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田邊議員 私は提案者を代表いたしまして、ただいま議題となりました
家内労働法案につきまして、提案理由並びにその概要を御
説明申し上げます。
さて、御承知のように、今日の日本経済の目ざましい発展は、一方ではあらゆる分野に格差やひずみを生じ、特に家内労働の性格にも大きな変化があらわれ、物価高に対する収入を確保するため、一般労働者の主婦が家内労働に従事する傾向が強まってまいりました。また経営者にとりましても、電気器具、プラスチック製品、メリヤス、紙器などの分野では労働者の不足に対処するため、家庭主婦の家内労働の活用が増大しておるのであります。
政府の
調査によりましても、現在家内労働者は約百万人にのぼり、そのうち九〇%以上が女子で占められ、地域的には六大都市に集中し、産業別には繊維工業並びに雑貨工業がその八〇%を占めているといわれております。しかし、これら家内労働者の工賃は、驚くなかれ一時間当たり四十円程度であり、しかも労働条件はきわめて劣悪で、作業環境が不備なため安全衛生上の問題が頻発していることは御承知のとおりであります。
しかも今日の家内労働の増大は、学卒労働力の不足からくる賃金上昇のために、中小企業が家内労働に依存する結果あらわれた現象でありまして、わが国経済の質的向上、二重構造の解消という意味からもきわめて重要な問題といわねばなりません。また家内労働が増大すればするほど、雇用労働者の労働条件の向上を阻害する要因となっていくことは明らかであります。わが国低賃金の温床的役割りを果たしている、これら家内労働者を苦汗労働から解放し、あわせて家内労働に依存せざるをえない諸産業の近代化を促進する上からも、いまや抜本的な立法
措置を講ずることは刻下の急務であると考えるのであります。
今回、政府も、このようなわれわれの主張を認め、同名の法案を
提出しておるのでありますが、政府案は内容上、なお不十分な点を残しておりますので、あえて本法案を提案したのであります。
以下、この
法律案の概要について御
説明申し上げます。
まず第一に、本法案の適用範囲は、同居の親族以外の者を使用したいで家内労働に従事する者に限ることとし、事業主がこれらの家内労働者に物品の製造等を委託する業を営む場合は、行政当局に届け出なければならないことといたしました。
第二に、家内労働者には家内労働者手帳を交付し、労働条件などを委託に際して明記させ、もって委託者の不正を
規制することといたしました。
第三に、家内労働者の最低工賃は、社会党
提出の
最低賃金法案による一般労働者の最低賃金額に見合う額で、都道府県
労働基準局長が、地方家内労働審議会の議を経て決定することといたしております。
第四に、家内労働者の労働時間、危険有害業務の委託等について、若干の
規制を加えるとともに、労働基準法の規定を大幅に準用することといたしまして、一般労働者と同様にその労働条件の改善をはかることといたしました。
第五に、家内労働者が団結して労働条件等につき、委託者またはその団体と労働協約の締結等の交渉をするため、家内労働者組合を組織することができることとし、これに労働組合法の規定を準用するとともに、家内
労働関係の当事者間において争議行為が発生した場合におけるあっせん、調停について規定いたしました。
以上が本
法律案の提案理由とその主たる内容であります。何とぞ慎重審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
次に、
最低賃金法案について御
説明を申し上げます。
私は、提案者を代表いたしまして、ただいま議題となりました
最低賃金法案につきまして、提案理由並びに内容について御
説明申し上げます。
申すまでもなく
最低賃金制は、制度ができた初めのころは、欧米資本主義諸国で、極度に窮乏化した一部の極貧層の労働者救済のための社会政策として、また資本家の側からは、産業平和や社会緊張緩和のための手段として採用されてきたのであります。しかし第二次大戦後においては、
最低賃金制は労働者の最低生活保障のための統一要求として掲げられるようになっております。
