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1970-03-06 第63回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年三月六日(金曜日)    午後二時三十九分開議  出席委員   委員長 八田 貞義君    理事 浦野 幸男君 理事 橋口  隆君    理事 武藤 嘉文君 理事 岡本 富夫君    理事 樋上 新一君 理事 塚本 三郎君       石井  一君    稲村 利幸君       遠藤 三郎君    大橋 武夫君       海部 俊樹君    神田  博君       北澤 直吉君    小峯 柳多君       左藤  恵君    坂本三十次君       始関 伊平君    藤尾 正行君       増岡 博之君    山田 久就君       石川 次夫君    岡田 利春君       加藤 清二君    中井徳次郎君       松平 忠久君    横山 利秋君       近江巳記夫君    樋上 新一君       松尾 信人君    西田 八郎君       米原  昶君  出席国務大臣         通商産業大臣  宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         経済企画政務次         官       山口シヅエ君         外務政務次官  竹内 黎一君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         通商産業政務次         官      小宮山重四郎君         通商産業省企業         局長      両角 良彦君         通商産業省繊維         雑貨局長    三宅 幸夫君         中小企業庁長官 吉光  久君  委員外出席者         商工委員会調査         室長      椎野 幸雄君     ————————————— 委員の異動 三月四日  辞任         補欠選任   横山 利秋君     久保 三郎君 同月五日  辞任         補欠選任   久保 三郎君     横山 利秋君 同月六日  辞任         補欠選任   中谷 鉄也君     加藤 清二君   川端 文夫君     西田 八郎君 同日  辞任         補欠選任   加藤 清二君     中谷 鉄也君   西田 八郎君     川端 文夫君      同日   理事樋上新一君同日理事辞任につき、その補   欠として岡本富夫君が理事に当選した。     ————————————— 三月四日  輸出中小企業製品統一商標法案内閣提出第五  三号)(予) 同月五日  九州電力の各種料金引下げに関する請願(大久  保武雄紹介)(第九四六号)  米国の繊維品輸入規制反対に関する請願川端  文夫紹介)(第九四七号)  同(永末英一紹介)(第九四八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件      ————◇—————
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  理事辞任の件についておはかりいたします。  理事樋上新一君から辞任申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 八田貞義

    八田委員長 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。  引き続き理事補欠選任を行なうのでありますが、選任につきましては、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 八田貞義

    八田委員長 御異議なしと認めます。委員長は、岡本富夫君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  5. 八田貞義

    八田委員長 この際、小宮山通商産業政務次官及び山口経済企画庁政務次官から、それぞれ発言を求められております。これを許します。小宮山通産政務次官
  6. 小宮山重四郎

    小宮山政府委員 このたび通商産業省政務次官に任命されました。本委員会では常日ごろ御指導御鞭撻をいただいております。なおさら心強い御支援のほどをお願いします。(拍手
  7. 八田貞義

  8. 山口シヅエ

    山口政府委員 ごあいさつがたいへんおくれております。私は経済企画政務次官に就任いたしました山口シヅエでございます。ふなれでございますので、皆さま方にいろいろと御指導をいただかなければならないと存じております。どうぞよろしくお願いを申し上げます。(拍手)      ————◇—————
  9. 八田貞義

    八田委員長 通商産業基本施策に関する件及び経済総合計画に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武藤嘉文君。
  10. 武藤嘉文

    武藤委員 私に与えられた時間が四十分ということでございますので、大臣所信表明関連いたしまして、国政調査ということでございますが、繊維の問題と、それからあと時間があれば、中小企業の税制並びに金融問題に少し触れて御意見を承りたいと思います。  繊維問題につきまして、きょうはまず外務大臣お願いをしたのでございますが、外務大臣が公務でこちらへ御出席願えませんので、たいへん恐縮でございましたが、政務次官竹内先生お願いをいたしましたので、竹内先生あとの時間もあるようでございますから、先に外務政務次官に御質問をしたいと思います。  特に、私が外務大臣にお聞きをしたかったのは、きのうも少し予算委員会足立議員から御指摘があったかと思いますが、予算委員会足立議員は、どうも下田駐米大使PR不足である、こういうことでございました。私は、PR不足どころか、下田大使言動について非常に疑問があるのでございます。それは、いつぞやジョンソン国務次官下田大使対案を出したとか出さないとかいうことで新聞をにぎわしまして、それの弁解ということかもしれませんが、そのあと記者会見がございました。その記者会見の内容を私ども新聞承知をしておるのでございますが、その新聞承知をしておる範囲においては、下田大使発言の中に、アメリカ側が非常に不可解に思っておるのは日本側話し合いの場に出てこないことである、こういう発言があったわけでございます。私ども日本側といたしまして、少なくとも昨年の五月ごろ本委員会決議をいたしましたころ、あるいは本会議決議をいたしましたころには、確かに相当強い姿勢であったかと思います。話し合いには応じられないという姿勢であったかと思いますが、それ以後いろいろ紆余曲折がございまして、最近においては、被害があり、あるいは被害のおそれのある場合にはわれわれは話し合いに応ずるんだ、こういうことでジュネーブ予備交渉も昨年来やっていただいたわけでございます。そういう点からいけば、日本側が全く話し合いの場に入っていないということは、私は、少なくとも日本大使としては、これは認識不足もはなはだしいのではないか、こういう感じがいたしておるわけでございます。  きのう予算委員会足立議員お話しになりましたように、駐日アメリカ大使マイヤーさんあたりは盛んに、アメリカ側被害がこうあるから絶対に日本は応ずるべきであるという強い姿勢で言っておられる。いま国会で各大臣を通じての御答弁を聞いておりましても、被害がない場合は規制に応ずるわけにいかない、こういう姿勢をとっておられるわけでございまして、その点、国会における各大臣の御発言、それと下田大使記者会見における発言というものは非常な違いがある、こういう感じが私はいたします。この点について、どうしてそのような発言をしておられるのか、また外務大臣と申しますか、外務省といたしまして、そのような発言というものに対しては、出先機関大使がそういうことを言うことについて、全く放置しておられるのか、その辺からまず承わりたいと思います。
  11. 竹内黎一

    竹内(黎)政府委員 お答え申し上げます。  いわゆる繊維問題につきましての政策基本方針は、繰り返し、しかも詳細に在米大使館に訓令をし、強力に折衝に当るように指示をしております。下田大使以下の在米大使館では、この指示に基づきまして、国務省商務省等関係方面に対し、わが国の基本的な考え方を十分に展開し、強力に説得に当たっているものだとわれわれは心得ております。  なお、予算委員会等でも、下田大使言動につきましていろいろ御質問がございましたが、私どもは、これはありがたい忠告と承わり、しかるべき方法で大使にも伝達しておる次第でございます。
  12. 武藤嘉文

    武藤委員 非常に要領よくおっしゃっていただいたので、私のほうからとやかく申し上げることもないかもしれませんが、きのうの予算委員会の、いわゆるPR不足ということだけじゃなしに、私が申し上げたいのは、大使PRしていただくにも、大使の心の中にしっかりとした認識がないと、こちらで、日本国内で思っておる方向と違った方向で幾らPRしていただいても何にもなりませんので、大使認識で、少なくともこちらの大臣答弁と違った認識を持っておられる、こういう点を私は非常に心配をしておるのです。先ほど申し上げましたように、記者会見においては、全く日本話し合いの場に出ていない、話し合いの席に入らないということを大使がおっしゃっておる。しかも、これはジュネーブ予備交渉が中断をしておるときの記者会見なんですね。その辺は私は、いまおっしゃっていただいたように、今後十分こちらの意向がアメリカ側に伝えられるようにしっかりとやりますということでございますから、やっていただけるものと思いますが、私はいまの御答弁の中で、その辺のところを多少不満に思うわけなんです。いわゆる大使認識——私から言わせれば洗脳していただきたい。  どうも下田大使の場合、前の沖繩返還の場合でも、核つき返還でなければいけないのだというような発言をされた。結果的には核抜きになりましたからいいんでございますが、どうもその辺の認識が間違っているのではないか。もう少し国内の、日本政府考え方、こういうものをもっと的確にしっかりとつかんで、それに基づいて、いまの話のようによく向こうに伝えていただく、あるいはPRもしていただく、こういうことが必要かと思います、もう一度、くどいようでございますが、その辺大使認識が間違っておると思いますので、その辺を改めていただきたい、こういうお願いに対してひとつ御答弁をいただきたい。
  13. 竹内黎一

    竹内(黎)政府委員 政府の申し上げていることと大使言動とが非常に食い違っているという印象でありますと、たいへんこれは遺憾なことだと思います。その意味におきまして、ただいま御注意の点、なお徹底を期するように一生懸命やってまいりたいと思います。
  14. 武藤嘉文

    武藤委員 私がどうしてそういうことを申し上げるかと申しますと、結局、日本大使アメリカでそのような発言をされますと、向こうに帰って——私は今度の問題でも、一つはこの繊維問題をよけいこじらせる原因をつくったんじゃないか、こういう感じがいたします。そこで、なおもう一つ特にお願い申し上げたいのは、今度も吉野公使がお帰りになりまして、いろいろこれからこちらの覚え書きといいますか、あるいは対案ということばは当たらないと思いますけれども、いずれにしても何らかの形で向こう政府にこちらから回答が出されるわけでございます。どうか今後はそういう意味合いにおいて、出されたものは忠実に大使はそれを受け取っていただいて、忠実に向こうへ伝えていただく。決してその中へ個人的な考え方、個人的な予測、個人的な見解というものをプラスして向こうへお伝えにならないように、これを十分御注意お願い申し上げます。どうぞそういうことで、もうけっこうでございますから、それだけお願いしておいて、お忙しいようでございますから……。  次に、経済局長にひとつ承りたいと思いますが、アメリカ関税委員会が、輸入繊維製品による被害というものは現在のところ認められない、こういう判断をしておられると私どもは聞いておりますが、これは外務省として御承知いただいておりますかどうか、承りたいと思います。
  15. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生の御指摘になりました点は、おそらく一九六七年の十月にジョンソン大統領関税委員会に命じて調査させた結果のことであろうかと存じますが、その結果が一九六八年の一月の半ばごろに報告として提出されております。その段階で、アメリカ繊維業界には被害というものが考えられないということを言っております。その点、私ども十分承知いたしております。
  16. 武藤嘉文

    武藤委員 少しいまのお話で、古いことでございますが、昨年一年間、一九六九年、これは日本のほうの統計によりますと、日本からアメリカ輸出をされておる毛、化合繊の実績というものが四億八千六百万ドルで、一昨年と比較いたしますと伸び率は一二・七%であり、一昨々年に対する一昨年の伸び率の二八%からいたしますと相当低下をしておる、こういうことを私ども聞いておりますが、これも御承知いただいておると思いますが、いかがでございましょう。
  17. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 毛製品及び化合繊によりまして少しずつ違っているかと存じますが、私ども調査によりまして、数量ベースによりますると、日本からの対米輸出毛製品につきましては、昨年の一−十一月は、一昨年の一−十一月に比較いたしまして、一一・一%減という形になっておることを承知いたしております。また化合繊の場合には、同じ時期をとって考えてみますると、昨年の一−十一月が一昨年の一−十一月に比較いたしまして三三・五%の増になっているということも承知いたしております。
  18. 武藤嘉文

    武藤委員 その三三・五%というものの内訳はもう少しわかりますでしょうか。
  19. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 お答え申し上げます。  私の現在持っております手元資料によりますると、毛製品は一括いたしております。それから化合製品も一括いたしておりまするので、それをさらに詳細に分類したものは現在持っておりませんので、ちょっと申し上げかねると存じます。
  20. 武藤嘉文

    武藤委員 それは後ほどでけっこうでございますから、ひとつ参考にしたいので資料としてお願いいたします。  次に、最近アメリカへ財界から経済視察団が行っておられます。その方々のいろいろ新聞に発表されておるところを見ますと、アメリカ経済界の対日感情は現在非常に悪い、こういうお話を聞いております。また、何か四日の日に商務省デービス次官補相当強く日本通商政策非難をされた、こういう話も聞いております。実は先日吉野公使お話を聞いておりましても、吉野公使も、もし日本自由化方向をより一そう進めていただいておれば、このような繊維の問題についても私どもはやりやすいのではなかろうか、こういうような話もございました。また、今回日本へ来られることになっておるケンドールさんがいろいろ向こう新聞記者に語っておられる話を聞いておりましても、日本自由化のンポは非常におそい、こういうことで日本非難しておられます。こういう点から、考え方といたしましては、いま私が質問を申し上げておる繊維のような問題について、しかも日本側が言っておりますように、現在のところ被害が出ていない、万が一出ているならばその被害を立証できる資料を見せてほしい、それに応じて、もし被害がある、あるいは被害のおそれがはっきりしておるならば規制に応じようという姿勢、しかもそれは、あくまでもこれはガット十九条に基づいておるわけでございますから、そのようにガットの精神に基づいて解決をしていきたい、こういうことを日本は言っておるわけでございます。今後ともその姿勢、そういう筋はあくまでも通すべきであると思いますが、一方において、先方からいろいろ言われておりますこのような資本自由化あるいは残存輸入制限品目撤廃、こういうような問題についてはこちらも積極的に前向きに取り組むべきではなかろうか。こちらも向こうに対して筋を通して発言をする以上は、向こうからもこちらが非難を受けないように筋道を立てた政策をとっていくべきだと思います。後ほどまた大臣にこの点については承りたいと思いますけれども、まず外務省のお考え方をひとつ経済局長から承りたいと思います。
  21. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘になりましたとおり、アメリカのほうでは、近く来日いたしますが、ケンドール氏をはじめ、あるいはデービス商務次官補、あるいは国務省筋先方国会議員の人々、業界、すべて日本残存輸入制限というものがガットの規定に違反をして多数まだ残っているということについて批判的な空気が強いわけでございまして、特にアメリカ議会筋におきましては、この繊維問題にも関連いたしまして、日本がいろいろとガットルールに従ってやるべきだということを主張するのに対して、日本自身ガットルールに必ずしも従っていないではないかというようなことをよくあげつらうわけでございまして、この点、先ほど先生が触れられましたように、吉野公使残存輸入制限撤廃が着々と進んでいくということであれば、日本側の主張もそれだけ非常に強くなるということを言ったわけであろうかと考えるわけであります。  私どもといたしましても、外務省といたしましても、残存輸入制限の問題は、繊維の問題の始まる前から、先生御存じのとおり、一昨年の十二月十七日に閣議決定お願いいたしまして、それに基づいて昨年着々と進めつつございます。これはぜひとも、単に対米関係のみならず、対発展途上国関係、あるいはほかの先進国との関係等を見まして、またわが国国内のいろいろな物価政策の観点にも立ちまして、着々とこれは進めていくべきことであろうというふうに考えておりまして、関係各省と緊密な連絡をとりながらそれを進めてまいりたいと考えておるわけでございます。
  22. 武藤嘉文

    武藤委員 次に、大臣に御質問を申し上げたいと思います。  これはまだ速記録を私は読んでおりませんのでわかりませんが、三月三日に参議院予算委員会におきまして大臣が社会党の亀田議員お答えになっておるのを、私は新聞で拝見をしておるわけでございます。その答弁をここで私が新聞で見ますと、「アメリカとの友好関係を堅持しながら、両国が納得できる道を考えている。解決筋道の立つものでなければならない。現在はまだ対案をつくる段階ではない。」こういう外務大臣答弁でございます。それから通産大臣の御答弁が「両国間についての考え方には開きがある。処置を誤ると、両国間の対話がとぎれることを心配している。」、これは速記録じゃございません。新聞記事でございますけれども、私はこれを読んで、外務大臣のほうは筋を通すんだということで終わっておられるが、通産大臣の場合には、何か両国関係が悪くなるのが心配である、こういうほうにウエートがかかり過ぎた答弁のように私は思う。実はこれはいまもその感じで読んでおるのでございますけれども、私から言わせれば、やはり日本通産大臣といたしまして、ひとつ筋道のすっきり通った形においての解決ということで、以前からそうおっしゃっていただいておりますので、そういう方向でいっていただきたいと私はお願いを申し上げたいのでございますが、その辺これがほとんうであるかどうか。この記事のとおりかどうかは私も存じませんけれども、この御発言のその辺についての御真意をまず承りたいと思います。
  23. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 参議院予算委員会で概略そのようなお答えをいたしましたことは事実でございます。それで私としましては、亀田議員の御質問に対して外務大臣一つの面をお答えになりましたので、両方あわせてお聞きを願うという意味で、私がそちらの面をそのときに申したわけでございます。  私がそう申しました、そういうことを考えております背景は、先ほど武藤委員がまさしく非常に的確に御指摘になりましたように、資本自由化あるいは物の自由化について、わが国がOECDなりガットなりに加盟をいたしまして相当の時日がたちますけれども、しかも経済的には大国だと、少なくともよそから見られておるにしては、いかにもそのルールの守り方が十分でないということがこの問題の背景にございますので、そこで、この問題自身理非曲直を離れて、問題がそういうことに転化をしやすい、そういうことがございますということを実は申し上げたかったわけでございます。
  24. 武藤嘉文

    武藤委員 そういう面で、私それでは先ほど経済局長にも承りましたことに関連をいたしまして、大臣にひとつお尋ねをするのでございますが、いまのお話にございますように、資本自由化あるいは残存輸入制限品目撤廃ということでございますが、残存輸入制限品目の場合は、通産関係よりはどちらかというと農業関係が多いと思います。そこで資本自由化という面にできるだけしぼって私お尋ねをしたいと思いますが、具体的にいえば、たとえば自動車自由化の問題でございます。これは一応四十六年十月でございましたか、四十六年十月までには自由化をするんだということにきめられております。しかしながら、最近のアメリカ国内経済界のいろいろの動きとか、あるいはこの繊維問題にからんでアメリカの政界のいわゆる自由主義論者方々心配をされて御発言をしておられることをわれわれ聞きますときに、何とかこういう問題をいま少しやはり前向きで再検討するということはどうであろうか。四十六年十月にきめたんだから、それまではもうこれはきまったことだといって捨ておっていいものなのか。あるいはもっとさらにこれを再検討して、でき得るならば四十六年四月までそれを繰り上げるとかいうようなことも考えていいんじゃなかろうか、何か私はそういう感じでおるわけでございます。きのうの足立議員予算委員会で取り上げられたマイヤー大使の大阪における御発言においても、自動車の問題がたしか言われておったはずでございます。そういうことからいって、どうも私は、繊維の問題から関連をいたしまして、こちらが向こうに強いことを言う場合には、向こうから強く言われてこちらに弱味があるものについては、できる限りこの際、もうそれはすでにきまったものということにしないで、もっと積極的に進んでいく姿勢をとるべきではないか、こういう感じがしておるのでございますが、まずその自動車自由化の問題についてちょっと大臣のお考え方を承りたいと思います。
  25. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一般に、資本にいたしましても、物にいたしましても、自由化を進めていくということが、私はわが国の国益であるというふうに考えておりますので、むろんそれが対外的にいい影響を与えることも、これも見のがし得ないことではありますけれども、主としてわが国自身のためになる、こういうことから推進をしてまいったつもりでございます。そこで、ただいまの自動車の問題も、確かに一つのそういう問題であるわけでございますが、私、就任以来できるだけ早く自由化の問題について勉強し直したいと考えておりましたが、今日までこの繊維の問題がたいへん時間をとりまして、十分まだ勉強する時間に恵まれておりません。しかし、できるだけ早くもう一ぺん従来のことを勉強してみたいと思っております。  そこで、問題はいろいろあろうと思いますけれども一つの面では、わが国経済の成長が非常に急テンポでございますので、いまからしばらく前の時点で、このときぐらいにはときめましたスケジュールというものは、世の中の動きが早ければもう少し早まってもいいのではないかという武藤委員のようなお考えは、これは当然に私はあるだろうと思うのでございます。しかし、他方で一度スケジュールを与えました結果、関係業界がそれに対応していろいろなことを考えて準備をしていくといったようなこともまた事実あるのであろうと思うのでございます。でありますから、過去のことにこだわるという意味ではございませんで、そういう一度与えましたスケジュールに従っていろいろ準備が行なわれているであろうときに、それを変えることからどういう反作用が起こってくるか、この点も研究しなければならないと思っておりますので、その辺のところを少し詰めてこれから勉強をして見直してみたいと考えておるわけでございます。
  26. 武藤嘉文

    武藤委員 そういうことで再検討だけはぜひしていただきたい。その結果が、いまの国内業界の体制からいってやはり四十六年十月までは無理である、こういうことであるならば、またそれはそれで私はけっこうだと思います。ただ、日本政府としては、少なくとも向こうから指摘をされておるそういうものについては、積極的に前向きに取り組んでいくんだ、こういう姿勢をとることも、このような繊維の筋の通らない話を向こうへ押し返す一つの方法といいますか、一つのやり方として私は必要なことではないか、こういう感じを持っておりますのでお願いをしたわけでございます。  それに加えてもう一つ、これも非常にむずかしい問題でございますが、いわゆる資本自由化の問題に関連して、向こうからいろいろと、たとえば繊維も五〇%でございますけれども、そのようないわゆる五〇%、一〇〇%のあの自由化の面で、例のいろいろお取りきめをいただいたのがございますが、そういう業態についても、前にああいう形できまったということでそのまま移行しないで、やはりこういう現在の時代を考えて、あのパーセンテージについても、あるいは対象業種につきましても、再検討といいますか、いま一度検討を前向きでしていただく、こういう姿勢も私は必要じゃないかと思うのでございますけれども、その点についてもあわせてひとつ承りたいと思います。
  27. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 資本自由化は、御承知のように一次、二次が済みまして、ことしの秋ごろに第三回目の自由化を行なう。そうして最終的には昭和四十七年の三月までにまずあらかた終わる、こういうのがあらかじめ設けられたスケジュールでございます。そこで、御指摘になりましたように、その場合、われわれは五〇対五〇をさしずめの目標とする、ものによってはその後一〇〇に移行したものもございますけれども、こういうことできております。  そこで私は、これは御意見でございますから、確かによく考えてみなければなりませんと思いますが、一応五〇対五〇ということで、いま申し上げましたスケジュールをまず完了をして、その後にいわゆる比率というようなものに問題があるとすればまた考える。両方の問題を一緒に突き出しますとたいへんに整理が混乱するのではないかというような、どちらかというと、私はただいまそういう気持ちを持っております。しかし差しつかえないものについて一〇〇のほうに少しずつ移行させておることも、これも事実でございます。
  28. 武藤嘉文

    武藤委員 次に、具体的な問題について、たまたまこの繊細の問題に関連して、最近新聞をにぎわしておりますのは、アメリカのバーリントンと日本の三菱レイヨンさんとの提携の問題でございいます。これは新聞によりますと、三日に調印されたと聞いておりますが、この認可に対してはなかなかきびしい姿勢で臨まれるんではなかろうかと−特にこれは何か新聞によれば、カーペットなどの二次加工品に限るような資本提携のように聞いております。これに対しては、いまのところ非自由化品目でございますから、そうなると認可ができないということになるわけでございますけれども、私も新聞承知をしておる範囲でございますから、その辺のところ、はっきりまだ実態がどうであるのかわからないのです。これに対して現在通産省は何かお考え方を持っておられるのか、まだ何らこれについては通産省は関知をしておられないのか、まずその辺ちょっとお聞きしたいと思います。
  29. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 きわめて最近のことでございますし、内容も役所としてはまだ全面的には聞いていないようでございます。そこで、非自由化業種であるから云々というお話でございましたが、私は基本的にいずれの方向に向かっての予断も持たないでこの話を聞いてみたいと思っております。  確かに関係業界ではすでに反対を決議したところもございますけれども、そして、いわゆるタペストリー・カーペットというものがウイルトン・カーペットをだんだん駆逐していくような、そういう姿もあるのだろうと思いますが、それは一つの技術革新だということも言えると思います。そのような観点から、及び冒頭に武藤委員が御指摘になりました、自由化についての基本的な姿勢というものもございますので、閉ざされた気持ちでなく、予断を持たずに、少し事案の内容、それから関係業界に与える影響、賛否等々をそういう気持ちで検討してみたい、ただいまその程度に思っております。
  30. 武藤嘉文

