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1970-04-21 第63回国会 衆議院 内閣委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月二十一日(火曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 天野 公義君    理事 伊能繁次郎君 理事 熊谷 義雄君    理事 佐藤 文生君 理事 坂村 吉正君    理事 塩谷 一夫君 理事 伊藤惣助丸君    理事 和田 耕作君       加藤 陽三君    笠岡  喬君       菊池 義郎君    辻  寛一君       葉梨 信行君    堀田 政孝君       山口 敏夫君    鬼木 勝利君       受田 新吉君    東中 光雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中曽根康弘君  出席政府委員         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         防衛庁人事教育         局長      内海  倫君         防衛庁衛生局長 浜田  彪君         防衛庁経理局長 田代 一正君         防衛庁装備局長 蒲谷 友義君         防衛庁参事官  江藤 淳雄君         防衛施設庁長官 山上 信重君         防衛施設庁総務         部長      鐘江 士郎君         防衛施設庁施設         部長      鶴崎  敏君         外務省アジア局         長       須之部量三君         通商産業省重工         業局長     赤澤 璋一君  委員外出席者         内閣委員会調査         室長      茨木 純一君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十七日  辞任         補欠選任   笠岡  喬君     中村 梅吉君   中山 利生君     島村 一郎君   堀田 政孝君     山本 幸雄君 同日  辞任         補欠選任   島村 一郎君     中山 利生君   中村 梅吉君     笠岡  喬君   山本 幸雄君     堀田 政孝君 同月十八日  辞任         補欠選任   葉梨 信行君     廣瀬 正雄君 同日  辞任         補欠選任   廣瀬 正雄君     葉梨 信行君     ――――――――――――― 四月二十日  元満鉄職員恩給等通算に関する請願外四件(  亀岡高夫君紹介)(第三五一九号)  新発田市の寒冷地手当引上げ等に関する請願(  稻葉修紹介)(第三六二一号)  新潟県水原町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(稻葉修紹介)(第三六二二号)  新潟県山北町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(稻葉修紹介)(第三六二三号)  新潟県朝日村の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(稻葉修紹介)(第三六二四号)  新潟県関川村の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(稻葉修紹介)(第三六二五号)  新潟県三川村の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(稻葉修紹介)(第三六二六号)  靖国神社国家護持早期実現に関する請願外六  件(内海英男紹介)(第三六二七号)  同(大坪保雄紹介)(第三六二八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月二十日  恩給法の一部改正に関する陳情書  (第一二四号)  恩給共済年金の改善に関する陳情書  (第一五一号)  青少年健全育成対策に関する陳情書  (第一五三号)  旧軍人の一時恩給支給に関する陳情書  (第一九二  号)  同(  第二一六号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法等の一部を改正する法律案内閣  提出第二三号)      ――――◇―――――
  2. 天野公義

    天野委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菊池義郎君。
  3. 菊池義郎

    菊池委員 私の発言は、質問というよりも、むしろ進言であり、献策であって、野党の諸君のような単なるやぼくさい議論ではないのであります。  この前、大出委員質問に、長官入閣前における意見入閣後の意見と異なっておる、たとえば七五年に安保条約を廃止したいということも言っておるのに、今日変わっておるということを言われましたが、長官の答弁をうっかりして私は聞きのがしましたが、国際情勢変化により、あるいはまた立場の変化によりまして、人の意見の違うことは当然のことで、少しも怪しむに足らぬと思います。そのときに長官考えられた七五年に安保条約を廃棄して、そのあとどういうふうにして日本を守るか、その構想は非常に興味があることであろうと思うのです。参考のために聞かしていただきたいと思います。長官の天才的な頭からわき出した考えでありましょうからして、大いに参考になるだろうと思いますが、聞かしていただきたいと思います。
  4. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は前にもお答え申し上げたのでございますが、私の考えでは、七〇年代というのは非常に変化に富む年月である、それで日本人も七〇年の安保条約自動継続、これによって相当精神的に変わってくる、七二年に沖繩が返ってくれば、またかなり考え方も緊張してくるだろう、七五年くらいになると、日本のGNPは四千億ドル近くになると推定されておる、四千億ドル経済というのはスーパーネーションの経済であって、おそらく太平洋全地域というものはほとんど日本と交流し、交易しなければならぬという方向にいく、そういうふうになると、日本の大きな経済力というものが各国に相当な変化も与えていくのであって、そういういろいろな変化ファクターが出てきておる、それで安全保障条約はことしの六月二十三日に自動継続されるが、一年の予告でいつでもやめられるという体制になっているから、おそらく私は、七〇年代の初期というものは安全保障条約を弾力的に適用して、そしてたとえば基地は共同使用にするとか、自衛隊に返還してもらって、それをまた向こうと協力して一時使用にさせるとか、さまざまな弾力的適用が行なわれるだろう、しかし、七〇年代の半ばごろになると、いろいろな条件が出てきて、いままでの安全保障条約でそのままいいかどうか、検討を要する段階になるかもしれない、それは日本経済力というものが相当伸びているという要素もあるからである。そういう場合に、現在の安全保障条約を弾力的に運用してそのまま続けていくか、あるいは両方の合意によって新しい日米親善関係を再建設して新しい型に入っていくか、そういう可能性もある。そういう理論的可能性問題提起を私は下田日米民間会議でやったんです。そういう意味で新しい日米親善関係に発展していくということを言っておるのでありまして、安保条約を廃棄するということばは言っていないのです。新聞が見出しに書いたために、そういうふうに誤解を受けましたが、そういうことは言っていないのです。私はそのときも、日米間の提携親善というものは太平洋の平和を維持するために非常に大事であって、日本のためにもアメリカのためにも大事である、またそのことはアジアの安定と平和のために非常に大事なファクターである、そういうことを申し上げて、この基本線はくつがえしてはならない、しかしその提携の態様は時代によって変化していくべきものであろう、むしろそのころになると、昭和の世代が日本中心勢力になるから、日米昭和生まれの連中が、新しい日米親善関係がどういうふうにあるべきかお互いに模索して昭和っ子でつくってみなさい、われわれは大正族として、お産婆さんの役目をしよう、そういう話をしたのでございます。私はそういう思想をいまでも持っておりますから、日米間の安全保障体系というものは半永久的に必要であろうと思う、そういうことを議会でも言っておる、それは下田会議のときも変わらない考え方なんです。  しかし、日米間の安全保障は、昭和二十七年に前の安保条約が発動したとき、それから三十五年に岸内閣によってこれが新しい安保条約に変わりました。そのときに、いままでの、たとえば内乱出動条項を切るとか、事前協議をつくるとか、行政協定を変えて裁判権を回復するとか、十年の期限を一応つくるとか、経済条項が第二条に入ってくるとか、非常な変化をしたわけです。前の安保条約よりもはるかに日本自主性発言権が回復をされたわけです。十年たって、この六月に自動延長になると、また今度は一年の予告でいつでもやめられるという体制になるのですから、いままでのような気持ちでやっていいかどうかということも問題でしょう。今度この五年間というものは、日本は平和が続けば、経済的にまたすばらしく続く可能性もある、そうした場合に、いつまでも昔のからをかぶっていていいかどうかも疑問である。昭和っ子には昭和っ子の新しい見方があるだろうし、自覚が出てくるでしょう。そういう意味において、総理大臣も言われましたが、七〇年代は変化可能性の探求の時代である、こう言っておりました。また選択の時代であるとも言われておった。私もやはりそういう考えを持っておるのであります。
  5. 菊池義郎

    菊池委員 経済の発展と防衛問題とおのずから別に考えなければならぬと思います。総理大臣は、憲法改正しない、それから核兵器も持たぬ、さらにはまた徴兵制度ももちろんしかぬ、そういうことを確認しておりますが、中共は御承知のとおり国民皆兵で、原水爆もある、いわゆる好戦国として知られ、ソ連も同じような徴兵制度である、それでこのままでもって日本が安全を保ち得るかどうかということは、はなはだ疑問がありまして、わが党内にも憲法改正の動きが活発に行なわれております。そういう点につきまして、長官はどういうふうなお考えを持っておられますか。
  6. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いまの憲法につきましては、私も憲法調査会委員をいたしまして、いろいろ制定の由来、その他も調べてみましたけれども、あの制定手続が完全に民主的であったかどうかは非常な疑問の余地もあります。しかし、あの憲法日本に新しい価値を導入して、そして人間を大事にするという市民社会を非常に力強く育成してきたというこの成果は否定することはできないし、その成果は守っていくべきであると私は思います。  そういう観点に立って、憲法条項には必ずしもそのまま適当であると思う——疑問の余地の点もございます。たとえば宗教、学術団体に国が金を出してはいけない、そういうものを免れるために、私学振興会のようなものをつくって、それをある意味においては回避したが、実際的にはそれを実行しておるような方法も行なわれておりますし、また国民相当部分は、裁判官の国民審査のやり方について、疑問を持っておる人も多うございますし、そういう点については、やはり国民の中には、いろいろの考えもあると思うのですが、しかし、当分はこのままでいって、そうして下田会議のときにも、私は言ったのですが、一ゼネレーションたったときに再点検するのがいいだろう。そうすると、七五年ぐらいは、三十年たつわけです。そうすると、一ゼネレーションでありますから、そのときには小学生が主力になるのであるから、小学校の人たちが、これでいいかどうか再点検したらいいではないか、そういうことを私は前に申し上げましたけれども、そういうことも考えていいのではないか。ただし、目下のところは、この憲法を守っていくということがいいと私は思います。
  7. 菊池義郎

    菊池委員 われわれも、この点については、現在の時代においてはやむをえないと考えております。核兵器を持つことは、これはたいへん金がかかるし、今日必要がない。要するに、われわれは安保条約を主にして——この点、ちょっと長官と見解が違うのですが、長官は、自主防衛——自主防衛ということは、自力防衛とは違うかもしれませんが、われわれは、この集団安全保障体制、これを主として、日本自衛隊防衛力、これを従と見る、こういうような考えが正当であると考えておるのでございますが、こういう点について、どういうお考えですか。どちらを従として考えられるのですか。
  8. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いままで日本は、自衛力が非常に弱くて、特に占領以来、日本防衛力が全部解体されましたから、昭和二十七年独立当時は、安保条約にたよって、アメリカにほとんど依存してきたということでありますが、元来、これは正常でない状態であります。それが三十五年に国力が回復してきて、そこで安保条約も変え、自衛力を漸増した結果、米軍の撤退をどんどん促進したわけです。これは国家として当然あるべき姿です。そこで今度は、十年たって昭和四十五年が来たわけでございますが、この自主防衛といいますか、自分自分の国を守るという自然体に復元していくということを、ほかの内政諸原則とバランスを保ちながら、できるだけやっていくべきであると思います。現在は、まだ三次防でありますから、いままでの原則でやっておりますけれども、次の防衛計画段階になれば、自主防衛を主として、そうして安全保障条約は、これを補完的にする、そういう方向に明確に進んでいったらいい、そう考えます。
  9. 菊池義郎

    菊池委員 軍事専門家の目から見ますると、今日の自衛隊は、おもちゃのようなものであるといわれておる。これではとうてい国を守ることはできないので、外国からの侵略があった場合には、陸上自衛隊は半月もつか、一カ月もつかといわれているくらい——結局、集団安全保障体制、この軍事同盟がおどしとなって、日本侵略はできないのだ、これがわれわれの考え方であります。万が一にも安保条約がなくなったといたしますると、日本は鎧袖一触、滅ぼされる。それは、たびたび日本シナ大陸侵略して、はかりしれない損害を与えておる。そればかりでなく、しまいには満州国という得体の知れない国をつくりあげて、これを日本植民地にする、すなわち勢力圏にするというように、踏んだりけったりの仕打ちをしてまいりましたから、日本に対する彼らの恨みは、骨髄に徹するほど深刻なものがあると思うのであります。毛澤東は、しばしば公開の席においても、台湾とともに日本侵略するということを豪語している。そういう物騒千万な国が日本の隣に控えている。こういうときにおいて、わが日本考えなければならないと思うのでありますが、われわれは、どこまでも安保条約を主にして、そうして自衛隊自衛力は、これを従と見る、そういう考え方が正しいと思うのでありますが、やはり長官は、このたよりにならない、ほとんど防備力がないといってもいいような自衛隊を主として、そうして安保条約を従とするという考えを固執しておられますか。
  10. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 自衛隊がたよりにならない、それは私は正しくないと思います。自衛隊は十分たよりになる。一生懸命やっている。日本防衛力であります。その点は、菊池先生も一ぺん自衛隊にお越しになっていただいて、戦闘機にでも乗っていただけば、よくおわかりになるだろうと思います。やはり天はみずから助くる者を助くというのであって、みずからを助けもしない者を、ほかの者が助けるはずがないのです。国の存立の基礎は、やはり天はみずから助くる者を助くという基本線を貫いていかなければならない。足りない分は外国提携しよう、そういう原則が正しい姿であると思います。
  11. 菊池義郎

    菊池委員 それから中共が、この間新聞に出たように、ああいった暴慢きわまる共同声明を古井君に押しつけておるのでございますが、日本は、御承知のように、憲法改正しない、核兵器も持たないといったように、総理態度もはっきりしている。こういったようなことを宣明する総理大臣というものは、世界にも珍しい。まるで神仏をこきまぜたような平和主義者でありますが、それにかかわらず、佐藤総理を極度に向こうでもって攻撃している。それは、どういうところから、そういったような考え方中共に出てくるのであるか、それについて、どういうお考えですか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは全く誤解であり、場所によっては曲解であると思います。きょうは、閣議でそういう話も出まして、官房長官の談話が出るはずであります。それで、内閣としては、こういう考えであるという考え方官房長官考え方として打ち出されて鮮明になると思います。
  13. 菊池義郎

    菊池委員 政府は、あの問題について、中共誤解を解く——中共誤解している、曲解している、これくらい認識不足考え方はないと私は思う。中共といわず、ソ連といわず、日本には全国にわたってクモの巣のように完全にスパイ網を張りめぐらしている。彼らは、日本の実情は鏡に映すようにわかっております。日本自衛隊がどういうものか、あるいはまた、その戦闘力がどんなものかはっきりわかっております。総理が、核兵器を持たない、非核三原則を言っている、あるいは憲法改正しないと言っているということも、もうちゃんと知り抜いている。それにもかかわらず、ああいうことを言っているのは、要するに、これは日本に対する言いがかりであって、つまり日本左翼勢力に勢いをつけ、また一面においては、国民政府とを離間して、そうして日本の赤化を早めていこう、そういう謀略であるとわれわれは考えておりますが、政府は、そういうことを考えておらないのかどうか、長官のいい頭でひとつお考えを述べていただきたいと思います。
  14. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 自衛隊は、直接及び間接侵略に対応するように練成しているわけでございまして、日本の周辺及び日本にかかわるいろいろな紛争を考えてみますと、そういう間接侵略のような様相は非常に強く出てくる可能性があると思っております。しかし、われわれは仮想敵国を持っておりません。日本国民的な合意をできるだけ確保しながら、国民の結束を守っていく、そういう方策が一番大事であると思っております。
  15. 菊池義郎

    菊池委員 もし将来米国安保条約をも廃棄しようと言い出した場合、日本はこれをやむなく受けなければならぬ。そうなりますると、他の国と安全保障体制に入るか、あるいはまた独自の力でもって日本を守るかということになるのでありますが、独自の力でもって日本を守る、そういう場合において、およそどのくらいの軍事予算が入り用か、大体の見当をひとつお示し願いたいと思うのです、独自の力でもって日本を守らなければならぬと考えておるならば。
  16. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は、まだそういう計算をしたことはございませんが、日本が水爆を持ったりあるいはICBMまで持つということになると、日本の毎年度の予算の十倍くらい毎年使わなければそういうものはできないのじゃないかと思います。アメリカ国防費が、ことしは少し減ってたしか七百八十億ドルくらいでございますけれども、日本防衛費がいま十五億八千万ドルくらいになりますか、四十五年が。アメリカは七百八十億ドルというのですから、いかに差があるかということがわかります。そのほかの国を見てみましても、イギリスとかフランスあたりが毎年毎年使っているお金が五十億ドルくらいです。それを見ましても、十五億ドルくらいのお金を使っている日本というのは、いかに防衛費を節約して効率的にやっているかということがわかると思います。私は、日本安全保障というものは、総合力でできるものですから、防衛力だけ、武器だけ、武力だけにたよるということは非常に危険である、そういうように考えます。
  17. 菊池義郎

    菊池委員 私ら、もし独自の力で日本を守らなければならぬというならば、防衛予算は少なくとも二十倍から二十五倍くらいにはね上がって、国民の税金もいまの何倍かになると考えておる。これはおそろしい事態であると考えております。したがいまして、安全保障条約は、アメリカが廃棄しようとしても、こっちはどこまでも向こうを説得して、とりすがってでもこれを持続するという態度をとることが必要であろうと思います。したがいまして、アメリカに対してはあらゆる方法をもって持続のために努力を続けることが必要であると考えておるのでございます。  さらに沖繩から核を抜くとか抜かぬとか、沖繩に核があるとかないとか、そういうことは米国軍事秘密保護法によってこれは全然発表されていないのです。日本に対しては核抜きなんということを向こう考えておるかどうかわかりませんが、沖繩が返還された場合に核を抜くものと考えていいかどうか、そういう点はどんなものでしょうか。
  18. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは昨年の佐藤ニクソン共同声明にもはっきりいたしておりますように、返還のときには核抜きにきまっております。
  19. 菊池義郎

    菊池委員 韓国朴大統領は、済州島を提供しても、そうしてアメリカの核を置いて差しつかえないということをこの前提言しております。ところが、米国はその必要はないというのでもって、これを断わっておるのでございますが、これは非常なる卓見であると思うわけです。ところが日本では核を抜け抜けという。たいへんな違いがあるのですね。そういう点について長官はどういうお考えを持っておるか。沖繩から核を抜いたら、アメリカ防衛力を減殺することになり、日本のためにたいへんな防衛の障害になると考えるのでありますが……。
  20. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 沖繩核抜き本土並みがいいと思います。
  21. 菊池義郎

    菊池委員 日本防衛力の足らない点を外交で補うことができるという発言がございますが、私はこれを疑問に思っておるのですよ。外交というものは、どこの国でも、いつの時代においても、軍備というものが背景にあって初めて強力な外交を展開することができるし、しこうしてまたその目的を達することもできるもので、日本のような軍事的に弱小な国家外交でもってその目的を達するということは非常に困難であると思うのですが、そういう点についてどう思いますか。軍事力外交との関係ですね。
  22. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本憲法の命ずるところに従い、平和国家として平和政策をやる国是を持っておる国でございますから、やはり外交を主にして、外交の力によって国際緊張を緩和し、友好親善を深め、また国連をはじめとする国際平和機構の機能の強化に協力していく、そういうような平和的手段によって国際的な平和を維持するという努力をまず第一にやるべきであって、防衛というものは、自分本土防衛についてぎりぎりの線を最後に厳然として守っていくべきものだ、そういうふうに思います。
  23. 菊池義郎

    菊池委員 佐藤総理の言いそうなことを言っておられるのでございますが、日本韓国に対してすらも、終戦以来七十隻の漁船を取られておる。ソビエトにはさらにその倍くらいの漁船をふんだくられておる。そこで漁業交渉も何もうまくいかない。これは要するに日本軍事力が足らないためなんだ。昔は日本のほうでアメリカ漁船を引っぱってきて、検問所でもってぎゅうぎゅう言わせたものだ。それが今度あべこべになっている。いかに軍事力というものが外交背景となるものであるかということは、こういう事実において立証することができると思うのですが、それでも外交手段によって防衛を補足することはできるとお考えになりますか。
  24. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはり中国の先輩が言っておるように、上兵ははかりごとを討つ、一番へたなやつは城を攻める、そう書いてありますが、やはり先哲の言ったことは正しいのじゃないかと思います。
  25. 菊池義郎

    菊池委員 勝ちを千里の外に決するというのは、要するにその国のそれ相応の防衛力があって、戦えば必ず勝つというそういうおどしがあって初めてそのことばが通用するので、弱小国家においてはそのことばは全然通用しないのです。私はそう思うのですが、どうですか。
  26. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 菊池先輩ことばとして拝聴しておきます。
  27. 菊池義郎

    菊池委員 国の防衛国際情勢変化によって変化するもので、ケース・バイ・ケースでもって対応策を講ずるといわれておるのです。ところが、軍備というものは、一朝一夕にできるものではなくて、予算の審議といい、何といい、たいへんな時日を要するものだ。ところが国際情勢というものは急激に変化する場合がある。突発事件が起こる場合がある。そういう場合に対処せんがためにもケース・バイ・ケースでもって軍備を即座に用意するということはなかなか困難なことであろうと思いますが、どうでしょうか。
  28. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は同感でありまして、ふだんからみんなが努力して蓄積しておくということは大事であると思います。
  29. 菊池義郎

    菊池委員 きょうの新聞にも出ておりますが、どうも防衛庁は宣伝にばかりつとめておって、まるで日本の宣伝省のような観を呈しておる。これは私の言うことではない、人の言っておることでありますから、御参考のために申し上げておきますが、今日のように日本の国情が許さない事態におきましては、幾ら防衛力を増強しようとしてもできない状態になっておるのでありますからして、あまり同じような宣伝はなさらぬほうがよかろうと思うのであります。これは私の忠言として申し上げておきます。  さらに、どの国の防衛計画にもすべて仮想敵国というものがあります。仮想敵国のない国は、どこの世界にもありません。一国もありません。長官仮想敵国はないとおっしゃいますが、それは立場上当然なんです、そう言わなければならないのですから。私が長官になってもそのとおり言います。でありまするから、これはごもっともでございますが、この仮想敵国に対応するような防備といたしまして、今日その計画を進められておるかどうか、あるいはまた、その仮想敵国侵略を防ぐことができないにしても、一応の形式を整えておくというような考えでありまするか、そういう点はっきりお願いしたい。
  30. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本本土防衛につきましては、実力をたくわえて、不当に侵略してくるものはこれを撃攘する、そういう方策でわれわれは防衛力を蓄積してまいりたいと思っております。
  31. 菊池義郎

    菊池委員 そうおっしゃるほかしかたがないと思いますが……。自衛隊には正攻法ばかりを教えないで、私はゲリラ戦術を教え込むことが最も必要であると考えております。間接侵略は、これが一番おそろしい。でありますからして、内乱、暴動に備えるがためにはどうしてもゲリラ戦術、すなわちパルチザン戦術をむしろ主として教え込むことが必要であると思うのであるが、この点はどういうお考えですか。
  32. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは間接侵略に対応する一つのお考えと思いますが、そういうお考え参考にしてやるべきであると思います。
  33. 菊池義郎

    菊池委員 私が世界で一番ほめておりまする政治家は、ユーゴスラビアのチトー大統領です。これは実に偉い男で、大戦中十五倍のドイツ軍に取り巻かれてびくともしないで、ゲリラ戦術でもって撃退した。敵のほうからして絶賛されている男なんですね。これはソビエトの圏内にありながらソビエトの言うことも何にも聞かないで、おれにはおれの政策があるということでもって、どしどしと自由世界と取引したりなどしてソビエトをおこらして、それでもフルシチョフはどうにも手出しができなくて、ついに彼の政策を許した。これは世界で一番偉い男であると私は考えておるのです、共産主義者であるけれども。このゲリラ戦術こそほんとうに正攻法よりも十倍も二十倍も力を発揮することができる戦術であると私は考えておる。特に、外国と違って日本は四面楚歌の中にある国でありまするからして、そういう点を重視して、参考にするというだけでなく、直ちにこれを実施すべきであると考えておりますが、どうでしょう。
  34. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 間接侵略というものを重要視するということは私は全く同感でございまして、大いに研さんしていきたいと思っております。
  35. 菊池義郎

    菊池委員 たとえば過般の赤軍の日航機奪取事件につきましても、やはりゲリラ戦術の研究が足らぬ。共産主義者の心理すらも理解してない。そのために日本はたいへんな失態を演じております。あの飛行機は福岡の板付で断然これをとめて、そうして取り押えるべきであった。彼らは自爆する、自爆するといっておどしたのでありますが、自爆すれば自分たちが死んでしまう。ところが、共産主義者が自殺するなどということはこんりんざい絶対あり得ないことです。それを知らないのですね、日本政府は。彼らは共産主義社会の実現を見るまでは、自分みずから自分の命を絶つという、そういう低能児は一人もおりません。土方、職人のような単純な頭じゃないのです。それにだまされて、日本の大臣は朝鮮まで引きずられていく、これは非常な醜態で、日本の警察や自衛隊の無能、無力を全世界に暴露した。そうして日本の威信を失墜したことはこれよりはなはだしいはないと思うのでありますが、自衛隊の飛行機のごときは途中まで見送って、まるで飛行機どろぼうを国賓待遇している。そういったような醜態を演じている。ところが、あとでもって調べたら、われわれの予想どおり、あの爆弾は擬装爆弾であり、短刀は刃どめをしてあった。それからピストルも短剣もみなおもちゃであったということがわかっておる。これは最初から福岡に当然とめるものとわれわれは考えておった。あれをとめるには、飛行機の一部をぶちこわすなり、あるいは厳然たる命令を下して、乗客をおろすまで断じてこれを飛ばせないということをはっきりさせなければなりません。警察の仕事でありますけれども、自衛隊といえども警察の仕事を手伝って悪いという法規はどこにもない。自衛隊のごときは率先してこういうときに活動すべきであるのに、何であのときに長官は拱手傍観しておったか。
  36. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ああいう場合には、運輸大臣や公安委員長が出ていくべきものであって、われわれが表に出ることは適当でない。
  37. 菊池義郎

    菊池委員 運輸相や公安委員長がまごまごする場合においては、何も自衛隊が出動したからといって悪いことはない。出動して悪いという法規はないのでありますから、明敏な頭脳を備えた長官としては当然そういうときに彼らを叱咤鞭撻するなり、運輸省を叱咤鞭撻するなり、あるいは公安委員長を鞭撻するなり、それで言うことを聞かなければ、自分みずから出て、そうしてこれを押えるべきであると考える。そのぐらいの手腕もなければ気魄もないことでもって大臣がつとまるかと私は考えている。
  38. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 自衛隊はやはり節制を主として、運用については慎重を期しておらなければならないと思います。そういうことをやることが非常に勇気のあることでもあると思います。
  39. 菊池義郎

    菊池委員 それから、米軍の基地を日米共同で使う、特に自衛隊が主となってこれを管理するというようなこともきょうの新聞に出ておりますが、米軍の基地を共同で使うということ、これはなかなか複雑きわまることで、そう簡単にはいかないと思うのでございますが、どうでしょうか。
  40. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先方とよく話し合って計画を調整してやれば、むずかしいこともございますけれども、できないことではないと思います。
  41. 菊池義郎

    菊池委員 いままでそういう下話をしたことがありますか。
  42. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いままでやった例では、長浜の射撃場、東富士の演習場、そういうものは日本に返してもらって、自衛隊が管理して、それをアメリカに一時的に貸したりしているのです。そういう先例もございますから、向こうと話し合えば、必ずしも不可能ではないと思います。
  43. 菊池義郎

    菊池委員 内乱、暴動に備えるために、昔の戒厳令にかわるような立法措置が必要であるということをわれわれは痛感しておりますが、長官はこれについてどういうお考えですか。
  44. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 目下のところ、考えておりません。
  45. 菊池義郎

    菊池委員 防衛大学では、戦時国際法を教えておりますか。
  46. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 教えていると思います。
  47. 菊池義郎

    菊池委員 ヘーグの陸戦法規、ジェネバの海戦法規、いまはもうこれは前世紀の遺物となって、ほとんど通用しないのですね。今度の大戦においても、もはや戦時国際法なんというものは全然顧みておられません。でありますから、こういう無用な学問を自衛隊に教えるよりも、それを科学技術の研究に振り向けたほうがよくはないかと思うのですが、どうでしょうか。
  48. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本は、やはり平和国家で、国際協調主義でいくのでありますから、国際法を教えることは非常に大事であると思います。
  49. 菊池義郎

    菊池委員 そういうことは、あたかもキリストの山上の垂訓みたいなもので、人もしなんじの右ほおを打つならば、さらに左のほおを打たせよ、なんじの上着をはぐならば、さらに下着もこばむなかれと同じでありまして、向こうが無法でくるのに、こっちが礼儀正しくそれを守るなんということは、これは自滅を招くゆえんであると思いますが、それでもやはり戦時国際法を順奉するつもりでありますか。
  50. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 戦時国際法には、そういうことは書いてないと思います。
  51. 菊池義郎

    菊池委員 たとえ話であります。  それから、自衛隊の応募者が少ない。また自衛隊防衛大学の卒業生が直ちにほかに就職してしまう。それは国家の非常な損害です。防衛大学を利用して科学技術を研究して、そして会社なりどこかなりへ行って、それを応用して月給をもらう。これは非常にずるい考え方だ、非国民考え方であります。それをやめさせるために、どうでしょうか、卒業生に一定の期間防衛庁に就職するという義務を課する法規をつくってはどうでしょうか。
  52. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういうことは、法的に可能であるかどうか。かりに可能であるとしても、それが適当であるかどうか、これは検討してみる必要があると思います。
  53. 菊池義郎

    菊池委員 われわれの青年時代に師範学校というものがあって、ここでは卒業生を一定の期間学校に就職させる、教べんをとらせるということを義務づけてあります。そういう法規があった。それにならって、防衛大学の卒業生にもそれを適用するように法規をつくるべきであると私は思う。それでなければ、何のための教育かさっぱりわからぬようになってしまう。
  54. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ただいま申し上げたとおりでございます。
  55. 菊池義郎

    菊池委員 それから、自衛隊には婦人の隊員もいるというが、これはほんとうに入っていますか。
  56. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 入っております。
  57. 菊池義郎

    菊池委員 これは何ですか。マネキンガールのかわりに入った、そういうのか、どういう意味なんですか。
  58. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いまの憲法のもとにおいては、男女同権でございまして、女性も非常に国家のために役立っておるわけです。日本がこれだけ産業的に発展するには、女性の力をかりることなくしてできなかったと私は思います。自衛隊の内部におきましても、女性でできる仕事は多々ありまして、七〇年代にかけて、日本の人口層や労働力のことを考えていきますと、女性の隊員も大いに募集していきたいと考えております。
  59. 菊池義郎

    菊池委員 女性を入れますというと、どうも自衛隊というところが一体どういうところか、そんな軟弱きわまる連中の集まりだというような印象を与えて、かえって勇気ある青年は自衛隊に入りかねるような場合もないとは限らぬのであります。これは大いに考えなければならぬと思います。それはもちろん婦人にできるような職場もありましょうが、そういうことは男にもできるのでありますから、わざわざ女を入れなければならぬという必要はないと思うのですが、いかがでしょうか。
  60. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 女性というものに対する見方が私と先生と違うと思うのであります。先生は男女七歳にして席を同じゅうせずという明治の教育をお受けになって、そのお考えがまだ脈々として流れているのではないかと私は思います。しかし、今日は新憲法のもとに男女平等でありまして、学校も男女共学であり、男女共学であるがゆえに変なところというものはそうないです。やはり普通の人間として女の子も男の子もつき合うようになりまして、悪いところも多少あるけれども、いいところもうんとあります。そういう点で男と女が一緒にいるということを変に思うのは、やっぱり明治の人の偏見じゃないかと私は思います。やっぱり人間ですから、すなおに育てたほうがいいので、また、選挙事務所にいたしましても、女性がいたほうがうんと男も集まって票も集まる、そういうこともございます。別に自衛隊と選挙事務所を同じにするわけではありませんが、やはり自然な姿ということが一番大事じゃないかと私は思います。
  61. 菊池義郎

    菊池委員 私はそれに百歳に近い老齢でありますが、女を愛することにおいては人後に落ちないつもりです。しかし、どうも長官の最後の話を聞くというと、結局これはマネキンの役割りを果たさせる、そういうようにしか考えられないのです。ひとつお考えを願いたいと思います。  それから防衛長官に、いつもながらしろうとばかりこれまで長官になりましたが、幸いに今度の長官は軍隊出身の方でありまするから、最も適任であると考えておる次第でありますが、ほんとうに鉄砲の撃ち方も知らない連中がいつも防衛長官になる。これはほんとうに見苦しい。自衛隊のためにもこれははなはだ向かないと思うのであります。自衛隊をむしろ冒涜するものであると私は考えております。  それから長官の服装ですね。いつもながらの自衛隊の観閲のときにせびろでもって回る。あれは新聞に出る写真を見ても、国民に対する感じがまことによろしくない。でありまするから、長官というものはすべからく自衛隊と同じに制服をつくって、制服でもって隊員を検閲するということが必要であろうと思うのですね。どうか長官は制服をつくってもらいたい。われわれはそれを希望にたえない。これは長官がせびろでもって自衛隊を検閲するということは、あたかも工場の主人がどてらがけでもって職場を回っておるのと同じようなもので、はなはだ不謹慎きわまると考える。自衛隊の士気を高揚するためにも、これは制服をつくって、そうして検閲する考えはないか、どうでしょうか。
  62. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は非常に大事なポイントでありまして、先生の考えと私は違うのであります。やはり民主主義国家においては、軍というものは文民統制のもとになければならない。文民とは国民代表の意味であります。つまり、国民代表の機関である国会の管理下に軍というものはなければならない。そういう意味で政治家が軍治を掌握すべきであります。政治家は元来がせびろであります。ヒトラーやムソリーニと違うのであります。そういう意味において、チャーチルやルーズベルトがせびろで閲兵したりなにかするということは、非常に意味のあることだと私は思います。ただ長官が現場へ行って作業するために、便益のために作業服を着るということは、これはけっこうであります。しかし、ふだん長官は文民として、政治家としての存在で厳然としておるべきでありまして、軍人まがいのかっこうごときは断じてするべきではない、そう思います。
  63. 菊池義郎

    菊池委員 自衛隊は武官でなくて文官です。文官でありながらやっぱり制服を着ておるのですから、長官が制服を着たからといって、何も武装、武人の服装をしたということにはならないのですね。ていさいを整えるためにも、それは必要であると思います。ことに中曽根長官は軍人出身であり、眉目秀麗にして、制服を着たらそれこそ似合う。あたかも平家の公達をいまに見るようなすばらしいいでたちになりますから、これをひとつ実行していただきたい。文官であるからといって、制服を着たからといって、何も軍人のまねをすることにはならないのでありますから、こういう点をよく考えてもらいたい。士気を高揚せんがためにそれは必要であると思う。形式は大事です。
  64. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は根本的に考えが違うのを遺憾に思います。
  65. 菊池義郎

