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1970-05-12 第63回国会 衆議院 商工委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年五月十二日(火曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長代理理事 橋口  隆君    理事 浦野 幸男君 理事 鴨田 宗一君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 岡本 富夫君 理事 塚本 三郎君       石井  一君    遠藤 三郎君       小川 平二君    大橋 武夫君       神田  博君    北澤 直吉君       左藤  恵君    坂本三十次君       始関 伊平君    進藤 一馬君       田中 六助君    藤尾 正行君       山田 久就君    石川 次夫君       岡田 利春君    中井徳次郎君       中谷 鉄也君    松平 忠久君       横山 利秋君    近江巳記夫君       多田 時子君    松尾 信人君       川端 文夫君    吉田 泰造君  出席国務大臣         通商産業大臣  宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         通商産業省貿易         振興局長    後藤 正記君         通商産業省重工         業局長     赤澤 璋一君  委員外出席者         中小企業庁指導         部長      小斎  弘君         商工委員会調査         室長      椎野 幸雄君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十二日  辞任         補欠選任   谷垣 專一君     大橋 武夫君   原   茂君     中谷 鉄也君   塚本 三郎君     佐々木良作君 同日  辞任         補欠選任   大橋 武夫君     谷垣 專一君   佐々木良作君     塚本 三郎君     ――――――――――――― 五月八日  情報処理基本法案塩出啓典君外一名提出、参  法第一六号)(予) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  輸出中小企業製品統一商標法案内閣提出第五  三号)(参議院送付)      ――――◇―――――
  2. 橋口隆

    橋口委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長所用のため、指名により私が委員長の職務を行ないます。  輸出中小企業製品統一商標法案を議題といたします。  質疑の申し出があります。順次これを許します。石川次夫君。
  3. 石川次夫

    石川委員 私はこの統一商標に関する法律に対して質問するわけでありますけれども、実は、前々から日本平価切り上げ相当話題にのぼっておるわけでありまして、経済企画庁長官あるいは通産大臣大蔵大臣の集まったところで、顔の合ったところで一回質問したい、こう思っておったわけでありますけれども、予算委員会から引き続きどうもその機会がなかったわけでございます。今度の法案も、いわば輸出関係中小企業を育成助長するという関係で出ている法案でありますので、その関連でこの平価切り上げの問題をほんとうにやるとすれば、一時間、二時間でとても議論の尽くされる問題じゃございません。しかもきょうは、長官並びに大臣の時間の関係で私の質問時間は三十分ということでありますから、ほんとうに要点だけの質問で、またあと機会に譲らなければならぬことは非常に残念でございます。  そこで、最初にお伺いをしたいのでありますが、弱小中小企業輸出関係でもってこれから相当いろんな点で痛手をこうむるのではないか。それは一つは、後進国キャッチアップという問題があるし、それから特恵関税の問題が具体化しようとしておる。かてて加えて、残存輸入制限撤廃をしなければならぬ、自由化をしなければならぬという問題がある。そこに加えて平価切り上げということになりますると、弱小中小企業というのは一体これに対応できる力があるのかどうかという問題が、これは日本人全部の非常な関心の的ではないかと思うのでございます。経済企画庁長官、それについて、時間がございませんから、簡単に、結論的に答弁をしていただければけっこうでございます。
  4. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 いまのお話は、円の切り上げ前提にしての御質問のようでありましたが、もちろんわれわれ円の切り上げを目下考えているわけではございません。確かに情勢はきびしいものが予想されます。しかし率直に言いまして、日本中小企業も特に対外関係においては相当の力をつけてきていると私は思っております。そういう意味で、そうしたきびしい環境の中でさらに今後も輸出を伸ばしていく、そういう地力を十分持っておる際でございます。もちろん、その環境がきびしくなればなるだけ、われわれとしても、いわゆる中小企業対策というものにさらに力を入れていかなければなりません。いずれにしても今日の事態において、特に国際関係において、中小企業だけがいま特別に急激な不利な条件が出現するという問題ではない、したがってわれわれとしても常時これについては怠らざる対策を進めてまいる、これ以外にはないと思っています。
  5. 石川次夫

    石川委員 それで、いわゆる平価の問題については、購買力平価説能率賃金平価説、いろいろな説があるわけでありますけれども、一体円が強いのだろうか、弱いのだろうかということについて、われわれも確信の持った見通しが立てられないわけでございます。購買力平価説によれば、大体、総合物価では一ドル二百五十円から三百五十円ということではなかろうかという見通しが立つし、能率賃金平価説によれば、三百円から三百六十円というような大ざっぱな見通しが立っておるわけでありますけれども、何といいましても、円が非常な過保護の状態の中にあって今日の平価というものが維持されておる、こう思われる部面が多々あるわけであります。そうなりますと、円がはたして強いのか弱いのか、これも簡単にひとつお考えを述べていただきたいと思うのです。
  6. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 これはいまお話のありましたように、いろいろな計算がございます。まあそれぞれの角度から行なわれていることでございまして、それらの計算を通じて、強いとか弱いという結論は出ないと私は思います。今日の事態において、日本のいわゆる競争力というものが強くなっておる、これは合理化に次ぐ合理化をやってまいった日本産業のいわば力でございます。そういう意味において、日本経済成長力がここにあらわれておるという、この意味において強いということは言えると思いますけれども、いま御指摘になったように、いろいろな計算もある際でございますし、そうした計算から、直ちに円が特別に強いのだというところまでは言えない。特に御指摘のように、相当保護を与えられておるという前提でございますから、そうしたものを一体どの程度計算に入れるか、なかなかむずかしい問題であろうと思います。
  7. 石川次夫

    石川委員 どうも時間がなくて、突っ込んで議論ができないのは非常に残念なんでございます。  残存輸入制限撤廃必要性ということは、前前からいわれておるのです。そこで、昭和三十八年の二月に二百七十七品目が百二十品目にまでなった。四十六年末には、それからさらに五十五品目を差し引いて六十五品目にするのだ、こういう見通しが一応立てられておるように聞いておるわけでございますけれども、たとえば自動車なんかも相当な問題があったわけでありますが、これは踏み切るといたしましても、今般問題になりました電子計算機というふうな問題になりますと、なかなかこれはおいそれと輸入自由化はできないであろうというようなこともあるわけです。そういう点で、残存輸入制限品目を減らしていくという点についての見通し――これはしかし、至上命令としてどうしても自由化をしなければ、いろんな外圧がかかってくるであろうという懸念もあるわけなんで、これについて通産大垣、これは断固としてやらなければいかぬというふうにお考えになっておるのかどうか。さらに、この問題はいろいろまた検討を加える余地が多いんだというふうにお考えになっておるのか。それも結論的でけっこうでございます。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私といたしましては、現在あるろ九十八品目のうち、すでに自由化をすることを決定しているものにつきましては、できるだけ早くそれを了したいと思います。なお、それと並行いたしまして、まだ自由化候補になっていないその他の六十品目、この中から自由化候補者を早く選びたいと考えています。残りましたものがハードコアになるわけでございますが、これは数から申しますと、やはり農林省所管の物資が多いであろう。通産省所管につきましても、ただいまお話しの中型、大型の電子計算機、あるいはその他一部マイニングでありますとか皮革、多少そういうものが残ることがあろうかと思いますが、大まかに申しますと、通産のほうでできるものはできるだけやってまいりたい。農林もさようでございますが、最後に残りますいわゆるハードコアの中に、数としては農林のものが若干残るのではないだろうか。つまり、もう一度申し上げますと、すでに自由化を決定いたしました品目につきましては、できるだけ早い機会にこれを全部やり切ってしまう。それから残りました六十品目については、早く自由化候補者をその中から選定をする、こういうことでいきたいと思っておるわけでございます。
  9. 石川次夫

    石川委員 それで、この円の切り上げをするかしないかという質問をしてみたところで、するということはもちろん言えないでしょうし、また、するという結論はなかなかこれは困難だろうと思いますので、その点については質問はいたしませんけれども、これは仮定の問題で恐縮でありますが、もしこれが五%あるいは一〇%いろんな考え方があるわけでございますけれども、一番この影響を受ける輸出産業というのは一体何と何だというふうに一応お考えになっておりますか。これは通産大臣のほうが適任かと思うのでありますけれども……。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは私ども、円の切り上げということを本格的に考えたことがございませんので、ただいまの場合お答えを申し上げることはできません。
  11. 石川次夫

    石川委員 まあ、そういうふうに答えないと政治的にはまずいということで、おそらくお考えになっておるだろうとは思うのでありますけれども、造船あるいは合成繊維化学肥料雑貨産業機械というようなもの、あるいは弱電関係もかなり影響があるのじゃなかろうか、こう思っておりますけれども、その中で統一ブランドの中に出てくる問題といたしましては、雑貨品関係労働集約でありまして賃金引き下げ余地がほとんどない、あるいは省力――その産業機械に置きかえるというような余地もほとんどないというようなものは、特に大きな影響を受けるのではなかろうかというふうに私個人としては考えておるわけであります。造船なんかは、一応これをやりますと、一〇%切り上げをされても九十億円損をするというようなことで、五%やっただけでも十一社の利益の大体二年半分くらいは飛んでしまうというようなことがあるようで、たいへん大きな影響がありそうに思うのでありますけれども、これはつぶさに調べてみますと、平価の変更に備えて、必ずスライド条項というものを適用するというようなことがあるようでありますから、私は大企業のものについては、世の中でいわれているほどの影響はそれほどない――もちろんないとは言えませんけれども、むしろ問題は、中小企業の弱小と言えるかどうかわかりませんが、そういう輸出産業が特に影響を強く受けるのじゃないか、こういう心配をいたしております。  まあ言ってみれば、私はシミュレーションをいろいろ見せてもらったのでありますけれども、これによるところの、平価切り上げをしたほうがいいんだというような数字が、あちこちに散見されるわけなんです。そこで私は、非常にふしぎというよりは、どうもわからないと思うのは、この輸出関係価格は、切り上げをやりましても、下降はするけれども価格弾性というものはゼロだというような見通しで、ここに非常に問題があるということがあるから輸入はふえないのだ、そうやっても輸入はふえないのだ。ということは、せっかく平価切り上げによってもたらされるであろう国内の価格物価引き下げというものに役に立たないであろうという逆な結果が、これから出てくるのではなかろうか。こういう点で私は、初めはシミュレーションを見ているうちは、平価切上げというものは結論的にはやっぱりやるべきではないかという考え方が、だんだん具体的な政策に移しかえていった場合に、簡単にこれは平価切り上げということにはなり得ないというような考え方に傾きつつあるわけです。私個人としては結論は出ておりません。したがって、この問題につきましては、これからもいろいろな機会でもって、よく国会の場でも討論をしなければならぬ重要な課題になるのではないかと思っておるわけであります。平価切り上げを肯定する側におきましても、この円の切り上げ輸入資本自由化とは二者択一ではないわけで、前提としては、輸入自由化資本自由化というものが伴わなければ、総合的な意味での円貨切り上げによるところの効果というものは期待はできないということにならざるを得ないのではないか。そういうことと、あるいは政治的な圧力でもって、これに屈服をした形での平価切り上げなどというものは絶対にやるべきではない。総合的な長期計画のもとに、日本独自の展望の中で、経済的な原因に準拠した形でもって、平価切り上げというものは、やるとしてもしなければいけない性質のものではないんだろうかというように考えますし、また、世界景気が大きく後退でもしない限りは、ことしの末か今年度の末かあたり舞は、かなり具体的な力となって平価切り上げを迫られるということになってくるのではないかということをあわせて、私は一方では懸念をしているわけであります。  そういう点で、外貨準備というものはどんどん積み増しになるんだというようなことが一般的に流布されておりますけれども、最近の貿易の伸びというものは、若干、どうも当初に予定されたほどではなさそうな傾向を感ずるわけです。しかしながら、四十五年度の大体の見通し経済企画庁から閣議決定として出されておりますけれども、それを見まずと、いろいろこまかい内訳について意見はありますが、総合収支としては、十億七千万ドル、これが結局プラスになるんだということになっておるわけでございます。ところが、銀行あたり調査によりますと、去年のうちに、あまり外貨積み増しになったのでは困るということで、外貨を減らすという対策をとっております。これは、外国為替銀行のいわゆる円シフトというものがあるし、世界銀行への貸し付けもあるし、それから参加債務証書の引き受けもあるし、それからガリオア、エロアの返済を急いだ、それから世銀の貸し付けというものも増したというようなことの総計が大体十三億ドルから十五億ドルくらいではないか、こういわれておるわけです。そうなりますと、現在は大体三十九億ドルをこしておると思うので、そういうふうな外貨減らしの特別な対策がなければ、現時点ですでに五十億ドルになっておるということになるわけです。しかも今度は、それ以上に外貨減らし政策というものは、そう余地が多くはならないんじゃないか。短期の円シフトなどでは、とうていそういうふうな大規模外貨減らしということは考えられませんので、総合収支の十億七千万ドルというのは少し少な過ぎるのではないかという気がしてならないのです。そうなれば、いやおうなしに外貨減らし方策ができないということとかてて加えて考えますと、五十億ドルを優に突破をするという時期はそう遠い将来ではなくて、今年じゅうにきてしまうんじゃないかというような気がしてならないのでありますけれども、その辺の見通しについては、通産大臣及び経済企画庁長官、どういうふうにお見通しになっておりますか、伺いたいと思います。
  12. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 確かになお今後も、外貨のいわゆる積み増しは行なわれていくことは事実でございます。しかし、現在の状況ですと、いま石川さん御指摘になりましたように、輸出も、特にアメリカに対するものなんかは、昨年から比べまして、昨年の相当高い増加率が一〇%台というふうに、だいぶ落ちついてきています。輸出総体でも二割台になっておるのに対して輸入は三割台というような状況であります。そういうことで、まあわれわれの見通しとちょうどいい感じのところにいっていると思います。しかしこれは、年度が始まったばかりでありますから、先行きはもちろんわかりません。海外情勢、特にアメリカ景気動向等によって、われわれもなお今後注目しなければならない点がたくさんあるわけです。  それからまた、長期資本収支見通し、これは非常にむずかしいと思います。四十四年度は、ともかくも、いわゆる外人の株式を中心とする投資でもって十億近いものが入ってきておったのですが、御存じのような最近の国際証券市場状況でございます。こういうようなこともあって、本年のいわゆる長期収支見通しがどうなるか、これも率直に言ってなかなかむずかしい見通しであります。そういうふうなことで、私たちは、いまのような情勢いろいろ勘案して、十億ドルの総合収支の黒というのは目下いいところじゃないかと思っておりますが、なお、いま申したようないろいろの今後の条件変動ということを頭に入れますと、よほど控え目に考えても差しつかえはない。ある程度のアローアンスを見てこれはもともと考える性格のものでございます。  そこで、外貨の問題でありますけれども、まあ御指摘のように、かりに外貨というものが多少ふえることがございましても、もちろん今日までの日本外貨事情そのものは、国際的に見て決して高い事情のものではございません。外貨準備そのものも、国際的に見て決して特別日本だけが十分に手厚くなっているというわけでもございませんし、特に最近のようないわゆる貿易規模の拡大ということを考えてみますると、今日の日本外貨準備が非常にぜいたくであるとも思いませんし、それからまた、金融的な面から見ますと、日本外為特別会計に全部引き揚げてきております。実際は、民間における外貨手持ちというものは、決して諸外国のように十分ではございません。そういう意味で、今後そうした点にも少し気を配っていかなければならない。そういうふうに考えてみますると、この外貨情勢というものが今後多少好転するといたしましても、外貨準備がすぐそれでもってふえるとも言い切れない点もあると思います。いずれにしましても、いろいろな政策運営等もございますし、すぐに五十億ドルを突破するということも、私は言い切れない点が非常にあろうと思っております。
  13. 石川次夫

