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1970-03-12 第63回国会 衆議院 内閣委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年三月十二日(木曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 天野 公義君    理事 伊能繁次郎君 理事 熊谷 義雄君    理事 佐藤 文生君 理事 塩谷 一夫君    理事 大出  俊君 理事 鈴切 康雄君    理事 和田 耕作君       阿部 文男君    伊藤宗一郎君       加藤 陽三君    辻  寛一君       葉梨 信行君    堀田 政孝君       山口 敏夫君    木原  実君       鬼木 勝利君    受田 新吉君       東中 光雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長内閣総         理大臣官房審議         室長      青鹿 明司君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         人事院総裁   佐藤 達夫君         総理府総務副長         官       湊  徹郎君         総理府人事局長 栗山 廉平君         宮内庁次長   瓜生 順良君         皇室経済主管  並木 四郎君         防衛庁人事教育         局長      内海  倫君  委員外出席者         労働省職業安定         局業務指導課長 保科 真一君         内閣委員会調査         室長      茨木 純一君     ————————————— 三月十一日  靖国神社の国家管理反対に関する請願(青柳盛  雄君紹介)(第九六六号)  同(浦井洋君紹介)(第九六七号)  同(小林政子君紹介)(第九六八号)  同(田代文久君紹介)(第九六九号)  同(谷口善太郎君紹介)(第九七〇号)  同(津川武一君紹介)(第九七一号)  同(寺前巖君紹介)(第九七二号)  同(土橋一吉君紹介)(第九七三号)  同(林百郎君紹介)(第九七四号)  同(東中光雄君紹介)(第九七五号)  同(不破哲三君紹介)(第九七六号)  同(松本善明君紹介)(第九七七号)  同(山原健二郎君紹介)(第九七八号)  同(米原昶君紹介)(第九七九号)  同(阿部助哉君紹介)(第一〇二二号)  同(青柳盛雄君紹介)(第一〇二三号)  同(浦井洋君紹介)(第一〇二四号)  同(卜部政巳君紹介)(第一〇二五号)  同(加藤清二君紹介)(第一〇二六号)  同(川村継義君紹介)(第一〇二七号)  同(小林信一君紹介)(第一〇二八号)  同(小林進君紹介)(第一〇二九号)  同(小林政子君紹介)(第一〇三〇号)  同(後藤俊男君紹介)(第一〇三一号)  同(島本虎三君紹介)(第一〇三二号)  同(下平正一君紹介)(第一〇三三号)  同(田代文久君紹介)(第一〇三四号)  同(田邊誠君紹介)(第一〇三五号)  同(楯兼次郎君紹介)(第一〇三六号)  同(谷口善太郎君紹介)(第一〇三七号)  同(津川武一君紹介)(第一〇三八号)  同(辻原弘市君紹介)(第一〇三九号)  同(寺前巖君紹介)(第一〇四〇号)  同(土橋一吉君紹介)(第一〇四一号)  同(林百郎君紹介)(第一〇四二号)  同(原茂君紹介)(第一〇四三号)  同(東中光雄君紹介)(第一〇四四号)  同(広瀬秀吉君紹介)(第一〇四五号)  同(不破哲三君紹介)(第一〇四六号)  同(藤田高敏君紹介)(第一〇四七号)  同(松本善明君紹介)(第一〇四八号)  同(松平忠久君紹介)(第一〇四九号)  同(美濃政市君紹介)(第一〇五〇号)  同(柳田秀一君紹介)(第一〇五一号)  同(山原健二郎君紹介)(第一〇五二号)  同(横山利秋君紹介)(第一〇五三号)  同(米田東吾君紹介)(第一〇五四号)  同(米原昶君紹介)(第一〇五五号)  同外二件(曽祢益君紹介)(第一一〇二号)  同(田代文久君紹介)(第一一〇三号)  同(土橋一吉君紹介)(第一一〇四号)  同(林百郎君紹介)(第一一〇五号)  同(東中光雄君紹介)(第一一〇六号)  同(松本善明君紹介)(第一一〇七号)  同外一件(門司亮君紹介)(第一一〇八号)  同(安宅常彦君紹介)(第一一五三号)  同(阿部昭吾君紹介)(第一一五四号)  同外一件(赤松勇君紹介)(第一一五五号)  同(井上普方君紹介)(第一一五六号)  同外一件(石川次夫君紹介)(第一一五七号)  同(江田三郎君紹介)(第一一五八号)  同外一件(岡田利春君紹介)(第一一五九号)  同(勝澤芳雄君紹介)(第一一六〇号)  同外一件(勝間田清一君紹介)(第一一六一号)  同(川崎寛治君紹介)(第一一六二号)  同外一件(北山愛郎君紹介)(第一一六三号)  同(久保三郎君紹介)(第一一六四号)  同(黒田寿男君紹介)(第一一六五号)  同(河野密君紹介)(第一一六六号)  同外一件(佐々木更三君紹介)(第一一六七号)  同(佐藤観樹君紹介)(第一一六八号)  同外一件(佐野憲治君紹介)(第一一六九号)  同外一件(阪上安太郎君紹介)(第一一七〇号)  同(武部文君紹介)(第一一七一号)  同外九件(土井たか子君紹介)(第一一七二号)  同外四件(中嶋英夫君紹介)(第一一七三号)  同(中村重光君紹介)(第一一七四号)  同(楢崎弥之助君紹介)(第一一七五号)  同外一件(成田知巳君紹介)(第一一七六号)  同(畑和君紹介)(第一一七七号)  同(細谷治嘉君紹介)(第一一七八号)  同(堀昌雄君紹介)(第一一七九号)  同(平林剛君紹介)(第一一八〇号)  同(三木喜夫君紹介)(第一一八一号)  同(八百板正君紹介)(第一一八二号)  同外一件(山口鶴男君紹介)(第一一八三号)  同(山中吾郎君紹介)(第一一八四号)  同外一件(山本幸一君紹介)(第一一八五号)  同(山本政弘君紹介)(第一一八六号)  同外一件(安井吉典君紹介)(第一一八七号)  豊岡市の寒冷地手当引上げ等に関する請願外七  件(有田喜一君紹介)(第九八〇号)  兵庫県温泉町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(有田喜一君紹介)(第九八一号)  兵庫県篠山町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願外二件(有田喜一君紹介)(第九八二号)  兵庫県城東町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願外一件(有田喜一君紹介)(第九八三号)  兵庫県多紀町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願外一件(有田喜一君紹介)(第九八四号)  兵庫県丹南町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願外一件(有田喜一君紹介)(第九八五号)  兵庫県西紀町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願外一件(有田喜一君紹介)(第九八六号)  兵庫県日高町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(有田喜一君紹介)(第九八七号)  兵庫県村岡町、美方町の寒冷地手当引上げ等に  関する請願外十件(有田喜一君紹介)(第九八八  号)  兵庫県養父町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願外一件(有田喜一君紹介)(第九八九号)  兵庫県浜坂町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(有田喜一君紹介)(第九九〇号)  兵庫県一宮町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願外一件(松本十郎君紹介)(第九九一号)  兵庫県大河内町の寒冷地手当引上げ等に関する  請願(松本十郎君紹介)(第九九二号)  兵庫県千種町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(松本十郎君紹介)(第九九三号)  兵庫県波賀町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(松本十郎君紹介)(第九九四号)  兵庫県山崎町の寒冷地手当支給に関する請願  (松本十郎君紹介)(第九九五号)  長岡市等の寒冷地手当引上げ等に関する請願外  二件(小林進君紹介)(第九九六号)  糸魚川市の寒冷地手当引上げ等に関する請願  (高鳥修君紹介)(第九九七号)  旧軍人恩給受給資格に関する請願(有田喜一  君紹介)(第九九八号)  国防省設置に関する請願(宇野宗佑君紹介)(第  九九九号)  同外一件(植木庚子郎君紹介)(第一〇〇〇号)  同外二件(小山長規君紹介)(第一〇〇一号)  同(永田亮一君紹介)(第一〇〇二号)  同外一件(小澤太郎君紹介)(第一〇五九号)  同(天野光晴君紹介)(第一一一二号)  同外三件(稻葉修君紹介)(第一一一三号)  同(田澤吉郎君紹介)(第一一一四号)  同(亀岡高夫君紹介)(第一一九三号)  同(鴨田宗一君紹介)(第一一九四号)  同(倉成正君紹介)(第一一九五号)  人事行政厳正化に関する請願(宇野宗佑君  紹介)(第一〇〇三号)  同外二件(小山長規君紹介)(第一〇〇四号)  同(永田亮一君紹介)(第一〇〇五号)  同外一件(小澤太郎君紹介)(第一〇六〇号)  同(天野光晴君紹介)(第一一〇九号)  同外三件(稻葉修君紹介)(第一一一〇号)  同(田澤吉郎君紹介)(第一一一一号)  同(亀岡高夫君紹介)(第一一九〇号)  同外一件(鴨田宗一君紹介)(第一一九一号)  同(倉成正君紹介)(第一一九二号)  滋賀県近江町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(後藤俊男君紹介)(第一〇五六号)  滋賀県余呉村の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(後藤俊男君紹介)(第一〇五七号)  同(草野一郎平君紹介)(第一〇八七号)  長浜市の寒冷地手当引上げ等に関する請願外九  件(後藤俊男君紹介)(第一〇五八号)  同外四件(草野一郎平君紹介)(第一〇八八号)  元満鉄職員恩給等通算に関する請願外二件  (和田耕作君紹介)(第一〇六一号)  同外二件(毛利松平君紹介)(第一一一五号)  滋賀県竜王町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(宇野宗佑君紹介)(第一〇六九号)  滋賀県能登川町の寒冷地手当引上げ等に関する  請願(宇野宗佑君紹介)(第一〇七〇号)  滋賀県土山町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願外一件(宇野宗佑君紹介)(第一〇七一号)  滋賀県信楽町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(宇野宗佑君紹介)(第一〇七二号)  滋賀県石部町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(宇野宗佑君紹介)(第一〇七三号)  滋賀県日野町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願外一件(宇野宗佑君紹介)(第一〇七四号)  滋賀県愛知川町の寒冷地手当引上げ等に関する  請願(宇野宗佑君紹介)(第一〇七五号)  滋賀県愛東村の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(宇野宗佑君紹介)(第一〇七六号)  滋賀県秦荘町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(宇野宗佑君紹介)(第一〇七七号)  同(山下元利君紹介)(第一〇七八号)  滋賀県蒲生町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(宇野宗佑君紹介)(第一〇七九号)  同(山下元利君紹介)(第一〇八〇号)  滋賀県五個荘町の寒冷地手当引上げ等に関する  請願(宇野宗佑君紹介)(第一〇八一号)  同(山下元利君紹介)(第一〇八二号)  滋賀県甲西町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(宇野宗佑君紹介)(第一〇八三号)  同(山下元利君紹介)(第一〇八四号)  滋賀県浅井町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(草野一郎平君紹介)(第一〇八五号)  滋賀県西浅井村の寒冷地手当引上げ等に関する  請願(草野一郎平君紹介)(第一〇八六号)  滋賀県米原町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(草野一郎平君紹介)(第一〇八九号)  滋賀県湖北町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願外一件(草野一郎平君紹介)(第一〇九〇号)  滋賀県山東町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(草野一郎平君紹介)(第一〇九一号)  同(山下元利君紹介)(第一〇九二号)  滋賀県虎姫町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(草野一郎平君紹介)(第一〇九三号)  同(山下元利君紹介)(第一〇九四号)  滋賀県高月町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(草野一郎平君紹介)(第一〇九五号)  同(山下元利君紹介)(第一〇九六号)  彦根市の寒冷地手当引上げ等に関する請願(山  下元利君紹介)(第一〇九七号)  滋賀県マキノ町の寒冷地手当引上げ等に関する  請願外一件(山下元利君紹介)(第一〇九八号)  滋賀県朽木村の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(山下元利君紹介)(第一〇九九号)  滋賀県高島町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(山下元利君紹介)(第一一〇〇号)  滋賀県新旭町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願外一件(山下元利君紹介)(第一一〇一号)  山形市外二市の寒冷地手当引上げ等に関する請  願外十四件(華山親義君紹介)(第一一八八号)  兵庫県安富町の寒冷地手当支給に関する請願  (松本十郎君紹介)(第一一八九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  総理府設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第五〇号)  皇室経済法施行法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一九号)      ————◇—————
  2. 天野公義

    天野委員長 これより会議を開きます。  総理府設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。東中光雄君。
  3. 東中光雄

    東中委員 同和対策協議会設置期限延長に関連しまして、政府同和対策、いわゆる同和対策事業について聞きたいのですが、同和対策は同対審答申にもありますように、環境改善あるいは社会福祉、教育問題、人権問題、非常に広範にわたっておる重要な問題がたくさんありますが、そのうちで特に部落住民転職転業について若干お聞きしたいわけです。  未解放部落住民は今日なお部落出身者という理由だけで職業の上でも不平等な扱いを受けています。とりわけ中高年齢層労働者や婦人は特に就職が困難でありまして、土方、日雇い、パートタイマー、行商あるいは内職が生業みたいな形になっておる。こういった雑業に従事せざるを得ない状態であります。そういう中で、非常に生活が困窮しておるわけですが、この問題を解決することは基本的に非常に重要な問題だと思います。それで政府部落住民就業状態について現状をどのように把握しておられるか、ひとつ総務長官にお願いしたい。
  4. 山中貞則

    山中国務大臣 私実態が正確にわからないということもありましょうが、御指摘のように、同和地区の方であるから転業、再就職その他がほんとうに阻害されているのかどうか。ときたま、たとえば結婚問題なんかで予算委員会で質問がありまして、興信所から何か調査して旧戸籍か何かまでめくって、それを報告をしたものだから破談になった。これは人権じゅうりん問題だから、こういうのは人権侵害の事実ですから、法務大臣に私のほうから調査善処方を依頼したのですけれども、一般就職問題まで差別しているのかどうか、そこらまではちょっと私わかりませんし、私の常識ではそういうところまではほんとうにもう同化して、あまりそういう差別はないんじゃないかと思うのです。ただそのような失業者調査というものは四十二年の八月の実態調査の際に一応しておりますけれども、個人個人職業形態なり現在の状態なりという調査みたいなことをしておりませんので、これらはこれから機会あるごとに各県の補正調査をお願いしたいし、あるいは国が、特別措置法のできたあとのことでありますから、都道府県も少し意欲がまた違っておりましょうし、そういう意味でもう一ぺんそういうことも含めた調査等をしてみたらどうだろうかとは思っております。
  5. 東中光雄

    東中委員 昭和四十一年に大阪同和対策室で発表した同和地区就業状況調べを見てみますと、部落住民で就業可能で、しかも就職をしたいというふうな希望を持っておりながら、実際は失業ないしは半失業状態になっている人が非常に多いようです。この数字で検討してみますと、六〇%余りにもなっているのじゃないかと思います。特に最近では部落の伝統的ないわゆる部落産業、たとえば製靴業——くつの製造あるいは修理あるいは再生物販売、こういったものが大資本に押されてどんどんつぶされていっている、こういう状態があります。また青果あるいは植木、再生物、こういった販売をやる露天営業についている人、これは半失業状態ですが、こういういろいろな行商関係それからくつ、げたの修理、こういうものが職業と言えるかどうかしりませんが、これらが半失業状態ですね。こういう人たち行商露店業、これは全部道交法取り締まりをされている。そういう中でひどい人は罰金まで食らうという状態まで起こっているわけですね。こういう人たち、これは長い歴史的な問題ですし、社会的経済的に差別しないということが非常に大切なことなんで、こういう転職転業を余儀なくされている人たちがずいぶんいるわけですが、これについて政府はどういうふうな処置をとるのか、対策をお聞かせ願いたいと思うわけです。
  6. 山中貞則

