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1970-03-06 第63回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年三月六日(金曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 鬼木 勝利君    理事 大坪 保雄君 理事 神田  博君    理事 藏内 修治君 理事 三原 朝雄君    理事 岡田 利春君 理事 相沢 武彦君    理事 伊藤卯四郎君       有馬 元治君    菅波  茂君       廣瀬 正雄君    三池  信君       山崎平八郎君    井野 正揮君       松本 七郎君    田代 文久君  出席国務大臣         通商産業大臣  宮澤 喜一君         労 働 大 臣 野原 正勝君  出席政府委員         通商産業政務次         官      小宮山重四郎君         通商産業省鉱山         石炭局長    本田 早苗君         通商産業省鉱山         保安局長    橋本 徳男君  委員外出席者         経済企画庁総合         開発局山村豪雪         地帯振興課長  足利 知己君         文部省初等中等         教育局高等学校         教育課長    望月哲太郎君         文部省大学学術         局学生課長   石川 智亮君         厚生省社会局老         人福祉課長   永原 勘榮君         通商産業省鉱山         石炭局石炭部長 阿部  茂君         運輸省鉄道監督         局民営鉄道部長 佐原  亨君         労働省職業安定         局失業対策部長 遠藤 政夫君         自治大臣官房         参事官    佐々木喜久治君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件(石炭対策基本施策及び  北炭夕張炭鉱清水沢炭鉱災害に関する問題  等)      ――――◇―――――
  2. 鬼木勝利

    鬼木委員長 これより会議を開きます。  この際、去る一月二十七日、北海道夕張市において発生いたしました北海道炭砿汽船株式会社夕張炭鉱落盤災害及び去る二日の清水沢炭鉱におけるガス突出災害について、政府から報告を聴取いたします。橋本鉱山保安局長
  3. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 北海道におきまして、相次ぐ重大災害を起こしまして、まことに申しわけございません。その状況につきまして、御説明申し上げたいと思います。  資料といたしまして、「夕張炭鉱落ばん災害について」という資料をお配りしております。これは最初にいろいろ概要を書いたものと、それから最後のところに災害個所を中心にいたしました図面が入っておりますので、それを対照いたしながら御説明さしていただきます。  災害を起こしましたのは、この一ページ目にございますように、北海道炭砿汽船株式会社夕張炭鉱第一坑でございます。起こしました場所は、この夕張炭鉱は御承知のように千歳区域最上区域と二つございまして、それ以外に第二坑がございますが、事故を起しましたのは千歳区域立層の下部第三流炭右中切、右七中切という個所でございます。  災害が一月二十七日の二時二十分ごろに起きました。災害種類といたしましては、落盤でございます。下のほうにございますように、死亡が四名、軽傷一名ということでございます。  災害概況でございますが、一月の二十六日の午後十一時ごろ右中切坑道、これはうしろのほうにこの個所の地図がございます。この中切坑道の入口から大体三メートル程度坑道床面に穴があきまして、それを係員二名と鉱員七名計九名で山固め作業をしておりました。それから大体三時間後の二十七日の二時二十分ごろでございますが、突然底抜け崩落が発生いたしました。そこに働いて山固めをしておりました七名の者は七中切の奥に避難いたしまして、そこに閉じ込められたわけでございます。ところが、この七中切の上に当たりまする六中切坑道で休息しておったと思われる四名でございますが、それがその崩落に引き込まれて、この四名が死亡したわけでございます。災害後右七中切坑道に閉じ込められました七名は当日の午後四時十五分までに救出されたわけでございますが、その後引き続きその行くえ不明になっておりました四名の救助に全力を尽くしまして、五日後の二月一日の午前五時五分ごろに全罹災者を収容いたしました。  こういうふうに五日間もおくれました理由は、この表でごらんいただきたいと思いますが、一番最後の表にこの災害個所を大きく書いた図がございます。この斜めに入っております第三流炭坑、ここに粉炭が御承知のように崩落いたしまして、ぎっしりと詰まっております。したがいまして、これを取り明けしながらの救出作業になるわけでございますが、御承知のようにこういった崩落個所におきましては、相当慎重に取り明けていかないと、二次崩落を引き起こし、またそこで罹災者を出すというようなことで、きわめて慎重に、しかしできるだけ能率的にということで、非常にワク組みをしっかりとさせながら作業を進めたわけでございます。そのために百二十三時間、約五日間の日にちを要したわけでございます。災害の報に接しました札幌の鉱山保安監督局からは、局長以下監督官五名が現地に参りまして、罹災者救出とそれから原因究明等の指揮に当たったわけでございます。  その原因でございますが、原因対策につきまして次に申し述べたいと思います。  二ページのところに「災害原因」というのがございますが、この炭鉱は御承知のように水力採炭をしております。したがいまして、今回のこの落盤事故につきましては非常にいろいろな問題を投げかけておりますので、さっそく夕張炭鉱におきましてこの落盤対策委員会というのを設置したわけでございます。  その委員長は、三枚目にこの名簿を載せてありますが、北海道大学の磯部教授委員長といたしまして、あと、こういったいわゆる石炭関係技術的専門家の方に寄っていただき、それからまた御承知のように、この夕張炭鉱よりもこういった水力採炭について経験の深い三井砂川あたりからの人も入れまして、委員会をつくり、監督局オブザーバーというような形においてこれに参加いたしまして、こういった委員会でこの原因究明と、それから対策について審議をしたわけでございます。  その委員会は二月の十日と十一日の二日間、第一回の会合を持ちました。それから十八日に第二回の会合を持ちまして、そこで委員会としての結論を出したわけでございます。その結論がその次に書いてございますが、結局災害の直接的な原因といたしましては、右七中切と右八中切の抗道、特に八中切の抗道でございますが、これはよく調べてみますと、掘採後かなりの期間放置されておる。したがいまして、坑道矢木とかあるいはワクといったようなものが折損しておりまして、そのために天盤間漏れとか高落ち、こういったようなものを起こしております。したがってそういった現象から天盤自体にゆるみを生じておったというふうに推定されるわけでございます。八中切のそういった崩落あとを取り明けていく際に天盤にゆるみを生じ、それから坑道上部のほうに結局ゆるみが生じておりますために、坑道上部炭柱との間に空隙ができた。その空隙が逐次拡大してまいりまして、結局右中切坑道床面にまでこの空隙が達したというふうに推定されております。この空隙が結局右七中切坑道ワク足沈下を引き起こしまして、そうしてその七中切崩落を引き起こした。その七中切崩落から順次波及いたしまして、流炭昇下盤沈下を引き起こし、また六中切坑道陥没落盤を引き起こした。これは順次こういう形で書いてはおりますが、非常に瞬間的にこういった状態が発生したと推定されるわけで、これが直接の原因であるという結論に達しております。  われわれは、当初こういった問題が生じました場合に、こういった直接的な原因のほかに、何か水力採炭、いわゆる水が炭層に作用したのではないかということを非常に懸念して、その面について特に調査をいろいろ進めてもらったわけでございます。したがいまして、その調査のために、単なる理論だけではなしに、現地におきまして実際にボーリング実地調査をもやってもらったというふうなことをいたしましたところ、その結果といたしまして、その周辺炭層に対して水の浸透の影響はないというふうな実地調査の結果が出たわけでございます。  いろいろそういったところから検討をいたしますと、その次の「註」にございますように、六中切坑道うしろ側といいますか、大体場所といたしましては、この流炭坑道と六中切のクロスする場所の奥のほうに、いわゆる潜在的な断層があるということがわかりまして、しかも、その断層の線が鏡はだで剥離しやすいということが突きとめられたわけでございます。したがって、直接的な原因は、先ほど言ったような坑道維持管理が不十分であって、それが直接的にいろいろ波及していってこういった災害を起こしたが、それを助長したものとして、こういった潜在的な断層があったのであろうというのが、最終的のこの委員会としての結論になったわけでございます。  監督局としては、もちろんオブザーバーとして参加はいたしておりますが、やはり監督官庁という立場におきまして、委員会結論委員会としてのものということで、また、監督局が別個のサイドからいろいろ検討を加えていったわけでございますが、そういった現地調査その他の物的な証拠、科学的ないろいろな調査といったものを総合いたしまして、結局、この委員会結論が正しかろうというふうなことに実はなっておるわけでございます。ただ、司法捜査関係もございますので、監督局結論は、推定というふうなことにとどめておきたいというふうに考えております。  したがいまして、こういった原因究明されました暁におきましては、問題は今後の対策でございます。同時にこの委員会は、引き続き、この今後の対策等検討してもらった次第でございます。これをいろいろ技術的な点から検討いたしまして、次のようなことをやれば二度とこういった種類災害は防止できるというふうなことがこの委員会結論に得られましたので、二月二十日に、大体一カ月近く操業を停止しておりましたのを、掘進を開始させるというふうなことにしたわけでございます。  その対策といたしましては、先ほど申しましたように、何といってもこういった中切坑道というものの維持管理が非常に根本的な問題であるというふうな結論でございましたので、こういった中切坑道維持管理に万全を期する。そのためには、中切坑道の掘進と水力採炭、これのバランスをとっていく。従来は、どちらかといいますれば、この山においては、中切坑道を相当早目にやって、それからあと水力採炭をやっておる。その間に中切坑道のいろいろなそういった隘路が出てきておったというふうなことでございますので、極力水力採炭とそういった坑道作業バランスをとっていく。  次に、直接的な方法といたしまして、結局坑道崩落を防止するということで従来いろいろ――もちろん坑道につきましては施ワクはやっておりますが、これを一段と強化していくというために、たとえば、ここにございますように、総矢木とか裏込め踏前矢木、これは非常に専門語でございますが、結局は坑道の上下、両側面というものを非常に強くささえるというふうなことをすべきであるということになったわけでございます。  それから、第三番目には、今回の例に徴しまして、そういったいろいろな坑道を維持する施策をやったといたしましても、かりにその周辺坑道において局部的な崩落がもしあった場合には、さらにそれにつきまして天井炭をさらに崩落させないために、またそれに必要な差し矢木とかあるいはセメントミルクの注入といったような方法で、十分の山固めをやらせるということにしたわけでございます。  また、こういった特に災害を発生した区域の近傍におきましては、いわゆる専任の係員がつきっきりでその監視に当たり、被災を免せるというふうなことで、こういったいろいろな対策、これはいろいろな対策をかなりまとめた形でございまして、非常に専門的細部にわたりましては、いろいろな問題が指摘されております。それの大きな方向といたしましては、こういったような対策をやることが緊急に必要であるというふうなことで、これを差し上げる次第でございます。  次に、同じ北海道炭砿清水沢炭鉱で、この二日にガス突出がございましたので、それにつきまして、概略の御説明を申し上げたいと思います。  もう一枚の紙に、「清水沢炭鉱ガス突出災害について」というのがございます。実はこれは、災害が起きましてまだ完全な調査が行き届いておりませんので、場合によりますれば、若干、後刻修正ということもあり得るかと思いますが、現段階におきまして承知しました範囲内のことで御説明させていただきたいと思っております。  災害概況でございますが、この清水沢と申しますのは、これは夕張の來炭層でございまして、ここの生産炭はほとんど原料炭でございます。  災害が起きましたのは、二日の十三時十四分ごろでございまして、清水沢坑の五片八尺のあと向きロングゲート引立、すなわち先端でございますが、先端で起きた。  災害種類といたしましては、ガス突出ということで、災害発見の端緒が次に書いてありますが、採炭作業場作業を監視しておりました係員が異常な圧風ガスを感知いたしまして、それからまた、可燃性ガス自動警報器を設置しておりますが、これが電源とインターロックになっておるというところから、コンベヤーが自動的に停止されたというふうなことから災害を知りまして、直ちに救出作業に取りかかった。災害が発生いたしましてから一時間半程度の間に、四名全員を搬出いたしまして、さっそく病院に運び込み、人工呼吸をいたしましたが、蘇生せず、全員死亡したという状況でございます。  災害個所状況が次に書いてございますが、災害が発生いたしましたのは、五片の八尺あと向き払い原動機座から約十六メートル先端ということで、これも一番最後のところにその図がかいてありまして、災害が起きましたのは、この一番下のところの、ちょっと飛び出たところでございます。ここの先端からガス突出して、ここに圧風で、掘進しておりました四名が、全員罹災した、こういうことでございます。  突出炭量は約五十八立方メートルということでございますので、ガス突出としましては規模はきわめて小さなものである。したがいまして、倒ワクも崩壊もあまり見られないという状況でございます。  次に、災害個所管理状況につきまして、二ページ目に書いておりますが、実はそこでガス突出が起きましたが、昨年の十二月二十五日と、ことしの一月十八日に、こういったガス突出前兆らしいものが感知されております。もともとこの地域は、あまりガス突出という問題の起きない場所ということになってはおりましたけれども、その二回にわたりまして、一・五立米程度粉炭可燃性ガスを伴って出てきたということが会社側で認められておりまして、さっそく会社は、これはガス突出前兆ではなかろうかというふうなことから、ガス突出対策を労使協議いたしまして実はつくったわけでございます。ガス突出対策としまして次に①②③といろいろ書いてございますが、結局ガス突出対策としましては、ボーリングをいたしましてガスを抜き、そして安全な状態において作業をしていくというのが原則でございます。したがいまして、こういった坑道を掘っていきますときに、坑道上山側のほうは三十メートル間隔で、また下側のほうは二十メートル間隔にそれぞれガス抜きボーリング座を設けましてガス抜きの穴を掘り、そして特に吸引によってガス抜きを行なうということで、これは現に行なっておりました。それからさらに進行方向引き立てでございますが、引き立てからは二本のボーリングをやって、これもガス吸引をやっております。  次のページへ参りますが、それからさらに先ほどのようにガス突出前兆という判断に立っておりますので、ガス突出前兆があった場合の避難の方法その他につきましても、労働者教育をやっておる。これも現実に調べましたところ、いろいろやっております。  こういった形で災害発生防止措置現地としてはとっておったということでございます。また現にこれは監督局のほうでその実態を確認しております。しかも、これは少し会社側に有利なことではございますが、ここのガス抜きのやり方、その次のパラグラフに書いてありますけれども、通常の山でやっております以上のガス抜き対策をやっておるということが確認されておるわけでございます。といいますのは、通常の場合におきましては坑道の掘進先あたりでのいわゆるガス抜きとしましては、六十ミリないし八十ミリ程度口径ボーリングで、自噴によってガス抜きをやるというのが通常の形態ではございますが、ここにおきましては特に百四十五ミリという大口径ボーリングをし、しかも強制的なガス抜きを実施しておるというふうなことで、この限りにおきましては、ガス抜き対策としてはほかの山よりもよくやっておるということがいえるわけなんでございます。現在断定はできませんが、それではなぜガス突出が起きたのであろうかというふうなことをいろいろ調べましたところ、断定はしにくいとは思いますけれども、要するに進行先に対しまして、あらゆる角度のガス抜きボーリングをやって、そしてガスを排除するのに対しまして、どうも一カ所進行先の上のほうに当たるかと思いますけれども、そういったところにボーリングが達していなかった。それは結局、坑道を掘進していきますれば、三十メートル間隔ボーリング座をつくるわけでございますが、そういった払いの掘進と坑道の掘進が計画どおりには行なわれないために、それがアンバランスを来たしておったので、もう数メートル早く坑道が延びておりますれば、そこに今度事故を起こした原因と思われる場所までのボーリングができたと思われるのですが、若干掘進のおくれがございましたために、むしろ次に置くべきボーリング座が置かれなかった。そのためにどうもそういった進行方向の上側のほうにいわゆる死角ができて、そこにガスがたまっておったのが突出したのではないかというふうに現在は推定されるわけでございます。したがって、方法としてはほかの山以上のことをやり、いろいろその危険性を予知してやっておったのですが、やる技術においてどうもちょっと欠けるところがあったのではないかというふうな感じを持っておるわけであります。これは、先ほど言いましたように、最終的結論を出すのにはまだ調査が不十分な段階でございますので、さらに検討を進めなければ最終的結論は出ないかと思っております。したがいまして、現段階におきましては、もちろんこういった災害現場作業を中止し、原因究明に当たっておるというのが実態でございます。  概略以上のとおりでございます。     ―――――――――――――
  4. 鬼木勝利

