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1970-06-10 第63回国会 衆議院 社会労働委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年六月十日(水曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 倉成  正君    理事 伊東 正義君 理事 小山 省二君    理事 増岡 博之君 理事 粟山 ひで君    理事 田邊  誠君 理事 大橋 敏雄君    理事 田畑 金光君       有馬 元治君    梶山 静六君       唐沢俊二郎君    小金 義照君       斎藤滋与史君    中島源太郎君       別川悠紀夫君    松山千惠子君       箕輪  登君    向山 一人君       渡辺  肇君    川俣健二郎君       小林  進君    後藤 俊男君       島本 虎三君    下平 正一君       西宮  弘君    藤田 高敏君       山本 政弘君    古寺  宏君       古川 雅司君    渡部 通子君       寒川 喜一君    西田 八郎君       寺前  巖君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 内田 常雄君  委員外出席者         経済企画庁国民         生活局長    矢野 智雄君         外務省経済協力         局外務参事官  鹿取 泰衛君         厚生大臣官房長 高木  玄君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省社会局長 伊部 英男君         厚生省保険局長 戸澤 政方君         社会保険庁医療         保険部長    穴山 徳夫君         農林省農林経済         局企業流通部長 森  整治君         労働政務次官  大野  明君         労働大臣官房長 岡部 實夫君         労働省労政局長 松永 正男君         参  考  人         (雇用促進事業         団理事)    鈴木 健二君         参  考  人         (海外技術協力         事業団専務理         事)      寺岡 卓夫君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 五月十九日  辞任         補欠選任   箕輪  登君     中川 俊思君   小林  進君     日野 吉夫君 同日  辞任         補欠選任   中川 俊思君     箕輪  登君   日野 吉夫君     小林  進君 六月十日  辞任         補欠選任   島本 虎三君     西宮  弘君   藤田 高敏君     下平 正一君 同日  辞任         補欠選任   下平 正一君     藤田 高敏君   西宮  弘君     島本 虎三君     ————————————— 五月十三日  一、駐留軍労働者雇用の安定に関する法律案    (島本虎三君外六名提出衆法第一号)  二、国有林労働者雇用の安定に関する法律案    (川俣健二郎君外六名提出衆法第一九    号)  三、厚生関係及び労働関係基本施策に関する    件  四、社会保障制度医療公衆衛生社会福祉    及び人口問題に関する件  五、労使関係労働基準及び雇用失業対策に    関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件(日雇労働者健  康保険に関する問題等)  労働関係基本施策に関する件(政府関係特殊  法人における労働問題等)     —————————————
  2. 倉成正

    倉成委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。田邊誠君。
  3. 田邊誠

    田邊委員 厚生大臣に、政府立場を代表する意味から端的な質問をいたしたいと思います。  去る特別国会において政府から出されました日雇健保法律案は、最終的に審議未了廃案になったわけでありますが、この法律案廃案になると同時に、政府厚生省は、この廃案をよしとせずして、いままで行政運用で行なってまいりましたいわゆる擬制適用廃止するという方針をきめたようであります。われわれは、日雇健保法律の持つ重要な意味からいい、これが適用者生活と健康に及ぼす影響からいいまして、重大な関心を払ってきたのであります。少なくとも特別国会においてわれわれが審議をしておる過程において、この擬制適用の問題について政府がそのよう暴挙に出ることは、公式、非公式を通じて一言もわれわれに話がなかったのでありますから、この措置は、当該者はもちろんのこと、われわれとしてもまさに青天のへきれきともいうべきことであります。しかもこの日雇健保法律案審議過程で、国会の場所において、いままで大工左官等人たちのいわゆる擬制適用は、当然これは日雇健保法律適用をすべきであるという意思が動いて、衆議院においては、当委員会において修正可決をされ、続いて衆議院会議修正可決をされたのであります。  そういう経過から見ますならば、この擬制適用については、本来の日雇健保法律適用に直すべきであるという世論に従って、国会においてもその意思が働いたことは事実でありまして、少なくとも一院においてその意味法律修正がなされたという事実に照らしてみましても、今度の擬適廃止するという措置は、これはまさに暴挙といわなければならないと思うのであります。一体政府厚生省は、こういった暴挙をあえて国会終了と同時に瞬時の間において行なったという真意は那辺にあるのか、この点に対してひとつ大臣の明快な御答弁をいただきたいと思います。
  4. 内田常雄

    内田国務大臣 今回の私どものとりました措置に対しまして、いろいろ御心配や御迷惑をおかけいたしましたこと、まことに私は恐縮に存じております。  田邊先生からいまお話がございましたとおり、過ぐる国会におきましては、政府からも改正法案を出し、また当院におきましては、それに加えて擬適の問題にも触れる修正案も出されたわけでございまして、私ども政府原案成立することを強く希望をいたし、また国会の御意思もあることでございますので、修正案による擬適制度適法化というようなことにつきましても、その御意思を尊重をしてまいる所存で正直のところ私はおりました。しかるところ、まことに残念にも、この政府原案も、修正案も、御承知ような経緯で不成立になりました。  ところが、この日雇労働者健康保険制度というのは、全く制度運用が停止をしなければならないような非常にむずかしい危急存亡関頭に立っておりましたわけでございまして、国会がああいう状態で終わりました段階におきましては、その危急存亡関頭に立っております状況を、何らかの方法によりましてこれに対処しないことには、日雇労働者健康保険制度そのものが動かなくなってしまうというよう心配もございました。そこで、不本意ながらと申しますか、諸般の事情をも考慮をいたしまして、擬制適用制度、これは読んで字のごとく、本来日雇労働者健康保険制度対象ではない方々を、これについては別個の措置を講ずることといたしまして、本来の被保険者に対する保険給付の円滑を期してまいるということのために前の行政措置を撤回をする、こういうことにせざるを得なかった、こういう事態でございます。何とぞ御了承をいただきたいと存じます。
  5. 田邊誠

    田邊委員 いま大臣は、国会意思がその間に働いて、衆議院において法律修正がなされたという事実について明快な答弁がないと私は思うのであります。いま何か日雇健保財政上の問題としてたいへんな赤字がかさむという事態を、何らかの措置でもって乗り切らなければならぬ、そのために、本意ではなかったけれども擬適についてこれを廃止をするという挙に出たのだ、こういう話がありましたけれども一体国会の中で、これは行政運用でやってきたものを本来の法律適用に直そうという、こういう意思が働いておるという事実は、私は財政運用の問題とは本質的に違うと思うのであります。いままで非常に不安定な立場にあった大工左官等人たちに対して、日雇健康保険のいわば本来持つ意味というものを公に認めようじゃないか、こういうのが法律適用にしようとする一つの大きな要因だろうと私は思うのです。このことの意味を全然抜きにした措置というのはとらるべきでないと私は思っているのでありまして、財政問題は別として、法本来が持つ意味合いからいって、擬適法律適用にしようという考え方に対して、あなたは一体どういうふうにお考えでございますか。これが修正に対して、あなたは本委員会を通過した際に、その趣旨に沿って運用することに意思表示があったはずであります。したがって、そのあなたの当時における意思表示と、今度の擬適廃止という、いわば行って帰るほど違うそういう措置に対して、あなたは一体矛盾を感じておらないのかどうか、この点に対してひとつお答えいただきたいと思います。
  6. 内田常雄

    内田国務大臣 ただいまも申し述べましたとおり、この日雇労働者健保制度に対しましては、過ぐる国会政府自身改正案を出しており、その改正案成立を強く望んでおりましたが、さらに当院におきましても、ただいま田邊さんのおことばのとおり、この本来の日雇健保制度にさらに一歩を進める修正案をお示しになりましたので、私どもは、国会意思でございますので、それを尊重する、こういう気持ちでございました。  しかるに、結果におきましては、まことに遺憾にも、国会全体としてこの改正案並び修正案不成立になりました。その事態におきましては、また、申すまでもなく、日雇健保状態というものは、いまに始まったわけではないことはもちろんでございまして、昨年の段階におきましても改正法案国会提出いたしましたところが、それが不成立になって、今回また政府改正案並びに当院の修正案とも不成立になってしまったその後の状況におきましては、そのままこれを放置いたしますと、日雇健保制度そのものが動かなくなる。法律制度であるとか行政制度であるとかいうよう形式論上のことは別問題といたしましても、制度そのものが動かなくなる。これまた、他のことばでいいますと、本来の被保険者、本来のチャンピオンに対する保険給付というものが、現行制度もはなはだ不満足の制度、十分でない給付ではございますが、そういう給付さえも動かなくなるよう事態におちいるというよう状態でございましたし、また、私どもがいろいろの方面からのおことばを耳にいたしますと、この制度そのものが、失業対策事業に従事せられる日雇い労働者の方、あるいは健康保険制度適用されている事業所に、外から来て日雇いで働かれる労働者方々に対する——ことばをかえますと、日額給料が非常に安い方々に対して、非常に安い保険料——これは安いにこしたことはございませんが、安い保険料、つまり日額二十六円前後というよう保険料で、本来のチャンピオン以外の擬制適用の方方をもその対象に入れているという状態がどうにもこうにも動かなくなった。また、これは数字的に見ますると、これらの擬適方々年間にかけられるあるいは月々かけられる保険料というものと、それから、年間に受けられる保険給付との関係は御承知のとおりでございまして、それがわずかの間ならこれまでのような無理もきいたでありましょうが、もうこれ以上はそういう無理はきかないという、絶体絶命のところに追い込まれておる事態にかんがみまして、これは厚生省としての行政責任行政上の措置廃止して、繰り返し申しますように、本来の日雇い労働者に対する保険給付を続けてまいらざるを得ない、こういうことで今回の処置になりましたので、何とぞ御了承をいただきたいと存じます。
  7. 田邊誠

    田邊委員 大臣、きょうはひとつ、私の質問なり、これから同僚の委員質問がありますけれども、その質問に対して正しく答えてくださいよ。あなたは余分ないろいろな説明をしますけれども、私はそれぞれ聞きます、それ以外の方々財政上の問題は財政上の問題で聞きますから……。  いま私が言っておるのは、いわゆる法律趣旨からいって、擬制適用というあやふやな状態でなくて、本来の日雇健保法の中に入れるべきである、そういう意思表示国会でなされた。少なくとも衆議院においてはそういう意思が働いた。そういう法律の中に入れようという——いま、一歩進めてとあなたはおっしゃった。まさに一歩進めてである。この考え方と、擬制適用というものをさらに外にはずそうというのは、これは行って帰るほど違うじゃないか。逆方向じゃないかと私は聞いておるのでありまして、いわゆる法律の持つ趣旨からいって、あなた方のとった措置は、すなわち衆議院における考え方と逆方向ではないかと私は聞いておるのであります。逆方向ではないというならないでひとつお答えいただきたい。
  8. 内田常雄

    内田国務大臣 田邊さんにも十分な御理解をいただきたいと思いまして、やや十分過ぎる御答弁を申し上げましたが、たってのまたお話でございますので……。  法律は通らなかったわけであります。通らないから、通らない法律のとおりの措置はできない、こういうことでございます。
  9. 田邊誠

    田邊委員 その話、そのことばを私はちゃんと記憶しておきますよ。あと質問しますが、いいですね、それで。法律は通らなかったからそれでいいのだということであれば、あなた方のとった措置に対して、私は、そのことに対して一言も触れてないというなら話はわかるけれども、あなた、いまの答弁をはっきり覚えておいてくださいよ。確かに衆議院では修正したけれども、最終的には廃案になった。通らなかった。だから国会のそういった意思とは関係ない、われわれとしては、われわれの立場でもって行政措置をせざるを得なかった、こういうことですね。
  10. 内田常雄

    内田国務大臣 法律論でやれ、それ以外のことは言うなというお話でございますから、ただいまのよう答弁をいたしました。
  11. 田邊誠

    田邊委員 法律の話をいまあなたはされましたけれども一体さきの国会で出された政府原案というものには、擬制適用について触れていますか。
  12. 内田常雄

    内田国務大臣 擬制適用については触れておりません。
  13. 田邊誠

    田邊委員 とすれば、成立をしたらばこれについては国会のきめたとおりにやる、成立しなかったら廃止をするということに対して、これはあなた方が云々すべき筋合いはないじゃないですか。擬制適用というのは、行政運用でやってきた、しかも今度の政府原案には擬制適用について云々すべきことについて触れてない。それならば、成立をしようが、廃止をしようが、過去十七年間やってきた擬制適用について、これを一瞬の間に行政運用からはずす、こういう措置は、いまのあなたの答弁から見れば矛盾していませんか。そうでしょう。矛盾しているでしょう。あなたのほうは、政府原案の中に擬制適用については触れてない。あなたのほうが、擬制適用について、これを法律適用にしよう、あるいは何らかの措置をしようという、そういう政府提案を出されて、その政府考え方国会意思として通らなかった、廃案になった、それならやむを得ないということなら話はわかりますよ。擬制適用について政府原案一言も触れてないじゃないですか。それが廃案になろうが成立ようが、いままで十七年続いてきた既得権を、そのことによってはずすというそういう考え方に立つのは、これは矛盾がありましょう。これは誤りがありましょう。これはおこがましいでしょう。越権じゃありませんか。そう思いませんか。
  14. 内田常雄

    内田国務大臣 これは、御議論は避けたいと思いますが、私どもの先般の改正案は、お説のとおり擬制適用の問題には触れておりません。が、いままでの日雇健保状況というものが、ああいう改正、つまり保険料等々についての改正をしなければもたなくなったという状態のもとにおける改正提案でございますので、その改正案が通らない状態のもとにおいては、もたなくなったという事態に応ずる措置を講ずるのが、これまた私ども行政上の責任だと考えて今回のよう措置を決定いたしたわけでございます。
  15. 田邊誠

    田邊委員 あなたのほうは、擬制適用については一体どういうふうに考えておるのですか。大臣は、国会においてもしかり、あるいは社会保険審議会においてもしかり、擬制適用については前向きに検討する、すなわち法律適用について十分考慮しなければならぬ、こういう発言をしばしばしているじゃありませんか。このあなたの発言と今度の措置は、いわば、私の言っているように、行って帰るほどの違いがある、逆コースじゃないか、こういうふうに考えるのが当然でしょう。あなた自身は、あなたのいままで言ってきたことばと今度の措置矛盾を感じませんか。矛盾を感じないとすれば、ずいぶん二重人格もはなはだしいと思う。そうじゃありませんか。
  16. 内田常雄

    内田国務大臣 私は矛盾を感じておりません。と申しますのは、とにかく日雇健保というようなものが、いままでのままほったらかしてしまえば、これはもう全く動かなくなることは火を見るより明らかであります。そこで、日雇健保が動くようにいろいろの改善をお願いしたい。また、その私ども説明過程において、擬制適用についてのお尋ねもございましたが、私の気持ちとして御答弁申し上げましたことは、とにかく日雇健康保険法改正になって、そして財政状況改善することになれば、その時点において擬制適用の問題は、これはもうどうしても切らなければならぬということではなしに、いままでも行政措置としてやってきたことだから、日雇健保がこれをかかえられる限りにおいては、その時点において考え所存でございます、こういうことが私の発言であり、また私の偽らざる気持ちでございました。しかるに、現制度改善というものが法律不成立によってできなくなってしまった状態のもとにおきましては、擬制適用方々をかかえようにもかかえようがない、こういうせっぱ詰まった状況で今回の措置になりました。こういう次第でございます。
  17. 田邊誠

    田邊委員 あとでお聞きをしますけれども、この問題に対する政府考え方は、いわゆる法律上のたてまえとは別に、あくまでも財政上の問題である、財政上切り抜けることができない事態になっておるからこれを措置した、こういう一点ばりでいいわけですね。それでいいわけですね。
  18. 内田常雄

    内田国務大臣 話がだんだん入ってきますが、財政問題ももちろん大きい問題であります。財政問題があるから——保険というのは金を集めて、そして事故のあった方に支払うわけでありますから、集まる金がないのに——これは国からも御承知ように何十%かの国庫負担も入ってくるわけでありますが、それと保険料を足したのでは保険給付ができなくなってきておりますから、それはもはや財政上の状況といえば財政上の状況でございます。それがもちろん第一でございますが、もう一つは、やはり負担の公平といいますか、不公平、不公正の問題というようなものもありまして、法律に書いてありますように、いまの二十六円あるいは二十円という日額保険料というものは、日額所得を四百八十円前後という前提においてきめられた保険料でございます。しかし、現状におきましては、医療保険制度といいますか、医療発展に伴いまして保険給付は多くなる一方でございますし、また経済発展につれまして、擬制適用方々所得も四百八十円前後ということではなくてふえてきておりますので、それに相応する保険料を出していただかないことには、本来の、本チャンのほうの失対事業対象になるよう日雇い労務者方々の安い保険料による保険給付というものが維持されなくなっているというようなことは、私は、財政問題であると同時に、もう一つは広く社会の公正、正義の問題から考えなければならない、そういう点もございます。
  19. 田邊誠

    田邊委員 あなたはいま、法律論からいうと、国会でもって廃案になったんだから、これについては触れるべきでないという論旨でございましたね。われわれのほうは、擬制適用は、要するに日雇健保の本来の適用にしようじゃないか、こういう考え方というものがいろいろと論議がされたわけです。まだまだいろいろな面で不十分な点もあります。しかし、一応一歩前進という、あなたがお答えになったようなそういう意思が働いた。結果は逆に、今度は擬制適用廃止ようというのですね。こういういわばうしろ向き答弁である。これは厚生省が、いまあなたが二つ答弁された、そういう考え方でいままで行政運用をやってきたんだから、国会廃案になった時点で、政府厚生省がこれに対して廃止方向に踏み切ったのですか。自主的に廃止方針をきめたのですか。外からの圧力があってやむを得ずそういう廃止の運命をたどるようにあなたは措置をとったのですか。どちらですか。
  20. 内田常雄

    内田国務大臣 これは全く厚生省行政といたしまして、法律案改正がなし遂げられなかった。また、せっかくの修正提案もつぶれてしまったという事態のもとにおいて、どうにも日雇健保制度が動かなくなりますので、従来行政措置としてとってまいってきた擬制適用制度でございますので、行政上の責任でこれをやめざるを得なくなったというところに追い込まれたわけでありまして、他の方面からの圧迫等に基づくものではございません。
  21. 田邊誠

    田邊委員 そこで、先ほど国会におけるいろいろな修正問題等については、最終的に、法律論からいえば廃案になったのだから関知することでない、こういうお話がありました。それならなぜ、あなたのほうで五月二十二日厚生事務次官社会保険庁長官の名でもって各都道府県あてに出しておる「日雇労働者健康保険制度におけるいわゆる擬制適用取扱い廃止について」という通達がありますけれども、この中の第一の廃止理由の(2)に、「第六十三回国会における衆議院審議段階で行なわれた擬制適用法制化についての修正は、この法制上の問題点の解消を意図したものであり、また、この修正案衆議院において可決されたことにより現在のままの取扱いがもはや法律上認めがたいものであることが明確となった」というのは一体何ですか。こういう文書をあなたのほうで流しているのは一体どういう意味で流しているのですか。国会意思についてあなたのほうはこういう解釈をしているじゃありませんか。解釈しているでしょう。これは大臣はさっき国会意思関係ない、法律論からいえば廃止になったことは関係ない。なぜそれならば、衆議院段階修正されたという事実をあなたのほうの通達の「廃止理由」の中に書かなければならないのですか。あなたは法律論からいえば廃止理由の中に入ってないと言ったじゃないですか。一体どういうわけですか。
  22. 内田常雄

    内田国務大臣 私は、すべてをふえんして申し上げましたが、たまたまこの社会保険庁長官通達のことに及ばれましたので、それは本チャンのほうの社会保険庁長官から文意を説明をいたさせます。
  23. 田邊誠

    田邊委員 大臣、それじゃあなたは、この通達について御存じないのですか。
  24. 内田常雄

    内田国務大臣 知っております。
  25. 田邊誠

    田邊委員 それならばあなたはこれに対して一体どうお考えですか。さっきは、法律は流れたのだから、法律論からいえばわれわれの関知するものではない、こういう話がありました。私の質問は、衆議院段階擬制適用法律適用にするという意思が働いたことに対して今度の措置は全く逆コースじゃないか、行って帰るほどの違いがあるじゃないか、こういう質問をしましたところが、あなたは、法律論からいえば、これは廃案になったのだからわれわれとしては関知するものではない。そういったことに対してわれわれは別に関与するものではないのが、なぜ廃止理由を並べ立てている通達の中でもって衆議院における修正の問題を出されているのですか。あなたはどうお考えですか。
  26. 内田常雄

    内田国務大臣 私にやれというから私にやらしていただきますが、いろいろ田邊さんのお話の中でお尋ねがございましたので、私は法律論にも触れ、財政論にも触れ、また正義論にも触れ、いろいろな趣旨から御説明をしましたところが、よけいな答弁は要らない、法律論だけについて言え、おれが聞いたことを言え、こうおっしゃいましたので、それは修正案を出された、その修正案においては擬適を適法の保険対象として認める修正案でございましたから、これは一歩進んだ法律案で、私はそれが成立しますならば、これはもう国会の御意思でありますので、政府の原案から一歩進んでおりましても、国会の御意思を尊重する、しかもその御修正の内容は、保険掛け金の点におきましても合理的な修正が取り入れられてございましたので、私はやや日雇健康保険制度というものの中身が、あるいは形が、従来の日雇労働者健康保険よりも異質的なものになるけれども、しかしこれは一つのりっぱなものになるわけでありますから、その修正を尊重いたすつもりでございました。しかるに修正案は流れてしまったので、田邊先生から、修正案が出ておったのだから、修正案が流れてしまった今日においても、修正案成立しないと同じよう考え方擬適を尊重してまいれということをおっしゃられましても、これは法律は通っていないし、一方、事態は逼迫して、そして保険給付の不払いというよう事態も憂慮されるよう状態の中におきましては、これはその修正案並びに改正案成立しなかったのだから、行政責任行政上の措置をやらざるを得なかった、こういうことを申し上げたのであります。したがって、ここに書いてあることとも、私はこの文章のとおりを読み上げたわけではございませんが、矛盾がないものと私は考えております
  27. 田邊誠

    田邊委員 それじゃ、衆議院において修正可決されたということ、これをあなたは一体どういうふうにとっておるのですか。ここに文言が書いてあるけれども修正案可決されたことを廃止理由一つにしているのですね、これは。衆議院において修正したというのは、いま言った宙ぶらりんな形である擬適を本来の日雇健保の中に入れようという趣旨でしょう。そのことと、今度廃止をするというこの理由づけと一体どうつながるのですか。いわゆる宙ぶらりんのものはいかぬというのでしょう。すっきりしたいというのでしょう。すっきりする筋道が、向こうへ行くのとこっちへ来るのと逆コースになっていいなんてものじゃありませんよ。すっきりしたいから廃止するなんて、そんなことは衆議院修正における趣旨と全く相反する方向ではありませんか。
  28. 内田常雄

    内田国務大臣 修正案はおっしゃるとおりでありますが、その修正案成立しなかった。ここで起立採決がございましたが、どういう方が起立をし、どういう方が起立をしなかったかということも記録に残っておるんじゃないかと思うのですが、成立しないものを私ども成立したものとして取り扱うわけにはまいりません。
  29. 田邊誠

    田邊委員 それならば、この廃止理由の中に、衆議院において修正案可決されたことによって、現在までの取り扱いも法律上認めがたいということが明確になったというのは一体どういうわけですか。なぜ書いてあるのですか。
  30. 内田常雄

    内田国務大臣 私は、大筋は見ますが、こういう文章は一々書きません。これは前の官房長の保険局長もおりますから、こういう文章の書き方については、その衝に当たった方から一応説明をお聞き願いたいと思います。
  31. 戸澤政方

    ○戸澤説明員 この原案の作成につきましては事務当局の責任でございますので、一応私からふえんして趣旨を御説明申し上げます。  この衆議院の御意思擬適廃止になかったことはもちろんでございますけれども、この通牒のこの段でもって申し上げておりますことは、法制上の問題として、この擬適につきましては前から法律上認めがたいものであるという議論がたくさんございます。その点について結論を出すために、衆議院の御意思を援用いたしまして、法制上の問題についてここでもってピリオドを打つんだという意図が衆議院の議決の中にあらわれておるということを申し上げたいだけでございまして、法制上の解釈としての趣旨でございます。
  32. 田邊誠

    田邊委員 いま大臣は、いよいよ苦しくなったから逃げられたのでしょうけれども保険局長の答弁は全くわれわれの考え方と逆ですね。こういう擬適よう状態に置いておくことは法律上認めがたい、これは事実ですよ。だから、いわゆる法律適用をしようというんだ。ところが、あなたのほうは——だから宙ぶらりんの擬適ではいけない、法律上認めがたいという、こういう国会意思が働いた。国会はそれだから法律適用しろというんだ。あなたのほうは、だから擬適廃止ようというんだ。だからのあとが違うのですよ。国会意思をあなたのほうで尊重したかのごときこの通達を出しているから、私は、あなたのほうのそういう考え方はまさに誤りではないか、こう言っているんだ。大臣修正案は通らなかったと言うけれども、それなら国会意思というものをあなたのほうは一体どういうふうに考えているのですか。宙ぶらりんのかっこうでいることは認めがたい。本来の日雇健康保険法に入れようじゃないかというのが国会修正意思でしょう。この意思のとおりにあなたのほうはやったのですか。この文章はそうなっていますか。そういう意味合いであなたのほうは今度の措置をとったのですか。
  33. 戸澤政方

    ○戸澤説明員 お話しのとおり、法律上認めがたいものであるということと、だから廃止する、あるいは法律上認知するということとは別問題でございます。これが国会の全体の御意思として擬適を認めるということになれば、もちろんそれに従わざるを得ないわけでありますが、これが最終的な国会意思としては流れたという段階になりますと、擬適を含めた日雇保険全体の運用を考える場合に、財政上の問題、あるいは先ほど大臣の言われたようなバランスの問題という点からして、もはや一日もこれを放置することはできない。日雇保険全体を救うために擬適を別扱いしなければならなくなったということでございます。
  34. 田邊誠

    田邊委員 そうすると、この文章というのは、国会意思をそのまま表現した文章でありませんね。大臣、あなたがこういう通達を出していないなら、あなたのさっきの論理は一応通るごとく見えますよ。しかし、あなたのほうでは、廃止理由の中に衆議院における修正問題を出しているんだ。結果として廃案になったと言っているけれども、それじゃなぜ修正の問題を出しているのか。修正の問題を出す以上、当然国会意思というものを正確に伝えた通達でなければならぬと思うのですよ。全く逆じゃないか。こんなかってな解釈を行政府でもってやっていいのですか。国会意思を確かめないでもって、国会修正意思を全くひん曲げた形でもって、こういうかってな通達を出して、これは行政府の立法府に対する介入じゃありませんか。どうですか。こんな通達をあなた認めていいですか、大臣
  35. 内田常雄

    内田国務大臣 国会意思と言われますが、国会意思成立しなかったわけであります。でありますから、私ども政府としては、国会意思成立をしなかった事態に応じて処置するよりしかたがないということが一つと、それから二番目には、国会の御意思としてこれは成立しませんでしたが、いままでの擬制適用というものを、擬制ではなしに本チャンに入れる、本格適用対象に入れる、そのかわり、それが成り立つように、保険料に関しましても、御承知ように二十六円のを三十円、六十円、九十円、さらにそれ以上も引き上げるということをも、両方含んで保険が成り立つようにされておったが、それも成立されなかった。もう一つは、ここに書いてある意味は、いまの保険局長の説明によりますと、国会のほうでも、いままでやってきた擬適制度というのはいわば行政上のやみ制度であるから、したがってはっきり法律の上に出したいということを——国会成立しなかったにしても、その意思を表示をされた。そういう段階になって成立しなかったとしますと、もはやいままでの擬適行政上のやみ制度として温存していくということは、かえって法律的にも不都合だ、こういうことになったという意味のことを説明いたしておりますので、私は、それはたいへん理屈っぽい話でありますから、そういう理屈はあまり申しませんでしたが、しいて文章の意味お尋ねでございましたところが、そういう保険局長の御答弁でありましたので、私はそういうふうに理解をしていただきたいと思います。
  36. 田邊誠

    田邊委員 あなたの改正案には三十円、六十円、九十円とあるのですよ。われわれの修正の問題が出たのは、これは制度上の問題として、いわゆるやみ制度であるものを明るみに出そうというのです。それに対してあなた方も賛成をされたのです。そこに修正趣旨があるのでしょう。それを今度あなたのほうは、やみ制度だからやみに葬ろうというのです。これは全然意味合いが違うじゃありませんか。それを書かないというなら、廃案になったのだからいいですよ。いいけれども、わざわざ通達の中に、衆議院における修正趣旨というものはかくかくであると書いているから、その衆議院における修正趣旨というのは全く違うものではないか、あなたの措置国会修正と逆行するじゃないか、私はこういう質問をいたしておるのでありまして、私の質問が無理ですか。私の質問が間違っていますか。いかようにあなたが詭弁を弄しても、この通達は、まさに行政府が立法府の意思をひん曲げて、てまえがってに解釈して、それを廃止理由の中にもっともらしく載せて、何か廃止理由一つの裏づけにしようとしている。そういう魂胆があればこそこれは書いたのでしょう。こんな通達は、私は立法府としては認められませんよ。  私は、これは委員長にお伺いしたいのであります。これは、衆議院における社会労働委員会修正可決された、その内容というものは、やみ制度のものを明るみに出す、こういう意味であった。ところが、今度の政府厚生省のいわゆる擬適廃止というのは、やみ制度をやみに葬ろうというのでありますから、これはわれわれの考えているものと全く逆である、こういうふうに私は思うのでございまして、この種のものを通達に出すことは、まさに行政機関の立法府に対する介入であると思うのです。かってな解釈だと思うのです。私は、この種の問題に対する取り扱いは厳重な措置をとるべきであると考えますので、これは委員長からひとつ特に発言をされて、行政府措置に対して的確な措置をとるように話をしてもらわなければならない、こういうふうに思うのです。いかがですか。
  37. 倉成正

    倉成委員長 ただいまの田邊君の御発言については、妥当であるかどうかということは理事会で協議をいたしたいと思います。
  38. 内田常雄

    内田国務大臣 理事会でというお話でございますが、私の申し上げ方が不適当であったかもしれませんので、理事会までわずらわせますことはたいへん恐縮でございますので、私の説明の悪かった点あるいは不適切な文章がありますことにつきましては、私ども検討の上十分反省をさしていただきたいと思いますので、御了解をいただきたいと思います。
  39. 田邊誠

    田邊委員 この擬適廃止をあなたのほうはきめられておるというのですが、これは手続上からいってもおかしくないですか。今度の改正法律案についてあなたのほうは社会保険審議会に諮問しています。その中で擬適問題についてもあなたは触れられているわけですね。当然、行政運用ですから、これは厳格に言って、審議会にはかるかはからないかという点についてはいろいろな意見がありましょう。しかし、いままでのいきさつから言えば、擬適の問題について社会保険審議会においていろいろ論議があったことは事実であります。あなたのほうで意思表示をしたことは事実であります。とすれば擬適廃止については、諮問機関である社会保険審議会なり社会保障制度審議会なりに対して、制度上の問題としても財政上の問題としても当然はかるべき筋合いのものではないかと思いますが、この点に対してはいかがですか。
  40. 戸澤政方

    ○戸澤説明員 この擬適適用は、法律に基づかずに運用の問題として従来もやってきたわけでございます。従来の社会保険審議会につきましても、擬適問題について諮問等をいたしたことは一度もございません。ただ議論に乗ったことはもちろんございますけれども法律上の扱いとしては、諮問の必要もないし手続上も問題はないというふうに考えております。
  41. 田邊誠

    田邊委員 言いたくないけれども、私はそういう趣旨質問をしているじゃないか。手続上からいっても、あるいは法律上からいっても、諮問する必要はないかもしれないけれども、事実問題としてその中で論議があり、現に大臣からも意思表示があったじゃないですか。擬適については説明員からも意思表示があったじゃないか。だから一年半については、改正案においても六十円でいくべきだ、こういう審議会の意思があったじゃないですか。そういう質問をしておるにもかかわらず、私の質問をとって、法律上も手続上も必要ない。そんなことはわかり切っておるから前置きをして質問をしている。大体時間の空費だ。そういう論議があったのを踏まえて審議会にはかるべきではないか。さっき大臣は、道義上のことを盛んに言っておられますから、道義上からいってもそうじゃないかと言っている。都合のいいときにははかるけれども、都合が悪くなったら、そういう諮問機関を無視してやろうというところが、官僚の最も独善的なことだと私は思うのです。どうですか。
  42. 戸澤政方

    ○戸澤説明員 この擬適廃止のタイミングについての問題としましては、当初日雇健保が全体としての財政対策を踏まえて改正案を出したわけでありまして、それが廃案になったということになりますと、もう日雇健保全体として支払い不能にもおちいるおそれがあるよう状態になってきたわけであります。その意味において、タイミングとして一日の猶予も許さないよう状態でございましたので、そういう審議会その他の議論に乗せることなくこういう措置をとったわけでございます。
  43. 田邊誠

    田邊委員 過去日雇健保法が始まってから擬適についてもすでに十七年にもなんなんとする期間、これはいろいろと論議をされてきたことですよ。すでに十数年もこれが適用をやってきた事実があるじゃありませんか。そういう事実の中でもって、今度の法律案が通らなかったら即日その擬適廃止しなければならぬ、そういうものがありますか。これはそんなせっぱ詰まった状態でありますか。相当な検討を加えて、長い歴史を持ち、すでに既得権になっており、現実に四十五年度の予算の中において、擬適に対する予算措置をしている。こういう事実から見て、当然慎重な配慮をするのがあなた方のとるべき措置じゃないか。その中に、諮問機関に対する審議をわずらわすということも当然入れなければならないということを私は言っているのです。子供じゃあるまいし、これだけの長い歴史を持っているものが、法律が通らなかったらその日のうちに擬適廃止しなければならぬ、そういう筋道ですか。そういう財政問題ですか。そんなことはありませんでしょう。そこにあなた方のまさに報復的な措置をとられる考え方があると思うのですよ。感情に走った、いわゆる法律が通らなかったことに対するそういう考え方、いわば感情論でもって処理する、まさに行政運用を誤った考え方に立った今度の措置じゃないかと私は思うのです。そういうことはできぬはずはないでしょう。なぜやらなかったのですか。
  44. 戸澤政方

    ○戸澤説明員 今回の改正法案廃案になりましたことよって、日雇健保全体としての赤字の増が、単年度で九十四億ほどふえております。累積赤字は千二百億ほどになる予定でございます。そういった状態でございまして、本来の日雇健保対象を救済するためにも、このままでは放置できない。また、今度の制度改正は、擬適方々にとりましても決して改悪だとは私ども考えておりません。これが廃止しっぱなしになればもちろんいろいろな弊害が生じますが、いろいろの対策を講じまして支障のないようにして、今後擬適の方方についてもよりよい給付を確保できるようにしようという意図でもってやっておるわけでございますので、改悪とは考えておりません。そういうようなわけで、いろいろ実施上の手続期間等もございますので、一日も早くこういう措置に踏み切ったわけでございます。
  45. 倉成正

    倉成委員長 後藤俊男君。
  46. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま田邊議員のほうから通達の問題なり、さらに財政的な問題なり、あるいはその他いろいろと質問があったわけですが、その中で、廃止しなければ日雇健保全般に迷惑をかける。聞いておりますと、廃止しなければ何ともいたしかたないのだ、廃止する以外方法はない。これは通達の一部にも書いてあるわけです。それなら擬制適用廃止しなければ日雇健保全般で医療費の支払いなり、その他ができなくなってしまう、こういう実情について具体的に御説明をいただきたいと思います、数字をあげて。
  47. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 当初法律改正を予定いたしましたときには、大体財政効果を九十四億見込みまして、百八十五億の不足を生ずる、累積千百四十二億の赤字が見込まれるということでございましたが、今回の法律廃案に伴いまして、結局九十四億の財政効果が見込まれなくなりましたので、単年度の赤字としては約二百八十億、累積としては千二百三十六億の赤字が見込まれるという状態になったわけでございます。
  48. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、廃案になったことによって九十四億というのが収入で減ってきたというところを問題点にしておいでになると思うのです。先ほど話が出ておりますように、いままで十数年間やってきたわけですね、これは。しかも、最近におきましては、赤字ということはよくわかっております。いままで十数年間赤字でありながら、どうして今日までそれを運営してきたのですか。
  49. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 借り入れ金その他の措置で運用してまいったわけでございます。
  50. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうすると、今回の廃案になったことに対して、いままでとってきた措置に基づいてやっていけばやれるのじゃないのですか。
  51. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 四十五年度の予算におきましては千百四十二億という借り入れ金を一応予定をしておったわけでございますが、法律が流れたことによりましてさらに赤字が立つということになったわけでございます。これ以上借り入れ金ができるかどうかという問題でございますが、御承知ように、何ぶん政管健保に比べましても約十分の一くらいの被保険者の数で、大体それに匹敵するくらいの赤字が積み重なっているというようなこともございますし、いろいろ財政関係審議会等の意見もございまして、借り入れ金が非常にむずかしいという判断に立ちまして考えたわけでございます
  52. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま借り入れがむずかしいから考えたと言われますけれども考えた方法が十数年間やってまいりました擬制適用を一瞬にして廃止してしまう、これ以外に考え方がないということがわれわれにはわからぬわけです。少なくとも、百九万ですか、加入者は。そのうちの四十何万が擬制適用を受けていると思うのです。家族を含めると百万以上になると思うのです。しかもこれを十数年間やってまいった。しかも保険審議会におきましては、抜本改正のときに、機構上の問題があるのだから、そのときには十分検討すべきである。これは昭和三十六年、さらに四十年、四十二年あたりにそういう問題が出ておるわけなんです。だから財政的に、この擬制適用を一挙に廃止せぬことには、もう行き詰まって何ともしようがない、私はこういうことではないと思うのです。考え方一つでやっていけると思うのです。それを一挙にこうやってしまう、これはたいへんな問題ですよ。しかも、先ほど田邊委員のほうから話がありまして、この前の六十三国会においてこの擬制適用の問題が論議をされたということならばまた話は別だと思うのです。しかも今度の通達を見ますると、あなたのほうは、擬制適用は不法である、間違っておる、間違っておるなら、今度の六十三国会でなぜこの擬制適用の問題を提起しなかったのですか。最後の修正のときには擬制適用の問題を法制化するということは、それは話が出ました、出ましたけれども政府のほうから出ておるわけではないんですよ。あの修正案さえ通れば、不法であるこの擬制適用もそのままほおかぶりで行こうという考え方でした。それが流れたことによって、不法だとかなんとかいって理屈をつけて廃止してしまう、なしにしてしまう。これは当時のどの新聞を読んで見ましても、廃案になったことによる報復手段だと、これは全部がはっきり言っておりますよ。やりやがったな、やったろう、という根性でやられたのが今回の措置なんですよ。やくざ以上ですよ。やくざに権力を持たしたようなやり方ですよ。これはどうですか、厚生大臣
  53. 内田常雄

