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1970-03-19 第63回国会 衆議院 商工委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年三月十九日(木曜日)    午前十時三十九分開議  出席委員   委員長代理理事 浦野 幸男君    理事 鴨田 宗一君 理事 橋口  隆君    理事 前田 正男君 理事 武藤 嘉文君    理事 中村 重光君 理事 岡本 富夫君    理事 塚本 三郎君       石井  一君    稲村 利幸君       宇野 宗佑君    大久保武雄君       大橋 武夫君    海部 俊樹君       神田  博君    北澤 直吉君       小峯 柳多君    左藤  恵君       坂本三十次君    始関 伊平君       進藤 一馬君    田中 六助君       増岡 博之君    岡田 利春君       加藤 清二君    中井徳次郎君       横山 利秋君    近江巳記夫君       多田 時子君    松尾 信人君       川端 文夫君    吉田 泰造君  出席国務大臣         通商産業大臣  宮澤 喜一君  出席政府委員         外務省経済局長 鶴見 清彦君         通商産業政務次         官      小宮山重四郎君         通商産業省通商         局長      原田  明君         通商産業省繊維         雑貨局長    三宅 幸夫君         通商産業省鉱山         石炭局長    本田 早苗君  委員外出席者         参  考  人         (日本繊維産業         連盟会長)   谷口豊三郎君         参  考  人         (日本化学繊維         協会会長)   宮崎  輝君         商工委員会調査         室長      椎野 幸雄君     ————————————— 委員の異動 三月十九日  辞任         補欠選任   松平 忠久君     加藤 清二君 同日  辞任         補欠選任   加藤 清二君     松平 忠久君     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商に関する件(繊維製品の対米輸出問題)  鉱工業に関する件      ————◇—————
  2. 浦野幸男

    浦野委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長所用のため、指名によりまして私が委員長の職務を行ないます。  通商に関する件について調査を進めます。  本日は、繊維製品の対米輸出問題について、日本繊維産業連盟会長谷口豊三郎君及び日本化学繊維協会会長宮崎輝君が参考人として出席しておられます。  参考人には、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  本委員会におきましては、繊維製品の対米輸出問題について常に多大の関心を払い、日米交渉経緯等、逐次政府の所見をただしてまいったのでありまするが、本日、本問題に直面する関係業界方々の御意見を伺うために、両参考人の御出席をわずらわした次第であります。何とぞ忌憚のない御意見の開陳をお願いいたします。  それでは、まず両参考人から意見を述べていただき、その後質疑を行なうことといたします。  まず、谷口参考人にお願いいたします。
  3. 谷口豊三郎

    谷口参考人 ただいま御紹介にあずかりました谷口でございます。  きょうは、皆さん方多用のところ、特に繊維問題につきまして、私たちの意見を聞いてやろうということでお招きにあずかりまして、たいへんありがたいことだと感謝いたしております。  当問題につきましては、ことに議会先生方におかれましては、かねてよりたいへん御理解をいただきまして、議会決議におきましても、議会の質問におきましても、皆さん方、超党派的に筋を通して話しすべきだということで、われわれの立場を非常に御理解くださっておりますることは、われわれほんとうに感銘深いものがございます。みな心からお礼を申し上げる次第でございます。連盟皆さん方にかわりまして、ここに深甚のお礼を申し上げたいと思います。  大体この問題につきましては、先生方議会決議までしていただいておりますので、十分御承知だろうと思いますが、一応問題の焦点をしぼりまして、問題点を御説明申し上げたいと思います。  この問題の焦点は、アメリカ日本業界に対して全繊維品について自主規制をやれということでございます。新聞等で、自主規制あるいはオーダリーマーケット、決して繊維品をとめるんじゃないんだ、秩序ある貿易拡大を願っておるんだ、自由貿易の精神に反しないんだというような表現でございます。それで、自主規制ということは、常識的に考えますると、まあしかるべく遠慮してくれというふうに一般に受け取られがちでございますが、実質はそういうものではございませんで、御承知ように、綿製品につきましては、十五年くらい前からこの問題が始まりまして、いろんな歴史がございます。その間におきまして長期協定というものが結ばれました。それが今日なお続いております。  長期協定と申しますのは、一年ずつ更改するのはめんどうだから五年という期間にしようということで、一年に比べて長期という名前が出ました。決してこれは永久的にという問題じゃございません。で、長期協定の前文には、この問題はガット自由貿易の場で全く特殊なケースとして扱う。ですから綿以外には及ぼさない、またやってもそれはネクスト・フュー・イヤーズ、数年を限るんだ、できるだけこれは被害がなければはずすほうが好ましいんだということがちゃんと書いてございます。それで五年ぐらいならということで、非常に過酷な内容でございまするが、まあまあ五年ぐらいだということでしんぼういたしましたんですが、一ぺんそれをやりますると非常に都合がいいものですから、これはどんどん続ける。今日では、これが繊維貿易世界秩序を維持するのに最もいい方法だから、これをあらゆる繊維に及ぼすべきだという態度アメリカ繊維産業態度でございます。そういうことのために、前の協定というものは、綿以外に及ぼさぬじゃないか、あるいは短期でやめるべきじゃないかということを申しましても、これはもう情勢が変化したのだからという一言で常に片づけてまいりました。そして今日のような状態になってきたわけでございます。  綿製品協定内容は、御承知ように、最初、三品目か四品目くらいから始めましたものがだんだん広がりまして、それが最初は、いま鉄等でやっておられますような、日本の一方的の宣言によって始めたのでございまするが、それでは心もとないということで政府間の協定になりました。で、自主規制とはいいながら、一々各品目について前年度の何%増しというようなことでワクがはめられました。六十四品目についてワクがはめられておることは御承知のとおりでございます。そうしますと、実際オーダリーに伸ばすんだという仕組みになっておりましても、実際上は、流行の変遷等、品質が変わりますと、絶対量は伸びないという仕組みになっておるわけでございまして、そういうものを全繊維に及ぼそうということは、いかにも自由貿易主張されるアメリカ態度としては解しがたいということは、一様に皆さん理解のことだろうと思います。  それがなぜこういうふうな問題に発展したかということは、すでに御承知ように、ニクソン選挙問題から起こりまして政治問題化したということでございます。それゆえにこそ、皆さん方御心配くださいまして、議会決議をしていただきますし、あるいは沖繩問題に絶対にからめない、筋を通して話をするのだということを、総理及び関係皆さん方が明言をしておられるので、安心をしておるわけでございまするが、どうも最近の動きを見ておりますると、それはそうだけれどもというような話がぽつぽつ出てまいりました。まことに業界としては心外にたえないわけでございます。  われわれ、日米間の問題が円満にまいりますることは、だれよりも希求するところでございます。また、日米間の関係は最も古い歴史を持つ関係でございますし、われわれは、米国に対しては最も深い関心を持ち、深い理解を持っておる業界だと自負しておる次第でございます。それがなおかつできないということが、いかにどんなものであるか、何ゆえにそういうことであるかということを、ひとつよく御理解願いますればしあわせだと思うのですが、それがいまいわゆる政治問題となりまして、筋は通らないのだけれどもということに発展してきておるわけなんでございます。  しかし、一たんこういうことをやりますると、一方の保護貿易のほうの立場の方がわれもわれもということになって、世界全体の貿易がそうなるきざしが明瞭でございますし、また、アメリカの方のおっしゃることを聞きますると、アメリカ議会がやかましい、行政府自由貿易なんだけれども議会が何しろ保護貿易の勢力が強いから、これを聞いてもらわぬと、これをきっかけにしてそういう法案がどしどし出てくる、だからひとつそこはということをよくおっしゃるのですが、どうもわれわれ日本に籍のある日本国民として、アメリカ議会がやかましいから、自分の意思を曲げて、自分業界犠牲にしてそういうことが一体できるもんだろうかどうかということは、どうも納得のいかない、理解のできない点でございます。  それから、ほんとうアメリカ業界被害を与えておる、実際アメリカ業界がそのために非常に不況になっておられるということなら、これはまた、アメリカ業界を痛めつけてわれわれが栄えるというわけじゃございませんで、両方の業界が手を携えて繊維産業というものは世界的に発展するということは、私らの希望するところでございます。また、そういうことができるはずだという信念から申し上げておるわけでございますので、それがそういうことをおっしゃるのは、どうも理解ができない。ですから、あればひとつその分について、こういう被害があるとおっしゃっていただきたいということが、ただいま日本政府アメリカ政府におっしゃっておる事柄だと思いますが、そういうものは出せない。出せないが全部にわたってやれ。それから、こういう産業はこういう被害を持っておる、こういう産業は非常に不況だということをアメリカ大使がおっしゃっておりますが、私の手元にございまするアメリカの各社の、これが年次報告でございます。相当数ございますが、どれを見ましても、大体において非常にいい成績のなにがございます。ですから、少なくともアメリカ業界が悪いという立証は、これからは出てこないはずでございます。バーリントンに至りましては、日本の最大の繊維産業で飛び抜けて成績のいい東洋レイヨンさんよりは、よろしい成績がございます。これで、どうしてわれわれが全繊維にわたって規制を受けなければならぬかということが、全く理解のできないことでございます。それにもかかわらず選挙公約だからということでございますが、そういうことで日本が聞きまして、日米関係が一体よくなるものでございましょうか。  日本首脳者の方だけが日米関係を心配されて、それによって円満にいくということで、日本国民中小企業のたくさんの方々がおられるが、その方々理解なしに、アメリカはどうもひどいことをするじゃないか、日本はそれを聞くじゃないかということ。また、この問題につきましては、韓国台湾香港、そのほかヨーロッパの国々もみんなそれを見ておられるわけです。そういう方々の前で、筋の通らないにかかわらずまあまあということで、日米の大局的な立場からこれをまるくおさめたらよろしいということで一体よろしいのだろうかということを心配するわけです。まるくおさめるということは、向こうさんの筋の通った、なるほどと納得のする線なら、いかようにも私はしてもいいんじゃないかと思いますが、こういう筋の通らない、しかも自由貿易と全然反対の情勢を永久に制度化しようということがねらいでございますので、まず一時ということじゃないので、一時やれば綿製品協定の二の舞いを踏むということを心配するものですから、これは困るということを申し上げておるんでございます。決して、日米関係を危殆に瀕してまで業界だけの利益を不当に何でも主張するということじゃないことは、十分御理解いただけると思います。そういうふうなことをすること自体が、長い目で見た日米関係をかえって阻害するんじゃないか。お互い信頼感なしに、ほんとうにあれはたよりになるやつだ、筋を通してやってくれるんだということがあってこそ、両国のほんとう信頼関係というものが生まれてくるんで、一方の力にまかして力ずくでそれを押えつけることによって、どうしてほんとう信頼関係が生まれてくるんだということを私は危惧するわけでございます。  また、こういうことをやることによりまして一ぺん統制経済に入りますと、統制経済というものは、どうしてもだんだん広がりまして、それを脱却することは非常にむずかしいということは、皆さん方いやというほど御承知のことだと思います。例をあげるまでもなく、日本の米の統制アメリカの綿の統制、近くはわれわれ自身紡績産業統制というものは、業界を非常にスポイルいたしまして、発展するためにはもう一ぺん自由に立ち返らなければならぬということで、先生方の非常な御尽力を得まして構造改善ということをやりまして、自由競争に戻ろうということで努力しておる最中でございます。  そういう見地から考えましても、この問題は、少々の摩擦がありましてもそれを乗り越えて、そしてほんとうに筋を通すことこそ日米間のほんとう理解だというふうに私は考えますので、こういう連盟というようなおこがましいものを組織いたしまして、そして皆さま方に衷情を訴えまして御理解をお願いしておる次第でございます。どうかその辺のところをひとつ十分御理解いただきまして、何ぶんの御処置を願いますように心からお願いを申し上げる次第でございます。  今日は、これだけのことを皆さまに聞いていただきます機会を与えていただきましたことを、衷心よりお礼を申し上げる次第でございます。ありがとうございました。
  4. 浦野幸男

