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1970-04-14 第63回国会 衆議院 大蔵委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月十四日(火曜日)     午前十時十二分開議  出席委員    委員長 毛利 松平君    理事 上村千一郎君 理事 金子 一平君    理事 藤井 勝志君 理事 山下 元利君    理事 広瀬 秀吉君 理事 松尾 正吉君       奧田 敬和君    木野 晴夫君       木部 佳昭君    木村武千代君       坂元 親男君    田村  元君       高橋清一郎君    地崎宇三郎君       登坂重次郎君    中島源太郎君       丹羽 久章君    原田  憲君       福田 繁芳君    坊  秀男君       松本 十郎君    吉田 重延君       平林  剛君    堀  昌雄君       美濃 政市君    八木  昇君       貝沼 次郎君    伏木 和雄君       二見 伸明君    岡沢 完治君       永末 英一君    小林 政子君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         自 治 大 臣 秋田 大助君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省主税局長 細見  卓君         大蔵省理財局長 岩尾  一君         大蔵省銀行局長 近藤 道生君  委員外出席者         大蔵大臣官房審         議官      安川 七郎君         自治大臣官房参         事官      首藤  堯君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 四月十四日  辞任         補欠選任   永末 英一君     岡沢 完治君 同日  辞任         補欠選任   岡沢 完治君     永末 英一君     ————————————— 四月十日  貴石、貴金属製品等第一種物品税課税方式改  正に関する請願丹羽喬四郎紹介)(第二九七  二号)  同(梶山静六紹介)(第二九七三号)  同(北澤直吉紹介)(第二九七四号)  同(塩崎潤紹介)(第二九七五号)  同(園田直紹介)(第二九七六号)  同(中曽根康弘紹介)(第二九七七号)  同(石川次夫紹介)(第三〇四四号)  同(佐藤観樹紹介)(第三〇四五号)  同(竹下登紹介)(第三〇四六号)  同(葉梨信行紹介)(第三〇四七号)  同(林孝矩紹介)(第三〇四八号)  同(毛利松平紹介)(第三〇四九号)  同(大橋武夫紹介)(第三一二五号)  同(大平正芳紹介)(第三一二六号)  同(楢崎弥之助紹介)(第三一二七号)  同(増岡博之紹介)(第三一二八号)  中小商工業者に対する課税減免等に関する請願  (細谷治嘉紹介)(第二九七八号)  同(広瀬秀吉紹介)(第三〇五〇号)  同(細谷治嘉紹介)(第三〇五一号)  減税に関する請願安宅常彦紹介)(第三〇五  二号)  同(阿部昭吾紹介)(第三〇五三号)  同(阿部哉君紹介)(第三〇五四号)  同(阿部未喜男君紹介)(第三〇五五号)  同(赤松勇紹介)(第三〇五六号)  同(井岡大治紹介)(第三〇五七号)  同(井野正揮君紹介)(第三〇五八号)  同(井上普方紹介)(第三〇五九号)  同(石川次夫紹介)(第三〇六〇号)  同(石橋政嗣君紹介)(第三〇六一号)  同(卜部政巳紹介)(第三〇六二号)  同(江田三郎紹介)(第三〇六三号)  同(大出俊紹介)(第三〇六四号)  同(大原亨紹介)(第三〇六五号)  同(岡田利春紹介)(第三〇六六号)  同(木島喜兵衞紹介)(第三〇六七号)  同(北山愛郎紹介)(第三〇六八号)  同(加藤清二紹介)(第三一二九号)  同(勝澤芳雄紹介)(第三一三〇号)  同(勝間田清一紹介)(第三一三一号)  同(角屋堅次郎紹介)(第三一三二号)  同(金丸徳重紹介)(第三一三三号)  同(川崎寛治紹介)(第三一三四号)  同(小林信一紹介)(第三一三五号)  同(佐野憲治紹介)(第三一三六号)  同(斉藤正男紹介)(第三一三七号)  同(阪上安太郎紹介)(第三一三八号)  同(島本虎三紹介)(第三一三九号)  同(下平正一紹介)(第三一四〇号)  同(田中武夫紹介)(第三一四一号)  同(田中恒利紹介)(第三一四二号)  同(田邊誠紹介)(第三一四三号)  同(高田富之紹介)(第三一四四号)  同(武部文紹介)(第三一四五号)  同(楯兼次郎紹介)(第三一四六号)  同(千葉七郎紹介)(第三一四七号)  同(辻原弘市君紹介)(第三一四八号)  同(戸叶里子紹介)(第三一四九号)  同(土井たか子紹介)(第三一五〇号)  同(堂森芳夫紹介)(第三一五一号)  同外一件(内藤良平紹介)(第三一五二号)  同(中井徳次郎紹介)(第三一五三号)  同(中澤茂一紹介)(第三一五四号)  同(中嶋英夫紹介)(第三一五五号)  同(中谷鉄也紹介)(第三一五六号)  同(中村重光紹介)(第三一五七号)  同(楢崎弥之助紹介)(第三一五八号)  同(成田知巳紹介)(第三一五九号)  同(西宮弘紹介)(第三一六〇号)  同(芳賀貢紹介)(第三一六一号)  同外一件(長谷部七郎紹介)(第三一六二号)  同(畑和紹介)(第三一六三号)  自動車新税創設反対に関する請願金丸信君紹  介)(第三〇六九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二一号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  三四号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第五七号)      ————◇—————
  2. 毛利松平

    毛利委員長 これより会議を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。平林剛君。
  3. 平林剛

    平林委員 きょうは総理大臣に、今後における税制改正目標という問題につきましてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  昭和四十五年度の税制改正によりまして、所得税減税は、基礎控除配偶者控除扶養控除等引き上げによりまして、平年度三千五十億円の減税実施をされたわけであります。またこれによりまして所得税課税最低限は、給与所得者の場合、夫婦子供三人で百二万八千六百七十四円ということになりました。このことについて税制調査会は、昭和四十三年の「長期税制あり方についての答申」の中で、百万円程度課税最低限実施されるという場合は、貯蓄のためにゆとりのある合理的な課税最低限水準であるという観点と、先進諸国課税最低限水準との比較においては、おおむね妥当な水準が達成されるものと認められる、こう述べておるわけなんでありますけれども、私はこの認識について実は不満を感じておるわけであります。なお検討すべき幾つかの課題があるはずだと考えるわけであります。夫婦子供三人で百万円の課税最低限といいますと、あるいは政府自体の中にも「長期税制あり方についての答申」の線に一応達したという考え方はあるかもしれませんけれども、これが望ましい水準として落ちついておられたのでは私どもとしては納得ができない。昔は百万長者といえば金持ち代名詞となっておったのですけれども、いまや百万円程度金額というのは、給与所得者所得階級別調査によりましても、これは昭和四十二年、百万円から二百万円程度の人は二百五万人をこえておるわけです。申告所得の中でも百万円から百二十万円程度の人だけ計算してみましても二十五、六万人はいるわけでありまして、昔は百万長者といえば金持ち代名詞だけれども、今日は私に言わせればかすかすのところであって、望ましい水準というような理解のしかたはどうも理解できない。これはもっとこまかくいろいろの角度からわれわれはこの委員会を通じて議論をするつもりでありますけれども、きょうお尋ねをいたしたいのは、総理はこの課税最低限百万円の実施ということで、貯蓄のためにゆとりのある合理的な課税最低限であるとお考えになっておるかどうか、そうでないとすれば次の税制改正目標はどこに置くか、私は総理大臣としてのビジョン勤労国民大衆に与えてもらいたい。千両役者というのは、その道においては非常に権威者ということになっておるわけでございまして、その千両役者たる総理が、ひとつその値打ちが下がらぬようにいいビジョン勤労大衆のために示してもらいたい。このことをまずお尋ねします。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまいろいろお話しになりましたが、長期税制答申、これは一通りとにかく達成された、これはそのまま評価してしかるべきじゃないかと私は思います。もちろんその間にいろいろな、世の中は変わってきておりますからいろいろな批判があるだろうと思います。しかし、とにかく長期税制改正答申はそのまま実施した。  それからもう一つは、わが国の総人口でただいま中産階級というのはどういうような地位を占めておるか、一体どのくらいのパーセンテージを占めておるか、こう考えると、これは非常に高い中流階級だというようにいえる。いわゆる、いま言われた昔の百万長者という、そういう部類のもの、億万長者がきわめて少数で、また七、八%のいわゆる低所得層、こういうものがあるが、大部分がその中間に入る。その中間に入るところのものが、いまの税制改革で一応その底辺だけは所得課税されない、こういうことになったのじゃないかと思う。  これから一体どうしたらいいのか、これは私が申し上げるまでもなく平林君よくおわかりですが、私どもがいま国として何が足らないのか、これは何といっても社会資本の不足、また福祉国家建設というような意味からもその方向に努力せざるを得ない、財源がほしいときであります。財源と歳入と見合って、そうして適当なところを見ていく、そうすると、一応いまの長期税制、これが実施されたところで一応の満足がいく。だがしかし、何といっても国民税負担感が重い。そういうものをどんなにして解消していくか。なるほど国の支出社会資本等支出、その要望も需要も非常に大きいけれども負担感をとにかく軽くしない限り国民の協力は得られないだろう。  そこで今度は率の問題が問題になるのじゃないだろうか。いずれ税制調査会でどんな議論をするかわかりませんが、私はいままで説明しておるような、大蔵大臣が冒頭に説明し、また私もその説明を聞きながら実は賛成しているのでありますが、別に変わったことを申し上げるつもりもございませんが、いまの税率、そのほうをもう少し手直しする、そういう余地があるのじゃないだろうか、かように思います。百万円といっても、当時考えられた税制基本家族というものは、大体構成人員五名。しかし最近の家族構成は四人になっている。四人百万、そういうように変えろ、こういうような意見もあること、これはもうそのとおり私どもも受けますけれども、しかし、とにかく公平な税、またいわゆる税負担が重い、こういうことのないような方向税制はあるべきじゃないだろうか、かように思うのであります。いま一番必要なのは、いまようやくまず百万になった、百二万になった、そういう段階ですから、さらに百二万になったから今度は百三十万、百五十万に上げろ、こういう議論もございますが、それよりももっと私は階層税率改正をするほうが先じゃないだろうか、かように思っております。
  5. 平林剛

    平林委員 いまの総理お話の中からは、中間層についての税制、同町に税率、それから四人家族程度百万円ということは念頭にあるようなお話でありますが、もっとすかっとしたビジョンをお示しいただけなかったのは残念でございます。  もう一つ私は、総理としてどういうことをお考えになっているかということをこの機会に聞きたいことがあるのです。それは、先ほど私がお尋ねいたしましたように、貯蓄のできるゆとりのある合理的な課税最低限であると思うかどうか。百万円がそういうものであるかどうか。これはむずかしい話でなく、一般常識として総理の御見解を承りたいと思うのであります。ゆとりのある生活とは一体どういうものであるか。福田大蔵大臣は、かつてこうした質問に対しまして、ゆとりのある暮らし、蓄積ある企業ということをスローガンに掲げられたことがありまして、ゆとりのある暮らしとはどういうものかという質問に答えて、百坪程度の庭を持って、三十坪程度の家を建て、庭に芝生を植えて、バラの花二、三輪というような、なかなかいい答弁をされたのであります。最近三井銀行では「サラリーマン未来像」と題しまして、これから二十年間における国民生活の姿というものを、電子計算機でも使うたんでしょうね、前提条件がもちろんありますけれども一つの夢といいますか、像を描いて見せてくれているのを発表しました。これによりますと、昭和四十二年に勤続十年余を迎えた三十五歳のサラリーマン勤続二十年後の昭和五十二年、つまりこれから七年の後には税込み四百七十万円、つまり現在の五倍になるだろう。手取りの月収は三十二万円くらいになるだろう。さらに経常的な生計費支出した後、三人の子供大学教育を受けさせられるようになるだろう。ローンを利用して、さすがに銀行ですから、住宅ローンを利用して郊外に土地つきの家、これも敷地二百平米、住宅百平米、この程度のものは実現をし得るのではないかという一つ未来像というものを描いておるのです。こうしたバラ色の夢は電子計算機のはじき出すところでございましょうけれども、やはり国民には将来に向かって夢を持たせなければいけない。私はそれは為政者としての一つのリーダーシップでもあると思うのです。したがって、こういう意味において、一体総理大臣は、ゆとりのある生活実現というのはどういうものであるか、これはむずかしい話ではなくて、総理のお考えとしていかがでしょうか。どんなようなことを描いておられるか。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 平林君、私、若い時分からずいぶんいろいろの借家をして今日までに至っておる。過日も家内といろいろ話をして、何度くらいかわったかなと一ぺん数えてみたら、二十回になっている。いまは総理官邸に住まっておりますからなかなかたいへんな状態ですけれどもむね割り長屋からだんだん一戸建てにかわり、子供がだんだん大きくなるに従ってやはり庭もほしくなり、だんだん広いうちにかわってきておる。それも借家住まいです。  そうして私どものときの考え方は、鉄道で二十五年勤務して退職する、おそらくそのときはその退職金でうちが建つだろう、それを実は考えていたのです。ところが、私が退職したときはちょうどインフレ進行中のまっただ中だった。したがって、退職金をもらったが、その退職金をもらっていなかへ帰ったら、帰っただけでその金はもう飛んでしまった。はっきり申すが、そのときもらったのが十万円だったと思います。二十五年近くいて。これはインフレ進行中であったので、私のバラ色の夢がこわれた。ただその当時、私どもの先輩、鉄道の局長あたりした人が退職して、一戸建てのうちを買って、そして住まっておる、そういうことになりたいなと実は思ったものです。それがいま言われるように百坪だとかせいぜい二百坪近い、あるいは三十坪から五十坪くらいの住宅、そのくらいのものを考えた、かように思っております。もちろん、私はいまの若い人たち、いろいろアパートが狭いとか広いとかいわれているが、これはそれぞれ独身の場合と夫婦になった場合、子供、しかもその子供が大きくなった場合と、それぞれかわっていく、かように思って、それ相応の状況に相応したやはりアパート住まいが必要だろう。したがって、戦後のような、何でもかんでも、住むところがない、寝るところさえあれば、雨露さえしのげばいいという時代と変わってきておりますから、だんだん広いところを要望される、また二戸建てを要求される、これはもちろん適当なことだと思っております。  ところで、いま言われる貯蓄が一体どうなっておるのか、私は、物価が片一方で上がりながらも、とにかく最近の状態、円の価値は強い、そういう意味貯蓄はふえておる、これが実情じゃないだろうか。だからそのことは率直にそのまま認めてよろしい。  ただ私ども政策の上から見まして、ただいま申し上げるような一つの夢があるだろう。おそらく各人ともその身に沿った一つの夢を持つ。私どもは岩崎や三井、その当時の代表的な財閥のようなうちを夢みてはおらない。しかし少なくとも私ども仲間がつくったくらいな、局長仲間がつくったようなうちはほしかった、これは率直にそう思います。しかして、その当時はやはり退職金でそれができたものであります。また私は、各階級を通じてそれ相応のものが持てたと思います。そして、どうもこの金では都会では住めないとなると、やはりいなかに帰って、いなかに老後を養う土地を見つけたものです。その辺に国としての落ちつきがあったように思います。  しかしこのごろは、何にしても都会のほうが住みいい、不平を言いながらも都会に住んでいる。これが一番住みいいから都会人口がどんどんふえるんだろうと思っております。だれか、どうも死んだ後でも都会に住みたいらしくて墓まで都会につくっている、これじゃ都会人口がふえるのはもっともだ、そういう皮肉すら申したことがございますが、住みにくいと言いながら都会のほうが住みいい、そういうところにやはり私ども政策のアンバランスがあるんではないか。そういうものはバランスをとらないと、過密過疎の現象、これの対策はできない。どうも夢を持てない。いまのような過密に悩みながら、その過密地域にどうしても入り込もうとする、そういう気持ちになってくる。ここらに私は一つの問題があるんだ、かように思って、いろいろ政策も、ただ単に過密対策、こういうような意味でなしに、総体のバランスをいま考えながら、どうしたらいいかというようにこれと取り組んでいくつもりであります。
  7. 福田赳夫

    福田国務大臣 総理のさっきのお話で、ちょっと今後の税制あり方という意味において、税率調整が中心になるんだというような印象を与えたかもしれません。総理が言われるのは、そうじゃないんだと思います。いま皆さんに御審議願っておる、いままで十数年も課税最低限のみが所得税減税議題とされて、税率調整は顧みられなかった、そこで子供を持つ中堅階層負担が重くなってきている、これが当面の課題であるということを強調する御趣旨であったと思うのであります。将来の問題としてのあれではなかったんだろう、こういうふうに思いますので、ちょっと補足さしていただきます。
  8. 平林剛

    平林委員 いや、お互いに政治に携わっている者は、一つの夢がなくちゃいかぬし、あんまりこまかい言質を取って、ぎしぎしやるというつもりでもっていま総理大臣に聞いておるわけではないんです。しかし非常にリラックスなお話を聞きまして、たいへんけっこうでございました。  かりに、私は、その続きでありますけれども、これから一般国民願望といいますか、そしていま中堅層、大体年間二百万ぐらいというようなことを描きながら、将来に向かってその水準に進めていくという諸政策を進める。その場合、私はいま一番大きな悩みはもちろん物価の上昇もありますが、具体的にはやはり住宅とか教育問題——先ほど福田さんの、ゆとりのある暮らしとは百坪の土地を持ち、三十坪の家を建て、庭に芝生を植えて、バラの花二、三輪、ことばでは非常に美しいけれども土地をもし買うとすれば、百坪の土地は、大体三万円としても三百万円なんです。都会地に住みたいということになって、とても百坪の土地は持てないけれども、やはり三百万や四百万の土地購入経費は必要になってくる。また三井銀行の将来の未来像を御紹介しましたけれども子供の三人を、できれば大学にやりたいということになれば、大学経費、一人子供をやるのに、いま調査によれば年間低くても二十万円以上は要る、こういう状態であります。  そこで私は、きょうは税の問題の審議でございますが、税の制度の中に、たとえていうと、家賃控除のようなものを認めるというのはどうだろうか。たとえば3DKの公団住宅家賃が月に二万二千百円でございますから、年間にすれば二十六万円をこえる。借り入れ金によって住宅を建て、その返済をしていく場合には、その返済額家賃とみなす、そんなことはできぬだろうか。住宅を建てたいという願望のために積み立てるものには、一般企業に認めているように積み立て金制度を認める、これは所得控除をするということはどうだろうか。私は、きょうはむずかしい税理論として言っておるのではありません。国民の抱いておる願望に対して政治がこれにこたえるという方向で、こういう考え方はどうなんだろうか、こういうこと。それから、家を建てなかったというのは、大体佐藤さん悪いわけですよ。一世帯一住宅ということをいつまでもやらぬから。そういうことを税制でこたえることができぬか。  また教育費の問題につきましても、多くの方々の悩みであります。そうしたことについて、一定の限度を限ってもいいけれども教育費控除というようなことも何とかしてもらえぬだろうか。素朴な国民の希望があると思います。これについてどうお考えでしょうか。
  9. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 さっき大蔵大臣が私の説明を補足してくれて、平林君は誤解されないで、四人家族のことも言っているからということでお許しになったようであります。これはよくわかっておることだと思っております。私も別に最低限引き上げについて全然考えないというわけじゃございません。さっきも申すように、税の負担感をないようにする、これは必要だと思います。  ところでいまお尋ね家賃控除、大体私ども生活は昔から衣食住、この三つであらわされております。その衣食住のうちの住だけについて税金をまけろという、これはちょっとおかしくはないでしょうか。やっぱり衣食住、全体をひっくるめて何か控除をはかる、そういうのが筋じゃないだろうか。いま金額が多いとか少ないとかいわれておりますが、やっぱり控除額はそういう意味で、衣食住、これを合わせて控除すべき筋のものだ、こういうふうに考えたのでございます。住宅だけについて特に認めろとおっしゃる、これは結局その全体の控除額が少ないということにもなるのだ、かように思いますので、考えるほうとしてまたいろいろくふうされるべきじゃないだろうか。そのほうが現在の状態——これもきめたばかりでございますから、しょっちゅう変えるわけにもいかないだろうと思いますが、だから事務当局に言わせれば、そういうことは考えております、かように言うだろうと思います。私は、いまのように普通の生活考えると、衣食住、それでいわれておるので、やはりそれ相応のことを考えなければいけないだろう、こう思います。
  10. 平林剛

    平林委員 まあきょうはいろいろ問題がありますから議論はしませんけれども国民の一般的な気持ちの中には、衣食を詰めても家をほしいというのが、これが七〇年代における一つの焦点になると私は思う。総理大臣お答えはまことにさびしいお答えでありますけれども、まあこれはあとでまたいずれ議論をいたしたいと思います。  教育費の問題も、お答えがありませんでしたけれども、私は、やはり総理としてその国民の抱いておる気持ちにどうこたえていくかということは、絶えず念頭に置いてやってもらいたいということだけを希望するにとどめておきます。  そこで、そろそろむずかしい話に入っていきます。  経済審議会は四月九日、四十五年度から六年間の新経済社会発展計画総理大臣答申しました。「人間性豊かな経済社会を目ざして」という目標のもとに、七〇年代の前半のこれからのわが国経済の方向づけを答申したものと理解をいたしております。新しい計画の中には、経済の効率化、物価の安定、社会開発、経済の安定維持、この四つを課題にしておるようでございますけれども、この経済計画の隠れた主題は円の切り上げ問題である、こういう分析が行なわれておるわけであります。  この円の切り上げの問題につきましてはいろいろ議論がありまして、私も、わが国の経済における利害得失を考えますと慎重でなければならぬ、これは言うまでもないことだと思っておるわけであります。しかし、わが国の経済、国際収支の現況、七〇年代における重大な課題としてこの問題の検討を避けて通ることは許されないのではないか、こう考えておるわけであります。いや、円の切り上げの問題は頭の端っこにもありませんというような態度で通れない。私は切り上げろとか、そうすべきでないとかいうのじゃありませんよ。頭のかけらにもこういう問題ありませんということでは通らぬ時代が来つつある、こういうことを考えるわけであります。これはいろいろの角度から議論せねばなりませんけれども、さしあたり私がお尋ねしたいことは、経済審議会のこの答申につきまして、総理はどう考え、この答申を具体的にどう措置するつもりであるかという点をお聞かせいただきたいと思います。
  11. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 経済審議会答申はなかなか広範な、浩瀚なものでございます。私まだなかなか通読もできない。いただいたばかりで、そのうちの二、三の項目は拾い読みをしたという程度でございます。長い間かかってあれだけのものをまとめ上げた、これは大論文だ、こう言うほうが適当かと思います。したがって、まだなかなか私の頭にすっかり入っておりません。  そこで、いまの円の話でございますが、私どもが使っておる通貨、この通貨の価値がどういうところにあるのか、これから一体どういうことになるのか、これは絶えず問題でございます。私がたしか大蔵大臣時分、皆さん方からいろいろ聞かれたことはデノミネーションだった、かように思います。当時はとにかく一ドル三百六十円、これをもっと単位を小さくするような方法はないのか、こういうようないろんないわゆるデノミが問題であったと思います。そのときに、日本人はなかなか頭がいいから大きな数字でもうまくこなしますよと言って答えたことをいま思い出すのです。しかし、デノミの話は最近はなくなった。それにかわってただいま言われるような切り上げ、その問題が起きている。切り下げの問題はいまございません。円がそれだけ強いということ。そういう意味から盛んに切り上げ切り上げ、外国からしいられるのじゃないか、こういうような話までございます。最近のように外貨が四十億ドルにもなると、いよいよ切り上げが近いのじゃないか、こういうことで私どもの意見を聞かれる方もあります。ついせんだっても、二、三日前に日本記者クラブに参りましたが、その際にも、野田研究所の野田さんからも、円の切り上げ、どういうように考えるか、こういうことでした。私は即座に、切り上げはございません、さように答えたのであります。私どもは、いま円が強いことをたいへんしあわせに思っているけれども、これをいま他の外国の弱い通貨に肩を並べるためにわれわれが切り上げなければならぬ、さような処置を考えるつもりはございませんと実ははっきりお答えをしたのであります。しかし、一国をあずかる者、大蔵大臣としても、また私としても、円がどういうように評価され、どういうように扱われるかという、これはいま言われたように、考えておらぬのではない、しょっちゅう頭の中にあって、これは一番国民が関心を持ち、これを土台にして生活を続けておる、産業を続けておる、かように私ども思っておりますので、適当な地位を与える、そのことを考えておるわけであります。  また外国のお客がいろいろ来ましても、ドイツ等から来る人たち等の話を聞いてみましても、君のところのマルクの切り上げはどうだった、こう言うと、どうも、失敗したとは言わないけれども、なかなかむずかしい問題だ、あるいはもっと早い時期にやったら成功したかわからぬ、こういうような言い方をするのが、よほど援護的な立場にある人たちの言のようでございます。私は、そのことを考えながらも、日本の円、いまこれをとやかくする筋のものではない。そのためにも、いまのような質問をされたりあるいはいろいろ議論されることは、これは御自由と思いますけれども、そういうことがやっぱり問題を少し複雑にするのじゃないだろうか、かように思いますし、私は、そういう意味ではっきりした政府の態度も申し上げておくことが望ましいのじゃないだろうか。不安を一掃し、そして落ちつかす、こういう意味からも、円の切り上げはない、しない、これはもうはっきり申し上げたい。いろいろなこの問題をめぐっての議論はございます。損得の問題ではなくて、せっかく信用のついたこの円を維持していくこと、それにわれわれが精進すべきではないか、かように思っております。
  12. 平林剛