    内田国務大臣 擬制適用の方は、読んで字のごとく、日雇労働者健康保険の本来の被保険者ではございません。本来は、日雇健保でありますから、失対事業でありますとか、あるいは厚生あるいは健康保険適用事業所日雇いで雇われる所得の低い方々のために便宜を講じようということでできた制度のはずでございますが、当時たまたま国民皆保険ではなかったために、それと態様の似ているよう方々についても、便宜行政上この制度適用をしてまいろうというところからこの制度が始まったことは、もう十分御承知のとおりでございます。ところが、この擬制適用方々所得は、日額所得もだんだん上がってまいってきておりますことは統計などが示すとおりでございますし、先ほども述べましたが、保険給付の金額も年々伸びまして、四十五年度の予想では、擬制適用の方をも含めました日雇健保保険給付は一人当たり四万円ないし五万円——五万円に近い金額、四万七千円くらいになることが数字上見込まれております。ところが、これに対しまして、保険料のほうは日雇いの給料というものを四百八十円前後に置きまして、そして安い口は二十円、高いほうでも二十六円ということでございますので、高いほうをとりましてかりに月二十日印紙を張ってもらうといたしましても、月五百円内外の印紙の貼付でございます。しかし、保険給付というものは、いろいろな場合には——二カ月間で二十八枚の印紙を張った場合でも保険給付が受けられるということがありまして、したがって、二十枚張るか、それ以下でもいいかというようなことが各地の保険事務所等でごたごたしてまいったという状況でございます。かりに月二十枚といたしましても、いま申すように五百円内外でありますから、年間五千円内外ということになります。五千円内外の保険の掛け金で五万円内外の保険給付を受けるという仕組みでありますから、これはたいへんけっこうな話でありますから、私どもも福祉官庁として続けたいのであります。しかし、その差額は、御承知のとおり国からも三五%の国庫負担があります。しかし三五%受けましても、掛け金はなお一割しかございませんので、したがって、国の負担三五%と、本人の掛け金一〇%合わせましてもそれは五〇%以下の掛け金、四〇何%の掛け金しかございませんので、長年これをやってきました結果が、保険部長から申しましたように、財政的にも非常に無理を重ねまして、支払いは短期の資金を借り入れて、そして年度を一つの芸術で越すというようなことをやってやってまいりました。そのしりが一千億にもなっているということになりまして、しかも毎年の状況を見ますと、経済が成長いたしましたために、本来対象にいたしておりました日雇い労務者という方々の数が減ってまいってきております。その反面、擬制適用方々は、いろいろな関係もございまして、数字の示すところによりましても、本人だけでも年間五万人くらいふえてまいるというようなことで、ことばは悪うございますが、しかられたら訂正さしていただくことにいたしまして、いわばひさしを貸してあげた擬制適用方々が、日雇健保の本屋を占領しかかっているというよう状態、これは皆さんも御承知のとおりでありまして、それが現時点においても全体の四割を占めるというよう状態であります。このまま推移をいたしてまいりますと、借り入れ金による支払いというものの及ぶ芸術というものも非常に困難になってまいりますし、一方、本来の日雇健保対象者である日雇い労務者方々に迷惑をおかけするということになってきております。たまたま、私は厚生省の打つ手がおそかったと思いますが、これにはいろいろの事情もございましょう。国民健康保険なりあるいはまた政府管掌健康保険なりがみな整備されて国民皆保険になりましたので、本来的なその保険に移っていただきまして——それは政府の助成がございますが、しかるべき国の補助のもとにしかるべき地位において保険に入っていただくということが、普通に考えましてあるべき姿でもあるということにもなりまして、今回の法律政府改正案あるいはこの衆議院における修正案が通りまして、その保険料も上がる、あるいはもう法律的に堂々と、日雇労働者健康保険というものの性格をいわゆる擬適をもちゃんと含めるよう制度に変えてしまえば、それでバランスもとれますし、考え方も割り切っていくわけでありますが、まことに残念なことにそれが成立いたしませんでしたので、たいへんそれが延びましたような次第のもとにおきましては、単に千億というよう財政上の問題ではなしに、及びがつかなくなるという問題、あるいはまた本チャンとの問題とも関連いたしまして、私どもといたしましても非常に切ないようなことをいたしまして、皆さま方から攻撃を受けて、こうして立っているという、こういう次第でございますので、ぜひひとつ御了承いただきたいと思います。(「あやまちを正せというので、攻撃とは何だ」と呼ぶ者あり)訂正いたします。いまの攻撃というのは御叱正ということに訂正さしていただきます。
  54. 後藤俊男

    ○後藤委員 ひさしを貸して本屋を取られる、こう言われましたね。日雇健康保険全般について言っておられるのだと思いますけれども、ところが、擬制適用だけ考えると、もうひさしも本屋も何にもないわけなんだ。全部これをなしにしてしもうたんですよ。現在の時点では、今度の一本の通達でなしにしてしもうたんですよ。しかも厚生大臣、全国的な情勢というものを十分把握しておられるかどうかわかりませんが、まずいままでの社会保険審議会との関連があると思います。これは、こまかいこと言いませんけれども、さらに衆議院の建設委員会における論議というのも十分御承知だと思うのです。これは御承知でしょう。さらには、山形県の県会議員の皆さんは、いわば社会党、自民党、与野党を問わず、こんなばかなやり方が一体どこにある、いままで十数年間やってきたこの擬制適用を、一本の通達廃止をしてしまう、しかも家族を含めて百万以上の者に影響するようなこれを、なぜ一体政府はこういうむちゃなことをやるのか。中身につきましては、いま大臣が言われたように、いろいろな理屈はあると思うのですよ。これはいろいろ理屈はあったにしても、国会でその点が十分論議されたその直後に、いわば一瞬にして抜き打ちです。やみ討ちですよ。こんなことは耐えられぬという、山形県の県会議員、与野党を通じて抗議を申し入れしたのは御承知のとおりであります。  さらに、全国県知事の中にも、これは岐阜県なり三重県、京都、東京は申すに及ばず、なるほど擬制適用の問題については、日雇健保の問題についてはわからぬことはない、わかる、中身の問題については。だけれどもやる方法ですよ。こんなこと、一体厚生大臣がやれといってやった仕事なのか。こんなむちゃなやみ討ちが一体どこにある。あなた、全国の知事の中でも多くの皆さんが——おそらく全部の者が腹の中に持っておりますけれども声としてよう出さぬ知事さんがたくさんおると思うのです。  それからさらに、四党国対委員長会談におきましてもこれは問題になっております。これは御承知のとおりです。さらに田中幹事長のごときは、厚生大臣、どう言っているか御存じですか。抗議団が行きましたら、内田君もたいへんなことをやってくれた——あなたお笑いになっているが、これは事実なんでございます。それぐらいあなたはひどいことをやっているのですよ。さらにあなた、東京都知事にいたしましても、それはいろいろな点で考えておられると思うのです。だけれども、あまりにもやり方がひど過ぎるということをおっしゃっておられるわけなんです。さらに、全国的にいま各県で抗議集会が行なわれている。  それから、五月十五日の朝日新聞の社説を厚生大臣はお読みになりましたか。いろいろ理屈はあろうけれども、あまり政府のやり方が強引過ぎる、これは朝日新聞が堂々と世論として訴えているわけなんです。   〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕 さらに当時の新聞がおのおの全部、これは国会廃案になったもんだから報復手段として政府はやったのだ、これはどの新聞といわず全部触れているわけなんです。  こういうような情勢、これ以外にもたくさんありますけれども厚生大臣がいま言われましたような中身については、いろいろ理屈はあろうと思いますけれども、こういう抜き打ち的なやり方に対する批判というものは、これは全国津々浦々にごうごうと政府に対する、厚生大臣に対する批判が出ているといっても私は間違いではないと思うのです。しかも保険事務所なり、各県なり、あるいは各県庁におきましても、関係の職員の人はひどい目にあっている。それは赤字がどうの、黒字がどうの、あるいはひさしを貸しておもやをとられるとか、そんなことはみなわかっているわけなんです。そういう点があるならあるで、国会を通じて改正したらどうだ。たとえば、いかにおそくとも十二月には通常国会が開かれると思うのです。この擬制適用適用されないのは——大体八月一ぱいまでできるのです。長くても三カ月か四カ月じゃないですか。しかもこの間の通常国会で十分論議したものを土台にして、次の通常国会でまた論議をしてもらう、そこにおいて初めて厚生大臣がいま説明されたようなことを十分説明をしていただく、そういうことなら、これは日雇健康保険適用なり擬制適用の問題も、堂々としてこれは審議に乗って正しい方向で進んでいくと思うのです。わずか三カ月か四カ月待てないばかしに抜き打ち、やみ討ちですぱっとやって、全国的にどこに行きましても、日雇健康保険の問題で県庁からどこからその問題で一ぱいなんです。こんなことを厚生大臣としてなぜ一体やらさなければいけないか。保険の中身の理屈は私は知っています。このやり方に私は問題があると思うのです。この間の国会のいきさつも私は十分知っています。いま申し上げましたような情勢に対して、厚生大臣としてやはり相変わらずいままで言われたような意見で堂々とこのまま進んでいく、そのうちに騒いでおるものはおさまるわい、こういう気持ちで乗っていこうとしておられるのか。あるいは新聞の記事等によりますと、厚生大臣はどうとかこうとかといういろいろな意見が発表されておる新聞記事もあるわけです。率直に考えて、いま社会保障関係の最高の責任者である厚生大臣として、これだけ騒ぎの種をまいておいて、日一日とじんぜんむなしゅうするということではなしに、これに対して一体どう大臣として対処して、これをどう納得させて進めるか、どういう態度で進められるか、これが私は一番大事なことじゃないかと思うのです。まだまだこまかいことで言いたいことは私はたくさんあります。こまかいことを言っておったところで、こちらでこう言えばあなたのほうではああ言う。それでは論争になるだけでございまして、要はあなたの腹の中一つだと思うのです。要はあなたの考え方一つだと思います。政府考え方一つだと思うのです。いかがですか。
  55. 内田常雄

    内田国務大臣 後藤先生からじゅんじゅんとお話を承りまして、私も非常に御理解をいただいている点があることも承知をいたしまして、ありがたく存じております。  ただ、先ほど来田邊先生はじめ皆さま方から、一挙にやめられた、こういうお話もございますが、これはやめるとなりますと、半分やめる、三分の一ずつやめるということもできませんし、また、やめるのには、やはりある時点から以後についてはこうするというよう時点をきめなければなりませんので、後藤先生からじゅんじゅんおさとしをただいまいただいたような結果にもなるわけであります。しかし、これにつきましては、私はもともと貧乏人の出身でございまして、弱い者の味方のつもりで厚生大臣をやっておりますので、これら今度の擬制適用からはずれる人々のあと始末をどうするかということにつきましては、私にも一つの構想がございますが、また皆さま方の御意向も聞かせていただきまして、できるだけショックを避けるような処置をとってまいりたいと存じます。  いま後藤さんがおっしゃいましたように、五月末日で印紙の貼付というものはやめるにいたしましても、医療給付の期間というものは、擬制適用制度がなくなった後においても、その経過分につきましては、やはり過去六カ月に所定の枚数の印紙が張ってある方々は計算をして、八月末日まで新しい医療給付も受けられるようにいたしますし、また、そのとき医療給付を受ければ、その病気がなおるまでは所定の年限は継続給付も受けられる。また、過去二カ月以内に二十八枚張った方方も、擬制適用を切ってしまったからというのでその適用をすぽっと切ることなくして、これも次の月に及ぶということをいたすとともに、そのあとにつきましては、保険を全然なくなしてしまうのではないので——いままでと同じような料率で、二十六円ベースで新しい保険の仕組みに入って給付を受けるというわけにはまいりませんけれども、他の保険に入る場合等の状況考えながら、また、いままで特に低いベースで擬制適用を受けておったというような現実も考えながら、その間できるだけ心配するようなこと——これは各方面とこれから相談もいたしながらと思っておりますが、そういうことは私はできる限り親切にやらせていただきたい、かように思っております。  今回の措置につきましては、これは私といたしましては、せっぱ詰まってやらざるを得ない、どうも一番悪いところに私はぶち当たりました。しかし私は、あえてその難局を受けて立った、こういうことでございますので、今後の援護措置をどうするかということにつきましても、だんだんとまた御意見を聞かしていただきまして、そしてこれだけはひとつ今度の厚生省のやり方を御理解いただきたい、切にお願いを申し上げます。
  56. 後藤俊男

    ○後藤委員 大臣、いまおれは貧乏人の味方だと言われるけれども、いまあなたは貧乏人の敵になっておるんですよ。全国の擬制適用に入っておる家族というものは百万でしょう。あなた、その中には日給数千円とっておる人がある、こう言っておりますけれども、あの通達等を見ると、まるで四十何万の者全部が日給数千円とっておるような印象を与える通達が出ておるわけです。中身を取り上げていけばいろいろ文句はあるのですけれども、ただ問題は、擬制適用そのものが、あるいは日雇健康保険そのものが現状のままでいいと私も考えておりません。検討すべきところは検討しなければいかぬと考えておりますけれども、なぜ一体抜き打ちにこんなことをやらなければいけないのか。その説明を聞いてみましても、理由がまことに貧弱なんですよ。どうしてもこうしてもこれをやらぬことには、百万人の労働者がいままさに死んでしまうというようなせっぱ詰まった理由一つもないわけなんです。それをやることによって百万人の命に影響こそあれ、これは逆なんですよ。  だから私は、今回出されましたこの通達なり今度の廃止の問題について、凍結をしてしまう、冷蔵庫の中に入れてもらう、その上に立って、いま厚生大臣考えておられるとやかくの意見があるとするなら、凍結した形の上に立っていろいろな問題を国会を通じて検討していく、そうしてこの現状を解決していく、私はそれ以外にないと思うのです。このままのかっこうで進んでいったとしたら、これはどうなりますか。厚生大臣としては、全国的にこれだけの騒ぎが起こるということは、おそらく予想をされておらなかったと私は思っておるのです。おどすわけではありませんが、まだまだ全国的にひどくなりますよ。各県庁全部一ぱいになりますよ、動員すれば。こんなことを厚生大臣、あなた平然として毎日よう最近の情勢を見ておられますね。少なくともあなた、大臣じゃないですか。中身がどうとか、日給がどうとか、そんな問題ではなくなってきておるのですよ。まことに日本国内の大きな問題としていま提起されておるのです。どこの県庁にでも行ってごらんなさい、大臣、全部すわり込みです。それらの人が率直に言っておられるのは、二十六円そのままでいいとは思っておらぬ、少々上がるのはやむを得ぬ、そういうほんとうに純真な気持ちでやっておられる人を、こういうひどい目にあわしたものですから、その反撃たるや全国にいま一ぱいなんです。われわれは地元に帰りますとその実情をつぶさに自分で見てまいりますからよくわかるわけです。大臣はこっちにおられるから、そういう実情を——知っておられるとは思いますけれども、まだまだわかっておらぬところがたくさんあると思うのです。大臣にこういう騒ぎをひとつ早く何とかおさめたい、さらに百万になんなんとする人の家族をこれだけ苦しめておるこの問題を何とか解決したい、こういう気持ちがあなたの腹の中にたとえ一片なりともあるとするならば、早急にこれは解決してもらわなければ困ります。四党の国会対策委員長だとかなんだとか、あっちこっちどうです。われわれも含めましてですけれども、あの人に頼んだらよかろうか、この人に頼んだらよかろうかと、このうしろのほうの人が、毎日朝から晩までその筋へ陳情に歩いておるじゃないですか。この気持ち大臣わかりませんか。あなたも相当の御年配だと思います。全国のこれだけ多くの人がこれだけ真剣にやっておられる気持ち、わかりませんか。ぜひひとつこの問題については——私はもう時間が参りましたからやめますけれども、私はりっぱな厚生大臣だと思っていままで真剣にお互いにやってまいりました。しかるに、これだけ抜き打ち的にこんなひどいことをやられまして、きのうあったものがきょうはなくなる。しかも三人や五人でなしに家族を含めて百万です。これは大臣、ひとつ強く考えていただく、そうしてこの廃止通達については一応凍結していただいて、その上に立って、大臣として何か考えることがありとするなら、そのことを十分論議していく、それこそ私は間違いのない常識的な正道に乗った国会の運営であり、そのことに対する正しい論議のあり方だと思います。  もうくどいことは私は言いませんけれども、北海道へ行こうと、九州へ行こうと、どこへ行こうとここへ行こうと、これだけ多くの人が日夜を分かたず、このあなた方のやり方に対するたいへんな憤激と不満をもってやっておられるわけなんです。ある陳情団の奥さんのごときは、泣いて県知事に陳情しておられるところがあるのです。そういう人になりますと、全国的な大きな問題はわかりません、ただ自分の生活のみに一ぱいなんですよ。ぜひ大臣、こういうような実情を十分考えていただいて——きょうは十日です。順次日がたつに従ってこの問題の解決はむずかしくなると私は思います。きょうあたりは、幸い社会労働委員会も開かれております。よその委員会におきましても、この問題は提起されておると私思いますけれども、やはり中心は厚生大臣の腹一つです。わかった、心配するな、悪かった点は悪かったでいいじゃないですか。やり過ぎた点はやり過ぎたで戻ればいいじゃないですか。メンツであるとかどうであるとか、そんなことを今日は考え時点じゃないと私は思います。国民一億の中の百万人が、日夜を分かたず関係各省へ陳情して、何とかしてもらいたい、何とかしてもらいたいとやっておるじゃないですか。この実情をぜひくみ取っていただいて、先ほど申し上げました方法によって一刻も早くこの問題を解決されんことを私はぜひお願いをいたしたいと思います。  最後に大臣から、いろいろ私は申し上げましたが、これに対する所見なり決意なりをお伺いして、私は終わりたいと思います。
  57. 内田常雄

    内田国務大臣 後藤先生のじゅんじゅんたるお話を承りまして感銘が深いものがございます。しかし、私ども気持ちでは、所得の低い方々を苦しめたいということでは毛頭ございませんで、本来所得が低いがゆえに、この日雇健康保険制度で守ってやっている方々を守るために、私どもは先ほど来申し上げておりますような、擬制適用という形でこの制度行政的に利用していただいた方々に、その事情を御理解をしていただいて、そうして他のしかるべき制度のほうに乗り移っていただきたい。そうしない限り、ほんとうの日雇い方々のための健康保険制度というものが元も子もなくなるということを心配しての措置でございます。したがって、このあと措置につきましては、できる限り私は、後藤先生がただいまいろいろとお述べくださいましたようなことも考えまして措置をいたす所存でございます。
  58. 後藤俊男

    ○後藤委員 それなら、私やめるつもりでしたが、いまどうこう言われましたけれども、ただ私は、現状を円満におさめるためには、円満におさめるといおうか、百万余りの人のこの問題を解決するためには、廃止通達なり、いま行政上やっておられることを一応凍結をしてもらう、その上に立って、いま大臣が言われたようないろいろな政府考え方がありとするのなら審議をしていく、その方法以外に私はないと思うのです。そのことに対してあなたは一体どういう決意でございますかという最後のお伺いをしたわけでございますから、それを、中身がどうの、お金のない人がどうのという話もけっこうですが、現状を厚生大臣として一体どうおさめていくか、その点に対する決意をひとつお伺いしたいわけなんです。
  59. 内田常雄

    内田国務大臣 たびたび申し述べましたように、後藤先生のじゅんじゅんたるお話、よく私はわかりますが、私の立場は先ほど申し述べたとおりでございますので、御了承いただきたいと存じます。
  60. 後藤俊男

    ○後藤委員 終わります。
  61. 伊東正義

    ○伊東委員長代理 川俣君。
  62. 川俣健二郎

    ○川俣委員 関連でございます。  大臣、さっきやくざということばが前議員の質問の中に出ました。御自分が提案したものが廃案になったら、やっちまえということでやるということは、やはりこれはやくざなやり方だったと思います。私は国会に初めて出てきまして、提案された法案が廃案になれば、旧に復する、現行のままだということが私は国会だと思います。それを、立法機関で通らなかったから行政機関でやってしまえということであれば、私はもう三権分立を原則とする民主政治というものはなくなってしまったと思うのです。  そこで、いろいろと前々議員の話から大臣答弁を伺ってまいりました。世論も今回はかなり批判的です。先ほど田中幹事長の話も出ました。わが社会党の幹部方も動きました。各野党も動き出しております。仄聞するところによると、どうやら今回の長官通達というのは少し行き過ぎであったということが厚生省の中で出ておるという観点から、これをある程度引き揚げるというか、保留にするという動きがあるというように聞いておりますけれども、その辺、大臣どうですか。
  63. 内田常雄

    内田国務大臣 そういう保留、引き揚げというような話が部内に出ているとは私は全く思っておりません。  それから、これは弁解がましくなって恐縮でございますが、今回の措置は、決して私どもが、国会改正法案ないしは修正案が通らなかったからということで、報復というようなやくざ的な立場からやったものではございませんで、せっぱ詰まって、方法がなくてこういうことの処置になったものでございますので、弁解がましゅうございますが、ぜひ御理解いただきたいと存じます。  また、国会の御意思にさからうつもりはございませんで、川俣先生も御承知ように、この制度法律制度ではなしに、行政制度として、まあ形式を申しますと、一片の課長通牒でやってまいった制度でもございますので、したがって、行政的な措置として当初に戻した、こういうようなことでございますので、その辺は御了承いただきたいと存じます。
  64. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大臣の弁解なり、それから先ほど局長のお答えなり、私も聞いておりました。しかし、実施されて今日十数年この方、しかもこれは今回予算にも組まれているでしょう。私は今回の措置法律行為だと思いますよ。行政措置では済まされない問題だと思います。したがって、今回の改正案だって出たじゃありませんか。それを一片の通達でできるのだということをいま大臣がおっしゃるというのは、ちょっとひきょうじゃございませんか。そうでしょう。それで私は、どうしてもこれを強行するというようなお考え方であれば、各県で末端に相当混乱が起きるということを警告しながら、一つの例示をもって、与えられた時間内、質問をしてみたいと思います。  この間の岡山の社会保険事務所においての傷害事件といいますか、厚生省は暴行事件とおっしゃるようですが、この点について大臣は知っておられますか。
  65. 内田常雄

    内田国務大臣 大体のことを聞いております。
  66. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それではひとつ、当局はどのようにこれを把握しておるか、局長でもけっこうですから、あらましを説明してみてください。
  67. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 六月三日の午前中に、岡山社会保険事務所に岡山建設厚生協会の方が見えまして、これは確認を求めにきたわけでございますが、確認が終わったあと、これは社会保険事務所としては、私どもの指示のとおり手帳を回収しようという行為をとろうとしたわけでございます。この回収しようとした行為に対して、実力をもってこれを阻止したということでございます。その際に私どもの職員の二名が負傷したという事件でございます。
  68. 川俣健二郎

    ○川俣委員 局長は、私どもの職員が二名けがをした、そこで厚生省は告発する、こういうように出られたのですか、これはマスコミの文章からいいますと。
  69. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 こういう社会保険事務所内におきまして業務を執行している場合に職員が暴行を受けたというような場合には、一般的には当然告発すべきであるということで、告発を指示したわけでございます。
  70. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ところが労働者のほうが六人けがされているのです、診断書によると、明治、大正生まれの人。いろいろと調べてみたら、厚生省はこれは告発する、暴行されたのだから、職員が労働者にやられたのだから。こういうような受け取り方は、当初はしたのですね。どうですか。
  71. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 先ほど申しましたとおり、私どもも、来られた方も負傷したという事実も存じております。それから私どもの職員が二名負傷いたしましたので、いまのような指示をしたわけでございます。
  72. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうしますと、厚生省の本省のほうから職員をその際派遣されましたか。何人派遣されましたか。
  73. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 この事件が起こったからということではございませんで、まあ先生も御承知だと思いますけれども、ずいぶん長いこと岡山事務所の窓口でいろいろと手帳の回収その他でもって混乱がございました。保険課あるいは岡山事務所の職員もだいぶ疲労したりしましたので、私どもとしては、最後には全体で八名でございますが、事務の応援に職員を派遣したわけでございます。
  74. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで私は、これは暴行を加えたのはどちらであったかということをここで論争したって、局長は、うちの職員が二名けがした。私は六人の診断書を持っておる。ところが厚生省が告発をきめるということは、早くも六月の四日にそういう考え方をした、意思決定した、それは事実ですか。
  75. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 先ほど申しましたように、社会保険事務所内でこういう事件が起こりましたときには、一般的に当然告発するのが至当であるというよう考えて指示したわけでございます。
  76. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこでいろいろと調べてみたら、決して労働者が暴行を加えたのではなくて、公平に見て、手帳のやりとりでけがをしたと思います。そうでしょう。これはなぐったとかなぐられたとかいうことは現地ではだれも認めていない、向こうのほうも認めていないし、労働者も認めていない。むしろ組合のほうは、幹部のほうが、挑発に乗るな、話し合いでいけということの制止の中で指導をしていった。したがって、六、七人こちら側がけがしたわけです。それを、告発をきめるということをマスコミに出している。これを撤回すべきじゃないですか。どうです。
  77. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 私どもとしては、ただいま申しましたようなことで指示をしたわけでございまして、いまこれを撤回するとかそういったようなことは考えておりません。
  78. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どういう理由か知りませんが、八人ですか、こちらから派遣したのが。ある県に八人もよく出すひまがあるし、人が余っているものだとぼくらも思うのですが、しかも告発だ、こういうふうにマスコミに出す。いろいろ聞いてみれば、職員のほうが暴行を加えたということなんだ。ところがそれを論争したって、大臣、いま話になりませんからこの話はやめますけれども、こういう問題が各県において各所に起こりつつある。そこで施行令第三条によりますと、この実施は県知事に委嘱することができるではなくて、県知事がこの職権を行なうということになっておる。ところが各県を見渡して、各県知事がこれに納得しておるかどうかという問題を公平に見た場合に、いまの各県の様相はいかがですか。さらに具体的にいいますと、これを通達どおりに実施させようという県の動きがあるのか、少ないのか、その辺をひとつ聞かしてください。
  79. 戸澤政方

    ○戸澤説明員 各県市町村等につきましては、いろいろな機会をとらえて趣旨の徹底につとめておりますので、一応そういう方針を了解されて、国保組合への移行という方向でもって努力をしてもらっております。現在のところ、各県でもってまだ新しい措置への移行を決定しているというところは必ずしも多くありませんけれども、そういう方向でもっていま話し合いをしている最中でございます。
  80. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで各県が非常に混乱しておるということは、各県の責任者も混乱しておるということは、各労務者に対する通達あるいは通知のやり方がまちまちなんですよ。私もはがきを持っております。それから一つの文章を取り上げてみますと、こういうことです。局長、聞いておいてください。「本年五月三十一日までに医師にかかっていた病気やけがについても引き続いて治療することができます。」こうなっておる。これは、五月三十一日まで医師にかかっていなければ六月一日になったらもうだめだという文章なんです。しかしこれは違法じゃありませんか。「五月三十一日までに医師にかかっていた病気やけがについても」と、こうなっているのは、この文章は私は違法だと思います。いかがですか。
  81. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 これは一定の受給資格を持ちますと、二年間引き続いて受けられます。したがって五月三十一日までにすでに受けていた方は、初診の日から二年間は受けられるということをいったわけです。
  82. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それでやはり大臣、これは非常に混乱している証拠です。文章でもはがきの出し方でもほんとうにまちまちで、各県ではたいへんなものなんです。それから、私持っていますけれども、一人に三枚、それからもう脱退した人、それから大臣、ここにこういうふうに赤線を、故意にやったのかどうか知りませんが、これは黒線でないからまだ不吉なものではないけれども、赤線で、こういうことなんです。それから三宅さんという人に三枚。台帳がどのようになっておるか、混乱している証拠だと私は思います。そういうことだと思いますよ。そこで先ほどから後藤委員からもいろいろとお話がありましたけれども、やはり国民健康保険、国保に全員が入るべきだと私は思います。ところが国保に入れないのが日雇いなんですよ。それが政治でしょう。いまの政治なんですよ。国保に全員が入れるような政治が行なわれていないのが日本の現状なんですよ。それが日雇いなんですよ。だからいままで特殊な扱いをしてきたわけです。そういうよう考え方からしますと、もう一度私が最後に質問したいのは、大臣は貧乏人の気持ちはわかる、弱い者いじめはしない、こうおっしゃるけれども、やはりこの辺である程度通達というものに対して考え直すべきじゃないだろうかと私は思うのです。あるところにいくと、保険庁の長官が欠員のためにああいう事故も起きたんじゃないかといううわさもある。保険庁の長官がおられない、欠員だった、したがって、保険庁の長官がいないもんだから、大臣が知らないうちにわっと作文して、それをあと大臣に報告した、これはたいへんだ、内田君もたいへんなことをしてくれたと田中幹事長が言った、いまはこういうことなんです。そこで各県は非常に混乱しておる、こういう状態なんです。これに対して大臣は、最後に、どういう考え方を持っておられるか。
  83. 内田常雄

    内田国務大臣 川俣先生の御親切なお話、よくわかりますし、また事務なども非常に混乱しておったということを承りまして、これは恐縮千万でございます。趣旨の徹底しなかった点もあると存じますので、これらにつきましては今後十分この擬適方々がその制度を離れても——中には保険が全然なくなってしまうのじゃないかという御心配をされる方もあるし、あるいはまた、この間の改正案あるいは修正案等による保険の掛け金などよりもたいへんに保険料が上がるのではなかろうかというような御心配を持っておられる方々もございまして、その辺に疑心暗鬼のものもあると存じますので、私どもは決して弱い者いじめではない、いま皆さま方が日雇健保におられるということは、皆さま方擬制適用の方よりもっと所得が少なくて、そして安い保険料保険制度の恩典を受けておられる方々を、混乱、不幸におとし入れるものであるというよう趣旨につきましても、なお十分説明をいたさなければならないと思います。ことに厚生省の役所の前にも先日からいろいろ苦情を持っておいでの方々がいらっしゃいますが、その中には、日雇健保制度というものがそこにいらっしゃる方々についてもなくなってしまう、こう誤解をされまして、あそこにいらっしゃっている方々の中には、本来堂々たる日雇労働者健康保険対象になられている人方が、自分の保険がなくなると思っていらっしゃっておるよう方々もございますので、そうではないのだ、日雇健康保険の本来の対象方々はいままでと同じよう状態で、法律等の改正があるまではそのまま残る仕組みであって、今回のその措置対象になるのは皆さま方と違った、擬制適用の名のもとに便宜この制度適用を受けておられるところの、所得等の高い方々ばかりだというよう説明もさらに私は申し上げなければならない点もある、このようにも考えるものでございます。  それから、先ほどの岡山の事件等につきましては、私は事後に報告を受けましただけで、経緯等につきましてはよく存じませんが、せっかく川俣先生がここでお取り上げになる問題にもなりましたので、私は、その間の手帳の回収等々の事務が円滑にいくならば、どういう経緯があるにいたしましても、なるべくこれは話し合いでおさめるのが行政のあり方としてはいいものだと私自身は思います。しかしなかなか厚生省の役人も強い人がおりまして、言うことを聞きませんので、その辺は私もよく言って聞かせまして、そうして川俣さんの御趣旨が達成されるようにやってまいるつもりでございます。
  84. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ありがとうございました。
  85. 田邊誠

    田邊委員 いろいろな質問がありますし、またこのあと同僚の山本委員等から具体的な中身についての質問があると思うのですけれども、私はいま同僚委員質問を聞いておりまして、大臣がいろいろな面で苦しんでおることはわかるのです。なぜこの苦しみを、あなた自身の心にすとんと落ちる解決方法をとらないのか、私はこういう気持ちがしてならないのです。内田さん、あなたいまこそ厚生大臣のいすの重さというものをしっかりと私は踏まえてもらいたいと思うのです。しっかりと心の中にこたえて、一体一国の厚生大臣として、いま国民が待望しておる問題に対してどう対処するのか、いま国民が心配しておる問題に対してあなたはどうそれに対処するのか、こういうことに対して私はぜひひとつ真剣に、しかもすなおな気持ちになって答えてもらいたいというように思うのです。ですから、いろいろな意見がありますし、われわれもあなたに対して正しい道を歩んでもらいたいという意味質問を展開しているつもりですけれども、そういう意味合いでこの問題に対して、まだおそくないから、ぜひひとつあやまちを改めて正しい本道を歩んでもらいたい、こういうことを私は心からお願いするわけであります。  以下、それぞれの質問がありましょうから、それをひとつその質問を通じてぜひあなたの本意と、そうしてまた具体的にこの問題に対する正しい対処を私は心からお願いをしておきます。
  86. 伊東正義

    ○伊東委員長代理 山本君。
  87. 山本政弘

    ○山本(政)委員 厚生省が五月二十二日に全国課長会議を開きました。擬制適用廃止通達を出したのだけれども、それによれば、一つ負担の公平、もう一つ法制上の問題、それから財政上の問題、こういうふうな三つの理由をおあげになって、そうして廃止をされておる。ところがその廃止をされた、ことばの言い方はおかしいかもわかりませんが、それを一切擬適にしょわせておると思うのです。それで大臣にちょっとお伺いしたいのは、けさの毎日新聞の読者欄をお読みになりましたか。帰ったらもう一ぺんぜひ目を通していただきたいと私は思うのですけれども、三多摩の職人の奥さんが投書をなさっております。そのお書きになっておること、まことに私はごもっともだと思うのですけれども、その中で、ここで通達を出しておる負担の公平ということについても言及をしております。擬適というものがなぜ実施されるようになったかということは、これは私が申し上げるまでもありません、あなた方のほうでお書きになって出されておるものの中に書いてあるわけです。それは、制度の構造的な問題点はあるかもしれないけれども、第一点は、おおむね低所得者層に属するために保険料を低額に押えざるを得ない。多少賃金の事情の改善はあっても、日雇労働者健康保険の被保険者である日雇労働者の一月当たりの平均賃金額と政府管掌健康保険の被保険者の平均標準報酬月額を比べるとなおかなりな開きがある、こうおっしゃっておるわけです。  第二点は、低賃金と高年齢者層であるために有病率が高い。一件当たりの医療費も高い。こういって表を出しておるのです。これは政府のほうでお出しになっておるものであります。  ここで一件当たりの診療費、政管健保と日雇健保を比べてみますと、診療費については政管健保が三千二百八十八円、日雇いが三千八百七十九円。入院については、三万三百二十六円、日雇健保は三万三千四十五円。入院外は二千三百六十八円、日雇いは二千六百九十九円、歯科は二千三百十一円、日雇いは歯科については二千六百九十九円、こうなっておるわけです。これは被扶養者についても同じような傾向があります。特に診療費については、政管と日雇いについては五百九十一円の差がある。入院については二千七百十九円、入院外については三百三十一円、そして歯科については三百八十八円という差があるわけです。つまりそれだけ日雇い人たちの一件当たりの診療費が高いということは、なぜ高いか。(「それだけ病人なんですよ」と呼ぶ者あり)いま小林さんがおっしゃったように、それだけ病気になっても費用がかかる。病気がひどいということを証明しておる一つの根拠になっておると私は思う。  もう一つ、第三点は、被保険者の就労形態が浮動性を持っている。制度上、健康保険における資格喪失後の保険給付に相当する給付が多い。これは皆さま方がお認めになっておるのですよ。すなわち被保険者が病気で働けなくなった場合、一方では保険給付が行なわれながら、他方保険料の納付が行なわれないという事態がある。ここに日雇健保が他の一般の保険と違った特殊的な性格があるのだと思うのです。だからあなた方は擬制適用というものを実施なさったのだと思うのです。  もう一つ、これもあなた方の統計であります。政管健保と日雇健保の受診率。本人ですよ。昭和三十八年に入院は〇・一九で同じであります。しかし入院外については、本人が日雇健保の場合には三・六二、政管健保の場合には四・〇七であります。三十九年には入院外のものだけについてみますと、三・八六の日雇健保に対して政管健保四・四六。四十年は四・〇四に対して四・六三、四十一年については四・二一に対して四・八五、四十二年は四・四五に対して四・八五です。全部受診率が高いのですよ。日雇健保のほうが受診率が高いということは、それだけ災害の率が多いし、あなた方が言うように浮動性によるだろうし、あるいは高年齢者が多いだろうし、仕事の性質上けが人が多いだろうし、病気にかかる人が多い。そういうことをあなた方がちゃんと数字なりにお出しになっておるにかかわらず、先ほどから議論があったように、なぜ日雇健保というものを廃止されるのか。特殊な性格がある。それを単に財政上の理由からはたして急激に廃止していいのかどうか、この点をひとつお伺いしたいと思います。
  88. 内田常雄

    内田国務大臣 山本さんがおあげになりました数字は、それはお調べになりましたとおりだろうと私は存じます。でございますので、今回私どものとります措置は、日雇労働者健康保険制度というものをなくなしてしまうのではなしに、むしろそれを守るために、日額所得の多い方々、本来の日雇い健保の対象にならない方々、政管健保に入るなり、あるいは国民健康保険なり、あるいは同種同業の組合というものをつくるのに適するよう方々にそのほうに進んでいただいて、そしていまお読みになりましたように、経済が成長しながらも日給額がそんなにも上がらない方々のための保険を残して、それらの方々を守ってやろう。そうでないと、この日雇健保というものが、先ほど来だんだん申し述べますような資金的な事情もございまして動かなくなる、こういうことでございますので、このことをひとつ御理解いただきたいと思います。
  89. 山本政弘