    鬼木委員長 石炭対策に関する問題について質疑の通告がありますので、順次これを許します。岡田利春君。
  5. 岡田利春

    岡田委員 ただいま夕張炭鉱清水沢炭鉱災害報告がございました。夕張炭鉱災害については、その後委員会をつくられて、大体今後の対策がいま述べられたわけです。私は、確かにこの対策は一応こういう災害の場合常識的な対策だと思うのですが、ただ一点気がかりなことは、今日の採炭現場設計構造自体がこれでいいのかどうか、こういう問題がやはり残されておるのではなかろうか。もちろんすでに坑道骨格ができておるわけですから、いますぐ当面の対策としては述べられておる対策がとられることは当然だと思いますけれども、長期的な展望に立った場合に、やはり採炭切り羽設計の問題について研究を加えていく必要がある、この研究を進めるべきである、私はこういう見解を一つ持っております。  それと同時に、第二点の問題は、一応これだけの今後の対策を局として打ち出されたわけですが、局側自体としてもこの災害現場に対するいわゆる監督、こういう点についてもやはり重点的かつ適切な対策指導がなされなければならないのではないか、この面がちょっと説明がないので非常に気がかりな点であります。これだけの対策をして再び同じような災害が起きるとするならば、これはきわめて重大な問題であると思いますので、この点特に私は質問というよりも、そういう面についての行政上の指導万遺漏なきを期するように、この点申し添えておきたいと思います。  それと同時に、清水沢炭鉱災害についてもいま報告がございましたけれども、何といっても前進式タイプの場合、もしこの状況の中で大型な突出であった場合には、もう切り羽全体に影響を及ぼしたと思うんですね。大きな災害になったことはもう火を見るよりも明らかなわけです。この程度であって掘進先の四名でおさまったわけですが、この報告を聞くと、もし大型の場合にどうだったかということを考えますと、非常に身の毛がよだつような感じがするわけです。したがって、地山前進式タイプの場合に、こういうガスの多い地帯ゲート坑道がはたして十六メートルでいいのかどうか、これは非常に問題だと思うんですね。そういう意味においては、これはいま日本の炭鉱が全般的に掘進がおくれておる一つの象徴的な事故として起きているのだ、こういう受けとめ方をせざるを得ないと思うわけです。そういう点について、私はやはりこういう技術的な問題は、その坑道の掘進の延びの状況や、あるいはまた設計そのものについて十分配慮をしていかなければこの種の災害の絶滅を期することはできないのではないか、こう思いますので、今後原因究明される場合に、単に局部的な原因よりも、そういう立場に立って検討していただきたいということを、清水沢炭鉱については私の意見としてこの機会に述べておきたいと思います。  大臣が参りませんし、時間も制限がございますので、初めに、昭和四十四年度、すなわち第四次石炭政策がほぼ一年間経過しようといたしておるわけです。この一年間すでに閉山は七百万トン以上に達している。あとから大臣が述べられる所信表明の中には、社会的問題があまり起きないでスムーズにいっているようなことが述べられるように拝見いたしておるわけですが、私はあながちそういう受けとめ方はどうかという見解を実は持っております。当初の予想から見れば、私はやはり、われわれが指摘をいたしましたように、第四次政策の結果、大なだれ閉山現象が起きている、こういう認識を実はいたしておるわけです。特に企業ぐるみ閉山として、雄別炭鉱の問題が出てきた。第四次政策というものは、そういう意味でまさしくなだれ現象を起こしている。特に昭和四十五年度にもこの傾向は続く、そして三千五百万トン程度出炭規模というのは、大体来年度から再来年度に達成されることはすでに明らかである、こういう見解を持っているわけですが、この一年間第四次政策を進められて、どのように総括されて、どういう見解を持っておられるか、この機会に明らかにしていただきたいと思います。
  6. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。御指摘のように、四十四年度におきまして、閉山規模は七百万トンをこえる状況に相なっております。これは、規模としては例年に見ない大きな規模でございます。しかしながら、四十四年度は、御指摘にもありましたように、第四次石炭対策を実施いたしました第一年でございまして、第四次石炭政策を実施に移すまでに、一昨年来石炭鉱業審議会におきまして審議が進められておる過程において、閉山交付金制度の大幅な改善というような問題が取り上げられておったわけでございまして、閉山を手控えていた炭鉱が新石炭対策の発足を待ちまして閉山に移ったという傾向があったと考えられるわけであります。たとえば、この四十四年の第一・四半期におきましては、四百三十万トン弱の閉山がございまして、自後は百万トン、四十七万トン、それから第四・四半期におきまして雄別を含めまして二百万トン弱というふうに、第丁四半期に集中いたしておる事情もございますので、その辺のところも御理解いただきたいというふうに考えるわけでございます。全体といたしまして、御指摘のとおり、われわれといたしましても、石炭鉱業の実態に即応した石炭対策であるかどうかということについては、絶えずこれを見守っておくことが必要だというふうに考えておる次第でございます。ただ、第四次石炭対策では、苦境に立っております石炭鉱業の再建をはかるにあたりまして、財政の許す範囲で最大限の助成措置を用意いたしますが、この助成のワク内で、立ち行かない状態になります企業につきましては、みずからの意思で撤退をするということを基本的な考え方といたしておったわけでございます。その意味で、閉山の発生があるということにつきましてはやむを得ないかと存ずる次第でございます。さような意味で、今次対策におきましては、閉山対策につきましても大幅な拡充を行なっておりまして、御指摘もございましたが、四十四年度の閉山の大規模な実施が行なわれましたけれども、これに伴う社会的な影響という点から考えますと、大勢的に見ますれば、大きな摩擦を起こすことなく処理されたというふうに考えるわけでございまして、今次対策が一応基本的な考え方の線に沿うて進んでおるというふうに考える次第でございます。
  7. 岡田利春

    岡田委員 いずれ一年間の総括については深めてまた見解を承りたいと思いますので、きょうは一応局の見解をお聞きするという程度にとめておきたいと思います。  問題は、当委員会で第四次石炭政策について政府が私の質問に対して述べられて、本委員会でも確認されておる問題でありますが、いまの局長の言われた総括と相関連して、石炭政策についての展望については、体制問題を取り上げて体制委員会を設置して、ここで大臣が諮問して作業を進める、しかもこの体制委員会は昨年の八月に設置をして、本年八月にその答申を求める、こういうことが明確に実は確認をされておるわけです。暮れの臨時国会にも私は、体制委員会の設置されていないということは国会軽視ではないか、したがって年度内に必ず体制委員会を設置するように強く要望しておったのでありますけれども、今日依然として体制委員会は設置をされていないわけです。そしてそういう中でなだれ現象閉山が進行しておるということは政治的にもきわめて重大であり、その責任は関わるべきではなかろうか、私はこう判断せざるを得ないわけです。一体政府は、この委員会で確認している体制委員会をつくる意思があるのかないのか。つくるとすれば、もう八月にできていなければならぬのでありますが、いまだできていないのでありますから、いつつくるのか、一体いつ体制問題についてこの委員会に諮問する考えでおるのか、こういう点についてこの機会に明らかにしてもらいたいと思います。
  8. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 岡田委員の御質問については、体制委員会の設置に対してたいへんおくれましたことがございましたけれども、これはできれば本年の今月中にでも体制委員会を発足させたいと思います。これについては、たいへん弁解がましいお答えでございますけれども、昨年来いろいろ諸般の事情もございます。また年が明けまして予算の問題その他がございまして、今日まで延びましたことはたいへん遺憾でございます。体制委員会の運営方針については、体制委員会の設置をきめる石炭鉱業審議会総合部会ないし総会、さらには体制委員会そのもので御審議いただいた上で定められるものだろうと思っております。方向としては、石炭鉱業が今日直面している具体的諸問題をかまえつつ、その中から体制的な意味合いを持つ諸問題と取り組み、この現実的な解決策につき検討を加えていこうと思っております。
  9. 岡田利春

    岡田委員 体制委員会の設置が今月中に行なわれるという答弁でありますけれども、これが半年以上にわたっておくれたということを私は非常に残念に思うわけです。なぜかなれば、これからの石炭の撤退についても体制的にやはり議論して受けとめるという姿勢は今後必要であろうかと思います。また私は近い将来に必ずそういう問題は出てくると思うわけです。したがって、せっかく機会がありながら、体制委員会の設置がないままに、そういうことが体制的に検討されないままに、雄別なら雄別に企業ぐるみ閉山が行なわれる、これを私は非常に残念に思っているわけです。たとえ同じ結論が出たとしても、そういうせっかくの体制委員会の設置ということがあったわけですから、そういう意味で撤退の方式についても、たとえば明治方式もございましたし、いま再建方式でいえば、予算はついておりませんけれども法律はあるわけですから、そういう公式のところでやはりある程度の議論ができるというものがなかった点について私は非常に残念に思うわけです。したがって、このことは将来の、これからの石炭政策を進めていく上に大きな障害になっていく可能性を非常に多く含んでおる。特に雄別の企業ぐるみ閉山が全体の炭鉱労働者に与えておる影響というものは、はかり知れないものがあると私は受けとめております。もし近い将来日本の石炭産業が崩壊するとするならば、地下に働く労働力が確保できない――それには保安の問題もあるでしょう、これができない場合には、日本の石炭産業は崩壊をすると思います。そういう意味で、やはり全体の地下で働いておる人々に対してそれぞれ構想されておる制度を運用しつつ、撤退をはかるなら撤退をはかる、こういうことでなければそういう石炭産業の崩壊の時期が早まるのではないか、私は実はそう受けとめておるわけです。そういう意味でこの体制委員会がすみやかに設置をされて、そして当初予定どおりの諮問を行なうべきだ。今月中に体制委員会ができたとすれば、ではその諮問がなされ、答申を受ける時期は、当初約束どおり今年の八月なのかどうか、こういう点について明確にしていただきたいと思います。
  10. 本田早苗

    本田政府委員 今月中にも体制委員会の発足を見たいというふうに考えておる次第でございます。  御質問の答申の時期につきましては、当初、昨年の四月に大臣が回答で申し上げました線を極力尊重するように実施いたしたいと思いますが、事情によりましては、審議事項に応じまして時期的に分割してでも答申を得たい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  11. 岡田利春

    岡田委員 今日の石炭政策の中で、特に今年度予算を見れば、大体前年度の予算の組み立て方が踏襲されておる、こう言っても差しつかえないと思うわけです。ただ、しかし、新しい問題としては、いま原料炭が売り手市場になり、国際的にも確保が非常に困難になりつつあるという情勢の中で、国内原料炭を確保するという立場から、鉄鋼及びガスそれぞれのユーザー側から、原料炭炭鉱をある程度維持をしていくという積極的な協力面として、炭価値上げについてトン当たり五百円が内定しているというぐあいに私は承っておるわけです。この点について、どういう具体的な話し合いの結果炭価値上げが考えられたのか。それと同時に、この場合、鉄鋼側として五百円値上げをするについて、いろいろ希望なり協力要請というものが当然なされておると思うわけです。そういう点についてはどういう意見が出されておるか、この点を含めてひとつ御答弁願いたいと思います。
  12. 本田早苗

    本田政府委員 石炭の炭価問題につきましては、御指摘のように原料炭の海外の需給状況等も反映いたしまして、国内の炭価の値ぎめにおきまして引き上げの話し合いが起こっておりまして、現在最終結論を得るための詰めが行なわれておる現状でございます。  なお、その際の一般炭の問題につきましては、最近の情勢から見ますと、なお困難な情勢にあるというふうに考えておる次第でございます。
  13. 岡田利春

    岡田委員 わが国の原料炭を使う消費者側、すなわちユーザーが今回こういう措置をとっておるということは、長期にわたって原料炭の山というものを安定化さしていく、長期的に国内原料炭を確保する、こういう立場からこういう積極的な協力が生まれてきた、私はこう思うわけです。そういたしますと、このねらいを分析いたしますと、わが国の原料炭山をトータルしてみて、いわゆる半分が原料炭で、一般炭が併産される、一緒に生産される、こういう事情を持っておるわけです。もちろん原料炭が八五%の山もあれば四五%の山もあるわけですが、そうしますと、もしトータルで見ますと、五百円の炭価の値上げというのは、一般炭を含めればトン当たり二百五十円ということになるわけです。これに協調して一般炭の炭価の値上げを行なえば、鉄鋼が積極的に協力した意味はさらに生きてくるわけですね。しかもわが国の石炭政策の立て方は、政策需要としては特に原料炭と電力用炭二本の柱でまいっておるわけですから、過去の炭価の値上げの経過を見ても、原料炭の値上、げが行なわれれば、一般炭の炭価の値上げも行なわれておるわけです。また、当然そうあることが、今回の措置というものが生きてくることになると私は思うのです。そういう意味では、従来の炭価値上げの経過並びに今回の鉄鋼側のそういう積極的な協力、これを分析をしてさらに効果あらしめるためには、一般炭の炭価の値上げは当然しなければならぬ。もちろん電力サイドだけから見れば、油が安い、石炭が高いわけですから、別な性格だといわれるかもしれませんが、石炭政策から見れば、当然表裏一体の関係にございますし、いままでの炭価の問題の取り扱いについても当然そういう形で推移しているわけです。しかし一般炭の場合には、これは御承知のように基準炭価があるわけですから、そういう面から考えますと、いずれにしても、この措置と相まって、私は当然この問題は石炭鉱業審議会に諮問すべきじゃないのか、意見を聞くべきじゃないのか、そういう考えを持っているのですが、そういう意思がおありかどうかお聞きをいたしたいと思います。
  14. 本田早苗

    本田政府委員 御指摘のように、原料炭と一般炭が併産されるというような事情がございますが、今回の値上げの背景というものが炭種の需給状況というものも反映して行なわれているという事情がございますので、御指摘のように並行的に実施できるという条件が必ずしもそろうておらないというのが現状でございまして、したがって、御指摘のように一般炭の炭価引き上げをこの際その方向検討することを審議会にかけるかどうかについては、われわれとしては諸種の条件を考えつつ検討いたさなければならない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  15. 岡田利春

    岡田委員 私は、今日の石炭政策の課題は、体制委員会に諮問されて答申を得ることと炭価問題にありという認識を実は持っておるわけです。そういう意味で、いまの問題については、いま明確な考え方を示すことは困難かと思いますけれども、審議会に諮問することは、結論がどう出ようとも、産業連帯の立場に立って当然審議会の意見を聞くべきだという意見を私は持っておるわけです。したがって、この問題もいずれまた具体的に議論することにして、そういう私の見解についてこの機会に明らかにしておきたいと思います。  それと同時に、一般炭の問題を取り上げた場合に、先般の四次政策の中にもありますように、「特に一般炭の中で低硫黄炭の確保について政府は重大な配慮を払う」という意味は、公害環境等の変化にかんがみて、いわば原料炭に準じて低硫黄炭の確保というものを考えていく、こういう意見であるというぐあいに私は受けとめておるわけです。そうしますと、低硫黄炭といいますけれども、低硫黄炭の定義というものは一体何なのか。もちろんいろいろな環境が変わることによってその内容は若干は変わるかもしれませんけれども、低硫黄炭というものは何なのかという点について一応の見解を統一しておく必要があると思うのです。この点についてはどういう見解ですか。
  16. 本田早苗

    本田政府委員 お話しのように、現在のところ、どこを基準に低硫黄炭といい、それを越えるものを高硫黄炭というかという点についての見解は統一されておりませんで、むしろ今後の公害対策等々の関係から低品位炭の内容がきまってこようかというふうに考えておる次第でございます。御指摘のように、低硫黄炭につきましては、さきの大臣の回答で、これに対して特に考慮を払うということにいたしておりますが、四十四年度の開銀融資におきましても、低硫黄炭確保の観点も入れまして推薦を行なうということにいたしておる次第でございます。
  17. 岡田利春