    菊池委員 これで終わります。
  66. 天野公義

    天野委員長 伊藤惣助丸君。
  67. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 最近の報道によりますと、防衛庁は今後十年間の長期戦略見積もりに基づく長期防衛構想の骨子を固めたように報ぜられております。私は国民の一人として、平和憲法下におけるわが国の多面的な安全保障政策について、国民のすべてが参画しなければ実効はあげられない、なかんずく国土防衛に関しては、まず何よりもその国土防衛についての国民合意をつくり上げることが先決である、このように考えます。そのためには政府が現在とっている政策の実態、そして今後とろうとしている構想を率直に国民に知らしめることが必要であります。もちろん国家の最高機密事項は別といたしましても、国民の判断の材料となる真実を積極的に国民の前に明らかにしていただきたいと思います。  従来政府は、一次防、二次防、三次防というような既成事実をつくって国民に押しつけ、それにあわせて憲法解釈を拡大してきた、このように感じられる面があります。そうではなくて、事実をつくる前に国民に真実を語り、その上に政策を進める姿勢でなければならないと思います。  きょうはそういった意味で、中曽根長官国民に対して防衛問題のありのままの姿を国民に知ってもらおう、そういう観点に立たれまして、以下私の質問に答えていただきたい。今日までの質疑応答とダブる面も多少あるかと思いますが、できるだけ国民に対して答弁するように、懇切なる答弁をお願いしたいと思います。  そこでまず第一に、先ほど申し上げました、今後十年間の長期戦略見積もりに基づくその長期防衛構想について、簡単に伺いたいと思います。
  68. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 今後十年間の戦略見積もりというようなものはまだできておりません。しかし私は、自民党の安全保障調査会に行きまして、私個人の党員としての心組みを、党員である自民党の皆さんに申し上げた文書がございます。これはお手元に差し上げるように指示しておきましたが、ごらんになりましたですか、まだ参りませんか。
  69. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 まだ見ていません。
  70. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 なければ至急お手元に差し上げるように、この間も命じておきましたから。  ああいうような基本的考え方をどういうふうに国策あるいは官庁の仕事として形成していくか、客観情勢と調整させていくかというようなことで、実はやってまいりたいと思うのです。  いままで国会でいろいろ申し上げましたことの中で、やはり大事なことは、これからは軍事と政治が結合するという情勢が出てくるということ、それから日本の場合は間接戦略が非常に大事であるということ、それから、やはりシビリアンコントロールというものを徹底させる必要がある。それにはやはり国会に防衛に関する委員会というようなものを、国権の最高機関でつくっていただく必要がある。それから日本固有の防衛体系、防衛戦略というものをつくって、アメリカの体系と調整する。やはり日本固有のものがまず先行しなければならない、そういう考え方、あるいは自衛隊というものの中において人間尊重をもっと徹底するというようなこと、あるいは自衛隊国民の皆さんにもっとよく認識していただくために積極的に努力し、国民に支持される自衛隊としてさらに数歩前進させていく。それからやはり総合国策の中の一つとして防衛はあり得るので、特に外交機能を重要視して外交と一体になって防衛戦略を進めていく、そういうような考え方を実現していきたいと思うわけでございます。なお、非核三原則を維持していくということも申し上げたとおりでございます。
  71. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いままで長官発言は、断片的にそれぞれの委員会また本会議等において聞いております。やはりそういった長期防衛構想をつくるにあたって大事なことは、現在の国際情勢の動向分析をどのような分析をしているかということが非常に大事だと思うわけです。特にベトナム以後の新しいアジア政策をさぐるニクソン大統領は、昨年八月ですか、グアム・ドクトリンを発表をしまして、また本年になってアメリカの国防長官なども七〇年代の外交政策、平和のための戦略、こういったことを取り上げております。またこのグアム・ドクトリンあるいはまたニクソン・ドクトリンまたさきに実行されましたあのフォーカス・レチナ作戦あるいはまた第七艦隊における台湾海峡のパトロールの停止、こういったアメリカの極東戦略の大きな変化が見られるわけでありますが、これをどのように長官は分析なさっているか。さらにわが国をめぐる極東の軍事情勢の動向について長官はどのように分析なされているか。私たちはいままで台湾や朝鮮半島についての分析は聞いたことがございますが、東南アジア、カンボジアをめぐる東南アジア周辺の動向についての分析はまだ伺ったことはないわけであります。しかし、こういったことも含めて、どのように分析しているか、その点を伺いたいと思います。
  72. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 軍事的双極性と政治的多極性という現象は出てきておると思います。それで軍事的双極性の中に中国が核開発、いわゆるICBMの開発をやって割り込もうとして努力しておる情勢であると思います。それからNATOにしても、ワルシャワ体系にしても、軍事同盟であると同時に、あれは政治同盟的な性格が最近はかなり強く出ておる。日本安全保障条約のようなものもある意味においてはそういう政治提携的色彩がかなり強い要素としてあると私は思います。現に経済条項なんかもあそこに入っておるのであって、あれは軍事同盟純一として見ているという考えは事態を間違ってとらえておると思う。核というものが、こういうふうに偉大な威力を発揮してまいりますと、わりあいにコミットメントの力というものが非常に出てきている。したがって、平常事態においては、そういう政治同盟的な形に各国の安全保障体系というものは性格を増してきつつあるという情勢は否定できないと私は思います。そういうこととうらはらになりまして、やはり各国の自主防衛努力というものは、いままで以上に世界的に出てくるだろうと思います。日本も、ある意味においては、そういう世界的傾向と一致して、自主防衛努力をやっていくのだろうと思います。そして、そういう時代においては、直接的軍事侵略よりも、間接侵略とか、間接戦略というような非常に総合性を持った戦略が必要である、日本の場合も同様である、そういうように考えます。
  73. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 国際情勢の分析をもう少し、軍事面について、あるいはまた将来の動向について、伺いたいわけですが、それを補足答弁してもらいたいと思います。  きょうはおもに長官に基本的な問題そしてまた基本的な姿勢、構想、こういったことについて伺っていきたいと思っているわけでありますが、次に、脅威の実態と安全保障政策について簡単に伺いたいわけです。  まあ先ほどのような答弁、そしてまた国際情勢というものを判断されていると伺ったわけですが、そういった国際情勢の分析に立たれて、長官は、わが国の安全保障政策を立案するための前提条件となるわが国の脅威は一体どんなものと考えているか、この点から伺いたいと思います。
  74. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 前にも申し上げましたように、具体的、顕在的脅威というものは、目下のところはそうあると思いません。しかし、脅威というものは、いまや世界的スケールで一義的に存在しておると思います。したがって、ベルリンのこともわれわれは無関心ではあり得ませんし、またインド洋や中近東のことも、国際情勢の判断としては無関心ではあり得ない、そういうような世界的なスケールにおける国際情勢の動きというようなもの、戦争の勃発の可能性あるいは平和の持続の可能性というものは各国が共同して分担し、責任をしょっているような事態になってまいっておりまして、こういう人工衛星が飛ぶような時代は、昔と非常に変わってきていると思います。それと同時に、たとえばこの間、国籍不明の船が日本海沿岸に近づいて逃亡したとか、ああいうようなゲリラ的な具体的な小さな脅威というものも実際はわれわれが見ておるところでもあるのです。そういうようなすべてのことを考えながら、国際情勢全般を考えつつ、できるだけ軍事費を節約して国民経済を安定させ、発展させるという方向考えを持ちながら、ある程度の基幹防衛力を整備していく。それは一挙にできるものでなくして、時間をかけて徐々に蓄積しながら普遍性のある整備に持っていく、そういう考え方がいいんではないかと思います。
  75. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 わが国に対する侵略は、当面どのような形の侵略が最も可能性があるか、これを伺います。
  76. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 具体的侵略可能性というものは、目下のところはない。顕在的にはない。しかし、間接戦略、ボッフルの言うような間接戦略という面から見て、政治、軍事、混在したさまざまなことは起こり得るし、あるいは内在的にはあるのかもしれません。
  77. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そういった脅威または侵略に対して、わが国はいかなる広義の安全保障をとるべきだと考えるかということが問題でありますが、いままでの政府の国防の基本方針や三次防の大綱の全部を見ても、防衛より広い総合的な安全保障の立場に立ちながら、実際の施策の上ではそれが生かされていない、具体化されているようにはとても見受けられないわけであります。端的に言って、政府には軍事力中心の防衛政策のみが先行して、そして非軍事面の安全保障政策に欠けるように思われるのでありますが、政府のとろうとしている安全保障政策の全体の姿がどうであり、その中の対外的、国内的軍事力はどうであるかという中身の構成と関連性について伺いたいと思います。
  78. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は見解を異にいたしておりまして、日本防衛費というものはGNPの〇・八%弱の情勢で、英、仏その他が五%から七%ぐらい、アメリカソ連中共は一〇%程度になっているのと比べると雲泥の差でありまして、そのために防衛費を節約して、民生安定、経済発展等のために使われているということは、目の前にわれわれが見ているとおりであります。また、自衛隊の存在、運用にいたしましても、非常に節制と節度を守りながらやらしているということも、ほかの国には例を見ないことでもあります。それらはみんな国の結束が第一である、日本国民の平和思想に合うようなコンセンサスをつくりながらやっていこうという基本的観念に出ておるのでありまして、私はそういう点から見れば、ほかの国以上にまれに見るくらいに日本はコンセンサスを大事にしてやっておる国ではないか、そういうふうに思います。
  79. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私はここでふしぎに思うことは、脅威に対し、また侵略あるいはまた仮想敵国ということでございますが、要するに仮想敵国はない、脅威についても非常にばくとして、聞いておってもわからないわけでありますけれども、そういったことに対して国の防衛費というものを、ただ単にGNPだけで、また完全な軍隊を持つ国との比較において自衛力を整備するという考え方について、私は疑問を持っております。たとえばイギリスにしても、アメリカにしても、あるいはまた共産圏諸国にしても、想定する脅威あるいはまた侵略に対しては、具体的な一つの観点から、それに対する戦略、戦術の構想、また政策というものがとられ、そしてその裏づけとして予算が組まれているわけであります。わが国の防衛はただ単に外国との比較、GNPにおいてのみ少ないではないかという形での防衛費の捻出ということは、私は非常にその点が納得がいかない。確かに安全保障政策については、公明党と自民党では違うことはもちろんであります。しかしながら、だれが聞いても、GNPで防衛費の額をきめ、そしてそれに見合った一つの防衛力の整備ということについては、なかなか納得がいかないわけであります。したがって、この安全保障政策の中できわめて大事なことは、いままでのような軍事力偏重によらないで、総合的な安全保障政策を推進すべきである。そしてまたそういった中で考えられることは、文化的または経済的、そして国内体制の調整、そういった問題がきわめて大事ではないか。また、そういうことも国防の基本方針にも書いているわけであります。しかしながら、現実の問題としては、ことばにはあるけれども、そういったことが具体的な一つの政策としてとられていない。その点を私は指摘するわけであります。その点について、今後もそのとおりいくのか。また広義にあたる安全保障政策を遂行するには、具体的に非軍事面においてはどのようなことを考えておるのか、その点について伺いたいと思います。
  80. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本は非核三原則を持っておりますし、海外派兵も徴兵も行なわず、こういうことを自分政府自分を縛っている国は世界じゅうどこにもないだろうと私は思います。それだけでもほかの国から見れば驚くべきことをやっておる新しい国家ではないかと評価されていいだろうと私は思います。そういう非常に大きい大事なところに目をおつけいただけば、日本がほかの国とのバランスを見て、いかに平和政策を実行しているか、そして民生安定やほかのところにお金を使っているかということが御了解いただけるだろうと思うのです。私はそういう大局的見地に立って、世界の国のレベルと日本のとっておるレベルをよくお考えくださるように、国民の皆さんも御理解いただくようにお願いいたしたいと思います。
  81. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は長官のいまの話を伺いまして、いろいろ感ずることがあります。それは、欧州における安全保障日本のような大海の小島のような、いわゆる島国の中での安全保障、そしてまた防衛費というものの比率は比較にはならぬ、こう私は思っております。  それはそれといたしまして、先ほど来いろいろ長官がお話しなさいましたけれども、いずれにしても、予想される侵略に対処して防衛力の整備計画はある、このように思うわけでありますが、現在の自衛隊はそういった侵略に対してどの程度の能力を持っているのか、それを伺いたいと思います。また、七〇年代あるいは四次防段階の前期においてどれだけの能力を最小限必要と考えるか、それも伺いたいと思います。
  82. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は防衛局長をして答弁せしめます。
  83. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 防衛力がどの程度かということを、数その他で具体的にお答えすることはきわめて困難なことであります。本来相対的なものでございますから、具体的に申し上げることはむずかしいわけで、ごく大まかに申し上げるしかないわけでございますけれども、陸上自衛隊は、御承知のように十八万体制という体制がほぼ概成したわけでございます。このことから、数だけでいいますと、有事直ちに友好国の支援がなくても、かなりの防衛力を発揮できる程度の数に至ったのではないかという感じを持っております。しかし、これにもまた質的な問題が残っております。  それから海上自衛隊について申し上げますと、陸に比較しますとだいぶおくれておりまして、三次防末現在で考えてみましても、主要な海峡とか港湾の防備あるいは沿岸等の哨戒あるいは船舶の護衛、そういった本来海上自衛隊が当然第一義的に担当しなければならないような作戦機能といいますか、そういう機能につきまして一応最小単位の部隊ができるという程度でございます。  また、空のほうの航空自衛隊について申し上げますと、防空力につきましては、104を中心といたします要撃戦闘機部隊あるいはナイキ、ホーク等のミサイル部隊等の基盤が一応整うことになりました。またバッジ等も一応整いました。有事のことを考えてみますと、米軍に期待する敵の基地攻撃ということと組み合わして考えますと、わが国の防空というものが二次防に比較しますと相当な程度に達したものというふうに考えられます。  三次防末で申し上げますと、非常に抽象的な申し上げ方になりましたけれども、以上のようなことになろうかと思います。  そこで、今後の問題につきましては、陸上自衛隊につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、数におきましてはほぼ十八万体制前後で維持していってよかろうかという感じを持っております。しかし質的な面では、たとえば機動力とか火力とか、そういった戦闘能力を向上させる必要がある、そういう方面に増強の重点を持っていきたいというふうに感じます。  また海上自衛隊におきましては、先ほどちょっと申し上げましたが、平素の戦術の演練ができるという程度の部隊がやっとでき上がりました程度でございますので、有事のことを考えますと、陸に比較しますと、まだまだ多く米軍に期待しなければならぬという状況でございますので、自主防衛の見地からも、数も質も相当増強いたしたいという感じを持っております。  それから空につきましては、防空力の質を増強さすということも当然でございますし、その中心になりますファントム戦闘機をおきめ願いましたので、相当な増強が期待されるわけでありますが、さらに陸上や海上の空からの支援という能力が現在まだ相当弱いので、その辺を増強する方向に持っていきたいというふうな考え方で作業を進めている、こういう状況でございます。
  84. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 長官に伺いたいのですが、防衛力の整備ですけれども、防衛力整備の量と質の問題を伺ったのですが、財政面のおよそのめどを伺いたいわけです。四次防の防衛費の規模については、計画策定当初からおおよそのめどを与えるのか、あるいはまた下からの計画の積み上げの結果を見た上で、ほかの経費との関係と見合わせながら押えるという方法をとろうとするのか、また長官はどの程度で押えるべきと考えておるのか、その点について。
  85. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まず基本構想を目下練っておる最中でございまして、具体的に数量の段階にまではまだ入っておらないのでございます。しかし、基本的な考え方としては、やはり社会保障費とか教育研究費とのバランスもよく考え、また平時におきましては国民生活の安定やあるいは経済の発展に支障を来たさないような配慮をしつつ整備していかなければならぬ、そう思いまして、目下いろいろ研究中でございます。
  86. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 要するに、おおよそのめどはつくってからということでございますね。——そうしますと、規模という面でございますが、四次防はGNPの何%くらいを予想しておりますか。
  87. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点も目下検討中で、まだ確定しておりません。
  88. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 長官は、四次防は三次防の延長の部分と、新しい要素をつけ加える部分とがある。いままでのものは古い戦略思想の痕跡が残っている。たとえば陸の師団の考え方は、満州等の平原作戦の痕跡がある。島国である本土防衛にはもっと機動力を重視しなければならない。海では、艦隊渡洋決戦の思想が根強かったが、日本の列島防衛には、小型ロケット艇とか海峡監視の能力など、日本独自のものが必要である。こういった趣旨のことを述べられましたが、現在の防衛力の問題点はどのようなものか、問題点は何か、また今後整備すべき防衛力の重点は何に置くべきか、できれば陸海空それぞれについて伺いたいのです。
  89. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 一番の基本は、国民に支持される防衛力となることであり、第二番目には、日本固有の防衛戦略体系をはっきりつくって、アメリカの政策とこれを調整吻合させるということである。日本固有の、独自の戦略体系を確立することが非常に大事なポイントで、それと同時に、友好国であるアメリカとの関係において、ばく然たる期待とか無原副的依存をやめて、やはり彼我の分担、責任をはっきりさせるということが非常に大事であります。このときに指揮系統を明確にするということも、政治としては非常に大事なポイントであると思います。  それから陸海空の整備につきましては、これは非常に技術的な情勢も考えなければなりませんので、先ほど御指摘になりましたことは私の考えにあることであります。しかしこれらはいずれ積み上げ作業をやりながら、この中身を点検して確定してまいりたいと思っていることです。
  90. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 先ほど核については非核三原則を守る、こうおっしゃいましたが、かつて長官は、日本は中級非核国の対核戦略をつくらねばならない、このようにも発言したことがございます。長官の言う中級非核国の対核戦略構想というものについて伺いたいと思います。
  91. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 核問題というのは人類全般の運命を決するような大きな問題でありまして、一日本国のみならず全世界の諸民族が関心を持ってこの問題に対処しなければならぬ問題でもあります。でありますから、国際連合を中心にする動きあるいは十八カ国軍縮委員会を中心にする動き、あるいはいま米ソ間でやっておる戦略核兵器制限交渉、いわゆるSALTの動向、あるいは中共やフランスの動向、そういうあらゆる問題をよく掌握しながら、できるだけ核軍縮、世界的核統制の方向に世論をリードしながら、核の惨害を人類に及ばさないように努力していくということが大事でありまして、これは外交の非常に大きな分担すべき分野でもあると思うのです。そういうものを含めまして、日本のように核を持たないということをきめている国は、外交その他あらゆるものを含めた戦略があり得ると思うのです。国際情勢を利用し、あるいは各国の世論を誘発し、あるいは決議を出すとかあるいは外国に対して使いを出すとか、いろいろなものが考えられます。そういうものまで含めた大きな対核戦略というものを持って、核の惨害が世界的にも自国にも及ばないような総合戦略をつくっていく、そういうことをひとつ考えていきたい。それはまだどの国にも確立しておりません。確立しておりませんだけにまた重要な問題で、確立していかねばならぬ問題であるだろうと思っております。
  92. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ここで伺いたいのですが、確かに日本は非核三原則を守り、核を持たない。しかし外交には軍事力経済力というものが背景になければ非常に弱いというのが国際的な常識となっておりますが、私は日本のこの国情を見たときに、現在すでに「おおすみ」などという人工衛星が上がったり、また原子力発電所というものが相当数つくられておる。そして原子力発電所の運転によって、プルトニウムというような原爆あるいは熱核兵器をつくるものが製造されておる。言うならば、現在日本は核を持たなくても、人工衛星を上げたそのミサイルの性能、さらに何かがあればいつでもプルトニウム等によって一つの熱核武器をつくることができるんだというような、潜在的な核保有国というような形で、非核三原則を守りながら、核先進国と同等に今後外交面でもつき合えるのじゃないか、こう思うのですが、それについて長官どう思いますか。
  93. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本が近代的文明国家及び工業国家として成長していくためには、ウラニウムの平和利用ということはもう不可欠でございまして、その意味において原子力発電、アイソトープ利用あるいは核動力の平和利用というようなことは、もうどしどし推進していかなければ、文明におくれると思うのです。しかしこれは両刃の剣みたいなもので、これを悪く使うと武器に転化する危険がある。その点は厳重に監視し規制しつつ平和利用の面を大いに増大させていく、こういう政策が正しいことであると思います。
  94. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 外交的には、核潜在保有国としての日本のそういった立場で、強力な外交が展開できると思いますか。
  95. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは核というものを潜在的に持てるとか持てないということよりも、工業国家として非常に大きな経済力背景にしつつ外交を行なうということが、非常に日本としては大きく考えられるところではないかと思うのです。
  96. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 長官はわが国の防衛について、ウサギのような耳を持って、またハリネズミのような国にする、こう言ったことがありますが、私が特にきょう伺いたいことは、情報戦略ということです。現在の日米間の情報収集機構と機能はどうなっているのか、その点をまず伺いたい。また日本独自の情報収集を今後どのように具体的に進めていこうとするのか。将来人工衛星とか通信衛星を通じて収集するという計画を持つか、あるいは考えているか。ただ単に防衛アタッシュの増強とか、部内の情報分析の機能強化だけでは、私は不十分であると考えます。あるいはまたアメリカのCIAのような機構を考えているかいないか。具体的に情報収集の機構と機能についてどのように強化されるか、その点伺いたいと思います。
  97. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 アメリカのCIAのようなものは全然考えておりません。  それからこの間の「よど号」の事件でも申し上げましたが、日本日米安保条約を結んで、情報面においてもアメリカ日本は相互交換をし、協力し合っておるわけでございます。しかしやはり自主的情報を持たないということは、自主防衛の上で非常に大きな欠陥で、もし自主防衛で自主的情報を持たない場合には、一方的に相手方の情報に依存してしまうということになれば、そちらに流されてしまう危険性があるわけであります。事前協議というようなことを考えると、自主情報を持っておるということは非常に重要なファクターになってきておるのです。  ですから、私は着任以来、そういう観点に立って情報機能を強化しよう、そう考えておるのであります。しかしこれは一つはやはり在外武官等の情報機能の面において、たとえば在外武官の地位が非常に低かったりあるいは在外公館にあってほかの外交官と比べて肩身の狭い思いや、予算が足りなかったり、ろくな機能もないというような情勢に置かれておる。そういう部面を直さなければ、せっかく行った意味がないということもございますし、あるいは部内におきましても情報系統というものの権威、権限と申しますか、あるいはそういう地位というものが非常に低いようではいい情報将校が生まれてこないのです。パイロットがおり、整備関係がおり、あるいは大砲屋がおると同じように、情報量というものが育ってこなければ、いい情報分析が生まれてこないのです。そういう意味において、やはり部内において、防衛庁の政策としてこれを恒久的に確立してやらなければ、いい人材が集まらない。そういうポイントを考えまして機能を強化していこうと思っておるわけです。いま部内においていろいろ検討しておりますけれども、やはり一番大事なことは、総合性と分析力をつけるということだと思うのです。そういう面において力を入れていきたいと思います。  いままで情報部面を強化するなんと言うとすぐ誤解されるものだから、そんなことを言うのはいかぬ、そういうことをくろうとがよく言うんです。しかし私はそういう態度をとらないので、堂々と皆さんの前に言って、足りないものは足りない、つけ加うべきものはつけ加うべきである、国民に知らせて、それで反対があっていかぬというならこれはやめますけれども、やはり知ってもらって協力して、その国民的基盤ができた上で堂々とやるというふうに私は持っていきたいと思って、あえてそれを言っておるわけであります。しかし、何と申しますか、外国がよくやるような謀略みたいなものとか、品性の悪いことをやろうと思っておりません。
  98. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 四次防ではどのような新しい情報収集に対する考えがございますか。それから人工衛星による偵察衛星とか、あるいは通信衛星、こういったことを通して収集する、そういう考えがございますか。
  99. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう軍事利用の計画はありません。
  100. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 四次防ではたしか軍事偵察機、偵察機というよりも情報収集機というものの構想があるように伺っております。夏ごろに調査団を出すというふうに聞いておりますが、その点について確認しておきたいと思います。
  101. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 四次防につきましてはまだ作業中でございますけれども、いまお尋ねの航空機につきましては、レーダー搭載の早期警戒機のことかと存じますが、それでございましたら、ことしじゅうに調査のために必要な人間を海外に出したいという予定でございます。このレーダー搭載の早期警戒機といいますのは、レーダーの区域を、特に低空の区域をカバーするという機能の航空機でございます。
  102. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 国防の基本方針について伺いたいのですが、現在の国防の基本方針はいろいろ述べられておりますが、防衛庁長官は、新しい防衛計画を策定する、そして国防の基本方針を再検討したい、その際いわゆる自主防衛原則参考にしたいという趣旨を述べておりますが、その中でいろいろこうありますけれども、この現行の国防の基本方針を全文を通じて大体どのように書き改める考えであるのか。一つは長官考えといいますか、国防の理想的あり方というようなことを考えているのではないかと思うのですが、その点について伺いたいと思います。
  103. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 目下いろいろ研究中でございまして、まだ発表する段階に至っておりません。ただ、国防という概念よりもっと広い安全保障というような考え方をもう少し付加してやったらいいのではないかという考えを持っております。
  104. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この国防の基本方針というのは、一つには「国際連合の活動を支持し、国際間の協調をはかり、世界平和の、実現を期する。」また二番目には「民生を安定し、愛国心を高揚し、国家の安全を保障するに必要な基盤を確立する。」三に「国力、国情に応じ、自衛のため必要な限度において効率的な防衛力を漸進的に整備する。」また四番目には「外部からの侵略に対しては、将来国際連合が有効にこれを阻止する機能を果し得るに至るまでは、米国との安全保障体制を基調としてこれに対処する。」こういうふうに出ているわけでありますが、もうすでに防衛庁長官は、この基本方針から離れて、あるいはまたこういった基本方針のワクを越えて何回か発言をしておるわけであります。たとえば四番目にあります「安全保障体制を基調として」ということを長官は補完としてと、こうおっしゃっておりますし、また「国力、国情に応じ」てという点についても長官独自の考えがあるわけでございます。そういったことから順次この点について伺いたいと思うわけでございます。  そこで、特にこの安保体制の基調から補完という面にするというようなこの移り方ですね、そういったことについてどういう考えなのか。さらにまた三番目の「漸進的に」ということですが、これは最近は漸進的じゃなくて、非常に急速的に整備されつつあるのじゃないか、こう思うわけでありますが、その点について簡単に……。
  105. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 安全保障条約を基調としてという点は、これは検討すべきポイントであると思います。やはり自主防衛を主にし、安全保障条約で補完するということは総理大臣の施政方針演説にも言っているところでございまして、次の防衛計画についてはそういう基本的な考え方に立つべきであると思います。  それから国力、国情という点も、前に申し上げましたとおり、国力ということばからいうと、GNPの伸びに比例して伸びるということだと膨大なものになる、そういう問題についても考慮しなければならぬ、そういういろいろな点について目下研究中でございまして、まだまだ自分考えを練っているという最中で、人に申し上ぐべき段階に至っておりません。
  106. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これは自主防衛原則とも関連ありますのでもう少し伺っておきたいわけですけれども、補完するという表現になって、自主防衛と安保体制との関係が現在の考え方から将来に向かって具体的にどういうように変わっていくのか、この点についていま長官おっしゃいましたが、まずやはりその一番目に言いたいことは、そういった自主防衛というもののワクの中で、核だけをやむを得ないからアメリカの核のかさの中に入って、その他はすべて自力でやる、こういう構想なのかどうか。また二番目には、みずからの防衛力を増強して防衛体制を整えて、有事のとき、必要に応じて米軍の来援を頼む、いわば一種の有事駐留論みたいな構想なのかどうか。また三番目には、基本的には現在の体制を維持する、その中で日米の共同防衛関係で対米期待度を減らしていくという構想なのか、その点伺いたいわけですが、その他のスタイルがあるかもしれません。いずれにしても、この自主防衛と安保体制を補完とするという考え方は、どのようなケースを基本的にたどろうとしておるのか、少なくとも基調から補完と、思い切った発言をなされているからには、その裏づけとしての考え方があっての発言と私は思うわけです。その点について、いま言ったことについて答弁を願いたい。
  107. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 核抑止力とそれから攻撃的兵器は、これは米国側に依存しなければできないと思います。それ以外のものはできるだけ日本自分で整備して、本土防衛については独力で、その部分に関しては機能が発揮できるように整備していきたい。それから駐留の問題につきましては、安全保障条約を弾力的に適用して、そして、随時協議というのがございますから、随時協議によって、客観情勢に応じていろいろ変化に富む政策を七〇年代は行なったらいいのではないか。それを固定的に有時駐留であるとか、あるいは常時駐留であるとか、非常事態来援であるとか、そういうものにとらわれる必要はない。要するに相互信頼関係に立って協議していくべき問題である、そう私は思います。
  108. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 現在の日米安保体制下において、基本的にアメリカに依存するものは何か、日米防衛分担の大ワクはどのようになっているか伺いたい。一つは、米国に全面的に依存しなければならないものは何と考えておりますか。たとえば核抑止力、また侵略国への攻撃力、こういったことがありますが、そのほかに何があるか。また二番目に、日本が全面的に、または主として担当しようとするものは何と何か。たとえば間接侵略であるとか、わが国の防空であるとか、本土の陸上、沿岸または海峡の防備であるとか、いろいろあると思いますが、主としてどういうものか。三番目には、その他に日米共同で防衛に当たるものは何と何か。たとえば日本周辺の戦闘における戦術的攻撃とか、日本近海における潜水艦の掃討とか、これは日本だけでやるのか。いわゆる日米防衛分担の大ワクを、支障のない範囲で具体的に伺いたいと思います。
  109. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先ほど申し上げました限度で、日本日本のことをやり、アメリカに依存すべきものはアメリカに依存する、あとのことはやはり随時協議によって、客観情勢の変化に応じてそれは伸縮さるべきものであろうと思います。しかし基本的には、日本本土防衛に徹して、そして外へ兵隊を出さないとか侵略的な行為は行なわないとか、そういうことは厳守して、日本の本務は、日本の本土、国民生活の防衛にある、それに徹していく、そういう考え方でいくべきであると思っております。  具体的にどの兵器をどういうふうに使うかというふうなことは、そのときに協議すべきものであろうと私は思います。
  110. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 長官発言は非常にわかるんですが、抽象的なんですよ。私は非常に大事なことは、こまかい点——政治的または抽象的、あいまいな話で、話はよくわかるのですが、こういう場合はどうすればいいのか、日米安保条約体制下においては日米共同でやるんだ、じゃ日米関係においては一体どんな取りきめがあるのか、何だかあるんだかないんだかわからないというようなことで続いてきたわけです。そういったようなことを今後も続けていくということは非常に問題である、そういう点から、いままであいまい、しかもまた防衛論議の中で明かされてない分について、私は一つ一つ伺っているわけなんです。ですから、長官が答弁なさったあと、また防衛局長なり関係局長から、この問題についてはもうすでに質問通告もしてあるのですから、避けて通らないで、具体的に答弁していただきたい、こう思います。そういう点から現在の防衛庁の考え方について、そのときになってから話し合ってきめるなんというんじゃなくて、現在の防衛分担の大ワクはこうなっているんだ、こうしたほうがいいと思っているのですというふうに、国民の前にわかるように説明願いたい。
  111. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 オペレーションに関することは非常に技術的なことであり、そのときの客観情勢に応じて非常に変動するものでありますから、いまここで何はどこが分担するというようなことは言うことはできないし、また言うことは適当でもないと思います。ただ、文民統制ということと国防の基本方針を、長官、次官、統幕議長、そういうものがしつかり握っていて、そのワク内で適宜適切な判断をしていくべき問題であろうと思うわけです。したがいまして、これは防衛局長であろうがだれであろうが、私が申し上げた範囲以上には答えられない問題だろうと思います。
  112. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 まず国民が一番知りたい点であります。私は何も防衛の機密について言えとか、あるいはまたきまっていないことを言えと言っているわけではないのです。こういうふうにすればこうなるんじゃないか、こういう場合はこうするから日米共同体制というものが大事なんだというような説明がほしいわけであります。その点きまっていなければ、今後の課題として取り組んでいただきたい、そう思います。  では申し上げますが、日米防衛分担の中で、特に公空について言うならば、日本がたて、米軍がやり、こういう役割りがあるわけでありますけれども、日本は将来ともにやりは持たない、持てない、こういう解釈でよろしいですか。確認しておきます。
  113. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのとおりであります。
  114. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは憲法自衛隊の問題について伺っていきます。  防衛問題は、単なる防衛論だけではきめられませんし、また複雑多岐なものであることは確かでありますけれども、しかし自衛力の限界をきめるにせよ、防衛計画を立案するにせよ、その前提として国の基本法たる平和憲法の精神を尊重しなければならないことは申すまでもありません。ところが自主防衛の名のもとに、いままでの漸増方式から積極的な急増、また質量ともに大きく転換をはかろうとしておるように見受けられるわけでありますが、もちろん長官が何回もおっしゃるように、自主防衛原則というものを通して、その防衛原則の中にも憲法を守り、国土防衛に徹する、こういうふうに述べられておりますが、この際平和憲法下における由主防衛のあり方、限界等について聞いておきたいと思うのです。  まず、その前に、長官の、憲法に対する基本的な考え方について伺いたいわけです。かつて、鳩山内閣は、いわゆる改憲論者であったと思うわけでありますが、長官も、また以前は、いろいろ憲法について御意見を述べられているようでありますが、特に第九条関係については、どういう所見か、まず伺いたいと思うのです。
  115. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 憲法は、当分このままでいいと私は思います。第九条につきましても、このままでいいと思います。
  116. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 五原則にもうたっておりますが、この中で、特に戦争放棄また戦力不保持をうたった平和憲法の基本方針を今後の防衛政策の推進にあたっては必ず尊重される、こういうふうに思うわけでありますが、それも念のため伺っておきます。
  117. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのとおりであります。
  118. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 次に、自衛権の本質、地域及び限界について伺いたいわけです。  過去において、相手の基地をたたかなければ死んでしまう、座して死を待つより相手の基地をたたけ、こういうことが国会で問題になり、またそれが自衛権の本質である、こういう答弁がなされております。今日、自衛隊が外部からの武力攻撃に対するために公海、公空防衛を自衛権行使に必要な限度内でやるとしておりますけれども、これが拡大解釈されますと、かつての自衛権のように、自衛のためならば何でもできるということになりますし、また海外派兵ともつながるおそれも出てくるわけであります。そこで、日本に対する直接侵略をどこで排除するのか、またその歯どめはどこにあるのか。自衛権の本質と、自衛権行使の地域的な範囲に限界があると思いますが、その点について明確に伺いたいと思います。
  119. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それらの点につきましては、いままでの政府の答弁を踏襲し、同じ考えでいくつもりであります。  具体的な内容につきましては、政府委員をして答弁をさせます。
  120. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 この問題につきましては、むしろ法制局のほうで御答弁をしていただくのが適当ではないかと思いますが、自衛権の本質につきましては、もう従来からしばしば政府側の答弁にもありますように、要するにわが国の憲法は、自衛権を規制いたしておるわけではありません。したがいまして、自衛に必要な限度において、そのような目的を達成するに必要な措置をとるということは、憲法の解釈上認められておるというふうに考えるわけであります。  そこで自衛権の地域的な範囲につきましては、自衛に必要な範囲あるいは限度におきまして必ずしもそれが領土、領海、領空に自衛権の発動の区域が限られておるわけではなくて、その限度内におきましては、公海、公空においても自衛権の発動ができる、こういうふうに解釈をせられております。ただし、その場合といえども、外国の領域に入って自衛権の行使をするということは、憲法上認められない、こういう解釈であろうと思います。
  121. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 地域的な範囲に限界はあるということでございますね。それは、領空の場合は何マイルか、領海の場合は何海里ぐらいを想定なさっておりますか。
  122. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 わが国の場合、領海は一応、三海里でございますし、領空もその領海の上空ということでございますが、公海、公空において行動します場合、それが何海里までは憲法上、認められるという限界はあるわけではございませんで、概念的に見ますれば、日本の周辺海域、こういうことになろうかと思います。
  123. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 非常にあいまいです。ただ、領海、領空ということですと、確かに三海里を日本はとっているわけでありまして、また、領空については、飛行機が飛ぶ高度ということが領空というふうにいままで言われてきたわけでありますが、私は、こういった考え方を、将来の問題としては、もっと明確にすべきではないかと考えます。なぜかならば、人工衛星が通っておる。しかし、飛行機が飛ばないから領空ではない、こういう考え方では、私は、現在に合わないと思います。さらに、領海、領空を守る範囲といっても、現在は水平線のかなたから、あるいはまたどこからでも、日本攻撃はされるわけであります。そういった点について、これは防衛局長に伺いたいのですが、実際の現在の近代兵器、特に核を除いた通常兵器の中で、わが国の領空、領海を守る範囲というのは、軍事的にどのくらいだったら守れるのか、その点について伺いたい。
  124. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは具体的に脅威が出てきた場合に、脅威に相応して考えらるべきものでございまして、いま何海里とか何キロということを仮定して言うことはできないと思います。
  125. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 その辺が、やはり私は、これからの戦略、戦術上、いろいろ検討する場合に大事なことではないかと思います。かつて、海上自衛隊のある艦隊司令官といろいろ懇談したことがございます。そのときに、現在の通常兵器でさえも、現在のような防衛政策の中では、全く守れない、そういった点について、もう少し国会のほうでこまかく詰めていただければ、われわれとしても訓練のしようがあるんだ、こういうことも私は伺ったことがございますので、いま質問したわけでございます。それについては、長官の答弁がありまして、またそういったときに考えるということでございますので、次に進みます。  次に、自衛力増強の限界について伺いたいと思います。  まず第一に、量的な限界。政府は、自衛力というのは、自衛上必要最小限度の自衛力を言い、それは内外の情勢、科学技術の進歩等によってきめられる、こういう解釈のように承知しておりますが、その必要最小限ということがはなはだ観念的であります。それは、必要最小限の名のもとにどこまでも増強され、政府の持とうとするものは常に戦力に至らないものということになるわけでありますが、憲法上、自衛隊の量的な面での限界は一体あるのかないのか、その点、まず伺いたいと思います。
  126. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはり国力不相応で、民生を平常時において圧迫したり、他の諸政策のバランスを破るようなものは、憲法上、限界があるだろうと私は思います。その点は、前に申し上げました自主防衛原則の範囲内において実行していったら適当であると思います。
  127. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 質的な限界について伺いたいと思います。  核・非核両用兵器は、核弾頭をつけたときは核兵器で、つけない場合は非核兵器だということであります。いわゆるスリーB——ICBM、IRBM、B52長距離爆撃機などのような、本格的な核弾頭をつけるものは核兵器になる、こういう説明がいままでされておりますが、このような本格的な核弾頭が装着される核兵器は、スリーB以外に何があるのか、防衛庁ではどんなことを考えておるか、その点について伺いたいと思います。
  128. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 たしかナイキなんかはアメリカで核弾頭がつけられると思いますが、そのほかのことは私、よく知りません。いずれにしろICBM、IRBM、あるいはB52のような他国に脅威を与える攻撃的兵器は持ちません。
  129. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 兵器というのは、その使われる目的や環境によってそれぞれ性格が変わるものと思われますけれども、戦略兵器と戦術兵器、攻撃兵器と防御兵器の区分の基準はどこできめるのか、その点について伺いたいと思います。
  130. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 戦略兵器、戦術兵器、あるいは攻撃兵器、防御兵器、そういった区分が軍事上常識的に明確にあるわけではないと思います。ただ、ごく大まかに言いまして、一般的に戦略といいますと、戦争の総合的な準備とか計画とかその運用の方策というふうなことに普通言われておりますし、戦術といいますと、個々の戦闘能力、戦闘遂行の方策、方法というふうなことに言われておりますので、そういうことから兵器を当てはめて例をあげてみますと、戦略兵器といいますのは、先ほどお話の出ましたICBMとかあるいはポラリス、SLBMとか、あるいは核を搭載したB52長距離爆撃機とか、こういったのはいわゆる戦略的兵器と通常言われております。その他のものは、たとえば戦闘爆撃機のF111のようにB52にかわって戦略的に使われるという場合もあり得るわけですけれども、概して戦術的な兵器といってよろしいかと思います。  それから、攻撃、防御になりますと、これも兵器そのものが本来、ある場合には攻撃し、ある場合には防御するという性格のもので、はっきりこれは攻撃専用である、これは防御専用であるというふうに分けることはたいへんむずかしいと思いますけれども、しいてあげますと、先ほど戦略兵器であげましたようなものは攻撃的な兵器である。それ以外に、たとえば攻撃用の空母等は、戦術的な兵器のほうに入るかもしれませんけれども、攻撃用というふうに普通考えてよろしいかと思います。防御用——大部分の兵器は、戦車にしろ、大砲にしろ、通常のミサイルにしろ、場合によって攻撃に、場合によって防御に用いられるのが通常でございましょう。ただ、たとえば高射砲とか地雷とかあるいはナイキ、ホークのように、こちらで待ちかまえておって、向こうが来た場合に初めてその性能が発揮されるというふうなものもあります。そういうものはあるいは防御専用というふうな区分も可能かと思いますが、大部分の兵器は攻撃でもあり防御でもある、戦術的な意味でそういうことが言える、こういうふうに考えられるわけでございます。
  131. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 わが国は、現在の防衛政策の中では、非核三原則によって、憲法解釈上は防衛兵器については核兵器も持てるとかいうようなお話でございますが、政策的に持たない。戦術といえども、戦略といえども、防御兵器といえども持たぬ。いままでこういうふうに来ておりますが、特に最近沖繩返還をめぐりましていろいろなことがいわれております。在日米軍の中でも第五空軍あるいはまた第七艦隊、沖繩米軍、こういった艦隊や部隊の装備のほとんどが戦術核兵器と両用になっております。また沖繩なんかについては相当数の戦術核兵器、ミサイルの弾頭が貯蔵されておる、こういったことは専門家の一致した見方であります。こういった戦術核兵器についてでございますが、沖繩返還時には当然こういったものも撤去をさせると思いますが、その点防衛庁長官はどのようにお考えでございますか。
  132. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのとおりであります。
  133. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 たとえばこの戦術核兵器を持ち込むとき、あるいはまたそのミサイルをそのまま置くときには、当然事前協議の対象になる、そのときはノーと言う、当然そうなると思いますが、その点も確認しておきたいと思います。
  134. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのとおりであります。
  135. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 海外派兵の定義について伺っておきたいと思います。また海外派遣とはどう違うのか、その点も明確にしておきたいと思います。
  136. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 武力行使の目的を持って部隊を外国に派出する、それは海外派兵であるだろうと思います。
  137. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 海外派遣は。
  138. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 自衛隊を海外に派遣するということはいままでございません。ですからその差がどういうふうにあるのか、現実にそういうケースが起こってこないと私はわからぬと思います。
  139. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 たくさん聞きたいことがありますからまた次の機会にしますが、最近ソ連軍の太平洋演習が行なわれている。連日のように新聞に載っております。この太平洋でのソ連軍の演習が、ソ連政府から正式にあるいはまた極東の司令部からそういった計画の発表があったのかないのか、またないとするならば防衛庁の入手した情報の範囲でその概況を伺いたいと思います。
  140. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 さきに行なわれようとした演習はソ連の、これはおそらく水路系統のほうで発表したのだろうと思います。それで演習区域を設定して期間を設定し、船舶航行を注意させようとしたらしいのでありますが、これは日本側の要望によりまして全面的にやめまして、その後のものについては別に通知はございません。
  141. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いつ行なわれるかわかりませんけれども、この演習によって一番心配なことは漁業及び航路、空路というものの妨害、そして万一の事故であります。何か新聞によりますと、政務次官もP2V、その監視をする飛行機に乗った、小笠原方面で潜水艦が急に沈むのを見た、こういうようなことを聞いておるわけでありますが、防衛庁の入手した情報の範囲で、どんな船が集まってどうなっているのか、その点簡単に伺いたいと思います。
  142. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 政務次官には、八丈島及び硫黄島の付近に、演習をやっているという情報があるから行って見てきなさい、そう言って、政務次官は張り切っているものですから、行って見てきたと思います。  最近の動向を私よく知りませんが、先般得たもろもろの情報によりますと、大体九州の南方、そうして石垣島から東へ向かった線、その交点の辺に約八隻ぐらいのソ連の艦船がおったらしい、それから八丈島と硫黄島の間に六隻ぐらいの艦船がいたらしい、それから土佐沖と能登半島の先に潜水艦、救難艦が一隻ずつおったようである、そのほか飛行機が、いわゆるバジャーと称するものがそれらの地帯に出没しておる、そういう情報を、一週間ぐらい前でしたか、私ら総合的に報告を受けました。その後はおそらくそういうものは移動したりしているのではなかろうかと思います。
  143. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 自衛隊の船かあるいは飛行機だと思いますが、情報収集や警備行動は行なっているわけですか。
  144. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本の領海に近接してきたり、あるいは日本漁船や空路に対して危険が生じたりする場合には、当然これは日本としては注意しなければなりませんものですから、自衛隊もP2Vを飛ばしてそういう情勢を調べるということも必要であるだろうと思います。ただ遠距離でやっているものをわざわざ入っていってのぞきに行くということは、やらぬほうがいいだろうと思います。
  145. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これは小笠原諸島の付近のようでございますが、小笠原といっても、これはもう日本の領土であります。この日本の領海、領空の侵犯があった場合にはどのように措置しておりますか。
  146. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのときには警告を発して領海、領空に入らないようにわれわれは措置しなければならぬだろうと思います。
  147. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 小笠原の場合はどうやってそれを確認するわけですか。
  148. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 小笠原には部隊もおりますことですから、それが視認したら、あるいは直ちにこちらのほうへ通信が来るだろうと思いますから、それによって、外交的手段その他によって警告を発するということは十分とり得ると思います。
  149. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは小笠原に——小笠原といっても航空基地は硫黄島であると思いますが、小笠原に現在F86Fとか、またはP2Vが常駐しているわけですか。
  150. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 常駐はしてないと思います。あそこには通信系統とかその他の部隊が若干おると思います。
  151. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 小笠原の領海、領空の侵犯があったときには、日本本土から飛ぶわけですか。
  152. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 外交手段によってやるということがわりあいにいいのではないか、また情勢によっては日本本土から飛ぶということもあり得ると思います。
  153. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 現在の演習の海域で、日本漁船やあるいはまた航路、空路に当たる、または近くにあるというところはございますか。
  154. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私のところへはまだそういう報告は来ておりません。
  155. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 海上保安庁、水産庁等の関係各機関に、わがほうの自衛隊でつかみました情報も連絡しております。向こうのほうのいろいろな状況も伺っておりますけれども、現在までのところ、直接漁業なり水路妨害等の事案はないようでございます。
  156. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この演習について、各国では非常に重大な関心を持って見守っておる。特に日、米、韓、台湾、こういった各国からの情報収集合戦が盛んに行なわれている、このようにいわれております。そしてまた、重大事態の発生があるかもしれない、この間こんなような報道がありました。このことは四十三年の春、日本海の日米合同演習のときにソ連船が割り込んで、米ソ船が二度にわたって接触事故を起こしたことがございます。そういったようなことからも、このような事故や、または日本政府に対する飛ばっちりを非常に私は心配するのでありますが、その対策は万全なのかどうかですね。ただ単なる警備やあるいはまた偵察くらいでは、少しのんき過ぎるんじゃないか、こう思うんですが、その点について。
  157. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 先ほども申し上げましたけれども、自衛隊としましては、海上自衛隊を主にしまして、今度の演習の情報収集につとめておりまして、関係機関にその状況をできるだけお知らせすることにいたしております。関係機関であります海上保安庁、水産庁等において、いまお話しのようなことにつきまして、いろいろな措置を必要であればおとりになるだろう、当然そう考えられるわけですけれども、現在までのところ特別の事案の発生の危険もないということのようで、特別の措置はとっておられないというふうに聞いております。
  158. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 まだ演習が始まっておりませんし、危険水域や海域の指定もないようですから、いまはどうということはないと思いますが、しかしこれが本格的に演習が始まったときにはいろんなことが起こると想定されます。演習については、どこまでも公海自由の原則がございますから、とやかく言うことはできないと思いますけれども、しかしその付近における漁業や航路の安全を確保するという権利も、私はあると思います。そういう意味から、もしか危険を伴うような海域での、あるいは空路や航路に当たるようなところでの訓練が発表されたときには、私は積極的にその計画の中止を申し入れるべきだと思いますが、防衛庁長官はどう判断し、この演習についてどう考えられるか、最後に伺いたいと思います。
  159. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 必要にして適当な措置をとるようにいたしたいと思います。
  160. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これも時局の問題でございますが、難航を続けました日中覚え書き交渉は、去る四月十九日北京飯店で日中政治会談コミュニケと七〇年貿易取りきめが正式に調印されて、妥結しております。この共同コミュニケは、佐藤内閣に対するきびしい中国側の姿勢を反映しております。この現実に対するために、政府は中国政策を前向きに検討する必要があると思うのでありますが、そこで、この共同コミュニケについて言うならば、非常に強い態度日米共同声明を非難しております。特に「日米共同声明侵略的な「日米安全保障条約」を一層範囲の広い、一層危害性に富んだ新しい米日軍事同明に変えており、そのほこ先を直接、中国人民、朝鮮人民、インドシナ三国人民に向けている。」このように言っているわけであります。このことは、きのう来の政府の談話あるいは田中幹事長の話にも、そういったことはとうてい容認できないという強い態度が示されたのでございますが、こういったことについて防衛庁長官はどのようにお考えになっておられますか。
  161. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あの声明は、覚え書き貿易のために、日本側においては私的な人たちがつくったものでありまして、公のものとして取り扱うことは適当でないと私は思います。しかし、あの内容において、沖繩返還はペテンであるとか、あるいは本土の沖繩化であるとか、あるいは日本軍国主義が復活したとか、そういう見解については、これは全く誤解であり、あるいは曲解であるかもしれない。はなはだ遺憾であると私は思います。日本憲法のもとに平和国家としての道をまじめに前進しておるのでありまして、そういうような考え方日本国民承知しないだろうと私は思います。ただ、共同声明というものは両方が妥協してつくり上げるものですから、一方の意思だけでは通るものではない。だから、日米共同声明でも佐藤・ニクソン間においてかなり苦労もあったし、お互いの言いたいことも言わなかったり、書きたいことも書けなかったこともあるので、相当苦労してできているだろうと思います。この間の覚え書き協定においてもやはり同じように両方が苦労してつくっておるので、その点は古井さんが一生懸命努力して、ともかく涙をのんだかどうかは知りませんが、相当苦労した結果、あれをのまざるを得なくなってのんだのではないか。私は友人としては同情をもって見ております。しかし、国家の立場はまた別のものがあります。
  162. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この共同声明を見ていきますと、少なくとも曲解、誤解であるとは言うけれども、非常にきついことを言っているわけですね。特に、まぼろしの日本軍国主義が一挙に顕在化した。これは「米帝国主義の育成のもとに日本軍国主義の復活はすでにアジア人民と世界人民の前に置かれているきびしい現実となっている。」こういうふうにありますが、これは現在の自衛隊が二次防、三次防、そして四次防に進む軍事力増強におそれを抱いて、また警戒の姿を示しているのではないか、こう思いますが、長官はどう考えますか。
  163. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あの周恩来首相の談話の中に、佐藤榮作首相と、山本五十六元帥の名前と、野坂参三氏の名前と、不肖中曽根の名前がたしか出ておりましたが、佐藤さんや私のような平和主義者をなぜああいうふうにおとりになるのか、はなはだ了解に苦しむところがあります。また、山本元帥の映画ができたので軍国主義復活云々というような新聞記事がありましたけれども、山本元帥は三国同盟を阻止するために非常に苦心をした人でありまして、山本元帥の映画ができたから軍国主義が復活するとか、しているとかということを考え日本人は、非常に少ないんじゃないかと私は思います。
  164. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 先ほども長官おっしゃいましたが、「沖繩返還は全くのペテンである」などということを言っておりますが、外務省側では何も言っておりません。これについて外務省側はどういうふうに考えておりますか。
  165. 須之部量三