    武藤委員 それでは、この問題について私の個人的な考え方を参考までに申し上げておきたいと思いますが、私はいろいろ国内の同業者に対する影響は、当然これは考えなければならないと思います。それに対しての手当てはしなければならないと思いますが、今日のアメリカ繊維業界のいろいろの意向を考えてみますときには、いま大臣からもおっしゃっていただいたように、私は自由化論者でございますので、私は、積極的にこういう問題は、たとえいま現在においては二次製品については非自由化品目であろうとも、こういうものについては、先ほど申し上げましたように、いままでこうセットされておるからどうということではなくて、もっと積極的に自由化でき得るならば認めてもいいんじゃないか、こういう方向で進んでいただいたほうが、少なくとも日本アメリカとの間の友好関係をそこなわなくて、結果的に繊維の自主規制をしなくてもいい方向へいくのではなかろうか。まれは、先ほどお断わりいたしましたように、あくまで私の個人的な見解でございます。私は実はそういう感じを受けておるわけでございます。こういう問題はこれだけではないと思います。これから出てくると思いますが、こういうふうに、アメリカ繊維産業の日本への進出という面については、私はできる限り受け入れ体制をよりよい方向へ持っていく、こういうことが必要であろうと思います。そういう私の見解−まあ、いまいろいろ御答弁をいただきましたので、ことさらまた御答弁いただきたいとは思いませんが、もう少しその辺について、大臣からもし何かおっしゃっていただけることがあれば、承りたい。
  31. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは少しくどくなるのかもしれませんが、一般に自由化という問題について、当面繊維の問題がございますけれども、それとは別に、自由化そのものは日本のためになるという考えは私も実は持っております。  このバーリントンと三菱の話でございますが、これは、したがって、当面の繊維の問題があるからどうこうというふうな考え方ではなくて、もっと根本的に、わが国の将来にとってこれがいいことかどうかというふうな観点から考えるべきものだろうと思います。で、御意見はたいへんに貴重なものとしてありがたく承りました。
  32. 武藤嘉文

    武藤委員 わが国の将来についてという大臣お話でございますが、そして特に繊維の問題が、いまこういうものが出ておるからどうということでなしにというお話でございましたけれども繊維の問題がいま相当政治的な問題−あくまでこれは経済的なベースで解決できる場合であれば、私はそれが一番いいと思います。しかしながら、政治的なものを加味しなければならないというのが両国の実情であるならば、私は、こういう問題にやはり政治的な問題をからませていいんじゃなかろうか、こういう感じを実は持ちましたので、いまのような御意見を申し上げたようなわけでございます。  時間がないものでございますから、それではたいへんはしょりまして、次にもう一つ繊維の問題で最後に承りたいと思いますのは、三月五日の日経新聞に、結局、今度の繊維対案というものを事実上の方向転換をして、いわゆる二十八品目ではなくして、これを読みますと商品に対するアメリカの輸入率が非常に高くて、かつ日本からの輸入が急増している品目に限ってその資料の要求をする。それについてはその基準が、一応米国内の輸入比率五%以上、対日輸入増加率が一九六九年で前年と比べて五〇%以上、こういう線でやると、セーターとかブラウスとかニットシャツとか、四品目ばかりが一応対象になるような形に書いてございました。これが事実といたしますと、すでにもうそのような品目については、こちら側としても規制をしてもいいという心がまえで向こうへそのような資料の要求を出さされておるような感じを受けるのでございます。これはほかの新聞には出ておりませんが、日本経済新聞だけに出ておりましたので、これは、日本経済新聞がそういうことでしっかりとうまくニュースソースをとられてやられたのか、あるいは多少日本経済新聞の憶測なのか、私もよくわかりません。これについてひとつ大臣、あるいはもし何でございましたら局長でもけっこうでございますが、その真意、真偽につきましてお答えをいただきたいと思います。
  33. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その記事は私も読みまして、いろいろ勘を働かされた報道であろうと思いましたが、事実ではございません。私どもが、今回アメリカ側に対してはっきり誤解のないように申しておこうとしておりますことは、いわゆる包括規制というものはガットのものの考え方からしてもあり得ないのである、こういうことでございます。したがって、前回求めました資料は、たいへんにたくさんの品目について、いわば包括規制を裏づけるようなつもりでつくられたと思うような資料でございました。そういうものはこの際問題にならないのであるということを強く申してやろう、こういうことでございますので、そこにそういう推測が出たものかと思いますが、私どもは、そういうふうな品物の選び方をして、その資料を求めておるということではございません。
  34. 武藤嘉文

    武藤委員 時間がなくなりましたので、きょうの私の質問は、まだほかに、中小企業の税制の問題、また金融の問題で御質問申し上げたかったのでございますけれども、ただ一つその問題について伺います。  最初の金詰まりの状況、これは、昨年九月に引き締めをやりましてから、少なくとも昨年一ぱいにおいてはあまり影響が出ていなかった。しかしながら、本年に入りまして、いろいろ私ども聞いておりますと、大企業においても相当金繰りが苦しくなってきた。それが最近二月以降徐々に中小企業に及んできた。たとえば具体的に申し上げれば、一つの製品を中小企業から大企業へ、あるいははっきり言えば下請からその上の会社へ納入をする。そうすると、その納入した品物をすぐそこで検収を受けて、それから六十日なり九十日のサイトの手形で決済がされる、あるいは半分手形、半分キャッシュということで決済がされる、こういう形で進んでいくのが普通でございますけれども、どうも最近二月、三月ごろ銀行あたりで聞きましても、また業者に聞きましても、そういうルールがくずれてきて、検収は品物を使うとき、あるいはそこまでいかないにしても、一月くらいほっておいてから検収をやるということは、一月サイトが延びているということであります。こういう形がだんだん出てきておる。こういうことを私ども聞いておりまして、この五月あるいは六月過ぎになりますと、相当金詰まりの影響というものが中小企業にしわ寄せをされるのじゃないか、こういうことを私は非常に心配をいたしております。あの去年九月の金融引き締めのときには、少なくとも中小企業にはこのしわ寄せは持っていかない、こういうことで金融引き締めがあったわけでございますが、最近の情勢はそういう点で非常に心配されるものがある、こういう感じを持っております。  特に、中小企業庁をかかえておられる通産大臣といたしまして、全体の金融引き締めというものをいつ緩和するのか、いま日銀、大蔵省あるいは通産省と多少考え方に違いがあるやに新聞でも私ども読んでおるわけでございますけれども、そういう全体の金融の問題は別といたしまして、最近そのような状況がいろいろと出てきている中小企業に対して、少なくとも今後において中小企業の倒産が非常にふえてくるということのないように、倒産してしまってからではおしまいでありますから、この際、そういうものについては事前にきめこまかい手を打っていっていただきたい、こういう感じがしておるわけでありますが、この点について大臣の御所信のほどをひとつ承りたいと思います。
  35. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 現在の金融情勢は、確かに武藤委員の御指摘のような事柄の起こりやすい情勢だと思います。過去でございますと、まず検収をおくらせる、それから現金比率を落とす、手形のサイトを延ばす、こういう順序で起こってまいりました。そこで私、実は就任早々でございましたけれども、もういまから一月近く前に、どうもそういうことが起こりそうなので、そこで、むやみに設備投資を押えろという意味ではなく、設備投資をするのならば、その資金のソースを私どものほうでも明らかに把握しておくことを考えておかないと、結局、自己資金とか銀行とかいっているもめが、最後にはもうそれがありませんと下のほうに押しつけるということになるわけでございますから、少しその辺を今度ははっきりつかもうではないかということを、企業局長中小企業庁長官に申しておきました。そういう心がまえでやっておるようでございますが、政府といたしましては、中小企業関係の三つの金融機関、あるいは信用保証協会でありますとか、いろいろな準備は第四・四半期にもいたしておりますし、御審議願っております来年度の予算、財投でもかなりお手当をお願いしておるわけでございますけれども、それにしても、こういうときにはそういうことが非常に起こりやすいのでございます。実は今日も経済閣僚の懇談会がございまして、総理大臣から、特に日銀総裁並びに私どもに対して、いまの金融の基調はそれでいいとしても、こういうときには中小企業に非常にしわが寄りやすいので特に配慮をしてもらいたいという指示がありまして、それに対しての日銀の総裁も、ともかく問題は四−六月というあたりかと思うので、四−六月の貸し出し規模をどうするかということはしばらくおくとして、そのあんばいなどについては、いま御指摘のあったように、まさしくこの問題を考慮に入れなければならないのではないか、こういうようなことでみんなの申し合わせがございましたような次第でございます。
  36. 武藤嘉文

    武藤委員 ひとつよろしくお願いをいたします。では私の質問は終わりまして、一言だけ関連お願いいたします。
  37. 海部俊樹

    ○海部委員 大臣繊維のことに関連しまして二つ御質問したいと思います。  率直に申し上げますと、大平大臣が何回もお答えになったことは、日米繊維問題に関しては、二国間であろうと多国間であろうと、自主規制を前提とした交渉には一切応じない、こういう御答弁でありましたが、大臣がおかわりになってから、町の声もございますけれども、何か宮澤大臣にかわられてから新聞の論調も少し変わってきたのではないか。率直に申し上げますと、宮澤大臣の気持ちの中には、これは何とかまとめなければならぬというようなお考えがあるのではないかという声がちまたに伝わっております。  同時に私どもに入ってきます最近のいろいろなニュース等も、どうもPR不足というようなことが先ほど言われておりましたけれども、たとえばアメリカ大使館がウイークリーとしてわれわれに送ってまいります情報文化局のパンフレットを読んでみましても、マイヤー大使の非常にきびしい発言が載っておって、ひょっとしたら、これは、日本があまりぐずぐずしておると立法措置をとるかもしれぬぞというような、含みのある内容のことが書いてあります。これはアメリカ大使館が出すものですから、まあPRをやっておると私は思ったのですが、「今週の日本」という新聞があります。これは政府直営ではないかもしれぬが、政府の意向を大幅にくみ入れて、それをPRする新聞だと思うのですけれども、この「今週の日本」という新聞でさえ、「こじれた日米繊維交渉」という題で、日本の抵抗に向こうは憎悪感を生む。ニクソン大統領が高度の政治的配慮を要請して沖繩を核抜き本土並みで返したんだから、「こんどは日本政府が同じ理由で高度の政治的配慮をするときである。そうでなければ、このこじれた問題は、日米関係のいろいろなところに飛火しないとも限らない。」こういうことが堂々と書いてあるわけであります。いろいろなことを総合判断しまして、高度の政治的判断ということで押し切られたとなると、これは繊維産業にとってはたいへんなことでありますし、何しろビフテキとバターでできた考え方にお新香とみそ汁で挑戦するわけでありますから、宮澤大臣もたいへんだと思いますけれども被害のないところには規制はないというお考えを、恐縮ですが、ここでもう一回大臣として明確にお答えをいただいて、現実に被害の立証されない限り規制には応じないという基本態度を貫いていただきたい。これがお願いできるかどうか、これが第一点であります。  それから第二点は、いま繊維交渉は日米交渉だけに限定されたような感じがいたしますが、繊維業界全体の立場から見ますと、繊維というものは日米以外にもいろいろと関係があるわけであります。特に、私の聞いております範囲では、EEC諸国との繊維交渉、これが日本にとってたいへん不利益ではないか。もっと極端に言うと、EEC諸国には弱腰どころかものも言っていないんじゃないか、こういう風評が強いわけであります。そこで特に、日本は今度毛織物なんかを自由化したわけでありますから、わがほうは毛織物の輸入を自由化しておいて、EEC諸国への輸出は依然として非常にきびしい数量制限を受けておる。特に西ドイツのごときは、ドイツと日本との総ワクは、日本の一メーカーがそれを行なって十分な量だ、こうまでいわれております。日米交渉と同時に、対EEC諸国との繊維交渉はいまどうなっておるのか。これは前向きの姿勢で打開してやっていこうというお考えが通産省にはおありなのかどうか、この点をお尋ねしたいと思います。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 第一点でございますが、被害のないところ規制なしという原則を確認するかというお尋ねでございます。確認いたします。  そこで、前大臣と私のこの問題についての姿勢のニュアンスが違うではないかということでございますが、私は、あるいはそうであるかと自分でも多少意識をしております。と申しますのは、率直に申しまして、私はこの問題はほっておきますと非常にあぶないという感じを持っております。そのあぶないという意味が、先方に理があるとか、争いでどっちが勝ったとかいう、単純にそういう意味ではなくて、いろいろ誤解に基づいてあぶない事態が起こるということもございますし、意思の疎通が欠けて思わないところへいってしまうということもございますので、そういう意味で私は、よほど注意をしないと非常にあぶない問題に発展すると思っております。それでございますから、私がこの問題をとにかく突っぱねていればいいのだというのでない姿勢をとりました意味は、そういう認識が私なりにあったから、また現在あるからでございます。しかし、そうかといって、私もかなり長いことガットや何かのことをやってまいりまして、幾らか知っている面もございますので、先ほど言わわれました、被害なきところ規制なし、この原則は確認をいたします。  次にEECとの関係でございますけれども、これはもう海部委員よく御承知のとおり、わが国が一九六一、二年ごろ、それらの国とガット関係に入りたいということで、終戦後の不規則の状態を解消しようといたしました際に、残念なことでありますが、いろいろな代償を払わなければならなかった。それが現在EEC各国並びに英国がわが国に対して持っております特別の差別でございます。毎年この差別は、外交当局の非常な努力によりまして、貿易協定のたびごとに数を減らしてまいっておるわけでございますが、繊維とか陶磁器とかいうものがやはり一番まだ残っておるので、これはしかし非常に努力をして、こちらからも出すものを出しまして、減らしてきておる歴史でございます。アメリカもよくここを誤解いたしまして、お前たちはEECに対してはこういう規制をしておるではないかというようなことを申しますが、それは実はわれわれにとりましてはまさに屈辱の歴史なのでありまして、それをいま取り返しつつあるというのが現状でございます。
  39. 八田貞義

  40. 横山利秋

    横山委員 繊維に対しましては、私よりも専門家の加藤委員あとで詳細に聞きますので、私は二、三、これだけはここを聞いておきたいと思う点にとどめたいと思います。  それは、いまちょうど海部委員がはしなくも言ったわけでありますが、要するに、いま大臣が言われた、ほかっておくとあぶないという感覚と、被害なきところに妥協、譲歩なしという感覚との相違点が、問題の一つの焦点になっておると思うのであります。繊維業界をはじめ日本国民は、おれに何も関係ないじゃないか、被害はないではないか、アメリカ側は何を言っているかという気持ちが一ぱいである。そうしてこのことを日本政府が正しくアメリカの在外公館の諸君に伝えていないのではないか、また公館の諸君は正しくアメリカ政府に伝えていないのではないか、アメリカ政府の官僚は大統領に正しく伝えていないのではないか、なぜ伝えられないのだろうか、ニクソンと佐藤の会談によって頭を押えられているから伝わっていないのでないか、こういう感覚であります。  それで、大臣の言うところの、あぶないのではないかということばは、アメリカ政府並びに在外公館が言っておることでありますが、一体あぶないとは何だ、具体的にどういうことなんだ、これを明らかにしてもらったほうがかえってさっぱりすると思います。
  41. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、先ほど武藤委員がちょうど御指摘になりましたように、わが国ガットあるいはOECDに加盟いたしましてから長い年月がたつにもかかわらず、しかも経済的には相当発展をいたしましたのに、それらの国際機関から課せられたルールを十分に履行していないということについての批判、これは、いろいろそれについての弁解なり理由はありますにしても、批判としては正しいのでありますから、そういう問題に転化をしていく、こういうことでございます。
  42. 横山利秋

    横山委員 本件に関する限りにおいてはどうなんですか。何があぶないのか。何もあぶないことはないでしょう。
  43. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 本件に関しましては、われわれはアメリカのいう包括規制というようなものはガットの精神の違反であるということを指摘しているのでありますけれども先方は、それならば貴国のやっておることはもっと何倍もガットにもOECDにも違反をしておる、こういうやりとりに発展をするのであります。
  44. 横山利秋

    横山委員 本件に関する問題については、理論的にも何らわれわれは譲歩する必要はない、こういうことについては、重ねて大臣が、また閣僚が言っておることでありますから、国民としては、本件に関する限り譲歩は認められないという点については明白だと思うのですが、違いますか。
  45. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、先ほど海部委員にも申し上げましたとおり、被害または被害のおそれなきところ規制なし、この原則は私ども譲れない。
  46. 横山利秋

    横山委員 そこのところが大事なことなんですが、そうすると、本件に関する限りにおいては、いま大臣のおっしゃったように、被害がないのだから譲歩する必要はない、包括規制に応ずる必要はないということは明白なんです。だから本件に関する限りは、その既定方針で何ら誤りもないし変更する必要もない。ところが、どうも雲がかかるように思われるのは、ほかの問題に火がつくからといまあなたはおっしゃる。それでは端的に聞きますが、ほかの問題に火がつくおそれのある場合には妥協するとおっしゃるわけですか。
  47. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そう申し上げておるのではないのであります。  まず第一の問題。本件については被害または被害のおそれがないと横山委員は断定をされるわけでありますが、私どものただいまの立場は、アメリカから送られました資料についてはにわかに被害または被害のおそれを認定することができない、したがって追加の資料なり説明を承りたい、これが私どものただいまの態度でございます。  後段の問題は、したがってわれわれは、本件についてはガットの原則に従って解決すべきだ、この主張はいつまでもいたします。それに対して先方は、それならばガットの原則に照らして貴国にもいろいろものを申したいことがあるではないかというような議論に発展いたしますと、その行き先というものは、せっかくガットで自由貿易をやろうという基本的な流れがありますのに、もうそれでは、そういうガット的なものの考え方はやめるか、自由貿易というものの旗をおろすかということになれば、これはわが国にとっても、またおそらく先方にとっても非常に不幸なことである。アメリカ国内がいま御承知のようないろいろな事情で、たださえ世界からからの中に閉じこもろうという風潮がございますので、そういうことと合わさりますとなお事態は危険である、こう申し上げておるのでございます。
  48. 横山利秋

    横山委員 これはこれ、あれはあれ、アメリカがあれのほうを持ち出してくれば、まだ幾らでも言うことはあるのですよ。問題は、重ねて言って恐縮ですけれども、そのことを政府が常に意識している限りにおいては、繊維業界なりわれわれが心配しておるような結果に政府が首を突っ込んでいくのではないかという心配が常に存在している。かてて加えて、沖繩との問題で佐藤総理が取引したのではないかという疑惑が常に存在している。後者のほうがそうでないとするならば、事この問題に関する限りはきちんと筋を通さなければいかぬ。他の、あれはあれのあれのほうに首を突っ込んでしまっては、どんなに政府解決案を示し、あるいはいろいろなことをやったところで、国民や業界の疑惑は解けない、こういうふうに思うのですが、その点だけもう一ぺんはっきりお答えを願いたい。
  49. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 沖繩云々のことにつきましては、もう総理大臣が幾たびも公開の席で言明をしておられますので、私から繰り返し申し上げることもないと思います。  そこで、私どもはこの問題について筋を通してまいりますが、その反面で、それならばその他の問題についても筋を通さなければ、今度はこちらが筋を通すことを求められるということを覚悟しておかなければなりませんが、それがすぐに即応できるかできないかということになれば、御承知のように、問題は非常にたくさんあるわけでございます。そういうやりとりの結果、お互いが全部について筋を立ててしまえばそれでよろしいわけですが、そうではなくて、もうそういうガットのようなものの考え方をやめようということになれば、これは非常に不幸な事態だと思うわけでございます。
  50. 横山利秋

    横山委員 あとのほうの答弁がいかぬと思います。率直にいって私は心配でなりません。しかし、あと加藤委員からさらにお話があると思いますから、私はひとつきのうの予算委員会に続いて、商品取引の問題について少し質問をいたしたいと思います。  繊維の問題は、いまの話のように、被害がないとわれわれは考えている。しかし商品取引の問題は、国民の中で実に全国にわたって被害が現存して、膨大な紛議が出ておるわけであります。時間の関係上簡潔にお答えを願いたいと思うのでありますが、まず、四十二年の四月から四十四年の十月までの、取引所段階あるいは仲買い人段階において届け出られた紛争の件数並びに金額はどのくらいあるか、伺いたいと思う。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府委員からお答え申し上げます。
  52. 両角良彦

    ○両角政府委員 委託者から出されました紛議の件数でございますが、四十二年度は三百二件、四十三年度は二百七十三件、四十四年度上期百二十三件ということになっております。
  53. 横山利秋

    横山委員 私が申し上げている時期について、なぜ私が言っているかということをあなたは御存じないのでありますか。この期間、約二年半の間に届け出られた表を全部予算委員会に出してもらいたい、こう言って私は要求しているから、きのうに続いて要求しておるわけです。そこに意味があるわけであります。その二年半の間に届け出られた数字というものは、すでにあなたのほうの手元にあるはずであります。
  54. 両角良彦

    ○両角政府委員 御指摘の期間だけをとりますと、総件数で千四百六十件、金額十四億六千八百万円でございます。その中で千三百五十件、九億四千五百万円が解決済みということに相なっております。
  55. 横山利秋

    横山委員 仲買い人の段階においてあった紛争の件数並びに金額はどのくらいですか。
  56. 両角良彦

    ○両角政府委員 ただいま申しました数字は、仲買い人に申し出のございました紛争の件数でございます。
  57. 横山利秋

    横山委員 どうして数字がそう違うのでありましょうか。私の調査いたしましたのは、取引所段階においては、解決済みが九億四千六百万円、未解決が五億二千三百万円、仲買い人の段階においては五億四千百万円、六千二百四十六件、合計いたしますと、まさに二十億二千万円になんなんとする金額になっておるのでありますが、なぜ違うのか。
  58. 両角良彦

    ○両角政府委員 先ほど申し上げました数字は、当省におきまして、主要な仲買い人五十五社から任意に提出されました数字を集計したものでございます。
  59. 横山利秋

    横山委員 あなたのほうに私が要求しております事故の総括表をこの際本委員会に提出を願いたいと思いますが、いかがですか。
  60. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨日も予算委員会で申し上げましたとおり、通商産業関係のものでございましたら、業者の申告を取りまとめまして資料としてお目にかけることができると思います。
  61. 横山利秋

    横山委員 農林省は来ていますか。−農林省は、通産省が出すというのをなぜ出さないのでありましょう。
  62. 小暮光美

    ○小暮政府委員 昨日農林大臣お答えになりましたとおり、ただいま、明年一月の許可制移行を前にいたしまして、各種の調査をいたしております。御指摘の問題は、関係の仲買い人から自主的に申告させたものの一部集計にかかわるものであるというふうに存じております。これらのものにつきまして、許可制の運営のためにただいまいろいろ検討いたしております経過の途上での資料でございますので、それの公表を差し控えたいという趣旨でございます。
  63. 横山利秋

    横山委員 通産省が出すというのに農林省が出さないのはどういうわけかと聞いておる。通産大臣は、さらっと出す、こう言っておる。あなたのほうだけ、さらっと出さないだけの理由があるなら、聞かしてほしいといっているのです。
  64. 小暮光美