    岡田委員 この基準のとり方は非常に問題があろうかと思いますけれども、私の見解を示せば、いまわが国の電力で使っておる重油のサルファの総平均は一・八%といわれておるわけです。それと同時に大体一%以下を一応常識的に低サルファの重油、こういっておるわけです。これを石炭に換算いたしますと、大体平均の面では〇・九%、それから一%を石炭に換算すると〇・四五%になるわけです。そういたしますと、やはり常識的にいまのわが国の電力が使っている油のサルファに対する見解を一応基礎にして石炭に引き直すということが基準になってしかるべきではなかろうか、こういう見解を私は持っているのですが、私のこの見解についてはいかがですか。
  18. 本田早苗

    本田政府委員 御指摘のように、現在重油はサルファ一・八というものが平均なのであります。しかし、今後の環境基準に即応するためには、四十八年度には大気汚染のために対策を要する地域におきましては一・二五程度まで下げねばならないというふうにされておるわけであります。したがいまして、そうした重油の硫黄含有率の低下というものを考慮いたしますと、石炭としてはそれの半分ないし六割程度のものでなければならないということになりますので、御指摘のように〇・四五ということになりますと、四十八年度の時点における低硫黄対策方向からいきますと、低硫黄の炭という内容になろうかと思います。
  19. 岡田利春

    岡田委員 一・二を石炭に引き直せば〇・五四になるわけですから、大体私の見解と合うわけで、これがさらに一%に下がったとしても大体〇・四五%、一%以下に下がっても〇・四五%以下の炭は長期的に見て低サルファだということは間違いなく、相当ロングランに見てもそう言えるんじゃないでしょうか。
  20. 本田早苗

    本田政府委員 御指摘のとおりであろうと考えます。
  21. 岡田利春

    岡田委員 大臣が出席されておりますけれども、所信表明を受けないで質問するのもどうかと思いますので、所信表明をいただいてから、時間のある範囲で質問いたしたい、こう思います。
  22. 鬼木勝利

    鬼木委員長 通産大臣及び労働大臣がお見えになりましたので、先ほどの理事会申し合わせのとおり、岡田利春君の質疑は一時中断していただきますが、よろしくお願いをいたします。      ――――◇―――――
  23. 鬼木勝利

    鬼木委員長 この際、石炭対策の基本政策について、宮澤通商産業大臣並びに野原労働大臣からそれぞれ説明を聴取いたします。  まず宮澤通商産業大臣
  24. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 石炭対策につきまして所信を申し上げるに先立ち、私の就任以来、一月、三月と石炭鉱業の事故が相次いで発生いたしましたことに対し、深く遺憾の意を表しますとともに、保安の確保につきまして今後一そうの努力を尽くす決意をここに表明いたしたいと存じます。  御承知のとおり、石炭鉱業は引き続ききわめて困難な状況に直面しておりますので、事態の緊要性にかんがみ、関係各方面の御協力を得て石炭対策の一そうの充実のため最善を尽くす所存でございます。  石炭対策につきましては、一昨年十二月の石炭鉱業審議会及び中央鉱山保安協議会の答申に基づき、石炭鉱業の再建と保安の確保並びに終閉山の円滑化をはかるため、四十四年度からいわゆる第四次石炭対策を実施しておりますが、これに伴い予算措置につきましても従来に比し飛躍的な増額を行なったところであります。  この第四次石炭対策におきましては、まず、石炭鉱業の再建をはかるため、再建交付金の交付、安定補給金の大幅な増額、石炭鉱業合理化事業団が行なう無利子融資業務の画期的な拡充などにつきまして格段の留意をいたしております。  また、保安の確保につきましては、石炭鉱業存続のための基本的前提であることにもかんがみ、石炭鉱業経営者に対し保安に取り組む姿勢の確立を求めるとともに、監督指導の一そうの徹底につとめております。  他面、やむを得ず発生する終閉山につきましては、これに伴う社会的な諸影響を緩和するため、特別閉山交付金制度の創設など閉山対策の大幅な拡充をはかったところであります。  四十四年度における閉山規模は、今日の石炭鉱業をめぐるきびしい情勢を反映して七百万トン台になる見通しでありますが、これらの施策の効果によってこれまでのところ閉山はさしたる社会問題を惹起することなく円滑に行なわれたものと考えております。  今後の石炭対策につきましては、四十四年度に引き続き第四次石炭対策の一そうの充実を基本的な方針としてこれを推進してまいる所存であります。  このため、四十五年度におきましては、石炭対策特別会計において総額九百七十一億円の予算を計上いたしておりますが、この規模は四十四年度における八百八十五億円を八十六億円上回るものであり、これにより石炭鉱業の再建と保安の確保はもとより、終閉山の円滑な処理、さらには最近ますます重要の度合いを高めてきております鉱害対策、産炭地域振興対策等の一そうの充実をはかることとしている次第であります。  本特別委員会は、従来から石炭対策につき、熱心に御審議をいただき、また心強い御指導、御鞭撻をいただいておりますが、今後とも一そうの御支援をお願い申し上げる次第であります。
  25. 鬼木勝利

    鬼木委員長 次に野原労働大臣
  26. 野原正勝

    ○野原国務大臣 このたび労働省を担当することになりました野原でございます。私は誠意と熱意をもって労働行政の推進につとめてまいる考えでありますので、委員各位の御指導と御鞭撻をお願いいたします。  今後の石炭対策のあり方につきましては、去る四十三年十二月に石炭鉱業審議会の答申を得て、四十四年一月に閣議決定を見たところであります。  労働省といたしましては、この答申の趣旨に沿って、石炭産業労働者の労働条件と福祉の向上を促進し、雇用の安定をはかってまいりたいと存じます。  石炭政策の進行により今後やむを得ず閉山する炭鉱離職者につきましては、まず前職経験を生かして存続炭鉱への再就職を促進いたすとともに、他産業への再就職を希望する者に対しては、従来の経験を十分に生かして援護対策を推進し、その再就職の確保に万全を期する所存であります。  石炭鉱山における労働災害の防止につきましては、労働省といたしましても、労働者保護の見地から重大な関心を寄せ、鉱山保安行政を所掌する通商産業省に対し必要に応じ勧告を行なうこととしてきたところであります。  石炭産業は、現在経営上種々の問題を有しておるのでありますが、何といっても労働災害の防止は経営の基本と考えます。このような見地から、今後も通商産業省と密接な連携を保ちつつ、石炭鉱山における労働者の安全衛生の確保につとめてまいる考えであり、また、炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法につきましても、今後さらに法施行の遺憾なきを期してまいる所存であります。  賃金、退職金等の不払いについては、昨年の閉山交付金制度の改善及び再建交付金制度の新設により大幅に改善を見つつあるところでありますが、今後ともこれらの諸措置と相まってその解決に一そう努力してまいりたいと考えております。  以上、石炭鉱業における当面の労働諸問題について所信の一端を申し上げた次第でありますが、今後とも各位の御意見を十分拝聴して行政の推進に力を尽くしてまいります。何とぞよろしくお願いいたします。
  27. 鬼木勝利

    鬼木委員長 次に、小宮山通商産業政務次官から発言を求められております。これを許します。小宮山通商産業政務次官。
  28. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 このたび、通商産業省政務次官に就任いたしました。今後とも各位の御指導、御鞭撻をよろしくお願いいたします。      ――――◇―――――
  29. 鬼木勝利

    鬼木委員長 引き続き、昭和四十五年度通商産業省所管の石炭関係予算の概要について政府から説明を聴取いたします。阿部石炭部長。
  30. 阿部茂

    ○阿部説明員 お手元にお配りしてございます「昭和四十五年度石炭対策特別会計予算要求」という横書きの資料がございますので、これに即しまして申し上げたいと思います。  通商産業省の関係の予算要求の大きな柱は三本でございまして、第一が石炭鉱業合理化安定対策、第二の柱が鉱害対策、第三の柱が産炭地域振興対策、この三本になっております。なお石炭特別会計といたしましては、そのほかに労働省御所管の炭鉱離職者援護対策と産炭地域開発雇用対策、二本の柱がございまして、おおむねこの五本の柱で構成されているわけでございます。したがいまして、以下ごく簡単に要点だけにつきましてそれぞれ御説明申してまいりたいと思います。  まず第一に、石炭鉱業合理化安定対策の第一といたしまして、石炭鉱業経理改善対策でございます。四十四年度二百六十九億一千九百三十二万四千円でございますが、四十五年度は三百億二千九百三十六万五千円を計上いたしております。  その内容は、そこにございますように三つになっておりまして、第一が元利補給金でございます。四十四年度百十二億に対しまして、四十五年度百十一億でございます。備考の欄にございますように、これがいわゆる第一次の肩がわり分というのでございまして、対象は大手十社、中小九社、計十九社でございまして、元本ベース千億円にあたるものでございます。  第二が再建交付金でございますが、昨年の審議会の第四次政策のこれが一つの大きな柱になっておりまして、四十四年度から初めて実施に移されたものでございまして、いわゆる第二次肩がわり分でございます。四十四年度三十六億六千八百万円に対しまして、四十五年度は七十億七千八百六十六万二千円でございますが、これは昨年は一年の後半分、つまり半年分をそこに計上してございまして、四十五年度初めて平年度化するわけでございまして、一年分まるまる計上したのがこの数字の違いになっております。  第三の安定補給金でございます。四十四年度百二十億でございますが、四十五年度もおおむねそれとひとしい百十六億三千五百万円でございまして、四十四年度、御承知のとおりこれまた第四次施策で抜本的に強化され、炭価が上げられた政策の一環でございまして、四十五年度はすべて炭価等はそれと同様に積算されておる次第でございます。  次に、第二の、石炭鉱業合理化事業団出資金、これは四十四年度百三億六千万を四十五年度にも同様に全くの同額を計上しております。  内訳は、備考の欄に、設備資金と整備資金、信用保証基金、この三つに分けて書いておる次第でございまして、設備資金が九十五億から若干、四億ほど減になっておるのでございますが、これは現在の設備投資の状況等から見まして、十分これで間に合っていく、こういう考え方を持っておる次第でございます。  なお、一言添えますと、新鉱開発につきましては、有望な計画に対しましては積極的にこれを新規に考えてまいりたい、こういう考え方をここにとっておる次第でございます。  なお、合理化事業団の全体の融資規模というものは、償還金をも合わせますと、おおむね百五十億円程度と考えておりまして、四十四年度とその規模は大体同じようなものになろうかと思う次第でございます。  三番目の石炭鉱業生産体制改善対策でございますが、次のページに内訳の説明がございますように、これは坑道掘進費等の補助金でございます。備考の欄にございますように、主要坑道、これは補助率四〇%でございます。それから次に、一般坑道三〇%ということになっておりまして、そのほかに、周辺炭鉱閉山いたしますことによりまして坑内水が増加してまいります、それの揚排水に要する加算金補助ということで一億というものを見ております。その結果、四十四年度四十一億に対しまして、四十五年度おむおねそれに近い三十九億、こういうことに相なっておる次第でございます。  四番目に、石炭需要確保対策「うち増加引取交付金」こういうふうにしるしておりますが、これはすでに御承知のとおり、政策需要を裏づけていこうという予算でございまして、ただ四十四年度の八十一億に対しまして四十五年度は四十億と半減しているように一応お目にとまるかと思いますが、その内容をごらんいただきますと、まず、そのうち一番下にございます電源開発株式会社に対する出資二十億は四十四年度をもちまして完全に予定どおり終了いたしましたので、これは四十五年度ではゼロに相なるわけでございます。片方、増加引取交付金のうち電力用炭がかなり減少してまいる見通しでございまして、その分がおおむね約二十億円ここに減ってまいっておるような次第でございます。その結果が八十一億が四十億、こういうようなことに相なっておる次第でございます。  次に、五番目に、保安対策が四十四年度十六億七千万円に対しまして、四十五年度十八億二千八百万、二億近くも拡充強化に相なっておるわけでございまして、保安につきましては後ほど保安局長のほうから詳しい御説明があろうかと思いますが、四十三年度に三億から四十四年度に十六億と抜本的に強化された後でございまして、さらに本年度では充てん関係を新規に認められておるということがことしの特色でございます。  六番目に炭鉱整理促進費補助でございますが、これは四十四年度百五億に対しまして、四十五年度百六十二億七千万を計上しておりますが、おおむねこれはトン数にいたしまして三百万トンを予想しておる次第でございます。  次に第二の柱といたしまして、鉱害対策でございますが、鉱害対策は、四十四年度百六億の規模に対しまして、四十五年度は百二十三億を計上いたしておりまして、事業規模にいたしますと、おおむね四十四年度百十億に対しまして四十五年度百二十五億と相なりまして、たいへんな規模の拡充がこれで期待できる、かように考えておる次第でございます。  第三の柱の産炭地域振興対策でございますが、これは四十四年度五十六億九千万に対しまして、四十五年度六十四億八千万、約八億の強化になっておりますが、そのうち産炭地振興事業団への出資金は、四十四年度四十一億に対しまして、四十五年度は四億増の四十五億、かようにいたしておるわけでございます。  なお、産炭地域振興対策は産炭地振興事業団の事業の拡充強化ということをもっぱらその中核として進めてまいることになっておりまして、その観点から申しますと、事業団の融資及び土地造成事業いずれも前年度に対して非常な拡充に相なりまして、その総額は百七十一億を予定いたしておりまして、四十四年度はこれに対して百二十九億を見込んでおりますので、伸び率から申しますとおおむね一三三%という拡充強化に相なるわけでございます。なお、これに対する資金源でございますが、このほかに財投から四十四年度六十億に対して、四十五年度は七十六億の融資が期待されておりまして、これらの資金のめどを得ておる次第でございます。  その次の最後のページでございますが、産炭地域臨時交付金、四十四年度初めてできた制度でございまして、閉山の行なわれた地域市町村に対してその財政の苦しい状況を幾らかでも緩和しよう、こういうことでできた制度でございますが、四十五年度ではさらにこれを増額して十二億にいたした、かような拡充を考えておる次第でございます。  なお次の四番目、事務処理費、これは十一億八百万から十二億三千三百万に増額されております。  なお、あと五、六の労働省関係予算につきましては、労働省のほうから御説明があるかと思いますので、省略さしていただきます。  その結果、石炭特別会計といたしましては、最後の合計欄でございますが、四十四年度八百八十四億五千三百万円に対しまして、四十五年度は九百七十一億一千四百万円、かように相なった次第でございます。  さらに一言だけ追加さしていただきますと、実はこの特別会計のほかに、一般会計で新規に石炭関係としまして二項目このたび予算要求しておる次第でございます。  その第一が、海外原料炭開発調査費補助金という項目でございまして、千五百十八万五千円というものをその原料炭の開発調査事業補助といたしまして計上いたしておる次第でございます。  また第二に、亜炭鉱業整備共済事業費補助金といたしまして千三百万円、これも三分の二補助ということを予定いたしまして、いずれも一般会計でこの二項目を要求しておりますことをつけ加えさしていただきまして、御説明を終わります。
  31. 鬼木勝利

