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1970-03-11 第63回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年三月十一日(水曜日)    午後二時四十八分開議  出席委員   委員長 鬼木 勝利君    理事 神田  博君 理事 藏内 修治君    理事 田中 六助君 理事 三原 朝雄君    理事 岡田 利春君 理事 相沢 武彦君    理事 伊藤卯四郎君       有馬 元治君    廣瀬 正雄君       山崎平八郎君    松本 七郎君       田畑 金光君    田代 文久君  出席国務大臣         通商産業大臣  宮澤 喜一君         労 働 大 臣 野原 正勝君  出席政府委員         通商産業省鉱山         石炭局長    本田 早苗君         通商産業省鉱山         保安局長    橋本 徳男君         労働省職業安定         局長      住  榮作君     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件      ————◇—————
  2. 鬼木勝利

    鬼木委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。相沢武彦君。
  3. 相沢武彦

    相沢委員 このたび、大手企業といわれました北海道雄別炭砿が、企業ぐるみ閉山になりまして、これは、昨年スタートした政府の新石炭再建策がもろくも破綻を来たした何よりの証拠だ、このように私ども理解をしております。  先日の当委員会においての通産大臣所信表明の中で、今後の石炭対策については、引き続き第四次石炭対策の一そうの充実を基本的な方針としてこれを推進する、とお述べになりましたけれども、この際、新しく就任された大臣の立場で、この石炭再建策について再検討をするお考えはないのかどうか、このことをまずお聞きしたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まずこの第四次の対策を踏襲、遂行していこうと考えております。
  5. 相沢武彦

    相沢委員 新石炭再建策は、そうしますと、御就任になってから十分に検討されて、これを踏襲することによって、石炭産業を再建させるという自信を持っておられた上で遂行されるというのでしょうか。再建策のねらい、効果、これについてどのように御理解、御所見を持っているのか、その辺を承りたいと思います。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 第四次対策閉山等がやむを得ないと判断されました場合については、まず、いま政府としてはでき得る最善のことを考えてやっておるわけでございますから、しかもその期間もまだ何がしかございますから、これでスクラップ・アンド・ビルドをやっていくということがやはり基本だと思います。
  7. 相沢武彦

    相沢委員 政府予想では、四十四年度閉山規模が二百七十五万トンということであったのですが、現実にはもう雄別の百万トンを含めて現在六百万トンの閉山規模になっておるわけなんです。また昭和四十八年度生産を三千六百万トン台にして、四万七千人に縮小するというお考えのようですけれども閉山判断企業にだけまかせておくというやり方では、四十八年度を待たないでこの三千六百万トン台に落ちてしまうんじゃないかと考えるわけですが、大臣は、日本エネルギー政策における石炭の位置づけはどのようにお考えになっているのでしょうか。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、政府が一応の数字を持って施策をしておるわけでございますけれども、いろいろ世の中の変化に従って、あるいは政府考えていなかったような閉山が起こることもあるかもしれません。しかしこれは、いずれにしても計画と実際とが必ず一致するとは限りませんので、万一そういう場合がございましても、いまの四次対策でとにかく国としては最善保護と申しますか、対策を持って臨んでいる、こういうことに考えておるのでございます。
  9. 相沢武彦

    相沢委員 各炭山再建整備計画を立てて、政府から各種の財政援助を受けているわけですが、それでもなおかつなだれ閉山の様相を呈してきているわけですね。この閉山判断は、企業時代の推移にだけまかせるだけでなくて、新しい時代に対応して政府がもっともっと積極的に石炭流通体制生産体制整備、特に鉱区の調整に乗り出して、スクラップ規模のテンポはもっともっとスローダウンさせていくべきではないか。一応第四次の石炭再建政策はありますけれども、新しい時代に応じてまた新たな保護政策考える余地もあり得ると考えてよろしいのでしょうか。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 なだれ的な現象であるかどうかということにつきましては、もう少し様子を見ないとわからないと思いますのは、ともかく第四次でああいう政策を打ち出したということで、従来それを待っていたといいますか、そういう方面も相当あったようです。したがって、こういう政策を打ち出しましたときには、一時的に閉山が多くなるということは、第三次のときにもやはりあったようでございます。したがって、これが今後いわゆるなだれのように続いていくものかどうか、私どもは必ずしもそういうことではなかろうと思っておりますから、一応いまの第四次の政策を続けていくということでいいのではないか。ただ、従来から、いわゆる体制の問題として、もう一ぺん考え直すべきではないかというような御議論もございますので、石炭鉱業審議会の中で体制問題というものをやはり議論をしてもらう必要はあろうと考えております。
  11. 相沢武彦

    相沢委員 ここで承っておきたいことがあるのですが、原料炭はトン五百円値上げを内定されたということなんですが、一般炭のほうの炭価値上げはいつごろ実施し、どれくらいの値上げ考えているか、承っておきたいと思います。
  12. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。原料炭につきましては、海外原料炭情勢等も反映いたしまして、値上げについての話し合いが進んでおりまして、そのうちに結論を得ると思います。一般炭につきましては、原料炭のような事情が現在ございませんので、値上げ問題については非常にむずかしいという現状にございます。
  13. 相沢武彦

    相沢委員 むずかしいということはよくわかるのですが、むずかしいので当分考えない、上げないということなんですか。それとも、むずかしいけれども、いずれ上げることを考えているというのでしょうか。その辺はっきりしていただきたいと思うのですが……。
  14. 本田早苗

    本田政府委員 石炭業界としては、一般炭値上げ問題について非常に強い要請があります。また一般炭生産条件というものは、原料炭と比較してこれもかなりむずかしいものを持っておるという事情はよく理解しておるわけでございますが、こうした事情を反映して炭価の引き上げに持っていけるかどうかということについては、なお諸事情検討しなければならぬ現状でございまして、したがって、業界要望を反映し得るかどうかということについて慎重な検討を要する、こういうふうに考えておる次第でございます。
  15. 相沢武彦

    相沢委員 原料炭確保の問題に触れておきたいのですが、現在日本の国ではどれだけの原料炭を必要としているのでしょうか。
  16. 本田早苗

    本田政府委員 四十四年度原料炭需要状況でございますが、国内炭が千二百万トン余り、輸入が四千万トン前後、こういうことになっております。
  17. 相沢武彦

    相沢委員 現在一般炭原料炭化研究は進んでいるというのですが、それはどの辺まで進んでいるか、実際に原料炭として需要に応じられるのはいつごろか、またその生産規模についておわかりでしたら、お答えいただきたいと思うです。
  18. 本田早苗

    本田政府委員 国内一般炭コークス原料に利用するという技術研究が現在行なわれております。現在は一部では実用されておりまして、五ないし一〇%程度一般炭の利用ということは企業化できる段階に達しつつあります。しかし、この程度では一般炭の活用としてはなお不十分でございますので、今後コークス用原料炭確保という意味一般炭需要の拡大という意味と両面を考えまして、昭和四十四年度、本年度から財団法人石炭技術研究所に対しまして、成型コークス製造法研究というものに対して補助金を出して、その開発を促進いたしておるわけでございます。この方法が成功いたしますと、七〇%程度一般炭コークス用に利用できるということになるわけでございますが、現在研究目標といたしましては、五年後の四十八年を目標にして研究を進めておるという現状でございます。
  19. 相沢武彦

    相沢委員 海外原料炭開発は今後ますます強力に行なわれる体制になっておるのですが、国内開発もひとつおろそかにしないようにしていただきたいと思うのです。これ以外に、もっともっと原料炭国内開発の具体的な施策がありましたら、お伺いしておきたいと思います。
  20. 本田早苗

    本田政府委員 原料炭の新鉱開発につきましては、合理化事業団を通じて行ないます新鉱開発資金融資に期待しておるわけでございまして、四十四年度には三菱の大夕張炭鉱に対して融資をいたしておりますが、このほかに北炭夕張日炭有明炭鉱というものにつきまして計画はございます。この計画につきましては、自然条件としては有望であるというふうに見られておりますが、今後、計画妥当性あるいは損益収支見込み等々を検討して、融資の対象とするかどうかを決定いたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  21. 相沢武彦

