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藤井委員 私は、本日、まず第一に、先般来すでに質疑応答をなされた問題でございますけれども、
法律的にいろいろ疑義を生じている問題数点につきまして、政府当局の見解をただしたいと思うわけでございます。
まず第一点は、今回中央会が行なうことにされております転換給付金ないし転廃給付金のこの事業は、全部の
清酒製造業者を対象としておるわけでございます。ところが、中央会なるものはいわゆる任意加入の組合であるわけですから、これが全体の清酒業者を規制する、すなわちアウトサイダーまで範囲を広げるということは行き過ぎではないかという意見が、もうすでにこの
委員会でも出ております。一応私は、こういった問題について念のため、そのようなことはないのかという確認をしておきたい。ちょっと無理な印象をぬぐい去ることができないという意見もあるわけでございますから、この点について当局はどのように考えておるか、ひとつ御答弁願いたい。
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○細見政府委員 酒造業界の実態につきましてはすでにたびたびお話を申し上げておるとおりでございまして、今回、自主流通米の実施に伴いまして、従来いわば米の割り当てというものが、いわゆる酒の造石権という形で、基準指数というものが中心になりまして現在まで行なわれ、あるいはここ五年間におきましては、カルテルによって生産制限を行なうということになっておるわけでありますが、そういう意味で、三十年にわたりましていわば酒造業界の秩序の根幹をなしております基準指数につきまして、これが、自主流通米という新しい、いわば米穀の自由な配給ということによって、酒造業界も、その生産割り当てに乗っかった秩序から、新しい自主競争的な自由な競争による酒造業界に大きく転換をしていかなければならなくなったわけであります。そういう意味で、酒造業界にとりまして、いわば三十年の組織の基盤が大きくゆらぐような事態に到達しておるわけであります。
そこで、それを考えまして、現在そういう割り当て制度あるいは配給制度というようなものがございますと、統制経済の通弊とでも申しますか、弱小業者というようなものもそのまま保護される、あるいは企業合理化の努力を怠っておるような企業につきましてもそのまま保護される、あるいはまた新しい需要層の拡大というようなことにつきまして積極的な努力が行なわれておらないような企業につきましても、残念ながら温存してきたというきらいがあるわけであります。ところがここで一挙に自由競争あるいは自主的な競争体制に入りますと、業界にいろいろな混乱が起きまして、酒税を保全するという意味におきまして、——酒類業者というのは免許制になっておりまして、特別な保護を加えておるわけでありますが、そのそもそもの目的でありまする酒税の保全ということ自体も容易ならぬことになるおそれもあるというようなことを考えますと、それは業界全体に新たな混乱、あるいは新たな秩序ができるまでのいろいろな摩擦というようなものが生じやすいことをおもんぱかりまして、今回この転換給付金というようなもの、あるいはまた担保力の不足に伴いまする信用保証制度というようなものを設けまして、いわば自由競争のあらしに突入する前の段階におきまして、できる限り自主的にその新しい事態に業界全体として取り組んでいけるようにすべきであろうということを考えまして、そのための施策ということで考えましたものが、ただいま御審議を願っておる
清酒製造業の安定に関する特別措置法でございます。そういうものでありますだけに、業界全体の動きあるいは酒税の確保という全体につながる問題、しかも免許制度をとってその根拠としておりまする酒税の確保、国家財政の中で八%程度ではありますが、非常に大きなウエートを占めておる酒税について、その納税に混乱が生じないようにしたい、それが基本でございます。
そういう意味で非常に公共的なものでございますので、アウトサイダーであるとか、あるいは中央会に加盟しておる者であるとかいうような区別をすることなく、酒造業界全体として取り組むべきものであるということでありますので、またそのメリットと申しますか、新しい秩序に伴いまする利益あるいは新しい秩序に伴いまするいろいろな清酒業としてのあり方というようなものは、組合員であるとないとに関係ございませんので、当然にアウトサイダーは含まれるべきものだ、かように考えておるわけであります。
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○
藤井委員 長々と答弁がありまして、ちょっと私もお答えの中心が……。一ぺん確認しておきたいのですが、そうすると、酒税確保という公的な性格を持っておる事業を、秩序ある新しい時代への変化に対応せしめる。そのためには、やはり本来的ならば特殊法人というようなものでやるのが妥当である。しかし便宜上、全国組織を持っておる酒関係の中央会を利用して、これを便宜的に活用して給付金の交付事業を行なわしめる。したがって、いわば中央会に対して特殊法人的な機能を与えてやる、だからアウトサイダーを規制するのもやむを得ない、こういうふうな御答弁なんですか。
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○細見政府委員 一言に申せばそのとおりでございます。もともと中央会と申しますのは、酒団法によって酒税の保全のためにいろいろな特殊な地位が与えられておるものであり、その団体の構成員は酒造業者の大部分をカバーしておる、いわば公的な機関である。それに、この
法律によりまして新たに転換給付金なり信用基金なり、いわば本来ならば特殊法人として行なうべきものでありますが、中央会自身が現在かなり公的な特別な機関であるということを考えまして、その中央会に新たにこの
法律によってこれだけの権限を与え、この意味におきましてはいわば特殊法人的な性格を持たした、こういうことでございます。
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○
藤井委員 特殊法人的な性格を与えるためにこの特別措置を
法律的にやった、こういうことなんですね。
それで、先ほどのお話の中で私はもう一ぺん確認しておきたいもう一つの問題は、先ほどお話しのとおり、自主流通米制度の導入によって、従来いわば財産的価値を持った基準指数なるものが急激に価値が低落した。したがって、その基準指数なるものの財産的価値の低落という、こういう側面から考えると、これに対して補償してやるんだというような、こういう理解のしかたもできるのです。この問題については、やめていく人に対する見舞い金であるとか、あるいは残っている人間が、結局それだけシェアが広がるために利益を受けるということからいえば、受益者分担金であるとか、いろいろなことも言えますね。だから、そういった問題に入る前に、私は念のために、基準指数なるものは一体どういう性格であるか、どういう内容のものであるかということを一ぺん、議論を進める上において、はっきりさせておきたいと思います。
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○
吉國(二)政府委員 御承知のように、昭和十三年に、清酒業界におきましては生産規制を実行いたしたわけであります。その生産規制の基礎となる製造石数をその直前の事業年度の製造石数にとったわけです。これがいわば基準指数の初めでございます。その後、もちろん原料米の不足というようなことで、一時は実際の基準石数よりも製造石数が減るという事態も生じましたが、昭和十五年以後、この基準石数というものを前提として、米の統制という関係から米の割り当ての形でこの基準指数が利用されてまいりました。戦後も引き続き、食糧管理体制のもとにおいて、米穀の配給統制の手段としてこの実績石数が用いられたわけでございます。もちろん製造石数が変わってまいりますために、これを指数化いたしまして実績指数といたしまして、その指数を基礎にして米穀を割り当てる、それによって製造が行なわれるというシステムがとられたわけであります。
この基準指数につきましては、そのような意味では非常に固定的なものである。その間業界の変動がございました。そういうことを考えながら、将来の自由化に対処するために、基準指数だけでなく、それに相当な自由化部分を加えて、清酒の製造実態に近づけるべく操作を加えてまいりましたが、何と申しましても米の割り当ての基礎になるものは、この基準指数、昭和十三年に生産統制をいたしましたときに利用いたしました実績石数というものが基礎になってでき上がったものであり、米穀を食糧管理法の規定に基づきまして需要者に割り当てる際の基準になるべき基礎指数である、かように考えていただきたいと思うのであります。
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○
藤井委員 そうすると何ですね、いわゆる統制ですね、統制して生産を規制する、その結果生まれてきた一つの、何といいますか、財産権的なものになっておる、事実は。したがって
法律上保護された権利でも何でもない。そのようなものは時代の流れとともにうたかたのごとく消えていくということであって、別に、そのようなものを持っておる、価値がなくなったから特別にめんどうを見るということは考えなくていいではないか。いわんや、今度はそれを救うために取りきめておる納付金を納めない者に対して営業を取り消すというようなことは、きわめて行き過ぎであるというふうな見方もできるわけでございます。そういう意見もすでに当
委員会で出されておる。これに対して一体どのような見解を持たれておるのか、ひとつ再度長官からお答えを願いたいと思います。
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○
吉國(二)政府委員 基準指数が財産権であるということは、いわば社会学的にあり得るわけでございまして、
法律的にこれが権利として基礎づけられたものでないことは御説のとおりでございます。ただ、御承知のとおり、一定の統制があればそこに反射的に一つの地位が生じます。その地位が財産的な取引の対象になり得るということは、これは酒の業界だけでなく、あらゆるところに存在する事実でございます。もちろん、この権利的なものを擁護する、さような考え方はさらさらないのでございます。というのは、先ほど申し上げましたように、できるだけ自由化をして、酒の製造の実態に近づけるという努力は、昭和三十二年以来、米の割り当てについていろいろとくふうをされてまいったわけでございます。ただこれが、三十二年以来それだけの努力がされながらも、実際上なかなかそれが消え去らないというところに
清酒製造業のむずかしさがあるわけであります。それが今回、自主流通米の採用ということによって一挙に消滅するということになったわけであります。私どもは、この消滅すること自体を一つの補償対象とするというふうな考え方はさらさらございません。もしそうであるならば、全清酒業者に対して補償するという結果になるわけで、これはもう膨大な補償額に達する。これは本来補償すべき性質のものではないということは、はっきり割り切っておるわけでございます。ことにこの実績、基準指数というものは、いまこそその何倍かの生産が行なわれておりますが、ある場合にはこの二分の一しか生産が行なえないという、逆に製造を規制したという面がかつてはあったわけであります。この場合には、実は営業を制限をしておったという性質を持っております。これが時代の変遷とともに、あたかも、米の統制が消費者のためであったのが生産者のための統制になったというようにいわれます。それと同じような経過をたどる面は私どもも認めますけれども、それだからといって、その財産権を、この際消滅したから保護をはかるということは全然考えておりません。今回の措置は、むしろ実際にそういうものが存在し、それが経済界の一つの生産の要因になっていたという事実、その生産の要因が消滅した場合に業界にどのような混乱が起こるかということを考え、その混乱によるはね返りにより、酒税の確保が危険になるという事実を認めまして、それに対応する措置をいかにしてとるかということから発足をしているわけでございます。
その第一の点は、従来清酒業者が生産をいたします場合には、これは御承知のとおり、一時に原料米を仕入れる。その原料米がいわばコストの六〇%近くを占めるという状況でございますが、一年分の仕入れを一時に行なう。しかもそれを徐々に年間に回収するという業態でございます。そういう特殊な業態、一種の第一次産業的な性格を持った業態については、本来その資金の手当てのための特殊な金融機関ができていたり、あるいは信用保証が行なわれていたりするのは御承知のとおりであります。そういう意味では、長らく酒造業界におきましても、清酒製造金庫というものをつくってくれという要望がございました。しかし、たまたまこの清酒業界にさっき申しました基準指数が取引されておる。それで財産的権利があるという事実が認められたために、金融業者におきましても、この基準指数を担保として認め得るという立場から、これを担保として酒造資金の約半ばが供給されてまいったわけでございます。そういう意味で特別な金融組織を必要としないということで、従来からこれを認めてこなかったわけであります。これが一挙になくなったといたしますと、明らかに酒造資金の半ばに達する資金については、資金手当てをしなければならない。これにつきましては、たとえば農林漁業金融公庫というものがあるような意味で、酒造資金についても何らかの手当てが、制度金融があってこれはしかるべきものだと私は思います。ことに、これが実はそのまま酒税として大宗を占めるという性質のものでございますから、これに対して何らかの資金手当てを加えることはむしろ必要であろう。その手段としては、従来基準指数によって担保されておりました部分について信用保証を行なうということで代替すべきではないかというのが第一点でございます。
それから第二点といたしましては、基準指数がなくなった結果、能力のあるものは幾らでも製造ができる。そのようなことになりますと、現在かなり、昭和四十四酒造年度の直前におきましても相当な持ち越し石数がございました業界といたしましては、酒の非常な生産の片寄り、部分的な生産過剰を生ずる。それにより弱小業者の乱売というような事態が起こって、おそらく清酒業界には相当な混乱が起こるであろうということは予測されるわけです。他の業界は終戦後漸次統制が廃止されまして、この二十五年の間に、さような自由競争に、いわば年月をかけて耐えてきたわけでございます。これを一年で一挙にやるとなれば、この混乱はきわめて大きいと思われます。その混乱を避けるためには、やはり一定の期間、猶予をもって漸次的にこれを自由化する必要がある。そういう面で、業界において五カ年間の期間を定めて、その期間内に完全自由化をはかるという計画をいたした。しかしその計画を実施するためには、業界ぐるみの構造改善の努力が必要であるということになったわけでございます。その際に、もちろん業界としては、清酒全体の需要数量が減るわけではない。そういう意味では、いわゆる企業整備的な意味はございませんが、その間に体質改善をはかれば、当然いまの業態では存立し得ない業者が出てくる。しかしそれが乱売等によって酒造業界を混乱におとしいれないためには、その業者がいわば平穏裏に転廃業を遂げるということが構造改善の中で行なわれなければならない。その場合に、それを容易にするためには、結局において総体の需要量が減らないとすれば、残存業者はそれだけの利益を受ける、その中から共助的に、これを一つのイニシアチブとして、共助金によって遂行していこうという考え方をとってまいったわけであります。そういう意味では、このことによりまして、現在免許業として生産を規制されております清酒業界、その免許業者相互間における大混乱を防ぐという意味におきましては、酒税確保の本来の意味における免許のいわば思想と同じ形でこの転廃が行なわれると考えざるを得ないわけであります。そういう意味では、この転廃に関する費用というものを、観念的には政府が行なってもいいのではないかという考え方もございますけれども、さっきも申し上げましたように、生産数量そのものは減らないということでございますから、これを国民の税金でやるということは不当である。したがって、公的な意味は十分持たれるけれども、政府として資金を拠出することはできない。したがって政府としては、この業界が行なおうとしている構造改善を、いわば酒税保全の立場からバックアップをして、法制的な立場でこれを基礎づけてやろうというのが、今回の
法律案の第二の意味でございます。
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○
藤井委員 非常に答弁をいろいろの面からしていただいて、私が次に質問しようと思った問題までお答えを願ったわけであります。質問が能率的に進んでいいと思うのですけれども、ひとつ御答弁を確認する意味において申し上げますが、基準指数というものの性格、これは
法律的に何も保障されたものでもない。しかし実際、現実的な経済の動きの結果、確かにこれは担保価値を持ち、しかも譲渡性を持って今日まで扱われてきておった。酒の事業の特殊性からいって、本来ならば政府が特別にこの資金制度、農林漁業金融公庫のようなものをつくっていくべきものであったけれども、便宜的にとりあえずそれでやらしておった。そのような過去のやり方、これは筋論からいくといろいろ問題があると思うのだけれども、そういう結果になっておった業界でもあり、しかもこれが自主流通米制度になって急激に野放しにしてしまうと大混乱を起こす。しかも酒税確保というきわめて公共性のあるにない手である。こういうことを考えると、今度の措置というものは特別措置によってこれが推移を円滑にやっていこうという、こういうお答えと心得ていいのではないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
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○細見政府委員 そのとおりでございます。
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藤井委員 そこで、私は今度は問題を第九条にしぼってもう少し具体的にお尋ねをし、確認をしたいと思うのでありますが、給付金ですね、これをやめていく人はもらい、あるいはまた納付金を残る人は中央会に納める。こういうことになっておりますが、これは、いまお話を聞くと、国が補助まで出す必要はない、仕事が伸びるのであって、なくなる事業とは違うから。本来ならば補助金でも出してもいいくらいな公的なものではあるという御説明でありますが、だからしたがって、補助金がなくて、業界の自主的な拠出金ですね、いわば会費のようなもの、こういったもので、そこには、いろいろお話がございましたように、共助金である性格とか、あるいはまた公共性の強い分担金であるとか、残った者はそれだけシェアが広がるのであるから受益者分担金であるとか、いろいろな説明が先ほどなされましたけれども、一体そういうふうな自主的な負担金であるものを、もし納付しない場合には大臣が納付命令を出す、ここまでくらいは一応一つのものの運び方としていいとして、もしそれを納付しない場合には免許を取り消すという、こういったことが第九条二項に書いてありますね。これはいささか行き過ぎではないか。特にまたその取り扱い方について「酒税法第十二条の規定の適用については、酒税に係る滞納処分を受けた者とみなす。」こういうふうな表現までされておるわけでございまして、こういう問題について、一体これが行き過ぎであるかどうか確認をしておきたい。当局の御答弁を願いたい。
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○細見政府委員 この
法律をつくりますにあたりまして、実は第九条が一番悩んだところでございます。いま長官からも申しましたように、この納付金あるいは給付金というものは、本来むしろ非常に公的な性格を持っておる金銭であるわけであります。したがいまして、第七条にもございますように、公共性の強い分担金としておるわけであるということを担保いたしますために、第七条におきまして、この金額は、まず政令で定めるところによって大蔵大臣の認可を受けなければならないということ、しかもその最高限はこの
法律によりまして政令で定めるということに第二項でいたしておるわけであります。そういう意味におきまして、この分担金というものは非常に公的なものであり、またこうすることが秩序ある競争関係に入っていくためにどうしても必要だということであります。
この分担金のようなものを、ある特定の人たちが払うのはいやだというようなこと、あるいはそれが一人二人でなくてかなり多数の方が、自分たちはどうせ生き残るのだから払うのはいやだというような感じのことになったのでは、業界をあげての秩序ある競争へ持っていこうという本制度がいわば無にされるわけでありまして、このきめた納付金というのは何らかの形で強制的にも徴収できるということをうたいたかったわけであります。そこで「強制徴収の方法による」という書き方も一つの立法論であります。その場合は、この中央会のようないわば任意の団体ではなくて、先ほどもお話し申しましたように、特別法人にしなければならないという問題、それからまた、この納付金を国のものとして振りかえて、税務署で徴収するというような考え方もあるわけでありますが、金額の算定その他につきましては、業界の実情によりいろいろ考えていかなければならない要素もありますので、それを税務署の徴収ということにもいささか問題があろう。そこで、業界団体自治の精神を生かしながら、最終的には公共性の強さというものを
法律によって担保するのにはこの方法がよかろうということでいたしたわけで、この点につきましては、私どもももちろんでありますが、ここに来ておりまする法制局において非常に綿密に検討を願っておりますので、なお要すれば法制局からお聞き願いたいと思います。
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藤井委員 確かにいまお話しのように、ここにかりに納付金を自発的に納めない者が発生した場合に、それに対して何らか有効な措置を講ずることができなければ、これはアリの穴から全体の制度がくずれてしまうという、こういうことで、何とかそこら辺で私はそれを差しとめるささえというものが必要なことはよくわかるのです。いまお話しのように、酒の場合は、よく素朴な意見として、百姓が、おれのつくった米だから自分でつくらせいというようなことを、あの終戦当時聞かされたものですね。ところがそうはいかぬ。酒はアルコール分を含んでおり、未成年者には飲まされないという特殊なものでもあるし、あるいはまた酒税確保のためのいわゆる財政物資である、こういう特殊性から特別に免許制度でやっているのだという、こういうことで、農家の方々が酒の不足のときにも、まかりならぬ、ブドウ酒もまかりならぬという議論もかつてあったことを思い起こすのです。そういうことを考えると、酒屋さんには特別な権利が与えられておるという、こういうことにもなる。その特別の権利を与えられているものが時代の変化に即応して、業界全体が秩序ある推移をして、公的なこのいわゆる税金を納めるという方向に持っていくためには、そこに規制を考えなければならぬことはよくわかるわけでございますけれども、一体、自発的な会費である、それを急に公権を発動して税金と同じような滞納処分をするという取り扱いというものは、実際必要性はわかるのだけれども、何だか木に竹をついだよような感じがするわけでありますので、そこで法制局にお尋ねをいたします。こういうふうなことについて、いわゆる先例があるかどうか。先例を踏まえてひとつ御答弁を願いたい。