    ○須之部政府委員 私どもの非公式の見解、これはもう新聞等にも発表されておりますし、また、政府の見解はすでに総理が、きのうの参議院の決算委員会でお述べになっております。先ほどの中曽根長官のお話でも、閣議でもそれが問題になっておったということでございますし、私どもの見解から見ますと、「全くのペテン」というのはまことに理解に苦しむところでございます。おそらく先方の全然根拠のない誤解であるというふうに申さざるを得ないと思うわけでございます。
  166. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 次に、基地問題について長官に伺いたいと思います。  七〇年代における米軍及び自衛隊基地を含めた、いわゆる基地問題に対する基本方針と、基地対策の進め方についてまず伺いたいと思います。
  167. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 元来、基地というものはその主権国家がこれを管理し、支配すべきものであります。しかし、日本は歴史的理由によりまして米軍の施設、区域を供与してきたわけでございますが、これは日本自衛力が足りない時代にやむを得ない措置としてあったと私は思うのです。日本自衛力が整備するにつれて、でき得べくんば先方と話し合いをやって、徐々に計画を調整しつつ、基地は日本自衛隊に返還してもらう、日本が管理する、そして要らないものは民間に返す。それから先方と協議して、先方が一時使用あるいは期間使用、そういうような形態によって再調整して、また使わしたらいい。それを七〇年代のできるだけ早目の仕事として実行してみたい、そう思うわけであります。
  168. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 去年の九月、ニクソン大統領は海外要員の一〇%の削減を指令しております。また、レアード国防長官も昨年の十月、軍事基地二百八十カ所、うち海外基地二十七カ所も含めまして閉鎖、縮小、統合を発表しております。さらに、ことしに入って三月四日、三百七十一基地、うち海外基地三十カ所も含めまして閉鎖、縮小、統合を発表しております。加えてリーサー陸軍長官は、アジア地域の補給基地を沖繩に集中し、南・北東アジア太平洋全域の補給センターをつくる、こういうふうにも述べておりますが、そういったことについて外務省、防衛庁に正式の通告や照会があったかどうか、この点について。
  169. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 正式の通告、照会はございません。
  170. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 特にリーサー長官は、アジアにおける陸軍部隊は全部撤去をする、こういうふうに発表をしておりますが、こういったことも政府、外務省に連絡があったかどうか。
  171. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 自衛隊も外務省も正式の連絡は何らございません。
  172. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 施設庁長官に伺いたいのですが、現在日本にあります百二十六カ所の在日米軍基地のうち米陸軍の補給基地はたしか三十九カ所だと思いますが、その基地名と地名、それを伺いたいと思います。
  173. 山上信重

    ○山上政府委員 陸軍の所管しておる施設の名称でございますか。
  174. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうです。
  175. 山上信重

    ○山上政府委員 現在陸の管理しておる施設を申し上げますと、キャンプ朝霞、山王ホテル士官宿舎、相模原住宅地区、横浜ノースドック、呉はしけ停泊地区、呉第六突堤、赤坂プレスセンター、横浜神栄生糸ビル、米陸軍調達部事務所——これは返還になっております。それから名古屋調達事務所、神戸港湾ビル、博多輸送事務所、神奈川ミルクプラント、相模総合補給廠、米陸軍出版センター、八戸LST係留施設、所沢補給廠、富岡倉庫地区、小柴貯油施設、鶴見貯油施設、横浜冷蔵倉庫、鶴見野積場、横浜貯油施設、池子弾薬庫、吾妻倉庫地区——これは海も使っております。それから追浜海軍航空隊施設——名称は海軍ですが、陸軍の所管です。それから秋月弾薬庫、川上弾薬庫、広弾薬庫、赤崎貯油所、庵崎貯油所、横瀬貯油所、キャンプ王子、岸根兵舎地区、米陸軍医療センター、キャンプ千歳補助施設——これは空も一緒です。それからキャンプ千歳、これも空と一緒です。それから百石通信所——青森県でございます。それからキャンプ淵野辺、雁の巣空軍施設——これは空軍に施設が移っております。それから名島倉庫地区、仲原通信中継所、平尾通信中継所、田浦送油施設等でございます。
  176. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 合わせて三十九カ所でございますね。
  177. 山上信重

    ○山上政府委員 ちょっと数字ははっきりいたしませんが、後ほど集計させていただきます。
  178. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いずれにいたしましても、アメリカのリーサー陸軍長官が言われておることでございます。したがって、当然向こうからこの基地について検討しろということが私は予想されると思います。  そこで、長官に伺いたいわけですが、こういった長官の公式発表があった以上は、前向き、積極的にこちらのほうからこういうことを議題にして、返還のための努力をすべきでないかと思いますが、その点いかがでしょうか。
  179. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 議会が終わりましたら日米安保協議委員会を開きまして、その趣旨のことを申し入れしょうと思っております。
  180. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 聞くところによりますと、現在防衛庁では米軍基地の実態を調査して、その白書をまとめておるというふうに伺っておりますが、その実態を概括的に伺いたいと思います。
  181. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 白書をまとめておるということはありません。各基地について、私が先ほど申したような趣旨に基づいて、改革をしていく上について必要な調査をしておるということで、ケース・バイ・ケースに調査を進めさせております。
  182. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうしますと、前に基地白書のようなものを出すと言いましたが、それは出さないことになりますか。
  183. 山上信重

    ○山上政府委員 私のほうは、かねてから基地の実態について、基地の内容であるとか、あるいは対策であるとか、あるいは日本人の従業員労務者の関係であるとか、そういったような基地の実情をなるべく明らかにしておきたいということで、かねて調査いたしてございまするが、まだこれはまとまっておりません。なお、防衛庁長官からは、いまの御方針に基づくような、基地の実情についてさらに調査するようにという話もございまして、両方ともども実施しておるという実情でございます。
  184. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 現在の実態を掌握した中で、特に問題とする点がございましたか。
  185. 山上信重

    ○山上政府委員 いま調査を続けておる段階でございまするので、どんな問題ということをいま申し上げる段階ではございません。
  186. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 政府は一昨年の十二月二十三日、日米安保協議委員会において、五十一カ所の基地だと思いますが、その基地を検討して、返還のため、あるいはまた日米間において協議されて、いままでに二十六カ所ですか、返還または移転、使用転換の措置がとられたわけでありますが、残余の基地についてはどうなっているのか、その見通しについて伺っておきます。
  187. 山上信重

    ○山上政府委員 一昨年の安保協議委員会におきまして、約五十の施設、区域の基地の使用転換あるいは共同使用、移転等について協議されましたが、その後日米合同委員会あるいはその下部機関の施設委員会等におきまして、いろいろな観点から協議を進めまして、合意に達しましたのが二十八施設でございます。その面積は約六千万平方メートルになっておりますが、従来まで三億六千万平方メートルぐらいございましたのが、その程度減少したことになります。そのうち現実に返還を見ましたのは二十五施設でございます。残余の施設、区域につきましては、双方でただいま鋭意努力をいたしておるところでございまして、なるべくすみやかに解決をはかりたいと考えておる次第でございます。
  188. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 米軍基地の縮小に伴って現在いろいろ検討されておりますけれども、ただ極東における、または沖繩の返還に伴いましていろいろと基地が移動しております。たとえばベトナムに行っている米軍がベトナムから直接三沢に来ている。第十六戦術偵察中隊といいますか、そういうものが移ってきたり、または岩国等においてはファントムの戦闘機がいままでになく大量にそこに移駐してきております。そういった意味では、ベトナム戦の縮小、沖繩返還に伴って、一部ではありますけれども、在日米軍基地は強化されるという面もあるわけであります。  そこで問題になるのは、その在日米軍基地の恒久化ということなんですけれども、現在中曽根長官は、将来については自衛隊が管理して、その中で米軍基地も共同使用なり、あるいはまた自衛隊基地管理の中で考えていきたい、そういうふうに移したい、こういうふうにも言われたわけでありますけれども、その自衛隊管理の移行の構想について具体的にひとつ伺いたいと思います。
  189. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 安保協議委員会でそのことを申し入れしまして、それからやはり各基地ごとにアメリカ当局と計画を調整し吻合させ、そしてどの程度段階的に時間的に可能であるか、そういうような話し合いをよくまとめて、そしておのおのの基地によって地位協定の適用条項が違ってくると思いますから、そのどの条項を適用するかという話もするし、それから一番大事なことは、予算の経費の分担の関係がありますから、これはやはり大蔵省とも相談しつつ、そういう政策を適確に進めていきたいと思うわけであります。これは若干の時間を要することだろうと思っております。
  190. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 長官自衛隊管理の構想というのは、日本にある米軍基地のすべてを一括して管理するという考え方ですか。それとも米軍がどうしてもこれだけはというような重要基地を除いて管理するという考え方なんですか。その点明確に伺いたいと思います。
  191. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 原則として自衛隊が管理すべきものだと私は思うのです。しかしそれは先方の要望もございましょうから、話し合ってみてケース・バイ・ケースで調整していく、そういう形になるだろうと思います。原則的には自衛隊が管理すべきものである、そう思います。
  192. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 原則的にすべての在日米軍基地を自衛隊が管理する。ではそのめどは七二年以降七五年ぐらいというふうに考えているわけですか。
  193. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 時間的にはわかりません。  それから原則的にはと申し上げましたが、同じ基地の中でも施設として提供していく部分が残るかもしれません。そういうケースもございますから、施設、区域として基地の中で提供していく部分が若干残るというケースも含めて、原則的には日本自衛隊が管理すべきものである、そう考えておるわけであります。
  194. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうなりますと、地位協定も相当改定しなければならないと思いますが、そういうことも長官考えておられるわけですね。それはいつごろをめどに考えられておるわけですか。
  195. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 当分は現在の地位協定を運用することによってやっていけるだろうと思います。将来どうしてもそれが不適合であるという場合には、将来はこれを改正することも考えなければならぬと思いますが、大体やっていけるだろうと思います。
  196. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 今年度の基地関係予算の中で、返還またはそれに準じた考えで調査費をつけた基地名はどこですか。これは基地周辺整備法の、言うならば基地公害のものと分けて教えていただきたい。返還のための調査費のついた基地、それから整備法などによって公害のためについた基地、その点について。
  197. 山上信重

    ○山上政府委員 四十五年度予算のうちで、返還に関連する予算といたしましては、第一に返還を実現するために集約移転ということが必要でございますので、その移転のための経費が非常に多くなるわけでございます。それの予算としては、一般会計におきまして六億二千九百万円、それから持別会計で六十億七千四百万円。その施設といたしましては、一般会計のほうでは横浜の住宅等十二施設でございます。これは調査費並びに工事費を含みまして、水戸、板付、久里浜、新倉、山王ホテル、キャンプ朝霞、横浜海浜住宅、横浜ランドリー、池子弾薬庫、横浜ノースドック、呉はしけ停泊施設が一般会計。持別会計として山手住宅地区、それからグラントハイツ、こういうことになっておるわけであります。  それからさらに返還補償というのがございます。返還されたときに補償をしなければなりませんので、そういう経費といたしましては、山手住宅地区のほか十二府県で九千五百万円の予算を計上いたしております。  それからいま申された基地の公害関係、周辺対策の予算を含んだところはどこであるかということでございますが、これはほとんど全地区にわたっておりますので、どこそこということを申し上げるのは意味がないじゃないかと思いますので省略させていただきたいと思いますが、周辺対策全体といたしまして、御承知のように、基地対策費というのを私のほうは一応ワクはこのくらいという計算はいたしておりますが、これは四十五年度におきまして一般会計、持別会計合わせまして三百二十六億円、昨年が二百二十八億円でございましたから約四三%、九十八億円の増額ということになっております。これらのうち、特に労務関係とか——あるいは借料関係も若干含んでおりますが——を差し引きましたもの、たとえば障害防止、騒音防止、道路改修、民生安定、安全保障、施設周辺の補償等々だけを取り上げていきますと約二百三億円になります。個所につきましては、先ほど申し上げましたように飛行場、演習場、その他周辺に多少なりとも影響を与える地区全域にわたっておりまするので、省略させていただきたいと思います。
  198. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いま話が出ましたが、グラントハイツの返還ですが、その返還のあと地利用計画は東京都と住宅公団でやっておったようでありまするが、どのような状況でいま進められておるのか、特に私たちは、基地の返還に伴うその基地のあと地利用というのは特に地域住民の声を聞いて利用計画を立ててほしい、こういうふうに言ってきたわけでありまするが、グラントハイツの場合、福祉施設というものがあるのかどうか、さらに武蔵野住宅地区ですか、これも関連がいまあるように伺ったわけですが、当然そうなればグラントハイツと同じように返還になるということになると思いますが、その点もあわせて伺いたいと思います。
  199. 山上信重

    ○山上政府委員 グラントハイツにつきましては、先ほども申し上げましたように、四十五年度予算の特別会計において五十億の予算を組んでおります。これは四十五年度から四カ年計画で全体で三百五十億くらいの予算を要するわけでございますが、グラントハイツ並びに武蔵野住宅地をあわせて移転、返還させたいというための住宅等の移転に要する経費でございます。したがいまして、四十五年度から始まるということで、これの考え方としては、グラントハイツのあと地は、主として住宅に使われるというような含みをもちまして、住宅を建てる土地の取得希望の向きと政府との間で、買い取りあるいは交換というような措置を講ずることになっております。これは御承知のように特別会計で、大蔵省の理財局が主管しておりまするが、たてまえとして、住宅でございますので、住宅公団がまずその候補になっておりまするし、また東京都もこれにいろいろ御希望を持っておるようでございまして、都並びに住宅公団、大蔵省等でいま協議を進めておると聞いております。来年度の分については一応住宅公団というふうになっているやに伺っておりますが、これも今後の問題であると思います。住宅を建てるのが主体ではございまするが、その内容といたしましては、いずれの側の計画におきましても、いろいろ公園であるとか学校であるとかその他の福祉施設が含まれており、児童施設であるとかいうふうなものも含まれて計画しているように伺っております。  先ほど話の中で申し上げたので、答えは出たのかもしれませんが、武蔵野住宅はそういうことでございますので、あわせて移転後は返還されるというふうになっていくように考えております。
  200. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 長官に伺いたいのですが、最近の米軍基地の返還のうち、面積にいたしますと九五・五%くらいが自衛隊に移されており、地元への返還は八戸LST係留施設とか横浜海浜住宅とかわずかに四・五%にしかすぎない、こういうようになっております。これでは米軍基地が返還されても自衛隊がそのまま使うのでは無意味だという声も出ております。また、地域住民には、どこまでもその地域住民の声を尊重してあと地利用を考えてほしいという意見があるわけでありますが、長官としては、こういったことについてどう考え、そうして今後の基地撤去についてどうなさるか、基本的な態度について伺いたいと思います。
  201. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 講和発効以後四十四年十二月末までの返還施設が二千六百九十八、約十一億三千七百万平方メートルであります。このうち、民間使用は約六億五千八百万平方メートルで六〇%です。自衛隊使用は四億七千三百万平方メートルで四〇%です。そうして大体六対四くらいで民間に返っているわけです。しかし、過去一年間の返還施設二十六カ所、六千万平方メートルを見ますと、民間使用十六施設、約三百二十万平方メートルで、これが七六%、自衛隊使用が五カ所、百三万九千平方メートルで、これが二四%という形になっております。大体われわれといたしましては、できるだけ地元の御要望に沿って、民間使用に利用可能なものは民間に移譲することが賢明であると思いますが、防衛上どうしても必要だという部分は最小限確保しておきたい、そう考えております。
  202. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これも長官に基本的なことを聞いておきたいのですが、防衛産業の件、兵器の件、そうして武器輸出の件について伺います。  去る二月、経団連会館で行なわれた経団連防衛生産委員会の席上で、防衛庁長官は、今後の防衛産業についての所信を述べた、こういうふうに聞いておりますが、長期的な防衛産業に対する政府の基本的方針あるいは四次防における武器生産の方針については、まだ私たちは伺ってないわけです。そういったことについて承りたいと思いますが、さらに、国防会議の付議事項になっております防衛計画に関連する産業との調整計画の大綱、これも活字ではございますが、いまだに具体的になっていない。そういう点について、どうしてなのかという疑問があるわけなのでありますが、その点について伺いたいと思います。
  203. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国の防衛は、国民の愛国心と国の総合力によってできておるのでありまして、自衛隊というものはその前線の一部を担当するにすぎない。それは国民全般にあるわけです。その国民全般の中には、経済力もありますし、工業力もありますし、防衛産業の力もあると思うのです。そういう武器弾薬の補給能力あるいは自主開発能力がなければ自主防衛というものはできっこありません。したがって、日本防衛産業もそういう補給的意味において、あるいは開発的意味において大きい意味防衛体系の一環をつくるのであって、それが健全に成長するということは国のためにも必要である、そう思います。そういう点について、計画的育成というものが足りなくて、ややもすればその場当たりで乱雑に成長してきて、過当競争があったり変なスキャンダルがあったりしたということが過去の例です。私はそういうところはきれいに掃除をして、できるだけ整然とした体系にして効率的にやりたいと思っておるのです。しかし大事なことは、いわゆる産軍複合体というようなものができて、政治にプレッシャーをかけるということは、これは絶対回避しなければならない。したがって日本の国力の中において、防衛産業というものが節度を持った必要限度の力に成長していくようにわれわれは厳重に監視していくべきであると思っております。しかし必要であるということは、これは厳然たる事実でありまして、適正に成長させていくということが必要であると思います。  それから、そういう兵器の開発その他の問題にいたしましても、役所がやることが非常に能率的で、またそれがアイデアその他の面においてすぐれているとは思いません。やはり民間の力を活用して、巧みに誘導しながら国の力に発展させていくということがうまいやり方でもあると思います。そういう点においてはまた協力を求めなければならぬ部分もあると思いますので、そう別に敵対関係にあるというような感覚でなく、お互いに国の総合力の一環を形成し合う協力者としての立場で努力していくべきであると思います。
  204. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 長官の答弁はよくわかるのです。しかしいままでもそういう答弁は何回も聞いてきているのです。長官は非常に意欲的にまた積極的にすべての面で発言もし、いままでもいろいろなことを言われてきましたので、私も期待を持って、いままで解明されなかった、あるいは抽象的な、あいまいな点について長官に伺っておきたいわけで、きょうは基本的なことをずっと聞いておるわけです。非常におもしろくない話でまことに申しわけないと思っているわけですけれども、そういったことからいいますと非常に具体的じゃない。基本的方針とは何と何か、生産の方針についてはこれが歯どめなんだ、それが伺いたいわけです。そういったことについてもう少し具体的に伺いたいと思います。  まず第一に申し上げました防衛産業に対する基本的な方針とは何か、その点。次に武器生産方針について。最近非常に国産化がふえております。これはどこまでも無制限、無原則に膨張していったのではうまくない、こう思います。そういった点についてどういう考え方があるのか。さらに国防会議の中に防衛産業に対する調整計画の大綱というものが載っているけれども、やるのかやらないのかということについて伺っているわけです。その点について。
  205. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いまのような御質問に対する基本的考え方は、先ほど申し上げましたとおりで、大体すべての点について申し上げておると思います。問題は、国防会議の方針とおっしゃいました。その中における防衛力整備に関する問題があると思います。この点につきましては、装備局長に私から、大体次の防衛計画をつくっていく上において、防衛産業というものがどういう地位にあり、また役所としてはどういうふうに誘導し調整していくべきか、そういう作業を命じております。それで、たとえば競争原理を部分的に導入していく要素を広げるとか、民間のそういうアイデアや創意力を大いに活用するとか、そういう若干の原則みたいなものに対する方針もありまして、大体それでよろしい、じゃ、それを具体的に次の段階でどういうふうに施策を展開していくか、もう少し作業せよ、そういって命じておる段階でございまして、これは次の防衛計画作成の一つの基礎としてだんだんできていくものなんです。ですからまだここで申し上げる段階には至っていないのであります。
  206. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 次の段階というのは四次防のことでございますか、四次防までには明らかにする、そういう意味ですか。
  207. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いわゆる四次防の基礎的な考え方として固めていこう、そう考えております。
  208. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 防衛庁は技術開発本部、また経団連は防衛生産委員会または日本兵器工業会、日本航空機工業会などが中心になって、兵器生産のための共同作業機関設置を考えている、こういうふうに一部で報道されておりますが、これはどういう体制で、またどんな構想でやるのか、長官にお伺いいたします。
  209. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは新聞報道にそういう記事が出ましたが、そういう共同機関設置という事実はございません。それは何らかの誤った報道であると思います。ただ、技術研究所なりあるいは防衛庁が誘導しながら協力を求めていくということはあり得ると思います。これは当然やるべき問題であろうと思いますが、経団連を相手にして、あるいは兵器産業と共同機関をつくるというような考え方はございません。
  210. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私もあってはならないと思って質問したわけであります。こういった防衛産業について一番問題になることは、先ほども言いましたように、産業と一体になって産軍復合体というような形に発展することであります。これはアメリカの軍人大統領アイゼンハワーが言ったことでありますが、彼が一九六一年の一月退任するときにこう言っていました。私は軍人であったので、軍に対しては相当の権威を持っていたが、産軍相互依存体制の圧力によって軍事国家的な傾向を十分に統制することができなかった。さらにことばを続けて、もし国防経費を制限しなければ米国のあらゆる資源は軍需産業に集中され、米国は要塞国家になってしまう云々、こういうふうにアイクの退任演説があったわけであります。その後九年を経ているわけでありますけれども、まあ米国民はこのような体制の強力な圧力に抗し切れなくてベトナム戦争に深く突っ込んでしまったり、またはその結果深刻なドル危機にその足元をすくわれている、こういうようなことがいわれるわけでありますが、こういった実情を長官はどう評価されますか。
  211. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 アイゼンハワー元大統領のことばは、私もよく読んで、日本はそういう可能性はいまありませんけれども、戒心しなければならぬことであると思っております。
  212. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 こういったような意味で非常に産軍複合体ということを私はおそれるわけでありますけれども、これは何もアメリカだけの話ではなくて、今後の日本についても防衛費の支出の増加に伴って必然的に防衛産業が拡大され、またそのことによってきわめて密接な関係の中に発展するのではないか、こういうふうに私は思うわけであります。  そこでこの防衛産業について、長官はわが国の安全保障政策の中で防衛産業というものをどういったワクで位置づけするか、その考え方について伺いたいと思います。
  213. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 現在いわゆる防衛産業の生産高は、日本の工業総生産高の〇・五%以内でありまして、くつや何かの皮革産業と同じくらいの生産額にすぎない、したがってこの膨大な工業生産あるいはGNPから見ればまだまだ微々たるものでありまして、そういう危険性は目下のところはないと私は思います。しかし将来につきましては、われわれとしてはよく監視の目を光らせながら、節制ある成長を遂げるように指導してまいりたいと思っております。これを金額はどの程度とかなんとかということはいまのところ申し上げられませんが、ただ申し上げられますことは、いままで日本自衛隊が持っておる装備品の中には、アメリカから貸与されたり無償援助でよこしてくれた、古い、もう使えないような戦車とか艦艇が相当数あるわけです。小銃にしても同様です。それらを国産の最新式のものに代替していくというだけでもかなりの費用がかかるわけです。そういう点で、やはり自主開発で国産で性能のいいものをつくっていくということは非常に大事なことでありますので、そういう自主開発、国産の性能の向上という面について努力をしていきたいと思っております。
  214. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 参考までに伺いますが、わが国の防衛産業に関係している会社は大体どのくらいあるのですか。
  215. 蒲谷友義

