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1970-05-09 第63回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年五月九日(土曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 鬼木 勝利君    理事 大坪 保雄君 理事 田中 六助君    理事 岡田 利春君 理事 相沢 武彦君    理事 伊藤卯四郎君       進藤 一馬君    山崎平八郎君       井野 正揮君    松本 七郎君       八木  昇君    田畑 金光君       田代 文久君  出席国務大臣         通商産業大臣  宮澤 喜一君         労 働 大 臣 野原 正勝君  出席政府委員         通商産業省鉱山         石炭局長    本田 早苗君         通商産業省鉱山         保安局長    橋本 徳男君         通商産業省公益         事業局長    馬場 一也君         工業技術院長  朝永 良夫君         労働省職業安定         局長      住  榮作君         労働省職業安定         局失業対策部長 遠藤 政夫君  委員外出席者         通商産業省重工         業局次長    山形 栄治君         通商産業省鉱山         石炭局石炭部産         炭地域振興課長 真野  温君     ――――――――――――― 五月七日  炭鉱閉山による留萠鉄道株式会社の休業に対す  る補償に関する請願(福井勇君紹介)(第七四八  五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月二十日  石炭産業安定等に関する陳情書  (第一五〇号) 五月四日  産炭地域振興に関する陳情書  (第三二八  号)  石炭産業安定等に関する陳情書  (第三二九号) 同月七日  石炭対策に関する陳情書  (第三七七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  石炭対策に関する件  石炭鉱業政策に関する件      ――――◇―――――
  2. 鬼木勝利

    鬼木委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。田中六助君。
  3. 田中六助

    田中(六)委員 大臣に一、二お尋ねしたいと思いますが、御承知のように石炭問題は、大きなカンフル注射をしつつ手術しなければならないというようなきわめて特殊な事情にございまして、ほんとうは、わが国エネルギー資源の中の石炭位置づけ、あるいはこれをどのような体制で、どういうふうにもっていくかということをお聞きしなければあまり意味がないような気がするわけです。しかし、石炭鉱業審議会でいまちょうど体制問題を研究しているさなかでございますので、この問題は差し控えまして、当面の問題を二点だけお聞きしたいと思います。  一つは、四千万トンを四十五年度確保するということで出炭量をきめているわけでございますが、これにつきましての労務者確保に御自信があるのか。しかも、これとうらはらになるわけでございますが、四千万トンの出炭量ほんとうに維持できるのか。と申しますのは、四十四年度を見ましても、予想以上に炭鉱閉山になっておりますし、その量が八百四十四万トンもあるというような情勢でございますので、四十五年度一応四千万トンといっても、現状の諸対策の不備を考えますと、はたしてそれが確保できるだろうかという疑問を持つのであります。したがって、そういう関係上、四千万トンの維持、それからそのうらはらとなる労務者確保というような点でお聞きしたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは後ほどまたいろいろお尋ねもあろうかと思いますので、ちょうど田中委員冒頭に言われました部分につきまして感じておることを申し述べさしていただきたいと思います。  戦争中、私ども物動計画ということで、石炭生産目標五千万トンというものを掲げまして、以来不幸にして敗戦になり、戦後の復興になったわけですが、その間石炭産業わが国産業先達エネルギー供給者として尽くしてこられた役割りというものは非常に大きなものであって、私どもは、それに対しては常に敬意と感謝を表するにやぶさかでないわけでございます。しかし、時の流れとともにエネルギー革命というようなものが起こってまいりました。かつて四十万を数えた労務者も、今日おそらく六万台ということになってまいっておるわけでございます。そのような戦後のある時期からの石炭産業の斜陽化に対して、私どもが伝統的に考えてまいりましたことは、経済法則というものはやはり基本ではありますけれども、何ぶんにも当時のわが国は、今日のような労働状況ではなく、むしろ労働供給が過剰の状態であった、したがって、炭鉱労務者の問題というものは相当深刻な問題でありましたし、また、長年地域社会がいわゆる山を中心に形成されておるということもございました。したがって、政府といたしましては、大きな時の流れを踏まえながら、しかし、こういう特殊な事情でありますがゆえに、ゆるやかな撤退と申しますか、そういうことを続けて、いわゆる今回の第四次対策にまで至ったと思うのであります。  そこで、さしずめいま御指摘の四千万トンの問題でございますが、私どもは、最近石炭企業からいろいろなヒヤリングを行ないまして、またそれを審議会に御相談をいたしまして、その議を経て、四十五年度の実施計画における出炭量として見積もったものであります。もちろん、この見積もりが計画どおり達成されるかどうかということは、これからの問題でありますけれども、私どもといたしましては、労使双方が一そうの努力をしてもらうこと、また関係者協力というものも必要であろうと思います。そうしていまの段階でまずまず期待できる、かような労務なり経理なりの諸条件前提として算定をいたしたものであります。したがって、この出炭目標四千万トンというものは、冒頭に申しましたような長い経緯の中ではじき出されている数字でございますので、やはりそういう目標そのもの田中委員が御懸念なさるような一つ前提の上に立っているということは認めざるを得ませんけれども、私どもは、非常に無理な前提を設けてこういう目標を決定したわけではございませんで、各方面の協力があればまずまず達成できる目標考えまして決定をいたしたものであります。
  5. 田中六助

    田中(六)委員 いま大臣より大体目標どおりいく公算をお話しいただいたわけでありますが、わが国炭鉱労務者平均年齢などを見ましても、四十二歳以上になっておりますし、非常に老齢化しております。それから労働条件そのもの考えましても、世界各国を見ましても、ドイツは日本とちょっと似ておるのですが、自然条件も非常にいいし、日本と雲泥の差で、地下三千数百尺下で働くということ自体普通の労働者とはずいぶん違った条件のもとにおるわけであります。しかも、そこに至上命令みたいなトン数があり、これをやらなければ労務者に対する不安を強めるだけで、これを何とか予定どおりやらなければならぬというところにまた無理があるわけでございますが、労働条件改善をしない限りどうにもできない面があるのではないか。今度炭労などは二二%のアップを獲得しておるわけです。これは一般産業よりもちょっと低いけれども、結局そういう労務者そのものがあまりに無理をすると自分たち基盤を失うという、労使双方が非常にそういう危機感を持っておるということが一つの原因でもあろうと思われますが、いずれにしても、たとえば大手十二社を見ましても、四十四年度でトン当たり二百二十八円の赤字、それから政府の試算を見ますと、四十五年度でも二百二十一円というような赤字が予定されておる中で、このままではいろいろな諸条件を整備あるいは改善するということは不可能だと思うのです。原料炭は五百円値上げをしておりますが、一般炭につきましても値上げをせざるを得ない状態がもう数年前から来ておりますが、これをすると、いろいろ受け入れ側の問題もありますし、過去の歴史、そういうようなものがあって、非常にデリケートな面もございますが、いずれにしても一般炭値上げについて手をつけなくちゃならぬ段階になってきておる。この点につきまして大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 したがって、石炭産業につきましては、政府としては、国会の御同意を得て、できる限りのことをしてまいったつもりでありますし、また今度の第四次の方策についても、私ども最善を尽くしておると思います。その中には労働条件改善、何といっても労働条件改善と保守というのが大切でございますから、そういうことにつきましても全力をあげてまいったと思います。先ほどお話しの、今回の炭労の賃金の春闘の問題でありますけれども、私もそのお話を主管の立場から承っておったわけですが、確かに労使双方とも、自分たちのつとめておる産業そのもの基盤危機というものを非常に強く意識しておられて、いわば炭労の要求の立場というのは、そういう意味で非常に私ども気の毒だといいますか、心を打たれるものがいろいろな意味であったわけであります。妥結の金額にしても、他の産業と比べて、おそらく決して労働側の満足するような水準ではなかった。しかしそうかといって、ストライキができるような体制ではない。こういうことで労使双方に共通の一種の危機感があるということは、私も田中委員の言われたように感じておるわけでございます。それでありますから、この問題、石炭産業を少し長い目でどういうふうに考えるかということは、体制委員会のようなもので関係者から研究をしてもらうことが必要で、そうせざるを得ないと考えまして、先般来体制委員会を何度か開いて御検討をお願いしておるわけであります。そういたしますと、先々の体制の問題はそれといたしまして、いま田中委員の言われましたようなトン当たり赤字というものは、どうしても数字として出てまいります。しかも今後賃上げが将来に向かってないかといえば、そういうことは考えにくいわけでありますから、こういう数字を検討してまいりますと、いま御指摘のような一般炭の問題をどうするかということがどうしても出てござるを得ない。私ども一般的には、国の経済政策はできる限り経済法則にのっとってやっていくべきものだと考えておるのでありますけれども、いま現実一般炭というような問題になりますと、なかなか経済法則だけを貫いていくわけにまいらない。行く行くはこういう不自然な状態というものは解消してまいりたいとこいねがっているのでありますけれども、なかなかそうばかりもまいらない、現在の段階では。そこで関係者の理解と協力を得ることが必要であるというふうに、私としては考えておるわけでございます。
  7. 田中六助

    田中(六)委員 以上、二問で私の質問は終わりますが、いずれにしても、経済合理性という面あるいは自由企業という面から考えると、全く矛盾した諸要素をこの石炭産業はかかえておるわけでございますが、ただ、企業社会性ということを強調するならば、おのずから問題の回答は出てくると思いますので、その点大臣も十分御認識なさっておるようでございますが、お考えくださって善処なさることを希望して、私の質問を終わらしていただきます。
  8. 鬼木勝利

  9. 大坪保雄

    大坪委員 宮澤通産大臣初めてお見えでございますから、一問だけお尋ねをいたしておきたいと思います。  それは、石炭産業に必然伴う、と申しましても北海道等はわりあい少ないようでございますが、九州の諸山には必ず伴っておる鉱害の問題、これの復旧対策に対する大臣のお考えを伺っておきたいと思います。  鉱害は、もう申すまでもなく、炭を掘れば起こってくる状態でございますが、九州の山々は、山とは申しますけれども水田の下部を掘っているものが少なくございませんで、その結果直ちに鉱害が起こって水田が陥没する、農家が傾く、こういう状況がきわめて多いわけでございます。何も石炭産業に関して責任もなければ関係もないような第三者である農民被害をこうむって、その惨苦に泣いておるというのが現状でございます。  たとえて申しますと、佐賀県の、これは昨年閉山をいたしましたが杵島炭鉱というのがございます。これは整理中で、まだ無資力にはなっておりませんが、やがて無資力になるだろうと考えられる炭鉱でございます。その被害水田面積は約六百五十町歩、昨年度において鉱害復旧として水田陥没状態を直したのが約二十町歩、この調子でまいりますと、一村の鉱害復旧水田復旧だけについても三十年以上を要する、こういう計算になるわけでございます。何も責任も罪もない農家が、石炭産業のためにこうむった被害のために三十年も泣かねばならぬということは、これはむざんではないかという感じが強くいたすわけでございます。  石炭は、申すまでもなく炭鉱業者が掘るわけでございますけれども、その掘るについては政府認可があっているわけでございますから、政府認可がなければ掘らない、石炭鉱業者だけの責任ではない、これはどうしても半分の責任政府が負担すべきものである、私は本来そういうものであると思うのでございます。いま例を申しました杵島炭鉱の江北町の水田被害、人家も数百戸ございますが、その復旧状態が三十年もそれ以上の年所もかけなければ完全にできないということではあまりにひどいではないか。でございますから、鉱害復旧についてはすみやかにこれを実施する、特に閉山炭鉱のような場合におきましては、産炭地域振興も大事でございますけれども鉱害現実に泣いている者を、救い出すということにはよほど力を尽くしていただかなければならぬことでないかと思うのでございますが、この点について、大臣はどういうようなお考えでございますか。すみやかに鉱害復旧すべきものである、それだけの措置予算上にもとっていただかなければならぬと思うわけでございますが、その点についてのお考えをお伺いいたしたい。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 石炭産業が殷盛でありましたころには、ただいま言われましたような鉱害についても十分手当てをする力があったわけでございますけれども、今日になりますと、なかなかそれが十分にいかない、十分な資力を持っていないということは考えられる。ことに閉山となりますとさようでございます。  そこで、鉱業権者閉山後も三年間は鉱害復旧について義務があるということは御承知のとおりのことで、いま杵島炭鉱の場合にも、無資力ではないということと思いますが、その後は、したがって鉱害事業団ということになるのであろうと思いますが、御指摘のケースの場合、なおいろいろ役所としても考えておることもあるようでございますから、その点政府委員のほうから申し上げますことをお許しいただきたいと思います。
  11. 本田早苗

    本田政府委員 御指摘杵島の場合は、特別閉山制度でございますので、杵島として三年間鉱害復旧責任を負いまして、その後は鉱害復旧事業団復旧をするということに相なっておる次第でございますが、六百数十町歩の中で二十町歩しかなかった計算からまいりますと、三十年かかるということで、もっと早くやるべきではないかという御指摘であろうと思います。  ことしの鉱害復旧事業規模は百二十五億ということで、四十四年度に対しまして一四%の増を考えております。しかしながら、これでいきましても、四十一年の答申で四十六年度までに安定鉱害処理を完了するということになっておりましたが、これは実現困難であろうと思いますので、これに対して、現在といたしましては、長期見通しを立てるべきだということで、残存鉱害量の正確な把握をまずやりまして、それによって長期的、総合的に鉱害復旧計画を立てよう、しかしながら、それも御指摘のように、長年月にわたって鉱害を残すということではまずい、できるだけ短期間にこれを実施するような長期復旧計画を策定いたして、鉱害に悩む方々の問題を解決したいということで、現在鉱害復旧基本調査を実施しておりまして、残存鉱害量を正確に把握して、これを長期的な計画として処理を行なうということを考えておる次第でございます。御指摘のように、そうそう長くはかけずに解決いたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  12. 大坪保雄

    大坪委員 大体だんだんと通産省でも鉱害復旧のことについて熱意を持ってやっておいでになるようでございますから、その点はけっこうでございますが、どうかひとつ行政が血の通った行政になるように、政府措置ば冷たいものであるというような感じを国民に持たせないように、あたたかい温情をもって御処理を願いたい。先ほどもたびたび申しましたように、何も責任も罪もない、完全に第三者である農民が、その地下石炭を掘られたがためこうむった被害である、水田は陥没する、家は傾く、そういう惨状が三十年も続くということでは、これは政治も行政もないということになるわけでございますから、どうかひとつ一段と温情をもってすみやかに鉱害復旧ができるように、この上ともの御努力をお願い申し上げます。  終わります。
  13. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 閉山というようなことになりますと、長い間の歴史の一ページを閉じるわけでございますから、これが動いております間は、鉱害復旧は当然鉱業権者義務であり、その義務は確かに三年間は残ります。しかし、これで歴史の一ページを閉じるということになりますと、そのあと始末については、やはり従来と違った形で、国が事業団等を通じてしなければならないことはどうしてもあるのではないかというふうに考えておりますので、御質問の御趣旨のような線に沿いまして行政をやってまいりたいと思います。
  14. 鬼木勝利

  15. 岡田利春

    岡田委員 先般の当委員会大臣に、当面の石炭政策課題についていろいろ御質問をいたしたわけです。私はその答弁を聞いておりまして、実はいたく失望を感じたわけです。しかし、その時点で議論しても議論の前進というものがないのではないか、こういう感じを前委員会では持ちました。  そこで本日は、まず今日の石炭鉱業に対する大臣認識についてお伺いいたしたいのでありますが、いま田中委員に対して、今日までの石炭政策のあり方は、撤退では、きわめてゆるやかな撤退をしてきた、こう述べられておるわけです。しかし昭和三十七年の石炭政策転換以来今日まで四千万トンの山が閉山されているわけです。また第四次政策の初年度では八百四十四万トンという、あの政策当時よりも三百万トン程度上回る閉山が行なわれておるわけです。また今年度予算では、昭和四十五年度三百万トンの閉山、私の推計では、このまま推移いたしますと五百万トンの閉山になるだろう、実はこういう見解を持っているわけです。五千万トン程度炭鉱規模でこれだけの撤退が行なわれるということは、撤退が非常に鋭角的である。もちろんそれはわが国経済事情のいろいろ影響するところもあると思います。ただ、最近雇用事情が変化をして、雇用政策の面では、従来と違った形で、ある程度転換がスムーズにできたということは言えると思うのでありますけれども、少なくとも撤退の面でゆるやかであったという認識は私はいかがかと思うわけです。わ国がの経済の発展も目ざましいけれども石炭産業撤退も急であったという認識のほうがまことに当を得ているのではないか。そういう視点に立ってこれからの石炭政策考えるほうがきわめて妥当ではなかろうか、私はこういう判断を持っておるわけです。  私ば、そういう点について大臣見解をお聞きいたしたいと同時に、今日わが国石炭鉱業位置づけをどのように考えているか、これは単に出炭規模だけの問題ではありません、わが国石炭鉱業そのものが一体今日のわが国経済社会の中でどういう位置を占めつつあるのかという点について、まずわれわれは認識を統一しなければならないと思うわけです。そして、そういう判断の中から、わが国石炭鉱業の当面の課題は一体何であるか、こういう方向でこれからの政策というものをきめてまいらなければならないのではないかと思うのです。そういう意味で、わが国石炭鉱業位置づけ実態認識について、この機会に大臣から明確な答弁をいただきたいと思います。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどゆるやかな撤退云々ということを申し上げましたのは、この一、二年のことを申し上げたのではなくて、過去十数年における国の石炭政策について申し上げたわけでございます。雇用あるいは地域社会ということを考えますと、経済法則一本で進んでこれない、進むべきでもなかったということについて申し上げたわけでありまして、昨年の対策以来、相当の閉山が集中してまいっておりますことは、これはもう岡田委員指摘のとおりでありまして、私どももそのことはよく承知をいたしております。  そこで、わが国石炭産業をいまの時点でどう考えるか、それからどういう対策を生み出すかということでございますけれども原料炭は別にいたしまして、一般炭について言えば、やはりエネルギー革命というものの大きな流れにさからうことができない、その結果、これは私企業でございますから、閉山をするものがある、それに対して国はできる限りの応援をして、その閉山に伴ういろいろな意味での苦痛、摩擦を緩和する、こういうことが当面の問題であろう。それから先、しかしどうあるべきかということになれば、そういうエネルギー革命の中で生き残るものは強く生き残ってもらいたいわけであります。閉山をしてくれということを私ども決して考えておるわけではありません。やむを得ず閉山をされるときは、国はできるだけの援助をいたしますが、今後やっていかれる山は、もうできるだけ強く着実に生きるような方策でひとつ生きていただきたい。いわゆるスクラップとビルドをはっきりしよう。そうでありませんと、ここに働かれる労務者にとって、労働条件が、会社経営がよくなければ、政府がどれだけ申しましても、政府の力でやり得ることには限度がございます。十分に会社労働条件をよくするだけのしっかりした経営をやってもらわなければ、会社にとって不幸であるばかりではなくて、実はそれよりももっと大事なことは、労務者自身、あるいはその保安あるいは地域社会ということがもっと不幸になるのでありますから、しっかりした見通しを持って、生きる人は強く生き残ってもらいたい。それに対しては国も十分の援助をいたします。こういうことが当面の石炭鉱業の問題ではないかと私は思います。
  17. 岡田利春

    岡田委員 いま大臣原料炭は別であるがと、こう述べられておるわけですが、原料炭が別であるという認識自体に私は問題があるのではないかと思うのです。御承知のように、わが国原料炭はトータルで把握いたしますと、一千二百万トンの原料炭が出れば一千二百万トンの一般炭が随伴して出炭される。だから原料炭一般炭を機械的に区別をすること自体石炭鉱業認識について欠けるのではなかろうか、こう私はいわざるを得ないわけです。したがって、原料炭一定割合一般炭、これが必ず伴って石炭政策考えられなければ、実態把握についても不正確であり、政策の立て方にも誤りをおかすのではないか、こう私は考えるわけです。政府は、第四次政策昭和四十五年度に三千六百万トン程度という出炭規模を予想いたしておりますが、もし原料炭一般炭をいまの形でトータルいたしますと、二千四百万トン程度になる。無煙、煽石二百万トンとしても、二千六百万トン程度になる。そうすると、あと三千六百万トンの中に一般炭ということに実はなってくるわけです。ですから宿命的に、わが国炭層条件から見て、原料炭一般炭を同時に把握して政策を立てる、こういう方向でなければ石炭政策はスムーズに進まないという見解を私は持っておるわけです。  それと同時に、四十八年までの政策が立てられておるわけですが、わが国電力事情昭和四十七年から四十八年にかけて最大の危機を迎えるということは、すでに大臣は御承知であり、その対策に腐心されておると思うのであります。そういたしますと、いま、従来の石炭火力をフル運転して、そしてここで石炭をたいて発電をする、古いものでは三十年前に建設された発電所が今日運開されておるのがわが国の電力の実情でもあるわけです。しかも新鋭の石炭火力ができておる。北海道の産炭地では、燃料費は油をたくよりも石炭が安いのです。そういう北海道地域もあることを忘れてはならないと思うのです。そうすると、そういうわが国電力事情から判断いたしましても、また原料炭随伴以外の一般炭をある程度把握するという立場が当然あってしかるべきではないか。加えて、北海道炭は御承知のように、一般炭でもサルファが〇・二%から〇・六、七%ぐらいの非常にローサルファの一般炭が産出をされる。これは今日の公害環境の変わった面からいって、果たす役割りは当然あるわけであります。そういう総合的な把握をしなければ、これからの石炭政策を進める場合に、いろいろ問題点というものを残すのではないか。まして鉄鋼の問題については、私が指摘するまでもなく、昨年以来大きな情勢の変化がございます。そういう意味で、日本石炭産業というものをこの段階位置づけをしていく、単に出炭規模位置づけだけではありません、石炭産業歴史的に果たす役割りいうとものを位置づけをして、そういう実態認識の中からこれからの石炭政策を立てなければならないのではないか、このように私は考えるわけです。私のこういう認識大臣認識というものが、一体一致できるかどうか、お伺いいたしたいと思うのです。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま岡田委員の述べられた限りにおきましては、岡田委員と私の認識は一致し得ると思うのであります。すなわちエネルギー換算と、その上でいずれが経済であるかというような一つのものさしのほかに、昨今は公害ということがこれだけいわれるようになりました。その点をも考えておかなければならないわけでございます。したがって、一般炭の中にもサルファコンテントの高いもの、低いもの、いろいろございますわけで、それを合わせまして、メリットをはじかなければならない、そういうことであろうと思います。私どもは、そういうメリットをはじいた上で、なお今後もやっていける山というものはぜひやっていってもらいたいし、政府もできるだけその支援をいたします。しかし大切なことは、これは体制委員会等で御議論を願うことになると思いますが、人間の予測能力でありますから、絶対に誤りがないとは言えませんが、まずまず自信を持ってやっていけると考えるものと、それからいろいろ考えても、どうも実はこれは先はむずかしいというものと、やはり分けて考えておいたほうがいい。後者の場合に、みすみすむずかしいと考えているものを、当面を糊塗して、これは何とかやっていけるであろうというふうに表現したり、また申したりすることが、かえって当事者なりその関係者地域に不親切になるという結果は従来もあったことでございますから、その辺はやはり予測し得る限りのことを考えていって、そうしてスクラップとビルドとを分けていかなければならないというふうに考えているわけでございます。
  19. 岡田利春