    鬼木委員長 次に、鉱山保安関係予算の概要について説明を聴取いたします。橋本鉱山保安局長
  32. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 保安関係につきまして、お配りいたしました予算要求表に基づきまして御説明さしていただきます。  四十五年度十八億二千八百万という要求になっておりますが、実は保安関係の予算としましては、これだけでなくて、生産関係と保安とで分離不可能という形において生産関係に入っている、たとえば保安のために必要な坑道関係の補助金とか、あるいは保安関係の整備のための無利子融資といったようなことで、合理化事業団の融資に伴います出資、こういうようなものにつきましては、先ほど石炭部長から話しましたように、石炭特別会計の一般の対策の中に入ってございますが、特に保安プロパーといたしまして引き出したものがこの予算でございます。四十四年度十六億に対しまして四十五年度十八億、先ほど話もございましたように、第四次の答申を受け、かつまた保安協議会の答申に基づきまして、保安の整備強化という意味におきまして、四十三年度は三億四千二百万程度の予算を、四十四年度約四倍強に当たりまする十六億ということにいたしましたので、四十五年度はそれを受けてさらに重点的な施策を強化するという考え方をとったわけでございます。  項目について申し上げますと、鉱山保安技術対策費と申しますのは、これは保安関係として必要なテーマを設定いたしまして、そのテーマをたとえば石炭技術研究所あたりに回答を求めるという形におきまして、毎年いろいろテーマを定めてやっておる仕事でございます。  それからボタ山災害防止対策ということで一億八千八百万円計上しておりますが、これは御承知のように、特に九州地域におきまして鉱業権者のないボタ山、これの特に危険なものにつきましては、国が三分の二、地元県が三分の一を出しまして、国、県の力によってその防災工事をやっていくというものでございまして、四十四年度八ボタ山に対しまして、四十五年度は十三のボタ山を処理しようという金でございます。  それから保安専用機器開発費というのは、保安のために必要な機器につきましては、市場が非常に狭いということ、それからまたそのメーカーが非常に中小のメーカーであるというようなことから、特にその研究、開発につきまして補助金を出して助成し、研究、開発を促進しようというテーマでございまして、本年度は新規のテーマを取り上げてございます。  それから放置坑口閉そく対策費というのは、すでに休止しました鉱山の坑口閉塞は本来鉱業権者の役割りではございますけれども、不幸にして閉山したというような場合に、過去におきまして相当の坑口が放置されておる。ところが、一般の住民の方たちが知らずにその放置坑口に入って事故を起こすといったようなことから、昨年度始めました三カ年計画で、県に補助金を出しまして、県と国でこれについての閉塞をしていこうというものでございまして、昨年はこれを六十抗口、ことしは八十六の坑口の閉塞をやろう。なお、亜炭につきましても同じような問題がございますので、これは一般会計のほうでやっておる次第でございます。  それから救護訓練教育費といいますのは、昨年発足いたしました全国三カ所の保安センター、これにつきましての救護訓練その他特殊訓練等の充実強化をはかる等のことで四百万円の増加をはかったわけでございます。  それから次に、石炭鉱山保安確保費ということで、これは炭鉱のいろいろな保安専用機器を買いました場合にその三分の二を補助する、その対象としましては、特に保安上必要だと思われるような装置、たとえば連絡警報装置とかあるいは酸素呼吸器、ガス自動警報装置、こういったものにつきまして、いまの炭鉱の経理状況から見て三分の二の補助を国が与えておる、特に昨年以来やりましたものが、ガス抜きの工事、それから密閉、こういったものにつきましても三分の二の補助金を与え、本年はさらにこれを充実いたしまして、充てんにつきまして四億一千万円の新規の予算を計上して、坑内における自然発火等の防止対策を講ずることにつとめていきたいというふうなことでございます。  これ以外に事務費がございますが、説明は省略させていただきたいと思います。
  33. 鬼木勝利

    鬼木委員長 次に、昭和四十五年度労働省所管の石炭関係予算の概要について説明を聴取いたします。遠藤失業対策部長。
  34. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 昭和四十五年度の石炭対策特別会計予算、労働省所管の分について御説明申し上げます。  昭和四十五年度の石炭対策特別会計予算案のうち、労働省関係炭鉱離職者対策に必要な経費につきましては、総額八十五億五千二百八十七万四千円を計上いたしておりまして、四十四年度に対比いたしまして九億一千六百三十万円の増加になっております。今年度に引き続きまして来年度も相当数の離職者が発生するという予想でございますので、これらの離職者の再就職のあっせん、職業訓練の実施等の援護措置を強力に進めることにいたしておりまして、これに必要な経費を計上いたしたものでございます。  まず第一は、炭鉱離職者の援護対策費でございますが、人件費の二億五千百万円は、離職者の職業相談、職業紹介あるいは求職指導等を担当いたします就職促進指導官の人件費でございます。  第二の、炭鉱離職者緊急就労対策事業費補助金は、四十五年度は三十一億二千八百万円計上いたしております。これは事業費単価を前年度の二千五百円に対しまして三百円増の二千八百円を予定いたしております。吸収人員につきましては、四千七百人でございましたものを四十五年度は四千三百人、四百人の減になっておりますが、これは炭鉱離職者の求職手帳制度が設けられまして以来、新規の離職者には手帳制度によって手帳を発給することになっておりますので、新規にはこの事業に吸収しないことになっている関係から、就労者が減少したことに伴うものでございます。  次に、炭鉱離職者の援護事業費補助金でございますが、これは炭鉱離職者に対しまして雇用促進事業団が行ないます援護業務に必要な経費の補助でございます。十二億五千百万円を計上いたしております。この内容は、再就職奨励金等の増額に伴うものでございます。  次が、炭鉱離職者の職業訓練費の補助金でございまして、炭鉱離職者が他の産業へ再就職をいたします際、これを容易にするために都道府県が行ないます職業訓練の補助の経費でございます。六千八百十二万九千円を計上いたしております。  五番目が、炭鉱離職者の就職促進手当でございます。これは、求職手帳の発給を受けました炭鉱離職者に対しまして、就職促進手当を三年間支給しまして、再就職までの生活の確保をはかる経費でございます。これは四十四年度に比較いたしまして一億二千六百六十万円の減になっております。実は最近雇用情勢が好転いたしてまいりまして、炭鉱離職者の就職が非常に容易になってまいりまして、比較的順調に再就職がはかられておりますために、就職促進手当の支給が低下してまいっております。その関係で四十四年度に対比いたしまして経費が減額計上されておるわけでございます。これは、先ほど申し上げました援護事業費補助金が実は昨年より二億八千八百万円増加になっております。再就職が比較的容易に早期になりましたために、この援護事業費のほうの補助金が約三億近く増額になっておりまして、促進手当のほうが減額になる、こういう関係になっております。ただし、この促進手当の経費はいわゆる義務的経費でございますので、もちろん不足を来たすような場合には弾力条項等によって措置されるということになっております。  次に、産炭地域開発就労事業費の補助金でございますが、これは四十四年度から実施された事業でございます。四十五年度は三十一億五千四百万円を計上しております。事業費単価は、産炭地市町村等の御要望もありまして、四十四年度の三千六百円に対しまして二五%増の四千五百円を計上しておる次第でございます。吸収人員につきましては、前年度同様の三千二百人を計上しております。  以上簡単でございますが、労働省関係石炭対策特別会計予算案の概要を御説明申し上げました。      ――――◇―――――
  35. 鬼木勝利

    鬼木委員長 質疑を継続いたします。岡田利春君。
  36. 岡田利春

    岡田委員 第四次石炭政策を進める中で、第二次肩がわりが実施されたわけでありますが、この場合、特に現在炭鉱が一番困っておるのは資金繰りの問題であることは御承知のとおりです。したがって、二次肩がわりを行なった場合には、担保抜き等を強力に進める、特に炭鉱の金融問題について担保抜きをすることによって金融をつけるように努力したい、こういう政府の考え方が述べられておるわけですが、一体、肩がわりが行なわれて、これが実施された実績があるのかどうか、またそう言われた政府は、担保抜きについて一体どの程度の努力をしておるのか、この点について伺っておきたいと思います。
  37. 本田早苗

    本田政府委員 炭鉱が今後再建路線を進めるにつきまして、資金の不足が生じることがあり得るので、これに対してあっせん等を行なうべきであるという点はかねて御指摘を受けておるところでございます。われわれといたしましても、昨年四月以降、資金の手当につきまして金融機関等に協力を要望しておったわけでございます。また中小炭鉱につきましては、融資の確保をはかるために中小金融公庫が限度額の引き上げを行なっております。また個別企業につきましても、それぞれのケースに沿いましてあっせんをするということをいたしておるわけでございますが、御指摘の肩がわりに伴いまして担保抜きの問題につきましては、なおいろいろ問題があって、なかなかむずかしい問題がございますが、三億五千万円の担保を抜いた例が一つ出ておるわけであります。
  38. 岡田利春

    岡田委員 この肩がわりを行なうにあたって、金融機関救済ではないかという議論がずいぶん各方面からなされたわけです。したがって、この点についてはさらに一そうの努力をして、政府の趣旨というものが現実に生かされるように特段の努力をこの機会に要望しておきます。  それから、いま予算を説明になりましたけれども、一点だけ伺っておきたいと思うのですが、従来ございましたボーリングに対する補助金は今年度はゼロ査定に終わったわけです。予算編成の過程で、漏れ承るところによれば、今後近代化資金の中で、特に九州南端の海底探鉱等のボーリング費用は、陸上と違うわけですから、近代化資金でこれを見ていきたい、もちろん近代化資金でこれを見るという場合には、設備投資と同じようにその費用の七〇%を見ることになるのかどうか、この点についてはどういう見解をまとめられておるか伺っておきたいのです。
  39. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。原料炭の炭田開発につきまして、委託調査がかねて行なわれておりまして、四十四年度まで行なわれておったわけでございますが、本年度からは、一応五カ年計画が終了したということで、これは廃止になっております。今後は近代化資金の対象事業として、これを助成していくということに相なっておる次第でございます。
  40. 岡田利春

    岡田委員 大体、この資金総額は、前年度予算程度でございますか。
  41. 阿部茂

    ○阿部説明員 大体、同額でございます。
  42. 岡田利春

    岡田委員 時間がありませんので、飛び飛びになりますけれども、雄別の閉山について伺っておきたいと思うのですが、新政策に基づいて経理審査が行なわれて、肩がわりが実施をされることが決定をされましたのは十月と聞いておるわけです。十月に経理審査した山が、この一月、二月には企業ぐるみ閉山をしなければならないということになったわけです。一般世間で見れば、きわめてふかしぎなことが起きたものだというのが、私は、一般の見方だと思うのですが、雄別が企業ぐるみ閉山になった理由はいかがですか。
  43. 本田早苗

    本田政府委員 御指摘のように、雄別炭鉱の再建整備計画は、十月にこれを認定いたしております。しかしながら、この雄別炭鉱につきましては、今回の四次の石炭対策を発足する際に、あるいはそれ以前からも、先行き楽観を許さないという事情が多々見受けられたのでございますが、会社関係者は、労使とも再建意欲が非常に強く、再建の方針に基づきまして、強力に努力いたしたいという考え方を持っておったわけでございます。政府といたしましても、今回の第四次の石炭政策の制度のたてまえから、極力この意向を尊重すべきであるということでございまして、昨秋の再建整備計画の認定にあたりましても、その再建努力に期待いたしまして、これを認めたわけでございますが、遺憾ながら、その後も業況の改善が見られず、ついに閉山のやむなきに至った、こういう実情でございます。
  44. 岡田利春

    岡田委員 この場合、企業ぐるみ閉山に伴う交付金ですね、特別閉山交付金の推計はどの程度になる見込みですか。
  45. 本田早苗

    本田政府委員 数字の整理をいたさねば、簡単に申し上げかねると存じますので、後刻の機会にお答えさしていただきたいと存じます。
  46. 岡田利春

    岡田委員 雄別は二月の二十七日に、全員解雇の通告が行なわれておるわけですが、そのことによって三月から労働者は失業保険の受給に入っておるわけです。したがって、交付金のこれからの取り扱いでありますけれども、代理受領及び会社の解散、さらに鉱業権の抹消、そして、第一回の交付金の交付はどういう日程になっておりますか。
  47. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。御指摘のように、二月二十七日に雄別炭鉱は特別閉山交付金の申請をいたしまして、全員解雇を行なったわけでございますが、今後の閉山の処理に伴うスケジュールといたしましては、四月の二十日前後に鉱業権の抹消をいたしまして、その数日後に会社解散、こういうことに相なろうと思います。そういたしますと、六月の末ごろ、賃金債権の第一回の支払いが行なわれまして、本年末ごろに一般債の第一回の支払いが行なわれる、こういうことになろうかと思います。賃金関係につきましては、第一回の支払いの裏打ちといたしまして、これを担保に三月の下旬に内渡しができるように、いま関係の方面と折衝をいたしておる次第でございます。
  48. 岡田利春

    岡田委員 いま局長の答弁では、会社解散前に鉱業権の抹消をする。従来の例から言えば、会社解散が行なわれた後、第一回の交付金が交付される以前に鉱業権の抹消がされるという日程のように承知をいたしておりますけれども、この点はいかがですか。
  49. 本田早苗

    本田政府委員 お答えします。一応われわれの聞いておるスケジュールといたしましては、いま申し上げたようなスケジュールになっておりますが、この会社解散との前後は、いずれでもいいということに法律上はなっております。
  50. 岡田利春

    岡田委員 雄別の企業ぐるみ閉山というものが釧路地域に三山集中したという点で、地域経済のショックというものは非常に大きいわけです。同時に、自治体も、たとえば尺別炭鉱の存在する音別町は、六割の人口を尺別炭鉱が占めている。いわば半減するというのが実情であります。また、雄別炭鉱が存在している阿寒町は、鉄道その他を含めて廃止されますから、大体人口的に見ますと、これまた半減をする、こう言われておるわけです。したがって、地域経済のショックと同時に、また自治体自体もたいへんな状況にさらされるというのが実情であります。したがって、今年度予算でも、自治体交付金が十億から十二億に増額をされておりますが、問題は、すみやかな交付決定を行なわなければ、結局、借金政策を自治体はとらざるを得ないということになるわけです。こういう制度があるわけですから、当然、繰り上げて対策を立てるということがきわめて望ましいのではないか、こう考えておるわけでありますが、この点についてはどう対処されようとしておるか。  それと同時に、従来のトン六十円の計算の自治体交付金の上積みをする考え方があるかどうか、あわせてお聞きいたします。
  51. 本田早苗

    本田政府委員 御指摘のように、今回の雄別三山の閉山は、関係市町村に対して財政的に非常に大きな影響を与える実態でございます。先般、通産省といたしましても、北海道庁等と協力いたしまして現地調査いたしたわけでございますが、その結果、早急な対策が必要だというふうに考えておる次第でございます。このために、北海道庁、それから自治省に対しまして、特別交付税の重点的配分を要請いたしますとともに、御指摘の産炭地域振興臨時交付金につきましては、できるだけ本年度内に交付ができるように措置いたしたいというふうに考えておる次第でございます。  なお、さらに、つけ加えてお尋ねのございました、この臨時交付金について加算できるのかどうかという点につきましては、関係市町村の税収入の減少などの財政状況を十分考えて、結論を出したいというふうに考えておる次第でございます。
  52. 岡田利春

    岡田委員 北海道炭鉱の特性から言いまして、山が閉山になりますと、その山に存在している中小商店その他一切がとにかくスクラップ化されるというのが特性であるわけです。しかし、制度的に見ますと、そこに存在している中小商店を救済する方法というのは皆無だ、こう申し上げても私は差しつかえないと思います。もちろん、信用保険制度の特例はございますけれども、実際これを運用する場合には、なかなか保証人その他の関係で金融ベースに乗りづらいというのが一般的な特色であります。また、そういう企業ぐるみ閉山に伴って、関連企業、釧路経済圏に関連する企業、これまた大きなショックを受けるわけです。私の聞いておるところでは、一般債務十四億、こう推定をされておるわけですから、この二分の一が補てんされても七億、しかも一年間これがずれるということになるわけですから、これらの対策は、もちろん、政府及び北海道庁並びに関係自治体も協力をして行なわなければならぬと思いますけれども、特にこの点については、北海道の場合には重大な配慮を払わなければならない必要性が、他の地域よりもきわめて大きいと思うわけです。こういう点についての見解を承っておきたいと思います。
  53. 本田早苗

    本田政府委員 御指摘のように、関連中小企業者に対する援助の措置といたしましては、現在の特別会計によります制度といたしましては、一般債務に対する二分の一の回収不能分の弁済に充てる補てんというものがあるわけでございますが、これはもちろんできるだけ早くこれを適用するように事務を進めたいというふうに存ずる次第であります。そのほか、先ほど御指摘がありましたように、賃金債務につきまして第一回の支払いの行なわれるまでに、手元に一定額の資金をお渡しできるような融資の道を折衝中でございますが、これが実現すれば中小企業者に対する弁済にも充てられるということで、一部救済されるというふうに考える次第でございますが、そのほかは御指摘のような中小企業信用保険制度の特別措置、あるいは中小企業金融公庫等の特別貸し付け、あるいは地元地方公共団体による制度金融等を極力活用する必要があると存じますので、これらにつきましては、道をはじめ関係機関に極力協力を要請するというふうに考えておる次第であります。
  54. 岡田利春

