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1970-04-27 第63回国会 衆議院 内閣委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月二十七日(月曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 天野 公義君    理事 伊能繁次郎君 理事 熊谷 義雄君    理事 佐藤 文生君 理事 坂村 吉正君    理事 塩谷 一夫君 理事 大出  俊君    理事 伊藤惣助丸君 理事 和田 耕作君       阿部 文男君    伊藤宗一郎君      稻村左四郎君    加藤 陽三君       笠岡  喬君    鯨岡 兵輔君       田澤 吉郎君    竹下  登君       辻  寛一君    葉梨 信行君       堀田 政孝君    山口 敏夫君       木原  実君    佐藤 観樹君       高田 富之君    横路 孝弘君       鬼木 勝利君    渡部 一郎君       受田 新吉君    東中 光雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中曽根康弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         人事院事務総局         職員局長    島 四男雄君         行政管理庁行政         管理局長    河合 三良君         防衛政務次官  土屋 義彦君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         防衛庁人事教育         局長      内海  倫君         防衛庁衛生局長 浜田  彪君         防衛庁経理局長 田代 一正君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         防衛庁参事官  江藤 淳雄君         防衛施設庁長官 山上 信重君         防衛施設庁総務         部長      鐘江 士郎君         防衛施設庁施設         部長      鶴崎  敏君         経済企画庁国民         生活局長    矢野 智雄君         外務政務次官  竹内 黎一君         外務大臣官房長 佐藤 正二君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省条約局長 井川 克一君         運輸大臣官房長 鈴木 珊吉君         運輸省自動車局         長       黒住 忠行君         気象庁長官   吉武 素二君         気象庁次長   坂本 勁介君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      井辻 憲一君         運輸省鉄道監督         局民営鉄道部長 佐原  亨君         運輸省航空局監         理部長     川上 親人君         運輸省航空局技         術部管制課長  泉  靖二君         内閣委員会調査         室長      茨木 純一君     ————————————— 委員の異動 四月二十七日  辞任         補欠選任   阿部 文男君     竹下  登君   鯨岡 兵輔君    稻村左四郎君   中山 利生君     田澤 吉郎君 同日  辞任         補欠選任  稻村左四郎君     鯨岡 兵輔君   田澤 吉郎君     中山 利生君   竹下  登君     阿部 文男君     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法等の一部を改正する法律案内閣  提出第二三号)  外務省設置法及び在外公館に勤務する外務公務  員の給与に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第一三号)  運輸省設置法等の一部を改正する法律案内閣  提出第一五号)      ————◇—————
  2. 天野公義

    天野委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法等の一部を改正する法律案議題といたします。  他に質疑もないようでありますので、本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  3. 天野公義

    天野委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  4. 大出俊

    大出委員 本会議ではわが党の同僚委員でございます佐藤観樹委員から反対討論をいたしますが、私、もういままで質疑の中で申し上げておりますから、簡単に反対意思表示をいたします。  まず、最近における防衛庁姿勢自体について幾つかの問題がございまして、四次防をめぐりましても六兆四千億という上限をつくっておられるわけでありますが、いかに諸政策とのバランスをとってと言われましても、明らかにこれは歯どめのない、いわば限界のない軍備増強という受け取り方をしなければならぬと思うわけであります。そのことが与えるアジア諸国極東諸国に対する影響というふうなものを考えますと、非常に危険なことになるのではないかという気がするわけであります。  さらに、四次防策定とからみまして、国防基本方針の変更が表に出ておりますが、三十二年の決定以来、安保体制基調とするということでの国力国情に応じた漸増方式がとられてまいりましたが、これが自主防衛という名のもとに根本的に変わってくることになる。しかも、外務省を中心にいたしまして、防衛外交うらはらでございますけれども資本輸出あるいは政府ベースに基づく経済援助が韓国、台湾に重点が置かれてこれから進んでいくわけでありますが、経済ベースで認めないことになった浦項の総合製鉄所の問題などにいたしましても、政治ベース資金拠出がきめられておりましたり、政治的不安定なこの地域に対する保障をどこでするかといえば、それは明らかに軍備増強につながる。したがって、古い釜山赤旗論的な発想が随所に出てくるということになるわけでありまして、将来の日本の安全と平和にとってそういう意味でたいへん危険なものであるというふうに考えておるわけでありまして、そういう意味で、まず防衛庁姿勢に対して賛成ができません。  またもう一つ、昨今における防衛大学大森校長の新しい意味における軍人像というふうなところに象徴されております幾つかの問題もございまして、半面自衛隊隊員諸君の不祥事も幾つか出てきておるわけであります。これはこの法案に提案をされております海上自衛官の五百十人の増員あるいは航空自衛官の四百七十四人の増員等がございます。また予備自衛官もございますしいたしますけれども、今日的な事情の中ではこれ以上の定員増意味がない。陸上においてもそうでございますし、昨年のように広報費等も含めて四億四千万円もの募集経費をかける。私どもから言わせると全く正道でない、邪道だと言わなければならぬ募集方法がとられておる。こういうことであってはならぬと私は思いますから、基本的な点は抜きにいたしましても、これ以上定員をふやすことについてはふやすべきでない、つまり反対だというふうに私ども意思表示を申し上げる次第でございます。  また、昔なつかしい准尉という制度につきましても、何かしら将来、せっかく自衛隊出発当初にあたりまして名称を変えてきたわけでありますけれども、どうも昔に返るきざしが見えてきたといいう感じさえするわけでありまして、賛成ができません。  以上の諸点等につきまして、私どもは基本的な問題は問題といたしましても、当面出されております設置法について明確に反対であるということを申し上げまして、簡単でございますが、反対討論にかえる次第であります。(拍手
  5. 天野公義

  6. 山口敏夫

    山口(敏)委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております防衛庁設置法等の一部を改正する法律案に対し、簡単に賛成の意見を表明いたします。  紛争や局地的な戦争随所に発生しております今日の国際情勢の現実から見まして、侵略に対する防衛力必要性については多言を要しません。本法律案海空自衛官予備自衛官等増員及び准尉制度新設等をそのおもな内容とするものであります。  現在自衛隊では、海空防衛能力強化重点を移しているようでありますが、四面を海に囲まれたわが国に対する侵略が常に海または空を媒体として行なわれることを考えるとき、海空防衛力の面で一そうの充実が必要であることは言うをまちません。外からの侵略国土外において食いとめる体制を確立し、また大部分の資源を海外に依存するわが国にとっては、国民生命線でもある航路の安全を確保していくために、その面でも十分の努力が払われなければなりません。  また、防衛力を考える場合、常に物的な側面と精神的な側面との両面から考えなければなりません。たとえ量的に優勢で装備にすぐれていても、隊員士気が低ければ防衛の大任は全うすることはできないのであります。この士気高揚の面で今回の准尉制度新設は、長年防衛のために献身してきた隊員に希望を与えると同時に、優秀な技能を身につけた隊員の登用によって部隊運用効率化をもたらし、自衛隊質的向上に大きく貢献するものと確信いたします。  さらに、現在の防衛が技術的に相当高度化、専門化してきており、一朝事ある場合に自衛隊が人的な面で厚みを欠くことはきわめて危険であります。その意味で、かつて隊員として勤務し、練度の高い、そして国を守るという使命感に燃えた者を予備自衛官として十分に確保することは、わが国防衛力をより効果的にするもので、きわめて重要な施策であると考えます。  以上、本法律案は現在の国際情勢下においてわが国防衛力整備の上から見てまことに時宜に適した措置であり、国民の大多数がこれを支持するものであると深く確信をいたすものであります。防衛国民の心から発し、国民の心にささえられるべきものであることは申すまでもありません。国民を離れ、国民から孤立した防衛は成り立ちません。  私は、わが国防衛力を真に国民的基盤に立ったものとするため、政府がより積極的な諸施策推進されるよう強く要望いたしまして、賛成討論といたします。(拍手
  7. 天野公義

    天野委員長 伊藤惣助丸君。
  8. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 私は、公明党を代表して、今回提案されました防衛庁設置法の一部を改正する法律案等防衛三法に対し反対であります。以下その理由を明らかに申し述べます。  わが国安全保障の終局の目標が戦争のない世界を目ざす以上、安全保障政策の最重点国際緊張の緩和をはかる多面的な平和外交を最も重視しなければなりません。すなわち日本周辺戦争が起こらないようにすること、かりに戦争が起こってもそれに巻き込まれないようにすること、敵対国をつくらないようにすること、等々を日本外交政策基本政策とすべきであって、いたずらな装備増強隊員数量増員という軍事力偏重政策であってはならない。さらに安全保障力基盤は、国民的合意を確立するとともに国民生活を向上し、国民生活防衛前提であり、かなめであります。これに基づく日本政治力経済力、社会的な安定と発展であります。このような基盤に立たない防衛自衛力は真の安全保障力とはなり得ないと考えるものであります。  政府が決定した「国防基本方針」にも、「国家の安全を保障するに必要な基盤を確立する」とか「国際間の協調をはかる」こと等があげられており、三次防の前文にも「防衛力整備と合わせて外交及び内政諸施策を講ずべきこと」をうたっているのでありますが、しかし、実際の施策の上では、日米安保体制ワク組みの中で自衛力増強という、軍事面偏重政策のみ増強され、最も重視すべき非軍事的政策は抽象的であり、乏しいのであります。  これでは政府の総合的な安全保障政策の姿がどのようなものであるのか、全く国民の前に明らかになっていない。さらにその中での対外面国内面軍事力関連性における四次防、五次防を含む七〇年代の安全保障政策のビジョンが、いかなる国際情勢、特に周辺諸国の動向の分析を行なっているのか、政策を立案するための前提条件となる脅威は一体どのようなものかについて、政府は明確にいたしていないのであります。  ただ自主防衛の名のもとに、六兆数千億円という巨額の軍事力増強に片寄った政策をとろうとする政府の意図に、国民の多くの不安が高まっていることを、第一に指摘するものであります。  第二は、防衛問題は単なる法律論だけできめられない複雑多岐なものであることは確かでありますが、今日自主防衛という名のもとに、いままでの漸増方式から自衛力の積極的な急増へと、専守防御のワクを大きく踏み越えており、今後の国防政策推進にあたって、戦争放棄戦力保持をうたった平和憲法の精神をどこまで尊重するのか疑問であります。  また自主防衛平和憲法ワク内でその限界が明確になっていないのであります。  第三に、自主防衛五原則によれば、「現在の日米安保体制基調とする」から「補完する」に表現が変わってきているのでありますが、自主防衛日米安保体制との関係が、現在から将来に向かって一体どのように具体的に変わっていくのか。すなわち、アメリカの核のかさに入り、その他は自力でやるという構想なのか。またみずからの防衛力増強して防衛体制を整え、有事の際、米軍の来援を頼む構想なのか。あるいは基本的には、現状維持体制下で、日米共同防衛で対米期待度を減らしていく構想なのか。自主防衛日米安保体制を補完するという考え方は、どのようなケースを基本的にたどろうとしているのか、全く明らかになっていないのであります。  第四に、自衛権本質と、自衛権行使地域的範囲限界についてであります。政府は外部からの武力攻撃に対処するため公海公空防衛自衛権行使に必要な限度内でできるとしているが、これが拡大解釈するとかつての自衛権のように自衛のためなら何でもできることになり、いわゆるそれは海外派兵につながる危険性があることであります。日本に対する直接侵略をどこで排除するのか、自衛権本質自衛権行使地域的範囲限界を明確にいたすべきであろうと考にるのであります。  第五に、政府は、自衛力とは、自衛必要最小限度の実力を言い、それは内外の情勢科学技術進歩等によってきめられると言っておりますが、その最小限ということがはなはだ観念的であり、政府の持とうとするものは戦力に至らないものというのか。はたして自衛隊の量的な面での兵力限界はあると考えているのか。四次防以降において整備されるべき、防衛力の質、量、財政面の根拠が明らかになっておらないのであります。  第六に、防衛費の増加は必然的に防衛産業の拡大をもたらし、いまや二次防から三次防へ、そして四次防へと際限のない兵器増産に拍車をかけており、わが国においても、防衛産業官民一体産軍複合体を現出することは火を見るより明らかとなってきております。これは防衛産業に対する政府の基本的な調整計画の大綱が全く不明確なところによるものであります。  第七に、七〇年代安保についての最大の課題は、在日米軍基地の問題であります。政府在日米軍基地自衛隊移管、すなわち、米軍との共同使用を推し進めようとしておりますが、基地実態調査に基づく基本的な基地政策が明らかでない。  さらに、自衛隊員処遇については、医官及び技術者充足率を見ても明らかなように、はなはだ不十分であります。  したがって、簡単に問題点を指摘いたしましたが、わが党は以上のような点から、防衛三法については反対態度を明らかにするものであります。
  9. 天野公義

  10. 受田新吉

    受田委員 私は、民社党を代表して、ただいま審議中の防衛庁設置法案反対討論をいたします。  民社党は多年にわたりまして、当委員会を通じまして、はっきり国民の前に宣言していることは、国土国民を守るための最小限自衛措置を肯定している憲法第九条の解釈を基点に置いていること。しかし、それは最小限自衛措置であって専守防衛である。これまた国民の前にはっきりと御提示申し上げております。同時に、日米安保条約につきましては、わが国防衛力補完的任務を持つものにすぎないものであって、いわゆる基地なき安保を提案し、駐留なき安保を提案いたしまして、日米安保条約改定を宣言しております。  その意味におきまして、今度の改正案を拝見いたしますと、そこにおのずからわれわれの意図する方向をもとにした反対理由政府自身おくみ取り願えると思います。  自衛力漸増計画につきましては、私たちといたしましては、国力国情に応じた増強計画を第一次長期防衛計画にお立てになられた自民党の、そして政府外交防衛方針以来、はっきり申し上げておるのでございますが、それは、いたずらに量を増大して質をおろそかにするやり方を排除することでございます。人員をふやして、その人員に対する個々の優遇を忘れるところに烏合の衆を構成する危険がある。無理やり募集、そしてそこからくる無理やり隊員確保上からくる除隊に対するくぎづけ、心ならずも隊員として残留する人々によって防衛力増強ができますか。数を少なくして一人一人を厚く優遇する。一騎当千の士をもって国土国民を守る意欲をわかす、そこに自衛隊あり方が存在していると思います。  同時に、防衛力あり方は、国民合意の上でなければならない。国民の支持のある自衛隊でなければ存在意義がない。国民が心から感謝し、そしてその御苦労を敬仰するという形に持っていくためには、そうした質的向上力点を置くということが大事であることを指摘したい。今回の改正案はまたそこに失敗を繰り返しまして、依然として人員増強にその目的を置いておる。しばしばわれわれの主張したことをお取り上げになっていないという点で、残念ながら反対せざるを得ません。  最後に、防衛はその背景として、外交を前面に打ち出さなければならない。平和外交、その大路線を歩むためには、常に諸外国との交渉において、わが国が平和を愛する国家であること。侵略を意図したり、防衛増強にのみ明け暮れた、軍国主義的国家の要素などはみじんもないのだという崇高な平和信念を諸外国に浸透させなければならない。これは非常に大事なことでありまして、自由民主党政府がそこに力点を置かれ、安保条約改定等におきましても、駐留なき安保基地なき安保への切りかえの努力をされる等、諸外国侵略国家の印象を抱く国家がやがて壊滅するような、そういう平和外交路線をしっかり敷いていただく。ここに私たちが、自由民主党政府に対して強く要請する根源がございます。  以上、国民的合意の上に立つ最小限自衛措置である自衛隊であること、国民外交を含めた平和外交の強力な推進をはかるところの外交路線による防衛であること、そして安保条約は、これまた駐留なき安保への前進をはかるべきであること、憲法にはっきりと約束された防衛路線確保すること、これらを前提にして、いま残念ながら今回の改正案反対せざるを得ない理由を申し述べた次第でございます。終わり。
  11. 天野公義

  12. 東中光雄

    東中委員 私は、日本共産党を代表して、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案反対するものであります。  佐藤内閣は、アメリカ帝国主義の新戦略、ニクソン・ドクトリンと、それに基づく日米共同声明によって日米安保条約アジア侵略かなめの位置に据え、また自主防衛強化を口実として、アメリカアジア戦略の重要な一翼をになう日本軍事力を急速に増強しようとしています。  また、今国会を通じて政府並びに防衛庁当局公海公空における武力排除方針と、それに見合う自衛隊装備強化局地戦の独力遂行、いわゆる間接侵略への対処など、三次防を引き継ぐ四次防で、自衛隊が目ざす新たな侵略的強化方向を明らかにしました。  このような自衛隊増強計画は、単に国民にばく大な犠牲と負担をしいるばかりでなく、自衛隊日本アジアの平和と安全を直接脅かす根源となるものであります。わが党は、政府のこのような危険な策動を絶対に容認することはできません。  次に、本法律案反対する理由を簡単に申し上げます。  その第一の理由は、今回の自衛官増員が、憲法の平和的、民主的条項にまっこうから違反するものであり、国民反対をよそに年々その戦力を拡大してきた自衛隊の一そうの増強を目ざすものだからであります。  すなわち、今回の改正案は、政府海空戦力強化方針のもとで、海上自衛隊においては第四護衛隊群余市防備隊の新編及び護衛艦潜水艦魚雷艇、対潜哨戒機、対潜ヘリコプター等、艦船、航空機の就役等に伴い、海上自衛官を五百十人増員し、また航空自衛隊においては、自衛隊ミサイル化を急ぐ政府が、昨年に引き続いて第三高射群、第一高射群要員確保をはじめ、第四高射群先行要員、その他部隊の改編に伴って航空自衛官を四百七十四人増員しようとするものであります。この改正案によって自衛官定数は二十五万九千五十八人、予備自衛官を含めて実に二十九万五千三百五十八人に達するのであります。しかも、第三高射群に関しては、現在いわゆる長沼訴訟として自衛隊の序在そのものが憲法違反に問われ、係争中であるにもかかわらずミサイル基地要員確保することによってこれを既成事実として押しつけ、ミサイル基地建設を強行しようとするものであります。また第四高射群に関しては、地域住民の強い反対意思を無視して、饗庭野、各務原をはじめ、近畿、中部地区ナイキ基地設置を強行しようとするものであります。  わが党は、一切の戦力保持を禁止した憲法第九条のもとで、これをまっこうから踏みにじるこのような戦力増強と、地域住民無視政府態度をきびしく糾弾するものであります。  第二に、今回の改正案は、新たに海上自衛隊予備自衛官制度を設け、陸上及び海上自衛隊予備自衛官を計三千三百人増員しようとするものであります。  言うまでもなく、予備自衛官は、防衛出動に際しては自衛官としての身分が与えられるものであり、事実上自衛官増員と軌を一にするものであります。政府は、予備自衛官増員予備兵力確保するものであるとして、これを今後とも積極的に推進することを言明しております。  わが党は、自衛隊戦力増強の一環である予備自衛官増員には反対であり、とりわけ今回の増員予備自衛官十万人構想に歩を進めるものとして重視せざるを得ません。  第三に、本法律案陸海空自衛隊准尉制度を復活させるものであります。  政府は、准尉制度の採用は処遇改善が主たる目的であるかのように説明されておりますが、この真のねらいが准尉制度をえさにした自衛隊員に対する管理体制強化にあることは明らかであります。  第四に、本法律案米軍及び自衛隊地域住民に対する損失補償基地取得等に関し、いわゆる民意を反映する防衛施設審議会を中央、地方に設置しようとするものであります。しかし、この真のねらいは、最近とみに複雑化する地域住民米軍自衛隊の間を取り持つ第三者機関として持ち出されているものであり、きわめて欺瞞的なものがあります。いわゆる第三者機関が果たしてきた役割りは、今日までの各種審議会の例を見ても明らかなとおり、これらの機関政府の反動的な施策推進するための隠れみの、代弁機関にすぎず、今回つくられようとしている審議会もまた基地維持運営を効果的に進める道具となるものであります。  以上、わが党の本法律案反対する理由を述べて、私の反対討論を終わります。
  13. 天野公義

    天野委員長 これにて討論は終局いたしました。  防衛庁設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  14. 天野公義

    天野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、ただいま可決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 天野公義

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  16. 天野公義

    天野委員長 中曽根国務大臣。
  17. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 長時間にわたり、かつ慎重に御審議を賜わりまして、まことにありがとうございます。御討論の趣旨を体しまして、一生懸命やるつもりでございます。  どうもありがとうございました。(拍手)      ————◇—————
  18. 天野公義

    天野委員長 外務省設置法及び在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原実君。
  19. 木原実

    ○木原委員 この機会に、私は日中関係の打開の問題について、外務大臣に端的にお伺いをいたしたいと思います。  御案内のような状況が相次いで起こっておるわけでありますけれども、これからの日中関係の打開について、政府は一体どういう取り組みをしようとするのか、お示しを願いたいと思います。
  20. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 最近いろいろのことが起こっておりますが、政府の基本的な態度は、イデオロギーあるいは体制の異なるところとも親善関係を結びたいということを基本的な考え方にいたしまして、国際緊張の緩和ということを心がけてまいりたい、この基本方針については何ら変わるところはございません。そして、できる限りいずれの国との間におきましても、基本的ないろいろな考え方が違うことはやむを得ないといたしまして、わが国としてはわが国の考えておることが正確に伝わり、また理解されるようなそういう態勢ができることが望ましい、かように考えておる次第でございます。
  21. 木原実

    ○木原委員 基本方針は変わらない、わが国の考えや政策方針が正確に伝わることが望ましい、こういうことでございますけれども、しかしながら、おっしゃるようにわれわれの国の方針政策を正確に伝えようにも、御案内のとおり、パイプが一つもない。一番の問題は、実に戦後二十五年間の長きにわたって隣国の中国との間に何らの外交上の往来もない。このことが何にも増して国民にとっては不安であり、ある意味ではそのことが国民にとっての脅威だと思うのです。もし政府の考えておることが、できるだけ正確に伝わることが望ましいというのであれば、そういうコミュニケーションの場を求めていく、そういう努力方向というものは何か具体的にお考えでございますか。
  22. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 しばしば申し上げておりますように、政府といたしましても、たとえば抑留邦人の問題というような、こちらとすれば差し迫って解決をしてもらいたいこともございます関係もあって、たとえば第三国において中共側と日本と大使館を設置しておる場所が相当ございますので、そういうところを通じまして、いかなる場所においてでも、またいかなる時期においてでも、大使館の接触ということが、政府機関同士の対話の場として窓が開けるならば、双方政府の立場において考えていることの意思疎通ができるのではないだろうかというふうに考えまして、努力を続けておるわけでございますが、ただいままでのところ、その窓が開けるような状態にはなっておらない、このことを遺憾に思っておりますけれども、そうした考え方は何ら変わっておりませんので、今後も、これは相手のあることでございますから、一人芝居だけではできませんけれども、気持ちと努力は持ち続けてまいりたい、かように考えております。
  23. 木原実

    ○木原委員 しばしば第三国でおっしゃるように大使級の会談を、こういう努力をされたという、こういうことはわれわれも聞いておるわけでありますけれども、従来もこちら側のそういう態度がありましたけれども、具体的には何らの手づるも得られなかった、こういうことじゃないかと思うのです。それからまた、大臣のただいまの御発言でも、これから先の見通しとしましても、必ずしも何か具体的な見通しがあるわけではない、言ってみれば、これも率直にいいまして、やりたい気持ちはあるけれども、相手のあることであるから展望としては必ずしも十分でない、暗いのではないか、こういうふうに解してよろしゅうございますか。やる気持ちはあるけれども、見通しはない……。
  24. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これも私は率直にお答えするのでございますけれども、今回のいろいろの共同声明等にあらわれているところから見まして、なかなか対話の進め方というものも非常にむずかしいなという感じは率直にいって否定することはできません。しかし、これはやはり相当忍耐強く、ある程度の時間がかかりましても、やはり私どもとしてはそういう努力を続けていかなければならない、こういうふうな基本的な立場に立っておるつもりでございます。
  25. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、先般御案内のように、古井さんたちの覚書貿易によるコミュニケが発表されました。そうしますと、これは政府の具体的な接触の場でないことはもちろんでありますけれども、あの覚書貿易の政治会談という方式については、何か新聞等によりますと、政府の中にもあれはもう再検討したらどうだ、ああいう声明を出されるのではともかく好ましくないといいますか、方法としても好ましくない、こういうような意見もあるやに聞いておるわけでありますけれども、いかがですか。これはああいう会談の方式について、政府としてはどういう態度といいますか、お考え方で考えていこうというふうに考えていらっしゃるのか、ひとつその辺の御見解を承っておきたいと思います。
  26. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いろいろの御批判やあるいは建設的な御意見、いろいろ政府としても注意深く検討し、謙虚に検討をいたしておるつもりでございますが、従来たとえば政経分離ということで、貿易については民間貿易、ことに覚書貿易を中心にしてという考え方で、いろいろ関係の方に御苦労願ってきたわけであります。私は、やはり何らかのこうしたつながりというものは必要なことである、かように考えております。  それから、ただいま具体的なお尋ねの点でございますが、これにもいろいろの意見が出ておりますことは御指摘のとおりでございますが、政府といたしましては、慎重に真剣に今後どういうふうにしてやったらばいいかということをさらに慎重に検討いたしたい、かように考えております。
  27. 木原実

    ○木原委員 慎重はけっこうなんですけれども、そうしますと、もう一つ、あのコミュニケの中にあらわれました幾つか問題になっております、軍国主義が復活したという指摘、あるいはまた沖繩返還についての中国側の鋭い指摘、こういう問題が今度の会談の中で新しい問題を投げかけてきておると思うのです。こういう問題についての外務大臣としての御見解はいかがですか。その席で総理はたいへん声を荒らげて反論をしておりましたけれども、外務大臣としての御見解をこの際示していただきたいと思うのです。
  28. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先方が考えておることあるいはその表現というようなことについて、私は、これもざっくばらんに申し上げるのですけれども、売りことばに買いことばというようなことは、外交をあずかる者としては差し控えたいと存じます。しかし同時に、これは非常に大切なことでございますから、ただいまも御指摘になりましたように、最近の覚書貿易に関連する政治的な声明について申しますと、御指摘のように、一番の問題と思われることは、軍国主義云々の問題と、それから沖繩返還がペテンであるあるいはまやかしものであるというようなことが非常に強調され、非難されておる。この点は、私は誤解というよりもそれ以上の問題ではないかと思います。  すなわち、日本に軍国主義が現にもう復活しているのだというようなことは、これは日本の全国民的に申しましても、さような事実はございません。またそういう点について、日本国民のものの考え方というものは、定着した徹底した平和主義であるということであろうかと思います。それから沖繩の問題につきましては、私自身当事者でもございますので、国民的な願望、そうして具体的にいえば、核抜きで本土並みでできるだけすみやかな返還という、いわば三本の柱に徹底して、この国民的なコンセンサスに立って、何とかその線でアメリカとの話をまとめたいと思いまして努力をしてまいりました。結果はそのとおりに実現できた。こういう交渉自身にあずかりました当事者といたしまして、これがペテンであるとかまやかしであるとかいうことは絶対にない。また本土の沖繩化というようなことは、これは先ほど軍国主義で申しましたように、まあ誤解というよりもむしろそれ以上の見方の間違いというより取り上げ方が全く異なるものであって、こういう点についてはほかにもこまかく申し上げればいろいろあると思いますけれども、特にこの軍国主義云々と沖繩の問題等については、政府といたしましては、いま申しましたような見解に立ち、またこれは大切なことでありますから明確にしておいたほうがよろしいという考え方に立ちまして、先般の閣議での各閣僚の意見も取りまとめて、官房長官が記者との共同会見の席でその点を明らかにいたしたわけでございます。  私も、そのときの官房長官の記者会見で示されている見解は、私のみならず全内閣としての考え方である、それと同じに考えておりますということをお答え申し上げる次第でございます。
  29. 木原実

    ○木原委員 その点はあとでまたあれしますけれども、その前に、そうしますと、この覚書貿易による政治会談という方式について、これはやはり来年も存続をさせていきたいというお気持ちはございますか。
  30. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは覚書貿易に限らず、御案内のように日中間の貿易は友好貿易等が相当進んでおりまして、おそらく現在の見通しからすれば、ことし一年間では相当の額に達するのじゃないかと見通されております。また昨年の実績も、日中関係はこういうふうな不幸な状態になりましてからでも、最高の額をあげております。また世界的に見ましても、これだけの実績をあげているところはないことは御承知のとおりでございますので、政府といたしましてもこういう関係は引き続き続けてまいりたい、かように考えております。  ただ、これは覚書貿易に関係しお骨折りをいただいている方々も指摘されているところでございますが、全体の貿易額に占める覚書貿易の比率は非常に減ってきております。ですから、あるいは貿易の形態だけということから取り上げますと、そこに何らか考えなければならない要素もあろうかと思うのでございますが、しかし、何としても一つのメリットというものは、こういう形でパイプがつながっているということが、私は確かに一つのメリットであると思いますから、そういう観点に立ってやり方その他、これもまた相手のあることでございますから、一人芝居でこちらだけがどう考えてもなるものではないと思いますけれども、いろいろの点で改善を加えるべきところがあれば考えてまいらなければならないかと思っておりますけれども、どういうふうにすべきかということについては、もともとこの覚書貿易は民間の双方の機関でやっておることでもございますから、いま政府としてこれに対して今後はこうあるべきだと申し上げるまでの研究の結果がまだ煮詰まっておるわけではございません。
  31. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、政府としましては、ああいう方式で政治会談を含むいわゆるパイプがつながっていくということであれば、やはりそれを尊重していく、こういう態度だというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  32. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いま申しましたように、まだ十分練れておりませんし、また覚書貿易に今回も関与された方々のお話や御経験もひとつ十分伺い、かつ、その背景なども政府の立場においていろいろ分析をしてみまして、そしてどういう方法が今後考えられる最善の方法かということを考えていきたいと思っておりますので、ただいまお尋ねがございましたが、現在のこのままの方式でよいかどうか、それがよいという結論になったわけでもございませんし、改善できるところがあれば改善したいと考えておりますけれども、それならどういう方向が考えられるかという点についても、いままだしかとまとまった考え方を持っているわけではございません。
  33. 木原実

    ○木原委員 御承知のように、日中間の関係というのは、先ほども申し上げましたように、もう実に二十年に余って断絶の状態が続いておる。しかも相次いで問題が起こってきておる。この不自然な状態を解決をすることなしには——先ほども防衛三法が成立いたしましたけれども日本防衛の問題、ひいては日本の平和、安全という問題の基本にかかわる問題だと思うのですね。ところが、肝心の中国との間にはいわゆる戦争処理もできてないままでこういう断絶が続いておるということは、国民にとりましてはまことに大きな不安の材料だと思うのです。私はそういうことを前提に置きまして、しかも日中問題を考えた場合には、最小限度のパイプさえももう風前のともしびになってきておる。大使級会談のことも言われましたけれども、これも事実上意思はあるけれども手詰まりだ、こういう状態がある。そのほかにともかくもコミュニケーションの場というものを探りかねておる。これはいろいろな意味国民にとっては不安だと思うのですね。しかも今度の会談に参加された自由民主党の代表の人たちの言い分の中にも、一つの問題は、一体政府はこれから先の問題としてほんとうに日中関係を打開をしていこうという腹があるのかどうか、手段の問題よりもあるいは積み上げというような問題よりも腹の問題だ、こう申しておるわけです。しかもその場合には、あらためて指摘するまでもありませんけれども、台湾の問題は避けて通ることができないのだ。これは元外務大臣である藤山さん御自身の口からも、いまや台湾の問題は避けて通ることができない、こういうような問題の提起もあるわけです。そうしますと、一体政府としましてはさまざまなアプローチの方法は探るけれども、しかし、どうも見通しとしてはまだはっきりしないものがある。しかも覚書貿易によるあの種の政治会談についてもいろいろな難点が考えられる、こういうことになりますと、もうまったく先がまつ暗だ、こういう感じもするわけです。  そこで、一体日中関係の打開ということについてほんとうに腹をきめてやるというそういうお気持ちがあるのかないのか。一説には佐藤内閣ではもうだめだと向こうからけられているという状態もあるなどということも指摘をされているわけですが、しかし、政府としてはどうですか。ほんとうに現状を踏まえて日中関係打開のためにあらためて腹を固めていこう、こういうお気持ちはございませんか。
  34. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 政府としての基本的な考え方は、冒頭にも申し上げたとおりの基本的考え方に立って今後とも処してまいりたいと考えておるわけでございます。  それから、これはしかし私もここでも繰り返して申し上げることになると思いますけれども、やはりこれは日本としての主体的の立場というものも非常に大切なことであると思いますので、先方の考え方、あるいは誤解ということがよく使われますけれども、ほんとうの誤解なのか、戦略的誤解なのか、見る人によってまたいろいろの分析をしている向きもございますが、私は希望を込めて申せば、中国側も国際緊張を激化しようという考え方は持っていないことは想像にかたくないところであると思います。それから貿易にいたしましても、これは何も日本が望んでいるだけではございませんで、先方もまた日本の現在の経済的な環境、状況はよく知っておるはずだと私は思うのでありまして、先方もまた貿易については日中間大いに盛んにしたいという気持ちを持っておるに違いないと判断しても間違いじゃないんじゃないかと思いますから、私は決してお先まつ暗とは考えません。これはくどいようではございますが、相当の時間はかからざるを得ない。またある意味で、今回の共同声明に限らず、それに十日ほど先立って出ました金日成と周恩来との間の共同声明というものも、まあなかなかこれは激しいものでございますが、中国側も文化大革命が終息したという状態でございますから、漸次心を広げて世界の中の中国という立場に立って、世界の平和のためにまず日本との間にも、先方も表に出る態度についても変化があることを、これはいま申しましたように私は希望を込めて申すわけでございますが、そういう状態の変化というものも、必ず私はあるだろうと考えております。  それから、台湾の問題でございますが、これはいまさら申し上げるまでもございませんが、台湾のほうも、あるいは北京側も、一つの中国ということを双方とも非常に強く主張しているわけでございますから、一つの中国論に対して、他国である日本政府の当事者がこれに論評を加えるということは、私は差し控えたほうがよろしいと思いますが、気持ちといたしましては、これは平和的に中国内部で解決をしていただくべき問題であると考えるのが至当ではないか。ただ、これが武力抗争というような形で、一つの中国問題というものがエスカレートするようなことは、近隣諸国にとってもはなはだ迷惑なことでございますので、そういうことが起きないように、日本としても十分の考え方は持っていなければならない、こういうふうに考えるわけでございます。
  35. 木原実

    ○木原委員 どうも、外務大臣のお話を聞いておりますと、われわれの日本の主体的な立場に立っての判断、アプローチ、これはけっこうなわけですけれども、成り行きまかせのような感じがするわけです。希望的な観測というのは、これはまたけっこうでございますけれども、これでは、成り行きまかせはいいのですが、繰り返すようですけれども、二十五年間という、四分の一世紀という時間がすでに経過しておるわけですね。先般も、たとえば、十八年前にわれわれは台湾政府を選んだのは誤りではなかったと、総理はそういう言明をなさいました。しかしながら、時日の経過の中で、二十五年間の長期にわたって、隣の国の中国についての何のコミュニケーションも得られない。繰り返すようですけれども、これがもうやはり、私は最大の問題の一つだと思うのです。ところがいまでも、またあらためて、やはり希望的観測を含められて、成り行きにまかせられる。これでは、中国の問題については、政府にはもう全く策がないんだ、こういうふうに断ぜざるを得ないような感じがするわけであります。  そこで、お伺いをするわけでありますけれども、やはり台湾問題等についても、従来も経過がございました。たとえば、池田内閣当時ですか、ある段階では、いわゆる積み上げという方式がありまして、中国との関係もかなりに好転をしていた時期も、実はあったわけであります。当時の外務省としては、必ずしもそれを歓迎していたかどうかはまあ別にいたしまして、確かに、民間の交流を中心にいたしまして、相互の理解が進んだという時期もあったわけであります。ところが、佐藤内閣になりまして以来、それが急激に冷却をしてきている。なるほど、相手の態度もあったでしょう。しかしながら、われわれのほうにも何か問題がなかったのか、こういう点はやはり問題ではないかと思うんですね。その一つの中に、台湾の問題、御発言がございましたけれども、やはり中国は一つだ、そしてこの台湾との関係は内政の問題だ、円満に解決することが望ましい、こう言いながら、事実の問題としては、やはり台湾にあるいは片寄り、あるいは台湾を重視をすることによって、逆に大陸中国に対して敵対的な立場をつくり上げて、今度のワシントンでの佐藤・ニクソンの共同声明の中でも、ことさらに台湾の問題をあげ、三十八度線の問題を指摘をしておる。このこと自体が、内政問題だという北京と台湾との関係の中に、一つのアプローチを試みた、日本態度を出すことによって干渉を試みた、こういうふうに向こう側はとっても、やはりこれはやむを得ないのじゃないか。そういう態度こそ是正をしていくという姿勢がなければ、これはなかなか国民が不安を感じておることについての解決の道を見出すことができないと私は思うのですが、その点はいかがでしょう。
  36. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いろいろの点にお触れになりましたので、十分お答えになるかどうかわかりませんが、一つは、国民が日中関係について不安を持っておられる。これは各人各様、いろいろの見方があろうかと思いますけれども、たとえば最近米中大使級会談ということが話題になりますが、これに対して米国側として、米国政府筋としては、自分のところとしては何のパイプもないので、この会談に期待をかける以外に中国との話はできない、日本におかれては、貿易のやり方からいっても相当に進んでおるし、あるいは新聞記者の交換もとにかくできておるし、その他の点からいってもさすがに隣国であり、長い関係を持っているだけあって、日本政府としてはなかなか苦心をされ、相当の成果をあげているではないかというコメントもしているくらいでございまして、私は、こういう非常に複雑なむずかしい問題ですから、相当に時間がかかっているということは、あるいはこれはやむを得ないことかと思います。また他国から客観的に見れば、たとえば承認をしておる国においても、十分な情報とかあるいはコミュニケーションの成果が十分にあがってないように見受けられる節もございます。私は決して悲観をしておりません。  同時に私は、何か先方が言うことはこちらの考え方と全く違っておる、あるいは日本側からいえば事実に反したことを向こうとしては取り上げておるようですが、何でもかんでもそうだからといって、それに対してこちらがそのとおりだと言わなければこれ以上うまくいかないというものではないと思うのでありまして、やはり日本としての、主体的に正しいと信じていること、あるいはそれを行動していることを向こうにわからせることが必要であって、俗なことばを使って恐縮でありますけれども、わかっちゃくれないのだなあというふうに率直な気持ちを言わざるを得ないと思います。しかし、これは先ほど申し上げましたように、時の経過とともにそういう点もだんだんに解決できるのではなかろうか、私はこういうふうに希望を持って、しかも相当の時はかかるかもしれませんが、忍耐強く事に当たってまいるべき問題である、かように考えております。
  37. 木原実

    ○木原委員 なかなかわかってもらえない、こちら側の言い分も理解をしてもらいたい、時間をかけても、こうおっしゃるわけであります。しかしただいまの問題としましては、日中間に民間であのような声明が出された、それに対する反撃の姿勢もある。与党である自由民主党は、今週早々にもあれに対する一つの反論の姿勢を表明をしよう、こういう動きもあるやに聞いておりますけれども、いまの問題としましては、理解を求めるということはいいわけでありますけれども、やはりだんだんに問題がエスカレートしていっている。そういう意味では、ある意味では非常に危険な状態になっておるのがいまの姿ではないかと思うのです。  ですから私はもっとお伺いをしたいと思うのですが、こういう問題が出てきておる一つの根源は、昨年の秋のワシントンでの共同声明の中にもやはり問題があると思うのです。台湾の問題にあの声明の中でお触れになっているわけでありますけれども、台湾でかりに事が起こった場合に、日本は一体具体的にはどういうような態度をとろうとするのですか。声明の中では、これは日本の運命にとって、安全にとって非常に重大だ、こういう指摘でありますけれども、台湾にかりに問題が起こったときには、どういうふうな態度をおとりになるのか。総理はやはりその席で、場合によれば、台湾からの大陸進攻ということはあまり考えられないけれども、しかしながら大陸からの台湾進攻というようなことがあるかもわからない、こういうような御指摘までもなさっておるわけですね。そうしますと、あの共同声明の文言の裏づけとして、かりに台湾海峡に事が起こった場合に、一体日本はこれからの問題としてどういうふうな態度をおとりになるのですか。
  38. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 共同声明の問題は、いまお答えするのが漏れましたが、これはまず第一に、たとえば一九六七年の共同声明と比べていただきますともっと御理解が進むと思いますし、またその辺のところも北京政府側にも大いに見てもらいたいところだと私は考えるわけでございます。要するに、緊張の緩和ということを基本的な考え方にして、たとえば共同声明におきましても、そういう趣旨で中国側も建設的な平和に対する、国際社会に対するもう少し広い考え方をとることを期待しているということは、相当明らかに出ております。それから、これは両国の合意したものではもちろんございませんけれども、よくまた話題になりますが、その共同声明の直後に出された総理大臣の演説もごらんいただきたいと思いますけれども、台湾海峡に何か紛争が起こるとかいうようなことは現在予見し得ないところであるということも、認識として出しておるわけでございます。しかし、そうした予見できないということの分析、判断の基礎においては、日本として、日米安保条約によって日本の安全、日本を含む極東の安全ということが守られている、その抑止力というものがあるからまた緊張が緩和されることに非常に役立っている、こういう認識に立っていることも同時にもちろんでございますけれども政府としては、観念的にはいろいろな場合が考えられましょうけれども、現実の問題として、台湾海峡で戦闘行動が大規模に展開されるとは予見をしておりません。しかし、ただいま申しましたように、もしそういうことがかりに起こるということがあり、その規模が相当なものであって日本の安全に対して直接これが降りかかってくるような危険を包蔵するような場合においては、これに対し、そういう想定される事態に対しては日本の安全ということからいってとるべき態度というものは考えておかなければならない、これが共同声明の趣旨である、そしてそういったような、日本からいえば至近の距離にあるところの地域においては、あるいは水域においては、そういう事態が起こらないようにするということを、最終、最高の目標にいたしまして、そうして現実にそういうことが起こらないように措置するというのが、この共同声明の本旨であり、精神であり、また運用上の問題である、かように私は考えておる次第でございます。
  39. 木原実

    ○木原委員 六七年の共同声明にお触れになりましたけれども、この共同声明の中では、核を持つ中国は脅威であるという指摘があったのは御承知のとおりです。この問題については、先般もこの委員会で論議があったわけでありますけれども、その前に向こうの中国の側の理解を求める、わかってもらうために努力をするのはいいのですが、しかし、あわせまして、われわれの国内の問題として、やはり相手側にわれわれの行動の中で、少なくともあるいは誤解を生むようなあるいは向こう側がストレートに脅威を感ずるようなそういう措置があるのではないだろうか。たとえば沖繩の問題についても、御承知のような指摘が今度の共同声明であったわけでありますけれども、しかし沖繩の問題にしましても、何といいますか、施政権が日本に返ってくる、このこと自体はもちろんいいわけでありますけれども、しかしながら、引き続いて沖繩で、旧来に増して抑止力という名のさまざまな米軍による施設の増強が行なわれておる。一部の報道によりますと、あらためてアジアの諸国に対する補給基地としての機能を強化する、そういう方針がワシントンのほうであるというような報道もあるわけであります。そうしますと、少なくとも日本国土の中に、明らかに中国に対して照準を向けた強力な攻撃的な基地ないしは介入をしていくための基地が存在をしておる、しかもそれを日本が許しておる、こういう状態も、中国の側にとってみれば明らかに脅威である。ですから古井さんたちの共同声明を見ますと、日米安保条約アメリカ軍事力と結託をした日本の軍国主義云々、こういう文言も見えるわけです。そうしますと、沖繩返環等に伴って、少なくともこれ以上向こう側に脅威を与えるような措置というものは、日本の国内の問題として、やはりそれを緩和をしていく、解決をしていく、そういう姿勢がないとなかなかコミュニケーシヨンの場というものが、理解を求める場というものが得にくいのではないか、こういうふうに考えるわけですが、どうでしょう。
  40. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 その辺が、私としては大いにまた逆に言いたいところでございます。沖繩の返還は、冒頭にも申しましたように、本土並みで核抜きであって、たとえば核のごときもすでに撤去をされた。それから本土並みでございますから、返還前はアメリカとして自由に軍事活動に使えていたところが、返還と同時に、脅威になると見られるような行動、配備、装備等については事前協議、あるいは基地からの作戦行動の要請に対しては、これは自由にできない、事前協議の対象になる、本土と同じような姿になるということは、沖繩を中心にする米軍軍事力からいえば、確かにその機能というものが減殺され、あるいは減殺される方向に向かっているということは、これはもう私は天下に明白な事実であろうと思います。また、それだからこそ、平和を愛する日本国民全体が核抜き、本土並み、早期返還ということをあれだけほんとうに情熱を込めて、沖繩返還問題が盛り上がり、かつその成果が総選挙において示されたように、大多数の国民の支持を受けたものと私は考えておるわけでございまして、この姿、この現状がわかってもうえるということ、これが一番大事なところではないかと思います。  なおまた、沖繩については従来以上に米軍軍事力増強されるというようなことも御引用になりましたけれども、いま申しましたところで、その点はきわめて明確になっておると思います。  それから補給基地がどうなるかというようなことについて、米側のいろいろの言動があることは私も注意深く承知いたしておりますけれども、これらの点について、もちろん日本政府には、公式、非公式を問わず連絡があったり、あるいは協力を求められたことはございません。  それから、これらの言動を分析いたしてみますと、こういうふうに私どもは理解いたしております。全体として、要するにアメリカのミリタリープレゼンスが減殺されてくる。したがって補給につきましても命令系統といいますか、管理機能といいますか、これを効率化するということで、あるいは従来日本にありました司令官機構というものを他に移すというようなことは考えられるかもしれませんけれども、沖繩に、安保条約目的としている使命以上にこれをふやすというようなことは全然考えられていない。要するに管理機構の改善ということがそういうふうに伝えられ、あるいはまたある面において誤解を招いたのではなかろうかと想像いたしておりますが、沖繩の基地が返還話がきまります前よりもさらにこれが強大になるというようなことは、諸般の情勢から見てもあるいは現実の姿から見ましても、さようなことはございませんと政府として言い切りまして間違いはないと考えております。
  41. 木原実