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○荒井政府委員 今回のこの転換給付金事業というものが、いままで説明ありましたように、清酒業界の秩序の安定をはかり、ひいて酒税の保全に資するのだという目的であるといたしますと、その給付金事業を行なうための納付金の確保ということが絶対に必要になるわけでございます。その徴収の確保をはかる方法としまして、中央会自身に自力執行を認める、まあ強制徴収権でございますけれども、そういうことも一つの方法としては考えられるわけでございますが、現在国税滞納処分の例により徴収することができるという、いわば強制徴収の権限が認められておりますのは、国、地方公共団体あるいは土地改良区というような、いわゆる公法人というたぐいのもの、あるいは国がその出資をし特別の監督をしているいわゆる特殊法人というもの、公共性の強い、いわば国の分身あるいは代行機関と考えられるような機関の場合には滞納処分の例により強制徴収をすることを認めているわけでございます。それに対しましてこの中央会というものは、公共性は持っている——酒税の保全に関する事業に協力するというようなことがその事業の範囲として書かれておりますように、公共性は持っておりますけれども、本質的には同業者で構成するところの加入、脱退自由の団体である。その同業者で構成され、同業者によって役員等が選ばれているという団体で、国税滞納処分の例によって会費なり賦課金というものを取ることを認めている立法例が現にないわけでございます。
それはどういうわけでないのだろうかといいますと、滞納処分の例によって強制徴収することを認めるというのは、それだけ公法人ないしは国の分身あるいは代行機関と考えられるような公的な色彩が非常に強くて、その従業員といいますか、役員、職員というようなものは公務員とみなされるようなものでなければならない。刑法その他の罰則の適用については公務員とみなすというのが、強制徴収を認められる特殊法人等の場合には軒並み書いてあるわけでございます。たとえば、公務員と同じように、贈収賄等については三年以下の懲役とするというようなこともありますし、同業者から選ばれたところの役員が、かりに滞納処分に行って他の同業者の営業用財産を差し押える、それによって営業上の秘密を知るかもしれない。その同業者から選挙され、選ばれて組織されているような団体の役職員というものが、その同業者のところへ行って強制的に公権力の行使をするというようなことはいかにもふさわしくないし、それは
法律論としても実体論としてもふさわしくない。公務員とみなして刑法その他罰則を適用するとか、あるいは守秘の義務、秘密を漏らし、窃用した場合には何年以下の懲役に処すというようなことを書いて、国の機関と同様なものであるというふうに、同業者で構成される団体について構成していくということは、この酒税の保全及び酒類業組合等に関する
法律の基本的な構成というものからいって非常に問題があるということでございますし、従来の立法の例を見てもそういうのはないということでございます。
法案の七条五項にもありますように、納付金の算定については行政不服審査法の規定により審査請求することができるということで、公的な色彩があるものだということをうたっているわけでございますけれども、それに対して、この転換給付金の事業というものの公共性を認め、それによって最終的に酒税の保全をはからなければならぬところの大蔵大臣としては、側面的にそこでバックアップするといいますか、納付命令を出すという構成に九条の一項はなっておるわけでございます。その点は、酒類業組合法の八十四条の第二項あるいは第三項の場合を見ますと、それもやはり酒税の保全というためにどうしてもやむを得ないという場合には、大蔵大臣がアウトサイダーをも含むところの酒類製造業者あるいは販売業者というものに対して規制命令を出すことができるということになっているわけでございまして、この法案の九条一項で考えているところの納付命令というものは、これは酒類業組合法の八十四条の第二項あるいは第三項でいうところの規制命令に本質的には該当するものであるというふうに考えられているわけでございます。
その場合に、酒類業組合法の九十六条第一号という規定を見ますと、八十四条の第二項、第三項の規制命令に違反した、いわば主務大臣の命令に服従しないという場合には三年以下の懲役または二十万円以下の罰金に処するということが書かれているわけでございます。そしてその結果どうなるかという点を酒税法の規定にはね返って見ますと、酒税法の第十条の第七号、八号の規定で、酒税の保全及び酒類業組合等に関する
法律の規定により罰金の刑に処せられたという場合には免許の要件に該当しない、あるいは禁錮以上の刑に処せられたという場合には該当しない。そしてそれは十二条の第二号の規定により、酒類の製造免許を取り消す事由になっているということでございます。すなわち酒類業組合法の八十四条第二項あるいは第三項のアウトサイダーを含むところの規制命令というものに違反した場合におきましては、それはその罰則の適用というもので担保され、そしてそれは免許の取り消しというか、免許の制度によっても担保されているという形であるわけでございます。
そういうふうに、免許制度一般につきまして、その免許を受けた業者、まあ、それは免許によってある意味では反射的な保護も受けているわけでございますけれども、そういう業者が法令に違反したあるいは法令の規定に基づく主務大臣の命令に違反したというような場合には、一般的に罰則で担保をする。そして、免許あるいは許可の取り消しという形で担保しているのが、むしろ法制としては一般的であるわけです。
また、両方とも同じ
法律で規定しているというものも多いわけでございまして、たとえば、大蔵省所管の
法律で申し上げますと、銀行法の二十三条は、主務大臣の命令に対して違反した場合には免許の取り消し事由になるということを書いて、それを、相互銀行法二十条、長期信用銀行法十七条あるいは外国為替銀行法、信用金庫法等で準用しておりますし、信託業法十九条でありますとか、保険業法の十二条でありますとか、あるいは証券取引法の三十五条でありますとか、こういうような法令は、その法令の規定に違反した、あるいは法令の規定に基づく主務大臣の命令に違反したという場合には免許取り消しにつながるということによって、主務大臣の命令を実効あらしめるというように担保しているわけでございます。
他の所管の法令で申し上げましても、たとえば、電気事業法の十五条第二項でありますとか、ガス事業法の十四条第二項でありますとか、そういうものは、その
法律命令あるいはその
法律に基づく主務大臣の処分というものに違反した場合には許可の取り消しをする。たとえば、東京電力が電気事業法施行規則に違反したという場合にも、それは、それによって公共の利益を阻害すると認められる場合は許可の取り消しというものが規定されているわけでございます。その他、航空法の百十九条でございますとか、海上運送法の十六条でございますとか、道路運送法四十三条、地方鉄道法の三十七条、あるいは薬事法の七十五条でございますとか、あるいは中央卸売市場法の十八条でございますとか、いろいろな規定が例としてはございます。
そうして、こういう納付金の事業につきましても、たとえば石炭鉱害賠償等臨時措置法では、石炭鉱害事業団に対してその鉱害賠償に充てるための納付金あるいは積み立て金の納付義務を、第九条とか附則の第十項というようなところで規定しておりますけれども、そういう納付金に充てるべきものを納付しなかった場合には鉱業権の取り消しをするというような規定もございます。
そのほか、たとえば、先ほど
藤井先生が会費というようなこともおっしゃいましたけれども、会費について見ますと、税理士法、弁護士法あるいは土地家屋調査士法というのは強制加入になっている。そうして、会則を守らなければならぬということが
法律に書かれております。その会則の中には会費の徴収に関することというようなことも定められることになっておる。その会費を納めないということは、したがって会則を順守しなければならぬという規定に違反するわけでございますけれども、そういう場合には、業務停止であるとか、登録の取り消しであるとかあるいは除名というような方法によって最終的には担保をするという仕組みになっているわけでございます。
例をあげろということでございますので申し上げますと、そういうことでございます。
〔発言する者あり〕
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○春日委員 いま、法制局が、他の立法例はこういうことであると長々と述べられましたけれども、それらはいずれも
法律に基づく大臣命令ですよ。その大臣が命令を発する
法律というものは、この国会において国民の代表者が十分に審議して議決され、
法律として制定された。それに基づいて大臣が国家権力を行使する、大臣命令を発する。
法律に基づいての大臣命令である。
ところが、今度の会費を納める納めないという問題についての大臣命令は、ものごとを砕いて言うならば、これは近代化計画に基づくところの賦課金ですから、その近代化計画なるものはどういうものであるかといえば、酒屋のだんな衆が集まって、こうしたほうがいいと思うと言うて寄り寄り協議して、そうしてこれを大臣に申請するわけだ。そうすると、大臣がこれをいろいろと検討して、これならばまあまあよろしかろうということで認可したものだ、実際は。結局はその業者同士が自分たちの利益のために、しかし公共的性格ということを念頭に置いて申請したものを、大臣がまあまあとこれを認めて、認可してやっただけのことなんでございますよ。したがって、その近代化計画というものについては、国会というものは全然そこに参加することはできないのである。現実の問題として、可否を論ずることも批判することもできないのである。そういうものに対して、員外者に向かって、すなわちその近代化計画の賦課金を支払うべき旨、大臣が命令を発する、こういう場合なんだけれども、かりに、そういうことが公共の利益に沿うし、この
法律の効果、機能を確保するために大臣命令を発し得るとしても、それに従わない場合に、これを税金と同じような価値判断をして、差し押え、競売する、あるいはまた免許取り消しに通ずる、こういうような事柄は、これは
理事会なんかで論じられておるように、はなはだしく論理が飛躍するといわざるを得ない、現実の問題として。まるで、交通違反をやった、そいつを死刑にするというような、はなはだもってとっぴな法の構成といわなければなりません。
私は、大臣命令を発することはできるとしても、その大臣命令に従わない場合における主権者国民の処遇というもの、それをいきなり、免許取り消しをしてしまうとか、あるいは国民の財産権をはなはだしく拘束する、こういうような機能を大臣命令そのものの中に与えるということについては、憲法上大きな疑義があると思う。憲法においては、二十二条に職業選択自由の原則がありますね。そしてまた二十九条には財産権不可侵の原則というものがある。それを拘束する場合には、税法の場合でもその他の場合でも、国会の議決、
法律によらなければならぬ。
法律による場合、たとえば税法のような場合は、まず、慣例として、大蔵大臣が税制調査会に諮問を発し、その答申を待って法案をつくる。そうして国会にかけ、ここで論議をして、衆参両院の賛成を得て成立して初めて財産権を拘束することができる。ところが、今度の賦課金なんというものは、酒屋のだんな衆が集まって、いよいよこれは自由になっちまった。商売をやれなくなるから、これは近代化せんならぬ。そうして頭数を減らさんならぬから、やめたいやつはやめろ。やめるやつにはこれだけ金を出そう。出すにはみんなが持ち寄らなければならぬからと言うて、みんなが寄り寄り協議して案をつくり、そいつを国会にも国民にも関係なく大臣が認可して、そうして納めてくれいと言うたところが、相手は納めぬ。納めぬときには大臣に要請して、大臣命令の発動を求めるんだが、そこまでは立法例としてもあるいは政策論としてもエクスキューズがあり得るとしても、納めぬ者に向かって免許を取り消したりあるいは強制徴税権を発動するということは、これは何としてもあまりにとっぴ過ぎると思うんだ。たとえば酒税滞納処分の例によるとか、あるいは大臣の規制命令に対して服従しない場合とか、罰金を受けた場合は免許取り消しに通ずるなんて言われるけれども、そういうときにはことごとく立法例は、大臣命令を発するときには、
法律に基づいてのみ命令を発し得るんだ。行政府というものは
法律に基づかずして行政行為は行なえない。ところが大臣命令の中身になるところの近代化計画というものは、こんなものは業者団体の内輪の申し合わせなんだ。こうしたら過当競争が防止もできるし、やっていけるから、こういうことなんでございます。だから、この問題は、いま法制局が他の立法例をちょうちょうと述べられたけれども、それらの立法例とこれとは全然異質のものだ。義経と向こうずねのように、やかんとてんかんのように、縁もゆかりもないものだ。こういう詭弁を法制局の代表が権威ある大蔵
委員会において論ずるにおいては、まことに研究不足のそしりを免れないと思う。強く警告を発しておきます。
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○荒井政府委員 いま憲法論も出ましたのでお答えを申し上げますと、憲法上の国民の自由権の保障というものは、御承知のとおり、公共の福祉とのかね合いの問題でございまして、その公共の福祉の政策的判断は大蔵大臣なり国会がされるということでございますが、いままでの説明によりまして、この清酒業界の秩序の安定をはかり、ひいては酒税の保全に資するということが言われておりますので、そういう点が公共の福祉であると考えられますと、憲法二十九条というものも、財産権の内容というものは公共の福祉に適合するように定めてございますし、こういう納付金というものも、それが公共の福祉に適合するものであるという限りにおいては、別に憲法に違反するというようなことにはならないわけでございます。
-
○春日委員 その点を明らかにしておきたいと思う。なるほど、これが公共の福祉に適合するかどうかという問題を、実際問題としていまわれわれは論じておるのです。その問題を、いまこの
法律を通すか通さないかというこの場面において、そこに力点を置いてわれわれはここに論じ合っておる。公共の福祉というものはどういうものであるか。国民の財産権を拘束するとか、あるいは営業権、職業選択自由の原則というものがあるにもかかわらず、免許を受けてきちっと酒団法に基づいて酒の製造をやっておるものが、今度の近代化計画の分担金を納めなかったからといってこれが免許を取り消される、こういうことになるからたいへんなことなんだ。言うならば死刑に処するようなものですね。酒の製造家にとって免許を取り消されるということは、死刑に処せられるような極刑なんでございます。そういうような大きな国民の基本的人権というものを国の力によって拘束するときには、すなわち公共の福祉というものとこの調整計画というものとをにらみ合わせて、ほんとうにそのことがなければ公共の福祉が阻害されるかどうかという、この弁識ですね。これが私は重要なポイントだと思う。ときに財産権が侵害されてもいい。税法はことごとく財産権を侵害しておるんだ。けれども私は、そういうものは、ほんとうにそのことがなければわが日本国の国家存立の基礎を危うくするとか、あるいは国民経済を混乱におとしいれるとか、酒税の徴収を皆無におとしいれるとか、そういうような事実弁識というものをお互いが何と見るかということになるのでございます。
私は、いま
藤井君の質問にも述べられておりましたけれども、実際はこの基準指数というものは、いま
国税庁長官も述べられたけれども、これは酒造対策、酒の製造対策としてこの基準指数というものが与えられたものではない、これは食糧管理対策として与えられたものであるということが明確なんでございます。だからそういうような点から考えて、ここに自由化されたということは、酒の製造家にとってはむしろこれは自由にされた。すなわち、われわれを縛っておった鎖の一つが解き放された。手かせ足かせの中のそういう大きな鎖が取りはずされたんだ。われわれは今後資本主義経済、自由経済の原則の上に立って、自由にして公正なる競争の原則の上に立って、いろいろと手足を伸ばしてやれるという体制になったのであって、これを被害的に受けとめるべきものではなくして、われわれはこれはプラス要因が加わったんだという認識で取り組むべきだと思う。しかし、現実にいま当面していろいろと問題があるとすれば、その問題を解決するためにこそ、昨年の八月あのような生産調整という
自主規制、みんながむやみやたらに製造することのできざるように
自主規制の計画が立てられて、これが酒団法に基づいて大臣の認可を得て、みんながむやみやたらに製造することのできないような体制がもうすでに確立されておるのである。
そういうことですから、したがって、いま関連質問として申しました、他の立法例があるからということだが、これは酒屋さんたちが相談をして、大臣がまあこれならよかろうと言うて、極端なことをいえば、ざっくばらんに、めくらうのみに、ではないにしても、若干のチェックがされたとしても、実際はその組合が自分たちの利益をはかるためにつくった案を、その組合と関係のない員外者に向かって拘束力を与える、こういうようなことは明らかに憲法違反である。どうかひとつこの点については深甚なる反省を願って、後日問題を残さないようにしてもらいたい。現在は組合員外者はわずか一軒だといわれております。しかし、この分担金が過大であり、あるいは交付金が僅少である場合は、私はいやだといってこの組合から脱退する者が将来相当できるかもしれない。いまは一軒のものが三十軒、五十軒、百軒にふえていくかもしれない。さすれば、そういうものに向かってどんどこどんどこと大臣命令が発せられて、免許が取り消されたりあるいは強制徴収の手段が講ぜられたりすれば、もしそれ、それらの連中が憲法違反だといってその救済を求め、裁判をする。そのとき、もしもその裁判所の判決が、この二十九条と二十二条との関係において本人の救済申し立てを認めた判決がおりたとき、この
法律は全部無効になる。そのときは、わが立法府の責任は非常に重くなってくるのである。私はこのことをよくお考えを願いたいと思う。この間私は高木審
議官にも質問をいたしたのでありまするが、一昨年の国会において、あの社労の
委員会において美理容師法が非常に唐突の間に成立された。すなわち、国家試験を受けて現に営業をしておる者が、管理美容師を置くのでなければ営業権が剥奪されるという形になった。
法律に基づいて営業しておる者が新しい
法律によって営業が禁止される、ばかなことがあるかといって、いま行政裁判が何千件と起こされております。後日このような紛争を起こすことのないよう、この立法の時点において完ぺきを期すべきであるというのがわれわれの所論である。こういう意味でひとつ十分の御検討を願っておきたい。
-
○
藤井委員 ただいま法制局から具体的な立法の実例をあげられて御答弁されました。私はいろんな面において非常に参考になったと思います。同時に、野党の論客である春日委員から関連質問をしていただきまして、春日委員の組織論的な御見解、これまた明快に了解ができまして、まことにありがたく思う次第でございますが、あと、また論客がそろっておられますので、このような問題については私、一応これで、相当時間が経過いたしておりますので切り上げまして、一、二具体的な問題について、これは大臣にひとつ御見解を承りたいと思うのであります。
日本酒造組合が行なうところの信用保証、転換給付金支給の業務運営上の基本的な問題についてお尋ねをいたしたいのですが、第一点は、信用保証基金と保証限度の限界についてでございます。このたびの信用基金というものは、政府の交付金が七億、業界の拠出金が七億、合計十四億で、保証限度四百二十億ということになれば、保証倍率は三十倍ということになるわけですね。ところが従来、林業信用基金とかあるいは繊維工業構造改善事業協会の保証倍率は十倍になっておるわけでございまして、特にこの清酒業界は長年販売統制を行なって、資本蓄積がきわめて少ないと一般にいわれておる。同時に今度自主流通米制度が導入をされまして、いわゆる造石権なるものの価値が暴落をしたという、そういう点から担保力が全く薄れてきておる。このような背景、同時に過去の実績において、酒をつくる資金は大体千二百億円くらいといっておるのです。そのうち半額の六百億円というのは酒造組合が保証して借りておった、こういうことを考えますと、私はこの保証倍率三十倍というのは非常に無理がある。したがってこれを薄めるためには、政府が債務保証を円滑に行なわしむるためには、やはり拠出金をまだまだふやさなければならぬと思うのです。七億ばかりではどうにもならない。したがって必要資金を、今後どうしてもこれが円滑な運営をするために、基礎固めのために、政府は拠出をすべきであるというふうに考えておりますが、これに対して大蔵大臣はいかなる御見解でしょう。
-
○
福田国務大臣 ただいまの保証限度に対する政府の助成、これにつきましては全く私も同意見であります。すなわち来年度におきましてはさらに七億円の助成が必要ではあるまいか、さようなふうに考えております。いずれ来年度予算編成に関連いたしまして御審議いただきたい、かように思っております。
-
○
藤井委員 ことし七億だからまた来年七億という、七億にはあまり拘泥をされないで、七億以上ということでひとつ御答弁を承っておきたい、こういうふうに思います。
次は、転換給付金支給業務に関してでありますが、案によりますと、昭和四十五年から四十八年の四カ年間に転廃業者を六百三十名と押えて、給付金が二十八億六千万円、その半額十四億三千万円は業界からの納付金、そして残額は中央会の借り入れ金に依存しておるという、こういう案になっておると承っております。ところがどれだけ転廃業するのかというのはやってみなければわからない。私はやはり最悪の事態に対処して手当てをしておく必要があるという、こういう点からいいますと、もし六百三十業者以上になった場合、これは運営が行き詰まってしまう、こういう心配があるわけでございまして、もともとこれは、本来ならば、私は、この業界が借り入れ金でやる分だけぐらいは国が出してもいいくらいに思っておったのです。ところが先ほどお話を聞いてみると、業界ではまだシェアは伸びてくる、こういうことから、政府から金を出すまでの必要はなかろう、業界で運営をしてやったらよかろう、こういうことだから、それもそうだろう、こういうふうにしておりますけれども、問題は六百三十者以上になるというようなことを想定いたしますと、これは制度の運営が行き詰まる心配がありますが、こういう場合一体政府は、せっかくの制度をつくる、その趣旨を貫徹する意味におきまして、そういう事態に対してはどのような心がまえをしておられるか、大蔵大臣の所見を承りたい。
-
○
福田国務大臣 今度の制度は非常に公益性の高い使命を持っておるわけであります。そういうようなことでこの制度が行き詰まるというようなことがあってはこれはたいへんだというふうに理解をいたしておるわけであります。ただいまのところでは行き詰まるというようなことは考えておりませんけれども、もしこの構想が行き詰まりを生ずるというようなことがあれば、これはたいへんなことでありますので、その際におきましてはその際といたしまして適当な措置を講じなければならぬ、さような考えであります。
-
○
藤井委員 これは問題が少し事務的になりますから、これは銀行局関係ではありますけれども、一応担当の
国税庁長官から、またもう一つは主税局長からお伺いしておきたいのですが、貸し付けについていわゆる保証料を取りますね。一般に広範に行なわれておるのですが、これはもともと酒造組合が組合員に対する債務保証をやるわけですね。一般不特定の債務保証ではないわけですね。したがって原則として、私は、保証料は取るべきではないという考えを持っておる。それだけ一般のお酒をつくる酒造資金が金利プラス保証料と高くなるわけですから。その保証料は年七分二厘ですか、これはいわゆる転換給付金の財源に充てがうというえらいやりくり算段をされての考えのようでありますけれども、もともと、もし借り入れ金の債務者が弁済を怠る場合には中央会が代位弁済を遅滞なくやるとなっておりますから、貸したほうの金融機関は何も腹を痛めないということでもありますので、この保証料金については、一般からいえば七分二厘というのは低いとは私承知しておりますけれども、これはもっともっと引き下げるべきだというふうに思います。この点について今後の努力をされる御用意があるか、長官にお伺いをいたしたい。
-
○
吉國(二)政府委員 信用保証料を取るべきか取らざるべきかという問題についてはいろいろ議論がございますが、国の補助金によって保証を行なうという形をとっておりますものは、いずれにしろ信用保証料を取っておるわけです。その中で比較的安い信用保証料でやっていこうということでいたしておりますが、さらに余裕が出てくれば、将来はもちろんこれを引き下げていくべきだと思います。