    相沢委員 いま南大夕張の新鉱開発の問題が出ましたので触れておきたいのですが、ここは若干計画よりおくれておるそうでございますが、何がネックになっているのでしょうか。
  22. 本田早苗

    本田政府委員 大夕張炭鉱開発につきましては、若干のおくれがございますが、この五月ごろからは採炭開始ができる予定でございまして、特に大きなネックというものはないというふうに聞いております。
  23. 相沢武彦

    相沢委員 約半年近くおくれて採炭開始というふうに聞いておりましたが、その間に、予定したいわゆる資金不足あるいは資金のむだづかいというようなことは考えられぬでしょうか。
  24. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。特にそうした事情があったとは聞いておりません。
  25. 相沢武彦

    相沢委員 去年の十月に委員会から調査団が派遣されたというのですが、そのとき一番問題になったのは労働力不足だったといいますが、その指摘に対して当局としてはどういうような対策を講じて、現状はどうなっていましょうか。
  26. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。労務確保につきましては、社内の配置転換あるいは外部からの新規の雇用等で大体目安がついてまいっておるというふうに聞いております。
  27. 相沢武彦

    相沢委員 石炭産業問題は、だんだん閉山が多くなってきますと、いわゆる産炭地ぐるみの問題になりまして、閉山になった地域地方自治団体が非常に困るわけですが、つい最近美唄の市長さんなんかと話し合ってみますと、もう少し石炭企業に対する通産省としての助言あるいは指導監督閉山に対するアドバイスを強化してほしいというような意向を漏らしておりました。どういうことかといいますと、いきなり抜き打ちに閉山してしまうと、いわゆる産炭地自身が非常に困るというので、それからあわてて産炭地振興のための企業誘致にかけ歩く。せっかく企業誘致しても、そのときにはすでに労働人口は流出してしまっているということで、常に産炭地振興対策が後手に回っている。ですから、通産省側企業側のトップクラス、それからその地方自治体の長クラスのいわゆる秘密的な連絡会議というものを設けてもらって、やむなく閉山になるまでの間に、その産炭地振興に対する企業誘致等の手を事前に進められるような方法も今後は考えなければならぬじゃないだろうか、考えてほしいものだ、こういう要望等もあるのですが、これについての当局側の御見解はどうなっていましょうか。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今回も雄別の問題で私が実は一番苦慮いたしましたのは、ほかのこともさることながら、その地元関係の町村、そうしてこの炭鉱の上に成り立っておる経済住民生活というものであったわけでありまして、北海道の知事さんにもおいでを願って、実はそのことを中心にいろいろお話しをいたしたわけでございます。事業団からのお助けもできることでございますから、できるだけのことはいたさなければならないと思いますが、何ぶんにもその事柄の性質上、及び山でございますからその置かれた位置というものが、すぐに企業が入ってきて新しい経済を興すのには適さないような場合が多うございます。そこで、まことにお気の毒なことだと、今回もいろいろとそのことを私は苦慮をいたしましたようなわけで、今後ともできるだけ親切にそういうことは行政の上で考えてまいりたい、地元ともできるだけの連絡はいたしてまいりたいと思っております。
  29. 相沢武彦

    相沢委員 いまの大臣のおことばを承って、多少は心強く感じたわけですが、繊維規制その他の問題でたいへんお仕事も多かろうと思いますが、現在、炭鉱従業員はまだ八万近くおりまして、家族も含めますと約三十数万になる。その他、いわゆるそういう炭鉱企業に付随する商店街等で生計をしている人たちのことを考えますと、この石炭産業の問題は非常に重要な問題になると思いますので、ひとつ大臣にますます意欲的に取り組んでいただきたいということを要望しまして、だいぶ時間を急いでおるようなので、私の発言はこれで終わります。
  30. 鬼木勝利

  31. 岡田利春

    岡田委員 ただいま相沢同僚委員質問に対して答弁されたことをお聞きいたしておりますと、昭和四十四年度閉山はいわばなだれ閉山でない、そういう実は印象を持たれておるように私は拝聴いたしたわけです。何を一体基準にして政府なだれ閉山ではないとおっしゃるのか、私は非常に疑問に思うわけです。相沢委員は六百万トンと言われておりますけれども、今年度末までの閉山はほぼ八百万トンに達するわけです。すでに北夕及び飯野炭鉱企業ぐるみ閉山をいたしている。こういう情勢は明らかになだれ閉山である。この認識を欠くと今後の石炭政策に大きな問題点を残すと私は考えるわけです。昭和四十年度は従来の最大の閉山規模の年でありますが、五百三十五万トンであります。四十四年度出炭規模から見れば昭和四十年度より縮小していて八百万トンに及ぶわけです。このことをさしてなだれ閉山と言わずして何と言うのでしょうか。私は、その認識について非常に欠けるところがあるのではないか、こう考えざるを得ません。私は、四十四年度予算委員会総括質問佐藤総理にこの点についても質問をいたしているわけですが、政府としては目安であるから、いわば当初予想の三百九十万トン——この中には三企業企業ぐるみ閉山が含まれているわけです。多少これをこえることがあっても二倍程度閉山規模になる、こう指摘をしたわけです。まさしく私の指摘現実数字になってあらわれてきているわけです。そういう従来の四次政策に対する政府確信から見ても、この四十四年度閉山動向というものは明らかに私はなだれ閉山である、こう思うのですが、もしなだれ閉山でないとするならば、何を一体根拠にしてなだれ閉山でないと言うのか、見解を承りたいと思います。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そうであるかないかは、過ぎ去ってあとになって判断いたしませんと、わからないことでございますから、私は、なだれでないということを断言するつもりはございませんでしたので、いままでで見る限り、新しい措置がとられますと、それを待っておったような閉山が従来の第三次のときにも起こりましたので、そこで今回も第四次の措置がとられるとともに、まとまった閉山があったのではなかろうか、こう思っておりますけれども、しかし世の中の動きも早うございます。これは後になって判断をいたさなければわからないことだろうと思います。
  33. 岡田利春

    岡田委員 では、大臣お尋ねをいたしますけれども昭和四十四年度出炭実績見込みは、四千三百五十五万トンと一応いま推計をされておるわけです。昨年の実績に比べると、ビルドのほうが多くて、いわば総出炭規模ではあまり差がないではないか、こういうことが一応言えるわけでありますが、今年度出炭規模というものは、昭和四十三年度出炭規模とは、その内容を質的に異にいたしているわけです。昭和四十三年度までは従来の五千五百万トンベース、こういわれてきた。四十四年度以降は、そのベースとは内容を質的に異にいたしておるわけです。そういう内容から見ますと、今年度出炭規模というのは、ほぼ四千万トン程度であります。ですから、出炭規模から見ると、六百数十万トンの縮小に実はなっているわけなんです。単年度で、出炭規模から見ても、スクラップ・アンド・ビルド政策をとりながら六百万トンを上回っている。閉山規模からいえば、八百万トンになっている。こういう点から見ても、異常ななだれ現象を起こしている、私はこういうふうに判断せざるを得ないわけです。私がそう言う根拠については十分御理解でしょうが、承っておきたいと思います。
  34. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。昭和四十四年度生産実績につきましては、統計の数字で大体考えますと、二月までの実績が三千九百九十万トン、約四千万トンでございますので、この調子でまいりますと、四千三百五十万トン、そのうち原料炭が千二百五十万トンということに落ちつくというふうに見ておるわけでございます。  この四千三百五十万トンに対しまして、実質は、四十三年度あるいはそれ以前の石炭生産事情と今度の四千三百五十万トンの数字事情とは若干違う、その違う点を整理すれば四千万トンではないか、こういう御指摘であろうと思いますが、われわれといたしましては、そういう点を考慮いたしますと、大体四千百五十万トン程度になるというふうに考えておる次第でございます。したがいまして、今回の減産は四百万トン強ということでございます。
  35. 岡田利春