    ○木原委員 増強されることはないということですが、ただ現地の姿は、御承知のように、返還交渉の過程の中でも港湾の施設等を含めまして、少なくとも基地の施設の面での増強が外見から見ましてもかなりな規模で進んでおる、こういう姿もあるわけであります。  いま御答弁になりました新しい基地機能を強化をするというのは管理の体制強化をすることであって、現在まで以上に強化をすることはないんだ。これは私どももそれ以上の何かを持っているわけではありませんので、そうですがと言う以外にないわけであります。それでは、返還時まで米軍のほうで沖繩の基地の機能を強化をするということはまずあり得ない、かりにそういう場合があればこれは断わるということでございますか。
  42. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは返還前と返還後と分けてお答えをしなければならないと思いますが、返還前におきましては、今回この国会におきましてもすでに那覇における日米間の準備委員会に関連する法律も成立させていただきましたし、返還準備の作業も非常に進みつつあるわけでございます。したがって基地に関連する問題などについても、日本側としては、いままだ向こうが施政権を持っておりますから、これは準備委員会あるいは東京における協議委員会、あるいはその他の場面におきましても十分アメリカ側と相談をして、できるだけ日本側の望むような姿に準備の過程においても進めていきたいと思っております。  それから返還がいよいよ効力を発生いたしますと、安保条約はもちろんでありますが、地位協定等も何らの変更なしにそのまま沖繩に適用されるわけになりますから、そうした問題も、たとえば安保協議会の議題の対象になる。これは地位協定その他から当然出てくるわけでございますから、必要性のないようなものについてはもちろんのこと、日本側の意思が十分そういうところを通してアメリカ側に反映をして、そして基地体制というようなものも漸次減殺されていくことになる、またさようにいたしたい、かように考えております。要するに、返還前と返還後は法制的な態様も違ってまいりますけれども、返還準備の過程からわれわれとしてはできるだけの努力を進めていきたいと考えておるわけでございます。
  43. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、沖繩の基地の機能については、これからの返還を目ざしての事務折衝の中で基地の施設を含めて減らしていく、こういうお考え方でございますね。  それではもう一つ、これは逆の問題になるわけですけれども日本側から見て中国が脅威である、こういう指摘が六七年の共同声明にあったわけですが、新たに御承知のように、人工衛星の打ち上げ、これがすぐにと申しますか、ICBMの完成もテンポが早いのではないか、こういうような指摘も専門家によってなされておる、こういう姿も出てまいったわけですね。そうしますと、中国が日本にとって脅威である、こういう指摘について、総理御自身は、一つには核兵器がある、それからもう一つの問題は、しかも中国が国際的なつき合いをしていない国だ、これがわれわれにとっては脅威だ、こういうふうに先日そこで御答弁があったわけであります。そうしますと、今度の人工衛星の打ち上げはわれわれにとっても青天のへきれきのような感しがいたしたわけであります。防衛の問題を審議をする委員会といたしましても非常に重視をいたしておるわけでありますが、一つの問題はICBM、予測以上の早いテンポでそういう開発が行なわれておるという事実、この事実は政治的な問題として考えた場合にどうですか、脅威の問題ということからいえばやはりわれわれにとっては新しい脅威、そういうものが増加をしてきた、こういうふうに受け取ってよろしいのでしょうか。
  44. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まずこの人工衛星打ち上げに成功したということは、これは事実がそういうふうになったわけでございますから、その前にどういうふうな見方をしていたかということについては、あえていろいろ申し上げる必要もないと思いますけれども、かねがねわれわれとしては意外に早くこういうふうな技術開発が進んでいるのではないかというふうに見ておりましたので、実は私としては来るものが来たというふうに考えたわけでございます。そしてまずこの人工衛星については、わが国はもちろんそうでございますけれども、中国側としてもこれは平和利用ということに徹底した目的でやってもらいたい、こういうふうに私は期待いたしたいと思うわけでございます。しかし同時に、ICBMの関係もこれは意外に早いテンポで進んでいるのではないかと思いますから、そういう点からいって軍事的な利用ということを考えてこれからいくのだということであれば、これは近隣の諸国に対しては相当脅威の問題として取り上げられる可能性があり得る問題だと思います。同時にしかし、われわれといたしましては先般核防条約の調印をいたしましたときにも政府の声明の中に織り込んでおきましたけれども、現在米ソ間のSALT交渉も始まって双方熱心にやっているときでもあり、こういったようなことも考えあわせて今後中国も世界の平和ということを念じておられるのだろうと私は信じておりますから、そういう面で国際的な協調あるいは協力、会議というか機関というか協定というか、そういうことにも積極的に入ってもらうことが望ましいのではないか、そのことが緊張緩和に対してたいへん有益な態度である、かように期待いたしますが、しかしこれは先ほど来申し上げておりますことと逆でございまして、他国の内政に干渉するということは外交姿勢としてとるべきでないことでございますから、私の率直な期待を申し上げるにとどめておきたいと思います。
  45. 木原実

    ○木原委員 いろいろな問題があろうかと思うのですが、ただはっきりしていることは、あらためて核兵器体系の国際的な管理といいますか、このことがやはり大きな問題になってくる、一つの新しい変化の契機にもなる、こういうふうに判断ができるわけでありますけれども、そうなりますと問題はまためぐってくるわけでありますけれども、中国の国際社会への参加、こういう問題があらためて問題にならざるを得ないと思うんですね。その場合にいかがですか、端的に言いまして、国連への加入の問題、日本としてはこれから先の問題としてこういう情勢を踏まえて、外務大臣がおっしゃったようなことであればあるほど、すみやかに国際連合に加入の道を開いていく、具体的には少なくとも日本がいわゆる重要事項指定方式という形で事実上の参加の道を狭くする、こういうような政策はやはりもう限度に来ているのじゃないでしょうか。その点についての何かお考えはございますか。
  46. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この問題は、日本はもちろん非常な関心を持たざるを得ない問題でありますけれども、同時に、やはり国際的に過去の経緯をごらんいただいてもわかりますように、各国がそれぞれいろいろと心配をし、またいろいろと考え方も複雑でございますけれども、同時に国連の場における問題の取り上げ方といたしましては、このごろは加盟国が非常にふえた関係もありまして、かなり小さなことも重要事項として取り扱っておりまして、単純な多数決で相当な問題を取り上げるということは、国連の運営方式としても、大多数の国があまり積極的じゃないことは御承知のとおりでございます。政府といたしましても、やはり中国代表権の問題は国際的に非常に大きな問題でございますから、これは国連の中における扱いとしても重要事項に指定するのが当然である、こういうふうに考えております。要するに単純な多数決で論ずるのには問題が大き過ぎる、こういう立場に立っておるような次第でございます。
  47. 木原実

    ○木原委員 これは外務大臣、国連の中の事情と言いますけれども日本が主体的な立場に立って云々という先ほどおことばもございました。こういう問題こそ日本の主体的な立場が問われるんじゃないかと思うのです。手続の問題として、単純な多数決かあるいは重要事項指定方式か、こういうことになれば、それはまた問題があると思うのですよ。しかしながらこれは政治問題として見れば、われわれは結果において批判を受けなければならない立場にあるわけなんです。そうしますと国連の内部事情あるいは手続の可否の問題、そういうことではなくて、先ほどの問題ではありませんけれども、ほんとうに日本政府として主体的な立場に立って相手の誤解も解いていく、コミュニケーションの場を求めていく、そういう努力の中ではやはり一つの決断が迫られていると思うんですね。この決断の具体的な場の一つがやはりこの問題じゃないかと私は思います。その際に、繰り返すようですけれども、やはり手続の問題あるいは国連の内部事情、いろいろおありだと思いますけれども、しかし日中関係を基本的に、それこそ前向きに打開をしていくのだということになれば、少なくとも重要事項指定方式の提案者に日本がなるというのは、もうその辺のお考えを変えなければならない時期に来ているのではないか、こういうふうに私どもはかねて考えておるわけですけれども、特にいまのような情勢を踏まえてそういうことを痛感をするわけですが、いかがでしょう。
  48. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いま私、申しましたように、これは何としてもやはり重要事項として扱うことが適当であると考えております。  それから提案国になるかどうかという点につきましては、ことしになりましてから、前にも申し上げておりますように、どういう態度をとるかということについては、慎重にひとつ検討いたしたいと考えております。
  49. 木原実

    ○木原委員 慎重に御検討はいいのですけれども、しかしながら中国との関係をどうするかという問題はやはり一つの転機へ来ていると私ども考えるわけですが、いまの情勢をそういうふうにはお考えになりませんか。やはり政府としても、それからまた、広くは国民としましても、中国の問題はやはり日本がどういうふうなアプローチを試みていくのか、一つの転換が迫られてきておる、あるいはまた、こちらから求めて転機をつくっていかなければならぬのだ、私はそういう情勢に立ち至っていると判断をするわけですが、そういう面の判断はどうでしょうか。
  50. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは御承知のように、詳しく申し上げるまでもございませんで、長い間の経緯がございます。それから実質問題として先ほど申し上げましたように、一つの中国ということは、国民政府も北京政府も何としても譲り得ない態勢を現在とっているわけでございまして、これに対してこれに触れるようなことを第三国としてとかく申し上げることは、いままだ時期ではない。この点については先方の国内問題として平和的に処理されるようなことが最も望ましい、こういうふうに私は考えているわけでございますが、それに触れるような点についてこの際とかく申しますことは不適当だ、かように考えておる次第でございます。
  51. 木原実

    ○木原委員 これはどうも見解が違うようだと思いますけれども、いろいろお尋ねしましても、やはりこれだけの問題が出てきておりますけれども、しかし、気持ちがあるけれども、実際は政府としてはもうほとんど打つ手がない、あるいは進んで手を打っていこうという姿勢がない、先ほど来お尋ねをしましてどうもそういう印象を受けるわけであります。  ただ、くれぐれも私は外務大臣に望んでおきたいと思うのですけれども、何と申しましても中国はあれだけの歴史的な経過を持ち、そうして何よりも日本に一番近い国のうちの一つである。私は、十年ほど前に北京に参りましたときに、周恩来首相がこういうことを申しました。朝めしはどうぞおたくで食べてきてください、昼めしは北京でごちそうしましょう、しかし夕方は東京へお帰りになって銀座でお好きなものをどうぞ、そういう時代が必ず来る、こう彼は申しました。現にこれは普通のジェット機でわれわれの国から北京まで二時間の距離ですね。そういう形で、飛行機の発達その他によってたいへん時間的にも近い距離になっている。ところが、残念ながら政治がその距離を逆に最も遠い国に追いやっている。このことが日本の現在あるいは将来、あるいは平和あるいは安全、こういうものを考える場合に、私はどうしてもこれこそ避けて通ることのできない大きな問題としてある。しかし、それにもかかわらず、それについてのアプローチの方法が見つからない。これではまことに困るわけですね。今度この委員会外務省設置法、それから在外公館に勤務する外務公務員の人たちに対する給与の問題が出ております。私はけっこうだと思うのです。外国に勤務する外交官の皆さんに不自由をさせないよう、納税者としてはできるだけのことはしたい、こういう気持ちはあるんですね。そうしておそらく外務省にはりっぱな外交官がたくさんいる。しかしその外務省のすぐれた外交たちが、実に四分の一世紀の長きにわたって、ジェット機で二時間のところにただの一人も政府を代表して使いをしない。この事実については私はやはり国民の糾弾は免れないと思うのです。それは国際関係ですからいろいろな問題もありましょう。いままで歴代の政府がやってまいりましたことがすべて悪かったとは申しません。しかしながら、もうすでに終戦以来二十五年たって、しかもなおこの状態が続いておるということは、これはもう日本の国にとっては何にも増しての悲劇だといわなければなりません。しかも相次いで問題の出てくる中で、このアプローチの方法さえも見つけ出すことができない。そういうことならば、在外勤務の公務員の人たちにこれ以上給与をふやしてやらなくたっていいじゃないかという声さえ出てくるかもわかりません。給与の問題はともかく、私はほんとうにそういう感じがするわけであります。ですから問題が困難なのはわかっておりますけれども、この困難な問題に、やはり避けないで入っていくという努力が、私は外務省の仕事だと思うのです。日の当たる場所だけに何か回っているというだけでは困るわけです。ですから、私はあえて問いたいわけですけれども、一体この多数のすぐれた外務省外交官の中に何人かでも中国の問題についてからだを張ってでもやろうという気骨のある人はいないのか、あらためてやはり問いたいと思うのです。それは双方だとおっしゃいましたけれども、土下座外交をやれというわけではありません。それだけの熱意がありまた信条があるならば、私は外交官の真骨頂を中国問題で示してもらいたいと思うのです。それがないのがはなはだ残念だと思うのですが、佐藤内閣も北京によって批判をされました。しかしながらそれが曲解であり誤解であるというならば、私は外務大臣もこれは誤解であるといって乗り込んでいくだけの道を見出す努力を少なくともしてもらいたいと思いますけれども、いかがでしょう。
  52. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 非常に建設的な御激励のことばを含めて御質疑をいただいて、その点は感謝申し上げるわけでございますが、私から申せば、中国問題というのは先ほど来申しておりますように、やはり相手のあることでございまして、こちらだけが一人芝居をして、そして向こうの言うことだけに耳をかすわけにはまいりませんし、現に大使級接触ということについても、私といたしましてはずいぶん知恵をしぼり、また行動の上においてもだいぶくふうはこらしておるわけでございますが、現在のところ、これといって申し上げるような結果が出ていないことは、私も残念に思っております。要するに政治的な問題の話し合いというのは政府機関でなければいけないと私は思うのでございまして、そういう点においてこの複雑な国際情勢の中で国益を守って接触すべきところに接触し主張すべきことを主張するということについては、この上ともにできるだけの努力を払うことは当然のわれわれの職務である、かように考えておりますが、同時に先ほど来申し上げておりますように、これは相当時間のかかることである。これまでの経過が長かっただけに、一ぺんで百八十度にどうということはなかなか期待のできないことである。最近の先方の態度によってまた少しこれは問題がむずかしくなってきたなというような感じがぬぐい得ないわけでございますが、私どもは売りことばに買いことばということでなくて、当方の主義、信条については相互内政不干渉、そっちのほうが内閣をかえてこなければいけないとか、そっちのほうがすでにできている安保条約を廃棄してこなければ出てこないとか、そういうことではそれこそ相互の立場を信頼しながら世界の平和のために貢献しようということが、どうもこちらも納得し得ないわけでございますが、どうもこういうふうな複雑な状況でございますから、相当の時間をかしていただくことが必要ではないか、かように考えているわけでございます。御趣旨あるいはお考えになっているお気持ちは私も十分理解できますことを、重ねて申し上げます。
  53. 木原実

    ○木原委員 それではもう時間がございませんのでこれで終わりますが、最後に一つだけ別の問題でお尋ねしておきたいと思います。  新聞報道によりますと、メコン川で日本の船舶が銃撃を受けた、こういうような報道があるわけであります。たいへんあの地域情勢はこんとんとしておるわけでありますけれども政府としましては日本の船舶あるいは在留邦人等に対する安全の措置ないしはこれからのそれらについての対策、何かお考えでございましょうか。
  54. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 特にごく最近の状況から見ますと、カンボジアの情勢が非常に憂慮すべき状況になっておるように見受けているわけでございまして、これは日本のみならず関係国も非常に心配いたしております。同時に該地域の邦人在住者も相当おりますけれども、この安全につきましては十分と思われる措置を講じておるわけでございまして、在留邦人についてはいまのところ心配はないと思っております。ただ、ただいま御指摘のございましたような船が攻撃を受けたというようなことにつきましては、適切な措置を早急に考えていきたいと思っております。
  55. 木原実

    ○木原委員 これで終わります。
  56. 天野公義

    天野委員長 加藤陽三君。
  57. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 外務大臣に事前協議の問題で少しお尋ねしたいと思います。  まず第一は、事前協議と国連協力の問題でございますが、昨年の十一月の共同声明で、朝鮮半島及び台湾の問題が日本の安全に非常に関係があるとおっしゃったことには私は同感でございます。と同時に、今国会になりましてからもいろいろこの問題が論議されました際に、政府側の答弁といたしまして、国際連合で侵略と認定をした場合には問題なく前向きにすみやかに善処するんだというふうな答弁がなされております。私もこれは国連の加盟国として当然だろうと思うのであります。ただ、国際連合として侵略の認定をするということは、申すまでもないことでありますが、安全保障理事会で中東戦争の場合も、ベトナム戦争の場合もなかなか決議ができない。また一九五〇年の平和に関する統合決議によりましてもなかなかそういう認定は出るのに時間がかかるだろうと思うのであります。  そこで心配と申しますか問題になりますのは、朝鮮における国連軍の問題でございます。この問題につきましても今国会になりまして、ほかの委員会でいろいろ論議をされました。私、ずっと会議録を読んでおったのでありますが、どうも一つはっきりいたしませんので、ぜひ外務大臣の御見解を承りたいと思うのであります。  朝鮮における国際連合軍の職務はどういうことになっておりますか。事務当局の方でけっこうでありますが、お示しをいただきたい。
  58. 井川克一

    ○井川政府委員 在韓国連軍は一九五〇年六月二十七日の安保理事会決議第八三号の勧告によりまして、北鮮からの軍隊による武力攻撃を撃退し、かつ朝鮮における国際の平和と安全を回復するため、国連加盟国が朝鮮に派遣した軍隊で、同年七月七日の安保理事会決議第八四号によって合衆国のもとにある統一司令部の指揮下に置かれたものであります。しかしその後休戦協定ができまして、現在毎年採択されておりまする総会決議にございますとおり、在韓国連軍の現在の目的は、この地域の平和と安全を確保することを唯一の目的として駐留しているものでございます。
  59. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 ありがとうございました。朝鮮における平和と安全の確保ということが在韓国連軍の一つの職務、こういうことになっておりまして、もし朝鮮半島において問題が起こった場合は、やはり問題の解決は在韓国連軍の当然の職務の範囲に入る、こう考えていいのではないかと思うのであります。そうしますと、もし朝鮮における国連軍の要請によって、日本基地から米軍が戦闘作戦行動に出動するということは、政府のお考えでは、国際連合で侵略と認定した場合に該当するのでしょうか。これをひとつお尋ねしたいのです。
  60. 井川克一

    ○井川政府委員 あるいは私、御質問がはっきりわからなかったかもしれませんけれども国際連合安全保障理事会あるいは総会において認定がある前の行動でございますか。
  61. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 そうでございます。
  62. 井川克一

    ○井川政府委員 ある前の行動でございますから、一般的にはそれが認定があったとはいえないと思います。ただ、先ほど申し上げましたように、国際連合軍、国連軍というものは、国連の決議に基づきまして駐在し、現在におきましても、総会の決議の使命を持って駐留している軍隊でございます。その点におきまして特殊性があると思います。
  63. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 お尋ねいたしておりますのは、そういう任務の特殊性はあると思うのですが、現在までの国際連合の安全保障理事会なり総会の決議があるかどうか知りませんけれども、その決議の範囲内において、現在の国際連合の決定の範囲内において、在韓国連軍が朝鮮の平和と安全について責任を持っておるとすれば、在韓の国連軍の司令官の要請というものは、これはすなわち政府でおっしゃっておる国際連合が侵略と認定した場合というのに該当するかどうかというお尋ねでございます。
  64. 井川克一

    ○井川政府委員 直接お答えする前に申し上げなければなりませんのは、先ほど来申し上げておりますとおり、国連軍は国連の決議に基づいて使命を有して駐留している軍隊でございます。ただ、御存じのとおり休戦協定というものができまして、したがいまして休戦協定下にある軍隊でございます。ただ、しかしながらこの休戦協定を無視しあるいは休戦協定の範囲で処置できないような大規模な再侵略というふうなものがございましたときに、しからばこの国連軍が国連の認定があるまで、そのような大規模な再侵略というものは現在の事態を全く引っくり返すような事態でありますので、この国連軍の行動につきまして、やはり国連といたしまして、新しい事態に処しまして、何らかの決定なり決議、勧告を行なうものと考えております。けれどもしかし、その間にかかる使命を持った国連軍が何らの措置をとれないということは全くあり得ない。国連軍といたしまして、平和と安全を維持するためにおるのでございますから、それが休戦協定を無視し、これを根底から引っくり返すような侵略行為があった場合に、これに対する反撃というものができるというふうにわれわれは考えております。この行動は認定の問題ではなくて、やはりこの反撃の行動は国連軍の行動とわれわれは理解しております。
  65. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 私がお尋ねしたいのはまさにそこなんです。そこのところをいままでの政府の御答弁では、いわゆる国際連合が侵略と認定した場合というふうなカテゴリーに入れてお考えになるのだろうかどうかということなんです。新たに決定があればこれは問題ないと思います。しかし、いまのきめられた職務の範囲内でも、おっしゃったような事態は私は起こり得ると思うのです。これは法律的にですよ。現実に起こるかどうかは別にして、法律的に考えましたら、条約的に考えたら起こり得ると思うのです。その辺が国民としてやはり聞きたいところなんですが、お答えできないでしょうか。
  66. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いまの御質問につきましては、私予算委員会その他の委員会でも従来お答えしておるところと、これから申し上げることとは違いはないつもりでございますけれども、いま条約局長から申し上げましたように、休戦協定によって国連軍の職務というもの、任務というものが国連の決議のワクの中でさらに明確にされておりますから、今度は観念的な想定の問題でありますけれども、休戦協定が予想しないような大規模な、組織的な侵略行動がかかってきたような場合に、大事をとれば国連の総会なりあるいは安保理事会なりの決議を求めるのが筋かもしれませんけれども、そういったような全く予想しないような大規模な、組織的な、計画的な大攻撃にさらされたような場合に、国連軍としては本来持っている国連軍の使命からいって、これを追い払うということは——国連憲章全体の規定あるいは精神からいって拱手傍観するわけにはいかない、またそうしてはいけないということが趣旨であろうかと思います。私がいままでお答えいたしておりますのはそういう趣旨でございます。  そして、そうしたような大規模の計画的な、組織的な攻撃というようなことが起こって、そうして休戦協定の全く予想しなかったような事態が起こったということをかりに想定してみれば、これは相当の大動乱といわざるを得ない場合があり得る。そうすれば一衣帯水の日本の安全に直接関連して考えなければならない。そこで国益を中心とした日本政府としての主体的判断の対象になる問題があり得る。その場合に日本政府としてのとるべき態度というものは、国連の使命ということももちろんでございましょうが、日本の国益ということからいって、その際とるべき措置というものは考えておかなければなるまい。これがこの問題に関連した問題に対する政府態度である。この点を従来申し上げておったつもりでございます。
  67. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 いまの外務大臣のお答えで私了承するものであります。ただほかの答弁で、国連が侵略と認定した場合は問題なく肯定的な回答を出すようなお答えがありましたものですから、朝鮮半島におけるいまのような在韓国連軍の行動に対しては、どういうふうなことになるのだろうかということを実は疑問に思っておったような次第でございます。よくわかりました。  それに関連して次にお伺いしたいのは、やはり私も役人の経験がございますけれどもアメリカと非常に緊密な関係を持っておりますが、お互いの国の間では、自分の国に不利益なような情報を流さないのですね。事前協議でもするような場合に、アメリカ側から出てきます情報というものは、もちろんアメリカ側で得た情報をもとにして日本政府に要請するわけでございますが、その際に日本政府として独自の判断が十分できるだけの情報活動と申しますか、資料の収集というものが現在の外務省でできていらっしゃるだろうと思うのでありますが、その点問題ないだろうかということがちょっと気になってきたのでございますが、先日防衛庁法案審議の際に伺いましたところが、防衛駐在官というものが何カ国かに出ていらっしゃいます。私から言わせれば少ないと思うのです。経済問題その他につきましてはある程度どんな方が行かれても——どんな方といってはなんですが、普通の外務省の方でおわかりになろうと思うのですが、軍隊の指揮とかあるいは練度とか装備もそうでございますが、これは専門家でないとわからないと思うのですね。日本政府としては、確実な日本の国益の上に立って判断をするために、アメリカの情報だけにとらわれない確実な情報をぜひ入手をしていただくようにしていただきたいと思うのであります。防衛駐在官をもう少し増強するというふうな点につきましては、どういうふうにお考えでございましょうか。
  68. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは全くごもっともな御指摘でございまして、結論として防衛駐在官という制度は拡充したいと考えております。予算とか、人事とかの都合で従来思うにまかせなかったわけでございますが、今後できるだけ努力をいたしたいと思っております。  なお、御承知のように、私は率直に言って事前協議の問題が、具体的な直面する問題として出てくることは、まずあり得ない、こういう想定に立っておりますから、それに関連して申し上げるわけではございませんけれども、やはり全般的に情勢の分析や判断というものが非常に必要であるということは、痛切に感じておりますので、この第三次佐藤内閣になりましてから外交防衛連絡協議会というものをつくりまして、まず大臣間の情勢分析それから政治的な考え方、あるいは外交的な考え方というものと、防衛庁で考えていただくこととの意思疎通を常に緊密にはかっておくことが、どうしても必要であると考えまして、何回かいたしておりますけれども、相当効果があるように私は思います。  同時に、実はその席で防衛庁長官からも非常な御要請があったわけで、これも実施に移しましたけれども、在外からのこういう種類の情報については、できるだけ早く長官のところにインフォームするように、従来多少事務的に考え過ぎておそくなったことや、あるいは伝達漏れもあったようでございますから、相互の連絡、通報というものを非常に的確に平素からやっておく必要がある。こういうことで、まだもちろん十分とはまいりませんけれども、取り上げる姿勢としては、そういう姿勢で前向きに、的確にやれるように段取りをようやくつくり始めたような次第でございます。
  69. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 よく了解いたしました。情報活動のことでございますが、私は何と言いましても、日本外交は的確な資料の上に基づいた外交を進めなければならない。そのためには相当多くの予算を情報収集に使われましても、国民反対しない、日本の国益に合致することなら反対しないと私は思うのでございます。いまの外交防衛連絡協議会でございますが、これは私非常にけっこうなことだと思うのでございます。外務大臣は事前協議が起こる場合は、あまり想定していらっしゃらないようなお答えでございましたけれども、そうなれば非常にけっこうだと思います。しかしながらああいう制度があります以上は、事前協議が起こる場合もやはり考えていただかなければいけないと思うのでございますが、その場合に事前協議に対する回答は、これはもう急速になされなければならないことは当然でございますが、私の承知しておる限り、閣議で御決定なさるのだろうと思います。しかし閣議にかけるといいましても、関係の閣僚の方々がよく軍事情勢についての分析をしていらっしゃいませんと、ほんとうに皆さん納得した政府意思の決定ができるだろうかということを心配するわけでございます。国防会議というものもございますけれども、伺ってみますと、あまり開かれていらっしゃらない。外交防衛閣僚会議もけっこうでございますが、事前協議のような問題になりますと、やはり大蔵大臣だとか、あるいは治安担当の大臣とか、こういう方々もその協議に参画し、十分腹に入れられなければならないのではないかと思うのでございます。せっかく国防会議という機関もあることでございますから、ぜひ国防会議を活用して、軍事情勢についてお互いの意思の疎通をはかっていただきたいと私は思うのであります。  もう少し進んで申し上げますと、図上演習というようなことをよく防衛庁でやっておりました。いまでもやっておると思います。私は、これは非常に効果があると思うのでありまして、こういう国際情勢のもとにおいては、あるいは軍事情勢のもとにおいては、どういうふうに日本政府として対処すべきかというふうなことを、これは国防会議でも中心にして、私は援助でもなさることが必要ではないかと思うのであります。  大体、私の疑問といたしました点は、これで解けましたので、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  70. 天野公義

    天野委員長 伊藤惣助丸君。
  71. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 私は、時間がありますれば、報償費の問題について詳しく質問をしたいと思うのでありますが、時間もございませんので、先ほど来から、るる各委員の方々が質問をしております中で、人工衛星の問題がございました。そして情報収集のお話もございました。そういったことについて二、三質問をしたいと思います。  北京放送は二十四日、中国で初めての人工衛星を打ち上げた、また、その成功を報道しております。このことは、アメリカ、ソ連、フラン入そして日本と、自国の開発によって打ち上げた国としては五番目でございますが、もうすでに中国は核の実験については何回かやってきておりまして、問題はミサイルの開発だと、このように最近いわれてきておりました。そしてそのミサイルというのは、中距離から長距離弾道弾、こういうふうに発達をし、そしてそのミサイルの開発がいつできるのかということによって世界の軍備の態勢が変わる、このようにいわれてきておったわけでありますが、今回の人工衛星の打ち上げによって世界各国、特に日本に与える政治的、心理的影響は非常に大きいと思うわけであります。先ほど外務大臣は、その人工衛星が平和のために活用されることを望むというようなお話がありましたが、こういった人工衛星の打ち上げ成功について、国際政治への影響がきわめて大きいと思いますが、外務大臣はどのように評価なさっておるのか、その点まず伺いたいと思います。
  72. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私は、先ほど木原さんの御質疑にお答えした程度以上に申し上げることはないのでございますが、要するに中共としては、かねてからこの方面に対して非常な努力を払っておった。そしてあるいは世界的に、一般に予想しておったよりは意外に早く成功の段階に入るのではないかというふうに見ておったわけでございますが、はたせるかな、今回人工衛星の打ち上げに成功いたしました。それからICBMの開発にも非常な努力をしておるわけでありまして、もう昨年中にもICBMの最初の実験を行なうのではないかと考えておったわけでございますが、その実験をする場合においては、たとえばこれは想像の問題ですけれども、太平洋とか、あるいはインド洋に向けて発射することになるのではないだろうか、その場合には、これは相当国際的な何といいますか、衝撃を与える問題である。そこで、それらについても、いろいろの考え方があったのではないかと思いますが、それよりも、むしろ今回人工衛星をまず打ち上げたということに理解されるのではなかろうかと、これは相当の想像を含めての観測でございます。  ただ、こうしたように観測をしてみれば、人工衛星打ち上げというものは、やはりICBM開発計画の一環として行なわれた、こういうふうに見るのが自然ではないだろうか。そこで、そうだとすると、軍事的脅威というふうに、日本はともかくとして周辺の諸国も関心を持たざるを得ないであろうから、そうした威嚇手段、これを背景にした外交の展開というふうにならないように、中共のためにも、平和愛好国ということを国是としておるに違いないですから、そこでそういうふうにならないように、これからの姿勢や対策をとってもらいたい。ついては、先ほど申しましたようにたとえば核拡散防止条約、この機構のほうに入るというようなことも考えてほしいものだ、こういうふうにいま私は考えているわけであります。
  73. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 新聞報道にもございますように、現在ウイーンにおいて米ソのSALT、すなわち戦略兵器制限交渉が行なわれております。そういった時期だけに、中国の人工衛星の問題は、核ミサイル能力の、言うならば一つは実証ともいうべき実験が行なわれたわけでありまして、非常にその意義は大きいと思うわけであります。ただいま大臣からもお話がございましたように、その評価を伺って思いますことは、これからのわが国外交がいかに重要な役割りを持つか、また、ただ単に中国を脅威と感じて、現在の軍事偏重の防衛計画をさらに飛躍的に推進しようとするのか、あるいはまたそうではなくて、近隣諸国、またアメリカでさえも日本の国が軍国主義が復活されるのではないかといわれるようなそういう誤解を解くためにも、もう少し軍事関係の予算については修正といいますか、あるいはまた四次防、五次防の計画についても考えなければならぬのじゃないか、私どもはそう思うわけですが、今後のわが国外交政策についてはどういうふうに考えておられるか、この点についてもあわせてお聞きしたい。
  74. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 外交防衛というものが車の両輪として動いていかなければならないということを私は基本的に考えておる次第でございます。中共の今回のこの挙については、いま私申し上げたような希望を含めた観測をしているわけでございますが、これはしかし私の一方的な希望を含めての観測でございます。日本はともかくと申しましたけれども、やはり近隣の諸国はもちろんのこと、世界的にも一つの新しい事実として注目されるのは当然であろうと思います。そういうときに、かりに脅威が出てきたという見方をとる場合に、それならこちらは自主防衛も何もほったらかして、あるいは安保条約を廃棄してしまう、そういう発想をとるのは私は逆ではないだろうかと思うのです。やはり現実にSALT交渉の背景あるいはヨーロッパにおいても東西間のいろんな接触が行なわれておりますけれども、やはり自国の安全ということ、かっちりした備えを持って、その上で紛争が起こらないように、あるいは緊張を緩和していくようにというのが真の政治家のとるべきかまえ方であると私は思うのでございまして、中共が人工衛星を上げた、ICBMの力も相当持ってきたようだということにおいて、日本が現在の自主防衛は多過ぎるというふうな考え方に立つというのは、私は、ことばを返すようですが、いかがかと考えるわけでございまして、もう少し堅実に、そしてほんとうに国民の安全ということを考えながら、そして外交防衛というものを車の両輪の上に乗せて堅実な政策をとっていくことこそ、まさに必要だということが、今日の見解であってしかるべきではないかと私は思うのであります。ただ誤解を受けてはいけませんが、私は、中国の核の戦力の開発というのが、日本に向けて、日本を攻撃するためだというふうに観測しているわけでは毛頭ございません。この点は誤解のないようにお願いいたします。
  75. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 大臣の答弁を聞いていろいろ私も感ずるところがございますが、いずれにしても中国はあの覚え書き交渉のとき政治会談コミュニケの中で、日本は軍国主義が復活した、あるいはまた沖繩返還が行なわれても本土の沖繩化であるというようなことから、きわめて強い姿勢佐藤内閣を批判しているわけでございますけれども、私は大臣のいまの答弁を聞いた上でも思うことは、自国の安全についてはある程度というか、大臣のおっしゃるように、現在のとっておる政策が当然であるようなお話でございますが、私は、こういった中で大事なことは、やはり何といっても外交であると、その外交を行なう場合にでも誤解を受けるような、あるいはまたそういうような発言があったときには、前向き、積極的にその外交を展開すべきではないかと思うわけであります。たとえば具体的に大使級の会談をやりたいというならば、いつどこでやろうとしておるのか、あるいはまたそういった安全保障を考える場合には、現在のような武力を中心とした軍事力偏重のような外交政策であってはならぬと私は思うわけであります。特に大事なことは、外交そして経済そして文化、そういった総合力の中で初めて自国の安全保障もまた世界の安全保障もはかるべきではないか、こう私は思っております。  そこで、そういったことからも私は、日中打開のための早急な会談あるいは大使級の会談を開くならば、今国会終了後でも何らかのルートを通じても行なうべきではないかと思うわけです。その点について大臣に伺いたい。
  76. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 日中の大使級会談については、いついかなる場所でもこちらはよろしいということで接触をいたしております。  それから外交政策が大事であるということはお話のとおりでありますけれども、しかし私は何といっても、今度のこの共同声明に盛られている考え方は、先ほど申しましたように誤解ということなんかの程度ではない、それ以上の問題だと私は理解しております。そういう点できわめて複雑で、同時にこちらもほんとうにいろいろのことを想定し、あるいは分析しながら、日本としての自主的な国益を守る立場ということ、これが非常に大事なことではないかと思います。何でも言うことを聞いて、どこへでも頭を下げるというのならば、ある意味でこんなにやさしいことはないかと思います、それで国益が守れるのであるならば。私はあえてこう申し上げて私の気持ちを明らかにいたしたいと思います。
  77. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 時間がございませんので、次回にまた質問させていただきます。
  78. 天野公義

    天野委員長 午後二時より委員会を再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五十九分休憩      ————◇—————    午後二時十九分開議
  79. 天野公義

    天野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  運輸省設置法等の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横路孝弘君。
  80. 横路孝弘

    ○横路委員 本日は、運輸省の設置法改正案に関連いたしまして、航空行政と陸運行政についてお尋ねをしたいと思いますけれども、その前に、今回この設置法で出ております海運局船舶整備公団監理官の廃止など、一連の法律職の廃止についてなんですけれども、運輸行政改革による機構の整備であるというふうにいわれておりますが、運輸省における新しい行政改革の方向について、基本的な姿勢というものを最初に運輸大臣から明らかにしていただきたいと思います。
  81. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 お答え申し上げます。  運輸省といたしましては、実は今後三カ年間で行政改革を行なおうということで、四十三年に政務次官を行政刷新本部長といたしまして行政刷新本部というものを省内につくりまして、われわれ局長クラスを部員にいたしまして、全省をあげまして検討いたしました。なお、部外から学者先生も参加していただきまして、運輸省の行政のいくべき姿はいかなるものかということにつきまして御議論いただきました結果の一部が今回の設置法の改正に入っておるわけでございます。  全般的に申し上げますと、お手元にお配りいたしました提案理由の中にございますように、いままで運輸省は、ややもいたしますると、要するに許認可行政に片寄り過ぎていたのではないだろうか、これからは、こういった新しい高度成長の社会あるいは公害あるいは安全あるいは情報化社会、こういったような新しい行政需要に応じた行政方針というものでいくべきではないだろうか、許認可行政ばかりに力を注いでいるうちに、そういった面からの措置がおくれるのではないかという反省をいたしました結果が、要するに、しからば政策の企画立案機能というものを充実していこうではないかということがまず第一の点でございます。これはやはり各局にそれぞれまたがっております各種の行政を、総体的にものを見る、あるいは横のほうからものを見るということで、そういった意味での政策の立案、そういった機能を充実していこうということで、官房にいわゆる企画部門というものを充実いたしまして、そこに政策計画官というものを八名ということで、そういうスタッフ組織でもって総合的に問題を取り上げていこうということがまず第一点でございます。  それから第二番目には、それがためにはやはり各局限りの審議会ではだめではないかということでございまして、このたびの改正案にございますように、運輸政策審議会あるいは運輸技術審議会、こういった大きな立場からものを見る、そういった審議会をつくって、それらの御意見を聞きながらやっていきたいということでございます。それが第二点でございます。  それからその次には、やはり安全、公害という問題、それから新しい社会開発の問題もございますので、特に陸上の安全問題につきましては、いままで手ぬるかったのではないかということで、このたび新しく交通安全公害研究所というものを新設いたしたいということでありまして、その点につきましての安全公害行政につきましても充実をはかっていきたいという趣旨でございます。  非常に簡単でございますけれども、そういうことでやっていきたいという趣旨でございます。
  82. 横路孝弘

    ○横路委員 そこでいまの陸運事務所なりあるいは航空保安体制なり、これはあとで具体的にお尋ねいたしますけれども、そういう現場を見ますと、やはり一つの不安というものが国民の中にあるのも、これまた現実だろうと思うのです。いまお話がありましたように、許認可を中心とした規制型の行政からいわゆる誘導型の行政に転換していって企画部門を充実させていくのだというのは、最近の経済成長なりそういった意味での社会構造の変化に伴って、確かにそれは重要な考えなければならぬ点だと思うのです。しかし、従来なぜ許認可という規制を用いた行政だったかというと、やはりそれを通して国民と行政との間にある運輸事業者というものを規制手段を用いて監督していくのだ、そのことによって国民の生命なり財産なりを守っていくのだという点に重点があったわけですね。運輸事業あるいは航空事業というものを考えてみますと、やはり国民生活を守る、あるいは生命を守るという観点から、どうしても国の高度の規制下に置いていかなければならぬのじゃないか、その点がやはり一つの不安として、実際おやりになっておられることを見てみますと、感じられるわけなんです。その点についてはどのようにお考えですか。
  83. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 まことにごもっともな御質問でございますが、実は許認可の整理と申しましても、時代に合わないものとか、それからまだ車が非常に少なかったころ、いろいろな規制をしておったということでございまして、そういった新しいモータリゼーションの時代に即応したような、あるいはそれに不必要なもの、そういったような許認可、報告、言ってみればそういったものを整理していきたい。そして、その出た余力でもって新しい行政需要に応じていきたいという趣旨でございまして、決して根本的に、交通事業というような公共性の強い、特に人の生命、財産を預かる、こういった交通事業の監督という点については大筋は通していくという趣旨でございます。そういうことでございます。
  84. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、皆さん方の職場の実態を見てみますと、企画部門を充実させるんだということで、その逆に今度は実施部門を縮小させていく方向にあるのじゃないか。それが先日ここの委員会でも陸運事務所における許認可事務のいろいろな問題をめぐる議論があった一番大きな原因じゃないかと私は思うのです。企画部門を充実させることはけっこうだけれども、それに伴って実施部門を縮小させるということで、はたしてそういった国民の安全を守るという観点からの行政が十分に、そういう考えで行なうことができるかどうか、その辺のところはいかがでございますか。
  85. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 実は定員の問題も、片一方におきまして、各省同一でありますけれども、五%削減という内閣方針がございまして、増員もなかなか思うにまかせないというのは事実であります。また新しい組織をつくるにつきましても、むしろ一昨年行ないましたように、一省一局削減というような非常にきびしい態度内閣ではきめておりますので、なかなかその点各省やりくりがむずかしいというのは事実でございます。われわれといたしましても、たとえば新しい組織をつくるためには、既存のどこかを犠牲にして——犠牲というのはおかしゅうございますけれども、多少どこかをへこましてやっていくということでございまして、そういったやりくりをやりながらやっていかざるを得ないということは、政府全般の姿勢からいえばやむを得ないんじゃなかろうか。その中で私どもやりくりしてやっているわけでございまして、したがいまして、先生のおっしゃったような危惧なきにしもあらずということは事実でございます。しかし、その点は私ども知恵をしぼりまして、いま申しましたように、過去のわれわれの行政を反省いたしまして、時代の変遷に伴わないようなもの、そういったものを漫然と続けていく必要はないんじゃないか。できるだけ早く切って、新しい需要に応じようという努力を続けていきたいということでございまして、そのために国民の皆さんに御迷惑をかけてはいかぬということは重々承知しておりますので、その点につきましては今後とも十分努力を続けていきたいというふうに思っておる次第でございます。
  86. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 関連して私、原則論を申し上げますが、お互いに考えなければならぬこと、政治家及び行政官としても考えなければならぬことは、やはりいかにして能率をあげ、またあまり国がやらなくてもいいものまで国がやっておる、こういう状態は抜本的に考え直す時期ではないのか。なるほど自動車はたくさんふえました。だから、それに比例して人間をふやさなければならぬという考え方はおかしい。そうじゃなくて、当然民間でもやれるべきものは、もちろん国の監督は残しますけれども、そういうような民間でもやれる仕事はできるだけこれを大幅に民間に移すべきである。たとえば、御質問があるでしょうけれども、民間車検について御意見があるようですが、これも技術基準というもの、特に最近のそういった機械技術というものが相当高度な技術基準によってつくられる。そしてこれが、メーカーの監督は通産省でございますから、そこで合格してきたもの、したがって、民間車検というものは、将来四十七年ごろまでには七〇%くらいにふやしていく。なるべく早く全部ふやしたらいいのです。登録事務にしても、ただ登録事務については国家的業務だから登録事務は国がやらなければならぬというものの考え方はおかしい。たとえば、郵政事業にしましてもそうであります。郵政事業は私の所管でありませんけれども、私は個人的見解として、ああいう仕事は何も国営でなければならぬという理由はないのです。信書の秘密というものの考え方、一つの原則から来ておるようでありますけれども、これも郵政省の中で公社案が出ておる。こういうぐあいに国は原則として監督機関である、同時にまた指導機関であり、政策立案機関である。もちろんものによっては自主的にこれをやらなければならぬものもあります。そういう一つの新しい新行政といいますか、新社会構造のあり方に沿うた行政改革というものがなされなければならぬ。そうでないと、いつまでたっても、世間の一部から言われるように、非常にお役人が多過ぎるのではないか。私もある意味では多過ぎると思います。そういう点を改善しなければだめです。幾らやったって、人間は足らない、そういう抜本的なものの考え方によって考えていくということは、私は政党あるいは政治家あるいは行政官庁の責任だろうと思うのです。だからして、それを機械があるけれども、なお人間のほうが正確だなんという考え方でもって人間をよけいよこせという考え方については私は不賛成、根本的に賛成できない。これから御承知のように機械化がどんどん行なわれていく。その場合にもちろん人間は必要であります、人間が機械をつくるのですから。だが、機械で間に合うものまで人間がわざわざやらなくてはならぬという考え方では、これはとても新しい社会への発展はできない、かように考えておるという、先ほどの官房長の意見に加えて私の考えを申し述べたのであります。
  87. 横路孝弘