なお、コストにどれだけはね返るかという問題でございますが、この信用保証は、先ほど御指摘のありましたように、もし債務弁済不能になれば直ちに代位弁済が行なわれるという性質のものでございますので、地方銀行等といろいろ折衝いたしておりますけれども、一般に自分の財産を担保にして貸し付ける場合よりも貸し付けの利息がやや低目になるという見込みでございます。そういう意味では、貸し付け利息と信用保証料の見合いでまいりますと、必ずしもコスト逓増を総体としては来たさないという見込みもございます。そういう点で、むしろ現在予想しております信用保証料が当面非常に過重ではない、かように思いますし、将来事業が進展をいたしました暁には、これはおのおのの業界から払い込まれた信用保証料であり、またその基金の運用によって得た蓄積であるとすれば、当然その余裕が出てくれば引き下げてもしかるべきものだと思います。将来の形としては、余裕が生ずるに応じて引き下げていくべきものである、かように考えております。
-
○
藤井委員 最後に希望意見を申し述べて、別に御答弁は要りません。
大蔵大臣並びに主税局長にお願いをいたしておきたいことがございます。これは素朴な国民の気持ちで、どうしても割り切れない問題の一つとして私は常時頭から離れないのですが、すなわち、今度転廃業者に給付金をやります。所得税法のたてまえからいいますと、所得のあるところ課税するというたてまえになっておりますね。したがって、いわゆる所得税、法人税というものが、給付金を受けた個人並びに会社に今度はかかるわけですね。これに対して私は、酒の今度の場合、何千年−何千年というわけでもないが、何百年、何十年と続いて、最後にいわばせんべつが出るわけですね。そのせんべつに政府が手をつけるというのは、これはどう考えても人情的にみみっちい考えだというふうに思う。これをやると次に波及するという心配もあるわけですが、いいところは波及さしたらいいと思う。だから、ある程度こういう政府の施策によって出る金について、せんべつに政府が手をつけるなどというようなことはせぬでも、この経済成長の段階において、法人税はちょっと上げましたけれども、減税をしているわけですから、これは一ぺん一考あってしかるべきではないか。特に今度の清酒業界の大変革に沿うて国も拠出し、とにかくいろいろやっているわけですから、これに対しては人間性のある、素朴な国民の理解できるような行政運営をひとつやっていただきたい。これは希望意見として申し述べて、質問を終わりたいと思います。
-
-
○堀委員
清酒製造業の安定に関する
特別措置法案という議題でありますけれども、大臣、
清酒製造業は現在は一体安定しておると思われますか、安定していないと思われますか。
-
-
○堀委員 どういう点が現在安定していないのでしょうか。
-
○
福田国務大臣 零細の清酒業者があまりに多い、つまり過当競争、そういう状態、これが一番安定していない原因である、かように考えております。
-
○堀委員 私は、現在が安定していないというのは、これはなかなかたいへんなことだと思うのです。私は、一応安定しておると思うのです。なぜかといえば、一応安定しておるから、酒税は確実にほとんど一〇〇%取れておるのじゃないか。ですから、私はその安定というものを、
法律的にこの大蔵
委員会で考える場合には、少なくとも酒税が一〇〇%収納されて、ほぼそうたいして滞納がないという状態は、これが安定していないのならたいへんなことだと思うのです。この
法律というものは、主として公共の福祉につながるのは一体どこでつながるかといえば、酒税との関連においてつながる以外に私はつながるところはないと思っておる。その酒税との関係においてつながるところが一〇〇%ほとんど取れて、徴税コストもきわめて安い。最も安い徴税コストによるという状態になっておるときに、いま大臣が、なおかつ安定していない、こう言われるのは、これは私は非常に重要な発言だと思うのです。
ちょっと事務当局に聞きますが、あなた方は事務的見解として、一体現在の清酒業界は酒税を収納する立場からして安定しておるのか、安定していないのか。
-
○中橋説明員 現在の清酒業界の事情を酒税の立場から申しましても、私は不安定な状態になっておると思います。いま幸いにして、酒税についての滞納ということが各所で起こっておるという事態はございませんけれども、それを担保しておりますのは、実は昨年から認めていただきました生産規制が大いに働いておると思います。これによりまして清酒業界はいまかろうじて安定という状態を保っておる。本質は不安定の要素を多分に蔵しておるというように考えます。
-
○堀委員 私は、ただ、清酒業界は安定しておるかどうかと、実は大臣に伺ったのです。間税
部長のいまの答弁では、不安定な要素がある、こういうことです。不安定な要素があるけれども、しかし安定はしているのじゃないですか。もし安定していなければ、酒団法その他の
法律に基づいて処置が行なわれていなければならぬ、そういう酒税の徴収その他のおそれのある場合。さっきそちらの答弁で、酒団法四十二条に触れておられるわけですが、安定しないということ、おそれがあるということなら、当然酒団法四十二条が発令されておらなければならぬと思うのだけれども、それが発令されていない。ただ四十二条に基づいて規制しておる。だから私はいま安定しておるかどうかと言ったので、規制の中においては安定しておる、こういうことじゃないですか。そういうふうに私は理解しておるのであって、安定していないというわけではない。どうですか、いまあなたの言ったように、規制がなければ不安定な状態になっておるかもしれぬ。だから大蔵大臣も規制を認めておるわけだ。規制をしてなおかつ不安定だと私は思っていないのですが、どうですか。
-
○中橋説明員 いまの堀委員のおっしゃるとおりでございまして、不安定で酒税の納付が非常に不安定になるおそれがあるからこそ、昨年公取の同意を得まして生産規制が認められておるわけでございます。それをいま実は不安定の要素というように言っておりますので、やはりこういう不安定の事情があるからこそ四十二条が発動されておるのです。
-
○堀委員 発動した結果不安定だということですか。発動したけれども不安定だから安定にするというのですか。いまやはり不安定なんですか。
-
○中橋説明員 生産規制がありますので、幸いにして現在は酒税の確保ができておるということであります。
-
○堀委員 大臣、ひとつそういうふうに清酒業界の安定の問題を理解をしていただいておきたいと思うのです。ですから、私は、現在規制を行なっておることはやむを得ないと思っております。やむを得ないが、そういうふうにやらざるを得ない過去からの沿革がある。だから、そういう意味で、現状は安定していると私は認識しておるわけです。ただ、そうすると先へいって不安定になるおそれがあるという問題は、御承知のように、現在の
自主規制は、これは四十八年と、終わりは限ってあります。私はこの前、前の公正取引
委員長においでいただいてこの論議をしたわけですが、現在この
自主規制なるものに対する
公正取引委員会の態度は、一年という認可であって、五年間という計画に基づいて認可しておるわけではない。一年ごとにそのつど認可するというふうに聞いております。それはそれでいいと私は考えておるわけです。
そこで、これは少し背景の問題について触れておきたいと思いますけれども、今度の転換給付金が昭和四十五年度は四万円ということになっておるというふうにこの前答弁がありました。一体この四万円の算出の基礎は何か、事務当局からお答えいただきたいと思います。
-
○中橋説明員 給付金を一体幾らにすべきかということは現在検討中でございますけれども、おっしゃいましたように、現在の大体の考え方は、原規制数量一キロリットル当たり一年一万円という計算になろうかと思います。その算定の基礎は、従来の
清酒製造業におきますところの実態調査なり、あるいはかつて私どもが基準価格などを算定いたしておりましたときの資料、あるいはおけ売りをしましたものについてかつて調べました資料から検討いたしますと、当時でございますから少し古うございますけれども、年間の原規制数量一キロリットルに当たりますものについての利益というものが、当時で一万二千円をやや上回っておった数字が三つとも出ております。ただ現在、先ほど来御議論がございましたように、非常に不安定な要因を含んでおりまして、かなりそれよりは利益は減っておると思います。それからまた給付金としまして完全にそれをまかなうという必要もないわけでございますので、それでまるめまして一万円というふうに算定をしたわけでございます。
-
○堀委員 そうすると、いまあなた一万円の話があったわけですが、その一万円のほうからいきましょう。調査をされた時点というのは四十二年ですか、四十三年ですか。
-
○中橋説明員 四十二年でございます。
-
○堀委員 当時一万二千円の大体利益があった。現在はそうすると、大体清酒一キロリットルについて一万円ぐらい、まあ最近の調査ではありませんでしょうけれども、その他の調査もありましょうから、ということになる、こういうふうに確認をしてよろしゅうございますか。
-
○中橋説明員 平均的にはそのように考えております。
-
○堀委員 そうすると、それが四万円になるというのはどういうことなのですか。
-
○中橋説明員 それで制度の本質にも触れるのでございますが、簡単に申しますと、いまの不安定要因が生産規制ということで安定しておるわけでございますが、おっしゃいましたように、おそくとも四十九年度からはこの安定をささえておる生産規制というものがなくなることになるわけであります。そこでいよいよ不安定になるわけでございます。その不安定のときに正々たる競争を実現するためには、やはり市場性のない清酒をつくってばかりいて販路のないというメーカーは、この際やはり将来をおもんばかれば秩序ある撤退が望ましいのではないかというような考え方でございますが、それを一年でも早くやめれば、それだけの秩序ある競争というものも実現できるのではないか。四年早くやめれば四年間の所得に大体見合ったものとして四万円、三年前にやめれば三年間の所得に大体見合ったものとして三万円というふうに、逐次逓減をするという思想でございます。
-
○堀委員 わかりました。
そこで公取
委員長、あまり長時間いていただくのもあれでありますが、ちょっと公取
委員長にもお伺いしたいのですが、いま大蔵省の見解は、大体平均すると、現在時点において一キロリットル当たり一万円の利益が清酒業界にはある、こういう事実を答弁になったわけですね。それからもう一つの側面として、清酒は、確かに伸び率はいろいろありますけれども、なおかつ、先ほどの論議でもありましたように、生産数量も伸びていくということもまず明らかになりました。しかし、いまお聞きのようなことで不安定な要素があるから、ここで一種の不況カルテルをつくっておる、それを
公正取引委員会は認められておる、こういうことになっておると思うのであります。
ところが、最近清酒業界の方のお話を聞いておりますと、米の購入価格が上がってきた、あるいは人件費が上がってきた。
〔
委員長退席、
山下(元)
委員長代理着席〕
いろいろな本来のコストが上がってきておる。私はこの前のときに、この問題については、不況カルテルをつくって生産制限をしておる間は、少なくとも正常な価格ではないわけでありますから、生産制限によってある意味の価格維持が行なわれておるという背景がある中での清酒類の値上げについては認めるべきでないと思う、こういうふうにお尋ねをしたら、
公正取引委員会も大蔵省も、そのとおりだというお答えをいただいたわけです。
そこで、いま私はそれの背景についての論議を少ししたわけでありますが、公正取引
委員長は、今日時点において清酒の業界が言っておられる値上げ問題というものについて、不況カルテルをこのような形で実施しておる際に、そういう値上げは依然として私はやはり認められるべきではない、こう考えますが、それについての
公正取引委員会の見解をひとつ承りたいと思います。
-
○谷村政府委員 だんだん伺っておりましたが、不況カルテルというものを認めておるのは、これは公取の立場からするなら例外的なことでございます。本来、いま大蔵省のほうから述べられましたように、正々たる競争が行なわれて、そこにまたいろいろの条件はあっても、一つの価格形成が行なわれるというのがわれわれとして望ましい姿でございます。しかし業界の実態は、いまお話がありましたような意味で撤退作戦をひとつやる、その結果こういうことでいきたいということだというふうにわかります。
そこで御質問のことは、そういう例外的な、保護的な意味での、本来の価格競争をいわば生産規制によって制限するような形の中において、一体値上げの問題をどう考えるかということで、これは実を申しますと清酒だけではなくて、私どもが不況カルテルのような形のものを扱っております業界においてもあるわけであります。経済全体は成長し、おっしゃるような意味で消費も伸び、また賃金も上がり、そしてものによっては原材料が上がるという実態がございます。しかもそれを企業がどういう形で吸収できるかというときに、必ずしも競争条件の中だけでやっている企業でない、いま申したような一種の保護的な中に置かれておる企業もあるわけであります。そういうものに対して、もう存在の意義がないとか、もうやめてしまえというものであれば、そもそも不況カルテルを認める必要はないのでありまして、不況カルテルというものを認めて、いわば段階的に整理をしていく、そういう事態のもとに、たとえば人件費が上がっておる——私は一番大きな問題は人件費であろうかと思います。材料費の上昇その他もあろうかと思います。これらについては一切値上げしてはならないというふうに、私は清酒のことだけを申しておるわけではございませんが、言えるかどうかということになりますと、私はそこは必ずしもそうは言い切れないと思います。
しからば、それじゃかってに上げられるかといえば、そこは特別な保護のもとにあるわけでありますから、十分そこは、たとえば所管官庁なり何なりが内容について、消費者の利益を代表して見ていただく。そこはいわばやや行政介入になりますけれども、酒は幸いにして免許企業であるので、いろいろ国税庁のほうでもよくやっていらっしゃると思いますけれども、その他の業界においても、そういう問題についてはやはりある程度、原価の問題なり何なり、いわば業界の中に立ち入って見ていただく、こういうことでなければならないと思います。
-
○堀委員 そこで、おっしゃるように、私もこの前申し上げたことは、一律的に値上げをしてはならぬというふうに考えていないわけです。確かに原料も上がり、人件費も上がり、コストが上がる。コストが上がってくる限り、それはコストをまかなわなければ、今度はその面からの倒産その他の問題が当然出てくるわけでありますから、そこは必要だ。ただ、問題はこういうことではないかと思うのですね、要するに、そのコストが上がる上がり方については、企業経営の形によって非常に差がある。ですから、現在少なくとも利益があって、言うならば黒字ですね、黒字で経営をされておるところが、利益が減ったから値上げをしろという問題と、現実には赤になっていて、もうこれ以上赤字には耐えられないという問題とは、おのずからそこに差があるのではないか。黒字になって、利益幅が減るところをふやしたいということであるならば、そこでやはり適正な競争原理が働くような条件において利益を拡大されることが望ましいわけであります。そういう意味では、私は、少なくとも不況カルテル下における値上げという問題は、個々企業の個別的内容の問題であって、要するに一般的なかっこうの問題ではあり得ない。だから、その場合における値上げは個々企業におけるその経営の実態との見合いということになれば、すべて、五円あり七円あり、八円あり九円あり、十円あり十一円ありというような、例をとりますればそういう個別的内容のもの以外は問題がある、こういうふうに思いますけれども、この点については公正取引
委員長はいかがお考えでしょう。
-
○谷村政府委員 原則としてそういうことであると思います。特にどういう意味で価格の引き上げというのが行なわれるのか、またその行なわれることをやむを得ないと見るかという場合に、平均生産費的なものであるかあるいはバルクライン的なものであるか、あるいは限界生産的なもので見るか。国税庁のほうのお立場というのは平均ですか——どういうふうに見ておられるか私は存じませんが、全体として価格協定を許しているわけじゃございませんから、そして限界企業でも生きられるというふうに保証してやっているというわけでもございませんから、その辺の価格の問題をどう具体的におとりになるかということは、本来は個別にそれぞれの企業が考える問題ではありますけれども、十分主管官庁のほうで、たまたま清酒の話が出ましたけれども、その他の不況カルテルについても同じような意味で見ていただきたい、指導していただきたい、かように思います。
-
○堀委員 ちょっとこれについて国税庁側の見解をひとつ……。
-
○中橋説明員 過去にマル公なり基準価格を持っておりましたときには、価格につきましては、先ほどの平均的なものを国税庁も考えておりました。ただ基準価格というものもすでに数年前に放てきいたしましたから、個別的な問題として私どもも処理してまいりたいと思います。
-
○堀委員 わかりました。要するに、この問題はいま申し上げたように、個別の問題としてならそういう場合もあり得る、こういうふうに私は理解をいたします。
そこで、この問題に関連をするわけでありますけれども、昭和四十四年度には一体何業者転廃業したでしょうか。
-
○中橋説明員 構造改善計画の第一年目でございますけれども、その正確な計数の集計というのは現在まだできておりません。かりの数字でございますけれども、七十六件出ております。
-
○堀委員 この七十六件は今度の
法律の適用を受けていないわけですね。この七十六件は、では今度の
法律の適用的考えからいくならば、本米五万円もらっていいことになるわけですね。これは一体どのくらいもらったのでしょうか。
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○中橋説明員 四十四年度までは、転廃しましたものはみんなそれぞれ譲渡する相手先をさがしてやっておりますから、自由価格でもって処理されたと思います。いつの時点で譲渡が行なわれたかにもよりますけれども、今度の法案ないし予算の話が出ましたころは、大体一キロリットル当たり一年間一万円、したがいまして、四十五年度ですと四万円という数字が業界の中ではかなり伝播しておりますので、ほぼそういった数字を頭に置きながら譲渡されたと思いますので、四万円前後の価格だったと思います。
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○堀委員 私、四十四年度を聞いたわけです。四十五年度は四万円ですよ。四十四年度なら一年早いのだから、あなたの論理からいったら五万円見当で売買がされてなかったらおかしいのじゃないだろうか、こう聞いたのです。
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○中橋説明員 今回の給付金の制度も、毎年十一月末なら十一月末までにやめた人につきまして出すわけでございますけれども、そのときに一体あと何年やるかという判断でございますので、そこで四十四年度にやめた人については、確かにおっしゃるように、本来この制度が発足しておれば五万円という計算になったと思いますけれども、この制度が発足をすれば、自分は来年度にこの制度に乗ってやめたということを期待しておったであろうと思いますので、大体四万円という数字が市場相場であったようでございます。
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○堀委員 そこで、四十四年に四万円という市場相場だということでありますが、さっき
藤井委員もお尋ねになりました、この清酒の基準指数価格がかつては実は四万円だったのですね。それが最近急激にずっと高くなって、今度はゼロになった、こういう経緯があるわけでありますが、これはなぜこんなに急激に高くなったのでしょうか。私は、昭和三十五年に当
委員会で酒類の問題を取り上げて以来、いかにして今日の状態をつくるかということを精力的にやってきたわけです。要するに、つくり得る能力のある者に統制によってつくらせないで、結局高い酒を国民に売りつけておるのは政府の責任じゃないか。米がなければこれは割り当てるわけにはいかないけれども、米が十分あるのだからもっと割り当てて、競争を適正に行なわせることによって、良質の酒をより安く国民に提供するというのが本来の資本主義のメリットではないのか、こう言って、三十五年以来ずっと当
委員会でこの問題を提起をしてきた。ところが、資料を拝見しておると、実はそういうふうになっていない。昭和三十八年には四万二千円の取引価格であったものが、三十九年、四十年、四十一年、四十二年とだんだん値段が上がってきて、四十二年に十四万二千円になっているということですね。これは一体何を物語っておるのでしょうか。
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○中橋説明員 おっしゃいますように、過去におきます基準指数の売買価格というのは変動いたしております。この変動の要因は何かといいますと、結局原料米の総量の割り当てによりますところの生産でございますので、一体翌年度幾ら需要される見込みであるかというのを毎年立てるわけでございます。それに応じまして幾らつくったらいいかということを、将来のある時点におきますところの在庫量をもかみ合わせながらつくるわけでございます。そのときの需要見込みの立て方あるいは生産見込みの立て方ということで、ある年にはそれに食い違いができまして、需要と生産の間に非常に乖離ができてくる。そういうようなことでもって他の石数を買い入れるという必要が出てくるわけでございます。堀委員の御指摘のように、過去において三十四年来あるいは三十六年というふうに、実勢に応じた生産を免許業者にもやらせるということを逐次取り入れてはきておりました。しかしながら、やはり総量の問題がかなり影響をしてこういう価格が出現したものだと思っております。
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○堀委員 このことは、四十三年のはわかりませんけれども、上がったり下がったりしたというのなら私は話がわかると思うのですよ。これを見ると、もう傾向的に上がってきたわけですね。三十八年の四万二千円、私の資料はこれがボトムになっているわけですが、三十九年七万円、四十年七万三千円、四十一年十万五千円、四十二年十四万二千円。だから、私はこの経過の中に今日のカルテルをやらなければならなくした非常に大きな要因があったと思うのですね。実はもっとこの期間にゆるめて、少なくとも四万二千円が横ばいか、また多少は上がってもまた下がるという形の生産を認めておれば、今日このようなカルテルをやらなくても処理ができてきたのではないのか。不安定要因は、何か自分たちに無関係に起きてきたように、さっきからの答弁を聞いておると聞こえるわけですけれども、これは私は、やはり少なくとも国税庁の行政が業界に妥協をし過ぎてきた結果、言うならば過保護をやり過ぎた結果、今日このような
自主規制をさせなければならなくなったという問題があるのではないか、こういう感じがするのですが、その点については長官はどういう反省があるか、お答えをいただきたい。
-
○
吉國(二)政府委員 この総量の問題と申しますものは、最近においてこそ需要そのもので測定できるわけでありますが、四十年以前におきましては、やはり米の需給という関係で制約をされた面がございます。そういう面で、完全に総量を需要に即してつくらせるという方向がとり得なかったという点は、私も事実であろうかと思います。同時に、堀委員の御指摘になりましたような、有力なものが安い酒をつくるという方向、消費者のためになる酒をつくるというような方向が実態的にはずいぶん進んできたと思います。そしてこの基準指数というものが、米の統制がいつはずれるかという問題の予測がつかなかった段階におきましては、かなり多く収集されたと申しますか、買いあさられたという面がございます。そういう面では、一面においておけ売り問題と関連し、基準指数の買い付けということも自由化の方向としてとられた面があると思います。それらの要素が総合して最近におけるかなり高い基準指数の価格が出たということは言えると思いますけれども、総量についての完全な適用がとられてきたのがかなり最近のことであるという点は確かに事実であろう、かように考えるわけであります。
-
○堀委員 米は、少なくとも昭和四十一年にはもうかなりなキャリーオーバーがあったわけです。四十二年、四十三年とどんどんキャリーオーバーがふえてきたのです。だから、あなたのいまのお話しのように総量の制限があったのは三十八年以前のほうにあったのですね。
〔
山下(元)
委員長代理退席、
委員長着席〕