    岡田委員 若干私の見解と違いますけれども、これを深めることは、私はこの機会にはやめておきたいと思うのです。  私の試算によれば、四千万トンから四千百万トンの間である。といたしますと、今年度予算で、昭和四十五年度閉山規模は一応二百万トンを要求しながら、三百万トンということで最終予算が確定をいたしておるわけです。ですから、いまのベースでいきますと、三百万トンをこえるということは、四百万トンにも達するということは、当初政府が第四次政策で、昭和四十八年には大体三千六百万トン程度出炭規模を見込む、しかもその出炭規模考え方は、従来の出炭ベース考え方に立っていたことは間違いがないわけです。ですから、四百万トンももし閉山をするということになれば、わずか二年で四十八年度の、当初政府が四次政策で描いた三千六百万トン程度に、もう二年間で落ち込んでいくという結果になるわけです。ですから、この傾向から見ても、さらに予算で三百万トン、それ以上上回る趨勢にあるということは、これまたなだれ閉山傾向が展望できる、このように私は指摘することができると思うのです。もしそうでないとするならば、今年度は一体、出炭規模及びスクラップ閉山見通しというのは、予算上はそうなっておるけれども、動いている石炭産業全体をとらまえている通産省としては、ではどの程度見込み——三百万トン程度におさまるという確信があるのかどうか、この点について承っておきたいと思います。
  36. 本田早苗

    本田政府委員 四十五年度生産及びその閉山見通しはどうかというお尋ねだと存じますが、先生御承知のとおり、四十五年度生産あるいは閉山見通し等につきましては、四十五年度合理化実施計画をつくる際に詳細な検討をいたして決定するということになっております。この作業は、四月から始めまして、四月の終わりあるいは五月に石炭鉱業審議会意見を聞いてきめるということでございますので、四十五年度としての生産規模あるいは閉山の確かな見通しというものは、いま申し上げるわけにはまいりませんので、しばらくお時間を賜わりたいと思います。ただ、従来の傾向から申しますと、例年四、五百万トンもの減産が続くというふうには考えられないと存じますし、おそらくわれわれの推定からいきましても、それほど大きな減産はなかろうというふうに見ております。
  37. 岡田利春

    岡田委員 もちろんいまの局長の答弁は、おっしゃるとおりでありますけれども、少なくとも原局としては、今年度実績に照らして、合理化計画を立てる以前においても、ある程度見通しというものがなければならないと私は思うわけです。しかし、そのことはさしたる意味を持ちませんから、この程度にしておきますけれども、私が非常に疑問に思っておりますのは、なぜこういうことを聞いたかと申しますと、第四次政策がどのように進んで、さらにどう発展をしていくか、これをある程度正確に把握しないとこれからの石炭政策は成り立たない、こう思うわけです。別になだれ閉山を認めさせたいからどうこうという話じゃないのです。やはりこれからの石炭政策を立てるためには、現状、少なくとも来年度の展望というものの意見一致を見なければならないのではないか、こういう角度から実は私はいま質問をしておるわけです。  そこで、これもあげ足とりではございませんけれども、実は大臣所信表明にも、これだけの八百万トンの閉山が行なわれても、さしたる社会的問題もなく閉山が進んだという認識ですね。これは書いた作文を大臣が読まれたのだから、そうではなかろうと思いますが、石炭というものは、いわば産炭地北海道九州ですから、中央にはあまり響かぬわけです。もちろん局地的な社会問題といいますけれども、これはその地域で見ればやはり社会問題なんです。深刻なものであるわけです。「さしたる社会問題」ではなくて、確かにそういう社会問題もあるけれども、それを最小限度に食いとめる対策をとってきたし、進めていく、こういう考え方が私は当然ではなかろうか、こう思うわけです。でないと、では九州の端で百万トンの山がつぶれたけれども、これはその地域の問題で日本全国の問題ではないということで受けとめて、さしたる社会問題でないということになったのでは、石炭の扱いとしては問題があるのではなかろうか。先ほど大臣が言われたように、雄別の問題でも、地域経済の問題として非常に苦慮されたという御意見が述べられておる趣旨からいっても、そういう認識が私は大切ではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 仰せのとおりと思います。
  39. 岡田利春

    岡田委員 そこで、私は雄別炭礦企業ぐるみ閉山になって、このことは単に雄別炭艦企業ぐるみ閉山になったというだけではなくて、石炭関係者に大きなショックを与えたことは事実だと思うのです。その結果、労働界においても、この雄別企業ぐるみ閉山の前提に立っていろいろな意見が出てきておる。こういう動向から見ても、いかにショックであり、いかに影響が大きかったかということは私は歴然としておると思うわけです。特に私が先ほどからずっとお伺いしてまいりました趣旨は、このまま推移すれば、四十五年度はたいへんな年になり、四十六年度なだれ込んでいくという心配を実はいたしておるわけです。御承知のように、たとえば一般炭の山でとらえれば、九州では日炭高松、さらに松島も一般炭の山といって今日いいでしょう。中央では常磐炭鉱がございますし、北海道では一般炭プロパーとしては、大きいところでは太平洋炭鉱、さらに旧三菱所有美唄炭鉱、加えて羽幌炭鉱そうしてまた企業系列下で見れば、北炭の幌内、及び住友の奔別炭鉱ということに実はなるわけです。これが一般炭主力炭鉱であるわけです。そして政策格差もございますし、このまま推移いたしますと、私は、そういう意味で、四十五年から多少ずれても、四十六年にかけてたいへんな混乱が起きる可能性が非常に強いという認識を持っておるわけです。ですから、この雄別企業ぐるみ閉山から今後の石炭界を展望した場合に、原料炭山の場合には炭価五百円の値上げが四月から一応内定しているという情勢がございますけれども、このまま一般炭炭鉱を放置しておきますと、たいへんな状態が現出するだろう。先ほど局長が答弁しましたけれども炭価問題に触れないということは、もう一般炭の山はすみやかに見切りをつけてやめなさい、やれるところまでやったらやめなさいということに、そうは言わないけれども、実際には政策上なることは火を見るよりも明らかだ、こう思うわけです。したがって、秋にかけて重大な問題が必ず出てきますよ。これは出てくることは間違いがない。ないから、やはり間髪を入れず勇断をもってこれに対処するという姿勢がなければ、四十五年度なだれ現象というものがさらに深刻化していくことは間違いがないと思うわけです。その体質を調査しますと、その可能性がわかるわけですから、そういう意味で私はこの雄別炭硬の企業ぐるみ閉山以来の今日の情勢、来年の情勢を展望する場合に、前向きの姿勢で勇断をもって対処すべきことにはすみやかに対処するという基本的な考え方をもって、できるだけ当初の四次政策の基本であるなだらかな閉山、なだらかな撤退、こういう面を、やはり筋を立てて生かしていくという努力がどうしても必要である、こう思うのですが、この点については見解はいかがでしょうか。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 非常にむずかしい問題だと思います。わが国の石炭、ことに一般炭の将来については、もう十年も前からいろいろ衆知を集めて予測を立て、いろいろな政策をやってまいりましたけれども、結果としては、世の中の動き方が明らかに早かったわけでございます。そこで、私ども考えますのに、人があって石炭があるのでありまして、石炭のために人間が振り回されるということであってはならないのでありますから、結局、私どもは、一定の予断を持って、どうしてもこの数字で食いとめなければいかぬとか、それであってはならぬとかいうことを申すのではなくて、やはり石炭鉱山に就職をしておられる方の、必要があれば転職が円滑にいくように、また一つの閉山があったときに、そこから生まれるいろいろな経済的な混乱を国の力でできるだけ防止をするように、また石炭を中心としてでき上がっておった地域経済が、新しい経済の上に成り立っていくようにといったような配慮を常にしながら、できることであれば、そのことが急激に起こりますことはよろしくございませんから、なだらかにやっていきたい、こう思っておりますけれども、しかしここ十年来のことを振り返ってみますと、予断を持っておりましても、世の中の動きのほうが早かったり違ったりいたします。そこで、常に機動的に対処できるような体制政府としては持っていなければならない、こういうふうに考えております。
  41. 岡田利春