    ○横路委員 いまの行政の中で許認可事項が多過ぎるというのは、確かにそれはおっしゃるとおりなんです。私も何もいま許認可事務をそのまま守ってやれということではなくて、いままさにお話のあった監督するような体制が十分にできているかどうかということが問題なんです。運輸省のほうの感覚は、たとえば航空行政にしてもあるいは運送事業にしても、結局そのことは事業体がやるのですから、企業体がやるのですから、営利第一主義にどうしてもなるのです。それをどうやって規制して監督するのかというところに、許認可事務を通して監督していこうという点に従来の行政があったわけです。だから何でもかんでも——民間車検の問題はあとで議論いたしますけれども、民間車検の問題だって、では民間に車検を委託する、そしてきちんとやられているかどうかということは、これはやはり運輸省でもって監督しなければならない。いまどんどんふやしているけれども、でははたして民間車検に対する監督が十分に行なわれているかどうか、あとでお尋ねいたしますけれども、実情はほとんど監査も十分に行なわれていない。どんどん民間車検場をふやしているだけなんです。だからこれからの方向としていま一番基本的な方向として運輸省が持っているのは、企画部門を拡大させてそのかわり実施部門を縮小させるという、ただ単純にそういう発想じゃなくて、いまの監督をどういうぐあいにして十分にやる体制をつくるのか。しかも事はほんとうに直接国民生活なり生命なりに関係のあるほんとうに重大な仕事を運輸省というのは監督されているのですから、そこの点が問題だということを私はお尋ねしているわけです。ですから、やはりそうした意味で、新しい監督が十分できるような行政機構の確立あるいは人員の配置、やはり必要なものは必要なものとして、これは要員だって確保しなければならぬと思うのです。その点についてどうですか。
  88. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 もちろん民間車検に対して運輸省は最善の監督をやっております。したがって、民間車検に移したから、これは全然運輸省に責任がないのかというと、監督する責任があります。したがって、監督はもちろんやっております。ただ問題は、横路さんにお聞きしますが、登録事務なんというものは運輸省の中では反対なんです。私の意見では、必ずしも賛成はしておらぬ。私は個人的に言えば、登録事務なんということは、やはりできれば別個の団体をもってやらせてもいいんじゃないか。たとえば船舶のような検査にしましても、進水検査は、先進国は、イギリスでもどこでもそうですけれども、イギリスはロイド協会というものがやっておる、日本でも海事協会というのがやっておる。安全基準というものは国が監督するから安全であるという問題だけではないのです。安全の基準というものをどうきめるかという問題がまず第一。その機械の問題については、それがルーズにきめられて、その監督が十分でない場合において間違いが起こる。そういう意味において、民間車検とかその他民間に譲る場合、機械に対しては、委託されたその団体、協会等は責任を負う体制をつくらなければいかぬ。これは当然だと思うのです。そういうことによっていわゆる監督機構も一方においては拡大をしていく。いわゆる民間の団体なりあるいは協会なり、そういうものにまかし得るものはまかして、やはり国の監督機構を強化する、これは当然なんです。われわれはそういう方針でやっておるのだということで、いわゆる人員の大小はわれわれ問わない。しかし、時代によっては、こういう行政事務がふえてくれば、人間というものは、ある程度はものに対して比例してはふえませんけれども、相当ふえておることは当然です。そういう意味において、やはりこれから行政について抜本的なものの考え方をしなければ、とても新体制には追いつかない。これは横路さんよくおわかりだろうと思うのです。
  89. 天野公義

    天野委員長 横路君、経済企画庁長官が見えましたので……。  伊能繁次郎君。
  90. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 経済企画庁長官はたいへんお忙しくて、時間がないようですから、要点だけをお尋ねいたします。  いま政府は内政上の最も重要な問題の物価についていろいろ御苦労されておると思いますが、私どもが外から拝見しておるところでは——どうも物価問題について詳細にお伺いしたいと思いますが、時間がないものですから、公共料金の問題について主としてお伺いしたいと思うのです。  公共料金といわず、物価全体の問題としては、私ども常にそれぞれの物価間に調和のとれたものでなければならぬ、調和がとれないためにかえって物価の引き上げを助長するような傾向がなしとしない、かように考えるのでありますが、長官の今日までの物価に対する基本的な抑制方策、取り扱いについてのお話をまず伺いたい。
  91. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 物価問題は今日最重点政策の一つになっておりますが、その際に、これは経済全体の一種のバロメーターといいますか、あらゆる経済現象のよってきたるものが一手に集中した問題でありますから、一つ二つの対策をとっただけで解決するものでも、また満足すべきものでもございません。そうして、そうしたたくさんのいろいろな政策というものを実行していく際には、いま伊能さんが御指摘になられましたように、斉合性がやはり大事である。全体としてのバランス、こういうものを考えながらやってまいらなければならない。本来物価現象そのものは、バランスの上に立って行なわれておる現象でございますから、そういう意味において、物価政策の扱いというものは特にその点についてはやはり意を用いなければならぬ。私も全くこの点については御同感でございます。
  92. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 いまの長官のお話を伺ってたいへん意を強うするわけですが、とすると、政府がいわゆる公共料金という名前のもとに抑制措置をとっており、これは私は当然だと思いますが、その公共料金間においても、大臣御指摘の斉合性、調和のとれたものでなければならぬと思うのですが、どうも私どもの見るところでは、その間に調和の常にとれないような形に行政が行なわれておるおそれがある。ことに非常にむずかしいとは存じますが、物価の当面あるいは公共料金の当面の主管省は必ずしも経済企画庁ではないというところでその問題が斉合性に欠ける面がしばしばあると思うのですが、この公共料金に対する斉合性についてどういう措置がとられておるか、お伺いいたします。
  93. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 御存じのように、今日は自由主義の手法をもって経済問題を扱うという大きなたてまえがございます。でございますから、本来はあまり政府は介入してはならないのだ、こういう前提でいろいろな経済政策の運用が行なわれている。そういう際に、物価政策につきましてだけ非常に問題があるということで、ある意味において政府政策的にいろいろと関与する、こういう度合いが一番強くなっております。それだけに、先ほど申し上げました政策に照らしてみても、この関与のしかたをよほど十分な配慮を行ないながらやっていかなければならない、そういうふうに考えております。従来どっちかといいますと、政府の物価政策について公共料金の占める位置というものは、非常に心理的な観点が強くいわれていたように思います。民間がいろいろと政府の行政、政策を見ますときに、政府がまず自分でえりを正すのだ、そういう意味においては公共料金を抑制しなければ、ほかの物価に対していろいろなことを言うことはできないじゃないか。どっちかというと、そういう意味のものの考え方というか、これはある意味においては政策運営上の一つのポイントであろうと思いますけれども、非常にそういう点が強く出ておったように思います。そこで心理的な要素ということで、どっちかというと抑制抑制、こういうことが強く打ち出されてきております。われわれは公共料金についてもちろん抑制策をとるのでありますが、それはあくまでも合理的なものでなければならない。しかし、こういう線は政府も従来からとっておるところでございます。そこいらのかね合いといいますか、調整のしかた、運営のしかた、こういうものはわれわれとしても細心の注意を払ってやっていかなければならぬところであろうか、こういうふうに考えます。
  94. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 佐藤経企庁長官から、たいへんにお話のわかった、ごもっともな御説明をいただいて、われわれ非常に力強く感ずる次第ですが、率直に申し上げますと、過去にはどうもそうなっておらない。民間の公共料金についての規制が非常にきびしい。ところが一たびそれが政府の予算に関係するものであると、きわめて安易な引き上げをお認めになる。たとえば、具体的な例を二つ申し上げましょう。公共料金について二割、二割五分上げるのに、卑近な例でいえば、せんだって三月一日に上がったタクシー料金は八年もかかっております。ところが昨年の暮れに自賠責の保険は、わずかに三カ月か四カ月で二・七二倍というような、ほかのものに比べると十倍に等しいような料金を経済企画庁は平気で御許可になる。またつい最近には、首都高速道路公団のトールレートが百五十円から二百円にきわめて簡単に上げられる。一般の民間のほうは何年も据え置かれるということが、どうも私ども斉合性、公平という点から理解できないのですが、この点はいかがですか。
  95. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 公共料金であるか私的料金であるか、つまり公的なものであるか私的なものであるか、こういうことで区別を行なっておるとは必ずしも私は言えないと思います、いまの御引例の場合は。多少性質の差というようなことももちろんあると思います。御存じのように、政府は新しい六カ年計画におきまして、いわゆる新経済社会発展計画の例をとりましても、一方において物価の安定、物価政策というものを一番重要視しておるのですが、同時に高福祉、高負担ということを打ち出しております。経済が伸びて一人頭の国民所得が伸びてまいるということになった場合においては、福祉政策を実現する過程においてある程度負担が高くなることもやむを得ないという性格を一面御存じのように打ち出しています。保険の問題なんかは、つまりこの社会的な負担の問題に連なる面もございます。これを普通の価格現象としてとらえますか、それともいわゆる高負担という形でとらえますか、まあ両面を持っておるわけでありまして、考えの立て方のなかなかむずかしい問題ではございますが、そういった要素も私は加味されてきておるのではないか、こういうふうに考えております。いずれにしましても、同じような性格のものについて、それが私的なものであるからきびしく、公的なものだからゆるやかにやるというようなことは、これは政府としても考えてはならないことでございます。いま御趣旨の、基本的な原則についてはそういう意味で私たちも十分承知しておるつもりでございますから、今後の運用にあたっても十分その点を留意していきたい、こういうふうに考えております。
  96. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 実は、私は本委員会において自賠責保険は公共料金であるかどうかということをお尋ねをしました。経済企画庁からは公共料金であるというお答えがあったわけです。したがって、この問題についていまお尋ねをしたわけですが、首都高速道路公団のごときは明らかに公共料金です。それらのものがきわめて安易に引き上げをされる。しかも自賠責のごときは二・七二倍、この問題については、わが党だけでなく各党で取り上げ、とりあえずことしは二倍以上に上げてはならぬ、そうして自賠責保険の抜本的な内容の検討を行なった上であとの処理をすべきである、法律改正を必要とするものなら法律改正をすべしというようなことで、とりあえず二倍ということになったのですが、どうも政府の財政負担に直接影響のあるものは二倍だ、二倍半だとかってに安易に上げる。しかも私が最も奇異に感ずるのは、交通関係の公共料金です。御承知のように、交通というのは運輸省の所管で、交通の実態は運賃に対する政策と輸送の管理政策と二つに分かれる。輸送は安全と正確と迅速、この三つのことが行政上政策の中に盛り込まれなければいけない。その基準はそれをまかなう運賃で、運賃が適正でなければ輸送の安全も正確も迅速も期せられません。ところが、具体的な例を申し上げましょう。国有鉄道の運賃は四十三年、四十四年と二度続けて上げておる。地方鉄道の大手十三社の運賃は、四十三年に政府に引き上げ方をお願いしても全然上げない。これが交通政策上、御承知のように道路運送法に、これは地方鉄道にも同様な条項がありますが、はっきり書いてある。道路運送法第八条「自動車運送事業者は、旅客又は貨物の運賃その他運輸に関する料金を定め、運輸大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様とする。」第二項「運輸大臣は、前項の認可をしようとするときは、左の基準によって、これをしなければならない。一 能率的な経営の下における適正な原価を償い、且つ、適正な利潤を含むものであること。二 特定の旅客又は荷主に対し不当な差別的取扱をするものでないこと。三 旅客又は貨物の運賃及び料金を負担する能力にかんがみ、旅客又は荷主が当該事業を利用することを困難にするおそれがないものであること。四他の自動車運送事業者との間に不当な競争をひきおこすこととなるおそれがないものであること。五 運賃及び料金が対距離制による場合であって、運輸大臣がその算定の基礎となる距離を定めたときは、これによるものであること。」云々とあります。ところが、経済企画庁の運輸省に対する政府部内の公共料金に対する査定方針は、赤字を出さなければ認可をしない、終始一貫この方針であります。ところが法律にはこんなことは書いてないのです。合理的な経営のもとに適正な利潤を与えるものでなければならないと書いてある。しかるに、一方においては輸送管理政策において政府は、地方鉄道の大手十三社に対して三回にわたって輸送の整備計画を指示しておる。現在行なわれておる五カ年計画では四千五百億円もの金がかかる。ところが運賃は二年も三年も据え置いている。しかも財政上の別途な、開銀その他の金融措置等についても何らの措置をしない。これで一体輸送が確保できるかどうか。安全、正確、敏速の輸送が確保できるかどうかという問題、これらの問題については、それは運輸省の所管であると仰せられるかもしれませんが、基本は運賃です。しかも私どもの常識、世界じゅうの常識では、国鉄と民間鉄道いずれが高いのが常識か。一つの例をとってみれば、カナディアン・パシフィックとカナディアン・ナショナル、いかなる場合において・もカナディアン・ナショナルがカナディアン・パシフィックより高かった例はございません。日本においては世界においてただ一つ国鉄が、通勤運賃においても一般の運賃においても、地方鉄道よりはるかに高い。五割以上高い。こういうような現象で公共料金の斉合性が保たれるのかどうか、この点、私はお伺いしたい。
  97. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 まあ私も私鉄の経営の中身については必ずしも十分詳しくございませんが、しかし、いま御指摘のいわゆる原則問題として、私的な企業であるということで同時にあるわけでありますから、料金として公共性が商いという意味で一つのコントロールを受けておりますけれども、しかし、やはりかかったところのコストに適正なる利潤というものを加え、ただしもちろんそれは能率的な経営というものを前提としてでありますけれども、そうした観点から料金はきめられてしかるべきものであるというふうに私も考えております。御指摘の国鉄と私鉄との関係、これにつきましても、私は当然そうした一定のバランスというもの、基準的なものが論理的になければならないともちろん考えております。まああるいは国鉄というものの今日における特殊な事態、こういうようなことからして、こういうことが行なわれるわけです。御存じのいわゆる再建計画というようなことで財政支出も相当に出さなければならない、こういうことでもって、その財源の総合的な計画の一環として国鉄の値上げというものが——まあこれはある意味においては過渡的な措置であろうと思いますが、行なわれたもの、こういうふうに私は理解をしております。しかし、いわゆる原則というものは、あくまで最初申し上げましたように、できるだけこのバランス論、こういうことが基礎になっておるというふうに考えていただいていいと思います。一方において、開銀融資のお話が出ましたけれども、私も率直にいって、交通関係については今日の時代においてもっと新しいそうした方面の投資というものが拡大されてしかるべきものであると思っております。これは運輸当局のこれからの政策運営の問題でありますから、私がすぐ結論的に申し上げるのは不適当であるかもしれませんが、いずれにしましても、そういう問題を含めて今日非常に問題が多いことも私は承知しておるつもりでございます。まあ国鉄の問題だけは、私はそういう意味で臨時過渡的な一種の措置ではなかろうか、こういうふうな感じがしております。  公共料金全体としましては、今日まで約数年ないし十カ年くらいのあれを見ましても、平均では上昇率がほかのものよりも低いのです。そういう点、他の一面として御了解を願いたいと思う次第であります。
  98. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 いま最後に御指摘の公共料金がその公共性にかんがみて他の一般の物価もしくは料金に比較して引き上げの率が低いということも私ども承知しており、また了承しております。それでしかるべきであると思う。しかし、それがバランスがとれないというところに問題があるわけです。たとえば、これは長官は御存じありませんが、バスその他の運賃、料金の問題についても、個々のものについて一々経済企画庁がこれが妥当であるとか妥当でないとかいうようなことを言うのは、行き過ぎではあるまいか。それは運輸省の所管にまかせるべきである。基準として現在のトラック、バスあるいは私鉄の公共料金というものがいかにあるべきだということを示すのは、私どもこれはわかると思いますが、過去においては一つ一つの会社についてやっておる。率直に申し上げて、現在においてもそういう実情にある。そこで私どもは、こういうことは経済企画庁として行き過ぎではなかろうか。したがって、基準の賃率というようなものをつくって、それに適合した場合においては、経済企画庁はこれを了承して、その行政を運輸省にまかせるべきではないかということを提案したところが、経済企画庁はそれを了承して、みずから基準賃率というものをつくりました。ところがそれをつくってもなお個々の会社その他の関係を見て、これはまだ赤字でないから上げられないと、適正利潤を依然として無視をしておる。こういう状態で運輸大臣が一体運輸行政ができるのかどうか。少なくとも私は二十数年運輸行政に関与してきた、しろうとではありません。そういう観点からいけば、運輸大臣は少なくとも行政が非常にしにくい、こういう状況にある。現在においても大臣、そういう状況でやっておられるということを御存じかどうか伺いたい。
  99. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 この点はいわゆる平均的な基準だけで片づけるのがしかるべきか、場合によっては一社ごとのものに立ち入って検討するほうが適当か、これは私は率直に言って企業によってずいぶん立地条件その他いろいろな営業形態、いろいろな条件の差がありますから、それを機械的にやるほうがいいかどうかについては、それは私は問題もあろうかと思います。もちろん行政としてはわりあいに大まかにやることのほうが望ましいことです。しかし、今日、いわゆる物価の問題それからいわゆる経営の問題ということが、これだけぎりぎり問題がせっぱ詰まってきておる際でございますから、それの調整をとりますしかたとして、そのいずれがいいか、まあ私は事態によっては一社ごと、こういうようなことも考えられないことではないと思います。もちろん、この基本は運輸大臣がいわゆる所管でございます。ただ、運輸大臣といえども、今日におきましては、国全体の立場から運輸行政と物価政策の調整をどういうふうにやるか、みずからお考えにならなければならないむずかしい事態に立たされておると思うわけでございます。そしてわれわれがそうしたときにやはり御相談にあずかる、これが企画庁の今日の立場であろうと思います。そういう意味でいわゆる所管大臣としての運輸大臣がこの二つの目的を具体的にどう調整するか、そしてその際の具体的な基準をどういうものをとるか。これはまあ運輸大臣が中心になり、またわれわれとしてももちろん意見を申し上げる、こういうことできまった経緯のものであろうと思います。できれば、できるだけ簡略な方法が望ましいのでありますけれども、なかなかそうも言っておられないというような今日の実情もある程度御了承願えるんじゃなかろうか、こういうふうに考えています。
  100. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 あなた御存じないから、あまり追及をしてもぐあいが悪いと思うのですが、基準賃率というものは、いろいろ検討した結果、経済企画庁みずから採択をされたのです。その基準に適合したものは上げてやるということをはっきりきめたわけです。ところがそれをやらない。依然として個々のものを取り上げたりなんかしている。そうして赤字でなければ上げぬ。法律違反を内々において経済企画庁みずから行なっておる。こういう点に私はいまの公共料金の非常な混乱があると思うのです。さいぜん、自由経済下であるから非常に物価政策は困難だと仰せられました。私もそれは承知しております。したがって、言うのはやめようかと思ったのですが、あえて申し上げたいのは、自由経済下であるからといって、カラーテレビ、トランジスターラジオあるいは自動車、さらに肥料など、外国へ売るものは安くして国内のものは高い、こういう問題について経済企画庁はいわゆる物価の観点から依然として放置をせられ、こういう点は通産省の所管であるから、あるいは農林省の所管であるからということで、常に放置してあるところに国民の納得しないものがあるわけです。しかもいわゆる公共料金という名のもとに一部のものだけを取り上げる。  しからば事務当局に伺いたいと思いますが、いわゆる消費者物価の中に占める公共料金というものは、どの程度のパーセンテージを占めるものか、皆さんの説明は常に非常に少ないものであるということを明らかにしておりますが、その少ないものだけをやいやい取り上げているところに私は物価の斉合性というものが失われておるのではないかと思う。いわゆる消費者物価の中に公共料金というものはどの程度のパーセンテージを占めるのか、お伺いしたい。
  101. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 消費者物価の中で、広義の意味の公共料金が約二〇%です。広義と申しますのは米麦が入ります。それを除きましたいわゆる狭義の公共料金だけをとりますと、約一二、三%でございます。
  102. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 御指摘のとおり一割程度、それにやかましく言って、長きは七年も八年もほったらかし、一方国鉄財政の再建については、これもよくわかっておりますが、国鉄は続けて二度も上げて、私鉄のほうはほったらかしておる。これでは国民はやはり納得しない。しかもそのために輸送の混乱を来たしておる。通勤等において五割以上も安ければ国鉄に乗る人はありません。そのために地方鉄道は非常な負担を受ける。負担を受けるから、どうしても安全、正確、迅速の面で整備しなければならぬ。そのために四千五百億円の新しい整備計画が現に進もうとしておるが進められない。運賃の値上げをしてそれを進めようというのが、四十三年に立てた整備計画の内容なんです。ところが四十三年から上がらない、だから進められないから事故が起こる。一番大事な、交通の基本である安全が阻害される。正確、迅速は二の次、三の次です。そういうことでは全体としての日本の輸送が停滞をするのは決して偶然ではない、かような感じが私はいたします、率直に申し上げて。あるいは言い過ぎかもしれませんが、いわゆる公共料金の名のもとに、輸送機関の犠牲において日本経済の二十数年間の発展がある程度期待されている、かように言っても私は過言でないと思うくらいです。  たとえば、海陸空のこの三つの輸送をごらんを願いたい。昨日は運輸大臣から、海陸空の運輸の仕事は非常に忙しくなって、たいへん活発に、将来性のある事業だからということばがありました。私は、これについては残念ながら異議がある。陸上交通はそうではありません。海と空は戦争が終わったときに壊滅をしました。これを今日の隆昌を来たしたのは何ですか。国の助成です。同時に業界の努力だ。ひとり陸運行政については、国の助成はなくして、国有鉄道をはじめとして今日まで、まだやれる、まだやれるといって、ぞうきんをしぼるようにしぼり抜いたから今日の国有鉄道の困窮を来たし、今日の陸運事業の困窮を来たしておるのです。したがって、財政上の措置その他について運賃を値上げするだけが能でない。海運のように、航空のように、あれだけの助成が陸運事業になされたら、今日の陸運事業の衰退はないと思う。この点について大臣、どうお考えになりますか。
  103. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 これは、いわゆる交通の総合的な政策をどういうふうに立てて実行するか、こういう問題であろうと思います。いま振り返りまして、戦後二十年にわたるところのそのあり方について、必ずしも理想的な姿でなかった、幾多の試行錯誤を経て今日に至った、こういうお説は、私も事実問題として十分起こり得ることであると考えられます。そういう意味においては、今後この交通政策の総合化といいますか、総合性をいかにして確保するかということは、われわれにとっても重要な問題でございます。全総におきましてもあるいは新経済社会発展計画におきましても、やはりそうした観点から問題を扱わなければならないということが今日特にやかましくいわれているのも、そういうことであろうと思います。そういう意味におきまして、過去には多少そういう問題があったんだろうと私も思いますが、今後はひとつできるだけ——そういうことを頭に置いた政策の運営ということは、当然これは考えられなければならない、そういうふうに感じられます。今後の交通需要というものの測定自身もずいぶんむずかしいことでございます。そうしたこととにらみ合わせまして、今後そうした全体的な政策を立ててまいらなければいかぬ、こう思っています。
  104. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 たいへん前向きな御答弁をいただいて、さらにさいぜん財政上の措置ということについては、開銀等の問題についても運輸省と協力して今後できるだけのこともしようというお話で、たいへん私どもも心強く感ずる次第でありますが、現実の問題として、いまの陸運事業どれ一つとして、大臣、まともな事業はありません。タクシーを一つとってごらんなさい。五、六十両くらいの東京のタクシー事業はぼろぼろ、赤字だけでなく、まいってしまって、売りに出ております。しかも今回のタクシーの運賃値上げについても、当然政府がすべきもの、近代化センター等は政府の予算ですべきものであろう。それが運賃値上げの中へそれを織り込んで、業界から大部分の金を出さして、そういうことをやる。実にみみっちい話です。こういうようなことは、来年度は率直に国が陸運行政、ことに大きな都市における市民の足の一つであるタクシー等についても、その健全な育成のためには当然国が出すべき方途を講じていただきたい、かように考えます。またバス、トラック等についても、基準賃率をきめたら、経済企画庁みずからきめたんですから、これをちゃんと厳格に守って、道路運送法第八条にいう適正な利潤、合理的な経営のできるような指導をしていただくんじゃなければ、陸上運送事業というものは数年ならずしてまいってしまうと、はっきり申し上げることができます。現にバス事業のごときは、六〇%が赤字を出しております。詳細な資料が手元に届いて、私ども常に実情を明らかにいたしております。したがって、こういう問題については、適正な措置を——運輸行政プロパーの問題と経済企画庁が物価を押えるという大きな方針に基づく仕事の調和の問題を適正にやっていただかないと、いたずらに事業を殺してしまう結果になり、それが経済の発展に重大な支障を来たすという心配があるから、私は申し上げているわけでございます。鉄監局の民鉄部長が来ておられれば承りたいのですが、大手十三社の運賃については、すでに公示がなされておって、その後何ら措置がされておらない。これについて正規の処理をいつなされるのか、伺いたいと思います。
  105. 佐原亨

    ○佐原説明員 先生のおっしゃるとおり、ことしの一月十三日に運輸大臣から運輸審議会に諮問がなされております。その後の取り運びは、運輸審議会のほうで行なうことでございまして、直接的には鉄道監督局の手を離れておるわけでございますが、いろいろ政治的にも非常に大きな問題でございますので、慎重に取り扱うべく種々検討中でございます。
  106. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 そんな形式的な御答弁をいただこうとは——私も実情はよく存じております。三月も四月も運輸審議会がまだ審議をしないのです。一応の審議が数カ月たったら、なぜ公聴会を開かないのか。
  107. 佐原亨

    ○佐原説明員 審議の行なわれていないということはございません。運輸審議会といたしましては、学者その他一般の評論家を五、六名定期的に呼びまして、意見を聞いております。それからふだん運賃値上げ申請の内容等につきましても、われわれのほうの事務当局から説明をしておる、こういう段階でございます。
  108. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 そうすると、数年間ほったらかしておいたのは、どういうわけですか。
  109. 佐原亨

    ○佐原説明員 前回の値上げが昭和四十一年でございます。その前の値上げが昭和三十七年。大体三年ないし四年の間隔をもちまして、大手の運賃はいままで上げられておりました。したがって、四十一年から四年経過いたしましたことしの一月が、やっと四年経過した時点でございますので、そういったタイミングを見計らって運輸大臣が諮問をした、こういう経過でございます。
  110. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 申請はいつ出されたのですか。
  111. 佐原亨

    ○佐原説明員 申請は、四十三年の十二月から四十四年の一月に出ております。十四社一挙ではございませんで、ばらばらに出ております。
  112. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 国鉄運賃値上げの際に、私鉄については、どういう態度で臨まれたのか、お伺いしたいと思います。
  113. 佐原亨

    ○佐原説明員 前回四十一年度に値上げが行なわれましたときの閣僚協議会の申し合わせ事項の中に、大体大手私鉄の運賃は、四年間は据え置くように努力する、こういう一項目がございまして、その期間経過まで値上げを見送っておった次第でございます。
  114. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 政府部内の決定は、これは別といたしまして、国鉄を上げるときに私鉄も申請をしておられる、そのときに、さいぜん来申し上げておるように、国鉄を上げても私鉄のほうは、運賃に不当な取り扱いができても、上げなくていいのだという根拠を伺っておるわけです。
  115. 佐原亨

    ○佐原説明員 私鉄各社の経営内容をわれわれなりに審査いたしましたが、昭和四十三年に至って、大かたの社が同じでございますけれども、赤字の発生状況に立ち至った、こういうふうに心得ておりますので、それ以前に、国鉄が上がったから必ず私鉄も上げる、こういう態度はとらなかった次第でございます。
  116. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 さいぜん佐藤経済企画庁長官にお尋ねしたときに私が申し上げたのですが、運賃の公平は、対人的にも対物的にも公平でなければならぬ。バランスのとれたものでなければならぬ。ことに国有鉄道と地方鉄道においては、世界じゅうに国有鉄道が地方鉄道よりも高いなんという例は私は知らないのですが、あったら教えていただきたい。
  117. 佐原亨

    ○佐原説明員 私も事こまかいすべてのケースを承知しておりませんけれども、一般的には、先生のおっしゃるような場合が多いと思います。
  118. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 それを承知で国鉄のほうは二度も上げた。財政再建その他の理由はあります。そうすると、私鉄のほうは、四十三年から五カ年計画をつくって四千五百億円の資金を投入しよう、それは運賃の値上げが前提になっておると私は理解しておるのですが、その辺はいかがでしょうか。
  119. 佐原亨

    ○佐原説明員 先生のおっしゃいますように、五カ年計画は、四十二年度を初年度とした五カ年計画でございます。当然大規模な投資を行ないますと、資本費の増高を来たしますので、鉄道経営の非常な圧迫要素になることは明らかでございます。したがいまして、ある時点になれば、当然運賃を上げていただきたいというのがわれわれの気持ちでございます。
  120. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 どうもある時点と言われると、皆さんが五カ年計画に認可を与えたり何かして、非常に責任が不明確になると思うのですが、過去のことは別として、当面二年の間——政府は四年間はやらないのだというのでほったらかしておいて、ことしになってから、一月から運輸審議会におろして、もうすでに四カ月がたとうとしているのに、これを、公聴会もやらなければ、その他の措置もとらないで、運輸審議会の事務として学者を呼んだり、専門家、皆さんの間で審議をしているというのですが、その審議の内容については、民鉄部としては何ら関与しないわけですか。
  121. 佐原亨

    ○佐原説明員 学者、評論家の意見聴取の場合には、われわれのほうの担当課である課長が傍聴しております。それから担当課長といたしまして、ただいま申しました申請内容、経営内容につきまして、運輸審議会に対して説明を行なっております。これは先ほど申し上げたとおりでございます。
  122. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 私は、運輸省としてこの問題をいつまでほったらかしておかれるのか、その点を伺いたい。これは行政上も決して妥当な措置ではない、私はかように思います。現に私鉄の方面では、いろいろな面で支障が出てきている。事故も多い。国鉄が財政再建その他で窮迫していると同じように、私鉄も窮迫していると思います。しかも、それをこうして、いつごろになったらどうするのだというめども何も明示しないで、ただ運輸審議会にまかしてある。それでは私は行政として正しいあり方であるかどうかに多大の疑問を持つのですが、今後の処理を一応念のために伺っておきたい。
  123. 佐原亨

    ○佐原説明員 輸送力増強、運転保安施設のために多大の投資をしなければならない。そのためには経営上赤字発生が予想されますので、運賃は上げる必要があるという判断のもとに運輸大臣としては諮問を行なったわけでございます。  いつと言われましても、ちょっとこの場で私一存で申し上げられませんけれども、なるべく早く値上げをさせていただきたい、このように考えております。
  124. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 どうもそういう御答弁だと、運輸審議会の会長に参考人としてでも来ていただいて実情を伺わなければ、われわれとして納得ができないというかっこうになります。大臣も来ておられるのですが、私どもの希望することは、いい悪いはできるだけ早く処理をして、輸送力の増強に明確な指示を与えることが運輸省の適切な仕事であろうと思います。上げないなら上げない、また別途の財政上の措置をとるならとる、こういう問題について、ただ、じんぜんとして時を過ごし、運輸審議会に籍口していることについては、私どもは納得ができないのですが、もう少し明確に今後どういう処理をするということを、大臣もおられるのですから、ひとつお伺いしたい。
  125. 佐原亨

    ○佐原説明員 五カ年計画の中間年次でございますけれども、経営の圧迫から工事計画がおくれを来たしておるということもまた事実でございます。運賃を担当する運輸省といたしましては、ただいま申しましたように、極力値上げをすみやかに行ないたいという気持ちでやっておりますが、この問題は、御存じのように、物価対策閣僚協の了解事項でもございますので、当面の相手である経済企画庁にも事務的な促進をお願いしたい、こういうように考えております。
  126. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 時間がだんだん迫ってきたので、あんまり同じことを追及しておっても始まらないので、私としては強い希望を申し上げたいと思います。  歴代の経済企画庁長官に、私は二時間もしくは三時間ぐらい公共料金の問題についてお尋ねをしております。残念ながら歴代の経済企画庁長官が、物価、公共料金に対する明確な態度のお示しのないのを非常に遺憾に思う。と同時に、それだけむずかしい問題であろうということは、われわれもわかります。しかし、あくまでも物価、公共料金については、大臣がお話しのごとく、全体の物価の斉合性ということが、物価抑制に一番大切なことです。ところが、事実はそうでない。政府の財政に影響のあるような自賠責は、二倍であろうと二倍半であろうと、三月や四月で上げている。また首都高速道路のごときも、いつの間にか五十円上げる、そういうことが平気で行なわれる。一方長い間苦労をしておる陸上運送事業については、多きは八年、少なくも五年もしくは四年というものを理屈なしに引っぱる。審議をしないでただ押える。その上が、そういう実情ではいかぬから、陸上運送事業、自動車運送事業については、一定の基準を設けて、その基準によって上げるのが妥当であるということを経済企画庁みずからその方針で決定をせられておる。にもかかわらず、それにのっとってやらない。赤字が出るまでは上げないというような理屈のない、率直に言えば理不尽な行政をやられることに、私どもは非常に全体としての斉合性について疑問を持ちます。したがって、例を私鉄運賃にとりましたが、これらの問題は運輸大臣も聞いておられますから、至急この問題は運輸省としては経済企画庁長官、経済閣僚会議等と御協議の上、処理をせられたい。その点について最終的にお答えが願いたい。
  127. 佐原亨

    ○佐原説明員 御指摘のように、いつまでもほっておけない問題だと思います。これから運輸省といたしましては、企画庁のほうへ申し入れをいたしたいと思います。
  128. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 終わります。
  129. 佐藤文生

    佐藤(文)委員 ちょっと関連して長官にお尋ねしますが、首都高速道路が百五十円から二百円になった。その五十円のことについて、なぜ上がったのだろうかという疑惑を大衆が非常に持っておるわけですよ。そのPRが足らないんじゃないかということで、先般運輸大臣に、お上げになる前に大衆への理解の努力が足らないじゃないかということを言ったのですが、これはどういう理由で上がったのか。その使途。大衆の考えているのは、橋と同じように、長く使っているんだから、しかも利用度が高くなっているんだから、年次が重なっていけばいくだけ料金は下がるんじゃなかろうか、こういうぐあいに思っておったのが、逆に三〇%近くぽんと上がってしまったのですから、物価政策について経済企画庁は何しているのだという声が非常に出てきている。どういう理由でこれは上がったのか、長官のお考えをちょっとお聞きしたい。
  130. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 ちょっと政府委員に答弁させます。
  131. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 これは新しい路線が新規に供用されることになりまして、その建設費も含めて計算いたしますと、現行の運賃ではその基準にしております三十年償却ができなくなる。大体三十年償却をもとにしておりますので、そうした計算が基本になって、値上げを私どものほうでも認めたわけでございます。
  132. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 そういう答弁をするから、われわれ黙っておられない。それならほかのものでもそういう事態では上がるわけですか。
  133. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 それぞれの部門につきまして、私どもでは原則として原価をもとにしております。その原価につきましてそれぞれ申請がありましたときに、関係省と打ち合わせて、慎重に検討の上で処理しております。
  134. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 慎重に検討したとは思われませんよ。きわめて短時日の間です。長きは八年もかかる。何カ月検討したのですか。新しい仕事をやるのに、三十年間の償却でぐあいが悪いから、そんななまやさしいことで皆さんは上げるのですか。おかしいじゃないですか。ほかの運送事業の例を見ていただきます。赤字を出してもなかなか、三年も五年も上げない。ところが三十年もたたないのに、償却の上で支障があるからというので上げる。バランスがとれますか、伺いたい。
  135. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 高速道路の場合に、その資金の回転等を勘案いたしまして、その程度を基準にして計算し、有料の料金を取っているというのが適切であるという判断に基づいて処理しております。
  136. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 そうなると、ほかのものは適正でないということですか、上げないのは。
  137. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 先ほども申しましたように、原則としては能率的な経営のもとにおける適正原価、適正利潤を基準にして判断しております。その中身がそれに該当するかどうかを個々のケース、ケースについて慎重に処理してまいっております。
  138. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 ただ一点。首都高速道路公団と民間とを比べて、首都高速道路公団が赤字が出ない。ところが民間は赤字を出しても上げてもらえないのです。赤字が現に出ておる会社がみな皆さんのほうにいっておるはずです。それを皆さんは上げない。ところが政府に予算上負担のかかるものは、自賠責であろうと、首都高速道路の三十年先のものでも上げる。一方は、目先、赤字を出しても上げない。だから私は、公共料金に対する措置がへんぱだと申し上げる。へんぱでないとお考えですか。
  139. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 それぞれのケースにつきまして、私どもは十分その内容を検討し、処理しているつもりであります。
  140. 佐藤文生

    佐藤(文)委員 そうすると、首都高速道路公団が今度二百円に上がりましたね。そうすると、その二百円に上がったのは、将来また首都高速道路公団で新規な高速道路をつくる場合は、また二百円をさらに他のものをつくるために上げていくんだ、こういうぐあいに何年計画でこれを上げていく計画があるのか、その辺がどうも私わからないのですが、何かやはり目標があるのでしょう。七五年にはこういう計画をする、そうすると、二百円に上がったのはまた二百三十円に上げていく、こういうそのときの物価のいろんなバランスを考えないで事業計画をつくっていく、また上げていく、こういうかっこうに料金というものはきめていくのですか。他の物価政策とのバランスをとりながら事業を進展させて計画していくべきではないかと私は思うのに、計画だけ先にいってしまって、そうしてその結果予算がないから二百円を二百五十円に上げていく、あるいは三百円に上げていく。その目標というものは何年計画で上げていくのですか。一体どういう計画なのか、そのところを教えていただきたい。
  141. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 この点につきましては、つまり高速道路の今後の計画あるいはそれの計算の内容につきましては、それを主管する省でプランを立ててまいるかと思います。私どもの考えといたしましては、新しい路線が供用されれば、必ず上げる、上げなければならないというようには必ずしも考えません。その場合に交通量がどうなっていくか。その総合的な計算の結果に基づいて、それをもとにして考えるわけであります。しかし、先ほども原則としてと申しましたが、ただいま御指摘のようにいろいろな諸般の物価政策、そのほか経済情勢をもちろんその場合に勘案いたします。しかし、その原則としては、ただいま申しましたようなことを基準にして考えております。
  142. 佐藤文生

    佐藤(文)委員 長官にお尋ねしますが、私は、物価政策について、経済企画庁が一番中心になって強い権限を持ってやらねばならない時代が来たと思うのです。数年前とはずいぶん違ってきたのです。非常に物価の問題が政治の中心になってきておりますから、そこでこの一つの問題を見て直観したことは、経済企画庁というのは弱いんだな、各省が道路状況あたりを勘案してどんどん計画をつくっていって、そしてどうせ予算が足らない、そうすれば最後は経済企画庁に持っていって、これに判を押せ、じゃしかたがないから判を押す。私は経済企画庁の持っておる弱さというものをまざまざと見せつけられた印象を受けたのです。  これから、関連して、運輸関係とはちょっと別な話なんですけれども、野菜の問題一つとりましても、私は、各省——農林省というのは生産者をしっかり守っていくという立場にいまは立っておると思うのですね。そうすると、最近タマネギの問題が、非常に物価が上がったということで大きく取り上げられていますが、その原因をついてみるというと、あるところにはたくさんあるわけですね。ある地域には非常にない。その間にも輸送力というものは常に考えていかなければならない。そういうところの操作といいますか、物価の面から見た蔬菜を安定させる面から見た強い力というものを経済企画庁は持たなければいかぬと思うのですね。それを持たなければならぬと言いながら、何年もの間持たないままやってきておる。各省の計画の中から常に最後は経済企画庁に判を押せと言われる。野菜というものは自動的に需要供給で上がっていくものだ。それを見たままにしておくというかっこうになっているわけですから、長官としてはこういったような道路公団の使用料の一つの問題、蔬菜、物価の問題を一つとってみても、最近長官になってからどういう強い権限を持つようになったのか。いままでどおりのやり方では、私は根本的にいかないと思うのです。その長官の考え方をひとつ示していただきたい、こう思います。
  143. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 この物価政策について、私もただいまおあずかりしてやはりひとつ非常に問題があるのは、価格政策と受益者負担の調整の問題でございます。いま御指摘にありました高速道路の問題等も、これは実質的には昨年から議論があったそうであります。そういうこともいろいろ経緯があったと思うのでありますが、そうしたことも一面影響しているのじゃないかと私は考えているのです。しかし、いずれにしても、今後の、いままさしく御指摘のように、物価の行政をやっていく上については、先ほど伊能さんから御指摘を受けました斉合性ということは一つの大きなポイントになるわけですから、われわれとしても十分そこらのところを検討する際に慎重でなければならない。  それからまた権限というお話がありましたが、農林省もほんとうは主としては生産者の立場の部局が多いですけれども、たとえば食糧庁一つとっても、あるいは野菜のほうの担当の部局をとりましても、これは生産者だけでなく、流通まで責任に入っているのです。つまり、日本は農民の省である農林省といわゆる食糧供給の責任者としての食糧省というものの性格が一本になりながら、必ずしもそこがまだはっきりと観念が打ち立てられていない。どうもそういうきらいは確かにあります。そこでこの野菜の問題一つをとりましても、率直に言いまして、われわれはただ心配するばかりということも多いのです。しかし同時に、物価政策全体をあずかる立場からは大いに御注文もしなければならないということで、閣僚協議会というような場をつくって、そうしてやることになったのでありますが、ただこの閣僚会議というものが従来どっちかというと公共料金を上げるときの承認機関というような運営のしかたであったように思います。そういう点を脱皮して、そしてとにかくもっと積極的に、たとえばタマネギの場合に台湾から輸入するというときには、閣僚協議会の場を使って、そうしてもっと輸入をしてほしい、こういうような注文までするようなことにだんだんなっていく。私はほんとうは行政というものは簡素をとうとぶのですけれども、物価政策のほうになると、だんだんきめのこまかい話になりまして、事、必ずしも志のようにいかないのは残念なんですが、そういうことでもっと実効性を確保するという点についてやっていかなければならぬ。しかし、今日権限というものが、たとえば野菜に一例をとれば、農林省にある。そこで農林大臣の立場は複雑でありまして、生産者と同時に流通あるいは消費者の立場も考えてもらわなければならない、こういうことになりまして、現に農林大臣も今度はずいぶんその点でも苦心をされたのでありますけれども、そういう意味で二重、三重の立場を持っていますから、それを自分が調整をしなければならぬという立場であります。そしてわれわれはそれを大いに強く要請もし、そうしていままでのようにただ生産者だけではない。それからまたそこで議論になったことは、生産者も実はそれほど手取りがないんだ。それで消費者は高い、その間に何があるんだ、こういうような問題もだんだん、おそまきではありますけれども、真剣な討議が行なわれるようになってきたわけであります。まあそういうことで先般の閣僚協議会においてもそういう議論が大いに出たわけであります。もちろん単なる議論であってはいけないので、それの結論をいままとめているのですが、ひとつできるだけ御趣旨に沿うようなほうに運営が行なわれなければならない。私はいまのところ企画庁の権限が別にふえるからという問題として扱ってはおりません。それは国民消費省とかいろいろな議論もいわゆる行政機構の議論としてはございます、けれども、いますぐ間に合わないし、機構いじりをしてもしかたがない。それよりもむしろその担当省がその気になって、いままで同じ運営をするのでも、まあ物価のほうには率直に言ってあまり認識を十分しなかった。しかし最近こういうふうに問題が強くなってきて、ますますそっちのほうに頭を向けて運用していただく、これはどこでもそうだと思うのです。各種の審議会が各省にありますが、これもやはり消費者、利用者の立場も入れた審議会に今後やっていってもらわなければいかぬ。これが今日の行政の実情だと思います。方向だと思います。御趣旨の点は私たちも大いに努力して、実現をはかっていく方向であろう、こう思っております。
  144. 佐藤文生