    石川委員 私も、五十億ドルに今年末くらいにはなるだろうという予想が達成できるかどうかということを、最近ちょっと気にし始めているとは思いますけれども、しかし、ロンドンの「エコノミスト」なんかによりますと、日本外貨準備高は一九七〇年の中ごろでは百二十億ドルだ、こういうふうな見通しを持っているわけです。したがって、平価切り上げというものは必然性を持っているものだというふうな見通しを、海外では強く持っておるというのが実態ではないかと思うのです。このことの当否は別といたしまして、当面、平価切り上げという問題は相当慎重に扱わなければならぬ問題で、あると思うし、異字国赤字国生産性格差という問題と、それから、世界的インフレ各国における進行速度というものの格差相当あるわげなんで、前者のほうの生産性格差というものは別としましても、世界的インフレ各国における進行速度格差というふうなものは、結局赤字国自体の怠慢によるところが非常に多い。それを、何か自分たちの怠慢の責任を日本平価切り上げのほうに転嫁してくるという考え方は、われわれの側としてはなかなか納得のしがたい問題がたくさんあると思うのです。  それとあと一つは、日本社会資本というものは、ヨーロッパに比べれば現在のところまだまだ非常に低いわけですね。最近やっと社会投資というふうなものもスピードを速めてきたけれども、長年にわたるところの積み重ねというものは、比較にならぬほど日本は脆弱だ。たとえば住宅にしても、道路にしても、港湾にしても、下水道にしても、公害防止その他の問題にしても、これは比較にならぬ。こういうふうな差が日本現状としてはまだまだ強く残っておる。それから労働力不足で、賃金上昇に備えて省力設備をやることのできない、あるいは老朽化施設の更新を何とかしなければならぬという必要性を感じておる、特に中小企業貿易業者労働集約業というふうなものへの影響というものは、きわめて甚大であるということも考えなければならぬというようなこともあるし、それから、景気を安定するためには、大体一五%か二〇%――これは大ざっぱな見方でありますけれども、そのくらいの企業操業余力というものがあって初めて景気が安定したということになるのだろうと思うのでありますけれども、日本現状は、ほとんど操業一〇〇%というものが前提となって安定というものが保たれておるということを考えますと、ほんとう景気の安定であるのかどうかという点については、多くの疑問がまだまだ残されているのではないだろうか。  そういう点をいろいろ考えますと、私は、輸入弾性がゼロということについて、政策的な流通機構の改革というふうなものも含めて対策考えられ、それから輸入残存制限品目というものが自由化をするということが円滑に行なわれるというようなことなしに、平価切り上げだけで、何かこの問題を外国からの圧力によって解決をしていく、これが直ちに物価の値下がりというものに結びつくかどうかということについても、前提条件としての残された問題が多過ぎるというようなことを考えると、おいそれと平価切り上げに応ずることは不可能ではないかというような気がするわけなんで、そういう点をよほど――まあ考えたこともないとおっしゃるけれども、しかし外国では、もう平価切り上げ必至ではないかという世論もかなり強いという実態考えて、これらの対応策というものを相当考えていかなければならぬ。  この間大蔵大臣が、一年間の輸入に対して五割までは外貨準備があってもいいのだということをおっしゃっておりますけれども、これだけでは弁駁の論拠にはならないのじゃないかと思うのです。しかし私は、結論的にいって、平価切り上げができて、それがほんとう長期的展望に立って日本価格引き下げにも役に立つというようなことが実現する見通しがつくならば、これは敢然として平価切り上げをやったらいいのではないか、こう思うのだけれども。なかなかそこまでの結論は私個人は出ておりません。しかし、この問題は相当真剣に、深刻に対応していまから考えていっていただかなければ困る問題である。  それらのこまかい問題でたいへん恐縮ですが、通産大臣に伺いたいのです。  三井物産あたりは、三月には五億円、為替変動準備金積み立てをやっておりますね。それから、三菱あたりはそういうことをやっておりませんが、丸紅あたりは、そんな為替変動準備金積み立ててみたところで、これは税金対象になるわけだから、したがって、税金をかけてまでそんな積み立て金は必要ないのだという考え方になっておりまして、商社関係といたしましては、この為替変動準備金というものは、輸出促進あるいは平価切り上げに備えるというような意味で課税の対象にしないでもらいたいという要望が出ておるやに聞いておるわけです。これは私も、そういうことが可能ならばそうすることも一つの方法だと思いますけれども、まあこれは大蔵大臣所管だと思いますが、通産大臣としては、それを現在どうお考えになっておりますか、ちょっと伺いたい。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 商社にいたしましても、あるいは先ほど造船業界お話もございましたが、理想的にいえば、やはり為替あるいは注文というものは、スクエアで持つのが私は本来だと思うのでございます。商社にはそれがある程度できますけれども、たとえば造船会社などというものは、外国から金を外貨で、たとえばドルで借りるというようなことはいま実際上はできない。できればそこまでいきますと、いまのような心配はあまりしたいで済むわけでございます。まあ民間に外貨を保有させる、あるいは外国からの借り入れをもう少しゆるめるというようなことは考えられますが、しかし後者の問題をやりますと、逆に外貨準備がふえるという関係になりますから、なかなかそれはすぐにはできない。  変動準備金でございますけれども、これはいろいろむずかしい問題があると思います。つまり国が為替レートを法定しておって、そうして集中決済をしておる。そういう場合に、為替の変動に対してかりに――これは一種の単に学問上の問題としてお聞きいただきたいと思うのでありますけれども、国が何かの責任を負うのか負わないのかという問題は、学問上の問題としてはあるであろうと思います。あろうと思いますけれども、しかし現実には、そういう変動準備金というようなものに対して、国が税法その他で保護を与えるべきかどうかということになりますと、やはり私は問題ではないか、私としては、実は消極的に考えたいと思っている問題でございます。
  15. 石川次夫

    石川委員 時間がなくて、統一ブランド質問がほとんどできないのですが、結論的に言いますと、マルクなんかは切り上げをやりましたけれども、マルクの場合には風雪に耐えて相当の力を持っていると私は思うのです。GNPだけで国の力というものはそうはかれるものではない。マルクの場合にはほとんどマルク建てで貿易ができる。日本の場合には、円建てにする比率というものはほとんどないだろうと思います。それだけ円というものは弱いし、円建てにすればとたんに貿易が減ってしまうというような現実からいって、まだまだドイツ並みに平価切り上げ考えられる時点にきていないのではなかろうか、こういうふうな最近の心境でありますけれども、いずれにいたしましても、海外のいろんなニュースを見ますと、円の切り上げという問題がちらほらと聞こえてくることも相当の現実性を持ってきている問題でありますだけに、よほど慎重にいまから対策考えてもらいたい。この問題については、まだこまかい点についてたくさん聞きたいことがあるのでございますけれども、時間がございませんので、中途はんぱになりましたが、この程度にしておきたいと思います。企画庁長官十一時までということでしたが、おそくなって失礼しました。  それから統一ブランドの問題で四点ばかり用意したのでありますけれども、一点だけお伺いします。  通産省から出ております「軽工業品輸出現状」というところで、「近年わが国の輸出に占める軽工業品の比重は年々低下しつつあり、昭和四十年には総輸出額の一九%であったものが昭和四十三年には一五%にまで落ちている。」というふうに書いてあるのですけれども、通商白書によりますと、四十三年度は三十五億ドル、四十四年度は四十一億ドルで、総輸出額のおよそ三〇%を占めている、こうなっております。そのうち中小企業の生産加工にかかわるものの輸出額は、昭和四十三年は二十七億ドルで、昭和四十三年一月から九月までが二十二億ドルであった。四十三年度についてみれば軽工業輸出品の七七%を占めているというふうに、だいぶ数字が違うのですよ、この両方が。こういう数字の統計はきちっとしたものでないと困ると思うのでありますけれども、どうも両方照らし合わせて見ると、食い違いがだいぶありそうな感じなのです。一体これはどうしてこういう間違いが出たのか。間違いといいますか、私のほうの誤解かもしれませんが、貿易振興局長のほうに伺いたいと思います。
  16. 後藤正記

    ○後藤政府委員 私のほうからお答えいたします。  実は軽工業品という範疇が必ずしも確定したものでございませんので、したがって、その品目のとり方によってそういった食い違いが出てくるかと存じます。普通軽工業品と考えておりますのは、主として繊維関係の製品と雑貨関係でございますが、雑貨と申しましても、これは非常に種類が多うございまして、ざっと分類したところで本約五千から六千あるということでございますので、その辺の品目のとり方によってそういう誤差が生じたかと存じます。先生御指摘のとおり、全部あらゆる統計をつくります場合に、ことごとくそれをきちっと一つのきまった形でとるということが最も望ましい状態でございまして、相互に連絡をとりまして、でき得る限りそれに近づけたいと思っておりますが、データのとり方によってそういう食い違いが出たものと承知いたしております。
  17. 石川次夫

    石川委員 中小企業対策相当きめこまかにやらなければならぬということは前から言われておりまして、しかも、そのためには統計がよほどしっかりしなければならぬということは、前々から指摘をされておるところであります。ところが、通産白書の数字と違ったものが、これも通商産業省のほうで出ているということになりますと、これはまことに困ったことではないか。そういう点できめこまかな対策が必要であるが、中小企業対策などにおいて、これは中小企業庁の関係になると思いますけれども、こういう点から見て、この統計はしっかりした食い違いのないものにしてもらわなければ困るということを一言御注意申し上げておくと同時に、統一ブランドの問題は、結論的にいって反対すべきものでもないし、おそきに失した法案である。ゾリンゲンがそういう性質のものであったということは、今度私も初めて、浅学非才でわかったわけでありまして、むしろおそきに失したのではないかと思います。こまかい点で質問をいたしたいと思いますけれども、時間がありませんので、この程度にいたしておきたいと思います。
  18. 橋口隆

    橋口委員長代理 横山利秋君。
  19. 横山利秋

    ○横山委員 通産大臣の時間が四十分ごろまでだそうでありますから、本法案に若干関連しまして、当面の問題について伺いたいと思うのであります。  それは例の日中貿易の問題であります。きょうの新聞にも非常にショッキングに書いてあるのでありますが、周四原則につきまして、肥料六社が一致して受け入れる体制を整えました。日中貿易は、この四月に入りましてから非常に伸びてまいりまして、四月の輸出認証額に占める国別順位では、中国が昨年四月の十六位から、米国に次いで二位に躍進をいたしました。今後中国貿易は着々と伸びる可能性が一応あるわけであります。  しかしながら、古井さんがお見えになりまして、続いて周四原則が出ました。周四原則は、もう御存じのように、中国と貿易しながら韓国、台湾を援助するようなメーカー、商社とは取引しない。韓国、台湾に投資している企業とは取引しない。爆弾を生産して米国のベトナム、カンボジア侵略を援助しているような企業とは取引しない。米国との合弁会社とは取引しない。きわめて具体的、シビアなものであります。これに対して、どういうふうにわれわれが受け取るべきかという点につきましては、肥料六社の中の住友化学の社長がこういうことを言っています。日華協力委員会への出席はやめる、という表題で、社長は、もともと純粋に経済的立場から参加したもので、政治的意図は全くない、中国側に痛くもない腹を探られるのは心外なので取りやめる。つまり肥料六社にいたしましても、鉄鋼の住友金属、川鉄の三社にいたしましても、経済的立場において判断をする、自分たちが何も政治的な立場において、あちらがいい、こちらがいいという政治的判断をするのではない、こういうことを言って、結果として周四原則を受け入れる、こういう方向に順次産業界は動き出しておると私どもは考えるわけであります。  そこで、デリケートな問題でありますが、大臣に伺いたいと思いますのは、この種の動きに対して政府は介入をするお気持ちがあるのか、これが第一の質問であります。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府の立場から申しますと、貿易というものにいろいろな政治的な条件をつけるということについては、いかがなものかという感じはいたしておりますが、しかし、民間の企業がどこと貿易をし、どこと貿易をしないかということは、これは私は企業が自由に判断をせられるべき問題であると考えております。
  21. 横山利秋

    ○横山委員 古井さんが帰りておみえになったときに、中国側と古井さんの考えたこと、きめたこと等については、政府及び与党はたいへんおこった立場をとられました。総理大臣も本会議で言われたことは、まことに感情的だと思われるようなことでございました。しかし、今回それに続いて出た周四原則について、産業界が経済的立場においてこれを結果として受け入れるという意思表明をしたことは、古井さんがやってきた問題、イデオロギー的な政治的な問題とは別に、政府としては、産業界のあり方、どうしようとも介入しない、それに対して新しい制肘をしたり施策をしたりするようなことはしない、こういうふうに理解してよろしいのですか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は企業の自主的な判断でおやりになるべきものだと思っております。
  23. 横山利秋