    岡田委員 この際、労働省に質問いたしたいと思うのですが、先ほど指摘しましたように、今年度七百万トンをこえる閉山が行なわれておるわけです。したがって、これに関連して離職者の雇用促進の問題、さらにまた、その実績に加えて、今次の雄別の企業ぐるみ閉山に対する雇用促進に対する労働省の対策、これらについて労働省から説明を受けたいと思います。
  55. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 本年度の炭鉱離職者の再就職計画は、すでに当委員会で御説明申し上げましたので、御承知のことと思いますが、繰り返し簡単に申し上げますと、四十四年度新規の求職者は一万一千四百七十名を予定いたしておりましたが、先ほど先生御指摘のように、なだれ閉山というようなことで、閉山が集中いたしまして、本年一月末までにすでに閉山合理化によりまして約一万五千七百人程度炭鉱離職者が発生いたしております。さらに二月に入りまして雄別炭砿をはじめ、大手、その他中小炭鉱閉山が行なわれる、ないしは行なわれたものもございまして、本年度末までに当初計画の約倍近い二万二千人くらいの離職者が発生するものと見込まれております。これに対しまして、一月末までに再就職計画に基づく職業安定機関の紹介によりまして就職した者の実績を見ますと、約一万二千人が再就職しておりまして、そのほか会社あっせんとか自己開拓によりまして約九百人が就職いたしております。一全体として大体八三%程度の者がすでに再就職いたしております。ところが閉山炭鉱状況を見ますと、企業ぐるみ閉山を行ないました明治鉱業につきましては、本岐、昭和、平山、西杵、佐賀、こういった各鉱を通じまして約三千二百人の離職者が出ております。それは非常に再就職の成績があがっておりまして、約九四%がすでに再就職いたしております。麻生の吉隈につきましても、千四百六十八名のうち、すでに八〇%が再就職いたしております。それから佐賀県の杵島の場合は、千六百名のうち七六%が再就職いたしております。北海道の北星炭鉱の場合は、千六十名のうちの七七%になっております。こういった状況で各大手の企業が企業ぐるみ閉山いたしまして、相当数の離職者が固まって出ておりますが、最近の雇用情勢が非常に好転しておりまして、こういった離職者に対しましては他の各民間企業が集中的に求人を出してくれましたおかげで、私どもの予想以上に再就職の成果があがっておる、かように考えておる次第でございます。今回の雄別炭砿につきましても、約三千八百名の離職者が出ることになっておりますが、これも積雪期ではございますし、しかも釧路地区の山の中でございますので、早急にこの対策を強化いたしまして、できるだけ雪解けまでに再就職計画を進めるようにいたしたいと考えている次第でございます。
  56. 岡田利春

    岡田委員 特に炭鉱災害が多いところでございますから、未亡人あるいは身体障害者が他の産業よりも非常に多いわけです。これらの再就職の状況と、特にこういう未亡人とか障体障害者に対する重点的な再就職促進について、労働省としてはどういう措置をとられておるか、承っておきたいと思います。
  57. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 炭鉱閉山いたしますと、一般の炭鉱従業員の中に、未亡人とか身体障害者がかなり含まれておる、これは実績でも明らかになっております。一般的に炭鉱離職者の再就職は非常に順調に進んでおりますが、未亡人、身体障害者につきましては、こういった雇用情勢の好転の中でも、なかなか再就職が困難なことは御承知のとおりでございます。したがいまして、こういった人たちにつきましては、それぞれの山元に設置いたします臨時職業相談所の中で、専門的に未亡人、身体障害者を対象とした職業相談を行ないますと同時に、職業講習とか、いろいろなきめこまかい職業相談に応じまして、こういった人たちの再就職を進めてまいっておる次第でございます。とは申しましても、求人側もなかなかこういった人たちを対象にした求人というのは渋りがちでございますので、求人者に対しましては、一般の炭鉱離職者の求人の中で、こういった求人条件を極力緩和させることにいたしまして、一般的な能力を持った炭鉱離職者と、未亡人、身体障害者をできるだけ抱き合わせといいますか、そういった形で採用してもらうように、なるべく指導を行なっているわけで、今後ともこういった方向で身体障害者、未亡人の再就職をやってまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。具体的に未亡人、身体障害者だけにつきましての再就職の実績は、ただいま数字を持ち合わせておりませんので、御了解いただきたいと思います。
  58. 岡田利春

    岡田委員 雇用促進の上で一番大事なことは住宅の確保だと私は思います。すでに雇用促進事業団では離職者アパートを建てて、そのための対策を進められてきているわけですが、特に北海道の場合は、せっかく今年度予算がつきながら、この実施は来年度、大体五月から十一月までの間に工事が行なわれ、一年間ずれるわけです。その理由は、やはり土地の確保が事前にできない、こういうことが大きな理由であります。今日の情勢から見れば、せっかくついた予算が一年間持ち越されるということは非常に残念なことではないか。いうなれば、本年度の予算は、事前に土地を確保しておいて今年度のアパートを建てる、こういう迅速な措置がとられるようにすべきだ、こういう見解を持っているのですが、この点についてはいかがですか。
  59. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 御指摘のとおり、炭鉱離職者を対象にした雇用促進住宅の建設につきましては、特に北海道の場合は積雪地の関係もありまして、せっかく予算がつきましても冬季間工事ができないというようなことで、翌年度に繰り越す例が過去においてしばしばございました。こういった欠陥をできるだけなくしますために、手持ち資金で土地の先行取得というような方法も講じまして、こういった弊害を極力最小限度に食いとめるように措置をいたしておる次第でございます。今回の雄別炭砿の対策といたしましても、すでに釧路に既設の八十戸がございますが、これに四十四年度分の予算二棟分八十戸を計画いたしておりまして、この早期竣工をいま督励いたしておる次第でございます。そのほか四十五年度の一万戸の中からも北海道のこういった対策のために、至急土地その他を手配いたしまして、夏までにはできるように準備を進めている次第でございます。
  60. 岡田利春

    岡田委員 雄別炭砿は、雄別炭砿に付随している鉄道部門があるわけです。この鉄道も同時に、これは会社が炭砿と合併して解散をすることになるわけですが、これは運輸省にお尋ねしますけれども、地方鉄道でありますから当然運行廃止、さらにまた埠頭線という特殊な事情もございますから、この埠頭線についてはどうしても確保しなければならないという問題もあるわけです。これらに対しては、すでに関係方面と折衝されて、その対策が進められておると私は聞いておるわけですが、この機会にこれらに対する対策及び埠頭線の取り扱い、こういう面についての運輸省の見解を承っておきたいと思います。
  61. 佐原亨

    ○佐原説明員 お答えいたします。雄別炭砿の閉山によりまして、御指摘の雄別鉄道は雄別炭砿で出炭される石炭の輸送を一手に引き受けておった鉄道でございます。その大宗貨物である石炭がなくなりますと、もはや鉄道としては維持が非常に困難であります。まことに遺憾ながら廃止を認めざるを得ないと考えております。ただし一挙に廃止いたしますと、沿線住民、なかんずく炭鉱労務者の下山、引っ越しの足がなくなることになりますので、北海道庁が中心になりまして、関係官庁、関係市町村、関係業者集まりまして種々協議いたしました結果 一応直接経費と申しますか運営資金と申しますか、要するに営業を維持することによって生ずる赤字分を地元の釧路市なり阿寒町に御負担していただくことになりました。一応四月の中旬をめどにそれまで鉄道経営を維持する、こういうことになっております。現在でも従来どおり旅客列車一日七往復、貨物のほうは従来石炭がございまして四往復ございましたけれども、石炭がなくなりましたので、現在は一往復でございますけれども、一応そういう体制で四月中旬までは臨むことになっております。  それから廃止後は雄別鉄道、それから雄別鉄道が経営しておりましたバス部門の輸送分野につきましては、阿寒バスと東邦交通バス、この二社が肩がわりいたしまして代替輸送を行なう、こういう手はずになっております。具体的な運行系統、それから運転の回数その他につきましては、目下現地で慎重検討中でございます。  それから先生御指摘の新富士から釧路埠頭に至ります二・二キロのいわゆる埠頭線でございますが、これは現在、将来とも石油類を中心といたしましてかなりの物資輸送が見込まれますので、直ちに廃止というわけにはまいりません。たまたま港湾施設の運営をやっております釧路開発埠頭株式会社、これが雄別鉄道から譲り受けまして経営をしていく、こういうことで合意が成立いたしましたので、なるべく早くこの譲り受けの手続を進めさせる、かように考えております。  それから尺別のほうも大体同じたてまえで進んでまいりまして、現在一日四往復の混合列車が運行されておりますが、廃止後は東邦交通バスがこれを肩がわりする、こういう手はずになっております。  以上でございます。
  62. 岡田利春

    岡田委員 特に雄別炭砿の鉄道の場合には、その金融債務を調査いたしますと、北東開発公庫及び産炭地域振興事業団が主力で、一般民間金融機関の債務は非常に少ないわけです。そういう面から、この埠頭線の処理はいわば、いま指摘された開発埠頭株式会社は五一%自治体が出資をしておる会社でございますから、公的な機関でもある。問題は、この二・二キロをどう維持していくかという意味で、この埠頭線を譲渡する価格に影響する問題だと思います。私の希望としては、この機会に通産省、運輸省、さらに関係のいま申し上げました政府金融機関でありますから、そういう点で円滑にこれがいま述べられた趣旨に沿って処置されるように、この機会に強く要望いたしておきます。  次に自治省にお伺いいたしますけれども、先ほど鉱山石炭局長が答弁されましたように、特に人口が半減するだろうといわれる自治体対策というものは非常に重要であります。しかも二月に全員解雇されておる。会社は四月に解散をするわけでございますけれども、実際にもう生産は二月に入って非常に大きく落ち込んで、事実上炭鉱経営というものは行なわれていない。したがって、四十四年度分の鉱産税の減収、及び租税公課の下降という問題もございましょうし、これに関連して四十四年度の特別交付金でこれらの問題については対処できるのかどうか。それと同時に、それぞれの自治体は学校その他の起債による施設がございまして、これが炭鉱閉山に伴ってほとんど放棄しなければならぬという事態に追い込まれてくるわけです。これらに対して自治省としては、従来もこういうケースがございましたけれども、その対策について、考え方についてこの機会に明らかにしていただきたいと思います。
  63. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 雄別炭砿が閉山いたしましたのが二月末でございました。特別交付税の算定が二月末ということになっておりますので、具体的な事業あるいは具体的な財政需要に対する計算は事務的には不可能だったわけです。ただ、それらの状況が大体特別交付税算定時期にやや間に合った面もございましたので、一部のものにつきまして算定をいたしておりますが、一つは、雄別鉄道の問題につきまして、地元が四月中旬まで運行いたします赤字の負担分、これが私どもの見通しで約六百万円というふうに計算をいたしております。その負担割合が阿寒町と釧路市が二百万、四百万というような割合になっておるということでございます。その点につきましては、ことしの特別交付税に両市町につきまして算定をいたしております。さらに阿寒町、音別町、それから白糠町、この三町につきましては、さしあたりの石炭対策費といたしまして、阿寒町、音別町につきましてはおのおの三百万円、それから白糠町につきましては六十万円、これを昭和四十四年度の特別交付税において措置をいたしたわけでございます。また地方団体に財政需要として出てまいります金額あるいは収入の減となってまいります金額は、どうしてもこれからの計算になってまいります。それから四十四年度中におきましても若干の経費のまだ見足りない分というものが出てくることがあるかと思います。そういうものにつきましては、昭和四十五年度の普通交付税あるいは特別交付税において、閉山後のそれぞれの町村がとりました措置等もにらみ合わせながら具体的には計算をしてまいらなければならないというふうに考えております。
  64. 岡田利春

    岡田委員 次に文部省にお尋ねいたしますが、雄別の閉山は二月に行なわれてその時期は、高校進学についてはもう進学希望の受け付けをも開始して、大体確定をしておったという時期であるわけです。したがって、現地の高校にそれぞれ子弟が入学をすでに決定されるという状況にございますし、いままた労働省の説明のように、四月中旬を目途にしてできるだけ雇用促進をしていきたいということになりますと、高校生を結局現地に置かなければならない、こういう問題が一つ出てくるわけです。昨年の十月ですか、北海道の例をつけて、高校転入については特段の配慮をはかるような通達といいますか要請といいますか、こういうものをすでに出されているように私も承知をいたしておりますけれども、特に炭鉱離職者の就職促進をするためには高校生問題がいつでも実は問題になるわけです。この機会にやはり再度各県教育委員会に協力方を要請すべきではないか、こういう意見を持っておるのですが、この点についての見解。それと同時に、親が再就職して、遠隔の地に子供と別れて就職をするということになりますと、残る子供は下宿をするなり宿舎に入れるなり、そういう形で従来以上に出費がかさんでまいる。松尾鉱山の場合にもこれが大きな問題になったわけですが、そういう高校生については、希望があれば育英会の育英資金の措置、こういう点について積極的に対策をとるべきではなかろうか、こういう見解を持っておるのですが、これらについての文部省の考え方をこの機会に承っておきたいと思います。
  65. 望月哲太郎

    ○望月説明員 育英奨学の件につきましては、後ほど学生課長のほうからお答えをいたしますが、最初に御質問のございました炭鉱離職者子弟の高校転入学の問題につきまして、お答えを申し上げます。  炭鉱離職者の子弟の高校転入学につきましては、先生御指摘のように、昭和三十八年に初等中等局長名で各都道府県の教育委員会に対して極力便宜をはかるように要請をいたしてまいりましたが、その後さらに石炭鉱山整理特別交付金制度が新設されまして、これに伴って炭鉱離職者が増加することが予想されますので、昨年六月二十日に重ねて初等中等局長名をもって各都道府県の教育委員会に通達を出しまして、三十八年の通達の趣旨に沿って十分炭鉱離職者の子弟の高校転入学について特段の配慮をするようにということを要請をいたしてきておるところでございます。なお雄別炭砿離職者の子弟の取り扱いにつきましては、北海道教育委員会におきましても非常に配慮をいたしておりまして、たとえば道内の高校につきましては、転入学のための特別選考日を設定するとか、あるいは教育局、学校が中心になって教育相談をするとか、あるいは私立学校を含めましていろいろ配慮するように教育委員会から要請するとか、あるいは他の府県に対しましても文部省の通達の趣旨に沿ってひとつ十分配慮してもらうようにというふうな要請をするとか、あるいは寄宿舎を設置する市町村に対して、いろいろその経費につきまして、たとえば舎監の手当とかあるいはまかない婦の人件費等について補助を考えるとか、北海道教育委員会でもいろいろ対策について検討しておるようでございます。  そこで、私どもといたしましては、昨年の六月に初中局長名をもって文書で通達をいたしましたので、重ねて文書でさらに通達するかどうかにつきましては、なお検討をさせていただきたいと思いますけれども、先生御質問の趣旨に沿いまして、私どもといたしましても、さらにこの問題につきましては、あらゆる機会を通して、各都道府県の教育委員会あるいは高等学校の校長等に対しまして特段の配慮をするように要請をしてまいりたい、このように思っております。
  66. 石川智亮

    ○石川説明員 奨学金のことでお尋ねがございましたので、お答え申し上げます。  日本育英会は文部省の所管でございます。従来から、災害等によって修学が困難となったという生徒が出ました場合には、採用基準を緩和するようなことで特別推薦による採用の措置を講じまして、しかも各支部を通じまして従来からやってまいっております。これは先生御存じだと思いますが、ちょっと申し上げますと、三十九年の北九州地域炭鉱の場合には、高等学校生百四人、高専四人、四十年度には三百六十七人、山野炭鉱の場合には三十七人、それから昨年度、松尾鉱山、雄別茂尻、北星炭鉱その他がございました。  松尾鉱山の場合には、たとえば支部を通じまして、高等学校生徒八十一人の希望者がございましたので、このワクをあけて待っておりましたが、今年三月五日までに四十九人全員これを奨学生にしております。雄別の場合は三百十人出ましたが、北海道の育英会でも二十一人採用いたしまして、北星の場合も三人出ております。  こういった意味で、文部省としては育英会を通じまして、行政指導によってさらに強めてまいりたいと思っておりますし、さらにことしの二月末でやっております上茶路、尺別、雄別につきましても、すでに育英会を通じて調査をして対処するように指示してございます。
  67. 岡田利春

