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1970-03-24 第63回国会 衆議院 大蔵委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年三月二十四日(火曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 毛利 松平君    理事 上村千一郎君 理事 藤井 勝志君    理事 山下 元利君 理事 広瀬 秀吉君    理事 松尾 正吉君       奥田 敬和君    木部 佳昭君       佐伯 宗義君    坂元 親男君       高橋清一郎君    地崎宇三郎君       登坂重次郎君    丹羽 久章君       原田  憲君    坊  秀男君       松本 十郎君    森  美秀君       吉田 重延君    阿部 助哉君       平林  剛君    堀  昌雄君       美濃 政市君    貝沼 次郎君       二見 伸明君    春日 一幸君       竹本 孫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         外務政務次官  竹内 黎一君         外務省経済協力         局長      沢木 正男君         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省主計局次         長       船後 正道君         大蔵省国際金融         局長      奥村 輝之君  委員外出席者         水産庁漁政部長 平松甲子雄君         通商産業省貿易         振興局経済協力         部長      黒部  穣君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  漁船保険及漁業共済保険特別会計歳入不足  をうめるための一般会計からの繰入金に関する  法律案内閣提出第四三号)  経済及び技術協力のため必要な物品外国政府  等に対する譲与等に関する法律の一部を改正す  る法律案内閣提出第三六号)  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に  伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第四〇号)      ――――◇―――――
  2. 毛利松平

    毛利委員長 これより会議を開きます。  漁船保険及漁業共済保険特別会計歳入不足をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案議題といたします。
  3. 毛利松平

  4. 中川一郎

    中川政府委員 ただいま議題となりました漁船保険及漁業共済保険特別会計歳入不足をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案につきまして、提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  昭和四十三年度におきまして、海水の例年にない高温等により全国的にノリの被害が異常に発生し、これに伴い漁船保険及漁業共済保険特別会計漁業共済保険勘定保険金支払いが増加したため、同勘定支払い財源に五億六千七百五十五万円の不足が生ずる見込みでありますので、昭、和四十五年度において、一般会計からこの金額を限り、同勘定に繰り入れることができることとしようとするものであります。  なお、将来この会計漁業共済保険勘定におきまして、決算上の剰余が生じた場合には、この繰り入れ金金額に達するまでの金額一般会計に繰り戻すことといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその概要であります。  何とぞ御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  5. 毛利松平

    毛利委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ります。      ――――◇―――――
  6. 毛利松平

    毛利委員長 次に、経済及び技術協力のため必要な物品外国政府等に対する譲与等に関する法律の一部を改正する法律案、及び国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。二見伸明君。
  7. 二見伸明

    二見委員 最初に、海外経済技術援助について若干お尋ねしたいと思います。  最初に、法案の内容についてお尋ねしますけれども、今度の改正では、いままでの物品にさらに「船舶建物その他政令で定める財産」を加えた、こういうことでありますけれども、「その他政令で定める財産」というのは具体的にどういうふうになっているのか、御披瀝願いたいと思います。
  8. 船後正道

    ○船後政府委員 「その他政令で定める財産」といたしまして現在考えておりますのは、船舶建物譲与等に伴いまして、これらの従物をもあわせて譲与等を行なう必要がありますので、政令ではこれを指定する予定でございます。  御承知のとおり、従物とは、ある物の効用を確保し、あるいは高めるために、これに継続的に付属されている物でございます。具体的に申し上げますと、建物の場合には照明装置とか冷暖房装置船舶の場合には羅針盤とかいかり、このようなものでございます。
  9. 二見伸明

    二見委員 新たに船舶建物を含めた理由はよくわかりますけれども開発途上国援助という立場からいって、航空機あるいはヘリコプター、こういうものを今回含めなかった理由は、特別な理由があるわけですか。
  10. 船後正道

    ○船後政府委員 特別な理由があるわけではございませんで、さしあたり現在、航空機ヘリコプター等につきましては援助要請もございませんので、考えてはおりません。
  11. 二見伸明

    二見委員 外務省のほうにお尋ねしますけれども開発途上国援助に対して、ヘリコプターというものは、必要あるのですか、必要ないのですか。
  12. 沢木正男

    沢木政府委員 地域開発調査、その測量等には、ある場合には必要でございますが、それがこの法律が適用されますような無償援助としてやるという意味の必要性は、いまのところ、大蔵省から御答弁がございましたように、実際の要請は出てきておりません。
  13. 二見伸明

    二見委員 私、聞いたところによると、せめてヘリコプター程度は含めてもらいたかったという、おたくのほうの関係からも話があるわけです。おたくは必要ないとおっしゃるけれども、そういう声も実際あるわけです。そういう点はどういうふうにお考えですか。
  14. 沢木正男

    沢木政府委員 近い将来におきましては、日本技術協力が拡大するに従い、そういう要請もおいおい出てまいると考えておりますが、現在具体的な事例としてはございません。
  15. 二見伸明

    二見委員 もう一つ、これは定義の問題になりますけれども開発途上国、これは自由諸国圏内だけに限るのか、それとも共産圏も含まれるのか、その点はいかがですか。
  16. 船後正道

    ○船後政府委員 開発途上にある外国政府定義でございますが、これは別段自由圏あるいは共産圏といった政治的イデオロギー的な問題とは関係がないわけでございます。文字どおり経済的社会的開発程度が十分でなく、現在その開発努力している国をさすわけでございます。
  17. 二見伸明

    二見委員 ということは、たとえは共産圏――ルーマニアとか、向こうのほうから要請があれば、こちらとしても快く応ずる、こういうふうに理解していいわけですか。
  18. 船後正道

    ○船後政府委員 開発途上国に該当するかどうかという問題でございますが、これにつきましては、どこまでが開発途上国であり、どこまでがそれを通り過ぎた国であるということを、一義的にきめることはできないと思います。たとえばOECDの開発援助委員会、いわゆるDACの表、これなんかも一つの参考になるわけでございます。
  19. 二見伸明

    二見委員 東南アジアといたしますと、ポストベトナムという大きな問題があるわけです。ベトナムがどういう形で解決するか、まだ予測する段階ではございませんけれども一つ考えられるのは、南北ベトナムがいまのまま共存体制に入るということが一つ考えられるわけです。もう一つは、北ベトナムが南を統一するというか、そういう形での南北統一考えられるだろうし、あるいは南が北を統一するという形での南北統一考えられる。いろいろなケース考えられると思います。その場合、もし南と北がそれぞれ南北に分かれて共存体制に入る、ベトナム戦争が終わって共存体制に入るといったようなケースになった場合、当然日本としては南ベトナム援助はいたすでしょうけれども北ベトナムはどうなりますか。
  20. 船後正道

    ○船後政府委員 外交上の問題はわれわれよくわかりませんが、いずれにいたしましても、外国政府でございまして、日本にとりまして、未承認国政府北ベトナムはこれに属するわけでございますが、未承認国政府外国政府ではありませんで、初めからこの法律対象とはならないということでございます。
  21. 二見伸明

    二見委員 日本が承認しておりませんから援助対象にならないと言われれば、それはそのとおりだろうと思います。  もう一点、別の点からお尋ねしますけれども開発途上国に対する援助というこの目的ですね、これはどういう目的でやるわけですか。
  22. 船後正道

    ○船後政府委員 これは経済及び技術協力を通じまして開発途上国開発援助するということでございます。
  23. 二見伸明

    二見委員 それは私もわかりますけれども、六〇年代が開発の十年と騒がれたわけです。何のために開発途上国に対して先進国援助しなければならないか、それはいろいろな観点から論じられるわけでありますけれども、結局は、先進国開発途上国との間の格差が拡大したんではよくないという問題があるんじゃないですか。世界平和という面から見ても、格差の拡大はよくないという、そういう観点もあって、先進国開発途上国に対して積極的に手を差し伸べよう、こういうふうに進んでいるわけじゃないですか。
  24. 沢木正男

    沢木政府委員 お説のとおりでございまして、わが国海外に対して経済技術協力をいたしますのは、相手国の産業の振興あるいは経済社会開発の基盤の整備あるいは技術水準の向上というようなことを通じまして、できるだけこの格差を少なくして、後進国諸国の発展を助けるという目的のためにされておるものと考えております。
  25. 二見伸明

    二見委員 そういう考え方からいって、南だけは援助するけれども、北には援助しないということになるとしますと、南のほうは援助の効果があらわれて、どんどん国が回復して、国力もついてくる、生活も豊かになる、北のほうはおくれてくる、こういう現象が起こってきた場合に、これは世界の平和にとって、あるいはアジアの平和にとって、好ましい状況では決してないと私は思うのです。やはり、アジアの緊張をなくすとか、世界平和を考えるといった場合には、それは未承認国かもしれないけれども北ベトナムの民衆に対しても、何らか積極的な手を差し伸べていくのが、私は、先進国の役目ではないかと思うのですけれども、その点はどうですか。
  26. 沢木正男

    沢木政府委員 北ベトナムに対する援助の問題は、ベトナム戦争終結の態様にもかかわりますし、かつまた、行なわれる援助内容にもよりましていろいろ考え方が変わると思います。そういう点につきましては、いまだ政府部内において一定した考え方を固めておりませんので、いま先生がおっしゃいましたような点も十分考慮に入れて、今後の政策立案について対処してまいりたいと考えております。
  27. 二見伸明

    二見委員 ベトナム戦争がどういう形で終結するかわからないからというのでありますけれども、しかし、ベトナム戦争終結の形は、そんな複雑な形になるわけじゃないでしょう。大まかな形は何通りかにきまるわけです。先ほど申しましたように、南北がいまのまま平和状態に入るというケース考えられる、あるいは南北統一が行なわれる、そして北が南を統一するという形での終結もあるだろうし、南が北を統一するという形の終結もあるだろう。せいぜいこの三通りぐらいじゃないですか。これ以外に終結の形があればまた別でありますけれども……。しかも、ベトナム戦争終結というものは、そう十年も二十年も先の話じゃない。となれば、しかも、ポストベトナムというのはもうここ数年来いわれていることでありますから、そうなれば、その三通りぐらいの、こういう場合にはこういうふうにいこう、こういう場合にはこういうふうにいこうという基本的な考え方があってしかるべきじゃないかと思うのです。そういう点について、まだ考えていません、これから検討いたしましょう、私は、そういう態度はちょっと理解に苦しむわけでありますけれども、その点どうでしょう。
  28. 沢木正男

    沢木政府委員 検討は加えておりますが、ただいま申し上げましたように、政府部内の一致した意見としての固まったものはないという趣旨でございますので、どうぞそういうふうに御了承願いたいと思います。
  29. 二見伸明

    二見委員 その問題はその程度にいたしまして、国際金融局長にちょっとお尋ねしますけれども、円の問題になりますが、円の切り上げがいろいろいわれておりますね。実際に円が強いのか弱いのか。大蔵大臣は、円の切り上げ考えていない、こういう御答弁でありますけれども、確かに私は、円が強い強いというふうに外国は言っているけれども、円はいろいろな保護が与えられている、そういう点から考えれば決して強くないと思います。しかし、金融当局としては、この点をどういうふうに考えられているのか。円の評価ですね。強いのか弱いのか、この点いかがでしょう。
  30. 奥村輝之

    奥村政府委員 円の価値につきましては、現在の為替相場などを見ますと、かなり円高相場が出ておるわけであります。これは、やはりこの一年、二年の間、国際収支黒字というものを反映してそういう状態であると思いますが、これまた一般議論が行なわれておりますけれども日本の現在の為替管理は、貿易にいたしましても、あるいは資本取引にいたしましても、なお他の先進諸国に比べてもう一歩自由化を進めなければならない点があると思います。先ほど仰せになったとおりでございまして、そういう点が、一種保護状態というものが取り払われましてから、それから一体どうであるかというような議論が出てくるのが筋合いでございます。現在円が非常に強い、あるいは切り上げをしなければならぬというふうなことは、一部のジャーナリストその他からは出ているわけであります。しかし、外国責任ある政府当局等からは、そういうような円の切り上げを主張するという議論は私ども聞いていないのでございます。そういうことでございますので、大蔵大臣がたびたびお答え申し上げておりますように、円の切り上げというものは考えていない、私どもはいまそういうことを議論する時期では毛頭ないというふうに信じておるわけでございます。
  31. 二見伸明

    二見委員 諸外国から円の切り上げに対する要請といいますか、圧力、これはまだそれほど強くない、こういう段階でございますか。
  32. 奥村輝之

    奥村政府委員 外国にも評論家はおりますし、日本にも評論家たくさんいるわけであります。絶えず新しい問題について見解を述べることは自由であります。しかし、私が申し上げたように、外国責任のある政府当局というものからは、そういう点、議論に出ていないのでございます。
  33. 二見伸明

    二見委員 きょうの朝日新聞のニュースですけれども、金・外貨準備が今月の末には四十億ドルをこえるだろう、こういう話が出ておりますけれども、これは実際どうなっているのですか。
  34. 奥村輝之

    奥村政府委員 二月末の金・外貨準備は、御存じのように、三十六億三千万ドルでございます。三月の末の数字は、これはやはり三月の末になってみませんとわからないのであります。私ども責任のある数字をいま述べるということはむずかしかろうと思います。特に、御存じのように、最近の国際収支の中で、外国人日本の証券に対して行いいます投資という、このものの金額がかなり異動をいたしております。ある月は多く ある月は少なくなっているという点もございまして、なかなか予想はむずかしいわけであります。そういう点で、もうしばらくお待ちをいただけば正確な数字は出ようかと思います。
  35. 二見伸明

    二見委員 国際収支黒字基調をずっと続けていく、おそらくそう予想されているわけですね。現在は、円の切り上げに対する外国からの責任ある要請はまだない。だけれども、ないからといって安閑としていれば、これは当然出てくるだろうということは考えられるわけですね。近い将来にはあるかもしれない。われわれとしては、現状で円の切り上げが行なわれたのではたまりませんから、切り上げが行なわれないようにいろいろ手当てをしなければならない。そのために政府としては円シフトを導入した。しかし、円に対してこれからかかってくるであろうと予想される圧力というものは、それだけではちょっとかわし切れないんじゃないか。そのためには、輸入制限を撤廃するとか、為替完全自由化とか、いろいろ考えられておりますけれども、これを一切やろうとすると、国内的にはいろいろ問題がある。結局、そういう圧力をかわすためにも、いままでは外貨は準備するんだ、積むんだということが一つ考え方だったけれども、これから外貨をどういうふうに使っていくかということに考え方を変えなければならぬと思うわけです。それで、これからさらに大きなウエートをもって考えられてくるのが、結局は開発途上国に対する日本からの援助、これはいままで以上に大幅に上げていく必要があるんじゃないか、こういうふうに考えるわけですけれども、いかがでしょうか。
  36. 奥村輝之

    奥村政府委員 確かに、いまのような国際収支前提といたしますと、今後日本としてはいろいろ考えなければならないことが多いわけです。ただ、開発途上国に対する援助ということになりますと、これは外貨がたまっているから援助をしなければいかぬとか、あるいは援助はすぐできるのだということではなくて、円資金というものが必要であります。これは私が申し上げるまでもないと思いますが、国内にもかなり後進地域がございます。いろいろとやらなければならないものがたくさんあるわけです。それと海外に対する後進国援助との関係でございます。後進国援助のほうも、開発途上国経済水準を上げるということによって、やはり先進国経済が伸び、世界全体としての繁栄ができるわけですから、これもまた大事だと思うのです。しかし、この両者のかね合いというものはなかなかむずかしい。国民のコンセンサスというものを得て着実に進めていくべきものであると私も考えているわけです。  話はもとへ戻るのでありますけれども、さっきからのお話の中で、日本黒字あるいは国際収支というものについて、これはかなり手厚くなったという話があるんですけれども、私どもドイツが過去に経験した国際収支黒字外貨準備の増加などを考えてみますと、いまの日本外貨準備というものは、まだそう安心をいたしましてこれで何をやってもだいじょうぶだというような状態じゃないのです。やはり着実に堅実にこれから先また伸ばしていかなければならない点もあるのじゃないか。特に外貨準備については、一国が外貨準備をふやしますと他国が減るという非常に簡単な理屈がございます。したがって、私ども注意しておりますことは、あまり急激に外貨準備をふやすということになると問題が起こります。国際協力の見地からそのテンポをいささかなめらかにして持っていく、基本的にはいま申し上げたとおりでございます。したがって、いまの国際収支というものを前提にして外貨準備というものを議論して、直ちに後進国開発全力投球ができるかどうか、これはやはり経済の微妙な状態というものをながめながら慎重にやってまいらなければならぬと思っております。
  37. 二見伸明

    二見委員 西ドイツ日本とが違う、私もその意見に賛成です。と同時に、全力投球していいものかどうか、これは確かに考えなければならない問題だと思います。日本国内でのおくれた地域をほうり出して、あるいは社会資本の充実が叫ばれておりながらその面をほうり出して、低開発国ばかりに目を向けるのは国策上いいかどうか、これは考えなければならぬ問題だろうと思います。  ところで、外務省の方にお尋ねしますけれども、過去十年間、開発の十年として騒がれて今日まで来たわけでありますけれども開発途上国に対する援助が必ずしも効果的でないということで、ガルブレイズだとかバウアーだとか、そういうところからいろいろな悲観論が出ていますね。そういう点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  38. 沢木正男

    沢木政府委員 確かにそういう悲観説もございますけれども、最近発表されましたピアソン報告におきましては、一九六〇年代の対外援助についてはいろいろあやまちがあったし、効果的でない、ミステークもあったけれども、全体としては有効な援助が行なわれたということで、対外援助について、もっと希望を持ってやれば、後進国が一九七〇年代の終わりにおいて自立経済に達成する率は非常に多いということで、決して援助悲観論はとらないというような説もありまして、われわれもできるだけ後進国援助のための努力国力に従ってふやしていくべきであるという観点から、希望を失わずやっていきたいというつもりであります。
  39. 二見伸明

    二見委員 もう一点それに関連してお尋ねしますけれども開発途上国に対する援助が効果的でないという悲観論も、一つは、そういう向こう土地制度とか社会制度とか、そういう点に問題がある、あるいは人的資源に問題があるんだ、そういうところを解決しなければ、幾らやってもむだだという極端な悲観論もあるわけですね。一方には、いまのピアソン報告に見られたような、どちらかといえば楽観的な考え方がある。わが国としては、そういう土地制度社会制度の改革は、それぞれの国にまかせながら、それはそれとしてわれわれとしてはでき得るだけのことはしていこう、そういうものが解決されてから援助するということじゃなくして、それはそれとして向こう自主的努力にまかせながら並行して進めていこう、こういうふうになるわけですか。
  40. 沢木正男

    沢木政府委員 大体の方向としましてはただいま先生のおっしゃったとおりでございますが、援助を与えるにつきまして非常な勧告、あるいはわれわれが援助でき得る面につきましては、そういう面につきましてもできるだけ援助をしていきたいというふうに考えております。
  41. 二見伸明

    二見委員 もう一つ援助形態でありますけれども最初トレーニング方式といいますか、向こう訓練所みたいなものをつくってやっていこうという形がありましたね。それから今度はプロジェクトベースでやるようになり、最近の傾向としては西ドイツでやっているマンデープランみたいな地域開発的なものに形が変わってきている、こういう話を聞いておりますけれどもわが国が現在行なっている形態というのは、そういう分け方をしてまいりますとどこら辺に位するわけですか。
  42. 沢木正男

    沢木政府委員 プロジェクトタイプ援助といたしましては、技術協力の中では農業協力医療協力等にそういう傾向が過去二年間くらいにあらわれてまいっております。本格的な地域開発に取り組んだ援助というのは、まだそういうドイツのようなスケールではいたしておりません。しかしながら、最近インドにおいて手をつけましたダンダカラニャの開発計画、あるいはタンザニアから要請が参っておりますキリマンジャロのアルーシャ地方開発計画というようなものを日本が取り上げるといたしますと、やはり一種地域開発的な要素が入るわけであります。しかしながら、それが主流かと申しますと、それはわが国が行なっております技術協力援助の一部でございまして、依然として専門家派遣研修生受け入れ、あるいは海外派遣青年協力隊、あるいは技術協力センターというものも相当な量でこれを進めてまいるということになろうかと思います。
  43. 二見伸明

    二見委員 理想的な形としては、そういった地域開発的なもののほうが望ましいのか。そういうものをやると同時に、専門家派遣とか研修生受け入れとかいうのは、これは当然並行してやらなければならない問題だろうとは思いますけれども方向としてはそういうような地域開発的な方向に移ったほうが、相手国にとってはプラスになるのじゃないだろうかという気がするのですが、どうでしょうか。
  44. 沢木正男

    沢木政府委員 地域開発協力プロジェクトとして援助を与えました場合には、相手国開発に寄与する度合いから申しまして非常に効果的であることは事実でございますが、そうかといいまして、その国の技術水準を上げるということになりますと、やはり個々の研修生あるいは専門家によるトレーニングというような点も無視するわけにはまいりませんので、必ずしも重点がそれに移るということは申し上げられないんじゃないかと思います。
  45. 二見伸明

    二見委員 ピアソン報告についてですけれども、これはGNPの一%ですね。そのうち政府援助が〇・七%、こういう目標を打ち出されておるわけでありますけれども大蔵大臣はあまりこれには積極的ではなかったと聞いております。先ほどの国際金融局長答弁ではありませんけれども国内とのかね合いもあって、必ずしもピアソン報告のいうようにできないという実情が日本にあるんだろうと思いますけれども外務省としては、政府援助をどの程度まで持っていこう、たとえば〇・七%は無理としても、〇・六五にしていこうとか、〇・六三くらいにしようとか、おおよその目標はあると思うのですが、どうでしょうか。
  46. 沢木正男

    沢木政府委員 目標は外務省だけできまるものではございませんで、結局、政府部内の協議によるわけでございまして、目下それの協議をいたしております。  外務省といたしましては、関係各国の出方も見ながら、先進国の一員として、その国力に恥ずかしくないだけの寄与はしたいというつもりでございますが、ピアソン報告の勧告内容につきましては、現在OECDのDAC、開発援助委員会でも議論が行なわれておりますし、国連の各種委員会でも行なわれておりまして、いまだ各国とも何%というような数字をはっきり出して、それを実現するという議論にまで煮詰まっておりません。われわれとしましては、そういう各国の出方も見ながら、〇・七%は無理であるにしても、できるだけそれに近い数字で、どういう点まで達成できるかということで協議を進めておる段階でございます。
  47. 二見伸明

    二見委員 私は、それに関連して、ほんとうは、おたくのほうで〇・六とか〇・六五とかいう数字を出されたならば、それを達成するためのスケジュールをお尋ねしたいのですけれども、当然スケジュールはできていないですね。そういう点、何かスケジュールはできておりますか。
  48. 沢木正男

    沢木政府委員 いろいろ試算はいたしておりますけれども外務省としての固まった考え方に基づくスケジュールというようなものは作成しておりません。
  49. 二見伸明

    二見委員 それでは話を変えますけれども、四十三年度の経済援助総額は十億四千九百万ドルで、DACのうちで第四位になったと大々的に報道されております。GNPの〇・七四%に達した、かなり高率である、高い額になっておる、こういわれておるわけでありますけれども、二国間政府ベースの援助額、これは四十二年よりもかなり減っているんじゃないかと私は思うのです。四十二年が三億四千五百九十万ドル、四十三年は三億八百三十万ドル、三千数百万ドル減っておるわけでありますけれども、これはどういうわけですか。
  50. 沢木正男

    沢木政府委員 これは、一言にしていえば、前年度の政府援助支出額がきわめて例外的に高かったということでございまして、その理由は、フィリピンの賠償の支払いが前々年度から前年度に落ち込んできて、六七年の支出が高くなったこと、それから、六八年におきましては、通常六八年度内に成立すべきインド、パキスタンに対する大口の円借款協定の締結が、先方との交渉でおくれまして六九年にずれ込んだというような理由がございまして、六八年度の政府ベースの援助額が六七年度より減ったという結果になっております。
  51. 二見伸明

    二見委員 逆に言えば、日本援助というのは、いわば民間ベースに全部おぶさりっぱなしで、政府としてはあまり積極的ではなかったということのあらわれじゃないかと私は思うのですが、そういうふうに酷評されてもやむを得ないと思うのですが、いかがでしょうか。
  52. 沢木正男

    沢木政府委員 われわれといたしましては、最善の努力をしておるつもりでございますが、何ぶん相手があることでございまして、それとの協定がととのわないとか、あるいは合意に達しないというようなことからおくれる場合もございますので、一言にしていえば、ただいま先生がおっしゃったような批判も、数字の上からはできるかと思いますけれども、今後ともそういう非難はこうむらないように努力していきたいという考えでおります。
  53. 二見伸明

    二見委員 政府経済技術援助の中で――技術援助にしぼりますけれども、これは大体どの程度のパーセンテージを占めておりますか。
  54. 沢木正男

    沢木政府委員 一九六八暦年度のDAC統計によりますと、わが国の技術援助額の二国間政府援助額に対します比率は四・四%でございまして、同じ数字でDAC諸国の平均では二四・三%ということでございまして、これらの国に比べて非常に低いということでございます。したがいまして、今後とも国内研修施設の拡充だとか専門家の養成、訓練等、技術協力をささえる基盤の整備ということをやりまして、技術援助の充実をはかっていきたいというふうに考えております。
  55. 二見伸明