    岡田委員 先ほど大臣は、第四次政策というものは堅持しつつ、体制委員会議論もあるので、そういう方向ともにらみ合わせてまいりたい、こういう答弁がありましたけれども、私は、第四次政策をいまここで根本から変えるとか、政策を重大に変更することを申し上げる考えはないわけです。ただ、やはり第四次政策の中には明治方式のようなこともございましたし、また法律的には再建炭鉱の制度も残っておりますし、またいろいろなこともとられてきておるわけですから、雄別炭礦の場合も、大臣が述べられた趣旨に基づいて、大臣なりに御努力された点については私も実は評価をいたしておるわけです。ただ、私が申し上げることは、やはり非常に目まぐるしい変化がございますから、それに対応するためにはアフターケアは当然しなければならぬでしょうし、またそういう流れの弾力的な運用については、当然しなければならぬ場合には勇断をもってすべきでないのか、こう私は実は考えるわけなんです。その必要性が、いわば四十四年度実績から四十五年度を展望する場合に必ず出てくる、こう私自身は判断をいたしているわけです。そういう意味で先ほど、事態に対してすみやかに把握をされ、対処するという姿勢がやはり大事ではないか、そのことが四十五年度の課題であろう、こう申し上げたのでありまして、そういう意味では大体意見が一致するのではなかろうかと思うのですが、いかがでしょうか。
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御説は十分に理解申し上げることができます。
  43. 岡田利春

    岡田委員 先ほど炭価問題が出ておりましたけれども局長も現時点でなかなか答弁がむずかしいので、ああいう答弁に終わったのであろうかと思いますが、ただ、私は原料炭炭価の値上がりというのは、海外原料炭の値上がり、ある程度の入手困難、そうしていまごろになってわが国の原料炭の多情性といいますか流動性というものが非常に見直されているというようなことが、鉄鋼界の中にも実はあるわけです。それは確かに背景はあるけれども、基本的にはなぜ一体五百円炭価値上げにユーザー側が協力的な態度を示したかというと、それはやはり新政策後であっても原料炭山生産が不振であった、大手炭鉱でもこのまま推移すれば崩壊をする、こういう事態がやはりユーザー側としても認識できたというのが炭価値上げに踏み切った大きな理由であろうと私は思うのです。背景については先ほど局長が言われたとおりであります。ということは、四次政策のもとで原料炭炭価を五百円も上げなければならない、上げるのに協力をしたという認識から引き出しますと、一般炭炭価の場合もその例からまぬがれるわけにいかないわけです。同じ状態に置かれておることには間違いがないという認識ができるのだと私は思うのです。それと同時に、先般も申し上げたのでありますけれども、鉄鋼側としては、電力と石炭、この二つが主要な柱に立っておりますから、トータルで原料炭炭価を見ますと、原料炭一般炭はフィフティ・フィフティの関係であります。そうすると、五百円をトン当たりに引き直しますと、トータルで二百五十円になるわけです。ですから、ここまでの鉄鋼の値段というものを考える場合に、一般炭の値上がりに協調的にある程度協力をするということは、その趣旨がより一そう生かされることになり、当面鉄鋼が必要とする原料炭確保に役割りを果たすことができるという意味に実はなるわけです。そういう意味で産業の連帯性ということがやはり考えられなければならない。こういう角度から考えると、やはり一般炭の場合には基準炭価もございますし、いままで炭価問題というのは審議会で議論しているわけですから、この情勢の中では、鉄鋼は一月から上がるのですから、近いうちには、どういう結論になっても、石炭鉱業審議会というものがあり、各部会もあるわけですから、ここに意見を聞くというぐらいの姿勢がないといかぬのではなかろうか。その結論が、いやこれは上げるべからずということになるかもしれません。しかしやはりそういう前向きの受けとめ方だけは必要ではないか、こう思うのですが、この点についてはいかがでしょうか。
  44. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このたびの第四次の対策にいたしましても、私はいわゆる経済法則というものからいえば、非常に経済法則と違った、ずいぶん思い切った政策であるというふうに自分としては考えております。これも先ほども申し上げましたように、何といっても多数の炭鉱労務者がいるということ、それから閉山でもあれば大きな経済的な混乱があるということ、地域経済の問題、地域社会の問題等々がございますがゆえに、経済法則とはずいぶん違ったことを、あえて政府は国会のお許しを得てやったわけだと思うのでございます。そこで、そういういろいろな、一言で摩擦と申し上げておきますが、摩擦現象を回避する意味でのこういう政策であるということを考えておりますから、できるならばなるべく経済性のほうにいつかは戻っていくのが本則であろう。だんだん、徐々に摩擦をなくしていく。なくなってくれば、また経済のほうになるべく近寄っていきたい、こういう気持ちが私はございます。そこで、燃料政策一般という見地から申しましたら、これは本来経済政策でやるべきでございましょう、私どもの哲学から申しますと。したがって、一般炭をこの際上げるかということになりますと、これはどちらかといえば純粋な経済政策からは遠ざかる方向になるのではなかろうか。いろんな意味で摩擦を回避する考慮は必要でございますけれども、だんだんとは経済政策のほうに近寄っていきたいという気持ちが私にはございます。
  45. 岡田利春

    岡田委員 今日のわが国の経済発展計画に基づいても、いま大臣が言われたことはもちろん理解はできますけれども、大体わが国あるいはヨーロッパの場合でも、石炭の問題というのは、どう一体調和を保ちつつ歴史的な任務を果たさせるか、こういう点について非常に苦慮されておりますし、また同じエネルギーでいえば、アメリカの石油産業自体が日本石炭産業と同じように保護産業に実は置かれておる。こういう事情も実はあるわけですから、そういう意味石炭の問題の扱いというのは非常に多角的な面から検討されなければならないんだと私は思うわけです。ただ私は、いままでの政策の流れ、認識からいいますと、鉄鋼の場合、炭価を上げれば、やはり負担増対策というものはあるわけなんですね。にもかかわらず炭価を上げたということについて、この置かれておる実態、実情というものをわれわれは知ることができるのではなかろうか、こう思うわけです。そういう流れからいいますと、大体いままで石炭政策の面では、千二百円の炭価の引き下げがまず当初基本原則で、これがあまりにも急激にまいりましたし、経済の発展が非常にテンポが進み過ぎたわけですから、そういう意味で三百円の炭価を逆に上げるということが四十年に行なわれているわけです。いわば原料炭一般炭は同様なケースで取り扱われてきたという一つの経過がございます。それと同時に、先ほど申し上げましたように、石炭政策需要の柱は鉄鋼と電力であるということもこれは明らかであります。さらにまた、先ほど申し上げましたように、原料炭炭鉱のてこ入れをするというユーザー側の態度から見れば、産業連帯という立場に立って一般炭の引き上げ、もちろんこれは同等な扱いは困難でありましょうが、やはりそれに見合った協調というものがこの際必要ではなかろうか。さらにまた、すでに昨年の九月に開催された経理審査会では、来年度炭価値上げというものは当然課題になる、こういう方向についてはもう示唆をしているわけですね。そのことから見ても、原料炭一般炭を区別をしてしまうということは絶対できないのではなかろうか。いわば石炭鉱業審議会のそういうメンバーにおいてもすでにそのことを示唆しているという点についても、われわれは注目をしなければならぬと思うわけです。さらにまた一方、電力の場合には、今日資金不足でたいへんな状態にはございますけれども、当初、昭和四十五年度政策需要の引き取りは、総電力サイドで三千百万トンという位置づけが行なわれたわけです。もちろん九電力、電発その他の電力を含めて三千百万トンという位置づけが行なわれた。これから見ると、四十五年度の場合には大体三分の一近く当初の計画から見れば減る。そういう状態にありますから、安い油をたいて、当初の政策需要で協力をした石炭の引き取りというものが極端に三〇%程度減っている、こういう実績に実はなっておるわけです。もちろん負担増対策がございますから、それを引いても二割程度——安く油をたくことが実際当初電力が協力を約した内容から見れば二割程度石炭引き取りが減っている、こういうメリットも実は出ておるわけです。そういう問題点を総合的に私は検討する場合に、先ほど大臣もいろいろ言われておりますけれども原料炭値上げの中で一般炭について全然触れないで避けて通るということだけは不可能ではないか。そうすると、やはり政府自身としては結局石炭鉱業審議会にこの点について意見を聞くということにならざるを得ないのではないか、こう思うのですが、いまここですぐその点について明確な答弁ができるかどうかは疑問でありますけれども、そういう方向とかそういう内容については深く検討しなければならないという点についてだけは意見の一致が見られると思うのですが、いかがでしょうか。
  46. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 公益事業ではございますが、電力も事業であり、事業的な経営の上に成り立っておるものであると思います。また他方で公害といったようなことも御承知のようにございます。それがまた電力会社の上にも経営上の負担になってきておる。電力会社の負担が増加するだけでございますと何ということもございませんが、これが電力料金に響いてくればすぐに国民生活にまた関係してくる。非常にいろんな要素が錯綜しておりますので、いまにわかに何とも申し上げることはできません。そういう要素をいろいろ検討する必要があるということだけは申し上げることができます。
  47. 岡田利春