そのころは基準指数は実は安かったのです。そして米が十分ふんだんにあるようになってから高くなっておるわけですね。ここらにはやはり過去における問題が少しあったのではないか、私はこう思います。その問題があって基準指数が高くなるような条件が、要するに近代化をはばんできたのじゃないか、私はそういう考えを持っておるわけです。なぜかといえば、基準指数が高くなるということは、つくればもうかるということなんですよ。それでなければ、だれも高い金を出して基準指数を求めるわけはないのですから、つくればもうかるという条件がこういう形で片一方にある中から安易なおけ売りに走って、自分たちの本来の、自製酒を売るというふうな角度が非常に低くなってきた。それが今度は逆に自由化される段階になると非常に大きなショックを受ける条件になったのではないか、私はそういう感じがしてならないのです。
そこでお伺いをしたいのは——時間がありませんから——あなたのほうの統計からいうと、実は非提携おけ売りで、自分のところの製成数量の半分以上をおけ売りしているというのが八百十九場あるというふうにあなたのほうの資料は出ているわけですが、それでいいですか。
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○中橋説明員 そのとおりでございます。四十二年度はそのとおりでございます。
-
○堀委員 いまの話は全部四十二年度の資料に基づいてのことのようでございます。そこでちょっとお伺いをしたいのは、八百十九場の中のおけ売り比率の階層は大体どうなっているのか。八〇%以上おけ売り、八〇%から六〇%の間のおけ売り、六〇%以下のおけ売り、製成数量に対するおけ売り数量の比率を、この八百十九場についてはどういうように階層別にとらえておられるか、ちょっとお伺いしたい。
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○中橋説明員 階層別には全部製成数量とおけ売り数量がございますが、おけ売り比率というのをいまここに算出しておりませんので、御必要であれば後ほどお答えいたしたいと思います。
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○堀委員 実はいま皆さんのほうが転廃業の基準に置いておるのは、どうもこの八百十九場というものが非常にウエートが高いように思います。そこで、おけ売りをしておられるこういう非提携おけ売り型の企業がいま八〇%以上も出しておったということは、かりに八〇%とすれば、二〇%は自製酒で売っておるはずなんですね。自製酒で二〇%を売っておる。ところが結局そっちがおけ売りに出したために、自分のほうの自製酒に対する販売努力というものが行なわれておらない、ここに実は最大の問題がある。私はかつてから当
委員会でも議論してまいった中に、やはり本来は清酒業者というものは、自製酒を自分の販売努力で売るということが自分の経営基盤を安定させる最大の条件だ。その自分の経営基盤を安定させる条件の上に、生産余力があるならば、おけ売りをすることによって収入が得られる、こういうのが少なくともあるべき清酒業の姿ではないか、こう考えて、そういう態度で論議をしてきたわけであります。
ところが、なぜそれがこういう形で非提携おけ売りというものを多数発生させ、さらにその未納税者をふやしてきたかという中には、やはり生産制限が強く行なわれて、特に販売能力のある業者に対する生産制限が強いために、そこでどうしても販売能力のあるものは自製酒で販売できないから、そこでおけ買いをする。そのおけ買いの価格がある程度市場性を持って高くなっておるから非提携おけ売り業者というものができてくるのであって、これがあまり高くならなければ提携おけ売り以外は成り立たない。そこらに、私がさっきから申し上げておる前段の過保護の状態というものが逆に今日業界を誤らした最大の問題であったのではないのか。これらの人たちは、かつて昭和三十八年にはこういうおけ売りの全体の中に占めるシェアというのは小さかったわけですね。さらに八〇%以上、八〇から六〇というところも少なかった。それが最近実は急激にふえてきた背景というのは、やはり過保護によって、そういう本来の資本主義下における自由競争で、自己責任で自分の企業を見詰めながら運営をしなければならぬものを、過保護の結果これらの企業の業態を誤らせて、そして今日急激に自由になったときにこの人たちは転廃業をしなければならぬということになった、その責任の一半は私はどうしてもこれは大蔵省、これはここで少しはっきりさせておかなければいかぬと思うのです。
だから大臣、いまお話を聞いていただいて少しおわかりいただいたと思いますけれども、これは私は社会党だからというんでありますけれども、少なくとも資本主義社会では競争があって、その競争の中で消費者によりよきものをより安く提供するということが、裏返せばその企業の自己責任を重大に考えさせるもとになり、そのことによって自分の経営を将来的に展望しながらやっていくというのが、本来の資本主義のあり方ではないか。それを過保護により、次第にそういう感覚が薄くなって、要するに安易な経営態度に流れるようにさせてきたのは、私は大蔵省にも責任がある、こう考えますが、大臣いかがでしょう。
-
○
福田国務大臣 自由競争ということは国民のためにいい側面を持っておるわけです。ですからそういう状態をつくっておこう、しかもそれを秩序正しく進行させようというのが今度の安定法のねらうところなんです。まさにあなたのおっしゃるようなことをしたい、これがいま御提案をしておる
法律案の趣旨なんです。過去のことを言われますが、過去はいろいろあったので、自由競争でもっと早くやったらどうだというような意見もあると思いますが、とにかく清酒業界というものはもう数十年にわたってこれを経営する、あるいは百年以上にわたるものもある。また同時に、そういう清酒業界というものは国の徴税について重大な協力をしてきておる。それが無秩序のうちに、混乱裏に転廃業しなければならぬというような状態であってはならない。政治的に考えてそうだろうと思います。そういうようなことで、この措置というものがおくれたという一面はありまするけれども、環境も熟した、こういう段階をとらえましてお話しのような筋に持っていこうというのが、今度の
法律のねらいとするところであります。
-
○堀委員 私、実は今度の
法律のことを聞いていないのです。過去の反省がなければ私は問題があると思うのです。私はいまこの法案を見ながら感じておりますことは、要するに転廃業したっていいですよ。それはしたっていいけれども、転廃業する者の立場に立って考えて
法律ができているかどうかという点には、率直に言って疑問がある。あなたのほうで過保護した結果——それは本人だっていいとは言えないかもしれませんよ。言えないかもしれませんけれども、制度的に過保護になって安易な道があれば、人間というのはだれだって安易な道を歩きたいわけです。だから、初めからもうちょっときびしい風に当てておけばものを考えたものを、安易な中に温室的な保護をやったためにだんだんと経営態度が甘くなった。それが今日のいろいろな背景にあって、そのことをいま間税
部長は不安定だ、こう言っているわけですね。不安定なのは私は大蔵省にも責任があるということを、どうしてもここでちょっとはっきりさしておきたいわけです。だから過去においてやはり過保護であったということは、これは酒税の保全があると言われますが、酒税の保全は保全として、なおかつ過保護であったことは間違いがない。そこを確認しないで前に出ると、この次の新しい
法律の問題が真剣味を持ってやるわけにいかぬじゃないか、こう思うので、そこで大臣に、過去においては過保護のきらいがあったならあった、だからこういうことは適切ではなかったけれどもこれからは改める、こういうことなら私はいいのですが、どうですか。少し過去の反省をやらなければ納得できない。
-
○
福田国務大臣 過去において御指摘のような問題はあったと思うのです。ただ清酒業者というのは特別な存在だというふうに考えております。つまり長い問酒税の徴収に協力をしてきた、そういうような面もありまして、急な措置というもの、これは政治的に考えてなかなかとりにくい状態であった、こういうふうに思います。これは政治家であられる堀さんも御理解いただけるのじゃないか、こういうふうに思いますが、とにかく環境はようやく熟しておる、こういうふうにいま思っておるわけであります。多少、理屈からいえばおそまきであるというような御批判もあろうかとも思います。確かにそういう一面が私はあったと思います。しかしこれは、急激な措置というものが数年前の状態においてとれたかと申しますと、私は、それまでの環境はできておらなかった、こういうふうにいま思うわけです。これからひとついよいよやっていこう、こういうことです。
-
○堀委員 十二時半が来ましたので、時間ですからあとに……。
-
○
毛利委員長 午後一時三十分再開することとし、暫時休憩いたします。
午後零時三十四分休憩
————◇—————
午後一時五十一分
開議
-
○
毛利委員長 休憩前に引き続き
会議を開きます。
質疑を続行いたします。堀昌雄君。
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○堀委員 そこでお伺いをしたいのは、転廃業に対する見通しでありますが、先ほど四十四年度は七十六件転廃業があったということでありますけれども、今後の見通しをひとつお答えをいただきたいと思います。
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○中橋説明員 現在策定をいたしております構造改善事業におきましては、転廃業を五年間で六百三十四という数字を一応立ててございます。しかし、もちろんこれは見通しでございまして、六百三十四が、いまこの時点で確たる転廃業の見込みを持っておるというわけにはまいりません。それから、その六百三十四あるいはそれに前後する企業がやめますにつきまして、第二年度にどれくらい、第三年度にどれくらいという数字も現在のところは立てておりません。
-
○堀委員 六百三十四というふうに非常にはっきり数が出されておるわけですが、これはなぜ六百三十四になったのか、それをひとつお答え願いたいと思います。
-
○中橋説明員 酒造組合中央会におきまして構造改善計画を立てますにつきましては、たとえば企業合同はどういう企業をやるとか、集約製造とか、あるいはおけ売りの系列化をどういうふうにやるかということを積み上げてきたわけでございます。転廃業に関します限りは、自分がこの四年間なら四年間、五年間なら五年間にやめるという具体的な申し出はございません。ただ中央会におきまして各県の事情をそれぞれ聴取いたしまして、従来の販売実績なり生産の規模等から、完全自由化後におきましてはやはり転進する見込みが非常に強いと思われるものを、中央会で各県の事情を聴取しながら算出した数字、その集計が六百三十四という端数のついた数字になっておるわけでございます。
-
○堀委員 いまのは各県別にということのようですから、それをひとつ各県別にちょっと主たるところ、多いところを答えてください。
-
○中橋説明員 手元に各県別の数字を持っておりませんので、直ちに取り寄せまして、後ほどお答えさせていただきたいと思っております。
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○堀委員 これは中央会が、いまの抽象的な話ではちょっとよくわからないのですけれども、転廃業を四年間にするという話ですからね。非常に長期の見通しの問題でありますから、これについての何らかのルールがなければちょっと私は問題があるのではないか、こう思うのです。過去において何となくという感じで六百三十四というような非常にはっきりした数字が出てくる可能性がないような気がする。何らかのルールがあるのでしょうか。ただ何となくということで六百三十四という数は私は出ないと思います。ルールがあればそのルールというか、見通しを立てた根拠というか、基準を、そういうことをひとつ……。
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○中橋説明員 構造改善計画におきましては、ある販売の型に応じまして、これだけくらいの製成数量を持ったらよいという一応の最低規模というものを想定いたしております。その型に応じまして幾らグルーピングをやりましてもその規模に達しないような企業というものがあるわけでございます。そういう独立企業として存続するにはやや根拠が薄弱であろうというものを選ぶわけでありますが、その中でも特に私どもあるいは中央会で心配をいたしておりますのは、おけ売りを従来主としてやっておった企業でございます。ただ、おけ売りと申しましても、先ほど堀委員がおっしゃいましたように、何でもかんでもおけ売りが存続の基盤がないというふうには考えておりません。
清酒製造業の従来の実績見込み、今後の見通しからいいましても、かなりおけ売りを企業として存続する余地はあると思います。ただ問題は、おけ売りがおけ買い先と系列化するかどうかということが今後におけるおけ売り企業の存続の基盤であろうと思います。そういうおけ売り先と系列化し得るか、し得ないかというのが、完全自由競争になった場合の一番問題点であろうと思います。
ところで、従来、先ほど御批判のございましたような事情でもって、おけ売り企業がかなり有利に動き得た時代というのがございました。そういうところで、価格の有利なところにおけ売りをして従来やってまいりました企業が、最近の生産規制におきましても、かなり限度数量というのが上に上がっておりますし、ますますその数量がふえるわけでございます。そうしますと、おけ買いをしておる企業としてもみずからつくる数量は多くなります。それでおけ買い企業が——系列化しておるおけ買い先の企業というものは、これは生産量がふえてまいるわけでございます。そこで、従来十分な系列化をしないままに、価格のおもむくままにおけ売りをして泳いできた企業が市場を失うおそれがあるということで、私どもの構造改善計画で申せば、系列化しない、提携化しないおけ売り業者の中でおけ取引の単位に達しないようなところ、あるいはおけ取引に非常に不利な地域のところ、そういうものが転廃業の六百三十四の中にかなり見込まれておるということは言えると思います。
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○堀委員 お話しは確かにそのとおりだと思うのですが、今後の転廃業の問題について、一体この人たちは酒屋をやめたらどうなるのですか。いまの七十六件は転廃業をして一体どういう業態に変わったのか。すでにやめた人ですから、わかっておると思いますから、ちょっとその数字を教えてください。
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○中橋説明員 従来の事例でございますと、酒屋をやっておった方々で他の部門の兼業をやっておった方がかなりございますので、完全に酒屋をやめまして、別の事業に転進した人がかなり多かろうと思います。今後どういうふうに動きますかというのは、これはまた新しい見通しでございますけれども、酒の販売業に従事する向きもございましょうし、あるいは倉の転用をはかって、それの利用を行なうというような道もあるかと思います。
-
○堀委員 いまの六百三十四は、そうすると兼業の状態についてはどういう見通しを持っておるのですか。現在兼業しておるものと見ておるのか。それともそのうちのどれくらいが兼業だけでやれるのか。あと専業でやっておるものはこの中にあるのかないのか。そういう専業でやっておるものに対する廃業後の対策というのは一体あるのかないのか、そこら辺はどうなんですか。
-
○中橋説明員 六百三十四を算出いたした際には、専業であるか兼業であるかという考慮は入れておりません。六百三十四なら六百三十四が転廃業をいたしましたあとで、何かほかの事業をやりたい、あるいは従来継続しておった事業を拡張いたしたいという場合には、
中小企業金融公庫でもって構造改善計画のために近代化の資金というのを確保してございます。もちろんその資金というのは
清酒製造業だけではございませんで、構造改善計画の業種指定を受けましたもの、現在これは八業種ございますけれども、その業種の中で、しかも存続する企業がみずからの近代化のために施設を設けるという資金にも充てられますし、構造改善計画の一環として転廃する際の融資を受けるという道も開いてございますが、四十五年度には、そういったものをひっくるめまして、
中小企業金融公庫としては八十億ワクを取ってございますので、その中から転業資金を借りるという道もあるわけでございます。
-
○堀委員 大臣にお伺いをしたいのですが、なるほどいまの清酒業の問題の中には、先ほどから提示されているような問題はありますけれども、私は、さっきの大臣の論理からすれば、長年にわたって酒税を納めて国家に協力をしてきた、そういう業者が、その業態を引き続き継続しながら混乱のないような形でやられるということは考えないのか。要するに弱い者はとにかくやめろ、やめる者には一種の涙金的なものをやるからやめなさい、こういう発想が大体この問題の中を流れているようですね。ちょっとさっきも触れましたように、たいへんたくさんおけ売りをして、非提携おけ売りの諸君というのは確かに危険にさらされるでしょう。特に地理的に、主産地である伏見、灘から非常に遠いところというところで非提携のおけ売りをやっているような人たちは、これは確かに今後自由化が促進するにつれて非常に困難になってくる、こう考えます。しかし、それならその人たちが自分たちの能力で自分たちの製品を売っていくための何らかの協力を逆にしてやることによって混乱を防ぐ方法もある。この中に流れておるのは、まさに弱肉強食といいますか、競争があるんだから弱い者は落後するんだ、落後するやつは早く落としてしまえ、私は実はこういう発想がこの中を流れているような感じがしてしかたがない。だから、これまでは過保護によって温室育ちにし、自由化になってきたら、要するに切り捨てごめん的に弱者は去れという形は、どうも政治という問題から見るとやや冷たきに失するのではないか。ですから、第一点の問題としては、この制度を考えてきた背景というところにややそういう感じがしてならないのですが、大臣はそれをどう受け取っておいでになるでしょうか。
-
○
福田国務大臣 これは、いま世の中が非常な近代化、合理化の時代である。生産性を高めなければならぬ。賃金はどんどん上がっていく、それに対して生産性を高めなければその製品の値段を上げるほかはない。そういうような大きな時の流れに際して、酒造業を一体どういうふうに持っていくかということです。いままでとにかく長い間国家に貢献をしてきた、そういうようなことを考えて、でき得るならばこの商売というものが続くようにというふうに考えてきたのですが、そういう大きな歴史の流れにもう呼応し得ない、そういう際にどういうふうに考えるかというと、やっぱりこれは企業経営の規模というものの拡大を考えなければならぬ。いまの三千六百もあります企業が全部拡大するわけにいきません。そこで、生産性を上げ得ないものはこの際転廃業する。それに対しましては政府も法的に援助をいたしまして、そしてその企業整備を助けよう、こういうことで、決して冷たい措置とは考えておりません。非常にあたたかい気持ち、従来長い間とってきた酒造業界に対する態度、これは一貫して流れている精神である、こういうふうに考えております。
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○堀委員 いま大臣はあたたかい措置だと言われましたが、あたたかい中身をちょっと伺いたいのですが、これまで千石つくっていた酒屋さんが今度昭和四十五年度にやめるとしたら、一体幾ら年間給付金をもらえるのですか。
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○中橋説明員 おっしゃいました企業が四十五年度に転廃をするといたしますと、六百二十万円、この制度による給付金を受ける計算になります。
それから、先ほど御質問がございました六百三十四者の内訳でございますけれども、県別にあるのでございますが……(堀委員「数の多いところ……」と呼ぶ)地方別に大きく分けまして、関東から北くらいのところで約二百者、それから中部から近畿のところで約百五十者、残り二百八十者くらいが中国、四国、九州くらいというふうに一応計算をいたしております。
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○堀委員 大臣、あなたはたいへんあたたかい処置だといまおっしゃったですね。千石つくっておる酒屋というのは——今日大体の平均というのが幾らですか、千六百石くらい——平均値はそのくらいのようであります。それが七七・二%あるというのですから、大体千石くらいというのは平均よりも少し高いところになるかもしれませんが、それがやめる。これまで長年にわたってやってきた業態というものをやめるのに六百二十万円給付金をもらうわけですね。これはいまサラリーマンでも、銀行の支店長をしておった人が定年退職をするときにどのくらい退職金をもらうと大臣は思いますか。——御存じないですか。大体いま大銀行の支店長をしておった人がやめるときには、八百万円から一千万円近く退職金をもらうといわれておるわけであります。それから比べて、長年にわたって、さっきの話の、三十年にわたって営々として清酒をつくって酒税を国に納めた者に六百二十万円渡すのが非常にあたたかい政治的な配慮だというのは、これもちょっと私どもの常識からするといただけないような気がするのですが、どうでしょうか。
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○
福田国務大臣 整備するといいましても、その財産というものが残るわけですね。財産、固定投資は、これまた処分の道もありましょうし、とにかく額は小さいけれども、それらを総合して見るときに、これはそう少ない額ではあるまい。しかし、いま六百万円の例をあげられましたが、これは業界がもう少し出そう、みんなで出し合うといえばもっと上がる額です。しかし業界も大体その辺が妥当であろうというふうな意向であるということを考えまするときに、いまとにかく納付命令を出す、また納付命令に従わないものに対しましては免許の取り消しまでするというふん切った措置をとる、そこまでして企業整備を助けるという考え方は、これは非常にあたたかい措置である、私はそういうふうに考えるわけであります。
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○堀委員 大体いま問題になっておる地域の人たち、それは固定資産はありますね。これはお酒屋をやったから固定資産ができたのではなくて、大体これは過去においては地主ですからね。もう先祖代々持っておった土地があった諸君がそこで酒屋をやっておる。ですからこの土地を売ろうと思うならばまず酒倉をつぶさなければならない。酒倉をつぶすのに、おそらく千石つくっておるところなら三百万円やそこらはつぶし代にかかってしまうと思うのですね。従業員に退職金もやらなければいかぬと思うのですね。幾ら少なくても従業員の十人や二十人いるでしょう。そうしたらもう、酒倉をこわして何とか土地にして売るということのために半分ほど行ってしまって、あと三百万円で、五人なり十人なりに退職金払うといっても、退職金すら払えないというようなわずかの金で、ほんとうにいまいわれておる清酒の安定に役立つほどのインセンティブになるかどうかという点については、非常に大きな疑問が私は実はあるわけです。
だから、ここで私がこれまでずっとそういう実態論について論議をしてきましたのは、はたしてこの転換給付金というものがいま言われた六百三十四という推定の上に立っておる業者に対して、それも今年じゅうにやめなければ六百二十万円にはならないわけです。これは四万円の計算だろうと思うのです。だからこれは来年になればさらにこれの四分の一が減るわけです。その次は半分になるのですから、三百十万円くらいに再来年になればなるわけです。ですから、この金がいまの六百三十四をやめさせるためのモメントになるかどうかという点については、非常にそこに疑問がある。大臣はいま非常にあたたかい温情的措置だとおっしゃいましたが、それはないよりは確かによろしい。ないよりはよろしいですけれども、さっき申し上げたように、父祖伝来の仕事をやめるためのそういう転換給付金という名に値するだけの内容かどうかという点については非常に問題がある、私はこういうふうに感じるわけであります。大臣はその点は、ではどういうふうにお考えになるでしょうか。