    ○小暮政府委員 繰り返しになりますが、許可制移行の仕事を厳正に実施いたしたいということで、今後も各種の資料をとりたいと思っておりますが、そういう意味で、仕事を進めております際の資料でございますので、公表を差し控えたいということでございます。
  65. 横山利秋

    横山委員 通産省だって農林省だって、仲買い人及び取引所の出した資料を集計したにすぎない。通産省なり農林省なりがそれについて念査したものではないということを、私は百も承知しておる。その意味においては、通産省は、内容に責任は持ちませんが報告されたものを出しましょう、こういう意味だと私は思うのです。それはそれでよろしいというのだ。それならば農林省はなぜ出さないか。農林省はなぜその理由で出せないかということを私は聞いておる。何かほかに理由があるのか。通産省はこうであるけれども、農林省はこういう理由で出せないというその理由を言え、こう言っている。同じことですよ、明年の一月の許可基準は。
  66. 小暮光美

    ○小暮政府委員 ただいま申し上げました以上、全く他意はございません。
  67. 横山利秋

    横山委員 他意はないといったって、こっちにわからぬじゃないか。答弁にならないじゃないか。  これは、お聞きのとおりのことでございますから、委員長、ひとつ善処を願いたいと思うのです。
  68. 八田貞義

    八田委員長 横山君に申し上げますが、本件の問題につきましては、理事会にはかりまして善処いたします。
  69. 横山利秋

    横山委員 理事の諸公にお願いをしたいのでありますが、事情はお聞きのとおりであります。通産省は出す。同じ報告書ですよ。通産省は出す、農林省は出さない、こういうんですね。その理由が私にはどうにも納得できない。ですから、理事会におかれましては、ぜひひとつ、これは理事会の決議をもって資料提出を農林省に要求をしてほしい、こういうふうにお願いをしておきたいと思います。  ここにひとつ、板橋区の国谷さんという奥さんから参りました手紙を皆さんに紹介したいと思うのであります。たくさん来ておりますが、全部読み上げるのがめんどうでありますから、時間がございませんので、恐縮でありますが、この国谷さんで代弁をしたいと思います。  忘れも致しません。去年の四月二十九日、若いセールスマンが来て、何かグラフ用紙を出して話しかけました。今が一番良い買時で、よその人は五百万銀行から借金して四百万円短期間に儲けました。間違いない、絶対儲けてあげるから買いなさいと、あまりしつこく言うもので、年も子供と同じぐらいで、最小限度の予約をしました。三十五万円だという。  翌日になって、お金の都合が悪いので、午前八時四十分にことわりました。すると次長と言う人を連れて、予約したのだから是が非でもと言って、人は働くだけでは限があり、頭は使い用でいくらでも儲けられます。私は何も知らないのでいやだとことわったのですが、専門家の僕がついているから心配いらない。更に私はこの取引新聞にものっていると写真を見せ、外国へも会社から行かせてもらった腕前だと自信あることを言って最初少々儲けさせ、あとはかってに買い、金を払わせる。そして、追加証拠金が出た、百七十五万出さなければ全部損金になる、是が非でも出せと言う。これ以上金は出せぬといえば、保険つなぎとして売と買を買うから心配ない、「まかして下さい」と言うけれど、この売りを切るのは非常にむつかしいが、僕は上手にやってみせます。そして百七十五万円追証拠金を払わされた。五月二十一日、これだけでは損金はとりもどせない。他に百七十五万円都合してくれ、一生懸命やりますと言う。  本店に電話したら、損金百五十万だから切れと言う。次長に切ってくれとどなったが、切ってくれないので、よその人に強く切ってくれと言ってもらい、農林省に訴えると言ったが、切ってくれない。すると次長が自動車で乗りつけて来て、さっきの人は誰だ、商品取引の仲間だと話が違うと言え、とにかく又百七十五万用意してくれ、みすみす百五十万損することはない、絶対取りもどす、私を信じてほしい、最後までついてきてくれ、僕の目を見てほしいと眼鏡をはずし、じっと私を見て、政界の人の玉も多くまかされている、選挙のときはその儲けた金を一度に引き出して選挙資金にあてるのだから、僕は毎日勉強しているとのことで、私が何か取引きの本をかして下さいと頼むと、奥さんは用事が多いから電話口に出てくれればそれでいいので、損金は取り返してあげますからと言う。  六月九日、利益金が出た、喜んで下さい、誰かお金持ちの人を紹介してくれとの事を言うが、とんでもないと言った。が、私のお金は全部建玉となっているとのことだった。  六月十日、臨時増の金がいる、二百万用意しなさい、何とかなるだろう、金をつくれと言うので、損金が出ては大変と思い、銀行から借金をした。  老母のへそくり五十万を無断で渡し、十一日、ぞくぞく損金の伝票が送られ棄て、びっくりして本店に電話したら、自分でやることですよと言われる。三百九十万円の損金が出て、もうやめてほしいと行き、この様な世界だとはちょっとも知りませんでした。家の中が目茶目茶になり、男子の子は家に帰らず、誰れにも話すことが出来ず、上京して来た老母は、これが最後の別れになるだろうと、八十五歳の身で私のあまりにも変りはてた姿を見てすい事をしてくれたが、倒れてしまい、姉の所に行ってもらい、どうやめようとしても社員は切ってくれない。そこで商品取引の他の人におそわり、やっと全部切ることが出来ました。翌日「まかしてくれ」と言ったセールスが、取引所に電話をかける様書いてあったので、電話すると、支店長がすぐとんで来て、もう済んだ事でだめだと言う。そこで翌日、済んだ事はだめなものかと取引所に言ったら、本店から四人して、セールスは一生懸命やったが裏目に出ただけで仕方がない、道徳的には悪いが、法律的には悪くないのだといっていうだけ。一枚の用紙を出して押せと言う。私は何が何だかわからず、目はかすみ、頭はぼうぜんとして印を押してしまった。すると、十万円の見舞金を子供にやってほしいとおいて帰った。  その後私は、会社は法律的には悪くないと言ったが、どうしてもなっとくいかず、取引所や農林省にも何度も足をはこびました。ところが取引所の某氏は、人のいない時を見て、こことここが問題ですから、この所を話すのですよと言って下さった方もあり、又私の直接担当者も具体的に問題もおしえてくれるし、その会社のそういった手口も話して下さいました。  この様にして悪質業者は無知なる私達を無理やりにやらせ、最後には丸裸にし、平然としているのです。  どうかよろしくご理解を下さいまして、よろ  しくお願い致します。  農林省に聞きますが、いま早口で読んだのですが、事はおわかりだと思うのです。この国谷さんの体験を通じて仲買い人のとった違法措置は何と何であるか、まず聞かしてもらいたい。
  70. 小暮光美

    ○小暮政府委員 かなり広範な内容でございましたので、あるいは聞き落としがあるかもしれませんが、私が拝聴しておりまして、一つは、やはり勧誘いたします際に利益保証と申しておりますが、損はかけないというような言い方をして勧誘をしております点、これは御承知のように、利益保証あるいは一切の売り買いをおまかせくださいという一任売買というようなことを勧誘にあたってしてはならないということが、明文で規定してございます。その法九十四条の違反に相なると思います。
  71. 横山利秋

    横山委員 それだけじゃないよ。そんなことくらいで済まぬよ。もうないですか、違法行為は。農林省、もう違法行為はないのかね、あなたの言うだけで。そういうことだからだめなんだよ。それだけかね、違法行為は。  通産省、どうですか。
  72. 両角良彦

    ○両角政府委員 ただいまの農林省の御答弁にもございましたように、不当勧誘行為が行き過ぎたという点は、私どもとしてはなはだ問題だと存じますが、さらに、売買を途中で委託者の要望によりまして打ち切ることを拒否いたしまして、一任売買を継続させたという点は問題だろうと思います。
  73. 横山利秋

    横山委員 それだけですか。もう両省ともこの文の中に違法行為はほかにないと思いますか。見当がつきませんか。私は、両省がこの現場の状況、いまのこの違法状況について現実認識がたいへん乏し過ぎるということを痛感をいたします。早口で読んだからどうかということはありますけれども、専門家であれば、まだまだこの中に、幾つも幾つも違法行為があるということをおわかりのはずではないか。まず第一番に、戸別訪問をしてうちへ行って、お金をもらって商売をしておるということが最初に出てこなければならぬじゃないですか。どうなんですか。戸別訪問の違反行為はどうなんです。
  74. 両角良彦

    ○両角政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、不当勧誘行為が非常に遺憾であると申しましたが、不当勧誘行為の中身といたしまして、ただいま御指摘を賜わりました戸別訪問、これは必ずしも法律上違法というわけではございませんが、現在、取引所におきましては、さような不当勧誘行為と見られるような戸別訪問、あるいは電話による勧誘、あるいは不当な広告、こういうものは自粛をいたすというようなことに相なっておりますので、さような精神に反するような行為であったということは言えると思います。
  75. 横山利秋

    横山委員 いま登録外務員が八千三百人ですか。それに登録されてない外務員がその倍の一万六千人。約二万四千人ぐらいの人たちが一体毎日何をやっていると思いますか。全部外へ出て、この国谷さんの体験したような戸別訪問をやっているんですよ。あなた方はそれをどう思っているんですか。この週刊朝日に「私は四十九人のお客をコロした」という手記が出ている。この手記を見ますと、全く驚くべきことではあるけれども、現実問題としてはどこでも行なわれていることであります。  「最近、取引について紛議を申したてる客が多くなったが、やかましい客には、「私は若いからやり直しがきくが、裁判にでもなって、事態が大げさになった場合、あなたの立場はどうなります」とやり返すと、たいてい、黙ってしまう」。それから「「役所の監査があると大変なんです。われわれは名刺や個人別の営業記録を車のトランクに押込み、監査が終るまでドライブに出かけるんです」」。電話勧誘をしておるときの雰囲気として、電話勧誘をする朝のときには一斉に全員が立つ。「すわっていては、腸をふりしぼって出すような迫力のある声は出ない、というわけだ」。「得意客のダイヤルをせわしなく回す。相手がでたら「モシモシ……」などとやったら、大目玉を食う。息せききった調子で、「アッ、△△さん。小豆が暴騰してます。買っときます。買っときますよ」とたたみ込む。隣では、まるめた新聞紙で机をポンポンたたきながら「私を信じなさい。身上をいまこそかけるときです」と絶叫。「あっ、またあがった。中共からマメははいりませんよっ」」。これは何にも電話をかけてない。一人の人がやっておるときに、八百長で答えて、聞こえるようにやるんだという。そう言って、「「あっ、お客さん、ただいま北海道の現地から調査員が帰って参りました。現地の様子を直接、きいて下さい」そういって、受話器を仲間に渡す。その朝、会社の寮で一緒に朝飯をくった仲間だが、そこは手なれたもの。ハーハー息をはずませながら、「あっ……ど、どうも。北海道は不作……」、品薄になれば、相場は上がる。たいていの客は、ここで陥落する。不思議なことに、相場が上り調子のときに、さかんに「売り」をすすめているグループがある。この客は「売り」に食いつきそうだとみれば、相場が「買い」であろうとなんであろうと、「売り」をすすめるのだ」。こういうわけですね。  私はこの記事を見まして、これが全部が全部そうだとは思いませんよ。しかし、いまの仲買い人の状況からいってありそうな雰囲気だとほんとに痛感をするわけであります。「契約をとることは客をト殺場に送るようなものだが、それでも私は何度か客を救おうとした。電話攻撃の際、上司の目の前でニセ電話をかける。わざと相手の電話番号の末尾番号を回さないでおいて、一人芝居するのだ。これも、もし上司が「オレが代る」といえば、万事休す。そこで私は客と、あらかじめ〃暗号をきめた。「ボク」といったら、私が責任をもつから信用して売買をして大丈夫。「私」といったら上司にムリやりいわれてのことだから要注意——それはト殺場にかり出されたセールスマンとして、ささやかな良心の抵抗だった」、こういうわけなんであります。  こういうようなことが日常茶飯事のように行なわれている。もうかるから買えと言っておきながら、自分の会社は自己玉を売る。客の売り買い々取引所を通さないのみ行為。元本保証とうそをつく。してはならない戸別訪問をする。客がいやだと言っても引き延ばす。証拠金がなくなっても家に知らせない薄敷き。計算書を送っても証拠金は仲買い人がのみ込むガブのみ。かってに売り買いして計算書だけ送るむちゃくちゃな電話勧誘。こういう状況はこの際処置をしなければならぬと私は痛感をします。きのうは予算委員会で、短い時間ではございましたけれども通産大臣お答えを願ったわけでありますが、根本的な問題であって、単に仲買い人の営業姿勢を正すということだけ——それもやらなければなりませんが、それだけでは、一片の通牒だけでは絶対これはなくならないものだと痛感をいたしますが、あらためて通産大臣の所見を伺いたいと思う。
  76. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は昨日横山委員から予算委員会でいろいろ御指摘がありまして、農林大臣御自身も、答弁されましたようにかなり実情を御存じのようでございます。それからたまたま私も、役人としてではございませんでしたが、過去何年かの間に幾つかのそういう訴えを聞きまして、関係方面に善処方を求めたこともございましたために、問題については多少の認識を持っております。そこで、実は農林大臣と二人で予算委員会後に話し合ったことでございましたが、どうも事柄は非常にひどいことになっているようだ、したがって両省の責任事務当局で少し根本的に問題を考え直そうではないか、二人でこういう話をいたしました。  考えてみますと、商品取引所というようなものは、本来の正当な機能は当然ありましたし、現在もあるわけでございましょうが、一般の大衆がいろんな形でこれに結局引きずり込まれて、はなはだしいスペキュレーションの場になっておるということもまた事実だと思います。しかも、それは当初の取引所法の意図するところではございませんでした関係もあって、どうも行政のほうがそういう思わない事態の発展に対して十分に措置をしないままで今日に及んでおるのではないだろうか、そういう感じが私としてはいたしております。したがって、御指摘のありましたような点について、農林、通産両省で少し基本的に問題を洗い直してみようということを、昨日倉石農林大臣と私との間で話をいたしましたような次第であります。
  77. 横山利秋

    横山委員 非常にけっこうだと私は思う。この際、一番いま悪いときではあるけれども、いいときでもある。つまり商品取引の現状を洗い直す一番いい、世論の旺盛なときでもあるから、あまり時間をかけないで、ひとつ全努力を結集してもらいたいと思うのです。  あわせて聞いておきたいと思いますが、自己玉は三〇%までしか行なえないことになっている、実際はどの程度行なわれておるか、両省から伺いたいと思います。
  78. 両角良彦

    ○両角政府委員 御指摘のとおり、自己玉は三割ということで自粛措置をいたしておりますので、さように行なわれておると存じます。
  79. 小暮光美

    ○小暮政府委員 たてまえとしては、取引所当局、理事者をして監督させるということでございますので、直接、自己玉三割かどうかという、そのこと自身としての調査をただいまいたしておりませんが、かねがね幾つかの仲買い店を私どもの職員で監査いたしております。その際には、この問題はおおむね守られているというふうに見ております。
  80. 横山利秋

    横山委員 農林省に頼んでおきますが、二月十八日にやや半強制的な解け合いが行なわれました。その経緯、その付近の残玉のうち自己玉がどのくらいあったか。その前二、三日、以降二、三日どのくらいあったか調べておいていただきたいと思います。次の機会に本委員会に提出をしてもらいたいと思うのです。  この自己玉というものが三割になったのは、なっただけの理由がある。先ほど例証いたしましたように、お客にいままで買いどきであると言って勧めて、一生懸命にうそ八百を並べながら買えと言っておきながら、自分のところは買う。こういう制度があるから、これが悪いことになるからといって三割になっている。けれども、三割であっても、それ悪い仕組みというものがなくなったわけではない。しかも、三割が守られているわけでもないのです。だから私は、根本的にこの自己玉というものがなくならない限りにおいては、お客に売れと言っておいて自分は買うという仕組み、そういう悪質な仲買い人がなくならないことだ。だから、ほんとうに実需家でやっている人は十分に実需家で専業に徹する、仲買いとしてブローカーをおやりになるというなら、自分は売り買いしないということにきちんとこの際させたらどうかと痛感をするわけですが、両省の御意見を伺いたいと思う。
  81. 両角良彦

    ○両角政府委員 自己玉につきましては、ただいま御指摘のような弊害面も確かにあり得るわけでございますが、元来、自己玉の自粛措置を行ないましたゆえんは、向かい玉を用いまして相場に不当な利益を占めるようなことのないように、これを自粛させるという措置で行なったものでございまして、本来当業者の原則に立ちまして、取引所の会員、仲買い人というものがつくられております原則から考えますと、自己玉を一切禁止するということは取引所体制の本質に触れる問題もございますので、そこまでは現在考えておらない次第でございます。
  82. 小暮光美

    ○小暮政府委員 自己玉の問題につきましては、ただいま通産省のほうからお答えになりましたことと趣旨は同じでございますが、取引所の発生の沿革から見まして、仲買い人がみずから売買をすること自身を、論理的には全面的に否定できないように思います。しかしながら、自己玉の問題が、顧客との間で取引の実態から見て問題があるという御指摘は、私どもも十分承知いたしておりますので、今後検討を続けたいというふうに考えております。  なお、先ほど御指摘調査につきましては、できるだけ急いでいたしたいと思います。
  83. 横山利秋

    横山委員 あとの時間の関係上、私はこの際、問題を提起しておきたいと思うのであります。両大臣が御検討くださるときにぜひひとつ検討してもらいたい。この一つ一つを、私は、この委員会で十分に議論をしておきたいと思うのでありますが、時間がございませんので、問題提起にとどめておきたいと思うのであります。  第一は、この商品取引に関する政府の行政機構が、たった一つ報告書を出すか出さないかということだけでも両省の意見が違う。そのことは、この仲買い人の営業姿勢を正す、あるいは商品取引を改善する、あらゆる意味において両省の意見が違うとは言いません。違う場合があるし、両省が合議しなければならないし、こういうことは行政の二元的なことでありまして、これを一元化する方法を考えなければならぬ、これが第一であります。  それから第二番目に、取引所の運営がきわめて弱体であります。私は、連合会や穀取、繊取の幹部にも会って、現場も見ていろいろ痛感をしたのでありますが、取引所は何としても、この会員を指導し、あるいは商品取引を十分効果あらしめるための機能を欠いております。その第一は、歴史的には、会員組織で仲買い人が集まって、あるいは当業者が集まって運営をするんだというところから出発したものではありますけれども、いまや公共的機能が非常に強くなっておるのにかかわらず、悪いことをやった仲買い人が中で運営しておる、こういう場合が見られます。公共的機能を強めるためには、理事構成は、仲買い人からの理事を減少し、第三者理事を増加しなければなりません。理事長も第三者から選ぶことが適当であろうと思う。連合会がわずか四、五人の事務員で、どうして一体全国の二十になんなんとする取引所の指導なりあるいは前進が期待できるであろうか。  それから監査であります。監査が適切でない。農林省はようやく明年度の予算で農政局に監査員を置くようになりました。出来高から言いますと、また問題の所在から言いますと、通産省よりも農林省のほうが多いにかかわらず、通産省はいち早くすでに通産局に監査員を置いて、そうして繊取を監査しているんだけれども、農林省はようやく明年度からやるという、こういうような状況であります。監査につきましても、取引所の監査員がこの仲買い人の監査について適切に行なっているであろうか、全く客観的態度に立っているであろうかと思いますと、その点についてたいへん遺憾な点があると私は思います。これは、連合会の中央監査制度というものに飛躍をしなければならぬと思います。もし取引所が公共的機能を強めるということであるならば、取引所につきましても、法人税なり租税特別措置法によって配慮をしても何ら差しつかえないと思うのです。大体、取引所から普通の会社と同じように法人税を取っておるということ自体、私はおかしな気持ちがある。協同組合の軽減税率を適用しても何ら差しつかえないではないか。私がある取引所へ行きまして、会員の会費は幾らだと言ったら三万円だという。月かと言ったら年三万円だという。年三万円の会費で、あとはこの取引所の利用度に応じてということでありますが、年三万円の会費ということがあり得ることかと私は逆問をいたしたわけであります。  それから大きな三番目としては、先ほどお話ししましたように、今回のよって来たる原因の発端となったことは、商取法における禁止条項が何ら守られていない。全く野放しになっている。ある意味においては、商取法が厳正に守られておるならば、かかることはあるまいにと思うのです。しかし、いまとなっては、この商取法を厳正に守らせることだけでは解決がもうおそいと私は思います。この際、業界の自粛措置を徹底的に私は追及しなければならぬ。その意味においては、私の調査したところによりますと、二年半のうちで、大きな仲買い人で、取引所に申告しただけで二百四十四件、自分のところでは七百七件、これだけの事故を起こしておる会社がある。仲買い人がある。全く言語道断であります。こういうようなところはもう来年の免許は絶対にしない、一刀両断にして一罰百戒をしなければならぬと思います。それから紛争処理機能が十分な効果をあげていません。  大衆投資家について一言触れますが、大衆投資家に対して、先ほど亀鷹さん、また多くの人にお目にかかりました。ほんとうにいやならいやと徹底すればよかったと私も思います。けれども、そこが女性でもあり、そこがアズキの何にも知らないしろうとでありますから、いやならいやと言えばいいではないかということだけでは解決がいたしません。それには、この大衆投資家について認識を徹底させる必要がありますから、仲買い人の出しますパンフレットなんか全部禁止してもいいのじゃないか。取引所並びに連合会が出すパンフレットしか扱わなくてもいいのじゃないか。それから契約書なんというものは、連合会の発行した様式、そういうものでしか契約はできないようにしても一いいのではないか。  それから六番目に、外務員の素質を向上する必要がある。外務員はいま百万円もらっている外務員があるという。月にですよ。二十二、三歳で十万円もらっている者はざらにあるという話であります。しかも固定給が半分、歩合給が半分だというのであります。それでは、外務員はあとから火がつくように追われて、何でも町内会回りをして、奥さんこんにちはと言ってやっていくのは、その賃金制度からいっても当然ではないか。固定給をこの際思い切ってふやすように行政指導すべきではないか。教育諸制度は確立しています。けれども私は、仲買い人が社内でやります社内教育は信用できません。やったことにしているだけであります。社内教育というものは外務員の登録資格要件にしない、そこまで割り切ったらどうか。試験問題の水準を上げる。  それから、それらの点を含めまして、この際もう一度二年半前にさかのぼるのでありますが、二年半前に商取法の改正をいたしましたときの附帯決議、その第一項に、あらためて根本的改正をしろという附帯決議がございます。言うまでもなくそれは法律改正の問題であります。この法律改正をして、自己玉を禁止したり、取引所の一元化と公共性を強くしたり、それから外務員の行為が即仲買い人会社の責任であることを証券取引法と同じように明記することが必要である。一つの取引所で処分を受けても、東京の取引所で処分を受けても名古屋でやればいい、穀取で処分を受けても繊取で営業やればいい、こういう仕組みは直さなければなりません。連合会を法制化しなければなりません。あるいはこの仲買い人の中で、もうかったからといってボクシングジムをやっている人がある。馬を買っている人がある。きのうも話をしたように、仲買い人が、この世論の沸騰しているときに、飛行機をチャーターして台湾旅行へわんさと出かけようとした連中がおる。こういうようなこと、その他証拠金の問題、手数料の問題、取引所に予託する証拠金率の問題、弁償積み立て金の問題等についても、この際あらためてメスを入れる必要がある。  最後に、きのうも言うことでありますが、北海道で生産されるアズキ、外国から輸入されるアズキ、そういうようなアズキに対して、一体大衆投資家が投資する国民経済的な価値があるのであろうか。投資をすることによってアズキが生産される、それによって日本経済が発展する、こういう関係が一体どこにあったであろうかと思うのであります。繊維関係についても同じようなことが言えると思うのであります。上場商品を洗い直すべきことは院議となっておるわけであります。この院議となっております三つの点、根本的改正と上場商品の洗い直しと、それから過当投機の抑制——過当投機といっていますけれども、私はばくちではないかと思っております。商品取引所の一部に行なわれているのは、これはばくちであって投資でもない、こういうことを痛感するわけであります。さりとて私は、商品取引がいまなくなっていいとは言いません。けれども、これほどの大きな問題になっておるときでありますから、一ぺん根本的に洗い直して、上場すべきでない商品、あらためて上場させるべき商品というものにも触れてやらなければ、このまま放置するならば、商品取引は要らない、こういうことにまで感情的にも発展するおそれがある。商品取引が公正に、しかも国民経済の中で健全な地位を占めるためには、いま思い切った措置をすべき時期ではないか、こういうふうに考えるのであります。  以上私の意見を申し上げましたが、ひとつ大臣のお考えを承って私の質問を終わることにいたします。
  84. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 取引と価格の安定をはかるという商品取引所本来の機能がなくなっていいとは考えておりませんけれども、それが事実問題としてはなはだしいスペキュレーションの場となって、しかも大衆がそれに多数巻き込まれておるという状態は、いかにも弊害がはなはだしい状態と考えますので、昨日両大臣もそういう意味で相談をいたしたのでございますが、今後思い切った検討をいたします際に、ただいまの御意見は十分参考にさせていただくべきものと考えます。
  85. 八田貞義