    岡田委員 先般の委員会で、鉱山石炭局長から、政府は昨年の八月に体制委員会を設置をするということを当委員会でも明確にしており、その後延び延びになって、当委員会でも年内には設置すべきだという点がさらに延びて今日に推移をしておりますけれども、今月中に委員会を設置をする、そしてこの石炭鉱業審議会の中に設けられた委員会に諮問をする、こういう実は答弁をいただいておるわけです。そしてまたこの答申は、当委員会でも明確にされたように、今年八月を目途にして、もちろんそれは全般的な答申になるか分割答申になるか、いずれにしてもそういう方向でこれを受けとめるという答弁を実はいただいておるわけです。諮問するのは通産大臣が諮問するわけですが、当委員会で確認したこの体制委員会内容というのは、結局石炭鉱業体制整備に関する問題を前向きに審議する、したがってこの委員会には石炭鉱業再編成小委員会と鉱区調整等小委員会、二つの小委員会を設ける、そして前者の場合には企業の統合、販売機構の合理化等、石炭鉱業全体にわたる体制面の基本構想を検討させることとする、このように実は述べられて、このことが本委員会で確認をされているわけです。そういたしますと、この趣旨からいえば、通産大臣が諮問する内容というものは大体限定されてくる。いま申し上げた趣旨に基づいて諮問されることにならねばおかしいと思うのですが、一体通産大臣は、今月中に設けられるこの体制委員会にどう諮問されるお考えなのか、前大臣大臣がかわりましたから、この機会に大臣からお聞きいたしておきたいと思います。
  48. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いろいろな事情から体制委員会の開会がおくれておったようでございますが、今月中にも発足させたいと考えております。そこで委員会に対しては、石炭鉱業が今日直面している具体的な問題の中から体制的なもろもろの問題を取り上げて、それと取り組んでいただいて、その現実的な解決策の検討をお願いしたい、こういうふうに思っております。
  49. 岡田利春

    岡田委員 時間になりましたから、これで終わりたいと思うのですが、私は、日本石炭産業というのは、第四次政策を実施して今日の動向を見ますと、やはり非常に悲観的な面が多くなってきておるように思えるわけです。しかし今日わが国の鉄鋼の生産の伸び等を判断いたしますと、どうしても国内原料炭確保しなければならない。またすでに電発等をはじめ、今日の電力危機の中で、それぞれの発電所はフル運転をしておるという現状でありますから、長期的に見ましても、電力事情から判断をいたしましても、ある一定期間はやはり安定的に燃料である石炭確保する必要があるということも、これはいなめない事実であろうと思うのです。私は、そういう点で問題の処理のしかたについて、四十五年度を展望されて、やはり整理をされることが必要ではないのか、四十四年度の経験にかんがみて四十五年度を展望して、その基本になるものについてやはり整理をする必要があるのではなかろうかというのが一つの点であります。そして整理をされて、すみやかに問題点を把握されることによって基本政策を弾力的に運用できるし、そしてまた極端ななだれ閉山とか、集中閉山というような局面をある程度打開できるのではないのか。そのためには相当思い切った措置を必要とする。これが四十五年の展望である。また政策課題としては、体制委員会が八月に、分割であっても一体どういう答申を出してくるのか、これにどう対応するか。それと同時に、炭価問題の解決というのが今年の重要なポイントであろうかと思うわけです。そして長期的にある程度——長期的といいますか、そう長い長期的じゃありませんけれども、ある一定期間を見ますと、日本石炭がもし崩壊をする場合には、結局近代化ができないで、この経済高度成長の中でコストアップ要因があまりにも急激過ぎて、これに対応できない、そのためにいわゆるユーザー側から日本原料炭が見放されるというような事態に追い込まれたときには、当然これは瓦解するでしょう。それともう一つの側面は、結局保安問題である。これに関連して労働力が安定的に確保できるかどうか。労働力が安定的に確保できないとするならば、当然わが国の石炭産業は崩壊するのではなかろうか、こう私は実は判断をいたしているわけです。そういう意味で私は、石炭政策の面から見れば、今年一年間も非常に忙しい年ではなかろうか、こういう実は判断をいたしておりますので、特に大臣もいま非常に忙しいようでありますけれども、少なくとも五十万トン、あるいは大きいところだけでも百万トン以上の山がいま大体どういう状態にあるか、こういう点を把握されれば、私が言った意味を御理解することができるのではなかろうか、こう思いますので、特に四十五年を展望して、この点について通産大臣要望いたしておきたいと思います。  以上で終わります。
  50. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 すでに先ほどから申し上げておりますことで大体私の気持ちはおわかりいただけたと思いますが、何ぶんにも非常に変化の激しい世の中で非常に苦労をしておられるのが今日の石炭産業の姿でございます。いろいろな予断を持たずに、常に実情を把握しながら、政府としてすべきことがあれば、手おくれにならないように処置をしていかなければならないという心がまえで行政をやっていきたいと思います。
  51. 鬼木勝利