    平林委員 円、すなわちわが国の通貨の価値につきましては、総理はきょうもしばしば円が強いというお話をせられておりますが、通貨の価値については私は二つの顔があると思っておる。この間も大蔵大臣とこの問題を議論したわけであります。一ドル三百六十円、つまり外国貿易の面におきましては、日本の円は確かに有利性があるから強いという表現は当たっておるかもしれません。しかし国内における円の地位というのは、逆にいえば一円で何が買えるか。先ほど総理の、昔の夢が、インフレによって価値を失い、だんだんそれが実現できなかったというように、国内においての円の価値というものは物価上昇によって下落していることは間違いない。この面においては円は強いとは言えない。つまり、私は通貨については二つの顔があるということを絶えず考えておるわけであります。  そこで、七〇年代の経済のことを考えますと、現在有利性を保っておる円の力で輸出はどんどん進められている。四十億ドルの外貨を保有するようになった。しかし、日本は一体どのくらい銭をためたら満足するのだという外圧はこれからも出てくるおそれがある。直ちに出てこなくても、やがてこれが、さっきの経済計画ではありませんけれども昭和五十年になって七十億ドルになった、計算のしかたによっては八十億ドル、有徳ドル、こういうことになりますれば、当然、円の切り上げという外圧は出てこないとはいえないわけであります。また円の対外的な有利性から輸出がどんどん伸びていくというようなことになりますと、輸出価格の高騰によって国内物価は引きずられていく。すなわち私は、将来においては円の切り上げの問題が、インフレインフレを抑止するか、この二つをうまく調整しながらやろうという考え方がもう一つの道としてあると思うのであります。  この間、日本銀行が輸出の優遇金利を一率に一%引き上げましたね。私はこれは結局、ただいま申し上げました情勢をいろいろと判断をされて、やがて当面する円切り上げ問題に対する一つの事前の措置として打ったものではないだろうか、こう考えておるわけなんでありますけれども、あまり時間がないもので、ちょっとその考えは間違いであるかどうか、これは総理でも大蔵大臣でもけっこうです。
  13. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま、日銀がやった措置が円の切り上げの事前準備措置であるかというような趣旨のあれがありますが、そうじゃない。円の切り上げはいたしません。しかしこの輸出金利の引き上げ、これは円の価値の切り上げにかわる一部分的な意味を持つ、こういう性格でございます。まあ円の価値の切り上げはしませんけれども、しかしながら、しないかわりに輸出金利の切り上げをいたしますとか、輸入の自由化をいたしますとか、そういう措置を講じまして、円の価値の切り上げをいたさない、こういう方針を厳守していく、こういうことなんであります。
  14. 平林剛

    平林委員 まあこの輸出優遇金利の引き上げについては、通産省あたりでも、あるいは輸出業界でも猛反撃があったという情報が伝えられておるわけであります。しかし腹の中では、一%程度の金利がかりに上がっても、四%や四・五%の優遇金利であったわけですから、世間並みに考えてみればいまだに手厚い保護がされておったことでありまして、一%程度の切り上げはそんなに影響がないということは腹の中でお考えになっておると私は思うのであります。むしろこうした措置に反対をしていて、円の切り上げ問題のような事態になったらどうするのだというようなことも反省せにゃならぬと思うのでありまして、これについては私は適切な措置であったと思うのでありますが、もう一つ七〇年代の経済を展望すると、インフレをどうするか、それから物価問題、物価の上昇をどうやって食いとめるか、同時にインフレか円切り上げかの問題など考えますと、必要な措置としてはどう打つべきかという点が私はこれからかなり重要な焦点になってくるだろうと考えておるわけであります。  そこで私は率直にいいまして、これからは輸出の額だけを高める時代ではない。それは輸出ということがわが国の経済の政策の主柱であることは言うまでもありません。私はこれは否定しない。それは輸出が伸びるほうがよろしい。それからドルも四十億ドルや五十億ドルたまったって、これで十分だというような考え、ちっともありません。それを有効に使うということも考えればいいことですから、多いの少ないのという議論は私しません。しかし輸出の金額を伸ばすということだけ、それに集中する時代はもう終わっておる、こう思うのであります。  そこで私は、租税特別措置法の中に輸出振興税制というのが、御存じだと思うのですが、あるわけであります。この輸出振興税制というのは、輸出所得控除であるとか、従来の歴史もありまして、いろいろな四つぐらいばかりの方式がありましてやってきました。私、計算してみましたら、昭和三十九年度にこれが創設をされましてから大体今日まで、四十五年の見込みまで、各年度の輸出振興税制の見込み額の累積を計算してみましたら、二千七百六十億円も使うておる。私は、こうした輸出振興税制、しかも今日のような対外収支、輸出の異常な伸びという時代におきまして、累積ではありますけれども二千七百億円も三千億円も使ってまで輸出を振興する必要が今日においてあるのかないのかということは、これは考えなければならぬと思うのであります。  特に最近ガットにおきましては、ことしの一月十二日から開かれましたガット工業品貿易委員会の非関税障壁に関する作業部会では、どうも日本がやっておるいろいろな制度の中には、形は変わるけれども輸出ダンピングをしているんじゃないかというような批判も生まれてきておるわけでございます。同時に私は、今日総理もしばしば述べておりますように、国際競争力も十分ついておる、ある意味では経済大国とも表現をされることもございます。そういう国がこうした多額の、四十五年度も約四百五十億円も使うて輸出のための優遇措置をとる必要があるかどうか。税の問題でもいろいろな不公平であるという議論があるわけで、租税特別措置につきましては漸次これを廃止していくというような声が強い現在におきまして、ただいま私がるる述べてまいりました情勢を考えてみたならば、政府としてもこの制度はやめて、税制上の不公平の批判を一つずつ解決するという気持ちと、同時に国際競争力をふやすにはまた別の考えがあるんじゃないかという意味で、こうした輸出振興税制については再検討し、むしろ廃止の方向に踏み切るべき時期ではないか、こう思うのでありますが、大きな意味総理大臣の御見解を承りたい。
  15. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの御趣旨は私も大体賛成です。大体この種の特別措置は時限立法だろうと、かように思います。いまも大蔵大臣に聞いてみると四十六年が期限だということですから、もちろんその際に十分検討さるべき筋のものだと、かように私思います。  そこで、いま円の両面があると言われた。これは確かに両面がある。貿易の面では、これはなかなか一ドル三百六十円は有力で、輸出を進める上において非常に役立っている。もう一つ国内の面で、いま物価の問題を指摘になりました。このほうがもっと国民生活全般に影響することでございますから、政府とすれば物価の問題とほんとうに取り組まなきゃならない。一体これはどうしたらいいのか。やっぱり私どもの立場はいわゆる自由経済の立場ですから、自由競争の原理を内外ともに取り入れるという、いわゆる輸出ばかりじゃない、輸入もそういう意味で国内物価に対する対策の一部としても取り上げざるを得ない、こういう形でございますから、いま言われることも自然とおのずから解決されるだろうと思います。さような時期になっておるだけに、この輸出だけの振興、とれに特別措置をとる、これはますます意味がなくなってきておる。ことにわれわれが物価対策と真剣に取り組めば取り組むだけに一そう、国内の物価をいかにして鎮静さすか、このほうにより以上の力を注がなければならぬ、かように思います。ただいまのお話しのとおりに政府は考えております。
  16. 平林剛

    平林委員 なお、私はきょうは家庭の——今度はうんと次元が小さくなるけれども国民生活に重大な配慮をお願いしたいと思いまして、家庭の主婦の内職収入の課税問題を取り上げたかったのでありますけれども、まあ言わなくても総理大臣大蔵大臣と御相談なすっていただきまして大体おわかりいただけると思うので、これはまた別の機会にやります。  なお午後は大蔵大臣としばらく、いま取り上げられなかった問題をちょっと議論したいと思いますから、一応総理に対する質問はこれをもって終わることといたします。
  17. 毛利松平

  18. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いま平林委員がこの輸出振興租税特別措置を取り上げられましたので、それに関連をいたしましてまず最初にお伺いをいたしたいと思うわけであります。  この問題につきましては、特にことしの、昭和四十五年度の経済の見通しにおきましても、日本の経済見通し、特に輸出見通しはある程度過小に見積もりをする、輸入はある程度過大に見積もる。これは円切り上げ、外圧というような問題を踏まえて、どうもそういう経済見通しがいつもよく狂うわけでありますが、政策的な意図もあって、特に国際収支が好調であり、外貨準備の蓄積もきわめて順調である。いま総理もおっしゃいましたように、おそらく昭和四十五年度末には五十億をかなり突破するのではないか、こういうような問題もある。こういうことで、アメリカの若干の景気停滞というような局面はあるけれども、秋には中間選挙もあるということで、しかもアメリカではそう長い期間リセッションが続くものでもない。過去の六七年のミニリセッションのときでも、アメリカ経済が一・五%くらいしか伸びなかったときでも、世界貿易も落ちなかったし、日本の貿易もそれほど影響はなかったというようなこともありまして、おそらくことしもかなりこの貿易は伸びるだろう。一四・七%というような伸びを——これはまあ民間のそれぞれの企業などが、あるいは銀行などが調査網を動員してやったところでも、ほとんど一七%程度の輸出の伸びというものが考えられる。しかも輸入のほうは、今度は逆に民間ベースでは大体一四%くらいだろう。ところが政府見通しは一七%というように過大に見積もりをするというようなこともあるわけですね。  まあそういうことを一応前置きにいたしまして、最近ではやはり、いま平林委員も指摘しましたように、外国から、自由化の促進という問題と関連をいたしまして、日本がこれだけ輸出振興に税制上メリットをつけておるという問題に対して、これはやはり一種の不平等待遇といいますか、不公平な振興策を政府ベースで民間につけている、こういうような面での反撃がぼつぼつ出ているというような面もあるわけですし、そういうことから考えれば、これはやはりこの際税制の公平を害する問題でもございますから、いままでの特に税額控除というような問題はこれを廃止をしていきますけれども、準備金あるいは引き当て金というようなものがまだ七百億から残っている、こういうようなことになりますと、やはりこれは非常に問題の点がある。こういうことで、非常にこの問題を、いま趣旨は賛成だと言われましたが、そこをもう一歩進めて、現在輸出関係企業に対する交際費の課税特例まで含めますと五項目ばかりあるわけですけれども、これらは来年の期限が到来する時期において全面的に廃止をしていいのではないか。もちろん日本経済が将来とも輸出を伸ばしていかなければならぬということは十分わかるけれども、もはや日本の輸出関係の企業というものは、海外との経済競争力において、今日までのここ七、八年の間に二千七百億からの巨額のいわば隠れた補助金を受けてきたというようなこともあって、もう十分伸びてきておるし、力もついてきておるということでございますから、これはやはり来年度は廃止するというようなことでしばらく様子を見ても差しつかえないんじゃないか、こういうようなお考えで、先ほど同様なお考えである、こうおっしゃられたのかどうか、その辺のところを総理大臣にお伺いいたします。
  19. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあ税の問題ですから、総理がどう言ったとかこう言ったとかいうことは問題になると思います。やはり税制調査会というものを設けているのも、これは各界各層の意見を広く聞いて、そうしてそういうところで結論を出して、それにふさわしい処置をとる、これが国民から見て望ましい姿だ、かように私は思っております。したがって、ただいま言われたような趣旨でこの輸出振興特別措置というものは議題になる。私が議題になると言うことは、私個人としては、そういうものは廃止してしかるべきじゃないか、かように思うけれども、私の意見よりも総体の税制調査会がどういうような結論を出してくるか、その結論を待たないことには、いまこの際ここでとやかく申しましても、どうもこれはあまり意味がないのじゃないだろうか。私は、その点では慎重にやはり広く皆さんの意見を聞いた上で問題を取り扱うべきだ、税の問題でありますだけにさように思います。
  20. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 総理大臣がとにかく趣旨についてはそのとおりに考えるということで、税制調査会もあることでありますから、そういうものにかけて十分慎重にやっていきたい。このことは私どもは、やはり期限到来の際は改廃を含めてやっていかれるという御趣旨だ、こう受け取って差しつかえないことだと存じますが、そういうように確認をいたしまして、時間があまりございませんので次の質問に移ります。  次の問題は、けさの新聞には非常に各紙とも税制関係のことが、読売は砂糖などの関税引き下げということで、通産省の物価安定対策というような問題とも関連してそういうようなことも出ておりますし、所得税、住民税の課税最低限を大体同じくしていこうというような記事も出ております。きょうは非常に税問題が各紙の第一面のトップを飾っておる日なんでありますが、こういうのも非常に珍しいことだと思うのです。  そこで、ぜひこの点総理にお伺いいたしたいのでありますが、今日課税最低限が、サラリーマンの場合に標準家族で百万一千六百五十円である。これはサラリーマン減税課税最低限がそこまで来ました。それに対して住民税のほうは、同じく標準世帯で七十二万九千円、こういうようになっておるわけでありまして、大体三十万という開きが出ておるということであります。前にもこの委員会議論をいたしたわけでありますが、昭和四十四年度で全国勤労者の平均家計支出、消費支出は約八十七万という数字が、ついことしの二月七日に報告されているわけであります。しかもこれは三・八九人という、四人家族にも足りない、そういうもので八十七万という消費支出がかかっている。これは全国勤労者の最低生活だという問題、平均生活費だという問題等、いろいろありますが、しかしそれにいたしましても、四十四年で、しかも四人家族で八十七万ということから考えれば、四十五年度の税制改正においてようやく七十二万九千円の住民税の課税最低限というのは、どう見ても——最低生活費の平均的な数字をいま申し上げましたけれども、大体近いものだと思うのでありますが、それすらも侵して課税している、すなわち生計費の中に食い込んでいる住民税の課税最低限である、こういうように表現していいかと思うわけであります。  そういうようなことから考えまして、この問題を、きょうの新聞によりますと、大蔵省筋では、これはどういうことかわかりませんが、その真意はまだはかり知れないのですが、大体今度は住民税も所得税課税最低限も四人世帯ということで基準をとろう。先ほども総理お答えになりましたが、この所得税のほうも四人というものが実態に合うというようなこと、夫婦子供二人四人世帯というもので百万というような新しい目標もあり得るというようなことも言われましたが、住民税の場合も大体それに合わせて百万くらいのものを実現しようというような意向もあるやに新聞でも報道されておるわけであります。そういうような所得税、住民税、両税にわたって三十万というような格差があるということは、少なくとも私どもから見ればこれはけしからぬことだというように考えるわけであります。その問題について私、いま若干の意見を申し上げましたけれども、これを所得税並みぐらいに、全く同じでなければならぬとも言いませんけれども、少なくとも三十万というものは十万円ぐらいの格差には、とりあえず来年あたりは縮めてもらうようにわれわれとしては強く要求しているし、これは国民の要望でもある、こういう立場で、その点についての総理のお考えをお聞かせいただきたいと思うわけであります。
  21. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの税だけの点から見まして、国に納めるのも地方に納めるのも同一の人です。そういう立場から考えると、国にはどうももっと所得がある人が税を納めて、地方自治体にはそれよりも低いところで負担がある。どうも納めるほうの人から見ますと納得がいかないだろうと思うのです。しかし、いまの国、自治体のあり方、これはなかなかむずかしい議論だと思うのです。だから地方自治というものを完全に遂行して、中央と全然関係なしでやれるかというと、そうもいかぬだろうと思うのです。けれども、特別な税をつくっているために、やはり税を扱う支出も自治体には相当あるのじゃないか。そんなむだなところ——むだとは申しませんが、ダブっている点も整理されれば、案外所得税と同じようにすることで地方住民税は片づくかもわからない、ここらにも一つの問題があると思うのです。  しかしいま申し上げるように、地方自治と中央と、その関係が一つあるし、それをいかに調整するかということ、それから徴税の事務、その事務がダブらないように、またむだにならないような、もっと簡単に処理できるような方法はないか。そうすると、きょうの新聞に出ているように、「日本経済」のような考え方も一案にだんだん出てくるのじゃないだろうか。これはやはり地方自治をそこなわないで、適当な財源を与えつつも、収税官吏というか、収税費用を別に取らなくて済むような仕組み、そういうものが考えられるのじゃないだろうか、かように私は思います。もっと研究をしないことには、いかにも誤解を受けやすい問題ですし、税の点だけでそれを扱うだけならけっこうですが、いかにも中央集権化をはかろうとしておるとか、あるいは地方自治体の権限を無視するとか、こういうような議論にも発展しやすいことですから、これはもう少し慎重に扱わないと結論が出ないのではないだろうかと思います。  ただ、納める人は、これは国だろうが地方自治体だろうが同一人だ。そのことを考えると、もう少し知恵のあるしかたをしないと、問題をよそへ持っていって議論してはこれは解決されないことだ、かように私は思います。いま、どうしたらいいか、その結論は申し上げておりませんですが、問題の所在のあるところを指摘したというだけにとどめておきます。しかしこのままでいいとは私も思いません。だからもっと簡素な収税方法もあってしかるべきだろう、かように私も思います。
  22. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 問題指摘をされたわけでありますが、私どもは、そういう問題についてはいろいろな問題があるだろうということは十分考えておりますし、特に新しい憲法で保障された地方自治と国の政治あり方という問題については、常にその問題を忘れて考えてはならないということを強く考えるわけであります。  ひとつもう少し端的にお答えをいただきたいことは、現状においてそれはいろいろ問題はあります。しかし片方国の所得税は、平年度では百二万九千円かになっている、それに対して七十二万九千円、そういう開きがある。なるほど地方自治体は貧富の差にかかわらず比較的利益というものは均てんするじゃないか、だから低いところからも出せ、こういわれるのですが、私はどうもこの七十二万九千円というのは、住民税は地方独自の立場で保障された税金ではあるけれども、やはり税金である以上、生活費にまで食い込むようなおそれのあるこういう差というもの、しかも国の所得税との間に約三十万の開きがあるということについてどうお考えなのか。これはもっと何らかの形で、少なくとも近づけていくという努力を、いまいろいろ御心配な点をあげられて問題指摘をされましたけれども、それらをかみ合わせながらも、特に課税最低限という問題は、どれだけの所得のある者までを免税にしていくかというぎりぎりの限度でありますから、それを考えて近づけていく、あるいはいろいろな問題を克服しながら同じようなものにしていく、その辺のところの総理大臣としての、問題指摘だけではなしに、こうしたいということを、現状に照らして、いま私が申し上げたような限度においてその判断のポイントをしぼるとするならばどうか、こういう点でお答えいただきたい。
  23. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまも、結論はきょうの新聞に出ているところあたりが一つの方法じゃないですか、かように申したつもりでございます。その点がおそらく速記録にも載っているだろう。「日本経済」に載っていますね、それは一つの方法だろう、かように思っております。
  24. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 総理大臣でありますから、綸言汗のごとしというか、たいへん慎重に御答弁なされておりますが、その意図されるところは、総理大臣気持ちもわかりますので、これもかなり前向きに総理は検討される、また大蔵大臣等大いに鞭撻してそういう方向に進むであろう、こういうように確認をしておきたいと思うのですが、よろしゅうございますか。
  25. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは大蔵大臣と申しますより、行政の配分が、財源を伴いながら適当に中央、地方で配分されておる、そういうことが前提であっていま申し上げるような結論になる、かように私思いますので、それらの点をも含めて十分検討しなければならぬ。これは大蔵省だけではどうしようもないことだ、かように思います。むしろ地方自治体のほうで積極性を持った処置が望ましいのじゃないだろうか、かように思っております。これはどうも自分たちの独立した財源がほしいという意味のものが多分に働いておる、かように私思っております。しかもこういうものは、課税最低限が国と一緒になるならその不足分はどうしてまかなってくれるかという問題にすぐなろうかと思います。いま付加税やその他の形でずいぶん国が地方に財源的には援助をしておる。私が大蔵大臣時分から見ると、いまもちろん変わっておりますが、それにしてもずいぶんふえてきて、財源の中央から地方に分けるものがどんどんふえておる。これで中央もなかなかむずかしい状態になっているのじゃないだろうか、かように思っておりますから、いまの点はむしろ地方でひとつ処理されたらどうか。それには地方そのものに、徴税費をずいぶんかけていらっしゃるから、そういうものがなくなるので、やはりやり得るのじゃないだろうかというように私は思っております。
  26. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 これ以上論議をいたしませんが、この問題も国民が、所得税はある程度まあまあというところにきた、しかしこれはもう各界各層が、これからの減税の問題について、住民税の課税最低限引き上げというような問題を相当強く出していかなければならないということが、いま非常に強まり、広まって、国民の中の世論になっておる問題でございます。そういう意味でひとつ、総理大臣はもちろん大蔵大臣、自治大臣の上に立つ最高の責任者でございますから、地方自治の問題で自治省のほうからというようなことではなしに、ぜひ大いに最高の政治指導力を発揮して、私が申し上げたような趣旨に沿うような方向に進むように、今後とも御努力をいただきたいと思うわけであります。  次に問題を移しますが、社会保険医療報酬、税制でも経費率がきまっておるのはこれだけなんですね。しかも、昨年あたりも実態調査に近いものを、国税庁でもわれわれのこの委員会にだけ出されたわけでありますが、経費率もかなり下回る、大体五〇%ないし六〇%ぐらいということも言われておるというようなことになりますと、やはりこの問題については国民がどうもおかしいというような非常に大きな疑惑を持つわけであります。私どもも、この制度が議員立法として出された、しかもその背景には医療保険の診療報酬のあり方、一点単価というようなものとの妥協というようなことで、そういう点で不当に税制にしわ寄せしたという政治的な背景があるということも承知をいたしております。しかしこれが全然期限も付されずに、しかもこの問題だけが経費率を法律で定めたというような、どうも税制上も異質なものになっている、しかも非常な過保護であるというような問題も最近指摘されてきておるわけでありまして、そういうようなことから言うならば、これはやはりそういう沿革的ないきさつなども十分配慮しながらその面での改善を急ぐと同時に、できるだけ早い機会にこれを公正な税制に変えていかなければならぬ、もうその時期が差し迫ってきた、このように考えるわけです。片方がだめだからといってそっちが、診療報酬制度というものがいつになったらきまるかわからぬ。特に医師に対する技術評価の問題であるとかいろいろな問題なども比較的熱心にやらない、中医協なんかでだらだら審議をして、いつ果てるとも知れない論議にまかしておくというようなことで、これはそれが解決つかなければだめですというのでは、やはり問題があるわけであります。したがって両面から、そのほうの問題もしかるべき公正な結論をできるだけ早い機会に得てこれを改善すべきだと思うのでありますが、大体そのめどをどの程度に置かれるか、この辺のところを、総理大臣のお考えをお聞きいたしたいと思います。
  27. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 このお医者さんの特別措置についてどの辺にめどを置かれるか、これはなかなかむずかしい。いま私が申し上げるまでもなく、議員立法でやられたことだと思っております。各党賛成されて議員立法でやられた、これがいまのところではたいへんな問題だ。ちょうど堀君がそこに——さっきまでいたようですが、いま出ておられる。よくこういう問題で皆さんの御意見を合わされてしかるべきじゃないだろうか。とにかくこれはいまのところではたいへんな問題だと思います。お医者さんでも、病院につとめる人と開業医とでは特別な違いがある、その不公平だけでもたいへんなものだ、かように思いますので、こういう問題はやはり税の問題として取り扱うべき問題だ。政府がというより、その成り立ち等から申しまして、もう少し掘り下げてしかるべきであろう、かように考えます。
  28. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 大蔵大臣税制の最高責任者として、この問題についてどうお考えですか。
  29. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは広瀬さんも御承知のように、昭和二十九年に緑風会を除く各党一致の議員立法としてできたわけであります。なぜそういうものができたかと申しますれば、医療費の単価問題と深く関連をしてそういう措置になったわけであります。そういうことでこういう特別な立法ができ、今日に至っておるわけでございますから、大蔵省としてもその立法がいいのかどうかということはよく考えております。それで先般中間調査したのです。これによりますと、五〇%ないし六〇%、おっしゃるような数字が出てきますが、これはまだ中間調査です。しかもこの中間調査でありまするけれども、医療費の単価問題がひっからまっておるというので、この扱いをどうするか非常に苦慮しております。いずれにいたしましても、一方において適正な経費率はどういうものであるかということを結論を出し、それが医療費とどういうふうな関係になるのかということを勘案いたしましてこの問題は結論を出すべきものである、こういうふうに考えておるのであります。医療費の単価問題につきましては、これは医療費の根本的改正という問題がありまして、この問題とからまってくる性格だと思いますので、その医療費の根本的改革と関連をさせながら最終的に処置をいたす、こういうふうに考えておるわけであります。
  30. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この問題はいずれまたあとで、大蔵大臣は残られるそうでありますから、その際少しやりたいと思います。  そこで、時間もございませんので、総理に最後に御質問いたしたいことは、これは予算委員会で堀委員も取り上げられてきた、独身未成年者に対して今日の課税最低限三十三万八千六百三十七円という数字は、まだたいへん低いわけであります。これなども踏まえながら、しかもこの未成年者は、納税は全国民の義務だとはいえども、成人に達しない、いわば権利能力のない層であります。しかも大学教育も受けられるほどの余裕もないというような子弟が労働して賃金をかせいでおるわけです。そういう一方において、また学生に対しては国立学校で百二十何万の予算も使う。私立大学の場合でも国費の支出も相当しておる。そういう問題点もあるし、これはやはり今日の佐藤総理の社会開発の一環としても、若い人がほんとうにりっぱに次の世代をになう国民として、少なくとも権利が与えられない段階においては、税制の面でもメリットを受けるというような政治の配慮というようなものはやはり必要ではないか。もちろん、成人に達したとたんにその税負担が急激にふえるというようなことも御心配されておるようでありますが、私はそれがある程度あってもいいと思うのです。成人式を何のためにやるかといえば、ほんとうに国民として、公民権の与えられたりっぱな国民になったんだということを自覚させる意味でもあるのですから、そのことはあまり理由にならないのじゃないか。資格、権利のない未成年者、しかも若くして大学教育も受けないで一生懸命働く、労働の汗を流すというような者に対して、よりよき青春時代、それこそゆとりある青春時代を少なくとも送れる蓄積というようなものも、こういうようなものに対する何らかの配慮があって初めてできるだろうと思うのです。  そういう問題意識において、この問題について何らか、未成年者控除なりあるいは思い切って給与所得等の定額部分というようなものをかなり大幅に上げるというようなことを通じて、未成年者の人たち——もちろん芸能界で年に一億もかせぐというようなのは別でありますが、そういうものは幾らでも切りようがあるのですから、そういうレアケースをいろいろ引用されずに、大多数の未成年労働者、こういうような人たちに対する税制上の何らかの優遇措置というものをこの際、これは佐藤総理の画期的な善政として考えていただけないか、こう思うわけでありますが、いかがですか。
  31. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 だいぶおだてられましたが、しかしどうでしょう。勤労未成年者については実際同情すべき点もある。ただ、未成年者なるがゆえに所得があっても税は払わない、そういう単純なものではないだろう、かように私は思います。(発言する者あり)不規則発言はちょっとやめてもらって……。でありますから、いまのよほど考えるべきものとして考慮するとすれば、勤労未成年者についての最低限はもう少し引き上げて、そうして課税基準を適当なところへおさめる。全然無税にするというわけにはいかぬだろう、かように思います。私は最近の大体の傾向から見まして、所得の課税限度というものはだんだん高くなっている、かように思いますので、そういう点もだんだん解決されるんじゃないか、かように思いますが、いかがでしょうか。ただ勤労所得者といわれると、いかにも気の毒だ、学校にも行けないんだ、どうも税は冷厳なもので、ずいぶん冷たいものだと考えるようにも思うが、その公平なほうをもっと大事に考えないと、あたたかみより以上に、税で公平さを欠くとこれは国民から不信を買う、そういうことにもなろうかと思います。したがって、ただいまのような最低限がもう少し高くなる、こういうような方法があればかっこうかと思います。そういうようなこともあわせて税制調査会でいま検討してもらう。それより以上にはどうもこの際申し上げかねます。よく検討してみます。
  32. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 それじゃこれで総理に対する質問は終わります。  自治大臣せっかくおいでになりましたので、お伺いいたしたいわけでありますが、いまも総理質問をいたしまして、いかにも住民税の課税最低限が——昨年よりは十万ばかりふやしたけれども、今日所得税のほうも課税最低限が上がってまいりました。依然として両税における課税最低限の乖離約三十万はそのままになっているという問題点を指摘いたしました。そうして七十二万九千円というものは、適正水準生活程度というものに支出される消費支出の中にむしろ食い込んでいるのではないか。税は何税であっても最低生活費に食い込まない、生活費に課税せずということが大原則だと思う。これは先ほども申し上げたのですが、毎勤統計四十四年分で三・八九人、すなわち四人家族にもならないもので八十七万円の消費支出をいたしている。これは主税局長のお話によると、若干のレジャーと貯蓄分も入っているということなのでありますが、それにいたしましても、いまのたてまえでは課税最低限は五人家族の場合でございますから、そうしますと少なくとも、二十二万三千円がそのままつけ加わるとも思いませんが、かりに二十万だといたしましても、百七万ぐらいのところが勤労者の平均的な生活費だ、こういうことになるわけであります。それから見ましても、それでは三十万も貯蓄や不必要なレジャーを楽しめるという余裕が別にあるわけじゃない、そういう人たちに対して七十二万九千円の課税最低限を設定されているのはいかにも低過ぎるのではないかということを考えるわけであります。  そこで自治大臣、この問題について、課税最低限はまるまる一致させるということが理想でありますが、今日の段階で諸般の事情を考えれば、地方自治の中には応益負担というような面もかなり濃いのでありますから、そういうことを考えましても、少し乖離が激し過ぎる。十万ぐらいの差という程度ならいまのたてまえでも許されるのではないか。しかし三十万の開きというものでは、最低限度額が絶対的に低いということは大臣もお認めになるのじゃないかと思うのでありますが、この点について、将来この課税最低限所得税課税最低限との関係をどういうように考えていくか、自治大臣の見解をお示しいただきたいと思う。
  33. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 御承知のとおり、住民税と所得税とは税の性格が多少違いますので、必ずしも両税の課税最低限を一致せしめなければならないということは税の性格上考えられないのでございます。しかしながら住民税におきましても、課税最低限には生活上の最低生活費というものを十分考慮しなければならないことはもちろんでございまして、その点は考慮しておるのであります。そこで、いま二十八、九万の差がここにございます。これは差を縮めよという御意見でございまして、われわれもできるだけこの差を縮めたいと思います。しかし一挙にこれを縮めることは地方財政に及ぼす影響等もございます。それは税制調査会の御意見等も伺いながら検討してまいりたいと思いますが、本年度におきましては、昨年度と比較いたしまして、所得税、住民税の間の課税最低限の差というものは少し、ほんの少しでございますが縮まったわけでございます。そこで、縮めようという考え方は十分あるのでございまして、今後ひとつできるだけ地方財政その他国民生活水準等の推移をよく見きわめながら、この差の縮小につとめてまいりたいと考えております。
  34. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 差が縮まったといまおっしゃったわけでありますけれども、その額はもうほんとうに微少なもので、縮まったと大臣がおっしゃられるような縮まり方ではないと思うわけですね。大臣としては、当然所得の差に比例して地方自治の恩恵が国民に及ぶわけでもない。所得の多い少ないにかかわらず利益はかなり平等に受けるという面があるということは私どもも十分承知をしながらも、なおかつ、この乖離がはなはだし過ぎるではないかということを私どもも指摘をしておるわけなんです。  それで大臣、いま地方自治は最近一ころよりはかなり好転した、こういうことで、予算編成の際にいつでも大蔵大臣と自治大臣がいろいろやり合われて、このごろではもう国に金を貸す立場になっている。今日では約九百何十億でございますか、そういう状態でございますね。
  35. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 九百十億ばかり、いわゆるお貸ししておるという状態になっておるわけですが、これはいつときから比べてみれば多少よくなったということは言えるかもしれませんが、しかしこれで余裕を生じたというわけじゃございませんで、やはり地方道でございますとか、下水道とか清掃設備であるとか、生活環境設備等について社会資本水準がまだ低い。これを十分充実強化していかなければならない使命がございますので、こういう点を考えますれば、地方財政は決して余裕を生じたとは言えないと思っていますが、とにかくいま御指摘のとおり、ここ両三年両省間のいろいろの折衝によりまして、九百十億円ばかりのいわゆる借り貸しが生じておることは事実でございます。
  36. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 地方自治の行政水準が理想的な姿にいっているとはだれも認めてないわけですよね。しかも地方自治が地域住民の生活面で非常に密着した諸問題と取り組んでおられるということも考えて、私どもはそういう見方をしておるわけであります。しかし、そういう中でなお国に九百十億も貸しをつくるというところまできているんなら、この際もう少し課税最低限も——先ほどちょっと上がったと言いますけれども、大体去年は所得税の最低限九十一万に対して六十二万三千円、これも二十九万円程度の差ですね。ことしも百一万に対して七十二万九千円ですから、これも二十九万くらい。これはまあ二十八万何千円ということで、ほんのちょっぴり、何千円という程度引き上げだけですよね。だからこういうことではなしに、ことしあたりは当然地方財源とされるべきものを国のほうに召し上げられないで、もう少し抵抗して、こういうところに使うべきではなかったかと思うのでありますが、来年あたりは、昭和四十六年度には一体どの程度まで、国のほうでもまた若干の所得税の最低限の引き上げもあろうと思いますが、少なくともこれよりは大幅に上げてこの差は縮める、こういうお考えと大臣の先ほどの答弁をとってよろしゅうございますか。
  37. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 ただいまも申し上げましたとおり、その差を縮める考えは十分持っております。しかし、地方財政上におきましてもいろいろ財政上の需要もございます。また減税の要望もございまして、彼我いろいろ勘案をいたしまして、いま直ちにどれだけの額を住民税の課税最低限におきまして引き上げられるかということを、ここに具体的数字をもって明言することはできませんけれども、今後税制調査会等にも御検討を願い、関係方面とも連絡、検討いたしまして、できるだけその差を縮めることに努力をいたしたいと考えております。
  38. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この点は総理も、自治大臣に大いに期待しているという趣旨の御発言があったわけでありまして、その方向で十分ひとつ御努力いただきたいと思うわけであります。  そこでもう一つ、これは自治大臣と大蔵大臣の両方にお聞きしたいのですが、国税の一人当たりの負担額、これは単純な算術計算で十年前の三十六年と四十五年と比較してみたわけですが、三十六年の一人当たり国税負担額が二万三千八百四十七円、四十五年は七万一千九百六十七円で、これは三・〇二倍、約三倍ですね。地方税のほうは当時九千七百三円が三万三千四百六十八円となって、これは三・六五倍くらいになっておるわけですね。こういう面から見ましても、いわゆる負担の割合、負担額がそういう倍率でよけいふえているということは、やはり国税よりも地方税が相対的には重税感をつくる一つの問題点になってきたというように言えると思うのでありますが、この辺は一体どういう事情でこういうようなことになったのかといえば、やはり地方税の減税が努力が少しずつ足りなかった、こういうように思うわけでありますが、この点についてどういうようにお考えでしょう。
  39. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 この点は私も正確に数字的に説明する資料をいま持ちませんし、また検討もあるいは足らないかとは存じますが、やはり国と地方との仕事の配分、これに見合いました合理的な税源の配分という点を考慮しなければならないと思います。それにつきましても、ただいまも申されましたような課税最低限に対する引き上げの努力等、いろいろ検討すべき点は多々あろうかと存じますので、今後はそういう面にあたりましても総合的に十分検討する必要もあり、その結果によりましてひとつ負担の合理化をはかる、均衡をはかる、こういう点についても詰めてまいりたいと考えております。
  40. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 これは自治省の事務当局にちょっとお伺いしたいのですが、昭和三十五年の県民税、個人分ですね、これが二百九億だった。ところが四十三年では千八百五十三億で、これはまた驚くなかれ八・九倍、約九倍に近いですね。この間に法人分は三百十二億が九百九十七億ということで、これは三・一九倍ぐらい、こういうたいへんな倍率のアンバランス、約九倍と三倍、これは皆さんは地方税の専門家として、一体どういうようにこの点をお考えなんですか。
  41. 首藤堯