    浦野委員長代理 次に、宮崎参考人にお願いいたします。
  5. 宮崎輝

    宮崎参考人 宮崎でございます。  私、メモで申し上げますので、用語等に不適当なところがございましたらお許しをいただきたいと思います。  ただいま谷口さんからお話がございましたので、重複を避けまして申し上げたいと思います。  実は、この繊維問題というものが、どうしてこういつまでも問題になるのかということでございますが、その理由は佐藤ニクソントップ会談における相互の理解に食い違いがあるということであります。アメリカ側は、包括的な規制日本側トップが受諾したのだというように初めは理解しておったようでありますが、その後、これははっきり日本側から訂正をされたやに聞いております。その次には、しかしながら包括に近い自主規制をやるのだということのよう理解をしておるように思うのであります。しかし、これは明らかに、この話が出たのは事実でありましょうが、総理国会で、そういうような密約はないのだ、具体的な取りきめはないのだということをはっきり言っておられますので、私ども国民としては、総理の発言に信頼いたしまして、やはりそういうような問題のない前提のもとに、この問題を考えていくのが適当だと思っております。  それからもう一つは、アメリカニクソン大統領選挙公約ということも一つ問題ございますが、アメリカの人が表立って最近これを言わなくなりました。そしてやはり非常に輸入がふえてきておる——実は初めの間は、洪水のようにふえてきておるということを言っておりましたが、最近は、昨年の七月から非常に鎮静期に入りまして、もうそういうことを言える材料がないものですから、それも言わなくなりましたけれども、しかし、たとえばマイヤー大使なんか、諸先生方にたしか手紙が行ったと思いますけれども、あれを見ましても、南部の繊維業界データというものは、あれがほんとう輸入による影響なのかどうか。大体アメリカはいま非常な金融引き締めインフレ防止に努力しておりますから、非常に鎮静期に入っておるのです。ですからそういうのが大きな原因じゃないか。先ほど谷口参考人からもおっしゃいましたように、バランスシートを見ますと、相当な会社は日本よりもっとほんとうにもうけておるのです。ですから、どこの企業だって悪いところはあるので、特に日本繊維関係中小企業には非常に倒産が多いのです。ですから、経営がまずいじゃないかというふうに思われるのでありまして、われわれとしては納得しがたい点でございます。  そこで、ほんとうに経済的な問題としてこれを処理するのであれば、われわれはちゃんと国際間に妥当したルールがあるじゃありませんかということで、終始一貫この主張をしてきておるのでありますが、これは最近日本からの覚え書きとして新聞に載った点でありますが、あれを拝見いたしましても、日本側は譲り過ぎているということを私どもは感ずるのでありまして、それほどさように非常にリーズナブルな主張をいたしておられます。それは諸先生方専門でありますから、くどくどと申しませんが、アメリカでは通商拡大法国会に出ている。これを改正するまでのつなぎとして、話し合いで、もしもインジュリーがあったらわれわれは自主規制をいたしましょう。これは話し合いで、合意ですからかまわないのですが、しかし、さればといって、これは日本だけじゃないのですから、関係国間も入れてやりましょう、こう言っておるわけです。しかし、それは輸出国のほうが数が多いから、輸入国は一カ国だから、多勢に無勢でかなわぬということでありましたならば、アメリカにある関税委員会にかけてください、そしてそれを尊重しますよ、こう言っているわけです。しかも、そういう品目以外のものについては、関係国間で会議を開いて、そして一カ月以内にまとまらなければどうか御自由に規制をしてください、そしてそのかわりその代償は払ってくださいよ、こういうような至れり尽くせりの案を出しております。しかも、輸入比率等の非常に高いものについては直ちに協議の用意があります、データを出してくださいと言って、最近その十品目なるものが新聞等に公表されておりますが、そしてあれは、アメリカの当該の品目の消費におけるシェアが一〇%以上のものをピックアップして出してあるわけでありまして、あの数字といえども非常にばかになりませんので、かりにあれだけ全部自主規制の対象になりますと、日本だけで化合繊が二割規制されることになります。毛はあれだけで七三%規制をされます。  しかも、先ほど話が出ましたが、この問題は日本だけではなくて、韓国台湾香港、EEC、豪州カナダ英国というところに問題が波及いたしますが、韓国はどのくらいかと申しますと、あの十品目で、化合繊だけで八四%カバーされるのです。それから台湾は五四%、香港が六三%というように、あのたった十品目というふうに思いますけれども、実は韓国などでは八四、五%というものは——毛もまた比率がありますが、大ざっぱに計算いたしまして、あの影響は非常なたいへんなことなんです。そして韓国台湾にはわれわれから原料を提供しておるわけでございますし、しかも韓国は、諸先生方御存じように、ほとんど日本の技術と日本の金で育成した繊維工業でございまして、韓国輸出の三分の一は繊維でございます。こういう国に対する影響を一体日本がどう考えるのかという問題があるわけであります。  よくカナダ方式ということを申しますけれどもカナダに対しましては、実はさっきのLTA方式でございませんで、カナダにおる日本大使カナダ政府手紙を書くという方式でやっておりますが、これで全体の繊維輸出に対する規制率は約三一・九%なんです。ところが、アメリカでも綿製品を二四・七%規制しておるのです。ですから、あと七・二%やれば、実はもうアメリカ自身カナダ並み規制になるのですよ。ですから、今度かりに十品目をやりますと、対米に対しましては四割は規制されたことになります。そういう十品目をかりにやるとしますと、カナダ以上の規制をする案になっているのです。もちろんインジュリーの問題がありますから、あれを全部やるとは思いませんけれども、そういうような案を出しておるのでありますが、アメリカはやはり依然として包括規制主張しておりまして、けさの新聞紙等も報じてありますように、日本側の誠意のある対策をアメリカは拒否したやに聞いております。そういうことでございまして、まことに強引と申しますか、われわれとしては了解に苦しむところであります。  それと、もう一つ申し上げたいのは、たとえば包括的に規制をした例というのは、どこの国とも日本はございません。繊維産業というのは、日本はいままで非常に犠牲になっておりまして、過去においては栄光の産業であったために、ガットに加盟するときに、三十五条の援用を撤回するために、常に繊維犠牲になって二国間の規制をいたしておりますが、しかし、包括規制をした例はどこの国ともございません。したがって、もしも万一包括規制政府がおりるようなことがありましたら、先ほども話が出ましたが、韓国台湾香港に迷惑がかかるだけではなくて、いま現に英国は、さっき述べました綿のLTAを一九七二年には撤回する、そして日本スコッチウイスキー自由化をしてくれるならば繊維日本からの輸入自由化するということを言っております。それからドイツもワクを広げてきております。こういう国は非常に日本態度を注目しておりまして、日本がもしもアメリカとそういうものをやるならば、われわれとの間にも同じようにやってくれということを言ってきておるわけでございまして、これはカナダもウエーティングリストに載っております。カナダもわれわれとアメリカ関係を非常に注目いたしておる次第でございまして、豪州も同様です。ですから、そういう意味におきまして、事は日米だけに限るのでありませんので、あらゆる世界に対する日本繊維品輸出関係をする問題でございます。しかも、われわれは将来、佐藤ニクソン会談においてアジアに対して日本は責任を分担することになっておりますが、その国々に大きな迷惑を及ぼす。これを一体最後にどういうふうに処理するのだろうかという点もあるわけでありまして、現に韓国大使は、そういうことになったら日本シェアを分けてくれということを、はっきりと記者会見で申しておられます。そういう派生的な問題が出るわけであります。ですから、事は日米だけの問題ではない。日米友好関係という点については谷口さんが言われましたから、私は触れませんが、日米以外の国々との関係も同様に考えてもらわなければならないという点でございます。     〔浦野委員長代理退席前田委員長代理着席〕  それなら繊維産業というのは一体どういうものかということでございますが、諸先生方御存じのとおり、非常に数の多い、百九十万の労働者をかかえまして、しかも非常に流通段階が複雑でございますので、これによって生計を立てておる者が九百万人おります。人口の約一割でございまして、生産は統計上いろいろ問題があってわかりませんが、四兆四、五千億になるというように考えておりますが、実はそういう大きな産業でございます。しかも輸出は、昨年の統計によりますと、単品としてはトップでございまして、鉄以上に多くなっております。二十三億ドルになっておりまして、鉄が約二十二億ドルですから、単品としてはやはり輸出の王座を占めております。そういう産業でございまして、これからという産業であります。  よく世間で、繊維斜陽産業だ、そろそろ落ちていく産業なんだから、最後のもがきでアメリカ日本お互いに争いをしているのではないかというように言われる方がおりますが、まことにとんでもないことでありまして、繊維というのはファッションビジネスとしてこれから大きく伸びるという産業でありますのみならず、合繊工業というのは実は重化学工業でありまして、石油化学の誘導品であります。その原料は、ラクタムにいたしましても、アクリルモノマーにいたしましても、DMTにいたしましても、これは石油化学の製品の売り値として一番高いのです。これを使ってやる合繊は、プラスチックなんかの売り値の五倍ないし十倍の売り値の非常に付加価値の高い繊維品であります。と同時に、常に衣料と結びつきますが、最近は繊維産業というのは、実は合繊は工業用に非常に入っている。そういう用途の広い繊維品でございまして、実はこれからというのが合繊工業の将来であります。そしていま現に繊維全体の五三%は化合繊化しておりまして、近い将来三分の二が化合繊化してくる次第であります。  しかも、こういうものがアメリカの中の輸入シェアは高いかと申しますと、日本の一番問題になっているのは化合繊ですが、アメリカ化合繊の消費の中に占める比率は一%、繊維全体の中に占める比率は〇・五、六%という非常に低い率でございます。そういうことですから、包括的にインジュリーがあるという議論はどこから見ても出てまいりません。大体アメリカは商品の中におけるシェアが一〇%になると問題にいたしますが、いままでいろいろな商品を見てみますと、鉄が一五%のときに自主規制に入っております。自動車その他を見ましても一六、二二、三〇、あるいはものによっては五九というように高い輸入シェアを占めたものがたくさんあります。ですからわれわれは、個々の品目について被害または被害を与えるおそれのあるものは、先ほど申し述べましたような方法でやりますよと言っておるのでありますが、これに対してアメリカはどうしても一顧だにしてこないという現状でございます。  しかしながら、私どもがこの問題につきまして考えておりますのは、とにかく日本の一つの貿易の姿勢として、対外通商の姿勢として、いままで日本は長いものには巻かれろという方式で、アメリカから言われますと唯々諾々として自主規制をいたしてきたわけであります。もちろん抵抗した場合もありますけれども、しかしその自主規制というものは、先ほど谷口参考人からもお話がございましたように、ほんとうの意味の自主規制というのはないのでありまして、法律のクォータでおどかされてやった自主規制がいまから十四年前の綿であります。また最近の鉄も同様でありますが、これが政府間交渉になりますと、結局法律の根拠ができまして、アメリカは憲法の規定で、行政協定を結びます場合には国会の授権が要りますから、授権立法ができますし、それから協定に入らないものと入ったものとの不合理を是正するためにアウトサイダーの規制命令ができるようになりまして、農業法二百四条というのができておりますが、これはさらに最近改正案が出ておりまして、従来の解釈では、複数の国が加盟して、しかも相当量の輸入国との間に協定ができた場合には、アウトサイダーに対して規制命令が出せるということになっておったのを、一カ国でもその量自体が相当量になれば、他に対してアウトサイダー規制命令をかけ得るという農業法の改正案がアメリカ国会に上程をされております。ということは、したがって日本が三割近く輸出しておりますので、日本協定を結べば、あとはアウトサイダー規制命令を出せるんだというよう仕組みで、一つはそれが理由になって日本をシングルアウトして、日本に攻撃を集中してきているという状態でございます。しかしながら、これは日米だけではなく他の諸国にも非常な影響がある。と同時に、日本の対米外交、対米通商外交のこれからの七〇年代の姿勢をきめる問題である。もう日本もそろそろGNPでは二番目といいますが、そういうことだけではなくて、言うべきことは言って、あとあと悔いを残さないような、ちゃんとしたルールに基づく解決をアメリカ主張して、これを通していく。それでこそ、アメリカ日本は信頼に値する国になるんだという体制をつくりまして、同時に諸外国が、日本アメリカの言うことは何でも聞くんだというように思っている気持ちを払拭させていく時代に、すでに入ったのではないかというふうに考えております。  私どもは、この問題に取り組みまして非常に長うございまして、綿製品の問題以来十四年、毛が六年、化合繊はもうすでに三年、この問題と取り組んでまいっておりますが、先ほど申しました沖繩問題とのからみ、それからニクソン大統領選挙公約、あるいは佐藤ニクソントップ会談内容に対してとやかくのことがいわれておりますが、私どもは、やはり国会で言われた首相の発言を全面的に信頼いたしまして、沖繩とはからますのではないんだという首相の約束をはっきり実現させてもらわないと、これこそ、アメリカ人がニクソンを支持すると同様に、私どももまた、日本の一国の総理の発言に十分敬意を払うのは当然でございますから、あくまでそういう意味で処理をしていただきたいと思っております。しかしながら決してエキサイトはしておりません。アメリカではATMIの大会が十八日にございましてもうやっておりますが、大きなことはキャンペーンいたします。それからおそらくクォータ法案を出して、またまたおどしをかけてくるでしょう。あるいは本気になって通すと言ってくるかもしれませんが、そういうようなことにかかわらず、われわれ繊維業界はきわめて冷静にこの問題の処理をしていきたい。諸先生方国会決議という未曽有な方法をとっていただきましたのが大きなたてになっておりまして、アメリカというあの民主主義の国では、国会決議がしかも満場一致であったということに対して、これは何とも言えない力強いささえになっております。これからもどうか正念場に差し迫ってまいりましたので、ひとつ諸先生方の一そうのお助けをいただきまして、筋の通った堂々たる問題の解決をはかりまして、これからの十年後、もう私どもがいなくなったあと、先輩はよくやってくれた、失敗はしてくれなかったというような有終の美をなしたいものだと思っておりますから、どうかよろしくお願いをいたします。ありがとうございました。(拍手)
  6. 前田正男

    前田委員長代理 これより質疑に入ります。  質疑の申し出があります。順次これを許します。武藤嘉文君。
  7. 武藤嘉文

    ○武藤委員 いま谷口さんと宮崎さんからいろいろとお話を承りまして、私もいままでこの委員会で何回となく、この繊維の問題については政府当局に対して質問をやってまいりまして、考え方は私も大体御両所と一緒でございます。私どもが、昨年の四月この委員会で、また五月に本会議決議をいたしましたその内容については、現在も私どもは間違っていないという信念を持っております。その後沖繩の返還がございましたが、そのときにおいても私は、沖繩の返還というものが非常に平和のうちに、しかも戦争においてたくさんの戦死者を出したものが返ってくるということは、まことにすばらしいできごとである、人類の歴史においてもこれは必ず将来輝かしいものを残しておくものだ、しかしながら、それが一つの計算のもとに、繊維業界犠牲のもとに沖繩の返還ができ上がったというようなことになると、これは逆に非常に大きな汚点をそこに残すことになるのではないか、こういう考え方で私ども委員会でも主張してきたわけでございます。  最近、マイヤー大使が、いろいろ実害があるんだというようなことをおっしゃっておられたり、あるいはアメリカの国内においていろいろと意見が出ておりますが、いまお話を聞いておりましても、アメリカの国内で被害が出ておるのは、決して日本からあるいはその他の国からの輸入によって被害が出ておるのではなくして、それは向こうの経営者の経営に対する努力が足りないからだと、いま宮崎さんからお話を承りました。私どももいろいろの資料を見ておりましても、アメリカの現在の景気は好況である。この間も私が新聞以外で一つの例を見ましたのは、アメリカの商務省の資料で、一九六九年、昨年、非常に伸びた業種の中に繊維産業あるいは衣料品産業が入っておる、こういうのも私この間資料で見て、なるほどと思ったのでございますが、そのようなことで、いまおっしゃったことは私は当然だと思います。  そこでちょっと御質問申し上げたいのは、最近の政府の動き、特にいまお話のございました、現在サンフランシスコで行なわれておる繊維業者の大会を控えて、日本政府の動きが非常にあわただしくなってきておる感じがいたします。これは毎日の新聞に書いてあるとおりでございます。こういう政府の動きに対してどういう感じ方を持っておられるのか、あるいは不満に思っておられるか、不愉快に思っておられるかを、ひとつ率直に承りたいことが一つ。  それから第二番目は、自主規制というものはあくまでも業界がおやりをいただくわけでございます。政府間で幾ら取りきめをいたしましても、いまのお話でございますと、業界はなかなか納得ができない。そういう場合、政府が取りきめたものはしかたがないから従うというのか。あるいは、政府が取りきめようが、われわれとしては筋の通らないものはあくまでそれに応ずるわけにいかない、そういうお考え方なのか。その辺のところを明確にひとつ教えていただきたいことが第二点でございます。  それから、第三点といたしましては、これは、いまお話があまり詳しくございませんでしたので、ちょっと承りたいのでございますが、現在新聞をにぎわしております一つに、アメリカ議会での制限立法の動きがございます。こういうものに対して、業界業界でいろいろ御調査をいただいておると聞いております。皆さま方調査の結果、この制限立法の動きに対してはどういう感触を持っておられるのか、その点はっきりと承れればありがたいと思います。  それから、最後にもう一点は、私はどちらかというと自由化論者でございます。ですからこういう意見を申し上げるのでございますが、バーリントンと三菱さんとの提携の問題でございます。私は先回の委員会でも申し上げたように、この問題については、国内の業界の体制を整備するということはもちろん大切なことでございます。しかしながら、業界の整備が行なわれないからいつまでもこういうものを認めないということでは、こちらがアメリカに対して強い意見を言うことができない。アメリカに対して強い意見を言う以上は、やはり日本側自由化というものにもっともっと進むべきではないか。そういう点で、繊維産業全体の立場からこういう問題をどう取り上げておられるのか。あるいはまたもっと進んで、現在経済界の中においても、この間うちアメリカからも来ておられまして、いろいろと資本の自由化あるいは貿易自由化の促進を強く言っておられましたが、やはりこういう問題はもっともっと前向きで取り上げるべきじゃないか。そういう意味で、繊維産業としては、繊維産業に対する経済界の理解を深めていくという意味合いにおいて、ぜひもっと動きをされたほうがいいんじゃないかと私は思いますことと、なお進んで、資本の自由化などについては、もっと前向きで行こうじゃないかという空気を経済界の中に吹き込まれるお気持ちがないのかどうか。  これだけの四点を私は承りたいと思います。
  8. 谷口豊三郎