    二見委員 日本援助で従来からいわれていたことの一点は、技術協力が非常に低かったということじゃないですか。本来ならば、資本が行き、それに技術がフォローする、あるいは技術が行って、資本がフォローするという形ですね。いままでは、日本の技術援助が非常に低いというのが批判の的になっていた。当然おたくのほうとしては十分考えておると思いますが、これからどういう方向に持っていきますか。何%くらいまで技術援助の割合を持っていくつもりですか。
  56. 沢木正男

    沢木政府委員 DACの対日年次審査におきましては、御指摘のように、わが国の技術援助が非常に低いという点が強く批判されております。しかしながら、技術援助というものは、なま身の人間を扱う援助でございますし、ただお金さえふやせば二倍にすぐなし得るものではございません。やはり、専門家につきましてもいろいろ待遇の問題のみならず法制上整備すべきような点もございますし、かつ、日本人の専門家その他には、ことばの障害で、国内ではりっぱな専門家でありながら海外に出せないというような方も多々ございますので、予算とそういう人の補充の面と制度的な面が一貫して進まなければ、実際の技術協力援助を質のよいものにしてふやしていくということは困難であろうかと考えまして、今年度予算は申すに及ばず、来年度も再来年度もそういう方向で全体の調和ある発展をはかっていきたいというふうに考えております。
  57. 二見伸明

    二見委員 通産省の構想によると、昭和五十年には二国間政府ベースの援助額の中に占める比率を二〇%くらいにまで持っていきたい、こういう構想があるそうですけれども、この点はどういうふうに了解しておりますか。
  58. 黒部穣

    ○黒部説明員 ただいま先生御指摘の数字は、事務方でつくりましたほんとうの試算でございまして、公式の通産省の見解ではございません。
  59. 二見伸明

    二見委員 通産省の見解じゃなくても、事務的なベースでの試算だとあなたはおっしゃいましたけれども、実際には二〇%が妥当かどうかわかりませんが、こういう構想は持っていてあたりまえじゃないですか。事務ベースでつくったならば、おたくのほうがそれを承知していたならば、外務省としても、このくらいまで持っていこうとか――いろいろな問題があるのは、私わかります。言語の問題もあるし、いろいろな問題があるのはわかるけれども、技術援助を積極的に進めようとするならば、昭和五十年にはこの程度まで持っていきたいとか、五十五年にはこの程度まで持っていきたいとか、そういう明確なプランがあってあたりまえじゃないですか。その点どうですか。
  60. 沢木正男

    沢木政府委員 もちろんそういうふうな理想はわれわれも持っておりまして、現在経済企画庁を中心に審議されております中期経済計画の手直し、あるいは対外経済協力審議会の技術協力小委員会における審議その他を通じて、われわれの理想を実現すべくいろいろ努力をいたしておるわけでございます。
  61. 二見伸明

    二見委員 それからもう一つ日本経済援助についていろいろと指摘されている欠陥は、相手国のGNPをどういうふうにしたら向上できるかという観点に立っての国別の長期にわたる援助計画がない。たとえばインドネシアに対しては、五年計画でこういうものをやろうとか、あるいはインドに対してはこうだとかいう、そういったこちらとして長期のプランがないということが、日本経済援助に対する一つの欠陥としていろいろ識者からも指摘されておるわけです。それは、経済援助は相手のあるものでございますから、こちらでかってにつくって押しつけるわけにいかない性質のものだと思います。しかし、いままでのやり方というのは、向こうから要請があった場合には応じましょうという、いわば消極的な立場での援助だったのじゃないですか。むしろこちらは――まさか押し売りするわけにいきませんしね。また、あまり露骨に話を持っていけば、イエローヤンキーだなんて悪口も言われるし、経済侵略じゃないか、そういう批判が出てくるのは私はわかります。その辺は慎重にしなければならないと思いますけれども、しかし、われわれがイエローヤンキーと言われるような欠点をなくし、経済侵略だという――前回の質問のときには、阿部先生から、外征だ、しかもセイは政治の政じゃなく征服の征だ、こういう批判もありましたけれども、そういう立場じゃなく、ほんとうに相手国の向上をはかろうという立場でもって相手国と話し合い、ある程度のプランは持ってしかるべきではないだろうか、私はこういうふうに考えるわけですけれども、いかがでしょうか。
  62. 沢木正男

    沢木政府委員 援助の長期計画化ということは、ピアソン報告の中でも非常に強く勧告されておりまして、ただ、わが国の予算制度は、憲法によりまして、歴年、国会で審議を経て決定されるということでございますので、その辺の技術的問題もございまして、その両者を含めながら目下われわれで検討を加えておるという段階でございます。確かに後進国にとりましては、長い間の援助計画を示してやったほうが、先方も長い開発計画を立てられるという点でお互いに便利であることはお説のとおりでございます。
  63. 二見伸明

    二見委員 いまの予算の問題は、ほんとうは政務次官が来ていれば政務次官に聞くつもりだったのですが、来てませんからやめますけれども、もう一ついわれていることは、日本援助機構がいろいろ複雑だということです。一元化していない。おたくのほうでもそのことは痛切に感じている立場じゃないかと思います。経企庁のもとには海外経済協力基金がある。大蔵省のもとには日本輸出入銀行がある。技術協力については、外務省のもとに海外技術協力事業団があるというぐあいに、いろいろと機構が分かれているわけです。これがはたして相互の連携がうまくいっているのかどうか。うまくいっていないといういままでの指摘でありますけれども、実情はどうなんですか。
  64. 沢木正男

    沢木政府委員 確かに機構が分かれておることによりまして不便もあるわけでございますけれども、われわれは目下緊密なる連絡のもとに、大体大過なく事務を処理しておるんじゃないかと考えております。
  65. 二見伸明

    二見委員 実際は大過なく事務は過ごされてないのです。その点はあまり時間もありませんのでやめますけれども、イギリスには技術協力省がある。カナダには対外援助省がある。西ドイツには経済協力省がある。外国の場合にはかなりこういう問題については積極的に、しかも独立した省でもって積極的に進めておる。日本の場合には、お互いに相互の連携がうまくいっているという答弁でありますけれども、実際はそうではない。それは局長の本音じゃないと私は思います。そう言わなければまずいから言うんだろうと私は思います。だけれども、実際はうまくいってないのは、現場の声を聞いてみればよくわかるはずであります。別に私、ここで局長にこれを聞いてもしようがないのですけれども技術協力庁みたいなものを設けろというわけではありませんけれども、何かこういった機構を統合するような、一本化するような方向にこれから進んでいくべきじゃないだろうか。しかも、おたくが直接こういう問題にはいろいろと不便を感ずるのですから、そういう点はむしろ積極的に具申していったほうがいいんじゃないだろうか、こう思うわけですが、いかがですか。
  66. 沢木正男

    沢木政府委員 機構問題は内閣総理大臣の重要なる問題でございまして、外務省がどうこう希望しただけでそういうふうに動くものでもございませんので、政府の上層部においても、そういう点については、お気づきの点は御検討をなすっておると思いますので、そういう検討を通じて今後行政機構を簡素化し、かつ能率的にしていくのが自然の方向であろうかと考えます。
  67. 二見伸明

    二見委員 もう一つは、開発途上国の債務が累積しているという問題が起こっております。そのために援助資金が元利返済のほうに回されるのではないかという憂いも聞こえてくるわけでありますけれども、それは今後どういうふうにして解決していきますか。それは向こうにとってもかなり深刻な問題だろうと思うし、こちらとしても、せっかく相手のためにこういういろいろな援助をしても、それが利子の支払いに回されたり元金の返済に回されたのでは、これは結局何の役にも立たないということになるわけです。これについてはピアソン報告も何か言っているようでありますけれども外務省としては、あるいは大蔵省としては、こういう問題はどういうふうに考えますか。
  68. 奥村輝之

    奥村政府委員 開発途上国の債務の累積の問題はいろいろ原因があると思います。その一つは、国によって違いますけれども国力以上に借り入れをする、こういうのが原因でございましょうし、あるいはその国のやった、あるいはその借款でやったプロジェクトというもの、これが実際上あまり効果的でなかったという問題もございましょう。それから経済開発計画、こういうふうな受け入れ国での政策というものが適当でなかった、こういうふうないろいろな原因によるものであろうと思います。しかし、これは一がいにきめつけるわけにもまいりません。  そこで、私ども今後の方策でございますけれども、やはり、今後開発途上国に対する協力にあたりましては、いろいろなプロジェクトあるいは商品援助、いろいろなものがございましょうけれども受け入れ国の全体としての経済政策との関連等にもっと着目していく必要があるのじゃないだろうか。それと、国際機関がいろいろございますが、一国対一国の関係では、悪気なしに良心的ないろいろな勧告をいたしましても、これはなかなかちゃんとそのまま受け取られないという場合もあります。そこで、政治的に無色透明な国際機関というものがもう少し、いまも活動しておりますけれども、もう少し前面に出て、足らざるところを補っていく、こういうことも必要であろうかと思います。しかし、それでもなおこの借款の返済が困難であるという場合もあろうかと思います。これはやはり債権国が国際機関を中心にして集まりまして、今後の再建計画をお互いに検討いたしまして、長い目でその後の発展をはかってやるというようなことも私は必要じゃないかと思います。問題は非常に根深いところにあるわけでございます。簡単には片がつかない問題でございます。非常に長期的な視野を要する問題でございます。一律的な方針でもってこれを律するわけにまいりません。個々別々に、ケース・バイ・ケースに実情に即するようにこれから対処していきたいというふうに考えております。
  69. 二見伸明

    二見委員 具体的なこまかい問題に入りますけれども、研修員と留学生の受け入れの問題です。日本西ドイツやアメリカ、フランス、こういうところから比べるとかなり低い、こう指摘されているわけでありますけれども、これは言語という障害もあると思います。しかし、障害は言語だけなのか、あるいは最初からこちらに受け入れるワクが少ないから来ないのか、その点はどうでしょうか。
  70. 沢木正男

    沢木政府委員 主として研修施設の問題とか、これに対する研修指導員の問題とかいうふうな予算上の制約というものが大きいと思います。
  71. 二見伸明

    二見委員 研修員あるいは留学生の受け入れこれは多ければ多いにこしたことはないと思います。それで、実際に日本に来ている外国人留学生というのはおよそ九千人くらいいる。そのうち大体三千人くらいは東南アジアからと聞いているわけです。これは私費留学生も含めてですね。そのうち日本で国費でもって留学生を受け入れているのは、東南アジアだけに限りますと大体六百人くらいじゃないかと思うんです。残り二千数百人というのは私費で来ているわけです。というのは、それだけ日本に留学したいという希望があるということですね。だから、言語の障害はあるけれども、ワクを広げればもっともっと留学生は来る、喜んで来るんじゃないだろうか、こう思うわけです。ワクが小さいとおっしゃいますけれども、今後の方向としてはこれはふやしていく方向ですか。
  72. 沢木正男

    沢木政府委員 今後の方向としてはふやしていく方向努力いたしております。
  73. 二見伸明

    二見委員 それに関連しますけれども、ことし四十五年度から第三国研修を六名ほど外務省で計画されているそうでありますけれども、この第三国研修はいろんな問題があると思います。現在あるのも私は承知しておりますけれども、これはさらにこれからもかなり積極的に第三国研修というものは進めていく方針ですか。
  74. 沢木正男

    沢木政府委員 外務省といたしましては、今後も第三国研修は拡充していきたいというふうに考えております。
  75. 二見伸明

    二見委員 それから、先ほど留学生はこれからもワクをふやしていきたい、こういうお話でありましたけれども日本に来ている国費留学生に対する支給額といいますか給与――何という表現をしたらいいかわかりませんけれども、それは月幾らになっていますか。
  76. 船後正道

    ○船後政府委員 国費外国人留学生に対する給与でございますが、四十五年度予算では、学部の場合は月額三万六千円、研究員の場合は三万七千円を予定いたしております。
  77. 二見伸明

    二見委員 四十五年度の場合には、留学生の場合は一カ月三万六千円ですね。そして、研修生の場合は幾らですって、三万七千円ですか。
  78. 船後正道

    ○船後政府委員 ただいま申し上げましたのは文部省所管でございまして、研修生ではございません。学部が三万六千円、学部以外の研究員が三万七千円でございます。
  79. 二見伸明

    二見委員 三万六千円で実際問題、留学生が日本に来て満足な勉強ができるのかどうか。千葉大で留学生のストライキもありましたけれども、そういったことを考えて三万六千円でどうですか。日本に来て十分な勉強ができると思うのかどうか。日本人であるならば、足りなければアルバイトもできるでしょう。だけれども外国人であれば、アルバイトだって決して日本人のように簡単にはいかないいろんな問題があると思います。彼らはアルバイトに来るんじゃなくて、日本に勉強に来るわけでありますから、アルバイトする時間があったらば勉強したいというのが人情でしょう。それが私は留学生のほんとうの態度だと思います。また、われわれ日本としても、その人たちには、日本にいる二年だか四年だかの滞在期間中に、思う存分勉強してもらって向こうの国へ帰って、そして向こうの国の役に立つように働いてもらいたい、こういう気持ちがあってやっているわけですね。それが三万六千円でもって満足に勉強できるのかどうか。実情に合っているのかどうか。千葉大のストライキを見ても、私はこれは決して実情に合ってないからこういうストライキが起こるんじゃないかと思うのです。私は、留学生の場合、ワクをふやすというだけでなくて、そういう面から考えていかなければならない問題があると思う。そういう点はどうでしょうか。
  80. 船後正道

    ○船後政府委員 四十四年度は三万三千円でございましたが、四十五年度は三万六千円に引き上げたわけでございまして、なおこの三万六千円のほかに、下宿する者につきましては日本国際教育協会から別途六千円宿舎の補助が出るわけでございます。合計いたしますと四万二千円になるわけでございます。この額がこれでもう十分だというわけのものではございませんが、文部省とも協議いたしまして、今後とも充実につとめてまいりたいと考えております。
  81. 二見伸明

    二見委員 六千円の下宿料が出るのは私知っております。実際六千円で下宿なんかできやしませんよ。いま東京都内だったら一万円くらいかかります。下宿料も出すんだったら、そういった実勢に見合って支給してもらいたいと私は思うのです。いま六千円ではできませんよ。六千円というのはいまから十年くらい前です。それは安いおんぼろの、いつこわれるかわからないようなアパートであるならば、六千円でもいいかもわからない。しかし、人間並みの生活をしようと思えば、六千円でできるわけないですよ。来年度というか、四十六年度からは、少なくとも下宿料についてもそういう点は考慮していただきたいと思うのです。そうして、どうせ来ているんだから、よかったと喜んで帰れるような境遇に置いてやるほうが、日本の将来にとっても、向こうにとってもいいんじゃないだろうかと思うわけです。その点いかがでしょうか。
  82. 船後正道

    ○船後政府委員 その点は、前回も堀先生から御指摘のあった問題でございまして、せっかくわが国に留学した人たちでございますから、帰国の後は十分その国の経済発展に従事していただくと同時に、日本に対して協力的な人になっていただきたい、これがその目的であろうと思いますので、御指摘の留学生の給与の問題につきましては、御趣旨を体しまして今後とも十分検討いたしてまいりたいと思います。
  83. 二見伸明

    二見委員 外務省のほうに、こういう留学生といいますか、研修員といいますか、そういう人たちの便宜をはからうために大学みたいなものをつくりたい、こういう構想があると聞いております。日本に来てそれぞれ大学に入れるのもいいけれども、言語の上でいろいろなハンディキャップがあるので、日本国内で工業大学みたいなものをつくって、そこに外国人留学生を全部――まあ希望者になるかどうかわかりませんけれども、入れて、こちらとして英語だとかあるいはフランス語でもって講義をしていくようなものをつくりたいという構想が外務省にあると聞いておりますけれども、それはどうなっていますか。もしすでに構想があったならば、それがどういうような状況で現在進行しているのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  84. 沢木正男

    沢木政府委員 いろいろ議論段階でそういう話も出ておりますが、省としてのまとまった構想というものはまだ完成しておりません。
  85. 二見伸明

    二見委員 省としてまとまったものはないそうですけれども考え方としては、外務省としては十分受け入れられる考え方ですか、これは望ましい方向と。私はこれを聞いたときに、非常に望ましい方向だなと思ったんです。できるならば積極的に進めてもらいたい、こう思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  86. 沢木正男

    沢木政府委員 そういうふうな構想は、外務省部内のみならず、省外におきましても、きわめて有力な筋からも、東南アジアの大学をつくるとか、あるいは国連の大学を招致するとか、いろいろな構想がございますので、目下のところそういうふうな各種構想を整理いたしまして、できるだけ一本のまとまった効果的なものを考えたいということで、検討を加えておる段階でございます。
  87. 二見伸明

    二見委員 それから、これは六八年度版の海外技術協力事業団の年次報告みたいなものですけれども、これにこう書いてある。相手国経済開発、技術開発の政策に対して、直接助言、指示する高級ポリシーアドバイザーの派遣もほとんど行なわれていない。日本から専門家相手国派遣しているのは、いわば単発というやつであって、局部的なものだ。そのために、専門家派遣した効果も決して高いものではない、こういう意味だと思うわけですけれども、その点いかがでしょうか。
  88. 沢木正男

    沢木政府委員 高級専門家海外派遣につきましては、やはり給与の問題、あるいは実際そういう能力のある方が、国内において、すでに自分が生涯かかって勤務しようというような会社なり協会なり、そういうポストにおられまして、お願いしてもなかなか海外に出ていただけないということから、非常に充足が困難であるのは事実でございます。しかしながら、一部タンザニアあるいはウガンダのほうには、そういう高級な政府のアドバイザーとしての専門家も実現いたしておりまして、今後とも、われわれとしましては、そういう要請がございましたときに、できるだけこれにこたえるべく、あらゆる手段を尽くしてまいりたいと存じております。
  89. 二見伸明

    二見委員 専門家派遣の件ですけれども、高級なポリシーアドバイザーがいないということと、非常に局部的なものになっている。いままでかなりの数の専門家派遣しているわけですが、その専門家派遣した結果というものを、もう一度ちゃんと洗い直して、そうして、できれば地域的にあるいは業種的に集中したほうがむしろ効果的ではないかという意見もあるわけです。そういう意見についてはどうでしょうか。
  90. 沢木正男

    沢木政府委員 日本は、現在世界じゅうの国といろいろ関係を持っておりますので、集中するということは、実際問題としては、現実的には困難であろうかと存じます。
  91. 二見伸明

    二見委員 これはケニアだと思いますけれども向こうの国鉄のゼネラルマネージャーとして日本専門家要請しているという話も聞いておりますし、もう一つ、ウガンダだと思いますけれども貿易公団でもゼネラルマネジャー、そういったものの要請もきていると聞いておりますけれども、これの実情はどうなっておりますか。
  92. 沢木正男

    沢木政府委員 ただいまお尋ねの貿易公団のほうは、ウガンダの話でございまして、これは専門家一名をすでに派遣しております。  それから運輸公団総裁のほうはタンザニアの話でございまして、これはすでに一名選択いたしましたけれども、適任者じゃないということで、さらに適任者を選ぶべく目下運輸省、国鉄その他と人選中でございます。
  93. 二見伸明

    二見委員 それから、専門家派遣について、帰国後の身分保障制度がないということで、それも専門家があまり行きたがらない一つ理由だと聞いております。向こうに行っている間、国家公務員の場合には休職という形でいくわけですから、三年なら三年向こうに滞在していれば、その間は本俸は上がらないけれども、帰ってきたときにその分だけは、今度は一ぺんに上がるようになったという話も聞いておりますけれども、こういった身分保障制度はやはり考えていかなければならない問題だろうと思うのです。特に、民間の人を派遣する場合には、帰ってきた場合に、ポストがなくなって首になっている、あるいはやめて向こうへ行かなければならないという、いろいろな問題があるわけです。  そこで、ひとつ提案したいのですけれども、年金制度みたいなもの、たとえばインドに五年間いたならば、何年以上いたならば年金を支給する、そういうふうな制度は現在あるんでしょうか。もしなければ、考えるに値するものなのかどうなのか、御検討いただけるものなのかどうなのか、その点はいかがでしょうか。
  94. 沢木正男

    沢木政府委員 現在、専門家につきましての身分保障制度につきましては、六カ月ないし七カ月間、本俸の六〇%を支給するという身分保障制度が一部認められておりますけれども、年金支給的なものは、現在制度上はまだ認められておりません。  専門家の待遇改善につきましては、いろいろ予算の中でも、外務省といたしましても一番力を入れて予算要求しておる点でございまして、ただいまのお説のような点を考慮に入れまして、今後とも専門家の待遇の改善ということには努力してまいりたいと考えております。
  95. 二見伸明

    二見委員 もう一度関連して伺いますけれども、退職金制度、たとえば向こうから帰ってきた場合、休職して行っているのなら別ですけれども、ある企業を退職して向こう派遣されて帰ってきた場合には、実情は失業保険みたいなものしか出ていないのではないかと思うのです。かなり有能な専門家が、日本に帰ってきたとたんに失業者になって失業保険をもらっているのでは、本人としてもあまり気分がよくないだろうし、政府としても恥ずかしいのではないかと思います。そういう場合には、たとえば三百万円とか五百万円とか、そういった退職金制度を設けるという考え方はどうでしょうか。
  96. 沢木正男

    沢木政府委員 われわれといたしましては、そういうふうな制度も含めまして、専門家の待遇改善ということを全般的に進めてまいりたいと思っておりますが、何ぶん予算全般のワクの問題あるいはプライオリティーの問題というものも考慮に入れながら、全体の中で改善を加えていくということでございまして、直ちにそれのみを実現するということは、いろいろ制約もございまして、なかなか困難であろうかと思います。
  97. 二見伸明

    二見委員 政務次官がいらっしゃらないので、主計局の関係の方にお尋ねいたしますけれども、そういう考え方、これは予算の問題になると思いますので、大蔵省としては前向きに検討していただけるのかどうか、その点いかがでしょうか。
  98. 船後正道

    ○船後政府委員 援助予算の一環といたしまして、外務省とも十分相談してまいりたいと考えます。
  99. 二見伸明

    二見委員 もう一点、やはりこまかくなりますけれども、現地業務費という問題ですね。現地に行って専門家がいろいろな仕事をする、その仕事に要する事務費だとかなんだとかいうのは、相手国から当然出るたてまえになっているはずですけれども、実際には後進国なるがために、出るものも出ないという場合もかなりあり得る。そういう場合には、結局は、日本から派遣された専門家がポケットマネーで買わなければならぬという実例がかなりあると聞いているわけです。そういう点で、向こうでの仕事を円滑にするために、向こう政府ばかりにおぶさっているわけにいかない。どうしても緊急に必要な場合もある。ところが、向こう政府のほうは、なかなかスムーズにいかないで、おりるべき金もおりてこないという場合もありますので、そういう場合の現地業務費を支給してもらいたい、こういう意見もかなりあるようでありますが、そういう点についてはこれから検討していただけるでしょうか。
  100. 沢木正男

    沢木政府委員 派遣専門家の現地業務費につきましては、昨年度予算からそれが一部認められておりまして、センター等の専門家がグループで行っておりますところにつきましては、一カ所につきまして月額百五十ドル、個別の専門家につきましては月額三十ドル程度の業務費が予算上認められております。
  101. 二見伸明

    二見委員 最後に、考え方だけをお尋ねしたいと思いますけれども、医療援助という問題がありますね。この医療援助というのは、これは非常にめんどうくさい問題らしいですね。要するに際限がない、この援助はエンドレスだ。相手国としても、開発途上国というのは、患者がべらぼうに多い。そのために、相手国政府としても、こういう問題はむしろ等閑視してしまって、そこに金をつぎ込むよりも、国民総生産をあげるのだということで、そちらのほうに重点がいっている、こう聞いております。医療のほうには、向こう政府としてもあまり手をつけないのだ。ところが、人道上の問題としては、医療援助というのは推し進めなければならぬ問題だ。ところが、これは実際には、直接的にはGNPにはあまり関係がない援助だ。そういう点で、ある程度の限度を設けたほうがいいんじゃないかという意見もあるし、人道上の立場からいえばどんどんやるべきだという二つの意見があるわけでありますけれども外務省としては、こういう問題はどちらの立場でこれから臨んでいくのか、その考え方だけひとつお願いしたいと思います。
  102. 沢木正男

    沢木政府委員 医療協力は、社会開発に対する協力の非常に重要な一環と考えておりますし、それだけ相手国に感謝される面もございますので、医療協力は強力に進めてまいりたいというのが現在の外務省考え方でございます。
  103. 二見伸明

    二見委員 海外援助のほうは、時間もありませんのでこの程度にいたしまして、国際通貨基金に関連してちょっとお尋ねします。  先ほど円の問題についてお尋ねしたわけでありますが、SDR、これは第三の通貨といわれておりますけれども、これは性格的には金の代用物なんですか、それともドルの代用物なんですか。
  104. 奥村輝之