    ○山本(政)委員 だから、そういう事情があるから擬制適用というものを廃止すべきじゃないでしょう。廃止してしまって要するにその穴埋めをやるということは、常道ではございませんよ。廃止をしないということが常道でしょう。だから私は、日雇健康保険法というものはそういう特殊的な性格があるということを、受診率あるいは一件当たりの医療費というものをあげてあなたにお話をしたわけです。
  90. 内田常雄

    内田国務大臣 それは私が申し述べる説明が足りないのかもしれませんが、日雇健保の本来的な被保険者、それらの人々につきましては、先生がおおむねお述べになりましたような事情のもとにある。しかし今日の状態のもとにおいて、日雇健保擬制適用の名のもとに利用をされておる方々は、これは本来の失対事業でありますとか、あるいは健康保険適用事業所に出てこられて日給を受けられる方々とは違ったようになって、私どものところに参る手紙などによりましても、建築関係の職能を持っておられる人であり、それらの人は中小企業ともいうべき一人親方の方が多いのみならず、何人かのお弟子さんというとことばが悪いのですが、徒弟、従業員をかかえられたような方までも擬制適用の中に入っておる。そうすると、それらの方々は本来はむしろ先生がお述べになったほうの、所得も高いし、それからそれだけの働きもあられる方でありますから、政管健保のほうに入っていただくのが筋じゃないか、こう思う点はいかがでございましょうか。
  91. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それは大臣が土建という職業の性格を御存じないからですよ。たとえば大工さんが一つの仕事に行く。そのときに一人で行く場合もあるでしょう。これはあなたのおっしゃる一人親方かもわからない。だけれども、その人たちが急場の仕事とかあるいは仕事の性質上、下職を使っていく。しかしそれは、あしたは仕事がなくなるかもわからぬわけですよ。だから、一人親方だけでなしに、そういうあなたのおっしゃるように職人を何人か連れていくというような場合にも、適用なすったわけでしょう。制度があったけれども制度はあっても適用がないということから、擬制適用というものが生まれてきたのだと私は思うのですよ。日雇健康保険法というものはあるけれども、しかし現実にはそれは適用されない人たちがおるということから、そもそも擬制適用というものは生まれたわけでしょう。それを今度は、報復措置ということばが使われているけれども、ぼくはそういうことばを使いたくないけれども、まさしくそれと同じですよ。言いましょうか。あなた方は予算の上に九十四億というお金を計上しているじゃありませんか。そしてお金がないとこう言っているけれども、閣議で決定したものが、食管の積み上げに二百三十八億というものをちゃんと出しているじゃありませんか。政管健保は赤字ですよ。そのことに対するあなた方の見通しはありますか。そして先ほどあなたは弱い者いじめをしたくないと言うけれども、まさしくいまあなた方のやっていることは弱い者いじめじゃありませんか。非常に力の強い者に対しては二百三十八億の金を出す。しかし力の弱い者に対しては、一文も出さぬどころか、あなた方はそれを切って捨てようとなさっているじゃありませんか。それがはたして社会保障というものをつかさどる厚生省の態度かどうか。
  92. 内田常雄

    内田国務大臣 弱い者をいじめるという趣旨は全くございません。切って捨てるのではなしに、これは日雇健保擬制適用という形で入っておられるのを適当としない方々、健康保険なりあるいはその組合でありますとかあるいは政管健保のほうに移っていただくのが本来的な姿である方々——ども擬制適用方々をそう判断するから、全部が全部とは言いませんが、そういうことをやろうというだけでありまして、いままでの本来の日雇健保対象になっておられるよう所得の低い方々は、これによって決して悪い影響がない。なおまた、今回の米価の決定に関連する政府の予備金支出のことについてもお話がございました。これは私の所管ではございませんけれども、しかしこれもいまの農家の方々の生産者米価というものとの関連、あるいは農家の姿ということを考えますときに、強い者によくして、そして擬制適用方々につらく当たるというふうにも解されないというものになるのではないかと思います。
  93. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それじゃ、あなた方がそうおっしゃるんだったら私は質問したい点がありますよ。  つまり政管健保の場合には、なるほど改正をやった、だから赤字が四十二年は五十八億円、四十三年は二十四億円、四十四年は見込みとして十六億円、だけれども、四十五年に対しは二百七十八億の赤字をあなた方は見込んでいるのですよ、現実には。そうでしょう。そしてこのことについては、おそらく赤字を解消する見込みは、現状のままでいけばないだろうと思うのです。なぜだろう。政管健保というものの事柄の性質上抵抗が強いからであります。しかしあなた方は日雇健保に限っては、率直に申し上げて、組織問題もあるかもわからぬ、全国に散在しているということからかもわからぬ、四十万という人数からかもわからぬ、はっきりとあなた方はそれを切ってお捨てになっているわけです。それはどうも私は納得がいかない。政管健保に関してはそういう実態だ。そしてさっきの話じゃありませんが、食管の上積みに対しては閣議決定をしておる。そして擬制適用に対しては課長通達ではっきり切っている。それは筋としても私はおかしいような気がするのです。しかも考えなければならぬことは、予算の上にあなた方は計上して、国会の決定とかなんとか言っているけれども、予算上では擬制適用というものを九十四億円とちゃんと計算されているじゃありませんか。組んでいるわけでしょう。それなら少なくとも九十四億円分に対しては、あなた方は配慮があるべきだと思うのですよ。
  94. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 予算の問題でございますが、先生御承知ように今回廃案になりまして、それに伴う支出が減ったわけでございますが、廃案になったあと制度の運用と申しますか、いわゆる歳出権の中で支出が可能になるということなので、私どもとしてはこのままの予算の形でいくということでございます。
  95. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それなら申し上げましょう。たとえ話ですよ。山本工務店というところがかりにある。そのときに、五人以上であれば政管健保の適用を受けられるわけですね。かりにある人がある期間手伝いに行く。そうするとこれは印紙を張ってもらえる。ところが適用事業所としての手続をしない場合には、印紙を張ってもらえないわけでしょう。そういう適用事業所というものについて、一体あなた方がどれだけ努力をしてそういう指導をやったかどうかという問題があると思うのですよ。財政上の理由財政上の理由と言うのだったら、私は金額は別として、あなた方が財政上の理由について行政指導の努力をしたかということについて、例証をもってやりましょう。  昭和三十六年の適用事業所の実数は四万八千五百七十二であるはずであります。これはあなた方社会保険庁が出している資料です。飛びまして三十九年には四万六千九百三十七に減っている。四十二年には四万五千三百五十九に減っているじゃありませんか。つまり三十六年から四十二年までに三千件、適用事業所が減っているのですよ。いまの世の中に適用事業所が減っているというようなばかげた現象は、常識として考えられない。それだけの行政指導をやられましたか。財政上、財政上と言うけれども、若干のお金でも日雇健康保険をあなた方守るということで努力したかといったら、努力していないじゃありませんか。三千件減っているという事実はどういうわけなんですか。自分のやることをおやりにならないで、財政がお困りになったらあなた方ははっきりと擬適というものを廃止なさっている。その点はどうなんですか。
  96. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 ただいま先生のおっしゃいました減少の理由というのは、私ども考えますと、それは事業所が逐次減少していくということではなくて、日雇労働者を使用している事業所が減ってくるということではないかと思います。
  97. 山本政弘

    ○山本(政)委員 つまり適用事業所というものは、私が申し上げたように五人以上であればやれるわけでしょう。しかしそういう事業所としての手続をしない場合には印紙を張ってもらえない、こういうことでしょう。あなた方が、大臣もそうですけれども、私は弱い者いじめを決してしていないということをおっしゃるなら、そういう指導をやっていいのではないかということを私は申し上げているのですよ。五人未満の場合にはそういうことが不可能ですね。だから私が言うのは、そういうことで、六条の一号ですかによっていまの適用漏れの人を擬適にしたわけでしょう。だから日雇健保の赤字をなくすために適用事業所というものをあなた方は減らさない、あるいはふやすという努力を一体おやりになったかということなんですよ。
  98. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 先生の御質問趣旨を取り違えているかもしれませんけれども……。
  99. 山本政弘

    ○山本(政)委員 もう一度言いましょう。適用事業所というのは、健康保険の印紙購入のできるあれでしょう。そういうものをあなた方、適用事業所というものを減らさないでふやす努力をすれば、きちんと印紙も張るだろうとぼくは言うのです。そういう努力すらしないで、擬適をはっきり廃止してしまうというところを、あなた方はやるべき努力をなさらないで、赤字が出た出たという話をしても始まらないと言うのです。
  100. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 先生のいまおっしゃっておられるのは六条の一号の事業所だと思いますが、六条の一号の事業所は健康保険法十三条一項の強制適用事業所でございまして、したがって強制適用事業所でありながらなお漏れているものがあるということでありますと、これは私どもがその適用適正ということをはからなければいけないわけでございます。その点は、私どもとしては努力をしなければいけない問題だと思います。
  101. 山本政弘

    ○山本(政)委員 私が申し上げるのは、努力をしなければいけないんだという答弁だけでは困るというのですよ。実質は三千件減っているじゃありませんか。行って印紙を張ってもらえないところが出てくるのですよ。六条一号の適用漏れが擬適なんですよ。しかしぼくが言うのは、適用事業所すら、あなた方は減らすことに努力はしたけれども、ふやすことに努力をしたかということを言っているわけです。つまりそういう行政努力をしないということに問題があるというのです。  時間がないですから、次に大臣にお伺いしますよ。この「擬制適用廃止に関する経緯」という中で、「最近のこれらの職能人の報酬が日額数千円という高額に及んでいる状況から、これをいつまでも一般の日雇労働者と同様に取り扱うことには、日雇健保財政の大幅な赤字の累積による制度の崩壊」云々、こうなっている。一体数千円というのはどれだけの金額とあなた方はお考えになっているのですか。そして、数千円というようなものの根拠をちょっと知らしてほしい。
  102. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 現在の擬制適用の被保険者の平均賃金日額は二千七百三十六円というように私どもは推計いたしております。これは労働省の屋外労働者職種別賃金調査というものの結果に基づきまして、それから積算をいたしまして、擬制適用の方の四十四年度の調査結果が二千十七円、それを、この調査の内容を私ども擬制適用をいたしております職種別の構成比によりまして計算をいたしまして、四十四年度は二千三百六十七円というように推計いたしておりまして、それが四十五年度におきましては一五・六%上がるという見込みから、二千七百三十六円というように推計をいたしておるわけでございます。
  103. 山本政弘

    ○山本(政)委員 四十四年が二千三百六十七円、四十五年が二千七百三十六円。じゃお聞きしますけれども、他の制度というのは標準報酬制をとっておりますね。日雇健保というものは総報酬制ですよ。そうでしょう。それじゃ日当の中から——ボーナスがありますか。   〔伊東委員長代理退席、倉成委員長着席〕 もう六月だけれども、ボーナスがありますか。あるいは諸経費というものがありますか。道具とか何とかいうものが含まれているのですよ。これはこの金額の中に含まれている。そのほかにも諸手当があるだろう。そういうものを全部割り出した金額というのは一体幾らになるとあなた方はお考えになっているのですか。つまりそういう計算をなさったことがありますか。片方は標準報酬制、片方は総報酬制、ボーナスから道具代から交通費から全部含まれている。そういうものを引いたときに、一体標準報酬制に値する額というものは幾らになるだろうか。そして、それによって保険料率を割り出したら一体幾らになるだろうか。そういう計算をあなた方はなさったことがありますか。
  104. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 これは私どもが全くあれしました一つの試算でございますけれども、ただいまの二千七百三十六円の平均賃金日額、これをかりに国家公務員と同率のボーナスということを考えまして、それを考慮をした額を一応試算してみますと約二千円になります。それでかりに二千七百三十六円及びその約二千円の日額が、二十三日稼働するということで、二十六円二十枚五百二十円という保険料の料率換算をいたしますと、二千七百三十六円の場合には千分の八・三、それから約二千円の、ボーナス控除の場合には千分の一一・四という数字になるのではないかと思います。
  105. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それじゃ一つお伺いします。厚生省の試算は二千七百三十六円。ここに五省協定というのがある。建設省、運輸省、農林省、大蔵省、労働省、この五省協定によれば、一番高いところが二千六百七十円ですよ。あなた方がいつも計算をするときには御自分の都合のいいように、保険料を高くとれるように高くしていることになるじゃありませんか。これは五省協定、あなた方が試算した金額、これだけでも違うじゃありませんか。二千六百七十円と二千七百三十六円、これだけでも違いますよ。この点について第一点としてお伺いしたい。  第二点は、国税庁は土建の労働者に対して必要経費をちゃんと認めているのです。それは所得率を六五・三%にしているのです。三四・七%というものを必要経費にしているのですよ。あなた方の試算と比べると、はるかに高いものを必要経費として認めているのですよ。国税庁が認めているものに対して、あなた方は何にも知らぬでそれにまるまるぶっかけて保険料が出ている。これを差し引いてごらんなさいよ。二千円を切る金額になりますよ。   〔委員長退席、小山(省)委員長代理着席〕 その点を第二点としてお答えをいただきたい。
  106. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 私どもが二千七百三十六円という試算をいたしましたのは、これはまあいままで労働省のこの調査を基礎にして試算をしてきたわけでございまして、従来使った方式で積算をしたわけでございます。  それから、五省協定の内容は、私どもちょっと詳しく存じませんですが、擬制適用労働者とそれから一般の労働者を含めまして算出したために低くなるのではないかというような形が出た。これは私どもとしてはまだ詳細に中身を検討しておりませんので、確実なお答えはできません。
  107. 山本政弘

    ○山本(政)委員 だからあなた方が保険料を取る場合の計算というものは、私をして言わしむるなら、いつでも大工さんの手間賃というものを高いほうに高いほうにあなたたちは見ているんだというのですよ。だけれども、第三者から見た場合にはそれをちゃんと正常に計算をするということを言いたいわけです。要するに、高い日額なら高い保険料をかけるのがあたりまえですよ。ところが実態はそんなものじゃないでしょう。あなたのおっしゃるように二千七百何ぼで、そして必要経費を差し引いたら二千円になります、こう言っているでしょう。そうしたら、二千円に対してあなた方は保険料というものを計算すべきでしょう。土建の人たちも、絶対反対とは言ってないのですよ。大幅引き上げは反対だと、あのときには言っておったと思うのです。それはいま私が申し上げたように、自分たちの必要経費を差し引いたらこれくらいにしかならないじゃないか、だからあなた方がかけてきている保険料というものは高過ぎるじゃないかということをあの人たちは言いたいわけですよ。だけれども、あなた方はそれに耳をかそうとしてないのです。耳をかさないばかりか、つまり私をして言わしむるならば、二千円に対して保険料というものをお考えにならないで、現実には逆に、廃案になったから擬適廃止する、こういくんですよ。  第二番目は、あなたはよくわからないで、従来どおりの試算だというけれども、第三者というものは公平でしょう。五省ですよ。厚生省一省じゃありません。五省がちゃんと計算しながら、ここが適当な金額だろうといったものに対して、あなた方のおっしゃっている金額のほうがはるかに高いというところに問題があるでしょう。そういうことを謙虚にきちんとしないで、そしてゴリ押しをしようとするところに問題の発端があったんでしょう。その点を一体どうお考えですか、大臣
  108. 内田常雄

    内田国務大臣 数字の問題でありますが、私が聞いておりますと、いまの問題の擬制適用対象になっておられる技能者の方の日額給料が二千六百円である、二千七百円あるいは二千円でありましても、現在の日雇健保擬制適用を認めている限りにおいては、その人の給料は四百八十円とか四百八十一円と考えて、日額保険料は二十六円しかとれないというところに非常な無理がある。そこで私ども改正案を出しましたのは、決して高いものではなしに、千円以下、千七百円以下、千七百円以上というようなことで、もし技能者の方が千円から千七百円のところが実額でありますならば、それに応じまして保険料も、あの当時六十円でございましたか、というようなことでございまして、ここで技能者の所得を千七百何十円ということで無理に押しつけてというつもりではございません。また今回の措置をとりまして、これらの方々が国民健康保険あるいは政管健保に入られましたときの、その場合の標準報酬、あるいは国民保険なんかの場合の所得の算定につきましてはことにそうでございましょうが、地方税算定の方式に従いまして経費も引かれるということになりますので、したがって、私どもはここで擬制適用方々日雇健保からはずして、しかもその所得を今度は高く擬制して、特に高い保険料をいただこう、こういうつもりでは毛頭ございませんので、その点はひとつ御理解いただきとうございます。
  109. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それならなぜ最終段階で百二十円というものをお出しになったのですか。
  110. 内田常雄

    内田国務大臣 政府の案にはございません。これは国会において各方面の御協議で、修正案ができる過程において修正案の中身として——これは廃案になってしまったわけでございますが、出たわけでございまして、私どもは、初めからそういうつもりで政府改正案は出ていなかったことは、御承知のとおりでございます。
  111. 山本政弘

    ○山本(政)委員 政府案には百二十円は出ていない、あなたはそうおっしゃる。それはけっこうです。百二十円は出ていないけれども廃案になったら、それじゃ擬適廃止、どうも身がってな感じがします。
  112. 内田常雄

    内田国務大臣 その数字と関係ないんですよ。
  113. 山本政弘

    ○山本(政)委員 いや、関係がある、相関関係があるんですよ。たとえよその党が——だれが出したか知らぬですよ。ぼくはあえて追及しませんけれども、百二十円出したときにはあなた方はそれにお乗りになって、やっぱりそれを強行しようというお考えをお持ちになったと思うのです。あなた方はそれでは、百二十円というものは無理ですといって強硬に主張なすったかどうか。それはすべきじゃないということを主張されたかどうか。主張されないで、そして法案が廃案になったとたんに擬適廃止するということは、やはり都合のいいほうへ、いいほうへあなた方はお乗りになっていると思うのですよ。そうじゃございませんか。
  114. 内田常雄

    内田国務大臣 いささか公式論の答弁になって恐縮でございますが、私は厚生大臣として政府提案成立を念願をいたしまして、ここにじっと、当時の委員会においてもすわっておったわけでございます。しかし法律国会がおつくりになるものでございますので、しかるべき方面でいろいろの御協議がございまして、国会としてはその修正案が出されましたと、こういうことでございまして、私がそれをあおり、そそのかしたということは決してございませんので……
  115. 山本政弘

    ○山本(政)委員 いや、あおり、そそのかしたと言っておるのではないのですよ。どうも建設労働者というものが要するに疎外をされているのではないか、こう言っているのですよ。というのは、けさの新聞にも書いてありますけれども、就労の不安定ということをいっておるのですよ、就労の不安定というものは収入の不安定、こういっているわけだ。そういうことをあなた方はお考えになったことがありますかということを言っておるのです。あるいは、建設労働者というものが建設省からも、労働省からも、厚生省からもまま子扱いされておりますよ、現実には。建設省では建設技能者に対する所管課というものがないですよ、つい最近室ができただけ。労働省は、労働基準法五十二条と労働安全衛生規則の四十八条による健康診断の項から日雇い労働者というものははずされているのですよ。労働省からもそうです。厚生省擬適廃止しておるのですよ。そのほかにもあります。厚生年金の対象者になっていないでしょう。そういう条件の中からあなた方は、それでもまだ擬制適用というものを廃止するのですか。まま子扱いするのも——各省でこれほどやられておって、なおかつ無慈悲なことをやるのがあなた方の態度じゃないかと私は言うのですよ、そうお考えになりませんか。
  116. 内田常雄

    内田国務大臣 厚生省は国民の職種に関係なしに、これは私などの気持ちといたしましては、社会の底辺に置かれておられる方々の、できるだけその味方になって行政をしてまいる、こういうつもりでございますので、ひとり技能者の方々に対して、保険適用につきましても、不利益な措置を決して考えるものではございません。しかし今朝来だんだん申しておりますように、日雇労働者健保の本来の制度並びにそれの現状におけるのっぴきならない窮状にかんがみまして、行政上の対象としてやってまいった。それは厚生省がやってまいった責任はあるのでございましょうが、そういう方々に別の座席に移っていただく、しかしその座席たるや、決して無理をしないように、このことにつきましては、私もいろいろのことをちょいちょい申して厚生省の諸君を牽制して、あまり無理なことをさせないようにという——これはしかられるかもしれませんが、私はそういう気持ちで言っておりますが、これにつきましてもまた、皆さん方の御意向も承りまして、その善後措置などにつきましても、でき得る限り厚生省は厚生少らしい、庶民大衆の味方としてのやり方をやってまいりたいというのが念願でございます。
  117. 山本政弘

    ○山本(政)委員 時間がないので、私も簡単にしますけれども大臣も御答弁を簡単にお願いしたいと思います。  厚生省の場合に、私先ほど厚生年金法の対象にならぬと言ったのですけれども、日雇労働者というものは、五人未満は、要するに日雇い健保の適用じゃないわけだ、本来ならば。現実にはそれが、五人未満の就労がいま増大しておる。そういうような中で、二十八年ですか、擬適を採用しかというのは、これは一つ厚生省のせめてものクリーンヒットですよ。それをいまあなた方はおやめになって、そして別の席にすわれ、こう言っているのです。その席というものは、少なくとも言えることは、いまの席よりかすわりここちの悪い席であることは間違いないでしょう。あなたはいまの席よりかすわりここちのいいという断言、保証ができますか。
  118. 内田常雄

    内田国務大臣 そこでございますが、いままでの席はすわりごこちがよかったと思います。いま山本さんがお示しになりましたよう所得日額に対しましての保険料が二十六円ということでございまして、したがいまして、保険制度をとります限りにおきましては、これよりすわりごこちがいいところはないわけでございます。したがって、どの席に持ってまいりましてもすわりごこちがそれよりも悪い点があるとは私は思いますが、でき得る限りすわりごこちがはなはだしく悪くならないように、厚生省としていろいろな皆さま方のお知恵を拝借しながらやろう、私はこういうことを申し上げたり、考えておる次第でございます。
  119. 山本政弘

    ○山本(政)委員 だから少なくとも、大臣がおっしゃっているように、いまのいごこちというものが、ふんぞりかえってそうして極楽浄土をきめ込んでいるという、そういう席ではないと思うのです。そんなことを土建の労働者も言っておるわけじゃないと思うのです。やはりすわりごこちがあたりまえの——あたりまえという言い方はおかしいですけれども、つまりほかの健保に比べてははるかに窮屈なすわりごこちなんです。給付条件を見てごらんなさい。そうでしょう。もろもろの条件というものを並べてみた場合には、日雇健保というものははるかに下なんです。そのいすにすわらされているわけです。それを大臣は明確に、少なくともいまのすわりごこちよりはいいところにすわらせるとはおっしゃっていない。できるだけそれに近づかせるように努力するということは、悪いところじゃないですか。悪いが上にもなおかつ悪くなるという以外にないじゃありませんか。しかもそのことの理由というものは財政上の問題だけに帰しているわけです。  それじゃお伺いしますけれども、あなた方は擬制適用の被保険者というものは本来の日雇い労働者ではない、こういう言い方をしているわけです。それはどういう意味ですか。これをひとつお聞かせ願いたいと思います。大工や左官さんは全部が自営業者じゃありませんよ。実態をあなた方は知らぬからそうおっしゃっているので、大半が日雇労働者ですよ。日雇労働者と言っていいと私は思うのです。その点は一体どうお考えになりますか。
  120. 戸澤政方

    ○戸澤説明員 本来の日雇労働者健保の対象は、法律で規定されておりますとおり、適用事業所において日々雇い入れられる者というのが原則でございます。それで、今度移しかえるにつきまして地方の実情を調べてみますと、いまはしなくも先生のお話にあったような、何人かの労働者を雇っておりまして、本来なれば政管健保に入り得るような者、あるいは政管健保の包括適用に該当するような者も入っておるよう状況でございます。  沿革的に申しますれば、日雇健保法ができました当時は、確かに、先ほどお話もありましたとおり、日雇い、いわゆる一人親方というよう人たちに対して適用すべき適当な保険がなかったということでもって、日雇健保を準用するというようなことも意味があったかとも思いますけれども、本来なればこれは、三十六年に国民皆保険ができましたときに整理すべきもので、国保に当然移るべき性質のものではなかったかと思うのであります。船員保険等については、事実そういう扱いをしておるわけであります。  そういう点から見まして、本来日雇健保法になじむべきでなかった一人親方、そういう人たちに対しましては、本来なればいわゆる国保に入るべきものでありますけれども、しかし従来団体運営のようなかっこうでやっておりますので、国保組合という運営方式を認めてこれでもって育成していこうというよう考えでやったわけでございます。
  121. 山本政弘

    ○山本(政)委員 局長、そんな答弁でいいのですか。ここに、一連のあなた方の通達の中に、ただの一ぺんも、擬適というものはあなたのおっしゃるようなものであるということを、つまり国保に当然かえるべきであるということはどこにも出ておりませんよ、通達はこれだけあるけれども。二十八年以降今日までの通達がここにある。ただこの通達の中には、擬適をもう少しきちんとしなさいとか、そういうものはあるけれども擬適というものがいまの時勢にそぐわないからこれを廃止すべきであるという見解なんて、どこにもありませんよ。十七年間出たことがありますか。あなた方もし出そうとすれば、それは財政上の問題だけからじゃありませんか。どこに出ております。
  122. 戸澤政方

    ○戸澤説明員 公式通知等に必ずしも出てないかもしれませんけれども保険の体系から考えますれば被用者保険については健康保険かあるいは日雇健康保険に入るべきものであり、そうでない者は地域保険たる国民健康保険に入るべきものであるわけであります。それで被用者保険というものは文字どおり雇用関係にある者、使用者と被使用者という関係にある者を対象にしておるわけでございますので、そうでないいわゆる一人親方等につきましては当然自営業者、農漁民などと同じように国保に入るべき筋のものであろうと思います。こういうものについてまた別個の保険体系を考えるということならば、それは別問題であります。
  123. 山本政弘

    ○山本(政)委員 さっきあなた方、法制化ということをお考えになったけれども日雇健康保険について擬適法制化ようということは、私は先ほどの逆手をとるわけじゃありませんけれども法制化厚生省から出たわけじゃないでしょう。政府・与党のほうから出たのでしょう。あなた方事務当局が法制化ということをお考えになったのではないのじゃないか。日雇労働者の要するに職業の性質上、私は先ほどから擬適の必要性ということをあなたに申し上げた。もしそれを体系化するんだったら、まず手初めに日雇健康保険法について擬適法制化するということを考えるほうがノーマルなあり方ですよ。
  124. 戸澤政方

    ○戸澤説明員 確かに政府原案では擬適廃止ということは考えておりませんでした。しかしそれは大臣やあるいは前大臣あるいは社会保険審議会等でも申し上げておりましたとおり、今回の改正法案が通った暁には、抜本対策の検討の際にこの擬適の扱いについて検討しようということになっておったわけでございます。抜本対策の検討の際にはたしてどういう姿になるか、擬適日雇健保として認知されるかどうかは全然わかりません。しかし、この前提たるべき修正法案も通らなかった。それで財政的あるいは他法とのバランス等から見て猶予できないということになりまして、そうなりますればやはり合法的な制度にかえなければならないというわけでございます。私ども考えました国保組合というのは、国保法に基づく合法的な運営方式でございます。それに移しかえることによって、内容的にも従来の給付が落ちないような方法でもって育成していこうというのが私ども考え方であります。
  125. 山本政弘

    ○山本(政)委員 時間が来たようですから、最後に入りたいと思いますが、つまりこういうことですよ。あなたはその抜本改正のときに法制化考える。これは中野さんもそう建設委員会でおっしゃっておるようです。五月の八日でしたか、そういうふうにおっしゃっておる。  それじゃ私はお伺いいたしますけれども、十七年間ですか、これを使ってきた、いわば一つの慣習法とこれを見ていいと思うのです。しかし、それは私は一歩譲って、それではあなた方にお伺いしたいのは、あなた方が法改正というものをお出しになった、それが廃案になったのだったら、残っておる、要するに現行の法というものを適用すべきでしょう。それがほんとうのあり方でしょう、法のたてまえというのは。しかも擬制適用というものは、母法といいますか、本法たる日雇健康保険法の欠陥を補うものとしてできたものですよ。だから、擬制適用というものは日雇健康保険法の表裏をなすものだと私は考えていいと思うのです。本来ならそれをそのまま適用していくべきだと思うのです。だけれども、それをなさらないで日雇健保だけ切っていったというのは、これは法解釈の上からいったって私は間違いだと思うのです。その点、あなた方は法律家じゃないけれども、見解をひとつお伺いしたいと思います。
  126. 戸澤政方

    ○戸澤説明員 本来合法的なものでございますれば、修正案廃案になったという場合には、これで元に戻るのが当然であろうと思います。しかし、本来合法的でないということは、衆議院審議段階においても合法的でないということが認められたわけでございます。そうすればやはり、本来行政措置でやっておったようなものは合法の筋へ乗せなければならぬというのが私ども考えでございます。
  127. 山本政弘

    ○山本(政)委員 いいですか。擬適というものは日雇健康保険制度の発足以来ですよ、ぼくに言わしたら。発足以来、その欠陥を補うものとしてできているのでしょう。しかもその十何年という間、予算措置も出てきているじゃありませんか。予算措置をしながら、しかも長期にわたってやってきたもの、それをあなた方が廃止ようというのは、理由としてあるものは赤字だけですよ。どこへ出したって、法解釈上、あなた方が擬適というものを廃止するという根拠がもしもあるとするならば、土建の人たちが、職人の人たちが一斉に保険料を納めないとか、そういう違法行為があったときにそれを破棄することができるかもわからぬ、法解釈上としてはそういうことが成り立つかもわからぬ。だけれども、納めておるものに対してそれを廃止することはできませんよ。どこからそういう法解釈が出てきたのでしょう。成り立ちからいって日雇健康保険と同じ、つまりそれを補完するものじゃございませんか。  繰り返して申し上げますけれども、予算がついているのです、長期的に。何人といえどもこの擬適というものに対して、廃止をすべきという意見は一つも出ておらぬのですよ。もう一ぺん御答弁願いたいと思います。
  128. 戸澤政方

    ○戸澤説明員 やや法律論を先に出したきらいはございますが、確かに十七年間積んできた実績でございますから、その実態はやはりさかのぼって無効というようなことにはとてもできませんし、また守っていかなければならないものでございます。それで、その実態を落とさないように、しかも合法的な方法があればそれに切りかえるのが当然ではないかというふうに考えまして、私どもは、従来十七年間実施してきた実績を守って、しかも筋の立った保険に切りかえようということを考えたわけでございます。
  129. 山本政弘

    ○山本(政)委員 いいですか、それなら私はもう一ぺんあなた方に確認しますよ。昭和二十八年の十二月から今日まで、一回も廃止というものは提案されたことがない。逆に、私の知り得る限りでは、法制化の要求を押えてきたのはあなた方じゃありませんか。公式の場で、その法制化はタブーだとしているのはあなた方自身じゃありませんか。あなた方が押えながら、それが廃案になったとたんに擬適廃止をやるようになってきている。なぜそれなら、いままでそういうことに対して、法制化をしてくれという要求に対して、あなた方はタブーとされたのか、大臣答弁順いたいと思うのです。
  130. 内田常雄

    内田国務大臣 補足するそうですから……。
  131. 戸澤政方

    ○戸澤説明員 実態について補足しますが、擬適法制化については、それを表向きの要求をしたことはございませんが、この擬適は望ましいものではないということから、この擬適の承認、認可といいますか、組合の認可は、四十三年以来新設のものは認めておりません。そういうようなことで、いずれこの制度についてしかるべきときに考え直そうということで進んでまいりましたわけで、たまたまこういう機会に改正考えよう……(「たまたまとは何だ」と呼ぶ者あり)たまたまというのは、一つの報復的なチャンスということではございませんで、国の財政的な理由、それからまた他法との関係、バランス、公平、そういった点から見て、もう一刻の猶予も許さぬという判断に立っていたしたわけであります。
  132. 山本政弘

    ○山本(政)委員 問題は一刻の猶予も許さぬよう段階かどうかという問題ですよ。つまり食管については気やすく二百三十八億ですか、それだけの金を出せるものが、一体大臣大臣責任において四十万人の擬適の利用をしておる人たちに対してそういう措置というものがなぜできないのだろうか。米ならば、農民ならできるものが、なぜ土建の働く人たちにできないのかということです。それをひとつお聞かせ願いたいというのが第一点。  時間がないからもう最後です。第二点は、いま局長のほうからお話があったけれども、覚え書きの法的効果というものはこういうものでしょう。あなた方は、要するに事業所というものを、組合をつくらせることによって事業所と認めたわけです。そうしてそれに対して負担行為をかけているのですよ。そういう相互の確認の中にできているわけでしょう。それは私は一つの法的な契約だと見て差しつかえないと思うのですよ。まさしく私は契約行為だと思うのです。だから先ほど言ったように、もしこれを廃止するということだったら、あなた方が破棄の事由を定めている、組合代表が正当の理由がなくて覚え書きに違反をした、そういう事実というものがたくさん出てきたとか、あるいは保険料納入を怠ったというものが一般的に起きたときにだけそれは効力を持ち得るので、そういう事実がない限りは、これは公法上の契約として、破棄できるものじゃないはずですよ。しかも母法たる日雇健康保険法の欠陥を補完するものとしてそれは出てきたわけでしょう。繰り返して申し上げますけれども、長期にわたって予算措置を講じてできたものじゃありませんか。それが軽々しく一片の通達廃止されていいものかどうか、私は法的にも疑義があると思うのです。再度質問いたします。
  133. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 覚え書きの効力の問題についてお答えいたしますが、私どもの解釈といたしましては、先生先ほどからおっしゃっておられるように、この擬制適用制度というものは、行政措置によって実施をされるようになった。それでそれを受けまして、各県の課長なり部長なりとそれから組合のほうとの間にそれについての実施細目の取りきめをした、それが覚え書きであるというように解釈をしておりますので、したがってもとになる行政行為というものを廃止したということによって、実施細目である覚え書きも効力を失ったというように解釈をしておるわけでございます。
  134. 山本政弘

    ○山本(政)委員 最後ですから私申し上げます。  ここに三つはがきがあります。あるいは川俣さんがおっしゃったかもわかりません。これは熊本県から来た。中身は非常に指導的に親切に書いてあると私は思うのですけれども、ここには、受給資格者票は返す必要はありませんという判がないのです。東京には、ここに一つ、受給資格者票は返す必要がありませんという判がある。しかし、同じ東京のこれにはないのです。これは一体どういうことなんです。多くの混乱がここで起こっておるでしょう。そういうことに対して、あなた方は一体擬制適用廃止するのだったらなぜそれだけの親切心というものをやらないのです。  第二点、すべて国保へ移行せよというけれども、あなた方の考え方というものは、国の負担を軽くして地方自治体に負担をかけるということですよ。こんな不親切な、ばかな行政指導というのはどこにあります。
  135. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 第一点のはがきの問題につきましては、これはまあ私どもも早急の間に各被保険者の方にいろいろと連絡をしたいということで出したわけでございまして、そのはがきの内容自身がいろいろわかりにくいとかなんとかいうような、あるいは舌足らずであるというような点が全くないとは申しませんので、県によりましては、それについてのさらに説明書きのようなものを配るというよう措置をとったこともあるわけでございます。  それから第二点の負担の問題は、私どもとしてはそういうような見地からやったのではないということでございます。
  136. 山本政弘

    ○山本(政)委員 早急の間に擬適廃止して財政的な効果を何とかしようというのが、これに端的にあらわれているのですよ。しかも地方に行ってごらんなさい。東京都内でもある。擬適廃止されたから現金をよこせというお医者さんにあって、土建の職人の人たちがたいへん困っている現実だってあるのですよ。あなた方のやり方は、まさにやらずぶったくりではありませんか。さなきだに条件の悪い日雇健康保険法に対してそういう仕打ちをやるということが、社会保障の御本尊である厚生省のあり方であるかどうか。最後に大臣の御答弁をお願いいたしたいと思います。
  137. 内田常雄

    内田国務大臣 山本先生の御所論、傾聴いたしておりました。先ほど来、だんだん私どもが申し述べておりますように、私といたしましては、この善後措置につきましてはさらにこまかい配慮もいたしてまいりたいと思います。  なお、御指摘のはがきの文章等につきましての問題につきましては、これも混乱を来たすような手違いがあったとすれば、まことにこれは申しわけないことと存じております。
  138. 山本政弘

    ○山本(政)委員 最後に、この「全国建設工事業国民健康保険組合の概要」、これの給付内容とか保険料とかというものがここに出ていますね。これの予算措置というものは保険庁でちゃんとやっているのですか。国保組合のこれは、予算措置はもうすでにやっているかどうか、それだけ聞かしてください。
  139. 戸澤政方

    ○戸澤説明員 資料として提出いたしましたのは、とび関係の国保組合の設立申請中のものの概要でございまして、まだ組合自体におきましても、この給付内容とか収支計算については検討中でございまして、きまっておりません。したがって、国の措置というのは、まだこれは一般の国保組合に対する助成、つまり医療費に対する二割五分の国庫負担、それから臨時調整補助金一億という以外には、特別の措置はいたしておりません。
  140. 山本政弘

    ○山本(政)委員 これで終わります。
  141. 小山省二

    ○小山(省)委員長代理 この際、午後二時まで休憩をいたします。    午後一時四十六分休憩      ————◇—————    午後二時十九分開議
  142. 倉成正

