○広瀬(秀)委員 私はただいま議題となりました
物品税法の一部を改正する
法律等の一部を改正する
法律案について、野党各党を代表して反対の討論を行ないます。
そもそも
物品税は、
昭和十二年北支事変特別税法による宝石、貴金属、写真機等の奢侈的消費抑制を目的とする奢侈的物品に対する課税に始まり、
昭和十五年、大東亜戦争前年の戦時色の横溢する時代を背景として
物品税として独立し、時代の変遷と経済社会の進展、生活消費の態様の変化を若干ずつ反映しつつ幾たびかの改正を重ねて今日に至っているものであります。
しかしながら、一九六〇年代におけるわが国経済は異常ともいうべき高度成長をなし遂げ、それとともに
国民の
所得水準も高まり、奢侈的消費抑制ではなく、消費は美徳なりという風潮の高まりとともに、消費物資の豊富な供給、消費の高度化が見られ、従来奢侈的物品と見られたものも一般的、平準的消費と
考えられるように、生活様式、消費の態様に変化が生じております。すなわち消費者の消費選択はまさに広範なものがある時代なのであります。かかるときにおいて、その選択する物品の消費の背後にある担税力に着目し、これに照応した税負担を課するところに今日の
物品税の意義があるということができましょう。もちろん一般的生活様式の変化に照応して、生活必需品となっているような物品について、かつては便益的、奢侈的な物品であっても、これに課税することは、それが人頭税的
意味を持ち、
所得と担税力を無視した逆進的悪課税のそしりを免れ得ないことには十分留意しておかなくてはならないでございましょう。
このような立場に立って、以下数点について反対の
理由を申し述べます。
その第一は、
税制調査会が差し示した
物品税についての問題
指摘とその改善
検討が、今回の改正案にはほとんど見られない点であります。
すなわち、一部の高級消費財について非課税とされていることについて、物品間の負担の不均衡、不公平感があることに配慮して、課税廃止物品及び新規物品を課税対象に取り入れることについて再
検討が求められておったにもかかわらず、今回の改正案にはこの点何らの積極的な
努力が行なわれていない点であります。
第二の点は、
物品税率構造について、同一税率の適用される課税物品相互の間において、消費者の常識に照らし多くのアンバランスがそのまま放置されている点であります。たとえばダイヤモンドが二〇%であるのに対して扇風機が一五%というがごときであります。扇風機のごときは、もはや便益品というよりはまさに生活必需品であり、大衆消費物資であり、少なくとも非課税か税率半減が必要であることは常識であります。
第三は免税点の問題についてでありますが、今日的消費状況において奢侈的消費水準と思われる程度のものに過当な免税効果を及ぼしているものがあり、たとえばハンドバッグについて八千円の免税点は、消費の実態にかんがみ、まことに不当であります。一方、時計の免税点が三千円に据え置かれているのは低きに失しております。かくのごとく、税調答申の免税点の適正水準のあり方、免税点を設ける場合の物品間の権衡について、各物品を通ずる総合的観点から適宜再
検討の必要があるとの
指摘について何らかの
措置が行なわれていないことはきわめて遺憾であります。
第四は、非課税物品についても本
委員会における審議を通じて明らかにされたごとく、今日希少価値とさえいわれるウルシ塗り家具等の非課税、神仏用というだけで時価数十万の仏壇が非課税とされるなど、著しく購買者の担税力を無視した非課税物品が多く、これらは当然その高級性、奢侈性に着目し、これを購入する者の担税力から見て課税対象物品に取り入れるべきであります。
第五は、今次改正案についても、カラーテレビ受像機などについて非課税から二年ないし三年の段階
措置を行ない、本則税率に戻すにあたって、過当に電機メーカー保護の色彩が強いことを
指摘せざるを得ないのであります。
物品税の本質がこのことによってゆがめられているといわねばなりません。
第六の反対
理由は、第一種物品すなわち
貴石、貴金属などの小売り段階課税の
方式などについてでありますが、これは
徴税当局の
事務的技術的都合のみを優先させ、小売り業者に著しい負担をしいるものであり、輸入卸段階、製造段階課税
方式に戻して当然であろうと思うわけであります。
以上、本法案について反対
理由を申し述べたのでありますが、
政府は、本
委員会の審議過程において明らかにされた現行
物品税法のもろもろの矛盾を率直に認識され、明年度においては消費者物価への深甚な配慮、逆進性による課税公平をそこなわないように十分留意しながら、全
国民の納得と理解が得られるよう、新しい時代に即応した
物品税法の全面的改正案を国会に
提出されることを強く要求をいたしまして、私の討論を終わりといたします。(拍手)