    奥村政府委員 私どもは、SDRが出ましたあとの国際的な通貨体制についてはこういうふうに考えたほうがよくおわかりだと思うのですが、現在までドルというものが各国の準備資産に入っておりますし、金というものも準備資産に入っておる、こういうものと競争するものとしてSDRというものが準備資産に入る、こういうことだろうと思います。  ドルというものは、アメリカの赤字がありませんとふえていかない。アメリカが赤字を出すときにドルがふえていくわけであります。金は金鉱が見つかったとか、あるいはさらに奥深いところに金があったとかいうような自然条件によって量がふえるわけであります。あるいはふえないということが起こるわけであります。SDRというのは、そういうものとの関連において各国が相談をして、そしてインフレにもデフレにもならない、しかも世界経済というものが順調に伸びていくように量を適度に創出していく、こういうことでございます。
  105. 二見伸明

    二見委員 SDRのたてまえはそのとおりだと思いますけれども、SDRでもって他の通貨にかえますね。かえる場合には、結局ドルとの関係で、交換比率でかえるわけですね。そういったことかから、SDRというものがドル本位移る中心的な役割りをむしろ果たすのじゃないか、そういう見方もあるわけですね。金融局長はいま、そうじゃないとおっしゃいましたけれども、そういう見方もあるわけです。私は、それはそれなりに一つの説得力のある理論だと思っているわけですけれども、その点どうでしょうか。
  106. 奥村輝之

    奥村政府委員 私、先ほど申しましたのは、SDRは金とドルとを補充するものということで申し上げたわけです。SDRは、金との関係では、現在のドルと金との交換比率そのものと同じ交換比率を与えられておるわけです。もっと平たく言えば、金価値保証がある、そういう準備資産でございます。SDRというものがこれから順調に伸びるのも伸びないのも、各国の協力いかんにかかるわけであります。そういうふうに伸びてまいりますと、SDRは全体の各国の準備資産の中で量がふえてまいるわけであります。ふえてまいりますと、むしろ比率においては、ドルとか金とかよりもSDRの比率のほうがふえるという可能性があるわけです。そういう意味で、いまの御質問との関連は、どう承ってどう考えたらいいか、ちょっと私はわからないのでございますけれども、むしろそういうふうにドル本位制というもの、これは内容についてはいろいろな定義があるようでありますけれども、あくまでもやはり競争の関係にあり、アメリカの赤字がこれから減っても、国際的な準備資産が、全体として減らないようにSDRがふえていくというかっこうが望ましい姿だと考えております。
  107. 二見伸明

    二見委員 ドル本位制にはいろいろの定義があるというお話でございましたが、ただドイツでマルクを切り上げましたね。その前にはフランが切り下げられた。マルクの切り上げも結局ドルが基準ですね。ドルより強いからマルクを切り上げるというのが前提にある考えじゃないか。フランの場合もそれと同じようなことが言えるのじゃないかと思うのです。また、現在円切り上げについて言われておることも、結局、そういうドルよりも強いか弱いかというようなことが、今後切り上げの基準として考えられてくるのじゃないだろうか。そういうおそれはないのか、実際にもうそうなっているのか、あるいは今後そういうおそれがあるのかどうか、その点はどうでしょうか。
  108. 奥村輝之

    奥村政府委員 平価の変更は、基礎的不均衡というものがあるかないかということで考えるのがIMF協定にある思想でございます。もちろん、このドルの経済というものは非常に大きいことでありますので、ドルとの関係がどうであるかということはやはり問題になると思いますが、しかし、常に各国通貨相互間の関係というものを見て、そうしてもう一つは、基礎的不均衡があるかないかということを見て、平価の変更というものが行なわれるというふうに考えております。
  109. 二見伸明

    二見委員 それから、マルクの切り上げがドルを基準にして行なわれたのじゃないかという、これはたしか神戸大学だったと思いますけれども、則武さんという教授ですが、この人の理論です。もしマルクがドルを基準にして切り上げが行なわれたのじゃなくて、金を基準にして考えたら、西ドイツの場合は、物価が上がっておるのだから、切り下げということが現実に行なわれていく、ドルを基準にして考えたからそういうことになっていく、こういう理論なんですが、その点はどうですか。
  110. 奥村輝之

    奥村政府委員 切り上げのときの考慮の中にはドルも入っておったと思うのですけれども、ほかの通貨の関係も入っておったというふうに考えるべきだと思います。
  111. 二見伸明

    二見委員 ドルが考慮に入っておったし、ほかの通貨との関係も入っておった。ただ、もう一面から言えば、ドルを考慮に入れておる。しかも、もしそのドルを考慮に入れるという考え方がこれからも比重を増してくるとするならば、今後の円の切り上げにしろ、あるいはほかの各国の通貨にしろ、全部アメリカ経済とのかね合いで見ていかなければならぬことになるわけです。それを物価の関係から見ると、たとえばアメリカの卸売り物価の上昇率よりも低ければ――ただ単に一時的に低いということだけでは問題はないのでありますが、たとえば日本がこれから黒字基調を続けてきて、卸売り物価の上昇はアメリカよりも低いということになると、円が相対的にドルよりも強くなったので、切り上げろという要請も出てくるのじゃないか。こういうことになると、逆にいえば、アメリカの卸売り物価の上昇がここまで来ておるわけです。それをこえれば円が弱いのだ、それを下回れば円が強いのだということになると、物価問題という立場から考えてみた場合に、もしそういう理論が成り立つとすれば、日本国内だけで物価を鎮静させようとかということは非常にむずかしくなる問題だ。これはアメリカとのかね合いでもってやらなければならないような事態にもなるのじゃないだろうか、こう思うわけです。局長がおっしゃったように、SDRというのは第三の通貨で、これを採用したことがドル本位制へ移行するものではない、それがはっきりしてくればそれはまた別の問題になると思いますけれども、そういう点の憂いがあるわけでありますが、その点いかがでしょうか。それだけをお尋ねして質問を終わりたいと思います。
  112. 奥村輝之

    奥村政府委員 平価の問題が議論されるときにいつも起こるのは、経済運営の節度がどうかということであります。為替平価だけでもって一国の経済を操縦していくということは非常にむずかしい。これは過去の歴史が示しているわけであります。切り下げをする国、切り上げをする国、それぞれ事情は違うのであります。確かに一部の国では物価が非常に上がってまいります。ことに卸売り物価が上がってくる、輸出物価が上がってくるということで競争力が落ちてくる。その場合に、その国は、いまそのままにしておいて、よその国の通貨を切り上げてほしいというような希望が一部に出てくるということも自然の形であろう。ときどきそういうことが起こってきたわけであります。しかし、私ども国際金融協力というものを、この十年あるいはこの数年間非常に深くしてまいったわけであります。絶えずこの議論の中に出てまいりましたことは、経済運営の節度の強化、そういう意味で、いま御指摘の問題も、経済運営の節度を強化する方向で問題を解決していくということを忘れてはなりませんし、私どももそういう線で、主張すべき点はこれからも主張していくということがほんとうに正しい道じゃないかということを考えております。
  113. 毛利松平

    毛利委員長 堀君。
  114. 堀昌雄

    ○堀委員 最近の日本海外経済協力、特に発展途上国に対する経済協力というのは、これは経済協力というべきか、わが国援助規模の拡大とか、こう書いてありますが、たいへん目ざましく大きくなりつつある。大きくなることは私はけっこうだと思うんですけれども、大きくなり方が少し早過ぎるのではないかという感じがちょっとする部分も指摘をしておきたいと思います。それは結局どういうことかといえば、各種の投資にしても、その他の問題が、あとで触れますけれども、多分にどうも、特に東南アジア諸国の現在のナショナリズムとぶち当たっている。こちら側は競争原則に立って大いに向こうに物を売り、あるいは向こうから物を買っているのだ、コマーシャルベースとしてやっておるのだから別に問題はないだろうという観点に立つと思うのです。しかし、向こう側にしてみると、資源をどんどん持っていかれる、あるいは経済的な支配力を拡大強化をしてきておる。言うなれば、経済的な帝国主義によって東南アジアが結果としては収奪をされるのではないかという不安、そのことはやはり、過去においてわれわれが、第二次大戦以来いろいろと誤った道をたどってきたことを、私は彼らの中に思い起こさせる非常に大きなモメントになりつつある、こういう感じがするわけであります。  そこで、ちょっと通産省に伺いたいんですけれども、現在東南アジア各国における直接投資というものは、一体通産省ではどういう考え方で見ているのか。投資の形はいろいろありましょうけれども、投資そのものが、単にコマーシャルベースで、利益をあげることのための投資というものが先行する場合には、私はやはりいまのナショナリズムと非常にぶち当たる問題があるのじゃないか、こういう感じがするので、通産省としては、いまの東南アジア諸国に対する日本からの投資についてはどういう考えで見ておるか、また実態はどうなのかを、ちょっと最初に答えていただきたいと思います。
  115. 黒部穣

    ○黒部説明員 東南アジアに対しまする直接投資、つまり合弁会社をつくるとかあるいは直接事業を行なうとかというものの形態を見ておりますと、一番多いのがやはり、従来は製品で輸出しておったものが、相手国がだんだん国産化の要望が強い。したがいまして、先方の適当な相手方と合弁会社をつくりまして、その製品をつくるようにしてやるという例が非常に多いかと思います。その次に多いのは、いわばわが国経済がいろいろな面で必要とする資源の確保でございます。典型的な例が、木材あるいはニッケルあるいは鉄鉱石あるいは銅鉱石というような例になるわけでございます。こういうものは鉱業権の付与とか合弁会社の許可とかいうような面で、相手国政府の強いコントロールがあるわけでございます。先生御指摘のような、資源を収奪するというような感情を与えているのではないかというような御見解もあろうかと思いますけれども相手国政府の許可なしには事業ができないわけでございますし、わがほうとしては、産業が必要とする資源を獲得するという日本側の業者の立場、相手国側にいたしますれば、日本の技術ないしは資本によりまして、眠っている資源を開発してもらうという利点があるわけでございます。その点が一致して合弁会社の設立が認められて事業が開始する、こういう形になっていると思います。したがいまして、あるいは先生の御指摘のように、利潤だけの目的で東南アジアに合弁会社を設立するというようなケースもあろうかと思いますが、むしろ私らが一番目にしますのは、相手国の国産化の需要に対応しつつ徐々に合弁会社によって生産を開始していく、あるいは資源の開発に協力するというような例のほうがはるかに多かろうかと思います。
  116. 堀昌雄

    ○堀委員 私はあとで外務大臣に入っていただいて、少し基本的な海外経済協力問題を論議をしたいわけですけれども、その背景となっておるところに、さっき申し上げた経済的帝国主義というような問題、あるいは、たとえばフィリピン南部では、いま日本が木材を買い取るためにどんどん山が裸にされつつある。私は、木材の需要そのものがある程度大きいことは、いまの日本経済の発展状況から見てやむを得ないと思うのですが、どこかにあまり集中して――、なるほどラワンはフィリピンに多いのかもしれない。しかし、どこかにあまりに集中をして、その地域に徹底してそうやって木材をとっていくことは、結局そういう地域において植林が十分されるわけでもないんじゃないかという気もする。そこがやはりきちんとある程度計画的に、木材はとっていくけれども、同時に植林もして、その地域における国民が見て無理がない自然の姿だ、こう感じていればいいと思うのですが、おそらくどんどんとっていく。その他の地域でも、日本の漁業問題というのが常に外国との間で問題になるのも、日本の漁業が進出をしたところには、あとは何も残らなくなるといわれるぐらいに、日本の漁業はともかく稚魚を含めて徹底的にとっていくという傾向がある。  だから、いまの日本海外進出というものが、経済的側面だけが非常に前に出て、その地域における人たちの――特に私はこれまでいろいろな経済協力の問題を調べる中で感じるのは、東南アジア諸国におけるナショナリズムというのは、ちょうど日本がかつて明治時代に持っていたようなそういうナショナリズムに共通の非常に強いものがあるという、その点をわきまえながら、あまり急激な拡大でなくて、できるだけ広い範囲に徐々に拡大をする。特定なある一定の拡大が全体にきわめて分散をされておるならば、私は比較的問題はないと思う。どこかにある程度集中をしてくると、それは非常に目立つことになってくると思う。そこらに私は、やはり日本海外に対する経済協力のやり方というものも、全体を見ながら、要するに適度なスピードでやっていくということが必要なんじゃないだろうかという感じがするわけです。  資料的に見ると、ものによってはたいへんな伸び率になっておるものがあるわけです。いいことですけれども、民間ベースの輸出信用なんかについて見ると、一九六三年と六八年と比べると五五二%という伸び率でありますから、伸びていくことはけっこうだし、輸出信用を与えておること自身いいことだと思うのですけれども、しかし、この輸出の裏には、やはりそれに見合うバランスのとれた輸入がないと、向こう側の諸問題としては問題が残ってくるのじゃなかろうか。日本はいろいろな面で最近の海外経済との関係というのは、輸入においても確かに私はいい姿があると思います。他の国に比べるといい姿であると思う。ところが、輸入の問題は、いまのように確かに日本は必要な資源の確保になっているけれども、それもせっかく輸入をしておりながら、向こう側から好感を持って迎えられないような形があらわれてくるとするならば、私は非常に問題があるのじゃないか、こういう感じがするので、まず何にしても、特に東南アジアに対する経済的な諸問題というのは、一面的には慎重に、一面的には計画的に行なっていく必要が非常にあるのじゃないか。そうすることなくしては、どうもせっかくわれわれの国の費用――費用という意味では直接のものも間接のものもありますけれども、費用を使いながら喜ばれざる協力、これは協力ではなくなるわけですから、そういうことにならないようにする配慮というものがきわめて重要だと感じるのです。伸びていく計数的な姿そのものの面ではこれはたいへんけっこうだ。しかし、せっかくそうやって伸ばしていきながら、連日のこれらの諸国の新聞から対日批判や警告が出るのではどうも浮かばれないという気がするので、通産省としてのそういうものについての考え方、いまあなたの言われたように、製品製造を向こうで合弁会社をつくってやるということはけっこうだと思うけれども、おそらくかなり低賃金で向こうの人たちを使っておる。そうして日本から行っておる職員は高い給与だということが目の前にあれば、やはりその国の人々は、必ずしも気持ちよく感じていないのじゃないかと思いますので、その点についてちょっと答えていただいて、あと大臣の質疑に入りたいと思います。
  117. 黒部穣

    ○黒部説明員 ただいま御指摘になりました点は、確かにわれわれとしても十分注意せねばならないことかと思います。  ただ、蛇足ながら申し上げますと、現在インドネシアの木材開発には数社が合弁をし、事業をいたしておりますし、また、その計画を持っているものがございます。インドネシアのほうの考えは、いまのところは経済開発を大いに進めてもらいたいという態度のようでございます。ただ、もし大規模に進めるならば、さらに木材だけでなくてパルプにしてもらいたい、あるいは製紙工場を建ててもらいたいというような要望もついておりますので、日本の業者も、またわれわれも、先方のさような要望になるべくこたえるようにいたしたい。実現可能性のある計画であるならば実現をさしていきたい、かように考えております。
  118. 堀昌雄

    ○堀委員 外務大臣にお越しを願いましたのは、実は現在私どもの委員会でIMFに関する法律と、経済及び技術協力のため必要な物品外国政府等に対する譲与等に関する法律の一部改正、この二法案を審議いたしておりますので、それに関連をしてちょっとお越しをいただいたわけであります。  そこで、最初に伺いたいのは、実は最近しばしばわが日本の新聞紙上にも出てまいっておるわけでありますけれども、われわれがせっかく発展途上国、特に東南アジアの諸国に対して各種の経済協力といいますか、あるいは経済的な進出をしておることに対して、これらの諸国の新聞論調というものは、いまもちょっと申したのでありますが、経済支配を拡大してきているのではないのか、経済侵略ではないのか、資源の収奪をしていくのではないかという論調が強いわけでありますし、同時に、イエローヤンキーというようなことば、もう一つは、イギリスから出たことばでありますけれども、エコノミックアニマルであるというような式の、たいへんわれわれとしては残念な批判が非常にいま強く出てきておるというのが、私は東南アジア諸国の現状のように感ずるわけであります。これは、せっかくわれわれがこれから東南アジアにいろいろな意味で協力をしていきたいというときに、はなはだ残念なことでもありますので、大臣は大蔵省にいらして経済問題についてもきわめて詳しい方でありますから、一体どこにこの問題があるのか、ちょっと最初にそれをお伺いしたいと思います。
  119. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私も率直に申しまして、堀さんと憂いをともにしておるわけでございます。  最近、開発途上国等におきまして、一面においては日本からの経済援助、技術援助を非常に要望しておりますけれども、反面においては、日本がわれわれの資源を壟断して、そして資本的に進出し、あるいは、ことばは悪いですけれども、収奪をする、そういう意図があるのではないかというようなことを、ちらほら新聞その他でも見受けまして、非常に憂慮いたしております。  また同時に、もう一つは、政治的な利権でつながるおそれがあるのではないか、これは日本側に対する批判というよりも、むしろ自国側に対する反省や非難をも含めてだと思いますけれども、大別してそういう二つの傾向は否定できませんので、この点については、心配すると同時に、対策をいろいろ積極的に講じています。  たとえば、これも相手国の協力と心からの理解がなければできないことですが、経済援助をやりまして、それがどういうふうに使われておるか、目的のとおり開発途上国の民生の福利向上のために的確に使われているかどうかという、いわば追跡調査ということが一つ必要ではないか。そういうことをやることにおいていろいろとまた具体的な反省の資料も出てくるであろう、かように考えて、これは行っていただく人の人柄にもよりますし、なかなか微妙なところもございますが、いままでのところ、まだ多くの調査団を派遣しておるわけではございませんけれども、十分目的を明らかにし、相手国の理解と協力によって、たとえばインドネシアにおきましても、調査団を現在専売公社総裁になった北島君にお願いして調査をしていただいて、私は相当よかったと思います。それは調査の報告それ自体ももちろんでありますが、真剣なまじめな意図で日本として協力していこう、また、先ほど申しましたようなそういういろいろの批判が起こらないように十分戒心していくべきであるという当方の意図もよくわかってくれているようでございますので、こういうことをやるのも一つだと思います。  それから、もちろん計画自体を十分に、ほんとうに真剣に慎重に審査をしていかなければならない。このほうは各案件、プロジェクトが出るたびに十分配慮をして、かりそめにも非難が起こらないようにいたしておるつもりでございますが、なお今後とも一そう注意をいたしたいと思います。  それからもう一つは、少し政策的なことになりますけれども、二国間の援助というものももちろんたいへん必要なことだと思いますけれども一つは、具体的に例をあげますと、アジア開発銀行というようなものは、ただいままでのところ相当信頼を受け、また評判もよくなっておると私は思います。扱った案件はまだ件数も少ないし、金額もまだそれほどではございませんが、要するに与える国が協力をして、地域協力に基づくプロジェクト考えて、そこに金を出す。そして国際的な機構によって十分審査をして投融資をする。このやり方がいわば政治的には中立化されますし、それから、与えられるほうの立場からいっても、経済効果があがるように合理的にやっていける。したがいまして、いわば一種のマルティプルの考え方とでも申しましょうか、こういう方面への積極的な努力はやはり今後とも必要ではないか。そのためには、与えるほうの国もできるだけふやし、額もふやし、そして共同して低開発国に対する協力の実をあげる。このほうにも相当の比重を置いて考えるべきではないか。大ざっぱでありますが、そんなふうに考えております。
  120. 堀昌雄

    ○堀委員 実はいま東南アジアの人たちがどんなふうに感じているか。私自身まだ参ったことはないのでありますけれども、われわれは東南アジアの諸君と皮膚の色においても、その他人種的にもきわめて近い姿にあります。かつてこれらの諸国は白人支配の国であったわけでありますけれども、やはり白に対する現地人の人たちの感じ方とわれわれに対する感じ方は非常に違うと思う。おそらくは東南アジアの人たちは、われわれ日本人に対しては非常に親近感というか、やはりアジアの民族の一つとしてそういう親しみを持ちたいというベースがあるだろうと私は思う。かつてわれわれがそれほど経済的に優位でなかったときには、おそらく出かけておる人たちも、それほどに自分たちの経済的背景を意識しなかったであろうと思うのでありますが、最近の日本の目ざましい経済発展というものによって、海外に出ておる人たち、それは商社であれ、あるいは合弁会社で行っておる人であれ、その日本人の人たちに、日本人の自分たちのほうが優位に立っているのだという意識が相当強くあるのじゃないだろうか。同時に、その人たちに支払われておる報酬と現地の人たちが受け取る報酬との間にも大きな格差が出てきておるだろうし、そのことがおそらく、白人であればそこまで反発がなかったであろうことが、かえって同じアジア人であるというために、そういういろいろな格差に対する反発というものが相当強いのじゃないだろうかという感じが一つはするわけであります。  そこで、この問題の一つの側面として、もう少しわれわれが、国内を含めて、いまの日本経済の問題を基本的に考えてみなければならぬ問題がたくさんあるのじゃないだろうか。それは私は、いまの日本経済の発展は、ある側面としてはけっこうでありますが、日本の文化とか、あるいは日本の自然であるとか、われわれ人間の生活という側面に対して、はたしていまの日本経済発展というものがプラスかマイナスかという点を見ますと、私はどうも最近はマイナスのほうが非常に多くなっておるという判断であります。  これは、大臣もこの間万博へお出かけでありましたから、新幹線で京都の駅に入られるとすぐ目につくと思うのでありますけれども、かつて京都の駅から見えたのは本願寺やその他のお寺の屋根であり、静かな京都の町並みであったわけですけれども、今日京都へ入りますと、非常に問題になりました例の駅前のホテルか何かの上に立っておるあのへんちきりんな塔、あれがまず一番最初に目に入るのですね。ということは、最近の奈良だとか京都だとかいう、せっかくわれわれが過去の伝統の中から持ってきておるそういうよきものに対して、経済的な利益があるならばそんなことはどうでもいいのだということで、奈良の近くにドリームランドとかいうものをつくってみたり、せっかくわれわれが先祖から持ってきた日本の文化の非常にいいものを、経済の前には無力なものなのだといういまの日本人の経済的な発想、これは私は国内的にも非常に問題があると思うんです。同時に、それは自然に対してもたいへんな問題を提起しておる、私はこう感じているのですが、こういうように国内においてすら利益優先といいますか利潤優先で、すべて力で経済がどんどん進んでいく姿は、おそらく東南アジア諸国においてもそんなに差がないのじゃないだろうか。それは、具体的な現象を見ておるわけではありませんけれども国内でこれだけのことをやっておる日本経済というものは、おそらく国外ではもっとひどいのではないだろうかという感じがしてしかたがないわけですね。  そうすると、いま日本経済大国になったことは、ある側面としては確かにいい点がたくさんにありますけれども、それは国内に対しても、国外に対しても、経済大国になったがゆえのロスが非常に大きくあらわれてきておるんじゃないか。ですから、そのことはどこでコントロールするかといえば、それはやはり政治以外にこれをコントロールする力はないのではないか。特に国内の問題は、われわれを含めて、政治家の責任でありますけれども、国外の問題となると、われわれも見たり聞いたりすることが十分でありません。これはどうしても、特に外務省がそういう経済的な進出その他について、現地の国民の立場に立って適当な助言指導を行なうことなくしては、この問題をコントロールする道はないんじゃないか、私はこう考えるわけでありますが、大臣は、いまの私の問題提起ですね、経済発展という問題と、文化なり自然なり、われわれ人間の生活という問題とのかかわりにおいてお考えいただかなければならぬ問題が非常にたくさんあるんじゃないか、こう思いますので、それについて承りたいと思います。
  121. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まことにごもっともでございまして、先ほど海外経済協力の中で、主として投資というような関係を頭に描いてお答えをいたしたわけですけれども、同時に、たとえば貿易通商関係などになりますと、これは非常に率直なことを申すようでございますけれども、東南アジア地域においては、日本商品の広告ですね、これが非常に目につき過ぎる。それから、日本の優秀な働き手の壮年の人たちが、商社活動で――過当競争ということも私は否定できないんじゃないかと思いますが、働き過ぎると申しますか、現地の人たちの心持ちから見れば、非常に活発過ぎるという面も私は否定できないと思います。こういう点についても、外務省としてはずいぶん心配もし、また対策も考えておるわけでございます。  たとえば、ちょっと迂遠な間延びをしたお答えをするようで恐縮なんでありますけれども、おもな商社活動あるいは日本経済協力の比重の大きいようなところには、自然邦人の海外進出が多い。しかも壮年あるいは青年が多いわけですが、家族を連れていって落ちついて生活をしてもらうということも、こういう面で非常に必要なことだ。そういう点から申しまして、やはり相手国の理解と協力がなければいけませんけれども、たとえば小学校の施設、こういうようなものにできるだけ骨を折り、あるいはまた、現地の学校に子弟が行きましても、日本語教育その他、将来帰ってきてからもおくれをとらないようにという日本人としての教育、そうして活発に働くだんなさんが、家庭的にもやはり、ひとり者ではなくて、落ちついて働けるような環境と条件を整備してあげるということが、案外私は必要なことではないかと思いまして、そういう面では、予算の上におきましてもなかなかむずかしさがありますけれども、しかし、大蔵省の協力も得、あるいは教職員の関係などは文部省等の協力も得まして、だいぶこのごろはよくなってまいったように思います。それから、広告の問題などは、やはり商社あるいはメーカーの協力によるよりほかにございませんで、これは規制する法制の問題じゃない、外国でのことでございますから。こういう点については、やはりそういう人たちのビヘービアに期待するよりほかないんじゃないかと思っております。  なお、同時に、やはり技術協力という面が非常に大事なことでございまして、現地の人たちに技術とか、あるいは、いま文化というお話もございましたが、そういうことも広義では入ることかと思いますけれども、そういう面で現地の人を助け、そして、これらの人たちがそれぞれ適地適業に企業を運営し得る能力あるいは技術開発をやり得る能力を引き出して伸ばしていってあげるというような、じみちな努力が成果をあげるようにするのが、これからの行き方じゃなかろうかと思います。  幸いに、先ほど申しましたような心配が非常にありますが、反面、日本のこの平和憲法のイメージというものは、私は非常に定着してきたと思うので、武力によってどうされるというような心配は、これらの国々の人たちは毛頭持っていないと思うのですが、ただ、先ほど申しましたように、金の力で押しまくられはしないか、自分たちの働く場所がとられてしまうんじゃないかということが一番の注意すべき点だ。そこにやはり触れるような対策、そして心持ちを醸成することが必要だ、かように考えております。
  122. 堀昌雄