    倉成委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。大橋敏雄君。
  143. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 第六十三国会において日雇健保修正案がついに廃案になった。それに応じまして、直ちに擬制適用廃止が打ち出されたことによって、いまや大きな社会問題が起こりつつあるわけでございますが、この廃案になったいきさつにつきましては、いろいろとうわさもされているわけでございますけれども、結果的にはいわゆる一片の厚生省通達でもって四十一万人という大ぜいの擬制適用者を切ってしまう。つまり四十一万人という人々の健康と生活を脅かすようなことが現実になされた。これはもう重大問題である。率直に私もそのように感じております。確かに日雇健保財政面は憂慮されるべきいわゆる危機状態にあることは、われわれもよく承知しているわけでございますが、この財政上から見ても、何とか措置を講じなければならないと考えるのは当然のことではありますけれども、ただ赤字の解消をしようというその手段として、擬制適用を打ち切る、また、これを断行するということは、これは職権の乱用である。あるいはまた、報復措置である、このような批判を受けてもいたしかたないと思います。われわれは、もともとこの擬制適用問題については、医療保険の抜本改正の中であわせ考えられていく事柄である、このように思っていましただけに、この擬制適用打ち切りの方針が出されたときに、大きな問題であるということを実感しまして、今日起こっている諸問題をこれからいろいろとお尋ねしたいと思います。   〔委員長退席、小山(省)委員長代理着席〕  まず最初に厚生大臣に、このような重大な事柄を、いわゆる事後措置の計画もあるいは明示もなく。一片の通知を出したということについて、どのよう考えを持たれたのか、あるいは責任を感じておられるのか、まずお尋ねしたいのでございます。
  144. 内田常雄

    内田国務大臣 大橋先生からいろいろ御注意をいただきまして恐縮千万に存じます。ではございますが、この擬制適用制度は、もう十分御承知ように、また読んで字のごとく、対象になられる方々を、本来は日雇健保対象とはならない人々でありますのを、対象として擬制をいたしまして、それも法律上擬制をいたしたわけではございませんで、当時これらの方々が処遇さるべき他の保険制度がないというよう事態に応じまして、行政措置といたしまして便宜日雇健保制度適用を認めて今日まで至ったわけであります。私はもとより法律家ではございませんので、そのことの法律上のよしあしはあまり考えるものではございません。ただ、もともとこの保険が非常に安い日額の給料を取られる日雇い労務者対象といたす保険でありますために、保険料も御承知よう日額二十六円内外というようなことできめられておりまして、これは擬制適用を受けられる方も、本来の給料の少ない日雇い労務者の方も、同じに取り扱われておりますために、この保険が、先ほど来大橋先生も言われましたように、赤字に赤字を重ねてまいりました。そこで今回の政府法律改正提案、また昨年も国会に同じよう趣旨法律改正提案をいたしたわけでございますが、この改正によりまして、ある程度その擬制適用方々をも含めまして日額給料の実態に即するよう保険料も上げていただいて、そうして何とかこの保険制度を今後行なわるべき抜本対策の時期まで引っぱっていこう、こういう趣旨でございましたが、昨年も今年も二回この法律成立をいたさなかった今日の事態におきましては、このままではこの保険は全くその支払いができなくなってしまう。何べんも申しますように、掛け金は一日分で二十六円、月二十日と見ましても五百円内外、年額にいたしましてせいぜい、五、六千円というようなのに対しまして、保険給付のほうは五万円前後出る。これに対しまして国からも三五%の国庫補助はございますけれども、国庫補助と掛け金を足してみましても、保険給付の半分にもならない、こういうよう事態のもとにおきまして、この保険がほんとうに動かなくなってまいりまして、これまでは短期の借り入れ金を重ねまして、その借り入れ金でお医者さんに対する医療費の支払いをする、年度末においてはある特殊な方法で年度を越すというようなことでやってまいりましたが、非常に不安定なやり方でございました。それが、法律改正ができませんために一そうその収支が整わないということは、単に財政ばかりの問題でなしに、この保険制度がつぶれてしまうというよう事態にもなりかねないよう状態になりましたので、そこで、言ってみますと、財政問題がどうであるとか、あるいはけさほど来議論がございましたよう法律論がどうであるとかいうことよりも、この保険が動かなくなるという緊急事態に対応する一種の緊急避難のような形で、行政措置としてこの擬制適用方々を他の保険の席にできるだけ摩擦がないように移っていただくよう措置を講ずる、こういうことにいたしたわけでございます。これは十分御承知ように、この制度がある程度続いてはおりますけれども、もともとは法律に基づくものではなしに、行政措置としてやってまいってきたものでございますので、国会意思を無視するというようなおしかりもございましたが、私どもといたしましては、もともと行政措置でやってまいったものでございますので、だんだん申し述べましたよう事態に即応する緊急措置として行政措置で今度のようなことをさせていただく、こういうことになりました事情をぜひ御理解をいただきたいと存じます。
  145. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私は、いま擬制適用財政問題、それから擬制適用そのもののよしあし、そういう内容についてお尋ねしておるわけじゃないのです。それはあとお尋ねしたいと思っておりますが、とにかく五月十三日に参議院では廃案になったその段階厚生省として擬制適用廃止方針を打ち出した。このことは、厚生省という重大な役割りを持つ当局として軽率な態度ではなかったでしょうかと、実はここをいま指摘しようとしておるわけであります。確かに日雇健康保険趣旨からいって、擬制適用者は、本来法律的に見た場合多少の問題があるとして、そのことばにあるとおり擬制として適用されてきた。いまも大臣みずからおっしゃるとおり、行政措置として便宜的にそれを取り上げてきたのだ、こう言われますものの、昭和二十八年以来今日まで続いてきたこの実態、事実から見た場合、これは私はりっぱな既得権である、このようにみなすわけであります。また見れるわけであります。したがいまして私は、かりに、擬制適用法律的に問題であるのでそれを法制化ようということもありましたし、また、いずれにいたしましても、その擬制適用そのものを何らかの姿でなくすという方向に進むとしても、あくまでも先ほど言った既得権を侵害するようなことであってはならない。つまり、今回の厚生省のとられた措置は、いわゆる既得権を一方的に無視した措置ではないか、私はこう指摘しているわけであります。  先ほどからも言っておりますように、今度の五月十三日にあのような発表をなさったこと、つまり事後措置といいますか、事後保障といいますか、そういう裏づけなしに発表なさった厚生省の態度はよろしくない、私はこう言っているわけですが、これに対して大臣はどうお考えになりますか。
  146. 内田常雄

    内田国務大臣 既得権というおことばでございますが、これは、法律論は別といたしまして、いままでそういう制度になじんできた擬制適用の皆さま方からこの制度適用をはずすわけでありますから、はずされるほうの方々は、痛いことは私にもよくわかるわけでございます。しかし、またはずされる方々も、保険は毎年毎年のことでございますので、先ほども数字で申しますように、平均して五、六千円の保険料を払って五万円何がしの保険給付を受けておるわけでございますので、そういう状態は、既得権と申されましても、いつまでも続くわけのものではございません。そういう無理な状態が何年も続けられました結果、先ほど来申し述べましたような、日雇健保存立の緊急事態になりましたので、これは法律成立をいたしますと、そこで御承知よう保険料も相当程度引き上げられたわけでありますが、それが成立しないことがはっきりいたしました状態のもとにおきましては、私ども行政責任をとるものといたしましては、まことに申しわけないことでありますけれども、一日もすみやかにこの制度を他の制度のほうに乗り移らせなければどうにもならない、こういうことになりまして、非常に急いだようなことでおしかりを受けましたけれども、そういう措置をとらざるを得なかったわけでございます。   〔小山(省)委員長代理退席、委員長着席〕  もう一つは、そのかわり擬適からはずされる皆さま方に対しましては、十七年前にはその他の乗るべき保険制度がございませんでしたが、しかし今日では、他の乗るべき保険制度もございますので、そちらのほうにでき得る限りスムーズに移れるような親切な、また場合によりましては財政的にもできる限りの心配もいたしてまいろうということを——これは、そういうことを申しましても、もとどおりではないとは思いますけれども、私ども厚生省でございますので、なるべく無理をしないほうがいい、やさしい役所であるわけでございますので、そういうやさしいことをも考えなながらこういう措置をとった、こういう次第でございます。
  147. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いま大臣答弁を聞いておりますと、そうした擬制適用の皆さんに対しては決して悪いようにはしない、そういう配慮は十分あったのだ、このように聞こえるわけでございますが、これは今後においてどのよう措置をとられるかにかかってくるわけでございますけれども、私がいま言わんとしておることは、それだけの配慮があるのならば、なぜあの五月十三日に、混乱したその時点をとらえてこのようなことをなさったのか。つまり、うるさいように言っておりますけれども、今日ではある程度の事後措置のことについていろいろ発表されているようでございますが、その五月十三日の時点においては何らの裏づけもありませんでした。したがいまして、その関係者である擬制適用者、これが十人とか二十人ならばいざ知らず、四十一万人、家族を入れるとばく大な数です。この方々の健康と生活が脅かされるということになれば、黙っているわけはないじゃないですか。大きな社会問題が起こるということも当然予想されたと思いますが、そういう観点から見た場合、大臣として軽率であったということを率直にお認めになりますかどうですか。
  148. 内田常雄

    内田国務大臣 擬制適用廃止いたすのでありますから、それらの方々が健康保険適用を受けられないということになりますとこれはたいへんなことになりますが、先ほども申し述べましたように、今日におきましては、擬制適用制度をはずしましても、他に乗るべき保険制度がございますので、そちらにでき得る限りスムーズに乗っていただくということでいっておりますので、擬制適用対象方々が、健康と生活上非常に脅かされるというふうにも、実は私どももそれほど深刻には考えないと申しますか、そういうことにならないようにつとめつつこれをやる。それから、あまりに急速にやったということに対しましては、たびたび申しますように、全くこの保険が動かなくなりますので、緊急避難といたしましてこういう措置をとった、こういうことでございます。
  149. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 擬制適用をはずしても、それが廃止になっても、その関係者は健康保険から締め出されるわけではないので、さほど心配はなかった、こうおっしゃいますけれども、平易にものを考えますと、擬制適用医療を受けていらっしゃる方は、被保険者本人ならば十割であったわけです。国民健康保険になると七割給付ですね。そこにもうすでに三割の差がつくわけです。あるいは傷病手当などは国民健康保険にはないということになれば、これは非常に問題にされるのは当然であります。  そこで私は、もうそう言い切ってしまった今日において、その問題を云々してみても始まりませんので、もう少し掘り下げて内容を確認したいことがございます。それは、日雇健保修正また再修正案をめぐっていろいろとうわさされておりますが、私が手元に持っております「週刊社会保障」という雑誌がございますけれども、これにその当時のいきさつが、表面に出ないことまでが記事になっているわけでございます。全部が全部そのままとは私も信頼はしておりませんけれども、そううそを書いておるとは思われません。したがいまして、その中から一、二問お尋ねをしたいと思いますが、はたして大臣はその後の事態を御承知であるかどうか、その点も確認するわけです。と言いますのは、この修正案については、自民党の斎藤邦吉という議員と社会党の社労関係の議員との間で修正案の話が順々と進められていった。そして、そのうちにある程度の了解点といいますか、一致点が見出されたので、それが修正案として出てきたのだ。私もこの社労の理事会で大体のいきさつは聞いておりまして、確かにそういう方向で行っておったのだろうということで、とにかく衆議院段階では附帯決議等もつけて一応通過したという姿が出たわけであります。ところが、参議院段階に入りまして、その修正案の内容が実はわれわれをごまかしていた修正内容であった、このような全建総連等の立場方々が、実際に厚生省が示している修正案の内容を掘り下げて見ていくと、これは問題だらけである、このようなことで、即座に社会党さんにも廃案の申し出をした。また政府に対しても、こういう修正内容ではわれわれの意見とはずいぶん違うではないかということを言っていた、このような話を聞いたわけでございます。  そこで、まず一つですけれども、共闘会議のほうから、政府に対して、この修正案に対しては、法制化というものは擬制適用法制化ようということですよ、法制化というものは、二十八年の通達を尊重したといっているものの、その対象者を一人親方に限定して既得権を無視している、このよう厚生省に対して指摘をした、こういうふうにありますけれども、その点はどうですか。一人親方にのみ限定したその点はどうですか。
  150. 内田常雄

    内田国務大臣 私へのお尋ねでございますが、政府といたしましては、政府改正案国会提出いたしました。これは、実は先般の国会にも何とかひとつその日雇健康保険の窮状を立て直さなければならないということで、実は法案としては一番早く国会にお出しをしたのでありますが、国会のほうのいろいろの御都合で、なかなか最後までこれが委員会の議題にもなってまいらないということで、私も気をもんでおりましたし、また、委員会が始まりまして、政府案を成立さしたいという気持ちでございまして、私が国会の各党の間でどういう修正案の打ち合わせが行なわれておったか、これは政府として全く関与しておりません。しかし、修正案が出されましたので、これはもう立法は国会の権限でございますので、また私どもも、たとえ修正の形におきましても、この法律改正がなされないことには制度が動かなくなるという見地から、国会の御意向を尊重いたしまして、私もここで附帯決議に対しましては、国会の御意向を尊重することを申し述べた、そういう事情でございました。
  151. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 局長にお尋ねいたしますけれども、今回の修正案については、先ほども言いますように、いろいろと取りざたされているわけでございますが、全建総連も直接関係なさる擬制適用者の意見としては、確かに日雇健保の赤字の問題もあるし、いろいろある。しかしながら、われわれの主張も聞いてほしい。そういうことである程度の修正がなされて、これは不満ではあるけれどもやむを得ないという姿で話が進んでいったというようなことで、御承知のとおりに最終修正案も提示され、しかも附帯決議等も出されたわけでありますが、私がいまここで問題にしたいのは、衆議院段階で話し合いがなされていた。その内容が実はわれわれの目をごまかした内容であったのだ。すなわち、参議院段階において、その修正の裏を見た場合、非常に不満な、またよこしまなものがあったのだ。こういうことで、急選廃案方向に進んでいったということを私は聞いているわけでございますが、先ほど申し上げましたように、一人親方に限定していたのかどうかということですね。あるいは擬制適用の承認権を社会保険庁長官のみとして、しかも承認時期を六月と十二月の年二回というふうに制限をした。しかも、その効力は二年間と限ったのだ、こういうことですね。あるいは、二十日以上の長期療養で労務に服せない場合は、擬制適用からこれを排除してしまう。また保険料は、四十七年の二月からは九十円のランクを飛び越えて第四級保険料となる。つまり、日額二千四百円以上の労働者保険料百二十円の四級に一ぺんに決定されていくのだ。このようなきびしい制限が裏でなされていた。こういう話は衆議院段階ではなされていなかったのだ、交渉されていなかったのだ、こういうことであったのかどうかということですね。  なぜ私がここまでお尋ねするかと申し上げますと、つまり、事務次官が何といいますか、擬制適用の共闘会議の幹部の方々に、いろいろと相談をし、話をなさっていた。しかしながら、最終段階では、この修正案がもし通過しなかった、つまり廃案になった場合は擬制適用廃止する旨の申し入れをやったというようなことも、この本の中には書いてありますので、こういう点を確認したい気持ちからいまお尋ねしているわけでございますので、その点を正確にお答え願いたいと思います。
  152. 戸澤政方

    ○戸澤説明員 法案の審議段階におきまして、原案に対するいろいろの修正問題につきましては、与野党の間あるいは共闘関係の団体との間においていろいろ打ち合わせがあるのは当然だろうと思います。しかし政府のほうは、そういう打ち合わせの結果表面に出てきた修正意見を聞かされるだけでありまして、その裏の話については全然承知しておりません。ただいまおあげになりました幾つかの例示された問題につきまして、政府は、厚生省は、関知しておりません。  それから、最後につけ加えられました、事務次官が、この法案が通らなかったならば適用廃止せざるを得ないというようなことは、事務次官のみならず課長等が関係の団体等にも申しております。
  153. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 関知していないといえばそれまでで、これは私自身が尋ねる対象を誤ったということになるわけでしょうけれども、これは私は非常に問題であろうと思います。しかしながら、それでは一般世論の見るところは、厚生省はこのたび擬制適用廃止したのは、これは日雇健保そのものをつぶそう、つまり解体させようというねらいがあるんだ。それは確かに今日まで相当な赤字が出ている。擬制適用は四十一万人であった。それを抜けるとあと六十数万人だ。その六十数万人の残りのわずかの人数でもって、その被保険者の数から見ても、大幅な赤字は解消されるとはみなされない。つまり日雇健保を解体させる理由が明らかになってくるんだ。また、抜本改正に入っても、これを解体するには非常に好都合の状態になる。だから、むしろ厚生省はいろいろな事柄があったけれども、その話し合いのあった修正内容とは異なったそういう修正案を持ち出して、そしてみずから廃案に追い込んだんだ、このような一般世論の見方もあるわけでございますが、厚生省として日雇健保をなくそうというよう気持ちがおありじゃないですか。その点ここではっきり答えてもらいたいと思います。
  154. 内田常雄

    内田国務大臣 これは大切な問題ですから、大臣の私からお答え申し上げます。  少なくとも厚生大臣であります私に関する限りは、今回の措置によりまして日雇労働者健保制度廃止するというつもりは全くありませんで、むしろ日雇労働者健康保険制度を残すためには、擬制適用という、ことばは悪うございますがお許しをいただくこととして、重荷をこの日雇労働者健保から他の保険制度のほうに片寄せることによりまして、賃金の低い日雇い労働者方々の健康と生活を守っていこうというつもりで私はこういうことをいたしたのでございます。
  155. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは確認いたしますけれども日雇健保というこの法律そのものは、将来ともなくす気持ちはさらさらない、こうお答えになったと理解してよろしいでしょうか。
  156. 内田常雄

    内田国務大臣 これは日雇労働者保険制度にかかわらず、いまこの健保制度は共済組合等のタイプを含めまして八つくらいのタイプがございまして、その間非常に複雑怪奇、不公正でありますので、これは大橋先生よく御存じのとおり、単に日雇労働者健康保険だけを目標にするのではなしに、いま言う八つの健康保険制度の合理的調整統合ということは、抜本改正として何らかの形においてその姿をつくりたいということで、関係審議会等の御審議をいただいておることは御承知のとおりでございます。でありますから、それらとの関係において合理的調整ということは、成否は別といたしましてあり得ることではないかと考えます。
  157. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 大臣としてはそのよう答弁をせざるを得ないわけでしょうけれども、それではまた話は最初に戻りますが、かりに擬制適用廃止するとしてみても、また今後健康保険のあり方についていろいろと議論をされて、いろいろな問題が起こってくるにしても、私はそうした既得権や、あるいは対象者が現時点よりも実質的に低下させられるような内容であっては絶対に相ならない、あくまで改悪といわれるような内容であってはならない、改善でなくてはならない、その点だけは約束できますか。
  158. 内田常雄

    内田国務大臣 いまの擬制適用方々にかかる日雇健保利用の状況というものは、これもけさほどからたびたび申しますように、日額二十六円の保険料を払いまして、おおむね一カ月間二十日前後でございましょうが、そうして年間約五万円内外の保険給付を受けているという状況でございますので、他にはこういう保険制度はございません。同じような中小企業の方でありますとか、あるいは同種同業と見られる技能者の方々でも、地域の国民健康保険に入られたり、あるいはまた政府管掌の健康保険組合に入られたりしている方々がございまして、そういう方々が多いと思いますが、その方々との権衡も失しておるというか、はなはだ不公平なことになっております。同じ所得の人々でも、これは国はもちろん補助金は出しますが、やはり保険でありますので、相当な自前負担をしておるのに、この擬制適用方々に限って、しかも日額相当の所得があられるのに、そういう方々に比べて非常に安過ぎる保険料を払っている状況でございますので、したがって今度の擬適措置に伴いまして、私はやはりそれは調整しなければ社会正義というものが成り立たないと思います。ただし、現実といたしましては、そういう方も、まだ給付は悪いようでありますが、安い保険料のもとにやってまいられましたので、その乗り移りにつきましては、私はできる限りスムーズな、負担の面におきましてもそういう措置をとってまいりたい、こういうことを申しておるわけであります。ただし、先ほど大橋先生が、どういうことをやってみても、日雇健保から他の保険に移すと、いままでの本人十割給付が国民健康保険においては七割給付になる、こうおっしゃいますが、かりに本人はそうでありましても、家族はいままでの五割給付から国民健康保険になると七割になることもちろんでございますし、引き上げになります。また、国民健康保険組合というようなものをつくります場合には、本人についても七割ということじゃなしに、組合の財政状況等を勘案しながら、その本人給付というものを引き上げることもできるはずでございますので、他の制度に乗り移ることが頭から悪い、こういうことばかりでもございません。あれやこれや考えまして、また皆さま方のお知恵も拝借したり、御希望も承りながら、最もいい方法をとる、こういうことでございます。
  159. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いま財政上の問題とは別に、保険料負担が不公平である、他の制度に比べると擬制適用者は非常に安い金額で保険料を払っているんだ、ここに問題があるということでございますが、今回の擬適に関する廃止理由の中に「一人親方は日額数千円にも及ぶ高額の賃金をとっているにもかかわらず、これを低賃金の日雇労働者と同額の保険料のもとに日雇健保に加入させておくことは、各方面から不公平、不正義の批判があること。」というようなことが盛り込まれていると書いてあるわけでございます。大体擬制適用者が数千円の賃金を受けているとあるのですが、一体この実態調査はなさったのでしょうか。もしなさったというならば、大体いつごろの実態調査で平均幾らになったのか、また最低と最高はどうだったのか、そういう点、事務当局の方でけっこうですから、答えていただきたいと思います。
  160. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 私どもが把握しておりますのは、先ほどもお答えいたしましたように、労働省の調査をもとにいたしまして、大体二千七百三十六円、約三千円に近いものを推定しているわけでございます。なおこのほかに、全建総連のほうで出されました資料と申しますか、要請書の添付書類を見ましても、所によりましては三千五百円あるいは四千円という協定賃金額が出されておりまして、こういうようなことを勘案して数千円という表現を使ったわけでございます。
  161. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 もう一回念を押しますけれども厚生省調査されたのはいつの時点なんですか。
  162. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 労働省が昭和四十四年の八月に調査をいたしました屋外労働者職種別賃金調査というのがございまして、その結果、四十四年の八月の調査の結果から見まして、一応二千十七円という調査の結果の賃金を出しております。ただ、これは擬制適用方々の職種と違ったものが入っておりますので、そういうものを除きまして、私ども擬制適用対象となる職種の構成比を使いまして計算いたしますと、それが二千三百六十七円になるわけでございまして、これをもとにして昭和四十五年の賃金を推定して二千七百三十六円という推定値を出したわけでございます。
  163. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは、負担が不公平だ云々ということがよくいわれているわけでございますが、そういう立場からいきますと、擬制適用者は、他の制度に比べると、大体保険料を幾らぐらい納めなければならぬということになるのですか。
  164. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 幾らぐらい納めるか、ちょっとそのお答えのしかたが違うかもしれませんけれども、先ほども答えましたように、これは単純計算と言われればそのとおりでございますが、二千七百三十六円という賃金日額を一応前提といたしまして、稼働日数が二十三日、それから二十六円の保険料を二十日納めるということで計算をいたしますと、千分の八・三という保険料率になるわけでございます。御承知よう政府管掌健康保険は千分の七十で、自己負担分はその半分でございますから千分の三十五ということでございますので、かなりの開きがあるということでございます。
  165. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 先ほど大臣は、保険料負担の上からいくと確かに低い。しかしながらその内容においてはまだ十分ではない。それでは擬制適用廃止した場合、どのような内容でそういう人々を救済していこうと考えられているのか、具体的にここに示してもらいたいと思います。
  166. 内田常雄

    内田国務大臣 擬制適用から国民健康保険なりあるいは国民健康保険組合あるいは政府管掌健康保険組合のほうに乗り移りますと、それぞれの保険制度におきまする給付の約束がございまして、たとえば国民健康保険のほうへ入りますと、いま申しましたように家族は七割ということになりますから、いままでよりもよくなります。また、御本人も、一応は七割でございますが、国民健康保険組合の場合には、それを上回るよう給付を自己計算においてなす場合もあります。あるいはまた、お産のときの分べん手当と申しますか、あるいは病気のときの給料に見合う医療手当といいますか、そういうようなものにつきましても、いままでの日雇労働者健康保険よりもよくなるはずだと私は理解をいたしております。もしこれを間違うといけませんので、その点はさらにひとつ保険部長から私の述べたことを補正をしてください、もし間違っておったら。間違いなかったらそのとおりでけっこうです。
  167. 戸澤政方

    ○戸澤説明員 大体大臣お話しのとおりでございます。大体と申しますのは、その内容によりましては、組合を結成してやるとしても、組合員の規模とか構成とか年齢とか、それからまたその医療、健康管理の問題とか、いろんなことによって違ってまいりますので、一がいには言えませんけれども、いま大臣が言われましたような、従来受けておった給付を下回らない、むしろそれよりもある部分では改善するというような内容を持ってやっていくことは、組合員にその意思があればできないことではないと思います。
  168. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 とにかく、いまのよう答弁では私は納得いきません。擬制適用者の不安はいま想像以上でございます。先ほどからも何べんもお話があっておりますように、どこの地方団体に行ってもこの問題で持ち切っております。それでまずそうした内容を一日も早く明示し、関係者の方々が、ああこれならばいたし方ない、これならばまあまあ納得いくというようなものを示さない限り、私はこの問題はほんとうに重大問題となり、大きな社会問題となって手がつけられなくなるのじゃないか、このように思うわけであります。  正直言いまして、この擬制適用廃止方針が示されて以来、関係者間には大きな不安と動揺とそして混乱が日々に高まっているわけでございます。だから、政府責任を持って、まず混乱防止についてどのように手を打たれようとしているのか。いま言った、もし今後健康保険に入ってもらう場合はこうこうだという内容とともに、まだそのほかに努力を払わるべき何ものかがあるのではないか、こう思うのですが、その点について大臣はどう思われますか。
  169. 内田常雄

    内田国務大臣 御注意のとおりだろうと思います。たいへん誤解に基づく不安、また反対というようなものもあるのではないかと思います。先刻もちょっと申し上げましたが、私どもの役所の前に反対にいらっしゃっておられる方々を見ましても、これはもう日雇労働者健康保険の当然適用を受ける、何ら影響のない本チャンピオンが、自分たちの分が廃止されるのかと思われて来られている方々もおられるわけでありまして、そういう方々に対しましても、あなた方は本チャンなんだから何の心配も要らない。むしろ所得の高い方々を隣の健康保険のほうの適用に移すことによって皆さん方の荷は軽くなるのだ、こういうよう説明さえもいたしたいくらいの気持ちを私は正直のところいたしました。  それはそれといたしまして、きょうこういう社会労働委員会をお開きいただいて、たいへん私も皆さんに失礼なことを申し述べましたが、意のあるところを率直に述べさせていただく機会を得ましたことも、関係者の御理解を深める一つの手段であったと思うものでありまして、委員長はじめ皆さま方にお礼を述べる次第でございます。また、今後関係方面、府県の部課長の方々あるいは社会保険事務所の方々にも、あらゆる方法をもってこの趣旨をお伝えをいたしまして、そして無用な混乱を防止し、また関係者に少しでも御安心をいただくような方法をとらせるように、私からも当局の諸君に十分申しつけたいと存じます。
  170. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 とにかく、四十一万人の労働者をいわゆる通知だけで廃止した。これに対しては、法的に見ても憲法違反の疑いがあるのではないかということで、日雇健保共闘会議のほうでは、通知無効で訴訟を起こそうという準備が着々と進められているわけでありますが、実際問題としまして、この訴訟問題が起きると、結着がつくまでには、事務的にもあるいは制度的にもいろいろと混乱が起こることが十分予想されるわけであります。  そういう立場から、私は大臣提案をするのでありますけれども、この問題は厚生省側としても大きな手落ちがあった。一番最初に私が言いましたように、軽率なところもあった。したがいまして、いつ開かれるかまだはっきりわかりませんが、いずれは臨時国会が開かれるであろう、そのときまでこの擬制適用の問題は凍結をして、その臨時国会でこの問題を解決する、このよう方針に出られるべきではないかと私は思うのでありますが、その点についてはどうお考えになりますか。
  171. 内田常雄

    内田国務大臣 たいへん御親切な御心配をいただいておりまして、私も大橋先生はじめ皆さま方にそういうことにならないような御協力をこの上ともお願いをいたす次第でございますが、いまの凍結のことにつきましては、先ほど御意見も出ましたけれども、現在におきましてそういうことはいたしかねる、こういう次第でございます。
  172. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 あまり感心しない答弁で、すっきりしませんけれども、それじゃ今後、私がいま予想しているような大混乱が起きた場合、厚生省責任とりますか。
  173. 内田常雄

    内田国務大臣 そういうことにならないように努力をいたしたいということが、先ほど来私が申したりお願いをいたしているところでございます。
  174. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 ならないように努力していくとおっしゃいますけれども、これはケースはただ一つじゃないと思うのです。いろいろな問題が起こってくると思いますので、それこそ口先だけではなくて、ほんとうに真剣にこの問題と取り組まないと、取り返しのつかない事態になるのじゃないかということを忠告いたしておきます。  それからもう一つお尋ねいたしますが、これは今後の問題になるわけですけれども、すでに通達が出ておりますので、その通達の中から質問をするわけであります。  「擬制適用取扱い廃止に関する措置」として「昭和四十五年六月一日以後は、擬制適用取扱いによる被保険者手帳の新規交付および同日以後にちょう付された健康保険印紙に基づく受給資格の確認は行なわないものとするが、従前の擬制適用取扱い対象者の保険給付受給の中断を生じないようつぎの措置を講ずるものとする。」こう前置きがありまして、それから(ア)として「昭和四十五年五月三十一日までにちょう付された健康保険印紙に基づいて受給資格の生ずる保険給付は、昭和四十五年六月一日以後においても行なうこと。この場合、昭和四十五年五月三十一日までにちょう付された健康保険印紙に基づいて行なわれる日雇労働者健康保険受給資格者票の確認は、本年八月まで行ない得るものがあることに留意されたいこと。」こうあるのですけれども、ここがちょっとわかるようなわからないような気がいたしますので、これを解説していただきたいと思います。
  175. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 これは現在日雇健康保険制度は、先生御承知ように、手帳に印紙を張りまして、その張りました枚数、すなわち稼働日数でございますが、その日数によって受給資格が生ずるということになっているわけでございます。二カ月二十八枚あるいは六カ月七十八枚張ってありますと、たとえば三月、四月に二十八枚を張りますと五月には受給資格が発生するわけでございまして、たとえば五月に病気になって初診を受けたという人は、そのときから二年の療養給付が受けられるということになるわけでございます。  それで、今度の取り扱いのこの通達の中に書いてございますのは、結局五月までに張りました、たとえば四月、五月で二十八枚張りました方は、制度が消えました六月におきましても、この日雇健康保険法の扱いからいきますと、六月に二十八枚張ってあるという確認を受けまして受給資格というものが発生するわけでございます。それを制度がなくなりましても認めるという趣旨でここに書いたわけでございます。それは、いろいろな張り方、すなわち稼働形態がございまして、そういうことでたとえば五月に二十八枚かりに張りますと、前二カ月ということで、七月に病気になった場合にも前二カ月で、五月、六月で二十八枚ということで確認を受けられるわけでございます。そういう意味で、八月までにそういう形で資格が発生する人は従来どおり確認を受けまして、受給資格者票を持って医療機関に従来どおりかかれるということを、解説したと申しますか通達したわけでございます。
  176. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは、いまの通達どおりにいけば、一番おそい人でも八月で一切切れる、こういうことですね。
  177. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 さようでございます。
  178. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それだけにこれは問題ですね。  また「特別療養費については、昭和四十五年六月一日以後であっても、被保険者である間は、その支給を行なうこと。」とありますけれども、これもやはり八月の時点でということになるわけですか。
  179. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 これは支給の限度がございまして、最高三カ月でございます、特別療養費の支給の期間は。したがって、これの取り扱いの最終は七月三十一日までということになります。  それから、先ほどちょっと申し落としましたが、八月まで、六月、七月、八月に受給資格が発生し得る方がいるわけでありまして、八月に受給資格が発生する方は、たとえば八月に病気になりますと、そのときから二年受けられるということになります。
  180. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 こまかく一つ一つここでやっていくと、時間も制限されておりますので問題ですから、この辺で次に移りますけれども、こうして一つ一つ聞いていけばいくほど、その関係者においては不安を抱くことであろうと思うわけであります。したがいまして、これは大きな政治問題でありますので、今後厚生省として私が先ほど指摘しましたような問題を十分認識された上、それを勘案しながら最善の努力を尽くしていただきたい。私はこれをまず大臣にしっかりと要望するわけでございます。その大臣の決意といいますが、この擬制適用者に対する考え方の最終的な気持ちをここで披露してもらって、その内容次第では終わりたいと思います。
  181. 内田常雄

    内田国務大臣 この措置関係者に不安を来たさないように、また現実にもいろいろ不便を来たさないようにいたしたいという気持ちは、私も大橋先生と全く同じでございますので、ただいままでの大橋先生のお話は私も心にしみておりますので、でき得る限り御期待に沿うように努力をいたす所存でございます。
  182. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 終わります。
  183. 倉成正

    倉成委員長 寒川喜一君。
  184. 寒川喜一

    ○寒川委員 朝来から各党の委員日雇健保擬制適用の問題についていろいろと論議をかわされておりますが、お聞きをいたしておりまして私は著しく理解がいかないのです。したがって、本来でございまするならば重複するよう質問は差し控えるべきであろうと思いますが、私の立場で再度同じような問題について質問を申し上げるかと思いますが、御理解をいただきたい。加えて私は、保険行政のことについて実務的な経験等も持っておりますので、そういう次元でぜひひとつお答えをいただきたい、こういうことをまずお願いを申し上げておきます。  そこで、問題は昭和二十八年にさかのぼるわけでありますが、当時の健康保険課長が都道府県民生部長に対して通牒を発せられております。その中で、二つ目のセンテンスのところに、「しかしながら、これらの者の労働の実態は専ら適用事業所において使用される日雇労働者とほとんど同様のもの」であるという認定をまずされたがためにこの通牒をお出しになっておられると思います。そして「すべてひとしく本法の適用を受けしめるのが適当であると考えられる」、こう言っておられるわけでございまして、その後この種の労働者諸君の就業構造、就業形態並びに広い意味の給与、端的に申しまするならば賃金というものがこの当時と著しく変化を遂げておるかどうかということについて、まず部長からお答えをいただきたいと思います。
  185. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 同様という意味は、たとえば擬制適用対象になる一人親方の方が適用事業所に参りまして労働する場合と、それから町家に参りまして一般の民家の建築その他に従事される場合と、その労働形態というものは同じようなものである。ただ働きに行く先が適用事業所であるかそうでないかという差であるというよう意味におきましては、それは現在も同じだと思います。  それから、賃金のほうは、これはここにちょっと資料がいますぐにはあれですが、二十八年から逐年上がってきていると思うわけでございまして、先ほど申し上げましたように、四十五年度の私どもの推計では二千七百三十六円という賃金を推計しているわけでございます。
  186. 寒川喜一

    ○寒川委員 前段のことをいろいろ議論しておりますと長くなりまするが、後段御質問申し上げた趣旨はそういったことではございません。これはしろうと同士の話でないのですからわかるのですが、私のお聞きしたいことは、一般事業所において雇用されておる労働者ように、たとえばボーナスであるとか、最近のようにほとんどの事業所が退職金という制度を取り入れた。あるいは特殊勤務手当というような形で手当が恒久化する。あるいは通勤手当、家族手当といったようなものもほとんど恒久化され制度化されております。そういうものと対比をして、ただいま議論の対象になっておる労働者の諸君の広い意味の労働条件といいましょうか、給与といいましょうか、そういうものに著しい変化があったとお考えですかどうかという質問をしておるわけなんです。
  187. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 そういうような条件につきましては、あまり変わっていないのじゃないかと思います。
  188. 寒川喜一

    ○寒川委員 保険行政に対して私の要望したいところは、いろいろ論議されておりますけれども、ここがやはりポイントなんです。そういう意味日雇健康保険という制度が日の目を見ておるのであって、そうでなければ、国民健康保険ができる以前におきましても、たとえば政府職員なんかは優先をして昭和十七年からやっておるというようなこと等を考えますならば、これができるだけの理由があったというところに着目をしていただかぬとこの論議の発展はないと思います。そういった意味合いで、今朝来から大臣はいろいろと陳弁をされておりますけれども制度というものと保険財政というものを混同して議論されているところに基本的な間違いがあると私は思いますが、大臣はどうお考えになられるか、お答えをいただきたいと思います。
  189. 内田常雄

    内田国務大臣 私は、けさほど来実はわかりやすく、御理解をいただきたいというつもりで御答弁をいたしてまいりましたが、ただいまの寒川先生の御所論には、私はほんとう申しまして傾聴するところがございます。  簡単に申しますと、この擬適というものは、擬適擬適でなしに、本チャンと同じようなことに繰り入れて、日雇労働者健康保険法というものを従来と多少性格が変わったものにしてしまうか——それは先般の修正案がそれを意味するものと私はあとから解します。あの修正案は私がつくったものではございませんので……。それが一つの方法です。でなければもう一つの方法は、いま日雇健保というものはまことに重態に瀕しておりまして、病気にたとえると変な話ですが、二期か三期の状態で、このままではもちません。その際どうするかといえば、法律の本チャンよりも、擬制適用方々はこの日雇労働者健保を創設した二十八年と違って、三十八年以後別の席もあるわけですから、その席のほうへお移しをして、そしてこの緊急事態に対処してまいる。こういういずれかの方法でございますが、不幸にして皆さまの御提案修正案も、また私どものほうの提案をいたしました改正案も流れましたので、いま申す緊急措置をとったということでございまして、財政問題と制度問題を私が混乱をさしておるということでは実はございません。
  190. 寒川喜一