    岡田委員 大臣は、過般石炭鉱業審議会体制委員会を設置をして、この体制委員会石炭の全般的な体制的あり方について諮問されたわけです。この諮問されたということは、当初の政府の回答は、昨年の八月に体制委員会を設置をして、体制的な問題について検討を進めて、これに諮問をするのだ。これが延びて四月に設置をされたわけです。この体制委員会に全般的な体制問題を諮問した大臣の気持ちとして、そういう体制的な審議の結果として、第四次政策のある程度の手直し、表現をかえていうならば、第四次政策の補強、補正という表現でもけっこうでしょう、あるいは政策を発展的にとらえていくということの表現でもけっこうでしょう。いずれにしても、そういう内容がその諮問の中に含まれておるものではないのか、私は、今日の情勢から判断をして、こう受けとめているわけです。そういう意味で、大臣体制問題を諮問されておりますけれども体制を非常に広範に考える場合と、非常に狭い範囲で体制問題を考える場合ーーしかし諮問した文書を読みますと、非常に広い意味体制問題について諮問されている、こう思うわけです。そういたしますと、私は当然第四次政策の補強、補正、発展といいますか、そういう問題について議論がされるものと思うわけですが、大臣はその点について、諮問当事者としてどういうお考えですか。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 体制委員会に御意見を聞いておりますゆえんのものは、石炭政策というものはこれでもう終わったということはできない、将来いろいろなむずかしい問題をまだまだ、むしろ従来よりもむずかしい形でかかえるに至ったという認識からでございます。さしずめ急を要しますものは、この夏過ぎまでにでも答申をいただきたいと思っておりますが、おそらくそれだけでは問題を全部カバーし切れずに、あとにもつとむずかしい問題がいろいろ体制委員会の中でも御議論いただかなければならないものとして残るのではないかと思っております。しかし他方で、第四次の考え方はもう一切動かしませんということであっては、何のために諮問をしたのか実はわからぬわけでございますから、御議論なり答申のいかんでは、やはりそこに弾力的に考えていく、そういう余地を持っておりませんと、本来諮問をする意味がないのでございますから、それだけの余裕は持って考えておるつもりでございます。
  21. 岡田利春

    岡田委員 第四次政策昭和四十八年度で終わるわけです。第四次政策を決定するにあたって、佐藤総理大臣は、当然第四次政策から第五次政策と、国内外の石炭情勢を分析をし検討する場合には、発展していくものではないか、こういう私の質問に対して、石炭政策は第四次政策で終わるものではない、新たな政策というものは当然検討されなければならないという答弁予算委員会でいたしておるわけです。私はそういうことはきわめて必然であると理解をいたしておるわけです。そういたしますと、政策のタイミングからいって、第五次政策を立てるということになれば、当然昭和四十七年ごろから着手しなければならない、こう思うわけです。今年は四十五年でありますから、そういたしますと、いま大臣答弁から判断をして、今度の体制委員会でそういう問題が議論された結果が答申をされる、その答申は、ある意味では中間的な補強あるいは政策を発展させるアフターケアということばが適当かもしれません、そういうことになるでしょうし、そして第五次政策の検討に入っていかなければならないということに結果的になっていくのではないかと実は私は考えておるわけです。  そこで、では基本的な体制問題は別にして、当面何が一体石炭政策課題なのかということを考えてまいりますと、第一に、なだれ閉山を防止して、ゆるやかな閉山の方式を進めていく、そのゆるやかな閉山を進める理由は、先ほど大臣が述べられているように、急激ななだれ閉山地域経済に混乱を与え、石炭産業そのものが瓦解をする、さらにまた、今日の原料炭確保についてある一定の長期的な安定政策というものがどうしても必要になってきた、こういう側面からなだれ閉山を緩和しなければならないという政策が、当然緊急な課題だと私は思うわけです。  その課題を分析してみますと、二つになるのではないのか。一つは、原料炭が五百円の値上がりをしている。しかし一般炭は据え置かれて、四次政策基本である労働者の賃金は、物価は四・七%、賃金は一〇%ずつ上昇するという要因がすでにくずれておるわけです。物価の面でもくずれてまいりましたし、賃金でも、初年度一二%、今年度二二%で、しかも大臣答弁されているように、決して高いものではないわけです。だから四次政策基本そのものがすでに初年度、二年度でくずれ去っておるわけです。ですから、これを政府政府自体の力によってある程度カバーしていくのか、あるいは当初計画以上の何か妙案があって、企業家そのものが努力をしてこれを吸収するのか、それともユーザー側の協力を得て炭価の問題を考えるのか。幸い原料炭については炭価問題についてユーザー側の協力を得たわけです。そうしてわが国原料炭炭鉱状況から判断すると、一般炭というものが半分を占めておるわけですから、そういう意味ではユーザー側の理解も得て炭価の是正というものが当然緊急な課題になってきている。これが第一の課題だと思います。  第二の課題は、前段に述べた理由から判断をして、炭鉱撤退閉山方式について検討を加えなければならぬのではないか。それは炭鉱の分離方式、たとえば明治方式といわれるのも炭鉱の分離方式の一つでしょうし、そしてそういうものを包括した閉山制度、これもやはり撤退体制的な問題だと思うわけです。これを手がけなければならない状態になっていくのではないのか。当面まずこの二つが、具体的に内容を分析すれば課題になる。  それと同時に、もう一つの面は、積極的な面として、炭鉱の近代化というものについて、四次政策を立てた原料炭をめぐる内外の情勢に変化があるわけですから、その意味わが国の前向き対策として近代化補強の面を検討しなければならないのではないか。そしてまた、流通問題についてはしばしば問題にされておりますけれども、今日の時点ではやはり流通問題について検討を加えていく、これが私は少なくとも今年度の石炭産業政策課題ではないかと思うわけです。こういう私の当面の石炭政策課題に対する認識について大臣見解を承りたいと思います。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま仰せられましたことの中で、二、三の点を除きましては、私は御指摘のとおりであろうと思っています。その二、三の点と申しますのは、たとえば明治方式云々といったところあたり、これについては私どもにまた別の考えもございますが、概して言われましたとおりであろうと思います。  そこで、しかしもう一つだけ申し上げておきたいことは、だれのために石炭を掘るかということについて常に考えておかなければならないと思います。それは、結局ユーザーのために掘るという考え一つございましょうし、労務者の生活の確保ということも大事なことであります。地域経済地域社会というものに大きな変動を与えないということも大事なことであります。しかし常にだれのために掘るのかということを考えておきませんと、とにかく石炭を掘っていさえすればいいのだというようなことになっては、これは物事の本質を誤ることになるおそれがある。これは私は先般も炭労の諸君とこういう話をしておりまして、あの人たちが一番よく自分たち立場現実的に考えておられて、私は正直に言って、非常に心から同情を禁じ得なかったのでありましたけれども、そういう立場というものもおのずから考えておかなければならない問題だと思います。
  23. 岡田利春

    岡田委員 だれのために石炭を掘るのか、問題はやはり石炭産業に従事しておる者の使命感に関する問題だと私は思うわけです。ユーザーのために石炭を掘っているというきわめて端的な表現でございますけれども、私は、わが国石炭産業は、わが国社会経済、国家社会のために必要だから石炭を掘っておるのだと思うわけです。その結果として、経済社会の問題として、鉄鋼生産の原料になり、あるいはまた電力用炭になり、あるいはまた一般炭になり、厨暖房用炭になっておるのだと思うわけです。私は、まずそういうユーザーのために石炭を掘っておるという認識であるとするならば、石炭産業に働いておる者の使命感に対する一つの冒涜になるのではないか、こう思うわけです。そういう点についてはきわめて重大な問題ではないかと私は思うのです。もし国家社会のために石炭を掘っておるのでないとするならば、これはやはり石炭政策に対して抜本的な検討を加えなければならぬ問題になるのではないか、私はこう思うのですが、その点についていかがですか。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 しかし、ユーザーのために石炭を掘りませんで、だれのために掘るのかということになります。国家社会の要請というのは、国家社会石炭を使いたい人がいる、欲する人がいるからこれを掘るのでありまして、ユーザーというのは、何か特定の、資本主義だとかなんとかいうことにお考えになるのはおかしいので、需要がありますから石炭供給しておられるので、それを離れて、石炭を掘るために石炭を掘るのだという立場は、私はこれは成り立たないだろうと思います。
  25. 岡田利春

    岡田委員 いまの日本石炭産業は、石炭がそこにあるから石炭を掘っているのではないわけです。国家経済社会のために石炭が必要だから石炭を掘っているのではないでしょうか。だから石炭政策で国家予算石炭産業をささえてきたのではないでしょうか。ですから、私は、少なくとも平面的なお茶飲み話ならば、いまの大臣の言われたことも何もかどを立てないですなおに話ができると思うのですが、少なくとも国権の最高機関であり、そしてやはり国務大臣であり、国民を指導するという指導理念の立場から言えば、あまりにもいま端的に表現された表現というものはどうか、少なくとも国民を指導し、国民に納得をさせ、国家経済社会を指導していくという立場から考えればいかがかと私は思うわけです。その点についてはいかがですか。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 論争を申し上げるつもりはございませんけれども、これは私はやはり大切な点だと思います。需要がなければ、石炭を掘りましても、これはいかんともなしがたい。先ほどから申し上げておりますように、長い間の歴史のある問題でありますから、私どもその需要を、ある程度関係方面の理解なりあるいは政府も力を出しまして、需要が急激に落ちないようにということは、これはあらゆる配慮をしてまいりますけれども、しかし石炭があるから石炭を掘るという立場ではこれはないことは、私は岡田委員の言われたとおりだと思うので、やはり需要があるから供給がある、こういうふうに考えてまいらなければならない、これは基本だというふうに私はやはり考えます。
  27. 岡田利春

    岡田委員 石炭産業は長い歴史性を持っている。その点については百年間の長い歴史性を持って、いわばわが国の戦争政策と直接結びついてきたような、そういう強い側面すら持っておるわけです。ですから、そういう意味で、少なくともエネルギー産業というのは産業基本でありますから、当然国家社会の要請に基づいてエネルギー産業というものが成り立っていくのだと私は思うわけです。だから電力は公共企業体であり、あるいはまた油についても、その確保のために国が相当な資金を出し、しかも業法等である程度の規制をしながら、安定的な低廉なエネルギーを確保していく、こういう政策を私はとっているのだと思うわけです。普通一般の、商品を買う人がおるからつくるのだという考え方と違い、少なくとも産業基本であるエネルギー政策に立つ場合には、あくまでもやはりこれは国家経済社会が要請するから掘るのだ、必要と認めるから掘る。もちろんそれは社会的な摩擦の側面もございましょう。そういう考慮もあるでしょう。やはりそういう認識になければ問題が残るのではなかろうか。石炭産業歴史性を考えるならば、単に十年間の歴史ではなくして、長い明治以来からの石炭百年の歴史に立ち返って石炭産業というものに対する認識をすべきではないのか。そういう認識から言えば、百年間の歴史そのものが、国家社会の要請において石炭産業というものは今日まで成り立ってきた、こう思うわけです。そういう点で大臣としては別にこだわらないで、端的にそういう認識についてはお認め願ってけっこうなんではないでしょうか。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは先ほど田中委員にお答え申し上げたとおりでございます。そういう歴史がございますからこそ、われわれとしては、ある程度経済法則をはずしてまで、納税者の金を使って、これだけのことを御賛同を得てやってまいったわけでございます。また、需要と申しますときに、何も私どもは、ほかの商品と違いますから、国家の資源でありますから、きょうあすの需要だけを考えておるわけではございません。将来にわたっての需要ということも考えなければならない。これはもう言われるとおりでございます。
  29. 岡田利春

    岡田委員 通産大臣は、石炭のみならず、わが国資源全般に対して行政の最高責任者でもあるわけです。ですから、わが国のたとえば国内石油をとらまえても、経済合理性立場で言うならば、これは問題にはならぬわけですよ、価格から見ても。いま三十万トンのタンカーで中近東から運んでくると、それは日本の国内に油田があるというような認識ができるわけです。ですから国内炭並びに湧出量の少ない国内石油産業というものは、これは経済合理性から言えば成り立たないわけです。あるいは基礎物資であるベースメタルの銅、鉛、亜鉛についても、最近は非常に動向が変わってまいりましたけれども、やはり歴史的には問題があったわけなんです。ですから、エネルギーと基礎物資というのは今年の通産省の政策の最重要な柱になっているわけですね。それだけにやはりエネルギー及び資源に対する考え方というのは、単に経済合理性だけではなくして、長期的な見通しと同時に、技術革新に対応できるために技術の温存、海外を開発するといっても技術がなければ開発できないのでありますから、そういうわが国経済発展に必要なエネルギー、基礎物資を確保する総合的なもの、そういう立場から資源産業、資源政策考えなければ誤りをおかすのではないか。こういう意味ではメタルの政策についても、金属鉱山の政策についても、国内石油、天然ガスの政策についても、やはり石炭産業と同じような立場に立って今日まで通産省はその対策を進めてきたのではないのか、こう私は思うわけなんです。そういう点の認識についてはいかがですか。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはそのとおりでございます。資源に関しましては、確かに工場で商品をつくるのとは違いますわけですから、需要ということについてきょうあすというような短期間で考えるべきものではない、それはそのとおりでございます。
  31. 岡田利春

    岡田委員 先ほど答弁が積極的でなかったのでありますが、炭価というのは、石炭鉱業審議会で基準炭価がきめられておるわけですよ。ですから炭価を改定するということは、結果的に石炭鉱業審議会、法律に基づく審議会でその基準炭価の変更がなければならないわけです。ですから単にユーザーと生産者側がかってにきめるというわけにはまいらぬわけです。最終的には基準炭価の変更というものがなされ、それが公示されなければならない仕組みに今日なっているわけです。炭価の変更という問題については、当然この一般炭の場合には基準炭価の変更になるわけですから、政府自身がこれに対して単にユーザーと石炭側にまかしておくという性質のものではないわけです。そういう制度、仕組みから考えて、一般炭の炭価の是正について、是正をしなければならないとするならば、ユーザー側の理解も求めながら、政府がある程度行政指導的にこの問題について意見を求め、行政指導の立場でこれを解決していかなければならないのではないか、そういう仕組みになっておると思うのですが、そういう点についてはいかがですか。
  32. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。基準炭価につきましては、毎年実施計画できめるわけでございます。これはガイド価格として基準としてきめる。本年は具体的な条件が定まっておりませんでしたので、具体的な条件の定まるのを待ってきめるということで、近い機会の需要部会で決定するということに相なっておるわけでございます。
  33. 岡田利春

    岡田委員 私は、いま局長答弁というのは、そういう意味でやはり今日の動きをよく見ているのではないか、動向をやはり見て今年度の基準炭価をきめるというような慎重な配慮でまだきめられていないのだと思うわけです。その点についてはまことにけっこうなわけですが、問題は、石炭産業の場合には、いままでの政策を振り返ってみますと、タイミングを逸するわけですね。四次政策の場合でも一年間かかっている。三次政策の場合は二年間かかっているわけですよ。そして予算に計上をして実施したときには、もう三次政策では二年から二年半おくれ、四次政策の場合でもタイミングを逸するという、そういう傾向がいままでの石炭政策にあったと思うんです。だからそういう意味では、石炭政策の場合には資金的にも詰まっておるわけですし、しかも硬直しているわけですから、タイミングを間違うと非常に予期しない結果になる。そこでは、その時点ではこの政策でよろしいと思ったけれども、タイミングをずらしてしまうとまた補強しなければならない、こういうことが私はいままでの石炭政策では繰り返されてきたと思うわけです。それが、最近の石炭産業の資金状況を分析いたしてみますと、資金の面では非常に硬直化いたしておりますから、タイミングというものはより一そう要求されてきた、前の政策の場合よりも要求されてきた、こう実は思うわけです。そうすると、結局、八月に分割答申を期待しているというのが政府答弁でありますけれども、八月とかなんとかということでなくして、諮問している内容がまとまった場合には、むしろ積極的に答申を受けて、それを、タイミングを逸しないで政策を具体化していく、こういう態度が従来よりも一そう要請されておるのではないか、このように私は判断をいたすのでありますけれども、この面についての見解をお聞かせいただきたいと思います。
  34. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。御指摘のように、当初は、八月を目途にいたしておるということで、八月までに必要な問題点について答申を得るという考え方でおったところ、先般の体制委員会では、問題ごとに、ある程度急ぐものは急いで整理しようという考え方が出てまいっております。したがいまして、今後、体制委員会の審議の状況でまいりますと、岡田委員指摘のような問題のとらえ方が出てまいろうかと存ずる次第でございます。
  35. 岡田利春

    岡田委員 約束の時間ですから終わりますけれども、最後に一つだけ要請申し上げておきたいと思います。  私は、いままでのいろんな通産省の政策のあり方の中で、常に変更しなければならぬというのは、一つはやはり総合エネルギーの見通しです。当初見通しよりもずいぶん大きく変化をしている。エネルギー全体もそうでしょうし、たとえば石油なら石油だけをとらまえてもそうでしょうし、あるいは原子力なら原子力をとらえてもそうでしょうし、また、二次エネルギーで見れば、電力についてはまさしくそうでしょうし、そうして、そのいずれもに困難な条件が累増されてきている。ですから、実施がずれる。そのために、見通しのズレに加えて、そういう実施困難がなお一そう拍車をかけている、こういう動向にあると思うのです。まして、今日の経済成長を続けていくとするならば、基礎物資の確保はきわめて重大な課題であるわけです。私は、通産行政基本は、まず安定的な基礎物資を長期的に確保する、安くてしかも長期的に安定的に確保する、産業の根幹であるエネルギー政策というものが常に先行していく、そういう体制がなければ産業の安定的な成長発展を望むことはできないと思うわけです。そうして、年々その環境は悪化していくという条件にあるわけですから、そういう点で、私は、従来電力等についても委員会で問題にしてまいりましたけれども、今日のわが国電力事情の置かれておる実態から見ても、結局は、見通しの甘さがあった、経済成長をささえるエネルギー政策見通しの甘さが、やはり今日の結果を招いている、このように判断せざるを得ないわけです。私は、そういう意味で、ひとり石炭産業のみならず、通産行政のあり方として、特に通産行政基本になる、産業基本になる問題についての最近の動向からして、この機会に大臣見解を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 エネルギーにつきましては、これはきょうあすだけの問題を考えるわけにはいかないのでありますから、長期、安定的に、かつメリットのあるものを確保していくということであろうと思います。
  37. 鬼木勝利

    鬼木委員長 相沢武彦君。
  38. 相沢武彦

    ○相沢委員 いまもずっと議論が続いたわけでございますが、今年に入ってから、すでに閉山が続いておりまして、ごく最近においても松島炭鉱閉山、また、現在北海道の美唄炭鉱が縮小合理化操業体制会社側から提示されまして、組合大会があす開かれまして、労使の検討がされる、こういう運びになっておりますが、地元では、一部残すといわれている美唄炭鉱そのものも閉山になるんじゃないかということで、非常に不安にかられておるわけであります。私どもが心配いたしますことは、このまま第四次石炭政策が推進されれば、閉山やむなしという炭鉱ばかりでなくて、将来とも存続させるべき炭鉱までも閉山のあらしに巻き込まれるのじゃないか、こういうおそれが増大しているという現状でございます。現在すでに労働力はどんどん流出しておりますし、また炭鉱経営自体が質的に弱体化していますし、生産体制の破壊という形がどんどん急速に進行している。このままでは、石炭産業は壊滅への道をばく進するのじゃないかということが心配されておりまして、第四次石炭対策後のわが国石炭産業は一体どうなるのか、こういった各方面からの声にこたえて、かねて持つことになっておりました石炭鉱業審議会の中の体制委員会が、いよいよ本格的な検討を開始するということでございますけれども、私は、この体制委員会での問題として、どうしても、日本のエネルギー政策の将来における石炭産業位置づけ、これは第四次再建策の当時に増して突っ込んだ論議がなされなければならないのじゃないかと思います。  この石炭産業界の体制問題につきましては、第四次再建策を策定した際に、国有化論、管理会社論あるいは全国三社案等、いろいろ多くの構想が出されましたけれども、非常に難問題がございまして、御存じのように結論は出なかった。そういうわけで、私どもとしては、石炭の将来についてのビジョンのないまま、ことばは悪いかもしれませんが、生かさず殺さず式の一時しのぎの資金投入策にとどまってしまった。ですから、大臣もなだれ閉山とはまだお認めになっていないようでございますが、現在閉山がどんどん続いているということは、そのときから予想されていたことだ、こういう声もあるわけでございまして、私は、石炭鉱業審議会は、他の単なる諮問機関と違いまして、日本石炭産業を救済、再建するための重要な対策を引き受けている部門だと思うわけです。しかも、審議の過程で、具体的な石炭対策のための予算措置についても政府から約束を取りつけているのが通例でございますし、答申は事実上政府石炭対策とも言えるものとして重要視されてきているわけでございます。そういった点から、このままでいきますと、石炭産業全体が、四十八年を待たずしてほとんど壊滅状態になるのじゃないかということでありまして、今回の体制委員会の審議は、各方面から非常に注目をされております。  そういうわけで、今回の体制委員会の答申は、徹底して石炭産業の再編成ビジョン、石炭産業長期見通しを明確にすべきである、再建ができるかどうかのかぎは、経営体制あるいは再編成の問題までどうしても突っ込んでいかなければならない、こういうふうに考えておりますが、大臣としてはどのような内容のことを諮問されますか。また、いま私の申し述べたことについての御見解を承っておきたいと思います。
  39. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 会社の将来について不安を持つために労働力が流出していくというようなときに、私どもは、何でもかんでもそこへおとどまりなさいと申すわけにはまいりません。私どもが申さなければならぬことは、あなたのやっておられることは国家にとっても非常に大切な仕事なので、しかもその上に、ここであなたは働いておられて、将来ともあなた及びあなたの御家族の生活はだいじょうぶですということが言えなければ、よそへ行くのをとめるということは私どもにはできません。したがって、体制委員会等で考えるべきことは、これはいろいろな角度から同じことが申せますけれども、残って、そうして大事な労働者をお預かりしてやっていく炭鉱は、ちゃんと将来の見通しをもって、責任をもってやっていけるだけの自信を持って残ってもらいたい。そうでありませんと、かえってそれは働く人々にとって不親切な結果になるわけであります。でありますから、そういう自信のあるものはひとつぜひ残ってほしい。国もそれに対してはできるだけの助成はいたします。しかし、経営者がそういう自信のないものは、これはもう自信のないままの経営というものはみんなに迷惑をかけるのでありますから、そういうことの見きわめというものをやはり体制委員会で立てていくべきだというふうに考えるのであります。
  40. 相沢武彦

    ○相沢委員 大臣のおっしゃる意味はわかるのですが、いわゆる第四次再建案を考えたときに議論されて残った問題について、今度の場合は徹底してやるようにという諮問をなされたかどうか。いわゆる石炭産業のビジョンあるいは長期位置づけというところまではっきりさしていこうという、大臣自身にそういうお考えがあるのかどうか、その辺を承っているわけです。
  41. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 諮問は、石炭産業現状に徴して、その体制はいかにあるべきかということでありまして、この意味は、先ほどから御指摘もありますように、第四次の計画にかかりました当初と比べて、かなり情勢に新しい展開がございますから、そういういまの現状にかんがみて、将来石炭産業体制はいかにあるべきかという非常に広い意味での問題を提起しまして、御意見を求めておるわけでございます。
  42. 相沢武彦