    佐藤(文)委員 私は物価政策国際的にいえば日本が必ずしも失敗しているとは思っておりません。近代国家の形をなしている国の間を比較してみても、大体そう失敗しているとは思いませんけれども、過去昭和四十年から四十三年にかけて米が二〇%上がるし、肉が六〇%上がるし、魚が、サバに至っては九〇%上がっていくという実例から見て、蔬菜のほうは上がったり下がったり非常に不安定だ。こういう実態に対してやはり一番勇気を持ってやっていただきたいと思うのは、私は経済企画庁長官だと思うのです。そこで国民も期待しておるし、われわれも期待しておりますので、その付近でやはり勇気をふるって機構改革すべきは改革して、そして定期預金の五・五%の半分ぐらいを目標に、やはり毎年平均をして持っていくぐらいの目標を国民に与えていただかないと、定期預金をすることに不安を持つような時代が来たら、私はどんな政治をしてもだめだと思う。ぜひともひとつ公共料金といわず、あるいは民間の物価といわず、平均して五%以内でおさめていくんだ、理想をいえば三%ぐらいに毎年おさめていく時期が来年来るんだ、再来年来るんだというような目標を私は経済企画庁で与えていただきたい、こういうぐあいに思っております。
  145. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 私自身もそう考えています。一生懸命やりたいと思います。
  146. 横路孝弘

    ○横路委員 先ほどに引き続きお尋ねしたいと思います。  結局、行政機構の改革の中で一番国民が問題にしておるのは、従来もありましたけれども、手抜き行政、生みつ放しであと監督しないという点が一番大きな問題になったわけです。先ほどの大臣の御答弁ですと、中には民間に委託していくのだというようなお話があって、何か車の登録も民間に移したいというようなお話でしたけれども、車の登録ということになりますと、これは家屋や土地の登記と同じように、一つの所有権の公示公告の手段で、所有権の対抗要件というぐあいになっているわけですから、これを簡単に民間に移すことができるかどうか、非常に大きな疑問があるだろうと思う。  そこで、先ほどのお話の中でちょっと気になる点があるわけです。この行政機構の改革というのも、結局五%の定員削減との関係で出てきている問題だろうと思いますけれども、昨年のこの委員会定員法の審議の際にも、佐藤総理大臣のほうから、やはり直接国民の生命の安全に関係のある現場要員については、これを一率五%ということじゃなくて、その必要性に応じてやっていくのだという答弁があったわけでありますけれども、その点を一度確認していただいて、あと具体的な問題に入っていきたいと思います。
  147. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 各省一応原則は五%ということでございますけれども佐藤総理がおっしゃったように、特に安全関係、たとえば運輸省でいいますと、海事職とかあるいは航空の管制員とか気象の観測員とか訓練所の教官とか、そういう特殊な現業業務に携わっておる職員につきましては、五%に対しましてさらに軽減率というものを考慮していただいておりまして、それでもって算定しておるわけであります。たとえば、軽減率につきましても、非常に現業労働の強いものにつきましては、普通の一般職を一としますれば、〇・二、その次くらいのものにつきましては、一般一に対しまして〇・五というふうに換算して軽減していく、これはそういうふうに見ていただいておりますし、私ども自身といたしましても、運輸省の割り当てのいわゆる五%削減の全般の数が千四百名近くありますけれども、これについて、たとえば気象庁なり航空局なりあるいは海上保安庁なりに割り当てする場合でも、そういう軽減率を乗じまして、そういう配慮をもってやっておる。したがって、正確に言えば、五%をずっと割っておりまして、四%足らずではないかというふうに考えておる次第であります。
  148. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで抽象的な議論をしていてもしようがありませんから、具体的な問題についてお尋ねをしていきたいと思いますけれども、その前に航空行政一般について少しお尋ねしたいと思うのです。  昭和四十一年に非常に大きな航空機の事故が相次いで起こりまして、そのときに、運輸省のほうでは非常に精力的にいろいろなことをお考えになられた。たとえば、全日空に対しては、四十一年十二月二十六日に、航空の安全確保のための業務改善勧告についてというのが出されましたし、また四十二年には航空長期計画というのが立てられて、空港整備五カ年計画が閣議決定されて、総額千百五十億円現在実施されておる。しかし、あれから四年たって、実際にたとえば全日空の職場なら職場を見てみますと、あの事故当時のような意気込みで航空の保安というものが基準になって運営されているかどうか、また運輸省のほうでも安全の確保という点を第一にした監督行政が行なわれているのかどうかということを見てみますと、やはり四年間という時間の経過とともに、そこに一つのなれが生じて、非常に危険な実態になりつつあるのじゃないか。特に最近、航空交通の機関の発達というのは非常に目ざましいわけで、たとえば四十三年度の場合、国内線で八百四十四万人、国際線は二百十二万人ということで、この十年間に十倍近くになっているわけですね。しかも、ことしになってからは、パンアメリカン航空の例のジャンボが乗り入れをする、あるいは日本航空でもこの運航を考えておられるようであります。こうした航空輸送の需要というのは非常に増加しているし、また大型化している。それだけに、一たび事故が起きれば、多くの人命が失われるという結果になるわけです。  そこで運輸大臣にお尋ねしたいわけなんですけれども、こうした航空の安全という観点から、どのような基本的な立場に立って民間会社の事業に対する指導というものを現在おやりになっているか、その基本的な姿勢をお尋ねしたいと思います。
  149. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 おっしゃるとおり、航空機の発達は非常な勢いでありまして、ある意味においては追いつかない面も多々あると思います。運輸省としては、そのような事態に備えるために最善の措置は講じておるわけです。  まず第一には、やはり飛行場の整備、これが大事だと思うのです。それと、いわゆる飛行場の近代化装備というものが必要である。同時に、それに従事するところの熟練した監督官あるいは整備員というものが必要だと思うのです。残念ながら、いままでは十分でありませんが、御承知のように、最近滑走路もできるだけ規定どおりの滑走路にもっていくとか、その他の費用をかけてまいっておりますが、発達に十分追いついているかというと、なかなか追いつかない。だからといって飛行機を減らすわけにもいきません。しかしながら、人命尊重のたてまえから、今後航空線の増設等については少しきびしくやっていきたい。そして十分なる操縦士、機関士あるいは機械等を備えない会社に対しては、たとえば増発あるいは増備を希望しても押えていく、人命尊重の立場からこれをやっていきたいと思います。国内航空に対しては、特にその感が深い。国際航空の場合には船にかわるということはなかなか無理ですが、国内航空の場合には、鉄道もあることでありますから、十分な設備なくして無理やりにそれを動かそうということについては、できるだけこれは戒心をしてやっていきたい、かように考えておるわけであります。
  150. 横路孝弘

    ○横路委員 その飛行場の整備等についてはまたあとでお尋ねしたいと思うのですけれども、そうした航空の安全という観点から考えますと、私は最近の民間会社の姿勢も非常に大きな問題があるのじゃないかと思うのです。最近、特に日本航空をはじめとして、相当な黒字を毎年出している。日本航空の場合ですと、昭和四十三年で計上利益が百四十億円以上ということになっているわけですね。これらの黒字というのは、確かに輸送量の増加ということもあるでしょうけれども、しかしそれだけではなくて、その陰で相当無理をした合理化が行なわれているのではないか。安全性を無視した体制がとられつつあるのじゃないかという危惧があるわけです。そしてまた監督行政の基本的な姿勢も、ともかくあの事故の当初は、安全を第一にしようということだった。ところが最近は、経済効率を重視するような立場に変わってきたのじゃないかと思うのです。たとえば先ほどの全日空に対する業務改善勧告の中では、安全第一主義の一そうの徹底として、ともかく定期航空運送事業については安全の確保がすべてに優先するのだ、全日空の措置を見ると、切り詰めたダイヤの編成、運航並びに整備関係の管理部門のスタッフが不足している、したがってこの点について一段の配慮が必要なんだということがこの勧告の内容になっていた。ところが、最近こういう議論がある。安全とコストというもののバランスを考えなければならぬというような議論が、日本航空の中でも、全日空の中でもなされているんですね。つまり、コストとのバランスの中で安全というものを考えようということになっているんです。私は、これはやはり基本的な姿勢の問題として、あの事故のあった直後とはやはりだいぶ変わってきていると思う。たとえば、最近全日空の運航規程の改定案というのが出されている。その中でも、従来の、安全が至上命令だという内容から運航効率という概念、つまり経済性を考えていこう。ですから、もちろん、この安全性の問題、そのほかにも、たとえば定時運航とかあるいは飛行の快適というような問題もあるでしょうけれども、しかし、そういうバランスの中で安全を考えるんじゃなくて、やはり安全性を第一とした運営なり経営なりというもの、皆さん方の立場からいうと、先ほどの路線の認可にあたっては、そういう要員がきちんと確保されているかどうか、やはりそういう点を中心にして、監督官庁の立場からの行政というものを進めていっていただきたいと思うのです。そういう点、最近の日本航空なり全日空の、安全第一主義からだんだん経済的な効率を考えていく、そういった方向姿勢が変わりつつあるという点について、基本的なお考えというものをお伺いしたいと思うのです。
  151. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 おっしゃるように、運輸省としても、安全第一といいますか、安全を優先さしております。  ただ、最近の収入が増加したということは、大体、いままで飛行機の——私もこまかいことはわかりませんけれども、いずれ局長からお答えしましようが、大体、座席の五〇%をもって一つのコストに考える。これがまあ、七〇%になり七五%になれば、それだけ、まるもうけと言っちゃ悪いが、もうかるわけですね。そういう点が大事であって、いわゆる労働時間を延長したり無理にこき使ったり、こういうところからはとても増収は出てこないと思うのです。最近、特に札幌線とか福岡線とかいうような辺は、非常に座席において高能率をあげているわけですね。これは、横路さんお乗りになっているし、よくおわかりだと思うのです。二、三年前と現在とは飛行機の充足率が違ってきている。これは、七五%あるのと五〇%の重みとでは、気をつけなければいけませんことはありますけれども、したがって、もちろん、運輸省としては、十分に安全を保ってもらいたい。また、会社にしてもそうだろうと思うのです。一機間違いが起これば、これはおそらく十億前後の金が飛んじゃうんですから、安全でなくていいわけはないから、安全第一主義でやっていると思いますが、ただ、人間のさがといいますか、情けないことであって、事故が起きてから四、五年も太平だというと、案外気がゆるむという話はあり得ると思いますから、そこで、運輸省としては、常に監督を厳重にし、ちょいちょい監督官も派遣する、あるいは、運輸省に幹部を呼んで、人命尊重といいますか、輸送の安全ということはやかましく言っておりますから、その点については、われわれ十分のことをやっておるつもりです。いまおっしゃったように、人間の気がゆるんじゃ、しょうがない。どんなに人間が多くても、気のゆるみがあったんじゃ、どうもしょうがありませんから、この点は十分に考えなくちゃならぬ。ただ、増収の原因は、何人も人を減らしてよけい飛行機を運航したということじゃなくて、要するに、いわゆる乗客率、だんだんと利用者が多くなってきましたから、そういうところに大きな原因があるのではないか。  こまかい点が必要であれば、座席の充足率等は、航空局長から御説明を申し上げます。
  152. 横路孝弘

    ○横路委員 そういう中で、いま、たとえば全日空なんかの問題を考えて、具体的な例で、はたして皆さん方のほうの監督行政が十分に行なわれているかどうかということについてもお尋ねしていきたいと思うのですけれども、一つは、運航管理体制の問題、もう一つは、整備体制の問題、二つあると思うのですよ。  最初に、運航管理体制の問題なんですけれども、全日空の場合、この業務改善勧告の中で、四つの点をあげて勧告しているのですね。運航管理者を増強してその配置をさらに適性にすること、運行管理者の養成を計画的に行うこと、運行管理者の路線踏査飛行を確実に実施すること、運航管理者不在空港に対する運航管理を強化すること、こういった点を中心にした勧告というのが行なわれているのです。ところが、では、この勧告の内容というのは、あれから四年たって実際に実施されているかどうかということになりますと、これは何も実施されてないのが現状なんです。たとえば運航管理者をきちんと置くべし、あるいは不在空港に対する管理を強化することということがいわれていますけれども、全日空の場合、運航管理者を置いている空港というのは、千歳、東京、名古屋、大阪、福岡、宮崎、鹿児島、熊本だけなんです。このうち宮崎、鹿児島はわずか一人しか置いていませんから、公休で休みになると、あとはだれもそこにいなくなる。では、いないところでどうやっているかということになりますと、全日空の職員でない、代理店契約を結んでいる営業関係の人間に、運航管理者の仕事としてきめられている、たとえば気象の通報なり何なりの仕事というものをさせているのが現状なんですね。だから、四年間たって現在の全日空の状態を見た場合に、運輸省は一体何をやってきたのか、全日空のほうでも一体何をやってきたのかということが当然私は問題になると思うのです。しかもこの運航管理者というのは、国際民間航空条約というのがございますけれども、この中できちんときめられている。日本の国内法の関係でも、国家試験に合格した者だけがそれに従事することができるようになっている。機長が飛行機を飛ばす場合には、その運航管理者の承認がなければならない。そういう重大な職務というのを負っているのです。これがこんなにばらばらに、勧告はきちんと出されていながら、その後そのまま放置されて、いないところもあるし、いるところもある、こういう実情になっているのです。これで一体、航空の安全という観点から行政を行なってきたのかどうか。この現状と、それに対していままでどういう態度をとってきたのかということを明確にしていただきたい。
  153. 川上親人

    ○川上説明員 ただいま先生が御指摘の運航管理体制について、全日空につきまして、昭和四十一年の大事故にかんがみまして、全日空の運航体制強化すべきであるということで、ただいま先生が御列挙になられました各事項についての勧告をいたしているわけでございます。今日まで、その勧告の線に従いまして、航空局もそうでございますが、全日空におきましても鋭意努力をしてまいっておりまして、現在においては、一応私ども、十分な体制が整っていると判断いたしております。  全日空におきましては、東京及び大阪におきまして運航管理の集約を行なっているわけでございます。四月当初の時点におきまして二十九人の運航管理者がおりまして、これが常に二十四時間オールウォッチの体制に入っております。日航におきましても、国内の幹線においての運航管理は東京だけに集約いたしまして、東京で全般的な情報を把握し、電子計算機その他を用いましてその資料を十分に駆使しながら、いま飛ばしていいかどうかの判断を東京において行なうというふうにいたしております。全日空も同様に、東京と大阪に二つのポイントを置きまして、そのほかに、先ほど先生が御列挙になられました各空港におきましての運航管理者あるいは運航補助者というものを、みずからの社員を配置し、または代理店の職員のある者を指定いたしまして、運航管理の教育を実施している。そして、その東京と大阪におります、最終的な判断を下します運航管理者と各ローカル空港にございます管理者あるいは運航管理補助者との関係につきましては、各ローカル空港の管理者ないしは補助者は、気象状態その他を、気象庁その他のデータによってもらいます。これをテレタイプで東京なり大阪なりに送ってくる。そして、その情報に基づきまして、東京と大阪において最終的な判断をする。こういうふうな体制が一応でき上がっているわけでございます。日航、全日空、比較いたしまして、現在その点については遜色のない状態まで来ていると私どもは判断いたしております。
  154. 横路孝弘

    ○横路委員 いま十分だというお話ですけれども、結局ちゃんと試験を通って資格を持った運航管理者というのは、全部の空港に配置されているわけじゃないわけですね。たとえば、北海道の函館には全然いないわけです。だから、飛んでいく前に、東京にいる運航管理者が機長に対して承認のサインをするわけですね。行って戻ってくる往復の飛行について承認を与えているわけでしょう。函館にはいないのですからね。向こうを飛ぶ前に承認を与えるわけはないのです。だから往復の承認を与えているんじゃないですか。
  155. 川上親人

    ○川上説明員 現実にはそうではございませんで、たとえば函館について見ますと、函館にございます運航補助者でございますけれども、運航補助者から空港の状況を詳細に東京のほうに連絡をしてくるわけでございます。東京出発以前に函館における状況というのは一応運航管理者のほうにわかっております。その結果、パイロットと東京における運航管理者とが協議をいたしまして、飛行させるかさせないかの決定をする、こういうことに相なっております。
  156. 横路孝弘

    ○横路委員 全日空の運航規程によれば、こういうぐあいに規定されていますよ。「任務及び責任」というところで、「運航管理者の不在地から出発する航空機に対する運航の承認」というものは運航管理者の仕事になっているのです。実際に私これは全日空の運航管理者の人からつい四、五日前に聞いた話なんです、実際に承認していますと。そしたら函館へ行って、往復の場合、往復ということになると五時間くらいかかるわけですね。行くのに二時間、こっちへ帰ってくるのに二時間で、四時間ないし五時間かかる。そうすると、途中で自分の勤務時間が切れることがあるわけですね。そうすると、それは引き継ぎということになる。しかもあくまでもサインをしたのは最初に飛ぶときにサインした者、それに全部の責任があるのだ。こういうように私のほうでは話を聞いているのです。もしこちらのほうの話がたとえ事実だとしても、函館にいるのはどういう人か。全日空の場合、代理店契約を結んでいる営業関係の人間なんです。これはやはり気象の状況なり何なりの専門的な知識がある者についてだけ運航管理者ということで国際条約にもきめられている。航空法でもそういう規定になっているのです。そんな営業の関係の人間に、これは運航管理ばかりじゃなくて、整備だって同じなんですね。同じ状態にあるんです。それはあとでお尋ねいたしますけれども、営業関係の人間にやらせておいて、はたして十分に気象が——ほんとうにこの日本の上空というのは目まぐるしく変わるのです。そういう変化というものをきちんと掌握して飛行するということがはたしてできるかどうか、私は非常に大きな疑問があるのです。その点いかがですか。
  157. 川上親人

    ○川上説明員 先ほども申し上げましたように、函館空港におきます離発着をさせるかどうか、この決定は東京の運航管理者が行なっております。函館におきます気象状態その他は函館のほうからテレタイプで送られてまいります。それらの状況に基づいて東京におきます全日空の運航管理者がパイロットと協議をいたしまして、その。パイロットとの協議といいますのも、たとえばそのパイロットが函館におります場合、函館のパイロットと東京の運航管理者との間で協議する、こういうかっこうでいくわけでございます。すべての空港にその管理者がおりまして、当該管理者と機長との協議という形は必ずしも必要でないわけでございます。
  158. 横路孝弘

    ○横路委員 運航管理者がいない空港というのは非常に多いわけですね。それが問題なんです。あなたのほうはともかく東京でコントロールしているからいいのだ、こういうことでございますが、たとえば東亜航空なんかの場合、運航管理者のいる飛行場というのはわずか五つだけで、あと十二、三はみんな代理店契約を結んでいる営業関係の人間にやらしています。国内航空の場合も、東京、大阪、札幌に運航管理者がいて、あと旭川、釧路、高松、徳島、高知、大分、全部で十六、七ありますが、全部代理店嘱託になっておりますね。この国際条約からいって、運航管理者制度というものが設けられた趣旨というものは、やはりこの試験の科目を見てもわかるように、気象の問題から無線の問題までいろいろな専門的な知識がある人間でなければならぬことになっておるわけです。そうしますと、東京に置いて、それで掌握するからいいのだということじゃなくて、やはり少なくとも定期便が飛んでおるところには、現地にいて気象なり何なり掌握する体制というのがどうしても必要じゃないか。そのことがあの事故のとき全日空に対する改善勧告となって出てきた、そうじゃないですか。
  159. 川上親人

    ○川上説明員 四十一年におきまして、全日空に対して改善勧告をいたしました。その当時におきましては、東京と大阪におきます運航管理体制そのものも十分でなかったわけでございます。それから先生のおっしゃる各空港に運航管理者ないしは補助者を置けという御提案も、この四十一年の勧告のときには実は十分考慮されておりまして、できるだけ各空港に運航管理者を置いておくということが望ましいわけでございます。そういったものについてはほとんどなかったわけでございますけれども、最近の全日空におきましては、運航管理者は約半数以上の空港について置きまして、残りにつきましては、代理店の職員を運航管理補助者というふうに指名いたします。これは全日空におきまして十分教育訓練を実施いたしているものでございます。  なお、気象その他につきましては、それぞれの空港について航空気象関係を気象庁のほうで担当しておるわけでございます。その資料をもらって、それをテレタイプで送ってくる、あるいは滑走路の状況その他が悪い場合にはその旨をテレタイプで送ってくる、こういうふうに刻々必要な情報につきましては送るわけでございます。  先ほど函館について往復五時間かかるじゃないか、この間何ら気象状態その他について連絡がないのではないかというような御趣旨の御質問があったかと存じますけれども、函館を立つ時点におきまして当該空港の運航管理者は東京のほうにデータを送ってくるわけでございます。そこでの協議というものがなされるわけでございます。そういったことで離陸あるいは着陸を中止させるかどうか、これらはすべて東京ないしは大阪に全部データが集まりまして、その上で公正な判断が下されておる、私はそのように現在理解をいたします。
  160. 横路孝弘

    ○横路委員 たとえば、定期便の中には、全日空の場合八丈島なんかが八便ですね。仙台六便、秋田、函館三便くらいずつ飛んでいる。しかし、運航管理者というのは函館にはいませんよ。これらの空港のどこにもいないのです。あなたのほうの運輸経済年次報告の中では、国内の航空路線は年々拡大されておる。現在は百二十一便、幹線便一日九十二往復、ローカル便二百二往復で大幅な増強となると、非常に誇らしげな報告がある。先ほど大臣のほうからも答弁がありましたけれども、そういった意味で、国際条約でも運航管理者の規定はこうなっておりますよ。国際民間航空条約の第六付属書の第四章の四の六というところには「運航管理者の職務」ということで、「自己の管理下にある全ての飛行が終了するまで職務にとどまる」こと、つまり自分が承認を与えた飛行が終わるまできちんとその職務にとどまらなければならぬ。ところが現実には、この往復なんかの場合には、とどまらないで、途中でほかの人にかわらなければならぬ、こういう実態に、全日空の場合職場の実態がそうなっている。あなた方のほうで会社のほうからどういう報告を受けているのかわかりませんけれども、そういう実態に現実はなっているように私は直接聞いている。だから、私はどうしてもそういう意味で、この国際民間航空条約の中にも規定があるように、運航管理者の使命というのは非常に重大だから、できるだけ定期便の路線の回数の多いところには、やはり運航管理者という、これはちゃんと航空法できめられた試験を受けて合格した者を配置するようにすべきじゃないかと思うのです。その点について大臣のほうからでもひとつ……。
  161. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 一つは、最近情報化時代といいますか、そういうものが発達してまいりましたから、かなり気象通報等、また気象通報が運航の上においては重要な要素でございましょうが、そういうものは一カ所でもってなるべく広範囲のものをとるということが望ましいということからして、東京とか大阪に集中しておるのだろうと思うのです。しかし相当便が発着する定期便の飛行場には、やはり専任のおることが好ましいと私も思います。その点については、条約のいかんにかかわらず、人命尊重のたてまえから、今後も、専任官を置くように、これは強力に指示していきたい、かように考えます。
  162. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、この勧告の中でも、要するに養成計画を立てて運航管理者を養成しなさいということになっているのですね。いまその実情について、全日空ばかりじゃなくて国内航空から東亜航空を含めて養成計画をきちんと立ててやっているのかどうか、その辺はどうですか。
  163. 川上親人

    ○川上説明員 ただいまその関係についての手持ち資料を持ち合わせておりませんので、何人ということを正確には申し上げられませんが、運航管理者並びに各運航管理者を将来置くまでの間における運航管理補助者、こういう形で、全日空の例について見ますと、毎年十分な訓練を実施しているわけでございます。
  164. 横路孝弘

    ○横路委員 いや、訓練じゃなくて養成のほうですよ。
  165. 川上親人

    ○川上説明員 養成を実施いたしております。
  166. 横路孝弘

    ○横路委員 それで、あとでこれは資料として、できればどういう計画を立てているのかということを、おたくのほうで各民間会社に、これは監督、指導する立場にあるのですから、養成計画書みたいなものを出させて、そしてその定期便の回数によってはここに置くということを指導していく、これがやはり航空の安全という観点に立った行政だと思うのです。だから、ぜひそういうようにしていただきたいと思います。いかがですか。
  167. 川上親人

    ○川上説明員 ここに資料として手持ちをしておりませんのがまことに残念でございますけれども、各会社からその養成計画については毎年聴取をいたしまして、それによっての養成計画内容その他をわれわれとしても十分審査をいたしますし、また必要な助言もいたしておるわけでございます。
  168. 横路孝弘

    ○横路委員 そこでもう一つの問題は、やはりこの勧告の内容にある踏査飛行の問題なんです。これも民間航空条約の中で第六付属書の第十章で、御承知だろうと思いますけれども、こういう規定になっているのです。「前十二カ月以内に運航管理者が運航監督を行なう権限を与えられている地域の上空を飛行機のフライトデッキに乗って少くとも一回資格飛行をしていること」こういうことになっているわけです。ところが話を聞いてみるとほとんど行なわれていない。たとえば東京の運航管理者の場合でしたら、千歳に行く、函館に行くあるいは秋田に行く、たくさんの路線を持っているわけです。これはやはりこの趣旨からいうと乗ってみなければならぬ。現実に行なわれていないんじゃないか。その点はどうなんです。
  169. 川上親人

    ○川上説明員 各路線にどのように実施しているかにつきまして、いま詳細な手持ちの資料がございませんけれども、踏査飛行は必ずやらせるように指導いたしております。これは各路線別に何回やったということをいまお答えできないわけでございますけれども、踏査飛行は必ずやっているはずでございます。
  170. 横路孝弘

    ○横路委員 やっているはずだということでは、行政としてそれではやはり非常に困るんですね。実際に運航管理者のほうは、私は乗っていないと言っている。その点も実際どういうぐあいに運営されてきたのか。やはりおたくのほうでこれは調べて、一体個々の運航管理者について各路線きちんと踏査飛行をしているのかしていないのか。やっているはずだという期待だけでは、この勧告の中でこのことをきちんとおたくのほうで言われているのですよ、やらなければだめだということを言われているのですから、やはりそれでは困ると思うのです。
  171. 川上親人

    ○川上説明員 ただいま先生御指摘の点につきましては、十分調査いたしまして、資料をもって別途御説明を申し上げたいと存じます。
  172. 横路孝弘

    ○横路委員 行政のほうがそういう姿勢だから、民間会社のほうも、だんだん安全ということをあの事故の直後のように考えなくなってきているのです。たとえば運航管理者の権限でこういう問題があるというのを聞いている。一つは機長との関係ですね。よく運航管理者と機長が飛行機を飛ばす前に、飛ぶべきか飛ばざるべきか議論になる。その場合、機長というのは、大体各会社の中の労使関係でいうと使用者側というか管理者になる。そうすると、やはり利益を上げたいから飛行機を無理をしてでも飛ばそうということになる。運航管理者のほうではそれに反対だ。こういう議論がよく職場の中で行なわれているというんですね。これは非常に大きな問題がある。たとえば日本航空の場合、飛行機に搭載する燃料について、会社の業務命令という形で幾ら積みなさいという指示が与えられているというんですね。いまの日本航空の場合ですよ。ところがやはりこれについては、運航管理者が目的地あるいは目的地におりることのできなかった場合のかわりの飛行場、さらにその飛行場で待機する場合の四十五分なら四十五分という時間について考えて、そして燃料を幾ら積むということは、運航管理者の権限として運航管理規程の中にきめられている。ところが燃料をたくさん積むと今度は荷物を積めなくなる、あまりお客さんを積めなくなるという問題が一方で起きてくるわけです。そこで、日本航空の場合ですと、業務命令という形で運航管理者の実質的な権限をなくしてしまって、幾ら積めという形でくる。実際に私なんかも札幌から東京に来て、東京におりられないで大阪へ行ってしまう、あるいは千歳まで行ったけれども、引き返して東京に来る、こういうケースというのはよくあるわけです。だからそういうことを考えた場合、やはり一番その現状を把握している運航管理者の権限というものをきちんとして、やはりその指示に従うという形でなければならないと思うわけです。もちろん機長と運航管理者との共同が一番必要なわけですけれども、私は、やはりこの国際条約の中に規定されている職務権限というものをきちんと守らせるという方向で指導すべきではないかと思うのです。その点についてはどのようにお考えになりますか。
  173. 川上親人

    ○川上説明員 ただいま御質問の燃料につきましては、これは運航管理者の権限に属することでございます。運航管理者がこの燃料搭載量を決定するにあたりましては、たとえば東京から千歳に行く場合でございますと、その代替空港をもう一回東京にしあるいは大阪にするということがあるわけでございます。その代替空港に至るまでの燃料プラスさらに二時間ほどでございますか、余裕燃料を搭載するという義務が——そういうふうな角度から搭載燃料を運航管理者がきめまして、その量を搭載させるということになっております。
  174. 横路孝弘

    ○横路委員 なっていることは私ももちろん承知しておるのですが、それが実際には、日本航空の場合業務命令という形でもって出されてきている。全日空にもそういうような形で出てきて、いまこれがやはり労使間の一つの問題になっているのです。そういう実情はもちろん監督官庁の立場で御承知だろうと思うのです。そういうことを業務命令でやらすのは大きな誤りですし、現実にいま全日空もそういう形でやろうという動きがあるわけですから、やはりそこのところを監督する立場から、きちんと運航管理者の権限を守らせるようにおたくのほうで指導していただきたいというのが私の質問の趣旨なんです。
  175. 川上親人

    ○川上説明員 航空の安全という点につきましては、私どもも航空会社も安全第一をまず考えなければならないという点においては、いまだに考え方はちっとも変わっておりません。この燃料につきましても、直接その安全にかかわる問題でございます。これについて運航管理者の権限に専属させているわけでございまして、別な筋からその燃料塔載量を基準以下に規制していくということは、私ども、いままでのいろいろな調査におきましても全然承知をいたしておりません。昨年の暮れ総点検をいたしましたときにも、これらの関係についてはチェックをしたわけでございますが、そのような事実についての報告もございません。
  176. 横路孝弘

    ○横路委員 ところが、実際はそうやっているんだということを現場の人が言っているのです。それは皆さん方が行ったときには、会社のほうの報告はそうじゃないかと思うのです。違う報告をしているかもしれない。ところが、実際にそういうことが業務命令という形でやられているから、これは非常に大きな問題だということを運航管理者の人がみんな言っているんですね。だからその点についても、日本航空も含めて全日空なり国内航空なり全部についてぜひもう一度確認していただきたいと私は思うのです。その点について、やはり大臣のほうも航空の安全という観点から行政を行なってもらわなければ困ると思うのです。
  177. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 おっしゃるとおり安全第一でありますから、これを十分に注意をすると同時に、万が一違反をすれば厳罰に処します。
  178. 横路孝弘

    ○横路委員 そのことばに期待をして次の問題に移りたいと思います。  次は整備士の問題なんです。飛行機の整備について、現行の航空法では、整備、改造について必要な検査、点検方法は定めていますけれども、これは整備、改造を実施したときの検査、点検の方法をきめたものだけであって、整備士による飛行前点検あるいは飛行間点検というものを義務づけていないわけですね。現在の航空法では七十三条で機長の飛行前の確認という規定があって、それでやっているのだ、こういう御説明を受けているのですけれども、しかし、これは機長といっても、飛行機の機体そのもの、特にエンジンの問題、何の問題ということになると専門家ではないわけであります。そうすると、やはり飛行機の安全という立場から見れば、一飛行ごとにきちんと整備資格のある者が飛行機についても点検すべきだと思うのです。この点について、航空会社によっては、自主的に有資格の整備士が飛行前に、飛行間点検を実施しているところもあるけれども、実施していないところもあるのですね。これは別に義務づけられていないから、各会社がかってにやっているわけです。だから、これはあらためて安全確保という点から見ると、必ず有資格の整備士が飛行前点検すべきじゃないか、これはやはり義務づけるべきじゃないかと思いますけれども、その点についてどのようにお考えになりますか。
  179. 川上親人

    ○川上説明員 エアラインの飛行間点検につきましては、各社とも、たとえば全日空の場合でございますと、有資格の整備士ないしは十分訓練をした上で社内の試験に合格いたしました者を飛行間点検者に任命いたしまして、その者に飛行機が出発する以前のいわゆる外観点検あるいはオイル漏れの点検、そういったきわめて簡単な点検作業を実施させているところが多うございます。これらは三種空港についてでございます。二種空港以上につきましては必ず自社の有資格整備士、国家試験を受けました整備士を配属しておる状況でございます。
  180. 横路孝弘

    ○横路委員 それも私のほうで聞いているのとちょっと話が違うのですが、函館、岡山、高知、大分という飛行場は三種空港ですか。
  181. 川上親人

    ○川上説明員 二種空港でございます。
  182. 横路孝弘

    ○横路委員 私のほうでは、全日空の場合そこに全然有資格者が配置されていないというふうに聞いている。いわゆる確認整備士は配置されていない。
  183. 川上親人

    ○川上説明員 先生がおっしゃられます確認整備士という意味が私はわかりませんけれども、航空法によります一等、二等、三等、この整備士につきましては、二種空港においては配属されております。
  184. 横路孝弘

    ○横路委員 その一等、二等、三等の整備士は配置されていないというふうに私のほうでは聞いておるのですけれども、確認整備士の場合はやはり試験があるでしょう。それに合格された者が配置されていないということなんです。その点どうですか。
  185. 川上親人

    ○川上説明員 国家試験を受けまして合格した者がいわゆる有資格の整備士と先ほど申し上げたわけでございます。これらにつきましては二種空港には全空港に配属されておるというふうに了解いたしております。
  186. 横路孝弘

    ○横路委員 その点も私のほうで聞いている話と違いますので、ぜひ調べていただきたいと思うのです。  それで、国内航空なり東亜航空なんかの場合も、いわゆる確認整備士というのが配置されているのは、たとえば国内航空の場合、東京、大阪、千歳、福岡だけで、あとは全然配置されていない。東亜航空の場合は、大阪、福岡、鹿児島に配置されているけれども、あとはもう配置されていないというように私のほうでは聞いておるのです。やはりこの確認整備士の問題についても、そうした意味では資格のある人間がきちんと飛行間点検をすべきだ、一飛行ごとの点検というのを定期路線についてきちんとやらすように配置すべきだと思いますけれども、その点についてどうでしょう。
  187. 川上親人

    ○川上説明員 御指摘のとおり、自社で試験をいたしました飛行間点検者ではなくて、国家試験に合格いたしました有資格の整備士を置くことがより望ましいとは考えます。できるだけそのように指導したい。かねてそういう方向で実は指導しておるわけでございます。さらにその点について力を入れてまいりたいと存じます。
  188. 横路孝弘

    ○横路委員 全日空の場合、函館、八丈島、岡山、高知、大分、これはちょっと確認していただきたいと思いますが、私のほうで聞いておる話では有資格者は配置されていない。そしてどういう人間が配置されておるかといえば、いまお話のあった出発前点検確認者というのを全日空の運航管理整備規程の中できめて、その人間にやらせている。しかもこの場合、いま中でもって試験をやっているという話だったけれども、話を聞いてみると、整備工場の工場長の推薦があればその点検者に指定されるような制度だというように私のほうでは聞いておるのです。実際にいろいろな点について試験なんか行なわれていない。私も、これは全日空の整備士の人から聞いた話なんで、あなたのほうと話が違いますから、事実の問題についてこれ以上お話ししても、しょうがありませんから、その辺のところをぜひ確認をしていただいて、もし有資格者が配置されていない場合には——私は配置されていないと思う。配置されていない場合には、すぐ配置すべきだ、そういう措置をとるべきだ、その点について再度確認をしていただきたい。
  189. 川上親人

    ○川上説明員 先生のおっしゃった点が事実であるかどうかにつきまして、再度調査をいたしまして、また後刻御報告を申し上げたいと存じます。
  190. 横路孝弘

    ○横路委員 しかも会社の合理化の中で、この飛行機の整備、検査というものが非常に簡素化されつつある。全日空の場合、いまその整備規程の改定ということで、こういうように変わろうとしているのです。たとえば飛行後点検というのは、AランクからDランクまでありますね。これは従来はいわゆる確認整備士、資格のある整備士がきちんとやってきたのです。ところが、今回その確認整備士がやったことを書類上確認すればそれで済む。現実には現場に行って確認をしないで済むような方向にこれを変えようということで、いま全日空の労使間の非常に大きな問題になっている。これはそうした意味で、書類上の確認をして、あとまかしておくんだということではなくて、A、B、Cランク——Dの場合には何か日本航空のほうに発注して、いま整備を全日空の場合してもらっているようですけれども、やはりきちんと資格のある人間が飛行機を点検、検査するということもやっていただきたいと思うのです。いまこれは全日空のほうの労使の問題となっているけれども、私は、これは労使間の問題ではなくて、ほんとうを言えば国民の立場からおたくのほうでものを言うべき問題であると思う。その点について……。
  191. 川上親人

    ○川上説明員 ただいま先生の御指摘の点については、私どもまだ全日空の方針として説明を聞いておりませんので、確実にお答えできませんが、おっしゃるとおりの方向でやはり指導すべきものだと思います。
  192. 横路孝弘

    ○横路委員 私、先日全日空の整備士と運航管理者の人に集まってもらって話を聞いたときに、ディスクリパンシー、日本語では不ぐあい事故というのだそうですけれども、こういうものはほとんど毎日のように発生しているわけだ。これは何か備えつけの航空日誌に記載されて航空局のほうにも届け出をしているそうだから、あなた方のほうも御承知だと思いますけれども、大きな事故にはならぬけれども、その危険性のある小さな事故というものは日常的に発生している。こういうことをあの人たちは言っているわけです。だから、その辺のところも、整備士の問題なり運航管理者の問題は、事故が起きてからどうこう言ってもしょうがないのです。いま私が指摘した点というのは、あの事故のあとで皆さん方のほうでまさに問題だと思うから業務改善勧告という形でもって出されているわけです。出されていながら、それこそ四年間も現在まで放置されている。十分には行なわれていない。私は十分ではないと思うのです。  そこで一つの問題は、この問題というのは、やはりちょっと航空法の規定にも問題があるのではないか。というのは、航空法の百四条には「運航規程及び整備規程を定め、」なければならないとして、具体的な基準がきめられていないのですね。項目だけがある。そしてその項目については、各民間の、全日空なり日本航空なりで規程を設けて、それを運輸大臣に出して承認をもらうということになっているから、確認整備士がこっちには配置されているけれども、こっちには配置されていないとか、運航管理者がいるとかいないという問題が起きてきている。だから、すべてのものについて詳細な基準を定めるということは、技術的な問題がありますから、私はそんなことは言わないけれども、しかし、やはり運航管理者なり確認整備士なり、つまり資格のある整備士を各飛行場に配置する基準というものを、航空法でもってきちんときめる、あるいはおたくのほうで内部的にきちんとその基準をきめるということが必要だと思う。その点について、どのようにお考えになるか。
  193. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 それは当然のことと思いますから、これは至急規程を——法律に書いてあるのですから、会社が規程をつくれという意味じゃないでしょう。おそらく運輸省内で航空局として、そういう規程をつくれ、基準をつくれということだと思います。法律ですからね。できているのかもしれません。できているのであれば、そのとおり実行させる。第一、人間が多いから、会社にしてみれば、あんまり断わることが気の毒なために、ややもすればそうするのでしょうけれども、やはり百回に一回の間違いが起きてもたいへんですし、一万回に一回でもたいへんです。先ほどからお話を聞いておりますと、横路さん、よく勉強しておられると感心しておりますが、大いにこれは啓発されました。ぜひこの点は、乗客の安全に十分意を用いない会社は増便を認めないくらいの措置をしたいし、いまおっしゃったことはどのくらいあればできますか、一年くらいあればできるのではないかと思いますけれども、養成期間がありますから、一年かかるか二年かかるか知りませんけれども、その間に完全にせよ、それまでは増便を認めないとか、新路線を認めないくらいの強い姿勢でやらなければ、なかなか直らないと思います。このような厳格な姿勢でこの問題は解決していきたいと思います。
  194. 横路孝弘

    ○横路委員 いまお話のあったとおりにやっていただきたいと思いますけれども、もう少しこの全日空の問題でお伺いしたいと思いますけれども、ダイヤの編成について、次にお伺いしたいと思います。  これもやはり勧告の中で、ダイヤの編成にあたっては安全第一主義に基づいて予備機を設ける。そうして操縦員の状況なり整備能力というものを考慮すべきだというように、勧告の内容としてあるわけですね。  この第一点について、まずお伺いしたいと思いますけれども、予備機ですが、いま全日空はどうなっていますか、予備機はありますか。
  195. 川上親人

    ○川上説明員 各機種につきまして予備機を一機置く、こういうことを原則といたしております。ただ具体的な例におきまして、フレンドシップの28と申しますか、これとYS11と同じ路線で共用されているようなものがございます。これは両方の機種を一本にいたしまして予備機というふうに考えまして、グランドさせているというのが従来もございますが、原則として、一機種について必ず一機は置く、こういうふうな原則でございます。
  196. 横路孝弘

    ○横路委員 その場合、その予備機は何が予備機なのかということが当然問題になるわけですけれども、実際はテストフライトとか、あるいは機長のローカルトレーニングなんかに使用されて、予備機として存在しているというのは全然ないのだ、そちらのほうにどんどん毎日のように使われているんだという話なんです、私の聞いているところでは。予備機を置いたのはなぜかというと、やはり余裕あるダイヤの編成という観点から、それが安全につながるのだ、こういう考えで、できるだけ予備機を置きなさい、こういう勧告になったのだろうと思います。それがほかに使われていて、予備機としての実質的な作用というものを果たしていないということも、また大きな問題だろうと思います。その点の実態についてどのように把握されているのか。
  197. 川上親人

    ○川上説明員 ただいま先生おっしゃられました訓練機につきましては、予備機をもって訓練機に充てるということはしていないようであります。訓練機は訓練機、しかし予備機はそれと別個に必ず置くというふうにいたしてございます。
  198. 横路孝弘

    ○横路委員 ただ、たてまえはそうであっても、実際にそうでなければほんとうに意味がないと思うのですね。だから、そこのところも実情をきちんと把握されて、お考えいただきたいと思うのです。  それから次に、ステータイムの問題なんですけれども、これについていまどういうように規制されているのか。たとえば千歳から東京に飛行機に乗るという場合に、その飛行機が東京から来て折り返し千歳から東京に来るわけです。そして十分、二十分おくれてくるのは最近ざらなんですが、見ていると、おくれてきて、お客さんが降りてきて、それからすぐ十分くらいでお乗り下さいということですね。その間に一体何をやっているのかと見ていると、何か棒みたいなものを持ってとんとんと飛行機をたたいて歩く。それが確認整備士の仕事なんだと思うのです。だからこのステータイムは、たとえばジェット機ならジェット機の場合に何分というふうに規定されているのか。
  199. 川上親人

    ○川上説明員 国内線におきましては、原則として三十分でございます。
  200. 横路孝弘

    ○横路委員 整備の人の話を聞くと、十分に確認するには時間として五十分くらいかかる。これは人によっていろいろ違うのでしょうけれども、きちんと法律できめられたことをやれば五十分くらいかかるんだということを言う人もいるわけです。ですから、その点もきちんとして、二十分でしたら二十分ぐらいかもしれませんけれども、おくれてきた場合でもその辺のところもこれまた十分に監督して、おくれてきたからといってあわてて飛んで、その間の点検が十分じゃないということにならないようにしていただきたいと思うのです。  そこでもう一つはお尋ねしたいのですが、いまのダイヤの過密という問題とも関連してくるのですけれども、大阪空港のある時間帯、これは現在のものですけれども、こんなようになっている。十一時三十分、この同じ時間に大阪発高知行き全日空、大阪発徳島行きの国内航空、大阪発東京行きの日本航空、十一時三十五分に大村発大阪着の全日空、十一時四十分には大分発大阪着の全日空、北九州発大阪着の全日空、隠岐発大阪着の東亜航空、米子発大阪着の東亜航空、こういうダイヤになっているのです。これはあとで航空管制の問題に関連して再度お尋ねしたいと思いますけれども、これで見ますと十分間に八機ですか、こんなような状態になっているのです。この辺のところ、もちろんダイヤの編成の場合には、これもたしか運輸省のほうできちんと認めなければならぬということになっているはずですから、その辺のところを安全という観点からどういうようにお考えになってこんなダイヤ編成を認めておられるのか、その点についてのお考えを聞かせていただきたいと思います。
  201. 川上親人

    ○川上説明員 大阪空港はことしの二月五日にAランウェー、三千メートルの滑走路が完成いたしまして、現在二本の滑走路でございます。したがいまして、ここにおける空港の処理能力もかなり高くなったということがいえるわけでございます。いまの羽田のCラン一本という現状よりはかなりの余裕がございます。現在の羽田のCラン一本で、天気のいい場合におきまして三十四回、通常平均的にいいまして三時間に九十機、一時間三十機ということを羽田における一つの基準として考えておるわけでございます。そういう原則から考えますと、大阪の場合におきまして、現在の大阪空港の全般的な使用状態は、まだそれほど過密だというところではございません。東京より一年おくれというような現状であるわけでございます。ただ先生がただいま御引例になられました時間帯におきまして十分に八機でございますか、かなり無理なスケジュールであるとは思いますが、方向別に違います場合に、管制その他のやり方によって、必ずしも一本の滑走路を同一方向からだけの離着陸ということでない場合が——二本の滑走路でございますと、一方からスタートいたします、スタートする直後にまた次の飛行機を別の滑走路に着陸させるという処理方法が可能でございます。そういったやり方によって安全上の十分のセパレーションをとりながら実施されていると思います。
  202. 横路孝弘