    山中国務大臣 いま大阪府の実態についてお話しになったので、私もそれは正確だと受け取りますが、現在の日本雇用状態から見ますと、大体においてアメリカあたり経済繁栄をしておりましても絶えず失業率が三%とか、現在は五%近いとか議論されております背景を持っているわけですが、今日日本の場合は完全雇用で、失業率というものはほとんどパーセンテージにのらないような状態まできていると私は一面においては思っておりますけれども、はたしてその中で同和関係皆さま方だけがそのような希望する職場あるいはありたいと思う職業というものが選べないのかどうか。そこらをだれが阻害するのかという問題になりますと、私もつまびらかにしませんが、人手が足りないときに、わざわざ働こうといって来てくださる人の身元まで、そういう意味身元まで調べて、だからこれは雇わぬというところまでいまの日本中小企業といえども考えているだろうかと思うと、私はあまりそういうふうには思っていないのじゃないかと常識上思うのですが、ただいまおっしゃいました地域の方々が主として従事しておるような業種というものについて、大企業がその職場を奪いつつある、あるいはそれの分野資本攻勢がかけられつつある、このことは確かに日本企業分野全部についても言えることだろうと思いますが、先般閣議で——私は閣僚じゃありませんが、非自由化品目の四十六年末自由化の中に皮革というのも入っておりましたけれども、そのときに、やはり岡本君はたしかまだ国会議員であったと思いますが、その影響はどの程度あるのかというようなことも、私ちょっと聞いたりしたこともありまして、そういう意味の国家的な関心も一応持っていたつもりでありますけれども、大企業の場合に、いまは全面的に、畜産業に至るまでそういう形態になりつつあります。そこで、やはり単に同和地域の人々のみならず零細資本、零細な企業というものは同じような波にいまさらされているような気がします。ただ大阪における形態として、道交法取り締まりの対象にもなる路上の露天商その他について理解ある態度はとれないかということ等につきましては、その実態等をもう少し私も調べまして、道路交通の支障にならない、大体慣例として露店等が前々からそこらにはあったものだというようなこと等については、年じゅうということもできませんでしょうけれども、そういう植本市とかなんとかということもありましょうが、そういう問題についての、当然の既得権といかないまでも理解ある措置、取り締まるだけでなくて、そのような措置ができるかどうか、これは荒木国家公安委員長等とも相談をしてみたいと思います。
  7. 東中光雄

    東中委員 先ほども言いましたような小売り露天商ですね。こういう再生物販売とかその他いろいろありますけれども、そういう露天商が一方で圧迫される。この露天商は、それはやりたくてやっているというよりは、むしろ長い歴史的な経過の中でそういうことをやるよりほかに方法がないということでやっているという状態ですね。しかも今度転業しようということになれば職業訓練の問題がどうしても起こるわけなんです。だから、そういう道交法による抑圧なんかをやらないという方向で処置していただく。これは当面非常に必要なことだと思うのですが、同時に、必要な職業訓練を受けるということですね。これが特に中高年齢層の場合には、この訓練を受けるといっても相当期間がかかるわけです。そう簡単にいかぬ。それから教育問題、文盲の人も相当ありますし、そういう条件の中での実際上の部落差別をなくしていくということ。この施策が非常に大切な、いわゆる同和事業として中心の問題になると思うのですが、そういう点で今度の政府予算案では、就職資金貸し付け予算は一千万円ですね。貸し付け限度額が三万、これではどうもならぬのじゃないか。三万借りて、貸し付けですから、大体返せると思っておられるのかどうか。三万じゃ、これは一カ月の生活費にもならぬ。そうすると、職業訓練は一カ月じゃとてもやれやしない。大体三カ月ないし六カ月くらいの訓練期間が、要る。その間どうもできないわけです。しかも全体の額からいえば、全国でわずか三百三十三人になってしまうわけです。これではどうにもならないという感じがするので、こういった問題について、職業訓練が実際に受けられる、転業転職が客観的にできるような事業の促進というものをやっていただきたいと思いますが、そういう点についてのお考えを聞きたい。
  8. 保科真一

    保科説明員 ただいまの職業訓練の問題でございますが、労働省といたしまして、毎年同和出身の方が入所しやすいような地域職業訓練校を一校新設しております。それから一般職業訓練校におきましても、同和出身の方でそういう御希望の方は、できるだけ一般訓練校にも送って訓練するというようなことでやっております。  それから、訓練を受けておるときの手当の問題でございますが、職業訓練を受けられる場合には、中高年措置というものがございますが、同和地区出身の方には特に年齢制限をはずしまして、この措置を通じまして訓練手当を毎月支給いたしております。  先生がただいまおっしゃいました就職資金貸し付けでございますが、これは就職する際に衣服をととのえるとか、そういう必要がございますので、そういうときに貸し付け制度でございます。訓練を受ける方にはこの訓練手当を差し上げております。
  9. 東中光雄

    東中委員 職業訓練受講奨励金というのがありますが、これはどういうものですか。
  10. 保科真一

    保科説明員 これは職業訓練校で、特に中卒、高卒の学卒者養成訓練を受けます場合に、奨励金として毎月千五百円を差し上げる。これは奨励金でございます。
  11. 東中光雄

    東中委員 月額千五百円で全国で二百人。大体職業訓練を受ける人は、あるいは転業のための中高年層を含めての受ける人はどれくらいいるのですか。
  12. 保科真一

    保科説明員 訓練手当の額を申し上げますと、これは中高年の方でございますけれども、これは地域によって差がございますけれども、平均月額といたしまして訓練手当支給額は二万一千四百五十円でございます。  転職訓練を受けられておりますうちで、同和地区の方はどのくらいおられるか、これはまことにつかみにくいのでございまして、はっきりつかんでおりません。
  13. 東中光雄

    東中委員 先ほどの予算でいくと二百人、あるいは就職資金貸し付けにしても三百人余り、これは何を基準に、どういうところから出されてきたのですか。
  14. 保科真一

    保科説明員 一般的には転職訓練という制度がございまして、この転職訓練で特に中高年層の方の転職訓練をやっておるわけでございます。これにつきましては予算的にかなり余裕のあるワクがございますので、御希望がある方は十分その訓練を受けることができると思います。  それから奨励金でございますが、これはことし初めて創設したいという制度でございますので、特に養成訓練を受けられる学卒者の方で御希望の方に差し上げるというようなことで考えております。
  15. 東中光雄

    東中委員 訓練を受ける場合に、その生活が保障されなければ実際上受けられませんね。その訓練を受けることを客観的に可能にする生活保障はどういう形でやられておるのか明らかにしていただきたい。
  16. 保科真一

    保科説明員 ただいま申し上げましたように、転職訓練を受けられます場合には、中高年措置という制度がございまして、この措置によりまして安定所のほうで訓練所の入所指示をするわけでございます。安定所のほうからそういう入所指示をいたしまして、職業訓練校に入られまして訓練を受けます場合には、ただいま申し上げましたように、訓練手当といたしまして平均月額二万一千円ぐらいの手当を差し上げるわけでございます。それで生活のほうも保障しながら訓練を受けていただこうというふうに考えるわけでございます。
  17. 東中光雄

    東中委員 二万一千円だと、中高年層の場合は家族がいますから生活保護法の基準よりずっと下回るものになりますね。だから実際上はそれでは受けられない。転業したくても、その訓練を受けたくても受けられなくなってしまうのではないか、そういう点がありますので、これは実際部落人たちほんとうにそういう転業ができるような客観的な保障をしていくために、ひとつぜひ政府のほうではそういう客観的保障を実現する方向を進めていただきたい。このことを強く要請したいのですが、ちょっと長官の御所見を聞かしていただきたい。
  18. 山中貞則

    山中国務大臣 厚生省が来ていればここで即答できはせぬかと思ったのですが、やはり再就職訓練を受けられる方は、生活保護を受けるような状態を耐えられて自分で収入の道を得て自立しようという意欲を持って取り組んでおられると思いますね。やはり全員そうじゃないにしても、生活保護を受けるような状態で再就職訓練を受けておられるんだろうと思うほうがおおよその常識だろうと思うのです。その際も再就職のための手当その他を収入と見て生活保護を打ち切っておるのか、そこらのところがもし打ち切ってあるというしかたであれば、私はやはりそういうものは生活保護を差し上げながら——その生活保護支給対象を自分が脱却しようという努力をしておられるのが再就職訓練を受けておられる姿でありますから、そういうことまであまりきびしくしゃくし定木にしないように、厚生省が来ていればここで意見を統一したいと思ったのですが、来ておりませんので、これもいずれ、ここの席で答弁するかどうかは別にいたしまして、連絡をも含めて検討さしてください。
  19. 東中光雄

    東中委員 その点は、実際上訓練が受けられるように、いま言われている二万円そこそこではもうやっていけないことは明らかですから、その基準をもっと上げるなり生活保護法との関係をただしてもらって、そういう転職転業が実際上可能なような処置を進めていただきたい、このことを要請しておきたいと思います。  次に、いわゆる天下り問題について簡単にお聞きしたいのですが、憲法二十二条で、御承知のように何人も公共の福祉に反しない限り職業選択の自由を持つということになっておるわけです。逆にいえば、高級官僚のいわゆる天下りについては公共の福祉に反することがあるからチェックしている、こういうことになると思うのですが、人事院としてやっておられるチェックをする観点ですね、どういう点をチェックしなければ公共の福祉に反するというふうにお考えになっておるか。そういう基本的な問題をお聞きしたいと思うのです。
  20. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 いまの公務員法で、百三条にいわゆる規制の条文があるわけでありますけれども、その趣旨は、要するに官庁内部の職場の規律を厳正ならしめよう、これを確保していこうという立場に立っておるものと従来考えておるわけです。ただこの官庁内部の職場の規律確保ということについては、もちろん上司の周到なる監督によって未然にこれを押えることもできます。あるいはこれが相当のところまで進んでおれば直ちに懲戒をする、あるいは懲戒免職のような形で排除してしまう。あるいはものによっては刑務所に送る——刑務所に送るのはちょっと早過ぎますけれども、刑罰問題として手続きを進めるというような方法が一番本筋の方法だろうと思う。この百三条の規定は、いわばそれのさらに第二のささえとして、かりにそういうことの手が及ばぬ場合においても、この就職を制限することによって、その職場に本人がおる間に、行く行くここの企業に自分は天下ろうという計画を立てて、そして盛んに情実をもって不当に職権を乱用して、その会社あるいは企業に対してコネをつける。そしてやがて役人をやめてその会社へ、いいところへすべり込んでいくということがあり得る。この規制を設けることによって、そんなことをしても結局むだだよ、またチェックをすることによってそれじゃやめようか、素朴な言い方ですけれども、まじめにやろうかという気持ちを持たせるというためにも、非常に卑俗な表現でありますけれども、率直にいえばそういうねらいでこれはできているんだというふうに申し上げていいと思います。
  21. 東中光雄

    東中委員 いま職場規律とおっしゃったんですが、具体的な実態でいえば、たとえば許認可などについて特別な便宜を払うようなことが起こりやすい、あるいは受注関係なんかで官庁との取引のある関係で便宜をはかるというようなことも起こりやすい、そういうふうなことをチェックしていくということだというふうに理解していいですか。いま職場規律と言われたことの内容です。
  22. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 この法律条文ができましたころは、あらゆる面について例の配給制度がありまして、配給の公団などがたくさんあった。役所などでも物資の配給をやっておった。当時の一番のねらいは、おそらくそういう配給に携わっておるような人が不当にある会社に対してよけい配給をしてやるというようなことで利益を与えておいて、恩を売っておいて、やがて自分がそこへ行くというようなことではなかったかと思います。そのほかいまおことばにもありましたように、許可、認可をするというものがありました。許可、認可をするに際して、これは少し甘くやってやろう、恩を売ろうというようなことをして職権を乱用する。それでやってもこういう規制がうしろに控えておるからむだだよということで思いとどまらせよう、回り回った規制であるというふうに考えております。
  23. 東中光雄

    東中委員 前にもいわれておりますが、要するに、企業と官庁との癒着ですね、そういういろんな面が出てくると思いますけれども、そういうものはなるべく排さなければいけないという観点を貫いておるんでしょうね。
  24. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 悪いことばで癒着といわれておりますそういうものを排除していこう、これはおっしゃるとおりだと思います。
  25. 東中光雄

    東中委員 こういう癒着をなくしていくという点、これは一般公務員であろうと特別公務員であろうと、事柄の性質上区別さるべき性質のものじゃないと思います。人事院ではいわゆる天下り白書を発表されておりますが、これは法律上の規定があって発表されているわけでありますけれども、これの趣旨もそういう癒着のないようにするために、国民にそういう内容を知らしていくためだというふうに理解していいかどうか、そういう処置をとっておられる、そういう観点からあの八項目にわたる処置を公表されているんではないか、その点をちょっとお聞きしたい。
  26. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 あの報告の制度が入りましたのは、世間でいわゆる天下り、人事院総裁は天下りということばを正面から使いませんけれども、いわゆる天下りが相当激しいという批判があって、それに応じて、これは国会の議員立法だと思いますけれども、ああいう条項が入れられた。結局その御趣旨は、審査を公表するわけですから、おのずから公正ならしめるということと、その実情をあわせて一般の方々に知らせようということもあったと思います。
  27. 東中光雄

    東中委員 ところで、防衛庁関係につきましては、いままでこの内容を一応将、将補については名前、年月日その他発表されてあったわけですが、ことしは、政府委員室を通じて要求したのですが、発表しないというふうに態度を変えられているようなんですが、これは一体どういうことでそうなっておるのか、明らかにしてほしい。
  28. 内海倫

    ○内海政府委員 お答えを申し上げます。  防衛庁におきましても、いわゆる高級自衛官等の就職の制限についての考え方あるいは趣旨というものは、ただいま人事院総裁が御答弁されましたことと変わるわけではございません。私どもも、そういう趣旨で努力をいたしておりますが、ただ一般官庁の場合と異なりますのは、防衛庁の場合は、自衛隊法による制限が付されておりますことと、その付されておる趣旨は人事院総裁のおっしゃったこと同じなんでございますが、実情は防衛庁自身は、他の会社等に対しまして監督権限とかあるいは許認可の権限というふうなものは持っておらないわけでございまして、結局物資の調達、契約というふうなものに伴って職場規律を確保していくということが主たる目的になろうかと存じます。  そこで、いわゆる関係会社、これは自衛隊法及びその委任に基づく法令で登録されておる会社の役員または役員と同じような地位につく者についての制限が規定されておるわけでございますが、それにつきましては、昭和四十三年度までの就職しました人たちの名前は、確かにいままで発表といいますか、国会のほうに提出いたしておるのでありまして、その後のものにつきましても、私ども決してこれを秘匿するとか、隠すとかいうふうな意図は持っておりません。持っておりませんが、少しくどくなりますけれども、長官が承認いたしました人々については、当然私ども発表もしなければならないと思いますし、もちろん資料の御要求があれば、個人名をあげて提出すべきものと考えますが、そうでなくて、法令の規定に該当しない人たち、該当しないで就職しておる人たちの名前も、個人名をあげて明らかにするということは、私どもからは何ら支障はないのでございますけれども、それぞれの個人の立場を考え、あるいは個人の心情を考えまして、私ども差し控えておるわけでございます。したがいまして、もし特定の会社に行った者で問題があるとかいうふうなことでございますれば、私どもは決してこれを明らかにすることにやぶさかではございません。その点は事情を申し述べて、明らかにいたしておきたいと存じます。
  29. 東中光雄