    谷口参考人 私の考えをお答え申し上げます。  政府の最近の動きといいますものは、それなりにお察しできないわけではございませんが、われわれの立場からいたしますと、どうも少し理解がいたしかねるということでございます。それはあとの問題にも関係いたしますが、筋を通す、それから業界理解なしにはやらないということを明言なすっていらっしゃいますので、その点は御信頼申し上げておりますので、そういうことにやっていただけるだろうということでございます。  それから、かってにきめたらどうかということでございまするが、おそらく日本政府は二枚舌は使われないりっぱな政府だと信頼しておりますので、そういうことはあり得ないと思います。しかし、万一そういうことをやられましても、おそらく業界皆さん方は、とうていそういうことは御承諾なさるまいというふうに私は観察いたしております。  それからもう一つ、自由化の問題でございますが、バーリントンと三菱レイヨンさんの問題でございますが、ああいう問題はこれからどしどし起こってくるのじゃないか。ただ、それが直接に中小企業その他の方の体質の整備とのかみ合わせにおいてどういう形になるかということは、政治の問題じゃないかと思います。しかし、方向といたしましては、世界自由化の方向に進み、全部流動的になる、そしてそれが平和に寄与するということが非常に大きな大前提だと思いますので、それに順応するような体制を立てていくことがほんとうに必要じゃないかと思います。  ついでに、アメリカの場合におきましても、アメリカが、いま繊維産業は賃金ベースが違うから非常に困るのだということをおっしゃるわけなんですが、私の考えは、いやしくも先進国という立場からいきますれば、賃金ベースを克服して、それが能率的になるということが先進国の産業の資格でありますので、どうしてそういうふうに持っていかないかということは問題じゃないかと思います。現に百年前のイギリスの紡績業というものは、賃金ベースは決してインドやらシナより低いわけじゃございません。その当時のイギリスの賃金ベースというのは、はるかに高い賃金ベースじゃなかったかと思います。それを、あの当時の紡績産業というのは、今日のコンピューターとか原子力発電に相当するような高度の装置産業でありましたために、その製品が十分に競争力を持ったということなんです。ですから、アメリカも月旅行のできる技術と資本力をお持ちなんだから、綿を入れたらシャツが出てくるようなものをどうしておつくりにならないのだ。それくらいのことはできるはずじゃございませんか。現にケネディの援助計画の第一条に、アメリカ繊維産業をそういうふうに持っていくのだ、だからしばらく時間をかしてくれというのがLTAの精神であったはずなんです。そのときに、同じアポロ計画ができまして、それがりっぱに実現しておる今日からいけば、そのとおりのことをおやりになれば、後進国の競争云々ということは今日言われなくても済むのじゃないかという気がいたすわけなんです。やはり日本につきましても、繊維産業そのほかの産業につきましても、これだけ世界の一流国に発達すれば、ほかの産業で払える賃金が払えるような体制になるよう産業自体を持っていく必要がある。また政府もそういうふうに指導していただく、援助していただくということが一つの政治じゃないかというふうに考えておるわけなんでございまして、はなはだおこがましゅうございますが、いい機会でございますので、意見を述べさしていただいたわけでございます。
  9. 武藤嘉文

    ○武藤委員 制限立法の動きに対しては……。
  10. 谷口豊三郎

    谷口参考人 アメリカの制限立法がどうなるかという見通しでございますが、これは私はアメリカ議会のことというのは不案内でございますので、全くわかりません。しかし常識で考えまして、アメリカは非常に良識の国であると思います。まあ動きとしましては、ああいう政治運動的な動きが非常に強うございますから、あるいはその勢いに押されてある種の立法がされるかもしれぬと思いまするが、アメリカ自体がほんとう自由貿易の方向にいま進んでおられるはずでありますし、また、そうしなければ世界の平和が保てないという大前提のもとにああいう事柄が行なわれておるわけでございますから、良識のあるアメリカ議会の諸先生方は、やはり最後の線においては良識が支配するのじゃないか。  現に、お手元にございまする言論機関のなにをごらんくださいましても、良識のある方々は、繊維関係の方のおっしゃることはどうも筋が通らないじゃないかという議論も、りっぱにたくさん出ております。それからまた政府筋におきましても、商務省はいま多少違った空気が出ておりまするが、これも全部の方がどうかということは私も疑問に思います。国務省の方々、ことにLTAに関係されました皆さん方のお考えは、あれは間違っておったということをはっきりとおっしゃっておることなどを、あちらこちらで伺っております。公にはなかなかむずかしいかもしれませんが、ボール次官の著書にもそういうことがあったように聞いております。あるいはそのほかの直接当たられた方は、大体において、あれはどうも失敗であったという話をしておられるようなことを聞いておりまするから、アメリカの良識は、いざというときにはそれをある程度もとへ戻されるのが民主主義のルールじゃないか、それでこそアメリカが今日の繁栄を来たしておると私は理解しております。
  11. 武藤嘉文

    ○武藤委員 私の時間、まだちょっとありますので、おそれ入りますが関連で二人お願いいたします。
  12. 前田正男

    前田委員長代理 関連質問を許します。坂本三十次君。
  13. 坂本三十次

    ○坂本委員 武藤君の質問に関連いたしまして、一つお尋ねをいたします。  いま両参考人方々はなかなかジェントルマンでございまするから、政府を信頼をしておられるとおっしゃいました。しかし、その中にも微妙な動きがあるという不満の意も漏らされたように思っております。私どもは微妙な動きに対して、国会決議をいたしました政治家の一人としての責任も感じまするから、早期解決というこの早期の中には、筋を曲げてもらっちゃ困るのだという強い不安を持っておるわけでございます。富樫が勧進帳を読ましたということはけっこうなことでありましょうけれども、勧進帳を堂々と読んで通せばいいのですけれども、近ごろは勧進帳の読み直しを懇切ていねいに教えておるような段階にきておるように思います。外務省がいま非常に活躍をしております。そして通産省も、いままで業界の応援をしておるように思っておりましたけれども、だいぶ向きが今度は変わって、財界に対して説得をする、業界の説得をするという方向にもなってきておるのじゃないかという心配をしておるのです。  そういう意味におきまして、私がいま武藤君の質問に関連をいたしまして、つい二、三日前の新聞に出ておりました十品目云々の事柄につきまして、やはり自主規制をやるからには、業界と密接な連絡、そして、いざという場合の納得を得られてこそ初めて筋が通るわけなんですから、十品目云々の問題につきまして、業界方々とどの程度連絡なり、あるいはお話し合いがあったものか。しかし、表へ出せぬことは出せぬ程度でいいですが、基本的な姿勢として、日本政府アメリカに向かって、日本大使が向こうの政府に対してやっておりますけれども、これらの動きに対して、業界皆さんは御承知があって、しかもどの程度御納得しておられるのかどうか。このスタートで業界皆さんがつんぼさじきにおりますということになると、私ども——業界皆さんはある程度の腹は譲っておったのだということになっておって、私どもがつんぼさじきでは困りますから、ひとつ差しつかえない範囲でお答えをいただきたいと思います。
  14. 宮崎輝

    宮崎参考人 十品目の選定につきましては、覚え書きをつくる前に外務省のある高官から、ああいうよう品目を出そうかという話がありまして、私は反対をいたしました。通産省も同様でございまして、覚え書きからその品目の提示は漏れております。しかし、そのうち、いつ出たのか知らないが、あの十品目が出ておりまして、これは私ども知りません。新聞承知したのですが、考えてみれば、一〇%以上のシェアのものを選んだんだということでありまして、アメリカという国は一〇%以上を問題にいたしますから、外交の一つのテクニックとしてやられたんだろう。あのインジュリー調査にいよいよ入った場合には、あれは単なるシェアが一〇%だけですから、あのほかに、グロースレシオであるとか、雇用であるとか、利益の低下であるとかいう点が問題になりますから、そういう点の段階でおそらくわれわれにお話があるのであろうと想像しておるわけでございます。
  15. 前田正男

    前田委員長代理 関連質問を許します。稲村利幸君。
  16. 稲村利幸

    ○稲村(利)委員 私は繊維産業の足利、佐野、桐生、両毛地区から出ている一議員でございますが、最近この規制問題が起こりましてから、繊維産業は、もう先進国のやることでなしに後進国のやることだということで、業種転換、特に繊維から鉄鋼に移らなければならないというような、いままで繊維産業に取り組んでいる業者が非常に自信を喪失しているのです。それで、私ども中小企業が非常に多いわけでございますが、そういう人たちに対して、政府も、また業界の代表も、納得をさせていない点を私は遺憾に思っておるのです。連絡が非常に不徹底であるということ。それと、業者側の非常に強い熱望と、政府側の国民の世論を背景とした努力が、国民のために立っていないような感を受けているわけです。  そこで、沖繩の領土返還と繊維の取引があるんではないかというほうの認識に国民が立ち、政府にともすると不信の念を抱かないでもないと思いますので、私は業界の方に、中小企業の人たちはほんとうにこれから業種転換をしなければいけない、自分たちはもう数年後に非常に不安に立っているということなので、特に理解をさせていただきたいと思うのです。ここにおいでの旭化成の方なんか、私どもの足利には傘下が非常に多いのです。非常に不安がっている。ですから、政府との連絡を密にされて、これから繊維が後進国の産業ではなしに、ファッションビジネスとして、先進国の業種として、しかも輸出の王座を二十三億ドルということで占めておるのですから、ますますその発展を祈念している一人として、私は質問ということでなしにお願いするわけでございます。
  17. 宮崎輝

    宮崎参考人 ただいまおっしゃったことはごもっともでございまして、実は足利だけではございません。福島県、富士吉田、こういうところでわりに中堅のところが転業しております。いい設備と労務者をかかえておる人たちが機械を売りまして、あるいは山の中に移して、自分は電気部品のメーカーにかわるというようなことが行なわれておりまして、私ども非常に憂慮しているのです。  先生の選挙区であります足利の関係ですが、実はトリコットが従来の原料から一部かわってまいりまして、そういう点はそれでいいのですが、おっしゃるとおり、繊維産業は斜陽だというのは非常に認識違いなんです。ファッションビジネスといいますと、一時建築事業に手を出したというので株が上がりましたけれども、最近ファッションビジネスといえば株が上がるようになった。ですからこれは近代産業なんです。日本は従来素材づくりと単品、非常にプレーンなものをつくっておりましたけれども、これからファッションビジネスは危険も伴います。しかしそれだけもうけも大きいわけですから、そういう分野は非常におくれておりますが、これからが私はほんとうの勝負だと思っておりまして、そういう意味で私ども  メーカーは、いろいろな技術を入れたり自分で開発したりしまして、そして、そういう人たちと一緒になって協力して、共存していきたいと思っておりますから、どうかひとつ先生方のかえって御指導をお願いしたいと思っております。
  18. 前田正男

    前田委員長代理 次に中村重光君。
  19. 中村重光

    ○中村(重)委員 両参考人の御意見を伺ったわけですが、委員会、本会議決議をいたしました私どもとしては、見解は全く同じことで、内容についてお尋ねすることもないわけですが、ただ、いまの武藤君その他の質問に対するお答えの中で谷口参考人が、最近の政府の動きに対しては、お察しできないこともないが業界としては理解できないというお話であったわけです。さらにまた宮崎参考人が、政府が十品目被害検討品目として明示をしたということについて、全く知らなかったというようなお話を伺って、奇異な感じを受けるわけですよ。特に財界に対して、植村甲午郎さんほか数氏に対して、十八日、昨日ですか、宮澤通産大臣が繊維業界の説得に対して協力を要請をしたということ等も伝えられている。常識的に考えてみまして、財界に対して繊維業界の説得に対する協力を要請をするくらいであるならば、当事者である業界に相当突っ込んだ話し合いというものが当然なされていなければならないんだと私は思うのです。おそらくここにおられる各委員もそう思っておられるだろうし、国民もひとしくそう考えているのではないでしょうか。だから、この十品目について全く業界方々に対してお話がなかったのかどうか。それから、財界に説得方を、協力を要請したということですから、繊維業界に対しては、何らかの政府の考え方を示して、それに対する協力の要請を受けた事実はないのかどうか。その点ひとつ伺ってみたいと思います。
  20. 谷口豊三郎

    谷口参考人 私の承知しておりまする範囲内、私の接触いたしました範囲内では、政府方々とお目にかかりましていろいろお話を申し上げましたときには、全く意見は同じだというふうに皆さんおっしゃいます。それから、こまかい品目、ああいう技術的な問題につきましては、主として問題は化繊関係のなにがございますので、私はあまり直接伺っておりませんが、宮崎さんがある種のなには伺っておられることは、先ほどお話しになったとおりでございます。  それから、業界方々に説得というのは、きょうの新聞に出ておったようでございますが、私の場合でも、お話しになりました内容なりなには、説得的なお話を伺ったことはほとんどございません。何とかしてくれというお話はございませんで、大体筋を通してやろう、こういう情報じゃないか、こういう経過でこういうものができたんじゃないかということを、いろいろ意見交換いたしましたときは、お話し申し上げたり伺ったことはございまするが、その点においては全く同じ意見だというふうにおっしゃったケースが大部分でございます。  それから財界についても、私の伺っておる範囲内では、説得になるのかもしれませんが、いままでの情勢をお話しをしたということで、財界の方がそれを説得とお受け取りになった方と、そうでないような御耳聞きの方とあったやに承っておりますので、あからさまに業界を、筋が通っているけれども何とかということじゃないのじゃないか。現に財界の相当な方が、何しろ繊維の問題はあまり筋が通り過ぎているので困るなというふうなお話もなすっておられたくらいでございますから、まさかそれで説得してわれわれのほうに圧力をかけられるということは、万々ないのじゃないかというふうに、ちょっとばかかもしれませんが、信頼しておりますのでございます。
  21. 中村重光

    ○中村(重)委員 政府が示した十品目被害検討ですね。これに対してきょうの新聞が伝えておるところによりますと、アメリカは拒否反応を示したということなんですが、そうではなくて、アメリカがこの検討に同意をするということで具体的に問題が進んでまいりました場合、業界としてのお考え方はいかがなんですか。
  22. 宮崎輝

    宮崎参考人 いまのところ、私の聞いているところでは、アメリカはもう拒否しておりますね。ですから乗ってきません。しかし、かりに乗ってくるといたしまして、先ほど申しましたように、インジュリーのあれは、単なるアメリカの消費の中に占めるシェアが一〇%以上のものをピックアップしたのでありますから、あれに対して、たとえば輸出の伸び率がどうだとか、あるいは利益が減ったとか、雇用が減ったとかいうようなところを、日本側からは資料を要求するでしょうけれども、そういうようなことがアメリカはなかなか出しにくいので、関税委員会に出す道もあるということを日本は言っておるのですが、これもアメリカさんはあまりお好みじゃないようでありまして、私が非常に注目しますのは、インジュリーというものが今度一つ判例ができる。話し合いでできなければとにかく関税委員会ですから、これは過去においてピアノや洋食器その他で一つの標準は出ておりますが、今度のインジュリーの判定で一つの標準ができますと、これは他産業にもアプライされるのだし、よその国に対してもやはりそれは一つの参考になりますので、非常に重大だと思います。特に一つのそういう例ができますと、これから他の種類のアイテムの品目にもアプライされますから、われわれは非常に注目しておるわけです。  ですから、政府間の話し合いですからどうなるかわかりません。あるいはどの段階でわれわれの意見を聞かれるかわかりませんが、これは非常に専門的な知識が要りますので、かりにそういう話が進みます場合には、おそらく、私どもようなのじゃなくて、もっと専門家の人が、それこそ参考として意見を聞かれるような事態になるのではなかろうか。また、ぜひそうしていただきたいというふうに考えております。
  23. 中村重光