    ○相沢委員 通産省が、四十五年度の石炭鉱業合理化実施計画策定のために、先月から、各鉱業会社のほうに対してのヒアリングを行なったわけでありますが、私は、この際、石炭産業長期安定をはかるためには早急に業界全体の経営管理状況に対する総点検が必要じゃないかと思うのです。これを政府自身が本格的にやりまして、それによって初めて体制も整備されるだろうし、生産性の近代化あるいは鉱区の再編成あるいは流通の合理化等の具体的な案が初めて出てくるのじゃないか、こういうふうに感ずるわけなんです。  なぜこういうことを言うかといいますと、これまで次々に出されました再建案がすぐ破綻を来たしてしまうという、その理由の一つとして、政策立案が、企業の提出した生産計画によってやられるわけですが、どうも水増し計画といいますか、あるいは個別企業の利害や思惑のからんだ甘い資料がどうしても出てきやすい。そういったものを基礎に政策を立てたのでは、どうしても不安定な不明確な政策にならざるを得ないのじゃないか、こういう声も一部にあるわけです。しかも、政策を立てても、結局、政府がどれだけ金を出すかというだけで終わりであって、あと企業自身がそれぞれの思惑でばらばらの経営をやる。こういうようにして、多額な国家資金を引き出しながら、そのあと出炭目標計画さえも挫折させてしまう。ですから、引き取り約束された政策需要さえも納入不能になってしまうということが繰り返されてきたにもかかわらず、その責任があまり問われたことがないのですが、石炭産業の今後の問題は、労使双方がもっともっと話し合い、協力して、出炭目標確保する、また、そういった問題点は、率直に政府にお願いしてめんどうを見てもらう、こういった点がなければならないと思うのですが、この点については、大臣、どういうお考えを持っておりましょうか。
  43. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。石炭産業全般について総点検をする必要があるのではないかという点につきましては、各山の現状把握して、現状に即した実施計画を立てて、そうして、その実施計画が実現できるものであらねばならない、こういうふうに理解をするわけでございます。  先ほど、この点につきましては、四十五年度の実施計画の作成にあたりまして、山別にいろいろ実情を聞きまして、そうして、もちろんその四次計画前提でございます自主的な努力という点について期待をせねばならないという点はございますので、労使双方の一そうの努力あるいは関係者協力を求めるということは前提として考えておりますけれども、一応現在のところで予想されるところの条件というものを考えた上で、今回の四千万トン計画実施計画として案をつくりまして、審議会の御審議を得たわけでございます。さような意味では、問題はなお若干残っておるとはいえ、かなり慎重に検討をいたした次第でございます。  なあ、出炭等につきまして、計画を下回ったために需要者等に迷惑がかかるような事態に対してはどうかという点につきましては、できるだけ事前に情勢を把握いたしまして、それに対する対策の講じられるような方法を講じつつ四十四年度は処理をいたしたわけでございまして、かようなことのないように、四十五年は実施を確実にできるようにやってまいりたいと考えておる次第でございます。
  44. 相沢武彦

    ○相沢委員 結局、生産規模から需要先まで国がある程度保証し、いわゆる企業を統御、ということばが適当かどうか知りませんが、そうしながら、運営結果については一切の責任企業にあるのだというようなことで、どうもその点ちょっと政府のほうとしても逃げ腰みたいな感じがするわけです。四十八年度までに約七千億円以上にのぼる国の資金を使う以上、もっともっと行政側と企業側双方に責任の区分と、またその所在を明確にしなければならない。そうしなければ、結局、政府が出す石炭再建策についても、国民一般大衆の理解も支持もされないのではないか、こういうことは考えられるわけでして、これまでの答申でも、通産省が経理の監査やあるいは事業計画の検討をすべきであるということが出ておりますわけですから、この際もっと徹底した炭鉱経営の点検、こういうことをしなければならないのではないかということを痛感するわけです。これは私、国家権力で民間企業を圧迫するというようなことに受け取られては困るわけでして、あくまでも民間企業の健全な保護育成の効果をより一そうあげるために、特にいまむずかしい立場に置かれている石炭産業に対しては、充実したいわゆる行政機関の指導、保護が必要であるという観点から申し上げるわけですが、この点について大臣から一言御返答をお願いします。
  45. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはそのとおりであると思います。
  46. 相沢武彦

    ○相沢委員 せっかく労働大臣がお見えなので、お願いしたいのでございますが、先ほど申しましたように、労働力はどんどん石炭産業界から流出をしております。どうも政府をはじめ一般的に、石炭産業は斜陽産業だ、こういうふうに簡単に片づけられてしまうほど暗いムードになってきたことは残念でございますが、そのために、労働力が不足して、出炭の安定確保もおぼつかない、こういう現状であります。  私の調べたところによりますと、北海道内の各炭鉱の鉱員不足は、おもな鉱山でも四十名ないし五十名前後は常に慢性的な不足状態を呈しております。今年に入りましてからは、企業ぐるみ閉山になりました雄別の場合も、その就職問題に関しまして、石炭産業への再就職を最優先にするということで、道の労働部なんか非常に力を入れたそうでございますが、これでも現在までと同じ程度しか確保できなかった。しかも今後ますます石炭関係に再就職する人が減少していく傾向にあるだろうと思うのですが、これについて労働省としては、どういった企業に対する行政措置、あるいは労働省自身の御見解をお持ちか、また対策をお考えになっておるか、お伺いします。
  47. 野原正勝

    ○野原国務大臣 石炭産業から山を離れる人たちに対しましては、その方々の雇用のためにあらゆる面での対策をお世話しておるわけでございますが、同時に、炭鉱にあらためて再就職をしたいという方に対しましても手厚い対策を講じておるわけでございます。従来は、ややともすると、炭鉱から離れてほかに行く者に対してのみやっておりました対策を、実は本年からは石炭炭鉱を離れて別な炭鉱に働いていただくという方のためにも適用しようということでありますが、しかし現実はなかなか炭鉱には人が集まらないということを聞いております。何としても、やりは炭鉱が魅力あるものというか、働く人たちにとってそこで働くことが賃金の面においても比較的恵まれておるとか、あるいは生活環境もほかよりもいいというようなことでないと、なかなか人は集まらぬという段階でございます。同時に、言うならば企業の合理化等によってだんだんと人手を多く要しないような企業の近代化、合理化をはかっていただくということも必要でございましょう。同時にまた、通産省がやっておられますけれども労働災害という問題に対しましても徹底した施策を講ずる。安心して炭鉱で働いていただくというような対策が講ぜられて、そこで初めて人たちが炭鉱に就職しようという気持ちになるわけでございます。どうも聞いておりますというと、炭鉱に働いておる方々の子弟も、せめて子供は炭鉱にはやりたくないというふうなことになっておる。これはまことに残念でございますけれども、そういった現状考えてみまして、これに何とかして手厚い対策を講じて、炭鉱労働力を確保するために御協力申し上げたいという気持ちでおりますけれども、なかなか現状は容易でないということを聞きまして、私どもも一そう炭鉱労働確保に対しましてはきめこまかな対策を加えていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  48. 相沢武彦

    ○相沢委員 もう一問大臣にお願いしたいのですが、今後国内における原料炭炭鉱はかなり見通しがあると思うわけですが、そういったわりあい明るい見通しのある原料炭炭鉱でさえも労働者不足だ、こういう現状になっておりまして、もしこのままますます閉山等が続けば、掘進だとかあるいは電気関係あるいは保安関係炭鉱技術者がかなり他産業へ転職されることが考えられるわけですが、その後もし国内においてどうしてももっともっと原料炭を採掘しなければならない、国も力を入れてやっていく、ところがそういった技術者が不足であるといった場合、一ぺん他産業へ転職されたそういう元炭鉱技術者、その方に炭鉱へまた戻っていただいて、大いにその力を発揮してもらう、技術を生かしてもらうというようなことが起こり得るのではないか、考えられるのではないかと思うのですが、そういった場合に、労働省としては特にそういった面の援護措置を講ずることができるかどうか、またお考えがあるかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  49. 野原正勝

    ○野原国務大臣 新しく炭鉱を開発されるという際に、技術者なり働く炭鉱労働者が必要であるということになりまして、ほかに働いておる方々を無理に炭鉱にというわけにまいらぬわけでございますが、どうしても炭鉱の新規の開発事業にはやはり人手が必要である、技術者も必要であるということになりますと、そこに問題は、それ相当のその希望する人たちを雇用するための条件というものがなければならぬわけでございまして、それにはやはり新規の炭鉱が今後大いに魅力ある炭鉱として成り立ち得るかいなかということと同時に、就職を希望する人たちにとってその条件をかなえていただくという体制がなければならぬと思う。昔と違いまして、どうも国が徴用するというわけにもまいりませんし、ましてや強制はできませんし、そういった日本経済現状の中において、われわれは、何とか炭鉱側が新しい企業として健全に育成強化され、魅力ある炭鉱としてやはりお世話するに足るだけの十分な内容があるのだというものに対しましては、全力をあげて雇用の問題を御協力申し上げていきたいというふうに考えておるわけでございます。通産省の行政に対しまして側面から御協力申し上げるという態度で進みたいと考えております。
  50. 相沢武彦

    ○相沢委員 きめられた時間が参りましたから、両大臣に対する質問は以上で終わります。
  51. 鬼木勝利

    鬼木委員長 田畑金光君。
  52. 田畑金光

    ○田畑委員 通産大臣に最初お尋ねをしたいと思いますが、大臣がこの委員会でお答えになる答弁というのは非常な反響を持つということを、私は前回の石炭特別委員会あと各地を回りまして、接触する人を通じ痛感したわけです。したがって、きょうのこの委員会大臣がお答えになるその答弁の内容というものは、いまの石炭産業に携わっておる関係者に非常な反響をもたらすものであるということをまず前提に念頭に置いてもらいたいと思います。  先ほど来の質疑応答を聞きまして、私は、前回のこの委員会における答弁と比べて、ある面においては、私たちの立場から言うならば、より弾力的な、そしてまた将来に発展的に対処しようとする答弁も伺うことができて、その限りにおいては力強く感じております。大臣のお答えにもありましたように、石炭産業の問題というのは、過去百年間わが国産業経済社会の発展の中に果たしてきたその役割りというものを常に念頭に置くべきであるということを大臣自身も認められたことを私もうれしく思います。またわが国の唯一のエネルギー地下資源であるという資源産業を大事にしなくちゃならぬという政府の姿勢、通産大臣の姿勢もそれであるということも先ほど答弁を聞いて私も同感であるし、また当然そうなくちゃならぬ、こう考えておるわけです。  問題は、今日の石炭政策というものが経済主義の立場に立った場合にどうかということになってくれば、私は、今日の石炭政策というものは経済主義プロパーで貫かれておるものであるとは考えておりません。これは当然石炭政策のことばのとおり、政策的な配慮というものがいまの石炭政策のほとんどである、こう申し上げてもよろしいと思います。その意味において私は、石炭問題を論議するにあたっては、単に経済主義の立場に立つだけではなくして、先ほど申し上げた諸点を背景に置きながら、政治的な配慮で見るということは大事な、いなむしろこれが一番大事な石炭に対する取り組む姿勢である、このように見ておるわけでありまするが、この際、このような基本的な問題について大臣の所見をまず伺っておきたいと思います。
  53. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 当委員会におきまして御質疑にお答えをいたしますことが、全国に、ことに石炭関係のお方々にいろいろな反響を及ぼすということにつきましては、私も十分に承知をいたしておりますし、なお御注意がございましたので、今後とも戒心をいたします。  ただいま田畑委員の言われましたことは、私はそのとおりであると思います。で、私がときどきいわゆる経済法則云々ということをそれにもかかわらず申し上げておりますのは、とにかく石炭産業というのは非常にむずかしい段階に差しかかっておりますから、労務者に対しても経営者に対しても、また関係方面すべての人々に対して、間違った希望あるいは間違った将来像というものを与えることは、私はかえって不親切だという気持ちがいたしますので、それで、ただいま田畑委員の言われましたことはそれを全面的に私も認めながら、また政府として近い将来にいわゆる純粋な経済主義に立ち返ってこの問題を処理できるとは決して考えておりません。おりませんにもかかわらず、しかし問題の本質がやはり一つはそういうものを含んでおるということを聞いていただきたいために、あえて申し上げておったわけでございまして、問題認識として田畑委員がいままで言われましたことは、私はそのとおりと思っております。
  54. 田畑金光

    ○田畑委員 大臣に私のお尋ねしたいことは、通産大臣という職責は、産業全般、経済全般にわたっておるわけでありまするから、エネルギーの問題を取り上げてみても、石炭の問題を一つ取り上げただけでも、石炭供給するという面と、またそれをユーザーとして使うという産業立場、これをどう調整するかというのが通産大臣役割りだと考えておるわけであります。したがいまして、その意味において通産大臣経済主義の立場に立って発言されるということは、それなりに私は理解するわけであります。しかし、いまの御答弁にもありましたように、願わくば石炭問題に対処する姿勢については、第一次答申から第四次答申に至るまでのこの経緯ということを十分念頭に置かれて取り組んでいただきたい、このことを強く要望いたします。  大臣すでに御承知のように、昭和四十二年以降第三次政策が発足したわけであります。ところが、第三次政策に基づいて初めて肩がわり措置あるいは中小炭鉱に対する安定補給金の支給、こういうことになりましたが、その直後に大手の一つといわれた大日本炭鉱閉山をした。この問題をきっかけとしまして、御承知のように昭和四十三年の四月二十六日に時の通産大臣から石炭鉱業審議会に対し今後の石炭対策はいかにあるべきか、こういう諮問を出されて、そうしてその年の昭和四十三年十二月二十五日に第四次答申が出されて、四十四年一月には閣議決定がされて、昭和四十四年以来、石炭対策特別会計の延長はじめ新しい政策、第四次政策が発足したわけであります。当時おそらく通産大臣はやはり閣僚であられたわけであります。そういうわけで、実は第三次政策から第四次政策に移る期間というものはまことに短い期間であったわけです。さて、昨年以来第四次政策が発足をして今日に至っておるわけでありまするが、先ほど来の質疑応答の中にもありましたように、わが国産業というものは異常な発展ぶりを遂げておるわけです。それがまた石炭をめぐる情勢にも異常な変化というものが出ておることは大臣承知のとおりだと思います。第四次政策の基礎をなしておる、たとえば賃金のベースアップを見ましても、一〇%の想定が昨年はすでに一二%になり、四十五年度の炭鉱労働者のべースアップは一三%になっておるわけです。一三%といいながら、大臣承知のように、一方当たり二百二円、月額にいたしまして二十二・五方としますと五千五百三十七円にすぎません。日経連がこの間出した資料によれば、すでにこの春闘で出てきたベースアップが八千六百三十五円、 こうなっております。昨日の朝公労委の調停で出された三公社五現業については八千六百二十六円です。地下産業に働く労働者の諸君がこういうような賃金に甘んじなければならぬ。しかし、その賃金すらもいまの企業はどうして吸収するかという深刻な問題をかかえておることば大臣承知のとおりです。ちなみに四十四年度の大手十二社の経理の状況は、仄聞するところによれば、トン当たり二百二十円の赤字であると聞いております。そうして四十四年度のトン当たりの労務費は、私の試算によれば二千二百六十八円になっております。そうしますと、二二%上がったといたしますと二百九十五円ということになります。一〇%と一すれば二百二十七円です。すでにことしの賃上げそれ自体を見ただけでも、第四次政策計算基礎のそれと比べますると、賃金だけで六十八円の赤字が出ることになるわけです。単純な算術計算でまいりますと、四十五年度の赤字は、この賃金の値上げだけで昨年の二百二十円プラス六十八円ですから、二百八十八円です。さらに石炭産業にとって大事な資材費を見ますと、たとえば坑内で使う坑ワク用の古レールを例にとりますと、四十三年の下期において一〇〇%としますと、四十五年度の上期は一三二・二%、三二・二%の値上がりを示しておるわけです。坑木を例にとりますならば、四十三年の下期は一〇〇%、四十五年度の上期は一一二・五%であります。私は賃金の問題と主要な資材の二つだけを例にあげたわけでありまするが、このように石炭を取り巻く情勢はまことにきびしいものがある。第四次政策が出発してようやく第二年目は入ったにすぎないが、そのような深刻な状況に置かれておることを考えましたときに、たまたまここに先ほど来問題があげられておりまする合理化体制部会が、いま大臣の諮問を受けて審議が進められておるわけでございますが、私はここでもう一度大臣に確認をしておきたいことは、合理化体制部会は、単に第四次答申の中の体制問題の論議だけではなくして、今日石炭産業の当面するもろもろの問題について広く衆知を集めて、すみやかに石炭産業はどうあるべきかという答申を大臣に出してもらいたい。その答申が出たならば、その答申に基づいて大臣は、石炭産業についていかなる手を打つべきかを考えることにするのだというのが大臣先ほど答弁の内容であったと私はお聞きいたしましたが、確認のためにもう一度そのことを承りたい。  どうかひとつこの問題については、この際せっかく体制部会が開かれて、石炭の問題について取り組むわけでございまするから、この結論が出ましたならば、この結論を尊重して、大臣としては今後の石炭政策について前向きの姿勢で取り組んでいただきたい。特に私は先ほど答弁の中で非常に明るく感じたのは、第四次政策を固定的に、もう意地でも動かさぬというものではなくして、体制部会の答申の内容によっては、当然第四次政策の中身についても弾力的に対処するという大臣答弁がございましたが、そのように受け取ってよろしいかどうか、この点をひとつお答えをいただきたいと思います。
  55. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま田畑委員から炭鉱会社の十二社の経理状況あるいは先般の春闘の問題などについてお話がございました。私、具体的な経理その他の数字はいま存じませんけれども、しかし大勢としていま田畑委員の御指摘になったようなことであろうと考えております。そういたしますと、先般のいわゆる一三%の賃上げというものも、いかにも労働側にとって、事情がわかっておるだけに私はよけいお気の毒だという感じがいたしましたし、経営者側にとってはまたそれでも非常にきつかったということは、ただいま経理の内容を言われましたので、これはやはりすべての人が感じるところだろうと思います。そういう状況にあって、私企業であるところの炭鉱というものをことしどうするかということならば、あるいは私ども関係者にいろいろお願いをし、働きかけて、いっときのことはできるかもしれません。しかし来年も賃上げがあるということは間違いありませんし、おそらく再来年もそうであろうと思います。そういたしますと、いつまでいまのままでこういうことがやっていけるかということは、労働側も、経営者側も、また私どもも、おそらく田畑委員も同様に考えることでございます。したがって、ただいま第四次案の進行中ではございますけれども、最近の閉山等々の経緯にもかんがみて、少し広く将来に向かって石炭鉱業というものがいかにあるべきかというその体制について研究をしていただき、御答申を得たいというのが、先般の諮問の趣旨でございます。したがって、その答申の内容いかんによりまして、もちろんそれをもう一度吟味はさしていただくつもりですが、この第四次の体制、現在の政策そのものはもう全く動かさないということでは、諮問をし答申を得たことの意味がなくなるわけでございますから、その点は答申いかんにもよりますが、やはり弾力的に考えなければならないのではないだろうかというふうに私としては考えております。
  56. 田畑金光

    ○田畑委員 原料炭の問題について先ほど来いろいろ質問がございましたが、大臣の所管でもございまするし、私は一点だけお尋ねをしておきたいと思うのでございます。  鉄鋼の生産というものはいまや自由世界第二位の地位にまで来ているわけです。昨年四月に産業構造審議会でつくった鉄鋼の将来の生産計画を見ますると、昭和四十八年度には粗鋼ベースで一億一千万トン、こうなっております。したがって、鉄鋼生産の増産に伴うて原料炭の需要もふえ続けることになるわけでございますが、四十八年度においては、ガスあるいはコークス部門を入れると七千五百万トン、むしろ原料炭はそれを上回る需要量が出てくると思うのです。大臣承知のように、わが国原料炭というのは一千二百万トン。したがって六千三百万トンは輸入に依存しなければならぬということになってくるわけでございまして、これは今日の四千万トン前後の輸入からいたしますと、二千万トン以上輸入をふやさねばならぬということになってくるわけであります。しかもカナダを見ましても、豪州を見ましても、あるいはアメリカももちろんそうでありまするが、いずれも原料炭の産出国あるいは輸出国は、御承知のように弾力条項があって、そして賃金が上がればそれに応じて輸出価格も上がって、日本の側からいう輸入価格も上げなければならない、こういうような仕組みになっておるし、世界的に今日は原料炭不足という状況に立ち至っておるわけでありまするが、こういう問題をとらえて、政府としては今後の原料炭確保についてどのような方針を進めていかれるのか、明らかにしていただきたいと思います。
  57. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一方におきまして、原料炭は御指摘のようにかなり海外の供給にたよっておるわけでございますから、その海外に対してのこれからのわれわれのいろいろな意味での投資、資源確保ということがますます必要になってまいると思います。ことに鉄鉱の場合で申しますと、たとえばウェストバージニアの場合でございますが、これは埋蔵量がないというわけではない。むしろそれを積み出すための鉄道の施設でありますとか、あるいはハンプトンローズの港の施設でありますとかいうところに問題があるようにも聞いておりますが、一般的にそのような問題までもくるめまして、需要者としてのわれわれが海外の資源の流れをどのように確保するか、少し将来の問題になりますと、船腹をいかにして確保するかということも問題になるかと思っております。と同時に、国内におきまして価格メリット等々を考えながら国内で開発できる原料炭というものは今後ともできるだけ開発を奨励して、われわれ自身のものを国内に確保するという努力を怠ってはならないというふうに考えております。  なお、これは国内の技術の進歩、石炭側と鉄鋼側と両方の技術の進歩にかかることと思いますが、自然に採掘されましたもののメリットを技術操作によってどれだけあげられるかということも、やはり研究を続けていかなければならない問題と思います。
  58. 田畑金光

    ○田畑委員 原料炭確保についてはいろいろ隘路があると思いますが、ひとつ手を尽くして御努力を願いたいと思います。ことに、大臣承知のように、原料炭については本年の一月以降、鉄はトン当たり五百円、ガスコークスは二月からと聞いておりますがトン当たり五百円、ユーザーとしても国内の原料炭確保の面から協力をしておるわけであります。私は、こういう問題については、鉄なりガスコークスなりのユーザーの人方も、原料炭の今日の海外の姿を見たときに、やはり国内に原料炭をできるだけ確保するためには、ユーザーとしても協力する必要があるという認識に立って、このような措置もとられたものだ、こう見ておるわけです。私は、このような関係業界の協力というものは今後とも必要であるし、またそういう方向に通産大臣とされても指導助言をされることを強く希望し、期待いたしますが、問題は先ほど来からお話がありました一般炭の問題であります。  第四次答申を見ますると、一般炭については、こういうことを書いております。「石炭火力発電所の存在を前提として考えれば、電力需要などを一中心としてなお相当量の需要を期待することができる。」何と申しましても、一般炭の需要の確保は電力需要ということであり、政策需要ということであり、したがって、通産大臣努力にまたねばならぬ面がほとんどである、こう申し上げてもいいと思います。原料炭については、先ほどユーザーの協力ということを申し上げましたが、大臣承知のように、原料炭の単価引き上げだけでは、石炭の経理はそのままよくなるというものではないわけであります。たとえば私が手元に持っておる資料を見ますると、三井三池を例にとりますならば、これは四十三年度の実績で申しますと、原料炭が千七百十三万トン、一般炭が四千四百三十三万トンです。三菱の大夕張を見ますると、原料炭が八百五十万トン、一般炭が四十三万トン、これはほとんど原料炭です。それから北炭夕張を見ますると、原料炭が九百七十二万トン、  一般炭が九十六万トン、こういうことになっておりますが、このようにほとんど原料炭を出しておるところが中心である山と、三井三池を一例にとりますと、原料炭だけでなく、より一般炭が大きな比重を占めておる山、また申すまでもなく一般炭だけしか出していない山もあることは御承知のとおりであります。そこで、私は、今日の石炭事情を見まするならば、一般炭の価格引き上げについて、一般炭のみを産出する炭鉱の出炭の安定化のためには、どうしてもこの炭価の問題というものについて考えざるを得なくなってきておる。いな原料炭を出しておる山についてもやはり一般炭の問題と切り離しては考えられない。こういうことを考えてみまするならば、私は、ひとっこれらの点等についても、体制部会等で私が申し上げたような点に触れて議論が出て、結論が出て、大臣に答申をなさるかどうかは将来の問題でありますが、ほんとうに今日の石炭事情考えるならば、そのようなこともあり得ると私は見通しておるわけでございますので、この際ひとつ大臣に特にお答えをいただきたいことは、一般炭の炭価の問題等についても、ひとつ諸般の事情を顧慮しながら、その時期が来れば検討するということも、この際弾力的に対処するということくらいは明らかにしていただきたい。この点を特に私は大臣答弁を期待して、その答弁によって私の質問は終わりたいと思いまするし、また大臣の時間の都合もありまするから、一時には終わらなくてはなりませんから、どうぞひとつこの点だけを大臣からお答えをいただきたいと思うのです。
  59. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 体制部会におきましては、現状にかんがみての将来の体制を検討しておられるわけでございますけれども、その検討の過程では、おそらく当然に、田畑委員が御指摘になりましたような各社の経理状況原料炭を引き上げました後に、なおその経理の状況がどのようであるかということも当然御検討になるであろうというふうに想像をいたします。そういたしますと、将来いかにあるべきかという基本問題と並行して、現状をどうするかということについておそらくいろいろな御議論が出るであろうということは想像するにかたくございません。したがって、体制部会において正式の答申というような形でございませんでも、多数意見として当面の問題をどうすべきかという御意見がかりに出ましたときには、私は、関係方面にその体制部会の御意見を十分御理解を願って、そうして、できることならば御協力を願いたいということをお願いするのにやぶさかではございません。
  60. 田畑金光