    ○蒲谷政府委員 現在調達実施本部で登録しております会社が千五百ございます。これは契約の対象となり得る会社であります。その内訳は、大体千二百は製造業者、三百は販売業者であります。四十三年度の実績を申しますと、そのうち八百社と契約しております。
  216. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 概括的でけっこうなんですけれども、この産業が急激に伸びてきておるわけでありますが、各年度別、過去二、三年でけっこうなんですけれども、どのくらい金額を使っておるのか、また品目について簡単に伺いたいと思います。
  217. 蒲谷友義

    ○蒲谷政府委員 全体的に申しまして、集計の終わっております四十三年度までを申しますと、四十三年度で国内調達の総契約額が二千四百二十四億円、四十二年度が千八百五十九億円、四十一年度が千三百九十六億円、四十年度が千三百五十九億円、大体五カ年間はこういう傾向であります。  これはトータルの調達額でございますが、四十三年度だけの例で申しますと、船舶で二百二十五億円、それから航空機で七百一億円、車両で百九億円、武器で九百五十三億円、弾薬で百十一億円、通信機器で二百十一億円、これが大体四十三年度の実績でございます。
  218. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 その中でどんな種類が扱われているのか。たとえばライセンス生産と純国産とありますし、兵器といっても種類は多いわけでありますけれども、一般的に国民から見てどんなものをつくっているのかということがわからぬわけですね。そういった点についてどんな種類のものがあるのか、この点を伺いたいと思います。
  219. 蒲谷友義

    ○蒲谷政府委員 現在防衛庁が調達して管理しております品物の種類は約百万点をこえております。いま先生の御質問のような一般的な言い方で申しますと、現在大体二百五十種類程度の武器あるいは装備品を持っております。  概括で申しますと、火器類、たとえば小銃、機関銃あるいは大口径砲という関係で約五十種類、弾薬でそれに見合うもので約七十種類、艦艇が約二十種類という仕分けをいたします。航空機が約三十種類、車両が約四十種類、通信電子機器が四十種類、大体一般的な名称で申しまして二百五十種類程度の装備品を持っております。
  220. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 装備局長に伺いたいのですが、これから装備する四次防の特徴的な兵器はどんなものがありますか。陸軍と海軍、空軍、そういうところで。
  221. 蒲谷友義

    ○蒲谷政府委員 現在三次防期間中に開発に着手しましたものの中で、たとえば中型輸送機XC1とか、あるいは超音速高等練習機XT2、あるいは短距離地対空ミサイル、あるいは地対地ミサイル、これが大体四次防で完成しまして調達に入ってくるわけであります。  なお、四次防に入っての今後の新しいものにつきましては、現在検討中でございますけれども、先ほど防衛局長が答えましたAEW、いわゆる早期警戒機とか、あるいは地上支援戦闘機と申しますか、地上支援機とか、そういうものが今後の新しいものとして出てくるものではないか、そのほかに主として検討の対象になるのではないかと思われるものについては、小型のミサイル艇なども勉強する問題になるかもしれないというようなことが今日考えられます。
  222. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 現在海について言いますと、三次防後半における整備計画の中に、新型ターターというものを建造する、こういうふうになっておりますが、新型ターターというのは、私の調べではそれを長くしたものはテリアになる、そういうふうにいわれておりますが、どういうものを想定しているのか、また現在のターターは短距離でありますが、それだけの長距離のものが必要なのかどうか、その点について伺いたいと思います。
  223. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 ターターは「あまつかぜ」、に装備しているだけでございますけれども、先生のお尋ねはこの改修のことかと存じますが、「あまつかぜ」につけましたターターを三次防中の四十五年度に改修をする予定でございます。これは現在のが古くなりまして、スタンダード型のものにしよう、もちろん性能もよくなります。若干距離等も長射程になります。また、これは対空ミサイルでございますけれども、構造からいいますと艦対艦にも使えるという構造にはなります。しかし、用法としては対空ミサイルのつもりでございます。こういうものに改修をする予定にはいたしております。
  224. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 その新型になりますと、距離はどの程度なんですか。その距離は非常に長いように思うのですが、大体その距離というもの、あるいは新型というのはテリアと同じものですか。
  225. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 射程距離は現在おおむね十マイル程度のものでございます。これを大体四、五割程度伸ばす、こういう程度のものでございます。
  226. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 要するに新型ターターというのはテリアのことでしょう。それは日本でなくてアメリカにあるわけでしょう。
  227. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 テリアとは違います。スタンダード型のターターでございます。
  228. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 「世界軍事史」、これに出ておりますけれども、スタンダードミサイルというのは、要するに変えるということは、二十五マイル飛ぶということになると思うのですよ。要するに、いままでは短距離用でターターがあったけれども、これを長距離用に変えればテリアになる、またもう一つはスタンダードミサイルになる。これは現在もうすでにアメリカの艦隊に防空用として使われておるわけでありまして、こういう足の長い、また距離の長いものを装備するということになるわけでありますけれども、そういう点についてはどうなんですか。
  229. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 先ほども申し上げましたように、大体四、五割程度の射程延長のもの、そういう改修でございます。
  230. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 もう一つ非常に問題じゃないかなと思うのは、今度ファントムを購入するわけですけれども、そのファントムにスパロー、ファルコン、これがつくわけです。このファルコンの型は26BですかAですか。——いま調べておるようですが、その前に防衛局長、先ほどの新型ターターですけれども、これはスタンダードミサイルになりますと、核・非核両用のものだと思いますが、両用のスタンダードミサイルでございますね。その点も伺っておきます。
  231. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 わが方のは非核専用のものでございます。ターターには両用のものもありますけれども、海上自衛隊で採用しますのは非核のものでございます。
  232. 蒲谷友義

    ○蒲谷政府委員 先ほどお話しのファルコンにつきましては、現在予定されるものはAIM——4Dというタイプだそうでございます。  なお、参考でございますけれども、F4EJにつきましては、現在国内でAAM2型という赤外線ホーミング方式のミサイルを開発しておりますので、その開発が大体四十八年ごろに終わる予定でございますが、それを主として搭載するという考えでおります。
  233. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 最近の兵器というのは、両用というよりもむしろ通常の発射台で戦術核兵器は幾らでも撃てるという段階まで発展している。これはもう戦術的に常識になっていますけれども、私が一番おそれるのは、そういった足の長い、または非常に距離の長いものをつけることによって——防衛庁長官が国土防衛に徹するといいながら、近隣諸国やまた周辺諸国にいたずらに脅威を与えるような兵器は持つべきではない、こう私は考えるわけです。特に新型ターターについては、はっきりスタンダードミサイルとなれば、いままでの二倍半も飛ぶ足の長いものになることは間違いないわけであります。またファルコンにいたしましても、これはほとんど核・非核両用でありまして、非核専門といっても、普通の発射台でいまの戦術核兵器というのは撃てるわけでありますから、私は、そういった装備をする場合については、特に足の長いものは必要ではないのではないかと思うのですが、その点について長官から答弁を伺います。
  234. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は性能をよく知りませんが、いわゆる攻撃的兵器で他国に脅威を与えるようなものは装備しない方針であります。
  235. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうしますと、いま言った新型ターターなんというのは私は大いに脅威を与えるんじゃないかと思うのです。いままでは十マイル程度でしょう。それを二十五マイルのものに取りかえるということですけれども、その点はどうなんですか。
  236. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その程度のものでしたら、脅威を与えるとは思いません。
  237. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 先ほどお答えいたしておりますけれども、現在の射程は十マイル程度でございますが、改良いたしましたものは大体五割程度延びるであろうということを申し上げているわけでございます。
  238. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 しかし、名前がスタンダードミサイルとなれば、その性能の規格はあるわけでしょう。それがこの軍事史にちゃんと載っているわけですよ。ファルコンにしましても、いま聞いたのは24Bと言ったですか、あれなんかも射程距離はいままでよりも非常に延びておりますし、そういった意味においては、非常に足が長いものに変えることについては必要以上に問題になるのではないか、こう私は思っているから申し上げただけであります。いずれにいたしましても、そういったような兵器の国産化または今後の装備の問題については国民の前に明らかにしながら国土防衛に徹する防衛計画を策定していただきたい、そのことを申し上げておきます。  次に武器輸出について伺っておきたいわけですが、現在は武器輸出に関する三原則によって輸出が禁止されております。しかし、自由圏諸国に対してはある程度兵器類の輸出が自由であり、また少量ではありますが、行なわれてきたわけであります。その点について、兵器の輸出を行なわれた実態を簡単に伺いたいわけです。
  239. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 過去五カ年間の武器輸出の実績について御説明をいたします。  四十年度は金額で三億一千五百万円、四十一年度が二億四千二百万円、四十二年度が七千七百万円、四十三年度は五千九百万円、四十四年度はわずかに四百万円でございます。  おもなものは、タイ国の警察向けの小銃及びそれに使います銃弾が相当数出ておりますほか、アメリカ、イギリス、スイス、こういったところに向けました護身用の拳銃といったようなものがその内容でございます。
  240. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これは実績でありますが、そのほかに、日本の最近の兵器は非常に優秀でありますから、いままでに兵器を購入したいという照会が多々あったと思うわけですが、そういった照会のあった兵器とか、また国はどんな国でしょうか。
  241. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 最近そういう具体的な引き合いとか照会があったということは、通産省としては承知をいたしておりません。ただ、だいぶ前になりますが、四十二年ごろにブラジルの空軍から小銃を買いたいというような非公式な打診があったということを、メーカーから通産省に言ってきたというような事実があったようでございます。最近は、いま申し上げたように特別にそういう照会あるいは引き合いがあったということは承知をいたしておりません。
  242. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 日本の新明和工業がつくっておりますPS1のことについてですが、この輸出照会があったように報道がありましたが、その後どうなりましたか、その経緯について、また政府はそのPS1の輸出についてどんな見解を持っておるのか、あわせて伺いたいと思います。
  243. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 いま御指摘の新明和のPS1でございますが、まだ私どもとしては正式に、そういう引き合いでありますとかあるいは輸出の商談等が具体的に進んでおるというふうには聞いておりません。ただ、私ども承知しております限りでは、米国のコーストガードが、こういった飛行機を、PS1を改造いたしまして救難艇として使えないかというような話がメーカーのほうにあったということは聞いております。したがって、まだそれが一体どういうふうに改造されるのか、あるいは具体的にはじゃどういうふうに今後輸出の商談に進展するのか、こういったことについて、まだそこまで話がいっていないというのが実際の模様のように聞いております。
  244. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 現在のような経緯の中で改造して使うということになれば、政府としてはその輸出を許可する考えですか。
  245. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 これはその内容にもよりますし、また使う用途、相手方等にもよると思いますが、いま申し上げましたように、これを救命用の専門の飛行艇ということで改造がされ、もっぱらその用途に使われるとすれば、私どもとしては輸出を拒否する理由はないと思います。
  246. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 最後に防衛庁長官に伺いたいのですが、最近、中国をはじめ北朝鮮、ソ連、そういう国の方々が、日本アメリカとの安保体制、さらにまた沖繩返還に伴う日米共同声明を見て、従来以上に日本軍備強化について批判を強めてきております。これは国際緊張を高めるものとしてきわめて遺憾なことであると私は思っております。そこで、またさらに共産圏を刺激するような武器輸出というものは今後一切認めるべきではない、そういう基本原則でいくべきではないかと私は思います。その点について長官の所見を伺いたいわけでありますが、さらに通産省については、そういった武器輸出を禁止する法制化をしていく考えがあるかどうか、その点を伺っておきたいと思います。
  247. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 自主防衛原則として私が申し上げました線、私はこれを防衛庁の基本方針の中に組み入れまして、そして外国からは軍国主義だ何だかんだという誤解を受けないように、あくまで憲法に基づいて専守防衛に徹して、われわれは必要な限度の防衛力を整備していきたい、そのように考えております。
  248. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 わが国からの武器の輸出につきましてはこれを規制しておるわけでございますが、これはもっぱらわが国からの武器輸出によりまして国際紛争などを助長することは厳に避けなければならないという考え方に基づいておるわけでございます。こういった意味から、軍隊が使用いたしまして直接の戦闘の用に供せられる武器、こういったものにつきましては、従来からいわゆる武器輸出に関する三原則というものを明らかにしておるわけでございます。現在、この三原則にのっとりまして、外国為替及び外国貿易管理法並びにこれに基づきますところの輸出貿易管理令、これの運用上、いま申し上げたような、また従来から御説明しておりますような三原則に抵触いたします場合には輸出承認をしないということで、はっきりとこの方針を固めております。そういったことでございますので、特に武器輸出につきまして何らか特別の法制化は、いまのところ私どもは必要がない、従来の法律的な運用でもって三原則にのっとってやっていけば十分ではないか、かように考えております。
  249. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 たいへん長い間、お昼の時間も休ませないで質問いたしましたことを御了承願いたいと思います。いろいろまた基本的なことはございますが、また機会を改めまして長官質問したいと思います。本日は以上で終わります。ありがとうございました。
  250. 天野公義

    天野委員長 午後三時より委員会を再開することとし、暫時休憩いたします。    午後二時六分休憩      ————◇—————    午後三時二十分開議
  251. 天野公義

    天野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。和田耕作君。
  252. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 長官に御質問いたします。  御案内のとおり、現在日本は世界をまたにかけての経済大国になっておりまして、そういう点で、こういうことを基礎にして日本国民のしあわせという問題が確保されておる。今後、日本国民のしあわせという問題を考えても、この道をもっと広く深く開いていくということになろうかと思うのですけれども、こういうふうに考えてまいりますと、平和主義と申しますか、国際平和を何よりも大事に考える、あるいは平和なしには日本は生きていかれないというような状況に置かれておると思います。また、アメリカだけではなくて、ソ連中共とも仲よくしていかなければならないということにもなるわけでございまして、そのためには、日本はあくまでも民主的な国家というスタイルを堅持していかなければならない、こういうふうな命題が、好むと好まざるとにかかわらず、われわれの国家の基本的な一つのかまえとして出てきておると思うのです。そういうふうな、日本としての防衛の責任を持っておられる長官、午前中からのいろいろの質疑を通じて所信をお聞かせいただきました長官の姿勢が、きわめて平和的であり、民主的であるという点にたいへん安堵の念を抱いておるわけでございますけれども、そういう立場から、ひとつ二、三の御質問をいたしてみたいと思っております。  長官はこのごろあちこちでよく新聞記者会談とか講演会とかいろいろなところで発表されておられる、また世間の人も非常に注目をして、長官の一言一行を報道をしておるという状況なんですけれども、ずばずばとものを言う、あまり隠しごとをしないという印象を与えておるということは、非常に重要なことだと思っております。非常に好ましいことだと思っておりますけれども、そういう点で、ごく最近あったことで、ちょっとどうかなということが一つありますので、その問題からひとつお聞きしてみたいと思います。  例の「よど号」の事件ですけれども、私どもは、できるだけ板付で何とか解決をはかってもらうように努力をしてもらいたいと願っておったのですが、それがはかられなくて、平壌へ行くものだとばかり思っておったところが、京城の金浦の飛行場へ着いた。実は、私、あの報道を聞いてほっとしたのです。ほっとして、ああよかったな、あそこで何とかうまくとめることができればこれにこしたことはないなという感じを持ったのです。私は、たぶん日本国民の少なくとも半分以上はそのような感じを持ったと想像するのですけれども、長官は、そういう率直な感じはどういう感じをお持ちになりましたか。
  253. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私も、和田さんと同じようにほっといたしました。
  254. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私は、あのときに、私自身もほっとしたわけですけれども、政府もなかなかやるなと思って、気のつかぬことを計画して手を尽くしておるなという印象を受けたのです。しかし、その後、いろいろな国会の論議を通じて明らかになったことによると、政府は、中曽根長官もそういうふうに言明しておられたと思いますけれども、総理も、そして官房長官も、運輸大臣も、全然知らなかったのだ、平壌へ行くものだとばかり思っておったのだという答弁があったと思いますけれども、これはほんとうですか、どうですか。もういまになったらなんということはないと思います。この点について長官のお気持ちを聞かしていただきたいと思います。
  255. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ほんとうに平壌に行くものだと思っていました。
  256. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私こういう問題をお聞きするのは、あのとき何かあったのだろうと、いまでも、そういう疑問を持っちゃ悪いけれども、疑問を持っておるのです。平壌におりて何とかするようにということがあったとしても、一つもおかしくないのですね。それが、平壌、北鮮のほうに着いたとしても、それは何とかかんとかいうかもしれないけれども、何ともおかしいことではない。もしそういうことをおやりにならなかったとすれば、これは一つの手抜かりであったと私は思うのですけれども、あれよあれよといううちに京城まで行ってしまった、また板付を出るということもよくわからなかったというようなことでは、一つの手抜かりだったというふうに逆に思うのですけれども、その点どうでしょう。
  257. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あのことは福岡において片づけるべきことであったと思います。それが福岡でできなかったということは、日本側としては国際的に失態である、反省いたします。
  258. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 それに関連しまして、今後ともひとつそういうデリケートなように思われる国際関係、デリケートであればあるほど、ごく自然に率直な意見を今後ともひとつ長官に表明していただきたいと思います。これは要望しておきます。  もう一つの最近の問題は、昨日の日中貿易の問題、あの覚え書きの問題なんですけれども、これも、私どももあの文章を見て、おかしなことを言っているな、紋切り型という感じもするのですけれども、私ここで問題にするのはそのことではありません。長官も、四次防について、いろいろ前提、柱にして考えられる問題、いろいろ書いておられます。私も大体これは了承いたします。こういうふうになりますと、国の防衛というものは、自衛力だけではない。自衛力はむしろ従属的なものになって、もっと政治、外交あるいは経済の問題の総合的な対策というものが必要になってくる、そういう基本的なかまえを持っておられるようですけれども、これは正しいことだと思います。  こういう観点に立ちまして、さしあたり非常に重要な問題になるのは、台湾と中共に対する日本の基本的な一つの態度、これは非常に変化をしていくわけですけれども、それを予定しても、基本的な態度をどのように考えたらいいのかという問題なんです。これは、日本防衛、要するに四次防を立てる場合にも、何らかの仮定を置いても一応考えておかなければならない問題ではないかと思います。  たとえば、この覚書貿易で、佐藤内閣を強く批判をしておる。また、沖繩の返還なんというものはペテンである、こうもいっておる。こういうふうな問題について、自民党の党内でもいろいろ波紋があるようですけれども、しかも全体として私たちの受ける印象としては、いろいろなことをいっているけれども、しょうがないわ、まあ貿易をしておこうという印象のように受け取れるのですけれども、その点はどうでしょう。
  259. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは私見でございますが、やはり台北と北京が話し合いで解決すべき問題で、中国人同士の問題であると心得ます。
  260. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 今後、たとえばいま長官もおっしゃるように台湾と北京との二つの政府の当事者が話し合ってきめるべき問題で、日本は関知しないということは形の上からわかるのですけれども、しかし、その状態では、だんだんと処理ができなくなるという問題が出てくるのではないか、そういう感じがするわけです。たとえば、日本防衛という問題を考える場合に、台湾との状態をこのままにしておいて、中共からいろいろと言いがかりをつけられても、それはいま申し上げたように、何ぼやかましゅう非難されても、まあしようないわということで過ごしていったほうが、日本防衛という問題から考えてみていいのか、あるいはまた少しずつ台湾の問題について変化をして、日本防衛の問題として中共との問題を積極的に打開していったほうが好ましいのか、その二つの判断、その処理は向こう政府がやることですけれども、日本政府として、日米共同声明でも、台湾あるいは韓国の問題に日本は重大な関心を持っているということを言い切っておられるわけです。したがって、その問題を今後どういうふうにお考えになっておられるのか。つまり現状のままで台湾との問題を固定化して、しばらく四、五年はやっていくというふうなのが有利と思っているのか。この問題は少し流動的になっても、中共に対して積極的な姿勢をとったほうがいい、日本防衛という問題から考えて好ましいと思っておられるのか、その問題についての御意見をお伺いしたい。
  261. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いまのように台北政府と北京政府が分かれてきたというのは、それぞれの歴史的因縁がありまして、そういう歴史的現実というものはわれわれが否定しても否定し得ない事実として存在しているわけであります。したがいまして、話し合いによって現状が改革、改善されない限りは、現状を是認して、その上で政策が進められるという以外にはあり得ないと私は思うのです。そういう観点に立って、日本は事実として二つの勢力が存在するという上に立って、できるだけその国民に対して友好親善関係を深めていくという考え方が正しい、そういうふうに思います。
  262. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いまの状態は、たとえば中共のほうは日本の商品がほしい、日本と貿易をしたいという気持ちを非常にたくさん持っているけれども、ほしいものは友好商社の貿易でもって大体まかなっておる。だから覚書貿易の場合はたいしたことないんだということで、このやりとりは日本側に不利だと判断するのですけれども、いろいろきょうの新聞なんかで読みますと、アメリカ経済界のほうでも、中共との貿易をどんどん進めてくれという傾向が出てくる、あるいはヨーロッパ筋でもそういうような動きが出てくる。出てきても、地理的な関係からいって、日本は有利な立場になりますよ。どうしてもこれ以上交渉の立場としては不利な——日本中共との窓をどんどん開いていくことが必要だというよりも、せざるを得ないような状態になってくるということも考えられるわけなんで、こういうことについて、それ以上のお答えはむずかしいかもわかりませんけれども、もうそろそろその問題について考えるべき時期に来ておるというふうに私は判断をするのですけ訳ども、そういう点についてはどうですか。
  263. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国際関係を処理する場合には、よく国際法でディファクトといいますけれども、現実の事実あるいは現状、ステータス・クオということばがございますが、こういうことばはやはり人間の英知が生み出した、長い間の経験が生み出したことばでありまして、そういうものの上にあとは時間を重ねて自然に解決していくということを待つのがまずまず穏当な考え方ではないか、そういうふうに私は思います。
  264. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 その考え方の中には、現在の台湾との問題を強く維持していくという考えもなければ、つまり流動するのにまかしていくということですね、相手の問題なんだから。そういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  265. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この問題の中には、時間の経過というものが非常に重要な要素を占める、そう思います。
  266. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 それではその問題はその程度にいたしますが、次に核戦略の問題につきまして一言長官の所信をお伺いしたいと思っております。  現在の日本防衛の責任者として長官、率直に考えてみて、核戦争があるということを前提にして防衛計画は立ちますか。
  267. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 おそらくアメリカでもソ連でも、戦略的核兵器を使うことを前提にして防衛計画は完全にはできないと思います。かりに第二撃能力とかABMというものを持っておったとしても、何割かはその網をくぐって入ってくる、これは計数上からも出てきていると思うのです。したがいまして、戦略的兵器による核戦争というようなものは、これは防衛理論としては成り立たない、そう思います。それから戦術的な部面については、NATOあるいはワルシャワ条約の背景を見ると、おのおの戦略の要素が入っております。したがって、戦術的部面については成り立つのじゃないか、こう思います。
  268. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 日本核兵器を持たない、つまり非核三原則というものがあるわけです。これもいろいろ議論をされておりますけれども、私はこれは非常に賢明な政策だと思います。これは単なる言いわけとかあるいは当面の時間かせぎというようなものではないのではないかという気がいたします。と申しますのは、いま申し上げたとおり、アメリカなりソ連ならともかく、現に日本の場合に核戦争というものを予想しての防衛計画というものは立たないのではないか、こういうように考えるからでございます。  そこで私は一等初め申し上げたとおり、日本平和国家として世界のどこの国とも仲よくしていかなければ日本人のしあわせは得られない、世界をまたにかけて貿易をしているのですから。そしてどこの国とも仲よくできるような民主的な政府が必要である、この制約を申し上げたのですけれども、中共核兵器をもって、あるいはソ連核兵器をもって、日本の北洋漁業の問題にしてもあるいは台湾その他の問題にしても相当無理な注文をつけてくるあるいは戦争一歩前の強喝、おどしの政策をとってくるという事態がかりにあったとして、その問題に対して長官はどういうふうにお考えですか。
  269. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 現代は国際世論というものが非常に政治の重要ファクターを占めている時代になりまして、たとえばチェコ問題にいたしましてもソ連は相当国際世論を浴びて苦悩をしょってきておるだろうと思うのです。そういう点を見ると、武力によって自由を侵害するというようなことは、終局的に見てはたしてプラスかマイナスか、疑問の要素も長い目で見れば出てくるだろうと思います。そういうようなことはアジアの場合でもやはり出てきておるとわれわれは思いますので、必ずしも軍事力偏重ということでなくして、国際世論とかあるいは国家間のあり得べき正しい姿を道義的に歩むというような考え方が最も長続きする、最も賢明な安全保障政策になるではないかと考えます。
  270. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私はこの問題はほんとうに理屈では解決のできない問題だと思うのですけれども、日本の立場としてはどうしたらいいかということを考えた場合に、こういう問題がすぐ頭に浮かんでくるのです。これは五、六年前だったと思いますけれども、イギリスで核実験を全部やめてしまう、核実験をやめるということはつまり核開発をやめるということなんで、次第にこれは核兵器というものを凍結あるいは廃棄をしていくという前提がなければ、核実験というものはやめられないものだと思うのですけれども、あのときの論争に例のバートランド・ラッセルという人並びに一連の平和主義者、アインシュタインなんかもそうだったのですけれども、この人たちが議論を煮詰めていって、そうしていよいよソ連から核でおどかされるあるいは戦争で負けたときに降伏しても核兵器を持たないのかというふうに煮話めいた議論をしたことがありました。こういうふうな議論について長官はどういうふうにお考えになりますか。
  271. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 イギリスのそういう偉い哲学者はそういうお考えを持ったと思いますが、日本には日本固有の考えや固有の立場があるので、降伏してまでも、つまり自分たちの自由や正義を犠牲にしてまでも、そういう核兵器やあるいは軍事的どうかつ等に頭を下げるということは正しいかどうかははなはだ疑問であると私は思います。
  272. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 そういう場合は、この問題のつまりぎりぎりの決着の議論となれば、そうなっていくわけです。現にラッセルさんがそういう議論を、これは降伏の道を選ぶのだということを公言して、イギリスの世論からずいぶん反撃を受けたことがあるのですけれども、日本の場合はもっと大きな反撃の要素になる。ところが、私がこういう質問を申し上げるのは、そういう時期が、どうかつの程度もありますけれども、なきにしもあらずだということですね、それに近いような状態が。時期が来るというのでなくて、そういう状態が考えられるということなんですね。したがって、こういう問題を考えた場合に、核戦争なんてものはないのだ、こう割り切ってしまって、そして防衛計画を立てたほうが、気楽と言ったら失礼ですけれども、それ以外に、核戦争があるということを前提にしては防衛計画は立たないのですから、ないというふうに割り切ってしまって、日本はかせぐものはかせいでいく。日本国民の気持ちをしっかりさす、他の方法をもって考えていくというような考え方もあり得ると思うのですが、長官は、それは日本国民として感情的にそういうようなことはできない、こういうことなんですか。
  273. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ないと断定することは、これは神さまの立場になることで、人間の世界でありますから、ないともあるとも言えない。やはり非常に科学的に実証性やあるいは常識やそのほかを総合した、一口でいえば科学的と申しましょうか、そういう考えに立った判断を国民の皆さんにお示しし、その御理解を得るということが、結局長続きのするものになるのじゃないか、そう思います。右とか左とか割り切ることは簡単でありますけれども、それが真理に近いかどうかははなはだ疑問であります。
  274. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 実は私はこの問題を何年もいろいろと考えてみるのですけれども、たとえば太平洋戦争のときに、私どもはあのときパターン作戦にも出たり満州の戦争に出たりなんかして、いろいろな事情でいろいろなところにおったのですけれども、もし戦争に負けたら日本国民は全部全滅するのじゃないかという気持ちを持った。そういう非常にせっぱ詰まった気持ちを持っておったけれども、戦争に負けてしまうと何ということはなかった、たいへん苦労はしたのですけれども、なんということはなかったという一つの歴史的な経験を持っております。私自身は満州におりまして、そしてソ連軍が入ってきた。ソ連軍は社会主義の軍隊であるということから、少しはましだろうと思ったところが、たいへんな暴行、脅迫をやった。こんなことなら徹底抗戦をしたほうがよかったなという感じを私も持ちました。それがソ連に五年間捕虜にいっておると、これは日本の右翼のごちごちがソ連を攻撃しておったことばが一番当たっておるような状態であったことは事実です。事実だけれども、ソ連では、ソ連人としてはやはりけっこうにこにこ笑っているし、仕事もしているし、飯も食っている、恋愛もしているという、人間の生活らしいものがあるわけです。これはあんまり思い詰めるものじゃないなという感じを持ったことも事実なんですけれども、そういう意味で大東亜戦争の敗戦という問題を一つの歴史的な民族的な経験として考えた場合に、日本の本土では幸いアメリカが入ってきて、これが契機になってよくなってきたというふうな見方もできるわけです。そういうように、戦争の場合の敗戦という問題を、片っ方、原爆戦争という問題と対比させて考えた場合に、長官、先ほどの答弁では自由を奪われる、つまり共産軍にじゅうりんされるという問題をかりに考えても、この二つの問題をどのように評価したらいいのか、これについて私見でけっこうですが、ひとつお聞かせいただきたい。私自身わからないのです。
  275. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは個人の人生観の問題に帰着するのであると私は思いますが、私個人の考えでは、やはり時間の要素というのは非常に大事なことで、思い詰め過ぎてはいかぬ。この間も艦長の退艦の問題について、七生報国ということは死ぬことではない、生きて生きて生き抜いて国のために奉仕することだ。もちろん質問なさった方々も、この辺で一発気合いを入れておいてやれという意味で、ちゃんと意識して御質問なすったのだろうと私拝察いたしておりますけれども、そういう時間的要素をかなりものごとの中に入れて、そうして根強くものごとを実現していくという考えが大事じゃないか。それで、たとえば最近のいろいろな政治現象や思想的な問題を見ましても、共産主義やマルキシズムの系統の哲学というものは、人類の歴史を相手にした勝負をいどんでおるわけです。これはやはりキリスト教哲学の裏返しですから、精神弁証法を唯物弁証法に切りかえただけでありますから、したがって、歴史をかけた戦いというものだろうと思うのです。これは毛沢東の人民遊撃戦やあるいはレーニンや最近のソ連のいろいろなものの考えを見ましても、非常に長期迂回作戦をもって歴史をかけて戦ってきておる。柔道でいえば寝わざをやっておるようなものだと思うのです。ところが日本人というのは、ややともすれば寝わざが不得意でありまして、立ちわざで瞬間タッチで勝負をきめようというくせがある。ファシズムがそうです。ヒトラーでもムソリーニでも、柔道でいえば立ちわざで背負い投げ一本やって拍手させて前進させるという型の政権である。それだけ哲学的に非常に浅い。特にヒトラーの哲学のごときは、動物的哲学であって、きわめて衝動的な、人間性にそむいた哲学であると思うのです、血のミトスというような血族的なものをかりているやり方というものは、そういう点からして、やはりこのファシズムは負けるべき運命にあったと私は思います。そういう点から見ると、民主主義の哲学というものはかなり息の長いものです。そうしてやはり人間の中におけるハーモニーといいますか、予定調和というものをある程度信仰した哲学的な立場に立って、これはやはりキリスト教文明が背景にあるから非常に長いと思います。長いけれども、たとえばアメリカのダレスさんのような場合は、長いくせにやはり年が来ておるから、立ちわざをやろうとする。自分の生理的寿命と国や世界の政治的寿命と混合したという感じもありますね。あれはお年のせいだからやむを得ぬと思いますけれども、しかし、ケネディみたいに若くなると、寝わざに返ってきておる。ニクソンさんも寝わざに返ってきておる。そういう意味において、日本の政治ももうそういういろいろな経験を経て反省しなければならないのじゃないか。非常に息の長い歴史をかけて挑戦するという型の政治に入っていかなければいかぬ、そう思います。
  276. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 よくわかりました。  そこでもう一つお伺いしたいのは、これも私はそういう感じを持ったので、またわからない点もあるので、長官の気持ちをお伺いしたいのですけれども、この間のハイジャックの問題ですね、ああいうふうな形で乗客百三十何名を人質にして、そうして自分たちの間違った考え方を通そうとした。日本政府その他のジャーナリズムあげて人命尊重を第一にするということで対処して、いろいろ苦労なさって、結局は成功したということなんですけれども、今後たとえば、日本にそういう機密は現在ないけれども、日本防衛上致命的な情報を握られて逃げられたということを考えた場合に、もしそういう情報が向こうあたりに知られれば、日本防衛の問題について大きな損害を受けるという、そういうハイジャックがあらわれたときに、やはりそういう人道的な問題を絶対にして解決ができますか、あるいはしようと思っておられますか。
  277. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それはそのときの情勢に応じて、お客さんの問題とか国際関係がどう動くとか、あるいは機長やその他がどういう処置をとるとか、あるいは関係各国の動向とか、そういういろいろなファクターを勘案した上で最後に決断すべきもので、いま若干の想定で結論を出しにくい問題だと思います。
  278. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これは案外いろいろなばか者の全学連の諸君もおるわけですから、そう空の議論ではないと思うのです。やはり人命の尊重という問題と国益の尊重という問題とのぎりぎりのところのバランスのくずれるところがあると思うのです。こういうふうな判断をする場合が、今後も起こってくるという感じがするのです。私も実はあの飛行機のときに、乗客の生命という問題はあっても、あんなばか君たちをむざむざという気持ちが非常に強くするのです。しかし、そうは言っても、あれがほんとうになっておったらたいへんだなという感じもする。こういうふうな問題をどうして解決したらいいのかということについて、よくひとつ御検討をいただきたいと思うのです。たとえば、ちょうどあの時期に、ドイツのほうの大使はあれを断わって殺されたという事件がある。しかし、殺された事件について、あの政府の取り扱いがきわめて非人道的なことであるという国際世論も聞かない。ありますか。ドイツは非常に攻撃したのですけれども。そういう問題が一つあるのですね。国民的な感情があるということですから、これはただ単に一回勝負の人道的な問題ではない。人道的だということだけでは片づかぬ問題があるのだということをひとつよく御検討いただきたいと思うわけです。
  279. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 よく検討してみます。
  280. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 それで、防衛のいろいろな問題について若干御質問申し上げたいのですけれども、自主防衛という長官の発想のしかた、これは私ども非常によくわかります。私どももそういう発想のしかたをしております。自主防衛プラス安保という考え方、それを長官がオーソライズしていただいたということで、たいへんありがたいと思っておるのです。  こまかい問題は午前中御質問がありましたので省きますけれども、その中で、この法案でも問題になっている定員の問題があります。私どもは、昔の特務曹長、准尉をつくることに対しては賛成です。反対ではありません。しかし、定員の問題については、若干ひっかかるところが依然として出てくるのです。定員だけふやしても、いま欠員もあるのにという、説明をすればたわいのない疑問だと思いますけれども、こういう疑問も一つある。  もう一つは、定員の問題よりは、予備兵力の問題をもっと中心に考えていかなければならないのではないかということですね。この法案にも予備兵力の問題も出ておりますけれども、たとえば自衛隊を出た人あるいは自衛隊の学校を出た人、こういう人を将来の日本防衛力の要員にしていこうという考慮が足らないのじゃないか。むしろ、いろいろな新しい定員をふやすよりは、それをどうして確保していくかということにもっと焦点を当てて考えてみるべきではないか、こういうふうに考えているのですけれども、どうでしょうか。
  281. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その考えには同感であります。定員というのは、ある意味においては、ワクとも考えておいていいと思うのです。それで、定員の充員について、海で九四%、空で九六%というのは、外国と比べて非常に率がいいのです。陸が八七%というのも外国との比率におきましてそう悪いものではないようです。それで、その充員されていない部分の予算は給料として要らないわけでありますから、税金は国に返ってくるわけです。しかし、それだけのワクを持っておくということは、いざというときにそのワクを埋められるという可能性を持たしておくという意味におきまして、これは意味のあることでもある。そこで、あまり質のよくないものを充員させて九〇何%持っておるよりも、量は八〇%台であっても質ははるかにいいというものがあれば、実は定員の倍以上の力を持つということが考えられるのでありますから、そういうふうな考え方に立ってできるだけ質を強化するという方向に次の段階には行ったほうがいい。したがって、もちろん充足、充員のことも努力はしますけれども、それほど気に病んで、しりひっぱたいて、何でもいいから員数を合わせろというやり方はとらないつもりです。  それから、予備兵力というお考えは私も非常に同感でございまして、次の防衛計画においては空海陸にわたってそれを拡大していこう、そう考えております。
  282. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いままでいろいろ苦労して相当の国費を使って訓練をした、いろいろな学問も教えた、これが最後のところの歩どまりが非常に悪いということは、一応訓練しても出たあとは全然ほったらかしという状態だと、悪くとれば、何か申しわけに自衛隊を持っているんだというふうにもとれないことはない。予備兵力を設けるということについて、中曽根さんの四次防に対する、たとえば幕僚長には軍事参議官の地位を与えるというようなことを書いておると思いますけれども、自衛隊を出た者に対して、あるいは大学校を卒業した者に対して、具体的な何かの案がございますか。
  283. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私が考えておりますのは、予備自衛官を拡充するということであります。予備自衛官の中にはいままでの曹士だけではなくして、幹部も含めていきたい。それから私の講演に載っておりました軍事参議富みたいなものという意味は、相当年月をかけて国が養成して最高に近い指揮官として優秀な人たちを民間会社へ持っていってしまって、すぐ翌日から民間会社の社長のあとにくっついて自衛隊にあいさつに来るというようなことは、指揮統率上からもいかにも考えさせられるものがある。そういう意味において、そういう非常に大事な頭脳や指揮能力のある人は、やはり将クラスの予備自衛官というものをつくって、そして自衛隊にも協力してもらうようにして、そういう会社なんかにも行かぬようにして、ふだんは各部隊を見て回って査察するとか教育に力を入れて見てもらうとか、そういうような使い方があると思うのです。そういうやり方を私の一つのアイデアとしてこれから検討してみたい、こういうことでございます。
  284. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 わりあい数の少ない、相当高級の技術的な指揮官についてはそういう扱いはできると思いますけれども、一般の自衛隊の隊員に対しては何か具体的な腹案がございますか。
  285. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 予備自衛官の定員をふやして——これは予算との見合いがありますけれども、いざというときの後方要員あるいは補充要員としてとっておくということは、防衛力のために非常にプラスになるだろうと思います。これをすぐ民間へ返して罠間に染まってしまって、彼らの愛国心がだんだん薄れていくというのではもったいないし、国としても税金の使い方から見て、いざというときには奉仕できるようにしておくほうが国民の希望にも沿うのではないかと私は思います。
  286. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 それから、けさほど菊池委員の御質問の中にあったのですけれども、私は非常に反対な面と賛成な面が一つあるのです。  反対な面は、おがんでもいいからアメリカにくっついてというああいう考え方というのは、あの人は自民党でもタカ派だと思うのですけれども、タカ派にも似合わず、アメリカにくっついていけという点では、たいへんおがむようなところがあるような感じがする。これは絶対反対なんですけれども、防衛大学の卒業生ですね、ああいうふうにお金をかけて、しかも普通の大学生と同じような能力を与える教育をして、しかも自由意思にまかしてというああいう考え方、あれは何とかならぬものですか。
  287. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は私もかねがね考えているところでありまして、一人四百万円も金をかけて養成しておるという情勢でもあり、もし可能ならば防衛大学卒業後二年とか三年は自衛官として国のために奉仕する、そういうことができないものか。私は、入学試験をし、そして防衛大学学生に採用されるときの本人との契約の内容でそういうことができるんじゃないか、卒業後は二年とか三年は自衛官として奉仕する、それが契約の一つの約款としてある場合には、憲法上の問題にはならぬのじゃないかという気もするのです。そういうことが可能であるかどうか、検討させたいと思っております。もし可能であるならば、そういうふうに改革していきたいと思います。
  288. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 あの内容を見ますと、大学生の生活をしておる四年間というのは相当の俸給もあるようだし、そしてたいへんな金をかけて特殊な教育をしているわけですから、当然そういうふうな見合いの奉仕の期間があってしかるべきだということですね。これは憲法のどういう条項と問題になりますか。
  289. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 職業選択の自由という項目がございます。しかし、あの憲法の、項目は、それが強制されるという場合に問題があるだろうと思います。契約でやるという場合には、その憲法条項をはずれることができるんじゃないか、自由意思によってそういう道を選ぶということでありますから。という気がしろうと論議でございますが、私はしておるのです。そこで、それを法制的にもよく検討してみたいと思っております。
  290. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私どもは全般として、日本の現在の状態として、ただ数をふやすということは賛成できません。ただ、質を考えていくということについては大いにやってもらいたいという感じがするのです。そういう点から、中曽根長官の真に民主的な、そして平和的な基本姿勢のも之で、むずかしいいろいろな矛盾した条件がありますけれども、そういう量よりも質の問題を考えていくんだというふうに、ひとつお考えいただきたいと思うのです。  そういう面からもう一つの問題を御質問してみたいと思うのですが、技術の問題です。たとえば防衛庁の、技術本部というのですか、幾つかあります技術本部というこの体制は、たとえばアメリカから新しい兵器を買ってきた、それを分解して研究をする、そしてアメリカのいろいろなパテントを買ってきて、そのパテントを媒介をして会社に注文するというような能力を自衛隊内部で持っておりますか。
  291. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 政府委員から答弁せしめます。
  292. 蒲谷友義