    ○寒川委員 それは私は著しくすりかえの議論だと思うのです。前段にも申し上げましたように、これの擬制適用にしろ何にしろ、昭和二十八年十二月十八日に、公平な意思表示をして、特殊なカテゴリーの被保険者だ、こういう出発をして、それが著しい事情変更のない限り、むしろそれを日雇健康保険の中に入れる努力をすべき性質のものであって、その上に立って、かつ保険財政のことですから、赤字を国の負担の増額あるいは被保険者負担の増額、両々相まって問題を解決するという趣旨でない限り、私は議論のすりかえになると思います。  そこでもう一つ、この当時の通牒でお聞きしたいことは、次に述べますようなことがあります。おそらく当時としては緊急の措置であったから法制化をしたいという意味で、一般には知らしめないようなことの行政措置でいこうという趣旨に理解をしておったのです。すなわち「本件については秘の取り扱いとせられたい。」こういうことがなお書きでついております。普通の通牒にこういう形をとるというのは、行政慣例としては著しく珍しい通牒形式なんです。そういったことで、当時の事情を詳細に発表していただきたいと思います。
  191. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 これは正面から申しますと、この擬制適用対象になる方々日雇健保対象外の方でございます。したがって、この日雇健保法律というものを前提として考えますと、こういうことを扱うのが実は違法の措置になるわけでございます。しかし、当時、先ほど大臣も申されましたように、国民健康保険というものが、いまの状態とは異なりまして、皆保険と申しますか、各市町村全部にしかれていたわけではございません。そういうことで、こういった方々を取り扱う方法としては、あえて違法の措置ではあるけれども行政措置で認めようということで、法律的に純粋に見ますと違法的な措置でございますので、行政的な方法として事実上やっていくというよう意味で秘の取り扱いということにしたわけでございます。
  192. 寒川喜一

    ○寒川委員 そういう善意で違法のことをやろうなんということを正面切って今日の段階だからおっしゃられておるわけであって、それは現在とっておる厚生省立場を正当化しようという理論的背景の御議論だと私は思うのです。だから、すなおにとれば、御承知ように国民皆保険の発足が三十六年でしたか、十年の間に当然に手直しをして、私生児でない形をとるのがやはり行政当局としての考え方でなければ私はいけないと思います。重ねて申し上げてくどいようでありまするけれども、それは、国保に移管する被保険者労働者の実態が違うということについて認識があれば、私は当然のことだと思うのです。したがって、制度的なものを、十四日以降今日までとられた措置を正当化するために、詭弁でもって違法違法というようことばが私は表に出てきておるのではないか、かように思います。それでは、違法なことをやっておって、これがいかぬのですということで通牒でおやめになった。被害を受ける皆さんがたくさんいらっしゃる、百万もいらっしゃる、こうみなが主張しておる。それじゃ厚生省当局はどういう責任をおとりになったのか、その点についてお聞かせ願いたいと思います。
  193. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 私が違法と申しましたのは、これはいわゆる法律違反で悪いことをしているというよう意味——いろいろとられるかもしれませんが、とにかくこの場合に、本来であれば法律に乗らなかったんだけれども行政措置でもって法律と同じよう措置と申しますか、手段を講ずると申しますか、そういったよう意味でやるということで申し上げたわけでありまして、そういう意味のマル秘、秘の取り扱いということであると私ども考えております。
  194. 寒川喜一

    ○寒川委員 いま部長からお答えございましたが、私の主張いたしておりますのは、行政措置であっても、それがおっしゃられるように違法で、今日主張されているよう状態でもしあるとするならば、十七年間の間に何らかの措置をされなければいけない。それはそれでほおかぶりしておいて、今度一部改正法律が通らなかったということで違法の論理を飛躍さして、間違っておったんだからやめるんだという主張は、それは少なくとも厚生当局があるいは大臣自身が政治的な責任をとってからの話だと私は思うのです。したがって、部長の答弁で済ましたいと思っておりましたが、大臣からどういう政治的な責任をおとりになられるのか、お答えをいただきたいと思います。
  195. 内田常雄

    内田国務大臣 今度の措置につきましては、私が全面的に政治的責任をとる覚悟でこういうことをさしていただくわけであります。  従来、昭和三十六年から国民皆保険になりまして、各市町村には国民保険というものが全部施行されましたので、いま寒川さんの御意見の中には、しからばその三十六年以降、もしこの擬制適用というものが異質的なものであるならば、すでにその時点からこれを他の座敷に移すようないろいろな企てなり意図を表明すべきであったのに、これまで怠慢であった責任いかん、こういうことと私は解するわけでありますが、それは率直に申してそのとおりであろうと思います。これは厚生省も怠慢であった。ただし、これは賢明な寒川先生ですから、私は親しいこの委員会におられる中での仲間ということで申すのであります。腹を立てられては困るんですが、出しようがなかったということも事実でありまして、地方の各保険事務所——あなたも大阪におられまして御承知でございましょうが、むしろその地方の現場においてさえも、なかなか日数についてのトラブルもあり、したがって、これを制度的に変更しようと思ってもとうてい持ち上げようがなかった。私のようなばか者が今度来て、そしてたまたまこの保険も持たなくなったということで、やむにやまれずこういうことになりましたが、これまでこの期間はそういうことがちょいちょい出たはずでございますけれども、大きく出来なかったということは、厚生省として怠慢の責任があったと——先輩を悪く言うわけじゃありませんが、私思うわけでありまして、したがいまして私どもは、今度こういう制度につきましてこういう措置をやります場合にも、いばってやるつもりは毛頭ございません。まことに相済まぬことで、お気の毒の面もあるので、できるだけやらなければなるまい、私はこういう気持ちを持っておるわけでございます。
  196. 寒川喜一

    ○寒川委員 論理としてはいま御答弁をいただきましたけれども、私はむしろ昭和二十八年から三十六年までの間に早急に何らかの措置をしておくのが行政当局の筋だと思うのです。いわんや三十六年以降のことにつきましてはむろん当然だと思いますが、やはり現在お考えになっておられるよう考え方ではなしに、日雇健康保険のカテゴリーの中に入れましてこの措置をするということでございませんと、先ほど来から繰り返し申し上げておりますように、制度というものと、いわゆる財政的な問題が一緒になって議論をされているが、制度制度として、日雇い労働者並びにこれに準ずるような就業形態にある諸君並びに給与の実態からいってそういうカテゴリーの労働者は、日雇健康保険の中で措置をしていくのだという姿勢がまず大事ではなかろうか。したがいまして、特別国会委員会の中でも、もしこの法律改正が通過しなければ擬制適用廃止するのだというニュアンスも私たちは承知をしておらない。むしろ委員会の意向としては、早急に擬制適用者を正規のルートに乗せて、保険の面において安心して生計が営まれ、生産に寄与していただくというような判断で議論をしておったと思いまするが、そういうことも考慮にお入れになって今回の措置大臣はおとりになられたのですか。国会のことは国会のことで、おれは当面かぶってでもやるという先ほどの姿勢で今回の措置をとられたのか、お聞きをしたいと思います。
  197. 内田常雄

    内田国務大臣 先ほどの姿勢でというおことばでございますが、私は決してこれはいばってやろうということではございませんで、卑俗なことばになりますが、日雇労働者健康保険というものが、政府提案法律案も昨年も流れ、ことしも流れた状態において、またいま寒川さんの御発想のように、本来的にいうならば、擬制適用の人々も日雇い労働者と同じ範疇に入れてしかるべきだという一つ考え方、そういう考え方と一致するよう修正案も流れてしまった現在におきましては、たびたび申し上げるように、緊急避難といたしまして、これはその法律の正面からの適用対象になっていない方々に若干の御迷惑はかかるわけでありますが、その席から本来の席にお移りをいただくということ以外に避難の方法が実はないわけであります。  ただ、一言多いとまた言われるかもしれませんが、先生のおっしゃるこの間の修正案と一致するよう考え方はけっこうだと思いますよ。けっこうだと思いますが、それも一つ考え方でありまして、他の同様な日雇い収入を得ているいろいろな人々がございます。たとえば大工さん、左官の方など建築関係に一番近い方々と植木屋さんとなりますとかなり違ってきておりまして、一部の方々日雇労働者健保の適用を受けておられましょうけれども、そうではない植木屋さんもたくさんあります。さらには、いろいろな職場に頭脳労働で行かれて、これは二千円なり三千円、四千円という報酬ではございませんけれども、一回行って五万円、十万円取ってきて、また次の百貨店に行って働く。あるいはまた次のしかるべき職場に行って頭脳勤務をされているというような人々もございまして、それらの人々をどのような範囲にまですべきかということを考えますと、さっきから四十万、家族を入れて百万という説もありますが、これらとそれに類する他の国民健康保険やあるいは政府管掌健康保険に入っている方々の公平といいますか、そういうことを考えますときに、たまたま緊急避難の問題とも合致する点がございまして、私のせつない腹を切ったということでございます。
  198. 寒川喜一

    ○寒川委員 私は緊急避難のしかたが著しく間違っていると思うのです。と申しますのは、この委員会でかなり回数を重ねた議論があった中で、衆議院社労委員会の空気というものは承知をされておうたはずでございます。会期が少なかったということもございましたでしょう。そういう意味で、参議院に参って一日も審議期間がない、そういうよう状態の中で手のひらを返したよう措置をうすうす感じられておれば、これほどの騒ぎは起こらないと思います。いわんや大臣は、常に恵まれない生活をいたしておられる方々の味方だ、こういうような主張を繰り返されておる。大臣がよもやという面があったのではないかということが一点と、佐藤内閣はしきりに対話の政治だということを言われまするが、衆議院でこれだけ詰まった内容を持って、参議院で一日も審議がなくて流れたけれども、やはり対話の精神を大いに発揮して、もう少し詰めて、六カ月後には臨時国会もしくは通常国会が開かれるという中で、最善の努力をし切った上での理解が一般の人の認識の中にあれば、かほどまで問題が大きくならぬし、しっぺい返しというような俗なことばでのやり取りも起こらなかったんじゃないか、こう判断をするのですが、そういう面では現在の御心境としてどうお考えになっておられますか。心境をひとつ御表明いただきたいと思います。
  199. 内田常雄

    内田国務大臣 いろいろ申し上げるつもりもございません。おことばを返すようになりましてまことに恐縮でございますが、心境を述べよということでございますので述べさせていただきますと、私は常々申しておりますように、恵まれない人々に厚生省行政というものは加担するんだという精神は、今度の擬制適用措置に関連いたしましても私は持ち続けてまいるつもりでございます。したがって、将来の抜本改正というようなことにどう吸収されるかは別にいたしまして、この際やはり失対労務者あるいは健康保険をやっておられる事業所日雇いで働かれる人々のための日雇健康保険のこの制度は、でき得る限り今後も改善をしつつ残してまいりたいという気持ちでございます。  もう一つは対話の問題でありまするが、私は実は政府案を出しました政府当局でございますので、国会の会期中もこの法律案についての修正の御議論などが委員会の外で関係の各党の方々の間で行なわれておったようでございますが、私はここにじっとすわっておりました。私自身それに参画はいたしませんでしたが、一番早く私ども提案いたしましたあの法律案が、最終日近くまで残ります間に、かなり対話が行なわれておったということをあとになって私は伺ったところでございます。
  200. 寒川喜一

    ○寒川委員 したがって、やはりあやまちを改めるにそうちゅうちょする必要はないと思います。先ほど御指摘のあるような職種があるからということでございますが、わが党の西田委員も当時の委員会でも申し上げましたように、高額でない同種の就業形態をとっておる他の職種の人もいらっしゃるわけでございまして、将来抜本改正と申しましても、それはやはりそういうカテゴリーで一つの被保険者群というものを把握して保険行政というものを運用をせない限り、片づかない問題でございますので、立法技術上でいかよう措置もとられることは、私が先輩の大臣に申し上げるまでもないと思います。そういう面で十分な配慮をぜひお願いをしたい。各党の皆さんからも申されましたが、ここの段階に来て、たとえば国体委員長会談等、国会意思というものが一つ方向にまとまりました場合において、大臣はそれでもこの道を行くんだというお考え方か、そういう方面の御意見あるいは主張を十分尊重して、本問題の解決を目ざして対処するお考えがあるかどうか、お聞きをしたいと思います。
  201. 内田常雄

    内田国務大臣 寒川先生の御意向、十分拝聴いたしました。それはそれといたしまして、私は最善を尽くして善後措置を講じてまいりたいと存じます。
  202. 寒川喜一

    ○寒川委員 したがって、最後にお願いをしておきたいことは、たとえばこの問題に関する厚生大臣談話の一項の中に、これまでの力関係やその他の事情等もあってというような、何か先入主的な感覚で本問題を把握、認識をされておるようなきらいなしとしないように私は判断をするのです。したがってもっと現場の労働者の諸君のことを親身になって考えてあげていただきたいということと、同時に、たとえば地元府県庁においてもこのことのために非常に混乱をしておる。その大きな理由は、私も参りましたが、やはり衆議院段階の模様というものをそれぞれ関係者のところには話題として提供されておるわけです。そういうものと、今回五月二十二日にお出しになった通牒というものとに著しいニュアンスの差があるわけなんです。そういう面でこの問題を早く解決せない限り、先ほども大橋さんが言っておられましたように、ほんとうに冗談じゃなしに、不測の事態が起こらないとも限らないようなものを内包しておることは私は事実だと思います。したがって、従来の主張その他、もう大臣は大蔵省の役人でも何でもないのですから、高い次元で関係方面に十分な折衝を重ね、繰り返し繰り返し述べておりますように、被保険者の諸君のことについては心配をしておるんだということが、現実にあらわれてくるような配慮と具体的な努力を特に要請をしておきたいと思います。いわんや、これが国保にいくということになりますると、形の上ではそれぞれ自治省を通して財政的な負担対象になるということにはなりましょうけれども、きびしいワク、そういったこと等から当然に、都道府県段階におきましても、大きな負担増になってまいろうかと思います。そういうような問題も同時に先刻来の御答弁の中で承りますにつけて、何としてでも早くこの問題をみんなが得心のいく中で軌道に乗せていただく、こういう配慮を切に要望し、最後に大臣のこの問題に対する対処の御決意を承って質問を終えたいと思います。
  203. 内田常雄

    内田国務大臣 ここには、私はかりではなく、この問題に関する厚生省の幹部全部が出そろっておりまして、寒川先生の御意見を拝聴いたしておりますことでございます。また私も、これは厚生省のこの方面の幹部職員とは違った立場で、単なる事務屋あるいはまたお役人としてではなしに、微力ではありますが政治家の一人といたしまして、おことばをも十分胸に置きながら、でき得る限りの善後処理につとめさせていただく所存でございます。
  204. 寒川喜一

    ○寒川委員 終わります。
  205. 倉成正

    倉成委員長 寺前巖君。
  206. 寺前巖

    ○寺前委員 各党の皆さんからかなり突っ込んだこまかい問題も出されましたので、私は集約的に二つの点についてのみ聞きたいと思います。  一つの問題は、先ほどからの答弁の中で、国保に入るのが本来あるべき姿だという問題が繰り返し出されておりましたが、一体労働者康保険というのをどのように見ておられるのか、この問題について一つはお聞きをしたいというふうに思います。  もう一つの問題は、各党の皆さんから、今日大臣がとられたところの処置に対して凍結をせよ、あるいはまた軽率ではなかったのか、こういう意見が出ております。これらの野党各党の態度に対して、一体率直に非を認めるのか認めないのか。私はこの二点が一番大きな問題だろうと思いますので、最後に時間の範囲で見解をお聞きしたいというふうに思います。  まず第一番目の問題について、土建の労働者というのが全国で三百万おるということがいわれております。これらの人々で、日雇健康保険擬適ではなくて、あの本文上の第六条の一項によるところの日雇健康保険適用を受けておる人が一体どれだけおられるのかということを、関係の人から聞きたいと思います。
  207. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 ちょっとこれは資料がございませんので、すぐにお答えすることはできません。
  208. 寺前巖

    ○寺前委員 これはぼくは非常に重大な問題だと思います。先ほどからの話によると、擬適を受けておられる方々は本来国保に入るべき人だという話が出されている。あの擬適の人々の中に本来日雇健康保険の中に入るべき人はないのですか。日雇健康保険法の第六条の一項によるところのものに入る人はないと言われるのですか。どうですか。私は、この辺の問題をはっきりしてなくて国保に入るべきだというのは、けしからぬ話だと思うのです。どうなんですか。
  209. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 現在擬制適用以外の方が約六十八万人おられますけれども、そのうち失対に従事される方が約二十万人ぐらいと推定をしております。あとの四十万の方が、これはいろいろな適用事業所につとめておられますので、その職種別までいまちょっとここでは把握しておりません。
  210. 寺前巖

    ○寺前委員 いや、私は何回も聞くんだよ。三百万の建築労働者の中で、日雇健康保険法第六条一項に基づくところの日雇い労働者というのは一体どれだけおるというふうに考えておるのか。私は建築労働者をどう取り扱うかという問題でこれは基本だと思う。これもわかっていないのに、どうして擬適の主要なものは国保に入るべきだという言い方ができるのか。一体あなたのところで、下のほうでそれを調べられたことがあるのですか。ないのだったらないとはっきり言いなさいよ。残念ながらわからぬというのだったら、国保に入れという言い方はけしからぬ話だよ。あれは取り消しますとはっきり言いなさい。
  211. 穴山徳夫

    ○穴山説明員 いまの土木建築に従事される方はいろいろの形で健康保険を受けておられると思うのですが、たとえば常雇いの形で政府管掌の健康保険に入っておられる方もあると思いますし、一部は土建国保に入っておられる方もあると思います。それから一部は日雇健保適用事業所の被保険者になっておられる方もあるし、それから擬制適用対象になっている方もあると思います。いわゆる健康保険関係から申しますと、いま申しましたような分類になっているのではないかと思いますが、いまここに手持ちの資料がございませんので、ちょっと数字的にはお答え申し上げられないわけであります。
  212. 寺前巖

    ○寺前委員 大臣、私はあえていまの話は大臣に聞かなんだのです、これは課長通達でお仕事をやっておられるから。しかしこれは非常に重大な問題なんです。現実には先ほど山本さんがここで質問されましたが、適用事業所が減ってきている。これは従来からあの日雇健康保険擬制適用制度的に行なわれてきたときに毎年いわれておった話は、実際にはこの関係の問題は調査がたいへんなんだ、また事実そういうことでやれないので、擬適という便法でやったことがよかったのだということを毎回繰り返して今日まできているのです。だから、明らかにあの中には多くの部分に日雇健康保険適用事業所があるのです。当然それは考えなければならぬことだけれども、実際上やり得ないというのが今日までの実情だ。これはずっと従来からいわれておった話なんだ。こういう従来からいわれておった話を抜きにして国民健康保険に入りなさいということは、政府責任を負わなければならない日雇健康保険そのものの執行に対する責任のがれじゃないですか。大臣はこの辺の話は聞かれたことがあるのですか、どうですか。   〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕
  213. 内田常雄

    内田国務大臣 あまり聞いたことはございません。
  214. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは、聞かれたことがないのだから、先ほどからの国保に入りなさいという話はおこがましい話だ。この点をひとつ確認してもらいたいと思うのです。  そこで次に大臣にお聞きしたいと思うのです。大体お互いに働いている人間は、まずからだが悪くならないうちにお医者さんにかかってめんどうを見てもらって、そして悪くならないうちに健康を保っていくようにありたい。その次に、もしもかかったときにはたいへんだ。そこで、家族を含めての生活をやりながらそれを完全になおしてもらえる条件をつくってほしい、私は、ここが労働者康保険の基本的な考え方の流れだと思うのです。さればこそ、あの健康保険労働者保険の場合に、まず病気になる前にすっと行けるように、あるいはかかっても早目に行けるように、ここに十割給付というものの持っている非常に大切なところがあると思う。そして、同時に、かかった場合に一定の収入を持ちながらなおすことができる、ここに傷病手当の持っている非常に重要な役割りがあると思う。労働者康保険というのはこういう性格を保障するところに基本があると思うのだけれども大臣はどう思われますか。
  215. 内田常雄

    内田国務大臣 私も同感でございます。ただし、これは、日雇労働者健康保険の仕組みばかりでなしに、一般の健康保険につきましても、また国民健康保険につきましても、私どもは、保険制度というものがあるために病気になったら保険でなおせばいいという考え方厚生省としては立ちませんで、できる限り病気になる前に健康が保てるようにして、したがってまた、そうなりますと、それだけ健康保険医療費も安くなるわけでありまして、相互の利益でありますので、そういう事前の予防衛生というようなことにつきましても、もちろん私ども心配をいたしておるものであります。
  216. 寺前巖

    ○寺前委員 ですから、国保もそうですけれども、十割給付というのを一番のたてまえにしなければならないというふうにいくことは、もう当然だと思うのです。特に労働者の場合と商売人さんの場合の違いはどこにあるのでしょうか。たとえば屋根に上がっている方は、おとうちゃんが病気になって倒れたからといって、その屋根の仕事を女房がかわってやるというわけにはいかぬ性格を持っているでしょう。これは労働者保険の特徴です。御商売をやっている人は、おとうちゃんが倒れたらすぐに奥さんというわけにいかぬ内容もあるかもしれませんが、一定部分の保障は家族あげてやれることが条件としてあると思う。しかし、労働者の場合、全くその人の肉体を投げ出していく仕事、そこにすべてがあると見ていいと思う。したがって、労働者保険の場合、本人が倒れた場合のそこの家庭環境というのはたいへんな状態。事ほどさよう考えた場合に、傷病手当の問題というのは非常に重要な位置を占めておる。労働者保険というのは、私はここに非常に重要な要素があると思う。  そこで、大臣にお聞きしたいのですけれども、日々雇用労働者というのは、これは労働者保険というのは当然持つべきじゃないのか。当然労働者には労働者保険は持たすべきじゃないだろうか。その点についての御見解をお聞きしたいと思います。
  217. 内田常雄

    内田国務大臣 いまの日雇労働者健康保険は、おっしゃるとおり本人十割でございますが、しかし、家族に対する医療給付の割合は五割のはずと私は記憶いたしております。私の家庭と例は違うかもしれませんが、私のところはおやじは私一人っきりでございますが、家族はやはり何人かございまして、したがって、その保険の家族に対してカバーされる率というものも私は非常に大切なものだと思うわけでありますが、いまの国民健康保険の場合には、家族の給付率は日雇労働者保険の五割より高くて七割になっておる、こういうことも考えますときに、寺前さんの御所論は、それは私否定をいたしませんけれども、同時にまた、家族についての保険が他の保険に比べて優遇されておるということもあわせて考えていいことではないかと思います。
  218. 寺前巖

    ○寺前委員 家族ももっと上げねばいかぬと思うのです。これは国保を上げねばいかぬのと同じように、家族も上げなければいかぬけれども、日々雇用労働者であっても、大企業の労働者であっても、公務員の皆さんであっても、働く者はそれぞれ——大企業の労働者は、資本家と労働者がそれぞれ分かちあって持つところの保険を持っています。あるいはまた、公務員の場合は共済制度保険をちゃんと持っています。日々雇用労働者に限って——労働者としての当然持つべき日雇健康保険という制度をすべて日々雇用労働者適用させて、労働者の権利としての保障をすべきである。傷病手当をもらいながら療養することのできる十割給付も、そういう日雇健康保険というものをもっと改善し、ワクを広めて持たすべきである。これは私は基本の問題だと思う。もう一度その点についてお聞きしたいと思うのです。
  219. 内田常雄

    内田国務大臣 私も基本的には賛成でございまして……。
  220. 寺前巖

    ○寺前委員 その基本の点を聞いただけです。  それでは大臣、基本的には賛成だ、労働者保険を失ってはならない、この立場から考えるときに、これは先ほどの話ではないけれども、国民健康保険に行きなさいという態度というのは、はっきりと間違っている。労働者保険という権利を基本に据えたところの保険としてあくまでも守っていきたいという点から見るならば、とられた措置というのは、これは明らかに違うということを、まず第一点の問題として押えておきたいというふうに思います。  第二番目の問題。先ほどから各野党の人々が、これは国会の軽視である、国会を無視している行為であるということを批判をしました。私は、ここで日雇健康保険の問題について大臣が出された問題、各党が審議した内容について、まさか大臣は、あの審議の日にはここに出席をしておられなかったから、わしは知らぬとは言えないと思う。それは議事録にも明確に載っているのですから。討議になった内容は何でしょう。なった内容は擬制適用のワクをもっと拡大して、そうして日々雇用労働者をもっと全体として救うようにやるべきではないかという問題、掛け金についてはあまり大幅の掛け金はよくないのではないかという問題、それからまた、療養給付の問題についてもっとよくすべきでないか、主としてこの三つの点がここで論議になったと思うのです。そして、その上に立って自民党さんからの修正案が出た。しかし、自民党さんから出たところの修正案については若干問題がある。それはいま擬適を受けている範囲が全体が吸収されないようになっているじゃないか、一人親方ということになって限られているじゃないか、あるいはまた掛け金にしてもえらい高い分野がさらに出てきているじゃないか、これはちょっと問題だということで、各党の意見が一致しなかった。そういう状況で採決がされた。これがあの事態だと思う。各党が一致した事態は何でしょう。各党の一致した事態は附帯決議にあらわれていると思う。附帯決議には何と書いてあるか。これは私は附帯決議を、各党が一致したものをあなたたちは尊重せぬわけにはいかぬだろうと思う。  第一番目にこう書いてある。「医療保険の抜本改正の機会に及びその以前においても他の医療保険制度との均衡を考慮しつつ制度改善を図ること。」「傷病手当金及び出産手当金の支給日額の引上げ及び支給期間の延長等給付面において一段の改善を図ること。」「受給手続の簡素化を図ること。」「日雇労働者の特殊性にかんがみ、国庫負担率の大幅引上げに努めること。」一致しているのはこういうことじゃないですか。一致しない二つの問題点でもって、賛否のところで賛成と反対が出てきた。これが参議院にいった。あの参議院の最終の一日で、ほかの法案との関係もあって、十分ここで一致しなかったのだから、そのまま流れてしまったというだけの話じゃないですか。議会の意思を尊重する立場から言うならば、せめて衆議院のこの段階で、この段階のところにある二つの問題点、ここの問題点あたりを検討くだすったならば、新しい発展方向が出てくると思うのです。これが国会を尊重する基本的な立場じゃないですか。行政機構というのは国会を尊重し、国民の——憲法に書かれてあるとおりですよ。国権の最高の場ではないですか。この国会意思を尊重してあなた方は仕事をしなければならない。討議している内容とやっておる内容とが違うじゃないですか。だから各党が先ほどから、凍結させろと言ったり、あなた方いま反省はないのかという追及があったりしたのです。  私は、大臣に対して再度、私の最終の質問です。国会に対して、この問題についてやった処置は明らかにすまぬことをやったということを私は言うべきだと思うのですけれども、あなたはどう思われるか。私は重大な責任問題だと思うのです。
  221. 内田常雄

    内田国務大臣 御意見よく承りました。
  222. 寺前巖

    ○寺前委員 承っただけではいかぬじゃないですか。ここで率直に、悪かったなら悪かったと言わなければいかぬ。悪うございました、再検討さしてもらいますと言わなければいけないじゃないですか。意見を聞いたというだけで済みますか。そんな甘いものだと思っているのですか。国会をないがしろにして、すまぬで簡単に通ると思うのですか。だからあなた、全国的に批判が出ているのじゃないですか。筋が通らぬ話じゃないか。国会で討議している内容と違う。十七年間も世の中を通ってきた話が、あすから通らぬようになる。そんな筋の通らぬ話があるか。各自治体の首長に会ってごらんなさい。どう言っていますか。国のほうは赤字で一刻の猶予もならぬといって、やれ打ち切りだ国保だと言うけれども、そんなこといったら地方は金がうまいこといくのか、そんな無責任な話があるかといって、各地方の自治体の首長もおこっているじゃありませんか。筋の通らぬ話なんです。国会を無視し、各自治体の首長を無視し、そして現実に生活を送っている者を無視している。あなたはこんなことで世の中が通ると思うのですか。悪かったら悪かったとはっきり言うのが、私は民主政治の基本だろうと思うのです。もう一度この問題について——これは単に国保の問題ではないのですよ。日本の世の中の政治のあり方の問題、行政機関のあり方の問題として、ただでは済まない。大臣、どうです。
  223. 内田常雄

    内田国務大臣 けさほど来、私からも御納得をいただきたくいろいろ御説明申し上げておりますことは、寺前先生もお聞きをいただいたことと存じます。それはそれといたしまして、いろいろ御意見がございましたが、とにかく保険制度でございますので、擬制適用を受けておられる方々が、その日額所得に比べて一日二十六円の保険料で五万円内外の医療給付を受けるということをこれまでやってまいりましたために、行き詰まってしまってどうにもならない。どうにもならないものでございますので、いまお話がございましたさきの国会における修正案成立をいたしましたり、また政府提案による給付の引き上げ、また掛け金の引き上げ両面を含む改正案が通りますれば、何とかこの保険も命脈を保ち得て、そして擬制適用の問題につきましても他に考えようもあったかもしれませんが、それがすべて成立をいたし得なかった今日におきましては、全くこの保険は動きようがなくなるよう事態になってまいりましたので、私ども行政責任で今回のよう措置をとらせていただくわけでございます。これはいろいろ申しましても議論になるだけでございまして、私も国権の最高機関であられる諸先生におことばを返すつもりもございませんので、どうぞいままでの答弁で御理解をいただきたいと存ずるものでございます。
  224. 寺前巖

    ○寺前委員 私は財政がどうのこうのということを言っているのではないのですよ。国会審議をしておった。その審議が時間切れになった。そのために流れた。事は重大だというんだったら、臨時国会を開いてこれを審議してくれ、実はここにまだ問題がありまして、こういうて、その時点から出発すればいいというんです。全然そういうことと関係なしに、国会ではもう通らなんだ、これはかってにやる、そんなことで、国権の最高機関を無視することが通るのかという問題ですよ。こんなばかな話はないでしょう。私は、国会のあり方の上において、国会の権威においても、この問題だけは許すわけにはいかない。そういう重大な問題である。  私は、時間がきておりますので、委員長に申し入れますよ。委員長国会がこのように無視されておるのに、この問題を行政機関に一方的にやらすつもりですか、委員長答弁を求めますよ。
  225. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 ただいまの寺前君の御意見につきましては、理事会にはかりまして結論を出したいと思います。  約束の時間になりましたので、最後の質問にしていただきたい。
  226. 寺前巖

    ○寺前委員 それじゃ委員長にお願いしますよ。国会を無視したという点においては行政機関にこのまま仕事をさせるわけにいかぬから、近いうちに再度委員会を開いてこの問題について審議をして、これに対するところの答弁を明らかにしてもらう、このことを要望して発言を終わります。
  227. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 西宮弘君。
  228. 西宮弘

    西宮委員 私は、きのう物価対策閣僚協議会が開かれましたので、この問題についてお尋ねをしたいのであります。ただし、この席は厚生省所管の事項について審議をする場所でありますから、私は、きのうの問題の中で特に生協、消費生活協同組合の問題にしぼってお尋ねをしたいと思います。  私は、過般の予算委員会でこの生協の問題について質問をしたのでありますが、それから間もなく佐藤総理がこの生協育成の方針関係閣僚に指示をした、こういうことが新聞で発表されたわけでありまして、私はそれを見てたいへんに喜び、かつ佐藤総理の英断に深く敬意を表したのであります。つきましては、それから後この生協問題について、所管大臣として厚生大臣はどのように取り組んでこられたか、同時にまた、きのうの閣僚対策協議会におきましてどういう審議をなされ、結論を得たか、お尋ねします。
  229. 内田常雄

    内田国務大臣 西宮先生から生活協同組合についてのお尋ねでございますが、生活協同組合は、申すまでもなく、消費者みずからがその生活の安定向上のために自発的に生活必需品の共同購入等の事業を行なっておるものと私どもは理解をいたしておりまして、今後とも組合員の自主的活動の強化促進等を通じまして、国民が少しでも安い生活必需品等を入手するためにも貢献をしていただきたいという見地に、厚生省といたしましては立つものでございます。また昨日の物価対策閣僚協議会におきましても、お話しのようにこの生活協同組合の活用の面が取り上げられましたけれども、私どものほうといたしましては、これは生活協同組合だけに限る問題ではありませんが、産地直結あるいは生産組合等との直結の方法によって、生産された物の流通経費等をできるだけ省いて、そして消費者の手に渡す方法の一つといたしましては、他にいろいろの流通関係をつかさどる団体ももちろんございましょうが、中小企業協同組合その他の団体もございましょうが、そういうような場合にはその受け口として、野球で申しますならば、生産者側の団体はピッチャーとし、消費者側の団体をその一つ生活協同組合として、その間のルートを直結させるような方途を講ずるというようなことを、昨日の閣僚協議会におきましても随所に取り上げております。  最後に、生活協同組合だけに対する特殊の問題といたしましてはいろいろございます。いろいろございましょうが、私どもはことに地域生協の活動区域の問題に着目をいたしまして、一都道府県の範囲内に限定されている現在の活動区域につきまして、これを実情に即して緩和する等のことにつきましても今後考えなければならない、検討の対象にしなければならない、こういうことも提起をいたした次第でございます。
  230. 西宮弘

    西宮委員 具体的な問題については、また逐次お尋ねをいたします。  要するに、いまのこういう物価情勢の中で、生協の育成に大いに政府として力を入れよう、こういう姿勢だということを伺ったので、私どもも、ぜひそうあってほしいということを願っておるわけです。この物価対策については経済企画庁も重大な使命をになっておるわけでありまして、きょうは国民生活局長に出てもらっておるので、特に生協の問題についてどういう考えを持っておるか聞かしてください。
  231. 矢野智雄

    ○矢野説明員 物価対策を推進していきます場合に、その一環として重要な課題は流通機構の改善ということであります。その一つとしまして、生活協同組合につきましても、いわば大型流通機構と申しますか、またそれが生産から消費へのパイプが短くなる、あるいは太く短くなる、そうした一環としてこの生協の活動に期待するところも非常に多いわけであります。それで、ただいま御指摘がありましたように、昨日の物価対策閣僚協議会におきましても、当面の物価安定対策の幾つかの項目の中に、もうすでに厚生大臣からも御答弁がありましたが、生協に関連しまして幾つかの項目が織り込まれております。  その一つが、産地直結に関連いたしまして、生産者側の団体、農業協同組合とか漁業協業組合、これと消費者に近い面の小売りの機構、たとえば小売り店の協同事業とかあるいはスーパーであるとか、あるいは小売り機構とはちょっと違いますが、学校給食等の集団給食、それと並んでこの生活協同組合、こことの間で直結をするように推進してまいる、こういうことが一つきまったわけであります。  それから生活協同組合が活動してまいります上に、いままで若干いろいろ障害があった面が見受けられる。それに関連いたしまして、昨日の物価対策閣僚協議会でも、事業許認可制度の再検討という項目がございまして、ここであるいは薬局あるいは酒類の小売りとかあるいは米穀の小売りとか、こういうことにつきましてそれぞれいろいろ許認可制がありまして、それぞれかなりの制約がございますが、こうしたことも漸次改善していくべきではないか。その場合に、大型小売り店についてもなるべく扱えるようにすべきであるという文句が挿入されております。この大型小売り店には生協とかスーパーとか、こうしたものをある程度意識しておるわけであります。  それともう一つは、やはり許認可制度のところでありますが、ただいま厚生大臣からも御答弁がありましたように、生活協同組合の事業活動を助長するため地域制限の緩和を検討する、これは御承知よう法律で現在府県単位になっておりますから、これを全国的にということは生活協同組合の性質上いろいろ問題があるかと思いますが、少なくとも隣接地域あたりにまでは拡大してはどうだろうかというよう考え方も私ども持っておりますが、いずれにしましても、これは法律改正を必要といたしますので、そうした問題の検討をしてまいるということであります。  そのほかにも若干関連した事項があるかと思いますが、以上のことが昨日決定したわけであります。これに基づきまして、現在関係各省でこれを具体的に実施していくための手はずを早急に整えるようになっております。
  232. 西宮弘

    西宮委員 さっき大臣お尋ねをしたのは、佐藤総理が特に生協の育成ということを関係閣僚に指示をした、こういう事実がありますので、それを受けて所管大臣としては何をやったか、こういうことをお尋ねをしたので、ぜひその点についてもう一ぺんお答え願いたいと思うのです。私は、たとえば消費者保護基本法というのがこの前成立をしたわけですが、あの法律の中には第二条に「国は、経済社会発展に即応して、消費者の保護に関する総合的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。」こういうことで、国の責任が、消費者に対する保護の責任として明らかにされておる。なお、この法律審議の際に、衆参両院で特別決議が行なわれておるわけでありますが、たとえば衆議院の決議文を見ると、「消費者の組織については、消費者自身の自主的活動に期待する面が大きいので、消費生活協同組合等民間の消費者組織の効果的発展をはかる方向で適切な措置を検討すること。」こういうことが決議をされている。参議院においてもほとんど同じよう意味で決議をされているわけです。したがって私は、こういう流通面を担当するのは、何も生協にだけ限っているわけではもちろんありません。しかし、生協はこの特別決議の中でうたわれておりますように、いわゆる消費者が自主的につくった特殊な組織なわけですね。したがって、その中で当然こういう点を所管大臣としては認識をして、その上に立って生協育成をはかっていく、こういうことが絶対に必要だ。佐藤総理がこういうことを指示したのもおそらくその点に着眼をしたと思うのですよ。ですから、そういう特殊性を認識をしながら、佐藤総理の指示に従って何が行なわれたかということを簡単にひとつ聞かしてください。
  233. 伊部英男

    ○伊部説明員 ただいま先生御指摘のように、物価の問題におきまして、消費者のつくりました組織であります消費生協の役割りは非常に大きいわけでありまして、このため先般来の物価対策におきまして、厚生省といたしましても生協の活用、育成ということを要望いたしたのでございます。その点が、ただいま経済企画庁からお話がございましたような、昨日の閣僚懇談会におきましても具体的な問題点が決定を見たのでございますが、そのほかに、生協問題につきまして関係官が現地を視察する、あるいは関係者と話し合いを持つというような方法によりまして、ちょうどただいま明年度の予算あるいは財投の編成時期でございますので、そういう点につきまして、生協の要望を生かせるような線を見出そうということで努力しておる段階でございます。
  234. 西宮弘

    西宮委員 内容はいまの局長の答弁で私はけっこうだと思いますけれども大臣、せっかく佐藤総理が関係大臣に指示をしておられるのですから、ぜひそういう点を所管大臣として、その重大なことを十分受けとめて、大いに努力をしてもらわなければならぬということは、私どもはどうしても強く大臣に要請しなければならない問題です。  それでは具体的な問題についてお尋ねをしますが、いわゆる地域制限というのが従来問題になっておったけれども、これは今度の関係閣僚会議で撤廃をするという方向が出たようですから、私はこの問題はこれでけっこうだと思いますが、ただ、いつやりますか、あるいはこの法律改正はいつの国会提案するか。次の国会——次の国会というのは、臨時があれば臨時という意味だけれども、いつ出しますか。
  235. 内田常雄