    ○堀委員 いま大臣がおっしゃいました技術協力でありますけれども、この資料で見ましても、技術協力というのは非常にまだわずかでございますね。一九六八年で千三百七十万ドルですか、ということで、伸び率としては少し高いですが、これはまだ全然過去にやっておりませんから高いだけで、これは非常にウエートが低いんで、やはり、いまおっしゃるように、いかにして現地の人たちが、ほんとうに協力をしてくれた、よき意味のパートナーシップとして日本があるんだという立場が、すなおに理解されるようなやり方というものに比重をかけていかないといけないんじゃないか、こういう感じがいたします。  そこで私は、やはり海外経済協力の問題というものも、基本的にはどうも民主主義という問題に関係があるような気がいたします。民主主義ということはいろいろありましょうが、私がいま申し上げたいのは、こちらが大国で向こうは小国だという意識ですね。このこちらが大国、向こうは小国という意識は、今度はまた日本自身がそれを持つということは、裏返せば日本より大きな国に対してはこちらが小国、向こうは大国という意識を持つという問題ではないのか。福沢さんの、天は人の上に人をつくらず、ということばにもありますけれども、やはり私はその国と国との関係というのは、そういう民主的な立場といいますか、国が大きい小さい、あるいは経済力があるないにかかわらず、やはりよきパートナーシップを持つということにおいて初めて私は正常な両国間の問題が整えられるんじゃないだろうか。やはり、われわれ個人的な人間同士の間においても同じであるし、そのことは国の間においても同じだと思うのですが、私はどうもその点で、われわれ日本人の悪い癖は、少し力があると弱い者の前ではいばるけれども、今度は力のあるやつの前に行くとたいへん萎縮するという傾向がある。それの一つの典型が、私はいまの日米繊維交渉に非常にあらわれているような感じがしてしかたがないわけです。アメリカでは盛んにいま、日本はよきパートナーシップということを言っておるわけですね。口では言っておるけれども、どうも私は、いまこの繊維交渉にあらわれておる姿というのは、やはり日本が東南アジア諸国に向かってやっておる式の感じが、向こうが少しゴリ押しをしてきておるという感じがしてしかたがないのです。これは少し横道にそれていますけれども海外経済の問題としては、一つの裏返った側面のような感じがいたしてしかたがありませんので、ひとつ大臣のお考えを少し承りたい。
  123. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これもごもっともな御見解であると思いますが、同時に、日米関係というようなことになりますと、急激に経済構造が国際的に変わってまいりまして、それに対処する両国あるいは国民の気持ちというものが、パターンが変わってきたのに対してまだ十分に適応されていないところがあるのではないかと思います。私は、今度の繊維問題につきましても、これも非常にざっくばらんな言いようなんですけれども、渡り合って、理詰めで談判するというのならば、こちらも大いにやりようがあるわけでございますね。ところが、向こうが、いまお受け取りになっているように、ゴリ押しと見られる向きもあるけれども、実はほんとうの腹の中からいえば、このくらいのことをやってくれてもいいではないかというような――いまよくケンドールという人の名前が喧伝されておりますけれども、彼に失礼かと思いますけれども、日米の貿易だけの関係をとってみると、まことに残念ながら、わが国は低開発国になって、この実情はこれこれと言って、たくさん数字も出して説明をされるわけですね。そういうふうに、たとえば対米輸出が年間十五億ドルとか二十億ドルとかの輸出超過というような、こういうパターンになってまいりますと、向こうのゴリ押しということもさることながら、何とかしてくれぬかということになると、かえって扱いにくいということもございます。これは非常にざっくばらんな話ですけれども……。  それで私は、こういうふうに経済構造が国際的に急激に変わってきたことに対して、たとえば、これは日米間だけの関係を見ればそうかもしれないけれども、もう少し目を広く及ぼしてもらえば、たとえばオーストラリアを一つそこへ入れて、この三角関係で見れば、ぐるぐる回りになって、日本はオーストラリアからは入超になっている、アメリカは出超になっている。いろいろ急激に世界的に経済構造が変わってきているということに注目して、そしてお互いに知恵を出し合って共存共栄ができるようにしようではないか、こちらはそういう態度に出ておりますが、何ぶんにも日本の成長がはなはだしいことを中心にして、同時にやはり、国際的にずいぶんパターンが変わってきたのでありますから、それに対処して、日本としては適切な知恵と努力を発揮しなければならないのじゃないか、そう思っておりますが、先ほどからの御意見のとおりで、私どもとしては、それはともかくとして、開発途上国の人たちに対しては、あくまで謙虚に、押しつけではなくて、お互いによりよくなっていくという点を、アジア日本人らしい謙虚な気持ちでやるべきだと痛切に私も感じております。
  124. 堀昌雄

    ○堀委員 私は最近のアメリカの状態をずっと見ておりますと、いま日本の繊維の諸君が、被害がなければ規制しなくてもいいではないか、こう言っておることは、私はやはり今後の経済外交の一つの原則ではないかと思うのであります。本来この問題は、やはり二国間交渉の問題ではなくてガットの問題であるべきだ。特に、いま大臣がお触れになったように、二国間だけで問題を見るということについては、いまの情勢ではいろいろ問題があります。もしこれを二国間でやるという先例を開きますと、それはいまのアメリカの産業構造から見まして、非常な高賃金と非常な物価高、いろいろなアメリカの経済諸条件から見て、実際の被害は立証されないにもかかわらず、そういう被害意識の上に立って、問題が次々と出てくる一つの端緒にこれがなりはしないかという点で、これは将来的に非常に重要な問題――単に繊維そのものという意味ではなくて、日米経済外交上の非常に重要な問題になるのじゃないかという不安を実は感じておるわけであります。ですから、これは経済外交の基本的な姿勢としては、特に前段で触れましたように、われわれが、アメリカに対しても、同時に発展途上国に対しても、節度を持つことは、私は重要だと思います。  特に、数年前に私、海外に参りました。ちょうど西ドイツ日本製のナイフその他の食器類あるいはこうもりがさが幾何級数的にふえて、ラッシュのように入っていく状況のときに参りました。やはりわれわれは、どこに進出をするについても、そこにはおのずから節度がないと、発展途上国側は、その急激なラッシュに対しては恐怖心を覚えるでありましょうし、そのことは、いま先進国といえども、やはり恐怖感を持たれることについてはよくわかるわけですから、そこに節度が必要だと私は思うのです。しかし、われわれが節度を持つということと筋を通すということとは、これまた同時に並存さしていきませんと、われわれだけが節度を守って、筋のあることまでも譲歩をしなければならぬということでは、これはまた問題が残るかと思いますので、特にこれからまだこの繊維交渉問題というのは残っておりますけれども、そういう全体の海外経済に対する処理のしかたとして、ひとつぜひ適度な節度を保ちながら、しかしあくまで主張をすることは、民主的な立場において対等の立場で主張することが、私は、よりよきパートナーシップを維持するための基本原則ではないかと、こういうふうに考えますので、その点についての大臣のお考えを承って私の質問を終わりたいと思います。
  125. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これもまことに適切な御見解で、私も同感でございます。先進国に対しても節度というものが必要だと思いますが、しかしやはり筋道を立ててまいりませんと、今後のこともございますし、それから特に繊維については、やはり発展途上国、これが非常に大きな関係を持ちますし、日本の態度に対して非常な注目をしている。あるいはヨーロッパに対し、あるいはいまではガットの有力な一員としまして、筋道を立てて処理しなければなりませんので、そこで非常に苦慮しているわけでございますが、繊維の問題については、前国会でありますけれども、国会の御決議もございますし、それを十分体しまして……。しかし、同時に、こういう状態が長く続きますと、国内的に見ても、繊維業界にいたずらに揣摩臆測が続き、不安を起こすということも、これまた国益に反するゆえんであろうとも思いますので、何とかその筋道の立った中で、場合によっては若干の互譲、妥協も必要かとも思いますけれども、十分そこを踏んまえて、まあ毎日毎日苦慮をしているようなわけでございます。いましばらく政府の善処に御期待をお願いいたしたいと思います。
  126. 毛利松平

    毛利委員長 午後二時再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      ――――◇―――――    午後二時二十一分開議
  127. 毛利松平

    毛利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。竹本孫一君。
  128. 竹本孫一

    ○竹本委員 国際通貨基金及び国際復興開発銀行――世銀、第二世銀と、この三つの機関はそれぞれの分野がはっきりしているはずだと思うのですけれども、大体どういうふうに分野が区分されておるか、並びにそれが現実の運用の面において、初め期待されたような分野を厳格に守っておるか、その点についてお伺いしたいと思います。
  129. 奥村輝之

    奥村政府委員 広範な御質問でございますが、IMFは短期的に国際間の国際収支の不調、これがありましたときに融通し合うということで活動しているわけであります。それから世界銀行、これは国民所得が一定額以上の場合、ただしなお開発途上にある国に対して長期的な資本を供給するということで動いているわけであります。第二世界銀行、これはIDAと呼ばれておりますが、これは一人当たりのGNPが三百ドル以下の場合、こういう国に対しましてやはりその国の長期的な資金の需要、これをまかなうために活動しているわけであります。
  130. 竹本孫一

    ○竹本委員 ありがとうございました。  そこで、この提案理由説明を見ますと「昭和二十七年八月、わが国国際通貨基金及び国際復興開発銀行加盟して以来、この二つの国際機関がわが国経済の発展に寄与するとともに、世界経済の成長と安定に多大の貢献をいたしてまいりましたことは、申すまでもないところであります。」こういうふうに書いてあります。わが国経済の発展にどういう寄与をしたか、お伺いしたいと思います。
  131. 奥村輝之

    奥村政府委員 IMFにつきましては、日本はいままで四回にわたって、日本国際収支が困難におちいりましたときに協力を受けたのであります。第一回は昭和二十八年、金額で一億二千五百万ドルを引き出しております。それから第二回は昭和三十二年、これはやはり同じ金額一億二千五百万ドルを引き出しております。それから、直接引き出しではございませんけれども日本国際収支が先行き非常に不安定の要素を増してまいりまして、いつでも引き出しができるようにということで、スタンドバイ取りきめというものを結んだことがあるのでございます。これはスタンドバイ取りきめを結んだだけで、実行はいたしませんでした。この額は、御参考までに申し上げますと昭和三十七年に三億五百万ドルでございます。昭和三十九年にも同じく三億五百万ドルのスタンドバイ取りきめを結んでおります。なお、世界銀行についてもお尋ねがあったのでございますが、世界銀行は、日本の借り入れ総額が八億六千三百万ドルでございます。昭和二十八年から四十年にかけまして借り入れをいたしておるのでございますが、ちなみに四十四年末の借り入れ残高を申し上げますと六億五千六百万ドルでございます。
  132. 竹本孫一

    ○竹本委員 ありがとうございました。  IMFの第一条の目的を見ますと、国際貿易の拡大、均衡のとれた増大といったようなことが書いてあります。このIMFもそういう意味で、貿易の拡大という方向にいくことをねらいとしなければならないものだと思いますが、最近のアメリカの繊維の自主規制にしても、あるいはピアノなんかのケネディラウンド三年間お預けといったような動きを見ても、必ずしもこの有力なメンバーであるアメリカの動きというものは貿易の拡大の方向には向いていない。むしろ自分の国の地盤沈下というものを防ぐためには逆にこれを制限するというような方向に動いておると思いますけれども政府はどういうふうに見ておられますか。
  133. 奥村輝之

    奥村政府委員 戦後、アメリカは長い間にわたって自由貿易主義を標榜してまいりました。日本がいま輸入の自由化等についていろいろと話があるわけでございますが、わが国もまた国力の伸展に応じまして、いま自由化という、自由貿易主義というもので進みたいということでございます。ただ、国によりましていろいろとまた過渡的な摩擦が起こっておることも事実でございまして、私どもの見る限り、アメリカもいま特定の産業については競争力の問題等がありまして、困難があるように聞いているわけであります。日本に対しては、いまのように日本国際収支あるいは国民所得、日本全体の国力から見て、もう少し日本のほうが自由化をすべきではないかという議論もかなり多いのであります。私どもは長い間、戦後の復興から今日に至ったわけでありますが、その間の過程を顧みまして、だんだんと日本国力もふえてきております。したがって、いまの私ども段階というのは、日本国内のいろいろな問題もございますが、この調整をはかりながら、もう少し輸入の自由化ということに進んでまいりませんと、私どものほうもまた他国に対して強い要求をすることもむずかしいということに相なろうかと思います。非常に相関関係のある問題でございます。
  134. 竹本孫一

    ○竹本委員 政務次官に伺いたいが、いまの答弁では、日本自由化がおくれている、これは私はそのとおりだと思うのです。大いに自由化しなければならぬと思うが、アメリカの最近の動きというものは心ずしも自由化方向に向いていない。繊維の自主規制でも、先ほど言ったピアノにしてもあるいはその他の項目にしても、さらにはもっと産業分野を広げ、製品種類を広げて規制をしていこうという動きが非常にある。予算委員会においても私はこの点をだいぶ強く質問をしたのですけれども、そういう問題に対して、こちらのほうが自由化をしましょう、それからまた自由化の大きな流れには大いに協力をしましょうと言うことも必要だけれども、御本尊のアメリカのほうがかってなことをやっておるということについては、政府の腰は少し弱過ぎると思うのだけれども、アメリカのそういうケネディラウンドを、ピアノも三年間お預けしたでしょう、今度は繊維も自主規制だといって――自主規制というものは、業界なら業界が自発的に規制するのが自主規制であって、アメリカがワクをきめたり、品目を指定したり、数量を指定して、それで自主規制なんてとぼけた自主規制は世界じゅうにないのです。そういう行き方に対して政府は一体どういうふうに考えておられるかということを伺っている。
  135. 中川一郎

    中川政府委員 最近アメリカがかなり強い態度で出てきておることは御承知のとおりであり、政府としてもこれらの態度に対しては、日本の国としては国としての主張を続けておることも御承知のとおりであります。それでは、アメリカが特に最近強くなったということでありますが、ニクソンが大統領選挙のときに約束したとかしないとかいうようなこともあるいは、あるのじゃないかと思いますが、繊維くらいのものでこれくらい強いということについては、私も御指摘のような感じもいたします。いたしますが、向こう国内には国内の事情もあることでありますので、それを勘案しつつ、やはり強力に日本の立場を主張して、竹本委員の御指摘のとおり、世界はいまや貿易自由化で、貿易の拡大をはかろうということでありますから、主張を続けていき、この壁に屈しないようにひとつ努力すべきものであろう、このように思います。
  136. 竹本孫一

    ○竹本委員 念のために申し上げますけれども、たとえば綿製品協定が期限がくる。イギリスの場合には自分のほうで構造改善をいっときやるからしばらくの間待っててくれ、それができたら必ずあとは自由化をします、こういうような考え方だから、ある意味において前向きだと思うんですね。ところがアメリカの場合には、地盤沈下という決定的な問題が私はあったと思うんだけれども、それにしても、恥も外聞もなく、これも規制、これもストップ、そういうことをやって、そして日本のほうは最近の段階においては、互譲の精神だということで、ごまかしだけをしようというような動きすら見られるんだけれども、ここはその問題の委員会でないから私はこれ以上言おうと思いませんけれども、基本的な考え方として、このIMFにしても何にしても、すべてがみんな自由貿易方向へ向いていこうという、そのために協力しようという法案を審議するときに、政府の基本姿勢において、アメリカのいまのやり方は間違っておるということもはっきりしないままに、ただ法案だけを事務的に審議してみたって、これはナンセンスだという意味で、私はもう一度政務次官に――前向きに努力をするからしばらく待ってくれというならまだ話はわかりますよ。それを何もやらないでおいて、ちょっと自分のほうが地盤沈下をしたから、あるいはニクソンにおいては自分が選挙公約をしたから、そのしりぬぐいは日本の繊維産業がやってくれなんてことは不届き千万なやり方だ、そういうものに対する折り目けじ目をつけないままに、ただ自由化自由化の問題として事務的に進めていくというのにはわれわれは納得できない。その意味でもう一度……。
  137. 中川一郎

    中川政府委員 その点につきましては、われわれも同じ考えを持つものでありまして、それはそれなりにアメリカに対して交渉を続け、かたがた御審議いただいておりますIMFの、あるいは経済協力の体制なりの拡充というものはやはり並行して進めていくべきものではないか、また、それらをやっていくことによってアメリカに対しても強い発言権を持つ場もできてくるであろうと考えますので、両面並行してやらしていただきたい、このように思います。
  138. 竹本孫一

    ○竹本委員 この点は、ひとつ筋を通すことをがんばっていただきたいと要望を申し上げて、次にまいります。  今度日本の追加出資ができますと、理事日本から出すということになるのですね。そこで、その理事は出ていって並び大名ですわっておるつもりではないでしょうから、その理事は国際社会の自由と前進のためにはどういう取り組み、どういう努力をしようとしておられるのであるか、お考えがあれば承りたい。
  139. 奥村輝之

    奥村政府委員 いままでも日本理事は、日本の最近債権国になったその立場を踏まえまして、主張すべき点を十分主張してまいったのであります。いま御指摘の点につきましては、いろいろと申し上げることはたくさんあるんですけれども、一番何が大事であるかということになりますと、私は、いまの国際通貨制度で一番大事なのは、主要国が経済運営の節度をよく守って適切な経済政策の運営をする、こういう精神で日本としては発言をやらしていくということだろうと思います。
  140. 竹本孫一

    ○竹本委員 ちょっともう少し正確に詳しく言ってください。
  141. 奥村輝之

    奥村政府委員 いまの一言で私は日本の立場は尽きておると思うのですが、もう一ぺん申し上げますと、国際通貨制度というものの運営の根本は何か、いろいろと技術的な点はあろうと思います。日本がこれまでやってまいりましたように、経済の運営節度を十分守ってやるように、これは世界の主要国の国際的な義務であります。そういう点を今後とも日本は主張してまいりたい、これが根本であろうかと思います。
  142. 竹本孫一

    ○竹本委員 節度ある運営によって、通貨の安定もはからねばならぬということのようでありますが、この問題についてはあとでまたアメリカの問題等を少し質問いたしたいと思いますが、その前に、今回七十五億五千万ドルという大幅な増資をIMFがやる。日本も四億七千五百万ドル出すということでございますが、現在までのところでIMFのごやっかいになって一番大口の引き出しを行なっているのはどれどれの国であるか、五つばかりあげてもらいたい。
  143. 奥村輝之

    奥村政府委員 いろんな計算方法がございまして、一番御質問に合うのはどれか存じませんけれども、現在IMFから引き出しを行なっている国は全部で四十九カ国ございます。引き出しました残高が五十二億八千九百万ドルでございます。このうちで四十一カ国、これはいわゆる開発途上国でございまして、先進工業国で引き出しているのは、イギリス、フランス、デンマークでございます。  もう一つ数字があるのでございますが、IMFが創立されましてから以来の引き出し累計、これを見ますと、先進国は百三十三億ドル、開発途上国は五十五億ドル、それから先進工業国といわれないその他先進国というのがございますが、これが十四億ドルでございます。
  144. 竹本孫一

    ○竹本委員 その中でアメリカとフランスの話を少し聞きたいと思うのですけれども、アメリカのほうはいま数字をあげられなかったが、全然ないということですか。
  145. 奥村輝之

    奥村政府委員 アメリカは、先ほど数字をあげませんでしたのは、いま現在の残高においてはIMFから資金繰りをしていないということでございます。ただ、いままでの歴史を振り返ってみますと、二百二億ドルが利用されたその中において、アメリカは約十八億ドル、正確には十八億四千万ドルを利用しております。現在は残高はないわけでございます。
  146. 竹本孫一

    ○竹本委員 フランスは次々にあらゆる方法を尽くしてやっておるようですけれども、最近はどうですか。
  147. 奥村輝之

    奥村政府委員 現在のフランスのIMFの資金の利用残高は七億五千四百二十万ドルでございます。ちなみに、過去IMFの創設以来フランスが利用いたしました総額は十七億六千四百六十万ドルでございます。
  148. 竹本孫一

    ○竹本委員 次にSDRの問題にひとつ触れておきたいが、この制度を創設するときにいろいろ議論もありましたけれども、その後の運用の実際を見ると、当初考えたものとどういう点が違ってきておるか。それから現在の運営については後進国からもいろいろ注文が出ておるようでございますけれども、問題点というのはどういうものが出されておるか。
  149. 奥村輝之

    奥村政府委員 現在、SDRという制度が実施せられましてから、これは一月の一日からでございまして、まだそれほど日がたっておりません。この問題についていろいろと検討し意見を述べるということは、もうしばらく時期の経過を待つほうが適切ではないかと思うのでございます。ただ御質問の趣旨をそんたくいたしまして、どの程度このSDRがいままで利用されたかということでございますけれども、この一月じゅうにSDRを使用いたしました国、これは合計十三カ国でございます。SDRを使用いたしますときは、御存じのように、IMFにその旨を申し出まして、IMFのほうでは、俗なことばで申しますと国際収支のよさそうな国にSDRを差し向けるわけでございます。十三カ国が八千九百四十万ドルというSDRを使用いたしました。SDRを差し向けられた国が十一カ国で七千七百十万ドルでございます。IMFが出しました額が千二百三十万ドルということになっております。
  150. 竹本孫一

    ○竹本委員 それらの十三カ国はどんな国かということと、そういう国がSDRを利用する場合には制限とか規制とかいうものは全然ないのかどうかということについて伺いたい。
  151. 奥村輝之

    奥村政府委員 使用国の国名でございますが、十三カ国の名前を申し上げますと、ギリシア、コスタリカ、ドミニカ、ハイチ、イスラエル、アラブ連合、ビルマ、セイロン、パキスタン、フィリピン、シエラレオネ、スーダン、チャド、この十三カ国でございます。SDRというものは無条件引き出し権でございまして、制限はございません。使用についての制限はこの場合かかっておりません。
  152. 竹本孫一

    ○竹本委員 SDRの使用については全然無条件ですか。いま無条件という話でしたけれども
  153. 奥村輝之

    奥村政府委員 SDRは、国際収支上その必要があるときに使用するということになっております。国際収支上その必要がないときには使えないという意味の条件はございます。
  154. 竹本孫一

    ○竹本委員 国際収支上ということで、たとえばその金が短期であるか長期に焦げつくか――焦げつくと言うとことばは悪いかもしれませんが、そういう点についての配慮、問題点はないのですか。
  155. 奥村輝之

    奥村政府委員 短期であるか長期であるかによる区分はございません。
  156. 竹本孫一

    ○竹本委員 先ほども言いましたように、これはできるときには、アメリカのドル不足をカバーすることになるんではないかという論議がいろいろ行なわれた。アメリカは、いま御報告にもありましたように、たいしたことはない。主としてギリシアとかフィリピンとかいうところで使われておるということでございます。当初の話とだいぶ違うように思うのだけれども、運用の面で何かそこに問題は出てこないのかという点はどうなんですか。
  157. 奥村輝之

    奥村政府委員 私は事実を申し上げたのでございまして、これはまだ一カ月しかたっておりません。この問題についての評価はもうしばらく時をかさなければ、ほんとうの意味の御質問に答えるような客観的事実、判断する材料というものは出てこないのではないかと思います。ただ、この制度はアメリカのドル問題を解決するためにできたのではないかという批判があったのでございますが、しかし、少なくともこの一月に関する限りは、そういうふうな意味の状況というのは起こっていないということは確かでございます。
  158. 竹本孫一

    ○竹本委員 IMFの今回の増資の払い込みについて、金が十九億ドルとか二十億ドルとかいうておるのだけれども、その金はどこからどういうふうにして持ってくるつもり、あるいは見通しであるか、その辺をひとつ。
  159. 奥村輝之