    ○首藤説明員 最近におきます都府県民税と市町村民税の伸率がはなはだしく違ってきておりますのは御指摘のとおりでございます。これは経過がございまして、実は御案内のとおり、昭和三十七年度に所得税から地方の住民税への税源移譲を受けまして、この場合都道府県が非常に財政的に困っておりましたものですから、当時の額で百八十一億ほど住民税を強化をしたわけでございます。現在の都府県民税の二%、四%という率はその際に設定をされたものでございます。それから、その後は県民税及び市町村民税とも、最近になりまして課税最低限引き上げによって減税をいたしておるわけでございますが、特に市町村民税におきましては、三十七、八、九、四十年度、この四カ年間にわたりまして、従前の課税方式が五つございましたものを一つの方式に統一をしたわけでございます。OP1とOP2とかいろいろとり方がございまして、これが各市町村ごとに非常にアンバランスでございましたので一本化をいたしました。そのことによります市町村民税の減収が、合計で当時の金で四百五十億余りになるわけでございます。そういった彼此影響がこのような伸率の相違を来たしておると考えております。
  42. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この期間に、市町村民税の場合には千二百八十億から四千八百六十九億、三・七二倍くらいに伸びておるわけですね。いま都道府県は財源的にある程度ゆとりのある状態になってきた。しかし、それに比べて市町村は非常に苦しい状態、特に過疎地帯などではたいへんなことというようなことで、過般の衆議院を通過した法案等についても、それらについてのある程度対策がなされておりますけれども、この県民税が百五十万を境にして二%、四%という比例税率になっている、こういうような問題について、このままの姿でいくのか、あるいは前のような形に戻すべきか。そういう比例税率の二%、四%というようなものが、このように非常に急激な倍率で県民税負担が増額されてきた、それだけ都道府県の県民税がふえてきたということに何らか寄与しているような気がいたすわけであります。私も地方税の専門ではないものですからよく勉強していないのですけれども、その辺のところの感触、何かありますか。
  43. 首藤堯

    ○首藤説明員 御指摘のような県民税及び市町村民税におきます税率問題もいろいろ議論の対象になっておるのではございますが、最近の動向といたしましては、先ほど御指摘がございましたように、住民税の減税はまず何よりも先に課税最低限度をできるだけ引き上げていきたい、この方向に努力を集中したわけでございまして、財政上の能力的にもそれを第一に取り上げてまいった、こういうことでございます。  それから道府県民税が二%と四%の、わりにフラットな税であり、市町村民税のほうは一四%までのこの累進課税の税率をとっておりますが、このことによりまして、課税最低限引き上げてまいりました場合の両税の伸率、これはむしろ累進課税の状況をとっております市町村民税のほうが、若干でございますが伸び率がよろしいわけでございまして、先ほど御指摘の道府県民税がひどく伸びたというのは、その移譲の問題と、それから市町村民税を統一方式にしてしまったということ、この二つが大きな影響であったと思います。
  44. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いま、そういう都道府県民税は比例税率、また市町村民税は国税の税率に近いような累進課税をやっておられる、こういうような点で、都道府県というものと市町村、同じ自治体、普通地方自治団体であるわけなんですが、その課税方式というものが道府県の場合により有利に働き、市町村の場合に不利に働いている、そういう税率構成というようなもの、そういうところに原因があるのか。あるいは市町村というようなのは、今日問題になっている過疎問題なんかの影響を強く受けているというようなところに問題があるのか。税の立場から見てこの比例税率、累進税率、こういうようなものについての検討をもう一ぺんしてみる時期ではないのか。そういう、最近では都道府県が比較的ゆとりがあるようになったのに対して、市町村がさらに財政的には苦しくなりつつある、しかもやることは山ほどあるというような問題について、その辺のところでこの税収をバランスをとっていくという点で何らかのお考え、構想というものはございませんか。
  45. 首藤堯

    ○首藤説明員 ただいまも申し上げましたように、都道府県民税が二段税率、それから市町村民税がかなりな累進税率ということをとっておりますことによって、市町村民税の伸率が落ちるということを申し上げたのではございません。むしろ若干でございますが、逆でございます。したがって、そのことによって市町村民税のあれが非常に落ちたという事実はないわけでございます。最近、道府県関係の税収がかなりよくなってまいりましたのは、これも御案内のとおり、法人関係の税収がかなり府県で多い、こういうことに根ざしておりますし、市町村税関係の伸率があまり芳しくございませんのは、固定資産税等の伸びが鈍い、こういうことにも影響があるわけでございます。  なお、全般的には、まだ地方税収入は御案内のように全地方歳入の決算では四〇%にも及びかねるというような状況でございますので、その点も、特に府県に対してたくさん税が入っておるというようには私ども考えていない次第でございます。
  46. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いま参事官がおっしゃったことは、市町村等でいわゆる標準税率を超過して税率をきめているところが非常にいまでも多いですね、こういうものを前提にしての御議論ではないかというように考えるのですが、いかがですか。
  47. 首藤堯

    ○首藤説明員 御指摘のように、住民税におきましてはかなりの団体が標準税率超過課税をいたしておりますが、そのことにかかわりなく、税率あり方として考えてみました場合に、この税率のとり方が違うゆえをもって市町村の率が下がる、こういうことはないと思います。
  48. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この、いわゆる超過税率適用問題というのはかなり大きな問題だと思うのですが、この問題については大臣、どういうようにお考えでしょうか。
  49. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 超過税率は、地方において必要なものの経費を自主的に支弁させるという必要上から出ておるわけでございます。しかしながら、慢然と常にこれにたよっていくということはとるべきではないのでありまして、本来の税率の趣旨に応じまして運用を適切にするように指導をしてまいりましたし、今後ともその指導を強化してまいりたい。慢然とこれにたよることは改めていきたい、こう考えております。
  50. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 これはぜひひとつそういうことで努力をしていただきたいわけでありますが、きょうのこの日経に、国税と地方税の関連の問題で、大蔵省筋は所得税と住民税の課税最低限を同一にしたい、両税の課税対象年次が違う、これは地方税は前年を基準にする、こういうことを同一年次にしたいということ、それから徴税事務を、国の税務署か都道府県、いずれかに集約をするという、こういう考えが大蔵省筋にあるということが新聞に出ておるわけであります。自治大臣としては、この三つの問題点、つまり徴税事務を一元化するという問題、それから同一年次で課税所得を押えるという問題、さらに課税最低限は両税とも一本にしたいという考えがあると聞くわけでありますが、これら三つの問題点についてどういうようにお考えか、御所見を承りたいと思います。
  51. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 住民税を前年度課税、所得税と同じにしようということは理想であり、そうしたいとも思いますけれども、現年課税として基準を同じにすることには、これは源泉の納税義務者に、事務的に、地方税の税率がいろいろ違っておる点等がありまして、非常な負担を課するというような点がありますので、いま直ちには行なわれない。  課税最低限のことは、ただいま申し上げたとおりでございます。  徴税につきまして互いに協調しまして、簡素化をはかっていくということは、これはけっこうなことだろうと思います。お互いに研究をいたすべきだと思います。しかしながら地方税には地方税としての独立の立場がございますので、これの自主性をなくすような形、あるいは実質的にそのようにする形、すなわちこれが、徴税機構の一本化等が発展しまして、地方税が昔のように付加税的な制度、機構というようなことは、いまどうか。この点は、そういうふうにいくことが必ずしもいいとは考えておりませんので、その点は、自主性をあくまでも保っていきたい。それを害さない程度におきまして、おいおい、徴税の手続を簡素化する等はいまもある程度やっておるわけでございますが、さらに、その自主性をそこなうことなく、具体的にいろいろな方法を検討し、研究をしたらよろしかろう、こう考えております。
  52. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 大蔵大臣にお伺いしたいのですが、この所得税、住民税の問題について、課税最低限を同じレベルにしたいということ、これはこれだけ有力紙の第一面に出るわけですから、大蔵省としてもある程度固まったお考えなのではないかと思うわけでありますが、所得税と住民税との間における課税最低限をほぼ同じにしたい、同一にしたいという表現でここにあるわけなんですが、この問題については、大蔵大臣としては、どのようにいまのところ構想を持っておられますか、御所見をお伺いしたいと思います。
  53. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、まだ新聞を見ておらないのですが、いま広瀬さんから伺うところによりますと、まず課税最低限を中央地方一緒にしよう、こういう点が書かれておるというのですが、これは理想としてはそうあるべきだと思います。しかし、いま自治大臣もおっしゃるように、地方財政の現状からしまして、一挙にそこまでというのはなかなかむずかしい。しかし漸進的にそこへ近づけていくという努力は、いま自治大臣も言明しておるとおり、ぜひ私どもとしてもやっていただきたい、こういうふうに考えております。  第二点の問題、つまり中央地方の税制並びに徴収事務の一元化、こういう問題、これは私は、非常にそこに問題がいま実際にあると思っております。つまり、いま国の徴税費また地方の徴税費、これは非常な格差があるわけです。これは、たいへんな格差、何倍という徴税費が地方税にはかかっている。しかも徴税公務員が、地方では約八万人もおりますが、納税者というものは、これはもう国も地方も両税において同じ人なんです。したがって徴税費がそれだけ地方でかかるということ、それはそれだけ国税においても煩瑣な手数がかかっている、その上に地方においても何倍かの手数がかかっているのだということを示すものだ、こういうふうに思います。そこで、何とか中央地方を通じて税制上また徴収上において、これを相協力して総体として縮めることはできないかということは、今後の中央地方を通ずる税制の、これはもう一大焦点である、こういうふうに私は考えているわけであります。もとは付加税方式というようなことがあって、地方税は非常に簡素に決定せられて、その徴収にあたりましては、逆に国が地方にその徴税を委託するというようなことであって、その中央地方を通じての納税者との関係というものはきわめて簡素であった、また明快であった、こういうふうに思うのですが、今日は非常に複雑な事態になってきている。これは私是正しなければならぬことだ、こういうふうに思うのです。ただ地方自治団体あるいは国会の一部に、あまり中央地方の一元化というようなことが行き過ぎると、地方自治の精神、地方自治の自主性、独立性というものを阻害する、傷つける、こういうような御意見もあるようですが、私は決してそういうことにはならぬと思うのです。徴税の、あるいは税制の事務を一元化する、こういうことによって、決して地方自治がそこなわれるようなことはあるまい、こういうふうに考えますが、何かそういう抵抗感というか、そういう感触を地方の方あるいは国会の一部においてお持ちのようであるが、そういう観念は、もうぜひ是正していただきたい、こういうふうに思うのです。これは非常に大事な問題でありますので、そういうような点については、ひとつ自治大臣とも今後よく話し合ってみたい、こういうふうに考えております。
  54. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 地方税と国税の関係について、いま徴税の一元化というようなことについては、わりあい明快な御答弁があったわけです。  そこで、ちょっと先ほども申し上げましたけれども、地方自治の財源から、すでにもう九百十何億というものを国が借り上げの形で引き揚げてしまっている、こういうことが、やはり今度の課税最低限引き上げなどについても、きわめて不十分なものにした一つの原因になるのではないかというように考えるわけであります。そういうことでございますから、やはり自治大臣も、課税最低限は、国の所得税課税最低限にできるだけ近づけていきたいということを表明されたわけでありますから、そういう努力に対して、大蔵大臣が、国のさいふを握る立場において、いつでも予算編成期に地方財源を引き揚げてしまうというようなことは、これはやがて返すにしても、その年その年のそういう税制改正というようなものを不十分なものにするところにもつながるわけでありますから、その辺のところは十分ひとつ両大臣で御検討をいただいて、もちろんこれは、非常に大きな、いわゆる中央集権的になってはいけない、地方自治というものはもう憲法上保障された住民自治の本旨に従ってやっていくんだという立場、さらに事務の分配というようなことなんかもどう適正にやっていくかというような問題なんかもからんで、なかなかむずかしい問題点はあるにしても、できるだけそういう方向で、理想の方向に向かって前進をするように御配慮をいただきたいと思うわけであります。  そこで、最後に自治大臣に伺って、それが終わりましたら帰られてけっこうなんですが、個人事業税の問題であります。これは中小零細の個人事業者からは、昔から長い歴史があるわけでありますが、これはもう二重課税であって、廃止してほしい。しかも担税力の弱い者からそういうものを取るというのはけしからぬではないかというようなことが・ずっといわれているわけであります。若干ずつ事業主控除というようなものも引き上げて、今回も五万円引き上げられて三十二万円まではきたというようなことなんでありますが、この点について、自治省当局としては、この事業税ももっと税率を下げるなり、あるいは事業主控除をもっと引き上げるなり、こういうようなことについては、いまどういうようにお考えでございますか。
  55. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 御承知のとおり、事業主控除を四十五年度は大幅に引き上げまして、ただいまおっしゃったとおり、三十二万円にする予定でございます。従来も、専従者の控除につきまして、あるいは完全給与制の実施というようなことにつきまして、いろいろ努力をしてまいったのでありますが、今後といえども、中小企業者に対する税負担の軽減につきましては、十分関係方面とも検討いたしまして、軽減につとめてまいりたいと考えております。
  56. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 自治省、けっこうでございます。  そこで、今度、あと幾らも時間がないのですが、大蔵大臣、この配偶者の控除からは——個人事業者に、いわゆる事業所得者に対して配偶者の取り扱いが、青色申告者についてはまあ完全給与制になった、こういうことで、いわば理論的には、それほど常識を逸脱しない範囲では何万円の給料を出したということになってもいいわけでありますが、同じ事業をやりながら、なかなか夫婦かけ向かいで商売をやっておって、まだ記帳等も十分できないものだから、白色申告しかやれない。これは、いわゆる配偶者控除を受けるにすぎない。こういう問題の間における取り扱いの差というものはあまりにも激しくなり過ぎ、はなはだしくアンバランスになり過ぎているのではないか。こういうふうに考えるわけですね。この点については、白色申告者にも、やはり少なくとも給与を常識的な線で出すということについて、同じような取り扱いをしても私はいいのではないかと思うのですが、この点はどのようにお考えでしょうか。
  57. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま青色申告、白色申告、こういう制度があるわけでありますが、私は何とかして、全申告納税者がこれは青色申告になってもらいたい、こういうふうに考えております。それには、何がしかのメリットを青色申告のほうに与えていかなければならない、そういうような見地からいたしますと、ただいま問題とされております青色申告者には専従者給与の控除を認める、これは私は一つの有力なる手段であるというふうに考えます。同時に白色申告の人の課税は、これは青色申告に比べますと、まあきわめて大ざっぱなものに実際はなっておると思うのであります。その中で配偶者だけを取り上げてその控除を認めるということは、これはいかがなものだろうかというふうに考えます。せっかくのお話しでございますが、白色の者に対しまして配偶者の専従者給与の控除を認めるということは、これは私はいまこの段階で、そう考えてみようというような気持ちになれません。
  58. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 理由としては、青色申告をふやすというだけの理由なんですね。やはり税制における公平の原則からいけば、この取り扱いというものは、もっとそういう角度から検討してもいいことではないのか。これは国の都合だけで割り切ってしまって、青色申告がみんなに普及して一〇〇%やれるようにという、政策目標だけで課税の公平というものをそこまで害していいか。いまは、たとえば月給を三万円かりに出すといたしましても、年には三十六万、ボーナスを入れれば四十五万にも五十万にもなり、片方では十八万くらいだ、こういうのでは、政策目標を追求するといっても、その間における公平というものが犠牲にされる、あまりにも高価な犠牲ではないのかという点を心配するわけなんです。もう少しそういう点で——この政策意図はわかりますよ。私どももそういう方向は、青色申告をふやしていきたいという気持ちはわかります。わかりまするけれども、それにしてはあまりにも高価な犠牲を負わしているではないか、こういうように考えるのですが、何らかそこらのところ、いい知恵はありませんか。
  59. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま配偶者というふうに申し上げましたが、配偶者ばかりじゃない、専従者全体についての問題でありますが、白色の場合には、だれが一体ほんとうに専従者であるかというような判定が非常に困難です。事実上そういうふうな困難が伴う。同時に、先ほど申し上げましたとおり、そういう問題について青色、白色の間に何がしかの差別がある。これは私は、これから税制を育てていく、りっぱなものに育てていくという上におきまして、たいへん理由のあるところではあるまいか、そういうふうに考えるわけであります。何かいい知恵はないかというお話でございますが、いま私はいい知恵がありません。またいい知恵でもありましたら、ぜひお聞かせ願いたいと存じます。
  60. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いい知恵は、私どもはやはり白色に対しても、給与制をとってもそう問題はない。やはり白色には白色として、これはやりたくてもやれないという人なんですから、そういうものがやっぱりできるだけ残らぬように、お互いにこれは努力はするけれども、そのことだけで、そういう税制における不利を与えることによって公平を害するという代価の中でそういうものを促進するというのは、別な方法がこれはあるはずなんです。指導行政ということもあるのだし、そういう面をもっと充実するというようなことなどを通じてやっていただくように、ぜひひとつ要請をいたしておきたいと思うわけでございます。  それから、きょうの時間もあと十分くらいなんですが、今度法人税について、昭和四十年、四十一年に引き下げた、二カ年にわたって三%引き下げられた税率を、留保分についてだけ五%引き上げをする、こういうことで一・七五だけ前に戻したということになるわけでありますが、実際には一・七五ふえたのではなくて、もっと、おそらく一・一%ぐらいだろうという計算も成り立つようであります。それだけしか前に戻さない、こういうことなんでありますが、そういうことを考え、しかも今日ではもう——あの四十年、四十一年のときにはまさに不況対策ということで、いわゆる景気に対する刺激をこういう面からもつけたいということなんでありますが、今日ではもう過熱を心配されて、いろんな手を打たれておるわけです。金融引き締めもやり、そしてまた輸出貿手、いままで聖域みたいにされておった輸出貿手の割り引き率も引き上げるというようなことまでやっておる。そういうようなことを通じて景気の鎮静化をはからなければならぬというような時代には、一%か、まあ大蔵省が表面上言われておるような一・七五%上げたというようなことでは、そういう点についてもきき目はまずないのではないかと思うわけであります。実際に法人税の負担率というようなものも、諸外国に比較しても低いことはいまさら数字をあげて申すまでもない。そういうようなことでありますから、前に四十年、四十一年、二回にわたってやったものを、少なくともここ一両年で、まあことし一・七五やったとするならば、次の段階ではさらに一・七五ぐらいまた明年度においてもやる、こういうような形でいって十分差しつかえない、こういう考えを持つわけなんですけれども、しかも二年だというように年限も切りまして——これは大蔵大臣、どうなんですか、二年たったらもうもとに戻してしまうんですか。それとも、これをさらに二年間はそういうことでやるということ、二年たった後にどういう措置をとられるかということ——これはもちろん経済がそのときどうなるかということでありますが、そのことだけに逃げないで、経済社会発展計画なんかでも、これから一〇・六%ずつ実質上がっていくだろうという見通しも立てておられるわけですから、そういう状況というものを土台にいたしまして、二年後は一体どうなさるというのか、その辺のところをひとつ……。
  61. 福田赳夫