  86. 加藤清二

    加藤(清)委員 お許しを得まして、私は主として繊維関係、特に日米の繊維問題についてお尋ねをしたいと思いますが、いま同僚の横山委員からの御質問、特に三品市場の問題は、日本繊維業界に及ぼす影響も非常に多うございまするので、その点について一言最初に触れておきたいと存じます。  いま通産大臣は、この三品市場並びに雑穀の市場が大衆を無理に巻き込んでいる、スペキュレーションを起こしている、こういうお話でございますが、私は、スペキュレーションではなくて、ギャンブルだと思っている。完全にギャンブルが行なわれている。それを洗い直して、思い切った検討をするというおことばでございます。農林大臣もそれに賛成の様子でございますので、一言私も、ぜひ対応策を練られまするおりに御参考にしてもらいたいことがございます。  それは、いま糸へんの三品市場はギャンブルの場となって、設立の趣旨が失われつつあるということでございます。私が申し上げまするまでも丸く、設立の趣旨は、昔は天然繊維だったので、これを加工する方々がコンスタントに加工するには、先物を買っておかないと、先の材料を買っておかないと工場がとまらなければならない。これは困ることだ。だから先物買いで、証券市場にけございません一月限、二月限、三月限と、六カ月先のものまでバイカイできるように相なっていることは、大臣のほうが専門家でいらっしゃるから、よう御存じのはずでございます。ゆえにこのバイカイは、専門家すなわち会員、いわば繊維の加工業者に限られるということになっている。それが設立の趣旨なんです。ところが、いまや大声お認めのとおり、これに大衆の資金が、定期預金五分五厘では物価に追い越されてしまう——ここらあたりは政府の責任ですね。したがって、それよりも利回りのよろしいところへとおもむきつつある。この物価上昇と定期預金の金利との逆ざや、これをうまく業者が利用して大衆をここに巻き込んでいる。これは明らかに間違いであり、しかも商法、民法で規制しているところの、のみ行為が日常茶飯事のように行なわれ、それを行なうことがこのギャンブルからの欠損をのがれる道になっている。悪は悪を生んでいますね。無理が踊ると道理が引っ込んでいるようでございます。  そこで、ぜひ再検討の場合に検討していただきたいことは、もはやその使命を失ったものはここから除外するということでございます。なぜかならば、今日の繊維のうちの主たるものは合繊でございます。天気都合によってでき、ふできが変わるものではございません。製造はコンスタントに一律に伸び率を示しております。三品市場の使命といいましょうか、任務と申しましょうか、この合繊に関する限りは必要がなくなった。だからここ数年来、三品の中から合繊は除くべきであるという意見が業界にほうはいとして起こっておる。三品市場のギャンブルはやがて材料高を招きます。その結果はいまどうなっているか。日本繊維材料が、輸出をするときの値段と内地の卸値段との間にたいへんな幅ができている。輸出FOBは安く、内地卸は高い。内地の加工業者はこの高いものを買って加工をせんければならない。ゆえにますます高くなる。しかし発展途上の国に安い材料が輸出され、安い低賃金でこれが加工されてまいりますると、外国の市場において日本繊維と競合するのみならず、いまでは逆に発展途上の国から敵前上陸が行なわれておる。たいへんなことでございます。コットン、ウール、合繊またしかりでございます。ぜひひとつ、せっかく御検討になりまするならば、専門家の方々で、特にこの道に詳しい通産、農林の大臣の間で行なわれるならば、ここをお忘れなく、もう必要のなくなったものはどんどん除外していくべきであり、そのことがやがて日本繊維産業を安定させ、コストダウンさせる一つの原因になり、物価引き下げの原因にもなると思います。いかがでございましょう。
  87. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私も、三品取引というのは、供給側の事情が自然の条件で直接に左右されるものについて意味があるというふうに教科書では習ったものでございますけれども、何ぶんにも現実に取引が行なわれているのが今日でございますから、よく専門家の意見を聞きまして、その上でその辺のことも考えさせていただきたいと思います。
  88. 加藤清二

    加藤(清)委員 これは要望しておきます。せっかくいま横山委員質問によって、これを徹底的に洗い直して根本的に検討をするとおっしゃられたんですから——これはきのう、きょうの意見じゃございません。私はこの委員会でも、もうすでにこのことを四へん申し上げておるんでございます。これで五へん目でございます。したがって、業界のほう、特に加工業者のほうは、この意見を大歓迎でございますということをつけ加えて、つまり言えば、関係業界の賛成の意思を付してあなたに御検討をわずらわしたい、こういうことでございます。ぜひひとつお願いします。  次に本論に入りますが、最初に申し上げておきます。ノーモア・ヒロシマということばがございますね。私に言わしたならば、ノーモアLTA、いわんやノーモア新規制です。ノーモア・ヒロシマと同様に、ノーモアLTA、ノーモアSTA、ノーモア新規制でございます。これは、アメリカの都合はそれでよくなるかもしれませんけれども日本をはじめとして関係輸出国は大反対でございます。そこでその理由として、マテリアルインジュリーが発見できれば相談に応ずる。しかし相談に応ずる場所は、二国間協定とか、包括規制で多国間協定ではなくて、ガットの場でこれを行なう、こう先ほどもおっしゃられたようでございます。このことは総理もそのようにおっしゃっていらっしゃいます。もう一度念を押します。いかがでございます。
  89. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大きな実害または実害のおそれのあった場合にのみ、規制というものが考えられるわけでございます。しかも、現実の問題といたしまして、アメリカ側があげておりますような品目について検討いたしますと、その主たる供給国はわが国でない場合が多い。むしろそうでない場合のほうが多いくらいでございますから、最終的に被害または被害のおそれがあると判定され、何かの規制が必要だと考えましたときには、それは当然ガットとの関連において、多国間の何らかの相談の結果として結論が生まれるものである、こう考えておるわけでございます。
  90. 加藤清二

    加藤(清)委員 LTAがガットの例外措置である。これはガット違反の疑いがある。日米友好通商航海条約の違反の疑いもある。同時にこれはケネディラウンドとは逆行する案件である。これは私の意見ではございません。もう朝日、毎日、読売、中日、あらゆる新聞が社説に取り上げている問題でございます。これはお認めでございますか。
  91. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただ私の記憶では、これは加藤委員がどうお考えになりますか別でございますし、私個人としても多少の批評を持ってはおりますのですが、私の記憶では、LTAというものは本来自由貿易に進むための一つのステップであって、緊急の一時的なやむを得ない措置である。したがってこれはガットの精神に基づくものである、こういう条約解釈になっておったと思います。
  92. 加藤清二

    加藤(清)委員 いみじくもおっしゃりました。緊急な一時的のものである、そのとおりでございます。それが大義名分になっていた。それがガットの例外措置になる原因にもなった。それが、日本業界がいやいやながらも、たたかれながらもその手にすがった原因でございます。そこで、これは例外措置であり、やむを得ざるの措置であり、暫定措置であるとお認めでございまするか。あれから何年たちました。もう契約の五年はとっくに済んでいる。三年延長され、ことし満期でございますね。これは、罪を犯して刑に服した者でも、満期になれば無罪放免と相なるわけでございます。いわんや暫定措置でございます。この秋満期でございます。いかがなされます。
  93. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは交渉、ことに御承知のように多国間の交渉のことでございますので、どの程度私どもの考えを申し上げることが適当か、ちょっと私だけで判断できない問題でございますが、わが国以外の国々の大体の動向は、今年をもって廃止するということには消極的のようでございます。もちろん、しかし関係者の多くの共通の考え方は、その内容は改善しなければならない、またもっと簡素なものでなければならない、こういうことはみんな共通してあるようでございますけれども、多くの国が、この協定はもう即時に今年をもって廃止することがいいというふうには考えていないらしいということを、私としては聞いております。
  94. 加藤清二

    加藤(清)委員 多くの国とは、どことどこでございましょうね。間違いないようにお答え願いたい。多くとは、それに副詞なり助詞なり形容詞がつくのです。なぜ。このLTAによって利益をこうむっている国の多くは継続に賛成であり、このおかげでマテリアルインジュリーを受けていろ国々は反対である。アメリカのマテリアルインジュリーを云々して新しく結ぼうとしているものが——日本のマテリアルインジュリーが厳然と認められているにもかかわらず、なぜ日本通産大臣がそのようなことを言わなければならぬのですか。だから、大平さんのときとはだいぶ空気が違ってきたと、こういわれなければならない。新聞、雑誌がみんなそう書いているのです。なぜ日本はLTAを継続しなければならぬのか。しなければならぬというなら、その理由も一緒に承りましょう。
  95. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 日本は継続しなければならぬと申し上げたことはございません。
  96. 加藤清二

    加藤(清)委員 その前に、多くの国がとおっしゃられました。参加国の数もわかっております。どことどこがそういうことを言っておるのですか。
  97. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 詳しいことは交渉の当事者のほうから申し上げるのがよろしいと思いますが、(加藤(清)委員アメリカでしょう」と呼ぶ)まあアメリカは、これは問題外といたしまして、EECでありますとか、イギリスとか、そういう国がどうもそういう傾向だそうでございます。
  98. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ただいま加藤先生の御質問でございますが、御存じのとおりLTAの現在の参加国は三十カ国でございます。そのうち、いわゆる輸入国というものが約十二、三国ございます。それで、この問題につきまして一番やはり関心のございまするのは、輸入国もございますが、輸出国。輸出国の中で日本と同じような考え方を従来とってまいりましたのが、インドとかパキスタン、韓国、中国等々でございます。ごく最近の状況によりますると、パキスタンも、この際はまあやむを得ないという態度に変わったという情報が入ってきております。そういうような状況でございまして、この前のLTAの会議の際には、輸出国がすべてこの延長に反対をしたということではございません。その点は先生も御存じのとおりでございます。
  99. 加藤清二

    加藤(清)委員 あんた、日本の立場に立ってものを言っているのか、アメリカの立場に立ってものを言っているのかね。それはなるほど輸出国と輸入国と比べてみたら、どっちが多いかは歴然たる事実だ。同時に、日本と同じように輸出国という立場にありながら、別な交換条件、別な貿易物件によってその欠損分を穴埋めしてなおあり余るところは、やむなく賛成といっておるのです。こんなことで時間をとろうとは思っておりませんが、たとえばEEC諸国の一部における——これは乳製品と大豆製品、マーガリンの関係なんです。それは外務省経済局長ですから、あなたのほうがよく御存じでしょう。どうころんだってインジュリーのほうが多いとみなされている国が、この継続を喜んでがえんずるなんていう、そんなばかげた話はどこにも聞いたことはありません。ただ日本だけが、どこかの国の鼻息をうかがっては、その鼻息に従って右に左に動いていらっしゃるようでございます。まことに軟弱外交と言わざるを得ない。だれのための政府であり、だれのための外務省であるかと言いたくなる。順番にわかっていきますから……。  そこで、明らかにこれはガット違反であり、日米友好通商航海条約違反、ケネディラウンドの違反の疑いがあると同時に、これは脱法行為の例外措置なんです。これはだれも認めるところなんです。脱法行為の例外措置なんです。いわんや米国のこのたびの繊維規制は、またLTAの第一条並びに六条違反であることは御存じですね。
  100. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 LTAを結びました当時、これは恒久的な措置ではない、綿製品以外に及ぼすものでもないということは、明らかに了解されておったと思います。
  101. 加藤清二

    加藤(清)委員 条約局長、おられませんか。これは条約局長でなくてもよくおわかりですな。LTAの第一条並びに六条違反である。これについて外務省の御見解を——わからなければ、読みましょうか。第六条……。
  102. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ちょっと確めたいと思いますが、加藤先生のおっしゃる御質問は、LTAの第一条と六条が日米通商航海条約に違反というふうに言っていらっしゃるのでございますか。それともガット違反というふうに言っていらっしゃるのでございますか。その点、御質問を先に確めたいと思います。
  103. 加藤清二

    加藤(清)委員 冗談じゃない。今度新しく日米の繊維規制が、それが包括的であろうと品目別であろうと、もし行なわれたとする。その内容がどうなるかは知らないけれども。聞くところによると、外務省ではもうすでにそういう原案ができておるようだ。それは明らかにLTA第一条、第六条の違反ではないかと聞いておるのです。
  104. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 第一条に、このLTAにつきましては、「他の分野には適用されるべきでないと考えることを確認する。」ということがうたわれていること、先生の御指摘のとおりでございます。それから、先ほど宮澤大臣も仰せられましたようにLTAというものについては、この面においてガット上のそれらの加盟国の権利及び義務に影響を与えるものでもないということもいっているわけであります。したがいまして、今後万が一、自主規制の何らかの形の取りきめができました場合には、これはガットのワク内で考えていくべきであろうということを前々から申し上げているわけでございますが、はたしてそうなりますかどうか。現在の段階では、もちろん先生指摘のとおりはっきりいたしません。しかしながら、ガットのワク内で考えるべきであろうということになりますから、したがって、この第一条に特に違反をするということではないというふうに考えます。
  105. 加藤清二

    加藤(清)委員 それは言い回しというものであって、それじゃもう一度突っ込んでお尋ねするが、例外措置ではないのですか。第一条、最後のところに「これらの措置が綿製品の特定の問題について処理することを目的とするものであるから、他の分野には適用されるべきでないと考えることを確認する。」。他の分野に適用すべきではない。第六条の部分の「この取極の適用範囲を綿製品以外に拡大することを意図するものではない」、それがLTAの締結されたときの精神なんです。第六条に明記されておる。それを何と読みます。もう一度……。
  106. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたのは、アメリカ人がどう考えるかは知りませんが、私どもは、少なくともLTAと同じものをこれによってつくろうということは、全然考えておりません。したがいまして、LTAをほかに延ばしていく、ほかの分野に適用するという考えは全然ないわけでございます。したがって違反の問題は起こらないかと思います。
  107. 加藤清二

    加藤(清)委員 はしなくもおっしゃられましたね。そうすると、外務省の中にはいますでに、新しく起こったウール並びに合繊に対する規制の大体の観念ないしはカテゴリー等々が固まっているわけですね。だからこそ違反にならないとおっしゃったでしょう。固まっていますか。
  108. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ただいま御質問のような趣旨での考え方というものは別にございません。ただ先ほど申し上げましたのは、万が一アメリカが言っても、LTAというものをそのままの形でもってほかの繊維製品に及ぼすということは絶対にあり得ないのだ、そうすべきではないという考え方だけを申し上げたわけであります。
  109. 加藤清二

    加藤(清)委員 外務省の意見は、歴史的に法解釈が変わるのですか。かつての中川条約局長、これがSTAが結ばれたとき、二国間協定が結ばれたとき、私の予算総括における質問に答えて、明らかに日米友好通商航海条約違反の疑いがある、もしこれが国際司法裁判所に提訴されてい、ずれが優先するかという問題になった場合には、二国間の問題よりは、列国間の問題、すなわち国際協定並びに国際条約のほうが優先する、このように明らかに答えてみえる。私は毎年この問題を質問している。毎年の条約局長は前と同様のお答えになっている。にもかかわらず、STA、LTAが違反でないの、またそれから発展して今度新しぐ結ばれようとしているものが違反でないのと、これはどういうことなんです。それで、違反でないとあなたが断定できるならば、考え方が固まっておるはずでしょう。新しいものはと聞いたら、それは固まっていないとおっしゃる。固まっていたいのならば、違反するのかしないのか、わからぬじゃないですか。どうなんです。
  110. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 お答え申し上げます。  私が申し上げましたのは、第一条は、先ほど生生御指摘のとおり、他の分野には適用されるべきではない。また「これらの措置が」という言い方で、このLTAの措置ということだろうと思います。それから第六条のほうでは、六条の(b)項におきまして「参加国は、この取極の適用範囲を綿製品以外に拡大することを意図するものではないが、輸入国において第三条にいう市場かく乱の事態」云々という字がございます。これは先生指摘のとおりでございます。したがいまして、先ほど来申し上げておりますことは、私どもは、このLTAを延長してほかの繊維製品、綿製品以外に拡張するというようなことはやるべきでないということばはっきり申し上げているわけでありまして、あとの点につきましては、また御質問がございますればお答え申し上げます。
  111. 加藤清二

    加藤(清)委員 このLTAは他のものに押し及ぼすべきではない、適用すべきではないというお答えがございましたので、大臣、先ほどのあなたの答弁答弁漏れがございます。秋、期限が来るLTAはどうするつもりですかと尋ねたけれども、まだお答えがない。
  112. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでございますから、先ほど申し上げましたように、これは多国間の交渉になることでございますから、それにいろいろな外交上の問題もございますから、私としてここでいずれと申し上げることは御遠慮すべきだ、こう申し上げておるのであります。
  113. 加藤清二

    加藤(清)委員 少なくとも日本が損するほうをとられるか、利益するほうをとられるか、国益を守られるか、いずれでしょう。
  114. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最終的な意味での国益に合致したほうをとるつもりでございます。
  115. 加藤清二

    加藤(清)委員 しからばこれは廃棄すべきである。いわくつきの問題です。当然廃棄すべきだ。そこで、いま新しい協定か品目規制かをアメリカが要求してきておるようでございまするが、その行為自体がLTA違反である。同時に、どんなに言いのがれをしようとも、それはケネディラウンド違反であり、ガット違反の疑いが濃厚である。日本に向かって資本自由化を要求しておりながら、自分のほうは保護貿易で制限をしようとしている。こんなことは、われわれ議員でなくたって、小学校の生徒だってわかることなんです。それをなぜもたもたしておらなければならないのか、ここに国民のひとしく疑問とするところがあるわけなんです。そこで私は、この問題については急いでし損ずるべきではない。また総理も筋を通す。筋を通して時間がかかってもすると、大屋氏には答弁なさっているわけなんです。この問題について通産大臣はどうなんです。時期の問題です。
  116. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず前段でございますが、LTAに違反ではないかと言われますので、少し話がこんがらかるのだと思います。私でございましたら、いまアメリカが申しておることは、LTAが結ばれた当時お互いが考えておったことと違うではないかということ、これはアメリカによく申しております。ケネディラウンドに対してどうだということになりますと、これも違反ということはいかがかと思いますが、ケネディラウンドの全体的な精神には合わない。ガットに照らしてどうかということになりますと、いきなり包括規制というようなことを、実害または実害のおそれと関係なしに求めるとすれば、これはガット考え方に少なくとも違反をしておる、私はこういうふうに申し上げるべきだと思います。
  117. 加藤清二

    加藤(清)委員 ゆえにガットに違反しないような措置をとりたい、ここまではわかりました。が、時期はどうなんです。
  118. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 なるべく誠意をもって早急に解決すべきものだと前々から申し上げておりますが、そう申しながら、私がこの問題を取り上げましてからでも、もうすでに二カ月近く時間がかかっております。依然として私どもは、やはり誠意をもって早急に解決すべきものだ、しかしガットの筋合いというものは日本としては譲れない、こういうことでございます。
  119. 加藤清二

    加藤(清)委員 二カ月ばかりを長いなんてお考えになっちゃいけませんよ。STAの前に四品目協定が結ばれておることは御存じのとおりですね。これは一体何年かかったのです。六年もかかっているのですよ。     〔委員長退席、武藤委員長代理着席〕 あの当時、オーキュパイド・ジャパンであってもなお六年がんばったのですよ、吉田さんという偉い人が見えて。そのおかげで六年間。何で二カ月がそう長いのです。そんなにおっしゃられると、宮澤さん、あなたは大臣を拝命なさるときに、この問題は万国博の開かれる前までに処理をせいと言われたではないかという下世話を信頼したくなるが、この点はいかがですか。
  120. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 お答えを申し上げる必要はないと思います。
  121. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは、そういうことは問題にならない、こう受け取ってよろしゅうございますか。
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま申し上げたとおりであります。
  123. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは先ほどの、あくまで日本の国益を守るということばと、もう一つは、先ほど来他の委員からの御質問がありましたが、この日本の意向がアメリカによく理解されていない、ここのところにいろいろ疑惑も起き心配も起きてくるわけですが、疑惑を解くため、ないしはアメリカ日本の空気をより正確に伝えるために吉野さんが帰ってこられたと思います。この吉野さんはきのうお帰りでしたね。お帰りになるにあたって、新聞、テレビのニュース解説等々は、通産省と外務省とは意見の一致を見た、内容については不明確である、その一致したものを持って吉野さんはアメリカへ帰るんだ、こういうことでございます。私はそれは当然なことだと思います。けっこうなことだと思います。この間の消息は誤りですか。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もし正確なことでございましたら外務省当局から答えていただきますが、私の知っております限りでは、正式の文書にいたしたものを吉野公使が持って帰ったというのではございませんで、正式の文書ができますのが多少、数時間のことでございましたが、時間がかかりましたので、吉野公使はそれらの考えを持って帰った。正式の文書というものは、その後に、もうすでにでき上がったと考えておりますが、その大筋と申しますものは、第一に、いわゆるアメリカの在来の提案は事実上包括規制を求めるものであるから、これは先ほど申し上げました事情によってわれわれはそういう提案を受諾するわけにはいかない、次に、われわれの考えというものは、これも申し上げたとおりでございますが、インジュリー、またはインジュリーのおそれがある場合にのみ規制ということが考え得るのである。したがってそれは、あるとしても当然選択的な品目になるわけでございますが、ただしそれをそう考えるについては、いまわれわれがにわかにそう考えるだけの十分な資料をもらっておらないし、その説明も聞いていない、したがってそういう機会を求めたい。最後に、もしそういう討議の結果、幾つかの品目についてインジュリーあるいはそのおそれがあるということになるとした場合に、主たる供給国は日本以外の国である場合もおそらく当然あることでありますから、これは多国間の申し合わせにならざるを得ない。まあ大まかに申しまして、そういう趣旨のことでございます。
  125. 加藤清二

    加藤(清)委員 それが外務省、通産省とが合意に達したものであり、それを新聞対案と称し、その対案を持って吉野公使が帰米された、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  126. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 対案と申すことが適当でありますかどうか、私どもの今日までのものの考え方を集大成して述べたということでございます。
  127. 加藤清二