    奥村政府委員 今回払い込みますIMFへの払い込み額の中の金の部分については、アメリカからこれを購入して払い込む予定でございます。
  160. 竹本孫一

    ○竹本委員 時間がないからまとめて聞きますが、アメリカはいま金が幾らあるのかということが一つ。その中からそういうふうにして用立てていくと、あとの問題はないかという問題が二つ。同時に、時間の倹約で申し上げますが、この前やりました金の二重価格制といいますか、それは今後見通しはどうなるかということの三つをひとつ伺いたい。
  161. 奥村輝之

    奥村政府委員 アメリカのいま持っております金は百十八億ドルでございます。  次に、あとの問題はないかということでございますが、先般の南アフリカの金問題、新産金の売買問題等も確定いたしましたので、これから先はこの問題はわりあいに円滑に推移するのではないかというようなつもりでおります。  それから第三に、二重価格制の問題でございますが、これは御存じのように最近のロンドンの金市場価格は三十五ドルをときに割る、あるいは三十五ドル十セント、二十セントというようなところを動いておるわけでございますが、当初の目的からしますと、別に三十五ドルでなければならない、三十五ドル付近でなければならないということは全然ないのでございますけれども、そういうふうな状態を推移しておるわけでございます。ワシントンコミュニケで発表されました金二重価格制度というものは、私どもは、いままでも順調に動いてまいりましたし、これから先も、いまの状況から判断いたしますと順調にいくのではないかというふうに考えております。
  162. 竹本孫一

    ○竹本委員 次に、経済技術協力の問題について、二つほど伺いたいのですけれども、いままでにこの線で海外協力をしたものはどういう種類のものが多くて、総額においてどのくらいになっておるかという点をまず一つ
  163. 奥村輝之

    奥村政府委員 御質問の意味がよくわからないのでございますが、いままでこの分野でとおっしゃいました、この分野というのは……。
  164. 竹本孫一

    ○竹本委員 経済技術協力
  165. 奥村輝之

    奥村政府委員 経済技術協力全体でございますか。
  166. 竹本孫一

    ○竹本委員 そうです。
  167. 沢木正男

    沢木政府委員 一九六八年度の援助総額は十億ドルでございまして、政府ベースの援助がそのうちの三億五千七百万ドル、民間ベースの援助が六億九千二百万ドルでございます。政府ベースの援助形態別に御説明申し上げますと、二国間贈与の中には賠償、無償経済協力、技術協力等がございますが、そういうふうな二国間の贈与と、政府貸し付けといたしまして直接借款、再融資、整理信用、それから国際機関への贈与、出資等がございます。民間ベースの援助としまして六億九千二百万ドルの内訳は、直接投資が一億二千二百万ドル、輸出信用が五億六千九百万ドル、概括いたしまして六八年度の実績はそういうふうになっております。
  168. 竹本孫一

    ○竹本委員 経済技術協力のため物品を与えたものはどのくらいですか。
  169. 沢木正男

    沢木政府委員 従来までに約三十七億円相当の機材が供与されております。
  170. 竹本孫一

    ○竹本委員 これを承って終わりにしたいのだけれども物品の贈与というようなものは、それぞれの国から言ってきたものをただ受けて与えるということだけで、それは審査をされるわけでしょうけれども、やられておるのではないか。日本の東南アジアに対する一つの大きなビジョンなり大きな計画なりというもの、構想なりというものがあって、こちらから、もらいに来てくれという催促をする必要もないかもしらぬけれども、大体言ってきたものを受けて立つということだけで、しかもその個々のものを審査しているだけでは、私はほんとうの意味のアジア経済の発展なり技術の前進に協力するということにとって不十分ではないか。日本自身が一つのマスタープランというか基本的な構想を描いて、その線に合ったものを次々に協力していく、与えていくという形にならなければ、どうも不満足な感じがいたしますが、そういう点について政府のお考えを承って終わりにしたいと思います。
  171. 沢木正男

    沢木政府委員 まことにお説のとおりでございまして、われわれが与えておる援助につきましてなかなか長期の計画が立てにくいというような点がございますけれども、われわれといたしましては従来から、単に各国の要請にこたえただけではございませんで、経済協力の効果も調査いたしておりますし、あるいは不断に現地公館からの意見具申というようなものをとりまして、最も効果的な寄与を相手国経済に対して行なうということで、予算を計画的にいただき、そうしてそれを実施しておるつもりでございます。
  172. 竹本孫一

    ○竹本委員 最後に、要望でございますけれども、効果があったとかあがるということは当然のことでございますが、その効果をより効果的ならしめるためには、日本自身が東南アジア経済のあるべき姿、そういうものについて一つのビジョンなり構想なりを持っていて、その中からの具体的な援助というものが次々に行なわれるという形をとるべきではないかと思いますので、十分基本的に、前向きに検討していただきたいと要望申し上げまして、質問を終わります。
  173. 毛利松平

    毛利委員長 美濃政市君。
  174. 美濃政市

    ○美濃委員 まず最初に、いろいろお話を承っておりましたが、どうも、先ほど外務大臣のお話も承っておりましたが、第一番にはっきりとお聞きしておきたいのですが、第一に経済協力を計画した、あるいはこれを増額して続けようとする政策的な意図というものを、どういう意図に基づいて、どういう効果をねらって、またそれは相手方の効果とわが国の効果と両方に分類して、どういう効果とどういう考え方でこの政策を、さらに増額して――年々増額してきておるわけですが、続けようとするのか、まずこの基本的な考え方を先に承りたいと思います。
  175. 奥村輝之

    奥村政府委員 発展途上国に対する協力についての基本的な考え方でございますが、いま私ども日本の場合を考えましても世界全体のことを考えましても、発展途上国の発展なくしては世界全体の発展はない、この考え方がやはり根本にあるわけでございます。私ども日本の利益だけでは、発展途上国に対する協力というものはほんとうの実を結ばないと思うのです。相手方の立場もよく考えて、総合的に協力を進めていく、こういうことで臨んでおるわけであります。
  176. 美濃政市

    ○美濃委員 この発展途上国、いわゆる後進国経済開発なくしてわが国経済もないというお考えですが、その中で、この政策を通じて、具体的にしからば日本経済にどういう影響があるか。
  177. 奥村輝之

    奥村政府委員 もし、日本のみならず先進国が、戦後、発展途上国に対する協力をしていかなかったならばどうなったであろうかということで考えてもいいかと思うのでありますが、要するに、平和のうちに世界経済を順調に発展せしめていくということは、やはり経済協力というものの働きを待たなければできないことでございます。私どもはいま直ちに、いままでやってきたところによってどれだけの数字があるかということについては、もう少し長い期間をかさなければ数字的に出てこないと思うのであります。国連の発展計画、十年の計画というものが、第一年目は一九六〇年、それから六九年まであったわけでございますが、この間に発展途上国の国民所得、GNPは五%引き上げるという目標でやってきた。大体その目標は達せられたということは報告せられておるわけであります。
  178. 美濃政市

    ○美濃委員 そうすると、そういう考え方と、現実に経済援助、協力を通じて行なわれる意図との間に何か矛盾はないのですか。たとえばそういう考え方が、国際赤十字とは違いますけれども、国際赤十字のように純然たる国際間民族愛の結合で、ほんとうに無償供与の意識で行なわれるのか。それともその背景に、先ほど外務大臣も言っておりましたが、資源を要求するとか、あるいはその裏から取引条件を要求するとか、何か向こうから見ると、日本のことばでいえば援助そのものについては好意を持つけれども、その背景から迫ってくるものに対して非常に憎しみが起きてくる、そういうことで、たとえば、私どもが調べたところでは、アメリカが積極的に力を入れておるところでも、そのことそのものがあまり好影響となって成功していないように見受けられる面があるわけです。言っておることと背景から押しつけていくこととは、何か別なものがあるのではないですか。そのために、この援助後進国の、国際社会上お互いの民族の純然たる愛情によって行なわれるものではなくて、かなりこれを流した裏にはいろいろの、通例私どものことばでいえばコネをつけていく、そういうものと結びつけると、これははたして援助を受けたほうがいいのか悪いのか、また援助をめぐって侵略されるとか、あるいはこれで後進国の民族の独立が、経済の独立がはかっていかれるのか、こういう疑問とあれが起きておるのではないか。それが、先ほども話があったように、新聞に出たり、相当の金を出しながらまことに残念だなどと、遺憾だなどという問題が派生してくるのではないかと思うのですが、実際はどうなんですか。そういうものがあるからそうなるんじゃないかと思うのですが、どうですか。
  179. 沢木正男

    沢木政府委員 後進国に対します経済協力ないし経済援助は、それのみでもっては後進国経済が自立達成可能となるものではございませんで、やはりその国自身の自助の努力と申しますか、自身の努力を助ける役割りを果たすのが海外からの経済協力なり後進国援助であろうかと存じます。ただいまお説のように、日本後進国と持っております経済関係全般をとらえますと、いろいろ資源確保のための投資だとか、あるいはマーケットを広げるための企業の進出もございまして、そういう面では確かにお説のとおりの点もございますけれども、一方また、それは日本がやっております海外経済活動の一部でございまして、純粋な理由から生まれました技術協力あるいは借款、あるいは無償援助というようなことも総合してやっておるわけでございますので、ただそれだけでもって現在の発展途上国が先進国に追いつくことはできないと思いますけれども、それはそれなりに寄与はしておるというふうに考えておる次第でございます。
  180. 美濃政市

    ○美濃委員 いまのお話を聞いておると、私はこういうことが想像されるのです。政府としてこういう予算を計上して、そうして法律をつくって出す意図は、前段にお話のあった後進国経済開発援助、それを足しにして後進国経済が伸びてもらいたい、こういう意図のあるということは、それはそのとおり受けていいんですけれども、それとは別に、いま言ったようにそういった問題とは別に、今度は別な形で、政府自身の行為じゃなくて、日本の企業なり財界なりというものの行為の中から、いまわしい、いま言ったようなそういう裏から、そういうつながりを足場にして、たとえは資本進出をして、向こうか意図しない――向こうの自主的行為が加わらなければこの援助だけではもちろん経済がよくならないことは当然でありますけれども、自主的行為を持とうとしても、将来その自主的行為のネックになるような資本進出なり、あるいは資源が先手を打って資本的に掌握されるというような問題が今後起きてくるんじゃないですか。そうすると、全体の国民の税金を使った財政の中でこういう行為を行なって、その背後にそれに結びついて、非常に相手国の国民を不快におとしいれ、せっかくの行為が、せっかくの政府の意図する行為がかなり減殺されて、あるいはそのことが、大きな表現でいえば民族独立運動となって、せっかくこういう金を出しながら、相手方の国から大きな排撃運動が起きてくるという結果に終わる危険性もあるんでないか。国民の税金を使って金を出しながら、その背景にいまわしいものがくっついて結びついていくと、それに対する憎しみが増大して、そうして結局思わぬところで、予測しないところで投資した金は無になってしまって、その国のためには若干なっておるかもしれぬが、総体の上では無になってしまって、そういう体制を排撃するという意識が相手方の国に高まってくる、こういう点も見受けられるのですがね。どうですか、そういう点はどういうふうに考えておりますか。
  181. 沢木正男

    沢木政府委員 ただいま本委員会で御審議いただいております法律、この法律を適用して行ないまするような援助は、被援助国の産業の開発、または経済の安定あるいは技術水準の向上に資するための協力でありまして、特に無償あるいは時価よりも低い対価で相手国に与えるということが妥当だというものに限られております。したがって、いまお説のような、通常の企業進出あるいは企業活動の伴うような場合にこの法律を適用するということでは全然ないわけでございます。やはり、いろいろ経済関係相手国と密接になってまいりますと、貿易、人の交流、商品の交流、いろいろな面が起きてまいりますので、その中にはいま言われましたような非難を招くようなケースもないわけではございません。したがいまして、政府といたしましては、すべてのそういう面について、わが国の善意が理解されるように、あらゆる面を通じて指導あるいは協力をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  182. 美濃政市

    ○美濃委員 相手方の国に善意を理解さすというのは、どっちを向いて理解さすのですか。そういう日本人として、将来、国際間にこういう国民の税金で多額の援助をしながら、それが無になるような行為をするものに善意を理解さして、直ちに法律をつくるつくらぬは別として、善意を理解せしめて、そういう日本人そのものの行為をやらさぬようにするのか、それとも相手方の国に、そういう行為があってもがまんしなさいといって善意を理解さすのか。そのどっちなんです、その善意を理解さそうというのは……。
  183. 沢木正男

    沢木政府委員 私の言い方が誤解を招きましたようでございますが、相手国に対して日本の善意を理解してもらうようにつとめるということでございます。
  184. 美濃政市

    ○美濃委員 そうすると、あなた自身も言われておりました、日本人自身がこういう密接な経済援助をすることによって、相手方の国との往来も、人のつながりも強くなる。そういう中から、取引の面やあるいは事業の面を通じて、好ましくないそういう私が指摘したような面が出てくるのだ。あなたも言いましたね。そういう面はそのままにしておくのですか。それはひとつその陰に隠れて日本人は大いにもうけなさい、こういうお考えですか。
  185. 沢木正男

    沢木政府委員 多数ある経済交流の中でそういうものも出ておるという事実を申し上げたわけでございまして、われわれといたしましては、そういう面ができるだけ出ないように、かつそういう行為に及ばないように指導するのが政府の立場であろうかと存じております。
  186. 美濃政市

    ○美濃委員 しからば、具体的に指導とか、現在までとってきた態度、さらにこれからとろうとする態度、どういうことを具体的にやって、どういうことをやろうとするのか。そういう国際間のやはり明るい世界関係をつくるために――日本人か行なって、善良な日本人もその巻き添えを食って、国際間から日本人、日本国が非難されるような悪徳行為を、どうやってそれを確実に指導してそれをなくしていくか、どういう方針ですか。いままでどういうことを具体的にやってきたか、これからそれをどういうふうにやっていこうとするのか。
  187. 沢木正男

    沢木政府委員 これが対策は非常に広範な面にわたりまするので、これは単に外務省のみでなく、関係各省も、それぞれの分野におきまして民間と接触する際、あるいは海外におきまして接触する際、それから日本一般の世論に訴える面もございますし、広報活動その他あらゆる面においてそういう努力をやっていくほかないというふうに考えておる次第でございます。
  188. 美濃政市

    ○美濃委員 通産省の黒部部長さん、おいでですか――では、この問題は通産省の黒部部長か来るまで、通産省の考えはあとに保留しておきたいと思います。  この援助の中で、文章の上では、どうせ援助額のうちですから、今回の物で援助する中で船舶建物をふやそうとしておりますが、これはその理由づけの中で、病院とか、概して公共用施設のようなものを対象にうたっておりますが、これは相手方の国が、工場の建物をつくって、機械は当然いいわけですから、セットで――日本にそういう法律ができて、建物援助の中へ含めてもらえるのであれば工場を、たとえばその国へ日本が主として輸出しておるようなものの工場を、自己生産してその経済体制を高めたいから、いわゆる建物を含めたセットで工場をつくってくれ、こうなった場合、それも入るのですか。単に、建物というのは学校とか病院とか、こういう公共物のみにとどめるつもりなのか。そういう工場をセットでつくってくれといった場合も、それは考えておるのか。
  189. 沢木正男

    沢木政府委員 現在この法律を適用して行ないます援助は、被援助国の産業の開発または経済の安定、あるいは技術水準の向上に資するための協力でありまして、それが特に無償あるいは時価よりも低い対価で行なうことが適当と考えられるものに限定して行なっていきたいというのが考えでございます。したがいまして、通常の企業活動を援助するような場合は、この法律を適用するのには適当でないと考えております。  このような観点から申しますると、ただいま仰せられました工場のセット輸出というような問題は、本法律の適用の対象にはなりがたいと思われますし、また実際に有償の援助でやったほうが、そういうふうな企業を健全に運営するためにも、かえってそのほうが後進国のためになるのではないかというふうに考えておる次第でございます。したがいまして、どうしても人道的、社会的インフラストラクチュアというようなものが、おそらく中心になっていこうかと思います。
  190. 美濃政市

    ○美濃委員 いまの、もう一ぺん確認しておきますが、そうするとこれは、お話がありましたように、公共もしくは公共に準ずるものであって、企業的なものはこの対象にしない――船舶はとうなります。船舶はやはり公共性ですか。いわゆる運賃を取って輸送するというような船舶会社のものは含まれていない。たとえば監視船とかあるいは試験船とか、そういうやはり公共的船舶ですか、これに該当するのは。
  191. 沢木正男

    沢木政府委員 現在具体例がございませんので、将来にわたって予測することはきわめて困難でございますけれども、そういうふうな商業運用をするような船舶が含まれることはおそらくあるまいと思われます。
  192. 美濃政市

    ○美濃委員 おそらくあるまいという答弁ではちょっとおかしい。そこはやはり、おそらくあるまいで、ある場合もあると解釈するのですか。行なわれる場合もあるというのか、それともないというのか。
  193. 沢木正男

    沢木政府委員 商業的用途に供せられるような船舶はないというふうに言い切っても差しつかえないと思います。
  194. 美濃政市

    ○美濃委員 それでは黒部部長さんが見えたようでありますから、そこで相談して、再質問いたしませんから、どういう方法でやるか、それをひとつ、通産省としての見解を承っておきたいと思います。
  195. 黒部穣

    ○黒部説明員 時間におくれましてたいへん失礼いたしました。  最近、特に東南アジア方面で、エコノミックアニマルあるいはイエローヤンキーというようなことばで批判が高まっているように思いますが、これにつきましては、かの地に駐在しております日本の業者の方々の態度とか、あるいはまた日本の事業が海外に進出しておるわけでございますが、かなり短期間の間に急速に数がふえておるというような面もありまして、何か経済的に侵略されるのではなかろうかというようなばく然とした不安ということもあろうかと思います。かてて加えて、日本貿易の態度あるいは日本商社の態度は物を売り込むことに熱心で、自分らの要望する品物を買いつけるということは熱心ではないのではないかというようなこともあるわけでございます。現に、タイと日本との貿易は年々たいへんな伸び方をしておるわけでございますが、輸出と輸入を比較いたしますと、二・五対一というような比率になっております。東南アジアの国全部がそうではありません。輸入超過の国もございますけれども、輸出超過の国もかなりある。しかもその貿易のアンバランスがますますふえるというような状態であります。  したがいまして、私ども考えといたしましては、まず東南アジアから買い得る品物をどんどんふやしてまいりたい。その点でどういう品物かということになりますが、とりあえず買い得るものということになれば一次産品で、しかも日本国内の産品と競合しないもの、こういうものをどんどんふやしてまいりたい。たとえばトウモロコシ――コーリャンでございますが、これは現在半分以上のものは米国その他の先進国から輸入しているわけでございます。輸入の毎年の伸び率が高いわけでございますから、しかもそのようなものは、東南アジアでも十分適地があるわけでございます。適地でありながらその輸入がふえない、これは技術の問題とか流通の問題とかいろいろあるわけですが、その辺を国のほうで何らかの助成をいたしまして一次産品の輸入をふやしてまいりたい、こういうことで一つほかの国の要望にもこたえたい。  第二には、日本の出ていく企業、業者の態度でございます。これにつきましては、先般来当委員会の諸先生方からも御指摘がありましたように、とかく何といいますか、見下したような態度であるということがどうも問題を起こすようでございます。経済協力、もっと具体的に申し上げますれば、合弁会社を設立して非常に感謝され、成功している例がむしろ現在は多いわけでございますけれども、その成功の中には、実は日本の代表者と申しますか、あるいは工場長と申しますか、そういう方の、派遣された人の人柄に非常に負うところがあります。私も聞いた話でございますが、たとえば白人の技術者の場合は、その現地職員の下級技師を同席させなかった。ところが日本の進出企業では、現地人の、まあ下級技師を同席さして、同僚として扱ったということで、日本の企業に対しまして非常に感謝しておる。それがまた非常な能率をあげるもとになったというような実例も聞いております。したがいまして、やはり出ていく日本の企業の現地に駐在する者の心がけにつきましては、当省といたしましても責任がありますので、何らかの方法で指導してまいりたい、かように考えております。
  196. 美濃政市

    ○美濃委員 いまお話を聞いておると、何か向こうから買うものに、流通の改善もさることながら、助成等を講じて、向こうの、輸出見返りの輸入の促進をはかりたいというお話でしたけれども、助成というのはどういうことを意味しているのですか。どの程度のものをどういうふうに考えておりますか。
  197. 黒部穣

    ○黒部説明員 具体的な例を申し上げたいと思いますが、たとえばカンボジアは昔からメイズの若干の産地であったわけでございますが、日本で買い得るほどの数量にはなかなかまとまらない。数量が少ないために、カンボジアに対しては買うものがないために、日本とカンボジアの輸出入のバランスは極端に日本側の輸出超過になっております。したがいまして、外務省にあります海外技術協力事業団にお願いいたしまして、日本のトウモロコシの専門家を現地に駐在していただきまして、いかなる品種のトウモロコシの種を使ったらその生産をあげることができるかということで指導をする、こういう点が第一点でございます。  具体的な例から申し上げましたが、要するに海外技術協力事業団等を通ずる技術協力によりまして生産を改善して上げる。  第二は、何か施設をすることによりまして、輸出のコストを下げられる、あるいは品種の改善をなし得るというような場合があるわけでございます。これにつきましては、従来は経済協力基金による融資ということでございましたけれども、私企業で日本経済協力基金から金を借りて、それによって事業をなすにはあまりにも仕事がインフラストラクチュアに関連するというような場合がございます。この点はいままで解決されてなかった問題でございましたので、四十五年度予算案にも計上をお願いしましたが、アジア貿易開発協会というものを先般当省の指導でつくりまして、これに国家資金を投入いたしまして、この協会を通じて合理化施設に融資するという方法をとって問題を解決したいと思っております。  第三には、このアジア貿易開発協会の仕事でございますけれども、当初は輸入するものの十分なロットがない、しかしながら日本がだんだん買い付けていって一定の量になれば、コマーシャルベースで民間の人が買い得るようになる。したがって、何か二、三年ぐらいは呼び水的に買ってあげなければならない、買うことによって先方の、相手国の輸出業者なりあるいはひいては農民なりが生産し、売り込むような習慣がつく、ともかく呼び水的に買わなければならない。ところが先進国から現在輸入しているような品物は大量に入りますので、輸送費その他の面でもはるかに安くなる。この割り高な一次産品を呼び水的に何かどうしても買い付けていきたいというような場合があり得るわけでございます。こういう場合に備えまして、非常に低利なお金をアジア貿易開発協会を通じて貸すというようなことを始めることにしております。  以上が、先ほど私が申し上げました何らかの助成という意味でございます。
  198. 美濃政市

    ○美濃委員 ついでにお尋ねをしておきますが、いまそういう意図に基づいて日本の企業が向こうでトウキビとか、そういう試作をやっておるものがありますね、これはどのくらいの件数で、どのくらいの規模でやっておるのですか。
  199. 黒部穣

    ○黒部説明員 大体はトウモロコシは買い付けでいくというのが形でございますが、カンボジアの場合では、民間で合弁会社をつくりまして、それと先ほどの海外技術協力事業団の職員によります技術協力とタイアップいたしまして買い付けをしようという計画で進んでおるのが一件ございます。  なお、インドネシアではやはり合弁会社をつくりまして、トウモロコシを試植し、生産がふえたなら輸入したいということで現在実施中のものが二件ございます。  私の知る限りではその三件でございますが、なおタイでも若干の、計画で進んだものがあるかと思います。
  200. 美濃政市

    ○美濃委員 これは将来の問題になりますが、日本のそういうえさにも限度がありますね。これは無限なものじゃないのです。いまたとえばトウキビについて申し上げますと、アメリカからかなり入っております。それからアフリカから入っておりますね。アフリカあたりは過剰で、トン五十七ドル-五十五ドルに下がることがあるわけです。トウキビ全体は国際的に過剰供給の傾向です。そこで、日本は東南アジアへ進出していってそれをやると、将来東南アジア開発して、いわゆるガットに基づく得意産業成長発展というシステムでそこを開発できれば、いまアメリカ、アフリカあたりから買っておるのは打ち切るという考えですか。そういう政策の配慮というものがきちっとなって行なわれておるのですか。それとも、従来日本の政策というのは行き当たりばったりですが、行き当たりばったりでやっておるのですか。そこが開発されて多く出れば日本のトウキビの輸入、えさの輸入といったって限度がありますから、無限大に、おそらく一千万トンも必要とするものじゃないわけですから、現在の需要とあるいは将来の家畜を見ても、ここ当分は、いまの輸入量が膨大な状況で伸びていくとは思わぬが、そこと取引をするためにそういう開発をして、そこからえさを求めるとなると、どこかのえさを切らなければならぬ、アメリカを切るのか。あるいは、主としてアフリカから入っておるものはでん粉用ですね、コーンスターチ、でん粉用の白トウキビが入ってきておるのですが、そういうものをどういうふうに調整していくか。第一段階、アメリカのトウキビを切っても東南アジアのトウキビをふやしていくのか。切るとなると、いまの織物の輸入規制と同じように、かなりやかましい問題が起きると思うのです。大豆あたりは関税を下げろとか、日米経済会議のつどああいうふうにやかましいのですが、強力な圧力で農産物を買えと、こう言うのだが、そういうものができてしまうと、どこかを切らなければならぬでしょう。両方買って、要らぬトウキビまで買って工業製品を売る、それはやはりそういう考えにはならぬと思うのです。そういう交通整理はしてやっておることなんですか。そこらはどうなんですか。
  201. 黒部穣

