行政にはタッチしていないということで、ここで御説明をしていただくのは苦しいと思いますので御答弁は必要ではありませんけれども、法務行政の責任者として、そうした裁判の厳正と同時に、そうした国民から信頼される裁判官になるような、すべての裁判官がかくあってほしいという気持ちはあなたは十分お持ちだと思うのです。そういう観点で法務行政を今後進めていただきたいという希望を申し上げておきます。  最後に、もう時間がないので二つだけの問題にしほりますけれども、出入国管理問題に触れさせてもらいます。  いま韓国などから盛んに密入国がある。その密入国した人の事情を聞いてみると、なかなかもののあわれを感ずるような者がおる。涙なきを得ないような者がおる。肉親に会いたさに忍び来ているわけです。しかもそれはきびしい法の網の目をくぐってきておるわけです。厳密にいって、日本に肉親がおってそこへ来たいというときには、人道的な、政策的な見地からいうならば移民制限などすべきではなくして、ほんとうは来たい人にはどうぞお越しくださいというのが高度の人道政策ではないかと思うのです。われわれの国の人が他国へ移民しようとしても、移民制限があると非常に不愉快です。住みよいところに行きたいというときには、人権の尊重、人間の自由性からいったら、自由に住みたいところに住まわせてあげたらいいと思う。ただしかし、それが秩序が乱れると一方に偏するという事情がありますので大量ではちょっと困るということもありましょうが、密入国の中には涙なきを得ない肉親思慕のために来ておるような人もある。これらにあまりにきびしい措置をすることによって、一方で法のきびしさの中で人情を捨てるということにもなると思うのでございまするが、政策として、密入国などでなくて堂々と来れる道をどんどん開いて、わが国に人を受け入れるすき間がないほどもう人口稠密であるという時代がいままだ来ているわけではないのでありますから、勤勉で日本国民となってほんとうにりっぱな人物という一応の保証ができる人は、むしろわが国に歓迎して受け入れるべきじゃないかと思うのですが、国策の立場からこの問題の御答弁を願いたい。
  247. 小林武治

    小林国務大臣 いまの密入国の場合は、むろん一応密入国として法律による取り締まりをせざるを得ない。しかしこれを扱うにつきましても、やはりある程度特別在留とか特別の便宜をはかることもあります。必ずしも鬼のような扱いばかりしているわけじゃない、こういうこともひとつ御承知願っておきたいと思います。私どもはやはり正規の入国でなければ困る、正規の手続をしておいでをいただきたい。しかしこれについてはやはり出国のほうもむろんありますので、われわれだけの考えではうまくいかない、出入の両方がその手続はうまく円滑にいかなければならぬ、こういう事情がございます。
  248. 受田新吉

    ○受田委員 大臣、私がお尋ねしたのは、国策として、つまり密入国でなくて、十分そうした人物を選んでわが国が受け入れるという国策を生み出してもいいんじゃないかとお尋ねしているのです。
  249. 小林武治

    小林国務大臣 これはいろいろな関係がありまして、無制限というわけにもなかなかまいらぬと思いますが、やはりそういう気持ちはひとつ持ってやりたいと思います。
  250. 受田新吉

    ○受田委員 そのおことばは非常に貴重なおことばなんです。  そこで今度は逆に、帰りたい人がおる。朝鮮民主主義人民共和国、北鮮には一万五千人——一万七千人の人々が帰りたいと新潟その他で待機している。ところがコロンボ会議以後これが両国の赤十字でいろいろ話し合いをする機会も失われてきた。文書その他で道は開けておるようではございますが、帰りたい皆さんを帰すことができないというようなきびしい現実が現実に起きておる。これも人道問題としては来たい人をおおらかに受け入れると同時に、出たい人、祖国に帰りたい人に対しては、それがいま国交が開かれておらぬなどというような理由でこれを拒否するべきものでなくして、これこそ赤十字という両国に厳とした人道尊重機関があるのでございますから、政府がいろいろな注文をつけないで、赤十字同士でこの問題の処理をはからすという大国の襟度を示す必要があると私は思うのでございますが、北鮮すなわち朝鮮民主主義人民共和国へ帰りたいという気持ちを持った人々に対して、日本政府は赤十字同士というあっさりした態度をお持ちかどうか、これも法務大臣にお伺いをいたします。
  251. 小林武治

    小林国務大臣 法務省の立場といたしましては、帰りたい方はやはり人道的な立場でお帰り願うことはきわめて適当である、こういうように考えております。その考えは変わりません。したがっていまは赤十字同士の話にまかせてある、こういうことでございます。
  252. 受田新吉

    ○受田委員 完全に赤十字同士のお話にまかしていらっしゃるのですか。これだけはっきりしておけば、赤十字同士の自主的な結論に持っていくということがはっきりしておるなら、私はもう何をか言わんやです。
  253. 小林武治

    小林国務大臣 いままたあらためてお聞きになったから、私は入管局長に聞いたが、まかしてあるそうでございます。
  254. 受田新吉

    ○受田委員 完全に政府はこれをおまかせして干渉をしない、注文はつけないという形に現になっているのか。そうすれば赤十字同士が話をすればいいという形になっているのかどうか。赤十字は政府の何かの了承をとる必要はないとはっきり宣言をしていただけるかとうか。ひとつ入管局長でけっこうですが大臣にかわって答弁を願います。
  255. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 帰還業務自体につきましては、細部の技術的な問題遂行に関しましては赤十字に全部一任してございます。ただ、国の主権行為に属するような問題点に関しましては、一つのたてまえがございますので、これは一つのワク内で政府の基本方針を日赤のほうに示して、そのワク内においては先方と自由に交渉して実施する、こういうことになっております。
  256. 受田新吉