    東中委員 昨年までは発表した、今度は発表しない、方針を変えたのかどうか。変えたとしたらなぜか。ひとつ簡単に答弁してください、時間がありませんので。
  30. 内海倫

    ○内海政府委員 たいへん先ほどくどく申しましたけれども、官庁側の立場で申し上げるよりは、むしろ発表をされる個人の立場、個人の心情を考えて、積極的に私どもが名前を官庁の側から発表するということを差し控えておるだけでございます。  と申しますのは、いままでも登録会社に行った将補以上、将補、将の名前を発表しておるわけでございますが、この人たちの中には、なるほど顧問あるいは嘱託というような、一見りっぱな名前のものになっておりますが、その実態は、たとえば寮の舎監でありますとか、そういうふうなものでございますので、本人もいろいろ立場があろうと思いまして公表しておらないということでございます。
  31. 東中光雄

    東中委員 官と企業との癒着が非常に問題になるわけで、国民的にも非常に大きな天下りについての意見が出てきているときであります。しかも第三者機関で諮問委員会をつくったらどうかということも、総務長官なんかの御意見もあって、そういう方向へいま行っているときですから、将、将補くらいの段階の人のいわゆる天下りについて全然発表しないというのは、従来からの態度を変えている。いまの世論からいっても全く逆行する。非常に秘密主義的な感じが強く出てきているわけですね。だから、八項目について人事院が発表している程度のことは、それだけで十分かといったら、そうじゃないという批判がたくさんあるわけですから、せめてその程度のことは発表して、国民の批判といいますか、あるいは国民の意見にこたえていくというふうにやるべきだと思うのですが、ひとつ総務長官、そういう点についての御意見、御所見を言っていただいて、時間がございませんので打ち切りたいと思います。
  32. 山中貞則

    山中国務大臣 他省、ことに特別職の防衛庁のことにあまり私がこれ以上は申し上げたくありませんが、大臣同士の間では、ただいまどのような手段がいいか、やはり防衛庁内部がいかに厳正にやっておられると自負しておられましても、国民の側から見たらどうなのか。個人の就職の自由とか、再就職の自由、秘密というものは大切にしなければなりませんが、しかし、それはやはり特別職といえども、国家公務員として存在しておった高い地位の人に限るわけでございますから、やはりある意味の公的な規制は受けてしかるべきだろう、そうすると、ある程度客観的に見たチェックがなされたという形が必要じゃなかろうか、私は公務員の身分、給与を擁護する立場の大臣ですけれども、国務大臣として、そのように判断いたしますので、人事局長の言うことも、もっともと私も思いますけれども、やはり私のところの人事局か、内閣官房か、もしくは防衛庁の外に、人事院の中の、人事官は出られませんので、そのような事務担当のものか、それらの第三者構成みたいなもので相談を受けた結果が、国民の目から見てもまあまあと思われる範囲内にとどまれば、防衛庁のむしろためにもよろしいのではないかと私は思っておりますが、何しろよその役所でございますので、これ以上私からこうさせるつもりだということは、ちょっと言えないわけでございます。
  33. 東中光雄

    東中委員 国民の目から見ても納得できるようにしなければいかぬということであります。そのためには少なくとも発表しなければ、全部隠しておったのでは、どうもこうもならぬわけでありますから、その点は発表するように、そうして国民の批判を受けるようにしてこそ、その癒着についての疑惑なんかを解消していくことができる、こう思うので、そういう点で努力していっていただきたいと思います。  これで質問を終わるわけですけれども、討論の機会がございませんので、私は、この際、この改正案に対する日本共産党の態度を一言述べておきたいのですが、第一に、わが党は、ただいま提案されております同和対策協議会の設置期限を四年間延長することには賛成であります。  その理由は、部落問題は一日もゆるがせにできない重要な問題であり、政府がより積極的な施策を推進するために同和対策協議会を存続させ、活動させることが必要だと考えるからであります。  第二は、本改正案には輸出会議の貿易会議への改組が含まれております。これに対してわが党は反対であります。  その理由は、すでに現行の輸出会議が、輸出に関しすぐれた識見を有する者として産業界代表を加え、いわば政府と独占資本、官民一体となって対米従属のもとにおける東南アジアへの帝国主義的な進出に関する政策を協議する公的な最高機関になっています。さらに今回の改正で輸入自由化の推進、東南アジアからの独占資本のための資源確保を背景として行なわれるものでありますから、現行の会議の権限と性格をさらに強めることになるからであります。  したがって、わが党は以上述べた理由によって、同和対策協議会の設置期限の延長については賛成、そして輸出会議の改組については反対するということを明らかにしまして、本法案の採決に際しては棄権をするものであります。この点を明らかにしておきたいと思います。
  34. 天野公義

  35. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 先般、前回の委員会で同僚木原委員、鈴切委員から銚子沖のイペリットの問題についていろいろと総務長官に伺って、事態はおおむね明らかになったわけでございます。ことに総務長官としては、必ずしも自分のプロパーの主管事項ではないけれども、各省いろいろ関係があるので、自分がお世話をして何らかの適当な結論を求めたい、こういうたいへん親切なお話がございましたが、この点については、私も木原委員、鈴切委員が事態をただされた気持ちと全く同じでございますので、いろいろ個人に対する補償その他の法律的な問題があろうと思いますが、ぜひ両委員があなたにお尋ねをされたと同じ趣旨で、何らか前向きで、ああいうような占領軍の行為によって今日日本の漁民が非常な迷惑、苦しみを受けているという実態を十分に認識されて、適当な方途をぜひ講じていただきたいということをこの際お願いをして、長官のお考えもあわせて伺っておきたいと思います。
  36. 山中貞則

    山中国務大臣 予定ではあと百回残っておるわけですが、船主側と申しますか、漁業者側の方々が、三日間という約束じゃなかったか、これ以上危険な作業に忙しい時間を取られることはかなわぬという御意見等も率直に申し上げてあります。したがって、これに対してさらに御協力を願うには、やはり喜んで御協力をいただく、自分たちのためではあると思っても、何らかの、じゃ、よろしい、いそいそととは言いませんが、気持ちよく日にちをさいていただくようなことができるか、具体的なことばの表明は差し控えますが、さらに内部で検討をいたしてみます。そして後顧の憂いなきようにすることを目標として努力して、なお続けていきます。
  37. 天野公義

    天野委員長 これにて質疑は終了いたしました。     —————————————
  38. 天野公義

    天野委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  総理府設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  39. 天野公義

    天野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、ただいま可決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 天野公義

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  41. 天野公義

    天野委員長 次に、皇室経済法施行法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原実君。
  42. 木原実

    ○木原委員 宮内庁の次長にお伺いいたしたいのですが、天皇や皇太子が御旅行なさる。公的な御旅行もあるし私的な御旅行もあると思うのです。その際に、御旅行先の地元と申しますか、現地側の受け入れ体制あるいは奉迎、こういうようなことについて、宮内庁としては何かそのつど希望なり、あるいは奉迎の基準というようなものをお持ちになってお示しになる、こういうことがあるのでございますか。
  43. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 天皇、皇后両陛下、皇太子殿下等の行幸啓の場合に、この行幸啓をなさる際、宮内庁のほうの担当者が下検分に参ります。その際に、現地の県庁とか、あるいは市役所とか、そういうところと打ち合わせをいたしますが、そういう場合には、公式の場合でありますと、たとえば知事とか市長がずっとお供をされるとかいうようなものを打ち合わせをいたしますけれども、非公式のような場合には、それには及ばない、なるべく手数をかけないようにしていただきたいというふうに申し上げるというように、その間には区別を設けておるわけでございます。
  44. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、公的な場合にはあるいは知事が出迎えるとか、あるいは市町村長がどうするとか、あるいは乗りものその他の通過をなさる地点の問題だとか、そういうことについては、公的な行幸啓については一応の基準がある、こういうことでありますか。
  45. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 行幸啓のお列のつくり方というようなもの、それから送迎のやり方、これは規則があるわけではありませんですけれども、一応慣例的な基準的なものはあります。
  46. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、そういう際の、たとえば乗りものの手配から、あるいは警備のことから、さまざまなことがありますけれども、そういう場合の最終的な責任というのは、たとえば行幸啓をされる場合、たとえば何か行事があれば行事の主催者か、あるいは国といっても政府になりますか、当該の県庁か、それから宮内庁が持つか、最終的な責任はどこにありますか。
  47. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 行幸をなさいます陛下の御行動の御関係、皇太子殿下の行動の関係については宮内庁側が責任を持つわけでございますが、お迎えになるほうの御関係では、大体おいでになります先の県知事が責任を持っておられるという場合が多いわけであります。なお、その行事によりますと、大会などにおいでになりますと、その大会の主催者が、お迎えする場合の、その場のお迎えするほうの様式の責任をとられるというふうになっております。
  48. 木原実

    ○木原委員 公的なそういう御旅行の場合も、これはある程度しきたりもあるでありましょうし、いろいろなことが考えられるわけですけれども、それにしても、従来しばしば、公の席ではなかなかそういうことはありませんでしたけれども、一般に行幸啓を迎える側が、非常に大げさというと語弊がありますけれども、何か大げさなお迎え方をする、こういうことが部分的にはいろいろいわれてきたと思うのです。そういうことについて、何かやはりこの種の行事であればこの程度、この種の問題であればこの程度、こういうようなきちんとしたものはおつくりになってはいらっしゃらない、そのつどでございますか、奉迎の規模の問題ですね。
  49. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 その奉迎の規模についての特別の基準というようなものはできておりませんですが、おのずから慣例があるわけでございますから、公式の場合ですと比較的大きくなりますが、非公式の場合にはなるべく簡素にということで、宮内庁側もいつも現地と打ち合わせをする場合には、あまり大げさにならないように、必要の程度にとどめていただきたいと申しますが、実際の場合は宮内庁の申しているよりも幾らか大げさになっている事例が多いわけです。出てきたいとおっしゃっている方を無理にとめるということもできませんものですから、幾らか宮内庁の希望よりは大げさになってはおると思いますけれども、これは国民感情がそうなっているのだと思います。
  50. 木原実

    ○木原委員 それでも公的な場合は私どももある程度やむを得ないと思います。問題は、全く私的な御旅行の場合、そういう傾向がまた非常に強い。そうなりますと、これは公的なお立場の方ですから、私的と申しましてもなかなか限界があるということはわかりますけれども、純然たる私的な御旅行の場合にかなり大騒ぎをしてお迎えをする。そうなりますと、天皇陛下にしても皇太子にしてもあるいはその御家族にしても、やかましく言うとプライバシーの問題があるんじゃないかと思うのです。  私がきょうお伺いをしたいのは、そういう私的な御旅行等をなさる際に、宮内庁としてはできるだけ、いわば天皇陛下なら天皇陛下、皇太子なら皇太子のプライバシーを守って差し上げる、できるだけ自由な御旅行を楽しまれる、そういう領域を守って差し上げる、そういう義務もあるんじゃないかと思うのですが、いかがですか。私的の場合に成り行きのままでございますか。
  51. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 私的な御旅行の場合は、いま先生のおっしゃいますように、あまり大げさになりますとゆっくりした御旅行ができかねられるという点もございますので、なるべく簡素にしていただきたいというふうに申しており、その場合、どこかお出かけの場合にこういう方がお供したいというふうに言われても、それはお断わりしますとはっきり言った例もございますけれども、しかし概して、私的な場合でも天皇陛下なり皇太子殿下がおいでになりますと、その機会にお顔も見ながらお会いしたいというようなことで多数の方が出てこられる。そういう方のお気持ちをそう無理に押えるのもというので、ここらあたりはある程度やむを得ないというようにしておるわけでありまして、心ならずもでありますが、また国民感情も尊重しなければいけないから、公式の方のお立場上、ある程度御自分の御都合だけも考えられないで、国民の感情も尊重されようというような場合がときによるとあります。
  52. 木原実

    ○木原委員 それはある意味ではけっこうなことなんですが、ただ宮内庁の皆さんの大事な仕事の分野として、これは以前と違うわけですから、公的なお立場の方ですが、しかしやはり私的な場合、たとえば人間皇太子のお立場をできるだけ尊重して差し上げる、そういう仕事もあると思うのです。そうしませんと、おっしゃるように国民感情ということで成り行きにまかせますと、これはもうしばしば私的な分野が侵される、こういう側面が強くなると思うのですが、ものの考え方として、できるだけそういうふうに私的な分野を尊重して差し上げるように努力をしよう、こういうお考え方はございませんか。
  53. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 私的な分野につきましてはなるべく私的なお立場を尊重していきたいという考えば十分持っております。そういう点は先生と気持ちの点では同じなのでありますけれども、しかし、先ほど申しましたように、国民感情もあるものですから、また私的なお出かけの場合でも、送迎の方に手を振っておこたえになる、ある程度そういう場合もまたおつとめでもあるというふうに考える点もあるものですから、ある程度のことはやっていただこうというふうな気持ちでおります。
  54. 木原実