    ○黒部説明員 一昨年、一九六八年のトウモロコシの日本の総輸入が四百万トンになっております。これは対前年比一〇%の伸びということで、実はえさ用のトウモロコシは毎年毎年一〇%以上の伸びを示しておる。このうちアメリカの輸入が二百八十九万トンございまして、いま先生から御指摘の東南アジアの輸入は、カンボジアが九千トン、インドネシアが八千トンというような非常に小さな数字でございます。ちなみに、はるばる遠い南アフリカから七十五万トンも輸入しなければならないというような状態になっております。このほかに、トウモロコシに代替するものでございますが、二百八十万トンのコウリャンを輸入しております。このコウリャン二百八十万トンのうち、百八十七万トンはアメリカから輸入しているわけでございます。したがいまして、将来の伸び率がないという前提の場合は、これは輸入ソースを切りかえるというので、あるいは問題が起ころうかと思いますが、年々大量のものを輸入しておりますし、しかもその伸び率が高いわけでございます。しかも東南アジアでは、この輸入総数量から見るとほとんど微々たる数量でございますので、現在輸入しているソースからの輸入を減らすことなく、先ほど申し上げましたような政策を遂行できるものと考えております。
  202. 美濃政市

    ○美濃委員 この論争は、いま申したように、いまの量はきわめて東南アジアは少ないのですが、思い切った開発をすれば、どこか投げなければならぬことになりますね。そこらのことはいま起きているばかりの現象ですから、それをいま言うのは時期的にちょっと早いですから、この程度にしておきたいと思います。  そこで、各国の援助費はどうなっておるか、これをちょっとお聞かせ願いたい。
  203. 沢木正男

    沢木政府委員 ちょっと統計が古くて恐縮でございますが、一九六七年度で各国の援助費を申し上げますと、アメリカ合衆国が五十五億六千七百万ドル、フランスが十三億四千三百万ドル、ドイツが十一億四千万ドル、イギリスが八億七千五百万ドル、わが国は六七年度は八億五千五百万ドル、イタリアが二億八千四百万ドル、カナダが二億五千三百万ドル、それがDACに出されました各国の援助実績の報告でございます。
  204. 美濃政市

    ○美濃委員 この援助地域はどうなりますか。日本は主として東南アジアでありますが、この援助を進めておる地帯のあらましですね。東南アジアだけでないと思うんです。たとえばアフリカだとか、どういうふうにこれがばらまかれているのか、こまかい点は抜いて、大勢でよろしゅうございます。
  205. 沢木正男

    沢木政府委員 ごく大ざっぱに申し上げますと、アメリカが出しております援助は、自由圏世界じゅう全般に多うございますが、ラテンアメリカ地域に対してわりあいたくさん出しておるわけでございます。それからイギリスとかフランスは、旧植民地に出しておる割合がわりあい多うございます。日本の場合は、直接投資ではやはり東南アジアが中心でございますが、直接投資に関する限りは米州諸国、それから中近東も相当な額にのぼっておりますが、政府援助では大部分が東南アジアに集中しておる。ごく大ざっぱに申しまして、そういう状況になります。
  206. 美濃政市

    ○美濃委員 この総額は何ぼですか。ちょっといまここでトータルするのはめんどうですから伺いますが、総額は何ぼになっておりますか。
  207. 沢木正男

    沢木政府委員 総額と申しますと、日本の総額でございますか。
  208. 美濃政市

    ○美濃委員 いや、そうではなくて、いま言った総トータルです。
  209. 沢木正男

    沢木政府委員 ただいま六八年の新しい統計が見つかりましたので、それで申し上げますと、DAC諸国の援助総額は六八年度で百二十八億二千七百万ドルでございます。
  210. 美濃政市

    ○美濃委員 これはDAC地域ですが、社会主義国家はテレビや何かでかなり海外援助のニュースなんか出てくるわけです。この状況は総額でよろしゅうございますが、どのぐらいのものをやっておるのか。社会主義国家のこの種の援助というのはどのぐらいの規模のものをやっているのか。
  211. 沢木正男

    沢木政府委員 通産省の発行しておられます一九六九年度の「経済協力の現状と問題点」によりますと、一九五四年から六八年の間の約束額累計額で九十三億三千八百万ドルでございます。六八年の年額にいたしまして、七億四千八百万ドルというのが約束額、すなわちコミットメントの額でございます。
  212. 美濃政市

    ○美濃委員 次に援助額を見ますと、もちろんアメリカは経済が強いですから、ラテンアメリカ主体といういまのお話でありましたが、力点はどこに置く置かぬにかかわらず、額においては日本よりも高い比率の援助費を出しておりますね。しかし最近これは逐次減少傾向をたどっております。あまり増加していない。たとえば一九六五年、六六年、六七年、六八年とありますが、六七年から六八年は若干援助費が減っておりますね。ところが日本は反対に四十一年から四十五年まで、この五年間にこの関係援助費というのは約倍になっておりますね。四十一年が四百九十一億、四十五年、本年の計画は八百一億、倍というにはちょっと足らぬけれども、八〇%以上増加しておる。アメリカはずっと横ばいもしくは最近は減少傾向である。日米間の経済協力や何かの話し合いの中で、援助費の肩がわりというのを、ドル防衛からアメリカは日本側に強く押しつけてきておるのです。この政策に基づいて、こういうふうに日本側はものすごく増加していく。アメリカは横ばいもしくは最近の傾向は減少、こういう経過をたどっておるのです。このいわゆる経済協力の肩がわりという話はどんなふうになっておるのですか。日米間のこの関係の肩がわりという話し合いは、どういうふうになっておるのですか。
  213. 沢木正男

    沢木政府委員 アメリカの対外援助予算が減少する傾向にありますことはただいま御指摘のとおりでございますが、それはアメリカ国内の各種の事情、それから米国自身の国際収支上の問題等によるものでありまして、わが国援助が一方ふえておりますのは、アメリカの事情とは別に、何の関係もなく、わが国として開発途上国経済開発を支援するということは先進国の国際的責務であるという考えに基づきまして、わが国独自の立場から、その国力に応じまして独自の判断に基づいて経済協力を拡充する方針をとってきております。したがいまして、ただいま御指摘のようなアメリカの援助日本が肩がわりするために援助をふやすということは、現在までその事実はございません。
  214. 美濃政市

    ○美濃委員 あなた方はそういうふうに答弁するのですけれども、新聞や何か、国際通信や何かで、肩がわりをアメリカが要求したということは報道されておるのです。ドル防衛の、いわゆる経済協力関係の話し合いになると、肩がわり要請ということが行なわれておるわけです。あなた方はそういうふうに答弁するけれども、報道のほうは、肩がわりという報道が行なわれるわけです。この相関関係はどうなっておりますか。日本国力がふえたから、これは純然たる自主的考え方でやっておるのですと言うけれども、しかし一方報道の中では、ドル防衛から肩がわりを要求してくるという事項は出ておるわけですがね。これはもう報道が虚偽なのか、それともそういう話し合いが日米間である程度行なわれて、それは原則的には日本経済が復興したから若干ふやしましょうというような話し合いがあるのかないのか、全然そういう話し合いなしに――話し合いがないものであるならば、火のけのないところに煙は立たぬと思うのですがね。どうなんですか、そこのいきさつは。あるだけのことは、私どもはあるように思うのですがね、報道を見ておると。肩がわりという話し合いの中で行なわれる、しかしその肩がわりが無理な肩がわりか、それとも経済成長に伴ってある程度やはり先進国分担の中では正当に持ち分を計算されて持っておるのかというところの適正な判断を私としてはしたいわけです。しかし、そんなことは全然ないのであって、報道機関は報道しておるのですが、報道機関は虚偽の報道をしておるということになるのか、どうなんですかな、そこのいきさつは。
  215. 沢木正男

    沢木政府委員 日本もアメリカもメンバーでありますOECDのDACその他の場におきまして、GNPの伸びに応じてその一%に達するまで援助を伸ばすべきだという議論は非常にされておりますが、二国間において援助を、この援助はおまえのほうが持ってくれという意味の日米間の話し合いというものは、ただいま申し上げましたとおり、ございません。
  216. 美濃政市

    ○美濃委員 この関係で最後にお尋ねしておきたいのでありますが、やはり心配になることは、せっかく国民の血税でこういう援助をしながら、繰り返しませんが、結果が非常に――援助をしながら、いわゆる皆さん方みずからも言われたような一部の背徳行為、それは一部じゃなくて、かなり熾烈に経済侵略のような、政府みずからがやるのじゃないのだが、その行為が行なわれておる。この規制措置です。今後どういうふうに考えるが。これは、指導といったってなかなか、ず太い意識で入っていくわけですから、あなた方が口の先だけで指導したくらいじゃ改まらぬ。これはやはり問題だと思うのです。いわゆる政策の意図、国民の意思、あるいは国民の苦しい負担の中で世界の発展のためにこういう援助をするということ、そのことが悪いと私は言っておるのじゃないのです。その裏に隠れて腹黒い人間が、結局はその意図があだになって相手方の国民に不快な念を起こさせて、反撃の姿に変わってくる、これはまことに好ましくない現象だと思うのです。ゆゆしき問題ですから、そういう行為をどうチェックしていくのか。それはどういうふうにお考えになっておりますか。ただ指導だけじゃうまくないのですが、将来どうやっていくか。
  217. 沢木正男

    沢木政府委員 その点に関しましては、結局日本人の海外におきます行動、あるいは企業の海外におきます経済行動、あるいはわれわれが援助を与えます与え方、相手国との折衝に対する態度、すべての問題がからんでまいりますので、その各面におきまして幅広い対策を講ずる必要があるということで、現在関係各省とも話し合いを続けておる段階でございます。
  218. 美濃政市

    ○美濃委員 どうですか、政務次官、断固やりますか。悪徳行為追放を断固やるという決意ですか。
  219. 中川一郎

    中川政府委員 午前中もその問題あったかと思いますが、せっかく国民の税金でもって海外援助をして、一部の悪徳者によって日本国民の体面が汚される、ましてや東南アジアから大きな誤解を招くということは断固としてあってはならないことでありますので、先刻来御指摘もありましたので、この点についてはさらに一段と政府として鞭撻をいたし、そういう心配のないように最善を尽くしたいと存じます。
  220. 美濃政市

    ○美濃委員 次に、IMF関係で若干お尋ねをしておきたいと思いますが、まず第一番に、今回の増資された総額というのはこの要綱で説明がありますが、現在の額と主要各国の持ち分ですね、これはどういうふうになっておりますか。
  221. 奥村輝之

    奥村政府委員 IMFの現在のクォータの総額は二百十三億ドルでございます。各国のクォータでございますが、主要国について申し上げますと、アメリカが五十一億六千万ドル、イギリスが二十四億四千万ドル、ドイツが十二億ドル、フランスが九億八千五百万ドル、インドが七億五千万ドル、カナダが七億四千万ドル、日本が七億二千五百万ドル、イタリアが六億二千五百万ドル等であります。
  222. 美濃政市

    ○美濃委員 今回の増資額は、これは特に日本は比率増加をするわけですが、今回の増資の比率は各国に比例してどうなんですか。
  223. 奥村輝之

    奥村政府委員 今度わが国は七億二千五百万ドルのクォータを十二億ドルにふやすわけでございます。増加率は六五・五%でございます。全体の増加の比率は三五%でございます。
  224. 美濃政市

    ○美濃委員 他の主要国は大体平均と解釈していいのですか。それとも日本のように持ち分のふえる国はありますか。あるいは減る国――減る国はないですけれども、いずれも増資するのでしょうけれども、今回の持ち分がぐっとダウンされる、それから日本と同様にかなり持ち分比率が高まる、その関係はどうなりましょうか。
  225. 奥村輝之

    奥村政府委員 先ほど申しましたように、平均が三五%でございまして、日本が六五・五%でございます。各国について申しますと、アメリカの増加率は二九・八%、イギリスが一四・八%、ドイツが三三・三%、フランスが五二・三%、インドが二五・三%、カナダが四八・六%、日本は六五・五%、イタリアは六〇%でございます。  なお、このシェアについてお尋ねがあったかとも思いますので、シェアについて申し上げますと、アメリカのクォータ、これは全体の中で二三二六%と相なります。現行は二四・一七%でございまして、同じような数字を各国について申し上げますと、イギリスは一一・四三%から九・六八%へ、ドイツは五・六二%から五・五三%へ、フランスは四・六一%から五・一九%へ、日本は三・四〇%から四・一五%へ、カナダは三・四七%から三・八〇%へ、イタリアは二・九三%から三・四六%でございます。
  226. 美濃政市

    ○美濃委員 これは何かこの持ち分、日本の企業内にもあるわけですが、この持ち分算定基準というようなものはあるのですか。こういうふうに計算をし直していく何かこの関係の国際間のあらかじめの基準、この関係あるいは国際復興開発銀行の持ち分、こういうものに対する算定要領とか基準というようなものがあるのですか。
  227. 奥村輝之

    奥村政府委員 このIMFのクォータのきめ方につきましては、ブレトン・ウッズ方式というのがございます。中身は外貨準備、国民所得、輸出、輸入等の数字がもとになっているわけでございます。今度は一九七〇年の増資でございますが、各国ともにいま申し上げましたような数字を集めますためには、少し年度をさかのぼらないと統一的に数L字が出てまいりませんので、そういう関係数字が求められたところは一九六七年でございます。そこで、一九六七年の数字を使いまして、算式をいま申し上げますと、0.02Y+0.05R+0.1M+0.1V´これにかけますことの1+X/Y、Yは国民所得、Rは外貨準備、Mは輸入、Xは輸出、V´というのは五年間における輸出の最高額と最低額との差の一〇%をとっております。非常に技術的になりましたが、こういうふうなことをやりまして、小国については国民所得と外貨準備のウエートを減らしまして輸出入のウエートを高める方式を採用したり、あるいは貿易外取引の大きい国については貿易外取引とか移転収支、こういうものを加味する方式による金額も考慮されているわけであります。
  228. 美濃政市

    ○美濃委員 次に、この法案説明の中の末尾にSDRの配分額というのがある。それからもう一つはSDRの特別引き出し権という字句が出ておりますが、この配分額と引き出し権との関係はどういうふうに……。
  229. 奥村輝之

    奥村政府委員 SDRというのはスペシャル・ドローイング・ライトで、特別引き出し権でございます。非常に不統一で申しわけございません。同じことでございます。
  230. 美濃政市

    ○美濃委員 同じことですか。配分額と引き出し権とは同じですか。この額で固定されておるかということです。これ以上に引き出すことができるのか。
  231. 奥村輝之

    奥村政府委員 いま申しましたのは特別引き出し権とSDRは同じ意味であるということを申し上げましたので、次に配分額と申しますのは、SDRは今回、将来三年間に世界全体について約三十五億ドル、三十億ドル、三十億ドルというふうな額で配分をしようということがきまったわけでございます。そして本年の一月一日現在のIMFのクォータ、これをもとにいたしましてSDRが配分されたわけでございます。今後SDRの配分があります際には、そのときのIMFのクォータ、これが絶えずもとになるわけでございます。したがって、今回御審議を願っておりますIMF加盟法、これが成立いたしましたときには新しいクォータでSDRの配分を受けられるということになります。したがって御質問の点については、配分額というのは今後変わり得るわけであります。
  232. 美濃政市

    ○美濃委員 いまの点、もうちょっとお聞きしておきたいのですが、たとえば国際収支が悪化した場合にこの基金が必要となると思うが、この配分額を越えて適用を受けられるのか受けられないのか、これを聞いておるわけです。配分額で固定されておるのか。この配分額で固定がされて、いかなる状態になってもこの配分額を越えての適用を要請することは不可能なのか。それとも特別条件の場合は、これは通例配分額であるこれを越えての適用があるのかどうなのかということです。
  233. 奥村輝之

    奥村政府委員 SDRの配分を受けました例をもって申しますと、日本は一億二千二百万ドル、これだけ配分を受けたわけでございます。それで各国もそれぞれ先ほど申しましたように、IMFのクォータに比例した配分額を持っているわけでございます。今度国際収支が悪くなり、国際収支上の必要が起こりましたときには、自分の持っているそのSDRをIMFのほうに持っていく。IMFのほうでは比較的国際収支が安定し、外貨準備の余裕のある国にそれを差し向けてくるわけでございます。そういうことによって、たとえば日本にSDRが差し向けられた場合には日本の持っている、本来割り当てられた配分額もふえることになります。現に一月は六百万ドル増加いたしました。二月は四百万ドル増加いたしました。いま一億三千二百万ドル持っているわけでございます。そのかわりに、日本の場合には一月には六百万ドル、二月には四百万ドルのドルを、IMFを通じて、SDRを差し向けてきた国に渡したわけでございます。
  234. 美濃政市

    ○美濃委員 現在の運用状況はどうなっておりますか、各国が使っておる状況……。
  235. 奥村輝之

    奥村政府委員 SDRはまだ一カ月しかたっておらぬのでありますが、この一月中におきますSDRを使用いたしました額は総額八千九百四十万ドルでございます。国の数は十三カ国でございます。SDRの受領をいたしました国、これは日本も含めてでございますが十一カ国でございます。金額は七千七百十万ドルでございますが、その差額は、IMFの一般勘定の保有額から、通俗なことばで申しますと融通されたわけであります。
  236. 美濃政市

    ○美濃委員 今回の増資で日本理事国になれるというのですが、この関係理事、これは通例日本では役員といいますが、監事はあるのですか。理事だけですか。管理者だと思うのですけれども、監事はあるのかないのか。理事だけの構成なのか、監事という構成があるのかどうか、その数はどうなのか。
  237. 奥村輝之

    奥村政府委員 IMFは監事という制度はございません。理事が二十人いるわけでございます。クォータの上のほうからとりまして、五人任命理事を出すことになっております。と申しますのは、その他は選挙理事を出すことになります。選挙理事というのはどういうことかと申しますと、数カ国が集まりまして、一つのグループをつくります。そのグループの中でどの国の人を選ぶかという選挙をいたしまして、選挙された人がそのグループを代表して理事に出るということで、十五人がそういう選挙理事でございます。
  238. 美濃政市

    ○美濃委員 次に、この関係は、ここに書いてありますが、日本の円で出す部分は別といたしまして、金で出さなければならぬのですが、この関係が、日本円で出したものは外貨資産にはならないと私は思うのです。いわゆる金で出すには、金がないから外国から買わなければならぬ、こう書いてありますけれども、これは外貨ということになりますが、こうして出したものは特別会計の資産となると思う。この資産はいわゆる通例外貨準備高として公表される数字に入るのか、それともこの特別会計の特別資産に組み入れて外貨準備高からはずすのか、それとも、これは積んであるのだから外貨準備高の中に含めて、外貨準備高として発表される額に入ってくるのか、特別会計の資産区分はどうなるのか。
  239. 奥村輝之

    奥村政府委員 二五%金で出しました部分は通例ゴールドトランシュと呼ばれております。現在の金額は一億八千百万ドルでございます。これは外貨準備の中に入れております。今後増加いたしました場合には、やはりその増加したあとの金の払い込み分というのは、ゴールドトランシュとして外貨準備の中に入るわけでございます。
  240. 美濃政市

    ○美濃委員 そうすると、従来は一般会計で出しておったと書いてあるけれども一般会計から出しても、金で出した分は外貨準備高に加えて公表しておるのですか。現在でもこれは間違いないですか。
  241. 奥村輝之

    奥村政府委員 間違いございません。
  242. 美濃政市

    ○美濃委員 最後にお尋ねしたいのですが、日本の円が強いか弱いかという論争、これは新聞でも取り上げておりますが、この関係について、この前日本の輸出カルテルの状況というもののしさいの資料がほしいという要請をしましたけれども、企業機密等があって把握していない、こういうことなんですが、日本の円が強い弱いという問題、これは大蔵当局としてはどう見ておりますか。  それから、かなりの輸出カルテルがかかって、国民に、私どもから見ると不当な経済のしわ寄せ、負担、物価高の悪質な要因をなしておると思うのですけれども、これはカルテルがなかったら日本の輸出はできるのですか。国内価格で何でも輸出できますか。いわゆる国際経済の状況の中で、かなり安く売らなければ輸出ができない状況なのではないか。そういう状況で、国民に非常な物価高の悪質要因をなす出血のカルテルを背負わしている。安く売るカルテルを背負わして輸出をするということ、そして日本の円が強いとか弱いとかいう論争があるということはどういうことなのか。基本的にはやはり強いのか、それとも、そういう無理な不当経済行為の中からでも輸出が伸びて外貨準備が多いから強いというのか、それとも基本的に日本の現在の国内価格は国際価格に比較してずっと安いのかどうか、安いのであればなぜカルテルをかけるのか、この関係はどうなんでしょうか。どういうふうに考えておられるか。
  243. 奥村輝之

    奥村政府委員 御質問のいわゆる輸出カルテルなるものについての御答弁は、通産省のほうから申し上げたほうが適当でなかろうかと思います。  ただ、いま円が強いというお話、確かに円が強い段階でございます。弱い時期もございましたが、いまは強い時期でございます。しかし日本外貨準備も、日本の輸入額などと比べましてそれほど過大であるという状態ではございません。また日本黒字なるものについても、その継続期間もドイツなどと比べましてまだそんなに長くない。基本的によくドイツと比較せられるわけでございますが、今後の経済の推移などもよく見てまいらなければならぬ、こういう時期でございまして、巷間いろいろな議論が行なわれているようでございますが、私どもとしては、決定的に円の価値がいま特に過小評価されておるというふうにはまだ考えていないわけです。
  244. 黒部穣

    ○黒部説明員 直接の担当ではございませんので、輸出カルテルの問題、あるいは的確なお答えにならないかと思いますが、輸出入取引法あるいは貿易管理令によりまして行なっております規制は、主として過当競争の防止でございます。不当に外国に安く売ったりあるいは品質のごく悪いものを出すというようなことを押えるために、輸出業者間で協定を結びまして、政府が認可して、それに基づいて規制するという形をとっているわけでございます。これと、先生御指摘の円高あるいは円安の問題とどう結びつくのか、私はどうもつまびらかにしないわけでございますけれども、今日の規制あるいは先生の仰せられましたいわゆるカルテルというのは、さような趣旨で実施いたしておるわけでございます。
  245. 美濃政市

    ○美濃委員 そうすると、単純に例を一つあげてお尋ねしますが、今日、私どもカルテルの実態を完全に掌握しているのは、たとえば肥料二法によって立ち入り検査等をしている窒素肥料なんですが、これはことしあたりの輸出になると約半価格ですね。国内農民におろす価格と輸出する価格は、国内価格が倍ですね。これはどうですか、国内価格で輸出できると思うのですが、通産省から見た場合、これはできないのですか。その他にもそういう類似のものがあるのだが、ここで一例をあげてお尋ねします。どうして国内価格で輸出できないのか、国内価格で輸出しようとすればできるのかできないのか、それについてひとつ見方を御答弁願いたい。
  246. 黒部穣

    ○黒部説明員 これも私が直接の担当でないものでございますから、十分なお答えにはならないと思いますが、私の乏しい知識で申し上げますと、むしろ窒素肥料につきましては、外国市場ではヨーロッパ方面から非常に安くオファーが出されておる現状でございまして、あまりにも安ければ見送る場合もございますが、やはりある程度の輸出量だけは確保していきたいということで、他の諸国との競争に勝てる程度に、場合によっては値を下げなければならぬという場合もあるわけでございます。一つは生産方式自体の近代化ということで、先生御承知と思いますが、硫安工業の合理化につとめてまいったわけでございます。諸先進国といいますか、主としてヨーロッパの国のほうはまたそれが一段と進んでいるという面があるのと、場合によってはまた非常に安い値段でオファーしてきているということで、なかなか輸出の商売がむずかしくなってきているという状況でございます。あえて国内価格を高くし、輸出価格を低くしてということではございませんで、もっぱら外国市場、第三国市場で他の肥料輸出国と競争する、そういうところで値段がきまってまいります。
  247. 美濃政市