    岡田委員 次に経済企画庁にお伺いしますけれども、実はこれまた北海道の特殊事情なんですが、九州、常磐地区にはこの例はないと思いますけれども、産炭地振興法の適用を実はそれぞれの町村が受けているわけです。ところが、一方において町村構成を見ますと、北海道炭鉱というのは沢ごとに炭鉱がありまして、いわば町村の場合でも一定区域炭鉱で、それ以外は農山村であるというのが北海道の特殊事情なわけです。ですから炭鉱がなくなりますと、あとは木を植える以外にその地域は再開発が不可能であるという炭鉱が非常に多いわけです。ところが、先ほど言われておりますように、産炭地振興法では、自治体に対する特別交付金の制度がございますから、炭鉱がなくなったからそちらをやめて山村振興法の適用を受けるということは、これは事実上できないわけです。しかし残された地域というものは、農山村振興に力を入れなければならない。これは北海道に限った特殊事情であると思うわけです。私は、これらについて、山村振興法適用についての特例を設けるべきではないか。しかもこれは町村は限定されるわけですから、産炭地すべてに拡大をされていくというものではないことも明らかなんです。昨年の委員会でも、この点についての検討を要請をし、十分ひとつ検討するとの答弁をいただいておるわけですが、今回の音別、雄別、阿寒についても同様なケースであることは明らかです。したがって、これらについて特例措置というものが設けられ得るのか、られないのか、この点について、前回も質問いたしておりますので、この機会にその検討の結果をお知らせ願いたいと思うわけです。
  68. 足利知己

    ○足利説明員 昨年の委員会でも申し上げましたとおり、現在産炭地振興法に指定されております地域は、山村振興法の指定にあたって調査地域にいたしますことを保留しておるわけであります。これは現在全国で約四十町村ございますが、こういった町村は、いま御指摘のとおり、いつでもきわめて山村的なところが多うございます。したがいまして、われわれといたしましては、その実態に即しまして、できるだけ山村振興法の適用をしたいと考えておるわけでありますが、昨年も申し上げましたが、現在できるだけひとつ早く、できれば四十五年度あたりからは指定ができますように、鋭意検討をしております。ただ、本日結論が出たとはちょっと申し上げられないのは非常に申しわけないのでありますけれども、できるだけわれわれといたしましては、四十五年度からは調査をいたしまして、適格でございました場合には指定をしていくようにしたいと思っております。なお、これは山村振興対策審議会の意見を聞かなければならぬことになっておりまして、これは四月に予定されておりますので、できるだけこれも意見を聞くつもりで、実は関係各省とも協力してやっております。
  69. 岡田利春

    岡田委員 終わります。
  70. 鬼木勝利

    鬼木委員長 相沢武彦君。
  71. 相沢武彦

    ○相沢委員 最初に夕張炭鉱落盤事故につきましてお尋ねをしていきたいと思いますが、例年一月から三月にかけて、非常に低気圧の襲来と地圧の変化によって炭鉱災害発生率が高い、こういわれておりますが、この期間は特に例月よりも保安の強化をはかっているのかどうか、まずこの点からお願いします。
  72. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 先生ただいまおっしゃいましたように、そういった鉱山災害と自然の天候との関係は、明確なる相対因果関係が必ずしも出てはおりませんけれども、過去の事例等からかなりの関係があるように考えております。したがいまして、例年この一-三月を控えまして、特にこういったガス関係あるいは炭じんの関係等につきまして十分な注意を払うように特別の監督指導をやっておると同時に、またその結果につきましても、常時各炭鉱から報告を受けて、万遺憾なきを期したいというようなことで、そういう体制をしいておる次第でございます。
  73. 相沢武彦

    ○相沢委員 第一坑、この事故の起こった千歳坑でございますけれども、非常に炭じんが少なくてガスも少ない、そういうところがら、他鉱に比べまして保安点検の巡回が少なかった、二月に一回というふうに減らしてやっていたというのですが、あの事故の起きる少し前に地震がございまして、坑内の作業員のある人は、地震直後の坑内作業に多少異常を感じて、保安係に、早目山固めをしなくちゃならぬじゃないかというふうに話したそうでございますけれども、やはりあとから考えてみますと、条件がいいからというような油断があったんじゃないかなと思うのですね。やはり念には念を入れて、保安の強化をしなければならないと思いますし、またちょうど事故直後にガス検定器には一・五から一・八五が記録されたそうであります。平常〇・三五といいますから、かなりなガスもありますし、やはり万一のことを考えて、ふだん事情のいいところであっても、定期点検というものは強化すべきであろう、こういうように思うのですが、その点どうなんですか。
  74. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 こういう事故の発生というものにつきましては、いろいろな角度から、いろいろなそれはそれなりの原因を持っておると思うのでございます。しかし多くの場合、最近の北海道における例から見ますれば、従来その山においてガスがなかったというところにガス突出が起きてみたり、比較的落盤その他の事故の少なかったところにそういった落盤等の災害が発生しておるというふうな事例がら、やはりそういう環境のよしあしというものからくる若干の気のゆるみという問題は、これは否定できない問題だろうと思うのでございます。したがいまして、われわれのほうといたしましても、監督を強化すると同時に、またそういった山の地層条件等にたよるだけではなくて、科学的ないろんな検討を十分積み重ね、保安に万全を期するように、より一そう指導はしていきたいというふうに考えております。
  75. 相沢武彦

    ○相沢委員 坑内で働く人たちの声を聞きますと、いろいろな点、保安について気がついて要望するのですが、実際にそれが行なわれるのはかなりおくれて行なわれる。これは人手のない点もあると思います。山固め三カ所をやるべきところ、早くやってほしいと要望しても、人手の関係でそれが一カ所しかすぐできなくて、あと運搬のほうに労力をとられて、だんだんあと回しになるということもあるようですし、また資材の点からいいましても、私はちょっと問題だと思ったのですが、いわゆる現場の人たちの話によりますと、支柱の打柱というふうに表現しておりましたけれども、普通直径三十センチのものを使っている。ところが実際に十五センチしかないものが資材が間に合わなくて使われている例があるのだ、その補強がどうしてもおくれている、こういう点も事故を大きくする一つの原因になるのじゃないかと思うわけで、今回の事故の「今後の対策」の中にも出ておりましたけれども、相当この点の指導強化をしなければならないし、また現場の作業員の人たちの声がもっともっとその会社の保安係、さらには監督局の方の耳にも入る、そういうふだんの状況といいますか体制が整えられなければならないのじゃないかというふうに感じてまいったのですが、その点いかがでございましょうか。
  76. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 炭鉱の保安につきましては、上は統括者から下は労働者に至るまで、一人一人すべての者がこれについて最大の関心を払わなければならないというふうなことは、仰せのとおりでございまして、保安法におきましても、十九条の規定によりまして、各山に保安委員会をつくる。そこの保安委員会の構成メンバーとしましては経営者側それから組合側というふうなことで、法律上の構成要件を満たした形において運営されておりまして、保安委員会は、いろいろ山の作業計画、保安計画を議論すると同時に、そういったいわゆる従業員の人たちが気のつくいろいろな保安の点につきましての改善事項を会社側に要望するということも、これまた一つの非常に大きな役割りになっております。したがいまして、われわれのほうも、そういった問題につきまして、十分経営サイドのほうでこれを取り上げるように指導はしていると思いますが、なお遺憾な点がないとは限らないと思っております。  それからさらに、保安法の三十八条では鉱山労働者の申告制という制度を設けまして、この法律は実は非常に運用がきびしいような形に一応できておりますので、昨年これを法律の運用として簡素化し、とにかく危険状態があれば、危険と感ぜられる状態が発見されれば、適宜保安監督局長に申告をしていただくことができるような運用に改めた次第でございまして、したがってそういったような点で、申告のきておる事例につきましては、さっそく監督官を派遣し、これについての改善措置をやるというふうなことをやっております。しかし、おっしゃいましたような点につきましては、なお一そうの今後努力が必要であろうというふうに考えております。
  77. 相沢武彦

    ○相沢委員 次に、水力採炭につきましていろいろ聞きたい点がありますのでお伺いしますが、第一千歳坑の場合はいつからこの採炭方式をとっていたのか、まずこれからお聞きしたいと思います。
  78. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 四十一年の春ごろからだというふうに記憶しております。
  79. 相沢武彦

    ○相沢委員 水力採炭をする場合、私どもこれはしろうと考えかもしれませんが、どうしてもその作業過程からいきまして、炭層に水が徐々に浸透して、崩落しやすい状態をつくる可能性があるのじゃないか。これに関係する問題ですが、第一坑の場合は非常に複雑な地質を持っていますし、それからもう一つは、かりに水が浸透するとすれば、断層や逆転層の割れ目に入ることも考えられますので、どんなに炭層の周囲がかたくても崩落するということはあり得るわけなんです。さらにまた一月-三月の場合、融雪期、雪解けのときですが、この間には各地層との間にたまって、地表に圧力が加わって、地圧の変化をもたらすことも考えられるというのですが、この水力採炭を採用する場合、いわゆる地層あるいは炭層の硬度軟弱あるいは融雪どきの水の漏れというようなことも十分に検討した上でかかっておるものでしょうか。
  80. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 確かに水力採炭はどの山でも完全に安全なんだとは言えないと思うのでございます。水力採炭をいたしまして、その水が炭層その他に影響するというふうなことはもう当然の事例だろうと思うのでございます。したがいまして、それを防止するために、やはりそれがしみ込まない期間に採炭を終わるというふうな形において、先ほどの対策にもございましたように、やはりこういった中切採炭との間の時間的なバランスをとるというふうなことが非常に重要であろう。また一般的に水力採炭をやる条件といたしましては、これはいろいろございますけれども、たとえば山におきましてメタンガスがあまり多く発生するとか、あるいは自然発火を起こしやすいとか、ないしは地盤が非常にもろいとか、こういったようなところではもちろん水力採炭をとることはできないのでございますが、それ以外にそういった水の浸透というふうなものをよほど防止しなければ問題のような事故はやはり防止できないだろう。ストレートに水を流すわけではなくて、採炭によりましてトラフの上を水が流れる、その水によって石炭が流れる、こういう形になるわけでございますけれども、そういった作業過程においての水の漏洩という問題は当然あり得ることだと思います。したがいまして、採炭のそういった方式につきましては、水の防止はもちろんのこと、採炭とそれから掘進とのバランスの問題、それから周辺における坑道施ワクをがんじょうにやるといったような方法で、できるだけそういった施策を集中いたしまして、水力採炭による弊害は今後とももっとさらにその予防にはつとめていきたい。それからまた、根本的にはやはり水力採炭をする場合の坑道の構造、そういったものにつきましても、先ほど岡田先生からも御指摘がございましたが、われわれは基本的な問題としてこれは検討を進めていきたいというふうに考えております。
  81. 相沢武彦

    ○相沢委員 千歳鉱の場合はかなり複雑な地形だということも聞いておりましたし、ふだんからあの現場は地圧のズレや何かで小規模の落石があったように考えられております。昨年の十一月ごろですか、第十一中切落盤があったわけですけれども、深ければ深いほど地圧も大きいでしょうし、理解できないほどの圧力が加わるわけですね。それでどうして千歳鉱で水力採炭を採用するようになったのかということは、採炭能力、生産の面から考えまして、いろいろな問題点があると思いますけれども、私らが調べましたところによりますと、ソ連の例で、水力採炭を採用しますと、一日の出炭千トン当たり百五十人から二百人で間に合う。通常の半分以下で人が足りる。また材料費は出炭量千トンごとに約八%低下するし、賃金も千トンごとに五・三%低下、また出炭原価は一千トン当たり六、七%低下になるので、そういったことはこの場合も当然考えられると思うのですが、その場所における地圧とかあるいは炭層等、水力採炭が可能であるかどうかという試験的な採掘期間を十分とらないで生産に踏み切ったというようなことは考えられませんか。
  82. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 水力採炭をいたしますことは、先生のおっしゃいましたように、確かに効率的であるということは事実でございます。したがいまして、これもいろいろな諸条件が満足でありますれば、水力採炭というものも絶対否定すべき問題ではないだろうと思っております。したがいまして、条件としまして、先ほど言ったような自然的な条件、それからまた操業上のいろいろな問題、それから坑道維持管理の問題、こういったようなものも必要であろう。それからさらに、この山につきましては、水力採炭を始めます前には、実はこの同じ千歳区域におきまして、石炭技術研究所が中心になりまして一年三カ月程度の試験採炭をやっております。その試験採炭をやります過程におきまして、ここの責任者が、水力採炭についてより経験の深い砂川へ行きまして、水力採炭の勉強をしてきたというふうなことで、地形その他の関係からいきますれば、水力採炭に不適ではない、それからまたそういった経験ないしは試験的なことも一応とにかく完了したというふうなことでやっておるわけでございますが、要するに、坑道における維持管理が不十分であったというふうなことに大きな問題をかかえておろうかと思っております。
  83. 相沢武彦

    ○相沢委員 中切間隔の問題を気がついたのですが、水力採炭の場合の中切間隔のとり方にはもっと考慮を要するのじゃないかという気がするのです。それで既存の方法を適用させて、採炭だけは水力を用いるというようなやり方をやっているようなんです。ですから、水力採炭のための適当な中切間隔についての問題はまだまだ研究途上じゃないかという気がいたします。それと既存の方法ですと、一区画ごとに、採炭終了後、小立て坑などを密閉して、自然発火の誘発を防いでいるわけですね。先ほども原因の一つにいわゆる事後の坑道の充てんという点がおくれていたということが出ておりましたけれども、この点についての心配はなかったのでしょうか。
  84. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 中切中切との間の間隔、この点につきましては、技術的にどこでなければならないといったようなものは現段階では必ずしも明確ではないようでございます。ここにおきましては八メートルの間隔をもってやっておるわけでございまして、これも先ほどの委員会におきましていろいろ検討してもらいました。検討してもらいましたが、それはこういった事故につながるそう大きな要因ではないのではないか。八メートルあれば八メートルあっただけの、要するに強固な山固めというふうなものをすれば十分これで持ちこたえられるし、その距離の問題はあまり――極端に、短くなりますればいろいろの問題はあろうかと思いますけれども、これでなければならないというふうなものは必ずしも明確ではない。その意味におきましては、先生のおっしゃいましたような研究課題ということにはなろうかと思います。  それから次に、充てんその他の問題でございますけれども、水力採炭の場合は、ガスその他の関係からいきまして、充てんをしないというのが通常の例でございまして、特殊な場合にはまたいろいろな考え方があるかと思いますけれども、ここの場合には充てんが必ず必要だということにはなってこないのではなかろうかと考えておる次第であります。
  85. 相沢武彦

    ○相沢委員 北海道水力採炭方式をやっているのは夕張と三井砂川の二カ所であると聞いておりましたけれども、全国的にはあとどこの山で使っているのでしょうか。
  86. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 九州の平山炭鉱とそれから大浦炭鉱、この二つでございます。
  87. 相沢武彦

    ○相沢委員 その場所炭層の傾斜、坑道の傾斜はどうなっておるのでしょうか。
  88. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 両山とも二十度以下で、いわば平層というふうな種類のようでございます。
  89. 相沢武彦