    ○田畑委員 私の質問はこれで終わりますが、最後の大臣の御答弁を聞いて、私も正直に言って明るい気持ちになりましたが、今後とも大臣石炭産業に対する一そうの理解と協力を切に期待申し上げて、質問を終わることにいたします。
  61. 鬼木勝利

  62. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 関連いたしまして、一言だけ質問、意見を申し上げておきたいと思います。  それは、炭鉱等が今日の苦境におちいったのは、歴代の政府石炭対策のあやまちからこれは起きてきておる。どうも答弁等を伺っておりますと、何か政府は自由主義経済下においてはあまり干渉をすべきじゃないというようなことを一貫して述べられておるようでありますが、私はそれを伺っていて非常に奇怪千万だと思っております。というのは、炭価の値下げについては圧迫干渉し、値上げについてはこれに触れるべきでないということは、私は、はなはだ無責任きわまる態度ではないかと思う。というのは、昭和三十四年から五年間にわたって毎年二百五十円ずつの炭価値下げを強制したのは、これはだれですか。これは政府じゃないですか。そのとき政府は、五年間に千二百五十円下げれば油に打ちかてるから下げろと言って、これは強制的に下げさせた。ところが、その当時から、炭鉱に必要な機材、しかも国鉄運賃、さらには物価はとめどもなく上がってくるということから、労働賃金も上げなければならぬ。そういう点から、最後の年の五年のときには、これは政府のあやまちであったから最後の二百五十円の値下げはストップするというようなこと等を現にやっておるじゃありませんか。そういうあやまちをおかしておる結果が炭鉱を今日の苦境におとしいれている。あのときに値下げを強制的にさせないでおったとするならば、炭鉱は今日の苦境におちいっておりません。この機材、輸送、物価、賃金の値上がりに準じて石炭炭価を上げていかなければならぬのであります。それをやっておれば炭鉱は今日の苦境におちいっていないのです。ところが、そういうあやまちをおかしておいて、あやまちの点はてんで一言も触れずして、ただ自由主義経済下において干渉することはどうか。何かはれものの上を手で静かにさわっておるという程度しか答弁されておりません。はなはだこれは遺憾です。そういう点から、この委員会においても後ほど全会一致の形で石炭対策に関する決議が出されるようになっておりますが、以上述べられたような宮津通産大臣答弁等によって政府の所信が明らかにされなければ、私どもは納得できません。したがって、そのとき当然私どもの決議に対して所信を述べられなければなりませんから、いま私のこれに対して、いや、伊藤君、あなたの言っておることは間違いだというならば、間違いだということを明らかにしてください。間違いでないとするならば、政府責任であることを明確にしてください。そして今後の具体的な石炭対策はこうして解決策をはかるということを明らかにしてください。この点、大臣答弁をされるならば私はそれを伺います。私の言っておることを全面的に認めるならば答弁されぬでもいい。反論されるというなにがあるならば反論してください。それによって全会一致の決議に対してわれわれもまた考えなければならぬ点がありますから。
  63. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府石炭対策として累次の施策をしてまいりました中で、賃金の上昇あるいは必要機材の価格の変動、国内における需給の見通し、あるいは海外からのエネルギー資源の価格の見通し等々、いろいろな要素についてその予測が正確でなかったということは、御指摘のとおり認めざるを得ません。また、正確でなかったことについては、それなりの事情もございましたと思いますが、しかし、そのこと自身は認めなければならないと思います。ただ、これは伊藤委員も御承認いただけると思いますが、その間政府は終始善意であって、何とかしてこのむずかしい産業が急激なショックを受けないようにという努力をしてきたことは、これは申し上げても間違でないと私は思います。過去におけるいろいろな努力、その努力の中にはいっとき石炭側に対してかなりきつい点もあったと思いますけれども、もし政府がいままでこういう努力をしてきたならば、今日の石炭業界はこのような苦境になったはずはないと言われる点につきましては、私、多少違った意見を持っております。しかし、大先輩に対してこれ以上申し上げますことは幾らか非礼にも当たると思いますので、私の所感としてはそのようなことを申し上げておきます。      ————◇—————
  64. 鬼木勝利

    鬼木委員長 ただいま委員長の手元に、田中六助君、岡田利春君、相沢武彦君及び伊藤卯四郎君から、石炭鉱業政策に関する件について決議せられたいとの動議が提出されております。  この際、本動議を議題とし、提出者から趣旨の説明を聴取いたしたいと思います。田中六助君。
  65. 田中六助

    田中(六)委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して、その趣旨説明にかえさせていただきます。     石炭鉱業政策に関する件(案)   わが国石炭鉱業は、第四次石炭政策実施以来昭和四十四年度の一カ年を経過したが、閉山は、八四四万トンに達し、今年度閉山見込みは、三〇〇万トンを上回ることがけねんされる。   このまま推移すれば“なだれ閉山”となり、石炭産業はもとより地域経済に重大な混乱をまき起こすおそれがある。   政府は、先に石炭鉱業審議会体制委員会を設置し、石炭鉱業の全般的な体制のあり方について諮問を行なっているが、特に次の諸点についてすみやかにその措置をとるべきである。  一、炭鉱の生産基盤を確立するため、従来の炭価政策の経過にかんがみ、ユーザー側の協力を得て一般炭炭価の値上げについてすみやかに検討すること。  二、内外の原料炭長期かつ安定的な確保のための諸施策をさらに充実し、新鉱開発のあり方を検討すること。  三、一般炭のコークス化を積極的に進め、研究の総合的推進に留意するとともに、低硫黄一般炭確保を図ること。  四、労働力の安定的確保のため今までの諸対策に検討を加え、福利厚生施設、労働条件改善に努めること。  五、炭鉱保安体制を確立せしめるため、監督の強化および助成の充実について、さらに系統的かつ具体的な対策を進めること。  六、産炭地域対策および鉱害対策について一層の拡充を図ること。   右決議する。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  66. 鬼木勝利

    鬼木委員長 この際、岡田利春君から発言を求められておりますので、これを許します。岡田利春君。
  67. 岡田利春

    岡田委員 ただいま提案になりました石炭鉱業政策に関する件の決議に対して、賛成の意見を表明いたしたいと存じます。  先ほど来、本委員会で質疑応答がなされておりましたように、当面のわが国石炭産業課題は、その体制を整備すると同時に、今日の生産基盤の安定をいかにはかるか、ここにその問題点があろうかと思います。国際的には原料炭不足の動向がより一そう顕著になってまいりましたし、しかもこれは長期的な見通しに立っても、原料炭の入手には相当な努力を払わなければなりません。これができない場合には、わが国の鉄鋼生産はおのずから頭打ちにされる、こういうきびしい実情にあることを認識しなければならないと思います。一方において、わが国原料炭は非常に流動性に富んで、他の原料炭との配合については、その性格、質的に非常に特徴を持っておるのでありまして、そういう意味では、あらためてわが国原料炭について見直さなければならない時期に来ていると思います。しかし残念ながら、一部の炭鉱を除いては原料炭及び一般炭の併産状況でございますので、その生産基盤の確立は、何といっても、原料炭の炭価の問題のみならず、一般炭の炭価の動向についても十二分な注意を払わなければならないものと思います。いままでの歴史的な経過を見ますと、千二百円の炭価引き下げはそれぞれの石炭全般にわたって行なわれて、その後経済の動向とにらみ合わせて三百円の値上げが行なわれました。歴史的に、一般炭原料炭の炭価は同時にその値下げ、値上げが行なわれてきておるわけです。  また一方において、一般炭の需要先である電力の動向から申し上げますと、第三次政策では昭和四十五年度、九電力、電発その他の電力を含めて、三千万トンの石炭を電力で消化することを政府を決意したのであります。しかし、その後の石炭政策方向あるいはまたその結果として今日、昭和四十五年度の電力用炭は九電力で千四百五十万トンに想定をいたしておりまして、総電力で見ましても、当初政府が決意した三千万トンに比べれば約一千万トンの落ち込みがあるわけです。この一千万トンの分は油に代がえされておるのでございまして、当初政府が決意した面から判断をいたしますと、油と石炭の競合関係はありますけれども一般炭の炭価の値上げ措置ができないということになってはならないのではないか、私はそういう立場産業連帯性の立場に立って、一般炭の炭価の値上げについて、妥当な解決をすみやかにすべきであると確信をいたします。また、原料炭の問題については、いまさら私が申し上げるまでもございませんけれども、従来諸外国では炭鉄共同の体制原料炭の生産が行なわれてまいりました。しかし、最近の傾向としては、西ドイツに見られるように、炭鉄分離の状況にあります。しかし、国際的な原料炭の動向から判断をすれば、わが国原料炭確保は、非常に体質の弱まっている石炭企業政府のてこ入れだけで、はたしてこれが可能かどうか、こういう体制的なあり方についてはあらためて再検討する時期に来ておると判断をいたすのであります。したがって、生産会社である炭鉱側とユーザー側である鉄鋼あるいはまたガス、そういう相互連帯の関係において新鉱の開発等も当然検討すべき時期に来ていると思うのであります。そういう点で、いま体制委員会でも審議を進められておりますけれども、そういう角度からも新鉱開発、あるいはまた既存の原料炭炭鉱が毎年深部に移行してまいるわけでありますから、新しい深部のフィールドを開発しなければなりません。そういう石炭坑内構造が転換期に当面いたしておるのでありますから、そういう立場からも政策的な検討を進めるべきであると確信をいたすわけです。しかし、原料炭確保は、内外の原料炭確保といっても、さらに多くの問題点がございます。現在ヨーロッパですでに実用化されております一般炭を成型コークス化するこの方式をさらに一そう進めることが当面の緊急な課題であります。いわば適当な一般炭炭鉱が壊滅をしてからこれが技術的に解明されても、あまり大きな意味を持たないのであります。大体今日の常識では、一般炭原料炭をフィフティ・フィフティーの配合によって新しい成型コークスをつくる。すでに西ドイツでは二十五トンパワーの連続操業のコークス化のスタイルがもう実施されておる段階でありますので、わが国原料炭の需要動向と今日わが国一般炭の動向とを判断する場合に、この研究はすみやかに、急いで、早急に実用化すべきである。特に石炭利用という面から考えれば、この面に最大の力点を置いて、最大の措置をとっていくことが最も妥当ではなかろうか、このように考えるのであります。  また、わが国石炭産業がもしそういう要請にもかかわらず崩壊するとするならば、第一には保安問題でございます。最近若干落ちつきの動向にはございますけれども、もし従来のような、三池災害のような重大災害が次々と発生するとするならば、当然炭鉱労働者は離散するでありましょうし、また災害は閉山につながるという最近の傾向から判断しても、わが国石炭産業はこの面から崩壊する危険性があります。  また一方において、国際的に労働力不足であります。国際的に原料炭供給不足ということは、やはり国際的に炭鉱労働者確保が非常に大きな問題になってきている。そういう面から、諸外国における原料炭の開発あるいは増産が進まないという側面が非常に大きいウエートを持ってきております。そのことはまた、わが国においても今日炭鉱閉山になっているけれども炭鉱に長い経験を持っておる労働者が、安定性について確信の持てない状態において、ほかの産業転換している傾向が非常に強いことは、一方において閉山労働者が余りながら、一方において炭鉱労働者確保が不足だ、この面についてはやはりいままでの経過にかんがみて、労働力の確保基本的な石炭産業の安定ではありますけれども、それを前提として労働力の確保についてあらためて検討しなければならない。  この労働者確保保安確保わが国石炭産業歴史的な使命を果たす上の重大な要件であると確信いたします。  今日、もし石炭産業が崩壊したとしても、残された鉱害復旧、あるいはまた産炭地振興には、一九八〇年代を越え、その対策は継続的に進めなければならぬ事項であります。先ほど質問にもございましたけれども、そういう意味において、産炭地振興鉱害対策をより一そう充実する必要がありますし、また従来の産炭地振興政策の経過からかんがみますと、質的にいま産炭地振興政策転換期にあるとも言えるのであります。  私は、そういう角度から本決議案に賛成の意見を表明し、政府のすみやかなこれらの具体化に対する期待をいたしまして、意見を終わりたいと思います。
  68. 鬼木勝利

    鬼木委員長 本動議について採決いたします。  田中六助君外三名提出の動議のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  69. 鬼木勝利

    鬼木委員長 起立総員。よって、田中六助君外三名提出の動議のごとく、石炭鉱業政策に関する件を本委員会の決議とすることに決しました。  ただいまの決議について、政府の所見を承ることにいたします。宮澤通商産業大臣
  70. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨を尊重いたしまして行政を進めてまいりたいと存じます。
  71. 鬼木勝利

    鬼木委員長 次に、野原労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。野原労働大臣
  72. 野原正勝

    ○野原国務大臣 ただいまの御決議は、その御趣旨を尊重いたしまして、今後の政策展開を積極的に進めたいと考えております。
  73. 鬼木勝利

    鬼木委員長 なお、本決議の政府への参考送付等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 鬼木勝利

    鬼木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  75. 鬼木勝利

    鬼木委員長 質疑を続行いたします。岡田利春君。
  76. 岡田利春

    岡田委員 先ほど大臣への質問に引き続いて御質問いたしたいと思います。  先ほど来、わが国原料炭確保の問題につきまして、それぞれ意見が出されておるわけです。この機会に私はお伺いいたしたいのでありますが、すでに経済社会発展計画が策定をされて、わが国鉄鋼生産の見通しにつきましてもすでに推計をされておると思います。石炭政策の終了期限は、第四次政策昭和四十八年であります。経済社会発展計画の場合には、昭和五十年を一応目途にいたしておるわけです。したがって、わが国の鉄鋼生産の見通しというのは、その計画が達成できるかどうかということは、いろいろな要因があろうかと存じます。そこで、政府の確信のあるわが国の鉄鋼生産計画見通しは一体どう立てられておるのか、いろいろ数字はいわれておりますけれども責任のある御回答をいただきたいと思います。
  77. 山形栄治

    ○山形説明員 お答え申し上げます。鉄の長期の需給の問題でございますけれども、いまお話がありましたように、新経済社会発展計画におきましては、一億五千万トン程度の需要ということに一応政府内部で表現がきまっておるわけでございますけれども、いま御指摘もありましたように、今後の労働力の問題、それから原材料の問題、それから輸送力の問題等、いろいろと詳細に詰めなければいかぬ問題もございますので、いま通産省内部におきましても検討をいたしておる段階でございます。まだ成案を得ておりませんけれども、大体一億五千万トンを若干こえる程度になるのではないかと考えておる次第でございます。
  78. 岡田利春

    岡田委員 昭和四十八年度が粗鋼で一億一千万トン強、さらにまた昭和五十年には粗鋼で一億五千万トン強、大体一千万トンくらいずつの相違がありますけれども、当初からの鉄鋼生産の推計ではそう大きな数字の狂いはなかったと思うわけです。従来の石炭比は〇・八一程度でありますから、大体石炭比については私は長期的に見ても変更がほぼないと見ていいのではないか、かように実は考えておるわけです。いまいろいろな要因はございますけれども、当委員会として、ではこの昭和四十八年−昭和五十年のこの鉄鋼生産を完遂するためには当然それに伴う原料炭確保が必要であります。この見通しについてはいろいろいままで資料も出されておりますけれども、不安定要素というものがずいぶん私は大きいように見ているわけです。この点については、この計画を立てられるにあたってどういう対策考え、そしてどういう見通しを持たれておるか、この機会に承っておきたいと思います。
  79. 山形栄治

    ○山形説明員 お答え申し上げます。ただいまお話ししましたように、生産を粗鋼ベースで五十年で一億五千万トンといたしますと、非常に単純な試算でございますが、これに要します原料炭は約一億トンになる、計算上そういうふうになるように考えております。この一億トンの確保の問題でございますけれども、いまのお話にもございましたように、非常にいろいろな要素がからみ合っておりますので、今後新経済社会発展計画におきましては、極力新しい発想のもとにこの原料炭確保については努力をすべきであるということが指摘されておるわけでございますけれども、われわれのほうといたしましては、海外の原料炭の入手につきましても、従来と違いました新しい開発方式等を今後検討を至急に進めなければいかぬじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
  80. 岡田利春

    岡田委員 昭和四十四年度の資料はまだむずかしかろうと思いますけれども、海外から原料炭をそれぞれの契約に基づいて供給を受けておるわけですが、この実質輸入率というのは、昭和四十四年がわかれば四十四年をお聞きしたいのでありますけれども、わからなければ昭和四十三年度でけっこうですが、輸入契約に対してどの程度の実質輸入率になっておりますか。
  81. 山形栄治

    ○山形説明員 海外の原料炭の輸入の比率といいますか、輸入率といいますか、一応契約に対応いたしまして、いろいろとこれは仕入れの国及びそれぞれの案件によって違いますけれども、大まかに言いまして、契約ベースよりほぼ一〇%ぐらいショートするようなかっこうで推移しておるやに聞いております。なお参考に申し上げますと、四十四年度の国内の弱粘の引き取りが九百八十万トン、海外からの輸入が四千四十五万トン、これは強粘、弱粘両方合計でございますが、そういう実績になっております。
  82. 岡田利春

    岡田委員 私の資料によりますと、昭和四十三年度の実質輸入率で見ますと、豪州炭の場合には強粘結炭七七・五%、弱粘は七〇・四%なわけです。きわめて入着が不安定な動向で推移をしておるわけです。またアメリカにおいてもスポットものについては四四%、カナダ炭については八〇・二%、ポーランド炭については七七・六%、ソ連炭につきましては九二%、こういう輸入率になっているわけです。しかし、いま述べられた昭和四十八年−昭和五十年の原料炭確保の面から言いますと、豪州炭のウエートが非常に強まってくると思うわけです。そういたしますと、この四十三年の動向がなぜこうであったかという理由を分析しますと、豪州の場合にはまず労働問題がある、あるいは開発のおくれ、あるいは積み込み設備その他の事情によるもの、こういう理由があがっております。あるいはアメリカの場合には労働者の不足、黒肺病ダスト規制のストライキ等が四十三年には行なわれている、高金利、高賃金という課題石炭産業はかかえている、こういう理由がそれぞれ分析をしますとあげられてくるわけです。そういたしますと、原料炭確保ば、ウエートからいって、オーストラリアがずっとふえてくるわけですから、豪州の動向は非常に注意深く検討しなければならないと思います。大体昭和四十四年にはオーストラリアから一千百二十万トン、これが五十年になりますと、大体三倍の三千五百万トン程度を期待する。米炭については、四十四年が一千四百五十万トン程度で、五十年には二千万トン程度を期待する、こういう動向になっているわけです。それだけに今日のそれぞれの産炭地の動向というものが原料炭確保の上に大きな対策上留意をしなければならない諸点として私はあげられてくるのではないか、こう考えるわけです。  そういたしますと、先ほど大体五十年度で一億トン程度原料炭が必要である。いまままでの長期契約の内容等から分析いたしますと、一億トンの原料炭が必要であるということは、その場合大体二千万トンないし二千万トン強の原料炭が不足になる、こういう推計ができるのでありますけれども、私のいま述べた推計については誤りございませんか。
  83. 山形栄治

    ○山形説明員 海外の原料炭のいまの入着の比率等に関連しまして、先生の御指摘は非常にそのとおりだと私は思うのでございますけれども、現在の開発方式といいますのが、原則として産炭国まかせのかっこうを主としてとっておりまして、いまお話しのように、その産炭国の労働力、港湾施設等々はそれぞれの国の開発にまって、日本側としてはそれを適当なる価格折衝をして買うという体制をとっているわけでございますが、今後は日本の鉄鋼資本も、当然と思いますけれども、自力でもって向こうの輸送施設なり、むしろ山の開発そのものに相当積極的に入っていかなければいかぬと思うわけでございます。したがいまして、ただいま最後に御指摘の一億トンのうちどのくらいが新規開発であるかということにつきましては、まだ五十年は先の問題でございまして、今後いわゆる長期契約ベースの増加も考えられますので、どの程度が純粋の新規開発ということは申し上げられませんけれども、まあ相当程度の新規開発が必要であることは、それは御指摘のとおり確かだと思います。
  84. 岡田利春

    岡田委員 海外原料炭開発株式会社ができて、従来の方式より積極的に資本参加あるいは共同合弁会社をつくって開発をする、こういう方向が打ち出られたことは私はきわめて当を得ていると判断をするわけです。しかしながら、今年度は調査段階ですから、結局実施段階考えて生産時点というものを想像いたしますと、大体昭和五十年ぎりぎりの段階でなければこの政策の実質効果は私はあらわれてこないのではないか。したがって、当面順調に鉄鋼生産を伸ばして原料炭確保するという立場に立つ場合には、結局長期守定的な長契を、さらにこれを増加さして、安定的に入手をするという方法、それと国内原料炭一定割合というものは当初計画どおり確保していくということが当然考えられていかなければならないと思うわけです。ただしかし、海外の長期契約は、先ほどの入着率から見ましても非常に不安定要素があり、日本石炭産業がかかえておる問題と同じような問題が海外にもあるわけです。あるいは価格の面では、今年米炭は三ドルないし三・九ドル上がっておるわけですが、これまた来年、再来年と炭価が上がっていく動向にあることも、大体常識的にそういう動向にあることは一致した見方ではなかろうか、こう私は判断をいたすわけです。そうすると、もしこの経済社会発展計画の中で鉄鋼生産というものが当初の見込みより落ち込むとすれば、鉄鉱石の面からそういう事態が来るのか、原料炭の入手の確保が困難なためにそういう事態が来るのか、あるいは労働力不足、労働確保ができないから設備があっても設備のフル稼動はできないという面から来るのか、この要因については問題点としてどのように把握されていますか。
  85. 山形栄治

    ○山形説明員 御指摘のとおり、一億五千万トンという数字につきましては、現在鉄鋼業界の中においてすら、これは若干過大ではないか、過大といいますか、供給力の面から一億五千万トンの達成はむずかしいのじゃないかという意見もあることは確かでございます。その場合に、それは何でそういうことが供給カサイドで言われるかということにつきましては、いまのお話のように、原料炭だけでもなく、労働力問題だけでもなく、日本経済全体の中の動きとしてとらまえられていわれているように考えておりますが、どちらかといいますと、現在これは一部の意見でございますので、公式なあれではございませんが、鉄鋼業界などで言っておりますのは、原料炭問題よりは、日本経済全体の労働力問題というところのほうが現時点では強いかっこうになっております。ただ、原料炭問題がそれでは非常に程度が低いかといいますと、そういう議論をなさる方の相当部分がやはり原料炭問題を意識していることは確かでございますけれども、どちらかというと労働問題のほうが現時点では強いというように聞いております。
  86. 岡田利春

    岡田委員 では昭和四十八年度で見れば、四十八年度ですからあと三年後に四十八年が来るわけですが、昭和四十八年度に一億一千万トン程度と見れば、いまの長契並びにさらに増加協定を結ぶ、こういうことを前提にしても、なおかつ一億一千万トンの粗鋼生産を見込めば、大体私の試算で一千万トン程度原料炭の不足が見込まれるのではないか。もちろん長契は増加していくわけですけれども、にかかわらずさらに別な方法でとにかく努力しなければならぬのは、その場合には一千万トン程度と推計されるのではないか、こう思うのですが、この点についてはいかだですか。
  87. 山形栄治