    加藤(清)委員 それが書類になっていないというお答えでございます。民間側は、吉野公使に書類をもって民間側の意向を伝えたようでございます。それが本省は書類になっていない。しかし、いまのお話によりますと、後ほどそれができる、いまはもうできておるかもしれぬ、こういうお話でございまするが、その書類はいつできますか。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 吉野公使も、この私ども考え方の集大成の作業には最終の段階で参画をしてもらいましたので、考え方の大要は知って吉野公使は帰ったはずでございます。ただ、てにをはというような、文書になりますと、それが公使が帰るまでに間に合わなかったので、公使はそれを持って帰ったわけではない。正確にどういう趣旨の書類でありますか、これは必要があれば、外務当局からお答えをいただきたいと思います。
  129. 加藤清二

    加藤(清)委員 じゃ外務当局お答え願いたい。正式な文書になったものをお示し願いたい。
  130. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ただいま宮澤大臣からお答えがございましたとおり、鋭意その文書の作成に努力いたしまして、大体それがまとまりました。これは外交用語上ではエードメモワールという形でつくって先方へ手交するということを考えております。
  131. 加藤清二

    加藤(清)委員 それはいまできておりますか。そこにありますか。お示し願いたいんですが。
  132. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 現在手元には持っておりませんし、これはやはり外交上の文書になりまするので、御提出するわけにはまいらないかと存じます。その点は御了承願いたいと存じます。
  133. 加藤清二

    加藤(清)委員 そう言って逃げるだろうと私は思っておったです。ですけれども、しかし、下田さんのように、外交上の機密にかかわるようなことまでアメリカでじゃかすかじゃかすかと新聞発表をしておきながら、日本国会へは出ることもいやじゃ——吉野氏が、野党一般の要求に対しても出ることはいやじゃ。ところがとんでもないところへ出てきよる、夜の夜中に。カーペットの上はいやでも畳の上はいいですか。これはどういうことなんです。  まあ、それはいずれ外交委員会お尋ねするとして、本日私の聞きたいことは、内容が大体煮詰まっている、それを書類にする、その書類はだれがいつ持っていくんですか。
  134. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 先ほど宮澤大臣が仰せられましたごとく、吉野公使はこの作成段階の、二回にわたりまして通産当局、外務当局一緒に作業いたします際に、十分加わっております。したがいまして、それの内容は十分承知いたしておりますが、てにをはの問題がございますので、それができました上では、ワシントンの大使館に電信でもって訓令いたします。
  135. 加藤清二

    加藤(清)委員 いつ、だれが持っていくかという——ワシントンに電信ですか。電信で訓令するとおっしゃいましたね。それはいつやられます。
  136. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 大体、この一両日中にやりたいと考えております。
  137. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは、この訓令が、国会へも発表することはできないというほどの機密文書とお考えでございますか。畳の上で発表はできても、この国会のカーペットの上ではなぜ発表できないのです。その理由を承りたい。
  138. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、外交上の文書として先方に渡し、先方はそれについて何らかの態度を示す——事前に出すということは外交上の儀礼に反するわけでございますので、先生も十分御了承いただけることと存じます。
  139. 加藤清二

    加藤(清)委員 それが外交上の非礼にわたるとすれば、下田君は何べんその非礼をおかしておるんです。非礼だけじゃないです。国民感情に対してとんでもない油を注いで火をつけておるのです。  まあ、その下田の処置についてはいずれ外交委員会お尋ねするんですが、下田氏が、すでに辞任をいわれておりながら、牛場君という代理ができておりながら、それが交代もせずにじっとしている。だから世間では週刊雑誌までが、経済雑誌までが、この条約といおうか何か知らぬけれども、新しい繊維規制が締結されたら、そのおみやげに国際司法裁判所の判事に栄転さしたるという約束が佐藤さんと下田氏との間で行なわれている。だから後任がきまって——豪州へ行った斉藤君はとっくに行ったのに、牛場君だけがまだ行かずにいる、こういううわさが飛ぶのです。時間がもうございませんので、その言及は外務委員会で行なうこととして、最後にケンドール会長が来られますね。これは佐藤総理、宮澤通産大臣並びに財界その他の方々とお会いになるようでございます。お会いになる目的も、アメリカですでに発表済みのようでございます。これに対して、通産大臣の会われますときの覚悟はいかがでございますか。
  140. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 別に覚悟というほどの大げさなものはございませんが、私の知っております限りでは、ケンドール氏は、万国博の関係と、経団連の人々との会談と、日本以外の国における自分の会社の社用とで参る由でありますが、なお、御承知のように会長でございますから、おそらく私に面会を申し入れられましたのは、一般的な日米間の経済貿易問題、自由化などの問題について意見を交換したい、こういうおつもりではないかと思っております。
  141. 加藤清二

    加藤(清)委員 新聞の発表によりますれば、今度のケンドール氏の来日の目的は、いま通産大臣がおっしゃられた内容とほぼ似たり寄ったりのようでございます。しかし、ただ一般的な貿易問題、経済問題だけではなくて、特に繊維の問題が取り出されて報道されておりまするが、繊維の問題については相談はない、こう理解していいのですか。それとも、繊維を含めて日本経済とか日米経済、こういうふうに理解してよろしいのですか。つまり繊維が入るか入らないか承りたい。
  142. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはどうも話してみませんとわからぬことでございますけれども、私の聞いておりますところでは、何か自分の訪日が繊維の問題、しかもそれを政府筋の委嘱を受けた形で話すためだと伝えられて自分は迷惑をしている、自分としては日米間の貿易、経済一般について話をしたいと思っておるのであって、繊維そのもので自分が、ことに政府から委嘱を受けて何かの話をするために訪日をするのではない、こういうことを言っているようでございます。
  143. 加藤清二

    加藤(清)委員 これで結論にしたいと存じます。時間かせぎのためではございませんから。  このちまたのうわさというよりも、関係筋の意見等々を、わが党の繊維対策特別委員会政策審議会あるいは商工部会等々でもいろいろその検討を進めてきておるわけでございまするが、どうも佐藤さんが何か相手方に言質を与えているのではないか、あるいは下田さんもマイヤーさんも本質を理解していない、本問題の悲劇がそこから生まれているのではないか、こういう疑いが濃厚でございます。そのことをまた筆をそろえて論説にまで大きな新聞も書いているわけでございます。  そこで最後に、私はあなたに要望します。ぜひひとつあなたは、日本通産大臣として、日本の国益のために、せっかくいらっしゃるケンドールさんに日本の立場をよく理解していただけるようお話しを願いたい。それはどうしてもできぬ、そういうむずかしいことは肩書きをつけておる身ではやりにくいということでありまするならば、かつての先例にならってわれわれがそのほこりをかぶる、どろをかぶることは引き受けますから、われわれ野党——これは社会党だけとは言いません。民社党の方も公明党の方も共産党の方もあわせてでもいいんですが、その代表と会う機会をぜひつくっていただきたい。その必要はない、私一人でやるからよろしいとおっしゃるならば、次のことを言っていただきたい。  日本からアメリカ繊維輸出されているが、いま取りざたされているのはインジュリーの面だけだ。しかしアメリカの国益の面が非常にたくさんある。LTAの場合は日本のほうにインジュリーがたくさんあるということです。言うまでもなく、日本の安くてよい繊維製品がアメリカ輸出されることは、さなきだに高まろうとしているアメリカ経済の過熱を防ぐことになる。このことは、すでにフルブライト上院外交委員長に、先般鉄の問題で参りましたときに申し上げましたところ、この点はよく理解をいただいたところであります。パストーレ議員もよく理解しているところであります。  次に、アメリカの低所得層に対して、日本繊維はたいへんな恩恵になっているということでございます。日本の安くてよい繊維アメリカの低所得層によい影響を与えている。黒人就職問題云々ということがございますけれども、これは日本繊維向こうに行くから職場を失うという問題等はいささかはき違いでございますが、それを説明する時間がございません。同時に、アメリカ日本繊維製品輸入商、それを扱っている業者は、日本繊維製品を歓迎であり、規制されることは困ることであると申し述べておることは、先刻御案内のとおりであります。  最後にもう一つの問題は、日本繊維製品がアメリカによく買われるということは、アメリカの綿耕作者に間接的なたいへんによい影響を与えているということでございます。なぜかならば、しからば日本が市場転換といってコットンの輸入を別な国に求めるならば、アメリカのコットン耕作者がたいへんな打撃を受けることは、アメリカ大使館の社会党担当の担当官までがよく知っておられる、社会党が全部市場転換を言い出したならば、九十人にやせたりといえども、これは大問題になることでございます。したがって、この点はぜひひとつよく御検討いただくと同時に、それを相手方によくお伝え願いたい。  以上の要望を申し上げまして大臣の所見を承ります。
  144. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御注意の点はとくと承りました。
  145. 武藤嘉文

    武藤委員長代理 樋上君。
  146. 樋上新一

    樋上委員 持ち時間が三十分でございますので、なるべく簡単にお伺いいたしたいと思いますし、繊維の問題も相当こまかく御質問もあったし、あと同僚岡本議員繊維の問題は譲りまして、私は宮澤大臣中小企業の問題についてお伺いしたいのでございます。  中小企業の予算について二、三御質問申し上げたいと思いますが、御承知のとおり、わが国の産業界における中小企業の重要性は、その事業所構成において全事業所数の九九・五%、四百二十一万に及んでおりまするが、また従業員数においても七九・七%、二千五百万人、その家族を含めて全人口の約半数が中小企業関係者であるわけでありまして、わが国産業の土台をなしているのでございます。しかしながら、中小企業はその構造上、国際化、近代化についていけず、その他労働力の不足、公害など、自力で解決できない多くの問題を持っておるのであります。金融の面におきましても、政府の引き締め政策でまことに苦しい最悪の状況に追い込まれている、また倒産件数が三月、四月には激増する傾向が心配されている状態でございます。  ところが、四十五年度一般会計予算のうち中小企業対策費は五百三億一千八百万円で、前年度に比べて七十二億三千四百万円、二八・八%増。一見伸びているように見えますが、総予算は、中小企業わが国経済の中で占めている重要な位置にかかわらず、たくさんの難問題をかかえ、いろいろ自力で解決できないことを持っているのでありますが、まことに僅少な予算であると言わざるを得ません。この点について、前々より要望し、当委員会におきましても審議されておりまするが、それにもかかわらず四十五年度も前年とほとんど同様になっている。通産大臣はこの点についてどうお考えになっておるか、所見を承りたい。
  147. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのような観点からの御指摘は従来も何度か承っておるのでございますけれども、ただいままさに御指摘になりましたように、中小企業というものは、わが国それ自身、少なくともその半分くらいのものでございますから、ただ予算で中小企業関係の一般会計と銘打ったものばかりでなく、国の施策全般、たとえば社会保障に至りますまで、何かの形でやはり中小企業に直接に関連をいたすわけでございます。財投あるいは中小企業関係の三機関等々ばかりでなく、ほとんどの施策が中小企業に何かの意味関連をしておるわけでございますから、一般会計の金額がどうということだけで私どもは判断をすべきものではないと考えておるわけでございます。  私がむしろ感じますことは、中小企業につきましては、当委員会でも在来から何度も御指摘があり、いろいろな法律、いろいろな金融措置というものがずいぶんできておるのでございますけれども中小企業の中で、ことに小といわれる人たちと、それらの法律、金融上の準備、税制等との間に、どうもギャップがあるわけでございまして、施策がしっかりほんとうに小企業の企業主まで届かない。それはまあ無理もないことで、一人で仕事をしておりますと、なかなかそういう研究もできないというようなこともよくわかることでございます。したがって、やはり商工会の指導員でありますとか、あるいは帳面をつける記帳のための指導であるとか、企業のコンサルタントであるとか、そういう人々が直接に接触をして、こういう法律の道もある、こういう金融の道もあるということを中小企業主に知ってもらう、そうして利用してもらうという、そういう段階がひとつまだ十分でないのではないかと考えまして、御審議を願っております四十五年度の予算でも、そういうところに重点を置いて考えておるわけでございます。
  148. 樋上新一

    樋上委員 そのお話はいつも承っておるのでありますが、一番問題になるのは金融の問題ですね。金融機関の貸し付け限度の問題ですが、ただいまのお話を聞いておりまして、いろいろ指導して、こういう方法がある、ああいう方法があるというのですけれども、実際に融資を受けようとする中小企業者並びに零細企業者は、融資を受けるときのいろいろな信用力、それからもう一つ担保力、または銀行取引ができておらないというような、いろいろな問題に突き当たって、実際に融資を受けて使いたいというときに、いろいろな手続上どうしてもそれが受けられないで、ついにやみ金融に走ってしまう。零細企業、家族工業から、十人ぐらい、また十五、六人というような中小企業は、朝晩、早出をし、残業をし、一生懸命やっているけれども、結局、取引先からもらう手形は長期の手形であって、その手形の割引も、やみで割ってもらわなければ銀行で割ってもらえない。ほんとうに機械一台でも入れたいというような、あすの生活をどうするという差し迫ったこの中小零細企業に対する金融面が、なかなか思うようにいかない。それに対して大臣は、通り一ぺんじゃなしに、こういう面はどうしたらいいか。またその金融制度、いわば私が申し上げるのは、融資面について、中小企業にあたたかい手を差し伸べる意味においては、信用補完制度、これの強化をはかる必要が私はあると思うのですが、この点はどうでしょうか。
  149. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 具体的にと言われますと、やはり一番その方々が利用をしやすいのは国民金融公庫、あるいは商工中金、信用金庫というようなところになるわけでございますが、その際、御承知のように信用保証協会の保証制度も設けられておるわけでございます。それだけの準備がありながら、なかなかそれでも話の筋にのっていかないということについては、いろいろな事情がございましょうけれども、結局、持ってこられる話が高利の借りかえの話であったり、あるいは計数的に企業者自身が自分の企業を把握できていない、帳簿などがなかなか金融の筋にのってこない、そういう場合を一番多く私は見受けるように思います。
  150. 樋上新一

    樋上委員 将来この金融機関においていろいろな指導をしてもらい、そしてあたたかい手を差し伸べてもらいたい。また、この政府三機関の四十五年度の中小企業関係の融資は一兆円と聞いて去りますが、そうでしょうか。
  151. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 普通貸し付けの規模は一兆円をこえるわけでございます。
  152. 樋上新一

    樋上委員 財政投融資の全体の資金量が今年は大幅に増額されているにもかかわらず、中小企業に対するその一兆円はあまりに少ないのではないか、私はこう思うのです。今後中小企業の資金雲要が増してきた場合、弾力的に財政投融資の措置をとっていける考えはございましょうか。
  153. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 年末にはしばしばそういうことがございますので、それは弾力的に考えるべきだと思います。
  154. 樋上新一

    樋上委員 その大体の額はどのくらいか、いまお考えはありませんか。
  155. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 たとえばこの一−三、四十四年度の最後の第四・四半期でございますが、財投から追加いたしましたのは、前年度に比べまして三〇%増しでございますから、したがってそれがただいま使われておるわけで、今度は、昭和四十五年の年末あるいは四十五年度の年度末に必要があれば、また同じようなことを考えるべきかと思っております。
  156. 樋上新一

    樋上委員 ひとつ弾力的な処置を要望いたしておきます。  次に移りますが、今度は労働力の不足についてお伺いいたしたいのですけれども、現在中小企業の雇用問題は、一般的に労働力の不足が深刻になっておる。これは前々からですけれども中小企業の従業員に対する厚生福祉面、こういう面において大企業との格差が非常にある。そこでまず、なぜ中小企業には働く者が少ないのか。全部大企業に取られてしまう。それは住宅の問題、また交通の問題。働く人々が、働きたくても住宅がない、厚生施設がない、福祉面がないという点において、どんどん大企業のほうに行ってしまうのですが、この不足した労働力を打開する、こういう施策について、大臣はどういうお考えを持っていらっしゃるのでしょうか。
  157. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まさに中小企業のいまの一番大きな問題になりつつありますのは、労務の問題であろうと思います。そこで、勤労者住宅でありますとか、青少年センターでありますとか、国もいろいろ手をかしておるわけでございますが、中小企業庁長官からただいま御答弁をいたします。
  158. 吉光久

    ○吉光政府委員 住宅関係についてでございますけれども、これは関係各省非常に広うございまして、労働省でございますとか、厚生省でございますとか、建設省でございますとか、この中小企業関係の勤労者住宅を建てるために、自分で建て、あるいはまた企業のほうに融資をいたす制度があるわけでございまして、本年度の予算面でながめてまいりますと、たとえば年金福祉事業団で住宅関係に約四百八十億円、それから雇用促進事業団、これは労働省関係でございますが、百四十三億円、それから中小企業退職金共済事業団のほうで十六億円程度の金額を、中小企業の勤労者のために準備をいたしておるわけでございます。なお、このほかに住宅金融公庫あるいは住宅公団等が、また特別に中小企業者のために、大企業と違いまして、低利の資金を準備いたしておるわけでございます。ただ、何ぶんにも需要量が非常に多うございますので、これを有効に活用したいという方は非常に多いわけでございますけれども、その全部が全部をこれでまかない切れておるという状況ではないわけでございまして、さらにこの面につきましての拡充につとめてまいりたいと考えております。
  159. 樋上新一

    樋上委員 いまお話を聞いて、いろいろ手を打たれておりますように思うのですが、行政区がばらばらになっておりますので、私はいつの場合でも思うのですが、こちらへ行けば、こちらのほうはこうやっている、あちらへ行けば、あちらのほうはこうやっているというぐあいに、それが譲り合いになっているが、一体全体、それでは過去三年間をさかのぼって、どのくらいの住宅が建設されたか、またどれだけ福祉面が向上されたかという過去三年間の実績などがございましたら、一ぺん聞かしてほしいのですが……。
  160. 吉光久

    ○吉光政府委員 ただいま資料を手元に持っておりませんので、後ほど調べまして御報告を申し上げたいと思います。
  161. 樋上新一

    樋上委員 その点、ひとつ資料あとからいただくとしまして、大臣にも、いま私が申し上げましたこの中小企業の問題である労働力の不足、また零細中小企業の金融面については何とぞあたたかい手を差し伸べて、みなが喜ぶような、大企業偏重になるのではなしに、みなの中小企業——いま申しましたように、大多数の人口を占めているのですから、よろしくお願いをいたしたいと思います。  それでは、中小企業問題はこのくらいにしておきまして、いま一つは、資本自由化関連をしてお伺いいたしたいのでございますが、これは先ほど武藤委員さんがおっしゃいましたのと重複するのでございますけれども、重複するところがございましたらよろしく御了承を願いたいのですが、今回世界最大の紡織メーカーである米国のバーリントン・インダストリーズ社が、三菱レイヨンと折半出資で資本金十億円の合弁会社設立のために三日調印をした。近く政府に認可を申請するといわれておりますが、このいわれている内容は、当初はカーペットを年間百五十万平方メートルから百六十万平方メートルの製造販売を手がける、こう申している。カーペットは毛製、化合繊製とも、米国がわが国に要求している自主規制対象の二十八品目の中に入っている。大臣はこの問題についてどのようにお考えになっているか、もう一度お答え願いたいと思うのです。
  162. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 関係会社から合弁の計画についての連絡があった程度でございまして、まだその詳細はヒアリングしておりませんので、具体的にお答えできない段階でございます。  なお二十八品目の中に入っているかどうかということについても、まだはっきりしておりません。
  163. 樋上新一

    樋上委員 日米繊維交渉が微妙な段階にある時点において、同社のマイヤーズ会長が、ニクソン政権に繊維輸入規制を約束させたといわれる団体、いわゆる全米繊維製造業者協会の首脳であること、さらに先ほど申し上げました二十八品目のうちの一つであること、こういうことなどから考えまして、わが国関係業者間を刺激するものがあり、今後の繊維交渉に少なからぬ影響があるものと私は考えるのですが、このことについて大臣はどうお考えになっておりましょうか。
  164. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この話というものは、どうも昨今の話ではないらしゅうございまして、多少前に両社の接触の沿革があるようでございます。そういうことを考えますと、なおさらどういう関係になるのか、ちょっと私にもわかりかねております。しかし、これは注意をしておくべき点だとは私も実は考えておるのでございます。  それから、いまの二十八品目との関係では、その辺がアメリカ資料がはっきりしないことの一つでもあるのでありますが、どうも二十八品目に入っておるのはウールのカーペットであって、化合繊のカーペットではないのかもしれない。これも、もう一つ資料がはっきりするとはっきりいたしますが、その辺にも多少疑問があるようでございます。
  165. 樋上新一

    樋上委員 この問題については、私ども調べたものがこちらにありますので、あとで申し上げますが、それはあとといたしまして、この合弁会社設立認可申請があったときには−過去に不認可にしたという前例があるかどうか、お伺いしたいのです。
  166. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 カーペットに関しては、いままで認可した実績はございません。
  167. 樋上新一

    樋上委員 それ以外のもので合弁会社を認可したものはあるのでしょう。それはどうですか。
  168. 両角良彦

    ○両角政府委員 現在、自由化業種を除きまして、それ以外の業種につきましては、すべて個別ケースで合弁会社等も措置いたしております。
  169. 樋上新一

    樋上委員 それでは結局、この合弁会社設立の認可申請があったら、大臣調査をして認可をする、一つの新しい面からするというお考えでございましょうか。
  170. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは先ほどお答え申し上げたことでございますが、自由化品目でございませんので、当然まず審査をいたさなければなりません。そこで考えます上に、現在の業界との関係がどうなるのか、それから、将来この企業がタフテッドカーペット以外のほうにも進出するような計画を持っておるのか、その他いろいろなことを考えまして、いずれにするかをきめなければならないと思いますが、私は、先ほど申し上げましたように、いずれにしようとも、いまいずれの方向にも予断を持ってはおりませんので、全く新しい目で詳しいことを調べまして、決断をいたしたいと考えております。
  171. 樋上新一

    樋上委員 カーペットの需給の実態、こういう点、それからカーペットを織るタクチングの機械は現在日本にどのくらいあるのか、また生産能力はどのくらいあるのかつかんでいらっしゃいましょうか。
  172. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 業界新聞等で拝見しておりますところによりますと、先方の計画は、タフテッドカーペッドについて国内生産の約十五分の一相当額のようでございます。なおそれ以外に、タフテッドカーペットとやや代替関係にございます織りじゅうたん、いわゆるウールトンカーペットの業界がこのほかにございまして、両者合わせて約百数十の企業がございますが、その中の相当部分に中小企業があることも御存じのとおりでございます。
  173. 樋上新一

    樋上委員 生産能力はどのくらいあるのですか。
  174. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 生産能力は、タフテッドカーペットの業界が約二千三百万平方メートル、織りじゅうたんのほうが約五百万平方メートル、この程度の能力だと考えております。
  175. 樋上新一

    樋上委員 カーペットには二種類ありまして、ウールトンカーペットとタフテッドカーペットがある。これはしろうとが見てもほとんど見分けがつかない。今度やるタフテットカーペットは——今回バーリントン会社と三菱レイヨンと合弁して製造する品物がタフテッドカーペット、こういうのですね。ところが、このタクチングという機械は、一セットで一億円もかかるということになっているのですね。調べましたら、日本には現在これは五十五台ある。ところが今度は、三菱と合弁した新会社がやってくると、当初年間百五、六十万平方メートルのタフテッドカーペットを生産し、国内販売及び東南アジア向けに輸出を行なうといわれておるのですが、国内のカーペット会社の約三十社は中小クラスの企業が圧倒的に多い。そこで心配いたしますのは、巨大資本が進出してくることによって、国内販売はもちろん輸出も押えられるということで、カーペット業界はもう死活の問題であるというので、中くらいの業者が寄りまして、今度反対決議を行なった。何とかしてこの合弁会社の設立を反対したい、もう日本のカーペットの製造業者は全部倒れてしまうというのです。こうして中小零細企業者の製品に対する外資進出について、基本的には、現在、政府繊維工業の構造改善を実施中であるが、この際、この合弁会社を国内体制が確立するまで認めない方針でいってほしい、私はこう思うのですが、先ほど武藤委員さんのほうは、非常にこれに賛成して、好ましいことであると言われたけれども、私は、こういう中小企業者が、日本の中小カーペットが倒れてしまう上においては、まだ時期が早いのではないか、こういうぐあいに考えるのですが、この点はどうでしょうか。
  176. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 タフテッドカーペットをつくっておりますのは二十何社かございまして、大手がたしか九社のようでございます。そこで、今度の生産計画は、先ほど繊維局長が申し上げましたように、現在の国内生産の十五分の一くらい。なお、この輸出わが国では現在ほとんどございません。二億円くらいのようでございます。もちろん大手が一つふえるということには違いございませんから、それだけ需給に影響を与える、それはそうでございますけれども、問題はその程度ということであろうと思います。ことにタフテッドカーペットは、ウールトンカーペットに比べますと、どちらかというと新しい技術でございましょうから、そういう意味では一種の新技術で、わが国にももう相当入ってはおりますけれども、そういうことでございます。賛否両論いろいろあるだろうと思いますけれども、少しその辺のこともよく聞きましてからいずれとも決断をいたしたいと思っております。いずれの方向にもいま私予断を持っておりません。
  177. 樋上新一