  52. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 先ほど来同僚委員の方々から、当面する石炭問題についてそれぞれ相当突っ込んで質問をいたしておりまするので、私は重複を避けながら、きわめて重要であるという点についてのみ、時間の制限等もありますから、通産大臣、またあわせて労働大臣にもあとで伺いたいと思うわけでございます。  御存じのように、日本の四十五年度出炭は弱粘結炭と一般炭とを合わせて大体四千万トンであろうと見るべきだと思っております。外国からの輸入炭が、強粘結炭と弱粘結炭とを合わせて、四十五年度は大体三千万トン以上だろうと思っておるわけでございます。それから来年度は、国内炭と輸入炭とは大体同じぐらいな数量にならざるを得ないのじゃないかと思っておるわけでございます。国内炭にとってかわる原油でありますが、この輸入が四十四年度は一億六千七百四十三万キロリットルという数字が出ております。これを石炭カロリーに換算いたしますと、三億三千二百八十六万トンになると思うのでございます。四十四年度より四十五年度は二〇%油の輸入がふえております。この輸入油を金額に直してみますと、六千八百六十四億円になるようでございます。政府がいうように、日本経済力が十年後には現在の二倍になるということ、もしそのとおりに成長するということになりますと、この油の輸入量もしたがって二倍にならざるを得ません。外国炭の輸入もおそらく国内炭の二倍に増加してくるであろうことは、これも私どもは当然のこととして見なければならぬと思っております。日本国内炭現状のことく放任するならば——輸入炭の炭価も引き上げられることは明らかでございます。現に先般来からアメリカ炭がトン当たり三ドル、日本のお金にしてトン当たり千円の値上げになってきておることは御承知のとおりです。そういうように、日本の唯一の熱源である石炭がだんだんじり貧になって、外国の石炭と油に依存せざるを得ないということになりますと、日本の産業経済力の支配権というものが外国資本に握られてしまうことは、これはひそかに考えれば何人でも憂慮せなければならぬ問題であろうと私は思うのであります。宮澤通産大臣はさきに経済企画庁の長官もしておられたので、こういう点については専門的に勉強し、考えておられるだろうと思いますが、いま申し上げましたようなことで、将来のことを考えるならば、きわめて容易ならざる問題としてこれに対する十分の対策を持って、やはり日本の産業経済を守る、その産業の食糧である熱源の石炭に対しては、やはり国策として慎重に考え対策を立つべきであると思っておるのであります。そういう点等が、さっきから御答弁を伺っておりましても、またこのじり貧状態に石炭をおとしいれてきておる政府石炭対策にしましても、明るい見通しというものは全く見ることのできない現状でありますが、これに対してひとつ宮澤通産大臣から、私が憂慮をしておるようなことは心配ないのだと言いきれるかどうか、いや、憂慮せざるを得ない点があるから、それに対して石炭対策政府としてもかくしなければならぬというお考えであるか、この点をひとつきわめてはっきり御答弁を願いたいと思います。
  53. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今後わが国の経済が直面するであろう一つの大きな問題が天然資源の問題であるという点につきましては、私は御指摘のとおりだと思うのでございます。そこで、政府としましてまず考えるべきことは、メリットがあり、かつ経済性から問題がなければ、できるだけそういう資源を国内において開発すべきだ、これはもう私も異存のないところでございます。その点は石炭につきましてもあるいは石油につきましても、私は同じことであろうと思いますので、したがいまして、石炭につきまして新鉱の開発というようなものにつきましては、企業側でメリットがあると考えるのでありますれば、合理化事業団等を通じて無利子の貸し付けもしてそれを奨励していく。先ほど幾つかの炭鉱の名前が出ておりましたが、そういうものがいま候補になっておるわけでございます。また石油資源につきましても、明年度北海道、東北あるいは日本海のほうもございますけれども、いろいろな探鉱をしようとしております。  しかしそれと同時に、不幸にしてわが国が経済性の高いそれらの資源に十分に恵まれていないということでありますれば、外貨の余裕も出てきたことでございますから、自分の手で海外に資源を開発することも考えなければならないと思います。先ほどお話のございました三ドル云々というのは、ウェストバージニアの鉄鋼の粘結炭のことであろうかと思いますが、これなども、必要があれば、わが国から資本の投下なりあるいは融資なりをしてさらに開発をしていく。しかしもっと典型的な例は、それ以外の国で新しい資源の開発のために投資をするということをやっていかなければならないと思うのであります。わが国が本来そういう資源に恵まれておりましたら、これは国内開発が優先すべきものだと思いますし、また可能な限りそういたしますが、それだけで足りないということになれば、海外に資本を投下する、そうしてよそからの価格、数量等の制約を受けないわれわれ自身の資源を開発していくということも必要なのではないかと思います。
  54. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 政府のほうではこの産業熱源についていろいろ苦心しておられることを私も知っております。しかし、さっき大臣もおっしゃったのですが、国内の油、ガスというものはみんな層が小さくて、とにかく問題にならぬのです。おそらく油などは、外国から入れる百分の一程度ではなかろうかと思っております。ガスのほうも、これは当てにしなかったのが、ややあるということが、秋田県から新潟あたりの海岸線にあるわけですけれども、これとて層が小さくて、大きな計画は立たぬわけでございます。それからスマトラにいま大いに力を入れてやろうとしておるわけでありますが、これまた非常にむずかしい地層がいろいろ出ておりまして、日本で掘っておるようなあの掘り方、鉄管の入れ方ではこの油を揚げることができないという大きな悩みにいまぶつかっておるということでございます。そういう点から考えまして、やはり何といっても私は、せっかく国内石炭があるのでありますから、この石炭を唯一の熱源として産業経済の上に生かしていくということは、いま大臣の答弁の中にも出てまいりましたが、私はあわせてそういう点等を強く要望しておきたいと思います。  さっきからどうも炭鉱がだんだん閉山が激しくなってきた、企業ぐるみなだれ閉山だというようなこと、それに対して政府は、いや、そうじゃないんだという意味のことを言っておられますが、これはもう予想外のなだれ閉山になっておることは数字の上で明らかに出ております。たとえば四十四年度においては、当初政府閉山見込み三百九十万トン、こういうことで立てておりました。ところが、実際に閉山されたのは七百万トンにもなっておる。ところが、これは炭がなくなって閉山したのかというと、そうじゃありません。炭は自分の炭鉱にも埋蔵量、可採炭量は相当ある。しかしながら炭価として経済出炭ができないというところからこれをやめておるのであります。政府のほうでも、山をやめるお葬式料はできるだけ優遇してやるからというようなことで、いわゆる閉山を奨励するようなことでやっておることが一つ。いま一つは、やっても炭価が安いので引き合わない、だから足元の明かるいうちに、お葬式料のもらえるときに閉山したほうが得だ、こういうところから経営者も従業員の人たちも、労使一体でこの点を認めてやっておりますから、したがって閉山した山が非常に多くなる。今後もまた大きな山で閉山せざるを得ないのが相当出てくるものと私どもは見ております。ですから、こういう点でもわれわれはなだれ閉山だと言う、政府のほうでは、いや、そうじゃないんだ、というようなことで水かけ論をしておるときじゃないと私は思う。さっきから申し上げましたように、これは日本の産業経済の原動力であるから、国策として真剣に考えなければならぬという点を私は申し上げておきたいと思います。  時間の関係がありますから、一々答弁してもらわぬで、あとでしてもらうことにいたしますが、そういう点から石炭に対する再建意欲というか、そういう気魄というものが経営者にも従業員の人たちにもなくなってきてしまっているのです。経営者も、いまやめればまあまあとにかく不都合せぬでもいいというようなこと、従業員のほうでもいまやめれば給料の未払いやら退職金ももらえるから、なるべくいまやめて次の転換を考えたほうがよろしい、こういうことが炭鉱全体、九州から北海道までの一つの空気になっておることは、おそらく大臣の耳にも入っておると私は思うのであります。こういう点に政府石炭政策の一つのあやまちがあった、これはもっと真剣に国策として考えなければならなかったというようにお認めになっておるかどうか。いやもうそれはしようがないんだというようなことで今後も考えられるかどうか。この点をひとつはっきり伺っておかぬと、次の対策問題に対して非常に重大でありますから、この点について大臣のお考え、お伺いした点においてきわめてはっきり責任の持てる御意見をお聞かせ願いたい。
  55. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 非常に長い間御経験を積まれて、わが国のいわゆる成長、変化というものをごらんになってこられました伊藤委員の御発言でございますので、私ども軽率にそれに対して批評申し上げることは差し控えるべきであると思っておりますけれども、私ども経済政策のものの考え方から申しますれば、できるだけ経済の中にいわゆる経済合理性というものを導入していきたいという気持ちがございますことは事実であります。ただ先ほど長く申し上げましたように、この石炭の問題というのは、いろいろな社会的な、一言で申しましたならば摩擦ということばが適当かどうか、そういうことがございますので、経済性だけでは割り切れないということで過去十年いろいろな政策をやってまいったと思うのでございます。したがって、これからあとのことを考えますと、そういう摩擦というものがもうあまり起こらないということになってまいりましたら、私は、できるだけ経済性のほうへ問題を引き戻していくべきではないかという気持ちを持っておるわけでございます。ユーザーの側から申しますと、おそらくメリットの高い燃料を使いたいという、これば当然の願いであると思いますので、その場合、メリットということになりますと、輸送費を含めてのコストであるとか、あるいは扱い方の難易であるとか、また公害のためにどれだけ余分なコストがあるかとか、いろいろあると存じますけれども、そういうメリットの高いものならば使いたいというユーザーのものの考え方は、私は、基本的に私ども考えている経済合理性と合っていくというふうに根本的には考えておるわけでございます。したがって、いろいろな摩擦がだんだんに社会の変化から小さくなっていくといたしますれば、できるだけそのメリットに従った経済合理性を導入してまいりたい。その場合、原燃料がわが国自身に非常にメリットの高いものがたくさんあるということでありましたら、これはもうまことにそれが一番しあわせなことでございますけれども、そうでない場合には外国のものも使う、こういうことがあっても、それはそれでいいのではないかというふうに私は根本的には考えておるものでございます。