本来、
最低賃金制の目的は、労働者の最低生活水準を保障することであります。現在労働者の最低生活費はほぼ全国同水準となっております。また学卒労働者の初任給水準も労働市場の需給
状況を反映して格差は縮小しつつあります。
また最低賃金水準については産業別、規模別の格差も縮小しつつあり、このような現状のもとでは原則的には全国今産業一律の最低賃金が設定されなければなりません。
今日わが国の経済
情勢を見ますとき、工業生産においては、造船は世界第一位、自動車と化学繊維は第二位、鉄鋼とセメントは第三位であり、民総生産は実に世界第二位の地位を占めるに至っています。
しかるに国民一人当たりの所得は、国連統計によれば、驚くべし、何と世界第二十一位で中南米のベネズエラ以下というみじめな状態であります。すなわち今日なお月二万円以下の低賃金労働者が膨大に存在しこのほか低い工賃のまま放置されている家内労働者は二百万世帯にも及んでいるのであります。
こうした著しい生産と所得の不均衡を是正しし、健康で文化的な労働者の生活を維持するに足る賃金を法的に保障することこそ最低賃金法の使用でなければなりません。
すでに現行法実施以来十年余になりますが、現在、中小企業労働者千三百万人のうち、八〇%は日額七百円以下、月額に換算すると二万円以下という賃金なのであります。しかもこの膨大な低賃金労働者の存在が、他の労働者の賃金にも悪影響を与え、今日のわが国労働者の生活を常に不安におとしいれているのみならず、法的最低賃金は、さらに米価の生産費に含まれる労働力の費用の基礎ともなり、農民の所縁水準をも
規制しているのであります。さらに生活保護基準、失業保険の最低額、失対賃金、国民年金とも関連、低い国民生活水準のおもしとなっているのであります。まさに国民総生産世界第一位を誇るわが国の見せかけの繁栄を物語っていると申せましょう。現行最賃法では
最低賃金制度本来の役割りを十分果たし得ないのはここに明らかであろうかと思うわけであります。
今日、雇用
情勢は逼迫の度を加え、人手不足の傾向は深まり、今後の企業の深刻な問題は労働力不足にあるとさえいわれています。いまや低賃金によって国際競争に立ち向かう時代は過ぎ去りました。
今後のわが国経済は、先進国の名にふさわしい高度の技術によってその発展を期すべきであり、それは労働者の最低生活水準を保障することによってのみ可能であります。
今こそ真の
最低賃金制を確立することは国家の急務であります。中小企業の上に大企業がそびえ立っている経済の二重構造を解消する
方向もこれをおいてありません。
以下法案の内容について御
説明申し上げます。
まず第一に、最低賃金の適用方式は全国一律制といたしたのであります。このことは特にわが国のように、産業別、業種別、地域別の賃金格差がいまだ存在し、低賃金労働者が多数存在する状態のもとでは、それぞれの最低賃金を定めることは
最低賃金制度の効果を半減せしめるからであります。
なお全国一律の
最低賃金制の上に、労使の団体協約に基づいた産業別あるいは地域別に拘束力を持つ最低賃金の拡張適用の制度も積み上げることといたしました。
第二は、最低賃金の決定については、労働者の生計費(原則的には標準家族の必要生計費)と一般賃金水準等を考慮して定めることといたしました。
第三に、最低賃金の決定及び
改正は行政
委員会の性格を持つ最低賃金
委員会に権限を持たせることとし、同
委員会は労使同数の委員とその三分の一の公益委員をもって構成することといたしました。
第四に、最低賃金
委員会は六カ月に一回必要生計費及び一般賃金水準に関する
調査を行ない、その結果を公表し、必要生計費が三%以上増減したときには最低賃金の
改正を決定することといたしました。
以上この
法律案の提案理由及びその概要につきまして御
説明申し上げました。
今日までのにせ最低賃金法に対する汚名をそそぐために、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いして提案
説明を終わります。
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