    ○受田委員 これはつまびらかに質問する時間もないのだが、そのワク内ということばにちょっとひっかかるところがあるのです。帰りたい人が待機している。それが帰れないという現実は、これはたいへんわれわれとしては遺憾です。これはただ政治的問題じゃない。純粋な人道問題で処理すべき問題であって、この背後に政治的な意図が入っておるということは非常に不純である。不純性を一切なくして純粋に赤十字同士で処理していくという形をとるべきだ。私も昭和四十一年にモンゴルに行ってきました。純粋な赤十字同士の御尽力で出かけることができたわけです。実に気持ちのよい墓参の旅をさせていただいたのですが、すなおに帰りたいという人の気持ちをかなえさせたらいいと思います。これは思想とか何かを乗り越えた完全な人道問題で処理していただくということをぜひお願いしたい。そのために何か制約があるということであれば、独立国家としての政治上の制約があるということになると、人道を先頭にして、そういう事情のほうは捨てるという雅量を政府が示していただきたい、これを要求しておきます。何か答弁があれば一つ……。
  257. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 ただいまおっしゃられたとおり、本件は人道的ケースとして、私たち政府、日赤一体となって、従来もそして現在もまた今後ともできるだけこれは実現するように努力しておるわけでございます。ただいま若干の制約があると申し上げましたのは、現在とまっておりますのは、帰還未了者一万五千人をわれわれのほうはむしろカルカッタ協定に準じて直ちに帰そうではないかという方針で行っているわけでございますが、先方がそれをそのままのまないで、それだけの人が帰ったあとに、また今後非常に長い期間たくさん帰る人があるかもしれない。そういう人に対してどうするのだという問題、それにわれわれは先方の要求をほとんど受け入れた。ただ集団的に帰還するという事業はずっと長い間続けてまいりまして、帰りたいという意思を表明された方、現在一万五千人表明しておられる方をお帰しすれば、あとはほとんどなくなってくる。しかし今後あることは間違いないと思いますが、そういう人は自由にお帰りいただくという方針をとっているわけでございます。現在も帰っておられる方があるわけです。したがいまして、日本政府として、帰りたいという人を阻止したことは一度もございませんし、そういう意図も考えたことも毛頭ございません。あくまでこれを実施するという人道的見地から遂行しておる次第でございますので、その点特にはっきり申し上げておきたいと思います。
  258. 受田新吉

    ○受田委員 帰りたい人は荷物をちゃんと用意して待機している。にもかかわらず帰れないという現実、船が迎えに来てくれない。きびしい条件などをつけないで船が迎えに来ればいい。私は韓国から日本へ密入国するなどということをやめて、常々と受け入れなさい。同時に北鮮に帰りたい人はどんどんと帰してあげましょう。両方とも人道問題でしょう。この人道問題の中に、韓国と北鮮との関係の政治的問題を政府考えておることはありませんか。人道問題として純粋に考えれば、韓国のほうに北鮮に帰すことを気がねしている必要はないので、どうぞ入国を自由にしていくという日本の人道的幅を広げていただく。北鮮に帰りたい人にはとうぞお帰りなさいといって——いま阻止したことはないとおっしゃるけれども、現に船が来ぬ。港に待機しても来ない。これはきびしい現実ですよ。はっきりしている現実です。それを幅を持って、悲劇の南北朝鮮の二つの国の立場に政治的な配慮があると、入るほうについても出るほうについても問題が起こる。これは国務大臣として十分ひとつ検討していかれて、法秩序の責任者としても、韓国から入りたい人はどんどん入れていけばいい。北鮮に帰りたい人は帰す。みな人道主義で解決できる問題だと私は思いますので、あえてこの機会に閣内において十分、そうした南北朝鮮の政治的立場を配慮しているところがあるとするならば、人道と政治を混同するものだと思いますが、その点はないという発言ができるかどうか、この点一つ明確な答弁をお願いしてこの問題は終わりにします。
  259. 小林武治

    小林国務大臣 いまのすでに帰りたい、こういう方々が帰ることについてはいま入管局長がお答えしたように、何らの支障がない。またそれはぜひ実現させたい、こういうふうに考えております。いずれにいたしましても、いまの受田委員お話は私もそういう方向にひとつ考えていきたい、かように考えております。
  260. 受田新吉

    ○受田委員 法務大臣、非常にまじめです、ごりっぱです。あなたはすっきりしておられるし、愛情のある国務大臣であります。  私これで質問を終わりますが、最後に、法務省には人権擁護局があるし、矯正局もある。人権を大事にする役所でありますが、人権に反するようなことばが法務省で使われている。たとえば監獄ということばは人権に反する用語で、用語として適切でないと何回かここで私は指摘しました。獄へ監禁する、地獄へ落とす、入獄、出獄、こういう用語がある。また逮捕ということばを使っている。大臣であろうと幹事長であろうと総理大臣であろうと、逮捕されるということばが自由に使われておる。これは自民党の政府の皆さまにも過去においてしばしば起こったことだし、また野党の世界にもそういう問題がしばしば起こってきた。けだものをつかまえる、イノシシをつかまえる「捕える」と、人間をつかまえる「捕える」と同じようになっている。これは用語として適当かどうかということです。監獄、獄に監禁する、地獄へ落とすということ、これは刑務所とすっきり全部統一すればいい。拘置所という用語も適切な用語であります。ある程度不正を行なった者に対して公の秩序を維持するためにその身柄を拘束するということはやむを得ませんけれども、用語の適切を欠いておるということは、人権擁護を叫ぶ法務省としては適当でないと思うが、いかがでしょうか。
  261. 小林武治

    小林国務大臣 私は実は監獄法などというものはもうない、こういうふうに考えておったが、これがあることを知りまして驚嘆いたしたのでございます。先般この委員会でも横路委員からお話がありまして、監獄法は全面的に改正することにして次の国会に提案をし、皆さんの御審議をいただきたい、かようにこの席で明言をいたしておるのでありまして、お話しのようなことは全部改めなければならぬ、かように考えております。
  262. 受田新吉

    ○受田委員 監獄だけでなく、ほかのことも私は例をあげた。
  263. 小林武治

    小林国務大臣 そのほかのことも同様でありまして、監獄法の改正の際に、これらの用語等についてもできるだけいまの時勢に合うように直したい、かように考えております。
  264. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、すべて用語は人権擁護の立場に切りかえる、語句を全部直す、こういうことは、次のというのは時期はいつですか。目標はどこに置いているのですか。
  265. 小林武治

    小林国務大臣 ことしの暮れの国会に出したい、こういうふうに考えております。
  266. 受田新吉

    ○受田委員 その出し方は、たとえば逮捕などということばはどういう形でお出しになるのですか。どういう形に直すのですか。
  267. 小林武治

    小林国務大臣 これらの用語の問題は、皆さんのお考えもお聞きしていろいろ考えていきたいと思いますが、とにかく全体について非常に時勢おくれ、明治四十一年に成立した法律であります。これは非常に時勢に合わない。したがって、それらの用語等も含めて全面的に改正をいたしたい、こういうふうに考えております。
  268. 受田新吉

    ○受田委員 用語でもう一つ言わなければいかぬのですが、裁判官の報酬ということば、裁判官だけに給料に当たるところを報酬とやっている。これはまことに独特の名称であるが、裁判官に報いるためのことばを憲法とかそういうものを抜きにした立場からも私は検討すべきだと思うのです。これも用語として改正するのかどうか、ひとつ……。
  269. 小林武治

    小林国務大臣 正直に申してそのことはまだ私の頭になかったのでありますけれども、御注意をいただきましたから、検討をいたします。
  270. 影山勇

    ○影山政府委員 御承知のように、裁判官につきましては報酬ということばが憲法に用いられておりまして、憲法上の用語となっておりますので、たとえば裁判官報酬法というように法律にもこれを踏襲しているということでございます。
  271. 受田新吉