    ○蒲谷政府委員 現在の技術研究本部では基礎的な研究をいたしておりますのが中心でございますが、部分的には先生御指摘のような問題もやっております。大きなプロジェクトは大体民間企業に導入して一緒に勉強するというかっこうになっております。
  293. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 では、技術本部には、民間の機関係の兵器をつくっておる会社から特別の形で技術本部へ出仕して勉強するという形ですか。
  294. 蒲谷友義

    ○蒲谷政府委員 現在民間会社から技術研究本部のほうへ出向しておるという形はございません。ただ部分的に、試験をする場合なり、あるいは設計する場合なりについて、民間企業の技術を、援助と申しますか、その人を頼んで一緒に仕事をしているという姿はございます。また、場合によっては技術研究本部の職員が民間企業に勉強に行くという姿がございますけれども、出向という形ではやっておりません。
  295. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 現在技術本部ではそういう一人前の能力を持った技術者は何人くらいおりますか。
  296. 蒲谷友義

    ○蒲谷政府委員 現在定員千二百五十名の中で七百二十五名が技術者でございます。
  297. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 その人はどういう経歴あるいは資格の人ですか。
  298. 蒲谷友義

    ○蒲谷政府委員 大体大学の技術系統の学部を出ておるということでございます。
  299. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 大学の技術系統の学部を出て、そうして防衛庁の技術本部につとめるという人が大部分ですか。
  300. 蒲谷友義

    ○蒲谷政府委員 先ほど申しました七百二十五名はそういう人でございます。
  301. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 そういうことだと、最近のような状態になると採用するのに非常に困難じゃないですか。
  302. 蒲谷友義

    ○蒲谷政府委員 実は定員の関係でなかなか人はふやせませんが、募集いたしました場合の応募者は、非常に質もいいし、量も多く参ります。
  303. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 技術本部でやっている新しい製品を開発するという仕事は、その中でどれくらいのウエートを占めておりますか。
  304. 蒲谷友義

    ○蒲谷政府委員 現在の日本の実態でございますけれども、五つの研究所と五つの試験所、そのほかに開発系統が四つの開発部門を持っております。概略申しますと、その研究所のほうでは基礎的な研究、特に民間の研究では成果を期待できないような特殊な研究、それを中心にいたしております。そのほかに、開発というかっこうで進みます場合の設計をし、計画をする段階の基礎データを集める、できました開発というかっこうにまいりましたものの試験なりあるいは審査なり評価なりということをするということが、大体いま申しました研究部門でございます。いわゆる開発という関係につきましては、いま申しました四つの開発部門がございまして、それが民間に設計、試作を委託するということで、民間の企業の技術あるいは防衛庁外の研究機関の技術内容を勉強しまして審査をし、それを総合して新しい開発プロジェクトをまとめていくというかっこうの仕事をいたしております。
  305. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 そういう基礎的な開発の研究をやるといっても、たいして設備がないでしょう。
  306. 蒲谷友義

    ○蒲谷政府委員 いま五つの研究所、五つの試験所がございますが、もちろん十分とは申しませんが、一応の設備は持っております。
  307. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 たとえば三菱重工とかあるいは民間の有力な兵器をつくるところに防衛庁の技術者が出張っていって、そうして出向するようなかっこうで、あるいはまた向こうのそういう担当の技術者が事実上防衛庁の準職員のようなかっこうで、そういう有無相通ずるような関係は現在できておりますか。
  308. 蒲谷友義

    ○蒲谷政府委員 現実の試験なりあるいは審査なりというかっこうでの先生のおっしゃるような交流はいたしております。たとえば、現在民間企業にもないような航空機関係の試験設備あるいは艦艇、船舶関係の試験設備、そういうものを持っております。そういう関係で一つのプロジェクトと取り組む場合、民間の技術陣と防衛庁の技術陣とが前向きで協力し合うという関係の交流はいたしております。
  309. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 全体として民間の技術者——兵器をつくる、兵器を開発する、兵器を改良するというこの仕事における防衛庁の中の技術陣と関連の民間のほうの技術陣とのウエートは、どちらに大きなウエートがありますか。
  310. 蒲谷友義

    ○蒲谷政府委員 開発する場合には、民間の技術陣のウエートのほうがはるかに大きいと申し上げていいと思います。われわれといたしましては、現在はそういう民間の技術を審査し、評価する力を中心に持って、全体的なプロジェクトを総括していく技術を持つという方向で勉強をしております。
  311. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これは長官にちょっとお伺いしたいんですけれども、世上、天下りとかいろいろな問題があります。しかし、いまお聞きになるような状態、防衛庁の技術本部というものは内容、量、質ともに非常に私は力が弱いんじゃないかという感じがする。こういう場合には、やはり民間のそういう技術を動員するということが必要になってくる。こういう問題が、当然やらなければならない問題が、しかも天下りとかあまり癒着するとかいう批判をおそれて、そういう問題もできないというようなことはないですか。
  312. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 若干はあるだろうと思います。
  313. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 ちょうどいい人が長官になっておるわけですから、あけすけに問題を国民の中へ出して、こういう必要があるんだ、そのためにこうするんだということをひとつあけすけに出してもらいたいと思うのです。そのほうが結局、多少論議はあるし、いろいろな批判もあるだろうけれども、むしろ間違った、妙なやみでこそこそというようなていさいだけつくろうようなことがなくなって、平和国家における日本のまともな防衛が確立していく道だと思う。いろいろ世評をおそれて、やらなければいかぬことまでやらないということが一番いけないんで、そういう点をひとつぜひともお考えいただきたいと思います。  私、質問を終わります。
  314. 天野公義

    天野委員長 佐藤文生君。
  315. 佐藤文生

    佐藤(文)委員 関連して長官質問します。  防衛大学の学生がこの前参りまして、学生の中に自治会があるかどうか私わかりませんが、学生が仲間で、こういう講師あるいはこういう政治評論家、そういったような方々を呼んで十分に話を聞きたい、こういう計画をしましたところが、なかなか許可が得られない、こういうことがありました。そこで私は、この四年間の間に、やはり学生の希望するような、思想を超越したこういう人の話を聞きたいというような意向があった場合においては、ある程度自由に聞かせるべきじゃないか、こう思うのですが、どういう考え方で、学生の希望する講師あるいは政治評論家、そういったものをチェックしておるのか、それをお聞きしたいと思います。
  316. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は、方針としては、いま佐藤さんがおっしゃったような考え方でやっていきたいと思います。特に防衛大学に行ってみまして、急に彼らの宿舎に入って本だなを見てみましたら、文化科学系の本がわりに少ないのです。理工科の大学ということですから、文化科学の本が少ないのは多少やむを得ないでしょうが、司馬遼太郎の本が少しあるくらい、あとはナポレオンの戦略とかそういうのがわりに目につきました。そこで、やはり広い社会的視野を持たせ、人間的情操をたくわえさせるというのが、あの年ごろでは非常に大事なことでありますから、その点で持に力を入れるように私は学校長にも言ってまいりましたけれども、いまおっしゃったように、学生が自発的にそういう欲望を持って相談に来ることについては、できるだけ相談に乗って彼らの満足を与えてやることが大事だと思います。  具体的には、人事教育局長に答弁させます。
  317. 内海倫

    内海政府委員 まことになんですが、そういう事実、私聞いてないのですけれども、もしそういうふうな事実があったりいたしますれば、いま長官が申しましたように、積極的にそういうふうな面は許可をして、どしどし講師を呼んで視野を広げる、あるいは知識をふやすということが必要であろうと思います。ただ、いままで私聞いております限りでは、かなり広範な範囲の人、したがって、ごく一般的に考えれば防衛大学校と必ずしもそぐわぬと思われるような人でも、呼んで話を聞いておる例もあるようでございますので、今後もそういうふうな積極的な空気をつくらせるように、私ども大学のほうの指導をいたしたいと思っております。
  318. 佐藤文生

    佐藤(文)委員 学生の中で、新聞と申しますか学生の仲間でつくっていく新聞、あるいはお互いに趣味としていろいろなものを発表し合うそういったような広場の新聞をつくりたい、こう考えておるけれども、学生だけではそういう金がない、学校に言っても出してくれないということで、若干の資金を応援してくれないか、こういう話もありました。それは応援するのもいいけれども、できれば学生の仲間だけで資金を集めてやるべきだ、こういうぐあいに私は指導しておきました。そのときに、具体的にわれわれが左翼的だと考えておる評論家も呼びたい。私はいいと思ったのです。ところが具体的にそれがチェックされたということで、そういったような希望がかなえられずして、今春卒業して現地の部隊に行ったわけでございます。私は、戦争中に、予備士官学校の区隊長をいたした経験があります。そのときに、絶対に軍事学以外に、軍隊専門の書籍以外に読んではならぬという強いあの当時の指示があったときに、ひそかに自分の好きな独法なら独法を陰に隠れて読んでおった若い学徒出陣の学生の姿を見てきたわけであります。したがって、防衛大学のそういったような若い学生諸君の望むところはある程度認めてやるべきだと私は考える。また、新聞の発行とかそういうような希望があれば、ある程度学校から応援をしてやる、学生自身も金を出す、そういう姿でやっていただきたい、こう私、お願いを申し上げておきます。
  319. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 防大生などには特に免疫性を与えることが非常に大事だと思います。そういう意味では、他流試合というようなのは腕前をあげるのに非常にいいわけですから、そういうチャンスもつくってやりたいと思います。  なお、クラブ活動等は、これは自分の金でやるのがまず原則でありますが、非常に有益なことで学校が援助することしかるべしというようなものは、援助できるようにしてやりたいと思います。
  320. 天野公義

    天野委員長 鬼木勝利君。
  321. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 防衛長官にちょっとお伺いいたしますが、これは先日社会党の大出さんからも御質問があっておるようでございましたが、いささか私は長官の御答弁に対して納得がいかない。その問題は、防衛大学の去る三月二十一日の卒業式において、校長先生が軍人勅諭は現在でも軍人の基礎的な徳目である、こういうことを強調されております。これに対して長官は、先日、いささか私が不満に思うところは、あれは徳目を述べたのであって、とがむべきではない、こういう御答弁があった。非常に進歩的な新感覚を持っていらっしゃる中曽根防衛長官がこういう御答弁をなさったのに対しては、いささか私は不満であります。今日、日本に軍人は存在しておらないわけなんです。それを、あれは徳目だからさしつかえないというようなことを簡単に御答弁なさった。その点に対して、私はもう一回防衛長官のお話を承りたい。
  322. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私はあの演説を全部聞いておりましたが、演説全般としては不当なものではない、そう思っております。ただ、あの部分は軍人勅諭ということばも出ましたし、軍人道ということばも確かに出ました。出ましたが、彼が言わんとしていたことは、軍人勅諭の徳目ということを強調しておったのです。つまり、一、軍人は忠節を尽くすを本分とすべしとか、礼儀を正しくしろ、信義を厚くしろとか、そういう徳目について言ったので、そういう点においてはやはり礼儀を正しくしたほうがいいし、信義を重んじたほうがいいし、そういう徳目においては間違いないと私は思うのです。その徳目について、これから修養する場合に、昔、軍人勅諭にあった徳目自体は内容としてはいいものだから、みんな考えて実践したらどうか、自分はそう思う。そういう趣旨のことなので、軍人勅諭そのものではないのです。朕はなんじらの大元帥なるぞ云々ということを言っているのではない。だからそういうバーチュー、徳目という面について彼が強調したことは彼の自由であって、それは校長としての自分の人生観であり、見識でもあると思うのです。私はその自由まで拘束する考えはありません。  それから軍人像ということばが出ましたが、あれが言わんとしたのは人間的軍人像ということばを言うて、人間的ということばがあったわけなんです。あれは人間的自衛官像というのが正しいことばです。しかし、あの人はボキャブラリーが少ないものだから、つい軍人像ということばが出てしまったので、言わんとしているところは人間的ということであった。硬直したものであってはいかんぞ、情味もあり、情操もあり、あふれるばかりの愛情のあるいい人間になれよ。そういう意味の人間的を強調したのでありまして、その点は情状酌量しかるべし、そう考えたわけでございます。
  323. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 長官が校長先生をかばわれることばけっこうですよ。私もあなたの立場であったら、そのようにかばうかもしれません。だがしかし、長官はこういうことをおっしゃっているのですよ。「昔の陸軍省とか海軍省という考えは一切捨てるべきだと思う。それは世界の情勢や国家のあり方が、昔とまるっきり変わってしまっている。そういう認識の転換をまずしなければいけない。」はっきりあなたはおっしゃっておるのですよ。最近ですよ。四月にそういうことをおっしゃっている。「時の動き」の座談会でそういうことをおっしゃっておる。私も、あなたのおっしゃるように、軍人勅諭の精神は、なるほど旧軍時代は軍人像形成として、そのよりどころであったと思うのですよ。しかし、今日はもう少なくとも軍人はいないのである。しかも、徳目であるから差しつかえないという長官のおっしゃることに対しては、いやしくも防衛大学の卒業式において、菅の徳目を——現在の防衛大学の卒業式に、将来日本防衛をになっていくところの幹部に対して、新しい国土防衛の自衛官像の、いわゆる人間形成の徳目は私はあるはずだと思うのです。せっかく自衛官の進むべき新しい徳目があるのに、ことさらにそういう軍人勅諭を卒業式に持ってくる。ここに私は不満がある。現在の「自衛官の心がまえ」という徳目が厳然としてここにあるわけなんです。それによって今日まで長い間自衛官は育ってきておるわけなんだ。「使命の自覚、個人の充実、責任の遂行、規律の厳守、団結の強化」という、自衛隊の心がまえという徳目があるわけなんですよ。これを卒業式で校長がおっしゃったというならば、私どもはうなずけるのでありますが、わざわざ古い——長官もそういうことはいけないとおっしゃっているのだ。だから私の考えは、じゃ自衛隊の徳目はいつ軍人勅諭にすりかえられたか。自衛隊の教育方針であり、指導方針である、昔の軍人勅諭に匹敵すべき「自衛官の心がまえ」という大事な徳目がいつから変わっておるか。私は自衛隊を攻撃しているのではありません。この自衛隊にはりっぱな五項目の徳目があるわけでございます。卒業式のときに、校長として、かねがねわれわれが教育したこの五項目の徳目に対して、この精神でしっかりがんばっていけよという告辞、訓辞であれば私はけっこうだと思う。そういうことを一言も言わないで、軍人勅諭を出す。もっと極論しますならば、この校長は現在の自衛官への五項目の徳目に不信ではないか。そういう考えで自衛官を教育されたのでは、長官のお考えから遠く離れていくのではないか、私はそれを憂えておるわけなんです。本質的にこれはよくないと私は思います。何回も言いますけれども、部下をかばわれることは非常にけっこうです。それは何かの機会に話のついでに、昔の軍人勅諭の精神もよかった、そういうことをおっしゃるのはそれはまた別でございますけれども、そういう点の見解は、長官はいかがでありますか。
  324. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あのときの演説をちょっと読んでみますと、こういうことを言っておるのです。「諸君の目標である新しい時代の軍人像を考えるには、旧軍人像はどうであったかを知ることが大切です。明治以来終戦に至る間の軍人像を一がいに論ずることはきわめてむずかしい問題ですが、それが明治十五年の軍人勅諭を離れて考えられないことは何人も異論のないところと思います。軍人勅諭には、忠節、礼儀、武勇、信義、質素の五つの徳目が掲げられています。私は、これらの徳目は今なお軍人の基礎的資質であると考えます。しかし、軍人像も時代の変遷によって変化すべきものであることは申すまでもありません。旧軍人像は軍人勅諭を中心とし、天皇の絶対主権と富国強兵の国是のもとに次第に形づくられたものであります。こういう背景を持った軍人像は一言にして言えば、忠勇な軍人ということでありました。その本質は変わらないとしても、時代が移って満洲事変以降においては、かなり様相が違ってきました。非常事態下、ことに敗戦時においては、異常な軍人像がわれわれの印象に残った事実を否定できません。率直にいえば、それは人間疎外の戦闘的軍人像とでも評すべきものでありました。国運をかけた大戦争と大量に動員された未教育者によってかもし出されたものかもしれません。軍人には任務遂行上必要な特殊の資質が不可欠なことはいうまでもありません。最近、科学技術の急激な革新に伴って国防に対する考え方は、変わってきました。国防の本義はまず、戦争の阻止、抑制を目的とするようになりました。また、国防任務達成は単に武力の行使のみによっては不可能になりました。高度の防衛に関する技術のほか、政治、経済外交等の分野にわたる広範な知識、技能を必要とするに至りました。軍人の傭うべき資質は昔日の比ではありません。したがって、職能的資質の変化に従って軍人像が変わることは当然であります。」云々とこう言って、「しかし、旧軍人像に対比し、新しい軍人像を考える場合には職能的特質の変化のほかに一つの重要な問題があるのではないでしょうか。私は、国民の期待にこたえる新しい軍人像は、人間性の尊重こそその基調でなければならないと考えます。りっぱな軍人は、まずりっぱな人間であり、良識のある社会人でなければなりません。」云々と、こう言っているのです。ですから、言わんとすることは私らも了解できるところなんですが、ことばが少し不用意であった、そういうふうに私思いまして、この程度ならかんべんしてやってくださいとお願いするものなんです。
  325. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 中曽根長官はなかなか度量の広い方だから、部下をかばわれることはけっこうであります。いまお読みくだすったのも新聞に載っておりますから、持っております。わざわざ読んでいただきまして御苦労さまでありますが、持っております。それは長官のおっしゃるとおり、私もおっしゃっていることはわかるのですよ。しかし、何を好んで卒業式にそういう昔の勅諭はこうであった、ああであったということを言うのか。そして現在の自衛官の心がまえの徳目には一言も触れていない。何をもってことさらにそういう昔の軍人勅諭を謳歌するようなことを言うか。現在の心がまえの五項目の徳目と軍人勅諭の五つの徳目、いつそういうことをすりかえたのか。言いかえれば、自衛官の五項目の徳目に対する不信ではないか。防衛庁の幹部諸君の中に現在の自衛官の行くべき道に不信を持っておるものがおるのではないか。これはとんでもないことだ。私はその点を長官にお尋ねしておるのですよ。そういうことになりますと、長官は非常に進歩的なお考えを持って、度量も広くてあれですが、よしよしではだめだと私は思う。引き締めるべき点はきちんと引き締めていただかないといかぬ。そういう点を私はお尋ねしているのです。
  326. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先月でありますか先々月でありましたか、この御質問が一回出まして、翌日本人を呼びまして、厳重に注意をしておきました。今後とも戒めてまいりたいと思います。
  327. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そういうことをこの前おっしゃらなかったものですから、私また念のためお尋ねしたわけなんです。校長の大森さんも私はよく存じております。あの人は少しやはり封建的なところがありましてね。時代感覚は多少ずれている人なんです。だからそういうところはやはりきびしく指導していただかないといけない。先ほどからもお話があっておりましたように、防衛思想に対しては広く国民に知らしめていく。長官がおっしゃっておりましたように、涼み台で将棋を打っている熊さん八さんまで防衛論がわからなければならない、こういういいことをおっしゃっていただいておりますけれども、一面封建的なことを言って、大事な卒業式に、昔の古い思想で、これもよかった、しかしいまはこうだなんと言う。それだったら前によかったということを言う必要はありません。そういう点は進み行く防衛政策に十分心すべきことではないか、私はこういう点で長官の御見解をあらためて承ったわけであります。それで一応ケリがついておるということになれば、私の質問の趣旨はもうそれで……。  次にお尋ねいたしたいのでございますが、安保の問題でございますけれども、去る三月二十六日でございましたか、防衛三法について私は本会議総理並びに長官に御質問いたしましたところが、長官は「日本は、核兵器はもとより攻撃兵器はもてない現状で、核抑止力はやはり米国に依存するしかない。したがって、日米安保体制は、半永久的に必要だと考える。」このように答弁をされておるのであります。そこで新聞がこれを取り上げまして、「変化した長官の判断」という見出しで朝日にいろいろ載っております。長官新聞はごらんになったかと思いますが、ちょっと読みましょう。「中曽根防衛庁長官が二十六日の国会答弁で「日米安保体制は半永久的に必要」と発言したことは、一般に奇異な印象を与えた。というのは、長官就任前の昨年秋、日米関係民間人会議などで「一九七五年ごろには安保条約を解消して、新しい日米関係を……」と〃安保解消論〃をぶち、波紋を起したことがあるからだ。君子ヒョウ変ともとれる変化だが、中曽根氏は長官就任時の記者会見などで〃安保解消論〃について」云々とこういうふうに書いてございます。あとは御存じと思いますが、こういう点について、先ほどから申しますように長官はこれを国民に広く知らすべきであるとおっしゃっておりますが、国会議員のわれわれでさえも奇異に思って、ふしぎに思っておることが、一般の熊さん八さんにどうしてこれが徹底周知できるかということです。防衛政策に対してはもう少しはっきり長官のお考えをおっしゃらなければ、これはみなあなたに対してとても不信を持っております。  たくさんございますが、これも「時の動き」です。これは司会者があなたに対して尋ねておることですが、「日米安保条約と一ぺん断絶しないことには、日本人の精神的な独立は考えられないんだ、七〇年代のしかるべき時期に再検討する必要があるというふうにおっしゃっておりましたけれども、そのお考えはいまでもお変わりないわけですね。」これはことしの二月です。こういうように司会者がお尋ねをしましたところ、長官はこのようにお答えになっておる。「個人としては、その考えは変わっておりません。」ことしの二月ですね。「しかし、政府の機関でもあり、党の党議というものもありますから、それと調整しながら、また相手の出方や客観情勢を見ながら、これまた合意でなければやれないものですから、そういう点を考えながらやっていきたいと思います。」こういうふうにおっしゃっている。ここで私はますますもってふしぎに思う。「個人としては、その考えは変っておりません。しかし、政府の機関でもあり、党の党議というものもありますから、それと調整しながら、また相手の出方や客観情勢を見ながら、これまた合意でなければやれないものですから、」こういうふうに御答弁なさっている。この説明をひとつお願いしたい。
  328. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私の考えは少しも変わっておりません。新聞その他に報道されることが断片的でありましたために誤解を生んだのはまことに残念であります。私は二年前の夏、われわれの新政同志会の青年講習会をやりました。それから去年はたしか七月に日経連の財界セミナールが富士のすそ野でありまして、そのときもやりました。九月一日に同じくわれわれの同志会の青年講習会で約一千人ばかりの青年に言ったことも、それから九月の、いまの日米民間人会議で言ったことも、みんな同じことを言っているのです。ただ何と申しますか、象をさわるように、鼻をさすったり足をさすったりして、これが大蛇のようだとかなんとかという、そういう感じがしなくもないのです。これは私が体系的に全貌を大衆の前に全部露呈する機会がなかったからそういう誤解を受けたので、私の不徳のいたすところでありますが、こういう考えを言ってきたわけです。つまり安全保障条約というものは時代とともに変わっていくものだ。それで日本も初めは戦争に負けて、軍は解体されてゼロであった。そして昭和二十七年に独立し、安保条約が結ばれたけれども、日本はゼロであったからほとんどアメリカに依存して、そのために安保条約行政協定も不平等であった。しかし自来自衛隊ができ、だんだん国力も回復してきて、何とかして米軍をできるだけ早く撤退させ、かつ条約を平等に直そうと国民努力し、自民党も努力した。そうして昭和三十五年に至って、その第一回の改革のときが来て、安保条約改正され、行政協定改正され、そしてたとえば内乱出動条、項というような恥ずかしい条項は削除され、あるいは十年の再検討の期間が設けられ、あるいは行政協定は改革されて、裁判権日本に戻り、NATO並みになった、あるいは事前協議条項というものがつくられて、日本発言権は回復した。そういうようにこの三十五年の安保改定というものは新安保条約に変わったわけですけれども、一歩前進である。そしてアメリカの軍はほとんど全部撤退して、陸軍はほとんどなくなった。そこで今度は十年たって、その再検討のときが来て、今度は自動延長になる。そして一年の予告でいつでもやめられるという体制に変わってきた。これはやはり経済力の回復と日本発言権を回復し、日本自分防衛しようという努力がだんだん実ってきた。こういうふうに変わってきた。そして一年の予告でいつでもやめられるというふうに踏み切って出てきた。私はこれがいいと思っている。自民党内には十年間固定延長せよという意見もあるけれども、われわれ大反対して、この考えをつぶしたのだ。なぜならば、もう十年間アメリカにおぶさるという根性にしておいて、どうして青年に独立心がわくか、民族独立の精神がわくか。だから一年の予告でいつでもやめられるという潜在的危機状態をつくっておいて、初めて日本人や青年に民族独立の精神がわいてくる、そういう環境をつくって、あえて裸で飛び出そうという考えに立って、自動継続を主張し、そういう方向に変わってきた。喜ぶべきことである。そして今後はどうすべきかといえば、おそらくこの自動継続によって精神もだいぶ変わってくるし、七二年に沖繩が返還されれば、沖繩の返還というものは必ずしも日本防衛領域が量的に拡大するというだけでない、質的な精神的変化も入ってくると私は思っておる。言いかえれば、サンフランシスコ平和条約の敗戦条項が一部分これで消えるということでもあります。そういう意味において、日本人の精神的な変化もある。それからさらに経済力が回復して、七五年ぐらになればおそらくGNPが四千億ドルくらいになるだろう。そうなった場合には、おそらく汎太平洋の地域は、ほとんど日本防衛しなければお互いに生きていけないという体制になってくる。そうなった場合は、経済というものはややもすれば人心をゆがめたり、民族を傷つけたりする。アメリカでも、ニクソンがカラカスへ行ったら、トマトをぶつけられたり卵をぶつけられたりする。日本はいままで賠償で維持してきたけれども、経済的にほっておくと、醜い日本人とか、あるいは成り上がり者とか、日本人はまだ国際的なそういう教養ができていない。そういう意味からも経済の傷をいやす政治プログラムが必要だろう。さもなければ華僑が南方でいやがられるように、日僑ということばが出てきていやがられる。そういう意味において、アジア太平洋にわたって、日本日本独自の政治プログラムを用意して、そういうものに対する治療薬も持っていかなければいかぬ時代が必ず来る。そういうふうにいった場合に、日本アメリカとの関係がいままでの比重でよいか。経済的に見ても、これからの大問題は経済的な衝突になるだろう。日本が四千億ドル経済になれば、貿易のバランスは転倒していくであろうし、安全保障以上に経済の対立や何かをわれわれは心配しなければならぬ。そういうふうになってきた場合に、安全保障という問題をそのままにしておいていいかどうか、疑問な時代が来るかもしれぬ。しかし、日本アメリカが相互に提携し、基本線において相共同していくということは、太平洋の平和のために一番大事なことだ。われわれは明治以来の経験において、太平洋が荒れたときぐらい日米の不幸はないし、アジアが動乱に巻き込まれるときはない。一番大事なことは太平洋を平和な海にしておくということであって、そういう意味において日米がしっかり提携していくということは、われわれはもう永久的といっていいぐらいの基本的国是であり、世界の平和に貢献することにもなるだろう。安全保障条約というものはその一つの手段でもある。しかし、そういう安全保障体制というものは続くだろうけれども、内容は変わっていくだろう。それは安保が変わってきたのを見ればわかる。そういう意味において、新しいそういう環境が生まれてきたら、基本精神は残して、その提携の内容を時代に合うように変えたらどうか。それは理論的可能性としてわれわれは提起しておいてみる必要がある。いつまでもいまのままにぶら下がっておいていいかどうかわからぬ。いまのものは、原型は吉田さん、ダレスさんのような明治の相当古い連中がつくったものである。小学校がいつまでもそれにぶら下がっていく必要は必ずしもあるまい。新しい時代が来たら、日本アメリカの新しい人たち国民世論に従って新しい結合形態をつくるということが、日米相互保障の一番大事なポイントになっていくだろう。そういう意味において、いまの安保条約というものを新しい別の日米親善関係に発展させるという可能性も、われわれは選択の問題として考えておかなくてはいかぬ、そういう意味発言なんです。  そこで、それを防衛的に見れば、日本核兵器は持ちませんし、また他に脅威を与える攻撃的兵器を持ちません。したがって、そういうものを持たないという限りは、よほどの変化がない限りは、それはアメリカに依存せざるを得ない。そういう意味において、日米間の安全保障体制ということばを使った。速記をお読みになればわかります。安保条約ということばは使っておりません。いつでも私は使っていないのです。日米間の安全保障体制は半永久的に必要であると思うと私は言い切っておるのです。それはいま言ったような根拠に基づいて、太平洋の平和ということを考えて、そして安全保障体制と言っておる。安全保障条約、こういう固有名詞のついたものは一時期における一態様であると考える。佐藤総理も今度の施政方針演説で、一九七〇年代は選択と可能性時代であると言っておる。私と認識は同じであります。しかし、そういうふうに変化していくにつれても、それはお互いがあることであるから、お互いが合意の上に立って、そういうふうに変えていくという合意が成立しなければ、一方的にはできない。お互いが協調し合いながら、そういう新しい提携方針を模索しつつ健全に建設していくという、そういう選択を可能性の一つとして考えてみてもらいたい、そういう意味を申し上げたのであります。それはもうここ四、五年私が一貫して言っていることでありまして、もし誤解がありましたら、お直しをいただければありがたいと思います。
  329. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いまあなたの御説明でよくわかります。お気持ちはよくわかるのですが、いまお答えになるように、四年も五年もこれを言い続けてきた、それが長官になられると同時に変わってしまった。しかも御答弁なさっておられることは、私はいまおっしゃったからどうこうというわけじゃないのですけれども、それは世界各国の国際情勢もありましょうし、経済の問題もありましょうし、あらゆる観点から時代は推移しておりますので、わが国の安保体制もそれはあなたのおっしゃるように、そういう考えであったけれども、時代とともにこういうふうになっておる、それを各観点から御説明がありましたが、私は政府機関でもあり、党の党議に従わなければならぬ、また相手の出方や客観情勢もあるんだ、そういうことで簡単に説明をされますから、私は国民に非常に疑惑を招くと思うのです。大臣になってもならなくても、党議というものは私はあるはずだと思います。長官は自民党所属の方でございます。野にあるときは党議に従って、長官になれば党議に従わなくてもいい——いずれにしても私は党議というものはあるはずだと思います。こういう御答弁はちょっとおかしいと思うのです。また相手側の出方とかあるいは客観情勢を見ながらとおっしゃいますけれども、これは大臣におなりになろうがおなりになるまいが、相手方の出方とか客観情勢は、賢明な長官ですから、十分お考えになって、それは見きわめて各会合で意見を発表されたんだと私は思う。大臣になったから相手方の情勢とか客観情勢を考えなければならぬ、大臣になったから党議を調整しなければならぬ、そんなことは答弁にならぬと思うのですよ。これははっきり載っているのです。その点、長官にも似合わぬ。こういう簡単なことで国民をごまかそうなんという、私これを読みまして、むしろおかしく思ったのです。長官になられるととたんに、党議があるからとか客観情勢を見ながらとか、私はそういうことは政治家として当然あるはずだと思うのです。何も長官におなりになったから、ならないからと、そんなことは関係があるわけはないはずだと思います。
  330. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 自民党は自由民主の政党で、非常に思想の自由はあって、みんながアイデアを出し合って、切瑳琢磨しているわけです。そのときは三百分の一です。しかし閣僚になると三百分の十七になって、しかも国策を遂行する責任者になるわけです。防衛庁長官というのは、防衛政策の責任者になるわけです。したがって、三百分の一のときとは違うわけです。いよいよこれを執行するということになれば、これは行政上の処理、政治上の処理、国際関係の処理、そういうものを見合いながら実行していくというのは当然のことであります。そこは党員と違うところであります。したがって、いままで持っていた考え方を基本に持ちながら、いかにそれを現実にアジャストして生かしていくか、そういうことが私らの政治家としての課題になってくると思うので、私はそういう考え方は間違っていない。自分考えていることを党員として言ってきたことを、何でもほんとうにそのまま実現するということになれば、実際問題としたって考えてもできない、やったら摩擦が大きくてかえって内閣や党が迷惑を受けるということにもなります。そこが政治家としてバランスをとり、調節をとる政治という要素であると私は思います。自分の所信を捨てたというわけではございません。
  331. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 長官は三百分の一とおっしゃるけれども、三百分の一全部大臣にはなりませんからね。これは何も長官におせじを言っているのじゃないのです。少なくとも自民党内において、あなたのおっしゃることは、大臣になられようがなられまいが、あなたは自民党の安全保障調査会の副会長をなさっておったでしょう。三百分の一全部副会長じゃありません。あなたをおだてておるのじゃありません。あなたの発言と三百分の一の発言発言が違うのですよ。そんな簡単なことをおっしゃってもらっちゃ困る。
  332. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 自民党は非常にゆるやかな、端的にいえば宇都宮徳馬さんから松村謙三先生まで、あるいは賀屋興宣先生から藤山愛一郎先生まで一緒におるという非常に幅の広い自由主義的な政党で、一つのテーゼによって拘束はしないのです。私はそこが一番いい言論自由の政党であるだろうと思う。したがって、みんなができるだけ多彩にアイデアをみがき、そして党員である間に勉強し、蓄積をもって、いざとなったら責任者になってそれを実行する。そのときにはこれはかねて勉強していたことを実行し、またそのときの現実に合わせながら最大限実現していく、そういう要素が政治家として非常に恵まれている環境にあると思うのです。私はそういうあり方が議院内閣制としていいんじゃないかと思うのです。
  333. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 あなたのおっしゃることが前宣言、前ぶれがあまりに広過ぎて、そして今度はそれに対する答弁は、ごく簡単な子供だましみたいな児戯にひとしいようなことでそれをあなたが解決しようとする。だから私はそこが納得ができない。ましていわんや広場がどうして納得がいきますか。長官の主義主張は、熊さん八さんにまでわかるように国民が全部こぞって防衛論議をやるように、これが自分の主義主張であると仰せになっているけれども、まことに長官というのは有名な大雄弁家というのに、これはおっしゃっていることが舌足らずじゃないか。七五年以降安保の廃棄をすべきだということを朝日でも仰せになっているのですよ。これは箱根で開かれた新政同志会、これはあなたの会でしょう。これは内容を言わなくてもいいですね。それは覚えていらっしゃるでしょう、長官もたいへん賢明な方だから。それから伊豆の下田で開かれた第二回日米関係民間会議でも仰せになっておるのですね。「一九七五年ごろ日米関係の新しい親善関係を樹立するため、現行の日米安保条約をいったん廃棄すべきだ」御記憶ございますか。
  334. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 廃棄ということばは一回も使ったことはないのです。廃棄というのは社会党の言っていることばであって、自民党員の言うことばではないのです。私は解消とか新しい関係を建設するとか発展的に解消するとかそういう言葉を使って——つまりそれは合意であるということなんです。一方的に片方だけがやめたといってやめるという、そういうものではないのです。あの棄てるという字が私はきらいなんです。
  335. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それは廃棄でも解消でも、結局さっきのお話じゃないけれども、内容がはっきりわかればいいのですがね。しかし、ここに新聞記事に載っておるから読んだのですから。これは私がつくったのじゃない。それからまだあるのですよ。これも朝日に載っておるのですが、これは四十四年十月ですな。「安保は将来一度解消を」これは今度解消とこうなっておる。「中曽根康弘氏(安保調査会副会長)」こう書いてある。それにも、「日米両国が長期に、今までより幅広く提携し、個性を生かしつつ最適の対応と、緊密な結合をはかってゆくことが次の政策の基本である。」まことにごもっとも。「平和には日本の自主外交、とくに中国との調整が大切であり、また国民合意もカナメだ。その後は条約を弾力的に運用し、まず東京をはじめ都会周辺の米基地を整理し、自衛隊による代替を促進する。日本自主防衛の強化と国際地位の向上に応じて、七〇年代なかばごろをメドに情勢が許せば合意により安保をいったん解消し、新時点の日米新友好関係を発展的に建設したらどうか。」やはりこういうことをおっしゃっているのですよ。それが長官になられたら、党議によるとか客観情勢ということてばたっと——そこですよ問題は。いいですか長官、私の申し上げていることはだんだんおわかりいただくと思いますが、まだあるのですよ。これは私がさがしたものだけでこれだけですから、さがさぬのは無尽蔵にあるかもしれぬ。「自主防衛を強化し安保廃棄も」——これにも廃棄と載っておるのです。安保廃棄もやむを得ぬ、中曽根氏の七〇年代の展望、こういうふうに載っておるのです、内容は同じですけれども。このように非常に前広くおっしゃっておるということなんです。まだずいぶんあるのですよ。いかに私が防衛に熱心か……。どうですか、今度は読売に載っております。これは四十五年の三月二十九日です。ごく最近ですよ。これはごく最近の読売に載っておるのです。しかもこれは、長官、おこらぬでください、これは新聞に載っておるのですからね。「君子ひょう変に不信」、こういうふうに見出しが載っておるのです。こういうことで私が先ほどから長官に申し上げておるわけなんですよ。詳しくここへ載っております。これは全部読むとひまがかかりますけれども……。この新聞にも載っております。「説明不足から誤解も」これはあなたがおっしゃったのですね。国会答弁で、「私の発言をよく聞いてほしい。誤解が多い」と言って、参議院の予算委員会で社会党の木村禧八郎氏に対して、「それは誤解です。私の真意はこうです」と説明をし直していらっしゃる。ほかにもあります。ここへ全部赤をつけてやっておるのですからね。ところがやはりこれに対しても安保の、七五年代に日米親善をますますはかって、そして事情が許せばこれを解消すべきだということを、このように数回にわたってことあるたびごとにおっしゃっている。それを簡単におやりになったものだから、しかもおっしゃるとおり説明足らずで、長官に似合わぬ、大雄弁家が舌足らずというのはどうも私は——そうして長官のおっしゃることは、国民の広場に全部持ち出して防衛論議をやるべきだ、国民防衛だ、国民はみずからの手で国を守っていくんだ、まことに私どもはそのとおりだと思いますけれども、これはたいへんうぬぼれたことを申し上げまして相済みませんが、こうして一生懸命これと取り組んでおるわれわれでさえ長官の心境がわからない、長官のおっしゃっておることと実際がわからないで、どうして一般広場にわかりますか。非常に前広くおやりになって、いわゆる竜頭蛇尾で、そういう点について、あなたのおっしゃったことに対して、ここでいま言いましたように、君子豹変、これに対して不信を抱いておるとか、長官の言われることに対しては一貫性がない、また自民党内にもそういう批判があると新聞に書いてあるのですよ。核防条約に慎重論者だったのが、中曽根氏が入閣したとたんにあっさり調印にくらがえし、君子豹変するなど、しんがない、こういうことが自民党内でも広まっておる、こういうことですね。だからせっかく防衛対策と真剣に取り組んでいらっしゃる、卓越した考えを持っておやりになっておる長官、まことに惜しいことだ、せっかくのあなたの努力がこういう点でマイナスになったのでは。そういう点について長官のお気持ちをお伺いしたいのです。
  336. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 誤解を受けましたことはまことに遺憾千万でございますが、いずれだんだんわかってくれるだろうと思います。
  337. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いずれだんだんわかってくるという消極的でなくして、長官ともあろう者が、鳴かざれば鳴くまで待とうホトトギスでなくて、鳴かしてみましょうホトトギスで、国民誤解を持っている、じゃ、こういうふうにひとつはっきりしよう、そうしてあまねく国民に知らしめるということが大事じゃないですか、あなた、そうおっしゃっているんだから。きょういただいたものにも書いてあるのです。先ほどいただいたから私はすぐ拝見しましたが、それにもはっきりお書きになっておる。「そもそも防衛国民合意なくしては成り立たない。一国の防衛力を形づくっているものは実に国民自身である。」じゃ、これは「国民自身である。」とおっしゃるけれども、国民がみんなわかっていないのでしょう。むしろ不信を持っておる。これじゃせっかくの長官の卓越した防衛政策も——あなた、おっしゃっているのです。「防衛力を形づくっているものは実に国民自身である。」「国民合意なくしては成り立たない。」と仰せになっている。だから長官お一人の先走り、勇み足では私はいけないと思う。そういう点を、もう少し国民とともにあるんだというお考え防衛政策を樹立していただきたい。むしろ私は防衛庁長官としての中曽根長官を高く買っているから申し上げている。こんなものはつまらぬというなら私は何も申し上げない。いかがですか。
  338. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう誤解を解く非常にいいチャンスをお与えいただきましたことを感謝いたします。
  339. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうでしょう。私は何もあなたを攻撃しているんじゃありませんからね。だからこれからも、先ほどもどなたからかお話があっておりましたが、十分ひとつ国民に知らしめていただいて、秘密主義をとらないで——これは歴代の防衛庁長官をどうだというんじゃありませんが、どうも防衛関係はほんとうのことを言わない。秘密主義がある。実際私が調べたことを聞いてみると、ああそういうこともありましたかもしれませんというて、そういうときにようやくほんとうのことを言う。もう少し防衛政策は国民の前に全部——先ほどもお話があっておった、全部さらけ出して、国民合意のもとにやっていくべきだ。すぐ力で押し切っていくというのは、私は間違いだと思う。いつも長官がおっしゃっておるように、防衛問題は国民の広場に押し出して、そうして国民合意の上に立って、長官一人が先走りをして、勇み足でやられるのでなくて、合意の上に積み重ねていくべきだ。その点、ひとつどうでございましょうか。
  340. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 全く同感でございます。以後大いに努力いたします。
  341. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そこで、安保問題につきましてはその程度で、なるべく早くやってくれということでございますので、少し質問が粗雑で、実はもっと詳しく申し上げたいのでございますけれども、次の問題に移りたいと思うのです。  次にお尋ねいたしたいことは、先般この問題も、大出さんでしたかどなたかお聞きになっておったと思いますが、兵庫でしたか、募集をするのに何かインチキがあったというようなお話がありました。これに対して防衛庁長官は、そういうことをしないで、問題は隊員の優遇問題にあるんだ、それによって解決ができるというようなことをおっしゃっておりましたが、自衛隊員の優遇問題について私は特に長官に御注文申し上げたい。以下、ずっと順を追ってお尋ねいたしたいと思います。  第一次防、第二次防、第三次防、第四次防と、こういうことになっておりますが、まず国防白書でございます。昨年の暮れに国防白書を出す、こういうお話でございましたが、いまだに国防白書が出ておりません。自衛隊員の優遇という点について、国防白書でも拝見するとわかるのございますが、四十五年度においてどのように重点を置いていらっしゃるか。予算面もここにいただいておりますが、自衛隊員の優遇策について、私は根本的にお話を承りたいと思います。ただ優遇しておる、優遇しておる、昨年よりもこのくらい予算が多くなったというようなことでは、私ども納得いかないのです。ことに四次防においては六兆というようなたいへんな予算まで組もうとしていらっしゃるのです。そういう自衛隊員の優遇ということに対する根本のお考え長官にお尋ねいたしたいと思います。
  342. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 自衛官は、特別職の公務員といたしまして、一身を犠牲にして一朝有事の際には国家のために奉仕すべき職分を持っておるものでございますから、ふだんできるだけ優遇してやるということが望ましいと思っております。その優遇の内容は、給与の面において、官舎やその他の居住性において、あるいは社会的栄誉において、あらゆる面において逐次改善してやったらいいと思うのであります。  具体的内容につきましては政府委員から御答弁申し上げさせますが、次の防衛計画の機会等にもそういう優遇策をかなり表へ出してやっていきたいと思うわけでございます。  国防白書につきましては、私着任してざっと目を通しまして、これはまだ出すのは尚早である、そう思いまして、次の防衛計画のいろいろな基準、国際情勢、そういう総合的な判断がまとまって、必要な修正なり手入れをしたあとでそれは出すことを考えたいと思っております。原案を読んでみますと、いままでの情勢にとらわれてやや古くさい感じのものでございますので、直す必要性を認めまして、私のときになってから押えておるわけでございます。
  343. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 でございますから、先ほどから何回も申し上げておりますように、長官のお考えが、国民の広場に持ち出す、国民の一人一人にこれを知らせるべきだというお考えであるならば、一日も早くこの国防白書を出していただいて、なおまたこれは一日も早く国民の知りたがっておることでございますので、ややともすると、先ほどから申しましたように秘密主義だという批判を受けている防衛政策に対して、長官の手によって、国民を基盤としたほんとうに親しみのある自衛隊であるなという、そうした認識を国民全体に一日も早く持っていただくというような意味からいたしましても、国防白書は私どもが望んでおることでございます。いまお話を承ると、非常に感覚が古いから新しいものにするというお考え、まことにけっこうでございますが、一日も早く長官の手によって国防白書を出していただきたい。再度そういうことを長官に希望申し上げます。
  344. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 準備ができ次第、なるたけ早目に出したいと思います。
  345. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 四十五年度の予算において佐藤総理も、人間尊重を主眼とした予算、内政問題はことに人間尊重の問題だ、こういうふうに仰せになっておりますが、四十五年度の防衛予算にはどういう特色がございますか。人間尊重という面に大きな特色があるのかないのか、その点長官にお伺いしたい。
  346. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 たとえば曹クラスで准尉制度というものを設けまして、いま御審議をわずらわしておるわけでございますが、これは曹クラスに対する優遇措置でもあります。そのほか隊舎、官舎の改善、それからいわゆる備品費を相当ふやしまして、いままでは自弁でやっておった備品等は国で相当出すことにいたしております。あるいは被服費等につきましても倍くらいの額に増額いたしてあります。このほかこまかい点は政府委員から御答弁申し上げますが、そういう自衛隊員だけの改善にたしか十七億から二十億ぐらいの金をよけいにふやしてあったように考えております。
  347. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 少しずつ順を追うてお尋ねしていきます。  広報関係でありますが一般広報において予算が前年度より二千二百万円ばかり増になっております、二億八千五百十五万円でございますか。広報の活動方法としましてどのように前年度と違っておるか、またおもにどんな効果をねらって広報活動をしていらっしゃるのか。これはこまかいことですから、長官でなくてどなたでもけっこうです。
  348. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 ただいま御指摘の二億八千万円の広報は、私どもの中の計画といたしましては、いわゆる一般広報でございます。これ以外に募集のための広報がございます。  そこで、この一般広報につきまして従来から防衛庁としましては、防衛問題あるいは自衛隊の現状等につきまして国民の皆さま方に広く理解、認識を持っていただきまして、御協力をいただくという点にねらいを置いておるわけでございますが、その方法としましては、一つはパンフレット、リーフレットあるいはその他の刊行物、こういういわば刊行物広報と申しますか、これに一つの主力を注いでおります。それから映画の製作あるいはテレビ放送、こういういわば視聴覚広報という点にも力を注いでおるわけでございまして、四十四年度に比べまして約二千万円程度の増額をお願いいたしておるわけでございますが、その中では主として単価が上がりましたり、あるいはパンフレット、リーフレットの部数をふやしましたり、そういう点で従来の規模を大きくしたというふうな点がございます。いろいろ新しいことも企画しましたが、予算がなかなか認められませんで、そういう二千万程度の増額に終わっておるわけでございます。こういう予算をわれわれといたしましてはできるだけ有効に活用いたしまして、一般の御認識を深めていきたい、かように考えておるわけでございます。
  349. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 一般広報としてはおっしゃるように視聴覚の宣伝をするとかあるいはパンフレットだとか、いろいろあるかもしれぬと思いますが、募集広報関係として本年度は一億一千四百七十七万円組んであるようです。前年度よりも五百四十六万円多いようですが、どのようにして募集活動をしておられるか。あなた方の募集方法は私は最も拙劣だと思うのです。その点をひとつ承りたいのです。
  350. 内海倫