    ○横路委員 その辺のところも基準があるということでございますから、それに基づいて監督していただきたいと思います。  最後に一つ、パイロットの問題を取り上げてみたいと思うのですが、昨年の六月、やはりこれも全日空ですけれども、航空法に基づく例の運航規程と乗員訓練基準というものを変えて、従来五十時間あった機長になるための見習い時間、これを三十五時間に変えましたけれども、これを運輸省のほうで認められたわけですね。これは一体どういうことで従来五十時間あったのを——長くするのなら話がわかる、なぜ短くすることを認められたのか。
  203. 川上親人

    ○川上説明員 機長昇格訓練につきましては、昨年の六月に、教育訓練体系全般を最も最適な体系に改めるという角度から、教育訓練体系の変更を全日空はいたしております。その中に先生がいま言われましたような二十時間くらいの時間というのが、機長昇格訓練の中から落とされているわけでございます。これは小型機による練成飛行時間として従来認められておった分でございますけれども、この教育訓練の時間は、実は機長昇格訓練の段階以前の基礎教育の段階のほうにプラスとして落としてございます。したがいまして、機長教育訓練の中からはこれをはずしておるわけでございますが、その反面、そういうふうに基礎教育の段階で処理してしかるべきだと思われるものを落としますとともに、機長の実機による訓練飛行時間並びに路線ごとの機長見習い飛行といいますか、そういう時間を十分に別途とることによって合理的に改善されているわけでございます。
  204. 横路孝弘

    ○横路委員 機長の責任というのは非常に重大なわけでありまして、いまそういうお話でありますけれども、たとえば、あれは日本航空でしたか、オークランド空港の異常降下、海のほうに不時着した問題にしても、それからもう一つ、ニューヨークのほうでオーバーランして海に突っ込んでしまったという事故がたしかあったと思うのですけれども、この事故にしても、その原因は何かというと、たしか新型のDC8か何かを入れて、十分その飛行機に熟知しないうちに運転したということがこの事故の一つの大きな原因だというようにいわれている。ですから、やはり。パイロットの養成の問題にしても、どんどん路線が伸びる、機長が足りないというのがいまの民間航空会社の実態ですね。そこで何としてでも早く機長にしなければならぬという営業上の観点からものごとが考えられている。私はその安全という観点が抜けているように思うのです。  だからその点も、航空法の中にいろいろと規定がされていますけれども、やはり中には拡大解釈されていっている面というものがたくさんあるのではないか。たとえば機長の資格審査というのは、運輸大臣の指名する職員というのが、その認定を申請する者と同乗して行なうということになっているけれども、実際には航空会社のほうでそれをやっているというような事例もありますし、また航空士の搭乗、これはやはり航空法の六十六条で規定されている五百五十キロ以上の距離を飛行する場合には乗せなければならないということになっているけれども、これも同条の二項の規定で、他の航空従事者が操作することによって乗せなくてもいいようになっているというように、私はいまの航空行政を見てみますと、不安な点というものが非常にたくさんあるわけです。その辺のこともひとつ十分に考えていただきたいと思うのです。  そこで整備士の問題、まだたくさん質問することがありますので、この問題はこれで終わりにしたいと思いますけれども、この整備士の問題にしても、あるいは運航管理者の問題にしても、それからいまのパイロットの問題にしても、やはり最近ローカル線が非常に伸びている、一方ではジャンボジェット機など非常に大型の器材というものが導入されているという場合に、それに見合った施設と、それからそれに見合った形の要員が確保されるということがやはり飛行機の安全な航行を保障する一番重大な点だと私は思うのです。それについてやはり監督官庁として、これは詳細に、細部にわたってチェックするということをやっていただきたいと思うのです。その点を最後にお伺いいたしまして、この全日空の問題は終わりにしたいと思います。
  205. 川上親人

    ○川上説明員 先ほども申し上げましたが、交通の安全ということは、航空にとっては何ものにもまさる先決的な条件であると私は考えております。そういうことから、航空会社におきましては、パイロットの養成並びに訓練、あるいは整備の充実、さらには運航管理者、それから余裕のある器材運航を行なうことというようなことにつきまして、さらに一段の督励、監督、育成をやってまいりたいと存じますし、また航空局自体におきましても、管制盲あるいは航務関係、通信関係その他航空保安職員という、航空保安行政に最も密着している業務を担当している職員がたくさんおるわけでございますが、これらの職員についての定員の今後の組織的な充実、さらに待遇改善、こういう各般の面にわたりまして、ただいま御指摘のようなことを十分に含めながら、善処してまいりたいと考えております。
  206. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、飛行機の安全というものを考えた場合に、先ほど一番最初に大臣もお答えになりましたけれども、空港の整備の問題とか、それから航空の管制の問題とかいう問題がやはり大きな問題として出てくると思う。その問題についてお尋ねしたいと思うのですけれども、あの事故の直後空港整備五カ年計画というのが立てられました。ことしからこれは特別会計になりましたけれども、第四年目にしてわずかに三七%の整備状況にあるわけですね。あのときは非常にたくさんの項目を設けられて、国民の不安に対してこういうぐあいに空港を整備しますということを示された。ところが、事後四年たってわずか三七%しかできていない。一体これで計画どおり遂行をきちんとおやりになるのか。現在の整備状況を含めて御報告いただきたい。
  207. 川上親人

    ○川上説明員 四十一年の事故にかんがみまして、空港整備五カ年計画を策定し、四十二年度を第一年度とする四十六年までの計画をもってその後空港整備を進めてきているわけでございますが、四十五年度までの予算につきましては、総額五百六十八億円でございます。この五カ年計画の総額は千百五十億円ということでございますけれども、この中で県の単独工事その他の分を約八十億、それから調整項目といわれる、まだこれは具体的な計画の裏打ちがない項目でございますが、百五十億を差し引きますと、いわば具体的な裏づけのございます空港整備計画というのは、実質的には九百二十億円でございます。この九百二十億円に対しまして、いまの五百六十八億というのは約六二%にあたるわけでございます。なお、そのほかにいままで国庫債務負担行為によって施工の段階に入るものが約八十一億円ほどございます。これを含めますと、事業の施工規模といたしましては七一%、こういうことになるわけでございます。もちろん、あと四十六年度という一年度を残すわけでございますが、これにつきましては、いままでよりも格段の努力をいたしませんと、この空港整備五カ年計画を完遂することができない非常にむずかしい時期ではございます。空港整備特別会計法をそのためにも実はつくったわけでございます。努力してまいりたいと考えておるわけでございます。
  208. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、その計画のおもな内容としてあの当時発表されたもののうち、実際に実現したものというのを考えてみますと、大阪国際空港の、さっき話に出ておりましたB滑走路、それから東京国際空港はいろいろ工事をされているところでございますけれども、昭和四十二年六月二十七日参議院の内閣委員会で、当時の大橋運輸大臣は、たとえば二種空港についてはジェット機用としては二千メートル級にいたします。それから三種空港については千五百メートルに延長いたしますというように、この五カ年計画の中でお答えになっているのですね。これは実際に行なわれておりますか。整備されておりますか。これはやはり、一つには例の松山空港における事故というものも大きな要素になっている。この点についてお答えいただきたいと思います。
  209. 川上親人

    ○川上説明員 空港整備五カ年計画の概要は、いま先生もおっしゃられましたように、一種空港については三千メートル級の、ジャンボジェットも将来着けるような、そういう空港の規模で整備する、二種空港については、ジェット機の離発着が可能なように、主要な二種空港については二千メートル級の滑走路を整備する、三種空港は、松山のあの事故にかんがみまして、YS級を使うといたしましても、その安全係数を相当にゆとりをもちまして千五百メートル級に原則として整備したい、こういう計画を盛った五カ年計画の内容でございます。これに従いまして、四十二年度以降空港の整備にかかってきているわけでございます。四十六年度の末までといいますか、この五カ年計画を完了します時点におきまして、計画どおりにまいりますと、二種空港のうちの八空港でございますが、これが大体二千メートル級に整備が終わることになる。現在そのために鹿児島空港、宮崎空港、それから熊本、大分、仙台、函館、各空港におきまして二千メートルの滑走路延長のための工事が着々と進められている状況でございます。また、三種空港につきましても、計画年次までにおきまして、技術的に非常に困難な個所あるいは需要者の非常に少ないというところの一部を除きまして、千五百メートルという滑走路延長工事が一応できるという考え方でございます。
  210. 横路孝弘

    ○横路委員 いまのお話ですと、大体その計画どおりに、二種空港は二千メートルにする、三種空港のほうは千五百メートルに延長する、それは四十六年までには完成するのだ、そういうように伺ってよろしいですか。その点確認したい。
  211. 川上親人

    ○川上説明員 四十六年度に残されております事業量を実施いたします場合には、いま申し上げたような姿に相なります。
  212. 横路孝弘

    ○横路委員 もう一つ確認しておきたいのですけれども、三種空港の場合、千五百メートルに延長するのは技術的に無理だというのはどこですか。それ以外は全部四十六年末までに整備されるということですね。いまのお答えそういうことでしたから、技術的に無理だ、つまり実現できないところだけ明らかにしていただいたらよろしいと思います。
  213. 川上親人

    ○川上説明員 空港整備について、工事関係については、そのほうの専門家でございませんので、技術的にどこが困難であるかということになりますと、はっきりこの空港というふうに私も言うことができないわけでございますが、たとえば佐渡の空港などは非常に困難であるというふうに聞いております。また屋久島などにつきましても、技術的にできないわけではないのですけれども、かなり困難性が伴うというようなことを事務的には聞いているわけでございます。
  214. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、ひとつ空港整備の関係と関連してお尋ねしたいのですけれども、衆議院でこの前交通安全対策基本法というものが可決されて、いま参議院でまだ通っていないと思いますけれども、いずれ今国会で成立するのは間違いないと思うのです。この中で、国は中央交通安全対策会議をつくって、そこで交通安全基本計画を作成しなければならぬということになっているわけです。毎年毎年その計画に基づいて交通安全業務計画を作成するというのがこの交通安全基本法の二十四条に規定されているのです。そして二十九条で「交通環境の整備」というところで、航空交通管制施設等の整備をしなければならないというように規定されているのですけれども、この交通安全基本法に関連して、特におたくのほうでこういうような計画を立てて空港の整備に伴って整備をするんだというような内容あるいはその計画というものがございましたら、どういうようなことをお考えになっているのか、そこら辺を明らかにしていただきたいと思います。
  215. 川上親人

    ○川上説明員 航空関係につきまして、現在運輸大臣のいわば諮問機関でございます、そういう性格を持っております運輸政策審議会というところで、航空の将来における一応のビジョンを中心といたしましたいろいろな御検討をいただいておるわけでございます。そういった一つのビジョンがまとまりましたところで、空港整備の次の、昭和五十年までを目途といたします長期計画を策定いたしたいと考えております。また航空交通の非常な激化に伴い、大量高速輸送時代を迎えたこととも関連いたしまして、空域における航空管制業務の内容の充実あるいはエンルート並びに飛行場周辺における航空保安施設の一段の充実、こういったことを全般的な計画として実施をいたしたいと考えております。  失礼いたしました。先ほど運輸政策審議会と申し上げたかと思いますが、運輸政策懇談会でございます。訂正をさせていただきます。
  216. 横路孝弘

    ○横路委員 いま問題になっておる法律が通れば審議会になるのでしょうけれども……。  そこで空港の整備計画ですけれども、昭和四十二年の六月に参議院の内閣委員会でやはりこの五カ年計画が問題になったときに、当時の澤航空局長が、空港の整備に伴って、やはり整備をするだけじゃだめなんで、それに十分な要員が必要だということで、五年間に千五百名の増員をするんだということを御答弁になっているのですけれども、実際この整備に伴ってその要員のほうはどういうことになっていますか。
  217. 川上親人

    ○川上説明員 要員につきましても、この新空港整備五カ年計画あるいはさらに新しい航空保安施設整備計画、管制充実計画というものによりまして、おのずから定員が策定されてくると思いますが、いまの千五百人ということが、今後も千五百人でいいのであるかどうか。これはだいぶ数字的に変わってくる面があるのではなかろうかと存じます。
  218. 横路孝弘

    ○横路委員 それは、その変わってくるというのはどういうぐあいに変わってくるのですか。
  219. 川上親人

    ○川上説明員 施設的に増強をはからなければならない面が多々出てくるかと思います。そういう意味で、あるいはふえる方向で変わってくるのではないかと存じます。
  220. 横路孝弘

    ○横路委員 そこでその空港の整備には、やはりそれに伴って要員の配置というものが伴わないと十分な安全対策にならないと思うのですね。たとえば新東京国際空港ですね。これも全面的な運用はかなりおくれるけれども、来年の四月から部分的な運用を開始したいということで、そのための要員なんかもことしの予算で認められていますけれども、しかしこれも内容を見ますと、新空港の要員というのは百十五名の要求に対して五十二名、さらに各職場の要員というのは百八十四名の要求に対して、現在の職場からの振りかえを見ても三十三名が不足するということがいわれているわけですね。それがやはりこういう状態の中で一番大きな問題になっているのは——これから航空管制官等の問題についてお尋ねしたいと思うのですけれども、この要員不足の中で、各職場で引き抜かれてしまって穴埋めができなくなって、現在の職場のいろいろな技術なり技能というものが低下するのではないかということで、やはり航空の安全という面からも大きな問題になっているのです。この新東京国際空港の供用開始に伴う要員の問題についてどういうようにお考えになっているのか、お聞かせいただきたい。
  221. 川上親人

    ○川上説明員 新空港ができる前に、新空港が供用開始された場合における基幹要員となるべきものについては、すでに今年度の予算におきまして定員化されております。これを追って教育訓練を実施いたしまして、供用開始のときにこれを中核体といたしまして空港の供用開始ができるような体制をいま整えつつあるわけでございます。
  222. 横路孝弘

    ○横路委員 との新東京国際空港でも管制に電算機を導入するということが計画されているわけですね。しかしやはりその要員の養成というのはおくれているわけです。そういうケースというのは実は二、三ほかにもあるわけなんで、私はやはり空港を新設したりする場合に、航空保安業務を行なうような際に、その業務に見合うような施設を設定する、そして人員も配置するということでなければいけないと思うのですね。  そこで運輸大臣にお尋ねしたいのですけれども、昨年昭和四十四年度新たに開設された鹿児島の離島空港、沖永良部空港の管制通信業務の施設があるのですね。つくったのは去年ですよ。施設をつくっているのです。施設をつくったんだからこれはもちろん必要性があってつくったんだろうと思う。ところがこの空港が始まって以来一度もこの施設を利用していないのですね。管制通信関係の人間というものは配置していないのです。そうすると一体何のためにつくったのか。税金のむだづかいじゃないかという問題にもこれはなりかねないと思う。一体どうしてせっかくこの施設をつくりながらそれを利用しないで放置してあるのか、そこのところをお答えいただきたい。
  223. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 政府委員に……。
  224. 川上親人

    ○川上説明員 沖永良部空港につきましては現在管制施設といいますか、通信施設その他の関係については、三種空港として必要な基準に基づきます施設を一とおり整備いたしてございます。ここにおきます職員も配置をいたしまして、その職員でもって一応運営できるという態勢でございます。いまこれらにつきましては職員を三人配属いたしております。
  225. 横路孝弘

    ○横路委員 通信関係の人間は配置されていますか。
  226. 川上親人

    ○川上説明員 三種空港におきまして離島関係の空港等につきましては、奄美大島を中心といたしまして沖永良部を管轄させるということに現在いたしておりまして、奄美大島のほうが沖永良部におきます諸般の業務を全部管轄いたしております。それで沖永良部を離発着するにつきましては、沖永良部空港のこの三名の職員が、奄美大島にございます空港事務所の職員に連絡をいたしまして、そしてそこからまた福岡の管制部その他に連絡をとり、管制承認が出されるあるいはクリアランスが出されまして飛び立つ、こういうふうなやり方を現在はとっておるわけでございます。  ただ将来航空需要がふえます場合には、さらにこの空港に職員を増強しなければならないというふうに私どもは感じておるわけでございます。現段階におきましては奄美大島におきまして沖永良部をあわせて管轄させるということで、これは安全上必ずしも支障はないというふうに判断いたしておるわけでございます。
  227. 横路孝弘

    ○横路委員 結局ここでこういう施設をお金を投資してつくったということの意味は、やはりそれを使う必要があるからつくったんじゃないのですか。三種空港の問題についてお尋ねしていきたいと思うのですけれどもね、私は何も施設をつくったのが税金のむだづかいだと言っているのではなくて、そういう必要性があってつくったんだから、そこにきちんと専門家を配置しなければならないのじゃないか。この三種空港、特に特定三種空港については二、三年前から航務要員も管制関係の人間も全部引き揚げているわけですね。そういう中でなぜつくったのか。必要があるからつくったんでしょう。しかもつくったのは昨年ですね、昭和四十四年。当然やはりここに人間を配置すべきじゃないですか。そうした意味でお答えは一貫性がないと思うのです。
  228. 川上親人

    ○川上説明員 各空港に管制官が必ずいなければならないかということについては、空港の状況によっては必ずしもそうでないと言えると思います。もちろん管制官が各空港に配属されるということがより望ましいこととは存じますけれども、沖永良部のように計器飛行を行ないませんで、いわゆる有視界飛行だけを行ないます場合におきましては、管制官による管制業務ということは必ずしも出てまいりません。こういったところにおきましては管制官の出発の承認でございますとか、そういう関係のものについて連絡できる職員があればよろしい、こういうことになるかと思うのでございます。そういった関係の事務を奄美大島を中心といたしまして、そこから三名の職員を沖永良部に派遣している。奄美と沖永良部と両空港の体制において、それらの関係を奄美大島が補完しながら実施をいたしているという状況でございます。
  229. 横路孝弘

    ○横路委員 だから、奄美大島のほうでやるから十分だということならば、何もここに管制通信の施設をつくる必要がないわけでしょう。そうじゃないんですか。その点どうですか。
  230. 川上親人

    ○川上説明員 先生が管制通信とおっしゃられますのは、事実と必ずしもあれではございませんので、沖永良部におきましてはいわゆるボイスと申しまして、VHFを使って声でもって連絡中継をする。いわゆる管制官のようにみずから判断して指示をするというのではなくて、単に連絡中継する。その指示は奄美大島のほうにおります管制官が指示を与えるわけでございますが、その連絡をボイスでもってする、そういう意味での施設が沖永良部にはあるわけでございます。
  231. 横路孝弘

    ○横路委員 結局おたくのほうで三種空港十三空港について航務要員の引き揚げを、この二、三年前だったと思いますけれどもいたしましたね。それから管制通信の仕事を実施していない空港というのも女満別、紋別、中標津、みんな北海道ですけれども、それを含めて四つほどあるわけですね。この三種空港の問題なんですけれども、私一番最初にお尋ねしたように、やはり実施部門の縮小ということで行政改革の一環として出てきていると思うんです。これは開設当初七名から十名くらいの要員を配置して、管制通信あるいは航務、それから無線機器の保守あるいはテレタイプ通信等の業務を行なってきたわけです。これはやはり私は航空の安全ということを考えた場合に、それは定期便は飛んでいないかもしれないけれども、夏には女満別、紋別というものは観光で相当使われているところです。こういうところはむしろ拡充していくべきじゃないか。これを定員削減という一つの政策理由にして、職員を二名ないし三名減らしてしまう、航務要員も引き揚げてしまう、管制通信の仕事も全部引き揚げてしまうということは、非常に安全を阻害する方向に行っているのじゃないか。小さな飛行場だからたいしたことはない、定期便が飛んでないからいいのだということであっても、ここをやはり現実に使用しておる。しかも夏には定期便が飛ぶわけです。入るわけです。この問題については、昭和四十二年に参議院の内閣委員会のほうで何回も議論されています。しかし基本的には、そうした安全の確保という面を考えてみれば、むしろ拡大していく方向で検討されるべきじゃないか。そのお考えがあるかないか。これはいますぐといっても、ずっと五%削減ということの中で、皆さん方は行管をはじめとして締めつけを受けているので、そういう立場も私のほうで十分理解した上で御質問申し上げているのですけれども、将来的にはやはりそれを拡充していく、また通信業務も行なうし航務要員もそこに派遣するという方向で検討すべきじゃないかと思うのです。その点についていかがでございますか。
  232. 川上親人

    ○川上説明員 女満別と特定の空港の職員を若干集約していることにつきましては、先生の御指摘のとおりでございます。ただその結果、安全性が阻害されることのないようにということにつきましては、私どもとしては別途また考えておるわけでございまして、女満別につきましても釧路空港が、先ほどの沖永良部に対する奄美大島と同様な関係位置に立っておるわけでございます。しかし基本的には、私ども今後航空管制という業務の重要性にかんがみまして、航空管制あるいは航務、通信の業務がそれぞれの空港において円滑に実施できますように、できるだけの努力をしてまいらなければならないと考えておるわけでございます。
  233. 横路孝弘

    ○横路委員 ほかでやっておるから十分だというけれども、実際には、たとえば女満別の飛行場にはそういう人間はいないわけですね。そうすると、気象状況なり何なり、女満別なりあるいは紋別に対するそういう指示を釧路において行なっておるということですね。はたしてそういう状況をきちんと認識できるのかということになると、やはり大きな問題があるわけですね。ですから、いますぐいわゆる特定第三種というその特定の指定を取り消すということでなくて、将来的に——北海道の観光というのは年々相当な勢いで伸びてきておるわけです。飛行機を利用して遊覧飛行をやろうというのもだんだんふえてきておる。それからまた札幌あたりから紋別なら紋別に行くというのもふえておるのです。ですから、やはりそういう方向で検討されるべきだと思うのです。将来の問題についてお尋ねしておるのです。いかがでございますか。
  234. 川上親人

    ○川上説明員 定員面における確保その他諸般の努力を払いまして、なるべくそれらの空港におきましても円滑な業務が実施、担保できるように努力いたしたいと存じます。
  235. 横路孝弘

    ○横路委員 それはもちろんそのとおりなんですけれども、そうじゃなくて、これを取り消して、将来的には、沖永良部空港の場合もこれからふえていけば、そこに専門家をやはり配置するのだというような御答弁が先ほどあったと思うのですよ。それと同じような方向でこの問題についてもやはり検討していくべきじゃないか。いますぐ私はやれということを言っておるのじゃないのです。五%削減ということの中で皆さん方その締めつけを食らっておるわけですから、それはもう理解しておるつもりなんです。だから今後北海道の観光というのはどんどん伸びていく中で、やはりこの航空の安全ということを考えれば、二人、三人乗っているセスナ機だからいいんだということにはならぬわけですから、やはりその点を検討すべきじゃないか。そういう余地という毛のが全然ないんですか。やはり私は、そうじゃなくて、ともかく安全第一という観点から、管制官なり管制通信官なりの配置というものを考えていかなければいけないと思うのですよ。その点について、再度くどいようですけれどもお答えいただきたいと思います。
  236. 川上親人

    ○川上説明員 管制官につきまして、先ほども申し上げておるわけでございますけれども定員的に決してこれが現在十分だとは私ども考えておりません。非常に困難な中で全職員が身を粉にして仕事に当たってくれていると言っていいような状況でございます。そういう中でやはり私どもとしては、管制官の定員を今後ふやしまして、その全体の充実の中で路線の充実その他を勘案しながら、各空港におきまして、定員を配置してまいりたい、そしてその御指摘の業務がそれらの空港においても実施できるようにいたしたいと存じております。
  237. 横路孝弘

    ○横路委員 ぜひそういう方向で検討していただきたいと思うのです。そうでないと、現在この三種空港の職員の人たちの労働条件というのを見てみますと、私も聞きましたけれども、自分の専門外の仕事をみんなやらされている。職員の配置が少ないから公休も取れない、病気になっても休めないというような実態になっているんですね。いま御答弁いただきましたから、ぜひそういうことでやはりこの航空の安全というものを第一に考える、そういう立場からひとつお考えをいただきたいと思うのです。  そこで、あと二つほどお聞きしたいのですが、いま話が出ました管制宮、管制通信官などの問題なんですけれども、私、先日やはり札幌のほうで丘珠の航空管制通信所というのですか、あそこに行きまして話を聞いたときに、現場の人がこんなことを言っているのですね。四十一年の事故のあと仕事の条件というのは少し改善された、人間も少しふえた。ところがあれから四年たってどうも最近はまた管制通信のほうの仕事の業務量はものすごく伸びるけれども、仕事の要員は伸びていかない。これだけ飛行機の取り扱いの機数が多くなると、またそのうち事故があるんじゃないか。事故があれば、政府のほうもまたその管制官の仕事なり管制通信の仕事なりを認めてくれるんじゃないかというようなことを言う人がいるんですね。これは、言っている内容はとんでもないことなんです。とんでもないことなんですけれども、そういう発言をする気持ちというものを、私、現実にその仕事を見て、やはり理解することができると思うのですよ。だからそんなことにならぬようにやはり配置というものも考えていかなければならないと思うのです。  そこでひとつお尋ねしたいのですけれども、いまもう空のハイウエーは事故寸前だということがいわれている。それにはいろんな要因があると思うんですけれども、管制官の不足ということもやはり一つの要素と考えられる。そこでひとつお尋ねしたいのですが、ニアミスというのがありますね。異常接近というやつ。これも最近何か非常にふえて、昭和四十三年には三十件か四十件ぐらい、発生しているというように聞いているわけなんです。これもさっきの大阪空港の話じゃないですけれども、東京の場合ですと、昨年の八月あたりで一日に四百五十五回離着陸がある。そうすると、三分間に二機の割合ですね。こういう状態になっているわけです。だからそれを管制するほうも非常にたいへんな仕事だと思う。そこで、このニアミスというのが毎年どのくらい発生しているのか、そしてその原因が一体どの辺にあるのか、それをお尋ねしたいと思います。
  238. 川上親人

    ○川上説明員 ニアミスにつきましては、この四十四年の一年間におきまして発生いたしました件数は十八件でございます。これを地域的に見ますと、空港の周辺で九件、エンルート上で九件、こういうことでございます。それからまた気象状態において、いろいろニアミスの発生状態がかなり変わってまいります。計器飛行状態におきまして計器飛行を行なっております航空機とそうでない有視界飛行で行なわざるを得ない航空機との間のニアミス、これが十一件ございます。あとの七件が有視界飛行同士の間のニアミス、こういうふうな状況でございます。  それらの中から私どもいろいろ原因を探ってみまして、一つの対策としましては、現在東京及び大阪においては、すでに実施をいたしておるわけでございますが、特別管制空域といいまして、すべての飛行機を管制の対象にしていくという方法が一つあるかと存じます。十一件ございます計器飛行と有視界飛行との間のニアミスといいますのは、有視界飛行が管制の対象にならないというところに大きな原因があることと存じますので、航空交通の混雑しております空域におきましては、それらの航空機をも対象とする特別管制空域というものを拡大していきたい。もちろん東京、大阪においてもその空域を拡大することといたしております。これは昨年十一月淡路島上空で発生いたしました読売機と全日空機との衝突のときの例に徴しましても、空域を拡大しなければならぬ。また航空交通が非常に混雑するエンルートにおきましても、やはりエンルート全体を特別管制空域に今後していくというふうに持っていくべきであろうかと思います。ただそのためには、今後エンルートのレーダー管制を全面的に実施していく必要がございますので、そういった問題がこれからの一つのテーマだというふうに私ども考えておるわけでございます。それらの空港の特別管制空域を拡大いたしますとともに、読売の事故の例に徴しても明らかなように、空港あるいはエンルートの周辺で試験飛行あるいは訓練飛行というものを実施しないように、その試験、訓練の空域を完全に分離をするという方向で、これはかなり実効をあげ得る対策ではなかろうかと存じます。並びに、いわゆる有視界雲上飛行といいまして、雲の上を大体千フィート以上の距離を置きまして飛ぶ場合が有視界雲上飛行といわれておるものでございますが、雲の形に沿って飛びますと、雲の中を一定の高度で突っ切ってまいります航空機との間にニアミスが発生するおそれがございます。したがいまして、特に夜間におきまして、見通しその他が悪い状況も勘案いたしまして、夜間の有視界雲上飛行は禁止する。それから最も基本的なのは、何といいましても、パイロットの注意義務にかかわってくるのではないかと存じます。スピードが非常に早くなってきておるわけでございますけれども、パイロットの注意義務については、依然としてその重要性は変わらないというふうに考えられます。前後左右に対する注意義務を十分払うように、こういったいろいろの対策を現在、一部はすでに実施いたしております。管制空域のごときは、今後早急にそういう改善対策を基本的にやっていくということで検討をいま行なっておるところでございます。
  239. 横路孝弘

    ○横路委員 まあその機長の注意義務ですね、これはもちろん必要でしょうけれども、しかししろうと考えで、飛行機のようなスピードの出るものが一体機長の独自の判断でどの程度避けることができるものか、非常に大きな問題があると思うんです。やはりこれはいろいろと空を整理するとか、管制のほうの仕事を、いま対象を拡大するということがございましたけれども、やはりそういう方向で改善されなければならない。そうしますと、やはり要員の問題というのはどうしても出てくるわけですね。いまのニアミスの内容についてなんですけれども、個々の報告された例について、たぶんその原因なり検討すべきものというのは、おたくのほうできちんと資料としてあると思いますので、昨年一年間の分でけっこうですから、その内容について、その原因と対策、どういうのをとられたのかということについて、あとでけっこうでございますから、資料として出していただきたいと思うんです。  で、その管制官の問題なんですけれども、一つの例をお話ししたいと思うんです。私、やはり業務量に比較して人員の配置というのは少ないと思うんですね。一番初めに橋本運輸大臣のほうから、業務量の増大だけを見ていてもこれは困るんだなんてお話がありましたけれども、これは全部の職場を一般的に見られるから、ああいう発言になったんだろうと思うんです。航空管制の仕事をとってみた場合に、私は、大臣がいないのが残念なんですけれども、ああいう発言にならぬと思うんですね。札幌の場合、丘珠の場合、昭和四十二年は四万六千百七十機、四十四年には六万三千八百七十六機、三八%も業務量がふえている。定員のほうはほとんど変わってないんです。ですから、いまどういう仕組みでやっているかといいますと、航空管制の資格がある人でなければできないことになっていますが、運輸省の省令できめられている資格がない人がチームの編成の中に入っているわけですね。そうして、本来あそこは東北と北海道のセクターを管轄しているわけなんですが、二つのセクターに分けて管制すべきなんだけれども、いまはもうそういう実情にないんだ。現実に、管制官の場合、欠員が五名、通信官の場合二名、通信技術員、これが三名というふうな欠員が出ている状態なんです。だから、交代制でやっていても、だれかが病気になると、ほんとうにたいへんなことになってしまうんだ。こういう職場の実態というのは皆さん方も十分御承知だろうと思うんですけれども、そのために今後ともどうしても実態をそのまま放置しておいていいということにはならぬわけですから、大蔵省なり行政管理庁なり、いろいろ交渉すべき相手がたくさんあって、御苦心もあるだろうと思いますけれども、やはりその辺のところは検討していただいて、限られた人員の中ではやはり業務量の非常に増大しているところは、それに合わせて要員の配置というものも考えていただきたい。その点についてお答えをいただきたい。
  240. 川上親人

    ○川上説明員 管制官につきましては、先ほども実は申し上げたところでございますが、非常に困難な中でも毎年運輸省全体をあげまして、その管制官の重要性にかんがみまして、管制官の定員確保については、省全体で努力をしていただいているわけでございます。今年度におきましても、航空局全体で見ますと、二百十九名の増でございます。その中で管制官が四十五名の増を実は認められまして、施設増に伴う新規の定員とともに、業務量の増に伴う定員も一面において認められているわけでございます。業務量の増に伴う定員確保というのは、先生も十分御存じのように、非常に困難なものでございますけれども、管制官につきまして、あるいは通信につきましても一部そういったことが認められております。私どもとしては、こういった線に従い、今後とも定員の充足については大いに努力をいたしたいと思うわけでございます。  なお、話がちょっとわき道にそれるかとも思いますけれども、管制官の担当いたしますフライトの機数が年々増加しているということに対して、管制官の伸びが伴っていないのではないかという御指摘でございます。確かに一面そういった面があるのでございます。私どもといたしましては、そういう中におきまして、管制官の負担を軽減しながら、しかも業務能率を向上し、安全を第一に守れるような体制を実施いたすべく、東京の管制部につきましては管制の自動化というような手段も現在とりつつあるわけでございます。今後こういったものにつきましては、重要な管制部の業務並びに主要な空港におけるものについて、管制の自動化その他の合理化、能率化対策を、安全を害さないでやれる方法というものを勘案いたしまして、なるべく早目に実施に移していきたい、かように考えておるわけでございます。
  241. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、管制官の要員との関係で、結局管制官のコントロールする限界みたいなものを、基準をやはりつくられたらいいんじゃないか、それが明確になっていれば、大蔵省あたりと交渉する場合にも、こういうことでということで交渉できると思うのです。ですから、いま管制官一人についてコントロールする機数なら機数というものがどのくらいかというようなことをきめてあるのかないのか、ないとすれば私はそれをきちんときめるべきじゃないか、そういうぐあいに思うのですけれども、いかがでございますか。
  242. 川上親人

    ○川上説明員 一人当たりの管制官が負担できる能力の限度というようなものにつきましては、実は以前からこういった問題について航空局としても十分な検討を行ないまして、一応の基準は部内的に作成してございます。そういったものの関連におきまして、定員の要求その他も実は行なっているということでございます。
  243. 横路孝弘

    ○横路委員 その機数とはどのくらいなのですか。どういう基準なのですか。
  244. 川上親人

    ○川上説明員 事務的な点につきましては、管制の専門家でございます管制課長が来ておりますので、管制課長に答弁をしてもらいたいと思います。
  245. 泉靖二

    ○泉説明員 管制の処理能力につきましては、タワーの場合、またセンターの場合、レーダーを使う場合、使わない場合、いろいろな条件によりまして能力が非常に変わってまいります。一般的に申しまして、基準に一番使いやすいのは、ターミナルの場合の処理能力を最初に使いまして、それに有視界の処理能力に加えて、計器飛行の場合にレーダーを使えばどうなるのか、ごく一般的に申しますと、レーダーを使いますとワークロードが非常にふえますが、処理能力がふえるという、ちょっと矛盾した結果が出ます。ワークロードがふえながら処理能力がふえる、つまり人がたくさん要るけれども、たくさん処理できるという形になります。それからセンターのほうはもっと単純になりまして、一人がどれくらいの空間で何機処理できるかということがわりあい簡単に出てまいります。その場合に、平均して航空機の速度がトラバースする空間に対してどれくらいのファクターになるかという点で、値が変わってまいります。もしこまかい資料がお望みでございましたら、後ほど提出いたしたいと思います。
  246. 横路孝弘

    ○横路委員 そういう基準があるのでしたら、ぜし出していただきたいと思います。  そこで、次の問題に移りたいと思うのですけれども、結局五%定員削減ということで、現場の人が不足しているのが実態だろうと思うのですね。その中で一つ問題があると思うのは、管制官にしても管制通信官にしても管制技術官にしても、無線の保守の関係にしても、これは電波法三十九条なり四十条なりで認められた資格というものがなければいかぬですね。まず電波法上の資格がなければいかぬ。それから管制官と管制通信官、管制技術官については、その上にさらに運輸省の省令できめられた試験というのがあるわけですね。ところが職場の実態を見てみますと、無資格の人に実際の仕事をさせている状態にある。そこでお尋ねしたいのですけれども、管制官、管制通信官、管制技術官、それから無線保守に分けまして、一体有資格者何名で、無資格者は何名なのか、それをお答えいただきたいと思います。
  247. 川上親人

    ○川上説明員 管制官につきましては、四十四年度の定員で申し上げたいと存じますが、五百六十五名が定員でございます。この中で……
  248. 横路孝弘

    ○横路委員 六百六十三名じゃないですか。
  249. 川上親人

    ○川上説明員 五百六十五名でございます。無資格者がその中で三十三名でございます。残りは全部有資格者でございます。この三十三名につきましては、現在航空保安職員研修所におきまして、三週間ないし八週間の教育訓練、再教育を実施いたしますとともに、また実地におきまして、それぞれの飛行場管制業務あるいはレーダー管制業務各般の業務について資格を取らせるように、現地におきましても教育訓練をしていることでございます。これらについては、本年中に十分有資格者になり得るものと私どもは考えております。  なお、通信関係につきましては、いわゆるテレタイプ関係の業務と、それから無線その他を使います通信と二通りあるわけでございますが、テレタイプ関係につきましては、現在資格を特に法律的に要求されておらないのでございます。しかしながら、これらについても、航空局としましては、できるだけ資格を持たせるようにということでつとめてまいっておるわけでございます。  この通信関係につきましては、現有施設について資格を必要とする最低限度の人数は、航空局の場合でいきますと、法律上は百五十人あればよろしいことになっております。しかしながら、当局としましては、全員についてできるだけ資格を付与したいということで教育訓練をいたしまして、現在三百六名の有資格者を持っておりまして、残りは一名だけが資格を持っていないという状況でございます。  なお、無線関係につきましては、これも、一級通信技術士、二級通信技術士、無線技術士でございましたか、この資格を必要とするわけでございますが、無線の保守あるいは管制の技術要員、それらについてできるだけ同様に有資格者をふやしていくという考え方のもとに教育訓練を実施いたしました結果、法律上、現有施設に対する最低限度の必要者数は三百二十八名で足りるところでございますが、現実には四百二名の有資格者を備えておりまして、法律以上の有資格者数を養成いたしておるわけでございます。
  250. 横路孝弘

    ○横路委員 ちょっと確認をしたいのですが、無線保守に当たっている人は四十四年度の定員で四百四十九というように聞いておりますが、間違いございませんか。
  251. 川上親人

    ○川上説明員 定員としましては、四百四十六人でございます。  それから先ほど申し落としましたが、管制官の中で無資格者をふだんの業務の中に入れておるのではないかという御質問につきまして、管制官が管制業務を実施いたすにつきましては、必ず資格者でなければならないことに部内的にはいたしてございます。そうしますと、この三十三名は何をするかでございますけれども、現実には教育訓練をその場所で実施いたします要員でありますほか、ストリップの整理、記帳、計算、それから管制卓の間の連絡、こういった直接の管制官の判断を要しないそれらの面において、業務に従事しているのでございます。そういう点では、その三十三名の仕事の内容につきましては、現在直ちに無資格者であるからといって、それが違反になるわけではございません。
  252. 横路孝弘

    ○横路委員 それはこれからお尋ねすることなんで、その前に、ちょっと定員との関係で、一体何人いるのかというのがどうもはっきりしない。管制官については五百六十五名中三十三名だ。管制通信官、管制技術官についてはどうなんですか。定員が何名で、そのうちどうなのか。全員が資格を持っているのなら資格を持っているというふうにお答えいただきたいと思います。
  253. 川上親人

    ○川上説明員 通信関係の定員は、四十四年末の数字で申し上げますと、三百九名でございます。それから航空管制官につきましては五百六十五名でございます。無線保守要員関係が四百四十六名でございます。
  254. 横路孝弘

    ○横路委員 そうしますと、無線保守の四百四十六名のうち、四百二名は資格者ということになりますね。先ほど、資格を持っている人が四百二名ということですから、残りの四十四名については資格を持っていない、こういうことになるわけですね。
  255. 川上親人

    ○川上説明員 先ほど申し上げましたのは、現有施設に対する最低の必要資格者数といたしまして三百二十八名と申し上げたわけでございます。しかし現実には四百二名の有資格者を擁しておるわけでございます。
  256. 横路孝弘

    ○横路委員 そういうことだから、定員からその人数を引きますと、四十四名については無資格者ということになるわけですね。管制官についても三十三名いる。管制通信官と管制技術官についてはどうなんですか。
  257. 川上親人

    ○川上説明員 管制技術要員につきましては、百四十五名でございます。その中の百三十名が有資格者でございます。
  258. 横路孝弘

    ○横路委員 管制通信官のほうもついでに言ってもらうといいわけですが、いずれにしても、無資格者というものは相当いるわけですね。先ほど、仕事はさせていないと言うけれども、たとえば札幌の航空管制官の場合、完全にそのチームの編成の中に入っている。そうして、話を聞くと、忙しくなってあそこの管制官の前のところの台にあるフライト計画みたいなものがどんどんたまってくると、つい、こうしろ、ああしろということで、現実に仕事をさせている。無線の場合でも、ことしおたくのほうで航空保安職員研修所というのをつくりましたね、一年間ここに入ってみんな試験を受けたところ、十六名全部落ちてしまった、資格を取れなかったわけですね。この十六名は、いまどうしていますか。全部配置しているじゃないですか。仕事をさせているじゃないですか。だから、先ほど全日空の場合についてお話ししたわけですけれども、運輸省のほうでも、そういう資格のない人に実際仕事をさせているじゃありませんか。
  259. 川上親人

    ○川上説明員 先生、荷か誤解をしていらっしゃるのではないかと思うのでございますけれども、いわゆる法律的な根拠によりますと、実は一つのチームの中で責任者である者が有資格者であればよろしいわけでございます。しかしながら、航空局におきましては、そういったことでは必ずしも十分でないという考え方のもとに、そのチームのできるだけ多くの者を資格者に養成していこう、こういうことをやっているわけでございます。したがいまして、無資格者に仕事をやらしているということは、必ずしもそうではございません。資格者の指揮、監督のもとに、その指示に従って軽易な作業を実施するというようなことは、法律的にも許されているところでございますし、管制官につきましては、先ほど申し上げましたように、ストリップの整理、先生ごらんになられた管制卓におけるストリップの整理なり、そういった関係の業務を実施しているのであります。クリアランスを出す出さないというその判断は、管制官でなければさせていないわけでございます。それらの業務は、この三十三名は実施いたしておりません。
  260. 横路孝弘

    ○横路委員 電波法の関係は、三十九条に無線局の無線設備の操作は、四十条の定めるところによりきめられたその無線従事者でなければならぬ、そしてその無線従事者の資格は、四十条にきめられているわけですね。いまお話ですけれども、たとえば三種空港の場合、無線従事者が一人もいないところがありますね、管制官も何もいないところで。一人ですと、その人間がたとえば公休なんかでは、その無線の仕事をだれがやっているのか。  もう一つ、たとえば佐渡なんかの空港の場合、所長さんが一人。これは聞くところによると土木出身の人だ。ところがあそこの実際の設備など、スイッチを入れたりする仕事を現実にさせているというように私は聞いているのです。  その問題が一つと、それからいま、個々の人間が電波法による無線の資格を持っていない者でもいいんだというようなお話でしたけれども、それは一体、電波法のどこにそういう規定があるのですか。二つの点をお尋ねしたい。
  261. 川上親人

    ○川上説明員 三種空港におきまして、無線通信技術者、それから通信士、これらは二名ないし三名、ローカル空港においては配置をいたしております。そこで三種空港におきます通信関係については、いわゆる無線標識でございますNDBの保守並びに先ほど来申し上げておりますようなベースで連絡をするためのVHF通信機器の整備というようなことについて必要があるわけでございますけれども、これらにつきましては、もし故障があってそれを直して電波を発射するときに、それらの必要な職員の立ち会いが必要である、こういうようなことでございまして、一般の整備におきましては、運営は通信士でもって一応やれるわけでございます。また、それらの空港においては、当局では必ず二級通信士を配属いたしておりまして、電波の発射について立ち会い上の資格も一応持たせる。その電波の発射というのはそう数多くあるわけではございませんので、その人が不在の場合にどうするかという問題は、直ちには出てこないと思うわけでございます。  なお、これらの空港を通じまして、通信関係は現用と予備と二組みそろえてございまして、現用がだめになったときは予備を直ちに現用として使う。その間に整備をして現用としての電波を発射する、こういうふうなシステムになるわけでございます。職員もそれらに対応する職員の配属を行なっているわけでございます。
  262. 横路孝弘

    ○横路委員 電波を発射するのはやはり資格のある人でなければだめなんでしょう。仕事をしているところに一人資格者がいれば、あとの者はかってにできるということではないわけですね。その点はどうなんですか。
  263. 川上親人

    ○川上説明員 いま一番条件の悪い空港におきまして二級通信士及び三級通信士、二名の通信士を配置いたしております。こういったことで先ほど申し上げたようなことが一応できるわけでございます。
  264. 横路孝弘