    ○山形説明員 輸入炭の問題でございますと、これは先生全部非常によく御存じのことと思いますけれども、一要なる地域がアメリカ、カナダ、オーストラリア、ソ連、ポーランドというふうになっておるわけでございますけれども、アメリカ市場というのが非常に古くから、もちろん世界的に有名な粘結炭市場でございまして、ほかの地域は、日本側からの買い付けにつきましても体制が整い、かつ長契の体制も非常に整っておるわけでございますけれども、アメリカ市場というのが山も非常に多いのと、こちらの買い付けのしかたが非常にばらばらで現在推移しております。今後も米炭の買い付け体制というのが、一本になってしっかりした長契の形態がとれるかどうか、ここはポイントであるし、また御存じの、非常に良質の強粘結炭はアメリカだけにしかない事情にございますので、問題は、このアメリカ市場、米炭、アメリカのたとえば国内の電力用炭の振りかわりというような問題、この辺がどういうふうに、これは日本の輸入価格との函数の問題でございますが、どういうふうに動くかによって絶対不足量というのがどのくらいになるか、これは非常にわかりにくい問題でございます。非常に大ざっぱな、現在の推計をそのまま延ばすというようなことでありますれば、先生のお話しのような数字になるのではないかという感じもいたしますけれども、その辺、実質的にアメリカの国内炭全体の需要の中に日本の輸入がどういうふうに入り込むかということは、相当流動的な要素も持っておりますので、きちっとわれわれのほうでどのくらいということはちょっと申し上げにくい点があるかとも思います。
  88. 岡田利春

    岡田委員 いずれにしても、確かに米炭の場合にはいま言われたような事情がございます。したがって一応米炭の見方については横ばい傾向、ただし豪州炭についてはこれば二倍以上、大体四十三年千百七十万トンですが、四十八年には大体二千五百万トンぐらいを豪州炭に期待をするというように見ても、大体入着減一〇%を見れば、多少クレームがあっても、相当な原料炭が不足をするということだけは間違いがないのではないでしょうか。
  89. 山形栄治

    ○山形説明員 その点は御説のとおりだと思います。
  90. 岡田利春

    岡田委員 第二の問題としてお聞きいたしたいのは、きょう決議にもございましたけれども、昨年新しい予算として、一般炭の成型コークス化の予算がつけられているわけです。工業技術院から参っておると思うのですが、工業技術院の試験所である川口の資源研究所ですか、北海道工業開発試験所並びに石炭技術研究所、この三つが、いずれも成型コークス化の予算がついて、いま研究をされておるわけです。この研究の動向について、研究しているのは一般炭の成型コークス化でありますけれども、方式が違うわけですね。それについて、どういう方向でこの研究を進められておるか簡単にお伺いしたいと思います。
  91. 朝永良夫

    ○朝永政府委員 一般炭によります製鉄用のコークスの製造に関しましては、いま先生御指摘のように、現在資源技術試験所、それから北海道の工業開発試験所、これは工業技術院傘下でございます。それから石炭技術研究所において研究を行なっておりますが、この三つの研究所の研究におきます関連は次のようでございます。資源技術研究所では、昭和三十八年度から四十三年度まで、基礎的な小規模の試験を行ないまして、その研究成果をもとにいたしまして、四十四年度から石炭技術研究所が次の段階の中規模試験を行なっておるわけでございます。それから北海道工業開発試験場におきましては、昭和四十五年度から、いま申し上げました二つの研究所におきますコークス製造法の中で、縦型乾留炉を横型の乾留炉にいたしますことによって、原料の条件に応じたプロセスをいろいろ多様化いたします研究を行なうことをいま北海道のほうでやっております。このように三つの研究所でそれぞれ行なっておりますけれども、それぞれ適切な分担を行ないまして、一つの研究目的を達成するように努力しておるわけでございます。
  92. 岡田利春

    岡田委員 いま西ドイツ並びにベルギーで、すでに小型でありますけれども実用化されておるわけですが、いまわが国で研究しているのは、この形式にとらわれないで、当然特許あるいはノーハウに問題がございますから、これにとらわれないで、新しい技術開発の分野として進められておるように聞いておるのですが、そう理解して間違いございませんか。
  93. 朝永良夫

    ○朝永政府委員 日本におきます炭種はドイツとも違いますので、日本独特のやり方とお考えいただきたいと思います。
  94. 岡田利春

    岡田委員 私の報告を受けておる範囲では、たとえば北海道工業開発試験所の場合には、成型コークス原料炭並びに一般炭の混合比率は四五の五五かあるいは五〇、五〇か、この前後の見当で成型コークス化の研究を進めるということに私自身は承知しておるわけですが、他の場合にも大体そういうフィフティー・フィフティー前後の程度の混合比率で成型コークス化の方向で研究をされておるわけですか。
  95. 朝永良夫

    ○朝永政府委員 資源技術試験所と石炭技研において行なっておりますのは、七、三の割合で行なっておりますが、北海道のほうは先生御指摘のように多少粘結炭を多くした研究をいま考えておるわけでございます。
  96. 岡田利春

    岡田委員 院長も先ほど来から石炭施策についていろいろ質疑答弁をお聞きになっておったと思うのです。今日の原料炭不足をどう一体解決をしていくか。一つには、いろいろな方式を考え出して積極的に、これはいろいろなしかたがあると思います。海外開発をする、またそれと諸外国の増産を期待をして長期安定取引を増加をしていく、国内原料炭の安定的生産をはかっていく、と同時に、もう一つは、いま進められておる一般炭原料炭化するということが原料炭確保方向であろう、こう思うわけです。しかし石炭の動向というものは急激に撤退作戦に入っておるわけです。そういう面から見て、随伴一般炭と、一般炭のみ産出をする一般炭炭鉱石炭地域的にはずいぶん条件が違うわけですね。サルファが多いとか、極端にサルファが少ないとかいろいろあります。あるいはまた灰分溶融度についても違いがあるでしょうし、工業分析の中ではいろいろ違いがあるわけですが、そういう面を総合的に判断をしますと、やはりこの成型コークス化の方向により残しておきたい炭鉱、しかしながら無機、有機の硫黄分のために有機サルファがなかなか抜けないというような面があれば、これまた問題点が出てくるでしょうし、とにかくいずれにしても、そういう総括的にいまのわが国石炭全体から判断した場合に、期待をする方向閉山が進み、残る山が残るかというと、あながちそうでもないのではないかと思うのです。たとえば羽幌や本別、幌内、太平洋、美唄——美唄はちょっと除かれますが、こういう炭は混合分だけを除くならば、いまでも百五十万トン程度原料炭に可能なわけです。しかしながら、それでは相対的にコストが合わないから除かないで、電力用炭に供給しているわけです。そういう面から考えますと、私は、この研究が相当時間を要しますと、全然意味がないということではありませんけれども、そのときには昭和四十八年度三千六百万トン程度というのが二千五百万トン程度に落ち込んだり、三千万トンを切ってしまったということになってくると、国内の石炭立場から見れば、ちょっとタイミングを逸するようなことになりはしないか。しかし、その研究が完成をすれば、外国から一般炭も輸入してけっこうできるわけです。そういうことは十分承知をいたしておりますけれども、国内の石炭産業という立場から見れば、タイミングを逸することになりはしないかというような懸念が実はあるわけです。私はかつて委員会で、そういう意味ではもちろん石炭の性質が違いますから、そのままプラントを持ってきて、そしてまた特許技術を買ってきてすぐやるといっても、簡単にできるものではないでしょう。それは承知をいたしておりますけれども、とにかくそういう面も駆使をしながら、せっかくこういう研究を二カ所でもやっておるわけですから、一方においては最も技術的に情報のあるものを促進して、早目にこれを実用化する、一方においては、多少おくれても、将来一般炭を輸入しても原料炭をつくることは可能なわけですから、そういう意味では日本的なものを時間がかかっても従来の研究を続けていく、こういうような角度に立って研究を進められるほうが現状に合うのではないか。いままで研究されてきた方に対してこういうことを言うのは非常に失礼でありますけれども、実践の面から考えますと、そういうことが望ましいんじゃないか、こういう気持ちがあるわけです。この点についてどうなのかということが一つ。  それと、そういうスピードを上げるという面から見て、そういう場合には予算上何か問題点はないか、この点についてお答え願いたいと思うのです。
  97. 朝永良夫

    ○朝永政府委員 タイミングの問題につきましては、先生御指摘のとおりでございますが、現在石炭技研で行なっておりますのは、一時間当たり二トンの規模の試験段階でございまして、この試験につきましては、高温の焼成工程の温度コントロールの問題であるとか、あるいは成型コークスの亀裂の問題であるとか、今後それをスケールアップしたり企業化いたしますためのいろいろな問題点がございます。それで鋭意努力しておるわけでございますが、何ぶんまだ基礎的なものがすっかり終わってないということもございまして、今後スケールアップのめどをつけますのにかなり時間を要するのじゃないだろうかというふうに考えておりますのがまことに残念でございます。それで、いま先生御指摘のような問題もあろうかと思いますが、その点につきましては、私どももなお十分研究を要するかと思っております。  それから予算上の問題でございますけれども予算のほうは、従来、資源技術試験所におきましても、先ほど申し上げましたように、数年にわたりまして年間約一億の予算を使っております。現在でも、予算のほうといたしましては、十分というと困ると思いますが、われわれの要望するものはいただいておる。まあ予算だけたくさんつけましても、それで時間が短縮されるかと申しますと、そういうわけにもまいらないといま思っておるわけでございます。
  98. 岡田利春

    岡田委員 もちろん研究でありますから、また結果としてこれが実用化できるかどうかという問題も私はあろうかと思うのです。経済ベースの問題もございましょうし、たとえばせっかく研究されて産炭地振興予算までつけてやった企業であっても、これは経済ベースから見てできないという問題があるわけですから、そういう点で非常に問題があろうかと思いますけれども、私はやはり今日のわが国石炭産業の情勢から見て、そういう意味では研究の分野に立ち入るわけではございませんけれども、実用化していく近道を検討していくといいますか、そういう意味で私は積極的な検討をこれからさらに願えれば幸いだ、こういう気持ちを実は端的に院長さんに披瀝をしまして、この面に対してより一そう期待にこたえられるように御努力を願いたい。時間がありませんので、その程度でとどめておきたいと思います。  次に、最近の保安状況の問題ですけれども、重大災害につながるような保安上の問題、これは人が死ななければあまり重大災害と言わないわけですけれども、たとえば事故者か罹災者かがいなくても、これは間違えば重大災害につながっていく、こういう傾向、あるいはまた実際に多くの人々が罹災をしている重大災害、こういう災害があるわけです。では、この災害の防止をするためには何が一番問題点になっているのかという点について、端的にひとつお答え願いたいと思うわけです。
  99. 橋本徳男

    ○橋本(徳)政府委員 炭鉱の災害につきましては、御承知のように、災害発生とともに、当然その個々の災害ごとにそれぞれそれなりの原因がございます。ところが、最近のいろいろな傾向を見てまいりますと、こういったいろいろな災害に共通した基本的な問題、これは一つには経営者そのものの姿勢の問題もあるだろうとは思いますが、基本的な問題としましては、やはり炭鉱の本来の姿として、坑内におきまする構造というふうなものを完全に整備して、その中において危険要素を排除した形において作業を行なうといった、そういう本来の姿が必ずしも十分にできていないというふうなところに、いろいろな災害の原因の共通的な問題があるのではないかというふうに私考えております。したがいまして、そういったような問題につきまして、現在、鉱山保安協議会というところにおきましても、基本的な問題としてこれを掘り下げ、検討を進めておる段階でございます。
  100. 岡田利春

    岡田委員 時間がありませんから……。  きょうの決議にもございますけれども保安確保の面でこれはますます重大になってくるわけですが、この保安確保について、従来どちらかといえば技術職員系列があって、労働者保安に参加をするというのは法律的に保安委員会がある。しかし、いろいろな面に労働者を参加をさせるのを排除するという気風というか流れがあったと私は思うわけです。しかしその結果、災害はいずれにしても重大災害が頻発をしてきたという経緯にかんがみて、いま炭鉱というものは生産体なんですね、石炭をどう出すか、売ることについてはあまり問題がないわけですよ。そうすると、生産体が安定的にあるためには、むしろ積極的に労働者保安上に参画をさして、そしてこの保安確保し、生産を安定化していくという点について、さらに一そう新しい角度からこの面について検討する必要があるのではないか、こう思うのですが、端的にお答え願いたいと思います。
  101. 橋本徳男

    ○橋本(徳)政府委員 鉱山の保安につきましては、おっしゃいますように、これは労使一体になりまして保安体制を確立し、災害につながる諸要素を排除していくというふうなことはぜひ必要だと思っております。したがいまして、現在におきまする保安法におきましても、御承知のように労働者保安に関するいろいろな意見の反映するような制度、たとえて言いますれば保安委員会あるいは労働者による申告制、こういったような制度が設けられてはおります。ただしかし、いろいろ従来の実態を見てまいりますれば、たとえば保安委員会等が、ほんとうにその山における労働者考え方なりあるいはまた労働者全体のいろんなかかえております保安上の問題というものが、必ずしも十分に反映されていないという点をわれわれは十分承知しております。したがいまして、そういったいわゆるより高度な形においての労働者の意向というものを、個々の山におきまするほんとう保安対策面にどうして反映させるかということにつきまして、従来の気風もありますし、それからまた従来やってきたいわゆる慣行もございます。したがいまして、そういった面につきまして反省をし、いかなる方法を講ずることによってより一そうそういった意思の反映が保安面にできるかというふうな点につきまして、せっかくの提案でもございますので、新たに保安協議会にそういう問題についての検討をお願いし、早急に結論を出したいというふうに考えます。
  102. 岡田利春

    岡田委員 いま保安局長答弁もありましたけれども、四月二十八日に合理化部会と雇用部会との合同部会が開かれて、従来「石炭鉱業の合理化に関する重要事項」としては、「石炭の有効利用に関する新技術の開発」、「近代的な経営管理技術の普及」という二つの項目であったわけですが、この部会では新たに三つ程度の問題点が項目として追加されているわけです。そのうちの特に「保安確保のための坑内骨格構造の整備および保安施設の整備拡充を推進するとともに、保安技術の開発および普及を図る。」という項目があるわけですね。私はこの項目が気に食わないのではなくして、なぜ保安に限ったのか。保安上、坑道掘進のおくれがある、骨格構造上の問題について整備をしなければならない問題があるということは、当然生産上も骨格構造の整備や坑道掘進のおくれがある、炭鉱保安の面で保安だけにこういう問題を限っておるということは、どうも合理化部会の認識について疑わしいという感じが実はするわけです。ですから、保安の面では骨格構造や坑道掘進のおくれを認め、では、近代的な安定的な生産体制の面では、この面にはどうなのか。そうであれば、合理化部会の新しい課題として、この問題は当然大きな柱として保安と生産の両面で位置づけられなければならない問題点である、こう思うのですが、この点についてはいかがですか。
  103. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。御指摘の点につきましては、保安の面からの表現でございまして、生産面についての坑道掘進についてはどうか、それは落としたのではないかという点でございますが、これは二の項で、「昭和四十五年度における石炭坑の近代化に関する事項」というところで、「安定的な生産体制を確立するため、炭層探査および坑道掘進を促進し、効率的な坑内構造の造成を図る。」ということで、生産面のほうは別途に述べておるわけでございます。
  104. 岡田利春

    岡田委員 そうしますと、(2)の「近代的な経営管理技術の普及、活用を図る。」中にその点は含まれておる、こういう理解でよろしいわけですか。
  105. 本田早苗

    本田政府委員 御指摘のとおりでございます。
  106. 岡田利春

    岡田委員 私はこの項目については、保安でそうあげなければならぬという問題は、生産の面から見れば、単に(2)の「近代的な経営管理技術の普及」の中の項目というよりも、今日の石炭の生産構造を見ればここが一番大事ではないのか。これが整備できないで、近代化も技術開発が伴っていくというふうには考えられないわけです。基本なんですから、骨格なんですから。ですから、少なくともこれから合理化の場合の基本は、骨格構造、坑道の、ぜいたくをいえば完全後退式の採炭体制、その上に重装備の機械が配置され、新技術が開発されていく、こうであらねばならないと思うわけです。そういう意味で、私は、これが基本であり、前向きの政策を進める場合にここにポイントを置かないと、日本石炭産業というものは安定しない、炭価を上げても結局くずれてしまうということになると思うのです。そういう認識については一致できますか。
  107. 本田早苗

    本田政府委員 御指摘の点につきましては、坑内の骨格構造の問題ということになりますと、生産体制の問題ということでございまして、さらに体制委員会で十分審議されると思います。これにつきましては、われわれといたしましては、やはり近代的な生産体制の確立が基本的に最も必要だというふうに考えておりまして、石炭対策としては、坑道掘進費の補助金あるはい近代化資金の貸し付けということによりまして、骨格構造の改善を助成するという体制にあるわけでございます。炭鉱の生産基盤の確立ということにつきましては、最大の効果が発揮されるように期待をいたしておるわけでございますが、これについてはさらに体制委員会においての御意見も承りたいというふうに考えております。
  108. 岡田利春

    岡田委員 時間がありませんのですが、今度の決議で労働問題について決議をしてあるわけですが、炭鉱労働者の問題について、実は労働省と通産省共管のような形で、炭鉱労働力の確保ということをやらなければならぬ仕組みになっておるわけですね。たとえば離職金は通産省で、しかも合理化事業団で結局離職した者に離職金を払うわけですね。しかしこれは直轄従業員にしかないわけですよ。組夫は対象にならないわけです。一方、労働省の黒い手帳は、直轄労働者であろうと組の労働者であろうと適用されておるわけですよ。離職金というのは、その炭鉱閉山になり、炭鉱をやめることによって離職するから支払いるするわけですね。ですから、労働省と通産省の炭鉱労働者の問題に対する取り扱い方がどうも統一されていないのではないか。労働省の立場からいえば、離職するんだから直轄の工員も組の工員も黒い手帳を出すわけなんですから、せめて離職金だけは同じく扱うべきではないのかということが、私は従来からも疑問であった。今回の政策の場合も、一応時間切れで、それぞれの企業が一カ月の見合いで手当てをするということで終始をしてきたわけです。そういう意味においては改善されなければならないのではないかというのが第一点。  それから第二の問題は、これは通産省所管の体制委員会石炭鉱業審議会労働確保の問題をいま議論するわけです。もちろん労働省からも参加はいたしておると思いますけれども労働力を一体どう確保していくか、また撤退する場合には体制的に労働力の分散あるいは炭鉱への転換、そういう総合的な政策をどう扱っていくかというのは通産省ではできないわけですね。閉山すると今度は労働省でやってくれと、こうなるわけですよ。出すものを出してしまったら、これはあと労働省でやってくれ、こうなるわけです。この点は石炭に関しては両方に法律があるわけですけれども、どうも統一性を欠いておる。しかも労働力の確保がこれからの重要な課題となってくるならば、石炭鉱業労働者に対する労働政策は、通産、労働で統一的な政策が立てられなければならない、私はこう考えるわけです。そういう点について別に矛盾がないと考えられておるか。さらに、体制問題というのは労働力の把握が非常に大事だから、そういう点についてもさらに検討していくのか。それは単に通産サイドの強い立場だけではなくして、労働省と通産省が対等の立場で検討されていく意思があるのか。これに対して労働省はどういうお考えを持っておるか。双方からお聞かせ願いたいと思います。
  109. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。組夫の離職にあたっての離職金の問題につきましては、先生御承知のとおりの議論が行なわれました。離職金を制度として払う対象というのは、相手の企業と直接の契約のある者ということに議論が集中されておりまして、組夫については、下請企業者との間の債務という形、間接に組夫に対する債務があるという形になるわけでございまして、現在一応直接雇用者ということでやっておるわけでございますが、現実の問題は御指摘のような形で一応解決をいたしておるわけでございます。今後の問題といたしまして、御指摘のように解決できるかどうかについては、いまのところ私は確信を持てませんが、問題点であるということは十分認識いたしております。  それから労働確保の問題については、やはり閉山に伴う労働者の意思というものが第一でございますので、これについては労働行政の問題であろうと思います。われわれといたしましては、閉山にあたって労務者が離職する際に、できるだけ炭鉱の業種の中に残ってもらうように希望し、労働省にもお願いをいたしておりますが、労働省としてもその線に沿って現在いろいろ御指導いただいております。十分連絡をとりつつ、御指摘のような成果をあげてまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  110. 住榮作

    ○住政府委員 従来私どものほうでやっております仕事といたしまして、歴史的に考えてみますと、やはり離職者対策が中心でございまして、石炭産業から職離された方々をどう他の産業に就職をさせるか、こういうことが重点になって進んできましたことは御承知のとおりだと思います。と同時に、今後の問題といたしまして、石炭産業の安定的な成長のためには、必要な労働力の確保ということも、従来と違って非常に重要になってきつつあると考えておるわけでございます。そういう意味で私どもの従来の考え方につきましても、いろいろ再検討を加えていくべき問題点があると思います。そういう意味石炭産業の今後のあり方等にも非常に関係が深くなるわけでございますから、通産省との関係におきまして、そういう意味での体制というもの、連絡というものを、いままで以上に考えていかなければならないと思っております。なお鉱業審議会関係につきましては、これは所管は通産省でございますけれども、私どもといたしましては、それは一体となってやっていくというような体制に従来ともなっておりますので、所管の点は別に支障になるとは考えておりません。
  111. 岡田利春

    岡田委員 政府同士ですから、にこやかに、なごやかに、ドッキングで答弁されているような感じがするわけですけれども、このポイントはこれから非常に大切な問題ですよ。先ほど言ったやめていく場合の問題もあります。制度的にはやはり社会的に問題があるわけです。この問題がありますけれども労働力を確保する面でも問題点があると思うのです。というのは、通産省ベースでは、労働雇用政策というものについて、そう画期的なものを考え出すという力はどっちかというと弱いと思うのですよ。しかしながら労働省が考えても、これはやはり企業家なり含んでこれが理解されなければならないという問題があると思うのです。たとえば労働力の把握をするために、もし統一的に把握する何らかの措置考えるということになると、これは通産省だけでもできないだろうし、労働省だけでもできないだろう。雇用政策の問題については非常に大きな柱のわけですから、もう一歩重なり合った立場に立って、雇用問題、労働政策考えていく、そのことが非常に大事だと私は思うわけです。たとえば炭鉱における勤続年数というものを他の企業に通算するとかいうことを、もし統一把握のために必要だということで考えるならば、やはり相当な研究がなされなければならぬし、その面では労働政策立場だけで考えても、通産省がそういう点で企業に対して理解を求めるとか、必ず何かそういう重なり合ったものが考えられなければ、炭鉱労働者確保の前進した政策というものは成り立たないと思うのです。  そういう意味で若干関連して聞いておきます。これは労働省にお聞きしますけれども、いま炭鉱離職者は、長年炭鉱に働きながら、技術を持ちながら、なぜ炭鉱に行かないでほかに行くのか、どういう理由によるのか。それから炭鉱に行く人もおりますね。比較的中高年齢層が炭鉱に行くわけです。圧到的多数の人がほかに行くのに、なぞこの三分の一、二七、八%程度の人はまた炭鉱に行くのか。これを把握することがこれからの労働確保の面で非常に大事だと思うのです。その点についてはどういうような見解を持たれておりますか。
  112. 住榮作