  56. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 御存じのように、石炭鉱業審議会のほうでは、四十八年度三千六百万トンというものでひとつ押えていこうということのようでありますが、私どもはそれを四千万トンはどんなことがあっても維持しなければだめだぞと言っておるわけでございますけれども、しかしながら、これは両論あると思います。私どもの四千万トン論というのは、私ども根拠を持っております。それから審議会のほうで三千六百万トンというのも、これは全くじり貧状態を促進するようなものになってしまうのじゃないかという点を私は考えまして、どうしても今後、少なくとも十年間ぐらいは四千万トンの日本石炭を維持していくという国策を政府としては樹立してもらいたいというのが私どものこれは切望でございます。そうでないと、経営者も従業員も安心をして石炭再建と取り組んでいこうという意欲をなくしてしまうということになります。  諸外国のことも、これは大臣御存じでしょうが、アメリカはああいう自由放任の国で、自給自足で何でもやれる国だから、これは別格としまして、あと西欧諸国のなにを見ますと、英国においては御存じのように国有、国営、フランスは強力な国家管理をしいております。それからドイツは炭鉱屋が油も兼業しております。でありますから、その辺は適当にあんばいしてやっておるわけでございます。同時にまた、各国とも石炭というものは国の、国民の財産である、資産であるから、これは極力大事にして、それで生産規模などにおいても粗末にならぬようにしてやらなければならぬというのは、これは近代国家の中において共通した一つの対策としてやっておることは、おそらく大臣も御存じであると思います。そういう点からしまして、もう現代の山自体が、九州においても北海道においても老朽化してしまっておるのです。それだけの点でやっていくなら、それは三千六百万トン、三千万トン、二千万トン台にきっとなると思います。でありますから、これをそこまで縮小させないようにしようとするならば、どうしてもやはり新鉱開発あるいは地域開発、これは岡田委員からもしばしば言われておりましたが、先般来問題になりました雄別のごときも、もう十年ぐらい前あるいは七、八年ぐらい前に隣の北洋石炭鉱区を合併をしてやれば相当やれるだけの需要があったということを、その関係者から私は聞かされておるわけでございます。その点においても、やはり政府スクラップの方面に向かっては積極的にやるが、ビルドのほうに向かっては一向手をつけなかったということ。このスクラップ・アンド・ビルドというもの、これは私どもが超党派できめた問題です。ところが、このビルドのほうに向かって一体新鉱開発をどこへやられたか、それから地域の合併の問題についての増産計画というものは一体どこをやられたか。私の知る限りにおいては、こまかいところは別として、大どころでそれがほとんどやられていない。さらに、たとえば有明で日鉄鉱業が百何十億もかけておりましょう。立て坑も掘り、なにしておりますけれども、これはもう坑道を掘ってさえいけば必ず三池炭と同じあの優秀な炭層に行き着くことは明らかになっておりますけれども、これとて日鉄鉱業自身が自前の力でこれ以上資金がないので、これはやはり着炭してやるためには相当資本を投下しなければなりません。そういう点においても、政府がこのビルドに力を入れてやられるということであるなら、当然こういう点を早く炭につけてやるというようなこと等をやられるべきなんだ。ところが九州から北海道に至るまで、いま申し上げた新鉱開発、あるいは地域に対するそういう有望な鉱区を合併さして、そのままの形で掘らすと非常に経済的であるからというような点においてやられた山が一体あるかどうか。それから、それがはたしてどれだけの増産になっておるのかという点をひとつお聞かせ願いたいと思う。
  57. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 詳しくは政府委員から申し上げますが、私の聞いておりますところでは、三菱南大夕張でございますか、ここは実施中だそうでございます。それから、ただいまお話のありました日鉄の有明、それからもう一つ、夕張北炭でございますか、企業でいまいろいろ考えているところだそうでございます。政府といたしましては、この無利子の開発資金の貸し付けはするという体制を持っておりますので、その点は、もし企業がそう判断されるのならば、それを貸し付けをいたすことができますが、問題は、非常にいい炭であるということがかりにございましても、その採炭費等々で、コストの面で引き合うかどうかという問題がございましょうから、そこまでよく考えてやってもらいませんと、また過去の二の舞いを繰り返すことがあってはならない。こういうことは当然企業においても考えてもらいたいと思いますし、私ども考えなければならぬのではないかと思います。
  58. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私が、政府はお葬式のほうだけ力を入れて、若い者が生々発展することのビルドに力を入れておらぬではないかと言ったことについては、大臣もお認めになったようです。ただ、やかましくなってきたものですから、したがって、今後大夕張とか清水沢あるいは日鐵有明鉱区であるとかいう点をようやく、これはやむにやまれず、押されてきて、政府が取り上げようとしておるということではないかと思います。しかし、いまからだっておそいわけではありませんから、私が申し上げたような点に積極的に政府は力を入れてやってもらいたいという、これは私の切望です。  それから、そういう山の体制ができましても、山に働いてくれる従業員の人たちが、若い人たちが山にどんどん入ってくれるというような状態にならないと、山は膨大な資金を投資して、そうして新鉱開発した、あるいは隣の鉱区も合併さしてやらしたとしても、働く者がいなくなってしまったのではこれはどうしようもないのですね。そこで、いま炭鉱従業員人たちの平均年齢が、大体私は四十五年には四十歳になると思っております。それからその後閉山になった山から、五十歳以下の人は、関西地方、中部地方にどんどん求人を申し込んで連れていく。先般、麻生産業の吉隈三坑という炭鉱がございます。これは千四百人おる炭鉱で、企業ぐるみ閉山になったんですが、千四百人しかおらぬところに二万何千人の求人申し込みがあった。ところが、それでも五十歳以下の者でなければ連れていかぬのです。ですから、老人はそこへ置き去りです。そういう点から、山には若い者はほとんどいないといってよろしゅうございます。山に現在おる職員や従業員の人たちで、自分の子供を二代目として山に残そうかなんという者は一人もありません。他からもまた一人も入ってきません。ですからだんだん老朽化してしまう。だから、いまのままの形であるなら、もう十年もたったらおそらく養老院みたいになってしまって、そこには生気も、増産計画も何もないと思うのです。一体どういうところから山にそういう若い人たちがいなくなったかというと、それは炭鉱に対して魅力がなくなったのです。第一は労働賃金が安過ぎるのです。これは政府側に言わせると、いや、炭鉱は請負だから非常に多く取るときもあるということを言う人もあります。しかし、そのかわりに非常に変動が激しいから、それを平均して私のほうで調査したものを見ますと、大体において、大都会の近代工業の労働賃金の半分あるいは六〇%程度です。平均して六〇%より高いところはありません。したがって、何といっても賃金の高いところに行くのはあたりまえの話です。さらにまた、期末手当なども大体都会の工場の半分です。いや半分どころではない、もっと以下の、二万円か三万円くらいしかやらぬところもある。いや、それもやらぬところもあるのです。退職金なども大体都会の工場の三分の一です。それでわれわれは、これではとても炭鉱に足をとどめる人がなくなるぞというので、炭鉱労働者には特別の老齢年金制度をつくれということを、これも超党派で各党一致してやったことです。ところが、これは五年後です。もう三年たっておりますから、あと二年たたなければならない。ところが、二年たって一カ月幾ら老齢年金をもらえるかというと、二千円です。しかも、それは政府が出すのではなくて、炭鉱経営者が自分の負担で出すのです。一体こんなばかばかしい年金制度というのがありますか。経営者が半分出すなら国も半分を出す、大体これは保険を意味するものですから、そういうやり方が各国でもとられている例です。それからまた、政府側に言わすと、厚生年金が、一般の人は二十年であるけれども炭鉱労務者には十五年にして、厚生年金を二万円やれるのだ、こういうことを言っております。しかしながら、そんなに長くしんぼうして——若い人たちにはこういうのは魅力がないのです。若い人たちに一番魅力があるのは、やはり労働賃金のいいこと、それから期末手当の多いこと、それからいろいろ優遇措置を講じてもらうことです。以前には、炭鉱は家賃も要らぬ、電気代も要らぬ、水道代も要らぬで、特別の福祉厚生施設があるからいいのだと言っておりました。昔はそれが通りました。しかし、いまは御存じのように、どこに行ってもりっぱなアパートをつくってやらなければ人が来てくれないということになっているでしょう。ところがまだ炭鉱は、いまも昔式の長屋で、トイレが内についておらぬから、十戸建て、十何戸建ての戸数があるのに外便所ですよ。そういうところに子供を連れて行ったりする奥さんなんかやはり行きたくない。そういうところがまだ二割ないし三割ありますよ。ですから、炭鉱に特別な福祉厚生施設があるからなんというのは何にもならぬ。むしろ都会のほうがかえってりっぱな施設を持っている。したがって私は、いま申し上げた労働賃金の問題、そういう問題について、やはり自分の子供も二代目としたい、あるいは外からも若い人たちが来てくれるというような山にどうすればなるかといえば、やはり経営が健全でなければならぬ、利潤が生まれてくる経営でなければならぬ。一体いまの炭鉱でそういう山がありますか。私がいま町方と比較すると悪いぞというのに対して、いや、町方並みにしてやれますという山があったらお聞かせください。ありはしませんよ。ですから炭鉱経営者も、背に腹はかえられぬから、若い人たちが来てくれぬからしかたがない、このままおじいさんみたいになってしまいます、こういうことを言っておるわけです。この若い人たち、そういう労働力がなければ、新鉱開発をしましても、そこで働いてくれる人がありませんから、増産計画は立たぬわけで、この点は私は、労働者の問題は労働省の問題、経営の問題は通産大臣の所管でございますが、やはり通産大臣と労働大臣が経営と労働は一身同体であるということで明るく解決のできるようにされなかったならば、炭鉱を若く生気みなぎる炭鉱によみがえらせることは不可能だと思うのです。この点において労働、通産両大臣が十分お話し合いをされて、国策として、閣議としてきめて、経営と労働とを若返らせようじゃないかという点において御相談願って、やれるかどうか、その点を通産大臣と労働大臣とが話し合いをして、解決しましょうというお考えになれるかどうか、そういう必要性を認められるかどうか、この点をひとつお聞かせ願いたいと思う。
  59. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 不幸にして閉山の場合の離職者対策、あるいは在職者に対する住宅等々につきましては、政府としては万全の処置をとってまいりましたつもりでありますし、また保安の問題につきましては、再建整備計画検討いたしますときに、生産計画ばかりでなく、保安計画についても計画を出すようにということで十分気をつかっておるつもりでございます。また坑内の整備についても相当手厚い助成もいたしております。しかしそれにしても、結局経営が健全で十分な利潤をあげなければ、なかなかそういう福利施設などは行き届かぬではないかといわれます点は、私はそのとおりだと思うのでございます。そこで、であるから炭価を上げる必要があるであろうといわれる段になりますと、これは前から申し上げることを繰り返しましてまことに恐縮でございますけれども、私は、社会的な摩擦を徐々に解消していくという途中の段階ではいろいろなそういう施策が必要だと思いますけれども、最終的には、できるだけ経済法則、メリットの考え方を導入していきたいと考えておりますものですから、軽率に申し上げてはなりませんが、最後の点では多少私ども考え方は違っておるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  なお、老齢年金のことにつきましては、後ほど厚生省のほうから御答弁があろうかと思います。
  60. 野原正勝