    ○横山委員 第三番目の質問は、それならば、日中貿易がどんどんと今後発展をする、発展をする過程で、政府がかねがねケース・バイ・ケースといっておられた輸銀の扱いの問題が、どうしても爼上の問題となってくる。そういう点については、今後ケース・バイ・ケースという原則をくずさないで、必要があるならばそれを適用するというふうに理解をしてよろしゅうございましょうね。つまり私の申し上げることは、この周四原則を受け入れたことによって、政府の施策について、いままでは少なくとも順次前向きというような感じを受けておったわけでありますが、この順次前向きという考え方について変わりはないか。それをもう途中でやめるとか、客観的にいって政府はもう何にもしないというような立場をとるのかという質問であります。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府がわが国と大陸中国との貿易が増大することをこいねがっておりますことは、基本的な立場として変わりがございません。ただ、輸銀使用の問題になりますと、これは毎々申し上げますとおり、政治的な判断をも含んでおりますし、また、純粋に経済問題といたしまして、その結果起こるであろう、たとえば台湾からの反応というようなことを考えますと、わが国の貿易にとって差し引きどういう損得が生まれるかということも、これも考えてみなければなりません。したがって総合的に申しますと、この問題についての政府の考え方というものが、今回の古井氏の北京訪問、あるいは伝えられる周四原則といったようなものに影響されることはない、こういうふうにお考えをいただきたいと思います。
  25. 横山利秋

    ○横山委員 政府と産業界と若干の-若干どころでない、たいへん考え方に違いがあるようであります。あなたが産業界に対して理解を示されることは、産業界が経済的な立場において周四原則を受けようが、あるいは受けまいが、それは産業界の自由であるから、それに対して制肘はしない、こう言っておみえになる。しかし、このことを、政府と産業界を比べてみますと、産業界は、台湾貿易が阻害されるというリスクをあえておかしても、中国貿易をしたほうがいいと考えておるわけですね。ところが政府のほうは、台湾に対する兼ね合いからいって一定の制肘がある、こういうふうにお考えのようであります。あなたがおっしゃるように、貿易の振興という立場からいうならば、産業界がそのほうがいいというふうに考えておるならば、国の貿易振興という立場から言うならば、通産大臣としても、それをある程度了とした方策が出てもいいのではないか。政府は政治的オンリーである、産業界は経済貿易的オンリーである、それは食い違ってもしかたがない、もうやるならかってにやれ、こういうふうでございましょうか。そこのところが、わかったようで、どうもまだまだ政府の腰が不十分な点が見られると思うのでありますが、どうお考えでありましょう。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず経済あるいは貿易の分野に限ってだけ最初に申し上げますと、おそらく、わが国の企業の中にも、台湾に資本投下をしておるものもございます、相当台湾で大きな経済活動をやっておるものもございますから、それらの企業が今回の問題をどう判断するか、すべての人が中国大陸との貿易専一にかかろうと考えるわけにもまいりますまいと思います。これらはいずれにしても企業の自主的な判断でございますけれども、すべての企業がそのように動くということも考えられません。したがって、その点も政府としては考えておかなければなりません。それは貿易に限ったことでございますが、さらに問題を国益全体ということについて広げて考えますならば、貿易だけが国益ではないということになると思います。
  27. 横山利秋

    ○横山委員 次の質問日本プラント協会の問題でありますが、大臣もうちょっと聞いておっていただきまして、あとで御判断を願いたいと思います。  日本プラント協会は、協会独自の引き合いキャッチによる輸出調整業務が、重要性が最近非常に著しく低下いたしまして、少数の会員会社に対する補助金のトンネル機関におちいり、会員会社においても協会のメリットを疑問視する状態となり、他方では通産官僚の天下り、出向ポスト確保、海外研修コースの場と成り下り、全く形骸化し、プラント輸出振興機関としての性格を急速に喪失しつつある状態である、こういう批判がございます。いま政府の補助金も約三億円という額になっておるそうでありますが、このプラント協会が発足いたしましたときの歴史的な経緯はともかくとして、現状におきましては、これはもう何か改善をすべき条件下にあると私どもは判断をいたしておるわけであります。  たとえば調整業務、談合の業務につきましても、四十四年度はプラント輸出が前年並みとしても、協会案件はそのうちの二・八%にすぎないといわれておりますし、協会調整案件の受注実績を見ましても、三十一年ごろ七、八〇%から一〇〇%に達しておったものが一四%にしかすぎませんし、会員会社の持ち込み案件がどんどんとふえて、何か特定の会社のトンネル機関となっておる傾向が見られますし、協会案件の質が低下をいたしておりまして、この点につきましても相当考えらるべき点がございます。また、技術調査団派遣が主力会社に集中をしておるという傾向がございますし、海外事務の活動状況を見ましても、中小プラントに関する引き合いは年平均二百五十三件で、そのうち受注に成功するものは平均二件、〇・八%であるという傾向が見られますし、プラント類のリスク補償につきましても、法解釈について非常な混乱が見られる。  これは時間の関係で要約して申し上げましたが、このような状況で、もうこの日本プラント協会というものを根本的に改革をして、新しい立場において再発足をせいというような条件下に置かれておると思うのでありますが、所管の局長の御意見をまず伺いたいと思います。
  28. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 日本プラント協会につきましては、御承知のように、これはプラント輸出の主要なメーカー、現在では二十九社でございますが、これが集まってつくっております社団法人でございます。いずれもこれは非常に大きな大手のメーカーでございまして、いま御指摘がございましたように、当初は、こういったようなメーカーが集まって、しかも、インドでありますとかパキスタンでありますとかいったような発展途上国に対して、みずからコンサルティングもやり、こういったプラント案件も発掘をし、そうしてこの二十九社がよりより過当競争におちいらないような調整を行ないまして、いわば秩序のあるプラント輸出をするということで、過去十数年運営をしてまいったわけであります。ところが、プラント協会自身のその後の推移を見てみますると、一つには、プラント輸出メーカー、あるいは商社、あるいはまた別途民間のコンサルティング専門の企業等が漸次育ってまいっております。こういったことから、プラント協会が独自に行ないますような、いわゆるコンサルティングを中心にした案件の発掘というものが、漸次減ってきておることば御指摘のとおりでございます。  ただ私どもとしては、将来こういったプラント輸出というものが、わが国の重機械輸出の中心に伸展をしていかなければならぬということも政策的には重視すべき一点だと考えまするので、この点につきまして思いをいたしながら、なお現状のいま御指摘のありましたような点等も十分考え、将来やはりプラント協会がプラント輸出の総合機関として十分その役割りを果たし得るよう、どういう形でこれを再編成と申しますか、考えていったらいいか、こういった点について、目下プラント協会にも検討方を依頼をし、また、わがほうとしても、そういったブラント協会独自の検討と合わせて検討しておるというのが現状でございます。
  29. 横山利秋

    ○横山委員 通産省側と私の意見とは、そんなに違いはないとは思うのでありますが、私どもが端的に見るところ、出発の歴史はともかくとして、いまや大企業はこの利用価値がなくなった、だから談合する必要もない、自分のところで独自に調査し、独自に契約をし、独自にやっていくんだという傾向に、これは経済の発展、企業の成長と相まってなってきた。だから、このプラント協会の利用価値、役割りというものは一変をしなければならない時期になっている。もうおそきに失しているのではないか。しかし、このプラント輸出についての必要性、重要性というものはますます増大していることは間違いのないことである。したがって、この際むしろ角度を変えて、海外におけるプラント建設に明るい高級技術者やあるいは開発専門家等の集団を擁する専門機関へと脱皮させて、名実ともに協会の目的を達成させるようにすることと同時に、中小企業に対してコンサルティングサービス、あるいは現地調査や、あるいはまた先進諸国のプラント輸出の動向、輸出振興政策、機関の調査や、あるいはプラント輸出契約、技術輸出契約、技術の研究、プラント類輸出リスク補償制度の調整、整備というようなことをひとつ専門にしてやっていきますためには、この際ひとつ、諸般のこれに類するようなものも集めて特殊法人にしてやったらどうか、こういうことを私は考えておるわけでありますが、もう通産大臣は時間でございますから、いま質疑をお聞きになって、どうお考えになりますか、御意見を承りたい。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 特殊法人というものは、私どもなるべくつくりたくないという気持ちを実は持っております。そこで、プラント協会も発足後十五年ほどでございますが、いま政府委員が申しましたように、大企業は何といっても海外にネットワークを持ちましたし、また大商社のサービスもおのずからいいということで、情報などはかなり自分の手でとれるようになりました。しかし中小企業はそうではない。ことに中小企業のプラント輸出は、私ども進めたいと考えてもおりますし、また過当競争があってもいけないというふうにも思われる。コンサルティングというような仕事も必要であろうと思います。したがって、プラント協会が十五年たちまして、従来の仕事の内容を、いまの新しい事態に対処してどのようにしていくかということは、これは考えるべき時期に立ち至っておると思います。  ただ、これを中小だけでやるということになりますと、費用の分担等々たいへんなことでございますから、そうもまいらない。したがって、いまあるような体制の中で、新しい問題にどう対処するかということは、これは私は検討しなければならない時期と思っておりますが、いわゆる特殊法人ということは、できるならば避けたいというふうに思うわけでございます。
  31. 横山利秋

    ○横山委員 私は、中小企業を特に新しく再発足するプラント協会の一つの役割りにしてもらいたいが、そういたしますと、大臣がおっしゃるように、費用の分担の問題でたいへん障害がある。そういう意味合いにおいて、中小企業政策をあらためて推進するためにも、特殊法人としてこれをやらなければ、十全な援助政策なりあるいは予算の支出ということが困難ではないか、こういうふうに私は考えるのであります。きょうは時間がございませんので、これ以上申しませんが、日本プラント協会の今日の状況からいって、一刻も早く再発足をし得るように御検討を切に要望いたしまして、私の質問を終わります。
  32. 橋口隆

  33. 中谷鉄也

    中谷委員 法案についてお尋ねをいたします。  参議院で非常に本法案については詳細な審議をいたしておりまして、特に何点かにわたってお聞きしなければならないというほどのことはないと思うのですが、第五条第一項第一号について次のような答弁を三月二十四日政府委員はしておられます。「統一商標が通商産業省令で定める基準に適合するものであること。」、この点についての質問について、「基準というものは一体どういうものかというと、これは商標として登録されたものであるということ」云々、こうあります。そこで第五条の第一項第一号によりますと、通産省令による認定基準というのは、まず商標法の商標登録を受けたものということが前提になるというわけでありまするけれども、そうするとある場合には、商標法の第四条に該当しないとして、すなわち、「商標登録を受けることができない」場合に当たらないとして商標登録を受けたものであっても、統一商標の認定商標になり得ない場合がある、こういうことでございますね。要するに「通商産業省令で定める基準」というのは、まず商標法の登録を受けてきなさいということなんだから、そして商標法の登録を受けてあるものは、イコール統一商標の認定商標にはならない。ということは、そういう場合もあり得るということでございますか。
  34. 後藤正記

    ○後藤政府委員 統一商標もまた商標であることに変わりはないわけでありまして、大前提といたしまして、統一商標は商標法の適用を受ける商標でございます。
  35. 中谷鉄也

    中谷委員 そうではないんです、尋ねているのは。商標法の登録に基づいて商標登録をしてあるということが――私、誤解かあるのかもしれませんけれども、五条一項一号による認定基準の一つになっている。ところが、商標法の登録を受けて、統一商標としての認定商標たろうとしたものが、商標法以外の条件によって結局認定商標になり得ないという場合、そういう場合には、もう一度今度は商標法による商標登録を抹消して、あらためて商標登録をしてもう一度申請し直すという場合もあり得るわけですね、こう聞いているのです。理屈を言えばそうなるでしょう。
  36. 後藤正記

    ○後藤政府委員 商標法によって登録を受けた商標であることが前提であることほ、先ほどお答えいたしたとおりでございます。そこで、この統一商標としての通商産業省令で定めます認定基準には、まず第一に商標法によって登録された商標であることということ以外にほかの要件を加えております。したがいまして、商標法によって登録されておる商標でありましても、全部それが統一商標としての認定を受けるということには必ずしもならないと思います。
  37. 中谷鉄也

    中谷委員 だから、プラスアルファの分というのは、後藤局長が政府委員として答弁されたところによると、「たとえばちょんまげ印だとか大小チャンバラ印だとか、そういうのはちょっとまずいのでありまして」と、そうお答えになっている。そうすると、そういう場合は現実問題としてはなかなかあり得ないでしょうけれども、あなたのほうは、商標法の登録を受けてくることを前提としているんだとおっしゃるから、そしてさらにプラスアルファの認定要件があるから、せっかく商標法の登録を受けてきても、統一商標としての認定商標になり得ない場合があるということ、これは何か行政指導の面でそういうむだなことが――実務としてはなかなかそういう場合は生じないのかもしれませんけれども、何かそういうむだなことがないような、行政指導として何かいい知恵はありませんか。
  38. 後藤正記

    ○後藤政府委員 商標法による登録商標であること以外の要件といたしまして考えられますことは、その特定貨物に付せられました統一商標が、仕向け国の工業所有権等と抵触する心配はないかどうかということ。それから第二に、ただいま私の参議院における答弁を御引用いただきましたのですが、やはり国全般の良識と申しますか、考え方からいって、この統一商標法の一番基礎となっております日本商品のイメージアップ、それから商標による具体化といいますか、イメージアップが表現されてくるということの精神というものと背馳するような商標というものは、統一商標規程を認定いたします際に十分に申請者と御相談ができる。そこで先生おっしゃいました行政指導というものをでき得る余地はあるものと考えます。
  39. 中谷鉄也

    中谷委員 商標法による商標登録をするかしないかということは、通産省では無理な仕事でございますね。だから、商標登録ができるかできないかはわからないけれども、まず商標登録になったら認定商標になり得るかどうか。要するに一番大事なのは、商標法による商標登録があることが前提でありますけれども、そのほかのプラスアルファの条件ないしは要件、認定基準についてまず通産省と行政相談、行政指導を受けて、そうして商標登録の出願をして、そうしてあらためて認定を受けるというかっこうにしないと、理屈の上ではむだな場合が生じますね、こう聞いているのです。
  40. 後藤正記

    ○後藤政府委員 統一商標輸出向けのものにつけるわけでございますので、国内的にはさまで差しつかえないというように考えられる商標でございましても、これが外国へ出てまいりますと、たとえば先ほど申し上げましたように、日本というものに対するイメージが間違ってくるというものが出てまいるわけでございますので、こういったほかの要件をつけ加えたわけでございますが、しかし、そういったいかがかと思われるようなものが出てくる場合というのは、常識的に考えましてほとんど少ないと存じますので、行政指導というものを常に必要とするということではなくて、そういう場合があり得るというように考えております。
  41. 中谷鉄也