    内海政府委員 募集の活動につきましては、在来からもいろいろ御叱責を受けたりあるいは御批判を受けておるところでございまして、そういうふうな御叱責をいただきましたりあるいは御批判をいただきましたような点を極力取り入れまして、できるだけ効果のある合理的な募集広報ということを展開することにつとめておるわけでございます。  具体的にどういうふうなことをやっておるかと申しますと、やはり日本国民の多数に対して自衛隊を知らせるということが必要でございますので、これはただいま官房長が説明いたしました自衛隊を知らせる広報の上に立って、さらに現実に自衛隊に応募する、勧誘する、そういうふうな気持ちを起こさせるというふうな意味でポスターあるいはテレビ、ラジオによる広報、さらに新聞における広報、こういうふうなものを一方において行なっております。他方におきまして、地方連絡部の広報官を動員いたしまして、具体的な自衛隊の広報というものを行なっておりますし、さらに外郭団体等の活動に期待して自衛隊員募集広報といったようなものを行なっておる次第であります。  反面、みずから進んで自衛隊に志してくれるようにということを最も必要といたしますので、自衛隊員であることの誇りあるいは自衛隊員になることによる多くの特典あるいは将来社会に出ていく上において有利であるというふうな点もいろいろな観点から広報をいたしておる、こういうふうな総合的な募集策をとって現在臨んでおる次第でございます。
  351. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 一応そういうことだろうということは了解できますが、私はこれは長官によく考えていただかなければらぬと思う。むろん自衛隊の本質、実態を知らしめるために、いま御説明があったようにいろいろな方法をとられることもけっこうかと思います。しかしながら、これは長官もおっしゃっておりましたが、根本の問題は、自衛隊員を優遇しなければ、こうしている、ああしていると、テレビを通じあるいは映画、ラジオその他を通じ、あの手この手を使って自衛隊員の募集をなさっても、現実においてはそのとおり応募がない。先般二倍あるんだということをおっしゃっておりましたが、これはとんでもない話で、自衛隊がそれほどいいのであったら、二倍どころか三、倍、四倍、十倍もあるはずです。今日他のほうの就職とか学校の入学とかいろいろな問題を見ました場合に、少なくとも十人に一人、十五人に一人というような状態なんです。自衛隊員の応募者が二倍あるからと先般豪語されましたが、二倍だなんということでは問題じゃない。ただ単に数の上で二倍というような員数を合わせていらっしゃるのかもしれないと私は思う。員数を合わせていらっしゃるということの証左としては、かつては客引きみたいなことをして非常な批判を受けた。今度はまた詐欺行為みたいなことをして集めようとする。そういうことをなさっては、私は自衛隊の権威に関すると思うのです。まことに残念しごく、遺憾千万だと思う。その根本策は、あらゆる方法をとるということよりも、自衛隊員自体を優遇すれば、自然に、高きより低きに水が流れるごとくに応募者も多くなる。あの手この手を使って、そういう詐欺行為までやってだまかして連れてくる、これは過言じゃないのです。これは策の最も拙の拙なるもので、国民に親しまれる自衛隊の権威に関すると思う。その点に対して長官のはっきりした御答弁を願いたい。
  352. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 全く同感でありまして、一番大事なことは優遇してやることや社会的地位を高めてやることだと思います。
  353. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 現在の自衛隊員の欠員は、正確に申してどのくらいございますか。またその欠員補充ということに対してどのようになさっておるのか。
  354. 内海倫

    内海政府委員 今年の二月末現在の定員と欠員の関係を申し上げてみますと、陸上自衛隊が十七万九千に対しまして現員が十五万五千四百二十一名でございますから、二万三千五百七十九名の欠員、海上自衛隊が定員三万七千八百十三名に対して三万五千四百五十六名、二千三百五十七名の欠員、航空自衛隊が定員四万一千百八十三名に対しまして現員が三万九千四百六名でございますので、欠員が千七百七十七名、こういうふうなことになっております。したがいまして、私どもはこれに対しまして、先ほど長官も御答弁申し上げましたように、定員の全部を補充するということは現実にも非常に困難でありますし、また実際の訓練の必要上からも必ずしも定員が全部充員するということは——必要ないと言うと、いささか語弊がございますが、定員に満たなくても、訓練は可能であるという前提で、いわゆる先刻御存じの充足率というものを定めまして、昭和四十五年度の充足目標が陸上自衛隊につきましては八八・四%、海上自衛隊では九六・五%、航空自衛隊では九七%を充足の目標といたしまして、これによってはじき出される概数三万二千名程度のものを、いわゆる昭和四十五年度の募集目標といたしまして、これを募集するということを考えております。
  355. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いずれの社会においても、このように欠員があるなんということは自衛隊だけですよ。どこでも整理するのに困っている。多過ぎて困っているというのが現実の状態なんです。陸上自衛隊が、しかもその最たるもので、二万三千人も欠員がある。根本原因はなぜこんなに欠員があるのか。ここ一、二年のことじゃないのです、これは。ずっと昔から陸上自衛隊はどうしても二万数千という欠員がある。補充できない。またあなた方自体も、補充せぬでもこれでいいという消極的な考え方。だったら定員法を変えたらいいと私は思う。それをほったらかしてある。一体どういうところに原因があるのか。国民に親しまれる自衛隊だ、一方においては第四次防で六兆もお金を用意しよう、自衛隊はその欠員の補充すらできない。これは私は根本問題だと思うのです。真剣に、一体どうしてこのように欠員があるのか、どうすれば自衛隊が皆に親しまれて——先刻申しましたように応募者が二倍だなんて、そうして安易な考え——いかなる社会においても今日募集した場合に、二倍なんという数は絶対ありません。どこの社会でも少なくとも五倍、十倍です。もっと多いのです。これは根本的な解決策を皆さんお考えになったことがあるのかどうか、その点をひとつはっきり答えていただきたい。集めても集まらぬような自衛隊だったら、役に立たないじゃないですか。
  356. 内海倫

    内海政府委員 お説のとおり、自衛隊としまして、ほんとうに進んでくる者が五倍、十倍来てくれることが最も望ましいことでございますし、またそういうふうな魅力のある自衛隊をつくる、あるいはそういうふうな魅力のある自衛官の条件を設定していくということは、私どもの根本的に考えなければならない問題でございますし、現在長官のもとにおきまして、いかにすればそういうことが現実具体的に実現できるかということを検討して、実現にできるだけ移していきたい、こう考えているわけでございます。反面、現実を見ますと、これまた先刻御存じのように、自衛隊の場合、十八歳から二十四歳までの中学卒業以上の学力を有する者という前提でもって採用いたしておるわけでございますが、その給源のある適齢人口層というものが四十二年を一応のピークとして、だんだん下降をたどりつつある。私ども労働省、厚生省等の統計を見ますと、昭和五十一年になりますと、非常に大きな低下を示すようで、一方一般企業の求人というものも非常に強く、きびしい条件である。これとの競争関係にも立たなければならない。他方そういうふうな一般企業における求人条件というものは、遺憾ながら自衛隊よりは相当条件がいいと認めざるを得ないわけでございます。そういう中にありまして、乏しい給源に対しまして、多数の隊員を募集していくということは、そう容易な問題ではないと考えられるわけであります。したがいまして、お説のように、抜本的に対策を立てて、この問題に対処していくことが、この際、一番必要なことである。事務当局といたしましても、このことを痛感いたしております。
  357. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 これはもう毎度同じことを言って、同じことを皆さん答弁される。自衛隊国家公務員ですからね。他の国家公務員の就職状態なんかを見ました場合には、就職率は非常なものですよ。しかも自衛隊は非常に重労働です。時間にも制限がない。ところが警察官なんかと比較をしました場合に、遺憾ながら自衛隊のほうがずっと待遇が悪い。それはむろん警察も非常に重労働でしょう、たいへんでしょう。しかし、これは国家の治安を守っておられる。自衛隊は国土を守っておる。それでいて、待遇の上においても懸隔がある。そういう点についても、もう少し真剣に、ただ、やります、やりますだけでなくて、何か具体的にはっきり皆さんのほうで、そういう政策をとっていただきたいと私は思う。特にはなはだしいのは、これもずいぶん昔から私は何回もお話ししたのでございますが、隊員の健康管理の面から申し上げまして、今日自衛隊は二十六万か七万かいらっしゃると思いますが、医官の今日現在の実態ですね、どのようになっているのか、長官は御存じでしょうか。
  358. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 遺憾ながら非常に充足率は落ちておりまして、前線の部隊ではたしか歯科のごときは二三%ぐらい、普通の医官にいたしましても二〇%台でございまして、非常に落ちておりますことはまことに遺憾であります。
  359. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それを長官は御存じでありながら、人間尊重だ、いつもこうおっしゃっておられる。すぐに他のほうの関係がどうだとか、大蔵省がどうだとか、他の公務員の関係がどうだとかということをおっしゃいますけれども、長官も御存じだと思いますが、昔は軍隊には軍医というのがおりまして、病院もちゃんとあったわけですね。今日は自衛隊の隊員の健康管理というものはまことにずさんですよ。私は、人間尊重ということで一番大事なことは、隊員の健康管理だと思う。ここに資料をいただいておりますが、まことにもってこれはもうただ驚くのみで——四十二年、四十三年、四十四年度の医官とそれから歯科医官の数がちゃんとここへ出ております。その補充が定員に対して全部二〇%台ですね。試みに四十四年度は医官の定数が五百七十九名というのに百三十二名、二二%、歯科の医官が百六十一名の定員に対して三十九名。これでどうして隊員の健康管理ができるか。努力はしておりますけれどもできません、できませんで放置しておく。そして、自衛隊はいいんだ、りっぱだとポスターで広告しております。テレビでやっております。こういうことは隠してあるのでしょう。あなたたちが自衛隊に来ても体のぐあいの悪いときは保証はせぬぞということなんだ。そういうポスターを出したか。国民はほんとうのことを教えてもらったでしょうか。全然これはふざけていますよ。私は実態調査をしました。あるところに行ったところが、町医者を委託しております。その町医者はもうお年寄りで、むろん開業していらっしゃるが、町ではあまり患者はいない。かかり手がいない。ひまがあるから、その人をお願いしております。委託してある。——みんな黙ってしまっておるが、だれかひとつ少し元気を出して、これに対して答弁してください。
  360. 浜田彪

    ○浜田政府委員 ただいま医官の充足対策が十分いっていないじゃないかというふうなおしかりを受けたわけでございますが、私たちも医官の充足につきましてはいろいろと苦労をいたしておりまして、実は過般の人事の処遇問題におきまして、初任給の調整手当というふうなものを今年度からつけるようにいたしました。それから自衛官の俸給表の中でも特に医官の場合には、同程度の経験年数を有する一般職の公務員の医師と同じ待遇を受けるように努力いたしております。あわせまして、できるだけ医療施設、中央病院をはじめとしまして、いろいろな病院の近代化をばかりまして、医師に対してできるだけ研究のチャンスを与えるというふうなことに努力をいたしております。特に航空自衛隊の航空医学実験隊あるいは海上自衛隊の持っております潜水医学実験部等は、日本でもかなりこの方面の研究にいたしましては整備された研究施設でございまして、このようなところで勉強するようなチャンスも与えたいというふうに考えておるわけであります。大学との連係あるいは通修、研修等の機会もできるだけ医官の希望に沿えるように努力をいたしております。しかしながら御指摘のように、部隊等におきましては非常に充足がよくございませんので、現在約四百五十六名、医師の場合三百七十一名、歯科医師八十五名の方々を委託いたしまして、少なくとも医務室に週二日もしくは三日以上の形で、大体半々くらいでございますが、来ていただきまして、できるだけ隊員の診療には支障がないように努力をいたしておるのでございまして、今後ともこの問題につきましては努力をいたしたい、こういうふうに考えております。
  361. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 医官が健康管理に支障がない、そんな答弁をするから私はますますやる。支障だらけだ。支障がないなんて——定員のわずか二〇%くらいの補充率でどうして支障がないということが言えますか。だから私は、かつて問題を出したこともある。演習演習で大砲で耳をやられて十年間もほったらかしておる。毎年、毎月隊員の健康診断をやればわかるはずなんだ。健康管理をやっていないんだ。やっていないから十年間もほったらかしておる。自衛隊に来て一生懸命にやったためにかたわになった、そして健康管理に支障がないなんて——支障があるからあなたたちはこれから努力しますと言っているのでしょう。支障がなければ努力せぬで現在でいいじゃないですか。長官はこれに対して支障がないと思っていらっしゃいますか。
  362. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 支障はあります。
  363. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そんなでたらめを言うからいけないんだよ。局長ももう少ししっかりしないか。からだは大きいけれども、言うことはさっぱりだ。つまらぬことばかり言うじゃないか。まことに遺憾千万だ。  委託医は現在何人いらっしゃいますか。
  364. 浜田彪

    ○浜田政府委員 委託医師は全部で四百五十六名おりまして、医官が三百七十一名、歯科医官が八十五名というのが委託医師の現状でございます。
  365. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうして週に二日ないし三日出勤と書いてあるんですね。週に二日か三日来ている。昔は軍医というものがおりまして、二日出勤、三日出勤じゃなかったんですよ。昔の軍医というのは委託医じゃないんですよ。町医者じゃないんですよ。専門ですよ。一方自衛隊は四次防で六兆も金をかけるとか何とか言っているけれども、自衛隊そのものが自衛隊としての形を備えていないのじゃないですか。私は、医官の不足ということは健康管理上重大な問題だと思います。人権問題だと思う。人道上の問題だと思います。たくさんの隊員を預って、その健康管理もずさんきわまりない。これは国家の責任において——だから隊員が募集しても集まらない。そんなことをあなた方は隠している。そうして長官は、自衛隊というものは国民の広場に持ち出して、みんなに親しまれる自衛隊にしよう、八さん熊さんにわかるよう。こんなものをわかったら、だれも来やしませんよ。もうわかっているのです。どうでしょうかね。われわれの大事な大事な——それは自衛隊そのものに対してはいろいろ甲論乙論あるかもしれませんけれども、隊員は私は徹底的に大事にしてもらわぬと困る。いやしくも国土を防衛するところの隊員ですよ。長官は瞑目して考えていらっしゃるが、いかがでしょう。
  366. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 全く同感であります。
  367. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 ひとつ衛生局長あたりもそういう点を——私は、ただ努力する、努力するでなくして、これはおたくからいただいておるのですから、これを一々読み上げてもいいけれども、時間もなんですから読み上げませんけれどもね。そういう点は今度少なくとも——この推移を見ますと、四十二年、四十三年、四十四年とこれで見て、いささかもよくなっていないのですよね。ちゃんとはっきり出ておるんだもの。よくなっておるどころか悪くなっている。四十三年度よりも四十四年度が悪うなっておる。とんでもない話だと思うのですよ、これは。四十二年度が二五%、充足率が。四十三年度も、これはちょっと下がっている。二五・三%。四十四年度は二二・八%、二五が二二になっている。歯科医官もそのとおり。ずっと下がってきているのですね。これは局長一人でできることじゃないと思いますけれども、歴代の長官に対してこのことをはっきり言ってもらわないと、私は国民の総意において徹底的にこれは承認できません。  それから、宿舎の問題もそうですがね。隊舎ですね。あるいは営外の宿舎の問題です。一般公務員の宿舎充足状況と比較しました場合に相当の隔たりがある。これはおたくの資料にもはっきり書いてある。一般公務員の宿舎充足状況と比較して相当の隔たりがあるという。こういう点においても、それは国土を防衛せよ、時間の制限もなく一生懸命にやりなさい、そうして住むに家がないというような状態なんです。これでどうして人間尊重だとか自衛隊員を優遇するとかいうことがよくも皆さん言われると思うのですよね。施設庁のほうの方、ひとつ説明してください。
  368. 内海倫

    内海政府委員 宿舎、要するに国設宿舎の関係につきましては、人事教育局で所管をいたしておりますので、概要を御説明申し上げて、今後の努力方向も御説明申し上げたいと思うのです。  いまお話のございましたように、自衛隊の隊員の国設宿舎の入居状況は、他の一般官庁の職員に比較いたしますと、かなり劣っております。平均五五・四%という入居率でございますから、他の各省庁の入居率は公表いたしておりませんので、私どももそれを知るによしなしということでございますが、推察する限り非常な差があるように考えます。しかし四十五年度の要求は三千七百九十二戸を要求いたしておりまして、これが成立いたしました以上は五五・四%という入居率は六三・三%に上がってまいります。したがいまして、今後私どもといたしましては、やはり少なくとも各省の役人と同じ程度にまでは入居率が向上いたしますよう宿舎の計画を進めていきたい、かように考えます。ただ御承知いただけると思いますけれども、自衛隊の場合は各省と違いまして非常にたくさんの人間をかかえておりますために、各省ほどに充足が容易でないという点がございます。今後共済組合の努力等も要望いたしまして、宿舎の充足にはできるだけの力を尽くしていきたい、かように考えております。
  369. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 各省と違うというような、そのくらいのことはわかっておりますよ。各省と違うから四次防では六兆も取っておるのでしょう。それはもうおっしゃらぬでもわかっておりますよ。各省が全部、一次防、二次防、三次防という、六兆なんて取っておるところはありゃしません。でございますから、四十五年度が三千七百四十五戸、四十六年度が三千七百九十六戸と、こうなっておりますが、これは全部一〇〇%でひとつこの実施計画どおりにやっていただいて、隊員の優遇の一部面としてこれが完成を一日も早く私はやっていただきたいと思うのです。  それから順を追ってお尋ねいたしますが、次は食事の問題ですがね。防衛大学の生徒諸君が二百九十一円ですか、ところが自衛官の隊員陸上勤務者が二百七十四円という。防衛大学の生徒は二百九十一円、重労働の陸上勤務者は二百七十四円と、これはどういうわけでこういうことになっておるのですかね。
  370. 蒲谷友義

    ○蒲谷政府委員 いま自衛隊で支給しております食事につきましては、その勤務の状況に応じまして必要な栄養を与えるということで考えておりまして、現在の支給の考え方は、国民の強健と栄養に関する協議会と申しますか、そういう給食関係、栄養関係の有識者が集まっております団体に審査と、基準をつくっていただきまして、その結果に基づきまして必要な糧食を与えておるということでございます。その結果がいまの陸上勤務員あるいは海上勤務員あるいは学生という関係の基準のそれになっております。
  371. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 私が申し上げておるのは、これは人数の点もありましょう、だがしかし、陸上勤務の重労働と、それから重労働でない点についてこれだけの差がある、しかも四十五年度の予算になりますと、二百七十四円、前年が二百五十円ですか、わずかに二十四円昨年度よりもアップされておる、一食に換算すると約九十円である、物価の値上がりなんかから勘案いたしまして、一食九十円で重労働の、しかも若い隊員の健康を保つことができるかどうか、体位の向上に役立っておるかどうか。私どもが参りますと、御飯を一緒にいただきますが、これはこれで十分でございますよというわけです。少しよくしてあるそうですけれども、あとで聞いてみると、いやこれは日ごろの隊員と同じでございますと言うけれども、そうじゃない、少しプラスアルファで、ちょっと色がつけてある。これは長官にお伺いしますが、あんなに一生懸命朝から晩まで働いている隊員が一食九十円でできますか、実際の話が。
  372. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私が十二師団で食べたり、北海道の部隊で食べた範囲内では、まあまあいけると思っております。昔の旧軍時代から比べると非常によくなっております。
  373. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それは昔の旧軍時代といまは、自衛隊に限らず一般家庭においても生活水準も上がっております。カロリーの点においても上がっております。しかし、いま長官がおっしゃるように、私は北海道にも行った、どこにも行ったとおっしゃるけれども、それにはプラスアルファがあるということがおわかりにならないのですよ。
  374. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私が行ったときにはプラスアルファはなかったと思います。そういうことは絶対やっちゃいかぬとは言っておきましたが、それでもやっておるかどうかも確かめてみました。大体みんなの兵員と同じところに行って、セルフサービスで食べておるのですから、そのときだけよけいうんと出しているかといえば、そうでもないようでした。
  375. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それはたまたまあるいは一緒であったかもしれぬが、大体においてよくしてあります。私はあるところではっきりそれの実態を確めました。でございますから、いずれにいたしましても、今日一食九十円でわれれわの生活ができればけっこうですけれども、問題はもう少し食事もよくしていただいて、かわいがっていただきたい。ことに防衛大学の生徒は二百九十一円で、陸上勤務者は二百七十四円、どうしてこんな差別をつけるんだということですよ。むしろ逆じゃないか。陸上勤務者のほうが重労働で朝から晩まで働いているのです。どういうわけでこういう差別をつけるかということです。それは先ほどからの説明で人数が少ないとか多いとか、いろいろ話がありましたけれども、まだこういう点において自衛隊なんかが差別があるということに私はどうもおかしい点があると思うのですよ。たとえば制服の方は朝八時三十分までに来なければならぬ、せびろの方は朝九時までだ、何かそういう規定、内規があるのか知らぬけれども、不文律であるかもしれぬけれども、せびろは九時ごろのこのこやってくる、制服は八時半までに来なければならぬ、防大生は二百九十一円、陸上勤務で働いている者が二百七十四円、こういう点に差別があるということは長官御存じでございますか。
  376. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 知っております。それはしかしほかの社会でもそういう差別はあるので、何でも平等だという社会はないのではないかと思うのです。場所により、機能に応じて差等があるということは、人間社会を発展させるためにも必要ではないかと思うのです。  それから食事の費用の点もございましたが、確かに十分とは言いませんけれども、われわれが特に先に手をつけてやることは、食事の問題よりも日用品とか娯楽とか、そういう問題もまだまだあるように思っております。
  377. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いやお説ごもっとも……。福祉問題とか厚生問題、それはあとでお話し申し上げようと思っているのですが、むろんそれのほうが大事ですよ。しかし食事の問題ということも私は大事だと思うのです。こういうふうに差別がつけてある。それから制服の人は八時半だ、せびろは九時だ、その根拠ですね。それはいま長官が言われたように、組織、機構の関係で早く出なければならぬところ、おそく出なければならぬところ、それを私はやかましく言っておるわけではありませんが、そういう機構上の問題であれば、それは長官のおっしゃるとおりでございますが、それはどういう理由、根拠によるのか、自衛隊の皆さんは納得していらっしゃるのか、その点、だから私は時間にズレがあるということに対して、それがよくないと言っておるのではありません。はっきりした論拠、根拠があって、それをみんなが納得してそういうことになっておれば、それはけっこうです。そういう点をはっきり私は知りたい。私どもはわからないのです。その点を明快にひとつ御答弁願いたい。
  378. 蒲谷友義