    ○受田委員 それは憲法に書いてあるからこれを用いなければならぬ……。憲法の精神をくんで用語を変えていいはずですよ。これはどうですか。給料に当たるところが報酬となっている。その精神をくんで改正できるはずじゃないですか。それは可能かどうかです。
  272. 影山勇

    ○影山政府委員 まあ精神をいいますと仰せのとおりになるかと思われますけれども、特に裁判官は他の公務員と御承知のような地位の違いもありますし、特に憲法にそういう用語を使っております関係もございまして、いま直ちにこれを他の名称に変えるという点は相当検討を要するのではないかと思います。
  273. 受田新吉

    ○受田委員 それじゃ大臣、あなたも誠実な答弁、事務当局も一応いい。法務省は法秩序を確立する役所ですから、きちっとした態度で国民に師表たる行動をしていただきたい。御苦労じゃがよろしく。
  274. 小林武治

    小林国務大臣 よくわかりました。
  275. 天野公義

  276. 東中光雄

    東中委員 昨日、いわゆる長沼ナイキ事件の福島裁判官に対する忌避却下の決定がありましたが、法務省としてはこれに対して即時抗告をするおつもりなのかどうか、まず最初にそれをお伺いしたい。
  277. 小林武治

    小林国務大臣 こういう問題はいずれの席においても慎重に扱えということでありまして、私どもいま却下の決定の理由を検討いたしておりますので、慎重に考えていきたい。したがって、いま結論を持っておりません。
  278. 東中光雄

    東中委員 国が忌避申し立てをやるというのは、裁判官の独立に対する行政権の不当な介入になる、あるいは本件の福島裁判官に対する忌避が裁判に対する不当な介入になるのではないか。非常に重大な問題を含んでおると思いますので、若干お聞きしたいのですが、わが国の裁判制度始まって以来、国側が裁判官忌避を申し立てたことが前例としてあるかどうか、まず第一点としてお聞きしたい。
  279. 小林武治

    小林国務大臣 そういう事例はないそうであります。しかし、これは何か行政が介入したというような誤解をされておりますが、国家も訴訟では単なる一当事者にすぎません。したがって、当事者として訴訟上許されている合理的手段、手続をとるということは、別段介入とかなんとかいうさような問題では絶対にない、かように私は考えております。
  280. 東中光雄

    東中委員 その点についてはあとでお伺いしますが、わが国の裁判の例では国側が忌避した前例はない。外国で国が国の司法機関である裁判官の忌避をやったというような例がいままであったかどうか、法務省としては知っておられるかどうか、この点いかがでございましょう。
  281. 香川保一

    ○香川説明員 その点十分調査いたしませんので、的確なことは申し上げかねますが、ものの本によりますと、そうではないかという例がドイツとフランスに一、二あるようにも思えるのであります。この点正確に調査いたしておりませんので、ここではっきりしたことは申し上げかねるわけでございます。
  282. 東中光雄

    東中委員 外国の例も、日本のような法構造で裁判官忌避をやったことは、私も寡聞にして知らない。法務省もおそらくいま言われたように御存じないと思うのですが、いわば古今東西を通じてこういうことがあったという前例がないといっても過言でないようなケースなんですが、この国側の忌避申し立てをすべきことを決定されたのはどの国家機関で決定されたのかをお伺いいたしたいと思います。
  283. 小林武治

    小林国務大臣 何か法律規定によって、国が相手の当事者である場合には法務大臣が訴訟指揮をする、こういうことになっておるそうでありまして、その決定は私がいたしたのであります。
  284. 東中光雄

    東中委員 いわゆる長沼ナイキ基地訴訟事件の当事者というのは国なのか、国ではなくて農林大臣という行政庁なのか、どっちですか。
  285. 小林武治

    小林国務大臣 これはまあ農林大臣の名前で訴訟が出されている、こういうことでございます。
  286. 東中光雄

    東中委員 農林大臣の名前で訴訟が出されているんではなくて、地元の人ですね、結局国民の側からこの長沼町の国有保安林指定解除の告示という行政処分をやった農林大臣、すなわち行政庁を相手に起こしておる裁判です。だからこの裁判の当事者は農林大臣と原告である国民である、当事者はこういうことになると思うのですが、その点はいかがでありましょうか。
  287. 香川保一

    ○香川説明員 そのとおりでございます。
  288. 東中光雄

    東中委員 忌避申し立てをやる申し立て権者というのは訴訟当事者だけですね。その点はいかがですか。
  289. 香川保一

    ○香川説明員 申し立て人はもちろん本件の場合、行政庁たる農林大臣でございます。ただ、これは従来判例の解釈といたしましても、代理人に対する特別の授権行為は要しない。したがって、代理人が当事者の意思に反しない、あるいは積極的に了解を得て忌避の申し立てをすることは可能でありますし、本件の場合には行政庁、農林大臣が被告の訴訟でございますので、法務大臣は訴訟遂行について指揮権を持っておるということになるわけでございます。
  290. 東中光雄

    東中委員 国が訴訟当事者になっておる事件の件数、それから行政官庁が当事者になっておる事件の件数、言いかえれば法務省から指定代理人を出している事件数は現在どれくらいございますか。
  291. 香川保一

    ○香川説明員 訴訟事件は約六千件、正確には五千九百三十件ばかりだと思いますが、これは民事事件、つまり国家賠償とかあるいは国の債権の取り立てとかあるいは所有権の確認というふうな、いわゆる民事事件と称するもの、これはもっぱら国そのものが当事者になっております。この場合には、したがって法務省の職員が指定代理人になる。と同時に、また関係の行政庁がそれぞれございますので、その行政庁の職員を指定代理人にすることもできるわけでございます。  それから行政事件。これは行政庁の処分の取り消しとかいうふうな関係の事件でございます。これはやはり行政庁を被告にする事件でございますが、法務省の職員が代理人になることもできますし、行政庁の職員も代理人になれる。  それから税務事件、これが約二千七百件ばかりございます。これも先ほど申しましたと同じような関係でございます。
  292. 東中光雄

    東中委員 行政官庁が当事者になっておる事件で法務大臣が指揮権をいままで発動した例がありますか。訴訟一般についてです、
  293. 香川保一

    ○香川説明員 法務大臣を補佐する訟務部におきまして、それぞれ訴訟の遂行についていろいろ意見を述べ、あるいは遂行を実際やっておるわけでございます。
  294. 東中光雄

    東中委員 私の聞いているのはそういうことではなくて、本件の忌避申し立てをやるべきことを決定したのは法務大臣だとおっしゃった、だから法務大臣が指揮権を発動したんだ、こうおっしゃっているわけです。先ほど言われたのはそうではないのですか。
  295. 香川保一