    ○中村(重)委員 先ほど谷口参考人は、アメリカ側としてもいろいろな動きはあるけれども、良識の国だから、アメリカ議会において規制立法といったようなことはまず考えられないのではないかというお話があったのです。アメリカ側がそうであるといたしましても、また、先ほど武藤君の質問に対しまして、政府が一方的に何かやった場合、万一そういうことがあった場合は、業界としてはこれに応ずることはできないであろうというお話があったわけです。ところが私どもは、やはり自主規制ですか、これはあくまで業界の同意が必要であるという考え方の上に立ちますが、業界が同意をしないのに政府が行ない得る措置というものは、それではどういうものがあるのか。その点をひとつ、両参考人どちらでもけっこうでございますから、お答えを願いたいと思います。
  24. 宮崎輝

    宮崎参考人 御承知ように、貿管令であるとか、いろいろなものがあるようでありますが、実は私ども業界といたしましては、そういうような法律の適用その他、業界の意思に反してかりに協定を結ばれた場合の法律的な処置ということにつきましては、十分な時間をかけまして、日本の各行政法の大家その他の人も動員いたしまして、すでに結論を出しております。あらゆる場合についての研究は終わっております。
  25. 前田正男

    前田委員長代理 加藤清二君。
  26. 加藤清二

    加藤(清)委員 本件は、すでに皆さん御案内のとおり、今国会の最大な重要案件でございます。今度の国会では、言論の自由の問題、貿易の自由の問題、ともにこれ自由を阻害するのは案件があらわれたがゆえに、その自由を阻害することとの戦い、これが今度の国会焦点だと思います。  ところで、言論の自由の問題は内輪同士の妨害であり、ところがこの繊維の問題は、アメリカのゴリ押しによるところのいろいろな問題が発生してきているわけでございます。そこで、国と国との関係のことでございまするから、すでに私どもはさきの国会においても、これは本委員会並びに本会議で議決をしているところでございます。にもかかわりませず、きのう、きょう、急に風向きが変わったようでございます。本国会におきましても、本委員会並びに予算委員会等々で多くの同志の委員がそれぞれに質問をしておられる。政府の答弁は一致していた。インジュリーのなきところ規制はない。これは自民党も社会党も民社党も公明党もみんな一致しているところである。にもかかわらず、なぜ、きのう、きょう急に方向転換をしたかのごとき態度政府側に見られるのか、きわめて不可解でございます。私はこのことをお尋ねするために、いま外務大臣と通産大臣の御出席を要請いたしました。そのうちに見えるということでございます。したがって、それ以前に、それではせっかく業界皆さんが来ておられまするので、その代表の御両所に二、三承りたいと存じます。  すでに御説明のありましたように、この被害のなきところ規制は受けられない、こういう態度をいま承ったわけでございますが、きのう、きょうになりますと、同じ業界でも、繊維関係の少ない他の業界業界の大ものといわれる方々、そういう方々が、政府のお先棒をかついで説得に回っていらっしゃるかのごとき報道がなされておりますが、これは事実でございますか。それともうそでございますか。
  27. 谷口豊三郎

    谷口参考人 私の身辺に関する限り、そういう方々の説得的なお話は毛頭ございません。いろいろな座談のうちに、事実をよく御承知なしに、自主規制あるいはオーダリーマーケットという甘い宣伝文句で常識的に判断されて、繊維というのはいつもどんどん方々へ出て行って問題を起こしているんだ、またあれか、だからそれを少し遠慮すればいいじゃないかという程度の判断でないかと想像される判断から、まあまあという話をされる方はありますが、正式に面と向かって、あるいは説得的な態度で、もういいかげんにとおっしゃった例は全くございません。
  28. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは、政府がどうも急に方向転換をしたようだ。方向転換というよりは、最初から予定していたのを、いままでしっぽを隠していて急にしっぽを出したというふうな見方のほうが正しいかもしれませんが、そうなってまいりますと、今後繊維業界に対して他の業界が圧力をかけないとは保証ができないと思います。そのようなことがあったとしても繊維業界態度は不変でございますか、いかがでございましょうか。
  29. 谷口豊三郎

    谷口参考人 これは大ぜいの方がお集まりになっておることでございますから、中には一人二人多少ニュアンスの違う方ができるかも存じませんが、われわれ代表的な立場におりまする者は、全くそういうことに対しても筋を通すことにおいていささかも圧力に屈するような所存はございません。
  30. 加藤清二

    加藤(清)委員 まことに確固たる信念を承りまして、私どもも、いままで考えてまいりました本件に関する考え方が正しかった、そしてなお今後もこれをわれわれも続けなければならぬ、かように存ずるわけでございますが、この際に至って業界皆さんは立法府に対して何を要請されますか。  本件は、聞くところによれば、経済ベースの出発ではない、大統領が選挙公約をしたこと、それを佐藤総理に告げて協力を要請した、そこから発生しているようでございます。大統領の選挙公約が他の国の経済並びに政治に影響を及ぼすということは、明らかにこれは内政干渉であって、国際法にもとる問題だと私は思います。ところが、アメリカ繊維に関する態度は、常に業界と政界とが一致をいたしております。行政府もまた一致しております。三位一体でございます。しかもこれは歴史的にそういう制度までできております。すなわち、アメリカ国会ではパストーレ委員会がございまして、ここが一切の勧進元を引き受けて交渉のもとをつくっておるようでございます。そういう相手に対して対処するには、やはり日本においても三位一体の組織と申しましょうか、あるいは制度と申しましょうか、そういうものに応ずる機関が必要であると私は思っております。この際ぜひひとつ、このアメリカの三位一体に対して日本の政界はどうあるべきか、これは希望でもけっこうでございます、承りたいと思います。
  31. 谷口豊三郎

    谷口参考人 私は大阪のいなか者でございまして、東京の政界のそういう姿というものはどうしたらいいかということはよく存じませんですが、常識で考えまして、日本議会で全会一致で決議をされた、またいろんな機会に総理が答弁をなさった、あるいは担当の大臣が答弁をなさったということは、国民全般が知っておることでございます。それをいまさら疑ったり弱めたりするというようなこと自体が、私にはふしぎなくらいに思えますので、おそらく先生方も面目にかけても、この問題はわれわれが心配しなくてもやっていただけるというふうに信頼しておりますのですが、そういう信頼はやっちゃ甘いというように考えなければいかぬのでございましょうか。それをちょっとお伺いしたい。
  32. 加藤清二

    加藤(清)委員 ここで私は大臣に政府態度を承りたいところでございますが、まだ見えないようでございまするので、ちょっとこまかい点についてお尋ねしてみたいと存じます。  きょうの新聞に、通産大臣が財界と懇談したということが出ております。しかもそれは明らかにその筋でいけば、これはニクソン佐藤会談の密約説、沖繩との交換説、それをうそだうそだといままで国会で言うてこられたのですが、そのうそがうそであった、つまり密約説、交換説は正しかった、そういう結果を招来するような会合が行なわれていると聞いておりますが、これはうそですか、ほんとうですか。
  33. 宮崎輝

    宮崎参考人 私どもといたしましては、やはり総理国会で堂々とおっしゃったこと、これをもう信頼する以外にはないと実は思っております。  ただ、アメリカ筋から情報がしょっちゅう入ってまいりまして、これはアメリカ人のことですからフランクに言うのですね。たとえばある議員が保護貿易に反対すると、いや実はこんな話があったんだからおまえやめてくれというようなことを言うと、そういうことが流れてまいりますけれども、これはアメリカ人のことですから、どこまで信用していいかわかりませんが、私どもは、私ども自身がその対談に立ち会ったわけでもないし、知るよしもありませんので、やはり国会でおっしゃったことを信頼して、それによって私どもは行動するという以外にはないというふうに考えております。
  34. 加藤清二

    加藤(清)委員 もしこれがほんとうだとしますと、新聞、まさか朝日、毎日、読売、中日をはじめとする、特に日経さん、こういう新聞が根も葉もないことをこの期に及んで書かれるとは思いません。したがってこれはある程度火のけがあったに違いない。  私はこれを見てふとこう思ったのです。かつて佐藤さんは、犬養法務大臣に指揮権発動を命じて命長らえた人でございます。しかし、そのおかげで犬養さんはあえない結果になりました。いま宮澤君に対して、犬養氏の二の舞いをやらせようとしていらっしゃるではないか。そうなれば宮澤氏としては、ここ一番ふんどしの締めどころではないか。先ほど参考人両氏からおっしゃられましたように、ほんとうにあの時代の者はいいことをやってくれたと、十年先、二十年先の人々に思われるようなことをしておきたい、こうおっしゃられましたが、私どもも同感でございます。繊維は長いです。一日や二日の問題ではございません。日本全国に行き渡る問題であります。非常に広い問題であります。しかもなおこれは、日本国内のみならず諸外国に及ぼす影響が非常に多いことは、品目規制からLTAに発展したあのコットンの歴史谷口先生よく御了解のところであり、業界のそれに関連する者としていまだに遺恨二十年でございます。したがって私は、この際宮澤氏に、ほんとうに遺恨を残すのか、歴史に花をかざるのか、聞きたいところなんです。  それができませんので、こまかいところに入ってお尋ねしますが、きのうの新聞に十品目の問題が出ておりました。これは先ほども質問がありましたので、私は重複を避けますが、この十品目政府が示したということになっておりますけれども、これも先ほど宮崎さんは、事前に提示されたけれども私は拒否した、こういうお話。拒否したものをかってに政府が提示しておるわけなんです。一体これは通産省がやったのですか。それとも外務省がやったのですか。それとも相談ずくでやったのですか。そこを承りたい。これは政府側に聞きたい。
  35. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 ただいまの御質問に対してお答え申し上げます。  一昨日、きょうになりますと一昨日でございますが、一昨日に追加的な説明をアメリカ側にするということで電報を出したわけでございますが、その際には、品目につきまして新聞にいろいろ出ておりますが、その内容につきましては、私といたしましてコメントすることは控えさせていただきたいと存じますが、これはもちろん外務省だけでやった問題ではございません。両方で十分打ち合わせた上のものでございます。それだけお答え申し上げます。
  36. 加藤清二

    加藤(清)委員 通産省も了解の上で外務省がこれを提示した、こういうことでございますか。
  37. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 そのとおりでございます。
  38. 加藤清二

    加藤(清)委員 この十品目を提示された理由が承わりたいのですが、その前に、この新聞に付随して書かれておりまするデータ、これは一体日本データでございますか。アメリカデータでございますか。
  39. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 私どもといたしましては、そのデータについては全然存じておりません。
  40. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたは、知らぬ存ぜぬと言えばそれで事が足りると思って、先回私が本件についてここで質問をしました、吉野公使が持って帰った内容について、外交上の機密であるとあなたはお答えになった。そう言って逃げなさった。ところが、同じ日に、同じ時刻に外務委員会で堂森君が外務大臣に質問したら、外務大臣はそれをはっきり答えておる。局長ともなるというと、機密であるとか機密でないということを、自分一人でかってにきめるわけですか。そういう権限をあなたは法第何条によって受けておるのですか、承りたい。
  41. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 この前の本委員会におきまして、私は加藤先生の御質問に対しまして、大要はこういうことでございますが、細目は外交文書でございますから申し上げられませんとお伝えいたしました。同じようなことを外務大臣は外務委員会で申し上げたわけでございます。
  42. 加藤清二

    加藤(清)委員 冗談言っちゃいかぬよ。私がそんなことを争うのが本日の目的ではないから、外務委員会でゆっくり私はお話し申したいと思います。  ところで、私がどうしても伺っておかなければならぬことは、十品目品目規制であるという見出しで提示されておりまするけれども、これは包括規制になる。そこでそのわけを承りたい。毛織物のうちで紡毛梳毛織物、紡毛織物、梳毛織物、この三つを除くと、ほかに何がございますか、承りたい。
  43. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 これは、規制をするといって出した品目ではございませんことは、先生よく御存じのとおりでございます。したがいまして、包括規制とかいうような性質のものではないと私は了解いたしております。
  44. 加藤清二

    加藤(清)委員 私の質問に答えていただきたい。毛織物のうち、紡毛梳毛織物、紡毛織物、梳毛織物、この三つを除くとあと何が残りますかと聞いておる。
  45. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、これにつきましては通産当局との打ち合わせの結果のものでございますので、私といたしましては、その点につきましては十分お答えする資格は持っておりません。
  46. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは、通産省側でだれでもいいから答えてみてください。何が残りますか。
  47. 原田明

    ○原田政府委員 私は繊維の所管局長ではございませんので、その意味でお聞き取りいただきたいと思いますが、私の浅薄な知識で理解しております限り、毛織物の全部になるのではなかろうかと存じております。
  48. 加藤清二

    加藤(清)委員 これはそのとおりなんです。毛織物のうち、梳毛織物、紡毛織物、またその梳毛と紡毛の混紡したもの、これは全部ということなんです。これで品目規制ということが言えますか。これは品目じゃございませんですよ。しかも、これにインジュリーがあるのは一〇%以上だのとおっしゃるならば、私は承りたい。それじゃイギリスはどうなるのですか。イギリスのアメリカ輸出はどうなるのです。ここらに、コットンでやられたときと同じように、また日本が先べんをつけたおかげで、ガット三十五条第二項の援用でイギリスからもペナルティーを受けなければならぬ原因が発生してくるのです。品目規制だ、品目規制だと口に言いながら、内容包括規制じゃございませんか。なぜそういうことをせなければならぬのです。理由を承りたい。
  49. 原田明

    ○原田政府委員 これも所管局長じゃございませんので、その意味でお聞き取りいただきたいと思いますが、私ども理解しております限りは、新聞に出ております十ぐらいの品目は、規制をしようとか、あるいは規制の候補になる品目というような意味では全然ございませんで、あくまでわがほうの態度として、インジュリーまたはそのおそれのある品目でなければ話し合いができないので、そういうインジュリーまたはそのおそれがあるかどうかということを調べるにあたって、まあ、こういう輸入消費比率などがきわめて高いというようなものからまず調査をするということが適当ではないか、という意味の品目ではなかろうかと存じております。
  50. 加藤清二

    加藤(清)委員 たとえば、これを調査してみてください、こういう意味で出されたのですか。
  51. 原田明

    ○原田政府委員 もちろんたとえばでございますが、調査してみてくださいという意味もありますが、これはあくまで輸出国輸出規制という方式をとるといたしますならば、輸出国の側が納得をしなければなりませんので、われわれと一緒になって話し合いをして調べようではないか、それについて、たとえばこういう品目から調べるということはいかがかという意味の品目であると了解をいたしております。
  52. 加藤清二