    樋上委員 まだまだもうちょっと突っ込んで承りたいと思いますが、時間がなくなりましたので、この点さらにいま申しました趣旨を十分検討してもらいたい。私たちが言うのは、中小企業がせっかくその芽を出してきた、せっかく軌道に乗り出してきたところへ、ばさっとやられてしまったというので、もう中小企業は反対決議をやった。業者も反対決議をやってしまった。何とか言っておるのに、それはそういう事態じゃない、あまり影響ないんだというぐあいにやられてしまうと、すべて中小企業の分野に大企業が進出して芽をつみ取ってしまう。ここに中小企業の発展を阻害させる大きな問題があるのではなかろうか、これを心配するのでございます。よろしくお願いいたしたいと思います。  それからもう一つ、次の五分間時間をもらいまして、あとの方に五分縮めてもらいます。  もう一つお伺いしたいのですが、外国資本わが国の消費者金融に進出している。米国の有力市中銀行、ファースト・ナショナル・シティ銀行が日本信販と提携し、わが国市場で自動車のローンを中心に消費者金融を開始することになり、契約書に調印した。これは新聞に報ぜられております。業務の対象としては自動車ローンである。お答えなしにずっと言ってしまいますから要点だけ答えていただきたいと思いますが、信用供与で総ワク半期五億円。三番目は利率を六%にした。これはアドオン方式である。期間は六カ月から十二カ月程度でやる。四番目は、代金回収の困難なときは日本信販が代払いする。こういうようなものは、従来の企業金融から消費者金融へ進出するもので、わが国としても今度初めてのケースである。そこで、心配な点がありますので、二、三お尋ねしたい、こう思うのでございますが、本件のほかに消費者金融進出の計画があるのかどうか。
  178. 両角良彦

    ○両角政府委員 日本信販とファースト・ナショナル・シティバンクとの提携以外に、消費者金融につきまして外国系の銀行が進出しょうという計画は、ただいまのところございません。
  179. 樋上新一

    樋上委員 私は、いま国内金融が非常に引き締め政策で資金繰りが困難になっているときだけに、これがもし入ってきたときには利用者が多いと見込んでおるのですが、この点どうでしょうか。
  180. 両角良彦

    ○両角政府委員 御承知のように、自動車の消費者金融あるいはユーザー・クレジットというようなものは、内地の金融機関によっても行なわれておりまするけれども、今回のケースは、ただいま御指摘がございましたように、ワクが一応五億円というワクでもございますし、また国産車を取り扱ってまいるということでもございますので、全体から見ますと、大きな悪影響はないと考えております。
  181. 樋上新一

    樋上委員 外国銀行の進出は、資本自由化を見込んでいるものと私は当然考えておるんですが、現状においてはいろいろ規制があるわけでありますが、将来自由化になった場合、国内景気政策あるいは外貨準備の面、それから波及して円問題などにも通じてくる可能性があらわれてくるかどうかということの大臣の御所見を承りたいと思います。
  182. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 本件は、いま企業局長から申し上げましたように、どうも外国系のディーラーを使うわけでもなく、五億円ということで日本信販と一緒にやる。どうもたいしたことではなさそうに私は聞いております。もう少し確かめますけれども、この程度のことでございましたら、何ということもないという感じがしております。まあ将来と言われますが、いまの外国銀行の東京支店の金融力にも限度があることでございますし、それから自動車にいたしましても、国内の割賦販売の体制がかなり事実上できつつございますから、まあまああまり心配をしなくてもいいのではないだろうか。もちろん十分気をつけますけれども、大まかには私はそんなふうに考えております。
  183. 樋上新一

    樋上委員 終わります。
  184. 武藤嘉文

    武藤委員長代理 岡本君。
  185. 岡本富夫

    岡本委員 きょうは、各党の代表質問ということでございますので、非常に大まかな質問になってしまったわけでありますが、この問題については、次の委員会で詳しくまた明らかにしていただきたいと思います。  そこで私、先般中小織物業者の実態をつぶさに調査いたしまして、今度の日米繊維交渉の経過が、あるいはまたその結果がきわめて重大な問題である、このことを痛感いたしましたので、重ねて繊維問題についてお聞きしたいと思います。  そこで、本年の一月の二十三日、マイヤー駐日大使が通産省に宮澤大臣をたずねてきたときに、どういう交渉があったか、あるいはまたそれに対して大臣がどういう答弁をなさったか、ちょっとこれをお聞きしたいと思うのですが、いかがですか。
  186. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 あまりしさいに申し上げることもいかがかと思いますので、大筋だけを申し上げるわけでございますが、マイヤー大使は、あまり本件についての経緯を当時御存じでなかったようでありまして、自分が帰国中に視察しました、サウスカロライナでございましたかの繊維の工場の二、三の営業報告のようなものを私にお見せになりまして、一株当たりの収益がかくのごとく急激に下がっておるというような御説明があったわけでございます。そこで私は、そういうことはガットの原則で考える限り、それが日本からの、あるいは外国からの輸入の直接の結果であるということ。それから、一地方ばかりではなくて全米の同種の企業がそうなっておるというお話でもなければ、一つ、二つの企業の営業報告を見ましても、どうもなるほどという気がいたしません。私どもとしては、やはりガットのものの考え方に従って、輸入の結果、被害または被害のおそれを生じておるということでなければ、この話にはついていけないということを率直に申したようなわけでございます。
  187. 岡本富夫

    岡本委員 そこで、今度米国の第二次の提案が来まして、これによって米国の被害が立証されたと判断されるか。あるいはまた現在の立場で非常に根拠が薄弱だ、こういうふうに考えられるか、これをひとつお聞きしたいのです。
  188. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 第二次提案そのものは、米国側が被害を立証しようとした提案とは思えないのであります。したがって、今度お断わりをすることになったわけでございますが、その提案のあとに参りましたいわゆる二十八品目に関する資料、これにつきまして事務当局が見ました範囲では、にわかに被害ありという認定をすることができませんので、さらに追加の資料あるいは説明があればそれを求めたい、こう申しておるところでございます。
  189. 岡本富夫

    岡本委員 そこで、下田大使に一月の初めに、愛知外務大臣や当時の大平通産大臣から、米国の第二次提案に対して討議の基礎となり得ない、こういうような方針の訓令を出した。それに対して、ワシントンの駐米大使館の下田大使はそれに反発するところの意見具申をしてきた、こういうことがありますが、いかがですか。宮澤さんは御存じですか。
  190. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは私の就任前のことでもございますので、つまびらかにいたしませんけれども、そのようなことは聞いておりませんが、あるいは知っておる者がおるかどうかでございますが……。
  191. 岡本富夫

    岡本委員 これはすでに新聞やいろいろなもので報道されておりますし、いま当の繊維交渉に入りまして、一番大事な立場に立っていらっしゃる宮澤通産大臣のおことばとも考えられないわけでありますが、まあそれはそれとして、私、聞きたいことは、先ほど武藤委員から、これは外務省当局にでありますけれども、現地の下田大使は、確かに日本の国の現在の繊維業者の状態というものを知っていないじゃないか。こういうことに対してはっきりした訓令が行き届いていない。あるいはまた行き届いてもそれをはねておる。だから間違えないようにこれから一生懸命やっていきますという竹内政務次官答弁であった。それから、これと非常に話が飛躍しておかしいのですけれども、先ほど、あなたがマイヤー駐日大使にお会いしたときも、あまり向こうの現地のことをそのときには知らなかった。こういう一連の考えをいたしますと、出先のほうは、こちらのことを言いますと、下田大使が帰ってきて現実を見ないとわからないのじゃないか、こういうふうに私は思うのですが、一ぺん下田大使にこちらに帰国を願って、国内事情を明確にすべきではないか。これに対して通産大臣の御意見はいかがでしょうか。
  192. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっと私からお答えすることが適当かどうかと思いますが、かりにそういうことがあったといたしましても、私はないと思いますけれども、このたび吉野公使が帰ってまいりまして、十分わが国のものの考え方、雰囲気というものは知って帰りましたので、報告をいたしていることだと思います。
  193. 岡本富夫

    岡本委員 それで、先日吉野公使が帰国したときに、米国政府が大体十八品目といっておりますけれども日本の国から見ればこれはほとんどもう包括規制と一緒です。そういう従来の立場をアメリカ政府が少しは変えてきたのかどうか。あなたが会ってのことばの中でどういうように感じたでございましょうか。
  194. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私の受けました印象では、米国政府側は、在来からの立場、すなわち包括規制というものを要請することが可能だというふうに考えているらしく聞きましたので、それはとうていそういうことではないということを、この際はっきり申してやることになったわけでございます。
  195. 岡本富夫

    岡本委員 変えていないとすると、今回新たに意見書を米国側に伝達する、それはどういう意味なのか、これをひとつお聞きしたいのですが、どうですか。
  196. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は私どもとしましては、在来のやりとりから、包括規制というものはもうガットの考えからあり得ないということは、当然先方においてわかっておることだと考えておりましたが、必ずしもそうでないように見受けられますので、今回文章をもって、包括規制というようなことはわが国としては受諾することができないということを申してやったようなわけでございます。
  197. 岡本富夫

    岡本委員 下田大使がこの繊維問題で向こうでずいぶん何べんもいろいろ話をしておる。アメリカのほうから要請があったと思うのですが……。ところが、アメリカの態度が全然変わっていないということは、やはり下田大使が全然日本の国の事情を知っていないのか。これは私は、あなたが最初おっしゃったマイヤー駐日大使も、アメリカの南部をあっちこっち回って初めて気がついた、こういうことでありますから、これはこの問題を解決する上におきまして、当の通産大臣といたしまして、日本の国の繊維業者を守らなければならない立場、また国務大臣として日米の友好を守らなければならない、こういう面から考えまして、最高の手を打つ、最善を尽くす、こういうことを考えますと、ただ人に聞いた、こういうことだけでは、ちょうど靴の裏から足をかいたようなものだ。だからここでひとつ、あなたのほうの分野じゃないかもわかりませんけれども外務大臣にこのことを要請する考えはいまのところはないでしょうか。いかがでしょうか。検討する考えがあるかないか。下田大使を呼び戻して現地を見せる、あるいは業界の意見を聞かせる。いまのところこういうことを検討する考えはないかどうか。
  198. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 誤解があるといけませんので申し上げますが、下田大使は、包括規制ということはわが国としてガットのたてまえからも受けられないということは、当然知っておられるのでございまして、大使の説得にもかかわらず、米国側がそれをなかなか理解できないというのは、やはりガットというものについての知識が、お互いよりアメリカ人のほうが薄うございます。従来、自由貿易でございましたから、あまりそういうことを知る必要がなかったので、その辺のいわば認識の不足ということであろうと思いますので、下田大使に対しましては、吉野公使も帰ったことであり、また外務省もしばしばいろいろな方法で本国の情勢は伝えておられるのでございますから、私はそれで十分であろうと思います。
  199. 岡本富夫

    岡本委員 ことばじりをつかまえて言っては悪いですけれども、前の綿製品の交渉のときもガットのいろいろな話があったのです。だから、アメリカ政府ガットの問題を全然関知しないというようなことは、私はないと思うのですよ。まあ時間がありませんからこれは次のあれにいたします。  そこで今度、先ほどの加藤委員のときも、吉野公使はことばあるいはまた正式の文書は持って帰らなかった、あと大体来週早々下田大使あてに訓令の形で打電するのだ、こういうように——これは日本経済新聞に出ておりますけれども、そうすると先ほどの外務省お答えと非常に似ているわけです。似ているというとおかしいけれども、きちっと一致するわけです。そういたしますと、この日経新聞に「セータ、ブラウスなど 規制数品目を示唆 事実上の方針転換」、こういうような記事が出ておりますが、これは、このあとの  「来週早々にも下田駐米大使あてに訓令の形で打電する」というのと、きちっと合うわけですね。そうすると全く間違いではないように思うのですが、その点いかがでしょうか。
  200. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは先ほども申し上げましたように、事実ではございません。と申しますのは、今回こちらから先方に言ってやりましたことは、包括規制というものは受諾できないということを中心に言っておるわけでございますから、その問題がはっきりしてこない前に、そういうことを申す筋合いはないわけでございます。
  201. 岡本富夫

    岡本委員 時間の都合で、これはもっとお聞きしたいのですが……。  この新聞が間違っておったということは言えないけれども、そうすると、先ほど外務当局からは、外交上の都合によってこれから打電する。もう打電したのかしれませんが、打電して訓令することはここでは言いにくいという話でありましたが、その中には、セーターとかブラウスとかいう規制数、品目を示唆するようなことは絶対に入っておりませんかどうですか、それくらいはお聞きしたい。
  202. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 入っておりません。
  203. 岡本富夫

    岡本委員 この新聞報道は絶対に真実でない、こう否定なさいますね。どうでございますか。
  204. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府がそういうことを言ってやったことはございません。
  205. 岡本富夫

    岡本委員 そこで次にお聞きしたいことは、この繊維問題については、日本以外の主要輸出国、これと米国との話し合いの状況はどうなっておるか。これはおそらくそんなことは知らぬ、こうおっしゃると思うのです。そこで政府は、やはりこれらの諸国と十分協力し、あるいは協議すべきであると思うのですが、これについて重ねてお聞きしたいのです。
  206. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは昨年スタンズ商務長官がわが国に参りましたと同じように、台湾、韓国、香港などにも包括規制をしてもらいたいということを申したと承知しておりますし、EECに対しても同じであったと思います。しかしこれは一様に拒否にあったということでございます。そこで、ただいまのところアメリカとしては、日本と何とか話をまずやってみたいということもあってか、それらの国にはその後あまり言っていないようでありますし、したがってそれらの国の反応も比較的目立っておりませんけれども、私どもといたしましては、それらの国とはいろいろな方法で、EECを含めまして連絡をとっております。
  207. 岡本富夫

    岡本委員 もしも日本がこの繊維問題で降伏しまして、被害がないのに規制を行なった、こういうことになれば、これは非常に問題だろうと思うのです。他の輸出国に対しても規制に巻き込むことになる。世界の信用を失うことになる。今後、経済外交、また一般的なわが国の立場が非常にマイナスになると私は思うのです。これは一般もあたりまえだと思います。  そこで私、これは提案でありますけれども、先般米国のスタンズ商務長官がヨーロッパ各国を回って説得をして、そしてアジアに来まして、アジア三国、あるいはまた日本にも来て自主規制の要請をして回った。これは決して特使の資格で来たのではない。商務長官としての資格で来たと思います。またマイヤー駐日大使は、これは私、資料を持っておるのですが、先般大阪へ参りまして非常に説得をしておる。これに対してワシントンの下田大使がどういうことをやっておるか、それほど活躍していないじゃないか、こういうふうに私考えるわけでありますけれども、いまこそ実力ある宮澤通産大臣、かつてガットのあのルールのときも相当な手腕を発揮した、業績をあげた、こういうようにも報道されておりますし、いま外交筋では、就任間もない新宮澤通産大臣の一挙手一投足を興味深く見守っておる。また約一千万人の関係の皆さんも非常に期待をしておるわけであります。したがいまして、一応宮澤通産大臣が、米国のスタンズ商務長官が来たようにアメリカに参りまして、業者や関係者や、あるいはまたいろいろなところに日本の実情を訴える。そしてたとえば一ぺんぐらいは不成功に終わるかもわからない。確かにスタンズさんは来たけれどもまだ不成功であります。決してそれに対してとやかく言うのじゃない。イバラの道があるかもわかりませんけれども、そうして行くことが、大使館に対しても非常に大きな激励となり、日本下田大使に対しても激励となる。こういうような考えをしておるのですが、佐藤総理や関係閣僚と相談をして、そういう検討をなさる御用意がいまの心境としてありましょうか、どうでしょうか。
  208. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は決して労をいとうものではございませんけれども、この問題は自主規制でございますから、アメリカわが国に要求すべき筋合いのものではなくて、要請すべき筋合いのものだと思っております。したがって、要請を受けた側が出かけていくということは、私は筋道が違うと思います。こう考えております。
  209. 岡本富夫

    岡本委員 力の外交の関係からいきますとやはり向こうが強いわけですから、対等と言いながらやはり何とかして、おれはおまえのほうが頼んできたのだからもっと頼みに来い、こういうのじゃなくして、今度は、日本の窮況というのはこんななのだということを、親善の意味を兼ね、そしてたとえ一ぺんは不成功に終わるかもわかりませんが、そういうことを全然検討する考えはないか、あるいはいま検討する考えがあるかをお聞きしておるわけでございますが、いかがですか。
  210. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう考えはございませんし、私が参って理屈を申しましたら、あまり親善にもなりそうもなく思います。ただいまそういうことを考えておりません。
  211. 岡本富夫

    岡本委員 時間がありませんので最後に……。  繊維問題では、構造改善事業のちょうど四十二年度の返還のときがいよいよ来るわけでありますが、大体構造改善を見ますと、一〇%から一五%くらいの伸びを考慮して、そしてやっているわけですが、自主規制の問題から非常に先行き不安になって、輸出に対してかげり現象があらわれる、メーカーは発注をしない、こういうわけで、今度の構造改善事業に対する返金というものに困ってくるのじゃないか、こういうことが見受けられるわけであります。こういうことが顕著にあらわれた場合は考慮なさる考えはございますか。
  212. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 たとえば福井等の産地で、御指摘のようなことが先行き不安で起こりつつあるわけでございますが、この四十五年度に構造改善返済の予定になりますのは、最初の年、四十二年のものが第一回の返済になるわけでございます。福井県全体で二億円くらいと推定されておるようでございます。私ども、そういう先行き不安から起こっておる業界の姿については非常に心を痛めておりまして、いろいろなことで応援の手を差し伸べたいと思っておりますが、ただいまのお尋ねは、実はこれからの交渉等々にもいろいろの関係がございますので、公の席でお答えすることが非常にむずかしゅうございます。そこで、ただいまのところ考えておりません、こういう答えでお許しをいただきたいと思います。
  213. 岡本富夫

    岡本委員 そうすると、あと全国的には構造改善のやつは九億五千八百万あるのですから、わずかな少ない福井県の場合だけのことを言わないようにお願いします。  そこで最後に一点だけ。実はこれは全然話が違うのですけれども新聞の報道によりますと、行監委員会委員の意見といたしまして、四機関、六特殊法人、その中で電源開発、こういうのはこれからその存在は認められぬ、遊休職員を配転せよ、こういうようなことが非常に大きく発表が出ておるわけですが、これに対する御意見を伺いたいと思います。
  214. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 行監の委員方々の御意見というものは、たとえ公式の結論でなくても、私どもできるだけ行政簡素化の意味で尊重をしていくべきものだと考えておりますけれども、電発につきましては、申し上げるまでもなく公害等々が言われておる現在でありますので、水力の開発、ことに大規模な揚水発電であるとか、あるいは将来の原子力開発、それから各地域間の連絡の機関、送電線の建設等々、まだやってもらわなければならない仕事が私は相当あるというふうに実は考えておりますし、行監の御意見もその点は一応認める、しかし金利あるいは運用のしかた等々に改善の余地はないかというようなことを伺っておりますので、そういう改善への努力は私は常にいたすべきものだと考えております。
  215. 岡本富夫

    岡本委員 時間が来まして、まことに佐藤経済企画庁長官に申しわけない。せっかく待ってもらって何も聞かぬというわけにいきませんので、四十五年度の消費物価の上昇率を四%台にとどめることとし、卸売り物価の鎮静化をはかるといっても、ことしの一月か二月にもうすでに野菜や生鮮食料品の値上がりがきているわけですが、これを確かにことしは四%台にとどめることができるかどうか、率直にお聞かせいただきたい。
  216. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 私どももこの点はずいぶん検討いたしまして、四%台にとどめられるという自信を一応持ったわけなんです。ただ非常に各方面からそういう疑問を提出されております。それはある意味においてはごもっともだと思うのでありますけれども、本年、四十四年度の物価は、当初の見込みは五%でございまして、それがこの間の改定によりまして五・七になりました。ところがこの五・七が、一月までの実績を横ばいにいたしますと、さらに六・二ぐらいになりそうなんです。ですから、当初四十四年に五と考えておりましたのが五・七、さらに六・二とはね上がった。一体こんなことでは四十五年度に四・八%という見込みを立ててもとても心もとない、こういう御議論をわれわれも非常に受けております。それで、これはまた、聞きようによると言いわけめいて、私も非常につらいところなんですけれども、五%の見込みが五・七になりましたのは、これはほとんど季節商品なんです。ことし四十四年度はまことに不幸だと私も思うのです。夏に長雨があり、そうして秋から今度は干ばつ、寒波というようなことで、野菜にとっては異常な年でございます。少なくとも昨年の四月からことしの一月までで季節商品で大体一六%上がっております。これは実は三十七、八年以来の非常な——季節商品でありますから、もちろん上がり下がりは多いのでありますけれども、これだけの高い指数を示しましたのは十年ぶりという状況でございます。そういうようなことから、私どももまことに残念なのでございますけれども、五・七に上げた上にさらに六・二というようないまの見通しに立っておる、こういうことでございます。  そこで、明年はどうかということでありますけれども、この季節商品の上昇については、こういう異常な値上がりはないというふうに見ております。これはほんとうは天候ですから、遺憾ながらわからない要素もありますけれども、従来の季節商品の動き等から見まして、そういうふうに実は判断しております。それで、季節商品の動きがことしほどにひどくないということになりますと、ほかのほうでは、公共料金の抑制は、米麦等もなお続けてやってまいる。その他できるだけわれわれとしては抑制してまいりたい。それから一般の商品も、実を申しますと中小企業の製品なんかで相当強含みの点もございますけれども、非常に遅々たる歩みではありますけれども、やはり従来の物価対策という努力も積み重なってきておりまして、ある程度の効果はあげておると私は思っております。一方において生産性も相当伸びております。この見通しは来年も相当にいくと信じております。そうしたことを勘案いたしまして、四%台に何とか押えよう、こういう気持ちでおります。
  217. 岡本富夫