    ○香川説明員 法務大臣が了解されたという意味でございます。
  296. 東中光雄

    東中委員 同僚横路委員がお聞きしたときには、はっきりいうと法務大臣が独断専行した、法務大臣が指揮権発動を決定したというふうに答えられたのじゃないですか。いまは何か了承を与えたとか何か妙なことをおっしゃったわけですけれども、趣旨を変えられるわけですか。
  297. 小林武治

    小林国務大臣 私はむずかしい法律のことばは知りませんが、私にこれでよろしいか、こういうことを言われたから、よろしい、こう言ったのは、やはり私の考えを最後に示した、こういうことでございます。
  298. 東中光雄

    東中委員 最終決定は、本件忌避の指揮権発動については、法務大臣がじきじきによろしいと言う。要するにそのことによって法務大臣の意思としてやられておる、こういうことなんだ。現に係属ているだけで六千件もあるそういう国もしくは国の機関としての行政庁が当事者になっておる事件で、訟務検事がいろいろ相談しながら指定代理人として行動する、これはあたりまえのことなので、法務大臣がそういう指揮権を発動した例はいままであったかどうか、このことをお聞きしているわけです。
  299. 香川保一

    ○香川説明員 具体的な事件について積極的に法務大臣からこうしろああしろという指示を受けたことはございません。今回の場合も積極的にさような指示があったわけではないのであります。一般的に私どもが大臣に御了解を得ておくというふうに考えるものは御了解を得るというだけの手続をとったわけでございます。
  300. 東中光雄

    東中委員 法務大臣に訴訟遂行についてこうしたい、よろしいとわざわざそういう最終的な結論を仰いで、訴訟活動を指定代理人である検事なり、あるいは主務官庁の職員が指定代理人になっている場合あるいは行政官庁に対して、そういう形で指揮をしたことがいままで例があったかなかったかということをお聞きしているわけです。積極的にとか消極的にとかいうことを聞いているわけじゃない。事柄の性質は、法務大臣に指揮権があるわけでしょう。法律規定からいえばそうなっている。その法務大臣としての指揮権を法務大臣の意思でやったことが本件以外にあったかなかったかということをお聞きしているわけです。消極的とか積極的とかそんな指揮はないですから。その点はどうですか。
  301. 香川保一

    ○香川説明員 すべての訟務事件の責任者は法務大臣でございますので、私どもは法務大臣の意を体してやっておるわけでございます。ただ、事柄の軽重によりまして大臣の了解を得ておくというものとそうでないものとがあるのは当然のことだと思います。これは一般的に大臣が訓令で訟務部長にその関係の権限を委任していただいているわけであります。それに基づいてやっているわけでございます。
  302. 東中光雄

    東中委員 だから事柄の軽重に従って扱いが違う。本件の場合はわざわざ大臣の了解を得ている。だから非常に重要なものとしてやった。従来そういう例があるか、こうお聞きしているんですから、従来ないならないと答えてください。
  303. 香川保一

    ○香川説明員 私の記憶では小林現大臣のときにはその例はございません。ただ前には上告するかどうかというふうな点について大臣の了解を得たというケースは幾つかございます。
  304. 東中光雄

    東中委員 上告するかいなかという問題については、まさに訴訟行為——指定代理人としての、あるいは行政官庁としての行為について判断をするわけですけれども、忌避申し立てを、行政権力を持っている法務大臣の名で指揮権が発動されるということになると、これは訴訟当事者の意思じゃなくて、訴訟当事者は大臣の了承を得た、法律規定でいえば、法務大臣の指揮によって農林省は忌避をした、こういうことになるわけですね、今後のケースでいえば。そうではないですか。
  305. 香川保一

    ○香川説明員 法務大臣の指揮によって農林大臣が忌避の申し立てをしたということには相ならぬと思います。それは先ほど来申し上げていますように、積極的にと申し上げたのは、法務大臣がこうしろというふうにいわれて、それを受けて私どもが忌避の申し立てをしたということではない。こちらは普通の訴訟手続といたしまして忌避を申し立てするのが相当だと考えて、その手続をとる以前にこういうふうにいたしますと、いわば報告と申しますか、それに対して、それでよかろうという了解を得た、かような趣旨でございます。
  306. 東中光雄

    東中委員 いま私どもとおっしゃったんですが、私どもといわれるのは法務省の立場なんで、訴訟当事者は——法務省は訴訟当事者ではないわけでしょう。法務省は代理人でもないです。法務大臣は指定代理人を任命できるだけで、だから指定代理人は、いまの場合は主務官庁である、訴訟当事者である農林省ですね。農林大臣の訴訟行為に代理人として行動を起こすわけで、忌避を起こしたのは代理人としての忌避ではなくて、行政官庁である農林大臣が忌避をした、こういう行動になっているんじゃないですか。
  307. 香川保一

    ○香川説明員 この事件の被告は農林大臣でございますが、法務省の職員も指定代理人になっておりまして、先ほど申しました忌避の申し立てができるのは当事者だということは、代理人が独自に代理人の固有の立場でできるものではないと申し上げたわけでございまして、農林大臣の指定代理人として法務省の検事なり農林省の指定代理人になっている者が共同して忌避の申し立てをした、かような筋合いでございます。
  308. 東中光雄

    東中委員 法務大臣の意思が訴訟当事者である行政官庁に貫徹していくのは、訴訟当事者である行政官庁が「法務大臣の指揮を受けるものとする」という規定法律にあるからだ。だからその法律規定に従って、指揮権に基づいて指揮を受けるものとしての行政官庁が、法務大臣のその決定に従って、いわゆる独断専行に従って、当事者としての農林大臣は行動した、こういう行動になることは明白だと思うのですが、違うとおっしゃるのですか。
  309. 香川保一

    ○香川説明員 この権限法に法務大臣が指揮できるというふうになっておりますのは、これはこういうふうにしろという命令をするわけでございまして、こういう形で本件の忌避申し立てが行なわれたということではないのでございます。農林大臣の指定代理として、農林大臣の意思に反しない限り、指定代理人は忌避の申し立てができるわけでございます。それは指揮を仰ぐという意味ではなくて、報告に対して了解を得たというだけのことなんでございます。だから権限法でいう指揮ではございません。法律的に申し上げれば権限法による指揮権を発動したということには相ならぬと思います。
  310. 東中光雄

    東中委員 そうすると、法務大臣が忌避をしたことになるんですか。法務大臣は事件の当事者ではないわけですから、法務大臣は忌避をしたんじゃないでしょう。そこはどうなんですか。
  311. 香川保一