    中谷委員 それじゃ、もう一点だけ質問をしておきますが、十五条一号の適用除外というのは、具体的には存在しているのですか。
  42. 後藤正記

    ○後藤政府委員 お答えいたします。  現在まだこの法案が通っておりませず、したがいまして、統一商標規程の認定の申請もまだございませんし、それから現在予想される業種はございますが、それにつきましても、まだ現実にそれが提出されておるという段階ではございませんので、したがって十五条はそういった場合を予想いたしまして、もしそういったものがある場合に備えてつくった規定でございますので、現実のところ、どういったものが出てくるかという具体的な予想と申しますか、そういったものはございません。
  43. 中谷鉄也

    中谷委員 参議院では本法案については参考人まで呼ばれたようですけれども、たとえば西陣だとか、あるいは燕などといわれている食器、これらについては、かりにいま局長が御答弁になられたように、本法案にいう認定商標の適用を受けた場合には、具体的な問題は生ずるのでしょうか。
  44. 後藤正記

    ○後藤政府委員 いまおあげになりました具体例につきましては、そういった事態は生じないと了解いたしております。
  45. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、十五条の一号というのをお書きになっておられるけれども、法というのは完全なものでなければならないということでこうお書きになっておられるのであって、当然認定商標の申請をしてくるだろう、そうしてその場合には、すでに認定商標になるべきものと同一の商標またはこれに類似する商標を使用する権利があって、そこ-衝突、交錯があるというふうな具体的な予想例というものはないとお聞きしてよろしいでしょうか、というふうにお聞きいたしましたのですが、次の質問に移ります。あと一問で終わります。  十九条の問題についても、すでに参議院において質問が出ているようです。十九条の第四項、特に、「立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」とあります。そうして、第二十三条の第一号は、十三条第二項の規定に反して表示をした検査機関の役員または職員について罰則を設けております。そういう中で、結局本法案考え方は、いい物を高く、後進国の追い上げに対してそういうことで対抗していく、中小企業の振興をはかっていく、輸出の促進をする、こういう法案だということであります。その趣旨を了解をいたしますが、たとえば、統一商標をつけて、しかし統一商標としての認定商標をつけた、ところがそれが品質基準に合わなかったなどということになると、これはかえってイメージダウンもはなはだしいことになるだろうと思うのです。十九条の趣旨はこれでいいと思いますけれども、罰則においても、二十三条の一号等において、こういう場合には処罰されますよということを規定をしておる。一体、どんな場合に、どんな状況で、どういうふうに、第二十三条一号のような違反というふうなものが検挙あるいは探知されると考えられますか。「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」と、立ち入り検査の権限をそのように制限的に制限しております。そのことは私は当然だと思うし、それでいいと思います。そうすると、一体二十三条一号のような違反が出るということはたいへん遺憾なことです。そういう違反が出ないことを強く望みますけれども、もしかりにそのような違反事実があった場合に、そんな違反事実は、どんな状況、どんな場合、どんな方法、どんな端緒で発見されるというふうに現在お考えになっておられますか。
  46. 後藤正記

    ○後藤政府委員 お答えいたします。  二十三条の罰則は、第一号といたしまして、十一条の二項に違反をいたしまして表示を付した検査機関の役員または職員、それから二号は、第十三条第三項の規定に反して表示を付した者、こういうものに対する罰則でございます。  そこで、この一号の十三条二項の場合でございますが、たとえば検査機関が認定規程に定めてある検査の方法によらずに検査を行なった。それから、その品質がその認定規程に定めてある基準に適合していると認めて前項の表示を付する場合、それだけしか表示を付してはならない、こういうふうになっております。そうなっておりますから……。
  47. 中谷鉄也

    中谷委員 わかっております。
  48. 後藤正記

    ○後藤政府委員 それに違反した場合の罰則がこの二十三条でございます。二号のほうは……。
  49. 中谷鉄也

    中谷委員 わかっております。わかっているのです。もうそんなことはずいぶん詳しく質問もしていますし……。  十三条の違反がある。十三条の違反がないための立ち入り検査としての十九条があるはずなんです。しかし、十九条というのは「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」ということで、制限的に権限を制限している、そうでございますね。
  50. 後藤正記

    ○後藤政府委員 はい。
  51. 中谷鉄也

    中谷委員 しかし、そういうふうなことがあったらたいへんだからといって特に罰則まで設けている。そういう状態の中で、結局、「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」とあるけれども、十九条の検査というものが、こういうふうな違反を探知する端緒としては一番大きなものになるのでしょうか。どんな場合にそういうふうな十三条の違反が発見される可能性がありますか。そういうことについて、もしそういう違反がまかり通るというようなことであったら、望まないことであるが、かえって統一商標をつけておるものが品質基準に合わないとなれば、イメージダウンになることははなはだしいじゃありませんか。だから、十九条の条文の趣旨は了とします。そうしてまた、十三条というものの担保のために、十三条の二項等の違反を犯さないために十九条の立ち入り検査規定のあることもよくわかります。しかし、そういうふうな違反事実はこの程度で十分に発見できますかどうかという趣旨の質問なんです。もうそれだけです。それ一つ質問は終わりますから、簡単にお答えになってください。
  52. 後藤正記

    ○後藤政府委員 お答えをいたします。  例示的でございますが、海外から、こういう統一商標をつけた商品が出てきておるけれどもはなはだ品質が粗悪ではないか、というようなクレームがついてきた場合、そういったときには、これは一つの発見の端緒になると存じます。それ以外には、税関の検査の場合に、これは普通に考えましても、そういった厳重な認定基準に適合したものとして通ってきたものにしては品質がおかしいじゃないかと、常識的には税関で考える場合が出てくるかと存じます。それ以外にちょっと……。
  53. 中谷鉄也

    中谷委員 終わります。
  54. 橋口隆

    橋口委員長代理 岡本富夫君。
  55. 岡本富夫

    ○岡本委員 最初に、この法律の目的は「中小企業の振興に資することを目的とする。」ということでありますが、統一ブランドをつくったからといって、それで輸出の振興に寄与できるのかどうか、その点についてまだほかにどういうことがあるのか、これをひとつ局長からお聞きしたいと思います。
  56. 後藤正記

    ○後藤政府委員 お答えをいたします。  この法案は、中小企業の製品の中で、特に品質を向上して、その向上した品質にふさわしい統一商標をつけて、海外にその製品の成果を公表させるということをねらいといたしておりますのは、先生御承知のとおりであります。しかしながら、これはあくまでも中小企業輸出振興の手段の一つでございまして、根本的には、やはり中小企業自体が競争力をみずからつける、そうして海外の場で十分に大企業なりあるいは他の外国商品と競争し得るという体質を養なっていくことが、諸般の中小企業政策として実施されなければならないと存じます。あくまでこの法律は、そういった中小企業輸出を振興して、それにふさわしい価格で販売をされて、その利潤が中小企業にはね返ってきて、中小企業産業者に裨益するということをねらいといたしておるものでございまして、やはり全体の中の一つの方策である、かように考えております。
  57. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、この本法の関連するところの予算を一応聞かしてもらいたいと思います。
  58. 後藤正記

    ○後藤政府委員 お答えをいたします。  本年度におきまする統一商標制度関係の予算といたしましては、まず第一に、海外宣伝費の補助金といたしまして二千六百九十八万九千円。これは統一商標海外に宣伝するために、海外の雑誌、新聞等を通じましてのPRをいたす、広告をいたすという補助金でございまして、おおむねこれは四業種くらいを想定をいたして、二分の一の補助率になっております。第二番目が海外展示会費の補助金でございまして七百五十一万六千円。これは、海外において統一商標を宣伝いたしますための展示会開催のための補助金でございまして、これも四業種分を考え、おおむねこれにつきましては七五%の補助率を考えております。第三番目に統一商標外国出願費の補助金八百三十二万円というものがございまして、海外におきまして統一商標の侵害されることを防止いたしますために、それを外国において登録するための補助金でございます。統一商標というものについて、以上あげたのが本年度予算でございます。これは、昨年度もこれに似た額を計上しておったわけでございますが、法案提出に至りませんで、昨年度はお流れになった、予算措置は講じてございましたが。そういう経緯がございます。  そのほかに、たとえばジェトロ等を通ずるいろいろな広報宣伝、情報収集、いろいろなジェトロの機能を通じて、あらゆる機会統一商標の普及宣伝というものを進めてまいりたい、かように考えております。
  59. 岡本富夫

    ○岡本委員 いままで、補助率五〇%、あるいはまた展示会の補助率七五%、あるいは外国登録費の補助金、こういうふうにあなたのほうで出しておりますけれども、こういう要求がありますか。あるいはまた四業種は何の業種を考えておるのか、どういう要求があるのか、これをひとつお聞きしたい。
  60. 後藤正記

    ○後藤政府委員 お答えいたします。  すでに、法的には定められておりませんが、新潟県の燕等におきましては、ツバメ印というマークを自分たちの話し合いによってやっておるという状態でございます。それ以外にも、たとえば京都の西陣織りでございますとか、あるいは福井県のめがねワクでございますとか、あるいはまた大阪府のめがね類、その他モザイクタイルとか、ギンガムとか、スカーフとか、刃物とか、そういったところで、こういう統一商標というものをつけて、もっと自分たちの製品というものを海外に評価を高からしめて、そうしてそれにふさわしい価格で販売されるようにしたいという要望が、数年来秋のところへ参っております。したがいまして、今回の法案を通過させていただきますならば、いま申し上げましたような業種からそういった希望が出てまいる、そういうことを予想いたしましての先ほどお答えいたしました予算でございます。
  61. 岡本富夫

    ○岡本委員 私が現実に歩いて皆さんの意見を聞いてみますと、この補助率五〇%、なかなかここまでいかないというのが現在の輸出商品をつくっておる人たちの、中小企業ほんとう実態である。そこで私の一つの提案は、ひとつ思い切って全額に近い補助率を出して、こういうようにやればこうなるのだという見本というか、サンプルといいますか、そういうものをつくらないと、なかなか中小企業の人たちは踏み切れない。たとえば、中小企業の人たちは、失敗したら全部自分の財産をすってしまうのですね。ですから、商工会あるいはそういうところでまとめるについても、いろいろ意見が出てなかなかまとまらない。したがって私は、第一回は、一つくらいは思い切ってほとんど全額に近いものを補助してあげて、そうして一つそうした証拠というものをつくらなければ、ほんとうに今度やるところの中小企業統一ブランドは生きてこないのではないか、こういうふうに私は各社の間を歩いてみてわかった。ですから、ひとつ思い切ってそういうことはできないものだろうか、またそういう考えはないか、これをお聞きしたいのです。
  62. 後藤正記

    ○後藤政府委員 この統一商標制度と申しますか、この法案のねらいといたしますところは、輸出向けの製品を生産しております中小企業の業者、業界が、自分たちの創意に基づき、自分たちの熱意によって、下から盛り上がる力によって、この統一商標というものをつけて海外輸出して、その評価を高め、それにふさわしい価格を得たい、こういう努力を助長したい、こう思うわけでございます。したがいまして、先ほどお答えいたしましたように、すでに自分たちでその制度を実際に行たっている業界もございますが、そういうのを確保するためのささえがございませんので、このささえといたしまして、この法案によって統一商標規程というものを認定して、それに基づいてしっかりした検査を行ない、その検査に適合いたしていないものは税関でチェックして輸出させない、そういうことにいたしたわけであります。あくまで基本は、そういった業界の自主的な熱意というものが基礎になるわけでございます。したがいまして、先生御質問のお気持ちは私も了解できるところでありますが、一〇〇%全部国がまるがかえという状態をとりますと、そういった業界の自助努力と申しますか、そういった熱意に対してかえっていかがか。特にまた、補助金全部を出すということになりますと、これは申すまでもなく、予算というのは国民の税金をもってまかなわれておるものでございまして、この統一商標制度というものによってはね返ってくる利益を受ける者は、その業界だけに限定されるわけでありますので、したがいまして、私どもの立場といたしましては、二五%よりは五〇%、五〇%よりは七五%というふうに、業界育成のこの方針の趣旨から申しますれば、なるべく高い補助率でそういった業界の熱意を育成し助長していくという立場をとりたいと存じますが、ただ、その一〇〇%まるまるの補助というのは、現存の予算制度もございますし、それから業界自体にとってもかえって安易に流れるという点で、私は不適当ではないか、かように考えております。
  63. 岡本富夫

    ○岡本委員 中小企業に対する育成、あるいはまた中小企業に対するところの補助というものが非常に少ない。そこで、この中小企業の人たちは、自分で仕事をしてそして金融を回すだけで精一ぱいですから、これを最初に自助的にやれと言われましてもなかなかできない。これが法案ができてからどのくらいの見込みでできるだろう、こういうことになると、おそらく見込みがつかないのじゃないか、こういうように私は思うのですよ。だから、この際補助を多量につけて、この法律による一つの証拠をあらわす必要があると思う。そういう証拠があって初めて中小企業が乗り出すと考える。いいかげんなことをやったんじゃみんなつぶれますから、非常に経済基盤が弱いから、相当強力にやらなければならないと私は思うのです。ですから、政府主導型にするか、あるいは民間主導型にするか。要するに業界の主導型について政府が応援するというのでは、私はこの法案は結局有名無実になってしまう。いまたくさんわが国には中小企業に対する法案がある。ものすごくあるのだけれども、どれ一つとして非常に力を発揮したということが少ない原因はどこにあるかといったら、こうした姿勢にあるのではないか、こういうふうに私は思うのです。ですから、何もどれもこれもというわけにいかない、ただ、ツバメならツバメ、あるいはまためがねなら福井のめがね、そういうものを一つだけこうなった、だから皆さんどうだ、こういうようにやることが私は大事ではないかと思うのですよ。局長は、この法案が通って、どのくらいの見込みでこの法律を使って中小企業が伸びていくか、輸出するようになるか、どのくらいの見込みを立てていらっしゃいますか。
  64. 後藤正記

    ○後藤政府委員 この法案が、中小企業自身の体質を強化することと、それから、特に中小企業輸出についての大きなささえになるということは、私ども十分に期待をいたしております。  さて、具体的にどの程度この法案によって中小企業関係輸出が伸びるかという予測は、これはたいへんにむずかしい御質問でございまして、ちょっと私ども考えましても、確かに伸びることは十分期待いたしておりますが、計数的に申し上げることは困難かと存じます。現在、先生御承知のとおりに、大体中小企業関係、軽工業関係輸出というものは、全体の輸出の約四十数%を占めているという現状でございますので、それが量的のみならず、その輸出によって、さらに個々の中小企業への反射的な利益がはね返ってくるということを期待いたし、ひいて中小企業の育成につながることを期待いたしておるわけでございます。
  65. 岡本富夫