    福田国務大臣 二年の時限立法になっております一・七五%の法人税率引き上げ、これを二年後においてはどうするかということにつきましては、広瀬さんが御指摘のように、二年後当時において見通される経済情勢をよく勘案いたしまして、これを存続するのか、あるいは軽減するのか、廃止するのか、あるいはさらに増税するのか、そういうような点を考えてみたいと思います。それから同時に、これから将来のことを今日展望しますと、これは財政は膨張すると思うのです。それから国民税負担というものも幾らか上がっていく傾向を持たざるを得ない、こういうふうに思うのです。しかしそれにもかかわらず、所得税におきましてはこれを軽減せよ、こういう御要望がある。その問題もまっ正面から取り組まなければならぬ。そういう際にどうするか。つまり財政は膨張します、また所得税減税はしなければならぬ、そういうものに対して、その財源を一体どうするか、こういう広い税制問題が当面われわれの課題となってくるわけであります。そういうような諸問題もからめて、総合的にひとつ考えてみなければならぬ、そういう問題でもある、こういうふうに考えておるのであります。これらの点につきましては、税制調査会、また皆さんの御意見、こういう各方面の意見をよく伺いまして適正な結論を得たい、そういう考え方であります。まあ具体的な法人税率の問題は二年後の時点においてきめる、こういうふうに申し上げるほかないだろうと思います。
  62. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 絶対的に法人税の負担割合というものは、諸外国から見ても日本が一番安くなっておる。地方税を含めた段階で考えてみましてもなおかつかなり低い。アメリカの四八%に対してやっとこ四〇%程度である、地方税を含めても。そういうことにも相なっておるわけでありまして、やはり担税力というものは十分日本の法人、特に大法人の場合にきわめてゆとりのある状況にある、こういうことを考えて、もう少しこの問題については、これから増大する高福祉高負担というような時代を迎えて、やはり担税力のきわめて豊かなところにもつと目を向けていくということ、単に間接税増徴というような方向だけを示唆されるのじゃなしに、こういうところにも目を向けていっていただきたいということを強く要請をいたしておきます。  そこで、今回の租税特別措置で懸案の、毎年毎年もうずっとここ十数年来続けられておる利子・配当の問題について、一応四十五年度は大体現状どおりでありますが、四十六年から五カ年間で、大体の長期の見通しに立って現状より一歩進めた改善をする、こういうことが利子・配当それぞれについて出てきたわけであります。そこでいま私ども考えるのは、こういうことで五年の期限を付したということで、その期限が到来した先もまたこれと同じ程度のものをやっていくのか。これはきわめて緩徐な、いわゆる激変緩和の立場でやられたと思うのです。それについても私どもは非常に不満があるわけですが、これについて五年たったらどうするかということも、これは私どもとしては重大な問題だ。それ以前に、今回の措置そのものについていろいろ問題があるわけなんだけれども、それは一応さておいて、それで五年先にはまた様子を見る、そしてまた、大体最後の三年のところでやるものを、ずっとまたこう期限を延長していくというようなことはよもやなさらないだろう、こういうように考えるわけなんですが、その点については、大臣、明確にひとつ方針を出しておいていただきたい。
  63. 福田赳夫

    福田国務大臣 今回はいつもの時限と違いまして、わりあいに長い時限で法改正をお願いしておるわけであります。これはやはり納税者に一つの展望を与えておいたほうがいいだろう、こういうふうに思いまして、五年の間は少なくともこういう形でいきますよ、しかしその中途の二年目というところはこういう変化がありますよということをはっきり頭に置いて経済活動をしていただく、こういうことで長い五年という時限にいたしたわけです。  さて、その五年後のことを一体どうするか。これはそのときの情勢でよく判断してみなければならぬことでございますが、その時点における国民の皆さんの御意見を広く伺いまして、適正な結論を得るようにしたい、こう申し上げるよりほかは今日ではないわけであります。
  64. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この問題は、また各委員もあとからやられることでありますので、その程度にしておきますが、大体五年先にはこの配当・利子に対する優遇というものはもう一切なくなるのだ、こういうことが当然の前提にならない限りは、私どもとしては今度の改正案にとても賛成するわけにもいかぬし、その中身についてもいろいろ問題点があるわけなんですが、そういうように五年というような長期にわたって今度やられたわけですから、少なくともそのあとまた同じようなものが残るというようなことはないように、もうこれだけでも国民の税に対する考え方というものがかなり好転するだろうと思うのです。こういうものがすぱっとその段階ではなくなりますよということになれば、国民の納税意識というようなものも、こういうようなところから一つ一つほぐれて、喜んで納めるというような時代も来るわけで、そういうための努力を十分期待いたしておきたいと思います。  次に、この前阿部委員も取り上げた問題で、ひとつだめ押し的に確認をしておきたいわけですが、貸し倒れ引き当て金は今日全体的に一兆一千二百二十九億もある、こういうことになっております。そのうち特に金融保険関係だけでも五千五百八十八億という巨額にのぼっておるわけであります。この実際に引き当てをしている額というものはほんとうに、〇・二%とか〇・三%とかいうようなきわめて少額である。こういう引き当て金が無税で、いわば内部留保として企業活動にきわめて大きなプラスになっておる。これはもちろん課税の繰り延べだという説明はあるわけでありますけれども、少なくとも金利のつかない自由に使える金が内部にそれだけ蓄積されている、それを税制で見ておる、こういうことになっているわけでありまして、これは一般的な租税特別措置に対する国民の側からいろいろ問題にされる点で、そういう実態からいっても今日これはきわめて不当なものになりつつある、過保護であるということになりつつあるわけですね。この問題については本会議でもいろいろ行なわれたわけでありますが、具体的にこれをどうなさるという考え方、これを大蔵大臣としては固められておるだろうと思うのですが、この点をひとつはっきりさしていただきたい。
  65. 福田赳夫

    福田国務大臣 貸し倒れ準備金の率は昭和三十九年の税法改正によりまして今日のようになったわけですが、それ以前は累積方式と申しますか、それがその改正によりまして当該年度の貸し倒れの総洗いがえ、こういうふうに相なったわけなんです。そういうような制度改正がありましたので、当時きめられた今日の準備率は、どっちかというと幾らかゆとりを持ちながらきめられた感があるのではあるまいか、そういうふうに見ておるわけであります。そういうふうに見ておりますので、この問題はまさに広瀬委員の御指摘のとおり、検討してみる必要のある問題でありますので、再検討いたし、実績を見まして、必要がありますれば改正をいたしたい、かように考えております。
  66. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 ぜひひとつこの問題は積極的に——やはり先ほど申し上げた一兆一千億のうち大体半分は金融機関が占めておる、そのほか各業種にわたっておりますけれども、それは何十業種というところにあとの半分があるので、この問題も、問題のあるところもほかにもあろうと思いますが、特に金融機関の場合に非常に過保護になっているという点を十分着目して御努力いただきたいと思います。  それから、先ほど総理にも御質問した輸出振興税制の問題、これについて、来年期限が来るわけでありますが、大蔵大臣、いま率直に——これは廃止の方向でということも四月八日の新聞に出ておるわけなんです。「輸出振興税制の廃止、大蔵省方針、来年三月末期限切れで」こうなっているわけでありますが、このようにすかっといきますか。その辺のいまの大蔵大臣の構想を……。
  67. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま日本の貿易収支その他国際収支、これが非常に大幅な黒字である、それで外貨手持ち高が急増する、こういうことから、国際的に日本の経済運営につきましていろいろ批判が出ておるわけであります。その一番のものは何といっても輸入制限の問題、第二は関税その他非関税障壁の問題、それから外貨保有高とは関係は薄いのでございますけれども、資本の自由化の問題、この三つの問題が非常にうるさい問題になっておるのです。それからさらに、その三つの案件ほどではありませんけれども、ぼつぼつ問題視されるのは輸出優遇という問題でありますが、その中でも輸出優遇金利ということが特に話題になるわけであります。  それで第一の問題、第二の問題、第三の問題、この三つにつきましてはそれぞれ、わが国は外国から批判されるまでもなく、わが国自体の立場から積極的にそういう姿勢を持ち、逐次段階的に自由化の方向を進めており、また今後もさらに努力をするつもりでございますが、それらに比べますと比較的話題の少ない輸出優遇問題、その中でも金利問題、これは前三者に比べるとそれほどの批判はございませんけれども、税の問題に比べると批判が多いのです。そこでこれは是正をするという方針をとり、先日日本銀行で輸出貿手の金利引き上げを行なうということにいたしたわけでありますが、税の問題については、話題にはなりますけれどもそれほどの抵抗をいま受けておりません。おりませんが、わが国は、とにかくわが国の国是といたしまして貿易の自由化、これの世界的動きの先頭に立つべき立場にあると思うのです。それがこの資源の乏しいわが日本の国益である、こういうふうに考えます。そういうふうな観点から輸出優遇の措置としての税制問題、これも考えてみなければならぬ問題だと見ておるのであります。四十六年にこの優遇措置の期限が一応来るわけですが、そういう一般的情勢でありますので、それより早い時期にこれを変更する必要をいま感じておりません。しかし、その期限到来の時期には、ただいま申し上げましたような方向でこれをどうするかということを検討してみたい、こういうふうに考えております。
  68. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 主税局長にちょっと数字の問題をお伺いしたいと思うのですが、日本の企業は十期にわたって増収、増益を重ねてきておる、こういう中で輸出優遇税制を受けるメーカー及び商社、こういうようなものの収益というものは、一般的な増収、増益というものをかなり——特に輸出の急テンポの増大という形、しかもそれに加えて、輸出でもうかればもうかるほど税金は安くしてやるということになっておるわけでありますから、かなり企業収益率というものも高くなっておるのじゃないか。増収、増益が一般よりも水準が高いのではないかと思うのですが、そういうことについてお調べになったことはありますか。
  69. 細見卓

    ○細見政府委員 輸出企業が特に収益上有利になっておるかどうかというのは、一般経済現象としてわりあい輸出が有利になってきたとかいうようなことで承知はいたしておりますが、特に輸出割り増し償却の適用になる企業とその適用にならぬ企業との間に差があるかどうかというところまでは、検討はまだいたしておりません。  なお、輸出割り増し償却がわりあい早いテンポで増大いたしておりますのは、輸出割り増し償却の対象になる企業が、商社のようなものからメーカしになるとかいうような形で、償却の対象になる機械、設備が多くなってきておるという点もございますので、その辺はいま少し検討いたしませんと、特別な印象はいまのところ持っておりません。
  70. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 しかし、そういうことについても、これは租税特別措置法を論議する際に輸出振興ということはいつでも言われることなんです。これは輸出を増大させるという政策目標に奉仕するわけでありますが、それじゃ、一体この税制がどれだけ輸出振興のために役立ったのかという積極的な証明はない。とにかく現実に輸出は急テンポで、高い成長率で、二〇何%というようなことで伸びてきておる。それにかなり役立っておるであろうというような推理をするだけで、これだけのメリットをつけてこれだけ政策目標に貢献をしたというような、そういう証明というのは常に行なわれないものだということであるわけなんですが、そういう問題について、主税当局としても、国税庁当局としても、そういう政策効果にどれくらい寄与したかということは、この制度を出した以上は、もっと関心を持ち、調査もし、そういうものが政策効果、政策目標にどれだけ寄与したかというようなものを、やはりわれわれに証明できるように常に準備をして——これはこれだけの問題に限りませんけれども、していただきたいと思うわけです。  それから、先ほど大臣のお答えにもありましたように、非関税障壁との関係がこの問題ではあるというお話でありましたけれども、現にその中でも輸出優遇措置というものに対して金利の問題が特にあるということを言われたわけでありますが、税制の問題はそれほどでもないというのですが、最近ではやはり、各国ともわが国のこういう税制に目をつけてきた傾向が見られるということでありまして、ガットの工業品貿易委員会NTB第一作業部会というところでも、もうカナダあたりが輸出振興税制措置について、特に割り増し償却あるいは準備金、こういうようなものについて、あまりにも輸出のインセンティブになっておるのじゃないかということを言い出してきている。これは単に金利という問題だけでなしに、こういう問題に対しても、過度に貿易の振興というものに国が力をかしておるということで、NTB部会でありますから、そういう問題を中心にやるわけですね。こういうことで、かなりそういう点の問題も出てこようかと思うわけであります。それで、自由化の問題の中では、やはり非関税障壁の問題もだんだん少なくしようという努力もなされていかなければならぬわけであるし、これは相対的なことであるけれども、こういう問題点も踏まえて、かなり思い切った改廃というものを期限到来と同時にやっていいのじゃないか。もう日本の企業はそこまで力もついてきておる、輸出の力というものも、海外競争力というものもついてきているのだ、こういうことにしていいのではないか。しかもたまり過ぎそうな外貨に対して、それをどう使うかということが政策課題として非常に重要性を帯びてきている段階では、これほど税制における公平の原則を阻害する過度な優遇というものはもうそろそろやめるべきだ。期限が来年到来するのですから、まあそれまでにやれとは言いませんけれども、この一年間にこの点は十分検討されて、よき結論を出されるように要望いたしたいと思うわけでありますが、もう一度大臣の気持ちを端的に表明していただきたい。
  71. 福田赳夫

    福田国務大臣 私、先ほど申し上げましたとおり、日本の国はもう自由貿易の、自由化の先頭に立つべき立場にあり、それが国益である、こういうふうに考えますので、あらゆる面にわたって、わが国のみがそういう封鎖的な政策をとるというようなことは、あっては相ならぬというふうに考えるわけであります。一つ一つ外国の状況ともにらみ合わせながら検討していきたい。その中におきまして、輸出の優遇策、これにつきましても、急というわけにはなかなかいかぬと思いますが、逐次ということになりましょうが、ひとつよく検討をしていきたい、かように考えます。
  72. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 だいぶ時間も予定より過ぎましたので、大臣の御都合もあるようですから、きょうの質問はこれで終わります。
  73. 毛利松平

    毛利委員長 午後二時再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時四十七分休憩      ————◇—————    午後二時六分開議
  74. 毛利松平

    毛利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。平林君。
  75. 平林剛

    平林委員 初めに基本的な問題でありますけれども一つ、二つ大蔵大臣の御所見を承りまして、本題に入ってまいりたいと思うわけです。  今回の昭和四十五年度税制改正のポイントは三つありまして、一つは中堅給与所得者を中心とする所得税減税、二つには法人税の負担引き上げ、三つには利子・配当課税の改善合理化、こういうことになっておるわけでありますが、法人税の負担増加は十八年ぶりというお話であります。二年間の臨時措置ということがうたわれております。しかし、私がお尋ねしたいのは、この法人税の負担増加の法律的な手続を、法人税法改正によらず租税特別措置法改正という形で提案をされておりますことは、どうも従来の経緯から見て筋が通らぬじゃないか、こう思うのでありますけれども大蔵大臣の御説明をいただきたいと思います。
  76. 福田赳夫

    福田国務大臣 今回の法人税は、その経過が他の税に比べましてかなり唐突的に出てきているわけなんであります。総選挙中にそういう議論が出まして、多少うわさ程度のことがあったのでありますが、私がこれを正式に取り上げて検討に入りましたのは総選挙が済んでからなんです。そこで一体法人税率を固定的に動かす、こういうことになりますとかなり慎重な配慮を加えなければならない、かように考えたわけでありますが、景気の情勢もあり、まあとにかく金融政策との調整もはからなければならぬ、そういうようなことで、とにかく二%程度引き上げをすべきか、こういうふうに考えたのであります。そういうようなことで、恒久税法としての法人税率をいかほどにすべきかということをきめるという趣旨でなくて、臨時応急的に、この景気調整考え方といたしまして法人税率引き上げる、こういうことにいたしたわけでありまして、したがって、これを本法に入れないで特別措置に入れる、こういうふうにいたした次第でございます。
  77. 平林剛

    平林委員 今回の法人税の負担率、税率、これが唐突なところから出発しているというのでありますけれども、必ずしもそれは当てはまらない。なぜかというと、しばしばこの委員会におきまして、わが国の法人税の税率は諸外国に比べて必ずしも高くはない。たとえていえば、アメリカは四八%、イギリスは四五%、ドイツは五一%、フランスは五〇%ということから見ましても必ずしも高いとは言えない。また税制調査会においてもしばしば、わが国の法人税率は高いとは言えないということが答申の中にもうたわれておったわけでございますから、そういう意味では、長い間この税率については議論のあったところであると私どもは思うのであります。いまのお話から見ますと、税率をきめる場合は慎重でなければならぬ、こういうことでございましたが、私はもう一つの疑問として、今回は、大蔵大臣説明のように、かりに租税特別措置として、経過から考えてやるとするならば、いわば非常に臨時的なものであるということは言えると思うのですけれども、それならば、昭和四十年と四十一年とにおいて法人税率はそれぞれ二%、一%、合計三%引き下げましたね。これは当時の経済的事情から見て、きわめて政策的な意図を持って、不況脱出という大義名分もございまして税率を変えたわけですね。あのときは法人税法改正でやった。今回は特別措置でやった。政策的な見地からいえば、前回のほうがむしろ租税特別措置的ではなかったか、こういう誓い方もあり得るわけでございますね。これらの矛盾はどうお考えですか。
  78. 福田赳夫

    福田国務大臣 あのときはかなり前広に検討いたしまして、そして結論を得た。今回はもう一、二カ月の間で、二カ月というくらいな余裕もなくきめざるを得なかった、こういう事情があるわけなんです。御承知のように、わが国におきましては企業の蓄積が非常に少ない、この点に問題があるわけで、法人税率が高い高い、こういうお話でありますが、企業に蓄積を与えなければならぬという問題があるわけであります。これを一がいに諸外国と比較するということもできませんし、そういうようなことから、企業といわず個人といわず、わが国におきましては総体としての税負担は諸外国に比べまして非常に低くなっておるわけです。ですから、平林さんがおっしゃるように一がいに諸外国と法人税率を比べまして、これは低いのだということをもってわが国の法人税率を論ずるわけにはいくまい、こういうふうに考えますが、とにかく今度はそう精細な検討をする余裕がなかった、こういうことで御了承願いたいと思うのであります。
  79. 平林剛

    平林委員 そういう意味であるならば、先ほどお話しがあったように、法人税の負担としての税率をきめる場合はきわめて慎重でなければならぬ、こういうことから考えますと、今回の税率は恒久的なものではない、臨時的なものである。もう一つ昭和四十年、四十一年、これはいわば特別的な政策として不況脱出ということでやられたのであるから、現行法人税率の三五%というのも、わが国の法人が負担すべき税率としてこれが正しいのだ、これが妥当である、こういうものでもない。こういうふうに理解をすることができるわけでありますけれども、これはいかがでしょう。
  80. 福田赳夫

    福田国務大臣 今回の場合と比べまして、四十一年度はかなり前広に精細な検討をいたしたのです。それで当時私ども考えましたことは、一つは景気調整という問題がある、一つ企業の蓄積という問題があるわけです。そういうような二つの見地から減税をいたした。こういうようなことでありまして、当時の考え方といたしましては、三五%という基本税率は妥当なものである、こういう見解に立ったわけです。ところが今回は、当時妥当と考え税率ではありまするけれども、景気調整上ここで考え方一つ新しく加えなければならない、こういうようなことでございまするが、しかし何にいたしましてもとっさのことでもこれあり、恒久的な税率というところまでこれをきめかねたというのが実情であります。
  81. 平林剛

    平林委員 法人税の負担については、今回の改正で留保分の税負担引き上げられた。これはいま私議論したとおりで、どうもちょっと納得いかぬ点があるわけでありますけれども、配当の分についての負担は据え置かれたわけですね。かりに昭和四十年、四十一年の税率は、いま、法人税としてはその当時は妥当と思ったけれども、今度はいろいろな事情もあって、それを取り戻すというような意味もあって議論が進められてきたと思うのですが、配当のほうの負担は据え置かれている。これは一体なぜかということなんです。株価の状況を見てみますと、昭和三十九年当時の平均は大体千二百五十二円、昭和四十年の七月、例の山一証券の問題が起きたときは千四十六円。しかるに現在、昭和四十五年一月現在で見ますと、二千三百二十六円。株界の状況についても非常に変化がある。法人税負担のほうの増加は臨時的に、唐突の間でもあるから、昭和四十年、四十一年の改正についてのいろいろな議論はあったけれども、それの取り戻しという意味でここに若干の引き上げが行なわれたとするならば、この配当分の負担を据え置いたというのはおかしいじゃないか、どういうわけですか、こういう疑問が出るわけでございますが、この点はいかがでしょう。
  82. 福田赳夫

    福田国務大臣 配当にいたしましても留保分にいたしましても、これは法人が、企業が払う税金なんです。ですからそれは一体として見てもらわなければいかぬ。とにかく企業に対しましてはその留保分について増徴を行なう、こういうことで、実現する手段としては荒いところがあるかもしれませんけれども、とにもかくにも法人に増徴をいたしましょう、こういうようなことで臨時的にさような考え方を採用したわけです。
  83. 平林剛

    平林委員 どうも納得できないのでありますけれども、これは議論していると時間がかかって、私これからやろうと思っていることの時間がなくなりますから議論を残すことにしまして、この問題はまたあらためてやることにいたします。  そこで大蔵省の主税局のほうにお尋ねをしばらく続けます。  所得があっても税金を取らないという規定が所得税法第九条にあるのでありますけれども、概略でけっこうでございますから、この点についての概要をちょっと御説明いただきたいと思います。
  84. 細見卓

    ○細見政府委員 非課税所得がここに列挙されておるわけでありますが、第一号は、郵便貯金の利子であります。第二号は、子供銀行の利子であります。第三号は、恩給、年金、その他これに準ずる給付で、一定の基準に該当するものであります。第四号は、給与所得者の旅費であります。第五号が、いわゆる通勤手当の非課税。第六号が、現物給与のうち、金額が一定以下のものを非課税とするというものであります。第七号が、いわゆる在外勤務の在勤手当であります。第八は、外国政府や外国の地方公共団体、あるいは国際機関等の職員の給与であります。第九号が、生活物資を譲渡した場合の譲渡所得の非課税でございます。十は、資産を譲渡して弁済に充てた場合の譲渡所得の非課税であります。十一が、有価証券の譲渡による所得のうち、そこにイ、ロ、ハとありまして、継続して売買する所得、あるいは相当数を買い集めて、いわゆる買い占めによってその利益を得た所得、それから事業を譲渡するのに類似した有価証券の譲渡、その三つを除いた有価証券の譲渡所得は非課税にするというのであります。第十二号は、オープン型の有価証券の譲渡所得に見合う部分の非課税であります。十三も同様であります。十四が、減資による資本の払い戻し。ですからこれは所得関係が発生しないということであります。十五号が、解散のときに残余財産の分配として交付を受ける金銭、並びに金銭相当の対価であります。十六が、合併交付金でありますから、十五とほぼ同じ性格の金であります。十七は、皇室経済法によって、いわゆる内廷費として皇族が受けられる給付であります。十八が、文化功労者年金、ノーベル賞その他のいわゆる特別な基金からの賞金であります。十九が、学資に充てるために親が扶養義務のある者に交付する金銭であります。二十が、相続税、贈与税の課税対象になるものは所得税から除くという、いわば法律の整備であります。二十一は損害賠償であります。これはいわゆる所得にならないというわけであります。二十二は、公職選挙法によって届け出でがなされておるものであります。  以上二十二号、非課税所得が列挙されておるのでございます。
  85. 平林剛

    平林委員 私はただいま、所得があっても税金を課さない例、第九条の中に定められておる二十二の特例についてお話を承りました。私がこれから取り上げたいと思いますのは、その第十一号、すなわち「有価証券の譲渡による所得のうち、次に掲げる所得以外のもの」は税金を取らないという規定についてであります。これによりますと、ただいま御説明がありましたように、「継続して有価証券を売買することによる所得として政令で定めるもの」。今度この政令を読んでみますと、少し省略いたしますけれども、「その売買の回数が五十回以上であること。」「その売買をした株数又は口数の合計が二十万以上であること。」これ以外のものについては所得があっても税金は取らない、こういうことになっておるわけであります。  そこで、私がお尋ねいたしたいのは、こういうきめをしたのはなぜか、またその有価証券の売買を行なう者が、たとえばその回数が五十回以上でなくて四十九回であったならどうなんだ、四十八回ならどうなんだ、一回だけだったらどうなんだ、そのときは、口数が二十万でなくて、五百万であろうと一千万であろうとも税金は取らないのか、こういうような実例はあるか、こういう点につきましてちょっと御説明をいただきたいと思います。
  86. 細見卓

    ○細見政府委員 その政令は所得税法施行令の二十六条でありますが、第一項に「営利を目的とした継続的行為と認められる取引から生じた所得」が基本的に株式の譲渡所得課税の対象になる所得だといたしまして、しかしその「営利を目的とした継続的行為」というのが、外形的に判別するのは非常にむずかしい問題がございますので、二項のほうにおきまして、そういう営利を目的としたというような意図をいわば外形的にそんたくできる基準として、五十回、それから二十万株という二つの要件があるわけでございます。したがいまして、いまの、かりに四十八回でありましても、第一項に該当して継続的に営利目的である方については課税になりますし、そうでない方は四十八回であれば非課税ということになろうかと思います。それから株数が二十万株をこしました場合におきましても非課税になるものといたしまして、その三項に、株式の公開の方法によって株式を売り買いした場合におきましては、この株式の譲渡は売買に含まないということになっておりますので、この場合において二十万株あるいは五十回ということをもこし得る場合があると思います。
  87. 平林剛

    平林委員 お答えが十分じゃないのですけれども、こういう措置をきめたのは、結局株式の上場を促進するためというのが一つの目的である。それからもう一つの目的は、株式を民主化していくというような意図がある。これは株式の公開の目的でありますけれども、そういうような趣旨も兼ねて私はこの規定があると理解をしておるわけでありますけれども、そこで問題は、この第二十六条の第三項の中に、いま申し上げましたような趣旨で、株式の公開をした場合、この株式を譲渡しても税金を取らない、こういうようなことになっておるわけでありますが、少し具体的な事例を承りたい。証券局にちょっとお尋ねをいたしたいと思うのであります。  最近、ここ二、三年の間におきまして、東京、大阪、名古屋、大体大きな証券取引所におきまして、この規定に基づきまして株式の公開を行ない、あるいは新規の上場会社ができ上がっていくというような例はどのくらいございますか。
  88. 安川七郎