    ○横路委員 なぜ私そういうことを申し上げるかといいますと、昭和三十五年に名古屋空港でF86Dと全日空のDC3型というのが衝突して、三人でしたか四人でしたか、なくなりましたね。このなくなった件について、航空管制官の訓練生が業務上過失致死の刑事責任を問われたというケースがあったように私は聞いておるのでありますが、これはそういうことはございましたかどうか、事実かどうか、まず最初に確認しておきたいと思います。
  265. 川上親人

    ○川上説明員 その当時私は局におりませんし、こまかい事情を知りませんので、当時の管制課長補佐でありました泉君に答弁していただきたいと存じます。
  266. 泉靖二

    ○泉説明員 仰せのとおりでございます。見習い管制官が当時やったわけでございますが、その人が起訴されました。
  267. 横路孝弘

    ○横路委員 結局その人が処罰されたというのは、彼が責任を持ってやっていたからでしょう。業務上過失致死という刑事犯に問われているのですから、何も責任がなかったら、刑事責任なんて負う必要はないのですよ。いまお話があったように、全然やらせていないというなら、何もこの人が、訓練生が責任を負うことはないのです。これは刑法からいって、行為者が処罰されるということが原則になっている。このケースを見ても、実際にやらせてないと言うけれども、私のほうで聞いているのは、みんなそうやって仕事を実際にやらす、やったあげくに事故を起こせば、その人間の責任になるのです。だから、これは管制官のほうの問題になりますけれども、その管制官について、きちんとやはり教育と訓練というものを分けて、しかも訓練のための要員というものをきちんと置いてやる。それはやはり実地教育も必要でしょうから、それもやらなければならぬわけですけれども、しかし、いまのようにチーム編成の中に入れてしまってやると、こういう事故が起きた場合にこんなことになるわけですね。だから、その辺のところもひとつ十分に検討していただいて、教育と訓練を分けていただきたいと思うのです。
  268. 泉靖二

    ○泉説明員 先ほど申し上げたのが少し舌足らずでしたので、補足させていただきます。  名古屋の衝突事件の際に、村手管制官が起訴されました理由と申しますのは、当日、彼は基礎試験に合格いたしまして、これは学科試験ですが、それで専門研修の途中で訓練を受けていたわけでございます。離陸をしてよろしいというクリアランスを出しましたときは、公的には一人の資格のある管制官の指揮のもとにそのクリアランスを出したわけでございますけれども、その資格のある管制官は他の電話をとっておりまして、実際上指揮監督をすることができない状況にあった。それで当時航空交通はDC3が一機と、それから戦闘機が一機、ほかの航空交通は一切ないという事態でございましたので、当然資格がなくても判断できるような事態であるという検察側の判断で起訴されたというふうに記憶いたしております。やはり当時も訓練ということははっきり分けていたのでございます、見習いであるということで免責されないで、分けていたのでありますが、片方の訓練している教官のほうが、フィジカルに責任をとれない状態であったということが、彼が起訴された原因であったというふうに記憶いたしております。
  269. 横路孝弘

    ○横路委員 ですから、いま電話をとっておる間にやってしまったというわけでしょう。そういう実態にあるのですよ、実際。どんどん飛行機のほうから連絡が入ってきますね。入ってくると、たとえば、札幌の場合は、六名のチーム編成でやっていると、そういうことができなくなるわけです。そうすると、やはりその中に入っている人間がどうしてもどんどん電話を受けて、飛行機と応答しているわけです。そうすると、やはり処理できなくなると、訓練生、見習い生に現実にやらせているのです。だから、私はそれを別にして、訓練のための責任者という要員を別に置いて、それはそれとして教育させるようにして、実際の管制のチーム編成の中には入れないようにするということでなければならないと思うのですね。その点についてのお答えをもう一度いただきたいと思います。
  270. 泉靖二

    ○泉説明員 ただいまの御指摘のように、訓練はできる限り業務と切り離して行なえる体制が最も望ましいと考えております。
  271. 横路孝弘

    ○横路委員 だからそれを、そのために実際にどうするかということでなければ、やはりいけないんじゃないかと思うのですね。事故が起きてしまってからでは、ほんとうにもうどうしようもないし、先ほどもお話もありましたように、業務量はどんどん伸びているんですから。やはりこうした資格を持った人間がきちんと処理するという、そういう制度のもとでは、訓練生なり見習い生をその中に入れてしまうというのじゃなくて、別にすべきじゃないか。そこで、もちろんそれは訓練する必要はあると思いますけれども、それにはそれを専門にやる人間をそこに置いて指導するようにして、実際のその仕事の中に入れてしまってやるということでは、先ほどのそういった事故がまた起きる危険性があると私は思うのですね。そういう点でひとつ検討していただきたいと思います。
  272. 川上親人

    ○川上説明員 見習い期間中でございます管制官につきましては、絶対にその管制業務そのもの、いわゆる判断をし指示をするという業務は一切させるわけにまいりませんので、その点だけは今後これは部内的にもきつく達しをいたしまして、その点は私ども確保してまいりたいと存じます。ただ、見習いである期間中におきまして、ストリップの整理あるいは管制卓の間の連絡をはかるというふうな業務は、これは管制官がその場において仕事を通じて研修するという道でもございますので、全然切り離してそういったことをやらせるというのも、教育効果としてはいかがかと思うわけでございます。必ずその管制業務についてはタッチさせない、この点を守らしていくことといたしたいと存じます。
  273. 横路孝弘

    ○横路委員 タッチさせないということでそれはもちろんやってもらわなければ困ると思うのですけれども、ただ、それだけやりますと、今度は現在残っているほうが仕事の量というのはきつくなるということになるわけでしょう。ですからやはりそうした意味で、私はその要員の問題と、それからそれ専門にやる指導官というのを置いたらどうですか。東京なんかにはいるようですけれども、札幌あたりにはそれはいないんですね。だからそのほかの実務に当たらないで訓練専門にやる人間というのを一人置いて、その人間に監督させるということであれば、飛行機との交信が多くなって、つい仕事をやってもらうということが私は起こらないと思うのです。いかがでございますか。
  274. 川上親人

    ○川上説明員 訓練教官につきましては、現在、東京、大阪、名古屋、それから全国に三つございます管制部、それぞれ訓練教官を配属いたしております。これらにつきましては、将来定員確保にあたりまして、訓練教官を他の空港にも配属できるように私どもとしてもちろん努力すべきであると考えます。そういったことを通じまして、余裕を持ち得ますならば、いまの管制関係につきましてもシフトからもちろんはずして、教育センターそのものをつくって、そこで全面的にやらしていく、こういうことも将来問題としてはとりたい、とり得るのではないかと思うし、とるべきではないかともまた考えているわけでございます。
  275. 横路孝弘

    ○横路委員 訓練生の配置をする場合に、ですから、その訓練専門の指導員がいるところにしか配置しないというようなやはり制度みたいなものを実際の運用の中で確立していただきたいと思うのです。  大臣がいたらひとつお尋ねしたいと思ったのですが、この前、千歳空港に行きまして、ちょうど雪の降っているときで、そこの人から話を聞いたわけなんですけれども、ついでだからちょっとお尋ねしておきますけれども、千歳空港の除雪の問題です。この除雪体制というのは全然できてないんですね。職員の人が徹夜で作業をやっても追いつかぬという状態なんです。特にあそこは共用飛行場になっているから、防衛庁のほうと比べると、機材というのは非常に不足しているわけです。防衛庁の場合は大体全部で三十八台あるのに、千歳のほうはわずか八台しか置いてないという実情になっているわけです。ですからこれはやっぱり、札幌の場合ですと七二年にオリンピックがありますので除雪体制をきちんと確保するということからも、せめてもう少し千歳空港あたりの空港の整備の中でこのこともぜひお考えいただきたいと思いますけれども、その点について最後にお尋ねしたいと思います。
  276. 川上親人

    ○川上説明員 千歳の除雪体制につきましては、今後除雪体制の充実を私どもはばかってまいりたいと存じます。
  277. 横路孝弘

    ○横路委員 次に、陸運のほうの質問をしたいと思うのですけれども、そういうことで、いまの航空保安体制も各民間企業の中にも問題があるし、それから管制官なり空港の整備についてもまだまだ十分でない点がたくさんあるわけでありますから、その点十分設備並びにその要員の確保という点から努力をしていただきたいと思います。  時間がだいぶあれしましたけれども、陸運のほうも少しお尋ねしたいと思うのです。  まず最初にお尋ねしたいのは、行政管理庁が「交通事故対策の推進に関する行政監察」ということで、過去二回にわたっていろいろな勧告というのがなされている。その内容は、たとえば一つには自動車運送事業者の事故報告の励行とか、あるいは事故を起こした事業者に対する十分な指導、監査の体制がなっていない。あるいは車両整備確保で、たとえば車両検査時における定期点検整備記録簿が十分呈示されていないんじゃないか、あるいは事故多発事業者に対する厳正な処分が行なわれていないんじゃないかというような問題が、この勧告の中で、数回にわたって同じような勧告がされているわけです。  そこでお尋ねしたいのですけれども、これがやはりさっぱり実施されていないその原因、いろいろあるでしょうけれども、一つは陸運行政の中で人が不足しているんじゃないか。さっきの要員の問題です。それからもう一つは、基本的な姿勢としてやはり業界保護、業界と密接な関係にあって、十分な監督行政ができないような仕組みになっているんじゃないかという二つの点から、いろいろ問題になってきているわけです。その点について、まず基本的な姿勢といいますか、何回も同じような行政勧告を運輸省の行政に関して受けている、この点についてどういうようにお考えになるかということをまずお伺いしたいと思います。
  278. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 自動車行政の大きな柱は保安の確保でございまして、この保安の確保のためには車両検査その他の道路運送車両法上の行政をやっておりますけれども、事業者の監督ということが非常に重要でございます。で、これにつきましては諸制度がございますが、やはり監査というものを極力やりまして、それらを徹底しなければならぬと思っております。で、要員なり予算の面につきましては必ずしも十分でございませんが、われわれはそれを確保いたしまして、保安行政の確立ということを第一に考えていきたいと思っております。
  279. 横路孝弘

    ○横路委員 その、業界の結びつきという批判については御答弁なかったわけなんですけれども、簡単に、これは指数だけでいいですから、お答えしていただきたいと思うのです。  陸運関係について、昭和二十玉年度でも二十四年度からでもよろしいですけれども、ここ十年間ないし二十年間、これはそちらのほうにある数字、どの数字でもよろしいですけれども、自動車数が指数にしてどのくらい伸びたのか、それから事業者数が指数にしてどのくらい伸びたのか、職員は指数にしてどのくらい伸びたのかということを、指数だけでけっこうですから、お答えをいただきたいと思うのです。
  280. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 昭和三十九年度と四十五年度を比較いたしますと、保有車両台数が、三十九年を一〇〇といたしました場合に二七六でございます。それから定員の面におきましては、合計いたしまして、三十九年度一〇〇に対しまして二二〇でございます。事業者の数につきましては、後ほど資料を調べましてお答え申し上げたいと思います。
  281. 横路孝弘

    ○横路委員 どうも何かもごもごとしてはっきりしなかったのですけれども、ここ十年ないし二十年くらいの数字を指数でとりてみると、ともかく、たとえば職員のほうは昭和二十五年が二千二百九十七名だったんですね。ところが、これが昭和四十四年四月には、陸運局なり陸運事務所の関係でありますけれども、三千十名ということで、わずか一・五倍にもなっていないわけです。自動車のほうは、昭和二十五年に比べますと、大体三倍以上に伸びている。事業者数でも、やはり大体三倍近く、三倍までいきませんけれども、それに近いだけの伸びというものを示しているわけです。  そこで、先日この委員会で質問がありました、許認可についてのいろいろな問題が出てくるだろうと思いますけれども、今後十年間の予想として、自動車数なり事業所の数なりの伸びというものを、おたくのほうでどういう計算をされて、今後の行政についての基礎的な資料とされているのか、それからまた、その中で職員の定員の関係をどういうようにお考えになっているのか、その辺、先ほど民間委託の問題やら何やらで出てきましたけれども、当然、この行政改革の中でお考えになっているだろうと思うのです。その辺のところを明らかにしていただきたいと思うのです。
  282. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 現在のところでは、軽自動車以上の自動車が約千六百万台でございまして、これを、昭和五十年度におきましては大体三千四百ないし三千五百万台と予想いたしております。それ以降の十年につきましてはまだ予想いたしておりませんが、大体いまのところでは二〇%の伸びでございますので、それを見まして昭和五十年度の自動車の伸びを算定いたしております。その伸びと仕事の量に応じまして職員の数を推定いたしておりますが、これにつきましては、一応昭和四十五年度の予算要求の際等には、四十八年度を目標に算定をいたしております。四十八年度の業務量から見まして、検査要員数の推移を、昭和四十四年度八百十二名に対しまして、昭和四十八年度は千六十九名というふうに算定をいたしております。これは仕事量の伸びと検査におきますところの認可件数というふうなもの、それから国が直接行ないますところの継続検査、新規検査、構造変更検査等の業務量を予想いたしまして、そのような算定をいたしております。われわれといたしましては、必要な人員確保——仕事は極力合理化する必要がございますけれども、自動車の伸びというのは、先ほど申し上げましたように、現在におきましては二〇%前後でございます。したがいまして、それに即応するだけの人員確保をしていきたい、かように考えております。
  283. 横路孝弘

    ○横路委員 その辺のところになりますと、皆さん方のお考えと先ほど大臣のおっしゃられた点とは若干、微妙ではあるけれども、やはり違いがあると思うのです。そこのところを私、いまの実態というものを明らかにして、大臣のほうに理解をしていただこうということで、これから事故に関する監査の問題なり、指定自動車の車検の問題なり、民間協力者の問題なり、いろいろお尋ねしようと思っておったのですが……。  では、質問を進めたいと思いますけれども、「行政監察月報」の百十七号、この中で「自動車運送事業者に対する指導、監督について」ということで、勧告がなされているわけです。この中で、要するに、交通事故の場合、運転者の不注意に基因することがあるけれども、その背後的要因として、自動車運送事業者における運行管理その他の事業管理の適否の問題というのを見過ごすことはできないんだ。そこで、その事故の原因を究明して、輸送の安全確保体制を確立するために、もう少し強い行政指導をすべきじゃないかということで、具体的に、たとえば自動車運送事業者の事故報告がきちんと行なわれていないために、事故の実態の把握が運輸省としてはなされていないんじゃないかというような問題、あるいは自動車運送事業者の運行管理に欠陥があると思われるような無資格、つまり無免許運転あるいは酒酔い運転によって事故を起こした事業者に対して、その後十分な指導もしていない、積極的に特別保安監査そのほかの必要な調査をやるべきじゃないか、これはもちろん、私はこの勧告のとおりであろうと思うのです。それは人手不足でできないのか、あるいはおたくのほうの姿勢に問題があって、やるべきことをやらないで放置しているのか、いずれにしてもその辺に大きな問題があると私は思うのです。
  284. 天野公義

    天野委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  285. 天野公義

    天野委員長 速記を始めてください。  横路孝弘君。
  286. 横路孝弘

    ○横路委員 大臣のほうもおそくまでたいへんだと思いますけれども、もうしばらくおつき合いを願いたいと思います。大臣せっかく来られましたから、ひとつお尋ねしたいと思います。  先ほどのやつはあとでお伺いいたしますけれども、この陸運の行政の中でやはり一番肝心な監督行政ですね。先ほど航空に関してもいろいろとお尋ねしたのですけれども、たとえば許認可が非常におくれているという指摘が、この前の内閣委員会でもあったと思うのです。その原因なんですけれども、何が一体原因なのか。従来やはり二つの点がいわれている。一つは人手が足りないのじゃないかという問題。それからもう一つは、大体監督する姿勢なんというのは持っていないんだということで、陸運行政の中で体質的に業界との結びつきということがいろいろな点から指摘され、いわれてきているわけです。簡単でけっこうでございますから、この辺のところを最初にお答えいただきたいと思います。
  287. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 いろいろ原因がありますが、一つは自動車が激増したということ。それに対して横路さんは人が足らぬのじゃないかという御意見ですが、それもありましょうけれども、現行のままでやっていくということ、そういうことが一つの原因です。しかし、これは行政監理委員会でも指摘しておりますように、タクシー事業等の許認可については、簡素化というより、やめたらいいじゃないか、一定基準をつくってやめたほうがいいというのが勧告の趣旨ですね。それから、増車の制限ワクを撤廃したらどうだ、申請があったら認めたらいいじゃないか、こういう二つの根幹が行政監理委員会あるいは物価安定会議の提言です。それによりますと、一つは自動車の数を申し込みが来たらふやしてやれ、それからタクシー事業者というものは一定の基準に従ったものは許可しろ、こういうことなんです。ただ私たちが多少それにこだわりますのは、許可いたしましても運転手が不足で、現在東京だけでもって約四千五百台というものが実際上遊んでおる。したがって、運転手が少ないので、今度皆さんの御協力を得てこの衆議院を通りましたタクシー近代化、これはいわゆる運転手の養成等をやろう、こういう問題を考えなくてはいかぬことと、もう一つは、これは根本問題ですが、横路さんはどうお考えになっておるかどうか知らぬが、行政があまりこういう商売に協力し過ぎているんじゃないか。あの法律がそうなっているんです。いわゆるこの事業が、需給がお互いに合うようにして、そうしてそれを考えながら許可してやれという、業者に対して非常に親切な行政というか、行政がそういう方面に関与し過ぎているんじゃないかとぼくは思う。せっかく申請があるのですから、一定基準に合えばスムーズに許可していくという制度を確立したほうがよろしい。その意味においては物価安定会議の意見と私は大体同じでありますが、ただそうした場合にも、なおかつ運転手の不足というものはこれはおおうことのできない事実ですからして、いかにしてタクシー運転手をふやすかということには、一方においては訓練機関、養成機関をつくることですが、同時に実際は待遇を改善しなければだめです。二十二、三歳の青年も四十五、六歳のベテランも同じ収入である、これじゃだれもなかなかなりません。これは待遇問題であります。しかし、タクシー事業という業種自身がそういうやむを得ない欠陥がある、こういうことも事実であります。それらを考えまして、ひとつ近代的な行政指導をしてまいりたい、かように考えております。
  288. 横路孝弘

    ○横路委員 その体制についてひとつお話ししたいと思うのです。たとえば、広島の陸運局をとりますと、広島の陸運局の自動車部旅客課の乗用一係、二係というのは、係員が両方で合わせて四名なんですね。四名で中国五つの県のハイ・タクの免許からタクシー事業の監査からみんなやっているのです。四名で中国の五つの県ですよ。それからたとえば広島陸運局の自動車整備のほうでは、一係、二係があって六名、このうち係長二名でタイピスト一名ですから、実質的には五名程度の人員で——これは先ほど大臣も御答弁になりました車検の関係ですね。民間の指定の車検場の監査から何から全部、五つの県を五名でやっている。私はこんな体制で十分な監督行政というものはできないと思う。一つの解決方法というのは、確かにそれはいまおっしゃったように、いろいろよけいな許認可をはずしていくというのも一つの解決方法でしょう。しかし、たとえばこのタクシーの事業の問題にしても、一番問題なのは、これはあとで申し上げますけれども、行政管理庁のほうから、行政監察で、監督が十分に行なわれていない、それが交通事故を増加している一つの要素、要因になっているのじゃないかという指摘もあるわけなんですけれども、一体こういう人員でほんとうの監督行政というのができるかどうか。従来の行政の中心というのは、許認可をするというところに重点があるのじゃなくて、それを通して肝心の監督をするというところに重点があったはずなんです。それが業務に追われているのがいまの実情で、肝心の監督ができなくなってきていると思う。だから広島の陸運局、これはどこの陸運局をとっても同じだと思う。大臣でなくて局長さんのほうからでもけっこうですから、この辺の実態をどういうぐあいにお考えになっているのか、もう一度御答弁願いたいと思います。
  289. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 いま御指摘のように、たとえばハイヤー、タクシーの許認可、監査等をやっておりますところの人員は、通常におきましては五名前後でございます。東京陸運局におきましては、年によって違いますが、現在二十二名ぐらいで仕事をやっております。ほかの整備その他につきましても、人員は必ずしも十分でございません。われわれといたしましては、まず仕事の内容を簡素化するということも一つは重要でございます。それを現在具体的に検討いたしております。それから許認可の仕事ももちろんこれをやらなければなりませんけれども、御指摘のように、監査ということは非常に重要でございまして、生んだものを育成していくということにつきましては、具体的に監査をやりまして悪いところを直していく。特に悪いものにつきましては、行政処分等を徹底するという仕事は重要でございまして、この点につきましても御指摘のとおりでございます。したがいまして、われわれはそれに必要な増員確保しつつ、また仕事のやり方自体を近代化、合理化するという両面からこれを解決するようにいたしたいと思っております。
  290. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで陸運行政について、私は交通安全特別委員会のほうの委員もやっているものですから、交通事故防止という観点からひとつこの陸運行政を考えてみようということなんです。先ほど大臣がおられなかったので、もう一度繰り返したいのですが、行政管理庁が「交通事故対策の推進に関する行政監察」というのを過去二回にわたって実施して、その結果同じような勧告になっているのですね。その一つは運行管理者に対する研修の充実、もう一つは自動車運送事業者の事故報告がきちんとされていない、つまり事故について運輸省のほうで把握してないじゃないか、だから事故を起こした事業者に対しての十分な指導、特別保安監査なんかがきわめて不十分だ、それから事故多発事業者に対する厳正な処分というのが行なわれていない、あるいは車両整備確保については、現在の車両検査についてはいろいろ問題がある、こういった行政勧告というものが行なわれているのです。  そこで具体的にお尋ねしたいと思うのですけれども、先ほどお尋ねいたしましたように、事故があった場合に、事故の報告というのは運送業者のほうもやらなければならぬけれども、警察のほうから現在おたくのほうに行っているはずなんですね。それをどの程度把握されて、そして事故の多発業者に対する監査というものをどういうぐあいに行なっているのか、これをお答えいただきたいと思います。四十三年なり四十四年なりの一年だけの統計でけっこうですから、把握している部分について御答弁いただきたいと思います。
  291. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 昭和四十三年度におきますところのいわゆる重大事故、これは報告を要する死傷を伴うとか車両欠陥でありますとか、事故報告規則に規定をいたしておりますが、これが一万一千百五十六件でございます。バスにつきましてはほとんど大部分が報告をされております。しかしトラックとかハイ・タクにつきましては十分ではありませんので、監査等の際にその励行状況をチェックしておるところでございます。それらの業者が十分これらの報告をしてないという場合におきましては、業者等の行政処分の際にこれを反映さすというふうにいたしております。  それから警察のほうの通告でございますが、事故の多発会社で特に顕著なものにつきましては、たとえば警視庁等におきましては、ハイ・タクについてはこれらが事故多発であるということでこちらに通告をいただいております。それにつきましては特別な監査をする、あるいは増車のときにおきまして、それらの成績が悪いということを反映いたしまして、それらには増車をしないというふうなことで運用をいたしておる次第でございまして、事故報告につきましてはさらに今後も完ぺきを期さなければいけない事項でございますので、そのようにいたしまして、いま申し上げましたような方法でもって監査等のときにチェックをしていきたいと思っております。  それから運行管理者なり整備管理者につきましての研修でございますが、これは関係の法令をつけまして教える、それから事故防止について研修をやる、年間約三万人の者を実施いたしておりますけれども、これらの教習の内容等につきましてはさらに改善の必要があるものと思っております。  それから先ほどの数字の中で、事業者の昭和三十九年度と四十四年度末、すなわち四十五年の初めにおきますところの数字は百二十四であります。
  292. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、その一万一千百五十六件の事故のうち、いわゆる特別保安監査というのをやった件数は何件ですか。
  293. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 バス、トラック、ハイ・タクを合計いたしまして、昭和四十三年度の特別監査が一千十九件でございます。
  294. 横路孝弘

    ○横路委員 その数字は定期監査も含んでいるのじゃないですか。
  295. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 定期的なものはいわゆる一般監査でございまして、これは合計五百七十一件でございます。先ほどの数字の中にはそれは含んでおりません。
  296. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、その監査をした結果、この行管の勧告の中にもあるのですけれども、やはり厳重な処分をしなければ効果というのはないわけですね。一体処分というのはどういうぐあいにこの一万一千百五十六件の事故、そのうちの十分の一について監査を行なって、その結果どういうような処分をされているのか。
  297. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 ただいまの一般監査と特別監査の合計が千五百九十件でございます。それの処分の内訳は、使用停止が百九十三件、事業改善命令二十三件、安全確保命令が二十六件、整備命令四件、それから警告をいたしたものが四百八十五件、勧告をいたしたものは三百十三件でございます。
  298. 横路孝弘

    ○横路委員 この一万一千百五十六件というのはいわゆる重大事故なんですね。だから本来からいえば、この重大事故については全部監査をしてチェックをするということにならなければいけないと思うのです。なぜこれは全部できないのでしょう。
  299. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 この重大事故報告というものは、たとえば運転の単純なミスで死傷事故を生んだ、そういうふうなものも入っておりますので、それらにつきましては一々監査しなくてもわかるわけでございます。監査をいたします重点は、個々の事故が起きました場合に、その会社が全体として運行管理が十分であるかどうか、事故防止に対する体制というものはどうであるかというようなことを調べるわけでございます。それからまた、車両欠陥事故というふうなものになりますと、自後ほかのものに対する影響というものもありますから、それらを重点にするわけでございます。したがいまして、重大事故報告のものを全部監査する必要はないかと思います。しかしながら、それに対する監査の実際の実施件数というものは、これは必ずしも十分でないのでございまして、われわれといたしましてはさらにこの監査の回数をふやしたい。そのためには監査の人員と、それから予算を要するわけでございますので、これらの点につきましては、毎年予算要求の場合におきます一つの重要な事項といたしまして、自動車局としては要求をしてまいっている次第でございます。今後におきましても、これらの点につきましては、重点を置いて改善の方向に参りたいというふうに思います。
  300. 横路孝弘

    ○横路委員 交通事故というのは、車両なんかに欠陥のある問題を別にすれば、みんな運転手のミスによるものなんです、過失があったということになるのです。問題はその運転手の不注意の背後に何があるのかということが問題なんです。その背後にあるものとして、この勧告の中にも言っているように、背後的要因として自動車運送事業者における運行管理、あるいは事業管理の適否、それが問題なんだ。だからそれを十分にやりなさいという勧告になっているのです。確かに事故そのものは運転手の簡単なミスによって起きている。そうでないのもありますけれども……。だから、事故報告を受けて、これは簡単なミスだということで除いてしまえば、やはりそこに大きな問題がある。その背後にあるものをつかもうとすれば、これはやはりきちんと監査する以外に方法はないと思うのです。だから私はいまの答弁を聞いていて、姿勢として、どうも交通事故をなくすという交通事故対策、しかもそれを運輸省の監督行政の中でなくしていくのだ。これは各省いろいろ、道路の問題もありますが、これは建設省なら建設省の仕事になるわけなんです。運送事業者のその背後的な大きな要因があるものについては、これはやはり運輸省のほうで監督をしなければならないと思うのです。その辺の姿勢が、どうもお話を聞いて不十分だと思うのですが、もう一度重ねてお答えいただきたいと思います。
  301. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 ただいま申し上げましたように、個々の事故の追及ということももちろん必要でございますけれども、会社におきますところの運行管理であるとか、労務管理でありますとか、背後関係というところに問題があるということが重要でございます。したがいまして、それらについては一般監査ないし特別監査でもって追及をしていきたいという考え方でございまして、その点は先生のおっしゃるとおりでございます。それに対しましては、重大事故の件数に対してわれわれの監査の件数というのが必ずしも十分でないから、これをもう少しやる必要があるということになりますと、人員なり金を要しますので、毎年それを重点にしてわれわれは要求してまいっておりますけれども、まだ遺憾ながら十分でございませんので、将来におきましても、ただいま申し上げますように、それに重点を指向いたしまして、必要なものを獲得して業務の完全を期していきたいというふうに思います。
  302. 横路孝弘

    ○横路委員 時間もあれなようですから、少し省略をして先へ進みたいと思うのです。  そこで一つ問題なのは、ことしの三月の東京におけるタクシー値上げのときの運輸省のとった措置というものは、やはり一つ大きな問題があるのじゃないか。本来ならばおたくのほうの権限でやれることなんだから、やはりおたくのほうでその監査をして、その結果、この行管から指摘されたような内容を中心にして、それをもとにして値上げを認める、認めないというようなことをやるべきだったと思うのです。  まあこれはもうすでに行なわれたことですから、その点は別にして、その後もう東京のほうは全部の会社が値上げになっていますね。値上げを据え置かれた会社については、もうすでに値上げになっている。それはやはりそうした点での監査をやった結果なのかどうなのか、その点をお伺いしたい。
  303. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 本件につきましては、閣僚協の決定等がございまして、労働関係の改善ということが今回の運賃改定の大きな要素になっております。したがいまして、労働条件の改善状況につきましては、まず申請会社全会社について就業規則、賃金規程を規定どおりのものを届け出しているかどうかということをチェックいたしまして、そしてまたこれの提出された内容が十分実施されているかどうかということにつきまして監査をしたわけでございますが、御承知のように六十二事業所、六十八営業所につきましてはそれらの点が不十分でございましたので、これの実施を延期させたわけでございます。その後、労働省のほうでそれらにつきましては具体的に監査をし、指導をいたしました結果、おおむねのものが合格いたしましたので、労働省の通告に基づきまして、これを追加して指定をしたわけでございます。それで、一社につきましては、さらに当時といたしまして非常に労務管理の点が悪いということでございますので、さらに労働省のほうから監査をし、指導していただきました結果、去る四月二十日にこれも合格であるということで指定をいたしました。今後も、これはわれわれの行政内容でありますと同時に、労働行政の内容でもございますので、労働条件の改善の点につきましては労働省のほうで指導監督をやっていただく、そしてまたわれわれのほうも監督をいたすわけでございまして、双方にこれらの点については監査した結果を通報し合いまして、両方で協力して改善していくということが、役所としても仕事を能率化することと改善の実をあげるということで非常にいいのではないかということで、両省でもこれは話し合いをいたしておる次第でございます。
  304. 横路孝弘

    ○横路委員 最近タクシーに乗って運転手に聞いてみますと、運賃値上げをしたために歩合の内容を変えられてしまって、むしろ悪くなったということを運転者はみんな話しているのですね。まあ皆さん方は、例の「た」ナンバー廃止ということがいわれるが、そういう車に乗られておって、タクシーにはあまり乗られないのでわからないのじゃないかと思うのでございますけれども、例の二・九通達があって、このうち最低六割までは固定給にしなさいよということまで出されておるのですけれども、私はやはり行政としては、こういう値上げの際にはその固定割合をたとえば六割から七割にするというような指導というものが、そっちは労働条件だから労働者ですよ、運送事業のほうは運輸省なんだからということではなくて、統一した行政というものもやはりその点で必要だと思うのです。その点については、何か特に皆さんのほうでこの改善策というものをお考えになっておりますか。
  305. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 今回におきますところの運賃改定の際の労働条件改善の点につきましては、閣僚協でも決定した事項でございまして、この点については各省が協力をして実行をしていこうということであります。したがいまして、われわれのほうもそれを受けまして、労使の関係者で確認書を交換させました。これは異例なことでございますけれども、役所のほうで指導いたして、確認書の交換をさせたわけでございます。これは給与の改善等に関するものでございます。それから労働省のほうは、先ほど申し上げました点で具体的に監査をしていただいたわけでございまして、われわれのほうの仕事であると同時に労働省のほうの仕事でもございますので、双方でもってやっていこうというわけでございます。  それで、運賃改定後の実収につきましては、いろいろ会社によって違いがございます。たとえば、従来労働時間を超過して動かしておりましたような場合には、これを改善することによって走行距離が減少してくるというふうな場合には、水揚げが必ずしも期待どおりにはあげられないという結果になるのは当然なわけでございまして、会社によっていろいろあるわけでございます。それもやはり労働関係の法律を守る、道路運送法を守るという前提のもとにおいて事業者が自覚しなければいけないわけでございまして、われわれはそれを出発点といたしまして、今後とも指導をしていきたい。  さらに給与の具体的改善につきましては、現在まだ実施して日が浅いために、どれほどのものが改善されたかということにつきましては、まだ明確でございません。現在おのおのの労働組合と経営者のほうで折衝いたしておるわけでございまして、われわれといたしましては、運賃改定の前に交換されました確認書が実施されるという方向に向かいまして、業者のほうを今後も指導を続けてまいりたいというふうに考えております。
  306. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、これは大臣にぜひお答えをいただきたいと思うのですけれども、交通事故防止という観点から運輸省のほうでやれることが一つあると思うのです。それは、タクシーの値上げの場合とかあるいは増車などの場合に、警察からは運送業者が事故を起こした場合には通報が入ってきているのです。これは運輸省にそういった資料がきちんとあるはずなんです。それから事故多発業者ということでやはり報告があるはずなんです。それを参考にして、つまり従来、タクシーの値上げにしても増車の場合にしても、きちんとおたくのほうできめて、たとえば交通事故多発業者に対しては増車を認めない、値上げを認めないというような措置は十分にはとられていなかったと思うのです。ですから、交通事故が多いところというのは、労務管理の点でも問題のあるところなんです。運送事業として非常に問題のある内容が多いのですから、これに対して一番きき目のある行政措置は何かといえば、それはやはり事業のいろいろな停止なり何なりと同時に、増車をさせない、あるいは運賃値上げを認めないということが一番きき目のあることだと思うのです。だからぜひ交通安全という観点からも、交通事故や交通違反等を統計的に処理されて、タクシーの場合にはそういう方向で、そのことを基準にして認める、認めないということを全国的にやるべきじゃないか。その点について大臣の御見解を承りたいと思います。
  307. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 おっしゃるように、交通事故多発会社は増車を認めないという方針は確立したいと思います。  ただ、その料金に差を設けるということははたしてできるかどうか。その問題は少し検討しなければ、何とも返事ができません。たとえば百円のタクシーと百五十円のタクシーが走っておると、あなたのおっしゃることによれば、この百円の車はあぶないですよということですね。そういう車を走らせていいかどうかということになりますと、これは疑問がありますから、その点はせっかくの御提案ですが採用しかねますが、多発会社に増車を認めない、時によりましてはその会社は事業免許を取り消す、そういうような手段はぜひやるべきであるし、また、やるように私は過日、局長に厳重に申し渡してあります。  ただ問題は、あまりしゃべり過ぎても時間がかかりますが、タクシー業というものは近代産業に適しているかどうかということを横路さんもひとつ御研究願いたいと思うのです。いま、固定給を中心にしたらどうか。これはいま大手はどうなっているかわかりませんけれども、要するに私が二十年のタクシーの経験者であっても横路さんが五年の経験者であっても、水揚げは同じなんですね。あるいはあなたのほうが、若いから多いかもしれぬ。ですから、いまのような歩合制度といいますか、いまのような考え方では、いわゆる近代化されない一つの部面を持っておることを先ほど申し上げた。ですから、これを思い切った値上げをしまして、近代産業同様に、若い人は、たとえば二十五歳の初任給は四万五千円、水揚げいかんにかかわらず年次によって収入を上げていく、そういう制度ができるかというと、それは働く人から見れば、自分も四十歳の橋本も同じような水揚げじゃないか、おれのほうが多いじゃないか、にもかかわらず、自分のほうが四万円で片方が八万円、こういう制度が可能かどうか。これは特別な立法でもして、職業運転手なるものは初任給は幾らである。そうして年次によってこれは上げるというような強行法律でもできなければ、実際問題としてできませんね。ですからして、いままで私はいろいろ検討しましたが、この事業というものは必ずしも近代産業的な、ことにいわゆる近代労務関係のものじゃないというふうな気がするのです。しかし、それではしょうがありませんから、将来どう持っていくか、いわゆるかつてのタクシーのように一切免許を廃止してしまって自由競争にするか、その場合において自賠法的なものをどう考えるか、こういうことまで考えなければいかぬと思いますが、なかなかむずかしい問題です。先ほど来局長やあるいは関係者方面がいろいろな検討を加えておりますけれども、あれだけでもまあある程度の効果はありましょうけれども、抜本的な効果はない。これは問題は、この業種というものはいわゆる近代産業の部面においてどう分けるかという問題から考えてこないと、なかなか最終的な結論には達しない、かように考えております。
  308. 横路孝弘

    ○横路委員 もちろん仰せのように、現在の現実を前提にしてどうするかという問題と、それから将来的にどうしていくかということは、やはり分けて考えなければいかぬですね。ですから、現在の現状の中で、いまおっしゃるように、そういう強行的な法律なんというのはつくれそうもないから、だからいまタクシーの運転手の希望というのは、ともかく何年か無事につとめて、個人タクの免許をもらってやろうというのが、タクシー運転手としてずっと一生やっていこうという人の希望ですよ。ただ一つの残された希望です。それが許認可のほうがうまくいってないというのは、この前、指摘されたとおりなんです。ですから、その現状を前提にして考えた場合に、やはりこのタクシーの値上げをしても、それがすぐに運転手の労働条件に返ってこない、そのことが事故の原因になっているわけですから、そうするとやはり規制というのはどこで規制できるかといえば、タクシーの値上げとかあるいは増車の場合に規制する以外にないのです。だから本来ならば、そういう事故多発業者に対してはもうやめさせてしまうというのが一番強い処分で一番いいかとは思いますけれども、なかなかそうまでいかない段階もあるでしょうから、その場合にはタクシーの値上げをとめる。だって、現実に今度の場合六十数社認めないで、その結果、さっきの報告を信用いたしますと、それによって改善されたというのでしょう。やはりそういった効果があるんですね。ですから、この交通事故が現在のように国民的な課題になって、政治の一番大きな問題になっていて、なぜこれが激増するばかりで減らないのかというのを交通安全対策委員会のほうでいろいろ議論をされた。一番大きいのは何か、一つには、ともかく各省にばらばらになっていて、外務省以外の全部の役所に関係があるといわれているくらいに、この交通安全行政というものはいろいろな役所がそれぞれの立場からやっている。それぞれの立場からやっているけれども、それが全然統一化された方向に動いていない。警察から事故多発業者だといって通報があっても、それに対する処分をきちんと運輸省のほうでやらなければ、せっかくそういう制度があっても、これは何も意味がない。そうした行政間の一元化の問題というのは、あの委員会で非常に重点的に議論されたのですけれども、その具体化の一つとして、交通事故発生件数が非常に多いところ、これについては行政監督の面から規制を加えていくということがやはり一番必要なんで、その一つの例として、タクシー値上げの場合にもやったらいいじゃないかということをお話し申し上げたのです。その点再度……。
  309. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 いや、だからあなたの提案のうち、行なえるものは、いま言ったように、そういう会社に対しては増車を認めない、必要によってはそういう会社は営業も取り消す、このくらいの考え方は持たなければいかぬ。ただ、料金の差を置くことはむずかしいのではないか、これはあなたも御理解になったろうと思うのです。  もう一つ、私も実はタクシーによく乗ります、それはいろいろ聞いてみたいこともありますものですから。そこでやはり問題は、いま直す点は、やはり先ほど言った給与の問題はなかなかむずかしいのです。それから先ほど答えましたのは、労働時間の八時間を守っているか守っていないかという問題なんですが、事故件数よりも労働時間、この点になかなかめんどうな面もあるのです。しかし、この点はあまり触れますまい。触れると労働省に対しておかしなことになりますから、…。それよりも運転手にいろいろ聞きますと、一つは勤続年限に対する退職手当制が明確でない、これは彼らは非常に問題にしています。私の行ったところでは、たとえば十年つとめましても、現行は十万円程度である。十年つとめて十万円じゃどうにもこうにもしようがない。であるからして、せめて、毎月の給与の点においては差別のつけようがないのですから、そこで、その会社の勤続年限での退職金の考え方を、これは思い切った考えが行なわれなければならない。たとえば十年間おるなら百万円、あるいは五年では三十万円だ、四十万円だ、こういって、長くつとめれば百万円、百五十万円、二百万円という退職金が落ちるんだというような制度は、タクシー運転手をして勤続せしめる非常に大きなものになると思うのです。ただ問題は、それだけの収入が出せるかどうかという問題ですから、会社自体の経営等に対してもそう内政干渉はできませんけれども、要するにそういう点も考えておきたいということと同時に、やはり運転手の自覚も考えなければならぬ。この間のような事故、列車と一緒に並行して走っておって、チンチン鳴っておりながらそれを無視する。こんな運転手がおりたら交通事故はなくならない。ですから運転手の質的向上をはかるとか、今度はタクシーの近代化というようなこともぜひやっていきたい。それだけでもいけませんから、やはり懇談会の諸君が中心になって進めて、お互いに運転手の職業は貴重な職業である——これはあなたも外国へ行ってごらんになっていましょうが、パリなどのタクシーも一つの見識を持っていますよ。日本だって郵便配達もかつては見識を持っておった。近ごろはあまり持ってないようです。そういう職業に対して見識を持たなければいけないということになるわけですから、いろんな面から総合的に横路さんのおっしゃるような方向に持っていきたい、かように思っております。
  310. 横路孝弘

    ○横路委員 従来はタクシーの運転手の問題については、これは労使間の問題なんだから行政のほうでは口を出すべきじゃないというような態度を、どちらかというとやはりとってきたと思うのです。それは二・九通達、あれもきわめて不十分なものなんで、その点についてはまたそちらのほうの委員会でもお尋ねしたいと思いますけれども、そういう大臣の姿勢でございますから、運輸行政の中に、そういう面でぜひ反映していただきたいと思うのです。  もう一つだけお尋ねして、時間もあまりないようですからやめにしたいと思いますけれども、運輸大臣が先日交通安全の特別委員会に来られて、一番最初でありますけれども、自動車交通の安全の確保については、運輸省としては自動車の検査体制強化して車両の安全性を確保するんだということをおっしゃられた。これしかおっしゃられなかったのが少し残念なわけですけれども、このことをおっしゃられた。そこでその車両検査の問題についてお尋ねをしたいと思うのですけれども、これも具体的な例から、いまはたしてその車両検査——増員の問題につきましては、ほかの部門よりはここが重点的にふえているので、そういう点でおたくのほうの姿勢というものもその限りではうかがえるのですけれども、しかしそれにしてもきわめて不十分だと思うのです。たとえば札幌の場合ですと、昭和四十一年に検査車両数というのは一人当たり三千九百七十一台だったのです。それが昭和四十四年、わずか三年の間に一人当たり四千九百九十八件にふえている。この問題についてもおたくのほうで大体一日一コース何両というような規定というものを設けているのかいないのか、そのことをお尋ねしたいと思うのです。  時間がないから私のほうから少しお話ししたいと思うのですけれども、統計を見ていて一番問題だと思うのは、そういう車に対する警告率とか再検率というのは、パーセントにしますと年々下がってきているのです。この下がってきているのは、完全に整備された車が多くなったから再検率とか警告率が下がってきているのかどうか、私は非常に疑問に思う。むしろあの札幌の例なんか、大体三分間で一台の車の検査をやっているのです。検査がいいかげんになって、車両台数が多くなって、一人当たりの業務量がふえているから、むしろそういうことでこの警告数とか再検率というものが年々下がってきているのじゃないか、私はそういうように考えたいと思うのですけれども、その辺のところについてお答えいただきたいと思うのです。
  311. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 これはコースにおきます車両検査につきましては機械化ということをやっておりまして、極力いい機械を導入することによって能率をアップしていきたいというようなことでやっております。現在一コースで一日百両なら百両ということでやっておるわけでございますけれども、機械化によって能率を上げていきたいということでございます。したがいまして再検率等が下がっているということは、検査がずさんであるからという結果ではないと思います。といいますのは、一つはメーカー筋におきますところの型式指定等についての仕事についても運輸省のほうで厳格にやっておりますのと、使用過程における整備ということを励行しておるということで、整備事業者を指導いたしまして点検整備の励行をはかっておりますので、機械の技術的向上と点検整備等の結果によりまして合格率が下がっていっているのではないかというふうに考えまして、手を抜くために下がるというふうには考えておりません。われわれといたしましてはさらに機械化というものを推進いたしまして、なるべく機械によって正確な検査をしていきたいというふうに考えております。
  312. 横路孝弘

    ○横路委員 それは行政庁の立場として、その下がっていることをまさかそうだとはお答えはできないと思いますけれども、しかし話をいろいろ聞いてみると、やはり私はそうじゃないかと思う。札幌なんかの場合に、別に機械化されているわけじゃない。わずか一台三分程度でもって処理をして、はたして十分な車両検査、特に継続検査の場合なんか私はできるかどうか非常に大きな疑問があるわけなんです。そこで先ほどの大臣の御答弁で車検の問題で今後七〇%程度まで民間に委託するんだということなんですけれども、その民間委託の前提としては、民間の指定の自動車整備事業、この工場がきちんと要件を備えているかどうか、きちんとやられているかどうかということを十分に監督されるということが前提になって、初めて七〇%民間委託というようなことでも安全の面から考えていいんじゃないかということになるだろうと思うのです。これは何か省令では車検の民間委託については年三回の監査というのは義務づけられているというように聞いておりますけれども、その点いかがでございますか。
  313. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 年三回の監査をやりたいということでございますけれども人員、予算の点等の制約がございまして実際は一回程度でございます。したがいましてわれわれといたしましてはこれではまだ不十分であるというふうに考えておりまして、将来改善をいたしたい。現在指定整備工場は約三千五百工場ありまして、逐次ふえているわけでございますけれども、幸いにして来年度はこれに対する監督の要員といたしまして陸運事務所十四名と、それから陸運局で指定いたしますための要員といたしまして五名、合計十九名の純増になっております。こういうようなことで定員の増加ということは非常に困難なことではございましたけれども、車検を国にかわってやるということでございますから、この重要性にかんがみて、われわれはこの民間車検を将来発展させるためにはそれに対する監査の体制等については十分整えていく必要があることを痛感しております。
  314. 横路孝弘