-
○
福田国務大臣 これは普通でありますれば何の措置もないのです。現にこの
法律におきましても、政府は援助するというが、金のほうの援助はしないのです。これは法的の援助をするだけなんです。その法的援助を背景にして、いまおっしゃられるところの共助金を出そう、こういうことなんです。ですから業界がもう少し出そうという雰囲気ならば、みんなして出し合って、もっと出すことはできると思います。しかし業界が大体この程度かなというところでございまするので、それを助成する政府が、あなた方からずいぶんおしかりを受けながら、納付命令まで出すのだ、これに従わないときには制裁もあるのだ、これは私はかなり思い切った措置である、こういうふうに考えておるわけです。
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○堀委員 思い切った措置の問題でなくて、これによってやめるようになるかどうかということなんです、伺いたいことは。
-
○
福田国務大臣 これはほうっておいてもやめざるを得ない。ことに四年後には自由化だという際には、これは皆さんがみんな考えておるだろうと思います。私のこの事業は一体どうなんだろう、そういう大勢です。しかしそれを放任しておきますると、これは混乱裏にそういう問題が起こってくる。それを秩序正しくひとつ近代化、合理化を実現しようというのがこの安定法のねらいとするところなんです。これはほうっておいても企業整備ということは起こってきます。それを今度は自由放任ではいけない。中央会を中心に秩序整然と近代化、合理化を実現しよう、こういうのがこの
法律案のねらいとするところであります。
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○堀委員 そこで私が伺いたいのは、秩序整然とやめさせるために、いまの千石を例にとれば、初年度六百二十万円、その次は百五十万円くらい引けますから四百六、七十万円ですか、その次は三百十万円、こういうことに減っていく。この姿がはたして秩序整然とやめさせるだけのモメントとして役に立つかどうか。私は実はあまり役に立たないと思うのです。やめることについては確かにおっしゃるように、大臣も、ほうっておいたってやめると、こうおっしゃっておるわけですから、ほうっておいたって確かにやめるんでしょう。ほうっておいたって確かにやめるんでしょうけれども、それを秩序整然とやめさせるためにこの制度でこうやったのだと、こうおっしゃるわけですが、それなら一体四十五年度に当初いわれておる程度のものがやめるかどうかという点について、私はさっそく非常に大きな疑問がある。本年度はやめる者は非常に少ないんじゃないか。それはなぜ非常に少ないのか。昭和四十五年度は、四十四年度の酒は御承知のように
自主規制をやるときに非常に生産量を減らしました。非常に生産量が減らしてあるということはどういうことかといえば、利益がこの年中については出るということになっているのですね。四十四年に生産制限をうんとしたためにことしは利益が出るということは、いまやめたのではこれはその利益を手元に置くわけにはいかないということになるわけですから、私は本年度について——おそらくはこれは来年のいまごろになればはっきりするわけでありますから、また来年こういう議論をさせていただきますけれども、やめたいという申し出をする者は非常に少ないのじゃないか。そうすると四万円が三万円に減るということよりも、その他におけるモメントのほうがはるかに大きい。そのために大臣の言われる秩序整然たる近代化ということは行なわれない。こうなれば私は、いまいわれておるこの制度というものよりも、要するに生産調整の関係の問題のほうがより多く転廃業につながっておる、こういうことになってくるのじゃないだろうか。これは見通しのことでありますから確定したことを申し上げるわけにはいきませんが、私はそういう見通しを持っておるわけです。国税庁は一体どういう見通しでしょうか。
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○中橋説明員 おっしゃいますように、生産規制のもとにおきましての総量というものが転廃をする人の決心を左右することはおっしゃるとおりであります。ところで四十四規制年度におきましては、御指摘のようにかなり、普通の計算でまいれば計算される限度よりも圧縮して規制をしてきましたけれども、四十五規制年度以降はそういういわゆる在庫調整ということはやらないということになっております。したがいまして、四十五規制年度に予定いたしましたときにも、四十四規制年度の限度と比べまして約一〇%伸びる計算になります。それ以後は、いまの予定では約四・何%というくらいの年率でふえていくわけでございますけれども、四十四年から四十五年にかけまして一〇%近く伸びるということは、御指摘のような四十四規制年度におきますところの在庫調整の関係がございます。それをやらないといたしますと、四十五規制年度といいますのは限度が一挙にふえるわけであります。そういう事態のもとにおきましての転廃業をする決心は、またことしとは違った情勢が出てくると思っております。なお、おっしゃいますように、われわれも、この制度が成立をいたしましたならば、この制度の趣旨というものをますます業界に浸透いたさなければならぬと思っております。その浸透の結果あるいは中央会のそういう指導の結果、どういう数字が逐年出てまいるかということは、これはまた今後の年度計画の問題かと思います。
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○堀委員 私がいまこういうふうに触れておりますのは、いまの大臣のおっしゃった、納付命令を出す、あるいは九条の二項の酒税の滞納とみなすという形で、免許に関係するところで問題を処理しようということならば、その実態のほうがそれを受けるにふさわしいだけの重要性を持っておるかどうかというところに関係がなければならない、こういうふうに私は実は考えているわけであります。
先ほど法制局のほうで、各種の問題を例証して答弁がありましたけれども、あの中で例をひとつ銀行法にとれば、銀行法によって、大臣命令に違反をしたときは免許を取り消すというのが二十何条かにありますけれども、これは金融機関というものが国民大衆の預金を預かっていて、その預金が危険にさらされるおそれがあるということを前提として大蔵大臣がいろいろな命令を出すのであって、これは、預金者の利益というのはストレートに国民の利益でありますから、公共の福祉にストレートに結びつく、こう考えます。しかし、いま私が述べてきたように、この転廃業する人に、かりに千石の人に初年度で六百二十万円渡すということが、さっき大臣もいみじくもおっしゃったけれども、ほうっておいてもやめるものを秩序整然とやめさせるために必要だとおっしゃったけれども、私は秩序整然とやめるだけの影響力をこの提案が持つものではないと判断をしておるわけですね。だからその程度のことに対して、一体免許を取り消すというほどの強い権力を担保をしなければならぬということについては、いかようにも私は納得ができないわけです。
そこでいまの銀行法についての私の考え方、その他要するに、あなたがお触れになった電気事業法でも、電気を使っておるのはすなわち直接の国民であって、その国民に対して危険が及ぶようなことはいけないということがあなたの提起をされた問題であろうと思うのであります。だからこれらはすべてが、その当事者の相手方になっておるのは直接国民でありますけれども、この場合は、間接的には国民が関係してくるでありましょう。しかし直接的にはこのことは業界内部の一つの問題であって、業界人も国民でないとは言いませんけれども、少なくとも業界内部というのは特定された人たちである。一般的にあとの
法律で問題になっておるのは不特定の国民が対象になっておる。こういう点に私は著しく性格に差がある、こう判断をしていますが、あなたが例示された中で、間接的な処理であって、直接的な処理でないもので、一体免許を取り消す問題というのがあるのかどうか。弁護士会とか何とかの例がありましたけれども、これは強制加入になっておる会の会費というのは当然納めなければアウトサイダーになる。アウトサイダーになれば、強制加入であるから資格を失う、こうなっておるのであって、これらもこの問題とはやや関係がない。私はこういうふうな認識をしておるので、私がいま触れたように、特定者を相手方とする関係の中で、その特定者の利益を守るためにきめられたことに反したら免許が取り消しになるという例をひとつ提示をしてもらいたい。
-
○荒井政府委員 先ほどいろいろ例を申し上げましたのは、要するに公共の福祉を担保するというために主務大臣がどうしても命令を出さなければいかぬという場合に、その命令に違反しても何らの法的効果もない、それで実質的な効果があがらないということは現在の立法としては考えておらないという意味の例示として申し上げたわけでございます。
ただいまの堀先生の御質問でございますけれども、たとえば中央卸売市場法の規定によりまして、その中央卸売り市場において卸売りの業務を営むことについて農林大臣から許可を受けているという者は、中央卸売市場法第三条の規定によりまして、その業務規程に従わなければならないということが書いてあります。その業務規程の中では使用料であるとか手数料というようなことの定めもするというわけでございますけれども、その使用料なり手数料というものを納めないということになると、まさに三条の規定に基づきますところの業務規程に違反するということになるわけです。そういう業務規程に違反することになった場合には、その卸売り市場においての卸売り業者としての許可を取り消すことができるというようなことがあります。これは一般国民というのではなくて、狭い卸売り市場という中での卸売り業を営むことについての許可を受けている地位というものが、その納付金なり、手数料なり、使用料の不納付という事態が起こった場合に、その地位、すなわち許可というものを取り消されるというような立法例でございまして、そういう納付金の納付をその許可制等によって担保している立法例があるかということでございますので、あげればそういうのがあるわけでございます。
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○堀委員 いまのは、卸売り市場というのは一つの単位があるわけですから、その単位を運営をするためには必要な経費が要る。その必要な経費を負担をしない者はその卸売り市場にいてもらっては困るというだけのことなんですね、実は。要するに、その業態が、たとえば乾物屋である、それがその卸売り市場に入りたい、入りたいについては会費を納めなさい、それがいやなら初めから入らない、こういうことになっているわけですね。ところが、いまの清酒の免許は、納付金を納めなさいというのは今度出てくるのであって、免許のほうが先に来ているわけですよね。その先に来ておる免許を受けておる者が、あとから来た事態の、納付金を納めないからおまえさんは免許を取り消すというのだったら、さっきの卸売り市場の例でいうならば、最初に契約があって、その契約以外のことをまたぽんと出してきて、それは言うこと聞けませんよ、それならおまえ出ていけというのと同じになるのであって、いまのあなたの例示は契約条項との関係というふうに認識をするのが至当なのではないでしょうか。だから、酒造組合中央会ですか、いまの中央会の賦課金なり何なり、そういうものがおそらくあるでしょう。だが、これを納めなければおまえさんの免許を取り消すというようには
法律ではなっていないと思うのです。中央会の負担金ですか、賦課金ですか、それをかけることになっていて、かけなかった場合には免許の取り消しではなくて、中央会から除名をする、外へ出すということはあり得るでしょうけれども、免許の取り消しにはつながらないと私は思います。だから、いまの例示は、いまのこの問題の例示からいくならば、中央会の賦課金の取り扱いと同じ次元の問題になるんじゃないか、こう思うのですが、その点は、中央会の賦課金というか、それを払わなかった者は免許が取り消しになるのかどうか、その点をひとつお答えいただきたい。
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○荒井政府委員 ただいまの中央卸売市場法の場合の納付金というのは共益費ではないかということを先生言われたわけでございます。この今回の
法律で考えているところの納付金というものも、
清酒製造業者の共益的な、共助的な負担金であるというふうに本質を理解し、そのような形によってその転換給付金の支給事業が進むということが、清酒業界全体の秩序を保つことになってみんなの利益になるのだということになれば、その中央会の会員あるいは間接の構成員というもののみを対象として行なうのではなくて、全
清酒製造業者というものを対象として行なう、全
清酒製造業者が一種の共同的に行なわなければならない。それによってまたその共同の利益を得る、そういう分担金なんだというふうに考えますと、やはり本質的には共益費的な要素があり、その免許を受けた事業者であるからには、その業界の秩序を乱したりあるいは酒税の保全をそこなうような行為をしないという前提でやはりその免許事業者という地位をずっと保ってきているのだというふうに考えますと、その共益費的なものを納めないということについては、やはり同様な理論が働くのではないのかというふうに考えるわけでございます。
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○堀委員 それはちょっとこじつけじゃないでしょうかね。さっき言ったように、片一方は、乾物屋でやっていたものに乾物屋をやめなさいという権限は成り立たないわけですね。その入っておる卸売り市場から出なさい、許可を取り消すというのはそういうことですね。それから、いまの免許というものの性格と、卸売り市場の市場員になるというのと、設例としても私は非常に違うと思うのです。
だから、要するにいま私が申し上げておることは、あなたの言われた共益的というか、私はこれは助け合い運動だと思っているのです。助け合い運動で、片一方やめる人に、名前は給付金だけれども、言うなれば見舞い金ですよね。見舞い金を差し上げましょう。お互いとして、やめる人たちが少しでもやりやすいように見舞い金というのを差し上げましょうというのが発想の根拠でないといけない。その差し上げる見舞い金というのは、本来的にはその人たちの善意に基づくものであるという規定でなければおかしいのを、それをなぜ、そうではなくて強権をもって、おまえたちは義務として出さなければならぬものだという規定にしなければならないのか。どうしても出さなければならないものだということにするためには、それが確かに、いま大臣の言われたように、秩序整然と計画に定められたものがそのとおり実施されるという前提があるならば、それは確かにそれに見合う何らかの処置が必要だと思うけれども、実はどういうふうになるかは全然わからない。おそらく国税庁でもだれも知らない。中央会も知らない。いつ何年にどれだけやめるか。六百三十四というのは一つのガイドラインとしての見通しではあっても、それが何年にいつどれだけやめるかというのはわからない。わからないというのは秩序整然とやめるということにちっともならないわけです。だれも予測できない。その程度のことを強権をもってやるということについては、これは私はいかようにも問題があると思う。だから、こういう例は私は
法律的にはその他にはないと思うのです。さっきあなたが石炭鉱害事業団かなんかの設例をされたけれども、この場合といえども、鉱害に対する金を納めない者は、おまえさんたちやらせないよというのは、鉱害というものは直接に公共の福祉に連なっておるのであって、これらの事業団体内部における相互援助の関係の問題ではない、私はこう認識しておるのですが、その点はどうでしょうか。
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○荒井政府委員 公共の福祉というのが直接国民にはね返ってくるか、あるいは酒税の保全というような形を通じて間接的にはね返ってくるかというので、事柄の内容はそれぞれの立法の目的とするところが違いますから、直接国民の利益にどういう形ではね返るかというのは、同じ線ですぐには比較できないのではないかということはあると思いますけれども、酒税の保全ということがこの
法律案のねらう究極的な目的であるとすれば、それはやはり同様に公共的な目的があるというふうに言えるんだろうと思います。
それから、強制加入の場合には違うんだということをおっしゃいましたけれども、たとえば税理士法とか土地家屋調査士法というものは、かつては強制加入ではなかったわけでございます。それが国会の立法によりまして強制加入になり、そしてその際に、会費等を納めないということにつきましては制裁規定が入っている。かつては加入、脱退が自由の団体であったものが強制加入になり、その際に、その会費を払わないということは、最終的には、たとえば税理士法の場合でいいますと
国税庁長官による業務禁止とかにつながるとか、あるいは土地家屋調査士法ですと登録の取り消し、税理士法の場合にも最終的には登録の取り消しにつながりますけれども、そういう形になった。それまで加入、脱退の自由な団体の構成員であったものが、そういう公共の福祉上の要請から、たとえば登録事務を税理士会が行なうほうがいいんだ、従来は登録事務は国費でやっておったとすれば、それをおれたちの会費で負担させるというのは不当であるとか、あるいは税理士の資質の向上に関する事務というようなものは、やはり国益に関するんだから国費でやっていいではないかというような議論を言いましても、それはやはり強制加入にする立法を国会でされた。特に、そういうものはおまえたちが負担すべきである、それを負担しないという場合には、最終的に登録の取り消しということにつながってもやむを得ないんだということで立法されておると思うわけでございますけれども、そういうような例もあるわけでございます。
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○堀委員 いまあなたは、公共の福祉というのは酒税が保全をされるということにつながる、こう言われたわけです。そこで、酒税を保全するためには、先ほどから触れられておるところの酒税の保全及び酒類業組合等に関する
法律の四十二条には、要するに酒税が取れなくなるおそれのあるときは生産規制ができる、こうなっている。生産規制ができるという
法律がきちんとあるわけだから、いまは要するに取れるという前提でああいう形で規制を五年間について考えたわけでしょう。しかしその経過の中で、もしこれをもう一つ持っていけば酒税の保全が危うくなるおそれがあれば、そういう規制は延長したっていいのです。これは延長することを妨げないという
法律になっているわけだから。そういう意味では、すでに現状の体系だけで酒税の保全は十分できるだけの税の体系がある。このことによらなくてもできる体系があるにもかかわらず、わずかこの程度のモメントで酒税の保全が危うくなるおそれがある、それを出さなければ、給付金をやらなければ酒税の保全ができないという立論根拠はないわけです。四十二条がある以上は、必要に応じていつでもできることに、国会では
法律はきめておるわけだから。どうでしょうか。
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○
吉國(二)政府委員 ただいま堀委員がいろいろ言っておられます点、いろいろ問題はあると思いますけれども、その給付金だけを問題にしておられるところに若干私どもと意見が違うところがあると思います。この規制措置は、堀委員御主張のとおり、清酒業界を自由化する、完全自由化をもたらすその過程における規制の措置であるということが前提でございます。その際にいかなる事態が起こるかということが、構造改善事業によっていわば裏づけされていると考えるべきだと思います。つまり完全自由化になった場合に、こういう幾つかの構造改善、体質改善を行なわないと、そのときには存続できない企業が出てくるという前提で構造改善ができ、しかも、その構造改善に乗り切れないものは好むと好まざるとにかかわらず廃業せざるを得ないことになるのではないか。その場合に、大臣が言われましたのは、秩序整然と申されましたが、まさにここで四万円、三万円、二万円、一万円という数字が出ておりますのは、その間に企業が製造を行なったとして得られる所得はその程度のものであるというものを保障しようというわけです。その五年間に、もし構造改善を行ないつつある企業と、そうでなくて漫然と従来どおりやっている企業があったといたしますと、その場合に、その企業がとにかく四年間はつくるだけつくって努力するといっても、それは結局最後には、構造改善が達成されていない限り非常な総体的に不利な地位に立つ。それが、その結果としてはどうせやめるんだからというので、手持ちを売り払ってしまえばいいというようなことで全体の価格構成を乱すということが起こってくれば、それが千波万波を呼んで、酒税全体に影響を及ぼしてくるであろうということを前提といたしまして、いわばその構造改善に乗り切れないものが、その最後の一番自由化された時期までの間に生産を営まずとも、それに相当するだけの所得を与えておくと、それが、秩序整然として業界全体が構造改善と転廃というものを分けていくゆえんではないかということがここにあるんではないかと思うのであります。
酒の製造に免許を与えておりますのは、これは決して酒造業者を保護するものではない。いわば酒税保全をはかるために免許制度をとっておるわけでございます。その免許業者の中全体で、いまの五年間に非常な変動が起こる。その変動が起こることを防ぐために構造改善計画を規制とあわせて行なっておる。この構造改善計画を絶対に推進をしていくことが必要であるという前提でこの措置法をつくり、中央会に特別の特殊法人的な性格を与えた、こういうことになりますので、いわばこの免許事業全体の利害休戚に関する問題であり、特定の者がこれに協力をしないということによって、それが影響いたしまして構造改善事業全体がこわれてしまうということになりますと、免許を受けた総体の人間に非常な影響を及ぼすことになりますので、そのためにこの免許の取り消しに及ぶまでの強い規制をしてもこの構造改善を実行しよう、こういう段取りになっておると思います。この六百二十万円を一つの問題として、これだけで転廃業が行なわれるというようには私ども考えてないのでございまして、この構造改善、第四十二条の生産規制、これらを全部総合いたしまして五年後の自由化というものに到達する。その全体を守って、免許事業全体が整然と自由な体制に対応できるようにというのがこの
法律のねらいである、こう考えますので、その点で御理解をいただきたい、かように考えております。
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○堀委員 そうすると、いまの話を裏返していいますと、要するに昭和四十九年には六百三十四はやめるんだという前提の話になるような気がしてしようがないのです、いまのあなたの話からするならば。いいですか、構造改善事業を推進するということで、その計画の上には六百三十四というものが一応組み込まれておる。そうすると、もし六百三十四がかりにここでやめたとしても、酒税保全に対して不安は絶対ないですか。私はそんなことは直接関係ないと思うのです。六百三十四がやめたら、あとは競争がどういうふうになろうとも酒税の保全は心配ないか。私は、依然として酒税の保全というものは——競争のあり方というものはあなた方が紙の上に書いていくようにいくわけがないんだから、どういう結果になるかは予想できないと私は思う。これから五年先の経済の実情ですからね。だから結局、そういう一つの前提、構造改善の計画はあっても、それは計画にすぎないのであって、それを担保するものは、やはり酒税の面からいいまして私は四十二条だと思うのです。だからここで聞いておきたいことは、いかようなことがあろうともいまの規制計画は、これはこの予定どおりきっちりやる。だからこの五年間についてはいかような事態が起ころうとも四十二条の適用は動かすことはない。いまの構造改善計画そのままにふやす方向でやるということがそれでは確認できますか、酒税保全について。
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○