    ○香川説明員 法務大臣が忌避の申し立てをしたわけじゃもちろんございません。先ほど申しました抗告、上訴というのは、内部的な事務の取り扱いとしてやっただけのことでございます。
  312. 東中光雄

    東中委員 民事訴訟にしろ刑事訴訟にしろそうですが、当事者は忌避権を持っている。しかし裁判官は御承知のように、これは憲法の基本的な原則として独立をしている。良心に従い、憲法と法律にのみ従う。行政官庁からの介入や、要するに行政権力からの介入、支配は一切受けないというのは、これは憲法上の大原則ですから、忌避ができるというのは、それは当事者として——その当事者は裁判長の訴訟指揮に従うその範囲内における当事者だから、裁判を公平に受ける、そういう立場から忌避申し立てばできる。当事者でない法務大臣が、独断専行したといわれるその法務大臣がよろしいということでやったわけで、法務大臣がよろしくないと言われたらやりはせぬわけですから、法務大臣によろしいかということを聞いたのは、それは法務大臣の補佐である皆さんが聞いている。法務省として法務大臣の意思決定を皆さんが形成していく上で、最終的にわざわざ法務大臣の意見を聞いて、それできまった。これは行政機関としての意見です。当事者の意見ではない。そうすれば、当事者の忌避権をもって当事者でない法務大臣、行政権力を持っている者が裁判官の不信任を問う忌避申し立てをやった、そういう指揮権を発動した、こういうことになっているわけですけれども、法務大臣は当事者でないことは明らかだという点についてどうお考えになっているか。
  313. 小林武治

    小林国務大臣 これは独断専行ということばが悪ければ直しますが、私は知らぬなんということはやはり責任者として言うべきでないんで、お話しのように、私がよろしいと言わなければ忌避はしなかったでしょう。したがって、私が責任あることでありますが、それが法律による指揮かどうか私は知りませんが、とにかく指定代理人というものの名前でこの忌避の申請はいたしておる。それをするについて、私の補助者が私の了解を得て、私がよろしいと言わなければやらなかったでしょう。そういうことを私は独断専行ということばで言っておりますが、独断専行ということを私が特に言うたのは、このことは別に総理大臣にも官房長官にも相談したわけでなくて、最後のよろしいというのは私が言うたんだ、こういう意味のことばだから、さようにひとつ御了解願います。
  314. 東中光雄

    東中委員 私の申し上げたいのは、要するに、訴訟当事者として、国も訴訟当事者であるから、だから忌避の権限がある、忌避をすることができるんだということを非常に強調されていますけれども、指定代理人を任命するのは、これは法務大臣です。しかし任命された指定代理人は、指定代理人として法廷内における行動をする権限を持っているわけです。その行為に対して今度は外部から——任命権者であるところから、この場合わざわざ指揮権が発動され——上訴の場合だったら訴訟の進行についてだからそれは問題にならぬですけれども、事は裁判官の不信任を問うという問題になっている。しかも裁判官の不信任を問うという問題になれば、裁判官の独立と行政権との関係からいえば非常に重要な問題が起こってくる。だからいままでも国側が忌避するというようなことはなかったし、各国の例を見たってそういうものはないわけなんです。そういう点で、今度のは法務大臣の当事者としての行為でなくて、法務大臣という行政機関の意思決定で当事者に忌避申し立てをする指揮命令を出したということになってくるわけですね。そういう点でこれは重大な介入になってくる、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  315. 小林武治

    小林国務大臣 これは忌避の申し立てをしたのは指定代理人がしておるのです。指定代理人がするについて、事が重要だし私の任命した指定代理人が当事者になっておる。したがって、これだけの問題になれば大きな問題ですから、指定代理人だけでは思案がつかなかった、そうして私の意向を聞いた、こういうことでございますから、やかましくいって指揮かどうか、これは別といたしまして、要するにこれは内部問題として、問題が重要なだけに大臣に聞いてやろう、こういうことでございますから、私はあまり、あんなたんかを切らないほうがよかったかもしれません。しかし、私が知らぬなんということはとんでもないことでありますからして、私の了解を得てやった、こういう事実問題を私は言うておるのであります。
  316. 東中光雄

    東中委員 事実問題はそういう経過だろうと思うのですけれども、裁判の独立という問題から考えた場合には、これは非常に重大な問題ですから、日本の裁判史上の例のないことなんだし、同時に世界でもそういうことが例のないことなんで、それだけに私は事柄の性質をはっきりさせておかなければいけない。これは、指揮権ということばがどうなっておるか知らぬけれどもとおっしゃったけれども、これは法務大臣の補助者に法務大臣がよろしいという、それは事実行為としては非常に簡単かもしれませんけれども、法務大臣の補助者が法務大臣のいわば決裁を仰いできておるわけですから、補助者がいろいろきめることは法務大臣がきめておることになるわけなんでしょう。そういう点でいえば、法務大臣という行政機関、これは相当大きな行政機関としての権力を持っておるわけですから、それがオルガントレーガーとしての裁判官個人に対する不信任が出されるということになると、これは実際上大きな圧力になるということは事実だと思うのですよね。心理的な圧力にもなるし。それで屈服するとかどうかということでなくて、圧力になることは間違いないですよ。そういう場合に、行政機関として、当事者でない法務大臣が当事者に指揮をした、これは指揮権発動だ、指揮だということは、もうはっきり条文に規定があるんだから、そうでなかったらこれはできないことですから。  それからもう一つは、本件の場合は農林大臣、行政官庁に対して指揮権を持っておるわけですね。その指揮に従って当事者である農林大臣が忌避をすることになったのではないとおっしゃるのですか。農林大臣は反対の意思がなかったから指定代理人がともかくかってにやったのだ——かってにやるというか、とにかくやってしまったんだ、こういうことだとおっしゃるのですか。そこの点はどっちなんですか。
  317. 香川保一

    ○香川説明員 厳格な意味では指揮ではないことは先ほど申し上げたとおりでありまして、農林大臣には農林省の指定代理人のほうから、私どもが法務大臣に了解を得ておると同じように農林大臣の了解を得てございます。
  318. 小林武治

    小林国務大臣 私が申し上げておるのは、皆さんがこれほど問題にするような大きな事項であります。したがって、普通これは指定代理人がやったことでありますなんということは私としては無責任だ、こういうふうに思うのです。それだから事実ありのままに私は申し上げておるのでありまして、それがむずかしい法律上どうなるかということは別にいたしまして、当事者が、私の任命した指定代理人が、これを申し立ていたします、よろしゅうございますか——こういうことは私は実は黙っておってもいいのです、内部問題だから。今度の申し立てそのものは私の名前で出ておるわけではない、指定代理人の名前で出ておる。私の名前は何も表面に出ておりません。ただこれは私は何も存じませんというのは、いかにも白々しい。事実を私はただ率直に申し上げておるだけであります。したがってもしそれが責任がありとすれば私の責任である、こういうことであります。
  319. 東中光雄