    ○横路委員 その監査官ということで人員確保したといっても、それ専門に当たるわけじゃないでしょう。大蔵省に対して要求するときにはそういう名目で取っても、実際にはともかく足りない状況なんだからそちらに穴埋めされて、実質的にはできないという状態になるのじゃないか。この三回の監査というのは省令できめられているわけでしょう、違うのですか。
  315. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 監査は普通省令等で何回というのはきめない性格でございまして、国といたしまして監査の計画を立てるということでございます。普通省令ではございません。したがいまして本件についても省令には規定いたしておりません。しかしながらわれわれといたしましては、年一回の監査を二回あるいは理想的には三回くらいにいたしまして、完全にやっていきたいというふうな希望を持っておりますけれども、今後におきましては、なるべく早くそれが実現するように努力いたしていきたいというふうに思っております。
  316. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで大臣にお尋ねしたいと思うのですけれども、そういうことで先ほど御答弁ありましたように、民間に委託するといっても、その監督が十分に行なわれなければ、そのことが前提にならなければ、これは意味のないことなんで、まるっきり安全について国の責務ということを放棄してしまう結果になると思うのです。ですから、そういう点を十分考えて、今後この監査についても、年三回というのは、省令でなければ内部的なそういう基準みたいなものだと思うのですけれども、これも前に正確な日付は忘れましたが参議院の内閣委員会でやはりそういうお答えになっている。だからやはりそれをきちんと守る方向で——これが何が原因かといえばやはり要員の問題なんですね。ですから、私は最後にお尋ねしたいと思うのですけれども定員の五%削減ということでいろいろやられているけれども、しかし昨年の四月のこの委員会佐藤総理大臣も答えている。それは削減といっても一律にやるんじゃなくてそれには濃淡があるんだ、必要なところには要員を配置します。そして行政需要の変化に伴って必要のないところはどんどん切っていったらいいでしょう……。しかしそうじゃなくて、こういう車検の問題なり現在の陸運事務所が仕事の内容として負っているところの内容からいえば、やはり監督をやるだけの十分な要員というのは配置されていない。私はそれが手抜き行政という形でいろいろ批判を受けている一番大きな原因じゃないかと思うのです。その点について最後に大臣の御答弁をお伺いしたい。
  317. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 私は原則は行政とは監督行政なり、そう考えていますから、監督要員の強化、これは今後ともやっていきたいと思っております。そのためには、内部的には事務の簡素化も一面においてはこれを行なう、そして必要なる要員はこれを十分に確保していくように努力する、本年度もその意味においては実質上の増員になっておるわけであります。それでも十分じゃないといえば十分じゃありませんから、つとめてこれが要員の確保努力したい、かように考えております。
  318. 横路孝弘

    ○横路委員 時間もなくなりましたので、私これで最後にしたいと思うのですけれども、いずれにしても行政改革の中でそうした肝心の監督行政というのが手抜きされているというのは、やはり一番大きな問題だろうと思うのです。陸運に関しましては、一番初めに申し上げましたけれども、要員の問題のほかにやはり行政の体質的な問題、つまり業界との関係においていまの陸運事務所のあり方なり何なりについて、これはたくさんの問題があると思うのです。民間協力者の問題をはじめとしていろいろな問題があるわけでありますけれども、その点についてはこの次の機会に譲ることにして、これで終わりにしたいと思います。
  319. 天野公義

  320. 大出俊

    大出委員 たいへんどうもおそい時間になりましたが、これは本来予定にない外務省をきょう午前中にやるということに突如なりましたから、結果的にこういうことになってしまったのですが、どうしてもきょうじゅうにやれるところまでやってもらいたいという皆さんの御要望が強いわけでございます。それで万やむを得ずこの時間に質問することにしたのです。  そこで、最近と申しましてもここ数年でありますが、特に気象庁の関係業務並びに定員配置等の問題につきましてずいぶん各委員会等で取り上げられてまいりまして、ほとんど各党がこれは取り上げられているのではないかと思うわけであります。ところがどうも中身というものを調べてみますと、さっぱりわれわれが考えて、いい方向に進んではいない、こう言わなければならぬと私は思っておるわけであります。  そこでまず気象業務全体につきまして、気象庁の長官は、私、念のために政策時報編の「運輸省」という本を調べてみましたが、長官の御経歴その他いろいろ書いてございまして、これを読んでみますと、その方面の専門の場所をずっとお歩きになってこられたわけですから、そういう意味ではその道に通じておられる長官、こういうことになると思うのです。その長官の立場で満足すべき状態に今日はあるのかないのかという点、また将来これはどうやればいいのかという点、あまりどうもそこらじゅうに遠慮しないでずばっと言っていただきたい、私はまずこう思うのであります。大蔵省があるから、行管がどっちを向いているということでなく、国民一般に切っても切れないたいへんな問題が方々にあると私は思うのでありますが、それをどうも何か知らぬけれども、長官自体ではありませんが、気象庁の方々の中には、どうも定員もきわめて苦しいのじゃないですかというと、いや、組合がかってなことを言うので、決してそんなことはないということを私に言ってくる方があったり、口の先では幾らそんなことを言ったって、現実に問題が片づかなければ何にもならぬわけでありますから、そういう意味でほんとうのところ長官がどう考えているのか承りたい。
  321. 吉武素二

    ○吉武政府委員 先生がおっしゃいましたように、私は昭和九年からこの事業にずっと携わってきて、現時点というものがどういうことになっているかということには常に頭をめぐらしておるつもりでございますが気象庁という仕事もなかなか社会の要望は強い、非常に強い。しかし私たちがなかなか皆さんの要望にこたえることができない面が多い。それはなぜかということを常に私は考えておりますが、人員とかあるいはお金、そういうことで解決するものであるとは、すべてそうだとは私も思っておりません。やはり新しい技術が取り入れられていく日進月歩の気象技術の進歩というものが最近は特に激しいわけでございます。それで、決して私は現状で満足しているわけではございません。しかし、やはり新しい技術を取り入れながら前へ前へと進んでいきたい、日本の気象事業というものが世界のレベルにおいて下であるとは私は決して思っておりません。しかし、やはりこの現状というものは何とか打破していかなければいけないという強い希望を持っております。
  322. 大出俊

    大出委員 私は繰り返して申し上げますが、先ほど冒頭に申し上げましたように、長官が歩んでこられた御経歴から申しまして、精通をされておる部門の責任者をやっておられる。だとすると、委員会その他衆参両院におきまして答弁をされておりますから、にわかに変えてものを言うわけにはいかぬ筋合いかとも思いますけれども、私は気象技術の面で、研究技術の面でもっとこれを向上をさせて世間一般の要望にこたえる、需要にこたえる、確かにその面は必要なわけであります。だから研究機関もいろいろおありになるわけでありますが、現時点における人と金の問題、長官はおそらく腹の中ではのどから手の出るほどほしい部面がたくさんあるだろうと私は実は判断をしてきた。そこでいまその点あたりをずばり聞きたいと思ったのでありますが、何回かお答えになっている議事録もここにありますから、違ったことをいきなり言うわけにもいかぬだろうと私は思います。  そこで私はそういう意味で聞きたいのでありますが、おたくの「定員削減と気象業務のあり方」という文書がございます。これは四十四年十二月四日のあなた方で検討された文書で、このいきなり冒頭に何と書いてあるかというと「気象業務に対する社会の要求が増大、高度化の一途をたどっていることは事実である。」これはいま御答弁にあった。「このため近年における欠員不補充、定員削減措置に関し、気象庁に限って削減どころか増員すべきだとの意見もあるが、」このあとが問題です。「事態はそのような甘いものではない。」こうまず切っている。この文書でいけば、近年、欠員不補充、定員削減ということがいろいろ政府部内で叫ばれて措置がとられてきている、しかし、気象庁に限っては削減どころか増員すべきなんだという意見がある、だが、しかし事態はそう甘いものじゃない、こういうのですね。一体どこが甘いものじゃないんですか。この文書でいけば、気象業務について社会の要求が増大、高度化の一途をたどっている、そこで、近年、欠員不補充あるいは定員削減ということが言われているが、気象庁に限っては増員すべきだという意見がある、しかし、残念ながら事態はそう甘くないのですということを言っているのです。国の方針政府方針、行政管理庁の施策等々があって、社会一般の需要というものが増大をし、高度化の要求もある、むしろ増員すべきであるという声もたくさんある。が、しかし、事態は甘くない。甘くないのは、行政管理庁なり政府なり大蔵省なり、こういうところの方針があって、満たさなければならぬ需要を満たすための増員が認められない、つまりそれがここで、事態はそんなに甘くない、こう言っている意味だと私は理解するのですが、これはどういう意味ですか。
  323. 吉武素二

    ○吉武政府委員 いま先生がおっしゃるように、やはり政府としてはいろいろな方針がある。私の立場とすれば、そういう面でそっぽを向いているわけにはいかないという面があることは先生も御了解いただけると思います。ただ、いまの情報社会の中では人員だけでものを解決するというのはもう時代おくれで、先生も御存じのように、私のところには非常に高度な電子計算機が入れられて、それでいろんなデータを処理する。集め、またそれを各地へばらまくということが自動的に行なわれつつありますが、そういう設備という点を強化していくことにこそ、いまから先の気象事業というのがあるのじゃないか。そういう意味で、やはり人員ということについては、もちろん新規の事業を始めるについてはそれはお願いをいたしますけれども、そう簡単に考えてもらっては困るということを私はそこにあらわしたつもりでございます。
  324. 大出俊

    大出委員 あなたが行政管理庁みたいなことを言っておったのじゃ——あなたは現業部門の仕事を預かっているんでしょう。そのあとであなたちゃんと言っているじゃないですか。「気象庁の業務が現業や研究を含んでいることが定員削減を困難にしているという事情もあるが、この点については政府の定めた削減基準でも考慮されており、現業あるいは研究業務といえども、それだけの理由で全然削減できないという主張はできない。」これはひっくり返していえば、現業をかかえているあなたの立場からすれば、削減しないでくれと言いたい。しかし、ばかばかしい話ですけれども一般的にいえば三年五%という政府の一律のかんなかけですから、現業をかかえているんだからといって、政府の削減方針があるので、減らさないでくれという主張はできない。あなたがあまり行政管理庁の長官みたいなことを言っていたのじゃ、現場の職員なんというのはたまったものではないですよ。ほかの省を見てごらんなさい。強いところになると、冗談じゃない、おれのところは減らしてもらっては困るということを平気で言う。この間、行政管理庁の六人委員会の意見書が出ておって、関係の各省の皆さん全部お集まりいただいて聞いてみた。行政管理庁がおられても、現に現業をたくさんかかえてやっていくところは、責任者の方々が堂々とおっしゃっているのですよ。一番根本になるあなたの姿勢、技術畑をお歩きになりましたから、そこらあたりはなかなかまじめにお考えになっておる気持は私もわかるけれども、その姿勢をはずしたのじゃ、気象庁という、冒頭に書いてあるように、これだけ国民的な需要が増大をする、こういう現場をかかえておる長官としては、やはり末端の諸君にすれば、うちの長官は腰が弱いからと、こうならざるを得ぬのですよ。だからあまり持って回った言い方でなしに、ずばり足りないものは足りないという主張をなぜなさらぬかと私は聞くのです。あなたはいま口ではそうおっしゃるけれども、この文書を見ればそう書いてない。ここのところは基本だからはっきりしておいてくれぬですか。
  325. 吉武素二

    ○吉武政府委員 何回もお答えしますように、こういう面ではどうしても増員していただかなければ仕事はやれませんという面については、私決して退嬰的であるつもりは毛頭ございません。しかし何もかも人でやっていくというのじゃない時勢にあるということは、先生おわかりいただきたいと思います。というのは、新しい機械、高度な機械を入れることによって非常に能率よく、またある意味では迅速に仕事ができる、そうしなければ気象のような仕事というのはもう人だけをたよりにやっていく仕事ではなくなりつつあるというようなことも、先生御理解いただきたいと思います。
  326. 大出俊

    大出委員 私は何も人だけ言っているわけじゃない。ただ問題は、現在いろいろな問題が起こっているから、その起こっている問題をとらえれば人の問題になってくる。だからそこを言っているのです。あなた方がここでいろいろな計画を立てているのは、なぜ立てたかというと、三年五%という削減計画が出たから立てた。四十一年に行政管理庁が監察結果の勧告をしている。ことしは四十五年だ。この措置の模様その他ずっとながめても、わずかの間にいろいろな問題が出てきている。新しい機械も入ってきている。だが、しかし、そのままになっているものもたくさんある。そういった中でもっと技術的に、おっしゃるとおりの新しい機械を入れなければならぬ部門もたくさんある。ずいぶん長い監察結果だけれども、私も全部調べて聞いているのだからわかっている。しかしいまぶち当たっている問題は人に関する問題がたくさんある。それが各委員会に出ておる。だからこのあたりで当面必要な人という問題についてはここ一、二年の間で決着をつけてもらいたい、私はこう思うから人の問題を取り上げているのです。もっと高度な技術的な改革、革新をはかっていくという面は、一朝一夕にはできないでしょうけれども、これは不断に努力をしなければならぬ問題です。  それからもう一つ、冒頭に申し上げておきますが、機械を入れたからそれだけ人が減る、そういう性格のものばかりじゃない、機械を入れたからということで、そのために人がふえるところだってある。現に気象庁の中で、例はあとから幾らでも申し上げます。だから私は決して人だけの問題を言ってはいないが、長官もお答えになっておるとおり、出てきておる問題は、機械は入れているけれども、しかしどうにも回っていかない人という問題について、方々たくさんの委員会で問題になっておるわけでしょう。それを取り上げているわけです。  そこでこのあとのほう、二、三点聞いておきたいのでありますが、百年に近い歴史を気象庁は持っているというところから書き始められて、社会情勢の激動に対応する柔軟な姿勢にかけているということを、あなた方は主張されて述べられている。再編成という問題が出てきて議論倒れに終わっている、こう言っているのですね。ここで問題は、「社会情勢の激動に対応する柔軟な姿勢にかけ」と言っているのですけれども、一番必要なことは、いま皆さんがやっておられる非常にじみな仕事の中身について、それがいかにたいへんなものであるかということについての国民的なアピールというのを、あなた方が国民一般に向かって、むしろ積極的にやらなければならぬと私は思っているのです。私は郵政省の出身ですから、郵便配達の上がりですけれども、これはいま、ついこの間も大騒ぎになりましたけれども日本の特異な現象ではないのです。これはどこの国だって郵便がおくれているのは、もう恒常的な状態ですよ。なぜそうなっているのかということをやはり所管省の立場で国民にアピールしなければ、自動車がこれだけ走っている世の中に、その自動車の間をやっとこさっとこ抜けて赤い自転車が走る。配達する人は一日に何回か命の危険にさらされているのです。だからこういう仕事にだんだん人が来なくなる実情はあたりまえですよ。そういった実情は、国民の皆さんに省の責任において相当訴えなければならぬわけです。だから皆さんは、気象庁の持っている責任と任務というものと、職場が動いていくかいかないかという現状というものを相当克明に国民の皆さんにPRをする責任があると私は思うのです。ところが逆に、組合の諸君が三年に五%減ってたいへんなことになりますよと、どこかでビラをまけば、皆さんはあわててビラをまかないでくれと言う。何でそういうことを言うのかというと、大蔵省が言うから……。そういうことでは話が逆ですよ。皆さんが置かれている実情というものをほんとうに国民にアピールする気持ちがあるのかないのか、それがまず出発だと私は思う。そこらのところは長官どうお考えになりますか。
  327. 吉武素二

    ○吉武政府委員 気象庁の仕事が昔とは現在ずいぶん変わりつつある、そういうような点について社会にもうちょっとアピールをしていくといいますか、知っていただく、そういう面のわれわれの努力が足りないことは、私も認めております。そういうことについて今後十分努力をしていきたいと思います。ただ組合あたりで人が足りない、足りないと言っていること自身については、私必ずしも同感ではございません。考え方に古い古い考え方がいつまでも残っている。しかし時代というものはもう動きつつあるんだ、そういう点を組合員にもわかってもらうよう常に努力してはおりますが、残念ながらまだ十分な理解を得ていない面が多々あることを申し上げたいと思います。
  328. 大出俊

    大出委員 もし、かりに組合員の諸君の言っていることが、あなたの言う古い古い考え方にとらわれていて、あなたが新しい新しい考え方をお持ちになっていて、その間に大きな懸隔、つまりズレがあるというならば、それが解決をしない原因だというならば、これはあなた自身の大きな責任ですよ。ものの考え方が根本的に違うということであるとすれば、相互理解というものは、何としてもあなたが責任をもってやらなければ、できるはずはないでしょう。それが同じ気象庁という中におって、長官以下管理をされる側の方と、末端の職場で一生懸命二直、三直というようなことで勤務する人との間で、なかなか苦労をしているのですから、そういう方との間に大きなズレがほんとうならあるはずはない。そうすると、あなたの認識だって、あるいは新しくなり過ぎているのかもしれぬ。そういう意味では、相互理解を求めてどこかに接点を見つけ出さなければいかぬでしょう。その努力をする前提があれば、話はもう少し前に進むと思っている、そこのところの筋道としては。  簡単な例をあげていえば、天気予報というものは当たらぬ、当たらぬと人は言う。当たってあたりまえですからね。当たったってそう感じませんから。ところが、これだってものの本に書いてありますけれども、私は横浜にいますが、横浜なんというのは浜で働く人が多い。職業センターの理事長なんかに聞けば、あしたの天気はこうだ。天気予報よりよく当たる。だから気象庁だって、その程度のことは空を見ればわかるのですから、そういう人のようにポンと予報をしておいたら、あるいはそのほうが当たるかもしれぬ。しかし、そうはいかないでしょう。問題の焦点は、天気図も必要ですし、観測図も必要ですし、あるいは高層観測も必要ですし、あるいは船の観測もやっておりますけれども、これも必要だし、どうしてもそういうシステムを通じて予報をしなければならないようにできている。それがまた当然でしょう。津波の警報だってそうでしょう。時間をきめて、時刻がきめられてあるからというので、津波が来ちゃってあとから警報が出たって話にならぬ。人が足りないから、てんてこまいでやり切れないということで、先に津波がやってくるおそれがあるということをポンと言っておいて、あとで詳細にデータを当たってみて、おそれがなかったら直したらいいということで、先に出しておくわけにいかぬでしょう。だからそうなると、やはりそこらあたりのところは皆さんのほうと、それから現場の仕事をしている人たちの壁というところで、やはり接点を求めていかなければ動きはせぬじゃないですか。それにはやはりここに書いてある「姿勢」というのと——私は、幾らかここにはほんとうのことが書いてあるように思う。しかし、長官の答弁に出てくるのは、現場の人たちが何を考えているかということを知っているのだとすれば、一々どうもまるっきり違うほうに走るようなものの言い方をすれば、おさまりがつかぬじゃないですか。だから冒頭に私はこう言っている。おわかりになりますか、私の申し上げていることが……。
  329. 吉武素二

    ○吉武政府委員 やはり職場で、そういうような現業に実際携わっている人たちとよく話し合う。新しい時代というものはこうじゃないだろうかというようなことは、私しょっちゅう、むしろやっているつもりなんですけれども、なかなかまだ十分な理解が得られていない。今後こういう点については一段と努力していって、何とかして気象庁が新しい時代に対応できるよう一生懸命でやってまいりたいと思っております。
  330. 大出俊

    大出委員 そうだとしますと、大阪あたりで自主観測ということでやっておられますけれども、もうだいぶ期間がたちますね。ここらの問題についても、どの辺で一体どういうふうにすればいいのかということ、あなた方から見て不自然だというならば、どういうふうに話をまとめればいいのかということは、ぼつぼつあなたのほうも考えなければならぬ時期に、そういう意味では来ていると思う。  そこで、私はその前に前提になりますから幾つかお尋ねしておきたいのでありますが、ここでいま私が取り上げた文章、これは将来の方針をここに書いてありますから承りたいのでありますが、先ほど私が読み上げましたけれども、「気象庁の業務が現業や研究を含んでいることが……現業あるいは研究業務といえども、それだけの理由で全然削減できないという主張はできない。」あなたはその気がない、こういう意味のことを言っているのです。これは現実には現場にある定員不足、人不足というもの、これといささか離れたことを言っている。だから、ここらのところはもう少し、自主観測なんということをやっている人たちもいるのだから、もう少しそこのところの理解をされて、あなた方によってものが言われるのでなければいけないのではないかと思う。  そこで、まず承りたいのは、四十三年、四十四年、四十五年ととらえて、人の動きというのは予算と比べましてどう動いておるのですか、気象庁全体としてみて……。
  331. 坂本勁介

    ○坂本政府委員 定員のトータル、統計だけで申し上げますと、四十三年度の定員が六千百九十三名であります。四十四年度六千百五十七名、四十五年度から六千百二十六名になります。
  332. 大出俊

    大出委員 そうしますと、これは四十三年、四一十四年、四十五年とこう減ってきているということになりますね。先ほど私は時間を省こうと思って行政管理庁の諸君にうしろのほうで数字を確めたら、どんどんふえておるのだとおっしゃったけれども、どうなんですか。行政管理庁というのはいいかげんですな。河合さん、年々ふえているのだといって、あなたいばっていたですな。どうなんですか、そこのところは。行政管理庁、しっかりしてくださいよ。時間がよけいかかる。
  333. 河合三良

    ○河合政府委員 お答え申し上げます。四十一年が六千百二十二名でそれと比べますと四十五年は四名ふえておりますが、四十三年、四十四年と比べますと御指摘のとおり減っております。
  334. 大出俊

    大出委員 人が時間を省こうと思って聞いておったのに、でたらめ言っては困るじゃないか、先ほど毎年毎年ふえているのだと言っておいて、冗談じゃないですよ。ほんとうにもう行政管理庁は当てにならぬな。また、ここに全く間違った字ばっかり書いてある行政監察月報というのがあるのだけれども、私は一番最初に何が書いてあるのかわからなかった。「行政監察月報 一九六九年一月 行政管理庁行政監察局」、これの一二ページに、えらいべらぼうに長いのだけれども、「気象行政監察(第二次)」この「勧告要旨」の一番最初にいきなり「予報範度の向上」とこうあるので、「予報範度」とは何だろうかと思って、何カ所も出てくるのだけれども、聞いてみたら、これは「予報制度」の印刷の間違いだというのです。全く何をやっているのかさっぱりわからぬ。気象庁の長官に「予報範度」というのは何ですかと聞いてみようと思っていたんですがね。こんなところまで間違っちゃ困るじゃないですか。定員はこれは間違いないということですから、そうすると、これだけ定員がいろいろ言われている世の中で、九十三名から五十七名になったわけですからここで三十  六名減って、さらにまた五十七名が二十六になりましたからここでまた三十一名減った。こういう減り方をし続けているということになりますな、これは。  そこでついでに承っておきたいのですが、この行管の勧告の中で、これは「予報に関する技術開発とその活用」の中に「予報精度の向上を期するためには」云々というところから「現業部門に積極的に導入することが必要であるが」というところで精度の向上をうたっているのですね、勧告の中身は。それに対して気象庁のほうは、「その後の改善措置状況」というものがございまして、「昭和四十三年度予算には予報官等が認められなかったが、今後も努力したい。」こうなっているのです。時間がありませんから実は長く読みたいのだけれども長く読みませんが、行政監察月報一月号のこの一四ページに、勧告を受けての気象庁の改善措置状況、この中に、気象庁みずからが報告をしている。「昭和四十三年度予算には予報官等が認められなかったが、今後も努力したい。」こうなっている。これは以後、四十三年に認められないのですから、四十四年、五年しかないのですが、その辺はどういうふうに動いているのですか。まだたくさんありますが一例をあげて言うのだが……。
  335. 坂本勁介

    ○坂本政府委員 ここでこたえております「その後の改善措置状況」の予報官等の予算要求というのは、実は定員の増じゃなくて定数の増でございます。それで実質的には今年度、すなわち四十五年度に、本庁にもう一名主任予報官が認められております。
  336. 大出俊

    大出委員 これは定数の増ですな、つまり現員でなくて。  それからこの勧告を実はずっと当たっていきますと、ほとんど焦点が表に出てくるような気がするのですが、実はこれをやっている時間があるかないかわかりません、いま八時ですから。ここには異常気象だ何だ、一ぱい措置状況その他含めて載っておりますが、再検査再検定についても、ここには気象庁のほうで「予算人員等の現状においては、きわめて困難であるので」というようなことが書いてあり、いろいろいたしておりますが、つまり予算人員が足りないからやれない、行管が言ってもできないということがここに書いてありますが、このやりとりの中に、人が足りない、人と金がないということが何カ所か出てくる。先ほど長官のほうでは人と金の問題じゃないと言っているんだけれども、行管とそれからあなたのほうのやりとりの中では、人が足らないというのは幾つもある。だがしかし、これをいま一々取り上げていると時間がありません。ありませんから、長官がいまおっしゃるけれども、現実にそうでないということを一、二こうあげておいただけであります。  そこで次に進みますが、そうすると人は年々減っている。さてそこで、先ほど私が申し上げた文書を見ますと、「積極的意義を有する再編成の意図を包蔵するもの」と、こうなっておりますが、「積極的意義を有する再編成の意図」というのは、具体的に言うとこれはどういうことなんですか。あまり省略してわからぬでしょうから、上と下を言いましょう。「社会情勢の激動に対応する柔軟な姿勢にかけ、そのために当然考えるべき再編成については議論倒れに終り、実施面においては極めて不充分であったといわざるを得ない。」なぜ議論倒れに終わったかということはここにあります。「よって今回の削減措置に対処する方策は将来に向って積極的意義を有する再編成の意図を包蔵するものでなければならない。」なかなかむずかしいことを言っておられますね。ちょっと普通の人が読んだのではわからぬ。何か知らぬけれども、これは削減措置に対する方策ですからね。いわゆるたいへんな大合理化でもやろうということになる、そういう感じもする。そうするとその中身は一体何だと聞いてみたくなるのはあたりまえです。中身は何ですか。
  337. 吉武素二

    ○吉武政府委員 定員削減という問題について、ただ一律にかんなをかけるというようなことは絶対にやるべきではない。いまの時点において、われわれは将来に向かってどういうふうに気象事業を発展させていくべきか。そういう点を深く考慮し、たとえば新しく始まった仕事がある。それは将来非常に伸びていくものであるとするならば、そういうところに手を加えるべきではない。しかしずっと長年やられてはいるけれども、もうこの時点である程度考えてもいい。そういう面については手を触れざるを得ないではないかというような配慮を意味しておるわけでございます。
  338. 大出俊

    大出委員 たとえばどんなところが要らないとお考えなんですか。
  339. 吉武素二

    ○吉武政府委員 具体的な一例を申し上げますと、私たち一つ考えたことは、できることならばレーダーというようなものについて、もう少し人員的にも強化する、そういう方向でものごとを考えたらというのが一例でございます。
  340. 大出俊

    大出委員 よくわからぬけれども、時間がありませんからその先へ進みます。  「地方公共団体(民間気象協会などを含む)などにまかせることが可能かつ適当なものは極力これらに行なわせるようにし、気象庁は必要な指導、助成、監督を行なうにとどめる」こう言ってますね。これは具体的にはどういうことなんですか。
  341. 吉武素二

    ○吉武政府委員 先生も御存じのように、気象というのはわれわれの生活のあらゆる面に入り込んでいるといいますか、関係しているわけです。そしてそれを気象庁が全部気象に関係あるからといってやろうとしても、やはり気象事業全体の動きがそのために足を引っ張られるというようなことがあってはいけないのじゃないか、国民の理解を得つつ、こういう面については、場合によれば地方公共団体で一つ手を貸していただけないでしょうか、そういうようなことを申し上げているわけでございます。具体的にとおっしゃいますと……。
  342. 大出俊

    大出委員 言えないですか。あまり相談しないで言ってください。
  343. 吉武素二

    ○吉武政府委員 別に言えないことはありません。たとえば大気汚染というような問題がございます。これはもちろん空気がよどんでくると空気が濁ってくる。まあいつも風が吹いていてくれればいいのですが、そうはいきません。しかも、よどんだときに気象庁が、いまのわれわれの技術で風を吹かすということもできません。しかしこういう問題について、空気中のいろんな、たとえばSO2というような有害なものが非常に人体に関係しているのだと思いますけれども、そういうようなことの測定まで気象庁がやれ、空気中にあるものだから空気中のものは一切がっさいやれとおっしゃっても、なかなか手が回らない面があるし、またその発生源がどうなっておるかというようなこともありましょうから、そういう面ではやはり地方公共団体と手を握って、私のほうでは気象の面でできるだけお役に立つような仕事をしたいという点に、ある意味では線を引かざるを得ないじゃないかというふうに考えるわけでございます。
  344. 大出俊

    大出委員 そうするとさつき機械の導入と言いましたが、それは機械を入れて人手を減らそうという考え方、それからあなたのほうで手に負えない、人が足りないというようなことでいろいろ問題になっておるのは、できる限り府県とかあるいは民間であるとかいうところに追っ払おう、平つたく言えばそういうことですか。
  345. 吉武素二

    ○吉武政府委員 また先生におこられるかもしれませんが、機械を入れるというのは、何も人手を省くために入れるというのじゃなくて、もうスピードといい量といい人間の手には負えなくなっている、そういうものはやはり機械でこなしていくというようなことをいまからしていかなければならない、そういうことで、しかもなるべく人間の手はかけないようにして、人間でなければできないいろいろな面がありますから、そういう方向にひとつ人を向けていきたいということでございます。  それから外部にまかすということは、気象台は人員が少ないから、金が少ないから、なるべく気象台の仕事を外へおっつけていこう、そういう考えでは毛頭ございません。やはりやるべきことは敢然としてやるつもりですけれども、何でもかんでも空気中のものだから全部気象台の仕事だなんとおっしゃっても、私もどうにもならない面があるということを申し上げたにすぎません。
  346. 大出俊

    大出委員 そうすると、念を押しておきますが、いまのお話を逆にものをいえば、機械の導入、このことによって人が減るという筋合いではないということですね、一つは。つまり、精度を向上させるとか、いろいろな意味で機械の導入が必要である、だがしかし、そのことはここまで来ると即、人が減るというところに結びつかない分野がたくさんある。例をあげてもいいのですけれども、そういう意味のことをいまおっしゃっていると思います。それなら私はよくわかります。  それからもう一つ、国民的な立場からものを考えますと、今日気象庁が持っておる仕事の分野というのは、これは単なる行政機関になって管理監督をするのだ、だから民間へなどという、これならば本末転倒だと私は思う。やはり気象庁が責任を負わなければならぬという、これは大前提だと私は思うんです。そこのところを二つだけいまやりとりをいたしましたが、結論としてはっきりしておいていただきたい、まずこう思うのですが、これはよろしゅうございますね。
  347. 吉武素二

    ○吉武政府委員 気象庁というのは、あくまでも気象技術をもとにして国民にサービスする国家機関だと思います。いわゆる単なる行政監督だけをやる役所であっては絶対にならないように考えます。
  348. 大出俊

    大出委員 皆さん方どうもだいぶおそくなっておってお疲れだと思いますから、少し急いでものを申し上げたいのであります。  これは各委員会でいろんな問題になってきたことでございますけれども、いまだに大阪で自主観測が続いているという現実がありますから、大臣はもうこの辺でひとつ問題をはっきりさせていただきたい。この国会を通じて各委員会でいろいろ取り上げてきて、なおかつ平行線そのままということも、あまり感心した筋合いのものではない、実は私はこう思うわけであります。  そこで、いま三年五%というのが、私は直接の動機になっているように思うのでございますが、まずこの問題のとらえ方なんですけれども、二十四回観測を——二十四回観測というのと二十四時間観測というのは違う、通報回数を八回にする、こういうふうなことですけれども、この削減観測になっている大阪の例につきまして、やはり三年五%という削減方式が出てきた、そこからどうも発展してきているように思えるのですけれども、そこら辺、どうですか。
  349. 吉武素二

    ○吉武政府委員 お答えします。国会でもずいぶんお答えしたことがあるのですが、何といっても気象観測というのは、測候所における普通の意味の、いま先生が問題としておられるような地上の観測、そこのデータを集めるということから始まってきたわけです。しかし、いまの時代はずいぶん変わってきております。そういう意味で気象庁の中でも、私の記憶でももう十年以上前から、どうしてわれわれは二十四回観測通報を行なわなければいけないのかということが問題になっておりました。やはり天気図というものは現在八回しか、台風が来たようなときは別といたしまして、普通のときは八回しか書いていない。そのための資料を送っているのがわれわれのいわゆる八回観測通報でございます。それ以外に大阪では、毎時のものが本庁に送られてきております。しかし、それはあくまでも天気図に記入するというようなものではなしに、一つの参考資料としてきたわけですけれども、現時点で見るならば、予報制度という点からいうならば、もう八回でいいんだという結論を気象台の中で出しまして、大阪については実施したわけでございます。ただいつも問題になりますように、資料の照会があったら、一日に八回のデータしか読み取っていなければ困るじゃないかということが何べんも聞かれましたけれども、多くの気象要素、しかも量的にちゃんとはかれるようなものは、現在では機械によって自記されているわけでございます。ですから、たとえば九時の観測はある、十時、十一時はちょうどデータが読み取っていない、しかし十二時はあるというような場合には、九時、十時、十一時はどうだったと聞かれればそれは皆さんにお答えできる、自記の機械がありますから、九時半がどうだった、九時四十分がどうだったと聞かれてもそういう点では私は御不便をかけないで済むんじゃないかというように考えて、大阪の二十四回観測通報というのを八回観測通報に改めたわけでございます。
  350. 大出俊

    大出委員 これはまず具体的に、いま長官がそういう質問があったらと言っておりますが、これは電話照会等があれば、現実に答えられないという面はたくさんあるでしょう。そこのところなどいかがですか。
  351. 吉武素二

    ○吉武政府委員 そういう面で支障があるというふうには私は考えていませんし、また、たとえば東京ですと、一番電話の回数が多いのは天気相談所でございます。天気相談所の所長並びにそこの人とも、私はときどきだべりに行って、よく話をするのですけれども、特に東京も今度は八回というように考えておるわけですが、しかし別に支障はないというのが、そこの現場で働いている人の声でございます。
  352. 大出俊

    大出委員 現場で働いている人の声がたくさん資料になったりしておりますが、これはずいぶんたくさん支障がある、こう言っているのですがね。あなたのほうは、現場で働いている人は支障はないと言っている。私の手元にあるほうはあるというデータが一ばいある。そこで承りたいのですが、これは電話がかかってくる。その場合に大体——あらためて聞いたほうがいいと思うのですが、どんなふうな電話がかかってくるのですか。
  353. 吉武素二

    ○吉武政府委員 私はそういう仕事に、一日とかあるいは何日間か、あるいはいままでのなんで、触れたのはもう古い時代のことですから、現在のことを申し上げますと、やはり電話で何を一番問い合わせてくるかというならば、それは天気予報でございます。
  354. 大出俊

    大出委員 そのほかは何ですか。
  355. 吉武素二

    ○吉武政府委員 あとのは、先ほどから申し上げているような過去のデータ、しかもそれがただその日だけと必ずしも限ってはいないと思いますけれども、しかしそれはいま現在私どもがそういう面で皆さんに御不便をかけることはない、私もこの国会で何べんも申し上げておりますし、それは先生御心配にならなくていいと私は思っております。
  356. 大出俊

    大出委員 あなたはしきりにそういうことを言うけれども、中身はおっしゃらないじゃないですか。天気予報でございますと言うだけじゃないですか、あなたの言っているのは。
  357. 吉武素二

    ○吉武政府委員 具体的に申し上げましょう。
  358. 大出俊

    大出委員 全部言ってくれなければ安心できやしないじゃないですか。
  359. 坂本勁介

    ○坂本政府委員 先ほど長官が申しましたように、回数でちょっといま数字はつまびらかにいたし得ませんが、一番多いのは、先ほど長官申しましたように将来の天気がどうなるかという意味での予報の問い合わせでございます。これは大体、トレンドをつかんでおりますから、その場で返事ができます。一番心配なのは、過去にさかのぼったデータの問い合わせであろうかと思います。たとえば消防署あたりからの問い合わせ等があろうかと思いますが、一時間か二時間ほど前にどこかで火事があった。おそらく消防署の場合には、それを消防日誌などに書きます場合のその際の風向、風速はどうであったかとか気温はどうであったかとか、こういうのが非常に重要なファクターになりますので、そういったデータを問い合わせてまいります。これは先ほど長官申しましたように、隔測装置で大体自記的に読み取れば返事ができますので、さしあたり、そういう意味ではさしたる時間もかけずに返事ができるという意味で、支障がないと申し上げておるわけでございます。  あと、東京の場合、東京都、そういったところからも同様な意味での過去のデータの問い合わせがございます。  大体過去のデータの問い合わせは、そういうふうな特殊な意味合いを持った問い合わせでございまして、その他は一般の方々を含めます天気予報が一番多い御質問でございます。
  360. 大出俊

    大出委員 ここにたくさんありますが、もう少しはっきり言ってもらわぬと、これは御心配なくなんておっしゃったって、心配だから聞いているんですから……。  まず電話の問い合わせの場合ですね。任意の時刻の気温、湿度、天気の問い合わせ。それからビルの空調関係なんかの日中の毎時の気温。その他学校、もちろんこれはアマチュア観測もあるでしょうが、あるいは報道関係、報道関係なんかというのは毎時間のようにある、こう書いてあります。それから屋上ビヤホールからの気温あるいは湿度の問い合わせ、これは営業上必要だからでしょう。工事関係からコンクリートの養生状態に関する夜間の毎時の気温の問い合わせ。これが気温、湿度です。  それから気圧でいきますと、気圧の問い合わせは、これは最近非常に多くなっておるという統計がここにあります。おのおの方々に気圧計がありますが、これが年中振れる。だから気象庁に連絡をしてこれは直していく。これは船舶関係が非常に多い。それから学校、山岳関係、百貨店の統計機器その他の分野、あるいは化学分析、高圧ガス、この圧力を標準状態に換算するための気圧の値、手術の際に必要だといって聞いてくる病院等々、これが気圧。  それから視程。これは表に出なければ見えませんね。視程というのはこれは一般に普通視界と言うんでしょうけれども、何キロメートルまで見えるかということ。それから公害との関係。これはずいぶん公害関係の諸官庁からの問い合わせが来ておりますね。それから航空会社、それからヘリコプター、これは主として新聞、テレビ局です。それから濃霧が発生した場合の交通機関関係。まだいろいろありますけれども、視程はそんなところが中心のようであります。いま申しましたように、視程というのは、天気もあれば雲もありますから、観測者の目による以外方法はないはずです。  それから総合的な気象状況、これは消防関係、報道関係、こういうかっこうのものがずっとたくさんあります。NHKテレビだとかいろいろ方々で例があがっておりますけれども、民間放送のテレビ、ラジオの天気の関係、これはずいぶんたくさんある。  そこでデータがここに幾つかありますが、一つ例をあげますと、昨年の四月、五月、六月、七月、八月、九月までのやつがございます。これは大阪です。いま問題になっておるところ。大阪に来ておるのは、書面が、四月が九、五月が三十、六月が二十、七月が二十二、八月が二十六、九月が十八、これだけで計百二十五。来訪者が、四月が八十五人、五月が七十六人、六月が九十四人、七月が百五十四人、八月が百九十九人、九月が六十人、計六百六十八。電話による問い合わせというのが一日おおむね二十件、月にして約五百件。それから文書の問い合わせの大部分は、ここに例がありますが、司法関係です。事件発生時刻の気象状況等の証明を求めてくるものなど。来訪者については最近は建設関係の利用者が非常に多い。毎時間の雨量、昼間の天気、何時から何時までどうなっていたかということ。それから冷暖房の設計監理のための気温、湿度の時間的な変化、塗装関係の業務、これが特定の湿度を調べる。こういうかっこうでの問い合わせ。三時間おきの間隔のものを言ったのでは、これはとてもじゃないが間に合わぬわけですね。それから交通事故と気象の関係、こういうふうなものが次々にある。  したがって、これらのものをどうやれば一体、つまり先ほど毎時観測を三時間おきにした場合に、どうやればこれらに回答を与えられるかということ、現実問題として。私はここでおたくの担当者の方に聞いてみた。そう簡単にすぐわかりますか。そんなものはすぐわかりますよ。そこで現場の方に私は聞いてみた。すぐわかるならだれかかわってやってもいいでしょう。とてもじゃないがすぐわかりはしない。そんなことは専門家だからあなたのほうでちゃんとわかっているでしょう。あなた、簡単に天気予報だと言うけれども、これだけいっぱいあるじゃないか。何があなた、天気予報だけですか、冗談じゃない。
  361. 吉武素二

    ○吉武政府委員 少し先生のお気にさわることを申すかもしれませんけれども、先生がおっしゃったように、いろいろな問い合わせ、資料の照会があるわけです。たとえば天気というのはローカリティーが非常に強いわけです。国会議事堂のところで雨が降っていて、気象台のところで雨が降ってないというのはしょっちゅうあるわけです。ですから気象台のデータというもの、もちろんわれわれが知り得ているものはお答えしますけれども、たとえば塗装をするとかどうとか、そういうような多くの場合はその現場ではかられないことには、温度にしてみたって、数寄屋橋のまん中と気象庁のところでは場合によればもう何度か違うわけです。だからそういう意味で、単に気象台に聞けば、それで自分のところの温度なり湿度がわかる、そういうのは私は間違いだと思うのですよ。そういうことはやはり皆さんが気象台の資料をどういうふうにお使いになるかということを考えながら、皆さんによりよいように、こういうことをなさってこそ初めて仕事にお役に立つんじゃないでしょうかという指導を絶えず私はやっていきつつあります。ただ先生がおっしゃった中で、かなり普遍的なものというのは気圧だと思います。これはわりかた場所による違いというものが小そうございますから、そういうものについては私のところにちゃんとしたスタンダードになるようなものがございますから、そういう資料は幾らでもお答えさせていただくことができると思います。しかし何でもかんでも自分のほしい気象資料につきまして、それは気象台に聞けばわかるとおっしゃっても、それは東京の中であってもずいぶん広うございます。最低気温にしてみたって、立川のほうと私の気象庁のところでは四度や五度は温度が違うことはしょっちゅうでございます。だからそういうことを考えながら仕事をやっていけばいいのであって、気象なら何でも気象庁へ電話をかけていいというものではないんじゃないかというように私は考えますが、いかがでしょうか。
  362. 大出俊