吉國(二)政府委員 いまおっしゃいました前の点でございますが、六百三十四がやめなくてはならないということを私が申しているわけではございません。つまり、構造改善というものに乗って体質改善ができない場合にはそういう事態におちいるであろうという点から見た場合に、六百三十四の企業がその危険性がある。その危険性のあるものについて、その所得保障といいますか、四年間の所得を与えておかないと危険性が大きくなるのじゃないかということであります。幸いにしてこの六百三十四が構造改善のラインにうまく乗っていって体質改善ができれば、六百三十四が必ずしもやめなくてもいいものが出てくる、そのように理解しているわけでございます。
それから規制につきましては、これは商工
委員会で堀先生が御指摘になって、これを五年以上やることはけしからぬと言われまして、私どももそのとおりだと思います。五年間を目途として、その間に自由化に達するということは、私どもも酒造業界も決心してやっていることでございます。
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○堀委員 いまの話、構造改善がひっかかってくると非常に複雑になると思うのです。なぜかというと、これは計画であって、なるかならぬか、全然わからないことだと思うのです。要するに、六百三十四だけがやあてしまえば構造改善は予定どおりいくということになっていないわけですよ。その他の業者だってそれだけの努力ができるかどうか、非常に疑問がある。疑問がある理由をちょっとここで申し上げておけば、「製品の品質 品質は、消費者のし好に即応した市場性の高いものとすることとし、なお、銘柄ごとに品質の統一を図り、おのおのその特徴を発揮するように努め」なければならない、となっていて、その次に「原価」とありまして、「原価(製造原価、詰口費用及び一般管理販売費をいう。以下同じ。)の引下げ率は、昭和四十三年度における清酒の原価に対し、その清酒と同一の品質を有する製品について実質一一%以上とする。」あなた、これはたいへんな計画ですよ。この計画が達成されなかったら問題が起こる、そういう問題じゃないじゃないかと私は思うのです。これはやはり一つのガイドラインであって、その方向に向かって努力するというガイドラインがここに示されておるだけで、どうなるかはやってみなければわからないわけですよ、率直にいえば。
だから、構造改善の問題と、いま問題になっている転換給付金とは、それは無関係ではないけれども、実は直接結びついておる問題ではないわけですよ。だから、この人たちがやめようという判断をするかしないかというのは、今後における需給の状態なり消費の状態なり、おけ買いをする側がどういう形のおけ買いをするかとか、いろいろ要素がかみ合ってその人たちが将来の判断をするだけであって、この構造改善がこうなっていて、このとおりにやらなかったときはやめなければならないということには実際なっていないのです。そういうようなことになればほとんど業者はみんなやめなければならないことになるのじゃないか。なかなかこれだけの高いガイドラインに到達できるなんて私は思えない、いまの情勢から見てですね。これだけいま清酒業界はたいへんな熱意を持って、何とか値上げをしたいと言っておる段階で、逆に下げろと言っておるのですからね。四十三年を基準にして実質一一%下げろ。名目ではこれは一体どのくらい下げることになるのですか。
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○
吉國(二)政府委員 私は、構造改善が、六百三十四やめればすぐできるというようなことを言っておるわけじゃないのです。この構造改善事業というものを推進していくことが、五年間の規制がいよいよはずれたときの一番大事な要素になるであろう。そのために業界全体が努力をするということに対して、政府としてバックアップしていくということを申し上げているわけでございまして、このとおりになるというのは——これは机上計画でございますから、この方向で努力はされていく、こう御理解を願うほかないと思います。
なお、一一%の引き下げは、これは四十三年価格で一一%でございまして、いわゆる生産性の向上が一一%あるという意味でございますので、その間の人件費の騰貴その他でこれが結局相殺されることは考えられるかもしれません。したがいまして、四十九年に実際の価格がどうなるかと申しますと、それは四十三年価格で換算して一一%の引き下げということで、生産性の向上一一%を目途としているという意味でございます。名目的には、その間の原料、人件費の値上がり等を考えますと、いまよりあるいは高くなるかもしれません。
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○堀委員 私が申し上げているのは、構造改善事業といまのこれを、あなたは表裏一体のように言われるけれども、私はこれは別の問題だと理解しているわけです。構造改善事業をやって、そういうふうな方向に努力をするということは当然なんです。これは当然やらなければならない。しかし、この人たちが転廃業をするという判断は、構造改善事業のベースに自分が乗ってないから転廃業をするのではないのですよ。要するに自分の企業の周囲における客観的諸情勢に対応できるかどうかという判断に基づいて起こることだから、あなたの言っておるように、この
法律の設定が構造改善事業を計画どおりにやらせることに直ちに役立つとは思わない。間接的には役立つでしょうけれども、直ちに役立つとは思わない。だから、そうなれば私は、この程度のさっき申し上げたように、少なくとも二人分くらいの退職金にしか見合わないものがそんなインセンティブにならないと言うのです。それだけの力はない。その程度のものに対して免許を取り消すというような強権をやるのは、さっき春日さんが言ったように、まさしく、横断歩道を通らなかったからおまえは死刑にするというのと大差ないですよ、この発想については。
だから、私はこの問題については、大蔵大臣が命令を出すところでいいのではないか。命令を出したものは、必ず
法律というのはそれについて担保をとらなくてはならぬかどうか。担保をとらなくても、大蔵大臣の命令に免許業者がそむいたときには、それなりに行政的に、この命令を守りなさいと行政的な指導をしても用が足りると私は思っている。だから、そこまでの処理をすることについてならわれわれは何も反対しない。しかし、酒税の滞納とみなすというのは、これはちょっとあれじゃないですか。酒税というのは直接的に公共の福祉につながっているわけですね。税金を国に納めるというのは、これは少なくとも最大の公共の福祉、国民全体につながっている。それを犯したことと同じだと——ここの表現は、「当該
清酒製造業者は、酒税法第十二条の規定の適用については、酒税に係る滞納処分を受けた者とみなす。」ですよ。滞納した者とみなすというのではないのです。「滞納処分を受けた者とみなす。」というのです。こっちのほうの、酒税の滞納をした者が免許を取り消されるのは、公共の福祉に反しているからこれは私はいいと思う。しかし、前段でずっと触れてきたように、これはそれほど重要なものでないと私どもは考えているわけです。
それは金額で明示するのが一番はっきりしているから、先刻の酒屋さんが六百二十万円というのは、要するにそこに三十年くらいつとめた人の退職金二人分に足らないでしょうね。いま退職金の非課税限度というのは、三十五年在職しておれば五百万円は非課税だ、というのは一般的にその程度の退職金が行なわれるという一つの判断があったという前提、それも三、四年前になっているわけです。三十五年で五百万円というのは、三年くらいもうすでに時間がたっている。そういうときに、わずか六百二十万円をもってそういうあなた方の期待をするようなことの実現をはかろうというのは、これはもうまさに手術をするのに出刃ぼうちょうで手術をしろというようなもので、これは全くわれわれとしては納得ができない。
だからこの点は、大臣どうですか、私たちはあとの問題については強く触れませんけれども、われわれ立法府としては、少なくとも
法律は、これは一回つくったらずっと残るわけです。国民の権利と義務に関する問題について、あるいは財産権に関する問題について、私どもも前段のほうがきわめて重要だ、公共の福祉にきわめて直接関係があり重要だという判断をしたら、この問題についてこれだけ強く反対をする意思はありません。しかし、少なくともこういう実態面から見てもそれほど重要でないことに対して、このように重大な規定をくっつけなければならぬという理由はない、私はこう判断をしておるので、その点については政府はもう少し慎重な配慮を必要とするのではないか、こう考えますが、いかがでしょうか。
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○
福田国務大臣 これは四年後の自由化ですね、そのときの状態、これが酒税確保ということに欠くるところがないようにという国益を持っておるわけです。そういうようなことで強権というか、御批判を受けるような措置も必要である。国益を考えておるということで、これは譲るわけにはいきません。
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○堀委員 自由化問題が、みな何か最終年度が終わったときに初めて問題が起こるように思っておられますけれども、実は私はそんなふうに思っていないのですよ。現在の自由化計画というのは、いま私が申し上げたように四十四KYは非常にダウンしています。しかし四十五KY以後はかなり急ピッチに実は自由化部分がふえるわけです。だからおそらくほんとうに問題が起こるのは四十九年ではなくて、四十七、八年にはかなりもうすでに問題が起きると思っているわけです。いま大臣が四年後というふうにおっしゃっておりますが、実はそんな問題じゃないわけです。それなら、ほんとうにそれを役立てようというなら、やっぱり国が金を出すべきだ。主計局が反対をするにしろ、それほど重大に大臣が考えておられるのなら、国も出します、業者も出しなさい。国が相当多額の金を出します、そうしてこの人たちが安心して、喜んでやめるだけの補償を国がしましょうという裏づけがあるなら、私はいまのやつが裏っ側についていてもいいのです。国もそれだけ負担をする、国民全体が負担をしているんだから、おまえたち負担をしてあたりまえだ、こうなるのです。ところが国のほうは金を出さないというのです。金を出さないが、業者には、おまえたちだけがやれ。そうなれば、大臣がさっきから言われたように、この程度の負担しかできないということで、言うならば涙金程度になっておるというのがいまの実態だと思うのです。そうやって、おまえたちだけがやれということに対して、国は強制権をもって免許取り消しでもやるぞということでは、これは大臣、ちょっと片手落ちに過ぎるのではないですか。ものの発想として、これは特殊法人の発想になっておる。私は、特殊法人にしなければならぬとかなんとか、そんなことを言っているのではないのです。少なくともそれだけ将来に対する危機を重大に認識するならば、やはり国は考えたことを行なうということが片面にあるべきじゃないでしょうか。だからこれは非常に片手落ちなんですよ。そこらにこの問題が非常に複雑になっておるゆえんがある。大臣、どうでしょうか。
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○
福田国務大臣 企業整備というか、そういうことはいずれの業界においてもあるわけなんです。そういう際にはまず何を考えるかというと、その業界内における共助体制というものを考える、これは堀さんよく御承知のとおりであります。この酒造組合もまずそういうことを考えるんだが、しかしながらその共助金の給付ですね、これの資源を一体どうするかというと、これはどうしても納付金に求めざるを得ないということになる。これも私は当然だろうと思う。その納付金が、ある一人がおれはどうもいやだと言った。大蔵大臣がそれに対して命令を出す。それでも実効がない。そういうような状態であれば、この共助体制自体が動かなくなるのではないか。つまり、おれも納めない、おれも納めないという人が続出するというような傾向になることも考えておかなければならない。私は、この納付金がそうごたごたするという事態はいま想像しておりません。おりませんけれども、万一そういうことがあり得ることもまた考えておかなければならぬ。
そういうことを考えますと、今度の企業整備の計画、これは私はあなたと見解が違うので、このお金ばかりでやるというのではない。この企業整備というのは、四年後の自由化、これがとにかくもう目前に迫っておる、そういう状態下におきましては、これはほっといても企業整備は行なわれる。それを秩序正しく進行させたい。これがまた、酒税を担当するところの清酒業界のあり方というものを考えると、大きな国益につながっておる。そういう判断で、法的には強権というか、まあ免許取り消し措置をもとるのだというようなことになるわけなんです。しかし私は繰り返し申し上げますが、そういうことを好きこのんでやるのではないのです。またそんなことは予想はしておりません、これが発動されるというようなことは。しかし発動される場合もまた一つ考えておかなければならぬ。そういうこと自体がまたトラブルを起こさないようにするゆえんでもある。こういうような認識を持っておるわけであります。でありますので、これをはずせという御主張、これはどうも私どもから見ると、まあ納得いたしかねる御議論である、こういうふうに思います。
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○堀委員 国税庁に伺いますが、酒税を滞納して免許を取り消された例がありますか。
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○中橋説明員 酒税を滞納しまして強制取り消しの例はございません。ただ、申請書を徴収いたしまして、申請書で自発的に免許取り消しという形でもって、免許業者から退いてもらった例はございます。
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○堀委員 いまあなたの言ったことは、そうすると十二条の適用ではないということですね。
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○中橋説明員 十二条の適用ではございません。
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○堀委員 大臣、これまで酒税の滞納というのは私はあったと思うのです。幾らぐらいあったか、それは私はつまびらかでありませんが、ある。酒税を滞納してもこれまで十二条によって免許を取り消された例がないのだそうですね。これは酒税とは次元がずいぶん違いますね。私はさっき幾回もるる述べておりますけれども、酒税と今度の納付金とは山と谷ほど次元が違うんですね。その次元のきわめて高い酒税を滞納しておりながら、これまで十二条の適用によって免許を取り消された者がない。この実態の上に立って、それよりはるかに軽い納付金についてこの
法律のここへ書かなければいかぬか。どうでしょうか大臣、やはりそれはそういうことですか。
-
○
福田国務大臣 納付金をそう軽く見てないのです。つまり、納付金が動かないということになると、これは酒税確保体制に非常に大きな影響がある、こういうふうに考えておるわけなんです。次元が違うというようなことをおっしゃいますが、決して次元は違わない。どうも根本認識が相当違うように思います。
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○堀委員 時間もあれですからもう終わりにしたいのでありますが、要するに納付金の問題というのは、やめることを何とか少し付価するだけであって、これでやめるという決断ができるものではないということを私はさっきから言っておるのです。大臣もそう言っておられるのです。やめるというのは別にあるのだ。ともかく自由化したらやめなければならぬ者が秩序正しくやめるようにしたいのだというのですから、だからそれは実はプラスアルファなんですよ。要するにやめるかどうかというところがいまの酒税保全に関係があるのです。だから、それにプラスアルファのほうが大臣の答弁だと主体になっているようですけれども、それはそうではなしに、このやめる人たちというのを判断するもとは、四万円くれるからやめるんだということではないわけです。だから私がさっき申し上げたように、ことしはあまり出ないのではないかというのは、来年でもいいという判断をするのは、ことしのもうかりがあるから急がなくてもいいじゃないかという、そういうところに関係が出てくるわけでありますから、だからやめるかどうかは金だけがすべてではない、私はこう考えているわけです。だからプラスアルファなんて——肝心なほうのやめるかどうかということについてのほうが酒税に直接関係があるのです。これは言うならば、それに関係がないとは言いませんけれども、それよりは次元が低い関係だということだけは、私どもが次元が違うと言う点は御理解がいただけるんじゃないでしょうか、どうでしょうか。
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○
福田国務大臣 そういう意味においては確かに次元は違うかもしれませんが、納付金が順調に納まる。これは企業整備に非常に重大な問題であるという点については次元はちっとも違いません。これはもうほんとうに酒税の確保という意味において大事な問題である。一人でも納めない人がある、これが納めないでいいんだということになったらほかの人も納めないかもしれぬ。そういうことになったらこの構想というものはつぶれてしまうのです。そこを考えますと、これは、酒税を確保するというのと納付金の確保ということは同じ重要性を持つ、こういうふうに考えているわけであります。
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○堀委員 順序が逆になっているんですね、大臣。要するにやめたいという人が出てからそれをもとに金を集める。計算をして、納付金を払ってください、こうなるのです。金が先にきて、きたからそれだけの人がやめるんじゃなしに、やめたいという人が出てきてからそれに必要な金がくるわけですね。順序としてはそうでございましょう。ですから、なるほど一、二、いま払いたくないという人があるかもしれない。あるかもしれないけれども、そこにはちゃんと延滞金を取り、それから大臣命令を出す、こうなってきているわけですから、何もないわけじゃないですね。中央会としてはいろいろな手だてがまず第一にある。その次に大蔵省としての処理の手だてがすでにある。酒税が滞納しておっても、この滞納をどうやって取り返しているんですか。免許を取り消すということで、それは制度があるからだといったって実際にはそうではなしに、まあ払いなさい、払いなさいと、いろんな形をやって酒税の滞納を取っているんじゃないですか、実際には。だから免許の取り消しが行なわれていないんだと思うんですね。その限りにおいては次元が違うんだから、ともかく払いなさい、払いなさい、こう言って酒税でも取れるものがなぜ納付金で取れないのか。実際に一回も免許取り消しはやっていない。酒税が払えなくなるというのと納付金を払わないというのは次元が違うのですね。大体業者で酒税を払わないというのは、払わないのじゃないですよ、払えないのですよ、実態は。払える酒税を払わないような業者なんてあり得ようはずがないと思うのです。本来酒税を納めることがもとになっている業態ですし、それによって免許を受けている。だからその場合には払えないという問題があるけれども、この場合にはそうではない。払えるけれども払わないという人が出てくる。なぜ払わないのかといったら、この制度そのものに対する不信感ですよ。こんな制度をやったってそんなもの予定どおりにいきゃしない。それがそんなに業界全体としてプラスだと思わないという、これはどちらかというと思想上の問題になってくるわけですよ。だからそこらは酒税の問題とはだいぶ違うし、その酒税の問題ですら実際は取れているのなら、納付金は何もそんなに免許を取り消さなくても私は取れると思いますが、これ以上伺いません。大臣はその点については全然妥協性がないようだから、幾ら言ってみても始まりませんから、これは
会議録にとどめて、将来問題があったときに、当時の
委員会における考え方というものはどういうことであったかということが明らかになれば、これは国民が判断をすることでありますから、私はそれでやむを得ない、こう思います。思いますけれども、少なくともこの
法律は
法律自体として私は問題がある。そうして
法律の中身が期待されるようなことを十分に担保するような中身ではないという二点だけは、これは何としても譲るわけにいかないわれわれの考え方であるということを申し添えて、私の質問を終わります。
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-
○平林委員
清酒製造業の安定に関する特別措置法に関して、いま私もいろいろと堀委員の議論を聞いておったわけでありますけれども、少し別の角度から政府当局の御見解を承ってまいりたいと思うのであります。
大体今度の
法律は、日本酒造組合の中央会の事業の範囲に特例を設けて、酒造米等の購入資金を借り入れるための債務保証あるいは
清酒製造業を廃止する者に対する転廃給付金給付、これに要する納付金の徴収などをきめておるわけでありますけれども、従来こういうようなケースは実例としてどういうものがあるか。今回は一つの転機に立っておる
清酒製造業界に対してかような措置をとったわけでありますけれども、同じようなケースは他にどのようなものがあったかということをまずお尋ねをいたします。
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○細見政府委員 一番古くは塩業整備に関する臨時措置法がございまして、一定の過剰製塩設備整理を行なったものがございます。それから石炭鉱業合理化臨時措置法によりまして石炭の廃鉱を促進した事例がございます。それからさらに、石炭企業がそういうようにいたしましても、借り入れ金がかさみましていろいろ経営困難になったことを救済するために、石炭鉱業再建整備臨時措置法、それから繊維につきまして、過剰繊維設備のスクラップ化というようなことで、特定繊維工業構造改善臨時措置法、これが主として転廃給付金制度を行なった実例でございます。
信用保証につきましては、これは非常に多いのでございまして、たとえば塩田転用資金、あるいは畜産振興事業団が行なっている債務保証、あるいは漁業共済基金あるいは石炭合理化事業団でありますとか、あるいはそのほか一般的には都道府県の開拓融資保証協会と、非常に数多くございます。
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○平林委員 そこで、債務保証の問題は一まずおきまして、いま議論をされておりましたところは、転廃給付金に要するところの納付金の徴収について議論が集中されておったわけでありますが、この
委員会に来て、かような問題についてはどうだこうだと、制度そのものに対する不信、いろいろな角度から議論をされておることは御承知のとおりであります。私はいまあげられました同じようなケースについて、たとえば塩業でいえば塩業整備臨時特別措置法という
法律に基づきまして、国会でその問題が検討されて法制化されました。しかし法制化せられる前には、専売公社総裁の諮問機関である塩業審議会が答申をいたしまして、十分検討した後に議会に
提出をしたわけであります。石炭鉱業の場合も同じように、石炭鉱業合理化臨時措置法というのがまとまるまでには、通産大臣が石炭鉱業審議会の意見を聞いて石炭鉱業合理化計画を定めているんですね。そしてその後にこの
法律案が
提出をされました。特定繊維工業構造改善臨時措置法も同じように、通産大臣が繊維工業審議会の意見を聞いて、いろいろな前提となる計画を定めて、所定の措置をとって
法律化した。いわば従来行なわれた制度はそれぞれ専門的な審議会がある程度検討した後に議会に
提出をされたわけであります。
今回の場合には、私、
法律をずらっとこう横でながめたのでありますけれども、第七条の第三項に「あらかじめ、広く
清酒製造業者の意見を聞くように努めなければならない。」と書いてありますけれども、実際上は従来行なわれたケースと違って、そのまま議会にこれが
提出をされました。これはどういうわけなんだろうか。こういう措置は考えられなかったのか。これをなぜとらなかったのか。まあ適当なものがないということになればそれまででしょうけれども、しかし私は、その前になおとるべき措置はないとは言えない。そんなことを考えますと、今回はなぜこういう措置で、直接国会審議に付するというようなやり方をとられたのでございますか。