    ○相沢委員 道内の炭層の場合は、その全炭鉱の五六%が五十五度以上になっておりまして、機械による採炭は非常に至難だといわれてきたわけですが、今度の場合の第三流石坑道の擬傾斜は約五十度といわれております。この急傾斜における水力採炭炭層の軟弱を早めるおそれがあるというようなことは専門的な見地からいって考えられるのかどうか、そういう配慮があって水力採炭を開始したかどうか、その点はいかがですか。
  90. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 水力採炭炭層の傾斜の問題でございますけれども、必ずしもこれが大きな要因であるというふうには考えられないのでございます。結局、御承知のように炭が水によって流れます度合い、いわゆる七度以上直角までの間ならば、ほかの条件さえよければ水力採炭が可能である。そのほかの条件というものは、先ほど申しましたように、炭層ガスの問題とかあるいは自然発火の問題、それから炭層が非常に軟弱でないかどうかといったような問題、それからさらにもう一つは水の処理の問題がございまして、水圧の関係とかあるいは水量とか、こういったような問題、それからさらには坑道維持管理、こういったような問題が十分具備されれば、水力採炭と傾斜との関係は大きな問題ではないというふうに見ている次第でございます。
  91. 相沢武彦

    ○相沢委員 水力採炭に使うモニターのことですけれども、いまこれを使っている会社は日本製ですか、それとも外国からの輸入でございますか。
  92. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 これは日本製でございます。
  93. 相沢武彦

    ○相沢委員 この水力採炭の場合の水圧と地質の関係とか、あるいはその場所にふさわしい独自の改良等の研究等は進められているのでしょうか、それとも同じ機械でどの山でも同じような使用方法でやっているのかどうか。
  94. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 これはやはり山々によりまして、山それぞれの技術的な観点からやっておるようでございまして、たとえていいますれば、水圧におきましても、この山では大体七十気圧、それから砂川の場合には百気圧をこえておるように聞いております。これは結局採炭のやり方、いま言いましたようないわゆる中切中切との間の間隔の問題といったようなことでございまして、これも実はこの委員会でいろいろ検討していただきましたけれども、水圧が七十気圧ということで特にいけないという結論は出ておりませんし、またそれに使っております水量調節をするためのノズルといったようなところにも特に問題の点は見当たらないというふうなことで、結局そういった水量、水圧につきましては、山のいろいろな炭層の条件によりまして異なる方法をとってはおりますけれども、それが必ずしも災害の大きな要因でないというふうに認識しております。
  95. 相沢武彦

    ○相沢委員 炭鉱災害は、いまなだれ閉山を起こしがちな石炭産業でさらに加速度を深めるおそれもありますので、一そう保安の強化についての指導監督を十分にやっていただきたいと思います。  次に、時間がありませんので、雄別炭鉱閉山に関する問題の中で二、三だけお聞きをしておきたいと思うのですが、炭鉱離職者のうち、正式な従業員については閉山一時金あるいは退職金、解雇予告手当金、合理化離職金ですか、こういった国からの手厚い対策が講ぜられておりますが、一般労務者あるいは組夫、臨時夫、こういう方については、通産省のほうとしてはどういうような手当てを講じておりますか。
  96. 本田早苗

    本田政府委員 特別閉山交付金制度で交付できる対象以外のものに対してどうかというお尋ねと思いますが、これにつきましては、やはり組夫等につきましても、閉山に伴って離職するということがありますので、会社のほうで金融をつけることをいろいろ援助指導いたしまして、会社でつけた金融資金の中から閉山に伴う資金を給付するというふうに指導いたしております。
  97. 相沢武彦

    ○相沢委員 労働省の場合は、正式従業員も、それから組夫、臨時夫の方にも、同じように就職促進手帳等を出して、公平な扱いになっておりますが、この金融面についてはかなりな開きがあると思うのです。といった点で、これからも閉山が多くなるということも予想されておりますし、これで一番気の毒な状態におちいるのは組夫とか臨時夫の方なので、その辺に対して今後もっと通産省として閉山に伴う離職者の金融的な援助について方法を考えられていただきたい、これは要望でございます。  次に、先ほども就業対策についての問題が出ておりましたけれども、いま雄別炭山には百十社に及ぶ求人の会社が来ておるということを聞いております。これにまぎれ込んで不正、不公正な求人が暗躍をするわけで、知人、友人等を通じて行なわれる、行ってみて条件が悪かった、話が違うというようなことは非常にあります。監視体制はあると思うのですけれども、こういうとき不公正な求人が行なわれて、それによる被害者が出ないような指導監督をひとつ労働省のほうでやっていただきたいと思いますが、これについてひとつお答え願います。
  98. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 相沢先生のいまお説のとおり、従来閉山いたします際に、最近の求人難を反映いたしまして、民間の企業が山元に入り込んで不公正な求人競争をやるというような例が過去においてもございました。今回のような雄別の企業ぐるみの閉山に際しまして、これは地域的な大きな問題でもございますので、実は三月一日に担当課長を北海道の山元に派遣いたしまして、道庁、地元、それから労働組合関係、各関係団体と相談いたしまして、道に対策本部を設けて、この再就職対策を進めることにいたしております。  山元には山元協力員とか就職指導官といったような担当官がおりまして、山元で集中的に就職相談をいたしまして、こうした不公正求人の入り込む余地がないように求職者側にも指導いたしております。と同時に、民間の求人側に対しましても、こうした不公正求人をやることがないように厳重な監視をいたしておる次第であります。こういった不公正求人にうかうか乗りますと、ややもすると求人内容が、さて行ってみると非常に違っていたというようなことで非常に問題を起こしがちでございますので、今後ともこういった不公正な求人の排除には強力な措置をとってまいりたい、こういうふうに考えております。
  99. 相沢武彦

    ○相沢委員 もう一問、労働省にお願いしたいのですが、組夫の方の再就職の場合、それまでに親方にかなり借金をしている方もおりまして、こういう閉山の場合、この辺で抜けて自分独自で自分に適当した新しい職をさがしたいと思っても、そういった関係でなかなか抜けられないとか、あるいはまた就職があと回しになるとか、こういう点があります。個々の就職運動はなかなか思うようにいかない。そういったことで組夫の再就職については親方ぐるみ、組ぐるみの就職のあっせんというような手当ては講じられておりましょうか。
  100. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 過去におきまして炭鉱の合理化対策を進められておりました当初におきましては、組夫についてはいろいろ問題がございましたけれども、現在ではすでに炭鉱離職者の臨時措置法で組夫も在籍鉱員と全く同じような扱いを受けております。組夫だからといって再就職の点で非常に問題があるというような事例はあまり聞いておりません。ただ、いまお話しのように、組夫の場合は退職金制度がないとか、あるいは賃金が一般在籍鉱員より安いとか、あるいは再就職する場合も非常に親方との関係でいろいろ問題があるという点はあるかと思います。そういったことで再就職の面で問題が起こる場合もあるかもわかりませんけれども、さりとて先生お話しのように、組ぐるみといったような再就職あるいは職場の転換ということ、これはきわめてむずかしい問題でございます。私どもといたしましては、在籍鉱員をかかえております会社側の再就職あっせん対策の中に取り込んでいただいて、職業安定機関と協力して、こういった組夫とか臨時夫の人たちの再就職をはかっていただくようにお願いしております。
  101. 相沢武彦

    ○相沢委員 わかりました。  次に厚生省のほうにお願いしたいのですが、閉山による老人対策の問題です。閉山離職者の方が再就職のために職を求めて移転される場合、行く先の住宅事情やその他もろもろの事情等によって、家族の中でお年寄りだけがその地元に残されるという例もございますし、またもともと身寄りもなくて生活保護で暮らしていらっしゃる方、そういう方がおるわけです。こういう人たちは自分の住んでいるところから家族が別に出てしまう、あるいは家族ではないけれども家族同様にいろいろとめんどうを見てくれた近しい隣人が土地を離れて行ってしまう、自分たちだけが残されてしまうということで、非常に精神的な不安とさびしさを感じて訴えているわけです。私も北星炭鉱閉山に伴いまして現地へ行ってきたわけですけれども、そこで去っていく方たちにすがりついて、一緒に連れていってくれ、さびしい、こういうふうな訴えをしているお年寄りの姿を見まして、今後あちこちで閉山になった場合にそういう例も多くなろうかと思いますが、その残されたお年寄りに対する民生安定の対策について、厚生省としては何か考えているかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  102. 永原勘榮

    ○永原説明員 お答えいたします。鉱山の閉山に伴いまして気の毒な老人が取り残されるというような事態がかつて北九州の閉山に伴いまして発生したわけでございます。したがいまして、厚生省側といたしましては、福祉事務所の機能をあげまして、各種相談に応ずるというような体制をとっております。それからまた経済面の相談等につきましては、世帯更正資金、場合によっては生活保護の適用というような点を考慮してまいりたいと考えております。  それから精神的な孤独の問題でございますけれども、老人クラブを結成いたしまして、活発な活動をひとつお願いしたいというふうに考えております。  それから住宅問題でございますけれども、これは特定向け住宅といたしまして老人向け住宅がございますが、それらをお願いいたしまして、今後老人ホーム等に対しまして、ひとつ明るい老人ホームに入っていただくというような政策も続けて整備してまいりたいというふうに考えております。
  103. 相沢武彦

    ○相沢委員 行政に当たる方がほんとうにあたたかい心をもって、一切の、残された老人の方に接することができるような指導の強化をお願いしたいと思います。  次に文部省の関係でお聞きしておきたいと思うのですけれども、先ほど離職者の移転に伴う高校転入学の問題がありましたけれども、入学に際して試験をやられた場合に、学力レベルが違う、あるいは教科書等に差違があって合格点に達しないという場合が間々あるわけですが、北海道の場合は無試験で入学させるということになったそうですが、この点各県の事情はどういうふうになっておりましょうか。
  104. 望月哲太郎

    ○望月説明員 この問題につきましては、高等学校の転入学を許可する権限は校長にございますから、制度的には校長の判断によるわけでございます。ただ、先生御指摘のように、北海道では、道内の公立の高等学校に対しまして、試験の際に多少成績が悪くても、将来高等学校教育にたえ得るような能力ありと判定された場合には入れてやったらどうか、あるいは若干定員をオーバーしても学校教育の正常な運営に支障のない場合には特別の配慮をしてやったらどうかというようなことで、教育委員会として管下の高等学校の校長に対して昨年要請をしております。  そこで文部省といたしましても、昨年の六月に出しました初等中等教育局長名の通達によりまして、その北海道の通達の写しを添付いたしまして、北海道ではこういう措置をしておる、よってそれぞれの県においても炭鉱離職者の子弟の転入学にあたっては、北海道のやっておるような趣旨を十分踏まえてやってほしい、こういう要請をいたしたわけでございまして、通達の具体的な影響があったかどうかということは具体的にはつまびらかでありませんけれども、佐賀県の場合におきましては、実は百十八名の転入希望者のうち、百十名が希望しておる学校に各県の御協力もありまして入っているというような実態もございます。今後とも、私どもいま申し上げよたうな通達も出しておりまして、その趣旨に沿って、各県の教育委員会なり学校に対して協力を求めてまいりたい、このように考えております。
  105. 相沢武彦

    ○相沢委員 最後に一言申し上げたいのですが、今回の雄別炭砿の閉山は、結局石炭再建の大きなてこ入れに政府の新石炭再建策がなり得なかった  一つの実証みたいなものじゃないかと感じております。きょうは通産大臣が基本方針をこのまま貫くのだとおっしゃいましたけれども、このままでいけば、新石炭再建によるてこ入れが切れる四十八年度までに大体全国で何鉱くらい残るのかという見通しはすでに立てられているのでしょうか。また北海道では何鉱くらい残るという見通しを立てられておるか伺いたいと思います。
  106. 本田早苗

    本田政府委員 御承知のように、今回の第四次石炭対策では、生産の目標等は立てずに、財政上許される最大限の内容を決定いたしまして、これによって経営を存続し、再建し得るものは再建してもらう、再建し得ないものは特別制度を援用して閉山していただくということを企業自身の判断でやっていただくということにいたしておりますので、御質問のように四十八年度でこうするという目標は持っておらない次第でございます。
  107. 相沢武彦

    ○相沢委員 趣旨はわかったのですけれども、そのためにこの委員会があると思うものですから、やはり、企業に対する連絡会議みたいなものをもう少しつくって一いきなり閉山になって地元の自治体も困ればあるいは離職者の人たちも困る、あるいは企業自体も非常な窮地に立たされるという例がありますので、その点について何とかもっと別な対応策を当局としても考える必要があるのではないかということだけを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  108. 鬼木勝利

    鬼木委員長 田代文久君。
  109. 田代文久

    ○田代委員 私は、最近続発している炭鉱災害について質問したいと思うのでありますが、これは炭鉱労働者のみならず、日本の全労働者また労働者でないわれわれにとりましても、これはあまりにひどいというふうな気がいたします。この二日に夕張清水沢災害が起こって、その翌日また起こっているんですよ、これは一人ですけれどもね。そうして一月二十七日に同じこの北炭夕張で一あの災害が起こって四十日余り、三月に同じ炭鉱でまた事故が起こって、翌日また一人起こっている。単に私北炭のあれだけを言ったんじゃないですけれども、これは御承知のようにことしの一月から見ただけでも――これはあとから通産省は資料をひとつ出してください。ことしはもちろん、最近少なくとも七、八年間の炭鉱災害炭鉱災害でどれくらいの死亡者を出しているのか、犠牲者を出しているのか、またどれくらいの負傷者を出しているのかというような点を、これは当然私は、なぜきょうここにそういう資料をみな委員に渡さないかと思うのですよ。ぜひともこれは出してもらいたいと思います。  それから、ちょっと私はそういう点では非常にしろうと関係から見ただけでも、ことしの一月以来一月四日に三菱の大夕張炭鉱火災でしよう。八日に北炭平和鉱、ここで一人死亡。十日に同じ夕張ガス突出、それで二人負傷。それから十五日に北炭清水沢、これは崩落があっています。そこで一人死亡。これは一月でしよう。そしてまたですよ、この三月二日というやつは。同じ日に三菱の大夕張で坑外事故で一人が死亡している。十六日に三菱の大夕張で炭車が転覆して一人が死亡。ずっと続いておるんですね。その中にはわずか十七歳のアルバイトの高校生が、徹夜勤務で、これはもちろん過労からきている。そういう徹夜勤務を余儀なくされている、生活ができないから。そういう若い人を働かせて、そうしてこれがやはり犠牲者になっている。これはことしの一月以来です。そうして昨年、一昨年のあれを見ましても、これは大きなところで一昨年の九月三日に同じ夕張の二鉱で八人、昨年の五月の二十八日にも二鉱の採炭現場で四人が死ぬという事故が続いておるわけです。一体これはどういうことですか。私はその原因、また政府並びに炭鉱当局の責任、これをまず説明していただきたい。――まずこれは大臣の答弁でなければいかぬと思うのですよ。大臣おられないから、これは基本的な政策ですから、次官がおられますから次官からひとつやってくださいよ。私は技術的なこと、小さいことをかれこれやる必要はないのです。そういうことも必要ですけれども、それよりは基本的な政策が明確にならない限り――大体炭鉱労働者の命はどうなるのですか、これは。その説明をはっきりしてもらいたいということなんです。
  110. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 たび重なる災害につきましては、非常に遺憾の意を表しますけれども、政府といたしましては、石炭鉱山の保安については、人命尊重の見地から、中央鉱山保安協議会の答申にのっとりまして、鉱山保安の厳格なる適用を行なってまいりました。特に鉱業経営者の姿勢がどうであるかということについては、石炭鉱山においては保安体制の適否を決定する最大のかぎであるところから、経営者の保安に取り組む姿勢の確立を促しております。これを制度面からも裏づけるために、再建整備計画の中に生産計画並びに保安計画の策定を義務づけて、その的確なる実行を指導しております。また保安の確保に万全を期するため、坑内骨格構造の整備とか、ガス抜きとか密閉、充てん等に対する助成策を講じてきております。これらの施策が浸透しつつあるちょうどそういうところでいろいろな災害が起きました。非常に遺憾ではありますが、経営者の保安責任について大いに猛省を促すつもりでございますし、今後災害原因を徹底的に究明いたしまして、防止策を確立させ、また保安体制の完備を促すとともに、各鉱山に対する監督を一そう厳重にいたしまして、災害が未然に防げるよう今後とも努力いたしたいと思います。
  111. 田代文久