    ○岡本委員 何かくつの裏から足をかいているみたいで、なかなかはっきりしない。  そこで、この議論は別として、たとえば一つの例をとりますよ。小野、三木の金物、これも輸出をやっているわけです。兵庫県の小野市あるいは三本市ですが、現在播州の金物は非常に性能がいいということで輸出しておったのですけれども、最近れんがごてですか、外国ではれんがで家を建てますから、そのこてが相当よく出ておるのです。これはいいとして、はさみなんかもだいぶ出ておったわけですが、何が一番ネックになっているかといいますと、はがねなんですね。日本の国の鋼材は、日立だとか川崎だとか、そういう数社の製鉄会社によって大体品質が押えられてしまっているのです。大体十四、五種ぐらいだと思うのです。外国のスウェーデンの例をとると百数十種のはがねがある。ですから炭素の含有量、こういうものがいろいろこまかい。そういう成分を入れるために鍛造しなければならぬ。その鍛造部門が非常におくれておる。そのために製品が多量にできない。注文があってもできない。したがって、その一番ネックになったところを、これは貿振局長のあれじゃないけれども、そういう面もよく勘案して――一つの足だけは行ったけれども片足だけ行かないというような、そんな輸出振興では私は何もならねと思うのですよ。だから机上のブラシになってしまう。そうしたネックを取り上げて、そうして今後片足だけでなく両方とも進むような考えがあるかどうか、これをひとつお聞せ願いたい。
  66. 小斎弘

    ○小斎説明員 ただいまの御質問でございますが、おっしゃるように、日本の技術、だいぶ最近進んでおりますけれども、先生のおっしゃる材質面というものは昔からかなり弱体でございまして、いま一生懸命やっておりますが、まだまだ不足な面があると存じます。中小企業に対しまして、国の試験研究機関、それから公設試験研究機関、これらで極力新しい技術を研究いたしまして、これを指導し公開いたしまして、この技術を引き上げて先生のおっしゃるような効果を発揮していきたい、こういうふうに存じて努力しておるところでございます。
  67. 岡本富夫

    ○岡本委員 はがねの鍛造についても、もう一つそういうような専門的な研究をしなければ、そして二、の鍛造をやるところに対してある程度の融資あるいはまた助成をしなければ、輸出は振興しない。もう一つは製造している人たちですね。はさみだとか、あるいはまた草刈りがま、こういうようなものも出ておったらしいですが、こういう輸出品を製造しておるところに対しては、国からの何の助成もないわけです。輸出業者は、輸出しているんだからといって税金が安くなるとか、そういうような優遇をされておる。しかし製造しておるところはそれがないわけです。そういうような輸出品を製造しておるところに対しても、中小企業庁としては意を用いていかなければ、私は輸出品がどんどん伸びていくということはないんじゃないか。この面についてもう一度答弁をしてください。
  68. 小斎弘

    ○小斎説明員 先生おっしゃいますように、金融措置が伴いませんと確かに効果があがらないということでございます。そこで、中小企業庁といたしまして一番力を入れます業種をこれから徐々に指定いたしまして、構造改善をしていこうと思っておりますが、この構造改善をいたします企業に対しましては、中小企業金融公庫から特別に特定中小企業構造改善貸し付けという資金によりまして、これは低利長期でございますが、これによって極力引き上げていきたいと思いますし、また特定中小企業輸出振興貸し付けというものもございます。そのほかにも制度がございますので、これによりまして極力育成してまいりたいというふうに思っております。
  69. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、統一商標、こういうものをやろうというような考えがあるところ、あるいはまた、現在輸出品をつくっている、業界ですね、これに対しては、特別にそうした制度を――いま制度がありましてもなかなか現実には貸さないのですよ。しかも書類をつくるのに、だれが見るのか知らぬけれども、ほんとうに頭が痛い。こんなにやってなかなか返ってこないのだったら、二年も三年もかかったのじゃ何にもならないわけです。もっと事務を簡素にしなければならない、こういう面も要望するわけですが、それについてひとつ……。
  70. 小斎弘

    ○小斎説明員 私どもといたしますと、中小企業に対します金融措置はかなり念を入れてやっているつもりでございますが、確かに中小企業の数も多く、先生のおっしゃるような面もあることは、私どもも耳にしておるわけでございます。ただ、この統一商標をつけられますようなものは、その前提として、かなり熱心な、特に向上意欲の強いものでございますので、いま申し上げました構造改善融資あるいは輸出振興貸し付け、こういうものが適用される業種が多いのではないかというふうに考えるわけでございます。おっしゃる点は今後とも十分気をつけてまいりたいと思います。
  71. 岡本富夫

    ○岡本委員 それでは、約束の時間があれですから次に進みます。  罰則規定につきまして、二十二条、「第十六条の規定による命令に違反して特定貨物を輸出した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金」、ところが次の二十三条で、「第十三条第二項の規定に違反して表示を附した検査機関の役員又は職員」、これは「一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」、こういうことになっておるわけですが、この検査機関が変な検査をして出すのだったら、最初の「第十六条の規定による命令に違反して特定貨物を輸出した者」と、これは結果としては同じことになるのです。なぜ検査機関の役人に類する者のほうが刑罰が軽いのか。これはぼくは納得いかないのですがね。だから金嬉老みたいに中へ入っているやつが――金嬉老は死刑になるかどうか知りませんがそれにどんどん差し入れした者は罪が軽いなんて、そんなばかなことはありませんよ。これを一ぺん聞かしてもらいたいと思います。
  72. 後藤正記

    ○後藤政府委員 二十二条、二十三条の罰則についての御質問でございますが、この二十二条の罰則は、十六条の輸出停止命令に対する違反でございまして、これはたいへん重大な犯罪というぐあいに考えております。ほかの法令にもございますが、他の法令とのバランスを考えまして、法務省当局とも十分打ち合わせをいたし、内閣の法制局の御意見を十分に承りまして、この二十二条の規定となっておるわけでございます。  二十三条でございますが、確かに効果といたしましては、その輸出停止命令に違反をして輸出をしたということ、それから検査がルーズでいいかげんであったために出ていったということで海外においてその商品の声価を落とす、これは結果としては似たような結果が出るという点はございますが、この十六条の場合というのは輸出停止命令で、外国為替及び外国貿易管理法、あるいは輸出検査法、あるいは輸出品デザイン法等々にも、すべて二十二条と同じような違反者に対する罰則がきめてあるわけでございます。三十三条の場合は、若干二十二条に比較してあるいは軽いのではないか、こういうことでございますが、そういうことではございませんで、十六条というものの持っている輸出停止命令というものの重さとのバランス、それから他の法令とのバランス関係で、二十三条につきましても、法務省、内閣法制局と十分に打ち合わせをいたしまして、他法令とのバランス上こうなっておるわけでございます。決して検査機関の職員を若干ゆるくしてあるというぐあいの性質のものではございませんので、御了承願いたいと存じます。
  73. 岡本富夫

    ○岡本委員 それで検査機関ですね。これは民間の任意――要するに、たとえば海事協会とかあるいはフランスのBV、そういうものなのか。それとも国で検査するのか、そういう検査機関なのか。これをもう一ぺんお聞かせ願いたい。
  74. 後藤正記

    ○後藤政府委員 輸出の検査機関につきましては、輸出検査法によりまして指定検査機関というのがございます。この指定検査機関には、国自体の行政機構の一部でございます通産省に付置されております工業品検査所、また各業種ごとに自分たちでつくりまして、それが公益法人として認められました検査機関、あるいは独自でなしに集まって、たとえば雑貨センターのごとく、幾つかの業種が集まってできた検査機関というものとございます。
  75. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは要望しておきますけれども、この検査機関が、たとえば海事協会のように、現在検査機関があっても、船が大きくなったために、その検査の基準よりもうんと違うわけですね。小さい船を検査しておったが、船が大きくなったために基準にないわけですよ。そういうように、検査機関というものは、検査の基準というものをよくあなたのほうでチェックしないと、これはもう基準外だということでさっさと通ってしまう、こういうような例がいままであるわけですね。それで、ひとつ検査基準についてはきちんとしないと、これは検査したことにならないことになります。  次に、最後に一つだけ。これは貿振局長ではちょっとなにかと思いますけれども、政務次官来ておりますか。――大臣いなかったら政務次官が……。
  76. 橋口隆

    橋口委員長代理 岡本君にちょっと申し上げます。  小宮山政務次官は、外交上の表敬を受けるためいま出られないそうでございます。――それでは連絡させます。
  77. 岡本富夫

    ○岡本委員 じゃ、政務次官来るまでぼくの質問は保留します。
  78. 橋口隆

  79. 近江巳記夫

    ○近江委員 本法案につきましては、参議院あるいは本委員会においてかなりの質疑が行なわれたわけであります。私も若干の質問をしたいと思いますが、中小企業製品が非常に伸び悩み傾向である、この点を非常に心配するわけです。この中小企業製品の輸出現状、特に伸び悩みの実態というものをひとつ簡潔にポイントを報告していただきたい。
  80. 後藤正記

    ○後藤政府委員 仰せのとおり、中小企業製品というものがわが国の総輸出に占める比重というものは相当高く、これはたいへん比重が高くて、重要な意義を持っておることも確かでございます。そしてまた、この中小企業製品というものは、最近絶対量としてはやはり伸びておりますが、伸び率において若干ずつ停滞ぎみである点も確かでございます。  計数的に申し上げます。輸出に占める中小企業の割合でございますが、これは歴年から見まして、重化学工業におきましては、総輸出額中中小企業輸出額の占める割合は、昭和四十年から四十三年まで二九・三%、三一・二%、三〇・五%、二九・一%、ほぼ横ばいか若干減っておりまして、四十四年はまだ一月から九月までしかあがってきておりませんが、これが二八・八%と若干下がってきておる、こういう状態でございます。それから軽工業関係におきまして、同じく四十年からの中小企業輸出額の占めます比率は、四十年以降七四・七%、七六・五%、七六・四%、七五・二%ということで経過いたしてまいりまして、四十四年の一-九月が七四・七%。まあ重化学工業、軽工業、両方ともさほどひどい落ち方ではございませんが、これは何ぶんにも全部をトータルしてのなにでありまして、品種によりましては、やはり相当伸び率が低下してきておるというものがあることは否定できない事実で、あるかと存じます。
  81. 近江巳記夫

    ○近江委員 過去において、統一ブランドを欠くことによって外国市場において競争に敗れた事例というものがたくさんあったかどうかということなんです。外国で立法措置によって輸出振興が行なわれた例があるかどうか。ゾリンゲンなどは聞いておりますが、そのほかにそういう効果的な事例があったら報告してもらいたいと思うのです。
  82. 後藤正記

    ○後藤政府委員 統一商標がないということによって競争に敗れたという事例は、これはちょっと統一商標自体がまだ存在しておりませんので、あげにくいかと思いますが、しかし、個々ばらばらの商標をつけて輸出されることによって、それ以上に普及し、声価を保っておる外国商品に比較して劣性と申しますか、そのために不利な状態にあるという事例は、これは一般にあると存じます。そういった要望からいたしまして、今回これを統一商標という統合した形で外国における声価を高めたいというのが、この法案のねらいとするところでございます。  つけ加えて申し上げますが、特に日本中小企業製品は、従来ともいわゆる外人バイヤーの買いたたきと申しますか、外人バイヤーがこれを買いまして、そして自分たちのブランドをつけて売るということで、その間に、その流通経路におきまして、多額の利潤を外人バイヤーによって占められる、したがって生産業者へはね返りが少ないという事例が、特に中小企業のうちでも軽工業製品について見られるわけでございます。  外国における事例でございますが、先生例示されましたように、ゾリンゲンの商標に関する法律がございますが、それ以外にも、これは法律ではございませんが、政令といたしまして、フランスのコニャックについての政令がございます。両方とも、ゾリンゲンにいたしましても、コニャックにいたしましても、国内はもちろん、特に海外市場において確固たる声価を維持しておることは、やはり否定できない事実かと存じます。
  83. 近江巳記夫

    ○近江委員 輸出品の声価維持のために輸出検査法というのが制定されているのですが、この輸出検査法で品質の向上をはかっていけば、わざわざ法律を制定しなくてもいいんじゃないか、このように思うのですが、この検査法との関係について簡潔にお願いしたいと思います。
  84. 後藤正記

    ○後藤政府委員 輸出検査法はたてまえといたしまして、公的な検査を義務づけることによりまして、輸出品の言うなれば最低基準、最低レベルというものを維持し、これを今後できるならば向上させたいというためのものでございます。この統一商標法は、さらにそれよりももっと高く、最低基準ということでなしに、海外市場で声価を向上させたい。輸出向けに出荷される中小企業製品のうちで、特に品質がすぐれたものについてこの統一商標をつけて、それを保護する措置を講ずることによってこうした効果をあげたいということでございます。したがいまして、この法律の諸規定におきましても、統一商標としての検査に合格いたしましたものは、輸出検査法の検査はもう受けなくてもけっこうであるというようにきめてございますが、まあ輸出検査法が及第点すれすれの六十点といたしますと、この統一商標法は八十五点ないし九十点という優良製品という関係に相なるかと存じます。
  85. 近江巳記夫

    ○近江委員 この法案の構成が輸出入取引法に非常に似ているわけでありますが、そういう関係で、輸出入取引法の改善あるいは運用をすることによって措置をすることができないかという問題なんです。もしできないとすれば、どういう理由からできないかという点をお聞きしたいと思うのです。
  86. 後藤正記

    ○後藤政府委員 統一商標法の趣旨は、先ほど来お答えいたしておりますとおりでございますが、この輸出入取引法は、生産業者に関しましては、輸出すべき貨物の国内取引に関する協定の設定を認めておるのみでございまして、これにつきましては、アウトサイダー規制は行なえないことになっております。したがいまして、輸出入取引法をもってしましては、この法案のねらいとしております輸出中小企業産業者というものに対する保護措置、効果の確保措置ということは行なえない現状になっておるわけであります。
  87. 近江巳記夫