-
○中橋説明員 ただいま御指摘の繊維でございますとか石炭でございますとかというものについての立法がございまして、その立法の前段階で、こういういまお話しのような審議会の意見を聞いて立法に至ったというよりは、むしろ立法措置の中で、計画を進めるにつきましてはそういう審議会の意見を聞いて計画を定めろということになっておると思います。それから塩のほうは、実は
法律ができまして強制的にそういう整理をやる一年前に自発的な制度として行ないまして、それでほぼ目的を達しております。
ひるがえりまして、この清酒につきましては、
中小企業近代化促進法というものがございまして、いわゆる近代化計画、構造改善計画というものを策定いたしまして、その策定にあたりましてはもちろん
中小企業近代化促進法に基づきますところの審議会の議を経ております。その中に、先ほど問題になりましたように、合併しますとか協業化しますとかいうことの中に転廃業というのが一項目出ておるわけでございます。もちろん、具体的にAという社、Bという社というものをここであげてこの審議会にかけておるわけではありませんけれども、その項目自体につきましては、近促法に基づきますところの審議会で議論をしておるという意味におきましては、大体同じような経過を経ておると思います。
-
○平林委員 私が言った趣旨をきわめて小さく、狭くとって答えておりますね。いま
中小企業近代化促進法の中の審議会というものでやっておる。しかし、それでは具体的にこういうものをかけたかというと、そうではないように答弁をされておるわけですね。今回の場合は、少なくとも政府から七億円の基金を出す、この制度をつくること自体が私はいいかどうか問題があると思うのですよ。ありますけれども、大蔵省が発案をしてこういう制度をつくるということでありますから、それなりにまた別な意味で慎重でなきゃならぬはずであります。同時に、いまお話がありました
中小企業近代化促進法というものに基づく審議会は必ずしも——私こまかいことは知りませんけれども、同じようなやり方で、特に今度は基金を設けてやるとかなんとかというような、手厚いような、手厚いとまではいきませんけれども、こういうような措置をとりながらやるものとはまた違うのじゃないですか。私の言っておる趣旨は今回はとられなかったというほうがむしろ近いんじゃないですか。それを形式的にはとりましたというほうがちょっと、詭弁とまでは言わないけれども、何かくっつけなければいけないから、しようがないからこんなのがあったという程度の答弁になっちゃいませんか。私はそういう意味では欠けていたんじゃありませんかと言うんだから、欠けていたなら欠けていたということで正直に頭を下げればいいのですよ。
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○中橋説明員 私の申し上げましたのは、繊維なり石炭なりでは、それに伴いますところの
法律の中で、何々審議会にかけて具体的な計画を定めろということになっております。その点に関しましては、今回の清酒安定臨時特別措置法の中にはそういうものはございません。それはおっしゃるとおりでございます。ただ、この清酒に関します
特別措置法案を考えました根元になっております、そのうらはらになっておりますところの構造改善計画というものにつきましては、近促法の審議会の議によっておるということを申し上げておるわけであります。
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○平林委員 いずれにいたしましても、私はそういう意味では、今後つくられる計画その他で別な意味のトラブルの発生ということは心配をしなければならぬと考えておるわけです。たとえば、私いま堀委員のお話を聞きながら感じたのでありますけれども、五年間にだんだんに自由化に向けて一つの基準を設け、それに達しないものは落ちていく。落ちていくものに対しては若干の給付金をやる。その給付金は業者の中からの納付金でもってやっていくという制度になっておるわけですけれども、大体清酒関係に携わる者は、昔の地主の人が酒屋になったり、それからまたどっちかというと地方の素封家、いまは素封家なんて言わないかもしれないけれども、大体そんな人がまあ地酒をつくるか、こういうことになっておるわけでございますね。それだけに、長年の
清酒製造業というものに対して、ぼくはそういう人たちとはあまり接したことないですけれども、しかし、その企業に非常に愛着を持っておるということは何となく想像ができるわけですね。したがっていまのところ、キロリットル四万円ですか、これではいまのところ転廃してしまえなんというような気はなかなか起きないですね、そう簡単には。だから、できれば何とかその企業を維持していきたいという願望が私は強いと想像をするわけです。その場合、実施した初年度は四万円、次には三万円、二万円、一万円と、こう下がっていく。一生懸命努力してみたのだけれども、最終的にはどうもうまくいかないから、どうしても刀折れ矢尽きてやめるということもあり得ると思うのですよ。私は、自分の推定でありますが、あり得ると思う。そうすると、こらえていた最初の三年間なり四年間なりは納付金を納めなければならぬわけでしょう。そうしたあとで、今度はあまり基準というのは高くない、低くなっておるものでやめるわけでしょう。そういうときのバランスなりというのはどんなふうに考えるのでしょう。
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○中橋説明員 刀折れ矢尽きた清酒業者を一体どうしていくかということでございます。大臣の先ほどからのお話にありましたように、秩序ある撤退と申しますか、転廃というのは、完全に自由になった暁において激戦をやって、刀折れ矢尽きてしまえば酒税の納付に非常に困難を来たすから、それより前にやめてもらいたい。いわば刀折れ矢尽きる前に見通しをつけてやめてもらいたいというのがこの制度の骨子でございますから、そのための納付金であるから非常に重要なものであるということでございます。ですからいまお話しのように、この四年間に、四年目、三年目、二年目、一年目というその間に見通しをつけて、秩序ある撤退をしていただく方々について一年間一万円という、先ほどの説明をいたしました算定でほぼバランスはとれておると思っております。
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○平林委員 これはまたあとで私ども相談をいたしましてあれしますけれども、時間の都合もありますから次の問題に移っていきたいと思います。
今度は全く趣を変えまして、酒の販売免許をなかなか税務署でおろさぬ。酒の販売をしたいと思う人たちは近年非常に多くなってきておるわけですけれども、手続はめんどうだし、第一申請をいたしましても受け付けてくれない。書類を出して却下されたのではあとでまた困るからという親切なあれがあってでございましょうけれども、第一受理してくれないのです。こういうような状態がいまございまして、どうも税務署では酒の販売許可についてはおろしてくれないという批判が強いわけでありますけれども、私もある程度のことは知っておりますけれども、いまの基準は、大体どういうふうにして免許の許可をおろすのですか。
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○中橋説明員 いまのお話は小売りの免許のことであろうかと思います。小売りの免許について申し上げますが、小売り免許の申請がありました場合に、私どものほうで判断をいたします基準といたしましては、まず、免許申請地域に一体どれくらいの需要量があるかということを見込むわけでございます。それから、同じようなことでございますけれども、どのくらいの世帯を対象とするようなところであるかというのを、既存業者等も含めまして判定をするわけでございます。それから既存の店屋との距離的な関係が一体どういうことになっておるのかということも判断の材料にいたします。それから新しく店を開こうとする方が、一体酒の販売ないしは酒税というようなものについてのどれだけの経験がおありになるかというような問題とか、資産、相当の高額の商品の扱いですから、資産状況がどういうようなことであるかというような観点で判断いたします。
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○平林委員 この
委員会の
会議録を読んで、将来酒類販売業を営まんと欲する者なきにしもあらず。そこで、需要量というのは大体いまの基準はどのくらいか。それから対象世帯はどのくらいの世帯が近所にあればよろしいか。距離は、非常に人口密度の薄いところと濃いところと違いますけれども、大体どのくらいであろうか。もう少しそういう点を親切に説明をしていただきたい。
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○中橋説明員 大体需要量がどれくらいかということでございますけれども、これも大都市とかその他の地域に分けてございますが、かりに大都市を例にとってみますと、一般小売りでございますと年間三十六キロリットル以上なければならない。あるいは世帯数で申しますと三百世帯以上くらいを受け持たなければならない。それから既存の店舗との距離では、原則としましては百メートルくらいの距離間隔が要る。資本といたしましては百五十万円程度持っておらなければならない。それから経験年数でございますと、かつて酒類業を経営しておった人でございますれば三年でございますとか、そういう店に従事しておった人であれば五年程度あったらいい。概略こういうようなことでございます。もちろんそれにはそれぞれ弾力条項はついてございます。
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○平林委員 たいへんけっこうであります。参考になると思います。
そこで、現在の酒の小売り店ですね。これはいま全国でどのくらいございますか。
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○中橋説明員 全酒類を取り扱いますものと雑酒だけを取り扱いますものとございますけれども、全体の酒の小売り屋としましては十四万軒ございます。
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○平林委員 きょうでなくていいですから、この十四万軒の販売数量別といいますか、所得階層別といいますか、そういうようなものはありますか、ありませんか。つまり、たばこの場合には年間の販売数量によっての階層別があるわけですね。酒の場合はどうなんでしょうか。そういうものがあるかないか。あれば私はちょっと資料としていただきたいと思うのですけれども、現状はいかがでございます。
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○中橋説明員 申しわけございませんけれども、販売階層別にどうなっておるかということの資料はとってございません。
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○平林委員 これは、酒類免許をもう少し気軽に、といえばおかしいけれども、したらどうかということの前提にはどうしても必要なんですよ。免許をおろすために既存の小売り店の生活に脅威を与えることではこれはまたならぬわけですね。私はその点は十分理解するつもりです。しかし一面、酒の小売り免許をとりたいという人がなかなか希望を達せられないということも最近における世論であります。そのときに、その距離だとかそれから世帯だとかいう一つの基準はございましても、もう一つ、そういう問題についての状態がわからなければ、どうなんでしょうか、うまい運営というのはできないと思うのですけれども、なぜとらないんですか。
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○中橋説明員 おっしゃるとおり、十四万軒の全国の小売り業の実態というものについての資料というのは非常に完全でないことはそのとおりでございます。私どもも最近の事情からかなり従来と違った様相を持ってきておると思っております。と申しますのは、非常に人口の移動もございますので、一軒当たりの世帯数でありますとか、消費数量が一体どうなっておるかという点について実態調査をやろうと思っております。ただその場合の、幾ら売っておるかということがはたしてその店の存在価値を左右するかどうかという点は疑問でございますけれども、できるだけ、いま私どもでとっておりますA地域、B地域、C地域という地域別くらいに、一体どういうぐあいになっているかというものを、ある程度、県別ぐらいの実態調査をしてみたいと思っておるのでございます。
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○平林委員 現在のわが国の世帯から見て、大都市、中都市、小都市、いろいろ条件は違うでしょうけれども、全国の酒の小売り店十四万軒というのは多いですか、少ないですか。
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○中橋説明員 全体の小売り屋というものがいま全国で、あらゆる業種ひっくるめまして百四十万くらいございますので、その一割はお酒の小売り屋さんであるということを考えますと、必ずしも少ないとは思っておりません。それから十四万軒を絶対数をもって上回っておる小売り屋さんを考えてみますと、ただいま御指摘のたばこ屋さん約二十万軒、それから菓子かパンを売っておる店が二十万軒、その次に酒の十四万軒が位するわけであります。あと、お米とか薬局とか肉とか野菜とかいうものは大体五万軒前後でございますので、総数からいいますと私は、お酒の小売り屋さんはそんなに少ないほうではないと思っております。
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○平林委員 しかしそれにしても、最近の世相から酒の免許がおりないなというような声が出てくるということ、それからまた申請をする人は、それぞれまわりの人たちから、ここらに酒屋さんがあったらいいなというようなことも背景にあっての申請が多いわけでありますから、私はこのところは、少ないか多いかというのは乱暴な言い方だと思いますけれども、やはりもう少し検討する必要があるのじゃないか。
ついでに、それならば年次別に小売り店の増加状況についてはどうなっておるか。これを、十年前の昭和三十五年は何軒であったか、ここ三、四年はどういう状況になっておるかということをちょっとお聞かせいただきたい。
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○中橋説明員 お酒の小売り屋さんは、大体年間ネットで見まして新規の免許は約二千軒前後置いております。それで、現在の約十四万軒のお酒屋さんの数に対応いたしまして三十五年が十二万軒でございます。
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○平林委員 二級酒はいま六百円だったですか、少しあれしますが、メーカーから出るときは幾らで、それに酒税がかかると何ぼで、卸と小売りのマージンを入れてどういう推移をたどるか。二級酒でいい、モデルケースとしてちょっと御説明いただきたい。
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○中橋説明員 国税庁といたしましては、実はマル公とか基準価格、そういう制度を離れましてからは一般的な価格というものを持っていないわけでございますので、一つの実例として申し上げます。
二級酒でかなり多い例といいますと、小売り価格が五百八十円というのがかなり多い例でございます。その五百八十円ものがメーカーのところを出ますときには四百三十九円くらいでございます。その中に酒税が約百五十四円入ってございます。その五百八十円もので、卸、小売りのマージンはそれぞれいろいろ違いますけれども、一例を申し上げますと、約五十円が卸のマージン、それから約九十円が小売りのマージンでございます。
-
○平林委員 こういう批判があるのです。清酒メーカーは自分の銘柄をできるだけ売ってもらいたいためには、小売り屋さんに対してリベートを出さなければならぬ。これはすべてに当てはまるとは言えないでしょうけれども、十本売ってもらうためには一本や二本はリベートとして持っていかなければならぬ。そのほかにも、たとえば温泉へ招待をするとか、あるいはまたその他贈りものをするとかいうような形で、
清酒製造業界は小売り店に対してかなりの経費が必要になっておるという話を、私どもちょくちょく聞くわけでございますけれども、国税庁のほうでは
清酒製造業界の交際費というのは——これは交際費に入るのですか。贈答品とかリベート代なんというものはどうなんですか。どのくらい使うておりますか。三千何百軒の中で、こういうものに使う経費はどれくらいあるでしょうか。
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○中橋説明員 ただいま御指摘のリベートは営業経費でございますので、交際費の制限の交際費にはなっておりません。清酒メーカーが一体全体で交際費をどのくらい使っておるかという数字は、ちょっと手元に持っておりませんので、後ほど調べましてわかりますれば——食品なら食品としてわかると思いますが、清酒だけについてお答えできるかどうか、ちょっと留保させていただきたいと思います。
-
○平林委員
清酒製造業界がこういう転機に立たされておる。もちろん米の仕入れ価格も影響するでしょうし、それから人件費なども関係なしとはしないけれども、同時に、こうしたリベートの点についてはどういう実情であるかということをやはり検討しなければならぬ、こう考えておるわけであります。少なくともちょくちょくまた酒の値上げなんということがうわさになっておるのでありますが、先ほども何か質問があって、不況カルテルを結んでいるようなときに酒の値上げをすることはどうなのかというような議論があったということを私は聞きました。
公正取引委員会では、そんなときも人件費やその他を考えれば一がいにいけないとも言えないというような答弁があったそうでありますけれども、同時にまたそういううわさも出てきておる。酒の値上げはちょっと私らはいまごめんですね。そういう意味では、このリベートの問題についてもどうなっておるかという検討をしておく必要を私は実は感じておるわけなんでありまして、別途資料をまとめて、われわれが検討ができるようにしてもらいたいと思っておるわけであります。
大蔵大臣、酒の値上げなんというのは認めるつもりはあるのですか。
-
○
福田国務大臣 酒の値上げはというお話ですが、いまこれは自由価格でございます。しかしなるべく値段は上げてもらいたくない、こういうふうに思っております。
それから、先ほどからお話しの小売り店の免許ですね、これは物価の問題とも関連して、もう少しこれを自由にできるようにということを考えております。
-
○平林委員 大臣のお気持ちはわかりましたけれども、人件費とかその他の問題で、あるいはこういう議論をせねばならぬときもあるかもしれません。しかし同時に私は、
清酒製造業と小売り業との関係、中間のマージン等についてもかなり綿密な検討が必要だと思っておるわけであります。万一、これから一つの転機に、値上げをせざるを得ないというようなことがあったときは、大蔵大臣は、値上げよりもまず、先ほどお話があった酒税というものについて検討する必要があるんじゃないだろうかと思うのです。大臣が非常に消費者のためを思うて、物価のことを念頭に置かれておることはけっこうなことでございまして、そういう点から考えますと、万一そういうようなことになったときは、その前に現行の酒税というものはいかがなものであろうか。もし物価その他を考えるならば、また値上げをせざるを得ない実情があるとするならば、その前に酒税について検討せなければなるまいという頭の働かせ方というものは、当然大蔵大臣としてなさっていただきたいと思うのでありますけれども、この酒税についてはそういう場合にはどういうふうなお考えをお持ちでしょうか。
-
○
福田国務大臣 大蔵大臣としては当然税の引き下げを考えるべきだというようなお話ですが、これは逆ですね。私は、あらゆる合理化の手を尽くしまして、そして酒の値段が上がらないように、卸売り、また小売り、またさらにさかのぼってはメーカー、これらの段階において努力をしてもらいたい。また政府において、流通機構だとかいろいろな面においてできることがあれば、それを先にすべきである。この税のことは最後の最後の問題である、こういうふうな認識を持っております。
-
○平林委員 少しがめつい大蔵大臣の答弁でありますが、まあこれはきょうの本題でありません。
そこで私は少しお伺いいたしたいのでありますけれども、最近二重ラベル事件というのが起きましたね。福島県の東駒という
清酒製造業者が生協との直売方式によりまして——先ほどお話しのありました、メーカーから出るとき二百八十五円ということでありましたが、あるいはそれよりも高いところもあるかもしれません。それに酒税がついて、卸、小売りのマージンが付加されまして五百八十円ないし六百円。直売方式をとりますとその中間的な流通機構が省略をされるわけでありますから、今度の東駒の直売方式によりますと四百三十五円、つまり安い酒、こういうことで評判をとったわけであります。この事件は後に二重ラベル事件で、私はよう考えてもわからぬのですが、二級酒のラベルの上に特級酒のラベルを張るなんということ、あんなのはどうせなら二級酒のラベルを張らないで特級酒のラベルを張っておけば、これはなかなかわからぬで済んでいただろうと思うのでありますけれども、わざわざ二級酒のラベルを張った上に特級酒のラベルを張ったなんというのは近代における怪事件ですね。一体どういう神経なのか、いかなる錯覚なのか。まことに奇々怪々なる事件でありますね。こういう事件が起きましたが、しかし消費者の側から見ると安い酒は魅力でございますから、こういうような流通機構について何とか考えられないものか、こういう声は、私は、いかに否定をいたしましてもこれから拡大をしてくると思うのであります。
そこで、私はこれについては国税庁側にもいろいろお考えがあると思うのでありますけれども、この事件について率直なる御感想というものを聞かせていただきたい。何しろこれはちょうど私の神奈川県で発見をされたのであります。神奈川県におけるある人が偶然にも発見して、さっそく税務署に御注進に及んで、それからいろいろ捜査の手が伸びまして明るみに出てまいりました事件でございます。神奈川県にあまり縁のない話でもございませんし、直売をした生協も神奈川県のほうの生協であったものですから、特に私は注目をしておったわけであります。ひとつ御感想を……。
-
○
吉國(二)政府委員 このいわゆる消費者直売問題と申しますのは、かつての古市酒造、現在の東駒酒造というのが、生協の媒介かあっせんか、その辺がはっきりいたしませんが、それによって個別に、はがきでもって注文を受けて、それを直接に運んで販売をした、こういうものでございます。形態として見ますと、いわゆる酒税法違反というものではないわけでございます。でございますが、しかしこれについては近所の小売り業者との値段差ができるというようなことで、酒類販売業界に非常な波紋を起こしたわけでございます。
ただ私どもといたしましては、いかなる商品につきましても、卸、小売りという流通段階がなければ、消費者の自由な選択で、しかも随時あらゆる銘柄についての購入を行なえるというわけにはまいらない。古市の場合も、古市の酒は買えますけれどもほかの酒は買えないということでございます。時期といたしましても何日間に一ぺん持ってくるということで、ほんとうに消費者に対する便宜な販売方法というのはやはり小売りを通すというのが普通の形でありますから、酒について特殊なものが起こったにしても、それは例外的なものであって、基本的には卸、小売りの現在の販売機構というものが消費者の選択にも一番即するものではないか。ただ小売り、卸という段階において合理化というものを行ないまして——現在卸につきましては卸売り業の近代化をやっております。そういうことでできるだけ流通マージンを減らすという努力はすべきであるけれども、こういう特殊な形を一般化するということ自体は経済の一般法則にそぐわないものであって、また実際実行不能でもある、かように考えてまいった次第でございます。