    ○住政府委員 離職した方々があるいは他の産業に行く、あるいはまた炭鉱に戻られる。これにつきまして、たとえば年齢の関係とか、産炭地域状況とか、いろいろなこまかい要因が関係すると思うのでございますが、そしてまたそういうものについての詳細なデータを実は持ち合わせておりませんので、一般的なことを申し上げてたいへん恐縮でございますけれども炭鉱を離職されて他の産業に行かれるという理由の根本には、石炭産業の将来についての不安感というものがどうしてもあるんじゃないだろうか。それに加えまして、たとえば災害とかあるいは地下労働という特殊な作業環境、さらには他産業と比べての労働条件の問題、こういうようなことを比較考量いたしまして、もう石炭産業に帰らない、こういうようなのが一般的な原因ではなかろうかと思っております。  さらに、離職し、さらに炭鉱にまた帰る、こういう方々の理由といたしましては、やはり長年従事されてこられた作業に対する経験というものを生かし続けていきたい、こういうようなこと。と同時に、炭住というような生活をさらに続けていくというようなこと等で炭鉱に戻る、と同時に、もう何年かつとめれば年金の資格がつく、こういうようなことも、再び炭鉱に戻られる理由になっておるんじゃなかろうかというように考えております。
  113. 岡田利春

    岡田委員 私も実際に個々に当たってみて、いま局長答弁と大体同じ理由だと思うわけです。特にその場合に、いま述べられなかった点で、私はこういう話を数多く聞いているわけです。中高年齢層であるし、年金の問題もあるし、なれているから行く、行っても、万が一またその炭鉱閉山になっても、他に転換はでき得る措置というものが備わっている、だから万が一また行った炭鉱閉山されても、それがさらに他に転換する場合にもそういう制度がある、こういう気持ちが非常に強いわけですよ。もしそれが、もう一回行ってどうなるかわからぬというなら、また行かない。また行って、もしつぶれても、さらに他産業転換する道はある、また、そういう制度というものがある、黒い手帳もあるということが、私は大きなささえになっていると思うのです。だから、一方においては、その制度があるから炭鉱にはまた行かないという経営者的サイドの意見もあるわけです。しかしながら、年金もあるしそれがあるから、おれはほんとう炭鉱は不安なんだけれども炭鉱に行くというのが炭鉱に行っているわけです。炭鉱に行っている理由を調べると、大体住さんが言われたものにその前提がついているわけですね。こういう理解を実は私は持っているわけです。いま労働省がそういう認識について答弁されたのですけれども、これからの離職者、労働制度を検討する場合に、そういう人々の考え方というものを把握しないで政策は成り立たないわけですから、私は数々多くの人々に会って話を聞いた結果そう思うのですが、通産省としても、なかなか会っておられないからわからないでしょうけれども、大体それはそうでしょうというような気持ちでございましょうか。
  114. 本田早苗

    本田政府委員 全体といたしましてはそうした状況であろうというふうに理解しております。そういう意味で、労働者確保の観点からまいりますと、石炭産業の将来についてどうなるかという点もはっきりさす必要がある、また、労働環境として安心して制度として石炭産業に従事し得る条件というものを充足するようにつとめねばならぬ、こういうふうに考えております。
  115. 岡田利春

    岡田委員 今度の四次政策で、結果的には残念なことでありますけれども、雄別の大手企業ぐるみ閉山が出たわけですが、この間の措置あるいは大体九〇%程度の人が雇用転換の先がきまっておるという点では、非常に従来にない努力と成果をあげたのではないか、かように実は私は判断をいたしておりますし、また評価をいたしております。そういう意味では端的に敬意を表しておきたいと思います。そういう点で今後の労働者確保、また撤退もあるわけですから、いま述べられた点、決議にもございますから、より総合的に検討されることを期待をいたしたいと思います。  最後に、産炭地振興の問題なんですが、その中に関連して特別交付金制度があるわけです。特別交付金の問題で、金の使用について一応強力な指導が行なわれておるわけですが、特に閉山をしてすぐの場合については、自治体としていろんな対策を立てなければならない問題点がたくさんあるわけです。そういう点で、たとえばトン当たり六十円、百万トンであれば六千万円ですか、そういう金が交付をされるという場合に、その費途については、たとえば地域ぐるみにある、ともにスクラップされる商店の転換問題、これは炭鉱労働者のようにささえがないわけですから、結局自治体がある程度の手当てをしなければならぬわけですね。そういう場合にはやはり弾力的にそういう特別交付金というものが効果的に使われることが望ましいのではないか、こう私は思うわけです。しかし、制度的に別にきびしい規制はないといいながらも、実際の運用の面においては、その点において非常にそれを弾力的に運用するということについては問題があるという意見が非常に多いわけです。この点は、地方自治体というのは議会もありますし、そういう地域ぐるみ転換をし、ほうり出されていく中小商工の方々、こういう面には、議会の決議を得ればそういう点の特別交付金が弾力的に効果的に使われることが望ましいのではないか、こう思うわけですが、この点についてはいろいろ心配されておりますので、この機会に伺っておきたいと思うのです。
  116. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。  御承知のように、産炭地域の市町村の財政が閉山に伴って著しく疲弊するという状況に対しましては、特別付付金の重点的交付ということで対処してまいったわけでございますが、それでもなお財政ショックが一時残るということに対しまして、御承知のように四十四年度から産炭地域振興臨時交付金制度というものが設けられたわけでございます。この運用についての御質問でございますが、本来交付金の運用ないし使途というものが閉山に伴う財政ショックの緩和ということでございますので、閉山に伴う緊急の民生対策あるいは企業誘致の促進といったような目的のものに充当すべきであるというふうに考えておるわけでございます。したがって、当該市町村との間で具体的な使途につきましてはよく話し合いをし、御理解、納得をいただいて充当するというようにいたしてまいったわけでございます。したがって、本来地方自治体として一般財源で経常的に実施すべき事業というようなものには充当せずに、閉山に伴う対策事業というものに充てていただかなければならないという意味で市町村とお話し合いをするということにいたしておるわけでございまして、具体的にはよく理解をいただいて、こちらでどうしてもだめだというふうな拒否をするというようなケースはございません。話し合いの上で、ごもっともであるという使途に自治体のほうでも使途をきめていただくという事態になっております。
  117. 岡田利春

    岡田委員 どうも時間が超過して恐縮であります。質問がまだ三分の一以上残っているのでありますけれども、時間でありますから終わりますが、先ほど大臣にも私質問しておりますので、きょう公益事業局長も来られたわけですが、電力問題、設備の動向あるいはわが国の電力の動向、いろいろ質問いたしたかったわけですが、時間がありませんので終わりますが、きょうは最後に、先ほど決議も出ておりましたから、十分ひとつ公益事業局長にも御理解を願わなければいかぬし、鉱山石炭局長は前公益事業局長でありますから、そういう意味で先輩後輩の関係になると思うのですが、この決議に盛られておる趣旨について通産省という総体的な立場石炭産業の悪戦苦闘している面も十分理解をいただいて、この決議が、具体的にはやはり局長以下のベースで話が進められるわけですから、その点の理解を期待するということを述べて、質問を終わりたいと思います。
  118. 鬼木勝利

    鬼木委員長 相沢武彦君。
  119. 相沢武彦

    ○相沢委員 先ほどに引き続きまして若干の質問をいたします。  これから注目されます石炭鉱業審議会のメンバーのことについてお尋ねをしておきたいのですが、従来まで、学識経験者、石炭、電力、鉄鋼あるいは労組代表と、各界のオーソリティーといわれるすぐれたメンバーで構成されておりまして、格段の御努力を伴ってきたわけでありますが、先日来設置されました体制委員会の審議は、さらにまた各方面の期待と注目が寄せられると思うわけでありますが、この体制委員会についてのメンバー人選について当局としてどういうような考慮をなさっているのか、その点をお尋ねします。
  120. 本田早苗

    本田政府委員 体制委員会委員の人選につきましては、石炭鉱業審議会の会長の指命ということに相なっておりますが、現在は十九名でございまして、中立学識経験者と、それから石炭経営者と労働者の代表、それに需要業界並びに産炭地域の自治体の代表の方をもって構成しておるわけでございます。
  121. 相沢武彦

    ○相沢委員 第四次答申にかかるとき、一部の関係者の中から審議会のメンバーの変更を主張する声もあったわけですが、その理由のおもな意見は、どうも石炭産業経営者の中には、石炭だけは別格だ、こういう企業エゴイズムが強いような方が多くて、どうしたら日本石炭産業全般が生きられるかという大局観に立った人を審議会にもっと選ぶべきではないか、こういう声もあったようでありますし、また電力、鉄鋼あるいはガス関係など関連産業の方々に対する、これは御希望ですが、もっともっと石炭産業そのものに対して遠慮なくびしびしとした御意見を述べられ、かつまた従来にも増した協力体制を願えるように政府としても考慮を払うべきじゃないか、こういうように考えるわけです。これまでも審議会の方々にはなみなみならない御努力や御苦労をいただいたわけでありますけれども、どうもそれだけの効果が期待し得ないまま今日まで続いてきたということは非常に残念でして、一つには政府があまり審議会に何んでもかんでもおぶさってきたというような声もあるし、また現状分析のための提出資料の作成に不備があるのではないかという声もあるし、とにかく重大な立場に差しかかっております関係上、石炭関係の当局側として、もっともっとしっかりした態度で臨んでいただいて、この審議会あるいは体制委員会の効果というものが十二分に発揮されるように特段の奮起を願いたい、このように思うわけですが、それに対する局長の御決意を承っておきたい。
  122. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。委員の構成につきまして御意見を承りましたが、われわれといたしましては、さように実は考えておらないわけでございまして、石炭オンリーの立場から、石炭だけの立場で今回の問題を結論を出そうというようなことではなくて、新しい事態の中で今後の石炭についてどうあるべきかということを十分検討願いたい。その際、需要業界の方につきましても、あるいは産炭地域関係もございますので、これらの方にも加わっていただいて、御指摘のように今後石炭鉱業に対する理解、協力を求めなければというふうに存じておりますし、新しい時代に即した真剣な御審議をいただけるというふうに期待しておりますし、われわれといたしましても十分そうした資料を提供いたしまして御審議を願おうというふうに考えておる次第であります。
  123. 相沢武彦

    ○相沢委員 今後体制委員会での検討の結果が次々と出されてくると思うわけでありますが、それまでの期間、閉山を防止あるいはまたスクラップをスローダウンさせるための何らかの措置が必要であろうと思うわけであります。政府ば産炭地振興ということを大きく掲げておるわけでありますが、これは閉山後のやむを得ない政策であって、山をつぶさないということが一番の産炭地振興になる、これが素朴な意見でございますが、そこで、たとえば四十五年で終わりといわれておる石炭鉱業整備特別交付金制度、これを今後も続行してほしいという各方面からの希望がございますが、これは重大な問題で、なかなか簡単に結論が出ないと思いますけれども、これが一つ閉山を大きく促進させておることになっておるのだから、何とかひとつこれを継続できるような意思表示というか、そういう検討する方向にあるのだという通産省側の発表あるいは態度があれば、産炭地あるいは企業の持つ不安もかなり除かれるのじゃないか、こういうふうに考えるわけですが、その点についてはどうでしょうか。
  124. 本田早苗

    本田政府委員 特別閉山交付金制度につきましては、あの制度の発足の経緯、あるいは考え方等から申しまして、いま私の立場としてこれをどうすべきだというふうにはなかなか申し上げにくいと思います。ただ、体制委員会の問題点としては、すでに委員の中からも御指摘がございますので、この点についても意見の開陳あるいは御審議があろうというふうに考えておる次第でございます。
  125. 相沢武彦

    ○相沢委員 原料炭の問題につきましては何回も論議がかわされておりますけれども、今後海外からの原料炭の輸入等、これは価格あるいはその他の問題から大量安定輸入の保証は必ずしもない、こういうふうに判断されますし、また一そう現状よりも海外原料炭の開発に力を入れなければならないことは当然でありますが、今後の鉄鋼需要増に対して、国内の原料炭の安定供給という点は大きな問題だと思うのです。  そこで、いま現在政府として、三菱の南大夕張鉱、それから新夕張鉱ですか、有明新鉱開発を計画をしておるわけですが、この三鉱が操業されて、開鉱され、将来フル操業されたとしても、まだまだ鉄鋼業界の需要には追いつかないという現状ですね。昭和五十年で約一千万トン強ですか、この見込みでありますけれども、このときはわが国原料炭必要量の十分の一にしかすぎないという心細い状況なわけでして、通産省としては、この三鉱のほかに新鉱開発を将来やっていくのか、あるいはそれだけの原料炭の埋蔵量のあるところ、まだ国内に可能性のあるところが残っておるのか、その辺の調査状況、それらについてお伺いしたいと思います。
  126. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。御指摘のように、原料炭需要は、先ほども重工業局次長からも御説明いたしましたように、ここ数年あるいはその先の将来におきまして、急速に需要量が増加いたします。先ほどの質疑にありましたように、五十年で一億トン前後ということに相なりますと、御指摘がありましたように、国内炭の見込みが鉄鋼用としては一千万トン前後というふうに考えられますから、九〇%は海外に依存せざるを得ないという状況でございます。しかも、先ほど岡田委員から御指摘がありましたように、日本原料炭は流動性に富んでおって、配合する炭としては最も適当であるというような事情もございまして、国内原料炭確保ということがきわめて重要だというふうに存ずる次第でございます。ところが、これにつきましては、新しい原料炭の開発ということにつきましては、できるだけわれわれとしてもやりたいと存じておりますが、いまある計画自身につきましては、その具体性について現在検討いたしておるという状況でございます。それ以外のものにつきましては、まだはっきりとした見込みを持っておらないのが現状でございます。
  127. 相沢武彦

    ○相沢委員 国内原料炭確保という点に立ちますと、今後原料炭の国内の山が閉山危機に見舞われるところも中小炭鉱ではあろうと思いますが、終掘というならどうしようもないこととして、かなり残量が残っているという場合は、国家的視野に立って、有効な投資あるいは経営指導、監督、こういったことを十分にやれば何とかまだやっていけるという炭鉱について、現状措置以上の措置をとって、採炭できるというようにやっていく必要があるのじゃないか、これから必要な原料炭の山が、企業だけの実績判断によってむざむざ閉山になってしまうというのは、将来にとって大きな損失じゃないか、こういうように考えるわけですが、その点はどうでしょう。
  128. 本田早苗

    本田政府委員 御指摘の点は、資源の確保あるいは国内資源の活用という点から申しますと、さような考え方も出てまいるわけでございますが、現在の石炭対策というものが、財政負担の点から申しますと、でき得る限りの限度でやっておるというのも、これまた一つの事実でございますので、その辺の両者の兼ね合いということに相なるわけでございますので、われわれといたしましては、できるだけ現行制度を最大限に活用して、経営面その他の合理化効果等によりまして、逐次採掘を続け得るように、われわれとしては助言、指導のできる限りやりたいというふうに存ずる次第でございます。
  129. 相沢武彦

    ○相沢委員 先ほど労働力不足の問題で御質問ございましたが、現在、一般炭用はもちろんのこと、やや明るい見通しのある原料炭の山でさえも、あるいは新鉱開発でさえも労働力不足、流出増がこれから考えられるという問題をかかえております。ですから、もし将来国内における原料炭の開発、確保ということをほんとうに大事だと思うならば、この辺で政府としても、原料炭の山は絶対つぶさせないのだ、つぶしたら国としても困るのだと、将来の安定を政府がもっともっとはっきり言明する段階に来ているのじゃないか、こう思うわけです。そうでないと、原料炭の山でさえも出炭確保がおぼつかないところまで現在追い詰められている、こういうふうに考えるのですが、その点どうでしょう。
  130. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。原料炭確保の必要性につきましては、十分われわれとしても考えている次第でございまして、たとえば安定補給金におきましても、一般炭よりも高額の安定補給金を出すということで、できるだけその確保をはかりたいということで考えているわけでございます。幸い今年度におきましては、先ほどの質疑の過程でお聞き取りいただきましたように、需要者サイドにおきまして原料炭価格につきまして五百円の値上げを認めるということにも相なりまして、需要者の協力というものも加わりまして、現在の条件といたしましては、ある程度の新しい有利な条件が出てまいったということに相なっております。何が何でも残すということにもまいらぬと存じますので、あれこれいろいろ活用しつつ原料炭確保をはかりたいというふうに存ずる次第でございます。
  131. 相沢武彦

    ○相沢委員 次いで、新鉱開発の資金面についてお尋ねをしておきたいのですが、石炭鉱業合理化事業団の新鉱開発資金の無利子融資の制度を活用されるという計画だそうですが、その場合、先日の内閣委員会におきまして、鬼木委員長質問局長は、開発銀行等の融資も呼びかけるというような御発言がありましたが、具体的はこの面はいつから交渉されるのか、どういう計画であるのか、お伺いしたいと思います。
  132. 本田早苗

    本田政府委員 新鉱開発につきまして開銀の融資も受けたいという考えでおりますが、しかしながら、具体的には南大夕張の計画が具体化して進んでいるだけでございますので、これについて近く話を始めたいというふうに存じております。
  133. 相沢武彦

    ○相沢委員 次に、労働省のほうにお願いしますが、石炭産業労働確保というものが非常に重要だということは御承知のとおりでございまして、現在炭鉱労働者の不足は、他産業へ行く場合にかなり手厚い政府措置が行なわれているためであると、こういう声もあるわけですが、労働省は、その後雇用情勢の変化に伴って、炭鉱からまた別の山に移る場合にも同じような措置をとられてきておる現状ですが、現在他産業へ行く場合と、同じくまた別な炭鉱へ移る場合とどれだけの差異が残っているのか、この点をお伺いします。
  134. 住榮作

    ○住政府委員 現在、御指摘の点につきましては、雇用奨励金制度があるかないか、この差異だけになっております。
  135. 相沢武彦

    ○相沢委員 そこで、この雇用奨励金の問題ですが、本来のたてまえからいきますと、これまで適用するということは筋違いみたいな立場になるのですけれども現状として、たとえば労働力不足の山が、ほかの山が閉山になった、うちで労働者を雇いたい、こう思いますと、いわゆる支度金といいますか、あるいはいろいろな面で労働者の人を受け入れるのにお金がかかるわけですね。現在非常に財政的にも困難な状況の山が、そういった面で非常に労働力を確保することで他産業に対して立ちおくれる、太刀打ちできない、こういうような状況にも追い込まれている現状なので、ぜひこの雇用奨励金についても、炭鉱からまた他の炭鉱に行く場合も適用するような方向へもっていくべきではないか、こう考えるのですが、その点に対しての見解見通しについて。
  136. 住榮作

    ○住政府委員 雇用奨励金制度につきましては、先生御承知のように、そもそもこの制度を認めましたのは、石炭労働者が長年地下労働という特異な作業に従事してきた、そういう方が他産業に就職する場合に、どうしても適応性がない、そういう意味で再就職が困難だ、そういうような観点から適応性を付与する期間という要素も考えまして事業主に交付する、こういう趣旨でつくられた制度でございます。したがいまして、炭鉱労働者であった方が離職し、さらに炭鉱に就職されるということとはちょっと制度の趣旨が違うのでございます。ただ、先ほど来申し上げておりますように、一面、石炭産業における労働確保、これは非常に重要な問題になってきておることは、もう言うまでもないことでございまして、そういうような情勢に際しまして、さらに石炭産業へ再就職する場合の奨励制度というものについては、検討してみる必要があるかと考えておる次第でございます。
  137. 相沢武彦

    ○相沢委員 労働力不足は石炭産業だけに限らず、全般的な問題だと思いますが、特に石炭産業労働不足だということで困惑を感じておりますので、他産業との格差をなくするという点で一そうの御努力を願いたいと思います。  次に、保安関係のことをお尋ねをしたいのですが、現在炭鉱保安確保のための具体的な措置といたしましては、鉱山保安法という独自の法律によって規定されておりまして、昭和二十四年制定以来、二十回近くですか、部分的な改正が重ねられてはきておりますけれども、最近非常に炭鉱の近代化あるいは技術革新等が進んだ今日の現状から考えまして、いわゆる近代的な災害防止対策の確立が立ちおくれているのではないか、こういう声もあるわけでして、局長さんは就任以来、最近特に保安の総点検をやりたいというような御意向もあったようで、実際に何カ所か歩いてこられたようで、非常にその意欲に対しては敬意を表するわけでありますが、この点についてどういうような御見解を持っていらっしゃるか。
  138. 橋本徳男

    ○橋本(徳)政府委員 保安法並びに保安法に基づきまする規則の問題と現在の保安体制との関連性ではなかろうかと感ずるわけでございます。御承知のように、保安法は二十四年に制定されまして、それで石炭規則もその時点において制定され、大体今日まで三十回程度石炭規則の改正が行なわれました。したがいまして、石炭規則そのものは非常に複雑煩瑣になっておりますので、そういった面を体系的に直す必要性というのは、私、率直に感じております。ただこの石炭規則の三十回に及びまする改正につきましては、その時点におけるいろいろな必要性を全部織り込みまして改正をやりまして、したがいまして、現時点におきましても、実態面からいろいろこれについての修正、その他の改正をする必要性がございますれば、これはもうちゅうちょすることなくやりたいと思っております。ただ、これは非常に体系的あるいは整理した形においての改正ということになりますれば、非常に煩瑣な手続並びに相当の長時間を要します。したがいまして、むしろそういったこと以上に具体的な対策の面にむしろ力を入れ、時期を見た上でこういったいわゆる法の整備といいますか、それを体系化するといいますか、こういったような形に取り組みたい、こう考えておりまして、どちらかといいますれば、むしろ具体的な対策を中心に進める方向でやっていきたい。しかし、決して法の、石炭規則の体系の乱れておりますことをそのままでいいというふうな感じは持っておりません。
  139. 相沢武彦

    ○相沢委員 炭鉱保安体制の問題ですが、現在保安体制の強化上心配されているのは、各炭鉱とも保安係員になるための国家試験の受験者が年々減少しているし、また合格率も非常に悪くなっているということが心配されているわけでありまして、国家試験は年一回行なわれているわけでありますが、四十一年度と四十三年度と比べますと、だいぶ受験率も、また合格率も低下しているようであります。この原因については、先ほど述べましたように、炭鉱労働者そのものが減少しているということが大きな原因ですけれども、いわゆる保安技術を習得しやすい若年の労働者が山には来なくなったということでして、特に最近は機械や電気関係の基礎技術を持っている若手が他産業へそのまま行ってしまうというために、こういった職種の受験者、合格者が非常に少ないという点なんですが、今後炭鉱保安体制は、本人の希望に応じて国家試験を受けさせるという従来の考え方から、保安要員を十分手元に温存できるような、率先して受験者を出すという方向が望まれておるわけですが、これについてはどういうような行政指導をされようとしておるか。
  140. 橋本徳男

    ○橋本(徳)政府委員 先生おっしゃいますように、最近こういった国家試験を受けようとする人たちの数が減っております。それから合格率の点につきましては、これは年によりまして非常に高低の差がございまして、最近におきまして四十四年が非常に少なかったというふうなことでございますが、四十三年におきましてはまたかなり高いというふうなこともありまして、合格率そのもの自体というものにつきまして、若干の変動は、たいして問題ではないのじゃなかろうか。ただしかし、こういった保安係員、保安要員というようなものになろうとする傾向が、もし先生のおっしゃいますような形において減少しておるというふうなことならば、確かに私問題であろうと思っております。確かに最近におきましては、若年労働者の流出、そういったところから新規にこういった試験を受けようというふうな人たちの数が、絶対数として減っておりますが、ただ、現時点におきまして、保安要員と一般労働者、こういったものの比率をとってみますと、むしろ、逆に保安要員の比率が上がっておるということもありますので、もうしばらくの傾向を見てみないと、いま直ちに何か特殊な方法によってその受験を強制するとかなんとかいったようなやり方は、少しまだ現段階では早いのではないかと思います。しかし、将来ともこういった問題につきましては、十分その推移を見ながらやはり考え方を出していかなければならないだろうという気持ちは持っております。
  141. 相沢武彦

    ○相沢委員 もう一つ鉱務監督官の点なんですが、一番ピーク時には何人鉱務監督官がいらっしゃったでしょうか、それからいま何名でしょうか。
  142. 橋本徳男

    ○橋本(徳)政府委員 ピーク時は四十二年でございまして、二百九名でございます。それで現四十五年度では百九十三名という数字になっております。
  143. 相沢武彦