    ○近江委員 非常に時間がありませんので、できるだけ簡潔に聞いていきたいと思います。  法案の内容で二、三聞きたいと思うのですが、本法の適用候補の業種についてどういう予定をしておるかという問題です。それと、この提案理由の説明では、中小企業製品ということでございますけれども、中堅企業の製品でもこういう措置を必要とするものはないかどうかという問題です。
  88. 後藤正記

    ○後藤政府委員 お答えいたします。  この候補業種といたしましては、金属洋食器とか、あるいは西陣織りとか、めがねワクとか、めがね類とか、ギンガムとか、スカーフとか、作業工具とか、刃物とか、約十種ほどの候補業種が考えられておるわけであります。  それから、次の中堅企業でございますが、中堅企業は、いわゆる中小企業関係の法律に定義されております中小企業の範疇には属しないが、大企業というところまではいっていない、その中間的なものというように解釈いたしまして、たとえば商工組合等におきましては、その構成員は三分の二までが厳密な意味での中小企業者であればいいということで、したがって、もし中堅企業がこの統一商標法によるメリットを受けようといたしますならば、その中小企業者と一緒になってその商工組合の中に入る、もしくはこれに準ずる団体の中に入るということで、一つ救済規定はあるわけであります。それからさらに、統一商標規程を定めました団体が、統一商標の使用許諾を他のアウトサイダーにも与えることによりまして、これによりまして、その中堅企業はアウトサイダーとしてこの統一商標法のメリットを受け得る。かような二つの方法があるかと存じます。  それから、中堅企業は大企業中小企業との中間にあるものでありまして、具体例といたしまして、たとえば陶磁器関係では鳴海製陶とか三郷陶器というのがございます。これは中小企業ではなくて、そうかといって大企業というところまでもいっていないのですが、それぞれのブランド名として、前者はナルミ、後者はサンゴウという独自の商標をつけて海外輸出をいたしております。ガラス関係では、佐々木硝子というのが3Sという商標をつけて輸出をいたしております。それから保谷硝子はホヤというのをつけております。それからおもちゃの関係では、トミー工業がトミーというのをつけて出しております。したがいまして、中堅企業関係では、自分自身の独自の商標によって海外に進出すればまたそれでけっこうでございますし、もしこの統一商標法のメリットを受けたいということならば、先ほど申し上げましたような方法をとることも可能か、かように存じます。
  89. 近江巳記夫

    ○近江委員 この検査機関については、岡本委員のほうからも質問がございましたが、第十一条の第三号の認定規程で定める検査実行機関は、具体的にどういうものであるかということです。それとこの基準でありますが、この統一ブランド及び特定貨物の品質のそういう基準、これは省令で委任されていることになっているのですけれども、その内容というものがどういうものが予定されておるか、こういう問題です。簡単にお願いしたいと思うのです。
  90. 後藤正記

    ○後藤政府委員 検査機関は、輸出検査法に基づきます指定検査機関を活用するのが最善であるというように考えております。おそらく、先ほど申し上げました十業種ともに、それぞれの検査機関を持っておりますので、これを活用して統一商標というものを進めていくことに相なろうかと予想をいたしております。  それから、統一商標を付し得る貨物の品質基準でございますが、一口に申し上げますと、その品質基準は発展途上国の製品とははっきり区別ができて、そして先進国の製品と肩を並べ得る、そういったものでなければならないかと存じます。
  91. 近江巳記夫

    ○近江委員 この法案が通りますと統一ブランドがいよいよ実行になるわけでありますが、要するに海外で認識されなくてはどうしようもないわけです。いまジェトロ等でやっておられると思うのですが、まだまだそうしたPRの点において、われわれから正直見てそれだけの活用がゆるいと思うのです。その点どういうように今後強化されていくか、その点をお聞きしたいと思います。
  92. 後藤正記

    ○後藤政府委員 仰せのとおり、統一商標が今後幾つも出てまいりまして、この法律の効果が出てまいりますためには、何よりも海外市場においてその統一ブランドというものが認められなければこれは問題にならないわけであります。したがいまして、予算関係といたしましては、先ほどの御質問でお答えいたしましたように、統一商標自体に関する海外宣伝、海外展示あるいは仕向け国の外国における出願に関する補助費等がございますが、その他一般的にジェトロ等を通じまして、中小企業製品一般のPR、普及ということと関連いたしまして、この統一商標の普及、したがってこの法律の実質的な効果の確保につとめてまいりたい、かように考えております。
  93. 近江巳記夫

    ○近江委員 この輸出振興というのは、統一ブランドだけではなくて、税制、金融、さまざまなそうした対策があると思うのですが、最近黒字定着ということで、輸出振興策について金利の問題とか、そういうことがいろいろ論議されてきておるわけでありますが、この輸出振興策について政府としてどういう抜本的な考え方をしておるかということなんです。この辺、最後の締めくくり質問としてお聞きして、これで質問を終わりたいと思うのです。
  94. 後藤正記

    ○後藤政府委員 お答えをいたします。  輸出の役割りというものは、これによって外貨を獲得して、その外貨を活用して、対外経済政策全般の積極的な展開をはかるための基礎条件であることは申すまでもないことかと存じます。さらにまた、国内の経済成長あるいは量産による規模の利益実現のための牽引力ともなります。さらにまた、日本比較的に他の先進国に比しておくれておりまする技術開発とか商品の多様化等々を促進するために、一番基礎になるものはやはり輸出である、かように考えます。  最近、このところのしばらくの輸出の好調と、これによる国際収支の好転、外貨の蓄積ということによりまして、この十数年来官民をあげて努力をいたしてまいりました輸出振興、輸出マインドというものに、間違っても冷水をかけるような状態になってはいけない。たまった外貨は活用すればいいのであって、輸出振興というものをおろそかにして、そして言うなれば、縮小均衡型の経済をとるということは日本の国としてたいへん間違ったことである。したがって、輸出は渇くまで振興し、同時にまた輸入の促進と並行いたしまして、日本経済自体の経済拡大、均衡の方向に持っていくことが大切であると私は存じます。したがいまして、あるいは黒字定着論ということにつきましても、いろいろ議論があるようでありますが、何、ぶんにも輸出というものは相手仕事でございますし、将来にわたって黒字が必ずコンスタントに定着していくというような議論はできにくいと私は思うのであります。したがいまして、要するに輸出振興というものは、現在の日本の国力の発展に伴いまして、あるいは輸出金利を若干引き上げるとか、あるいは輸出税制というものに対する意見等も出ておりますように、従来これをささえてきた非常に強い支柱というものを若干弱くするとか、あるいは支柱をなくすとか、これにも程度がありまして、そういったささえなしにも自力で輸出力が多くなっていけるような企業を育成し、その体質を強化させていくということは大切かと存じますが、あくまで基本は、輸出振興ということは大切である、私はかように考えておる次第であります。
  95. 近江巳記夫

    ○近江委員 終わります。
  96. 橋口隆

    橋口委員長代理 吉田泰造君。
  97. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 この法案については参議院でも十分論議をされておりますし、また本日当委員会においても、具体的な条文についていろいろ質疑が行なわれておりますので、私がその質問を通じまして特に感じましたのは、この法案統一ブランドのことにつきましては、これは当然いいことだと思います。ただ法律以外のところに問題があると私は思う。  ということは、指導とこれに対する予算だと思うのです。これをつくることはいいけれども、たとえば商標というものは非常に即効性のものじゃなくて、長い日にち、不断の努力を重ねていって初めてこの法の精神が生かされると思うのです。そういう意味からしますと、私は、まず実行は皆さん方、通産省の指導の体制にある、心がまえにあると思います。しかし、予算面を見ますと非常に十分な予算ではない。特定の業者だけが利益を得るからそう予算は組めないのだという元ほどの局長の御答弁がありましたか――違いますか。ただ現在の予算ですね。これの総ワクを見まして、たとえば国が全部やるというのは非常にむずかしいとか、いろいろな議論がありましたが、この予算面ではたして効果を生めるかどうか、非常に疑問がございます。そういう意味で、もう少し予算措置をふやすような配慮がなかったならば、せっかくの法の精神が生かされなくなるだろう、かように考えます。あとこの問題につきましては、再度質問いたします。  その前に、二、三具体的な問題でちょっとお聞きしておきたいことだけ、簡単にお伺いをしておきます。  定義の二条でございますが、「この法律において「特定貨物」とはその生産を行なう事業者の大部分が中小企業者である貨物のうち、海外市場における声価の向上を図るには、品質の向上と商標の適切な使用とが特に必要である貨物として政令で定めるものをいう。」、この条文で特にいま通産省がすぐに統一商標等を実行するように指導したいと考えておられる業種、ひいてはもう少し将来的な長い、ロングランの形にした日本中小企業者製品のうちで、どういう業種に利用したら望ましいと政令できめようとなさっておるか。具体的な、身近な、直ちに実行できてるものと、長い意味で実行したいと政令に盛り込むべき特定貨物の種類をひとつお示しを賜わりたいと思います。
  98. 後藤正記

    ○後藤政府委員 お答えいたします。  直ちに着手と申しますか、直ちに適用できる業種といたしましては、燕の金属洋食器でございますとか、あるいは京都の西陣織りでございますとか、あるいは福井のめがねワクでございますとか、大阪におきますめがね類でございますとかの四業種、さらに、もっとほかには十業種くらいがすぐ出てまいる、かように予想をいたしております。将来これがどの程度まで発展していくかどうかというのは、もちろん私どももこの統一商標法というものの普及を通じまして、よく一般に浸透させたいと思うのでありますが、まずこのパイオニア的な業種が出てまいりまして、これがいいということになれば、ほかの業種もこれに追随して出てまいるというように考えられております。  現段階におきましては、将来出てくるであろうという業種につきましては、先ほどお伺い申し上げました約十業種以外に、現在のところはまだ考えていない状態でございます。何分にも中小企業輸出関係というものは非常に業種が多うございまして、したがいまして、その中からそういった統一商標というものの効果を認識し、それによるメリットを享受しようという自発的なまとまりができ、熱意を持った団体からの申請によってこの政令の内容はきまっていく、かように考えております。
  99. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 引き続きまして、関連がございますので、第三条の同じく政令で決定しなければならないことでございますけれども、「その構成員が輸出向けに出荷する特定貨物の出荷額の当該特定貨物の総輸出額に対する比率が政令で定める率をこえているものは」とございますが、これもまた同じく業種によって違いますけれども、法律的に明文化して、画一的なある一定の比率ということになってきますと、それはどういうふうな政令のきめ方をなされますか。
  100. 後藤正記

    ○後藤政府委員 お答えいたします。  三条におきます比率は、原則として五〇%、総輸出額のうちで半分を占めるということを考えております。しかしながら、これはあくまで原則としてでございまして、その業種、業界の実情に応じまして、必ずしも五〇%というのにスティックずる必要はない、かように考えております。
  101. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 いまの局長答弁のお考えからすると、たとえば統一商標統一ブランドを申請してその認定を受けようとする業界が――いわゆる業界によって比率が違うということですね。自由裁量にするということですか。
  102. 後藤正記

    ○後藤政府委員 若干私のお答えがことば足らずであったかと存じますが、五〇%というのを原則といたしまして、ただ業種によりましては、一例をあげますと、有田焼きとか唐津焼きとか、陶磁器関係ではいろいろなものがございます。したがいまして、日本全体としての陶磁器の輸出額、そのうちの五〇%を何らかの一つだけの特定の陶磁器が占めるということは非常にむずかしい。そういったスペシャルケースに対しまして、必ずしも原則としての五〇%を適用しないというつもりでお答えを申し上げたわけでありまして、自由裁量ということじゃなしに、あくまで原則としては五〇%、しかし業種によっては、それが適用しにくい業種が中にあるので、その場合は考慮いたしたい、かように考えております。
  103. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 これは具体的な質問になりますが、中小企業者の場合、団体で非常に指導者の層の薄さもございますが、その団体かまとまるということは非常にむずかしい要素がいろいろございます。そのときに、たとえば同じ団体であっても、一業種でアウトサイダーもおるでしょうし、二つの団体が同じように統一商標を別の角度で出しますね、地域差とかいろいろなことを考えて。その場合には、同じ商品であってみても、二つの統一商標を許すような形になりますか、どうでしょうか。
  104. 後藤正記

    ○後藤政府委員 本来この法案は、各自個々ばらばらの商標、あるいは自分の商標でなしに他の外国人バイヤーによる商標をつけて輸出するところから出てくる弊害と申しますか、そういう中小企業者の弱点を救ってみたいというのがねらいになっておるわけでございます。したがいまして、でき得ることなれば、その特定貨物が全部まとまりまして、そして一つ統一商標ということで海外輸出されますほうがより効果的でありますし、これのPRにも楽でありますし、認識されるにも時間が短くて済む、かように考えておるわけでございます。  したがいまして、私ども今後の行政指導に関しましては、でき得る限りそういった方向によって行ないたいと思いますが、あくまでこれは民間の熱意を基礎として盛り上がってくるものを助長保護するというたてまえになっておりますので、どうしても業界でこれが二つに割れて、同じような品物でありながら、この地区のブランドはこれにしたい、この地区のブランドはこれにしたいという例が出てまいります場合には、これは業界の自主性を尊重する以外にないかと存じます。好ましくはないけれども、そういった場合はやむを得ないかと存じますが、そういった場合にも、決して役所による介入とか強制とかいう姿勢ではなしに、この法律の趣旨をよく御説明して、こういった趣旨のものであるから、そのほうがかえって皆さま方のお得になるでしょうと、こういう趣旨ででき得る限り指導には熱意を注ぎたい、かように考えております。どうしてもそれは話し合いがつかないということになれば、これはやむを得ない事態かと存じます。
  105. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 やむを得ないというのは、やむなく二つの商標を許すということですか。認定するということですか、しないということですか。
  106. 後藤正記