    内田国務大臣 私はどうもうそを言うのがきらいと申しますか、正直なほうでございますので申し上げますが、私どもは所管官庁といたしまして、消費生活協同組合の機能を高めることによりまして、先ほども申し上げますように、国民が中間経費を排除した安い生活消費物資を入手し得るような、そういう分野を広めたいという考えを持つものでありますが、同時にこれについては、他の流通機構がございまして、政府といたしましても、また関係の団体などといたしましても、他のほうとの権衡を十分考えなければなるまいという問題が実は昔から起きているわけでございます。小売商業調整特別措置法というような問題がございましたり、国会においても、一方において消費生協の活用、機能の高揚等につきまして御要望が表明せられると同時に、他の方面におきましては、中小企業団体等の斜陽化の防止といいますか、機能の高揚なんかについても訴えるべきだというような御要望もございまして、正直に申しまして、昨日の閣僚協議会でもその点がもめたわけでございます。しかしそれは両々相まつべきだということで論議を進められておりますので、その辺のことにつきまして、厚生省法律改正案を出します際にも、若干の調整といいますか、打ち合わせのようなものが要る段階がございますので、それらの面を十分配慮いたしながら、でき得る限りすみやかにこれの改正措置も講じたい、こういうことをただいま申し上げさしていただくほかございませんですが、私の気持ちもそうでございますし、先生の御所論もよく承知をいたしました。
  236. 西宮弘

    西宮委員 私も、だから流通機構を担当しておるのは生協だけではないということをお断わりもしておるんで、大臣のそういう弁明みたいなものはお聞きする必要がないんです。ただ、私がお尋ねをしたのは、いま特に最後にお尋ねをしたのは、地域制限撤廃は、これはやるということがきのうきまっておるわけですよ。それはいつの国会に出すのかということだけをお尋ねをしたので、前の問題についてはこれは全くそのとおりですよ。ただしかし、その点についても、私はもう一ぺんこの点を強調しておかなければならぬのだが、生協育成ということを特に総理が指示をした、こういう点を所管大臣はいかに受けとめているかということをお尋ねをしたので、実は私はこの前の予算委員会でも言ったのは、せっかく厚生省が生協を所管事項としながら、今日までほとんど何もやっていない。これはもう正直いって何もやっていなかったわけですよ。全然やっていなかったと言ってあえて差しつかえないと思う。多少極論かもしれませんが、それに近かったと思うのです。だからそうではなしに、こういう物価情勢の中で、みんなが自主的な努力で、消費者が金を出し合ってみずから自分の力でつくっている団体なんですよ。だからこれを育てていくということは、これはもう絶対に必要なことなんだ。さらばこそ、総理もそこに着目をしてそういう指示をされたんだと思う。だから、大臣がそういう点について認識がないならば、私はこれは何を議論しても全くしかたがない、それじゃいままでと少しも変わってないといわざるを得ないと思うのですが、ひとつその点をもう一ぺん答えていただいて、それから法律の問題は、技術的な問題だから、簡単なことをお尋ねしたのだから、局長でもけっこうです。
  237. 内田常雄

    内田国務大臣 そのとおりと思いますと申し上げてもいいのでありますが、昨日の閣議決定におきましては、消費生活協同組合の活動区域の緩和について検討する、こういうことになっておりまして、緩和とは何ぞや、検討とは何ぞやということを詰めてまいらなければならない段階がございます。議院内閣制度のもとに、政党などの制約も実はございまして、自由民主党におきましても、これは正直のところ、いろいろ政務調査会もございましょうし、また商工部会というようなものもございますので、そういうところとも十分連絡をとって、そして私は消費生活協同組合の所管大臣といたしましてでき得る限りこの面における前進をはかってまいりたい、こういうことをいまの段階においては述べさせていただきたい、こういうことでございます。
  238. 西宮弘

    西宮委員 その点は、他の関係の向きといろいろ話し合いをしてできるだけ円満にやっていくというのは、もちろん当然なことでありまして、これはむしろ協同組合自体の中でそういうことは言っているわけです。たとえば日協連という全国組織の団体がありますけれども、ここで声明した声明書の中にも、「中小商業者と話し合う機会を積極的に作り、生協としての真意を披瀝したいと思います。そして、われわれの発展を阻んでいる共通な問題の解決のため、共に提携し、闘ってゆきたいと思っております。」こういうことを——これは昭和三十年の九月に出した声明でありますが、生協自体が中小商業者とも十分連絡をとりながら、共通の敵は何だ、つまり彼らの認識に従えば、いわゆる共通の敵というのは大独占なんだ、こういう考え方を持っておるから、むしろ中小閥業者たちはわれわれの味方なんだ、彼らはこういう認識に立っているわけです。したがって、いま大臣が言われたようなことは、当然に生協の関係者でもそういう姿勢でいこう、こういうことを言っているのだから、その話し合いをするのは当然なんだけれども、ただ生協を所管しているのは厚生省以外にないわけですから、繰り返して言うようだけれども、その点だけは大臣も十分生協の特殊性を考えて、その育成のために努力をしてもらいたい、こういうことを私どもは繰り返し要請せざるを得ないわけです。  それでは、時間がなくなりますから、もう一つ、具体的な問題としては員外利用の問題があるわけです。局長でけっこうですが、簡単に答えてください。
  239. 伊部英男

    ○伊部説明員 員外利用の問題につきましても御要望がある点でございますが、この点につきましては、生協の性格と申しますものが、先ほど先生御指摘のように、消費者が金を持ち寄って一つの供給事業等の事業を行なうという性格でございますので、組合員意識を高揚して、それによって事業を充実してまいるということがやはり基本的な線ではなかろうかというふうに考えておりまして、員外利用の問題につきましては、実は当方といたしましては、さほど積極的な問題ではないのではないか。むしろ組合員意識を高揚する。現状におきましては、たとえば組合員の出資金が非常に低いような組合もあるわけでございまして、そういう場合におきましては、中小企業者から見ますると、実際はもう大型の商店にするのじゃないかというような目でも見られるわけでございますので、やはり私たちといたしましては、関係者とも十分打ち合わせをしつつ、組合員意識を高揚するという点に当面重点を置いてまいりたい、かよう考えておる次第であります。
  240. 西宮弘

    西宮委員 いまの説明は私も了解しますが、しかし、実際問題として、最初のうち正規な組合員にならないで、生協を利用してみたらなるほど都合がいい、便利だ、おれも入ろうかというような人もだんだん出てくる。こういうことも現実にはあるわけです。ですから、員外利用の幅は狭くてけっこうだと思うのだけれども、やはりそういう面を若干でも道を開いておくということは、私は実態に即すると思うのです。ですから、これはぜひそういう点を考慮しながら検討してもらいたいと思います。  その次は、例の租税特別措置法に関連する損金算入の問題なんですが、これはどうですか。要するに農協や中小企業等と最初は同じだったものが、いまでは全然扱い方が違ってしまった。こういうことなので、この点はどうなっているか。
  241. 伊部英男

    ○伊部説明員 その点につきましては、前国会におきましても御質問いただいた点でございまして、厚生省といたしましては、農協並みの線を実現できるよう関係の省に引き続きお願いをしてまいりたい、かよう考えております。
  242. 西宮弘

    西宮委員 実は全く同じ趣旨答弁が、この前は社会局の生活課長からもなされておるのです。「なかなか実現しておりません。しかしながらこれは私どもの努力の不足のいたすところでございまして、今後とも実現に向かって努力をしたいと思います。」こういう答弁をされておるので、いまの局長の答弁と全く同じだと思うのです。ただ関係各省にお願いするということだけではなかなか進行しないのじゃないかと私は思うのだが、見通しはどうですか。
  243. 伊部英男

    ○伊部説明員 税金の問題でございますので、実を申し上げますればなかなかむずかしい面が多いと思います。厚生省といたしましては、この生協という問題につきまして関係団体との打ち合わせもただいまやっておる段階でございますが、生協につきまして、いろいろな生協があるわけでございまして、この点必ずしも厚生省として統一的な考え方が定まっていたわけではない、いわば自然的に発生をしてくる生協を、法律上差しつかえないものは認可をして、これについて共通的な扱い方をしてきたということだと思うのでありますけれども、今後の方向考えてみますと、やはり育成すべきものは育成をする、そういうものにつきましては特別の措置を講じていく。かつ、その生協につきましても、先ほど申し上げましたような組合員意識が非常に高揚しておる、そして組合員相互がそういう活動をするという線がはっきり出てまいりますれば、おそらく中小企業者の側におきましても、いろいろお話し合いできる余地はあるのじゃなかろうかと思うのでございまして、そういう点今後の育成の方向につきましても、十分関係者と打ち合わせてまいりたい、かよう考えておる次第でございまして、その一環としまして税金の問題等につきましても引き続き努力いたしたい。しかし税金の問題でございますので、ここで結論を申し上げるわけにいきませんけれども、なかなかむずかしい問題でございますが、引き続き努力したい、かよう考えておる次第であります。
  244. 西宮弘

    西宮委員 大臣答弁はお願いいたしませんから、いまの問題は十分念頭に置いておいていただきたいと思います。厚生省だけで出る結論ではありませんから、なかなか骨は折れると思いますけれども、ぜひひとつ努力してもらいたい。これはもとは一緒だったのです。それが途中から生協だけはずれてしまった。それで実態は、たとえば農協その他はいろいろ店を出したりしておるところもあるわけです。しかし私どもはむしろそうではなしに、農協は生産部門を担当する、生協は消費部門を担当する、こういうことでやったほうがいい、こういう考え方で私どもは地元では関係者と話し合いもしているわけです。そのほうが理想的な姿だ、こういうふうに考えておりますので、私どもはそういうことでみなと協議しながら、そういうことをやっているわけです。ぜひその間に差別がないようにしてもらうようにお願いしたいと思います。  その次は、これは生協運動にとりまして非常に重大な問題でございますが、金融の問題ですね。この問題について、これはぜひ大臣に御努力を願いたいと思うのでありますが、先ほど局長は予算あるいは財投、そういうものを準備をする時期になったので、ぜひ努力をしたい、こういう答弁がありましたけれども、この金融措置という問題についてどういうふうに考えておられるか、大臣からお聞きしたいと思います。
  245. 伊部英男

    ○伊部説明員 先生御指摘のように、生協が活動をしていきます上において、資金の問題は非常に重要な問題でございます。そこでやはり組合員意識の高揚ということによりまして、まず組合員の出資金をふやすということを一つ方向として打ち出したいと思うのでありますが、さらにそれを前提としての他の金融機関からの融資、これにつきまして、少なくとも他の中小企業金融程度のルートを開きたいと考えておるのでございまして、この点は直接厚生省としてのそのような金融機関を持っておりませんので、関係の省に十分お願いをしてまいりたいと考えておるのでございます。  なお生協が行ないます各種の福祉施設につきましては、病院その他住宅等につきまして年金福祉事業団から相当の融資が行なわれておるのでございまして、昭和四十四年度における融資状況は、住宅三十七件十九億六千八百万円、療養施設八件九千六百万円、合計二十億六千四百万円という数字になっておるのでございます。この点につきましてはなお関係の局とも十分打ち合わせをしてまいりたい、かよう考えておる次第であります。
  246. 西宮弘

    西宮委員 この融資の問題はまことに大事な問題です。もちろん局長の答弁をまつまでもなく、自己資金を造成するというのが第一であることは当然でありますが、融資なしにはやれない。そこでいま私がお聞きをしたいのは購買事業——いま局長が言われたようないろいろな事業に出しておられることは十分承知をしております。特に問題になるのは購買事業なんですよ。それで購買事業に対して、特に店舗をつくるとか、そういう点についてぜひ道を開いてもらいたいというのが、これはしばしば出ている意見なんです。それでこの問題は、さっきの財投について準備をする過程でぜひ解決をしてもらいたい。これは少し古いけれども生活協同組合が従来の産業組合から変わった当時の記事でありますが、それによると、「生活協同組合は、組織変更の結果、永く系統金融機関であった農林中央金庫を失わんとし、」「他給資金の導入もまた事実上至難な状態に置かれているのであります。斯くて将来益々生活協同組合の堅実な発展を期し公正な経済流通秩序推進の一翼を荷い、且つ又窮迫した消費者大衆の生活の安定、文化の向上に至大な役割を担当せしめるためには、生活協同組合金融の確立こそは焦眉の急務であり」——こういうことで、東京都知事安井誠一郎さんが大蔵、厚生両大臣に意見書を出しております。これは昭和二十四年のことでありますけれども、ここで書かれたことは今日でも全く同じ状態だと思うのです。ですから、これは関係者というよりもむしろ地方自治体の首長がこういう見解を述べておるということは、私は非常に重大な意味があると思うのでありますが、いま私がお尋ねをした、ここで言っていることも、直接いわゆる消費者大衆の生活を守れ、こういうことを都知事が言っているわけです。したがって、その購買事業に、つまり店舗等に、そういうところにも資金の融通ができる、こういう道を開いてもらいたいというのがわれわれの要請なんでありますが、その点どうですか。大臣、おわかりになりませんか。
  247. 伊部英男

    ○伊部説明員 生協の店舗に年金の還元融資をしてほしいという御要望は、前から関係者から強い御要望が出ておるのでございまして、昨年も関係局の間で協議が行なわれたのでございますが、現在の段階におきましては、還元融資は生産の方面には回さない、福祉施設に回すのであるというたてまえになっておりまして、そういうたてまえから申しまして、やはり店舗はどうもむずかしいということが関係局の御意見であったのでございます。しかしながら、この金融の問題といいますものは非常に重要でございまして、たまたま先生御指摘のように、系統金融機関を失っておるというのもまた事実でございまして、ぜひ他の中小企業並みのこういった系統機関をつくってまいりたい。この場合、まあ還元融資は二割五分でございますけれども、七割五分は厚生省としても財投に御協力をいたしておるわけでございますので、ぜひそういった面をも考慮をして、関係の省に、そういう点は金融の道を開く、持てるように、そういう努力をしたいと考えておるのでございます。
  248. 西宮弘

    西宮委員 大臣、いまの局長の答弁は私は非常に問題だと思うのですよ。つまり、生協に対しても他の中小企業並みの資金措置を講じたい、こういうことを言っているんだけれども、これは私は最初から繰り返しているように、生協というのはそもそもみんなが、消費者が金を出し合ってつくった団体で、しかもそこからもし利益があがるならば、それはみんな消費者に還元をする、こういうことで、だれもそこで利益をあげたり利潤をかせいだりというような人は一人もいないわけですよ。そういう点について、一般の中小企業、あるいは中小企業というか一般の企業体、これとは完全に性質、性格が違うと思う。だから、それに対する金融の措置を講ずるというのが、ただ中小企業並みの金融措置を講ずる、こういうことでは私は全く意味がないと思う。大臣どうですか。
  249. 伊部英男

    ○伊部説明員 中小企業並みということばは必ずしも適当でなかったかと思いますが、先生が御指摘になりましたよう意味におきまして、生協が系統の金融機関を持っていない、そういうものをどこかに見出してまいりたい、こういう趣旨でございます。
  250. 西宮弘

    西宮委員 系統を持たないからどこかに見出していきたいということだと、おそらくいま頭に描いているのは、たとえば中小企業金融公庫とかあるいは農林中金とか、そういうことを考えているんだろう。新しく何か生協専属みたいな金融機関をつくる、こういうことを考えているわけじゃないと思う。もしそうだとすれば、いまの財投をふやしてそれで融資措置を講ずる、こういうことならば大いに意味がある。しかも、さっき言ったように窓口を開いて。意味があると思うのだけれども、そうじゃないですか。ただ、いまある中小企業金融公庫とかあるいは農林中金とか、そういうものを使おう、こういうことじゃないですか。
  251. 伊部英男

    ○伊部説明員 いろいろ先生から御提案、御質疑等があるわけでございますが、ただいま金融の問題につきましても検討いたしておる段階でございますので、その一環として十分検討してまいりたいと考えております。ただ、生協独自で独立の金融機関をつくるということは非常にむずかしいと思いますので、やはり既存の金融機関にいろいろな方法で、生協に融資をしてもらうことが容易ないろいろなくふうをしたいという意味で努力をしておるわけでございます。
  252. 西宮弘

    西宮委員 時間がなくなりましたので結論を急がなくちゃなりませんが、大臣、局長の答弁でもけっこうだけれども、いまの点ぐらいは、要するに生協の特殊な任務あるいは特殊な組織、つまりこれは消費者団体の組織なんだ、そういう点ぐらいは十分認識をしてもらって、したがって、かせいでもうけるという団体とはおのずから違うのだから、そこに対する金融措置なんということも当然に別な対策を講ぜられなければ、およそ意味がないと思う。しかも、これは厚生大臣考え方一つでどうにでもなるのですよ。つまり厚生省の政令で使途、使い方はきめられているのですから、これはどうにでもなる。厚生年金の還元融資とかあるいは国民年金の特別融資、これを見ても、昭和四十五年はその前年に比べると全体の額はずいぶん大幅にふえているのですよ。去年は千八百四十五億だったのがことしは二千三百五十七億、ずいぶん大幅に全体がふえておる。その中で大部分が地方債に回されているわけです。もちろん地方債も大事ではあるけれども、実は地方団体などは原資にはそんなにに苦労はしないわけです。地方債のワクを自治省で認めてもらえば、原資には苦労しない。ところが、大部分がそっちに回ってしまって、肝心かなめの年金福祉事業団が使うそっちのほうは額が非常に少なくなっている。きわめて少ない。こういうことでは、いままで話しておったようなことをやりたいと思っても容易にできないと思う。だからぜひ財投のワクをふやしてこれに充当する、しかもいま制限されている購買事業、こういうところに道を開くというのが厚生大臣のお考え一つでできるのだから、ぜひそれをやってもらいたい。これはいかがですか。
  253. 内田常雄

    内田国務大臣 税金の問題やらまた生協の金融の問題やら、私のほうの社会局長と先生との問答を承っておりまして、実は私は少しそのほうの専門家に属する部類の仕事をやってまいりました。たとえば税金の問題でも、農協と同じにせよという強い御要望がございまして、先年私が衆議院の大蔵委員長をいたしておりましたときにいろいろの話し合いがございましたが、結局大規模の生協には御遠慮をしていただいて、あれは資本金一千万円以下ということでございましたか、小規模の生協についてだけ積み立て金の一部非課税の措置を講じた際にも、実は非常な苦労をいたしました。ところが、それを全面的に広げるという問題よりも先に、これは租税特別措置でございまして期限がございまして、そういう小規模生協に対する租税の特別措置も、たしか来年の三月三十一日で期限満了になってしまうはずでございます。でありますので、この期限をさらに延ばす、その上にさらに規模の大きい、資本金の大きい生協を積み立て金非課税団体にまで積み上げるというような問題が生じてきますので、これは非常に困難が伴うことでございますが、しかし、税金の問題も私どもの研究課題といいますか当面して解決しなければならない課題の一つとして取り上げてまいるつもりでございます。  金融の問題でございますが、これは西宮先生は厚生大臣考え一つ、筆先一つでどうにでもなるというお話でございましたが、どうもそうはいかないはずでございます。というのは、いまのところ厚生大臣の監督下にあります年金福祉事業団から、さっき申しますような生協の福祉関係、療養所とか住宅とかそういう方面の資金はお出しをしておるのでありますが、何といいますか、事業資金といいますか生業資金というものは、年金福祉事業団法を改正をしないことには——この改正にはまた非常な困難が伴うわけでございますが、私の一存ではできない問題でございます。しかしお話がございました中小企業金融公庫でありますとか、あるいは商工中金等を親機関というわけではございませんが、そこは手の届く借り入れ圏内にもあることと思いますので、その方面の業務方法書——これは法律じゃございません——等を直してもらって、とにもかくにもそこに手をつける。いままではこの生協は、労働金庫等を除いては、中小企業金融公庫にもあるいは商工中金にもおそらく手がついていないと存じますので、その辺に手をつけるようなことを講じてまいることは、もしそれが少しでも端緒がつきましたならば、非常に大きい、明るい方途になることと思いますので、そういうことも含めまして私どものほうの課題といたしまして検討させていただきたいと思う次第でございます。
  254. 西宮弘

    西宮委員 いまのは大臣、はなはだ認識を誤っているので訂正しておきたいと思います。たとえば中小企業金融公庫法には消費生活協同組合もちゃんとうたってあるのですよ。だからこれは問題ない。ただ問題は貸付の限度あるいは償還の期間、こういうものが、金額が少ないし、あるいは期限が短いし、そういう点に実際の問題がある。あるいは農林中金等も、これは現に使われているのですよ。やっているところがたくさんある。ただしかし、これはいわゆる農民から集めた金ですから、関連産業に限定されるというような問題があり、あるいはそういうところで集めた金ですから当然にレートが高くなるわけですね。だから私はあくまでも財投をふやせ、こういうことをさっきから言っているのはそのためなんです。だからそういう点を大臣十分認識を新たにしてもらわなければならぬ。  最後に一つだけお聞きしたいが、どうですか、開発銀行を使うわけにいきませんか。
  255. 内田常雄

    内田国務大臣 おことばを返して恐縮でございますが、財投をふやすことは、さっきも御指摘がございましたように、毎年財投もふえましょうし、また財投の中からの厚生省関係への還元融資の金額もふえておるわけであります。その財投資金あるいは還元融資の資金を置いておくその金融機関として何を選ぶか。年金福祉事業団をそれにいたしまして財投からの金をふやしましても、年金福祉事業団というものの法律上あるいは政令上、御要望のような金が貸せないことになっていると思いますので、その辺をどう直していくかという問題が一つあると同時に、認識を改めさせられたわけでありますが、いまの中小企業金融公庫あるいは商工中金などは業務方法書というのがございまして、業務方法書でなかなか生活協同組合にはうまいぐあいに金が出ないような業務方法書ができておると思いますので、せっかくそういう公庫法による政令で貸付対象としては消費生活協同組合というものも法令上載っかっている中で、業務方法書等をこの際新時代に即して新厚生大臣に顔を立てていただくというような道も、これもあわせて、含めて研究させていただく、こういうことでございます。たいへん楽観的なことを申し上げられませんが、何にいたしましても生協は厚生省の所管の法律に基づく組織でございますので、先ほどもお話がございましたように、これまで何にもしなかったということ、そのうちの一つでも二つでも解決させていただければ、これも時代の要求でございましょうが、非常にいい、こういうことで努力をいたします。
  256. 西宮弘

    西宮委員 それじゃ、大臣のそういう決意でぜひがんばってもらうようにお願いしたいと思います。時間がありませんから、もっといろいろお聞きしたいのですが、残念ながらやめざるを得ませんので、ひとつまた進行状況を随時お尋ねをしますから、ぜひがんばっていただきたいと思います。きょうは実は農林省からもわざわざおいでを願ったりしたのでありますが、例の生産と消費を直結する、こういうことがきのうの関係閣僚会議できまっておるようです。そういう問題について農林省の対策をお願いしたいというつもりだったのですけれども、時間がありませんから省略をいたします。ぜひこういう点も、さっき経済企画庁からも答弁がありましたけれども、それらをあわせてそういう道をぜひもっと拡充してもらいたいということをお願いしておきます。あるいはまた酒、たばこ、米ですか、そういうものなども扱わせる。きのうもきまっておるようですから、そういうのを具体的に現実に実施に移してもらいたいということをぜひお願いしたいと思います。終わります。
  257. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 古寺宏君。
  258. 古寺宏

    ○古寺委員 ベーチェット氏病につきましては、去る四月二十三日に私が質問をいたしました際に、大臣は、スモンと同様に多大の関心を持って臨む覚悟でございます、こういう御答弁がございましたが、その後ベーチェット氏病に対する対策についてどのような検討がなされたか。さらにまた、今後どのような対策を考えておられるか、具体的に大臣からお答えを願いたいと思います。
  259. 内田常雄

    内田国務大臣 恥ずかしい話でございましたが、古寺先生等からいろいろのお話を持ち込まれるまでは私はベーチェット氏病のことについては存じませんでした。お話を承りまして、その治療法も確立していない病気、またおそらくは診断法につきましても確立をしていないこの病気のことにつきまして、ただいまお話がございましたように、厚生省といたしましても関心を持つべきである、こういう考え方を深めたものでございます。このことには今日も変わりございません。たまたま一週間ほど前、テレビでベーチェット病についての報告がございまして、私は熱心にそれを見詰めてまいりました。そこで厚生省といたしましては、これをやはり本年度のうちに取り上げてまいる体制をつくる。来年度の予算要求ということではなしに、そういうことを、ここに医務局長おられますが、私から指図をいたしまして、スモン病と全く同じではございません、あのほうはこれまでベーチェットよりもある意味においては広く先に取り上げられてまいっておりますので、研究班というものもかなりの規模で縦横につくっておりますので、それと全くこの段階で同じというわけにはまいりませんけれども、特別の研究班というものを、本年度の予算のうちからさいて、そして診断なり治療なりについての研究を進めてまいることに方向をきめまして、本年度内の措置をとらせることにいたしておりますが、いさいは医務局長から答弁をさせていただきます。
  260. 松尾正雄

    ○松尾説明員 ベーチェットにつきましては、ただいま大臣からお答えのようなことでいろいろと私どもにも御指示をいただいております。この問題については、いまお話しのように、本年度のうちにいろいろな研究体制を整えたい、こういうふうに考えております。具体的には医療研究費の助成補助金というのがございますが、これはすでに昨年からいろいろなテーマ等も出ておる問題ではございますけれども、その中に特にこのベーチェット問題を入れまして、研究班を組織いたしまして、従来の、その後のいろいろな研究の業績もいろいろと集大成をいたした上で、さらに今後の研究方法等も合わせました研究班をつくりたい、こういうことで最終的にいろいろな事務的なセットができますのは大体今月中にめどがつくところまできておるわけでございます。
  261. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで、厚生省は患者の実態というものを現在掌握はしておらないと思いますが、今年度は身体障害者の実態調査が行なわれる予定になっておりますが、この際ベーチェットも含めて実態調査をおやりになってはどうか、こういうふうに考えるわけでございますが、そういう点についてはどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  262. 伊部英男

    ○伊部説明員 身体障害者につきましては各五年ごとに実態調査を行なっておりまして、今年実態調査を行なう予定になっております。したがいまして、原因のいかんを問わず身体障害の状況になっておりますれば、当然調査が行なわれるわけでございます。
  263. 古寺宏

    ○古寺委員 このベーチェット氏病というのは御承知ように、きわめて慢性的な悲惨な経過をたどる病気であって、しかも非常に若い男性に多いわけでございます。したがいまして、経済的な圧迫であるとかあるいは家庭の崩壊が見られて、非常に悲惨な闘病生活をしいられているわけでございます。せっかく社会復帰しようと思いましても、これらの方々に対する更生施設というものが非常にに少ないために思うよう社会復帰ができない、こういうような実情でございますが、今後これらの方々に対する社会復帰について厚生省はどういうことをお考えになっておられるか、その計画があるならばお聞かせを願いたいと思います。
  264. 伊部英男

    ○伊部説明員 ベーチェット氏病による視力障害者につきましては、国立視力障害センターが設けられておりまして、これらの方々が全体で約一〇%程度を占めておる状況でございます。全国におります定員は九百九十名でございますが、そのうちベーチェット氏病による視力障害者は百一名、一〇・二%を占めておる状況でございまして、今後とも訓練に耐えられる方につきましては、症状等を勘案をいたしましてできる限り入所をさしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  265. 古寺宏

    ○古寺委員 この国立視力障害センターという施設には、医療管理体制というものがないわけです。ところがこのベーチェット氏病の患者さんというのは全身病でございまして、入所をいたしましてからもいろいろな症状があらわれてまいります。さらにまた、こういう施設に入っている方々はスモンであるとかあるいは脳腫瘍であるとか糖尿病であるとか、そういう原因によって失明されて盲人になった方が多いわけでありますが、これらの方々を収容する施設として当然医療管理体制というものを併設した、あるいはリハビリテーションの施設を持ったそういう施設にしていかなければならないと思うのですが、今日そういう点については厚生省一体どういうお考えを持っておられるのか承りたいと思います。
  266. 伊部英男

    ○伊部説明員 現在存在しております国立視力障害センターは、視力障害者に対しましてあんま師、マッサージ師、指圧師、はり師、きゅう師等の養成、訓練を行なう施設でございまして、症状が固定をして訓練に耐える方を入所さして社会復帰への道を見出していただく、こういう性格のものでございまして、常時医療を必要とし、したがいまして訓練には向かないという方々につきましては、やはり現在の体系では病院を中心に考えるほかはないのではないかと思うのでございます。  ただリハビリテーションの全体の体系と申しますか、リハビリテーションと医療の連携あるいは科学技術の進展ということが非常に重要でございますので、そういうリハビリテーション全体の問題につきましては、関係局におきましてもそれぞれ検討が進められておるところでございますが、社会復帰におきましては身体障害者福祉審議会におきまして、ただいまそういった問題をも含めました総合的な方針を御審議いただいておる段階でございます。
  267. 古寺宏

    ○古寺委員 現在、こういう医療管理体制ができておらない、あるいはリハビリテーションの施設を持っていないために中間医療センターというものがございます。これは埼玉県の毛呂病院というところにございますが、ここに十二名のベーチェット氏病の患者さんがおられまして、一日も早く国立視力障害センターに入所をして社会復帰をしたいというので、毎日一生懸命そこで治療をしながらリハビリテーションを行なっているわけでございますが、このベーチェット氏病というのは大体五年くらいが極期でございますので、五年くらいで失明をして十年くらいの経過をたどるという非常に長い病気でございます。かりにこのベーチェット氏病の患者さんに対して、目の見えるうちにいろいろな職業訓練というものを行なうならば、これは社会復帰も非常に早くできると思うわけでございますが、ただいま局長さんからお話がありましたように、症状が固定しなければ入所ができない、そういうような実情になっているわけでございますが、今後こういうベーチェット氏病に対しての中間医療センターというものは当然国が考えなければならない、あるいはそういう視力障害センターというものに併設をしていかなければならない施設である、そういうふうに考えるわけでございます。  さらにまた、この毛呂病院の中間医療センターに対しては何ら国からの助成がございません。こういう点について局長はどういうふうにお考えになっておられるのか承りたいと思います。
  268. 伊部英男

    ○伊部説明員 私がお答えするのは必ずしも適当でないことかもしれませんが、リハビリテーションの問題につきましては、最近特に医療と並行してリハビリテーションを行なうという考え方が強まってきつつあるようでございまして、この点につきまして必ずしも現在の病院あるいは社会福祉施設の体系が適合していない面もあるわけでございます。この点につきましてただいま先生から御提案もあったわけでございますが、関係局におきましても十分協議もし、また審議会の御意見等も拝聴してまいりたい、かよう考える次第でございます。
  269. 古寺宏

    ○古寺委員 今年度のベーチェット氏病による失明者の国立視力障害センターに入所を希望した方々は五十一名でございますけれども、それに対して入所を許された方は三十六名でございます。今後これらの施設というものに入所を希望する失明者は増大するというふうに考えられるわけでございますが、こういう入所を許されなかった方々に対してはどういういわゆる救済措置というものを考えておられるか、あるいはそういう入所できなかった方々に対してはどういう措置を講じておられるのか、その点について承りたいと思います。
  270. 松尾正雄

    ○松尾説明員 ただいまお出しになりました例の具体的な個々のケースについては、私も承知いたしておりませんけれども、先ほど社会局長からお答え申し上げましたように、入所するための一定の資格というものをいろいろと選定されておられると思うわけでございまして、その中でいわば訓練に耐えないとか、病気のまだいわば患者さんという立場にあられる方ということであれば、身障施設としては受け取りにくいという事情もあったのではないかと考えておるわけでございます。しかしながらいろいろ私どもも、社会局長からもお答え申し上げましたように、リハビリテーションという問題については目の見えているうちに訓練をされたらどうかという御指摘は、非常に至言だと私は存じております。特に、一般にある症状が固定してからリハビリというものが始まるのだという考え方というものについては、私どももやはり疑念を持っておるものでございまして、むしろ診断がついたその瞬間からリハビリという問題がスタートをすると考えるほうが妥当であろうかと考えております。そういう意味におきましては医療機関側におけるいろいろなリハビリに通ずる体制の整備という問題が一つございますけれども、また同時に、単に視力障害センターのみならず、そのほか職業的なそういう養成をするというような点との関連で、中間の方々にもいろいろな手を伸ばすというようなことがこれからもう少し体系づけて検討されなければならない、そういうふうに感じておるものでございまして、先ほど社会局長から審議会でいろいろと検討していただくという問題でございますので、私どももそういう点を意識しながらこの審議会の結論の進行を待っておるというよう状況でございます。
  271. 古寺宏

    ○古寺委員 ただいまの御答弁によりますとあまり実態をよく掌握していないようでございますが、これらの施設に入所をした人々に対する職業訓練というものは、ほとんどがはり、きゅう、あんまでございます。過去の経験を生かしたり本人の能力を十二分に発揮できるような職業訓練というものを考えていかなければならないのじゃないか、そういうふうに思うわけでございますが、こういういわゆる新しい時代に適応したリハビリテーションの、あるいは職業訓練の施設の充実整備というものについては、何ら手が施されておりません。こういう点についてどういう計画をお考えになっておるのか承りたいと思うわけです。  しかも、更生訓練費というのが三百円から千円支給されております。これは労働省の場合には二万円くらい支給されているわけでございますが、どういうわけでこういう少ない更生訓練費を支給しているのか、今後これを増額していくお考えがあるのかどうか承りたいと思います。
  272. 伊部英男

    ○伊部説明員 盲人に限らず、身体障害者の職業の開拓ということは非常に重要な問題でございまして、国立センターの中におきましても、たとえばかなタイプ等の仕事も始めておりますし、また先般新聞紙等にも報ぜられましたような盲人による電話交換手、こういったような努力が重ねられておるのでございます。日本の盲人はあんま、はりという非常に大きな職業分野を従来持っておるのでございますが、反面新しい職業分野の開拓がおくれておるという非難もあるのでございます。こういう点は引き続き努力をしてまいらねばならぬと考えておるのでございます。  訓練手当の問題につきましては、労働省の行なっておりますものはおそらく失業保険会計によります事業ではないかと思うのでありますが、いずれにいたしましても、厚生省といたしましても引き続き改善に努力をいたしたいと考える次第でございます。
  273. 古寺宏

    ○古寺委員 かなタイプをやっている方は確かに三人はいらっしゃいます。これは点字印刷科というものがあっても、現在一人も訓練を受けていらっしゃる方がおりません。電話の交換手にいたしましても、これは国立の施設でそういうふうに訓練された方ではない、そういうふうに承っておるわけでございますが、こういういわゆる施設の専門職員というものが非常に不足をしているためにこういう結果になっていると思いますが、こういう施設のいわゆる専門職員の養成あるいは増員ということについて、一体どういう考え方で進めているのか、どういう養成機関を考えておられるのか承りたいと思います。
  274. 伊部英男

    ○伊部説明員 御指摘のよう社会福祉施設の今後の普及、増設を考えますと、職員問題が非常に大きな溢路でございます。そのため、既存の社会事業大学社会福祉学科等からも年間約二千名が卒業してまいりますけれども、こういう社会福祉大学の内容の充実を厚生省としても引き続き要望してまいりたいと思いますが、また一面、基本的には職員の労働条件あるいは労働環境といいますものがきわめて重要な条件であろうと思いますので、毎年度この改善に努力をいたしておるところでございますが、明年度以降におきましてもさらにその改善につとめたいと考えておる次第でございます。  また職員問題につきましては、先生が御指摘のような問題意識を持ちまして、社会福祉審議会に職員問題分科会を設けまして、昨年秋以来御審議をいただいておるのでございまして、この答申を背景といたしまして長期的な職員の充実あるいは資質の向上、職員の増員、そういったようなものにこたえるような対策を考えてまいりたいと努力しておる次第でございます。
  275. 古寺宏

    ○古寺委員 こういう視力障害センターでは、歩行訓練士であるとかあるいは感覚訓練士というような専門の職員が必要でございます。ところがわが国の制度の中には、こういう制度がまだできていないわけです。そういう制度がないから、当然こういういわゆる専門職員もいないということになりますが、今後こういういわゆる必要な職種の制度化というものは早急に考えなければならないし、またそういう養成機関というものも当然検討しなければならないと思いますが、そういう点については厚生白書にもそういうことが書かれておりますが、今年度はそういうことについてはどういうことをお考えになっておられますか。
  276. 伊部英男

    ○伊部説明員 先生御指摘のようにいろいろな専門家を養成しなければならないのでございまして、その数も不足しておりますし、あるいは資格も確立しておりませんし、養成機関も十分ではないようでございまして、今後そのよう方向で努力を進めねばならぬのでございますが、本年はスピーチセラピスト——言語治療士、聴能訓練士の養成にかかるということで、本年は建物をそろえまして、明年からその養成、訓練に入る予定でございます。今後もそういった趣旨で各種の専門家を養成するように養成機関を有してまいりたいと思いますが、また資格等につきましては医務局が関係する部分が多いのでございまして、関係局とも十分打ち合わせをしてまいりたいと思う次第であります。
  277. 古寺宏

    ○古寺委員 それでは、そういう制度ができるまでは、そういう職員ができないわけですから、そういうようないわゆるリハビリあるいは訓練というものは行なわないわけでございますか。そういう方々による講習会なり何かを行なう、そういう制度ができ、そういう専門家ができる間の暫定的な措置というものは当然考えておかなければならない問題だと思うのですが、そういう点については全然考えておられないわけでございますか。
  278. 伊部英男

    ○伊部説明員 従来、新しい専門職種につきましては、資格をつくってその上で新しい専門家が出てくるということではなくて、むしろ実態的に、養成ができて専門家が生まれて、いろいろ訓練の仕事にかかる、その後それが数年を経て法律をもって資格が定められるという傾向でございますが、いずれにいたしましても、いろいろなニードに応ずる努力をいたしたいと思う次第でございます。
  279. 古寺宏