    ○木原委員 国民感情とおっしゃるわけですけれども、少し具体的なデータがあるわけです。  去る九日と十日に皇太子殿下御一家が房総半島を一泊旅行なさった。御案内のとおりです。その際に、御旅行なさったのは御夫妻と小さな礼宮さんですけれども、これはおそらくくつろぎと観光、新聞の伝えるところによりますと、礼宮さんの初めての社会見学だ、こういうような意味の御旅行だったというふうに伝えられているわけです。ですから、私はどこまでものんびりとしたくつろぎの御旅行だ、こういうふうに考えていたわけです。ところが、いろいろ調べてみますと、地元関係の奉迎のやり方は例によってたいへん表面をつくろって、従来しばしば各地に見られたことですけれども、道路をつくり直すことから始まりましてさまざまなことがありました。調べてみますと、たとえば警備につきましては延べ八百人の機動隊を含む警官まで出動をしているわけですね。所轄の管内では三十人ないし五十人の私服が配置をされる、あるいは御通過になる列車の駅々には、列車がとまらない駅まで私服の警官等が出て通過を見守った、こういうふうなことで延べ八百人の警察官が動員をされておる。こういうことになりますと、国民感情ということをおっしゃいましたけれども、一体皇太子御一家と国民の中には警察官が八百人も出て警備をしなければならないような何か悪い感情があるのか。これは皮肉な見方ではなくて、あらためてそういう疑問が起こるような警備のしかたがあるわけですね。  それから例によりまして官庁関係では国鉄がまた大騒ぎをしている。国鉄はお召しになりました列車の車両の整備、それから清掃、洗面所、窓ワク、とびらなどをアルコールでふいて天井にもぞうきんをかけた。国鉄の総武線、房総の東西両線には百五十七カ所の踏切があるわけですけれども、それに延べ百七十人の職員を立てて事故のないようにという配慮をしたわけですけれども、そうしますと、逆に国民のほうから見ると、一体国鉄はふだん何をしていたのか。皇太子がお見えになるからこういうことをやるのですが、ふだんはきたない列車に乗せ、しょっちゅう事故を起こしている、一体何だ、これも皮肉な見方かもしれませんが、こういう反感も出るわけですね。そういう措置をやっている。たとえばそのほかに、おおりになりました国鉄の勝浦駅、これは実に百二十万円も使って駅舎の塗りかえをやっているわけです。この駅にはふだん便所もろくにない。そういうていたらくでありながら、行啓があるということで百二十万円投じて駅の塗りかえをやっている。地元のほうがびっくりしているという姿ですね。  それから、これはよくあることですけれども、お通りになる道路、国道百二十八号線は一キロにわたって舗装を行なった。あるいは鴨川町のお泊まりになったホテルからミカン畑に至る二キロの町道の補修をやったり各所で道づくりが行なわれた。こういう姿で、もっとひどいのは御旅行になったときの観光業者です。これは少々金をかけても皇太子がお立ち寄りになったあるいはお泊まりになった、こういうことになりますと、第一、宣伝になって少々金をかけても償うのだ、こんなようなことで、たとえばお泊まりになった某ホテルでは、実に百万円をかけてじゅうたんの張りかえをやっている。あるいは鏡からスリッパまで約三十万円をかけて新調をしている。そうして皇太子御一家三人の召し上がった食器には実に二十万をかけて新調をしておる、こういうような姿ですね。  それからまた、御一行が昼食をとった行川アイランドというところがあるわけですが、これは昼食をとられるというので、勝浦の保健所が特別衛生措置として四項目四十六点にわたる注意事項を指示した。その中には、たとえば調理場の従業員は当日または前日必ず入浴をし、洗髪など身体を清潔に保ち、入浴前大便して入浴し、作業中大便することのないようにすることなど、四十六点にわたって指示されている。一体人間の生理的な作用にまで指示する権限が保健所にはあるのか、これはまことにばかげたことだと思うのです。そういう指示を行なっておる。あるいはまた宿舎になりましたホテルでは、従業員三百六十四人の検便あるいは健康診断を行なっている。それから管内三町にわたって野犬狩りを前日まで行ないまして、約五十頭の野犬をしとめた、こういうような姿があるわけです。まだあります。勝浦市には御一家がお立ち寄りになりました猿が城という動物園があるわけです。これはふだんは動物残酷物語なんといって、市営ですけれどもろくな設備もないわけです。ところが、御一家がおいでになるというので約百万円を投じてサル、アヒル、ペンギンのおりの補修をしたというのですね。それだけならいいのですけれども、そういうところですから、ふだんはサルにはえさとして大体サツマイモとニンジンを与えていた。ところが当日はそれではいかぬというので、バナナとリンゴとなま卵を与える。こうなりますと漫画ですよね。そういうことを実はやっておるわけです。こういうことは、はたして国民感情として皇太子に対するほんとうの尊敬の念から出たものなのかどうなのか。私は逆に侮辱じゃないかと思うのです。もし皇太子がせっかく御旅行なさって、裏側にこういったことがあったということがおわかりになれば、これは人間ならだれだっておこりますよ。われわれだってそうです。こういうことが行なわれていて、それでまた知事以下が出迎えて、何か奉迎の誠を尽くしたというようなことをやっているわけです。これは憤慨にたえないわけです。いかがです。
  55. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 いま先生のおっしゃいますことをお聞きしますと、全般的な点でどうも行き過ぎのように思います。陛下の場合でも皇太子殿下の場合でも、どこかへお出かけの場合に下検分に行く際、ときによると、お泊まりになる部屋を、今度おいでになるのだったら改築したいとか、こういうふうにしたいという話が出る際には、その宿舎に、そういうふうにしなくてもいい、掃除はきれいにしてもらわぬといかぬけれども、金はかけないようにしてもらいたいということを常に言っているわけなんですけれども、実際の場合には、行ってみるとちゃんと直っていたりする場合がよくあるというようなことで、清潔にはしていただかなければいかぬですけれども、金をおかけにならぬようにということは言っているわけであります。そういう点でちょっと行き過ぎのような感じが、いまお聞きした話のとおりであればあるように思います。  なお警備の関係になりますと、これは警察に、一般的には行幸啓の際に御身辺の安泰と、それからたくさんの方がお出迎えになる場合、そういう方がもしも混乱をして、特にけが人なんか出られた場合がありますから、そういうことのないように両面の注意をしていただく。それは必要な最小限度にとどめていただいて、あまりぎょうぎょうしくならないように、これは公式の場合でもそうでありますが、申し上げておるわけであります。しかし、警備のほうの責任は警察のほうがとられるという立場で、一般の新聞記事なんかにあらわれない、裏面の、何か警察のほうで聞いておられるどうかなという情報がときどきあるようです。それがときによると、あとから週刊誌あたりで取り上げられた例がありますけれども、事前にはわかっていないわけです。そういう場合には警察の立場で、警備が普通の場合より厳重になるということはあります。  なお警備の関係になりますと、非公式の場合でも何かそこに身辺の安泰という点、あるいはたくさんの方が出迎えられる、その方を整理して事故のないようにという点は公式の場合と似ておるので、多分千葉県の場合は相当たくさん出られるということで警察が出られたのではないかと思います。その内容の点は警察のほうの判断なんですから私のほうでは何とも申し上げかねますが、一般論としては先ほど申したようなことであります。  いま先生もちょっとおっしゃいましたけれども、ときによると迎える側で将来の営業の宣伝になるとかいうふうな見地から必要以上のことをなさることもあるのじゃないかと思いますが、実はそういうことは宮内庁の立場から見れば好ましいことではないと思うのであります。
  56. 木原実

    ○木原委員 われわれの場合でも、遠来の客を迎えるというような場合には障子の一枚も張りかえる、あるいは敷きものの一枚もやりかえるということはあるわけです。ですから、これはおのずから良識と節度の問題だと思うのです。それから警備につきましても警察が心配するのはわかります。問題ばなかなかむずかしい問題ですけれども、天皇さまは、そう申してはなんですが御年輩ですからともかくとしまして、皇太子さまや御一家の人たちは国民に人気もあるのですから、もう少しフランクに、日本の民衆の中に溶け込んでいくのだという姿勢といいますか、そういう姿を少なくとも皆さんは側近にいておつくりになっていく、そういう責任はお感じになりませんか。
  57. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 皇室の方が国民と親しさを増していかれることは大切なことでありますので、そういうような関係で、あまりかた苦しくなく、ときにはフランクにお互いに接触されるような機会があったほうがいいということは考えております。ときによると以前にはなかったような取り計らいをしていることもございます。実はこの房総のほうへは皇太子殿下、同妃殿下が礼宮さまのためにおいでになったので、礼宮さまが四月から幼稚園に入られるので、幼稚園に入られる前に少し旅行をして、そういう模様も見ておかれたほうがいいだろうという教育的な御意味もあって房総を選ばれたわけで、あの旅行は非公式な、プライベートなものであったわけです。あの旅行につきまして東宮職の担当者にもちょっと聞きましたけれども、先生のおっしゃるように少しぎょうさんであったという批判を持っておりまして、あの姿があれでいいとは思っておりません。
  58. 木原実

    ○木原委員 私があえてこういう問題をこういう席で取り上げましたのは、これは今度の場合だけでないと思うのです。随所にいままでこういうことをわれわれは直接間接見聞したことがあります。そのことはいいのですけれども、問題はこういうやり方がもしあたりまえのことだということで通用していくようなことになりますと、一番心配なのはむしろ国民と皇室との間に逆にみぞをつくっていくことになりはしないか。何か特別につくられたものの上にプライベートな——たとえばいまは礼宮さまの教育的な意味の御旅行だったというわけですけれども、これでは教育になりませんよ。特別につくられて、裏ではさまざまにおとながこういうことをやっておる。特に官庁が悪いと思うのです。ですから宮内庁としては、そう言ってはあれですけれども立場が弱いのじゃないかと思うのです。総理府の長官がおられれば少しやってもらいたいと思うのですけれども、第一、官庁の姿勢から正してもらいたいという気持ちが私にはあるわけです。それにしても宮内庁があまりの事なかれ主義で国民感情という上に乗っかってやっておりますと、せっかく戦後人間天皇の宣言以来、国民の中に以前とは違った形で溶け込んでまいった皇室との関係が、逆にこういう形で不当に祭り上げられてしまうと先が案じられるわけです。この辺についてのお考えはどうでしょうか。
  59. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 いまおっしゃいましたお気持ちの点は十分わかるわけでありますが、両陛下とか皇太子殿下をお迎えする側があまり祭り上げてしまう、こういうようなことがあっては、こればいまの時代の皇室のあり方を考える面からいいましても、やはり正しくないと思います。象徴というお立場にあられる、それに準ずるお立場の方に対する敬愛の念、尊敬と親愛の念というものが中心であるべきことは言うまでもございませんけれども、それが何か戦前と同じような感覚でなされるというふうなことがあれば、これは正しくないと思います。そういう点について、ときに宮内庁の立場で相当押えてきている場合もいままでも幾つかございましたけれども、しかし先ほどもちょっと申しましたが、駒迎えされる側が非常に熱心で出てこられるその国民感情的なものは押えかねるというような場合もあるのです。しかし将来も、いま先生がおっしゃいましたような、そういう気持ちの点はわれわれも同じでございますので、事に触れて改善をはかるように努力いたしたいと思います。
  60. 木原実

    ○木原委員 これは国民感情を尊重するといわれるなら、むしろ官庁が、私がただいま読み上げましたような、そういう形のものを、たとえば少なくとも自治体の責任者、あるいは中央の官庁関係が進んでかきねをつくっているのですね。非常にいじましいかきねをつくっているのです。そのかきねを取り払って、国民感情の中に溶け込んでいくような道をつくっていく、こういうことでなければならぬと思うのです。ですから私も、宮内庁の立場は必ずしも強くありませんから、総務長官がおりましたら別の機会にも申したいと思うのですけれども、少なくとも宮内庁を含めて関係の各官庁が一ぺん相談をなすって、公式な御旅行その他については、これは従来のしきたりもあるでしょうし、とれも再検討してもらいたいと思いますけれども、これは一応筋は通ると思うのです。しかし、きわめて私的な御行動の場合には、もっと自由にもっとフランクに民衆の中に溶け込んでいく、こういう筋道をお立てになるように御配慮願えないものでしょうか、どうでしょう。
  61. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 私的な御旅行の場合には、御旅行をされるにしてもできるだけ簡素にお願いして、そのために御旅行の精神がそこなわれることのないようにというようなことは言ってきておる例もございます。事実それがある程度実現している場合もあるのですけれども、房総の場合についてはそううまくいかなかった一つの例でありますが、今後私的な御旅行の場合につきましては、われわれとしても、迎えられる側との事前の打ち合わせの場合に、十分こちらの考えている点を申し上げて、これによって私的な御旅行がいかにも私的な御旅行として効果があがるようにしたいと思います。
  62. 木原実

    ○木原委員 ぜひこれは前向きにひとつ措置をお願いしたいと思います。そうしませんと、これはちょっと私の口から言うのはなんですが、憂慮にたえません。国民を愚弄するというよりも、第一、人間としての殿下なら殿下に対する私はほんとうに侮辱だと思うのです。そういうことですが、最後に皇室の方々のプライバシーを守っていくという、そういうことについての何かはっきりした御見解はございませんか。
  63. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 皇室の方のプライバシーをお守りするという点は、これは一般の国民すべてについてと同じようにやはりプライバシーはプライバシーとしてお守りするという方針を持っております。したがって、ごく私的に、たとえば光輪閣にお出かけになる私的のお集まりなんかもありますけれども、これは報道関係にも取材をしないでくださいと申すとか、そういうふうにいたします。なお、どこか御旅行先で、公式にお出かけになって、その途中で陛下あたりが植物採集か何かプライバシーにちょっと余った時間お出かけになる場合、そういうような場合に、普通の公式の場合と同じようにお供がついてこられないようにチェックいたしまして、植物採集なんかなさっておる場合には、必要な人たちだけがお供したり、ときによると宮内庁長官なんかもお供しないという方法をとったりしているわけです。そういう点、プライバシーの点についてはいままでも配慮しておりますか、今後も配慮したいと思っております。
  64. 木原実

    ○木原委員 私の申し添えておきたいことは、従来もなさっておるということですけれども、きわめて公的なお立場ですから、これはお生まれがそうですからやむを得ないわけです。それだけにこれからの大きな仕事が——いままでも本来はそうだと思うのですけれども、できるだけ私的な領分を拡大をして差し上げる、こういうことが、本来、皇太子なら皇太子、天皇なら天皇に対する国民の念願といいますか立場なんだ、こういう観点をひとつ確立をしてもらいたいと思うのです。そうしませんと、先行き、いま申し上げましたように、一部の官庁その他のいわば不当な扱い方によって、国民との間にかえって断絶ができていく。そればかりか、人間としての陛下あるいは殿下に対する侮辱、きずをつける、こういうことがエスカレートしていくような感じがしてしようがありません。どうぞひとつそれらの点については、宮内庁だけでと申しませんけれども、できることならば総理府なら総理府と御相談なすって、関係各官庁を通じてこうしていくのだ、こういう方向を出していただきたいと思います。いかがでしょうか。
  65. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 私的な面の御行動について、円滑に私的な目的が達せられるようにするというようなことについては、いま先生がおっしゃるような気持ちでおりますが、これはみんな集まって鳩首協議してということでなくて、今後そういう場合に、そういう関係の役所とかあるいは地方庁とかいうところと打ち合わせする際に一そう力を入れていきたいと思っております。
  66. 木原実