    加藤(清)委員 もう一つの問題として、この一〇%というところに限定がある。これは私には理解できないところです。  大臣が見えるまでと思って、こまかいところへ入り込んだわけですが、まだ先になるそうですから、私は次の質問者に譲りまして、大臣の来られるのを待ちたいと思いますが、このいっとき私が譲るにあたって、最後に聞いておきたいことがございます。     〔前田委員長代理退席、武藤委員長代理着席〕  もし一〇%をインジュリーの限界とするということになりますと、及ぼす影響が非常に大きいと思います。すなわち、テレビの映像、これは二〇・五%でございます。テープレコーダーのごときは九三・五%、電蓄は二七・七%、そのほかずっとこう続いておりますが、一〇%でもって、これが被害があるから、だからこれはいけないなどとおっしゃろうものならば、日本からアメリカ輸出する、いま述べましたようなものに必ず影響が参ります。同時にまた、そんなことでしっぺ返しが他の国から来たら一体どういうことになりましょう。  それならば、申し上げたいことがある。日本アメリカから購入しているもので、小麦は四〇・七%、綿花は二九・一%、大豆は七七・三%、トウモロコシは四八・九%、こういうことになっておる。それではついでに、アメリカから買っているコットンはよその国から買わなければならない。市場転換ということになりますが、それをおやりになる勇気がありますか。それがもしないということになれば、どういうことになる。アメリカから買うときだけは、パーセンテージを限度をなしにして、次から次へと買わされて、日本からアメリカ輸出するときだけはクォータをしかれる。これでは、日米友好通商航海条約違反であり、ガット違反であり、すべての国際法に違反する行為だと思いませんか。そんなことがなぜ相手国に言えないでしょうか。どうしても言えないとおっしゃるならば、私どもが身がわりになって、いつでも申し上げる用意がありますから、アメリカに向かい、アメリカ関係議員に向かい、アメリカの大臣に向かって、いつでもそのことをはっきり申し上げる用意がございますから、これはひとつ御記憶願いたい。  大臣が来られるまで次のお方に譲ります。
  53. 武藤嘉文

    ○武藤委員長代理 松尾君。
  54. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 まことに本日は御苦労さまでございます。  どうもこの繊維問題につきましては、もやもやしておりまして、はっきりしない。私たちも、最初からこの問題につきましては政府にも質問してまいりました。お答えはもう御承知のとおりのような答えでございまして、かみ合わないと申しますか、どうも真相というものがはっきりしない。で、延び延びになりまして、きょうこのような御足労をいただいておるわけでありますけれども業界政府との話し合いというものがどのくらいなされておるのか、この点につきまして私は常に疑問を持ち、また、きょうもそういう点につきましてお話を伺いたい、このように思うわけでございます。  また他面、いつも新聞が新しいことを伝えていく。われわれ理解しておりまして、そして今度は新聞が新しい事態を伝えまして、いまいろいろの御質問が出ましたとおりに、いままでの理解というものとまた新しい情勢の展開があるということでありまして、これは一体どういうことかというようなことで、われわれも非常に一ぱい疑問があります。また、そういう中でお二方のお立場というものもデリケートなものがいまあるんじゃないかと、このよう理解しておるのでございますけれども、私は特に、政府業界とのつながりと申しますか、話し合いといいますか、そのようなことにつきまして二、三お尋ね申し上げたい、このように思っておる次第でございます。  それで、ほとんど政府皆さまに対して話がない、このよう理解しておるわけでございますけれども、たとえば吉野公使の追加説明、そういう十品目内容等もいま出たわけでありますけれども、このようなことにつきまして、このように今度はアメリカに追加説明したい、このよう内容で言うていきたいというようなことにつきまして、何か業界皆さま政府から話があったものでございましょうか、ほんとうに何ら話もなく進めていったものでございましょうかということについて、まずお尋ね申し上げたいと思います。
  55. 宮崎輝

    宮崎参考人 私は、国の外交というものはやはり機密を要するものが相当ありますので、何もかにも業界に事前に話をされるべきものじゃないと思いますから、その点はよく民間の人間として理解をしておるつもりでございます。  この十品目につきましては、先ほど申しましたように、この品目か何か知りませんけれども、とにかくハードウオッチといいまして、多少民間でウオッチしている商品があるのですが、その品目をあげたらどうかという相談がございましたので、それはまずいですよ、それを出しますとインジュリーをみずから認めたようなふうになりますからというので、先ほど申したとおり、私は否定的な返事をしたのですが、それは覚え書きには出ていなかったのでありますけれども、しかし抽象的なことばで出ておりますね。その品目が新たに出されたのでありまして、これは、外交当局がいろんな機密の情報を持っておられて、そして必要だと感じられたとき適宜出されるのですから、そこはやはり民間として、そこまでタッチすべきものかどうかは、非常に疑問があると思います。  ただし、いよいよ相手方とディスカッションに入る、ほんとうにこれはどうなんだろうというときには、これは民間の専門家が入りませんとわからないと思う。実は私自身もわからないんですから。その段階になれば、おそらく私どものほうのエキスパートが御相談に乗って——向こうも同様だと思うんですよ。入ってきて議論をするということになると思いますので、さっき言いました、一〇%というのは妥当かどうかという点は非常に問題がありますけれども、外務当局か、あるいは通産当局か存じませんが、アメリカが大体問題にしますのは一〇%なんですよ。ですから一〇%というところを一応お出しになったのは、アメリカの感覚をよく御存じの政府としては、まあ、あれはしかたなかったんだなあと思っておりますが、先ほど申しましたように、最後にデテールな話し合いになるときには、おそらく御相談になるつもりであったのだろうと思いますし、今後おそらくそうじゃないかと思っております。  もう一つ、いまの一〇%というのは被害があることをみずから自認されたんじゃなくて、二十八品目の中で全部資料がほしいんじゃなくて、こういう範囲のものをほしいという意味のことであることもよく了承しております。
  56. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 当然外交の機微については話すべき筋合いでございませんけれども、このようなものをもってひとつ次の段階を開いていこうというようなことにつきましては、何といいましても、やはり業界の意向を尋ねていかなくては、かりに、政府が全然話し合いもない、皆さま納得を受けるよう話し合いもなくて、外交上の問題だからというて外務省だけで先走っていきますると、その話を続けられては困る、それではますます業界としてはたいへんなことになるのだというような点も多々あるんじゃないか。また、あったんじゃないかと思いまするし、また黙っておれば、今後とも出てくる可能性が大いにある。でありますから、やはり皆さまの声というものが、そのようなものの土台として反映させていけるようなものがなくてはいかぬのじゃないか。いまアメリカは三位一体だというようなお話も出ておりますけれども、私はそうじゃなくてはいけないと強く思います。  また、ほんとう皆さま方意見が反映されないで一つ一つが先走ってやられていきますと、一例をあげましても、こちらは検討品目だというよう理解しておる、向こうは規制品目だと考えておるというようなことになりますると、そのような話をだんだん煮詰められては困るわけなんですね。でありますから、やはりそういう土台につきましては、これは正式じゃなくても、皆さまの声が反映されていくよう話し合いというものは、事、繊維に関する限りはとるべきであり、また皆さまもとらせていくように応援してもらいたい、このように思うのですけれども、いかがなものでございましょうか。
  57. 谷口豊三郎

    谷口参考人 まことに御親切なおことばをいただきまして、ありがとうございます。先生方には、それぞれ担当ルートを通じまして、いろいろ情勢につき御理解願っておることだと思っておりますし、それからまた、政府の問題につきましても、これはおまえ、そんなことをしたらだまされるぞとおっしゃれば別でございますが、一応りっぱな方々がおそろいになっておられることを信用するのでなければ立っていけないと思いまして、基本的の姿勢については、いままでたびたびお話を申し上げたり、また、たびたび申し上げますように、議会等の本筋でわれわれの納得のいくようなお話でございますので、順次接触はしておりまするが、松尾先生のおっしゃいます組織的な、それから加藤先生のおっしゃいました、どういうものがそういうことかというのは、ちょっと私、具体的の問題として頭にないのでございますが、実質的にはそういうことがある程度できておるんじゃないかというふうに、一応理解しておるのでございます。  それから、通産省、外務省等にも、そのつど一応その担当あるいは御関係の方には話がございまして、全然けたはずれなことをおやりになったらかえって困られるのは政府なんですから、まさかそういうことはやられるはずはない、そういうふうに理解しておりますので、その途中のこまかいことをあれやこれや言いましても、やっぱり政治折衝あるいは外交折衝ということになれば、われわれしろうとでございますので、しろうとがあんまりそういうところへ、こまかいことを申し上げることが、これはまた、いいか悪いかという問題もございますので、よほど人がいいのかもしれませんが、それはないという確信で今日までまいっておるのでございますが、先生方の御意見で、そんなことをしていたらあぶないぞ、これはこうやらないかぬぞということでございましたら、これはまた考えなければいかぬのでございますけれども、その点、ちょっと先ほどえらい失礼ななにを申し上げまして、申しわけございません。どうぞひとつお許し願いたいと思います。
  58. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 それで、ほんとう話し合いの場があまりない。懇談会みたいな、そういうものがずっと定期的に開けていくならば、自然と、このような問題があろうと——また業会では、常に新しい分野のための発展もあるわけですから、日本輸出でナンバーワンという繊維輸出でございますから、やはりかねがね懇談の機会を持っていく。それがこういう問題のときでも、定期的なものが開かれておるのだ、特にアメリカ規制問題でやっておるのじゃないというように、今後とも、ある程度はそういうものを軌道に乗せていかれたらどうかというような考えを私、持ちます。  なおなお、外務省がどういうふうに今後話をしていくのか、これは問題でございますけれども先ほどお話しのとおりに、あまりこの問題につきましては筋が通り過ぎておって困る、これは実感ではないかと思うのでございます。でありますから、どうもそこで、筋が通り過ぎておる、筋は変わらない、あくまでもこの線で押すというようなお話でありますから、今後はこのような問題を外交折衝でいく余地があるのかどうか。これはやってもむだではないか。また政治的な解決をしようと思えば、ますます苦しくなる、通産大臣の立場がなくなるということになりますことも予見されるような気もいたします。とするならば、やはり業界からも、そのようなきょう御披露なされました決心というものを、われわれも当然政府に追及し、また申し入れていくわけでありますけれども皆さまのその確固不動の考え、政治折衝等は一切排除していく、あくまでも筋論を通し、もう対米外交に繊維の問題から一つの転機をつくっていくのだというふうにしていくならば、あまり今後の話し合いというものはないのじゃないか、このように思うわけであります。それをいままでいろいろやってきまして、ああだこうだとやってきました。また追加説明等がございました。やれ十品目も出ました。そういうことをアメリカはどう取り上げておるのか。また、輸入規制でおどすような、いろいろ出方がありますけれども、どのよう輸入規制があろうとも、こちらは受けて立とうというよう意見もあるわけであります。また繊維業界といたしましては、受けて立つどころではなくて、あくまでも筋論を通していくわけでございますから、今後この繊維問題に対するいろいろな話し合いの余地、そういうものにつきましてどのようにお考えなさっておるのか。非常にこれは断定的に、もう関係ない、余地はないのだと言いにくい問題と思いますけれども。ただ、先ほど承れば、あくまでも業界としてはきちっとしたものでいくのだ、このようなことであります。重ねて、この折衝の余地ありやなしや、そういう問題につきましてお考えを承っておきたい、このように思う次第でございます。
  59. 宮崎輝

    宮崎参考人 これは政府が御答弁になることだと思いますけれども、実は民間は民間として接触がございまして、どんな場合でも、表向きはどんな危機の状態になろうとも、裏ではやはりちゃんとチャンネルがあるというのが、これは世の中のルールと思います。ですから、私どもは私どもなりにそういうチャンネルを持っておりまして、絶えず情報接触をいたしておりますが、政府はもちろん私ども以上にエキスパートですから、やっておられると思います。私は決して最後までこういう問題は絶望いたしませんし、また興奮もいたしません。商売人でございますから、エキサイトしたら自分が損しますから、そういう点は非常に冷静に、いかなる場合が起こりましてもやっていきますし、また十分にそういうチャンスがあるというふうに思っております。
  60. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 そのとおりだと思います。やはり何やかんやとしていくうちに、一つの何らかの形で軌道に乗ってくる。それは、業界といたしましても、そのような努力を続けていかれるし、政府もそれでいま苦労しておるわけであります。やはりこのままの状態で当分の間は続いていくと思いますけれども、ひとつ業界におかれましても、先ほどわれわれに、しっかり今後ともよろしくがんばれ、このようなことがありましたが、業界におかれましても、しっかりがんばっていただきたい、このように思います。  なお、谷口さんでございますけれどもアメリカのケンドールさんとお会いになったのでございますか。もしもお会いなされておりましたならば、そのときの大体の向こうの話というものがどういうことがなされたか、ということをお伺いしたいと思います。
  61. 谷口豊三郎

    谷口参考人 正式にケンドールさんとお会いする筋合いでもございませんし、そういう立場でもないと思いますので、やっておりませんが、パーティでたまたま出会いまして、そのときにちょっと話が出ておりました。  これは私の観察なんですが、ケンドールさんはペプシコーラの社長さんで、ECATの団長で来ておられますが、繊維問題についてはそう詳しい知識をお持ちじゃないのじゃないかと思います。やはり先ほど申し上げましたような、繊維自主規制、オーダリーマーケットというような大体の常識的な判断から、繊維というものを見ておられる。一番大事なことは、やはりニクソンさんのブレーンの一人というか、親近者の一人として、ニクソンさんの立場を非常に心配しておられるように私は見受けました。  それはそれなりにごもっともだと思うのですが、しかし、そうだからといって、簡単にわれわれが、将来の業界の非常に被害の多いようなものをどうこうするというわけにいきませんので、そういう点は、それはそう簡単にはいきませんよという話はしておきましたが、せんじ詰めれば、何とかならぬものですかなというようなことだと思います。しかしそれは、何とかなるものならそれはいかようにでもなりますけれども、ならぬから困っているので、あなたのほうで日本のほうの自由化をどんどん進めておれば、こんな問題起こらぬのじゃないかというふうなおっしゃり方をなさるのですけれども、私は、それはそうかもしれぬけれども日本のそういう自由化を好んでおられない方々の気持ちからいけば、アメリカでさえがあんなことを言っているのじゃないか、だからそんなに急ぐことはないじゃないかというような考えがどうもあるので、お互い自由貿易主義という同じ道に進むなら、お互いにそういうものを正していくほうがいいんじゃないですかというよう——それはカクテルパーティで立ち話ですから、そんなにすわった真剣な話をする立場でやるわけでもないのですから、そんなことがございましたのですが、そういう程度でございます。
  62. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 通産大臣にはいろいろ打ち割った話がケンドールさんから出た、そういうことで、何か一言でも谷口参考人のほうへそのときお話があったかと思いまして聞いたわけであります。  最後に、この輸出繊維事業というものは、お話のとおりに中小企業でございます。宮崎さんのお話でも、百九十万の従業員がおるんだ、それで九百万の人々が生計を維持しておるというようなお話、これもよく私のほうも理解しております。であればこそ、非常にそういう産地がいま苦しんでおります。注文もずいぶん減ってまいりました。工賃もうんと安くなってまいりました。自分の織機を売り食いをしているというようなところもあります。実態調査に参ったわけでございますけれども、非常につらい立場で生活しておる人がずいぶんあるわけでございます。でございますから、私たちも調査等は実施いたしますけれども、よくおわかりの業界でございますから、何かそういうことがございましたら、われわれにもまた御連絡いただきまして、しょっちゅうそれで政府に適切な手を打っていきなさい、どうしていくんだというよう——機械代の支払い等もあります。また現実に生活の問題が迫っております。それで言うておりますけれども、また、新しいそういうものは、われわれとまた御両所のほうと連携を密にいたしまして、そうしてその中小企業のいまの不況というものをがっちりと防いであげなくちゃいけないのじゃないか。そういう点において、中小企業がこのようにあるが、政府のほうのしりをたたけとかなんとかいうことが、われわれのほうに残念ながらあまりお声が聞こえてこないのです。声が聞こえてまいりません。そのようなルートもひとつつけていただきまして、そして業界とわれわれというものがかたく結ばれまして、政府の足らないことがありますれば、それをどんどん追及していきたい、このように思いますので、今後ともに中小企業の生活の安定、またいま苦しんでおるいろいろの問題、これは真剣にお取り上げなされまして、そうしてしっかりと業界のほうにも手を打っていただきたい。これは希望と申しますか、一言申し上げまして、私の質疑を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  63. 武藤嘉文