    ○後藤政府委員 するということでございます。
  107. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 するということだと、局長、ちょっとこれおかしくなるのです。ということはどういうことかといいますと、たとえばこの法案の第三条は空文化するおそれがございます。というのは、先ほどの答弁で、めがねとか西陣織り、あるいは燕の食器、そのほかに十業種くらいお考えになっておられる、統一商標を認定をしなければならぬような指導をしなければならぬようなものがあるということでございますが、そのアウトサイダーが一体幾らあるかということですね。それと同時に、一つの団体であって、この第三条を見ますと、五〇%以上という原則論でとるならば、中小企業者のことでございますので、十数業種を並べてみた場合に、私よく調べておりませんが、おそらく相当数のアウトサイダーがあるであろうと思うのです。ところがアウトサイダーも輸出をしておりますね。その場合に、相当輸出のアウトサイダーがある、その残りが二つのブランドをとった場合に、その団体の五〇%の輸出量を確保できませんね。当初から半分にはなりませんね。だから原則として、いま政令で定める五〇%ということにすでに問題があるのじゃないか。これはアウトサイダーの数とか、そういう背景を知らぬで私申し上げておりますので、同時に御答弁を賜わりたいと思います。いま考えられております業界のアウトサイダーのパーセントと同時に、団体が一業種団体であるかどうか、その辺のところをひとつ御答弁賜わりたいと思います。
  108. 後藤正記

    ○後藤政府委員 ただいま申し上げました金属洋食器の業界は、全国の業者に対する、現在熱意を持って進みたいという燕を中心といたします業界の比率は七九・五%でございまして、これが全輸出に占める燕の団体の輸出比率は九七・八%と、ほとんどこれは全額をカバーしておる、こういう状態でございます。それから、めがねのワク、福井県でございますが、これは全国業者に対する団体の業者の比率は約二〇%でございますが、全輸出に占める団体の輸出のパーセンテージは九二・八%と、ほとんど全体をカバーいたしております。ほかにも、全一部ここでアウトサイダー関係を調べましたが、先ほど候補業種としてあげましたような団体は、おおむね、全国業者に占める業者の数もさることながら、総輸出量中にその団体の占めておりますパーセンテージが、一番小さいもので六〇%、一番大きいもので九七・八%というように、先ほどの候補業種ではまず問題はないかと存じます。  しかしながら、先生御指摘のように、いろいろアウトサイダーもある業種がございます。もともとそういった業界が一つの団体にまとまらずに、アウトサイダーのほうがずっと数が多いというところでは、この統一商標法というものを適用するのは無理でございまして、そういった、まとまりがあり、しかもそうしてまとまった団体が、自分たちの製品を統一商標をつけて海外輸出をして、その声価を向上させて値段を上げて、その利潤を自分たちのほうにはね返さすようにしたいというような熱意を持っておる業界でなければ、この法律はもともとその効果を期待できないわけでございます。したがいまして、アウトサイダーのほうがずっと多く、しかもアウトサイダーの総輸出額に占める生産量のほうが半分以上であるというのは、残念ではございますが、もうこの法律適用の基礎的な前提からちょっとはずれておるということで、これは、そういった状態のままに推移することが自分たちの損であるという業界の自覚がなければ、どうにもならないことではないか、かように考えております。
  109. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 私がここで質問をしたいのは、五〇%、半分ぐらいといういまの局長の御答弁だと、いま政令で適用なさろうとしているその業界は、比較的アウトサイダーが少ない、輸出額も全般の輸出額に対するウエートが非常に大きい、そういう業種を言われました。質問に入る前にちょっと聞いておきたいのですが、たとえば燕をとった場合、そういう統一商標統一ブランドをつくらないでも比較的アウトサイダーがないということは、まとまりのいい業界で、ということは言いかえますならば、バイヤーの買いたたきとか、そういうことに対しては抵抗を持った業界、団体であろうと思うのです。ということは業界秩序が比較的守られやすい。あとでお伺いしますが、いま統一ブランドをつくることによって、貿易振興になる、買いたたきがなくなるとか、あるいはそのイメージアップができるとか、先ほどの答弁で具体的な数字は言えないということでしたけれども、このブランドをつくったほうがいいという背景には、ほんとうはそういうふうな背景が必ずあると思うのです。  私が言いたいのは、むしろ五〇%に満たなくても、業界のレールが非常に乱れているようなところにこそ、そこに柱を一本立ててやる。そこでバイヤーなんかの買いたたき、中小企業製品のPRをしていく、そういうアウトサイダーがもう統一ブランドで協力してイメージアップをはかったほうが、会社のためにも、利益のためにもプラスになるというような指導が注がれるべきであろう、こういうように考えるのです。逆の見方をしているわけです。非常にまとまったところは、比較的、値段協定なり、あるいは買いたたきなんかに対する抵抗ができるのじゃないか。むしろ五〇%に満たないようなところ、そういうものでも業界として指導すれば伸びられる、そういうものこそてこ入れをすべきじゃないか、こういう考え方の問題提起をしてみたいと思うのですが、局長、それに対してはどういうようにお考えでございますか。
  110. 後藤正記

    ○後藤政府委員 私どもの考え方では、たとえば洋食器関係における燕の業界などというのは、これは中小企業の中でも、地域的にも、まとまりでも最上位に属する業界である、かように考えておりますが、そこすらが、過去の実例をとってみますと最近若干減ってきておるようでありますが、五十ピースのセットものでFOB価格七ドルないし八ドルぐらいのものが、米国の小売り価格は三十ドル前後と、こういうことになっておる。しかも、そこで商標はどうなっておるかと申しますと、現在、自主的に燕のマークをつけましてこれを推進しようじゃないかという動きは燕の組合の中にございますが、これがつけて出ておりますのは一〇%足らずでございまして、あとは全部それぞれの外人バイヤーのマークで出ておるという状態でございます。したがいまして、非常にまとまりがいいと考えられておりますところでも、残念ながら過去からの惰性と申しますか、数がまとまっておりましても各個撃破されると申しますか、向こうのやり方が非常にじょうず過ぎるのか、言うなれば、被害を受けて当然得るべき利益を獲得せずに今日まで経過しておる、こういう状況でございまして、これをさらに、すでにその萌芽が出てきておりまして、自分たちでマークをつくっておるというものに対する法律上の保護措置、確保措置というものをつけてこういった機運を助長したいというのが、この法律のねらいとするところでございます。  先生がおっしゃいましたように、むしろ、てんでんばらばらでアウトサイダーのほうの数が多いという業界、これに対しましては、これは統一商標法以前の問題として、その業界に対する中小企業施策一般として、団結しまとまったほうがお互いに得である、そういう一般的な施策のほうがこれに先行するものかと考えます。したがいまして、それの施策がよろしきを得、効果をあげてまいった段階におきまして、この業種に適用されるという機運が盛り上がってきたのをとらえるべきでありまして、そういう実態になっていないところへこの統一商標法を持ち込むのは実現はむずかしいかと、かように考える次第でございます。
  111. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 もちろん、いま燕とかそういう団体がまとまったようなところに対して統一商標が非常に効果があるということは、われわれも当然そう考えております。ただ、そういうところは当然であるけれども、いま第三条で政令で定めようとする、五〇%原則論でございますが、そういう五〇%を割ったような場合でも、きめ方について私は問題提起をしたわけです。というのは、もう少し業種の中で団体構成員の中のシェアが低くても、ということはアウサイダーがあったりそういうことがあっても、一つ中小企業の体質改善で解決できるといいますか、統一ブランド一つの誘い水になるのじゃないか。そういう意味で、原則論にとらわれなく範囲を拡大していただきたいという、やや要望を交えた質問であったわけです。そういうふうに御理解を賜わりたいと思います。  最後に、大臣もお見えになりましたので、一問だけ質問をさせていただきます。先ほど冒頭で、この統一ブランドのこの法案には何ら問題はありません、非常にけっこうだことでございます――ただ、けっこうにするためには、私は二つの要素が要るだろう。ということは、非常に即効性ではなくて、商標なんという場合には、やはり長い日にちPR効果をあげていく、商標の信頼度を海外に高めていくという作業が要りますので、通産省の指導とこれに伴う予算措置が望ましい。ところが四十五年度予算を見てみますと、外国登録費の補助金、あるいは海外PR費の補助金、海外展示会費補助金、こういうのを見てみましても、非常に少ないのではないか。ということは、非常にいい法案であって望ましいことであり、中小企業者がドイツのゾリンゲンみたいな一つの銘品として――中小企業後進国の追い上げがどんどん続いておる時代に、これこそ私は非常にいいことだと思うのです。ただし、いいことを実行するには、もう少し通産省本腰を入れた予算を組んで、将来の後進国追い上げに対抗して、日本中小企業製品のシェアがだんだん狭まっていくのをとめていく、むしろ広げていくというような前向きな姿勢て指導と予算――指導はこれからの問題でございますが、予算はもう数字に出ております。それではいささかお粗末な予算ではないか、このような考え方をしますが、大臣はこの予算について、これで将来の中小企業――一つ統一ブランドというのは非常に画期的なことでございますし、いいことだと思うのですが、このようなことではたしていいかどうか。もう少し予算をふやして、ほんとうに不断の連続的なPR活動ができるような助成措置が望ましいのではないか。これについてひとつ御答弁をいただきまして、私の質問を終わります。
  112. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この法律によりまして、統一商標を付しました商品が海外の信用を博することになりますと、文字どおり、従来わが国が得意といたしました品物とまた違った意味で、わが国の中小企業における労働の質の高さと、きめのこまかさというものが海外に認識されることになる。それを期待しておるわけでございますが、幸いにしてこのたびこの法案が成立いたしまして、幾つかのものが指定を受けるようになりますと、まさにこれは相当息の長い仕事をしていかなければなりません。現在、海外宣伝費補助でありますとか、海外展示会費補助であるとか、あるいは外国登録出願費補助であるとか、一般的にもっと商標によりますところの予算等ございますけれども、今度この法律を御可決願いまして、統一商標を付したものがいよいよ海外に出ていくということになりましたら、これはもう従来と違った新しい局面を迎えることになりますので、予算措置につきまして、それもいっときでなく長きにわたって特段の措置を講じて、わが国の中小企業ほんとうのすぐれたところを外国に見てもらう、ぜひそういう努力をいたさなければならないと思っております。
  113. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 終わります。
  114. 橋口隆

    橋口委員長代理 岡本富夫君。
  115. 岡本富夫

    ○岡本委員 先ほど本案の質疑にあたりまして、大臣も、それから政務次官も、両方ともおいでになりません。いろいろ時間の都合もあったろうと思いますけれども、若干軽視されたんじゃないかというような感じもしないわけではございませんけれども、いずれにいたしましても大事な法案審議でございますので、大臣に一言だけひとつ念を押しておきたいことがあるのです。  それは、先ほども若干局長にお話ししましたのですが、この中小企業輸出の振興、これにつきまして、本法案が成立いたしたといたしまして、現在の中小企業の人たち実態というものを考えますと、この法案を活用するためには、こちらでいま考えているような状態でなくして、相当ギャップがある。すなわち、もうその日その日の生活、その日その日の金融、その日その日の商売に追われておりまして、統一商標法をこなすことがなかなかできないのじゃないか。五〇%の補助率ということでありますけれども、たとえば二千万なら二千万の補助をいたします。そして二千万のお金を集めるにはたいへんだ、こういうことを考えまして、試みに全額というわけにもいきませんけれども、九〇%ぐらいの補助率をしてまず一つの商標をつくることが大切である、こういうふうに私、局長に提案したのでありますが、大臣のお考えはいかがでございましょうか。
  116. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはやはりものの考え方だと思うのでございますけれども、品物を国内に売る、あるいは輸出をする。輸出とするということは、まさにわが国のような国情から申しますと非常に必要なことでございますけれども、これが一時的な輸出というものに終わらないためには、やはり輸出によるかせぎというものが一時のことでなく、その企業の経営の中に組み込まれるということが私は大切であろうと思います。国がとことんまで補助して輸出をさせるということよりは、やはり企業としても、国内に売るか、輸出にするか、いずれにしても相当の利益があるというようなことでございませんと長続きがしない。そういう見地から申しますと、一時、ことに一種目を限ってといういまのようなお考えも、短期の奨励策としては一案かと思いますが、私どもはやはり恒常的に、それも幅の広い日本中小企業の製品を、海外にその声価を買ってもらおうと考えております。そのためには、自分のために、しかも長期にわたっての輸出のための品質改善をはかるという企業自身の努力が大切だというふうに考えますので、ただいまのようなお話、ごく限られた種目、限られた期間、これはわからないではございませんけれども、長い目で見ますと、五〇%ぐらいというのが、政府に対する依頼心を起こさせない、あるいは国としても不当に突っかい棒をするのでないという、一つのいいところの限度ではないかというふうに私どもとしては考えるわけでございます。
  117. 岡本富夫

    ○岡本委員 それはそれ以上多くは申しません。  そこで御承知のように、これは大臣ですからお聞きするのですけれども、四エチル鉛、こういう猛毒が輸入されている。これは御承知のように、ぼすとん丸が四エチル鉛を積んできて、そしてそのあとの掃除に約八人が入った。そうすると、そのうち三人は死亡した、五人は半狂乱になっていまだに入院している、こういうような事件がありました。これは有名な事件でありますから御存じだと思うのですが、そういうような猛毒のものを積んできた。これは本年の一月末、イギリスの貨物船ロンドン・シチズン号がアメリカから輸入する四エチル鉛を上甲板に積んでおったわけですが、そのドラムかんが破れて非常に液が流れた。それを処理するため、原綿にしみ込ませて何とか食いとめた。それが神戸港に入港いたしまして、四エチル鉛の汚染原綿が神戸港の埠頭に置いてあったわけです。一月二十九日に荷揚げされて、汚染綿がずっとそのまま置いてあったわけです。これは過マンガン酸カリ液をかけて中和するということになっておったのですけれども、そうした処理もせずにあった。陸上に揚げますと、神戸の海上保安部、あるいはまた神戸の労働基準監督局というところにも、それを取り締まる法律がないわけです。したがってそのまま野ざらしになっていた。その付近には子供がたくさん遊んでおる。こういうあぶないものがほうってあったわけですが、そのうちにその二百二十一梱包が市販されてしまって全部なくなった。これは何のチェックもなく、猛毒であり、それに中毒しますとだめになってしまう、気違いになるというものがそのままになっている。これは非常に不安であります。したがって、こうした法的規制のないものに対してこまかい問題でございますけれども、非常におそろしい問題でございますから、今後こうした問題について大臣が力を入れてよく取り調べをしていただきまして、こうしたものを市販されないように特別な手を打っていただけるかどうか、それをお聞きしたいのですが、いかがでしょうか。
  118. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は初めて伺うことでございますが、四エチル鉛が放置されておるということは、もうだれが考えてもないはずのことでございますので、その神戸の埠頭にございましたものが何であったのか実は私ども存じませんが、もし四エチル鉛そのものではなくて、中和されたものでありますれば問題が少のうございますが、これはよく調べてみます。四エチル鉛そのものは非常な猛毒物でございますから、よもやそういうことはと思いますが、よく調べまして、関係方面とも連絡いたしながら調べさせていただきます。
  119. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは朝日新聞に出ておりまして、また現地のほうでも非常にやかましく言った問題です。ですからそうたびたびある問題ではないと思いますけれども、四エチル鉛というのは御承知のように猛毒でありますから、大臣御承知でなかったようですが、特別にひとつ考慮していただきたい。これを要求いたしまして終わります。
  120. 橋口隆