    大出委員 そんなことを言ったって、気象庁という名がついているから、まず気象庁に聞いてやるというのが世の中の一般のあたりまえのことじゃないですか、それは使うほうが使いものになるかならぬかという判断があって聞くのだから。そうでしょう。あなたのほうはいまのお話があるんだとすれば、それは国民に知らせておくべきであって、そういった意味のことを前提にして聞くことになるはずですから。一生懸命それをおやりになっているのだから、国民はそれを知っていて聞いているのですから、それだけの必要があるのだから、あたりまえですよ。何でもかんでもといっても、気象のことは気象庁に聞くしかない。ほかに私設気象庁というものは存在しない。あったらたいへんだ、そうでしょう。問題は、すぐわかるのかというと、この間だれかに聞いた。おたくの方ですよ、お顔は覚えていないですけれども。そんなのはすぐわかる、そんなものがわからぬというのは組合がそんなことを言っているんだ、と言う。この席で、ぼくがいたところで。私は腹が立ったけれども、そのときにはおこらなかった、御本人がおいでになるから。そういうことを言っていいものじゃないですよ。私だって、幾らしろうとであっても——政治をやっているのはおおむねしろうとですよ。おか目八目でしろうとが見れば専門家よりよくわかることはある。橋本さんだって運輸といったって知りやしない。だけれども、政治をやっているんだから政治感覚のほうがわかる。だからおやりになっている。私だってそうです。だから皆さんからいろいろ承ってわからなければ率直に皆さんに聞く。さっきここで質問していった横路君だって、彼は本職は弁護士だ。何もそんなことは知りやしない。知りやしないけれども調べればわかる。私も調べてそれなりにわかっているんだ。現場の人に聞いているから間違いない。現実に働いている人に聞いているのだから。それをそんないいかげんなことをここで言って、問題ないというのではいけません。やはりその点はもう少し前向きにものを考えないといけない。  私の調べた限りでは、気温、これは測器の誤差の範囲がきまっている、その補正値がある、これは当然でしょう。隔測測器、これが入ってきた。そこでこれは最近入ってきた湿度の問題もある、これは自記装置がある。露点温度をまずはかって、打点がずっと自記装置には記録されていく、これは一つの線になるのでしょうけれども、この打点を、まず補正値があるわけですから、表でこれを引いて、そして蒸気圧を調べる。表で調べる時間というものは、やはり単純な表ではなくて、気圧によって値が動くそうですよ。これはどう一生懸命早くやっても、やっている人に聞いてみると二分近くかかる。そうしておいて、気温、湿度というものを出していって、そして三十秒に一回くらいずつ打っているというのですけれども、結局はこれは直線になるのでしょうけれども、この打点をまず読み取って、そして表で調べる時間が終わって、そして露点気温、これが出てくる。蒸気圧を調べる。そして今度この気温の蒸気圧、つまり水蒸気が一〇〇%になっているときですから、飽和蒸気圧という意味でしょう、これでこの露点温度の蒸気圧はわかる、そして湿度を出す、こういう計算をやらなければいかぬのですね。そうなると、これは計算尺でやるのだそうですけれども、やっぱりぱっと見て——私どなたかおたくの方に聞いたら、ぱっとわかるようなしろものではない。そうすると、電話がかかってきて、それに答えたりするには、そのための仕事をとにかくその人がやらなければ答えようがない。これはあたりまえでしょう。物理的にあたりまえなんだ。そうだとすると、毎時観測をやっていないとすれば、これをさかのぼって聞かれたとすると、なおのことそれだけの時間をかけなければどうしてもその計算はできない。そうすると、これだけ需要がある、かかってくるものを、長官の言うように、質問には一切答えない、気象庁としては何を聞かれても一切答えないのだそうだ、このことを世の中に明らかにでもしない限りは話が進まない。そうすると、私はもう簡単に言っているわけだけれども、湿度にしても、気温にしても、風向、風速、雨量にしても、雲の状況にしても、やはり調べようとすることになれば時間はかかる。そうすると、これだけの需要があって年じゅう電話がかかったりするということになれば、やれるものならば当然二十四回観測を——二十四時間観測ではなくて、自記装置があるが、処理が残っているのだといえばそれまで。それを読み取って計算するということになるとすれば、二十四回観測と二十四時間観測とは明確に違う。そうなるはずですよ。ということになれば、それだけの需要を満たすことは必要なことだということになる。それは長官のさっき言った趣旨があるかもしれぬけれども、あなたのほうにかかってきた電話に対して協力して知らしても、その中身を相手がどう使うかということは一々わからないわけですよ。ほんとうに必要なことで聞いてくることもたくさんあると思う。町の中にアマチュアの専門家だって一ぱいいるのですからね、そうでしょう。また塗装店なんというものや、コンクリートをやっている人の中にも、専門家、技術者はみずから、気象庁に聞いてみたら、こう言った、そうならばこの辺でということで、そういう使い方をしているかもしれない。そうだとすると、長官の言ったのも一面理解を——しかしすべてがそうであるかどうかということについては、あるいはそこには大きな間違いがあるかもしれない。それでその真偽のほどを国民に対して答弁してきたわけではないはずだ、そのデータもないはずだ。そうだとすると、二十四回のこの観測というものが要るのか要らないのか。これだけの需要がある限り、全部それを断わるというなら別だけれども、そうでない限りは、需要のある——三年五%という問題が起こって私のところに飛んでこられた方々が、一時間おきの観測を三時間おきに切りかえる、それは何だと聞いたら、三年五%でかぶってきたというから、私は、この席で佐藤総理にこの問題を取り上げて質問した。そうしたら総理が私に言ったのは、ここに書いてある。それは総理もしろうと、私もしろうとだけれども、総理の御答弁がここにあります。昨年の四月の八日の内閣委員会、気象観測のようなところから人を減らしてよいわけはない——これはローカル空港の、さっきここに話の出た管制その他の気象の変化を連絡する係官の定員削除との問題とからんでいるから、そっちも総理は取り上げておる——そういうところが人を減らしてよいわけはない、三年五%というのが、そういう面にまであるいはいくかもしれないが、そこらは厳に注意をして、そういうことにならぬようにするという意味のことを、ここでお答えになっておる。だとすると、私がさっき三年五%が原因でしょうと言ったら、あなた方は答えないが、答えないといったって、三年五%で出てきたから私は取り上げて、ここで総理に質問をして念を押している。そこらあたりを、あなたお考えいただかなければ困りますよ、簡単に言われては。三年五%が原因でしょう。三年五%が出てこなければ、二十四回観測をやめはしない、あなた方は。ほかにも、これは減らせば問題が起こるのだからね。そうでしょう。
  363. 吉武素二

    ○吉武政府委員 もちろん定員削減という問題が出てきて、それで二十四回観測というものは——特殊な場所、たとえば飛行機の発着するようなところでは、これはもう二十四回どころじゃなしに、刻々変化を追っかけていかなければならない。飛行機がしょっちゅう飛び立つし、降りてくるわけですから、それはやるわけです。しかし、どこもかしこも二十四回やらなければならぬかというと、私は必ずしもそう考えていないということでございまして、そういうような古い、何か一応ずっと続いてきたが、しかしそういうことも何とか考えなければいけないということがあった、そこへ定員削減というような問題もあったということで、定員削減が直接と先生おっしゃっても、私も、はいとは申せない面もございます。間接的には、やはり関係があると申し上げたほうがいいかと思います。
  364. 大出俊

    大出委員 間接的にだけ前の答弁から変わってきたから、それでいいですよ。それは、あなただって長官をやっておられるのだから、変わったことを言ったら、同じ国会ですから、通常国会は一つの国会なのだから、困りますからね。そこで、いま長官がそこまでおっしゃれば、私も一つだけ言いたいことがある。それはあなたは、天気相談所その他にちゃんと隔測測器を入れて、そこでやるからというようなことをここで御答弁されたりしている。そうでしょう。いまあなたが言っておるのは、たまたま定員削減が行なわれる前に、こういう古い方式はぼつぼつ何とかしなければならぬという気持ちがあった、そこへたまたま五%削減が出てきたから、間接的には関係があってそこにいったのだ、こういうふうにあなたは答える。答え方はうまいですよ。しかし、それなら隔測装置というものは、これは二十四回観測を八回にする、それが目的で導入しようとしたものですか。そうではないはずですよ。その前からあった。これは、ちゃんと行政管理庁の方もうなずいておられる。だから、さっき私は取り上げた。なかなか行管も御勉強している。行政管理庁が指摘している監察結果の中に、こういうものを取り入れられると言っているのです。これは三年五%が出てくる前です。そうすると、二十四回観測を八回に減らそうということ、そのために、あたかもあなたの答弁は、隔測装置がございますから、だから、こういうものが入っているのだから、だいじょうぶとあなたは答える。そうでしょう。行管の指摘するところに基づいて、精度を高めようというので、あなた方は導入を考えておられた、そこへ三年五%が出てきたから——三年五%が出ても、さっきから言っている隔測装置のほうは、何も二十四回を八回に減らすので入れるのではないのだが、あなたは、たまたまそれにひっつけた。打点で記録していって、記録が残っていくから、だいじょうぶという言い方をあなたはされておる。あなたの言い方は逆にしたあれで、そういう答弁はいけませんよ。こういうことは、はっきりしなければいけませんよ。何も減らすために隔測装置を入れるわけではない。ちゃんと記録上資料はあるんですから……。私は、やはりここまでくれば、長官、職場の現場の諸君が、これだけ電話がかかってくる。現にそれを聞いていろいろ答えておられるわけだから、その方々の気持ちになれば、古いか新しいかということは——私は専門家じゃない。しかし職場にいる諸君というのは、それをみずからの業務としてやってきているのだからね。そうでしょう。だから、その人の知識に高い、低いはあっても、その職場の人の知識というものは、一応われわれから見れば、専門にやっている専門家と見なければならない。だとすると、その方々が答えようと努力していることは、これは、あなただって認めなければいけないと思うんですよ。人があれば配置するわけですから、九人を七人にしなけれげならぬことは何もない。そうでしょう。あなたは予防線を張って、最初から人の話を持ち出せば、人じゃない、人じゃないとしきりに言っているけれども、結局は人になる。だから、当面の問題解決を含めて、国民の需要を満たす意味においても、さっき私は、この辺でぼつぼつ——それは八回通報なら八回通報でもいい。いいけれども、二十四回観測というものは、二十四時間観測ではなくて、それは、せっかくいままでやってきた——一つの世論から見ても、御前崎の問題だって新聞に出ているし、これは、だれが持ち込んだかといえば、漁業をやっている方々にすれば心配だから記事になるのです。そうでしょう。あそこの所長さんが言ったりしたその言いわけも載っている。しかし国会答弁だとか過去のあれを見ると、これは政府方針でおりてきたからしかたがないということでやっておられるけれども、そこらのところは、行管の皆さんも言っておられるけれども、やはり要求すべきものは要求して、最小限度満たすものは満たすように努力をやっていただかなければ、職場は前向きに進まないのです。職場の感覚からいって、古いものが残っているとすれば、皆さんがやる気になってやれるようにしてやらなければ、単に機械を入れたって、機械を見るのは人なんだから前に進みませんよ。私は、そこを言っている。大臣、この辺について、ひとつ答えていただけないでしょうか。これは、方々で質問が出ておりますから、ここのところは、前向きにひとつ検討していただきたい。
  365. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 機械のことは、ちょっとこっちも弱いのですが、ただ問題は、仕事の性質が変わってきたということ、これは長官の言うように、サービス面といいますか、そういう面を、外部から聞きにきた場合に、そういう仕事をだれがかわってやっていくのかという、そういう問題がありましょう。しかし近代科学といいますか、観測の近代化に伴ってやり方が変わってくることは当然ですから、それは十分に長官から組合の諸君に御理解をいただくように、そしてまた雑務としてふえる面が、いまお話を聞いていると、あるわけですから、そういう面をどう処理すべきかという点もあわせて長官のほうにおいて検討するようにしていただきたいと思います。
  366. 大出俊

    大出委員 これだけ国会で、方々の党の方が取り上げて、各部門でやってきて、大臣も先ほど私に、きのう、きょうの問題でないからということでここへやってこられて、君、またやるのかと言っておられましたが、これだけの一つの空気になった。それほど国民一般に非常に大きく影響がある問題ですからね。だから、そういう空気が出てくるのです。そういう意味で、大臣がいまおっしゃったことをポイントにしていただいて話し合って、問題の解決に向かって相互に努力をしていただきたいというふうに思います。  そこで、もう一つ、ここで承っておきたいのでありますが、異常気象時において、毎時観測させるから心配がないと言っておられるわけでありますが、これはやっていないのですね。台風ぐらいのことしか——台風というのは、三百キロというところがあって、おたくに規程があるでしょう。それでこれはやらないのですね。私のほうに全部データがありますが、これはやっていないのですよ。昨年の四月四日に、平均最大風速が十五・七メートル、それから雨量が十三・〇ミリ、日本海を低気圧が通過したという、異常気象が昨年の四月四日にある。それから四月の十七日、これが、平均最大風速が十六・七、そして雨量が十六・五、これは低気圧が太平洋を通り、そして大阪府下で看板が飛ぶなどの被害が方々に出ている。それから六月の二十五日、これが平均最大風速が十六・〇、六月二十六日が十六・七、それから雨量が百六・〇と十一・五、これは同じように全国的に被害が一ぱい出ております、山岳その他においても。新聞もこれを報道しております七それから八月四日に平均最大風速が十三・七、雨量が十・五という、これは台風七号です。それから八月二十二、二十三日これは台風九号。このデータの中でいずれもこれは異常気象です。ここで毎時観測をやるという。これは台風ならば、皆さんの規程に基づいて三百キロからやらなければならないことになる。台風が三百キロ以内に接近した場合に毎時観測を始めるという現在の規程があるから、これはやるのがあたりまえだ。だから、例の台風七号と九号については規程どおりやっている。三百キロメートルに近づいた、だから毎時観測、こうなっているのですね。ところがそのほかの四つあるのは毎時観測はおたくのほうは命じていない、また命じてもできる体制にない。台風ならば規程があるからやらざるを得ない。こういうわけだ。だから、異常気象については三時間おきに観測をさせるから心配ないとおっしゃっているけれどもやっていない。現にできない。  そこで、ここでもう一点、時間がないから私のほうから指摘いたしますが、三百キロというのはどのくらいの距離かといえば、かりに台風が時速六十キロで動くとすれば、五時間という範囲ですよ。そうでしょう。三百キロ来てしまうまでにわずか五時間しかない。そうすると、毎時観測をやらなければ、これはとんでもないことになる。三百キロのところから毎時観測を始めた場合に、意外に大きな台風だったということになると、これは毎時観測を始めたって五回しかできない。片っ方の端を抜けば四回しかできないうちに台風がここまで来てしまう。そうすると、たとえば夕方の六時に台風がここへ来るとすれば、その五時間前の午後一時から毎時観測に入ることになる。そうすると、ほんとうはそれ以前の時間帯にいろいろな問題が起こる。台風は遠くにあったってずいぶんたくさんの被害がある場合がある。ここにもデータがある、あげてもいいけれども。だとすると、毎時観測をやっていないと、そこから先三時間はブランクだ。そうでしょう。だから、この台風の例を一つとらえたって、しろうとが判断をしても、これは現に毎時観測が要ることになる。それはあなたは専門屋だからいろいろな御見解があろうかもしらぬけれども、そういう結果になる。私は、やはりそれはあなたのほうで考えている——先ほどあなたの答弁をあげましたが、異常気象のときには毎時観測をやるから心配がない。心配がないからやっていない、規程どおりしかやっていない。その前の毎時観測がなければ、ほんとうは台風のその三百キロという規程も、五百キロ、六百キロ向こうに来た場合にやるというように改めなければ、そこから先三時間はブランクになる。たまたま台風との関係からいけば理屈はそうだ。これは規程を直さなければならない。
  367. 吉武素二

    ○吉武政府委員 少し具体的にお話ししてみたいと思います。  毎時観測通報といいますか、そういう測候所というか地方気象台というようなところは、ほとんどが日本の島の上にあるわけでございます。それからあと離島にわずかの気象官署を私たちは持っております。毎年やってくる台風について申し上げますと、南方からやってきて日本の島へ襲ってくる。日本の島に影響があらわれるといいますか、気象変化として、台風の何か徴候が出てくるというのはずいぶん接近しなければあらわれないわけです。それで私たちは、ずいぶん古い話ですが、室戸台風というのがありました。これは私が気象台に入った年の昭和九年のことでございます。その当時は、海のほうの資料も少なく、また陸の上のそういうような——室戸というところには測候所があったわけではございますけれども、室戸台風というのは何かしらぬ海から突然上がってきたというような印象を私も持っておりました。しかし、日本は毎年非常に台風の脅威にさらされることがあります。それで何とかしなければいけないということで、現在はそういう意味ではもうこつ然とあらわれてくるということは、毎時観測をやっていなくてもはっきりつかめる。たとえば富士山のレーダーをつくりました。そのおもな理由は、富士山から大体七百キロ離れたところに台風の中心が入ってくれば、台風が海の上であろうとどこであろうとつかまえられる。そういうために、われわれはあの上に多くの金をかけてレーダーをつくったわけでございます。また四十五年度についてもいろいろな施設を強化してもらうようにずいぶんの予算をお願いしているわけでございます。それから最近はまた気象衛星というものがございまして、台風がはるか南方洋上にあって、その辺は海が荒れておりますから、船は全部退避してしまいまして、船の資料というものもない。しかし気象衛星というものが、台風はいまどこにあるのかということを私たちにすぐ教えてくれます。しかもこれは現在のところは一日に一回ではございますけれども、遠いところのことですから、一日に一回そういう資料を送ってくれるということは、私たちにとっては非常にありがたいことでございます。ですから、台風をつかまえるといっても、それは何も二十四回の観測通報というものがつかまえている時代では現在はないわけでございます。しかし接近してくれば、やはり今度は、たとえば大阪に来るか伊勢湾に入るかということが非常に問題になってきます。そういう意味で、なるべく、接近して台風の影響があらわれ出した場合には、それは毎時のデータをよく見つめていただいて、これはやはり大阪湾に入るのだろうとか、あるいは伊勢湾に入るのだろうというそういう区別をする必要があるために、二十四回の観測通報というものをそういうときには実施いたします。  それから先生が、異常気象のときは毎時観測通報をやるから心配ないとおまえは言ったじゃないかとおっしゃいますけれども、それは異常気象と私が申し上げたのは、そういうようなかなりきびしいときのことを申しているわけでございます。風が十五メートル吹いた、雨が何ミリ降ったからといって、必ずしもそれは異常気象と私申し上げたわけではございません。その程度のことならば、いまやられている観測をそのまま続行することで、われわれは国民に十分なサービスができる。その程度のものまで、何も臨時に編成して、八回から二十四回というようなことをする必要は私たちは考えておりません。
  368. 大出俊

    大出委員 時間がないので、あまり長い論争をしようというふうに思わないけれども、いまお話しのようなことになると、一、二時間やらなければならぬということになる。たとえば飛騨川流域の集中豪雨が、ここにあるこのデータによりますと、これはある意味では気象庁は責められてもしかたがないですね。このくらいのものはというお話をいまするけれども、異常気象というものはそういうものじゃないというふうにここに書いてあるのです。あなたはその道を歩いてこられた方かもしれぬ。けれどもあなたのあとから若い方で学問をされて出てきている方々もたくさんある。私は筑波山ろくの学園都市問題のときに、気象庁の研究所が向こうへ移るというので、それは困るという意見をお持ちになった若い専門家の方に何人もお目にかかった。そのときにいろいろ伺ってみた。飛騨川の問題も当時起こっておるのですよ。そうすると気象庁の責任だとおっしゃっておる。長官はおっしゃりたくないのだろうと思うけれども、突発的に日本国内で起こった異常気象のゆえに発生した問題。それは天災だとはいいながらも、どこまでそれを早くとらえるかというのは気象庁の責任だと言っておられる。そうすると、さっき簡単にあなたはおっしゃるが、たいへんな大きな被害はなかったからいい。この異常気象といわれる——これは現場の専門家の方々が、これは異常気象だと言っている。旧来ならばこれは毎時観測で的確に調べていく筋合いのものだと言っている。たまたまそれがなくなった。いままでは毎時観測をやっているところがあるからよかったわけですよ。今度は全部三時間おきになる。だから異常気象をどうするんだと言ったら、あなたは毎時観測をやるからいいと言っている。そうでしょう。これは当然やるべき筋合いのもの、そう理解せざるを得ない。  それからあなたはもう一つ、いま台風の話をされるけれども、これはいま毎時観測をやっているところがあるからそれなりに、台風だというので三百キロというこの規程に基づいて毎時観測に入っても、それ以前からとっているからということになる。  それからいま一つ、あなたは気象の観測の方法はいろいろあるということをおっしゃる。高層観測もこれはある。確かにあるでしょう。レーダー観測もある。衛星で観測するのもある。一日一ぺんであってもある。しかし高層観測といったって、風船を上げて発信機があって打電してくるのでしょう。上げておおむね二時間くらいたたなければ、これは結果は得られない、そういう形のものですよ。一つの観測の方法です。レーダーということになると、これは別にこれだけ取り出して聞いておきたいのですけれども、レーダーというのは夜はどういう観測をしておるのですか。
  369. 吉武素二

    ○吉武政府委員 レーダーというのは、一日じゅう回しっぱなしにしておくというようなことは私は考えていません。
  370. 大出俊

    大出委員 夜はどうなっておるのですか。そこだけ答えてください。
  371. 吉武素二

    ○吉武政府委員 必要があるときには夜であろうとそんなことは関係なく、私たちは夜昼の区別を別にしないで仕事をしているつもりでございます。
  372. 大出俊

    大出委員 冗談じゃない。人がいないのに夜昼区別なくやれますか。命がなくなる。冗談じゃない。夜やってないじゃないですか。人がいないじゃないですか。全部定員配置がある、ここにちやんと。つまり、よけいなことをここで大論争したってしょうがないけれども、海上観測だってブイ観測、これはあなたのほうの資料によると、日本海上に設置されたブイロボット一号、二号、これはつい最近だ。おたくのやつだ。これは。そうでしょう。たいへん骨を折ってこしらえたと言って説明している。ほんとうにものの役に立つのはこれから先ですよ。だがしかしこれは必要なんです。つまり海上観測も高層観測も、レーダーもあるいは衛星も、全部必要なんです。必要だからつくったのでしょう。さらに地上観測も必要なんですよ。これは全部必要なんです。そこをあなたのほうは地上、いま問題になっておるところから、二十四時間という言い方をして、二十四回ではなくて八回通報だということに、三年五%という——間接的にとあなたはお答えになったからそれでもいいけれども、そうなっていったところに問題が一つ出てきている。ですからむしろこういう機会にあなた方のほうが、今日与えられている気象庁の任務というものは国民にこれだけ大きな、さっきあなたがおっしゃったような日常生活全部にからむんだから、その性格を明確にして、必要なものはとっていくということにしなければならない、こう私は考えておる。いまが非常にいい機会ですよ。こんなことでもなければなかなか、国会でどこの委員会でも気象問題を取り上げて、どこの党もみんな取り上げるというようなことはめったにない。三年五%からこれは出発しているのだ。総理をぼくらが責め始めたときからこれは出発している。そうでしょう。だからこれはあなたが古い考え新しい考えと言って逃げないで、やっぱり前向きでこれをつかまえて、必要なものは必要だと言っていくという姿勢をとらないと、それは職場で一生懸命苦労してじみな仕事をされている方々の身になってごらんなさい。大阪の総合調査というのはどうなっているのかあなたはよく知っているでしょう。だからそういうふうにあなたのほうはお考えをいただかなければ困ると私は思っているわけでございます。  そこでレーダーなんかの問題についても、これは実際にやっている方々がいろいろ資料を私のところへ提供してきているのだから、間違いない。現にやっているのだから。だからやっぱり人員配置——レーダーというものも一人で動くというのじゃないのだから、人を配置しなければ、せっかく高い金を出してとあなたは言ったけれども、それこそほんとうに常時使えるような定員配置をしていなければ、税金のむだづかいですよ、国費のむだづかい。フル回転してないのだから。そうでしょう。やはりそういうところはすべて必要なんだから。そういうふうにものを解釈する必要があるんだろうとぼくは思っている。レーダーなんかの人の配置もふやす気はありませんか。
  373. 吉武素二

    ○吉武政府委員 きょうもちょっとその問題には触れたわけでございますが、私はやはり観測のやり方というものを少しずつ変えていきたい。レーダーというようなものに——いま全国で十六カ所くらいございますが、そういうところへ人を振り向けていく、そういうことを徐々にやろうとしております。しかしいままでやられていることをこちらからこちらへというのはなかなかむずかしいので、私も日夜苦労している、その辺は先生おわかりいただきたいと思います。
  374. 大出俊

    大出委員 つまりこれは人が足りないということをあなたは言っている。わかります。そうでしょう。あなたは冒頭に、人と金じゃないとおっしゃったけれども、つまるところ人と金なんですよ。やはり新しい精度を高める意味の機械化も必要でしょう。確かにコンピューターも必要でしょう。必要であれば、自衛隊なんというのは——ぼくはそのほうは専門だけれども、全国に二十四カ所もレーダーサイトがありましてね、完全フル回転です。人があればやれる。国民にこれだけ必要なものは精度が高い観測をしろということを行政管理庁が再三再四、あとどうなったかまで監察をされているのですから、こういうところに人の配置をして、つまり金がかかってもやっていくということが必要なんだ。だから何でもかんでも一律五%式のかんながけというのは、さっき長官もよろしくないとおっしゃっている。それは一つの気象庁の中を見たってそうでしょう。国の行政全体を見たって当然そうでしょう。行政機構については私もずいぶん何年も携わってきましたから、そのなにはわかりますけれども、一つのセクションをつくったって、職をつくったって、やはり恒常的な職という形が定員なんですから、機構というのはそういうことで生きるわけですから。だからレーダーだって同じことですよ。そのワクならワク外じゃない。私はそういうふうに考えなければいかぬと思っているわけです。  そこでもう何点か承っておきたいのでありますけれども、東管のこの勤務時間なんですけれども、私はこれをながめてみて、こんなむちゃくちゃなことをなぜやるのかという気がしてならないわけであります。実は最近国家公務員の皆さんのほうの勤務時間、少し手を放しておりますけれども、人事院の皆さんに承っておきたいのですが、国家公務員法の百八条の五、職員の勤務時間に関して、これは途中を略しますが、「交渉の申入れがあった場合においては、その申入れに応ずべき地位に立つものとする。」こういう文言がございます。それから人事院規則の一五−一、各庁の長は、業務の性質、地域的事情、職員の健康及び福祉を考慮する云々というところから、適正な勤務条件の確保につとめなければならない。これはございますね。そして各庁の長は、人事院の承認を得て、勤務時間の割り振り、休憩時間及び休息時間につき別段の定めをすることができる、こういうふうになっているのですね。だから人事院規則の一五−一からすれば、業務の性質、地域的事情、職員の健康及び福祉を考える。健康及び福祉が要る。もちろん総理府令もあります。「現業その他特別の勤務に従事する政府職員の勤務時間は、主務大臣が別に定めることができる。」基準法適用事項じゃありませんから抜け道は一ぱいある。あるけれども、本来勤務時間というのは、かくあらねばならぬということはある、原則的に。そういう前置きをして、人事院の皆さんは気象台の東管の勤務時間なんというものをながめたことございますか。
  375. 島四男雄

    ○島政府委員 ただいま御指摘の東管については、私どもまだ調査したことはございません。ほかの気象台につきましてはかなり調査したことはございます。
  376. 大出俊

    大出委員 どうもこま切れ勤務なり変則勤務なり——変則勤務というのは基準法上もいろいろありますけれども、どこからながめてもどうもこれではやっていけない、たいへんなことであるという気がする勤務態様がずいぶんある。東管は調べておられないそうでありますが、その他の気象台関係の勤務、大阪でもどこでもいいですけれどもながめて、人事院の皆さんのほうはどういうふうにお考えになりますか。
  377. 島四男雄

    ○島政府委員 たとえば室蘭、新潟、横浜といろいろ調査したことがございますが、室蘭の例で申しますと、変則交代制勤務と申しますか、その一番過重な勤務の方々の勤務体制というものは、朝八時半からずっとその日、翌日の九時までずっと勤務に服するわけでございます。その間休憩、休息時間がそれぞれ設けられてはおりますが、かなり長時間勤務に服していることは認めざるを得ないところでございます。
  378. 大出俊

    大出委員 これは拘束二十時間なんという勤務を出してきて、こんなばかな、命がなくなるような勤務を平気で出してきて、人がいないからしようがないというわけですが、これはおっぽっとけないですよ。ここにある勤務表を見ますと、三日に一度夜勤をする人が三人、四日に一度夜勤をする人が四人、七名ですね。旧来九人でやっていた。一人予備です。この九人の勤務の場合は二十四回観測体制です。二十四回体制を変えた。すると三日に一度の夜勤をする人が三人、四日に一度の夜勤をする人が四人、七名なんですね。ですからA、B、C、D、E、F、Gという人を並べる。一、二、三、四、五、六、七名。月曜日、日勤が一人、あとは公休、明け、夜勤、夜勤、明け、公休ですから、日勤と夜勤と夜勤で三人。火曜日がつまり日勤のAさんが夜勤、公休だったBさんが出てきて日勤、Cさんは明けのあと公休、Dさんは夜勤でございましたが、これは当然明け、Eさんは夜勤でございましたからこれまた明け、Fさんは明けでその次は公休、Gさんは公休だったから夜勤に入る。だから火曜日は日勤、そして公休、明け、明け、公休、夜勤。それからAさんが夜勤に入るから日勤に夜勤が二人、つまり日勤に夜勤が二人という形の交代制勤務ですね。八時三十分から日勤者十一時、そして夜勤の方が二十時から始まって十三時三十分まで、官執勤務が九時から十七時三十分、こういうことですね。これを見ると、これはこういう勤務体制をとって、はたしてからだのぐあいが悪くならないはずがないというように私は思うのですね。これは東管ですよ。これは三年五%の結果として出てきた勤務体制、全部やりくりをした。ここに書いてある勤務時間でいきますと、日勤者を一人削って、現場にいる七人で四人グループと三人グループをつくり、前者が四直制、後者が三直制という、これはちょっと線を引いてみなければわからぬ。二人夜勤なんですね。夜勤の一番が十三時三十分に出勤して放射能の当番をやるのだそうですね。引き続き夜勤は翌日の九時三十分まで。むちゃくちゃですよ、なんと二十時間拘束。もう一ぺん言いますが、夜勤の一番が十三時三十分に出勤して放射能当番をやり、引き続き夜勤して翌朝九時三十分まで、ちょうど拘束二十時間。夜勤の二番の人は二十時に出勤して夜勤をし、翌日は放射能当番をやって十三時三十分まで仕事をさせられる、こういうわけだ。この二番の人は仮眠時間が二時間、一番の人が四時間三十分、こういうことになると、これは働く人の健康を考えなければならぬという人事院規則というのがあるのですけれども、最近私は人事院の皆さんに勤務時間の質問をしておりません。この席は時間がないから、もう少しこまかくやりとりをしたいのだけれども、概略わかるように申し上げたんだ。もう専門の方々だからこの勤務体制というのはすぐわかると思うんだけれども、そうすると、先ほど私が読み上げて、人事院はつらい勤務であることを認めたが、職員の健康及び福祉を考慮するという人事院規則十五−一、これらとの関係で、こういう無理な勤務が三年五%削減の結果として出てきている、捨ててはおけないという気が私はする。いま言っただけでおわかりにならなければならないと言っていただけばけっこうだけれども、私はあと人事院の総裁以下お出になるこの委員会審議の場所がありますから、もしいま検討しなければわからぬということになるとすれば、いまここで私がやり始めると一時間か二時間かかかります。たくさん勤務例がある。ですから一ぺん東管その他のつい最近の——いま申し上げたのは第二次案なんですよ、いまやっている案。第一次案というのはもっとひどい、話にならぬ、さすがにこれは引っ込めたようですね。だからそこらのところを一ぺん御調査をいただいて御回答願いたいんですよ。私も現場に行って調べてみたいと思っておりますが、ぜひそれは人事院の皆さんにお願いしたいのです。旧来お調べになった結果として過酷な勤務とおっしゃっておられる、楽な勤務でないとおっしゃっておられる。それ以上のことになっているとすればさらに過酷だということになる。なぜそうなったかというと、これはやはり人と金の問題、そういわざるを得ない。そこのところをどういうふうにお考えになりますか。
  379. 島四男雄

    ○島政府委員 もちろん一週四十四時間または四週間平均四十四時というワクは一応押えておるわけであります。ただ特定の日を切りますと確かに長時間拘束を受けているという意味においては、そのこと自体は非常に過酷でございます。なお東管等につきましては私ども十分調査をいたしまして、いずれまた御報告の機会があろうかと思います。
  380. 大出俊

    大出委員 私もずいぶんいろいろな職場のいつも申し上げるんですが、人事院ができたときから公務員の労働条件は当たってきておりますから、ずいぶんたくさんの職場の皆さんの勤務態様というものを見てまいりましたが、その私の目で見て、こういう過酷なことをなぜさせておくのかという気がしてならない。この点はやはり皆さんが改善をはかるという御努力をいただかぬと、これは私も個々の方にお目にかかって聞いたわけじゃありませんから、データですからわかりませんよ、わかりませんが、ここに気象庁の組合の皆さんがおとりになっている病気だとか死亡者数から始まって幾つかデータがあります。夜勤、それから宿直の疲労回復の度合いその他まで全部とっておられる。それから夜勤時の飲食、食欲なんという問題も全部とっておられる。おられるが相当に他の職場に比べてきつい労働環境にある、こう言わなければならぬと私は思います。  その原因はどこにあるかという点をこれから申し上げたいのですが、まず管理をされている長官以下皆さんが今日の気象庁の服務態様、勤務態様というようなものについて、ほかのほうを御存じないとすれば比較はできないと思いますけれども、たいへんにきついものであるというふうな認識をお持ちなのか、それとも、いやもう楽なんだ、休暇も十分とれるんだということをお考えなのかどうか、そこらのところをまず承りたいのです。
  381. 吉武素二

    ○吉武政府委員 私も決して楽だとは思っておりません。ただ気象台の仕事というのは気象現象相手なものですから、夜昼なしに繰り返されている。ですから、たとえば八時間交代というような勤務制も単純には考えられるのですけれども、いまの社会のいろいろなことを考えてみますと、なかなかそうも割り切れない面もございます。私たちも十分そういう問題については、昨年私が長官になりましてからも議論して、やはりある面では気象台が特殊な勤務体制を組まざるを得ないのじゃないかというようなことで現在に至っておると思います。非常に過酷であるかどうかという点については、残念ながら私ほかのことをよく存じませんので、何とも申し上げかねます。
  382. 大出俊

    大出委員 つまりいろいろな職場があって、何も気象庁だけがつらい業務かというと、そうではない分野だってそれはある。私は郵政局の出身ですが、これだってずいぶんいろいろ過酷な勤務がある。国鉄だって人の安全をはかっておるのですから、ずいぶんそれは過酷な勤務がある。あるが、やはりそういう特殊な勤務をやっておられるところの人の問題というのは、やはり他に比較して何とか充足をはかっていかなければ、その職場に働く人は肉体的にたいへん疲労度が高くなり、病気はふえる。それでもやらなければならぬというかっこうになってしまう。だからそういうところは十分皆さんが気をつけて、職員の皆さんと話し合って、ひとつ改善の方向に向けていくということにしないと——東管の一次案なんという勤務態様、つまり人を減らして組んだのを見てごらんなさい、あなた方が見たって満足なものだと思うはずはないと思う。だからそういうふうな点の努力を積極的に進めていただかなければならぬと私は思うんです。人事院なんかでもこのことは捨ておかずに、やはり前に出てものを言っていただくようにしていただかぬといかぬ。私は運輸省関係で申し上げれば、航空関係の夜の管制官なんかの通信の問題についても、ずいぶん尾崎さんに無理を言ったりしました。行ってみたりいろいろして、全くどうもがまんができないという面もあって、ある程度の手当の新設どもはかっていただいたり、たいへん前向きで御検討いただき、結論を出していただいて感謝している一人ですけれども、やはりそういうところを手当てしていくことが職場の皆さんが前向きで仕事をしていけて、その意味国民の側にとってはプラスになっていくということにつながる、こう私は思いますから、ぜひひとつこういう問題がいろいろ起こっている機会に、前向きに取り組んでいただきたいと思うのです。大臣、気象庁というのは、私の調べた限り、ほかに比べて勤務態様その他はたいへんに異常です。ぜひひとつそれは御検討いただきたいと思うのですけれども、いかがでございますか。
  383. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 おっしゃるとおりなかなかたいへんな仕事だろうと思います。私実情をよくわかりませんが、その点は長官、関係者もこれらの事情を今後十分に調査した上でできるだけの措置は考えていくべきであろうし、またそのようにつとめるだろうと思います。
  384. 大出俊

    大出委員 いま大ざっぱに言いましたが、実はきょうは、私も資料をだいぶ集めまして、一つずつ結論を出していこうと思っておったのですけれども、先ほど来長時間質問者が続いておりまして、大臣がお疲れのようでもありますので、だいぶ省略をして大ざっぱにしたわけでございますが、勤務時間等はまた別な機会に取り上げさせていただこうと思っております。  そこで二、三点、このあといささか列挙的に承っておきたいのでありますが、地震などの予警報等につきまして、これはまただいぶ変わってきているわけであります。どういうふうに変わったのか、まずお知らせをいただきたい、地震、津波関係。
  385. 吉武素二

    ○吉武政府委員 私たちがいまそういうような地象と呼んでおりますのは、地震、それから海底地震に伴う津波、そういうものについてはある程度の情報を流すということをやっております。地震の予報というようなことは、いまの段階では、まだ技術的に何をどうすればいいということがわかっておる段階でないことは、先生もよく御存じのことだろうと思います。それで、結局地震が起きますと、全国に測候所、地方気象台というところがございます。そういうところに地震計は置いてあって、その地震の記象というものを観測員が読み取って、その必要な諸元を気象の電報と同じように中央に送ってくるわけでございます。そのデータに基づいて震央といいますか、地震の震源地をきめるわけでございますが、それではなかなか時間がかかるというようなことで、現在は各管区気象台、西は福岡、それから大阪、東京、それから仙台、札幌、そういうところには一つのセンターを設けまして、その付近の数点の観候所を選びまして、地方気象台ももちろん入っておりますが、そこに地震計を据えつけておいて、それを有線で直接そのセンターと結びまして、地震があればその記象、地殻の動きというものがすぐにそのセンターに記録としてあらわれるようになっております。ですから、職員が記象を見て諸元を読み取って、電報を組んで送るという手数は省かれたわけですから、現在ではさしあたっての中心、地震の震央というものをかなり迅速にきめることができるようになっております。そういう点がここ数年前とはずっと変わったことだと思います。
  386. 大出俊

    大出委員 私はそれを聞いたのじゃなくて、三・五%を問題にしておるわけです。昨年四月の切りかえ以後、大阪の例をあげますと、地震当番一名切り捨てておられるんですね。そして四月から津波予報官が一名でやらなければならぬ、こういうことになるわけですね、これを見ると。そこで気象観測当番全員に対して地震係の併任を発令をしておるんですね。だから、その二名の気象観測当番を地震発生の際には協力させるという形をとった。だから、従来の当番が一名ありますから三名、これは形として成り立っておる。しかしいままでそういう併任を行なわれていない、つまり気象観測当番を二名、これを一名、地震当番を減らしたから形をつくるためには併任しなければ形ができない、そういうことなんですね、この中身を見るというと。そうすると、これはどうもごまかしですな。  そこであわせて言ってしまいますけれども、九月九日の午後岐阜中部の地震があります。震度四。このときは昼間なんです。そこで多数の人が直ちに取りかかって、直接携わった人は十八名。それで地震の発表までに二十分近くかかっておるわけです。これは五分で震源がきまるなんということがいわれておりますが、十分で津波警報が出せる、技術部長さんがそう言っておられたわけでございますけれども、これは速報装置、いまちょっと話がありましたが、速報装置を入れるに当たってですね。それから四月の一日、日向灘地震というのがあるのです。これは日中。十七名作業についている。これもやっぱり警報の発令までにおおむね二十分かかっているのですね。そのときの地元の新聞が、津波が来てから警報が出たなんて書いてあるのだけれども……。だからそういうことになっておるところをいまのようなことにしていいのかという点。年百年じゅう大地震があるわけじゃない、年百年じゅうそう津波が来ない、だからいいということにはならぬとぼくは思うのです。ここのところはこういうことにするとすれば、昼間でこうなんですから、夜になったらたいへんです。ほんとうの大地震があったら間に合わない。しろうとの観測員二名あたりを併任したところで間に合わぬのです。冒頭に私は申し上げましたが、そうなれば、津波が来るかもしれぬということを言っておいて、あとになって調べてみたら来そうもなかったんだからということぐらいにしなければ、気象庁の責任は免れないところなんだ。しかし私は、そんなことをすべきじゃないと思うのですね、実際には。こういうふうにかんなをかけたのがこういうところまでしわが寄っちゃ、これはどうも私は感心しないと思うのです。私の言いたいのは、こういうところはひとつできる限りすみやかに、やはり——年じゅう地震があったり津波があったんじゃたいへんなんで、だから二名や一名でいいんだということには、しかしならぬと思うわけでありますから、そこらのところは、そういうことにならぬようなことを皆さん方がやはり前向きで考える必要がありはせぬかと思うのです。なかなか世間一般の人は、津波が年じゅうないものだからぴんと来ないと思うのですけれども、現にそうなったのではぐあいが悪いという気がするものですから、どんなものでしょうか。
  387. 坂本勁介

    ○坂本政府委員 先生御指摘のとおり、確かに大阪でもそういう形になっておりますが、実は中央の本庁を除きまして、それ以外の官署におきましては、地上観測と地震観測とは複合勤務になっております。それでも大阪のほうは、実は一名減らしました、それはおっしゃるとおりでございますが、それ以外に一名津波調査官と申しますか、これを昼夜配置しておりますので、その限りにおいて、まず津波の予報には事欠かないというふうに考えております。大体津波の予報は、実はおおむね一番おそくて二十分くらいでありますが、もっとそのスピードを早めたいわけでございますから、海底地震の起こりようでも、その海底地震の、何と申しますか、私、しろうとでありますけれども、地すべりの模様とか、断層のぐあい云々で津波が起こるような地震であるかどうかという判定が若干あったりいたします。その辺の関係で、津波調査官というのを特別に置いておるわけでございますが、一般的には、その定員削減というものによって、地上観測員がついでに地震観測をやるということではなく、これは中央を除きましては、すべて地方の官署は初めからそういうふうになっておるわけでございます。
  388. 大出俊

    大出委員 いま気がついたのだけれども、この間、私ここで言ったときに、そんなことはありませんよ、これは組合がそう言っているだけで、見ればわかりますよと言ったのは、あなたじゃないですか。あなたはしろうとと言われたが、しろうとがそんなことを言っちゃいけませんよ。どなたかと思って、ずっと顔を見ておったらあなただったと気がついた。声を聞いてわかった。(笑声)しろうとがそんなことを言っちゃ信用しない。だめですよ。私は、しろうとだけれども、やはり政治感覚をもって一生懸命に調べて、答弁を合わしてきた。それは、あなた答弁をしなかったほうがよかった。まあこれ以上私も言いませんから……。  こんな時間になりまして、みんなだいぶ眠そうだからこの辺で、あらためて機会をいただいてやりますけれども、勤務時間その他については、私も必要があれば、現場を当たって、もう少し調べますけれども、何ともどうも——いま幾つか申しましたが、まさに抜き読みをしたわけです、たくさんありますから。しかし冒頭に申し上げましたように、あまりどうも皆さん、大蔵省がいるからとか、行政管理庁がどうだからと言っておるようですが、最後にこれは締めくくりですから、大蔵省の方がお見えになっておりますので——あまりそういうことを気になさらないようにしてもらわなければ困るし、お見えになるから気がついたけれども、やはりせっかく行管もこれだけの長い勧告を出しておいて、四十三年にこれこれのものを大蔵省に要求したけれども認められなかったが、今後努力する——それは一ぱいあるのですね。少しは認めてあげていただいて、少しずつでも前向きに進んでいくように、大蔵省の皆さんもお骨折りをいただきたいのですが、いかがでしょうか。
  389. 井辻憲一

    井辻説明員 気象予報関係につきましても、毎年予算要求においては非常に御熱心な要求をされておりまして、先生おっしゃいますように、大蔵省がどうだということではなくて、もちろん先ほどの定員の削減はございますけれども、必要な部面における増員の要求あるいは機械等の予算要求は非常に御熱心に私のほうも受けておりまして、私のほうといたしましても、その中ではたとえば削減とはほかに、一方で増員を認めまして、六十八名のプラス要員を四十五年度において考えるとか、いろいろな面で、あるいは機械化の費用というものにつきましても、年々できる限りの努力をいたしておるところでございます。  なお、今後とも気象庁の業務につきまして十分実情等もお伺いいたしまして、できる範囲内で努力してまいりたいと存じます。
  390. 大出俊

    大出委員 まあ井辻さんですから、私もきのうやきょうじゃなしに、いつもいろいろ答弁を聞いておりますので、前向きで答えていただいていると思っておりますが、ひとつぜひ大臣、この気象というのはじみ過ぎまして、非常に役に立っているのだけれども、すぐ出てくるのは、さっぱり天気予報は当たらぬじゃないかという話ばかりでありまして、かといって、さっき申し上げたように、空をながめていただいて、いつも一緒だというわけにもいかない中身ですから、非常に御苦労も多いことだと思いますしするので、ぜひひとつ、職場の方々が苦労してやっておられるのですし、たいへんな勤務態様でもございますし、大臣ひとつ予算、定員その他前向きで進めていただくように——いろいろ起こっております現象、出ておる問題については、先ほど御答弁をいただきましたが、なかなかこういう席ですから、それ以上の御説明を求めることは困難でございますけれども、意のあるところはおわかりをいただけたと思いましたから、御解決をいただくように格段の御尽力をいただきますように、最後に申し添えておきますが、御意見をいただきたいわけでございます。
  391. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 おっしゃるとおり、国民生活に非常に関係の深い業務ですから、最善の措置を講じたいと思っております。
  392. 大出俊

    大出委員 どうもおそくまで恐縮でした。
  393. 天野公義

    天野委員長 次回は明二十八日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後九時二十八分散会