    ○武藤委員長代理 吉田泰造君。
  64. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 両参考人には本日ほんとうにお忙しいところを心から感謝申し上げます。大体ほとんどのことは同僚の各議員から御質問がございましたので、私はできるだけ重複を避けまして、ごく簡単に二点だけ御質問を申し上げたいと思います。  その第一点でございますが、よく業界首脳者の方が、この繊維問題で筋を通すということをおっしゃられております。きょうの御決意のほどをお伺いしてみましても、そのとおりであろうと思います。まさに自由貿易に逆行するような形で、その一方の旗頭であるアメリカが無理な規制をしいてくるということは、筋からいっても、あるいはまた日本が、綿協定で十五年前に谷口さんが非常に煮え湯を飲まされた思い出からいたしましても、私は筋が通らないと思います。業界の筋の話はそのとおりだと思います。  ただ、この筋に私は二つあると思うのです。その一つの筋は、業界のいわゆる自由貿易の原則からきた筋。もう一つはいわゆる政治の筋でございます。この政治の筋が私は二つに分かれていると思うのです。その一つは、アメリカ国内におけるいわゆるニクソン繊維業者との密着といいますか、癒着といいますか、よきにつけ、あしきにつけ、非常に密着をいたしております。それと同時に、いわゆるニクソン佐藤会談で、私はもちろんその場のことはわかりませんけれども、これは仮定の話ではなはだ恐縮でございますが、おそらくやニクソンの要求を受け入れたのであろうという想像をいたしております。各紙もきょうあたりそういうことを報道いたしております。そうしないと、私はこの繊維交渉のいまの筋道がはっきり浮かび上がってこないと思うのです。その前提条件があるだろうということでございます。そういう形から考えますと、私は佐藤総理自身——いま両参考人は、時の政府総理でもございますし、非常に御信頼なさった発言、これはまことにけっこうでございますけれども、私はここに一つ大きな問題があると思う。この問題の解明をしなければ、繊維問題はおそらく解決はしないのじゃないか。  といいますのは、これはあくまで私の想像の仮定の話でございますが、おそらく、総理自身繊維業界に対する認識の食い違い、そういうことから、貿易自由化の前提として、繊維産業みたいなものは犠牲にしてもいいのじゃないかという——ニクソンの要請もあるし、そういうようないわゆる前提条件があったのではなかろうかと、私らは邪推をいたしております。そうでないと、この話がほんとうにわかってこないのです。  そうすると、繊維業界の戦い方が、両参考人がおっしゃるような、筋を通してはたして解決ができるものかどうか。皆さん方業界の方が、筋を通そうとする御決意なりそのプログラムは、私はけっこうだと思うのです。政界は、佐藤さんにしては、佐藤さんのやはり筋があると私は思うのです。ただここで言えることは、大きな立場から考えてみますと、原則的に佐藤総理の筋が間違っておるとは思いますけれども、やはり約束はしているだろうと思うのです。そうした場合に、業界の両首脳がおいでになっておりますが、具体的にいろんな場合を考えて冷静にやっておられるという宮崎参考人の御決意のほどもいまお伺いしたのですが、仮定の話で、かりに現在の政府ベースで規制されるような方向に持っていかれたとします。そういう場合の業界の考え方、決意を——精神的な決意じゃなくて、具体的にどういうプログラムがあるか。行政指導の限界をどのようにお考えになっておられるか。最悪の場合の決意、それを腹にきめていないと交渉はむずかしかろうと私は思います。ひとつ業界ベースの、行政に対する限界をどういうようにお考えになっておられるか、それをまず第一点としてお伺い申し上げたいと思います。
  65. 谷口豊三郎

    谷口参考人 それは先ほど申し上げたことなんでございますが、まず第一に佐藤さんとニクソンさんの密約説、これはどこまでいきましても、御本人、お二人だけの話でございますので想像の域は出ないのですが、私はもうちょっと善意に解釈しておるわけなんですが、これは前に池田・ケネディ会談がございましたときに、やはり同じような場面が現出したと——これも想像なんですが、私は想像しております。     〔武藤委員長代理退席、浦野委員長代理着席〕 あのときに、やはりケネディさんが業界との話し合いで、ある程度何とか助けなければならぬ。その一つにLTAの問題が入っておったわけなんです。LTAの問題、いまでこそ常識的にはなっておりますが、しろうとがフランクリーに考えて、ガットというよう貿易自由化をやる場所でそういう制限措置がとられるという話をされること自身が、私は非常に奇異な感じがしておったのですが、それがすっと通ってしまったわけです。それはどうもやはりあの当時の——なくなられた方に対してそういうことは非礼にあたるかもしれませんが、池田さんとケネディさんの間で、繊維のことはひとつ頼むぞというようなお話で、内容がどうのこうのということは、それはとうていどちらさんもおわかりのはずじゃないと思うのです。しかし、できるだけしかるべくやりましょうという話じゃなかったと思いますが、そのあとで行なわれた技術的な問題について、アメリカのやり方が非常にえげつないやり方になったため今日非常に混乱を来たしておるのが、一つの大きな原因になっておると思います。  同じようなことが、今度の佐藤さんとニクソンさんの間でも、沖繩の問題が主体でお話しになって、時に繊維は非常にお互い困った問題だというような話から、何とか早くこれを解決しなければいかぬ——これはだれしも常識的な話なんですが、だからそれは、全部向こうの言うとおりにのむということに解釈するのは、またそんなことをまさか約束されるはずはない。それまでに、今度は議会であれだけのなにがありますし、スタンズさんの問題もありますし、ずいぶんいろいろな問題が起こっておって、前とは違うわけなんですから、日本の政治をあずかっておられる総理大臣を私らは一応信頼しておりますが、そういう方がやられるのに、そんな見え透いたことをおっしゃるはずはない。そこで、できるだけひとつやろうじゃないかという抽象的な話じゃなかったかと思います。ところが、ニクソンさんは帰って商務省に話をされるときには、佐藤君によく話しておいたが大体了承しておったよ、というようなことじゃないかと思います。そうすると、前の池田さんのときと同じになりますから、ああしめたことだ、日本総理大臣、大体こうやったらいつもいけるのだということになっているのじゃないかと、私は想像します。そうじゃないかということをいろいろな関係の方に申し上げましても、大体そういうことですなということなんでございますが、向こうがそう思い込んでしまっているものですから、それから同じ当事者なんですから、それでやあっと、こうやってきている。それで両方非常に困ったということじゃないか。これは私の想像なんですが、密約説が出てくるのはそういう背景じゃないかと私は解釈しておるわけでございます。  それからもう一つ、それじゃ政府がかりにいろいろななにをやったときにどうなるかという御質問でございますが、これも先ほど宮崎さんもお答えになりましたように、いまの法律を私はそうこまかく研究したわけじゃございませんが、皆さんのおっしゃるには、いまの法律の範囲内で、これは自主規制なんですから、物理的にいきましても、制度的にいきましても、政府だけがそれを押しつけてやろうったってできない問題だと思います。あとは業界納得するかせぬかということなんですが、その納得の度合いでございまして、それは一億円の金が一円欠けてもいかぬというわけにはまいらぬかもしれませんが、一億円の金が九千万円なくなったのじゃとてもいけませんので、そういうことじゃとてもできるはずはない。もしもそうなれば、政府がおやりになろうと思っても、それじゃできないじゃないか。中には、それではひとつしりをまくってやろうじゃないかということで、どんどん輸出が行なわれたら、日本というものの立場は全くできない相談になると思いまするから、宮澤さんは、繰り返して向こうの方々に、日本政府が何でもできるように思ったって、それは間違いなんだ、過去にはそういう情勢を判断してやってくれたからいいけれども、できないのだ、というふうにおっしゃっておられるように聞いておりますので、それは正しいのじゃないか。その認識の足りないことは、先ほど申し上げました、腹を立てたらできるのだと思うことと加わって、それで非常に圧力をかけてきておるという情勢じゃないかと私は判断しております。  重ねて申し上げますように、そういう業界が、将来にわたって全く自分の息の根をとめるような状態にどうあってもこれは賛成できないことは、どなたがお考えくだすっても当然のことじゃないかというふうに思いますし、先生方がその点で非常に御理解くださいまして、松尾さんからも非常にあたたかい御激励のことばをいただいております。そういう点で、連絡が悪かったということはおわびを申し上げますが、先生方皆さんお忙しいので、私のほうから、こういうことにしますからおいで願えませんかということは、とても言える筋合いではございませんので、先生方からひとつやってやろうか、聞いてやろうかとおっしゃるならば、いつでも都合をいたして、万難を排して参りますから、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
  66. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 いま谷口参考人からいろいろ決意のほどを聞かしていただきましたが、私がいま一番心配をいたしますのは、政府を非常に信頼なさった御発言でございますが、その信頼どおりいくかどうか、非常にむずかしゅうございます。それだけに、日本の将来を考えますときに、今回の貿易規制だけは是が非でも、全国民、これほど世論が一致した——いま国会でも残念ながらいろいろ分かれております。ことごとに分かれております。ところが、事、繊維規制問題には、全く全党一致の、国論一致の反対でございます。それだけに、是が非でも悔いをわれわれの後輩に残さないために、いろいろな意味でこれからたいへんな交渉が続くと思いますけれども、両参考人の一そうの御奮起を私は心から願う者の一人でございます。もちろんわれわれも、この筋の通らない話は、国会決議でも見られますように、断固として規制は受けるべきでないという考え方には変わりません。  もう一つ、大臣がお見えになるそうでございますので、あと一点だけで加藤先生にお譲りをいたしますので、一点だけ御質問申し上げます。  それは、繊維問題については、いままで各委員の方からこまかい問題にまで質問が及びましたので、省略をさしていただきます。ただ、業界の指導的な立場におられるお二方が、この繊維問題を通じて、その交渉の過程から、日本の外交といいますか、それについてどうお考えになっておられるか。日本の外交姿勢が非常にアメリカ一辺倒といいますか、非常に弱腰な外交でございます。ニクソン繊維業者の密着といいますか、そういう形が議会を動かす。それがたちまち日本に及んでくる。日本は何となしに非常に弱腰な——外務省を見ておりましても、今度の通産省を見ておりましても、筋が通っておりながら十分なことが言えない。もちろん貿易自由化の問題とか、いろいろな問題があるでしょう。しかし、やはり言うべきことは言うべきであろうと思います。  そういう意味から、論点を変えまして、皆さん方に、日本の外交ははたしてこれでいいのかどうか。特に当事者は、貿易交渉を通じていろいろな意味でいやというほどお感じになっておると私は思います。信頼できる点もあれば、あるいは全面的に信頼できない不安な点もあろうかと思います。そういう点につきまして、アメリカが片や自由化を要求しながら、片方ではそれに対して規制してくる。綿協定の苦い経験にもかかわらず、それを何となしに繊維交渉で受けようとする。腹は十分なことを言うてないと思うのです。そういう意味で、基本的な外交姿勢が変わらなかったならば、この繊維問題のみならず、将来の日本貿易交渉、そういう面にまで多方面に影響を及ぼす。また、後進国諸国にもたいへんな御迷惑をかける結果になる。世界は、この繊維の交渉、日本の外交を、おそらく注視の的で、日本の去就を私は見詰めておると思います。そのときに、業界の決意と業界がやっておられることは、これでよくわかりましたけれども皆さん方の、日本の外交はどうあってほしいという、いわゆる希望を聞かしていただきたいと思います。いまのままでいいのかどうか、そういう点だけをひとつ一点聞かしていただきまして、あとの分につきましては、加藤先生と、通産大臣が来られますので、私は交代をさせていただきます。
  67. 谷口豊三郎

    谷口参考人 たいへんむずかしい問題で、そういうことをこういう晴れがましいところで申し上げるのはちょっと気がひけるわけでございますが、外交の姿勢といいますか、それは結果から判断すべきじゃないかと思いますので、途中のテクニックはそれぞれ専門家の方がおやりになるので、いろいろの紆余曲折があるのじゃないかと推察いたすわけなんです。これもまた甘いとおっしゃるかもしれませんが、一応われわれのただいままで伺っておりまする範囲内においては、非常に筋を通してやるとおっしゃっておられるわけなんです。また、やっていただいているようにも思います。ただ、その表面にあらわれた折衝の過程というものは、これは専門家がおやりになるんですから、そういう専門のなにもあるんじゃないか。結果がどう出るかということが問題だと思います。それは、今後の出てくることによって判断しなければならない。私はさようなことはないはずだと信頼しておるわけなんです。また、これだけ国会でああいう過程を経てやっておられますのに、かりにわれわれが押えつけられても、国会先生方承知なさらぬだろう。もしも、これをわれわれが押えつけられたら、ああやられたということで何か消えてしまうということになれば、国民国会に対する信頼というのは一体どうなるかということも心配いたしますので、まさかそういうことは万々ない、これだけちゃんと筋が通っておれば、これ以上心配するのは少し行き過ぎじゃないかという私は感じでございます。  外交のやり方について、これは意見がございますので、強い弱い、あるいはテクニックの問題についてはいろいろございます。しかし、本筋については、それは専門の方がお考えになってずっとおやりになっているんですから、それを私らの立場で、あまり公の立場で批判することは差し控えたほうがいいんじゃないかというふうに思いますが、大筋でいって、そう私は心配するような気持ちは持っておらないのでございます。万一これが期待に反するような予想外なことでも発生いたしますれば、そのときは私は、もう不信そのものになると思います。
  68. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 終わります。
  69. 浦野幸男

  70. 加藤清二

    加藤(清)委員 大臣がもうすぐお入りになるそうでございます。ほんのわずかな時間でございまするが、ぜひ承っておきたいことがありますので要請したわけなんです。その間、せっかく御両所がいらっしゃいまするので、二、三お尋ねいたしたいと存じます。  私はノーモアLTA、ノーモアSTAの立場でございます。ところで今度、LTAがこの秋に期限切れになりますですね。これに対して、そのSTA、LTA、その前の品目規制でずいぶん御苦労になってみえます谷口さんは、この秋、期限切れになりましたら、また再々延長を承服なさいますか。それとももはや、何度も何度も延長を重ねてきたんだから、ここらあたりでもうごかんべん願いたいと、こういうお気持ちでございますか。これはいずれでございましょうか。
  71. 谷口豊三郎