    ○美濃委員 それはわかるのですが、そうすると日本国内物価あるいは日本の円というものをこういうふうに日本経済政策で膨張させなければ、そういう対応性があるのじゃないですか。円が膨張するとインフレということになるわけですが、円膨張原因のインフレと私ども考えておるわけですが、経済の実質成長がないとは言いませんけれども、名目成長が多くて、実質成長は少ない部分しか伴っていない。主として通貨膨張インフレである。そして国内価格は上がっている、国際競争はそれでやらなければならぬ、こういう現況にあると思うわけです。農産物の価格を論じてもそういう壁にぶつかるわけです。長い話はしませんが、しかしそういう関係で、私どもからいえば、価格上から見ればそういう無理な輸出をしているわけです。無理な輸出をした部分は、国民にはね返っておるのでしょう。国内価格にはね返っておるのですよ。はね返らさなければその企業は倒産するはずですよ。実際に国内価格がぎりぎりの順ざやの卸のコスト価格である。企業の体質の中であれだけ安く輸出したということになれば、これは何年かやるうちに倒産するはずです。倒産しないのだから、これは国内にかぶせておるということです。国内価格にかぶせて採算をとっておるということは明らかじゃないですか。輸出にはそういう無理な行為が行なわれておる。そして外貨準備はあるんだ、こう言ってみても、日本の円価値そのものが――そういう行為をやめた場合に輸出ができますかできませんかと私は聞いておるのです。ですから、各品目についてそういうことがあるのですが、一品目について肥料をあげてあなたに尋ねておるのです。国内価格で輸出できるのかできぬのか、これを聞いておるのです。できるならできる、できぬならできぬ、特別のもうけのためにしておる、これだけ答弁してもらえばいいのですが、それはどうなんですか。
  248. 黒部穣

    ○黒部説明員 どうも私担当でないものですから、責任ある答弁ができないことをまことに残念に思います。もし御必要であればまた後刻担当者に来てもらって答弁させるべきかと思いますが、ただ一般的に申し上げれば、肥料はあるいは特殊なケースかもしれませんですけれども、輸出商品の中には、先ほど申し上げましたようにむしろ過当競争のために安値にくずれるのを防がねばならない、もうかる輸出になるように個々に取引をしている部門もあるわけでございます。  それから、肥料の面につきましては私よく存じませんですが、単純に国内価格との比較もできないのではなかろうか。大体は海外市場におけるマッチングといいますか、競争で海外の輸出価格はきまるわけでございます。国内の場合と違いまして、バラ積みで行なうとか大量の取引を行なうとか、あるいは国内価格では流通コストが当然入ってくるわけでございまして、その辺も彼此勘案した上でないと、海外では非常にべらぼうに安く売っているということになるかどうか、よく調べてみないとわからないと思います。必要あればまた後刻担当者に答弁させたいと思っております。
  249. 美濃政市

    ○美濃委員 これは、いまの答弁は全く私としては不満足なんですが、あなた方はいま担当でないといったっておそらく通産省に長いでしょう。あちこち歩いておるからわかっておるはずです。どうもこういう関係になるとくさいものにふたをするような、たとえばもう工業優先ですから、そういうふうに隠蔽したような答弁をするわけです。そうして、ただある面においては、たとえば農業問題なんかになると、財界から全部口をそろえて、農産物が高い、農業なんかやめてもらいたい、日本の農業なんかあってもなくてもいいのだ、こういうように結びつくようなことを言って、こういうぎりぎりのところを聞くと知らぬ存ぜぬ、こう逃げる。そこでカルテルの状態の資料を出してもらおうとすると企業をかばってか出さない、こういう体質は、きょうは私はこの程度にしますけれども、国民のためにどうも許せないと思うのです。こういう不当な、うしろに隠れて物価高の悪因をなしておる経済行為を、逃げ答弁、ごまかし答弁で通れると思ったら私は大間違いだと思います。機会あるごとに私はとことんこの問題についてはやろうと思いますから、今後とも私のほうからも的確な資料を出せるようによろしくお願い申し上げたい。質問を終わります。
  250. 毛利松平

    毛利委員長 広瀬秀吉君。
  251. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 今回国際通貨基金及び国際復興開発銀行に出資の増額を行なうこととして、これを外為会計の負担において行なうということになったわけであります。この外為会計一般会計から一々出すという形ではなしに、外為会計で一元的にこれを処理するという――IMFとの取引も非常にひんぱんになってきた、こういうようなことから見れば、そういう制度に移行するということのメリットはわかるような気がするわけであります。この外為会計の負担において、これからずっと増資なりを行なっていく、あるいはIMFに対して持つ債権を、外為会計を通じて日銀に譲り渡したり譲り受けたりするというようなことにする事務的な処理、こういうようなものでたいへん便利になるだろう、こういうことはわかるわけでありますが、それ以外に何か今回の措置をとる特別な理由というものがありますか。
  252. 奥村輝之

    奥村政府委員 いま広瀬委員御指摘の第一は、外為会計とIMFの間は緊密化してきている、これを一元化するためにやるのであろう、第二には、そういうふうにしたほうが順便であろう、こういうふうな御指摘があったわけであります。私どもはそういう趣旨で今回のこの増額を行ないた  いと考えておるわけであります。
  253. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 今回のような法改正を行なうメリットというものはそれ以外には特段にはない、こういうように了解してよろしいわけですね。  そこで、今回この基金に対して四億七千五百万ドル、銀行に対して二億五千四十万ドル、こういうぐあいに増資をするわけでありますが、これは日本が前からこういう主張をしておったということで、先ほどその出資の算定基準といいますか、そういうものも、こまかい数式までおっしゃられたわけでありますが、この増資をする世界経済的な、国際経済的な背景、こういうものはどのよう  にとらえられておるわけですか。
  254. 奥村輝之

    奥村政府委員 二つ申し上げることがあろうと思います。  一つは、IMF協定の第三条の二項によりまして、五年をこえない期間にIMFのクォータを見直す、検討するということで、前回から計算いたしまして一九七〇年はちょうど五年でございます。そういう時期に遭遇しておるということが一つ。  次に実質的な問題点でございますが、やはり世界経済の成長に見合って、IMFの引き出しワクを増額するということが必要である、これが第一でございます。  もう一つは、同じIMFの加盟国の中にありましても、各国それぞれ経済的な地位の変化というものがございます。それをクォータに反映させるようにしたいということが、その理由であります。
  255. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 わが国昭和四十一年、一九六六年にも、これはたしか三回目の増資、この場合におきましてもそれぞれ二億二千五百万ドル出しておるわけですね。そして今回はまた、日本の場合六五・五%というきわめて高率な増資を行なう。全体的にも三五%という増資をする。世界貿易の伸びがせいぜい七、八%ぐらいのところだ、こういうことで、そういう世界貿易の規模の拡大、伸び率、こういうようなものと見合っている、このように考えていいわけですか、それを具体的にひとつ。そういうことであるならばかくかくのごとく――特にSDR三十億の配分ということもことしの一月からやっている。これも国際貿易の健全な正しい姿での発展を裏づけていくための流動性不足に対応する措置であった、こういうことになっておるわけでありまして、それらを考えまして、今回またIMFだけで七十五億五千万ドルも増加をする、こういうことになるわけでありますが、それらを含めて、世界貿易の拡大基調というものに即応するものなんだ、しかもそれは正しく見合っているんだという証明が数字的になされますか。
  256. 奥村輝之

    奥村政府委員 こういう性質のものは厳密な数学のようにはまいりませんので、お答えも非常にむずかしいわけでございますが、まず第一に、五年前と比べまして世界貿易は、私どもの概算でございますが、四〇%程度伸びております。したがって、過去の伸びというものをIMFの条件つき引き出し権というものと照応させるためには、三五%程度というものが適当ではないかと考えるわけでございます。  次にSDRについてどうかというお話でございましたが、これは今後の伸びというものをどう考えるかという点と関係があると思いますが、世界貿易、おっしゃいましたように七%ぐらいずつ伸びているというところで計算いたしますと、いまの世界の準備は約七百億ドルある。これの計算からまいりますと四十五億から五十億ドルぐらいは一年間必要であろう。その中でドル、これはいままでのような増加を示すものとは私ども思わないのでございますけれども、これも若干の伸びがあろう、金も若干の伸びがあろう、こういうものを差し引きまして考えまして、三十億ドルあるいは三十五億ドルという程度のSDRの創出というものがいいのではないか。ただここで御注意願いたいのは、SDRは本来五年間ぐらいの間にわたって出すということで考えておったのであります。いま国際通貨制度はやや落ちついた状況を示しているわけでありますけれども、やはりこういうものは慎重でなければならぬということで、最初のことでもございますし、今回の場合は三十五億ドル、三十億、三十億というふうに、三年間だけをきめることにしたわけでございます。経済は生きものでございまして、なかなか数式をもって当てはめるわけにまいりません。やはり数字を扱う場合にも慎重な態度が必要であり、したがってSDRのそういう配慮が生まれてきたのもそこにあると考えます。
  257. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 私どもはグローバルな問題でなかなかとらえない面があるのですけれども、こういう形で、特にIMFの世界経済における役割り、こういうようなものから考えて、すでにSDRもここ数年の間に九十五億ドルも出されている。国際流動性不足に対処するためにそういうことが考えられている。しかもIMF及びIBRD、両方とも今回大幅な増資をする、こういうことになりますと、今日物価高、インフレーションという問題が世界的に問題化されておるわけであります。最近では国際インフレーションということばが流行しておるわけでありますが、そういうものにとって一体どういう意味をこれは持つであろうか。国際経済のグローバルなとらえ方の中で、生産に見合う通貨の供給量、マネーサプライというものがはたしてこれで適当なのかどうか。国際インフレーションを一そう助長するところにつながらないだろうかということを心配せざるを得ないわけなんですが、その辺のところについて、かくかくのごとく心配ないという判断、見通しがありましたら、それをここでお示しをいただきたいと思う。
  258. 奥村輝之

    奥村政府委員 御指摘の点はまことにごもっともでございまして、私どももそういう点を一番心配しているわけでございます。ただ、流動性をSDRによってふやします際に、IMF協定の中にもうたわれておりますが、一番留意しなければならないことは、世界経済をインフレにもデフレにもしないように、そういう配慮のもとにSDRの創出をきめなさい、また金額をきめなさいということを協定の中に書いてあるわけでございます。したがって、まさにいま御指摘の点についての問題意識というものはIMF加盟国全員が持っているわけでございまして、そこで、こういうような時代に流動性が過度にふえたらどうなるかという点はまことにおっしゃるとおりでございます。また流動性が過度に少ないときにはどうなるかということも考えてみなければならぬわけでございます。現に物価高あるいは国際収支の困難に直面いたしまして、経済の引き締めをやっている国が各地にあるわけでございます。主要国におきましてもイギリスがそうでございますし、あるいはフランスがそうでございます。ドイツもそういう状態、ちょっと複雑な事情でございますが、そういう事情にある。そういう国がもし過度の引き締めをやりましたならば、世界経済は縮小の方向に向かう。インフレは抑制しなければいかぬ、経済の節度は保たなければいけませんが、一方では過度の収縮が世界経済全体に悪影響を及ぼさないように流動性は適当に与えなければいかぬ、こういう考え方で、私どもはいまのSDRなりIMFの引き出し権の新しい姿が描き出されようとしている、こういうふうに考えます。
  259. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 国際金融局長の御答弁に必ずしも全面的な信頼をおくわけにもいかぬけれども、とにかくそういう問題意識をきちっと踏まえた上でこういうものが考えられている、こういうことで、その点はこれから先の経済の成り行きを見守っていきたいと思うわけでありますが、次の問題は、いままでこの法律の第五条で、出資は国債をもって一部行なうことができる、こういうことになっておったわけですが、これが今度は通貨代用証券というものを外為会計の負担において発行して、代用証券をもって出資に充てることになったわけであります。この通貨代用証券なるものと今日まで国債と書いておったものとどういうぐあいに違うのか、中身は一緒なのか、この点明らかにしてほしいと思います。
  260. 船後正道

    ○船後政府委員 通貨代用証券も国債の一種でございます。従来世銀に対する分もIMFに対する分も同じように出資国債、こういたしておりましたのを、今回の改正で世銀は従来どおり、IMFは通貨代用証券と改めたものでございます。これにつきましては、今回の改正によりまして内容が若干変わったわけでございます。この通貨代用証券が、IMFに対しまして円にかえて出すものだという点につきましては変わりはございません。ただ従来でございますと、これがIMFに円現金の支払いにかえて差し出したり、IMFから償還の請求がありますれば円貨で支払いまして、それで一回限りで終わったというのを、今回のIMFのこういった取引の特殊性にかんがみまして、IMFに保有する円があれば、再び通貨代用証券を再発行いたしまして円を取り戻す。つまり円と代用証券とが交換する、ぐるぐる回るというような構成にいたしたのでございます。その点が従来の出資国債でもいわゆる交付国債でも違いますので、相違点をはっきりするために通貨代用証券という名称に改めた次第でございます。
  261. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そこで、この通貨代用証券を日銀に買い取りを命ずることができる、こういうことになっているわけで、そういう形で円と通貨代用証券がぐるぐる回るということになるわけでありますが、この日銀に買い取らせるという場合は、どういう条件、どういう場合が想定されておるのですか。
  262. 船後正道

    ○船後政府委員 通貨代用証券の償還は外為会計の負担において行なうわけでございます。外為資金の現況によるわけでございますけれども、現状をもっていたしますれば、大体原則的には日銀買い取りということになろうかと思います。
  263. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 外為会計の状況がどういうときに日銀に買い取りを命ずるのか、このことを伺っているわけです。現況で買い取りするんだ、こういうことでは――問いに答えるような形で……。
  264. 船後正道

    ○船後政府委員 スーパー・ゴールドトランシュになる場合は、原則的に日銀に買い取らせるということで運用する予定でございます。
  265. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 次に、SDRの問題をちょっとお伺いいたしますが、先ほどから前の委員にもお答えになっておったわけでありますが、一月中に八千九百万ドルばかり、約十三カ国がこれをいわば配分を受けて使用をしたということになっているわけです。ほとんどがやはり使用国は後進国に片寄っております。これは差し向けを受けた受領国のほうは十一カ国で、比較的先進国が多い。こういうことになるわけですね。一カ月で八千九百万ドルということですが、こういう配分を受けて使用する状況というのは、一月に割り当てがあって、これは一カ月か二カ月の推移しかわからぬだろうと思いますが、大体このような推移をたどる――皆さんから資料をいただいた、こういうような推移をたどるというようにお考えですか。その辺のところの見通しをちょっとお聞きいたしたいと思います。
  266. 奥村輝之

    奥村政府委員 これは何ぶん本年の一月の数字でございます。正直申しましてこういうものは一カ月だけの実績を見るわけにまいりません。私どももいま一月以外の数字は持っていないわけでございます。やはり今後どういうように推移いたしますか、実績を見まして、どういう方向へ進むか、どういうふうにわれわれとしてはこの制度を育てていくかというふうなことを考えながら今後対処していかなければならない問題で、いま早急に一定の方向について結論を出すことはむずかしかろうと思います。しかし、発展途上国がかなりこういうふうにSDRを使っておるということについては、いろいろ議論があったわけでございますが、私どもとしてはこういうことは好ましい、どちらかといえばSDRはこういうふうに利用されて好ましい方向であるというふうに考えております。
  267. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そこでSDRがこういう状況で、私どもは、先進国間の流動性不足に対処する、特にアメリカがむしろ使うのではないかというような議論を、この法案がかかった際にそういう心配もしたわけでありますが、実際やってみると、その後の経済状況の変化というものもありましてこういう結果になっておる。そのことはたいへんけっこうなことだし、世界的に見て流動性不足開発途上国というようなところにあるのですから、こういうものが適切に利用されるということはたいへんけっこうだ。いまお話を聞きましても、将来を見通すにはまだあまりにも経験が浅いわけでありますが、しかしこういう形がずっとある程度続くという見通しはやはりあるのではないか。私は御説のように思うわけであります。  そうなりますと、このSDRが今度は非常に国によって、あるいは大きく分ければ南と北、先進国開発途上国、こういうようなところでこれが偏在をする、地域的に偏在をする、あるいは国に偏在をするというような妙な形が出てくるのではないかということを危惧を持つわけなんです。そういう点について、これは差し向けを受けた国が受領国になるわけでありますが、しかし受領国も、たくさんだまりますとこれをIMFにまた差し戻すというようなことにもなる。いろんなことが行なわれると思いますが、そういう地域的な偏在あるいは国別の偏在というような傾向というものがSDRの場合に出てくるのではないかというふうに考えられるわけでありますが、その辺のところはどういう見通しでございますか。
  268. 奥村輝之

    奥村政府委員 SDRの使い場所は、先ほども御質問でお答えしたと思いますが、国際収支不足のときでございます。国際収支に赤字が出て必要があるというときでございます。したがって、国際収支の赤字が継続する国においてSDRがほぼ無条件に、IMFの引き出し権などと比べましてはるかに無条件にこれが使われるということの結果、やはり国際収支上問題のある発展途上国の場合には、SDR勘定の残高が少なくなっていく、配分を受けた残高が少なくなっていくということは確かにあると思います。しかしいまのところは、同時に御審議をお願いいたしております世界銀行、これは先進国世界銀行からの融資は受けられないわけでございます。あるいは昨年御審議をお願いいたしました第二世界銀行、これも先進国は受けられないわけでございます。そういうことで、発展途上国というのはSDRの方法もございます、あるいは世界銀行の方法も、第二世界銀行の方法もあるということでございます。非常に多角的な方法で国際収支の問題が解決されるようになっております。そういうふうな状態にあろうかと思うわけでございます。  それから次に、SDRを向けられる国が、特定の国だけがSDRを差し向けられるということになるかならないか、そういう意味の偏在というものが起こるか起こらないかという御質問があったと思いますが、確かにそれは一つの問題点でございます。長期的に見て、一国の外貨準備とSDRとの比率、もっと具体的に申しますと、外貨準備分のSDRというものが大体各国同じようになるように、IMFのほうでいろいろと交通整理をいたしまして、できるだけそういう方法で交通整理をすることによって、偏在を防ぎたいという考え方でございます。
  269. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いま最後におっしゃったこと、こういうことが一番必要だろうと思います。そのことは奥村さんの考えじゃなくて、IMF自体で、理事会等で、このSDRの運用にあたって何らかの形で、その会議でそういうことが方針として確認されていることなのかどうか。それはいつどの会議のときにそういう方針というものがはっきりしておるかということを、おわかりになったらこの際明らかにしておいていただきたい。
  270. 奥村輝之

    奥村政府委員 原則は、IMF協定でSDRの創設に関して改正をいたしましたときに、協定の条文中に書き入れられたわけでございます。しかもその細目については、理事会のほうで決議をいたしたわけでございます。
  271. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 よくわかりました。  そこで、SDRの問題をめぐりまして、低開発国援助の問題とこのSDRの運用というものをリンクさせろという後進国からの要求が出ている。あるいはいまの段階でIMFに対する出資額と比例して案分配分、クォータがある。こういうことになっているわけですが、これは出資額とは切り離して、世界経済の動きの中でこの流動性不足を来たしておる国、そういうものに自動的にクォータが行なわれるというような方向に変わっていく可能性はあるのですか、ないのですか。
  272. 奥村輝之

    奥村政府委員 SDRと後進国との関係をリンクさせようという考え方は、一部の人たちから出された考え方であります。しかし、やはりこのSDRの運営というのは、いまのとおりがいい。現在のIMF協定、改正せられましたIMF協定のとおりでいいというのがいまの結論でございます。  それから次に、国際収支開発途上国において悪くなりました場合には、幾らでもSDRを供給するかどうかという問題でございますが、もしそういう御質問でありますならば、それこそ先ほど御指摘のあった国際的なインフレ問題、あるいは各国の経済運営の節度の問題と関連がありますので、やはりこれは総ワクをきめて、各国の経済規模に応じて割り当てをしていくという現在の制度が続けられていくのではないかと思います。
  273. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 しかし、それではやはり本来のSDRを出した目的というものが現実にそぐわない。力のあるところが今日IMFの出資はたくさんやっておるわけですね、そういう形になっている。後進開発途上国というところは力がないから、割り当ても非常に少ない。ところが、開発途上国に急速に力をつけていこうという立場からむしろこういうものが利用されていかなければならない。最近の国際経済全体がこれ以上大きく伸びていくためには、やはり開発途上国経済を発展させ、生産を高めていく、GNPをどんどん引き上げていく、経済の成長をはかっていくというために――今日開発途上国はみんな第一次産品を中心とした輸出というようなことで、輸出と輸入との関係においてそれが常に入超であり 海外からの援助というようなものも、債務額がどんどん超過して、身動きのとれないような状態にもなるということで、経済も発展しない。世界貿易に参加の量的な面でも、逆に後退をするようなことだって考えられる。そういうようなことから、これに対する適切な流動性を付与する。むろんそれはその国その国における自立的な経済発展への努力、そういうような節度というものはチェックをしなければならぬでしょう。とにかく金を貸すわけですからそういうことは必要であるけれども、その辺のところは、やはり割り当てにあたっても弾力的な運用というものがもっと機動的にとられる。そのほうがむしろ創設した目的にかなう面が非常に多いのではないかという考えが当然出てくるわけですね。だからいまのままの状態、これは誤りないかもしれぬけれども、形式的な公平というものには通ずるかもしれぬけれども、実際にSDRを創設して国際経済を非常に大きく発展をさせていこう、世界貿易を発展させていこうという立場からいうならば、やはり後進国が国際経済発展から取り残されてしまうことを救済していくことにはならないだろうと思うのです。それはIMFそのものの任務でないといってしまえばそうかもしれないけれども、SDR創設の目標というものが、国際流動性不足というものに対処するためのものであり、それは国際経済を発展させるところにあったんだ、世界貿易発展のためにというものであった以上、その辺の配慮もあって当然ではないか、こういう気もするのですが、いかがでしょう。
  274. 奥村輝之

    奥村政府委員 まさしくそういう議論が一部で行なわれたのでございます。IMF、SDRと発展途上国援助とのリンク、これをUNCTADで主張した国があるのであります。しかし結論としては反対ということで実現されなかった。これは、IMFというのは先ほどおっしゃいましたように、国際流動性というもの、その全体の問題をどう処理するかということを任務にしておるわけであります。発展途上国については、先ほど少し申し上げましたが、世界銀行というものがございます。これが今度お願いしておりますように、いままで二百三十二億ドルの資金を二百五十四億ドルに増資していただきたいということを申し上げているわけであります。またIDAというのがございます。去年御審議いただいたわけでございますが、一年間四億ドルずつ三年間十二億ドルを、もっぱら後進国のために資金を供給するという特別の箱をつくってあるわけであります。のみならず、後進国については保証融資の制度とか、第一次産品関係で特別ワク引き出しを認める。IMFにそういう考慮があるわけであります。したがって、まさしく御指摘のようにIMFというもの、あるいは広く申しましてIMFグループと申しますか、全体としては発展途上国に全く十分過ぎる――十分過ぎるというのは語弊かございますが、十二分の配慮が行なわれているというのが現実ではないかと思います。そういう意味では、御趣旨は十分取り入れられていると申して過言でないと思います。
  275. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 日本も今回の増資によって任命理事国という堂々たる地位を占めるわけでありますから、このIMFの世界経済に果たすべき役割りというものを、あまりにも固定的なブレトン・ウッズの原点にばかり固執しないで、かなり弾力的な運用がなされて、世界経済発展のために機動的に運営されるように大いにこれを主張してもらいたいと思うわけです。  ところで、今度の大幅増資、しかも規定によって二五%は金で出すわけですね。あとの七五%は現金または自国通貨。そのうち七四%は代用証券ということになるわけでしょうけれども、この金で出す分、これはこの前御質問いたしましたように四億六千九百万ドル、約四億七千万ドルくらいしか金のない日本で、日本円にすれば四百四十億円ですか、こういうものをどういうようにIMFに出されるわけですか。これは具体的にはどういう形になるのですか。たいへん愚問ですが……。
  276. 奥村輝之

    奥村政府委員 今回金で払い込まなければならないのは一億一千八百万ドル余でございます。過去、私ども最初加盟いたしましたとき、第一次増資と第二次増資、今度第三次でございます。過去の、たとえば一九六六年には五千六百二十五万ドル、金で払い込んだわけであります。これはニューヨークの連邦準備銀行から買って払い込んだわけであります。その前も六千二百五十万ドル。今回もアメリカから買いまして払い込むつもりでおります。
  277. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 今回もやはりアメリカ連邦銀行から買って払い込むということになりますか。現在の手持ちの金から出すということではないのですね。
  278. 奥村輝之

    奥村政府委員 お説のとおり、日本のいまの外貨準備の中に入っております金を使わないで、アメリカから買いまして、それによって払い込みを行なうというふうにきめております。
  279. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そうしますと、これはおそらくかなり困難な面があるのじゃないか。大体百八、九億ドルぐらいしかいまアメリカの金もないわけですね。今度のIMFの増資三五%平均ということでも、七五億のうち二五%といいますと、二十億ドル近くは金で払い込むという勘定になるわけですね。そういうものはアメリカ連銀に全部殺到するとはいえないかもしれませんけれどもドイツのごとく八%近く金で持っておるというようなところは別といたしましても、かなりの国がアメリカ連銀にIMFに対する金出資分として買いにいくというようなことになると、またもう一ぺんゴールドラッシュか起こる可能性――そう大げさにならないのかどうか、その辺のところをわれわれに安心のいくようにひとつ御説明をいただきたいと思います。
  280. 奥村輝之