    ○田代委員 いまの御答弁で業者側の猛省を促すとおっしゃいました。これは猛省をしてもらわなければならぬのですけれども、業者だけじゃないのですよ。基本的に現在の政府石炭政策、その責任がこれに出てきた。だから政府はこの災害に対してどういう責任をおとりになるのか、責任はどこにあるんだということを明確にしていただきたい。
  112. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 政務次官の御答弁に若干重複いたしますが、われわれといたしましては、行政の面からは、事故を起こさないというふうなことのためにあらゆる技術的な検討を加え、そういった技術を山に適用し、かつまたいろいろなそれをしやすいような方法で各種の助成策をやっておる。ところが一たび事故が起きますれば、これは一つの司法上の問題といたしまして十分原因究明し、司法上これを送致し、人によりましては体刑を受けるとか、あるいはいろいろな司法上の罰則を受けるということで、それはそれなりに処置をやってきておるわけでございます。  こういった炭鉱の保安の問題と政府の責任の問題というふうな関係で御質問かと思いますが、いささか言いわけのようになるとは思いますが、現在の保安法におきましても、要するに鉱業権者というものが山を経営し、山を守っていくというふうな体系で仕組まれておりまして、それのしりをたたき、かつまたそれを助成しというふうな形においてサイドチェッカー的な意味において政府というものがございます。しかしわれわれはサイドチェッカーだからといって何もこの責任を免れるという気持ちじゃございません。むしろ積極的に、単なる司法上の問題以上に突っ込んで、山の姿勢を改め、かつまたそれがしやすいような助成策を講じというふうなことで懸命の努力を払っておる次第でございまして、そういう意味におきまして、災害の防止ということにわれわれはあくまでも万全を尽くしていきたいというふうに考えております。
  113. 田代文久

    ○田代委員 一月二十七日の夕張落盤の今後の対策として、先ほど御説明がありました中で「次の事項を厳守することによりこの種災害の再発は防止できるものと判断し、」というふうに防止できるものと判断されておるわけです。そうすると、これは防止できるという判断をなさって再開を許可されておるということですね。それからまた先ほどの通産大臣やら労働大臣説明でも、保安だ保安だといって、ことばの上では百も千も何だか保安だけやっているような印象を受けるくらい言われておる。しかし、現実の災害というやつは全く逆の現実が出ているという結果になっているんですね。いま出た「次の事項を厳守することによりこの種災害の再発は防止できるものと判断」されたというのですが、実際に通産当局は、こういう対策によって、今後再び絶対に起こらないという保証ができますか。絶対に起こらないんだ、責任をもって政府はやるんだというお答えができるかどうか、ひとつはっきりしてください。
  114. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 保安の問題といいますのは、一つには、こういった炭鉱という自然条件、時々刻々に変わります自然条件と科学との戦いと言ってもいい問題でございます。したがいまして、現在の科学的な方法におきまして、知り得る限りの状態を想定いたしましてやった場合、しかもかつまた、こういった方法が、想定されるあらゆる諸条件というふうなものを完全に具備して実施されました場合におきましては、絶対に起こらないということは言えると思うのでございます。ただ、過去におきまして、類似の災害が絶対に起きていないとは言えないと思います。それには現在の科学的な水準において予測し得ないような問題がそこに介在いたしましたり、あるいはまたやるべき対策というものについて、片方の面においてはそれが実施できても、一方の面において、そういう手抜かりがあったというようなそごを来たすという点がございまして、こういった諸条件がすべて満足に具備されますれば、十分やっていけると思うのでございます。
  115. 田代文久

    ○田代委員 いまの御答弁、全くこれは無責任だと思うのですよ。予測し得ないようなことがある、そういう場合には自然条件があるのでやむを得ないんだ、とにかく自分たちとしては万全のあらゆる手を打ってやっているんだ、そういう場合においては起こらないんだという確信がある、こういう御答弁ですけれども、予測し得ないようなことがあるとおっしゃいましたけれども、一月二十七日の夕張炭鉱における災害は予測できなかったのですか。ちゃんと私はこの委員会で、この災害について調査に行くべきだと言いましたけれども、これは十人以上の死傷が出ないときには委員会としては行った例がないというので、取りやめになった。私はたいへんだと思って、すぐ翌日飛んで行きました。そして夕張炭鉱の企業側なり労働者側あるいは監督署へ行って全部私は調べてみました。そうしていろいろ聞いたら、予測し得なかったことではないのですよ、これは。しかもこれはちゃんと徴候があるのです。一月二十七日の前において、すでにこれは予測し得る事前の徴候がちゃんと出ておるじゃないですか。右の八中切の穴があいているのを労働者は気づいておった。どうもこれはおかしいということを発言したり何かしても、全然取り上げないじゃないですか。そういうことをなぜ真剣に取り上げないのかと私聞きましたら、命をかけて働いている炭鉱労働者が実際に自分が入ってみると坑内に異常が出ている、そういうことを現場に来る監督官に――いわゆる保安職員としては最末端におられる現地の係でしょう。そういう人に言うと、係官が保安日誌にそういうことが書いてあると消すということじゃないですか。そういうことが書いてあると、調べに来たときに困るということです。ですからほんとうに真剣に取り組んでいる、危険を感じている人々が発言したことが、ある場合には隠されておる。そうしてめでたしめでたしで、坑内はきれいにしておりますというような形でやっている。そうして保安を完全にして人命を守ると言う。この炭鉱労働者が減るというのは、こうも命がいつどうなるかわからぬという、こんなことでだれが働けますか。実際において炭鉱労働者が逃げるような政策がとられているではないですか。ですから現場における労働者の意見なり、あるいは労働組合の意見を聞いていけば、ちゃんとこれは事前に、事件が発生する一週間ないし十日前に、いまのような状態だったらまた事故が起こるかもしれぬ、あぶないぞといううわさやビラがまがれたりしているのです。ところが炭鉱側は、絶対そういうことはないんだというように言ってきたというのです。それでも予測し得ないのですか。なぜそういうことを取り上げないのですか。
  116. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 今回の災害につきましては、さらに司法的な捜査面からどう判断するかという問題は残っています。したがいまして、これは先ほどの予測し得ないというようなことよりも分岐坑道、要するに八中切、七中切、こういったところにおきまして事前に崩落があったことは事実でございます。したがいまして、そういったものについての手当ては当然しなければならないということは、いろいろ規則その他でも明確に出ておるわけでございますが、こういったものについての十分な手当てができておったかできていなかったか、そういうことによって事故を引き起こしたということにつきましては、司法上の問題として、これは十分に問題になるのではないかということを考えているので、全然それを無視しようという考えはございません。そうしてまた、いろいろ働く人たちの声につきましては先ほどありましたように、あらゆる制度を活用していただく、それによってそういった問題を十分事前に生かしていくという仕組みができておるのでありまして、もし万一そういった声につきまして、企業がそれを取り上げないとか、あるいはなかなか実施をしないとかいうようなことが明らかになりますれば、それはそれなりの措置は、われわれとしては十分とっていっておりますし、またとっていくつもりでございます。
  117. 田代文久

    ○田代委員 政務次官にお尋ねしますが、これはかりに私なら私、あなたならあなたが炭鉱の坑内の石炭を掘る、そうしてひょっとすると今晩坑内に入って落盤で死ぬかもしれない、ガス突出で命を落すかもしれないというような立場で坑内に入るわけですね。そういう立場で国会として解決しなければならぬのですが、そういう立場に立って災害なり保安の問題を考える場合に、絶対に政府の責任においてこういう災害は起こさないというような方策を立てなければならぬと思うのです。これまですでに長期にわたって、またと起こさないということを何回も繰り返して言われたのですが、また起こすでしょう。そういうことは命をかけて働いている炭鉱労働者にとっては意味ないですよ。ですから絶対に災害を起こさない、それにはこうだということを説明してください。
  118. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 絶対ということは、たいへんむずかしいことでございますが、今後そういう努力を大いに重ねて、いま田代先生のおっしゃったような事実があれば私も調査して、そういうことのないように万全を期して今後ともやっていきたいと思っております。
  119. 田代文久

    ○田代委員 それは何ら対策でも何でもないし、言いわけなんですね。そういう言いわけは、もう炭鉱労働者は耳にタコができている。大ダコができて、もう一度できるというくらい聞いているのですよ。ですから、安心して働けないけれども、それは少なくとも今度また起こったら、次官、自分はあのときにこんな説明をしたんだが、おれが炭鉱に入って犠牲になってやろうかというくらいの気持ちでやってもらわなければ困るのですよ。それをはっきりしてもらいたい。  それからいま一つは、技術的な問題とか業者の問題とかなんとか言われましたけれども、それは炭鉱業者の責任は実に重大です。もちろんこの責任の半分は負わなければならぬけれども、基本的には政府政策が、こういう炭鉱災害ですね、労働者の命を全く湯水のように考えておる、そういう政策がとられているというところにあると判断するわけですよ。ですからその点について質問いたしますが、石炭鉱業審議会が通産省に提出した石炭鉱業の合理化の基本政策というやつが出ているわけですね。これは通産省が出して、そうして審議会が了承したということになっておるのですが、その中に、その内容のおもなるものは、これはもう私が説明するまでもないのですけれども、四十八年度における石炭の生産数量を現行計画の約五千万トンから三千六百万トン程度にする、一人一カ月当たりの出炭能率を五十六・二トンから六十五トンに変更する、約十トンくらいノルマを上げる、それから閉山規模も、現行の二千七百万トンから四千万トンとする、最後に申しわけ的に石炭鉱業の合理化に関する重要事項に自主保安体制を確立する、こういうことがちょっぴり書いてあるのですね。私がなぜ政府がこの問題について責任を明確にしなければならないかというのは、この三千六百万トン体制にすると、これは結局山をつぶせということでしょう。とにかく石炭産業は非常に重大な民族資本であり民族産業である。石炭をどうしても確保して、埋蔵量はたくさんあるんだから、それをやるという姿勢ではなくて、これはとにかく、いわば露骨なことばでいえば、つぶせつぶせという形になっている。しかも一方には炭鉱労働者に対しては、これは現在五十六トンに一人当たりの出炭能率がなっている。非常に高くなっているのですけれども、これを六十五トンに、いまから約十トンほど上げる。これはもうすでに百トン近くまで上げておる炭鉱があるということを聞いておるが、つぶせつぶせ、一方労働者に言っておるように掘れ掘れと異常に掘らせる。そうして、資料によると、閉山規模を二千七百万トンから四千万トンの閉山規模にする、こういうことになっておるのですよ。これが通産省なり政府の基本政策ですよ。出てくる結論は何ですか。これは石炭産業はつぶせつぶせというようなことになるんじゃないですか。千万トンや二千万トン残るからということでは問題にならぬですよ。実際にあくまでも、これは民族産業である石炭を守っていくという姿勢が基本的にはない。そういうことから先ほども答弁がありましたけれども、公明党の同僚議員の御質問に対して答弁がありましたけれども、これだけはとにかくつぶすならつぶす、これだけは残すなら残すというようなこともせずに、企業の自主的な判断によってつぶれるならつぶしてもいい、つぶしなさいということになるでしょう。そうすると、これは福岡県の古河下山田炭鉱でも去年の九月か何か大災害が起こって、十数人がとにかく命を奪われておる。ところが、それは間もなく、すぐ閉山をきめてしまったのですね。そうすると、炭鉱企業というものは、とにかく自分の腹では閉山を見越しておいて、そうして閉山交付金をちゃんともらうという計算をやっておいて、労働者には閉山をするまではとにかく最大限に掘れ掘れ。何が抜けているか、保安でしょう。保安なんかもう考えるひまはないというときがくれば、もうどうせこの山はつぶれるんだからということになりはしませんか。そういうことになってきているところに、災害が頻発続出しているということに考えられませんか。ほんとうに業者が、石炭資本家が炭鉱労働者の生命を徹底的に守らなければならぬという立場から、閉山しようとしまいがほんとうの意味において保安第一主義でやるということなら、こんなに災害が――北炭のことをいうと、これは全くべらぼうじゃないですか。私は北炭の当局に聞きました。この一月二十七日の災害に対して、あなた方は生産第一主義で、閉山を見越してこういうことを始めたんじゃないか。私どもの炭鉱では保安第一主義でずっとやってきておりますという御答弁です。そんなこと幾ら言ったって、実際にはそうではない。そうではないから一月二十七日にもやった、今度もまたやり、実際次々にやっている。この政府の責任は一体どうです。私は基本的にはそういう政府の石炭の基本政策にあると思う。山をつぶす、しかも一方において労働者をあおって、保安なんか無視してやる。ですから、そういう政策政府は今後改めるかどうかということを私は次官に答弁していただきたいと思うのです。
  120. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 いまの保安の問題でございますけれども、先ほど申しましたように、保安計画あるいは生産計画を策定して、今後鉱山会社の合理的な運営ができるようにしたい。それから昨年の四月十五日に体制問題についての大臣答弁が出ておりますけれども、この中にも体制委員会をできれば今月中につくり、かつその体制委員会の中に石炭鉱業再編成小委員会と鉱区調整等小委員会をつくりまして、前者の石炭鉱業再編成小委員会においては体制面の基本構想というのが、これは企業の統合とか販売機構の合理化とかいう問題について検討していこうではないかというようなことで、今後やって、石炭の業界がやはり安定した方向に、またそこに働く人たちがこうこうこうなんだというような形をつくっていきたいという考えでございます。
  121. 田代文久

    ○田代委員 時間がありませんから最後にいたしますが、いまの政府の答弁では実際に安心できないですね。これはまたどこか起こりますよ。私は非常に不安ですね。どこかでまた非常に大きなあれが出てくるんじゃないか。そういう場合に政府はどう答弁されるか。これはどうしたって片づかない。警告を発しておきます。私はこういうことにならないためには、一つの方法としては、炭鉱労働者はほんとうにこれは賃金も安いのです。ですから労働賃金あるいは退職金、そういうものをもっと上げる。それから無理な労働強化ですね。ただノルマだけどんどん上げるというような、保安を無視したようなやり方はやめてもらうということをはっきりやって、ほんとうの意味で保安第一主義でやってもらわなければならないということですね。  そこで最後に御質問いたしますが、被災者に対して、なくなられた方に対して補償金は大体幾らお出しになる、また幾らの補償金になるようになっておるのでしょうか。
  122. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 労災保険によりまする所定の額のほかに、これは組合と経営者側のほうの話し合いによりまして、弔慰金二百五十万というふうなことでやっておるというふうに聞いております。
  123. 田代文久

    ○田代委員 最後に、二百五十万というのは、私はもちろん承知しておりましたが、これは組合との形で、これをやるかわり組合はストライキをやるな、そういうふうになっておるということを聞きましたが、いずれにせよ上積みされておる。しかし二百五十万遺族の方がもらって、自分の夫は命がなくなって、子供をかかえて路頭に迷った方が二百万もらって――あなたたち一千万もらっても二千万もらっても死ねぬでしょう。ですから私は、これは欲は申しませんけれども、最低五百万円くらいの遺族補償はとにかくすべきである、していいのじゃないかと考えるのです。これは非常に少ないのですけれども、その点について政府の方針は、そういう方向にもっていきたいとお考えになるのか、そんなことは絶対できないということになるのか、御答弁願いたいと思うのです。
  124. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 この弔慰金の問題につきましては、政府のほうで特別介入すべき問題ではございませんので、本日そういう御意見のあったことを経営者側へお伝えばいたしますが、政府できめるべき問題ではなく、賃金と同じように、やはり双方の話し合いというふうなことが基本原則になっております。ただそういう御意見のあったことはお伝えしたい、こう考えております。
  125. 田代文久

    ○田代委員 まだたくさん言いたいことはあるのですけれども、時間がないそうですから終わります。これは政府だってやれますよ。これはまたそういう労災保険法とか法律を変えなければならぬという問題が出てきます、われわれの責任なんだから。  終わります。
  126. 鬼木勝利

    鬼木委員長 次回は公報をもってお知らせすることといたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後二時一分散会