    谷口参考人 これは紡績協会でも決議をいたしまして、これはもうやめていただきたい。もうネクスト・フュー・イヤーズで八年以上も続いているんですから、もう十年——よく知りませんが、英語でフュー・イヤーズにはならぬのじゃないかと思いますが……。先生のほうが英語にごたんのうでございます。そうすると、ひょっとしたらアメリカ議会で立法がされるかもしれぬぞ、されてもよろしいじゃないか、これはやめていただきます、というのが紡績協会の決議でございまして、その点は十分に政府にも申し上げております。
  72. 加藤清二

    加藤(清)委員 つまり、ノーモアLTA、それが業界では決議になっている、したがってそれを政府にも要請している、こういう段階でございますね。わかりました。では、その立場に立てば、当然のことながら、今度の繊維規制問題は、もうおのずから答えが明らかでございます。  そこで大臣、せっかくお見えになりまして、時間が短いそうでございまするからまとめて大臣にお尋ねいたします。  すでに再三にわたりまして、総理大臣、外務大臣、通産大臣に、何回も今度の繊維交渉についての態度をお尋ねしていたわけでございまするが、その結論は、被害のないところ規制はない、業界の協力なきところ効果はない、ゆえに筋を通すんだ、こういうことのようでございます。本委員会、衆議院本会議決議もまたその精神にのっとっているわけでございます。今日、通産大臣の態度、どうも国会では筋論、たてまえ論をおっしゃるようですが、間々、他の場所で本音がちょこちょこ出ておるではないかと、こういうことが新聞に散見できますので、国民一般が非常に心配して注目いたしておりまするから、通産大臣の態度をもう一度はっきりと国民の前へお示し願いたいと存じます。
  73. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 前々から申し上げているところと変わりございません。先ほど加藤委員がおっしゃいましたとおりでございます。
  74. 加藤清二

    加藤(清)委員 そう聞けばほんとうに安心いたします。ところが、安心したいのでございまするが、それが急に安心できない原因がございますので、二、三お尋ねします。  きのう、都内の某所であなたは、繊維業界以外の財界の方もまじえて、本件についていろいろ御相談になっているようでございます。どうもそこから受け取りますと、財界を頼み繊維業界を説得しようという意思が、ほのかに見えるわけでございます。そこでお尋ねしたいのは、さしあたって、被害の有無にかかわらず、とりあえず暫定的規制をやるではないか、こういううわさが流れているわけでございます。私もそういう懸念をしておる一人でございます。被害の有無にかかわらず、とりあえず暫定的に規制をするんではないか、こういう心配でございます。これについて、いかがでございますか。
  75. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 両国間のいろいろの接触が目下進行中でございますから、詳しいことは申し上げられませんけれども、ただいまのところ、私としては、この原則論はどうしても、先ほど加藤委員の言われたようなことでございますから、それにのっとっていくのが適当だというふうに考えております。
  76. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は、通産大臣が、大平さんの場合も宮澤さんの場合も、本件についてたいへんな御苦労をしていらっしゃるということはよくわかります。むしろほんとうにお気の毒な立場であるという気持ちがいっぱいでございます。こいねがわくは第二の犬養さんにならないようにしてもらいたいということを先ほどちらっと申し上げたわけですが、第二の犬養健さんにならないようにしっかりしていただきたい。そこで、とりあえず暫定にしろ品目規制にしろ、どんなことがあってもやらない、こう受け取ってよろしゅうございますか。
  77. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 伺っておって、おとうさんのほうかと思いましたが、前々から申し上げておりますとおり、これは被害がないところには規制がないというのが原則でございますから、その原則にのっとって交渉をしていくということだと思います。そこで、もしかりにでございますが、被害または被害のおそれのある品目があるということになりましたら、これは関係各国とも、前々から申し上げておりますように、多国間で、しかも業界納得を得てその規制をすることはやぶさかでない。しかし、それはかりにということでございます。
  78. 加藤清二

    加藤(清)委員 私が犬養健さんのことを申し上げましたら、犬養木堂を想定したとおっしゃる。余裕しゃくしゃくでございます。ぜひひとつ、犬養は犬養でも、子供さんの犬養にならぬように、おとうさんの犬養さんになっていただきたい。あなたはそれになる資格を十分持っておるお方だからでございます。しかし、事ここに及んで、暫定的にしろ、被害の有無にかかわらず一品目でも二品目でも手をつけられたら、遺憾ながら、おやじさんのほうではなくて、むすこさんの境地に追い込まれる。それを私はお気の毒だと思いまするから、さようなことのないようにひとつがんばっていただきたいとお願いを申し上げます。  さて、もう五分になりましたから、けっこうです。  最後にもう一度、ノーモア・ヒロシマ、ノーモアLTAの立場から、私は業界の代表のお二方に申し上げますが、アメリカ貿易哲学に誤りがあるのではないか。アメリカ産業政策を云々しょうとは思いませんが、しかし、身に降りかかる火の粉だけは払わさせてもらうのが平等な立場というものだと存じます。したがって、消費の中に占める輸入の割合を固定し、それを永続することが自国産業を守る道であるというような現在のアメリカの考え方——考え方だけではなくて、それを実行に移しているところのアメリカ態度。すなわち、その例はLTA、また今度の問題、この観念はあやまちである。それはケネディラウンドに反するものであると同時に、ガットにも、日米友好通商航海条約にも反するものであると私は思います。なお、今度それがあえて強行されるということになれば、これはLTAの第一条並びに第六条にも違反する行為だと思います。このアメリカ貿易哲学は是正さるべきだと思います。この際いいチャンスだと思います。いかがでございましょうか。
  79. 谷口豊三郎

    谷口参考人 加藤先生のおっしゃるとおり全くさようだと思います。私は、アメリカ貿易哲学か、アメリカ繊維産業の一部の方の貿易哲学かというふうに解釈いたしております。ですから、アメリカの良識は、貿易哲学においてもさようなものじゃない。いやしくも自由貿易を唱えられる限り、さようなことは表で言えた義理ではないじゃないか。それをしも無理にでも言わなければならぬというところに、アメリカの非常な悩みといいますか、深いものがあるんですから、それと戦う必要があるのではないか。私は、それと戦わなければならぬ。それは将来の繊維産業貿易の実態からいってもさようだと思います。もしもそういうことがアメリカ貿易全体の哲学で、議会を通すということは全体の哲学ですから、全体の哲学として証明されるなら、お互いに都合の悪いものは私のほうも自主規制をいたします、あなたのほうもその主張をなさるなら認めますとおっしゃるなら、これは平等じゃないかと思いますが、しかし、これは繊維だけは別なんだ、アメリカに対してだけそれは別だということでは、まさかアメリカ議会はそれを承認されるというふうには私は考えないということを、先ほど申し上げたわけでございます。
  80. 宮崎輝

    宮崎参考人 ちょっとふえんさせていただきますが、いまのいわゆる哲学ですね。これは加藤先生は、LTAで認めたというようにおっしゃいましたけれども、実はLTAで否定されまして、そして五ないし六というようにパーセントでいっておりますから、もうすでにLTAで世界から否定された思想を今度の第一次、第二次案では出してきておるのだということを、一つ申し上げたいと思います。  それからもう一つは、谷口さんがおっしゃったように、繊維業界はそういう哲学を持っておりますけれども、私はアメリカ全体の輸出ポリシーといいますか、ビジネスマンの輸出ビヘービアとして感じますことは、日本と非常に違いまして、要するに、物が余ったら売る、余っているときだけ売るという観念が非常に強い。日本の場合は、初めから輸出しなければ食っていけないのだということで、輸出というものは物をつくるときからもう考えるというところに根本の差がございますね。ですから、アメリカ輸出入の貿易がアンバランスだとアメリカさんはおっしゃいますけれども日本ような姿勢で売りますと、これはもうあの力でしたら、当然その輸出入のバランスがくずれることはないんですよ。大体価格維持政策を非常に強くとりまして、安く内需の値段をくずさない、ですから操短してでも値段はくずさないという方針で、それから余った物は非常に安い値段でもたたいて売ってくるというので、現にもう台湾アメリカ繊維製品で私どもいまやられておるのです。しかし、これは非常に短期でございまして、アメリカのマーケットがまた復活してくると、アメリカの市場へへっ込んでいって、輸出向けに売ることはやめようということで、そういうところにアメリカ輸出ビヘービアが日本と非常に違う。これがやはりアメリカ貿易収支のバランスに非常に影響を与えておるのだということを私どもよくアメリカの人に言うのですけれども、そこが一つの問題だと思っております。
  81. 浦野幸男

    浦野委員長代理 これにて参考人に対する質疑は終わりました。  参考人には、御多用中のところ、長時間にわたり御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。      ————◇—————
  82. 浦野幸男

    浦野委員長代理 鉱工業に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。岡田利春君。
  83. 岡田利春

    ○岡田委員 昨年の通常国会の本委員会で、私は硫黄鉱業安定法を提案いたしたのでありますが、その後、鉱業政策の小委員会が設置されて、この委員会で各党間の意見の一致を見て硫黄鉱業安定に関する決議を実は行なったわけです。  当時の需給見通しによりますと、単体硫黄の面で昭和四十四年度二十九万二千トンの硫黄が過剰になる。したがって、すでにこの輸出をするために輸出株式会社が設置をされておるわけです。しかも昭和四十五年度の見通しでは、四十九万一千トンの硫黄が過剰になるという見通しでございます。しかし、最近ユーザー側から、供給の不足を理由にして二万トン程度の硫黄の緊急輸入をいたしたい、こういう要望が出されておるように実は承知をいたしておるわけです。御存じのように、すでに二万二千トンの硫黄が日本から今年度の実績として輸出をされておる。にもかかわらず、供給不足で二万トン程度の硫黄を緊急輸入したいというユーザー側の意向が強く出された。私はこのことは、昨年来のわが国のS源需給の見通し、あるいはまたこれからのS源に対する政策の大きな転換を意味するものではないか、かように考えるわけですが、このような急激な変化についてひとつ政府の説明を求めたいと思います。
  84. 本田早苗

    ○本田政府委員 お答えいたします。  硫黄需給につきましては、短期の需給の状況につきましては、御指摘のような事情が最近出てまいっております。長期の需給の状況から申しますと、先般の低硫黄化部会の報告によりまして今後SO2の排出基準を下げ、環境基準に適合するようにするためには、やはり重油脱硫を大いに促進する必要があることで、回収硫黄が増大し過剰硫黄が発生するという状況にあるわけでございます。  御指摘の短期の状況について申し上げますと、松尾鉱山の生産が中止された、あるいは草津鉱山の生産が中止されたということとともに、回収硫黄につきまして、年度当初では輸入の原油のサルファ分は一・八を予定いたしておったわけでございますが、本年度は低硫黄化原油の輸入促進をいたしておる関係で〇・七に下がっておりまして、硫黄分が減少しておる。したがいまして、回収硫黄の発生も当初計画を下回ったというようなこととからみまして、最近在庫の水準が減ってまいったという事情でございます。このような事情は昭和四十五年度の上期もなお引き続くと思われますので、当面、短期対策といたしまして、硫黄の増産、それから在庫の払い出し等の供給増加によりまして需給の安定をはかりたいと考えまして、業界の指導をいたしておるという実情でございます。
  85. 岡田利春

    ○岡田委員 輸出会社が設置をされて二万二千トンの硫黄が輸出をされておるわけですが、この輸出実績価格は一体どの程度になっているのか。また、いま輸入をするとすれば、輸入の価格はどの程度見込まれておるのか。私の調査では、輸出会社の発足当時は大体トン一万三千円程度、こういわれてまいったわけです。しかし、輸入をする場合には、荷揚げその他の関係で大体二万二千円から二万五千円程度になるのではないか、こう推定をされておるのですけれども、この点についてはいかがですか。
  86. 本田早苗

    ○本田政府委員 輸出につきましては、四十四年度として実施いたしました価格は一万二千円ないし一万三千円で輸出をいたしております。輸入につきましては、御指摘のように、一般の引き合いその他では二万円前後になるといわれております。ただ台湾等の輸入の実情は、かなり低い価格で取引されたという情報も入っておる次第でございます。
  87. 岡田利春

    ○岡田委員 わが国のS源対策に対する政策の基本から考えますと、一つには国内鉱山対策の見地からも、硫酸原料としては硫化鉱を当てるというのが一つの原則であろうかと思うわけです。したがって、そういう意味では自給の原則を一応保っていきたい。しかしながら、単体硫黄については、鉱山の合理化を進めるとともに、輸出をはかって過剰硫黄を輸出をし、国内の鉱山硫黄の安定をはかるというのがその基本であるように私は思うわけです。そこで、すでに硫化鉱についても一万二千トン緊急輸入を実はいたしておるわけですけれども、そういう関係から考えても、私のした調査によれば、硫化鉱の輸入は、日本の港着で二十五ドルくらいで約九千円、日本の国内価格はS代だけで五千百七十円、鉄代をこれにプラスして千五百四十円、合計六千七百円という価格に実はなるわけです。したがって、硫化鉱自体も緊急輸入をしているという現状から考えれば、やはり硫化鉱の増産、輸入は解消する、自給の原則を貫いていくという政策が積極的に展開されなければならない、こう思うのでありますけれども、この点についてはいかがですか。
  88. 本田早苗

    ○本田政府委員 硫化鉱の輸入の価格は、御指摘のとおりの現状でございます。御指摘のように、硫化鉱並びに単体硫黄につきまして、国内資源をフルに活用して、余るものは輸出をするという体制でいかねばならないと思います。そういう意味で、硫化鉱についても、単体硫黄についても、近代化をはかり増産をはかって、できるだけ充足していくというのが基本的な考え方でございます。
  89. 岡田利春

    ○岡田委員 通産省は、さきに日本燐酸の富山工場、日産一千トン、年間十一万トンの単体硫黄を硫酸化する工場の設置について、これが建設にかかっておりまして、十二月にこれが稼働の予定であります。いわば単体硫黄から硫酸化するという方向が画期的にとられてまいるわけです。そしていま質問いたしましたように、一方では輸出をし一方では輸入をする——単体硫黄の場合ですね。また硫化鉱は、これまた緊急輸入をしなければならない。またさらに全鉱連などでは、単体硫黄から硫酸肥料をつくるという希望がすでに出ておる、このようにわれわれは承知をいたしておるわけです。そういたしますと、昨年あれだけ議論したわが国のS源の政策について、一応事情の変化によって政策が変わっていかざるを得ないのではないか、こう私は受けとめざるを得ないわけですが、この点の認識についてはどういう認識をされておりますか。
  90. 本田早苗

    ○本田政府委員 お答えいたします。  基本的には、従来の考え方を変更することはないと考えておるわけでございますが、いま御指摘の単体硫黄を硫酸原料に使うという点につきましては、硫化鉱の生産の増加傾向、それから硫酸需要の増加傾向等を考えてまいりますと、一挙に単体硫黄に硫化鉱を振りかえるということではなくて、国内の増産された硫化鉱を使ってなおかつ不足する傾向が見られますので、その範囲においてきわめて漸進的に考慮せなければならない、かように考えておる次第でございます。
  91. 岡田利春