    ○安川説明員 東京証券業協会の公開の場合でありますと昭和四十三年に八社ございます。昭和四十四年に十三社、それから本年は現在までに十一社ございます。
  89. 平林剛

    平林委員 それらは新規の上場会社として株式を公開されたわけでありますけれども、大体公開した株数というのはどのくらいなんでございましょうか。
  90. 安川七郎

    ○安川説明員 株数は、当該公開をいたします会社の規模によりまして非常にまちまちでございます。少ないのは五十万株程度から、大きいのは、たとえば銀行等につきましては二、三千万株というような範囲にわたっております。そこで昭和四十四年度のただいま申し上げました十三社の公開株数の合計を申し上げますと二千四百八十万株になっております。それから本年現在までに東京で公開されました株数が四千百万株、この中には銀行の相当大きいものも含まれております。  以上のとおりでございます。
  91. 平林剛

    平林委員 私が承知しているところによりますと、昭和四十三年度の実情でありますけれども、ただいまのお答えによりますと八社ある。まあ話を具体的にするために、この八社の中でひとつきわ立った例をお示しいただけませんか。
  92. 安川七郎

    ○安川説明員 ある会社の場合でございますが、これは公開株数が一千五百万株でございます。そのうち、これは中小企業でございますので、会社の社長が大部分持ち株を保有しておりましたが、その社長が放出いたしました株が約一千万株弱でございます。そこで公開いたしました値段が三百三十円でございます。公開後市場で最初につきました値段が六百六十円でございます。かような状況でございます。
  93. 平林剛

    平林委員 そこでそろそろ大蔵大臣お尋ねをしてまいりたいと思うのでありますが、ただいまお話がありました、Aという会社にしておきまし、ようか、このAという会社が、所得税法第九条十一号、そしてこれに基づいた施行令の第二十六条第三項第二号の規定によって株式の公開をした場合、Aの会社は千五百万株公開をしている。社長さんは一千万株を放出した。おそらくその会社の経営に当たっている者は数人でございましょう。これらの人が株式を公開したことによって、五十円の株が公開をしたときは三百三十円、ということは二百八十円だけ利ざやが出るわけでありますね。千五百万株で、二百八十円の差が出てくることになりますと、そこに生まれる所得は合計で四十二億円。社長さんが公開をしたもの、かりにいまお話しのように一千万株だとすれば幾らになりますか。大体計算してすぐに出てくる金額でありますけれども、二十八億円、これだけの所得があっても一銭も税金が取られない。私はこれはまことに——いかに所得税法第九条の非課税、そしてそれを受けての施行令第二十六条、株の公開、それが民主化とかあるいは上場の促進とかいう大義名分がありましても、一人の社長が二十八億円の所得があっても所得税は一銭も取られぬ。そこのAという会社の創業者、すなわちその経営者が合わせて四十二億円の利得があっても、そのグループは一銭も税金は取られない。私はこれは非常に現実に合わない、こう思うのでありますけれども大蔵大臣の御見解はいかがですか。
  94. 福田赳夫

    福田国務大臣 この二十六条第三項のほうの問題ですね、この制度考え方といたしましては、上場の促進、こういうふうになっておるわけであります。ところがこれを適用した場合に、いま御指摘のように、その譲渡所得を生ずる株主、これの捕捉が、あるいは容易であるという場合もありましょう。あるいはこの所得の額が非常に多額にのぼるという場合もありましょう。そういう場合になりますと、上場を促進する趣旨だといって設けられた制度ではありますけれどもお話しのような不均衡、これを生ずる事態もまたあり得るわけであります。現にいまA会社と、こういうふうに申されましたが、そういう事例があるわけであります。そういうこともありますので、なおこれは検討してみる、そういうことにいたします。
  95. 平林剛

    平林委員 検討することはいいのですが、どういう方向に検討されるかという問題なんであります。私はいまAの会社の例を申し上げましたが、私の得た資料によりますと、Bの会社、これは建設業を営む法人でございますけれども、同じようにこの株式の公開を昭和四十三年に行ないました。ところが五十円株は公開するときに百八十円である。取引所でそれが公開をされて売買をされたときは一挙に二百六十五円になる。公開の百八十円というのを例にとってみますと、五十円株が百八十円になるわけでありますから、三倍をこえてその差は百三十円、この会社はおおよそ——ちょっと読み違えましたけれども、これはいま申し上げたのは建設会社でなくて油加工なんかをやっておる会社ですけれども、その会社は約十五億円のさやをかせいでおる。税金は一銭も取られていない。Cの会社の例を見ますと、これは電機関係の法人でありますけれども、公開の株数は四百八十万株、公開したときの価格は二百六十円、取引所に持っていったら六百七十円。五十円株が一挙にこれだけにはね上がった。公開開始のときの金額から考えてみますと、これまた二百十円。五十円株が二百十円上乗せ、プレミアムがつく。合計をしてみますと、私の計算で十億八千万円、こういうことになりまして、所得税は一銭も課せられない。昭和四十三年の八件、それぞれ私がいま指摘をしましたような巨額のプレミアムがついておるけれども所得税は一銭も課せられておらぬ。昭和四十四年になりますと、これまた非常にぐんとふえまして十三社。これは東京だけですね。大阪、名古屋を含めればもっと数が多い。ことしに入って昭和四十五年一月から現在まですでに七社、これから予定されているものは十社ある。そのいずれもが大体同じような傾向なんであります。ここ二、三年の例をとりましても優に、これらの公開をした会社はわずかでありますけれども、その合計額、つまりプレミアムとして入手したところの金額は、私の試算しただけでも六、七百億円になるのですね。その六、七百億円の所得に対して一銭も税金は取られないというのは、これはもう、どうも常識から考えてみてもおかしい。大蔵大臣は、これは検討してみたいとおっしゃるが、前向きか、うしろ向きの検討かわかりませんので、どういう方向で検討されるかということを私は承りたいと思うのです。
  96. 細見卓

    ○細見政府委員 若干技術的な点を補足して御説明申し上げたいと思います。  株式を公開されるときにそれだけの利益が出るということは、株式を売られなくても、その株にそれだけの資産価値があったわけであります。で、国によりまして譲渡所得を課税しない国があるというのは、譲渡によってそこに新しい所得というものは何ら発生しない。すでに手元にその富はできておる。会社としてはその富はできておるわけです。それを株式市場の振興、あるいは資本市場の振興ということで公開をするわけでありますから、御本人にとっては、いまおっしゃった四十億の利益の出た会社は、四十億というのは株を売らなくても中にあるわけです。それを証券政策のために特に公開上そういうことをするわけでございまして、そういう意味で、一部いろいろな議論もございましょうが、その方がかりに株式を公開されなくても四十億の富があり、その四十億の金が何らかの形で個人の資産になれば、その方にとって、所得税はかかりませんが、相続税の問題は起こってくるわけでありまして、その問題は株を公開されようがされまいが同じ形で起こってくるわけでありまして、そういう意味で、譲渡所縁の問題というのはいろいろ政策的なものをも考えなければならない要素を含んでおるわけであります。  そこで、一般的に株式の譲渡所得をなぜ課税しないかということでございますが、株はもう当然のこととして売りと買いがあるわけで、だれもがもうかるわけではなくて、だれかがもうかるということは、反面必ず損をする人も出てくるわけです。それらのことを徴税上いろいろやってまいりますと、アメリカで譲渡所得税が非常にむずかしくなりましたのは、株式を譲渡所程が出たときだけ課税するといたしますと、そういう株を売るような人たちは同時に下がった株を持っているわけであります。その下がった株を証券市場に売りますと、結果的には譲渡所得が消せるというようなことで、いろいろむずかしい問題もありますので、日本のように有価証券取引税で、その間に何らかの富が動いた、その富の形を有価証券譲渡税として、流通税として取るのが一つ考え方ではないかということで、日本の税制としてはそれなりにやはり意味もあり、またいままでの役割りも果たしてきておると思います。  そこで、なぜ公開のときにそれではそういうふうに特に譲渡からはずしておるかと申しますと、これは私、かつて証券課長をしておりまして一番困ります問題は、いわゆる青空市場というのができまして、その取引所の規制を受けない私的な売買がどんどん出てくるわけであります。これがむしろそういうことにならないで、公的な規制のもとに取引をさせるということになりますと、どうしても一定数量の株式がなければ公的な規制というのはできない。その公的な規制をできるような、いわゆる証券取引所の管理下に置くためには、相当数の株式を御本人が売りたくなくても売らせなければいけない。もし株式が少ないと、せっかく証券取引所で規制いたしましても、特定の人が買い占めるとかいろいろな問題が起こって、いわゆる証券投資の健全化が行なわれないというようなことになります。この問題につきましては、そういうような事情の一端を申し上げたわけでありますが、そういう複雑な事情がからんでおりますので、検討いたすにいたしましてもよほど慎重に検討いたしませんと、かなり複雑な利害を調整してでき上がっておる制度でございますので、非常にむずかしい問題があるということを重ねて申し上げておきます。
  97. 平林剛

    平林委員 どうも主税局長らしからぬ御説明を承わるものかなと、私はいま慨嘆久しく、これではどうも税の公正とかあるいは国民所得の気持ちというものをあきれさせるというたぐいですよ、いまの御答弁というのは。何ですか。含みがあるからそうだといったところで、それを譲渡して所得が生まれる。所得が生まれるところに税があるわけですよ。これは勤労者はみんなもっと大きな含みがあるかもしれぬ。しかし、それはわずかな勤労所得、——その勤労を売って、一つのきめでもってきまっておる、それに対しても所得税は課せられているわけですよ。含みがあろうがなかろうが、所得の生ずるところには私はやはり税が公平に課せられるのがあたりまえ。青空市場ができる。青空市場ができるなら、青空市場ができないように規制をすべきですよ。それがゆえに四十億円も二十億円も十億円も、所得があっても税金を取らないという制度が残っておるほうがおかしいのであって、主税局長は進んで、むずかしいのそうろうと言っていないで、これは検討して、そして何とか一般の国民も納得できるような線を見出すべきである。  大蔵大臣、ひとつ検討するだけでは困るのですよ。どっちの方面でどういうふうに、たとえば譲渡所得なら譲渡所得税のような形をとればいい。とにかくこの問題は、今日所得税その他の議論をしておる際でもありますし、そのままただ検討するだけでは済まされない。どういうふうな形で検討するか。前向きなんて抽象的なことでなくて、私はここはやはり賢明なる大蔵大臣の英断が必要である、こう考えておるわけでございまして、もう一度お願いいたします。
  98. 福田赳夫

    福田国務大臣 この制度は、証券市場にすでになじんでおる税制でございます。そこで、これを改正するあるいは廃止するということになりますると、かなりこれは証券市場に影響のある問題だというふうに考えるわけであります。そういうふうに考えますので、これはなお最近の事例とか、そういうようなものもよく見るし、今後の趨勢等も考えますが、慎重に検討してみます。あなたのおっしゃる御趣旨のほどはよくわかりました。これが御指摘のような面を強調するがいいか、あるいは証券市場というような立場をどこまで取り入れるか、いろいろな面があろうと思いますので、慎重に検討してみたいと存じます。
  99. 平林剛

    平林委員 検討の上に慎重ということばが加わったわけでありまして、御趣旨は認めると、こう言っておるわけでありますから、大体その方向で慎重に検討する、こういうふうに承っておきます。  もう一つ、この施行令第二十六条で、先ほど私が指摘いたしました売買の回数が五十回以上、その売買をした株数または口数の合計が二十万以上であること、こういう一つのものがありまして、それ以外のものは非課税であるという点も、先ほどこれは何でこういう数字が出たのかということの説明がなかった。五十回というのは一体何を根拠にしてやったのか、二十万というのは何を根拠にしておきめになったのか。非常にこれは抜け穴があるのじゃないだろうか。先ほど申しましたように、それは営利を目的としないということであったといたしましても、いろいろな抜け穴が考えられる。たとえばこういう例がある。証券会社に参りまして、株を買いたい、この場合に、どうもこれは二十万以上になりますと税金がかかる、二十万以下ならだいじょうぶだ、こういうわけで、ほんとうは五百万株ほしいのだけれども、この制限があるからひとつ分割してどうでしょうか。そしてこの施行令に該当しないように分けて、Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさん、Fさんと、こういうふうに分けたならば税金はかからないということになる。こういうようなこともあるわけでありまして、この問題の検討も私は必要でないかと考えておるわけでありますが、これは主税局長、さっきみたいな答弁しないでくださいよ、きちっと答弁してもらいたい。
  100. 細見卓

    ○細見政府委員 いろいろこういうふうに概括的に規制いたしますと、その規制をのがれる新たな知恵が出てきて、税の問題は追っかけるほうと逃げるほうとの鬼ごっこになるきらいがございます。しかし、特にこの種の取引は税の分野でも非常にむずかしい分野でございますので、知恵には知恵をもって対処できるように勉強してまいりたいと思います。
  101. 平林剛

    平林委員 どうも、勉強するというのはちょっとあれですが、勉強してもらいたい。同時に、私はきょう国税庁を呼んでおらないのですけれども、こういうような例があるのかないのか、一度私は徴税当局もひとつ具体的な調査をやるべきだと思うのですよ。そしてしっかり把握する、その弊害がいかにあるかというような点を私はもっと厳格に調査をすべき問題だと思いますが、これはひとつ大蔵大臣も今後の方向として、国税庁に対して、この問題について具体的な指示をしていただきたい、こう思うのですが、いかがですか。
  102. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは売買が五十回であるかあるいは四十九回であるか、五十五回であるか、その辺、見方によりましていろいろ問題があるのです。ずいぶんそういう紛争案件が多うございますが、しかし、こういう制度を撤廃しますとなおさら、これが営業的な、事業的な意図でやったのか何かというような意思判断までしなければならぬというようなことになりますので、制度上こういう制限を置くことはしようがないと思うのです。しかし、その制限を貫いた以上、その制限に対して国税庁がしんしゃくを加える、これはできないことでありますから、なお私からも厳重にこの趣旨を体して税務の執行に当たるように注意をしたいと思います。
  103. 平林剛

    平林委員 この問題は私自身ももう少し具体的な資料を集め、また主税局も大いに勉強にこれつとめ、大蔵大臣も大体私の意見に基づいて慎重に検討する、そういう方向に進めてくださる、こういうことでございますから、いずれあらためてこの問題についての結論を得るまで、私は皆さんと一緒に見詰めていきたい。これは結局税の構成の問題、それからキャピタルゲインという問題について、配当軽課その他が行なわれておりますけれども、これはまた同僚議員からいろいろな角度から議論があります。先ほど資本の蓄積云々というお話がありましたけれども、なお議論がたくさんあるところなんであります。こういう措置は私はやはり認めるべきでない。もっと正当な方法によって企業を育成し、資本の蓄積をはかるべきなんでありまして、これはちょっとたより過ぎておる。こういうものは一日も早くなくさねばならぬ。先ほど五年間と言ったけれども、五年間を待たず、いろいろな事例が明らかになってきた場合には一つ一つ解決していくという態度で善処してもらいたいという希望を申し上げておきたいと思います。  もう総理がおいでになる時間が参りましたから、もう一つ申し上げまして終わりたいと思います。  四十二億円あっても所得税という税金は一銭も取られない、こういう一つの例があるかと思いますと、家庭の主婦は十万円の所得があれば税務署に申告をせねばならぬ。家庭の主婦が内職をしたり、あるいはパートタイマーとして働きに出ていけば、かりに年間十四万七千円の所得があれば、そのだんなさんが国家公務員である場合は家族手当の支給が削られる。つまり、わずか十四万七千円所得があれば、家族手当、月に二千円、年額二万四千円が削られてしまう、こういうことに現行制度はなっておるのでございます。かりにこれが職場において勤労所得を得るといたしますれば、二十二万五千円所得がありますと、夫である者の所得に対して配偶者控除の適用がなくなる。したがって税金はそれだけふえますから、三万円ばかりふえる。国家公務員を例にいいますと、まず二十二万五千円を千円でもこえれば家族手当の二万四千円がなくなる。配偶者控除の適用を受けられなくなる。三万円ばかりだんなさんの税金がふえる。したがって、二十二万五千円からいま言った五万円か六万円が、ある程度家庭を犠牲にして働きに出ましても所得は割り引かれていく、こういう実態が現在の実情でございます。  そこで、私はこれはどこに原因があるのかといえば、いまの過少申告という制度、少ない金額は申告をしなくてもよろしいという限度額が十万円、つまり、いわゆる五万円、十万円というふうに区分されまして、ただいま申し上げましたような内職だとか職場においてのパートタイマーのような場合においては十万円ということが限度額になっておるわけなんですね。で、私は、この間堀委員に、そのうちの五万円のほうは前向きで検討すると、こう言われた大蔵大臣の回答を聞きまして、まことに妥当なる結論をお出しになったと思っております。あわせてこの十万円のほうもやはり引き上げねばなるまい、こういう意味では、この問題につきましてぜひ大蔵大臣も、当局からお聞き及びのことだと思いますので、これについての検討もひとつしてもらいたい。幸い主税局長はじめ政務次官も、これはひとつ何とか善処したいという気持ちがありありとうかがわれるような答弁を私は先回いただきました。そこで大蔵大臣にも、最高責任者として、この方向を前進せしめる措置をとるようにどうかひとつお答えをいただきたい、こう思うわけであります。どうも四十二億円の所得があっても税金を取らないなんというようなことをあとで申しますと、非常にはっきりした対照なんでございまして、ぜひ私の意のあるところをおくみ取りいただきまして、家庭の主婦のために善政を施してもらいたい。ひとつお願いをいたします。
  104. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまの現行の、所得十万円、収入にいたしまして勤労者で二十二万五千円、これは結局、制度の趣旨が、小額所得をまあしいて追求しない、こういう趣旨から出ておるわけです。その二十二万五千円という収入が、そういう趣旨から見ましてはたして適当であるかどうか、こういうことなんだろうと思いますが、主税局にもいろいろ調べてもらっておるんですが、まあ今日この段階におきましては二十二万五千円というのはそう低い額ではないようだ、こういうようなことをいろいろ資料をもって私に説明をいたしておるんです。そういうようなことでありますから、ここで色よい返事をせい、こういう御要請でありますが、色よい返事をすることはなかなかむずかしい。むずかしいが、よくひとつこれはなお取り調べてみるということにいたしたいと思います。
  105. 平林剛

    平林委員 社会党の平林剛が言うたんではあまり色よい返事もしないというわけではありますまいけれども、最近、日本経営者団体連盟、日経連でも私と同じようなことを希望いたしまして、政府に対して申し入れております。すなわち「控除対象配偶者となる家庭主婦などの短期就労者に対する所得限度額の引き上げ等についての要望」こういうことが出されまして、現在の家庭の主婦が職場に就労するというようなことは、主婦の余暇の善用、積極的な社会参加の道であるばかりでなく、労働力の有効な活用でもあろうし、そういう点を考えると、「短時間主婦労働力の就労を税制の面から阻害することはまことに遺憾であります。」「何らかの有効適切な税制上の措置をとられるよう要望します。」というふうに要望書が提出をされておるわけであります。ある会社のごときは、労務係の人がおりまして、二十二万五千円近くになりますと、あなたはそろそろ二十二万五千円になりますよ、これ以上取りますとだんなさんは配偶者控除を受けられなくなりますよ、あなた、休みなさいと言っている。そうして調整をさせておる。産児制限の調整のほうはともかくといたしまして、こういう就労についても調整をするような現象が起きておるわけなんです。政府自体もお考えでしょうけれども、中小企業でもどこの企業でも、いま人手が足りないじゃありませんか。人手が足りないというときに、就労をしたいという家庭の主婦の出動をこの税の制度から押えていくということは、私が申し上げた趣旨のちょうど逆のほうから考えてみても、これは改正をすべきであるというのはもはや世論ですよ。世論です。どこの資料で説明を受けたか知らぬけれども、その大蔵省のどうだこうだなんという資料だけを真に受けておやりにならないで、ひとつ大局を誤らず、この問題についてぜひひとつ善処してもらいたい。さっきのままじゃ引き下がれません。総理大臣お見えになったので、もう一度、今度は日経連、こちらのほうからも、ただいま申し上げました社会的な政策的要請からきておる考え方もあるわけであります。ちょうど一体となりました、この問題は。どうかひとつそういう意味でもう一度御回答いただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  106. 福田赳夫

    福田国務大臣 私の先ほどの答弁は、日経連の要望も承知した上の答弁であります。先ほどの御答弁のように、なお検討いたしてみます。
  107. 毛利松平

    毛利委員長 二見君。
  108. 二見伸明

    ○二見委員 所得税につきましては、昨日の参議院で大蔵大臣のほうから、夫婦子二人で百万円という一応のめどが示されたようでございますし、その点につきましては午前中の総理に対する質疑でも大体こういう方向が明らかになったように思います。私は、所得税ではなくて法人税について、今後改正する際に法人税をどういうふうに考えていくかということについて、まずお尋ねしたいと思うのです。  といいますのは、結論的に言いますと、法人税にはもうそろそろ景気調整的な役割りを与えてもいいんじゃないか、そういう時期に来ているんじゃないかと私は判断しているわけです。総理大臣すでに御存じのように、日本の経済も六〇年代と七〇年代とでは質的に大きな変化も遂げておりますし、景気調整も金融政策一本ではもうだめな時代に来ている。財政政策と併用させなければならないという時代に入っているわけです。しかし歳出規模を押えるということは、公的福祉に対する国民の要望が非常に強いという実情を考えた場合に、景気を押えるために歳出規模を押えるんだということはそう簡単なことではない。とするならば、法人税率というものをアップあるいはダウンさせることによって、景気に対応させることによって、景気調整というものをはかっていっていいんじゃないだろうか、私はそういうふうにまず考えるわけでございますけれども総理大臣としてはその点の御見解、いかがでございましょうか。
  109. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 法人税のつけ方、今度は少し課徴した。これは申すまでもなく設備投資を抑制するというか、金融その他とあわせてやったわけですね。これはまあ、経済調整の機能を発揮したと言えるかもわかりません。だけれども、その点だけで税をきめるというわけにはいかぬだろう。私は、法人税のあり方は広い視野に立ってきめるべきものだ、かように思っておりますので、そういう効果もある、だからそういう点の必要があれば今回のような措置もとりますけれども、もっと広いものだ、かように思います。
  110. 二見伸明

    ○二見委員 今回法人税が多少アップされたわけでありますけれども、私は、アップしたということについて、景気対策という面も含めてアップしたというその姿勢については賛成なわけです。ただし、上げ方が気にくわないのと、やり方が気にくわないので非常に不満なわけでありますけれども、そういう姿勢というものは私は高く評価したいと思います。と同時に、その姿勢はこれからも当然とってしかるべきじゃないだろうか。設備投資を抑制するということは、たとえば景気が上昇するからということで設備投資の抑制をする。それが金融政策だけでいいかというと、現在のように国際収支が黒字基調を続けている、外資の移動が激しくなってくるという、そういう客観情勢を考えた場合に、私は、金融政策だけでは景気の抑制というのはもう無理なんじゃないか。それは法人税についてはいろいろな考え方もあり、むずかしい問題もある、大局的に考えなければならないという総理の御答弁もわからないわけではございませんけれども、毎年一回、わが国の場合には税制改正が行なわれるわけです。そのときには当然国の経済政策に見合って、景気を抑制すべき段階なのか、それは予算の編成段階で政府としてもある程度の見通しは立てるわけです。そういうときには、景気を抑制しなければならないという事態があるならば、法人税は遠慮なく上げてもいいんじゃないだろうか。むしろそういうふうにこれからは弾力的に考えていってもいいんじゃないか。もちろん企業のほうから圧迫するのはわかりますし、反対もあると思いますけれども、むしろ財界のほうでもそういう点ではコンセンサスを持ってもいいんじゃないだろうか。政府としてもそのほうに指導してもいいのじゃないかと思いますけれども、その点あらためて……。
  111. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま申し上げたので同じことを申すようになりますが、おっしゃることもよくわかります。したがって、やはり景気の調整、必要度いかんによっては、思い切った法人税の扱い方があってしかるべきだと思います。景気論争の際も法人税を下げるということを現にやったんだし、またこういう時代になって刺激型になればやはり引き締めの方向でいく。これはやはり当然のことだと思います。しかし、その他の一般財政金融問題とあわせてそういうことが行なわれる、また税自身としてもどれくらいが適当であるかという基本的な考え方の問題もあろう、こういうことを申し上げた。少し回りくどいかわかりませんが、あなたがいま言われることと同じような結果になるのではないか。十分その点は理解しているつもりでございます。
  112. 二見伸明

    ○二見委員 景気に対応させて法人税も考えていく、こういうふうに理解してよろしいわけですね——そこまでは言い切れない……。その問題は時間がありませんので先に進めます。  配当控除に関連して一点お尋ねしたいと思います。配当控除が引き下げられるということには私賛成なんです。配当控除というのは高額所得者に対する優遇措置であるという批判もありますし、むしろこれからも廃止の方向でこれは検討していってしかるべきものであろうと思いますし、そういう方向で政府としても取り組んでもらいたいと思うのです。  ただ、そこで一番問題になりますのは、中小企業の立場から考えてみた場合に、株主と経営者というのは一体なわけです。一体なケースが非常に多いわけです。そうすると、法人税を取られてなおかつ配当所得に課税されるというのは、中小企業者にとってみて非常に過酷な税負担になるわけです。この点はこれからも考えなければならぬ問題だと思います。結局これは現在の法人税制に問題があるんじゃないだろうか。それは経営と資本の分離した大企業も、それから経営と資本が密着している中小企業も、一括して同じ税制でもって取り扱う、同じ税制に服させる、そういう現在の法人税制の立て方そのものにこういった点の矛盾が起きてくるんじゃないだろうか、不合理が起きてくるんじゃないだろうか、そう私思うのですけれども総理の御見解はいかがでございますか。
  113. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま二つ問題があると思うのです。つまり配当軽課をどうするかという問題と、もう一つは中小企業と法人を一定の税制でやっておるがどうかという問題だと思いますが、配当軽課は、お話しのように配当所得に対しまして課税を幾ら、こういうものに対する配慮でありますから、現行税制ではそれをはずすことはなかなかむずかしい。ただ、根本的に軽課措置をやめてしまうということにする、こういうことを検討すべしという議論があります。非常に根本的な議論になりますので、それは私どもとしても今後検討するにやぶさかではない、こういうふうに考えております。  それから中小企業と大法人を分けるという問題は、なかなか複雑ないろいろな問題が派生する。それは中小企業のままでいいのではないか、こういうようなことにもなりますので、別個の税制体系ということは非常に困難な問題がある、こういうようにいま考えるわけでございます。しかし、中小企業は中小企業なりにこれに対する対策をとらなければならぬというので、今回の税制改正におきましては、特別に法人税率引き上げは中小企業に対してはこれを行なわないということをいたしますとか、さらにさかのぼっては中小企業の軽減税率を設けるとか、あるいはいわゆる中小企業振興の特別措置がいろいろとられておるわけであります。私は、なかなか、その後者の点の中小企業と大法人を区分すべしということは非常にむずかしいと思いますが、配当軽課の問題は法人税の根本問題でありますし、これを検討したらどうかという有力な議論もありますので、今後なお検討を続けていきたい、かように考えております。
  114. 二見伸明