    ○木原委員 では終わります。
  67. 天野公義

    天野委員長 鬼木勝利君。
  68. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 私は、宮内庁の次長にお尋ねしたいと思います。あなた一人に質問を集中してお疲れでございましょうけれども、しばらくごしんぼう願いたい。  先に、皇居の東御苑の開放、公開について質問を進めていく関係上お尋ねしたいのでございますが、その開放された趣旨はどういうところにあるのか、それをひとつ的確に御説明願いたいと思います。
  69. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 皇居全体の地域が三十何万坪か、相当広いわけですが、そのうち東の、あの当時は東側地区といっておりました、いまは東御苑という名前にしておりますが、そこには以前は内親王さんなんかもお住みになっておった呉竹寮なんかもあって、御住居の一部になっておったのですが、内親王さんがおいでにならなくなりまして、その関係でどなたもお住みにならなくなった。一方皇居の造営が始まりまして、新しい宮殿の建築もほとんど進んでまいりました。この機会に、皇居の広い地域についての開放論というようなものがかなりありました。皇居はどこかほかへ移られて、都心のあの部分について、一般の人の公園にしたらどうかというような御意見も一部にありました。そういうことも勘案され、新しい宮殿も造営され皇居全体が整備される機会に、この東側地区の全体の三分の一にあたる部分については、園遊会等、皇室の行事の開かれる場合は別として、そうでない場合には一般の国民の方に公開をして御利用いただくことが、これはやはり、いまの国民の皆さまと皇室との関係を考える場合に、適当なことだろうというようなことで公開になったわけですが、なお、あの部分もやはり皇居でございまして、皇室でもお使いになる場合があるわけですから、そうした皇居の一部分を公開をして、国民の方が自由にお入りいただけるというふうにすることが、また他面、皇室と国民との結びつきという関係を深める上からも、意義もあるだろう。すぐ横に陛下が——その隣が庭園でございますから、皇室でもお使いになる。そこを公開することが、皇室と国民との結びつきを深めることにもなるだろうというようなこと、そういう両面がございまして、大いに利用していただき、それによって、国民と皇室との結びつきを深めていくというようなことがいいだろうというようなことで公開になったわけでございます。
  70. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 先ほど木原委員からもお話があっておりましたが、人間天皇、われわれの象徴である天皇、そこで、国民と天皇のその間に断絶があってはいけない、あまねく皇居を開放するということはよくわかりましたが、そういう重要な、国民が欲しておる、見たがっているというような史跡あるいは文化財、それを単なる物見遊山あるいは皇居は珍しいからというようなことで来るんじゃない、それはわかりましたが、それに対して徹底するような、国民に知らしめるところの標識が非常に私は不徹底であると思います。もう少し、大衆に率直によくわかるように、平易に随所に標識を立てべきである。  なお、これをいただいております、か、これは、皇居は天皇のものだ、おまえたちのものではないというような、断絶と言うとちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、はっきり一線が引いてあるように思われるのです。この禁止条項はくどいです。もう少しさらりと国民のものだ——これはおれのものだからこうしちゃならぬ、ああしちゃならぬという、まことに児戯にひとしいようなことが書いてある。「でい酔者等入園者にけん悪の情を催させ、又は迷惑をかけるおそれのある者」、そうしてまた、あとには「飲酒をすること」は禁ずる、そんな子供だましみたような禁止事項が非常に多い。「業として写真又は映画を撮影すること。」「施設その他の物件を損傷し、又は移動すること。」、当然わかり過ぎたことを、どういうわけでこんなことを書かなければならないか。「土地の形質を変更し、又は土石の類を採取すること。」、あるいは「野外炊事、たき火、花火の打上げ、喫煙所以外の喫煙等火災の危険がある行為」、当然常識として、こういうことは全国どこを探してもどこにも書いてありませんよ。そのほかたくさんございますが、人間天皇が国民にこれを開放しよう、そうして国民とともにあるんだ、こういうお考えの天皇の御意思にこれは反しておると思うのです。あなた方がかってに天皇と国民を離反させようとするようなこれは処置だと私は思う。どうでしょう。
  71. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 いまおっしゃいますのは、東御苑公開要領というので、宮内庁告示で出ておりますことの、いわゆる「してはならない」という事項のところをおっしゃいましたのですか、これをつくります際には、新宿御苑ですね、これは厚生省のほうの所管ですが、あすこのほうでつくっておられる「こういうことをしていけない」というような書いたものを基礎にしてつくりましたので、この東御苑だけ特別につくったわけではないのでございます。
  72. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 新宿御苑をあなたならってやったとおっしゃる。じゃ、この皇居東御苑の開放は、一昨年じゃないですか。新宿御苑は一昨年じゃありませんよ。そんな昔の——あなた方のお考えは、そういう五十年も百年も前の思想、観念によって、そういう理念によって、今日のもろもろのことを処理しようとなさるのですか。——いや、これは責めているんじゃありませんよ。お尋ねしているんですからね、どうぞひとつ……。
  73. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 この新宿御苑のそういう規則は、これはやはり終戦後——終戦前ですと、これは皇室のものでありましたから、そのころは、普通の方は入れないので、園遊会以外のときには入れないのですから、その後、終戦後は、これが皇室財産から離れまして厚生省所管の公園になったわけです。公園でありますが、公園を管理する立場上、皆さん方が秩序正しく利用されるようにというので、厚生省のほうがこの新宿御苑の規則をつくったわけで、それが現在もずっと行なわれております。その現在行なわれておる新宿御苑のその規則を基礎にしてつくりましたわけでございます。
  74. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いや、何回も繰り返すようで恐縮でございますが、いまのあなたの御答弁どおり、新宿御苑は一般には開放しないというんですね。そういうところの規定と今度の場合の規定は当然違わなければならぬ、そこを私は申し上げておるのですよ。これは国民のものとして、ともに開放して十分利用せよ。それは、あなたの頭は少しこんがらがっているんじゃないですかね。おかしいですよ。どうもその辺のところが私はあなたの御答弁ではちょっと納得できませんですね。だから、十分考慮いたします、これはもう一度再検討してよく研究いたしましょう、とおっしゃるならば理屈はわかるけれども、あれは新宿御苑に立ててあるのをならってやったんだ、何もおれらに関係はない、そういう無責任な答弁では——また声がちょっとあれになりましたけれども、どうぞその点でもう一度……。
  75. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 いま先生は、新宿御苑のほうは開放されてない、その規則とおっしゃいましたが、戦後、これは入場料金は取っておりますけれども、どなたでもお入りになれる公園になっておるわけで、一方東御苑のほうは入場料金も取らないわけで、これは無料であります。ただ、公園を秩序正しく管理して、みだりにいたまないように、ほかの方にも迷惑がかからないようにというようなことから、こういうような禁止事項が新宿御苑でもあるのであり、東御苑でもあるのでありまして、いままで一年半ばかりずっと公開を続けておりますけれども、このいわゆる禁止事項に触れるようないわゆる非紳士的な行為というのはほとんどございませんので、普通の公園を活用される場合の一般常識を表現したものというふうにおとりを願いたいのであります。
  76. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いや、だから私が申し上げている。東御苑を開放されて、公開されて、今日まで何ら問題はなかったとおっしゃっているじゃないですか。国民はそんなに愚か者じゃありませんよ。でございますから、いままでに何か問題点があったとか、非常にこういう規定をしておかなければ困るということがございましたならば、それは私も承りたいのですけれども、いまあなたは、そういう問題は何もなかった、これは常識だと、そんな常識ありませんよ。一般公園の中に、いろんな、こんな長たらしい、何十条ありますか、これは。こんなのありゃしませんよ、どこに行ったって。皇居であるがゆえに、なおそれをやらなければならぬというところに、国民と天皇との間に、先ほど言いますように断絶とまでは申しませんけれども、一線引こうとする、それはお互いが、天皇はわれわれの象徴であるという、これは国民感情で、国民がそう持たなければならぬので、しいるべきものじゃない。その点いかがでございますか。
  77. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 なお、この公開要領のこまかいこれは、まあ官報で告示になっておりますけれども、しかし、その東御苑の入口にずっと掲げてあるわけではないのでございます。常識的なことなものですから、掲げてはないのですけれども、おのずから皆さんがそれを守っておられるから、これは違った場合には御注意をしようというような心がまえのものでございまして、いわゆるむずかしい規則が掲げてあるというふうなことではございません。
  78. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そんなのを麗々しく掲げるようなばかはどこにもおりませんよ。当然のことですよ。あなた方の考え方、ものの考え方を私は申し上げている。古いあなた方のお考えをいま私は申し上げておる。時間がございませんので次に移ります。もっとお聞きしたいのですけれどもね。  次に内廷費の問題でございますが、八千四百万にこれはいつ引き上げられたのでございますか、その点をお聞きします。
  79. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 昭和四十三年度の初めからでございます。
  80. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 昭和四十三年の四月に六千八百万円であったのが八千四百万円に引き上げられておるように記憶しております。念のためにいまお尋ねしたのでございますが、そうしますと、ずっと内廷費の改定は——ここに資料をいただいておりますが、申し上げなくても、あなたのほうから資料をいただいたんだからおたくのほうがよくおわかりと思うので、町間の経済でそういうことは言う必要はないと思います。最近の激動する経済情勢、むろん御承知のとおり公務員並びに準公務員は毎年人事院の勧告によってベースアップしておる。物価指数も驚くべきほど上昇を示しておる。ところが天皇、皇族御一家に対してだけは経済情勢ということは考えなくていいか。むろんこれは、国民が毎年ベースアップで公務員はどんどん上がるから同町に天皇もぱっぱっと上げていけと、そういうことを私は申し上げておるわけじゃございませんが、天皇、皇后の御生活には時勢の流れ、経済情勢、社会情勢、こういうことは一切無関係である、そういうふうにお考えであるかどうか。過去の推移を見てみますると、二年あるいは三年、長きは四年、五年で内廷費は上げられておるようでございますが、今回アップされましたそれは千百万円、皇族費で百十万円、どういう算定基準でこれをなさったのか。むろんこれは先憂後楽といいますか、天皇はまず憂えしかして後に楽しむのだと、これは天皇御自身のおぼしめしであって、国民が天皇は先憂後楽すべきものだというふうにしいるべきものじゃない、そのように私は考えます。天皇は、自分は国民が楽しんだ後でよいぞ、あとでよいぞと、こうしたありがたいおぼしめし、われわれは、われわれの象徴である天皇がお困りになるようなことがあっちゃならぬ、何とか早く上げなければならぬというのが国民であり、そこに互いに天皇と国民というものが一体となっていくことが人間天皇として国民の象徴たる私はゆえんだと思う。いかがでございますか、その点ひとつ次長に。
  81. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 まあ内廷費、皇族費の増額の関係は、普通の公務員のベースアップのように毎年とかというふうなのじゃなくて、ある間隔をおいてお願いいたしておりまするが、これはいまおっしゃいましたですが、先憂後楽という点、あるいはまた皇室は質素を旨となさっておりまして、その模様をわれわれお手伝いしておる者が拝見しておりまして、実際にお苦しいような状態でなければまあしばらく待っていただくというようなことなんであります。最初から内廷費、皇族費の全額を考える場合に一割程度の予備費というのを見てあります。物価の値上がり、それから人件費の値上がりを考案して、その予備費以上に、一割以上に上げなければいけないというようなときにはこの改定をお願いしょうというような、そういう方針でお願いをすることにしておるわけでありまして、経済情勢を全然無視しているというわけではございませんが、御無理のないようにということで考えておることは事実でありまして、その点は特に御不自由をかけないし、質素を旨としておられますし、その皇室の伝統を尊重しておあげすることがやはりいいというような両方の考えでおるわけであります。
  82. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 これは、いまあなたの御説明で、天皇並びに皇族御一家は、不自由はなさっておらない、不自由はさせていない、われわれが常にお守り申し上げておるから、そういうことは御心配ないというような御答弁のように私理解いたしますか、それは、天皇御一家がそういうことを仰せにならないまでのことであって、お互いの場合だって、二年も三年も物価がどんどん上がっている、それに二年も三年もアップもしない、それはアップができない限りはしんぼうはするでしょうが、そういうごしんぼうを天皇にむしろしいているんじゃないか。先憂後楽ということがあるんだから、天皇は少々のごしんぼうはお願いしていくんだ、見るに見かねてわれわれがこうして処置をするんだ、そういうふうな気持ちに私には思われるのです。その点をはっきり申し上げて御答弁願いたいのです。私は毎年ベースアップをしろなんて言っているのではありません。一番にしろなんて言っているのではありません。だったら、それは先楽後憂になる。それじゃなくて、先憂後楽なんだ、ですから、そんな二年や三年たってやったり、四年たってやったりしないで、適当なときに、まず国民がやったらすぐに天皇にもしてあげる。これは国民のほうからやるべきことです。いかがですかその点、もう一度お尋ねします。
  83. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 いま先生のおっしゃいますお気持ちは非常にありがたいわけでありますが、先ほども申しましたように、質素を旨としておられるその皇室の伝統を、やはりわれわれも御尊重申し上げなければいかぬわけで、その上でやはり御不自由がかかりそうな場合にお上げする。今度は二年据え置いてお願いするわけです。その前は四年も据え置いてあったので、この委員会で委員のほうから、何か基準を設けるべきではないか、四年も据え置いたものですから、この前のときには二割ばかりもぽんと上がった、ですからそういう行き方もどうかという御意見もありましたので、この委員会の御批判も十分考えながら、今度は二年で改定をお願いすると一割ちょっと上がるわけでありますが、実際の経理の状況を、これは公金ではございませんが、お手伝いしているわれわれとしてもわかるわけでありまして、御不自由のないように常に考えておることは御了解を願いたいと思います。
  84. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 人事院が勧告するのは、御承知のとおり、民間の給与と比較して五%低いということになったならば勧告をしなければならぬということが人事院規則にあるのです。今回のを私いろいろ計算してみますと、一〇%になっておりますね。一〇%上がったら、あなたのおっしゃるように、二年か三年でまとめて上げる。ところがお互いは、たとえば五月なら五月、六月なら六月で差額までもらっているのです。天皇には二年も三年も据え置きで、それで上がったその時点からの問題でしょう。こういうことを一々国民同様にしろということを私は申し上げているのじゃないけれども、そういう算定基準というようなところももう少し的確に、科学性を持って、合理的に——天皇を擁護するということは、これば決して民主主義の日本の天皇に対して、昔の封建的な考えじゃないと私は思う。これが一番民主的だと思う。最も科学的だと思う。その点御迷惑でしょうが、もう一度お聞かせ願いたい。
  85. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 先ほどもちょっと申しましたが、以前何%以上必要になった場合に上げるという基準がなかったわけで、この委員会でいろいろ御批判があったりして、そのこともあって、一昨年の暮れ、皇室経済に関する懇談会というので、これは正式の皇室経済会議ではありませんけれども、総理以下お集まりになって、この内廷費、皇族費については今後はその一割以上上げなければいけないというような情勢になった場合に改定をしようというような基本の方針をおきめになったわけであります。それで、四十四年度の予算の場合にはまだ一割以上お上げする必要はなかったのですが、四十五年度の予算の関係になりますと、物価指数それから公務員の人件費のアップの率をかけますと一割以上になりましたので、それで今度改定をお願いしようということでありまして、人件費の関係も今後そのまま据え置くならばずっと上がりませんが、いまのような情勢ですと、また二、三年に一回くらいはそういうときが来るのじゃないかと思います。
  86. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 何回聞いてもあなたの御答弁はそれより以上は出ないと思いますから、これより以上申し上げませんが、十分ひとつあなた方はその責任において天皇を擁護していただきたい、かように要望いたしておきます。  次に、時間があまりございませんので三里塚の下総御料牧場の移転の件でございます。これはさきにわが党の鈴切同僚が質問をいたしまして、私はその速記録もよく読んでおりますが、今度栃木県の高根沢に移転した。法の施行は九月十日ということになっておりますが、昨年の暮れに移転を完了した。理由は新国際空港建設用地となるため・に移転をした、こういうことでございますが、三里塚とそれからお移りになられた高根沢と面積に非常に違いがあるようでございますか、その点ひとつはっきりしてください。
  87. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 下総の旧牧場は全体の面積が四百三十九ヘクタールございましたが、今度の高根沢のほうは面積が二百五十二ヘクタールというふうに、前の面積に比較しますと約六割というので、四割ほど狭いわけであります。しかしこれは牧場を経営していく立場からいろいろ合理化をしていきますと、この面積でも可能であるということで狭いのでございます。
  88. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 一応それでお話はわかりましたが、これは新国際空港をつくるから、皇室関係の財産だったらこれは文句ないから、反対されたりすわり込みされるようなことはないから、こういうのは簡単に、あそこは狭いけれどもあっちへ持っていけ。そうすると、あなた方も何にも抵抗もなしに、はいはいということで移られたのじゃないですか。その移転されるときには、みなほんとうに納得されて移転したのですか。従業員なんかの方も縮小されておると思いますが、そういう人たちは今度は通勤の関係でおやめになった方もあるかとも思うし、あるいは狭くなったから自然に退職させなければならぬというようなこともあったかと思いますが、こういう点に犠牲はなかったのですか。
  89. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 下総の御料牧場の用地のところが新東京国際空港の敷地になったというようなことになる際に、簡単に宮内庁はそれに応じたわけでは実はないわけであります。特に最初のころにおいては、地元の反対も相当激しくありましたわけでありますし、相当反対もある。そういう敷地として宮内庁はこの御料牧場の用地をよろしいと簡単に言えないというので、最初に打ち合わせがあったときから、それはいろいろ何度か会議がありまして、話があってから決定まで半年ぐらいした後に、いよいよ閣議の決定がありまして、閣議の決定のあります前に、宮内庁側としては、相当これは反対もあるわけだから、率先してこの御料牧場の用地を提供するということはできない。しかし大勢が賛成になってくればこの用地を国際空港の用地にお使いになってもいい。そういう意味において協力する。そのかわり、そこに従事している多数の職員がいますから、その職員の将来を困らないように十分考えてほしいということを条件をつけて協力を承諾したわけであります。  そういうことのいきさつでございますが、なお職員につきましては、やはり千葉県から栃木県へ移りたくない人もありました。そういうような人につきましては、やめる場合、そのつとめ先等については十分に考えるということで、一部の人は東京の宮内庁の本庁のほうへ来たいというので本庁のほうへ来た人もあります。それから市役所あたり、成田の市役所とかあるいはあの付近のそういうところにつとめた人もあります。なお、空港公団に来てもいいという方は十分お引き受けいたしますということで、空港公団のほうへ行かれた人も多数ある。したがって、いよいよ移転をする時期に将来の仕事についての不満というようなものは幸いなかったのであります。  それから、移転をされた方が高根沢に行かれた後、千葉県にいたときよりも不便な面もあるんじゃないかという点はわれわれも心配いたしましたのですが、買いものに行ったり何かするのには幾らか不便な点もあります。学校に通われる場合に、上のほうの高等学校のあたりの人ですと不便な点があります。そういうような点があるのですが、宿舎は新しいのができましたので、千葉県にいた当時の宿舎よりも気持ちよく住めるというようなことで、総合して、最近いろいろ聞いてみますと、あそこへ移ってから数カ月たちますけれども、不満の声もなく満足しておられるようで、これもわれわれといたしましては安堵している次第でありまして、そういうことでございます。
  90. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 温情あるあなたの御処置で、配置転換その他もスムーズに解決したとは私思いますが、三里塚にいました場合の従業員の数、それから、現在高根沢で牧場で働いていられる現在員、その点おわかりでございますか。
  91. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 現在は九十一名ということでございますが、下総の御料牧場のころで、昭和四十四年の一月ぐらいだったかと思いますが百十五となっております。ですから二十数名は減っております。面積の減った点もございます。それから下総の場合には軽種馬がありました。馬で、軽種馬と一般馬と競馬、三種類ありましたが、新しい牧場では軽種馬はやらないということになったわけであります。軽種馬といいますと競馬なんかに使われますサラブレッドでございます。これはいまは皇室で直接お使いになることがないものですから、皇室でお使いになるのは乗馬と競馬ですから、その範囲にしようということでそういう点をよしたわけであります。そういうようなことで面積も減り、それから軽種馬もやらないということになったので、人員が減っているわけであります。
  92. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 あなたがおっしゃるのだから間違いないと思いますが、聞くところによりますと、三里塚では百三十名ほど従業員がおられたということも伝え聞いておりますが、それはあなたの数字が確かだと思います。そういたしますと約二十名ばかりの方が配置転換あるいは退職をされたということになる。その方の行かれた行き先、それから待遇は以前と比べてどういうふうな待遇になっておるか、そういうことを資料としてあとでひとつ提出していただきたいと思います。  それから、いままで三里塚の牧場では、いまおっしゃっておったように野菜とか肉類、酪農ですか、バターとかチーズ、牛乳あるいは綿羊、馬までやっているというふうなお話でございましたが、三里塚において牧場を経営されておりましたときの収入と、これからの高根沢におけるところの収入の見込み、まだ本年度の収入はあがっていないと思いますが、どういう規模でおやりになるのか、全然三里塚とは違った規模でおやりになるのか、三里塚をそのまま移したような形態でおやりになるのか、政府から無理に移されたからしかたないというのじゃないと思う。三里塚の牧場を移転をするのだから内容も移転するのだというようなお気持ちであるか、変わった形態で何かおやりになるのか、収入の点はどういうふうにお見込みであるか、そういう点の御計画はあってしかるべきだと思うのですね。行き当たりばったりじゃないと思うのです。次長から御答弁がなければ、だれでも係の方でもようございます。
  93. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 旧牧場と栃木県のほうへ行ってからの牧場のやり方の内容でありますが、その点は前とおおむね同じですが、おおむねでありまして、違う点は、先ほど申しました馬の点で軽種馬をやめましたとか、それからもう一つ違う点は、これは羊の関係ですけれども、羊は三里塚の場合よりもできれば倍くらいにふやそう、これは羊は毛をとるためでなくて肉用であります。よく宮中の行事、園遊会などでジンギスカンが出ますけれども、これは御料牧場の羊の肉ですけれども、そういうのは実際足りませんので、それが足りるように羊をふやすという点が違います。  それから面積がだいぶ減ってまいりましたので、下総の場合には農地のほうで燕麦とかトウモロコシというのをつくっておったわけであります。これは動物の飼料になるものですけれども、それをつくっておりましたが、新しい牧場ではトウモロコシ、燕麦、そういうようなものはつくらないで、購入の方法によろう。ただし牧草の関係は当然必要ですから、これは三里塚の場合も高根沢の場合も同じわけであります。そういうようなことでございまして、こまかい点で違う点はありますが、その他はおおむね馬のほかに牛もいる、豚もいる、羊もいる、鶏もいるという点は大体同じであります。  それから収入の関係ですが、あれは収入を目的としているわけではありませんが、収入の点は、あそこの物品の払い下げをするという場合には、これは収入に上がってまいりますが、直接皇室の用に供するというのは収入として上がってこないのであります。そのものが皇室の用に供されますから、そういう点で普通の牧場とはちょっと違いますが、この新しい牧場における収入の点も、先ほど申しました軽種馬がないという点、一方綿羊がふえておるという点はありますが、軽種馬という点で、収入はちょっと減るかと思いますが、あれは競馬馬に売っておりましたが、その部分はあるいは減るかとも思いますが、その他の面では大体同じ、特に羊の点ではふえていますから多い、しかし、これは現金が入ってこないということで、はっきりした金額をここに申し上げることはできませんけれども、そういうような実態であります。
  94. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 私が言っておりますのは、先ほどから、面積も狭くなっておる、あるいは人数も減少しているけれども、機械化というような点においてそういうようなことは補うことができるというような説明であった。むろん収入ということは、現金の収入もありますけれども、私はそれを言っておるのではありません。あなたがいまおっしゃるように、生産物は皇室がお使いになる、あるいは外国の国賓に対して接待をするとかいうようなことにお使いになると思いますが、面積も狭くなった、人員も少なくなった、ですから従来の三里塚における牧場の生産と今回の生産と見合わせた場合に、低下するものがありはしないか、弱体化するものがありはしないか、不自由するものがありはしないかということになると、新国際空港の建設地になるために皇室の牧場が犠牲になったということになるのじゃないか。皇室のものならば、これは反対があるわけはないからこれにやれというようなことでやられたのじゃないか。犠牲がどこかに出ておるのじゃないか。これは総務長官もお見えだからたいへん都合がいい。お二人からひとつ御答弁をお願い申し上げたい。
  95. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 旧牧場と新牧場の関係で、新牧場が前の牧場から見て生産その他が低下してしまうのではないかという御心配でありますが、これは軽種馬をよしたというのは、皇室でお使いにならないからよしたので、その他の馬、ことに羊、豚、鶏、そういうような関係では決して低下をいたしておりません。かえって羊の関係ではふえておりまして、上がっておる。皇室の牧場からの製品を御利用になろうという点においては、前から見て低下しておるということはございませんから、その点は御安心願いたいと思います。
  96. 山中貞則