    ○岡田委員 いま鉱業審議会の中に硫黄分科会が設けられておって、すでにこの硫黄分科会は鉱山の合理化について検討する運びになっておるはずであります。しかしながら、いま質疑のやりとりの中で明らかになっておりますように、S源の供給計画の見通し自体について、やはりある程度検討し直すことが必要ではないのか、こう私は判断せざるを得ないわけです。そういう意味で、わが国のS源の過去及び国内S源生産業者の安定、この面については、やはり昨年の事情から見れば変化もございますので、この点は硫黄分科会で再び需給計画の作成をすべきではないのか、こう判断をいたします。  それと同時に、私はいま述べられたユーザー側の単体硫黄の輸入は、一万二千円から一万三千円で二万二千トン輸出をして、それが今度は、二万円からおそらく二万三千円以上になると予想される二万トンの、ユーザー側の希望の単体硫黄を輸入しなければならないということは、国益からいってもまことにおかしい話だと思うわけです。したがってこの単体硫黄の問題については、私の調査によれば、期末在庫では一応正常な在庫を持っておるわけです。問題は東部、西部に偏在をしているという面がございますから、この調整は多少むずかしいかもしれませんけれども、最近の硫黄化学の動向から判断をして一定のめどをつけて鉱山側に協力要請をする、在庫の調整をする、こういう方法で硫黄の輸入はやはり回避をすべきだ。将来、回収硫黄がふえて輸出がどんどん伸びていく大勢にあることは間違いがないわけですから、そういう一時的なものは、在庫の調整あるいは増産協力要請をしてできるだけ回避するのが政策のあり方として当然ではなかろうかと思うわけです。しかし、もしこれを輸入するとすれば、当然需給見通しの変更でありますから、これらは硫黄の需給懇談会の協議を経て行なわなければならないものと思うわけです。こういう点について当局の見解を承ります。
  92. 本田早苗

    ○本田政府委員 硫黄の需給計画については、御指摘のとおり、硫黄分科会において検討をすることにいたしておりまして、四十四年度につきましては、昨年二月に計画を定めまして、その後、情勢の変化に応じ三回見直しを行なっておるわけでございます。したがいまして、御指摘のように、四十五年度の問題につきましても、硫黄分科会におきまして十分検討いたしたいと思います。  その際、御指摘のように、一面で高値輸入をし一面で安値の輸出をするという体制では望ましくございませんので、なるべく回避するために、先ほども申し上げましたように、硫黄の増産あるいは在庫の払い出し等で供給の増加をはかることによりまして、当面の需給均衡をはかっていきたい、こういうことを基本にして計画を御審議願いたいというふうに考えておる次第でございます。
  93. 岡田利春

    ○岡田委員 硫化鉱の取り扱いは、わが国の国内鉱山についてきわめて影響があるわけです。現在鉱山側は、日本鉱業あるいは三菱鉱業の場合でも、ユーザー側にこれを鉱石として売っているわけです。そうしてユーザー側は、硫黄を取り出したあとのシンダーを、製鉄会社に供給している。それが最近公害事情が変わってまいりまして、製鉄側としては、このいろいろなものを含んでいるシンダーを引き取るということについては難点を示して、渋滞する傾向下にあるのではないかと承知をいたしておるわけです。しかし同和鉱業の場合には、シンダーから鉄分だけをさらに抽出をして、その鉄分だけを製鉄会社に供給をしている。こういう形態であれば別に問題がないわけですが、もしこれが渋滞することになれば、硫化鉄鉱についての問題が出てまいりまして、わが国の国内鉱山に影響を及ぼすということになるのでありますから、この点は、やはり通産省としても政策的に受けとめて、シンダーから鉄分を回収して鉄だけをとれるような方向に必要な措置をすべきではないか、こう私は判断をするわけです。  また、昨年閉鎖をしました三菱レイヨンの草津精錬所の問題でありますけれども、最近三菱商事がこの精錬所をぜひ再開をしたいという希望があるように聞いておるわけです。いま質疑のやりとりの見地から見て、もしやるという希望があるならば、この点は当然認めてしかるべきではないか、こういう見解を持つものでありますけれども、この二点について承りたいと思います。
  94. 本田早苗

    ○本田政府委員 御指摘のように、最近シンダーの使用者である鉄鉱側としては、S分があるということとからみまして、その使用について問題を提起しておるのは事実でございまして、われわれとしましては、硫化鉄鉱の生産が資源産業の一つのささえにもなっておるという実情でございますので、同和鉱業の方式等を拡大して、シンダーのS分残留をできるだけ少なくする方法を検討したいと存じておる次第でございます。  それから、もう一点の三菱の問題につきましては、前向きで検討いたしたいと存じております。
  95. 岡田利春

    ○岡田委員 私は次に、新石油資源開発株式会社の発足について承っておきたいと思うのです。  四十二年の通常国会で石油開発公団法が成立するにあたって、SKを事業団本部に引き継いで、これをさらに三年以内に民間会社に移行させるということに実はなっていたわけです。聞くところによりますと、四月一日には新SKとして設立登記完了の予定と承っております。そしてその資本金は百四十三億で、公団出資、いわゆる政府出資が九十四億、民間が四十九億、いわば公団の子会社。しかし商法上からいえば、公団は利害関係人であるから株主総会には議決権を持たないという形で発足する方針をきめて、すでにその日程にのぼっているように実は承っておるわけです。しかし、この出資の割合から見ますと、民間に移行するという当初の政府の説明にかかわらず、政府関係資金が九十四億で、民間がその半分程度の四十九億だということになりますと、旧SKとほとんど変わらないではないか。旧SKの場合でも、大体資本比率から見ればこの程度なわけですね。ですから、今度の新SKの場合には、従来の旧SKの特殊法人とほとんど変わらぬのではないか、こう私は受けとめるわけです。たとえば公団、公社等の子会社で、このような膨大な資本を持ち、しかも政府がこのような膨大な九十四億の出資をしておるという例がほかにあるだろうか。私はほとんどないのではないかと思うわけです。そうすると実質上、民間に移行すると説明をしてきたけれども、変形的な特殊法人、あるいは特殊法人に準ずるものという理解をせざるを得ないと思うのですが、この点について、私はそうあることが望ましいとかつて指摘をしましたけれども、いや、あくまでも民間に移行するのだと言っておりましたが、結果的に私の指摘したような方向になったと思うわけです。この会社の性格は、私がいま申し上げましたように準特殊法人といいますか、そういう理解で受けとめるべき性格のものと考えますか。
  96. 本田早苗

    ○本田政府委員 お答えいたします。  御指摘のように、石油開発公団法が成立する際に、旧石油資源開発株式会社を事業本部として吸収するということに相なりまして、三年以内にこれを分離するということになっておったわけでございますが、本年七月二十八日が三年の期限になるわけなものでございますので、この四月一日に会計年度の変わるところで分離を行なうということにいたしたわけでございます。  その際の資本の構成は御指摘のとおりでございますが、われわれといたしましては、二年有余にもわたって検討した結果、この会社が、当時決議をいただきましたように、自立安定し得る内容であり、従業員の身分も十分保障できる、将来性のある会社として発足すべきであるというような点を考慮いたしますと、かような形でいくことが最も望ましいということで、分離をすることにいたしたわけでございます。  御指摘のように、株の保有比率は非常に高いわけでございますが、従来の石油資源開発は、人事あるいは業務内容、定款、財産処分等についてすべて通産大臣の認可を要するということになっておったわけでございますが、今回は商法上の法人として、コマーシャルベースで企業活動を行なうということになっておる次第でございます。
  97. 岡田利春

    ○岡田委員 この場合、旧会社の買い取り債務の処理について、全額弁済を物で希望している株主が六十八名、それと代物弁済四分の三、現金返済四分の一を希望する株主が二十八名という形でこの旧会社の債務の処理をきめられておるわけですが、この間、相当強力な政府の、悪いことばでいえば押しつけといいますか、そういう傾向があったのではないかということがしばしば問題になっておるのでありますけれども、この点は、二つの方式はあくまでも話し合いによって円満に行なわれた、こういう自信がおありかどうか承っておきたいと思うのです。
  98. 本田早苗

    ○本田政府委員 原則といたしまして、今回の分離にあたりまして、従来の石油開発公団に対する債務を株式に切りかえる際に、その四分の一は現金で返済するということにいたしまして、さらにその中で全額現金を希望される方には、場合によって全額をお返しするということになったわけでございまして、その際、株主側の希望もございましたので、少なくとも四分の一は返すということで、話し合いにより結論を得た。その上、特に御希望のものに対しては全額返す、こういうことに相なった次第でございます。
  99. 岡田利春

    ○岡田委員 石油開発公団法に対する附帯決議の第四項に、「石油開発公団の事業部門の分離については、現在の石油資源開発株式会社とその出資会社が、将来、自立安定しうる形態となるよう配慮し、従業員の身分、労働条件等に不利益を生じないよう万全の対策を講ずること。」、こういう意味では政府の公団のいわゆる子会社でありますし、いま申し上げましたような出資比率がありますから、ある程度行政指導が可能である、こう思うわけです。したがって、この附帯決議については、今回の新SKの場合には当然順守していけるものと、こう私は思いますけれども、いかがですか。
  100. 本田早苗

    ○本田政府委員 今回の事業本部の分離につきましては、二年間の時間をかけまして、分離問題懇談会におきまして種々分離の内容を検討したわけでございますが、御指摘のように、会社の自立安定し得る形態となること、従業員の身分、労働条件等に不利益を生じないようにするために万全の対策を講ずること、この二点につきましていろいろ審議をした結果、今度の分離の形態になったわけで、御指摘のように、十分この決議の趣旨に沿った内容で分離し得るものと考えておる次第でございます。
  101. 岡田利春

    ○岡田委員 新SKの発足にあたって、これと競合するのは国内では帝石であるわけです。今年度予算を見ましても、昨年度と同様の探鉱補助金というものがついております。新SKが民間に移行することによって、探鉱補助金を受けられる条件を持つということになってまいりますと、従来帝石に限られておった補助金というものが、結局二つの会社が対象になる。こういう意味では、結局帝石自体の探鉱補助金というものが当然減るのではないか、こういう懸念が当然出てまいるわけであります。しかも、分離にあたっての前提条件として、政府の探鉱補助金、こういうものについても見込んでいわゆる会社が自立安定できるというぐあいに策定されている、こういうこの内容から見ても、非常にその点の問題点が出てくるのではないか、こう思うのでありますけれども、この点についてはどう処置をされようといたしておりますか。
  102. 本田早苗

    ○本田政府委員 お答えいたします。  御指摘のように、基礎調査費あるいは探鉱補助金等につきまして、格段の増額があったわけではございませんが、別途、大陸だな基礎調査等におきまして三億七千万円の増額を見たわけでございます。したがいまして、新たに石油資源株式会社に探鉱補助金を出すといたしましても、これらを総合調整的にやるとともに、今後は帝国石油との間の共同探鉱等を実施する体制で進めるように指導いたしたい、こういうように思うておる次第でございます。
  103. 岡田利春

    ○岡田委員 来年度の場合は予算の伸びも期待できると思いますけれども、今年度予算の内容から見れば、私は、いまの探鉱補助金については、実は非常に懸念を持っておるわけです。しかも、分離の前提条件には明確に、補助金、それから基礎調査委託費というものが出ておりますし、いま言われた北海道関係の大陸だなの面は、これはすべて新SKが持っておる鉱区の範囲であるわけです。したがって、帝石には関係がないわけです。したがって、この補助金を食い込むということになると、従来の実績が下回るということになりますので、この点については、特に予算配分その他の実行上の注意を喚起しておきたいと思います。  それと同時に、新SKが発足をするのでありますけれども、帝石の内容を見ますと、長期借り入れ金が百八十億、これに対して金利だけでも年間十五億円の支払いを計上しているわけであります。しかし歴史的に見ますと、昭和三十年にSKができて、しかも鉱区については国策に協力をするということで、帝石保有の鉱区が全部SKのほうに譲渡をされた、こういう経緯からかんがみましても、新SKと帝石とのこのあり方というものについては、体制上は非常に困難であるということでこういう分離になったと思うのでありますけれども、国内の石油、天然ガスの開発の面から見れば、いま局長は、共同探鉱等も実施をする、こう言われておりますけれども、ガスのいわゆるパイプラインの問題から見ても、供給の面から見ても、相当両会社の協力体制というものが強化をされなければならないのではないか。そしてそういう面の調整をさらに進めなければならぬのではないか。あるいは技術的には競争させるとしても、北海道周辺の大陸だな及び秋田沖から新潟にかかわる大陸だなの開発については、やはり両社が共同でやり得るような、そういう体制を目ざしていくことが最も望ましいのではないか、こう私は判断をするわけですが、この点についてはどう考えられておりますか、承っておきます。
  104. 本田早苗

    ○本田政府委員 御指摘のように、帝石と新会社との間では、会社の内容としてかなり差がある事情がございます。したがいまして、今後民間の企業として新石油資源開発が発動するにあたりましては、帝石との共同関係の強化が必要であるというふうに考えておる次第でございますが、先ほど御指摘がありましたが、石狩沖等は石油資源の鉱区でございますが、阿武隈沖は帝石の鉱区でございまして、その他の地点におきまして鉱区の接するところ等では、探鉱補助金の交付を通じまして共同探鉱を推進するように指導いたしたい。  それから、御指摘のパイプライン等につきましても、できるだけこれは共用していく。また、機械修理工場の共用あるいは岩石地質分析室等の相互利用等を強力に進めてまいりたいというふうに考えております。
  105. 岡田利春

    ○岡田委員 時間がありませんので、最後に一点だけ質問して終わりたいと思うのですが、今日エネルギー調査会のエネルギーの需給計画については再検討されなければならぬし、いま経済社会発展計画委員会においても、この点については検討されておる模様であります。しかし当初の計画からいえば、わが国の原油開発は非常に停滞をしているという方向を見定めておるわけでありますが、しかし供給の安定の面から見れば、昭和六十年、五億キロリッター程度のうち、影響のある三〇%は自力によって開発を推し進めていくという方針がとられているわけであります。その三〇%の一割を試算いたしますと、これは北スマトラ石油に見合う生産量になるわけです。いずれにしても、これはそういう意味において計画の再検討ということが進められると思いますけれども、それに付随して第四次五カ年計画、いわゆるペアックで出しております第四次五カ年計画についても、これは再検討されるべきではなかろうか。そしてまたこの新SKの発足にあたって、国内の問題についてもさらに検討を深めていく必要があるのではないか、このように私は考えるわけでありますが、そういう意味でペアックの第四次五カ年計画について再検討する意思があるかどうか、この点を承って、質問を終わりたいと思います。
  106. 本田早苗

    ○本田政府委員 お答えいたします。  第四次五カ年計画につきましては、本年度作成いたしました関係上、前の総合エネルギー調査会の報告の前提のみで作成したわけではないのでございます。できるだけ新しい実績等を織り込みつつ作成した事情がございますので、さしあたってただいま計画を変更するという考えは持っておりません。ただ、今後の新しい社会発展計画の実情等を見た場合に考慮いたしたいと思います。
  107. 浦野幸男

    浦野委員長代理 次回は明二十日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時五十一分散会