    ○相沢委員 減少した原因についてはどうでしょうか。
  144. 橋本徳男

    ○橋本(徳)政府委員 一般的に、御承知のように公務員の数というものは、行政需要の変化に応じましていろいろ流動的に考えねばならないという原則がございます。ただしかし、こういった特に監督官といったような特殊な職務、かつまたこういったいわゆる災害防止というものが非常に大きな社会的な問題というふうなことになっておりますので、われわれとしましては、ある程度の配置転換という問題は考えるにいたしましても、だからといって鉱務監督官の減少から来るいわゆる山のめんどうが十分見切れないといったような形は防止したい。したがいまして、実際問題といたしまして、数はこういったように若干減ってはおりますけれども、一人が受け持つ山の数ということになりますと、非常にその密度は上がっております。たとえて申しますれば、かつては一人が二山、三山というものを受け持つ体制になっておりましたが、この四十五年の百九十三名からいきましても、二人で一山を持つというふうなところまで上がっておりまして、こういったいわゆる密度の点につきましては、毎年その密度が濃くなっておりますので、こういった災害の撲滅がはかられるまでは、密度の問題とか、あるいはこれに伴います監督、いろいろな検査の回数とか、こういったものにつきましては、極力その上昇をはかっていきたいというふうなことで措置しております。
  145. 相沢武彦

    ○相沢委員 今後も閉山は続くであろうと思うのですが、山が減少しても、現状の鉱務監督官は決して定員数を減らすべきでないと思うのです。いま局長のおっしゃったとおりだと思うのですが、残った山に配置転換、増員をして、さらに保安の監督、指導の密度を増加させて、炭鉱災害等の絶対起きないような万全の措置をより一そう強力にとられるように要望しておきます。  次に、産炭地振興のうちの産業基盤の整備の点でございますが、産炭地域振興事業団が行なっておりますうちの工業団地の問題です。美唄炭鉱の場合を見ますと、ここは整地だけでありまして、誘致企業に必要な工業用水等の措置が行なわれていないわけでして、三十八年に五万坪できました工業団地に現在二企業が入っておりますが、まだ十分に活用されていない。道路であるとかあるいは工業用水道、地方自治体がやろうとすればかなりな負担になるわけでありまして、政府としても全部めんどう見切れない。あるいは九州のほうで実際工業用水道を事業団がやってみたけれども、予想どおりなかなか売れなくて、どうもむだみたいな形なので、今後はあまりやっていかないというような傾向であるようでありますけれども、やはりこの産業基盤の整備は、政府の先行投資の形でやるべき性質のものであって、産炭地域振興のためにやる事業でありますから、そこの地方自治体が十分にそれを活用できるような方向へ持っていくべきであって、今後この道路、工業用水道の整備にしても、事業団のほうで並行してやっていくような方向にもっと進めていくべきではないかと思いますが、この点について御見解を伺いたいと思います。
  146. 本田早苗

    本田政府委員 産炭地域振興対策といたしまして、工業団地の造成ということを大きな仕事として事業団はやっておるわけでございます。もちろん工業団地の造成につきましては、その前提として、御指摘のように産業基盤の整備ということが必要で、道路あるいは工業用水道の設備が促進されねばならないというふうに考えておるわけでございます。他の地域開発施策と違って、産炭地域振興事業といたしましては、先行投資として工業団地をつくることにいたしておるわけでございます。そこで、産炭地域の疲弊度、あるいは企業誘致の可能性等々とともに、御指摘のような関連産業基盤整備、道路その他の整備を考えまして計画を立てるということにいたしておるわけでございます。われわれといたしましては、産炭地域振興実施計画というものをベースにいたしておりますが、これの実施にあたりましては、産炭地域振興各省連絡会等の場を通じまして、その前提条件である産業基盤整備と並行して団地造成をはかってまいろうということにいたしておるわけでございます。御指摘のような事情もあろうかと思いますが、われわれといたしましては、御指摘の線に沿った工業団地の造成をやってまいりたいというふうに考えております。
  147. 相沢武彦

    ○相沢委員 ぜひ今後も、現地等視察をされて、また現地の要望等々も聞かれて、一そうの御努力を願いたいと思います。  次に、同じく北海道の美唄炭鉱企業縮小の問題ですが、これは通産省のほうにはいつ提示されたのでしょうか、日時をお知らせ願います。
  148. 本田早苗

    本田政府委員 美唄炭鉱の常盤坑の縮小に関しましては、四月二十三日に組合に申し入れておりますが、その前後にわれわれのほうにも連絡がございました。
  149. 相沢武彦

    ○相沢委員 それから南大夕張坑で本年五月上旬にそういうような予定でございまして、その炭鉱労務者確保の問題、これで何回かお尋ねしたわけでありますが、現地から労働者見通しはあるんだ、こういうことを通産省のほうで確認した時点は何月ごろでございましたか。
  150. 本田早苗

    本田政府委員 南大夕張のほうからの連絡では、五月の生産の人員は一応確保はついておって、秋からの本格的な生産についての所要人員については、なおその努力をするというふうに連絡を受けております。これは最近の連絡でございます。
  151. 相沢武彦

    ○相沢委員 そうしますと、かりにいま美唄炭鉱が予定している七百三十名の配置転換が起こらなくても、現状労働力で五月上旬操業は可能だ、こういうことでございますね。
  152. 本田早苗

    本田政府委員 御説のとおりでございます。
  153. 相沢武彦

    ○相沢委員 ここ十年来の石炭政策の根本的な欠陥と申しますか、こういうものを考えてみますと、いわゆる人間軽視というか、あるいは地域住民の不安解消といった点がどうもなおざりでないかと思うのでありまして、やむを得ない諸般の事情はあろうかと思いますが、どうしても閉山等が続きますと、そこに働く多くの労働者あるいは石炭に依存する産炭地経済並びに住民の生活にとって非常な大きな影響を与えるわけでありまして、ここで問題は、ともするとそれがあまり知らされないで、いきなり閉山ということで、非常にそこで働く人もあるいはその地域住民も自治体もショックを受け、そのあとの手当てに非常な困難を感ずるということが続いております。そういったわけで、どう手当てをしても今後やっていけないという場合は、これはやむを得ないということはわかるのでありますが、要は、何とか事前の周到な準備、計画が必要になってくるのではないか、そうすれば、もっともっと労働者の再就職あるいは産炭地経済の再建策、これも十分な手当てができるのではないか、こういう声が非常に現在高まってきておるわけでありまして、こういった点の通産省の行政指導をもう少し強化する必要があるのではないか。私も何回かこの委員会で、いわゆる業者側、あるいは地方自治体の長、あるいは通産省側とのキャップのいわゆる秘密連絡会議的なものをもっともっと開くべきであるし、もっと情報を早目にキャッチし、その対策等も練る必要があるのではないかということを申し上げたわけでありますが、先日も通産大臣は十分に考慮したいというお話でありましたけれども、おことばだけでなくて、実際に局長クラスでこの問題を真剣に討議して具体化していただきたい、このように要望するのですが、その点について御見解を承って、質問を終わりたいと思います。
  154. 本田早苗

    本田政府委員 御指摘の問題は、各所において現在生じている問題として、われわれとしても非常に考えねばならぬ問題だと存じておるわけでございますが、一方、企業が生きものとして動いておるという事情がございますので、そうした破局に近づいておるということが公になること自身が閉山を早めるという事情もございまして、この辺の問題が非常にむずかしくなっております。そこで、われわれとしては、できるだけ閉山をしないでいける方法についていろいろ検討し、指導して、こういう方法でいけないかどうかというようなことで対策考えておるわけでございますが、いよいよどうしてもだめだというときになりますと、われわれとしては、地域住民に対する影響、自治体に対する影響、雇用されている労働者に対する影響等を考えて、十分に企業として対策を講じ得るように計画を検討し、実施できるような体制を整備するというふうにいたしておるわけでございまして、この辺はどうも二律背反のような状況でございまして、できるだけ摩擦を少なくするということを主眼として実施をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  155. 鬼木勝利

    鬼木委員長 田畑金光君。
  156. 田畑金光

    ○田畑委員 局長以下昼めし抜きで、あまり長い質問をするのも気の毒だという感じがしますので、この際簡潔に二、三の点だけをお尋ねしておきます。私も実は汽車に乗らなければならぬので、そういうわけで、ひとつ答えも簡潔にお願いします。  いまの質問の中にもありましたが、これは局長お尋ねいたしますが、合理化臨時措置法によれば、石炭鉱業合理化基本計画目標年度を四十五年度から四十八年度に改めておるわけですね。四十九年度以降どうするかという問題。  さらにまた、引き続きお尋ねしますが、合理化臨時措置法によれば、山ぐるみ閉山については、昭和四十四年四月一日から昭和四十六年三月三十一日までの間になっておるわけであります。いまの閉山の推移から見るならば、山ぐるみ閉山についての特別措置としては来年の三月末で切れるわけでありますが、今後のことについてもやはり配慮すべきではないのかどうか、この点です。  第三点として、いま何と申しましても不安な感じ石炭企業の労使が持っておるのは、いまも指摘いたしましたが、四十九年度以降はどうするかという問題です。石炭対策特別会計も四十九年三月三十一日までとすることになっておるわけですね。こういう問題について、局長としてはどのようにお考えになっておるのか。  第四点、昭和四十三年十二月二十五日の石炭鉱業審議会の答申を見ますと、その一節にこういう文句がございます。「今次の対策政府石炭鉱業に投入しうる財政資金の極限であると考える。石炭企業においては、政府による助成を将来長期にわたり安易に期待することは許されないので、昭和四十九年度以降は、これを減少することを前提として今後の運営に当たるべきである。」このように書かれておりますが、いずれも基本的な問題にわたるわけであります。したがいまして、これは実は時間があれば大臣質問するのが本筋でございましたが、あげたこういう問題等も例の体制部会等で十分論議をして、そしてその論議を発展させることによって、四十九年度以降どうするかという問題もだんだん審議、検討し、結論の方向努力すべきであると考えますが、この点について局長の所見を伺っておきます。
  157. 本田早苗

    本田政府委員 四十九年度以降の対策の問題、あるいは特別閉山交付金制度の延長の問題につきましては、私どもとして、これを引き続きどうこうという立場にいまございませんが、体制委員会におきましては、すでにこれらの問題も問題点として指摘されております。したがいまして、体制委員会の審議の過程で御意見も出、御審議もあろうと存じます。その審議の結論については、先ほど大臣も申しましたが、一応承って検討させていただき、尊重すべきものは尊重することに相なろうというふうに存ずる次第でございます。
  158. 田畑金光

    ○田畑委員 局長に希望しておきますことは、いまあげた問題はいずれも基本的な問題でありますし、いわば第五次政策ということにもなってきましょうが、こういう問題等についてもいまから十分ひとつ検討されて、体制部会等の論議を通じ、これが将来計画等についても十分配慮していただきたい、このことを希望しておきます。  次にお尋ねしたいことは、松島炭鉱の大島鉱業所の閉山に伴う諸対策は、その後どのような状況に推移してきておるのか、この状況を簡単に御説明をいただきたい。同時に、あわせてお尋ねしておきますが、四十四年度の予算では、閉山の予定が三百九十万トンを予定していたわけです。ところが八百五十万トンにのぼった。四十五年度の予算閉山予定が三百万トンだ、こういうことになっております。そこで、閉山する山において、昨年からことしに相当の閉山が持ち越されてきておるので、たとえば、ことし三百万トンとなっておるが、昨年の八百五十万トンがことしの予算の三百万トンに食い込んでおるのじゃないか、こういう誤解なり不安があるわけであります。制度上、閉山については予算が足りなければ予算をつけるということになっておると思いますが、その辺の事情を明らかにしていただきたい。  第三点といたしまして、どうしてもこの種閉山をめぐって一番問題になりますのは金融措置でございますが、この金繰り等について、松島炭鉱の場合にはどういうことになっておるのか。また、これに対して、政府なり合理化事業団等協力というものは具体的にどのように進められて今日に及んでおるのか。これらの点もあわせて局長からお答えを願いたいと思います。
  159. 本田早苗

    本田政府委員 大島鉱の閉山に伴います現在の手続その他の状況でございますが、閉山交付金等の交付申請が出てまいっておりますので、事業団は所定の手続をとることになっておりまして、現地の調査等をこれから行ない、交付金の交付はおそらく秋ごろになろうと存じます。  それから、交付金の交付までの離職者に対する何がしかの資金が要ろうと思いますので、この期間についての前渡し資金の貸与といいますか、そうした形の措置を現在考えております。  それから、従業員債権の総額に対しまして、これは一般閉山でございますので、交付金のほうが少ない。その場合の差額につきましては、できるだけ財政資金による融資も考えたいというふうに考えております。  それから、大島町が産炭地域振興の指、定地域になっておりませんので、六条指定を行なうことが必要になっております。この六条指定につきましては、現在追加指定について関係のところと大体意見の整理が済みましたので、手続を進めねばならないという段階までまいっておる次第でございます。  それから、本年度三百万トン、閉山に伴う予算では予算が足らなくなるのではないか。その際はどうかという点につきましては、四十四年、四十五年度は弾力条項の規定がございまして、不足の場合には資金の借り入れができるということに相なっておりますので、資金の不足の場合には、弾力条項の適用を行ないまして、資金の追加をいたし得ることに相なっております。  それから金融問題についてでございますが、先ほど申し上げましたように、退職金等の差額については、財政的な資金の融資を行ないたいというふうに考えておる次第でございます。
  160. 田畑金光

    ○田畑委員 次に、労働省の局長お尋ねしますが、この松島炭鉱の大島鉱業所は、御承知のように島でございますから、この大島鉱業所の閉山に伴って多数の離職者が発生しておるわけです。そしてまた聞くところによれば、相当数の人方が職業訓練を受けたい、こういう希望を持っておるわけです。しかし佐世保に行くにいたしましても、時間で一時間、たしか船で二百円の船賃がかかるというふうな話を聞いておりますが、こういう状況でございますので、ひとつこの大島の島に職業訓練を受けられるような訓練校の分校の設置等を考慮願いたいという強い希望があるわけでございますが、こういう点等について何らかその希望にこたえられるような便法措置考えられないかどうか。職業訓練法を見ますると、いろいろなやり方があるわけでありますが、この職業訓練法を弾力的に運用するならば、私はこの希望もかなえられ得ると見るわけでありまするが、この点ひとつ局長から御答弁をいただきたいと思うのです。
  161. 住榮作

    ○住政府委員 炭鉱離職者の職業訓練の問題でございますが、私どもといたしまして、現在の段階で訓練の希望等について必ずしも確たる調査をいたしておりません。今後出てくる離職者の希望状況あるいは適性なり労働市場の状況等を考えて、その訓練をどうやっていくか、こういうことは検討してまいりたいと思います。  訓練のやり方でございますが、公共職業訓練施設で行なうわけでございますけれども、そういう施設の中で直接行なう、たとえば自動車学校のようなものがあれば、そしてそういう職種を希望する方があれば、そういうところに委託して訓練を行なうこともできます。それからまた大島に適当な施設がございますれば、そこへ指導員を派遣して訓練を行なうような方法もございます。あるいはまた職種によっては、長崎の訓練所に寄宿舎施設を持っている施設もございますので、そういうようなことを総合いたしまして、離職者の希望に即応するような措置をとってまいりたいと考えております。
  162. 田畑金光

    ○田畑委員 いまの点については、職業訓練法に基づくいろいろな訓練の施設なども考えられるわけでありまするから、現地の事情あるいは希望等をよく調査されあるいは聴取されて、これに基づいてできるだけ現地の希望に沿うように配慮願いたいと思います。  最後に、この大島町は炭鉱に完全に依存した地域で、大島鉱業所が閉山するということになってきますと、この産炭地域振興の問題が出てくるわけであります。産炭地域の大島町の振興等についてすでに地元から、町長なり議長なり等からいろいろ要望なり希望等が訴えられておりまするが、これについてその後具体的に現地の希望をかなえられるような何らかの方向が、当局として手を打っておられるかどうか、ひとつそれを明らかにしていただきたい。
  163. 本田早苗

    本田政府委員 御指摘のように、この大島町は島でございまして、代替企業の誘致についての立地条件としては必ずしも有利な条件を持っておりません、たとえば水の問題であるとか。そのためになかなかむずかしい事情にあるわけでございますので、現在既存の工場もございますので、これらの拡張等、できるだけのことを県、町と協力してやりたいというふうに考えておりますが、なお詳しいことは産炭地域振興課長から申し上げます。
  164. 真野温

    ○真野説明員 ただいま田畑先生からお話しございました大島町の産炭地の問題でございますが、先ほど局長のほうから六条地域指定の話はすでに答弁いたしましたので、その点については触れませんが、そのほかの問題につきまして、私どものほうから現地の通産局の職員を現地調査に出しまして、県の関係職員も含めて現地でいろいろ検討した結果を最近報告を受けまして、それをもとにしまして、さらに現地における産炭地域振興の各省連絡会、これを開催して、その場において具体的な問題について各省に連絡しつつ処理をはかる所存でございます。  特に私どものほうで当面の問題として聞きました点は、一つは水道の問題でございまして、御承知のように離島という特殊性にございまして、現在上水等の用水はすべて本土から船によって運んでおる、こういう状況でございます。これについて、さらに今後閉山のスケジュールに従いまして、炭鉱から町当局へ移管する問題等ございます。これについては離島振興の各種の制度もございますし、その辺を含めまして現在検討しておる段階でございます。  もう一つ、町当局としては、先ほどございました六条指定にからみまして企業誘致について検討しておる段階でございます。ただいま局長申し上げました現地における企業として、松島炭鉱の系列の鉄工所あるいはその他二、三の中小企業がございますが、これの拡張等については、すでに融資その他の手配を昨年からいたしております。さらに、近傍にございます佐世保船舶工業、その辺の鉄鋼関係の下請というような事業について、さらに具体的な計画なりあるいは企業の誘致というものをできるだけ早急に検討いたしたい。当面その辺の問題について、町当局におきまして議論いたしましたので、さらにいろいろ校舎の、いわゆる学校の統合問題その他がございますが、これについては逐次県当局が、いろいろ予算なり制度の面で相当関係がございますので、県当局と連絡をとりながら、具体的に早急に処理する方針でおります。
  165. 田畑金光

    ○田畑委員 私は最後に希望として申し上げておきたいことは、ひとつここでお答えになったことを、この場所だけのお答えではなく、いまお話しような方向で全力をあげて地元の期待にこたえていただきたいと考えております。何と申しましても松島炭鉱はビルド鉱の一つであるとみなされていた山であるし、その傘下の大島鉱業所は、今日までの長い石炭歴史の中で労使関係も健全に、しかもまた炭鉱と町当局とは一体となって地域の発展もささえてきたところでありまするし、その町の中核である炭鉱閉山してしまう、こういうことを考えてみますると、大島町地元地域社会にとって深刻な、ことばで表現のできない問題があるわけで、どうかひとつその辺の事情を十分配慮されて、局長並びに振興課長もお話しございましたが、できるだけ地元の要望にこたえるよう最善の努力を願いたい。同時にまた、労働省におかれても、職業訓練等の問題その他いろいろあると思いますが、できるだけ協力、支援をなされるように強く希望して、私の質問を終わることにいたします。
  166. 鬼木勝利

    鬼木委員長 田代文久君。
  167. 田代文久

    ○田代委員 委員長はじめ政府委員の方々も空腹でがんばっていられるのに全く敬意を表しますけれども、私も実はめしを食っておらぬので、その点はお互いに、私が最後ですから、簡潔に質問しますから御答弁願いたいと思います。  私たちがこのなだれ閉山の中で一番憂慮しておりますのは、炭鉱を離職される労働者の離職状態、それからその後どうなっておられるかという問題です。これは最近における北海道あるいは全国の状態だけではなくて、過去からずっと続いているわけです。これは非常に大ざっぱな質問ですが、離職者対策なり合理化についての労働者のその後における状況は、きょうの質疑応答を聞いておりますと、相当順調にいっているかのような印象を受けましたが、事実そうかどうか。労働大臣がおられれば大臣からはっきり聞きたいと思ったのですけれども、いま大臣が見えませんので、当局から御説明願いたいと思います。
  168. 住榮作

    ○住政府委員 離職者の再就職状況についてのお尋ねかと思いますが、いろいろ年度のとり方があると思いますが、一応三十七年度がら四十三年度までの累計について申し上げますと、新規求職者約十五万、これに対しまして就職者の計が約十四万五千、したがいまして四十三年度末の求職者が約五千。そこで四十四年度でございますが、四十四年度の新規求職者が約一万九千名、繰り越しを含みますと大体二万四千名が新規求職者ということになるわけでございます。それに対しまして四十四年度で就職した者の合計が一万五千六百名、現在求職中の者が約七千六百人、こういうような状況になっておると思います。
  169. 田代文久

    ○田代委員 私は、自分の欲せざる失業に追い込まれておる炭鉱労働者に対して、実際に政府並びに使用者側もそうですけれども、特に政府が十分にそういう手を有効に打っておられるというようには私はどうしても考えることはできません。午前中から宮澤通産大臣などの説明を聞きますと、大体石炭産業に対して何と考えておられるかということを私は非常に考えました。たとえば、生き残ることのできるような、そういう炭鉱に対しては強く生き残ってもらいたい、そういう炭鉱に対しては国会ももう遠慮するな、こういうことですね。そうなりますと、大体中小炭鉱なんかどうなるのです。結局、君たちはとにかく生き残る力がないのだから、つぶれちまったらいいじゃないか、こういうことになりかねないのです。それを受けて、結局先ほどだれのために炭を掘るのだという問題に、それとの関係において、明らかにとにかく腹のうちは見せられない。石炭を掘るのは、第一にユーザーのために掘るのだ、そういうことで実際許されますか。大体石炭産業を、民族資源としての重要な石炭産業に対してそういう姿勢で、日本石炭産業を維持し発展させ、そこで働いておる炭鉱労働者の暮らしとあるいは権利を守り、日本の全体の産業を発展させることができますか。これは全くけしからぬと私は思うのです。炭鉱労働者は、単にユーザーのために第一番に働いているということになれば、働き手はないのです。こういうことけしからぬと思う。それからまた、それを受けて、結局労働政策に対してどういうことを言われたかといいますと、大体炭鉱に自信を持って働くというそういう考え方の人は残っておられればいいのだ、残ってもらいたいのだ、そうでない人はどんどんやめていったらいい。これは一面、職業選択の自由を保障されて、それはどの産業で私たちが働こうとかってであるし、その自由は確保されなければなりません。しかし、こういうことを言われる裏には、結局石炭産業を維持発展させようという立場から、政府労働政策として、どうすれば石炭産業に対しては労働力を確保できるのか、また離職者対策に対して離職がされないようにとにかくどうすれば確保できるかというような、実際にそういう政策になっておらないのです。結局弱いものはつぶれていっちまえばいいじゃないか、やめたい者はどんどんやめていったらいいじゃないか。現在のような災害が非常に多い、賃金が非常に安い、労働条件が最も劣悪な炭鉱で、こういう状態炭鉱労働者が働こうなんて、来手がありはしません。当然でしょう。ですから私は、基本的には、そういう労働政策炭鉱労働者に対してどういう措置をとるか。また離職者に対してもこれはいろいろ手を打っておられるように言いますけれども、私は実際はそうじゃないということを思うわけですが、そういう点について、ほんとうにそういう考え方が正しいかどうか。  それから、先ほど松島炭鉱のことで質問がありましたけれども、北海道の雄別炭砿の例なんです。釧路の職業訓練所に入所を申し込んだら、三十人の定員に対して百五十人希望者があった。だったら、いつ回ってくるかわからないからこれはやめちまうということを四十五歳になる炭鉱労働者の人が言っておるわけです。そうすると結局五倍にも余る、三十人に対して百五十人の人があって、ほかでも大体こういう状態じゃないかと思うのですが、それがこの適正な職業の訓練も受けることができずにやめてしまおうかという、そういう自棄的な気持ちにならざるを得ないというようなこと、こういう問題をどういうふうに処置されようとしておるのか、またされるのか。  それから、その点と関連しますけれども、北海道の今度の尺別やら雄別やら、こういうなだれ閉山の中で離職を余儀なくされた炭鉱労働者の方々が、将来の就職の希望あるいは条件なんかを考えて、生きる希望を断たれて一家心中をされたということを私は新聞で見たのですが、そういうことは現地の北海道から報告が来ておるのかどうか、それに対してはどういう対策をとられたか、御説明願いたいと思うのです。
  170. 本田早苗