    ○野原国務大臣 石炭対策の労働問題は非常にむずかしい問題と考えております。わが国の経済の発展に尽くしてきた過去の大きな使命、役割りを考えるときに、私どもは、今日の現状をもってしてはとても不可能である、しかし、何としても石炭生産は今後も続けていかなければならぬというふうに考えておりますので、あらゆる手を尽くし、対策を講じてまいっておるわけでございます。特に四十五年度は、住宅問題につきまして住宅確保奨励金というような新しい政策も実施をしようということでございますが、それにもかかわらず、特に若年労働等につきましては、伊藤さんのお話のとおり、ほとんど炭鉱に働く人たちの子弟さえも実は鉱山には就職させたくないというふうな機運になっております。こうしたことを考えますときに、この問題を通常の姿で考えたのではとても解決の方法はない、これは思い切った抜本的な対策以外にないと思うのでありますが、しからば抜本的な対策ありやということになりますと、なかなか容易でないというのが現状でございましょう。私ども石炭の産業という問題に対しまして非常に心痛しておるわけでございます。これはもちろん通産省ともできるだけ打ち合わせをしまして今後の対策を講じたいと思いますけれども、何かひとつこういう思い切った手があるではないかというふうな御意見でもございましたら、この際積極的に可能な問題ならば取り上げていきたいと思いますから、むしろ委員の皆さま方のお知恵を拝借したいと考えておるわけで、どうもさしあたりの対策は思うようなものがないというのが率直な意見でございます。
  61. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 お約束の時間が参りましたが、もう一点だけお許しを願いたいと思うわけでございます。  もう一点というのは、実は統合エネルギーの強力な国家機構をつくられなければこの調整ができないのではないかという点についてであります。池田さんが通産大臣をしておられるときでございました。私は、このばらばらな状態では結局安いものが勝つ、便利なものが勝つ、政府は自由主義経済下においてそれに干渉することはできないというような点から、それをそのままにしておくならば当然日本石炭はつぶれていく。したがって、労働者も戦後は四十六万人からおりましたのが、いませいぜい六、七万人でしょう。そういうように炭鉱の労働者が減ってしまったのであります。このままの形でいくとそうなるぞ、だから総合エネルギーの強力な国家機構をつくって、それで外国炭、あるいは外国から輸入する油、あるいは国内炭、水力火力、原子力も今後出てこようとしておりますが、こういうものをやはり総合調整する強力な国家機構をつくりまして、そこでそれぞれのエネルギーの数量をきめていく、炭価もそれぞれきめていく、それをプールにしろということはまだ今日の自由主義下においてはなかなか困難であるなら、その機構をつくって、その機構においてとにかくあんばいをしていく、たとえば電力炭のごときはすでにそういうなにもあるわけであります。でありますから、私が一番先に申し上げましたような、あの石炭が非常な苦況におちいっていく、それを食いとめて、外国油、石炭資本に日本の産業、経済の生殺与奪の権を握られぬようにしようというのには、そういう機構をつくって、そこで国内炭の数量を幾らにする、炭価を幾らにする、油とかそういうものの数量を幾らにする、外国炭の輸入もこうするというようなことできめられなければ、だめになりますぞということを池田さんと論じ合ったことがございます。そのとき両方ともなかなか強い意見を言い合っておったものですから、しまいに池田さんもいささかおこったらしくて、伊藤さんつくればいいんだろう、それをつくります、こういうことだったから、だいぶきき目があったなと思っておりましたところが、強力な国家機構じゃなくて、単なる調査機関をつくられた。いま存在しておるものもそれです。でありますから、私は通産大臣に切望しておきたいと思いますのは、そういう一つの機構等をつくられて、その中において国内炭の数量なり価格なり、あるいは外国等から輸入するものも一ぺんにその強力なエネルギーの総合調整機関で調整する、ここであんばいするというようなことでやられるならば、私はおのずから一つの解決の道が出てくると思っております。それは、さきに申し上げた英国だってフランスだってドイツだって、その他の国々もそれぞれ大同小異、それに準じたことをやっておるのですから、日本においてもやはりそれをつくられることは、何も統制経済でもなければ、自由主義を圧迫するわけでもありません。圧迫しない範囲内で十分調整ができるということを私は考えているのでありますが、そういうものをつくられてやるということについて、そういう必要性をこれから検討してみようというようなお考え通産大臣にあられるかどうか。この点将来のためにも、この問題を解決するためにもきわめて重要な問題でありますから、これは私の提案でありますが、ひとつこの点に対して通産大臣意見をお聞かせ願いたいと思います。
  62. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 たとえば原子力関係の特殊なものでございますとか、あるいは海外等の探鉱、そういうことであるという場合に、国の、あるいはそれに準じた機関またはその支援体制といったようなものが私は必要だと思いますし、それから石炭の問題につきまして、先ほどから申し上げております摩擦を少なくしていくという目的で、電力用炭の引き取りであるとか、あるいは石炭の合理化であるとかいうために、特殊の法人をつくるというようなことも、これも必要なことだと思っておりますけれども、基本的に国のエネルギー総供給、総需要について、それをつかさどるような政府関係機関をつくるということについて、はたしてそれが効率的に動くものかどうかということになりますと、どうも私どもは過去の経験から実は疑問を持っております。この点、自説を固執してまことに恐縮でございますけれども、私自身はそういう考え方を持っております。
  63. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 もう時間が参りましたから、お伺いしたいと思っておりました三分の一も伺うことができませんでしたけれども、これはいずれまた後日お伺いする機会がたくさんあろうかと思いますから、本日はこの程度で私は質問を終わります。
  64. 鬼木勝利

    鬼木委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十二分散会