    東中委員 いずれにしましても、これは見解の違いがあると思うのですけれども、小林さん個人じゃなくて、日本国の法務大臣の忌避をやってよろしいという決定——それは決定であるわけですね。それに従って訴訟当事者が動いた。しかもそれが行政官庁である。こういう点で、これは今後ここにも非常に大きな問題点があるということが、日本の司法の独立を守っていくという点で、私はここでいろいろ問題が論議されることだろうと思うのですけれども、そういう点で当事者でない行政官庁が、ほかの訴訟進行についての指揮をするということはできても、少なくとも裁判官の独立が基本原則になっておる憲法のたてまえからいうと、忌避申し立て権というのは、こういう場合、その指揮権の範囲外になってしまう。それでなければ憲法上重要な問題が起こってくるのではないか、こう考えるので、その点を明らかにしておきたいのです。  それでそういう法務大臣がわざわざ決定をするということをしなければいかぬような、普通の訴訟進行ではそうはしませんから、それについては理由がきわめて明白でなければいかぬと思うのですが、すでに札幌地裁は理由なしということで却下をしておるという状態が起こっておるわけですけれども、この理由は結局——時間がございませんので、これも簡単に言っていただきたいと思うのですが、一体どういうところに置かれたかということです。
  320. 香川保一

    ○香川説明員 御承知の青法協が安保廃棄、自衛隊反対というふうな活動をやっており、その一環として長沼の原告側の支援活動をやっておる。その青法協の会員である福島裁判官が、長沼事件そのものの裁判に裁判長として関与するのは適当でないのじゃないか、かような趣旨が理由でございます。
  321. 東中光雄

    東中委員 そういう事実を法務大臣、といってもこれは補助者ですけれども、法務大臣のほうで知られたのは一体いつなのかということ、その点はどうでしょう。
  322. 香川保一

    ○香川説明員 福島裁判官が青法協の会員であるということは以前知っておりましたが、青法協自身がいま申しましたような活動をやっておるということを知りましたのは四月以降でございます。
  323. 東中光雄

    東中委員 昨年の九月二十一日に毎日新聞で森山欽司代議士が、いま法務省が出したあの忌避申し立ての理由の中でいっておるよろな、青法協及び福島裁判官に対する評価とほとんど同じことを書いております。さらに飯守重任鹿児島地裁の所長が国民協会の機関紙へ、やはり昨年の十月一日付に全く同じ趣旨のことを書いてある。いずれも平賀書簡問題が起こって非常に重要な問題になったころです。こういう問題について、法務省は、ことしの四月になってからしかわからなかった。しかもその四月になってわかったことが、昨年の九月、十月段階で大きな世論を起こしておる。しかも法務省に関係のある問題について、すでに新聞や自由民主党の外郭団体である国民協会の機関紙に載っておる。これを全然知らなかった、こうおっしゃるのですか。
  324. 香川保一

    ○香川説明員 森山議員その他の方のお書きになったもの、あるいは新聞報道、それだけで私どもは忌避の申し立てをするわけにはまいりません。みずからの手でやはり間違いないという確信を持たなければ忌避の申し立てはできないわけでございまして、ただそういった報道なり記事があるというふうなことだけで直ちに忌避の申し立てをするというふうなことは、まことに慎重を欠くことでございまして、私どもはみずから入手して判断した、その時点が四月以降だ、かように申し上げているわけでございます。
  325. 東中光雄

    東中委員 そういう結論が出る資料を集め始めたのはいつからですか、
  326. 香川保一

    ○香川説明員 それは積極的に集めるような意図はもちろん持っておりませんで、たまたま入手したというふうに申し上げております。
  327. 東中光雄

    東中委員 特定個人が当事者である場合は、たまたまだれかに会ったときに聞いたというようなことはあります。しかし法務大臣、法務省というふうな国家機関、組織体がたまたまどうして——しかも自然人ではありませんか、自然人の集合体ですから、どうしてたまたまそういう資料が集まるのですか。そんなこと実際上あり得ぬじゃないですか。その点はどうなんですか。
  328. 香川保一

    ○香川説明員 さような忌避事由があるかどうかというふうな調査を法務省が組織としてやるというようなことはもちろんあってはならないということでありまして、指定代理人である者がたまたまそういう資料を入手した、こういうことでございます。
  329. 東中光雄

    東中委員 いま言われた最後のところはちょっと聞き取りにくかったのですが……。
  330. 香川保一

    ○香川説明員 指定代理人である法務省の職員がたまたま入手した、こういうことでございます。
  331. 東中光雄

    東中委員 指定代理人が入手したというのは、疎明資料で出されておる疎第一号から第十二号まで、このことをおっしゃっているわけですか。
  332. 香川保一

    ○香川説明員 さようでございます。
  333. 東中光雄

    東中委員 いまここにその物件がございますけれども、青法協裁判官会員の機関誌である「篝火」、これは全部古いものばかりです。出されておる資料はほとんどがそうでありますけれども、これがたまたまだれかに会ってものを聞いたというものではなくて、こういう資料がたまたま入るということはあり得るのですか。実際上指定代理人である検事が資料を集めなければこんなものは事柄の性質上集まるものではないということははっきりしているじゃないですか。たまたま集まったというなら、どういうことで集まったのか、その事実を明らかにしてもらいたい。
  334. 香川保一

    ○香川説明員 これは私の知る限りでは訟務の担当課長、担当課のほうにそういうものを送ってきてくれた人がおり、あるいは持ってきてくれた人がおるというふうなことで、これは資料としてちょうだいしておいただけでありますから、結局そのものを集めてみますと、疎明資料として出してあるようなものになった、こういうことであります。
  335. 東中光雄

    東中委員 いま政府委員の説明自体でもありましたように、法務省がそういうものを集めにいったらぐあいが悪いのだ、裁判官のそういう行動について調べにいったりしたらぐあいが悪いのだという規範意識が先にあって、そして今度は、だからそれに違反しないように、たまたまあっちこっちから訟務課へ持ってきた、こう言われておるとしか考えられないですね。事柄の性質上北海道で出されたものもあれば東京で出されたものもあれば、一年も二年も離れておるものもあれば、さらにまた内容的にも全然違うものもある。こういうものがたまたま集まってきた。こういうことが一体実際に社会的、歴史的な事実としてあり得るかということですね。あまりにもおかしいじゃないですか。たまたまなら——ではいつからいつまでの間にこういうものが集まってきたのですか。
  336. 香川保一