    本田政府委員 大臣の午前における答弁の中で非常に理解しがたいという点を指摘を受けたわけでございますが、ユーザーのためということばは、国の産業としての需要があって、その需要に見合うという意味で、やはり単に一企業という意味ではないということを説明したと思いますが、そういう趣旨で言ったものでありまして、単に一企業のユーザーがあるからそのユーザーに見合う炭を掘るだけのことだということではないと御理解をいただかねばならぬというふうに存ずる次第であります。  それから、残る労務者の方に残っていただいて、残れない方はという言い方の中には、労務者として希望を持って働ける山という事態の中で残っていただくというふうにしなければならないという考え方を言ったものというふうに私は理解しておるわけでございます。その点、私の聞いた感じと理解とを申し上げまして、御理解をいただきたいと存じます。
  171. 住榮作

    ○住政府委員 石炭労働対策の問題でございますが、私ども職業紹介の立場に当たる者といたしまして、やはり石炭産業というものが魅力ある職場でなければならない、その魅力がない場合には、いかにそれは紹介の努力を重ねましても就職をさせるということはできないかと思います。そういう意味石炭産業石炭企業が将来にわたって経営基盤が安定しておる、あるいは作業環境なり労働条件というものが適正である、そういうことが必要であると考えます。そういうような前提のもとに、私どもは求職者の職業選択を援助し、石炭山に労働力を紹介する、こういうことができると考えておりますので、お含みおきいただきたいと思います。  それから、離職者対策についてでございますが、これは先生御承知のように、離職者対策の臨時措置法に基づいて援護措置を講じておるわけでございますが、さらにそれの具体化にあたりましては、特に最近は全山閉山というような形で非常に大量の離職者が発生する、そういう際には、特にそのための対策本部等を設置いたしまして、現地にはもちろん現地の相談所をつくりまして、できるだけ離職者の立場に立った再就職のあっせんを申し上げておるつもりでございます。  さらに、離職者対策を進めていく場合におきまして、事業主の協力はもちろんでございますが、と同時に離職者の立場に立っての再就職の促進という観点から、たとえば組合の方々等適当な方々に山元協力員等をお願いいたしまして、生活相談にまで立ち至った意味でのいろいろな相談もお願いするという形で離職者対策を進めておるつもりでございます。  それから、雄別の問題につきまして訓練の御指摘がございましたが、私どもが現在把握しております訓練希望者は百七名ということになっております。釧路だけでは希望者全員必ずしも一時に就職できることば困難な事情にあるかと思いますが、先ほども大島鉱業所のことで申し上げましたように、委託訓練の方法とかあるいは職場適応訓練の方法とか、あるいは寄宿舎に入所された上での訓練とか、そういうような方法につきまして、訓練希望者の方々ととくと相談いたしまして対処してまいりたいと思います。  それから、雄別炭鉱で御指摘のように自殺された方がおられます。この事情についても承知いたしております。本人が自殺されたのでございまして、いろいろの事情があったと思うわけでございますが、そういうような事態に立ち至ったことにつきまして非常に遺憾に考えております。なお、奥さん、お子さんは奥さんの実家のほうにお帰りになっておられますので、御希望があれば、安定機関といたしましていろいろごめんどうを見さしていただきたいと考えております。
  172. 田代文久

    ○田代委員 先ほど通産当局から、例のユーザーのためという問題について大臣考えはこうだ、こういうことだからそのように田代君も考えてもらいたい、こういうふうな話がありましたけれども、そういうように田代君も考えろといっても考えるわけにいかぬですよ。あなた、労働者にいまの通産大臣が言ったということを言ってごらんなさい。炭鉱労働者にしろ一般労働者にしろ、とてもたいへんですよ。炭鉱労働者は戦前から一貫して、特に戦中なんかそうですけれども、どういう立場で炭を掘ったかというのです。お国のためだ、社会のためだということで、繰り返し繰り返しガス爆発で殺されたり、あるいは落盤で殺されたり、けがをしたり、老衰を早めたりという中で、ただそこで政府もあるいは業者らも、お国のためだから、社会のためだからといってやってきているのですよ。でなければこういう労働にだれが働きますか。ですから、これはたとえ間違って寝言を言うにしろ、通産大臣ははっきりそれを言うべきですよ。お国のため、社会のためという立場炭鉱労働者は掘っておられるのだと、なぜそれを言わぬのです。それを全然忘れてしまって、ユーザーのため。それでそれを突っ込んだら、それはある個人の企業のためだとかどうとかこうとか、こう思えといっても、そんなこと思えますか。私はそういう現在の政府の姿勢の中に、現在の石炭政策なりあるいはそういう労働政策に対して、全く国民が、労働者が納得のできないその場ごかしの、全体としては知らせないうちに全体が犠牲にされておるということになってきつつある、またきておるということをいわざるを得ません。ですから、自殺者の問題も、実際にこれは一つじゃないですよ。実際そういう気持ちの人はたくさんおられるんです。その観点にはっきり立って、今後なおいろいろの万全の手を打ってもらいたい。それから自殺なさった方の遺族の方に対しては、奥さんたちの就職のことなんか考えておられますそうですけれども、こういう問題の起こった場合に、私は東京の本社から直接にすぐ飛んでいって実情を調べて、そして現地の指導をやって、全体の政策としてもらわなければ、炭鉱労働者は安心して働く気持ちにはなれない。それが基本的な労働政策じゃないか。そういう条件が満たされなければ、ほんとうに安心して山に定着して石炭産業のために働こうということになれないんじゃないかと私は考えます。  それと関連するわけですけれども、雄別炭砿のぐるみ閉山の中で、特に雄別鉄道の労働組合があるわけですね。ところが、それがぐるみ閉山の中で、鉄道関係は今度の閉山についての特別の措置にとにかく均てんするという措置になったというわけですね。ところが、同じ組合、そしてもともと同じ企業であったはずのバス関係の人たちは全然はずされている。バスといっても、これは一般のバスではなくて、炭鉱があるために炭鉱労働者が行き来されたり、そういう輸送の性質を持ったバスの労働者ですね。これが全然恩典に浴しないという形になっているという問題です。これは鉄道の従業員と同じ処置はとれないんですか。当然とってしかるべきじゃないか。しかも聞きますと、わずか五十人の問題ですね。これは同じ内容ですから、当然そういうふうにとってもらいたいと思うんですけれども、この問題についてどういうように考えておられるか、御答弁願いたいと思うのです。
  173. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。雄別鉄道につきましては、従来雄別炭砿の一部としてやっておったものが分離されておりまして、そして今回のような事態に相なった際に、たまたま分離されたということによりまして、特別閉山交付金制度の対象からはずれるということでは非常に不公平であるということから、いろいろくふうをこらしまして、雄別鉄道を対象の中に入れるということをいたしたわけでございますけれども、元来が特別閉山交付金制度というのは石炭鉱業の従事者を対象にという一つの線がございますので、やむを得ずバスについては適用ができないということに相なった次第でございまして、その点御理解を賜わりたいというふうに存ずる次第であります。
  174. 田代文久

    ○田代委員 それは結局石炭だけというが、鉄道関係を入れたわけでしょう。そのときになぜ一緒にバスを入れなかったんですか。
  175. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。特別閉山交付金制度を適用する際に、石炭企業が他の観光事業とかその他のものを兼営しておる場合でも、兼営部門については適用がないという運用に相なっておるわけでございまして、バス部門につきましては、石炭の輸送とは一応違った分野だということに相なるために、対象からはずれておる次第でございます。
  176. 岡田利春

    岡田委員 関連して。いまの問題ですが、制度としてはバス部門には適用されていないけれども、雄別の企業として、退職金その他については鉄道部門と同じように措置をしたというぐあいに私は承知をしておるわけですが、その点の説明があれば御理解できると思います。
  177. 本田早苗

    本田政府委員 岡田委員から御親切な御指摘を受けましたが、実際の措置はそういうことと聞いておりますけれども、ただいまの質問は、制度としてそういうものを対象とすべきではないかということであったと存じます。制度の運用上は私が申し上げたような形になっておるということでございますので、御理解を賜わりたいと存じます。
  178. 田代文久

    ○田代委員 次に、これもちょっと話が出たようですけれども、同じ閉山でも下請組夫ですね。そういう人たちが退職金あるいは補償金というような点で非常に不利な立場に立っておる。この人たちは、御承知のように、同じ石炭の出炭に当たりながら、労働条件も悪い。しかしながら実際の仕事についてはむしろより以上長時間働かせられている。ところが、閉山になった場合、そういう恩典をいささかも受けずにほうり出される、こういう状態になっているわけですね。ですから、こういう問題についてもう少し考慮をされるべきじゃないか。先ほど何か間接的な方法によってというような話があったように私は理解しましたが、具体的にこういう下請組夫などの方々に対するもう少しあたたかい措置はないかどうか、そういうことをされる方針はないかどうか、承りたいと思います。
  179. 本田早苗

    本田政府委員 御指摘のように、組夫の問題につきましては、今回の雄別問題の解決にあたりましても引っかかる問題であったわけでございますが、制度の運用から申しますと、先ほど御説明申し上げましたように、下請契約をしております下請業者が石炭企業との間の契約者でございまして、これに対しては特別閉山交付金制度としての一般債務者に対する交付があるわけでございます。これから支払わるべき組夫という形の法律関係になるものでございますから、これに直接出しがたいという問題がありまして、できるだけ企業として実態に即した措置がとれるようにということで現実の解決をはかったわけでございます。今後もこうした問題が出ると思いますが、いまのような法律関係になっておりますので、なおいろいろむずかしい問題が生ずると存じます。この点につきましても、現在の審議会一つの問題点として指摘されておる次第でございます。
  180. 田代文久

    ○田代委員 その点では、十分その人たちの立場に立って対処していただきたいということをお願いします。  それから、閉山地域について、たとえば炭鉱に対して、その町なり市の企業家がいろいろ納品をしているというような形で、それが売り掛け金になって、しかも閉山したというので、こげついて、もらえない、それがひいてはその地域における疲弊の条件にもなっているという問題があるわけなんですが、こういうのはこの閉山地域において全国で大体どれくらいあるのか。これは全体の計算ができてなければ地域的に、この地域においてはそういう売り掛け金の未払いが幾らあるというようなことでも説明願いたい。  それからもう一つ、国鉄が、三菱なら三菱、貝島なら貝島炭鉱のために石炭輸送に従事して、石炭を運んでやっているわけです。ところがその運送賃が国鉄に入っていないのが相当あるということを私は聞きました。そういう輸送代金が大体幾らあるか、これもひとつ御説明願いたいし、いま資料がなければ、これはあとから出していただきたい、このように思います。
  181. 本田早苗

    本田政府委員 御質問閉山地域の中小企業者の債務がどういう状況になっておるかという点につきましては、後ほどまた調べて御連絡をさせていただきたいと存じますが、これも特別閉山で行なう場合は、一般債務者として半分が後ほど補償されるということに相なっております。ただ、その際、かなりおくれて交付金が出るものでありますので、地方自治体と御連絡をして、その間の融資をしていただきまして、資金繰りがつくようにあっせん願っておる次第でございます。  それから国鉄運賃の滞納状況でございますが、国鉄運賃につきまして延納保証制度というものが残っておりまして、関係企業等で連帯保証があるわけでございます。したがいまして、連帯保証債務として弁済されるという事情にありまして、他の企業が代位弁済をしておるという形に相なっております。
  182. 田代文久

    ○田代委員 国鉄の滞納といいますか、それはいまのような内容らしいのですけれども、実際の数字、これは出していただけますか。これはわかるはずでしょう。
  183. 本田早苗

    本田政府委員 御質問のそれが延滞の実績だということならば、ほとんどございませんで、他の連帯保証債務者がかわって払っておりますので、支払いが滞っておるという実績はきわめて小さいということで、ほとんどないというふうに御理解願ったらけっこうかと思います。ただ、そういう事態はどれくらいあるかということになりますと、これは別に調べなければならないと思います。
  184. 田代文久

    ○田代委員 国鉄の労働者の人が、そういう点が自分たちは知りたいし、それからそれは相当あるように思うということをこの間九州に行きましたとき言っていましたのを聞いたのですが、そういう形ではそれは大体ないわけですね。
  185. 本田早苗

    本田政府委員 われわれの理解では、ほとんどないというふうに承知しております。
  186. 田代文久

    ○田代委員 それから、最後に鉱害の問題ですけれども閉山後における鉱害の問題は非常に大問題だと思うのです。非常に膨大な鉱害が今後にわたってますますたくさん起こる。たとえば、この間福岡の通産局に聞きましたら、福岡県だけでも大体一千億円くらい現在ある。ですから新しく閉山が出て、そして鉱害が進行する場合に、これはまだ加わるのではないか。ところがそれに見合った賠償なりあるいは復旧ということがうまくいっているかというと、実際はそうではない。私は現地に行きますと、そういう点で非常に被害者の方々から陳情や、君ら国会に行って一体何しておるんだというようなことのおしかりをいろいろ受けるわけですね。これはごもっともなことなんですが、その場合にいつも問題になるのは鉱害の認定の問題ですね。実際において被害者から見れば、これは鉱害だ、だからこれは早くやってくれという。そうすると、加害者のほうは、これは私のほうのところではありません、いや、これはほかのじゃございませんかとか、何とかかんとかいって何年も延ばしてしまって、そのうちに加害者は行くえ不明になるという形でしり切れトンボになるというような形になって、現在そういう点で加害者不明とか、あるいは資力がないという問題については手を打つようになっているようですけれども、いずれにしましても、認定ということが手っとり早くいかないという点がやはり復旧問題についての一つのガンになっていると思うのです。特にこれは、先ほど佐賀の杵島地方における鉱害問題で農地の問題が非常に大きいとおっしゃいましたけれども、私はそう思います。そしてまた、実際の復旧予算なんか見ますと、農地関係復旧に関しては量が多いという点もありましょうけれども予算が相当あるけれども、特に家屋の問題について非常に立ちおくれておるし、予算も少ない。ですからそういう点、認定が非常におくれること、そしてまた予算が少ないという点で、石炭によって全く一かけらのもうけもしない鉱区の上に居住しておられるそういう住民の方々の長い間の不便なりなんかというものは、全くがまんできない状態がたくさんあるのです。私も見に行きましたけれども、畳をはぐると下に穴があいていて、雨が降るとどんどん入ってくる。いつまでもそれをやってくれない。こういう状態もあるのですよ。戸障子が合わないというようなことは、そういう炭鉱地帯に行けば、特に筑豊地帯なんかざらですよ。むしろ産業の問題から農地をとにかくどうするということは最もやらなければなりませんけれども、単に生産増強というだけの観点ではなくて、生産増強の基礎には、そこで生産をやる労働者あるいは住民の生活の安定ということがなければこれはうまくいきませんから、居住問題なんか全く切実ですよ。便所の中に鉱害のためにどんどん水が入って、すぐ便所の水があふれるというようなこともたくさんあるわけです。そういう点で、鉱害認定という問題についてテンポを速めるということについて考慮をしておられるのかどうか。それからまた、そういう被害者住宅に対する復旧の速度を速めたり、それからまた予算をふやすというようなことについての考慮はどうか。それから、差し迫って鉱害復旧法の臨鉱法、賠償法、この鉱害二法が大体期限が切れると思うのです。しかし、鉱害復旧事業というものはずいぶん長期にわたってまだ残る、これは認めざるを得ないと思うのですが、この鉱害二法についてのしかるべき措置についてはどういうふうに考えておられるか。その点をひとつお伺いいたしたいと思います。
  187. 本田早苗

    本田政府委員 鉱害紛争につきましては、御指摘のように、福岡の通産局では認否問題が九五%程度になっておりまして、御指摘のとおりでございます。この認否につきましては、お話のありましたように、非常にむずかしい当事者間の問題もございまして、本来なら裁判制度で解決すべきでありますが、費用も時間もかかるということでございますので、四十三年度から石炭鉱業賠償等臨時措置法の改正を行ないまして、地方鉱業協議会の裁定委員会で裁定制度というものを設けておるわけでございます。鉱害の認否につきましては、その調査方法につきまして、できるだけ科学的な方法によって公正な解決をはかって促進したいということで努力いたしておるわけでございますが、今後さらにその点については御指摘のように促進するようにはかってまいる所存でございます。  それから、鉱害のうちの家屋鉱害と農地鉱害の中で、家屋鉱害に対する予算が少ないのではないか、もっと促進すべきではないかという点でございますが、実は昭和四十二年度に全国の鉱害調査というものを実施したわけでございます。その中で大体二三%強というものが家屋の鉱害ということに相なっておりまして、これに対しまして、四十二年度から四十五年度までの臨鉱法による復旧を行なっておるわけでございますが、大体二二%前後をこの家屋復旧に充てておりまして、まあまあ鉱害残存量との対比では比率的な予算を実施しておるということでございますが、被害住民の民生上の安定という点はまさに御指摘のとおりでございますので、この点についてはさらに促進するようにいたしたいと存じます。  それから、鉱害二法の問題でございますが、四十七年の七月三十一日までが期限ということに相なっておりますので、現在残存鉱害調査あるいは長期鉱害復旧計画等を検討すると同時に、この二法の改正についても検討をいたしておる次第でございます。
  188. 田代文久

    ○田代委員 こういうことをこの間福岡に行きまして聞いたのですが、復旧について、予算はとにかくかりにあるとしますね。あるけれども、認定が来て、それを復旧するといいましても、とにかくそれをやる事業団がそれを復旧するための予算はついたけれども、実際にその事業をどんどん促進するための人員が足らないというような面があるのじゃないか、こういうような話でしたけれども、こういうことがあれば全く言語道断だと思いますね。ですから、もしそういうことになるならば、人員不足については、事業団が人員不足のために、いろいろ設計したり、あるいは事業を進めるということについて、これがおくれるということになれば、被害者にとっては全くたまらないと思うんですね。こういうことについてどういうふうに考えておられるか。  それからもう一つ、いま申された裁定委員会ですね、これはどういうふうに構成されておるか、その構成。私らとしましては、この認定が非常におくれるとかあるいは遅滞が起こるというような問題の中には、ほんとうに苦しんでおる被害者の代表が十分入っていないのではないか、それからまた直接に関係する地方自治体の代表ですね、そういうものは十分入っていないのじゃないか。おそらくそれは鉱害被害者の代表も入っておられるという答弁になると思いますけれども、しかし大体私たちが承知している過去の実績から言いますと、被害者代表といって入っているその被害者代表なるものは、これは実は鉱業権者にいかれてしまっている。露骨に言えば、飲まされ食わされている、とまで言ったらあまり露骨だけれども、そういうことで手が回っているために、実際の鉱害復旧については、被害者の思うような形ではなかなか進まないというような事態をいつも私たちは聞くわけです。ですから、実際に裁定委員会の構成の内容は非常に重大だと思うのです。被害者の代表、十分発言力があり、またそれを尊重できるような形における被害者の代表を入れるとか、それから地方自治体の代表を十分入れるというような形でやっていただくべきだ、このように考えるわけですが、そういう点、どのようになっておりますか。
  189. 本田早苗

    本田政府委員 家屋の復旧について、人員が不足のために予算が消化し切れないのではないかという点につきましては、現在のところ、人員不足のために予算が不消化になるという事態はないと考えております。ただし、先ほどもお話のありましたように、無資力鉱害が逐次ふえてくる、したがって、鉱害事業団の負担で復旧しなければならない事業量もふえてくるという情勢にありますので、この技術者の増員ということが必要であろうと存じます。四十五年度におきましては、十数名の増員を考えておりますが、この技術員の増員を優先的にやろうという計画でおるわけでございます。  それから裁定委員会委員の構成でございますが、われわれといたしましては、御指摘のように鉱業権者、それから被害者、それから地方自治体を含む学識経験者という三者構成でやっております。この被害者についての御指摘がございましたが、本来の趣旨としては、これは被害者を代表して、被害者の立場で裁定に当たるというふうに考えて三者構成にいたしておる次第でございます。
  190. 田代文久

    ○田代委員 もう時間がありませんから、最後に、ほんとうにこれ一つで終わります。やはり私も非常に憂慮いたしておりますので最後にお尋ねするのですが、ことしの一月以来、北海道でああいう非常な大災害が起こったわけですね。あのときに私も相当政府にもいろいろ要望いたしましたが、ことしの一月以来のああいう北海道を中心とした大災害後において、政府当局は十分責任がある立場から、この災害を再び起こさないという立場で、以前のマンネリズムになった対策でなくて、新しくどういう点を加味した対策をとっておられるか、その後の経過について御説明願って、私の質問を終わりたいと思います。
  191. 橋本徳男

    ○橋本(徳)政府委員 一月と三月引き続きまして北海道炭礦汽船株式会社の山におきまして災害が起きました。これにつきましての全般的な対策といたしまして、一つは、御承知のように、北炭自体が昨年から引き続いて災害を起こしております。したがいまして、その災害のつどいろいろな措置をとってまいりましたけれども、もっと根本的に、北炭自体の体質面から、保安という角度において根本的な検討をする必要があるというふうなことから、北炭の全鉱山につきまして、従来とっていなかった制度ではございますが、外部のこういった問題についての経験もあり、かつ学識もあるといったような、いわゆるコンサルタントといいましょうか、こういった人を指名、われわれのほうからも推薦いたしまして、それによっていわゆる調査団を組織して、四月の上旬から四月の末にかけまして、北炭の全山を検討する、その出た結果に基づきまして、それを北炭が受け入れ、そして根本的な諸問題の解決に必要ならばこちらとしてもいろいろ手を差し伸べるというふうなことで、いまそういったコンサルタントの最終的な結論待ちの状態になっております。それが第一点です。  それから、こういった事例からいたしまして、また実は四月に入りまして、人の災害はさほどではございませんでしたが、災害の質としてはあまり質のよくない、いわゆる自然発火とかあるいはガス燃焼といったような事故、ガス突出といったようなものが北海道あるいは九州におきまして頻発いたしました。そのために四月の二十日ないし二十二日にかけまして、全鉱山についてあらためて保安のサイドから、鉱業所長みずからによる点検をやってもらう、そしてそれによって改むべき点は改めるというふうなことで、その結果を各監督局に報告するというふうなことで、逐次その報告が現在来ておるような状況でございます。
  192. 田代文久

    ○田代委員 以上で終わらせていただきます。どうもおそくまではなはだ失礼しました。      ————◇—————
  193. 鬼木勝利

    鬼木委員長 この際、御報告申し上げます。  本委員会に付託になりました請願は、炭鉱閉山による留萌鉄道株式会社の休業に対する補償に関する請願一件であります。  本請願の取り扱いについては、先ほど理事会において協議いたしましたとおり、この際、その採否を保留いたしますので、さよう御了承願います。
  194. 鬼木勝利

    鬼木委員長 なお、この際申し上げます。  今会期中、本委員会に参考送付されております陳情書は、石炭産業安定等に関する陳情書外三件であります。      ————◇—————
  195. 鬼木勝利

    鬼木委員長 次に、閉会中審査申し出の件についておはかりいたします。  石炭対策に関する件について、議長に対し閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  196. 鬼木勝利

    鬼木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、閉会中審査案件が付託になりました場合、審査のため参考人から意見を聴取する必要が生じました際には、参考人の出席を求めることとし、その人選、日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  197. 鬼木勝利

    鬼木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、閉会中委員派遣に関する件についておはかりいたします。  閉会中審査案件が付託になり、審査のため委員派遣を行なう必要が生じました際には、派遣委員の人選、派遣地、期間及び承認申請の手続に関しましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  198. 鬼木勝利

    鬼木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時十分散会