    ○二見委員 この中小法人と大法人との税制問題が非常にむずかしいのは私わかります。私は、大蔵大臣が御答弁をされなければ、そこまで話がいかなければお尋ねしようと思っていたのでありますが、一つは、大法人の担税力問題を考えた場合、中小法人と大法人とどちらに担税力があるであろうか。大法人のほうが担税力があるだろうというところで、現在の比例税率三五%というのをやめて累進的な課税体制ができないものだろうか。これについては反対論もあるし、法人を分割すれば、分割することによって高い累進税をのがれることもできるという有力な反対論ということも承知しておりますけれども、そういうことも実は検討されていいのではないかと思います。  それから、大臣の御答弁にもちょっとありましたけれども、現在は資本金一億円以下、年収三百万円以下については軽減税率が設けられているわけです。中小企業に対するそういう税制を二つにすることがむずかしいなら、中小法人についてはむしろこれからは法人税を下げていったらいいのではないだろうか。そういう面での御検討はできないものであろうか、この点先ほどの御答弁とダブるかもしれませんけれども、あわせてもう一度御答弁願いたいと思います。
  115. 福田赳夫

    福田国務大臣 第一の法人税に累進的な税率考えたらどうかということにつきましては、しばしば申し上げておるとおり、これは実際問題として非常にむずかしい問題になります。これはいま私はなかなか前向きの考え方はできない、こういうように考えております。  それから第二の、中小法人につきましてはさらにこれを軽減する方向でというお話でありますが、私どもから見ますと、今日でも中小企業にはかなり手厚い税制になっておるわけでございまするし、現実を見ましても、利益率からいいますると、中小法人が非常に商い利益率で、大企業の平均と比べますと比較にならないくらい今日利益を得ている、こういうような状態でございます。その上に各種の特別措置がとられておるというので、これ以上中小企業の基本税率を引き下げるのでは現実とマッチしないのではないか、そういうふうに考えますが、特別の事情があるというようなものにつきましてはそれぞれ措置をとっておりますので、この上とも必要に応じてそういう考え方を取り入れたいと考えております。
  116. 二見伸明

    ○二見委員 中小企業の問題にさらに言及したいと思いますけれども、同族会社がありますね。今回は同族会社に対する留保金課税がたしか改正されましたけれども、その前に主税局長にちょっと教えていただきたいと思いますが、わが国での同族会社の数と、留保金課税を受けているものは、資本金別にわかりますか。
  117. 細見卓

    ○細見政府委員 同族会社の数は約八十七万であります。いま留保金課税を受けておる会社が約十万社であります。留保税額をついでに申し上げますと三百四十一億ということになっておりまして、今回御承知のようにこの留保額を、金額、パーセンテージ、ともにゆるめました結果、課税対象になる法人がおそらく七万程度になるであろうと考えております。したがって、それによる減税額は約百億を上回ると予定いたしております。
  118. 二見伸明

    ○二見委員 同族会社というのはどちらかといえば中小企業のほうが多いわけですね。大規模の同族会社は少ないわけですね。留保金課税を設けられた趣旨は全然わからないわけじゃありませんけれども、中小法人の同族会社に対して留保金課税を設けるということが内部留保の充実に利益するかどうか、私これは問題だと思うのです。むしろこれは妨げる結果になるのじゃないか。総理大臣にお願いしたいのですけれども一つは、中小企業に対する税率を下げるということは、大蔵大臣はむずかしいという先ほどの御答弁です。現在でも安いと思っている。ならば、同族会社の中小企業関係だけでも内部留保を充実させるということのために留保金課税というものは廃止できないものかどうか、それほどの額ではないと私は思うわけです。
  119. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話しのようにやっております。同じ同族会社でありましても、中小企業もあれば大同族会社もあるわけであります。その中で中小の同族会社につきましては、今回の税制でもその留保額の控除額引き上げております。こういう措置をとっておりますが、これを全廃することはなかなかむずかしい。つまり個人企業との権衡の問題であります。これを全廃しちゃったら個人と非常なアンバランスになるわけであります。総理もいまここで、個人企業との権衡があるじゃないか、こういうふうにおっしゃっておられますが、全廃はむずかしゅうございます。
  120. 二見伸明

    ○二見委員 私も、個人企業との均衡を十分承知の上でお尋ねしたわけです。その均衡をはからなければならないのはわかります。だけれども、この点は私はこれからも考えていただきたい問題だと思うのです。バランスの問題があるからということでなくて、私バランスの問題があるということは十分承知しておりますけれども、同時に、これは全廃が無理であるならば、さらに軽減の方向に進んでいってもらいたい。この点いかがでしょうか。
  121. 福田赳夫

    福田国務大臣 御意見としてよく承っておきまして、今後の検討の資料にさせていただきたいと思います。
  122. 二見伸明

    ○二見委員 そこで、租税特別措置制度について総理大臣に御見解を承りますけれども、租税特別措置制度税負担の公平という観点からすれば決して望ましいものではない。これはすでに批判されているところであります。私も、税負担の公平というところから見ると、租税特別措置制度というものは決して好ましいものとは思いませんけれども、国の経済政策というものを考えれば、全面的に一から十まで全部だめだから捨ててしまえということもこれは言い切れない問題である。しかしながら、現在の租税特別措置制度全部を洗い直してみて、もし不合理なものがあるならばこれは改正しなければならぬじゃないだろうか。改めるものは改めなければならぬだろう、廃止するものは廃止する方向でこれからいかなければならぬじゃないだろうか。この基本的な姿勢だけはこれからも政府としては持ち続けていかなければならぬだろうし、そういう観点からこの問題を検討してもらいたいわけですけれども、まずその点についてはいかがでしょうか。
  123. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのように条件を付せられて、改めるべきものがあれば改める、これはもうもちろんのことでございます。また本来から申しまして特別措置というものは特別措置、そういう形のものが幾つもできては、これが税の公平さを欠くおそれもございますから、これはもうお説のとおりだと思います。それぞれ特別な意味を持ち、特殊な目的を持っているものでそういう特別措置がとられております。そういうものをあまりやかましくいって、いつまでも残すようなことがあってはならない。これはもうお説のとおりだと私は思います。
  124. 二見伸明

    ○二見委員 具体的な問題でいきますと、租税特別措置の中に減耗控除制度というものがあるのですが、これは私は非常に不合理な制度だと思っているわけです。総理は、当然この制度について詳しく御存じだと思いますけれども、確認の意味も込めて、主税局長申しわけありませんが、この減耗控除制度というものの概略内容を詳しく御説明していただけませんか。
  125. 細見卓

    ○細見政府委員 減耗控除制度は二つの制度から成り立っておりまして、一つは探鉱準備金制度、それからいま一つは新鉱床探鉱費の特別控除制度、この二つになっておるので、やや、ややこしいのでございますが、まず探鉱準備金と申しますのは、地中から出てまいりました鉱物の販売金額の一五%あるいはその販売により得ました所得の五〇%のうちいずれか低いほうの金額を限度といたしまして、準備金として積み立てることを認めるわけであります。そしてその準備金をこの次に取りくずしまして、新鉱床の探鉱費として支出いたしましたときに、その支出額の倍額、つまり同額じゃなく倍額を経費に見る。したがって、その新鉱床を発見したときにはごほうびが出るという形になっておる。この二つの制度から組み立てられておるもので、外国にございます減耗控除といわれるものと制度におきまして同性質のものでございます。
  126. 二見伸明

    ○二見委員 主税局長にさらに説明していただきたいと思いますけれども、この制度を利用することによって法人税は大体どのくらい負担が軽くなりますか、大体の目安でけっこうです。
  127. 細見卓

    ○細見政府委員 会社によって若干差はございますが、非鉄金属会社などが一番これを利用いたしておりまして、それらの会社におきましては、この制度がなかりしものとした税負担に比べれば、おおむね半額くらい軽減になっておるというのが実情でございます。     〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕
  128. 二見伸明

    ○二見委員 さらに説明してもらいますけれども、たしかこの制度を利用している最も大きなものは非鉄大手七社でございますね。主税局長の手元にもし資料がありましたらば発表していただきたいと思うわけです。四十二年上期から四十三年下期に至る二年間の大手非鉄金属七社がどの程度減税額を受けたか、大体階層別でけっこうですけれども、もしお手元に資料がございましたらばお示し願いたいと思います。
  129. 細見卓

    ○細見政府委員 一番大きな会社は十八億円ぐらいの利益を、いま申しました税金が半額になるという意味で利得を得ておるわけでありますが、そのほか十億とかあるいは四億というような利益を得た会社がそれぞれ数社くらいございます。
  130. 二見伸明

    ○二見委員 総理大臣、いまお聞き及びになったとおり、この制度を利用することによって十八億円以上の減税を受けた会社が一社あるわけです。そのほか十億円以上、七億円以上、四億円以上、一億円以上、こういう巨額な減税を受けている会社が合計で七社あります。この制度を存続させる理由として、これは業界側の主張だと思いますけれども、あげられている一つは、そういった非鉄金属関係の鉱業というものは、鉱床という減耗性資産を食いつぶして利益をあげているということから、課税にあたってこうした特殊性を考慮に入れるのは当然のことだ、これが存続論の一つになっております。  私は、この主張は一つは誤りであると思うんですね。というのは、鉱床を発見するために支出した費用、たとえば百の費用を支出して一万の鉱床を発見した場合には、差し引き九千九百の収益でもって百は当然まかなえるべきものだ。そういう点からいっても、私はこの一つの存続の理由というのは成り立たないんじゃないかと思うのです。  もう一つの存続の理由としていわれているのは、これは外国、特にアメリカにもこういう制度があるんだ、だから国際競争というものを考えた場合に、日本だってその程度の措置を設けてもいいんではないかというのが有力な反対論、存続論となっているわけです。私はそれに対しては、たとえばアメリカと日本の法人税を考えてみたらどうか。表面税率は日本の場合は三五%、アメリカの場合は四八%。アメリカにこういう制度があるんだから日本にもそういう制度を求めるべきだというならば、法人税だってアメリカ並みに引き上げてもよろしいんですか、そういうふうに存続論者に言いたくなるわけであります。  私は、こういう鉱床発見ということが非常にたいへんな事業であるということはよくわかりますし、日本の経済にとっても大事な企業である、産業であるということはわかります。だからといって、十八億円もあるいは十億円も減税するような措置は、租税理論からいってもおかしいんじゃないだろうか。これがいわば課税の繰り延べ的な準備金制度なら私は納得できる。ところがそうじゃない。準備金制度に一千万円積めば、翌年度は一千万円は課税の対象にならなくなってくる。はっきりいえばこれは免税制度であり、補助金制度と何ら変わりはない。こういう制度というものは不合理なものじゃないだろうか。総理は冒頭に、不合理なものがあれば改めるのはあたりまえだ、こう御答弁になりましたけれども、この点もやはり不合理なんじゃないか。税調の答申でも、この点は今後一年間合理的に検討するという答申も出ておりますけれども、やはり現在のこの制度は不合理じゃないか。こういう制度を残しておくから、租税特別措置というのは大企業擁護なんだというレッテルを張られてしまうのではないか。それは租税特別措置制度についても私は非常に不幸なことであろうと思いますので、総理大臣、どうかここは前向きに御検討願いたいと思うのですが、その点いかがでございましょう。
  131. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はいま、結論は税調でも一年間ひとつ預かって十分検討するということですから、もうそれで、その点は二見君も御承知だと思うので、けっこうだろうと思います。私もその結論を支持するものです。  ただ同情的な見方をすれば、日本にはいかにも資源が少ない。したがって海のものとも山のものともわからないような資源の開発をするというところに一つの非常な危険性がある。そういう意味である程度めんどうを見た。これが国家的な補助的なものだ、かような御指摘がございましたが、私はそういうものだろうと思う。うんと資源があって、それは発見することも非常に容易だ、そうして当たればすばらしいもうけだ、利益があがるんだ、こういうものにはいわゆる補助的なものは必要ない、みずからの危険においてどんどんやればいい、かように考えますけれども、どうも資源の少ない国だと、積極的に新鉱床、鉱脈の発見等に努力さすように、やはり政府も奨励すること、これはあり得ることだ。だからいま言われるように、一方でいかにも不都合なようだ、そうしてまた特殊な会社だけが利益を得ている、こういう点がいかにも不公平だ、かように御指摘だろうと思いますが、私は結局、日本の資源の少ないところにこういう制度が生まれたのではないか、かように思います。     〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、とにかく一年間期限を延期して、その間に十分慎重に結論を出そう、こういう税調の態度でもありますし、いま二見君の言われることも私はよく理解ができますので、そういう意味でこの問題が結論を出されることを実は期待しておる、かように思います。
  132. 二見伸明

    ○二見委員 私も鉱床発見ということが非常に危険度の多いことはわかります。だから、それに対して全然国がめんどうを見なくてもいいという、そこまで私も言い切れないのです。だけれども、現在のこのやり方は私は少し問題があると思う。この点は、どういう立場でやるか、税でやるのがいいのか、これは私、一つ問題だと思います。これは総理大臣にも十分御検討願いたいと思います。  それからもう一点、国税と地方税との課税最低限の話が午前中だいぶ論議になりまして、総理大臣の御退席になったあともあちこちで活発な議論が展開されたわけです。そこで浮き彫りになってきたのは、課税最低限を国税と地方税を同一にしろということと、徴税機構の一元化、それから前年度課税がいいか現年度課税がいいかということまで、これは詳しい論議になりませんでしたけれども話が出たわけです。私も国税と地方税、特に住民税というのは課税最低限は同一にすべきであるというのが持論であるわけです。これは住民からすれば同じふところから出ていくのですから、同一にするのがあたりまえじゃないか。しかも国税の立場でいけば課税最低限生活費に食い込まないという原則がある。それが住民税の場合に侵されていいのか。課税最低限は同一にすべきだと思います。しかしそれに対して自治省側あるいは地方団体のほうから反論がある。一つは、地方財政の圧迫だ。私はこの理論はわかります。地方財政を圧迫するから困るというこの理屈はわかる。  もう一つは、地方自治の侵害だからそういうことをやってもらっちゃ困るという強力な意見がある。私はこれは筋違いだと思う。地方自治というものは、たとえば税金を一元化することが地方自治の侵害になるかならないか。そんなものじゃない。私は次元が違うのだろうと思う。要するに金の面からいえば、国がひもつきでない金を地方自治体に渡せばそれでいいのじゃないか。それでりっぱに地方自治は守れると私は思うし、これから国も地方自治体もそのつもりになって、地方自治を守っていこうという姿勢さえあれば地方自治は守れるのじゃないか。地方自治が侵害されるという一つの反論は筋違いだろうと思うのですけれども、その点総理はどうお考えでしょう。
  133. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大体私はいいように思いますけれども、午前中にも申しましたように、中央政府が本来の地方自治にくちばしを入れる、そうして完全自治がなかなか行なえないようにする、こういう意見が、どうも一つはコンプレックスといえばいえるでしょうが、そういうものがあるだろうと思います。でありますが、これは行政の立場というよりも、やはり国民、地方住民、その立場に立って考うべき筋のものだ、かように私思います。ことに税金というようなものは、これは何といっても住民が主体になる。だから、それが国税だろうが地方税だろうが同一のふところから出るのですから、そういう意味で、ただいま言われるような差がないようにすることが本来のたてまえだと思います。ただしかし、そこまでいくのにはやはり段階を経ないとなかなかむずかしいだろう。私が午前中にいる間は、完全に一致しなくとも、もう少し近づけたらどうかという程度まで皆さんの御議論も近づいていたと思います。やはりそこまでなかなか踏み切れないのだろう、かように思っております。私は、自主的な自治権、これも大事でございますが、しかし地域住民の負担考えない自治権というものはあってはならない、かように思いますので、過去のいろいろ議論を経てくると、最終的にはいいところへ落ちつくだろう、かように思います。
  134. 二見伸明

    ○二見委員 地域住民の負担考えない自治権はないだろうという総理の答弁、私も賛成なんです。この問題を言うと、角をためて牛を殺すようなまねをしないでくれ、こういうふうに地方から言われるわけです。私は、地方自治という大義名分を振りかざして地域住民を圧迫するのはやめてくれと、私のほうからも言いたくなるのであります。  ところで、住民税でもう一点問題になるのは超過課税ですね。これは地方税法の三百十四条の三の3ですか、一・五倍まで認めるという制度があります。これは自治省の指導によって、超過課税団体というのは年々減少の一途をたどっているそうでありますけれども、しかし、地方税法に一・五倍まで認めるという規定がある限りは、これは行政指導によって減少しているとはいいながら、これはいつでも一・五倍まで取れるという伏線があるわけですね。住民にとってははなはだ迷惑なんです。しかも、一・五倍の超過税率、超過課税をしていったところは行政水準の低いところが多いと思うのです。わが町は行政水準が低いにもかかわらず税金ばかり高く取られて困るという住民の不満が絶えないのは、私は結局この制度があるからだと考える。行政水準の低いところに対しては、国のほうから交付金なり何なり支給して、行政水準を高めるようにやってもらいたいと思うし、一方、住民の立場からすれば、超過課税というものはもうやめてもいいのじゃないか。標準税率一本にして、その差額は、どうしても苦しいところには何か国のほうから手当てをしてやるという方向でこれからは考えていってもらいたい。これは住民税の課税最低限のアップと並行して、私は政府のほうにお願いしたいと思うのです。その点はいかがですか。
  135. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大体そういうものがだんだん減るだろう、またそういうような指導を自治省はするだろう、そのことを期待いたしますが、とにかく各自治体の仕事のしかたにも、いろいろ内容をよく分析しないと、積極的にいまここで批判を下し得ないのです。何にも仕事をしなくて黒字である場合もありましょうし、また、積極的に地域住民の生活向上のために社会資本を充実させよう、そういうようなことで何かと積極性を持つために赤字の場合もある。でありますから一がいには言えないと思います。要は、地域住民の方々が真にしあわせになられることなら、せっかくある程度のものを出しましてもがまんされるだろう。しかし、十分それが生かされておらない、どうもむだな使用をされておる、こういうようなことだと、超過負担をしなくても、普通の税金でも私はきびしい批判を受けるのじゃないだろうか、かように思います。要は、地方自治体の行政あるいは政治あり方いかんによるのではないか、かように思います。しかし、総体の傾向から申せば、超過負担というのはこれは漸減する方向じゃないか。また、そういう方向で指導している。いま大蔵大臣も、秋田君もさように申しておりますと言っておりますから、これは間違いないと思います。
  136. 二見伸明

    ○二見委員 超過課税団体が減っていることは、私はよくわかる。四十五年はたしか六百くらいです。去年が八百五十くらいで、四十五年度は六百くらいになるだろうと言われておりますし、その点についての自治省の指導というのは、私は非常に高く評価するものですけれども、ただ法律の上、地方税法の上では一・五倍まではよろしいという規定がある。とするならば、市町村にとってみれば、その指導に従わなくともかまわないわけです。その点に住民としての不安が残るので、むしろこの規定は削除してしまったほうがいいのではないだろうか、削除してもらいたいというのが、私の総理に対する要望なんです。その点はちょっとはずされたようでありますので、もう一度お願いいたします。
  137. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げますように、私は、行政のあり方ということが重要だ。やはり積極的な生活向上のためのいろいろの施設をする場合に、ときに超過課税をやはり出してもらわなければならない、こういう場合もあるのじゃないだろうかと思います。ただ単にこれは町村の担当者ばかりの問題ではない。そういう場合に、町村議会がどういうようにそういう場合の批判をするか。それに見合うだけの仕事の量があればそれで納得がいくのじゃないだろうか。私はいま直ちに法律を改正する、そこまでは考えない。ただ、いま弊害がある、こういうような点は十分是正すべきじゃないだろうか。それでこそ初めて自治体らしい、自立した自治体、こういうことも言えるだろうと思います。その辺のところは適当にひとつ運営をしていただきたい。
  138. 二見伸明

    ○二見委員 最後に、昨日大蔵大臣は参議院で、夫婦子二人で百万円、そのために基礎控除その他の控除引き上げる、こういう御答弁をなさったわけでございます。というふうにけさの新聞に出ておるわけですが、基礎控除その他の控除引き上げる。われわれにとっては非常にありがたい話でありますけれども、ただその控除引き上げる場合に、所得税減税に対する基本的な政府としての考え方になると思いますけれども、独身者を中心に考えていく方向になるのか、あるいは夫婦二人者だけということを中心に——ほかは全然やらないというのではなくして、それを中心にしていくのか。あるいは子供だとか老人の多い、扶養家族の多いところにむしろ目を向けてこれからの所得減税をやっていこうとするのか。そういう基本的な立場、その点はどうか、その点を伺いたいわけです。だからといって、家族の多いところを重点にやるから独身者については全然めんどうを見ないという意味じゃなくして、全部一律にやってもらいたいのだけれども、特にそのうちどこに焦点を置いて所得減税というものを進めていくのかどうか。その点をお尋ねして、これはぜひ総理大臣に御答弁願いたいわけでありますが……。
  139. 福田赳夫

    福田国務大臣 ちょっとその前に、きのうの関係を私から申し上げたいと思います。  いま二見さんが、私がきのう参議院の大蔵委員会で、四人家族で百万円の控除をしたいというふうに言ったと申されましたが、確かに新聞にそう出ています。出ておりますが、私はそうは言っていないのです。新聞のほうも用心深く「示唆」と、こう書いてある。  私が申し上げましたのは、四十六年度以降を一体どうするのだ、四十五年度でもう長期答申は完全実施だから所得税減税はおしまいかと言うから、それはおしまいではございません、今後とも考えていく。わが国では、国民全体とすると税負担は諸外国に比べて非常に軽い、それにもかかわらず重税だという声が多いのは、所得税に非常に片寄っている、所得税減税はやっていきたいつもりだ、こういうお話をしたのです。そうするとまた議員が、それでは所得税減税基礎控除を中心にするのか、あるいは税率の引き下げを中心にするのか、こういうお話がありましたから、私はそれに対して、まあ課税最低限引き上げ、これは今後の所得税減税の重要な柱になるだろう、こういうふうに思います。しかし、これはいろいろな角度から今後検討する問題である、こういうふうに申し上げたわけであります。  そのことだけを、総理の答弁の前に申し上げておきます。
  140. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの大蔵大臣の答弁で、もう私から何にもつけ加えることはございません。もちろん今後とも、最低限についても適当にこれを改正していく、その心がけで取り組んでいかなければならぬと思います。きょうも午前中に答えて、税率を主にして説明をいたしましたが、やはりいまのような点も考えていく。ただ、皆さん方のほうの主張である百五十万というのは、まだちょっと私ども考えないところです。そこまではまだ飛び上がらない。それだけひとつ御了承いただきたいと思います。
  141. 二見伸明