    奥村政府委員 アメリカは、ドルをもって他の国の中央銀行あるいは中央通貨等――日本の場合は大蔵省でございますが――に、金を買いに来た場合には売らなければならないという義務があるわけでございます。現在では金の問題は、南アの新産金の問題も落ちつきましたし、二重金価格制度も所期以上の効果をあげて、そういう意味での金を含めての通貨制度は非常に安定いたしております。したがって、私どもあるいは他の国がアメリカにIMFに対する払い込み用の金を買いに参りましても、そういう混乱は起こらないように進むであろうというふうに思っております。
  281. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 非常に安定しているということで、だいじょうぶだということなんでございますが、大体今回の出資増資によって、アメリカ連銀の金がどれくらいその出資のために買い付けられ、減少するだろうか、こういう点のおおよその試算はありますか。
  282. 奥村輝之

    奥村政府委員 この大口の出資国には、みずから金を豊富に持っている国も御存じのように多いわけでございます。したがって、いまおっしゃいました金額についてはまだきまっていないわけでございます。
  283. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そこで、つい最近、日本でも長期金利等についてかなりの引き上げがあったわけであります。まあ、イギリス始まって以来というくらいのいわゆる超々高金利の公定歩合九%というようなところから、イギリスも〇・五%ですか、下げました。イギリスの場合にはそういうことで最近非常に経済の、特に国際収支が改善されてきて、多額の借金などを返すことができているということのようでありますが、イギリスがそういう状態で若干低金利――低金利とは言えないけれども、公定歩合を下げた。ところがその翌日、今度は西ドイツが一・五%も公定歩合引き上げをするという、こういうまさにすれ違いの欧州金融情勢というようなことがいろいろな書物に書かれておるわけでありますが、そういう中で、アメリカでもかなりの高金利が続いておるわけであります。市中銀行のプライムレートあたりがぼつぼつ下がるかというような傾向は見えてきたようでありますが、依然として高金利である。こういう状態というものが、特に午前中から議論がありましたように、アメリカがやはりインフレーションの段階にあるんじゃないか。物価もどんどん最近上がっているということなんです。しかし、そうかといって金融をぎゅっと締めていくということが、むしろ国内経済的、特に秋の中間選挙というものを中心にした政治的配慮によって、引き締め政策に転換をして、物価を押えるためにそういう制度もなかなかとれないというようなことで、このアメリカのインフレというものがやはり全世界にむしろ輸出をされている形ではないのか。アメリカの国際収支ども、かなり流動性ベースでの赤字というものは、この前堀委員等の質問で明らかになっておるわけでありますが、そういう状態からなかなか脱却できないということは、このドルに対する信認というものがきわめて今日流動的だし、不安要因、信頼が薄らいでいるということは言えるだろうと思います。いまのところなるほど一応の平静を保っているというか、小康を保っているというような国際金融情勢にあるけれども、もう一ぺんこのドルと金との関係においてゴールドラッシュが発生するというような素地というものはないのか。これでもう国際通貨体制というものは磐石になったのか、ここらの見通しというものについてどういうようにお考えになっておられるか、この際お聞きいたしたいと思うわけです。
  284. 奥村輝之

    奥村政府委員 このヨーロッパの公定歩合の問題から始まりましてアメリカに及び、ドル、金の問題をどう考えるかという御質問でございますが、イギリスの公定歩合が八%から七・五%に引き下げられましたのは、これは最近イギリスが、為替市場においてポンドが堅調である、ロンドンへ大幅の金の流入が続いているというところからして、公定歩合を下げましても現在の金融引き締め政策と矛盾しない、こういうような判断からでございます。  大臣も見えましたから答弁のほうは簡略にさしていただきますが、そういうことで、イギリスの問題あり、またドイツ、イタリアでは、大体この問題がございまして、公定歩合を引き上げたわけでございます。結局は、アメリカがこれから先、現にとっております財政政策、金融政策をどういうふうに持っていくのかというところが、一番の問題であろうかと思いますが、ニクソン政権になりましてから正攻法をとって、国際収支の改善というものを、国内の財政金融政策というものをもって改善していこうという政策が、努力がいま着々と続けられておる最中でございます。われわれとしては、この努力が効果を結ぶということを期待しているわけであります。
  285. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大臣がお見えになりましたので、大臣にひとつお伺いしておきたいと思います。  国際金融局長は、国際通貨体制というものは、いま一応小康状態、平静に戻っているということなんですが、アメリカ自身が、国際収支もまだまだ楽観を許さない状況だ。六九年の第三・四半期と第四・四半期を比べれば、若干好転はしているというような面はあるかもしれないが、インフレは依然として終息をしないし、高金利もかなり続いているというような状態で、ドルに対する信頼というようなものが、やはりかなり動揺しているのではないか、そういうものが底流にあるのではないかと思われるわけですね。そこで、そこらについての大臣の見通しも伺いたいわけですが、そこへもってきて国際通貨体制が、ゴールドラッシュを転期として、ポンドの切り下げあるいはマルクの切り上げというような、あるいはフランの切り下げというような、こういうきわめてドラマチックともいうべき混乱状態、こういうことで、もう一度ドルの信認というものが問われて、あのような状態、ゴールドラッシュのような状態を迎えるような事態というものは当分ないんだということ、大臣は、そのように見られておるか。  それで、いま論議をしておりますIMFに対する日本の出資も、今回一億一千八百万ドルばかりは金で出さなければならぬ、そういうことは、これは単に日本ばかりじゃないわけであります。金準備の少ないところでは、やはりアメリカが百十億足らずの金しかないというのに、連邦銀行が、各国政府ベースの要求がある場合にはこれに応じなければならぬというようなこともあって、IMFに増資をするための金をアメリカから引き出す、こういうことによってアメリカの金がかなり少なくなる。あるいは百億を割るというようなことになりますと、またそのゴールドラッシュのようなものが、金に対する投機というようなものが起きないかどうかというようなことをいま質問しておったわけでありますが、その二点について大蔵大臣の所信を伺っておきたいと思います。
  286. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 昨年の秋、私がワシントンに参った際、アメリカの財務長官と会いましてよく話し合ったのですが、IMFへ払い込むための金はアメリカ政府から買います、向こうは売ります、これは心配がない。  それからアメリカのドルの信認という問題ですが、これは、よその経済状態を言うのもいかがかと思いますが、ニクソン政権になってから特に格段の努力をしている、こういうふうに見ているのです。ジョンソン政権のときも、その末期には金融調整をしなければならぬというので、たしか一昨年は通貨の発行量を七%増に押える、こういうような政策をとっておりますが、それでは足らぬというので、去年は、ニクソン政権になってから二%増に押える、下半期になりますと、それでも足らぬというので、〇・七%の増加にとどめるという非常にきつい政策を打ち出しております。それの影響がかなり深刻に出てきている。それでGNPは第四・四半期に初めて三角になる。わが国は一一%というようなときに、アメリカでは三角のGNPだ、こういうような状態です。かなりアメリカの官民にこれはショックを与えているのではないかというふうに見ているのですが、専門家の見るところでは、ことしの一-三、第一・四半期、これもまた三角のGNP、こういうことになるであろうというふうに言われているような状態です。ただ、通貨を〇・七%増で押えるというのはいかがであろうというようなこともありまして、これを多少緩和しようというような意見も出ているようでありますが、とにかく非常な決意をもって国際収支並びに物価の騰貴、こういうものと取り組んでおりますので、私はドルの信認は維持し貫く、こういうふうに見ているわけであります。その他の各国はまあ一服というところでありまして、それぞれ努力している。その努力が実りまして、まずまず内外の政策、特に国際収支面において各国が改善を見つつある。特にイギリスはいい状況、顕著であります。その他の国におきましても、徐々ではありますけれども、いい方向に向かっている。当分国際通貨不安というものは起こらないような形勢にある、そういうような判断をいたしておるのであります。
  287. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 IMF関係で時間をとってしまって、経済協力をあと一時間くらいやるつもりでおったのですが、大臣の都合もあるようですから、大臣に、この経済協力関係で一、二伺っておきたいと思いますが、一つは、今度の改正によりまして、いままで物品の供与しかできなかったものを、今度は船舶あるいは建物等を供与することができることになった。そこで、これは、いろいろ病院だとかあるいはヘリポートであるとか、大体計画もあるようでありますが、日本国内で生産をする民間航空機のYS11のごときああいうようなものとか、あるいはヘリコプターとか、こういうような平和目的に使われる航空機ども――船舶はやっていいけれども飛行機はだめだという、これはどういうわけかわからぬわけであります。相手国が、そのことによって非常に経済開発なり何なりというようなものが進むのだというようなことになって、向こうがほしいと言うならば、それもやはり加えてもいいのではないか。ただ、私ども、これが武器として転用されるというようなおそれがある場合には、これはシビアにチェックしていかなければならぬと思いますが、その点はどうなのかという問題、これも入れてもいいじゃないかという問題と、それから、まとめて言ってしまいますから……。  もう一つの問題は、実際に通産省なり外務省なり、経済協力、技術協力をやっておる、実務に当たっておるところとして、予算の単年度主義ということで、援助予算が単年度の予算だということで非常にやりにくい面があるというので、こういう問題についての不便というものを解消する道を何らか、これは当然考えていい時期ではないのか。福田さんもアジア開銀の総会において、早い機会に一挙に倍増しましょうというようなことも約束されているし、愛知さんもやられておる。こういうような段階において、この予算の単年度主義からくるいろいろな不便、不都合というような問題を積極的に、前向きに改善をしていくということについて、やはりこれは海外との関係ですから、日本の予算制度の単年度主義というものを、何らかの形で特例を設けるなりなんなりして、そういうものに不便を感じさせないで、スムーズに経済協力の実があがるように、そういう点でのお考えはないかどうか。それの具体策を、あればお示しいただきたい。  それからもう一つの問題点は、これは各委員がひとしく主張した点でありますが、日本が学生あるいは技術研修員を海外から受け入れる、これがいかにも政府ベースの受け入れ人数が少ないし、また一人当たりに支出する研修に必要な、生活費を含めた研修費というようなものが、月家賃の補償まで入れて四万二千円くらいだ。これではやはり、せっかく国費を支出しながらよき感じを抱いて国に帰るということがなくて、かえって反日的な空気を、ものを持って帰るというようなことにもなりかねない。中途はんぱな金の出し方をしたがために、逆に日本に対する尊敬心というものを、愛着心というようなものを抱かないで、むしろ反感を持って帰るというようなことになったら、これは全くアブハチとらずで、これこそつまらぬ金の使い方だ。だからある程度、こういうものは国際的なものでもあるし、ことに後進国の新しい指導者を養成する、新しい技術者を養成する、こういうようなものでありますから、もっとこれについてはかなり大幅な値上げの必要があるのではないか。こういうような三つの問題点だけ、大臣にお伺いしたいと思います。
  288. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 政令できめるその範囲に、ヘリコプターだとか航空機とか、そういうものはどうだというようなお話でございますが、これは相手国から強い要望でもありますれば考えなきゃならぬかと思いますが、今日の段階ではそういう要請がまだないわけなんです。そこでドロップだ、こういうことになっておりますが、まあ今後の状況に応じて考えるということにいたしたいと思います。  なお、対外経済協力、これは単年度主義で効率が悪いじゃないかというお話でございますが、まさにそのように思います。しかし、なかなかこれは、いまの日本の財政会計の制度、また国会と政府との関係、そういうことから考えまして、かちっとした意味の長期予算というようなことにはまいらないと思いますが、運用上なるべく見当をつけて、国会に対する審議違反というふうにもならないように、そういうところにも配意しながら見当をつけて、長期展望に立ってひとつ実施してまいりたい、そういうふうに思います。  なお経済協力を与えるにあたりまして、いろいろ日本援助をするが、その援助にあたって相手国に反感を与えるというようなことがあってはならない。留学生、技術研修生日本にやってくる。やってくる人についてももちろんでありまするけれども経済協力全体といたしまして、あるいは日本経済侵略を始めたんだというような印象になっても相ならぬし、日本は親切な国だ、善意を持ってやってくれるという印象を強くして、日本はどこまでも平和な国だ、親切な国だという印象を持っていただくように、今後とも特段の配意をいたすつもりであります。
  289. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 終わります。
  290. 毛利松平

    毛利委員長 堀昌雄君。
  291. 堀昌雄

    ○堀委員 最初にIMF関係の問題について一つだけ伺っておきたいのですが、いまずっと昨日から論議がありまして、IMF体制というものはSDRの創設によって、これまでのいろいろな問題については一つの前進をしたということになると思いますけれども、しかし、この際、金の問題ですね、金の問題というのは一体今後どういうふうになるのか。それに対して、日本は御承知のように金保有高というものがきわめて少ない国でありますが、ようやく多少外貨の手持ちが余裕もできておる今日、この間もちょっと国際金融局長と論議をしたわけでありますが、理論的にいけばSDRというものが非常に拡大をしてくると、まあまあ金の問題というのはあんまり比重がなくなるという理論的な背景もあるかもしれませんけれども、そのときにやはり国際金融局長は、まあ金とドルとSDR共存だというような答弁をしておるところから見まして、そうなれば、やはり金という問題についての日本としての考え方というものがあっていいのではないか、こう思いますが、それについて今後の日本の手持ち保有金といいますかに対して、これをふやしていこうというお考えがあるのか。資金の余裕はあるわけですから。その点について最初に伺っておきたいと思います。
  292. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 金につきましては、どうも世界的に配分が不均衡である、わが国としてはこの不均衡を是正すべきであるという主張をしておるのです。わが国自体といたしましても、まだまだ四億ドルという程度の金しか保有をいたしておりません。わが国自身としても非常に経済力に比べまして過少であるというふうに考えております。ただ、金は、わが国のごとく外貨保有高がきわめて多い、金購入能力を持っておる、そういう国が買い出動に出ますと、かなり金をめぐっていろいろな問題を起こしますので、そういう悪影響があるような金の買い方はいたすべきじゃないというふうに考えておりますが、まあ自然な方法で、また当たりさわりのない形で、今後逐次金の保有量をふやしていくという考え方をとりたいと思います。
  293. 堀昌雄

    ○堀委員 すでにこの間、南アとの間にIMFは金協定といいますか、そういう協定を結んで、雑誌の伝えるところによると、最近南アは二億ドル余りの金をIMFに売ったようでありますが、こういうときに、すでにもうIMF等に来ておる金であるならば、これはもういまおっしゃるような金価格に関係がないわけですから、当然、もしその他の国がそれを特に必要とするというときに割り込むこともどうかと思いますが、いま、御承知のように、欧州諸国というものは日本と比べれば格段に金を持っている国でありますから、多少そういうような余裕のある金が出てきたら、これはやはりいまおっしゃる話からすれば、その他に悪影響を与えない範囲では金の保有高はふやしていくということになるということになれば、そういうものの出たときには購入をするということになるというふうに理解をしていいわけですね。
  294. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いまのIMFの話は別といたしまして、いまお話があったすぐに買いにかかるという話はこれは別といたしまして、自然な機会がありますればひとつ買いに出よう、こういうふうに考えております。
  295. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと局長に伺いますが、いま、今度の金協定によって、要するに南アの外貨不足について必要であるときはIMFは金をそれだけ買い上げるということになったわけですね。そうすると、それをIMFが買い上げてIMFが持っているというのは私はおかしいと思うのです。これは当然どこかの通貨当局にそれを配るということになるのじゃないですか、あの協定の背後にあるものは……。IMFというのは本来そういうものの金を買い上げて、ずっと自分のところで抱いて持っているというのではなくて、それは南アとの関係でIMFが処理をするだけであって、それは結局どこかの通貨当局に当然交換するということが前提だと、あの金協定を私は理解しておるのですが、その点はどうですか。
  296. 奥村輝之

    奥村政府委員 南アフリカがその新産金を処分いたしますときの条件等については、もう御存じのとおりでございますから御説明申し上げません。  次に、IMFが南アフリカから買うのかあるいはヨーロッパその他の中央銀行が買うのかということについて議論があったことも御存じであろうかと思います。日本は、各中央銀行が南アから買うのではなくて、IMFが南アから買ってくれるようにという主張をして、それが通ったのでございます。そこで、IMFに集まるその金をどういうふうに配分するかということについては、わが国もいろいろと意見があるのでございますが、それはいまIMFで検討中でございます。いままでIMFで持っております金というものは相当ございますが、これは各国の通貨、円が必要な場合あるいはマルクが必要な場合、フランが必要な場合、それぞれ一定の法則をもってその国の通貨をIMFが入手いたしますとぎに、一部金で買ったというような実績がございます。今後の問題については検討中でございます。
  297. 堀昌雄

    ○堀委員 わかりました。IMFに金だけをとめてみたところで、別にIMFというものは本来金をためるための機関でもありませんから、一種のプールでありますから、当然それは通貨当局にある時期には分配をするのが正常な姿であろう。ただ、いまお話しのように、やはり処置はIMFで一括してやるということのほうがいろいろな点で合理的な処置をされるというふうには私も理解をしていますから、やがてはおそらくだんだんふえてくるでしょう。南アの国際収支にも関係がありますが、南アとしては当然最も有力な輸出品でしょうね。そういうことからすれば当然そういうことも起きると思うので、適切な処置によって、特に日本は欧州諸国に比べれば異常に金保有が低いわけでありますから、その点についてはひとつ瑕疵のない処理をIMFでやれるように、これは大臣含めて政府として配慮をしておいていただきたい、こう思います。  以上でIMFの関係を終わりまして、海外経済援助の問題であります。海外経済援助の問題は、私は何回か本会議でも議論をして、幸いにして日本経済力も大きくなったためにかなり比重がふえてまいりまして、一九六八年はようやくGNPに対して〇・八三%ですか、かなりの比重になってくるようになりましてたいへんけっこうなんですが、どうもその中身を見ますと、特に民間ベースのほうの輸出信用のようなものの伸び率は、一九六三年と八年を比べても五倍くらいに伸びておる。ところが実際には、たとえば贈与であるとかあるいは直接借款とか、そういう式のもののほうの伸び率というものはこれに比べるとずっと低い、こういうことになっているわけですね。私はきょうは外務大臣にお越しいただいて、特に東南アジア日本経済関係の問題について触れたのですけれども、いま日本がもう少し考えておかなければならないのは、同じするのならば少し長期的なプログラムに立って、東南アジアの諸国が長期的に役に立つという形の援助をすることが非常に重要ではないのか。もちろん輸出延べ払い等によってそれらの国に輸出を促進することは悪いことではありませんけれども、しかしそれはどちらかといえば、向こうの国から見ると日本がもうけるための手段にしているのじゃないかという理解をされるのであって、援助という総括的な名前の中に入っておるけれども、私はやはり前段のほうの贈与なり直接借款なり技術協力なりというものがほんとうの援助じゃないのか、こういうような感じがするのですが、大臣のその点についての御見解を承りたい。
  298. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私もそう思います。後進国というか開発途上国に対しまして経済協力をするが、特にアジアに重点を置いておるわけです。アジアの中でも東南アジアに特に重点を置いておる、こういうのですが、その与える援助が生きてこなければならぬ、これは大切なことじゃないか。そこで、援助を受ける国々に対しましては、まず自力建設ということをお願いいたしておるわけであります。東南アジアの中でいまわが国が一番多額の援助をいたしておりますのはインドネシアでございますが、これも長期の見通しに立った経済プランというものがあるわけであります。インドネシア経済建設計画、この計画の線に沿ってわが国も応分の協力をするというようなかまえをとっておるわけであります。その他の国々につきましては、韓国は日韓協定によりまして長期的な計画的協力をしておりますが、韓国以外の国々にはさほど多額の援助もしておるわけではございませんので、長期プランにのっとってというようなことはございませんけれども、なるべく受け入れ側において援助資金を活用して、ああ、日本の協力があったからこうなったのだというふうに思っていただきたい、こういうふうに考えております。同時に、二国間の経済協力ということもさることながら、国際機構を通じての協力、これが大事だというふうに考えておるわけです。特に東南アジアにつきましてはアジア開発銀行が創設された、これは画期的なことだと思いますが、このアジア開発銀行に活発に動いていただいて、そしてこの銀行が援助対象の国々に精細な調査を行ない、そしてアジア開発銀行の必要と認めた援助アジア開発銀行を通じて行なう、これが一番摩擦がない行き方ではあるまいかというふうに考えて、アジア開発銀行に対しましてはわが国としても積極的な協力をしてみたい、こういうふうに考えております。
  299. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、いま東南アジアの問題で一つ問題がありますのは、そういう言い方は社会党だからという形で受けとめていただかないで聞いてもらいたいのは、今日アジアというのは、要するに資本主義圏だけのアジアではなくて、かなり社会主義圏もあるわけです。私はいまいろいろな政治的な問題があろうと思いますけれども、長期的に見ますと、アジアにおける社会主義圏を疎外した形でアジアの健全な発展ということはどうしても考えられないのじゃないか。早い話が、いま中国貿易問題についても、自民党のほうでは松村さん、藤山さん、皆さんお出かけになっていろいろ努力をしておられる。私はこの間の日米協定などから見て、最近の新聞を見ると、これは逆に東南アジアのほうにまではね返って、日本が自分のそういう権益というか、生命線的なことを言い出したときにはあとに問題があるなどということを、東南アジアのいろいろな人が述べておるということを新聞で見ておるわけです。そういう別の理解の問題もあろうけれども経済的な問題というのは、もう少しそういう問題を越えて考えていく必要があるのじゃないだろうか。どうも日本のいろいろな海外援助なりそれらを見ておりますと、そこには非常に画然たる壁があると思うのです。そういう意味で、日本経済というものが単に資本主義圏だけの貿易その他で今後ともいけるかというと、やはり世界のかなり広い範囲にわたっておる社会主義圏を無視してこの問題の解決はあり得ない、私はこう思います。これはこまかい個別の問題というよりも、今後の日本海外援助という問題の中で、もう少し社会主義圏の問題というものに比重を置いて考えていく、これが長期的展望に立つところの日本経済のプログラムの非常に重要な一環じゃないか、私はこう考えますが、大臣はそれについていかがでしょう。
  300. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 理論的にはまさにそうだと思いますが、現実の問題としますと、やはり日本との国交という問題があるだろうと思うんです。しかし、共産圏だから日本経済上のおつき合いをいたしませんという姿勢はとっておりません。現に、ソビエトロシア、これなんかはシベリア開発日本にぜひお願いしたい、日本もこれを前向きでひとつ御相談に応じましょうということまで進んでおるわけなんです。つまり、アジアの国々でまだ国交の開かれておらない国がある。しかも、その国々の中には、国際的なマナーというか、そういう問題で、法律上の国交再開前のおつき合いもなかなかむずかしいところもあるわけなんです。そういうようなことでありますが、前提さえ整い、そして法律上の国交回復、そういうことができればもちろんでありますが、事実上の国交調整ができる、こういうようなことになれば、何も社会主義国、共産主義国だからおつき合いはいたしませんという姿勢をとることは毛頭ありません、さように考えております。
  301. 堀昌雄

    ○堀委員 お約束の時間でありますからあと一問だけで終わりますけれども、きょうも外務大臣にも申し上げたんですけれども、いま、日本のいろいろな対外的な力が強くなってきましたから、ややもすると、東南アジアのような開発途上国に対しては、誤解を受ける可能性が非常に間々ある条件が一つあるわけですね。逆に今度は先進国との側には、これは大蔵大臣に直接関係ありませんけれども、今回の繊維協定の問題に見るように、どうも私どもは、アメリカ側のほうが無理をしておるという感じがしてならないような事態も今度は起きておる。いま日本は、そういう海外諸国との経済関係においては、非常にいろいろな角度から微妙な立場に立たされつつある段階だと思うのですね。その場合に、私はやはり、いまちょっと申し上げたように、それらを含めて、しかしいずれも、どうも日本人というのはこれまで貧しかったせいか、目先の問題についての事の判断の比重が高過ぎて、長期的な見通しに欠ける部分が多かったのではないかというふうな感じがいたします。だから、それらについて、対米の問題についても、譲るべきことは多少は譲ってもいいけれども、筋を曲げるようなことをすれば、このことは次々にはね返って、日本のいろいろな諸関係にはね返るわけですから、きょうも愛知外務大臣に申し上げたのですけれども、まあわれわれで考えることはあろうとも、筋は曲げないようにしてもらいたい、こういう話を申し上げたのですが、このことは私はやはり、いまの国際金融なりその他諸般の海外との関係において、われわれとして主張すべきことは主張をして、それが単に短期的な相互間に多少気まずいものが残ろうとも、結果としては、長期的にそれがほんとうのイコール・パートナーシップになるというようなかまえをもって、海外諸国との経済関係を保持していくということであるべきだ、こう私は考えるのです。まあたいへん抽象論ですから御反対もないかもしれませんけれども、やはり日本の国益を守りながら、しかし、長期的展望に立って筋を立てるということが私は非常に重要だと思いますので、その点についての御見解だけを承って終わります。
  302. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 お話しのとおりに考えます。富んでおごらずということがありますから、そういう気持ちで、先進国に対しましても、また、後進国に対しましても接していく。そうして日本が国際的に、後進国からも先進国からも、つまはじきだとか国際的孤児になるということが万あっては相ならぬことだと考えますから、ひとつ御協力をお願いいたします。
  303. 毛利松平

    毛利委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。  次回は、明二十五日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十五分散会