    ○蒲谷政府委員 先ほど申し上げましたが、現在自衛隊の支給しております糧食の基準としましては、国民の強健と栄養に関する協議会という有識者の団体に、実際の各部隊の勤務状況、各年齢構成を見ていただきまして、その答申に基づきまして基準を設けております。その基準で申しまして、たとえば熱量で申しますと、陸上勤務員については三千三百、海上勤務員については三千三百だ、防大生については三千三百九十であるというふうに答申をいただいております。同じように、たん白、脂肪、ビタミン、その他各栄養素につきまして、これだけのものが必要であるという、年齢、勤務状況を見ましての答申に基づきまして、その必要量を供給しております。
  379. 内海倫

    内海政府委員 勤務時間の問題でございますけれども、先ほど長官も答弁いたしましたが、なお補足いたしまして実情を申し上げますと、確かに九時、八時半という現実はございますが、それは結局勤務する量の問題と、それから時差出勤と両方で考えておるわけでございまして、内局のほうの勤務員は昼休みの時間が三十分、制服のほうは一時間取ってございます。それから、また各省ともにいろいろな形の時差出勤を取らしておりますが、その考え方も入っておりますし、さらに、これは実際上の問題であって、必ずしも形の上で言うわけではございませんが、内局のほうは、ほとんど勤務時間終了後も残ったまま仕事を継続しておるのが実情でございますし、制服のほうは、一応きちっと勤務時間終了をもって終了しておる、こういうふうなことも、現実の問題としてはあるということを申し上げておきたいと思いますが、形の上におきましては、前半申し上げましたような実情でございます。
  380. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そういう理由があって、しかも昼休みの時間も差異があるとか、そういう点で埋め合わせておるというようなことが、隊員の皆さんに——制服であろうが、せびろであろうが、全部納得して、喜んでそういうことに承知をしていらっしゃればいいのですが、間々そういう不満の声が私どもに聞こえてきまずいから、だから、皆さんに申し上げておるのであって、これは、長官のおっしゃるように、ただいまの説明のように、片方は八時半、片方は九時というような、そういうこともあり得ると思うのです。現場はこうだ、内局はこうだということもあり得ると思うのです。しかし、それが周知徹底して、その主義、主張、趣旨というものが周知徹底して、皆さんがそれを喜んでやっていらっしゃれば問題がないのですけれども、間々私どもがそういう不満の声を聞くから、耳にするからお尋ねをしておるのであって、どこの社会だってそんなことがあり得るのだ、そんなことはあたりまえじゃないか、そういう木で鼻をくくったような長官の答弁は、もう少しやさしく言ってくださいよ。私はびくびくしますから、そんなことを言われると。質問もされないことになる……。
  381. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはり勤務勤務に応じまして、そういう労働条件その他を考えまして、差等があるものと思います。しかし、そういう点を隊員によく了解せしめることは、非常に大事であると思いますから、努力いたしたいと思います。
  382. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いまのように長官が答弁されると、私は最初から納縛するのだけれども、突き放すような答弁をされると、私もそうはいかぬ、引き下がるわけにはいかぬ、こういうことになるわけでございます。  次に、帰郷手当の問題でございますが、これは、長官御存じかと思いますけれども、この制度は、私が参議院時代に、三十七年に提案しました。それまでは、そのことがなかったので、私、提案いたしまして、四十年度からこれが実施されるようになった。昔の兵隊にもあったじゃないか、帰郷制度というものが自衛隊にはないじゃないか、こういうことで、私が先ほどから申し上げておりますように、広報活動も大事でございましょうけれども——遠く北海道に行っておる。それが一年ぶり、二年ぶりに官費で帰ってきた。先ほど長官が言われるように、被服も本年度はいままでよりも倍もりっぱな洋服をつくるようにしておる。そんないい洋服を着て、おみやげを持って帰ってくれば、あんなインチキをやって募集したり、客引きなんかしなくても、ほんとうにきゅう然としてみな集まってきますよ。帰郷制度が四十年度から実施されておりますが、これも、ここで資料をいただいておりますが、非常に少ない。もうこんないい制度をつくっておりながら——広報活動には何十億という金を使っている。そんな金があるならば、いい洋服を着せて、おみやげを持たせて、家に帰せば、もう近郷近在あれよあれよと集まってくる。へたな広報活動なんかしなくても、そんなインチキをやったり、客引きをするような愚劣なことをやらぬでも、ほんとうに——私は、そういう点をもう少し親心を持って自衛隊をかわいがっていただきたいんですよ。ところが予算の経過を見ますと、何をか言わんやです。四十年度が四千五百万円、四十一年度が五千万円、四十二年度が六千七百万円、四十三年度はぐっと減って五千六百万円、四十四年度が五千七百万円、四十五年度は五千三百万円と減っている。一体何をしているのだというんですよ。一体だれが、こんな予算を組んだのですか。それは、もう最終的な責任は長官にあると思うけれども……。
  383. 内海倫

    内海政府委員 鬼木先生からいただいたたいへんありがたい制度、私どもも、これにつきまして、隊員もたいへん喜んでおりますし、また、おっしゃるように、その効果も大きいものでございます。そういう意味では、年々研究を加えまして、いまおっしゃいましたように、確かに金額は、四十五年度は減っていることは事実でございますが、それにもかかわらず、この制度の恵みを受ける範囲は広がっているわけでございます。と申しますのは、一つは、制度を始めましたころは、北海道に勤務している者であって、しかも中部以西の居住者に限ったわけでございます。ところが四十五年度におきましては、いわゆる内地といいますか、北海道以外の全内地の出身者を全員資格のある者についてはこれを帰す、それから北海道だけではなく、その他の離島あるいは僻地に勤務いたしている者につきましても、帰郷制度ということで二年に一回帰す、こういうことで対象を広げております。  では、なぜ金が減ったのか、なぜ人員が減ったのかということでございますが、これは、一つは、かなり努力をいたしまして、出身地に近い郷土配置をかなり進めているということと、もう一つは、営内居住者に限定いたしておりますので、結局、営外居住の層がふえてまいりますと、自然この制度の対象になる者が減ってまいります。そういうふうなことで、実際の人員あるいはこれの帰郷に要する経費が減っていることは事実でございます。しかしながら、こういう制度の対象にしている隊員につきましては、むしろ範囲を拡大しているというのが実情でございます。一見金が減りながら対象がふえているというふうな言い方をいたしまして、妙に聞こえると思いますが、以上申し述べた点を御理解いただきますれば、われわれは、決してこの制度を無視しているどころではない、有意義にできるだけ発展させる方向に持っていっておるということは、御理解いただけるのではなかろうかと思います。
  384. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 私は、あまねく自衛隊の隊員がこういう制度の恩恵をこうむるように、そして広報活動というようなことを、こういういわゆるにしきを着て故郷に帰ってきたら、やはり自衛隊はいいなこうしたことが大きな広報活動の最たるものではないか。自衛隊に行ってほんとうにまじめになってりっぱなあれになった。近郷近在の人たちは、あああそこは今度自衛隊から帰ってこられたそうだ、いま墓参りに行っておるそうだ。皆がその自衛隊員の姿に、徳を慕って来るように広域にこれを広げていただきたいということで、私は皆さん方に提案して申し上げた。でございますから、対象人員を多くしたとおっしゃることは大いにけっこうです。ところが予算が少なくなったということになれば、これはだれが考えたって、一人の旅費やその他はずっと少なくなってくることはあたりまえです。対象人員を多くするならば、それと同様に比例して予算も多く組むべきだと私は思う。その恩恵に浴するところの対象人員は多くなった、予算はそれに反比例して少なくなったというのでは、私はおかしいと思う。一面広報活動は十億も二十億も使っておって、それで大事な、最もいい広報活動になるところの帰郷制度に対するところの予算は年々減ってくる、人員は多くなってくる。だから、これの恩恵に浴するところの人員は多くしているから文句はないじゃないかというのなら、大いに文句がありますね。大いに異議ありだ。
  385. 内海倫

    内海政府委員 私ことばが足りませんでしたので、対象人員といいますより、対象の範囲を広げまして、先ほども御説明申し上げましたように、実際の人員は、昨年に比べますと四十五年度は減っておるわけでございます。それから当然金も減っております。いまのようなおしかりを受けることは、私まことにごもっともな御意見と思うのでございますが、今後もいろいろな形でこの帰郷制度というものは研究をいたしまして、より効果があるように、できる限りにおいてこういう恩恵が多くの者に渡り得るような検討はいたしたいと思いますけれども、御承知のように、自衛官といえどもやはり一般公務員を規律する多くの法令に規律されておるわけでございますので、こういうような制度を適用いたしますにしましても、おのずから一定の条件を設け、一定の範囲に限ってやらざるを得ないという事情がございますことも先刻御理解をいただいておると思います。そういうふうな制約の中において、さらにこの制度を生かすことを検討いたしたい、かように考えております。
  386. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いや、だから、私は、むだな経費、むだなお金とは申しませんけれども、一面募集の広報活動に数十億の金を使っておきながら、地域社会の御本人も一家眷族一統の人たちもみな喜ぶ。しかも自衛隊の姿をそういう広告やあるいはテレビその他で見せるよりも、ほんとうに自衛隊の姿を見せていただく。これに関係した人たち皆さんに安心していただく。かつて中学校で教えたあるいは高等学校で教えた先生方にもごあいさつに行くと、ああきれいになったな、自衛隊はいいな、しっかり国のために働けよ、こうした広報活動が最も生きた広報活動だと私は思う。でございますから、こういう点に金をかけるということは、国民に親しまれる自衛隊ということには欠くべからざることでないか。いま局長のお話のように、それは地域的になるべく出身地に近いところの自衛隊に配置するというようなお考え、それもけっこうだと思います。だけれども、他の公務員との関係もあるとおっしゃいますけれども、これは年次有給休暇というものがあります。でございますから、近いところであったならば、旅費なんか非常に安いですからね。北海道の方が九州に帰るとかいう場合にはそれは旅費は高いでしょう。しかしながら、いまおっしゃるように、地域的になるべく自宅に近いところの自衛隊に配置しているとおっしゃれば、その金はわずかな金で済むわけです。だから、お金が非常にたくさんかかるという人はここに出ておるようにわずかですから……。いずれにいたしましても、私はこんな予算では、どうしてこれが広報活動になるかというわけです。それで一面十億も二十億もかけて広報活動をやって、何にもならない。その広報活動は全部うそだ。全部と言うと行き過ぎでございますけれども、医官の足らぬようなことは何も言うてない。だから、ただいいことだけをポスターに出したり、ただいいことだけをテレビで見せたり。ところが実物が帰って、こうだ、洋服も昨年より倍以上もよくなった。こんなにきれいな洋服もつくってもらったよ。以前はおまえは顔色が悪かったが、いや毎月健康診断を受けているよ……。だから、それは色が悪かろうと、働かせるばっかりで、お医者さんがおらぬというのでは、どうして安心して自衛隊に行かれますか。どうですか、長官、そういう点をお考えいただくわけにはいかぬですか。
  387. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 隊員の帰郷制度というのは、いま先生のお説を拝聴いたしまして、なるほどこれは名案だと思いました。いいアイデアを与えていただきまして、これを活用しないのはもったいないと思います。実は私はいままで知らなかったので、私の落ち度でもありますが、来年から大いにこれを活用していくように力を入れたいと思います。
  388. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 名防衛庁長官もやはり御存じないことがあるのですね。しかし、長官のお答えで、私の考えを十分お取り入れいただいて、その点は大いに努力すると仰せになったことで、では私の質問もその点はこれで終わります。その次に一つまたお伺いをしたいことがございますが、隊員の優遇問題その他につきましては、一応それでピリオドを打ちました。  次に、長官にお尋ねをいたしたいのでございますが、米軍の基地自衛隊移管ということでございます。質問があったかとも思いますけれども、その点について少しく私お尋ねいたしたい。これは佐藤総理が、国会の答弁で、在日米軍基地を今後可能な範囲において自衛隊に移管して、米軍共同使用させる方向で検討を進めたい、このように御発言があっております。これは結局自主防衛強化というものを目ざした方向だ。これはまあ一応わかりますが、私どもの考えといたしましては、基地返還後はまず国民の手にという考えで、国民もそういう考えを持っておる。国民総意だ。まず国民の手に返還をしてもらう。そういう点を長官も、米軍基地はまず自衛隊の管理下に置くんだ、こういうことを言っていらっしゃるようでございますが、これは私は国民の意思を全然とは申しませんけれども、いささか無視をされたお考え、一方的なお考えではないか、このように考えますが、長官のお考えはどのようでございますか。
  389. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本防衛上必要なものはやはり自衛隊で使わさしていただいて、あるいは態様によって米軍共同使用するなり、さまざまな態様が考えられますが、ともかく日本防衛上必要なものはそういう防衛目的に使わしていただいて、あとう限りそれ以外のものは民間のほうへお返しする、そういう考えでやっていきたいと思い、ます。
  390. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 米軍基地は現在百二十五カ所ぐらいあると思いますが、平和条約が発効しました御承知昭和二十七年には二千数百あったと思います。今日は二十分の一に減ったと思いますが、これは御承知のごとく、この米軍基地撤退ということにつきましては、わが党が四十三年十二月に米軍基地の総点検を行ないました。そして基地の現状をつまびらかにし、その実態を国民にお知らせした。米軍基地の全貌をつぶさに調査研究し、総点検をしまして、それを把握した上でこれを国民全体にお知らせをした。そこで基地返還の世論を喚起いたしまして、御承知のとおり米軍基地が徐徐にわが国に返還をされるというような経緯、いきさつがあったと思いますが、いまの長官の御答弁によりますと、自主防衛上必要であるからまず自衛隊の管理にするんだ、そして徐々にまた諸般の情勢を見きわめた上で国民に返還する、こういうお話でございますが、米軍基地を一応自衛隊に移管する前に、そういう二度手間をとらないで、まず情勢判断、自主防衛の上から高度のお考えをもって、国民に返還されるほうをまず先にやっていただきたい、このように私は思いますが、長官いかがでございますか。
  391. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 返還可能なものは、できるだけそのようにしていきたいと思います。
  392. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 返還可能なものはなるべく国民の手にというお考え。じゃ返還可能とお考えになる基地はどのくらいございますか。
  393. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それはこれから作業が始まるので、議会が終わりましたら日米安保協議委員会を開いて、そこでそういう話をしようと思います。それが終わってから両国の専門家がケース・バイ・ケースで基地ごとに点検をして、そして相談していくという形になると思いますので、かなり時間がかかるのではないかと思います。
  394. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 議会が終わってそれからとおっしゃいますが、そのためにわざわざ国会があるんだから、なるべくそういうことは、長官も非常に卓越した見識を持っていらっしゃる方だから、迅速にそういうことを先の見通しをつけていただいて、安保というものは七五年にはもう解消すべきだなんということは七回も八回もおっしゃっておるんだが、こういうことはいまからゆっくり議会でも終わってなんということは、少しどうもそのおっしゃることが私にははっきりしませんがね。大体おわかりになっておるのじゃないですか。それをまたうっかり言うと、間違うたら困る——そんなことは決して責めませんので、長官もう一ぺんはっきりしたことをおっしゃってくださいませんか。前にこんなことがあったから今度はひとつ慎重にやれというお気持ちはよくわかりますけれども、ちょっとでもここらで漏らしていただくわけにはいかぬでしょうか。
  395. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 種もしかけもございません。
  396. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 種もしかけもないならば、議会でも終わったならば早急にひとつ、この点については一番国民が知りたがっていることですから……。長官の御趣旨のように早くひとつ広場に出して、八公、クマ公、皆さんが、ああ長官は可能なものはこことこことここをこうやるそうだ、これがすずみ台の将棋盤に向かってみんなが話すように、そういう広場に早く移していただきたい、こういうことを長官に申し上げたいと思うのであります。  その次に、先ほど私が申し上げましたように、約五十カ所の基地が、私どもが総点検をいたしました結果、返還あるいは共同使用あるいは移転というようなことが提案されたのでございますが、それもこの新聞記事に載っております。載っておりますが、昨年一カ年間で二十五カ所、本年は二カ所、計二十七カ所返還される、こういうことになっておりますが、その中で——私ここで計算をしてみたのですが、そのうちで十カ所の総面積が五千七百二十万平方メートル、返還された二十七カ所の面積の九五%に当たっておる。それが自衛隊が使っておる。わずかに二十七カ所の面積の五%だけが、初めてわれわれ国民の手に帰ってきた、こういうことになるのです。そうするといま長官がおっしゃっておるように、可能なものは国民の手に一日も早く返還をするようにすると仰せになっておりますけれども、なぜ私がこういうことをくどく申し上げるかと申しますと、いままで二十七カ所返還されたその中で九五%が自衛隊専用の基地になっておる。それで国民の手に移ったのはわずかに五%にすぎない。でございますから、そういう点をいささかでもいいからお漏らし願いたいと申し上げたのでありまして、今後議会でも済んだならば十分そういう点を検討して、なるべく国民の手に、可能なものは早く返還できるように努力するとおっしゃっておりますけれども、なるべく可能に持っていくようにひとつ努力をしていただきたい。これは最初は米軍共同使用だ、こういうことになっていた部分もございますけれども、米軍は基地を手放したというよりも共同使用の権利を放棄したと思うのです。最初共同使用という点もあった。だけれども今日は、米軍使用しない、こういう事態になっておりますので、共同使用という点から自衛隊専用、それが九五%だ。するどこれから先の見通しも、可能な部分、可能な部分とおっしゃるけれども、わずか五%の可能では私どもは納得ができないのですよ。だからそこに、ひとつ長官の手腕に私どもは期待しておるわけなんです。その見通しに対しては発表できない、それはそれでけっこうでございます。でございますから、いままでのような、二十七カ所も返ってきて、総面積の五%が国民の手に移されたのだ、これが可能な部分だと委員会で言っておった、約束したとおりこれが可能な部分だなんということを言われたのでは、私どもは納得ができないから、十分可能ならしめるように長官に御努力を願いたい、こういうことを申し上げておるわけです。
  397. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 努力してみたいと思います。
  398. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いま長官は十分努力をすると仰せになりましたが、結果がどうなるかということになりますけれども、自走防衛という立場からのみお考えになってこれを処理しようとなされば、それは当然そういうことになるかもしれぬと思いますけれども、一方防衛費は一七・七%の伸び率を示している、防衛費の非常な大幅な増額になっております。これは一つの特色になっております。これは政府自主防衛という構想がだんだんエスカレートしていくのではないか。いままでの米軍基地が今度は自衛隊の算用となるということになりますと、自主防衛という点からますます防衛費はふくれていく。その間非常に危険性があるのではないか。いままでの米軍の基地が完全に今度は日本が肩がわりした。返還でなくて肩がわりした。返還ということは、国民に返還してもらうのでなければ……。そういう点について非常に危惧するものでございます。国民みなが望んでおる。あたかも干天に慈雨を望むがごとく、返還はまだか、一日も早く返還していただきたいと、国民の総意によって希望いたしております。そしてそれが返還されますれば、佐藤総理の言われるような人間尊重という意味から住宅もできましょうし、あるいは平和産業の土地の造成にもなりましょうし、国民生活に直結した有為な施策がそこで生まれてくるのじゃないか。それは全部国民に通ずるのじゃないか。佐藤総理は人間尊重で内政の年だと仰せになっておる。でございますから、そう言われておる佐藤総理の政治姿勢を何らかの形にあらわしていただきたい。それには米軍基地が返還されるということになれば直ちに国民の手に戻していただきたい。そうして国民に直結した、生活に潤いを持つことのできるような施策を私は非常に望んでおるわけでございます。どうでしょう、長官
  399. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御意見を尊重いたしまして努力してみたいと思います。
  400. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 長官がそういうふうに言われるとあまりあとを言われぬことになりますがね、(「鬼木先生に甘いな、長官」と呼ぶ者あり)いや、甘いなと言うが、私の言うのはほんとうに筋の通った、国民総意の正論を申し上げておるのでございますからね。これは国民が全部聞いておりますから、いいかげんなことは申し上げません。その点におきましては長官も私と全く意見が一致いたしたものと私は了解いたします。どうぞ今後長官防衛政策に対するますますの御健闘を祈ります。  時間も来ましたので、これで御無礼いたします。まことにありがとうございました。
  401. 天野公義

    天野委員長 東中光雄君。
  402. 東中光雄

    ○東中委員 きょう零時四十五分ごろに、日本原の演習場で発射訓練がやられて三発のたまが撃たれたわけですが、この山の中、奈美池の東側に四十五人くらいの人が入っておって、着弾地の近く十メートルぐらいのところに六人くらいの人がおった。この訓練で一名が負傷してもう一名が行くえ不明で現在捜査中だというふうに聞いておるのですが、そういう事実をお聞きになっておりますか。
  403. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 本日日本原で実弾射撃演習を実施しましたが、このため民間人一名が行くえ不明との由でございますが、まだ確認できておりません。目下調査中でございます。
  404. 東中光雄

    ○東中委員 この間私も防衛庁をおたずねして、事故のないように言っておったのですが、人に危険が及ぶようなことで実弾射撃の訓練をやるようなことはしないということだったのです。きょうも現地の野村中部方面総監部第四部長も、着弾地点に一人もいないことを確認しない限りは絶対発射しない、こう言われておったようですが、しかも発射をされた。そして負傷者一名と行くえ不明が出たという状態ですが、これは約束も踏みにじっておりますし、自衛隊の行動としては全く許されないことだと思うのですが、この点について長官考え方をお聞きしたい。
  405. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 事態をよく調査しました上で、善処いたしたいと思います。
  406. 東中光雄

    ○東中委員 こういうような人がおる状態の中で、とにかく射撃訓練をやらないということは、今後の問題としてはっきりさせておいていただきたい、こう思うのですが、いかがでございましょうか。
  407. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 安全確認ということは非常に大事なことでございますから、今後よく調査さしていきたいと思います。
  408. 東中光雄

    ○東中委員 その問題につきましては、事実をはっきり調査していただいて、そういうことが絶対に今後ないようにひとつやっていただきたい。  それでは本論に入りたいと思うのですが、佐藤総理も、国力、国情に応じて自衛力を整備し、その足らざるところは日米安保条約によって補充するのだ。自主防衛安保条約による補完ということを長官も言われておるわけですが、安保条約によって補完されるものは一体何なのか、補完の内容をお聞きしたいのであります。
  409. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本憲法によりまして攻撃的兵器とかあるいは核抑止力とか、そういうものは持てませんので、そういう部分並びに本土防衛等につきましても相互協力という関係にもなっておりますので、日本自衛隊の整備で足らざるところは補う、こういう考え方であります。
  410. 東中光雄

    ○東中委員 その足らざるところを補ってもらっておるものは、具体的にはどういうものでございましょうか。
  411. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 本土を防衛するについて不足と思われるような部分は、その際には向こうから応援してもらうとか補充してもらうということになろうかと思います。
  412. 東中光雄

    ○東中委員 具体的に言うと、たとえば核兵器その他どういうものか、その内容を明らかにしていただきたいと思います。
  413. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それはそのときの事態に応じて、どういう脅威が生まれるか、そういう客観情勢に応じて相談をしてきめるべきもので、いまこれこれといって特に明定されておるわけではございません。
  414. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、核兵器あるいは戦略的な攻撃兵器は日本自衛隊としては持たない、持てないので、その部分を補完してもらう、こういう関係になるわけですか。
  415. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その部分もございますけれども、それ以外におきましても脅威の実態によりまして、そのときの情勢によってきまるものと思われます。
  416. 東中光雄

    ○東中委員 在日米軍がいま日本で保有している戦力といいますか、その内容を聞きたいのですが、いわゆる攻撃的兵器で在日米軍が持っておるもの、その内容を明らかにしていただきたい。
  417. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 在日米軍の力といいますか勢力でございますけれども、人数は約四万人ちょっとでございます。航空機がおもでございまして、これが約三百七十機程度おります。海軍及び海兵隊の系統で百二十機ばかり、空軍で約二百五十機程度、合計しまして約三百七十機おるわけでございます。もっと具体的に申しますか。
  418. 東中光雄

    ○東中委員 海軍、空軍の機種、それから機数、配備をできればお聞きしたい。
  419. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 空軍関係で申し上げますと、三沢に第四七五戦術戦闘航空団というのがおりまして、機種はF4Dファントムでございます。これが三飛行隊、約七十二機でございます。三沢にはそのほかにRF4Cという偵察機もおります。  それから横田に第三四七航空団がおりまして、機種はF4Cファントム三飛行隊、七十二機、そのほかにRC130という偵察機もおります。  それから海軍関係では、岩国に海兵隊の関係の航空隊がおりまして、機種はF4、二飛行隊。それからA6、A4これは攻撃機でございます。ファントムが約三十五機程度、攻撃機はいま申し上げましたのを両方合わせまして約三十機程度でございます。そのほか艦隊航空団が一飛行隊おりまして、P3という哨戒機がおります。  おもなものは大体そういうところでございます。
  420. 東中光雄

    ○東中委員 在日米陸軍は大体どういうことをやっておりますか。
  421. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 陸軍は人数にしまして約七千五百人程度でございますが、管理、補給部隊で、戦闘部隊はおりません。
  422. 東中光雄

    ○東中委員 管理、補給と言われたのですが、補給というのは何を補給するのですか。補給されるものは一体何なんでしょう。
  423. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 各種の補給部品なんでございましょうが、その……
  424. 東中光雄

    ○東中委員 補給を受ける部隊……。
  425. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 その部隊は正確にはわかりかねます。
  426. 東中光雄

    ○東中委員 在日米軍が管理、補給をしておるのですから、補給されておるのは在日米軍でなくて、在日以外の米軍ということになるわけですか。どうもそういうふうに聞こえるのですが……。
  427. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 主としてそういうことになろうかと思います。
  428. 東中光雄

    ○東中委員 その補給を受けておる側の部隊はどこにいるか、そういうことについては日本防衛庁としては全くわからない、こうおっしゃるわけですか。わかっておるけれども言えない、こういうことでございますか。
  429. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 韓国とか沖繩とか、その他周辺の陸軍部隊の補給に任じておるものと想像されますけれども、正確にはわかりかねます。
  430. 東中光雄

    ○東中委員 在日米軍が、たとえばいまの陸軍の場合がそうですけれども、日本外の部隊の補給、管理ということになりますと、日本防衛のためではないということになると思うのですが、そういうふうに理解してよろしいのですか。
  431. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 極東全般の平和と安全のため、あわせて日本の安全のため、そういうことになろうかと思います。
  432. 東中光雄

    ○東中委員 それで、基地の管理のことについてお聞きしたいのですが、自衛隊による米軍基地の自主管理ということで、長官、いろいろ見解を出されておるわけでございますが、アメリカの戦略的な基地になっている、たとえば横田とかあるいは三沢とか横須賀とか佐世保、こういったような基地も将来自衛隊管理にし、共同使用方向を志向するというお考えなのかどうか、お伺いしたいと思います。
  433. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まず横田、三沢等は必ずしも戦略基地ではないと思います。あそこにおるのは戦術空軍部隊がおります。
  434. 東中光雄

    ○東中委員 戦術部隊ということですが、同時に、たとえば横須賀なんかの場合もそうですけれども、第七艦隊が一つの根拠地にしておるわけでもあります。戦略的な観点からも使用しております。いずれにしましても、そうした横田、三沢あるいは横須賀、佐世保のような基地についても共同の管理の方向を、他の基地と同じように自衛隊管理で共同使用方向というものを、中曽根長官の方針としては志向されておるわけですか。
  435. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あれらは大体いまの機能は戦術基地になっております。戦略基地ではございません。  それから、それらの基地を日本との関係においてどう処理するかということは、一般論としては、日本にある基地は日本に返還してもらって、その上で向こうといろいろ調整していきたいと思っていますが、いまの具体的な基地の名前につきましては、先方との話し合いやその他の情勢によって、まだきまっているわけではございません。
  436. 東中光雄

    ○東中委員 きまっていないということでございますけれども、いまきまっていないのは事実でしょうが、将来の方向として、在日米軍の基地を自衛隊の管理に移していくという方向日本としてはとっていくというふうにお聞きしていいのかどうか。
  437. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 一般論としてそういうことは私は考えていますけれども、基地基地、そのケースケースによってその態様は異なっていく、そういうふうになると思っております。
  438. 東中光雄

    ○東中委員 日本におるアメリカ軍の任務といいますか、これが安保条約に基づいて日本防衛及び極東の安全平和という二つの任務を持っておるということについては、これは安保条約上きわめて明白なんですが、この前も私、予算の分科会でお聞きしたのですけれども、基地を共同使用する、あるいは日本自衛隊の管理の中でアメリカ軍が常時使用する——いわれておる一時使用とか反復使用とか断続使用じゃなくて、いわゆる共同使用、常時使用するというふうになった場合には、結局自衛隊が、極東の安全平和をも目的にしておるアメリカ軍に、基地管理という面で協力し、協同する形になってくるわけですが、そういう方向もあり得るのかどうか、その点をひとつ明らかにしていただきたい。
  439. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは将来向こうと話し合ってみなければわかりません。しかし、もしそういう場合があり得ても、理論的には、わが主権の範囲内にある日本の領土を施設として提供しておるというものなんであって、日本の領土であり、日本の領域内にあるものを日本が守るということは当然許さるべき、やるべきことであると私は思っています。
  440. 東中光雄

    ○東中委員 そうしますと、第一に問題になるのは地位協定の関係ですが、いまの二条四項の(a)または(b)にしましても、これは一時使用ないし反復、断続使用の場合はともかくとして、アメリカ側と話し合いの結果、いわゆる共同使用ということになった場合は、地位協定は、そのままではいけない、もちろん話し合いの過程で変えていくという問題が起こると思うのですが、その点はどうなのか。
  441. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 しばしば答弁申し上げましたように、大体現行協定の応用でいけるという公算が大であります。将来それでいけないという場合は、将来の問題として検討していくことになると思います。
  442. 東中光雄

    ○東中委員 地位協定で第二条の四項以外のケースに入る場合、これはアメリカ軍の常時使用、そして自衛隊の管理ないし共同使用ということになれば、二条四項では律し切れないことは、規定の条項からいってはっきりしておるように思うのですけれども、それまでのたとえば断続使用、反復使用といっておる断続、反復の内容によりますけれども、それが常時ということになれば、それでもなお、地位協定は変えなくてもいけるというふうにお考えなのか。そこらはどうなんですか。
  443. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 滑走路とかあるいは港湾というものは、年じゅう横づけになって使っておるものではないのであって、おそらく大部分が断続的に使用され、間欠的に使用されるというので、これはあるいは地位協定の援用で解釈してできるだろうと想像されます。しかし向こうが定着して常時使っておるというような場合については、これは提供施設として考えなければならぬケースもこの中にはあるかもしれません。それらはそのときの実態に応じて、ケース・バイ・ケースで考うべきことになるのではないかと思います。
  444. 東中光雄

    ○東中委員 そうしますと、固定的に定着しておるような基地の場合には、自衛隊移管にするか、あるいはアメリカの管理のままでいくか、それはその時点になって、話し合ってみなければわからない、こういうふうに考えていらっしゃるわけですか。
  445. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その時点に立って、将来の問題として検討すべき対象であると思います。
  446. 東中光雄

    ○東中委員 その場合に、アメリカ軍は常時、恒常的に、いま長官が言われた、ある程度定着して使うという場合で、しかも自衛隊が管理をするということであれば、私、先ほど申し上げた米軍目的との関係、それから自衛隊日本防衛という任務からいきますと、これは基地の管理というのは、単に施設が日本にあるということだけじゃなくて、たとえば管理要員も要るわけですし、そういう点では財政的な処置もとらなければいけないでしょうし、そういう基地管理は、常時アメリカ軍がその基地を使って発進をする、あるいは使っておることに協力をする、そういう面では、極東における平和、安全をも目ざすアメリカ軍とその点で協力するわけですから、自衛隊法の目的の範囲を越えるように思いますが、どうでしょうか。
  447. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大体、そういうものも、日本のものを施設として提供しているのであって、日本の領土、日本のものであるものを日本自衛隊が守るということは、自衛隊法違反ではありません。
  448. 東中光雄

    ○東中委員 管理業務というのは、アメリカ軍が使用する基地の管理業務ですから、単に、その日本の施設を自衛隊が守るというだけの問題ではないですね。アメリカ軍がその基地を使って行動をするのに協力し、援助するという形は、これはそれなしに管理というようなものはないのですから、単なるそこの施設の管理、守るというだけの問題じゃなくて、たとえば発進していく場合のそれぞれの協力という問題が起こってくるわけですから、その点は全く同じものだ、単なる施設をいわゆる守る、日本の施設だから日本が守るというふうに、そこまで拡張してしまって、協力してしまうということに結果においてはなるんじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  449. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 安保条約がカバーしている範囲内においては——日本防衛あるいは極東の平和及び安全の維持という安保条約がカバーしている範囲内のことについては、自衛隊が守っても、日本のものであるのですから、あたりまえのことであって、自衛隊法違反にはなりません。
  450. 東中光雄

    ○東中委員 在日米軍が日本に基地を持って、そして安保条約目的の範囲内で動いている、たとえば極東での行動ですね、それについても、協力するのはこれはもう自衛隊としては当然だ、こういうふうにお考えなんですか。
  451. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは守っても自衛隊法違反ではない。
  452. 東中光雄

    ○東中委員 それでは、くどいようですが、結論的に申し上げておきたいのですが、極東における安全、平和のために、在日米軍が行動する場合に、それに自衛隊が行動面で、財政的な負担も伴いながら、協力することは、それは自衛隊目的の範囲内だ、こういうふうにいま言われているわけですか。
  453. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 自衛隊法違反ではありません。
  454. 東中光雄

    ○東中委員 そうしますと、自衛隊日本防衛アメリカ軍は安保条約に基づいて日本防衛と別個の任務を持っておるけれども、その別個の任務について協力することもこれはいいんだと、こういうふうにお聞きしていいわけですね。
  455. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 第一に、それも提供しているものも日本の領土であり、日本のものですから、その日本の領土であり、日本のものであるという厳然たる日本のものを、日本自衛隊が守るということは、自衛隊法に違反するものではありません。
  456. 東中光雄

    ○東中委員 どうも長官が言われることとかみ合うているのかかみ合うていないのかよくわからないので、くどく聞くのですけれども……。
  457. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ちゃんとかみ合っています。
  458. 東中光雄

    ○東中委員 自衛隊がその施設を管理するということは、アメリカ軍の使用のために自衛隊が協力するということになる。そのアメリカ軍が使用している目的というのは、日本防衛以外の目的を持っているけれども、それはかまわない、こういうことですか。単なる施設を守るということだけに言われると、あまりはっきりしないんですけれども……。
  459. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 極東の平和及び安全維持に寄与しているアメリカの基地を日本自衛隊が守るということは、違反にはならない、あたりまえですよ。
  460. 東中光雄