    岡本委員 それだけの答弁をいただいて、次の機会にデータをもってまた議論をしたいと思います。どうもありがとうございました。
  218. 武藤嘉文

    武藤委員長代理 西田八郎君。
  219. 西田八郎

    西田委員 通産関係全般にわたるということになりますと、相当広範な問題でありますから、時間の制約等もありますので、やはり対米輸出の問題と繊維の構造改善に限って質問をしていきたいと思います。  今度のアメリカ繊維に対する輸入規制問題は、だれが見ても一般的に政治問題だというふうにいわれておるわけであります。後ほど米国の労働経済事情等について触れたいと思いますけれども、とにかくいまアメリカは総体的に繊維産業は好況である、こういわれておるにもかかわらず、こうした問題が非常に強く日本に自主規制という形において要求あるいはは要請されてきておる。これに対して政府が真正面から取り組むということについて一抹の疑問を抱くわけであります。特に大臣あるいは首相等の国会答弁を聞いておりまして、あるいはまた対外発表を聞いておりますことと、アメリカにおける下田大使等の動きとの食い違いというものは一体どこから出てくるのか、その辺について通産大臣の明確な見解をひとつ聞かしていただきたいと思うわけであります。一説によりますと、佐藤・ニクソン会談で約束されたのだ、したがって日本政府一つの借りがあるのだというようなことさえ風聞として聞くわけでありますが、ひとつその辺についての明快な御答弁をいただきたいと思います。
  220. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 佐藤・ニクソン会談云々につきましては、もう総理大臣がしばしば公の席で言明をしておられますので、私から何もつけ加えることはないと思います。  しかし、どのようにしてこういうことが起こってきたと思うかと言われますことですが、まあ私の想像でございますが、アメリカ側では一部の地方に、どういう事情によるかは別として、収益の減退している繊維関係の企業があって、それをもってこれが全米的な被害である、しかもそれが輸入の結果であるというふうに、どうも何かのことから思い込んでしまったのではないだろうか。そこで私どもは、資料に基づいてはたしてそれがそうであるのかそうでないのかということを解明いたしたいと、こういう努力をしておるわけでございます。
  221. 西田八郎

    西田委員 そうしますと、米国のほうからは、日本以外の国にも問題があるということを口に出しておるわけですね。そうして報ぜられるところによると、他の国の問題が解決しなければこれを日本に直ちに適用しようとは考えていない、こういうような発言がありながら、どうして日本政府だけに強くこれを訴えてくるのか。これは、単に日米の親善関係というだけではなしに、何かそこにあるというふうに見られるわけでありますけれども大臣これをどうお考えになりますか。
  222. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これも想像をもってお答えするしかないのでございますけれどもアメリカ側といえども資料を見ておりましたら、問題になっておる品物の対米輸出につきまして、日本は一番大きな大株主である、そうは考えていないであろう。ほかにこれこれの国があるということはわかっていると思いますが、それがわが国に対してとにかくまず最初にと考えますのは、おそらくはわが国相当貿易の黒字も出しておる、経済的にいわば余裕があると見られておりますに比して、たとえば韓国、台湾あるいは香港などはそれほどの大きな規模の経済でございませんから、そこでまず一番余裕のある国と話し合いをしたい、こう思っておるのではなかろうかというのが私の想像でございます。
  223. 西田八郎

    西田委員 そこで、いま言われておるインジュリーといいますか、被害の問題でありますけれども、私の手元にあります資料によりますと、アメリカの衣類製造業の一九六一年から一九六八年にわたる伸びを見ました場合に、いわゆる売り上げ高では六一年に対して六八年は五五・六%、さらに税引き前の利益におきましては一八一・三%と二倍に近い収益をあげておるわけであります。税引き後の利益によりますと一九六・二%と、三倍近い収益を上げておる、こういう増加率が——これはフェデラル・トレード・コミッションから出されておる資料でありますけれども、そういうように考えますと、決して収益は減っていないということが言えるのではなかろうか。さらにまた、労働、経済の面からこれをながめました場合に、一九六二年に繊維雇用者数が二百十七万人であったのが、一九六九年、昨年の六月では二百四十五万人と増大をしてきておるわけであります。私が日本生産性本部のいわゆる研修チームで米国に渡りましたのが一九六一年であります。その時点におきましても、アメリカ繊維労働者の賃金が低いのだということで、全米の繊維被服合同労働組合を中心にして賃上げ等が行なわれておったのでありますが、その効果で、賃金の上昇率は、一九六二年から六八年の間に、年平均をとってみて、製造業が四・四%であるのに対して五・四%と、従来常に低い地位にあった繊維の賃金が、この間に一%優位に転換をしてきておるわけであります。こういう実情。さらには失業者数は、一九六二年には十二万七千人であったのが、現在では半減しておるというふうにいわれておるわけでありますし、労働者の移動率も、いわゆる全米平均の 〇・九%に比べて〇・四%と激減をしておるわけであります。これは、繊維産業が好況であることを示唆するものであり、そのもとに働く労働者の定着率がよくなったということにほかならないと思うのであります。  こういうような形になっておるにもかかわらず、なおかつ被害かあったのではないか——向こうから被害があると言われておるから、そういうふうに受け取っておられるかどうかは別として、こういう点、在外公館を通じて通産省ではどう把握しておられるのか、そこら辺の点について、ひとつお聞かせをいただきたい。
  224. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私の聞いておりますところでは、御指摘のように、マクロで見ます限り、アメリカ繊維産業というものは決して不況ではない、こういうふうに聞いております。先ほどからしばしば名前の出ますバーリントンなどは、相当総合的なメーカーでもございまして、決して不況である、収益が悪くなっておるとは聞いておりません。おそらく先方が、そこでマクロとミクロとを多少混同いたしまして、どこか地方の、それもある片寄った品物、あるいは合理化がおくれたというようなところのものの収益状況を、全体と思い誤っているというようなことでもあるのではなかろうか。マクロとしては、私は、いま御指摘のとおりだと思うのでございます。  それからもう一つ、これは全然別のことでございますけれどもガットで申しますと、ある特定の品物について、それと直接に競合あるいは代替関係にある物の売り上げなり生産なり収益が非常に落ちたというときには、それはその品物についてはインジュリーが成り立つという問題は別途にございますけれども、しかし、私は大まかに、米国の繊維産業が不況だとは聞いておらないのでございます。
  225. 西田八郎

    西田委員 そこで、こういう点から考えてみまして、被害あるいは被害のおそれということばを通産大臣はお使いになったのでありますけれども、この被害のおそれとは一体何をさすのか。先ほども社会党の加藤委員からお話が出ましたが、むしろ日本の製品が安く入って、あるいはアメリカの労働者、一般国民は、そのことによって消費生活の支出面を極度に押えることができるのじゃないか、それはかえってアメリカの物価騰貴、いまインフレだといわれておるアメリカ経済に寄与することにもなるのじゃなかろうかと考えるのであります。  そうすると、この問題で非常に被害を受けるのは、いわゆるアメリカの一部の業者ということになりはしないか。そうして、アメリカ繊維産業は、一九五八年ごろから北部から南部に移動をしておるわけでありますが、そうした南部地方のいわゆる繊維産業のみに限られてくるのではないかという気がするわけであります。さらに、そうした問題でもないとすると、この被害者はニクソンということになるのかどうかというようなことにもなるのでありまして、そうした点、いわゆる被害というのはどういったものをさしておるのか、こういう点についてお聞かせいただきたいと思います。
  226. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 外国から輸入される品物と直接競合関係にある、あるいは代替関係にある品物の生産、価格、そこから生ずる収益、それに関する雇用等に相当の影響があり、しかも、外国からの輸入が相手の市場で相当のシェアを持っておる、そういう場合に、その品物について被害または被害のおそれということを言うのだと思います。  そこで、どの程度をもって被害とし、あるいは被害のおそれとするかは、ガットの上では、たぶん定義をされたことがかつてないのではないかと思います。
  227. 西田八郎

    西田委員 そこで、アメリカ被害という点から見ますと、先ほど申し上げましたような繊維産業の事情である。そうすると、むしろ米国内における被害よりも、こうしたことによってアメリカの要請を少しでも聞き入れるということになれば、そのことは、大きな国内の業者あるいはその産業で働く労働者に及ぼす被害のほうが大きくなるのではないかと私は思うわけであります。  あとで御質問申し上げますが、そうした点をおそれまして、日本繊維産業は、いわゆる国際的分業の中に立ち、日本繊維産業の生きるべき道というものを十分検討した上に立って、昭和四十二年に特繊法が制定をされまして、そうしてそれがいま施行の過程で、各業種ともに努力をいたしておるわけであります。その努力が実を実らないのに、ここでまたもやこういう被害を受けるというようなことになれば、私は一大問題ではないかと思う。その点について、日本に及ぼす影響というものについてどう考えておられるか。
  228. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 自主規制をするということをきめたわけではございませんし、どの品目が可能性があるかということも私ども考えておりませんので、いま具体的に申し上げることができません。しかし、現在起こっておりますことは、少なくとも先行き不安によって産地にかなりの衝撃を与えておるということについて、私どもは非常に心を痛めておりますけれども、御質問全体については、そのようなことでただいまお答えすることができないわけでございます。
  229. 西田八郎

    西田委員 それはそういうふうに大臣としてはお答えになるだろうと思うのですけれども、少なくとも、日経新聞によりますと、数品種をきめて、その問題についての被害調査までやるというところまで政府は踏み切っておるということになるならば、そうしたことを先を見越して心配することこそ政治のあり方ではないか、あるいは政府の使命ではないかと思うのですけれども、その点についてどうですか。
  230. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 現在のいわゆる目先不安から起こっております現象についてどう対処するかということは、私どもいろいろに心を痛めておりますし、聞くところによりますと、業界の大手筋では、何かの意味でストックになりそうな物は、かりに自分たちがストックにしてでも産地に不安を与えないようにしたいということを考えておられるように聞いております。
  231. 西田八郎

    西田委員 次に、先ほども質問があった面でありますが、明らかにしておきたいと思いますので重ねてお伺いをすることになるわけでありますが、これの問題を突き詰めていきますと、やはりLTA、いわゆる綿製品協定にこれは違反するというように考えられるわけであります。その点では、LTAの第一条に明記されておりますように、この問題は綿以外には波及をしない、綿以外の分野には適用されないものであることを確認するということが明らかになっておるわけであります。しかも、そのガットないしIMFといったような国際経済体制を確立しようという提案者は、第二次世界大戦終了後、非常に経済的に大国となったアメリカの提唱によってなされたということ、あるいはまたアメリカがこれらの協定の成立に対して寄与したところは非常に大きかった、私はこれは認めなければならぬと思う。しかし、そうしたことを非常に主張してきたアメリカが、こうしたガットの、しかも協定で明らかにされておる条文まで侵してこよう、あるいはそれを破棄しようというか、破棄する行為に似るわけでありますけれども、そういうことは断じて許されないことだと思うのですけれども、どうお考えになりますか。
  232. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 LTAは、第一条に書かれておるごとき精神のものでございますから、かりに規制というものが行なわれますときに、これを借りる形で、LTAのワクで処理するという気持ちは一切ございませんことは、先ほど経済局長答弁をされたとおりであります。そこで、LTAの一条に書いてあることと違うではないかということを、私どももよくアメリカ側に申しておりますけれども先方は、それはもう七、八年前のことであって、そのときの日本といまの日本はいろいろと違うではないか、新しい問題が起こったのだとでも言いたげでありますけれども、LTAをどうかしてこの問題を片づけようという気持ちは、私ども全然ございません。
  233. 西田八郎

    西田委員 そういうお答えであろうとは予測はするわけでありますけれども、それならば、どうして先ほど御質問申し上げたような政府動きが出てくるのか、この辺私は非常に不安を感ずるわけであります。  今日、綿と合繊との生産量の率というものは非常に大きく変化をしてきておるわけでありまして、昭和三十一年の状態では、天然繊維六四・九%に対して合繊が三五・一であったのが、四十三年において完全に逆転をいたしまして、天然が四二・五、合繊が五七・五、こういうふうに比率を変えてきておるわけであります。そうしますと、この当時は日本の主たる繊維製品は綿であった。したがって綿に規制をする。それを国内において体質改善なり構造改善をはかりつつ、その製品の割合を変えていって国際協力をしていこう、あるいは国益を守っていこう、こういう立場で努力をしてきたものが、今度はまたぞろ、こうした努力をした品目に対してこういう問題が提起されてくるということになると、日本繊維産業全体、あるいは繊維産業だけではなしに他の産業においても、そういう心配というものは非常に大きく生まれてくると思うのですが、こうした面についてどうお考えになっておられるか。
  234. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 アメリカ側は、この繊維の問題は一つだけ特別なケースであって、ほかのものに及ぼすことはしないということを言っておる由であります。私はその善意は疑いませんけれども、そう簡単なものではございませんから、私どもとしては、そういうことの起こらないように、やはり筋道だけは立てておかないといけない、こういうふうに考えておるのでございます。
  235. 西田八郎

    西田委員 そうしますと、LTAのときだって綿だけに限ると言ってきたわけです。それが日本の生産比率が非常に大きく変わってきた。そこでまた今度は合繊だ、ウールだというふうに言ってきますと、これはもう退く一方です。それではたして日本通産大臣として国益を守れるのかどうか。この点は、かつて通産大臣にも党の代表としてお願いに上がったことがあるわけでありますけれども、そういう面については、通産大臣は守りたいという意向があったわけでありますが、それに対して変わりがないかどうか。  さらにもう一点。これと関連をするわけですが、アメリカの上院、下院の議員の中で、ガットという問題について非常に理解が少ない。したがってこういう問題が起こってきたのではなかろうか。その点について日本政府は、十分説明をしていきたい、こういうようなことばがあったと記憶いたしております。その点について、それを周知せしめるような努力をなされたかどうか、これをお伺いしたい。
  236. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 LTAにつきましては、業界は非常にそういう不信を持っておりまして、私自身も、その不信はもっともなことだと思っております。  それからガットについての問題は、やはり、たとえばキーカレンシーの国の国民は、為替管理というようなものが理解できないというのと同じような意味での認識の浅さがございまして、私ども、おっしゃいますように、機会あるごとに、アメリカから来訪する議員あるいは実業家に対しては、これを申しております。申しておりますのですが、条文を読んでなるほどそうかと思いましても、いままでそういうものの中に生きてきておりませんから、なかなか観念的にしか理解できないというのが、どうも事実でございます。
  237. 西田八郎

    西田委員 これ以上、時間の関係もあって聞きませんが、その辺はいささか私ども考え方を異にいたします。(「これはアメリカの提案でできたんだ」と呼ぶ者あり)いまもおっしゃるように、これはアメリカの提案でできておるものなんです。しかも、それはアメリカ経済を守るという立場でつくられてきた。それを世界の経済に広げていきたいという考え方でできたものであります。それをみずから侵すというようなことは、自繩自縛ということばが全く当てはまる行為ではなかろうか。そういう点については、日本政府がもっと腰を落ちつけて、きたないことばですが、ふんどしを締めてかかっていただきたいと思うわけであります。  これに関連しまして、今度のこの繊維に対する輸入規制で、万一あやまって筋を間違わして解決するようなことがかりにあったとした場合は、これはたいへんな問題が起こってくるように思われるわけであります。そうでなくとも、虎視たんたんとして日本繊維製品の輸入をマークいたしておりますカナダ、オーストラリアは、それ見よという形で日本に迫ってくるであろうということも考えられる。それは単に繊維製品のみならず大きな問題に発展をして、全産業に及んでいくのではないか。特に、最近顕著な伸びを示しておる自動車工業あるいは電気機器工業にも広がっていくと思われるわけであります。それをいみじくも意味づけるかのごとく、今度日本に来られますアメリカの貿易委員長でありますか、経済のベテランであるといわれるケンドール会長が、そのことを言外に含めて発言をしておられるわけです。そして、日本が現在制限をしている輸入品目の撤廃か急ぐべきである、私はこれを日本に行って主張するというようなことを堂々と公表しておるわけでありますけれども、こういう問題に対して大臣、どうお考えになりますか。
  238. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前段に言われました、処置を誤ると他の品物及びよその国との間に非常に危険な問題が起こってくるというは、そのとおりだと思います。最も戒心しなければならない点であります。  それから他方で、しかしこういう問題が起こってきた一つ背景は、自由化についてのわが国の従来の努力が、よその目から見ると、わが国の国力に比して十分ではないという問題が背景になっておると考えておりますということは、先ほどもお答え申し上げたとおりでございます。
  239. 西田八郎

    西田委員 それでは輸出問題について、確認の意味でこの問題の最後に御質問しておきたいのですが、従来から唱えられてきたところの、被害のないところに規制なし、この精神、これは堅持するというお考えかどうか。
  240. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ガットに定めております、被害または被害のおそれないときには規制というものはない、これは堅持いたすつもりであります。
  241. 西田八郎

    西田委員 したがって、この問題が友好親善といわれる日米の関係でどうしても解決しなければならない事態が起こったときでも、必ずガット々通じて解決するという方針には変わりはございませんか。
  242. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最終的には、多国間でガットとの関連において解決すべきものと考えます。
  243. 西田八郎

    西田委員 そこで私は、最後にこういう問題について、要請といいますか、強く要望いたしておきたいと思いますことは、今度の日米の繊維製品の輸入規制につきましては、業界をあげて、これは単に現在規制品目になっておる化合繊あるいは毛織物だけでなしに、綿製品すべてを含んだ業界あげての反対があります。さらにはまた、国益を守るという意味から、あるいはまた、労働者の労働条件を守り生活権を守るという意味から、わが国繊維労働者の大きな組織である全繊同盟が、あげてこれに反対をいたしております。そうした国民の世論というものを絶対無視しないで、そしてこの問題を解決をしていただきたいということであります。そしてさらに、昨年の五月の九日には、この問題が提起されて直ちに、この不当な、理不尽なアメリカ繊維輸入規制については反対するという院の決議がありました。この院の決議を無視して、この議会における答弁とは別個の形で政府が在外公館を通じて交渉することのないように、ひとつ厳に慎んでいただきたい。これは民主主義政治のルールを守るという意味からきわめて重要な問題であるから、この点特に付言しておきたいと思います。もし所信があったらお聞かせいただきたい。
  244. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 当然のことと考えております。
  245. 西田八郎

    西田委員 次に、構造改善に触れるわけでありますけれども、先ほど申し上げましたように、繊維の構造改善が四十二年から行なわれました。紡績関係につきましては、グルーピングその他の方法、あるいは体質改善、技術革新がきわめて努力して行なわれておるわけでありまして、その効果は漸次あがりつつあるわけであります。  ところが、今度のような問題が持ち上がってまいりますと、いわゆる繊維全体が、従来のテキスタイル・インダストリーからファッション・インダストリーに移行しようという傾向にあるわけでありますが、そういう形の中で、現在の構造改善の進捗度合いというものを見てみますと、きわめて緩慢な要素があるように思うわけであります。したがって、こうした構造改善、せっかく議会を通過した特繊法に基づいて行なわれる構造改善について、今後どう対処していかれるのか、ひとつ総括的に御所見を賜わりたいと思います。
  246. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 織布につきましては、ただいま御審議をいただいております四十五年度の決算案が成立し、これが施行されますと、五三%くらいの計画ができる、こういうことになるわけでございますから、引き続いてテンポを速めてまいりたいと思います。  なお、染色、メリヤスにつきましても、新たに構造改善に入ることは御承知のとおりでございます。やはりわが国繊維産業の近代化の一番のきめ手でもありますし、業界もここに来まして相当に熱意が出てまいりましたので、ぜひ当初の目的を達したいと考えております。
  247. 西田八郎

    西田委員 それでは、いま熱意があるのでテンポを速めたいということですが、過去四年かかってその進捗度合いが非常に憂慮されておる織布に関しましては、あと一年間ではたして当初計画されたような構造改善が実現し得られるのかどうか、もしも実現し得られなかった場合、新法の延長ということも考えられるのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  248. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 四十五年度予算につきましては、先ほど大臣の御答弁のとおり、相当の増額をはかりまして、四十五年度予算をもちまして五〇数%の進捗率になっておりますが、御指摘のとおり、まだ計画には相当の開きがございますので、今後、四十六年度以降どうこれを進めますか、その点につきましては、産業構造審議会の繊維部会あるいは繊維工業審議会等の御意見を伺いまして、今後慎重に検討したい、かように考えております。
  249. 西田八郎

    西田委員 慎重にお考えいただかないと、これは私どもの予測からいっても、あと一年間ではどうにもならない問題ではないかというふうに考えるわけであります。  次に、紡績の関係でありますけれども、紡績も確かに構造改善は進んできております。中小紡のグルーピングにつきましても、これはかなりな成果をあげつつあるわけでありますけれども、しかし、いよいよ新法が切れますと、その時点でこれは野放しの状態になるわけですね。野放しになった場合の紡績産業界はどうなるのか、きわめて憂慮せざるを得ません。しかも最近は、労働力不足等の関係から、省力投資もかなり行なわれております。確かにその設備錘数はかなり減ってきておるわけでありまして、一昨年から昨年にかけまして、二万錘ばかり稼働錘数は減ってきておるわけであります。ところが、生産量はきわめて高い数字を示してきておるわけでありまして、ちょっとここに伸び率の数字を持っておりませんが、かなりな高い伸びを示しておるわけであります。したがって、このまま放置いたしますと、これは国内市場もかなり混乱を来たすのではなかろうかというふうに考えられるわけであります。  そこで、そうしたことを何とかやはり制御するために、あるいは調整するために、登録制度は廃止しても、せめて届け出制ぐらいの必要があるのではなかろうか。そういう中で全体の規制をしていく必要があるのではなかろうかと思うのですが、これについてどういうお考えになりますか。
  250. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 設備制限は相当長期にわたって継続してまいりました。今回繊維新法が失効する際には、これの延長はこの際見送りたい、かように考えております。ただ、それに伴います経過的な混乱につきましては、設備の推移につきまして実態を十分把握するための措置を講じたい、かように考えております。  なお、最も根本的な問題は、大紡績につきましては、スリーシフトを中心にいたしました近代化が相当進んでおりますけれども、中小紡につきましては、近代化がなお非常におくれておりまして、私としては非常に心を痛めておる点でございます。この点に関しまして、昭和四十四年度から中小紡のグループ化につきまして開発銀行に特利を設けましたが、さらに四十五年度につきましては、中小紡の中の比較的上位のほうについてスリーシフトをやるとか、あるいは非量産番手の高級系に自分の生きる道を見つけるとか、そういったいい計画につきましては、開発銀行の特利を拡大適用したいということで、現在大蔵省と交渉しておりまして、交渉は相当煮詰まった段階にきております。
  251. 西田八郎

    西田委員 構造改善について、かなり意欲的に業界も取り組むようになってまいりました。いまの繊維雑貨局長の御努力もなんでありますが、こういう点についてあやまちを起こさないように、二度と優勝劣敗というような繊維の戦国時代がこないように、十分な行政的な指導を必要とするのではなかろうかと思います。  次いで、先ほど申し上げました織布業でありますけれども、進捗していないという御心配でありますけれども、その原因が一体どこにあったのか。四十二年から始まって二年、三年、四年と経過をしてきたわけでありますが、その間に一体どういう指導があったのか。そうして、その指導が誤っていたのかどうか、進捗していないというのは。その辺についてひとつお考えをただしたい。
  252. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 織布の構造改善は、四十二年度から始まったわけでございまして、四十三年度に相当の予算の計上をいたしたわけでございますが、必ずしも織機の開発との関係について十分な施策がとれていなかったともいわれておりまして、四十三年度における構革意欲が、意外に役所の期待したとおり伸びなかったというのが一因ではなかったかと思います。しかしながら、この中小企業の問題は、なかなか役所の考えるようなスピードで一挙に構革が盛り上がるとも考えられないのでありますが、昨今は非常に構革の意欲が燃え上がっております。したがいまして、今般の御審議いただく予算でも、その点については十二分の配慮を私としてはしてきたつもりでございますし、今後さらに努力を重ねていきたい、かように考えております。
  253. 西田八郎