    橋口委員長代理 中村重光君。
  121. 中村重光

    ○中村(重)委員 中国貿易の問題については、閉会中に統一テーマとして大臣にいろいろお伺いをいたしたいと思っておりますが、大臣も御承知のとおり、最近、周四原則に基づいて、いわゆる大手業者のダミー業者と称する業者が、台湾との貿易を打ち切って中国貿易一本に変えていこうとする動きが出ておるようであります。これに対して政府は、もちろん圧力をかけることではなくて、業者の自主性にまかせるべきであると私は考えるのでございますが、この際、大臣の明確なお考えをひとつお聞かせ願っておきたいと思います。
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 けさほど横山委員にもお答え申し上げましたとおり、これは業界が自主的に判断いたすべきことだと考えております。
  123. 中村重光

    ○中村(重)委員 軽工業品輸出の大宗は言うまでもなくアメリカであるわけです。ところが、最近はアメリカ輸入制限の動きというのが非常に活発になってきたようでございます。そこで、貿易の多角化ということが強く要請をされておるわけでございますが、政府といたしましても、もちろんそのことを望んではおられると思いますけれども、強力な指導が必要であろうと私は思います。その点に対する大臣の御方針を伺ってみたいと思います。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国の経済が概して重化学工業化いたしまして、輸出もふえ、ここまで参りましたけれども、しかしそれは、いわゆる軽工業というものがわが国に本来向かないということではございません。むしろ軽工業の中で一これは重化学工業に比べれば幾らか労働集約的になると思いますけれども、わが国の労働の質は非常に高うございますから、かりに多少労働集約的でも品質がよければ、すなわち品物が高級でかつ付加価値が高いものであれば、いわゆる発展途上国に伍しまして十分にメリットを買ってもらえるはずでございます。したがって、それらのものについて私どもはいわゆる近代化促進法で近代化をやり、あるいはその上に構造改善をかけまして、文字どおり個人的な趣味性の高い、また付加価値の大きい高級なものをわが国の軽工業が生産をする、そういったようなことを、中小企業が主でございますから、振興事業団あるいは近代化促進法によりまして援助をしてまいりましたし、これからもそうしてまいらなければならないと思っております。また、ただいま御審議願っておりますこの法律案も、一部そのような目的を持っておるわけでございます。
  125. 中村重光

    ○中村(重)委員 海外市場の多角化をはかっていく、こういうことになってまいりますと、出先のいわゆるジェトロの果たす役割りというのは非常に大きいのではないかと私は思うわけです。ときたま私どもも外地へ参りまして、まず第一に関心を持つのは、ジェトロがどのような役割りをはたしているのだろうか、その動きはどうだろうかということで、関心を持って実は話し合いをいたしております。ところが予算の面の制約というのもあるわけですね。それから機動力というものが実はない。かつて田中委員からもこの点について質疑をし、強く指摘したところでございますが、今回の統一ブランドのPRというようなこと等を含めて、このジェトロの強化策ということを政府は積極的に考えてみなければならないと思いますが、その点、大臣のお考え方はいかがでしょうか。
  126. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる軽工業、ことに統一商標との関連で申しますと、そのための海外宣伝費の補助でありますとか、展示会の補助でありますとか、あるいは統一商標外国出願の補助でありますとか、幾つか項目がございますが、やはり中心になりますのはジェトロでございます。ことに最近は、大企業の品物は何とか外国でも成果を確立しつつございますし、商社活動も盛んでございますけれども、中小企業の品物はなかなかそうまいりません。これはやはりジェトロというものがかなり意識して、質の高い中小企業製品を広めてもらうということが必要だと思います。在来ジェトロにつきましては、国会の積極的な御支援も得て逐年予算も伸ばし、人もふえ、海外のブランチの数もふえてまいりましたけれども、そうしてこの施策は私ども成功していると考えておりますから、今後ともジェトロにつきまして、さらにさらに活動範囲を広め、深めますように、予算の上におきましても、また人的な面でも、また出張所等の設置等につきましても、努力をしてまいりたいと考えております。
  127. 中村重光

    ○中村(重)委員 私どもは、ジェトロはやはりプロパーの職員を指導していく必要がある、できるだけ通産省その他からの出向は押えていかなければ意欲が出ないのではないかということを考え、そのことを指摘してまいりました。ところが正直に申し上げて、私どもが外地でジェトコの方と会いますと、どうも通産省出向のジェトロ職員のほうが何か非常に意欲的で活発だという感じがしてならないのです。私はそのことは大いに歓迎すべきだと思うのですが、プロパーの職員に対してやはり何とか自主性を、意欲を発揮させるということについての阻害要因があるのではないかというように考えられる。ですから、プロパー職員にひとつもっと意欲を持たせる、そうしてどんどん引き上げて主要ポストを占めさせるといったような指導が、私は必要だというような感じがいたしますが、その点どうでしょう。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 現在ジェトロの海外駐在員二百四十三名のうち、官庁出身者は七十四名だそうでございます。これは確かに多うございます。しかし、これは御承知のようにいきさつがございまして、ジェトロが発足して間もなく、ジェトロ自身の人を採用し始めたわけでございますけれども、まだこれだけの年数しかたっておりませんから、どうしても上のほうの管理職や海外のチーフということになりますと、まっすぐにジェトロに入った人はまだそこまで経験的にも成長していない、そこで官庁で経験のある者がチーフになっていくというふうなことを、いままで確かにあちこちでやっております。しかしこれには、本来申せば、ジェトロという団体がここまで育ちましたしいたしましたから、何も役所が好んで人をここに出す必要はない。役所として海外に出さなければならないポストはたくさんございますので、本来こちらが好んで出したと申しますよりは、その土地に定着いたしますために、相当の経験と年齢の者が出ていかなければ店をあけることがむずかしかったというような事情影響しておると思います。したがいまして、これは私どもの方針として申し上げることができるのですが、本来こういうことは変則でありまして、ジェトロ育ちの人が、文字どおり各地のチーフになり、また市場を開拓してくれることが本則でございます。私どもは、人が育つにしたがってそうすべきであると考えておりますから、ただいまのように通産省等から出向いたしております姿はむしろやや変則である、ときとともに改めてまいりたいと思います。ジェトロが自身採用を始めましたのは昭和三十三年だそうでございます。そこで、もうしばらくいたしますとこの人たち自分たちでジェトロを背負って立っていかれるようになる、そういたしたいと思っておるわけでございます。
  129. 中村重光

    ○中村(重)委員 大臣考え方、私はまあ当を得ていると思います。先ほども申し上げましたように、通産省出向のジェトロの職員が活発な動きをしているという事実だけは実は認めてきたわけですが、反面、申し上げたように、もう少しプロパーの職員が活発にやってもらいたいというような感じを持ちますとともに、プロパーの職員が一番車を持たないのですよ。たまたま自分のいわゆる自家用車で行動しているということですね。ですからそこらあたりはひとつ大臣も一こまかいことで非常に大切な問題であると思います。自主性を持たせるという意味からも、活発な行動を展開をさせるという意味からも、やはりそうした機動力を発揮させるということですね。それらについての御留意もひとつジェトロと十分話し合ってやっていただきたい、こう要請をいたしておきます。  なお、この軽工業輸出品の大宗を占めている中小企業製品ですが、これにはバイヤーが介在をしている例が私は非常に多いと思うのですね。そのことは、バイヤーの動きが活発である、それがいわゆるわがほうの自主性をそこなっておるというような点も、弊害として相当あるのではないかと私は思います。そこで、この統一ブランドのPRをさらに盛んにし、効果を発揮していくためには、改善をしていかなければならない点が非常に多いと私は思いますから、それらに対しての指導方針ということをこの際ひとつ伺っておきたいと思います。
  130. 後藤正記

    ○後藤政府委員 私からお答え申し上げます。  外人バイヤー自体の動きを政府として押えるというわけの施策はとりにくいかと存じます。事実また外人バイヤーが、先生御指摘のとおりに、従来いわゆる買いたたきというようなビヘービアをとってまいったことも事実かと存じます。それでこの統一商標法もこれが防止策の一つとなってまいるわけでありますが、要はこうした業界の団結とそれから自覚、熱意によりまして、そうした外人バイヤーに乗ぜられないような体制をとらせることが一番必要であると存じます。先ほど来お答え申し上げておりますように、現在この統一商標法の適用を受けたいという意欲を示しております業界が約十にのぼって出てきておりますというのは、そういった弊害を自分たちも自覚し、これから免れ、自分たちの努力によって進みたいという熱意が起こってきておるあらわれかと存じますので、こういった傾向を、本法案、さらにまたほかの施策を通じまして、助長育成してまいる方向に進めたい、かように考えておる次第でございます。
  131. 中村重光

    ○中村(重)委員 まあ相当積極的にわがほうの自主性を十分持って対処するように、これはやはり輸出業者の共同化、その面の指導というものは、申し上げたようによほど強力な指導が必要だと思うのですよ。統一ブランドということになってくると、その点特に留意される必要があるだろう、こう私は思います。  それから金属食器は、御承知のとおり構造改善計画の指定業種ということに実はなっているわけです。その計画に品質目標というのがあるわけですね。四十三年度が低級品が七六%、中級品が一六%、高級品が八%。四十四年度は低級品が三五%、中級品が四二%、高級品でもって二三%という実績になっているのですね。そうなってくると、この統一ブランドを実施した場合に、品質の問題が私は非常に大切であろうと思うのです。成否のかぎはそこへかかっているのではなかろうかという感じがいたします。そこで統一ブランドの品質基準というのをどう考えているのかという点が一点お伺いをしたい点です。  それから、七七%を占める中級品、低級品に対しての扱いをどうするのか、これは実は関連があるわけでございますから、政府の指導方針ということですね。  それから、先般私がヨーロッパに参りまして、大使館、領事館等あるいはジェトロも口をそろえて言うことは、ヨーロッパ諸国に対して特に品質のいい優秀品を望んでいるのだ、そのことでわが国の市場の開拓の余地というものは十分あるのだということを非常に強調しているのです。これはどこに行っても一致した考え方ですね。ですから、今回の統一ブランドの制度をここで活用されていく、制定をされるということとかんがみて、そのこと自体だけではなくて、やはり品質を引き上げていくという指導というものが私は必要になってくるであろうと思います。  以上の点についてひとつ大臣にお考え方をお聞かせ願っておきたいと思います。
  132. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 従来わが国では人手がたくさんございましたので、機械化された大量生産のもののほうが品質がよく、中小企業の品物は品質が悪いというばく然としたものの考え方があったわけでございますけれども、御指摘のように、人手不足を経験しております国では、労働集約的なもののほうが手が込んでおって、したがってこれは品質がいい、高くても当然だという考え方がかなりもうございます。そういうわけでございますから、今後わが国の中小企業の製品が外国に出ますときに、安いということがねらいではないはずなので、むしろ非常に人手を使っておって高級だ、したがって高い、しかし高くても当然だというふうに見られることになるベきで、またそうなる余地が先方にあると考えますから、できるだけ品質というものの選択を厳格にやってまいらなければならないと思います。いわゆる中小企業の製品だからむしろ高くていいのだというようなことが通るようにならなければいけないと思っております。  ただいまの基準の選び方につきまして、政府委員からちょっと補足して申し上げます。
  133. 後藤正記

    ○後藤政府委員 私から補足してお答え申し上げます。  中小企業の構造改善の目標となっております上級品、中級品、低級品の仕分けは、あくまでこれは商品分類上の、さらにまた言うなれば国内市場というものを一応の目安に置いたところの仕分けかと存じます。そこで、どの程度のところまでを海外に出して統一商標を付しても恥ずかしくないという、その線の引き方が、統一商標を付すべき特定貨物の品質基準ということになってまいるかと存じます。  そこで端的に申し上げますならば、発展途上国製品とは峻別できる、しかして同時にまた先進国製品と十分に比肩し得る、こういったものであることが必要であると存じます。したがいまして、先ほどの中小企業の構造改善の仕分け目標、上級品はもちろんでございますが、中級品のうちどの程度までを統一商標を付すべき品質基準にふさわしいものとして見ていくかということは、個々の貨物、業種によって業界と十分話し合いをし、そして海外市場の他の競合製品との比較をいたしつつ検討いたしてまいるべきことかと存じます。
  134. 中村重光

    ○中村(重)委員 まあ、ともかく安かろう多かろうという時代は、低開発国からの追い上げということによって日本貿易というものは伸びない、したがってどうしても品質で競争するということにならなければいけないと思う。ですから、こういう統一ブランドの制度を実施していくこと等を契機として、活発にひとつそうした指導をやっていただきたい。  なおまた、統一ブランドは、これはいいことでありますが、むしろおそきに失したとすら感じます。だからといって、せっかちにやり過ぎますと失敗しますから、息の長い、しかもこまかい指導というものが必要になってこようと思いますから、その点に対しての指導方針をいま一度明確にお聞かせ願って、私の質問を終わります。
  135. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 おそきに失したと言われます御批評は、あるいはごもっともかと思いますが、やはり何といっても国内の産地で現実に先進国のものと比べて恥ずかしくないものが相当程度できたという段階でございませんと、統一ブランドをつけますと、大部分はそれに合格しない品物ということになってしまいます。ちょうど、先般来申し上げておりますように、幾つかの品物については、まず海外に家の紋をつけて出しましても恥ずかしくないところまでほほまいりましたから、これをもう少しあと押しすることによって、かなり広い分野で統一商標を出してもだいじょうぶだというところまで来たという感じがいたしましたので、今回法案について御審議を願っておるわけでございます。一たび紋章をつけて出しましたら、これがあとになって海外でいわば家名をはずかしめることのないように、これは私ども十分厳選をしてやってまいらなければならないと思っております。
  136. 橋口隆

    橋口委員長代理 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  137. 橋口隆

    橋口委員長代理 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  採決いたします。本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  138. 橋口隆

    橋口委員長代理 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  おはかりいたします。  本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますか、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  139. 橋口隆

    橋口委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、明十三日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時五十三分散会