    ○二見委員 終わります。
  142. 毛利松平

  143. 岡沢完治

    岡沢委員 私は、一年ぶりで大蔵委員会質問する機会、ことに総理御出席の場で質問する機会を与えていただきましたことを、先輩、同僚の議員に厚くお礼申し上げたいと思います。  実は、きょうはわが党の大会でございまして、春日一幸前書記長、竹本政審会長あるいは先輩の永末さん、いずれも大会に出ておられまして、私がピンチヒッターでいささか心苦しいのでございますけれども質問をさせていただきたいと思います。主として土地税制を中心にして質問をいたします。  きょうは、総理大蔵大臣お並びでございますが、私たち野党の一員としての民社党も、率直にいって、自民党政府の政治の成果について、たとえば日韓問題、沖繩問題あるいは経済成長、そのメリットを評価するにやぶさかではございません。しかし、この土地税制に関する限り、あるいは地価対策に関する限り、物価に関する限りは、佐藤内閣は失政である、失敗だと私は指摘せざるを得ないわけであります。  土地の値上がりということは、ここ十年来続いての特徴的傾向であります。ことに佐藤総理が就任されてから以後、ここ数年間、値上がりの傾向は特に急カーブを描いております。土地問題が、あるいは地価問題がどれだけ影響を持つかということにつきましてはちょうちょうすることは避けますけれども、一口にいって諸悪の元凶だといわれております。個人からいたしましても、それによって貯蓄意欲がなくなる、あるいは家庭が乱れる、あるいは勤勉性についての意欲をなくするという問題があります。地方公共団体からいたしましても、公共用地の取得の困難性その他の問題がございます。国にとりましても、政治に対する不信あるいは諸事業の遂行の困難性というようなこともございます。まして国内的な課題を一九七〇年代の最大の取り組み課題とされる佐藤政府にとりましては、物価問題が一番大きな課題一つだと思いますけれども、この物価問題とも不可分の関係がございます。あるいはまたもう一つの大きな課題といわれております交通事故防止の問題。年間二万人の死者を出し、九十六万人の負傷者を出すこの交通事故問題とも、やはり地価問題は関連してまいります。道路の改良あるいは拡張等の困難性からいたしましても不可分の関係にもあります。こういうふうに考えてまいりますと、地価問題は、じみなようでありますけれども、日本の現在の政治の中で一つのガンだと見ていいかと思います。  私は、政府もこれに真剣に取り組んでおられないという見方をするわけではありません。真剣に取り組んでおられるんだと思いますけれども、結果としては異常な値上がり、しかもその傾向は経済合理性を越えた値上がりであります。ここに、政策の失敗と申しますか、あえて私が佐藤政府の最大の失政だと指摘したい理由があるわけであります。ここで政治的な決断を、この地価対策について求められている時期ではないか。そういう前提に立ちまして、私はピンチヒッターでございますので、春日委員質問内容を預かってまいりましたので、最初にそれを読ませていただきまして、それを前提にして質問を続けたいと思います。  土地税制の根本的改正について、まず、土地政策の重要性についてであります。  地価問題、住宅問題を解決するためには、土地政策が総合的見地から確立されなければならない。土地政策とは土地利用の規制と誘導に関する政策である。土地政策はきわめて広範多岐にわたり、しかも国民の権利義務、利害に関する重要な問題であるから、国民世論に基づき、国民心理に適合したものでなければならない。  土地政策に関しては、昭和四十四年六月に新都市計画法と地価公示法が前後して制定せられ、また昨年には土地税制改正されて、かなり前進が見られるが、なおきわめて不徹底で、このままでは地価問題、住宅問題の解決には焼け石に水程度の効果しかない。  そこで、新都市計画法の問題点でありますが、新都市計画法は、都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業等に関する必要な事業を定めておるものである。同法によれば、都市計画は市街化区域及び市街化調整区域を定めるものとしている。すなわち、市街化区域はすでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化をはかるべき区域とし、市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域としている。そしてそれぞれの区域について住居地域、商業地域、準工業地域または工業地域並びに住居専用地区、工業専用地区、特別工業地区、文教地区、空地地区、防火地区、美観地区、風致地区等々の地域、地区を定めるとともに、道路、都市高速鉄道、駐車場、公園、緑地、広場、水道、電気、ガス供給施設、下水道、汚物処理場、河川、学校、病院、市場等々の都市施設を定めるものとしている。  以上は都市計画の根幹をなすものであるが、これら基本計画はもとより、実施計画についても、それらの策定には関係各省の協力が必要であり、同法の所管庁たる建設省や都道府県知事、市町村の手に余るものである。都市計画についてはようやく市街化区域と市街化調整区域との線引きが近く実現されるような運びとなったが、以上のような実情からして、これが単なる線引きに終わるおそれなしとしない。これが単なる線引きにとどまる限り、土地利用の規制の基準たるべき土地利用計画はかけ声にすぎなくなり、土地政策は根底からくずれることになる。  次に地価公示法の問題点についてであるが、懸案の地価公示制度がいよいよ具体的にすべり出した。すなわち、さしあたり東京都の区部と大阪市、名古屋市、それにそれらの都市の周辺地域について、昭和四十五年一月一日現在の正常な価格、すなわち第一回の地価公示が去る四月一日に行なわれました。  公示価格は、地価に関する最も信頼し得る、また同時に最も権威ある価格とされ、公共用地の取得に関しては、任意買収による場合と収用委員会の裁決によって買収する強制取得による場合とを問わず、いずれも公示価格に準拠することが法律的に義務づけられ、一〇〇%公示価格が適用されることになるが、民間の土地取引については、不動産鑑定士に評価してもらう場合に、不動産鑑定士は地価公示価格に準拠することが義務づけられているほかは、単なる目安で拘束力がない。すなわち、民間の土地取引については、売り手も買い手も公示価格をめどにして取引を行なうよう取引慣行をつくり上げていくことにしたいとの政府の願望を示すにとどまっておる。しかしながら、地価公示制度はほかの政策とうまくかみ合わせて初めて土地政策としての威力を発揮することとなる。この意味において、土地税制において地価公示制度を一〇〇%活用すべきものと考えるが、これについての見解を聞きたいということであります。  そこで具体的に土地税制の改革について、この地価公示制度と結びつけてお尋ねするわけでございますけれども、国及び地方公共団体は、土地利用の規制だけでなくて、土地利用の誘導についても大きな責任を負っておると思います。土地利用の誘導については、金融措置等のほか土地税制にまつところが大きいと思います。すなわち土地税制土地政策を補完する有力な手段というべきであります。しかし土地税制を改革するにあたっては、同時に反面において金融措置等につき、きめこまかな、それこそかゆいところに手の届くようなあたたかい配慮ある手段を講じ、土地を持っている人の意思を十分にくみ取り得るよう、生活再建方策等についての万全の措置を講ずる必要があると思います。  ずいぶん前置きが長くなったわけでありますけれども、そこで土地税制の改革に関するわが党としての試案を申し上げるので、総理大蔵大臣の見解を聞きたい。  最初に未利用地税の創設の問題であります。土地の有効利用を促進するため市町村税たる未利用地税を創設する。すなわち、市街化区域内において、その用途地区に応じ有効に利用されていないときは、そのような未利用地の所有者に対して未利用地税を課する、こういうことを党としても決定しているわけでございますが、この未利用地税の創設について、総理大蔵大臣の見解をお聞きします。
  144. 福田赳夫

    福田国務大臣 未利用地税という考えにつきましては私は賛成です。何とかして、利用されない土地、これに対する課税ができないかということを常々考えておるわけでございます。ところが、それには前提があるのです。前提はまさにいま岡沢さんが春日さんの文章だとして読み上げられた、土地の国家管理というか、そういう問題が前提になってくるわけであります。国家管理というと言い過ぎかもしれませんけれども、ある土地はいかなる用途に使用さるべきかという問題、また、その土地の上に建つ建物その他の工作物はいかなる割合であるべきかという問題、それらの問題が解決しませんと、いかなる土地が未利用地であるかということがきめ得ないのです。まだ、国民的のコンセンサスとしてそこまで土地を管理統制すべしというところまでいっていない現段階では、そういう前提となる制度自体がまだ成熟の段階ではないのではあるまいか、そういうふうに考えられるわけであります。そういうことを考えますと、どうも現行の固定資産税というような一般的な課税でつなぐほかはないのだというふうに思いますが、そういう客観的条件が整い、国民的なコンセンサスができるというような段階になりますれば、まさに未利用地税といいますか、あるいは空閑地税といいますか、そういうものが創設さるべきものである、さように考えております。
  145. 岡沢完治

    岡沢委員 いま大蔵大臣から、原則として未利用地税には賛成だ、しかし、技術的に大きな問題があるとお答えがございました。総理の御見解をひとつ。
  146. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 何が未利用地であり、どこが空閑地であるか、それをきめることがたいへんじゃないか、かように実は思っております。したがって、理論として一応もっともらしく聞こえるけれども、具体的にはなかなか扱いにくい。いま大蔵大臣が答えたとおりに私も思っております。
  147. 岡沢完治

    岡沢委員 なにしろ与えられた時間が三十分でございますから、もう一度突っ込みたいのですけれども、春日さんから託されましたまだほかのアイデアがございますので……。  次は、土地高価譲渡税の創設、これは開発利益の吸収還元をはかるため、国税たる土地高価譲渡税を創設するという新しいアイデアでございます。すなわち、地価公示制度を活用して、公示価格をこえる対価を得て土地を譲渡した者に対して、そのこえる部分の金額を課税標準として一〇〇%の課税を行なう、きわめてきびしいものでございますが、公示価格、いわば公定価格以上の収益に対して一〇〇%課税するこの土地高価譲渡税の創設について、まず大蔵大臣の御見解を聞いて、また総理の御見解を聞かしていただきたい。
  148. 福田赳夫

    福田国務大臣 私もその考え方には賛成です。これは若干前提条件を整備しなければならぬと思います。つまり、いまかなり広いブロックごとに公示をしますが、多少はこれをこまかにする必要があるんじゃないかというふうに思います。これがある程度こまかになり、その地区の平均的な価格を表示するというようなところまでいけますれば、ぜひこの制度はやってみたい、そういうふうに考えます。
  149. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま大蔵大臣が行く行くはやってみたい、こういう言い方をしています。いま地価の公示制度を始めよう。これは公示しただけで、それが守られるような方法でない限り、意味をなさないわけですね。守らすためにはいまのような課税をする、そのことが必要だろう。これは生きてくると思います。しかし、いまようやく公示制度が始まるばかりでありまして、どの価格が適正な価格なのか、いま買い手も売り手もわからないような状態で、いきなりいまのような税を考えても実情に合わないのではないか。ただいま大蔵大臣が言っているように、行く行くはそうしたい、こう言っているし、私もそうあってほしい、かように思います。だから、いまきめた公示制度というものを、これを早くひとつ適当な方法で、また地域についてもそういうものが拡大されて、そうして一般にここの値段は幾らだということになってきて、これが超過しているか、してないかというようなことでいまの問題がきまるのではないだろうかと思います。  いままでもしばしば、税で地価を押えることができるんじゃないか、かようにいわれましたが、いままでのような制度なら税を織り込んだ売買価格で売買される。だから税金がかかる、それだけむしろ地価は上がるんじゃないか、その心配すらありましたが、片一方で公示制度がちゃんとあってその地価を守っていく、こういう意味から超過分についての課税がそのまま取り上げられる、こういうことなら、だれも高く売ったって意味をなさない、政府のために高く売ることになるから、そこまでは協力がなかなか願えないと思いますので、私はやはり効果が初めて生まれてくるのではないか、かように思います。
  150. 岡沢完治

    岡沢委員 憲法二十九条の所有権等の規定がございますけれども、やはり土地に関する限りは、これは与党も含めての共鳴者があると思いますけれども、単なる商品ではないという立場から思い切った税制が必要だと思います。  三番目のアイデアは、市街地開発税の創設であります。道路、上下水道等公共施設の整備を積極的に行なうため、都市計画税にかえて市街地開発税を創設する。すなわち、市街地開発税は、土地、家屋及び償却資産に対して課税することとするが、緑地地区等に該当する土地等は非課税とするほか、一定面積以下の土地、家屋については減免措置を講ずることとする、こういう新しい市街地開発税の創設についてのアイデア、これについての総理大蔵大臣の見解を聞きます。
  151. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまちょっと伺ったところでは、在来の都市計画税と市街地開発税、どこにアイデアの違いというものを求めておるのか、ちょっとわからないのですが、おわかりになりましょうか。
  152. 岡沢完治

    岡沢委員 私自身も実は受け売りなんで、ただ、あえて言いますと、市街地開発税と都市計画税との違いというよりも、根本的な考え方としては、開発利益を吸収するという点では、あるいは受益者にそれだけの負担を持たすという意味では同じでございますけれども、こまかい点では、課税最低限を特に認めまして、一般の住居用あるいは小額の土地、家屋所有者に対して、いわゆる過酷な課税にならないという配慮をしている。私自身も申しわけないですが、けさ私に渡されましたもので、ピンチヒッターのヒッターたるゆえんなのですが、お許しをいただいて、わかる範囲でお答えいただきたいと思います。
  153. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ想像するに、在来の都市計画税にその対象として償却資産も加えたらどうだ、こういうことと、何か控除制度みたいなものを加えたらどうだろうか、こういうことのようでありまして、大体現在の都市計画税と大同小異である、こういうふうに考えます。償却資産を加える問題ですが、これにつきましては、多少問題がありはしないかと思います。償却資産は、はっきりした都市計画事業による受益対象である、こう言えるかどうか、その辺に問題がありはしないか。それからまた、一定の基礎控除を設けたらどうだろうかという点につきましては、これは考え方によっては同様の考え方がとれると思いますが、いずれにいたしましても都市計画税とそう変わったものではない。今度固定資産税の評価がえがありますので、都市計画税がかなり充実されるわけであります。この都市問題解決、これはたいへん重大な問題になってきておりますので、都市計画税を中心にいたしましてこれを強化し、その財源に充てたいというふうに考えておりますので、大体これは私どもの趣旨と同じようなことになるんじゃないか、さようなふうに考えます。
  154. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま大蔵大臣お答えいたしましたように、都市計画税、これと大体趣旨が同じものだろうと私は思います。これをはずすとちょっと税制調査会どもむくれる、かように思っております。大体四十三年の税制調査会答申に基づいてただいまの都市計画税が考えられ、その方向でもし不都合があればそれを手直ししていこう、こういうように考えておりますので、大体それでいいんじゃないだろうか。いま言われます点は、提案者でないので十分御説明ができないとおっしゃるが、それはこまかいことだし、また私にもよくわからない。そういう専門的なことはちょっとわかりかねますので、答弁は預かったほうがいいのだろうと思いますが、いまのように都市計画税そのものが十分補うものじゃないだろうか、かように思っております。
  155. 岡沢完治

    岡沢委員 最後の提案で、しかもこれは最初の二つ、いま、賛成はしておられるけれどもなかなか実行がむずかしいという問題じゃなしに、ぜひ実行していただきたいし、最も効果的な問題だと私も考え、持論でもある問題ですが、それは固定資産税の強化、いわゆる時価課税を中心とした提案でございます。固定資産税、不動産取得税、相続税及び登録免許税にかかる土地の評価額を公示価格に統一し、税率調整を行なう。ただし、一定面積以下の土地等については減免措置を講ずることとする。これは東京問題調査会の意見でもございますし、この地価問題を解決する最も即効薬として、また最も実現可能な方法として、この時価課税を勇断をもって、政治的な決断で断行してもらうということが、この土地問題の解決としてきめ手になるんじゃないか。  いろいろ地価の値上がりについては指摘もされ、提案もされております。しかし簡単にいえば、いまのように土地を持っておれば値上がりする、買えばもうかる。預金の利息よりも土地の値上がりが高ければ、だれも土地を売って換金するばかはおりません。まして、銀行から借りる利息よりも土地の値上がりが多ければ、銀行から金を借りても土地を買おうという投機意欲をそそるのは当然でございます。それは結果として、現在の時点では、真の需要者だけでなしに、銀行の不動産部等はもとよりでございますけれども、生命保険会社、電鉄会社、百貨店、電気会社まで不動産部を設けて土地の買いあさりをする。非常に大きな悪循環をもたらしておる根本だと思います。やはり土地は持てばもうかるのだ、値上がりするのだという信仰を打ち砕くということが最もきめ手になるのではないか。また土地を持っておることが、いまのように値上がりはするわ税金は安い。土地の保有が非常に安易に、また人間のエコノミックアニマル的な感情に合うような方法で税制があり、実際の政策がとられている限り、いかに個々の政策としては地価を抑圧するという善意でありましても、結果としては大きな異常な高騰を来たしておると言い切ってもいいと思います。  その意味から、ほんとうに大きな政治的決断をもって時価課税に踏み切られるべきではないか。私自身も、この三月八日の予算委員会で、建設大臣、経企庁長官にも質問をいたしました。特に建設大臣は明言をもって、時価課税を断行したいという御答弁もありましたし、また二月十五日でしたか、NHKのテレビ討論で、建設大臣が公開の席で、時価課税はぜひ実現したい、自民党としては賛成だ、自分はやりますと、わざわざ司会者からほんとうにやりますかという念を押されて、やりますということをおっしゃいました。むしろそのときには野党の協力が得られるかどうかが心配だ、また国民の支持が得られるかどうかが心配だという御意見の発表がありました。まあ私たち小さい野党ではございますけれども、党の決定としても、この時価課税には全面的に賛成をするという政審の決定を見ております。また国民も、一部の者の値上がり意欲のために大多数が住宅も持てないという現在の地価のあり方については大きな不満だろうし、私は反対があろうと思いません。三百三名という大きな勢力を持たれたいまの佐藤内閣なら、やろうと思うならば現実に実現もできて、しかも即効薬である。この時価課税について、特に大蔵大臣総理の勇気のある御発言をいただきたいと思います。
  156. 福田赳夫

    福田国務大臣 建設大臣が時価評価、そういう方針を打ち出された、私も承知しております。私もそれに賛成です。ただ、固定資産税の扱いが現実の問題とすると非常にむずかしいのです。つまり、農地につきまして、その農地の地価をどういうふうにするのが適切であるか。これを農地として使用する場合における価格は反当たり三十万円、平均してそんなものでありましょう。ところがこれを他の用途に転用する、工場が買いますあるいは道路敷にします、そういうような際におきましては、これが何倍、場合によると十倍もする、こういうようなこともあるのです。そういう際にどういう価格を適用するかというのは非常に問題でございまして、固定資産税に適用につきましては非常に問題があると思います。しかし、できる限りその思想を固定資産税におきましても当てはめていくべきである、こういうふうに考えておるわけであります。
  157. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん余裕のあるお尋ねで、勇気ある発言をという——確かに勇気がなければいまの御発言、なかなかできないことだと思います。と申しますのは、いまの固定資産税の場合に、固定資産の評価がえを時価に正確にかえるという場合に、おそらく課税の激変があるのではないか、急激に増加するのではないか、かように私は思います。ここらに実はいままで手抜かりがあったといえば手抜かりがあった。もう少し、課税をするにしても、納めるほうの方々が納得のいくような方法でやはり税制はあるべきだ、かように考えます。これは高くなるのですから、負担能力なしとは申しませんけれども、どうもあのときに売ったらたいへんもうかったが、今度は税金を納めるようなものだというような、税に対する不信感を持つようなことであっては困るだろう、かように思います。  しかし、いま言われることは本筋でありまして、それだけの時価、それに相応する税を払う、これは本筋のものだ、かように思っております。ことに地価の評価がえが最近行なわれようとしておる、そういう際でありますだけに、いまのことはたいへん影響は大きい、広範であり、また非常に鋭いものではないか、かように思っております。私は、大体三割あるいは四割程度は、これはしんぼうしてもらわないと困るのじゃないかと思いますが、そんなことじゃない、もっと地価は上がっているというような御批判もあるのじゃないかと思います。ただ一ぺんに急激な課税負担激変を与えることは、必ずしも、いいからといってみんなに協力をされないのではないか、かように私は思いますので、そこらのところは、実際の処置にあたってはどういうようにしますか。とにかく非常なショッキングな扱いをしないような方法が望ましいのじゃないか、かように私は思っております。
  158. 岡沢完治

    岡沢委員 私は、尊敬する佐藤総理でございますが、どうもこれには非常に不満です。先ほど申しましたように、地価の異常な高騰の諸悪といいますか、及ぼす影響というのは非常に大きい。何も時価以上のものに課税せよ、時価以上の評価に課税せよというわけではございません。ただ、どんな法律でも、どんな制度でも、満点のメリットばかりの制度はないと思います。やはりこれだけの大きな地価問題、先ほどガンという指摘をいたしましたが、手術をしなければなおらないわけです。思い切った、それこそ政治的決断がこの地価対策についてはほんとうに必要じゃないか。この値上がりは三、四割じゃございません。一部の新聞等でも報じられましたように、同じ地番で一部は宅地として十万円以上の評価があり、農地としては千円前後の評価、百分の一の評価しかされていない。それが同じ地番です。同じ町の同じ番地の所在地です。こういう不公平。総理は納得する納税といわれましたが、私も不納得の納税を勧めるわけじゃございません。しかしそれ以上に、国民感情からいたしましても税の公平ということが最大の基本原則でなきゃならぬ。いまは大都市近郊の農地所有者はあまりにも保護がされ過ぎておる。過保護だ。国民の不満がほんとうに政治不信にまでつながりかねない。まじめに働く労働者でも、自分の土地と家を一生かかっても持てないという政治はいい政治だとは思えないし、そういうことを考えました場合、私はほんとうに決断が必要じゃないかと思う。激変緩和という一時的な糊塗的な言いわけの手段を、大宰相佐藤総理はなされるべきではない。特に総理のあとを継がれる大蔵大臣にも、重ねて私はこの点ではぜひ勇断を持った御答弁をいただきたい、かように思います。
  159. 福田赳夫

    福田国務大臣 御趣旨は私もまことに賛成だ、こう申し上げておるわけでございます。ただ、これが急激なことになったのではまた社会的な摩擦があります。また混乱が起きます。そういう点はよく考慮しなければなりませんけれども、なるべく時価課税にいくように、漸進的に努力をいたしていきたい、かように申し上げているわけです。
  160. 岡沢完治

    岡沢委員 終わりますけれども、いまの東京問題調査会でも答申しておりますように、時価課税を断行することとともに、土地を手放すことによって収入をなくしたり、一時的に生活を失うというような人のために、たとえば借家制度等ができるように、アパート経営ができるように融資を兼ね合わすというような方法を考えれば、私は時価課税による激変緩和の手段は十分にあり得ると思う。そういう点もきめこまかくやはり御検討いただきたい。そして、いつまでも単なる名目的な糊塗的な答弁を繰り返していて、政策的に、実際に異常なる値上がりをしている土地高騰をこのまま続けさすということを避けてもらいたいという願望をいたしまして、質問を終わります。
  161. 毛利松平

    毛利委員長 堀君。
  162. 堀昌雄

    ○堀委員 最初に大蔵大臣にお伺いをいたしますが、租税特別措置法というのは何のために設けられる税制でございますか。
  163. 福田赳夫

    福田国務大臣 租税につきましては、所得税法法人税法その他一般的な税法があるわけであります。この税法におきましては税の基本的なあり方を中心といたしまして、税制の仕組みが法定をされておるわけです。それに対して、政策的に特殊な配慮をしなければならない、こういう事例がありますので、それに対しまして税制上特別の配慮を行なう、こういう場合におきまして租税特別措置法においてこれを処置する、こういうふうにいたしておるものであります。
  164. 堀昌雄

    ○堀委員 大体税法というのは、いまお話しのように所得税法なり法人税法があって、政策的に性別の配慮をするということは、その基本税法に対してプラスのときもマイナスのときもそういう配慮ということばは使えるのでしょうか。
  165. 福田赳夫

    福田国務大臣 そう思います。
  166. 堀昌雄

    ○堀委員 実は、きょう私は主として法人関係の税制の問題と、あわせて税制全般上の問題とをちょっと論議をさせていただこうと思っておるのですが、今度の租税特別措置法の中には、実は当然法人税法に書いて問題がないと思われるものが租税特別措置の中に書かれておるものがあります。それは御承知の法人税法に対して、大法人の一億円以上及び三百万円以上の所得がある法人に対する留保課税について五%引き上げる、こういうことになっておるわけですが、これについて五%引き上げるというのは、これは一体プラスの特別の配慮なのか、マイナスの特別の配慮なのか。それでは一体この部分をどう理解したらいいでしょう。
  167. 福田赳夫

    福田国務大臣 プラスであるかマイナスであるか、これは見る人によって違うのです。つまり、政府側から見ますれば、特に大蔵省から見ますればプラスです。しかし税の対象になる企業家から見ますれば、これはマイナスになる、かように考えております。
  168. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっといまの話は納得できない話なんですね。私がプラスと言ったのは、基本税法に対して納税者側がプラスかどうかというのが普通プラスだと私は思うのです。それを大蔵省側と納税者側と二つ言われても、これはちょっと困るわけですが、しかし私は、いみじくも大臣が触れられたことにちょっと感ずるところがあるのです。大蔵省側プラスだと言われた。それは納税者の問題の次元ではなくて、大蔵省側プラス、要するに地方自治体側マイナスというのなら話はわかるのです。よろしゅうございますか、私がいまなぜそういうふうに申し上げているか、あとで申し上げますが、もしこれを法人税法で書いておけば、これによって出てきた分は地方交付税交付金で地方にいくものを、ここで遮断をして国だけで使おうということなら、確かにいま大臣がいみじくもおっしゃった大蔵省プラスということだと思うのですが、そういう意図もここにあったわけでしょうか。
  169. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう意図はございません。
  170. 堀昌雄

    ○堀委員 意図はないけれども、結果としてはこれは法人税としては入らないので、地方交付税の算定の中に入らない、こういうことになるわけでございますね。
  171. 細見卓

    ○細見政府委員 法人税の特別措置でございますから、税収は法人税に入るわけであります。
  172. 堀昌雄

    ○堀委員 わかりました。私は取り扱い上、特措でやったらこれは法人税の別ワクとして、交付税に入らないのかと思っていましたが、それは私の思い違いでありました。  その次に、いま私が問題を出しておりますこの問題で、なぜ今度は留保分だけが引き上げられたのですか。これは普通私ども新聞で承知をしておるところでは、最初大蔵事務当局は法人税率を二%引き上げるのだというふうに新聞に伝えられておりましたが、いろいろ経過があって最終的にここへ落ちついた。その落ちつき方も実は留保分だけ、こういうふうになったということでありますけれども、この点については、全体にかけても五%ならたいした問題ではないわけですが、これを留保分に限ったという積極的な理由は何ですか。
  173. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほどもお尋ねがありまして申し上げたのですが、今度の措置は、一つは選挙後の倉卒の間の税法でありますし、そういうような意味においてあまりこまかいところには触れない、こういう点が一つ。それからもう一つは、配当分に対しましては二六でずっと据え置かれておるのです。そして四十年、四十一年のあの税法改正の際も、これも減税が行なわれたにもかかわらずこの二六は動かなかった。そういうような経過をも顧み、今度は本率の改正だけ、留保分の改正だけにとどめた、こういうことであります。
  174. 堀昌雄

    ○堀委員 実は、いまのように、ただ四十年、四十一年にこれが据え置かれているから、それで今度は動かさなかったというのは、理論的な背景としては序や問題があるんじゃないか。なぜかと申しますと、なぜこの配当分をこのように分離をしてきたのかということには、その前からの経過が私は一つあったと思うのですね。ところが、今日御承知のように企業はたいへん情勢がよくなってまいっておりますが、ここで私はいろいろな資料を見ておりまして、配当軽課というこの姿がほんとうに配当そのものに役立っておるのかどうかという点については、全然実はそうなっていないということが資料で非常に明らかになっておるわけであります。  国税庁が出しております「法人企業の実態」というのを調べてみますと、昭和三十七年から四十二年までの間に、配当と社内留保を合わせましたものは益金の中で大体五五%ぐらいのところをずっとこうまっすぐきておるわけです。要するに配当に回しますものと社内留保を合わせた総額、これは大体コンスタントに五五%ぐらいのところをずっときている。裏返せば、役員の賞与と法人税と社外流出とが、これまた同じように四五%ぐらいのところへずっとこう益金の中できているわけですね。そうなっております。ところがその法人税が、そういう意味で下げてきた経過があるにもかかわらず、配当のほうは全体に占める比率は逆にどんどん下がってきている。内部留保のほうがどんどんふえてきているというのが実は具体的な過去から今日までにおける姿になっているわけですね。  そこで、まだそれだけではなくて、たいへん興味がありますのは、日本証券業協会連合会の行なった「企業税制に関するアンケート調査」(昭和四十四年七月)によると、配当軽課措置の導入と配当率の関係について、「配当軽課措置とは関係なく、増減配あるいは配当率の維持を行なった」と答えた者が約九〇%に達し、また、配当損金算入方式が導入されたと仮定した場合、減税分を主として配当にまわすと答えた者はわずか二%しかいない。」こういうデータが実はあるわけですね。このようないろんな過去からの沿革を調べてみますならば、今日ここで二六%にしておこうが、今度これを五%上げて——五%上げれば一・三上がりますから二七・三になりますか、上げましても、現実には、これらのデータが示しておるように配当そのものに関係はない、こういうふうに私は実はこれらのデータから判断ができると思うのですね。  だから、これまでは下げるときでありましたが、これからまたせっかく上げるときには——かつては、大臣も御承知のように、配当の関係は四二%そのまま、配当も一本であったときがあるわけです。それからだんだんと三八になり、それが三五になりという経過があるわけでありますが、昭和三十三年まではずっとこれ一本の税制できたものが、三十六年の税制改正でいきなり一〇%も落として二八%に配当分をしたという歴史的な経過があるのであります。少なくともこれらのデータや過去における傾向から見るならば、今度何もこの配当を据え置く必要はなかった、少なくとも五%分だけは全体をとってもよかったのではないか。ですから私は積極的な理由は何かと伺ったのでありますが、この点については、今後のこういう法人税の検討をする場合にはやはりこの問題を含めて検討をしておく必要があるのではないか、こう思いますけれども、大臣、この点はいかがでございましょうか。
  175. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほど申し上げましたように、今回の措置は、四十年、四十一年の減税のときもこれを動かさなかった、こういうことと、もう一つ言っています。もう一つは、総選挙後一カ月余りでこの税制をきめなければならぬ、そういう際にお話しのようなこまかい検討をする余地がなかった、こういうことです。今後の検討問題といたしたいと思います。
  176. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、今度のこの租税特別措置は、いろいろと大蔵省の書いておるものを見ますと、財源的に非常に比重がかかっておるように書いておるわけですが、大臣は今度のこの制度を導入された主たる理由は河でございましょうか。
  177. 福田赳夫