    山中国務大臣 今回御料牧場移転に伴って軽種馬をやめさせるということは、日本の軽種馬生産の歴史から見まして、たいへん御料牧場の貢献していただいた実績が大きかったものですから、関係者はだいぶさびしがったようでありますけれども、一方においては、四十六年末で生きておる馬の自由化というものも迫ってきますし、また宮内庁でお使いにならないということで、関係者としてはさびしいという気持ちはないようです。  なお、新空港でもって御料牧場を追い立てて犠牲をしいたというようなことはないのかという御意見のようでありますが、かりにも御料牧場が立ちのき反対だといって新空港に反対をされるようなこともまた考えられないわけです。ですから、これは国策に沿って快く御協力を願ったわけでありますから、内容の若干の変更はありましても、今後の御料牧場の運営に支障のないような配慮はちゃんといたしまして、双方了解の上に円満になされたわけでありますので、強制もしておりませんし、またこれに対して反対だというような態度をおとりになったものでは経過としてはございませんで、すらっといったものでございます。
  97. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 さすがに総務長官はなかなか巧みな答弁で、さもあらんと思います。しかし、先ほどから次長のお話を聞いておりますと、やや生産の面なんかにおいても低下するかもしれない。羊のことは盛んに先ほどから二回も三回も聞きましたが、高根沢の牧場は羊専門ではございませんから、その一部のこととして承っておきますが、いずれにしましても、これは発展的に移転をして、発展的に新牧場が高根沢にできたということならば、私どもは大いに喜ぶ次第でありますが、いま総務長官の御答弁で、将来ともに十分心して高根沢の牧場に対しては協力しますと言うが、いつまでも総務長官が永久に死ぬまでやるわけではないでしょうけれども、ますますこれから総務長官は発展されるのだけれども、大いに私は意を強くします。ひとつこの高根沢の牧場に対しては、十分皇室の擁護という立場から心していただきたい、私はかように要望いたしておきます。  次に、皇室経済法施行法の第二条についてちょっと承りたいのですが、賜与または譲り受け価額の増額については、今回改正案も何も出ておりませんが、これはいかなる理由によるか、先ほどのお話と同じようなことになるかと思いますけれども、賜与、譲り受け、その点について次長にお伺いしたい。
  98. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 皇室の賜与、それから譲り受けの価額についての金額は、今度改正を考えていないという点の御質問でございますが、これはこの前に改正しました沿革を申しますと、いまはこの賜与の制限の金額は六百五十万円、それから譲り受けられるのが二百二十万円、これは内廷の関係。皇族の関係ではともに六十万円ずつというようになっておりますが、この改正がありました。それは昭和三十九年に改正になっていますが、その前は昭和二十七年、もう十二年前に賜与のほうは三百七十万、譲り受けは百二十万というふうにあったのを十二年ぶりで六百五十万と二百二十万に内廷関係のは改正になったわけです。こういうふうに内廷費とか皇族費がたびたび改定されていないことについて御疑問の点があろうかと思いますが、賜与と譲り受けのことにつきましては、憲法の第八条にある規定を読みますと「皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜興することは、國會の議決に基かなければならない。」という条文がありまして、この第八条ができました趣旨は、、賜わったり、または譲り受けられたりすることをできるだけ抑制したい。この譲り受けの関係は、皇室の経費は国会の議決を経た予算でというふうに、これも憲法に条文がありますが、譲り受けを自由にされると、国会の知らないうちに譲り受けをされるといけないという関係、それから賜与の関係につきましては、皇室が特定の人に特別に何か恩典を与えられて、国が何か補助するような、そういうふうなことをされては、やはりいまの皇室の立場からいって好ましくないというような、そういう抑制的な意味があったというふうに憲法の解釈を聞いております。この憲法によると、一々国会の議決に基づかなければならないように思いますが、それでは御不便だというので、皇室経済法施行法のほうで、国会の議決によってきまる場合でも、内廷の場合賜与は六百五十万まで、譲り受けは二百二十万までは一々国会の議決を経なくてもよろしいというような規定ができて、こういうようなことになっております。実際上賜与あるいは譲り受けをされておる場合に、これも事務的に見ておりますが、現在もこの制限の範囲で普通の年はなされておりまして、特に非常に不都合であるというような点がありませんものですから、それでいわゆる内廷費、皇族費なんかの場合と違いまして、憲法第八条の抑制的な規定に基づいてなされておって、その範囲内で実際問題としては別に不都合の点もいまのところないからこのままにしてあるということで、しかしながらやはり不都合のような感じを持つような時期においては、これも改定をしなければいけないと思いますが、今度の、四十五年度の際には改定はまだお願いしていないというようなことでございます。
  99. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いまの次長の答弁を聞いておりますと、憲法第八条で——不肖私もそれを知っておりますが、規定してある。だから皇室経済法施行法によって六百五十万と二百二十万ですか、それは三十九年に改正になっております。三十九年と申しますともう四年も五年もたっておるわけです。試みに次長にお伺いしますが、五年も六年も前の、かりに一万円の価格のものを今日買えますか。これは経済観念のある方ならどなたでもおわかりですよ。六年も前のもの、五年も前のもの、何か物価の据え置きになったものありますか。佐藤内閣は物価を上げる専門の内閣ですよ。それにあなた、五年も六年も前の賜与の六百五十万で、今日天皇が賜与なさるのに御不自由があるとは認めていないというのは一体どういう経済観念ですか。おそれ多くというか、天皇は全然経済観念がないとあなたおっしゃるのですか。私はそういう説明ではどうしても納得いきませんよ。総務長官いかがですか。
  100. 山中貞則

    山中国務大臣 今回の内廷費、皇族費等の改定も、今回は二年目でわりと近いようでありますが、前はこの皇族費、内廷費すら相当長期にわたって据え置かれておるようであります。私はこのことを、いまおっしゃった賜与費も含めて疑問に思いました。したがって点検をいたしてみますると、物価あるいは公務員給与その他が一〇%以上に達しているにもかかわらずなお見送られている年が何年かある。私はやはりこれは、皇室経済会議を毎年開きまして、ことしはお上げしないでもだいじょうぶなのか、あるいはまた、ことしは上げなくてはいけないのではないかということをやらなければならないのじゃないかと思っているのです。しかも、これはかりに毎年改定をいたしましても、過去一年の分について、穴埋めというのは変でありますけれども、追随していく比率が計上されるわけでありまして、毎年やったところで、一年おくれの形で宮中の御費用というものは追っかけていく形になる。ここらのところは公務員給与とまともに対比して考えるべき性質のものではないでしょうけれども、やはり私たちも大多数の国民感情として、自分のおやじの、俗にいうと小づかい銭の問題でもありますから、てめえの月給が上がればおやじにも去年よりかことしは少しやってやるかなあという気持ちに、素朴になるものでありますから、その素朴な立場から考えて、毎年検討するために皇室経済会議を開くべきである。そうして、一年おくれであることは変わりありませんけれども、せめて毎年の点検と、それに対する対応は当然講ずべきだ。そうして国会議員の皆さんのそれぞれの立場からの御批判を受けて——宮中の御費用だけがいつまでも取り残されておることが論議されないということはおかしいと思います。ただ、私がそれらの点を問いただしましたけれども、それは宮中、陛下自体とは申し上げられませんが、全体のお気持ちとして、先憂後楽の気持ちで自分たちとしては慎み深いあり方を、ことに予算等についてはとりたいというお気持ちが前提にあるようであります。それで、なかなか宮内庁あたりのほうから、そろそろお願いできませんでしょうかということは言わないというふうになっておるようでございますので、これはやはり政府あるいは日本の政治を預かっておりまする責任者が、絶えずそのことを念頭に置いて、対応策を逐次講ずべきことであろう。私は今回この予算を見まして、今回は二年目であるからまあまあそうおくれなかったにしても、それくらいのことは国民感情としても大部分はお許し願えるのではないかと考えておりますので、それらの点は責任者にも進言をいたしまして、そのようなふうに運んでまいりたいと考えております。
  101. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 あなたの御高見と全く私は一致した。これで結論が出た。先憂後楽という問題を先ほどから口のすっぱくなるほど次長さんと私やりとりをやった。これはいまあなたのおっしゃるとおり、先憂後楽ということは国民が天皇にしいるものでなくして、天皇御自身のおぼしめしによって、けっこうぞと、国民がみんな愉快に楽しく豊かに暮らすようにおれはあとでいいぞと、こうおっしゃるのが先憂後楽。だから天皇のおぼしめしであって、それを国民が、天皇は先憂後楽だ、あとでいい、そんなことはどうでもあとでいいじゃないかとしいることは私は全く間違いだと思う。ことにただいまの次長の御説明なんかとんでもない考え方だ。いまから五年も六年も前のもので、皇室においては、天皇御一家においては賜与の面において何にも御不自由は感じていらっしゃらない、御不自由はありません、どうしてそんなことが言われるかというのです。社会情勢の点からいっても、経済の点からいっても、あらゆる観点からそういう結論は断じて出ないのです。総務長官の御答弁で私もほんとうにほっといたしましたが、これから大いに進言する、皇室経済会議でも毎年開くべきだという総務長官の御答弁に対して、私は全面的にそれを申し上げたかったのです。私の申し上げておるのは次長におわかりでしょうかね。皇居あたりに朝から晩までおって、少しは社会の風に吹かれないと、あなたは少しどうかなさっておるのじゃないか、少し皮肉を申し上げてすみませんが、次長、御迷惑でしょうが、もう一回御答弁を……。
  102. 山中貞則