    西田委員 織機の開発がおくれた、あるいは経営者の頭の切りかえが少しおそかった——そうおっしゃらなんだけれども、えんきょくにそうおっしゃったように聞くわけですけれども、私は通産当局の指導にも若干問題があったのではなかろうか。その機業地の、産地というものを中心にしたいわゆる産地主義に基づいて行なわれてきた構造改善、そのことが、それを業とする経営者にもうまくぴったりいかなかったんではないか。ということは、日本経済構造からいって、やはり大企業の支配する系列化というものの進んでおる中で産地主義というものをとったところに、一つの問題点があったのではなかろうかというふうに考えるわけでありますが、その点についてどうお考えになっておるのか。
  254. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 まことに申しわけございませんが、就任して四カ月、日米繊維交渉に追われておりまして、まだ産地に伺っておりません。ただ、役所に来られた業界の方には、時間の許す限りお会いして、いろいろお話を承っておりますが、若いりっぱな指導者が出てきた産地は、非常に構革の意欲が盛り上がってきつつあるし、それがまた全国的にいい例になってきておるんではないか。これが全国的に浸透することを私としては希望し、期待しておる次第であります。
  255. 西田八郎

    西田委員 私もやはり繊維産業に携わってきた一人でありますから、一対一でやりかけると時間に制限がなく出てくるんでありますが、もうすでに予定の時間が過ぎておりますから、最後に一言お伺いしたいのは、繊維製品の検査所の問題でございますね。いま化繊、綿、麻それぞれ輸出品のみについて検査をしておられる。これに対して、内需の面についてまで検査をするという、そういう考え方があるかどうか、この点についてひとつお考えを聞かしていただきたい。  ということは、繊維の品質保証をする、そういう意味で検査をするんだということは、国民の商品に対する信用度、そういうものをかなり高めるものであると思うのです。したがって、そうした方法を講じて、そしてこれからは開発途上国からもどんどんと輸入されてくることを考えましたときに、やはりまず国内で消費するということを考えたとき、これは国産品であり、きわめて優秀な製品であるということを裏づける意味からも必要なことではなかろうかと思うのですが、そういう意味でどうお考えになりますか。
  256. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 検査表示の問題は非常にじみな問題でございますが、また反面、非常に重大な問題でございます。同時にまた、それのエンフォースメントといいますか、それの成果を維持する、高めるという点において、技術的にいろいろ検討すべき問題が残っておるんではないか、かように考えております。したがいまして、私としましては、私の問題意識の中にはございますけれども、また部下にも検討は命じておりますけれども、まだ、目下検討中というほどの段階には至っていないのは、はなはだ残念に思っております。
  257. 西田八郎

    西田委員 ちょっと時間をお許しいただいて、最後と言いながら次から次へ出てくるわけですけれども……。  その場合に、検査をして、これは優秀品である、グッドクォーリティーといいますか、というような形で通産省がお考えになっているというようなことを、去る新聞で拝見をしたのですが、この点はどの辺まで進んでいるのですか。  そしてまた、それについていわゆる産地別のアドレスを入れるのかどうか、そういうような点について構想を、よろしかったらお聞かせ願いたいのです。
  258. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 四十四年度からスタートする準備を始めまして、いろいろ業界との話に手間どりましたけれども、私の記憶では、ことしに入りましてから、婦人、子供服につきまして、いま先生の御指摘の制度の発足を見たわけでございます。今後この成果を見まして、さらにそれを前向きに発展するかどうか検討したい、かように考えております。
  259. 西田八郎

    西田委員 産地別の……。
  260. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 いまはまだ産地別に広げるということまでは考えておりません。
  261. 西田八郎

    西田委員 いよいよ最後にいたします。  いま一番問題になっておりますのは、国民生活の上では物価の問題であります。この物価の問題は多分に流通の問題がからんでまいるわけであります。ことに繊維産業は、明治初年から日本経済をささえてきた産業であります。そういうような点から、ただ工業というだけでなしに、商業とも結びつきまして、非常にデリケートな複雑な様相を持っておるわけであります。このことが、今日のような高度経済成長の中に入ってまいりますとかえって災いとなりまして、その流通機構の複雑さが国民に非常に高い製品を与えておるということになっているのではなかろうか。メーカーから手放されるいわゆるカッターシャツを例にとってみましても、消費者に渡るときには約倍に近い価格になって出てきておるわけであります。  こういうような現象というものは一日も早く直さなければならないし、そういった第三次産業に働いている人を第二次産業に吸収することによって労働力不足も解消されると思うので、したがって、この流通問題はもっと早くから手をかけていかなければならない問題であったのではと思いますけれども、しかし、これが非常に複雑である、しかも巨大資本が商業部門にかなりのしてきておるということで、手がつけられなかったという実態があるわけでありますが、本年は、幸いに通産省の御理解ある好意で、流通問題にもひとつ手をつけていこう、こういうところまで踏み切られたわけでありますが、この問題について、一体どういうような方向で処理をしていこうとされるか。もちろんこれは委員会があって、産構審等でいろいろと諮問をされる問題ではあろうかと思いますけれども、通産当局の責任者の考え方がお聞かせいただければ幸いだと思います。
  262. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、繊維の流通機構は一番複雑なもの、また沿革を持っているものの一つであると思います。同じ品物が何度も手を変えていくということでございますから……。  そこで、やはり片一方では流通等々の団地化、たとえばマーチャンダイズマートなどもいい例だと思いますけれども、ああいうところから近代化をしていく、またそのための資金的な援助を国がするというようなことから始めていくべきではないだろうか。そのほうの委員会の意見などもよく聞いてやりますが、そういうふうにして進めてまいりたいと思っております。
  263. 武藤嘉文

    武藤委員長代理 米原君。
  264. 米原昶

    ○米原委員 私も繊維の問題について聞きたいと思ったのですが、各委員から質問がありまして、通産大臣のとられる態度はかなりはっきりしてきました。ただ問題なのは、被害なきときに規制はあり得ないという一つの原則とともに、先ほど横山君の質問に対して、ほっておくとあぶないんだ、こういう二面について、今後とるべき態度に、どうもそこに含みがあるようなので、割り切れないところがある。ですから、そちらの面について若干聞きたいと思います。  多くの委員からも指摘されましたけれどもアメリカの貿易緊急委員会ケンドール委員長発言というので昨日の毎日の夕刊に出ておるが、これを読んでみると、ずいぶんきびしいことを言っておるようですね。「日本繊維業界は米国の被害程度をたてに、日本政府に圧力をかけているが、米国の繊維業界にも言い分はあり、その影響力も強い。両方の言い分をいくら聞いても、なかなか問題は解決しないから、わたしは自主規制をするのがよいと思う」こう言いながら、いままでも「工業品だけでも日本は百二十品目についてガット違反をしている。自分の方で自由化を阻みながら、米国に対しては他の諸国と平等の扱いをしろといっても通用しない。日本はごまかすな。そんなことでは日本先進国の資格はない」こういうふうに言ったという報道があります。実際のことばがこのとおりであったかどうかわかりませんが、そういう意味のことであったろうことはわかるわけです。あるいはもう一つお話があった訪米中の財界経済使節団に対して、商務省デービス次官補が、現在の日本政府の貿易、資本自由化の意向表明は同じことの繰り返しで一向に進歩がないと激しく非難して、米国が国際収支赤字やドル不安に苦しんでいる時期に日本がこのような態度をとることは、世界の自由貿易体制をゆがめるもので、日本は孤立主義をとっているものと考える、こんなふうに言っております。これもそのとおりではないかもしれないけれども、そういう意味のことを米国のほうでかなり言っていることがわかる。  先ほど大臣は、日本自由化の努力が不十分だということを、よそ目で見てそういうふうに考えておるのがいるということをおっしゃいましたが、こういう言い分に対してどういうふうに対処されるつもりか、どういうふうに考えておられるか、その点を伺いたい。
  265. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一応、だれがこう言った、ああ言ったということを離れさせていただきまして、思いますことは、ガットに入りOECDに加盟いたしましてから、もうずいぶん長い年月がたちますが、当時のわが国はあのような状態でございましたから、いわばお目こぼしのようなことで、物の自由化資本自由化もあの程度でとにかく加盟をしたわけでございます。しかし、あの当時の日本と今日の日本は、もう経済的な力は全く違ってきておって、そのことはおそらく、私ども国内におります者よりは、外国から見たほうがはっきり見えるのだろうと思います。今日程度の日本になりますと、この程度の自由化、これだけ多く非自由化を残しておるということは、確かに客観的に見ましたら問題があるところだろうと私は思います。お互い国内にいろいろ問題のあることはよく承知をしておりますし、その説明もいたしますけれども、まず、われわれが意識しないうちにこれだけの経済大国になったといういまの段階で考えますと、自由化の努力を怠っておるではないかとよそから言われることは、どうもよそ目にはそう見えるだろうなという感じを私も持っております。
  266. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと、いまのたとえばデービス次官補が言ったという、日本政府が貿易、資本自由化の意図を何回か表明した、しかしこれは繰り返しで少しも進歩がないのだ、何もやっていないじゃないかという程度に言っているのですが、こういうことも認められるわけですか。
  267. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもとしては一生懸命やっておるつもりでありますが、よそから見れば、経済成長の非常な速いスピードに比べれば、どうもそのテンポは早くないではないか。そんたくいたしますと、そういう見方であろうと思うのでございます。
  268. 米原昶

    ○米原委員 では、そういうことから、おまえのほうがいろいろ言っても、そういうことをやっているのだから自主規制を認めるべきだ、こう言っているわけですが、自主規制に対してはその原則を守ってこれからやっていくのだということをいままで何回もおっしゃいましたが、それではしかし、向こうの言い分はやはり当然なんだ、だからこれは妥協しなければいかぬというお考えなんですか。
  269. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどもお話がございましたが、アメリカ国内にも自由貿易論者がたくさんおりますし、また、消費者利益を代表しなければならないということも、これはたくさんの人がよくわかっておるわけでございますけれども、それらの人々がこの繊維問題で案外発言いたしませんのは、その背景になっておる、わが国のいろいろな自由化努力について不満であるからであろう、したがって、米国の世論と称するものがやや凝集した形でこの問題が出てきている、こういうことであろうと私は理解しているのであります。
  270. 米原昶

    ○米原委員 アメリカのほうがそういうふうに考えていると思っていられるのはわかりますが、こういうふうに攻撃を向けてきている。私は不当だと思うのですがね。そうすると、アメリカの言い分どおり、こういう点で日本自由化の実際努力が客観的におくれているということを認められるわけですか。
  271. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前々申しますとおり、自由化は他人のためにするわけではありませんので、私は自由化ということは日本のためになる、こう考えております。そこで、少しでも早めたいという気持ちを常に持っております。
  272. 米原昶

    ○米原委員 そういう立場で努力されている、私はその考え方に反対ですけれども、しかし、そういう立場でおられることはよくわかるわけです。その点は日米共同声明にも、日本の立場というものはかなり具体的に述べておられる。これは自由化の原則について、ニクソン大統領はきわめて抽象的に一行、自由化の路線を堅持することを言っているだけですが、こちらのほうは相当詳しい約束をされていることが共同声明に出ているのです。これだけ見ますと、これはかなり不公平な態度だというくらいに私たちは感じているのです。  ところが、それでも実行していない、口先だけだとさらに言っているわけですね。そういう言い分を全面的に認めてこれから交渉に臨まれるということでしょうか。
  273. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 何度申し上げましても同じことになるかと思いますが、繊維についてアメリカの求めておりますことは、私ども筋道立ててでなければ対応できない、こういうことを言っておりますし、他方で自由化努力については、できるだけ早くわれわれはやっていくべきだ、これはわれわれ自身のためになる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  274. 米原昶

    ○米原委員 それならば、やはり繊維の問題はある意味で別の問題ですね。ですから繊維の問題については、おそらくこういう発言の調子から見ますと、先ほど西田委員質問に対する答弁の中でもかなりはっきりわかってきておりますが、被害は実際にはないだろうという可能性のほうが、どんなに見たってはるかに大きいと思うのです。そうすると、規制というものは実際にはやらない、断わるということになると思うのです、いまのとっておられる態度を一貫して貫いていかれれば。そのこと自体はちっとも心配することないじゃないですか。何かその面と、もう一つさっき言われた、ほっておくとあぶないと言われるようなことないじゃないですか。それを方針どおりやっていかれて一向差しつかえないように思うのですが……。
  275. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 繊維とほかのこととは、これは別の問題だと言われます。われわれの立場からすれば、そう申したいわけです。しかし、相手方がかりに、いや、それは同じ自由化、非自由化の問題であって、背景は同じ問題ではないかと、そう考えるかもしれない。これは先方が考えるということは、できるだけ蒙を開くようにはいたしますけれども、誤解というものはいろいろなところから起こるものでございますから、われわれがそう考えても、先方がそう考えないかもしれない。そのときにどうなるかということになれば、お互いにもうひとつ、ばかな話はやめてどんどん自由化へ向かっていこうではないかというふうに結論が出れば、これはけっこうなことでありますが、そうではなくて、自分たちだけが自由化をしても相手がしないのならば、こういう方針をやめたということになれば、今度は保護貿易の競争になるわけでございますから、そう発展したときには、きわめて危険だと私は申し上げておるわけでございます。
  276. 米原昶

    ○米原委員 保護貿易になる危険があるようなことをケンドール委員長もほのめかしているんですね。この人はそういう人じゃないと思うんだけれども、そういうことを毎日新聞の記者に話しておるようですね。そうして、そういう法案がアメリカの議会を通るかもしれないというような、一種の脅迫的なことばを使っているわけですが、しかし、たとえそういうことがあろうと、そのために繊維問題のこれまで言われた態度をくずされる必要はないと私は考えるのですが、その点どうですか。
  277. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は、繊維問題について原則をはずしてはならない、こう考えております。しかし、その保護貿易云々ということは、言う人によりましては、確かにおどかしで言っておると感じる場合もございますが、ケンドールとかジャビッツとかいう人たちは、自分たちがいままでそれと戦ってまいりましただけに、いまのアメリカの議会の中における動きというものはかなり今度は問題がむずかしいぞということを率直に言っておるものと、私はその点はそう了解しております。
  278. 米原昶

    ○米原委員 そういうことがあるかもしれませんが、しかし、結局被害がないということが客観的にも立証されればそうだろうと思いますが、当然規制することはないんだという態度をとられると思うわけなんです。そういう場合に、それに対抗して保護貿易の幾つかのそういう問題を向こうが出してくるとしても、それはあくまで筋を立てていく覚悟かどうかということなんです。
  279. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず日米間で、被害またはそのおそれがないという合意ができましたら、これはもう規制という問題はあり得ないわけであります。これが第一点です。  それから第二点のほうは、これは非常に公の場ではお答えしにくうございます。
  280. 米原昶

    ○米原委員 公の場所で答えにくいとなると、これ以上その問題については質問できないわけですが、簡単に結論的に言いますと、自主規制は一切やらないという態度を、はっきりもう示したほうがいい段階に近づいているように私は思う。むしろそうやったほうが、いろんなそういう制限を受けることがその結果として起こっても、そのことは大きな目で見ると必ずしもマイナスにならない、そういうことになるのじゃないかと思いますが、その点をどう考えておられるかということなんです。
  281. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 被害またはそのおそれがあるかないか、したがって自主規制ということが考えられるかどうかを、具体的に討議をしようというのがいまのわが国申し出でございますから、その帰趨をもう少しお待ちを願いたいと思うわけでございます。両国被害及びおそれがないということになりましたら、これは規制という問題は起こってまいりません。  次に、先ほどもお尋ねでございましたが、たとえば私が、アメリカが制限立法をするならしたらいいではないかということをこういう公の席で申せるかといえば、それはもう御推察いただけますように、申すべきことではございません。
  282. 米原昶

    ○米原委員 では、私は先ほども同僚委員質問にありました、バーリントンが三菱レイヨンと合弁会社を設立するという問題について質問しようと思っていたのですが、時間もあまりありませんし、これは省きます。ただこれで、先ほどもそういう意見が出ておりましたが、中小零細企業が倒産に追い込まれるようなことは絶対にやらないでほしいということと、それから外資の導入という問題は、単にそういう目先の倒産とかなんとかいうだけの問題でなくて、実際は日本経済全体にとって長期の意味でやはり大きな問題があると思うのです。そういう意味でも慎重にやってもらわなければならぬというのが私の意見です。  その資本の導入の問題に関連して沖繩の問題ですね、これについて若干聞きたいと思うのです。  沖繩で琉球政府事務当局が、今月の三日に、米系石油会社のガルフ及びエッソ両社の要望していたフリーゾーン地域内の事業の限定ワク撤廃の申請を認める方針をきめた。そして、この問題はかなり重大な問題だと私、思うのですが、こういう形で最近かなり巨大な企業が沖繩に入ってきているようであります。これを沖繩返還の場合にどういうふうに今後扱っていかれるつもりであるかという問題なんです。  もう一つ、フリーゾーンというものですね。これはどんなものだか、私も行ったことがないので実体というものを知りませんが、保税倉庫みたいなものだという話も聞きましたが、実は経団連が出している「日米経済の諸問題」のこの報告書を見ますと、フリーゾーンというのは租界なんだというふうに規定しています。そして、たとえばガルフがフリーゾーンに土地を借りたのは九十九年の契約になっている。これは租界と同じなんだというようなことを書かれている。このフリーゾーンというものの実体はどういうものか。返還の場合にこれはどういうふうになっていくのか。フリーゾーンについては、最近日本も、たとえば韓国の中にフリーゾーンができているということを聞きましたが、たとえば馬山です。そこのフリーゾーンで、たとえば韓国の労働組合がえらい抗議を申し込んでいるらしいのですが、つまり韓国の労働法が、そのフリーゾーンには適用されないということになっていて、フリーゾーン外の労働者とは特別の差別あるひどい待遇を受けているというのでストライキも起こったらしいですが、そういうようなことが沖繩のフリーゾーンでもあるのかどうか。そういうものだとすると、これは復帰の場合にどういうふうに解決されていくのか、という点を聞きたいのです。
  283. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず石油の問題でございますけれども、琉球政府に対しましても、また最近入ってきましたいま名前をおあげになりました業者に対しましても、沖繩の返還が実現したときには、いまわれわれがやっております石油政策がそのまま沖繩にも、当然のことであるが適用されるということをはっきり申し伝えてございます。  具体的に申しますと、新規の元売りというものはわれわれは認めない方針でございますから、それはそのまま沖繩にも適用される。それから資本の導入は五〇・五〇をこえないということでございますから、その点についても承知をしておいてもらいたい、こういうことでございます。その上で琉球政府が入れることがいいと思えば、それはそういうことでございましょうが、それを足がかりに、何かわれわれの石油政策を変えてもらうことができるという期待を抱いておれば、それは業者としては間違いだということを申しておるわけでございます。  次に、フリーゾーンというものは、私、沖繩でどんな形か存じませんが、一般にいわれておりますいわゆるボンデッドゾーンの意味でありましたら、これは御承知のように、再輸出されるものについては、ボンデッドゾーンにあります限りは関税をかけないということでございますから、これはわが国の場合でもボンデッド・ウエアハウスというようなものは御承知のようにございます。そういう意味でなら考えられることでございましょうが、沖繩が返還になりましたあと、何か租界のようなものが残るということは、どうも私どもには考えられないことでございますし、当然そういうことがあってはならないと思います。ただ、私、現状を存じませんので、これ以上詳しくお答えを申し上げることができません。
  284. 米原昶

    ○米原委員 基本的な態度はわかりました。ただ共同声明においても、「沖繩の施政権の日本への移転に関連して両国間において解決されるべき諸般の財政及び経済上の問題(沖繩における米国企業の利益に関する問題も含む)があることに留意して、その解決についての具体的な話し合いをすみやかに開始することに意見の一致をみた。」とあるので、当然いまのような問題が今後の話し合いで問題になると思うわけですが、その中で、沖繩の米人の商工会議所、これが、復帰後も既得の外資免許を継続的に認めて、日本で全国的に営業できるようにせよとか、現在日本政府が行なっておる制限的な関税や輸入割り当てを撤廃せよとか、こういうことを沖繩にある米人の商工会議所が問題を出しておるわけですけれども、こういう態度に対しては、さっき話された原則で一貫して貫いていけますか。
  285. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 詳しい態様を存じませんし、まだ問題も具体的に出されておりませんので、具体的に申し上げることができませんが、私、一つ思いますことは、とにかく二十年、基地その他の関連で沖繩島民の生活が行なわれてきたわけでありますから、こまかいことにまであまり急激な変化を与えて住民に不安を与えるということは、私はよくなかろうと思います。これは日米間の問題ではなくて、生活状態に急激な変化が起こるということは、たぶん沖繩の人たちも好まないでございましょうから、事の大小によって、大して原則にさわらないものであれば、急激な変化を避けたいというのなら、私はそうしてもよろしいと思いますけれども、いやしくも基本的なもっと大きな問題について、沖繩にいる米人だけが現在の内地にいる米国人と特別の特権を持つというようなことは、私ども基本的に認めるべきでない、こう思います。
  286. 米原昶

    ○米原委員 基本的な態度はわかりますが、ただ、これが米人だけの問題でなくて、沖繩のいまの琉球政府がガルフやエッソにいまの制限を撤廃したときにも、むしろ積極的にやったというふうに報道されておりますね。それに賛意を表した、そういうことが実際にあるのだろうと思います。ですから、この問題ははたして言われるとおりに簡単にいくかどうか。そしてやはり沖繩に、いわゆるかけ込みで入ってきておるのが相当最近あるですね。こういうものが今後大きな問題になってくると思うのですがね、交渉の過程で。そういう点でかなり憂慮すべき問題が起こるのじゃないかと思うのですが、その点についてどう考えておられますか。
  287. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 エッソについては、実はそうそう問題はないかと思われますのは、資本的に、あるいは石油の販売の面で提携できる会社が、すでに現にわが国にございますから、あるいは問題は少ないのではないか。ガルフの場合には、これはガルフにはっきり申しておることでございますから、わが国の石油政策の適用を受けることを当然知っての上でということを申しておるのでありますから、もしガルフがそれでも沖繩に企業進出をして、そして沖繩で消費される以上の精製でもやろうということであれば、それをどうやって売るかということは当然考えなければなりません、ガルフ自身の責任において。または返還になりますれば、外資のいわゆるフィフティ・フィフティーということのわれわれの政策の適用を受けるのでありますから、そのこともガルフの責任において考えなければなりません。私ども特別扱いをすることはできません。
  288. 米原昶

    ○米原委員 もう時間がほとんど来ましたから、この外資の問題はもっとまた別の機会にこまかく聞きたいと思っておりますが、 フィフティー・フィフティーにしても、この問題は、アメリカ自身が、単に資本の問題じゃなくて、いわゆる産軍複合体といわれるような、国家権力と産業とが非常にからみ合っているような体制の中でいま進められている。そのときの外資というものがそういう背景を持っている場合に、単に経済的に大きな支配力をもって日本中小企業や零細企業を圧倒するというだけの問題じゃなくて、政治や外交や軍事にまでしばしば影響を与えるようなものになりやすいということです。そういう点で私たちは、この問題はよほど慎重に扱わないとたいへんなことを引き起こしかねない。これはずいぶん例があると思うのです。そういう例をたくさん持ってきているので聞きたかったのですが、時間がありませんから次の機会にしたいと思います。  外資の問題に対して基本的な考え方を聞きたいのです。私が言ったような、そういう問題点はないかどうかということだけ答えてください。
  289. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、アイゼンハワーの言いましたことを、私は当時近くにおりました者から聞いております説明では、必ずしもああ言ったんではないと言っておりますし、ガルブレイスは、しかしいま言われましたような意味に近くとっておるようでございます。まあ気をつけなければならぬことだという意味で、私はこれを自分で考えておるわけでございます。
  290. 武藤嘉文

    武藤委員長代理 次回は、来たる十日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後七時四十一分散会