    ○古寺委員 厚生白書の中にも書かれてあるのですから、当然それはお考えになっておられることをお書きになっているんだと思いますが、非常にそういう点については熱意がないように思うわけですが、今後はそういう点については積極的にひとつ考えていただきたいと思うのです。  そういう実情でございまして、わが国の十八歳以上の失明者は二十三万四千人いるといわれております。ところがこの二十三万四千人の中で、現在就業している人は三二%です。他の身体障害者に比較をして非常に少ないという実情でございますが、これはこういういわゆる失明者に対する、盲人に対する厚生省の更生援護というものがおくれている結果こういうことになったと思うのですが、今後こういう点の解消について、就業率を高める意味において、盲人対策、失明者に対する対策というものが、当然その計画がなければならないと思いますが、局長はそういう点についてどういうふうに考えておられるか承りたいと思います。
  280. 伊部英男

    ○伊部説明員 身体障害者全般につきましては、先ほど申し上げましたように、身体障害者審議会におきましてただいま総合的な対策の御審議をいただいておる段階でございまして、これを踏まえまして、盲人を含む身体障害者に対する対策を強化してまいりたいと考えておる次第でございます。
  281. 古寺宏

    ○古寺委員 非常にあいまいな答弁でどうもはっきりしないのですが、ベーチェット氏病の患者さんの経過というものは非常に長くて、そのために医療費が非常にかかるわけでございます。そのために途中で治療を受けられなくなったり、あるいは家庭で苦しんでいる患者さんもいる、そういうことも聞いているわけでございますが、健康保険の休業補償あるいは継続療養の期間延長とか自己負担に対する治療費の援助等についても今後考慮してあげなければならないのではないか、そういうふうに思うわけでございますが、その点について保険局長のお考えを承りたいと思います。
  282. 戸澤政方

    ○戸澤説明員 ただいま普通の疾病につきましては休業傷病手当金のかっこうでもって半年間、特に結核についてだけは一年半に延ばしております。それから継続給付につきましても、普通は五年間になっておりますが、こういう長期療養を要するものにつきましてこれをもっと延ばすべきであるという御意見、御要望、もっともだと思いますが、スモン病とか成人病とかいろいろの問題、ほかの疾病についても同様の問題がございますので、今後抜本改正ともからんで検討してまいりたいと考えております。
  283. 古寺宏

    ○古寺委員 抜本改正ももちろん必要でございますけれども、現在ベーチェットの患者というのはスモンと同じように非常に苦しいわけでございます。昨年度一年間に眼科のお医者さんの診察を受けた新しいベーチェットの患者さんは、調査の結果判明しているものだけで二千三百名もいらっしゃるわけでございます。しかもそのうちの九〇%が失明をしなければならない、そういう非常にお気の毒な立場に立っているわけでございますので、こういう点については抜本改正を待つまでもなく、患者さんの立場に立った措置というものを考えていただかなければならないと思うわけでございますが、そういう点については、先ほどもいろいろ日雇健康保険の問題もございましたが、局長通達でもってこういういわゆる配慮ができないのかどうか、承りたいと思います。
  284. 戸澤政方

    ○戸澤説明員 私考えますのに、こういうベーチェットとかスモン病とかという問題につきましては、普通の保険医療でもってなかなかカバーしがたいものでございますので、まあ公的医療制度とか、あるいはだんだんお話がございます福祉施設とか、そういったいろんな対策でもって総合的に考えていかなければならぬのじゃないかというふうに思っておりますが、よく関係者でもって検討してみたいと思います。
  285. 古寺宏

    ○古寺委員 それから、ベーチェット氏病に対する専門の医療機関がないために、患者さんが非常に困っております。先ほども中間医療センターについて申し上げましたが、今後、国立病院あるいは国立療養所等において結核病床等が非常に余ってまいっておりますので、そういう施設にリハビリテーションを併設した、いわゆるベーチェット氏病の専門的な病棟、あるいはそういう医療機関というものを配慮する必要があるのじゃないか、そういうふうに考えるわけでございますが、そういう点について厚生省は今後検討の上、そういう設置を考えるかどうか承りたいと思います。
  286. 松尾正雄

    ○松尾説明員 結核療養所等が多少あいてきているものをうまく使ってこういう方面に転用するという御指摘の点は、私どももいろんな角度で検討いたしている問題でございます。  ただ問題は、いま御指摘がございましたように、一番大事な問題はやはり専門家というものがそこにきちんといるということが何より前提でございまして、そういう意味で今後やはり、先ほどの治療研究班の問題等ともあわせまして、ある程度の訓練なり勉強ができるような、そういう方式が出れば、そういう線に沿っていろんなお医者さんを再訓練いたしまして、そういう機能を持ちながら一定の病床等はリハビリテーションの機能を持つというふうに転換をしていく、そういう手順が必要ではないかと考えておるわけであります。必ずしもベーチェットだけにとらわれているわけではございませんけれども、先ほど来申し上げました医療といわゆる一般的リハビリテーションというものとのつなぎ目というよう立場に、慢性疾患を担当いたします療養所というものはちょうど接点に立つような性格もございますので、その辺も含めて今後の療養所の性格の一端といたしまして私ども検討を続けさせていただいているわけでございます。
  287. 古寺宏

    ○古寺委員 この国立視力障害センターでございますが、東京の場合を申し上げましても、運動場が狭くてほとんど使えない、あるいは施設が非常に狭い、そういうようないろいろな問題がございます。あるいは教育上の一クラスの数が三十名になっているわけでございますが、こういう施設の狭溢の問題あるいは教育上の単位の問題、そういう面については当然改善をしていかなければならないと思いますが、そういう点については厚生省として検討したことがあるのかどうか、今後の施設に対する充実、あるいは将来においては国立東京視力障害センターを移転してりっぱな設備にするというようなお考えを持っておられるかどうか、そういう点について承りたいと思います。
  288. 伊部英男

    ○伊部説明員 国立視力障害センターに限らず、身体、聴言センターその他各種の国立施設がございますが、その施設の整備につきましては、従来から毎年度予算におきまして努力をいたしておるところでございます。しかしながら、現状におきまして、御指摘のように施設が老朽もいたしておりますし、面積も非常に狭い、いろいろ欠陥が多いのでございます。先般社労委員長に視力センターをごらんいただきました際にもそういう御指摘をいただいたのでございまして、やはり国立施設は地方の施設に対しまして技術的な中心にならねばなりませんので、それにふさわしいものを持ちたいという気持ちでいろいろ検討いたしておる段階でございます。
  289. 古寺宏

    ○古寺委員 東京の視力障害センターには暖房がないようでございますが、これはまあ近いうちに設備をするそうでございますが、他の施設の暖房なんかは一体どうなっているのでございますか。
  290. 伊部英男

    ○伊部説明員 東京の視力センターは今年度配管をいたしまして、明年度から暖房が入る予定でございます。地方の施設は、別府を除きまして、おおむね暖房が入っておるようでございますが、暖房がないような施設につきましては、すみやかに充実をはかりたいと考えております。
  291. 古寺宏

    ○古寺委員 時間がないようですからなんでございますが、あまり局長さんにこまかいことを聞いてもよくおわかりになっていないようでございますので、あんまりこまかいことはやめます。しかしながら、ただいままでずっといろいろお尋ねをいたしまして、こういう失明者に対する、あるいはベーチェット氏病の患者さんに対する対策というものは非常におくれている、ほとんど今日まで顧みられなかったといっても私は過言でないと思います。こういう実情であっては、ほんとうに人間性豊かな七〇年代の新しい時代にふさわしい厚生行政の、あるいは福祉行政の実現というものはむずかしいんじゃないか、そう思うわけでございますが、先ほど大臣から、スモンと同じように今後は研究班もつくり、研究費も大幅に考えたい、こういう御答弁がございましたが、今後これらのベーチェット氏病患者に対する、あるいは盲人に対するそういう対策というものは真剣に考えていただかなければならない、そういう段階にきていると思いますが、局長はどうも施設の実態もわからないようでございますし、今後ひとつ国立視力障害センターあるいはベーチェット氏病の実態をよく調査をされて、そして対策を考えていただきたいと思うわけでございますが、医務局長あるいは社会局長の今後の決意を最後に披瀝をしていただきまして、私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  292. 松尾正雄

    ○松尾説明員 私ども立場では、この病気そのものが非常にまだわからない部分がございまして、そのために多くの疾病にかかった方々にいろいろな面で御迷惑をかけておる、何としてもこの治療の方法等につきまして一日も早くいい結果を得るということが何よりも基本であろうと考えておりまして、先ほど来申し上げましたような、そういう意味で今年度からとりあえず研究班も発足させたいと考えているわけでございまして、引き続き私どもの持っておりますあらゆる力、あるいは国立機関等のいろいろな知識も、その研究班に関係あるなしにかかわらず、そういうふうに結集いたしまして、医療としてのそういう確立が一日も早くできますように努力をしてまいるつもりでございます。
  293. 伊部英男

    ○伊部説明員 前国会におきまして障害者基本法も成立いたしましたことでございますので、リハビリテーション対策あるいは障害者対策につきましてはより一そう真剣に取り組んでまいりたい、かよう考えている次第でございます。
  294. 古寺宏

    ○古寺委員 保険局長もひとつ……。
  295. 戸澤政方

    ○戸澤説明員 担任と相談して進めてまいりたいと思います。
  296. 古寺宏

    ○古寺委員 それでは、以上で終わります。      ————◇—————
  297. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 次に、労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。川俣健二郎君。
  298. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ことしの賃上げ春闘ももう時期的に遠くなりつつあるわけですが、ただ残っているのは中央では政労協、地方では、民間では岡山にあるバス営業の中鉄バスであります。そこで私は後者の岡山のバス営業の中国鉄道、通称中鉄バスの争議について、せっかくの機会でございますからお伺いしますが、争議交渉が枯渇してからかなり月日がたっております。今日、どうしてもこれは私たち国会立場から、そして行政指導に当たられている労働省の強力な指示、指導が必要な時期じゃないか。特に公共性を持っておる営業であるだけに、そうだと思います。したがって、まずその前に局長に、どういういきさつになっておるのか、私は私なりにつかんでおるのですが、私はまた聞き程度の知識しかございませんので、教えていただきたい。それから始めたいと思います。
  299. 松永正男

    ○松永説明員 ただいま川俣先生御質問の中鉄バスの争議でございますが、私ども県と連絡をいたしまして報告を徴しておるのでございますが、中鉄バスは従業員が八百八十七名の会社でございまして、津山市を中心にいたしまして岡山県北部一帯に路線を持っておるバス専業の会社であるというふうに承知をいたしております。現在バスが約三百十台、営業キロは二万五千キロということでございます。  それで、中鉄バスの労使関係におきましては、四十二年ごろの春闘におきましてもいろいろもめごとがあったようでございますが、現在労働組合のほうが二つの組合がございまして、私鉄総連系の組合とそれから中鉄バス労組という別の組合と——私鉄総連系のほうが組合員数がやや多うございますけれども、大体似たような組合員を持った組合のよう承知をいたしております。最近の紛争の直接の動機といたしましては、その前にいろいろ人事関係等をめぐりまして紛争があったようでございますが、現在無期限ストライキに入っております直接の動機は、ことしの春闘におきまして、賃上げ問題をめぐりまして、会社が経営面からいたしまして合理化の提案をしたということをめぐりまして、このバス労組のほうは人員整理等の合理化の問題は別途協議をするということで、賃上げにつきまして八千五百円でございますかで賃金紛争は解決をした。一方の私鉄総連の中鉄支部の組合は賃金問題につきましても妥結を見ない状態のまま、その他の問題もあわせまして紛争が継続いたしまして、そして五月の十五日以降無期限ストライキに入っておるというふうに承知いたしております。  具体的な労使の意見の相違等について詳細には承知していないのでございますが、これに対してまして、岡山県におきます交通事情からいたしまして、このバスの会社が長期ストをやっておりますと非常に地域住民に不便をかけておるという状況がございまして、県民の側からいたしましても、何とか早く解決ができるようにという要望が出ておるようでございます。そしてこの津山市を中心にいたします自治体の首長あるいは議長あるいは県議等の方々が、これにつきまして知事に対しましても早期に解決をするように努力をしてくれ、こういうことの要請を出しておられるのでございます。知事といたしましては、問題の性質からいいまして、地労委であっせんをしてもらうのがいいのではないかという意向を表明をしておるようでございます。従来のこの会社におきます争議におきましても地労委が何回か調停をやったようでございますが、今回の場合におきましても地労委としては適当な時期に調停に乗り出したいという意向のようでありますが、やや複雑な事情のために、いま地労委が入ろうか入るまいかということを解決とのにらみ合わせでややちゅうちょをしておるというよう事態があったようでございます。  私どもといたしましても、これは地域から申しますと二県にまたがる面があるようでありまして、地労委の管轄という面から見ますと、岡山の地労委が乗り出すということになりますと、中労委が管轄指定をする。あるいはまた知事の要請でこれを解決するということになりますと、労働大臣から知事に対しましてこの権限の委任をするというよう——どちらでやりますか、地労委が自主的に乗り出すということになれば私どものほうの手続は要らないわけですが、知事が非常に公益事業で住民の福祉に関係があるからどうしても地労委に対して調停を要請するというような手続をとります場合には、私どものほうでは大臣から知事に権限委任をするというような手続が必要でございますが、それはいつでもできるという体制にいたしてございます。たいへん争議が長引いておりますので、非常にむずかしい面があるかと思いますけれども、いまのような事情でございますので、私どもとしましてはできるだけ早い機会に地労委が紛争解決に乗り出すということを希望をいたしております。  以上、概要でございます。
  300. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ありがとうございました。  第一組合、第二組合と分かれておるところにも不幸な点があるだろうし、それから人事的に幹部人事が輸入人事で、非常に歴史的に問題な会社であるとか等の内部事情については、私たちはとやかく言うべきじゃないと思うのです。ただ、いま局長がつかんでおるように、第二組合のほうは——せっかく出た七千五百円プラス千円、八千五百円のアップというのは、相場的にもそう争議を一カ月近くかけるほどまでの低い金じゃないと私自身は思っている。ところが、第二組合のほうはベースアップを了承して、第一組合のほうがベースアップを了承していないという簡単な受け取り方ではなくて、むしろ大事なのは、せっかくのベースアップを早く妥結して、会社の経営困難、特に北部となれば過疎化という現象がこういう合理化をもたらした原因にもなることであろうから、ベースアップの妥結要件として人員整理、合理化という付帯条件にあくまでも会社が固執する限りにおいては、第一組合と第二組合のイデオロギーの強弱だとか性格だとかとは違って、労働者としては自分を守るという立場に立つのは当然であります。ただ、不幸にして一カ月間それだけの人員が——そしてバスもあれが完全にストップしておるとすれば、近くの通勤通学がかなり弱っているわけです。ここに、きょうは大臣がおられませんが、次官にもぼつぼつ出ていただく時期ではないだろうか。先ほど局長は、地労委が時期を見ておるやにおっしゃっておりますが、どうやら現地では地労委も知事もさじを投げたと言っては失礼なんですが、こういうことこそは中央の行政指導が必要なんじゃないかという意味で、今回この問題を取り上げるわけであります。特に、ベースアップの妥結を見て争議が行なわれていない第二組合のほうに操業させておるのは、通勤通学を対象にする定期バスではなくて、観光バスのほうに回っておるということのようです。したがって、通勤通学の定期バス路線はほとんど八、九割がストップしておる。ところが、岡山というのは交通事情は非常に発達しておるところなんですが、中鉄バスといいますと北部一帯に営業権を持っておるバスで、そういう公共性からにらみ合わせまして、何としてでもやはり時期ではないかという考え方から、私はもう少し局長の強い意見を聞きたい。特に過疎振興助成法はどういうものなのかとか、そういった労使の話し合いというあれが全然ないというようなところに、取りつく島のない不幸な結果があると思うんです。その辺さらにもう少し御意見をまじえてお聞かせ願いたいんです。
  301. 松永正男

    ○松永説明員 ただいま概況を申し上げましたが、おっしゃいますように非常に長期ストであり、しかも、唯一であるかどうか存じませんが、非常に有力な交通手段が半分以下しか動いていないというよう状況でございますので、われわれ都市在住者といたしまして、たとえばこの過密都市の通勤通学がストライキ等で混乱をするということも非常に重要な問題でございますけれども、交通手段が非常に限られておるという面におきましては、やはり公益性といいますか公共性というものは非常に強いものだというふうに考えます。私どもも県とは連絡をしつつあるわけでございますが、幸いに岡山県の知事さんは私どもの政務次官をおやりになりましたし、社労のメンバーでもございましたし、労働問題をよく御存じの方でございますので、また副知事も労働省出身でございますので、私どもとしてはできるだけ連絡を緊密にいたしまして、おっしゃいますような面で——ただ、労使の問題でございまして、介入をしてうまく解決できるかどうかというような見込みもございますけれども、公益性の要請のほうが強いんではないかというふうに思いますので、さらに県の連絡を強化いたしまして、できるだけ早く第三者の公正な機関が入って解決をするように促進をいたしたいというふうに思います。
  302. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そういうお考えであれば、私はこれ以上のお伺いなりお願いはやめますが、次官に一言大臣もいま海外に旅行されておるようですが、先ほど申し上げましたように、金額的なものは、ここにおられるどなたでも、ますまず——ことしの相場以上とは言いませんが、問題はやはり合理化を機会に首切りというものをどうしても引っ込まさないという考え方であれば、これはどうしても争議の解決にならないと思うのです。妥協がないと思いますから。したがって、やはり電話なりあるいは人をつかわすなりして、政府の意向を——津山を中心とした北部一帯の足が奪われておりますから、そういう意味において何らかの指導、指示をやるということをお約束願えれば、私は質問を終わりたいと思います。
  303. 大野明

    ○大野説明員 ただいま中鉄バスの件につきましては、先ほど来労政局長からるる御説明したとおりであります。私どもといたしましても、もちろん知事をはじめ、県当局とも緊密な連絡をとって、一日も早くこの争議の解決ということを、きわめて公共性の強いバス事業並びに岡山の県北一体方々の足の確保のためになさねばならないことでありますので、さっそく事情をもっとつぶさに聴取いたしまして、そうしてこれの解決のための手段を強力に推進していく所存であります。
  304. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どうもありがとうございました。
  305. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 この際申し上げます。  政府関係特殊法人における労働問題について、本日、雇用促進事業団理事鈴木健二君及び海外技術協力事業団専務理事寺岡卓夫君の両君に、参考人として御出席いただいております。  質疑の申し出がありますので、これを許します。後藤俊男君。
  306. 後藤俊男

    ○後藤委員 実は政労協の賃金紛争の問題でございますが、五月六日と五月十三日の社会労働委員会でも、二回にわたって念を押したような形でやってまいりました。さらに昨年、これはもう二、三回申し上げるわけですけれども、木村官房副長官と総評、その翌日には、この社会労働委員会で、政労協関係の賃金紛争につきましては自主的に解決をさせる、しかも半年も一年も長引くようなことではいけないので、今後はそういう指導方向で進めてまいりますと、こういうような約束もあり、しかも労働大臣としても、そのことは五月十三日にはっきり返答をいただいておるわけなんです。ところが、現在のところ、御承知だろうと思いますけれども、政労協関係の各組合はもちろん労働法適用の組合なんです。二回、三回にわたって実力行使もやっておられると思います。ところがゼロ回答。自主団交どころか、全然金額すらも提示しないというようなことになっておるわけなんです。そこで、どうしてもゼロ回答で進まないので、組合のほうとしては中央労働委員会に提訴した。   〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕  ところが、団側のほうはこれを拒否する。受けない。しかもさらに、大蔵省なり労働省関係から何らかの指示がない以上は全然ものが言えません、いつまでたってもゼロ回答でございます、あなたのほうでストライキやるんなら何回でもおやりなさい——表現は悪いかもしらぬが、そういうふうな姿勢が今日の姿勢で、ずっと続いておるわけです。そうしますと、労政局長なりあるいは労働大臣が、いままで何回も何回も、去年からのいろいろな約束もあり、論議もあり、その方針に基づいてやるぞ、やるぞと、この委員会でも何回もおっしゃったわけでございますけれども、何を一体おやりになっておるんだろうか、そう思わざるを得ぬわけです。一体どうやっておられるんだろうか。相変わらず去年、おととしと同じかっこうで賃金紛争解決が長引いてしまう、これではいかぬと私は思うわけなんです。  それで実は、あともう二、三の使用者側の方にも参考人として御出席いただきたい、せめて三人くらいはお願いいたしたいと思っておったわけでございますけれども、都合がございましてきょうは雇用促進事業団の総務担当の理事の鈴木さんでございますか、御足労をいただいたわけでございますが、直接この問題に使用者側として毎日やっておいでになる鈴木さんのほうの、この賃金紛争に対する考え方ですね、これを一体どう処理していくか、やはり何らかの御意見なり考え方があろうと思うわけなんです。その点、冒頭にひとつ鈴木さんのほうから、今日の賃金紛争をどう一体解決していくのかという考え方があればお聞かせいただきたい、こう思います。
  307. 鈴木健二

    ○鈴木参考人 私どもの職員の給与というものが労働協約できまるということは申すまでもないことでございますが、それとあわせまして、私どもの賃金をきめます場合に、先生御存じのように、事業団法におきまして、労働大臣の承認を得る、また、労働大臣が承認をするにあたりましては大蔵大臣と協議しなければならぬ、その大蔵大臣が協議に応ずる場合には、やはりその基準を国家公務員に準拠する、こういう方針が立てられておるわけでございます。そういうことで、国家公務員の賃金の動向がわからない現段階で、私たちの主務大臣である労働省の承認が得られる見込みがない現在において、私どもといたしまして具体的な回答を申し上げるということは適当ではない、こういうふうに考えているわけでございます。  そこで、どういうふうにしたらいいかということになりますと、私どもよう事業団の公共性、特殊性を踏まえますと、なかなかむずかしい問題でございます。こうした問題で私どもが具体的な回答ができない基本的な原因は、やはり、いま申しましたように、私どもが承認を申請しても承認の見通しが得られない状況である、したがって、承認申請もできないということになっておりますので、承認申請した場合に承認が得られる条件ができるだけ早く得られますようども祈願いたしますと同時に、その方向に私どももでき得る努力を払っていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  308. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、いまの鈴木さんの言われました筋としては話はわかるわけなんです。たとえば、政労協関係の職員の賃金につきましては公務員に準ずる、公務員に準ずるということは八月の十五、六日ごろに人事院勧告が出る、それからことしのベースアップについてはどれだけ、こういうふうなことで相場が出た場合に、それに対して右へならえ、そこまで事態が進まぬことには政労協の賃金紛争についてはゼロ回答、したがって一歩も進めませんというのが、あなたのいまおっしゃいました端的な言い方だと思うのです。それで毎年毎年いままで紛争が長引いてきたわけなんです。これはいかぬというので、先ほど言いましたように、去年六月、さらにはことしの社会労働委員会で二回、三回、四回にわたって、自主的な団体交渉によって早期解決をはかる、これは木村官房副長官もそういうかたい約束を去年されておるわけなんです。さらに、ここで原労働大臣もはっきり言っておられるわけなんです。また、ここにおられる労政局長もそういう趣旨でいままで話してこられたわけなんです。そうなってまいりますと、労働省に私お尋ねしたいわけでございますけれども、いま申し上げました政労協関係の各公団の使用者といたしましては、いまおいでになるよう考え方でおられる以上は、この賃金紛争は、人事院の勧告が出ないことには、公務員の相場が出ないことには一歩も進みません。そうなると、相変わらず去年と同じように紛争が長引いてしまうことになる。去年の約束やらことしの五月六日なり五月十三日にあなた方のおっしゃったことはまるっきりうそになるわけです。自主交渉で早く解決するようにやりましょう。これは労働大臣も堂々と言い切っておられるわけなんです。それなら、そのように労働省なり大蔵省を説得するなりあるいは話をしていただいて、いわば団側にものを言えるような姿勢をつくっていただくのが、労政局長、いわゆる労働省の任務じゃないかと思うのです。約束されたことに対する義務じゃないかと私は思うわけなんです。そういう姿勢がとられぬ以上は、相変わらず九月になる、十月になる。その間ストライキをどんどんやっていく。賃金は公務員の賃金に右へならえだ。適用されるのは労働法で適用されていく。これでは、そこで働いている人の紛争というものはいつまでたっても解決しません。これに対してどうお考えですか。労働次官どうですか。
  309. 松永正男

    ○松永説明員 政労協の賃金問題につきましては長い経過がございまして、先ほど来先生がおっしゃっておられますような基本の方針というものを基本的に持ちまして対処をいたしておるのでございますが、当初におきましては、数年前でございますが、国家公務員の賃金が国会で決議をされて決定をされたあとでなければ政労協の賃金については回答をしない、こういうよう状態があったわけでございます。  私どもとしては、そういうことは非常に不穏当であるということから、少なくとも国家公務員の賃金についての政府方針がきまった場合には、政府関係機関の公団、公庫、事業団につきましても、その賃金のアップについての回答をできるだけすみやかにするということを私ども強く主張をいたしまして、何代にわたりますか、労働大臣二、三人の方にお願いをいたしまして、閣議でも発言し、そうしてそういう状態にあったわけでございます。  それを踏まえまして、その次には問題点としては二つございますが、その一つは、その回答のやり方につきまして大蔵省の承認というものがあるわけでございますが、それについてできるだけ公団なりあるいは公庫なりの理事者の自主性を生かすということをすべきであるが、がんじがらめにこまかいところまで承認を受けなければならぬということでなしに、基本の大ワクがきまれば、その中で団交できめた給与につきまして承認をするようにすることが自主性を発揮するゆえんではなかろうかということで、たとえば昨年は初任給についての縛りを弾力的にした。従来は初任給平均アップ額、アップ率、それから最高というような押え方、それを基準をきめまして、そうでなければ大蔵大臣が承認しない、こういうことであったのを、初任給については弾力的にするという措置を講じたのでございます。私どももできるだけそういう面におきまして弾力的な扱いを政府はし、公団、事業団が自主性が発揮できるようにしたい、これはかねてからの方針どおり今後も努力をいたしたいと考えております。  それから第二の点は時期でございます。時期につきましては、先ほど申し上げましたように、従来よりはだんだん早まって、ベースアップについては、職員が非常に強く希望しておるのに対応するように、できるだけ早くということでやってまいったのでありますが、問題は、各公団、事業団というものが政府の補助金によってやっているものが大部分である、言うならば政府の予算そのものであるということからいたしまして、どのよう方針でそのベースアップをするかということになりますと、そういう面からいきまして、人事院勧告、公務員給与というものに準拠するということの理由は大いにあると思うのであります。それは申し上げるまでもなく民間賃金を調査をいたしまして格差を出して勧告をするわけでございますが、政労協関係の各団体におきましては、たとえば民間賃金の一五%アップということで出発をいたしておりまして、そもそも給与決定の最初の考え方は公務員準拠ということでございますので、官民格差が出てくれば、その差額を人事院勧告に準じてやっていくという筋は一つあると思うのでございます。  これはこれといたしまして、しかし政労協組合の皆さんが春に賃上げをしたい、労組法適用の民間は春に賃上げをするからわれわれもしたいということを強く希望をしておられまして、そういう運動を展開しておる。しかし、一方におきまして、いままでのような弾力的な措置を講じながらも、人事院勧告、公務員給与というものを一挙に離れて、春の時期においてやるべきかどうかという問題が一番大きな問題でございます。私どもも政労協の組合の方針というものについてどうこうということを言うべき立場ではございませんけれども労使関係というものが労使双方の話し合いによりまして、そうしてそのことが解決するということになりますと、この賃金のきめ方をどうするかということについての労使間の意思の疎通といいますか、そういうものが率直に申しましてまだまだ熟していないというふうに私どもは思います。そうして、たとえば三公社五現業等の賃金におきましても、今度自主交渉段階におきまして回答をするということをことし初めていたしました。私どもも自主性発揮ということは非常にけっこうなことなので、政府・労働省の立場におきまして、そういう体制をつくるのに応援をし努力をしたのでございますけれども、これは相当の紆余曲折の歴史がありまして、そうしてこういうところに持ってまいったのでございます。政労協におきましても、もちろん組合員の希望あるいは組合員の運動方針というものがあると思いますけれども、そこら辺のところで、たとえば百九あります団体、その団体の理事者と組合との間の交渉——政労協に入ってないところもありますけれども、そういう中で情勢が熟してこないとなかなかむずかしいというふうに私は率直に考えるのであります。  その場合には、たとえば公団法、事業団法におきまして認可なり許可なりということが厳然と法律できまっておりますので、それとの関係をどうするか。大蔵省が承認する場合に、各公団、事業団がばらばらになるというようなことでいいのか、あるいは人事院勧告にかわった基準を持つとすれば、それは何であるかという点につきましての協議をし、そうして相談をなしていってこれを打開していくということが適当な行き方ではなかろうか、こう思うのであります。組合の皆さんのお気持ちはわかるのでありますけれども、いま具体的に、それではこれだけ多数の公団、事業団につきまして、従来十数年やってまいりました労使の間の賃金のきめ方を変えるということになれば、それなりの準備と協議がありませんとなかなかスムーズにはいかない。ただ基本の方針といたしまして、おっしゃるように労組法適用でありますので、できるだけそういう自主性が発揮できるよう方向ということで努力はいたしておるのでございますけれども、いまの春の時期に賃金を上げるという問題につきましては、申し上げましたようないろいろな困難な点があるということが率直な私の意見でございます。
  310. 後藤俊男

    ○後藤委員 それはあなた、いまになって政労協関係が春闘をやるのは解決できぬ、こう言われますが、それなら去年の春の約束なり、この間の話の約束と全然違うじゃないですか。たとえば、いまあなたの説明はるるやられましたけれども、一口に言って人事院勧告が出て内示がないことには政労協の団体交渉は進まない。一口に言えばそういうことなんです、付属物を全部のけると。そうなりますと、去年もおととしも一緒じゃないですか。同じことですよ。それなら五月十三日、この社会労働委員会で、労働大臣として自主的に団体交渉をやらして、早く解決させますというのは一体うそなんですか。さらに、去年総評の岩井事務局長と木村官房副長官との話し合い、さらにその翌日における社会労働委員会における話し合い、そこではっきりしておるのです。毎年毎年政労協は闘争をやりながら、長い闘争をやって人事院勧告まで持っていって、長ければ九カ月から一年かかっておる。こういうふうに紛争が長引くことは、労働省としても労働大臣としても好ましいことじゃない。だから自主的に団体交渉を持ってもらって、争議が解決するよう政府としても、さらに労働行政責任者としても考えてやっていきますと、これははっきり五月十三日のこの委員会でも言われたわけなんです。何を一体労働省としていまおやりになっておるのですか。  さらに、これは労働省の皆さん御承知かどうか知りませんが、五月三日の日に一水会というのがあるんですね。これは労政局長御承知だと思うのです。この一水会におきましては——これはいわゆる政労協関係の各団の使用者のお集まりの会だと思うのです。ここへ労働省の責任者も出ておるんじゃないですか。そこで中央労働委員会の調停は受諾しない、そういう申し合わせをその席でしておるわけなんです。労働省も一諸になって調停あっせんには応じません。これは一体、あなた方の言っていることと逆じゃないですか。私はただ常識的にいままでの経過等を考えてみると、一水会というのは初めて聞いたわけでございますけれども(「何だ、それは。」と呼ぶ者あり)一水会というのは政労協関係の各団の使用者側の会なんですよ。月に何回おやりになるか知りませんけれども、そこに労働省が一緒に出席をして、その会で一緒に話をして、組合のほうが中央労働委員会に提訴しておるけれども、この調停はひとつ受けないようにしよう。私に言わせれば、そういうふうに労働省は指導しておるわけなんです。それじゃ、あなた方ここに来られまして、労働大臣にしても、長引いちゃいかぬから、自主的な団体交渉で早く解決させるようにいたします、いたしますと、去年から何回となく言っておるわけです。この会に出席されまして、そうしてそこで使用者にじゅんじゅんと話をしてこういうかっこうになってきておる。ことしの春闘だって、大体相場が出ておるわけです。だから自主的に団体交渉をやってください、ある一定の金額がまとまった場合には、それを労働省は大蔵省と相談しながらそれをきめていきます、そういうふうに指導されるなら、私は話はわかるわけなんです。二回ストライキをやろうが三回やろうが、全然解決しない、これは何ともしようがないというので、中央労働委員会に組合側は提訴したわけなんですね。そうしたところが、ほとんどの使用者のほうは——ほとんどじゃない、全部です、拒否しておるわけです。あっせんならどうこう、調停は受諾できません。しかもそういう申し合わせをする会に労働省から行ってやっておるんですよ、あなたのほうから指導に。それじゃ一体、ここで言われることと裏面でやっておることと違うじゃないか。できぬならできぬと、去年の秋の木村官房副長官と総評との話し合いのときに、政労協についての話し合いはできぬ、人事院勧告の関係があるからと、はっきり言うたらどうですか。やりもせぬことをそこで約束して。この間の五月六日、五月十三日のこの委員会においてもそうなんです。努力いたします、努力いたしますと、相変わらず同じように言っておるわけでなんです。陰で何をやっておるかというと、これだけ組合のほうは一生懸命やって、中央労働委員会に提訴しても、使用者は受けたらあきまへんぜ、これは一体何事ですか。そんないいかげんな、人をばかにした話というものはないですよ。そんな話がありますか。これは去年なり五月に出た話を、そのまま一生懸命に労働省として指導されておっても、なかなか解決せぬということなら、話はわかるんです。そうじゃなしに、そんなものを受けたらいかぬぞ、とにかく八月の人事院勧告で十月ごろまでものが言えないのだから、内示がないことにはおまえらものを言うな、こういう相変わらずの主張なんですよ。労働省としてそれじゃないということならそれじゃないということで、あなたのほうではっきりしてくださいよ。会議にまで出て——しかも中央労働委員会に提訴しておる。中央労働委員会の会長はどういうことを言っておるかというと、いろいろなことを言っておる。石井会長からごもっともな意見が出ておるわけです。一々私は申し上げませんけれども、何を一体使用者側としてやっておるのだろうか、やろうと思えばやれるじゃないかと言っておるんですよ。これは、なるほど労働省、大蔵省の関係は私はあると思うんです。それはあると思うんです。あると思いますけれども考え方いかんによっちゃ、やれるんです。そうして、いままでもそういう問題を調停解決したことがあるということを石井会長は言っておるわけですよ。これはいままで言われたことを現実にやっておられることと私は非常に大きな食い違いがあると思うし、さらにきのうでございますか、きのうもストライキが行なわれておると思うんです。解決しようとするストライキが、何の影響もなしに、三カ月も四カ月も向こうを向いてあなた方ものを言っていらっしゃるわけでなんですよ。これは鈴木さんのいわゆる参考人として来ていただいた人の立場というのは私はわかるわけなんです。何かそういうような労働省みずからが縛ったようなかっこうでやっておられるところに、私は問題があると思うのです。いま雇用促進事業団の内規規程というのを私ここに持っていますよ。賃金をなぶるときにはどうせいこうせいと全部書いてありますよ。それなら、それで、労使間で自主的な団体交渉をやらせて、もし話がついた場合にはそれが直ちにオーケーということにはならずに、それが労働省に来て、労働省は大蔵省と協議をしてきめていくんだ、そういう運用のしかたをしたって、決してこの内規規程に違反するわけではないのです。私は労働省としてそういう方法で指導してもらえるとばかり思っておったわけなんです。東京へ出てくるたびに、政労協の役員の皆さんは賃金問題はどうなっているかと尋ねておるわけなんです。全然前進せずなんです。これはどうですか。きょうは労働大臣がおいでになりませんから、大野政務次官、いかがでしょうか。
  311. 松永正男

    ○松永説明員 具体的なお尋ねでございますので、私からまずお答えを申し上げます。三点申し上げたいと思います。  一つは、私の見解は先ほど申し上げたとおりでございます。  それから第二点は、一水会という公団、事業団等の理事者の集まりがあることを承知をいたしております。この一水会の幹事の人から話がありまして、労働省の職員が出席をすることがございます。御質問の、何日でありましたか、労働省の職員も出席をいたしたのでありまして、どんな様子であったかということを私もすぐ報告を聞きました。その際に、政労協で出しておる新聞がございますが、実は私どものほうで何とか解決を見出したいということで政労協の幹部の人に組合課長から連絡をして来てもらいまして、何か解決手段はないかといような話し合いをいたしたことがございます。そうして、その際における労働組合課長の意見が政労協の新聞に載りまして、それに対する質問があった。その質問に対して、こういう趣旨で話したんだという返事はその職員がしておりますが、いま言われましたように、一水会という会においてとにかく中労委の調停に応じないというようなことは何も出なかったという報告でございます。直接出席をいたしました職員から私はじかに報告を聴取いたしました。  それから第三点でございますが、実は原労働大臣と岩井事務局長と会見をいたしまして、その際に、御指摘になりましたような政労協の賃金問題についての取り扱いについて話し合いをいたしました。その際は岩井事務局長並びに総評の海老谷争対局長、それから政労協の滝沢議長、それから私と、当時組合課長でありました北川組合課長、これだけ出席をいたしました。その際に私は、できるだけ自主性を発揮するという方向が望ましいので努力をするけれども、一挙に春闘に移行するということはなかなかむずかしいということをはっきりと申し上げております。それはただいま御指摘がありました官房副長官との会見に私は立ち会いませんので、その様子は知りませんけれども、労働大臣と岩井事務局長及び滝沢政労協議長と私どもが話をしました際に、春闘に移りたいという気持ちはわかるけれども、現実の問題として、過去のいきさつや賃金のきめ方、法律制度からいって一挙に春闘というのはたいへんむずかしいということは私は申し上げておりますし、その後の国会におきまして申し上げました答弁の中におきましても、後藤先生に対する答弁の中におきましても、申し上げておるつもりでございますし、それからその前の委員会におきましても、一挙に春闘移行というのはなかなか問題があるということは申し上げておるつもりでございまして、いわば無条件で春に賃上げができるというようなことは、労使関係に実際携わっておる者といたしましては、これはなかなかむずかしいということは非常によくわかるのでございまして、その点につきまして労働大臣会見の際に、それは困る、春闘でなければ絶対困るというような意見もなかったのであります。私どもとしては、もちろん自主性発揮ということがどのような形でどうやったらできるか、これはいまでもやはり私はその解決策を見出したいと思っておりますけれども、それがイコール春闘移行なんだ、それからまた人事院勧告離脱なんだということになりますと、それではいかなる基準でいかなる時期にどうやるか、合理的なものをどう見つけていくかということの地道な積み重ねというものがございませんと、それはやはりたいへんにむずかしい。私は直接民間の労使関係もやっておりましたし、公労協、三公社五現業もやっておりましたけれども、先ほども申し上げましたように、二十数年たちまして自主回答ができるというようなこと、これは望ましい姿ではございませんけれども、現実の問題といたしましては、そういう点も踏まえて、そうしてその中でどのような具体的解決策があるかということを発見していくというのが私の考え方でございます。
  312. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、結局政労協の賃金紛争というのは、あなたがいまいろいろ弁明的なことを言われましたけれども、去年からことしにわたって、とにかく自主的団交によって早期解決の方向でひとつ努力いたしましょう、このことは間違いないのです。何と言われようと間違いないのです。そこで、組合のほうとしては、こうなってきてどうしても解決の見通しが立たないというので、中央労働委員会に提訴したわけなんですね。調停あっせんは受けてない。みな同一歩調でけっておるわけなんです。これを受けさしたらどうですか。受けるように労働省が指導したらいかがですか。一水会のことをあなたは言われましたが、私は、そんなことを言うた言わぬの水かけ論を言うつもりはございませんけれども、団体交渉の席上で使用者側の代表がそういうことを言っておるのですよ。それはこっちから言っておるのじゃないですよ。そうなりますと疑いたくなくとも疑わざるを得ぬですよ。一水会へ労働省が行ってそういうことをやっているのか、それじゃまるっきり話が違うじゃないか、だからいま中央労働委員会に提訴しておるものなら、それに対して応ずる、これはもう春闘が、民間相場が出てしまって、大体終わっておるじゃないですか。残っておるのは公務員だけですよ。それが出るまではうんともすんともものが言えぬというようなことでは、相変わらず三年、五年と同じようなことを繰り返すことになるわけなんです。それでは去年からことしみんながあれやこれや言い合ったことは何にもならぬ、水泡に帰するわけなんです。これは鈴木さん、こういう現状についてどう思われますか、参考人として。
  313. 鈴木健二