    ○東中委員 そういう点で、日本自衛隊も、極東における安全、平和に間接的に協力していくことになるのですね、在日米軍と一緒に。そういうように聞いていいわけですか。
  461. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 極東の平和及び安全維持に審与するということは、日本防衛のためにもまた非常に大事なことでもあります。
  462. 東中光雄

    ○東中委員 そうしますと、要するに、基地共同使用ということになっても、自衛隊法を変えるとかそういう必要はないという考えで進めていく、こういうふうに防衛庁の見解をお聞きしてよろしいわけですね。
  463. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 任務の範囲内でありますから、変える必要はないと思います。
  464. 東中光雄

    ○東中委員 それでは、次の問題に移りたいと思います。  四次防におけるいわゆる自主防衛構想における自衛力の内容についてお聞きしたいのですが、昨年の十月十四日に出された有田防衛庁長官の第四次防作成についての指示ですが、その中に、第一義的にはみずからの力でこの防衛に当たることを本旨とし、通常兵器による局地戦以下の侵略等に対して有効に対処できる体制をできる限りすみやかに確立したいと、こう言われておるわけですが、この考え方は現在も同じ考えで進めておられるわけですか。
  465. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう考えも含まれております。
  466. 東中光雄

    ○東中委員 通常兵器で局地戦に有効に対応できる——これは日本自衛隊が有効に対応できるような、そういう力を持つ、こういうことだと思うのですが、そうですか。
  467. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのとおりであります。
  468. 東中光雄

    ○東中委員 ここで言われている局地戦争という場合は、どういう程度のものを言われておるのですか、明らかにしていただきたい。
  469. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この局地戦というのは、英語でいえば、ローカルウォーという概念で、グローバルウォーに対してあることばです。つまり、グローバルウォーとなると、世界大戦的な、全世界がそれに関係するような大きな戦争、局地戦という場合には、その地球上の一地域に起こる、そういう意味においてローカルウォー、そういうことばがあるわけです。日本の場合には、憲法及び自衛隊法の命ずるところによりまして、本土を防衛する、そういう関係ですから、本土並びにその周辺地域の防衛ということになるだろうと思います。
  470. 東中光雄

    ○東中委員 局地戦と言われている戦いの規模ですが、いまことばの面から言われましたが、たとえば、戦後、世界のいろいろな局地で戦争がやられておりますが、ベトナムあるいは朝鮮、中近東、これは全部、ここで言われているいわゆる局地戦争というふうな中へ入るわけですね。
  471. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 軍事学的定義においては入るだろうと思います。ただ、局地戦ということばは私、あまり好きじゃないことばなんで、限定戦ということばが正しいと思います。たとえば目的防衛である、侵略とかそういうものじゃない、それから、使う兵器は攻撃的兵器を使わない、核も使わない、それから、地域は本土を守りその周辺で行なう、そういうような限定戦、そういう考えはいいと思うのです。局地戦ということばは、昔の陸軍が使ったことばがそのまま流れてきて使われているんじゃないかと思いまして、適当なときに変えたらいいと思います。
  472. 東中光雄

    ○東中委員 私のお聞きしておるのは、戦争の規模の問題です。たとえばベトナムのいまやられている戦争、これも、局地戦ないし限定戦というか、限定戦ということばを使われたらそういうことになるのかもしれませんが、なるのかならないのか、その点をもう一度伺いたい。
  473. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は、軍事学や国際法の権威者じゃありませんから、正確なことはわかりませんが、入るだろうと思います。
  474. 東中光雄

    ○東中委員 私が申し上げているのは、軍事学的、国際法学的に聞いているのではなくて、指示で出されておる内容として聞いているわけです。そういう程度のものが、要するにたとえば朝鮮やベトナムで相当大きな規模で死傷者もずいぶん出ている、そういういわゆる局地戦、それを第一義的には日本自衛隊が戦える程度の能力を持っていく、それを目ざしていくというのが四次防の方向と解してよろしゅうございますか。
  475. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大体いままで申し上げました制限戦争——リミテッドウォー、限定戦、そういう範囲のことを通常兵器によって行なう、そういうふうに解釈されてけっこうです。
  476. 東中光雄

    ○東中委員 それで長官は、今後の問題として間接侵略を非常に重視するということを言われておるわけですが、間接侵略というのは一体どういうふうに定義をされておるのか、まずお聞きしたい。
  477. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは共産党のあなたのほうが権威者じゃないかと私は思うのですが、私に教えていただきたいと思います。
  478. 東中光雄

    ○東中委員 長官考えをお聞きしたい。
  479. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 間接侵略につきましては、国際法上明確な定義はまだございませんが、外国の教唆または干渉によって引き起こされた国内における大規模の内乱、騒擾等をいうというふうに解しております。
  480. 東中光雄

    ○東中委員 前に定義されたそのままのことであるということですか。
  481. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いま申し上げた内容でございます。
  482. 東中光雄

    ○東中委員 ちょっと話を戻しますが、一九五四年五月二十日の参議院内閣委員会における当時の佐藤法制局長官の解釈ですが、アメリカの陸海空軍のごやっかいにならないで、独自の防衛力を持つようなことができるときになれば、これは戦力だ、こういうふうに言われておるわけですけれども、先ほどの局地戦を第一義的に遂行できる能力を目ざすということになると、第一義的に日本自衛隊がそれをやることになるわけですが、この法制局の言われておった戦力に入ってくるのじゃないかというふうに思うのですが、どうでしょう。
  483. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 核や攻撃的兵器までは、とても日本は持てませんから、該当しない。
  484. 東中光雄

    ○東中委員 当時の法制局長官の説明では「独自の防補力」ということを百言っているのです。だから、核兵器とかあるいはそういう攻撃的な力ということはもう言うに及ばず、防衛力であっても独自に戦闘能力が持てるようになれば、それは戦力になるんだ、こういう解釈を示されたと思うのですが、その点は四次防の目標を目ざしてどうでしょう。
  485. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのときの速記録をよく読んでいないのでわかりませんが、アメリカにかわる防御力という意味は、おそらくアメリカが現在持っておる近代的な、核兵器的な大規模な攻撃力ないし防衛力——防衛力の中には、概念の中において攻撃力も入っている場合があります。そういう意味において使われているのではないかと私は思います。
  486. 東中光雄

    ○東中委員 アメリカにかわってじゃなくて、アメリカのごやっかいにならないで、要するに独自の防衛力を持つようなことができるときになれば、こう言われているわけです。いま四次防で追求されている目標というのは、独自に通常戦以下の戦い——まあ長官の言う限定的な戦いは、これは結局防衛でしょう。そこからさらに越していくんだったら攻撃になってしまうので、防衛力という同じ限定がついているわけですが、その点で法制局が示された当時の見解からいくと、いまや四次防で目標にされておる内容というのは、憲法上にいう戦力になっていくんではないかというふうに思うのですが、その点はどうでしょう。
  487. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その法制局長官の答弁は、私の推察では、アメリカが持っておる戦闘力、近代的組織的な近代戦争を遂行し得る戦闘力意味しておると、私はいま拝聴して感じておりますから、該当しないと私は思います。
  488. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、いわゆる局地戦における通常兵器による戦闘能力、戦争遂行能力ですね。これは憲法にいう戦力ではないという考えで進めていく、こういうことですか。
  489. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 戦力ということばが、なかなか多岐にわたって使われておりますから、憲法にいう戦力ではない、自衛力であります。
  490. 東中光雄

    ○東中委員 自衛力もまた戦闘する力という意味では戦力なんですね。戦力というのはまさに言われるように多岐なんですから、だから私がいま申し上げているのは、通常戦であればそれを独自で遂行していくというその程度の能力を持っても、そういう意味での戦いの力、戦力を持っても、それは憲法にいう戦力ではない、自衛力だ、こういうことで、憲法違反にならない、こういう考えで、結局局地戦における独自の戦争遂行能力を持つことはかまわないんだ、こういうふうに防衛庁としては考えて進めておられるのですか。
  491. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 防衛的なものならかまわない。
  492. 東中光雄

    ○東中委員 これは堂々めぐりになりますからやめますけれども、ただし防衛的なものというのは、先ほど長官自身が言われましたように防衛的なものの中に攻撃的なものも入るんだ。これは当然そういう戦力の性格、戦う力としての戦力の性格からいってそうなるわけですが、防衛的なものだということであれば、たとえばベトナムや朝鮮で現実に第二次大戦後起こっているような局地戦を独自で遂行し得る能力を持つことは、これは憲法にいう戦力ではない、こういうふうに考えておられる、こういうことですね。
  493. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そう思います。
  494. 東中光雄

    ○東中委員 それじゃ次の問題に移りますが、間接侵略に関して中曽根長官が先日、三月十九日に自民党の安全保障調査会で演説された中で「わが国に対し万一外部から侵略があるとすればなんらかの原因で国内の治安が乱れた場合に反乱分子に地方政権を樹立させた上でこれを外部から支援するという形」をとるだろう。「いずれにせよ、侵略者はアメリカを戦争に引き込まないよう細心の注意を払い、その限度でゲリラ的戦争を断続させ、国内破綻を狙うと思う。したがって自衛隊はこのような事態に備えて訓練し、装備することが必要である。」こういうように言われておる。間接侵略に対処することを非常に重視しなければならない、こういうように言われておりますけれども、これは防衛庁長官としてもそういうようにお考えになっておるわけですね。
  495. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 三派全学連とか、一部の左翼勢力を見ますと、そういう意図も公然と言っているのもありますし、備えを持っておるということがわれわれ防衛の任務を全うするゆえんであると思います。
  496. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、現実政治的な勢力としてこういうことが予想されると言われておるのは、いわゆる三派学生、暴力学生、この連中の言っておることを——現在存在するものとして、そういうものを念頭において言われておるということなんですか。
  497. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういうような考えがときどき散見しておりますし、それから、中にはまた綱領を急に変えて、どういう行動に出るかわからぬというのもなきにしもあらずであります。そういう、いままでの終戦以来の歴史も考えてみて、われわれは注意深く見ていかなければならぬと思っております。
  498. 東中光雄

    ○東中委員 共産党、社会党が、あるいは民主勢力が連合して国会で多数を占めて民主連合政府をつくろう——私たちはそう思っておるのですが、そういう政府、そういうものは間接侵略関係があるというふうにお考えなんですか、どうでしょう。
  499. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そんなに御遠慮なさらぬでもいいのだろうと私は思う。ともかく憲法的手続によって、民主的に国民の納得する手続を経て政府ができれば、憲法上の合法政府でございましょう。
  500. 東中光雄

    ○東中委員 それで間接侵略に備えて訓練、装備をやるということですが、結局治安出動の体制ということが問題になると思うのですが、前長官のときに指揮官心得云々という問題がありましたが、それはどうなっておりましょうか。
  501. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 目下検討中であります。
  502. 東中光雄

    ○東中委員 そういうふうなものをつくろうという方向で検討されておるわけですか。
  503. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は着任以来ああいうものはなるたけ慎重にやったほうがいいと思いまして、慎重に検討しております。
  504. 東中光雄

    ○東中委員 つくるかつくらないかを慎重に検討しておるのですか、つくる内容を検討しておられるのですか。
  505. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 つくるかつくらないかを検討しております。
  506. 東中光雄

    ○東中委員 治安出動に関連してお聞きしておきたいのですが、先月の日航機乗っ取り事件のあのとき、自衛隊が出動しておるのですが、その発進命令はいつ、だれが、どこの基地に対して出されたのか、その点を伺いたいと思います。
  507. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 スクランブルをかけました飛行機につきましては、大滝根の基地と佐渡のレーダー基地が飛行機から出た緊急発信を受けまして、それを航空総隊ですぐキャッチして、航空総隊からの命令に基づいてスクランブルが発進されました。  それから福岡におきまして、自衛隊の基地内において、私の勘違いで、不発弾処理隊の人間が数人待機しておったようです。これも西部方面総監の指示でやったと聞いております。
  508. 東中光雄

    ○東中委員 この出動は、自衛隊法上はどういう根拠による出動ですか。
  509. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 飛行機の場合は、人命救助のための災害出動であり、あとの場合は官庁協力ではないかと思います。
  510. 東中光雄

    ○東中委員 飛び立った飛行機はどういう任務といいますか、目的を命令されて行ったのでしょうか。
  511. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あの「よど号」のそばに付き添って、中で異変が起きないか、あるいは機長が脅迫されたり、危険な状態が起きないか、そういうことを監視していたのだろうと思います。
  512. 東中光雄

    ○東中委員 それは、私も飛行機に乗って操従していましたからよく知っていますけれども、飛行機で、ほかの飛行機の中の状態なんというのは、そんなのはわかりっこないわけです。実際、おりておる飛行機の中さえ、あの板付の場合はわからないわけですから、その中の状態を監視するためについていかれた、そういう命令を出された、こういうことですか。
  513. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは、命令は一般的に安全航行を保護してやれ、そういう意味だろうと思うのです。しかし雁行してこう行けば、パイロット、コーパイロットのところに日本刀をこうやっているのが見えますから、一番大事なのはパイロットですから、そういう点は雁行していけばよく見えるだろうと思います。
  514. 東中光雄

    ○東中委員 それは前のほうは見えるかもしれませんけれども、見えたところでどうもしょうがないのじゃないですか。たとえば進路をどこかに変えさすとかいうのだったらまた別ですけれども、中の安全を外の別の飛行機でどうもしょうがないと思うのですけれども、そういう任務はどういう任務でございますか。
  515. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 パイロットやコーパイロットは、やはり自衛隊の飛行機がそばにくっついていてくれれば、ずいぶん心強いだろうと思うのです。
  516. 東中光雄

    ○東中委員 それは見解の違いになってしまいますけれども、私も経験がありますが、飛行機というのは、一機離れておれば、燃料がなぐなって落ちていく飛行機を横で見ておったってどうもしょうがないのですから、そういう点では、そんな力強くなるとかなんとかいうような性質の、応援団みたいなかっこうにはまいらないわけで、それにしましても、その出動された目的というのは、そういう進路を指示するとかそういうことじゃなかった、こういうことですか。
  517. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 安全航行の保護だろうと思います。
  518. 東中光雄

    ○東中委員 小松基地から発進したF104J二機は「よど号」が北に機首を向けた場合はできるだけ阻止するよう小松付近で空中待機していたというようなことが報道されていますけれども、これは事実なのかどうか。
  519. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう事実は聞いておりません。
  520. 東中光雄

    ○東中委員 日航機が板付空港に着陸したあとも、上空で築城の86F四機と新田原基地のF104J二機が空中待機を続けていたという報道をされていますが、これはどういう任務なんですか。
  521. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それはいかなる場合にも有事即応で、もし日航機が急に飛び立つとかなんとかいうときの用意に、安全航行を考えて待機していたのでしょう。
  522. 東中光雄

    ○東中委員 ついでにお伺いしておきますが、板付空港で、滑走路中央に航空自衛隊のT33とT34各一機が故障を装って、滑走路を封鎖したというような報道がされていましたけれども、これは事実かどうか。
  523. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それはあそこの空港長の要請でT33、T34を滑走路に置いたのであります。
  524. 東中光雄

    ○東中委員 それは、撤去されたのも空港長の要請で撤去されたということになるわけですか。
  525. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのとおりです。
  526. 東中光雄

    ○東中委員 災害出動ということなんですけれども、災害というのは災害対策基本法なんかでも概念規定がある程度きまっておると思うのですけれども、普通、自然現象による天変地変その他の災害と書いてありますけれども、それは結局は大きな火事とか爆発とか、そういうものを普通、災害といっていると思うのです。人命救助ということは、たとえば犯罪が行なわれておれば、いつでも人命救助になりますから、そうすると、警察活動との区別がつかなくなるわけなんですね。いま本件の場合は、災害出動だといわれているけれども、人命救助、あれが災害だとは——中に乗っておる人はたいへんな災難というか、たいへんな事態でありましたけれども、いわゆる災害出動という場合の災害とは違うと思うのです。人命救助ということになれば、治安出動の場合だって人命救助、これは秩序維持ということ、治安維持ということが中心なりますが、やはり人命救助ということが基礎に入っているわけで、条文にはないけれども、同じことなんです。だから自衛隊の出動についての災害出動と治安出動というのは、限られて規定されているわけですが、今度の場合はどうも災害出動というにはあまりにも拡張解釈され過ぎているのではないかというふうに思うのですが、どうでしょう。
  527. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 人命が危急存亡のときなんというのはやはり大きな災害だろうと私は思うのです。その災害のために、防護のために出るということは災害出動になるだろうと私は思います。
  528. 東中光雄

    ○東中委員 それは要請を受けて出たのではなくて、要請なしに、自衛隊として出動された、こういうことですね。
  529. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そうです。そのとおりです。もっとも緊急コールがありまして、要請はありました、飛行機から。
  530. 東中光雄

    ○東中委員 飛行機からの要請であって、災害出動を要請する権限を持っておる機関はきまっておるわけですから……。
  531. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういうときは、他官庁から要請があった場合、あるいは独自で出る場合、二つともあり得ることになっております。
  532. 東中光雄

    ○東中委員 治安出動ではない、そういう解釈だと思いますけれども、それじゃ、自衛隊の出動というのは、犯罪があれば出動するということになったら、これはたいへんな警察との混淆が起こってくると思うので、そういう点では安易な出動はされないようにすべきではないかというふうに考えるわけです。  時間もあまりありませんので次に進みたいと思いますが、沖繩返還後の防衛体制の基本的な方向をお示し願いたい。
  533. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は米軍側が沖繩をその後どういうふうに評価し、どういうふうに維持管理することを希望しているか、そういうことも聞いた上でわれわれはわれわれの考え向こうと調整し決定していきたいと思っております。
  534. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、七二年返還後、自主防衛、安保補完、基地も自衛隊移管の方向をとっていくという本土で考えられておる方向は、沖繩ではそのままいかない、話してみなければわからない、こういうことになるわけですか。
  535. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 米軍側がどういう意図を持っておるか、それを聞いて、それとわがほうの考え方とを協議して調整していくべきものだと思っております。
  536. 東中光雄

    ○東中委員 本土とは同じではないということになるのかどうか。
  537. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 本土でもそういうことはよく行なわれております。アメリカ軍が持っていた基地を日本に返還してくる、そういう場合については、東富士みたいに使用するのか、あるいは北富士みたいになるのか、場所によってみんな相談をしてきめているわけであります。
  538. 東中光雄

    ○東中委員 特定の基地について言っているのではなくて、沖繩県全体の、いわゆる沖繩防衛についての自衛隊の構想というものはどうなっているか。この点についてお聞きしているわけであります。
  539. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ですから、先方がどういうふうに沖繩を持っていきたいと考えているかということを聞き、わがほうもわがほうの考えを述べ、そして調整して決定したい、こういう考えで、大体陸上警備力とかあるいは防空能力、それから沿岸哨戒能力、それから一部の施設部隊や通信部隊、そういうようなものが要るのではないかと考えております。
  540. 東中光雄

    ○東中委員 さっき申し上げた有田防衛庁長官の指示では、沖繩に関してはその地理的特性にかんがみ、機動力と独立性の付与を重視すること、こういって、本土と別個の自衛隊としての防衛体制というか、条件というものを考えておられるように思うのですが、この考えは現在も踏襲されるのかどうか、その点をお聞きしたい。
  541. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは基本的にはそういう考えがあるでしょう。しかし、それは先方との協議によって影響を受けてくる問題だと思います。
  542. 東中光雄

    ○東中委員 いまたとえばアメリカでは、二月六日に公表されました米議会の議事録で、アメリカ太平洋統合軍マケーン司令官の発言でも、「沖繩日本返還は、沖繩基地のどれかを失うことを伴うものではない。」こういうふうに言っておりますし、四月十七日に米海兵隊副司令官ワルト大将は、沖繩の施政権が返還されても、海兵隊の沖繩基地の縮小は考えていない、沖繩基地は半永久的基地であるというふうな声明を出しているわけです。そうしますと、沖繩の施政権返還後のアメリカ軍基地というのは現在とほとんど変わらない、こういう意思をすでに公式に、それぞれ責任のあるアメリカ側の人が言っているわけですが、この前提で進めていくということになるわけですか。
  543. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 アメリカ側もときどき変わるのでありまして、日本が独立しましたときに二千幾つか基地がありましたが、あのときもこれは重要不可欠であるといって絶対手放さないような感じをあのころわれわれは受けましたが、いまになってみたら、百二十幾つに減ってしまった。また沖繩につきましても、あれは極東のかなめで、絶対日本に渡さぬ、こんりんざい渡さぬというようなことをいっておりましたが、日本に渡してきている。そういうわけで、やっぱり変わり得るものだと思います。
  544. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると日本として沖繩防衛——アメリカ軍の言い分が変わるだろうということを期待されておるような発言があったわけですけれども、日本としてはどういう方向で行こうとしておられるのか。
  545. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 七二年以降は日本の領土であり、日本の主権が平穏公然と支配する場所になったわけですから、当然われわれが防衛すべきである、そういう配慮をもってあの土地の問題を考えていきたいと思います。
  546. 東中光雄

    ○東中委員 しかしアメリカ軍は、永久的基地だ、縮小しない、こういっているわけですから、そうすると、具体的な沖繩防衛の構想というものはどういうことになるのか。たとえば先ほど言っている自主防衛、安保補完というふうなことを、沖繩でもやっていくというお考えなのかどうか。
  547. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 沖繩も本土並みであります。
  548. 東中光雄

    ○東中委員 実際は沖繩の基地というのは本土並みどころか、アメリカの基地というのは極東最大の基地になっているわけで、むしろアメリカ軍の基地があってそれが中心で日本自衛隊が補充しいくような形になっていくのではないか。現にアメリカ側の高官がそう言っているわけですから、その点どうでしょう。
  549. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本本土についても昭和二十七、八年ごろはそういう状態であったのですから、やはり時間の推移というものはわれわれは考える必要があります。
  550. 東中光雄

    ○東中委員 時間の推移——二十七、八年ごろというのは朝鮮戦争のやられておる最中で、自衛隊はまだできていない年ですから、いま沖繩の状態というのは、そうするとやはり同じように、昭和二十七、八年ごろからこれは二十年近くたっているわけですから、沖繩もそういうふうな長期の時間の推移によって変化していく。七二年返還によってどうするかということではなくて、アメリカ側の方針が不変ではない、変わるということを期待して進めていく、こういうことになるわけですか。
  551. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 沖繩がどの程度長期になるかということは予測できないと思います。条件があのときと今日は非常に違いますし、そういういろいろな条件の変化をわれわれはよく見通しながら進めていかなければならぬと思います。何も日本の場合がそのまま沖繩に適用されるとは限らない。むしろ時代の潮流は、あのときよりもはるかに強く、早く動いているように思います。
  552. 東中光雄

    ○東中委員 次に海外派兵の問題に関連してですが、中曽根長官が小谷秀二郎教授との対談で国連警察軍への参加について、そういう方向を目ざしていきたいという趣旨のことを言われておりますが、国連警察軍が創設されれば自衛隊がそれに参加をしていくという方向を、防衛庁長官としてお持ちかどうか。
  553. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は何回も申し上げましたように、個人哲学として民族非武装、人類武装、それが今日の世界の人の願いであろう、そういうふうに思うのです。しかし現実はそこへいかない。やむを得ず各国が国別に武装して防衛をやっておる、あるいは集団保障をやっておる、そういう状態で、もっと早く人類が文明的に目ざめて進んでいったらいいと思うのです。いずれ将来、個人哲学として、そういう世界政府みたいなもので、一種の警察行為をやってくれて、各国が廃藩置県といいますか、武力を捨てて、そうして世界が平和な世界になるということを熱望しておる一人なんです。将来そういうことがもし出てくれば、それが五十年かかるか百年かかるかわかりません。この間も議会で言いましたけれども、一日八時間労働というのになるためには、大体一時間、労働が減殺されるには二十五年から五十年かかっている、人間の歴史の中で。したがって国が武装を解くというのには百年かかるか二百年かかるかわかりません。あるいはしかし、この核の威力によってもっと早く来るかもしれませんが、少なくとも労働時間の一時間短縮——一日八時間労働というものが実現している歴史を見ると、一時間短縮するのに二十五年から五十年かかっているという冷厳なる事実を見なければいかぬ、そう思います。
  554. 東中光雄

    ○東中委員 個人哲学をお聞きしているのではなくて、防衛庁長官として、いわゆる平和維持のための警察的な国連軍というものに自衛隊を参加させるという方針を持っておられるのかどうか。
  555. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 目下のところは持っておりません。
  556. 東中光雄

    ○東中委員 愛知外務大臣が九日の委員会で、ベトナム戦争の休戦がまとまれば、わが国に対して国際監視団への参加が要請される可能性がある、事務当局でこの問題は常時検討しているということを外務省の立場で言われているわけですが、防衛庁としてはやはりこの検討はされておるのかどうか。
  557. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 憲法上から見ますと、国連の平和監視行為について、日本自衛隊が参加することは憲法違反にはならぬ、しかし自衛隊法にそういう規定がないからできない、また政治的に見てもまだ熟していないからやらない、そういう段階であります。
  558. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、ベトナムでそういう国際監視団がいつできるかということはまだわからぬわけですから、そういうのに、自衛隊法上そういう規定がないからできない。自衛隊法を改正してやるというふうな考えはないわけですね。
  559. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 目下のところはありません。
  560. 東中光雄

    ○東中委員 ジョンソン米国務次官は、この十日にフィラデルフィアの講演で、日本はすでに、東南アジアの現在の情勢から生ずるかもしれない国際平和維持軍に参加する意向を示している、こういうふうに述べていると報道されていますが、自衛隊もこれに派遣する、そういうつもりがあるかどうか。
  561. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 外国の人はときどき間違った情報でものを言うことがありまして、そういうことは信用なさらぬようにお願いいたします。
  562. 東中光雄

    ○東中委員 しかしジョンソン・アメリカ国務次官が言っておるので、そう誤った、いいかげんなことを言っておるのだったら、これは話し相手にもならぬということになってしまいますけれども、この情報は、このジョンソンの発言は、参加する意向を示していると言っているのですけれども、そういう事実はないということですね。
  563. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大体共産党の方は、アメリカの情報は信用しないということだと思っておりますけれども、この情報も信用しないでいただきたいと思うのです。
  564. 東中光雄

    ○東中委員 いやいや、アメリカの情報は自民党の皆さんよく信用されるから、信用できることになっておるのかどうかとお聞きしておるのであって……。
  565. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 外国人はときどき認識不足のことを言いますから、誤解されないでくださいと申し上げたのです。
  566. 天野公義

    天野委員長 東中さん、もうだいぶ時間もおそくなっているので……。
  567. 東中光雄

    ○東中委員 もうちょっとですから……。  日航機乗っ取り問題のときに、中島一佐が派遣されましたね。あれはどういう根拠で……。
  568. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 山村政府次官が京城に行くというときに、各省庁からそれを補佐する要員を連れていくことになりまして、運輸省や厚生省や、その他各省から出したわけです。そうして防衛庁にもそういう要請がございまして、中島一佐を外務省の職員に併任いたしまして、そうして外務省の職員としてあそこへ派遣したのでございます。やはりあそこに駐在武官がおりまして、駐在武官がいろいろ心配をしたり、われわれの防衛庁のほうへいろいろ、武官として外務省を通じて情報を送ったり、そういう点で助けてやる必要があると思ったからでもあります。
  569. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、中島一佐は武官として情報連絡の任務を持って自衛隊から外務省の併任で行った、こういうことになるわけですね。
  570. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 外務省の職員の資格を持って、向こうへ渡ったのです。
  571. 東中光雄

    ○東中委員 今度の日米共同声明で、韓国の安全は日本の安全に直接緊要な関係があるといわれておるわけですが、たとえば韓国で安全が脅かされておる、あるいは脅かされておるような状態があるというふうになった場合には、結局中島一佐を派遣されたような形で自衛官を派遣して、そういう情報収集や連絡その他の任務につかせるということになるわけですか。
  572. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あの場合は百何名の命にかかわっているという非常に重要な段階でもあり、官庁協力ということで各省からそういう人を要望されたので、自衛隊も官庁協力の意味におきまして、そういう形をとって協力申し上げたわけです。
  573. 東中光雄

    ○東中委員 それは百何名の生命が問題になっているたいへんなことでありますけれども、しかし日本の安全に緊要な関係がある事態が起こっているとしたら、それ以上にもっとたいへんなことだということに論理上なっていくのじゃないかというように思うのですが、そういう場合は別だ、こういうふうに言い切れるわけですか。
  574. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう場合は別だと思います。
  575. 東中光雄

    ○東中委員 自衛隊機があの場合出ていって防空識別圏のところから引き返していますね。これはなぜ引き返されたのか。
  576. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本自衛隊機のそういうスクランブルの行動範囲というものは、その識別圏の範囲内に、一応訓令で教育を受けているからであります。
  577. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、あの日航機の救援ということではなくて、その任務からいえば防空上飛んでいっても別にかまわぬはずなんですけれども、防空識別圏から帰られたのは、そのあとはどうするということなんですか。
  578. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ひとのお座敷へ入るということは遠慮したほうがいいと思ったからです。
  579. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると防空識別圏より先はひとのお座敷だ、こういうお考えですね。ひとというのは韓国ですね。
  580. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ともかく日本自分防衛のために必要な限度内の行為を行なう、そういう節制を持っておるのでありまして、その節制を守っていくという考えであります。
  581. 東中光雄

    ○東中委員 今度の出動は人命に関することだからということで出動されているのですね。そうすると、そこから先は、人命に関することでも、自衛隊としてはもうそれはひとのお座敷だから知らぬのだ、こういうことになるのですか。どうもよく解せぬのですが……。
  582. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのとおりです。自衛隊法及び自衛隊の方針のほうが大事でもあります。
  583. 東中光雄

    ○東中委員 そこから先は韓国の航空機が出てきて、日航機に対して自衛隊機と同じような態勢をとったというふうに聞いているのですが、どうでしょう。
  584. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 三十八度線の付近で出てきたのが韓国の飛行機じゃないかとわれわれは想像します。
  585. 東中光雄

    ○東中委員 これとの関係で聞いておきたいのですが、松前・バーンズ協定というのは、今日なお有効ですか。
  586. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 有効です。
  587. 東中光雄

    ○東中委員 協定によりますと、自衛隊のレーダーサイトには米軍の運用チームを置くとされておりますが、二十四カ所のレーダーサイトのうち、米軍が配置されているところはどこで、人員はどれくらいですか。
  588. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 人員は全部で七十名前後だったと記憶しております。個所は二十四カ所全部ではございませんで、七カ所ないし八カ所くらいだったと思います。
  589. 東中光雄

    ○東中委員 この協定によりますと、日本の防空組織は第五空軍指揮下の隣接防空組織との間で情報を交換するとされておりますが、この規定はいまも実行されておるのでしょうか。
  590. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 隣接区域との連携は第五空軍のほうでやるとこういうで、今度の場合もちょうどそういうふうに行なわれております。
  591. 東中光雄

    ○東中委員 日航機の場合もこの松前・バーンズ協定に従ってやられている、こういうことになるわけですか。
  592. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 協定そのものは領空侵犯に対する措置でございます。そして第五空軍と日本の航空自衛隊とが情報をお互いに交換し合う組織になっております。今度の場合は人命に関することですが、その情報組織がたいへん活用されて役に立った、こういうことでございます。
  593. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると結局は、日本本土と沖繩韓国を一つに結んだ共同体制といいますか、それが府中の作戦指揮所のもとに、第五空軍のもとに連絡し、やられていくということになるわけですね。
  594. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 府中を中心にしまして、わがほうの総隊司令部と第五空軍の司令部がありますが、それを中核にしまして日本米軍との情報交換が行なわれておりますし、今度の場合も行なわれたわけであります。
  595. 東中光雄

    ○東中委員 米軍との関係というよりも、隣接防空組織との関係が第五空軍の統轄下に行なわれていく、こういう関係ですね。
  596. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 第五空軍の中では府中が司令部でありまして、その管下に沖繩なり韓国の管轄を持っておるわけです。その韓国におります第五空軍のほうと府中との間に情報の経路があったわけです。その経路によって府中に情報が来ましたのをわがほうが受けた、こういう経路でございます。
  597. 東中光雄

    ○東中委員 韓国におる第五空軍と、それから韓国軍との関係はどうなんですか。要するに隣接防空組織といっている場合のその組織の中に、在韓米軍だけでなくて韓国空軍そのものも入るのじゃないですか。
  598. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 松前・バーンズ協定は、日本アメリカとに関する協定でございます。韓国は入りません。
  599. 天野公義

    天野委員長 東中君、もう二十分超過しておりますので、そろそろ結論をお願いいたします。
  600. 東中光雄

    ○東中委員 もう終わります。  この協定では、戦時緊急計画が実施されるまでの取りきめとしておりますけれども、戦時緊急計画というのはあるのですか。あるいはないのですか。あるとすれば、内容はどういうことなんですか。
  601. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 現在ございません。
  602. 東中光雄

    ○東中委員 緊急時にあっては、一方的に処置した後、事後に調整するというようなことになっているようですけれども、それはそのとおりですか。
  603. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 ほぼそういう内容の協定になっております。つまり領空侵犯等をどちらかが発見した場合には警戒態勢をどちらかがとる、そうして通報し合う、こういう趣旨でございます。
  604. 東中光雄

    ○東中委員 安保条約五条が発動されて日米共同行動がとられる場合の最高指揮は、どこが持つことになるのですか。
  605. 宍戸基男

    ○宍戸(基)政府委員 別々の系統でございます。日本日本の指揮官の系統、米軍米軍の指揮官の系統、並立するわけでございます。
  606. 東中光雄

    ○東中委員 その共同作戦の態勢がとられたら、共同軍というのは、一番トップに指揮を掌握する最高司令官というのがいるわけですね。それのない共同作戦なんというのはありませんから。自衛隊の指揮は自衛隊がやっていくということはわかりますけれども、共同作戦をとるその最高の指揮はどこがとることになっていますか。
  607. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 米軍側はアメリカ大統領、自衛隊日本総理大臣、全く別系統でございます。
  608. 東中光雄

    ○東中委員 共同作戦をとる場合に、共同行動をとる場合のその両軍の具体的な最高指揮官というものは——両軍が一緒になって共同するわけですから、そのときに、その指揮官というのはないということですか。
  609. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ない。
  610. 東中光雄

    ○東中委員 ないんですか。  もう終わりますが、もう一点だけ聞いておきたいんです。第四高射群の関係がありますね、関西のナイキハーキュリーズの基地の関係、いま各務原と饗庭野とが大体決定したようにいわれておりますが、その後どうなっているかですね。白山町ですか……。
  611. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 現在饗庭野と各務原以外に、あとの候補地はまだ全然きまっておりません。検討中でございます。
  612. 東中光雄

    ○東中委員 この白山町というのはどうなんですか。
  613. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 白山町も一応の候補地でございますけれども、まだ内定も決定もいたした地区ではございません。
  614. 東中光雄

    ○東中委員 そのほか一応候補地の予定地域は大阪、和歌山ということになっておるのですが、それはどの程度まで進んでいるのか、お聞きしたい。
  615. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 阪神を中心にしまして大阪、兵庫、和歌山の三県の中に二カ所設置するようになっておりますが、まだ候補地も調査検討中でございまして、具体的に内定いたしたものはございません。
  616. 東中光雄

    ○東中委員 調査対象になっている地域も言えませんですか。
  617. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 現在のところ、まだ内定した地域もございません。
  618. 東中光雄

    ○東中委員 地元でこの基地に対して反対が、たとえば町議会とか関係行政組織が反対しているような場合にも防衛庁は設定されていくか。その点、地元民の意思を尊重してやられるか。その点を長官にちょっとお聞きして終わりたいと思います。
  619. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その前に、先ほどの射撃の問題の報告が参りましたので申し上げますと、射撃は所定の着弾予定地域に人がないことを十分確認し、さらにその外周に歩哨を立て万全の措置をとって実施した。したがって負傷はやぶの中などに隠れていた反対派の人々が砲撃音に驚いて飛び出した際、さくや立ち木で擦過傷等を負ったのではないかと思われる。少なくとも砲弾の破片によるものではない、こういう報告が参りました。  それからナイキ設置場所の問題でございますが、住民の意向あるいは防衛上の必要、そういうものをよく勘案いたしまして妥当な措置をとるようにいたしたいと思います。
  620. 東中光雄

    ○東中委員 じゃ終わります。
  621. 天野公義

    天野委員長 次回は、明二十二日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後八時十五分散会