これがその後、東駒と連携をいたしましたある業者を中心にして、何か小さい八社が集まって同じようなことをやろうという計画は当時からございましたが、その間に刑事事件等が起こりまして、その後の動きは私どもも十分把握いたしておりませんが、これがいわば一般化するとすれば、他の酒類以外の製品についても同じ問題が起こるはずでございます。そこはやはり流通秩序というものが一般的には支配的になるんじゃないかというのが率直な感想でございます。
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○平林委員 まあ、むずかしい問題だからあまり割り切れたような答弁はお聞きできませんと思いますけれども、しかし一般的にいえば、小売り店で五百八十円ないし六百円で買う二級酒が四百三十円から四百三十五円くらいで買えるということになりますと、これは消費者にとっては魅力なんですね。税金が高いことが一番大きな問題でありますけれども、しかし消費者にとりましては、銘柄ももちろんありますけれども、なるべく安い酒を飲みたいという階層もかなり多いということは否定できない事実でございます。そういうことを考えますと、お話しのようにこれは酒税法違反ではありませんし、そうかといって、私は同時に、現在の経済の法則を全く無視して流通機構を混乱におとしいれてこれを一般化するのはどうかなという気持ちは持っております。持っておりますが、消費者の一つの心理から見ますと、こうしたことを押えるということは、きわめて奇妙な現象に映ることもまた事実なんです。万博じゃありませんけれども、ここに調和と進歩がなければいかぬ。これはやはり現代における一つの流れですから、私は、既得権だとか、そういうものがもうあたりまえだというものの考え方だけで最近起きてきた動きを軽視してはならぬ、こう思っておるわけであります。
そこで私いろいろ考えてみたのですけれども、どうでしょうか、ひとつ生協のような組織にもう少し酒類免許を与えるようなことを考えたらどうか。先ほど大臣も言われました、物価の問題も考えて、小売り免許の点についてはもう少し幅を持たせよう、こういう御意向を私承りました。同じように、生協などについてもう少し酒の販売認可を与えるようにしたらどうなのか、こう思うのでありますけれども、これについては何かいま禁止しておるようなことがあるのですか。そうではないのですか。それにしてはこれにおりる免許の数が非常に少ないように聞いておりますけれども、いかがでしょうか。
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○中橋説明員 先ほど小売り免許につきましての基準をいろいろ申し上げましたときの問題でございますけれども、生協につきまして、特別に私どもが全然免許をおろさないというものを持っておるわけではございません。ただ従来から生協は、員外利用できるものかできないものかというところだけは、私どもとしては免許を付与する場合に注目いたしております。免許をもらった店屋で普通一般の人が利用できないというのはいかがであろうかということで、員外利用できる生協につきましては、従来からも、先ほど申しましたような一般基準のもとにおいて免許を与えておるわけであります。それじゃ現在どれくらい与えておるかということでございますけれども、一年前の数字でございますが、約二百生協について小売り免許を与えております。
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○平林委員 私の承知しておるところでは、生協は大体全国で三千ぐらいあると思うのでありますけれども、昨年は二百件。そうすると現在酒類免許を受けている生協はどのくらいございますか。
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○中橋説明員 ことしの三月末という数字を持っておりませんので、先ほど申しました四十四年三月末の二百という数字が一応新しい数字でございます。
-
○平林委員 私の言わんとすることがおわかりになりますか。今度の二重ラベル事件の問題に関連をして、現在の世相と、それから現在の酒類行政の中で、もし改善をするとするならば生協にもう少し酒類免許を与えるべきである、私はこういう結論なんです。いま員外利用、員内利用のお話がございましたけれども、これもあまりとらわれる必要がないんじゃないか。つまりある程度消費者に重点を置けば、買いやすいという意味では消費者にこれ以上の利便なことはありません。会社の帰りに買っていけばいい。自転車のうしろに積んで帰ればいいのですからね。酒税のほうから考えれば、もっと能率よく税金がたくさん取れるかもしれませんよ。私いろいろなことを考えまして、もう少し生協に対して酒類免許を与えるようなくふうをしたらいいんじゃないだろうか、こう思っているのです。御見解を承りたい。
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○中橋説明員 最近の物価問題に関連しましての小売り免許について、おっしゃるように生協に免許を与えたらどうかというお話があることは十分承知いたしております。従来私どもが、先ほど申しましたように員外利用、員内利用の問題として生協の問題を考え、チミッドであったということは私ども認めるにやぶさかではございません。しかしながら、生協自体が免許をとりまして、員内の人だけにいわば流通マージンを切って売るのが一体いいのか、それとも一般の消費者に門戸を開放したところの小売り屋を通じてお酒を売るようにしたらいいのか。現在までも、先ほど御指摘のように、なかなか普通の小売り免許も十分与えていなかったという事情でございますので、場所場所の必要性に応じて今後とも判断をしてまいりたいと思っております。
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○平林委員 つかぬことを聞きますけれども、いろいろな酒類の小売り免許を申請をした場合、それは先ほどの基準に基づいて税務署が判断をするわけでありますが、この場合、その地元の酒の組合なんぞに書類を見せてお伺いを立てて、そうして初めて認可をするとかしないとかいうようなことはやっておりますか、やっていませんか。
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○中橋説明員 現在新規免許を与えるにつきましては、酒類業組合法に基づきます酒販組合の意見を聴取しておることは確かでございます。もっとも、これがはたしてその意見どおりにやっておるかやってないかという問題がございますけれども、そもそもこの意見を聞くということは、いまから十何年前でございますが、酒団法改正の際に附帯決議で、意見を聞けということを言われたわけでございます。それをずっと踏襲いたしてはおりますけれども、私どもといたしましては、必要あるところには免許を与えざるを得ないということでございますので、意見の諾否にかかわらず、必要のある向きには免許を与えておりますし、先ほど申しましたように、十年間で約二万軒くらいふえてきている。これはみんな賛成したところに与えられておるのではなくて、反対したところをも押し切ってむしろふやしてきたという実情でございます。
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○平林委員 私はこれ以上は突っ込んで言いませんけれども、とにかくいろいろな資料をいただいた後に、きょう質問をいたしました点につきましてはなお検討させてもらいまして、私の意見を述べてまいりたいと思います。
あと一つ、融資の問題についてこれからやりたいのですけれども、時間があれでありますし、
委員長もなかなか渋い顔をしておるし、この辺できょうの質問を終わることにいたします。
-
-
○春日委員 この法案には随所に疑義がございます。数日来この問題については各委員から質疑がなされておるところでございますが、必ずしもその疑問は解明はされてはおりません。したがってとの問題は、これから各党代表
理事間でさらにいろいろと突き詰めた検討がなされるようでございますから、すでに出された疑問点については私は触れないことにいたしますが、新しい問題点として大臣に伺っておきたいことがございます。
それは、今度自主流通米の制度によって、昨年八月に認可されました
自主規制の期限が到来いたしますと、少なくとも製造は完全自由になる、こういうふうに考えますが、この点はいかがでありますか。
-
○
福田国務大臣 当分の間これは継続しなければならぬというふうに考えております。大体四年は必要であろうというふうに考えております。
-
○春日委員 四年くらいはつかの間に過ぎてしまうのでございます。そこで、四年間は、一年ごとのチェックがあったとしても、大体自動延長されるものと了解されておりますが、四年を経過したその後においては、これが必ずしもそのまま延長されることは期待しがたいと思うのでございます。したがって、昭和の四十九年以降においては、少なくとも醸造免許を持っております醸造家は、その酒の造石をするについては自由になるであろう、こういうふうに考えますが、いかがですか。
-
-
○春日委員 そこでお伺いをいたしますが、そういたしますと、醸造免許を受けております三千数百軒でございますか、これらの諸君がフリーハンドで、とにもかくにも自由競争の中に突入するわけでございます。そういたしますと、経済の当然のメカニズムといたしまして、すなわち優勝劣敗の競争になり、それがだんだんと激化してまいりますと、弱肉強食的な現象にまで発展する場合なしとはしないと思うのでございます。それを規制する方法がございますか。すなわち四年間なら四年間
自主規制が認められた。もう経済は自由だから自由競争しなければならぬ。その四年間に構造改善というような施策もとられた。すなわち生産設備の近代化だとか合理化等がはかられたけれども、しかし生産手段というものは日進月歩でございます。毎日毎日新しい生産の方途や機械が発明されてまいるでございましょう。そういう中において、かりにこの計画に基づいて近代化計画がなされて、四年間は片方において
自主規制があり、片方において近代化計画があるのでございますから、これは
中小企業、弱小メーカーも、とにもかくにも存立の基礎はこれで確保されると思うのでございます。ところが四年を過ぎてしまって自由競争になれば、その時点において望見できる一つの実態というものは、これは優勝劣敗の原則である。強い者が勝つ。たとえばその時点において新しい生産設備、醸造機械が発明される。それを導入する大資本、大企業というものがやがて制覇するに至るであろうことは私は容易に予見できるであろうと思うが、その辺の展望はいかがでございますか。
-
○中橋説明員 現在の規制がほぼあと四年間を目途としておることはお説のとおりでございます。そのあと、私どもは完全に自由化になるという予測のもとにいろいろな施策をやり、またこの法案をお願いしているのが先刻来の議論のとおりでございます。その場合に一体どの程度の競争が行なわれるのか、私どもは、やはりかなり自分でつくられる、自分で売るというメーカーは、自分の自製の量をふやしてまいる。しかしながら、主産地の事情を考えてみますと、広い土地あるいはそれを立体的に利用いたすにいたしましても、かなりの新規投資を急速にし得るかという難関がございますし、お酒本来の性格からいたしまして、かなり下請的な系列化のもとにおきまするところのおけ取引というものの存続の意義が十分あると思います。一番心配なのは、先ほど申しましたように、系列化されないおけ売りを従来やっておった人たちの売り場を一体どこに求めるか、そこに先生の御指摘のような弱肉強食ということが起こるならば、その方面から一番心配な部分が出てまいるだろうと思っております。いずれにしましても、完全自由化になるという前提のもとに私どもはあらゆる努力をいたしまして、その体制を業界ぐるみでつくろうということに努力をいたしておるわけでございます。
-
○春日委員 大体わかると思うのでございますが、しかし、ここにそう長期的展望でなくして、向こう十年ぐらいの先を展望してみますると、いずれにしても
自主規制は四十八年までである。この近代化計画も四十八年までである。ところが、その後においてもこの生産が続けられてまいるであろう。それから近代化した生産設備なるものも次第に老朽化してまいるであろう。そのときに、やはり新しい機械を導入したり、あるいはその信用度を高め、いい品物をつくる、こういう者は顧客を容易に吸引することができるでしょうから、結局自由競争ということになるならば強い者が市場制覇をする、これは当然のことであろう。そうなった場合は、いまの
中小企業あるいは弱小メーカーというものは特に下請に転じざるを得ないですよ。しかし、この酒の醸造というものは、私は現場はつまびらかには承知いたしませんけれども、言うならば化学工業みたいなものでございますね。だから、自由に生産しようと思えば生産設備によって、オートメ化、大量生産を行なうことは容易ではないかと思う。だとすれば、そのようなおけ買いをせなければならぬという必要性も、この先の醸造業においては必ずしも担保にならないと思う。めんどうくさいからおけ買いをやめて自分でつくればいいじゃないか、こういうことになってくると思う。そうすると、この弱小メーカーはその時点においてことごとくぶっ倒れてしまうことにはならないか、こういう観点を持たざるを得ないのでございます。だとすれば、この際、この
法律案なるものの政策目的は、弱小メーカーが健全に存立できるようにその基礎を安定せしめていこう、言うならば、これは弱小メーカー、
中小企業メーカーの保護政策にそのウエート、ポイントがあると思うが、いかがでございますか。
-
○中橋説明員 弱小であれ、生産規模のいかんにかかわらず、今回お願いしております一つの制度といいますのは信用保証をつけるということで、売り場のあるお酒屋さんが毎年毎年円滑に生産を続け得るというためには、この制度としては非常にメリットがあると思います。
-
○春日委員 普遍的メリットや名目的メリットはお説のとおりでございますが、たとえば六大メーカーだとか、しにせとかいうものは、それ自体に別個の信用がございます。必ずしも基準指数を担保にせなければ金融が取りつけ得られないという立場にはないと思うのでございます。したがいまして、この
法律によって最も多くそのメリットが期待できますものは、他に信用力のない弱小メーカー、こう考えざるを得ないと思う。だとすれば、この政策というものの直接のねらいは、かつは重点的な政策対象になるものは、すなわち
中小企業、弱小メーカーの経営安定の基礎を固めていく、こういうところにありと理解をするのであるが、いかがでございますか。
-
○中橋説明員 そのとおりでございます。
-
○春日委員 だといたしますると、いまこの政策でそのような安定の基礎を固めたとする。しかし、冒頭申し上げましたように、四年たてばもう全部フリーハンドになってしまって優勝劣敗である。さらにそれがエスカレートすれば弱肉強食になっていってしまう。さらに終局のターミナルを見詰めてみれば、しょせんは大きなものが残って、小さいものはぶっ倒れざるを得ないような結末を遂げざるを得ないかもしれないという見通が立だざるを得ない。だとすれば、私はここでそういうような推移を念頭に置いて、さて最も効果のある施策をどう講ずるか、こういうことになりますと、私はこういう政策だけにたよるというのではなくて、まだ他に適当な効果の確保できる施策というものがあるような気がするのでございます。
それはなぜかと申しますと、国税庁では十分に御検討になっていると思うが、西ドイツとかデンマークとかスウェーデンとかいうところは、とにかく酒税というものが段階的な税率になっていることは御承知のとおりであろうと思います。すなわち、造石高の少ないところは生産コストが高いので税金を少なくし、そうして造石高の多いところは生産コストが低くつくであろうから、それに対する酒の税率はこれを高くする。そうして蔵出し価格はおおむね一個の正しい水準にならされる。かくして自由にして公正なる競争の立場を政策的に保護されておる。こういう政策がとられておることを大蔵省は御承知であられようと思う。さればこそあれらの地域は、ビールの製造会社で従業員百人だ八十人だという
中小企業が幾らもあると思うのでございます。ところが日本では、いま醸造免許の一つのチェックがあるといたしましても、ビールなんかはあのような四大メーカーに局限されて、
中小企業というものは、免許も与えられませんけれども、かりに免許を与えられたところで、とてもとてもそれは競争条件というものがそこには成り立ちません。
私は、最も案ずることは、清酒業界においても、後日、少なくとも四年後においては、日本のビールの製造が四大ビール会社の独占事業であるごとくに、現在の六大酒造メーカーの独占になっていってしまうようなことになるのおそれはないか。だとすれば、私はこの際、ヨーロッパにおいて酒税が造石高に応じた段階税率を採用しておるその政策というものの、その意義ですね、これをあらためて評価して、そして真にわが国の酒の製造が完全自由化になるためには、どうしたら
中小企業の製造部門、その企業の基礎を安定せしめることができるか、こういう課題を解決するためには、むしろそういうような段階税率の採用に踏み切るべきではないか。私はそのほうが、いま数々の疑義を無理やりに押し通そうとするよりももっと妥当で合理的で、そうしてその政策というものの生命に悠久性があると思うのですね。この点について大臣の御見解はいかがでしょう。
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○細見政府委員 先に技術的なことからお答えしておきます。
いまおっしゃったように、ドイツにおきましては非常に零細メーカーが多いということ、しかもそのメーカーの保護も考えなければいけないということで、段階的な、いわば一種の累進税的な形になっておることは御指摘のとおりで、私ども実はその点はよく存じないのでありますが、
中小企業対策としてそういうことが考えられておることは事実でございます。日本におきましてはそういう税率の差はございませんが、実際問題といたしまして、中小メーカーは多く二級酒をつくる、大メーカーは市場性の多い一級酒、特級酒というようなものをつくっておった。それが今後、市場性の有無あるいは市場性の将来ということを考えまして、最近のように消費がむしろ高級なものに片寄っていく段階において、従来のような区分でやっていけるかということにつきましては問題もございましょうから、いまの御指摘の点は、今後間接税のあり方として十分研究してまいらなければならない示唆に富んだ御意見であろうと存じますが、同時に実行はいろいろ問題のある御意見だろうと存じます。
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○春日委員 弱小メーカーは二級酒だ、そして強大メーカーは一級酒だ、特級酒だというその規定自体がおかしいですよね。実際は免許を受けたならば、二級酒をつくっている者なら一級酒をつくりたいし、一級酒をつくっている者なら特級酒をつくれるように技術の切磋琢磨をしてやっていく。それは当然の事柄だ。弱小メーカーは二級酒をつくっていればもうそれで足りるというあなた方の認識が、いかにも独善的であり官僚的なんですよ。私がいま高度の政策論をやっておるのに、そしてまた大臣の政策的答弁を求めておるのに、またもや細見君が雑音を入れて、われわれのあらたかな質疑応答の波調を乱すということはまことに困る現象ですね。(「無効だ」と呼ぶ者あり)無効だ、いまのは。消しておいてもらいたい。大臣の答弁をお願いいたします。
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○
福田国務大臣 企業の規模等によりまして段階的な税率を設ける、これは私は非常にむずかしい問題だと思います。いま局長から、規模によってつくる品物でも違わせるというような考え方をとれば、あるいは考えられることがあるかもしらん。しかし同じ品物をつくる、それに対して、その企業の規模が小さいから大きいからといって、それに賦するところの消費税に段階をつける、これは考え方として非常にむずかしい問題じゃあるまいか。つまり、結局酒税は消費者に転嫁されるという性格を持っておるわけです。そういう際に、能率の悪い業種に対しましては安い税率がかかるというようなことになりますると、これはやはり消費者の立場からいいまして非常に問題がありはしないか。いろいろ特則というか、特例はありましょう。しかし原則といたしまして、最も生産性の高い企業、これをみんなが目ざして競争する、そうして全体の生産性がそれによって上がってくるという状態のほうが望ましいので、低い生産性のものを基準にしてものを考えるということは、これは原則論といたしまして賛成いたしがたいことであると存じます。
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○春日委員 これはきわめて困難だと言われておるけれども、そのきわめて困難なる政策を西ドイツは現実に実行しておるということですね。私はあえて不可能なことを求めておるのではございません。あるいは単なる一つの空想を描いてその実現を迫っておるのではございません。ヨーロッパにおいては、西ドイツにおいてもスウェーデンにおいてもデンマークにおいても、私はおそらくイギリスでもそうだと思うのだけれども——イギリスは違うか。悪い例を何もかがみにすることはない。現実に諸国においてなされておることがわが日本国においてなし得ないと断ずることは、これは私は怠慢のそしりを免れないと思う。
ただ、いま大蔵大臣が指摘されたように、経済活動はスーパーファインのものを対象として、それに向かって切磋琢磨をなし得るような態勢をかまえさせておくということは必要なことだ、これについては異論はございません。けれども、そうすることによって、ではどうなるかという、こういう問題を考えなければいけません。結局はそうなれば、たとえばビールにおいて——いまここに資料をちょうだいしたわけなんだけれども、四大メーカーが独占してしまって、ビールにおいては中小の醸造家というものは全然ないのである。それは免許制度があるからと言われるかもしれないが、かりに免許を与えたところでこんなものは商売が成り立つはずはないのである。
そこで私は大臣に指摘したいことは、悪法といえども、あるいはときに物価対策上問題点があるかもしれないけれども、
中小企業基本法という
法律は厳存しておるわけですよ。国が
中小企業の安定と振興を確保せなければならない、そのために必要なる施策を講じなければならないとしておる。それは国家の宣言である。そうして行政府に対してそのようなことを義務づけておるのである。したがいまして、この際この施策といえども、そのような
中小企業基本法の宣言に基づいて、今度自主流通米制度が新しく出現したことによって中小の酒の醸造家がその存立の基礎を危うくするに至った、ゆえにこれを保護せなければならぬとして、このような幾つかの施策がダブって、片や
自主規制、片や近代化政策でなされておる。けれどもいま申し上げたように、このようなものは時限立法であり、経済の活動は日進月歩である。長期的に展望すれば、長期的に安定をはかり得る施策は他に絶無ではないのである。ヨーロッパでみんながやっておることである。そういうようなことをあわせ考えてみられいと、こういうことをアドバイスしておるのであって、あなたも宰相候補と目されるほどの大人物で、そういうような事柄についてむずかしいと——むずかしいことをやるのが政治家の中の政治家であり、代議士の中から宰相に選ばれようとする者の真の価値のありどころといわなければならない。ゆめゆめおろそかにされぬように、この政策について十分ひとつ検討されたい。この政策の疑義は後ほど
理事会で語ります。けれども、もし将来、六大酒造メーカーが独占して、何千という
中小企業の醸造家が倒れてしまうようなことになった場合、さてあわてて対策を講ずるということになれば、さらにさらに私は衝撃を大きくすると思うのです。一日先見の明あって、事前的に予防的にそのような施策を十分尽くされることを要望いたしまして、あとは
理事会に譲ります。
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○
毛利委員長 この際、
理事会を開会するため、暫時休憩いたします。
午後四時十九分休憩
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〔休憩後は
会議を開くに至らなかった〕