    ○鈴木参考人 いま御指摘の点は、調停に応じたらどうか、直接の御質問は労働省に対して調停に応ずるように指導したらどうかというよう意味のことだったと思いますが、私のほうから申しますと、調停をなぜ受けないかということになるかと思います。そういう点からお答えいたしますると、先ほど申しましたよう状況でありますので、現在私どもとして具体的な賃金についての回答をすることは好ましくない、適当でない、こういうふうに判断をいたしておるわけでございます。したがって、原則的にはそういうふうな状況で、第三者機関である中労委に調停に持っていってもなかなか実りが少ない、また、そういう段階で中労委の調停というのは時期的にいかがか、こういうふうに考えておるわけでございます。  もう少し詳細に申し上げますと、前に調停に入ってやったこともあるではないかという先生の御指摘もございましたが、この場合は、私どものほうの事業団で申し上げますと三十九年でございます。その場合は、私のほうは俸給表、テーブルを組合に提示いたしまして、そのテーブルの中のこのランクが足りない、これをどうするかというふうにして、非常に具体的になった段階で調停に応じたわけでございますが、この調停というのはそういうふうなものではないか、こういうふうに思っておるわけでございます。  ただ、しかし、組合といたしましては——どもはそういうことで現在第三者の調停ということにつきましては、その時期ではないというふうに考えておりまするけれども、組合がいまの段階で、どうしても第三者を通じてでも賃金問題の解決をはかりたいということでございますならば、私のほうの労働協約はいま平和条項がございます。したがって、すべて何も受けないということは平和条項の趣旨に反するわけでございます。  そこで、中労委の調整の方法でございますが、私が申すまでもなく、あっせん、調停、仲裁、労働協約にも書いてございますが、そういう三つの方法がございます。そこで、調停というのが三者構成——公、労、使、三者が構成いたしまして、調停案を提示して、それを受けるかどうかをきめる、こういう調整作業でございます。そういう調整作業は、いま申しました三十九年のように具体的なテーブルを示して、もう少し抽象的に申しますと、労使が意見をある程度出し合う状態になってある程度煮詰まる、こういう段階に適するものだ、こういうふうに判断いたしまして、まあいま申しましたような平和条項の関係もございますので、調停には臨まない、しかし平和条項の問題もございますので、もう少し弾力的な方法であるあっせんということで臨みたい、こういうふうな考えでおる次第でございます。
  314. 後藤俊男

    ○後藤委員 あなたはあっせんと言われますけれども、私もいままでの経過を見てみたら、いまから四年か五年前に二年間続いて中央労働委員会のあっせんを二回にわたってやっておるわけであります。あっせんだ、あっせんだということで結局は逃げてしまうわけなんですよ、人事院勧告が出るまで。だから、組合のほうとしては、あっせんということではもうだめだ、過去の経過から見ますると、あっせんということでずるずると結局逃げ切ってしまう。逃げ切るというとおかしいのですが、話がもの別れになってしまう。全然解決しないわけです。それじゃいけないということで、調停申請をしておるわけです。  そこで、いまあなたの言われる説明を聞いておりますると、御承知ように政労協の組合というのは労働法の適用組合ですね。労調法の適用組合です。それが春に全国の労働組合と一緒にベースアップの闘争をやるのはこれは当然のことなんです。それだったら、使用者側のほうとしても腹をきめてかかったらどうですか。団体交渉、よしやろう、自主的に団体交渉をやろうじゃないか。それができぬ場合には、組合のほうから中央労働委員会に提訴した以上は、それを受けて立ったらどうですか。そこで団体交渉をされまして、金額がきまれば労働省へ持ってくる。労働省は大蔵省と協議する。それだってあなたのほうの給与規程に違反するわけでもなんでもない。ここにちゃんと書いてあるけれども、何もかも労働省まかせ、大蔵省まかせで、何か政府のほうからものを言うてくれないとわしらは口がきけませんなんて、こんないくじのない使用者がありますか。ほんとうに何もされぬのと一緒ですよ。とにかく、上のほうから何かものを言ってくれぬことにはわしらはものが言えぬと、そういった説明なんですよ、いまあなたの言われておるのは。政府のほうに向かって、わしらはこんなことでは困る、少なくともわしらが自主的に団体交渉をやって金額をきめるぞ、労働省どうだ。これくらいな元気——元気というとおかしいが、そのくらいの腹をもってやってもらわぬことには、使われておる方にはたくさんの労働者がおるわけなんですよ。毎年毎年同じことを繰り返してまた同じストライキをやる。そして、相変わらず人事院勧告が出ぬことには物事が全然進展せぬ。進展させようと思えば進展させることができるわけなんですよ、やろうと思えば。  きょうは理事長がどこか出張だそうでありますから、あなたは代理で総務理事として来ていただいたわけですけれども、もう時間が来て、さっきからもうどうだ、もうどうだという請求を受けておるから、私はこれでやめたいと思いますけれども大臣のかわりに副大臣の政務次官がおいでになるので伺いますが、これはいままでお聞きになったような情勢なんです。まだ中身の問題でたくさんあるわけですけれども、そこまでいけないうちにこういう話になってしまったわけです。結局いま、政労協関係の組合といたしましては、二回、三回のストライキをやった、だが全然前進せぬ、だから中央労働委員会のほうに提訴した、ところが、使用者側は全部で話し合いをして、さっきのようなかっこうです。労働省も入りなが、一水会がどうとかこうとか言って話を受けない。こういうかっこうでいきますと、過去の経過と同じ経過をたどって、賃金紛争は長引くばかりなんですよ。労調法からいってもこういう精神はないと思うのです。紛争を長引かせるというような。だったら中央労働委員会の調停ですね、これに対して少なくともあなたは、使用者は調停、あっせんを受けると、こういう体制に早急に進める方向へ労働省が指導をしていただく。それがやはり、去年から今年にわたるこの問題に対するいままでの経過なりいきさつなりからして、そういう方向に進めていただくべきだと私は考えておるわけなんです。いかがですか。   〔発言する者あり〕
  315. 倉成正

    倉成委員長 お静かに願います。
  316. 大野明

    ○大野説明員 政労協自体は労組法に基づいた組合でありますけれども、先生御承知のとおり、これはまあ政府関係の特殊法人というようなもので、特殊性、公共性というものをやはり考えていかなければならない、こういうことでありまして、その点で労働大臣あるいは労働省だけで解決できるものでなくして、そこに大蔵省の問題あるいは法律、人事院、いろいろなものが介在いたしておりまして、それでなかなかすみやかに大臣が申し上げたような形になってこないという点において問題があろうかと思います。ただ、こういうように長くストが行なわれ、あるいはそれが波状的に行なわれるというようなことは決して好ましい状態ではございませんので、ただいま大臣は御承知ようにILOのほうに出席をいたしておりまして、留守をいたしておりますので、まあ私ごとき政務次官では、これはなかなかできるような問題ではございませんから、大臣も四、五日中には帰ってまいりますので、帰り次第ひとつ十二分に話し合ってやっていきますから、その点でひとつ御了解賜わりたいと思います。もちろん、この中労委の調停とかあっせんとかいう問題等も含めまして、すべてを解決していくような形に持っていきたいと考えております。
  317. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま政務次官いろいろ言われましたが、何べんも繰り返して恐縮ですけれども、去年から今年にわたり二回、三回、四回、五回とこの問題は論議されておるわけなんです、それできょうは何回目か知らぬけれども、この問題については、中央労働委員会の調停、あっせんについては先ほど言った方向——臨時労働大臣もおられるわけですから、これは臨時労働大臣とも十分相談をして実現するようにとにかく全力を尽くす、そういう固い約束がしてもらえますか。
  318. 大野明

    ○大野説明員 いろいろな調整その他あろうかと思いますが、あっせん等は決して否定していない、受けてもよろしいという態度をもって現在も来ておりますし、またそれ以上の考え方をもってやっていきたいと思います。
  319. 後藤俊男

    ○後藤委員 それ以上とはどういうことですか。
  320. 大野明

    ○大野説明員 それは大臣考え方等もあると思いますので、それ以上に一日も早く解決できるような方法という意味で申し上げたのですが、そういう点で大臣のお考えというものは五月十三日、ここに書いてあるようなこともございますし、自主的な解決の問題等もいろいろありますから、そういう方向を見出してやっていきたいということです。
  321. 後藤俊男

    ○後藤委員 それじゃぜひひとつ、くどいことは言いませんが、いま言われた方向で、長引けば長引くほどいいことじゃございませんので、早急に解決する方向へ全力を尽くしていただく、いままでのような、言うておいても全然やらぬということのないように、ぜひ努力していただきたいと思います。  さらにまた、参考人の鈴木さんにも、きょうはお忙しいところたいへん御苦労さんでございましたけれども、いま副大臣が言われましたよう方向政府としても努力をする、こういうことを公開の席上ではっきり約束ができておりますので、ひとつ使用者側のあなたのほうとしても、腹をきめてかかっていただきますよう、ぜひお願いをいたしたいと思うわけです。  終わります。
  322. 倉成正

    倉成委員長 鈴木参考人には御多用中御出席いただき、ありがとうございました。御退席になってけっこうです。  小林進君。
  323. 小林進

    小林(進)委員 私の質問に対していまお見えになっている方はどなたですか。委員長ひとつお聞かせを願いたいと思います。
  324. 倉成正

    倉成委員長 お答えいたします。  海外技術協力事業団専務理事の寺岡卓夫君であります。
  325. 小林進

    小林(進)委員 それから政府側は。
  326. 倉成正

    倉成委員長 政府側は労政局長。それから外務省の鹿取参事官。
  327. 小林進

    小林(進)委員 私は、委員長を通じて外務省とそれから海外技術協力事業団に出席を要望したのは、いま見えている人ではありません。委員長に出席を要求した人の名前をひとつここで言っていただきたいと思うのです。私はこんなものの出席を要望したわけではありません。どうぞお聞かせください。委員長、お忘れになったわけではないでしょう。
  328. 倉成正

    倉成委員長 委員長は承っておりません。
  329. 小林進

    小林(進)委員 委員部は委員長に報告をしなかったのか。
  330. 倉成正

    倉成委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  331. 倉成正

    倉成委員長 速記を始めて。
  332. 小林進

    小林(進)委員 私は、外務省は政府委員として経済協力局長に出席を要望しているのであります。参事官なんて政府委員かね。私は国会はきのうやきょうのかけ出しではないのだ。参事官というのは政府委員なのか説明員なのか知らないのだ。委員長政府委員ですか。
  333. 倉成正

    倉成委員長 説明員と心得ております。
  334. 小林進

    小林(進)委員 私は説明員を今日要望しておりません。説明員などというものは補助的なものであって、国会の正式の要望に対して、のこのこ出てくる者も出てくる者だけれども、何ですかあなた、そんなことをかってにやられたら国会審議なんかできるものじゃありませんよ。私はこんな説明員なんか要望したことはありません。
  335. 倉成正

    倉成委員長 小林君にお答えしますが、外務省からだれをほしいということは私は聞いておりません。聞いていないことを根拠にしていろいろ言われても困ります。
  336. 小林進

    小林(進)委員 経済協力局長の要望をしておりますよ。
  337. 倉成正

    倉成委員長 どういう手続でやられましたか。
  338. 小林進

    小林(進)委員 委員部を通じて要求しております。
  339. 倉成正

    倉成委員長 私は聞いておりませんから、何回言われても同じことです。
  340. 小林進

    小林(進)委員 それじゃあらためて経済協力局の局長を呼んでください。第一、局の参事官なんというものは常識だって考えられない。参事官が来るぐらいなら、局長を呼ぶことが常識で考えられぬかね。
  341. 倉成正

    倉成委員長 暫時休憩します。    午後六時五十七分休憩      ————◇—————    午後七時九分開議
  342. 倉成正

    倉成委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。小林進君。
  343. 小林進

    小林(進)委員 このたび私は、政府説明に、政府委員として外務省の経済協力局長の出席を要望いたしておりました。参考人としては、海外技術協力事業団の理事長の出席を要望いたしておりました。両方ともお見えにならない。私は、実にこういう国会軽視の態度に心から憤りを感じている。海外技術協力事業団からは、理事長の出席できない理由の開陳があった。言いわけがあった。その言いわけは何だ。田付理事長は、いま組合のストライキがあって、技術で日本へ来ている国々の人々に多大な迷惑をかけている、その迷惑をかけている国々の公館にあいさつ回りをするために国会に出れない、こういう言いわけであります。一体、言いわけにしてもへた過ぎる言いわけだ。私どもはきのうから議論した。私は三十五年に国会議員代表で海外旅行したときに、田付氏はデンマークの大使をやっておった。それから今度は四十年に私が同じく国会の用事で中南米を旅行したときに、彼はブラジルの大使をやっていた。あの出先の中の封建的な大使館で思い上がった態度をしている大使の中でも、田付氏は少しは庶民的だから、まあまあ話のわかるほうだから、きょう国会で、国民代表としての国会で参考人として出席の要望があったときには、おそらくはかの大使ならこないだろう、しかし田付氏だから来るだろうという——われわれは多くの仲間の話し合いの中で、来ないという者と来るという者の中に、私は来るほうに軍配をあげていた。ところが、いま申し上げたような失敬千万な言いわけで、ついに国会に参考人としての出席を拒否してきた。これが外務省の本来の姿ですよ。海外に行くと、菊の御紋をつけた公館の中でふんぞり返って、お山の大将を続けている者のこれが偽らざる姿です。しかし、このままにしてはおきませんよ。私も国会の中で速記をつけて言うんだから、このままにはしておきません。いずれひとつ対決しようじゃありませんか。こうして参考人として外務省の大使のOBがこういう失敬なことをしている。今度は現役の外務省は何だ。経済協力局長も、出席を促しているにもかかわらず、カトリだかカトラだか知らぬけれども、そういう参事官を、こちらには一言の断わりもなしにのうのうとして出席せしめるという、どうだね、二つ合わせて、これがみんな外務省の現実の姿ですよ。こんなことでわれわれは了承できません。きょうは、それでもまあ委員長や自民党の理事やわが党の同僚諸君が、きょうのところはと言うから、私の腹の虫はおさまらぬけれども、きょうのところはやむを得ない。そういう代理人にまあ一応の質問だけ繰り返して終わりますけれども、後日、必ず私はいま一度再開いたしますから、そのつもりでいてください。なめちゃいけませんよ。小林進なんというのは吹けば飛ぶようなものかもしれませんけれども、私自身は吹けば飛ぶようなものでも、少なくとも私のうしろには、国民がいるんだ。大衆がいるんです。国民を代表して皆さん方に問うている。私の質問がだめなら、大衆が心配しますよ。私どもはいつでも国民の審判の上に立ってあなた方に質問しているんだ。なめちゃいけませんよ。  それでは経済協力局長代理かにお尋ねしますけれども、六月二日は、いわゆる海外技術協力事業団でストライキが行なわれた。御存じですか、何の理由で行なわれているのか、お答え願いたい。
  344. 鹿取泰衛

    ○鹿取説明員 組合側の要求を申し上げますと、三点ございまして、一つは機構の問題、一つは人事の問題、もう一つはボーナスの問題でございます。
  345. 小林進

    小林(進)委員 一体海外技術協力事業団というのは、これは労働法規上いかなる性格の団体なんですか、労働法規上は。
  346. 鹿取泰衛

    ○鹿取説明員 労働法規上は一般の労働調整法が適用される法人でございます。
  347. 小林進

    小林(進)委員 政府機関でもないでしょう。政府機関でもなければ公共企業体でもないでしょう。あなたのおっしゃるとおりだ。それならば、一体なぜ団交に応じないのです。なぜ団交に応ずるようにあなたたちは監督指導しないのですか。
  348. 鹿取泰衛

    ○鹿取説明員 団交に応じまして団交をやったわけでございますけれども、団交を平静裏に一定の時間を限ってやるという条件でございました。残念ながら組合のほうでその約束を守らなかったために中断したのでございます。
  349. 小林進

    小林(進)委員 どれが平静で、どれが時間かはあとでお伺いしましょう。  まず第一点のあなたたちの天下り人事に基づく労働の強化という第一の問題だ。この問題についてお尋ねしますけれども一体海外技術協力事業団の役員と、それから部課長の構成をひとつお聞かせください。
  350. 鹿取泰衛

    ○鹿取説明員 役員は理事長のほか理事が四名でございます。それから部長、課長等の役職、いわゆる管理者は約五十名でございます。それから一般の組合員が約三百五十名でございます。
  351. 小林進

    小林(進)委員 そのあなたのところの理事長の田付という人は、これは外務省のOBだな。それから専務理事の寺岡という人は、これは原子力研究所の理事をやられた人だ。そうして労働組合との交渉においてロックアウトなどを強行した、労働者側から言わせれば前科者という——こういうことばは適当じゃないかもしれませんけれども、こういうことをおやりになってきた人です。私はそれの前の出身はわからない。あとでいま少し詳しく経歴を説明してもらいたい。常務理事の吉原氏というのは前農林省の近畿農政局長。そうでございますな。これは前農林事務次官がいらっしゃるから、私はよくわかると思う。それから、同じく常務理事の宮川さんというのは、これは前の大蔵省の造幣局長、同じく常務理事の中西氏は前の通産省の東京通産局長だ。そのほか、この中には部長が八名いる。そのうちの七名が、これは各省の天下りだ。課長が二十三名いる。十一名が各省の天下り。その各省というのはどれかというと、いま申した外務省、農林省、大蔵省、通産省のほかに、建設省、運輸省、郵政省、厚生省、労働省という九つの省からみんな天下って、そしてこういう海外技術協力事業団なるものをつくっている。そして今年度の予算なんか八十億。この金をつかみ勘定みたいにして高給をはんでいるという、こういう摩詞不思議な事業団なんだ。この中でいま労働者が、こういう天下りの人事では、われわれは心魂を込めてその仕事に精励することができないから、天下りはやめてくれ、こういう目標を定めて、いまあなた方に団交その他の交渉を持っているわけだ。一体この要望は不当かね。あなた、不当だと思うかね。こんなお化けみたいな事業団なんかを、そのままこの民主主義下のわが日本に厳然として存在せしめていること自体が、これはたいへんな間違いじゃないのか。しかも、もっと言わしてもらえば、いまの役員はみなうば捨て山だ。みんな各省の局長がやめると、うば捨て山のようにこういう事業団の中に入って高給をはんでいるんだ。今度は部長や課長は現役で入ってくるんだ。現役で出向という形で入ってくる。その入ってくるときにどういう入り方をするかというと、いわゆる前歴にアルファをつけて入ってくる。給料を二〇%上げてくるんだ。そして、本省にいたときよりも二割増しの給料をふんだくって何しているかわからない。二年、三年もするとまた本省に帰っていって、入れかわって来る。こういうことをやっている。繰り返して言うけれども理事長以下理事は、いわゆる各省のそれぞれのうば捨て山にして、みなポストを確保している。そして世襲的にそのポストへ入れかわり入ってくる。部課長は、二年か三年、給料を二割方よけいもらうために、遊びがてらに入ってくる。息抜きに入ってくる。こういうような機構が海外事業団なんかに行なわれている。私の言うことがうそならうそと言ってみなさい。
  352. 鹿取泰衛

    ○鹿取説明員 御説明申し上げます。  この事業団は八年前に発足したばかりの事業団でございます。将来はもちろん部内から人事を登用する、現在も漸次そういう方向で進めておりますけれども、さしあたってのところは、仕事の性質から申しましても、技術協力という範囲に入りますのには、医療協力もあり、それから農業協力もあり、場合によっては、郵政省関係になりますとテレコミュニケーション関係の技術者を指導することもあるということで、それぞれの専門知識のある方を部内に登用いたしまして仕事の安易化をはかっておるわけでございます。ほかの省から来られた方にいたしましても、たとえばいま組合で問題にいたしておりまする六月一日付の新部長の中におきましても、たとえば海外事業部長は労働省出身の方でございますけれども、これはもと労働省にいたというだけでございまして、終身、事業団につとめるということになっておるわけでございます。こういう方も含めると、先ほど先生が御指摘になりましたように、非常に広い意味でけいわゆる天下りという数が多くなるわけでございますけれども、その内容を、私が先ほど申し述べました観点、すなわち再びもとの省に帰るのか、それとも将来とも終身、事業団のために尽くしつとめるのかというようなことで区別いたしますと、先ほど先生が御指摘になりました数字ほどは高くないわけでございます。もちろん、私一番初めに申しましたように、外務省としても、事業団としても、今後は部内の人材を登用して、部内で人事を固めていくというのが理想でございますので、その方針に向かって漸次進めていくつもりでございますけれども、いわばまだ過渡的の状態でございますので、先ほど申し上げたようなことになっておるわけでございます。
  353. 小林進

    小林(進)委員 君は事実をしゃべればいいのだ。将来こうしますなんというのはおこがましいよ。そういうことは大臣や次官の言うことで、説明員の言う話じゃないよ。おこがましいことを言うのじゃない。事実だけしゃべればいいのです。現実にそうなっているじゃありませんか。一二〇%の給料まで現役の出向者にくれているじゃないですか。しかも、そのために昨年の十月——こんなことまで時間がないからしゃべりたくなかったけれども、そうだから言うのだ。通産省から技術指導とかいうものを持っていこうとして組合からの反撃を受けた。世論を上げた。そんなことはよろしくない、世論の支持のもとについにあなた方はそれを撤回せざるを得なくなった。そのときにも、もうこういうことはいたしません、今度は部内から引き上げます、そんなよそのほうから出向は入れませんということを、あなた、昨年の十月に約束しているじゃありませんか。あなた方は世論の前に全面的に敗北したじゃないか。それをまたいまここで繰り返している。繰り返しているのでないというならば、一体なぜこの六月一日から行なう人事異動に対して、労働組合とこの問題について話し合いをしようとしないのか。いいですか、労働者にとっては、自分たちの職場の異動というものは重大な交渉の主たる条件です。労働組合をつくるときには、賃金と同時に、自分たちの待遇の問題と同時に、自分たちがどう配置転換せしめられるかということは、労働者にとっては重要な交渉の一つだ。それをなぜ応じないのですか。その眠ったような顔をしている専務理事、あなたに聞いているのです。なぜ応じないのですか。それは団交事項じゃないとあなたはおっしゃるのですか。
  354. 寺岡卓夫

    ○寺岡参考人 私ども考えは、機構改革は原則として経営権の問題であって、直接労働条件に関する問題でないというふうに解釈しております。
  355. 小林進

    小林(進)委員 これは実に明快な答弁をお聞きしました。これは実に驚いた。あなたの職場における職員の異動を、一方的にあなた方が命令権によってできるとおっしゃるのですね。どこへ飛ばすも、あるいは職場を変えるも、それは経営権に属する、管理権に属することだからあなた方の自由だとおっしゃるのですね。これは重大な問題ですから、いま一度お聞かせください。
  356. 寺岡卓夫

    ○寺岡参考人 原則として機構改革は管理運営権に属する問題だと申し上げました。しかし、ケース・バイ・ケースで、直接労働条件に関する場合には、もちろん団交の対象事項として協議いたします。
  357. 小林進

    小林(進)委員 これは労働者の基本権に関する重大問題ですから、労政局長、いまあなたお聞きのとおりだが、労働者あるいは職員、組合員の異動、配転は、管理者や経営者が一方的に自由にできるという答弁に対して、私は明快なあなたの解釈を承りたい。
  358. 松永正男

    ○松永説明員 ただいまちょっと質問答弁がずれておるような感じがいたします。どのような機構でやるかということについて、経営権、労働権というよう法律概念でものを言えば、経営権に属するということの御返事だったように承るのですが、先生の御質問は、配置転換ということについてどうだ、こういうことでございます。配置転換というものが労働条件に非常に密接な関係がある、それはもう当然のことでございまして、したがって、通常の場合におきましても、配置転換の基準あるいはその際にどのようなやり方をするかというようなことを、労使の間できめるというのは普通の形でございます。機構の問題というよう答弁をされたように承っておりますので、先生の御質問であれば、それは当然のことである、そういうふうに思います。
  359. 小林進

    小林(進)委員 どうですか。いまの松永労政局長の答弁はあなたどうですか。あなたの話によると、配置転換までも機構の中の問題だから、これは経営者が一方的に命令権、支配権でできるんだとおっしゃったが、どうですか。私は機構改革なんて一つも言っていませんよ。あとから速記録を見てもよろしい。労働者の異動だとか配置転換が一方的にできるかということを聞いている。どうですか一体
  360. 寺岡卓夫

    ○寺岡参考人 私は一般原則の問題として申し上げました。個別の問題はもちろんケース・バイ・ケースで、労働条件に関するものは当然取り上げるということでございます。
  361. 小林進

    小林(進)委員 おかしいね。そうすると、組合員——あなたのところの職員ということばでもいい、職員の配置転換あるいは異動に関することは、原則的に経営者、管理者の一方的命令権でできるとあなたはおっしゃるのですね。そうでしょう。私はケース・バイ・ケースなんて聞いているんじゃない。
  362. 寺岡卓夫

    ○寺岡参考人 申し上げますが、私はあくまでも機構改革という……。
  363. 小林進

    小林(進)委員 改革なんて一つも聞いておらぬ。機構のキの字も言ったか。
  364. 寺岡卓夫

    ○寺岡参考人 配置転換、人事異動、その一般原則はもちろん労働条件に関係いたします。
  365. 小林進

    小林(進)委員 だからぼくは、先ほどから控え目に言ったでしょう。あなたはかつてそういうロックアウトをやったり、不当労働行為をやった。われわれのことばで言えば前科をお持ちになっていると私は言った。前科ということばがお気に召さぬならば取り消してもいいが、私ども立場ではそう言わざるを得ないくらいだ。そのいまの気持ちをあらわしたのがそのとおりだ。人事異動、配転を一方的行為でできるかどうかということを、私は最初から繰り返しておる。これは国会委員会で速記をつけているんですよ。機構なんということばは私は一言も言わぬ。何ですか、人のことばをかってにうらはらに解して、機構は経営権、管理権などというその答弁のしかた、それがあなた、まともな形で言われますか。そういう失敬な、人を小ばかにしたことを言わぬでくださいよ。あなたは、私の問うていることに答えてください。  そこで、人事や異動に関することは、それは労働条件に関することというならば、次にくるものは当然じゃありませんか。団交権あるいは労使関係の話し合いの主たる命題になることはあたりまえじゃありませんか。あなたの言われるとおりだ。これが労働問題、労働条件の重大な要素であるとするならば、あなた方は、当然労使の話し合いに応じなければならぬのはあたりまえじゃないですか。なぜいままでそれに応じない。あなた方はなぜ応じなかったのですか。
  366. 寺岡卓夫

    ○寺岡参考人 現在、団交に応じないわけではございませんで、私ども団交をしばしば持ってまいりました。特に三日から四日にかけまして団体交渉のための条件を話し合い、さらに四日におきまして団体交渉を持ったわけでございますけれども、その際、組合側は初めの、静かに正常、平穏なうちに話し合いを進めようというふうな約束を全然無視いたしまして、交渉委員以外の者が部屋にたくさん立ち入り、さらに組合員がわれわれ理事室を取り巻きまして、スピーカーその他でどなるというふうな、きわめて怒号と喧騒のうちに交渉が進められたという状態でございました。そのために、私どもはその交渉を団体交渉に切りかえて、さらに出席人員及び時間その他団体交渉のあり方というものをきめて団体交渉に臨んだわけでありますけれども、それにもかかわらず、またその約束を無視しまして、多数の組合員がその団体交渉会場に入ってくる。そしてまた怒号と喧騒のうちに、われわれゆっくり話をする機会が全然与えられないというふうな状態に終始したのであります。私どもは、こういうふうな状態における団体交渉というものをこのまま継続しては、とても話し合いが満足にいくことはできないというふうなことで、その場で団体交渉を打ち切って引き揚げてまいりましたのが四日でございます。その後私どもは労働組合に対しまして、正常な平穏な話し合いが続けられる保証が得られるならばいつでも団体交渉に応じましょうということで、説得を続けてまいったわけでございますけれども、組合のほうはそれに対する保証をいまだに私どもに与えておらないというのが現状でございます。私どもは、組合が昨年の十月からとってまいりましたそういうようないろいろな団体交渉のあり方というものに、何とかその姿勢を正して、正常なルールのもとに団体交渉を続けたいということを念願しておりますものですから、その保証が得られるまで組合を説得するというのがいまの状態であります。
  367. 小林進

    小林(進)委員 あなたの話を聞いていますと、あなたは団体交渉とあなたの経営者、管理者としての立場を混同している。近代的な経営者、管理者としてはまずあなたはゼロだ。それは職員というものは、あなた方理事者や管理者の前には使用の関係があるかもしれません。しかし、団体交渉ということになって、組合の代表ということになると労使の関係はないのですよ。そこに労使対等の原則というものが出てくるのですよ。あなたはそれを忘れているのではないですか。その中では、いわゆる賃金の問題や、待遇の問題や、人事異動の問題や、配転の問題で、組合の代表が管理者、理事者に話したいというときには、もはやあなたには命令権はないのですよ。支配権はないのです。さっきから説得、説得なんて言っているけれども、説得なんというものはないのです。お互いが対等の立場で話し合う、これがいわゆる近代的な労使の話し合いの場における原則なんだ。それをあなた方は、何です。時間をきめてやりましょう、人数もきめてやりましょう。いいじゃないですか。それはあなた方の申し入れだ。それは説得とか、それを押しつけるとか、強要するとか強制するなんという性質のものじゃない。あなたの話を聞いていると、一方的にそれを強制しているじゃないか。時間も制限しよう、人数も制限しよう、言うことを聞かなければ話に応じない。それじゃ一方交通じゃありませんか。近代的な労使の話し合いがどこにありますか。それじゃ労働者も応じられません。私だって、組合の委員長であり指導者であれば応じられません。その姿勢をまず直しなさい。私は、与えられた時間もない、委員長もなんでございましょうからやめますけれども、そんな考え方じゃこの問題は話になりません。労使対等の原則が一つもないじゃないですか。労働者が持っている基本権、団体交渉権というものを正しく認めて、その交渉に応じようとする気持ち一つもあなたの説明の中にない。われわれに言わせれば、これがこの問題を混乱せしめている根本の理由だ。労働者が応じなければ、交渉ですから、あなたのほうから改めて話し合いに応じたらどうです。もしそれがぐあいが悪いというなら、私が立ち会いに行ってもいいですよ。いま一回交渉を再開してください。そんなに一方的に、人を説得する、命令するような権力で圧力をかけるような、そういう話し合いはひとつやめてもらいたい。きょうからやめてもらいたい。だから私は、どうもいま皆さん方の話やら、この場所に出席をしない国会の軽視の態度、いまのあなた方の答弁の態度、その形から見たら、もうそれだけでも労働者がおこるのはあたりまえだという感じを受ける。あなた方がそんな恥ずかしいことをやっていますと、この問題はだんだん火をふきますぞ。どこまでも行きますぞ。私どももまた世論喚起のために内容を訴えますよ。いま私どもは多くの労働問題、労働組合問題を取り上げているけれども、一番悪いのは、政労協だ。政労協が一番悪い。その悪い原因はどこにあるか。われわれはわれわれなりに研究してみた。みんな各省から出てくる。各省のひもつきですよ。しかも、その各省のそこから受け継ぐポストを守るために顔は全部本省側を向いている。そのいすにしがみついている、高給をはんでいるから。役人として功成り名遂げて年金をもらっている。そのほかにまたこういう事業団なんかに入ってそこでまた高給をはんでいる。このいすを捨てたらというさもしい気持ちでしがみついている。こういう職場で切実に働いている労働者気持ちをそんたくしようなんという考え一つもない。もっぱら自己のいわゆる地位の温存ですよ。ものほしげな姿、こんなものを国民の前に明らかにすれば国民があなた方のやり方を認めると思いますか。世界の経済の第二番目だなんというけれども、国民はあくせくして働いている。苦しい生活の中にいるんですよ。こういうお化けみたいな海外技術協力事業団などというものをつくって、その中で真剣に働こうという三百や四百の労働者の上に鎮座して、その労働者に手一ばい働いてもらおう、気持ちよくやってもらおうなんという考え方一つもない。みんな本省だ。自分を派遣してくれた本省のほうだけながめて、その人たちのために陳弁これつとめている。その形から、先ほどわれわれの仲間の後藤さんが質問したときのように、団体交渉にも応ぜられない、自主的な賃金の解決にも応ぜられない、もっぱら朝から晩まで本省の様子だけ聞いているという、こういうふかしぎなあなた方の態度が生まれてくるのだ。嘆かわしい。もしそんな態度をあなたたちが改めないで、あくまでも団交に応じない、天下り人事のこういうぶざまな姿も改めない、夏季のボーナスも一発でもってそのままきめようなんというそういうことをやるならば、私どもは、国民を代表する国会議員の一人として黙って見ておるわけにいきません。今度相手がかわって私どもがあなた方と対決しようではありませんか。こういう事業団がこういう各省の派閥から出た天下りの役員が、各部課長も人事異動させて、こういうでたらめをしておりますということを、われわれがひとつ世論に訴えるなり、争っていこうじゃありませんか。よろしゅうございますか。これに対する外務省と事業団の専務理事答弁をひとつ聞きたい。
  368. 鹿取泰衛

    ○鹿取説明員 先生の御意見を拝聴いたしまして、私どももいろいろ考えるところがございますが、一番初めに申しましたように、外務省といたしましては、やはりこの海外技術協力ということは国の仕事として非常に重要であると考えておりまして、その業務に支障のないようにしていくためには、労使関係が平和に円満にいくということが一番望ましいわけでございまして、そういう意味で平和的に早期解決するということが望ましいと思っております。
  369. 寺岡卓夫

    ○寺岡参考人 先生の御批判は十分検討いたしたいと思います。
  370. 小林進

    小林(進)委員 約束の時間も来ましたので、私はきめのこまかい質問はやめますけれども、いま一つだけ不可解千万なのは、これも厚生省から行っている後藤伍郎なる人物のこの事業団におけるポストだ。これが今度の機構改革——これは機構改革だ、人事異動じゃないだろう。この機構改革にこつ然としてあらわれてきて、そして部長のいすについている。ところがこの部長は、部長になったけれども下には課長が一人もいない。私は、日本広しといえども、課長もいなくて部長だけ出てくるという、そんな機構改革のあり方なんて、これも摩詞不思議でしかたがない。まあこんなことを一々言ったって話は際限がありませんが、一つ一つ詰めてみれば、まことにもう矛盾だらけです。お化け屋敷と言っていいくらいだ。しかし、お化け屋敷の機構改革の問題は、ひとつ後日申し上げることにして、私は繰り返して言うけれども、団交に応じないというそういう現在の姿の中では、応じない管理者の側に非常に間違いがあるということだ。これだけはひとつ反省をしていただいて、直ちにそういう天下り人事は、これは機構改革とおっしゃるならしかたがないが、少なくともそれに含まれる組合員の人事異動や配転については直ちに団交に応じていただきたい。  なお、春闘等に基づく賃金ベースの問題については、これは後藤委員が先ほど言われましたから、そのとおりであります。この問題についても、直ちに団交に応ぜられぬならばひとつ仲裁裁定の調停に応ずる。あなた方の資格は何も政府機関でもなければ公共企業体でもない。労働法規の上においては民間労働組合と同じなんですから、みんな民間労働組合並みの労使対等の原則に立って、早く皆さん方の態度を改めて、ひとつ正常な労使の原則に復帰していただきたい。復帰してくださらぬければ、私どもあらためてあなた方の現場を監督かたがた見せていただくか、あるいはまた次の機会に再びこの問題を取り上げてあなた方に質問させていただきます。特に、お帰りになりましたら、経済協力局長と田付理事長には、私が当初述べたことを明確にひとつお伝えていただきたい。何かそれで言いたいことがあったら、言ってください。なければこれで終わります。
  371. 倉成正

    倉成委員長 寺岡参考人には御多用中御出席いただき、まことにありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時五十分散会