    ○香川説明員 その辺のところはいつだれからどうというふうなことは一切つまびらかにしておりませんので、その担当の課長のほうから私にこういうものがございますという報告がありまして、その中でいろいろ検討してみると疎明資料に出しておるようなものがあった、かようなことであります。
  337. 東中光雄

    東中委員 その検討を始めたというのはいつですか。
  338. 香川保一

    ○香川説明員 四月以降でございます。
  339. 東中光雄

    東中委員 その訟務課長ですか、こんなものがありますということを言ってきたのはいつなんですか。たまたまこういうものが集まっていますということで出してきたのは一体いつなんですか。
  340. 香川保一

    ○香川説明員 確か四月の十日過ぎだと思います。
  341. 東中光雄

    東中委員 これは笑いごとじゃないですよ、あなた。少なくともここは国会なんですから。しかもあまりにも見え透いた——これで国民が納得しますか。たまたま何か集まってきたのだ。しかもそれはたまたま集まってきたものをたまたま出して、たまたま討議をして、そうして裁判官忌避というような重大な問題が起こってくる、そんなことを国民が実際上なるほどそうだったのかといって納得しますか。あなたもっと事実をフランクに言いなさい。
  342. 香川保一

    ○香川説明員 答弁になるかどうかあれでございますが、今回の札幌地裁の決定におきましても、その点は認めていただいております。
  343. 東中光雄

    東中委員 決定というのは疎明なんです。疎明のある範囲でそうやるのだから、あなたのほうがそうやったからそうやったというだけで、決してそれが真実だということにはならないわけです。疎明というのは証明じゃないわけです。あなたのほうがはっきりさせないからそれだけしかわからないということであって、それだけしかわからないという立場に裁判所が追い込まれてあるからといって、それが正しいということになるか。全然引用するものが逆じゃないですか。事柄の性質を逆にしておるではないですか。そういう裁判所の決定をせざるを得ないような資料を出しているのがあなたのところじゃないですか。ぼくはその資料を出していること自体がぐあいが悪いと言っているのですよ。裁判は当事者主義ですから、それはそれでいいかもしれない。しかし国会はそうじゃないですよ。裁判は当事者諸君でできるわけです。民事ですからできるわけです。ここはそうじゃないですよ。もっと明らかにしていただきたい。決定がそう書いてあるからそれでいいのだ。そんなものは論拠になりません。どういう点がどうして——あなたはほんとうに個人としてもたまたま集まってきたということを本気で考えているのですか。
  344. 香川保一

    ○香川説明員 事実のとおり申し上げておるのでありまして、その証左として裁判所もさような点を認めていただいておる、かように申し上げたわけでございます。これはたまたま申し上げた点が実際上そういうことはあり得ない、こう言われましても、私どもいろいろの資料をいろいろのところからちょうだいすることもございますし、そのたくさんの資料の中から疎明資料としてさようなものが出てきたということ、これは事実でございます。
  345. 東中光雄

    東中委員 そうすると、青法協その他いろいろな団体についての資料をたくさんもらったものがあった、その中からこれを選び出した、こういうことになるわけですか。
  346. 香川保一

    ○香川説明員 青法協に関する資料という意味ではなくて、いろいろなそういった他の青法協に全然関係のないような資料もあちこちからちょうだいするわけでございまして、さような中から疎明資料としたものがたまたまあった、かような趣旨でございます。
  347. 東中光雄

    東中委員 青法協に関連するものも、民法協に関連するものも、その他国際法曹協会に関することもいろいろあるだろうと思います、法律関係だけでも。そういう資料がたくさんある中でこれを選び出して、四月段階で検討した、こういうことになるわけですか。
  348. 香川保一

    ○香川説明員 そのとおりでございます。
  349. 東中光雄

    東中委員 それなら前からあった資料、そのときに入手した資料じゃなくて、前からあるいろいろな資料の中からこれを選び出してそうしたということになるわけですけれども、それなら四月段階になってそれを選び出して、そういう検討をやり始めた契機になったものは一体何ですか。
  350. 香川保一

    ○香川説明員 長沼事件の所管課でございます三課のほうから私に、こういうものがあるという報告が来たのが契機でございます。
  351. 東中光雄

    東中委員 三課といったって、三課というのはあなたの部下でしょう。法務省としてのことを私は聞いているのであって、三課のことを聞いたり、部長のことを聞いたりしているのじゃないんですね。法務省としてはどういうことになるわけですか、これを調べる契機は。
  352. 香川保一

    ○香川説明員 法務省として知るか知らぬかということは、本件の場合は問題にならないと私は思うのでありまして、この長沼事件の指定代理人として委任を受けているものについて、いつ知りいつ検討したかということが問題だと思うのでございます。
  353. 東中光雄

    東中委員 どうもかみ合いませんので、質問をちょっとかえますけれども、この忌避理由では、青法協の会員であるから福島さんを忌避するということ、福島さんが会員であるからということそのこと自体は忌避理由にはなっていないわけですね。その点はどうですか。
  354. 香川保一

    ○香川説明員 そのとおりでございます。
  355. 東中光雄

    東中委員 会員であることにプラスしているものは何ですか。
  356. 香川保一

    ○香川説明員 青法協が安保廃棄、自衛隊反対運動の一環として長沼事件そのものの支援活動をしておる、そこにポイントがあるわけでございます。
  357. 東中光雄

    東中委員 長沼事件支援活動とおっしゃったのですが、そういうことばで言われておる内容は一体何ですか。何があるのですか。
  358. 香川保一

    ○香川説明員 長沼事件を通じて、安保、自衛隊基地というものが国民生活の破壊につながるというふうなことから、この長沼事件を契機にして、自衛隊憲法違反というふうな論争をやろう、こういうふうなことだと考えております。
  359. 東中光雄

    東中委員 青法協として長沼事件を支援するというような決議をしたとか、あるいは長沼事件について青法協として具体的な行動を起こしたとかいうことがあるのかないのか、そういう点は何も指摘されていないわけですけれども、その点はどうなんですか。
  360. 香川保一

    ○香川説明員 私ども、疎明資料全体を通じてさような判断をいたしておるわけでございまして、この点についてその判断が間違っていると言われれば、これは見解の相違ではないかと思います。
  361. 東中光雄

    東中委員 見解ではなくて、裁判官の不信任というような問題をやるわけですから、事実に基づいてやらなければいけない。事実は一体何か。支援決議という事実があったら、それは決議というものがあった、あるいは具体的にこういう行動があったというなら、これは事実です。何も言わないで、支援決議があったというふうに全体から感じた——それは考えであって事実ではないわけです。法務省は、事実じゃなくて考えによって忌避申し立てをしたということになるのか、その点はどうですか。
  362. 香川保一