    山中国務大臣 次長は宮内庁の職責を持っておりますから、なかなか自分の個人の見解は述べられない立場にあると思います。そこで、幸い最も世俗的な長官のもとにおりますので、週一回の総理府の幹部会には瓜生君も出てもらっておりますから、いま絶えず世俗の風に当てられておりまして、ずいぶん考え方も前進すると思いますので、宮内庁の中の職員の立場でこれ以上の具体的な返答は強要されないように、私から今度はお願い申し上げます。
  103. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 いまのお気持ちの点は十分わかっておるわけで、今度の場合も、あるいはこの賜与と譲り受けの制限のところも法律改正をお願いするかどうかということも話題にはなったのですけれども、物価の値上がりはこの前から見ると三割上がっている、そういうようなこともありますので、将来は、総務長官の御意見もございましたので、十分考えていきたいと思います。
  104. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それでは私の質問はこれで終わります。
  105. 天野公義

    天野委員長 受田新吉君。
  106. 受田新吉

    ○受田委員 鬼木委員の質問にお答えになった山中長官の御答弁、私、一昨年のこの法改正の当時、毎年ベースアップをすべきである、この内廷費について皇族費について提案しました。その前年は、四年目に改正されておったのです。長期にわたって皇室だけ御苦労を一身に引き受けられることは、仁徳天皇の民のかまどの愛情を思わせるものがあるが、しかし近代的国家の皇室として、がまんに限度があることをわれわれ国民の側から考えてあげるべきだという、憲法第一条の象徴天皇御一家を大事にすることにわれわれ国会議員の責任があることを提案しましたが、これは二年に  一ぺん、ちょっとテンポが早まりましたけれども、いまお説のような点でまだなまぬるい点があると思います。内廷費、皇族費のアップ率は、物価指数及び人件費の側は公務員給与の基準の上げ方というもの、この両方が入っていると思いますが、そういう具体的な問題については次回に次長が出たときにお尋ねすることとして、この法案審査に先だった前提をしばらく質疑応答で明らかにしたいと思います。  天皇御一家のお立場に深い理解と協力をさしていただいておるわれわれ国民は、憲法第一条をきわめて大事に考えております。その日本国統合の象徴でいらっしゃる陛下の地位は、憲法上の地位、国際的な地位、いろいろありますが、国の元首でいらっしゃるのか元首ではないのか、まず法制局の御答弁を願いたい。
  107. 真田秀夫

    ○真田政府委員 お答えを申し上げます。  現在の憲法のもとで天皇が元首に該当されるのかどうかという問題につきましては、従来しばしばお答えしているはずでございますが、要するに元首ということばの意味内容をどう取るかということにかかっているのだろうと存じます。昔のように、すべて内治外交面を通じて国を代表し、行政権を掌握しているという内容の存在をもって元首という、そういう定義を前提にして考えますと、現在の天皇は、日本国憲法下にあらせられましては元首とはいえないということになろうと思います。しかし、現行憲法の各条章に照らしますと、ごく一部ではございますけれども、外交関係においていろいろのお仕事をなさいますので、そういう点をとらえて、なお元首といってもいいのじゃないかというお考えもあろうかと思います。そういう前提に立てば、それは元首と申し上げてもさしつかえないと存じます。要は、やはり元首という定義をどう置くかということにかかるだろうと存じます。
  108. 受田新吉

    ○受田委員 総務長官、これはなかなかむずかしい問題が一つあるわけです。つまり、憲法の規定によれば、天皇は憲法に規定した国事を扱うだけで、しかも内閣の助言と承認を必要とする、だから一切国の政治に対する権能は持たないという憲法の規定があるわけだ。そういう場合に天皇陛下を元首と見るか見ないかという問題が起こってくる。特に万博を前にして一つ問題が起こってくる。  万博に列国の元首あるいは首相その他の国賓、賓客等が相次いで日本へやっておいでになる、こういう場合に、政府はこれに対応する日本の元首はどう考えるべきかということを、一応答えを出しておかなければいかぬ。長官、その外国の元首をお迎えする場合に、この元首に対応する日本の元首は総理であるか天皇であるか、きわめてはっきりした政治的な解釈が今度要る。法制局でないほうの解釈が要るわけです。
  109. 山中貞則

    山中国務大臣 元首ということばの持つ権能とか中身、そういう議論を始めますと、いわゆる象徴ということばの議論にまた戻ってくるでしょう。しかし私たちは、日本国の天皇を諸外国はどう見ているかを思えばもう簡単でありまして、諸外国の元首は天皇をもちろん元首として扱っておられますし、これまで来られました元首は、陛下御夫妻みずからが、両陛下おそろいで羽田にお出迎えになる、これは元首であります。したがって、国際的にはもうきちんと成り立っておるのでありまして、私たちが国内で、新しい憲法のもとに、象徴というある意味においてはえたいの知れない、あいまいもことした表現になっておることについて、いつまでも解釈論を繰り返す必要はないので、われわれの天皇は、外国に対して国事と申しますか、日本を代表される場合はもちろん元首としての代表行為をされる。  ただ今度の万博に関しましては、これは宮澤君のほうでいろいろやっておりますが、宮内庁ももちろん御相談の上でございましょうが、ずいぶんたくさんおいでになりますので、羽田の一々のお出迎え、お見送りということを省略されるようでありますが、その他の接遇については、午さんなり御引見なり等については、こちら側の元首として、諸外国の通念から見て、元首には元首としてのあるべき姿で接遇されるというふうに、きちんと分けてあります。したがって、元首以外の、たとえば首相その他が来られた場合にはもちろん総理大臣ということで、はっきりと区別がされております。
  110. 受田新吉

    ○受田委員 山中長官の見解に私も同感である。つまり日本の場合は、憲法上の規定にはいささか疑義はあるが、日本の元首として対外的には天皇をわれわれはいただくべきである、こういう考え方に立つべきであると私も思います。  そこで、天皇の御印並びに国の印、御璽、国璽というものは、いま宮内庁侍従職が保管をしておるのであるが、ここで一つ問題がある。賞勲局が勲章を出されるのに、大日本国という国璽が押してある。大日本国という国は、名称上明治憲法で消えておるわけです。大日本帝国が消えた。しかし現に大日本国という印判が押してある。これは金の印判だそうで、上に置いておくだけできちっとあとがつくそうです。押さぬでもいいのです。これは明治の初めからの御印をそのままお使いになっておるそうでありますが、大の字を美称などという考えで扱うべきものではなくして、これはやはりきちんとした、名は体をあらわすものでありますから、日本国の印という形で名称と印をきちっとすべきである、印判だけ昔の印判をそのまま押すということはわれわれとしてはとる道ではない、かように思いますが、この大日本国の印、美称で片づけられる問題でない。名は体をあらわすという意味から、印を、国璽をかえられる御意思があるかないか、御答弁願います。
  111. 山中貞則

    山中国務大臣 賞勲局のほうでは、勲記について確かに御指摘のような大日本国璽という印鑑が押されておるようであります。その印鑑をどうするかという問題は別としまして、価値のある、歴史のあるものでしょうから、やはり日本国璽というようなもので新しくつくり直させるということで——ただし賞勲局のほうですよ、宮中のことではございません。賞勲局のほうはつくり画させるということで検討さしてみます。
  112. 受田新吉

    ○受田委員 そういう検討の意思を初めて承りました。  そこで国歌、国旗、こういうものも、万博の開会式次第を見ても、国旗掲揚、国歌斉唱というのがある。これは国際的な儀式であり、しかも日本の対外的な公式の儀式である。その公式の儀式に国旗が掲げられること、国歌が斉唱されることがありますが、この国旗、国歌というものがこの万博の公式の儀式に取り上げられている、これはどういう意味を持つものであるか、法律の根拠がいまはないけれども、行政措置としてこれを国旗とし、これを国歌とする措置政府がおとりになるのかどうか、御答弁願います。
  113. 山中貞則

    山中国務大臣 諸外国では、憲法で国旗、国歌を定めているところあり、あるいは法律で定めているところあり、あるいは慣習として長い伝承の上に立っておるところあり、いろいろあります。私どもの日本における国旗、国歌の歴史も、その意味においては、ある意味において明確であり、ある意味においては不明確であるということでありますが、やはり国旗、国歌というものは、私たちの国が独立の国家であり、同一の民族がここに独立民族を構成しているならば、当然共通の自分たちの標章としてでも国旗というものはあるのがあたりまえであって、たとえば船舶一つ例をとってみても、沖繩の船舶に、施政権下にあるために変な旗を立てたということでインドネシアに逮捕されたり、そういうようなことでやっと日の丸掲揚を許された最近の事例等もございますが、これは国際的に国旗を持たない国民はありませんし、国民全部がひとしく自分たちのものとして歌わない、国歌というものの存在しない国もあまりないでしょう。そうすると、私たちは法規、典範等の根拠の議論の前に、やはり自分たちの国家、民族に誇りを持つというのは当然でありますから、ならば自分たちの国の旗、自分たちの国の歌として、日の丸、君が代というものは今日まで伝承されてまいりましたし、また総理府等のそれらに関する若干の世論調査を見ましても、大体において、国民動向としては国歌というもの、国旗というものはいまのままでいいんだという声も出ておりますから、どうするかの問題、法定するのかどうかの問題は別にして、やはりこれは自分の国は誇るべき国である、自分の民族はりっぱな民族であると、全国民が敗戦後のショックから立ち直ってくるに従っていい意味の自覚を取り戻しつつあるように思いますから、かつては占領中に日の丸の旗を見て、小学生が、ああ水泳の旗だと言ったという情けない時代も過去にありましたけれども、いまは大体もう、ひょっとすれば、おやじよりもむすこのほうが、子供たちのほうが学校において万国旗をよく知っておりまして、おとうさん、この旗はどこの国か知っているかというようなことで、おやじのほうがいじめられる可能性もあるぐらい、すなおに日本の国旗というものも溶け込んでいきつつありますので、やはりこのままで日本の国旗、国歌というものは誇りを持って民族の大多数が守っていくべきものであり、また認めるべき対象であろう、したがって、万博の会場において日の丸を国旗として掲揚し、君が代を国歌として斉唱することは、諸外国の列席者も含めて、あるいはテレビ等でそれを見る国民の大部分の人たちを含めて、すなおに国民感情として受け入れられていくものである。したがって、国の、政府の姿勢としては、あくまでも日の丸を国旗、君が代を国歌として掲げ、斉唱するということで、万博の開会式も行なわれるものと確信をいたしております。
  114. 受田新吉

    ○受田委員 一国がその国の旗章を定めることは当然のことだし、国民、民族全体が一緒に唱える歌を持つことも必要である、私もそう思います。しかし、終戦後二十五年たって、この大事な国の基本的なレッテルがまだきまっていない。私十年前から、こうした国葬を含めた、あるいは国賓その他の賓客を含めた、国旗、国歌、そして元号、葬儀の方式、そうした公式制度のすみやかな解決を押し迫り、また十年前からそれに対して歴代の総務長官は、すみやかに答えを出そうと御答弁されておるが、一向にはかどっていない。現に公式制度連絡調査会議というのがあって、ほとんど会合を持っていないと私は聞いておるのです。こういう有名無実なやり方をして、かつて吉田総理が昭和四十二年十月になくなられたときの国葬というのは、政府の行政措置で国葬という名称を使われておる。戦前の国葬令、大喪令というような勅令というものが当然政令で定められるべきものであり、また必要があれば法律で定められるべきものだと思います。皇室典範の二十五条には、陛下のなくなられたときの大喪の規定がある。二十四条には即位の規定がある。しかしその具体的な何らの対策がない。陛下がなくなられたときの御葬儀はどういう形でやるかということもつまびらかではない。そのときの政府が適当な行政措置をやられる危険が私はあると思うのです。吉田総理の国葬と同じことになる。この機会に山中長官、あなたは私以上に政治力を持って、決断力があって、また若さと信念を持ったいい総務長官がその任にあってくれるというのを、私は友情において大いに期待しておる。ひとつあなたが在任中、この停滞している公式制度連絡調査会議に、ぴちっと答えをだしてもらいたい。近来の名長官と私はあなたを期待しておるのです。どうですか。
  115. 山中貞則

    山中国務大臣 私は、主として受田委員の内閣委員会における今日までのやりとりを一応見てみました。みんなもっともらしい答弁をしております。そうして協議会のようなものもやっていないのじゃなくてずいぶんやっているのですが、ずっと順を追ってみると、いわゆる小田原評定をしているにすぎない感じがしてなりません。そこで、これをどういうふうにしたらいいのかという問題からまず出発しなければならないのであって、たまたま国会の権威ある一委員会においてそれが発言がなされて、しかもそれが当然首肯すべき内容の筋の通ったものであるということならば、それに対する答えを出さなければならぬと私は思うのです。そこで、国会の委員会等の質疑応答を、私かねがねずっと外で見ておりまして、質問するほうは——あなたの場合は、いまの場合は別ですよ、ほかの問題ではそうなるかしれませんが、政府のあげ足とりというようなことが多いのです。一方政府のほうは、極端にいうと、きょう一日、できれば在任中つつがなくのらりくらり、まず答弁技術を行使してメモでもめくりながら答弁して解怠なくそれを終わろうという、どうもそういう質疑応答が行なわれてならぬような気がします。そうではないのだ、党を異にしていても、国会の場で国会議員政府の責任ある閣僚としての質疑応答は、これは対話であって、そうして国民を相手にしたお互いの考え方の触れ合いであって、そこから何かが生まれてこなければいけないと私は思うのです。ですから、その意味において、私は、たとえば国旗、国歌というものは法律をもって定める必要はない、国民の間におのずから——自分を愛する者は家族を愛し、家族を愛する者は民族を愛す。自分の家庭が大切ならば国家も大切である、そこにおのずから国家の標旗としての日の丸、斉唱すべき対象の君が代というものが生まれてくるのであって、これは大体国民のすなおな感情の上に今後も乗っていくものであろう、だから、法定の必要まではないじゃないかと、この点については思いますが、しかし、さて、その他のいま触れられました元号の問題、あるいは国葬の問題その他の問題については、受田委員ずっと質疑応答しておられて、総理府のほうは、ひたすら協議会か何かのほうに審議中でございますと言って、そのままになってしまっておる感じがしてなりませんが、あなたはどういうふうなことが望ましいのであるというふうにお考えでしょうか、今度は逆に聞かしてもらえませんでしょうか。
  116. 受田新吉