    福田国務大臣 主たるねらいは、景気に対しまして財政においても警戒的な姿勢を示す、こういう意図であります。
  178. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、これは、いまの財源もさることながら、これまでしばしば私が予算委員会を含めて論議をしてまいりましたフィスカルポリシーというものの一つの逆の側面ですね。かつて福田さんが大蔵大臣になられて、デフレのときには国債発行——これは一番手軽なフィスカルポリシーなんですけれども、かねてから私は増税によるフィスカルポリシーという問題を当委員会または予算委員会で論議をしてまいりましたが、その点を考えるとするならば、私は確かに時間的な余裕はなかったと思いますが、やはりより効果的なのは一緒にやるべきではなかったのか。財源的な問題でこのくらいの財源でよろしいというのなら話もまた別であったかと思います。  そこでこの間実は参考人にお越しをいただいて議論をしましたときに、正木参考人がちょっといみじくも触れられたわけでありますが、この制度は実は一応二カ年の制度になっておりますね。ところがちょうどこれが二カ年たちますときには、昭和四十七年という年度は、最初に政府が福田さんの手で発行された国債二千億円が実は償還をする年に入るわけでありますね。そうすると、もちろんそのときの財政規模というのは、現在が七兆九千億円、去年とことしが一兆三千億円の伸びでありますから、少しずつ伸びがふえるとして、二年後というのはおそらく三兆円くらい伸びて十兆五、六千億というようなところへくるでありましょうから、その十兆五、六千億の財政の中における二千億はそうたいしたことはないと思いますが、その次の年からは今度はかなり大幅な実は国債償還が回ってくるわけでありますね。昭和四十八年になると六千七百五十億円、その次の年が七千二百億円ですか、こういうふうに非常に大きな国債の償還がくる、しかしいまだんだん国債の発行を下げて四千三百億まできておりますけれども、いつまでもこの程度で済むかどうかには、やはり私は疑問があるのじゃないか、財政上から見ても疑問があるのじゃないかと思うのですが、これはたいへん先のことになってあれですけれども、この国債がちょうど七年目で償還になったときは、政府は一体これについては何らかの処置を今日から考えているのかどうか、財政上の問題として。この点は大臣いかがでございましょうか。
  179. 福田赳夫

    福田国務大臣 四十年に発行しました二千億円ですね、これは四十七年に現金償還します。その準備をしておりますので、つまり国債整理基金に償還財源をためておる。それから四十一年に発行した六千七百五十億円、これは借りかえ償還、これを中心にして、財政の余裕がありますれば現金償還も加えたい、かように考えております。
  180. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、このあたりでは借りかえをするとなると、いまの四千三百億ベースというのがどこまでまだあと二年間に下がるか。四十七年におっしゃるように現金償還できるなら、そこまではいいわけですが、四十八年にいま出しておるベースの国債と、そこへ借りかえの分と重なるわけですから、とたんにこれから大きくなるわけですね、ここからしばらく。また先へいくと下がりますが、ここの三年間くらい、四十八年、四十九年、五十年の財政というのは、これは私は、借りかえをここでどかんとやらなければいかぬというのは、財政負担として相当大きな負担になるのじゃないだろうか、こう思うのですね。というのは、財政負担というのは国ですから、出すほうは借りかえをして出しますということでしょうけれども、償還する側とすれば二重にくるわけですね。当年度分と借りかえ分と重なったものを償還をしなければならないということで問題になりますから、これは少し今日からものを考えておく必要があるのじゃないか。  私は実はこの間から大臣と国債論議を少しさせていただきました。この間第一ラウンドをやって、きょう国債論議の第二ラウンドをやりたいと思っておるのですが、ちょっと理財局長に最初に事務的に伺いますが、国債のいまの利回り問題というのは、事務的には大体いつごろ決着をつけたいということですか、日程的に。
  181. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 国債の条件でございますが、先生も御承知のように、事業債について三月、条件の改定をやります。そのあと、事業債は非常に資金の需給が逼迫しておりますので、この消化をよくやっていかなければならない。そういう状況の中で国債の条件をどう改定していったらいいかというのは非常に微妙な問題だと思うのです。ただ、私らは、四十五年度は四千億市中消化ということもありますが、四月、五月、九月、十一月は非常な資金の需給がゆるむときでございますので、この機会になるべくたくさん消化したいという気がございます。しかし暫定予算の関係もございますので発行できないという状況になっております。さような条件を考えまして、まだ接触はいたしておりませんが、銀行その他消化先といろいろ、多量に消化してもらう話を進める段階できめていくことになる、かように考えております。
  182. 堀昌雄

    ○堀委員 実はこの前、予算委員会の総括質問のときに、たまたま大臣御病気で御出席がなかったわけです。大蔵大臣代理に佐藤経済企画庁長官がお出になりまして、そのときに私はちょっとある大蔵省関係の、というとあれですが、ここに責任者がおいでになる雑誌の対談をひとつ予算委員会で披露したわけです。それは何を披露したかというと、私も佐藤企画庁長官と全く同意見のことが書かれたと思うので披露したのですが、それは、いまの国債というのは日銀引き受け的である、こういうふうに書いてあるわけですね。しかし本来は国民が買う国債になるべきじゃないか。あといろいろつけておられましたけれども、そういう式のことを言っておられたわけです。  そこで私は、いまの国債が七年という期間、それが一体、今後の情勢として、まだ依然として借りかえその他を含めて見るとなかなか、大蔵大臣おっしゃるように火種にするのはだいぶ先になるわけですね。当分の間は、国債にかなり比重がかかる時期がこれから先にくるわけですね。四十八年、四十九年、五十年あたりはいずれも、いまちょっと申し上げたように六千七百五十、七千二百、その次になると四千七百億くらいでちょっと下がりますけれども、しばらくタブってくるわけです。この際、私は、国債を持っておる人たちが、七年でこの利子だから国債を持っておると思わぬのですね、率直に言いますと。そうすれば私は、七年でこの利子でというよりは、かりに国債の期間が十年に延長されてももう少し利回りがいいということのほうが、国民の持つ側にすれば同じではないか。特にいまのように七年で、大体七年後には主としてそれが現金償還全部されてしまうというなら話は別ですが、主として借りかえになるというのが前提になるならば、ことしの国債からどうという議論をするわけじゃございませんが、ものの考え方としては、国債の長期化と同時に高利回りという問題をもう少し考えるほうが、私は国民としても個人消化の足しになるのじゃないだろうか、こういうふうな気がするわけですが、大臣この点はいかがでしょうか。
  183. 福田赳夫

    福田国務大臣 当面の問題としては格別、もう少し長期な問題とするとそのように考えます。やはりこれは国民に進んで持ってもらうというふうに逐次持っていかなければならぬ。ただ七年という問題、これを長期化する問題は、他の政府保証債でありますとか、あるいは事業債でありますとか、それがみんな七年ということになっておる。それとのつり合い、それを見ながら七年と一応しておりますけれども、これは逐次長期化を考えていくべきものである、また考えていい、さように考えております。
  184. 堀昌雄

    ○堀委員 私もその点たいへんけっこうだと思うのですが、政府保証債と国債というのは非常に関係がありますから、これはセットで考える必要があると思いますけれども、金融債などというものは、これもすでに私は金融制度調査会の皆さんに対して、金融小委員会でかつては言ってきたのですが、やはり長期資金というものは本来長期資金の方向へ持っていってシフトさせるべきだ。七年のものは十年なり十五年なりの方向にシフトさせるのが本来の姿だと思っておるのですが、七年という金融債は非常に中途はんぱだと思います。しかし事業債、国債、政保債というものは必ずしも同じベースの七年でなければならないとは思わないわけです。ですからその点は、実はもう少し国債はユニークな立場に立っていいんじゃないか。特に建設公債のような性格を持っておるとすれば、七年の償還というのはやや実態に合わないという点もあると思うんですね。この点はひとつ年期を延ばすほうに比重があるのではなくて、長いものは利子が高くなるというのが原則ですから、そういう意味ではこれはしょっちゅう買ったり売ったりする対象になるのではなくて、ある程度資産というかっこうで国民がこれを持とうという気持ちになるためには、どうしてもやはり安定しておるので国債は非常にいいと私は思うのですが、同時に利回りもいいんだということにならないと、いまのように、進んで買うということにならない。  所得の中で、今度五十万円までの国債非課税問題が五カ年延長になっておりますね。私、これは個人的な見解なんですが、この間銀行協会会長、証券業協会会長に参考人に来ていただいたときにこの問題を出したのは、まずいま国債の非課税は五十万円なんです。ところが、要するに貯金利子のほうは百万円まで実は非課税になっていますね。私はなぜ銀行その他の利子のほうが百万円なのに——それは別途になっていますから問題がありますけれども、その他のもののほうは百万円、たとえば公社債投信のようなものでも百万円までは非課税になるのに、国債が五十万円というのはずいぶん遠慮をしているなという感じがするんですね。だから私は、この点は別建てですが、百万円までを非課税にしたってちっともかまわないんじゃないか、国民が国債を買うという観点に立てば。そうして今度五年延長になっているようですが、その点はひとついまのように、国民が喜んで買うというときに、百万円というのは貯蓄としますと、必ずしも国民の側からすればそれを常に第一線準備といいますか、いつでも金にかえなければならぬというのじゃなくて、大体われわれのいまの生活なら四、五十万程度は、いつ何か不時の病気をしたりいろんなことをしたときに要るかもしれないということで、これは預貯金にしなければいかぬでしょうが、それ以上のものは、換金性があるというのなら、安定のもので長期に持ったっていいんじゃないかということになるのじゃないかと私は思うので、そういう意味で私は非課税百万円にしたって国債の場合には問題ないのじゃないか。そうすると、相対的に利回りが百万円までもう一つ上がりますから、そういうメリットを加えて、できるだけ幅広く国民に国債を持たせることが、いまの佐藤経企庁長官の言う日銀引き受け的国債からあるべき国債にシフトさせる一つの大きな問題点になるのじゃないか、こう思いますが、大臣その点はいかがでしょうか。
  185. 福田赳夫

    福田国務大臣 ちょっと私が申し上げる前に主税局長から、技術的にちょっと理解の行き違いがあるようでありますから……。
  186. 細見卓

    ○細見政府委員 百万円のワクは、国債を買いましても預金をしましても貸付信託を買いましても、あるいは公社債投資信託に投資してもいいわけです。そのほかに五十万が国債だけにある。ですから、国債が好きだといわれる方であれば百五十万円買えることになっております。
  187. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 ただいま主税局長が申しましたようなことで、百万円の非課税があった上にさらに国債について五十万がある。これは五十万の額面については、従来五十万で二年間ということであったわけです。しかし先生のおっしゃるような国債自体の個人消化というものを進めていくためには、いまこれを利子に課税しないということにいたしますと、利回り計算といたしますとおそらく一番いい利回りになるわけです。したがってそういうことから、五十万までは従来やっておったものをさらに延長いたしまして、五年間そういう制度を続けることにしたわけです。
  188. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、この際、国債は、いまの免税処置をするという処置は、これはどこかの証券会社か何かに預託をしておかなければできないということになるわけです。これは一体どうなるのですか。国債を国民が買ったときに、その取り扱いとして、それじゃ私はいまの百万円分の国債はひとつ非課税にしてもらいたい、こういうときにはこれは一体どういう処置をとっておるのですか、具体的には。
  189. 細見卓

    ○細見政府委員 公社債投資信託と同じように、買い入れましたところで少額貯蓄非課税の取り扱いをするわけでございます。
  190. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると一応証券会社が事務的な取り扱いをする、こうなるわけですね。  そこで大臣、実は私この間銀行協会と証券業協会の責任者に伺ったのですが、証取法六十五条というのがございまして、アメリカの発想に基づいて、金融業、要するに銀行その他の金融業は、証券の扱う固有の業務、証券の売買、引き受け、発行等はできない、こういうことにきめられておるのですが、六十五条のただし書きで、国債それから政府保証債、地方債についてはこの限りでない、こういうふうに法律的にはなっておるわけです。ところが今日は国債というのは証券会社しか実は売っていないわけですね。ところが、最近は証券業というのはたいへん成績がいいのですけれども、これは都会地に集中していまして、証券業というのはいなかのほうではほとんど存立がしないというので、どんどん吸収合併というかっこうになりつつあるというのが最近の傾向なんですね。  そこで、証取法も認めておることであるから、これは銀行というか、金融機関にも少し国債を売らせたらどうなのか、こういうふうに思って実はお尋ねをしたら、銀行側はたいへんけっこうです。証券側は二、三の理由をあげて、どうも値段が多少変動するものを銀行が売られるのはまずいんじゃないだろうかとか、銀行が国債を売ると預金が減るんじゃないだろうかというようなお話もあったのですが、私はその証券業のほうがどう、金融業がどうというよりも、いまの前段の発想に立って、できるだけ国民が国債になじむという意味では、もし銀行が売りましょうというのなら銀行にも売らしたらどうか。  要するに、いま御承知のように銀行はシンジケートの中に入って、そうして国債を買わされているわけですが、それが事実上は日銀の引き受けに一年ほどたてばオペレーション種としていってしまうわけですから、ここに佐藤経企庁長官の言う日銀引き受け的国債の主要な問題点がある。それをもし銀行の窓口で売るとなれば、それだけ自分たちの引き受けたものが国民の中に入りますから、日銀引き受け的要素は減ってくる、こうなるのじゃないかと思うのですね。  ですから、今後の公債政策一つの問題点としては、金融機関の窓口で国債を売らせることは、それだけ国民の保有プールが大きくなる。保有プールが大きくなることは、私はオープンマーケットができてくる条件に連なるのじゃないか。今日一番オープンマーケットがきちんとできているのは電電債でございますが、なぜ電電債がオープンマーケットになっているかという一つの理由は、非常に多数の国民が電話を買うたびに買いますし、それがいろいろ売られて流通しているということでマーケットができていると思うのです。やはり広く国民が国債を持つことがマーケットのできる一つの条件に連なり、そのことが金融のためのオープンマーケット・オペレーションに道を開くことにもなってくるのじゃないかという意味では、私は前向きに少し考えてみていい問題ではないか。ことにそれは財政上の問題から見てもこれは非常に関係がある、私はこういうふうに思いますが、この点についての大臣の見解を伺いたいのです。
  191. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話しの点は、趣旨としてはわかります。ところがそれに対する反対、これは堀さんも御承知のとおり幾つかあげられておるわけですが、その反対論よりは、むしろ銀行と証券会社の業務分野の調整、こういう問題があるわけです。そういう問題で、これは国債を初めて四十年に発行しようというときからかなり議論になったところでございますが、まあもう少し周囲の環境の推移、こういうものを見ながらよく考えていきたい、かように考えます。
  192. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、いま国債を売っておる証券業というのはかなり大きいもの、中位以上くらいじゃないかと思うのです。事務当局に伺いますが、一番下のランクの小さい証券会社では国債を売ってないと思うのですが、どうでしょうか。
  193. 安川七郎

    ○安川説明員 現在証券会社は二百七十五社ございますけれども、御指摘のとおり、国債について一つの商品として売っておりますのは大体中位程度ですね。上から数えまして大体五十社くらいのところまでで、それ以下でもないということはございませんで、とにかく顧客の注文がございました場合には、当然それは大証券を通じまして顧客に渡すということはやっておりますが、ただいま申し上げましたのは、積極的に重要な商品の一つとして売るというようなこと、そこで上位五十社くらいをとりますと、この店舗網はかなり全国的に散らばっておりまして、御指摘のように非常に地方的に特に大きな穴があるということにはならないかと思います。つまり二百七十五社の下位のほうの証券会社は、本店だけあるいは二、三店舗というような、地域的に非常に片寄っておりますので、窓口の分散という点からは、そう大きな比重は占めておりません。
  194. 堀昌雄

    ○堀委員 実は、私がなぜこの時点でこの問題を持ち出しておるかといいますと、御承知のようにいま証券業はたいへん好況でございまして、もうこの三月の仮決算で上位のほうは実はたいへんな黒字になっておるわけですね。証券業の悪いときにこんなことを持ち出したのでは問題があると思うのですが、大体私はかねてから、競争原則というものを生かすということが非常に重要だといろいろ思っておるのです。少なくとも法律が定めておる——あの証取法六十五条ができたときには、これはやはり、過去においては銀行もやれた業務を、これをともかく証券にだけぽーんと持っていったという、きわめてドラスティックな法律が行なわれたわけですが、しかし国債と地方債と政保債についてはただし書きがついたということは、私はいまの業務分野の問題を含めて、これは別だという考え方、公的な財源というもので、他の私的な財源とは違うのだということが、私は証取法六十五条の精神だと見ているわけです。公共的なためにという点の非常に高いものを、そういう意味で金融業から遮断することは適当でないというのが証取法六十五条の精神だと考えますと、これだけ証券界が調子のいいときにこういう問題は処理をしておいても問題はないのではないか。国債に占めておる証券業のウエートというのは、今日必ずしもそんなに高くはなくて、その他のいろんな業務があるわけですから、私はだからいま申し上げた地方債、政保債に触れてないわけです。とりあえず国債だけひとつ金融機関の店舗で売ってみるということは、当面のいろいろな財政上の問題から見ても、やはり店舗がたくさんあってそこで国債を売るということになれば、これは金融業内部においても競争が起きてきて、かなり消化が促進をされるのではないだろうか、こういうことは国民の側から見てもあまりマイナスにはならないのではないだろうか、こういうふうに思うのです。その点、さっきの税法で、大蔵省はプラスで逆はマイナスになるということならこれはまずいですけれども、これは国もプラス、国民もプラスなら、その他のところにマイナスが多少あるくらいで気がねをすることはないのじゃないか。そのマイナスの起こるところは、ともかく戦後最高の好況の中にあるということであるならば、これは大蔵大臣も前向きに、少し思い切って検討していただく余地があると思うのですが、いかがでしょうか。
  195. 福田赳夫

    福田国務大臣 理論的には御指摘のように思います。思いますが、先ほど申し上げましたように、きわめて機微な業務調整という問題が金融機関と証券業界の間にあるわけです。まあよく考えてみます。
  196. 堀昌雄

    ○堀委員 ひとつ、できるかできないかは別として、少しやってみるというかまえで話を進めてもらいたいと思うのです。おそらく私は、証券業の皆さんが全部が反対なんということにはなろうとは思わない。六十五条全部を取っ払うということになれば、これはたいへんなことですから、そんなことは私は言ってないのですが、現行法にあることですから、法律で認めておることぐらいを一体やれないのかということになると、これは私はやはり国債政策として問題があると思うのです。ひとつ話を進めていただいて、できることならそれが具体化するように少し努力をしてもらいたいと思います。  その次に、実はこれも参考人の皆さんとの関係でちょっと問題を出したわけですが、あとのこまかい利子・配当の処置は明日にやらしていただくことにして、本日時間がありませんから、それに関連をして、実は今度の利子・配当の問題は、やはり貯蓄が重要だから、最近ちょっと貯蓄性向も下がってきておる際でもあるから、十分配慮してもらいたいというのが、金融関係なり証券業関係なりの代表の皆さんの意見でありました。そのことは、消費性向がどんどん高まってくるので、相対的に貯蓄性向が下がるのだ、こういうお話がありましたから、私はそこで一つ問題を提起したわけであります。  それは、昔は勤倹貯蓄というのが美徳であったわけですね。要するに節約をして貯蓄をするというのが美徳であった。今日は消費が美徳といわれる世界になってきているわけです。大臣、この点は御承知でございましょう。
  197. 福田赳夫

    福田国務大臣 消費が美徳になったということは、承知しておりませんです。
  198. 堀昌雄

    ○堀委員 実は大臣、やっぱりちょっと古いんですな。このごろは消費者が王様だとか消費は美徳だというような表現で、あらゆるマスメディアを通じてその考え方というのは、実は実際問題としてたいへん普及をしてきておるわけです。そこで、この前もちょっと申し上げたかもしれませんけれども、今日の国民のいろいろな消費に対する欲望というのは自然発生的ではないと私は考えておるわけです。昔は自然発生的だったわけです。大体何かがほしいという気持ちが起きてから物が買いたくなったのです。このごろはテレビという強力なマスメディアを通じて、これでもかこれでもかと、隣の車が小さく見えますなどということになってきたわけです。ずいぶんいろいろな方法、手段を通じて、これがいいぞ、これを買えというかっこうでどんどん注入をされるので、結局自然発生的ではなくて、ある程度欲望をそういうマスメディアによって喚起をして、そして消費を拡大する、こういうことになってきておる。これがいまの大量生産の生産状態とマッチをして、要するに大量生産、大量消費ということで今日の段階になってきておると思うのです。  そうすると、これに関連をして貯蓄の問題を考えるならば、最近は少しこれらの広告宣伝の問題は行き過ぎておる点があるのではないか、実はこういう感じがするわけであります。そこで大蔵省にお願いをした資料を拝見すると、大体昭和四十年に二千六百九十六億円であったものが、四十四年には四千九百三十一億円と、たいへんな実は広告宣伝費は急激な増加をしておるわけです。そこで、あまり高率の課税をしようという提案ではありませんけれども、われわれの党としては、かねてからこの広告宣伝費というものに課税をしたらどうかというのがわれわれの方針でありますが、これに一〇%の課税をしても年間五百億程度財源が出てくる。相当な財源になると思うのであります。そのことは結局、別に貯蓄に回すわけではありませんけれども、国の財源になるということは、私はそれだけ、日本経済の場合にはそれが公共投資なりそういうことに回ってくるわけでありますから、ある意味では、貯蓄によってそれを押えて吸い上げて、そうしてその資金によっていまの公共投資をやるという回りくどい手段でなくて、やはりこういう部分においては税制の活用しかるべきではないか、私はこういうふうに考えるわけです。今後おそらく、いまの五千億円、四十四年度五千億円というものは日ならずして一兆円をこえるような段階にまいるであろうと思うわけでありますが、今日、一〇%でなくて五%でも、要するに消費に関係する——消費というとあれですが、土地住宅を含めて、そういう購買といいますか、に関連するような広告については、低率の課税をもってしてもひとつ広告税のようなものを新設することは、今後の財源の問題としては考慮の余地があるんじゃないか、こう思いますが、大臣いかがでしょう。
  199. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう御意見だとするとかみ合ってくるんです。先ほどは、日本の世の中が、消費は美徳なりということを全般的に肯定するというような世の中になってきた、こう言うから、そういうふうには承知しておりませんということを申し上げたんですが、どうも私が見まして、近ごろの風潮は消費があまり行き過ぎている面があるというふうに考えるのです。お話しのように、その行き過ぎの根源として過大広告という面があると思う。これを何とか矯正できないものかというふうに考えますが、しかし他面におきまして、そのやり方、これが問題なんで、ちょうど交際費におきましても問題がありまするように、広告というものが営業活動である。交際費なんかに比べまするとそういう色彩がかなり強いわけです。これが経費として非常に重きをなしておるということを考え、また広告というのは、一つはこれは後進企業ですね、これが盛んにやる。これは伸びようとするためにやる。そういうことを考えると、これを一律にやるということになるとまたその間に不均衡というか不公平を生ずるというようなこともあり、この問題の考え方は非常にむずかしいと思うのです。私は、これは御趣旨の点はもう全く賛成です。広告が過大に過ぎて消費をあおり過ぎる、その行き過ぎにつきましては何とかためる必要があるんじゃないかということは賛成でございますが、税制によってこれをためるということ、その方法が非常にむずかしいんじゃないかと思う。今後十分考えさせていただきますが、そういういま私どもの段階でございます。
  200. 堀昌雄

    ○堀委員 私も税によってこれを抑制しようと考えていないのです。これは抑制できるものでありませんから考えていないのですが、ともかくも、いまの全体の中から見て、消費がこれだけもういっているのに、なおかつ消費をかり立てるために行なわれておるものからある程度の税を取ることは、結局私はさっき申し上げたような意味貯蓄の振りかえのような効果があるのじゃないか。国民貯蓄を国債で吸い上げるということよりも一つの意義があるのじゃないだろうかと思いますから、その限りでは、初めからあまり高率の課税をしようという提案はしていないのです。五%でもいいと思うのです。いま広告の五%課税しても、将来これはかなり大きな財源になると思うのです。この間大蔵大臣もおっしゃるように、今後は私どもはやはり財源問題を考えずして国の政治考えることはできないと思うのです。その財源問題は、いま私が申し上げておるように、国債の問題というのはやはり一つ財源問題だと私は見ておるわけです。これは今後の重要な一つ財源問題だ。税も財源問題として重要だ。そうすると その税の取り方の問題になるわけですけれども、税の取り方の中にやはり広告に対する課税というものがあっていいのではないか。ただ問題は、マスメディアというものが非常な力を持っておりますから、要するに政府・与党としてもどうもマスメディアにはかなわぬということで、初めからシャッポを脱いでかかったのでは、私は国民の公正な利益を守ることはできないと思うのです。ですから、いきなりここに二〇%の一〇%のということになれば、これは抵抗が大きいでしょうが、まあ五%程度をかけることは私はそんなに大きな負担になるとも思いませんし、そういうので薄く広く課税ができて、将来の財源になる見通しの大きい一つのファクターだ、こう考えるものですから、ひとつこれは、さっきの岡沢さんじゃないけれども、少し勇気をもって一ぺん検討を進めてもらいたいと思うのですが、大臣どうでしょうか。
  201. 福田赳夫

    福田国務大臣 よく検討いたします。
  202. 堀昌雄

    ○堀委員 法人税関係といまの財源の関係をきょうはやらしていただいて、あと明日、今度は租税特別措置の中身についてやらしていただくことにしたいと思いますので、本日は以上で終わります。
  203. 毛利松平

    毛利委員長 次回は、明十五日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時十六分散会