    ○香川説明員 私どもの考えといたしましては、端的に長沼事件の支援活動の決議が青法協でなされておるということが証明できなくとも、全体としてそういうことがそうらしいとわかればそれでいいのではないか、かように考えておるわけでございます。これは誤解のないように申し上げておきたいのでございますが、裁判官不信任、忌避ということばが悪いせいでございますけれども、福島裁判官個人を攻撃しておるというふうなものでは絶対ないわけでございます。
  363. 東中光雄

    東中委員 忌避といったら裁判官不信任につながるのはあたりまえのことです。あなたの裁判は受けないということですから、まさに不信任じゃないですか。これが不信任じゃないといったなら何が不信任ですか、まさに不信任ですよ。それであなたのおっしゃっておるのは、事実ははっきりされないじゃないですか。支援活動があったということ、そういうことが感ぜられる、そういう程度のあやふやなことでやられたというふうに理解していいわけですね。現に裁判所もそういうものは支援活動があったとは認められぬ、こう言っておる。
  364. 香川保一

    ○香川説明員 それは疎明資料そのものの評価の問題かと思うのでありまして、私ども現在すでに一審の決定がなされまして、そういう支援活動の決議がないのではないかというふうに決定でいわれておりますので、その点を含めて、先ほど大臣の申されましたように、十分検討してさらに即時抗告するかどうか検討したい、かように現段階で考えておりますので、その点についてのこまかいいろいろの考え方は、申し上げることは遠慮させていただきたいと思います。
  365. 小林武治

    小林国務大臣 私からちょっと、この前も委員長に申し上げたのでありますが、理由がどうにもなっておらぬぞ——これは裁判所のきめる問題でありまして、ここで一つ一つ御指摘を受けてそしてわれわれのほうから答弁する筋ではありません。大体もうこの前裁判所も、われわれの疎明資料に基づいて決定されておる、こういうことでありますから、こういうふうな裁判所的なことをここでいろいろお答えすることはなかなか困難である、そういうことを私はこの前も委員長にお願いしたのでございます。その辺もひとつお含み願いたいと思います。
  366. 東中光雄

    東中委員 私は裁判所の審理の内容をここで別個に審議しろというような考えを持っておるのではないのです。法務省が今度やったことは、裁判に対する不当な介入になるというふうに思う。なぜかといえば、根拠が明らかにされない。いまおっしゃったように、らしいということでやっていくということになったら、それはほかの意図でやった——どうもいろいろ調べてみた、重大な決定をやるんだ、法務大臣の直接の承認が出てやるんだというふうな重大な問題について、どうもやっておるらしいという程度のことでこの時期に忌避申し立てをやられたということになったら、これは国民納得しませんから、不当な介入になりはせぬかということがあるのでお聞きしておる。要するにその忌避の申し立てをした段階では、青法協は支援活動をしておるということが忌避理由の一つのポイントになっておるわけだから、それは内容的に見れば、どうもしておるらしいというふうに考えたという程度の根拠でやったんだ、こういうふうに聞いていいわけですね。
  367. 小林武治

    小林国務大臣 私がただいま申し上げたように、いまの指定代理人が出した忌避の申し立ての理由、疎明、こういうものを裁判所が価値判断をして決定をされる、こういうことでございますから、いまのような、これをやることが適当かどうかということは、要するに見方の相違。私どもは適当だと思ってやったし、あなた方は適当でない、こういうことでありまして、これは考え方、見方の違いだというふうにわれわれは申し上げざるを得ません。
  368. 東中光雄

    東中委員 もう時間がありませんので、終わりますけれども、私たちが言っておるのは考え方の違いではなくて、青法協の会員であるからということでは、これは裁判官の思想、結社の自由、良心の自由の問題があって、それだけでは裁判官に打撃を与えることはできない。何かそこにプラスをつけなければいけないということで、支援活動ということが理由にあげられているのです。ところがその支援活動の内容というのは、具体的なこういう事実があったということは、再三お聞きしたけれども、何にも具体的にはあげられない。全般を見て、らしいと思ったということでやられた。こういうのが今回の忌避の申し立ての根拠になっている。そういう点ではこの忌避申し立ての理由の中に、いま法務省のほうから理由の中心を言われましたけれども、忌避申し立て書にはそうでないことが書いてありますね。たとえば証拠決定、源田さんを証人調べするという決定をやったことがぐあいが悪いというふうなことまで書いてある。あるいはいま言われている忌避申し立ての理由とは明らかに違う、その当否は別としてと書いてありますけれども、忌避申し立ての理由に、その当否を論じない、別とするようなことをわざわざ一項目を入れて申し立て書には書いてあるのです。ここに真意が出ているのじゃないですか。この裁判をいわゆる自衛隊の裁判、自衛隊の合憲、違憲、統治行為論、法務省側のあるいは国側の主張を全面的にいれない裁判だから忌避しているということがあの申し立ての第三項にわざわざ書いてある。いまここで説明されていること以外のことが書いてある。そこで真実が出ているわけです。こういう点で、裁判の忌避の申し立てとしては、証拠決定、裁判所のやった——裁判官じゃなくて裁判所のやった証拠決定に対する不服、それからそれの訴訟引き延ばしという問題と、そこから当事者の忌避権を法務大臣がその指揮権を発動してやるようになったという点で、私はこの問題、今後こういうことは二度と日本の裁判のために繰り返してはならぬ、こう思いますので、法務省の今後のこういう態度について、忌避申し立てをしない、あるいは同種の忌避申し立てをしないということを強く要望いたしておきたい、こう思うわけであります。  終わります。
  369. 天野公義

    天野委員長 本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  370. 天野公義

    天野委員長 ただいま委員長の手元に、塩谷一夫君外三名より本案に対する修正案が提出されております。
  371. 天野公義

    天野委員長 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。塩谷一夫君。
  372. 塩谷一夫

    ○塩谷委員 ただいま議題となりました法務省設置法の一部を改正する法律案に対する自由民主党、日本社会党、公明党、民社党四党共同提案にかかる修正案につきまして、提案者を代表してその趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付してありますので朗読は省略し、その要旨を申し上げます。  原案のうち、入国管理事務所出張所の設置に関する改正規定は、昭和四十五年五月一日から施行することとしてありまするが、すでにその日が経過しておりますので、これを公布の日から施行することに改めようとするものであります。  よろしく御賛成くださいますようお願いいたします。
  373. 天野公義

    天野委員長 これにて修正案についての趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  374. 天野公義

    天野委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  法務省設置法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、塩谷一夫君外三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  375. 天野公義

    天野委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  376. 天野公義

    天野委員長 起立総員。よって、修正部分を除いては原案のとおり可決いたしました。  これにて、本案は修正議決すべきものと決しました。  なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  377. 天野公義

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  378. 天野公義

    天野委員長 次回は、来たる十一日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時三十六分散会