    ○受田委員 たいへんいいことを言ってくださいましたが、私は、この国事事項の問題で、憲法第四条後段の規定で、天皇陛下が海外に御旅行される自由が失われておる。国事事項を委任しなければ天皇は海外旅行ができないということで、終始これを発言し、それが三十八年の国会で池田総理に発言したら、池田総理が直ちに私の発言を取り上げて、その当時の徳安総務長官は、受田発言に対して池田総理自身から直ちに立案に着手せよと指示が出た、こういうふうに言われました、非常にすなおに。つまり陛下の海外旅行が御自由であるように、憲法第四条後段の規定の、天皇の国事事項委任法をつくれと私が提案した。これは具体的な提案です。池田内閣は、その末期ではあるが、すなおにこれを取り上げてくれました。にもかかわらず、陛下の海外旅行が御自由になる国事事項は委任ができても、陛下はよわい七十歳を数えられるに至りましたけれども、今日一向海外御旅行の道が開かれておらぬ。老齢に達せられる陛下御自身、わけて海外旅行の御経験のない皇后陛下のお立場などを考えると、両陛下おそろいで親善海外旅行、国際親善にお出ましになるべきです。その道をいま政府自身がふさいでおる。御退位になる前の問題として私が具体的に提示した。そこで法律ができた。法律ができても実行をしないというようなだらしない政府——われわれは、両陛下のお年をおとりになる姿、国会においでになられて、あの開会式のときにおことばをいただくときのお姿などを見るとき、陛下があのまじめなお人柄で、全然私心のない、私は、個人としてもりっぱである、いい天皇が日本においでるということをしみじみ感じておる。その陛下御自身が、奥さまに当たられる皇后さまと一緒に海外旅行の自由さえ認められないというこのきびしい現実を、長官どうお考えになるか。個々の具体的問題は、きょう時間がありません。私は三十分でやめてくれという注文です。大臣、あなたは非常に熱心な意欲を持っておられるから、次の機会に、具体的な、国葬令の内容、それから大葬の規定、元号についても、私は一つの私案を持っております。これは、シナの四書五経、特に易、従以易というあの易は、吉凶の占いから発祥している。明治、大正、昭和、みんな元号は易から発祥している。詩経、易経、書経、礼記、春秋という五経の中の易という、易から何を選ぶか、吉凶禍福を前提として文字をいろいろとさがし出しているという、これが、大化の改新のときから始まって、元号のもとですよ。こういうことを思うときに、ほんに学者の思いつきが、それがいままでその陛下御一代の元号となっておるのです。こういうようなことを考えるときに、元号の扱い方、これは非常に慎重な扱い方をしなければならぬ。次の機会に私の私案を提供したい。具体的なものを全部指摘するから、長官は非常に誠実なお気持ちがあると思うので、一々これを取り上げようとされる。私の提案することを個々具体的にいまから指摘します。  いま私、一つの問題として、天皇の海外旅行の御自由が認められて、せっかく法律ができた、にもかかわらずこれが戦後二十五年実行をされていない。陛下はお年を召されておる。皇后さまは海外旅行を一回もやっておられない。どこの国が陛下を迎えるかで外交上の問題があるということであるならば、ここで、山中長官、閣議において、どこでもいいじゃないですか、親善の橋渡しになる国から始められればいい。何をちゅうちょ逡巡されるか、私はわからぬ。宮内庁長官が謹厳にものごとを処理されることはわかるけれども、外務省、内閣、宮内庁が相談されて、——三年前のハワイの移住百年などは最もいいチャンスであったと、私もずいぶんあのとき言ったけれども、言を左右にして実行されなかった。  どうですか、山中長官、私は、あなたに、この国事事項委任法ができた機会に、あなたが在任中に、両陛下に海外旅行の実践を、実現待望のお二人に、長期にわたる戦時中の御苦労、戦後の御苦労、よく耐え抜いてこられた両陛下に、御慰労をかねて海外旅行の実践を、長官、あなたやってくれませんか。願いたい。
  117. 山中貞則

    山中国務大臣 これは両陛下の御意思に基づくべきことでしょう。私のほうから、外遊をなさいませというようなことを申し上げる筋合いのものかどうか、私もどうもそういう由緒正しい家柄に生まれておりませんので、よくわかりませんが、先般私は陛下に四十分間、私の所管事項等についていろいろとお話をさしていただく機会がありました。確かに陛下ももう御年輩になっておられまするし、そういう意味でかえって陛下に外国に行かれて御苦労をかけて、お疲れになるようなことではいけませんが、陛下のお気持ち、両陛下にそういうお気持ちがもしおありになって、それが、どこかでか、そのことばがあるいは気持ちが伝わっていないから外遊が全然なされていないのだということでありまするならば、これは私がそれらの点の障害はひとつ排除して、今回の宮廷費の予算には組んでありませんが、それらの予算措置はいかようにでも政府の責任においていたすつもりでございます。
  118. 受田新吉

    ○受田委員 宮内庁次長、両陛下は海外に御旅行をされたいお気持ちが私はあると判断します。あなたは、機会があったらそういうことに運んでほしいという、陛下の側近でいらっしゃるだけに、そういう御意思は十分ぴんぴんとあなたに響いていらっしゃると思いますが、御答弁を願いたい。
  119. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 両陛下も、適当な機会があればお出かけになってよろしいというお気持ちはおありでございますが、その適当な機会というのはないまま、ついつい今日までに至ったわけであります。
  120. 受田新吉

    ○受田委員 長官、そのとおりなんです。適当な機会をつくってあげるのが政府なんです。宮内庁であり政府である。その政府自身がチャンスを失わしめておる。陛下の御意思がいまおわかりいただけたと思うのです。あなたに私は非常に期待しておる。ぜひひとつこの問題、この国事事項委任法のその実現だけでも、私は、もう戦後二十五年たった日本が、新しく立ち直ったという証拠になると思うのです。古い慣習、しきたりから放れた新しい時代、近代的国家に脱皮したということになると思うのです。  私は、当委員会で、はったりや宣伝でいままでやったことはみじんもありません。私は常に憲法第一条の象徴天皇御一家の権威と、そしてそこの家族の方々が人間としてしあわせにあられるような形をとるのが、憲法を守る国民の責任だと思っている。その意味から発言しておる。
  121. 山中貞則

    山中国務大臣 いま私初めて、陛下のほうも適当な機会があるならばというお気持ちを持っていらっしゃるということを聞きました。それならば、どのような国に行っていただくか等について、これから相談をするにいたしましても、気候その他よく考えまして、両陛下がこれ以上お年を召さないうちに御希望に沿い得るように努力をいたします。
  122. 受田新吉

    ○受田委員 最後に——一時から一時半までという注文があって、お昼御飯を皆さん食べておられないそうです。一つだけ最後にきょうどうしてもお尋ねしておきたいことがあるのです。  万博はあさってから始まるわけです。万博を前に両陛下はじめ皇族の方々の御苦労、接遇関係というようなもの、また万博における天皇陛下のお立場というようなものを十分われわれは理解さしていただかなければならぬわけです。  それに関連する問題なんですが、長官は読書家だからいろいろな雑誌や新聞をお読みになっていられると思いますが、最近皇室のプライバシーに関するようなひやかし半分の演劇等が巷間演出されて、私たちいささか不愉快な気持ちを持っております。特に「ビデ夫人の恋人」などという上演劇などをいろいろ伝え聞くところによると、はなはだ不愉快な、申しわけないような、文明国として恥ずかしいような内容の公演がされておる。高度の文化国家の高い品性を持つそうした演劇、映画、こういうものを期待する、良心的な道義国家をつくろうとする、高度の文化国家をつくろうとするわれわれの願いとは逆に、憲法第一條の象徴天皇御一家の権威を侵すような形の演劇が公然と行なわれるような、それと実にまぎらわしくやって、これに該当される皇族の方々に非常に嘆きをお与えしていると私は思っている。  もう一度申し上げます。高度の文化国家で、世界の国々の中で大国と大きな誇りを持ち、経済国としてプライドを天下に誇っている日本、しかも大和民族というたった一つの民族国家、異民族がいない、こんな崇高な国柄で、憲法第一條の象徴天皇御一家にすべての国民が深い理解と協力をしてあげて国家の躍進をはかっていくということが日本の国の国民の当然の責任であると私は思います。もちろんこの憲法第一條を批判する立場の政党、個人というものは別でございますが、大半の国民の理解と協力で憲法第一條が擁護されなければならぬ。憲法第九十九條で、国務大臣であるあなたもわれわれ国会議員も全部憲法を守らなければならぬ、象徴御一家を守らなければならぬ責任があるときに、象徴御一家を全くそうしたひやかしの対象に取り上げるような現象に対してどう処理していったらいいか。かつては不敬罪というのがあった。しかしそれはない。しかし天皇御一家については、政府がその個人の告訴、告発等の代弁をして差し上げる立場にあるのでありまして、権限としては非常に弱いお立場の天皇御一家を、政府自身がそのプライバシーもひそかに守ってあげるというあたたかい心づかいが要ると思うのです。こういうものを野放しにしていくことは、良識を持った国民がひんしゅくするだけでない。道徳国家として誉れ高いわが国の前途に深い暗影を投げかけると思うのです。非常に私懸念される。万博を前に各国の元首、賓客が、そして世界の多くの国々の人々が、日本といううるわしの国を、そこに行なわれる万博を求めて大量に日本にやってくるとき、わが日本がこれらの国々に期待に反する国であったときはどんなに失望を与えるか。万博を引き受けたわが国の責任は重大であり、同時にその国における憲法第一條の規定するところを順守する義務のある政府の責任、またわれわれ国会議員の責任は重大であると思います。特に政府の側からこれに対する責任ある答弁をお伺いしたいと思います。
  123. 山中貞則

    山中国務大臣 あなたも具体的には言われませんでしたけれども、私はいま初めてそれらしきものを、証拠書類みたいなものをちょっとここで見たのですが、どうにもひどいですね。ですが、法律的に政府の立場からということになりますと、刑法で第二百三十二条の親告罪、「本章ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス」「2告訴ヲ為スコトヲ得可キ者カ天皇、皇后、太皇太后、皇太后又ハ皇嗣ナルトキハ内閣総理大臣、外国ノ君主又ハ大統領ナルトキハ其国ノ代表者代リテ之ヲ行フ」とこうありまして、これは私いま初めて見たわけですが、そうなっておりまして、そうすると、皇太子妃殿下の場合には政府がかわって告訴することはできないということに法律上はなるわけですね。そうすると、妃殿下が告訴をされるということにするかしないかという問題にもなりましょうが、このような事柄はあまり一これが全国の映画館で全部上映される、あるいは全国の茶の間にテレビでこれが放映されるというようなものでありますと、このままではほっておけないと思いますが、ごく限られた、特殊な、前衛俳優集団の諸君の意図しているところもあるようでありまして、それらの者の思うつぼにはまるようなことはかえってまずいとも私は思いますですね。ジョンソン大統領がケネディ暗殺の首謀者であることを明らかに示唆した劇がニューヨークでずっとロングランされましたですね。それでも現職であったジョンソンはそれに対して一笑に付して全く取り上げなかった。ここらのところがまあまあのところで、あまりいたけだかになることばかえってどうだろうかという感じも、事柄が事柄だけに私はいたしておりますが、その点はいかがなものでしょう。
  124. 受田新吉

    ○受田委員 これはそういう興行者に対して、別にこれに弾圧を加えるとかいう方式でなくして、政府自身の行政措置で道義的な解決をはからせる道もあると思う。そんなものはどうでもいい、たいした問題じゃないということで、ほうっておいてもその火が横へ飛び散るわけじゃないというような、そういう逃避的な態度で解決されるべき問題ではないと私は思う。映倫という立場の映画に対する機関もある。そうした公序良俗を尊重するような形で、公開の演劇等に対して、あるいは映画等に対して、何らかの道義的な奮起を促すような道が政府自身に閉ざされておるようなことであれば、またこれは傍観していてもたいしたことはないのだというような気持ちで扱っておられたのでは、次にまたきわめて身近なところに前者を学ぶ者が相次いで出る可能性が私はあると思うのです。これは国民の良識をふるい立たせるということで解決する問題であるし、特に政府自身がこういう公序良俗を育てる重大な行政責任者であるわけですからね。その面からの指導を加えるということが私必要だと思うのです。野放しでよいのだということでこれに手がつけられない、手をつけると次から次とやっかいな問題が起こるというような軽い気持ちで処理すべきものと長官はお考えであるか。もう一度あなたに伺いたい。
  125. 山中貞則

    山中国務大臣 受け取り方を軽い気持ちでというふうにお受け取りいただかないようにですね。おそらく意図してシナリオを書き、意図して上演、意図した宣伝、しかもこういうものは、どうも出版物そのものとしてもまことにいかがわしいものに近いようなものでありますから、そのねらいにわざわざはまるようなことはどうかということを申し上げたのであって、気にしないとかあるいはたいしたことじゃないという意味ではありませんで、このようなことが特定の人であっても行なわれることは、私としてはわが民族のあり方から見て、いかに混乱期、過渡期にあるとはいえ感心したできごとではない。先ほど鬼木委員にも答えましたけれども、自分たちのおやじやおふくろ、兄弟だって公然と侮辱されたら人間いい気持ちはしませんですね。そうしたらやはり国民感情から見て、しかもほとんどの人々がひんしゅくするようなことがいつまで続けられるものか。公演日数ももう二、三日で終わるようですけれども、そういうことは私ら良識のオブラートに包み込まれて消えていくものであろう。私は、むしろそういうものをことさらに騒ぎ立てることは興行価値をいやが上にも増しますし、そして、ヘアーの最後のヌードシーンがセンセーショナルに報道されて大騒ぎしましたけれども、日本では、最後の場一面では、なさそうだということで下火になってしまりて、あまり新聞も取り上げなくなってしまったということで、こういうことば民族の恥部としてあまりつつがないで、オブラートに包むべきではなかろうかという私の感じを申し上げたので、別段それを軽視したつもりではございません。
  126. 受田新吉

    ○受田委員 これで質問は終わりますが、こうした社会環境を、教育の世界、行政の世界、いろいろな面で浄化していくという政府の責任があるんです。一部局の突発的な現象として、やがて消えていく、こういう軽い問題でなくて、これが受け入れられるような社会環境が事実出ておる。政府自身が常にそういう環境が起こらないような配慮をあらゆる面で努力をされることで、そうしたひんしゅくすべきものは国民がのぞいて見ることをしない。それのために興行価値が上がるというようなことが逆に起こるならば、それはほんとうに残念しごくなことなんで、そういうものには目をおおっていくというような形が自然にとられるような政治というものが私は要ると思うのです。それに対する心づかいを、特に総理府は、そうした行政機関としては、総理大臣の隷下にあって行政各部の連絡調整をはかる責任者として、各省次官、政務次官等をつないでいく立場にある総理府の総務長官として、十分配慮していただきたい。
  127. 山中貞則

    山中国務大臣 御指摘の趣旨は私も全く同感なんです。ただ、私たちの戦後のあわただしかった混乱の過程を振り返ってみても、陛下の「朕」というようなことばを使ったプラカード等も終戦直後は立ったこともあれば、皇室をいろいろ相手にした、あるいはやゆするようなことば等も社会現象みたいに聞いたこともありました。しかしそれももう今日ではそんなプラカードをかついで歩こうという者はいなくなったんじゃないでしょうか。学生たちでもそういうことはしてないように見受けます。こういうものはやはり自然に、民族の生々発展の過程において、その年輪の中で包み込まれていって、民族のあるべき、すなおな、正しいバイタリティーというものが、単に世界の経済大国だけでなくて、戦争で失った日本人の心というものが、強制されずに徐々に取り戻されつつあるということにむしろ目を向けて、そのようなものにときどき狂い咲きのものが咲いたとしても、それらは路傍の花として見過ごしていく国民としての歩き方をむしろそっと育てていくということのほうがよろしいのではないでしょうか。でないと、逆に言論、出版、興行、公開、演奏等の自由に対して政府が介入したというようなことになりますと、またたいへんなことになりますし、これを企画しております人も、過去に裁判に持ち込んでまで、なおとことんまで争った人であるようでありますから、もっけの幸いというようなことになってはいけない、私はそう個人的に思います。
  128. 受田新吉

    ○受田委員 質問を終わります。あとに残します。
  129. 天野公義

    天野委員長 次回は、来たる十七日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時四十四分散会